私「ポケモンしたいな〜」神?「おk」 (食卓の英雄)
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その日、運命(あいすす)に出会う

まだ終わってないのに投稿作品を増やす阿呆



 

唐突だが、私には前世の記憶がある。

 

な…何を言っているのかわからないとは思うが私も何があったのかわからなかった…

 

 

まった!帰ろうとしないで!ふざけたのは謝るから!ポルナ○フごっことかはちょっと調子乗ってたから!

 

 

ふう、今度はふざけずに回想しよう。

 

 

ブラック会社に勤めていた私は八徹の仕事中にふと気を失った。

 

するとなんかモヤモヤした人型の光みたいな物が見えてソイツは神だって名乗ってきた。

 

『お前は今先程過労で死んだ。だがしかし、本来はここで死ぬ定めでは無かったのだ。よって別世界、あるいは平行世界へと転生させよう』

ってこっちの言葉とかも聞かずに一方的に話してきてさ。

 

『転生特典とやらが今は流行っているのだろう?それ、何か望みを言え。そうだな……初の転生特典ということで3つまで良しとしよう』

 

その時はぶっちゃけ都合のいい夢で、目が覚めたら仕事中の居眠りを部長に叱られるもんだと思ってたから、がっつり願望言っちゃって。

 

「十徹してもピンピンしてる丈夫な体、あと女の子になってみたい。出来れば美少女な感じで才能とかもその体に見合うように。……あとは…ポケモンを思いっきりしたい!」

 

ポケモンは私の青春時代。センスもいいし、楽しくって。

 

それで何でこうしたかというと新しいポケモンが出たらしいからそれをやりたかったんだ。

 

するとそのモヤモヤは少し考え込むような素振りをみせ、こう言った。

『それは『どうぐ』や図鑑等も使うのか?』

「私は廃人でも縛りプレイもないんで普通に使いますよ。というか図鑑は必ずあるでしょう?」

『…分かった。では送るとしよう』

「?」

 

少し会話が噛み合って無いような気もしたがどうせ夢だと思ってたいして気にしなかった私が悪いのだろう。いや、こんな事になるとか普通思わないから私は悪くない。

 

『これからは私が関わることも無いだろう。それでは第二の生を楽しむがいい』

「あー、はい。わかりました」

 

投げやりに返事した途端、浮遊感がする。足が地面についていないあやふやな感覚。というか足場がない?

 

下を見るとポッカリと空いた黒い穴。しかし目に見える大きさからかなり落ちるであろうことは予想できる。

 

うん、流石にこれは絶叫マシンとか大丈夫な私もっ

 

「〜〜〜〜!?」

 

嗚呼、起きた時に漏らしてなければいいんだけど…

 

・・・・・

 

 

「〜〜へぶっ!?」

 

勢いよく激突したが、その落ちた先がふかふかのソファであった為なんとか助かった。これが床だったら危なかった。

 

…というか落ちたし、全然目覚めよくないし。それ以前に近くにソファなんて無かったと思うんだけど。

 

目を開けるとそこは会社では無く何処かの一軒家。

ブラックで安月給な私では到底住むことの出来ない家。羨ましい……これ不法侵入では?

 

ヤバイヤバイヤバイ!?捕まったら今までのが全部パーになって!……いや、あの会社から開放されるなら案外捕まるのもいいのでは…?

 

じゃない、ダメだダメ!早いとこずらからないと!

この家の住民に見つからないように…

 

私は出来るだけ音を出さないように忍び足をし…なんか視線低くね?私は180センチはあったんだが大分低く見える…

 

「どうなってんの…?」

「……?」

「私の声こんなに高かったっけ?」

 

自分の体に起こった異変に戸惑っていると背後から物音がする。

この家の住民か!?と焦って振り返るとそこには150センチ少しの女の子が立っていた。結構美少女だ。

その女の子は寝起きのようでぽやっとした寝ぼけ瞳を擦っている。

 

「………」

「………」

 

お互い無言で見つめ合い、静寂が流れる。

 

「………」

「あ、いや、決してあ、怪しい者じゃありません!」

 

馬鹿じゃないの?人の家に不法侵入してる男が怪しくないわけないじゃん。

 

あ〜、ダメだこれ。完全に通報ルートだ。大人しくお縄につくとしよう

 

「何やってんの?お姉ちゃん」

「へ?」

 

お姉ちゃん…?

 

 

・・・・・

 

 

時が経つのは早いもので、その初コンタクトから4年。

私はこの新しい生活にすっかり慣れてしまっていた。

 

今世の名前は『白盾 鳴』。見た目はポケモンBW2の女主人公と一緒だ。

 

どうやらあの神らしきものは本当に私を転生させたらしく、体は十日の徹夜でもピンピンしてる程の丈夫な体の美少女だった……。

 

今は亡き祖母から譲り受けた全然ブラックじゃないホワイトなショッピングモールを経営していて、妹と二人で暮らしている。普通に生活するぶんには金には到底困らない。

 

 

15歳の私に憑依した私は今世の記憶もあり、少し整理するのに時間はかかったがそのお陰で、何も知りません。なんて事は無かったので良かった。

 

何故こんなに若いのに経営者になっているかは私もビックリ。

正直この体がスペック良すぎだと思うんだよね。なんか冗談みたいに売り上げが上がっていって今やイ○ンやら○ぽーとには及ばないまでもかなり規模を誇っている。勿論私が本店?です。気が重い…。

 

 

確かに前世に比べたら驚くほど良くなったが、不満が一つ。

ポケモンが無い。ゲームでもアニメでも漫画でもカードでも!

他の前世のものは一通り揃っているくせにポケモンだけが無い。

 

あの神?は本当に願いを聞いていたのだろうか?それともこのハイスペックが3つ目の特典でポケモンは却下されたとか?

 

う〜ん、分からん。

 

正直ブラック勤めの時と比べると大分明るくはなったし、そこは良かったけど、頼んだものでこれだけが無いとなるとやっぱりモヤモヤする。

なにげに一番やってたゲームだし。癒やし系はポケモン結構多いし

 

「ホントに何でかなぁ〜?」

 

そう思いながら寝る支度をする。明日は我が妹が北海道から帰ってくるため、何か面白い話でも期待しておこう。

 

目を閉じると意識は朦朧としていき、1分後には静かな寝息だけがたっていた。

 

 

 

〜翌日〜

 

 

「ただいま〜、お姉ちゃ〜ん!」

「はい、お帰り〜」

 

時刻は昼、少し待ちくたびれていたところに丁度妹が帰ってきたところだ。正直そろそろ寝ようかなと思っていたから助かる。

 

片付けをしている妹の優莉は、今年で15になる。

 

ウチのショッピングモールでの懸賞に当たり、夏休みを使って3人の友達と3泊4日の北海道旅行に行ってきたのだ。

一応向こうには知り合いがいるので、その人に面倒を見てもらった。後でお礼の品を送らなければ。

 

因みに私はここ最近殆ど仕事をしていない。ぶっちゃけ後進の教育が進んでいて出番が無いのだ。

私が仕事をしようとすると必死に止められるのだ。解せぬ

 

一応私がトップということになってはいるが先程述べた通り仕事量は精々がちょっとした確認程度。

でも何かあったら責任は私持ち。なめんな。

 

「でさ〜。………聞いてる?」

 

いつの間にやら優莉がこちらの顔を覗いている。

 

「あ、ごめんごめん。聞いてなかった」

「も〜、お姉ちゃんってたまにそういうとこあるよね。仕事忙しいの?」

 

うーん、これはかなり癒やされる。前世はホントに孤独だったからねぇ。仕事疲れを癒やすものが少なかったんだよ。

今は別に仕事してないけど

 

「いや、ちょっと考え事してただけ。仕事はね。うん。最近殆どやってないから。うん」

「そ、そうなんだ…」

 

私渾身の死んだ目に引いている妹。ちょっとやりすぎたか?

