99ADVENTURE (リカル)
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開演! 99期生の冒険

99期生のパートナーデジモンとそのキャラクターについては、あみだで決めました。




☆西方ウラル大陸・スラム

 

 

「華恋ちゃん!、起きて!、華恋ちゃん!!」

「んん~・・・っ、あれ?、ばなな?、なんで?

!、ここどこーーーー!?」

「それが、私にもわからないの・・・」

 

 

飛び起きた愛城華恋の横に座る大場ななの表情は暗い。

 

何せ、今2人が居るのは紫色に濁った空

 

そこに浮かぶのは月でも太陽でもない光球が2つ

 

更に周りは何故か大量の段ボールが山積み・・・

 

という、奇妙な世界。

 

しかも

 

「あれ?、この格好って!?」

「うん、オーディションの時の・・・

ねぇ、華恋ちゃん

こうなる前の事何か覚えてない?」

「えーっと、確か

聖翔祭の為に皆でレッスンしてて、それから

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・うーん!、ダメ!

 

何にも思い出せない!」

 

「やっぱり・・・」

 

華恋もななも身に纏うのはレヴュー衣装。

手にはそれぞれの武器まである。

 

「おーーーーい!、キリーーーーン!

居るんでしょーーーー!?

ちゃんと説明してよーーーー!!!」

 

だからこそ、あの存在を呼ぶのだが返事はない。

 

「(スタァライトを生まれ変わらせた華恋ちゃんの声にも答えないなんて・・・)

これは、あのキリンがやったんじゃない・・・

の、かも」

「ばなな?」

「ご、ごめんね!、こんな事始めてだから!

始めて、だから・・・っ

華恋ちゃんも不安なのに私がこんなんじゃ

ダメだよね・・・?」

 

 

「大丈夫だよ!、ばなな!」

 

 

「え」

 

 

「何が何だかよくわかんけど、ここはきっと何かの舞台なんだと思う!

なら私とばななには舞台少女として演じなくちゃいけない役がある筈だよ!

まずはそれを一緒に探そ?」

 

 

「・・・・・・・・・あはは、華恋ちゃんったら

 

本当に、眩しいなぁ」

 

 

華恋の励ましを受け、ななは漸く笑顔で立ち上がる事が出来た。

 

「とりあえず、まずはこの段ボールジャングルを探検してみよう!」

「はい♪、了解です華恋隊長」

「うんうん!、いいよばなな~♪

雰囲気出ててぐっどぐっど 」

 

 

カァンッ!   ボコ!

 

 

その直後、2人の耳に甲高い金属音が届き

視界に映っていた段ボールの塔が崩れ落ちる。

 

「行こう!、ばなな!」

「う、うんっ!」

 

即座に動く華恋を迷いながら追うなな。

 

現場に到着した2人が見たのは・・・。

 

 

「ぬううん!、おのれぇい!」

「ケッ!」

 

 

「え?、あれって鎧を着た・・・・・・・・・トカゲ?」

「もう一匹は猫?、じゃなくって、子供のライオンかな?」

 

言葉を喋る謎の生物2体による戦い。

 

『・・・・・・・・・ッッッ!』

 

その様子を遠巻きに見つめているのは段ボールで出来た人形のような者達。

 

「ここはバコモン達の住処で御座る!

余所モンは早々に出ていくがいい!」

「ア"ァン?、余所モンはテメェもだろうがァ」

「あの者達は行き倒れていた拙者を介抱し、あまつさえ食料まで分けてくれた!

その恩義を返す為、このリュウダモン!

御主のような無法者を成敗してみせよう!

御覚悟!、レオルモン!」

「ケッ、ゴチャゴチャゴタク並べんなァ!」

 

 

「わぁああっ、すっごい迫力ぅ!」

「華恋ちゃん

今の内にここから離れた方がいいよ」

「え?、でも」

「早く!、あんな戦いに巻き込まれたら 」

 

 

「隙有り!、《居合い刃!!!》」

「ケッ!、んなモンあたるかってんだァ!」

 

 

「「あ」」

 

 

「ぬ!?」「アァン?」

 

 

流れ玉ならぬ流れ刃に身を隠していた段ボールを断ち斬られ、バッチリ目撃されてしまう2人。

 

「な、なんで御座るか御主達は!?」

「えっーと、通りすがりの舞台少女でーす」

「テメェらもオレサマのナワバリを奪おうってのかァ!?」

「そ、そんなつもりはないから・・・っ

どうぞ、私達にはお構い無く・・・」

「そうはいくかァ!」

「ぬ!、待たれよ!

御主の相手は拙者で御座る!!」

「関係ねぇなァ、ナワバリに入った奴はァ

全員纏めてオレサマの敵だァ!」

「あわわわ!?」

 

すると仔獅子・レオルモンは華恋目掛けて爪と牙を向ける。

 

 

「させない」

 

 

「!?、テメェ・・・!!」

「華恋ちゃんは私が守る、守ってみせる!」

 

その前に立ちはだかったののは大太刀と小太刀を構えた大場なな。

 

「ケッ!、上等だァ!」

「・・・・・・・・・!?」

「ばなな!」

「助太刀致す!」

 

爪を輪で牙を舞で受け止めるが仔獅子・レオルモンのパワーに押されるななに華恋と鎧蜥蜴・リュウダモンが駆け寄った

 

 

その時だった

 

 

「「「「!?」」」」

 

 

2人のレヴュー衣装から虹色の鉱石のようなモノが同時に零れ落ち、眩いキラめきとなったのは。

 

 

『・・・・・・・・・!?!?』

 

 

突然の事態に舞台少女達も仔獅子も鎧蜥蜴も観戦していた段ボール達も驚愕する最中

 

 

虹光が華恋とななの手首に巻き付き

 

 

腕時計のような機械と化した。

 

 

「な、なにコレぇええ!!?」

「外れない・・・!?、どうして!?」

「まさか、こいつらァ・・・・・・・・・ケッ!」

「ぬ!?、ま、待つで御座る!」

「今日の所は見逃してやらァ

ありがたく思えニンゲン共!、おまけのトカゲ野郎もなァ!」

「!?、に、ニンゲンだとぉう!!?」

 

それを見た途端、レオルモンは今までの言動を一変させ走り去っていく。

 

「お、御主ら!、本当に!、本物の!

『あの』!、ニンゲンで御座るか!?

ならばこれはもしや神機!?」

「ちょっ、落ち着いて!

りゅ、りゅうた君?、痛ッ!、いたたたっ!!」

「や、やめて!、華恋ちゃんの腕が取れちゃう!」

「なぬ!?、それは困るで御座る!」

「うううっ、痛かったよぉばなな~・・・」

「後でちゃんと冷やそうね

それで、『あの』人間ってどういう意味?

これについてもあなたはわかるの?」

 

リュウダモンに問いかけながらななは自身の腕に取り付けられた

黄色を主体にボタンやアンテナ、縁取りが白く

画面が星形なデジタル腕時計に似た謎の機械を見せつける。

因みに華恋のモノは形こそ同じだが赤がベースで装飾は金色だ。

 

「御主らは知らんのか!?

ニンゲンとは、このデジタルワールドが未曾有の危機に晒された時!

現れると言い伝えられる救世主で御座る!」

「「きゅ、救世主!!?」」

「いかにも!、そして!

今まさにデジタルワールドはいずこから沸いて出た謎の侵略者共!、レイド帝国の支配に晒されているので御座る!

御主達はそれを討ち、無辜なるデジモン達を救う為に世界樹が遣わせたに違いない!」

「ま、待ってよ!

いきなりそんな事言われても困っちゃうっ

だって、私達普通・・・・・・・・・じゃ、ないかもしれないけど!

そんな、全然知らない世界を救うなんてとてもじゃないけど 」

「ばなな」

「華恋ちゃん?」

「さっそく見つかったね!、この世界

 

 

この舞台での私達の役!」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぇ?」

 

 

「やく?、役割の事で御座るか?

ならば、その通り!」

「うんうん♪

でも、でじもんってなんだろ?」

「拙者や先程の猫、更に」

『~~~~~~♪♪♪』

「わわっ!?、なんかいっぱい来たよ!?」

「このバコモン達のようなモノがデジモンで御座るよ」

「へぇー、そうなんだ」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

興奮した様子のリュウダモンや踊るバコモン達に囲まれる華恋をななは見ている事しか出来ない。

 

「(本当に、そうなの?

 

私と華恋ちゃんだけでこんなワケのわからない世界を救わなきゃいけないの?

 

なんで? どうして?

 

スタァライトを勝ち取ったから?

 

なら、ひかりちゃんもこの世界に居るの?

 

わからない

 

全然わからないよ・・・

 

でも、もしそうなら

 

純那ちゃんや、他のみんなが巻き込まれなくて

 

 

よかった)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆西方ウラル大陸・ゴミ捨て場

 

 

「つまり、ここは電脳空間に存在する世界で

あなた達デジタルモンスター・・・デジモンや今の私もデータって事?」

「うん、その通り」

「会った時に言ってた伝承

あれはデジモンなら誰でも知っているの?」

「うーん、知ってる奴は知ってるだろうし

知らない奴は知らないんじゃないかな」

「因みにここは何の為の場所なのかしら?」

「レイド帝国が壊れた武器やもう使えなくなったトループモンのガワとかを捨てるゴミ捨て場だよ、うん」

「途中に見えた大きな建物は?」

「この大陸の実質的な支配者マッハレオモンが根城にしてる要塞さ

後、周りのモノにはなるべく触らない方がいい

たまに不発弾とかが混じってて手や足ふっ飛ばされる奴も居たから、うん・・・」

「!?、そういう事はもっと早く言って!」

 

鉄やら何やらの廃棄物が山積みとなって出来た迷路を進む星見純那。

彼女を先導するのは紫色の毛並みで大きな尻尾と額の赤い宝石が特徴的な獣・ドルモン。

 

 

「大体、あなたも他のデジモンもそんな危険な場所でどうして暮らしているの?」

「どこでどう生きようがボクらの勝手だろ、うん

まぁ、こんなサイテーな掃き溜めに落ちてきたニンゲン 」

「純那、星見純那、さっき名乗ったでしょ」

「・・・・・・・・・ジュンナは運が悪かったとしか言えないどね、うん」

「私はそうは思わないわ、得体の知れない謎の生物を匿ってくれるような親切な相手に巡り会えるなんて十分恵まれてるじゃない」

「別に、偶然空を見てたら水色の流れ星が偶々近くに降ってきたんで記念に持って帰ろうと思っただけだよ、うん」

「偶然で偶々近くに、ね」

 

純那が見やるのはドルモンの首で揺れる双眼鏡。

因みに、ここに来るまで結構歩いている。

 

「ほら後はこの地下通路を通っていけばボクの住処だよ、うん」

「・・・・・・・・・」

「うん?、君もしかして狭い所苦手?」

「そうじゃないわ、ただ

ドルモンって素直じゃないって思っただけ」

「素直だったらこんな所に独りで住んでないよ、うん」

「ふふっ!、でしょうね

 

(人間の居ない世界なんて、正直未だに信じられないし不安でしょうがないけど・・・

 

この意地っ張りで優しい子の事は

 

信じても、いいのかも)」

 

揺れる大きな尻尾を追いながら舞台少女は想う

 

己の星の巡り合わせを・・・。

 

 

 

 

 

 




※神機【読みはシンキ】=デジヴァイスです
パートナーとの契約が成されると素となる虹色の鉱石からVテイマーっぽい腕時計型になって


外れなくなります





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大脱走!? まひるとストラビモン

☆西方ウラル大陸・キテンの街

 

「ううう、どうしてこんな事に・・・?」

 

レイド帝国軍の詰め所。

その牢屋に露崎まひるは囚われていた。

 

「あ、お隣さん起きた?

どう?、牢屋での目覚めの気分!

固いし狭いしカビ臭くって最悪っしょ☆」

「え?、だ、誰・・・?」

「あえて言うなら君のセンパイかなぁ☆

敬ってくれて構わんよ、新入りクン?

最も、お互いいつまでここに居られるかわかんないけど!」

「!、出られるんですか!?」

「見せしめに街のド真ん中で削除される時になればイヤでも出されるって!

いやぁ、レイド帝国らしいやり方だよねぇ☆」

「削除?、レイド帝国?」

「・・・・・・・・・ねぇ、新入りクン

 

 

君、何モン?」

 

 

「私は、露崎まひる

聖翔音楽学園の生徒、なんですけど・・・

あの、ここはいったいどこなんですか?

レイド帝国ってなんなんですか?」

「えっと、あっと!、チョイタンマ!

オジサンにシンキングタイムさせてチョ☆。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・いやねぇわマジありえねぇ、あの朽木っ

今更何しようってんだよ、クソ!」

「?」

 

それっきり隣の牢からの会話が途絶えてしまい

まひるが困惑していると・・・

 

「出ろニンゲン」

「「!」」

 

青い人型ロボットがゴムで出来た兵隊を引き連れ現れた。

 

「(なんなんだろ?、この、人?

!、それにあれって私の!)」

「おい、さっさと出せ」

『了解』

「!?、痛っ!!」

「ワォッ!、問答無用の力ずくなんてリンクモン隊長ったらダイターン☆」

「黙れ不穏分子、この場で削除されたいのか?」

「いいよ、別に

こんなクソッタレな世界に未練なんてないし」

「え?」

「止まるナ、動ケ」

 

兵隊に引き摺られていたまひるは漸く気づいた

 

『削除』という言葉の持つ意味に。

 

「我々の治世になんと不敬な・・・!

《クアドルぷふぅっ!!?」

 

気がつけば彼女は兵隊を振り切り

 

リンクモンに体当たりを仕掛け

 

その手にあった己のキラめきをもぎ取っていた。

 

「君・・・」

「(思ったより、かわいい顔してたんだ)」

「お、のれぇニンゲン!、何をしている!?

とっとと取り押さえろ!」

『了解』

「!」

 

青紫色の毛並みをした犬科の仔獣人が囚われた牢屋の前でまひるは奪還したLove Judgementを軽やかに回してみせる。

 

「(なんだよ アレ

 

どうやればあの固くて重そうなモンを

 

あんな風に柔らかくて軽そうに扱える?)」

 

帝国の雑兵を次々に打ちのめす舞台少女。

彼女の独擅場を最前列で観賞していた仔獣人

ストラビモンは思わず目を奪われ・・・

奪われながらも、しっかりソレに気づいた。

 

「後ろだ!!!」

「!?、きゃっ!」

「チィイイイ!、どこまでも邪魔を!

だが、そんな鈍重な武器では我が動きはとらえられまいて!」

「~~~ッ~~~!!」

 

狭い通路内を縦横無尽に駆け回り、目にも止まらぬ光速で腕の刃をまひるへと叩きつけるリンクモン。

 

「(確かに、上手く防いでいなしてはいるけど

このままじゃ押し負ける

 

そう、このままじゃ)

 

ね☆

 

 

《リヒト・ナーゲル》」

 

 

ストラビモンの光輝く爪は眼前の鉄格子

 

そして

 

「カッ、ハ・・・・・・・・・ァ」

「え?、ええええええ!?

た、卵になっちゃったぁ!!?」

 

ニンゲンばかりを狙うあまり隙だらけだった青い背中を斬り裂いた。

 

「ほら!、急いだ急いだ☆

早くしないと他の連中に気づかれるって!」

「わ、わかったよ・・・!」

 

戸惑いながらも先行するストラビモンの後に続くまひる。

 

「ねぇ、あなた 」

「ストラビモン」

「・・・・・・・・・ストラビモンはいつでも外に出られたのにどうして 」

「出なかったのかって?

そりゃ外もここと似たり寄ったりだからさ☆

ま、それでもなんかワンチャンありそうだし?

オジサンもはしゃいじゃおっかなって☆

ホラ!、丁度イイカンジの乗り物発見!

いやぁ、波きちゃってるね☆

マヒルチャンも乗った乗った!」

「車!?、ストラビモン運転出来るの!?

免許は!?」

「メンキョ?、なにソレ?、美味しいの?」

「え"」

 

 

ブロロロロロロロロ!!!

 

 

「ヒャッハァアアアアアア☆☆☆」

「い~~~や~~~!!!!」

 

 

「(何でかわかんない内に手に入った命って奴

 

 

その使い道がやっとわかったよ

 

 

炎の)」

 

 

・・・・・・・・・何はともあれ、無事(?)1人と1体は街を脱出出来たのだった。

 

 

『・・・・・・・・・』

 

 

カシャッ カシャッ

 

 

 

 

☆西方ウラル大陸・はげ山

 

 

「頼む!、どうかオレと共にこの世界 

 

デジタルワールドを救って欲しい!!!」

 

「お、おぅ・・・?」

 

 

浅黒い肌で額に角の生えた子供が土下座で頼み込んでいる相手・・・石動双葉は困惑していた。

それもその筈、突然デジタルワールドという異世界に問答無用で引きずり込まれ

いつも一緒の幼馴染みの行方がわからない最中にこんな頼みをされては

 

怒りを通り越して呆れるばかりだ。

 

「あー、つまり

そのレイド帝国とかいう奴らのせいで滅茶苦茶になってるこの世界に人間が現れたらそいつが救世主、なんだよな?」

「その通り!」

「ならさ、別にアタシじゃなくても良くね?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・へ!?」

「人間なら誰でもいいんだろ?

だったら他を当たってくれ、あたしにはやらなきゃいけない事がある」

「・・・・・・・・・!」

「それじゃあなー

ったく、香子の奴どこいきやがっ 」

 

 

ドスンッ!

 

 

「うおっ!?、なんだぁ!?

!、いや本当になんなんだよ!!?」

「~~~~~~・・・・・・・・・!!!」

 

突然の轟音に振り返れば・・・件の子供が土下座の体勢のまま地面に頭をメリ込ませていた。

 

「オレは、オレは何て不義理な真似を!」

「は?」

「相手の事情も鑑みずに己の欲求を押し通す等!

帝国が如き所業に他ならない!

そんな事にも気づけないとは!

やはりオレは!、生まれるべきではなかった!」

「いや待ってて、何もそこまで言わなくても」

「もとはと言えば!

オレ達祭具を用いて召喚された創世神が敗れた為に起きた災い!

その尻拭いを全く関係のないニンゲンに擦り付けようとする等!

あってはならないだろう!?

何故それに気づけなかった!?」

「と、とにかく一旦落ち着け!

あたしはあんま気にしてないから!」

「し、しかし!」

「ほら、こっち向けって

顔面砂まみれになってんぞ?」

「!」

 

双葉は子供の元に出戻り

その顔をレヴュー衣装の袖で拭ってやる。

 

「えっと、確かフレイモンだったっか?

お前にとってあたしら人間は伝説の生き物なんだろ?

なら、ああいうこと頼みたくなる気持ちもわからなくねぇよ

そんだけこの世界がヤバイってのはあの空とかこの山見れば大体想像つくしさ」

「ここなどは!、まだ!、まだマシだッ!

帝国に支配された街のデジモン達は!

いつ削除されるかの恐怖に脅えながら暮らし!

自分がそうならない為に自分より弱い物に犠牲を強いる!

そんな不条理がさも当然とばかり行われているのに!

オレは!、何も出来ない!、出来なかったんだ!!」

「フレイモン・・・」

「創世神が討たれた時、何の因果かモノであった筈のこの身にデジモンとしての生命が宿った!

それはきっと!、レイド帝国からデジタルワールドを取り戻せという世界樹の意思に他ならないというのに!

 

オレは!、オレは・・・ッ!」

 

「もういい、もういいよ

 

お前、ずっと頑張ってたんだな

 

そっちの事情全然気にしないで自分の事しか考えてなかったのはあたしも同じだよ

 

だから、泣くなって」

 

「ぐう"う"う"ぅ!、ずま"な"い"!!」

 

双葉は泣きじゃくる子供・・・フレイモンの体を優しく抱きしめ、真っ赤な髪を撫でてやった。

 

「落ち着いたか?」

「あ、ああ!

君の、フタバのお陰だ!」

「そっか」

「・・・・・・・・・!、フタバ!!」

「うおっ!?」

「フタバの言っていた通り、ニンゲンならば誰でもこのデジタルワールドでは救世主になれる!

でも!、それでも!、オレは!

フタバのように自分の意思を貫く強さと他人を許し励ませる優しさを持ったニンゲンこそがこの混迷と化したデジタルワールドの救世主足り得るのだと思う!!」

「え?、えっと 」

「だが!、それを理由にして無理矢理やらせる訳にはいかない!

何より!、フタバの成すべき事を邪魔するなんてオレには出来ない!

ではな!、フタバ!

君の目的が果たされる事を切に願 」

 

 

「ちょっと待てよ!!!」

 

 

「!?」

「ったく!、あたしが言えた義理じゃないけど言いたい事だけ言って勝手に離れようとすんなって

・・・・・・・・・なぁ、フレイモンあたしと取引しないか?」

「と!、取!、引!?」

「あたしはお前を手伝う

だから、お前もあたしを手伝って欲しいんだ

よく考えたらこの世界の事何にも知らねえしさ

だから、お前が一緒に居てくれるなら助かる」

「ッ!、確かに!!

レイド帝国とて伝承については把握している筈!

フタバが狙われる可能性だって大いに有り得る!

そんな事にも気づけないとはやはりオレは」

「だぁー!、そういうのもういいって!!

ったく!、ひねくれてる奴も手がかかるけどお前みたいに真面目過ぎんのも考えもんだな」

「す、すまない!」

「で?、どうすんだ?」

「無論!、その取引乗らせて貰う!

君の力になれないようではデジタルワールドを救う等は夢のまた夢!

このフレイモン!、全力でフタバを手伝おう!

 

その為にも!」

 

宣言と共に右手を紋様が刻まれた左胸に当てたかと思えば

 

 

そこから虹色の鉱石が取り出す。

 

 

「君には!、オレのパートナーになって欲しいんだ!」

「いや、なんでそうなんだ!?

ってか、それなんだよ!?、どっから出した!?」

「オレが全身全霊を賭すにはニンゲンとの契約が必要だ!

そして、これはその為に必要な神機!

創世神が敗れた折にオレの中に宿った!」

「・・・・・・・・・ほんっとにさぁ馬鹿真面目だなー、お前

言ったろ?、あたしは手伝うだけだって!

下手すりゃデジタルワールドなんて放って逃げるかも 」

 

 

「構わない!!!」

 

 

「!?」

「フタバは成すべき事をやればいい!

オレはオレの成すべき事をする!

その上でフタバの力となる!

これは!、その誓いの証だ!」

 

ははっ!、その言葉後悔すんなよ?」

 

 

どこまでも熱く真っ直ぐな想い。

それに押し負ける形で困り顔の双葉が虹色の鉱石を受け取れば

 

紫がベースで装飾が藤色の神機となって彼女の手首に巻き付いた。

 

「いつまでになるかわかんねーけど

 

それまではよろしくな、相棒」

 

「ああ!

 

 

(光の!

 

 

君の分もオレはレイド帝国と戦う!

 

 

そして!、必ずや!

 

 

フタバの成すべき事を果たしてみせる!)」

 

 

 

 

 




※ストラビモンの言う炎のがフレイモンで
フレイモンの言う光のがストラビモンです
この2体はスピリットそのものがデジモン化した所謂付喪神的な存在です


なので、スピリットエボリューションは無しです




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泣き虫弱虫ブイモン進化!

☆西方ウラル大陸・武器工場

 

 

その日、花柳香子はスタァになった

 

 

「(ふふん♪、流石うちどすなぁ

 

こんな風に

 

世界を照らしながら空を舞うやなん )

 

 

って!、ちゃうやろぉおおおお!!?」

 

 

ただし、物理的な意味で!。

 

 

「いややぁあああ~~~~~~!!!

 

ふたばはぁあああああんっ!!!」

 

 

彼女は桃色の粒子に包まれながら紫色の曇天を切り裂き突き進む!、涙目で!。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふぇ?」

 

 

その声に気づいたのは、物々しい建物の屋上で独り佇む青い生き物

 

 

「あああああああああ!!?」

 

 

「えええええええええ!!?」

 

 

を目指して桃色の光を纏う香子が突っ込んでいく

 

彼女の意思とは関係なしに。

 

 

「「ぐぇっ!?!?」」

 

 

結果、表面衝突を果たした1人と1体は折り重なった状態で屋上を転がるはめに・・・。

 

「いっっったぁあ!

んもう!、なんなん!?」

「ふえええ~~~・・・」

「って!、あんたはん誰ぇ!?」

「ぶ、ブイはブイモン、デスぅ!

あの、早く降りて欲しい、デスぅ!

お、重い、デスぅ!」

「はぁあ!?、この羽毛よりも軽いって評判なうちのどこが重いん?」

「ふぇええええええん!?」

 

下敷きにされたまま理不尽に晒されるブイモンだったが

 

「あ、あれ?、ない!?、ないデスぅ!

ブイの、ブイの宝物がないデスぅ!!」

「!?、急に耳元で叫わひゃあ!?」

 

唯一の心の支えをなくした事に気づくや否や香子を突き飛ばし屋上中を探し回った。

 

「あ!、あったデスぅ・・・!

よかったデす、ぅ?」

 

 

「ほんまええ加減にせえよ・・・!、こんの青瓢箪!」

 

 

「ふええええええ!!?

ご、ごめんなさいデスぅううう!!!

痛いのやデスぅううう!!!」

 

突きだされる刃を涙と鼻水を垂れ流しながら必死に掻い潜り、それでも取り戻した宝物は絶対に手放さない。

 

「はぁー!、はぁー!、しゃ、しゃーないなぁー・・・!

こんぐらいで、勘弁したるっ

うちの心の広さに感謝してもええんよ・・・?」

「な、なんでそんなバテバテなクセして偉そうなんデスぅ?」

「・・・・・・・・・」

「ふえっ!?

な、なんでもないデスぅ!

感謝!、感謝デスぅ!

そ、それであの!、きみ何モン、デスぅ?」

「なんや、うちの事知らんの?

この立てば芍薬、座れば牡丹

踊る姿は月下美人で有名な花柳香子を?」

「はいデス」

「そこ知らんくても即答するとこちゃう!」

「ふえっ!?」

 

 

ガコン!

 

 

「ッッッ!、しまっ!!」

「?、なんなんあんたはんら」

『・・・・・・・・・』

〔「ガガ、st-112

コンナトコロデナニヲシテイル?」〕

「こう、じょうちょう・・・

こ、これはその、何もして、ませんデスぅ」

 

突如開かれた扉から雪崩れこんできたのはゴムの兵隊達と黄色い重機のような姿をしたロボット。

 

〔「ガガ、ナラソレハナンダ?

ソレニ、ソノニンゲンハ?」〕

「ニン、ゲン?、カオルコが、デスぅ?」

〔「ガガ、トニカク、ヨコセ、ゼンブ」〕

「ぜ、全部ってまさか

ブイの宝物も、デスぅ?」

『・・・・・・・・・』

「ふえ・・・!

わ、わかりました・・・デスぅっ」

 

迫る工場長とゴムの兵隊達の前にブイモンは宝物を差し出す。

 

 

「うち無視して勝手に話進めんといて」

 

 

「え?」

 

 

その手を遮るのは薙刀を構えた舞台少女。

 

「工場長かなんか知らんけど、この花柳香子をのけ者にするなんてええ度胸どすなぁ?」

〔「ガガ!

ワレワレニサカラウキカ?、ニンゲン!」〕

「そんな当たり前の事聞きます?、見た目通りでおつむがないみたいで

あんたはんみたいなのがトップならこの青瓢箪がこない情けないのも無理ないわぁ」

『・・・・・・・・・!』

「ふえ!?」

 

挑発に誘発され一斉に襲いかかるゴム兵隊達。

 

「はっ!」

『!!?』

 

だが、それらは旋回する水仙花により屠られる。

 

〔「ガガ!、テイコウヲカクニン!

コレヨリ、ムリョクカヲカイシスル!」〕

「ふん、やれるもんならやってみい!」

 

工場長が左手のショベルを振り回せば、香子はその上に軽々と跳び移り黄色い装甲に刃を走らせる

 

「~~~~~~!、かっ、たぁ!」

〔「ガガ!《クレイジークレーン!》」〕

「うげ!?」

「か、カオルコ・・・!」

 

が、背中のクレーンからワイヤーが伸ばされ水仙花ごと絡め取られてしまった。

 

「あ、あんたはんは、逃げ!、ぇ」

「な、なんでデス!?

どうして、偉そうで自分大好きなきみが

ブイの、為になんで?」

「あ、と、で!、覚えときぃ

それに、あんたはんの為やないわー

 

うちの事突き飛ばしてまで取り戻したかった

 

宝物を、あんな簡単に渡すのがっ

 

癪に触っただけ、どす・・・!」

 

「え」

〔「ガガ、テイコウゾッコウカクニン」〕

「く!、うううううう!!」

「・・・・・・・・・!

 

癪に、癪に触るのは!ブイだって、同じ、デスぅ!

 

 

《ブンブンパンチ!!!》」

 

 

コンコンコンコン

 

 

〔「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ガガ?」〕

「元はと言えば!、こうなったの!

きみのせいデスぅ!、いつもは!

ちゃんと!、隠してたん!、デスぅ!

なのに!、勝手に庇った気になるな!

 

 

デスぅううう!!!」

 

 

決死の想いを込めて工場長に拳を何度も叩きつけるブイモンだが、まるで効いていない。

 

〔「st-112ハンコウカクニン

 

デリート、カイシ」〕

 

「ふえ!、ふえええええん!!」

 

頭上にシャベルが振り上げられてもブイモンは

 

 

宝物・・・虹色の鉱石を握ったまま殴り続け

 

 

装甲よりも、自分の拳よりも先に砕いた。

 

 

〔「ガガ!?」〕「ぁ」

 

 

直後、溢れ出た虹光が拘束を撃ち破って香子の手首に収まり桃色を主体に桜色の装飾がなされた神機となる。

 

「いっ、た・・・ぁ~~~!

けほっ、こほっ!

次から次に、ほんま忙しない事で・・・!」

「まったくデスぅ!」

 

並び立つ1人と1体の想いは1つになる

 

 

さっさと終わらせてこいつに文句を言う!

 

 

こんな一心でも神機は応え

0と1で構成された桃色の粒子を大量に放出。

 

〔「ガガ!?、コレハマサカ!」〕

 

幕のように降りてきたソレの下で急速に書き換えられるブイモンの肉体《データ》。

 

 

「俯き脅え、立ち止まってたブイの道」

 

 

細く華奢な体は太く逞しくなり

 

 

「例え小さな一歩でも

 

踏み出せば必ず勝利へと繋がる!、デス!」

 

 

角が、爪が、牙が大きく成長する

 

 

「ブイモン進化、ブイドラモン!

 

ブイの初陣、付き合って貰う!、デス!」

 

 

桃色の幕が開いた場所に立つのは

 

蒼き幻竜ブイドラモン。

 

〔「ガガ!、st-112シンカカクニン!!

サイユウセンデリートタイショウ!《ハイパーブルドーザー!!》」〕

「工場長

 

ブイ、その呼ばれ方

 

大ッ嫌いデス!《ハンマーパンチ!!》」

 

〔「ガガ!?」〕

 

真っ向から突っ込んできた工場長。

そのシャッター部分に先程とは比べモノにならない威力の拳をメリ込ませ

 

「《ブイブレスアロー!!!》」

 

零距離から超高熱線を浴びせた。

 

〔「ガガ・・・!、ソンショウ、ジンダイ!

ガ、セントウゾッコウ、カノウ!《クレイジークレーン!》」〕

「!?」

 

だが、完全に倒すには至らない

 

 

そう、ブイドラモンだけでは。

 

 

「ほんまおつむがないんや、なぁッ!」

 

 

〔「ガ?!、ガガガーーーン!!!」〕

 

 

溶解した装甲を貫いたのは

 

香子が投擲した激しくも流麗なキラめき。

 

「・・・・・・・・・!?、たまご?、卵!?

な、なんで機械が卵になってん!!?」

「デジモンは削除されれば皆デジタマに戻るデス

カオルコはそんな事も知らなイヒャヒャ!?

ホッヘヒハッハハイヒャイエフゥ!!」

「そんなん知るわけないやろ?

大体、でじもんってなんなん?」

「フエ!?、ヒョヒョヒャラエフゥ!?」

 

 

カシャッ カシャカシャ

 

 

「・・・・・・・・・!!?、ブェッ!!!」

「汚ッ!、ツバ飛んだぁ!、しかもあっつぅ?!」

「そんな事より早く逃げるデスぅうう!」

「はぁ?、あーんなひとつ目のコウモリに脅えるなんて図体ばっか大きくなっても中身は青瓢箪のまんまや

 

なぁあああーーーーーー!!?」

 

戦闘終了後、図上を飛び交う飛行体に気づいたブイドラモンは香子と屋上に転がっていた水仙花を引っ掴み建物から建物へ跳び移っていく。

 

 

「ふええ"え"~~~ーーーーーー!!!!!

 

やっちゃったデス!、完全に撮られたデス!

 

もうこれでブイは、ブイは・・・!

 

 

お尋ね者確定デスぅううう!!!」

 

 

 

 

 




※進化用BGMは再生産です


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トップスタァに並ぶ月 レキスモン跳躍!

華恋達6人が西方ウラル大陸でそれぞれ動き出していた頃、他の3人はというと・・・


☆東方士武大陸・朔ノ山最奥

 

 

「すみません

どなたかいらっしゃいませんか?」

 

 

山中に響くのはよく通る声。

 

「・・・・・・・・・困りましたね、何の反応もないとは」

 

その主である天堂真矢は茅葺き屋根の小さな家の前で立ち尽くす。

 

「(奇妙な空に撮影のセットを思わせる建物

やはり、あのキリンの仕業でしょうか?

配役の説明もなく山の中を延々と歩かされては)

 

思わず、この畑の作物をそのまま食べてしまいそうになりますね」

 

 

ガタタッ! ドタタタタ! カララ・・・

 

 

「・・・・・・・・・、!?」

「!?」

 

思わせ振りな台詞に釣られ僅かに開いた引き戸から見えたのは、薄ピンク色をしたウサギのような生き物。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

ソレは真矢を頭の天辺から爪先まで見つめた後、ソロソロと引き戸を

 

「すみません、突然。

ですが、先程言った通り空腹が限界を迎えそうで

何か食べ物を恵んで貰えませんか?」

「んぎゃーーーーーー!!??

押し入り強盗デシテーーーーーー!!!」

 

閉じれない。

 

「お願いします、でないとあなたの仰った行為を今にも実行しそうで・・・」

「このニンゲンは涼しい顔で何恐ろしいコト言ってるんデシテ!?、いいからとっととその足退けるのデシ

 

!」

 

「おっと」

 

泣き叫んでいた生き物の抵抗が突然やみ、勢い余って前のめりにつんのめる・・・フリをして室内への侵入を成功させる真矢。

 

「命が惜しかったら隠れているのデシテ!」

 

直後、入れ換わりで外へ出た生き物がピシャリと引き戸を閉めた。

 

〔「こ、コンゴウ親分っ!

今日は随分と、その、早いお着きデシテ」〕

〔「おおん?、早くってなぁんか都合が悪い事でもおるんけルナモンよぉ?」〕

〔「い、いえいえ!

そんな滅相もないのデシテ!

ただ、ワタクシとしては、その・・・

そう!、いつも御世話になってるコンゴウ親分達には最高の状態で召し上がって欲しいだけデシテ!」〕

〔「そーけ、そーけ

じゃがのぅ、腹ん虫がおめぇん所のうんめぇ野菜を食いてー食いてーと騒いでしょうがないんじゃあ」〕

 

 

バキッ ボリンボリン!

 

 

〔「かぁーっ!、たまらんのぅ!

さぁ、おめぇらも遠慮せんで食え食え!」〕

〔『へい!、親分!!』〕

 

 

「・・・・・・・・・」

 

 

〔「よ、喜んで貰えたなら何よりデシテ」〕

〔「ところでよぉルナモン

子分が森で妙なモン見たっつってなぁ

よくよく話を聞いてみりゃあそいつぁは何と!

ワシがリーフモンだった頃年寄り共から聞いた

 

ニンゲンにそっくりなんじゃが・・・

 

おめぇ何か知っとらんか?」〕

「!」

〔「に、ニンゲンについて知っている事といえば

デジタルワールドに危機が訪れた時それを救う為に現れると言い伝えられているぎゃあっ!?」〕

〔「そーゆー話はしとらんじゃろ?

見たか見とらんかハッキリせいや」〕

〔「み、みてない!、デシぐぎぃいいい!!」〕

〔「悲しいのぅルナモン、おめぇは余所モンじゃが今までずーっと仲良くやっとったと思っとったっのに

 

何で嘘をつくんじゃ?」〕

 

〔「し、らない!

ニンゲンなんて!、みたことない、デシテ!

 

だから!、はやくここから離れた方が・・・

 

いいの、デシテ!」〕

 

「(ああ、成る程 そうゆう事ですか)」

 

引き戸越しに聞こえてくる叫びが自分に向けられている、それを理解した上でこの舞台少女は

 

『!?』

「ぁ・・・?」

 

引き戸を開いた。

 

「な、なにモンじゃおどれはぁ!?」

 

 

「月の輝き 星の愛

 

数多の光、集めて今、あなたの心に届けましょう

 

99期生首席、天堂真矢!

 

今宵、煌めきをあなたに!」

 

 

高らかな口上と共に赤い前掛けを翻し

 

「ぬおう!?」

 

Odette the Marvericksで金の腕を斬りつけ

その中に囚われていたウサギを奪い取った。

 

「な、んで・・・?

どうして、にげなかった、デシテ?」

「逃げる?、何故?

やっと自分の配役が理解出来たというのに」

「へ?」

「しかし異世界の救世主、ですか。

しかも私自身、この天堂真矢として

ふふふっ、何とも難しい役ですがとても演じがいがありそうですね」

「なぁにゴチャゴチャ言うとるんじゃあ!?

よくもワシの自慢の黄金ボディーを傷モンに!

帝国に売っぱらうってやろうと思っとったが

もうゆるさんっ!

やっちめぇ!、コカブテリモン共!」

『へい!、親分!』

 

「許さない?」

 

殺到してきた青い甲虫達を迎え撃つのは

 

怒濤の連続突き。

 

『ぐわあああっ!』

「なん、じゃっ、う!?」

「それはこちらの台詞なのですが?」

「(こ、このニンゲンっ

 

荒らされた畑の方を見ているデシテ!?)」

 

「ちぃいいっ!

調子に乗るんじゃっなかぁあああ!」

 

Odette the Marvericksを受け止めていた2本の黄金の腕。

その下にある4本の腕が独古のような武器を真矢に向けた。

 

「ろ!《ロップイヤーリップル!!》」

「がぼぼぼ?!、ぶはぁ!

ルナモンっ、おめぇよおおお!」

「~~~~~~ッ!!!」

「おや?、急に震えてどうしましたか?」

「ど!?、どうしててってデシテて!!」

「まさか、今のは私を助ける為にやったと?

だとしたら見当違いも甚だしい

あなたがやった事は舞台に文字通り水を差しただけだというのに」

「んなっ!?」

「だぁああら!、ワシを無視してゴチャつくな言うとるじゃろ!《鉄砲!!》」

 

6本の腕から繰り出される連続張り手

 

「確かあなたは、ルナモン、でしたか?

もしも、あなたが

私と同じステージに立つつもりならば己のやる事

 

やるべき事に自信を

 

いえ、誇りをもって下さい」

 

を、掻い潜って黄金ボディーにOdette the Marvericksを一閃させる真矢。

 

「ほこり?、誇り、デシテ・・・?」

「それが出来ないのなら隅で縮こまっていればいいだけです、あなたが今までそうしてきたように」

「ーーーーーーッッッ!!!

この、こいつ!、さっきから好き勝手!

好き放題が過ぎるのデシテ!

なんなんデシテ!?、何様デシテ貴様ぁ!」

 

彼女の片腕の中、震えてばかりいたウサギ・ルナモンが吠えれば

 

 

「This is 天堂真矢!」

 

 

首席たる舞台少女は己のキラめきを掲げ

気高く、美しく名乗りを上げた。

 

 

「「      !      」」

 

 

        !

        ‎

 

彼女の圧倒的な存在感には相対していたコンゴウ親分も怒りを向けていたルナモンも

 

そして、この世界・デジタルワールドすらも

 

魅入ってしまう。

 

「これは、!?」

 

名乗りの直後、スポットライトのように真矢へと降り注ぐ虹色の天光。

それは彼女の手首に巻き付くと、純白の機体に漆黒の装飾が施された神器と化し

 

0と1で構成された白い粒子を大量に放出する。

 

「こ、れは、このチカラは!

(『かつて』のワタクシの!)」

 

幕のように降りてきたソレの下で

肉体【データ】を変化させていくルナモンの

 

 

「虚無の空 不明な曇天

 

そこに何もなくとも

 

星は、光は、確かに此処にある」

 

 

全身がすらりと伸び、顔の上半分が鉄仮面に覆われる。

 

 

「ルナモン進化、レキスモン

 

今宵の月、それはこのワタクシだけデシテ」

 

 

開かれた幕の下よりグローブが装着された拳を構えるのは、月の神秘を宿した兎獣人・レキスモン。

 

 

「これは!、随分と逞しくなりましたね」

「感心してる暇があるのデシテ?」

 

目を見開く真矢を見下ろし、しなやかな脚部に力を込め跳躍。

 

「グズグズしているなら貴様の出番は最早ないのデシテ」

「んんっ!、おおぅん!?

ルナモンッおめぇいつん間に進化したんじゃあああい!?」

「どこかのニンゲンのせいでつい先程」

「ふふっ!、本当に逞しくなりましたね!

先程までの愛らしい姿も魅力的でしたが

今のあなたも好ましく思えます」

 

呆けていたコンゴウ親分に拳を連打すれば、それに追随してOdette the Marvericksが振るわれる。

 

「ぬぬぬぅん!、ぬおおおおおお!

ワシの、ワシの自慢の!、黄金ボディーがあああどんどん削れてぇ

けず、れて・・・?、ぁ、あああっ!!!」

「デシテ?」

「失礼」

「あ、こいつ!?、ワタクシを踏み台に!!

待てデシテ!、て、テンドー!!」

 

順次跳び上がり、紫空に並ぶ1人と1体。

 

 

「お、おおおう! おおおおおおっ!!」

 

 

コンゴウ親分は見た。

 

金箔が舞う中、双光を背に舞い降りる

 

 

トップスタァのキラめきを。

 

 

「《ムーンナイトキック!!!》」

「はぁああああああ!!!」

 

同時かつ同じ箇所に炸裂する

真矢のOdette the Marvericksの切っ先とレキスモンの脚。

 

 

バッギィィィン!!!

 

 

「お、おやぶーーーん!?」

「んな馬鹿な!、親分の黄金ボディーに

あんな、あんな大穴がぁ!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ハァー、上手くいったのデシテ・・・」

「やはり、土壇場で私の剣を反らしたのはわざとでしたか」

「余所の土地から来たワタクシを受け入れてくれた手前、こんな形で削除するのは寝覚めが悪いのデシテ

(とはいえ、これで戦意を無くさないのなら容赦する気は無いデシテ)」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ん?」

 

レキスモンが土手っ腹に空いた穴に狙いを定めコンゴウ親分の動向を探っていると・・・

 

 

 

 

惚れやしたっ

 

あねご、姉御と呼ばせて下せい・・・!」

 

 

『「「      は?」」』

 

今までの尊大な態度を一変させ跪いた

 

 

天堂真矢の足元に。

 

 

「なんつぅキラッキラッした御方なんじゃあ!

あんたに比べればワシの体なんて・・・

屑じゃ!、屑鉄じゃあああ!!」

「お、親分なにを!?」

「ボディーの輝きを保つ為に肉断までしていた親分が!」

「毎日早寝早起きで体操まで心掛けてたきた親分が!」

「毎晩毎晩デジハニーマッサージしてきたおら達の頑張りがぁ!?」

「じゃがしぃ!、姉御の前で頭が高いわ!

控えい!」

『へ、へい!、親分!』

「これは、その

一件落着と思ってよろしいのでしょうか?」

「ソーデシテー・・・・・・・・・あぅっ」

「!、ルナモンに戻れたのですね!?」

 

戦士からぬいぐるみのような姿になった共演者を優しく抱き止め

 

「うふふふ♪」

「な、なんデシテ?」

「いえ、想像以上に素晴らしい毛並みだと思っただけですよ

特に、この辺りが」

「ちょっ!?、どこ触っ!

み、みみはやめるのデシテーーー!!!」

 

撫でくり回す真矢であった。

 

「う、うらやましい!

ワシもワームモンに戻れれば!!」

『(親分・・・

ワームモンに毛は生えてねぇべ・・・)』

 

 

 

 

 

 

 

☆東方士武大陸・竹林

 

 

「「はぁっ!、はぁっ!、はぁっ!」」

 

 

西條クロディーヌは竹を掻き分けながら帽子を被った小熊と共に全力疾走していた。

 

 

『待てやゴラァアアア!!!』

 

 

背後から迫りくる鎧武者の集団から逃れる為に。

 

「(どうしてこんな事になったのかしら

原因は)」

「へっへー!、ここでウチと鬼ごっこして勝てるワケないジャン♪、あっかんべー!」

『こん餓鬼ゃぁあああっ!!!』

「(間違いなくこの子のせいね・・・)」

 

この奇妙な世界で目を覚ましたクロディーヌが最初に遭遇したのが

 

小熊による強奪事件の真っ只中。

 

異常な光景に呆気に取られていた彼女の手首へと飛び込んできたのは乱闘の最中ひび割れた宝箱から漏れだした虹色の輝き。

ソレはオレンジを基調とし黒の装飾がなされた腕時計のような機械となりクロディーヌの手首に固定された。

 

「止まれぇいニンゲン!」

「御館様への献上品を返しやがれぇい!」

「その腕ちょん斬ったらぁあ!」

「お断りよ!

まったく、とんだ災難に巻き込まれちゃったわ」

「同感ジャン!、食いモン運んでると思ったのに箱の中なんも入ってなかったし!」

「・・・・・・・・・」

 

結果、この小熊共々追われる身となってしまったのである。

 

「お、橋見っけ!

あれさえ越えればウチの住処ジャン!」

「!、ちょっと待ちなさい!!」

「待ってて言われて待つ奴が・・・ジャン?!」

 

橋を渡る小熊の足元に突き刺さったのは数本の矢。

 

『・・・・・・・・・』

 

その発生源は向こう岸で弓を構えるゴム兵隊達。

 

「やっべ!、先回りされたジャン!」

「だから待てって言ったでしょ!」

 

クロディーヌが続々と飛来する矢を叩き斬っていると

 

「でぇえええい!」

「追いつかれたジャン!?

このっ!《小熊正拳突きィ!!》」

 

背後から迫る鎧武者を小熊が薙ぎ倒していた。

 

「がはっ!、餓鬼の、癖に・・・!」

「ガキだけど!、ガキじゃねぇジャン!」

「1人倒したぐらいで調子に乗らないッ!」

「「があ"あ"あ"!」」

「!、いっぺんに2体も!?

う、ウチだってそれぐらいやれるジャン!」

「あらそう?、なら私は」

 

おもむろに振るわれるEtincelle de Fierte。

 

『!?!?』

『ぎゃぁぁぁあああ!?』

 

その剣圧が突風を生み

迫る矢が鎧武者やゴム兵隊の方へ飛んでいく。

 

「その間にもっと沢山倒して上げるわNounours」

「!、!?、!!

 

 

ま、負けねぇジャーーーン!!!

 

 

うおおおおおおおおお!!!!」

 

舞台少女の勇猛な活躍に対抗する為かやたらめったら暴れ出す小熊。

 

「・・・・・・・・・子供相手に何をしているかしらね、私

(いくら元凶だからってどこかの誰かさんじゃあるまいし

あんなあからさまな挑発するなんて)

あの子を落ち着かせる前に、自分が冷静に

 

!」

 

それに気を取られていたクロディーヌの足に走る鋭い痛み。

 

「ーーーーーーッッッ!!!」

「んに"ぃ?!」

 

原因である針

を、抜くより早く橋に転がっていた刀を投擲。

竹林に潜んでいた栗みたいな格好をした忍者の脳天を貫いた。

 

「くっ!

(針を抜いても、熱と痛みが消えない?

それどころか、少しずつ広がって・・・っ)

時代劇の、お約束って、奴?

とんだ、失態、ね・・・!」

「どうしたジャン!?、ケガしたのか!?

ウチがなめてやろうか!?」

「結構よ!

それより、あなた、泳げる・・・?」

「ん?、お、おう!

ウチはベアモンだかんな!」

「・・・・・・・・・そう、なら

 

 

Je suis désolé」

 

 

「ぐええええええ!」

 

心配し駆け寄ってきた小熊・ベアモンをクロディーヌは蹴り飛ばした

 

 

「ぷは!、おいお前・・・!?

 

くっそーーー!

 

これで勝ったと思うなジャーーーン!!!」 

 

 

橋の下を流れる川めがけて。

 

 

「くっくっくっ!、愚かだなぁニンゲン!」

「あんな取るに足らんモンの為に自ら犠牲になるとは」

「何か、勘違いしてない?

私は、これ以上あの子にッ

荒らされたくなかっただけ!

 

この西條クロディーヌの、舞台を・・・!!」

 

「こいつ!、まだ動くか!?」

「早るなッ!、毒が回るのを待 ぎゃ!」

「くそぉ!、兎に角囲め!、決して逃がすなぁあああ!!」

 

次から次へと湧いてくる有象無象を斬り捨てる度、体を蝕む熱と痺れが増していく。

 

 

それでも彼女は止まらなかった

 

 

鎧武者が最後の1体になるまでは・・・。

 

 

 

「ぜぇっ!、ぜぇっ!

 

あいつ、名前!、聞こえたジャンッ!

 

コンチクショウ!、覚えたかんなぁ・・・!

 

えっと、サイクロ?、サイコロ?

 

・・・・・・・・・

 

だぁああああああ!!!

 

待ってやがれクロ公ーーーーーー!!!!」 

 

 

 

 

 

 

 

☆東方士武大陸・湖畔

 

「やっと、火を、起こせた・・・!」

 

悪戦苦闘の末、完成した焚き火の前で荒く息をつく神楽ひかり。

その周りに大量の木片やら何やらが散らばっているのは・・・まぁ、御愛嬌である。

 

「後はこれを」

 

ひかりが焚き火の前で掲げたのは

 

『一抱えもある大きなタマゴ』。

 

彼女はソレを轟々と燃える火の上に直接置いた。

 

「よし」

 

とある舞台少女が見たら慌てて止めに入るであろう調理風景だが、当の本人は満足げ。

 

「湖に浮いてたし殻の色がイースターみたいだけど火さえ通せば食べられる、筈」

 

謎の自信を持ってタマゴが焼けるのを今か今かと待ちわびる腹ペコひかりだったのだが・・・

 

 

ピシッ

 

 

「え?」

 

 

ピキピキピキ・・・! パリン!

 

 

「ぷすーーー!!!」

 

「あ」

 

 

彼女が食事にありつけるのはまだまだ先になりそうだ。

 

 

 

 

 



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吠えろ! ギンリュウモン&ライアモン

☆西方ウラル大陸・キテンの街

 

「ここがキテン

レイド帝国に支配された街・・・!」

「拙者達が行く先はいわば敵の腹の中

華恋殿、なな殿気を引き締めるで御座る!」

「・・・・・・・・・」

 

街の入り口にたむろすのは鎧蜥蜴と

段ボール人形(中)、段ボール人形(大)。

 

「本当に、大丈夫・・・かな?」

「心配召されるな、どちらもどこからどう見てもバコモンにしか見えぬで御座るよ」

「ちょっとサイズがおかしいけど、そこは舞台少女の腕の見せ所!

