緋鳥物語 (蟲鳥獣)
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第0話

「う、うーん・・・はっ」

 

 俺は目を覚ました。

 視界には赤が、飛び込んでくる。

 

「うおっ、なんじゃこりゃ・・・って、うわっ鳥になってる」

 

 次に体の異変に気が付いた。

 鳥になっているのである、体の動かし方はなんとなく分かる。

 本能的な感じで、覚えているんだろうな。

 あと視界にさっきから、映り込んでくる景色と同様に赤い。

 

「なんでなん」

 

 翼で器用に頭を抱えて、うずくまった。

 傍から見れば、毛づくろいしている美しい鳥である。

 その状態で、最後の記憶を引っ張り出す。

 


 

 休日で給料日だったので銀行に行きます。

  ↓

 銀行強盗が登場しました。

  ↓

 大変危険ですので言いなりなりました。

  ↓

 数時間くらい後に警察到着

  ↓

 後ろの子どもが泣き出して・・・パァン

  ↓

 銃声が聞こえた。

  ↓

 ゆっくりこちらに上から飛んでくる弾丸

  ↓

 意識のブラックアウト

 


 

「あっ、死んだ・・・じゃない、マジかよ」

 

 どうやら最後の記憶では、強盗が拳銃を撃って、その弾丸が跳躍して俺に当たったようだ。

 運がない、最悪だ。

 

「あ゛ぁ゛、これからどうしよっか・・・」

 

 思考が冷静になってきた、というよりは無理やり切り替えた。

 こうなったら仕方がないので、考えない事にする。

 考え込んでも埒があかないし、昔からこういう人間性なので無問題だな。

 

「・・・飛んでみるか」

 

 俺は鳥なので空を飛んでみた。

 飛び方は、体が覚えているようなので問題はない。

 しかしどこまで行っても、真っ赤だな・・・うーん、なんだっけ?

 

「あー、アレだ。緋色の鳥だっけ?」

 

 数時間くらい飛び続けて、ふとそう考えが過ぎって着陸した。

 

「えっと、そう、SCP財団って架空サイトの奴」

 

 俺はSCP‐910‐JPやSCP‐2000‐JPは記憶に残っている。

 他にも原典の『彫刻』とか、『クソトカゲ』『アベル』『キチクマ』などの有名所は知っている。

 

「緋色の鳥ってどんなSCPだっけ?」

 

 そこまで考えようとすると、見知らぬ記憶が浮かび上がった。

 その記憶は体の元の持ち主、つまり緋色の鳥の記憶なのだろう。

 

 星の生命を喰らって成長し続けたが、ある日に新しく誕生した生命に封印された。

 鳥という姿を付与されて弱体化したが、それまでに無かった知恵を考える力を持った。

 今は休眠して、新たに生命を喰らえるようになるのを待っている。

 そうして休眠中に落ちてきたものを喰らったら・・・そこで記憶は途切れている。

 

 要約をすればそんな感じの記憶だった。

 

「・・・もしかして俺なにかやっちゃてる?」

 

 また、翼で器用に頭を抱えるはめになった。



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第1話

「はぁ、どうしよう・・・」

 

 推定、緋色の鳥となって、体感的に数日が過ぎた。

 今は気分を上げるために空を飛び続けている。

 正直この世界は目に毒だ。

 全部が赤いし・・・しかも全然、景色が変わる気配がない。

 どこまで飛び続けても、赤い原野に赤い空だ。

 

「うぅ、休憩するか。精神的に辛い」

 

 そう言って、俺は地面に降り立った。

 記憶から色々と現状に対して推測している。

 例えば、俺が緋色の鳥と言う存在に吸収されたが、逆に吸収して成り代わってしまったのでは?という事だ。まぁ情報が少なくて、そこまで分らんのだが・・・

 多分そうなんだろうと考えている。

 緋色の鳥側の記憶の大半が、眠り続けていた弊害か、半分以上が抜け落ちている。

 そんな状況で、深く考えることができないのだ。

 正直、俺が緋色の鳥を逆に吸収できた事に対して、大きな疑問を抱いているが、分かる日は来るのだろうか?

 それにしてもアレだな、腹が減ってきた。

 これ以上動くのはやめておこう。

 緋色の鳥が永い休眠を行っていて、俺の魂的な何かが、目の前に落ちてきたときにバクンッ、と速攻で喰らった理由が分かった気がするわ。飢餓状態で寝ぼけていて、目の前に久しぶりのご飯があれば、誰だって食らいつくだろう。例えそれには、毒が混入されていたとしてもだ。

 

「とりあえず、寝る・・・」

 

 俺は飢えを誤魔化すために眠ることにした。

 そして意識が完全にシャットダウンした時に、獲物の匂いを感知した。

 

「ギャァアァア」

 

 雄叫びを上げる。歓喜を上げる。口から涎は出ないが、喉が鳴る。

 そこに俺という理性はなく、体は緋色の鳥としての本能で動き始めた。

 

 跳んで、飛ぶ。

 速く、速く、速く、速く、もっと速く飛べ。

 

「ハハハ、成功だ。新たな発k・・・」

 

 ブチッ

 

 喰らったぞ、美味い・・・

 腹が満たせる、もっと食べたいなぁ。

 戻れ、戻れ、戻れ、戻れ、戻った。

 緋色の世界の時が戻った。

 もう一度、もう一度、もう一度、もう一度、もう一度。

 繰り返せ、繰り返せ、繰り返せ、繰り返せ、繰り返せ。

 

「ハハハ、成功だ。新たな発k・・・」

「ハハハ、成功だ。新たな発k・・・」

「ハハハ、成功だ。新たな発k・・・」

「ハハハ、成功だ。新たな発k・・・」

「ハハ・・・ハ?、なんだ何かがおかしい」

「なんだ、なんだ、なんだ、なんだ、なんだ」

「なにが、なんだ。逃げないと、なぜ?なぜ?」

「やめろ、やめてくれ、嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ」

「死んだ?生きてる?どうして?」

「くそがぁ、化け物め。やめろ、やめてくれ」

 

「くぁwせdrftgyふじこlp・・・あっ、そうか」

 

 また、巻き戻った。しかしそこに獲物はいなかった。

 しかし鳥は歓喜していた。獲物が自らやってきてくれていると、本能は理解しているから・・・

 (理性)は起きない、本能が抑えているから・・・

 近い未来のSCP-444-JPは、(理性)を起こさず動き出した。

 



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第2話

 めざめ とびたて 緋色の鳥よ すべてをくわらぬ うえのみたまよ

 

 どこからともなく、そんな祝詞が部屋中に響いた。

 緋色の鳥、かの化け物は動きを停止した。

 

「やった・・・ぞ、後は・・頼みます。■■主任・・・」

 

 祝詞を紡いだ男は、血だまりの中に倒れ伏せる。

 その意識を消失させながら・・・

 


 

「ふぁ、んっ?えっ?はっ?」

 

 俺は目覚めて、困惑を隠せなかった。

 辺り一面が赤黒い、鉄錆の香りが漂い、地に大量の肉塊と肉片が不規則に落ちている。

 いや、よく見ればまだ完全に形を残している肉塊もあるが・・・

 まて、人の死体の事を肉塊と考えたのか?

