帰ってきたリーガルハイ (ぴちかー党)
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パワハラ裁判・上

あの凸凹コンビが小説で大暴れ

とりあえず、テンポ重視で書いていきたい


 東京のとある喫茶店。古美門法律事務所に所属し(安月給で)働く黛真知子(まゆずみまちこ)は依頼者との待ち合わせ場所に少し早めに到着しコーヒーブレークをしていた。

 

「あんたが弁護士の先生かい?」

 

 声のした方を振り向くと、恰幅のいいお爺さんが立っている

 

「あ、どうぞ!お掛けください。今コーヒーを注文しますね!!」

「いや、水でいい。コーヒーはどうにも苦手でね」

「わかりました!店員さん。お冷や一つお願いしま~す!」

 

そう元気よく頼む彼女。

 

彼女を一言で現すなら「正義感の塊」この言葉以外にないだろう。

 困っている人を見過ごせない性格で、モットーは依頼人を思いやる気持ちに基づき弁護士活動を進める事。

 これだけでも彼女の性格が見てとれる。

 

「早速ですが、今日はどのような依頼でしょうか?」

「それが、若い集の一人からパワハラで訴えられちゃってね」

「パワハラですか」

 

 今回の依頼者「一二三次朗長」は東京○○市一体の家庭内配線等を主として電気工事を行う「一二三工業」の社長兼親方である。

 

 従業員8名を雇い地域密着型を掲げた経営も軌道に載っていた。

 

「何か、パワハラに思い当たる節はありますか?」

「あるにはあるが・・・あの場合は仕方ないと思うんだがね」

 

 そう言うと、パワハラに至る経緯を話始める

 

 事件の発端は3日前、とある家庭の配線工事中誤って活線(電気が流れてる)回路に触れ、感電した原告(訴える側)を助けるため、被告(訴えられた側)が原告の右鎖骨辺りに蹴りを入れ、回路から引き離した事が原因だった。

 

「あのときは、あいつを何とか助けたい。それだけで頭が一杯で仕方なく蹴りをいれっちまってね」

 

ーーーーーーーーーーーー

 一般に人体にとって致死となる電流は100mA(約0.1A=100mA)と言われており、人体抵抗は4000Ω(乾燥時)あると言われている。

 

 一般家庭用電源100Vに感電した場合流れる電流はV=RIこれを変換し

 

I=V/Rより25mA、致死電流には程遠い。

 

 しかし、作業時の乾燥状態(発汗)、体格、年齢により人体抵抗は変化し毎年100V感電での死亡者は少なからず発生している。

 

関東電気○保安協会資料参考

ーーーーーーーーーーーーー

 

「今考えれば、主ブレーカー切って助ける方法もあったが・・・動揺していてそこまで考えが及ばなかったね」

 

「つまり、話をまとめると親方さんは原告さんを助けるために蹴ってしまったと」

「まあ、そんなところだ」

 

 この裁判確実に勝てる!知子はそう確信した。何故なら

 

「次郎長さん!この裁判確実に勝てますよ」

「本当かい?」

 

「ハイ!次郎長さんが行ったことは救命のために必要だった」

「それとAEDセクハラ騒動ってご存じですか?」

 

「なんだい?そりゃあ」

 

 

ーーーーーーーーAEDセクハラ騒動ーーーーーーー

 

 2017年某月、男性にAEDを使われたらセクハラで訴える女性が多いというデマがツイッターで話題になった。

 後にツイートした本人がデマであったと謝罪している。

 

 このデマが巻き起こった際、「AEDの使用を躊躇してしまうのではないか?」という男性の意見が多く見られ、弁護士達が罪になるのか?ならないのか?をブログ等で紹介しており、罪にならないという意見が大半であった。

 

 

 理由としては弁護士ごとで千差万別だが、共通していたのは「救護」のため。

 

 

 そしてもう一つ、一番重要なことが過去にそのような裁判事例が無いからである

 

※裁判は基本過去の事例に基づき刑の基準が決められる(あくまでも作者がネットで調べた素人知識)

 

 そのため過去裁判事例のない出来事で有罪にするのは、とても難しく仮に有罪になってもその判決まで、多くの時間を要する

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「簡単に言うと、今まで感電者を助けて訴えられたケースはないんです」

(作者が調べた限り)

 

「過去にそういった事例がない裁判は100%いえ、200%勝てます!大船に乗った気持ちでいてください!!」

 

「おお、そうかい!よくわからねえけどあんたに任せてよかったよ。これから宜しくお願いするよ」

 

 1回目の打ち合わせはこれにて終了となり、るんるん気分で小御門事務所に戻る知子。早速打ち合わせの結果を古美門に報告する。

 

「古美門さん聞いてください。実は・・・」

「待て!朝ドラ!!何を言いたいか当ててやる」

 

「え?」

 

「今回の依頼者さんパワハラで訴えられたんですけど~話を聞くと助けるために仕方なくやったことなんです~」

 

「過去に感電救護の判例何てありませんし、100%勝てますよ~」

 

 そう体をクネラセ「デューク○家」の健康ウォーキングを連想させる歩き方でやってくる73分けの男こそが、古美門事務所主任にして自称イケメン敏腕弁護士

 

「古美門研介」である。

 

彼を言い表すなら「金の亡者」この一言に尽きるであろう。

 

 彼は裁判に勝つためにほとんど犯罪まがいのことも平然と行う。

 

 しかし、弁護士としての腕は確かで口八丁手八丁で相手がぐうの音も出ないほどに理屈を並べ、完膚なきまでに論破するやり方で訴訟の勝率100%という不敗の記録を叩き出しており依然継続中である。

 

 社会正義や人権などといったものに価値は見出さず、ただひたすら訴訟に“勝利する”事を最重視する。

 

 このように弁護士として凄腕ではあるが、自らの実力に自信があるあまり態度が非常に高慢で、弁護料も法外であることから、業界内での評判はすこぶる悪い。

 また、その法外な弁護料から二つ名として「弁護士会のBJ」とも呼ばれているとかいないとか。

 

 

黛真知子を光とするなら、古美門研介は純粋な闇。

 

何故この両極端にある二人が同じ弁護士事務所で働いているのか?