しっかりバコモンに成りきって帝国の目をあさむいちゃうよ!」

「欺く、では?」

「そう!、それ!」

「(華恋ちゃんとリュウダモンすっかり仲良くなってる

 

でも、それはそれでいいのかも ね)

 

なら、ここから先は静かに行きましょ

ほら、バコモンってお喋り出来なかったし

こんな風に騒いでたらあっという間にバレちゃうかも」

「あ、確かに!

じゃあ早速、・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「おお!、その動きはまさしくバコモン!」

 

何はともあれ街への侵入に成功した2人と1体

 

 

「ケッ」

 

 

を、気づかれない場所から伺う影が1つ。

 

「タイヘンだー!、タイヘンだー!」

「イチダイジ!、イチダイジ!」

「ぬ?

もし、そこのトイアグモン達よ

一体何を騒いでいるので御座るか?」

「ワカンナイ!」

「デモ、イチダイジー!」

「ソコ、テハイショー!」

『タイヘンだーーー!』

「手配書?」

「・・・・・・・・・!」

「!?、!、!!」

「?」

「・・・・・・・・・、♪」

「なな殿?・・・・・・・・・ぬぅ、あいわかった

華恋殿は拙者に任されよ」

「!、!」

「~~~~~~♪」

 

慌ただしく動き回るトイアグモン達の隙間をぬって、段ボール人形(大)は騒ぎの中心である掲示板を目指す。

 

 

「      うそ」

 

 

そこに張り出されていたのは

 

花柳香子と露崎まひるの顔写真がついた

 

 

指名手配書。

 

 

「(香子ちゃん!?、まひるちゃん!?

そんな、そんな!、なんで!、どうして!?

とにかく一刻も早く探さないと )」

 

 

「コッチのニンゲンの方はココで暴れたんだってなー?」

「アア、その時リンクモン隊長が削除されたラシイ」

「ダカラ、あんな大規模な討伐隊が街の外へ出て行ったノカ」

 

 

「・・・・・・・・・ッ!!?

(どっちかはわからないけど

どっちでも構わない!、急がなくちゃ!)」

 

 

「ハァ、ニンゲンだが何だか知らないケド

イイ迷惑ダヨ」

「まったくダ!、どうせ帝国に歯向かったって無駄なのにサ・・・」

「巻き込まれるコッチの身にもなれよナー」

『ナー』

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

(2人のこと何も知らない癖に

でも、いいわ

私だって

 

 

あなた達の迷惑なんて知った事じゃない)」

 

 

黒やクリアカラーのブロック達の会話から情報を得たななはバコモンを演じながら華恋の元へ戻る。

 

「えええっ!?、まひるちゃんと香子ちゃんがお尋ね者ーーー!?」

「か、華恋殿!、落ち着くで御座る!」

「落ち着いてなんていられないよ!、早く助けに行かなくちゃ!」

「そうだね、行こう華恋ちゃん」

「あいや待たれよ!」

「・・・・・・・・・何、かな?」

「兵の大半が出払っているのならば

これは好機で御座る!、このキテンをレイド帝国の支配から解き放つには今しかない!」

「それがどうかしたの?」

「んぬ!?、な、なな殿・・・?」

「ば、ばなな!

りゅうた君も、その、悪気があって言ってるんじゃないと思うから!」

「大丈夫だよ、華恋ちゃん

わかってるから、全部わかっちゃったから

 

 

この世界で私がやらなくちゃいけない事」

 

 

「!、ばなな!!」

 

 

ドォオ・・・・・・・・・ゥン!

 

 

『ワーーー!!?』

「タ、タイヘンだーーー!!」

「エクスティラノモン大隊長ーーー!」

「ヤメテーーー!   ンギッ!」

 

一触即発の空気に差し込まれたのは

 

 

爆音、喧騒、そして悲鳴。

 

 

「な、なになにぃ!?」

「ぬううう!、レイド帝国め!

このような暴挙許しておけん!、御覚悟!」

「あ、待って!、りゅうた君!」

「華恋ちゃん!?」

「ごめんね!、2人の事も心配だけど

やっぱり私あの子を放っておけない!」

「でも!!」

「信じようよ!、ばなな!

まひるちゃんと香子ちゃんのキラめきは

このデジタルワールドでもあるって!

 

 

だから、今は!!」

 

 

「かれん!、ちゃん!

まって、いかないで・・・!

わたしは、みんなを守りたいのッ

なのに、これじゃあ

 

 

どうしたらいいか、わからないよぉ!」

 

 

リュウダモンの後を追い、段ボールを投げ捨てて駆ける華恋の背に向かってななは手を伸ばすが

 

 

届かない。

 

 

「ケッ!、見てらんねぇなァ・・・」

「!?、あなたは!」

 

そこに現れたのは、あの仔獅子レオルモン。

 

「なァにやってんだァ?、あいつの事守るつったのテメェだろうがァ?

それとも、威勢が良いのは口だけかァ?」

「そんな事、ない!

私はずっと、何度でも!

華恋ちゃんを、みんなを守ってきたんだから!

それはこんな世界でも変わらない!!

守る!、守ってみせる!」

「だァかァらァ!

口じゃなくて体動かせつってんだァ!

さっきの奴も追われてるニンゲンも

 

 

どっちも守ればいいだけだろうがァ!?」

 

 

「!」

 

 

「なのにこんな所でウダウダしてんなァ!」

 

 

「・・・・・・・・・あなた、もしかして私を慰めてくれてるの?」

「ア"ァン?、んなワケねぇだろうがァ!

ニンゲンがどうやって帝国ブッ倒すのか見物してやろうと思ったらァ、ウジウジしてる奴が居たから文句言ってんだァ!」

「そうなの?

でも、ありがとう

あなたの言う通り、へこたれてちゃダメだよね」

「礼を言われる筋合いはねぇなァ」

「ふふふっ!、あなた・・・レオルモンって照れ屋さんなんだ♪」

「ア"ァン!?

ケッ!、勝手に言ってろニンゲン」

 

そっぽを向くレオルモンに微笑みかけるなな

 

 

の、手首で神機が0と1の黄色い粒子を噴射。

 

 

「「!?」」

 

 

1人と1体が驚愕する中、幕が降りた。

 

 

「何処だろうがァ!、何だろうがァ!

 

何度こようがァ!、何時こようがァ!

 

楯突く奴ァ全部食い破るまでだァ!」

 

 

その下で仔獅子の体躯が、四肢が力強さを増す。

 

 

「レオルモン進化ァ!、ライアモン!

 

オレサマは!、もう!、絶対に!

 

倒れねぇんだァアアア!!!」

 

 

咆哮を上げながら黄色い幕を突き破るのは

立派に生え揃ったタテガミと二股の尻尾を持つ

雄々しき聖獣ライアモン。

 

「行くぞオラァ!」

「!?、うん!」

 

ライアモンは自分の頭をななの足元に滑り込ませたかと思うと、そのまま背中へ乗せ駆ける。

 

「!、ばなながライオンに乗ってるー!?」

「まさか!、御主あの猫か!?」

「ゴチャゴチャうるせぇなァ!」

「うわぁ?!」「ぬううう!?」

 

途中で華恋とリュウダモンを拾い、騒動の渦中である広場へ急行。

 

「ガフッ、ゲホ!」

「我だけならば削除出来ると思ったのだろうが当てが外れたな不穏分子」

 

そこでは瓦礫とタマゴが散乱する中で巨大な恐竜のヌイグルミが細身で茜色の狼を踏みにじっていた。

 

「仲間が逃げ出せた所で満足すればいいものを欲をかいたな《ブラック 」

「《サンダーオブキング!!!》」

 

トドメが刺される寸前、ライアモンのタテガミから放出された電気がキグルミを襲う。

 

「オレサマを前にそんな死に体に構うなァ」

「どうやら、そうした方が良さそうだ・・・」

「グハッ!」

「だ、大丈夫!?」

「しっかりされよ!」

「ハァッ、ハァッ・・・!

ニン、ゲン・・・?

いそげ、急いでくれっ

毛が長いお前達の仲間があのかた、と・・・・・・・・・」

 

ヌイグルミに蹴り飛ばされた狼は華恋に懇願する途中で力尽き気絶。

 

「毛が長い、って事は追われてるのは

まひるちゃん!?」

「華恋殿!、その者を安全な場所へ!」

「う、うん!」

「テメェも下がってなァトカゲ野郎」

「笑止!、進化したからといって調子に乗るなで御座る!」

「2人共仲良しなのはいいんだけど、今はあの大きなヌイグルミを何とかしなくちゃ」

 

赤い上掛けを翻し、獅子と鎧蜥蜴の間に割って入るななの手に握られるのは

大太刀と小太刀、輪と舞。

 

「御主がエクスティラノモン!

このキテンに巣食うレイド帝国の悪意、その首魁!」

「悪はお前達だ、我々がもたらす平穏を乱す不穏分子め

そもそもあのニンゲンが暴れなければ、このような被害が出る事はな 」

「まひるちゃんのせいにしないで」

 

エクスティラノモンの言葉を遮り、縫い目に向けて白刃が走った。

 

「狙いは良いが、甘い」

「バナナですから♪

でも、他の子はどうかな?」

「《クリティカルストライク!》」

「《居合い刃!》」

「たぁああああ!」

 

輪と舞を腕で受け止めていると、四方八方からの攻撃が飛び交いヌイグルミが所々解れていく。

 

「華恋ちゃん!、ばなナイス♪」

「ばななもね!」

「このままバラバラにしてやらァ!」

「御覚悟!」

「・・・・・・・・・クク」

 

2人と2体の連携を受け、ボロボロになっていくエクスティラノモン

 

 

の縫い目が解けた瞬間、ナカミが飛び出した。

 

 

「!?《兜返ぬぁっ!」

「オ、ラァアア"!」

「りゅうた君・・・!」

「レオルモン!?」

「ライア、モン!、だァ!」

 

周囲を圧迫したのは重厚な黒い影。

それに鎧蜥蜴は吹き飛ばされ、獅子は辛うじて踏ん張り爪と牙で抑え込もうとする。

 

「無駄な事を、このまま削除してくれる」

「させない!」「よ!」

「ッッッ!!!、ギャアアアアアア!!?」

「「あれ?」」

 

舞台少女の刃が当たった途端

影は絶叫を上げながらヌイグルミへと戻った。

 

「なんだァ?」

「もしかして、あの黒いのって

私と華恋ちゃんのキラめきに弱いのかも?」

「そっか!、それなら勝てるね!」

「調子に、乗るなニンゲン!」

「今度こそ!《兜返しぃいいい!!》」

 

振り上げられたエクスティラノモンの爪へと割り込むリュウダモンだったが・・・

 

「ぬあああっ!

ま、まだまだぁ・・・!」

「クク、そうか、こうすれば良いのか」

「「「!?」」」

「ニンゲン共、武器を捨てろ」

 

あっけなく押し潰された挙げ句捕まってしまう。

 

「拙者に、構うな!

この隙に、こやつを討つで、御座る・・・!」

「りゅうた君!?、何言って 」

「この街を!、デジタルワールドを救えるのならば!

このまま削除されるのも本望で御座る!

だからどうか、華恋殿!!」

 

 

「ノンノン、だよ」

 

 

「んぬ?!」

「それはあなたの夢

あなたのスタァライトでしょ!?

だから!、自分で叶えなきゃダメだよ!

りゅうた君の物語は、舞台は!

始まったばっかりなんだから!! 

こんな所で終わらない!、ううん

 

 

絶対に終わらせない!!」

 

 

「し、しかし! ぬうううううっ!?」

「最終警告だ、武器を捨てろ」

「・・・・・・・・・、!」

 

Possibility of Pubertyを投げ捨てる

 

 

それと同時に駆け出す華恋。

 

 

「か、華恋殿ぉおおお!?」

「クク、愚かだなニンゲン!」

 

素手で飛び込んでくる無謀な行為を嘲笑い、エクスティラノモンは残る腕を伸ばす

 

 

「アタシ 再生産!」

 

 

そう、縫い目が解れ

ナカミが剥き出しになっている腕を。

 

「!?!?」

「剣、が・・・!?」

 

地面を転がるPossibility of Pubertyが0と1の赤い粒子に分解され、再び造り上げられる。

 

華恋自身、どうやったのかはわからない。

 

だが、この手にキラめきが戻ったのならば

 

やる事は一つ。

 

「ーーーーーーッ、やぁっ!」

「ギャア"ア"ア"ア"!」

「・・・・・・・・・!!」

 

本体を断ち斬られ、緩んだエクスティラノモンの手から零れ落ちるリュウダモン。

 

 

「(そうだ、そうで、御座るッ

 

拙者の武勇伝は、これから)

 

ここから、始まるのだぁあああ!!!」

 

 

地面が近づく中で上げた咆哮に空中に残っていた赤い粒子が引き寄せられ、幕となる。

 

 

「無辜なる嘆きに導かれ

 

固き決意を鎧に纏い

 

乱世のこの世に堂々見参!」

 

 

全身が伸びていき、纏う鎧はより堅固に

 

 

「リュウダモン進化!、ギンリュウモン!

 

御覚悟!、エクスティラノモン!」

 

 

赤い幕を飛び越えて、天へと舞い上がるのは

鎧竜・ギンリュウモン。

 

「りゅうた君?!、じゃなくて

えっーと・・・」

「今の拙者はギンリュウモン!、成長期から成熟期へと進化したので御座る!」

「そっか!

なら、もうリュー君でいいね♪」

「ま、まぁ華恋殿がいいならばそれでも構わんのだが・・・」

「2人共話は後!」

「ウダウダしてんなァ!」

「ガ、ギィ!

おのれ、オノレェ!

ワレワレのジャマを!、スルナーーー!!」

「《棒陣破ぁ!》」

 

自分より遥かに巨大なヌイグルミの突進。

それをギンリュウモンは堅く滑らかな鎧で受け流し、体勢を崩す。

 

「オラァアアア!!!」

 

直後、獅子の牙が腹のジッパーを食いちぎりナカミを大きく露出させた。

 

「ばなな!」「うん!」

「く、クルナァアアア、ぁ"!」

 

必死に逃げようとする黒い影に

 

華恋とななのキラめきが深々と突き刺さり

 

ヌイグルミごと弾ける。

 

「か、完全体をも倒すとは流石ニンゲン!」

「あ、さっきのワンちゃんだ!」

「狼、じゃないかな?」

「自分はファングモン

レジスタンス『明けの遠吠え』の一員です

この街の事は任せて、早く!

あなた達の仲間を助けに行って下さい!」

「あ、そうだ!、まひるちゃん!!」

「華恋殿!、拙者に乗るで御座る!」

「モタモタすんなァ!、ニンゲン!」

「!、ふふっ、ありがと♪」

 

各々、鎧竜や獅子に乗り舞台少女は次なるステージへと進むのであった。

 

 

「リーダー!、無事か!?」

「辛うじてな

それで、どうだった?」

「もう大陸中がヤッベー大騒ぎだって!

ケンキモンが居なくなった途端、武器工場で強制労働させられてたデジモン達が一斉に暴動起こすわ

帝国に協力してる腕っぷしの強い奴らが賞金目当てにあちこち散ったんでその隙に自分達の村や街を取り戻そうと決起するわで!」

「これも全ては世界樹の思し召し、か

自分達も動くぞ!

少しでも帝国の手勢を割かせるのだ!

 

 

この世界に明けを取り戻す為に!」

 

 

 

 

 

☆西方ウラル大陸・ゴミ捨て場

 

「フォッフォッフォッ!

今日は随分とたんまり持ってきたのぅ

それで、何が欲しいんじゃ?」

「なるべく日持ちのする食料をありったけ」

「フォフォゥ・・・なら、干した肉と魚にデジタケの乾物とこんなモンでどうじゃ?」

「うん?、ちょっと多くない?」

「なーに、旅の餞別じゃよ」

「いや、そんなんじゃないから

勝手に勘違いしないでよ、うん」

「おっと!、そうじゃったかー

まぁ、出したモンは引っ込められんし

とりあえずとっとけばええ」

「うん、そうする

ありがと、ワー爺」

「表でたむろしてる連中に奪われんようにの」

 

とっておきのジャンクと引き換えに黒毛に白いモノが混じったツナギ姿の老人狼から受け取った食料。

 

「出テキタゾ!」

「飯、ヨコセー!」

 

それがたんまり入った袋を背負ったドルモンが外へ出た瞬間、小鬼の集団が襲いかかってきた。

 

「《ダッシュメタル・・・!》」

「ぎゃぁ!?」

 

前方を塞ぐ輩の顔面に鉄球をくらわせるの同時に駆け抜け、廃材の山にある隙間へと滑り込む。

 

「これだからなるべくここへは来たくないんだ

面倒なモン拾っちゃったよ、うん」

 

ドルモンがぼやきながら進むのはこのゴミ捨て場の各所に点在する隠し通路。

ここの顔役であるワー爺以外に把握しているデジモンは殆ど居ないので、入ってしまえばこっちのモノ。

 

「あ、お帰りなさい!」

「・・・・・・・・・うん、ただいま」

 

それを用いて鉄板やら何やらを組み合わせて造った住処に戻れば、ニンゲン・・・純那が笑顔で出迎えてくれた。

 

「ほら、食料

それに水もある程度は貯めておいたから

これだけあれば暫くはもつと思うよ、うん」

「わざわざありがとう・・・でも、私もう少しここに居たいんだけど駄目、かしら?」

「うん?、別にいいけど

君、早くここから出たかったんじゃ」

「それが、状況が変わったみたいで」

 

純那が真剣な表情で手渡してきたのは2枚の紙。

 

「うん?、これはレイド帝国の手配書?

って!、いつ外に出たんだよ!?」

「ご、ごめんなさい!

どうしても外の様子が気になってあなたが居ない間にちょっとだけ・・・

そうしたら、これが空から大量にばら蒔かれていたの」

「そういえばなんかヒラヒラしてたっけ

うん?、というかこのお尋ね者まさか」

「そう、私と同じ人間で私のクラスメイト

あなたに分かりやすくいえば仲間、かしら」

「その仲間がよりにもよって帝国に楯突いた

ってワケか、うん納得したよ」

 

よくよく手配書を見ればどちらのニンゲンもとんでもない値段の懸賞金がかけられていた。

 

「頭の軽い奴らならこの子達と君との違いにも気づかないだろうし、ほとぼりが冷めるまで大人しくしているのが懸命だ」

「いいえ、露崎さんも花柳さんも大変なのに私だけ安全な場所で安穏としている訳にはいかないわ」

「・・・・・・・・・うん?」

「すぐ近くにこの大陸を支配してる存在がいる

そう教えて貰った時からずっと思ってたの

これはチャンスだって、私はこのチャンスを逃したくない

絶対に逃せない!」

「まさか、君レイド帝国に挑むつもり!?」

「それがきっと私の、私達に与えられた役

人間がこの世界、デジタルワールドを救う

その伝承を実現させる!

台本もない、筋書きもわからない物語だけどこうして舞台に立った以上やり遂げなくちゃいけないの

だって、私は舞台少女だから」

「ッ、夢物語もいいところだね、うん」

「確かに、ずっと帝国に苦しめられてきたあなたにとっては夢みたいな話かもしれないけど私は夢で終わらせるつもりはないわ

その為なら、どんな事でもするつもりよ

例えばコレを利用したりとか」

「う"うん!??!!」

 

手配書の上に広げられたのは大きな布

そこに描かれていたのは

要塞の図面や配備されているデジモンの詳細を示したであろう絵や文字、隠し通路を使っての侵入経路等々・・・。

 

「か、返せ!

一体こんなモンどっから出したんだよ!?」

「どこって

部屋の隅に無造作に置かれてたんだけど・・・

日頃からきちんと整理整頓してないからこういう事になるんじゃない?」

「いいだろ別に!、ここにはボクしか住んでないんだから!

ううんっ!、背伸びするなーーー!!、届かないだろーーー!!!」

「だって、今返したら破られそうだもの

要塞攻略の貴重な資料が無くなるのは困るわ」

「こんなのガキの妄想もいいところだろ!?

そんなモンを本気にするなんて頭良さそうなのは見た目だけなのかな!?、ううん!?」

「妄想、つまりはあなたも夢見てるのよね

レイド帝国を倒す事を」

「!、そんなの、『普通』のコト、だよ、うん

あいつらのせいで、こんな事になってるんだから

でも、実現なんて出来っこないッ

できるわけが、ないんだ・・・!」

「・・・・・・・・・」

「だから、返せよおおお!

うんぁああ!?」

 

咆哮と共に跳び上がり、天井を足場にして純那の頭上に掲げられた布を狙うがヒラリと躱され床を転がる羽目に。

 

「ねぇ、ドルモン」

「う、ううん・・・っ、なん、だよ!?」

「さっきチャンスって言ったけど少し訂正させて

 

 

運命だって思ったの、あなたと出会った事は

 

 

帝国を倒す事を夢見て、その為に行動してきたあなたと人間の私がこうして出会ったのは決して偶然なんかじゃない

だから、舞台少女・星見純那はあなたの夢

 

 

その為の努力を妄想で終わらせたりしない!

 

 

絶対に!」

 

 

「!」

 

見下ろされる形で向けられた鋭い眼光に射抜かれたのか、ドルモンは耳と尻尾をピンと立てて膠着してしまう。

 

「(この目、あの時の水色の流れ星と同じだ

 

『あいつ』みたいに

 

静かな癖して誰よりも熱い

 

だから、反らせないんだ・・・・・・・・・うん)」

 

「お願いドルモン協力して!、この物語・・・

ううん!、私にはあなたが必要なの!」

「~~~~~~!

ああもう!、わかった!、わかったから!

だから!、そんな風に見るのはやめろっ」

「本当に!?、ありがとう!」

「礼を言うのが早いよ!、ダメだってわかったらボクは速攻君の事見捨てるから!

そのつもりでいてよ!、うん!」

「そうならない為に私は全力を尽くすだけよ

このデジタルワールドでも

 

掴んでみせます!、自分星!」

 

「・・・・・・・・・ったく、もうっ!

本当に、面倒なモン拾っちゃったよ、うん」

 

 

 

 

 




※『明けの遠吠え』
ウラル大陸の各所でレイド帝国に反抗しているレジスタンス組織。
獣型デジモンを中心に構成され、主に遠吠えを駆使した暗号ネットワークを用いての諜報活動や妨害工作がメイン。




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光輝く剣士 ヴォルフモン

☆西方ウラル大陸・岩場

 

「あわわわわわわっ!!??」

「この道ヤッバイね☆、いつタイヤがパンクしちゃうかのスリルがたまんない!」

「な、なん、で!

こんなととところえらんだのぉっっっ!?」

「だって、マヒルチャン匿ってくれそうなデジモンこっちにしか居ないし☆」

 

 

「「逃がさんぞニンゲン!」」

「追跡、捕獲、任務絶対」

『・・・・・・・・・』

 

 

「ワォッ☆、隊長3人お揃いだなんてとんだ欲張りセット!

・・・・・・・・・街手薄だからって早まんなよ、餓鬼共」

 

悪路を進むジープ。

それを2体の鳥が上空から、地上からは球体が率いるジープ部隊が追う。

 

「こ、このまままじゃおおいつかれ・・・!」

「ダイジョブダイジョブ!

もう技の射程圏内だからさ、発想を逆転させてみよう!」

「え、へ?、わわわわわわ?!」

「ヘイ!、バック☆」

『!?』

 

ストラビモンは突如ジープを後ろ向きに走らせ、迫る帝国兵達の方へ突っ込んだ。

 

 

「ほら、降りるよ!」「うひゃ~~~!?」

 

 

『!!??』

 

 

しかも、ガソリンタンク部分に穴を開けて。

結果、乗り手を失ったジープは他の車体を巻き込み大爆発。

 

「ちょっとはザコ減らせたかな?、本命には逃げられたっポイけど☆」

「けほっ、えほっ!

もう!、めちゃくちゃすぎるよぉ!」

「く、やってくれるな!、ニンゲン!」

「情報確認、対象リンクモン削除済み」

「本国が警戒し破格の懸賞金をかけたのも頷ける」

「も、もしかして・・・!

ストラビモンのやった事全部私がやった事になってる!?」

「みたいだね☆」

「そんな軽く言わないでよ!」

「ま、しょうがないって☆

帝国の支配者からしたらデジモンがやる事なんて眼中にないんだから」

「え?」

「それよりホラ、来るよ」

「《サンダーボルト!》」

「《サンダーストーム!》」

「!」

 

黒煙の上がる岩場にてまひるとストラビモン目掛け電流が放たれる。

それらは全て回転するLove Judgementに絡めとられ

 

「えい!」

「!!?」

 

迫る雑兵を打ちのめすのに使われた。

 

「《ストレリチア!》」

「おっと☆《リヒト・バイン》」

 

一方、ストラビモンは機械の翼から伸びるレーザーブレードに食らい尽き

 

「『明けの遠吠え』、何が目的だ?」

「オジサン入ったつもりないんだけ、ど☆」

「クァッ?!」

「マヒルチャン、パス☆」

「う、うん!」

 

まひるの方へと放る。

 

「「ゲェッ?!」」

 

電流を纏ったメイスは機械鳥を真芯に捉え、上空を飛び交う別の鳥へとかっ飛ばした。

 

「ワォッ☆、マヒルチャンやるぅ!」

「・・・・・・・・・ストラビモンもね」

「あれ?、もしかしてオジサンに惚れた?

惚れちゃった?」

「そ、そんな訳ないでしょ!

もう、変な事ばっかり言うんだからっ」

「メンゴメンゴ、ゴメンチョ☆

で?、どうするサンダーボールモン隊長?

まだやんの?」

「・・・・・・・・・」

 

サンダーボールモンは撃ち落とされた他の隊長2体を一瞥すると

 

「勝率取得」

 

トドメを刺した。

 

「!、そ、そんな・・・っ

なんで?、どうして自分で味方を!?」

「条件クリア、レイドプログラム作動、進化開始」

 

2体分のデータを取り込んだサンダーボールモンの姿が

 

 

チェーンソーを持った凶悪なモノに変化。

 

 

「サンダーボールモン進化、ギロモン

 

全てはレイド帝国の為に《ギロチェーンソー》」

 

「~ー~ー~ーッ!!!」

 

高速回転する刃とLove Judgementがぶつかり合う。

 

「すごい、力!

ダメ、押し負け、ちゃう・・・!」

「マヒルチャン!

!?、させっかよ!!」

 

硬直状態の両者の間に仔狼の獣人が割り込めば

 

 

「《デッドリーボム》」

 

 

ギロモンは手にした爆弾を爆発させた。

 

 

「い、たぁ!、いたたたっ!

ストラビモン?、大丈 」

「ぶ、じゃ、な、い・・・・・・・・・・・・・・・・・・ね☆」

 

 

「え、や、ぁ

 

 

いやあああああああああ!!!」

 

 

全身に痛みを感じながら立ち上がったまひるが見たのは

 

 

両腕を無くし、腹のデータを露出させる

 

 

ストラビモンの変わり果てた姿。

 

 

「あっ、はっ、はぁ☆

イケルかな、っておもった、けど・・・!

やっぱ、ムリ、ぽ」

「こんな時まで無理に喋らないで!

どうして、あなたは、そうやって・・・!」

「だ、ってさ・・・っ

せかいが、こんなんだ、し

オジサン、ぐらい、あかるくない、と☆

 

 

『光』として・・・・・・さ・・・・・・・・・」

 

 

「ストラビモン?、ストラビモン!

やだ、こんなの!、やだよぉ!

まだ、会ったばっかりなのに!

あなたの事も、何もわからないのに!!

 

 

私を、置いていかないで・・・・・・・・・!!!」

 

 

仔人狼にすがる舞台少女の涙。

 

 

そのキラめきが剥き出しのデータへと落ちた時

 

 

祭具に隠された虹色の鉱石を目覚めさせる。

 

 

「神機、発見、ニンゲン、捕獲」

 

 

ライトグリーンとライムグリーン。

2種の緑に彩られた神機を装着したまひるの背後にチェーンソーが迫る

 

 

 

やれやれ、しょうがないなぁ、もう☆

 

 

 

 

その刃は0と1で構成された緑の幕により阻まれ

 

 

「綺麗なモンは大好きだけど☆

 

生憎ゼーンゼン見つかんなかったんだよね」

 

 

「!、武器破損!?」

 

 

スラリとした腕により振るわれた光の刃により切断された。

 

 

「巡って巡ってぶつかって

 

巻き込み事故には御用心!、なんてね☆

 

ストラビモン進化、ヴォルフモン☆

 

オジサンだって褌締めていかなくちゃ

 

褌してないけど!、アッハッハァ☆」

 

 

マフラーを翻しながら幕を潜り抜けるのは

各部に薄紫のパーツが煌めくアーマーに身を包み狼の意匠が施された兜の下で

軽薄な笑みを浮かべる光の剣士・ヴォルフモン。

 

「すと、らび、もん・・・?」

「契約なんて絶対するモンかって思ってたのに

オジサンをその気にさせた責任取ってよねぇん、マヒルチャン☆」

「!、だから!

そういう言い方、やめてよ!

もう!、もう!、もぉう!」

「ワォッ☆、この子怖い!

普通にセインアメジスト砕いてくる!

どっから出んのそのパワー!?」

 

 

※おいもです。

 

 

「進化及び負傷完全回復を確認

ストラビモン改めヴォルフモン最優先排除対象《デッドリーボム》」

「《リヒト・クーゲル》」

「!?」

 

ギロモンが投擲しようとした爆弾を左腕から放った弾丸で射抜き、爆発させるヴォルフモン。

 

「こう、なれば・・・!、もろともに吹き飛ばす!、トループモン部隊!!」

『・・・・・・・・・』

「まさか、あれダイナマイト!?」

「爆発オチ好き過ぎでしょ、サイテー☆」

「全てはレイド帝国の為に!」

『レイド帝国ノ為ニ』

 

 

「ま、やらせなきゃいいだけなんだけど」

 

 

『「!!!」』

 

 

「《ツヴァイ・ズィーガー》

 

見えたかな?、光の軌跡☆」

 

 

ギロモンやトループモンによる一斉自爆。

 

それが敢行されるより早く、二振りの光の剣を繋げた両剣が帝国の軍勢を斬り刻んだ。

 

「て!、おかわり来るの早!?

しかも、まだ街に飛行出来るデジモン残ってたのかよ!?」

「!、待ってストラビモン!!」

「痛?!、言うより先に殴ったよこの子!?

というかオジサン今はヴォルフモンね!

あ、またセインアメジスト砕けてるし!

その棒何製!?、クロンデジゾイドよりもカタぁイ!」

 

接近する飛行物体を並み外れた感覚で察知したヴォルフモン

 

 

よりも正確にその存在を把握する露崎まひる。

 

 

「まーーーひーーーるーーーちゃーーーん」

 

 

「空から女の子が降ってきたーーー!!?」

 

 

「かれんちゃあああああああああん!!!」

 

 

「そして受け止めにいったーーー!!?」

 

 

ズゥゥゥウウウ・・・・・・・・・ンッッッ!!!

 

 

「地面の罅ヤベェーーーイ!!?」

「まひるちゃん!、まひるちゃん!

よかった!、無事だったんだね!」

「うん!、うん!、華恋ちゃんも!

こんな所で、会えるなんて・・・!」

「か、華恋殿!

いきなり飛び降りるのは危ないで御座る!」

「あ、やっとマトモに話せそうなの来た

チィイッス☆」

「ぬ!?、御主もしやファングモン殿の言っていたあの方とやらか?」

「・・・・・・・・・ナンノコトデショウカ?」

「まひるちゃん!、大丈夫!?

どこか怪我とかしてない!?」

「ばななちゃん!

ばななちゃんもこの世界に来てたんだ」

 

キテンの街から急行した2人と2匹と無事合流を果たしたまひるとヴォルフモン。

 

「こんな所でウダウダしてていいのかァ?」

「そっちの子の言う通り、再会の喜び分かち合うのはもうちょい安全な場所のがいいかな」

「なんと、この大陸にそのような地が!?」

「デカい奴程足元はお留守ってね☆

そこに居るんだよ『明けの遠吠え』の長が

・・・・・・・・・後はまぁ色々拗らせた聖騎士サマも」

 

ヴォルフモンは説明しながら無事そうなジープを物色し

 

 

カシャッ カシャッ   パン!

 

 

「まずったかなぁ?」

 

 

華恋とななの姿を撮影していた飛行物体を《リヒト・クーゲル》で撃ち抜くのであった。

 

 



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アグニモン炎の熱血進化!

☆西方ウラル大陸・荒野

 

「あの遠くに見えるデカい建物が帝国の武器工場なんだよな?」

「ああ!、オレだけでは入る事すら儘ならなかったがフタバが一緒ならば或いは!」

「いや、その自信はどっからくるんだよ?」

「何より!、あの工場は流通の要!

フタバの探すカオルコとやらの手がかりを得られるやもしれない!」

「まぁ、当てもなく探すのもなー

それに、そこで工場長やってるケンキモンって気に入らない奴はすぐ潰すんだろ?

もし香子が見つかったら何されっかわかんねーし

そうなる前に叩いた方があたしも安心 」

 

 

「ふぇええええええ~~~~~~ん!!!

 

 

や、やめるデスぅうううううう!!!」

 

 

「「!?」」

 

荒野に響く悲鳴を聞いた1人と1体は顔を見合わせた後、すぐに駆け出す。

 

 

そこで見たモノは・・・

 

 

「この!、この!、このこの!」

「痛い!、痛いデスぅううううう!!」

 

泣き喚くデジモンを薙刀の柄で叩きまくる人間。

 

「            」

「ふ、フタバ!

その!、あの!

か弱いデジモンを虐めているニンゲンの特徴が!

君の言っていたカオルコに、その!、似てなくもなくはないんだが!?」

「・・・・・・・・・うん、すっげえ気ぃ使ってんのはわかるけど

ちょっと黙っててくれ、フレイモン」

「す、すまない!」

「すー、はー、ふぅっ

 

 

何やってんだ香子ぉおおおおおお!!?」

 

 

「!?、双葉はん!」

「お前なぁ!、こんな世界だからって!

相手が人間じゃないからって!

弱い者虐めして良いわけないだろ!?」

「はぁっ!?、やっと来たかと思うたら

何ワケわからん事・・・・・・・・・!、アホ!!」

「いってぇ!?」

 

探し求めていた相手の暴挙をいさめるべく詰め寄った双葉を香子は突き飛ばす

 

 

ボゴン!!!

 

 

直後、彼女が立っていた地面が陥没。

 

「え?」

「はよ立ってぇな!

あれだけで終わりやないんよ!」

「何がどうなってんだよ・・・?

ってのは、後で聞いた方が良さそうだな」

「フタバ!、オレも手を貸すぞ!

ほら!、君も一緒に戦おう!!」

「む、無理デスぅ!

ブイにはそんなの無理デスぅううううう!」

「なっ!?」

「どこの誰か知らんけど、その青瓢箪には期待するだけ無駄どす

おっきくならんとなーんも出来ん情けない泣き虫で弱虫や」

「おい、まさか、さっき叩いてたのは

こいつをデカくする為とか言わないよな?」

「流石は双葉はん♪、うちの事ようわかってはるな~」

「出来ればわかりたくなかった!」

 

 

「なんかニンゲン増えたよ、ブラザー!」

「そうだな、ブラザー

これは懸賞金アップのチャンスに違いない」

「だな!、ブラザー!」

 

 

集結した2人と2体。

その正面に掘られた穴から顔を出すのは鼻がドリルなモグラに似たデジモン達。

 

「!、ドリモゲモンブラザーズ!!」

「知ってんのかよフレイモン!?」

「ああ!、レイド帝国にデータを改竄されていないにも関わらず奴らに従う賞金稼ぎ共だ!」

「しょーきんかせぎ~?

そないな相手がなんでうちらを襲うん?」

「お前にとびっきりの懸賞金がかけられてるからだ、ニンゲン」

「あのケンキモンを削除しただけあってめっちゃ高額!」

「うまいモン食べ放題!、食べ放題!」

「はぁっ!?、なんでうちだけ!?

ブイはんの方がよっぽど暴れたやん!」

「トドメ刺したのはカオルコデスぅううう!

ブイは巻き込まれただけデスぅううう!」

「この期に及んで何言うてん!?」

「あー、大体わかったから落ち着け香子」

「まさか!、既にケンキモンを倒したとは!

流石は!、フタバが尊敬してやまないカオルコだな!」

「お、お前はお前で何言ってんだよ!?」

「ねぇ、ブラザーあいつらバラバラだね」

「そうだな、ブラザー

これは真のチームワークを見せる時だ」

「だな!、ブラザー!」

 

ドリモゲモンブラザーズは一斉に地中へ。

 

「!、これは!?」

「し、沈むデスぅうううう!」

「いややぁ~~~~~~!

服ん中砂入ってくる~~~~~~!」

「お、お前ら!

だからって、あたしの上に登るなよッ」

 

すると舞台少女達が立つ地面が流砂と化した。

 

「すまないみんな!、少し我慢してくれ!

 

《ベビーサラマンダー!!》」

 

フレイモンが打ち出した炎のオーラ。

それは蛇のように地中を這い回ったかと思うと流砂化が途中で止まる。

 

「「あっちゃ!?、あちちちちちち!!」」

「ほう、地中の水分を瞬時に蒸発させるとは」

「やるな!、お前!」

「敵をほめるな、ブラザー!

準備の一つをパァにされたんだぞ!?」

「なら、諦めろよ

今なら許してやってもいいんだぜ?」

「ほざけ、ニンゲン《クラッシャーボーン!》」

「「《クラッシャーボーン!!》」」

 

三方向から迫り来る骨ブーメラン

 

「「はっ!」」

 

を、同時に叩き斬る双葉と香子。

 

「《フレイムテイル!》」

「!」「よ!」「ほい!、ほい!」

「ま、また潜ったデス!」

「んもう!、出たり入ったり!、ほんま鬱陶しい!」

「フレイモン、さっきみたいに地面を焼いて

あいつらを炙り出せないのか!?」

「今のオレにそこまでの火力は・・・!」

「そんな事言っちゃダメデスぅうううう!

もっと熱くなるデスよぉおおおおおお!!」

「そうゆうんならあんさんもはようおっきくなりなはれ!」

「さっきから気になってたけど、おっきくってなんだよ?

こいつ特撮みたいに巨大化とかすんのか?」

「恐らくは進化の事だろう!、ニンゲンと神機のチカラはデジモンに更なる可能性を与えるからな!」

「ってことは、香子契約してたのか!?

この青瓢箪と!?」

「青瓢箪違うデスぅううううう!

ブイはブイモンデスぅううううう!!

 

 

ふぇ?

 

 

ふぇええええええん!!?」

「!、ブイはん!?」

 

落とし穴にはまったブイモンが地中へと落ちた

 

 

直後、香子の手首に備わる神機が起動。

 

 

「《ブイブレスアロー!》《ブイブレスアロー!》《ブイブレスアロー!》《ブイブレスアロー!》《ブェッ、ブレス、あろぅ・・・!》

ふぇえええ・・・あぶなかった、デスぅう」

 

ブイドラモンに進化するや否や必殺技を連射

その反動を使って地上への復帰を果たした。

 

「「ぶ、ブラザァアアア!!??」」

「ふぇ?」

「おお!、1体仕留めた!」

「やるじゃんお前!」

「ふふん♪、まぁこれぐらい当然どす」

「なんでカオルコが得意気デス!?

倒したのブイ 」

「「このヤロウ!、よくもブラザーを!」」

「・・・・・・・・・これも全部カオルコのお陰デスぅ

だから、恨むならあっちデスぅ」

「「なんだと!?、おのれ!、ニンゲン!

見ててくれ!、ブラザー!」」

「ええええええ!!?

な!、ちょお!?

ブイはん!、後で、覚えとき、ぃ・・・!!」

 

足元からドリルが飛び出し、跳躍して躱せば着地地点に別のドリルが突き出される・・・それをひたすら繰り返す香子。

 

「香子!、待ってろ今なんとかする!!」

「!、待てフタバ!!」

 

フレイモンが止めるのも聞かず、双葉がDeterminaterを振りかざして走ると

 

踏み出した足が地面に飲み込まれた。

 

「なっ!?、う!、・・・!・・・・・・ッ」

「捕まえた!、捕まえた!」

「狙い通りだな、ブラザー!」

 

小柄な体が先程よりも早く沈んでいき

 

 

あっという間に見えなくなる。

 

 

「双葉はん!?、双葉はん!!」

「間にあえぇい!」

「さっきみたいには、やらせない!」

「だな!、ブラザー!」

「ぐ!、が!」

 

炎のオーラを纏いながら流砂に飛び込み、砂を掻き分けフレイモンが進むとドリモゲモン達が地中でヒットアンドウェイを仕掛けてきた。

 

「(く、そ・・・!、動けねぇっ

それに、息も、やべぇ

このまま、あたし)」

 

 

「はよ返事しぃ!、双葉ぁあああ!!!」

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(ったく、わかってるよ)

 

 

香子!!!」

 

 

地の底にまで届く

共に世界を目指す幼馴染みの必死の叫び。

それに応えれば腕の神機から紫の粒子が立ち上り

 

 

「おりゃああああああ!!!」

 

 

地中であるにも関わらず豪快に振るった

 

 

ハルバード・Determinaterが荒野を断ち割る。

 

 

「え?、え?」

「ぶ、ブラザー!?」

「ふ、フタバ・・・!」

「受け取れ、フレイモーーーン!」

「!?、ああ!、フタバの想いは!

オレが全力で受け止める!!」

 

双葉が造った道に浮かんでいたフレイモンは火を足裏から噴射させ、0と1で構成された紫の幕へと突っ込んだ。

 

 

「物言わぬ物でしかなく

 

故に、使われるがままでしかなく・・!」

 

 

子供の如き体格が大人のソレへと変わり

 

 

「そんなオレでも見つけられた!

 

暗中摸索のこの世に、一つの道を!」

 

 

全身が炎を思わせるアーマーに包まれる。

 

 

「フレイモン進化!、アグニモン!

 

この身!、この心!、この生命!

 

与えられた全てを燃やしてオレは行く!!」

 

 

幕を焼き払い、突き進むのは

黄金の髪を持つ炎の魔人・アグニモン。

 

「!?、ブラザー!」

「怯むな、ブラザー!

進化しようが関係ない!」

「だ、だな!、ブラザー!」

 

分かたれた大地に降り立っていたドリモゲモンブラザーズは再び地中へ。

 

「《バーニングサラマンダー!》行け!」

 

するとアグニモンは拳から火の竜を生み出し

穴の中へと入り込ませた。

 

「「あっちゃーーー!!?」」

「!、出てきた!!

ちゃんとやれたら、さっきのやらかしチャラにしたる!」

「ふぇええ!?、わ、わかったデスぅ!」

「フレイモン

いや、アグニモン!」

「ああ!、決めるぞフタバ!!」

 

ブイドラモンの頭上に立つ香子

アグニモンと並び立つ双葉

両者は同時に動き出す。

 

「やられて!」「たまるか!」

「「《ドリルスピン!!》」」

 

迫る脅威を迎え撃つべく、ドリルを高速回転させるドリモゲモンブラザーズ。

 

「これで、もう!」「《ブイブレス」

 

ブイドラモンは口に高熱を宿しながら頭を勢い良く振り上げ、香子はそのタイミングに合わせ跳躍。

 

「アロー!》」「しまい!」

「あ!?、な!!」

 

《ブイブレスアロー》により鼻からドリルが切り離された直後、剥き出しになったデータに流れるような斬撃が走る。

 

「ぶ、ブラザー!

せめて、お前達だけでも!」

「生憎、そういうわけにはいかねーんだよ

あいつを独りには出来ないからな!」

「《サラマンダー・・・!」

 

双葉はDeterminaterを旋回させる事で刀身にアグニモンが巻き起こす炎の竜巻を纏わせ

 

 

「「ブレイク!!》」」

「~~~~~~ッ、ッッッ!」

 

 

旋風脚と同時にドリルへ叩き込み

ドリモゲモンごと粉砕。

 

「はぁぁぁ、双葉は~~~ん

うちつかれたぁ、おぶってぇ・・・」

「あー、悪ぃ

あたしも、今けっこーきつい・・・」

「無理もない!、フタバはさっきソウルをかなり燃やしていたからな!」

 

 

ドドドドドドドドド!!!

 

 

「「「「ん?」」」」

 

 

「ニンゲン見つけたぞーーー!」

「何言ってんだ!?、先に見つけたのは俺」

「オマエ賞金独りじめする気カ?」

「そうはいかねーぞ、コラ!」

 

 

「えっと、アグニモンあれってまさか・・・」

「まずい!、賞金稼ぎの団体だ!」

「ふぇええええええ!

あ、あんないっぱいもう無理デスぅううう!

こうなったらカオルコを引き渡イヒャヒャ!

イヒャイエフゥウウウ!!

ヒョーヒャン!、ヒョーヒャンエフゥ!!」

「・・・・・・・・・チャラにしたそばからそないな事言うんわこの口か?、うん?」

「香子!、そういうのは後!

とにかく、どうにか切り抜け 」

 

 

ズボッ! ズボッ!

 

 

「「「わぁああああああ!!?」」」

「「「ぎゃああああああ!!?」」」

「あ、落ちた」「ホヒヒャエフゥ」

「そういや穴だらけだったな、ここ」

「い、今の内に逃げるぞ!」

 

 

2人と2体は追手に追われながら当てもなく荒野を行くのであった。 

 

 

『・・・・・・・・・』

 

 

カシャッ カシャッ

 

 

 

 

 

 

 

 





※ソウル=デジモンセイバーズのデジソウル
いわば人間の精神エネルギー、パートナーを進化させるだけじゃなくて身体強化にも使える。
舞台少女の場合コレにキラめきが混ざっておりステータスを異常強化されたレイド帝国のデジモンに対し有効打が入ります。




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勝つのはウチジャン! グリズモン荒ぶる

士武大陸視点


☆東方士武大陸・歓楽街

 

「お、おやぶん、さん・・・?

隣のデジモンは一体何モンでしょう・・・?」

「おおん?、覚えとらんのかぁ?

こないだ連れてきたルナモンじゃあ」

「いえ、あの・・・

覚えてはいるんですが、その・・・

前に見た時とサイズが大分違いません・・・?

と、というかなんで・・・!

 

 

首から下を布に包んでるんですか・・・!?」

 

 

「そりゃそうじゃろぅ!

なんてたって成長期なんじゃから!

おしゃれしたくなるお年頃なんじゃろぅよ!

ガッハッハッハッ!」

『ワッハッハッハッ!』

「あ、あはは・・・!

そ、そうですねー・・・成長期ですモンねー・・・私もそうでしたよー・・・」

「なんじゃなんじゃ、青い顔しよって

腹でも空いてるんかぁ?

まぁ、これで美味いモンでも食えや」

「・・・・・・・・・!、こ、今回だけですよ?

ぜ、絶対これっきりですからね!」

「おうおう、いつもすまんのぅ」

 

門番ヤシャモンとの問答を終えたコンゴウ親分と手下のコカブテリモン達

そして、『ルナモン』は映画村のような町並みへと足を踏み入れる。

 

「門さえ潜りゃあこっちのモンじゃあ」

「ええ、そのようですね」

「油断は禁物

勝手な行動は慎むのデシテ、テンドー」

「わかっていますよ、ルナモン」

 

忠告に応じつつ、抱いていたルナモンを降ろす真矢。

 

「それでは、まずはあちらの出店から」

「まったくわかってないのデシテ!?」

「子分共!、Bitに糸目はつけん!

ここら一帯買い占めてこい!」

『へ、へい親分!』

「無闇に餌をやるなデシテーーー!」

「静かにして下さい

私が人間だとバレてしまいます」

「だ・れ・の・せ・い・だ・と・・・!?」

「まぁ落ち着くんじゃあルナモン

挑戦ニンジン食うか?、うっめぇぞ?」

「それ元々育てたのワタクシーーー!」

「お、親分ていへんだ!」

「おん?、どうしたぁ?」

「広場の方で御触れが!

領主がニンゲンを捕まえたってあったど!」

「「「!?」」」

 

子分からの報告により1人と2体の空気が一変。

 

「失礼、捕まった人間がどんな姿かはわかりますか?」

「そ、それはまだわかりやせん・・・」

「姉御!、まさかあんたの仲間が!?」

「確証はありませんが彼女達も私と同じ舞台少女である以上、このデジタルワールドに呼び込まれた可能性はあります」

「よりにもよって

ここの領主に捕まるとは運が無いのデシテ」

「それはどういう意味でしょう?」

「ここの領主やっとるドウモンはレイド帝国としっかり手を組んどるんじゃあ

まぁ、そのお陰でレギオン群島のモンが流通しとるんじゃがのぅ・・・」

「あのかき氷に乗っている南国風のフルーツはその恩恵の一端という訳ですか」

「姉御、一応買ってきやしたけど」

「勿論頂きます」

「仲間の危機に何をしているのデシテ!?」

「まぁまぁ落ち着けぇ

あの威張りくさった奴の事じゃあ

必ずニンゲンを領民に見せモンにする筈

そん時までどっしり構えておりゃあええ」

「あの、コンゴウ親分?

帝国に盾突く気満々デシテ?」

「当たり前じゃあ!、今のワシは姉御の為なら世界樹だってヘシ折って見せっぞ!」

「ふふっ、頼りにしていますよ親分さん

(捕まっているのが『彼女』でなければいいのですが・・・)」

 

親分からの貢ぎ物を味わいながら周囲の通行デジモンに溶け込む真矢。

 

「(たかが布一枚であの存在感が消えた?

いや、『消した』のデシテ・・・!?)」

 

彼女の舞台少女としての実力にルナモンが戦慄していると

 

 

「りょ、領主様のおなーーーりぃーーー!!!」

 

 

「来たようですぜ!、姉御!」

「では、皆さん行きましょうか」

『へい、姉御!』

 

領主到来の報せが聞こえて来たので一同は雑踏に紛れながら広場を目指した。

 

「なぁ、ニンゲンってどんなモンなんだ?」

「さぁね、爺婆の話でしかしらないし」 

「でも、きっとすっげぇんだろうなー!

何せ 」

「おやめ!、滅多な事言うモンじゃないよ」

「それに、あの領主様に捕まっちまったらなぁ」

「これが済んだら、そのニンゲンどんな目に遭うんだろ・・・?」

「他のモンの心配しても仕方ないさ」

「あ、見えてきたよ!

へぇ!、あれがニンゲンかい!?」

 

 

「・・・・・・・・・!!!」

 

 

デジモンの波に飲まれながら真矢は目を見開く。

 

「グフフフッ、皆驚いているでおじゃる」

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」

 

彼女の視線の先には陰陽師のような格好をした丸々と肥えたデジモンと鎧武者

 

 

その足元で白装束を着せられ、息を荒げる西條クロディーヌが居た。

 

 

「領主様、お気をつけ下さい

こやつは 」

「うぬ以外の手勢を削除してみせたと?

