お兄ちゃんに大志くんが好きだと伝えてみた (ぱるーる)
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一話

 

 

 

 

小町の突然の告白に兄は驚いたような、呆然としたような、なんとも言えない顔でこちらを見つめていた。

小町の目もまた、真剣そのもので、まさに迫真の演技といったところだろう。

 

 

そして

 

 

八幡「…そうか」

 

 

それだけ言って自分の部屋に向かってしまった。

その顔は今まで見たことのない顔で、小町は背を向ける兄に声をかけることすらできなかった。

 

 

 

この発言が原因で小町達の"兄妹"という関係は変わってしまったのだろう。

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

八幡「おはよう」

 

 

小町「うん、おはよう。もう朝ごはんできてるよ」

 

 

八幡「ああ」

 

 

妹に声をかけられ、兄は席に座り、箸を取る。

 

 

「「いただきます」」

 

 

食事が始まる合図がリビングに響く。

そして、黙々と食事は進んでいく。

聞こえるのは箸と皿のぶつかる音、みずみずしいレタスの咀嚼音、そしてテレビから流れてくる退屈なニュースだけ。

 

 

普通の家庭で育った人間は恐らく、この状況に違和感を抱くことはないであろう。

しかし、この兄妹にとってこれは異常と言わざるを得なかった。

 

 

幼い頃から両親が仕事で忙しく、どんな時も二人で過ごしてきたこの兄妹はとても仲がいい。

妹は兄を「シスコン」と罵ることがあるが、妹も相当なブラコンであることは明確だった。

隠しているつもりなのだろうが全く隠し切れていないほどに。

 

 

二人きりの誕生日に、二人きりのクリスマス。

二人きりのお正月に、なにより、二人きりの日常。

いつだって二人の時を過ごしてきた。

時に口を聞かなくなる様な喧嘩もするけれど、数日経てば元の仲のいい、仲の良すぎる位の兄妹に戻る。

そんな二人が何もなしに会話がないなど異常と言わざるを得なかった。

 

 

「ごちそうさま」

 

 

兄は一足先に食事を終え、自分の皿を洗い始める。

 

 

「ごちそうさま」

 

 

妹も朝食を終え、食器の片付けを行おうとする。

 

 

「あ、小町。洗ってるからそれ寄越せ」

 

 

「あ、うん」

 

 

兄は皿を受け取り、一緒に洗う。

妹は学校に向かう支度を済ませる。

 

 

「…よし、行くか」

 

 

兄は食器を洗い終え、すでに準備してあった鞄を手に取り、先に家を出ようとする。

 

 

「いってきます。小町、遅れるなよ」

 

 

「あ、うん。いってらっしゃい」

 

 

兄の後を追い、妹も準備が完了し、家を出る。

 

 

「行ってきます」

 

 

 

家の中に響く最低限の会話と生活音。

これが"通常"であり、この兄妹の"異常"なのだ。

事務的で、端的な会話しか無いこの朝を通常と感じる家庭は少なくないのではないだろうか。

家を出た妹の背中は、親からはぐれた子供の様に小さく見えた。

 

 

 

 

 

 






アニメ三期までもうちょいですね。
展開はわかっていても、あれを声優さんが演じるというのはやはりワクワクしますね。
ではまた。


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二話


ワニとニワトリがにわに2羽 というわけで二話です


 

 

 

 

 

いつぶりだろうか。

朝、お兄ちゃんと会話をしなかったのは。

原因が小町のあの発言であることは明確なんだが、一体なぜなのか。

小町には理解ができなかった。

 

 

予想としては

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「あ!?あの野郎……俺の小町を誑かしやがって……ちょっと息の根を止めてくる」

 

 

「まぁまぁ、冗談だよお兄ちゃん」

 

 

「へ?」

 

 

「だから冗談だって!小町が好きなのはお兄ちゃんだけだよ?」

 

 

「こ、小町ぃ…」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

んで小町的にポイント高い♪ってなる予定だったのに…

 

 

流石のシスコンの兄でも妹に好きな人ができたショックで話せなくなったりはしないだろう。

というか、朝は話さないこと以外は普通だったし…

 

 

考えても考えても何もわからず時間は進み、気がついたらもう放課後になっていた。

 

 

「小町ちゃんバイバイ!」

 

 

小町「うん、じゃあね〜」

 

 

うーん、学校にいる間ほぼほぼ考えてたんだけどわからなかった…

とりあえず帰ろう

 

プルプルプル

 

 

ん?電話?しかもお兄ちゃんから…

も、もしかして元に戻った?