その理由は第1期リーガルハイ、第1話をご覧あれ(番宣)

 

 

「な、な、何でその事を知っているんですか!」

「そんなの簡単だ、朝ドラ。つい数時間前古美門事務所にパワハラ被害を訴えるボンボンのお坊っちゃまが来た。」

 

「それって・・・」

「話を聞いてると、どうやら被告は同じ古美門事務所に所属してる弁護士に依頼したようだ。」

 

「この古美門事務所で俺以外の弁護士何て、がに股でポンコツでおたまじゃくしな朝ドラ以外いないからな!!」

 

「そこまで言わなくたっていいじゃないですか!!」

 

 今回裁判の原告はいくつもの法律事務所を訪れたが、上記理由から全ての弁護士に敗色必須であると弁護を断られていた。

 

 そんな折り古美門事務所の噂を聞き付けた。金だけは持っているボンボンと金さえもらえば悪魔の弁護だろうと喜んで行う古美門、2人の出会いは正に必然であった。

 

「まさか、依頼を受けちゃったんですか!」

「当たり前だろ朝ドラ。なんたってボーナスステージだからな」

 

「どういう意味ですか、それ」

「そのまんまの意味だよ。ガニ股、ポンコツ、無能、オタマジャクシの朝ドラを法廷でぶちのめすだけで、大金が手にはいる。まさに濡れ手で粟だ!!」

 

「キー!本当どうしてそんなに口が汚いんですか!!」

「しょうがないだろ事実を言ってるだけなんだから~」

 

 そう、言うとふてぶてしくソファーに大の字に腰かける古美門

 

「もう、怒りました。絶対裁判でこてんぱんのけちょんけちょんにしてあげますからね!!」

 

「朝ドラ程度の実力でそれは無理だとお~も~うな~」

 

古美門VS知子、因縁の戦いの幕が開ける

 

 

 

 

 




法律関係はネットで調べ調べなので、恐らく色んなところが穴だらけのはず

*一部訂正
誤 I=R/V 正 I=V/R
自信満々に公式をかいておいて、この初歩的な失敗・・・
これはいけません!!


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パワハラ裁判・中

いよいよ、あの因縁の二人が再び法廷で合間見える

本当は2話で納めたかったですが、長くなってしまったので急遽つけたし

上・中・下の3部編成でお送りします


 20○○年某月東京民事裁判所で被告、一二三次郎長が起こしたパワハラ事案の第1回審理が開始された。

 

ーーーー第○回審理ーーーー

 裁判官が法廷で取り調べを行い事実関係(今回の件ではパワハラの有無)、法律関係を明らかにする。

 

 事実に争いがなければ、1回目の審理で終了し2回目で判決。

 

 事実に争いがある。または複雑な事件の場合、回数が数回~数十回に及ぶこともある。

 

※基本作者は一つの事件でネタを広げられないため、多くても3審程度で終了する予定

ーーーーーーーーーーーーー

 

裁判所内はありふれた民事訴訟と言うこともあり、傍聴者はまばらであった。

 

 法廷に被告、次郎長・黛真知子ペアが入廷。少し遅れて原告側は古美門1人のみが入廷してきた。 

 

 

ーーーーー民事裁判と刑事裁判の違いーーーー

刑事裁判の場合

 

1)人定質問(じんていしつもん)

2)起訴状(きそじょう)の朗読

3)黙秘権(もくひけん)の告知

4)罪状認否(ざいじょうにんぴ)

5)冒頭陳述(ぼうとうちんじゅつ)

 

と流れを踏んで行われる。

また被告は必ず出廷しなければならず、出廷がない限り裁判が行えない(ネット調べ)

 

 

一方民事裁判の場合、刑事裁判のような格式的な流れはあまり存在しない。

 また原告側と被告側が欠席することも可能であり、裁判当日お互いに弁護士だけで弁論を行うというのも珍しくない

ーーーーーーーーーーーーー

 

 小御門は、真智子に対し「かかってこいや!」の挑発ポーズ。対する真智子はボクサー顔負けのファイティングポーズで応戦。すでに、一触即発の雰囲気である。

 

 暫くし、裁判官が入廷。傍聴人も含めて全員が起立、裁判官が着席前に一礼するのにあわせて、全員で一礼。

 

 裁判が開始された

※本当はこのあと、争点整理・当事者尋問等あるが、テンポ重視でいきたいのでカット!! 

