近づく二人 (月島柊)
しおりを挟む

胡桃

俺は魔法高校に通う高校3年。魔法高校に通う以外は大して他の人たちと変わらない。全然普通の高校生。

強いて言うのなら俺に好きな人がいることだと思う。まぁ、俺の片想いかもしれないけど。向こうだって言ってないから意識してないはずだ。

しかも好きな人は学校一の美人。そんなやつとかかわり合えるはずないとは思ってるけどまぁ好きなのはいいだろう。おかしい気もするけど。

「ねぇ、ちょっといい?月島くん」

月島は俺の苗字。俺は月島柊。さっきも言った通り普通の高校3年だ。そして今話しかけてきたのは葉元胡桃。俺の好きな人だ。

「あぁ。どうした」

「月島くんって大学行く?」

「俺は魔法生かすから行かないよ。」

推薦されたら別だけど。

「そっか。私と一緒だね」

「胡桃も大学行かないのか。胡桃だったら行けそうだけど」

学力も2年連続学年2位だから行けるかと思ったんだが。

「だったら月島くんの方が行けるじゃん。3年連続学力1位でしょ」

それを言われたら何も言えない。確かに1年の時から1位だった。魔法を使うわけだから猛勉強した結果だ。

「まぁな。けど俺は頭がいいのを自慢したくないし。」

「そう」

あれ、何か嫌なこと言ったか?

 

【葉元胡桃視点】

やっぱり好きな人に話しかけるのは緊張する。あんまり話したくないからかすぐに会話を終わらせてしまう。ずっと話してると心臓が飛び出てしまいそうだから。

私は会話を終わらせ、自分の席に向かった。だけどやっぱり月島くんは私のところに来る。

「俺何か嫌なこと言ったか?」

「えっ!いや、言ってないよ・・・」

悪いって思わせちゃった。私のこと嫌いになっちゃったかな?けど誤解は解いたはずだからそれはないよね?

私は頭の中でこのことばかり考えていた。だって好きな人から嫌われたら嫌だから。

 

【月島柊視点】

俺は嫌われるかもしれないと思いながら胡桃に聞きに行った。さっきの俺が悪いこと言ったか。

「俺何か嫌なこと言ったか?」

ついに聞いてしまった。もう後戻りはできない。

「えっ!いや、言ってないよ・・・」

少し焦って胡桃が返す。俺は小さく頷いて席に戻る。席につくと窓から強い風が吹いてきた。窓側の席だから日常茶飯事だ。

「今日も風強いね」

前に座ってた女子が言ってきた。紗由理だ。

「あぁ。窓閉めたら暑いから微妙だよな」

まだ8月だから全然暑い。

「エアコンつけないかね。魔法使えるからいいだろとか言ってるけど」

「限度があるもんな。全く、先生もどうかしてるよ」




葉元胡桃視点は従兄弟に協力してもらってます。それ以外は自分で。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

下校

今度は下校時のシーンです。まぁあんまり文字数はないけど。


6時間目が終わり少しして、俺はいつも通り紗由理と一緒に帰ろうとしていた。紗由理とは小さい頃からの幼馴染みで家も近い。

「つっきーは私以外に帰る人いないの?」

つっきーは俺のあだ名。月島柊の月島からとった。

「笑わせるな。俺にそんな友達いるわけないないだろ」

俺も小学校卒業から友達という友達はいなかった。唯一仲がよかったのは紗由理だけ。幼馴染みだからだけど。

「そっか。友達とかつくればいいのに」

「そんな話かけるの得意じゃないし」

「もう高校卒業なんだから、彼女とかね」

彼女って、友達をつくれない俺にハードル高すぎないか?

外は晴れで暑い。溶けてしまうような気温だ。アスファルトからの反射熱もあり、体感温度は実際の気温より高くなっているはずだ。

「暑いー・・・」

「これ飲むか」

俺は購買で買った飲み物を紗由理に投げる。

「ありがとー!」

俺がしばらく待っていると昇降口に帰る人たちが集まってきた。「また明日!」とかの声も聞こえる。その中に胡桃もいて、俺の方を少し見る。俺は軽く黙礼をして、胡桃は歩いていく。

「どうかした?つっきー」

「あぁ、いや、何でもない」

俺は紗由理と一緒に歩き始める。俺の家のはす向かいだから最後まで帰れる。時々どちらかの家にあがることもある。

「つっきーって男友達もいないの?」

「話してるとこ見たことあるか?」

「・・・ないかも」

そりゃあそうだ。男友達なんていないんだから。女友達もいないけど。

「努力しないの?」

「する暇あったら魔法覚えるさ」

「私といい勝負してるもんね」

魔法の数では学年1位、学校2位だ。紗由理は俺と2個の差で学年2位、学校3位。学校1位は同じ3年がとってる。差は57個。全然大差だ。

「俺が896個だから紗由理は894個か」

「1位の人953個だからね。」

「どんだけ覚えてるんだか」

最近の情報だと

攻撃系魔法が157個

回復系魔法が150個

防御系魔法が152個

反射系魔法が147個

便利系魔法が326個

幻覚魔法が30個

その他1個

があり、合計963種類の魔法がある。要するに、1位の人はあと10個で全種類覚えられるのだ。

「転移魔法とか覚えるけど使わないよね」

「高速移動魔法とか個人差あるしな」

「私大体50キロ前後だけど」

「俺は65キロ前後だな」

ほぼすべてにおいて俺が上だが、ただ1つだけ俺が下になる。それは

「けど術式魔法は私の方が上だもん!」

「まず俺覚えてないし」

術式魔法は威力は最大だが、発動に時間がかかる。

「そういえば、好きって言ってた胡桃ちゃんって」

「あぁ、そういや魔法結構おぼえてたっけか」

まさか・・・

『胡桃が1位!?』

 

 




回復系魔法は回復魔法、解毒魔法
攻撃系魔法は火炎魔法、水魔法
防御系魔法はシールド魔法、上位防御魔法
反射系魔法は鏡魔法、跳ね返し魔法
便利系魔法は転移魔法、高速移動魔法
幻覚魔法は幻影魔法、幻聴魔法
その他は術式魔法だけです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

暴力

柊たちが帰ったあと、胡桃の家では・・・


 

 俺が家の前につくと、胡桃が俺の後ろを走っていった。

「おい!胡桃」

俺が呼んでもそのまま走り去っていった。俺はいけないと分かっていても胡桃の後をつけた。

ついていくと、胡桃が家の中に入っていった。かなりの豪邸だ。

近くにあった木に上ると胡桃がベットに横になっている胡桃が見えた。俺は窓を開け、胡桃の家の中にはいる。

「胡桃」

「月島くん!?どうしてここに――」

俺は手を差し出す。

「胡桃、おいで」

胡桃を呼ぶ。胡桃はゆっくり俺の手を掴む。俺は窓から下に落ちるように降りる。

「いやっ!って、ビックリした・・・」

「ごめんよ。」

俺は謝る。すると家の中から「誰かいるのか」と男の声がした。

「戻れ。俺も木の上にいるから」

「うん・・・」

俺は木の上に上り、胡桃の部屋を見ている。

しばらくして男1人と一緒に入ってきた。何を話しているか分からないため、盗聴魔法を使う。

〈あの男とは関わるな〉

〈なんで!関わってもいいじゃん!〉

〈関わるなと言ってるんだ!俺に逆らうのか!〉

そう言ってその男は胡桃を叩く。外でも十分に聞こえてきた。

〈痛っ!なにするの!〉

〈お前が逆らわなければいい話だ。反省しとけ〉

俺はいてもたってもいられず、窓を開けて窓枠に立つ。その男はまだ中にいる。

「胡桃、大丈夫か」

「っ!お前!」

俺に気付いたそうだ。俺がこいつと会ったのは1年前だった。

 

