魔装機絶唱シンフォギア (よなみん/こなみん)
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初日
一日目。光放つ天井。彼女は再会する。
「動くな、、、!」
窓から涼しい風が壁となっているカーテンをかぎ分けてその涼しい風を届けてくる。時間は夜。日の当たらないこの時間ならではの恩恵だった。そして、その部屋の中では男女が営みを、、、いや、男が一人の女をベッドに押さえつけ、片手に持った銃を彼女の頭に押し付ける。彼女は恐怖しているのか、額には涙が見え、声という声が上げれないでいた。
男は今にも彼女を殺しそうな顔をしている。しかし、彼女の手には刀が抜刀された状態で握られており、男の額にはわずかに切られた痕があった。そこからは大量ではないが、それでも血が出ていた。目と鼻をつたって顎から白いベッドに落ちていく。
「大きな声をあげるなよ。じゃないと俺は君を殺す」
「、、、
「何?」
視点は変わり、和真の下の少女は、確かに今、彼の名前を呼んだ。
、、、少年は今一度困惑する。確かに少年の記憶には彼女の名前、人物の情報はない。それどころか、彼の中ではこれが初対面のはずだ。
「何故俺の名前を知ってる」
「覚えてないのか!?私は、、、お前の帰りを待って、、、」
涙を流しながら安堵している彼女に、少なからず動揺してしまう。そして、それ以上にこの女がどういった人物なのかも気になってしまう。もしかしたら
「おまえは誰だ?」
「え、、、」
特に含みもなく。冷静で、相手から聞いたら冷たくも聞こえる言葉を投げかける。しかし、簡単な質問だ。彼女は動揺して、一瞬どういった答えをしていいかわからないようにも見えた。
苦しそうだったので。和真は高速を解除することに。彼女の身体から降りて、腕を離してやる。頭に突き付けた銃だけは手からは離さず、銃口はそのまま彼女に向いたままにする。
「、、、覚えていないのか?」
「いいから質問に答えろ。でなければお前を殺す」
「
風鳴翼、その名前を聞くと少しだけ、頭が痛くなる感覚に襲われた。どこか懐かしいような。自分が何かを忘れて居るような感覚に。
そして部屋を見渡す。彼女は女のはずだ。なのにもかかわらず、部屋には女物とは違う、明らかに別の人間の服や、下着が置いてあったからだ。
「、、、お前は一人暮らしなのか?」
「和真、、、」
「答えてくれ。頼む」
「一人ではない。つい先日まで和真。お前と過ごしていた部屋だ」
納得はいかないが納得するしかないのだろう。彼女の言葉には嘘はない。どこか懐かしいような。それで何かを忘れて居るような感覚がする。だが、これを言われても、和真の頭は何も思い出せない。和真は何とも言えない感覚に陥る。
翼の瞳は嘘をついていない。しかし、和真の記憶にはない。つまり、どこかでこの、風鳴翼と和真の記憶の食い違いが発生しているのかもしれない。
「まさか」
「何も覚えていないのか?」
「風は嘘をついていない。君は」
「、、、和真」
和真は部屋の端に散らばっていた雑誌類からある一つの手記を見つける。手慣れているように、山からかぎ分けその場所を知っているかのように一発で探し当てる。その手記にはタイトルはないものの、懐かしいもののように手触りを確かめ、ページをめくっていく。
「なんだこれは」
それは日記だった。そこには当然化の様に彼女の名前と、和真の名前、そして彼女との記録が鮮明に舁かれていた。、、、ダメだ。これを見ても何も思い出せない。彼女のことも、
記憶喪失とはふざけた言い訳だとは和真も思っていた。しかし、都合のいいように、記憶はずり落ちて、まるで穴が開いたようにふさがらない。ずっと開いたままなのだ。
「なぁ風鳴さん、、俺は一体誰なんだ」
「え、、、」
「ここで過ごしてた覚えがないんだ。一体俺は何を」
「忘れて居るのか、、、?」
「すまない」
和真の視線は下に向いているため、彼女の顔は見えない。しかし、それでも声のトーンでわかる。今、彼女は悲しんでいるのだろう。風が教えてくれる。彼女の心を、彼女の思いを。
翼は涙を拭き。和真を見る。彼女から見た彼は、間違いなく彼女の記憶に残っている妖鬼 和真なのだ。鮮明な記憶が彼が彼で織るということを証明している。それ以前に否定をさせてはくれない。
気が付けば、翼の身体は彼の身体を抱いていた。優しく、それで疲れた彼をいたわるように。今彼は疲れているのだと、彼は混乱しているのだと思ったゆえの行動だった。
「大丈夫」
「な、、、」
「大丈夫だから、な?」
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「本当に私のことは覚えてないんだな?」
「ああ、見当もつかない。申し訳ないが」
「、、、そうか」
風鳴翼は覚悟はしていた。していたはずなのに彼の言葉は落ちた女神の矢のように翼の心に突き刺さった。彼自身も嘘はつていないらしく、その表情を変えない。そして部屋には何とも言えない沈黙が続く。
和真は翼から聞いていた。自分はこの世界で翼たちの仕事の護衛をしていたこと。そして数週間前から俺は姿を消していたこと。翼たち、そしてその護衛の人たちも心配をしてくれ捜索をしてくれていたらしい。
しかし、和真にはこの世界の記憶がないどころか、どこに行っていたかの記憶もないのだ。本当に説明ができない自分を恨む。
「、、、どうすればいい」
「ほかの人はごまかせても叔父様はごまかせれないだろう。説明は私がしておく」
「ありがとう」
「気にするな。私の大切な人だからな」
しかし、改めて部屋を見渡す。、、、何とも言いにくい部屋だった。和真の記憶にある女性の部屋とは何か少し、いや、だいぶ違う気がする。この部屋には彼女の下着が、服が散らかっており、地面を踏める場所も限られていた。