だが、今は最早イガモン秘伝の毒でこの通り

逆らう力など残ってないでおじゃる」

「ぅ・・・・・・・・・」

「グフフ、見目はいいが愚かよなぁ

唯一解毒剤を持っていたモンを自分で削除するとは」

 

 

「ああそういう事ですか、通りで大人しいと」

「思ったより冷静デシテね、テンドー・・・」

「内心狼狽えていますよ

『彼女』、西條クロディーヌが相手ですから」

「?、まぁいきなり無策で突っ込むような

どこかのアホのような真似しないのなら 」

 

 

「クロ公はどこジャーーーーーーン!!?」

「あーーーっ!!!、行けないって!!!

困るから!!!、入っちゃダメぇ!!!」

 

 

『!!?』

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?、え、いや、まさか、そんな

でも、この気配と何よりこのアホ丸出しな声は

間違いなくッ『奴』デシテ!?」

 

広場へと乱入してきたのは、腰に門番をブラ下げた小熊。

 

「あ、居たジャン!、クロ公!!」

「ぐぇえええ!?」

「なんでおじゃるか?、うぬは?」

「こ、こやつは!

ニンゲンと共に我々に逆らった不届きモン!

わざわざ追ってきたというのか!?」

「あったりまえジャン!

ウチとそいつの決着ついてないんだから!」

「何を訳のわからん事を・・・!

総員抜刀!、斬り捨てぇい!」

『お、おーーー!』

 

鎧武者の号令に従い

侍姿の恐竜達がわらわらと現れ刀を抜き放つ。

 

「(あ、アホーーーーーー!!!

転生しても一切、いやそれ所かアホ度がパワーアップしているのデシテーーー!!?)」

「ルナモン」

「え、あ、テンドー・・・

(そうデシテ、今はあんなアホに構っていられないのデシテ

この混乱に乗じて、あのニンゲンを救出しなくては!)」

「私は今からあの舞台に飛び入り参加しますのでその間に西條さんをお願いします」

「いや!、それ役割逆では!?

って

いつの間にワタクシ進化したのデシテ!?」

 

慌てるレキスモンを尻目に真矢は纏っていた布を放り投げるとOdette the Marvericksを手に小熊・ベアモンの前に飛び込んだ。

 

「な、なんジャン!?、お前!」

「あなたと同じ目的を持つ者です」

「目的?

!、クロ公に勝つのか!?」

「ええ、私は彼女に勝ち続けますとも」

「また訳のわからん奴が増えただと!?」

「グフフフッ、これはまた見目は良くても頭の悪いニンゲンでおじゃるなぁ・・・

ここをどこだと思うておる?、マロによるマロの為のマロの領地で領民は全てマロの兵

たかだが2体、すぐに磨り潰して 」

 

 

「おどれらぁ!、姉御の邪魔すんなら!

まずはこのワシが相手したらぁああ!!!」

『お供しやすぜ!、親分!』

「うわぁーーー!?

コンゴウ親分が暴れ出したーーー!?」

「に、逃げろーーーーーー!」

 

 

「その兵の大半が去ってしまいましたが?」

「グフッ!?、グ、グフフフ・・・!

ま、まぁ偶には運動するのも吝かではないでおじゃるなー」

「お?、やる気ジャン!?、タヌキ!」

 

 

「おい糞餓鬼、今てめぇなんつった?」

 

 

「「ん?」」

「この俺のどこが狸だって?、ええ!?」

「お、領主様落ち着 」

「五月蝿ぇ!!!

俺は!、俺は御狐様だああああああ!!!」

 

地雷を踏まれたドウモンは近寄ってきた鎧武者に札を叩きつけ、データの内側から爆殺。

 

「あ、ああっ!

言っちゃいけない事言っちゃったぁ!!」

「ああなったらもう誰にも止められない!」

「僕達の町はもうおしまいだぁ!」

「えっと、まぁ、同情はしてやるのデシテ

《ムーンナイトボム》」

『!?、・・・・・・・・・ぐぅう』

 

レキスモンのグローブから放たれた泡を浴びた途端、睡魔に襲われ倒れ伏す侍恐竜達。

 

「さて」

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・!」

「この高熱と麻痺状態、ドクグモンの毒をベースに色々混ぜているようデシテ

家にストックしてある薬草でも解毒出来るかどうか・・・

まぁ、テンドーに恩を着せる為にもやるだけの事はやらないといけないのデシテ」

 

 

「   ェ   ン   ゥ    ?

 

 

      Ma   ya      !」

 

 

思案に耽る兎獣人。

故に己が抱く舞台少女の異変に気づかない。

 

「どいつもこいつもつっかえねぇなぁ、おい!

こうなりゃてめぇらみぃんな俺の手で呪い殺してやる!」

「ふぅっ、感心しませんね

演じる役をこうも容易く放棄するのは・・・」

「五月蝿ぇ!、ニンゲン!

てめぇは後で可愛いがってやるから大人しくしてろ!《鬼門遁 」

「隙ありジャン!《小熊正拳突きィ!!》」

 

ドウモンが振り上げた身の丈程の筆にベアモンが拳を叩きつける。

 

「・・・・・・・・・どうあっても先に削除されてぇようだなぁあああ!?

てめぇこの糞餓鬼ぃいいい!!!

御望み通り!、呪いで全身のデータぐっちゃぐっちゃにして!、地獄の苦しみにのちうちながら 」

「能書きが長い!、デシテ!《ムーンナイトキック!》」

「グフぅン!?」

「ああ、レキスモン

無事西條さんを連れてきてくれたようで」

「余裕ぶっているが!、今のはそのアホが割って入らなかったら危なかったのデシテ!

あのレナモン族全ての冒涜的な体型で未だに狐名乗っているが!、あいつはアレでも完全体!

コンゴウ親分の時のようにはいかないのデシテ!

わかったら!、さっさと下がって!

 

 

このニンゲンを守っているのデシテ!

 

 

テンドー!!!」

 

 

「・・・・・・・・・ああ、言ってしまいましたか」

「は?」

 

 

 

       だ、れ、がッ

       ‎

 

誰を!、守る、ですって?

天堂真矢が、私を?

 

この西條、クロディーヌを?、そんなの!

 

 

そんなの!!!、冗談じゃないわ!!!」

 

 

「!?、ア"ッヅーーーーーーイ"?!!」

 

突然腕の中で発生したオレンジの噴火。

それをモロにくらったレキスモンは絶叫と共に吹っ飛ばされた。

 

 

「輝くチャンスは誰もが平等!」

 

 

陽炎のように揺らぐオレンジの粒子により

白装束が焼失、0と1のデータに変換され

黒を基調としたレヴュー衣装に。

 

 

「だから愛のダンスで、 誰より熱く!

 

自由の翼で誰より高く!」

 

 

翻すのは赤い上掛け

手にするロングソードの名は

Etincelle de Fierte《誇りの火花》。

 

 

「99期生次席、西條クロディーヌ!

‎C'est moi, la star!」

 

 

「クロ公!?」

「西條さん?」

「私は、あんたに守られるんじゃない!

天堂真矢!、あんたに、勝つの!」

「・・・・・・・・・西條さん?

あの、なんだか湯気が出てますし

目が、その、大丈夫ですか?」

「何それ!、余裕のつもり!?、ほんとヤな女!

いいわ!、あんたがそうやっている間に私はこの舞台の主役を奪ってみせる!

C'est moi, la star!!!」

「なんなんだよぉ!?、てめぇはぁ!?」

 

全身から謎の蒸気を噴出させながらクロディーヌはドウモンに斬りかかる。

その頬は朱に染まっており、目の焦点は合っていない。

 

「こ、この煮え滾るようなソウル・・・!

まさか!、テンドーへの対抗心を燃やして体内の毒を焼き尽くしたとでもいうのデシテ!?」

「つまりクロ公すっげぇって事ジャン!?」

「ふふっ!、そうですね!

本当に、彼女は・・・例え異世界であっても変わらない

いえ、もっと進化している」

「ならウチも進化するジャン!」

「いや、それで進化出来たら

どのデジモンも苦労はないのデシ 」

 

 

「キタキタキターーー!、チャンス到来!」

 

 

「テエエエエエエーーーーーー!!?」

 

虚空からオレンジの粒子をかき集め

自分の体にベタベタ張りつけるベアモン。

 

 

「この爪で!、この拳で!

 

絶対の絶対に勝ってみせるジャン!」

 

 

「イヤイヤイヤ!、待つのデシテ!

おいコラ世界樹!

こんな進化させて本当にいいのデシテ!?

ねえ!?」

 

 

「ベアモン進化!、グリズモン!

 

テッペン取んのは!、ウチ!、ジャン!」

 

 

歪な幕の下で小熊が大熊への成長を果たした。

 

「《クレッセント、どーーーん!!!》」

「!、また邪魔をする気!?」

「クロ公!、ウチはお前に勝つジャン!」

「ふん、言ってなさい!

天堂真矢に勝つのはこの私よ!」

「おう!、絶対勝つジャン!」

「てめぇら会話噛み合ってねぇんだよぉ!」

「「うるさい!、さっさと

私/ウチに倒されなさいよ/るジャン!!」」

「グフゥッッッ!」

 

同じタイミング、同じ場所に炸裂する刃と爪。

 

「2人だけで盛り上がらないで下さい!」

「だぁあああ!、てめぇらやりたい放題ばっかやりやがってぇえええ!」

「自業自得では?《ティアーアロー》」

「こい、つぅ!」

 

真矢まで加わった乱戦の最中、正確に行われる援護射撃により札を射抜かれ筆が振るえずドウモンは術が使えない。

 

「なんでこうなった!?

前の領主消して!、帝国と手を組んで!

美味いモン食って!、楽しく遊んで!

全部上手くいってたのに!」

「レキスモンの言う通り、自業自得では?」

「五月蝿ぇえええ!!!

もう術も呪いもいらねぇ!、イラナイ!

スべてヲ、削除シてヤる!」

『!?』

 

すると陰陽師は自分で自分に札を叩きつけ

 

爆散。

 

「あ!、あいつ勝手に消えやがったジャン!

これじゃ決着つかねー!」

「いや違うのデシテ!、奴の狙いは!」

 

飛散したドウモンのデータは一枚の札に吸い込まれ

 

 

『「グォオオオオオオン!!!」』

 

 

巨大な黒い狐を呼び出した。

 

 

「自分の怨念そのものを式神にしたのデシテ!

これも、レイド帝国がもたらした不正コード

その影響によるバグ!」

「ならば、それを正すのがこの世界での私の役

親分さん、デジモン達の避難をお願いします」

「へ、へい姉御!」

「フー・・・ッ!、フー・・・ッ!

第二幕って所かしら?、上等よ!」

「ええ、行きましょう西條クロディーヌ」

「よくわかんないけどやったるジャン!」

「・・・・・・・・・もう貴様はそれでいいのデシテ」

『「グォオオオオオオン!」』

 

異常な程に膨れ上がった怨念が2人と2匹に向けて黒い炎を吐き出す。

 

「《ティアーアローッ!》」

 

するとレキスモンが氷の矢を放ち、黒炎を穿って舞台少女達の花道を造り出した。

 

『「グォ!、グォオオオーーーン!!!」』

「《当身返しぃ!》ジャン!」

 

鼻先にまで接近してきた2人に爪を振り上げれば

その力を利用したグリズモンの必殺技が急所にヒット。

 

『「ォッッッ!」』

「Claudine!」「Maya!」

 

痛みのせいか大きく開かれた口に真矢とクロディーヌは飛び込み

 

互いにどこまでも高め合うキラめきで

 

自分勝手な怨念を内部から蹂躙し尽くした。

 

 

「「ポジション・ゼロ・・・!」」

 

 

絶対の勝利宣言と共に式の源たる札へと突き立てられる

 

Odette the Marvericks

Etincelle de Fierte。

 

これにより、帝国の悪意

その一端が消え去り、残ったのはデジタマのみ。

 

「ふぅっ、素晴らしい舞台でしたね西條さん」

「・・・・・・・・・」

「ん?、どうしたクロ公?

あ!、ってかウチベアモンに戻ってる!?

なんでジャン!?、そっちはまだなのに!」

「このニンゲン

立ったまま気絶しているのデシテ!?」

「・・・・・・・・・」

「どうやら、そのようですね

 

 

T'es mignonne aussi quand tu dormir ・・・

 

Ma Claudine」

 

 

『・・・・・・・・・』

 

 

カシャッ カシャッ   パキィン!

 

 

「言ってる場合デシテ!?

今のサウンドバードモン!

貴様らの顔を撮っていたのデシテ!

これがどういう意味かわかっているか!?」

「無許可で撮影とはマナー違反も甚だしい」

「ち・が・う・だ・ろーーー!!?」

 

 

 

 

 

 

 

☆東方士武大陸・湖畔

 

 

シャリシャリ・・・ シャリシャリ・・・

 

 

「どうしよう、食べる所がない・・・」

 

林檎らしき実の皮をBlossomBrightを使って剥くひかりだったが、何度やっても芯だけになってしまう。

 

「ぷす!、ぷす!」

「食べる?」

「ぷす!」

「おしゃぶりしたままで食べ辛くないの?」

「ぷすー!、ぷすぷす!」

「そう、ならいいけど・・・」

 

それを食べるのは、綿のような毛に包まれ頭頂部の黄色い毛だけがツンツンした謎の生物。

 

 

グゥッ・・・

 

 

「おなかすいた・・・・・・・・・こうなったら、やっぱり」

「ヒー!、ヒー!」

「どうしたの?、!?」

 

 

「プスリーーー!」

 

 

「足が、生えてる・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 





※レヴュー衣装
地下オーディション同様に上掛けが落ちると敗北判定となり舞台少女は一定時間行動不能となる上にただの少女となり戦闘能力を失います。
衣装の装飾や武器の破損は時間経過によって再生
そして何より今回クロディーヌがやったようにソウルを大量に消費すれば全部纏めて再生産は可能です。


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下を向くのは今日限り・・・! ドルモン決意の契約

ウラル大陸視点


☆西方ウラル大陸・ゴミ捨て場入り口

 

 

ブロロロロローーー!!! キキィッッッ!

 

 

「ほらほら!、こっから先は歩きだよ!

良い子のみんなは起きた起きた☆」

『~~~~~~ッッッ!!!』

 

全速力から急停車するズタボロのジープ。

その車内は運転手以外死屍累々だった・・・。

 

「うううっ、まだグラグラする~」

「華恋ちゃん、しっかりぃ」

「・・・・・・・・・ストラビモン途中でわざと揺らしてたでしょ?」

「ソンナコトナイヨ?

だからその棒を降ろそうかマヒルチャン!」

「油と鉄クセェなァ・・・ウプッ!」

「ほ、本当にここが目的地で、ゴザるか?

オエェ!」

「坊や達エチケットタイムは物陰でやろうね☆

さて、どうしたモンか・・・前使った通路が生きてるといいんだけど」

「!、あれは!!」

「華恋ちゃん!?」

「急に離れたら危ないわ!」

「だって!、ほらこれ!、スタァライト!!」

「「!」」

「すたぁらいと、で御座るか?」

「なんだァ?、それ」

「お帰りスッキリーズ☆

って、それより・・・お、あったあった!」

 

華恋が見つけたのは聖翔音楽学園の者ならば誰でもわかるマーク。

それが刻まれた鉄板を持ち上げれば、通路が見えてくる。

 

「あ!、2人共見て!」

「この矢!、ばなな!」

「・・・・・・・・・やっぱり、この世界に来てたんだね

純那ちゃん」

「アァ?」

「親切に道標まで、随分几帳面な子だこって

まぁ、オジサン的には大助かりだけど☆」

「しかし、ここに来た目的は『明けの遠吠え』の長と会うのではなかったガッ?!」

「おっとっと☆、手滑っちったぁ!

・・・・・・・・・空気読もうか、そんなんじゃ帝国とやり合う前に斬り捨てられるよ?、物理的に」

「ぬ、ぬぅ」

 

所々に矢が刺さった通路を進む3人と3体。

 

その先に待ってたのは

 

 

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

 

 

帝国の雑兵トループモンが3体。

 

「!、レイド帝国!、御覚悟!!」

「「「!?」」」

「《リヒト・ナーゲル》」

「ぬあっ!?

御主!、さっきから何で御座るか!?」

「ハイハイ☆、ドゥドゥ☆

・・・・・・・・・明るくなったろ?、これでニンゲンの目でも見えんじゃね?」

「!、なな!!」

「華恋!、まひるも!」

「はぁーーー、なんやそれならこんなもん着たままにせんでも良かったやん・・・」

「純那ちゃん!、双葉ちゃんと香子ちゃんも!」

「じゅんじゅんだけじゃなくて2人も一緒だったの!?」

 

その正体は廃棄されたゴム兵のガワを着ていた純那、双葉、香子。

 

「香子ちゃんも無事でよかったぁ・・・!

帝国にお尋ね者にされたって聞いたから心配してたんだよ?」

「全然無事やない!、逃げても逃げても!

賞金稼ぎのデジモン達がワラワラワラワラと!

ほんまええ加減にして欲しいわ!」

「実際、委員長がコレ持ってきてくれなかったら危なかったしなー・・・」

「備えあれば憂いなし、よ

ここには色々な物が捨てられているから私達の匂いを誤魔化せたのもあるし」

「さっすが純那ちゃん♪」

「ケッ・・・」

「話の途中にすまない!

オレ達そろそろ出てもいいだろうか!?」

「せまいデスぅう!、くらいデスぅう!」

「ちょおっ!?、あんたはんどこ触ってん!?」

「ああ、悪かったなお前ら」

「わっ!、デジモンだ!

2人もけんやくしたの?」

「カレンチャン、契約ね☆

確かにこのご時世それやんないと生きていけないけどさ!」

 

ストラビモンが照らす光を頼りに舞台少女とそのパートナーとなったデジモン達は通路を進んでいく。

 

「純那ちゃん、それ持とうか?」

「これぐらい大した事ないわ

それにしてもあなたも華恋も随分暴れたみたいね

最初から露崎さんや花柳さんと同じぐらいの懸賞金がかけられるなんて」

「あはははっ、成り行きで、ね」

「あたしだってそうだよ、香子守ってたら

いつの間にかあたしもお尋ね者になって」

「そのせいで賞金稼ぎが余計に躍起になるし!

大体!、なんでうちらがこないな目に合わなあかんの!?」

「それにひかりちゃんや天堂さん、クロちゃんの事も心配・・・」

「みんな!、弱音はノンノン、だよ!

天堂さんもクロちゃんも!、勿論ひかりちゃんだって絶対無事に決まってる!

きっと、私達と同じようにパートナーになったデジモンと一緒に帝国と戦ってるんだよ!

それがこの世界での私達の役なんだから!」

「ワォッ☆、頼もしいね! 

そうは思わないか?、炎の」

「光の!、まさか君が再び動くとは!」

「オジサンも成り行き成り行き☆

ま、こうなった以上は腹くくるさ・・・

腹一回吹っ飛んだけど!、アッハッハァ☆」

 

 

「流石に増えすぎじゃないかな、うん」

 

 

「これはその、ごめんなさい」

 

ドルモンの住処に着いた途端頭を下げる純那。

 

「手配書見てたからニンゲンが6人増えるのは予想してたけど、そこに更にデジモンまで加わるなんて

食料や水の蓄えにだって限りがあるんだから正直勘弁して欲しいんだけど、うん」

「私もこんな一気に集まるなんて思ってもいなかったわ

でも、大丈夫

こうなった以上は短期決戦であの要塞を攻略してみせるから!」

「じゅ、純那、ちゃん・・・!?

要塞って、どういうこと?」

「さっき華恋が言っていたけど、今の私達の役はこのデジタルワールドの救世主

その為に何を成し、どうすればいいのか私なりに色々考えて準備してみたの

このトループモンの脱け殻もその一つね」

 

純那は机の上にゴム製のスーツを並べ、その上に例の布を広げる。

 

「こ、これは!

マッハレオモンの要塞の内部構造か!?」

「フレイモン、誰だよそのマッハレオモンって」

「こ、この大陸で!

一番偉くて強いデジモンデスぅううう!」

「そ、そない相手と戦うつもりなん・・・?」

「花柳さんはこのまま逃亡生活を続けるつもり?

ここだっていつバレるかわからないのよ?」

「確かに、そう、だよね」

「なになに?、マヒルチャンびびってる?」

「怖がるのは当然だよ

でも、純那ちゃんが作戦を考えてくれてるならきっと大丈夫

ううん、絶対成功させてみせるわ

みんなを守る為にも」

「ケッ、またそれかァ?」

「ぬうううっ!、こんなにも早く決戦の時が訪れるとは!、腕が鳴るで御座る!」

「うんうん!、何だかクライマックスって感じだよね!」

 

 

「・・・・・・・・・」

 

 

盛り上がる舞台少女とそのパートナー。

するとドルモンは静かにその輪から離れ、住処を出て行った。

 

「作戦の概要は以上よ

後、注意すべきは・・・上掛けを落とされない事かしら?

この世界でもあのルールは適応されているのか自分で脱ぐ分には平気でも誰かに奪われると舞台少女はしばらく動けなくなるみたい

他に何か質問はある?」

「はい!、じゅんじゅんは神機持ってないの?」

「・・・・・・・・・シンキ?、何よそれ?」

「この腕時計みたいな機械だよ

デジモンと契約してパートナーにする事で進化が出来るようになるんだって

私は一応この子が・・・・・・・・・あれ?、ストラビモン?」

「オヤジなら外出たなァ」

「いつの間にやら星見はんと一緒にいた紫毛玉もどっか行ってはりますなぁ」

「あいつ委員長のパートナーじゃなかったんだな」

「まぁ、ある意味ではパートナーと言えなくはないけど・・・みんなとは多分、違うんだと思う

それより、進化ってまさかデジモンの成長の事?

あれってそう簡単には出来ないって聞いてるんだけど?」

「(純那ちゃん・・・)」

 

あからさまに話題を変えようとする純那をななが心配そうに見つめていた頃

 

 

「やっ☆、おひさ! 孤高の隠士殿」

「・・・・・・・・・」

 

 

ゴミ溜めの中、ストラビモンとドルモンが対峙。

 

「最速殿の事完全スルーするなんて友達甲斐がないね☆、それとも白騎士殿以外はどうでもよかったりする?」

「要件は?」

「んもぅ!、もうちょい余裕持とうよ☆

ま、それがあったらとっくの昔にジュンナチャンと契約してたんだろうけど」

「あいつの事は今は関係ないだろ、うん」

「本当にそう思ってるのか?

惹かれたんだろ?、だから 」

「あっちが勝手に居座って好き勝手やってるだけでボクは関係ないよ、うん」

「やれやれ、相変わらず強情だこって

ま、オジサンもわからないでもないからここは見逃してあげよう!、ありがたく思いたまえよ?

とりま、ワー君につなぎ入れてくんない?

このウラル大陸の明けは近い、ってさ☆」

「うん、それぐらいならやるけど・・・

随分とニンゲン達の事買ってるんだね」

「チャウチャウ!、ニンゲンじゃなくて

マヒルチャンとその仲間、舞台少女を、だよ☆

そこんとこヨロシク☆」

「舞台、少女・・・」

 

 

 

 

 

 

☆西方ウラル大陸・要塞

 

「まだ見つからんのか!?」

「モ、申シ訳アリマセン!」

 

レイド帝国の侵略拠点である要塞。

指令室では2本の短刀を腰に差した獅子の獣人・マッハレオモンがトループモンに八つ当たりしていた。

 

「一刻も早くニンゲンを捕らえよと本国からの要請が入ってどれだけ経ったと思っている!?

これでは我の立場が危ういではないか!」

「タ、大陸全土二兵ヲ派遣シテイマスガ・・・

各地ノ反乱ノ鎮圧ニモ手コズッテイギ!?」

「負け犬共が!、調子に乗りおって!」

「伝令!、伝令!

ニンゲン、廃棄場二出現!」

「何ぃ!?」

「映像、出マス」

「・・・・・・・・・!、ククク!!

漸く我にもツキが回ってきたか!

航空戦力を総動員してニンゲンを捕らえろ!

全ては我々レイド帝国の為に!」

『レイド帝国ノ為ニ!』

 

マッハレオモンの号令により要塞の各所からプテラノモンが出撃。

 

「来たで御座るよ!」

「リュー君!、お願い!」

「任されよ!」

 

迫る戦闘機の群れを前に華恋を乗せたギンリュウモンはゴミ捨て場へと舞い戻る。

 

「目標、降下」

「地上戦力、応援求ム」

〔「了解」〕

 

更に要塞からトループモンや牡牛やサイなどのデジモン達が続々と溢れ出てきた。

 

「わわわっ!?、すっごい大群!」

「否が応にも華恋殿を捕らえたいのであろう

がそうはいかんぞレイド帝国!」

『・・・・・・・・・』

 

帝国の兵をひきつけたギンリュウモンは指定のポイントを通過。

 

 

「そこ!!」

 

 

すると、鉄屑に紛れていた純那が矢を放ち

 

ゴミの中の不発弾を貫ぬき、爆破。

 

すると、予め配置していた他の爆発物が誘爆し

更にはゴミから垂れ流しになっていた油に引火

 

 

辺りは火の海と化す。

 

 

『!?!?』

『ぎゃぁあぁあ"ぁ!!?』

「!?、メーデー!、メーデー!」

「徹甲刃!」「やぁあああっ!」

 

地上戦力が一網打尽にされた事にプテラノモン達が混乱していると、ギンリュウモンと華恋の刃に次々と斬り裂かれた。

 

「捕獲部隊消耗率、60%・・・

イエ、80%ヲ越エマシタ」

「雑魚共が!、もういい!、我が出る!」

 

手下の不甲斐なさに痺れを切らしたマッハレオモンが荒々しい足取りで出撃。

 

「《クリティカルストライク!》」

「《リヒト・ズィーガー☆》」

「「えいっ!」」

 

直後、獅子の牙が光の刃が日本刀がメイスが襲いかかる。

 

「!、!、ニンゲン!?

いつの間にここまで潜り込んでいた!?」

「ワオッ☆、流石ボスキャラ!

今の全部捌いたよ!、ヤベーイ!」

「あんなんでもレオモン族だからなァ、んな簡単にいくかァ」

「確かに、剣の扱いは凄いけど・・・

頭の方は大したことないね」

 

ななが笑顔で言い放つのと同時に

 

 

爆発、炎上する要塞。

 

 

「うっふっふっふっ♪、よくもまぁ今までさーんざん追っかけ回してくれましたなぁ?」

「ブイの事!、こき使ってくれたお返しデスぅううう!

《ブイブレスアロー!、アロー!、アロー!

アロォオオ!!!》」

「おーい、お前らーあんまやり過ぎんなよー」

「《ファイアダーツ!》

と、言いつつも!

フタバも2人に負けない暴れっぷりだな!」

「ま、ムカついてんのは

あたしも同じだから、な!」

 

 

原因は隠し通路とトループモンのガワを使い

内部への侵入を果たしていた幼馴染みコンビとそのパートナー2体。

 

「我の、我々の要塞を!、よくも!」

「ここまでは純那ちゃんの作戦通り!」

「気ぃ抜くなァ!

ここでこいつを狩らなきゃ全部パァだァ!」

「後、問題なのはあっちかな?」

「華恋ちゃんなら大丈夫!」

「いや、オジサンあの子の心配はしないよ?

なんたって、マヒルチャンのラブい

って!、ジョーダンジョーダン☆

だから真横で素振りすんのやめて、マジで」

 

 

 

 

 

☆西方ウラル大陸・ゴミ捨て場

 

「・・・・・・・・・どうやら、あの方と

ワシら獣の始祖様の魂持つ方とニンゲン達が動き出したようじゃのう」

「長!、では!」

「うむ

皆の衆、遠吠えを上げろ!

 

 

ワシらの明けを取り戻すのじゃ!!!」

 

 

『『『『アォォォオオオン!!!』』』』

 

 

『明けの遠吠え』の長である年老いたワーガルルモン・・・ワー爺の号令により獣型デジモンの集団が一斉に動き出す。

 

「はーーー・・・まさかワシが生きてる内に事がこうも大きく動くとは思ワンだー」

「・・・・・・・・・」

「元々はお前さんが立ち上がった時に動き易くする為の組織だったんじゃがのぅ、世の中ままならんわい」

「ままなってたらこうなってないよ、うん」

「フォッフォッフォッ!、確かにのぅ!

で、お前さんは

 

 

いや、あなた様はこれからどうしますか?

世界樹を守護せし聖騎士にしてその抑止力

孤高の隠士、アルファモン様」

 

 

「・・・・・・・・・ッ」

「あの戦いの折、手傷を負ったオメガモン様よりあなた様のデジタマを託されたワシはこの大陸まで逃げ延びてきました

故郷を、多くの仲間を見捨てて」

「ボクは!、あいつにそんな事頼んでない!

なのに、あいつは勝手に!、くそっ!!

あのニンゲン達だってそうだ!、今更現れて好き勝手に状況を引っ掻き回して!

 

 

だからボクも好きにやらせて貰うよ、うん!

 

 

その為にもワー爺、アレを返して欲しい」

「!?、では、やはり!」

「勘違いしないでよ

ボクは元聖騎士として帝国と戦うんじゃない

あのニンゲンの

ううん、舞台少女ジュンナの共犯として戦う!

それだけだよ、うん」

「・・・・・・・・・フォッフォッフォッ!

そういう事なら、ほれ!」

 

ワー爺が投げたのは神機の元となる虹色の鉱石。

 

 

今まで

 

色々ありがとう、ワー爺」

 

それを受け取ったドルモンは一目散に駆け出し

 

燃え盛るゴミを、散乱するデジタマを跨いで急ぐ

 

パートナー【共犯者】の元へ。

 

「ニンゲンの皆さん!、ギンリュウモンさん!

後は私達にお任せを!」

「どうか、マッハレオモンを!

帝国を討ち倒して下さい!」

「!、あなた達が例の『明けの遠吠え』?」

「じゅんじゅん乗って!」

「え、ええ・・・」

 

ギンリュウモンに乗った華恋が伸ばす手を前に躊躇う純那。

 

「(私は私なりに出来る事を全部やりきった

だから、絶対に大丈夫ッ!

自信を持つのよ星見純那・・・!)」

「純那殿!、急ぐで御座るよ!」

「!、待ってリュー君!」

 

 

「はぁっ、はぁっ・・・!、う、ううん・・・!」

 

 

「やっぱり、来てくれるって信じてたわ

ドルモン」

 

そんな彼女に紫の獣が息を荒げながら駆け寄る。

 

「か、勘違い、するなよ!、うん!

言ったろ?、ボクが君を見捨てるのはダメだってわかったらだって!

今はその時じゃない!、それだけだ!」

「!?」

 

ドルモンが吠えたてながら純那に虹色の鉱石を投げつければ

ソレは光となって弾け

水色を基調に、装飾が翡翠のようにキラめく神機となって彼女の手首に収まった。

 

「ボクと君はもう契約済みだ!

今更文句なんて言わせないよ!、うん!」

「本当に、素直じゃないんだからッ

でも、いいわ

改めてよろしくね、ドルモン!」

 

炎の中で交わされた契約。

そこに秘められた両者の想いに反応してか純那の神機から水色の粒子が迸り、0と1で構成された幕となってドルモンを包み込む。

 

 

「掴み損ねた、取り戻せなかった

 

だからもう、過ぎた時間は戻らない」

 

 

水色の幕の下、一回りも二回りも大きくなり

暗い色合いに変わる体。

 

 

「後悔に限りはなくても後悔するのは

 

下を向くのは・・・!、今日限り・・・!」

 

 

背を突き破り広がる翼も四肢から伸びる赤い爪も

それに負けない迫力がある。

 

 

「ドルモン進化、ドルガモン

 

運命なんてまだ定まっちゃいないよ、うん」

 

 

幕を吹き飛ばし忌々しげに吐き捨てるのは

獰猛な獣竜・ドルガモン。

 

「これが、進化?」

「・・・・・・・・・うん

わかってたよ、こうなるってことぐらい」

「え?」

「ううん、なんでもない

それより急ぐんでしょ?、ほら」

「ちょっ!?、何この運び方!?」

「じゅんじゅんが子猫みたいになってる!?

すっごくかわいい!、カメラカメラ!」

「こんな時にふざけないで!、バッ華恋!」

「問答はそこまでで御座る!

いざ!、戦場へ行かん!」

「え?、え?、ええっ!?

ほんとにこのままで行くの!?、ねぇ!?」

 

燃え盛るゴミ捨て場から飛び立つ2体。

舞台少女はその背に乗り・・・あるいは咥えられながら要塞を目指した。

 

「《ソニックスラスト!!!》」

「《ツヴァイ・ズィーガー・・・!》」

「くっ!、あっ!、ッッッ!!」

 

彼女らの目的地にて繰り広げられる

短刀2本VS光の2刃+大太刀、小太刀による激しい剣撃。

 

「下がってなァニンゲン!」

「ばななちゃん!、選手交代!」

 

押され気味だったななの横からライアモンとまひるが飛び出し、マッハレオモンの膝を深々と抉る。

 

しかし

 

「フン!」

「ガァッ!?」「あうぅ!?」

 

そのダメージは瞬時に回復し、反撃とばかりに蹴り飛ばされてしまった。

 

「まひるちゃん!、大丈夫!?」

「へ、平気・・・!

地面にぶつかる前にこの子がクッションになってくれたから」

「え?」

「ケッ、たまたまだァ」

「ハイハイ!、ツンデレ!

とりま!、早く!、誰か!、ヘルプ!、オジサン!、独り!、じゃ!、マジ!、無理!

・・・・・・・・・なんつって☆、目からビーム!」

「づあっう?!!、小賢しい真似を!」

 

単独でマッハレオモンの猛攻を抑えていたヴォルフモンによる不意討ち。

それにより穿たれた顔面も瞬く間に回復されてしまう。

 

「成熟期とは思えない戦闘能力と異常な再生力

帝国産チートコード増し増しでステータスカンストどころか上限突破してんじゃん、ヤダー!」

「これこそ我々帝国の力!

生まれながらにして従来のデジモンを凌駕し

平穏にして静寂なる新たな世界を作り上げる!

全てはレイド帝国の為に!」

「声は大きいけど、なんだか台詞をただ読み上げてるだけみたい・・・」

「このデジモンだけじゃないよ、私と華恋ちゃんが戦ったヌイグルミもそうだったわ」

「ケッ!、帝国の奴らはみんなそうだァ!」

「種族的なパーソナリティはあるけどこいつらに感情なんてないからね

・・・・・・・・・んで、レイド帝国の最終目的が全てのデジモンをこんな風にする事だってんだからオジサンマジサブイボ止まんない」

「我々の崇高な目的を否定するか!?

ならば削除した後、貴様のデジタマに帝国への忠誠を刻み込むまでよ!」

「お断りだァ!《サンダーオブキング!》」

「右に同じ☆《リヒト・クーゲル!》」

「効かぬ!、効かぬぞ!」

 

 

「ならばこれはどうだ!?《徹甲刃!》」

 

 

電撃と光線に紛れて、上空から放たれたのは槍。

 

「!?、チィッ!」

「なぬ!?」

「リュー君が空けた穴があっという間に塞がっちゃったーーー!?」

「これはあなたの情報にもなかったわね」

「遠くから見てただけなんだから知る訳がないよ

でも、それで諦める君じゃないだろ?」

「当然でしょ

・・・・・・・・・とにかく、まずは

 

 

この体勢をなんとかして!!!」

 

 

「じゅ、じゅんなちゃんッ!!?

え、えっと!、あの!

その子とパートナーになれたんだね・・・!」

「なな!、変に気を使うのやめて!」

 

ゴミ捨て場から合流した2人と2体もマッハレオモンの回復能力には驚愕するばかり。

 

「雑魚共が!、群がった所で我の前では意味がないと知れッ」

「それは」

「どうかな?《キャノンボール・・・!》」

「突いて駄目ならば押し潰そうという腹か?

浅はかな!」

 

純那を背中に移動させるや否や急降下しながら鉄球を吐き出すドルガモン。

その攻撃は軽々と躱されてしまい

荒野を穿ち、土煙を起こすに終わり

 

 

次いで放たれた矢の雨を覆い隠すのに使われる。

 

 

「ククク!、痒い痒い!

こんな非力な攻撃など避けるまでもない!」

「・・・・・・・・・」

 

マッハレオモンは体のあちこちに矢が突き刺さったまま嘲笑うが、純那は意に介さない。

再び宙へと舞い上がったドルガモンの背の上で淡々と矢を射続ける。

 

「鬱陶しい!、無駄だと言っている!」

「させない!、よ!」

「《棒刃破ぁ!》」

 

空に向かって飛ばされた剣圧を阻むのは華恋のPossibility of Pubertyとギンリュウモンの鎧。

 

 

「・・・・・・・・・ふふふっ!、わかっちゃいました♪」

 

 

純那の地道でひたむきな努力を見たななは

 

満面の笑みを浮かべると

 

二刀を翼のように構えながら突っ込んだ。

 

「!?《ソニックスラスト!!》」

「・・・・・・・・・さっきと動きが同じ」

「互角!、だとぉ!?

受けるだけで手一杯だったニンゲンが!?」

「反復練習は得意ですから♪

それよりいいの?、私ばっかり見てて」

 

 

「オヤジ!、抜かるなァ!」

「ハイハイっと☆」

 

 

高速の剣舞に合わせ振るわれる輪と舞。

その間隙を縫って獅子の爪と光の剣が掠る。

 

「フン、この程度

ッ!、ば、か、な・・・!?

回復しない!、だと!?、何故だ!?」

「あなたの中にあるからだよ」

 

 

ガッッッ!  ギィィィイイインッ!!!

 

 

「純那ちゃんの、キラめきが!」

 

狼狽するマッハレオモンの胴元にLove Judgementがクリーンヒット。

すると、全身に撃ち込まれた矢から水色のキラめきが溢れ出しヒビのように広がった。

 

「ぁ"っ!、がぁあぁあ"!!」

「好機!、御覚ごむぅ!?」

「リュー君すとっぷすとっぷ!

フィナーレを飾るのはあなたじゃないよ!」

「もかがももがうがもうもがうが!?」

 

 

「そうね、ここはあなたが決めなくちゃ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

純那が見守る先にあるのはドルガモンの口。

そこに限界寸前まで収束されるエネルギーだ。

 

 

「(うん、これが今のボクが出せる全力だ)

 

 

《パワーメタルッッッ!!!》」

 

 

放たれた巨大な鉄球はまるで隕石のような勢いで

 

 

地上の水色の輝きに吸い込まれていく。

 

 

そして・・・

 

 

 

 

 

 

 

☆??????

 

 

侵略域ウラル大陸エリア管理用特殊個体

 

種族名称マッハレオモン

 

損傷率100%超過を確認

 

削除完了まで残り0.5秒

 

異常事態と判断

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

侵略域ウラル大陸の放棄を可決

 

レイドプラグラム・緊急コード送信

 

全ては我々レイド帝国の為に

 

 

 

 

 

 

☆東方士武大陸・朔ノ山コンゴウ一家アジト

 

「ん、んんっ・・・?」

「あ!、クロ公起きグエッ!?」

「迂闊な奴デシテ」

「ふふふっ♪、羨ましいのならあなたも抱いてあげましょうか?」

「!、天堂真矢!!」

「いででで!、で、でも!

ギブアップなんて!、ぜったい!、しない!

ジャン!」

「え?、あなたなんで私の布団で寝てるの?

というより、ここはどこ?」

 

真矢の声に反応して跳ね起きるクロディーヌ。

 

「その説明をする前に西條さんはどこまで覚えていますか?」

「え、ええっと・・・

橋からこの子を落とした所まではハッキリしてるけど、そこから先は所々曖昧ね」

「だと思ったのデシテ」

「ただ、これだけは覚えているわ

私はあなたに助けられてなんかないって!」

「・・・・・・・・・ダトオモッタノデシテー」

「ルナモンも西條さんの事がわかってきたようで何よりです」

「よ、よっし脱出成功!

どうだクロ公!、お前の絞め技なんてウチには通じないジャン!」

「ねぇ、天堂真矢

あなたにはわかるの?、この妙な世界やそこの喋る動物達の事」

「大まかな説明はこちらのルナモンや外のコンゴウ親分さん達から 」

「てぇへんだぁ!、姉御!

姉御とそっちのクロさんが帝国のお尋ねモンにされとるんじゃあ!」

「とりあえず手配書は出来るだけ回収しときやした!」

「流石姉御!、写真でもベッピンだべ!」

「でも懸賞金はクロさんの方が上 」

 

 

「ちょっと貸して!

 

 

ふーーーん、へぇーーー、そうーーー・・・

 

 

うふっ!、ふふふっ!

なんの帝国かは知らないけど、見る目があるじゃない♪」

 

 

「何故高額の懸賞金がかけられた事をそんなに喜べるのデシテ!?」

「・・・・・・・・・」

「待てテンドー!、貴様は貴様で剣を持って何処へ行く気デシテ!?」

「なんでこいつらだけなんだよ!?、こうなったらウチ鬼ヶ城に行ってくるジャン!」

「座ってろ!、そして黙れアホ熊!」

「ベアモン、鬼ヶ城とは何処に 」

「興味を持つなデシテーーーーーー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

☆東方士武大陸・湖畔

 

「(私には夢がある、約束がある

だから、こんな所で倒れるわけにはいかない

その為にも)」

 

 

グゥゥゥウウウ・・・!

 

 

「食べなくちゃ」

「プスリー?」

 

腹の虫を鳴らしながらBlossomBrightを構えるひかりに謎の生物は無垢な眼差しを向ける。

 

「とにかく、火さえ通せば・・・きっと、必ず!」

「プス!、プスリー!」

 

短剣を振り上げるとそこから伸びるワイヤーが揺れた。

 

「・・・・・・・・・」

 

 

ヒョイ

 

 

「プスリー!」

 

 

ヒョイヒョイ

 

 

「プスリー!、プスリー!」

 

 

ヒュヒュヒュン!

 

 

「プスプスリーーー!」

 

 

「楽しい・・・!」

 

 

グゥゥゥウウウ!

 

 

「ハッ!、しまった、つい」

「ヒー、おなかすいたー?」

「うん、すごく」

「じゃー!、エーとってくるー!

まっててーヒー!」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハリネズミ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




※翡翠弓の矢
一定時間が経つと元々使用出来る本数が再び使用可能となります。
しかも、使った矢は完全に破壊されない限りはいつまでも残り続けます。



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W獣魂解放! 倒せマッドレオモン

☆西方ウラル大陸・要塞内部

 

 

「「はぁあああ~~~♪スッキリしたわぁ/デスぅ」」

「おー、お疲れー」

「これだけ破壊すれば最早要塞として機能しないだろう!、後は外の皆が

 

 

!!?」

 

 

ズズズズズズズズズズズズ・・・・・・・・・!!!

 

 

「ふえ"え"え"え"え"!!!」

「こ、こここんどはなななんななんっ?!」

「じ、地震か!!?」

「いや違う!、この大陸を構成するデータそのものが軋んでいるんだ!

 

帝国の不正コードによって!!!」

 

アグニモンが見据える先にある紫の空は稲光と共に崩れ始め、その残骸が鳴動する大地へと落ちていく。

 

「本来デジタルワールドに存在しないデータ!

レイド帝国はそれを用いて配下のデジモンを異常な程に強化しているがこれはあまりにも逸脱している!

このままでは・・・!」

「つまり、どういうことなん?」

「えっと、ゲームのキャラにやっちゃいけない事してすっげぇパワーアップさせたけど

それやったらゲームそのものが壊れたって、カンジか?」

「ほー、そのゲームがこの世界の事なら

そこにおるうちらは、どうなるん・・・?」

「・・・・・・・・・」

「あ、ちょっ!、双葉はん!?」

「目を反らしちゃダメデスぅうううううう!現実と向き合うんデスぅうううううう!!」

「いや!、まだ間に合う!

間に合わせるんだ!、オレ達が!」

 

 

 

 

☆西方ウラル大陸・要塞入り口付近

 

 

「あ"   ン"ぎ!   ぉぉぉっっっ」

 

 

「い、一体何が起きてるの!?

ドルガモンが倒したと思ったのに

なんで!?、あんな・・・!!」

 

崩壊の始まる紫空を飛ぶドルガモンの背で動揺する純那。

それもその筈、消滅寸前だったマッハレオモンの体が異音と共に盛り上がり始めたのだから・・・。

 

「Ir ま、づ! cooooodッ、nnn!!

まッハ、れOmon   シん化

ンマつD?、まっと!、MadLeomon !!」

 

蠢く0と1の粒子が弾け飛んだかと思うと

 

紫の体に黒いタテガミをした獅子獣人をベースに

 

両腕がチェーンソー、両肩と両足が蛇の頭の

 

異形の狂戦士・マッドレオモンがそこに居た。

 

「!、離れろニンゲン!!」

「マヒルチャン!」

「「きゃっ!?」」

「りゅ、リュー君!」

「ドルガモン!、ななを!」

「任されよ!」「うん!」

 

パートナーに放り投げられたななとまひるを

空を行く2体が各々キャッチ。

 

「Bじゃあアあアあrrrrrr!!!」

「汚っ!」「オラァ!」

 

直後、四つの蛇頭から毒液が噴射される。

地上に残ったヴォルフモンとライアモンはどうにか躱せたが、地面に落ちた毒液は見るからに危険な気体を放ちながら広がっていった。

 

「ぼ、ヴォルフモン大丈夫!?」

「ダイジョブダイジョブ☆

でも、マヒルチャン庇いながらアレ避けんのムリゲーだからそこに居てね!、マジで!」

「・・・・・・・・・ライアモン」

「ケッ」

「ななのパートナーも素直じゃないわね」

「うん?、どうしてボクを見るのかな?」

「問答はそこまでで御座る!

一刻も早くあの怪物を討たねば!《徹甲刃!》」

「んなこたァわかってらァ!《サンダーオブキング!》」

「《リヒト・クーゲル☆》」

「《パワーメタル・・・!》」

「私も!」

 

遠距離からの一斉攻撃をマッドレオモンに集中させるが

 

大半は毒液に溶かされ

 

当たった攻撃もすぐに回復され

 

実質的なダメージにはならない。

 

「回復能力も元通りってワケ・・・!?」

「そのせいかな

純那ちゃんの矢はすごく警戒してるみたい」

「うううっ!、こうなったら!」

「ダメだよ華恋ちゃん!、絶対ダメだからね!

あんなところに飛び込んじゃ!」

「マヒルチャンの言う通り、その役は君じゃない

お前だろ?、炎の!」

 

 

「《バーニング!、サラマンダー!》」

 

 

「!?、Bじゃあアあアあrrrrrr!!!」

 

突然出現した炎の竜にすぐさま毒液を放つマッドレオモン。

しかし、ソレは円を描くような動きで回避された挙げ句、高熱に炙られ蒸発していく。

毒を含んだ気体すらもだ。

 

「《サラマンダー」「《ブイブレス」

「「・・・・・・・・・!」」

 

火と熱が浄化した道を突っ走る2体と2人。

 

「ブレイク!》」

「おら!」「はっ!」

「アロー!》」

「Gyるるるルルル!」

 

炎を纏った旋風脚を、息の合ったコンビネーションを、超高熱線を

両腕のチェーンソーが受け止める。

 

「ジュンナチャン☆、たのんま!」

「ええ!」

「2人共しっかり捕まるで御座る!」

「「うん!」」

「ライアモン!!」

「ケッ!、オレサマの足引っ張んなァ!」

「今度こそ終わらせるよ!、うん!」

 

動きを止めたマッドレオモンの背に降り注ぐ矢の雨。

同時にヴォルフモンが

華恋とまひるを乗せたギンリュウモンが

ななを受け止め、騎乗させたライアモンが接近。

 

「《ツヴァイ・ズィーガー!》」

「《棒刃破ぁ!》」

「まひるちゃん!、一緒に!」

「華恋ちゃん!!!」

「《クリティカルストライク!》」

「はぁあああっ!」

「《パワーメタルッッッ!!!》」

 

純那のキラめきを埋め込まれた背中に渾身の攻撃の数々が命中した。

 

 

「《Jyuuu   O!   だケnnn!》」

 

 

『ーーーーーー!!?』

 

マッドレオモンの全身から獅子のオーラが吹き荒れたのは、その直後。

 

「み、みんなぁ!

カオルコぉ返事するデスぅうううううう!」

「なな!?、華恋!!!」

「ぅ、りゅー、くん?」

「れ、レオルモン?

あなた、私を、庇って・・・?」

「くそ!、くそぉ!

ボクは結局こうなるのかよッ!?」

 

無事なのは距離を置いていたブイドラモンと純那、ドルガモンのみ。

他は全員荒野に倒れ伏しリュウダモンとレオルモンに至っては完全に気絶している。

 

「か、かおるこ・・・・・・・・・よんでんぞ?」

「あ、ほ!、い、ま、こえ、で」

「2人共、無理はするな!」

「つっても、あっちがそれを許さないって」

「Gyるるるルルル!」

 

唯一立ち上がれたアグニモンとヴォルフモンは右左に分かれ迫るチェーンソーを押さえた。

 

「Bじゃあアあアあrrrrrr・・・!」

「!、ジュンナァアアア!!!

口を開かせるな!、射て!、射ちまくれ!」

「わかってる!、毒なんて吐かせない!」

 

ドルガモンと純那の奮闘により辛うじて蛇頭の動きを抑制するも、それも時間の問題。

 

「ふぇ?、ふえええ?

も、もしかして!、今、動けるの

ブイだけデスぅうううううう!?

む、無理デスぅうううううう!

みんなやられちゃったのに、ブイだけじゃ

絶対、絶対無理デスぅうううううう!!!」

 

 

ズズズズズズズズズズズズ・・・・・・・・・!!!

 

 

「ぁ」

 

 

より一層揺れる大地にブイドラモンの脳裏に先程の会話が甦る。

 

「(そうだ壊れちゃうんデス、このウラル大陸が

空は汚いし、ゴハンはマズいし、こき使われて

カオルコに出会って

ほっぺひっぱられて、悪口ばっか言われて

それから、それから?)

 

 

それ、から・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

どうしよう、ロクな思い出がない。

 

 

そう思い至った瞬間

ブイドラモンの中でナニカがプツンと・・・。

 

「GyaあァあアぁあAAA・・・!?」

「ぶ、ブイドラモン!?」

「ぇ?」

 

香子がうっすらと瞼を開けば、あの泣き虫で弱虫がマッドレオモンを殴り飛ばしていた。

 

「      」

「ワオッ☆、この子白目剥いてる!、怖ッ!

・・・・・・・・・古代種のオーバーライト

このタイミングで発動とか流石最速の聖騎士殿わかってらっしゃる」

「関心してる場合か!?、光の!」

「イヤイヤ

だって今近寄ったら巻き込まれるって絶対」

「       」

「ンgyっ!、ぎギggg!」

「       ふえ?」

「「あ」」

 

反撃を一切許さない猛攻。

しかし、それはブイドラモン・・・

いや、ブイモンが正気に戻った途端に止まる。

 

「《パワァアッ、メタルゥウウウ!》」

 

直後、上空から巨大鉄球が落下。

マッドレオモンを一時的に封じ込める事に成功した。

 

「これで対策を考える時間が稼げるわ!」

「うん、ただ

今ので、ボクも、もう・・・っ」

「え?、ええええええ!?」

「純那、ちゃっ!」

 

最後のチカラを振り絞った結果、ドルモンに退化し純那と共に墜落。

 

「ハイハイ☆、キャッチ!」

「うっ、ん・・・」

「あ、ありがとうヴォルフモン」

「それはこっちの台詞ね☆

お陰でオジサンも覚悟決められたから、さ」

「!、光の!?、まさか君」

「若い子達がこんだけ頑張ったんだ

ここで踏ん張んのが年長者の、始祖の務めって奴だろ?

