トリニティセブン~7人の魔書使いと第四真祖~ 《リメイク版》 (アゲハチョウ)
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1話

異境(ノド)でのシャフリヤル・レンとの戦いを終え、暁古城と12人の血の従者たちはそれぞれの日常に戻っていた。

 

「なあ、姫柊。ここのところ変な魔力を感じないか?」

「変な魔力ですか?」

「いや、俺の気のせいで済む話なら良いんだけど、第四真祖()に対する魔力への攻撃なら姫柊が感じないのも納得できるかと思ってよ」

「ですが、あの事件以降先輩が第四真祖だと言う情報は一般の方からは消えていて知っている人物は限られているはずです」

「そうなんだよな」

 

自分が第四真祖であると広まる覚悟で挑んだ戦い。だが、事件後まるで最初から無かったかのように古城や領主選挙で活躍した雫梨や結瞳にかんしても同じように情報が変わっていた。何者かが情報改竄をしたようで古城もただの高校生としての情報しかなかった。

 

「ですが、先輩が感じるなら用心した方が良いかもしれません」

「いやでもよ。勘違いかも知れねぇんだぜ」

「はい。本当に先輩の勘違いなら良いんですが、相手が先輩の住所など知っている場合は先輩だけに危害が出るわけじゃありません」

「まさか-」

「アヴローラさんや凪沙ちゃん達が危険です」

 

なにも敵は古城と真っ正面から戦い挑むつもりはないだろう。世界最強の吸血鬼に正攻法で勝てるなんて考えず人質を捕ると言う考えに至るだろう。

 

「急ぐぞ、姫柊!」

「待ってください!先輩」

 

慌てて自らの自宅へと向かおうとする古城のあとを追うように走る雪菜。

だが、この時の二人は周りを気にかける様子はなかった。故に引っ掛かってしまった。

 

「なッ」

「これは!?」

 

突如として二人の足下に魔法陣が展開される。そして、一瞬強い光を放つとそこには二人の姿はなくなっていた。

 

リリスside

 

「魔道士になるですって!?本気ですか、あなたは!?」

「本気だっ」

 

正気の沙汰とは思いませんでした。追い詰めすぎてしまったのではないかと思ってしまいました。

 

「だって魔道士は魔道書を持っているんだろ?なら俺でって持ってるわけだしなれる可能性あるってことじゃねーか?」

「い、いやっそれはそうかもしれませんがっ・・・・・・。そんなこと聞いたことがありません!!」

 

他人から渡された魔道書で、しかも魔道に関することに関わってこなかった彼が魔道士を目指すなんて無謀です。ですが・・・。

 

「・・・ですが、確かにないとは言い切れません。こんな世界を創り出してしまうくらいですから」

 

恐らく魔道士としての才能だけならきっと他の誰よりもあるでしょう。たった一人世界構築をしてしまう力。危険ではありますがこのまま記憶を消したところでまた違う所で崩壊現象を起こしてしまったら今度こそ抹殺しなくてはならなくなるでしょう。

 

「なら俺はなる!!例えどんなに可能性がひくても」

「・・・・・・」

 

この少年は覚悟と決意を顕にした瞳をしていた。

 

「ん、おい。なんかあっち方でバカデカイ魔力が発生してるぞ」

「え?」

 

魔道書が示した場所へと目を向けるとそこだけ空に黒い雲が掛かっており、大きな魔力の流れを感じました。

 

「なんですか、この大きな魔力は」

「おいおい、何て魔力だ。こんだけ距離があるってのにブルッちまぜ」

「なんだ?あっちになにかあるのか?」

「貴方達はここから動かないで下さい。私はあちらに向かって状況を確認してきます」

 

私は春日アラタと彼の従妹に姿を偽っていた魔道書にその場を動かないように注意し、私はとてもなく強い魔力を発している場所へと向かっていった。

 

リリスsideend

 

 

魔法陣に吸い込まれたと思ったら、落下していた。

 

「なんでだぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「せ、先輩っ!?落ち着いてください」

「ひ、姫柊!どうなってるんだ」

「とりあえずこのまま落下したら私たちはただではすみませんよ」

「く、姫柊ちゃんと掴まってろよ」

「暁先輩!?」

 