「本当に部屋なのか?」
「うぐっ」
「、、、掃除はしてないのか?」
「たまに緒川さんが来るから、、、」
要するにその人含めに甘えていたわけだ。まぁ、家事ができない人の少なからずいるようだが、この荒れ用には和真は顔をしかめることしかできなかった。とりあえず片付けだけはしておこうと彼女の下着、服を手に取り、片付けを始める。
「ご飯も作るよ。見た感じキッチンもきれいだからどうせ食べてないんでしょ」
「ん、あ、ありがとう」
「頑張って作るよ」
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「おい~っす。二人とも、来たよー」
料理が出来た途端。この部屋に別の人が入ってくる。声からして女性だろうか。翼が率先して出迎えに行ってくれる。そうしてしばらく待って、入ってきたのは赤髪の女性、恐らく彼女が
奏の手にはわずかながら荷物が。中身はお茶とお菓子だった。どうやら、こっちに会いに来る約束を本人たちはしていたらしい。
「なんだ、帰って来てたんだな」
「ご迷惑をおかけしました」
「いいって、こうして見つかったんだ。でもおっさんには叱られるな」
「、、、善処します」
おっさんという人について和真は聞いていなかったのでぴんと来なかったが、翼が目を合わせて、「大丈夫」と言ってくれる。和真はほっとした表情で奏との会話を続ける。
準備しながら会話をしているだけでも、多くの情報を得れた。まず、和真たちは機動二課というところに所属しているらしく、彼女たちは、「シンフォギア装者」と呼ばれる貴重な存在らしい。かつて女神たちが使っていた武器、、、「聖遺物」をまとえる人間。そしてアイドルユニット「ツヴァイウィング」の監視兼、護衛役をしていたのが和真だ。
そして近々、新たな聖遺物が発見されたらしく。それを起動するための計画もあるんだとか。あとは特に聞かなくてもいい情報だったので和真は聞き逃している。
「、、、出来た」
「なんだ、しっかり作ってたんだな」
「悪かったな」
「いや、帰って来てたならちょうどいいと思ってさ」
そういって奏が手に持っていた袋から取り出したのはお惣菜シリーズだった。よくスーパーのコーナーに置いてある洗練された食べ物たち。和真がいない日はずっとこれを食べていたらしく。奏の準備する手つきが慣れている。
まぁ、おかずのレパートリーが増えたと思えば問題ない。それに食材の少なさから用意する余裕もなかったからこれはありがたい。
「じゃあ食べようか、これでおかずも揃ったし」
「あれ?用意しなかったのか?」
「和真が買いに行くのを忘れてな」
いい言い訳がないのを気づいてくれたのか、翼が即答でカバーを入れてくれる。奏は納得し、三人分のコップにお茶を注いでくれる。全員が机を囲むようにして座り、ご飯を食べ始める。今日は簡単にシンプルなみそ汁とご飯(ふりかけ)にしてみた。今度からはお茶漬けもありだと思った。
「ところで戻ってきたのはいつだ?それによってアタシからのバツが決まるぜ?」
「、、、今日だよ。ついさっきだ」
「そりゃ翼もびっくりだろうな。よし、一発な」
「落ち着いて奏!和真だって用事があったんだから!」
「止めるな翼!アタシはこいつをぉぉぉ!」
周りには寝ている人もいるというのに奏の叫び、そしてそれを抑える翼の悲鳴は大きくなっていく一方だった。これは止めなければ大変なことになるな、和真は面倒そうにしながらも心の中でそう考えていた。
しばらくして奏のほうから「絶対後で殴るからな」と言われこの場はひとまず収まる。、、、しかし、いつ自分の話題を切り出そうか内心は迷っていた。いつかはバレる。特にこういう引っ張ってくるタイプの人間には弱いものでいつか出てしまいそうで怖い。
「ん?どうかしたのか?」
「あ、いや、、、」
奏は真っ直ぐ和真を見る。その瞳は心配している色だった。風もそういっている。「そうか?」といって少しずつ近づいてくる奏に和真は困惑してしまう。翼と同じ女性でも、奏と、翼では持っている魅力が違う、どちらもきれいで、どちらも整っている、しかし、翼にはないものを奏は持っているわけで、、、。
少しずつ奏に押される和真、翼もおろおろしてどうしていいかわからない様子だ。こんなとき、この世界の自分ならどうしていたのか、頭の中で考える。どうすれば彼女を追い払えるのか、どうすればいいのか、、、。
その時、強い風が部屋に入り込む。カーテンをかぎ分け入ってきた風は和真と奏の中を裂くように吹き通る。
「あぶなっ!」
「おっと」
「二人とも大丈夫か!?」
「、、、今日は風が強いな。大丈夫か?」
後ろにのけ反った奏に手を貸してやり身体を起こす。女性にしては妙に力が強かったのにビビッてしまう。風が入ってきた窓は大きく開いていて、カーテンは荒らぶっていた。奏はあきれたように頭を掻く。「すまない」と和真が短く謝罪する。
「いいって。気にすんな」
「、、、しかし」
「だけど。いなくなった分は別だな、、、そうだ!明日暇だろ?」
和真は予定を思い出す。と、いうよりは予定は翼と同じなのだから彼女がなければ和真もない。翼は「明日は私もないぞ」と目で訴えてきたので予定はない。と短く返すと奏は予想以上に笑顔になる。そのあといい感じに言いくるめられ、明日、和真は彼女たちとのデートに駆り出されることになった。
二課からは何も言われていないらしく、翼の言う叔父様に謝りに行くのは当分先になりそうだ。
「、、、どこに行くんだ?」
「全部アタシが決める!それじゃ!」
