Fate/Grand Nap (湯瀬 煉)
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第1話 バーカーカー、君臨

 本当はFate/stay night関連の話書きたいけれど、色んなサーヴァントがまったり過ごす感じのが書きた過ぎて結局FGOものを書くことにしました。第一部の第3特異点までしかいけてないけどもね!! ネタバレとかで話の展開は知ってしまったけれど。

 感想とかでこのカプ書いて欲しい! とかいってくれると嬉しいです。書けたら書きたいから。調べて頑張って書くから。
 


 サーヴァントとは、魔術師世界における最強の使い魔である。過去未来、あらゆる時代の英雄の魂のコピー品であり、人の姿をとりながら人ならざる超常の力を持ち、そして自らの契約者、マスターのために尽力する。

 それが英霊(サーヴァント)である。

 

 ここ、人理保障機関カルデアはサーヴァントと協力し霊長たる人類の百年先の生存を保障する機関であり、人理焼却という惨事を見事防いだという偉業を為した魔術師が所属する場所である。

 カルデアに所属するその魔術師の名は、藤丸立香(ふじまるりつか)。日本国籍の、一般人の中から発掘されたマスターである。

 

 

 

 

 藤丸立香。十七歳、身長158センチ。胸の発達は至って平凡。格別可愛いというわけでも、不細工というわけでもない、と自分では思っている。バイトとしてこの施設にきてから、どのくらい経っただろう。ごろん、とマイルームにある簡易ベットの少し硬い感触を肌で感じながら目を閉じてゆっくり休もうとした瞬間───

「先輩っ!」

「はぅわ!? は、はい! すいません!!」

 これが漫画ならば「バーン!」という擬音が用いられていただろう、凄い勢いで紫の髪で右目を隠した少女が入室してくる。ちなみに、カルデアは全室スライドドア式のため本当にバーン! という音が鳴ることは無い。それはさておき、私は少し寝ぼけていたのも手伝ってつい授業中に先生に起こされたみたいな反応をしてしまう。

「あっ…もしかして、寝てましたか? 突然すいません」

少女は申し訳なさそうに眉をハの字に曲げながら此方の顔をのぞき込む。昼寝を起こしたくらいでそんなに気にされても逆に困る。心配させぬよう、口角を上げながら両手を振って弁明した。

「ううん。気にしないでいいよ、マシュ。ボーッとしてただけだから。……それで、どうしたの?」

 少女の名はマシュ。マシュ・キリエライト。私のサーヴァントで、ずっと一緒に旅をしてきた大切な仲間で、友達。私のことを先輩って呼んでるけど、カルデアに先に来たのはマシュの方。そこらへんの事情は置いておいて……。マシュが慌てているということは、なにか緊急事態が起こったのだろうか。

「いえ、そんなに緊張なさらずとも、大丈夫ですよ。今日はレイシフトお休みだったはずなので、ちょっとお出かけしませんか?」

私の顔に緊張が走ったのを見逃さなかったらしく、安心させるように微笑みかけると少し首をかしげて手を差し伸べてくる。どうやら、レイシフトをしているとき以外は一切運動しない私を心配してくれているようだ。なんだか、妹が出来たみたいで小恥ずかしいような、嬉しいような感じがする。問題ない、といってこのままマイルームでごろごろしていても良いけれど、折角マシュが誘ってくれたんだ。素直についていく方が彼女も喜んでくれるだろう。

「うん、分かった。どこ行く?」

ベットから起き上がるとマシュの手を両手で握って目を輝かせる。行こうと思えばもう、どこにでも行ける。マシュはあまり外に出たことが無いというし、たまには全力で遊んでも誰も怒らないだろう。その点私はよく友達と街へ繰り出していたし、色々な場所を案内できるはずだ。マシュはかなり見た目も良いし、服屋へ行って色々なコーディネートを試しても良いかもしれない。

「シミュレーションルームです。私も、もっと先輩の役に立てるようになりたいので」

「あー……うん。嬉しいよ、マシュ。行こうか………」

 マシュは女の子である前にサーヴァントだった。ええ、察していましたとも。少しは想定していましたとも。

 とりあえず、今度は私からマシュを誘って外へ行こう。と内心で決心を固めながら、ゆっくりとマイルームを出た。

 