ま、入れモンだけどね☆、アッハッハァ!」

「それはそうだが!、今のオレ達はパートナーに依存しているんだぞ!?

その状態で『アレ』を使えば!、マヒルはどうなる!?」

 

 

「・・・・・・・・・」

 

 

「逆に聞くけど、このままならフタバチャンとカオルコチャンはどうなんの?

 

ドロドロに溶かされんの?

 

ズタズタに引き裂かれんの?

 

グチャグチャに食われんの?

 

それともワンチャン帝国にお持ち帰りされるのを祈る?、その後でもっと酷い目に合うのかもしれないのに?」

 

 

「・・・・・・・・・ッ」

 

 

「それはッ、それは!」

「「ねぇ/おい」」

「露崎さん、石動さん」

 

光と炎の問答に舞台少女2人が割って入る。

 

「ったく、当時者置いて盛り上がんな!」

「双葉ちゃんの言う通りだよ!

一応、あなたと私はパートナーなんだから」

「フタバ!、これは、その・・・」

「オジサンと炎のには『奥の手』がある

ただ、それを使えば君らの身の安全は保証出来ないし最悪の可能性だってある」

「!!!?」

「でも、あの化け物は倒せるんだろ?」

「!、ああ倒せる!、必ず倒してみせる!」

「なら、やって」

 

ヴォルフモンの言葉にななは過剰な反応を見せるが本人達は落ち着いたもの。

 

「2人共・・・!」

「止めんな委員長、どの道ここであいつを止めなきゃこの大陸そのものが壊れんだッ」

「それは、困っちゃうな

もしかしたら、ひかりちゃん達がいるかもしれないのに・・・!

だから、純那ちゃんお願い」

「~~~~~~ッッッ!!!

なら約束して!、絶対無事に!

あの怪物を倒すって!」

「当然だ!

あたしとあいつの夢はこんな所で終わらせねぇ」

「元の世界に戻ったらスタァライトが

私達のキラめく舞台が待ってるんだもん

ここに居ないみんなとも一緒に帰る為に

今私に出来る事があるなら!、全部やる!」

「アッハッハァ☆、2人揃って流石だね!

行くぞ、炎の」

「ああ!、やるぞ!、光の!」

 

 

「「獣魂解放!!!」」

 

 

「・・・・・・・・・!、Gyるるるルルル!?」

 

鉄球から脱出したマッドレオモンが見たのは

 

「グルルルルルル!!!」

 

背中に刃を持つ白の装甲輝くサイボーグ狼。

 

「ギャオオオオオン!!!」

 

両腕に銃を備え燃え盛る炎の翼持つ紅蓮の魔竜。

 

「Bじゃあ!、アあアあrrrrrr!?」

「《ずびィド、ズダー・・・!》」

 

毒液を放とうとした両肩と両足の蛇頭は超高速移動で接近し、擦れ違い様に展開された刃が断つ。

 

「ギャオオオオオン!!!」

「GyaあァあアぁあAAA・・・!?」

 

すると魔竜が炎を纏いながら組つき、回復を阻害しながら更なるダメージを与えた。

 

「《ぞぉラぁレ"ぇざぁ!》」

「ン"っっあGy!」

「ギャオンッ!、グギャアアア!!」

「グルァ!」

「ちょっ、ちょっと!

何で仲間同士で攻撃し合ってるのよ!?」

 

突然マッドレオモンそっちのけで光線と炎の弾丸の応酬が始まった事に純那は戸惑いが隠せない。

 

「無駄だよ、うん・・・

今のあいつらに理性なんて残ってない」

「これが『奥の手』?

確かに、アグニモンがあれだけ躊躇うのも無理はないわ」

「多分、自分だけなら迷わず使ってただろう

でも、パートナーの事を思えば・・・

実際、かなりマズい事になってるし」

「!、そうだ露崎さんと石動さ

 

 

ひっ!?」

 

 

「ハ、ぁっ、あうう!」

「ぐ、が!?、ぐぎぃ!」

 

 

まひると双葉は

苦悶の表情を浮かべ自分で自分を抱き

必死に抑え込んでいた

 

内から沸き上がる『獣』を。

 

そんな彼女らの口から牙が覗き

手の爪が鋭く伸び始めていた。

 

「(いきが、できない!

からだが、はじけとびそう・・・!)」

「(あつい!、あつい!、あづいいいっ!

からだが、とけて、なくなんのか!?)」

「2人共頑張って!、気をしっかり持って!

あ!」

「(・・・・・・・・・あれ?、なんだろ?)」

「(ひんやりして、やわらかくて)

!、かおるこ!?、おまえなにして!?」

「何してる?、はこっちの台詞や」

「だ、メ!、はな、れて!」

「それはノンノン、だよ!

こんな苦しそうなまひるちゃんを放っておくことなんて、出来ない!」

 

まひるの手を華恋が、双葉の手を香子が握る

 

「香子!、はなせ!、たのむかラァ"・・・!」

「わタシ、もうっ

このまま、ジャ!、ナニするカわガら 」

 

 

「「なら!、そうならないようにして/せい!」」

 

 

「「!?」」

 

 

「今出来る事、全部やるんでしょ?

 

 

私達が造るスタァライトの為に!」

 

 

「そんなもんに負けてたら!

 

 

うちと一緒にッ

 

 

世界一になるなんて、夢のまた夢どす!」

 

 

「「・・・・・・・・・ッ、すぅ・・・」」

 

 

大切な存在の感触が声が彼女達の確かな指針

 

 

「キラめく、舞台がダイスキだけどッ

 

キラめく、ミンナは・・・もっと好き!」

 

 

「ダかラ!、あたしモ・・・見ツケらレた!

 

夜空にソビえる!、一・本・道ぃい!!!」

 

 

そう!、舞台少女としての!。

 

 

「99期生!、露崎まひる!」

「99期生!、石動双葉!、気合い入れて」

「しまっていこう!」

 

そのあり方がキラめきが『獣』を捩じ伏せた。

 

「露崎さん!、石動さん!」

「よかっ、たぁ!

ほんとうに、よかったよぉ・・・!」

 

異形化の消えた2人の姿に純那とななも一安心。

 

「華恋ちゃん、ありがとう!」

「後はあたしとまひるに任せとけ」

「うん!、うん!!」

「言われんでも、うちもうくたくたやし・・・

これ全部終わったらマッサージよろしゅう」

「ああ、思いっきりやってやるよ!」

「行こう!、双葉ちゃん!」

 

各々のキラめきを手にまひると双葉は光と炎の争いへと飛び込む。

 

「待たせたな、相棒!」

「ギャオオオ・・・!

フタ、バ?、!?、フタバ!」

 

 

ガン☆

 

 

「痛ッ!!?

問答無用で殴ってきたよ、この子!?」

「だって、暴れん坊のお寝坊さんはこれぐらいしないと起きてくれないって思ったから☆」

「それ下手するとそのまま昇天しちゃう奴!

ま、お陰でバッチリ目は醒めたけど☆」

 

パートナーが『獣』を押し込める事に成功した為か、紅蓮の魔竜とサイボーグ狼の瞳に理性が戻った。

 

「GyaあァあアぁあAAA!!!」

「あらま☆、オジサン達がゴタゴタしてる間に大体復活してらっしゃる」

「でも、延長戦もこの回で終わり

そうでしょ?、ガルムモン」

「香子は待たせるとうるさいからなー

ソッコー決めんぞ!、ヴリトラモン!」

「ああ!、フタバのお陰で得られたこのチカラ!

これさえあれば帝国の歪みも焼き祓える!」

 

ヴリトラモンは両腕の銃から太陽の熱線を放ちマッドレオモンの全身を炙る。

 

「《Jyuuu!、O!、だケnnn!!》」

「さっきの大技キター☆

でも、それさ

使った後ちょっぴりタメあるよね?《スピードスター・・・!》」

「えい!、やっ!」

「おらおらぁ!」

 

獅子の闘気が熱を吹き飛ばした直後、まひると双葉を乗せたガルムモンが高速で接近。

蛇頭を斬り落とし、潰していった。

 

「Gyるるるルルル!」

「あらよっと☆

やっぱ、さっきよりかは回復速度が遅い」

「まだ純那ちゃんのキラめきが背中に残ってるんだよ!」

「蛇が元に戻る前に、ここで一気に!」

「おおおおおお!、《フレイム!」

「Gy!?、Gyるるるルルル!」

 

チェーンソーに銃を刺し込むと、そのまま翼を羽ばたかせ飛び上がるヴリトラモン。

更に、空中でマッドレオモンごと錐揉み回転し炎の竜巻と化しながら宙返り。

 

「ストーーーム!!!》」

「GyaあァあアぁあAAA・・・ッッッ!!!」

 

一気に急降下し、炎上させながら脳天から地面に叩き落せば背中にある水色のヒビが大きく広がった。

 

「マヒルチャンいっちゃうよ☆《ソーラーレーザー!》」

「!、ど真ん中の、ストレート・・・!」

 

ガルムモンが口から放ったレーザービームに自身のキラめきを乗せ打ち返すまひる。

その打球は見事ヒビに直撃しマッドレオモンを貫く。

 

「Gyっ!、ぐギe!、てい、kkノo!!」

 

頭が地面に突き刺さり

穴が穿たれてもなお、狂戦士は止まらない。

 

 

「じゃあな」

 

 

だが、その悪足掻きも双葉が全力で振り降ろした

Determinater【決意】によって絶たれるのであった。

 

 

ズズズズズズズズズズズズ!!!!!!!

ズズズズズズズズズズズズ!!!!!!!

 

 

「ちょぉっ!!?、双葉はん何したん!?」

「あたしのせいかよ!?

まさか、間に合わなかったのか・・・?」

「違う!、これは!

ウラル大陸のデータが修復されているんだ!

その証拠にアレを見てくれ!!」

「そらが、空が青くなっていくデス!

太陽も!、雲も!、風も!

全部!、全部元通りデスぅううううう!!」

「大地に緑も戻っていくね、うん・・・」

 

 

ォォォン・・・!!! ァゥーーーン・・・!!!

 

 

「アッハッハァ☆、ワー君達もはしゃいじゃって

 

念願の明けだ、無理もない」

 

「ぬ、ぬぅんっ

!?、こ、これは!」

「やりやがたんだなァ、あいつら・・・」

 

レイド帝国の不正コードにより歪められてたデータが急速に復元していく様をデジモン達が感無量の表情で見つめる最中

 

 

♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪!

 

 

「「「「「!!?」」」」」

 

 

舞台少女にとって特別なメロディが流れてきた。

 

 

「(もしかして、これで終わりなの?

 

 

みんな帰れるの?、聖翔に!

 

 

私達の本当の舞台に・・・!!!)」

 

 

 

 

 

☆東方士武大陸・鬼ヶ城

 

「ウラル大陸がニンゲンの手に堕ちたようだね」

「そうみたいだよ!、姉さん」

 

髑髏の意匠が目立つ部屋にて語り合うのは

士武大陸を統べる小柄な金の鬼と大柄な銀の鬼。

 

「キンカクモン様、ギンカクモン様」

「どうしたんだい?」

「付近の湖よりニンゲンらしきモンを見たとの通報がありました」

「へぇ、そいつは随分御機嫌な報せじゃないか」

「嬉しそうだね!、姉さん」

「ああ、嬉しいとも

 

 

ニンゲンで造った酒がどんなモンか・・・

 

 

今から楽しみでならないよ」

「任せて!、姉さん」

「頼んだよ、弟よ

さぁ!、出陣の準備をしな野郎共!

久方ぶりに狩りに出掛けるよ!!」

『ウオオオオオオ!!!』

 

 

 

 

 

 

☆東方士武大陸・朔ノ山コンゴウ一家アジト

 

「姉御!、クロさん!、てぇへんだ!」

「鬼ヶ城で大軍が動きだしたど!」

「なども、近くの湖に出たニンゲンを捕まえるって!」

「!、天堂真矢!!」

「ええ、行きましょう西條さん」

「なんだよ!、結局殴り込むんジャン!」

「不本意ながら、そうなってしまったのデシテ・・・」

「姉御!、勿論ワシと子分のコカブテリモン共も御供させて頂やす!」

『頂やす!』

「いえ、親分さん達には別行動をお願いしたいのですが」

「・・・・・・・・・」

「クロ公お前なんか負けてんジャン!」

「Tais-toi!、私はあいつに負けてない!」

「はぁーーーーーー・・・・・・・・・これ以上手がかかるのが増えないと良いのだが」

 

 

 

 

 

 

☆東方士武大陸・湖畔

 

「ヒー、おいしー?」

「うん!、美味しい!」

「ワー!、エーうれしー!」

 

 



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ヒーはエーがまもるー! エリスモンの鬼退治

士武大陸メイン回


☆東方士武大陸・湖畔

 

「そういえば、あなたは何?」

「エー!、エーだよー!、エリスモン!」

「エリスモン・・・うん、覚えた」

「ワー!、ヒー、エーおぼえてくれたー!」

 

おなかいっぱいになったひかりはやっとハリネズミらしき謎の生き物・エリスモンとのコミュニケーションを取り始め

 

「じゃあ、おやすみ」

「おやすみー!」

 

・・・・・・・・・る、かと思いきや寝る準備を始めた。

 

 

ガサササッ ガサガサ!

 

 

その直後、辺りの木々が不自然にざわめき出し緑の鬼が姿を現す。

 

「ニンゲンみぃつけたぁ!」

「!」

「ヒー!」

「ギャィン!?」

 

ひかりに襲いかかってきた鬼・・・オーガモンの顔面に閃光を纏わせた針毛を撃ち出すエリスモン。

 

「何!?、見つけた!?」

「どこだどこだ!?」

「ッ、エリスモン!」

「ワーーー!?、エーとんでるーーー!」

「静かにして」

 

他の鬼が集まってきた事に気づいたひかりはエリスモンを引っ掴むとワイヤーを伸ばして木の上へと飛び移った。

 

「上に逃げたぞ!」

「落とせ落とせ!」

『『『覇王拳!!!』』』

「・・・・・・・・・!」

「ヒー!、エー!、たたかうー!

ヒー!、エー!、まもるー!」

「興奮しないで、針が刺さって痛いから」

「ヴー、ゴメー・・・」

 

自分達が乗る木がへし折られる寸前に別の木へと移動。

 

 

「《雷光鬼蹴》」

 

 

「ッ!!?」

「ヒー!?」

 

しかし、その途中に凄まじい衝撃に襲われ

あえなく地面に叩き落とされる。

 

「他愛ないね、ニンゲン」

「違うよ!、姉さん

姉さんが凄いんだよ!、流石姉さん!」

「ッ、・・・・・・・・・!?

(からだが、しびれて、うごけない・・・!?)」

「ヒー!?、ヒー!

ヴーーー!!!、ヴァアーーー!!!」

 

悠々とした足取りで近づく金の鬼と銀の鬼に

エリスモンは針毛を逆立てると体をボールのように丸め突進。

 

「何許可なく姉さんに近づいてんの?」

「イ"ーーー!?、はなせー!、はなせー!」

「姉さん、こいつは要らないよね?」

「ああ、変なモン混ぜて味が変わるのは困るからね」

「じゃあ消すね!、姉さん」

 

だが、銀の手に容易く抑えられてしまった。

 

 

『ぎぃぃぃやぁぁぁっ!!??』

 

 

「なんだい?」

「気をつけて!、姉さん」

「ヴェー!?」

 

しかし、森の方から異様な気配を感じとるや否やエリスモンを放って姉の元へ。

 

「今のでウチ7体は倒したジャン!」

「あらそう?、私は丁度10 」

「13はあまり良い数字ではありませんね・・・

もう他に鬼はいないのでしょうか?」

「ほんっっっとヤな女!!!」

「貴様ら好き放題が過ぎるのデシテ!

援護するこっちの身にもなるのデシテ!」

「あれは・・・クックックッ!

ワザワザそっちから来てくれたのかい?」

「とっても嬉しそうだね!、姉さん」

「ああ、嬉しいとも!

今日の酒はとびっきりのモンになりそうなんだから!」

「勝利の美酒に酔うのは勝手ですが」

「いくらなんでも気が早いんじゃない?」

「あ!、キンカクモンとギンカクモン!

あいつらなら鬼5体分にはなるから両方倒せたらウチの逆転勝ちジャン!」

「なら、尚更負けるわけにはいかないわ

あんたにもね!、天堂真矢!」

「だ・か・ら!、好き放題するな、デシテ!」

 

どこまでもフリーダムな首席と次席とアホにキレつつツッコミ役は氷の矢を放つ。

 

「《鬼炎弾!》

 

 

・・・・・・・・・お前、今姉さんを狙ったなあああ!?」

 

 

「その鬱陶しそうなのは任せるよ、弟よ」

「任せて!、姉さん、《銀角突貫!!!》」

「私を無視しないで下さい」

 

逆上する銀の鬼の片足を横から払ったのはOdette the Marvericks。

 

「!?、《逆撃炎弾!》」

「《当身返しぃ!》からの《クレッセントどーーーん!!》」

「こい、つら!、姉さんの、邪魔を・・・!」

「他人の事ばかり言ってていいの?」

 

カウンターで放たれた火の玉にグリズモンは更にカウンターを重ね、次の技へと繋げば

クロディーヌが追撃を仕掛けた。

 

「へぇ、やるじゃないか

そっちで転がってるニンゲンとその腰巾着とは違うみたいだね」

「「「当然/Bien sûr」です/ジャン」」

「貴様ら少しは気を使うのデシテ!

ホラ!、なんかあのニンゲン青くなって

ん?」

「!?、《鬼爆ぐぁあ!!?」

「姉さん!?、姉さん!、姉さ、ん"?!!」

「ウー・・・、ヒー?」

 

突如、戦場を縦横無尽に駆け巡ったのは

 

青いキラめき、BlossomBright。

 

「Bonjour♪、ひかり」

「西條さん、天堂さんも」

「状況説明は必要ですか?」

「いらない、レヴューと違うのも

それでも戦わないといけないのもわかってる」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

ある意味テンドーとクロディーヌ以上の奴!

こいつ絶対手がかかる奴!

ニンゲンってこんなんばっかデシテ!?」

 

0と1の残滓を纏いながら無表情に告げるひかりにレキスモンは鉄仮面の下の顔を歪めながら矢をつがえる。

 

「こいつら、厄介だね弟よ」

「ごめん・・・姉さん・・・

!、でもそれならアレをやろうよ姉さん!!

そうすれば絶対に負けないよ!、姉さん!」

「帝国の洗礼を受けて以来やってないけど

大丈夫かい?、弟よ」

「勿論!

ああっ、感謝するよニンゲンとその腰巾着共!

久しぶりだ!、久しぶりに姉さんが!

 

 

ナカに入ってくれたぁあああ・・・!!!」

 

 

「「「「!?」」」」

「・・・・・・・・・!」

「ヒ、ヒー!?」

 

銀の鬼の腹部に備わるカプセル。

そこに金の鬼が入り込んだ途端、歓喜の雄叫びと共に凄まじい電流が迸った。

 

「くっ」

「ヒー!、いたいー!?

エーのせー?、ゴメー!」

「だい、じょうぶ・・・」

「別にひかりは休んでてもいいのよ?」

「ええ、私と西條さんだけでも十分かと」

「そうジャン!

なんならウチ独りでもよゆーで勝てるし!」

「自惚れるな!、デシテ!」

「撃ちたいだけ撃てばいいよ、もう姉さんに攻撃が当たる事はないんだから・・・!」

「チッ!」

 

《ティアーアロー》の連射を意に介さず突っ込んでくる銀の鬼。

 

「《当身返ジャン?!」「Quoi!?」

 

その体当たりにグリズモンとクロディーヌは跳ね飛ばされ

 

「《ムーンナイト、ボム・・・!》」

「姉さん!、姉さんがナカに!、姉さん!」

「効いていない!?、のは想定済みデシテ!

テンドー!!」

「ふっっっ!」

「へぇ、泡を目眩ましにここまで来るなんて

でも、残念

パワーアップしたのは弟だけじゃないのさ

《怒気怒鬼怒灸!》」

「!」

 

懐へ飛び込んだ真矢には電流が浴びせられた。

 

「・・・・・・・・・!」

「こいつ、剣を手放してッ」

「でも丸腰だよ!、姉さん!」

 

咄嗟にOdette the Marvericksを上に投げ避雷針代わりに。

 

「《ムーンナイト」

 

放電が弱まるや否や、天にキラめくソレを足場に

更に跳躍する兎獣人。

 

「キーーーック!!》」

「《逆げぶっ!、がは!」

「レキスモン、後で話があります・・・」

「後があればいくらでも」

 

銀の鬼が火を吹こうすれば足蹴にされて戻ってきた剣で顎を突き上げられ、更には脳天に強烈な飛び蹴りをくらう。

 

「お!、あ?」

「弟よ!」

「ねぇっ、さ!」

「あ!、やれると思ったのに!」

「そのコックピット、本物だったの?」

「ああ、いざって時は操縦してやるのさ

こうやってね!」

 

ノックアウトされた弟を体内から操る姉。

意識がある時以上に洗練された体術でグリズモンとクロディーヌを強襲

 

「!?、なっ!」

「運転中は足元をちゃんと見た方がいい」

「あああ・・・!」

「事故の元だから」

 

しようと踏み出した途端、片足に絡みついたワイヤーにより大柄な鬼のバランスが崩れた。

 

「う、うううっ」

「!、姉さん!?

姉さんが痛がってる!、苦しんでる!」

「・・・・・・・・・弟よ、こんなにコケにされたのはいつ以来だい?」 

「恐れ多くも帝国に逆らった時以来だよ!、姉さん!」

「そうだった、そうだったねぇ

すっかり忘れてたよ、この

怒りって奴をさぁあああ・・・!!!」

「あら?、まだ何か出し物があるみたい」

「何が来ようが勝つだけジャン!」

「うん、負けない

勿論、あなた達にも」

「ふふふっ、望む所です」

「デシテー」

 

倒れ伏したままだというのに尋常ではないプレッシャーを放つ鬼姉弟。

それを前に3人の舞台少女と2体のデジモンが身構えていると

 

 

「「《火電鬼爆波》」」

 

 

周囲一帯が炎と雷が蹂躙し、焼け野原と化した。

 

「!?、これは、想像以上に・・・!」

「くっ、ぁ!」

「いっっってぇ!、ジャン!」

「!?、ヒー!」

「あのニンゲン、アレを躱せたのデシテ!?

だが、それはいくらなんでも無謀!」

「・・・・・・・・・!!!」

 

所々焦げついた青い上掛けを翻し、黄金に輝く銀の鬼ギンカクモン・プロモートに急接近するひかり。

 

「見え見えだよ」

「見え見えだってさ!、流石姉さん」

「うぐ!?」

「ヒー!」

 

彼女の機動力を持ってしても今の鬼姉弟には

通用しない。

 

「ヒーはなせー!、はなせーーー!」

「弟よ」

「任せて!、姉さん《鬼炎弾》」

「ヴェーーー!?、ヴーーー!!」

「ッ!、えりす、も・・・!」

 

文字通り一捻りにされるひかりを救おうとエリスモンは懸命に針毛を飛ばすが、無造作に燃やされただけ。

 

「ひ、ー、はな、せー、!」

「うおっ!、あいつまだ動けるジャン!?」

「感心してる場合ではないのデシテ!

貴様!、もう動くな!、消えたいのか!?」

「き、え、なー!

エー、ヒー、たすけ、るー!

エー、ヒー、まも   る!!」

「・・・・・・・・・!!?」

 

灰色の毛並みを黄色の針毛を黒く炭化させながら

それでもなお、このハリネズミは諦めない。

 

「ぐ!、ぐわああああああ!!?」

「弟!?、ガッ?!、アアアアアア!!!」

 

この光景に神楽ひかりが

 

彼女のレヴュー衣装の中にずっと隠れていた

 

虹色の鉱石が変化した

 

青い本体にゴールドの意匠の神機が応える。

 

 

「おちてたー!、すくってもらったー!

 

ごはんくれたー!、あそんでくれたー!」

 

 

鬼姉弟を弾き飛ばしながら現出した青い幕。

 

 

「やわらかいてー!、あったかいてー!

 

ぜったー!、わすれなーーーーーー!!!」

 

 

その下でエリスモンの肉体《データ》は

 

より大きく、より鋭くなっていった。

 

 

「エリスモンしんかー!、フィルモーーーン!

 

エーのぜんぶー!、ヒーのためーーー!」

 

 

幕を貫くは赤い爪、体のあちこちに生えているのは大きな黄色いトゲ。

針鼠獣人フィルモンは進化を遂げるや否やひかりの落下地点に急ぐ。

 

「ヒー!、いたいー!?、だいじょぶー?」

「うん、トゲが刺さって痛い」

「ヴェーーー!?、ゴメーーー!」

「でも、ありがとうエリスモン・・・

ううん、フィルモン」

「!、エヘへー」

「くっ!、姉さんを苦しめた癖に!」

「遊んでんじゃないよ!」

「「《金銀雷鳴撃!!》」」

 

抱き合う1人と1匹目掛けて放たれる高圧電流

 

 

だが、それは白とオレンジにキラめく粒子の渦に飲み込まれた。

 

 

「「・・・・・・・・・!!!」」

 

 

互いの手を取り合って回転する真矢とクロディーヌ。

残る手に握られた刃が電流を絡め取り、更なるキラめきを放ちながら鬼姉弟へと迫った

 

このタイミングで獣人と大熊が動き出す。

 

「ニンゲン共に負けるな!、アホ熊!!」

「あったり前!、ジャン!!」

「「《クレッセントティアーズ・・・!」」

 

振りかざした熊爪に氷の矢を当て、形成させたのは凍える三日月。

 

 

「シューーーット!!!》」

「あ!、これウチも回れる奴ジャン!」

「「はぁっ!」」

 

 

レキスモンに蹴り飛ばされたグリズモンは氷の爪を構えながら空中で錐揉み回転

電流を纏う回転斬りとほぼ同時に放電中のギンカクモンプロモートに突っ込んだ。

 

「ーーーーーー!、どいつも!、こいつも!

本当の合体技を見せてやろう!、姉さん!」

「ああ!、弟よ!

最大電力、最大火力で全部消し飛ばす!!」

 

この攻撃を受けてなお

鬼姉弟の怒りはより一層増すばかり。

 

 

「「《火電」」

「《ライトニングー!」

 

 

最高潮にエネルギーが高められたタイミングで

 

 

「「鬼爆」」

「スティンガーーー!》」

 

 

腹部のコックピットに打ち込まれのは

 

 

「波  ぁ"っ"?!!」

 

 

刺したモノにエネルギーを流し込む黄色い針毛。

 

「あ、ああ!!」

「変なモノ、混ざったちゃったみたいね

困った?」

「ァッッッ!!!      ょ」

「ね、ねさん・・・?

ねえ、さん?、姉さん!?、姉さん!!?」

 

想定されたモノ以上のエネルギーを過剰に与えられ結果、コックピットのあちこちが激しくスパークし

 

 

次の瞬間   爆ぜた。

 

 

 

「姉さん!、姉さん!、姉さん!

返事をして!、姉さん!、キンカクモン姉さん!!!」

「・・・・・・・・・」

「ヴーーー!」

 

弟鬼は体内で起きた爆発も、自身の損傷も意に介さずデジタマと化した姉鬼に語り続ける。

 

「ねぇ、さっ

 

 

レイド帝国本国より緊急コードの送信を確認」

 

 

「「「「「「!!?」」」」」」

 

 

そんなギンカクモンの様子が唐突に一変。

 

「レイドプログラム、ファイナルプロテクト・・・

 

か、い?

 

全ては我々、帝国、の・・・

 

ていこく?、知るかそんなモン

 

全ては姉さんの為、その姉さんが居ないなら

 

なんのいみもない」

 

 

だが、結局は姉狂いのまま

 

 

「キンカクモン姉さん!、生まれ変わっても!

 

僕らはまた!、きょーだいにっ!」

 

 

弟鬼はコックピットの残骸

 

自分の腹部を自分の手で貫きデジタマへと還る。

 

「レキスモン、この鬼が何をしたかったのかわかりますか?」

「あいつは

帝国にデータを改竄されているにも関わらず

最後まで自分の我を通したのデシテ」

「それだけお姉さんの事が好きだったの?」

「エーのほー!、ヒーすきー!」

「フィルモン、痛い」

「(正直助かったのデシテ・・・

もしもこのサーバーへの負担を度外視して不正データが大量に送り込まれていたとしたら

 

 

ワタクシ達はおろか士武大陸全てが滅んでいた)

 

 

まぁ、つまりは元々ああゆう性格という訳なので同情の余地はないのデシテ」

「そう言いつつも、弟のデジタマを姉の近くに置くレキスモンなのでした」

「テンドー!、無駄に情感たっぷりなモノローグを入れるなーーー!」

 

 

ズズズズズズズズズズズズ!!!!!!!

ズズズズズズズズズズズズ!!!!!!!

 

 

「ッ!、地震!?、それとも新手!?」

「新手なら大歓迎ジャン!

・・・・・・・・・ん?、ちがう?、んん?、んー?」

「流石にアホの貴様でも気づけたのデシテ」

「あれは!、空が明るくなっている・・・?」

「綺麗」

「ウー?」

 

レイド帝国の侵略域管理個体を削除した事で士武大陸の空が濁った紫から吹き抜けるような青へと急速に変化。

 

「これでデータを改竄された連中も元に戻った筈デシテ

とはいえ、あの姉弟を見るに元々野心溢れる連中も多いだろうし・・・

テンドー、どうやら貴様の指示は無駄にならなさそうデシテ」

「?」

 

 

 

 

 

☆東方士武大陸・鬼ヶ城

 

「で、データが復旧していく!?」

「と、いうことはつまり!」

「あ、あの2体が倒されたってのか!?」

 

 

「「「しゃあっ!!!」」」

 

 

「今日からこの大陸はヒューガモン様がイタダキだぁ!」

「何行ってやがる!?、フーガモン様以外に士武を統べる器は居ねえ!」

「ほざけコンパチ共!、鬼の中の鬼!

オーガモン様こそが 」

「ゴチャゴチャじゃかしぃわぁ!!!

この大陸はワシがブン捕る!

そして、ワシのモンは姉御のモンじゃあああ!

文句ある奴ぁかかってこいかい!

 

 

《鉄砲!!!》」

 

 

「「「う、うわぁあああっ!?

なんだこいつぅうううううう!!?」」」

 

「うるさいべ!、おで達だってこのノリまだついてけんど!」

「んだ!、それでもコンゴウ親分はおで達の親分だべ!」

「どこまでも御共すっべ!

んで、姉御やクロさんに褒めて貰うど!」

『だからおどれら邪魔じゃあああ!!!』

「「「ぎいやああああああ!!??」」」

 

・・・・・・・・・こうして、コンゴウ親分率いる別動隊により鬼ヶ城は完全に陥落するのであった。

 

 

 

 

☆士武大陸・湖畔

 

 

♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪!

 

 

「「「!!?」」」

「何の音ジャン?、レキスモンわかるか?」

「・・・・・・・・・いや、耳に覚えはないのデシテ」

「ヴーーー!、エーこのおとやー!」

 

突然鳴り響いた謎のメロディに3体が怪訝な顔をしている中、舞台少女達は顔色を変えて発生源を探すと

 

それは自分達の手首・・・神機から流れていた。

 

「何これ!?、画面に変なモノが」

「・・・・・・・・・次のステージ、レギオン群島にて待つ」

「天堂さん、わかるの?」

「丁寧に教えて貰いましたから

ねぇ?、レキスモン」

「一回でほぼ完全にモノにしておいて良く言うのデシテ」

「ちょっと、後で私にも教えなさいよ」

「任せるジャンクロ公!、ウチ文字全然読めないけど!」

「あんたには言ってない!」

「ヒー・・・ゴメー・・・エー・・・よめなー・・・」

「なら、一緒に勉強する?」

「!、いいのー!?、ワーーー!」

「フィルモン、トゲ、刺さってる、痛いッ」

「しかし、レギオン群島はレイド帝国の総本山

不正データの介入のし過ぎで既存のデジタルワールドの常識が通用しない無法地帯

おいそれと飛び込める場所ではないのデシテ

大体、行くにしても海を越えなくては

 

 

って!、貴様らワタクシを置いて帰るな!

 

 

寂しいだろーーーーーー!?」

 

 

 

 

 

 

☆西方ウラル大陸・要塞跡地

 

「レギオン群島にて待つ、ね・・・

怪しさ大爆発☆、だけど本当に行く気?」

「うん、このメロディが流れたのなら

私達とも何か関係がある筈だから」

「露崎さんの言う通りね

それに、帝国の本拠地だっていうなら

いずれ行かなくちゃ行けないんだし」

「君、本気で帝国潰す気かな?、うん」

「当然で御座る!、それがニンゲン!

デジタルワールドの救世主の宿命!!」

「じゃ、じゃあブイはこの辺で 」

「あらあら、どこ行くつもりなん?」

「その、なんだ、諦めろブイモン」

「いやデスぅうううううう!、これ以上付き合ってらんないデスぅうううううう!」

「す、すまないブイモン!

だが!、君とカオルコが契約を交わしたのにもきっと何か意味が 」

「そんなモンいらないデスぅうううううう!

ブイはあの青い空さえあれば充分なんデスぅうううううう!」

「ううん・・・

生まれ変わっても空馬鹿は治らなかったか」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ケッ」

 

 

舞台少女とデジモンの喧騒の輪から離れ独り佇む

 

 

大場なな。

 

 

「次のステージ」

「ぬ?、華恋殿どうしたで御座る?」

「もしかしたらひかりちゃんはそこに居るのかも

ううん!、絶対居る!」

「えっと、一応聞いておくけど・・・

何を根拠にそんな断言出来るの?」

「さっき、グラグラ~ってなった時!

感じたの!、すっごい遠くから!

ひかりちゃんのキラめき!」

「そなアホな

って言えん所が華恋はんの恐ろしい所どす」

「神楽に関してはこいつの勘は馬鹿に出来ないもんな・・・」

「まるでフタバとカオルコのようだな!」

「「いらん事言わんでよろしい!/そうゆう事言わなくていい!」」

「す、すまない!」

「あははは、あ」

「?、どったのマヒルチャン」

 

 

「ぬぅうううんっ・・・!、ぬう?」

 

 

「あーあ」

「いや、だからその

あっ、察しって顔何さ!?」

 

 

 

 



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幕間・出港準備それぞれの一時

☆西方ウラル大陸・ゴミ捨て場改め大農場

 

 

「(やぁ☆、よいこもわるい子もふつうの子も

 

おはこんばんにちはーーーーーー☆☆☆

 

今日も愉快なオジサンだよ!

 

ん?、オジサン今何してるって?

 

見ての通りさ☆、地面を耕してるんだよ☆

 

しかも獣魂解放!、ガルムモンでね!

 

どうだい?、この用途を明らかに逸脱した

 

ウィングブレードの使い方!

 

すっごいだろ~?、アッハッハァ☆☆☆

 

脳内だけでもテンション上げとかないと辛い

 

だって・・・・・・・・・さぁ・・・・・・・・・)」

 

「ガルムモン、あの辺り耕し方甘いよ

出来るだけ早く終わらせたいのはわかるけど

あなたがスピード自慢なのもよくわかってるけど

ここはこの大陸のデジモン達にとって大切な開墾地帯になるんだよ?

だから適当にやるのはよくないと思うんだ」

「はい、すみません

 

(オレのパートナーいつからファーマー?

 

そしてこのオレいつからトラクター?

 

ノーノーオジサン、レジェンドアイテム☆

 

スサノオモンも泣いちゃうゼ☆、YEAR!

 

・・・・・・・・・なんておふざけは普段はスルーされるけど今の彼女の前で口にしたら最後、物理的な意味で尻を叩かれるんだ

まがりなりにもサイボーグ型でそれなりに硬度あっても痛いんだよ、あの棒

比喩でもなんでもなくケツが割れっから)」

「ニンゲン!、もうココ植えられる!」

「肉イッパイ!、肉イッパイ!」

「こら、ゴブリモン達!

そんな風に同じ場所ばっかり植えたら美味しくならないよ?」

「美味シクナイ?、美味クナイ?」

「ソレ困ル!、美味イモン!、食イタイ!」

「なら、もっと間隔を空けないと

ほら、これぐらい」

「「ワカッター!」」

「(あっれれ~?、おっかしぃぞ~?

指導の仕方に格差を感じてならないぞ?

オジサンパートナーぞ?、伝説の祭具ぞ?)

なんて、欠片も考えてませんから背中の上で棒クルクルはやめて下さい監督」

「もぅっ・・・・・・・・・そろそろ休憩しようか」

「だね、コントロールは出来てるけど

『獣』の長時間連続使用は危険が危ないし☆」

 

まひるが降りるのと同時にストラビモンへと退化

1人と1体は自分達が耕した広大な畑を並んで歩いていく。

 

「ねぇ、ストラビモン

あんな感じで本当に良かったのかな?」

「さっきゴブリモン達に教えてた事?

オジサンは特に問題なかったとおもいまふ☆」

「だって、私

畑でどうやってお肉が出来るのかもよくわかってないのに・・・」

「あー、人間界じゃ出来ないんだっけ?

畑で肉」

「出来ないよ

だから始めて見た時驚いちゃった

香子ちゃんなんて、こんなん食べられへんわ~って涙目になっちゃって」

「アッハッハァ☆、今のメッチャ似てるぅ!

でも、そんなカオルコチャンもバナナチャンが味付けやら何やら色々工夫したお陰でおかわり要員に劇的☆ビフォーアフターしたのでした、マル」

「前から思ってたけど、ストラビモンはどうしてそんな事知ってるの?」

「だって、オジサン『光』よ?

人間界の回線からこう色々と、ね☆

ま、自分で使うって発想になったのはこの姿になってからだけど」

「デジタルワールドを明るくする為に?」

「・・・・・・・・・モクヒシマス

って、オジサンの事はいいから!

マヒルチャンの農業経験がこのデジタルワールドで通用するかどうかだけど、ぶっちゃけわかんない!!!」

「えええっ!?」

「だって、前代未聞よ?

ニンゲンが『光』の祭具使って農耕するとか

こんなの君達がこの世界で与えられた役割じゃないんだから、気にしたって仕方ないって」

「でも 」

「それでも不安なマヒルチャンにオジサンからクイズです☆」

「いきなりなんで!?」

「そんな当てになるかもわからない異世界知識にズルイワルイヨワイの代名詞なゴブリモン達が素直に従ったのはナ~ゼだ?」

「え、えっと・・・美味しいご飯を食べる為?

かな?」

「ブッブー!、ハッズレー☆

正解は、君が本気で想って言葉に出したから」

「あ」

「それを信じたのはここで生きてるあいつらなんだからさ、育つかどうかは結局あの小鬼チャン達次第なんじゃない?」

「ストラビモン・・・」

「所詮はワー君がレギオン群島への移動手段を確保するまでの暇潰し兼『獣』慣れする為の訓練なんだし

上手くいかなくてもしゃーないしゃーない☆」

「だからって手抜きしていい理由にはならないからね

はい、休憩終わり

今度は鍬を使って一緒に耕やそ?

それなら今のあなたでも出来るでしょ?」

「ワォ」

 

 

 

 

☆西方ウラル大陸・元スラム現ダンボール街

 

「《兜返しぃいいい!》

《居合刃!》《居合刃!》《居合刃!!》」

「ヒイィィイッ!?、ニゲローーー!!」

「逃がさん!、御覚 」

「《レオクロー》」

「!?、何のつもりだ猫!」

「何のつもりはこっちの台詞だァ

あんな木っ端共追って何になるんだァ?」

「奴等は復興を果たさんとするバコモン達を襲おうとしたのだぞ!?、生かしておけばまた 」

「そうならないように今ニンゲン共が犬連中に話つけてんだろうがァ・・・

テメェの八つ当たりに他の奴の名前使うなァ」

「せ、拙者は八つ当たり等しておらん!」

 

帝国の支配が消えても尚

 

・・・・・・・・・あるいは

 

消えたからこそウラル大陸各地に出没し始めた野盗デジモン。

パートナーと別行動中のリュウダモンとレオルモンはそれらの撃退に勤しんでいた。

 

「まァ、あァも耳元で何度も何度も

ヒカリヒカリスタァライトスタァライト言われりゃ腹も立つかァ」

「だ、だから拙者は!

!、そう!

華恋殿が浮き足立って救世主としての務めを疎かにしているのではないかと危惧しているだけで御座る!」

「そうだよなァー、テメェにとって

『ニンゲン』は『それだけ』だモンなァー」

「・・・・・・・・・何が言いたい?、猫ッ」

「別に」

「うぬぬぬぅ!

そうゆう御主にとってなな殿はなんだ!?」

「気に食わねぇレイド帝国をブッ倒すのに都合の良いニンゲン」

「!」

「あいつが何考えてようがァ

誰を優先しようがオレサマには関係ねぇなァ

目的の為に利用するだけだァ、お互いになァ」

「ど、何処へ行く気で御座る!?」

「寝る、後はテメェが勝手にやってなァ」

「・・・・・・・・・ッッッ、くっ!!!」

 

仔獅子が離れた後、鎧蜥蜴は収まらない苛立ちを地面にぶつける。

 

「拙者とて同じ!

華恋殿がひかりというニンゲンをどう想おうが!

舞台だのなんだの言おうが!

すたぁらいとという訳のわからないモノの事ばかり押しつけてこようが!

このデジタルワールドが救われればそれで良いのだ!!

なのに、何故ッ」

 

リュウダモンの脳裏に蘇るのはエリア解放後

 

 

ここではない何処か遠くに想いを馳せ

 

 

瞳を輝かせる愛城華恋【己がパートナー】。

 

 

「(他のニンゲンを見る目とは明らかに違った!

まるで

 

 

拙者が、眼中に無いようで・・・

 

 

ええい!、それがどうした!!

華恋殿が見ていようがいまいが成すべき事は変わらないで御座る!

ニンゲンのパートナーデジモンとして!

必ずやレイド帝国を打倒するのだ!!!)」

 

リュウダモンは固い決意という鎧で自分の中に芽生え始めたある感情を覆い隠し、見ないフリを決めこんだ。

 

一方、ソレを向けられている相手はというと・・・

 

『~~~~~~♪、!』

「そっかそっか~♪

街作りはじゅんちょーなんだね!

他に何か必要なモノとかある?」

『!、!』

「大丈夫?、よかったぁ!」

「ば、バコモンと意志疎通を取れてる!?」

「あいつら匂い変わんないから俺ら全然わかんないのに!」

「ニンゲンって凄いな!」

 

街中でバコモンや『明けの遠吠え』と一緒に復興のお手伝い中。

 

「じゃあ、この街の事よろしくお願いします」

「はいニンゲンさん!、任せて下さい!」

「華恋ちゃん、そろそろ帰ろ?」

「うん!

じゃあね、みんな!」

『!!!♪♪♪』

「ふふふっ!、あの子達すっかり華恋ちゃんのファンになっちゃったみたい」

「えへへー、だって舞台少女は日々進化中!

どんな世界でもキラめいちゃうよ♪」

「うんうん!

スタァライトの為にも、ね」

「そうそう!

ワーお爺ちゃんもう準備出来たよね?

うううー!、早くひかりちゃんに会いたいなー!、待ちきれないよぉ!」

「私も♪

もしかしたら、真矢ちゃんやクロちゃんも一緒だったりして?

・・・・・・・・・そうだと良いのになぁ」

 

華恋の隣をななは笑顔で歩く

 

 

「(レギオン群島

 

 

そこにさえ行けば、きっと

 

 

そうじゃなかったら

 

 

私)」

 

 

『みんなのばなな』として

 

 

彼女は一歩、一歩確実に歩を進めるのであった。

 

 

 

 

☆西方ウラル大陸・ドルモンの住処

 

「ドルモン、これは捨ててもいいでしょ?」

「ううん、それはもしかしたら何かに使えるかもしれな 」

「典型的な部屋を片付けられないタイプの発言ね、却下よ却下」

「ぅあああん・・・!」

 

レギオン群島への旅に使えるモノがないかを探す純那だったのだが・・・

生真面目な性格が災いしてか、大掃除のような有り様だ。

 

「も、もうここに帰って来れる保証もないのにこんな事をして何の意味があるの?

・・・・・・・・・うん、ない」

「人間の世界には立つ鳥跡を濁さずって言葉があるの」

「ボクはデジモンだし見ての通り鳥じゃない

大体ここはデジタルワールドだ」

「屁理屈ばっかり言わないで手を動かす

後、いつまでワーお爺さんと顔を合わせないつもり?」

「う、うん・・・

これが終わったら考えなくもない、かな?」

「典型的な後回し発言ッ

予定変更!、今から会いに行くわよ!、ほら!」

「だって!、今生の別れみたいな事言った手前どの面下げて会えって言うんだよ!?

うう"んっ!、やめろーーー!

尻尾引っ張るなーーー!!、引っこ抜けるだろーーー!!」

 

 

 

 

 

☆西方ウラル大陸・武器工場跡地上空

 

「ふわぁあああ♪

青い空に白い雲、吹き抜ける風・・・!

やっぱり飛ぶのは良いデスぅ!」

「飛んでるんはあんさんちゃうやん」

「言ってやんなって」

「ブイモンが少しでも元気になってくれるなら!

フタバのソウルが続く限りオレはいくらでも飛ぼう!」

 

ブイモン、香子、双葉を背中に乗せてヴリトラモンは空を行く。

その手には縄に括られた大量の鉄筋がブラ下がっているのだが、飛行のバランスが崩れる様子は見られない。

 

「なんや、あの狼のお爺はん

状態が良い鉄が沢山必要じゃ!、なんて言うてましたけど」

「一体何に使うんだろうな・・・」

「わからない!

だが!、『明けの遠吠え』の長を務めた立派なデジモンの考えだ!

必ずみんなの益に繋がる筈!」

「ブイは飛べれば何でも良いデスぅ!」

「ほんまブイはんは空に上がると威勢がよろしおすなぁ

もう地上に降りん方がええんとちゃう?」

「ブイだって出来ればそうしたいデスぅ!

でも、独りじゃ飛べないし・・・」

「お前だってもっと進化すれば自分だけで飛べるようになるんじゃないか?

デジモンって結構何でもありだし、そんだけ空が好きならきっと飛べるさ」

「ふ、フタバァ~~~・・・!」

「ふぅん

ま、ほんまに飛べるようになったら

あんさんに御褒美、あげてもええかも・・・」

「え?、別にカオルコの為に飛ぶつもりはさらさらなイヒャイイヒャイイヒャイ!?」

「おおおおおお!?

ひ、飛行中急に暴れるのは・・・!」

「こら香子!、やめろって!

ッ、やっべ!、集中切れる!」

「「ふぇえええっ!!?」」

「ふ、フタバ!

今、獣魂解放を、解除する訳にはいかない!

もうすぐ、だから、頑張って、くれ!」

「わか、てる!」

「・・・・・・・・・ほんまに大丈夫なん?」

「正直、キツイ

でも、レギオン群島ってとこ行くまでには慣れとかないとマズいだろ?

だから、こんな所でへこたれてなんてらんねぇ

それに、いざって時は・・・頼りにしてるぜ」

「!?、ふ、ふん!」

 

『獣』のコントロール、双葉の方はやや難航中。

 

 

 

 

 

 

☆西方ウラル大陸・海岸

 

数日後

 

「皆の衆すまんのぅ、随分待たせてしまった」

 

ワー爺に呼ばれ6人の舞台少女とそのパートナー6体が集結。

 

「いいえ、むしろ

こっちの方があなたを待たせてしまったので」

「いい加減尻尾掴むのやめろよ

ここまで来たら逃げも隠れもしないって、うん」

「フォッフォッフォッ!、ワシと顔を合わせん間にパートナーとの絆を深められたのなら

寂しさを堪えた甲斐もあったのぅ」

「な、違!・・・・・・・・・ごめん、ワー爺」

「ハイ、純那ちゃんのお陰でドルモンもすっかり素直になりましたー♪」

「なんだァ、ありゃア?」

「ばななちゃん、カメラでみんなを撮るのが好きだから」

「それであのエアカメラやたらレベル高いんだ☆

・・・・・・・・・何か動きが迫真過ぎね?」

「ねぇねぇ!、お爺ちゃん!

もうレギオン群島に行けるの!?」

「ぬぅっ」

「まぁ、落ち着くんじゃカレンさんや

『明けの遠吠え』として活動を続ける傍ら

ワシはゴミ捨て場のジャンクをかき集め、あるモノを造っておったのじゃ」

「それが例の移動手段なのか!?」

「勿体ぶらんと、はよぅ教えて欲しいわー」

「こうゆうのは前置きが大事だろ?、ちゃんと聴いてやろうぜ」

「ウラル大陸に巣食う帝国の悪意に敗れた時

あるいは、撃ち破った時に海を渡り別の大陸を行く方法

 

 

その答えが   コレじゃあっ!」

 

 

『!?』

「なんデス!?、なんなんデスぅう!?」

 

謎のスイッチが押されるとどこからか振動が。

 

「かつて、はじまりの街と世界樹を囲う森に言い伝えられし守り神を模した!

ワシの生涯最後のだ・だ・だ!、大発明!

 

 

デッカードラモン号じゃあああっ!!」

 

 

ノリノリのワー爺の背後から現れたのは

 

 

鰐を思わせる形状をした巨大メカ!!!。

 

 

「      

 

すっ、げえええ!!!

 

 

すげぇよ爺さん!、あんたすげぇ!!」

「フォッフォッフォッ!、そうじゃろそうじゃろ~~~?」

「双葉はん、そないはしゃいでみっともない

所で、お爺はん

うちらの部屋はどこなん?、勿論あの頭の天辺にある眺めが良さそうな所やろ?、なぁ?」

「え?、いや、あそこ操縦席じゃから・・・」

「お部屋の広さはどれくらい?、家具とかはまだないの?

それなら、私頑張っちゃいます♪

みんなが楽しく、安心して生活出来るように」

「お、おぅんっ、それは追々、のぅ」

「まひるちゃん!、口から中に入れるみたい!

一緒に探検しよ!、ほらリュー君も!」

「ぬぅ!?」

「ま、待って華恋ちゃん!」

「あ、あのぅまだ説明が 」

 

 

「みんな!、静かにしなさい!

華恋も!、団体行動を乱さない!!」

 

 

『・・・・・・・・・!』

「いや、ワー君まで黙っちゃダメでしょ?」

「ハッ!、申し訳ありません始祖様!!」

「だから、オジサンただの入れ物だってば」

 

 

学級委員長の一喝により場の喧騒は収ま

 

 

「ゴフォン!

ささやかながら、ワシからの恩返しとして

デッカードラモン号には

 

 

ふろとやらを造らせて貰ったぞい」

 

 

「「「「「「      え?」」」」」」

 

 

「後、せっけんにしゃんぷーやらりんすとやらも

色々試行錯誤して作ってみたぞい」

 

 

「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」

 

 

「お前さん達に少しでも喜んで欲しくてのぅ

今丁度沸かした所じゃ

まぁ、構造上の問題で一人ずつしか入れんが」

「わ、ワー君・・・!

た、確かに、オジサンッ!

マヒルチャン達が欲しがりそうなの伝えたけどさ

伝えたんだけどさぁ!」

「フォ?、やはりにゅーよくざいとやらが必要でしたかのぅ?

そればかりは難しかったので

 

 

湯船に肌がツヤツヤになると評判の花を沢山浮かべてみたのじゃが・・・」

 

 

「それ火に油ーーーーーーー!!!」

 

 

 

ドォォォォォォオオオオオオン!!!!!!