そういうと奏は荷物をまとめて翼の部屋を後にする。机には食べ残しや奏の持ってきた惣菜の容器が置きっぱなしになっていた。和真はせっせと片づけを始めて、翼はお風呂を沸かしに洗面所へと向かう。
洗い物をしているとき、和真は少し、これからのことを考えていた。今のところ、自分の現状を知っているのは翼一人のみ。そして自分を理解するための答えはこの世界に転がっているのだ。これから、和真はそれを見つけなければならない。
(この世界はどこか懐かしく感じる。彼女に会ったからかそれとも、、、)
「和真、お風呂だ」
「あぁ、終わったら入るよ」
この世界のことを見つけ、自分のことを知ろう。そう思いながら、この日は彼女の部屋で一泊を共に過ごすのであった。
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一日目
「和真、起きて」
「ん、、、」
視界は暗い。目を開ける前でも多少の明るさというものはわかるものだ。明るければ目を閉じているときの視界も多少は明るくなる。しかし、和真の視界は部分的に明るく。日食が起きているように目の前は暗く、その周りが明るかった。
和真は布団の中で少し体を捻る。しかし、和真の視界を覆っていたなにかは待ちあぐねたのか、和真の身体の上にまたぐような形で乗ってくる。
「起きて、奏が来る前に」
「んぁ、、?」
外は意外にも眩しく目を開けるには時間を要したが、それでもゆっくり目を開けると、そこには風鳴翼の顔があった。彼女は心配そうにこちらを見つめている。彼女の身体は和真の寝ている身体を跨いでいた。
(そうだ、今日はデートだったな)天羽奏が昨日言っていたことを思い出し、和真は体に乗っている翼を退けると身支度を始める。まずはクローゼットを開けるがさすがはボディーガード。見た感じ服がスーツ一着しかない。翼が「ラフな格好でいいぞ」とは言ってくれたものの、見渡す限り、ラフな格好というものがない。
「どうした?」
「、、、服がない」
「いや、奥のほうだ、ほら」
そういって翼は奥のクローゼットから和真の普段着を見つけて見せる。和真はますます彼女との関係が気になっていたが、怖くて聞く気にはなれなかった。
気が付けば時間は奏が指定した時間。朝の10時。そろそろ迎えと共に奏が来る頃だろう。荷物をまとめて出かける準備を整える。
「お邪魔するよー」
玄関から元気な声が聞こえる。和真が出迎えると、そこにはアイドルにしては包み隠さない格好をした思う奏と、もう一人、スーツに身を包んだ青年が立っていた。表には黒塗りの車、そして護衛のSPたちが控えていた。
護衛の人の名前は確か
「おはようございます」
「相変わらず丁寧だなー。堅苦しいのはやめろって」
「、、、すまん」
「あー、謝るな!謝るな!アタシが悪いみたいになってるだろ!」
「いつものお二人で納得しました」
玄関先のいつもの光景にSPの人にも、緒川さんにも笑いがこぼれる。「見世物じゃない!」と奏は言い訳するがこの状態だとただの見世物と間違われても不思議ではなかった。
翼も遅れてきて全員が車に乗り込む。運転は緒川さん。助手席には奏、後ろには翼と和真が座る形になった。座るや否や、翼は優しく和真の手を握ってくる。
お互いに頬を赤らめる。そして気まずい空気の中、和真たちを乗せた車はある場所へと向かって走り出した。
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「着きましたよ」
緒川さんの透き通る声。気が付けば、車は新宿まで来ていた。大きなショッピングモールや、高くそびえたつビルが町の発展具合を示していた。さすがは東京の有名どころ。こういうところはしっかり整っている。
奏、翼、和真は車を降りる。緒川さんはそのまま車を走らせてどこかへ行ってしまう。恐らく駐車場を探しに行ったのだろうか。そして、そのその横では奏が悪魔のような笑みを浮かべているのが見えた。
「なーなー、和真。このままアタシたちとデートとしゃれこまないか?」
「な!?」
「唐突だな」
小悪魔のように誘ってくる奏の提案に和真は素直にはうなずけなかった。そりゃ、こんなにかわいいアイドルに詰め寄られてデートに行こうなんて言われたら「うん」とも言いたくはなるが、和真の直感が「いや」と言っているのと翼が心配性になっているということはきっとそういうことなのだろう。
しかし、にこにこ、何よりやる気になった奏を止めることはできない。和真の腕を無理やりつかむとそのまま周りの目を気にせず走り出す。少し困って、翼が後を追うように走り出す。
新宿の街を駆け巡るような疾走感に駆られ、街並み、外観を見ていく。どこか懐かしい感じがするが、和真の記憶には響かないのか、何も思い出せず、そのまま奏に連れていかれる。
そして気が付けば、三人は翼の部屋に置いてあった有名なファッションブランドのお店があるビルの前に来ていた。階層は三階。つまり階段を昇ればすぐなのだ。
「ほら、女性をエスコートしてくれよ」
「えーっと?それでは行きましょうかお嬢様?」
「ばっか!手を握るんだよ!か弱い乙女は手助けがないとだめなの!」
か弱いとは何なのか。そんな心の叫びを心に押しとどめて、和真は奏、そして翼の手を取り、エスコートをする。この世界のことを覚えていないとはいえどうしたらいいかぐらいはわかっているつもりだ。
三階のファッション店にやってくる。女性に人気らしく、品物も女性ものを多くそろえているまさに女性にとっては夢のような場所だろう。しかもだいぶ上品質でお金持ちが切るようなものから子供に人気のもの、さらには男性受けする服まで置いてあった。
「で?何をする気だ?」
「活きのいいアイドルがいるんだから決まってるだろ?」
「、、、はぁ」