 また、被告側と原告側の意見陳述には決められた順序があるらしいがテンポ重視でいきたいのでこれも無視。

 

 

 まずは、被告側の弁護士真智子の弁論が始まる。

 

「今回の事件、被告次郎長さんが行った行為はパワハラには該当しません!!」

 

「何故なら次郎長さんは感電した原告を救護するため、やむを得ず蹴ってしまったのです。また・・・」

 

 ここから、真智子はいかに今回の行動が正当であったかを以下の4点から説明していく

 

1.感電者を救護する際注意することとして、救護者も感電するこがないように絶縁防護(今回なら安全靴)をする。 

 またその際、体全てが地面と接していなければ尚良。(理想はドロップキック)

 

2.毎年100V感電の死亡者は後をたたない

 

3.AEDセクハラ騒動からもわかるように、救護時の行動が罪に問われることはあってはならない。

 

4.次郎長さんは従業員一人一人を家族同然のように可愛がっており、事件当日も原告を助けたい一心でつい蹴りが出てしまった。

 

 そして、ここで真智子とっておきの切り札が炸裂する。

 

「こちらは、一二三工業の元従業員Aさんです。現在は独立して一人親方をやっていますが今回、裁判のためにわざわざ御足労頂きました。」

 

 

ーーーーー証人尋問ーーーーー

 原告側、被告側各々の言い分を第3者の証言によって、確かめていく。

 

本来は、原告側・被告側両方の弁論終了後に行われるが・・(フィクションなので気にしない)

ーーーーーーーーーーーーーー

 

「Aさんにお聞きします。次郎長さんパワハラを行うような人でしたか?」

 

「とんでもない!親方は、常に自分達を第一として考えてくれる人です。」

 

ここから、証人Aがいかに被告、次郎長が従業員思いの親方であるかを以下のように語っていった

 

・親方は常に従業員一人一人を息子同然に可愛がってくれていた

 

・Aが電気工事士資格を取得する際、親方は仕事が終了後常に付きっきりでアドバイスをしてくれた(他従業員も同様に)

 

・一度Aが大病を患い1ヶ月程度入院した際にも、1日も欠かすことなく励ましに訪れ、退院後直ぐに職場復帰することができた。

 

・今の自分がこうして独立できたのも親方あってこそである。

 

「Aさん、有り難うございました。 最後にお聞きしますがAさんにとって次郎長さんはどの様な方ですか?」

 

「私にとって父親の様な存在です」

 

「有り難うございます。 最後に一言付け加えますが、Aさんは幼い頃に父親を亡くしております。」

 

「そのAさんが父親のようだと言い尊敬する被告が原告にパワハラを行うはずがありません。」

 

「何度でも申し上げますが今回の件はあくまでも、大切な従業員の命を守るために行った行動なのです。以上で被告側の陳述を終了致します」

 

 

そう言い終わり、裁判官の表情を伺う真智子。

予想通り、裁判官は感極まり涙を流していた。

 

 今回の事件を担当する裁判官は、あのリーガルハイ1期・3話ヤジ裁判で登場した人情派裁判官であった。

 とにかく、涙脆く特に「父親」や「母親」というキーワードに弱い。

 

 原作では、口汚いヤジを行い強制退場させられた原告が、球団側に1500万円を請求したムチャクチャな裁判でも「球団応援団にとって母親の様な存在だった」の決め台詞から原告側が勝訴している(小御門担当)

 

正に、真智子の狙い通り100満点の陳述であった。

しかし・・・

 

 

「ブラボー!!」

 

 あの男が、大袈裟にスタンディングオベショーンしつつ流れてもいない涙を拭う仕草をしながら反撃に移る。

 

「素晴らしい!とても感動的なお涙頂戴な陳述でした。私も涙無しには聞いていられません・・・しかーし!!」

 

「本当は被告には別の一面があるのでは?と私は思えてなりません」

「どういうことですか?」

 

真智子はくいぎみに反応する

 

「Aさんにお尋ねします。あなたは独立前、被告と共にSさん宅の屋内配線工事をしたことがありますね?」

 

「はい」

 

「その際、貴方はパワハラを受けた覚えがありますね?」

 

 証人A氏の顔を覗き込み、確信的にそう質問する古美門。

 

「・・・いいえ」

「それはおかしい!!」

 

 A氏の苦し紛れの否定に即座に反応、そして原告側用意した書類を読み上げていく

 

「此方は、工事を施行したS宅の依頼者Sさんから伺った陳述書です。僭越ながら読み上げさせていただきます」

 

 わざとらしい咳払いを一度行うと、以下のような内容の陳述書を読み上げていく

 

1.被告はA以下従業員3名を何度か大声で叱責しており、従業員達がとても不憫に思えた

 

2.またAさんはヘルメットの上から頭を叩かれている姿も目撃した

 

3.普段はとても社交的な被告だが仕事になると、大声で罵声を浴びせている姿を目にする

 

 

「此方の陳述書の証言者S夫婦、よくエアコンやコンセントが故障すると一二三工業に施工を頼むお得意様です。」

 

「今回の裁判に伴い!お忙しいところわざわざ!!陳述書の作成にご協力頂きました」

 

「Aさん、貴方は否定しました。しかし一二三工業が何度も施工を担当しているSさんがこう陳述書をかかれています。」

 

「本当に覚えがありませんか?」

 

「・・・親方にそのようなことを受けたことはあります。ですが!!」

 

親方受けた罵声には以下のような理由があるとAさんは、反論する。

 ※実際の裁判では証言の前に虚偽証言はしないことを宣誓し、故意に虚偽発言を行うと罰せられますが・・・そこはテンポ重視ということで以下略

 

・親方が怒鳴るのは基本此方の施工に不備がある(工事が雑、ミス、危険)時だけ

 

・メット上から叩かれたときも配線をリャンコ(黒線と白線を反対に接続)にしてしまった

 

・これらは、親方が自分達の成長をうながすための愛のムチである

 

Aさんの反論に、間髪いれず古美門の反論があがる

 

「愛のムチ!これまた古くさい!!」

 

「私達が子供のとき学校でも、その様に教師達は愛のムチと言い何かやらかすと廊下に立たされたり、校庭を走らされたり、平手打ちがとんできました。」

 

「ところが、令和の今そんなことを行ったのなら速攻で首が飛ぶ事でしょう」

 

「それは、何故か?時代だからです!!」

「昭和の時代は許されたことでも、平成・令和の現在では許されない。」

 