 当時の俺は胡桃と出会っていなかった。そのところでこの男が胡桃をいじめていたからか俺はこの男の首もとを掴む。

「柊!やめろ!」

「やめるのはお前の方だろ!」

「騙されたのはそっちだろ?」

俺は男の顔を殴る。

「君!やめてよ!」

胡桃は俺を突き飛ばした。あっちが悪いのに。どうして俺が悪くなるんだ。俺はそれから男のことを恨み始めた。

 

「・・・死ね」

男は俺に向けて攻撃魔法を放つ。

「っ!」

俺はシールド魔法を使う。そして煙が立ちこもった瞬間に外に転移する。

「・・・」

やっぱり胡桃を狙うのはやめよう。もう俺は恋人なんて要らないんだ。

俺は高速移動魔法で家に帰る。もう、やめよう。

 

 それから俺は学校にもいかず、家にこもっていた。別に、話す相手もいない。ただ、胡桃と目を会わせたくないがために、家にこもっているだけだ。

「つっきー、大丈夫?」

紗由理が付き添ってくれている。

「大丈夫。ただ、しばらくは行けない」

「そっか。彼女探さないの?」

「探さない。あと7ヶ月で卒業なんだ。それまでこもってる」

8月23日で、あと7ヶ月で卒業式。そしたら胡桃とも会わなくてすむ。それでいいんだ。

 




近づくどころか離れていってるね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む



 俺は学校から離れたルートでウォーキングを始めた。そりゃあ学校の近くだとあの男や胡桃に会うから離れたところでするんだ。

「おや?月島くんだったね」

話しかけてきたのはあの男の仲間だった。

「・・・何のようだ」

「何の用だって、言い方が悪いねぇ。ただ・・・」

そう言って男の仲間は持っていたナイフを俺の首に当てる。

「傷つけたいだけだよ」

少しでも動いたら殺される。そう思った俺は氷結魔法で男の仲間を凍らせる。

「まだ、だ」

俺は氷結魔法で動き出せるとは思わなかったため、俺は油断していた。

シュッ

ナイフが俺の首を切る。しかし男の仲間は一切動いていない。

「粒子魔法、さ。」

「粒子魔法って、ぐはっ」

俺は倒れ込んでしまう。首からは大量の血。

「面白い。そのままでいればいいさ」

俺はゆっくり目を瞑った。もう、開けていられなかったから。

 

 倒れてから何時間が経過しただろう。柔らかいものにくるまれているようだったが、俺が倒れたのはアスファルトの上。柔らかいはずがない。さらに言うと全体が涼しい。外は暑いのになぜだろうか。まさか・・・俺はそれ以外を思えなかった。

「月島君」

俺の名前を呼ぶ声。一体誰だろう。高い声だしどこかで聞いたことのある声。

「まだ起きてないのね・・・」

ドアを開け外に誰かが出る。いや、ドアがあるってことは室内だ。それに天国じゃない。ということは誰かの家。俺の家は俺しか鍵を持っていない。

「ん?」

俺は目を開ける。そこには高い位置に天井があった。部屋というのは合っているらしい。また、天井だから上を見ている。寝ているのか?

「どこだ・・・?」

辺りを見渡すと広い部屋だった。大きな窓もあり、見覚えもある。

「起きたのね・・・」

部屋に誰かが入ってくる。入ってきた方を見るとそこには・・・

胡桃(くるみ)・・・」

「月島君。」

胡桃とは会いたくなかったが、俺の中には会えてよかったという気持ちもある。

「男は」

「・・・」

「おい、まさか・・・」

仮想(かそう)世界(ワールド)で殺した」

やっぱりか。仮想世界で人を殺そうと罪にはならない。

「そうか。今は胡桃1人なんだな」

「そう。あっ、動かないで」

胡桃が俺の首を押さえる。

「首に包帯巻くから」

胡桃は包帯を持ち、俺の首に巻く。

「苦しくない?」

「大丈夫。胡桃こそ初じゃないのか」

「1回だけお母さんに巻いたことがあるの」

胡桃はすぐに巻き終わる。だが俺に当たったナイフはそんな単純なものじゃない。

「胡桃、少しここにいてもいいかな」

「うん。私も話聞きたいから」

胡桃はベットに腰かけて俺の方を見る。

「月島君はどうしてそこに傷できたの?」

「あぁ、あの男の仲間にナイフ突きつけられてね」

「そうだったんだ。大丈夫なの?」

「今は痛み収まってるから大丈夫。」

出血しなくなったからだろう。全く痛くなかった。俺は胡桃に聞いた。

「胡桃が助けに来たのか?」

「うん。紗由理ちゃんと協力して」

紗由理も来てたんだ。しかし俺がウォーキングに行ったのは朝8時前後。ということは、学校が終わる5時まで倒れてたということだ。

「そうか。ありがとう、胡桃」

俺は礼を言った。明日から学校行こうかな。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

学校

今回は同級生に手伝ってもらいます。


 俺は胡桃に看病してもらった翌日から学校に行った。周りからはなにも言われないが、唯一と言っていいほどに言ったのは胡桃と紗由理。

「柊くん、久しぶりだね。学校では」

「月島君来たんだ。頑張ろうね」

「あぁ、頑張ろうな」

早速朝から先生が息を切らして入ってきた。只事ではないと思い、周りは静まり返る。

「月島くん、ちょっといいかな」

「え?あっ、はい」

俺は前のドアから先生と一緒に前から出る。

 

【葉元胡桃視点】

 

(月島くん来てくれて嬉しいけど、どうしたんだろう・・・)

おそらく紗由理ちゃんも同じことを思っているだろう。

けど紗由理ちゃんはなにも話さない。

私は話さない紗由理ちゃんに話しかけた。

「柊くん久しぶりに来てくれて嬉しいね」

「う、うん・・・」

何か考え事をしてるかのようにしていて、返事もあまり話さない。しかも、目が泳いでいるように見える。

(さっきからキョロキョロしてる・・・どうしたんだろう)

しかしこの後あんなことになるなんて、知るよしもなかった。

 

【姫宮紗由理視点】

 

(胡桃ちゃん、自分から柊くんの事話題に出すなんて、まさか・・・いやいや、私は幼馴染みだし、私の方が柊くんの事知ってるんだもん。そんなわけ・・・)

私はまさかの事を思ってしまった。胡桃ちゃんが柊くんの事を好きになってることだ。

 

【月島柊視点】

 

「なんか葉元がお前の事心配してたぞ」

「はぁ、胡桃がですか」

以外ではないのだが、いや、むしろ嬉しい方か。少し驚いた。

「あと姫宮もよくお前の事話してたな」

「そうですか。それで、用は」

「あいつらのこと、お前はどう思ってるんだ」

どう思ってるって、先生がそんなこと聞くのかよ!