 

「えーと、それで何だって?」

「あ、うん。スキーしたときにホップとビートが競争始めちゃってさー。ルート外れちゃって危うく遭難しそうになっちゃって」

「そうなんだ」

 

ちなみにこのホップ君はあだ名である。当たり前だよなぁ?

ビート君は美しい衣に音でビート。親が作曲家だったらしくこんな名前になったらしい。

 

「どうしたの?」

「いや、別に迷ったとかじゃ無いんだけどね。マリィと一緒に追いかけたら、二人はコースに戻るでもなく立ち止まってて。それで、私達も何かあったのかなって思って見てみたらね?なんかそこだけ吹雪いてて可笑しいなって思ったら…雪男みたいなのが遠くにいてね。直ぐに見えなくなっちゃったけどその後皆で大騒ぎしちゃって」

 

一部分だけの吹雪に雪男…。確かに不思議だ。

 

「結局時間になっても戻ってこないから、って淡竹さんに連れ戻されちゃったんだよね。一応ホップが写真撮ってるらしいから後で見せてもらうんだ!なんたってUMAだもん!」

「UMA、ねえ…。なんか最近そういう変な事多いよね。果物がおかしくなったり、見たことも無い生物を見かけたーとか。ウチで贔屓にしてるところもそんな感じらしいけどね〜」

 

そう、こういったことは最近多く起こっておりニュースにも取り上げられるほどだったりする。

 

「ふ〜ん。そうなんだ。ちょっと調べてみるね」

「妹よ、もうちょっとニュースを見る事をオススメするよ…」

 

どたどたと音をたてて廊下へ駆け出していく。自分の部屋に向かったのだろう。

 

 

「って、バッグ置きっぱなし…」

 

(仕方ない、片付けてやるか……。)

 

テーブルの上のバッグに近づき手にかけると、モゾモゾとバッグが暴れだす。

 

恐る恐るそのジッパーを開くと、何か大きな影が勢いよく飛び出した。

 

「わっ!」

 

飛び出してきた『何か』は尻もちをついた私の前に着地する。

 

それは、半透明の棘状の殻を持ち、雪のように真っ白な体色と前方に張り出した短く丸い二つの突起。そして()()はつぶらな黒い瞳でこちらを見つめている。

 

「ふんわ」

 

―――少女はその日、運命に出会う。

 




鳴き声違うやんけ(素)

同じ様なジャンルを読んでて書いてみたくなった。
後悔はちょっとしてる。


(追記)
ちょっと詰め込みすぎたな、とも思う。人名の出し過ぎかな?


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メイ「願ったけど、願ってなかった!」

面倒くさいのでカタカナで名前は書きます。
それにそっちの方がポケモンっぽいので、有名キャラと同じ読み方の人がいたら大体見た目その人です。

後、主人公はSMまでしか知りません



「ふんわ」

 

()()はもそもそと動き始め、キョロキョロと辺りを見回している。

そんな中、メイは尻もちをついたまま動こうともしない。というよりは、現状を理解できていない様だ。

 

(…?虫…?デカくない?いや、雪像?…動いてるし鳴いたわ…。えっ、ナニコレ。ユウリは何を持ち込んだの…?っていうか生き物持ち出したら駄目じゃない…?)

 

困惑しているとそれがこちらを向き、しゃらしゃらと氷の様な音を鳴らしながら向かってくる。

 

ふと、それと目があった。

何を考えているのかよくわからない無機質な目、それと見つめ合っていることに焦りを覚える。

 

するとそれはぴょん、と飛びかかってきた。

 

「えっ、わっわっ!」

 

慌ててそれを掴み持ち上げる。そのことにマズイ、と思うも掴みあげられたそれは暴れるでも無く大人しくしている。

 

とりあえず床に降ろしてみるとまたもそもそとこちらの足に向かって進む。

 

「なんか可愛い…」

 

よく見れば黒い目もぬいぐるみみたいで愛嬌があるし、シルエットもまるまるとしていて愛らしい。それにさっき触った感覚だとひんやりとしていてモチモチの体だった。

 

これは…ワンチャンあるな…!

 

「ねえ、君」

「?」

 

私が話しかけると不思議そうにこちらを見つめ返してきた。かわいい。知能も良いのだろうか。

 

「良かったら私の家族になろうよ」

 

言った瞬間、明らかに喜んだ様子で飛び跳ねている。

その証拠に今まで無機質だった目がキラキラと輝いている。

 

ヴッ!ふう。余りの可愛さに汚い私が浄化されてしまった…。

癒やし系の力って凄いんだなって思った。(小学生並の感想)

 

それにしても見慣れないどころか、絶対あり得ない様な生物何だけどこれが噂の生物かな?

 

「あいすす〜」

 

気がついたら足に擦り寄って来ていた。さっきもだったけどあれかな、人懐っこいのかなこの子。

 

というか、なんか……ポケモンっぽい。

 

ほら、こんな可愛いとことか不思議な感じとか。少なくともデジ○ンではない。ポケモンだったらこおりタイプとかだろうか

 

…ちょっとやってみよ。

 

取り出したるは一つのみかん。これは近所のおばちゃんからダンボールで貰ったもの。二人にはちょっと多すぎるためまだ結構余っているのだ。

 

「ねえ、君。このみかんに向かってなんかだせる?」

 

すると心得たとばかりに口?を動かし、そこから白い風を吹き出した。

 

それだけでみかんは見事冷凍みかんへと姿を変えてしまった。

 

「えぇ…」

 

冗談で言ったのに本気でやりおった。

もう明らかに特異な部分見つけちゃったんだがどうしよう…。

 

「クークク♪」

 

件の本人は冷凍みかんを嬉しそうにもしゃもしゃと食べている。

 

…もう可愛いからいいや。飼おう。

 

「今の、『こなゆき』みたいで凄かったよ」

 

いやー、こんな不思議な事もあるもんだ。

 

取り敢えずユウリにも伝えなければ…

こいつを抱えてっと、

 

「おーい、ユウリー今日からこの「見てみてお姉ちゃん!」ぬう…」

 

部屋に入るやいなや、何やら興奮した様子でユウリが飛びかかってきたため、驚いて言葉を中断してしまった。そのせいでユウリのペースに持っていかれ、中々取り戻せない。こうなったらもう大人しく聞いたほうが早いのである。

 

「やっぱりハッキリ写ってるよ雪男!ほらココ!こんなの絶対着ぐるみじゃないって!」

 

言われた通りに見てみるとそこには毛むくじゃらの大男の姿が……

 

「これって…」

「ねっ、やっぱり雪男っていたんだ!」

 

そこに写っていたのは、確かに毛むくじゃらの大男だ。

ただ、もっと付け加えるのなら2メートル以上の背にずっしりとした白い体。口元にはヒゲのようなものがぼうぼうに生えていて、その手足の先端付近は緑の体毛で覆われている。

 

「ユキノオー?」

「え?」

 

見間違えようもない。この特徴的な姿はあの霰パの御大だ。

むしろ見れば見るほど確信する。これはユキノオーだ。

何で北海道にユキノオーが?