 

 

 

 

 レイシフトとは、人間の魂をデータ化して、違う時間軸、世界線へ移動させる技術のことでこの技術を使って変えられてしまった過去へ飛んで歴史を元に戻すのが、私の最初の任務だった。この歴史を元に戻すというのが中々難しい。聖杯という凄い魔力を持つ物を悪用されることで歴史がねじ曲げられていたのだが、その聖杯を持つのはサーヴァントであり、そのサーヴァントを倒さない限りは歴史は歪んだままになってしまうのだ。勿論、唯の魔術師、そもそも魔術師ですら無い私がサーヴァントに敵うはずが無い。そこで、サーヴァントを召喚して戦わせることで、その時代ごとの黒幕を倒してきた。シミュレーションルームというのは、私が召喚したサーヴァントたちの要望で作られた部屋でサーヴァント間で腕試しをしたり、敵のホログラム? とかいうものを出して腕を磨いたりする。

「こう、実力不足で悩んでいたらある方が協力を申し出てくださいまして。折角なので先輩に見て貰いたいな……と」

と、マシュは顔を恥ずかしそうに赤く染めながら私の隣を歩く。成長する様を見て貰いたい、というのは可愛いと思うのだが、女の子同士の楽しいお買い物を想定していた私としては複雑だ。

「まあ、マシュが私のためにって頑張ってくれるのは嬉しいし、マシュが頑張るっていうなら応援するよっ…!」

「はい………!」

 さて、相手というのは誰だろう。見る側としてはとても気になるところだ。やはり、同年代の女の子であるアルトリアだろうか。それともまたキャスターのクー・フーリンだろうか。期待しながらシミュレーションルームの前で、マシュと一緒に待ち始める。

 5分後、未だに相手は来なかった。

「…………ねえ、マシュ」

「……………クー・フーリンさんに頼んだのですが、来ませんね」

中々気まずい雰囲気になり始める。

 クー・フーリンというのはアイルランドの英雄で、気前の良い兄貴だ。槍の扱いが上手で、魔術も使える。そのため、ウチにはランサーとキャスタークラスの二人のクー・フーリンがいる。英霊というのはあくまで英雄の魂のコピーらしいので、こうやって同じ人が二人いることも珍しくない。

 先程いったとおり、クー・フーリンは兄貴肌の男だ。約束を破るようなタイプとは思えない。……と、思っていると朱槍を持った青タイツ……ランサークラスのクー・フーリンが私たちに近づいてきた。

「悪ぃな、嬢ちゃん。キャスターの俺なら途中でギルガメッシュに捕まって今動けず、だ」

「そ……そうですか…」

「あうぅ…王様かぁ…」

なるほど、ランサーの方は伝言役だったらしい。

 ギルガメッシュというのは、カルデアにいるサーヴァントのうちの一人で、なんでも世界で最初の英雄譚の主人公らしい。ウルクというメソポタミア文明の都市の王様で、唯我独尊を体現したような人だ。強いし、態度も王様としては当たり前だし、たまに優しいところもあるから憎めないのだが、たまに他のサーヴァントにちょっかいをして喧嘩になるのが玉に瑕というか…。

「………すいません、先輩。出来ないみたいです。ここまで連れ出したのは私なのに無駄足を」

「あっ、えっと……気にしないで、マシュ! 今なら、なんか強そうなサーヴァントが喚べそうな気がするもん!」

「……………………え?」

 マシュの申し訳なさそうな顔をみてとっさに叫んだが、首をかしげられてしまってはなんともいえない虚無感に襲われる。だが、吐いた唾は飲み込めないとかいうらしいし、このまま強引に押し通すことにした。

「な、なんだか運が来てる気がするの! 私がこれから喚ぶサーヴァントに、マシュの相手は頼もう!」

 

 サーヴァントの召喚は、本当は一人のマスターに一人だけらしい。でもカルデアは、カルデアそのものが擬似的なマスターになることで魔力を供給して、複数のサーヴァントを召喚できるようにしてある。だから、私のサーヴァントはマシュだけだけど、私と契約しているサーヴァントはたくさんいるのだ。割とこれって凄いらしい。

 ともかく、私とマシュは英霊召喚に必要なシステムが整えられた部屋に入ると、教わった手順を踏んで新しい英霊を召喚することにした。必要なアイテムは、最近使い道が無くなってきて貯まってたしね。

 

素に銀と鉄、礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)……繰り返すつどに五度、ただ、満たされる刻を破却する! ─────Anfang(セット)。 告げる、汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄る辺に従いこの意、この理に従うならば応えよ。誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者。我は常世総ての悪を敷く者。汝三大の言霊を纏いし七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守人よ───!!