「クラスメイトですかね?」

「多分2人とも好きなんじゃないか、お前の事」

好きって、胡桃が好きだったら両思いじゃないか。紗由理は・・・幼馴染みか。

「分かりました。じゃあ、聞いてみますよ」

俺は教室に戻り、胡桃と紗由理にその事を聞く。

「胡桃、紗由理、好きな人っているか?」

まずは遠回しに聞いた方がいいだろう。さすがにこれで分かるはずないし。

「いるよ?私は」

「私もいる」

2人ともいるということか。

「このクラスか」

「うん。このクラス」

「私も」

明らかに怪しくなってきた。このクラスで2人とも好きな人がいる。明らかに怪しいだろう。

「俺だったりするか?」

「うん。っ!」

「私も・・・って、あっ!」

自分から言ってどうするんだ。自白して俺に知らされた。って、俺2股じゃん。

俺は少し焦りながらも冷静を偽った。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

紗由理

今回も最後だけ、ね。


「えっと、2人とも、本当かな?」

冷静を偽っていたがそんなに偽れてない気がしてきた。

「うん・・・」

「胡桃、大丈夫なのか、まだ仲間はいるんだぞ」

主戦力はいなくなったものの、まだ仲間はいる。

「大丈夫。柊くんがいてくれるんだったら」

「そうか?だったらいいんだが・・・」

「・・・楽しそう・・・」

紗由理がこっちを羨ましそうに見ている。どうしようもできないが。

「もう授業始まるから座ろうか」

と言っても紗由理は俺の前だからいつでも話せるが。

 

 4時間目が終わり、昼休憩にはいる。俺はいつも弁当を作らないから購買ですませてしまう。今日も購買に行き、弁当を買う。外で食べたかったから俺は校庭の脇に座る。人も来ないから食べやすい。

「柊くん、ここいいかな?」

「え?あっ、いいけど」

横を見るとそこには紗由理がいた。周りには誰もいないから静かだ。

「紗由理、どうしてここに」

「柊くんと一緒にいたかったから?」

こんなかわいいと思ったの初めてなんだが。いつも幼馴染みとしてみていたが、さっきだけは恋人のように見ていた。

「そうか。」

「柊くんは私と居たくない?」

居たくないって訳でもない。

「別にいいけど、お前も購買で買ったのか」

「作るの苦手だし。」

なんか女子は料理得意だと思っていたが違うのか。俺も料理出来ないけど。

「それはそうと、俺がここにいるってよくわかったな」

「こ、ここにいると思ったから・・・」

俺は購買の弁当を食べ始める。

「ねぇ、柊くん」

紗由理が俺に話しかけてくる。

「どうした?」

「ぎゅってして?」

急に何を言ってくるかと思ったら抱きつけと。周りには誰もいないから見られるってことはないとは思うが、いくらなんでも付き合ってないのに抱きつけって

「嫌だったらいいんだけど・・・」

「分かったよ。ほら、こっち来い」

俺は紗由理にこっちに来るよう指示した。遠いとしずらいし。

 

【姫宮紗由理視点】

 

(よかった・・・!胡桃ちゃん、柊くんに何かしてるかと思った・・・)

私は抱きついた柊くんの温もりを感じてホッとした。今の私はドキドキよりも安心の方が強く、勝っていた。しかし、落ち着いてくると、今、何をされているか理解が追い付いてきた。

私は急に恥ずかしくなって何か喋らないと柊くんに不快な思いをさせると気付き、回らない頭のなかを回転させ、なんとか言葉を発した。

「っ、柊くん、暖かい・・・」

この空間だけ時間が止まっているようだった。

私は柊くんの体と腕に包まれて、ずっとこのままで居たいと思っていた。




最初、俺が略し過ぎて1000文字越えませんでした。けど優しい同級生が追加してくれて1000文字越えることが出来ました!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2人

 【月島柊視点】

 俺と紗由理が昼食を食べ終わり、教室に戻ると、胡桃が体を揺らして待っていた。

「柊くんっ」

「胡桃も柊って呼ぶようになったな。」

前までは「月島くん」だったのにいつの間にか「柊くん」になっていた。

「もう好きなのバレちゃったからね。」

それが関係してるのかよ。

 

 6時間目まで終わり、部活も全て終わらせた。さもないと「幽霊部員」になってしまうから。

俺は紗由理と、今日は胡桃を誘って家に帰る。今日も暑いが、俺は制服の半袖だったからそこまで暑くはない。しかもバスの中は涼しいし。

「あついーっ!」

「バスに乗るまで我慢しろ」

俺はブーブー言われていたがお構いなしに歩いていく。

バス停は都心に近いのにも関わらず、1時間に5本。およそ12分に1本。

「あと何分?」

「えっと、あと5分くらいかな」

次は12時48分の駅前行き。30度を越えるなか、5分待つのはなかなか体力が削られる。

5分だったはずなのに体内時計は10分以上だった。バスが来ると、この時間は下校時刻に重なるため学生が多かった。

「涼しー!」

「ずっと乗ってたい・・・」

「あと10分くらいだからな」

駅まで乗ると逆に遠くなってしまう。だから10分で降りるのだ。

「あれ?胡桃ちゃん、その本・・・」

胡桃はバッグに分厚い本を持っていた。

「魔術式の本だよ。術式使うから」

「術式使う人多いんだよな・・・俺使わないし」

術式は時間がかかるからあまり好きではない。

「ふーん、覚えてみる?」

「そうするかな」

俺は暗記魔法を自分にかけたあと、胡桃が持っていた本の内容を覚える。

「柊くん、覚えた?」

普通だったら早すぎるはずだが、暗記魔法をかけているからすぐ覚えられる。

「覚えたよ。さ、降りよう」

いつの間にか10分経っていた。

 

 「要するにこういうことだろ」

俺は覚えたばかりの術式魔法を唱える。

「あっ、柊くん!」

胡桃の声がしたが、もう魔法は発動していた。

大きな爆発音をたてて爆発する。

「うわっ!」

シールドが間に合わなく、爆発をまともに受けてしまう。

「あれ?」

全く痛くなかった。

「危なかったー。大丈夫?」

「シールドしてくれたのか」

「好きな人が傷つくの嫌だから」

もう完全に恋人じゃん。っていうか俺恋人2人いるのかよ・・・

 

 家に帰って誰かいる。まぁ、弟と妹がいるんだけどな。

 

 

「ただいま」

「遅かったな」

弟の暁依(あきより)だ。高校1年生。

「お兄ちゃん帰ってきたんだ。お帰り」

妹の咲春(さくら)だ。高校2年生。

「そんな遅くないだろ。暁依」

「私のはスルーですかそうですか」

「ごめん、ただいま、咲春」

俺は2人に挨拶をしてリビングへ向かった。俺も結構疲れたし。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

全員

 家でくつろいでいる俺と咲春、暁依は、実を言うと本当の兄弟ではない。親の再婚によってできた義理の兄妹だ。一方の親はというと、再婚旅行で4ヶ月家をはずしている。咲春たちの親と俺の親は昔からの友達らしく、意気投合している。

俺はまぁ、親は嫌いだ。勝手に離婚して再婚するし、してすぐ旅行で4ヶ月だ。何をしているんだ、俺の親は。

「咲春、何か飲むか」

「オレンジジュース!」

お前は子供かと思いながら俺はオレンジジュースを買いに行く。

本音は歩いて気分を晴らしたかったからだ。ずっとモヤモヤしていて明らかに気まずかった。

俺はオレンジジュースを買って家に戻る。

「咲春、買ってきたぞ」

「ありがとー、お兄ちゃん」

「俺が買ってきてやってもよかったのによ」

「計算ミスりそうで怖かったからな」

学年1位に任せとけ。

「ねぇ、友達できた?」

「まぁ、一応は」

友達というか恋人だけど。

「明日会えないかな」

会えないかなって、胡桃と紗由理にかよ。咲春にだけは会わせたくなかったが、別にいいか。

「分かった。連絡しとくよ」

俺は胡桃と紗由理のグループに連絡する。

〈明日俺の家来れるか〉

〈行けるよ。〉

〈私も!〉

〈じゃあ明日9時半に来てくれ〉

 

【葉元胡桃視点】

 

寝る前、本を読んでゆったりしていると、急にスマホから着信音がした。柊くんからだ。

〈明日俺の家来れるか〉

どうしたんだろう?