 

「お姉ちゃん知ってるの!?」

 

いやいや。流石にそんな事は無いだろう。きっとたまたまだ。

 

まずはこの無駄に押し寄せる妹を落ち着かせ、取り敢えず座ってもらおう。

そして座ってもらったのならまずこの子を見せます。

 

「何それ?ぬいぐるみ?」

 

つつくユウリに向かってそいつは口をあげて「ふんわ!」と応えた。ぬいぐるみだと思っていたものが動き出した事に妹は驚き戸惑っている。

 

「わっ!何なに!?え、生きてるの?」

「クークク」

 

驚きから立ち直ると直ぐに興味が移ったようで、つんつんとつついたりムニムニと触っていたりする。

 

「ユウリ、今日からこの子を飼おうと思っています」

「賛成!」

 

先程の態度でも分かったがユウリは賛成派。

結局提案から一秒も経たずに、この子を飼う事が決定した。

 

「この子は何て名前なの?」

 

あ、名前決めてなかった。そうだなぁ……モチモチで…ヒンヤリしてて……。雪見大福みたいで…。

 

「じゃあ『ユキミ』で。由来はもちろん雪見大福」

「ユキミかあ〜。いい名前だね。何て生き物なの?」

「え、知らないけど」

「え!?」

 

当たり前だろう。こんな摩訶不思議な生物知ってるわけが無い。

 

「知らないのに飼うって言ったの!?」

「え、でもこの子可愛いよ?」

「いや、だから可愛いから、じゃなくて…」

「それに物だって凍らせらるから。ほら、このみかんにもう一回さっきのやって」

 

指示を聞き受けたユキミは、みかんをまたしても冷凍みかんへと変貌させた。

 

「ほら」

「わあ、凄い……これ、みんなに送っていい?」

「いいよ」

 

その後、今度はスマホを構えてもう一度冷凍みかんを生成してもらった。

 

「ありがとー。じゃあ早速みんなに…あれ、ホップがなんか送ってる…。見てみてお姉ちゃん!」

「何?」

 

差し出されたスマホを見ると、ホップ君からは『なんかすごいことになってるんだぞ!』という文章と共に何枚かの画像が送られてきていた。

 

「何これ?どれも見たことない…」

「嘘でしょ…」

 

この世界で生まれ育った妹は分からないが、私には分かる。

 

巨大な芋虫、これはキャタピーだ。頭に草の生えた謎の生物はナゾノクサ。花に止まる妖精―アブリボン。大きな鳩の群れ―マメパト。

私の見知ったポケモン達が写っていたのだ。

 

直ぐにメッセージが送られる。送り主は―ビート君だ。

『ええ、ニュースでもやっているので分かります。残念ながらガセでも無いようですし。試しに外を覗いてみてください』

 

書かれた通りに、私達は急いで外を見る。

 

 

―そこには非日常が広がっていた。

先程のマメパトやキャタピーの他にも、ポッポやオニスズメ、ヨーテリー等の見知った顔が私のよく知る町並みに紛れ込んでいる。

 

「ポケモン…だよな?」

 

ハッと腕の中のユキミを見る。

まさかさっきから冗談で言っていたポケモンというのが、もしも本当だったなら…。

 

ユキミを優しく床に降ろし、もう一つのみかんを差し出し、今度は明確に指示する。

 

「ユキミ、このみかんに『こなゆき』」

 

ごく当然の様に白い息が吹きかけられ、みかんは凍っていく。

余ったみかんを食べさせながら考える。

 

(やっぱりこの子もポケモンなんだろう。現にこなゆきに反応して息を吹きかけ、外にもポケモンが現れている。でも何で…?)

 

そこでハッと気づく。

 

 

・・・・・

『それは『どうぐ』や図鑑等も使うのか?』

「私は廃人でも縛りプレイもないんで普通に使いますよ。というか図鑑は必ずあるでしょう?」

『…分かった。では送るとしよう』

・・・・・

 

アレか!?

普通にポケモンやるにしては何か可笑しいと思ってたけど!

まさか現実でやるとは言ってなかったじゃん!

 

ていうか道具も図鑑も無い…いや、待て。道具はあったかも。

 

「ユウリ、確か変になったみかんあったよね。アレ持ってきてくれない? 」

 

もしも本当に道具もあるのだとしたら…きっと()()だろう。

 

「うん、分かった。もしかして何か関係あるの?」

 

流石、察しがいい。前々からやたらと察しだけはいい妹だったよ。

それはともかくとして、それが詰められた袋を受け取り、全てテーブルに広げる。

 

それは青く、みかんにしてはかなり小さい。そして固かった。

 

「見た目は『オレンのみ』だ…」

 

オレンのみはポケモンに登場する代表的なきのみで、使用すると体力を10回復するのだ。

 

ものは試し、とカッターで指を少し切る。

 

パキッ

 

カッターが折れた。

 

「………」

 

カッターでは物足りないとばかりに包丁を取り出し思いっきり振り下ろす。

 

「痛っ」

 

力加減を間違えて深く切ってしまい、血が出てきてしまった。

ただ、包丁を指先に思いっきり振り下ろしたらこんな軽傷な筈が無いと思う。

 

「何やってんのお姉ちゃん!?」

 

当然ユウリには驚かれてしまい、救急箱を取り出し慌てて治療しようとする。

 

「んー、テスト?」

 

そう言うとそれを手に取り、一口かじる。

 

「固っ、え、渋っ苦っ!?甘、辛い?酸っぱい!何これ!?」

 

それはお世辞にも美味しいとは言えるものでは無かった。

今言った全ての味が混ざり合っていて、子供なら間違いなく吐き出してしまうだろう。

 

「ちょっ!?何でそんなの食べるの!?ほらっ、吐き出して!」

 

対応が小さな子供に対するものだがツッコんではいけない。

むしろ謎の果実をいきなり食べる方がどうかしているのである。

 

「治った…」

「そんなので治るわけないじゃ…あれぇ?」

 

そう、治った。切った指には傷跡も見当たらず、完治している事が伺える。

 

「え?え?もしかして、これのせい?」

 

怪訝な目できのみを手に取るユウリ。

しかし齧った当の本人は己の世界に入り込んでいて気にも留めていない

 

(やっぱり人間にも効果あったんだ。アニメでもどく状態になった人がモモンのみで解毒してたから、オレンのみでも効果があった)

 

効果を確認した所で確信に変わった。

 

あの神のはからいによって、この世界にポケモンと、その道具が出てきてしまった。そして道具は既存の物の内の一部、大体十分の一位が変化したものだということ。…ということはポケモンも一部が変化したものと考えるのが妥当か。

 

そこでふと考えつく。

 

この世界の人達はポケモンを知らないから、きっと必要以上に怯え、恐怖し、排除しようとするだろう。

そうなればポケモン達も黙ってはいない。全面戦争の始まりだ。

兵器により、ある程度は駆除出来るだろう。

 

だがしかし伝説のポケモンは?

時間や空間、天候などを操ったり司る者達に何が出来る?

何も出来ないに決まってる。

 

良くて壊滅。悪くて絶滅と言ったところだ。

どのみちロクな結末を迎えない。

 

アニメやゲームでお互いに分かり会えると知っているからこそ余計にそう思う。それにポケモンはうまく使えば人類の発展の役にも立つのだ。

それに、お互いの認識に齟齬があったとはいえ、これは他ならぬ自分が望んだこと。それにより、お互いが脅かされてしまってはどちらにも向ける顔がない。

 

多少なりとも世間にポケモンが正しく認知されるように、私が率先して動かなければ、と一人固く決心するのであった。

 




さ〜て、今回のポケモンは!

ユキハミ
いもむしポケモン
たかさ 0.3m
おもさ 3.8kg

こおり・むしタイプ

れいきの まざった いとを はく。 いとで からだを えだに まきつけ つららの ふりをして ねむるのだ。
(ポケットモンスターソードより)

じめんに つもった ゆきを たべる。たくさん たべれば たべるほど せなかの トゲは りっぱに そだつ。
(ポケットモンスターシールドより)

そして主人公はそんなこと知らない。

みんなもポケモン、ゲットだぞ!(hpyu大好き♡)


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メイ「ロトム図鑑とは何だったのか」

いや〜忙しい忙しい!書ける時間が全然無い!

話のストック?何のことかな?

というかたった二話で内容もほぼ無かったのにお気に入りが43件なんて…ありがたい…!
あと高評価もめっちゃ嬉しい…!
きっと将来性も込み何でしょうけどそれでも嬉しいです。
期待されたらこっちもモチベが上がるってもんです!

