勇者に誘拐された魔王様 (八月朔日)
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勇者に誘拐された魔王様
「でねー、アジグリ草取ってたらボアズの変種みたいなのが襲ってきてさー」
今、私の目の前で能天気に話している女、アジグリ草はまっすぐ3メートル下に生える根の先端に一個だけある根茎が高級食材なんだけれどもそれを小さくて体長10メートルのボアズの相手をしながら取ってきたとか言ってるアホ。
勇者、マリアベル・リーゼット。種族一応人間、3年前魔王城に私を殺しに来てなぜか私を秘境の地の奥地にたたずんでいた屋敷に誘拐した頭がおかしい女。
「まあそんなこんなで汗かいちゃったからさアーシェも一緒お風呂はいろ?」
「一人でどうぞ」
「えー、はいろうよー。流れでそのままセックスしよーよー」
「腰の痛みが引いてやっと動けるようになったのになんでまた寝込まなきゃいけないのよ」
そう、このあたおか女は私をここに誘拐したあげく求婚してきたマジイカレ女でもある。どうせ一度は負けた身、人間の寿命の間くらいはいいかと了承したのが運の尽き。返答をした次の瞬間にはベッドに連れこまれ3日3晩抱かれ続けた。精魂尽き果てて後悔をし始めてた時にはすでに遅し、
『あ、そうだ。私ミークスって言うの忘れてた。末永くよろしくね、アーシェント・バルンリーグちゃん』
ミークス、この世界を管理する神族よりその血統に永劫続く祝福を授けられた人間。基本的にミークスはかなりに長命で普通の人間とは比べ物にならない寿命を持っている。魔族である私と同等レベルといってもいいくらいに。そうなってくると人間寿命を想定して了承したのに結果的には死ぬまでの付き合いになってしまった。
一目見ればわかるミークスの証でもある神痕は大きい胸の谷間の奥にあるというふざけたもので、その次に抱かれたときに見せられた。
「大丈夫、失神する前にやめるから。ね?」
「失神するまでやるもんじゃないでしょ普通。ほら行った行った」
このままだといつまでも駄々をこねそうなので転移魔法で風呂場に強制的に送り込む。はあ、ここに着てからの3年間でだいぶ扱いにも慣れてきた。最初の半年はほぼ毎晩抱かれてたし移動範囲がベッドリビング風呂だけとかかなりえぐかったし。
「アジグリ草の処理でもするかな」
転移対象から外したマリアが大きめのかごいっぱいに取ってきたアジグリ草をキッチンへ。処理といっても根っこの先についてる根茎、いわゆる芋の部分だけ持って帰ってきてるから水洗いして使わない部分は保存処理するだけなんだ。草って名前だけど使うのは芋の部分だけなんだけどね。
煮る焼く蒸すのそれぞれで味も触感もすべてが変わる芋、それがアジグリ草。そんな芋だから重宝されて高級なんだけれどとにかく量が取れない。生息域はまばらだし取れ時が1日でもずれたら芋の栄養を使って花を咲かせるからとにかく取れない。でもこの秘境ならそんなの関係ないとばかりに取れる。なんなら群生してるから毎日取れる。
他にも一般的に幻レベルの物であってもここでは普通にあったりするからつくづくとんでも秘境だと思い知らされる。魔王城でも3個しかなかった地脈石なんてごろごろあるし。
その地脈石の効果を使ってちょいちょい魔王城を覗いてたりするんだけど、今は妹のクローシュが城をまとめてる。あの子なら私がいなくともうまいことやるでしょとか思ってたんだけど意外とポンコツだからなあ。
まあそれはさておき、芋の保存処理を―
「ごはんじゃなくてアーシェちゃんが食べたいなー」
「寝言言ってるならこっちかなくてベッド行ったら?」
「それはつまりセックスのお誘いって事でいい?」
「なんでこんなのが勇者になれたわけ……」
背後に音もなく現れて抱き着いてきたマリア。年中脳みそ真っピンクなマリアがどうして勇者になれたのかはいまだにわからない。戦力的には十分なんだろうけどというか戦力だけで選んだ???