古城は空中で上手く姫柊を引き寄せて胸のなかに抱き寄せる。突然の行為に焦る雪菜だったが古城が眷獣の魔力を使い始め、何をするのかを理解する。

古城が使ったのは第四真祖『焔光の夜伯(カレイド・ブラッド)』の7番目の眷獣『夜摩の黒剣(キファ・アーテル)』の魔力。この眷獣は第三真祖の系譜であり焔光の夜伯が持つ眷獣のなかで唯一の意思を持つ武器(インテリジェット・ウエポン)であり、魔力のみを使用すれば重力制御を行うことが出来る。

魔力を行使したことによって落下速度が緩まり無事に着地することができた。

 

「ふぅ、なんとかうまくいったな」

「あの、先輩・・・。もう離してもらっても大丈夫です」

「え。わ、悪い姫柊」

「いえ、緊急時だったのでしかたないかと。それよりこれは一体何があったんでしょうか」

 

雪菜と古城は周りを見て唖然としてしまった。明らかに本土の街中を想わせる場所のはずなのにまるでそこは魔獣が暴れたのではないかと考えさせられるような状態だった。多くの建物は破壊され倒壊し、道路や鉄柱はその面影すら無くなっていた。

 

「人の気配がまったく感じられません。それにこれほど災害があったなんて情報はありませんでしたし自衛隊が活動している様子はありません」

「獅子王機関みたいな組織が来てる可能性もないみたいだな」

「先輩、下がってください」

 

雪菜は古城を庇うように前へでる。

 

「雪霞狼!」

 

雪菜は雪霞狼を使い跳んできた何かを弾く。

 

「敵かッ」

「僅かでしたが急所からは離れていました。恐らく威嚇射撃でしょう」

「何者ですか、貴方達は」

 

現れたのはライフルのような銃を持った女性だった。

 

「待ってくれ。別に怪しい者じゃないんだ」

「貴方は-」

「俺の名前は暁古城。そんでこっちは後輩の姫柊だ」

「私は浅見リリスです。再度問います。貴方達は何者ですか?感じ取れる魔力は到底人間のものとは思えませんが」

「吸血鬼を知らないのか」

 

古城の放った言葉を聞き、リリスは声を語気を強めて否定する。

 

「吸血鬼!?そんなモノ存在しません!ふざけているんですか」

「待ってください!一つ質問させてください。暁の帝国または魔族特区と言う言葉に聞き覚えはありませんか?」

「どちらも聞き覚えのない言葉です」

「先輩ちょっと・・・」

 

雪菜はリリスの質問の返答を聞き少し考えると古城へと声をかける。

 

「どうしたんだ、姫柊」

「先輩、恐らくですが此処は私たちが知っている世界ではないかも知れません」

「どうしてだ?」

「私が彼女に聞いた単語は私たちの世界では認知されている言葉です。どんなに世間知らずでも暁の帝国ならまだしも魔族特区を知らないことはあり得ません」

 

古城はそこまで聞いて気づいた。彼女が暁の帝国と魔族特区と言う言葉を聞いたことがないと否定していたことに。

 

「彼女の持つ武器は恐らくですが魔法によって作られたものです」

「じゃあ、あいつは魔女なのか?」

「分かりません。ただ、魔女ともなんだか違うような気がします」

「そうか。なぁ、あんた浅見っていったか?俺達の話を聞いてくれ。信じられないかもしれないけど今から俺達が話すことは全て事実なんだ」

 

それから古城と雪菜は自分達の現状を話した。自分達が此処ではない世界の住人であること、謎の魔法によってこの世界に来たことを話した。流石に自分達が吸血鬼の真祖とその血の従者であることは伏せた。

 

「・・・分かりました。貴方達二人の話を信じましょう」

「本当か」

「ええ、こうなったら信じるしかありません。貴方達の話の中には私たちの世界には存在しないものもありましたから」

「ご理解いただきありがとうございます、浅見さん」

「とりあえずお二人の身柄は学園で一時預かります。学園長にも相談しないといけませんから。では、着いてきてください。あちらで待たせている二人のもとへ向かいますので」

 

リリスの案内のもと二人は歩くことになった。

 

「お待たせしました」

「お、やっと戻って来たのかよ。忘れられてるのかと思ってヒヤヒヤしたぜ」

「ん、なんだそこの兄ちゃんと姉ちゃんは?この魔力、本当に人間か?」

「そう言うお前も人間じゃねぇだろ」

「おっとそうだったな。良く分かったな。アハハハハハハハハハ」

「なんだ、見た目人に見えるけどな」

「いろいろと事情があるんだよ」

 

