アリアンロッド2E×エミル・クロニクル・オンライン リプレイ (とあるGM)
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「屋敷のごみ掃除」
PREPLAY01「モモンガ爆誕」
2017年8月31日。エミル・クロニクル・オンラインはサービスを終了した。
その日、出勤前のギリギリまで遊んでいた私は帰宅後、もうあのゲームに戻れないと思うと、心の隙間にぽっかりと穴が空いてしまった感覚に襲われた。
が、そんな穴を埋めるように、当時同時進行で行っていたTRPG、アリアンロッド2Eのルールを使いECO世界を舞台にしたセッションを行い、その寂しさを紛らわせていた。
そんなある日のこと。
SNS上でここでもかとTRPGの布教活動に勤しんでいた私に、興味を持ったのか声をかけてくれた人……人? がいる。
これは、9月の始まり、まだ残暑の続く、そんな時期の記録――であると同時、当時ルールガバガバリプレイ前提何のそのでキャラシも保存してないような頃の記録である。最も、今でもスリップしてるのにムーブで移動しちゃうなんてガバをしちゃうわけだが、閑話休題。
もう直に同じようにサービスも終わってしまうflashを使い動いているどどんとふを使用したテキストセッション、そのリプレイをお送りしよう。
また、本セッションは身内でわいわい騒ぎつつ、時に喧嘩したり(大体GMが悪い)しながら繰り広げる内容になっております。
少し読んで合わないと思った方はすぐブラウザ閉じて、再起動押して、悦森面白いので読んできてください(突然の布教)。
ECOを題材にアリアンロッド2Eのルールで遊んでいますが、GMはECOを遊びつくしていた訳でなく、だいぶにわか知識で行っている為、多々オリジナル設定を入れていたり、後先考えずなんかすっごい伏線みたいなものを張って放置する事があります。大らかな心でお読みください。許して!?
モモンガ:おじゃましますー。
GM:おや、モモンガさんこんにちは。
その日、どどんとふの部屋だけ公開して誰か来たら良いなーと凸待ちしていたところにやって来たのは、当時SNS上で交流があった人物……人物? ネズミ目(齧歯目)リス科リス亜科モモンガ族に属する小型哺乳類だ。
あいたん:モモンガさんはじめまして~。
前日、同じようにセッションをしていたECOプレイヤーの一人、あいたんを交え、モモンガとの会話は進んでいく。
アリアンロッド2Eは公式サイトでスタートセットを配布している。これには一通りゲームを遊ぶためのルールやデータが掲載されており、それを使用してのキャラクター作成が行われた。
あいたん:モモンガさんのキャラはモモンガにするんですよねっ!
この一言が、全てを狂わせたといえよう。
前述した通り、スタートセットは一通り遊ぶためのデータ群が掲載されている。しかし、そこにモモンガを再現するようなデータは無かったのである!
ならばと、唐突にスキルガイドを開きだすGM。モモンガが欲しいような種族、スキルデータを一通り聞き終え、キャラクターシートをセッション用にと準備していく。
並行作業でライフパスの対応。思えばこの頃から、3年後のセッションで行うマルチタスク卓の片鱗は出ていたのかもしれない……。
GM:ライフパスの決定をします。パーソナルデータと言って、そのキャラがどのような出自で、何を目的としているか。その大まかな内容の決定ですね。任意でも良いのですが、ここはダイスで!
モモンガ:ふむふむ……(ダイスを振る)61。前科者?
GM:あなたの親は、犯罪を起こして、あるいは無実の罪で捕まったことがある。あなたは、常に身を隠して暮らしてこなければならなかった。このようにどんなキャラか決まるわけですね。気に入らなければ振り直しとかでOKです!
モモンガ:なるほど! 畑の野菜をつまみ食いしたモモンガとか……? 記憶の書架三章で畑荒らしてた個体もいたし……。
GM:親が人間の畑荒らしていたのかもしれんね。腕無いのにあいつ武器持てるんだよなあ……。*1
あいたん:前回のシートあります!(キャラクターシートのURLを出す)
モモンガ:魔術師!
あいたんのデータは天翼族のドゥアンかつ、火を主体にしたメイジ/セージのデータだった。最も、そのセッションの途中でGMが引っ越し関係の話で家を空ける必要があった為、半ば中断、かつクリアした扱いになってしまったセッションである。はぐれたゴブリンを退治するという、オーソドックスなセッションであったと記憶している。
GM:そんなイメージで! 後は実際に遊んでみて、楽しいと思ったなら購入するのも良いかも。絶賛発売中です。さて、出自は前科者で良い?
モモンガ:うーん、もっかい振ってみます。(ダイスを振る)一般人。
GM:一般人!
モモンガ:一般モモンガ!
あいたん:普通のモモンガ。
GM:因みにあいたんの背景が、父親が商人、母親が魔術師、魔術は母親から学び、商人としての知識、特にモンスター識別に詳しい。裕福な家庭に生まれ、平凡に暮らして来た少女……って感じですね。
モモンガ:惜しいなー、64だったら秘密結社でモモンガ団*4ネタが入れられた。
あいたん:じゃあ、秘密結社にしたら?
GM:そうそう、任意OKだからね。
モモンガ:じゃあ、秘密結社にしよう!
GM:続いて境遇!
あいたん:モモンガさんの気になるね~D66で運任せもあり。
モモンガ:取りあえず振ってみよう……(ダイスを振る)21。義理の親……むしろ飼い主?
GM:飼い主。
あいたん:じろ~……モモンガさんを育てたのは私だったり……? うそうそ。
モモンガ:!
GM:そういうのもありだね(笑)。秘密結社の親だから、もしかするとその秘密知らない可能性も……。重要な秘密を握っていたり?
モモンガ:重要な秘密……世界をもふもふで支配する野望。
GM:目的振ってみよう!
モモンガ:あい!(ダイスを振る)逃亡。
GM:何から逃げているんだ。
モモンガ:肉食獣から逃げていた可能性……?
GM:それをあいたんに保護された?
モモンガ:スノップ追分でホワイトファングに追われてて、そこを保護された?
GM:取りあえず逃亡にしておきます?
モモンガ:あい!
それからデータの詳しい話に入っていくのだが、ここでGM、まさかのベスティアの布教。直接戦闘より攪乱や仕掛け解除などが良いとのことで、シーフ/ガーデナーのベスティアで、データを詰めていく。
GM:種族専用のライフパスあるな。出自振ります?
モモンガ:あい!(ダイスを振る)
GM:食材か。……贖罪!
あいたん:食材(笑)。
GM:贖罪です(笑)。あなたは何か罪を犯した、それは自分の世界*5での罪なのか、アクロニア*6という世界に対する罪なのか。
モモンガ:罪(野菜を)……。
あいたん:きっと畑の作物を……。
GM:どうする? 秘密結社のままと、食材どっちが良い?
モモンガ:結社のままで!
そうして作り上げたのが、およそ初心者向けとは言えないキャラクターであった。
GM:所持金すっからかんやな!
モモンガ:どうぶつなので野宿で自給自足でもよゆう!
GM:行動値9か早いな(笑)。軽く戦闘してみる?
モモンガ:こくこく。素早いモモンガ*7。
GM:よーし、戦闘だ!
あいたん:バトルだ! モモンガさんっ!
モモンガ:キュッ!
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CLIMAX PHASE01「初戦闘」
あるお屋敷の掃除を頼まれた冒険者たち。掃除をしていたところ、そこに潜んでいたゴブリンが現れ、ひっそりと暮らしていたブラウニーも共に姿を現した。掃除の音が煩く、一言物申したいと言ったところか。
あいたんと、モモンガ。二人の冒険者は敵と対峙していた。
GM:エネミーはブラウニー一体とゴブリン一体。PCは一つのエンゲージとし、10メートル先にゴブリン、15m先にはブラウニーが登場する。
あいたん:ぶらうに~。
モモンガ:「た、食べないで下さいー!?」
GM:ブラウニーは「食べないよっ!?」とその言葉を否定する(笑)。尚、キミたちは屋外にいるものとする。追われて逃げたら追ってきた感じで。
【ラウンド1】
GM:まずはセットアッププロセス。《ランナップ》か、《ガーデン:草原》が使用できるぞ。
モモンガ:まずはお庭掃除だー! ガーデン! 自分たちのところに(ダイスを振る)10。
GM:発動はファンブル以外で成功だね。2,3なので普通に成功。効果適用だ。
モモンガ:ファサー(リージョンビバーク)。
GM:スキルコストがこれで軽減されるね。
あいたん:MP消費ダウンは嬉しい。
GM:イニシアチブで行動決定、モモンガのターン。メインプロセスではムーブアクションを使った戦闘移動の他に、マイナー、メジャーアクションでそのタイミングのスキルや攻撃などができるよ。動くなら7m、全力移動で14m移動可能だね。
あいたん:草原あるとこにいたい。
モモンガ:おびき出すことってできるかな?
GM:今回エネミーはキミたちを追っているから、自然とそのまま近づいてくれるね。特に行動無いならエネミー識別という手もある。
モモンガ:識別っていうのは?
GM:メジャーアクションでそのエネミー単体が持つデータの一部を知ることができる。これには【知力】を使った判定になるね。
モモンガ:よし、じゃあゴブリンを調べてみよう。情報制するものが云々。2D+3で(ダイスを振る)9!
GM:惜しい。分からなかった。識別値は10でした。
モモンガ:きゅう……。
あいたん:どんまい~。
モモンガ:「あいつは……えーっと、ゴブリン!」それしか分からない。
あいたん:「ゴブリン、HP28、前戦ったゴブリンと大体同じかな?」
GM:(ゴブリンになって)「ゲゲッ、アノ女! 兄者を焼いた女ッ! 許サン!!」
モモンガ:何それこわい。
GM:さっき殺されたゴブリンの弟だ。
あいたん:弟なのか!
GM:ブラウニーが「えっ、こわい! 私のおうちも焼かれちゃう!」と怯えます。そしてゴブリンが「ソレニアノモモンガ、凶悪ソウナ顔ヲシテイル!」と、モモンガの顔みて恐怖しています(笑)。
モモンガ:お兄さんのことを謝りに来たのでお土産の果実もありますって言って、騙し討ちできるかな?