 

 

 

「ふぇええええええん!!?」

「な、なんで御座るか・・・!?」

「6人共!、なんて凄まじいソウルだ!」

「マッハレオモン倒した時より高まってんじゃないかな?、うん・・・」

 

 

ら      な      い     。

 

 

「ふ、ふふふっ・・・!

ねぇ、皆

自分で言うのもなんなんだけど、要塞攻略した時

一番頑張ったの私だと思うんだけど?」

「うんうん♪、じゅんじゅん

すっごくすっごく頑張ってたよね!

でも、それとこれとは話が違うよ」

「それに、それを言ったら最後まで戦ってたの私と双葉ちゃんだけじゃないかな?」

「んで、トドメ刺したのはこのあたしな!

って訳で、一番風呂は、!?」

「チィイイイッ!」

「もー、ダメだよ香子ちゃん不意討ちなんて

ここは公平に

 

 

歌って、踊って、奪い合いましょ♪」

 

 

 

一番風呂のレヴュー!、開始ッ!

 

 

「始祖様ぁ~~~~~~!

ワシ、ワシ!

何か悪い事してしもうたのでしょうか!?」

「う、うん・・・ワー君は悪いんじゃないよ?

その、あの子達ってホラ

ずっと髪やら体やらお湯に濡らした布で拭くだけだったから湯船への欲求が、ね

しかもそれにモロモロ加算されるワケだから・・・

 

 

結論から言えば、君は頑張り過ぎた!」

 

 

「フォゥ~~~~~~ン・・・!」

 

 

 

 

☆東方士武大陸・鬼ヶ城、キンカクモン専用露天風呂

 

 

「      華恋・・・?」

 

 

「あら?、どうかしたの?」

「今、どこか遠くで

華恋がキラめいたような

・・・・・・・・・というより、ギラめいたような?」

「流石愛城さん、日々進化しているようで」

「私だって、この世界でもっと成長してみせるわ

それはあんたも同じでしょ?」

「ええ、99期生首席天堂真矢はこのデジタルワールドでも誰より輝く存在で居ますとも」

「悔しいけど私達がこうしてのんびりいられるのは天堂さんのお陰」

「コンゴウ親分ったら

姉御達はゆっくり養生していて下せぇ

雑事はワシらが片付けておきやす

って、生き残った鬼まで引き連れてどこかへ行ったけど」

「帝国から解放され、レギオン群島との流通に使われていたトレイルモンという列車が全て撤収したとの事でしたが・・・

一体何が出で来るか楽しみに待っていましょう

 

 

ん?」

 

 

「クロ公達ばっかズッリィジャン!

なんでウチらは入っちゃダメなんだよ!?」

「エー!、ヒー!、いっしょーーー!」

「だからやめろと言っているのデシテ!

このアホ共ーーー!!、グェッ!?、ゲフゥ!」

 

 

「・・・・・・・・・そろそろ上がりましょうか」

「「ええ」」

 

 

 

 

 

 

☆西方ウラル大陸・デッカードラモン号

 

 

風呂場

 

 

「う~~~~~~ん!、はぁあーーーぁ・・・

 

 

ばなナイス♪」

 

 

 

 

 

 

☆西方ウラル大陸・海岸

 

 

「「「「「            」」」」」

 

 

「こいつらを守るんじゃなかったのかァ?」

「フォゥン!、フォゥンフォゥン・・・っ

ワシ、ワシ!

みなのしゅうによろこんでほしかっただけなんじゃあ・・・!」

「な、泣かないでくれワーガルルモン!

その気持ちは確かにフタバ達には届いている!、届いてる筈だ!」

「隠士殿、上掛けの紐ぶった斬られた場合

再起動にはどんだけかかる?」

「だから、その呼び方はやめろって

・・・・・・・・・うん、確か30分ぐらいだったと思う

後、意識無くした訳じゃないから

ほっぺ引っ張ろうとしてるのバレバレだよ、青瓢箪」

「ふぇえええっ!?

な、なんで早く教えてくれないんデスぅ!

それにブイは青瓢箪違うデスよ!、ボッチ!

・・・・・・・・・ふぇ?、なんでボッチ?」

「(こいつ!

どうしてそうゆうどうでもいい記憶だけは残ってるのかな!?、ううん!?)」

「なら、第二ラウンドはその後になるね☆

次誰が勝ち残るかトトっちゃう?」

「止めないのか!?、光の!」

「さっきの見てる限り怪我の心配はゼーローだし

たまにはガス抜きだって必要っしょ?

ただでさえ、この世界の事情を押しつけて不自由強いてるんだからさ」

 

 

「(こんなッ、こんな纏まりのない集まりで本当にデジタルワールドを救えるので御座るか!?

いや、弱気になるな!

拙者が、拙者さえしっかりしていれば!

 

 

きっと!、必ず!、絶対に!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




※デッカードラモン号
鰐っぽい口部分がハッチになっており舌部分の階段から胴体と頭部に行けます。
操縦席は頭部、所謂鰐の目の辺りのこんもりしてる部分ですね。
胴体は二層構造になっており上が居住区、下が機関部分。
居住区は通路を間に挟んで個室やキッチン、風呂などが並びその中央通路には出し入れ可能な長テーブルが内蔵され、食堂やブリーフィングルームを兼用。
機関部分の動力は『明けの遠吠え』の精鋭5体が交代でタービンをハムスターよろしくクルクル回しています。
因みに海水濾過装置も完備で生活用水もバッチリ。
地上移動時の為の貯水槽も勿論あります。
移動は胴体外側にある四肢と尻尾部分のキャタピラを用い、どんな悪路も何のそのな上に水陸両用。
背中にある甲板部分にはオリジナルにあったミサイルポットがなく、代わりにクレーン式の見張り台兼アンテナが取りつけられてます
内部での通信手段は伝声管・・・ラ〇ュ〇に出てくるアレのみ、緊急時にはワー爺が頑張って吠えるのが警報代わり。
弱点は急拵えな為に武装がない事と開発から整備、パイロットまで全部ワー爺任せな所。




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大海戦 エアロブイドラモン飛ぶ!

 

☆海上航行中デッカードラモン号、甲板

 

 

「うーーーんっ、うーーーん?、むむ・・・」

 

 

「華恋ちゃーーーん!、そろそろ降りて来てーーー!」

「ほんま、煙となんちゃらは高い所がお好きどすなぁ」

「風が強くなってるデスぅ!、もうすぐ嵐が来るんデスぅ!、危ないデスぅ!、早く見張り台しまうデスぅううう!」

「アア?、なんでわかんだァ?」

「風の動きと空模様についてだけはそいつの読みは当てになると思うよ

うん!、それだけは!、ね・・・!」

「ドルモンってさぁ、なーんかブイモンへの当たりがやけに強くね?

それと、自分のパートナーばななに丸投げしてていいのか?」

「うん?、なら君は何をしているのかな?」「「・・・・・・・・・はぁーーーーーー」」

 

甲板上で双葉とドルモンは溜め息をぶつけ合う。

 

 

「純那ちゃん、お水飲める?

 

 

・・・・・・・・・そっか、今は難しいんだね

 

 

・・・・・・・・・ううん、気にしないで

 

 

しょうがないよ、まさか地形が変わってたなんて誰も思ってなかったんだから」

〔「す、すまんのぅジュンナさんも竜の始祖様も

ワシがウラルに渡った時はギリギリ犬かきでどうにかなる距離だったんじゃが・・・」〕

 

 

想定された以上、あるいは到達出来るかが不安になる船旅を強いられすっかりグロッキーな自分達のパートナーを思えばさもありなん。

 

「アッハッハァ☆、体を得てから炎のは水が大のニガテだからね!

まさか、純那ちゃんまでそのレベルだったとは思わなかったけど、実はあの子も火属性?」

「そんな事より早くカレンを降ろすデスぅ!

嵐が来てからじゃ遅いデスぅ!、デッカードラモン号が沈んだらどうする気デスぅ!?」

「毎日ああしてひかり殿とやらを探してよく飽きないで御座るな

最も、拙者には全くもって関係ないのだが」

「・・・・・・・・・私の時より酷いのかも」

 

 

「あああーーーーーー!!!!!!」

 

 

「うおっ!?、なんだよ急にデカい声出して

まさか、マジで神楽見つけたのか!?」

「ぬぅぅ!?」

「え、本当に!?」

「ばななちゃん!

それに、純那ちゃんとフレイモンも・・・

大丈夫?、なのかな?」

「だい、じょうぶよっちゅじゃきさん!

ふなよいとかじゃ、ないから!」

「みじゅさえ、しかいにいれなければ!

もんだいは、ない!」

「うん?、ここ見渡す限り海しかないよ?」

「なんでもいいからはイヒャイイヒャイ!」

「あんさんはちょお黙っとき

華恋はーーーん?、何が見えたーーーん?」

 

 

「みんなーーー!、たいへんたいへーーーん!

 

 

あっちに海賊船が居るーーー!!」

 

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ!?』

 

 

「!、ドルモン!!」

「うん」

 

純那は水への恐怖を一時的に封じ、ドルモンから受け取った双眼鏡で華恋が望遠鏡で見据える先を覗いた。

 

「2本のマストに横帆を備えた帆船、確かブリッグだったかしら?

そして何より、旗と帆にはドクロのマーク!

一般的にイメージされる海賊船そのままね!

くっ、こんな状況じゃなければ貴重な体験を素直に喜べるのにッ・・・・・・・・・いえ、海賊なんだもの海上に現れるのは至極当然の事

とにかくワーお爺さん!、あの船から離れましょう!

今から進路を変更さえすれば鉢合わせにはならないわ!」

「そ、そうだな!

無用な争いは可能な限り避けなければ!」

〔「わかっておる!

わかっておるんじゃが、のぅっ」〕

 

 

「なんかーーー!

どんどん近づいて来てるよーーー!」

 

 

〔「あちらさん、センサーの反応から見ても明らかにこちらを狙っておるぞい!」〕

「ま、まだ敵と決まったワケじゃないわ!」

「ソ、ソウダナー!」

「炎の、君気配でわかってんだろ?

ってか、そんな目立つ印つけて堂々としてる時点でレイド帝国の傘下なのは丸わかりじゃね?」

「「               」」

 

 

「あああーーー!!!、大砲撃ってきたーーー!!!

わわわぁーーーーーー!!?」

 

 

「!、華恋殿!!」

 

砲弾が見張り台を掠めるとそこにある神機から赤い粒子が降り注ぎ、リュウダモンはギンリュウモンへと進化。

空中を軽やかに飛び回り、飛び交う砲弾を鎧で弾き砕いていった。

 

「無事で御座るか!?」

「うん!、さっすがリュー君!

ぐっどぐっど、だよ!」

「ぬぬん?!

こ、これぐらいはパートナーとして当然の事ッ」

「おい!、華恋!

今飛べんのそいつしか居ないから大砲の方なんとかしてくれ!」

「え?、ヴリトラモンとかドルガモンは・・・・・・・・・あ」

「「イ"イ"イ"ーーー!!?」」

「じゅ、純那ちゃん落ち着いて!

掠っただけだから!、沈んだりしないわ!」

「見ての通りだ・・・」

「うん・・・」

「わ、わかった!、お願いリュー君!!」

「ま、任されよッ」

「華恋ちゃん!、これ!」

 

見張り台からパートナーに飛び移れば、甲板からまひるがPossibility of Pubertyを投げ渡してくれる。

 

「みんなの分も持ってきたよ☆、ほぼマヒルチャンがね!

んで、オジサンが唯一運べた弓なんだけど

使える?」

「だだいひょうっい"やぁあああっ!?」

「あああたたた!、あたったぁ!?」

「ダメダコリャー☆」

「ストラビモン!、2人で遊ばない!」

「ハイハイ☆、っと!」

「《メタルキャノン!》」

 

注意されながら緑の幕に潜り込み、ヴォルフモンへと進化。

ドルモンと共に《リヒト・クーゲル》でデッカードラモン号に迫る砲弾を迎撃していった。

 

 

ゴポポ・・・・・・・・・

 

 

甲板上で舞台少女とそのパートナーが奮闘する最中、海中から迫る複数の影。

 

 

「「「《バブルボム》」」」

 

 

『!!?』

〔「機関部!、何があった!?」〕

〔「お、さ!

敵襲、です!、シーサモンが、負傷!

浸水箇所ッ、複数!

現在、ドーベルモン、が敵、封じ込め!

ガルルモン、グルルモン、急遽、溶接中!

そして、自分はッ

 

 

頑張って、動力回してまーーーす!!!」〕

 

 

〔「くっ!、いかん!

お前さんだけでは通常航行もままならん!

何より、これ以上艦底にダメージを受ければデッカードラモン号は・・・!」〕

「お爺さん、それ以上は言わないで

大丈夫、もう近づけさせないから

ね?、ライアモン」

「ケッ!」

「純那ちゃん一緒に中に入ろ?、ここに居てもみんなに迷惑かけちゃうだけだもの」

「な、ななぁ・・・」

「す、すまない!、オレも!」

「うん、下のワンちゃん達のお手伝いをお願いしちゃいます♪

じゃあ、みんな」

「うん!、こっちは任せて!」

「うちの船に土足で踏み入った不届き者の始末は頼みますえ」

「はーい」

 

顔が真っ青な純那とフレイモンを引き連れてななは艦内へ。

 

「《サンダーオブキング!》オラァ!!」

『ギャアアアアアア!!?』

 

直後、海中から忍び寄ってきたダイバー・デプスモン達をタテガミからの電流が襲う。

 

〔「始祖様!、件の船から倒した分と同じ数の敵が出てきていますぞ!」〕

「今回は無限湧きかー、元絶たなきゃダメな

奴だけど・・・・・・・・・ハテハテフムム」

「だったら乗り込むっきゃねーだろ!?

白兵戦だ!」

「せやね、今度はうちらがあちらさんにお邪魔する番どす」

「ふぇええええええ!?、でも!、だって!

ふぇええええええん!、ボッチーーー!」

「諦めろ、そしてその呼び方やめろ青瓢箪ッ

それに、この状態で嵐に巻き込まれてみなよ

君、確実に海の藻屑になるね、うん」

「何してるデス!、とっととあの船沈めて

ここから離れるんデスぅうううううう!!」

「わかった!、わかったから!

えっと私と双葉ちゃんと香子ちゃんとブイモン

それから」

「か、華恋殿

流石の拙者も、今言った以上を乗せて飛ぶのはその、難しいのだが・・・?」

「じゃ☆、オジサンとマヒルチャンはお留守番!

ここは任せて先に行け!、なんつって☆」

「もぉっ!、こんな時までふざけないの

しかも本当は真面目に考えて言ってるのに・・・」

「うん、こいつはそういう奴だよ

ギンリュウモン、ボクも残る

なるべく早くに片をつけて欲しい」

「任されよ!」

 

舞台少女3人とブイモンを乗せギンリュウモンは砲弾飛び交う海上を滑るように飛んでいく。

 

 

「キャプテン!、前方より敵影を確認!」

「数は?」

「1!、ですが背中にニンゲンが3!

ちっこいのが1!」

「そんだけ重りがあっちゃ避けれまいて

一斉掃射だ!、撃ち落とせーーー!」

『アイアイサー!!!』

 

 

すると、海賊船からの射線が集中。

 

「ッ・・・・・・・・・左、デス」

「ぬん?」

「リューはん、とにかく言う通り飛んで!」

「あ、あいわかった!」

 

ブイモンの呟き通りに飛べば迫り来る砲弾の雨が

 

スリ抜けていった。

 

「次、斜め上、デス」

「ブイモンすごい!、すごいよー!

ドルモンが言ってた通り!」

「あ、あの程度の砲撃!

拙者の鎧ならばどうという事は!」

「ドルモンから早く済ませろって言われたろ?

一々受け止めてたらその分時間を食っちまう

 

そしたらその分、星見とフレイモンが・・・」

 

「「「「ああー」」」」

 

 

 

 

☆デッカードラモン号、機関部

 

「グ!?、ギ!」

「これで全部?」

「は、はい!

助かりましたナナさん!」

「気にしないで

純那ちゃん、そっちは 」

 

 

「「イ"イイイイイーーーーーーッ!!!」」

 

 

「オオオゥン!?、どっちもヤッベ!

ガルル!、コレマジヤッベくね!?」

「無駄口叩かず伏せとけグルル!、でないと」

「グエッ?!、ア"ヅ!」

「「シーサモーーーン!?」」

 

入り込んだ水を炎で蒸発させ、その隙に機関部に空いた穴に投げつけた鉄板を射抜いて固定しているのだが・・・どっちも何かもう色々イッパイイッパイ。

 

「「ハァッハァッハァッ・・・!!!」」

「ふ、2人共お疲れ様

これでもう安心 」

 

 

             ピューーー・・・

 

 

「あ」

「「アアアアアアアアア!!!???」」

 

 

 

 

☆海賊船付近の海上

 

 

ザァアアアァアアアァアアアッッッ!!!

 

 

「ちょおっ!?、ほんまに嵐来よった!?」

「だからブイ何度も言ったデスぅううう!」

「それでもここまでとは思わねぇよ!」

「何が来ようが関係ない!

レイド帝国に与する海賊共!、御覚悟!!」

「ま、待って!

リュー君すとっぷすとっ 」

 

 

「《パイレーツパニッシャー》」

 

 

「んぬ!!?」

「「「うわぁあああ!?」」」

「ふええええええ!?

 

 

・・・・・・・・・ぇ"?」

 

 

突如発生した豪雨と強風。

どこからともなく放たれた弾丸はソレらを容易く引き裂き、鎧竜を穿って背中に乗っていた3人と1体を落とす

 

 

『ガチガチガチガチガチガチ!!』

 

 

青い鮫のようなデジモンが群がる海へと。

 

 

「         」

「ガッ!?」「チン!」「チイ?!」

 

 

すると、海面スレスレで桃色の幕が展開され

それを突き破って現れた白目の蒼竜が舞台少女達を引っ掴み、鮫達を踏み台にして海賊船まで駆け抜けた。

 

「ぶ、ブイはん   ありが」

 

!、!?、!!、ふぇええええええん!?

 

 

いつのまにか囲まれてるデスぅうううううう!!?

ブイはもうおしまイヒャイイヒャイ!?、イヒャイエフゥウウウ!」

「だから!、それは後にしとけ香子!

にしても、まさか全員船長とか

言わない、よな・・・?」

『その通り!、船長は我々だ!』

「ええええええ!?

い、いくらなんでも多すぎだよぉ!」

 

雨が叩きつけられ風が吹きつける甲板上には

右手がフック状のカギヅメ、左手がキャノン砲をした自称船長なデジモンが沢山。

 

「ならば!、全て倒すだけで御座る!

《徹甲刃!!》」

「ぐわぁ!」

「!?、ギンリュウモン!、やり過ぎだ!

今の槍、船底までいったぞ!?」

「この船さえ沈めてしまえばデッカードラモン号は安泰!、一石二鳥で御座ろう!?」

「はぁあああっ!?、それだとうちらはどないなるん!?」

「海にウヨウヨしてるのに食べられちゃうデスぅううう!!、もっとよく考えなきゃダメデスぅううう!!」

「ぬ!、そ、それは・・・」

「リュー君上!」

「「「「ヨーホーーーッ!」」」」

 

甲板に気を取られていたギンリュウモンをマスト上から飛び掛かってきた海賊達が襲う。

 

「ぬあああ!?

こ、こんなモノ!、ぬぐぅっ!」

『ガチガチガチガチガチガチ!!!』

 

フックに引っ掻けられていた鉄網にがんじがらめにされた挙げ句、海に引き摺り込まれた鎧竜に群がる鮫。

 

「リューーーくーーーん!!?」

「んもぅ!、しゃーないなー

ブイはん、はよ助けたり」

「そんな!、ヒマ!、ないッ!、デス!

大体!、今のは!、あいつの!、ジゴー!、ジトク!、デスぅううう!!」

「・・・・・・・・・言われてみれば確かに」

「だな、あいつの鎧ならそう簡単にやられなさそうだし」

「えええ!!、わわわ!?

ううっ、リュー君ごめんねぇ

後で絶対!、絶対助けるからーーー!」

 

雨風に晒され、大きく揺れる甲板上にてブイドラモンが肉弾戦で暴れ回り

その隙を狙おうとした海賊は薙刀、ハルバート、サーベルの餌食となっていった。

 

「流石ウラルを制したお尋ねモン共、一筋縄とはいかねえか」

『キャプテン!』

「あ、やっぱちゃんとした船長居たな!」

「そう、その通り!

この海賊船の船長キャプテンフックモンだ!

《パイレーツパニッシャー!》」

「!、今のって

さっきリュー君を撃ったの、あなた?」

「だったらどうする?、ニンゲン!」

「・・・・・・・・・!」

「ハーッハー!、どうしたどうした?

足元がフラついてるぜぇえええい!?」

「「華恋/はんッ!」」

 

他の海賊とは一線を画すキャプテンフックモンの漸撃と銃撃のコンビネーションに華恋は次第に押されていく。

 

「「「「ヨーホーーーッ!」」」」

 

更に、パートナーと同じように頭上から鉄網が。

 

「「「「ヨホ?」」」」

 

だが、網には何もかかっていない。

その下にあるのは、丸く斬り取られた甲板だけ。

 

「か、カレンどこ行ったデスぅ!?」

「どこって、そりゃ船ん中だろ?」

「華恋はんにしては頭使いましたなぁ」

「・・・・・・・・・ニンゲンってどうしてそんなに感覚鈍いんデス?」

「「は?」」

「ハーッハー!、そっちの青いモンの言う通り!

この船は我々帝国により、内部は部下共の生産プラントになっている!

倒したその瞬間から湧いて出るんだ、今頃あのニンゲン食い尽くされてるだろうよ!」

「「はぁあああっ!!?」」

「そんなんいくらなんでもインチキ過ぎとちゃいます!?」

「華恋!、華恋!、聞こえるか!?、返事しろ!

くそ!、ダメだ何も聞こえねぇ!」

「おいおい、そっちの心配ばっかでいいのか?

海の上で自分達の船を忘れちゃあ御仕舞いよ」

「「「!!?」」」

 

キャプテンフックモンの嘲笑と共に海賊船から一斉に砲撃が放たれる。

 

 

「よし!、大体コツが掴めてきた!」

「・・・・・・・・・ねぇ、君のパートナー

大砲打ち返して別の玉にぶつけ始めたんだけど?

あの棒何製かな?、ううん?」

「隠士殿、あの棒については深く考えるのはやめておいた方がいいと思うんだ

少なくとも、オジサンは考えるのをやめた」

「オラァアアア!!!

トカゲ野郎共何チンタラやってんだァ!?」

〔「お爺さん!、今怪我した子以外みんなで回してるの!、これなら逃げられるんじゃない!?」〕

〔「速度はあちらさんの方が断然上じゃ!、振り払えん!」〕

〔「ッ!!?、純那ちゃん!!

そんな!、ダメ!

ちゃんと息をして!、ねぇ!?」〕

 

 

強風、荒波、砲火、水爆と苛烈な攻撃に晒され続けるデッカードラモン号

 

 

と、1人と1体の限界が近い。

 

 

「や、やっぱりレイド帝国を倒すなんてムリだったんデスぅうううううう!!」

「そう!、その通り!

なぁ、青いモン

そこのニンゲン2体を差し出せば

お前の命だけは助けて おっとっと!」

「か、カオルコ・・・フタバ・・・」

 

俯くブイドラモンの前に並ぶは舞台少女の背中。

 

「はぁーあ、なーんでうちのパートナーがあんな泣き虫で弱虫なんやろ?」

「あたしはピッタリだって思うけどなー

実際、先にブイドラモンが弱音吐かなきゃ香子だって今頃泣き言言ってたろうし」

「な!、そ、そんなわけありまへんえ!

いい加減な事言わんと、はよあのインチキ船長倒さな!」

「ま、そういう事にしといてやる・・・よ!」

「はっ!」

「こ、こいつら・・・!」

 

降り注ぐ雨を弾きながら甲板上でキラめく

 

水仙花とDeterminater。

 

2本の長物による連携をキャプテンフックモンは左手の錨と右手の長銃で捌いていった。

 

『キャプテン!』

「・・・・・・・・・ッ、させない!、デス!」

「んなっ!?、何故!」

「お前はもう諦めた筈!?」

「道が造られたから!、デス!

《ハンマーパンチ!》」

 

幼馴染みコンビに活路を見出だしたブイドラモンは再び戦意を取り戻し、露払いに勤しむ。

 

「・・・・・・・・・ほんま手のかかる子やわー」

「ああ、誰かさんにそっくりだ」

「双葉はん?」

「なんだよ?」

「我々相手に余裕を見せると痛い目を見るぞ?《レイジギガアンカー!》」

「「それは」」

「!!?」

「こっちの!」

 

突っ込んできた錨に絡みつくハルバートの柄

キャプテンフックモンの勢いを利用した双葉の投げ技は体格差も悪天候も不安定な足場も物ともしない。

 

「台詞!!」

「ガッッッ!"」

 

空中を漂う船長目掛け、跳躍した香子が放つ

優美さと豪胆さを兼ね備えた一閃。

断末魔の叫びと共にキャプテンフックモンは胴体から真っ二つにされ、削除されるのであった。

 

「ふっふ~ん♪

双葉はん、今のちゃあんと見たん?

大将首取って、しかもこない荒れた海で揺れる船の縁に華麗に着地!

あかん、うちあの牛若丸も越えたかもしれん

でも、それも当然の話やなぁ

何せこの花柳香子は歴史に名を残す舞台少女やさかい♪」

「わかったわかった!、とりあえず危ないからさっさと降りろって!」

 

 

 

 

パ   ァ   ア   ン   !

 

 

 

 

「(      あれ?)」

 

 

ブイドラモンは全てが終わったと思っていた。

船長を討ち、じゃれ合う香子と双葉を見て。

 

なのに、何故だろう?。

 

「(肩が、熱い・・・?

それに、なんデス?、コレ)」

 

周囲の景色が白と黒のみと化して

 

雨粒の一粒一粒がハッキリ見える程に遅い。

 

「(あ、ブイの前にキャプテンフックモンが居るデス

さっきカオルコが削除したのにどうしてデス?

しかも、右足から煙出てるデス

 

・・・・・・・・・もしかして、ブイ

 

 

撃たれた?

 

 

だから、肩がこんなに熱いんデス?)」

 

 

スローモーションな世界の中でブイドラモンは普段の泣き虫はどこへやら、他人事のように自身の負傷を認識していた。

 

「(あ、弾が肩を突き破っていくデス

少し熱いのが引いたデス

 

あれ?、じゃあこの弾

 

これからどこへ行くんデス?)」

 

やけに重く感じる頭をノロノロと動かし弾の行方を目で追えば

 

雨粒にぶつかりながら

 

空気に軌跡を残しながら

 

ゆっくり、ゆっくりと迫っていく

 

 

船縁で得意気に笑う花柳香子へと。

 

 

「(!、~~~~~~!!

 

 

なんで!、なんで!、なんでだ!?

 

 

なんでだよ!!?、なんでこんな!!)」

 

 

ブイドラモンは必死に声を上げようとするが

 

口が開く動作そのものが緩慢で

 

声が音にならない。

 

その間に弾丸は香子に迫って、迫って

 

 

やがて、到達する

 

 

上掛けを止める、金のボタンへと。

 

 

「(どうして!?、ブイは、ブイは!!)」

 

 

香子の表情がきょとんとしていくのがわかる

 

双葉が叫んで動いているのがわかる

 

わかっているのに。

 

 

「(遅い!!!、遅い!!!、遅い!!!

 

フタバは届いてる!、届いたんだ!

 

届いてるのに、なんでブイは!!!

 

 

届かない!!?)」

 

 

次第に海へと傾いていく香子の体

 

彼女を抱き留めるも、共に落ちていく双葉

 

色を無くした世界で何故かこの2人だけは

 

鮮明に見えた。

 

見えたからこそわかる

 

ブイドラモンと視線がぶつかり合った時

 

香子の目は如実に語っていた

 

 

「あんたはんほんま鈍臭いなぁ

 

チンタラせんと、はよ助けてや」

 

 

と。

 

 

「だ   れ   が  遅いって!!?」

 

 

あらゆる感情が荒々しい衝動に上書きされた

 

その瞬間、世界に色が戻る。

 

 

「・・・ッ・・・・・・・・・」

「くそ!」

『ガチガチガチガチガチガチ!!』

 

間一髪、砕けたボタンを握り上掛けが落ちるのだけは防げたが、それだけだ。

鮫が群がる海に2人揃って落ちるのを止められない

 

 

そう、彼女達だけならば。

 

 

「最早誰にも止められない」

 

 

ブイドラモンの体から吹き上がる桃色の粒子。

 

 

「遥か彼方にある高み!

 

蒼穹へと繋がる勝者への道は!」

 

 

再生産された0と1の幕の下で蒼い幻竜の体躯がより逞しさを増し

 

 

背中には大翼が広がる。

 

 

『ガチン?!』

「「・・・・・・・・・ぇ?」」

 

 

ソレは一瞬にして投げ出された少女達を奪い取り

 

海賊船のメインマストを越えた荒天まで昇ると

 

 

「ブイドラモン進化、エアロブイドラモン!

 

こうなったブイの前には、もう何者も立たせない

 

つ、つもり、デスぅううう!」

 

 

高らかに、ちょっと情けなく名乗るのであった。

 

「エアロ、ブイドラモン?

ハハッ、お前ほんとに進化しやがった!」

「フタバ、そのままカオルコを頼むデス」

「へ?、うおっ!?」

「おっとっと!、今度は避けたられたカハッ!?」

「《マグナムクラッシュ!》デス!」

 

香子と双葉を抱えながらエアロブイドラモンは甲板からの《パイレーツパニッシャー》を難なく避け、キャプテンフックモンを瞬殺。

 

「《レッグリボルバー!》」

 

直後、フックモンの内の1体が姿を変え

新たなキャプテンフックモンとなる。

 

「船長は我々って、そういう意味かよ!?」

「そう!、その通り!

そして!、この通り!」

『ヨーホーー!!』

 

更に船内から倒された分だけフックモンが補充

 

「この船がある限り、我々は無敵だ!」

「なら、やっぱり沈めるしかないデス」

「待てよエアロブイドラモン!

あたしらは良いとして、華恋が!」

 

 

「その心配はー!、ノンノン!、だよ!!」

 

 

『「「「!?」」」』

 

そこから愛城華恋、再び参上!

 

「か、れ・・・ど、の!

ッ《ぼぅじぃんはぁあああ!!》」

『ガチチン?!』

 

すると、今まで鮫達にいたぶられていた鎧竜が鉄網をブチ破って脱出!!。

 

「はぁっ!、はぁっ!

敵の本丸の真っ只中を!、たった独りよくぞ無事で・・・!」

「うん!、だって

 

 

ひかりちゃんとスタァライトするまで

 

 

私は、負けない!」

 

 

「!、・・・・・・・・・そうで、御座るか

 

 

ーーーーーー!!!《徹甲刃!》《徹甲刃!》《徹甲刃!》

 

 

《てっこうじぃぃぃん!!!》」

 

 

「ハッハー!、無駄だ無駄ぁ!

そんな貧弱な槍なんざ、幾ら撃ち込んでもこの船はビクとも 」

 

 

ミシッ! ミシミシミシィ!

 

 

「しな、い?」

 

ギンリュウモンが連発した槍は甲板を通り抜け

 

船内に華恋が残したキラめきの残滓を纏い

 

帝国が起こした歪みを貫いていった。

 

「キャ!、キャプテン!?」

「うろたえるんじゃねぇ!

船は放棄だ!、ティロモン!!」

『ガッチィ!』

「華恋殿早く乗るで御座る」

「うん!、ありがとリュー君♪」

「・・・・・・・・・」

 

沈みだした船から海賊達は海へと飛び込み

舞台少女はパートナーに乗って空に飛び上がる。

 

「船はなくとも我々は戦い続ける!

全てはレイド帝国の為に!」

『『『レイド帝国の為に!』』』

『ガチチチ!』

 

一際大柄なティロモンの上でキャプテンフックモンが号令を出せば、同じように海賊を乗せた鮫とダイバーの大群が泳ぎ出す

 

デッカードラモン号を目指して。

 

「・・・・・・・・・ブイ、はんっ」

「!、香子お前もう話せるのか!?」

「お陰様、で」

「それでブイに何の用デス?」

「あんさん、折角進化したのにあんま活躍しとらんなー」

「きみとフタバを助けたのにデス?」

「そんなんは当たり前の事どす!

うちのパートナーならもっと上目指して貰わな困りますわ!

せやからあんたはん、この嵐の海の演目をきっちり締めてや」

「あー、えっと悪いなエアロブイドラモン

今のは、その、あれだ

香子なりにお前を励ましてるつもりで・・・」

「無理にフォローしなくても大丈夫デスよフタバ

それに、言われなくても最初からそのつもり」

「ぬ!?」「わわわっ!」

「デス!!!」

 

エアロブイドラモンはギンリュウモンに香子と双葉を押し付けると

 

『今』の自分が出せる最大速度で飛翔した。

 

「!、潜れ!!」

『ヨーホーー!』

『ガチチチ!』

 

その接近を察知したキャプテンフックモンの命令に一糸乱れぬ動きで従うティロモンとデプスモン。

 

「・・・・・・・・・」

「(ハッハー!、息が続かないと思って待ち構えてるんだろうが無駄だ無駄ぁ!

我々は海中での活動も想定されている!

さっきのお返しにこのままお前らの船の土手っ腹に風穴を開けてやらぁあああ!!!)」

 

自分達の周囲を高速で旋回し続けるエアロブイドラモンを海賊達が海中で嘲笑っていると

 

 

「《Vウィングブレード!》」

 

 

前方をV字状の超高熱エネルギーが通り抜け

 

真下から凄まじい水蒸気爆発が巻き起こる。

 

 

『『『ぅぁぁぁあ~~~!!?』』』

『カチカチカチ~~~ン!!?』

 

 

海から弾き飛ばされた海賊を待っていたのは

高速旋回により発生していた竜巻。

それによってキャプテンフックモン達は

より高く、高く舞い上がっていく。

 

 

「《ドラゴン」

 

 

そう、エアロブイドラモンのテリトリーにだ。

 

 

「イ ン パ ル ス ! ! !》」

 

 

全ての海賊達は海に戻る事はなく

 

ドラゴンの形状をした衝撃波に穿たれていく。

 

「(・・・・・・・・・相変わらず汚ねぇなレイド帝国)」

 

海面に1つだけ浮かぶデジタマを拾う幻翼竜の顔に普段の気弱で情けない様子はなく

 

 

この嵐にも負けない荒々しい気性が露になっていた。

 

 

「すっげぇ!、すげえよエアロブイドラモン!

な?、香子」

「ま、まぁ、うちのパートナーやったら・・・これぐらいはして貰わんと」

「あーーー!、ねぇねぇみんな!

海賊船が沈んだ所、何かバチバチしてる!」

「ッ!、あれはゲート、デス!?」

「ぬ!?、まさかあの海賊達自体がレギオン群島への鍵だったので御座るか!?」

 

 

アォォォーーーン! アォォォーーーン!

 

カフッ   カフカフ・・・!

 

 

「デッカードラモン号!、無事だったんだな!

フレイモンはどうかわかんねーけど・・・」

「じゅんじゅんも大丈夫かなー?、とにかく戻ろリュー君」

「ブイはんも遅れたらあかんよ」

「誰に向かって言ってんだ、デス?」

 

何はともあれ、舞台少女達を乗せたギンリュウモンとエアロブイドラモンはボロボロなデッカードラモン号の甲板に着艦。

 

「ふえええええ・・・

つ、つかれたデスぅうううううう・・・」

「ブイモン、色々戻っちゃったねー」

「華恋ちゃん、お疲れ様!

早く中に入ろ?、風邪引いちゃったら大変だよ」

「髪も衣装もビシャビシャやぁ!

うちはようお風呂入りたーい!」

「後でな

それで、爺さん

本当にあの穴の向こうが目的地なのか?」

〔「ああ!、間違いないぞい!

あそこから故郷の気配を感じるんじゃ!」〕

「ワー爺・・・」

「今は感傷に浸ってる場合じゃないよ

アレ、いつまで存在するかわからないんだから」

〔「!、申し訳ありません始祖様・・・ッ

皆の衆!、早く艦内に!

これよりデッカードラモン号はゲート内に突入する!」〕

 

伝声官越しに聞こえるワー爺の声は固い。

 

「華恋ちゃん!、双葉ちゃん!、香子ちゃん!

よかったぁ!、3人共無事で、本当にッ」

「ばななもな

で、委員長とフレイモンはどうなった?」

「あ、えっと、その・・・

色々あって疲れちゃったみたいだから

今は休んでるよ、あははっ」

 

 

「り、リーダー・・・

持ってきたおいらが言うのもなんだけど・・・

ナナさん、ジュンナさんに鎮静剤使うの全然躊躇わなかったんだな・・・」

「さ、流石の判断能力だった!

実際あのままではどちらも危うかったのだし」

「でもさでもさ!、シーサモンが救急箱持ってきた途端奪い取っててあの子ヤッベくね?

なぁ?、ガルル」

「無駄口叩いてる暇があるなら足動かせ!

グルル!」

「しかし、辿り着くまでにこんなにも損害を受けてこの先大丈夫なのでしょうか?」

「ドーベルモンの不安は最もだ

それでも自分達は長と舞台少女の皆さんを信じて足を動かし続けるしかないんだ

デジタルワールドに本当の明けが戻るまでは」

 

 

 

 

☆デッカードラモン号、操縦席

 

「ワー爺、ついにだね」

「ええ、漸くこの日が来ました」

 

ハンドルを握る黒毛の老人狼に語りかけるのは紫の獣のみ。

 

「(・・・・・・・・・本当なら、君はあの日仲間と共に果てる事が本望だったのに『あいつ』が無理な願いを押しつけたせいでずっとしなくてもいい苦労を )」

「ドルモンや

ワシはウラルでの日々、結構楽しかったぞい♪」

「!」

「機械弄りも裏工作もやってみると案外上手くいってのぅ

眠れる才能が開花した感じじゃったわい!

それに今も、ワシはこんなにも沢山の仲間に恵まれておるんじゃ

だから、皆の衆の期待には応えんと!」

「うん、そうだね・・・『明けの遠吠え』も舞台少女達もそのパートナーもワー爺を頼りにしてるよ

も、勿論ボクもッ」

「フォッフォッフォッ!、嬉しいのぅ

これはまだまだ現役で頑張らんとなぁ!!」

 

大きな足でアクセルを踏み込めばデッカードラモン号は加速。

海の真ん中に出現したゲートへの侵入を果たす。

 

「わーーー!?、SF映画みたいに周りの景色がグニャングニャンになったよ!」

「実際ワープみたいなモンだからね☆

・・・・・・・・・ただ、あの所々出来てる亀裂っぽいのに触ったら最期ダークエリアに送られて転生さえ許されないレベルで完全消去されっからそのつもりでいて」

「す、ストラビモン!

そういうのはもっと早くに教えてよ!」

「だが!、帝国の本拠地たるレギオン群島はこの先にしか無いで御座る!」

「それに、他の3人もきっと・・・!」

「クロ子と天堂はまぁ大丈夫だろ、問題は」

「まひるはんがおらんとなんも出来ん神楽はんが心配どすなぁ」

「まるでカオルコみたイヒャイイヒャイイヒャイエフゥ!」

 

窓の向こうに見える異空間に舞台少女達とそのパートナーが各々の反応を見せる最中

 

 

「「うぅっ・・・ううう・・・・・・・・・」」

 

 

・・・・・・・・・純那は自分のベッドで、フレイモンは通路の片隅に寝かしつけれていた。

 

〔「皆の衆、これよりゲートを抜ける!

各々衝撃に備えるんじゃ!」〕

「しょ、衝撃に備えるゆうても!

シートベルトも何もないやーーーん!」

「文句言う前にどっか掴まってろ!

生憎あたしはフレイモンで手一杯だ!」

「レオル、モン?」

「アア"ン?、どこにしがみつこうがァ

オレサマの勝手だろうがァ!?」

「とかなんとか言いつつ、ジュンナチャンをガッチリ固定してるボウヤでしたとさ☆」

 

 

ギシッ ギシギシギシギシギシギシ!!!

 

 

「ふええっ?!、ふえええええん!!?」

「ど、どうしよう!

途中でデッカードラモン号が壊れちゃったら

私達ッ」

「まひるちゃん大丈夫、だいじょーぶ、だよ!

だって、舞台少女は舞台に生かされてる!

だから、きっと!」

 

 

〔「抜けたぞぉぉぉおおおい!!!」〕

 

 

『      !、ーーー~~~!?!?』

 

 

老人狼の咆哮と共に艦内を襲ったのは

 

内臓が浮き上がるような感覚

 

後、息も出来ない程の衝撃

 

後、足元がガリガリ削れるような激しい振動。

 

そう、ゲートを抜けたデッカードラモン号は

 

空中に投げ出された挙げ句

 

地上へと落とされたのである。

 

 

「ぁぃったあああ~~~!」

 

 

「ぬ、ぬぅん・・・!」

 

 

落下時のショックで気絶していた華恋とリュウダモンがヨロめきながら起き上がれば

 

「み、んな・・・・・・ぶじ?」

「まずは!、テメェの、心配してなァニンゲン!!」

「・・・・・・・・・ごめんね、それからありがとう」

「ケッ!」

「!、何!?、どういう状況!?

なんで私のベッドにレオルモンッ!?」

「い、一体何があったんだ!?、フタバ!」

「おー、ようやくおめざめかー」

「いいごみぶんどす、なぁ!」

「デスぅ~~~」

「アッハッハァ☆、全員ダイジョバナイナイ!ってカンジ?」

「もうなにいってるかわからないよぉ」

 

とりあえず、他の舞台少女もデジモンもいつも通り。

 

「み、みなのしゅ~!」

「お、お爺ちゃん!?」

「退化でもしたので御座るか!?」

「ううん、そうじゃないよ

腰打って立てなくなっただけ

一応、薬草は貼っておいたからその内回復する・・・・・・・・・筈だよ、うん」

「わ、ワシの事は良いんじゃ!

それより、外を!」

『外?』

 

四足歩行のワー爺とドルモンに先導され

6人と5体が降り立ったのは

 

レイド帝国の支配を現す紫に濁った空と

 

そこに浮かぶ双つの光球の下で

 

鈍った明かりに照される灰色の大地。

 

「ど、どうなってるのアレ!?

火山に氷山、それからジャングルに

あ、あっちは砂漠!?、環境も気候も滅茶苦茶じゃない!」

「まるで、別々の舞台の背景を無理矢理繋げたみたい・・・」

「ナナさんの言う通り

ワシの故郷、はじまりの街があった島

その周辺に存在した島々をバラバラにし

強引に組み合わせのがレギオン群島ッ!、ガルルルルルル!!!」

「じ、爺さん?」

「ふえええ・・・!」

「顔怖!

は、歯ぁ見せ過ぎとちゃいます?」

「無理もない!

故郷をこんな、玩具のように弄ばれては!」

「ワー君」

「ガルルルゥウウウ!、わかっています始祖様!

わかっているの、ですが!」

 

 

♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪!

 

 

『!』

 

異常な風景に舞台少女達が圧倒されていると

彼女らの手首からあのメロディが流れだした。

 

「今度はなになにー!?」

「静かにしなさいバッ華恋!

・・・・・・・・・はじまりの、まち?

!、そこって確かワーお爺さんの」

「フォーーーゥ、どうやら取り乱してる場合ではなさそうじゃのう

すぐにでもデッカードラモン号を修理せねば」

「お爺ちゃん、そんな無理しなくても」

「心配いらないってマヒルチャン!

この子はそんなヤワじゃない・・・」

「ワー爺様!、急ぐで御座 ぬぁ!?」

「だからって無茶ブリはダメよぉダメダメ☆」

 

 

 

☆応急修理中デッカードラモン号、甲板上

 

 

「むぅううう」「・・・・・・・・・」

 

 

修繕作業が終わるまで自由行動となったのだが香子は何やらご立腹な様子。

 

「やっぱり納得いかへん!

なんでうちのお風呂が最後になるん!?

今回一番活躍したんはうちなんやから一番風呂入ってもええんとちゃいます?」

「・・・・・・・・・」

「大体ルーレットで決めるとかおかしいやろ!

レヴュー禁止はまぁ、しゃあないとして

せめてじゃんけんにして欲しいわ!、じゃんけん!」

「・・・・・・・・・」

「ーーーーーーッ、いい加減何か言うたらどうどす!?」

「ん」

「なんなんその手?」

「御褒美、デス」

「はぁー?」

「あー!、やっぱり忘れてるデスぅ!

ブイが飛べたら御褒美くれるって約束したデスぅうううううう!!」

「はて、うちそない約束しましたっけ?」

「ふ、ふん!

そんなことだろうと思ってた!、デスぅ!

それに!、カオルコの御褒美なんて!

どうせ対した事ないに決まってる、デス!」

 

 

「・・・・・・・・・へぇ」

 

 

「え?」

 

 

だだっ広い武骨な甲板の上、淀んだ紫空を背景に

 

 

「よぉ見とき」

 

 

レヴュー衣装をゆらりと揺らし

 

 

膝を曲げ、しゃなりしゃなりと歩きだす

 

 

「!」

 

 

ただ、それだけの動作なのに

何故か、ブイモンは目が離せない。

 

 

「千華流、跡取り 花柳香子」

 

 

砂の入り雑じった風の中

 

 

ひらり、はらりと揺蕩う指

 

 

ふわりと広がる髪

 

 

その一本一本にいたるまで

 

 

感じられる細やかな意識

 

 

だというのに、彼女の仕草はどこまでも自然

 

 

「その舞は」

 

 

音楽もない野外で

独りで使うには広すぎる場所

嫌悪感しか沸かない濁った紫の空の下

 

 

そんな事は関係ないとばかりに

 

 

「高くつきますえ?」

 

 

彼女はこの場を自分だけの舞台に塗り替えていく

 

 

「って!、双葉はん!?

い、いつからそこにいたん!?」

「あ・・・」

「風呂空いたから呼びにきた、けど

その、邪魔して、ごめん・・・」

 

だがそれは、罰の悪そうな顔をした双葉の登場により淡く消え去ったのであった。

 

「別に、誰も邪魔やなんて思うてまへん」

「だってお前、今の本気 」

「お風呂頂いてきますわ」

「お、おい!」

 

双葉を押し退け、艦内へと駆ける香子。

 

「・・・・・・・・・」

「どうだった?、あいつの舞」

「            飛んでた、デス」

「え?」

「ズルいデスよ

羽根もないのにブイより自由に飛ぶなんて」

「そっか

 

 

へへっ♪」

 

 

 

 




※海賊船
動力はチート改造デジモン1体とコスパが良いのに帆船とは思えない航行速度
遠距離からでも正確に狙い撃つ艦砲射撃
船長、船員、水爆要員、機雷要員は無限湧き
後、実は自己再生能力持ちという正攻法じゃまず攻略不能なクソゲーになるのに攻略しないと海域が脱出出来ないという罠


ただし、やっぱり舞台少女のキラめきには弱いので内部に華恋が乗り込んだ時点でヌルゲーとなりました




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出発進行! レギオン群島行き海上超特急

☆東方士武大陸、レギオン群島行き海上線路

 

 

「子分共ぉ!、しっかり運べぇえええい!」

『『『『『へい!、親分!!』』』』』

 

 

「すっごい増えてるのデシテーーーー!?」

 

コンゴウ親分を筆頭に甲虫、鬼、狐、猿、恐竜侍等々が運ぶのは

 

 

蒸気機関車。

 

 

「これもデジモン?」

「へい!、ひかさん!

こいつはロコモン、帝国の造った線路を勝手に使いまくって仕舞いには線路ごと爆弾で吹き飛ばされたんだど」

「だども、消去されずに瓦礫ん中さ生き残ってたんだぁ!」

「・・・・・・・・・本当に動くの?、コレ」

「すっげえ鉄錆臭ぇジャン!」

「さびさびーーー!」

「確かに、見た目からは不安しか感じられませんね」

〔・・・・・・・・・〕

「クロさんと姉御の言う事もごもっとも

しかし、まずは試してみんとわかりやせん」

 

舞台少女から懐疑的な視線が向けられる中で作業は続けられ、錆ついて変色した車体と窓ガラスがくすんでいて中が見えない客車が線路上に乗せられ、連結される。

 

〔・・・・・・・・・・・・・・・・・・セン、ロ?〕

「「「!、喋った!?」」」

 

すると、正面にある目に光が宿った。

 

「おお!、目覚めたか!」

〔オレハ、ハシレル?〕

「そうじゃあ!、そうじゃあ!

おめぇは姉御達を乗せて 」

〔ハシレル、ハシル!

オレハハシル!、ハシリツヅケルンダ!!〕

 

直後、各所から金属同士が擦れる不協和音を出しながら動き始めるロコモン。

 

「ま、待てぇい! どわぁあああ?!」

『親分!』

「ちょっと!、どういう事よ!?」

「わからない

でも、このままだと不味いと思う」

「そのようですね

コンゴウ親分、大変お世話になりました

どうかお元気で」

「あ、姉御ぉおおおおおお!!?」

 

徐々に加速していく蒸気機関車に舞台少女3人とパートナーデジモンは乗り込んでいく。

 

 

〔ハシル!、ハシルンダ!!〕

 

 

「・・・・・・・・・行っちまったど」

「お、親分

大丈夫ですかい?」

「       

 

 

わかりやした、姉御」

 

 

『『『『『ん?』』』』』

 

 

「これからも姉御の素晴らしさを多くのデジモンに広めるべく布教に励みます」

「お、親分?

さっきブッ飛ばされた時、頭打ったべ?」

「もう親分じゃあない

 

 

ワシは天堂教のコンゴウ教祖じゃあああ!」

 

 

『『『『『お、おやぶーん!?』』』』』

 

 

 

☆海上線路運行中ロコモン客車内

 

「とりあえず、客車には入れたけど・・・」

「お、椅子発見ジャン! ゲホゥッ?!」

「けむーーー!」

「何故こうなるとわかりきってるのに飛び込むアホ熊ーーー!?、ゴホゴホ!!」

「すごい埃

こんな時、まひるや星見さんや大場さんが居てくれたら」

「ふふっ、花柳さんは

うち、こないな所居られまへんわぁと言いそうですが」

「そしたら双葉に

しょうがないだろ、こんな時ぐらい我慢しろよ

って叱られるんじゃない?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・華恋」

「ヒー?、ヒー!」

「エリスモン、どうしたの?

急に抱き着かれると爪が痛い」

〔ハシル!、ヤットハシレルンダ!!〕

 

埃まみれの朽ち果てた客車内にて3人と3体が過ごす中、ロコモンは本能のまま線路を爆走していた。

 

 

「あらあら、うふふ♪」

 

 

その様子を上空から眺める謎のデジモン。

人型をしたソレは黒いローブで全身覆い隠し

唯一露出した口元を歪めると

 

 

「「「「「「!」」」」」」

 

 

一瞬で客車の真横へ移動。

 

 

「伏せろぉおーーーーーー!!!」

 

 

ルナモンが警告するのと同時に窓が砕け、客席に礫のようなモノが複数撃ち込まれる。

 

「走行中の機関車で襲撃を受けるとは」

「しかもここ海の上よ」

「つまり、普通の西部劇よりも難易度が高い」

 

 

「「「面白い!!」」」

 

 

「どこをどう解釈すればそういう発想に至るのデシテ!?、このニンゲン共はーーー!?」

「よくわかんないけど、とりあえず早いモン勝ちジャン!」

「エー!、ヒーまもるー!」

「貴様らは貴様らで何をしているデシテ!?