これが支配の魔王春日アラタと世界最強の吸血鬼暁古城の出会いであり、波乱の幕開けでもあった。



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2話

リリスの案内の元、古城と雪菜は少年と少女と合流し、この街が何故こうなったのかの説明を受けていた。

 

「崩壊現象か。大きな魔力の暴走による魔導災害ですか。黒い太陽の出現による人々の粒子化。たった一人の人物による世界の再構築。それを行った春日さんと魔道書の調査が浅見さんの任務だったと」

「はい。まあ、今は事情が変わってしまいましたが」

「で、俺と姫柊はこのままあんたに着いてくとして、春日とこの魔道書はどうするんだ?」

「一度自分の荷物などを整理出来る物などがあるのか確認して貰い荷物をまとめてこちらで手配した旅館かホテルに泊まったあと、こちらから連絡してから学園の場所など地図を送ります」

「なんだ?俺は一緒じゃないのか?」

「貴方の場合は説明や事情を話すのに時間がかかるでしょうから今日連れていくことはできません」

 

二人に今までの経緯を話す。このあとどうするのかを説明し、取り敢えずアラタは一旦何処かの宿泊施設へと行き古城たちはリリスが所属している学園へと向かうことになった。

 

「それでは春日アラタはこのまま荷物をまとめてここへ向かって下さい。それでは暁さんと姫柊さんはこのまま私に着いてきてください」

 

アラタと魔道書とは一旦別れて、古城と雪菜はリリスと共に歩いていった。

そしてアラタと別れ歩くこと数十分。古城たちは森の中にいた。

 

「ここが学園へと転移できるポイントになります」

「空間転移の魔法ですね。しかもそれなりに大掛かりな」

「那月ちゃんよりこれなら遠くの場所に転移できるな」

「ですが、これは相当制御が難しいものですね」

「まあ、制御している人物は変人ですが…」

 

すると魔法陣が光だし発動し、場所が変わる。そこはどこかの儀式所のような場所に飛んでいた。

 

「ここは学園にある転移魔法ができる唯一の場所です。そしてあそこにいるのが」

「やあ、リリスちゃん任務お疲れ様。そしてうしろの御二方ははじめまして私がこの王立ビブリア学園の学園長だ」

「学園長、場所を移しましょう。ここで話すわけにはいきませんから」

「おっと、そうだね。じゃあ、学園長室に向かおう!」

「なんだかテンションが高い人ですね」

「変人なのは間違いないだろうな」

 

そのまま二人の後を追うように学園内を歩く。まだ、午前中のためか教室と思われる部屋では授業が行われている様子が伺えていた。

 

「着きました。ここが学園長室です」

「それじゃあリリスちゃん任務の報告のほう最初にいいかな」

「わかりました」

 

そのままリリスはことのあらましを理事長へと話した。

 

「なるほど。その春日アラタくんの編入については許可しよじゃないか」

「な、そんな簡単に決めてしまってもいいんですか!!」

「彼は従妹の聖ちゃんを助けるために魔道を学びたのだろ?なら、うちに通ってもらおうじゃないか。なにより彼がそれを望んでいるのだろ?」

「そうですが…もし何かの拍子に崩壊現象を起こしたらどうするおつもりですか」

「なぁに魔道を少しづつ学んでいけばその危険性も低くなるだろうさ。それに他の場所で見ず知らずの魔道書で暴走されてみたまえこんどは手に負えない自体になるかもしれないよ?」

「わかりました。そのように連絡します」

 

どうやら話はついたようだ。そして学園長は古城たちへと視線を向けた。

 

「さて、待たせてしまったね。君たちの話を聞こうじゃないか」

「わかかりました。それでは私たちがここに来た経緯についてお話します」

 

それから古城と雪菜は自分たちがここに来た経緯を学園長に話した。

 

「なるほど。こことは全く異なる文化や世界観がある異世界からの放浪者ってわけか」

「ああ、そういうことだ。まさか異世界に飛ばされるとはこっちも思わなっかたけどな」

「ええ、しかも魔法の行使にも違いが見られましたが」

「詳しくその話を聞きたいけど…君たちの年齢を聞いていいかな」

「俺は16だ」

「私は15です」

 