では第3話(見直し無し)を投稿しますね〜。


●●●

 

「じゃあ私行ってくるから!」

「待って」

 

 決意を固めた直後、外出しようと玄関へ赴くと、やはりというべきか止められた。

 

「何考えてるの!外はこんな変な状況だし、家で待っといたほうがいいって!」

 

 服の裾を掴みそう懇願するユウリ。その声には隠しきれない不安が読み取れる。

 

 それもそうだろう。こんな謎の現象が起こっている中、共に生活する家族が、その渦中である外へ出るというのだから。

 

 しかし、メイはメイでやることが出来たのだ。

それは道具の回収。

少し調べたところによると、変化してしまった道具は、売り物にならないとされ、捨てられているのだ。

 

 オレンのみでさえあれだけの効果を発揮したのだ。キズぐすりやどくけし、なんでもなおし等はもっと凄い効果であろう。

ならばできる範囲で回収しておきたい、と考えたのである。お金の力もバンバン使う気だ。

 

 勿論、自分一人のためではなく分け与えるためにも多い方がいい。

 

 早速副会長に連絡し、それぞれの店で出来る限り回収してもらう。

 詳しくは話せなかったが、意図を読んでくれたのか、直ぐに応じてくれた。これである程度の数は確保出来るだろう。

 

 

 だがしかし、これはあくまで緊急時や民間の方様に回収してもらったので、個人としての物ではない。

 

 だからこそ、大きなリュックとカバンを持ち、外へ掛けださんとしていたのだ。

 

「お願い!絶対に帰ってくるから!今回だけ!今回だけは!」

 

 未だ縋りつくユウリを半ば引き剥がすようにして距離をとり、日本人お得意の完璧なDOGEZAを披露した。

 

 友人たちから図太いと言われるユウリも、これにはドン引きし、一周回って通常の精神状態へと戻ったのだった。

 

 そして無言で土下座を続ける姿にとうとう折れ、外出許可を出したのである。

 

「はあ…分かったから。顔上げて、お姉ちゃん。そこまでのことなら、まあ、いいよ。……でも、絶対帰ってきてよね。寄り道とかはしないで、できるだけ早く」

 

 まるで初めてお使いにでるような子供にかける言葉だが、このメイ、集中すると時間を忘れてしまい、以前も似たようなことがあったのである。

 

「はい、じゃあ早速行ってきます!あ、私が外に行ってる間に情報収集とかヨロシク!」

「いくよユキミ」

 

 ユキミを肩にのせ…のせ…る事が難しいので、ショルダーバッグの中へと入れることにした。

立ち上がっているのか、頭がでているので丁度いいだろう。

 

 準備は万端。私はいざいかんと外へと足を踏み出した。

 

 

 

 

 外は今世で見慣れた町並みには変わりはない。

 しかしやはりというべきか勧告が出ているらしく、基本は外に出ている人の姿は見受けられない。

 

 そんな静かな町を歩いていると新しい発見もあった。

 

 それは、意外にもポケモン達は襲ってこないということだ。ゲームならば歩いているだけでワラワラと寄ってきたが、こちらを興味深そうに眺めたりそもそも気にしなかったりで、道中の戦闘等は無かった。

 

 これがバンギラス等の好戦的なポケモンだったら話は別だろうが……。確かに、アニメでも特に理由もなく襲ってくるポケモンは多くはなかった。

 

 そしてもう一つ、町中では基本的に虫や小動物型が多く、他のタイプは中々見かけない。これも恐らくはそれぞれにあった場所にいるのだろう。

 欲しいタイプのポケモンがいたらそこに関係する場所で探せ、ということだろう。

 

 後は、ゲームの様にボールがいくつか転がっていたので有り難く貰っておくことにした。

 

 そうしてしばらく歩いていると、商店街についた。人通りは少なく、がらんとしていていつもの活気は感じられない。

ポケモンの発生を受けてか、いくつかの店はシャッターが閉じられていた。しかし営業している店もあるようで、私の探している八百屋もその例に漏れずにやっているようだった。

 

「すみません、少し頼みたいことがあるんてすけど…」

「おや、メイさんじゃないですか。どうしたんですか?今出歩くんは関心はせんですけど」

 

 この人は八百屋の草壁さん。かなり恵まれた体格を持っているけど温厚な人柄で知られている。私が名前を覚えられている理由は、普通によくこの商店街に通うからだ。…え?自分のとこには行かないのかって?だってこっちの方が近いし…安いし…。それに私が行くと何故か皆がすんごい形相で眺めてくるから落ち着かないんだよね。

 

「それは草壁さんも当てはまりますよね?食料がある店なんて格好の的じゃないですか」

「ははっ、そう言われるとなんも言えんです。でもこんな時こそ必要なモンがあるでしょう」

 

 やっぱり優しい人だなぁ…いや、抜け目が無いのかな?

 

「それで、頼みたいことって何だい?」

「はい、実はかくかくしかじかで―」

「―成るほど、まるまるうまうまという訳ですか」

 

 私が頼んだのは当初の予定通りに変化したきのみを頂くことだ。草壁さんはこれを快く承知してくれた。それもわざわざ種類ごとに袋詰にしてくれた状態で。

 

「こんなに頂いてもいいんですか?お金も払いますよ…?」

「ええんですよ。突然こんなのになったゆうんでちょっと扱いに困ってたんです。だからむしろ引き取ってくれて助かります」

 

 そう言ってはにかむ草壁さん。こんな人だから家族仲も良好なのだろう。よく息子さんの話や奥さんの話をしているので分かる。

 

 

 なにはともあれ、かなりの数のきのみを入手することが出来た。そしてついでにカレー用の普通の食材も買っておいた。

 

 その後も様々な店を周り、道具を回収していった。もっとも、全てタダで済んだわけではない。もとが宝石の物は高くついた。まあそれでも総資産的には全然大したことないどころか幾らでも、それこそ山のように買えてしまう値段ではあるのだが、前世が安月給のブラック会社だったので、その時の感覚で考えてしまいちょっと買うのを躊躇っていた。

 

 

「ふう、結構集まったかな?」

「あいすす」

 

 かなり手応えは感じた。これならゲーム初期のキズぐすりONLYのバッグにはならない筈だ。…と思う。集まった道具はこうだった。

 

 

▪キズぐすり×28

▪いいキズぐすり×8

▪まひなおし×5

▪やけどなおし×3 

▪ねむけざまし×3

▪なんでもなおし×1

▪げんきのかけら×6

▪オレンのみ×21

▪オボンのみ×8

▪キーのみ×11

▪チーゴのみ×14

▪ヒメリのみ×4

▪モモンのみ×17

▪オッカのみ×1

▪しんかのきせき×1

▪もくたん×1

▪しんぴのしずく×1

▪きせきのたね×1

▪ひかりのいし×1

 

 数えてみれば結構な数があった。バッグにはまだまだ入りそうだが、一通り回った為、次で終わりとしておく。

 

最後は…電気屋か。

 

 ひょっとしたらわざマシンとか機械系の何かが無いかと思ったからだ。

 

 

 そして電気屋につくと、店頭に何人かが集まっており、何かを話し合っているようだった。

 

「あの〜、すみません。どうかしたんですか?」

 

 そう尋ねるとこちらに振り返った初老の男性が応える。

 

「ああ、どうにも色々と様子がおかしくてね。こんな時に来てくれたのにすまんが今はやってないよ」

 

 そうなのか…それは残念。だけれど一応変化したものが貰えないか聞いておこう。

 

「確かにそういった物はあるけど…。一体それをどうするんだい?」

 

 この質問は予想していた。だが商店街の人達が顔見知りなせいか特に言及もせずに渡してくるためちょっと拍子抜けしていたのだ。しかし、ここでようやく考えていた言い訳を使うときが来た