「そして、教師はその時代に対応した教育を行う義務があり、古臭い昭和の指導を変えられない教師は淘汰されていく。」

 

「これは、他の職種にも当てはまります。勿論地域密着型の一二三工業にもです!!」

 

 ここから古美門は今回の裁判の争点、被告の蹴りは原告の感電救護に本当に必要であったのかどうかに展開させていく。

 

「被告にお尋ねします。貴方は感電した原告を助ける為に蹴ったと仰いましたが本当は救護にかこつけて原告を蹴ること自体が目的だったのでは?」

 

「意義あり!!感電者救護の最善は先ず救護者も感電に巻き込まれないことです。この鉄則に応じて最善の行動をとったまでです!!」

 

古美門の悪意ある質問に直ぐ様反論する真智子。

しかし・・・

 

「感電者を救護するだけなたら、ブレーカーを切る・絶縁手袋をはめて回路から切り離す色々とやり方があった筈だ!!」

 

「なのにその中から、原告を傷つける蹴り飛ばすというやり方を選んだ。何故か?」

 

「それは、普段から被告が原告に対し不満を持っており、その不満を救護にかこつけて蹴りを入れるというやり方で発散したかったからではないでしょうか?」

 

「意義あり!!それは原告側の憶測でしかありません」

 

「そういわれるであろうと思い、原告側の証人を用意しております」

 

そういうと古美門は、一人の人物を証言席に呼んだ。

 原告側証言人B。彼は原告と同じ時期に一二三工業に入社しており、常に原告とペアを組んでいた人物だ。

 その見た目は、丈のあっていないTシャツにダルだるのズボンであった全身からズボラさが滲み出ていた。

 

「Bさんにお聞きします。原告は普段から被告によく怒鳴られていましたか?」

「はい、ことあるごとに小うるさく怒鳴れてました」

 

「具体的にはどのような?」

 

「仕事が雑すぎる!やる気がないなら帰れ!何回同じ失敗をしたら気が済むんだ!まだまだ沢山あります」

 

「それは、あなたもよく言われましたか?」

「はい、よく言われました」

 

「それを聞いてさぞ、嫌な思いをなされたでしょう!!その時の原告の口調はどうでしたか?」

「ぶっきらぼうで、怒鳴り散らしてるようでした」

 

「わざわざお忙しい中貴重な証言有り難うございました」

 

 古美門側の証人が発言を終了し席につく。それを笑顔で見届けた古美門は再び発言を始める

 

「この証言からもわかるように、普段から被告は原告の仕事態度・技量に不満を持ち指摘していた」

 

「しかし、一向に改善されなかった・・・そして今回の事件、ついに形となって現れた!!違いますか一二三さん!」

 

「なっ・・・」

 

 被告席に座っていた一二三は思わず声をあげてしまった。彼の短く発した一言に、全く被告自信の意図とは異なる見解が向けられたことへの驚き・戸惑い・焦燥それらがありありと感じられていた。

 

「意義あり!原告側の主張は飛躍しすぎています!」

何とかフォローに真智子。しかし、まだまだ奴の追撃は終わらない。

 

「何処が飛躍している言うのでしょうか?」

 

「Bさんの証言からもそれは自明の理と言えるのではないでしょうか?さらに言わせてもらえば・・」

 

ここから古美門は、真智子が用意した切り札の打ち崩しにかかった

 

「被告側証人は一二三さんを父親のようだと言いました。しかし!!父親がかわいい我が子を助けるために暴力を振るうでしょうか?」

「何が言いたいんですか!」

 

真智子の反応を無視し、さらに古美門独自の解釈が行われる

 

「例えば、川で溺れている我が子を見つけたとき、父親ならばどうしますか?」

「直ぐに川から引き上げ、震えて泣きじゃくる我が子のために焚き火を起こし、怖い思いをしたな・・でも、もう大丈夫だと抱き締めるのではないでしょうか!!」

 

「ですが・・・」

 

そこで、わざとらしく一呼吸おき被告席に目をやる古美門。

 

「被告が行ったことは、泣きじゃくる我が子に平手打ちを放ち何故あんなところで遊んでいたんだ!!と、ただ怒鳴っただけに等しい。」

 

「これでは、ただトラウマを植え付けるだけで何にもならない。これが父親のやることでしょうか!!」

 

この弁護は例えに無理がありすぎる。

 しかし、古美門研介に掛かればこの支離滅裂とも思える弁護が成立し、法廷全体の空気さえも支配してしまうのだ

 

 古美門有利、この空気を変えるため何とか奮闘する真智子。

しかし、第1回審理でこの空気を変えることはできなかった。

 

 そして、続く1週間後に行われた2回目の審理。ここで、古美門は次郎長が失敗を注意するために行ったことを、パワハラと解釈する元従業員を揃え原告側有利な状況を更に磐石なものとした。

 

 そして、3回目の審理を明日に控えた打ち合わせ、真智子は依頼者の次郎長から意外な一言を言われることとなる

 

「次郎長さん。まだまだ裁判は始まったばかりです!ここからいくらでも巻き返せます」

 

「それについて相談したいことがあるんだが、大丈夫かい?弁護士の先生」

 

「はい!何でもおっしゃって下さい!」

 

「この裁判、もう和解しようと思うんだ」

 

「へ?」

 

次回に続く

 




ここまで来てあれですが、1部の主題パワハラですが、裁判でパワハラ罪というものはありません。

パワハラ行う過程で発生したもので、罪状を争うことがほとんどです。


パワハラ:部下に暴言・・名誉毀損、恐喝罪
    部下に手をあげる・・傷害罪

セクハラ:(その発言等が不快に感じられた場合)強制猥褻成立する可能性も
等々。

それと最近では、男性が女性の付近に立ち呼吸しただけでセクハラ!!といわれることがあるとかないとか・・・

女性の前では呼吸も出来ない・・・ヤヴァイですね!!






