願いを叶えてあげたら (Celtmyth)
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0日目①≠『僕らは彼女たちと出会った』
3月>日
もう3ヶ月くらい前かな。なんかあっちこっちで魔力が集中したり空中でバトルが起きたり騒がしい事があったけど僕らは関わることなく年末を過ごした。相変わらずはんちゃんの所は絵で見るようなおせちだったな。振り返ってみると正月にバレンタインとかイベント事が穏やかだった。管理局の監視から逃れる生活をしているけどね。
ただ数日前におじさんが出掛けたね。はんちゃんとコッソリ話していた関係だけどぼくとシアちゃん、ヴェヌスとなはとは知らない。聞いてないし教えてくれるとも思ってないしね。と言うわけでウチは3人だけだからよくはんちゃんが泊まりに来るよ。おかげで騒がしい毎日だよ。
おじさんが帰って来たら色々と変わるんだろうなぁ。でもまぁみんな一緒なら楽しいからいっか。
0日目
別の世界に遭難しました。
そうですね。By Venus
これぞ異世界転移だね☆ アリシアちゃんだよ♪
少しは危機感を持つでござる 阪奈より
3月<日
春休み。月が明ければ天吹と阪奈は五年生、アリシアは六年生だ。そうなると次の年でアリシアは中学生。その一年間は別々の学校生活になるだろう。
「といっても一年間だけどね」
「まぁ放課後は一緒になるだろうし」
『むしろアリシア、その見た目ならコッソリ学校に入ってもバレないのでは?』
「残念でござるが、アリシアは目立つ振る舞いでござったから無意味でござるよ」
しかし今はまだ変わらない面子で穏やかに過ごしている。むしろ忠がいない事で阪奈がお泊まりしているので闇の書事件以上に過ごしていることだろう。そして今日はカフェのテラスで3人と1機、そして1匹が集まっていた。
「で、阪奈。どうして今日は外のカフェに誘ったの?」
「ん、そろそろ忠殿の件に付いて少し話そうと思ったのでござる」
『ショートケーキ片手に遣う口調ではないですね』
「はいなはと」
「(パクッ)」
天吹の中からヴェヌスのツッコミが聞こえるが無視して流す阪奈。ショートケーキを一口頬張りながら。あとちゃっかり天吹の膝の上にいるなはともケーキを貰っていた。
「んぐっ……。さて、2人、とヴェヌス殿も薄々気付いているでござろうが、忠殿は天吹殿の後見人をして頂く人物に会いに行ったでござる。非公式ゆえ、接触には時間が掛かってるのでござる」
「えっと、忠さんにそんなコネがあるのはあまり驚かないけど、そんな話が出来る阪奈って本当に11歳?」
「忍者でござるからな」
『説明になってませんよ、と言いたい所ですが忍者修行の1つなんでしょう?』
「わかってるでござるな」
「はんちゃんはスゴいんだよ?」
「(フンスッ!)」
『マスターはともかくなはとが自慢げなのは何故ですか?』
元気に顔を出すなはとにツッコミを入れるヴェヌス、であったが実際にヴェヌスは天吹の仲であるしなはとは阪奈とアリシアにアピールしている。ヴェヌスはなはとの背中からツッコミを入れているわけ、舞台に立った漫才コンビのようなやり取りだった。
「いいんじゃない、なはとが自信家なのはわかってる事だし。それで阪奈、そのコネの相手は教えてくれるの?」
「管理局の、陸の人間でござるよ」
「管理局?」
「陸かぁ……」
天吹はピンと来ないがアリシアは呆れた様子だった。
「シアちゃん、陸だとどうなの?」
「うん。管理局の『陸』って言うのはミッドチルダの地上本部、陸上警備隊とかの通称。逆に本局にある、アスーラが所属する次元航行部隊を『海』、空戦魔導師が集まる航空武装隊を『空』って呼んでるの。それで陸と海と色々あって仲が悪いの」
『わかりやすく言えば本局がいい所を取るし地上にちょっかい出すから陸は嫌いなのです』
「ふーん」
「勢力の対立は仕方がないでござる。だからこその陸でござるからな」
「まぁ天吹君の力ならおつりが来るだろうし」
「そう、数千の有能より1つの万能。それに地上本部は防衛や警備で外に出ることはないでござる。預けで力を請われるのは仕方がないでござるから、その範囲を狭められるようにするのでござる。もちろんその為に天吹殿も管理局に貢献をしないといけないでござるよ」
阪奈はそう言って天吹を、その体の中に宿っているヴェヌスを見つめる。すでに高町なのは達と接触した事で管理局に天吹の存在は伝わった。今日まで隠れる事は出来たが隠れ続けるのも悪手だ。間違いなく諦める事はないだろう。
「でも思い切ったよね。去年の春だと隠し続けたのに」
「天吹殿が八神はやてたちに接触しなければ隠し続けていたでござる。ただこれは拙者の落ち度でござる。友として止められなかったでござるからな」
「はんちゃんのせいじゃないよ」
「確かにでござる。これは拙者の、天吹殿といる自分に対する思いでござる」
『私のマスターですが、面倒な相手に付いていく事にしましたね』
「そう?」
「(ン?)」
天吹が首を傾げるとなはとも首を傾げる。このマスコット、ただ天吹の真似をしているだけなのかもしれない。
「過ぎたことよりもこれからの事でござる。その陸の人間は忠殿と話し合った上で選んだでござる」
「問題なないの?」
「許容の範囲、でござるな。しかし清廉潔白では天吹殿を使えぬだろうし守れぬ」
『暗い物があると言っているような物ですよ』
「いざとなればヴェヌス殿が逃がすでござろう?」
『ええ、もちろん』
「(フンスッ!)」
「なはとも頑張るって言ってるね。でも私だって天吹くんの為なら頑張るよ」
「ありがと、みんな」
天吹はその絆を
アレコレと話している内に小腹が満たされると天吹たちはカフェを後にした。阪奈もその席で伝えるべき事は伝えたので今は街を歩きながらの雑談中だ。
しかし、日常が一変するのは唐突だ。
『――結界魔法に捕捉されました』
ヴェヌスの言葉に阪奈が一瞬にして意識を切り替え、それに遅れて天吹とアリシアが周囲を見渡す。その直後から周囲から人は消えて空の色も変化する。
「ヴェヌス殿、この結界に同調して侵入防止は可能でござるか?」
『可能です』
「なら天吹殿、すぐに」
「うん。――誰も入ってこられませんように」
『承認。結界魔法、展開します』
今度は天吹の足下から魔法陣が出現し、そして拡大していく。天吹達には見えないがそれがしっかり捕捉した結界魔法の規模にピッタリの大きさで止まる。
『同調、、完了しました』
「ありがとうヴェヌス」
「さて、では相手方と顔を合わせに向かうでござる。変身ッ」
「行くよなはと」
「(フンスッ!)」
「ミラクルチェンジ!」
そのまま3人はセットアップを開始し、そのまま上空へ移動する。そして変身の魔力が試算するとそれぞれのバリアジャケットの姿に変わっていた。ただ12月に比べると天吹の左腕には武装形態のなはと、『ナハトヴァール』が装着されていた。
「何者か、とは聞かぬでござる! しかし管理局でないことは確かでござろう! 用があるならまず姿をみせるでござる!!」
すると阪奈が2人の前に立って高らかに叫ぶ。それは堂々と、目立つほどに。
「阪奈忍者だよね?」
「忍者だよ」
『忍者の筈ですよね?』
「そこ、コソコソするなでござる。わかっているでござるからな」
しかし後ろで失礼な事を言われてたのですぐに止めさせる。そして阪奈は自分がリーダーの立場にいるからこうして宣言しているだけである。決して忍者であることを忘れていない。決して。
「と、向こうも応じてくれたでござるな」
そうこうしている間に3人に近づく人影が3つ。それが近づくにつれて疑問が膨れあがる。
「高町、なのは?」
「フェイト?」
「八神はやて、ではないでござるな」
天吹とアリシアが首を傾げる仲、眼差しの違いで阪奈は別人と断言した。そして彼女らが目の前で止まると、八神はやてによく似た少女が高らかに叫ぶ。
「ようやく見付けたぞ、久保田天吹っ!」
口にしたのは天吹の名前。そして少女は手に持つ杖を天吹に向けて更に叫ぶ。
「我は王のマテリアル、闇統べる王ロード・ディアーチェ! 我らが悲願の為、貴様の力を貸して貰おうぞ!」
彼女の叫びこそが、天吹達に取っては
GOD編から原作に突入です。
そして書いて思った。『GOD編のストーリーって何日間だったんだろうね?』
なので独断で進めます。
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0日目②≠『僕らは彼女たちと話した』
八神はやてに似た少女、ディアーチェの言葉を聞いて天吹は、脳内から木魚の音が鳴る幻聴を聞きながら思案し、
「うん、いいよ」
「アホか!!」
答えたら阪奈に頭をはったたかれた。思わず忍者口調がなくなる程に。あと11才女の子としては鍛えているので結構痛い。
なので天吹は頭を抑えて蹲る。そうすると出てくるのは、