 なんだろうか、鳥と融合したからだろうか?

 ・・・うん、どうでもいいな。俺は俺だからな!

 

「さて、どうするか」

 

 今この場から分かることは、この場所がおそらくSCP財団の施設だと言う事だ。

 目の前にSCPと、プリントされている白衣を着た肉塊が、倒れ伏しているからね。

 後は、ここから離れた場所に生存者が1人いるくらいだろう。

 

「一先ず、様子を見に行くか」

 

 ふわっ、と飛び立ち、壁をすり抜けて生存者の所まで一直線に飛ぶ。

 感覚的に実体が無いと思ったから、できると考えたので実行してみたらいけたわ。

 数分もすれば、目的地の天井裏に辿り着いた。

 大量の配線があるだけで、なんの面白みも無いけどな。

 さて、頭だけこっそりと覗かせて、覗き見てみるか。

 

「奴の事を知っているのも、残りは私だけか・・・■■君、時間稼ぎありがとう。どうにか間にあったよ・・・後はこの場所を封鎖するだけだ」

 

 白衣の男が、必死でパソコンに入力している。

 遠目から見る限り、報告書の類いだと思われる。

 

「ふぅ、本当は残すべきではないんだろうが、もう遅いか・・・」

 

 白衣の男は、ふぅっと椅子に深く座った。

 体の伸ばす、パキパキと音が聞こえた音から、長時間座り続けて作業していたのだろう。

 

「っ!」

 

 ドンドンドン、ドン

 

 白衣の男は白衣の内に手を突っ込み、拳銃を取り出して俺の居る天井に撃ちこんだ。

 突然の事で俺は驚いたが、拳銃の弾丸は身体をすり抜けていった。

 そして俺は、天井からすり抜け現れる。

 

「くっ、ここまでか・・・」

 

 拳銃を構えたまま、俺から離れるようにして扉へとジリジリゆっくり動いていった。

 

「・・・そいつはどうかな」

 

 白衣の男の言葉に、俺はそう言った。

 

「なっ!・・・なんだと?」

 

 白衣の男は驚いている。

 驚愕の表情を浮かべて、しかし拳銃の銃口はこちらに向けたままだ。

 

「「・・・」」

 

 静寂がこの空間を支配する。

 さてノリで言った言葉が、こんな空気になって、どうきりだしたものか・・・

 俺は決め顔(できているのか分からない)みたいな事をしながら、心の中で頭を抱えていた。



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第3話

 静寂が空間を支配して数時間

 白衣の男は俺を睨み続けて、俺はのんきにこの空気をどうしようと考えていた。

 そしてそんな状況の終わりは、白衣の男の言葉から始まった。

 

「話せたのか、SCP-444-JP」

 

 やはり俺はSCP-444-JPなのか、知りたくもあったけど、知りたくなかったな。

 

「さぁ、どうだろう」

 

 ちょっとはぐらかしてみる。

 ちなみに俺は日本語で話している。

 

「・・・なぜ、あんな事をする」

 

「あの惨状か?なら知らんな」

 

 うん、知らない。おそらく、寝ぼけと空腹が引き起こした只の事故です。多分

 こういうのって確か、夢遊病って言うんだったか?

 

「何故だ」

 

「寝てたもんで、今さっき起きた」

 

「・・・そうか」

 

「そうだ。こういうのを夢遊病とか、言うのでは?」

 

 俺がそこまで言うと、白衣の男はパソコンの前へ移動し、椅子に座った。

 

 カタカタカタカタ

 

 そしてパソコンに、今の会話内容を入力している。

 なお、この間の寸分違わず、俺の眉間ど真ん中に向けて銃口を向けているのだが、財団の博士は皆、狂ってるとか言われているが、こいつもかよ。

 

「続き行くぞ」

 

「いつでもどうぞ」

 

 俺は肩羽を上に持ち上げ、肩羽を胸の前へ、お辞儀をした。

 

「なぜ寝ていたんだ」

 

「空腹が凄くてな、寝てないとしんどかったもんで、まぁ、熊の冬眠みたいなものさ。あぁそれと今、腹は膨れているから、当分は寝るつもりはない」

 

 嘘は言っていない。間違ってもいないだろう、今は満腹なので当分は、眠らなくても大丈夫な筈だろう、寝ればまた夢遊病状態(仮定)になるだろうからね。

 

「そうか、それは一先ずの安心か?」

 

「さて、それはあんたらが決める事だ」

 

 白衣の男は少し考えるようにして、パソコンへ入力をした。

 

「・・・ふぅ、さてこれからどうするか」

 

 白衣の男は、頭が痛そうに眉間をおさている。

 そんなこと呟かれても、何とも言えないのですがそれは・・・

 

「んん?ソレはなんだ」

 

 白衣の男を観察していたら、その後ろに突然虚空から、出現してきたものが見えた。

 

「・・・何故、これがここに」

 

 それはコーヒーの入ったカップだった。

 しかも湯気が発生しているので、おそらく出来たてのホカホカコーヒーだ。

 コーヒーはあまり飲んでいなかったので、詳しくは分からないが、出現したコーヒーは、高級な代物だと直感できる。

 

「良い匂いだな」

 

 白衣の男は、出現したカップを持ちあげて匂いを嗅いでいた。

 そして一口飲んだ。

 

「美味い、しかしなんだ?何かがおかしいな」

 

 俺は理解した。あのコーヒーとカップは俺と同じで違うものなんだと言う事に・・・。



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第4話

「そのコーヒー・・・俺の能力だ」

 