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パワハラ裁判・下

前回までのあらすじ

真知子有利と思われていたパワハラ裁判。
しかし、これぞ古美門研介知らしめる百戦錬磨の弁護により劣勢にたたされる。

 そして、迎えられる最終弁論に向け準備を進める真智子に突如依頼者から和解の方針変更が告げられる。 


 突如依頼者から告げられる和解への方針変更に気が動転し、すっとんきょうな声をあげる真智子。 しかし、彼女の弁護方針は何を置いても依頼者第一、まずは何故和解の方針に至ったのか?その原因を確かめることに決めたようだ。

 

「次郎長さん、何故和解へ方針変更をするのか。差し支えなければ理由を伺ってもよろしいでしょうか?」

 

「構わねえよ。むしろ、突然方針を変更したんだから理由を話すのが道理だわな・・・実はね」

 

 突然の方針変更理由、それは裁判後の顕著な施工依頼減少にあった。

 

 今回の裁判、案件的には非常にありふれた些細な内容の裁判であり何処の新聞社も特に記事としては取り上げなかった。しかし、このような噂は直ぐに広まるものである。

 

 貴方は経験がないであろうか?

 おばちゃん達が集まり、やれどこどこの誰が受験に失敗した。どこそこの奥さんが急にパートを始めた。あそこの家のお子さんが○○の大企業に就職したetc・・

という、思わず「何でそんなこと知ってるんだよ!!」と突っ込みをいれたくなる井戸端会議の内容を。

 

 おばちゃん達の情報収集能力(他人の家庭事情限定)、それは正にCIAが裸足で逃げ出すほど脅威的な物なのだ。

 少し話がそれてしまったが、依頼者の興した一二三工業は地域密着型の施工で利益をあげていた。しかし、今回起こったパワハラ裁判、こんな絶好の井戸端ネタをおばちゃん達が見逃すはずはなく直ぐに噂は広まった。

 

 そして、パワハラ会社の烙印を押された会社に施工の依頼など来るであろうか?必然的に、売り上げは例年の1/10にまで減少し一二三工業存続危機に陥っていた。

 

 依頼者一二三次郎長にとってこの悪評は裁判が続く限り、いや、裁判が終わっても続くかもしれない。ならば、もう和解をしてしまい精神的にも楽になりたい。そして早く噂の元を消し去ってしまいたい、そのような思いで一杯であった。

 

「人の噂も75日とよくいわれるからなぁ・・・兎に角、足元に火がついっちまってもう裁判どころじゃあなくなっちまった。」

 

「本当にすまないね。弁護士の先生」

 

「次郎長さん・・」

 

 真智子は知っている。例え和解してもこの類いの噂はなかなか消えないことを

そして、このような事態を解決する最良の方法は勝訴する事。そして無実を証明する事であることを。依頼者の最良の解決に導くため、真智子はあえて反論を唱えた。

 

「このまま和解は絶対に行けません。次郎長さん、諦めちゃ・・・」

 

諦めちゃだめです!!そう言おうとした矢先、突如その言葉は遮られた。

 

「あきらめないで!!」

 

 あの男が某芸能人宜しく、決め台詞を放ちどこからともなく現れた。そして、当然のように真智子の隣の席に強引に入ってくる。

1.5人用の着席スペースに2人がけというなんとも奇妙な光景が演出されていた。

 

「どうしてここにるんですか!!今はお互い敵同士なんですから、スパイしないで下さい」

 

 真智子が「あっち行け」というジェスチャーを大袈裟に行い邪魔者を追い払おうとするも、古美門は意に介さない。

 

「残念だったな、朝ドラ!!俺は今、原告の弁護士を解任された。だからこれはスパイ行為にも違反行為にも該当しない」

 

そう苦々しげに語る古美門研介。

彼は、原告のボンボンから弁護料の法外な高さを理由に弁護士を解任させられていた。

 

 

ーーーーー弁護士の解任ーーーー

 どんな裁判でも依頼者の意思に沿った弁護士でないと判断した場合、例え裁判途中であっても自由に弁護士を解任できる。

 ただし、解任する弁護士に最初に払った手付金や相談料、解任日までの弁護費用等は当然返却されない。代わりに、裁判終了後の報酬金(勝ち取った慰謝料の○割)は払わなくてよくなる。

また、契約解除料も必要ないらしい

 

 大抵の場合弁護士解任のポピュラーな理由は、手続きが遅い、依頼者の意思にそぐわない裁判を行う等が大半であり今回の古美門のような理由での解任ケースは稀であると言える。

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「え!解任させられたんですか?」

「何笑ってんだ朝ドラ。あんなやつ、こっちから願い下げしてやったんだよ!」

 

「願い下げって、只の強がりじゃないですか」

「うるさいうるさい。そんなこと、どうでもいいだろ。」

 

「それよりもだ」

 

 この話はこれで終わりとばかりに強引に打ちきると、古美門は真智子の依頼者次郎長の説得に動く

 

「次郎長さん、貴方は兎に角どんな形でもいいから裁判を速く終了させて悪い噂を絶ちきりたい。そして何とかして経営を回復させたい。そう思っているのではありませんか?」

 

「その通りだよ。弁護士の先生」

 

「それならば、和解は最も選んではいけない愚かな自殺行為といえます!!」

 

 

ーーーーー訴訟上の和解ーーーーー

 今回のように、裁判途中で和解を行う場合は上記名称で呼ばれる。実際の裁判でもこのような和解は頻繁に行われており、割合としては50:50らしい。

 

