仕出かし過ぎ指揮官とそれに振り回される人形達 (エリザベートベーカリー)
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第一話 AK12と指揮官の出会い

M4A1と呼ばれている人形は思う、やはりここの指揮官はおかしい

人形とは何か?それを知らない者がこの小説を読みに来るとは思わないので割愛する

だが指揮官にこれだけは言葉に出しておきなさい、と指令を言われていたので彼女は遂行する

 

「世界線は原作ですが細やかな部分での違いがあります…?これで良いのでしょうか指揮官?」

 

指揮官と呼ばれた女性は満足そうに頷く、その後も一定間隔で頷いている訳だがこれは理由がある

感の酔い方であれば分かるだろうが、なんと現在新しく入隊してきた人形と交流を図っているのだ

 

そう、ダンスでだ、加えて言うならコサックダンスと呼ばれるダンスをノリノリでやっている。

更に言うならば、AK47とモシンナガンとナガンリボルバーも種類は違えどめちゃくちゃ踊っている

 

交流を図っている相手の反応、困惑と苦笑いと失神ですが何か?

私は勿論踊ってないですよ踊る訳ないじゃないですか立っているだけでも胃痛が痛いんですよ

何せ相手がAK12と呼ばれる人形ですよ、噂じゃあ正規軍にも採用されてるとかのヤバい人形です

スパイという可能性が高い人形相手に何故うちの指揮官はダンスバトルを仕掛けてるんですか!?

と…とにかく謝らなければ!あとこの司令部からの辞退を勧めなければ!

 

「あ、あのAK12さ」

「なるほど…そういう事ね?」

「え?」

 

彼女の雰囲気が恐怖を醸し出す、それは新月の真夜中で出会った鉄血のハイエンドモデルの如く…

(この恐怖感!やはりスパイ!?それとも実は本部の査察でちゃんと働いてないと判断された!?)

戦闘時ですら滅多に出る事はない冷や汗が頬を伝う、サイドアームに手を伸ばすが

それが間に合う事はないだろう、AK12が行動を起こすのが瞬間的に先だった

 

「これは瞳を持つ私への挑戦状ね!受けて立つわ!」

 

AK12が眼を開けると瞳には万華鏡の様な、今や見る事は叶わぬ星空、その美しさがそこにはあった

 

深度演算モード

それは感情を抑制する機能と高速演算機能がオンになり、文字通りの殺人マシンへと変化

更に軍用人形クラスを含めた機械類をハッキングし、自在に制御することが出来るようになる…筈

なおそれをAK12は眼を開けながらとても良い笑顔で完璧なコサックダンスを披露していた

それを見た姉の立場であろうAK47が更に音量を倍増させ指揮官部屋はダンスフロアへと変化した

 

「…辞表出そう」

 

場末の司令部は【今日】もいつも通りだった、M4A1の期待をぶち壊す様にAK12もおかしい奴だった

最前線であり人形の保有数も最多、正に地獄の一丁目でありながらそこの司令部はおかしかった

というより指揮官一人のせいでどんどん人形たちの頭がおかしくなっていくのだ

ある者は酒と趣味に目覚め、ある者は拷問が昇華され人形でありながら人形の開発者になり

指揮官にヤンデレとして愛情を仕掛けてるアサルトライフル達、そんな地獄現場で寝ているG11…!

何故か犬の首輪を付けたUMP45に晒し台で引きずられているUMP9…!そして犬と猫と鳥!

どうなっているんだ!まともなのは私だけですか!?

 

「うっ…」という言葉を最後に、ばたんとストレスでM4A1は倒れた

 




なお他の司令部や本部からはギャグ落ち指揮官と呼ばれている


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第二話 スーパーなショットガン

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「ショットガン人形…ですか?」

 

指揮官が朝起きがけに、副官であるM4A1に伝えたのは散弾銃形式

その特別性の高い装甲型人形を建造することの相談だった。

ショットガンタイプである人形は盾や遮蔽物としての役割を与えられ、通常であれば体力が多く

防弾チョッキや装甲板を用いて相手に接近、そして相手の進軍を体ひとつで止めて接近

ゼロ距離からの射撃、言わば攻撃と防御力を上げた重装騎士の様な兵士人形である

例外として似たような運用が出来る者がM4A1の姉であるM16やトンプソンなどが存在するが

これらは割愛する。

 