どこか予想はしていた。表情には出さないがファッションというのには生憎だが興味ない。朝、「面倒だから出かけていいか?」とめんどくさそうに電話で話していた時、何故か遠くから殺気を感じた。天羽奏という女性はもしかしたらとてつもなく恐ろしい女性なのかもしれない。
和真はあきれた表情で後ろを見る。そこには先ほどまで車を止めに行っていた緒川さんがまるで忍者のように隠れているのが見えた。他人から見れば手すりと同化しているように見えるだろうが悪いが少しのずれで隠れているのがばれている。黒服の人たちもあきれている。
「自分で言いますか」
「こうでも言わんとお前を誘えんからな」
「そう」
興味なさげに言うが「いいから行くぞ」と奏の一言、和真は無理やり腕を握られ、半ば強制に連れていかれる。翼は彼らの後ろをゆっくりついていく。お店の中に連行され、難しそうに服を選び始める奏。翼も初めは興味なさそうにしていたが、奏にバレて服選びに強制参加させられる。
女の子二人、しかもアイドル、モデルときたもんだ。これは普通の人なら夢かと疑ってしまうだろう。現に周りの人たちはビビりながらも現実を受け入れている。
「、、、で?服を選んでどうするんだ?」
「決まってるだろ?お前の意見を参考にするんだよ」
「なんで」
「察しろ」
冷たく奏にあしらわれ彼女たちはさらにお店の奥へ。和真は何が起きたかわからない様子でしばらく魂が抜けていたが黒服たちの必死の蘇生で現世に戻ってくる。
「和真さんは鈍感です」
「もう少し女心を理解してください」
「うっさい」
「自分結婚しました」
「「「え!?」」」
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「最近なんか変わったな」
「和真か?」
彼女たちは和真を振り払った後、更衣室で持ってきていた服に着替えていた。その間、部屋をまたいでだが奏が話しかけてきた。
「昨日帰ってくるまでの和真はなんか、ずっとアタシたちの会話なんか興味なかったのにさ」
「、、、そうだな」
「今の和真は別人だ。なんだ、こう、、、上手く言えないけど変わろうとしてるのかな、あいつも」
「だったら奏は?」
「決まってる。あいつに言いたいことがあるからな。今日はしっかりと言ってやるつもりさ」
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「猫?」
奏、翼の両名が着替えているとき。和真はお店の外、そこにいた猫たちと戯れていた。飼い主がいない、、、つまりは野良猫だろう。人懐っこいのか和真を見るなり近寄ってきて頭を足に擦り付けてくる。
和真は姿勢を低くしてやり、猫たちの頭を撫でてやる。やがて懐いてきたのか猫たちは和真の腕を上ったり、首に巻き付いたりと自由に体で遊ぶ。
「なんだ、結構やんちゃな」
「和真ーって、いなくなった!?」
「おっと、お姫様たちがお呼びか」
流石に今、この猫たちを連れて行くのは危ないか。と考える。翼が前に言っていたが、女の子の前ではあまり他の女の子の話をするなって言ってたしな。奏なら最悪、和真のことを殴りかねない恐れがある。和真はそっと猫を床に降ろしてやる。
「じゃあな」そう短く告げると、猫のもとを離れて、和真は翼、奏がいる店内にさっそうと戻っていく。猫は冷静に、ゆっくりと視線で追う。
「どうにゃ?」
「間違いないにゃ。カズマだにゃ」
「ラ・ギアスから飛ばされたと思ったらここにいたのかにゃ」
「どーするにゃ」
「とりあえず抜けてる記憶を呼び覚ますにゃ」
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「悪い悪い、遅れ、、、」
和真が視線を上にあげた瞬間、そこには、一言で表すなら天使がいた。先ほどまでとは変わって、翼は少し長めのミニスカートを履いていて、上には少し大きめのシンプルなパーカー、素手の部分で手を隠しながら恥じらう姿が何とも言い難い。一方の奏は、恥ずかしがりはしないものの、彼女もまた、コットン生地のスカートを履いていて、何より抑えめのレースタンクトップがいつもの彼女からは想像できないものがあった。
二人とも普通にかわいい。しかし、こういう状況は和真にとっては初めてなのでどういう対応をしたらいいかわからない。
「普段ならこんな格好はしないんだがな」
「選んだのは奏だろう?」
「そうだっけ」
和真は思考が追い付いていなかった。今は何を見せられているんだと心の中は疑問だらけだった。今、彼女たちは着替えて和真の目の前にいる。これだけでも和真にとっては何が起こっているかわからなかった。
「何してるんだ?」
「着替えだよ、それぐらいわかるだろ?」
「なんで俺の前に現れる必要が?」
「別にいいだろ」
聞きたい答えじゃないために和真は頭を抱えだす。しかし、そんなことはどうでもいいように、奏、翼は距離を詰めてくる。
「どうだ?可愛いだろ?」
「、、、」
「和真、どうかな?」
翼ですら恥じらいながらもしっかりと感想は聞いてくる。裏切られた気分に和真は襲われるが頭の中ではいくつもの選択肢が彼の中では出ていた。
ここから逃げるか、素直に感想を言うか、現実逃避するかだ。しかし、どれを選んでも奏には文句を言われるだろう。
「逃げていいか?」
「逃がすと思ってんのか?」
しまった。ついうっかり出てしまったと、和真は思ってしまう。じりじりと迫ってくる奏、翼の両名。見えてはいないが後ろからは黒服の人もついてきている。和真をとらえるために逃がさないように囲もうとしているのだろう。
「、、、さて?」
どいう逃げるか改めて策を練ろうとしたその時。
高らかに、耳障りな、警報が鳴りだした。