 訴訟上の和解を行うメリットは以下のようなものがある(やはりネット情報)

 

1.紛争が早く解決する

 

判決の場合、相手が上告すれば最高裁まで行う可能性もありそれだけ時間がかかる。しかし、和解ならその瞬間に判決を待たずして解決

 

2.判決リスクを回避することができる

 

判決では、証拠不十分と判断されて、負けてしまう可能性があるまた法の解釈で不利な判断をされる可能性もある。(ポピュラーなものだと、殺人事件などで加害者が反省しているとか、責任能力がないとかゆう意味不明な理由で減刑させられるやつ)これに対し、和解にはこのような「不確実性」がない。(ただし民事裁判に限る)

 

3.履行の可能性

 

勝訴判決を得ても相手方が履行してくれない(無い袖は振れない)、ということがあり、その場合別途強制執行手続きをとることとなる。この場合判決内容実現のためにさらなる手間がかかることがある。これに対し、和解の場合、相手方はその内容を守ってくれる可能性が格段に高くなる。

 

 4.費用

上訴があったり、強制執行手続きをとることとなった場合は、その分余計に費用がかかることとなります。和解ではその費用負担のリスクを小さくできる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「次郎長さん、此方から和解を申し出るということは被告側に落ち度があったことを認めるに等しい行為です!」

 

「そして、落ち度を認めた場合どうなるか?世間ではこう噂されるでしょう」

 

「やっぱり、一二三工業の親方はパワハラを行っていたんだ!!あんなパワハラ会社にもう施工なんて任せられない。そして行き着く先は一つ一二三工業の倒産です。」

 

 真智子・古美門二人の弁護信念は完璧に相反している。しかし、そんな二人に唯一共通している点がある。それは、依頼者の心情を明確に読み取り、裁判において何を重要視しているか?これを見抜く能力である。勿論一方は、その能力を依頼者の最もベストする形で弁護するため、一方はより多くの弁護報酬を稼ぐためという違いがあることは言うまでもない。

 

「親方、今回の裁判一二三工業が生き残る道は一つです。裁判に勝訴し無実を勝ち取ることこれしかありません!‼️」

 

「・・・」

 

しかし、次郎長は最終的な判断を未だ決められずにいた。

 押し黙る次郎長を前に古美門は直感した。これは再び裁判に持っていける!そのためには止めの一撃が必要だということを。そこで取って置きの殺し文句を次郎長に放つ古美門

 

「親方、先程も言いましたがこの裁判に和解するということは一二三工業の倒産を意味します」

 

「この会社が倒産したら残された従業員はどうなるのです!!」

 

「このご時世、そう簡単に次の職場など見つかりません。倒産してしまったら親方だけでなく従業員全てが路頭に迷うことになるのです。」

 

「この問題は最早、親方だけの問題はなくなりました。これは、一二三工業の存続と従業員の将来をかけた問題なのです。」

 

「貴方には従業員を守るため現場の親方として、一二三工業の社長として、そして・・・彼ら従業員の父親としての義務をはたすめにも最後まで徹底抗戦するべきであると私は考えます!!」

 

 従業員を我が子同様に思っている次郎長にとってこれほど効果てきめんの殺し文句はなかった。古美門の予想通り、一二三次郎長の考えは和解から一転再び裁判続行へ変更された。

 




 今回で1部終了させる予定でしたが、長くなったのでまたもや途中投稿



 次回こそ、本当にラストとなります。申し訳ありません

PS漸く私にも1週間遅れでお盆休みが来ました。
何とかお盆休みブースとで投稿ペースをあげていきたいですね(願望)


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パワハラ裁判・終

原告側弁護士を突如解任された古美門研介

 しかし、すぐさま被告側弁護を黛真知子と共同で行う持ち前のフットワークの軽さを披露する。果たして裁判の行方はどうなってしまうのか?


 古美門事務所、真知子は審理前日の古美門研介乱入、そして被告側一二三次郎長の弁護に加わることに当然のように抗議を上げていた。

 

「どうして、いつもいつも自分勝手に行動して私の邪魔ばかりするんですか!!」

「しょうがないだろ、あのぼんぼんが自分勝手に解任したおかげで、手持ち無沙汰になったんだから」

 

「それに……」

 

 ここで、一度言葉を止める古美門。

 

「それに、何ですか? そこで止められると気になっちゃうじゃないですか」

 

 真知子の問いにあのドヤ顔を決め、会心の一撃を言い放った

 

「それに俺様が加わらなかったら、朝ドラ側の敗訴は火を見るより明らかだからな!!」

 

「な、誰のせいでこの裁判こんなに苦労していると思っているんですか」

「そんなの決まっているだろ、こんな勝確の裁判でも勝訴に持っていけない朝ドラの実力のなさだ!!」

 

「う~・・・」

 

 今回の裁判、この男さえしゃしゃり出てこなければ真知子側の勝訴は確実であった。しかし、原告側弁護に古美門が回り窮地に立たされた。それらすべての不満を訴えようと思い放った一言、それさえもきれいにクロスカウンターを決められ完膚なきまでに叩き潰される。まさに真知子の完全敗北であった。

 

「でもここからどうやって、勝訴に持ち込むんですか?」

 

「誰かさんのおかげで、証人も完璧にそろえられちゃって敗訴濃厚なんですけど!」

「安心しろ朝ドラ!その誰かさんが被告側にまわったんだ。自分で用意した作戦など簡単に粉砕できる。現にもう、勝訴に導くための案は5つも用意している。」

 

「それに、これを見ろ。相手側の弁護士だ」

 

 古美門の手には、一通の手紙が握られていた。それは、明日の審理の時間や場所及び相手弁護人が記された、お知らせ書であった(そんなものは、実際の裁判では存在しない)