「勇者なんて面倒なだけだよ? 上の都合であれこれ制約とかもあるしなんなら政略結婚の話とかもあったっぽいし。暴れて逃げてもよかったんだけどその後が面倒そうだったしね」
「そういう割には私を殺さずに誘拐してるじゃないの。いい機会だから聞くけどなんでこんな秘境の奥地に屋敷なんかがあったわけ?」
「言ってなかったっけ? ここ元々私の家だよ?」
「は?」
「ミークスでもとりわけ面倒な加護持ちの家系だからさうち。人目だなんだが面倒でここに住んでたのよ。両親とも今は北の方にある別の秘境に住んでるけどね」
面倒な加護……ああ、マリアの加護って崩壊だっけ。まあ面倒といえば面倒な加護か、認識さえすれば対象を崩壊させることができるとかそんなんだったはず。
悪用したい人間なんてごまんといることだろうしね。
「魔王退治も加護使ってちゃちゃっと済ませてもらう物貰ってどこかに雲隠れする予定だったんだけどねー、好みドストライクな美少女が魔王な時点で退治する気なんて一切なくなったし逃避行しやすいように疲れさせるために戦ってたしね」
「どうりで決め手に欠ける攻撃ばっかだったわけか。戦いながら逃避行の算段をしていたってのは引くけど」
「だってー、白髪で幼顔なのにおっぱい大きいし腰細いし脚長くてすらっとしてる超好みな子がいたらそのくらい普通でしょ?」
「そんな普通があってたまるか」
「ゆくゆくは子供とか欲しいねー」
こいつ仮にも魔王との戦闘中に逃避行……誘拐の算段してたとかかなり引くわ。てかそんな変態に負けたのか私……泣きそう。まさかミークス全体がこんな変態とかそんなことない……ないよね? こんな変態マリアだけでしょ?
「女同士で子供とか無理に決まってんでしょ」
「魔法使って生やせばいいじゃん」
「は??」
「うちの両親女同士だけど魔法で生やして私産んでるからいけるいける。あ、そうだなんなら今からしよう? アーシェのナカにいっぱい出してあげるね」
「は? いや待って離して、離せえええええええ」
「……」
「アシェリーちゃんのナカ狭くて熱くて気持ちよかったぁ……喘ぎ声もいつも以上に可愛かったし、もう1回していい?」
「やめろしぬ」
あれから時間が経って翌朝。おわかりの通りベッドに連行されてあれを生やしたマリアに一晩中抱かれてた。あんだけ人様のナカに出しておいてまだしたいとかいう性欲モンスターのマリア。いくら私が魔王であろうとこれ以上しようものなら死ぬ。無駄に体の相性はいいから時間かけてやればやるほど快楽で脳が焼ききれそうになるから割と真剣に無理。
「えー……じゃあ夜しよ夜」
「普通に考えたら私魔王なんだしマリアから性欲消失させる魔法かければ全部丸く収まるじゃないの。ちょっと即興で魔法作って書けるからそこ立って」
「それはちょっとやだなー。今日食べる肉取ってくるねー!!」
「あ、こら逃げるな!」
後3秒で魔法をかけられたというところで部屋から逃げ出したマリア。追いかけたいところなんだけれども、けれども! いつもの腰の痛さとは違う腰の痛さのせいでベッドから動けない。あのクソ性欲女が体位ころころながら容赦なく腰振ってくるから……。魔法使って治してもいいけど痛みの大本(・・)まで治るからイタチごっこになるから安易には治せない。
味を占めた以上一時は生やした状態ですることになるだろうしね……。魔王城で魔王やってた頃には想像もつかない現状よこれは。
「もういいや寝よ」
浄化魔法であれこれ汚れてる体とかベッドを浄化して綺麗にしてから寝る。何事もなかったかのように出て行った体力お化けのマリアと違って今かなり眠い。何をされようと起きない自信があるレベルで寝入れるくらいには眠い。
肉取ってくるとか言ってたから2,3時間は帰ってこないだろうし。
死ぬほど眠かったとは言え一晩中抱かれた上にきっちり中に出されてるものを処理してなかったのを激しく後悔するのはまた別のお話。
感想くれてもいいのよ
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