 

 

ピッ

 

 

小町「もしもし?」

 

 

八幡『おう、もう学校は終わったか?』

 

 

小町「うん、今帰り」

 

 

八幡『あのさ、川崎がけーちゃんの面倒見てくれないかって言っててさ、ついでに晩ご飯ご馳走になることになった』

 

 

…ただ夕飯いらないっていう事務連絡か。

 

 

小町「うん。わかった。じゃあお兄ちゃんの夕飯は作らなくていいのね?」

 

 

八幡『いや、お前のもいらないぞ?川崎がお前も夕飯ご馳走してくれるってよ』

 

 

小町「え?いや、それはありがたいけど…」

 

 

八幡『んじゃ、帰って支度できたらこい。時間もあるし勉強道具でも持ってきたらどうだ?』

 

 

小町「う、うん」

 

 

今までも似たようなことで沙希さんにお世話になることはあったけど小町も夕飯に呼ばれることなんてあったっけ?

 

 

 

 

 

*****************

 

 

 

 

 

〜in 川崎's house〜

 

 

小町「お、おじゃまします」

 

 

川崎「あ、いらっしゃい小町」

 

 

大志「あ、比企谷さん。いらっしゃい」

 

 

京華「…誰?」

 

 

八幡「よう小町。けーちゃん、この子は俺の妹の小町だ」

 

 

京華「はーちゃんの妹なの!?えーっと…こーちゃん!」

 

 

小町「へ?」

 

 

京華「こーちゃんだ!」

 

 

川崎「ごめんね、小町。けーちゃん、人に呼び易い渾名つけるんだ」

 

 

小町「大丈夫ですよ。京華ちゃん?こーちゃんだよ!よろしくね!」

 

 

京華「うん!」

 

 

川崎「んじゃ、買い物に行ってくるから。比企谷、けーちゃん頼んだ」

 

 

八幡「あいよ」

 

 

京華「いってらっしゃい!」

 

 

大志「気をつけて」

 

 

小町「い、いってらっしゃい」

 

 

ガチャッ

 

 

八幡「さて、けーちゃんはこっちにおいで。お前らは受験もあるし勉強しとけよ」

 

 

小町「う、うん」

 

 

大志「はいっす!」

 

 

お兄ちゃんはいつも通りに見えるし、いつも通りの会話に聞こえる。

でも何故なんだろう…

 

 

お兄ちゃんに距離を感じるのは

 

 

いつもの優しいお兄ちゃんなのは変わりないけど、どこか壁がある…

なんというか…"他人"?

 

 

そんな疑問を抱え、苦悩していると声がかかった。

 

 

大志「…比企谷さん?大丈夫?めっちゃ手が止まってるけどわからない?」

 

 

小町「へ?あ、あぁ、大丈夫……あれ?」

 

 

大志くんに声をかけられて我に戻り、問題に目を向けたはいいものの、抱えた疑問が増えただけだった…

 

 

小町「…」

 

 

大志「えっと…教えようか?」

 

 

小町「…うん、お願い」

 

 

この後みっちり大志くんに教えてもらい、結構問題も進んだ。

大志くん、結構頭いいんだ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

川崎「ただいま」

 

 

大志「あ、おかえり」

 

 

小町「おかえりなさい」

 

 

川崎「あれ?比企谷とけーちゃんは?」

 

 

大志「あっちの部屋で遊んでるよ」

 

 

八幡「おう、おかえり」

 

 

京華「おかえり!!」

 

 

川崎「ふふっ、ただいま。もうちょっとで晩ご飯だから待っててね」

 

 

小町「なんか手伝えることありませんか?」

 

 

川崎「あんたは勉強してな。もう下拵えはやってあるからそんなに大変じゃないし」

 

 

小町「…わかりました。お言葉に甘えさせていただきます」

 

 

川崎「うん」

 

 

大志「お兄さん、ちょっとここわかんないんですけど…」

 

 

八幡「ん?どれだ?」

 

 

………ん?