二人の年齢を聞き、学園長は笑顔で二人に提案する。

 

「なら、二人ともこの学園に通ってみないかい」

「「え」」

「戻る手段がないんだろ?幸いこの学園は魔道を学ぶ場所であり、魔道を極めた人間も何人かいるからね。その子達にも協力してもらうといい。ちなみにそこにいるリリスちゃんも魔道を、書庫(アーカイブ)を極めた一人だよ」

「へぇ、そうなのか」

「先輩、そこはもっと驚くことです」

「そういう姫柊だって驚いてないだろ」

「ハッハッハ、二人ともリアクションが薄いね」

 

薄いはずだ。今まで巻き込まれてきた事件の中にはその魔道を極めた人物たちなんかよりも強大な力を持つ者たちや道具などとであってきている。それに古城自身が自分たちがいた世界で都市伝説にもなっている世界の理から外れた世界最強の吸血鬼の真祖なのだ。リアクションの取りようがなかった。

 

「そこまで反応がないと流石に凹みますね」

「あっ、いえ!別に驚かなっかたわけではないんです。浅見さんが凄い魔道士なのはなんとなく分かっていましたから」

「あと、あの春日もな。魔法を使うだけなら浅見さんより上かもな」

「ほう。その春日くんというのは今日リリスちゃんが出会ったていう魔王候補と思われる少年かな」

「はい。世界を再構築してしまうほどの力。さらに所持していたのはアスティルの写本と思われる伝説の魔道書。ここまでのことを纏めて考えると魔王候補と考えるのが普通かと」

 

魔王候補と言う単語を不思議そうに聞いている二人。

 

「なんだ?魔王候補って?春日は魔王になれる存在なのか」

「そうだね。彼は世界すら簡単に壊してしまうような存在だ。今は彼自身がそれを自覚してないがいずれは魔王となってしまう存在ってところかな」

「そうか。でもそれって自分で制御できるものなんじゃないのか。自分の力のわけなんだからよ」

「確かにできるかもしれないね。古城くんのその可能性は否定できないね。この世界の魔道は“すべての可能性を否定しない”。もしかしたら彼が魔王としての力を制御できるかもしれないね」

「…そうか」

 

古城はそれ以上何も聞くことはなかった。

 

「それじゃあ話はこれでお終いってことで!君たち二人の制服はアラタくんが来る日に渡すよ。彼も君たちみたいな顔見知りが一緒に編入したほうが気が楽だろうしね。それじゃあ、リリスちゃんには学園内の案内と寮の部屋もこっちで用意しておくから説明しておいてくれ。あと、古城くん雪菜ちゃんは同じ学年でクラスも一緒にしておくよ」

 

そんな感じで古城たちはこのあとリリスに学園内を案内され寮での規則などを説明された。

 

「しかし本当に俺たちがいた世界じゃないんだな」

「そうみたいですね。歴史も文化も所々違いますし、地図に示されている土地も全然違うものでした」

 

リリスからの案内などを終え雪菜は与えられた自分の部屋ではなく、古城の部屋で本当に異世界に飛ばされたことを実感したと話していた。

 

「あぁ。まさかこんなことになるなんてな。凪沙やアヴローラや浅葱や煌坂たちも心配してるだろうしな」

「そうですね。なるべく早く戻りたいですね」

 

あちらにいる妹や血の従者である彼女たちがきっと自分たちのことを心配しているだろうと考えた。

 

「というか、俺大丈夫じゃないよな。このまま戻るのが遅くなったら資料やら課題やら終わんねんじゃねか。完璧に那月ちゃんや浅葱にドヤサれる」

「だ、大丈夫ですよ。お二人にきちんと説明すれば理解してくれる筈です。私もお手伝いしますから」

「本当か姫柊」

「はい。私は先輩の監視役ですから」

 

雪菜が最後にいったセリフになんだか安心したのか古城は笑顔を見せ、雪菜も釣られるように笑顔を見せた。

 

「あっ、先輩。くれぐれも学園内で吸血衝動なんて起こさないでくださいね」

「分かってるって。こんなところで起こしたら面倒だからな」

 

そんな会話を最後に雪菜は部屋へと戻り、古城は吸血鬼の習性になんと抗いながらいつもどおりに寝たのであった。



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