「マスターの頭を叩くとは何事ですかっ!」
「馬鹿なことを―――んっ、んんっ。初見の相手の要求にすぐ頷く愚行はさすがに流せぬでござるからな。いわゆる鉄拳制裁でござる」
「私は暴力に対して意義を唱えているのです!」
「・・・・・・そろそろヴェヌス殿とは十分な話をした方がいいでござるな」
「はいはい。向こうが困ってるから後にしようね」
口論が喧嘩に発展しそうな阪奈とヴェヌスをアリシアが宥める。こういう時は年上のアリシアが仲裁するので意外にもバランスが取れている3人組と一機である。天吹? まだ頭を抑えていた。
「・・・・・・後にしましょう」
「・・・・・・ござる」
冷静さを取り戻すと改めて相手側と向き合う。と、なにやら向こうもコソコソ話し合ってた。
「ねぇー、お取り込み中―?」
そんな彼女らに天吹が声を掛けると反応してこっちを向いてくれた。
「あー、うむ。問題無い」
「わかった。ところで八神はやてちゃんに似てるの?」」
「それはあの子鴉が我のオリジナルであるからだ。久保田天吹よ」
「どういう事? それとなんで僕の名前を知ってるの?」
「よく知っているとも。なぜなら我らマテリアルは貴様が消滅させた闇の書の奥から見ていたのだからな」
闇の書。その名前になはとが反応した。それを感じた天吹は優しく撫でて上げた。
「闇の書は天吹殿が破壊した筈でござるが?」
「闇の書の再生プログラムも先に停止させていれば完全破壊が出来たでしょうね。あ、私は高町なのはをモデルにした星光の殲滅者シュテル・ザ・デストラクターと申します」
「あ、シュテるんズルい! ボクは力のマテリアル雷刃の襲撃者レヴィ・ザ・スラッシャー! オリジナルより強くて速くてカッコイイ!!」
他の2人、シュテルとレヴィが改めて自己紹介する。シュテルは理的な印象を与えたがレヴィは『アホの子』とレッテルが貼られた。
「私が改めてご説明します。私たちはある目的のため行動をしています。すでに目前との所ですが、懸念はあります。それが久保田天吹、貴方が存在している事です」
「なんで?」
「願いを叶える存在。そのような者を無視できると思っているのですか?」
確かにそうだろう。特に天吹はこの1年で起きた事件でアリシアやなはと、リインフォースを救っているし、リンカーコアを持たない阪奈に魔法の力を与えている。危険視するのは当然だった。
「故に天吹殿を連れて行くと?」
「結論から言えばその通りです」
「そうでござるか」
阪奈の問いにシュテルが答えると、阪奈の姿が消えた。
その姿が現れたのはディアーチェの背後、しかし剣戟の音と共にだった。
「ぬおっ!?」
「っ!」
驚くディアーチェだったがシュテルがその手を掴んで離脱する。天吹たちは何が起きたのか見えていたがディアーチェ達は離れて何が起こったのか知る。
「・・・・・・よく反応したでござるな」
「キミは卑怯だねぇ。まだシュテるんが話してる所だったよ」
「そちらも目が合ったときから警戒していたござろう?」
「そりゃあ何か狙ってる目だったもん」
そこにいたのは忍刀『流れ者』を持った阪奈とバルフィニカスでそれを防ぐレヴィの2人だ。この光景から予想されるのは阪奈が不意打ちをし、レヴィがそれを防いだと言う事。
「―――であるならば、今以上に動くしかないでござるな」
しかし阪奈は表情を変えることなく、レヴィから下がると再び姿を消し――。
「スパークッ!!!」
そこにレヴィが目の前、いや周辺に電気に変換した魔力を放つ。すると姿を消した阪奈が、レヴィの正面から斜め後ろから姿を現わす。
「アハハハッ、さすがに2回も王様の所には行かせないよ」
「ござるか。なら――!」
忍刀を握り直した阪奈は標的をレヴィに固定、しているが隙あらばディアーチェに再び奇襲を掛けるつもりであった。そしてレヴィも本能でそれを察していた。
そうして2人が戦闘態勢に入った中、残りの4人の半分、天吹とアリシアもまた戦闘態勢に入っていた。
「ごめんねー。阪奈がああ判断したなら間違いなくあれが正しいんだよ。だから天吹君は連れて行かせないよ」
「なるほど。彼女が貴方がたのブレインというわけですか」
「そーだよー。と言うわけで私たちもやろうか?」
「話が早いな貴様ら。――シュテル、我は天吹の相手をする。お前はあのレヴィ似の娘を相手をしろ」
「承知しました」
ディアーチェがエルシニアクロイツと紫天の書を持ち、シュテルもまたルシフェリオンを構える。
「乗り気だねー。フォーチュンドロップ、No.1『ラッキーシューター』」
【No.2, Eject】
アリシアもまたフォーチュンドロップから二丁拳銃型のラッキーシューターを取り出す。
「じゃあ天吹くん、なはと。そっちも頑張ってね」
「りょーかい」
「(シュッ!)」
天吹が敬礼と一緒に返事をするとなはともスパイクを出し入れして返事をする。しかしアリシアは正直、天吹が1人で戦うのに不安がないわけではない。しかしそうする理由はあった。
『目的が天吹殿である以上、戦うでござるよ。』
阪奈が最初に消えた直前、念話でそう伝えていた。ならば2人の選択は『戦う』である。しかし不安もある。アリシアは阪奈と忠との対戦経験はあるが、天吹はない。いや、
そんな彼女が戦うことを指示した。ならそれ以外の手がないと言うことでもある。つまりは、
(それだけの実力がある3人組、ってことだろうね)
堂々と名乗ったのは油断を誘うため。話を聞いたのは行動を決めるため。話が終わって動いたのはそこに隙があったため。しかし防がれる可能性も考えていた阪奈は戦うことを選んだ。全てを踏まえて。
「でもま、やるしかないか」
クルリと回転。ラッキーシューターも同時にクルリと回転。考えて考えたモーションでキメる。
「それじゃあはっじめるよー!」
「おー」
なんとも緊張感のない合図だった。
戦いまでの流れはともかく3対3、特定の相手による1対1の戦闘が結界内で始まった。この結界は『封時領域』と呼ばれる結界魔法だが天吹の重ね掛けで完全な隔離空間となっている。しかし天吹も継続的な隠蔽魔法を重ねるには結界魔法の範囲が大き過ぎた。故に、外界はこの存在を察知した。
「――こちらクロノ、現場に到着した。現在までの解析結果を教えてくれ」
『こちらエイミィ。まるっきりダメだよ。転移魔法で内部に侵入できないか何度もシミュレートしたけど結果は不可能。ベルカ式の魔法だけど後付けで未知の術式が加えられていて解析不能。本当に魔法なのって感じだよ』
「そうか。ありがとう」
手の打ちようがない結果だったがクロノは礼を伝えて通信を閉じた。すでに山のように見える結界。それを展開した人物について思う。
「結界はおそらくマテリアルの子たちだろうし、未知の術式は間違いなく例の子供だろう」
クロノは以前、接触した3人の少女の姿と、まだ見ぬ少年の存在を確信していた。内心、自分達では見付けられなかった少年をなぜマテリアルの子らが見付けられたのかという疑問が残るが、これはチャンスでもある。
「結界を張っている以上はどちらもまだ中にいる。入れない以上は・・・・・・」
この結界への対処を考えているとふと、ある方法が浮かんだ。しかし執務官としてどうなんだと自分を疑ってしまうが、それは彼女らに毒されたのだろうと納得した。それに時間をかけて逃げられては元も子もない。今は話が出来なくても情報の1つも欲しい所であった。
決断したなら即行動。クロノはある2人に通信を繋げた。
「なのは、ユーノ。唐突だがすぐこちらに来て欲しい。君たちの力が必要なんだ」
『クロノくん?』
『急にどうしたんだ』
「説明はするがとにかく急いでほしい。時間をかけては逃げられるかもしれない」
『逃げられるって、何を捕まえるの?』
「まぁこれは先に伝えておこう。マテリアルと、リインフォースを救った例の子供だ」
『えっ!?』
『わかった、すぐに来る!!』
『ちょ、なのは!? ああ、もうっ。ボクもすぐに向かうよ』
「ああ、頼む」
通信を切り、再び目の前の結界を眺める。今の時点で手出し出来ないが、とりあえず2人が到着するまで内部の事が終わらないでくれと願うのだった。
マテリアル娘たちのコソコソ話。内容
「なんか漫才はじめたよ?」
「彼らの個性でしょう。ところであっさり同行してくれると言っていますが?」
「いや、あの状況では無理であろう。どう見ても天吹の独断だ。と言うか誘った我らが心配になるぞ、あれは」
「攫います?」
「あー、それ無理そう。あのござる言ってる子、隙がないもん。あとこっちの隙狙ってるよ」
「マジか。レヴィ、奇襲の対応は出来るか?」
「うん、たぶん大丈夫」
「多分、と言いますとあの少女の実力は中々のようですね」
「よし、任せたぞ」
「りょーかい」
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0日目③≠『王は一問答をする』
上手く出来るかな?