 

 

………あれ?

 

 

た、大志くん…"お兄さん"って言ったよね…?

 

 

なんで…

 

 

いつもみたいにお兄ちゃんは拒絶しなかった?

 

 

お兄ちゃんは大志くんに会うたびに、大志くんが鬱陶しい様に接してたし、"お兄さん"なんて言ったら、「誰がお兄さんだ!?」なんて拒絶するのがいつものパターンなのに…

 

 

………もしかして

 

 

小町…嫌われちゃった……?

 

 

 

ありえないことではないのでは?

小町のあの発言で今まで保っていたシスコンとブラコンの均衡が崩れたとか?

いや、意味わかんないね…

 

 

でも大志くんのお兄さん発言を許したよね?

今まで嫌ってた相手と小町がそういう関係になってもいいってことは小町がどうでもよくなったのでは?

 

 

その考えに至った時、小町は心臓を締め付けられるような痛みがした。

 

 

川崎「ほら、出来たよ」

 

 

大志「あ、俺も手伝う」

 

 

京華「けーかも!!」

 

 

八幡「お、お手伝いできるのか。えらいな」

 

 

京華「えへへ」

 

 

八幡川崎大志(((尊い)))

 

 

川崎「…小町?」

 

 

小町「……」

 

 

川崎「小町!」

 

 

小町「わっ!!……あ、沙希さん」

 

 

川崎「どうしたの?あんまり顔色が良くなかったけど。具合悪い?」

 

 

小町「いえ!大丈夫です!」

 

 

顔に無理やり笑顔を浮かべて答えた

 

 

川崎「…なんかあったら言いな」

 

 

小町「はい!」

 

 

そのあとは沙希さんの作った料理をいただいた。

美味しそうな見た目だったが、味は何も感じなかった。

そんなことを考えてる暇なんてなかった。

途中大志くんが話しかけてきたけど、全部適当な返事になっちゃったなぁ。

ごめん。

 

 

 

 

****************

 

 

 

 

 

家に帰っても小町の気分が晴れることはなかった。

頭の中はお兄ちゃんのことでいっぱい。

あの発言でお兄ちゃんを勘違いさせてしまい、それをどうしたらいいのか。

今からでも冗談と伝えればいいのかもしれないが、今のお兄ちゃんにはとてもそんなことはできない。

なんというか、お兄ちゃんに話しかけるのに、あんまり知らない年上の男の人に話しかけるような緊張感があるのだ。

 

 

というか、小町が大志くんを好きだと思われてること自体も訂正したい。

恐らく小町に気がある大志くんには悪いが、小町は全くその気はない。

 

だって、お兄ちゃんのが絶対に優しいし、大志くんは見た目は悪くないかもしれないが、お兄ちゃんも目が腐ってるだけでメガネかければイケメンといって差し支えないし、それにお兄ちゃんの方が……

 

 

小町「……はっ!?」

 

 

気がつくと小町は大志くんとお兄ちゃんを比較していた。

そして、どこをとってもお兄ちゃんの方が小町は好きだった。

 

 

小町「……やっぱり好きだなぁ」

 

 

そう、私、比企谷小町はお兄ちゃん、比企谷八幡が好きなのだ。

 

 

いつもいつも心の中では否定してたかもしれないけどやっぱりお兄ちゃんが好き。

それはいろんな意味で。

 

 

小町「お兄ちゃん。好きだよ。大好き」

 

 

静かな自分の部屋に響くこの声が彼のもとに届くことはなかった。

 

 

 

 






ども。
続きが微妙に進んでないので気長にお待ちを。
ではまた。


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三話



俺ガイル完は見ましたか?
私は見てからテンションが上がってこれを執筆しました。
小説とは違い、感情の部分の表現が文字ではなく、声のトーンや、声質などで細かく表現されててさすがプロでした。
声優さんたちの演技を見るという意味でも見てはいかがですか。
おそらく後書きにて死ぬほどテンションが上がってます。
ご了承ください。
ではどうぞ。