「確かに第一部隊の主力はアサルト4サブ1のバランス攻撃型…ここら辺でショットガンタイプと

マシンガン、そしてハンドガンタイプ1での防衛進軍分隊を作るのも良いかもしれませんが…」

 

M4A1は幾つかの問題点を考えながらうーんと唸る、第一部隊として考える限りでは必須だ

第一部隊の役目は火力と編成バランス効果による万能的に破壊活動を行えることだが

 

これは言わば破壊活動しか出来ない事であり、サブマシンガンであるUMP45の負担も大きい

というかUMP45に緊急修理以外をする事例が今のところない程と言えば分かるだろうか?

最早彼女が指揮官を後ろから撃ち抜くのも時間の問題だ、流れに任せて副官となった身だろうと

流石に身内が上官の撃ち殺しをするのは避けたい、避けないと本部に戻されてしまう

…それもいいのでは?と思ってしまったが流石に対価が指揮官の死はまずいだろう、と考える

 

最低一人でも建造してしまえばいいかもしれないが、製造には最低限でも大量の資材に必要だ

全種の資材が一律一万ほどであり、総数にすれば四万程度は司令部には保存されているが

最前線としての司令部であれば少ない方というか最低限と言うほかない

 

一番の問題はショットガンの建造に必要な資材が二項目も八千程も必要な事だ。

弾薬と同列に必須と言える配給だ、弾薬があっても配給が無ければ餓死は避けれないだろう

鉄血はおよそ量で圧倒してくるのだから籠城戦をする為の蓄えは多ければ多い方が良い

加えてここは鉄血との最前線、いつ相手が本腰を入れて攻めてくるかも不明だ

故に最低でも五千は維持したい、無論指揮官が強引であれば副官として従うしかないのだが…

 

「…指揮官、もしかしてもう製造してたりしません?」

 

首を横に振る指揮官をM4A1はジト目で睨み続けるが、二割ほどの疑いの目で留める

すると指揮官は机に指をさしながらトントンととある紙切れを叩く

そこには半自動コア製造設備プロトタイプと書かれていた

責任者の欄にペルシカリアと書かれている当たり、どうやら16labが創り出した何かなのか?

 

「えーっと?設備を貸し出す代わりに建造費用数回分をこちらから輸送する…なるほど。」

 

ペルシカがショットガン建造をどこからか聞き出したのか、それとも指揮官が言ったのか

どちらにしろ自費で建造する、というのを出来る限り指揮官も避けたかったという事のだろう

契約書の最後の欄には実験的な設備の為通常製造と大型製造を各五回ずつと書かれており

恐らくこれを見て指揮官も【これだ!】と思ったに違いない。

 

「これなら司令部の資材も減りませんし、大型製造二回、許可を出しちゃいましょう指揮官」

 

契約書へサインをし、即座に預け郵便用妖精ドローンがそれを本部への直行するのを見届けた後

指揮官は即座に椅子から立ちM4A1にちょいちょいと、こちらに来るようにジェスチャーをする

 

「…まぁまさかとは思いましたが既に運ばれているなんて…ペルシカさんめ…」

 

窓からとある理由で空き倉庫となった場所を指揮官は指差しており、恐らくあるのだろう

既に半自動コア製造設備プロトタイプとやらが空き倉庫に起動を待つだけの状態で。

 

「もしかして全部分かった上で既に資材まで投入されてませんよね?」

 

指揮官は静かに目を逸らした、それが答えだったのだろう。

 

M4A1は静かに指揮官を窓の外へと殴り飛ばした。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

場所は打って変わり空き倉庫の前、指揮官は既に到着しておりあとは副官を待つのみだった。

なお頭から思いっきり血を流しているが司令部の敷地内の人形は大抵慣れている為無反応である

およそM4A1が到着するまでにかけられた言葉は、M16A1の『また怒らせたのかい?懲りないねぇ』

という、頭から血を投げ出している上官である指揮官にかける言葉ではないものだけである

 