何か大事なようでもあるのかな?でもどうしてグループに・・・

でも何かあるのかも!

私はわずかな期待に胸を膨らませて返事を書いた。もちろん返事はOKだ。

〈行けるよ。〉

明日のために期待していよう

と、思っていたが、紗由理ちゃんからも返事が来た。

〈私も!〉

紗由理ちゃんも来るのか・・・別に紗由理ちゃんが嫌いな訳ではないけど、紗由理ちゃん、柊くんに何かすると思う・・・

できれば来てほしくなかった。二人きりにしてほしかった。で、でも紗由理ちゃんには幼馴染みってだけでそれ以外は何も変わらないから大丈夫大丈夫。

私はこわばる心を落ち着かせながら明日を待っていた。

 

【姫宮紗由理視点】

 

リビングでテレビを見ていたら着信音が響いた

<明日俺の家来れるか?>

っ、柊くんだ

嬉しいんだがこの前の出来事を思い出してしまい顔が赤くなってしまう

「さっきスマホなってたけど大丈夫?って顔真っ赤じゃない!熱でもある?大丈夫?」

だ、大丈夫!気にしないで!

スマホをさっと隠した

ふ、ふぅーお母さんに心配されるほど赤かったんだろう どうしちゃったんだろう 私 そしたらまた着信音が響いた

<行けるよ。>

えぇー胡桃ちゃんも来るのか…本当は うふふっ

そう言うこともしたかったが胡桃ちゃんも来るなら仕方がない 今回は諦めよう でも柊君の家に行けるなんてとんだ幸運だなぁー

明日はとびきり可愛くして行こ!

高鳴る心を感じながら明日の準備をした。

 

【月島柊視点】

 

紗由理が来たあと胡桃が来た。

 

「あっ、お兄ちゃんの好きな人!」

「えっ?柊くん私のこと好きなの?」

もう逃げ場がないと思い、白状した。別にバレてもよかったし。

「そうだよ。ずっと前から」

「だったら付き合ってみる?明日」

「え?明日!?」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む



 俺は朝8時前に胡桃の家に向かった。俺も今日だけは服装に気を使い、格好よく決めてきた。色はまぁ、いつも通り黒だけど。

胡桃の家に着くと、少し驚かせたくなった。初めて来たときは窓から入ったから今日も窓から入ってみようと思ったのだ。俺は木に手を掛け、跳躍魔法を使って木の上の方にある枝に捕まる。そしてそこから跳んで窓枠に乗る。

「胡桃」

胡桃は服装選びをしてる最中だった。4つの服を両手にもって、首を左右に向けていた。もちろん気付いてないらしい。

「胡桃、来たぞ」

「あっ、柊くん。服装選び…って、えぇっ!?」

やっと気付いたらしく、驚いている。俺は家のなかに入り、靴を脱ぐ。

「そうだな、この水色のかな」

「ちょっ、玄関から来るんじゃないの?」

「別にいいだろ。着替えてないんだし」

「むーっ、もう、これでいいのね」

何かさっきのかわいかったな。俺は着替えると思い、後ろを向く。

「ほら、着替えるんだったらさっさと着替えろ」

「こっち向かないでよ?」

俺はいつからそんな変態扱いになったのかな?

「見ないから。ってか早くしないとそっち向くぞ」

「分かった!」

スルスルと服の擦れる音がするが俺にはなにも関係ない。

しばらくして胡桃が言った。

「着替え終わったからこっち向いて」

こっち向いてって言うのおかしい気がするがまぁいいか。

「柊くん、私のこといつから好きなの」

いつからって、いつからだ?高校入学してから4ヶ月だから…ちょうど2年前か。

「2年前からだけど、どうしたんだ」

「覚えてないの?幼稚園と小学校一緒だったでしょ?」

幼稚園と小学校一緒だった!?全く覚えてなかったんだけど。俺は追憶魔法で幼稚園の頃を思い出す。

 

【追憶】

 

「しゅうくん!こっちきて!」

「どうしたの?くるみちゃん」

「おままごとしよ!」

そうか。13年前、俺と話してた子は胡桃だったのか。俺はその時から好きだったのか?

「しゅうくん!おとなになったらけっこんしよ!」

「うん!いいよ!」

こんなことも言ってたか。昔の俺はやんちゃだったからな。全く意味が分かってなかったんだろう。

「しょうらいのおとうさんだ!」

「じゃあしょうらいのおよめさんだね!」

全く、意味分かってるじゃないか。お嫁さんだって、本当に好きだったんだな。

「同じ小学校入学できてよかった!」

「だね!よかった!」

小学校入学したときか。ずっと一緒にいたんだな。

「一緒に帰ろ!」

「いいよ!」

一緒に帰ってたりもしたのか。

「柊くん、どうしたの?」

「静かにしててくれ…」

俺が暗くなったきっかけか。そういえば小5くらいだったな。

「柊くん!帰ろ!」

「…1人で帰る…」

こんなこと言ってたか?全然覚えてなかった。

「柊くん、中学校は」

「受験する。会いたくないから。みんなと」

ここで胡桃と別れたのか。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第1長編作品 デート

長編で2000超えます。


 「そうか、幼稚園と小学校一緒だったな」

「思い出した?さっ、デート行こ!」

デートに行こうって、俺はまだ付き合うとしか言ってないんだが。

「付き合うって、そう言うことかよ」

「ん?なんで?結婚手前でしょ?」

それもそうか。てっきり付き合うって何かに付き合うことかと思ったんだが、ちがかったらしい。

「行こ?柊くん」

俺は言われるがままについていった。

 

【葉元胡桃視点】

 

「胡桃、来たぞ」

窓の方に目線をやった。そこには柊君がいた。

「あっ柊くん。服装選び…って、えぇっ!」

ナイスタイミングと言っていいほど柊君がちょうど良いところに来た!

どっちを着ようか悩んでいたところだったから!

でも…サプライズは台無し

 

【回想】

 

胡→お待たせ!

柊→おう、って (かぁぁ )

胡→(顔が赤くなってる… そんなに綺麗かなぁ 聞いてみよ)

胡→ねぇねぇ、私、綺麗?[さぁぁっと風がなびいてスカートと髪、イヤリングが揺れる]

柊→かっ、かっ[目が泳ぐ。まともに目線を合わせてくれない]

胡→胡→かっ?

柊→かっ、可愛い…!もうこれでいいだろっ!

胡→(キュン!テレる柊君!可愛い…)

 

【回想終わり】

 

って事をしたかったんだけどなぁ。まっ、まあいいや。

「そうだな、この水色のかな」

こっちの方が良いの?