GM:殺しておいて謝って済むだろうか(笑)。
モモンガ:ですよね。
あいたん:ブラウニーの識別しますね。
GM:オーケー。
あいたん:3D+5で(ダイスを振る)15!
GM:成功!(データを出す)
あいたん:ブラウニーの能力強力だなぁ。
気になる方は是非ルールブックをお買い求め下さい。
GM:地形適応はおうちから出ているので適用されていませんね。攻撃はしますか?*1
あいたん:ゴブリンへ攻撃します。ガーデンでコストは減っているので、コスト4で《ファイアボルト》を宣言。(ダイスを振る)命中は10。
GM:(ダイスを振る)此方は12。「お前の攻撃は良く知ってるゴブ!」と回避成功。兄が焼かれるところ見ていたかな?
あいたん:攻撃失敗ごぶ~。
GM:次はブラウニーが動きますね。全力移動で10m移動して終了。ゴブリンも同じく全力移動し、PCから5mの距離まで動いて終了です。ラウンドはこれで終了。クリンナッププロセスを迎え終わったことで、ガーデン効果は切れてしまいました。
あいたん:ガーデン1ラウンドだけなのか。
GM:そそ。
モモンガ:張りなおしておこう。
【ラウンド2】
ラウンド2はモモンガが再びシーンにガーデンを張り直し行動順に。ここでも再び識別を行おうとしたのでフェイトの使用について説明をしようとしたのだが、その前にダイスを振ってしまった。最も、結果は10。識別値と同値での成功だった。これにより一部データが公開される。
あいたん:「ゴブリン集団。*2ゴブリンを召喚*3しそう?」ゴブリンに向かってファイボ*4うちまーす!
モモンガ:「やっちゃえー!」
あいたん:その前にスキルで浮きます。*5「パタパタパタ」
モモンガ:うらやましそうに眺めている。
あいたん:「えへへ」
GM:これで離脱の時ふつうに逃げられるわ。
あいたん:ゴブリンに《ファイアボルト》命中判定3D+5ふりますね!(ダイスを振る)15!
GM:ブラウニーがゴブリンに対し《お手伝い》を宣言。判定に+1Dして回避強化「ゴブリンさんあぶない!」
あいたん:お手伝いきちゃったかー!
GM:(ダイスを振る)13……足りない!「ゴブっ!?」お手伝い空しく命中する。
あいたん:「せふせふ」(ダイスを振る)20ダメージ。
GM:17点食らいます。「あづいいいいっ!? じ、じぬぅ……!!」
あいたん:「私の炎の力っ、どう~?」
GM:「きゃああ!? ごぶりんさぁんっ!!」ブラウニーは10m移動。そしてゴブリンが「オ、オノレ!」攻撃の為にエンゲージ。対象はランダムで(ダイスを振る)モモンガ!
モモンガ:「ギュッ!?」
GM:行くぞ。(ダイスを振る)13だ!
あいたん:これだけ高いとアドバイス使うか迷いどころ。回避率高いからそのままでもある程度は……無理かも?
モモンガ:(ダイスを振る)12。
GM:イチタリナイ。(ダイスを振る)ダメージは15だ。
モモンガ:「ギュー!?」
GM:モモンガの物理防御は5あるから……10点のダメージか。
あいたん:防御結構高いね~。
これにて2ラウンド目は終了。戦闘は3ラウンド目へ突入し、モモンガは再びガーデンを発動する。
モモンガ:窮鼠猫を噛む! こうげきだー!(ダイスを振る)11!
GM:ゴブリンの回避行きます。(ダイスを振る)9で失敗。
モモンガ:「フシャー!!」(ダイスを振る)7! ガリガリ……!!
GM:(ゴブリンになって)「ナニコヤツジャマダドケジャ!」
あいたん:「ファイボで確実に仕留めきるよ~」
モモンガ:「先生おねがいします!」応援のポーズ。
あいたん:フェイトを2使って命中率大幅上昇してゴブリンに《ファイアボルト》打ちます。
この攻撃に対し、ブラウニーは《お手伝い》を使いゴブリンの回避をサポートするが、流石の命中力を前に避けられるはずもなく、綺麗に焼け焦げた。そしてブラウニーは復讐すべく敵へ突っ込むのだが……。
GM:(ブラウニーになって)「ひぃっ!? もう許さない……許さないんだから!!」対象ランダムで(ダイスを振る)「ももんがぁ!」
モモンガ:「キュー!?」
GM:(ダイスを振る)10!
モモンガ:(ダイスを振る)15。
攻撃は見事躱され、続く4ラウンド目。《アドバイス》を入れたモモンガの攻撃と、あいたんの《ファイアボルト》によって、ブラウニーは綺麗に焼かれてしまうのだった。
モモンガ:「フシャー!!」足の指に噛み付く。
GM:(ブラウニーになって)「痛い、痛いぃ!? や、やめて……やめてぇっ!!」
あいたん:「ブラウニーさん、ごめんね。早く寝ないと会社おくれちゃうからっ」
GM:「寝よう定期!!」
そんな問答の中、最期の時を迎える。
GM:「あ、熱い……熱いよ……おとうさ……おか……たすけ……」黒く焦げたブラウニーは、元の形状すら分からないくらいにバラバラになってしまいました。
モモンガ:消し炭になってしまった。
あいたん:(消し炭を見て)アイテムドロップまでもえたりしないよね……。
勿論戦闘の後はドロップロール。GMによっては戦闘中にメジャーアクションでドロップロールを振らせたりなど様々だが、基本戦闘後のスタイルで行く。
結果、あいたんがブラウニーに対しドロップロールを行い妖精の羽(10G)を、モモンガが薬草(10G)×3を入手した。
あいたん:「かわいい」
モモンガ:「この草たべられそう!」
あいたん:おめー! でかい。
GM:君たちは屋敷を荒らしていた犯人を倒したことを報告し、報酬を上乗せで貰った。今回報酬は1人300Gになる。かなり大きいお屋敷で、そこの持ち主が喜んでいるとのことだ。ブラウニーは死んだけど(笑)。成長点は1人5点だね。シナリオ名は「屋敷のごみ掃除」だ。
さて、始まりの物語。モモンガにとっては初のセッションであったが、ここからさらにどっぷり浸かっていく事になる……。
今ではGMをやるまではまった小動物の成長は今後もリプレイとしてちょくちょく掲載していく予定なので、お楽しみに。
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キョワ卓
第1回ECOAR2Eキョワ卓『古い屋敷と竜の世界樹』
2017年8月14日。ECOサービス終了告知を受けた我々はその世界観でTRPGでもしてみないか? という軽いノリの元、セッションを行った。
当時GMも実際のセッションが5年ほど前に一度だけという状態かつ、かなり混沌としたログとなっていた為、小説風に纏めるかと一昨年くらいに纏めていたものがフォルダの中に眠っていた。ぶっちゃけ纏め直すのも面倒なのと内容に違いは無いので、既に纏めてある第3回までの内容を続けて投稿しようと思う。その後の4回目はシーン2まで小説風に纏めてあるが、シーン3以降がログのままなので、この辺りからリプレイになる。本作は誰得な記録を残す用と考えて投稿しているので、もしこの作品を読まれている方がいらっしゃるようなら許して欲しい(土下座)。
第1回ECOAR2Eキョワ卓『古い屋敷と竜の世界樹』
◆オープニングフェイズ
●シーン1:道中
その者たちは行商として、放浪の旅を続けていた。
中性的な顔立ちの男性、懐には短剣を携えロリチャイナ帽がトレードマークの商会のリーダー、CHUN。
瓦のような灰色のすらっと伸びた美脚、その上にあるのは体ではなく太鼓を思わす円。その円に顔を持つ不思議な妖精にしこくん。
背の小さな何の変哲もない少女に見せかけ時折キョワッっという擬音の出そうな狂った顔を浮かばせるアルン。
一度嵌められどん底に落ちた商会は、その地位を取り戻す為にこの地へやって来た。
道中の森、アルンが川に落ち溺れて流されていく。
それを追いかけてみると、なんと目的地へ着いてしまった。
ここはファーイーストシティ。
緑豊かな自然と共生する共和国。
アルンを助け出した一行を屋敷からの使いである二人組が迎えてくれる。
「CHUN商会の皆様、よくぞいらしてくれた」
槍を携え猫耳を生やした偉丈夫の執事と、同じく猫耳の生えた可愛らしい小さなメイドの少女。
「どうもこんにちは」
「こんにちはブーン」
CHUNとにしこくんが挨拶を返す。
「こんにちは! ファーイーストシティへようこそ!」
メイドの少女、シャルは笑顔で挨拶を返すとそのまま屋敷があるというイーストダンジョンの方へ歩みだす。
「屋敷でお嬢様がお待ちです。どうぞこちらへ」
「おじゃましまブーン」
「では急いで参りましょう」
同じく執事が手を招くのを見て、二人は頷き急ぎ屋敷へ向かった。
◆ミドルフェイズ
●シーン1:屋敷前
目的地があるというイーストダンジョンの奥へ足を踏み入れる。
毒の菌糸に覆われた森と聞いていたが、入り口は比較的毒素が薄く、何の問題も無く進むことができた。
暫く歩くと見えてくる大樹。そこにくっつくように屋敷が佇んでいた。
「まるで世界樹を思わせるきれいな屋敷ですね……」
お世辞などではなく、心底そう思う声。
CHUNは商人としての目でその樹に関心を抱いた。
「こちらになります!」
「おじゃましまブーン」
屋敷の中に入ろうとしたとき、中から誰かが出てきた。
「おやおや、お客様ですかな? 私の屋敷へようこそ。ではここで一曲、さよならランデブー」
「!?」
人見知りであるアルンは突然現れた人物に驚き後ずさってしまう。