 

 魔方陣の中心が青く、怪しく光り始める。秒ごとに輝きを増す光につい目が眩んで顔を背けた瞬間に、儀式は成功した。

「────まあ、我が威光を前に目を覆うのは道理よにゃ」

青い光があったその場所に目を向けると、明らかに人ならざる物が腕を組んで直立していた。いや、人ならざるというか。

「──あの、猫……?」

そう、猫が金ピカの鎧を着て、ドヤ顔(?)で此方を見ていたのだ。

 猫(?)は尊大に、こくりと頷きその真名を契約者へ告げる。

「然り。忌々しい狂化スキルとやらで言語機能がだいぶ衰えてにゃあ……ついでに霊基も変えてみた。 さて、名乗ってやろう。その脳裏に刻み込み、子孫代々語り継ぐがいい。 サーヴァント、()()()()()()。ギルガメッシュである。精々よく仕えよ」

 

 「……という事情なんですけど、その、戦えたりします…?」

とりあえず自分を落ち着かせて、召喚した事情と確認だけする。

 私の知っているギルガメッシュは、猫では無く金髪に赤い目を持つ美しい、というか格好いいというか、とにかくそういう男だ。それが、目の前の自称ギルガメッシュはふわっふわのもっふもふ。実に庇護欲をそそられる見た目をした金の毛色を持つ猫なのである。鎧は確かにギルガメッシュの持つそれと同じだが、ペットのような見た目のこの猫王に戦闘が出来るとは到底思えない。

「……フン。よもや有象無象の相手をさせるためにこの(オレ)を喚び出すとはな。しかも我が戦闘力を疑うとは……如何に貴様が無知とはいえ赦される事では無いぞ」

だが、戦えるかどうか以前に、普通に怖い。狂化している影響なのか、惜しみなく殺意を私に向けてくる。いや、猫だから見た目は可愛いんだけど緊張を緩めたら死ぬ、という確信がある。

「いえ、王様。これは私が頼んだことです。なので、先輩を責めないであげて下さい。罰なら、私が受けますから」

 猫王(バーサーカーのギルガメッシュ)を召喚して3分後。私とマシュは全長30センチほどの猫に頭を下げていた。土下座も退けザ。きっと、サラリーマンも真っ青な綺麗な土下座である。

「はぁ……。顔を上げよ、雑種ども。所詮は狂戦士と身を堕とした我が身よ。王であるアーチャーやらキャスターやらであるならばやや赦されぬ所もあるが、戦場に身を投じることを至福とした側面の(オレ)であるならば、赦し、そこな小娘の相手くらいはしてやろう」

 要約すると、自分はバーサーカーであり戦闘が好きだから、王の中の王だが超特別に相手をしてやる、とのことだった。

 つまり、バーサーカーになったギルガメッシュは戦闘狂らしい。

 

 

 

 

 

 シミュレーションルーム。広い草原と快晴。戦闘では無くピクニックをする方が適切だと思われる。向き合うのは、盾を構えたマシュと、黄金の鎧を着た猫の王、ギルガメッシュ。王はただ相手を見下ろすようにふんぞり返ると、視線で『そっちから来い』と伝える。コクり、とマシュが頷いた瞬間に、戦闘が開始する。盾を右手でもち駆けだすと猫へ右から殴りかかる。速度は人間の知覚を超え、見ている私からは瞬間移動しているようにしか見えなかった。だが、王はそれに動じなかった。後方へ一歩跳ぶと、目の前を盾が掠る。それと同時に背後の空間が歪み、黄金の波紋が生じる。ギルガメッシュの宝具の一つ、『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』。マシュは攻撃のために前傾姿勢となっている。この宝具を凌ぐのは難しかろう。いや、体勢が万全であっても、この攻撃から逃れるのは至難の業である。なぜならば、生じた波紋から宝具なみの異常な魔力量を孕んだ武具が十五本撃ち放たれたからだ。速度は弾丸並み。直撃すれば死傷は免れない。

「あっ」

マシュが、危ない────!