 

 

 

 

 

 

「おはよう」

 

「おう、おはよう」

 

 

 

「「いただきます」」

 

「「ごちそうまでした」」 

 

 

 

「行ってきます。小町も遅れんなよ」

 

「うん」

 

 

 

会話がまるで学校の授業のように消化されていく。

そして今、「ただいま」「うん、お帰り」が消化された。

 

 

 

残ってる会話は「「いただきます」」と「おやすみ」「おう、おやすみ」だろう。

 

 

 

まるでゲームのキャラクターみたいに、同じ言葉しか交わさない、交わせない日々。

この日常にお兄ちゃんは何を感じているのだろうか。

 

 

 

…寂しいなぁ

 

 

 

あの日から変わることのない日常に耐えかね、視界が滲んできた。

おそらく今までの日常が続いていれば、目に浮かぶ滴は整った顔の輪郭をなぞるように伝い、床を濡らしていただろう。

 

 

ただし、目の前を非日常が通り過ぎなければ。

 

 

八幡「なにやってんだ、早く上がれ」

 

 

???「お、お邪魔します」

 

 

小町「え?」

 

 

え?

 

 

???「あ、比企谷さん。こんにちは」

 

 

小町「え、あ、どうも……じゃなくて!な、なんで……大志くんが?」

 

 

そう、なぜかお兄ちゃんの後に続いて大志くんが現れた。

え、なんで?

 

 

八幡「ちょっと待ってろ。小町、お茶でも出してやれ」

 

 

小町「あ、うん…」

 

 

久々に定型文以外の言葉をお兄ちゃんの口から聞いたことに再び視界が滲みそうになるが、それどころではない。

いや、やっぱ嬉しい。

 

 

小町「いやそうじゃなくて!」

 

 

大志「え、ど、どうしたの?」

 

 

小町「え?ああ、こっちの話…っていうか大志くんなんのようで?」

 

 

大志「この前うちに比企谷さんとお兄さん呼んだときに少し話してたら結構趣味が合ってさ」

 

 

え、意外…

大志くんみたいな好青年の真反対を突き進んでるお兄ちゃんと趣味が合うって大丈夫?

目とか性根が腐敗しない?

 

 

大志「んで、俺が読んでる本の続きを貸してくれるって言われたから今日お兄さんについてきたんだよ」

 

 

小町「へ、へぇ〜」

 

 

大志くん本読むんだ…

そういえば国語の問題もスイスイ解いてたもんなぁ…

大志くん文系なのかな。

ちなみに小町も文系。

国語が得意だからではなく数学ができないから。

 

 

小町「はい、お茶。緑茶でよかった?」

 

 

大志「うん、ありがと。うち麦茶が基本だから緑茶ってあんまり飲まないんだよね。だから特別感あって美味しく感じる」ズズッ

 

 

小町「毎日飲んでても美味しいよ」

 

 

大志「俺が緑茶好きってのもあるけど美味しいよね。」

 

 

へぇ、大志くん緑茶好きなんだ。

スポドリを好んで飲んでそうなのに。

ちなみに小町も緑茶派。

和菓子との相性はマジで小町とお兄ちゃんレベル。

 

 

大志「和菓子とも合うしね」

 

 

小町「そ、そうだねぇ」

 

 

心を読むんじゃない大志くん

 

 

…それにしても大志くんのこと案外知らないなぁ。

今の趣味とか得意教科とか好みとか。

クラスの友達とかのことはわかるのに大志くんのことは初耳なことが多い。

あと、案外気が合うんだなぁ。

 

 

 

……いやいやいや、お兄ちゃんとの方が気合うし。

伊達に15年兄妹やってないし。

相性だっていいもん!

緑茶と和菓子くらい合うもん!