右を見ればペンが描くのように走る青い光と屈折する暗い光。左を見れば次々と伸びる赤い光と弾けるような空色の光。他の2人は遠くに行ったなと、天吹はそんな事を思った。
「余所見とはっ、随分と余裕だな!!」
「ん?」
「そのとぼけた顔がまた癪に障るな!!」
しかしそんな天吹も戦闘中であった。ナハトヴァールを装着した片腕を動かし、飛行も高速。戦闘スタイルもあるだろうがディアーチェは防戦を強いられていた。
「調子に乗るではない!!」
「お―――」
天吹の連続攻撃の合間、その一瞬にディアーチェが盾にしていた本が開く。その開いたページにナハトヴァールを叩き付けた直後、吸い込まれるように天吹が本の中へと消える。
「グッ・・・・・・、ハァ!!」
「―――おふっ」
しかしすぐ本から吐き出されるように天吹が出てきた。取り込んだ時、ディアーチェが苦悶の表情を見せた事と関係はあるだろうが、今は戦闘中。ディアーチェは天吹との距離が離れた事を確認すると杖たるエルシニアクロイツを前へ向けた。その先にいるのは放り出された天吹。
「アロンダイト!!」
その名称を叫び、エルシニアクロイツから砲撃魔法が放たれる。
「ん」
それに対し、天吹はその砲撃を見つめる、だけで障壁を張り防ぐ。その際の彼は怯む事もその場から押されることもなかった。
「まだまだぁ!! エルシニアダガー!!」
だがディアーチェの攻撃は緩まない。むしろ距離を取った今だから攻勢に出る。エルシニアクロイツを天に掲げ、その先から数十もの魔力弾を放つ。それらが飴の如く天吹に降り注ぐが当の本人は先ほどと変わらず障壁を張り続け、何もしない。
(間違いなく防御特化。いや、
その最中でディアーチェは天吹の戦闘スタイルを分析し、結論を出す。防衛プログラムであったナハトヴァールをデバイスにしている時点で防御・結界魔法は強く、近接攻撃も猛烈だった。しかしそれは文字通りナハトヴァールの性能。天吹自身の戦いの気配がなかった。
(・・・・・・それもそのはずか。奴はその気になれば全てをひっくり返せる。戦いなぞする必要がない)
相手は願えば叶えられる、神の如く存在。それが限定的であってもこの場に決着を付けることは可能だ。天吹が願えばディアーチェを戦闘不能、いや消失だって可能だろう。それをしないのはする気がないか、言い聞かされているかだ。
「―――久保田天吹よ!!」
ディアーチェは戦闘中、いまだ魔力弾の雨を天吹に放ちながらその名前を叫ぶ。しかしその直後にそれは止む。攻撃がようやく止まった天吹はまだ動かず、隠している筈の両目はディアーチェを捉えているようだった。
「貴様に一つ問う!
その問いは久保田天吹と言う存在を確かにする、ディアーチェが選んだ物だ。全てを叶えることが出来る存在が何を願うのか。虚実どちらで答えてもそれが天吹を知るピースになるのは間違いなかった。
対し、天吹はすぐには答えない。反応はあるようだが、それはどちらかと言えば――。
「・・・・・・
「何・・・・・・っ!?」
ようやくの返事にディアーチェは疑問符を浮かべ、しかしすぐにそれは悪寒に変わる。
「
「インフェルノォ!!」
再生されたように語り始めた天吹だったが、その終わりの見えない様子にディアーチェは魔法を放つ。不意打ちとも言える行いだったが、当のディアーチェは冷や汗を流し恐怖していた。
無防備で魔法を放たれた天吹。しかしすぐにナハトヴァールを突き出し、巨大な障壁を張る。ディアーチェの魔法より大きな壁はその攻撃を受け止め、天吹に一切の衝撃を伝わらせなかった。
「・・・・・・あれ?」
その中で天吹は呆けたような声を漏らした。キョロキョロと周囲を見ては最後にディアーチェの方に顔を戻す。
「ねぇー、
「把握しておらぬのか・・・・・・!」
思わぬ言葉にディアーチェは戦慄した。その反応に天吹は首を傾げるがこれ以上の追求はせず、戦闘中と言うのを思い出したように魔力弾を放つ。
「ッ、チィ!?」
呆けていたディアーチェだったが魔力弾には放った瞬間に気付いたので十分な障壁を展開できた。が、天吹と違ってその衝撃に後退させられる。これは純然たる、魔力量の違いによる結果だった。
思わぬ結果でらしくない事をしたと、ディアーチェは反省する。同時に天吹が戦い方を知らない事が更なる確信に至る。普通なら自分の有利になる状況に持って行くだろうに、押していた近接ではなく遠距離の攻撃だ。
「それを補って余る硬さではあるがな」
しかし、ディアーチェが有利であるか? それは否だ。
ナハトヴァールの防御力と天吹の魔力量。それが合わさった鉄壁はこれまでの魔法を通さなかった現状で証明されている。まだ彼女には高威力の魔法を所有しているがダメージを与えられるかと言えば難しいと考えている。これまでの動きから防御も反射的に展開した物であり、防御もまだ本気も底も見せていない事だ。
攻撃は下手なくせに防御は完璧以上の相手。それが天吹に対するディアーチェの評価だった。
「だが、手加減無用で捕獲出来るともいえるな」
しかし焦りはない。元々、保険として天吹を狙って来たのだ。勝てない相手である事でプライドに多少の傷が付いてはいるが、目的を忘れるほどではない。
さてどうやって捕まえるか。ディアーチェの思考が変わり始めた頃だった。
「ん?」
「む?」
ディアーチェを見ていた天吹が明後日の方向に顔を向けた。特にない、ではない。ちょうど阪奈とレヴィが戦っている方向だった。向こうは向こうで目にも止まらない高機動の戦闘をしていた。
「危ない」
呟き、そのまま天吹は視線の先へと飛んでします。
「まっ、待て――――」
ディアーチェはすぐに追い掛けようとしたが、それと同時に空間が大きく揺れた。
ある意味ダメだった。
今さらだけど天吹は戦闘シーン出来るキャラじゃなかった。
なので阪奈とアリシアの戦闘シーンも投稿します。
PSP仕様(※参考:nanohawiki)
久保田天吹の場合
ロングレンジ | ロングレンジ(ため) | クロスレンジ | ||
---|---|---|---|---|
□ | ルビーファイア | アタック | - | |
△ | サファイアレイン | ブロック | 自動防衛・反撃 | |
○ | エメラルドブレス | キャッチ | 自動防衛・追撃 | |
L+L | フルバースト | ??? |
固有スキル
・ナハトヴァール:クロスレンジのコンボ補正
・ヴェヌスのサポート:ロングレンジの攻撃力UP
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0日目③≠『雷刃は歓喜する』
恐らく一番激しい戦闘をしているであろう2人。
力のマテリアル、レヴィ・ザ・スラッシャーはこの戦いに興奮を覚えていた。元々、好戦的な性格だったが今回は特に楽しんでいた。
何故かって? 決まってる。
「アハハハハッ、スゴいスゴい!! ボクってホントにニンジャと戦ってるよ!!」
「―――」
「おっと!」
高機動で動いていたレヴィ。彼女の視界には同じように追ってくる魔力光、夜の暗さに溶け込むスチールグレーの屈折線。
しかしレヴィはその魔力光のない、ましてや何もない場所から回避する。
「―――本当に勘がいいでござるな」
するとその場所から薄らと、靄のような影が現れる。しかしレヴィと対峙している。何よりその語尾が阪奈だと証明していた。
「ありがと。でもどうやってるの? あっちにだってキミがいるじゃん」
そう言ってレヴィがデバイスのバルニフィカスを向けた先には先ほどまで魔力光を放って移動していた方、その正体もまた阪奈だった。
「「分身の術でござる」」
「やっぱりぃ!! ホントどうやってるの!!」
「「忍者が技の秘密を教えるわけないでござる」」
「それもそうだね」
2人の阪奈から期待通りの返事を聞いたレヴィは彼女のイメージを裏切らない程の喜びに包まれていた。具体的には目をキラキラさせるほどである。
2人の戦いは最初こそ機動戦と言える高速の戦いだったが途中から阪奈が搦め手、彼女が忍術としている魔法を使い始めてからレヴィが楽しそうに戦うようになった。
「「全く・・・・・・」」
呆れたように呟くと2人だった阪奈の片方が消える。しかもレヴィに不意打ちをした黒い影の方だ。攻撃したのは分身だったのか、はたまた逆か。その事実を確認できる事はなかった。
「調子が狂うでござるな。――忍法・火遁の術!」
静かに、しかし阪奈は止まっていない。語るような言葉、それから流れるように
「スパークッ!!」
だがレヴィはそれに対応し、片手から同じ数だけの魔力弾を放つ。火玉が飛んでくる場所を狙い、全て同時に衝突しては爆発を起こす。その際に視界を覆う煙が広がり、レヴィはその中へ飛び込む。
「―――そこだね」
その中で直感的にある方向へバルニフィカスを振るい、金属同士が当たる音が鳴る。間違いなく阪奈の襲撃、しかし気配はまだ感じられない。だがレヴィは焦らない。煙の中から出ず、全神経を集中させ。
「―――雷刃爆光波ッ!!」
直感に従った方向に魔法を放った。レヴィの放った大きな雷球はまたも何かに接触し、加えて周囲の煙を吹き飛ばす爆発を起こす。晴れた視界でレヴィが見たのは、一本のクナイ。
「アハハッ!」
フェイクであったにも関わらずレヴィは笑ってその場から飛び出す。直線的ではなく変則的に移動しながら、時折に何かの攻撃を防ぐ。いるのだ阪奈が。姿を消して、高速で移動するレヴィを追走しながら攻勢に出ている。しかも弾いては手裏剣やクナイ、更には剣戟の感触が混じる。その中からレヴィを仕留める一撃も混ざっており、下手に躱せば自分が仕留められるだろう。
油断の一片も許されない状況で、レヴィは笑っていた。
「楽しい楽しい! ニンジャとの戦いがこんなにも楽しい!!」
『それでも拙者が天吹殿とお主の王の所へ向かわないように気を配ってるでござろう?』
「そりゃあもちろん! じゃなきゃもっと派手にやってるよ!!」