咄嗟に駆けだしそうになったが、相手をするマシュもサーヴァント。身のこなしは、流石だった。左方向へ振っていた盾を目の前に翳すと武具の雨を凌ぐ。勿論、衝撃を受け止めることは難しい。着弾した武具のダメージで十五メートルほど後ろへ吹き飛んでしまう。地面を転がって衝撃を和らげるが、それでも威力は壮絶だ。

「──ッく、ぁ……」

「どうした? その程度か、雑種。この(オレ)を相手にするならばもう少し抗ってみよ」

 波紋が生じる。中より現れた刀身から柄まで全てが金で出来た剣を引き抜き、右手で持つと剣先を倒れたマシュへ向ける。即座にマシュに刃を向けた剣が、槍が、斧が、三十本ほど展開され、一斉に放たれる。例えるならば子鹿狩りだ。手足が震えて立てないでいるマシュへ向けられた武具は間違いなくとどめとなるだろう。勿論それは通常ならば、の話だが。

「んぁっ!!」

あえて前方へ身を投げ出し、武具を避けると共に武具が地面を破壊する衝撃波を利用して加速、滑空するように盾を左下から振り上げ、その小さな体へ迫っていく。

「───────────ほう?」

猫の目が、すっと細められる。向けられた盾に五本の槍を射出して勢いを殺し、猫王もまた前方へ駆けだす。即ち、盾を槍で止められたマシュへ。振り抜くのは右前足に持った黄金の剣。狙いは首筋、アーチャークラスの姿を見ていると想像も出来ないだろうが、ギルガメッシュは本来、わりと自分で剣や斧を振って戦っていたらしい。その剣はセイバークラスのサーヴァントに比べれば稚拙だったが、マシュを仕留めるには充分すぎるものだった。

 

 

 

 

 

 

「……王様、やっぱり強いんですね」

「当然であろう? というか、小娘はよくもまあ無事であったにゃ」

「シミュレーションルームとは、そういう場所ですから」

シミュレーションルームにて首を刎ねられたマシュは三十秒後、首の傷が再生した。シミュレーションルームはあくまで腕試しの場。命のやりとりは出来ないらしく、死傷も直ちに治る。ともかく、結果はマシュの惨敗だった。

「まあ、少なくとも猫だからといって戦えぬだろうなどという貴様の杞憂は、晴れたであろう?」

ギルガメッシュは、汗一つ流さずニカッと笑ってみせる。いや、猫だから多分、だけど。

「うん! さすが王様! ……あ、そうだ。お部屋決めなくっちゃ」

 

 さて、マシュとの約束も果たしたし、あとはギルガメッシュ王のことをやらなくてはならない。といっても、お部屋くらいしか決めることは無いが。

「ほう? 部屋とにゃ」

「一人に一部屋、お部屋があるんだけど……相部屋とかになるかも。どうする…?」

少しばかり悩むと思っていたのだが、ギルガメッシュの返答は凄く早かった。即答だった。

「……? 貴様の部屋に行けば良いのであろう?」

早すぎて、というか言葉が衝撃過ぎて口をパクパクさせる。マシュも隣でパクパクしている。

「なんだ。猫といったのは貴様の方であろう。猫…すなわちペットならば飼い主の布団に潜り込むくらいは常識よにゃあ?」

……………わりとギルガメッシュ王、というかバーサーカーの王様は変態なのかもしれない。

 