 

そして、またいつの間にかワタクシだけ!

 

だから独りにするなー!、寂しいだろ!?」

 

数少ないツッコミ役は声を荒げながら白い幕を通り他の面々が集う客車の屋根へ。

 

「あら、皆揃って成熟期なんて仲良しですこと

 

 

そんな事でよくキラめきを奪い合えましたわね」

 

 

「「「!?」」」

「《クレッセント、どーん!》」

「《クリムゾンスラッシューーー!》」

「だ・か・ら!、勝手に突っ込むなアホ共!

《ティアーアロー!》」

 

愕然とする舞台少女達を余所にデジモン達は3体同時で攻撃すれば

 

「そうね、これじゃ」

「ジャン!?」「ヴェー!?」

「全然ダ・メ」

「ぐえっ?!」

 

グリズモンとフィルモンは途中で躓き、レキスモンは跳ね返された《ティアーアロー》が顔面に直撃。

 

「あの子達の相手を片手で!?」

「ほぼ一瞬でしたが確かに見えました

グリズモンとフィルモンの足を払い

レキスモンの矢を掴んで投げ返したのは」

「棘の、鞭!」

「うふふ♪、流石は99期生の首席と次席

そしてスタァライトを勝ち取り、あまつさえ

新たに生まれ変わらせた舞台少女・・・」

「さっきから、思わせ振りね!」

「聞きたい事は色々ありますが

まずはあなたを打ち負かしてからにしましょう」

「あらあら、随分傲慢ですこと」

「!」

「でも、それでこそ舞台少女と言えましてよ」

「「「うあ!」」」

 

真矢とクロディーヌの斬撃

その隙に死角に回り込んだひかりの刺突

それらは全てを片手で振るわれた鞭であしらわれ、各々のパートナーの方へと蹴り飛ばされた。

 

「クロ公!、お前何負けてるジャン!?」

「ッ、負けてない!!」

「ヒー!、だいじょぶー?、いたいー?」

「うん、痛い、フィルモンのトゲトゲ・・・」

「私を相手に片手とは

傲慢なのは果たしてどちらでしょうか?」

「言ってる場合 ッ!?

パートナー抑えろアホ共ーーー!!」

 

 

〔ハシル!、ハシリツヅケルンダ!!〕

 

 

レキスモンが真矢に覆い被さった直後、ロコモンは線路が進むままに海中へ。

 

 

 

ザッパァァァン!

 

 

「ブハーーーッ!、

あ!?、クロ公居ねえジャン!

やべぇ!、ウチ落とした!!?」

「ロコモンが浮上するの同時にテンドーと一緒に元気よく斬りかかっていったのデシテー・・・」

「ヒー!、ヒー!、ヴゥーーー!」

「フィルモン、もう、大丈夫

だからッ、離して、痛い!」

 

再び蒸気機関車が海上を走り始めるや否や

Odette the MarvericksとEtincelle de Fierteが剣のような形状をした棘と激突。

 

「ッッッ!、舐めてくれるじゃない!」

「あらあら?、何か御不満かしら?」

「ええ、不満しかありません

私達を舞台少女と呼びながら

眼中にないと言わんばかりのその態度は!」

「うふふ、仕方ないじゃない

だって、あたくしはもう・・・ね?」

「「!?」」

 

真矢とクロディーヌによる剣劇は一瞬で鞭と化した棘に2人纏めて絡め取られた所で途切れる。

 

 

ヒュゥッ!   キィン!

 

 

直後、走行中の風を味方にしたBlossomBrightが背後から迫るのだが・・・無造作に上げられた黒いヒールにより弾かれた。

 

「・・・・・・・・・」

「《ライトニングスティンガー!》」

「《ティアーアロー!》」

 

ひかりがワイヤーを引き寄せ短剣を手にすれば、彼女の両脇からフィルモンとレキスモンが必殺技を乱れ撃ち。

 

「接近戦では勝てないからと遠距離攻撃ばかり

でも、同じ事の繰り返しでは観客も飽き 」

 

エネルギーを流し込む針毛と氷の矢は

 

黒ローブに接近する寸前でぶつかり破裂。

 

雹の散弾となって降り注ぐ。

 

「どーーーん!!!」

「女性を足元から襲うなんてデリカシーが無い事

躾がなっていないんじゃなくって?」

「Je suis désolé・・・!

この子にその手の事を教えるのは諦めてるの」

 

更には、客車内からベアクローが伸びてきたので謎のデジモンは一度真矢とクロディーヌの拘束を解除。

華麗なステップで空中へと舞い上がり、ロコモンの走行に合わせ3人と3体の頭上を浮遊する。

 

「ズッリイジャン!、降りてこいよ!

そんなにウチらが怖いのか!?」

「あらあら、貴女方が昇ってくればいいだけの話ではなくって?」

「そうさせて貰う」

「うおっ!?、!、うりゃあああ!!」

「デシテ!」

 

突っ込んできたレキスモンをグリズモンは訳もわからぬまま掬い投げ。

 

「《ムーン、ナイト!」

「挑発に乗って馬鹿正直に真っ直ぐなんて

あなたらしくないわね、月光の神様」

「!?、ボム!》」

 

黒ローブの元まで到達した兎獣人が振るうのは

 

蹴りではなく、グローブに包まれた拳。

 

「面白い試みですけれど、これでは驚きが足りません事よ」

「なら、これはどう?」

 

催眠作用のある泡を鞭で両断すれば

まるで中から現れたかのようにひかりが登場

実は、レキスモンの背中にワイヤーをくくりつけ一緒にここまで来ていたのである。

 

「ヒーーーーーー!!!」

「・・・・・・・・・!」

「!!?」

 

自分達の周囲を飛び交う針毛の嵐。

そこに秘められたデータ破壊のエネルギーをワイヤーで受け止め、切っ先に収束

 

斬撃と共に放った。

 

「驚いた?」

「くっ!」

 

ひかりの一撃を受け止めた棘が根元から消滅し、露出した口元に漸く焦りが浮かぶ。

 

だが、彼女らの舞台はこれだけでは終わらない。

 

特に

 

 

「行って来い」

 

 

落下しながらの状態で

次々に打ち上げられる氷の矢を階段に

 

 

「身の程知らずな大馬鹿者め

【ワタクシのパートナー】」

 

 

天へとより高く昇る、このトップスタァは。

 

 

           ザ

 

 

           ン

 

 

           !

 

 

海の向こうの水平線すらも照らすキラめきは

 

 

ローブのフードを両断。

 

 

「・・・・・・・・・流石に首は落とせませんか

 

 

ですが、そこは決して安全圏ではありません」

 

 

「C'est vrai!」「キタキタキター!」

 

 

「~~~ーーー!」

 

 

真っ赤な薔薇の蕾のような頭部を露にしながら

客車へと叩き落とされる謎のデジモン

 

 

を今か今かと待ち受ける

 

 

猛獣達【西條クロディーヌとグリズモン】。

 

 

「(おっどろいたねぇッ!

 

成熟期でここまでやるなんてさ!

 

流石はあんたが推薦しただけの事はあるよ

 

・・・・・・・・・でも、アタシの相手はまだちょっと

 

 

早かった、ねぇ)《ローズベルベット》」

 

 

静かな呟き共に客車の内部

 

最初に撃ち込まれた種から

 

大量の棘の蔓が伸び始める。

 

 

「「こんなモノに!

私は/ウチは負けない/ジャン!!」」

 

 

凄まじい勢いで群がる脅威にクロディーヌもグリズモンも臆さない。

Etincelle de Fierteとベアクローを猛然と振るい

自分達に迫る棘を全て排除してみせた。

 

「「西條さん!」」

「相変わらずあのアホ

荒事にだけは使えるのデシテ・・・」

「ヒー!、みんなー!、おかえりー!」

 

その間にひかり、真矢、レキスモンが客車の上に着地。

 

「うふふふふふ♪、どの方も素晴らしい対応力ね

久しぶりに中々良い物を観せて貰いましたわ」

「白々しい!

そっちはまるで本気を出してないじゃない!

そういう事はせめて両手を使ってから言って欲しいわね!」

「あら?、いいんですの?

 

 

本気を出しても」

 

 

謎のデジモンが微笑を浮かべると同時に

 

 

客車が大きく爆ぜた。

 

 

「きゃあああ!?」

「ヒーーー!」

「掴まれテンドー!!!」

「すみません・・・!」

「な、何ッ!?」

「クロ公お前何やったジャン!?」

 

 

「あらあら、うふふ♪」

 

 

突如海に投げ出された舞台少女とデジモンの慌てふためく様を見て上品な笑みを浮かべる

 

このデジモンの正体は・・・。

 

 

「レイド帝国四天王

麗将・ロゼモンの本気を受け止めるには

貴女方ではまだまだ実力不足だったみたい」

 

 

「な!?、ば、馬鹿な!

そんな大物が何故こんな下界の片隅に!?

(だが、それならばワタクシを月光の神と呼んだのも納得が・・・

しかし!、やはり合点がいかないデシテ!)

貴様は最初の時点でワタクシ達全員を消せた筈!、何故そうしなかったのデシテ!?」

「だって、その方が

舞台が面白くなりそうだと思いません事?」

「成る程・・・、私達は・・・

あなたの演出通りに踊らされていた、と?」

「何ごちゃごちゃ言ってるジャン!?

ウチらまだ終わってねーぞ!」

「そうよ!、この程度で私達の舞台は!!」

「止まらない、大切な約束が待ってるから!」

「エー!、ヒー!、まもるー!」

「なら、次はこんな展開はいかがかしら?」

 

ロゼモンは上品に片手を振る。

 

 

それだけで、海流が大きくうねり

 

 

巨大な渦潮が発生。

 

 

「扉は開けましたわ

 

 

次の舞台、レギオン群島でも

 

 

歌って、踊って、奪い合い

 

 

あの無作法な観客達をも楽しませてあげて

 

 

それが、それだけがこの物語を・・・」

 

 

渦の中心にスパークが走るのを見届けると黒いローブを翻し、麗将は姿を消した。

 

「う、うおおおおおお!!!

ま、負けねぇジャ うおおおおおお!!?」

「ダメ!、吸い込まれる!!」

「ヒーーーーーー!、ヒーーーーーー!」

「ッッッ!」

 

 

「西條さん!!!、神楽さん!!!」

 

 

どこまでもよく通るその声は

 

 

激しい水流の音にも決して負けはしない。

 

 

「この先で待っています

 

次の舞台で、お会いしましょう」

 

 

「天堂真矢!?」

「き、貴様何を勝手に!?」

 

天堂真矢はパートナーを振り切って独り渦の中心

 

新たな舞台に飛び込んでいく。

 

 

 

あーーーーーーもーーーーーー!

 

デシテーーーーーー!!!!!!」

 

 

彼女の後を全力で追い縋る兎獣人レキスモン。

 

 

「ふざ、けないで!

始まる前から自分が勝った気になって!、Méchante va!」

「そうジャン!

一番になんのはウチに決まってんジャン!」

 

 

すると、西條クロディーヌと大熊グリズモンは怒りを露にしながら突っ込んでいった。

 

 

「フィルモン、お願い」

「わかったー!」

 

 

神楽ひかりと針鼠獣人フィルモンが渦の中心

 

 

レギオン群島へのゲートを潜ると

 

 

海は静けさを取り戻す。

 

 

〔ハシル!、ハシル!、オレハハシルンダ!

ズット!、ドコマデモ!〕

 

 

一方ロコモンは乗客の行方等お構い無し。

己の欲求のままレールの上を走っていく。

 

 

「《シャインブレイカー》」

 

 

〔!!?、バジ   ゥ〕

 

 

「不穏分子、削除完了

全ては我々レイド帝国の為に」

 

 

 

天を覆う程の大量のミサイルと

 

 

巨大な何かに車体を貫かれるまでは・・・。

 

 

 

 

☆レギオン群島・荒野エリア

応急修理中デッカードラモン号、艦内

 

「はい、包帯巻き終わったよ」

「す、すいませんなんだなマヒルさん・・・」

「いいんだよシーサモン

それより、さっきの話の続きなんだけど

 

 

あれ?」

 

 

「なんだな?」

 

 

ピピピ! ピピピ!

 

 

「なんだろ?、この音」

「操縦席の方から聞こえるんだな」

「お爺ちゃーーーん!」

「なんじゃらフォ~い?、フォフォフォーーーゥ♪」

「・・・・・・・・・長ぁ!」

「お爺ちゃん、あらからずっと作業してたもんね・・・!」

 

シーサモンとまひるの目頭が熱くなる中、血走った目の下にクマを作ったワー爺登場。

 

「どうしたんじゃーーーい、マヒルさんやぁ

フオッ!?」

「お、お爺ちゃん?」

「長!、まさかこれ敵の接近なんだな!?

じゃ、じゃあ見回りしてるリーダー達が!」

「違うぞいシーサモン、こいつは

神機レーダーがここに居る舞台少女さん達以外の反応を検知したんじゃ!」

「!、それって!!

華恋ちゃん!、みんな来てーーー!!」

「何?、何?、どうしたのー!?」

「ふわぁあ・・・んもう、せっかく気持ちよう休んどったのにぃ」

「そうデスよぉ、あふっ」

「お前らは寝すぎだって」

「完全体に進化しソウルを多く消費したんだ!

体力の回復に時間がかかるのも仕方ない!」

「こいつらの場合それだけじゃねぇだろうがァ」

「まひるちゃん、何があったか教えて貰ってもいい?」

「また何かトラブルでもあったの?」

「うん?、ワー爺やっと休む気になったの?」

「その方がオジサンも良いと思うよ

さっきから目がラリラリしてたし☆」

「わ、ワシの事はお気になさらず・・・

それよりこれを!、神機レーダーを!」

「しんきれぇだぁ、とは?」

「ここにある6つの点が皆の衆!

そして、このバラバラに離れた3つが 」

 

 

「ひかりちゃん!!!」

 

 

「ワフォ!?」「ぬぅううん・・・!」

「ひかりちゃんなんだよね!?

どれ?、どれがひかりちゃんなの!?、ねぇお爺ちゃん!」

「ハイハイ☆、落ち着いてカレンチャン」

「そんな風に詰め寄られたらワー爺も説明出来ないよ、うん」

「後、天堂とクロ子の事も忘れんなよ・・・」

「だが!、もしカオルコがこんな状況なら

きっとフタバは今のカレンのように 」

「フレイはん、そうゆうの言わんでええから」

「ふぇっ!?」

「す、すまない!」

「誰がどれかわからなくても、そこに誰かが居るのなら急いで探して上げないとッ!」

「アア"ン?、こんなショボい地図が当てになんのかァ?」

「でも!! 」

「レオルモンの言う通りよ、なな

せめて周辺の調査に行っているファングモン達の報告を待ってからにした方が懸命だわ

シーサモン、遠吠えで報せられる?」

「や、やってみるんだな!」

「うううっ!、待っててね!、ひかりちゃん!

もうすぐあなたを迎えに行くから!!!」

 

 

「(いよいよ、か・・・

だが!、どんなニンゲンでも関係ない!

デジタルワールドを救えるのならば!

この胸に疼くッ、よくわからないモンも!

必ずや耐え切ってみせるで御座る!!!)」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「マヒルチャン

だから、その悟りを開ききった眼差し何?」

 

 

 

 

 

 

 




※電脳世界の救世主
デジタルワールドにおいて舞台少女達が演じている役。
いつの頃からかわからない程の昔から多くのデジモンに語り継がれていた伝承


ニンゲンがパートナーとなったデジモンと共に世界を救う


これを心の底から本気で演じることで、パートナーが進化したレベルに応じて補正が入るので順調にいけば究極体にすら舞台少女の攻撃が通用します。



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究極体出現! 撃ち破れローダーレオモン&ドルグレモン

☆レギオン群島・荒野エリア

応急修理中デッカードラモン号、甲板上

 

 

「ガルムモン!、いっきまーーーす☆」

「え?、ええ!?、えええーーー!!?」

 

 

「・・・・・・・・・あのオヤジは何やってんだァ?」

「一度アレやりたかったんだって

うん?、今度は青瓢箪達がやるみたいだね」

 

 

「石動双葉!」「花柳香子!」

「エアロブイドラモン!」

「「「出る!!」」」

「おおおっ!、みんな格好いいな!!」

 

 

「今のニンゲン共、頭に何被ってんだァ?」

「ヘルメット、だって

こんな事もあろうかと!、とか

チャラチャラチャチャ~ンとか言いながら目の焦点がおかしいワー爺が渡してたよ」

「あの爺さん頭大丈夫かァ?」

「うん、大丈夫じゃない

だから『明けの遠吠え』達が4体掛りであんな事をやってるんだよ」

 

 

「フォウン!、フォーーーンッ!

そ、そこは!?、いかん!、いかんぞい!」

「長!、我慢しなくちゃダメなんだなー!」

「腰とか肩とかヤッベ!

ガルル!、これヤッベくね!?」

「そう思うなら真面目にやれ!、グルル!

なんとしてでも長の疲れを癒すんだ!」

「リーダー、この戦いが終わったら私

二足歩行に進化して機械整備が出来るよう努力します」

「ドーベルモン、それはフラグという奴らしいぞ

前に始祖様から教えて貰った事がある」

 

 

「ハタ目獲物を襲ってるようにしか見えねぇなァ・・・」

「うんうん、うん?」

 

 

「りゅ、リュー君すとっぷすとっぷ~!」

「あのような遊戯をやる暇は無いで御座る」

「確かに、早くひかりちゃんには会いたいけど!

私達だけやらないのはなんか寂しいよぉ!」

「・・・・・・・・・」

「無視されたーーー!?」

 

 

「ケッ、しょーもねぇなァ」

「さて、そろそろジュンナと交代しないと

一応訊くけど、君はどうする?」

「寝る」

「そういう事にしておくよ、うん・・・」

 

神機レーダーの反応を頼りに真矢、クロディーヌ、ひかりの捜索に出た舞台少女達を見送ったドルモンがハッチに入ると

 

「ねぇ、なな

そろそろ機嫌直して」

「・・・・・・・・・」

「うん?」

 

艦内では純那とななが何やら神妙な顔つきで語り合っていた。

 

「3人の事が心配で居ても立っても居られない気持ちも、この状況があなたにとって決して面白いモノじゃないのもわかってる

でも、もう幕は上がってて私達は舞台少女なの

だから、今は 」

「レイド帝国を倒して、この世界を救う事が本当に私達9人の役なの?

ここはいつものあの地下の劇場じゃない

データの中にある世界なのに

どうして純那ちゃんはそう言い切れるの?」

「それは」

「人間が救ったっていう物語があるから?

でも、それがどんなモノか

本当かどうかもわからないじゃない

大体、人間で良いなら舞台少女が・・・

みんながやる必要なんてない

それでも、舞台少女じゃなくちゃいけないなら

 

 

私だけで良かったのに」

 

 

「ッ!、なな!!」

「ごめん、純那ちゃん

ちょっと頭冷やしてくる」

「・・・・・・・・・」

 

足早に階段を降り、ドルモンを避けて外へと飛び出すなな。

 

「はぁーーー、やっちゃったのかも・・・」

「うん?、そう思うならワザワザあんな話しなくても良かったんじゃないかな?」

「もし君が悩む友を持っているなら

悩みに対して安息の場所となれ

だがいうならば堅い寝床、戦陣用の寝床となれ

そうであってこそ君は最も役立つものとなるだろう」

「何だよそれ?」

「ニーチェの言葉よ」

「ルーチェモン?」

「誰よそれ!?」

「傲慢を司る七大魔王だよ

他の魔王と一緒にデジタルワールドを支配しようとして・・・

あ、確かニンゲンの伝承に出てくるのもそいつらだったっけ?

うーん、駄目だあんまり思い出せない」

「え?、ちょっと待って!

ドルモン、あなた

何さらっと重要な事言ってるの!?」

「ワザとじゃないよ

自分が座に着く前に起きた大昔の事なんて覚えてる奴殆ど居ないんじゃないかな、うん」

「座?」

「!!!、な、なんでもない!!!」

「そういえば、ストラビモンがあなたの事・・・

隠士殿とか呼ぶけど、それと何か関係が 」

「なんでもないって言ってるだろ!?

大体!、ボクなんかより今はナナの心配をしろ!

君にはあの子の方が大事なんだからさ、うん」

「はぐらかさないで!

知ってる事があるならちゃんと教えてよ!!

今の私にとって・・・、信じられる情報源は・・・

あなたしか居ないんだからッ」

「じゅ、ジュンナ?」

「ななにあんな風に言ってても正直不安なの

 

 

これで、本当に正しいのかって・・・

 

 

だから、少しでもその不安を減らす為に出来る事をやってきたつもり

・・・・・・・・・つもりだったのに、私

海賊が襲ってきた時、足手纏いでしかなかった

海を移動する以上、そこで襲撃されるのは想定出来た筈なのに」

「うん、あの時の君は酷かった」

「・・・・・・・・・そうね、認めるわ

だからこそ、これから先に備える為にも!

もっとこの舞台を、あなた達が生きるデジタルワールドについて知らなくちゃいけないの」

「ボクが知ってる事が君達の役に立つかどうかもわからないのに?」

「それを決めるのは私自身よ」

「・・・・・・・・・

 

 

このデジタルワールドは世界樹により造られた」

 

 

「え?」

 

 

「世界樹はこの電脳空間に生まれた世界において根幹を成すホストコンピュータ

それを中心に幾つかのサーバーが広がっている

そう、まるで枝葉のようにね

ボクらが今居るこの場所だって、世界樹の枝の一部でしかない」

 

 

「ど、ドルモン?」

 

 

「これから向かうはじまりの街は枝の根本

言わば、このサーバーにおいて唯一世界樹の中枢・通称天界にアクセスが出来る場所なんだ

だから、レイド帝国の防備だってあの要塞の比じゃないし

よしんば、天界に行けて世界樹の深奥を占拠しているレイド帝国の支配者と戦ったとしも・・・

 

世界樹と共にデジタルワールドの創世に携わった十の魂が集う創造神

 

世界樹の防衛を司る13の聖騎士

 

世界樹の意思を反映し実行に移す12の神々

 

更には己の意思とチカラのみでその領域に匹敵していた5体の番長

 

他にも多くの究極体デジモンが挑んで

 

 

成す術もなく削除されたんだッッッ!!!」

 

 

「!?」

 

 

「何が、何が!、孤高の隠士だ!?

何が空白の座の主だ!?

何が13番目の聖騎士だ!?

デジタルワールドを守る抑止力?

何も抑えられなかっただろ!?

何も守れなかった!、逆に守られたんだ!

 

 

『あいつ』に!!!、オメガモンに!!!

 

 

なのに、なのに!

こうして戻ってきて生き恥を晒しているッ!

ニンゲンのチカラがなければ成熟期にすらなれない癖にだ!!!」

 

 

「聖、騎士?、あなたが?」

 

 

「うん!、そうさ!

その成れの果てが君のパートナーの正体だッ」

 

パートナーが望む己の知る全て。

それを激情と共に吐き出したドルモンの顔には歪んだ笑みが浮かんでいた。

 

「ほら、言った所で君にはわからないだろ?

知った所でどうにもならないだろ?

だったら、せめて今のうちに夢見ときなよ

もしかしたら、自分達舞台少女なら

そんな相手にも勝てるんじゃないかって何の根拠もない夢物語をさ」

「ええ、そうね・・・

あなたの話を私はきっと半分も理解出来てない

 

 

それでも、話してくれてありがとう」

 

 

「・・・・・・・・・!?」

 

 

「後、そんな想いをしたのに私に協力してくれて

パートナーになってくれて、信じてくれて

ありがとう」

「そ、れは!

君が、『あいつ』に似てると思ったから!」

「そのデジモンも聖騎士?」

「・・・・・・・・・うん、最強のね

なのに、結局帝国にやられたんだ

デジタマに還ったボクをこっちの許可なく無理矢理ワー爺に押しつけて、さ

そういう文句も、今はもう言いたくても言えない

だからジュンナ」

「?」

「君は絶対にナナを離すな

こんな後悔するのは、ボクだけで十分だよ

うん」

「ドルモン・・・」

 

 

アォゥン! アォーーーゥン!!

 

 

「「!」」

 

 

突如聞こえてきた遠吠えの意味は   敵襲。

 

 

 

 

 

☆デッカードラモン号停泊地付近の崖

 

時間は少しだけ遡る・・・。

 

 

「・・・・・・・・・」

 

 

後悔や寂しさを膝と一緒に抱え込むなな。

 

「ねぇ、こんな私を見てて何が楽しいの?」

「いーやァ、イラつくだけだァ」

 

彼女の側ではレオルモンが寝そべっている。

 

「なら、なんで」

「ケッ、自惚れてんじゃねぇ

オレサマがここで寝たいから寝てんだァ」

「・・・・・・・・・そっ、か

でも、自惚れぐらいしないとね

私だって、舞台少女なんだから」

「テメェのブタイってなんだァ?」

「それは勿論、みんなとのスタァライトだよ」

「なら

今のテメェはブタイショージョじゃねぇなァ」

「!」

「アアン?、何キレてんだァ?

ここはデジタルワールドだァ

スタァライトなんて欠片もねぇだろうがァ」

「それは!、そう、だけど・・・」

「最もどっかの冠ニンゲンはァ

んな事お構い無しにスタァライトスタァライト言いまくってるがなァ」

「!!

確かに、華恋ちゃんはこの世界でも

スタァライト、し続けてる

(そんなあの子とひかりちゃんが居たから

私の【再演】は途切れてしまった

 

途切れてしまったからこそ

 

今、みんなが危ない目に合ってる)」

 

ななの脳裏に甦る

 

要塞での死闘、海上での防衛戦。

 

「(【再演】を続けてさえいれば

 

こんな事にはならなかった

 

私が負けたから、みんながッ

 

・・・・・・・・・なんて、思っちゃダメね

こんな気持ちがあったから純那ちゃんに八つ当たりなんてしちゃったんだし)

レオルモンの言う通り

今の私、全然舞台少女じゃないわ」

「なら、テメェはなんだァ?、ニンゲン」

「なな」

「アア?」

「なーな、ニンゲンじゃなくて

ななって呼んで欲しいなって♪」

「ア"ァン!?」

「あ、ばななでも良いのよ?」

「誰が呼ぶかァ!

ケッ、ちったァマシな顔になったなァ・・・」

 

笑顔で詰め寄られたレオルモンは体を起こす

 

 

「あ、れ?」

「!、くそったれがァアアア!!」

 

 

ななの足元が大きく崩れて・・・。

 

 

 

ザッ パァァァアン!!!!

 

 

「この音は!!?、馬鹿な!

周辺に水気は一切なかった筈!!」

「なんかよくわかんねーけどヤッベくね!

なぁ!、ガルル!?」

「ああ!、そうだなグルル!

嫌な予感がビンビンするぞ、リーダー!」

「シーサモン!、手負いの所悪いが長を頼む」

「リーダー!、みんな!

わ、わかったんだな!」

「フォ、フォウン・・・ッ」

 

 

異変に気づいた『明けの遠吠え』の4体が現場に駆けつけると

 

 

「こ!、これは!!

 

 

ナナさん!!!、レオルモン!!!」

 

 

〔「ッッッ!!?、ゴボ!」〕

「・・・・・・・・・ァ、ァ!」

〔フシューーーゥ〕

 

そこでは崖が大きく抉れ

中から赤い装甲と両肩の砲身、銀の両腕が特徴的なマシーンが身を乗り出していた。

 

「な、ナナさんが水の中に!?

アレじゃあ息が出来なくてヤッベえよぉ!」

「それに、レオルモンがデカイ腕に捕まってる!

早く助けないといつペシャンコにされるかわからん!」

「ま、待て!

あいつの威圧感完全体とは比べモンにならない!

まさか!、究極体か!!?」

「「なっ!?」」

「どうやら・・・あの日あなた達に救われた命!

使うべき時が来たようだ!!

 

 

アォゥン! アォーーーゥン!!」

 

 

遠吠えを上げるや否や茜色で細身の体を翻し強大な敵に敢然と立ち向かうファングモン。

 

「!、リーダーに続けぇええ!!」

「「オォウン!!!」」

〔フシューーーゥ〕 

 

すると、他の3体も動き出し四方八方から赤いマシーンに飛び掛かるがまるで意に介されない。

 

「《ブラストコフィン!》」

「《カオスファイヤー!》」

「《フォックスファイヤー!》」

「《シュヴァルツ・シュトラール!》」

〔フシューーーゥ〕

「くそ!、ちくしょう!

こっちは全力なんだから少しは効けよぉ!!」

「諦めるな!、グルル!!」

「せめて、せめて注意だけでも!」

〔フシューーーゥ〕

「!、全員離れろーーー!!」

 

だが、流石に煩わしかったのか

両肩にあるキャノン砲だけを動かし

 

 

〔《ムゲンキャノン》〕

 

 

「「「グギャアアアッ!」」」

 

 

無造作に、強力なエネルギー波を発射。

直撃は受けていない筈なのに、余波だけで傷つき

『明けの遠吠え』の3体は吹き飛ばされる。

 

「(なんで、なんでこの子達逃げないの!?

こんなのどう見ても敵う訳ないのに!)」

「ナナさん!!!、今助けます!!!

 

 

だから レオルモンはお願いしますね」

 

 

〔フシューーーゥ〕

「(!?、ダメ!、ダメぇえええ!!)」

 

砲身が向けられ、エネルギーが充填されている。

それでも茜色の毛並みに細身の狼は止まらない。

マシーンの頭上にある水球の中、必死に声にならない叫びを上げる

 

 

「自分はファングモン!

一度狙った獲物は、絶対に逃さない!!」 

 

 

この世界の希望【オタカラ】を奪い返す為に。

 

 

「《スナイプ、スティイイイルッ!》」

〔《ムゲンキャノン》〕

「《パワーメタルッッッ!!!》」

 

 

盗み、超弩級のエネルギー砲、巨体鉄球。

これらの発動はほぼ同時。

 

 

「間に合った!?」

「じゅ、ジュンナさん!、ドルガモン!」

「わっかんねぇよ!、わっかんねぇよぉ!」

「リーダー!、リーダー!」

「ファングモンッ

くそ!、またボクはワー爺から仲間を!!」

 

マシーン周辺をもうもうとした爆煙が覆う

 

 

「・・・・・・・・・」

「ケッ、オレサマを余所にかっこつけんなァ!

犬共がァアアア!!」

「ガフッ、ゲホ!」

〔フシュ・・・ウ〕

 

 

それを引き裂き

 

巨体を傾けたのは輪と舞を手にした大場なな。

 

彼女のパートナーたる獅子・ライアモンの口には

 

ボロボロなファングモンが咥えられていた。

 

「なな!」

「「「りぃぃぃだぁぁぁあ!!!!」」」

「よかった!、本当に!、うんッ!」

「ドーベルモン、ガルルモン、グルルモン

ファングモンと一緒にデッカードラモン号に戻っていて

ここは、私達が引き受けますから」

「「「わふっ!?」」」

「なな、あなた」

「さっきはごめんね純那ちゃん

でも、もう大丈夫

デジモンのみんなのお陰でやっとわかったから

本当の、本当にわかったから・・・!

この世界、デジタルワールドでの私の役!」

「ケッ、ちったァ

ブタイショージョ、らしくなったんじゃねぇかァ

ナナァ」

「あははっ、やっと名前で呼んでくれたね♪」

〔フシューーーゥ!〕

「ア"ア"?、そういやテメェ

よくもこのオレサマを踏んづけてくれたなァ!

ポンコツ野郎がァ

 

ぜってぇ、ブッ壊してやらァアアア!!!」

 

舞台に立つ覚悟を固めたななの隣で吠え猛るライアモンの体から黄色い粒子が放たれた。

 

 

「楯突く奴ァ何だろうがァ食い破る!

 

邪魔する奴ァ何度こようがァブッ壊す!」

 

 

再生産された0と1の幕の下

獅子の全身が同じ色の重厚な装甲に覆われる。

 

 

「ライアモン進化ァ!、ローダーレオモン!

 

何時でも、幾らでも掛かってきやがれ!

 

全部纏めてオレサマが相手すらァアアア!」

 

 

咆哮を上げながら削岩機と化したタテガミを

モーニングスターと化した尻尾を振り回し幕を粉微塵にする機械獣ローダーレオモン。

 

〔《アクセルアーム》〕

「《ローダァモーニングスタァ!》」

「はぁっ!」

 

再び握り潰そうとしてきた銀の腕を鉄球付きの尾と大太刀、小太刀が弾き返せば

 

「《キャノンボール!》」

「これも!」

 

空を行く獣竜とその背に乗った舞台少女による援護射撃が降り注いだ。

 

〔フシューーーゥ〕

「くっ、思った以上に固いわね」

「うん、何せ相手は究極体

デジモンが到達しえる最終進化形態だ

今のボクじゃ通じないのも無理はない・・・」

「それは私達が居ない場合の話でしょ?」

「うん?」

「さっき、あなたが自分で言ってたじゃない

もしかしたら、舞台少女なら

そんな相手に勝てるんじゃないかって」

「あ、あれは 」

「根拠がない?

 

あるじゃない

 

帝国の強大さをその身で味わったあなたが少しでもそんな風に思えた

私達が、思わせる事が出来た!

だから、今、あなたはこうしてここに居る

同じ舞台の上に立ってるじゃない!」

「!」

「夢物語?、上等よ!

それを舞台で、世界に実現させるのが

舞台少女!、そしてあなたはそのパートナー!

だから、ドルガモンが夢見た未来を

 

 

夢のままで終わらせたりしないで」

 

 

「・・・・・・・・・本当に、君は」

 

 

「へ?、きゃあああ~~~~~~!?」

 

 

苛烈なまでの情熱に心を射抜かれたドルガモンは体を傾け純那を鼻先まで滑らせると

 

 

勢い良く上へと放る。

 

 

「過ぎ去った時間に、掴め損ねた手に

 

止められなかった、抑えられなかった現実に」

 

 

直後、水色の幕が降り

その中で獣竜の体毛が紺から赤に。

 

 

「目を背けるのは!、今日限り!」

 

 

更には翼が一対増え、角まで生えていくのだが

一番の変化は・・・

 

 

「ドルガモン進化!、ドルグレモン・・・!

 

定まっちゃいないなら、好きにやらせて貰うさ!

 

うん」

 

 

最早、幕に収まりきらない巨躯。

 

「あああ~~~!?、あぅっ!

なぁ!!?、なななななな!!」

「純那ちゃーーーん、呼んだーーー?」

「よんでなーーーい!!」

 

超大型獣竜の額にある宝石・インターフェースの上に着地した純那はそこからでは全体が見えない程に大きくなったパートナーに戸惑うばかり。

 

〔《ムゲン 〕

「何処見てんだァ!?」

 

頭上を覆い隠す存在に砲身を向けた途端ローダーレオモンが赤い装甲に爪を叩き込んだ。

 

〔キャノン》〕

 

その攻撃を、体勢が崩れた事も意に介さず

マシーンは天に向かって砲撃。

 

「掴まってろジュンナ!」

「ええ!」

 

余波だけでも『明けの遠吠え』達を戦闘不能に追いやったソレを、ドルグレモンは巨体に似合わぬ曲技飛行で躱す。

 

「・・・・・・・・・」

「ケッ、あっちのニンゲンが狙われたワリに

落ち着いてんじゃねぇかァ」

「だって

ドルモンが、ドルグレモンが一緒ですから♪

それは私も同じでしょ?」

「アア?、知るかァんなこたァ」

「うふふっ!」

 

純那と同様にパートナーに騎乗するなな。

 

〔《アクセルアーム》〕

「お願い」

 

その直後

突き出された豪腕を前に輪と舞を交差させれば

 

「純那ちゃん」

〔フシュウッ!?〕

「任せて、なな」

 

翡翠弓から放たれたキラめく矢が飛来。

 

ニ刀の斬撃を受け、更に加速した一矢は

 

黄色と水色のマーブル模様な渦を纏い銀の装甲を

 

穿つ。

 

「オラァアアアアアア!!!」

 

漸く出来た損傷を狙い、それを更に広げるのは

超高速回転する削岩機【タテガミ】。

 

「《ムゲン》」

 

片腕がスクラップにされる最中、マシーンは再び砲身にエネルギーをチャージしていった。

 

 

「ナナァ!」「うん!」

 

 

すると、鉄球付きの尻尾により打ち出されたななが空中で大太刀と小太刀を振るい鈍く光る砲門に己のキラめきを刻みつける。

 

「ーーーーーー!!!」

 

遠目にはほんの僅かにしか見えない筈のソレを

正確に幾重にも射抜く純那。

 

「《ブラッディー!」

 

しかも、急降下しているドルグレモンの上で。

 

〔キャ、キャキャッノ、ォ?〕

「ばな、ナイス♪」「ケッ!」

 

 

なながマシーンの頭部を踏み台にしてジャンプし、ローダーレオモンが銀の腕をもぎ取りながら飛び退く。

 

 

「タワーーーーーー!!!》」

 

 

同時にマシーンは自身を遥かに越える超大型の尾に串刺しにされ、紫空へと捨てられた。

 

 

〔ン ンンンンンーーーーーー!!!》〕

 

 

だが、やはり

 

このデジモンは自分の状態などお構い無し。

 

いや、あるいは

 

理解した上でこんな暴挙に出たのかもしれない。

 

「なんだァありゃあァ!?」

「自爆?

ううん違う、アレは・・・」

「あいつ!、削除する寸前に自分のデータを丸ごとエネルギーに変換して

その全てを撃ち出したんだ!

くそっ!、くそぉ!、しくじったッ!!」

「しくじってなんてない」

「え・・・」

 

 

「失敗じゃない!、終わってなんてない!

私達はまだ舞台に立ってる!

そうでしょ!?、ドルグレモン!!!」

 

 

空間を構成するデータにヒビをいれながら

 

今まさに堕ちてこようとする

 

無限をも超越した破壊の奔流。

 

 

「本当に!、君って奴は!!

 

諦めるって事を知らないのか!!?」

 

 

そんな絶望の光景に向けて

 

自身のキラめきとソウルを幾つも束ね

 

星見純那が翡翠弓を引き絞れば

 

「ローダーレオモン!」

「ケッ、しょうがねぇなァ!」

「《メタルメテオッッッ!!》」

「《ボーリンストーム!》

オラァアアアアアアアアアアアア!!」

 

上昇限度まで飛翔するドルグレモン。

その口から放たれた巨躯の10倍はある鉄球がローダーレオモンが高速回転させたタテガミから発生した暴風に乗って

紫空から迫り来るエネルギーにぶつけられた。

 

 

「人には運命の星がある」

 

 

天に向かって舞台少女は束ねた矢を放つ

 

 

「綺羅星! 明星! 流れ星!」

 

 

放つ! 放つ! 放つ!

 

 

「己の星は見えずとも、見上げる私は今日限り」

 

 

ただひたむきに、積み重ねていく

 

 

「99期生!、星見純那!」

 

 

遥か高みにある星【スタァ】を目指して。

 

 

「掴んでみせます! 自分星!」

 

 

こうして生まれた水色のキラめきの数々は

暴風すらも味方につけて、鉄球を後押しし

 

 

遂には、破壊の奔流をも退けるのであった。

 

 

「・・・・・・・・・」

「うん?、ジュンナ!?」

 

だが、そこで張り詰めた弓の弦が切れたかのように

純那の体が崩れる。

 

「くそっ!、起きろジュンナァ!!」

 

パートナーの意識が途切れた事で強制的に解除される進化。

翼を無くしたドルモンが抱き締めながら彼女の名を叫べば

 

 

「大丈夫」

 

 

固い地面ではない、柔らかい何かに包まれた。

 

「2人共、お疲れ様」

「ケッ、ウマイ所だけ食いやがったなァ」

 

その正体はローダーレオモンの背に乗って

1人と1体を受け止めた大場なな。

 

「なんだよ・・・ッ、ボクの心配なんて必要なかったじゃないか」

「え?」「アア?」

「なんでもない!、こっちの話だよ、うん!

 

うん?」

 

自分に向けられる視線から目を背け、ドルモンが上を見上げれば

 

 

未だ消えない水色のキラめきが

 

 

川のように、雲のように流れる紫空から

 

 

一枚の欠片が落ちてきた。

 

 

 

 

 

 

☆クラスター群島、水辺エリア

 

 

一方その頃、華恋はというと・・・

 

 

「あいたたた!、痛い!、いたーーい!!」

「ヴァアーーー!!!

ヒー!、とっちゃメーーーーーー!!

《ライトニングファーーーーーー!!!》」

「いたいいたいいたいいたいぃッ!

リュー君!、へるぷへるぷーーー!」

「生憎拙者は敵襲に備えねばならぬので・・・ひかり殿のパートナーの説得は華恋殿自身がして下され」

「えええーーーーーー!?

痛た!?、刺さってる!

トゲトゲいっぱい刺さってるからー!

ひかりちゃーーーん!、早く起きてー!」

「んん・・・すぅ・・・すぅ・・・」

「ヴゥーーーーーー!、メーーーーーー!」

 

 

思わぬ強敵と戦っていた!

 

 

 

 

 

 

 




※スイジンモン
はじまりの街でトレーニング場を担当していたアンドロモンがレイド帝国により削除され、デジタマを改造された存在。
ワー爺に戦い方を教えてくれていた。


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仲間はどこ? 双葉と香子空中大捜索

☆レギオン群島・山岳エリア

 

 

「「「ギャアギャアギャ・・・・・・・・・あ"!」」」

 

 

カラフルな色合いをした飛竜・エアドラモン。

空に群がっていたソレらは一迅の蒼い風により次々と屠られる。

 

「《マグナムクラッシュ!》デス!」

「うっわ、問答無用かよ」

「ブイはん、もうちょい心に余裕を持たな」

「エアロブイドラモンはきっと!、フタバとカオルコの安全を考えているのだろう!

本格的な空中戦になれば2人が危険に 」

「フレイモン、きみいつも色々余計デス」

「す、すまない!」

「それにしても、さっきのエアドラモン達

どこかに向かって飛んでいるように見えた、デス

もしかしたら、この先に居る舞台少女を狙って集まっているのかもしれない、デス」

「ほんま飛んどると人が変わるようで・・・」

「デジモンだけどなー」

 

2人と1体を乗せエアロブイドラモンは神機レーダーの反応があった方向を飛んでいた。

 

 

「ギュオウン!」「ギャウウン!」

『『『ギャアギャアギャア!!!』』』

「うおおおおお!、はちぃいいい!」

「neuf!、dix!」

「あー!?、おい!、クロ公!

今のはウチが仕留めた奴ジャンかよ!」

「あら、なら名前でも書いておきなさいよ」

「そうするジャン!

・・・・・・・・・って!、おい!

お前その間に獲物獲る気だろ!?、そうはいかねーぞ!」

「ギャウン!」「ギャオウン!」

『ギャアー!、ギャアー!』

 

 

「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」

 

 

そこで繰り広げられていたのは・・・

空中で身をよじる二対の機械竜を何度も交い

次々と飛竜を倒していく少女と大熊の独擅場。

 

「クロはん、異世界やからってはしゃぎすぎどす

あれじゃどっちが襲って、どっちが襲われてるかわからんわー」

「見つかったのはいいけど

今横入りしたらぜってぇ怒るぞ、あいつ」

「し、しかし!

あんな無茶な戦い方いつまでも続けられるとは思えない!

早く助けた方が良いんじゃないか!?」

「ブイ近寄るの嫌デスぅうううううう!、あいつらレイド帝国よりもずっと怖いデスぅうううううう!」

 

 

「!、なんか来たジャン!

20体分ぐらいしそうな奴!!」

「あれは・・・・・・・・・双葉と香子!?」

 

 

「ふぇええええええん!

見つかったデスぅうううううう!

目ギラギラさせてブイの事狙ってるデスぅうううううう!」

「あーもう!、ちょお黙っときぃ!」

「クロ子ー!、手ぇ貸す必要あるかー?」

 

 

「ええ!、ここはお願い!!

 

待ってなさいよ、天堂真矢!!!」

 

「ギャインッ!?」

 

 

「「「「は?」」」」

 

エアロブイドラモンの背中に乗っているのが双葉と香子だと気付くや否やクロディーヌは飛竜の頭部に飛び乗り、Etincelle de Fierteを叩き込んで墜落させる。

 

 

「待てよクロ公!

勝ち逃げなんてさせないジャン!」

 

 

「「「「えーーー・・・」」」」

 

瀕死のソレをクッションにして地上に降り立った彼女を追い、大熊は自由落下。

 

「あ、えっと、そのアレだ!

フタバ達の仲間が元気そうで良かった!!」

「「「・・・・・・・・・」」」

「うっ!、す、すまない!」

『『『ギャルルルゥウウウ!!!』』』

「って、こんな事やってる場合じゃなかったな

フレイモン!」

「お、おおう!!」

 

竜達の怒りが一身に集まるのを感じた双葉が

神機から紫の粒子を出しながら飛び降りればフレイモンが幕を通り獣化しながら受け止めた。

 

「乱れ!!、撃つ!!」

『ギャギャギャンッ!!』

「双葉はん、うちの為の露払い頼みますわ」

「ブイは大物仕留めてくる!、デスぅ!」

「ああ!、こっちは任せてくれ!!」

「ヴリトラモン、お前さ

美味しい所取られたとか思わないのか?」

「誰が倒したとしても!、デジタルワールドの平和が近づく事に変わりは無い!」

「・・・・・・・・・」

「ふ、フタバ?

オレは!、また何か余計な事を言ってしまったのだろうか!?」

「いや、そうじゃない

そうじゃないんだけど、なんつーか

んー、ダメだ、あたしじゃ上手く言えねぇ

こうゆうのはそれこそクロ子とか天堂とかならビシッと言えるんだろうけど・・・」

「す、すまない!」

「いや、謝られても困るって」

「うううっ!、それでもフタバが何か悩んでいて

それがオレが原因なら謝らねばと・・・!」

「はぁー、お前本当に馬鹿真面目だよなー」

 

 

「《Vウィングブレード!》」

「「ギ!」」

「はい!」

「「ァャン"!?」」

「ふぇっ!?、カオルコ!

きみなんでそこで突っ込むデス!?、一々ブイが拾わなくちゃいけないのに!」

「それはそれはすんまへんなー

あのままやとあんさんがうっかり取り逃がすんやないかとうち心配で心配で、つい」

 

 

「あそこまでは行かなくてもいいからさ・・・

ヴリトラモンももうちょい自分出していこーぜ」

「自分?」

 

問答の間にも空中の敵影はどんどん減っていく中

 

 

〔フシューーーゥ〕

 

 

戦場にエアロブイドラモンとは別の風が乱入。

 

「!?、この!、デス!!」

「ひゃん!」

「香子!?」

〔《クリティカルカッター》〕

 

緑色で軽装甲なアーマーの急接近。

それをいち速く察知したエアロブイドラモンと背中に乗る香子を両手のレーザーブレードが襲う。

 

「ま、マズいぞフタバ!

エアロブイドラモンだけならばあのスピードにも対処出来るが、カオルコを乗せたままでは!」

「なんとか近づけないか!?」

「やってみる!!」

「《マルトサイクロン》」

「くっ!」

「ひょぇえええ~~~ん!!?」

「たかたが横回転しながら上昇したぐらいで一々うるさい!、デス!」

「ぶ、ブイはん・・・!

あとで、おぼえと、きや!」

「だぁーーー!、ダメだ追いつけねー!!」

「す、すまない!

本当に!!、すまない!!」

 

パワータイプなヴリトラモンの飛行速度では

上昇していく両者との距離は遠のくばかり。

 

「め、めぇまわるぅ~・・・

あかん・・・うち・・・はく・・・かも・・・」

「やーめーるーデスぅうううううう!!!

それは!、それだけは!、ほんとのほんとに!

やめるデスぅうううううう!!!」

〔フシューーーゥ〕

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・こうなったら、デス!」

「へ?、ちょ」

 

苛烈さを増す縦横無尽の空中戦の最中

エアロブイドラモンは香子の体をガッチリ掴み

 

 

「《カオルコアローーー!!!》」

「ちょままーーーーーー!!?」

 

 

大きく振りかぶって、投げたーーー!

 

 

〔フシュウウウ!?〕

 

 

みどりのましーんくん ふっとばされた!

 

 

「ヴ、ヴリトラモーーーン!!!」

「お、おおおおおお!!!」

 

 

 

 

ガ   シ   イ   !

 

 

 

「            」

「いってぇえええ!!

香子大丈夫か!?、香子?」

「まさか気絶しているのか!?

いや!、エアロブイドラモンへのソウルの配給は止まっていない筈!」

「            」

「おい香子!、香子ってば!

起きてんなら返事くらいし 」

 

 

ズゥォォォォォォオオオオオオ!!!!!!

 

 

「「うわああああああ!!??」」

 

紅蓮魔竜の背において突如発生したのは

 

花吹雪もかくやというほどのソウルの激流。

 

「フレイはん」

「ハ、ハイィィィ!」

「あんさん、確か炎で竜巻出せたやろ?

アレ出して、今すぐ」

「か、かおるこ?

そんな、怒るなよ、なぁ?」

「いややわぁ、双葉はん

うち怒っとらんよ?、ただ

 

あの羽生えてから調子乗っとる青瓢箪に

 

どっちが上か改めて教えてあげるだけどすえ」

 

 

「「ひっ!」」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

〔フシューーーゥ《クリティカルアーム》〕

 

エアロブイドラモンにレーザーブレードが迫るが

 

ぶっちゃけ 今 それどころじゃない!。

 

「《ふ、フレイムストーーーム!》

って!、フタバまで何をやってるんだ!?」

 

天に生まれた炎の竜巻に自身のソウルを、キラめきを込めて一気に駆け上がる2人の舞台少女。

 

「ふぇええええええんっっっ!!!」

〔フシュ!?〕

 

徐々に伸びてくる燃える螺旋階段に恐怖を感じたエアロブイドラモンはレーザーブレードを噛み砕き、マシーンの腕に食らいついて急降下

 

とりあえずの盾にする。

 

「や、やれてたまるか!、デス!

 

《ドラゴンインパルス!!》」

 

〔ジュヴヴヴ!?〕

 

「はん!、そんなもんに

 

この天下無敵の花柳香子が負ける訳ないやろ」

 

「ううぅっ!」

 

空中でぶつかり合う

 

竜の波動を纏った突進と烈火を巻き込む薙刀舞。

 

 

〔フ、シューーー・・・〕

 

 

まず、最初にマシーンが限界を迎え消滅

 

 

「だから、ズルい、デスぅ・・・!」

 

 

エアロブイドラモンはブイモンに退化

 

 

「はい!、そこまで!」

「「きゅ~~~~~~・・・」」

 

 

力尽きた香子と一緒に回収された。

 

「フタバ!、みんな!」

「よっ、と!

ありがとな、相棒」

 

双葉は1人と1体を担いだ状態でヴリトラモンの背中の上に綺麗な着地を決める。

 

 

キラッ☆

 

 

「「んん!?」」

 

 

その直後

頭上から例の欠片が落ちてきたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 




※フウジンモン
はじまりの街でアイテムショップを担当していたアンドロモンがレイド帝国により削除され、デジタマを改造された存在。
ワー爺にメカやアイテムの造り方を教えてくれていた。



※《カオルコアロー》
多分デジモンカードならAが700越えてる





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心を解かす温もり 双刃ベオウルフモン

☆レギオン群島・雪原エリア

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぅ、あ、あれ?」

「気がついた?」

「マヒルチャン?、ッ」

「まだ動いちゃダメだよ!」

「え、待って待って何この状況?」

「ストラビモン、覚えてないの?