全方向から聞こえる阪奈の声に答えながらも攻撃は激しさを増していく。しかしレヴィの言うとおり、この状況で両者とも別の事に意識を向けている。それは共通して天吹とディアーチェのいる方向だ。
阪奈の目的はマテリアルの頭であるディアーチェの無力化。阪奈が彼女をリーダーと判断し、故に真っ先に狙った。しかし彼女らを撤退させるなら誰か1人を戦闘不能にすればいいと言うのは、彼女らのまとまりから見抜いていた。それを知った上で狙いがディアーチェなのは阪奈の直感。彼女だったならしばらく時間が出来るだろうと。
今は天吹が戦っているが彼は戦い方を知らない上に戦いでは決して『願い』で決着をつけない事を伝えていたので無力化まで追い詰めないだろう。アリシアも流れでシュテルを相手しているがこれは抑え込んでいるとも言える。
残った方法として阪奈がどうにか隙をついてディアーチェを奇襲する事だが、レヴィはそれを阻止する為に動く。忍者相手に興奮しているのは事実だが優先するべき事は間違えず、ディアーチェから離れて戦い、近づきそうになれば巧く動いて阻止していた。事実、阪奈とレヴィは通常の魔導師では追い付けない高機動戦闘の中で天吹とディアーチェがいる一帯から距離を保っていた。
『一撃必殺で拙者を墜とせば問題ないではござらんか?』
「それが出来たら苦労しないよ! オリジナルと違って速いだけじゃなくて読めない相手に当てるなんて、バインドを掛けて掛けて掛けないと! まぁそれも出来ないんだけどね!!」
『なら蝶を投げ紐で捕まえる方法でも教示しようでござるか?』
「今度教えて!!」
互いに軽口で話すが戦闘は激しさを増していた。レヴィへの攻撃はほぼ全方位の同時にして連続攻撃となっており、逆に阪奈の妨害も短い直進から急な軌道変更で目視では予測不能だ。これだけの戦闘をしながら2人は決して天吹とディアーチェの事を忘れない。
しかし、それでも集中しすぎた。
「通ります」
「『え?・ござる?」』
速く動いていた2人にもその声が、天吹の声が透き通るように聞こえた。思わず手を止め、阪奈に至っては姿を露わにしていた。
その直後に、結界の大きな揺れと桃色に輝く光を見た。
戦いが激しい・速いせいか文章が短くなって天吹の時より文字数が少なかった。多分だけど会話が少ないからと思うけど、やっぱり難しい。
PSP仕様(※参考:nanohawiki)
藤乃阪奈の場合
ロングレンジ | ロングレンジ(ため) | クロスレンジ | ||
---|---|---|---|---|
□ | 手裏剣 | クナイ | アタック | - |
△ | 忍法・火遁の術 | 忍法・火遁の術(爆) | ブロック | 変わり身の術 |
○ | 分身の術 | キャッチ | 忍法・煙玉 | |
L+L | フルバースト | 必殺・無音無影の極 |
固有スキル
・忍の極意:被弾率を下げる
・ノット・リンカーコア:時間が経つと攻撃力減少
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0日目③≠『星光は改める』
特にアリシアの魔法はinnocentから参考にしたので手間が多かったですね。
「ハイパーシュート!」
「パイロシューター!」
放たれた両者の魔法は狙い通りに相手に向かい、しかし狙い通りであったために二つの魔法は衝突し、爆発する。
「スターダストシュート!!」
その直後に片方のアリシアが連続し別の魔法を放つ。先ほどは右手の銃で撃った物であり、左手の銃で連続使用を可能とした。
「んっ、フッ!」
対し、シュテルは1本の杖でありアリシアほどの連続使用は出来ない。しかし理のマテリアルとして頭の回転と決断は速く、すぐに移動を開始する。しかもそれは回避ではなく打ち落とすための前動作。
「やはり誘導制御型ですか」
逃げるシュテルを追うようにアリシアの魔法が追尾している。彼女はあの時、一撃目の魔法と違いこの二撃目の魔法が星の形をしていた事から単純な射撃魔法ではないと判断した。結果としてそれは正解であり、そして機動も予測する。
「パイロシューター!」
先ほどと同じ魔法を放ち、追尾していたそれを撃ち落とす。
「No.6『マジカルグローブ』!」
【No.2, Receive. No.6, Eject】
その直後、アリシアと彼女のデバイスの声が聞こえた。振り向くと両手にあった拳銃が消えて右手にグローブを装着していた。そのグローブを見たシュテルは、確か野球と言うスポーツで使う物だと理解した。
「行くよ第一球! 魔球、流星ストレート!!」
それは綺麗な、しかしミニスカートだから変な意識してしまいそうなフォームでアリシアは投げた。投げたのは魔力弾で、しばらく飛ぶと砲撃魔法如き巨大化して放たれる。
「ッ、ディザスターヒート!!」
すぐにシュテルも砲撃魔法で迎え撃つ。接触と同時に衝撃音が大きく響いたが今度は相殺せずに膠着状態となった。
「圧縮された魔力弾ッ。砲撃と言うより
砲撃魔法としては異質とも言える魔法に関心と焦りが同時に現れた。関心はこんな魔法があったのかという物。焦りはこんな魔法に拮抗は失敗したと言う物。シュテルが砲撃魔法を
つまり、シュテルが動けないのに対してアリシアは次の行動に移せた。
「No.7『ハリセンスマッシュ』!」
【No.6, Receive. No.7, Eject】
拮抗する砲撃の上を飛び越えるようにアリシアが、手持ちをグローブからハリセンに変えてシュテルへ迫る。
しかしそれでも彼女はこの場での最適解を導き出し、固定していた足場を解放する。すると膠着していた勢いが圧され始める。
「―――とわっ!?」
その様子を見たアリシアはすぐに軌道を変えて離れる。その間にもシュテルは圧され続いたが、もしアリシアが軌道を変えていなかったら最悪で砲撃に巻き込まれていただろう。つまりシュテルはアリシアの砲撃魔法を使用して攻撃を回避したのだ。
「―――フッ!」
無事にアリシアの攻撃から逃れられたシュテルは残った砲撃魔法の対処を行う。再び足場を固定するとすぐに砲撃の向きを僅か下にし、アリシアの砲撃魔法はその逆に上へと軌道を変えた。
「ふぅ」
軌道を変えた事でシュテルへの脅威はこれで去った。一息をついて気持ちを落ち着かせる。戦闘中でこれは隙ではあったがアリシアもこの時は攻め手を止めていた。攻勢であった彼女もさすがに一息つきたかったのだろう。
「まずは謝罪します。正直に言えば貴女は後衛向き、よくて中衛の魔導師だと侮っていました」
「ああ、やっぱりそうだったんだ。別に気にしてないよ。『油断している相手は油断している内に倒すのが一番』って友達から教わってるから寧ろありがたかったよ」
「もっともですね。しかしそれなら私は反省しないといけませんね。こうして追い詰められていたのですから」
己の油断を認めシュテルだったが、その静かな立ち振る舞いでも警戒は最大にしていた。理由はアリシアが嘘を言っていないと判断したから。つまり隙があればそこを付くと言っているに等しいため、気が抜けなかった。しかしここまでの実力を持つ相手。初見で気になる相手であったが、その気持ちはより強くなった。
「その上でお尋ねします。貴女は何者ですか?」
「ん? どゆこと?」
「言葉通り何者と尋ねています。あの久保田天吹と共にいるのです。
最初は一言で、その次で詳細に付け加えられたシュテルの言葉にアリシアの表情から明るさが僅かに陰る。
「・・・・・・やっぱりそう思うよね」
「深い事情のようですね」
「うん。私は天吹君の力で私はここにいるの。奇跡なんてものじゃない、どうしようもなかった事が全部ひっくり返ったんだよ」
「願いを叶える力、ですか」
何を叶えられたかはシュテルの知らない事だが、話からして絶対的な不可能から救われたのだと考える。まさか虚数空間から拾い上げられ、しかも27年ほど前に死亡して蘇生させられたとは考えも付かなかった。
「フェイトは私がここにいることは知らないけど、いつかは会って色んな事を話したいって思ってる」
「会えない理由は久保田天吹がいるからですね」
「うん。でもこうして貴女たちが接触して来た。それに天吹君はこの前の冬にフェイト達の所に行った。きっともう歯車がかみ合う、お互いが巡り会う時なんだよ」
「詩的ですね」
「ありがと」
アリシアが礼を言うとハリセンスマッシュを持ち直して構えた。どうやらこれ以上は語らず、そろそろ再開しようと言う意思表示だった。シュテルもこれ以上の事は聞けないと察してルシフェリオンを向ける。
その時、轟音と空気の揺れが全体に広がった。
「おわっ!?」
「む?」
2人の反応は真逆だったがその後は何が起こったのかと周囲を見渡す。そして2人は同じ場所に視線を送る。
「天吹君! 阪奈も!」
「レヴィ」
呟かれた3人の名前。
天吹が結界を貫通して来た砲撃を防ぐ光景を2人は捉えていた。
文字数があまり伸びない理由の一つは単純に場面をわけたせいだと最後で気付いた。元々、武力偵察(※実際に戦って戦力を確認する偵察)を意識して書いていたのでそれもある。
PSP仕様(※参考:nanohawiki、innocent公式のカード)
アリシア・テスタロッサの場合
ロングレンジ | ロングレンジ(ため) | クロスレンジ | ||
---|---|---|---|---|
□ | ハイパーシュート | スターダストシュート | アタック | - |
△ | 流星ストレート | ブロック | 逆転満塁ホームラン | |
○ | ぷちシア奇襲! | キャッチ | ワンダーストライク | |
L+L | フルバースト | マジカルウィング |
固有スキル
・フォーチュン:攻撃・防御・回復をランダムで効果を得る
・ラッキーガール:命中・回避に補正がかかる。
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0日目④≠『僕らはここから始まった』
さぁ本筋に巻き込まれに行くよ!