 

 

お兄ちゃんと小町は……仲……いいもん……

 

 

大志「ひ、比企谷さん!?」

 

 

小町「え?………あっ」

 

 

ふと顔に手をやると手に先ほど耐えたはずの滴が伝ってきた。

一度ヒビが入り脆くなった涙腺は簡単に崩壊し、修復するのは不可能だった。

 

 

小町「な、なんで……止まってよ!」

 

 

小町の願いは届かず、拭っても拭っても次から次にこぼれる涙が袖を濡らすばかりだった。

 

 

大志「比企谷さん…」スッ

 

 

小町が感情的になっていると大志くんが小町の頬にハンカチを、小町の手に自分の手を添えた。

 

 

大志「何があったかはわからないし聞かないけど、悲しいことがあったときに涙を我慢する必要はないんじゃない?一人になりたければ俺は離れるし…」

 

 

大志くんは妹を慰めるように、優しく、穏やかに小町を宥めた。

その時の大志くんの手はとでも暖かく感じた。

 

 

小町「う、うぅ……わぁぁぁぁんん!!」ポロポロ

 

 

大志「…」

 

 

小町は大志くんが添えた手を自分の手と繋ぎ、力一杯握りしめて泣いた。

大志くんの言った通り、我慢することなく流れるままに涙を流し、感情を表に出し、泣き叫んだ。

 

 

 

大志くんもお兄ちゃんも優しい。

それは妹や弟がいるからそういうスキルを心得てるのかもしれない。

でもお兄ちゃんの優しさとは違った優しさを大志くんはもっている。

 

 

 

小町はその時、お兄ちゃんの捻くれた、さりげない優しさとは違った、大志くんの真っ直ぐな優しさに触れた。

 

 

 

 

 

 

 

 






だぁぁぁぁぁ!!!!最高かよっ!!!!!
なんだよあれ!!!!
アニメ勢の人で見てない人にネタバレになるからあれだけどもう!!!
これだけ言いたいってのはもう悠木碧さんマジで今回やばい!!!
ふぁふぇぁぁ!?なんなの!?って感じ!!!
ぬふぇぁぁぁぁぁぁぁ!!!!



もう一生崇拝するわ。







ちなみにテンション上がりすぎていっかい投稿する場所間違えた。
ではまた。





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四話

いい文が思いつかないながらもなんとか捻り出してみたので読んでもらったら私が喜びます。
ではどうぞ。





 

 

小町「…ごめん」

 

 

大志「大丈夫だよ」

 

 

気の済むまで泣いた。

こんなに泣いたのは人生で初めてかもしれないってくらい泣いた。

泣いてる最中も、そして今も、大志くんは隣にいてくれている。

少し困った様に、穏やかな笑みを浮かべながら。

 

 

 

 

………我に帰ってだんだん恥ずかしくなってきた。

 

 

小町「…」

 

 

大志「…」

 

 

いやどうしようこの空気…

 

 

そんなことを考えているとふと自分の手の違和感に気づく。

 

 

…あ、大志くんの手握ったままだ

 

 

小町「…あっごめん!」バッ

 

 

大志「ん?あぁ、全然。俺からしたかったからそうしたんだから。むしろ嫌じゃなかった?」

 

 

小町「ううん、むしろ助かった」

 

 

大志「そりゃよかった」

 

 

自分でも少し寂しがりやなのは自覚している。

悲しい時は人肌恋しくなっちゃうからいつもこういう時にお兄ちゃんに構ってもらうのだが、現状そうもいかない。

だから大志くんの優しさは本当にありがたかった。

 

 

大志「そういえばお兄さん遅いね」

 

 

小町「あ、そうだ」

 

 

そういえばお兄ちゃんいたんだった…

あれ?やばくない?

え、めっちゃガン泣きしてましたけど!?

比企谷家の壁に防音機能とかないけど!?

 

 

八幡「おーい、大志〜」

 

 

大志「あ、お兄さん」

 

 

うぉっと!?なんてタイミング!?

 

 

急いで赤くなってるだろう目元を隠すようにするが、ここでお兄ちゃんの耳に見慣れない装飾品を目にする。

…そういえばこの前新しいイヤホン買ったってウザいほど自慢してきたなぁ

あれ?これってセーフなのでは?