「雑種ー。(オレ)が呼んでおるのだ。さっさと返事をせよ、雑種ー」

ジト目で猫王を見つめ始めたとき、ふと奥の方から声がした。先程クー・フーリンで遊んでいたギルガメッシュが帰ってきたらしい。そう、アーチャーのギルガメッシュである。

「あ、王様。どうしたんですか?」

猫王とまったく同じデザインの金の鎧を来た紅顔の美青年、私が知っている『人間の』ギルガメッシュ王だ。

「ああ、犬めと戯れてやっていたのだが一瞬の隙を突いて逃げおってな。貴様らこそ如何した? シミュレーションルームなど滅多には来まい?」

要するに、クー・フーリンと戦闘なり舌戦なりしていたら、一瞬目を離した隙に走ってギルガメッシュの視界から逃げられ、暇になったから来た、という感じだろう。実は猫になった王様が現れまして……と説明しようと振り返ったところで、肝心の猫王がいなくなっていることに気がついた。

「貴様が、武芸もロクに出来ぬくせに我が名を騙る雑種か? アーチャー」

頭上から、声がした。要するに、猫ギルが頭の上に乗っかって仁王立ちしていた。私の身長は168センチで猫王が30センチくらいだから、人間のギルガメッシュ王を少しだけ見下ろす形になる。

「──ほう。バーサーカー、か。獣風情が人の王とは、何の冗談だ? (オレ)の名を名乗る贋作が」

円満に紹介しようとしたのに、猫王が軽く暴走したおかげで、空気がずっと重くなる。私は慌てて頭上の猫を持ち上げると、ぎゅうううっとアーチャーのギルガメッシュから猫王を庇うように抱きしめる。

「もがっ……雑種! 貴様出会って初日で………ッ! というか胸の脂肪が我が呼吸を阻害して至福で死────」

「だ、黙ってくださいっ。こう、そこでモゴモゴしゃべられると私も恥ずかしいんですからっ…! ええと、王様。この子は、私のペットなので、その……見逃してくれませんか?」

胸元に暖かい息が当たって変な気分になりかけるが、相手は猫、相手は猫と心の中で繰り返して自分を落ち着かせた。此処でギルガメッシュ王どうしで戦闘される方が大問題だ。

「……フン。貴様がそういうならば、見逃してやらんでも無いが」

 

 

 

 

ギルガメッシュ王(弓)を落ち着かせたあと、カルデアの皆に猫王を自分のペット兼サーヴァントとして紹介した。そして今はマシュとも別れてマイルームで猫王と二人きり、である。

「もう、なんで自分に対してあんな態度……」

「すまんにゃ。だが王というのは常に一人で在らねばならぬが故ににゃあ、アレを王と認めるのは、なんというか……にゃあ……」

ギルガメッシュという王様は、つくづく面倒くさい性格をしているようだ。まあ、其所はそこで良いんだけど。と、ため息をつきベッドに転がる。いつも通りのやや硬いベッドで、冷たい感触。だが、ぷにっと頬を暖かい手、いや肉球が触れた。

「…………どうしたんですか、ギルガメッシュ王」

「もう猫ギルでいいにゃ。心の中で何度も猫王だの何だの呼ばれているのはお察しだニャ」

なぁんだ、バレてたのか。と少しだけ笑うと、寝転がったまま猫ギルを見詰める。モフモフで可愛いけど、少しだけどきっとした。

 

「そうさにゃ……(オレ)は英雄王というより、戦闘狂のような側面があるからな…。戦芸王とでも名乗っておこうか。 サーヴァント、バーサーカー。『戦芸王』ギルガメッシュ。今日より貴様に力を貸してやる。後悔はさせぬが故に、付いてくるが良い…………にゃ」




 サーヴァント情報

戦芸王 ギルガメッシュ(猫ギル)