もうひとつのやつ選びそうになってた… あっ危なかったぁ まっまあ直接感想聞けるなら良いか

っ、てか玄関から来るんじゃないの?この前もそっちから来てたよね。

私はつい言葉に出してしまった。

「ちょっ、玄関から来るんじゃないの?」

「別にいいだろ。着替えてないんだし」

いや、そういう問題じゃ無いんだけど…

「むーっもう、これで良いのね?」

あれ?柊君の顔が赤くなってる…なんで赤くなってるだろう?まあいいや。

あっ後ろを向いてくれた。まぁいいや。今のうちに着替えちゃお。

「ほら、着替えるんだったらさっさと着替えろ」

私は念のために言っておく。

「こっち向かないでよ?」

「見ないから。てか早くしないとそっち向くぞ」

「わかった」

音を立てないとか、そんな考えてる余裕がなく、ただ、待たせてるから早く早くとしていたら、思ったよりも音が出てしまってた 。

恥ずかしいっ!でもそんな余裕なんてない。早く着替えなきゃ。

よ、よし 終わった。

「着替え終わったからこっち向いて」

ふ、ふう 今日こそあれを聞こう。咲春ちゃんが昨日さりげなく聞いたことから始まったこと。

「柊くん、私の事いつから好きなの」

やっ、やっぱり口に出すと緊張するなぁ。

私の計算が合ってればとても前だった気がするけど…

「2年前からだけど、どうしたんだ」

!!!二年前?いや、そんな前?とっさに言葉が漏れる

「覚えてないの?幼稚園と小学校一緒だったでしょ?」

柊くんが驚き、戸惑っている。

やっぱり…覚えてなかったんだ…

私の記憶が合ってれば…

幼稚園の時、お嫁さんになる約束した気が…実はあれ、本気だったんだけどな…あの頃から私は柊くんの事が好きだったんだけど、2年前までは私の片想いだったんだね。でもやっと結ばれた!嬉しいな昨日たまたまアルバムを見ていたら思い出したんだよね。

「そうか、幼稚園と小学校一緒だったよな」

パァァ!思い出してくれた!

「思い出した?さっ、デート行こ!」

柊くんの頭に?がいっぱい?がいっぱい浮かんでる えぇ?そんなに難しいこと言ってないのに。

「付き合うってそう言うことかよ」

はっ?付き合うってこういうことでしょ?なんか勘違いしてる?

「ん?なんで?結婚手前でしょ?」

私の付き合うってこういうことしかなかったけど… あっもしかして何かに付き合うって方で勘違いしてたんだーなーんだ まぁいいや どっちにしろお互い好き同士なんだから。私は早く行きたくてウズウズしてきた!

今日は充実した一日になりそう!

「いこ?柊くん」

柊くんは顔ひとつ変えなかったけど、楽しんでくれればいいな。うふふっ!

二人きりのデート!

途中、思ってたことと違うことも起きたけど、ここまで来れて良かった!

今日は楽しもう!

そう言うように柊くんに微笑みかけた。

 

【月島柊視点】

 

俺と胡桃はバイクに股がり、デートの場所へ向かう。場所は俺が知らないため、後ろから案内してもらっている。

「そこ右!」

指示に合わせてハンドルを切る。俺の来たことのない場所だ。

「胡桃、ここどこだ」

「秘密!」

俺は言われるがままにハンドルを切り続ける。

「ここ曲がって止まって」

俺は左に曲がってバイクを止めた。ここは遊園地や動物園でもない

「ここって、キャンプ場じゃないか?」

「そう!ここ来てみたかったんだ!」

キャンプ好きなのかな?もしかして。

「好きなのか、キャンプ」

「うん。焚き火とか大好き!」

そうだったのか。意外な1面を知れることはなかなかないからな。

「じゃあ行こうか。テントは――」

「持ってきてる!」

「なにも持ってないだろ?どこにあるんだ」

「もう預けてあるの」

預けてあるって…

ついていってみると「葉元胡桃様」と書かれたエリアにテントなどのキャンプ用品があった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

キャンプ

今回は全て胡桃からの視点です。


 柊くんのバイク…後ろに乗れるなんて幸せだなぁ。

柊くんの大きな背中!

素敵だなぁ!柊くんの安定したバイク裁き、やっぱりいつみてもかっこいい!と心のなかではしゃいでいたら、さぁぁっ

風で髪がなびいて気持ちよくなり、ナビを忘れるところだった…あ、危なかった…

しばらく道案内をしながら進んだところ。そう、ここは キャンプ場だ!

この前、徹夜して調べた後、私の使いたちにちょうどいいタイミングで運んできてもらってたんだ!

「ここってキャンプ場じゃないか?」

柊くん戸惑ってる!その顔もかっこいい…こんな人とデートなんて嬉しいな と心のなかでにやついている私。

「そう!ここ来てみたかったかったんだ!」

えへへーっ

「好きなのか?キャンプ」

えっなんで私の事分かるの?さすが!と心の中で拍手をしながら

「うん。焚き火とか大好き!」

柊くんが目を見開いてすごい驚いてる。私の一面を知れるのはこのときくらいしかないからねー

「じゃあいこうか。テントは一一」

あぁ、それだったら

「持ってきてる!」

柊くんの頭に?がいっぱいある これ、2回目だよね。「何も持ってないだろ、どこにあるんだ」

へへーっ

「もう預けてあるの」

私って準備早いでしょ!って心のなかでどやりながら案内する。ここは私のおじいさまが、ちょっと前にオーナーさんからこの場所を借りたんだ!だから広いんだよ。

「すごいな。もうこんなに準備してあるのか」

「そうだよ!今日は楽しもう!」

「お、おう!」

 

 時計をみたらまだ9:30だ、

「とりあえず、まずはテント張ろう!」

「分かった。手伝うよ」

「ありがとう!」

まずはセットを開こう…って え!テント大きめの一つしかないじゃん。

「これ、どうする?」

「う、うーん 寝袋は2つあるから仕方なくもう二人で1つのテントで寝る?」

柊くんの頬が赤くなっている。そっ、そりゃ二人で寝るから…かぁぁっ

そういえばなに言ってるんだ私…

「し、仕方ないよな 一人が野宿するわけにも行かないし、二人寝れるスペースあるから大丈夫だろ」

「だ、だね。 ごめんね」

「別に大丈夫だ 予備の服も持ってきてるし、これ、2日目の服にしようか 」

「うん わかった。」

まだ一緒の寝袋じゃないだけいいけど同じテントに寝るなんて緊張するな…

 

 夜になってついに寝るときになってしまった。同じテントで2人寝るんだ。

「胡桃?どうかしたか」

「同じテントなんだよ?ドキドキするじゃん」

「同じ寝袋じゃないだけいいだろ」

それもそうだけど…やっぱり――



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

心配

 俺の方が先に起きていて、俺は海のすぐ近くに立った。海は怖い。だが俺はそう思っていない。海は楽しいと思っている。

「入ってみるか」

さすがに服のままは入れないため保護魔法を使って海に入る。

深いところまで行っても飛行魔法で上がってこれるし大丈夫だろう。

 

 深くまで行くとたくさんの魚がいる。中には大きな魚も――って、あの魚明らか大きいな。他の魚の10倍以上ある。なんか口開いてるし。

「んぐっ!?」

よく見てみると鮫だった。こっちに口を開いて迫っていた。俺は必死で飛行魔法を使って上に上がる。もう足まで来ている。

(頼む、間に合ってくれ)

生か死か。ただ2つの分かれ道だ。

(胡桃、勝手だったな。ごめん)

俺は必死で上がろうとはするがもう間に合いそうにない。あと10mはある。

(死ぬのかな)

その時、なにやら光が入ってきた。空気がすえるようになったのだ。

「!」

「柊くん!」

俺は高く上がってからゆっくりと地上に降りる。

「柊くん、何してたの…」

「胡桃、ごめん…」

「もう、心配させないでよ。」

「…悪かった」

 