「ブーン♪」
対しにしこくんはその人物が奏でる音楽に合わせ踊りだした。
上半身は水着姿の美しい少女のものだ。しかし、その下半身は鱗に覆われた魚の尾びれのような姿をしており、そこにスカートを履いている。一言で言い表すなら人魚。最も、この世界には様々な種族の人間が暮らしている。彼らもこの程度で驚くほど世間に疎いわけではない。
音楽が止むタイミングを見計らって、CHUNが声を掛ける。
「今日はお話があると伺っているのですが」
屋敷の主、ローレライはぽんっと手を叩くと、思い出したように口を開けた。
「そうでしたそうでした、忘れていました」
屋敷の前で始まる取引を他所に、いつの間にか踊りをやめていたにしこくんが樹の上へ向かい登っている。
CHUNは呆れたような顔をしながら、顔を覆い大きくため息を吐くと頭上を見上げ声をあげた。
「にしこくん、ゆっくり降りて来るブーン」
それを聞いたにしこくんがゆっくりと降りて来る。
「実は地下の倉庫を整理していたところ、このようなものが見つかったのです」
「ほう、これは……?」
特段気に留めもしないで取引が始まった。
差し出されたのは竜の形をした真っ赤なクリスタルのような彫刻。
「うーん、鑑定してみないことにはどのようなものか分からないですね」
CHUNはまず手始めにとアルンに品を見せた。
アルンは知力を振り絞り鑑定を開始する。
結果、その彫刻が最初からその形であったことが分かった。
「アルンは知っているのかい? 俺には分からないものだったよ」
「うーん、分からないけど、この石変だよ? 削ったり作り出したようには思えないかな?」
アルンに言われCHUNも鑑定をしてみる。
確かに、加工のようなものを施した形跡が無く、自然にできたものである可能性が高い。
「ブーン」
その隣でにしこくんは特に意味もなく踊っていた。
「お~? ならこの石は生まれた時からこの形だったということですね~~~」
ローレライもにしこくんに合わせて踊っていた。
この二人、馬が合うのかもしれない。
「うーむ……ローレライさん、このお屋敷は古くからあるものですか?」
「そうですね~、少なくとも私が生まれたときにはありましたし、きっと古いものですよ~」
それについて後ろで控えていた執事が補足説明をする。
「お亡くなりになった旦那様、その先代、それよりも古く一番最古の文献によっても200年は昔からあるようですな」
「すごいですー!」
「ほ~~~、それはびっくりドンキー」
どうやらこの話はシャルとローレライも初耳だったらしく驚いた。
CHUNもまた、「二百年も!?」とその歴史の古さに驚く、と同時。二百年前からある竜の石、危険性を危惧してさらに鑑定の目を働かせる。
結果、その危険性は分からなかった。
続きにしこくん、アルンも危険性を調べてみるが、分からなかった。
「ブンブンパワーがみなぎってくるブーン」
石に魅入られたか、にしこくんが魔法力を高め始める。
いち早く気付いたCHUNが力づくでにしこくんを止めに入った。しかし、
「こいつの執念とんでもねぇ!?」
微動だにしないにしこくんを止めることができず、そのまま魔法が放たれようとする。
「おお、お客様困ります困りますーーーー!」
CHUNの動きからにしこくんが何かとんでもないようなことをしでかそうとしているのに気づいた執事が慌てて止めに入る。
それでも奴は止まらなかった。
「とまらねぇ……」
CHUNが沈んだ声を出す。
シャルやローレライも遂に気付いた。
「あわわわ」と慌てるシャルに対し、ローレライは暢気なもので歌を歌っている。
「アルン、説得をよろしく頼む」
「うん!」
そうしてアルンが説得を試みるも、聞く耳を持たない。
「もうだめだぁ……」
「にしこくん魔法撃っちゃだめっ!!」
水晶は今、アルンの手元にある。
つまり魔法はアルンに撃たれることになる。
CHUNはロリコンなのでそれを庇おうとする。
マジックセンスで増幅され、ファイアロードによりさらに増幅、マジシャンズマイトにより最大まで高まったファイアボルトが放たれる。
対しCHUNが割って入り魔法を破った。
危機一髪、インタラプトだ。
「あっぶねぇなぁ……すみません、この一円玉に足のはえた生物、いい人なんですけどたまに暴走するんです」
にしこくんが魔法を撃ったところ、赤い竜の水晶、以後赤竜水晶と略す、が少し光った気がした。
これに対しCHUNとにしこくんが反応を示す。
「今光りませんでした?」
「光る? 見逃してしまいましたね~~」
今よりもっと酷かった時のことを思い出しながら、CHUNはにしこくんに対し良くやったと心の中で言葉をかけた。
どうやら赤竜水晶は火の魔術に反応して光ったようだ。にしこくんの暴走が無ければこの結果は得られなかっただろう。最も、偶然の一致でしかないので暴走したにしこくんを単に良くやったと褒められたものではないのだが。
「ブーン!」
魔法を目前で止められたにしこくんはご機嫌斜めだ。
「ごめんて!」
それをCHUNが宥める。
にしこくんは落ち着いた。
「にしこくんは危ないから、アルン、少し頼んでいいかな?」
ローレライに光る水晶を見せる為、アルンに仕事を頼む。
「分かった!」
アルンは自らの魔法力を高めるが、反応しない。
単に魔力に反応した、という訳ではなさそうだ。
「仕方ない、にしこくんの魔力を見せたれ」
「ブンブンパワーがみなぎってくるブーン!」
ファイアボルトに複数の補正魔法をかけて火力を練り上げる。
通常のファイアボルトよりも巨大な炎の塊。
その魔術が完成するにつれて、水晶が赤く輝いた。
「おや? 赤く光っていますねー。ファイヤーって感じで干からびてしまいます」
水晶は熱を発し温かくなっている。
温い。ドラゴンホカホカ石かもしれない。
CHUNは赤竜水晶に対し感知行動を行う。
聞き耳を立てると、石から小さな声のようなものが聞こえてきた。
何て言っているかまでは定かではないものの、苦しんでいるように思えた。
悲鳴、というよりも呻き声に近い。
「むむ? どうかしましたか?」
「今、石の中から苦しんでいるような声が」
「石から声? 不思議ですね~?」
「声、ですかな?」
「怖いですー!?」
ローレライは不思議がり、その使用人二人は若干怯えた様子。
「少し文献を漁ってみましょう。どうぞ皆様も此方へ」
「分かりました。」
「おじゃましまブーン♪」
「おじゃましまーす!」
それまで屋敷の外で会話をしていた面々はようやく屋内へ入っていった。
●シーン2:書庫
屋敷の中は綺麗に片付けられており、整理整頓といった掃除が徹底されていることが分かる。
「綺麗なお屋敷ですね」
「ありがとうございますー!」
掃除を担当しているシャルが嬉しそうに受け答えする。
それに微笑みながらもCHUNは内部を観察。
広い屋敷にしては、使用人の数が少なすぎる。ここにいる面子以外の人間を未だ見ていない。
たった三人で生活しているのだろうか。深く考えすぎることなく、二階への階段を上る。
少し進んだところで立ち止まり、ローレライがマスターキーを使って鍵を開ける。
ぎっしりと本が並べられた書庫に辿り着いた。
中は部屋の外と違い埃だらけだった。
「はりきっていくブーン♪」
部屋の中をウロチョロと見物する。
「けほっ、けほっ、ご主人様~、自分でお掃除されると言って、してないじゃないですかー!!」
「書斎はいつもは締め切っているのですか?」
「いやいや、ここを掃除するだなんてもったいない。この埃っぽい部屋がいいのですよ。さてさて、皆さんもご一緒にトレジャーハントといきましょうかー?」
シャルのお説教を聞き流しながらのほほんとした表情でローレライが本を漁りだす。
それに合わせて他の面々も本を漁りだした。
アルンは執事とシャルに連れられて客室に案内される。
そこでこれとは別件の取引を行う為だ。
「この量を二人で探すのか、日が暮れそうだ。二百年前の文献を探すのは相当骨が折れそうだ」
「いえいえ、私も探しますぜ」
屋敷の主がそんなことをして良いのかとも思ったが、手伝ってくれることに越したことはない。
そのまま手伝いをお願いし三人で本を漁る。
暫く立って、ローレライは力尽き干からびた魚のように倒れてしまった。
そんな事は露知らず、二人は探索を続ける。
にしこくんは熱と因果関係のある本という観点から料理本を探した。
それに対しCHUNは純粋に古い歴史ということから、歴史本を中心に探している。
手分けして探していると、にしこくんがかなり古いレシピ本を発見した。
爽やかなハンバーグのレシピが掲載されている。
にしこくんはそっとレシピ本をバックパックに仕舞った。
CHUNは一冊の文献を見つける。
内容は、かつてこの屋敷の背後に聳える大樹には霊的な力が宿っており、竜が住んでいるとされていた。
その竜は町を守る主語竜として崇められており、大嵐に見舞われた際にも作物と人を護ったという逸話が記されている。
一年のうちの二つ目の月、四年に一度、二つ目の月が三十の日を超える時、竜は自らの力を高める為に、樹の内に眠りに着く。
その間、町の守護が薄れないよう竜は結界を張っていた。
だが、そのタイミングを狙い黒き者が結界を侵食し、世界樹を犯してしまう。