みんなを探してる途中で雷に襲われたの」

「!、そうだった!! ぐぅううう!?」

「だから!、まだ動いちゃダメだったら!」

「そうも、いかないっしょ☆

さっきの奴、アレ下手すると・・・!」

 

まひるの制止を振り切って、洞窟の外へ出ようとする手負いのストラビモン。

 

「ダメ!、だってば!」

「うぁっ!?」

「ほら、いつもならこれぐらい簡単に避けられるのに・・・」

「わ、わかったわかった!

オジサンの負け!、大人しくする!

だから早く降りて!、こんな所でマウントポジション取るとか女の子として色々あうっ!?」

「怪我してるのに無理にふざけないの」

「別にオジサン、無理なんかしてない・・・

けど、☆」

 

だが、あっさりと取り押さえられ組伏せられたので観念するしかない。

 

 

「「・・・・・・・・・」」

 

 

まひるが起こした小さな焚き火の前で向き合う1人と1体。

外から吹き込む吹雪の音だけが聞こえる中

 

「ストラビモンが怪我してるとコレを貰った時の事思い出しちゃうな・・・」

 

舞台少女が腕の神機を掲げながら口火を切った。

 

「オジサン渡したつもりはないけどね☆

それに、ゴッソリに比べればコゲコゲなんてゼンッゼン問題ないのにマヒルチャンってば心配し過ぎだって!」

「だから!

・・・・・・・・・もう!、シーサモンが言ってた通り!

聞いたよ、あなたが牢屋に居た理由

あの子を庇ったんだよね?」

「んー、どうだったかなー?

オジサン覚えてないや☆」

「それだけじゃない!、ずっとお爺さん達『明けの遠吠え』のお世話してたって話も聞いてるよ!

その怪我だって私を庇ったせいなのに!

痛いのに、平気な顔して無理に明るく振る舞って

 

周りばかりで自分の事全然考えてない!」

 

「ま、マヒルチャン!

ちょっと落ち着こ?、ね☆

君が泣くのはその、すっげぇ堪えるから、さ」

「だって!、だって!

あの日、ストラビモン言ってたよね?

消されても構わないって!!」

「!」

「最初、出会ったばかりの頃はいつもみたいな冗談だって思ってたよ・・・

でも、ウラル大陸でずっと一緒に居て『明けの遠吠え』のみんなの話を聞いて

あなたは

 

ああいう事は冗談では言わないってわかった

 

わかったから、いつかちゃんと聞きたかった」

「・・・・・・・・・ごめん

ずっと、抱え込まなくていい事抱えさせてた

ううん、マヒルチャンだけじゃない

カレンチャン、バナナチャン、ジュンナチャン

フタバチャン、カオルコチャン

それに、探さなくちゃいけない舞台少女達にも

何の縁も縁ない世界の事情に巻き込んで、危険な目に逢わせて

 

なんて、謝った所で自己満足に過ぎないか」

 

「ーーーーーー!!」

 

耐えきれなくなった彼女は仔人狼を抱き締めた。

 

「マ、ヒ 」

「どうして、ストラビモンがそんな事言うの?

言わなくちゃ、いけないの!?

パートナーになった切っ掛けは成り行きだし今でも戦うのはやっぱり怖いけど

それでも!、私達はこのデジタルワールドを自分達の舞台だって思ってここに居るのに

なのに、こんなに小さなあなたが!

私達の事も、お爺さん達の事も

この世界の事も何もかも背負おうとしてるなんて

 

おかしいよ!!、おか、しいよぉ」

 

「・・・・・・・・・ッ」

 

しっかりと

 

だが、全身に負った傷を労ってくれている

 

そんな温もりに包まれたストラビモンの手は

 

虚空を彷徨った挙げ句、力なく落ちていく。

 

「デジタルワールドを造った神様とか

獣デジモンみんなのご先祖様とか

そんなの関係ないよ、私にとってストラビモンは

背伸びしたがりで危なかっしい・・・

でも、みんなの笑顔が大好きな頑張り屋の

 

 

「や、めて」

 

 

「え」

 

 

「やめて、くれよ!

なんで?、優しい言葉ばっかりッ

オレは、そんな事言われる資格なんてない!

ない、から・・・!」

 

「!」

 

目に涙を貯め、無理矢理離れようとするパートナーを真昼の舞台少女は決して離さない。

 

「くそ、くそぉ!

やっぱり、契約なんかッ、するんじゃなかった!

こんな、こんなオレ!

誰にも、見せたくなかったのに・・・!」

「見せたくなかったのかもしれないけど、お爺さん達は気づいてたよ?

ストラビモンが今までずっと無理してるの」

「くぅっ!、ぐぅううううう!」

「ねぇ、教えて?

あなたは本当に消えるつもりだったの?」

「・・・・・・・・・ああ、そうだよ

シーサモンを助けて、もう償えたって思った

思い込んでた、から」

「償うって

デジタルワールドを守れなかったから?

フレイモンもそんな事言ってたけど 」

「炎のは、知らないんだッ

オレ達が、スサノオモンがこの世界を維持する為

 

 

何を、したのかを!!」

 

 

堰を切ったように『光』の器は内に秘めていたモノを吐き出した。

 

「マヒルチャン、さ

故郷で畑を、植物を育ててたんだよね?」

「う、うん

殆どお手伝いだけど一応は・・・」

「例えばの話、一本の樹があるとして

その樹の枝が何本も折れかけたり、病気になったりしたせいで樹そのものが脆くなり始めてたら

どうやってその樹を元気にする?」

「えっと、確か

病気になった枝を切って、そこに薬を塗ったりしてるのは見た事があるよ」

「レイド帝国の最初の侵攻の時、死に体にまで追い込まれたこのデジタルワールドは

 

 

世界樹は!、そうやって生き延びたんだッ

 

 

枝に住んでた沢山のデジモン達を切り捨てて!

 

四聖獣はおろかそれらを統べるファンロンモン!

 

果ては配下の十二将!

 

更には三大天使を含めた多くの大天使デジモン!

 

その全てを損害を補填する為の生贄にして!

 

でも、コレを実際に行ったのは世界樹じゃない

 

世界樹じゃ、ないんだよッ

 

 

だって、樹の剪定や栄養を与えるのは別の奴がやらなくちゃ

同じように、デジタルワールドを造った神様

が」

 

 

「・・・・・・・・・!?」

 

 

「あははっ、前、言ったろ?

回線を通じて炎のが知らない

 

知らなくていい事も『光』のオレは知ってるッ

 

だから、さ

あの日犠牲になったデジモンの数も、その来歴も

全部、入ってるんだ

デジタルワールドの運営データの一部として

そう、所詮はデータでしか・・・ないんだ・・・」

「でも、今は違うよね?

だからストラビモンはこうして苦しんでる

なのに、ずっと独りで頑張ってて」

「・・・・・・・・・自己満足だよ」

「満足なんてしてない癖に」

 

正直、ストラビモンが抱えているモノを聞いた所で一舞台少女でしかないまひるが全てを受け止めるのは難しい。

 

 

それでも

 

 

「アッハッハァ☆、マヒルチャンったら痛い所突くなぁもぅ」

「ふふっ♪、だってあなたのパートナーだから」

 

ホンキ出してぶつかったからこそ、歩み寄れた。

だから、こうして笑い合える。

 

「ったく、墓場まで持ってくつもりだったのにさ

無理矢理聞き出すんだモンなぁ、オジサン困っちゃう☆」

「ごめんね

でも、いい機会だと思ったから」

「だ・か・ら☆、今度はマヒルチャンの番ね」

 

 

「            え"!?」

 

 

「ほぉらぁ、この際だからゲロちゃいなよぉ」

「そそそんな!

私には、そんな改まって話すような!

話題なんてないからぁ~~~!」

「目がデータの海横断出来るぐらいに泳いでるし

私嘘ついてます臭プンプンさせながら言っても説得力皆無だって☆」

 

 

ピシャァアアアン!! ゴロゴロゴロ・・・!

 

 

「!?、この雷さっきの!」

「見つかったっポイね

後で絶対聞き出すから覚悟しといてよ?」

「あ、あははは・・・っ」

 

苦笑いを浮かべながらLove Judgementを手に取ったまひるは神機から緑色の幕を展開。

 

〔フシューーーゥ《エレクーゲル》〕

「ヒャッハァアアアアアア☆☆☆」

 

直後、雷球が洞窟を穿ち

舞台少女を乗せた白銀の機械狼が飛び出す。

 

「《ソーラーレーザー!》」

〔フシューーーゥ〕

 

一面広がる銀世界をガルムモンはジグザグに走行し、黄色いアーマーの放つ落雷を回避

あるいは反撃しながら接近していった。

 

「マヒルチャン!、こっからはヴォルフモンで行くんでヨロシク☆」

「え?、わ、わかった!」

〔フシューーーゥ《ブリッツアーム》〕

「《リヒト!、ズィーガー!》」

「えーい!」

 

敵の姿を眼前に捉えるや否や獣化を解除。

雷を纏った腕と光の剣、メイスが激突する。

 

「うわっ!?」「きゃあ!!」

〔フシューーーゥ〕

「び、びりびりするぅ・・・

このロボット、前に戦ったボールや鳥のデジモンよりも電気が強いッ」

「だ、ろうね

このカンジ、間違いなく究極体、だろうし」

「ヴォルフモン?」

〔フシューーーゥ《エレ〕

「!、《スピード」

〔クーゲル》〕

「スター!!》」

 

アーマーの周囲に雷球が浮かび上がった瞬間

ヴォルフモンは獣化し、超高速で突進して擦れ違い様にそれらを斬り裂いた。

 

〔フシュゥ!〕「グルァ!」

「ガルムモ ッ、うう!?」

 

爆発に巻き込まれ吹き飛ばされる両者。

直後、まひるはあの体の内から突き出るような凄まじい衝撃に襲われる。

 

「くそ!《リヒト・クーゲル!》」

「はっ!、はぁ・・・はぁ・・・!」

 

ガルムモンは慌てて人型に戻ると、周囲に光弾を滅多矢鱈撃ちまくり雪を舞い上がらせた。

 

〔フシューーーゥ〕

 

銀世界を浮遊し姿を消した1人と1体を探すアーマー。

 

「大丈夫?、寒くない?」

「私は平気、だけど

ヴォルフモン、もしかして怪我のせいでガルムモンを制御出来てないの?」

「・・・・・・・・・」

「だから、さっきから人になったり獣になったりして私への負担を減らそうとしてる」

「そりゃあ、まぁ☆

ここで暴走したらって考えたら、ね」

 

その真下、雪の中で『光』は

胸に抱いたパートナーに再び詰問されるはめに。

 

「前の時はカレンチャンのお陰でどうにかなった

ってか、アレだって君らなら大丈夫だって思えたからあんな分の悪い賭けが出来たんだし

でも、今は違う

君の側に居るのは、オレだけだ」

「・・・・・・・・・ッ」

「話の続きになるけど

さっき君オレが満足してないって言ってたろ?

その通りだったんだ

あの日、貸切りの特等席で君がその棒で踊るみたいに戦っているのを見るまでは満たされるって感覚すらもわかってなかった

そんな君をオレなんかが消えるせいで泣かせたくなかった」

「だから、私と契約したの?」

「他に何がある?

自分のやった事を見ないフリして無責任に偽善振りかざした挙げ句

どうでもよくなって忌むべき敵に生殺与奪を預けてたクソッタレなんかが今更デジタルワールドを救う使命に目覚めるワケないだろ?

オレは

 

この世界と君達舞台少女、どちらかを選ぶなら

 

迷わず君達を選ぶ」

 

「!」

 

「コレさ、他のみんなにはナイショだよ☆

こんな自分勝手なワガママ絶対許されないんだから」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・どこが」

 

 

「え?、マヒル、チャン?」

 

 

「それのどこがワガママなの!!?」

 

 

雪に埋もれ、体温は低くなってる筈なのに

 

まひるの心は沸点の臨界温度を突破する程に

 

高まる。

 

〔フシューーーゥ《エレクーゲル》〕

「今、取り込み中だから 邪魔しないでよ」

〔フシュ!?、シュシュシュゥ!!〕

 

周囲の積雪を吹き飛ばし

 

自分達目掛けて放たれる雷球の全てを叩き返す

 

回る回るキラめきの名は

 

Love Judgement【愛の裁き】。

 

「結局!、全部私達の、私の為じゃない!?

それのどこが自分勝手なワガママなの!?

ヴォルフモンが、ストラビモン許されないなら!

 

 

ひかりちゃんを、みんなをやっつけて!

華恋ちゃんを独り占めにしようとした!

 

 

私は何!!?」

 

 

「え?、あ、あのマヒルチャン?

オジサン、後で君の話聞くって確かに言ったけど

今は、ちょっと・・・」

 

 

「歌もバトンも聖翔に入ったのもおばあちゃんに言われたから!

そんな私にとって、華恋ちゃんだけだった!

華恋ちゃんのキラめきしかなかった!

だから、力ずくで奪おうとしたの!」

 

 

「あ、ダメだこりゃ

話聞いてるようで聞いてないや、この子」

 

 

〔《ブリッツアーム》〕

 

 

「って!、マヒルチャン前見て前!!」

 

 

「私はストラビモンが思う程、良い子なんかじゃ

 

 

ない!!」

 

 

「わぉあっ!?」〔フシューーー・・・ゥッ〕

 

 

ありったけの想いと共に振りかぶったメイスは

重低音を響かせ、雷の腕を強引に弾いた。

 

「自分の事しか考えてなかったんだよ?

華恋ちゃんがどんな想いでひかりちゃんとスタァライトしたいのかなんて全然考えてなかったんだよ?

私の方がよっぽど自分勝手でワガママじゃない」

 

銀世界を穿ち、造った円形ステージの真ん中で

掌を掲げ、そこに落ちる雪を溶かす舞台少女。

 

「え、えっと・・・それは仕方ないんじゃないかな?

誰だって自分の気持ちをまず優先しちゃうのは当たり前だってオジサン思うなーって」

「なら、あなたの気持ちはどこにあるの?

私達の為以外にストラビモンがやりたい事ってないの?」

「ワォッ☆、こいつぁ藪蛇だったかぁ」

「茶化さないで、ちゃんと答えて」

「ない」

「・・・・・・・・・」

「そんな目で見ないで欲しい

今のオレには本当にそれしかないんだから」

「じゃあ

私のバトンやダンスで満たされたって言ってたの

 

 

嘘だったんだ」

 

 

「ッ!!!、そんなワケないだろ!!?」

 

 

彼女の言葉に怒りを露にしながら狼剣士は

ステージの上へ。

 

「あの日!、オレの中で生まれたモノは!

絶対にッ、誰にも否定させやしない!

例え、君自身であってもだ!!」

「・・・・・・・・・あるじゃない

私よりもストラビモンが大切にしてるモノ」

「あ」

「でも、私だってあの日のままじゃないんだよ?

舞台少女は日々進化中、なんだから☆」

「マヒル、チャ」

〔《エレクーゲル》〕

 

正面から見つめ合う1人と1体の頭上を

マシーンが大量に生成した雷球が埋め尽くす。

 

 

ピシャアン! ピシャアン!

 

バリバリバリバリ・・・ィ!

 

 

「グルルルルルルゥ!!」

「うっ!、くぁ!、ガァアアアッ!!」

 

絨毯爆撃に晒された雪原をまひるを乗せたガルムモンが全力で疾駆。

その瞳からは徐々に理性の光が弱まり、背中の少女が噛み締めている口からは牙が見え始めていた。

 

「マヒル、チャン!」

「そのままでいて!!」

「でも!、このまま ジャア"ァ」

「華恋ちゃんが居なくちゃダメ?

今、ここに居るのはあなただけ?」

 

Love Judgementを握る手の爪が鋭く伸び

己を内側から突き破らんとする『獣』にまひるは

 

 

「ノンノン!、だよ・・・!!

 

私だって、ちゃんとキラめいてる!

 

ずっとあなたの側に居た、私が!

 

ここに居る!!」

 

 

『人』として、舞台少女として

真っ直ぐ【ストレート】にぶつかっていった。

 

 

 

アォォォオオオオオオーーーン!!!

 

 

 

すると、彼女の手首に宿る神機が咆哮。

 

星形の画面を囲うように狼の意匠が追加される。

 

 

 

やれやれ、しょうがないなぁ、もう☆

 

もう・・・!、ほんとうに、さぁっ」

 

 

あの日、牢獄で感じたモノ。

いや、それよりももっと大きなモノに満たされた

『光』の器は目に光る何かを流しながら0と1の緑

 

更には、白と紫の粒子を全身から迸らせた。

 

 

「ずっとは側に居られなくても」

 

 

緑を主体にした2色のフレンジが揺れる幕の下

 

『人』と『獣』の魂は輝きを放ちながら融合。

 

 

「巡り会えた、キラめく舞台に抱いた刹那を胸に

 

オレは行く」

 

 

幕を断ち斬る

ウイングブレードから造られた大型双刃剣。

それを軽々振り回し、片側の腕に備わるミサイルポッドとレーザー砲で迫る雷球を撃ち落とすのは

 

 

「人獣同魂、ベオウルフモン

 

この『光』は消させやしないさ、誰にも

 

ね☆」

 

 

ガルムモンの装甲が追加されたヴォルフモン

否、光狼の融合剣士・ベオウルフモン。

 

「ベオ、ウルフモン?」

「ハイハイ☆、ボサっとしてちゃダメだよ?

マヒル」

「!、うん!」

〔フシューーーゥ

《ブリッツアーム》《ブリッツアーム》

《ブリッツアーム》《ブリッツアーム》〕

 

並び立つ1人と1体の上空では黄色のマシーンが肩の四連太鼓を電流を纏わせた腕で叩きまくっていた。

 

「ワォッ☆

突然のパーカッション演奏にオジサンビックリ!

・・・・・・・・・な、ワケないか」

「あれは、雪起こし!?」

〔フシューーーゥ!〕

 

すると、雪を降らせていた積乱雲に雷が混じり始め銀世界に不穏な音が鳴り響く。

 

「あっちゃあ☆

どうやらこのエリア丸っと消し飛ばす気っポイ」

「なら、やらせなればいいだけ

でしょ?」

「アッハッハァ☆

おっしゃる通り!《リヒト」

 

ベオウルフモンはミサイルポッドから追尾式

ミサイルを連射すると

 

それを足場に瞬く間に空中のアーマーに急接近。

 

〔《ブリッツアーム》《ブリッツアーム》

《ブリッツアーム》《ブリッツアー 〕

「アングリフ・・・!》」

 

左手を黄色い装甲に添え、零距離で主砲を炸裂。

敵の削除には成功したのだが・・・

 

分厚い雷雲は未だ消えない。

 

 

「いくぞ マヒル!」

 

 

「ベオウルフモン いこう!」

 

 

天にて大型双刃剣トリニテート掲げられれば

 

地にて回転が加えられたLove Judgementが

 

それより高く、舞台を突き破らんばかりの勢いで

 

放り投げられた。

 

 

ピシャアアアァァァァァァンッッッ!!!!

 

 

帝国の傀儡により威力を増大した稲妻の全てが

 

回転を続けるキラめきに吸い寄せられ

 

 

「《ツヴァイ!   ハンダー!》」

 

 

亜高速で振り抜かれた光の大剣により寸断。

 

1人と1体の重なる想い【デュエット】は

 

積乱雲を、その先にある紫空をも引き裂いて

 

銀世界を真昼のキラめきで掻き消していく。

 

「あ"いてぇえ!!!」

「ストラビモン大丈 あ、れ?」

 

落下中に退化し、モロに緑の大地に激突したストラビモンに駆け寄ろうとしたまひるだったが何故か体が上手く動かせない。

 

「む、むりしないッ

あのすがた、究極体相当なんだから!

ソウルの消耗も今までの比じゃ、ない、て」

「ストラビモン、こそ!

もうっ、少しは頼ってくれると思ったのに」

「たよってるよー、たよりまくりだよー

アザース☆」

 

ピクピク痙攣しつつも、やはりこの仔人狼の

軽口は止まらなかったとさ。

 

「に、しても

まさか、一時的とはいえエリア丸ごと浄化なんて

 

あ」

 

「どうしたの?   ええ!?」

 

「う、うう・・・っ」

 

ふと、周囲を見渡していると

何かの欠片と薄ピンク色をしたウサギのようなデジモンが転がっているのを発見するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




※ライジンモン
はじまりの街で肉畑やレストランを担当していたアンドロモンがレイド帝国により削除され、デジタマを改造された存在。
ワー爺に料理や農耕を教えてくれていた。


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クレシェモン怒りの日、パンダモンは止まらない

麗将ロゼモンに良いように踊らされた天堂さんの精神テンションは今!、舞台版になっているッ!


☆レギオン群島・雪原エリア

 

 

これは、まひるとガルムモンが黄色いマシーンと遭遇する少し前の出来事。

 

 

「テンドー!、おいテンドー!!

ワタクシの話を聞いているのデシテ!?」

「ええ、聞こえていますよレキスモン」

「なら、何故足を止めない!?

この悪天候の中これ以上進むのはどう考えても危険デシテ!

せめて、他の誰かと合流するまでは安全な場所を確保 」

 

 

「なら、あなたはそうして下さい

私は独りで先に行きますから」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」

 

 

真矢の言葉にレキスモンは耳を疑った。

 

「い、いや待てテンドー テンドー?

本気でワタクシを置いていく気デシテ・・・?

お、おい!、おい!!」

 

矢継ぎ早の問い掛けに応える声はない。

 

「ーーーーーーッッッ!!!」

 

吹雪の中、遠ざかるトップスタァの背に兎獣人はグローブに包まれた拳を向ける。

 

 

「《ムーンナイト、ボム・・・!》」

 

 

そこから放たれた催眠作用のある泡は

 

 

「!?、ぅ、ぁ」

 

 

斬り捨てられた、技を放ったデジモンごと。

 

「・・・・・・・・・」

 

薄れゆく意識の中、ルナモンは見た。

倒れ伏した自分を一瞥すらしない天堂真矢を。

 

 

 

 

☆レギオン群島・荒野エリア

応急修理中デッカードラモン号、キッチン

 

 

「あんの高慢ちきがーーーーーー!!!」

 

 

熱したフライパンの上、念入りに砕かれた種や岩塩が踊り狂う。

 

 

「へし折られてしまえーーーーーー!!!

形だけは良い鼻っ柱はおろか!

無駄に均整のとれた骨格までも!

ベッキベッキになれデシテーーーーーー!」

 

 

目を血走られせながら複数の果物の果汁から造った液体を鍋で温め、削った皮を少しずつ素早く入念に混ぜ合わせる事で徐々にゼリー状に。

 

「ワタクシ何か間違った事を言ったか!?

いや!、間違ってない筈!、デシテ!!」

「え、ええ

間違ってはいないけど、あの天堂さんだから」

「真矢ちゃん・・・それにクロちゃんも・・・」

「ある意味ぶれないよなー、あいつら」

「ところで、何であの子目ぇ醒ました途端怒りながらお料理してはるん?

それも、冷蔵庫入れてたらすっかり酸っぱくなったり渋くなった果物で」

「そ、そこまではオジサンもわかんない☆」

「あれ?、ストラビモンの知り合いじゃなかったの?」

「知り合いっていうか、なんというか

気配が月光チャンに似てたし、ニンゲン臭染み付いてたからとりあえずお持ち帰りしたんだけど・・・」

 

真矢への不平不満の全てを食材にぶつけるルナモンをキッチンの入り口に集まった舞台少女達とデジモン達が遠巻きに見つめている。

 

「フーーーーーーッ

後は荒熱をとってから、器に移し

上にソースをかけて冷やせば完成デシテ」

「え?、あのソース!?

アレってレオルモンしか食べれないとっっっても辛い実から作ってたけど・・・」

「弱火でじっくり温めてから一気に強火にかければ辛味はある程度飛ぶのデシテ

それでも心配なら後がけにすればいいだけの事」

「うんうん、流石は

仕事そっちのけで酒盛りばかりの神々だね」

「ハッ!、頭の中までクロンデジゾイドの堅物共

その中でも特に融通の効かない事で有名な会議席の空白殿に誉められるとは光栄デシテ」

「ぶふぇっ!」

「笑うな青瓢箪!

うん?、というかやっぱり君記憶戻ってるな!

エアロブイドラモンに進化してからおかしいとは思ってたよ!、うん!」

「ナ、ナンノコトデスゥ?」

「ケッ、生まれ変わっても内輪揉めかァ・・・相変わらずくっだらねぇなァ」

「み、みんな!、過去の諍いは置いておいて!

今は同じ舞台少女のパートナーとして仲良くやっていこう!!」

「その舞台少女にワタクシ斬り捨てられたのデシテーーーーーー!!!

本当に何様だあいつーーーーーー!!!?」

「炎のー、やっと落ち着いたのに蒸し返すのはオジサン的にはやめて欲しかったなー」

「す、すまない!」

〔「皆の衆!、カレンさんとギンリュウモンが帰ってきたぞい!

しっかり舞台少女さんも一緒じゃあ!」〕

「お、華恋は無事に連れて来れたんだな」

〔「ぶ、無事と言っていいんかのぅ?」〕

「!、華恋ちゃんどこか怪我してるの!?」

〔「ケガ

た、確かにアレはケガと言えなくも・・・」〕

「ワー君、情報は正確に伝えて

あの子に関してはマヒルは特に敏感なんだ」

〔「も、申し訳ありません始祖様

しかし、その、こればかりは実際に見た方が早いかと・・・」〕

『?』

 

伝声管越しの歯切れの悪い報告に首を傾げながら6人と7体が甲板に上がると

 

 

「ひかりちゃーーーん!、そろそろ起きてー!

もうすぐ着くからーーー!」

「まだ・・・ねむ・・・ぃ・・・・・・・・・」

「ヴーーーーーー!」

 

 

「「華恋ちゃん!!?」」

「あの子ったら、なんでギンリュウモンのお腹にしがみついてるの!?

しかも、全身トゲまみれで!」

「アレはエリスモンの針毛?、まさかあのニンゲンと一戦交えたのデシテ?

いや、そんなアホ熊ではあるまいし・・・」

 

 

「華恋殿、皆待ちくたびれているで御座る」

「あ、ほんとだ! たぁっ!」

「・・・・・・・・・ぬぅっ」

 

宙に浮かぶ鎧竜から愛城華恋、飛び込み参上。

 

「華恋ちゃん!、その格好どうしたの!?」

「え、えっとひかりちゃんのパートナーの子

エーちゃんと色々あって・・・」

「とにかく、一旦お部屋に戻ろ?

衣装についたトゲ抜くの手伝うから」

「私よりも、ひかりちゃんを早くベッドで寝かせてあげないと!

何だか、すっごい疲れてて眠そうだから

天堂さん達もそうでしょ?」

「疲れた!?、眠そう!?

ふざけるなデシテーーーーーー!!

寝かしつけようとしたワタクシがどんな目にあったかも知らないでーーーーーー!!」

「わわわっ!?、何何なにぃ!?」

「あー、ごめんねカレンチャン・・・

今この子その話題になるとヒスっちゃう 」

 

 

「ヴーーー!!!、ヴァアーーー!!!

ヒー!、とっちゃメーーーーーー!!!」

「あいたたたたたたぁ!?」

「香子ッ!

いってぇ!?、あたしにまで刺さったぁ!」

「カオルコ!、フタバ!

君!、やめるんだ!!

2人は敵じゃない!、味方だ!」

「ヴゥウウウーーーーーー!」

 

 

「って!、何が起きた炎の!?」

「ああーーーーー」

「マヒル!?

・・・・・・・・・あ、そういう事かぁオジサン納得

じゃない!、早く止めるないと!」

「!、そうだね!」

「エリスモン、何故デシテ?

奴やクロディーヌにはこんな事は・・・」

 

パートナーに近づく人間に針毛を飛ばし激しく威嚇するエリスモンにルナモンは違和感を覚えていたが

 

「んん・・・・・・・・・すぅ・・・・・・・・・」

「兎に角、貴様はいい加減起きるのデシテ!

《ティアーシュート!》」

「わぷ!?」

「「「ひかりちゃーーーんッ!?」」」

「ヒーーーーーー!!」

 

とりあえず、八つ当たりも兼ねてひかりの顔面に水球をぶちかました。

 

「?、??、ここ、どこ?」

「ヒー!、ヒー!

だいじょぶー?、だいじょぶー?」

「・・・・・・・・・大丈夫じゃない、エリスモンの爪とか針が刺さって凄く痛い」

「ヴゥーーー!、ヴゥーーー!」

「エリスモン?、どうしたの?」

「目は醒めたようデシテ」

「ルナモン?、天堂さんは?、一緒だったんじゃなかったの?」

「あ"?」

「ハイハイ☆、オジサン横入りしますよっと」

「誰?」

「私のパートナーだよ

久しぶり、ひかりちゃん」

「!?、まひる!」

「ヴゥウウウーーーーーー!」

「ッ

エリスモン、本当にどうしたの・・・?」

 

青い上掛けに爪をメリ込ませ針毛を大きく逆立てるエリスモン。

 

「理由はわかんないけどそのハリネズミは他のニンゲンが近づくのが嫌みたいだね、うん」

「なら、落ち着くまで神楽さんと個室に居て貰うしかないわ

幸い、部屋はまだ空きがあるし」

「うん、なのに君ら一つの部屋を2人で使ってるけど?」

「寮と同じにしてるだけよ、大体それを言うならあなた達なんて部屋自体を使ってないじゃない

いつも好き勝手通路や甲板に寝転がって・・・

ドルモンなんて毎日お爺さんの部屋に入り浸ってばっかり 」

「ヒカリだっけ?、ボクが部屋まで案内するよ!

うん!!」

「え?、ええ、お願い」

「ううっ、ひかりちゃーん・・・!」

「華恋、ごめん

後で 」

「ヴゥウウウウウウーーーーーー!!!」

「ワォッ、特にカレンチャンへの敵愾心が洒落にならないカンジ☆

まさかとは思うけどさぁ、マヒルはあそこまでだったって事はないよね?」

「それは、その、ノーコメントで・・・」

 

純那の提案により、ひかりはエリスモンにしがみつかれたまま艦内へ。

 

「ふぇええええええんっ!

こっち来ないでデスぅうううううう!!」

「この青瓢箪!、さっきはよくもうち見捨てて自分だけ逃げはってからにぃいいい!!」

「フレイモン、あたしのはほどほどでいいから

早く香子に刺さったの燃やしてやってくれ」

「あのー、出来れば華恋ちゃんもお願いしたいなーって」

「わかっているさナナ!

だが、これだけ細かいと衣装を燃やさずに焼き尽くすのは少々時間がかかる!」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ケッ、いつまでそのまんまで居る気だァ

トカゲ野郎」

「拙者が何をしていようが御主には関係ないで御座るよ、猫」

「アア、関係ねぇなァー

テメェがそうやって籠ってる間にオレサマは完全体になってんだからなァー」

「なぬうん!?」

「まァー、今のテメェじゃいつまで経ってもなれねぇだろうがなァー」

「何故だ!?、拙者こそ!

この内で最も真剣にデジタルワールドが救われる事を願っているというのに!!」

「それ以外考えてねぇからァ

いやァ、それを理由にテメェが見なくちゃいけねぇモンから目ぇ反らしてるからだろうがァ・・・」

「!」

「ケッ、こんなクセェ説教するなんざァ

オレサマも絆されたモンだなァ」

 

 

「・・・・・・・・・テンドー」

 

 

様々な感情が交錯し混沌とする甲板の上でルナモンは想う

 

 

「(ワタクシを置いて行った事を!

 

 

絶っ対に後悔させてやるのデシテ!!!)」

 

 

みんなが美味しそうにスイーツを食べる前でお預けをくらうパートナーの顔を!。

 

この妄想を実現する為、今の自分が出せる最高の一品を仕上げるべくキッチンに向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

☆レギオン群島・廃墟エリア

 

 

〔フシューーーゥ〕

「く・・・っ」

 

 

迷彩柄の重装甲にOdette the Marvericksの切っ先を這わせた途端、腕を鈍い痺れが襲う。

 

〔《ライジング〕

「!」

〔サン》〕

 

直後、尾を思わせる形で後部から伸びるプラグが激しく放電。

その威力は廃墟全体を目映く照らす程だった。

 

 

バ ヂ ィ ッ !

 

 

だが、トップスタァのキラめきには敵わない。

 

「どうやら、常に全身が電流に覆われているようですね

そうとわかった以上は」

〔フシューーーゥ、シュッ!〕

「その上で演じるまでの事」

 

プラグを断ち斬り、頭部に降り立った真矢目掛け迷彩柄のマシーンが左手のアームを振り回せば洗練されたステップで躱された挙げ句

 

 

ソウルを纏った白刃が鋭く突き立てられる。

 

 

まるで事前に打ち合わせをしたかのように。 

 

 

天堂真矢はこの世界の最終進化形態を相手に即興の独擅場を悠々と演じていた。

 

「「追い付いた!、わよ/ジャン!!」」

 

そこに飛び入りで加わるは

彼女を越えんと挑戦し続ける次席

を、越えんと邁進する大熊。

 

「西条さん、グリズモン

アドバイスは必要ですか?」

〔フシューーーゥ〕

「「いるわけない」」

「でしょ!?」「ジャン!」

 

半ばから断ち斬られたプラグからの放電にもクロディーヌとグリズモンは怯まず突っ込んでいく。

 

「ってか!、ルナモンどうしたジャン!?

迷子か!?」

「ええ、困った事にはぐれてしまって・・・」

「そっか!、テンドーも大変ジャン!

ウチもクロ公が迷子にならないようにしないとな!」

「ふふっ、お互いパートナーには苦労しますね」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「どうしたクロ公?、変な顔して

あ!、わかったジャン!、うん 」

「Ferme-la!!!」

〔フシュ!?〕

「西條さん、やはり最低限の教養は身につけさせた方が良いのでは・・・?」

「あんたの意見に従うのは癪だけどッ

そうした方が良さそうね!

でも!、まずはこいつを片付けてから!」

〔フシュシュゥ!!〕

 

鮮烈なオレンジのソウルを立ち昇らせるEtincelle de Fierteが豪快に振るわれマシーンの脚部が強引に斬り裂かれた。

 

「!、キタキター!

《当身返しぃいいい!!!》」

 

バランスを崩し、倒れ込んでくる重装甲要塞の真下に大熊がその体躯を滑らせると

 

中枢部分に熊爪を走らせながら投げ飛ばす。

 

〔フシュ、シューーー・・・ゥ〕

「しゃあっ!!

見たかクロ公!、今日こそウチの勝 」

 

 

〔《キルリアン・ブラント》〕

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ち?」

「「!!!」」

 

勝ち誇るグリズモンの体を撃ち抜いたのは

マシーンの右手部分にある銃身から放出された

破壊の雷電。

 

「ーーーーーーッッッ、グリズモン!!!」

「ん?、どうしたクロ公?」

「!?

どうした、って・・・あなた・・・!」

「なんだよー、さっきより変な顔して

ってか、なんでウチ動けないジャン?」

「!、!」

 

クロディーヌは何も言えない。

 

何故なら、目の前で倒れ伏すパートナーの

 

 

右半分は完全に消滅しているのだから。

 

 

「しかも

なんかさ、すっげぇねみぃ、ジャ・・・ン

あ、でも

もう、いっか      ウチ勝てたし♪」

 

 

 

冗談じゃないわ」

 

 

「西條さん?、ぐぅっ!?」

 

 

その瞬間を天堂真矢は見た。

 

 

誰よりもよく知る彼女が神機が宿る腕を、拳を

 

 

大胆に振りかざし

 

 

「私は    負けてないッッッ!!!!」

 

 

「ん?    ぐええええええ!!!?」

 

 

オレンジに輝くソウルを、誇り高きキラめきを

 

 

熱く、激しく燃え上がらせ

 

 

消滅寸前のパートナーに全力で叩き込む姿を。

 

 

「勝手に付きまとって

 

勝手に勝った気にならないでよ

 

 

Nounours」

 

 

 

やりやがったジャン!、コンチクショー!」

 

 

吹き飛ばされた大熊は好戦的な笑みを浮かべ

 

 

データが丸出しな自分の体に熊爪を突っ込み

 

 

体内に宿る橙色の粒子を周囲にぶちまける。

 

 

「大チャンス到来!

 

キタ!、キタ!、キターーーーーー!」

 

 

0と1の穴だらけな幕の下で半分欠けた大熊の体が圧縮されていった。

 

 

「この爪で!、この拳で!、絶対の絶対に!

 

絶対絶対絶対!、勝ってみせるジャン!!」

 

 

更には毛並みが白と黒のツートンカラーに変化。

だからこそ、首に巻かれた真っ赤なマフラーがよく映える。

 

 

「グリズモン進化!、パンダモン!!

 

テッペンまで上がんのは!、ウチ!

 

ジャッ!、ジャーーーン!!

 

・・・・・・・・・って!

 

クロ公お前!、寝込み襲うとはヒキョージャン!

やるんならやるって言えよ!、迎え撃つから!

ん?、何だよ泣いてんのか?

腹でも壊したジャン?、やっぱうん 」

「その話いつまで引っ張るつもりなの!?」

「いってぇー!?、だからやるんならやるって言えって言ってるジャンか!」

 

 

「ふふっ♪、すっかり入り込まれてしまいましたね西條さん

 

最も

 

それは、私も同じなんですが

 

 

ねぇ、ルナモン?」

 

 

 

 

 

 

 

☆レギオン群島・雪原エリア改め草原エリア

走行中デッカードラモン号、見張り台

 

 

「あ・ん・の・ぉーーーーーー!

 

ニ・ン・ゲ・ン・は・ぁーーーーーー!

 

ど・ん・だ・け・ぇーーーーーー!?

 

高慢ちき!!、デシテーーーーーー!!?」

 

 

バキバキバキバキバキバキバキバキ!!!!

 

 

「おおいっ!!?、壊すなよ月光!!!」

 

甲板から発せられるドルモンの怒声も今のルナモンの耳にはまったく入ってこない。

半壊した望遠鏡を握る手にはドス黒い闇のオーラが放たれ、血走った目の瞳孔はかっ開いており種族的な愛らしいは皆無だった。

 

 

そんなウサギの頭上から舞い降りるのは

 

 

天堂真矢のソウルとキラめきで構成された幕。

 

 

『はぁああああああ!!??』

「うっそだろぉおおおっ!?、神機の射程圏越えてんのになんであそこから届いてんのぉ!?」

「それは、天堂さんだから、かな?」

「・・・・・・・・・なにそれオジサンこわい」

 

 

「空を刻む 鋭利な欠落ッ

 

見える星はどんなに遠くとも

 

輝きは、光は、確かに届いている・・・!」

 

 

白にルナモンから零れる白が重なり

その下でレキスモンに、いやもっと上へと至る。

 

 

「レキスモン進化、クレシェモン

 

今宵の月に!、ワタクシに!

 

歯止めはないと知れ!、デシテッ!

 

《ダークアーチェリー!!!》」

 

 

幕を貫くのは今の心情を表したかのような闇の矢

それを放つのは、グローブから変化した新たな武器を組み合わせる事で構成されたボウガンのようなモノだ。

 

「!?、あの子この距離から正確に狙ってる!

 

 

あんなに激しく動き回ってる天堂さんを!!

 

 

でも、彼女はそれすらも自分のキラめきへと昇華しているわ!

流石は99期生首席!、私も負けてはいられない!」

「・・・・・・・・・何故だろう、今なら

あのいけすかない神ともわかり合える気がするよ

うん、うんっ」

「それはよかった!」

「フレイモン、今の喜ぶ所じゃねーから」

 

興奮した様子で双眼鏡を覗いているパートナーとは裏腹にドルモンのテンションは低い。

 

「キィーーーーーーッ!

見せつけてくれる、デシテーーーーーー!」

「ひゃああああああん!!?

ちょぉっ!、今めっちゃ揺れたぁ!」

「デッカードラモン号が壊れたらどうするつもりデスぅうううううう!!

これだから自分勝手でお高く止まった奴はイヤなんイヒャイイヒャイイヒャイ!!?

ヒャオルヒョヒャヒャイエフゥ!!」

「ってかァ、見えてねぇだろうがァ・・・」

「うふふ、見えなくてもわかるんじゃないかな?

だって、真矢ちゃんのパートナーですから♪」 

「すごい!、すごいねクレシェモン!

力強いのに綺麗でしなやかなジャンプした後!

自分でバンってやった矢をバッって掴んで!

びゅーーーんって飛んでっちゃったよー!?

まるでひかりちゃんみたい!」

「ちがー!、ヒーもっとすごいー!」

「ありがとう、エリスモン

・・・・・・・・・でも、痛いッ」

「(何故だ!?、何故!

あんな、世界の事などまるで考えていないモンばかりが完全体になれて!

 

 

拙者はなれない!?)」

 

 

混迷する甲板を後にして草原エリアを突っ切る月光の魔人クレシェモン。

 

「テンドーーー!、き・さ・まーーー!

《ルナティック!、ダンス!》」

「ふふ、待っていましたよ クレシェモン」

 

頂きにキラめく星の元へ到達するや否や、両手の武器ノワ・ルーナを用いた幻惑の舞踏を披露すれば

 

 

天堂真矢はその不規則なステップに

 

 

完璧に合わせて、魅せる。

 

 

〔フシューーーゥ〕

「ワタクシを!、斬り捨てておいて!

よくもまぁヌケヌケと!、デシテ!」

〔フシュ?、シュシュ?〕

「それについては大変申し訳ありません

しかし、あのような雪の中で眠るのは遠慮したかったので

つい・・・」

〔フシュゥ!?〕

 

マシーンを中心にした円を描くかのような動き。

月と星が交錯する度、より激しくより華麗に

レイピアが鎌が盾が火花を散らす

 

迷彩柄の装甲の上で。

 

「2人だけで盛り上がらないでよね!!」

「《笹パァァァンチ!!》」

〔フシューーーゥ!!〕

 

すると、惑うマシーンの頭上からクロディーヌとパンダモンが襲いかかってきた。

 

「!、アホ熊!?

貴様、その姿は一体・・・!」

「何驚いてんジャン?、進化したのはお前だって同じジャン!」

「いや、そうではなく!

何故パンダモンになってるのデシテ!?

確か貴様の完全体はグラップラー 」

「だってウチ笹好きだし!」

「そんな理屈ーーーーーーッ!?」

「「!」」

 

クレシェモンは激情のままに矢を放ち

Odette the Marvericksには闇を

Etincelle de Fierteには氷を各々の刃に宿す。

 

「ワタクシはもう疲れた!

後は貴様らが勝手にやれ!、デシテッ」

「クレシェモン!、ウチもアレやるジャン!

テンドーとクロ公ばっかズッリィジャン!」

「あ"あ"あ"ーーーーーー!!!!!!」

「うおおおおおお!!?」

 

そして、パンダモンは丸めてシュート!。

 

〔《キルリアン・ブラント》〕

 

「それはもう」

 

再び放出された破壊の雷電を凍てつく闘気で冷静に受け流し

 

 

「通さないッッッ!!!」

 

 

内に秘めていた熱烈な刃で真っ二つに断てば

 

 

「《アニマルネイル!、回転つき!》

ジャジャジャジャーン!」

 

ツートンカラーの球体が豪快に突っ込み剥き出した爪で銃身を切り裂いた。

 

〔フ、シューーーゥッ〕

「・・・・・・・・・」

 

損傷し更に激しくスパークするマシーンの前で

 

極限まで姿勢を低くし、パートナーの闇を用い

 

自身のキラめきを更に引き立たせ

 

切っ先に収束させる聖翔音楽学園99期生首席。

 

 

〔《ライジング・・・サン・・・!!!》〕

 

 

すると、彼女の足元で序盤に切り捨てられたプラグが跳ね

 

 

あの電光が放たれる。

 

 

「      はぁっ!!     」

 

 

それよりも速く、目映く

 

突き出されたOdette the Marvericksは

 

迷彩柄の重装甲要塞

 

どころか

 

背後の廃墟すらも削り取った。

 

「疲れたのではなかったのですか?」

「何の話デシテ?」

「さぁ、何の話かしらね?」

「え?、クレシェモンの矢があのピロピロブチ抜いただけジャン?

他に何かあんのか?」

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

「あ!、何かキラキラ落ちてるジャン!

誰が取るか早いモン勝ちジャン!」

「やめろアホ熊!

こいつらの前でそういう事言うなデシテ!

そして貴様らも貴様らでムキになるなーーー!

ソウル消耗してるんだから大人しくしていろデシテーーー!」

 

戦闘が終わり進化を解いた後も何だかんだ騒がしい2人と2体だったとさ。

 

 

 

 

 

 

☆レギオン群島・廃墟エリア

移動中デッカードラモン号、機関部

 

「「「「ウオオオオオオンッ!」」」」

「気張れお前達!、ぐぅうっ!」

「傷ヤッベ!、ヤッベェぐらいいってぇけど!

俺ら、こんぐらいしか役に立てねぇモンなガルル!」

「ああ!、そうだグルル!」

「おいらも、頑張るんだなー!」

「すまない、みんな・・・」

「リーダーは休んでいて下さい!!

自分だけでは!、こいつら率いて長の世話までするのは無理なんですから!」

〔「皆の衆!、一旦休憩じゃ!」〕

「「「「!、わふぅ~~~・・・」」」」 

 

伝声官越しの指令が耳に入るや否や手負いの獣達がタービンの上に崩れ落ちる。

 

「・・・・・・・・・ッ」

「こんなとこで何やってんだァ?」

「あの子達、まだ怪我が治りきってないのに

どうして、あんなに

私達の為に頑張ってくれるんだろ?」

「別にテメェらの為だけじゃねぇなァ

あいつらはあいつらで自分の為に体張ってんだァ

だから、間違っても代わるとか言うんじゃねぇ」

「うん、わかった・・・

いつもありがとね、レオルモン・・・」

「ケッ!」

 

レオルモンと共に機関部を後にするなな。

 

「あ!、また強そうな奴出てきたジャン!」

「ええ?」「アアン?」

「ごめんなさい、なな

この子、頭が悪いの」

「それも常軌を逸してデシテ」

「そ、そうなんだ・・・」

 

デッカードラモン号を降りた彼女達を待っていたのはベアモンの洗礼。

 

「これでやっと99期生が全員揃ったね!」

「いやぁ、オジサンもやっと肩の荷が降りた

カンジィ☆」

「それは気が早過ぎるな!、光の!」

「フレイモン殿の言う通りで御座る!

拙者らの使命はデジタルワールドを救う事!

ニンゲンを集めるのはあくまでも通過点に過ぎませぬ!」

「その為にも頭数必要なんだって事ぐらい少し考えればわかるだろ?、デス」

「そう思うんなら、もっと大きな声出したらどうどす?」

「ところで、天堂とクロ子もロボ倒したんだろ?

ならさ、コレ持ってないか?」

「ええ、先程回収した所です

私が」

「この3枚と

天堂さんが持っている分を合わせれば・・・」

「うん、やっぱりピッタリだ」

『!』

 

舞台少女達が今まで集めた欠片を繋ぐと

ソレは一枚のカードキーに変化した。

 

「わぁあああ!、すごいねひかりちゃん!」

「うん

あれ?、エリスモン?」

「みせてー!、みせてー!」

「え?、いいけど」

 

すると、あれだけ頑なにひかりに引っ付いていたエリスモンが純那の元へ。

 

「・・・・・・・・・《ケンザンダイブ!!》」

「うああああ!!?」

「純那ちゃんッ!」

「お前!、何を!?」

「エリスモン!?」

「ヴゥーーーーーー!

《ライトニングファー!》」

 

すると、彼女から強引にカードキーを奪い

舞台少女やパートナー達に向け針毛を飛ばしまくる。

 

「いたた!?、いたたたたた!!」

「華恋ッ!

エリスモン!、やめて!」

「やー!、こいつらヒーとるー!

エー、スタァライトきらいーーー!」

「「!!!」」

「ぬ・・・」

「ヴゥウーーーーーー!!」

 

思わぬ言葉に華恋とひかり

 

リュウダモンが動けなくなった。

 

その隙にエリスモンはカードキーを毛の中に隠し何処へと走り去る

 

 

足元にいつくかの種をバラ蒔いて。

 

 

「!、構えろテンドー!!」

「わかっています!!」

 

直後、棘の津波が9人と8体を飲み込まんと殺到してきた。

 

「《リヒト・ナーゲル》」

「《ベビーサラマンダー!!》」

「ひぇええっ」

「た、助かったデスぅ・・・」

「ありがとな、相棒」

「ストラビモンも あっ、ひかりちゃん!」

 

 

「(エリスモン!、どうして・・・!?)」

 

 

光と炎が切り開いた道を突っ切る青の舞台少女。

廃墟の壁面に短剣を投擲しワイヤーで移動する。

それを何度も繰り返す内に、パートナーと

 

 

麗将・ロゼモンの姿が見えてきた。

 

 

「これー!、もってきたー!」

「うふふっ、良い子ねぇ」

「ねー、これでもー

エー、ヒー、ずーっといっしょー?」

「ええ、勿論 た・だ・し♪」

「ウー?、ヴェエー!?」

「エリスモン!!」

 

黒のヒールに蹴り飛ばされたエリスモンを

辛うじて受け止めるひかり。

 

「不穏分子として一緒に削除して差し上げますわ

全てはレイド帝国の為に」

「あなた!、エリスモンに何をしたの!?」

「あらあら、流石の演技力ね神楽ひかりさん

 

 

本当はその子の事もこの世界の事も興味はない

 

 

華恋と一刻も早くスタァライトしたいのに」

 

 

「!?

だから、この子は華恋をあんなに攻撃して

スタァライトがきらいって言ってたの?」

「ウー・・・ヒー、エー、いっしょー・・・

かえっちゃー、やー・・・!」

「ーーーーーーッ、く!!」

「うふふ♪

あたくし何か間違った事を言ったかしら?」

 

投げ放たれたBlossomBrightをロゼモンは軽々躱しカードキーを見せびらかしながら宙へと舞い上がる。

 

「天界へのアクセスコード

これが無ければあなた達が中枢へ行くのは不可能

 

 

そして」

 

 

『オオオオオオオオオオオオオオ・・・!!』

 

 

「な!?」

 

すると、廃墟の各所からレイド帝国の大軍勢が現れその全てがデッカードラモン号の方へ。

 

「麗将の名の元にこのレギオン群島に配備されたデジモンを総動員させましたわ

セキュリティの核たるガーディアンは倒せても

これだけの数を御相手出来まして?」

「また、あなたの脚本通りにッ

私達は!、踊らされて!」

「後悔する暇あんならとっとと動きなバカタレ」

「え?」

「ん"、んんっ!

これは最後通牒でしてよ

今から、そうですわねぇ・・・

一時間半後にあの艦に総攻撃を仕掛けます

それまでに降伏しレイド帝国にその身を委ねるか

 

 

あるいは無謀にも抗って、全てを失うか」

 

 

「・・・・・・・・・!!」

 

 

「うふふふ♪、どちらでも好きな方を選びなさいな

 

舞台少女達よ」

 

 

「待って!、待ちなさい!!」

「ゥー・・・ヒー・・・」

「!、エリスモン・・・

 

ごめんね

 

それでも、私は華恋との運命が」

 

 

 

 

☆??????