 俺たちは7時くらいにキャンプ場を出た。もう帰る時間だ。家に帰らないと咲春がうるさいから。紗由理はまだなぁ、でもあいつも家に来てたらうるさいか。

「柊くん、楽しかった。ありがと」

「来たかったら言ってな。いつでも連れてくよ」

結構近場だから週1くらいだったらこれると思う。まずは胡桃の方だけど。

家に着くと咲春しかいなかった。あんまり言ってこなかったけど。

「おかえり、お兄ちゃん」

「ただいま。胡桃、あがるか」

「じゃあ、そうしようかな」

胡桃の家までは比較的近いが、折角だから上がらせた。迷惑な訳でもないし。

「お兄ちゃん、これ食べた?」

そう言って出してきたのはアルコールが入っているお菓子だった。っていうかそれ俺も食えないんだけど。18だし。

「食えないだろ。って、まさか…」

「あっ、咲春ちゃん、もしかして…」

胡桃も察したそうだ。多分食べたんだろう。まぁ数個だったら問題ないけど、1箱とか食べてたら。俺は見せられた箱を開く。中身はなにも入っていなかった。

「咲春、水飲もうか」

「なんれ?」

全然口が回ってないじゃないか。よってる感じだな。

「お前よってるだろ。だからだよ」

「咲春ちゃん、おとなしく飲も?」

「はーい!」

なんだこの妹。苦労するな。

「どうしたんだよ、柊」

「咲春がこれ食っちゃってさ」

俺はからになった箱を見せる。

「アルコール入ってるじゃん。」

「だからだよ」

胡桃が相手してくれてるが結構酔ってたからなぁ、大丈夫だろうか。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

バンド

イケメンの気持ちは分からない…俺周りから嫌われてるから


 「えへへー、お兄ちゃーん」

「俺はここにいるぞ」

全く、なんであんな量食ったかな。結構な量入ってたのにさ。

「暁依、いけるかね」

「さぁな。俺たち外出るか?」

外に出た方が胡桃は困るかもだけど、こっちは楽になるから結局いいんだけど、どこも行くところないし。

「どこ行くんだよ、暁依」

「適当な場所だよ。どこでもいいんだから」

こう話していると弟とは思えないんだけどなぁ。俺より2つも下なのに。学校でも1位2位を争うイケメンなのになんで彼女出来ないんだろう?

「お前まだ彼女いないんだよな?」

「あぁ、もう飽きたよ。毎日毎日正門で待ち伏せされてさ」

そんな思いしたこと――あっ

「俺もお前の年の頃はそうだったな」

「柊はイケメンだからだろ」

イケメンに言われたくないけど。

「お前の方がイケメンだろうが」

「まぁ大してよくないけどな」

イケメンの悩みかな?

「そろそろつくれよ。俺も嫌われそうだけど」

「簡単につくれたら」

『苦労しないさ』

思うことは同じらしい。唯一血繋がってるのが暁依だからかな。

「暁依は母さんどう思ってるんだ」

「もう諦めてるよ。あんな奴」

そりゃあそうか。思い出したくもないからな。

「そうだよな。」

「咲春の父親はどうなんだよ」

「いい人なんじゃないか。ってか、咲春のことそう呼ぶのな」

「姉ちゃんな感じがしないし。」

ごもっとも。確かにそんな感じはしない。

「だったら俺も兄ちゃんな感じしないと思うんだが」

「血繋がってるからだろうな」

学校の回りに近づくと1年の人たちが暁依目当てでたくさん集まる。こんなことなかったけどな。

「なんかやってるのか」

「知らないのか?バンドやってるんだよ」

そんなの聞いたことないんだが。それで人気があるのか。

「ボーカルか?」

「あぁ。それ以外やれる気がしないから」

1番主役じゃないか。俺は学校の中に入り、空き教室に向かう。

「ここ2年空き教室になってるんじゃないのか。」

「俺が1年の時はここよく使ってたんだ」

ここは俺が使ってた教室だからな。物もまだ残ってるはずだ。これも卒業によって捨てるんだがな。

「俺が1年のとき、ボーイズアイドルやってたんだ。結構人気があって、評判だった。」

「じゃあなんでやめたんだ」

「最初から決めてたんだ。1年間しかやらないって。あと、言い出したのは俺だから」

「言い出したって何をだ」

「やめるって。ほら、マイクとかも入ってるから使ったらいい」

段ボールの中にただ1つのマイクが入っている。部屋を出るときに残していったものだ。




今回の問題
5X×4X=?
現実の俺はかなりブサイクだけどね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ボーカル

やっと夏休みだぁ!この小説でも夏休み入ろうかな


 俺が2年前以来に入った部屋は埃っぽかったが物はちゃんと使える。マイクも拭いて消毒すれば新品同様に使えた。

「よし、暁依、頑張れよ」

「だったら今日のライブ一緒にやろうぜ」

俺は2年前にやめたし、アイドルとバンドなんだから合わないだろう。俺は首を横に振った。

「見に行くだけでいいよ。俺は――」

「固いこと言うなよ。さっさと来いよ」

「はっ!?だから俺は!」

手を捕まれてそのままつれていかれた。衣装だって1年のは入らないし、このままかよ。真っ黒のTシャツに紺色のズボン。いかにも陰キャで病んでるじゃん。

「こんなんで大丈夫かよ」

「大丈夫だって。俺らも似たようなもんだし」

そんなもんじゃないし。俺は心のなかでそうつっこんだ。言ったら負けだろうけど。

「あと30分だ。もうそろそろメンバー集まるぞ」

暁依がそういうと奥の方から楽器を持った4人がやってきた。

「え?先輩?」

そりゃあそうだろう。いつも通り来たら話したことない先輩がいるんだから。

「ちょっと誘った。」

「楽しそうだからいいけどよ、暁依はなにやるんだ」

ボーカルがいなくなるのはまずいだろう。

「俺ギターボーカルやるから、柊はボーカルやってくれ。ツインボーカルだ」

「暁依、先輩だぞ?ついに頭狂ったか」

「こいつ兄だし」

なんだ、兄のことを言ってないのかよ。

「月島柊だ。よろしく」

「はぁ、兄ですか…」

あり得なさそうだな。苗字もおなじなんだからどう見てもそうだろ。

「よろしくお願いします」

1人だけすごい礼儀正しいな。そう挨拶してきたの君がはじめてだよ。

「よろしく。それで、曲はなんだ」

「これ」

暁依が楽譜を出してきた。これ、俺が歌ってた曲のカバーか。懐かしいな。

「俺がつくった曲だな」

「そうなんですか!」

俺が2年前に作った曲だ。デビュー曲だったかな。

「デビュー曲だったはずだけど」

「firefrowさん、出番です」

ついに呼ばれた。こんな緊張、久しぶりだ。ラストコンサート以来だった。

「みなさん!こんにちは!」

暁依が挨拶をする。視線は俺の方向と暁依の方向に向いていた。多分3年生だけこっち向いてるのだろう。

「今日は俺の兄、柊も来てるよ!」

爽やかな声で俺のことを紹介した。

「3年生のみんな、2年ぶりのステージ楽しんでいってな!」

『おーっ!』

暁依より反応いいじゃないか。ふてくされないようにしないな。

「それじゃあ聞いてくれ、new(ニュー) sea(シー)

そうして演奏が始まる。4分半のステージだ。

 