 

「はい、謎の生物もですが、何故か物品が変化していると言う事が起こっているので、何か分からないかと思い色々な方に頼んで変化したものを譲ってもらっています」

 

 ここでカバンを開けて中を見せる。案の定これに食いついてきた。中身を覗いてウンウンと言っている。少々苦しいが1個人としてなら怪しまれない…と思う。

 

「そうかい…。なあ山田くん、アレはどこにあったかな?」

 

 その男性に問いかけられた山田というらしい人は少し考え込むような動作をしたあと、廃棄予定の物と纏めてに置いてある。と言った。

もう一度「そうかい…」と言った男性は店の中に入り、こちらを見て手招きする。

 

「ついておいで」

 

 中に入ると、早速控室に案内され、「ちょっと待っといて」と言われ、大人しく座っている。

 

 店内は暗く、人もいないのでがらんとしていた。普段流れている音楽が無いのと、余り日が入ってこない場所で有ることも一因であろう。

 

 中々見つからないらしく、あれ〜?という声とガサガサと探る音が聞こえてくる。少し手持ち無沙汰になり、スマホを弄っていた所で、あるテレビが白い画面を映し出した。それはその画面のまま変わらず、静止していた。

 

(ああ、これがおかしいって言ってた…)

 

 納得した途端、そのテレビが光り、何かが高速で飛び出してくる。

 

「きゃっ!?」

 

何だ「きゃっ」て、…恥ずかしい…。

思わず女性のような悲鳴を上げてしまったが(※今は女性です)そんなことは気にしない。

 

 それはテレビの上で停止し、こちらを見つめていた。

どこか感情の見えない青い目、オレンジの体は水色のプラズマ状のものが覆っている。

 これは知っているぞ。覚えている。ポケモン第4世代である『ダイヤモンド・パール』に初登場したポケモンで、かなり特徴的な仕様のポケモン。

 

プラズマポケモン『ロトム』

 

 眼前のロトムはまるで稲妻の様に不規則な動きでこちらに向かってきている。

 

「っユキミ!」

 

 急いでユキミをバッグから出そうとするが相手の方が遥かに早い。とっさに顔を庇い、やってくる衝撃に備えるが、何も起き無い。

 

 目を開けるもロトムはいない。家電に潜り込んだのかと辺りを警戒するが、何も反応は無く、ただ驚かしただけか、と安堵するメイ。

 

 すると急にスマホが震え、メイの手を離れて宙に浮く。

 

 浮遊するスマホからは何か触覚のようなものが伸び、背面には先程のロトムの顔が浮き上がり、開口一番、こう言った。

 

 

 

「初めまして、ヨロシクロト!ユーザーメイ」(浪○ヴォイス)

 

 

 

「はえぇ…?」

 

 

「これでいいのかい?」

「はい、ありがとうございます」

 

 男性からは何かは分からないがわざマシンを貰った。

集めた中では唯一のわざマシンだ。何かしらのディスクが変化したものと思えるがそれにしては数が少ない。レア物かもしれないので大事にしまう。

 

 

 あ、そうだ。聞けばいいのか

 

「ヘイ『ロトム』!」

 

 私が呼びかけるとスマホは浮かび上がり画面が表示される。そして少し高い男性らしい声で応答する。

 

「何か御用ロト?」

「ロトムは何が出来る?このわざマシンがどんなのとかは分かる?」

 

 すると私のスマホに入ったロトム(スマホロトムと言うらしい)は回転し、自らのスペックを自慢し始めた。

 

「ボクは色々出来るロト!マップ機能に通話、検索等の普通のスマホで出来る事は勿論、電子機器に取り付いてそのサポート、寂しい時の話し相手にポケモン図鑑!所有しているポケモンの強さを見れたり、あらゆる方面をカバーできるんだロト!ちなみにそのわざマシンはNo.95『エアスラッシュ』ロトね〜」

 

 ぐう有能…。これエアスラッシュだったんだ…ん?

 

「今ポケモン図鑑って言った?」

 

「そうロト!このアプリは従来のポケモン図鑑と同じ機能ロト」

 

…これで悩んでた事が一つ解消した。とはいえ今すぐやるわけではないが不安事項が一つ消えたのは喜ばしい、というか予想外だ。

 

「…優秀なんだね」

「えっへん!ロト」

 

 胸を張るような仕草に人間味が見える。ゴーストタイプで好奇心旺盛で、機械に詳しい…もしかしたら機械等に精通する人間だったのかもしれない。

 

ともかくまずは使ってみる。

 

「ユキミ、出てきて」

 

 のそのそとバッグから這い出るユキミ。かわいい。

それにポケモン図鑑アプリを起動させたスマホロトムを向ける。

 

No.872 ユキハミ

 

 

「ユキミ、ユキハミって言ったんだね…。タイプはこおり・むし……予想通りだけど…今までにいたかな?」

 

 今覚えているわざも出ている。

 レベル10で『むしのさざめき』『こなゆき』『むしくい』は結構いいんじゃないだろうか。

ほか二つは分からないがこなゆきはあっている。試しに命令してみたらどちらも問題なくうつことができ、この図鑑が正しいことが証明された。

 

 このスマホロトムのおかげでこれから先が大分楽になりそうだった。やっぱりメニュー画面の奴は便利だ。

 

 

 偶然とはいえ、大きな収穫を得ることも出来た。これはもう大成功と言っていいのではないのだろうか。そんな事を考えながらるんるんと足を弾ませ家へと向かった。

 

 

尚、家へ帰ると遅くなった原因をユウリに散々問われて縮こまる情けない姉の姿があったそうな…。




今日のポケモンは!

ロトム
プラズマポケモン
たかさ 0.3m
おもさ 0.3kg

でんき・ゴーストタイプ

ある しょうねんの はつめいから ロトムを いかした いろいろな きかいが つくられはじめたのだ。
(ポケットモンスターソードより)

プラズマで できた からだで いろんな きかいに もぐりこむ。 おどろかせるのが だいすきだ。
(ポケットモンスターシールドより)

ぶっちゃけタイトルの台詞は作者がマジで思ったことです。絶対スマホロトムのほうが有能。ロトム図鑑みたいな特別な調整要らないからね。是非もないよネ!

みんなもポケモン、ゲットだぜ!(某ポケモンマスターを目指す少年並感)



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いけっ!モンスターボール(下投げ)!


次回を待ってくれている人がいるので投稿します。不定期で駄文というどうしようもない作品ですが何卒見てくだされば幸いです


●●●

 

「で、何でお姉ちゃんはこんな事知ってたの?」

 

あ、やっぱりそうきます?

 

 妹に叱られるという情けない構図が終わってすぐ、腰に手を当てた我が妹が問いかける。顔は笑顔だが目が笑ってない。

 アカンこれ、ガチなやつじゃん。ここまでキレたのなんて両手で数えるほどしか無いぞ?

 

「え〜、と何のことかな?」

 

 取り敢えずとぼける。まるで何も知らない小娘かの様に振る舞う…!これこそが一筋の光明…!あれ程取り乱していた妹だ。ちょっと記憶が曖昧になってたりで最初の事も忘れてるハズ…。大丈夫、カバーストーリーも考えてきたのだ。

 

「ユウリよ…人にはいずれも知的好奇心というものが備わって「お姉ちゃん」ウッス」

 

 よりプレッシャーが増してらっしゃる…!でも正直に言う訳にはいかない。一体どうすれば……!

 そうだ。何も全部言わなくても良いんだ。本当の事をちょっとだけ言って…うん、いけるわこれ。

 

「ユウリ、今から理由を話すけどこれは嘘でも作り話でもない。何ならお姉ちゃんが可笑しくなったわけでもないんだ」

 

「何?」

 

「まずはね――――」

 

 簡潔に纏めるとこうだ。

 ある日、突然神様みたいな変なのが現れて「これから何か変なの起こるからね。すごい便利な道具もあるよ(意訳)」と言われて夢だと思っていたが、本当におかしな事態になってしまったからそれを調べたくてあんな行動をとってしまった、と。

 

 うん、馬鹿かな?