天吹たちとマテリアル達が結界内で戦っている中、その外では第三――管理局の面々が突入の準備を終えていた。
「よし。指定したポイントに局員の配置と準備が終わった。なのは、後はきみの魔法で結界を破壊するだけだ」
「うん、わかった」
そして結界が特によく見えるビルの屋上になのは、ユーノ、クロノの3人がいた。
「でもクロノがこんな強行策に出るとは思わなかったけどね」
「残念だが侵入や解除、あらゆる手を使って無理だったからこの方法になっただけだ。とは言えここでチャンスを逃すほどのんびりは出来ない」
「そうだよねっ。はやてちゃんやリインフォースさんだって会いたがってるしね」
「・・・・・・まぁそういう事にしておこう。―――それじゃあ始めてくれ」
「うん。レイジングハート、お願い」
【All right, Master. Buster Mode】
なのはが愛機レイジングハートに声を掛け、そのまま形態を変える。それを見届けた他の2人は万が一のバックアップのために距離を取る。
そしてレイジングハートを構えたなのは。その足下からミッドチルダ式の魔法陣が展開され、続けてレイジングハートの切っ先に魔力が集まり始める。
「スターライト――」
魔力が球体を形成した頃になのはの口からその名前が紡がれる。彼女が得意とする砲撃魔法の、その集大成とも言える魔法を。
「ブレイカ―――ッ!!」
声を高らかに叫び、溜めた魔力を解放した砲撃魔法が放たれた。
十二分の魔力を込めた魔法は一切の障害に遮られることなく、目の前で聳える結界に命中する。そして一時の抵抗の後、結界に穴を開ける。
作戦通り。ここまでは、そうだった。
「――んんっ!?」
唐突になのはが驚愕に声を出した。
「どうしたのなのは?」
「えっと、初めてなんだけど多分」
混乱しながらもなのはは己の感触をそのままに答えた。
「結界の中で、
「「・・・・・・はぁっ!?」」
結界すら破るスターライトブレイカーを防いだ事実は、それだけに驚愕する事だった。
結界内で、外からの砲撃をいち早く察知した天吹は、それが阪奈に命中する軌道に向かっていると知って素早く戦闘を離脱。そして彼女を守るように障壁を展開した。
カットされた宝石を思い浮かばせる盾はヒビ1つ見せず、目の前の砲撃を裂くように佇む。そのせいで所々の結界の壁が貫通していた。
「・・・・・・重い」
しかし天吹も『攻撃を防ぐ』ことを願っていた為に足場の固定までは願っておらず、力の押し合いになっている。なはとのバックアップがあったので吹き飛ばされていないが、おそらく砲撃が終われば体勢を崩し隙となり、終わらなくても結界が崩壊するのが早いだろう。
つまり、判断は素早く。
『天吹っ! キミを中継にマテリアルの3人に念話を繋げなさい!』
『ん? うん、わかった』
念話から阪奈の声を受け取った天吹は砲撃の対処をヴェヌスとなはとに任せて『マテリアルの子達と話したい』と願う。
『――この声、聞こえているでござるか?』
『うぉっ!? ニンジャの声だ!』
『なぜお前が我らに対して念話が出来る!?』
『察するでござる。まず提案でござる。
天吹が中継点になっている事からその会話が筒抜けだが気にはしない。
『・・・・・・貴女がたも管理局には捕まりたくないようですね』
『付け加えるなら戦闘も回避したいのでござる。天吹殿の力を考慮するならば最終的に管理局に組み込まれる事になるでござるが、拙者達が求めるのは陸の配属でござる』
『なるほど、我らも管理局の内情は詳しくないが海と陸の仲の悪さぐらいは知っている。もしここにいる管理局員に捕まれば海に取り込まれるな』
『天吹殿を使わせない、のは不可能でござる。ならば内部の勢力に対し牽制し合える場所に置くだけでござる』
『ごめーん。そろそろ結界の外から何人か入ってきそーう』
自分の頭に響く会話に水を差すように、しかし重要な情報を告げた。
『・・・・・・天吹殿の力なら追跡も振り切れてるでござる! しかし拙者やアリシアは出来る限り顔を見せたくない。故にお主達には逃げる為の時間稼ぎをして貰いたいのでござる。返答を!?』
時間がないと知って阪奈は用件を伝え、マテリアル達に伸るか反るか問いかけた。
『・・・・・・受けましょう』
『そうか』
『えっ、いいの!?』
『天吹の確保はリスク承知でした。しかし一時とは言え協力するとあれば今後は話し合いやすくなります。貴女もそれを理解して提案しているのでしょう?』
『ご名答でござる。こちらの対価は天吹殿の限定的な協力を認めることでござる』
『では構いません。それではどうか見付からぬように』
『感謝するでござる。天吹殿、もういいでござるよ』
『わかった。じゃあね』
話が終わり天吹の中継もここで終わる。次に6人を転移する――と言うわけにはいかないようで、近づく気配を感じる。
「・・・・・・もう終わって」
未だに受け続けていた砲撃魔法に向かって呟くと弾けるように霧散した。ようやく防御の体勢から解放された天吹は近づいてきた相手を迎えた。
「・・・・・・はじましてだな。僕は時空管理局執務官クロノ・ハラオウンだ」
「はじめまして。でもボクは言いつけられて自己紹介ができません」
天吹の目の前に現れたクロノに対し、天吹は挨拶をしても名前は告げなかった。曰く、名前で居場所を特定されるのを避けるためらしい。
「それにしても、なのはのスターライトブレイカーを防ぎ、無効化するなんて本当に規格外だな。詳しい話を聞きたいんだが、同行してくれないか?」
「任意同行ならお断わりします」
この返事も言われたとおりに答える。阪奈曰く、日本は逮捕状か現行犯出なければ警察は強引に連れ出せないと言う事らしい。
「・・・・・・どうしてもダメか?」
「ダメ。あと、ハラウンさん? あっちから来るよ」
「何? ――っ!?」
会話中に天吹が指さす方向から、クロノに向かって突撃する青い閃光。しかし天吹が知らせてくれたお陰でクロノはシールドの展開が間に合った。そして青い閃光の正体は、マテリアルの1人、レヴィであった。
「ごめんね。ボクたちもあの子を連れて行きたいんだ。だから今回は、譲ってね!」
「くっ!」
バルニフィカスを力に任せて振り、クロノをシールドごと弾く。その為、2人は天吹の目の前から遠ざかる。
「・・・・・・天吹殿」
「あれ、はんちゃん?」
「わたしもいるよ」
「シアちゃんもいるんだね」
その直後、天吹の所に他の2人が合流した。ただし声が聞こえるだけで姿は見えない。しかしそれが阪奈の魔法であることは知っていた。
姿の見えない2人だったが側にいる事は確かである。だから気にはしなかった。
「まずは移動でござる。ただ天吹殿はそのまま姿を見せたままになるでござる」
「なんで?」
「移動しながら話すでござる」
そう言われて(おそらく)阪奈に腕を引っ張られると素直に従う。ふと周囲を確認するとマテリアル達は管理局員をあしらいながらも自分達に近づけないようにしていた。が、数も戦力も差があるためそう時間もなさそうであった。
「まず天吹殿は結界の中心で転移の準備。行き先は『誰も追い付けない場所』でござる」
「わかった。はんちゃんとシアちゃんは?」
「最良は拙者達は姿を見られないことでござる。しかし、その最良は
「?」
「とにかく、急ぐでござる」
最後の意味を理解出来なかったが急ぎと言われて天吹は転移する事に意識を向ける。ただしこれは2人の姿が見えなかったから。阪奈が最後の言葉を告げるとき、その視線はもう1人に向けられていた。
マテリアルは3人。大して管理局は十数人がこの場所に集っていた。数の理を持って天吹を含め、捕縛を目的としていた。
しかし、それは見誤っていた。
「沈めぇ!!」
「そこです」
「ハーッハッハッハー!!」
ディアーチェの広範囲により多くが墜とされ。シュテルの駆け引きで戦闘不能に。レヴィの機動戦闘で撃破され続けた。その間、なのはたちもカバーしようとしたがコンビネーションはマテリアル達に分が上がり、せいぜい時間稼ぎとしかならなかった。
その中で行き起こったのは3人。なのは、ユーノ、クロノだけだった。
『他の局員はさっきで最後だ。残りは僕らだけになった』
『ここまでコンビネーションが上手いなんて。いままで1対1だったのは寧ろ幸運だったね』
「うん、そうだね」
ユーノとクロノからの念話を聞きながらなのははレヴィの相手をしていた、と言えば良いのか。今の彼女は接近戦に持ち込むのではなく距離を取ってなのはの魔法を細やかに避けている。しかし砲撃魔法を撃とうとすれば一気に距離を詰められて阻止される。
やりづらい。しかしなのははその
「ねぇユーノ君。あれって時間稼ぎじゃないの」
『なんだって?』
「私、レヴィと戦ったことがないけどフェイトちゃんから聞いた話と違う気がするの」
『そう――ってわぁ!? ごめん、こっちはディアーチェが物量で攻めてるからちょっと集中できそうにない』
『こちらクロノ。シュテルを相手にしているがこっちも本気で戦っている感じがしない』
『だからぁ! こっち集中できないんだってば!!』
1人、とんでもない状況のようだがはのはの言うとおり時間稼ぎをしているのであれば自分達は
『例の子供はそっちにいるか!?』
『ごめん! こっちは探せなぁい!』
「え? えっと・・・・・・。あ、いた!」
そう見えた直後、静かに魔法陣が展開されていた。
「ねぇ! なんだか魔法陣を展開してるよ!」
『遠目だがこっちでも確認出来た! 状況から推測するに転移魔法だ! この場から逃げようとしている! ユーノ!』
『無理無理! さっきより物量が増えてる!!』
クロノとユーノの慌てぶりになのはどうにか止められないかと考える。しかし時間をかけては逃がしてしまう。そう思った時だった。
『今レヴィがシュテルを連れて行ったぞ!』
「え?」
『こっちもさっき魔法を撃ってきたディアーチェも離れていった』
『そうか、彼女らもあの子供を逃がすつもりがない。だが逃げるのを予想してその転移に巻き込まれるつもりで今のタイミングで戦闘を止めたんだ!』
それを聞いてシュテルが考えた事だと思うなのは。思わずマテリアルの姿を探すとすでに合流し、あの子供の所へ飛んでいる。
本当に時間がない。そんな焦りが行動に移させた。
(間に合うか一かバチ。犯罪者じゃないから真っ直ぐ狙うのもダメ。だから、足場!)