「…指揮官、流石に資材も貰えているとはいえ勝手に製造はしないでください、ペルシカさんが

既に安全性の確認はしているとはいえ一体何が問題になるかわからないんですから」

 

大きく開け放たれているガレージの扉から影が差すと、そこにはM4A1がフル装備で立っていた

指揮官は一瞬M4A1が発するプレッシャーにたじろいでしまうが、どうやら用心の為らしい

先程の殴られた続きではないと分かれば動揺する理由もない、と指揮官は意識を切り替えた。

 

「これがその場でコアと戦術人形が製造可能な機械ですか…かなり大きいですね…」

 

指揮官の隣にM4A1が立つと目の前に存在する複雑怪奇なパイプが伸びる巨大な機械を見上げる

およそ高さは5m程だろうか?それも奥行きもあるようで、倉庫の殆どを占領している

このサイズでは最前線司令部の様な重要な場所でしか設置は叶わないだろう

 

「このスイッチを押してしまえば銃器とコアが設計図通りに自動生成され人形が出来上がる…」

 

M4A1からしてみれば摩訶不思議な機械だろう、無論人間にとってもだが人形からの視点で見れば

【交尾という生物の行為を吹き飛ばした挙句に即座に自身と同じ生物が生まれるという機械】

なのだから、不気味に見えて仕方ないだろう。

だがそんなただ一人の戦術人形が考える生物の在り方から外れているという気分の悪さだけで

この生産性という文字を最高効率で行う機械を却下する事などあり得ない、

M4A1は自身の命よりも戦術価値を重視する人形故にだ。

 

指揮官は戦術人形を愛している為にM4A1が『ちょっと気持ち悪い機械ですね…』と言いながら

この機械の設置を却下すれば、即座にこの機械は欠片一つ残すことなく破壊するだろう。

指揮官はだいぶ戦術人形にとっての親大馬鹿である。

 

「完成した場合は司令部に在住している戦術人形の数を見るために一時保留にする事も可能…

その場合こちらのスイッチを押せばコアの情報を元に銃器と人形の器を作り出す…

このランプがついている場合は保持状態なので…こちらのボタンを押せば…よいしょっと」

 

ブイーンという古典的な音を発しながら装置が自立製造を起動、倉庫内の温度が若干程度上がり

五分ほど経つと装置の不自然な隙間から大き目のポッドの様なモノが煙の様なモノを発しながら

下されており二本のサブアームが起動し片方が扉を上げると、そこには一人の戦術人形がいた

もう一方のサブアームがディスプレイを持ち上げこちらに渡す

名称と基本スペックが書いてあるようだ、中々にサービスが行き届いているなと指揮官は評価する

が、まずは読む前に指揮官にとっては恒例の戦術人形からの名乗りを聞くべきだろう

 

「ふわぁ…あ!指揮官おはようございます!スーパーショットガンEternalモデル参戦です!」

 

緑のチェッカー模様のベストと黒色のスカート、役所事務員の様な服装と金髪を纏めているリボン

落ちついた垂れ目は少女と認識するに十分だろう、だが手に握っている銃器があまりにごつ過ぎる

 

ストックは切り詰められておりソードオフと言われるソレだ、近接戦闘を重視しているのが分かる

 

銃身の大きさはソードオフと無改造品との間ほどだろう、だが通常と比べ二回り以上分厚く

更に下には巨大なニッパーの様なモノも付いている、それは異形という第一印象を与えるだろう

 

『無理矢理にでも接近し相手の顔面に劣化ウラン加工の12ゲージをブッ放す』

 

ただそれだけの為に作られた、それがスーパーショットガンである。

 

M4A1は初めて仲間に対して怯んだ、指揮官は状況の知ってか知らずかM4A1に指先で肩をつつき

ディスプレイを指さすと、そこには装甲SS回避SS火力SSという異常な数値が刻まれていた

 

 

 

 

 

 

 

ペルシカに苦行を言おう、心に決めて肥大化するストレスを感じながら静かに白目をむいて気絶した

 

 

 

 

 

 

 

 




M4A1は忘れていたのだ、あと一回大型製造が行われている事に
それは彼女が目覚めた時に改めて気づく事柄であった。


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