何故か猫化したギルガメッシュ。もっふもふのふわっふわっだが、戦闘能力や冷徹さは変わりない

クラス:バーサーカー
属性:混沌・善

筋力:B++
耐久:B+
敏捷:A
魔力:A
幸運:A
宝具:EX

スキル

対魔力:B
魔術への耐性。無効化はできず、ダメージを軽減するのみ。だが、宝物この中に無数に対魔力宝具があるために殆ど問題にならないという。

黄金率:A
人生に於いて、どのくらいお金がついて回るかについてのスキル。Aランク相当ともなれば、一生遊んで暮らしても金には困らない。

カリスマ:A
軍を率いる才能。最も優れた王と称えられただけありランクが現状最高値。ここまで来ると魔力・呪いの類である。

神性:B
3分の2が神という出自のため本来はA+相当だが、ギルガメッシュ自身が神を嫌っているためランクダウンしている。

コレクター:EX
より品質の良いアイテムを取得する才能。レアアイテムすら頻繁に手に入れる幸運だが、本人にしか適用されない為マスターに恩恵はないという。

狂化:D
筋力と耐久のパラメーターをランクアップさせるが、言語能力が不自由になり、語尾が何故かニャになる。コレに合わせて、本人も霊基を猫に変えたという。

千里眼:EX
平行世界含めた全ての未来を見通す目。相手の奇襲などを見切れる。

紅顔の美猫:A
老若男女構わずに声や容姿で相手を魅了できる。

宝具

『王の財宝』
ランク:E~A++
種別:対人宝具

人類が生み出したものならば何でも入っているというチート宝具。過去未来関係なく、人類の生んだ才能、技術、その全てが収納されている宝物庫とその鍵が宝具。空間と蔵を接続して内容物を撃つのが基本戦法。
おもな収容物
・乖離剣エア
下記参照
・天の鎖
神性が高いほど、つまりは神に近いほどに拘束力が強まる鎖。ホーミング機能付き。
・ゲイボルクの原典
使用禁止。心臓必中の槍。
・矛盾した矛
高確率で相手の防御を突破できる矛。
・矛盾した盾
高確率で相手の攻撃を防げる盾。
・黄金の鎧
ほぼいつも着ている鎧。真名解放した宝具並の威力で以て攻撃しない限りは破壊は不可能。
・原罪
エクスカリバーの原典。ビームが撃てる。

『天地乖離す開闢の星』
ランク:EX
種別:対界宝具

乖離剣から放たれる究極の一撃。一薙ぎで時空断裂を生み出し、防御回避が困難な一撃を放つ。同等の威力を持つか、圧倒的な防御力を誇る防具でのみ対抗可能と言われる。


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第二話 見知らぬ、料理

 なんで皆さん、このカップリング書かないんですかね?


 カルデアの食堂。私、藤丸立香十七歳は机に突っ伏していた。

「あう~……エミヤぁ…お腹…お腹が空いて死ねそうだよ…」

「………死ねそうとは…。君は自殺志願者だったか?」

私の会話相手は、調理場に立つ褐色に黒いスーツの男の人──エミヤだ。

「そんなこと無いよ? 死にそうって程緊迫はしてないけど体内緊急事態宣言は発令されてるってだけ」 

彼はれっきとした私のサーヴァントの一人なんだけど、料理が上手いのでここでカルデアの全職員(私含め)、全サーヴァントの食事を作って貰っている。………というか、エミヤが召喚されてすぐに「ここの食環境は悪すぎる! ええい、私がやるッ!」って言いだしたんだけどね。

「はぁ……まあ、いいが。何が食べたい?」

 

 

 

 

 

 昼食のリクエストをして、上機嫌に食堂を立ち去ったマスターの事を思い出しながら、下ごしらえを進めていく。材料と道具。まずは道具があるかを確認し、次に道具がちゃんと扱える環境にあるかを調べる。

 ……………。

………………………無かった。

 

「……はぁ……。 投影開始(トレース・オン)

脳内にあるイメージを形となし、包丁を作り出す。普通の包丁で捌いても良いが、やはりこの料理にふさわしいのはこちらの包丁だろう。

 他のサーヴァントが怒らなければ良いが。と小さく呟きながら他の道具を揃えていく。

 

 

何を作っているんだい?