それにより竜の力は失われ地下深くに封印されてしまったという。しかし、竜もまた最後の一太刀として力を振り絞り、黒き者を自らと同じ地へ封じ込めたようだ。
「ハロー、ハロー、ハロー。おや、もう夕暮れですか」
死にかけていたローレライが起き上がりCHUNの元へやって来た。
言われてから外を見ると、結構な時間書庫に潜り込んでいたらしく、お昼の時間をとうに超えて、夕焼け空が広がっている。
「おや? これはとある不思議な物語が記された文献ですかな? 昔は、この町にドラゴンがいたなんて、不思議な話ですよねー?」
ローレライはどこか懐かしむようにうんうんと頷いている。
「ブーン♪」
レシピ本を隠し持ったにしこくん。今度はローレライの恥ずかしい日記を探し始める。
赤竜水晶の危険性は結局分からずじまいだ。
CHUNは休憩がてらにしこくんがおかしなことをしないか見守ることにした。
にしこくんは黒い装丁のされた一冊の絵日記を発見する。
子供の絵と拙い文字。年は書かれていないが、日付は書かれている。
最初の方はその日の出来事が描かれていて、今日はハンバーグを食べた、変な虫を発見した、など。ごく自然なことが書かれている。
ただ、そのどの絵にも描いた本人と思われる女の子以外の人間が描かれておらず、背景もまた、部屋の中が主なもので、外を描いたものが一切ない。
とある年の二月二八日を区切りにいきなり日付が十二月に飛ぶ。
真っ赤なインクが二ページに渡り大きく飛び散っており、目から赤いインクを流す女の子が中央に描かれていた。
そして次のページからまた白紙が続き、最後のページにはこう書かれていた。
『タ ス ケ テ』
CHUNとにしこくんは絵日記から嫌な感じがした。
すぐに離れなければという危険性を感じる。
にしこくんはそれをそっとバックパックに……仕舞った。
CHUNは持ち前の罠探知技能によりにしこくんが本を仕舞う所を確認。罠が掛けられている可能性は薄く、すぐに何かが起きることはないだろう。先ほどまでの嫌な感じもにしこくんが本を仕舞ったあたりで無くなった。
「おや? どうしましたかな?」
ローレライは二人の方を見て首をかしげる。
「ブーン♪」
にしこくんはとぼけてどこかへ行ってしまった。
にしこくんと入れ違いにシャルがやって来て、「皆様、そろそろお食事は如何ですか?」と声を掛けてくる。
どうやら調べものが終わるタイミングを見計らっていたようだ。
「集中していたようなので少し遅めのお食事になってしまいますが」
「ありがとうございます。にしこくんを連れて向かいます」
「夕食としては早すぎる気もするんだぜー?」
「夜には軽めのものをご用意しますね!」
外を見れば日が暮れようとしていた。
●シーン3:リビング
長机にそれぞれが席に着く。ローレライが中央の席で、客人である三人が両サイドに。アルンもいる。
「調べ物は終わったー?」
「終わったブーン」
「終わったブーン」
「終わったブーン」
何故かCHUNとローレライもにしこくんみたいな口調になっている。
「うちのシャルが作った料理は三ツ星シェフもびっくりなトレビアンなおいしさですぜ。ささ、温かいうちに冷めないうちにどうぞどうぞ」
ローレライに勧められたのは高級そうなコース料理だ。夕食には少しばかり早い時間ではあるものの、これならかなり腹が膨れそうだ。
「こんな小さいのに凄いですね」
「あわわわ、ありがとうございます!」
CHUNに褒められたシャルは照れた表情で笑みを浮かべる。
談笑を交えつつの食事が、何事も無く進むかに思えたその時、にしこくんの顔色が悪くなる。
「ブーン」
「どうしたんだ!?」
ばたりと倒れるにしこくんを見て、慌ててCHUNが駆け寄る。
「なんと、もしや毒が!」
「えええ!? ちちち違います違いますー!!」
「これは一体何が!」
ローレライの毒というワードに反応しシャルがパニックを起こす。
遅れて部屋に入ってきた執事が状況が分からず、兎も角パニック状態に陥っているシャルを落ち着かせなくてはと近づいては声をかけていた。
「もぐもぐ、別に毒はなさそうだよー?」
アルンはその光景を眺めつつも平然と食事を摂り続けている。
CHUNは毒がないか食事を調べるが、そういった類のものが混入していないことが分かった。
何かが起きようとしている。
にしこくんの体が発熱し、机の中央に置かれていた水晶も熱を発する。
にしこくんが熱を発するのに共鳴するように、水晶の熱は強くなっていく。
陽炎ができ、ゆらゆらと揺れる湯気。にしこくんの体の中に何かが入ってくる感覚と、バックパックから溢れる黒い靄。
にしこくんは狂気に取り憑かれ、その場にいるものに襲い掛からんとする。
◆クライマックスフェイズ
●シーン1:仲間割れ
CHUNはにしこくんの暴走を止めようとナイフでの斬撃を放つ。
ゆらりと、揺れるような軽やかな動きでそれを躱すと、にしこくんの魔法力が高まった。
ファイアロード、フレイムロードとも呼ばれる火の魔術の才能。それを備えたにしこくんの炎はとても強大な力だ。
普段ならば赤、或いは朱色の炎であるが、黒い靄のせいなのか、今は真っ黒な炎となり、にしこくんの体を纏う。
放たれた黒炎がエンゲージするCHUNを襲う。至近距離での魔法、普段より遥かに増した威力に回避行動が一歩遅れる。
「だめー!」
瞬時にアルンがプロテクションを唱え光の盾を生み出す。
それにより炎は抑えられたものの、全てを防ぎ切るには至らず、多少なりともダメージを受けてしまう。
その傷を癒すため、続けてアルンはヒールを唱えCHUNへかけた。
にしこくんをさらに黒い靄が包み込む。
「これは何事ですかな?」
にしこくんに起きている暴走。その原因を探ろうと執事が動く。
「これは、このバックパックから何かが流れ込んできている?」
そのアドバイスを受けて、CHUNはにしこくんのすぐ横に置かれているバックパックに狙いを定めた。
ナイフにロープを絡ませ、鞭のようにそれを投げる。
にしこくんの股を掻い潜り、鋭い刃の先がバックパックから覗いていた絵日記に刺さる。
絵日記から悲鳴が漏れ、にしこくんの黒い炎が靄となり絵日記の中へと戻っていく。
同時に、にしこくんの嫌な雰囲気が無くなった。
ガタリとバックパックから絵日記が零れ落ち、赤竜水晶も熱を放つことをやめる。
◆エンディング
●シーン1:解決?
「おー、フェスティバル? お三方は一体何を争っているのでしょう?」
CHUNは正直ににしこくんが本を盗んだことを白状する。
「泥棒さんだったんですかー!?」
「それはいただけませんな」
驚きにあうあうしているシャルと呆れ半分の執事。
そんな状況であるにも関わらず、ローレライはのほほんとした表情でその話を聞いていた。
「おはようブーン!」
倒れていたにしこくんが意識を取り戻し起き上がる。
CHUNは絵日記に続きレシピ本のことも伝え返却する。
「それは不思議ですねー?」
そう言いながらローレライはレシピと絵日記を受け取った。
そして続ける。
「確かにこのレシピ本はこの屋敷のものですが、この絵日記は誰のでしょう?」
「私のじゃないです!」
「私のでもありませんな」
どうやらローレライを含む三人の中にこの絵日記の持ち主はいないらしい。
「フシギだブーン♪」
「ここは一曲、さよならレクイエム~♪」
CHUNに無理やり頭を下げられそうになり抵抗するにしこくん。
「パパたちなんで喧嘩してるの……?」
「熱くなってしまった」
落ち着いたところでローレライが切り出す。
「それで取引はいかがしましょー? 私としましてはー、こんな怪しい石さっさと売り払いたいところですが。むしろこんな怪しいものおいておきたくないので、一人八〇〇ゴールド支払うので絵日記ともども引き取ってはいただけないでしょうか?」
「ハンバーグのレシピとセットなら引き受けるブーン♪」
「それでしたらこちらの写しを!」
落ち着きを取り戻している間、手元のメモにシャルはレシピを書き写していた。どうやらシャル自身はそのレシピを初見だったらしい。本には他のレシピも掲載されているのだが、にしこくんはハンバーグにしか目が行っていないようだった。
CHUNはそれに頷くと取引成功の握手を交わす。
窃盗罪で逮捕されなかっただけましと思うべきか。いらないものもあるが、ここで引き取らないと後々面倒なことになる。どちらにせよ面倒ごとが増えることには変わりないが、後腐れない方を選んだ方が断然いいに決まっている。
爽やかなハンバーグのレシピ、赤竜水晶、怪しい絵日記を手に入れた。
さらに一人八〇〇ゴールドを入手した。
こうしてCHUN商会は取引を終え、新たなコネクションを得たのであった。
「それでは皆さんさようなら。ここいらで一曲、さよならランデブー♪」
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第2回ECOAR2Eキョワ卓『目指せ! ギルド設立!!』
翌日、8月15日。引き続きセッションが行われる。
前回同様小説風でお送りする。
第2回ECOAR2Eキョワ卓『目指せ! ギルド設立!!』
◆オープニングフェイズ
●シーン1:ギルド元宮
無事報酬を手に入れ商人として一つ成長したCHUN商会。