__________________________________
「和真!」
「何だ!?」
「ノイズだ!一般の人の誘導を頼んだ!」
警報が鳴るや否や、周りの人は一斉に慌て避難を始め、翼、奏の両名は三階から一階へと飛び降りる。しかし、和真にはどうしたらいいかわからなかった。この世界のことを覚えてはいない。昨日、翼に話したばかりで、今日これなのだ、頭の中は混乱していた。
「どうすればいい、、、」その時、和真の視界に入ったのは猫だった。先ほどまで戯れていた猫が、俺の目の前に立っている。
そのあと、足元から変な生物が湧いて出てくる。目に悪い、基本色をにじませたような姿の人型生物。この世界の敵、「ノイズ」だ。ノイズは出てくると、和真に狙いをつけて攻撃を始める。まずは人型の緑ノイズが腕を伸ばしてくる。
「なんだっ!」
飛んできた腕を住んでのところで回避する。ノイズは生物だ。しかし、彼らには、言葉を交わすことも、意思を疎通させることもできない。放たれた攻撃は、無慈悲にも後ろの障害物をえぐり取った。
その時、猫は和真の前を横切り、非常階段へと入っていった。まるでついて来いと言わんばかりに非常口に入る前視線を合わせてきた。
「くそっ、今は乗るしかない!」
和真はその猫を追っていくかのように非常階段の入口へと向かっていった。
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「奏!反対に抜けた!」
「わかってる!翼!そっち頼んだ!」
奏、翼の両名は、FG式回天特機装束「シンフォギア」を纏い、二課の指示で特異災害「ノイズ」と戦っていた。現在、このノイズに対抗できるのは「シンフォギア」を所有している二課と彼女たちだけなのだ、状況次第では、自衛隊も行動するが、今回ばかりは場所が悪い。
建物の中では、避難誘導に出る自衛隊隊員も被害を受ける可能性が高い。今回のノイズの出現は建物の中だけ、守備範囲が限られるとはいえ、建物の中はそれだけ危険なのだ。
そして奏、翼は中に残っている一般市民の避難、救助を現任務として行動していた。ノイズの駆逐を第二目標とし、第一に市民の避難を優先とする方針だった。
「こっちだ!急げ!」
「緒川さん!」
「一階、二階の市民の避難を確認、しかし、まだ三階からは確認してません」
「ならアタシがいく!翼はそのまま頼んだ!」
奏はエスカレーターを駆け上がり、三階を目指す。ノイズは翼のいる正面ゲートの突破を試みるが、翼は「天羽々斬」の刀でそれをさせまいと防ぐ。
奏は「ガングニール」の槍で進路を塞ぐノイズを貫いていく。目指すのは三階、だが、その途中、奏の身体は重たくなったかのような重力感を感じる。突然、身体が落ちたのだ。
「LiNKERはまだある!残念だったな!」
腰から注射器のようなもの、「LiNKER」を取り出し、彼女はそれを腕に打ち込む。「LiNKER」は現二課の技術主任が生み出した聖遺物と人をつなげるもの。シンフォギア装者になるには、一定数値以上の適合率が必要となる。しかし、天羽 奏のような、本来、シンフォギア装者に必要な数値を持たない人間はシンフォギア装者の資格はないのだ。しかし、後天的にそれを後押しするための薬なのだ。
「まだだ、、、耐えてくれよ!」
一時的にガングニールに力が戻る。奏はそのまま縦横無尽に槍を振るい続ける。そして、三階に到達する。奏は市民を探すと同時にある人物の捜索を始める。
「和真!!どこにいる!和真!」
自分にとって大切な人の名を、今もなお生きているであろう人物の名を呼ぶが同階含め、周辺から声は聞こえない。聞こえるのはノイズが現れる音だけ。
奏は視線を色々なところへと向ける。彼が通りそうなところ。彼だったらどこに行くかを考えていると、開きかけの非常階段が視界に入る。まるで誰かがこじ開けたような跡がまだ真新しく残っている。
「まさか!」
嫌な予感が奏の頭を駆け巡り、衝動が彼女を動かす。彼女はそのまま、誘われるように階段へと走り出した。
___________________________________
「ここに何が、、、」
奏が三階についた時間までさかのぼる。和真は屋上に来ていた。屋上は風が強く、気を抜いていると今にも吹き飛ばされそうだった。例の猫は手すりの向こう側、本来なら入れないところまで和真を誘っていた。
「ここを渡れっていうのか、、、冗談きついぜ」
「それが出来なきゃ困るニャ」
突然声が聞こえる。一瞬和真は混乱するが、すぐにその声の主が誰かを理解する。この場所には和真、そして和真の前の二匹の猫しかいない。つまり、今聞こえた勘違いのような声は、目の前の猫から発せられたものなのだ。
そして風は一段と強くなる。まるで和真を試しているかのように、一本橋の向こうから荒く、強く吹き荒れる。
「そこには何がある!君たちは!」
「私たちはファミリア。君は私たちのご主人ニャ」
「ちゃんと説明しろ!!」
「知りたければ来るニャ」
「知りたければ来い」その一言が和真を向こうにわたらせる理由になった。和真は覚悟を決めると、危ない一本橋を渡りだす。強い風が吹き荒れる中、慎重に、慎重に、丁寧に渡っていく。
下を見ず、前だけ、あの猫たちの先だけを見続ける。そこに自分の知りたかったもの、真実があると信じて、怖くても和真は足を止めない。ただ無心に、ひたすらその足だけを進める。
その時、大きな風が吹き荒れる。その風は和真を、そしてその周りのものを飲み込むようにして発生した。
「なんだ!?」
「、、、カズマ。カズマ・ユウキよ」
「!?」
目を開けたとき。そこにいたのは女神だった。モデルの奏、翼にも劣らない、いや、それ以上に美しい白い肌。そして、すべてを見通すような緑の瞳。そして神話にあるような白い布を纏った女性は、俺たちを包み込むように目の前に居た。