初めて斜体使ってみましたがどうでしょうね?new seaのところが斜体になってます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む



 演奏が終わると6人はバテたようにステージ裏に倒れた。

「ふーっ、久しぶりにこんな歌ったな」

「今日はすごかったな」

今日はって、いつもそうじゃないのか

「俺たちもう帰るか。咲春が荒れてるだろ」

「あぁ、確かに」

「先輩、ありがとうございました」

「おう!いつでも話しかけろ」

 

 「柊くん!」

俺は真っ暗な暗闇の中に1人でいた。周りには鏡のようなものが俺を囲んでいる。声のした方向を見ると紗由理がそこにはいた。

「紗由理、そこにいたのか――」

俺が1歩歩くと紗由理はそこからいなくなってしまう。まるで暗闇に飲み込まれたかのように。

「紗由理?どこだ」

「柊くん、おいで」

今度は後ろから胡桃の声がした。

「胡桃、お前が来ればいいだろ」

「行けないもん。だって――」

その途端に俺の視界は真っ赤に染まった。少し黒くなっているような色だ。

「なんだ、これ」

目を触ると液体のようなものがついた気がした。

「血か?」

赤く液体の物は血以外思えなかった。目から血が出てるって、どういうことだ?

「柊くん、ごめんね」

そう言って、俺の目になにかが刺さり、見えなくなってしまう。

「紗由理!」

通じることなく俺は冷たくなって倒れてしまう。死んだんだ…

 

 「はっ!」

思いっきり起き上がる。動けていて目も見えている。

「生きてる…夢か…」

生きていて良かった…なんなんだ、あの夢は

「お兄ちゃん?どうしたの」

「あぁ、咲春か。」

こんな夢なんならなにも知りたくなかった。話せそうになくなるから。

「なんでもな――」

俺は遠くにあった銃口に気づいた。

「咲春、伏せて」

俺は強力なシールド魔法をかける。

tough(タフ)shield(シールド)

窓ガラスを割り、銃弾が入ってくる。その銃弾を魔法によって弾く。

「咲春、動かないで。まだ飛んでくる」

再び飛んでくる。しかし魔法が消えてしまい、ギリギリかわすことができた咲春に対し、俺には肩に銃弾が当たってしまう。あの夢と大して変わらないじゃないか。

「お兄ちゃん!」

「咲春、ごめん。」

そんなことしていても銃弾は飛んでくる。

「何でだよ、銃弾が…」

「お兄ちゃん、降りよう?」

「…分かった。」

咲春は俺を守るようにしてしたに降りる。俺も身を任せて降りる。

「お兄ちゃん、血まだ出てる」

「分かってる。」

咲春は俺の肩に包帯を巻いてくれる。巻いている途中に一旦止まる。

「お兄ちゃん、本当の兄妹じゃないんだよ?こんなことしていいの?」

「看病してくれてるだけで嬉しいよ。ありがとう」

「うん…」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む



夜間モードはoffで。


 咲春が入ってきたのは2年前。俺が高1、暁依が中2のときだった。

その時の咲春は臆病で、人見知りだった。多分怖かったんだろう。

しかしそれから俺は咲春と積極的に話し、仲良くなった。

 

「お兄ちゃん、さっきから、どう思ってるのかって思ってない?」

 

なんで分かってるんだ。エスパーかなんかか?

 

「あぁ。特に暁依には話してなくないか」

「そうだね。だってぇ、怖いし」

 

あいつ表裏ありすぎるからな。学校ではかっこよくしてるけど、家に入るとすげー怖いから。

 

「内心優しいぜ」

「本当?話しても殺されない?」

 

どんな感情抱いてんの?

 

「死なないよ。ほら、あと少しで帰ってくるぞ」

 

17:50。時間に細かい暁依は帰る時間も細かく決める。今日は17:57。あと7分だ。

 

「うぅ、怖いなぁっ」

「大丈夫だって。お帰りぐらい言ってみろよ」

 

 そして帰ってくる。決戦の時間だ。

 

「お、お帰りなさい、暁依くん」

「あ?あぁ。ただいま」

 

なんだよ最初の「あ?」って。怖いに決まってんだろ。

 

「お兄ちゃん、怖いって!」

「大丈夫だって。頑張れよ」

 

また話しかける。

 

お腹空いたでしょ?ご飯作るね

 

弱々しいなぁ。怖いんだったら当たり前かな?

 

「よろしく」

 

これは怖くないだろ。

そして作り始める。咲春って料理できたか?すると

 

熱っ!

 

火傷する直前じゃないか。危ないからやめろ。

 

「咲春、あぶねぇだろ。貸せ」

 

暁依だ。なんだよ、また怖いぞ。まるで暁依の方が年上だ。

 

「お前を守るのが俺の仕事だ。」

 

カッコいい!何て思う俺もいるが、咲春はどう思ってるんだ?

 

「ごめんなさい」

「謝るな。悪くない。ほら、やってみろ」

 

やらせるところは先生っぽいな。

 

「こうでいいですか?」

「俺は先生じゃないし、怖くないぞ。」

 

自分から言うかよ!隠れながらみているがついに突っ込んだ。

 

「怖くない?本当?」

「あぁ、本当だ」

 

だんだん仲良くなってるかな。するとまさかの行動に移った。

 

「ほら、怖くない」

 

暁依が抱きついたのだ。恋愛に持ってこうとしてない?

 

「暁依くん!?ちょっ、」

「怖いか?」

 

怖くないけどドキドキしすぎて死ぬだろ。

 

「怖くないけど、好きになっちゃいそう」

「いいじゃん。家族だし」

 

家族だから何てパワーワード勝手に使うんじゃない。

 

「俺も好きだしさ」

 

あらー、家族全員好きなこと判明したな。

 

「お兄ちゃんの方が」

「上下関係ないから柊でいいんだよ」

 

いいこと教えたな。

 

「だからさ、仲良くしようぜ」

 

ガシッとつかむ。ずるいなぁ。俺もだ!

 

「俺もいれろよー」

「狭いー!」

「面白いじゃん」

 

全員仲良くなったな。目標達成。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む



 咲春だけが別のところで寝ていたのだが、仲良くなったのか全員で寝ていた。左から暁依、咲春、俺の順番だ。

 

「よく寝れたな」

「あぁ。久しぶりだよ」

 

いつも男2人で暑苦しかったから花が入ってきた。

 

「そういえば、俺彼女できた」

「そうか。って、ええっ!?」

「あぁ。今度連れてくるよ」

 

マジかよ…高1に負けた。俺もつくらないとか。

 

「私もつくんないと。柊くん、私の彼女にならない?」

「兄妹でか?できなくはないけど」

 

血が繋がってなければいいけど、いくらなんでもいいのかよ、俺で。

 

「私のこと、嫌い?」

「嫌いじゃないけど…」

 

そういえば紗由理はどうしてるんだ?最近あってないけど。明日会いに行ってみるか。

 

 翌日、俺は1人で紗由理の家に行った。何してるんだろう。なんか声とか顔とか変わってそうだな。

10分歩いて紗由理の家に着く。久しぶりに来たな。俺がドアを開けるとゆっくりドアが開き、母親だろうか。母親らしき人が出てきた。

 

「あの、紗由理っています――」

 

パンッ!

 

いきなり頬を叩かれる。俺は思わず頬を押さえた。かなりジンジンと痛みが来る。

 

「何ですか…?」

「あなたが殺したのね」

 

は?殺したって、なにもしてないんだけど。

 

「なんのことですか、俺は何も」

「とぼけないで!」

 

母親はまた俺を叩く。さっきより明らかに強い。俺が一体全体なにしたんだ。

 

「ねぇ!答えたらどう!」

 

殴ってきて俺は地面に叩きつけられる。だから、俺が何を!