日々の鍛錬の成果もあり、にしこくんはその魔法力をさらに高める。
CHUNもまた、前回の戦いから新たな戦術を学び成長していた。
CHUN商会一行はファーイーストシティを離れアップタウンのギルド元宮に来ていた。
以前から考えていたギルド登録。幾つもの恩恵が受けられるというので登録しようということになり、協会にて手続きをしていた。
このギルドのことをアップタウンの一部の住人はリングと呼んでいるらしい。繋がりを意味する言葉だ。
「登録に際して、適正チェックをさせていただきます。登録希望のCHUN商会の皆さまには、そうですね、ここにある迷子の捜索を行っていただきましょう」
クエストボードには幾つもの依頼が舞い込んでいる。
その中の一つに迷子捜索というものがあった。
アプローチ方法は人脈やコミュニケーション能力を活かした方法もあるし、体力や戦闘能力を活かして探索を行う必要もあるかもしれない。
お金にモノを言わせて人海戦術という手もあるが、それだと適正を認められないだろう。
どうやらこの依頼、商会というよりも冒険者向けのように思える。
そもそもこのギルドへの登録というのが冒険者として行う事のようだ。
=================================
依頼者:エミル
依頼内容:迷子のパートナーを見つけてください。
詳細パートナーのエコ坊がお使いから帰ってこなくて心配です。
こちらでも捜索をしておりますが捜索の協力をお願いします。
=================================
どうやら依頼主自ら捜索活動は行っているらしい。
ここへの依頼は次いでのようなもので、誰か協力してくれたら助かる程度の考えなのだろう。
◆ミドルフェイズ
●シーン1:アップタウン
「それならまずは依頼主のエミルさんのとこへ向かう? 情報共有した方がいいと思うんだ!」
「賛成ブーン」
三人はまず依頼主であるエミルの元へ行くことにしたが、そもそも彼は捜索途中の身。今、どこにいるのか把握できない。
ならばとアルンは近くにいる人から情報を得ることを考える。
エコ坊という子の特徴がクエストには添付されていた。
子供ならばダウンタウンにある八百屋などにいるおばちゃんが覚えている可能性が高い。
アルンは都市部であるアップタウンからその地下、ダウンタウン側の捜索へ向かう。
CHUNは現在地から一番近い位置で門番をしている守衛にエコ坊が通らなかったか話を聞くことにした。
にしこくんはアップタウン南ギルド倉庫付近にいたのりりという名前の面白そうな雰囲気をまとった冒険者に話を聞きに行く。
ダウンタウンの八百屋前。
このダウンタウンには幾つかの宿があり、上層であるアップタウンよりも比較的安価に泊まれる。
CHUN商会も現在寝床をここで取っており、今後お世話になるかもしれない人への挨拶も兼ねての雑談をアルンは行う。
「あぁ! 買い物にきたよぉ。石ころくださいって言われてあっけにとられたから覚えてる。石ころはないよって答えたらどこかいっちゃったよ」
「石ころぉ……」
石ころなぞ見つけて何をするのか。その辺に転がっているのではだめなのか。
お使いの途中とあったので、もしかすると何かを聞き間違えてしまっている可能性が高い。
どちらの方向へ行ったのか尋ねると、東側との答えが返ってきた。
アルンはそのままダウンタウンを出て東稼働橋へ出る。
一方、にしこくんは冒険者に話を聞いていた。
「ポージングの仲間探しに忙しくて見てないなぁ。一緒にポーズしないか?」
その誘いに乗って幾つかのポーズを決めたあと、今度は東側へ向かう。
丁度その頃、CHUNは東側の守衛から話を聞いていた。
「うーん、あの子かなぁ。いしころー♪って歌いながら東アクロニア平原の方へ走っていったよ」
西、北と来てようやくそれらしい情報が得られた。
そこにアルンも合流し情報共有を行う。
「もしかするとモンスターに襲われてるかもしれないよっ!」
「準備をしていかないとだな」
「準備するブーン」
「準備している間に殺されちゃうかも」
「大丈夫だ、エコ坊の初期ステータスではこの辺で負けることは無い」
「パパ知り合いなの?」
「仕事上冒険者に会う事が多くてな。人づてに聞いた感じだ」
「へー、そうなんだあ」
どうやらCHUNは面識こそないものの、エコ坊という子がどれくらいの能力を持っているか把握しているらしい。
それも不思議な話だが、彼がそう言うのだからそうなのだろう。
アルンは深く聞くことなくその話を信用し、ある程度準備を終えてから東アクロニア平原へ向かうことにした。
●シーン2:東アクロニア平原
稼働橋を超えて東アクロニア平原へ辿り着いた三人は早速エコ坊を探し始める。
この場所からはモンスターの生息域だ。
なるべく戦闘は避けたいところだが、運悪く目の前にモンスターが現れてしまう。
キノコのような見た目をしたモンスター、ペリクラだ。
アルンを庇護するCHUNは五メートル前方でペリクラを敵視する。
「ブーン♪」
にしこくんはペリクラを敵として認識していない様子。
「なんかキノコが動き出したっ!?」
「楽しいブーン♪」
ただのキノコかと思っていたら動き出した存在にアルンは驚き尻もちをつく。
CHUNはペリクラが動き出すより前にすかさず先手を取りに行く。
エンゲージしダガーより一回り大きい両刃の短剣、バゼラードを振りかざす。
「いけー! パパー! ジェノサイドだー!」
「カッコいいトコ見てみたいブーン♪」
アルンとにしこくんが後方で応援する。
前衛型のCHUNに対し魔術をメインに扱うにしこくん、支援魔術を得意とするアルンはどちらも後方。必然的にCHUNが敵を引き付ける。
アルンはペリクラの動きから次の動きを予測し、賢者のスキル、アドバイスにより的確な助言をCHUNに行う。
短剣の扱いに習熟しているCHUNは他の人よりも巧く短剣を操ることができる。
ペリクラの弱点と思しき部位を把握し、致命的ダメージを与える強力な一撃を与える。
クリティカルにより上昇したダメージはペリクラに多大なる損害を与えるも、死に至るには一歩足らず。
「パパー、がんばってー!」
神に加護を祈りCHUNにその恩恵を与える。
インボークによりCHUNの身のこなしが軽やかになる。
「がんばるブーン♪」
「範囲攻撃は本当にやめろよ!?」
魔法力を高めだしたにしこくんを見て思わず叫ぶ。
前回、にしこくんに焼かれた記憶がまだ新しいCHUNにとって敵よりもにしこくんの方が危険だった。
「ネリリリリリ!」
にしこくんの魔術、ファイアボールが放たれるが、それより早くペリクラは動いていた。
先ほどまで眠っていた状態だったペリクラが覚醒。謎の言語を発しながら横に飛ぶと魔術を放ったにしこくんを睨む。
アルンのウィークポイントによりペリクラの弱点は掌握した。あとはそこを突くのみ。
着地したばかりのペリクラに向かいCHUNが移動しエンゲージ。バゼラードで思い切り斬りつける。
「ねりりり!?」
あと一歩。アルンはすかさず、斬撃を受け飛び退いたばかりのペリクラめがけメイスを振りかざした。
大きく振りかぶったメイスを振るうも、その重さに足を取られこけてしまう。
「きゃっ、いてて」
「ねりり♪」
躓いたアルンを見てペリクラが笑い声をあげる。
「う、うぅうう!! コロス、殺してやるぅッ!」
アルン、強イ、敵、倒ス。
アルンの中の何かがぱちんと切れた。
そんなアルンを嘲笑うペリクラに火球が着弾する。
そう、にしこくんだ。
アルンに気を取られているところを狙い放たれたファイアボールがペリクラを焼き尽くす。
「バーベキューだ!」
本来の体力を元にしても即死級のダメージ。
これにはペリクラも悲鳴を上げる暇すらなく焼き焦げた。
たった一体のモンスター相手に随分と手間取った。
アルンの中に嫌な考えが過る。
「もしかするともう死んでるのかも……」
「ペリクラがな……」
思いのほか厄介だったモンスターにCHUNはため息をつく。
「パパ、きっとエコ坊ちゃんキノコさんの毒に殺されちゃったんだよ」
ペリクラに毒があることを把握していたアルンがそんな縁起でもないことを言う。
「すごい死の概念強いね気味!?」
CHUNがアルンの将来に不安を覚えた。
近くに建造物があればそこにエコ坊が隠れているかもしれない。
ここは大声で探してみるべきか。
「ネリリちゃーーん! どこいるのーー!」
「名前違う!」
ペリクラのネリリリという鳴き声が脳にこびりついてしまったらしく、アルンは名前を呼び間違えてしまった。
そんな間違いはあったものの、探す対象に変わりはない。
人の気配を探る。人の息遣い、臭い、そして何か違和感がないか。
しかし何も分からない。
「見つからないよー」
途方に暮れていると、遠くから見ていた眼鏡を掛けた行商人の少女が声を掛けてくる。
「みなさん、どうしました? 誰かをお探しですか?」
人見知りのアルンはすかさずCHUNの背後に隠れた。
代わりにCHUNが対応する。
「このくらいの子をみませんでした?」
エコ坊の特徴を伝えつつ尋ねる。
どうやらこの女性、アルンの大声に気付き近くまでやって来たらしい。
(パパ眼鏡のお姉さんが一人でこんなところにいるのは怪しいよ幼女誘拐犯かもしれないよ!)
(凄い警戒心だね!?)