「君は、、、」
「私の名はサイフィス。魔装機神、サイバスターを守護する精霊です」
「精霊!?」
「はい。そしてあなたをラ・ギアスに召喚したのも私です」
サイフィスと言う女性が淡々と言葉を語るが、和真には記憶の整理が追い付いていなかった。だがはっきりしたこともある。和真は記憶を整理する。まず彼女は精霊、、、つまり、本体は今ここにはないということ、そしてサイバスター、守護精霊という単語から、彼女は物理的にも多く接触のできる精霊だ。そして厳戒できる精霊には限りがある、彼女はその中でも優れた能力を持つ精霊なのだ。
そしてラ・ギアスという単語。これは和真の頭に大きな頭痛を呼んだ。何かを呼び覚ますような頭の響きが和真の思考をさらに鈍らせる。
「召喚した?」
「はい、魔装機神の操者を選ぶのは私たちです。故にあなたが相応しいと思いました」
「、、、」
「そして今、あなたに記憶を返しましょう」
サイフィスの手から風が吹き荒れる。それと同時に、和真の中に眠っていた記憶が思い出される。この世界での自分、ラ・ギアスでの出来事、そして他の契約者たち、、、。
全て思い出したとき、和真は涙を流していた。感動からなのか、後悔しているのかはその場の誰もわからなかった。
「思い出した、、、ラ・ギアスでの出来事、そして他の契約者たちも!」
「ええ、そしてその契約者たちも各地で目覚めているでしょう」
「、、、ところでどうして俺はこの世界に!?そしてなぜ記憶が!?」
「それを探すのはあなたの役目。私の意志は、サイバスターと共にあります」
「サイバスター、、、」
風が止み、サイフィスの空間から一気に元居た場所へと戻される。周りはいつの間にかたくさんのノイズで固められており、脱出は不可能かと思われた。
「、、、クロ、シロ」
「何ニャ?」
「呼べば来ると思うか?」
「当然ニャ。サイフィスだって手引きしてるんニャから」
「よし、行くぞ!!疾風!怒涛!来い!サイバスター!!!」
掛け声とともに俺の周りを風が包む。風はやがて大きな旋風となってそのあたり一帯を巻き込む。そして、竜巻の中から剣閃が煌めくと。風は晴れて、その場には大きな翼の特徴な風の魔装機神、サイバスターが立っていた。
「人間サイズまで落ちるんだな」
「あったりまえニャ」
「こんなのが元のサイズで街を歩いてたらどうするニャ」
和真はサイバスターのコックピット内部にいた。サイバスターのコックピットはよくあるロボット物のそれではなく、独特のものだった。操縦桿は魔力球に変わっていて、握るだけであとは何とかなる親切設計だが、実際難しい。
物は試しと、まずは目の前に居たノイズで動かし具合を確かめてみる。腰の鞘に収納されていた剣、ディスカッターを取り出し、目の前のノイズ群に切りかかる。
切れ味はすさまじく、降りぬくとノイズはきれいに真っ二つになって消滅する。そしてそのまま加速して連続でノイズを切り伏せる。
「いいニャ!!問題ニャし!」
「当然だろ?さぁ、もっと暴れるぜ?」
その時、下で悲鳴が。覗いてみるとどうやら、下にもノイズ群が出現したらしく、自衛隊員も対応に追われてまわりはパニックになっている。
サイバスターを駆り、下へ降りる。そのままホバー移動でノイズを一匹、二匹と切り伏せていく。ノイズからの攻撃もあるが、すばやく移動するサイバスターにあたるはずもなく。綺麗にかわして横から真っ二つにしてやる。
「一匹一匹やってると終わらないな。あれを使うぜ?」
「「了解ニャ!!」」
ディスカッターを鞘に納め、右腕を高く上げると風が巻き起こる。その風は人間を除いて、今ここにいるノイズを全て空に打ち上げる。そして、右腕を下に降ろすとサイバスターの下には六芒の魔法陣が描かれる。
魔力を手に集中させるように、辺りにあるすべての魔力をサイバスターへと集める。両腕を前にクロスさせると、肩、肘部分にも魔法陣が現れ、魔力が球体状になって収束される。
「全エネルギーを集中!!」
「プラーナ指数、限界値突破!!」
「いけるニャ!カズマ!」
「いけぇっ!コスモノヴァ!!」
四か所から放たれた収束魔力は竜巻の中のノイズを全て駆逐していく。やがて魔力は一つになり、爆発的なエネルギーをノイズにぶつける。
「これが、、、魔装機神サイバスターの力だ」
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一日終わり
「和真!」
「ん?」
ノイズとの戦いの後、和真は奏たちのもとに姿を現す。というのも、ファミリアであるシロとクロが、「サイバスターの存在は知られちゃいけないニャ」と和真に教えていたからだ。その真意は今の和真にはわからなかったが。その反面、納得した部分もいくつかある。
まずは何より確保されることだろう。和真にしか出せないとはいえ、その姿は普通の人にだって見えてしまう。それがもしばれてしまった場合。操っているのが普通の人間とわかったとき。保護されるか、確保されるかだろう。いやでも事情聴取は避けられない。
「大丈夫だったのか!?探したぞ!?」
「悪かったって。だから殴るな」
戻って来るや否や、奏に襟を掴まれ、前後ろに頭を振り回す。その首が外れるかっていうくらい和真の頭は振り回されている。翼は奏を落ち着かせることで必死に説得している。
サイバスターで戦った後。その姿は奏、翼の両名に見られた。「何者だ」とさっきを含んだ視線でこちらを見てくる翼、遅れてきて速攻でからんでくる奏。和真はサイバスターをサイバードに変形させてその場を後にした。
サイバスターを普通の人間に渡してはいけない。強大な力を持つサイバスターは和真以外には操れないが、そうだという確証もない。