 

「そう…答えないのね」

 

母親は家の中に入っていく。この隙にって、痛くて動けない…

母親が出てくると、その手には刃の短いナイフが持たれていた。

 

殺す…

「はぁ!?なんだよ!」

 

俺の目の前にはもうナイフがあった。押さえきれないか。俺は…

 

「何してるんだ!」

 

警察だろうか。母親を止めにかかる。しかしそれに火がついたのか、母親は俺にナイフを突き刺す。ダメだ…

 

 俺が目を覚ましたのは病院だった。いたのは…胡桃と、紗由理…だけか。

 

「紗由理…?」

「柊くん…」

 

紗由理は俺に抱き付いてくる。泣き出している。

 

「柊くん…!ごめんね…」

 

【姫宮紗由理視点】

 

 「お母さん…?」

「紗由理、あの人には関わらないで」

 

急に叫びだしたと思ったら、ナイフを持って血が出ていた。すぐに警察が来て、私は1人取り残される。

 

「まさか!」

 

外に出ると、パトカーが走り去っていくが、通りすぎると柊くんが血を流して倒れていた。数分経ってから救急車が来て、病院へ運ばれていく。柊くん、ごめんね、助けられなくて。私がお母さんを止めていたら、無事だったのに。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

大丈夫

紗由理視点が中心です。最初から紗由理視点だし。


 お父さんがいないから私は一人になってしまった。胡桃ちゃんはライバルだから泊まりづらいし、あ、そうだ!あの子だったら。

 

「ってことで…」

「そう言われても、今人来てるのよ」

「ダメかな」

「ごめんね」

 

ダメだった。誰の家だったらいいんだろう。

私は真っ暗な中、1人で歩いた。お昼ご飯から何も食べてないからお腹もすいてるし、喉も昨日から飲んでない。もう倒れそう…

 

「君、未成年だよね、」

「え…」

 

補導されちゃう…これじゃあ柊くんに会えなくなっちゃう。

 

「この子の姉です!」

 

そう言って女の人は私を連れていく。

 

「君、私の家来て」

 

誰なのかも分からず、私は家に行った。

 

「あの、ここは」

「月島家へようこそ!」

 

月島?柊くんと同じ苗字…!まさか!

 

「私月島咲春。1つしただね」

「私、――」

 

その時、ドアが開き、誰かが入ってくる。

 

「ただいま、咲春」

「お帰り、」

 

そう言って咲春ちゃんが言った名前は

 

「柊くん」

「あれ、紗由理…?」

 

私に気がついたそうだ。柊くんって、やっぱりあの人だった。

 

「柊くん、怪我は」

「あぁ、大丈夫。」

 

ホントかな。ナイフ刺されたみたいだし。

 

「柊くん、紗由理ちゃんに会いたいからって退院早めたんだよ」

「私のために?」

「あぁ。全然会ってなかったから」

 

私のために…柊くんって、私を忘れてたんじゃなかったの?ずっと来なかったから。

 

「妹の件とか、胡桃のこともあって会えてなかったんだ。ごめんな」

「じゃあお詫びで、デートしてよ」

 

胡桃ちゃんと同じくらい楽しみたかった。ただそれだけだった。

 

「……」

「ダメなの?」

「あ、あぁ…胡桃とかもあるし…」

 

やっぱり胡桃ちゃんの方が好きなんだ。私のことなんて何も思ってない。

 

「…そっか。そうだよね。」

 

私は玄関に向かった。もう邪魔するのも止める。ここで守るなんて嘘だ。私を守るはずない。どうにか、どこかの路地裏に――

 

「じゃあ、私帰るね。」

「いつでも来いよ。」

「うん。」

 

私は真っ暗な暗闇に入った。街灯の明かりをたよりに進んでいくしかない。路地裏の場所なんて知るはずない。

しばらく歩いて、警察に見つからずに歩けた。ここで野宿する。奥の方に閉店した店があるそうだ。そこまで行けば。

 

「あ、スマホ充電ない…」

 

残りは5%。今日中になくなってしまう。何もできないんだ。けど、それでいい。私を入れてくれる家は大体見捨てる。そうなんだったら私は1人でいてもいい。孤独でいても。

 

 朝日が照らしてきた。もう朝なんだ。ここまで人が来るはずない。来たら、私は死んじゃった方が楽だと思う。




しばらく休止します。再開は分かりません。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

戻ってくる

 俺は飛行魔法を使って紗由理を探しに行った。いる場所にも心当たりがないし、0から探し始めた。

どこにいるんだ、紗由理。

光魔法を使いながら、飛んで探した。下まで照らせるには照らせるが、あまりはっきりではない。

 

 10分ほど飛んだだろうか。細い路地裏に女性がただ1人で体育座りになってうずくまっていた。俺はその方向に向かって空中から降りた。

 

「紗由理?」

「…なに…」

 

ぶっきらぼうな返事。目は俺を睨んできている。

 

「帰ろうぜ、紗由理――」

「…触らないで…」

「は?紗由理、今なんて」

「触らないで!」

 

紗由理は大きな声を出した。誰もが驚くような鋭く大きな声だった。

 

「紗由理!なに言ってるんだ」

 

俺もきつく言った。

 

「ここにいる!もう居場所なんてないんだから!」

「いい加減にしろ!」

 

俺は紗由理の肩を強く押した。紗由理は地面に倒れた。俺は紗由理に向かって怒鳴った。

 

「何が居場所ないだよ!居場所ぐらい、作ればいいんだろ!そんなことも出来ないかよ!」

「家に帰れないのに、どこにあるのよ!」

「家なんて、考えなくていいだろ。」

 

俺は少し落ち着いて言った。

 

「誰も、自分の家なんてないんだよ。なくなったら、誰かの家に行けばいい。」

「そりゃあしたよ。友達の家とかも。でも、拒否されたんだよ?どこもないじゃん」

「俺の家には聞いたか」

 

俺の家には聞きに来た覚えはない。だったら来てないはずだ。

 

「俺の記憶は鮮明だぞ。記憶魔法でストックされてるからな」

 

5年前から鮮明に覚えている。その日の天気、その日の最高気温、全て覚えている。

 

「来てないだろ、紗由理。恥ずかしくない。言ってみろ」

「……家、泊まっていい…?」

 

紗由理はうつむいて言った。俺は紗由理の顔が下を向いている時にも関わらず俺は言った。

 

「何泊でも、何年でもいいさ。」

「…ホント?」

 

紗由理は少し明るくなったような声で言った。

 

「あぁ。俺は紗由理の味方だよ」

「…ありがと」

 

紗由理は俺の体に顔を埋めた。俺は紗由理を抱き抱えて、飛行魔法を使い飛んだ。俺は紗由理が落ちないようにしっかり抱えていた。

 

 家に着くと、咲春が家で待ってくれていた。紗由理のことも待っていたらしく、風呂を沸かしてくれていた。

 

「風呂入ってきな。汚れてるだろ」

「柊くんも一緒に来てくれない?」

「は?1人で…」

「汚れてるから」

 

なんで異性と一緒に入らないといけないんだよ。

 

「前隠せよ。俺は水着で入るから」

「はーい」

 

紗由理は前をタオルで隠すことを約束し、俺は水着を着て風呂に向かった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。