小声でやり取りしているのを見て眼鏡の行商人は首を傾げる。
はははと笑いで誤魔化しながら何か知らないか聞くと、少しの間を置いて返事が来た。
「あぁ! この子ならウテナ湖の方に走って行きましたよ。『ピカピカ見つけるのぉ~♪』とか口ずさんでました」
ビンゴ。エコ坊の情報を手に入れた。
ついでにエミルのことも見かけていないか尋ねる。
「これくらいの鬼畜そうな男の子みませんでした?」
アルンのそんな問いかけを聞いてCHUNは「アルンの中でエミルのイメージは鬼畜なのか」と会った事も無い人に対し随分な印象を抱いているなと思う。
「えっ? えっと、分からないですね」
流石の行商人も苦笑い。
「ウテナ湖……どんな場所なんだろうね!」
アルンはすぐに話題を切り替え、目的地へと思いを馳せる。
時刻はそろそろお昼頃。見晴らしの良いというウテナ湖で弁当を摘まむのもいいかもしれない。
捜索中だというのに観光気分のアルンは、どこか楽観的に物事を考えていた。
●シーン3:ウテナ湖
ウテナ湖に向かった三人は湖の傍に来たところで騒がしい声を耳にする。
「パパ! 何やら不穏な気配がする!!」
「風が……騒がしいな」
近くまで寄ってみると、一人の少女と柄の悪い男が揉めていた。
「その石、か~え~し~て~!!」
「うるせぇ!!! これは俺様が頂くんだ!!」
その姿、特徴、全てが情報に一致する。
間違いなくあの子がエコ坊だろう。
「あ! もしやあれがエコ殿では!? じゃなかった、あ! もしかしてあれがエコちゃん!?」
「エコ坊で間違いないと思う。それよりも、柄の悪い男と揉めているようだな」
段々と猫をかぶっていたところがはがれかけているアルン。
CHUNはそんなアルンの発言の訂正は聞かなかったことにしながら返答する。
エコ坊と揉めている男に険悪な雰囲気が漂う。
「俺はなぁ、かの有名なヘルフェニックス兄貴の友達の友達だぞ! 怪我しねぇ内に帰りな!!」
聞き覚えのない名前に首を傾げる。
しかも友達の友達と来た。部下ですらなかった。
この男、ただの三下なのでは? 先のペリクラの方が十分危険だった……とは思うものの、小さな女の子相手ならばその危険度は格段と上がる。
山賊だろう男の懐にはナイフが忍ばせてある。あれを取り出されるとまずい。
「ヤダヤダヤダヤダ~~~~~~~~~~~!」
エコ坊は首を縦には振らず半泣きになりながら抵抗している。
「あの無双のイチカワと渡り合ったヘルフェニックス……噂には聞いたことがある! じゃなくて、今は助けるかどうかだ、どうするアルン?」
「助けようよ! あのおじさんきっとエコちゃんを捕まえていやらしいことするに違いない! お巡りさんに殺してもらおう!」
救助することを選択した面々。
急ぎ足でエコ坊のすぐ後ろに駆けつけると、どこから取り出したのか、アルンの手には紋所が掲げられていた。
「まていっ! それ以上のろうぜき、このCHUN商会が許さぬ!」
「ノリノリである。だがその通りだ、何をしている」
「ブーン!」
「何だおめぇら!? えぇい、まとめて痛い目に合わせてやる」
山賊は口笛を吹き手下を呼びつけた。
現れたのはなんとあのキノコ、ペリクラだった。しかも二体いる。
どうやって手懐けたのか、山賊を含め三体を相手に戦いが始まった。
◆クライマックスフェイズ
●シーン1:vs山賊
「あの人モンスターを従えている……? モンスターを従える何て悪い人だ! あの人はもう、モンスターなのかもしれない。殺さなきゃ」
アルンはそんな恐ろしいことを口走りながらも戦略を立てる。
タクティクススキルに基づき動くことで迷いなく動くことが可能になった。
CHUNは素早い身のこなしと得意の隠密術を行使し相手の死角から斬りかかる。
一瞬にして懐に入られたことに驚く山賊。そんなことお構いなしに斬撃による回転撃、周囲の者を薙ぎ払うようにワイドアタックをお見舞いする。
「山賊の人チャックあいてる!」
「え!? うぉっ!」
アルンの変なアドバイスで山賊の動きが鈍り、回避行動が遅れた。
「キリサケッ。にしこくん、とどめ頼んだぜ」
「やるのです」
にしこくんの体が光り輝く。
極限まで高まった魔法力が解放され、ファイアボールが放たれた。
が、そのモーションに時間をかけ過ぎたせいか山賊は攻撃の軌道を予測し回避してしまう。
山賊はマッスルポーズをしながらCHUNへ接近。
弾け飛んだ服から露になる筋肉美を見せつけながら叩きつけるような、まるで弾丸のような速さで殴打してくる。
すかさずアルンが魔術を唱える。寸でのところで張られたプロテクションがCHUNの身を護った。
「いた……くない! アルンありがとう!」
「いけー! ぱぱー! 正面突破だー!」
プロテクションの盾で守られたCHUNであるが、その身は宙に浮きあがる。
そこへ追撃をかけようとさらに飛ぶ山賊。しかし山賊は攻撃が当たったものだとばかり思い慢心していた。
宙で体を翻し山賊の殴打を躱すとその顔面めがけ回し蹴りを食らわせる。
空中での叩きつけるような蹴りは山賊を天へ飛ばした。そのまま太陽の光の方へ飛んでいく。
「いえぇぇす!」
「覚えてやがれぇぇぇええええええ!!!!」
そうして山賊はお空の星となりどこかへ消えていった。
その際エコ坊から取り上げた石と隠し持っていた薬草を幾つか落としていったので、ありがたく拾い上げた。
「わーい! お兄ちゃんたちありがと~♪」
「むっ」
可愛らしい仕草でCHUNに駆け寄るのを見てアルンは「こいつパパに色目を」と嫉妬した。
エコ坊は山賊が落としていった石を拾いポケットに仕舞う。
「どういたしまして。ギルドの頼みで君を探すように言われてきたんだ。一度ギルド本部へ戻ってもらっていいかな?」
「でもぱぱー、依頼主さんはどこにいっちゃったんだろう」
「エミルかぁ……どっかでたらしこんでそう」
酷い認識である。
「うん!」
無事エコ坊を保護した三人はギルド元宮に戻ることにした。
◆エンディング
●シーン1:ギルド元宮
「ただいまー!」
「ここどこー??」
何故かアルンに腕を引かれて入った先でエコ坊は混乱していた。
どうやらギルド元宮は初めてらしい。
CHUNはそんなエコ坊の手を引いて元宮内にあるギルド協会へエコ坊を案内する。
ギルド元宮ギルド協会。
受付嬢がすぐに駆け寄り、心配そうにしていたエミルに引き渡す。
既に協会にいたエミルをみて思わずCHUNが言葉を漏らした。
「あ、いた」
どうやら一旦捜索の手を止めて戻って来たらしい。
エミルの元にエコ坊が駆け寄る。
人のよさそうな顔をした少年だが、その胸に何を抱いているかまでは表面だけで判断つかない。
「依頼達成ご苦労様でした。詳細は部下から聞いております。立派に勤めを果たしたので合格です」
「やったぜ」
「合格だブーン」
「わーい! これで私たち、正式にギルドに認められたのかな? かな?」
「ギルド申請は受理されました。リング……つまりはギルド名、主な活動など詳細の申請を改めてこちらの登録用紙に記載して提出いただければ晴れてギルド設立となります。お疲れ様でした!」
どうやらリングという名称とギルドという名称が本部の方でも混合しているらしい。
ややこしい限りであるが、意味するものに違いはないだろうから特に気にせず聞き流す。
「やったー! やったー」
「たー!」
「ブーン♪」
こうして無事、CHUN商会という名のギルドが設立された。
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第3回ECOAR2Eキョワ卓『アンデッド・コネクション』
第3回ECOAR2Eキョワ卓『アンデッド・コネクション』
◆オープニングフェイズ
●シーン1:酒場
ギルド設立後、ある日のこと。ファーイーストシティにある酒場でひと時の休日をのんびり過ごしているCHUN商会の三人に突然の取引依頼が舞い込んできた。
依頼状の手紙を読むと、『取引希望。"特別な銀のイヤリング"を見つけて下さい。報酬は私の国の財宝です』とだけ書いてあった。
取引場所は商人がまず立ち寄らず、今となっては冒険者の修行の場であるアンデッド城。
その冒険者すら入るのを躊躇する城内部の応接間。いたずらとしか思えない報酬、そして取引場所。
何とも怪しい内容である。
十中八九いたずらだろうと話をしていると、「最近誰かがアンデッド城に住み着いている」と酒場のマスターからの噂を耳にする。
「以前は冒険者の修行場として有名だったんだがな。今はなぜかアンデッドが大人しいとの噂だ」
どうやら商会が手にしている情報は少し古いものだったらしく、この頃冒険者もアンデッドに戦いの意思がないとのことで立ち寄らなくなっているらしい。
とはいえ、戦いを挑めば反撃はしてくるので、面白半分で向かって謎の射撃、恐らくアンデッド城に潜むモンスターにより追い返されることが多く、狙撃手の姿が見えないことから戦いにすらならないと文句を言う冒険者もいるとか。
取引自体は怪しいが、その真意を確かめるためにもまずは向かう必要がある。
「アンデッド城、お化けがたくさんいるのかな!」
わくわくとした表情で目を輝かせるアルン。
「装備を整えたいブーン」
「もちろん、場所が怪しすぎる。準備はしっかりとしておこう」
戦いになる可能性も想定し、古くなった装備の更新、手入れや必要になるだろう道具を選別。
一商人であると同時、冒険者として挑む体制を整える。
そうして面々はファーイーストシティを離れ、その東に位置するアンデッド城へ向かった。
◆ミドルフェイズ
●シーン1:アンデッド城入口
アンデッド城のある場所にはかつて国が栄えていた。
一体何が起きたのか、その国は滅び今では亡き過去の産物と化している。
そんな暗くじめじめとした場所を好んでアンデッドが住み着き、今に至る。
以前はここにもクエスト出張の人員がおり、冒険者へクエストを斡旋していた。
それもアンデッドが大人しくなってからは需要がなくなり、完全に町へ撤退してしまっている。
辺りは静かで人の気配はない。
それも当たり前か。アンデッド城とはいえ、現在の時刻は昼である。
アンデッドたちも真昼間から出歩きはしないだろう。
以前は昼でも出歩いているアンデッドがいたらしいが、現在その姿は確認できなかった。
「誰もいないねー」
「さて、到着したが……依頼主は応接間にいるらしい」
「人が住んでるの!?」
「酒場のマスターの噂では、最近誰かが出入りしているらしい」
「入る前に外周を見たいブーン」
どうやらすっかりその情報が頭から抜け落ちていたようで、言われてやっと「そう言えばマスターが言ってたな!」とアルンは思い出す。
にしこくんは何故かいつもより好奇心が高く、城の周り全てをぐるっと見回ってきた。
入り口は二つ、正門、裏門を発見した。それと閉ざされた扉があったが関係ないだろうと無視することにした。