(、、、しばらくは隠れないとダメか。不便だが仕方ない)
「聞いてるのか!?」
独り言を考えているうちに、どうやら奏の説教は終わったらしく。奏は目の前で偉そうに胸の前で腕を組んでいる。翼も心配してくれたらしく、和真の腕を離さない。
「すまんな」
「今度からはしっかり頼むぞ?死んだら困るんだから、、、」
「ああ」
死ぬことが怖いのは百も承知だ。しかし、今回の戦いで分かったことがある。まず、ノイズはサイバスターでも撃退できるということだ。これはサイバスターのみならず、他の魔装機にも言えることだ。が、サイバスターはAクラスの魔装機神。他のクラス魔装機が倒せるかといえばそうも言えない。が、Aクラス、魔装機神が倒せることが分かれば後は同じなのだろう。
そしてサイフィスは言っていた。この世界には和真以外にも各魔装機の操者はいると。ならば和真がこれからとる行動は一つだった。
(他の操者を探さないとダメだ。この世界に俺たちが飛ばされた理由。それを知るためには一人でも多いほうがいいはずだ)
そう考えながら。和真は奏、翼が呼んでいるほうに遅れて歩いていくのだった。
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「二課に?」
戦い終わり。和真たちは再び車の中にいた。しかし、さっきまでと違うのは、この車は一台で、ある場所へと向かっていたということ。乗っているのは、翼、奏のシンフォギア装者と、和真、緒川さん。この三人に共通するのは「二課」という単語だった。
部屋にあった和真の日記。それには二課メンバーの名前や好きなもの、特徴がぴっしり記されていた。顔写真がないため、誰が誰かまでは把握していないが、それでもこの世界での手掛かりになると思って、部屋にいるときはいつも見ている。
「えぇ、司令から呼び出しがありまして」
「へぇ、そんなに大変なことが?」
「報告することと一致してるんでしょう」
車を降り、見慣れない地下空間を歩く。近未来的な扉が開き、明るく照らされた長い廊下が広がる。緒川さんと奏はすいすいと進んでいき、和真も、翼と遅れて歩く。長い廊下にはいくつか通路と部屋が見えたがスルー。そのまま奥にある大きな扉まで和真たちは直進する。
奥に四人そろうと改めて扉が開く。そこはSF映画にある指令室の様で、大きなモニターが大画面はおろか空間上に浮いてるタイプまであるまさに人類の英知のような部屋だった。
「久しぶりだな、和真君」
「あ、、、はい」
話しかけてきた人はライオンのような髪、髭をしている肉体がしっかりとした武人。名を風鳴弦十郎という。この特異災害対策機動部二課の司令でもあり、シンフォギア・プロジェクトの実質的な管理者でもある。
その先、各デスクに座っているのはオペレーターの
だが二課のモニターに映っていたのは先ほどの映像。ノイズが出現し、それを撃退している翼、奏の姿、、、そして、和真が駆る、サイバスターが映っていた。それを前にいる二人のオペレーターが解析しているようだった。
「翼、奏もご苦労だったな」
「今日はいつも通り、、、なんて言えねぇな」
「この翼の機械のことだろう。こちらでも確認している。どうだ」
「ダメです。この機械、、、からは反応ありません」
「聖遺物ではないですね。桜井博士の読みは外れましたか」
しかし、サイバスターについては何も知らないようでほっとした。どうやらこの世界においてサイバスターは認知されていないものらしく、それどころか見る限り危険視されているようにも感じる。次戦う時には捕らえそうな勢いだ。
「しかし、対策は練る必要がある。了子を呼んで来い」
「じゃあ私たちは行こうか」
「奏は?」
「検査があるんだよ、わるいな」
そう言うと先に部屋を出ていく奏。和真と翼も遅れて部屋を後にする。時間は過ぎ、もう夕方になっていた。赤い夕陽が今にも沈み、月はうっすらとその姿を現していた。
翼は今日のノイズの一件後から身体を離してはくれない。和真の腕を身体全体で包み込み、たまに大事にする様に撫でる。和真はくすぐったく、早く離れようとするが、離れようとすると翼は悲しい顔を見せる。それに弱いのか、和真は不満の顔で我慢する。
「、、、ねぇ、今日も、、、泊まる?」
「悪い。たまには部屋に戻らせてくれ、ご飯の時間になったら行くからさ」
「でも、、、」
「大丈夫。記憶が戻らないからって生活が出来ないわけじゃない」
「わかった。ご飯には来てね」
「約束する」
表には緒川さんが、車を用意して待っていてくれていた。和真たちは車に乗り、自分たちの住んでいる家に帰っていった。
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「さて、いろいろ教えてもらおうか」
和真の部屋。物が多くもきちんと整理されている部屋の中心。リビングのスペースには、和真とサイバスター契約者の相棒、通称「ファミリア」が対面して座っていた。と、いっても「ファミリア」たちは人間ではなく、動物の姿をしていた。日本語も喋れる、この世界で言う「進化した生物」なのかもしれない。
お茶とお菓子を用意してファミリアたちに出す。冷たいお茶に彼らは戸惑うが一瞬口にするとそのまま流れるように飲んでいく。ちなみにこの「ファミリア」は猫で名前は「シロ」、「クロ」と言うらしい。そのままで白い猫が「シロ」、黒い猫が「クロ」でシロが雄、クロが雌だ。
「、、、どうもこうもサイフィスの言った通りニャ」
「俺はラ・ギアスの人間なのか?何でこの世界の記憶が?」
「話せば長くなるニャ」
「、、、覚悟はできてる」
「君は並行世界の人間ニャ」