 

 

お兄ちゃんはイヤホンを外し、大志くんの方に寄ってくる。

 

 

八幡「さて、こんなもんでいいか」

 

 

大志「はい!ありがとうございます!」

 

 

八幡「別に本貸すくらいたいしたことじゃねえよ。」

 

 

大志「いや、ありがたいです!」

 

 

八幡「あ、あと小町」

 

 

小町「うぇっ!?へ、へい!?」

 

 

八幡「なんだそのリアクションと返事は…」

 

 

突然話し振られたからめっちゃ動揺しちゃったじゃん…

 

 

八幡「洗剤とか切れてるから買ってきてくれ。俺は切れそうな調味料買い足しとくから」

 

 

小町「わ、わかった…」

 

 

八幡「あ、あと今駅の方面のドラッグストアの方が安いからそっち行ってくれ。俺の自転車使っていいから」

 

 

小町「え?う、うん…」

 

 

特に何も言われないあたりセーフだったっぽい。

というかいつも洗剤とか買うところと違うし、なんならほぼ行かないと思うんだけどなんでそっちのが安いってお兄ちゃんが知ってるのか…

ま、いいか。

 

 

大志「お兄さん、今日はありがとうございました!」

 

 

八幡「おう、気をつけて帰れよ」

 

 

小町「い、行ってきます…」

 

 

八幡「いってらっしゃい。小町も気をつけてな」

 

 

お兄ちゃんは軽く微笑みながら小町を気遣う。

その一瞬だけ、あの顔が、小町の大好きなあの顔が見れた気がして引き留めようとしてしまう。

 

 

小町「待っ…」

 

 

ガチャ

 

 

無慈悲に扉は小町の言葉を遮る。

あの笑顔はなんだったのか、あまり頭が良くない小町に疑問を叩きつけてくる。

 

 

…早く買い物を終わらせればもう一度見れるかもしれない。

早く行かなきゃ!

 

 

小町「大志くん、またね!」

 

 

大志「あれ?方向一緒じゃなかったっけ?」

 

 

小町「え?」

 

 

おいおいお兄ちゃん!方向一緒じゃん!

大志くんと一緒なんだよ!?あの毒虫とか言ってた大志くんと一緒だよ!?

道からして四択くらいある選択肢からなぜ大志くんと方向を一緒にしたの!?

 

 

 

 

 

…あ、そっか。

お兄ちゃんはもうどうでもいいんだ………小町のことなんて。

 

 

大志くんだってもう嫌いじゃないし、どうでもいい人にもすごくやさしいもんね、お兄ちゃん。

だからさっきの笑顔もどうでもいい人に優しくするときの笑顔なんだ。

小町個人に向けての笑顔じゃない。

 

 

 

今日、何度目だろうか。

また目頭が熱くなるのを感じる。

 

 

大志「……行こうか比企谷さん」パシッ

 

 

小町「え?…わっ」

 

 

大志くんは少し強引に小町の手を引いて歩き始めた。

 

 

大志「ごめん比企谷さん」

 

 

小町「いや、いいけど…どうしたの?」

 

 

大志「比企谷さんがさっきと同じ顔してたから」

 

 

…よく見てるなぁ。

それこそお兄ちゃんと同じくらい。

だから方向性は違えどお兄ちゃんと同じように人に優しいのかもしれない。

 

 

小町「ありがとう。でももう大丈夫だよ?」

 

 

大志「さっきも言ったけど俺がやりたいからやってるんだよ。もう少しだけこうしてちゃダメかな?」

 

 

小町「……もう少しだけこうしてようか」

 

 

そこから大志くんの家に着くまで気まずさからか、気恥ずかしいさからか一切会話はなかった。

おそらく小町の顔は道中ずっと赤く染まっていたことだろう。

恥ずかしさを隠すためか少し早めに歩く大志くんも短く切られた髪のせいで露出する耳が真っ赤に染まっていたことから小町と同じ心境なんだと認識させられた。

 

 

お互いに言葉は交わさないけれども、大志くんの手から伝わる熱は小町の心の傷を癒してくれる気がした。

 

 

 





最後の方はもう考えてあるんだけどそこまでの繋ぎが思いつかなすぎるという脳の低スペック具合なので買い換えたい今日この頃。
コメントとか残してくれると喜びの舞を踊るくらいには嬉しいかも。
ではまた。


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