 

 いけると思ったさっきの自分を殴りたい。無計画すぎるだろ私。こんな説明で納得するわけ「ふーん、そうなんだ」!??え、まぢで言ってる?それマ?あ、真剣だわこの子。

 

 うーん、このもやもや感。今は有難いんだけどいつか騙されたりしないかな?お姉ちゃん心配。

 

 後で聞いたところ、「お姉ちゃんは色々とおかしいから何か有り得そう」ということだった。解せぬ。

 確かに体は丈夫な方だが流石の私もビル最上階から落ちて生きていられる自信は無い。無傷で降りられるのはマンション換算で7階までが精々だろうに。

 

 まあそれはさておき、謎の生物達は『ポケモン』だと言うことを知らせておく。世間に知らせる第一歩、まずは身近な所から。

 

「へえー、ポケモンって言うんだ。ゲームとかにありそう…でも、どうやって調べたりするの?何か瞬間移動するやつとかがいて話題になってるんだけど」

 

 妹のスマホには狐の様な黄色い生物(…これはケーシィだな。)がテレポートする瞬間が映っていた。どうやら外に出て動画を撮影しているらしい。

 まったく、こんな状況で外出した挙げ句ポケモンにここまで近づくとは…危機管理がなってないぞ(ブーメラン)

 

(それにしても『どうやって調べる』か…確かにどうやって調べるんだ?アニメやゲームでは特にそんな描写は無かったしな…。)

 

と考え込んでいると私のポケットが動き出した。

 

「そんな時はボクにおまかせロトー!」

「うわっ!びっくりしたぁ!誰ぇっ!?」

 

 飛び出したスマホロトムはユウリの頭の上をクルクルと回ると、顔の前で停止する。

 

「スマホが飛んでる!?」

「どうもユウリ、よロトしく!」

「あ、どうも。よろしく…って何コレ?これもポケモン?」

 

 流石、理解が早い

 

「うん。厳密には私のスマホの中に入ってる。一応他の電化製品にも入れる感じのポケモン。今はスマホロトムって名乗ってる」

「そんなのもいるんだ」

 

 そんな事を言っている合間にも手に持ったり近くで眺めてみたりで興味心身、といったところだろう。暫く触られていたロトムはユウリの手を離れ、再度浮かび直す。

 

「オッケー、ではさっきの質問に答えるロト。ポケモンの事を調べる学問は携帯獣学といって、研究者達が日々ポケモンの生態や性格、個体による技の変化や強さ等を調べているロト!詳しく知りたいなら後でまた聞くロト。そして調べる方法は簡単ロ。穏やかなポケモンなら野生でも十分に研究できるけど、協力的じゃないポケモンもいるロト。さっきのケーシィも同じロトね。だから捕まえてから研究するんだロ」

「研究されてるんだ……?でも捕まえても逃げるんじゃないの?」

 

 もっともな疑問を放った所で、ロトムは触覚を口元で3回振り舌?をならす。

 

「チッチッチ、その疑問は既にお見通しロト。そんな時は――」

 

 ロトムは素早く私のバッグの中に入り込み、そしてまた直ぐに出てきた。しかしその触覚には何かが掴まれている。

 

「――これ!モンスターボールロト!これでポケモンを捕まえて仲間にすることが出来るロミ。捕獲の方法は簡単!ボールを投げて、当てるだけ。3回揺れて、カチッとなったらその子はもう仲間ロト!…勿論捕まえるだけじゃなくて中に入れて一緒に冒険も出来るんだロト!さあ、これで君も今日からポケモントレーナーロト!」

 

 おお…中々簡潔に纏められてる。何か、すごく宣伝っぽかったけど分かりやすかったから別にいいだろう。現にユウリも納得がいったのかうんうんと頭を振っている。

 

「あ、成るほど。それで仲間になったのに協力してもらうってこと?」

「そうロト!………まあ、野生でも協力してくれたり野生ならではのことも調べるロトけど…

「なんか言った?」

「なんでもないロト。まあ、取り敢えず見てみるロト。はい、ユーザーメイ。このモンスターボールをユキハミに投げるロト今までの態度からきっと仲間になってくれるはずだロト!」

 

 そう言いながらモンスターボールを一つ手渡してくる。…どうやって握ってんだ…?ツルツルして平面なんだけど…。

 何はともあれ、モンスターボールを構えた私は、ユキミを呼ぶ。すると食べかけのミカンをほおってこちらにヨチヨチと這って来る。かわいい。どうしたの?とでも言いたげな顔のユキミにモンスターボールを差し出す。

 

「いいかい、今からこれを投げるから仲間になりたいなら抵抗しないでそのまま。逆に、仲間になりたくないなら、精一杯抵抗してね。それじゃあ、いくよ」

 

 ユキミが驚かないようにそっとボールを投げる。コツンッと軽い音を立てたモンスターボールは、二つに割れ、内側から出てくる光にユキミが吸い込まれ、ボールは床に転がり、点滅する。

 

 一回、ボールが振動する。

 

 スマホロトムはああ言っていたが実際のところは半々の気持ちである。確かにかなり懐いている様に見えたが、それは人懐っこいだけでも済まされるだろう。捕まってくれるかと言われれば謎だ。それに、アニメでも人に慣れているが、捕まる気は無いポケモンだっていたんだ。ユキミがボールから出てくるのはあり得ない話などではないのだ。

 

 そんな事を考えながら次を待つ、果たして留まってくれるのか……。

 

カチンッ☆

 

…へ?

 

 そんな期待とは裏腹に、一度だけ揺れたボールは軽快な音と共に、その動きを停めた。

 

………えぇ…?

 

 

 

 結局、ユキミは無事捕まえることが出来た。捕獲クリティカルでもないのに簡単に捕まえることが出来たのはロトム曰く、仲間になりたい気持ちが強かったんだとか。そんなのありか…とは思ったけどアニポケを見ると否定できないのが辛い。

 

 何はともあれ、これで私の手持ちにユキミが加わった。恐らくは私が世界で唯一のポケモントレーナーだろう。だがしかし、個人の力なんて高が知れている。時に大きな影響を与えることこそあれど、このような事態に、著名人でもない私の言葉なんて忘れ去られてしまうだろう。だからこそ、だからこそ周りを巻き込むのだ。勿論無理強いはしない。デメリットも説明する。それでもやってくれるという人がいるのならそこから広げていこう。そう、身近なところから。

 

「出てきて、ユキミ!」

 

 ボールから青い光に包まれ、ユキミが現れる。ユキミは再びミカン目掛けてもぞもぞと動くが背中からひょいと持ち上げ、こちらに顔を向ける。

 

「改めて、これからもよろしく」

「ふんわ?」

 

 何だか分かっていないのに取り敢えず返事した感がすごいユキミ。少し納得いかないけど…まあいいか。

 

「やっぱりいいなぁ〜、かわいいし、居たほうがこの先いいんでしょ?」

 

 聞いてきたのはユウリ。確かにこれからどうなるかも分からない。ひょっとしたら何事もないかもしれないし、事件が起こる事もあるだろう。…うん。近くから、か…。

 

「ねえユウリ、よかったらだけど―――一緒にポケモンをゲットしに行かない?」

「行く!」

 

 取り敢えず、今はこれでいいのだ。

 





ちなみに、このモンスターボールはアニポケとゲームが混ざったような仕様です。


今回は新しいポケモンが出ていないのでここでのコーナーはありません。代わりにユキミのことをのせときますね〜。

〜ユキミの生態1〜

ユキミはよく家でころころと転がっているぞ!ただ、よくこおりが引っかかって起きれなくなるので、その度ひっくり返している


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ふたりはポケトレ

これが今年最後の更新だ!受け取れぇー!