 

 真知子が、渡されたお知らせ書を受け取り弁護士の名前を確認する。

 

 

          原告側弁護人:磯貝邦光

 

「さーてと、あのガラクタどんなふうに料理してやろうか」

「邦光さん・・・」

 

 そう一言つぶやくと、真知子は空に向かって十字をきる。それは、これから虐殺されるであろう邦光への精一杯の彼女のやさしさであった

 

 

ーーーーー磯貝邦光ーーーーー

リーガルハイ2期から登場。元は三木法律事務所所属、とある事件をきっかけに退所。NEXUS法律事務所に入所する。

 

 三木法律事務所では刑事部門のエースと称されていたが、実際は勝ち目の無い敗戦処理ばかり担当させられていた。やや吃り気味で歯切れも悪く、弁護士としての腕は良いとは言い難い。

 NEXUSの中でも存在感が薄く、扱いは悪い(とある裁判では、検証現場に置き去りにされたりもしている。)そのためか古美門からも「ガラクタ」呼ばわりされてしまっている。

 

羽生、本田が事務所を去った後、NEXUSを引き継いだ。(作者は大貫善三の次くらいに好きなキャラである)

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 そして迎えた審理当日、まずは原告側の弁論から開始された。

 原告側の主張は、今までの審理と変わらず被告側の救助方法は適切ではなかったという主張であった。その根拠、証言もやはり古美門が行っていた今までの弁論をオウム返しのように吃り気味に読み上げるだけであった。

 

「えー、以上の点から・・被告側の行った行為はパワハラであると。えー主張いたします」

 

「意義あり!!」

 

裁判官からの、被告側の意義の有無があるかどうかの確認を待つまでもなく、古美門の意義が飛ぶ。

 

「原告側用意した証人の発言を全て鵜呑みにするのはいかがなものかと思います」

 

「そ、そ、それはどういうことです!」

「こ、今回の証人はもともと君が集めたもので全て一二三工業で働いていた従業員じゃないか!」

「なにを根拠に」

 

「ええ。確かにその方々はれっきとした一二三工業の元従業員です。しかーし!!」

 

 そういうと、古美門は用意していたいくつかの書類を原告側及び裁判官に提出する。それは、原告側が用意した証人の性別・氏名・年齢・及び今までの職歴などが書かれた履歴書であった。

 

「り、履歴書のようですがこれがなんだというのですか?」

「そちらの履歴書をよく見ていたただたい。何か気付く事はないでしょうか?」

 

 各々が注意して確認するも、それはやはりただの履歴書である。質問の意図が分からず邦光・真知子ともに沈黙法廷内は沈黙に支配される、しばらくの間あえて猶予を与える古美門。そして誰も声を上げないことを確認するとわざとらしくため息を着き解説を始める。

 

「まず、彼らの職歴をご覧ください。彼らはみな、一二三工業で働き僅か半年足らずで全員辞めてしまわれております。」

 

 慌てて再度資料を確認する真知子。確かに、原告側が用意した証人は全て半年未満、短い者に至ってはたった10日足らずでやめてしまっている者も散見された。

 

「半年と言えば、ようやく仕事のやり方が少し分ってくるところ。大企業では、ビジネスマナー等の基礎知識をセミナーで教え終わる研修期間に等しい」

 

「そんな研修期間も我慢できずに辞めていった者達の証言にどれほどの説徳力があるでしょうか?」

 

「対してこちらの用意した証人は一二三工業を立派に15年も勤め上げ、親方から暖簾分けしてもらい立派に独立し一人親方を勤め上げております」

 

「どちらの証人の発言が信じるに値するかこれは、職歴を見れば一目瞭然なはずです!」

 

 真知子にとって、そして原告側弁護士邦光にとっても盲点であった。職歴これは、今回の裁判において重要な項目である。 なぜなら、一二三工業での勤務年数=被告一二三次郎長と接した時間だからだ。

 この点において、15年以上の長い付き合いのある被告側証人と長くても半年未満の付き合しかない原告側証人どちらの証言が信頼できるかは、もはや言うまでもなかった。

 

「・・・で、ですが、被告側の救助方法はやはり不適切と言わざるおえません」

 

 何とか、話題をそらすため原告側弁護士は原告を蹴って感電から救護した方法の不適切さを次の争点に持っていく。原告側にとってこの論点は正に最後の砦、ここが破られれば敗北必須の天下分け目の関ヶ原である。

 

「こ、こちらの資料からもわかるように、感電救護で必要なことは救護者自身が感電しないよう絶縁防護をしてから救護することです」

 

「す、すなわちゴム手袋をし回路から引き離す、または、ブレーカを断として救護する方法もあったはずd・・」

「裁判長ご説明します!!」

 

「原告側弁護士にお尋ねします!感電者救護のうえで最も重要なことは何でしょう?」

「で、ですから先ほどから申し上げているように絶縁防護をして感電しないよう・・」

 

「違う!!」

 

 原告側弁護士邦光が発言を終わる前にすぐさま否定する古美門。

そして

 

「もっとも重要なのは、迅速に回路から感電者を引き離すことだ、通電電圧が高いほど、そして通電時間が長いほど感電者の死亡率は高くなる。ここで、実演をおこないます。」

 

 そういうと、どこからともなく小道具を用意すると手際よく法廷にセットしていく真知子

 

「違う!そのセットはそこじゃない。そのセットはあと5cm右、行き過ぎだ!!」

 

 現場監督さながらに、指示を飛ばしていく古美門。そして10分後法廷には被告が感電した当時の現場が見事出来上がっていた。 真知子は古美門の指示でそのセットの回路にふれ感電者約に、古美門が救護者一二三次郎長役になり、3つの救助方法がそれぞれどの程度時間がかかるのか実証する。