 俺と同一の代物だと分かって、ついそう口に出してしまった。

 

「なに?」

 

 白衣の男は怪訝な顔をする。

 こうなっては仕方が無いので、思い出した事を説明する事にする。

 

「俺の能力で出現したフィクションだ」

 

「なんだと、コレがか?」

 

 白衣の男はコーヒーの無くなったコップを持ちあげて見せた。

 

「そうだ、そして同時にそいつはあんたが望んだものだ」

 

 きっと白衣の男の脳内で、コーヒーを飲む自分をイメージしたに違いない。

 だからコーヒーが、あの机の上に突然出現した。

 まさか能力影響下の人間も、俺と同じ事が出来るようになっているとは思わなかった。

 いや、そもそも忘れていたんだから、そんなこと思う事も出来ていなかったか・・・

 

「あぁ、確かにコーヒーがあればなと思ったが」

 

「そいつが原因さ、ただし現実に起きている事じゃない」

 

 そう現実に起きている事では無い。

 能力影響下にいない第三者が、さっきの状況を見れば、パントマイムをやっているようにしか、見えていないだろう。

 しかし逆に言えば、それだけ本物に近い幻想を、認識していると言う事だ。

 

「あんたの飲んだコーヒーは幻想、俺の能力影響下から離れればコップは消えるし、飲んだ感触も無くなるだろうな」

 

「・・・・・・規格外だな」

 

「おいおい、そんな事を言うな。まだ良心的だろ」

 

 他の奴らと比べれば、まだまだ良心的だと思うね。ほんとに

 例えば、トカゲとか、シャイで(ナイス)ガイな奴とか・・・うん、この話題は止めておこう。

 

「そういや自己紹介していないな、あんた名前は何て言うんだ?おっと俺に名は無いぞ、もう既に捨てたからな。いや、意味が無くなったが正しいのか?」

 

「最後の言葉が気になるが、まぁそうだな。俺は[削除済]だ。この場所で、主任をやっていた。今ではお前のせいで、この有様だがな。ぜひ■■とでも呼んでくれ」

 

 露骨に強調したな、こいつ・・・

 

「へぇへぇ、わるぅございました。んで■■、これからどうするんだ」

 

「こいつ・・・はぁ、まぁいい。そうだな、外に出て他の支部との連絡手段を探さす事だな。ここは、辺境中の辺境、[削除済]に存在しているからな」

 

 俺の情報が出ていかない様に施設は完全停止、機動の為の発電施設は崩壊し、生き残って使える予備バッテリーはもう僅か。精々記録しかできないパソコンで、記録を残すだけらしい。

 今いるのは、地下130m地点の部屋だとのこと。

 

「・・・ちょっと失礼」

 

「おい、どこに行くんだ」

 

「能力影響下入った人間?が、今しがたこの上に」

 

 俺はこれ以上の返答は聞かずに、飛び上がった。



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第5話

 大体60m程だろうか?

 地面の中を飛ぶと、そこには人間が居た。

 地面の中にだ。

 

「・・・暗いよぉ、怖いよぉ、皆さんどこに行ったんですかぁ」

 

 どうしよ、多分目の前のコイツSCPだよなぁ。

 

「あぁ・・・」

 

 えーっと、肉体の方は無理だな。

 そもそも俺に実体ないし・・・よし、精神を肉体から切り離して連れていくか!

 そうと決まれば、早速・・・

 

「えっ?・・・誰、何、なn、くぁwせdrftgyふじこlp」

 

 よぉし、切り離し成功っと、後は掴んで急降下!

 

「みぎゃぁ

 

 ドサッ

 

「うぉっ、びっくりした」

 

 SCPと思われる男を連れて戻ると、■■は追加でコーヒーを嗜んでいた。

 部屋中に良い香りが漂っている。

 

「なんだ、こいつは」

 

「しらね、地中で1人寂しそうに蹲っていたから連れて来ただけだ。肉体の方は無理だから、精神だけを分離させてな。今からこいつは俺の世界の住民って訳だ」

 

 ケタケタと俺は笑いながら、■■にそう言った。

 

「そうか、地中にいたか・・・なんだったか、聞いたSCIPにあったな」

 

 SCIP?なんじゃそら、SCPオブジェクトの別称か何かかな?

 そんなのあったのか、知らんかったわ。

 

「・・・多分、コレだなSCP-097-JP。ワンダーテインメント博士シリーズだな」

 

 あっ本当だ。右腕にそう刺青が、彫られてる。

 

「あなたが神ですか」

 

 うわっ、なんだこいつ、助けなきゃ良かった。

 

「とりあえず、消えとけ」

 

 SCP-097-JP、ボッシュートです。

 

 ガコン

 

 そんな音と共に地面が、パカッと開いた。

 

「へっ?・・・うぉぁぁ・・・」

 

 そしてそのままSCP-097-JPは、穴の底へと落っこちていった。

 あの先には緋色の原野が広がっている。

 

「あっ、・・・大丈夫なのか、今のは・・」

 

「大丈夫なんじゃない?」

 

 ■■が目の前のコントを見て頭痛そうに眉間を指で押さえている。

 俺はそんな博士の言葉に、適当に返答しておいた。

 

「あんな事より、これからの事を考えろよ」

 

「そうは言われてもだな・・・はぁ、頭痛い。戻った時、なんて言えばいいんだ」

 

 ■■は頭に加えて、胃が痛くなったのか、胸を抑え始めた。

 そういや■■、いつのまにか拳銃手放しているな。良いのだろうか?