※12/28(月)20:18 タイトルを修正致しました。


 ユウリを誘ってから一時間、しっかりと道具を整理していった私達は安全を確認しながら街を散策していた。

 

「なんかニヶ月くらいたった気がする…」

「何言ってんの?」

 

 たった一時間しかたっていないのにそう思ってしまった。ユウリに白い目で見られているが気にしない気にしない。自分で感じたものこそが唯一の真実なのだ。

 

「あ、あれは?」

「アレはオニスズメロト。ことりポケモンのノーマルひこうタイプ。図鑑説明は『ハネが短く飛ぶのはやや苦手。せわしなく動き回り草むらのむしポケモンをついばんでいる。』ロト」

「んじゃあれは?」

「コクーン。さなぎポケモン。むしどくタイプロト。説明は『ほとんど 動かず 木に つかまっているが 中では 進化の 準備で 大忙し。その 証拠に 体が 熱くなっているぞ。』」

「ほんとだ。熱ーい」

 

 ユウリは少し前までの恐怖心とは何だったのかというほど初めて見るポケモンに大はしゃぎの様子。そうだろうそうだろう。ポケモンって面白いだろう?まあ私は知っているからね。微笑ましく妹の反応を見守っていこう。

 

「あれ?あの子ケガしてない?」

「確かに。あのポケモンはヒバニー。ほのおタイプで、『走りまわって 体温を 上げると 炎エネルギーが 体を 巡り 本来の 力を 発揮できる。』ロトが…」

 

 何それ私知らない。

 

「かなり弱ってるみたいロトね…。これはどく状態だロト」

「顔色も悪いし苦しそう…。お姉ちゃん、この子なんとかならない?」

 

 いやいや、知らないポケモンだからといってフリーズする時間もない。

 すぐにモモンのみを渡すと弱々しいながらも飲み込み、顔色が少し良くなった。どく状態は治ったらしい。続けてオレンのみは…ユウリがあげているな。

 

 この二つを食べると動かなくなってしまったが、ロトムが言うには安心して寝ているだけらしい。

 

 そして当然、この場に置いておくことは出来ない。どこかは分からないが傷だらけのうえ、どく状態にもなっていたんだ。このボロボロの状態でコイツがここまで動けたんだ。その犯人がまだ近くにいるかも知れない。

 

 ということを説明したらメイは納得したように頷き、ヒバニーをリュックへ入れて指を指し…

 

「ヨシ!」

「ヨシ!じゃない!」

 

 そうだった。我が妹はちょっと天然、いや、馬鹿が入っているのだった。この子は昔から無自覚でいろいろとやらかすのだ(ブーメラン)

 

「でもいいじゃんこれ。ちゃんと運べるし安全だよ?私も動けるし」

 

 まあそうなんだけど…。それじゃあ起きたときにパニックにならないか心配だ。…まあ、かなりぐっすり眠ってるから大丈夫かな。

 

「じゃ、いこっか」

 

 催促するとユウリは不思議そうな顔をし

 

「この子じゃだめ?」

「駄目です」

「なんで?」

「その子が回復しても一緒にいてくれるとは限らないでしょうが、それに一体だけだとちょっと心許ないじゃん。タイプ相性もあるし…」

 

 そういうものなのか。

 

 そうなのだ。

 

 言葉を交わし、ヒバニーをリュックに入れたまま、他愛のない話をしながら歩く。

 

「この子はほのおタイプなんでしょ?確か…みず、じめん、いわが弱点だったよね。ならそれを補える子がいいかな〜。あ、出来るなら、だけどね」

「だから決まったわけじゃ…もういいや。確かにそう。その三つに有利なのっていえば…くさタイプだね」

「そうロト!くさタイプならお互いに弱点を補えるロトね」

 

 というわけで近くにあった公園の草むらを中心に探すことにシフトしたのだが…。

 

「全然いなくない?」

「いないねぇ…」

 

 当の草むらには全くと言っていいほどポケモンがいなかったのである。

 本当に何もいやしない。さっきまではやかましくも主張していたとりポケモンの鳴き声さえもここでは聞こえない。

 

「またビードル。お姉ちゃん任せた!」

 

 何故かビードルはいる。

 ここのビードルはなんか群れで来るのでいい感じの経験値とさせて頂いてる。因みに死んではいない。気絶するか逃げるか、それで戦闘終了だ。

 一匹一匹は弱いが数が多いため、ユキミはおかげで17レベルになった。最初のジム戦位なら脳死プレイでも勝てるだろう。いや、しないが。

 そうしている間にも戦闘は終わった。勿論ユキミの勝ちだ。むしタイプにはタイプ一致のこおり技は応えるらしい。

 

「俺の勝ち。なんで負けたか明日までに考えといて下さい」

「お姉ちゃん」

 

 はい。真面目にやりましょう。

 

「なんでビードルしかいないんだろうね」

「さあ?この辺に巣でもあるんじゃ…」

 

 そう考えたところで、はたと気がつく。

…あれ、普通に不味くない?

 

フ”フ”フ”フ”フ”フ”フ”フ”フ”フ”

 

 木の上からは煩い羽音と共にスピアーが一匹二匹三匹四匹…。そのどれもがこちらに敵意を向けていて…。

 

 うん。

 

「逃げろーーーっ!!!」

「わあぁぁぁぁぁーーーっ!!」

 

 

・・・・・・

 

 普通に考えておくべきだった!当たり前じゃん!何でいないかってそりゃ何かが棲んでるからだよ!ビードルしか出ないって、そりゃソイツ等の縄張りなんだから普通は偏るよね!

 こうなると私達はスピアー達にとって勝手に住処に押し入った挙げ句、手当たり次第に子供を襲っていく凶悪な犯罪者的な感じである。そりゃ許さんわ。

 

「かといってこのままやられてなるものかー!ユキミっ『こなゆき』!」

 

 ユキミが放ったこなゆきは何匹かのスピアーを瀕死にさせ、さらに数匹がこおり状態になり動きを止める。しかしこれも焼き石に水。薙ぎ払っても、前列が盾となり後続には届かない。現に、スピアーとの差は着々と縮まってくる。

 

「ユキミー!もうちょい頑張って!『こなゆき』をし続けて!」

 

 ユキミが攻撃に専念出来るように抱えて走ってはいるがそろそろ限界だ。あるかどうかは検証していないから分からないがゲームどおりだったら『こなゆき』の使用回数は25。今使ったので本日22回目である。

 もしこのまま逃げ切ることが出来ずに使い切ってしまうと、範囲攻撃ができるのはスピアーにとっていまひとつな『むしのさざめき』だけになってしまい、今みたいにギリギリで持ちこたえることは出来なくなってしまう。

 

 何か後一手あればいいんだけど…!