それは、転移の強制的なキャンセルだった。
「レイジングハート!」
愛機の名前を叫び、連続のリロードを鳴らす。これで必要な魔力は十分に注がれ、魔法を発動ができる。
「ディバイーン……」
狙う先は天吹――ではなく彼がいるビル。ビルに魔法を当てて転移魔法の集中をとぎらせる。故に本来の威力は抑えているし、衝撃でビルが破壊されないよう加減もしている。
(お願い、行かないで……!!)
そして友達の恩人をここで逃したくない祈りを、思いを込めた。
「バスタ―――――――――――ッッッ!!!」
その思いを込めた叫びと共に砲撃が放たれた。マテリアル達は合流するために回った事でなのはから離れた場所に。天吹も気付きはしたが対処するにはその反応は遅い。あとは上手く転移魔法の妨害になることを祈るだけだった。
だが残念な事だ。その祈りは――――。
「満塁2アウトからの―――――ッッ!!」
「……え?」
よく知るもどこか違う
「大・逆・転、ディバインバスタ―――、ホ―――ムランッッ!!」
なのはの魔法を天高く弾き返したのだった。その直後、天吹が展開した魔法陣が光球となって更に広がり、
一瞬にして包み込んだ者たちと共に消え去った。
………………………
………………
………
「っきゃっ!」
「おう」
「とぅ」
「おっとと」
「せいやっ!」
「おぶっ!!」
無事に別の次元世界に転移した天吹たちとマテリアルたち。しかし転移と共に飛行魔法もキャンセルされた為、低い位置にいた順に地面に落ちる。順に言えば、アリシアは尻餅をつき、天吹は背中からぶつかり、阪奈は静かに降り立ち、シュテルは跳びながら勢いを相殺し、レヴィは勢いそのまま宙返り、ディアーチェは体勢が悪く顔面から突っ込んだ。
「無事逃げられたー」
「我が無事ではないぞ!!」
「アハハハハハハッ!!」
「レヴィ笑うな回るな止まれっ!!」
のんきな天吹にディアーチェが怒鳴るがそれ以上にバク転を繰り返しているレヴィが怒鳴られていた。
「落ち着いてください。―――そして改めて共に転移していただきありがとうございます久保田天吹」
「別にいいよー。あとフルネームじゃなくていいよ」
「わかりました」
「挨拶もはしゃぐのもここまでにするでござる。では転移の為に時間を稼いでくれた礼として話といくでござる」
「なんだ、気が早いな」
「逃げ切れたとは言え、拙者たちはこの渦の中に巻き込まれたのでござる。であれば情報はいち早く知りたいのでござる」
「そうですね。ディアーチェ、彼らとの縁を切らないためにここは話をしましょう」
「むぅ……。シュテルがそう言うのなら最善なのだろう。レヴィ、そろそろ本当に止めよ」
「はーい」
「なはと武装解除―。ヴェヌスも出てきて」
「はい」
「(ッン)」
マテリアルたちが話し合いする姿勢を見せた後で天吹が片腕のナハトヴァールをなはとに戻し、体の中からヴェヌスを出現させる。
「アリシアもこっちに来るでござる」
「ん――……」
「……アリシア」
「……はーい」
阪奈が離れていたアリシアを呼んだが生返事。もう一度呼んでみんなの所に移動してくる。しかし駄々をこねたような態度に反して笑顔だった。
それもそのはず。彼女は待ちに待った縁が巡ってきたのだ。あの瞬間、阪奈の言った『最良は出来る限りで問題ない』の許容外と判断――いや違う。もしかしたら阪奈もここが関わる場面と裏では考えていたのかもしれない。
アリシアがフェイトに会える舞台が巡ってきた。
ただそれ以上に言えるのは、これで天吹が本格的にマークされた。
まさに、賽は投げられたのだ。
ここで初日、0日目が終わります。
この後から原作キャラがオリキャラたちに注目し始めます。
なんと言うか、振り回すような展開にしたいよねぇ!!