 

 優しい、木漏れ日のような声がした。ふと前を向くと、緑の髪の女……いや男……どちらとも取れるし、どちらとも取れない、不思議な魅力を持った英霊がいた。

「君は……エルキドゥ、だったかな?」

こくり、と頷く英霊────エルキドゥ。その動きはどこか幼く、可愛らしい。

「それで、何を作っているんだい?」

「………そうだな、君達の時代には無かった料理だろうしね。………えっと、寿司

「………スシ? それは、どういうものなの?」

ぐいっと身を乗り出して前のめりになったエルキドゥから、ふぃっと目をそらす。見た目は女の方に近いため、身を乗り出されると恥ずかしいし、なにより服がダボダボのために、()()()()であった。

「なんというか……この生身の魚をごはんの上に載せて、食べる感じかな。生で食べる人も居れし、魚の部分…刺身を炙っても良い物もあるが……基本的には醤油を付けて食べる」

「なん………だって………!?」

西洋では魚を生で食べる文化は無かった気がする。もっとも、今では日本のスシは全世界に和食の代名詞として名を轟かせているが、過去に死んだ英霊には馴染みがなかろう。というか、江戸時代以降の日本人くらいしか寿司には馴染みがない気もする。つまりまあ、マスターからのリクエストはちょっとした冒険なのだ。

「ねえ、エミヤとかいったかな? 君は、僕たちを毒殺しようとしているのかい? それとも生身の魚って食べられないって知らないのかな? いや、そうなんだろう? 実はね、生魚って凄く危ないんd……もぐ……もぐもぐ…」

とりあえず、毒殺だの何だのといわれては硝子の心が傷つく。捌いていたマグロの赤身の部分をすばやく醤油に浸け、エルキドゥの口の中にねじ込む。百聞は一見にしかず、だ。

「────美味しいッ!? すごいよエミヤ! これすごく美味しいよ!」

 エルキドゥの興奮っぷりに自然と頬を緩ませると、二枚目も食べさせてやる。

「もう少しで昼食だよ。皆を、呼んできてもらえるかな」

「勿論だとも!」

お使いを頼まれた子供のように食堂を飛び出たエルキドゥに再び笑うと、調理に戻った。二品目は、夏だし、そばにでもしようか──────。

 

 

 

 

 

 次の日、アーチャーのギルガメッシュと、エルキドゥが真横に並ぶ構図で、私の調理場は覗かれていた。

「………………どうしたのかね」

「君の作る料理が美味しいと言ったらね、ギルが見たいっていうから連れてきちゃった」

「そういうわけだ。見せてみよ、貴様の腕を……!」

なるほど、分からん。

「…………………なんでも作ってはやれるが、なにか要望は?」

とりあえず、頼まれたならば作ろう。それが料理人だ。……いや、私は料理人ではないのだが。

「君の料理ならなんでも……」

(オレ)はステーキが食いたい。作ることを許そう!」

「…………ステーキ、だね」

ため息をつきながら、肉は無かったかな…と冷蔵庫の扉を開けた途端に、ボトン、と背後で音が鳴った。

「………これを使え」

まさかの材料指定だった。

 

 とりあえず、鉄板を熱し始め適温になるまでに塩コショウ、皿、等を用意していく。ソースも作りたいところだが、上品の肉に下手に味付けをするのは勿体ない。あえての塩こしょうだけ。もちろん、かけるかかけないかもセルフサービスだが。

「焼き加減は、レアか? それともミディアム?」

「「ミディアムレアで」」

仲が良いな……と呆れるべきか、二人の声がピッタリと重なるのを聞き届け、熱した鉄板の上に二つの肉塊を載せる。ジュウウウっと肉の美味しそうな音が鼓膜を襲い、鼻腔を香ばしい匂いが蹂躙するが、まだダメだ。じっくりと焼き上げなければならない。

「……! まだ…まだか、雑種!」

「すでにかなり美味しそうだねっ……!」

もう少し…もう少し……。今だっ。

 

 火を止めて余熱で肉を仕上げながら、皿に一枚ずつ載せて、二人にはナイフとフォークを渡す。ついで、焼き肉屋にあるような小皿を二枚、レモン汁と塩コショウをそれぞれ入れて渡すと、ちょうど良い感じになった肉を、コトン、と二人の前に指し出す。

「───ステーキ、完成したよ。どうぞ、召し上がれ」

 

 ………以降、なにかと英雄王とエルキドゥ、特にエルキドゥからは気に入られたらしく、度々話すようになった。




 エルキドゥ×エミヤは絶対良いコンビになるんだ……。
多分、これからもちょくちょく二人のカップリングをここでやる…はず。
抑止力コンビだし、大丈夫だよねっ!


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