 

「ぬわっ!」

 

 急にユウリがおかしな声を出し始めた。正直女子力は求めてなかったけど流石にそれはどうかと…そう言おうとした時、ユウリのリュックから何かが顔を覗かせる。

 

「ヒバ?」

 

 それは先程助けたヒバニーであった。ヒバニーは自らの置かれている場所を確かめると、何故か嬉しそうにはしゃぐが、背後のスピアーの群れを見た途端慌てふためく。

 そりゃ起きがけにこんなことになってればそうなるよ。

 

 だがそんなことよりこれで何とかいけそうだ。

 

「ごめんヒバニー!私達も説明はしたいけど時間が無いんだ。とにかくアイツらに向かって『ひのこ』を使って欲しい!」

 

 何が何やら分からなそうだがスピアーが敵だというのは伝わったのか、ひのこを連続ではいてくれる。

 

「そいやー!」

 

 それに合わせてそこらへんに落ちている木の枝などをユウリと共に投げつける。スピアー達は意に介さない様子で進んでくる。

 

 二人は必死に逃げているが一向に出口まで辿り着かない。

 それも当然だ。だってずっとこの辺りを回っているだけなのだから。

 

 最初は勢いを落としそうにもなかったスピアーの群れは、少しして異変に気がつく。

 

――気分が悪い。

 

 スピアー達は先程まではただ敵意を向けて追いかけていたが、突然視界が悪くなり、気分も悪くなっまことな相まってその場に立ち尽くしてしまう。

 

 だからスピアー達は近づいてくるその影に気づけなかった。

 

「よし、ユキミはそのままの態勢で『こなゆき』。後は私が回る!」

 

 声に気づいて注意を向けるも時既に遅し。スピアー達の中心に立ち、回転することによって群れの全てにこなゆきがヒットし、そのほとんどを戦闘不能にする。

 

 そしてそれを為したメイはユキミを抱えて全力疾走。公園を抜ける。そして入口付近で待っていたユウリと合流する。

 

「どうだった?」

「モチ、バッチシよ!」

「そっか、良かった」

 

 それは今の作戦が上手く行ったことに対する安堵が含まれていた。作戦といっても至極簡単でお粗末なもの。

 

「まさか本当に煙幕が効くとはね〜」

 

 そう、蜂は煙をたけば嫌がるのだ。ヒバニーの『ひのこ』で牽制しながら木に移らない程度で火を点ける。これを繰り返すことで煙幕を充満させたのだった。

 スピアー程の体躯で効くかどうかは不安だったが、逆にその体躯だったからこそ逃げたり散らばらずにひとかたまりになっていたと考えられる。

 まあ何であれ上手く逃げ切れた、ということだ。

 

「あ、ヒバニーもありがとね。はいタッチ!」

「ヒッバ!」

   

 ヒバニーも満足げに飛び上がりユウリとのタッチを交わした。

 …コイツ人に、トレーナーに慣れてるな。多分だが町にでも住んでいたか…ただ能天気なだけか。

 

「それで、どうするの?」

「どうするって?」

 

 きょとん、と何を言っているか分からないような顔をした。

 本当に忘れてたのね…。

 

「いや、ゲット。仲間にする?…なんならめっちゃ不利だけどユキミに弱らせて貰うって手もあるけど…」

「えと、うーーん…確かに欲しいけど……うごご…!」

 

 妹は必死に悩んでいるが…ま、それは無いだろう。

 だってゲットとかの話題が出た途端ヒバニーが耳をピクピク動かしてこちらの様子を伺っているからだ。本体は素っ気なさそうだが肝心の表情は期待に満ち溢れている。

 

 いわゆる、トレーナーと一緒にいたいタイプのやつだった。

 

「うーん、でも……いや、やっぱり……」

 

 いつまで悩んでいるつもりだろう。普通のモンスターボールをユウリに投げる。

 

「あたっ!」

 

 おっ、クリーンヒット。頭に当たった事に抗議するが、それがモンスターボールだと分かると、いいの?という目で見つめる。

 

「もうこんなに馴染んでるんだから多分普通に入ってくれるんじゃない?試しに軽く投げてみれば?」

 

 ユウリは少し迷った後、モンスターボールを固く握りしめてヒバニーと向き合う。

 

「よ、よーし。今から投げるから動かないでねー」

「ヒバっ!」

 

 ヒバニーは両手を腰に当てて胸を張る。逃げようとすらしないことから、捕まる気はあるみたいだ。

 

「せーの、……フンッッ!」

「ヒボァッ!」

 

 何故全力で投げたし。

 

 え、今すごい悲鳴あげなかった?あのノリは完全に優しく投げるとか手で当てるとかじゃないの?ヒバニー大丈夫?頭壊れてない?

 

 そんな困惑を余所にボールは動き出す。

 一回、二回…………三回。

 カチンッ☆

 

 やったー!

 ヒバニーを つかまえたぞ!

 

 あ、捕まるんですね。

 

 

 

 

 

 

「チュッチュリリィ♪」

「バニバニ♫」

「クークク♪」

「コジョジョ」

 

 あれから少し探索してユウリはチュリネを、私はコジョフーを捕まえた。

 

 チュリネは花壇付近にいたのをヒバニーが(ほぼ満身創痍で)弱らせて捕まえ、コジョフーは近くの学校の付近にいたのをこなゆきでこおり状態にして何とか捕まえた。

 

 何でコジョフーかって?そりゃ私がBWでお世話になってからだよ!いいじゃん。コジョンドめっちゃデザイン好きだし「すてみ飛びひざ」とか「さいせいりょくとんぼがえり」とか結構使えると思うんだけど!

 

……誰に言ってるんだろ。

 

 まあとにかく、頼りになる仲間が出来ました。

 今はロトムに頼んでこっちのスマホでも使えるポケモン図鑑。いわゆるマイナーチェンジ版ポケモン図鑑アプリを開発中。必要最低限の機能だけつけたものを無料配信するのだ。

 

 今の段階では実際にポケモンをスキャンしないと登録されないが、登録したらそれ以降は開放されるらしい。まるでゲームと同じだ。

 因みに無駄にこだわっているらしく、同じポケモンでも地域や登録番号によって説明文を少し変えているらしい。

 それやるヒマあったら機能を豊かにしろよと言ったが、現段階だと説明文いじるくらいしか拘るところが無いらしい。やってもらっている立場ということもあるので自由にやらせている。

 嘘、普通に違う説明文とかゲームそっくりでいいと思いました。

 配信してからも、アップデートはする予定で、ゆくゆくは勝手に図鑑がスキャンしてくれるレベルにまでするらしい。

 

 そして嬉しいことに明日には取り敢えずは完成するらしく、第一歩を踏み出せるのだ。深い理解、とまではいかなくても多少は受け入れて欲しいのだ。私の予想ではこれを見たら三割の人は多少はマシな印象を持つことになるだろう。

 

 まあ、これも希望的観測な訳だけども。

 

 ポケモン達はそれぞれ親睦を深めているが、ユウリは今日色々あったことでポケモンを眺めながら休んでいる。なので私が夕食を作っている。

 

 っと、キャベツは千切り…。

 

 暫く無心でキャベツを刻んでいるとは私の目にありえないものが映り込んだ。それは我が家に三つある内の二つの包丁。そして三本目は私が折ってしまっていて……。

 

 じゃあ私が今持ってるこの赤いのって何でしょうか。

 

「ツッキーーッッ!」

「全部月島さんのお陰じゃ危なっ!!」

 

 これヒトツキだ。それも色違いの。剣部分を振りかぶって私の頭に一直線!

 

「何の!柳生新陰流無刀取り!」

 

 バシッ!

 よし、捉えた!…あ、まて、その鞘で顔を打つな!むず痒い。クソッ助けを呼ぼう。幸いにもヒバニーはほのおタイプたから大丈夫な筈。

 

「ユウゥリイィィィィィッッ!!!へるぷみーーー!へるぷみーっ!」

 

 この大声にはユウリは飛び起き、ポケモン達も慌てた様子で台所へと向かっていく。

 

「お姉ちゃんっ!?」

 

 そしてユウリが見たものとは、赤い剣に腕ひしぎ三角固め?を繰り出している姉の姿だった。

 

「ユウリ!コイツ引き剥がして!」

「……テレビ見よ」

「え、待って!え?マジで?ちょ、ホント、ホントに待ってぇぇーーっ!!」

 




ヒバニー
うさぎポケモン
たかさ 0.3m
おもさ 4.5kg

ほのおタイプ

はしりまわって たいおんを あげると ほのおエネルギーが からだを めぐり ほんらいの ちからを はっきできる。
(ポケットモンスターソードより)

たたかう じゅんびが ととのうと はなの あたまと あしの うらの にくきゅうが こうねつを はっする。
(ポケットモンスターシールドより)


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