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1日目①≠『朝食、あっちは探してる』
賞味期限が近かったからってバーベキューはホドホドに。(個人的感想)
そして主人公たちは逞しい。
1日目
今日、と言うより昨日の事を振り返るよ。
おじさんが管理局の人と交渉に行って、改めてはんちゃんたちとその話し合いをした。するとその帰り、マテリアルを名乗る3人の女の子たちに会った。僕の力が必要だったからOKしようと思ったけどはんちゃんに止められた。その後は僕、はんちゃん、シアちゃんでそれぞれの相手をした。
僕は八神はやてちゃんに似たディアーチェ。
はんちゃんはフェイト・テスタロッサちゃんに似たレヴィ。
シアちゃんは高町なのはちゃんに似たシュテル。
それぞれの相手をして、でも管理局が来た途端に協力して異世界、ではなく別の次元世界に逃げた。無事に逃げられた後はディアーチェ、ディアちゃんたちと話し合ってどこまで僕の力を使うか話し合った。
ディアちゃんたちは「砕け得ぬ闇」って言うのを復活させるために僕に目をつけたそうだ。でも他の方法でも出来るって。僕は保険として確保したかったって。それを聞いたはんちゃんは一緒にいるのは止めてお互い何かあった時に手を貸すって事でまとまった。管理局には繋がりがあると認識されちゃダメだからって。お互い接触しやすい世界にいて、そこで会うことにする。接触しやすい世界は地球とこの世界の2つだけにすることになった。それ以上の条件はなく、ディアちゃんたちもそれで良いみたいだったから次に会うときまでさよならした。
そして僕たちはしばらくこの世界に残る事になった。さすがに今すぐ地球に戻ると管理局に見付かるからって。時々、闇の欠片って呼ぶなのはちゃんたちに似た何かと戦いながら過ごしてます。
====================
1日目
「お肉―」
「バーベキュー!」
「(フッ!)」
「お主ら朝からはしゃぎすぎでござる。あと肉でござるが朝食故に食べ過ぎてはダメでござるよ」
早朝。天吹が魔法で作った葉っぱと太い枝で作ったテント(※結界魔法で快適空間化)で一晩を明かしての第一声はそれであった。
「とりあえず顔を洗ってくるでござる。拙者はすでに終えているでござるから火を起こしておくでござる」
「「はーい」」
「(ンッ)」
すでに準備していた原始的な火起こし道具を用意していた阪奈の指示に従って2人と1匹は湖で向かっていた。
ここは逃亡した先の次元世界。天吹たちはすぐに地球に帰還することなくここで一晩を明かしていた。
天吹が拠点を設置し、阪奈が食料を狩り(?)、アリシアとなはとは湖で魚を静かに待っていた。小学生のサバイバルにしては余裕のある一晩を過ごした。
「さて、まず一晩が経ったわけですが」
そして焚き火を囲んでの朝食。メニューは一晩干しした魚の焼き魚と木の実が2つ。ついでに阪奈が狩った獣肉(!?)です。その中で天吹の頭の上で小さな木の実を食べていたヴェヌスが話を切り出す。
「帰るの」
「いや、まだでござる。とは言えこの世界にも闇の欠片が出現していると言う事は管理局の捜索範囲内と言う事でござる。やり過ごしながらこの世界に留まるべきでござる」
「じゃあもうちょいサバイバル? さすがにお風呂に入れないのは気になるんだけど」
「それは拙者もでござる」
((あ、阪奈もそうなんだ・なのですね))
時々、阪奈の女の子らしさがこうした形で出てくるのはいつものことである。
「まぁ最悪、そこは天吹殿になんとかして貰うでござる」
「ん? お風呂作るの?」
「いや、天然温泉が出るとこを探して貰うでござる」
「湧いてる、ではないのですね」
「地形的に自然と湧いてる場所がなさそうでござるからな」
「じゃあ作る?」
「今はしないでいいでござる。寧ろ気にするのは今日の事でござる。今日で管理局と接触する可能性があるでござる」
「それはなんで?」
アリシアが尋ねると魚を頬張りながら指を3本立てる。自分達とアリシアは考えたがその数はまた別の物があった。
「闇の欠片と戦った数?」
「正解でござる。三度、ここで拙者たちは彼女らの影と戦った。管理局もそう怠慢な態勢をとっておらぬでござろう。今日で拙者たちの捜索も視野に入れているでござろう」
「来るの? なのはちゃんたち」
「来る、でござろう。この世界にも闇の欠片が出現している以上は出向くのは確実でござる。そのから拙者たちと接触するのは可能性でござるが、恐らく探しに来るでござる」
「昨日の一件で目はつけられましたからね。マスターと、そして」
木の実で口元を汚しながらもその眼差しは真っ直ぐにアリシアを見ていた。
ここには2つ、管理局に属する者たちが見つけ出したい者がいるのだ。
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アースラ
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「貴女が隠したことは彼女の事。そうでしょうシグナムさん?」
日を跨ぎ、昨日までの情報を皆で共有していた。闇の欠片の出現箇所、マテリアルの動向、件の願いを叶える少年。そして、画像に映し出された少女。その少女は、フェイト・テスタロッサに似ていた。
「………」
そしてリンディにその事を問われたシグナムは沈黙を貫いていた。主である八神はやてもいる場で、だ。
「シグナム――」
「待ってはやてちゃん。私が言います」
そこにはやてがシグナムに声を掛けようとしたがそれをシャマルが遮り代わりとなった。しかし彼女はシグナムではなくリンディに告げた。
「リンディ提督。この情報を事前に確認しているのは何人いますか?」
その質問に対し、数秒の沈黙。しかしリンディはそれに答える。
「ここにいるので知っているのは私を含め現場にいたクロノ・なのはさん・ユーノくん。そしてこの会議の前にもう1人」
五人目の名前は言わなかったが彼女の視線がその人物を教えていた。この情報に対してもっとも密接で、そして気遣うべき相手に。
「……教えてくれませんかシグナム」
「テスタロッサ……」
フェイトからの頼みにシグナムはようやく口を開いた。
「私もなのはたちから聞いた時は信じられませんでしたが、もしかしたらの可能性に心当たりがあります。だから貴女が知っている事を教えて下さい」
戸惑いはあるが、それでも受け入れる覚悟があった。それを確認したシグナムも覚悟を決める事にした。
「私があの子供と出会ったのが図書館と言う事はお伝えしました。実はその時に家族の事を教えてくれました」
「家族、確かその事の親を蒐集したのがシグナムさんだったわね」
「いえ、親ではありません。おじさんと呼んでいましたがあの子は両親の友達とも言いました」
「それは……」
リンディを含め、その意味が何を言っているのか察する。
「すみません、話を戻します。その時にかの少女と一緒に暮らしていて寂しくないと言っていました。あの子は少女の事を『シア』と呼んでいました」
「シア……」
「手を出さないという約束もありましたのでこの事は私の胸の内に秘していました。ただ、今の私も彼女の事がどんな存在なのかわからなくなっていたので言えずにいた側面もありますが」
「そうでしょうね。」
シグナムが言えなかったのはこちらへの気遣いを含んでいたことを、この情報からすでに理解したリンディ。『シア』と言う名前にフェイトに似ているとなれば、連想されるのは『アリシア・テスタロッサ』だ。そして彼女は故人であり、そして遺体は次元の狭間に落ちてしまった。
その上で、もしかしたらの可能性は。
「ただもし、この少女がシアさん、アリシア・テスタロッサさん本人ならそれを可能とするものが2つ。1つはアルハザードの技術。もう一つが、ジュエルシード」
秘術が眠る楽園と、願いを叶えるロストロギア。前者はお伽話、後者は間違った伝承で寧ろあり得ないとするべきものだったがこれ以外に繋がるものはなかった。
「……荒唐無稽なのはわかってますか提督」
「ええ、もちろん。ただね、あの子供を知った後だともしかしたらって考えてしまうの」
リンディの懸念に、クロノはそれ以上の指摘は出来なかった。実際に件の少年と対峙した時、追跡できる措置を密かに実行してた。しかし転移した途端、糸を切ったようにあの場までしか痕跡が残らなかった。その正体が何であれ、自分が知る魔法技術より遙か不可解な領域にあることだけは実感している。
「ごめんなさいねシグナムさん。貴女も悩んでいたでしょうに」
「いえ、構いません。テスタロッサの事もありましたが、彼女が知りたいというのであれば話すつもりでもありました。少々遠回りのようになってしまいましたが」
「ありがとうございます。―――その上で私たちは闇の欠片とマテリアルたちの対処、そして次元渡航者の捜索に加えて「未知の魔法を使う子供」と「アリシア・テスタロッサさんと思われる少女」の保護を行います。また案件を増やして申し訳ございませんが、どうが協力をお願いします」
実際、捜索対象が増えたことで現場への負担は増えた事だろう。しかしこの場にいる者たちにそれを余計と思う者はなく、寧ろ今以上の意気込みを感じさせるのであった。
すべては、会って話がしたいから。その理由1つに尽きた。
=========
とある次元世界
=========
無人世界。人がいない故に動植物たちが自由に生息する場所。管理外世界ながら認識された世界。
今そこに、転移反応が出現していた。それも従来のものとは違う、特殊なもの。それは新たな来訪者を呼び寄せた。
「……ん?」
その者は突如として自分がいた場所から全く縁も繋がりどころか世界そのものが違う。上空、しかも逆さまで落下している。しかし
「………」
すぐに魔法を発動して落下の勢いを弱め、逆さかだった体も上下元に戻す。そうしてゆっくり降下して無事に着地する。
「………」
未だ声を発することなく周囲を確認する。キョロキョロと見渡して見付けるのは青々とした自然の緑。時折動物を見付けるが自分の存在に驚いて逃げてしまう。落下中から気付いていたが、ここは彼女にとっては覚えのない世界だった。
「……通信」
連絡を取ろうとデバイスを出す。待機状態のソレは青と白の輝きを放つ宝石型。歪みのない球体の形でまるで満月の様であった。
そのデバイスを通し、身内に連絡を取ろうとするが一向に繋がらない。彼女はその理由を考える。事前にこれを使って繋がらない場合、2つの可能性があると。
1つは遠い世界にいること。もう1つはまだ存在していないこと。
「……なるほど」
彼女は理解した。今の自分の状況を。ならば行動に移そう。彼らに会うために。
「―――