 

「とりあえず、脱出だな。お前は大丈夫だろうが、予備電源が切れると酸素が薄くなる」

 

 机の上に手放し置いていた拳銃を手に取り、白衣の内側に装備した。

 どうやらもう出発するようだ。

 

「何で上がっていくんだ?」

 

「階段だ、エレベーターは使えないからな」




SCP-097-JP『ミスターずぶずぶ』
 http://scp-jp.wikidot.com/scp-097-jp


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第6話

「はぁはぁ、ここまで上がれば、予備電源切れても大丈夫だろ」

 

 ■■は長い階段を上がってお疲れの様だ。

 ちなみに俺がついていけるように、白衣に少量の血を付着させて貰っている。

 ここまでの間、どれだけのSCPじゃなくて、SCIPが確保、収容、保護されたのかを聞いた。

 海外の方は詳しく知らないそうだが、日本では憶えているだけで、約1600件程のSCIPが、確認されているらしい。

 どういう事かと言えば、最低でもSCP-1600-JPまでのSCIP-JPシリーズは、発見されている状況なのだろうと推測できる。

 おん、■■が少し休むみたいだな。

 

「おう、そうみたいだな。ホレ、スポーツドリンクだ。飲め」

 

「は?」

 

 ゴトッと1500mlサイズのスポーツドリンクを目の前に置いた。もちろんこいつは、俺の能力製なので、飲んでも美味しくてサッパリするだけで、なんの意味なんて無いんだがな。

 ボフンとスポーツドリンクが消えた。

 ■■が消えろとでも考えたんだろう。

 

「遊ぶのは後にしてくれ、ふぅ行くぞ」

 

「へぇーへぇー、面白くないの」

 

「それで結構だ」

 

 数分ほど階段を上り続けて、出口の扉が見える。出口前には死体があり、頭を拳銃で撃って自殺したんだろうと考えられる。電子ロック扉の危機を念入りに破壊してな。

 

「おぅおぅ、外に行く為の扉が壊れてるぜ」

 

「問題無い、これ位ならなんとかなる」

 

 そう言うと、白衣の内からどこに入っていたんだよ、と思わず突っ込まずにはいられない工具箱が取りだされた。

 

「おい待て、どっから取りだしたソレ」

 

「フッ、私の白衣は特別製でな。ぜんまい仕掛け製なんだ、ちゃんと許可貰って使用したさ」

 

「おっおう・・・その工具もか?」

 

「あぁそうだ。持ちだすのに苦労したんだぜ」

 

 カチャカチャっと音を鳴らしながら、パパパッと電子機器を修理している。

 待って、その工具箱、材料も出てくんの?

 それなんて言うチート?ドラえもんにそんな秘密道具あったなぁ・・・

 

「よし」

 

 カシューァ

 

 そんな感じの音を立てながら、扉が開いた。

 扉の先には、人一人として居なかった。

 

「誰も居ないねぇ」

 

「今この場所は放棄されている状況だからな・・・この場所に収容されているSCIPの確認をしとかないとな」

 

「Dクラス職員の方は、いいのか?」

 

「どこに住居地があるのか、俺は知らん」

 

 えぇ地図くらいあるんじゃねぇのか・・・

 

「まぁ見つかった時にどうにかすれば良いだろう、最優先はSCIPの方だ」

 

 ■■はそのまま、ズンズンと先へ進んでいった。

 何かあっても俺はすぐに駆けつける事が出来るし、一旦緋色の原野の様子を見に行ってくるか。



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第7話

「・・・コレは酷い」

 

 ■■と別れて、一旦住処とも言える緋色の原野に戻ってきたが、そこでは死屍累々の有様が、広がっていた。

 右見て、左見て、人の屍。

 よくよく観察して見れば、その全ては皆一様に喰い荒らされている。

 頭に始まり、胴体、右腕、左腕、下半身、上半身etc.

 どの死体も、何かしらの部分が、喰い荒らされているのだ。

 

 見える辺り一面のアレらは、俺がやった事なんだ、と言う事を見れば、否が応でも理解できる。いや、理解する。・・・が、こんなどうでも良い事は、そこらの隅にでも捨て置いて、この世界に落っことした「SCP-097-JP(ミスターずぶずぶ)」を見つけ出さないとな。

 しかしこんな状況を見て、俺がやった事なんだと分かっても、どうでもいいと思えてしまうのは、俺はすでに人では無いのだろう、もしくはサイコパスな一面があった。・・・って何を考えているんだろう、今の優先順位はSCP-097-JPだ。

 

「・・・うーん、感知できる範囲内には、動いている者は誰一人としていないな」

 

 ここいら近辺に、落っことした筈なんだが、他者をこの世界に自力で入れたのは、SCP-097-JPが初だったから、落ちる地点がズレてしまったか?

 

「仕方が無い、飛ぶか」

 

 俺は羽を広げて、身体全身を使うように、振り下ろす。

 すると身体がフワッと浮かび、緋色の大空へと飛翔した。

 

 考えうる限りでは、SCP-097-JPは気絶か、発狂をしていると思っている。

 後は走って、死体の無い遠くまで行っている最中か・・・

 そう言えば、この世界なら人は空を飛べた筈だ。とんで離れていっているのかもしれないな。

 まぁ、どうにせよ。探し出すだけだ。

 

 数時間程、円を描くように飛び、その範囲を少しずつ広げていくと、動く者の気配を感じ取った。

 たぶんSCP-097-JPだろう。

 ついでにSCP-097-JP以外に、小さな小動物の様な気配が2つする。

 

 気配の元へと一直線に飛んでいくと、ありえないものを見た。

 青い海だ。この景色を見た俺は、世界が浸食されていると感じとった。

 そして同時に莫大な不快感を感じたが、その感情を一先ず抑える。

 

「何が起きているんだ」

 

 海と原野の境目が見えた。

 そこは言うなれば、緋色の砂浜や緋色の海岸だろうか?

 そんな光景が横に広がっている。

 

 そしてSCP-097-JPも見つけることが出来た。

 

 誰かと何かを話している様子だ。

 空から見える範囲では、SCP-097-JPの話し相手は・・・黒色の猫のようだ。

 

 あの黒猫が、あの海の原因だろうか?

 一先ずは話しを聞くとしよう、その為に俺は1人と1匹の近くへと舞い降りたのだった。



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第8話

「よっと」

 

「君が、この地の主人かな」

 

 バサァ、と1人と1匹ではなく2匹の近くに降り立った。

 すると、黒い猫に話しかけられた。

 

「そうだな、おそらく」

 

 俺は曖昧に猫の問いに答える。

 実際に俺は、今の俺がこの緋色の原野の主人かどうか、分かっていないからな。

 

「うむ、警戒するのは分かる。君のテリトリーにこうして侵入しているのだからな」

 

「警戒はしてないさ、好きに居れば良い」

 

 目の前に居る猫と、海に浮かぶオウムガイ。2つで1つのSCPなんだろう。

 それもおそらくは、俺と同じ精神世界に存在するタイプだ。

 

「・・・」

 

「・・・」

 