にしこくんは念のため、モンスターの気配を探った。
すると城外、城内からかすかに何かの物音が聞こえるのが分かる。
「どうだったー?」
「かすかに音がするブーン」
「そうだな、入り口は二つあったが、どちらからいくか?」
「行くブーン」
「正面突破でお邪魔しない?」
「素直にお招きされるブーン」
「そうだな。普通に入ろう」
依頼主が応接間にいるとの情報から、正面突破が正解だと思うアルンが進言する。
CHUNとにしこくんも商人ならばこそこそとしないで玄関から入るのがマナーだと素直にお招きに応じることにした。
●シーン2:城内
昼間だからか、中は思ったよりも明るい。
視界が晴れていて小綺麗に纏まっており、中を進むのに問題はなさそうだ。
周囲には古びた絵画、箪笥などがある。
奥には二階に続く階段がある。
アルンは絵画に目を凝らして一生懸命鑑定してみる。
美しい女性が描かれており、古いが力を感じる絵だ。
しかし分かったのはそれだけで、美術品や骨董品として幾らくらいの値段になるか、その価値を完全には把握できなかった。
「この絵の人綺麗……」
「主はお金持ちなのかな……古びているが良いものがあるな」
「良いものブーン」
流石は商会の頭。
CHUNにはこの価値が分かるようで、それはにしこくんも同様だった。
年若いアルンには流石に荷が重すぎたか、もっと目利きを磨かなければ。
少し嫌な予感が拭えないにしこくんは辺りを警戒しながら進む。
にしこくんの体がバイブレーション機能でもついているかのように振動した。
「にしこくんどうかした?」
アルンぷるぷる震えているにしこくんを見て怪訝な表情をする。
にしこくんはきょろきょろと辺りを見回し、それが気になったアルンも同じく周りを見渡す。
とは言え、アルンの場合は警戒ではなく興味心から来るものだった。
「箪笥気になるブーン」
「お化けさんいるかも!」
アルンはとてとてと走り出し、にしこくんが気になると言った箪笥に手をかける。
それを見ていたCHUNがやれやれといった表情で頭に手を当て呟いた。
「もし人が住んでいたら目も当てられないな……」
人の物を勝手に漁ろうとする行為はまるで泥棒だ。
元よりこのアンデッド城はダンジョンとして冒険者に使われていたようだし、中身に物など無いだろう。
そう思いつつも気になるものは仕方がない。アルンは箪笥を開けようとするも、朽ち果てていて中々開かない。
ふと過去の取引経験を思い出し、箪笥の構造を調べてみると鍵がついていることが分かった。
CHUNの所持しているシーフズツールを使えば開くかもしれない。
「パパー、この箪笥鍵がついてるー」
「おっ、パパあけちゃうぞー。よーーーし!」
目も当てられないと言ってたのはどこの誰だったか。
どうせ元はダンジョンだと言う事で頭を切り替えたのだろう。
カチャカチャと慣れた手つきで鍵を開ける姿はまるで盗賊だ。
にしこくんは罠を警戒し魔法攻撃の撃てる距離にさりげなく移動している。
アルンもそれを真似て後方二〇メートルまで退避した。
CHUNは箪笥の中からどこかの鍵を手に入れた。
「おー! カギだー! どこのだろ?」
警戒を解いたアルンは近づいてその鍵をまじまじと見つめる。
その時、CHUNは何かを感知した。
「ん、何か鍵を取ってから気配がするような……? 上から何か来るぞ」
「ほう、敵か。某の杖で殴り殺してくれよう」
CHUNに応じてアルンがスタッフを構える。
階段の方からコツ、コツ、と言う足音と共に一体の骸骨が現れた。
それは冒険者に殴られ過ぎて朽ち果てた可哀そうなスケルトン。
CHUNたちとの距離は一〇メートルある。
「ぱぱー、出汁とって?」
ゆっくりと近づいてくるスケルトン。その間合いにCHUNが入りナイフを滑らせる。
「おせぇ!」
骨の一部が砕かれ足元から崩れ落ちそうになるもまだ立っている。
その後方からさらにもう一体のスケルトンが現れる。
にしこくんは其方の方に向かい魔法を放つ。
CHUN同様に攻撃を当てられると思うも、命中の瞬間スケルトンの動きが加速した。
「軽やかに躱した!?」
「機敏なやつだ」
驚きつつもアルンはCHUNにインボークによる祝福を与える。
これによりCHUNの回避行動が成功しやすくなった。
「よけるぜぇぇぇぇぇ」
そんなCHUNの元にスケルトンが殴りかかる。
CHUNの動きは通常の状態よりも回避に特化した状態だ。
それでも、スケルトンの機敏な行動に捉えられ打撃を受けてしまう。
「あっ」
声が漏れた時には既に遅く、スケルトンの攻撃が放たれる。
そのギリギリの間合いを見計らってアルンによるプロテクション。
スケルトンの二体目がその隙を狙いCHUNを狙う。
二度も連続で食らう訳にはいかないと、CHUNはその攻撃を回避、二体が纏まっているところ目掛けワイドアタックによる斬撃を放ち両方の足を切り崩す。
流石のスケルトンも足を失えばその場に落ちる。あとは骨を砕くだけだ。
「意外としぶとい骨だった……」
一汗拭いながらCHUNが呟く。
「ほーねっ、ほーねっ!」
アルンは嬉々とした表情で崩れた骨に近づくと、その亡骸を漁る。
それぞれ二〇ゴールドほどの価値がある骨を手に入れた。
アルンはわくわくした表情で骨が来た方に行こうと提案する。
にしこくんはCHUNが鍵を入手したことから、近くに鍵穴が無いかを探すが、この辺りにはないようだ。
立ち止まっていても仕方がないので、そのまま階段を登っていく。
二階に上がってすぐのところに部屋があり、女性がいる。
CHUNたちは応接間へと辿り着いた。
「はろーはろー、ないすてゅーみーてゅーあいあむぱーふぇくとぴぃまん」
「みーとぅー」
アルンとにしこくんが何とも言えない挨拶をした。
目を常に瞑っている女性が微笑み返す。
「お待ちしておりました。依頼主のリアンです。私の宝物、銀のイヤリングをアンデッドたちが持ち出してしまったのです。左右二つ集めて来て下さい。最近はアンデッドたちも何故か大人しかったのですが」
「イヤリング? どのあたりでなくしたのー?」
「イヤリングは過去に何度も無くし、情けないことにその都度に冒険者に探してもらっていました」
「へー」
「冒険者はいつもなくす私に対して面倒になりどこかの絵の裏によく落ちている場所をメモしていたようです」
その話を聞きながらアルンは笑顔、可愛いエモーション、からのキョワ顔をした。
にしこくんは正座する。
「居座った!?」
依頼人の前だと言うのに好き勝手する商会メンバーに呆れ顔のCHUN。
アルンはキョワ顔を止めると悪徳商人のような笑みを浮かべる。
「それで、報酬は幾ら出せるのかな? かな?」
「報酬はイヤリングを受け取ってから最低でも五〇〇出します」
「五〇〇ゴールドあれば肉が大量に買える! そういえばさっき骨が襲ってきたけどあれはあなたが仕向けたもの?」
「いえ、私も大人しかったアンデッドの動きが最近活発になって困っているのです。アンデッドが活発だった頃はよく寝室に隠れてすごしていました」
三人は報酬金額に納得し依頼を受けることにした。
先の戦闘もあり腹が減った。そこでリアンに断ってアルンが持ち込んでいた干し肉や野菜、果実をお昼にし休憩を取る。
休み終え探索再開。
一度戻り絵を探しその裏を確かめる。
罠はないだろうと踏んでそのまま絵に手を伸ばすが、アルンの身長では足りず下の方に触ることしかできない。
「ぱぱー、高い高いしてー」
「乗らなくても届くよ」
「さっすがー」
CHUNが手を伸ばし絵を取ろうとし、すかさず回避する。
にしこくんが突っ込んできた。そのまま壁に衝突する。
「いや俺がとるって……あらら」
絵がガタンと音を立てて落下。
結果として絵は取れた。にしこくんの頭にぶつかることもなかった。
そう思ったのもつかの間、にしこくんの頭上に冒険者が仕掛けたと思われるタライが降ってきた。
にしこくんはリアクション芸人の余裕を持ってタライを受け、バタンを倒れる。
「にしこおおおおおお!」
「にしこくうううううん!」
絵は床に乱雑に転がった。
CHUNがにしこくんの名を叫びながら、ころころとのたうち回るにしこくんを足蹴にした。
アルンは二人を気にせず絵を拾い上げ裏を見る。
絵の裏には『2F壁、地下の床』と書かれている。
二階は先ほどリアンがいた部屋のことだろう。
地下はアンデッド城を訪れた際ににしこくんが外周を回って発見した裏口か。
壁はいつでも探せるので、まずは地下に行くことにし、一度全員外に出る。
外はまだ明るく太陽は真上にあった。
「わーい」
アルンは先頭を走り地下へ突撃する。
それに対してにしこくんが慎重に進んだ。
支援職であるアルンが何故先に突撃するのか。自ら肉壁になる覚悟だ。
裏口を潜るとすぐに階段があり、そこまで暗くもなかった。
進んだところでアルンはモンスターの気配を察知、相手にはまだ感づかれていない。
「敵襲! てきしゅうぅううっ!!」
気付かれていないのに叫んだ。阿呆だ。
それでも敵はまだ気づいていない模様。そこで陰からこっそり相手の出方を見る。
先ほどサンドバッグにしたスケルトンが一体いた。
「さっきの敵かぁ。奇襲なら攻撃はあたるかもしれない」
殴りかかるべきか検討を重ねた結果、無用な戦闘は避けるべきとクローキングでこっそりと地下奥へ進むことに。
「静かに行くブーン」
「静かに行くブーン」
アルンがにしこくんの真似をする。
静かに進んでいると、鉄格子を発見、そこに鍵穴があった。
「ん。鍵が掛かっているな?」
「パパー、さっきの鍵かな?」
カギを指してみると、がっちりかみ合った。
「おっ、鍵が合うな。使うか?」
「使うブーン」
CHUNは鍵を使って鉄格子を開けた。
すると奥からコツ、コツと足音がする。
まさかまたスケルトンがと警戒していると、現れたのは可愛らしい背の小さな軍服のようなものを纏った少女だった。
「おや、こんなところで珍しい。私はすけしゅというものだ。貴方達は?」
「すけさん? すけすけ?」
アルンは警戒する。
鍵が掛かっていたのに中に人がいるなんて怪しすぎる。
「すけさん、中々良いな。呼んでくれてもかまわないぞ」
「我こそは踊り狂う暴風! にしこくんブーン!!」
すけしゅに続いてにしこくんも名乗りを上げた。
「おや、鉄格子が開いているじゃないか!」
開いた鉄格子を見ながらそんな声を上げるすけしゅを、アルンは名乗ることなく問い詰める。
「こんな場所で何をしているの?」
「私は冒険者だが、不覚にもあいつら……ああいや、アンデッドたちに閉じ込められてしまってね。どうやらわたし……じゃなかった、親玉がいるらしい」
「親玉があなた?」
その訂正を見逃さなかったアルンがさらに問い詰める。
すけしゅは微妙な表情をしながら答えを返す。