並行世界。それはその世界から分岐し、それに並行して存在する別の世界だ。彼らが言うにはこの世界の和真とは別の世界線に存在する妖鬼 和真をラ・ギアスに召喚したらしい。しかし、ラ・ギアスの世界のバランスを崩さないために和真たちはこの世界に帰って来たのだが、邪魔が入ったらしく、本来の世界とは違う世界に飛ばされたらしい。
「、、、納得はできる。でもしたわけじゃない」
「現実ニャ」
「でも誰が一体そんなことを?精霊は基本、物理的に干渉できないはずじゃ?」
「、、、グランゾン、ニャ。できるとしたら」
「グランゾン、、、!」
サイバスターに乗ったとき。サイフィスと接触したとき、ある程度の記憶は蘇った。その中にグランゾンに関する記憶もあった。ラ・ギアスでサイバスターを操っていた時、突然邪魔をしてきた青黒い機体、グランゾン、奴もまた、魔装機なのだろう。
「それで、しばらくは」
「わかってるニャ。他の操者を探すことに専念するニャ」
もしサイフィスの言っていることが本当なら、この世界にはAクラス魔装機神操者が和真のほかには後、三人いるはずだ。機体名は「グランヴェール」、「ガッデス」、「ザムジード」。それぞれ、高位の精霊と契約した機体だ。
彼らもシロ、クロが言うのならファミリアがいて、問題がなければこの世界に来てるはずだ。しかし、日本内にいるとは限らなかった。
「、、、時間だ。出る」
「どこに行くニャ」
「ご飯の約束をしてるんだ。悪いな」
「了解。勝手に食べてるニャ」
和真は部屋を後にし、隣の翼の部屋にお邪魔しようと部屋のベルを鳴らす。と、部屋から驚いたような悲鳴と、何かが思いっきり崩れる音が聞こえる。この前見たとき、洗濯物の山が積みあがっていたもが見えたから恐らくそれが崩れたのだろう。
「か、和真!?」
「そうだよ」
「ま、ま、待ってくれ!すぐに片付けるから!!」
翼の悲鳴混じった声から数分後、部屋の扉を開けて翼が出てくる。暇だった和真はベランダで座りながら本を読んでいた。
本を読み終え、改めて翼の部屋に上がる。キッチンは昨日奏と掃除した時のままで、食器類もきれいに保たれていた。冷蔵庫には今日改めて買いなおした野菜たちがしっかりと収納されていた、部屋に戻った後翼が丁寧にしまったらしい。
「、、、何がいい?」
「和真が作るならなんでもいい」
「簡単なの作るよ、白味噌があるしそっちでもいいかな」
みそ汁を作るためにキッチンにたち、鍋と必要な具材をキッチンに並べる。包丁をしっかりと洗い、豆腐からゆっくり、けがをしないように切っていく。
「おいっす~!来たぞ!」
「奏か。遅かったな」
「今日はコロッケだ!持ってきてやったぞ!」
「ならこっちを手伝ってくれ、ちょうどみそ汁を作るんだ」
「わかったよ!翼も来い!」
「う、うん」
キッチンに三人が揃い、仲良くみそ汁を作り始める。奏は料理がそこそこできるものの、翼は初心者で、和真はちょくちょく気にしながら作業を進めていく。
奏は翼が危なくないか監視して、和真はテキパキと作業を進める。白味噌を適量入れて、翼、奏が切った野菜や具材を入れていく。
「白、、、なのか?」
「味噌だからな、でも美味しいぞ?」
「、、、味噌は赤派だから、、、」
「好き嫌い多いな」
机に料理を並べて、食卓を囲む、相変わらず、三人で食事をとるこの時間は、和真にとっても、奏と翼にとっても、至福の時だった。奏や翼が身の回りの話をして、和真がそれに相槌を打つ。普通の一家と変わらない幸せな食卓だった。
「そうだ和真、あの話は聞いたか?」
「あの話?」
「おいおい、ラ・イ・ブ!今度ライブやるって言ったろ?」
「あぁ、そうだっけ」
奏が切り出したライブの情報はすでに和真は得ていた。というのも、自身の部屋にあった手帳がすべて語っていた。今度の日曜日、新たに発見された聖遺物、「ネフシュタン」を起動させる実験という面目でライブが行われるらしい。
遺跡から発見されたとき、完全な聖遺物の劣化、及び破損がないことから「ネフシュタン」は「完全聖遺物」にカテゴリーされている。
「まったく、頼むぜ」
「ちゃんと覚えてるよ、頑張れよ」
「それだけ?」
「ほかに何がいる?」
「ご褒美はないのかよ」
奏が言いたいのは、ライブが終わった後の報酬らしい。人間、モチベーションを保つことは大事だが和真はまさか要求されるとは思っていなかったようで、完全に思考が止まっている。「早くしろよ」と奏がっ背がってくるが、どうしたらいいかなんてのは和真にはわからなかった。
「、、、じゃあさ、またデートしてくれよ」
「え?」
「今度は一人ずつだ」
「君がいいならいいけど」
そう言い、一度会話を切ると、和真は食器を片付けにキッチンに行く。洗い場に食器を重ね、スポンジと洗剤を取って泡を立てる。食器を手に取り、一つ一つ丁寧に食器を磨く。その間に奏と翼はお風呂を沸かしに向かう。
二人がいなくなったところで和真は思考を巡らせる。これからライブがある。もちろん芸能界での活動ということだろうが和真たちの面目上は「ネフシュタン」を起動させるというもの。当然、外部に情報が洩れていると言いたいわけではないがノイズが来ないわけじゃない。
そうなれば和真はサイバスターを駆らなければならない。しかし、それは大勢のいる前で、二課の人たちの前でその姿を見せることになる。最悪捕獲さえてしまうだろう。
サイバスターの存在は知られてはいけない。ましてや普通の人間にその力と技術を渡すわけにはいかないのだ、あの力は、この世界の人類には早すぎるのだ。
「、、、隠し通せるだろうか、彼女たちを騙して」
その言葉は誰にも届かないまま、終わりの日は近づいていた。
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