 微妙な空気が流れる。

 その間、『SCP-097-JP(ミスターずぶずぶ)』は、コーヒーを取りだして飲んでいる。

 SCP-097-JPは、何が何だか状況がイマイチできていないが、一先ず落ち着く為に飲んでいる。

 オウムガイは、海の上を相変わらずプカプカと浮かんでいるようだ。

 

「・・自己紹介がまだだったな、私の名は『猫』だ。それ以上でも、それ以下でも無い」

 

「・・ご紹介感謝しよう。俺は、そうだな・・・『緋色』とでも呼ぶといい」

 

「我が名 呼び名は ノーチラス

 彼を救えた オウムガイ」

 

「えっ?えっと、俺を作りやがったクソ親父には『ミスターずぶずぶ』って呼ばれてました。

 猫さんには言いましたけど、こちらの緋色さまに助けてもらった?と思っています」

 

「「「「・・・・」」」」

 

 猫から始まった自己紹介は、無事に終わったが、話しが続く事は無かった。

 気まずい空気が、また流れ始めた。

 この場に居る生きる?者は、皆が心の中で(こっからどうしよ)と完全一致していた。

 そして、この微妙な合間を撃ち破ったのは俺だ。

 

「まぁ一先ずアレだ。仲良くしようぜ?」

 

「なぜ疑問形なのかな?」

 

 俺の言葉に猫は反応する。

 

「海に浮かぶは ノーチラス 先に見えるは 赤き砂浜」

 

 ノーチラスは相変わらずのようだ。

 

「えっとあのー・・・緋色さま文句を一言だけ言っていいですかね」

 

「なんだ」

 

 そしてSCP-097-JP、いやミスターずぶずぶが、文句を言いたいと居てくる。

 

「確かに思い返せば、俺のあの行動はどうかと思いましたがね。その結果が落とし穴で、その先が死体の山って言うのは、えっとですね・・・その・・・」

 

「あぁ、うん。悪かったな、言いたい事はよく分かった」

 

 ミスターずぶずぶの言葉に俺は全力で目を逸らして、脱兎の如く逃げる構えを取って・・・

 

「それでは失礼する」

 

 全力で大空に向かって飛び去った。

 目指すは、あの■■の所である。

 

「逃げたっ!」

 

 そしてミスターずぶずぶの渾身の叫びが、聞こえたような気がするが気のせいである。




 キャラがなんか違うと言う方は、諦めてくれ。作者の限界です。

・SCP-083-JP『ノーチラスと猫』
http://scp-jp.wikidot.com/scp-083-jp


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第9話

「はっはっはっ」

 

「ふっふっふっ」

 

 ・・・何コレ?

 いや、マジでなんだ。この状況は・・・

 緋色の原野から、戻ってきたら、■■とオランウータン(首飾り着用)が酒を飲んでは、笑いあい語りあっていた。

 うん、オランウータンは悪名高き『ブライト博士』に違いない(確定&決定)

 異論は認めない。

 

 さて、どうするべきか。

 あの1人と1匹?は、まだこちらに気がついていない様子だ。ってそれは、まだ姿を見えるようにしていないので、それは当り前か・・・。

 

「それで、SCP-444-JPはどうだったんだい?」

 

 姿オランウータンの癖に、流暢に日本語しゃべっていて笑えるんですけど。

 

「Euclid認定でもよさげですね。SCP-444-JP-02の方が、表に出ていた場合に限りって、話になりますがね」

 

 どうやら俺の事を話しあっているらしい。

 まぁ原作と言ってもいいのか分からないが、原作?的には、クラスなんて存在しないSCIPだった訳ですが・・・

 

「ふむ・・・本部への報告はどうするかね」

 

 ブライト博士、その考える人のポーズするの辞めてもらえません。なんか面白いんで

 

「むっ、誰かに馬鹿にされた気がするぞ」

 

「・・・あ~、多分気のせいでしょう」目を逸らす

 

 うわっ、ブライト博士鋭くない?

 んでもって、これは俺が、戻ってきている事に■■は、気がついているな。

 

「はぁ、この地に居るSCIPの保護が面倒だな。まぁお陰で、好き放題できる訳なんだが」

 

「・・・はぁ、玄関を開くんじゃなかった」ボソッ

 

 ■■は頭が痛そうに眉間を抑えた。

 どうやら■■が、ブライト博士を招き入れてしまったらしい。

 ここがこれから、どれだけ悲惨な事になるのか・・・全くもって想像できないな。

 いやだって、ブライトの記事ってそんなに読んでないからさ。それに実物に出会うのは、これが初めてな訳だしさ。あの短い会話だけでも、すでに何個かのSCIPが、ぶっ壊れていそうだな・・・

 まぁまだ顔を見せていないので、そろそろブライトと対面するとしよう。

 あー、なんかやだなぁ。したくないなぁー。はぁ

 

「よっと、戻ったぜ」

 

 ■■は俺が実体化すると、超人的な反応速度で、拳銃を引き抜き銃口を向けてくる。

 そしてブライト博士は、何かの拳法の構えを取った・・・その瞬間、俺の生存本能とも言うべきモノが、俺に殺気を出して、構えろと警告を出した。

 ■■の方は見ても何の感情も湧く事は無かったが、ブライト博士の方はヤバイと感じている。 

 これは一体、何なんだ・・・?

 



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第10話

こっから1日、10日、20日、30日での投稿になります


 一言で言おう、地獄絵図である。

 どうにか財団サイトへのダメージを最小限に抑えて、ブライト博士を緋色の原野に引き込んだが、地獄であった。

 

 ヤバイ、マジでヤバイ(語彙力の消滅)

 今、何回目の時間逆行だ?

 強すぎるんですけど、何なんだ?まじで何なんだあの拳法は・・・。

 

 っ!