「ははは、信じてくれないだろうが昔はそうだったのさ。アンデッドをまとめていた者だったのだが、最近不審な輩がいてね」
「あなたは悪い人なの?」
「私の今の本業はアクロポリス内部にある人材発掘ギルドの一員だ。私が離れている間にアンデッドたちの動きがおかしいと知り合いから聞いて調査にきていてこの様ってわけさ」
警戒しつつ後ずさりながらにしこくんを盾にするようにその後ろへ隠れる。
最悪にしこくんを投射するつもりだ。
元々肉壁であるにしこくんは壁にされたことも気にせず代わりに問いかける。
「親玉を倒したら、配下のアンデッドを統率できるブーン?」
「元は私の友……知り合いばかりだからな。大人しくするように言い聞かせることは簡単だな。親玉はドミニオン・マリシャスというらしい。昔も巣くってた奴だ」
「親玉倒すブーン!」
「親玉を倒してくれるのか!私も付いていかせてくれ」
にしこくんとすけしゅがやり取りをしている間にアルンは床を調べた。
銀のイヤリングの右側を手に入れた。あとは左だけ、二階に戻って壁を調べれば依頼完了。
別に親玉を倒す必要はないが……
すけしゅは熟練の冒険者の風貌をしている。CHUNよりも圧倒的に強いだろう。
信頼のおける人物かどうか、よくその姿を観察する。
そこでアルンは思い出す。以前アップタウンで買い物の途中、この少女を見かけたことがあり、ギルド関係者と会話していたことを。
ここは疑いの目から外し、仲間にしておいた方が良いだろう。
「これからよろしくねっ!」
「ああ、よろしく頼むよ」
警戒が解けたことで一安心し、すけしゅは一時的にCHUNたちのパーティーに加わった。
地下にもう用事はない。
戻るべく進んでいると、さっき見かけたサンドバッグスケルトンが歩いてきた。
すけしゅは弓を構え矢を携える。そして一気に解き放つと、スケルトンを射抜いた。
放った矢は一撃で倒すまではいかなかったものの、不意をつかれスケルトンは逃げていった。
「先を急ぐか」
その光景を見たアルンは敵対しないでよかったとその動作を見て冷や汗を流す。
にしこくんはすけしゅに親玉のいそうな場所を尋ねた。
「ああ、それだが気配ですぐにわかるぞ。とりあえずは正面口だ。中にはいったら案内しよう」
にしこくんの目的は案内以外に、先頭に立たせることで盾代わりにするという悪い目的も兼ねていた。
そんなこととは露知らないすけしゅは、アルンの背の高さに気付いてニコニコしている。
すけしゅも背が小さいが、アルンはそれより僅かに小さい。
本当にちょっとした背の違いだが、自分より小さい存在を見つけて嬉しいのだろう。
アルンはそんなすけしゅの顔を見て「何こいつ笑ってんだ」と思いながらキョワ顔した。
◆クライマックスフェイズ
●シーン1:正面口
すけしゅの案内により正面口に通されたCHUNたち。
おもむろに箪笥をどかすと、後ろ手にある扉を開いた。
その隠し通路を通り抜けると、現在の親玉がいる部屋に辿り着く。
複数のスケルトン、そして親玉、ドミニオン・マリシャス。魔術師然とした衣服に身を包み、漆黒の翼を生やした存在だった。
その通路は一般的ではなかったのだろう。親玉はこちらに気付き驚いている。
「あの人服着てる! 骨じゃない!」
「ほんとだ! 骨じゃない!」
アンデッドの親玉というからには骨だと思っていた為思わず驚いてしまった。
先制を取るように戦闘態勢。すけしゅを後方に下げCHUNが前線に、その五メートル後方にアルンが、CHUNの傍ににしこくんが立つ。
対しドミニオン・マリシャスとスケルトンは同一エンゲージに立っている。
CHUNがまず接近、そのまま切り込む。
その動きに呼吸を合わせすけしゅによる援護射撃。
まだ完全に戦闘できる状態が整っていないところを突いた奇襲は効果的で、すけしゅの矢が的確にスケルトンを貫き、落とした。
にしこくんが火の魔術によりファイアボールを放つ。
それがもう一体のスケルトンを潰し、その炎をバッグにCHUNのナイフがドミニオン・マリシャスの喉元を捉える。
緊急回避、致命傷は避けるも傷を負う。
退避しながらの魔術詠唱。完成した火の魔術が一番弱そうなアルンを狙い放たれる。
アルンは前方に防御の盾を展開。プロテクションで軽減されるも熱気がアルンに降りかかった。
魔術を放った瞬間を突いてCHUNがさらに接近。ドミニオン・マリシャスに再び斬りかり、呼吸を合わせすけしゅが放った矢がその心臓部を貫いた。
「やるな」
CHUNの動きに合わせていたすけしゅが好意的にCHUNの傍に立つ。
「ちょ、なんもしてねぇえええええ!」
心臓を貫かれたドミニオン・マリシャスはそんな叫びを上げながら、影に溶けるように消滅した。
「貴様の魔術、しかとこの身に受け止めた。しかしぬるい! にしこの火には到底及ばぬわ!」
にしこくんの火を見てきたアルンにとってその程度の魔術大したことはなく、目立った外傷はない。
何とも可哀そうな敵である。
「それでは私はアンデット達の様子を見てくるよ。手伝ってくれてありがとう」
「ばいばーい」
「ありがとブーン」
「ああ、ありがとう。またな」
CHUNたちは手を振りすけしゅを見送る。
「イヤリング見つけなきゃ!」
そうしてイヤリングを探す為、二階へ向かった。
◆エンディング
●シーン1:二階
「取り敢えず一個あったよー」
リアンに報告しながらアルンはベッドの下を漁る。
エロ本あるかなあと思ったがなかった。そりゃそうだ。
「確か絵画の裏には……」
CHUNが探しに行く前ににしこくんが動いていた。
部屋の壁を探すと、灯台元暗し、リアンの背後の壁にイヤリングがめり込んでいた。
「ありがとうございます。おかげで助かりました。もうなくさないようにしないと」
「ほんとだよ!」
にしこくんはアンデッドの統率がされるようになり、城が少しは平和になりそうなことも、すけしゅの件と共に報告する。
「それは本当ですか? これで安心して過ごせます。それでは取引の話に戻ります」
「金だぁあああああああああああああああ!!」
「いいぇああああああああああああああ」
「めいりーしなきゃ」
手に入れた報酬金に目が行って目の前に依頼主がいることをすっかり忘れている。
リアンがそんな三人を見て苦笑い。
こうして不思議な依頼をこなしたCHUN達。退屈な一日は少しだけ楽しい一日になったようだ。
そして出会いもあった。
すけしゅとの繋がりを得たことで、今後何等かの形で関わっていくことになるだろう。
それはまた、別のお話。
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第4回ECOAR2Eキョワ卓『夢の世界と虚ろな少女』その1
本リプレイのミドルフェイズから『クトゥルフ神話TRPGやろうずWiki』に投稿されている『泥紳士様』作のシナリオ『毒入りスープ』のシナリオ内容をセッション用に改変し使用しております。内容にシナリオのネタバレを含む為、読む際はそのことをご理解の程よろしくお願いいたします。
シナリオ引用元
https://seesaawiki.jp/trpgyarouzu/
また、シーン2までは小説風で今回もお送りした後、シーン3からはリプレイとしての編集に変わります。変則的だけど許してオナシャス!!
◆オープニングフェイズ
●シーン1:富豪の下へ
アクロニアを訪れてから数週間、CHUN商会はアップタウンに住むという富豪の元に取引を持ち掛けることを決意する。
その為のアポイントを取り、贔屓にしているファーイーストの名産品を売り込むつもりだ。
「あっ! CHUN商会の皆さん丁度良いところに! これ、採れたての野菜なのですが、食べきれないのでどうぞ!」
「おっ、シャルちゃん。こんにちは。丁度良い。五つほど試供品として使いたいから一〇〇ゴールドで頂こうかな?」
「あわわわ! ありがとうございます!」
「いえいえこちらこそ。また暇があったらローレライさんのところにも顔を出すと言っておいてくれ」
「はい!」
先日、そんなやり取りの後に手に入れたファーイースト産の野菜。
ファーイーストから新設したCHUN商会は既に地域住民との話し合いを終え、この取引が成功すればファーイーストから定期的に野菜を卸すことで利益が出る。
ダウンタウンに借りている宿の中で出る時間まで今日の取引の流れを考える。
「映画館にチケットを買いに行ってくるブーン♪」
「いってらっしゃブーン」
CHUNはにしこくんにそう答えてから、言葉の内容を理解して玄関を見る。
にしこくんが宿を出ようとしていた。
「って、映画みるのか? それだと流石に時間ないぞ、急げるか?」
にしこくんがいなくても取引はできるが、アルンがファーイースト方面にいる現状、一人というのも心もとない。
かなり余裕を持って起きてはいるが、映画一本となると二時間くらいはかかるだろう。
ぎりぎり取引の時間に間に合うとは思うが、それでも遅れる可能性が高い。
「チケット買ってすぐに戻るブーン」
「ほいよ。ダウンタウンの中央広場で待つ」
合流の待ち合わせをし、CHUNも一度宿を出た。
●シーン2:豪邸
合流をした二人はアップタウンにある豪邸の前へやって来た。
玄関口がある正門前には二人の門番が立っている。
「こんにちはブーン」
「おおう、思ったよりもお金持ちが相手か」
CHUNはその豪邸に息を飲みつつ、にしこくんに続いて丁寧な言葉で挨拶。門番に取引で来た旨を伝える。
片方の門番はエミル族、もう片方はにしこくんと同じ種族の妖精だ。
そのにしこくんの方の門番が挨拶を返してくる。
「こんにちはブーン(^ω^)! CHUN商会の皆様ですね、お待ちしておりましたブーン( `ω´)!」
CHUNはにしこくんの方の門番、ではなくエミル族の方に声を掛ける。
「エリーゼさんとの取引で参りました。アポイントは取ってありますので通していただけますか?」
「少々お待ちください。お嬢様を呼んでまいります」
そう言ってにしこくんを残して門番が一度屋敷に入る。
「ぶーんぶーん」
「ブーンブーン」
同じにしこくん同士共鳴している。
CHUNはそんな二人を見守りながら門番を待つ。
暫くして、家屋の方から綺麗な女性がやって来た。
「お待ちしておりましたわ。直接顔を合わせるのは初めましてですわね。私はエリーゼ、この屋敷の主ですわ」
「こんにちは。改めて、ファーイーストで商会をしているCHUNと申します」
「初めましてブーン」
エリーゼはにしこくんを門番に雇っているだけあって、にしこくんに対し偏見がなかった。
「ささ、どうぞこちらに」
エリーゼが案内人となり豪邸の中に二人を招き入れた。
シーン3からリプレイに編集が変わるため、ここで一旦区切ります。
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