 

「あ~痺れ~る~」

 

大根役者顔負けの棒読みで感電役をえんじている真知子。検証順はブレーカのOFF、ゴム手袋を装着して引き離す、蹴って引き離すで行われる。

 

「死んでもいいぞー。朝ドラー!!」

 

 そういいながら、ゆっくりとブレーカのある玄関に向かっていく古美門。ブレーカを切ったところでタイムキーパー役の次郎長にタイムを訪ねる。結果は、「15秒」ダッシュで行けばおそらく5秒といったところであろう。

 

 1度目の検証を終え、2度目の検証が開始される

 

「た~す~け~て~」

「朝ドラ、あと1分ぐらいそうしてろ!」

 

 ゴム手袋の装着に時間ががかる古美門。ようやく装着を終え感電者役真知子を思いっきり引き離す。

結果は、12秒。普段装着に慣れている次郎長ならば、4秒程度。

 

「し~び~れ~r」

「朝ドラー!!」

 

 セリフを言いおわらないうちに、渾身のドロップキックを繰り出す。蹴とばされ、倒れる真知子と着地に失敗し勢いよく頭部を強打する古美門。タイムは「2秒」であった。

 

「こ、このように蹴りを放ち助けることが、一番迅速に救護することができ被告の救助方法は原告を感電死から救うえで適切だったと証明できます」

 

 朦朧とした意識の中、真知子の肩を借りそう締めくくる古美門、言っていることはもっともなのだがそれが余計に現在の情けない姿を強調させ何とも言えない空気を醸し出していた。

 

 その後、原告側が再度セットを用いて、3つの救助方法を実践するも結果は変わらず。3番目の蹴りを入れる引き離し方が、一番早く救助できる結果であった。

 これが、決定的証拠となり原告側の訴えは棄却。被告側の勝訴となった。

また、今回の騒動に伴い本来上げられるべき工事受注が減少したために発生した損害を合わせて請求、こちらも身とめられ、約2000万円の慰謝料請求にも成功した。

 

 

それから、一か月後古美門事務所。

 

「ききましたか?」

「何がだ?朝ドラ」

 

 パワハラ裁判も集結し、二人はそれぞれ別の案件もひとだんらくし服部さんの入れてくれたお茶とお菓子と共にティーブレイク中であった。

 

ーーーー服部さんーーーーー

下の名は不明。「昔、○○をしておりました」と新たな過去がほぼ毎エピソード紹介されほど、謎に満ちた過去。

そして、あらゆる分野に精通した知識・特技を多く持ち合わせる有能な人物。

 

料理や子守唄まであらゆる面で古美門をサポートする他、古美門の身に危険が降りかかった際にはボディガード的な役割も務めており、古美門は窮地に立たされる度に「服部さ〜ん!」と彼の名を叫んで助けを求めている。

そのため、誰ふり構わず慇懃無礼な態度を取る古美門が唯一、丁重に接する人物である。

ーーーーーーーーーーーーー

 

「一二三工業、最近親方が前以上に従業員を大切にしていると言われているみたいですよ。」

「ふーん」

 

「やっぱり、あの裁判から何か思うことがあってさらに従業員への接し方が変わったんですかね?」

「どうだかな、ちなみにそれは誰からの情報だ?」

 

「工事を依頼した受注者からです」

「従業員からは別な情報が入っているけどな」

「え?」

 

 そこで、古美門は一二三工業の従業員がまた、親方からパワハラをうけ一人が骨折の重症。今後親方との裁判を起こすため、事務所に訪れることを伝える。

 

「そんな・・・」

 

絶句する真知子に古美門の容赦ない一撃が浴びせられる。

 

「いいか、朝ドラ以前にもいったが正義の反対は悪じゃない。」

 

「正義の反対はまた別の正義だ。どんな、言い分にもお互いの言い分もとい正義がある。」

 

「それは、パワハラでも窃盗でも殺人でもだ。俺たち弁護士はその弁護人の正義に基づいて弁護してるんだ。それが実際の事実と違っていても関係ない。」

 

「一度裁判で、無罪が確定すれば例え窃盗しようが殺人をしようが関係ない、罪には問われない。」

 

「そして、事実関係を証明するのは裁判官の仕事だ。私達弁護士がどうこう言う資格がないことを覚えておけ」

 

気まずい沈黙が走る事務所に救いの手が伸べられるようにチャイムが鳴る。

 

「おや?だれかきたようですね」

 

来客者を迎え入れる服部さん。

それは意外な人物であった。

 

「あのときは、お世話になりました弁護士の先生」

「次郎長さん!」

 

パワハラ裁判の被告次郎長が弁護のお礼を言うため、全従業員と一緒に訪問にやってきたのだ。

 

「え?今またパワハラで従業員を骨折させたんじゃ・・・」

「よくわからねえが、従業員で骨折してる奴はいねえよ」

 

何が起こっているかわからないという真知子に古美門は人を食ったような笑みを浮かべ絶叫する。

 

「あんなの嘘に決まってんだろ、ば~か!!」

「だ、だましたんですね!ひどすぎます」

 

逃げる古美門に追いかける真知子、そしてそれを笑いながら傍観する服部さんと一二三工業従業員一同。

こうして、今回の裁判は無事終わりを迎えた。

 




これにて、1幕終了です。

次回は、親権問題を執筆予定でしたが急遽某知恵袋で面白そうな話題を見つけたので脱線です。

第2幕は「墓裁判」をおおくり致します。

おそらく、また作成に時間はかかりますが次回もお楽しみください

PS正義の反対は~というセリフは某野球ゲームのキャラのセリフそのまま持ってきました。


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