 

 あぶねぇ。避けるのでも精一杯だ。

 

 特に『正拳突き』がヤバイ、宇宙が創造されてるってどんな威力だよ。

(Fate/の『ギルガメッシュ』の宝具の1つ『天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)』並み)

 

「どうだね財団神拳の威力は!」

 

「素晴らしく、クソだよ。こっちくんな」

 

 あっ、しまった。

 俺以外にもSCIPが、この緋色の原野に居る事を忘れてた。

 

 ・・・スマン、強く生きてくれ。

 

 俺は能力をフルで発揮する。

 それは幻覚を感じさせる能力、幻視・幻聴・幻触・幻臭・体感幻覚・幻肢などのありとあらゆる幻覚を感じさせる事により、あたかも現実であると錯覚させることが可能だ。

 例えば、トラックに轢かれる。なんて幻覚を見せるとすれば、主に扱う幻覚は『幻視』『幻聴』『幻触』『幻肢』の4種だろう。『幻視』でトラックを見せ、『幻聴』でクラクションなどの環境音を再現、『幻触』で周囲の空気やトラックにぶつかった際の触感、そして『幻肢』にて轢かれた際の痛みを感じさせる。この時点で死ぬ人は死ぬ。俺の能力影響下に存在していない人間にとっては、心臓麻痺で死亡とかそんな感じに思われるだろうな。『幻肢』で死ななかったら、『幻触』で血が流れ出る感覚を感じさせれば、嫌でも脳が勘違いを引き起こして死ぬ。

 

 それだけの事を、今の俺は世界規模でやることが可能だ。

 やるつもりは一切にないけどな。

 

 さて、そんな危険な力をブライト博士相手に使用する訳だが・・・問題は無いな(無慈悲)

 さぁ、パーティータイムだ(深夜テンション)

 


以下パーティータイム中

 

『流星群』…大量の隕石が降ってくる幻覚

ブライト対処法…連続チョップで粉々に切断する

 

『火災』…大地が真っ青に燃え盛る幻覚

ブライト対処法…『朝孔雀』に似た技で消し飛ばす

 

『竜巻』…文字通り竜巻の幻覚だが、時間が経つごとに風速が増加していく

ブライト対処法…自身を逆回転させて相殺させる

 

『落雷の雨』…大量の落雷が空から落ちてくる幻覚

ブライト対処法…どこからともなく棒を手に取り、雷を棒で防いでこっちに投げ飛ばしてきた(隻狼)

 

『恒星の衝突』…恒星同士を衝突させる幻覚、イメージがつかないので再現が辛い

ブライト対処法…息を吸い、思いっきり吐く(ふざけんな)

 

世界(ザ・ワールド)』…四方八方から無数の刃が飛んでくる幻覚(単純なのが良いのかな?と思って選択)

ブライト対処法…ゲッダンダンスで全回避(うっわw)

 

『ビックバン』…ソレっぽい爆発を感じさせる幻覚(イメージが辛い)

ブライト対処法…正拳突きで相殺

 

『質量攻撃』…とにかく重く硬くデカイ何かが突撃してくる幻覚

ブライト対処法…地面を掬い取って投擲で相殺

 

など


 

「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ」

 

「けほっ、げほっ、こほっ、ごほっ」

 

 一体どれほどの時間が経っただろうか?

 現実時間では、おそらく1週間も経ってはいないだろう。しかし精神の世界では、既に数百年は経ったような気がする。それだけ長い年月を戦った気がする。

 

 ガシッ

 

 気がつけば俺とブライト博士との間に友情が芽生えていた。

 

「ひゃひゃひゃ、ヤバイ奴らが手を組んだぞ」

 

「海に潜るわ ノーチラス」

 

「・・・キャラ変わってないか?」

 

 その様子を見ていたSCIPが1人と2匹居たとか、居ないとか・・・

 




http://scp-jp.wikidot.com/scp-710-jp-j
『SCP-710-JP-J 【財団神拳】』


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第11話

前回どうやってブライトと手と手をガシッとしたのか?
全てはイメージです。


 はい、ブライト博士との友情を深めた所で、現実へと戻ってきました。

 いやぁ~、強敵でしたね。ははっ(ドン引き)

 

「・・・終わったみたいだな」

 

 現実世界に戻ると、そこには■■がコーヒーを哀愁を漂わせながら、華麗に飲んでいました。

 ・・・ごめん、存在すっかり忘れてた。

 お詫びに腹の足しにならない、豪華な料理を奢ってやろう。

 味は楽しめる筈だ。味はな・・・

 

「いらん」

 

 あぁ!まだ何も言っていないのに・・・

 うわっ、幻覚のガンナーが、弾丸を撃ち込んできやがった。

 

 ・・・あっぶねぇ、消すの遅れていたら、蜂の巣になってた。

 

「ちっ」

 

 あっ、おい、今舌打ちしたな■■。

 って言うか、俺より幻覚、使いこなしてないか?

 

「■■君、■■君何日くらい、行ってた?」

 

「ん?あぁ、だいたい1日だ」

 

「ほうほう」

 

「それでd・・・」

 

 あ~ぁ、ブライト博士が、■■と情報交換を始めた。

 こうなると、話しに入っていけなくなるんだよなぁ・・・

 

 ちなみにブライト博士が、財団神拳?とやらが使える理由を、あの戦いの終わった後に、聞いてみたんだが、

 

『絶対にブライトには知られるなリスト』

(ありとあらゆるSCIPを利用した対ブライト博士閲覧防止&進入禁止&発見防止セキリュティ付き)

 

 をどうにか突破した先で、偶然見つけたので、習得したらしい。

 馬鹿じゃねぇの?

 もう一度、言わせて貰うが、馬鹿じゃねぇの?

 これ、本人の前で言ったら、またあの戦いを繰り返す事になるんだろうなぁ(白目)

 

 と言うか何なんだよ。

 

ありとあらゆるSCIPを利用した対ブライト博士閲覧防止&進入禁止&発見防止セキリュティ

 

 って、ありえないだろ。

 なんでそんなセキリュティ作っちゃうのかな?馬鹿なの?死ぬの?

 そして、発見防止のセキリュティが、付いてるのに、偶然で見つけて、進入禁止を突破し、閲覧防止を解除して、中身を見たブライト博士も大概だけどさぁ。

 いや、普通にありえないよなぁ。だってSCIPをフルに使っていた、って話しだし・・・

 

 う~ん、やっぱ財団に所属する博士って、頭がおかしい奴らばっかりだな(白目)

 

「それじゃ、行きましょうか。こいつ居ますし、Dクラス職員は残ってるんでしょ?」

 

「えぇ、そうですね。いざとなったら、無力化すれば良い。本部に連絡がついた時には、財団神拳を自己防衛の為に使ってしまった、とでも言い訳すれば良いですからね」

 

 考え事をしていたら、話しが進んでどこかに行く事になってる。

 まずはDクラス収納室に行くらしい。

 まぁ、このメンツ(緋色の鳥、実質的に無限バンダナ装備している次元大介な■■、財団神拳の継承者ブライト博士)が居るから、犯罪者なんておそるるに足らず、な感じがめっちゃ漂っているんだよなぁ。

 ・・・そういや、このサイトに居るSCIPって、どれくらい収容されていて、どんなSCIPが居るのだろうか?