チョイバレするなら、最後のオリキャラは未来組に入ります。でもわかりやすい要素は多いと思います。
あと闇の欠片と戦っていたのは天吹です。曰く、戦いの
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1日目②≠『あっちこっちで遭遇する』
そんな中、野外生活中の天吹たちは苦労なく日を跨いでます。デウス・エクス・マキナ並の便利さですので。
「グッ、アァ……!」
苦しそうに唸るのは烈火の将シグナム。しかしすぐにその体は光となって崩れていく。彼女は本人ではなく闇の欠片のシグナムであった。そんな彼女と対峙していたのは天吹であった。
「お疲れ様ですマスター。これで5人目です」
「そっかー」
今回はマテリアル達と戦った時と違ってヴェヌスが傍に控えていた。戦う時に離れたりしそうだが彼女の本体は天吹と一体化しているので物理的な距離はない。そもそもこのヴェヌスは分身体であるので消失して再構築すればいいのである。天吹の魔力量ならその程度、軽いものだった。
「はんちゃんとシアちゃんは?」
「阪奈は変わらず潜んでいます。アリシアの方はもう少し掛かりそうですね」
ヴェヌスが指さす先にはアリシアとヴィータ(闇の欠片)が戦っている最中だった。お互い宮中を飛び回り、忙しない動きをしている。
しばらく眺めているとアリシアの方が射撃魔法で牽制し、隙を見て砲撃魔法を放った。それがトドメとなり、闇の欠片のヴィータも光となって消滅した。
「終わったー!!」
勝者のアリシアは元気に歓声を上げた。ただしどこかヤケクソ気味に、だ。
「シアちゃんは何人目だっけ?」
「8人目です。ダブりは2回ですが」
「多いねー。でもなんでこう多いんだろ?」
天吹が首を傾げるように、闇の欠片との接触が思った以上に多かった。まだ日も昇りきっていないうちに13回も戦闘を繰り返していた。前回との接触が3回だったと顧みるなら多すぎる。まるで引き寄せられているかのように―――。
「あ」
「どうしたのヴェヌス?」
「もしかしたらなはとに引き寄せられているかもしれません」
「あー」
ヴェヌスの考えに天吹は納得した。
考えてみればなはとは元々闇の書の闇そのもの。本体とも言ってもいい。そして闇の欠片はそこから産まれたもの。引き寄せられるというのは当然のことだった。
「なはと、引き寄せられないように出来る?」
「(シュポ、シュポ)」
『阪奈、貴女なはとが闇の欠片を引き寄せるとこは気付いていましたか?』
『ああ、やはりそうでござったか。数が多いと思っていたでござる』
『言いなさい』
「ただいまー。あれ、何かあったの?」
「おかえりシアちゃん。なんかなはとが闇の欠片を集めてたみたい」
「…………確かにその可能性があったか!」
原因がわかったがどこか抜けた空気であった。もっとも天吹以上に取り扱い注意な存在がいないのでなはとの事はそう大きな問題と捉えていないようだった。
『しかし、なはとが闇の欠片を呼び寄せるのであれば見付かるのは時間の問題でござるな』
『なんで阪奈?』
『闇の欠片がなはとを目指すように移動しているのであれば、それを追跡して拙者たちに追いつくでござる。寄ってくる闇の欠片から逃げてもいいでござるが、それだと芋づるで集まった分だけ戦う事になるでござろう』
『逆にやって来た闇の欠片を相手するだけ足止めを受け、最後は管理局に追いつかれる、と』
『ござるな。ただ例外があるとすれば――ちょうど近づいている存在でござるな』
『『ん?』』
『はい?』
阪奈の言葉に思わず返すと天吹とアリシアの前にそれは現れた。
「なんだぁ? 闇の欠片を追ってきてみればフェイトと、片方は新顔か?」
「でもバリアジャケットは違うし、いつものフェイトより幼くない?」
2人組の女性、いやよく似た顔なので双子の姉妹か。加えて猫耳と猫の尻尾で使い魔である事は一目瞭然。
彼女達はリーゼロッテ、リーゼアリアと言う。
あらゆる思惑が混ざり合っているだろうこの事件。しかし第一に闇の欠片の対処は変わらない。シグナムも先ほど闇の欠片を撃破した所であった。
(……見付からないな)
マテリアル達、来訪者に例の子供とアリシア・テスタロッサ。どれも見逃せないがシグナム自身、まず見付けたいのは例の子供だ。自身が最も縁がありながら繋ぎ損なった事もあるが、何より親友を救ってくれた恩がある。その感謝の言葉一つ伝えられていないのは納得できなかった。主のはやても同じ気持ちだ。騎士であればその憂いを取り除くとなれば一層に再会を願わずにはいられなかった。
しかし現状、手がかりはない。地球に住んでいるのは確実らしく、別の次元世界に転移したとしても地球という故郷から遠く離れないというのがクロノの見解だった。つまり自分達が蒐集活動を行った範囲であり、闇の欠片が出現する範囲内にいる可能性が高かった。とは言えその範囲が広大、という言葉では足らないだろう。手がかりがない以上はこうして虱潰しになった。
そして今も魔力反応を頼りに次の目的地を探す。
「……ん?」
索敵をしてみれば闇の欠片でもなく、管理局の仲間でもない。ましてや探している者たちでもない魔力反応を察知した。しかしこの世界に魔導師が在住しているとは聞いていないシグナムはすぐにこれは未確認の魔導師だと考える。
「……事件に巻き込まれた者かもしれん。向かってみるか」
幸いにもそう遠くない位置だった。すぐにその方向に向かって飛ぶ。
遮る物のない空をシグナムは真っ直ぐに、最短距離で進んでいく。距離も遠く離れていなかったお陰がその目が目的の人物を捉えた。相手もシグナムに気付いて空中で静止する。
(話し合いに応じる、が警戒を解いていないな)
もしかしたら気が抜けない相手の可能性を置きつつ、シグナムもその人物と対話するために静止した。
「時空管理局、シグナムと言う。貴殿は次元渡航者か?」
「……いいえ。唐突にこの世界に放り出されました。着の身着のままだったので身分を証明する物はありません」
「そうか。なら安全な場所まで案内しよう」
「それも必要ありません。人を探しているので」
「ん? 他にも巻き込まれた者がいるのか?」
「いいえ、初対面です。私が一方的に知っている相手です」
質問をして回答を貰っているシグナムだったがどうも要領を得なかった。そこで改めてその人物の姿を確認する。
薄桃色のバリアジャケットを纏っている事から魔導師であることは間違いないがデバイスらしき武器は身の丈に匹敵するほど大きな剣を握っている。近接戦闘、と初見は思ったが形状が三日月、ブーメラン状であるから投擲にも使う中距離戦闘のタイプと予想した。しかしシグナムは一番に気になっているのは相手の警戒心だった。まるで敵対者と相対しているようなものだった。
「ならば協力できるかもしれん。やはり同行して貰えないだろうか?」
「いいえ。問題ありません」
「しかし身元を証明して貰わなくては」
「いいえ。問題ありません」
とりつく暇もない、と思えたシグナムはふと小さな可能性を考えた。縁というものはあるのかという可能性を。
「………誰を探しているんだ?」
「ある子供です。おそらく地球を離れて次元世界を彷徨っている筈です」
「それは目元を前髪で隠した少年か?」
その可能性を具体的に告げると
「彼を探しているのでしたら、なおさら同行できません」
「あの少年を知っているのだな?」
「身内です。もっともまだ彼はまだ私を知らないですが」
「親戚か?」
「いえ。しかし
「……正直、私もあの少年を探している。貴殿がその情報を持っているのなら見逃すことは出来ない。その申し出、受けよう」
シグナムが抜刀すると彼女もブーメランの剣を構えた。
彼女はシグナムとの戦いは
別の次元世界でシグナムと七緒が戦い始めた頃、彼女達が探す天吹たちも戦闘の火蓋が切れる間近だった。
「……いや、匂いが違う。お前はフェイトじゃないな」
「まぁ、フェイトじゃないのは確かなんだけど」
会ってすぐフェイトと勘違いされたがまたすぐにリーゼロッテが別人だと見抜き、流石のアリシアも困惑していた。
天吹たちはリーゼ姉妹とは初対面。地球にいたから阪奈でさえその情報は手に入れておらず、唯一の機会だった闇の書が完成したクリスマスの日さえその姿は確認していなかった。
「私たちが探している相手でもなさそうね」
「でもこんな場所に子供がいるのも―――オイ、そっちのちびっ子」
「僕?」
「ああ。その腕の武器だ。ちょっと掲げてみろ」
「わかった」
リーゼロッテに言われたとおり天吹は片腕を掲げた。彼が素直すぎて、そして腕に装着されたなはとがリーゼ姉妹にある情報を与えた。
「ロッテ、アレって」
「間違いないよ。闇の書の闇、ナハトヴァールの武装形態。んでそれを持ってるって事はクロ助が言ってたちびっ子だ」
闇の書についての資料に目を通していた二人はナハトヴァール武装形態の事も知っていた。そしてクロノから天吹の事も聞いていたのでその結論に至った。
『……その素直さは自覚するでござる』
『ごめん』
しかし隠せば誤魔化せた事でもある。隠れている阪奈に注意を受けて返事をする天吹だった。
「目的とは違うけど見逃す訳にはいかないわね」
「ああ。アタシも色々と聞きたいことがあるからな」
戦闘態勢に入る二人に対し、天吹達もここで捕まるわけにはいかないのですぐに戦えるようにする。阪奈もいざとなればここで割り込む事も考える。
しかし、両者は戦わなかった。
『マスター左上に魔法攻撃っ!!』
「ん? んっ」
ヴェヌスが念話で伝え、天吹が反射的に言われた方向へ防御壁を展開する。しかし加減を忘れてリーゼ姉妹まで覆う程の巨大さ。それが彼女達にも向かっていた魔力弾から守った。
「うわっ!?」
「攻撃っ!? 誰の仕業!?」
「あそこ!」
突然の襲撃に混乱が起きるがそれでも下手人を目視した。誰もがその人物に注目する。
その人は杖型のデバイスをこちらに向けていた。コート姿で体部分の装備はわからないが頭部は露わであり、装着したゴーグルが日の光を反射していた。背丈から少年と青年の間、子供と大人の境くらいの年齢の男性。
「嘘、だろ……。アイツまで出てきてるのかよ!!」
そしてリーゼロッテは
その姿に―――。
「………おじさん?」
天吹は彼が
シグナムと遭遇したキャラ=未来で天吹の身内に元ナンバーズのセッテさん。オリキャラと言ったが半分嘘です。原作の道筋からズレたキャラでした。多分、原作の更正組より新たな人生を歩んでます。
そして天吹達の現れたミドル・バート(闇の欠片)=若き頃の久保田忠さん。このために登場人物にデバイスとバリアジャケットの紹介をした。装備が変わってないのは万能型だからこれ以上の改良が難しいだけ。
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