 なんか、楽しみになってきな。



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番外1話「とあるSCP」

 突然だが、自己紹介をしよう。

 俺は『山田(やまだ) 徳井(とくい)』、転生者だ。

 何を言っているのか、理解できない?

 知らん、理解しろ(命令)

 

 んでまぁ、俺は転生した。

 この『財団世界』にな。

 財団世界って言うのは、俺がそう呼んでいるだけだ。

 この世界は『SCP』と言う、化け物や現象があり、ソレらを『確保』『収容』『保護』を主目的とする団体がいる。

 この事実に気がついたのは、5歳の前世の記憶が戻ってきた時だ。

 

 まさか、くじ引きで転生先を決められるとは思わなかった。

 んでもって、俺には『転生特典』と言う、神々の遊び心を貰っている。

 その名も、『四次元マンション(俺の命名)』だ。

 

 名前からピンときた奴が、居たと思うが名前の元ネタは『HUNTER×HUNTER』の奴だ。

 まぁ、似ているだけで、念による能力じゃないんだけどな。

 

 床や壁に手をかざしたら、出入り口『穴』を創れて、そこからマンション内へと、物資の搬入や生物の出入りが、できるわけだ。

 穴が閉じていなければ、誰でも出入りできて、複数設置もできて、部屋ごとに上限が異なる。

 穴に入ると、行き先の部屋の天井に穴の出口が開き、そこからマンションに入り、天井の入口は人や物が入ってきたと同時に閉じる。

 

 部屋には扉があり、そこが出口でマンション内に入った時の場所に出る。

 扉には鍵穴があって、マスターキーを使用すれば、その扉から好きな部屋に移動できるのだが、マスターキーを使用できるのは俺のみだ。

 んで、1部屋につき、1つの出口を創れてる。

 出口は魔法陣のようなデザインであるが、見えるのは俺のみで、出口を設定した部屋から、退室した場合は、入ってきた穴の場所に関係なく、必ず出口の場所に転送されることになるようだ。

 マスターキーの使用は除いた者とするけどな。

 

 後はまぁ、マンションの階層は5階建てで35部屋あり、穴を通過中に消せば切断にも使える。

 

 そんで今は、この能力が財団に認識されてしまい、確保され収容され保護されている状態だ。

 調べられるにあたって、部屋は一つだけと嘘をついた。

 快適な場所だが、軟禁状態なもんだから、協力する気はさらさらない。

 この世界を守ってるのは分かるけど、やり方が気に喰わないのが多々にある。

 まぁ、だからと言って、現状を破壊する気は無い。死にたくは無いからな。

 

 さて、ここまでは別に良いんだ。

 最近、財団の奴らが来ない。なんでかは知らないが、来る気配が無い。

 とりあえずマンション内に置いておいた、保存食で食いつないでいるんだが・・・

 何かあったのか?施設外に出口はあるから、脱出は問題ない。

 施設内にも幾つかあるから、問題は無い。

 ・・・どうするか?一旦、様子を見に行って見るか?だけど、ばれたら面倒なんだよなぁ・・・

 



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第12話

「・・・SCP-■■■-JPだね」

 

「あぁ、そうだが」

 

 ■■&ブライト博士と共に、サイト内を探索していたが、どうやら収容違反のSCIPを発見した。

 まぁ、現在進行形で、いくつも起きているから、今更感が半端ないが・・・

(収容違反SCIP→【SCP-444-JP(主人公と融合している)】【SCP-097-JP】【SCP-083-JP】【SCP-963(ブライト博士)】これくらいか?)

 

 しかし目の前のSCIPは不思議だな、オブジェクト番号を聞きとる事が出来ない。

 これは一体、どう言う事なんだろうか?

 

「このサイトは放棄された、持ち出せる。連れだせるSCIPは、全て運ばれたと思ったんだが?」

 

「そういや、収容施設が一回大きく揺れたなぁ。アレだったのか?」

 

「あぁ、多分それだ。施設の放棄決行時は、収容施設ごと離れるからな」

 

 聞くだけで分かる、財団の無駄な行動力。

 その無駄な行動力があるせいで、ヤバイSCIPが覚醒するんだよなぁ・・・

 なんだっけ?この世界にあるのか知らんけど、確か・・・そうっ‼、『塔』って奴だ。

 

 ・・・考えて、SCP-ノイズ-JP(オブジェクト番号が聞き取れなかったから)の顔、俺を見たときから明らかに真っ青だよな。

 まるで、俺の本来の性質を知っているかのような顔だ。・・・まさかな?

 いや、俺と言う事例がある。無いと思うのは、悪手になるだろう・・・

 しかし、ド直球に聞くには、■■とブライトが邪魔だな。

 隙を見て、あっちに招待して、聞いてみるか?

 

 まぁ、頭の片隅にでも、置いておくか。

 

「そうだ、■■」

 

「なんだ、SCP-444-JP-2」

 

 長ったるいな・・・

 

「・・・このサイトのSCIPはどれくらい残ってると思っているんだ?それとだな、長ったるいから『緋色の鳥』でいい」

 

「そうだな、確か憶えていただけでも24あって、内2つが無力化されていたかな?」

 

「まぁ無力化されたのは、実質的に1つだがね。ははは」

 

 俺は■■に話しを聞いた筈なんだが、ひょっこりとブライト博士が、報告書を持ってきた。

 その数、実に30枚くらいだな。

 

「このサイトのSCIPの報告書だ。壊れていないパソコンを見つけて、確認しコピーして来た、現在我々が確認できているのは『SCP-444-JP』『SCP-097-JP』『SCP-■■■-JP』でよろしいかな」

 

「そうだな、その位だな」

 

 ・・・見る限り『SCP-083-JP』も確認済み、と言えんな。

 

「この中から、コレとコレは確実に居ると思われるよ」

 

 ブライト博士は、楽しそうにそう言った。

 

「何人かDクラスが衰弱してたぜ」

 

 その後にSCP-■■■-JPが、現れてそう言った。

 



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第13話

 ・・・一人になったんですけど、どうすればいいと思いますかね。

 ■■もブライトもSCIPも皆、俺を置いて先に行ったから、つまり取り残されました。

 とりあえずブラブラと、移動してみればいいか?とするなら、どこに行こうかな?

 この壁に埋め込まれている地図を見る限り、ここから一番近いSCIP収容所は、『SCP-060-JP』のようだな。

 

 よし、行くとして、まずは事前情報だな。

 ここにまだ存在するだろうという、SCIPとしては挙げられていなかったが、このSCIPは残って居るのだろうか?

 この報告書を見る限りは、透明人間ってやつだな。

 もしかしたら、俺と同じ精神世界の住民で、俺が他者の感覚を改変するなら、さしずめこのSCIPは、自身の情報を改変するのだろう。

 レベルをつけるなら、低すぎて自力で改変することができない。

 だからこそ、報告書のようになっている。いや、もしかしたら、そんな事ができると、知らないだけなのかもしれないな。

 

 んで、到着したわけだが、な~んにもないわ。

 扉をすり抜けて見たが、ただ施設の外が、広がってるだけだ。

 面白みのない、結果だな。

 まぁ、ウダウダ言っても仕方がないので、とっとと次に行くとしよう。

 

 えっと次に近いのが、『SCP-101-JP』だな。

 このSCPは、ここに残っている確率が高いらしい。

 報告書を読む限りは、木だもんな。確かに残っている確率は、高そうだ。

 子ども?果実?の方は、移動させられてるんだろうけどな。

 

 おっと、通り過ぎるところだった。

 移動速度が速すぎるのは、考えものだな。

 

 んで、さっきみたいにすり抜けると、存在しているな。

 元気に収容部屋で、わっさわっさと揺れている。

 ・・・こいつには興味がないから、博士どもに任せるとしよう。

 話し相手にはならないだろうからな、近づいても面白みがないって奴だ。

 

 そんじゃ次だ。

 次に近いのは、『SCP-515-JP』の収容場所だな。

 徒歩でだいたい10分はかかる距離だが、俺なら1分とかからずに到着した。

 到着できるではなく、もうすでに到着している。

 さーて、すり抜けまして、おっどうやら移動させれていないみたいだ。

 この報告書を読む限りは、こういう奴らこそ簡単に移動させられると思ったんだが、なんで移動させていないんだろうか?

 

 ちなみに今さらになるが、さっきから俺の呼んでいる報告書は、実際には存在しない。

 能力を応用して、生み出した俺専用の報告書だ。まぁ能力に暴露させれば、誰でも見て読むことはできるけどな。

 

 んじゃま、さっそく接触するとしようか。

 文字や血液といった媒介がなくても、俺の世界へと引き込めるようになった事に気が付くのは、いまから数十分後であり、その数十分間の間にどうやって接触すればいいのかと、考え続けていたのは内緒話だ。

 




http://scp-jp.wikidot.com/scp-060-jp
『SCP-060-JP 【不在の人】』

http://scp-jp.wikidot.com/scp-101-jp
『SCP-101-JP 【Peach tree(桃の木)】』

http://scp-jp.wikidot.com/scp-515-jp
『SCP-515-JP 【軍用犬の駒】』


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第14話

 さて、『SCP-515-JP』と出会った訳なんだが、バリッバリに警戒されました。

 いやー怖がらせるつもりは、一切ないんだけども、本能っていうのかな?そういうので、バリッバリに警戒されています。

 話し合いになりそうにないなぁ・・・

 目の前のグループのリーダーらしき犬獣人は、ゲロ吐き失禁コンボだもんね。

 ちっ、面白みのない結果だ。

 いや見る分には面白いんだけどな、想像していた結果からして大失敗だな。

 

 はぁ、ここ以外のSCIPは、面白くなさそうなんだよなぁ。

 とりあえず、博士達に合流しに行くとしようかな?

 確かこっちに・・・おっ、あった、あった。案内掲示板・・・よし、向こうか。

 

 この距離だと、飛んで30分だな。

 いや、本気を出したら1分で行けるな。

 

 ほい、とうちゃーーー・・・

 やっべ、行き過ぎた。

 施設の外に出ちゃったよ、やっぱり本気で飛んだらダメだな。コレは・・・

 

「真っ暗な世界だー」

 

 ・・・・・・いやっ、まって!!

 宇宙じゃん、ここ宇宙じゃん!!!(大事なことだから2回言った)

 ってか、地球どこだよ。帰れないじゃん、このままだと帰れないじゃん。

 そしてうるさいんだよ、ピー、ピピー、ピーピー、ってさぁ。こういうのなんだっけ?モールス信号だったかな?とにかくだ、うるさいんだよ。喰らい尽くしてやる。

 

―緋色の鳥、お食事中―

 

 けふ、ふぅ中々濃厚な味だった。

 喰らっている時、めっちゃうるさかったけど、まぁいいか。もう全部食べちゃったからな。

 んーで、これからどうすりゃいいんだ?

 と言うか、地球どこだよ。

 まいったなー、本気を出して飛んだだけで、宇宙まで飛び出すとは思わなかった。

 地球のある方向が分かんなくなちまったから、戻ることができないぞ・・・

 くそっ、もうちょっと他のSCIPを見ていたかった。

 特に『SCP-682(クソトカゲ)』とか、『SCP-076(アベル)』とか・・・あぁ、後は報告書で見たこの『SCP-294(コーヒー自動販売機)』は使ってみたかった・・・

 

 俺が一体何をしたって言うんだ・・・。うん、色々とやらかしてますわぁ(遠い目)

 死んでしまって、緋色の鳥に成り代わって、でも知らん内に大量殺戮をやって・・・

 数え始めたらキリはあるな。

 これからやらかしていくんだろうと思う事柄を考えたら、なんか頭が痛くなってきた。

 

 あー、真面目にどうすれば・・・あっ、そうだ。一先ず緋色の世界に行くか。

 うん、これは良案だな。さて、思い立ったが吉日だ。さっそく行くとしよう・・・

 




http://scp-jp.wikidot.com/scp-515-jp
『SCP-515-JP 【軍用犬の駒】』

http://scp-jp.wikidot.com/deleted:scp-1548
『SCP-1548【記録用:The Hateful Star / きらいきらい星】』

http://scp-jp.wikidot.com/scp-682
『SCP-682【不死身の爬虫類】』

http://scp-jp.wikidot.com/scp-076
『SCP-076【〝アベル"】』

http://scp-jp.wikidot.com/scp-294
『SCP-294【コーヒー自動販売機】』


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