 

 

「はてさて

 

もう1匹

 

お膳立てが必要な小童がいるみたいだねぇ

 

まったく!、どいつもこいつも世話が焼けるったらありゃしない!

 

・・・・・・・・・まぁ、あんたに比べりゃあ可愛いモンさ

 

カッカッカッ!」

 

 

 

 

 




※ライデンモン
はじまりの街で医院を担当していたアンドロモンがレイド帝国により削除され、デジタマを改造された存在。
ワー爺に治療の仕方や薬草について教えてくれていた。



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華恋とひかり大ピンチ! 麗将ロゼモンの誘惑



回想劇『そのハリネズミにジレンマなどなく』


エーがヒーとグルグルにとびこんだあと

「ウーーー・・・、ウー?、ヒー?
ヒー!、どこー!?、ヒーーー!!」

めをさましたエーはヒーをさがしました。

「ヒー!、ヒー!、ヒーーーーーー!!
ヴゥーーーーーー!、ヴーーーーーー!」

なきながら、なんどなまえをよんでもヒーのこえはきこえません。
それでも、エーはガンバりました。
めになみだをイッパイためて、てとあしをバタバタさせて

そして、やっとみつけました。

「!?、ヴゥウーーーーーー!!
ヴァーーーーーー!!」
「あらあら、うふふ♪」
「・・・・・・・・・んぅ」

でも、ねてるヒーのそばには
あのイヤなヤツがいたのです。

「ヒー!、いじめちゃー!、メーーーーーー!
《ケンザンダイブーーー!!》」
「いじめてなんていませんわ
少しの間、休んで貰っただけでしてよ
あなたと2人っきりでお喋りがしたかったから」
「ヴェエーーーーーー!?
ヴァーーーーーー!、はなせはなせー!」

イヤなヤツからヒーをまもろうとしたエーをトゲトゲがガッチリしました。

「ヴゥウーーーーーー!!、ヴーーーーーー!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・ウー?」

エーがトゲトゲからでようとガンバっているとなんだかあまくてイイニオイがしてきます。

「うふふ、良い子ねぇ」
「エー、いいこー?」
「そうよ、あなたはとっても良い子なの」

エーはあたまがポワポワしてきて
イヤなヤツがイイヤツにかわりました。

「だから御褒美にとっても良いモノを見せて
ア・ゲ・ル♪」
「ぅ」
「!、め、メー!
ヒー、いじめちゃー、メー・・・!」
「あらあら、魅了されても尚この子の事をこんなに想えるなんて
羨ましいねぇ」
「ヴー、ヴゥーーー!《ライトニング 」

でも、ねてるヒーにちかづくのをみて
やっぱりイヤなヤツだとわかったエーはフワフワしながらツンツンになろうとしました。

「だからこそ、存分に御覧なさいな」

イヤなヤツのてがヒーのてを
そこにあるスゴいのをギュッとしたら


「あなたのパートナーが望む『舞台』を」


「!?」


エーはみました、みてしまいました


『舞台少女・神楽ひかり』を、ぜんぶ。


「あ、ああああああーーーーーー!
やー!、やー!
ヒー、いっちゃー!、やーーーーーー!!」


ヒーのゆめ、ヒーのやくそく、ヒーのうんめい


スタァライト。


「ヴァーーーーーー!!
ヴゥーーーーーー!!、やーーーーーー!!
やー!、やー・・・ヒー・・・ヒーーー・・・!」
「あらあら、可哀想に
あなたにはあの子しかいないのに
あの子にはあなたはいらないなんて、ね?」
「ウウーーー!、ヴゥウーーー!」
「でも、大丈夫よ
だって、このデジタルワールドには
スタァライトなんてないのだから」
「ウゥー・・・ウウー?」
「だから、ここにさえ居れば
あなたは大好きなヒーとずっと一緒よ」
「ヒー、いっしょー?」
「そうよ
でも、もし
あのニンゲンが現れたら・・・
取られてしまうかもしれないわねぇ」
「!!、ヴゥウーーーーーー!!!」

ヒーのなかでいちばんキラキラしてたニンゲン。
そのかおをおもいだすだけでエーはおなかが

ドロドロしました。

「・・・・・・・・・流石は星罪の舞台少女
純粋で無垢な魂がこんなにも穢れるなんて
おっどろいたー」
「ウー?」
「ん"、んんっ!
ねぇ、あたくしのお願いを聞いて下さる?
あなたがヒーと一緒に居る為に」
「わかったー!、エー!、がんばるー!」

エーはガンバります。
これからもずっと、ずっとヒーといたいから。


エーはヒーをはなしません。


たとえ、エーのハリがヒーにささっても


だって、エーにはヒーしかいないのだから。




☆レギオン群島・廃墟エリア

停泊中デッカードラモン号、中央通路

 

レイド帝国による総攻撃まで残り45分

 

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

「ウーーー!、ウーーー!」

 

「エリスモン・・・」

 

舞台少女、そのパートナーデジモン

更には『明けの遠吠え』達まで集まった中央通路は重苦しい空気に包まれていた。

 

「あのさぁ月光 」

「言うな隠士、これは間違いなくワタクシの失態デシテ

貴様のパートナーにも悪い事をした」

「わかってるならいいよ、うん・・・

ジュンナ、手の具合は?」

「大丈夫、しっかり治療して貰ったし

この世界だと私達怪我の治りが早いから

制限時間までには弓を扱えるまでにはなる筈よ」

「純那ちゃん、無理しないで」

「ケッ!、そうも言ってらんねぇなァ」

「猫の言う通りで御座る!、拙者達はこれ以上無い程の窮地に立たされてしまった!!

御主のせいでな!!」

「ヴゥー・・・」

「リュ、リュー君!、そんな怒っちゃダメ!」

 

ひかりを筆頭に泣きじゃくるエリスモンを宥めどうにか話を聞き出したはいいが状況は何も変わらない。

 

 

いや、それどころか。

 

 

「何故庇い立てる!?、こやつが下らぬ口車に乗ったばかりに 」

 

 

「くだらなくなんてないよ!!!」

 

 

「ぬ!?」

「くだらなくなんて!、ない!

ひかりちゃんと離れたくないって気持ち!

私知ってるッ、よくわかる!

だから、そんな風に言わないで・・・!」

「結局それかッ」

「え?」

「ハイハイ☆、ちょーっと失礼☆」

「「!」」

「2人共そんだけ元気ありあまってんならさ☆

ちょっくらオジサンとパトロールしない?、こんな回りくどい事する奴が約束通りに攻めて来るとは限らないっしょ☆」

「そ、それは、言わんとする事はわかるが」

「ホラホラ☆、駆け足駆け足☆」

「ちょ、ちょっとちょっとぉ!

お、押さないで~~~!!」

 

一触即発の空気に陥った華恋とリュウダモンをストラビモンが強引に連れ出し、中央通路に再び静寂が満ちる。

 

「ヴーーーーーー、ヴゥーーーーーー!」

「ッ」

「だ、大丈夫?、ひかりちゃん」

「うん、まだ我慢出来る

星見さん、みんなも、ごめんなさい・・・」

「神楽さんが謝る事じゃないわ、悪いのはこの子の心につけこんだ麗将・ロゼモンでしょ?」

「でも、華恋のパートナーが言ってた通り

こんな事になったのはエリスモンの

私のせい、だから

私がもっと早くこの子と話してさえいれば」

「それはしょうがないんじゃない?

だって、元々住む世界が違うんだから

いずれ帰るのは当たり前でしょ?」

「え!、そうだったジャン!?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「今難しい話してるから終わるまで冷蔵庫のおやつ食べて待ってろデシテ」

「おやつ!、やっりぃ♪」

「では、行きましょうかベアモン」

「おう!、行くジャン!、テンドー!」

 

フーーーッ、ハーーーッ、ふぅううう・・・!

 

 

さて、あのアホは兎も角としてエリスモンが知らない上にこんな事をしたのは無理はないのデシテ

レイド帝国の侵略の影響かはじまりの街が機能を喪失してからのデジモンはデジタマから還った直後に見たモンを親と認識し

そこから生きる術を学ぶ事が多いのだから」

「インプリンティング、刷り込みね

あ、ドルモンがワーお爺さんにベッタリなのもそれが理由?」

「いや、それは単にそいつがボッチなだけデぶふぇっ!?」

「今ボクの話は関係ないよね!?、うん!

大体それはどっちかって言ったらこいつらだ!

昔はとーちゃんとーちゃん言ってワー爺の後ろをゾロゾロついて回ってさぁ!」

「んで、ドドモンそれを遠くから見てたっけ?

なぁ!、ガルル?」

「ああ、良く覚えているぞグルル」

「なのに、誘っても全然来なかったんだなー」

「仕方ないさ、そういう年頃だったのだろう」

「でも、今は長だけでなく

ジュンナさんも居てくれて良かったなドルモン」

「ちっくしょう!、薮蛇だったぁあああ!」

「後、今のデジタルワールドは神機無しでは進化するには多大な時間を要する筈なのにこいつはヒカリと出会って数日足らずで成長期にまで至っている」

「契約前にも関わらず!、そこまで影響を与えるなんて凄いな!」

「でもさ、それってつまり心は赤ん坊のまま体だけデカくなったって事だろ?」

「どおりで、なんやブイはんよりお子ちゃまやなぁって思いましたわ」

「今の話ブイ関係あったデスぅううう!?」

「士武大陸で貴様らの話を聞いた時点でワタクシがもっとフォローすべきだったのデシテ・・・」

「そうは言っても、あなた

天堂真矢とあの子の相手で手一杯だったじゃない

それに甘えていた私も同罪よ

だからこそ、舞台の借りは舞台で返すわ

そうでしょ?、ひかり」

「ええ、西條さんの言う通り

幕はまだ開いている

この世界での私達の物語、こんな形で終わらせたくないから」

「ヒー・・・」

「皆の衆、あの大軍勢にも全く怯んでおらんのぅ

ワシなんて、もぅ、腰がガクガクでッ」

「うん、それはただの持病だね」

「あはははっ、あれ?、ばななちゃん?」

「・・・・・・・・・」

「トカゲ野郎が気になんのかァ?

ケッ!、テメェも随分と絆されモンだなァ」

「うふふっ、そうだね♪

レオルモン達のお陰で今ならわかるの

あの子の、リュウダモンの気持ちが・・・」

「ア"アン?」

「まひるちゃんが捕まってたキテンの街

ううん、ウラル大陸全体が表立ってレイド帝国と戦う事を避けてたのにあの子だけは独りでも声を上げて抗おうとしてた

それは、きっと

すごく寂しくて、心細かったんだと思う・・・

 

だから、華恋ちゃんと出会って受け入れて貰えて

 

やっと、自分の居場所が出来て

 

嬉しかったんじゃないかな?」

「なのに、当の華恋ときたら

神楽さんとスタァライトの事ばかりで

ちゃんと真面目にやる気があるのかって考えたら

イライラしちゃうわよね・・・」

「うん?、ジュンナ?」

「ほんま、人の事引っ掻き回す天才やわぁ」

「だな」

「フタバ!?」

「引っ掻き回してるのはカオルコだってイヒャイイヒャイイヒャイ!!?」

 

華恋の話題で盛り上がる舞台少女達。

 

「ヴーーー!!」

「エリスモン・・・」

 

それだけでもエリスモンは針毛を逆立てて唸り声を上げるのであった。

 

 

 

 

 

 

☆レギオン群島・廃墟エリア

停泊中デッカードラモン号、甲板

 

レイド帝国による総攻撃まで残り30分

 

 

「うんめ!、うんめぇジャン!」

「ええ

 

 

ゼリー自体の持つ柑橘類を彷彿とさせる風味を、上にかかったソースの塩気と辛味が絶妙に引き立て、なおかつ中に散りばめられた種の食感と渋味が素晴らしいアクセントになっています、砂糖を使わず他の味を巧みに扱う事で甘さを引き立てる手腕

今度は是非バウムクーヘンに挑戦して欲しい所

いや、それよりもそろそろ真剣に

 

 

持ち帰る方法を考えるべきでしょうか?」

 

 

「ベロンベロン♪

ん?、テンドー今何か言ったジャン?」

「ただの独り言ですからお気になさらずに

それよりベアモンは西條さんと離れる事になっても良いのですか?」

「え!?、お前らもう帰るジャン!?」

「いいえ、私も彼女達も一度始めた舞台を途中で投げ出すつもりはありません

この物語が終わるまでは御一緒させて頂きます」

「なーんだ、それならいいジャン!

その前にウチがクロ公に勝てばいいだけだし!

勝ち逃げなんて絶対させないジャン!」

「そういえば、ベアモンはどうして私には直接挑まないのですか?」

「だって、テンドーはクロ公の獲物ジャン

まだあいつに勝ってないウチが横入りすんのはダメだろ?」

「・・・・・・・・・ぷ!、ふふふっ!、ははは!!

そ、そうですかッ!」

「?、ベロンベロン♪

うっし!、キレーになったジャン!

とりあえずテンドー、あそこからあそこまで!

ウチの分な!」

 

 

『オオオオオオオオオオオオオオ・・・!!』

 

 

ベアモンがスプーンで指し示す先で蠢くのは

 

レイド帝国の大軍勢、その半分。

 

「おや、珍しく謙虚ですね」

「だって、ウチだけ楽しむのは悪いジャン?

やっぱ祭りはみんなでやんないと!

タイタモンの時とかめっちゃワクワク・・・・・・・・・タイタモンって誰ジャン!?」

「誰、なのでしょう?」

 

 

 

 

 

 

☆レギオン群島・廃墟エリア

停泊中デッカードラモン号付近

 

レイド帝国による総攻撃まで残り10分

 

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

 

「(さーて、勢いで連れて来たのはいいけど

 

正直なんて声かけたらわかんないんだよなぁ!

 

だって、結局こういうのって当人同士で話し合わないとダメな奴じゃね?

オレとマヒルがそうだったみたいにさ

他人が口出すとか無粋にも程があるっしょ?

なのに、この子達外出てから一言も話さないし!

トカゲチャンはもうしょうがないとしてカレンチャンまで結構激おこだったのはマジ想定外!

でもなぁ、何もしないまま帰るのはオジサンの面目が立たないんだよなぁ・・・

なんて、考えてる間に制限時間は近づいてる)

 

 

のに、これだモンなぁ!!

 

 

アォゥン! アォーーーゥン!!」

 

 

「わわっ!、何何なにぃ!?」

「何事で御座るか!?」

 

突然吠え出したストラビモンに華恋とリュウダモンが戸惑っていると

 

 

「あらあら、うふふ♪

流石は創造神の一部、ね」

 

 

頭上に黒に包まれた薔薇が出現。

 

 

「!、もしや御主は!!」

「エーちゃんを騙した麗将・ロゼモン!?」

「騙したとは人聞きの悪い事

舞台少女達がいずれ人間界に帰るのも

神楽ひかりがあの子より貴女とのスタァライトを優先しているのも事実ではなくて?」

「そ、それは・・・」

「惑わされるな華恋殿ッ!

こやつさえ討てば万事解決で御座る!!」

「!、そうだね!!」

 

舞台少女は促されるまま赤い幕を展開し鎧竜にまたがって紫空へと飛び上がる。

 

「レイド帝国四天王が1体!、麗将・ロゼモン御覚悟!!」

「エーちゃんから奪ったモノ!、返して!」

「うふふふっ、鬼さんこちらでしたっけ?」

「待てギンリュウモン!、カレンチャン!

君らだけじゃ!

チィイイイッ!、完っ全に裏目に出た!!」

「ストラビモン!」

「マヒル、みんなも・・・」

「おいオヤジ!、何があったァ!?」

「華恋ちゃんとリュウダモンは!?」

「例のロゼモンがちょっかいかけてきたんだよ!、2人共それにまんまと乗せられて 」

「!」

「ひかりちゃん!?、待って!!」

「ヒー!?、ヴゥーーーーーー!」

 

取り残されたストラビモンの説明を遮ったのは廃墟の壁に投擲されたBlossomBright。

まひるの制止も聞かず、ひかりはエリスモンにしがみつかれたままワイヤー移動で華恋とギンリュウモンを追った。

 

「もう!、あの2人は!

相変わらず団体行動が取れないんだから!」

「・・・・・・・・・それに比べて

あっちはしっかり統率が取れてるね、うん」

 

 

『オオオオオオオオオオオオオオ・・・!!』

 

 

「キタキタキタキターーー!

デッカイ祭りの始まりジャン♪」

「こんなお祭り!、うちはごめんどす!」

「ブイだってお断りデスぅうううううう!」

「お前らなー、今更何言ってんだよ・・・」

「カオルコ!、ブイモン!

大丈夫だ!、オレ達みんなが力を合わせれば!

きっと乗り越えられる!」

「ワ・タ・ク・シ・のぉ!、パートナーはぁ!

合わせる気がないのデシテーーーーーー!」

「ッ、抜け駆けは許さないわよ!!

天堂真矢!!」

 

 

アウン! ゥォーーーン!!

 

ケフッ! カフカフ!

 

 

「!、オオオゥーーーンウォン!!」

「お爺ちゃん、なんだって?」

「自分達も出ましょうか?、だって

大人しく引っ込んでろって言っておいたよ」

「うん、戦うのは

守るのは!、私達の役だから・・・!」

「ケッ!、いっちょ前の啖呵

切れるようになったモンだなァ、ナナァ!」

 

定刻通りに動き出した大軍勢と

 

7人の舞台少女、7体のデジモンによる

 

乱戦の火蓋が切って落とされる。

 

 

ふたりでひとつの運命と

 

 

それに翻弄される蜥蜴と鼠を置き去りにして。

 

 

 

 

 

 

☆レギオン群島・廃墟エリア中心部

 

 

はじまりの街、跡地

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ッ」

 

 

朽ちかけた玩具や揺籠の残骸が未だ多く転がり

 

色褪せた建物には爆撃や斬撃、熔解の痕跡

 

かつて、デジタマから孵ったばかりの幼子達や

 

世話役達の様々な声で溢れていたこの場所に

 

麗将・ロゼモンは降り立った。

 

「《棒刃破ぁ!!》」「たぁあああ!!」

「・・・・・・・・・ハァ」

 

ため息まじりに振るった棘の鞭で絡め取るのは

空中から突進してきた鎧龍と振りかざされたサーベルとそれを握り締める右手。

 

「思ったよりも早いお着きです事・・・」

「ぬううん!、こんなモン!」

「痛いッ、けど!

エーちゃんのに比べたら!!」

「なら、これはどうかしら?

 

 

《ソーンウィップ》」

 

 

「「!!?、うわああああああ!!!」」

 

ロゼモンの呟きと同時に凄まじい電流が華恋とギンリュウモンを襲う。

 

「あうう!、う、ぁ」

「あらあら、さっきまでの威勢はどこへやら

ねぇ、あなた達

何の為にあたくしと戦っているの?」

 

 

「(え?、たた、かう?)」

「(なぜ?、そんなことを?)」

 

 

それだけでも強力だが

この技の真価は肉体へのダメージに留まらない。

あれほどまでに戦意に溢れていた瞳から徐々に

 

 

輝きが失われ・・・

 

 

「華恋!!!!」

 

 

「ッ!!、ひかりちゃん!!!!」

 

 

「ヴゥウーーーーーー!!

《ライトニングスティンガー!!》」

 

己を忘れかける寸前、呼び起こされる華恋。

 

「・・・・・・・・・だから、早いってのッ」

 

ロゼモンは棘を解き、青くキラめく短剣とエネルギーを纏った毛針をバックステップで避けた。

 

「華恋!、大丈夫!?」

「う、うんっ

まだ、ちょっと、フワフワしてるけど!

ひかりちゃんが来てくれたから気合いじゅーぶん

だ、よぉ!?」

「ヴァーーーーーー!」

「フィルモン・・・」

「ヴゥウーーーーーー!!」

 

ひかりがヨロめく華恋の元へ駆け寄ろうすればフィルモンが威嚇しながら割って入る。

 

「あらあら、そんな状態でよくこの場に立てますわね?」

「ロゼモン!

もうこれ以上、あなたの好きにはさせない」

「やろう、ひかりちゃん!

リュー君とエーちゃんも!」

 

 

「何故拙者が

ロゼモン殿と戦わねばならぬのだ?」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」

 

 

「エーもやー!」

 

 

「フィルモン!?」

 

 

「自分達だけじゃなくてちゃんと周り見なっての

 

 

バカタレ共がッ」

 

 

パートナーの異変に困惑する舞台少女2人をロゼモンは小声で叱責していた。

 

「りゅ、リュー君しっかりして!!

レイド帝国を倒してデジタルワールドを救うのがリュー君の夢でしょ!?」

「それは結局、力ずくで自分のやりたいようにしているだけではないか?

夢だのなんだのと綺麗事を言っても所詮はレイド帝国と同じ事をしているだけで御座る」

「!」

「それに気づかせてくれたロゼモン殿にその刃を向けるつもりならば拙者が御相手しようぞ」

「りゅ、う、くん?

ねぇ、じょーだん、だよね?」

「御覚悟、愛城華恋」

「!?」

 

Possibility of Pubertyが咄嗟に受け止めたのはギンリュウモンの必殺技《徹甲刃》。

 

「華恋!、うぐ!!?

フィルモン!、離して!!」

「やーーーーーー!、エー、ヒー、はなさなー!

はなれたく、なーーーーーー!!」

「ッッッ!!!」

 

助太刀に入ろうとするひかりをフィルモンが全力で抱き止める。

鋭いトゲが爪が衣装を突き破って刺さるのも意に介さずに。

 

「ひかりちゃん!!」

「《棒刃破ぁ!》」

「あう!?」

「この期に及んで、拙者から目を離すとはッ」

 

華恋もまたギンリュウモンに押し倒され身動きを封じられてしまった。

 

「あらあら、呆気ない事

じゃあ、そろそろ仕上げといきましょうか」

「リュー君!、お願いだから離して!

このままじゃみんなやられちゃうよぉ!」

「フィルモン!、後でちゃんと話すから!

こんな事しちゃダメ!」

「貴方達しっかり押さえてくださる?」

「任されよ」

「ウー、ヒー、いじめなー?」

「勿論、苛めたりなんてしませんわ

だから安心して、ね?」

「わかったー!」

「どうして!?、なんでリュー君もエーちゃんもあなたの言う事聞いちゃうの!?」

「それはあたくしの方が貴女達よりこの舞台で

 

 

キラめいているからではなくて?」

 

 

勝ち誇る言葉と共に放たれるのは薔薇の芳香。

 

「そんな訳!・・・・・・・・・ある、かも?」

「うん、うん、そうだねー

ロゼモンのほうがわたしたちよりもずっと

!?、ひかりちゃんダメ!!」

「ッ、かれん!!

うぐ!、あたま、が」

「抵抗するだけ苦しむだけでしてよ?

ホラ、たっぷりと堪能して楽になりなさいな

そして、貴女達もあたくしの虜になるの

パートナーと同じように、ねぇ」

「華恋殿が拙者と同じに・・・?

なれば、もう目を離される事はないで御座る」

「ヒー、エー、ずっといっしょー」

「「!、・・・・・・・・・っ・・・」」

 

パートナーに取り押さえられた状態でソレに包まれた華恋とひかりは危機感を抱きながらも自我が溶けていくのを止められない。

 

 

「・・・・・・・・・ったく」

 

 

自身が造り出した光景を前に麗将ロゼモンは

 

 

「(あんたらの新約スタァライトは

 

 

アイツが認めた舞台はこんなモンじゃないだろ?

 

 

ええ?    フローラ、クレール)」

 

 

黒い布の下に隠したモノを握り締めるのであった。

 



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ヒシャリュウモン&スティフィルモン スタァライトを越えてゆけ!

ククク麗将ロゼモン、奴はレイド帝国四天王の中で最弱・・・


 

 

 

「うふふふ!、スタァライトの主役2人が敵の傀儡として登場なんてしたら

他の舞台少女達はどんな顔をするかしら?」

 

 

「正解は☆   そうはならない、でした!」

 

 

「んな!!?」

 

甘い色香を引き裂き、ロゼモンへと迫るのは

大型双刃剣トリニテート。

 

 

そして

 

 

「ヒー    ヴェアーーーーーー!!?」

 

 

執着をへし折り

 

 

「ぬ"あ"あ"あ"ああああああ!!!???」

 

 

鬱屈を打ち砕いて

    

 

「・・・・・・・・・」

 

 

露崎まひるがLove Judgementを勢い良く回し、周囲の残り香を散らしながら登場した。

 

「うぅう・・・ん!、まひるちゃ?」

「た、たすか 」

 

 

「ねぇ、みんな ちょっとここに座って」

 

 

「「「「      へ?      」」」」

 

 

「早く」

 

 

「「「「は、ハイィイ!」」」」

 

彼女の放つオーラにロゼモンの誘惑以上に逆らってはいけないナニかを察知した2人と2体は震えながら従う。

 

「じゃあ、後はみんなでちゃんと話し合ってね

私はベオウルフモンと一緒にあのデジモンやっつけてくるから」

「えーーっ!?、まひるちゃん!!?」

「こうゆう場面、普通は諭したりするんじゃ」

「だって、私が口を挟んだら

 

 

2人共負けちゃうよ?」

 

 

「「!?」」

「それでもいいなら幾らでもお話するけど

本当にいいの?」

「「エ、エンリョシマス・・・」」

「よかった♪

ギンリュウモン、フィルモン」

「ぴっ!?」「ヴヴヴゥー!」

「華恋ちゃんとひかりちゃんにはホンキでぶつからないと伝わらないよ?

誰かに造られたんじゃない、自分の気持ちで」

「ほん、きで、ござるか・・・?」

「きもち?、エーの・・・」

「頑張ってね!、私は2人の事応援してるから」

 

やりたい事をやりきって笑顔で駆け出すまひる。

 

「あらあら、太刀筋に迷いがありますわねぇ」

「アッハッハァ☆、ほんっと他人の足元ばかり見てくれちゃってさぁ!、もー!

オジサン激おこプンプン丸になっちゃう!」

 

彼女が向かう先では棘の鞭と大型双刃剣が激しくぶつかり合っていた。

 

「あれだけ多くのモノを斬り捨てておいてこんな誰も居ない朽ち果てた場所を気遣うなんて、とんだ偽善です事」

「偽善?、自己満?、上等上等☆

開き直りゃあ無敵モード!、ってね☆

だから、そういう揺さぶりトークと

 

ソレ

 

オレらには通用しないんでヨロシク☆」

「それは残念です事」

 

魅了の芳香は出した途端に回転しながら飛来するメイスのキラめきに散らされ届かない。

一方、銃火器と大技を封じたベオウルフモンとサポートに徹しているまひるもまた攻めあぐねている。

 

硬直状態と化した戦場の片隅では

 

「華恋、殿・・・

その、あの!、面目ない!」

「え?、メモがない?」

「わ、悪かったと言っているので御座る!

拙者が軟弱だったばかりにあのような技に惑わされてしまった!!

本来ならば腹を切って詫びねばならぬ程の失態」

「それはノンノン!、だよ!

お腹なんか切ったら痛いってば!、絶対!」

「元より、拙者のような未熟モンには・・・

その資格すらないで御座るッ

 

デジタルワールドの平和よりも

 

御主にちゃんと見て欲しいなどと!

 

それこそ、エリスモンのような

 

稚い事ばかり考えていた拙者には!」

 

「え?、それって」

「ずっと、自分で自分を誤魔化していたが

 

 

最早限界で御座る!!!

 

 

華恋殿!、華恋殿にとって拙者はなんだ!?

拙者は御主のパートナーだろう!?

なのに、ひかり殿やすたぁらいとばかりで!

拙者を全く見てくれぬではないか!!

拙者には!、御主のパートナーである事しかッ

 

 

胸を張って誇れる物が無いというのに!!」

 

 

「エーも」

「フィルモン?」

「エーも、ヒーだけー

だから、そいつー・・・カーもスタァライトもー

エー、きらいー

で、も、でもー!」

「!?」

 

 

「ヒー!、いたがってたー!、こまってたー!

エー!、ヒー!、いじめたーーーーーー!!

そんなエー!、エーはー!

カーよりもー!、スタァライトもー!

もっとー!、もっときらいーーーーーー!!

ヴウウウァア"ーーーーーー!!!」

 

 

「拙者だって!、せっしゃだってぇ!

かれんどのにふけいをはたらいたッじぶんじしんがゆるせぬ"ぅううう!!

くぅううううううっっっ!!」

 

まひるによってへし折られ、砕かれ

 

剥き出しになった自分の心を受け止め切れず

 

泣き崩れるギンリュウモンとフィルモン。

 

「石動さんの言ってた意味、この世界で私が犯した罪の重さがやっとわかった・・・」

「罪?」

「気づかなかった、気づこうとしなかった

この子にとっての世界は私だけなんだって

なのに、私はフィルモンと

エリスモンとちゃんと向き合ってなかった」

「それはッ

それはきっと、私も同じなんだと思う・・・

このデジタルワールドの救世主って役の中で一番やらなきゃいけない事、やってなかった」

「なら、どうするの華恋?

わかっていても、私達は」

「うん、スタァライトはやめられない

だから!」

「ええ」

 

幼い蜥蜴と鼠の涙に

ふたりでひとつの運命が出した答え。

 

 

「強く掲げた手の平に」

 

 

「ヴゥーーー・・・ヒー・・・?」

 

 

「可憐に咲かせる愛の華」

 

 

「かれんっ、どの?」

 

 

「生まれ変わった光を胸に」

「キラめく舞台に飛び込み参上!」

「99期生 神楽ひかり」

「99期生 愛城華恋」

 

 

「「みんなを スタァライトしちゃいます!」」

 

 

スタァライト。

 

 

「「・・・・・・・・・!」」

 

2体共この言葉が大嫌いだ。

自分達とパートナーを遮る、厚くて高い壁。

それがスタァライト

それが愛城華恋、それが神楽ひかりである。

 

 

なのに、それら全てが一同に介した瞬間

 

 

蜥蜴と鼠の胸を刺したのは後悔も悲しみも

 

 

何もかも吹き飛ばす程の衝撃。

 

 

「ねぇ、リュー君

違う世界の違う生き物の私達がこうして出会えたのはきっと、私が舞台少女だからだと思うんだ

そして、私にとって舞台はひかりちゃん」

 

愛城華恋は歌う

 

「華恋が私の求めるスタァ

初めて、2人で舞台を見た時にキラめきを分かち合って

だから、離ればなれになっても繋ぎ止められた」

 

神楽ひかりも歌う

 

「だから、私はあなたともわかち合いたい」

「エーとヒーが?、でも、エー・・・

キラキラピカピカじゃ、なー・・・」

「だいじょーぶ!

エーちゃんとひかりちゃんだって運命だから!

もちろん!、私とリュー君も!」

「運命、で御座るか・・・?」

「うんうん!

だから、きっとキラめける!

この世界、デジタルワールドのよな、よなきたび?」

「世直し旅」

「そう!、それ!

リュー君もエーちゃんも舞台少女のパートナーみんながその主役、スタァなんだから!

絶対キラめけるよ!、私達と一緒に!

 

 

だから、リュー君のやりたい事は!、夢は!

レイド帝国と同じなんかじゃ!、ない!!」

 

 

「!、~~~~~~っ」

「エー、キラキラピカピカしたらー

はなれてもー、ヒー、またあえるー?」

「うん、きっとそう

だって、私と華恋がそうだったから」

「じゃー!、やくそくー!

エーもヒーとやくそくするーーーーーー!」

「それならリュ 」

「あいや、待たれよ!!

・・・・・・・・・そこから先は、拙者に言わせてくれッ

華恋殿

 

 

否!、華恋!

 

 

拙者の武勇伝!

どうか最後まで見届けて欲しいので御座る!

華恋とひかり殿のすたぁらいとにも負けない!

余所見も許さぬ程に煌めく物語を必ずや造ってみせようぞ!!」

「エー!、カーよりキラキラでピカピカなー!

スタァなるーーーーーー!!

ヒーとはなれてもー!、またいっしょー!、なるーーーーーー!!」

 

彼女達とギンリュウモンとフィルモンが運命の誓いを

約束を交わせば2体の体から赤と青

各々のパートナーの色をしたソウルが再生産。

 

「・・・・・・・・・そろそろ、一旦退場して貰いますわ

露崎まひるさん」

「え?、きゃっ!?」

「マヒル!!」

「うふふふ♪、あれだけ何度も近づかれれば

ねぇ?」

 

すると、まひるが手にするLove Judgementに植えつけられていた薔薇の種が一斉に芽吹き

 

咲き乱れ、散る。

 

「この!、えいえい!」

「《ツヴァイ   !   くそぉ・・・!」

 

パートナーへと群がる花弁の元を断とうとトリニテートを構えるベオウルフモンだったが

 

自分を慕う顔が脳裏にちらついて振り抜けない。

 

「《ソーンウィップ》」

「がぁあ"あ"あ"あああ!!」

「ベオウルフモン!?

待ってて!、今助けるから!」

 

数秒の躊躇いを突かれ、窮地に陥った光狼の融合剣士を救うべく真昼の舞台少女は0と1の緑の粒子を纏いメイスを握り締める。

 

 

「《ロージィクレイドル 戯曲・棘姫》」

 

 

「!!?、う!、ううっ、ぁぅ・・・ぅ・・・!」

「うふふふ!、頑張って息を止めて健気です事

でも、香りを吸っても吸わなくても

あなたは最早その眠気からは逃れられない

だって、舞台少女である以上は役柄には抗えないでしょ?

次の出番が来るまでゆっくりおやすみなさいな」

「・・・・・・・・・か・・・・・・・・・ん・・・ぅ」

 

すると、彼女のソウルとキラめきが触媒となり体に纏わりついていた花弁とそこから新たに発生した蔓が

 

舞台装置化。

 

薔薇の揺り籠に囚われたまひるは深い眠りへと落ちていく・・・。

 

「マ、ヒルゥウウウ!!!

グルァアアアアアアアアアアアア!!!」

「まぁ!、必死になっちゃって可愛いらしい事」

「グルルルルルルゥウウウ・・・!!!

返せ!、カエセェエエエエエエ!!!」

「これって確か負け犬の遠吠えだったかしら?

まさか本当に見られるとは思ってなかったわ♪」

 

進化が解ける寸前、棘を引き千切ったはいいが力尽き動けなくなった仔人狼の鼻先に戦利品を浮かべて弄ぶ麗将。

 

「さて、この子はこれからどうしようかしら?

このまま永遠の眠りにつかせてオブジェにするのもいいし、ゆっくり長い時間をかけてあたくしの完全な虜にするのもいいわねぇ・・・

どちらがいいと思いまして?」

 

 

「どっちもノンノン!!、だよ!!」

「まひるをあなたの好きにはさせない!」

 

 

「カレンチャン・・・!、ヒカリチャン・・・!

それに」

 

 

そこに飛び入りで参加する舞台少女が2人

 

 

「未知なる運命に揺蕩う中で」

「生まれたばかりの想いを背負って、胸に刺さった標を目指して!」

「遍く世界に!、煌めく御伽が堂々見参!」

 

 

だけではない。

 

 

「ギンリュウモン進化、ヒシャリュウモン」

「フィルモン進化!、スティフィルモン!

 

 

エーの全部は!、ヒーとの約束の為に!」

 

 

「御覚悟!、レイド帝国!」

 

 

雄大に空を泳ぐは武将の如き鱗の鎧を持つ東洋竜

地に立つは研ぎ澄まされた針毛を携える獣人。

 

「あらあら、そんな大きな体で攻撃してはこの子が危ないとは思いません事?」

「《ヴァーミリオンボルテックス!!》」

「「ええええええっ!!!???」」

 

全身から赤い槍を伸ばすスティフィルモンには

 

薔薇の揺り籠を撫でていたロゼモンも

 

固唾を飲んで見守っていたストラビモンも

 

度肝を抜かれた。

 

「「・・・・・・・・・!」」

「(ああー、成る程成る程

トゲに乗って一気に距離を詰めてきたのかい

でも、そんだけソウルとキラめき出してちゃ

ねぇ?)

《ロージィクレイドル 戯曲・棘姫》」

「!?、マズい!!

2人共逃げろ!、マヒルの二の舞になる!」

 

急接近するキラめき目掛け、殺到する花弁と蔓。

舞台少女の役柄を棘に囚われ眠る姫に書き換え無力化する筈のソレらは

 

 

華恋とひかりには触れる事さえ叶わない。

 

 

「!!?

(おっどろいたーーー!

今のこの子ら、他の役が入る余地がないぐらいに

 

 

スタァライトしてんのかい!!?)」

 

 

「まひるちゃんは!!」「返して貰う!!」

 

薔薇の揺り籠を芳香ごと斬り裂くのは愛の華。

彼女が造った活路から

囚われの姫君を奪還するのは青を纏う閃光。

 

「マヒル!!」

「大丈夫、寝てるだけ

でも、しばらくは起きれないと思うから・・・

お願い、ストラビモン」

「あ、ああ!

こっちはオジサンにお任せときなって☆」

 

 

「《縦横車ぁ!》」

 

 

「!、あらあら貴方動けたの?

てっきり、まだあたくしの虜だとばかり!」

「真打ちとは遅れて活躍するモンで御座るよ」

「く!、いっちょ前の口を・・・が!?」

「華恋、ひかり殿、スティフィルモン

いざ!、行かん!!」

「「「うん!」」」

 

眠るまひるがストラビモンに預けられた直後

ヒシャリュウモンがロゼモンを左右から攻め

 

たかと思いきや、尾で紫空へと打ち上げる。

 

「う、ふふ!、空中戦が御希望かしら?

飛べるのは貴方だけだというのに、ねぇ?」

「違う!、飛べるのリューだけじゃない!」

 

廃墟の上空にて武者竜の背から伸びる無数の槍。

ソレらは黒に包まれた薔薇を囲うように展開され

 

「ヒーは!、もっと飛べる!

カーが一緒なら!、もっと!

エーが一緒なら!、もっともっとーーー!」

「パートナー達の、足場・・・!

いえ!、キラめく為の舞台造り!」

「それだけでは終わらん!《縦横車ぁ!》」

「華恋!」「ひかりちゃん!」

「ぅぅぅううう!、あああぁぁあ!!」

 

上下左右、360度

代わる代わる行われる2人の連携攻撃。

 

時に飛び回る武者竜から華麗に飛び込み

時に伸ばされる針獣人の槍から槍へと移って

 

Possibility of PubertyとBlossomBrightが

互いのキラめきを受けながら振るわれた。

 

「(少しでも気を抜けば!)」

「(置いてかれる!)」

「「そうはいくかーーーーーー!!」」

 

竜と獣もふたりでひとつの運命に負けじと食らいつく。

 

「(なんて舞台だッ、息つく暇もない!)」

 

その全てを片手で扱う鞭一本で防ぐロゼモン。

 

 

ピシッ   ピキピキ・・・!

 

 

「・・・・・・・・・、うふふふ!、あははは!!

あーっはっはっはっ!!」

「「「「!」」」」

「いいわ!、とてもいいわ貴女達!

それでこそ!、あたくしの全力を出すにふさわしい存在でしてよ!」

 

彼女は狂ったように高笑いを上げ、紫色の空を血のように赤い薔薇で埋め尽くした。

 

「《フォービドゥンテンプテイション》

これだけ舞台を盛り上げてくれたんだもの

きっと、散り様も一際美しいでしょうね・・・

終幕を飾るにはうってつけだわ」

「散らないよ!、だって私達まだ!」

「スタァライト!、してない!」

「拙者の武勇伝は未だ中途で御座る!」

「エーはスタァになるんだーーー!

ヒーとまた会う為にーーー!」

 

 

「「「「だから!

 

まだ!、まだ!、終われない!」」」」

 

 

「吠えるだけなら誰でも出来るんだよぉ!!

 

 

バカッタレ共がぁあああッッッ!!!」

 

 

ロゼモンは長年造っていた役をかなぐり捨て

 

展開していた薔薇の全てを2人と2体の元へ

 

向かわせる。

 

 

「《成! 龍! 刃!》」

 

 

すると、ヒシャリュウモンが巨大な刀に変身。

 

柄に添えられる華恋、ひかり

 

スティフィルモンの手を

 

BlossomBrightに繋がるワイヤーが結んだ。

 

「《ギガ!」

「「ーーー~~~ッッッ!!!」」

「ぬ"ううううううんんんん"!!!」

「クリムゾン!」

 

すると、そこに高速錐揉み回転が加わる。

ワイヤーが千切れそうになる程の遠心力に襲われながらも、誰もキラめく事をやめない。

 

 

「ダイブーーーーーー!!!》」

 

 

「これが!、これが今のアタシの全力!!」

 

 

赤と青の輝きが交わる渦を纏った巨大な刀が禁断の花園を深々と抉った。

 

 

「ヴァアアアアアアーーーーーー!!!」

「ぬぁああああああーーーーーー!!!」

 

 

次々と迫る、触れたモノを破壊する薔薇を

 

スティフィルモンの極限にまで研ぎ澄まされた

 

赤い針毛が貫き

 

滾った情熱が迸るままに進むヒシャリュウモンの

 

 

「そ、そんな!

 

この、あたくしが!

 

レイド帝国四天王 麗将・ロゼモンが!」

 

 

「「ポジション」」

 

 

切っ先に栄光が

 

 

 

「負けると思いまして?」

 

 

 

「「「「!!??」」」」

 

 

 

止まらない。

 

 

「そ、そんな!、これって!!」

「キラめき!?」

 

自分達の全力を受け止めたモノの正体が漆黒のソウルとキラめきで形造られた花弁だと知り華恋とひかりも目を見開く。

 

「な、何故だ!?

何故!、レイド帝国が舞台少女のキラめきを扱えるので御座るか!!?」

「うふふふ♪、さっき言ったじゃない

あたくしは貴女達よりもキラめいているって」

「ヴゥーーーーーー!、そんな事ない!

ヒーとカー!、お前なんかよりもずっと!」

「残念だけど、これが現実 」

 

 

ゴッッッ☆☆☆

 

 

「うんぎゃあ!?!?」

「「「「え?!」」」」

 

勝ち誇っていたロゼモンの腰に直撃したのは・・・

 

 

「ねぇ☆、みんな☆、忘れてない☆

ここには舞台少女がもうひとり居るって事」

 

 

ストラビモンが天高く投げ放った

 

 

Love Judgement【まひるのキラめき】。

 

 

「ま、マズ!

おうふっ!、あ、コレほんとにダメな奴ッ」

「あれは!、リュー君!!」

「承知!」

「う、うふふふ・・・!

そ、それは!

がんばったごほうびにゆずってさしあげますわ!

おほっ、ほほほ ほぅうん!」

 

鈍器による痛打によりカードキーを落としたロゼモンは捨て台詞と共に紫空へと溶け込んでいった。

 

「なんとか、取り戻せた・・・けど」

「ロゼモンには逃げられてしまったな」

「ヴゥー・・・」

「でも!、次に会ったら絶対私達が勝つよ!

ね?、リュー君♪」

「無論で御座るよ、相棒」

「スティフィルモンもスタァになるならヒシャリュウモンに負けないぐらいに頑張らないと」

「わかったー!

エー、ヒーと・・・・・・・・・カーとも!

一緒に頑張るーーーーーー!!」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふふふっ」

「んもぅ☆、気持ち良さそうに寝ちゃってさぁ!

オジサンがどんだけー心配したと思ってんの?

ほっぺ突っついちゃうぞ!、このこのぉ!」

「ん、んん~、やめてよぉスズタルぅ・・・」

「アッハッハァ☆

 

 

それにしても、最後の技

どうして、オレとマヒルを一切狙わなかった?

いや、それどころか

この街に花弁の一つも落としていない・・・

 

レイド帝国四天王、麗将・ロゼモン

 

マヒル達の素性や舞台少女の性質に精通し

キラめきまで扱える

ただのデジモンじゃなさそうだ」

 

 

 

 

 

 

☆レギオン群島・廃墟エリア中心部

はじまりの街、跡地 ■■モンの家

 

 

「あいだだだだだだぁーーー!!!

 

どーなってんだい!?、あの棒!

 

・・・・・・・・・なんて、やってる暇はなさそうだねぇッ

 

とっとと、次の役にならないと

 

 

だからさ、もうちょっとだけもっておくれよ・・・

 

 

  の、キラめき」

 

 

 

 




※《ロージィクレイドル 戯曲・棘姫》
ロゼモンの得意技である薔薇の香りの眠りガス《ロージィクレイドル》を電脳世界が存在するよりも遥か昔から知られる物語を元に発展させたモノ。
舞台少女自身が高めたソウルとキラめきを逆手に取った追尾性能持ちの花弁と蔓から形成した薔薇の揺籠。
コレに閉じ込められた舞台少女の役は強制的に棘の中で眠る姫に上書きされ、無力化されるという


対・舞台少女専用の特別技。


舞台少女としてのキラめきや技量が高ければ高い程効力を増してしまい、自力で抜け出すには華恋とひかりがやったように他の役が介入する余地がない程に救世主としてスタァライトするか


寝てるだけなんて勿体無いッ!、私達で造るの!
新しい棘姫!、なフロンティアスピリットをファミリーにまで伝播させて無理矢理叩き起こすか


夢(妄想)の中でかっこよく先輩の窮地を助け出す最高に最強な自分を脳裏に描いて寝たまま実行する程に常軌を逸した妄想力を発揮する等


ロゼモンを驚かせる展開がないと無理。



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ワー爺の涙 はじまりの街の長老様

新キャラ登場!


☆レギオン群島・廃墟エリア

停泊中デッカードラモン号付近

 

 

「《ファイアダーツ!》」

 

 

アグニモンは火を放つ

 

 

水色にキラめく矢尻に更なる熱を加える為に。

 

 

「《バーニングサラマンダー!》行け!」

 

 

アグニモンは炎の竜を操る

 

 

純白のキラめきに更なる迫力を与える為に。

 

 

「《サラマンダー!、ブレイク!》」

 

 

アグニモンは炎の蹴りを繰り出す

 

 

黄色のキラめきがみんなを守れるように。

 

 

「獣魂解放!、おおおおおお!!」

 

 

ヴリトラモンは炎の弾丸を乱れ撃つ

 

 

紫と桃のキラめきがよりキラめけるように。

 

 

「《フレイムスト 」

「Non merci」

「なっ!?」

「《笹パァンチ!、パンチパンチパンチ!》からの!《アニマルネイル!!》ジャッジャーーーン!!」

 

 

ヴリトラモンは断られた

 

 

オレンジのキラめきには。

 

 

「さっきから見てれば何なのあなた?

やる気がないなら下がってくれない?」

「お!、なんだクロ公チャンスタイムか?

じゃ!、ウチ今の内に稼いでくるジャン!」

「・・・・・・・・・もういいわ、それで」

「く、クロディーヌ!

オレは何か君の気に触る事をしてしまったのだろうか!?

だとしたら、すま 」

「それは何の為に謝ってるの?

私の為?、だったら見当違いも甚だしいわね」

「ううぅっ!」

 

 

「あーらら

ついにクロはんに見つかってしまいましたなー」

「・・・・・・・・・悪ぃ、相棒」

 

 

「人間の私にもわかるわ

あなたとまひるのパートナーの実力がここに居るデジモンの中で飛び抜けてるって事は

なのに!、周りばかり気にして全然それを生かそうとしない!」

「ひ、光のと比べられるのはオレには身に余る!

何せ、あいつは融合体にまで至ったのだから!

今、余裕をもってデッカードラモン号を防衛出来ているのも光のとマヒルが大半を倒してくれたお陰!

だから 」

「だから、何?」

「お、オレはせめて舞台少女のみんなの力に

みんなが活躍出来るようにしたいと思って」

「話にならないわね」

「!!」

「悔しくないの?、ライバルに先を行かれて」

「ら、ライバル!?、オレと光のがか!?

それは違うぞクロディーヌ!、オレとあいつは元々一つの存在だ!」

「でも、今は全く別のデジモンじゃない

生まれが似通っている分、そんな相手が上に行っているのに何とも思わない

自分は端役で終わってもいいなんて温い覚悟で

 

 

私達の舞台に、双葉の隣に立たないでくれる?

 

 

ハッキリ言ってあんたの存在は

 

 

あの子の邪魔でしかないわ」

 

 

「!!! ぬ、るい?、オレが・・・?

 

 

フタバの、じゃま?」

 

 

「双葉の夢は世界一になる事よ

その為には、この危険が満ちた異世界でだってキラめき続けないといけないのに・・・

燻ってるばかりのあんたなんかに甘やかされてなんていたら、私達との差は広がるばかりよ」

「・・・・・・・・・その、通りだ!

オレは、やはり!

フタバのパートナーに相応しくない!!」

「ッ、これだけ言われているのにどうして怒らないの?」

「怒る?、何故だ?

クロディーヌは何も間違った事を言っていないだろう?

いや!、それどころか!

フタバの行く先を案じて、不甲斐ないオレにこんなにも熱い気持ちを力強くぶつけてくれているんだ!

それの何処に怒る所がある?」

「・・・・・・・・・」

「?、クロディーヌ?

お、オレはまた何か余計な事を言ってしまったのだろうか!?

だとしたら、す

いや!、謝るのは間違いだったな!」

「・・・・・・・・・ごめんなさい、双葉

この子、私の手には負えないわ」

「こっちこそ悪かったよクロ子

やっぱ、ヴリトラモンとは・・・

フレイモンとは、あたし自身がちゃんと向き合わなきゃいけない」

「双葉はん、フレイはんって

まさか」

「うん、神楽ん所のエリスモンと同じ

 

 

心が赤ん坊なんだ、あいつ

 

 

どういう生まれしたのか聞いてたのにな・・・

あたし、ちゃんと受け止められてなかったよ」

「ええんやない?、赤ん坊なら赤ん坊で

どこぞの青瓢箪と違ってこれから育てればええだけなんやし」

「そうね、こっちの言いたい事を理解しようとする姿勢があるだけマシ

どこかの暴れん坊と違って、ね

だから、後は双葉次第よ」

「お前らは自分のパートナー見限んのはえーよ」

 

 

「おーい!、クロ公ーーー!

もう終わるジャン!、いいのか!?

ほんっっっとうにいいのかーーー!!?

ウチ勝つぞ!、このままお前に勝つジャン!

負けだぞ!?、いいのか!?、おーい!」

「どうしてこいつこのタイミングでこんな事言い出すんデス・・・?」

「流石のアホでも完全に無視されるのは堪えたようデシテ」

「ふふふっ♪、祭りはみんなで楽しむもの

らしいですから」

「もー!、クレシェモン!、ダメじゃない!

お話しながら真矢ちゃんに矢を射ったりしちゃ」

「死角から至近距離で射ってんのにヨユーで避けられてっけどなァ・・・」

 

 

オオオゥーーーン! アオンアオーン

 

 

ワオーーーウン! ケフケフッ!

 

 

「ドルグレモン、今の遠吠えは?」

「うーーーん、確か・・・

ストラビモンの方が終わった?、迎え来いで

ワー爺がはい、だったかな?」

「華恋達も無事に勝てたみたいね

でも、また軍勢が現れるかもしれないし急いで合流しないと!

みんな!、一度デッカードラモン号に戻りましょう!」

 

 

 

 

 

☆レギオン群島・廃墟エリア中心部

はじまりの街、跡地

 

「とりま、エリスモン

ジュンナチャンに会ったら何しなくちゃダメなんだっけ?」

「ウー・・・、エー、ジュー、あやまるー」

「ハイハイ☆、よく出来ました☆

んで、リュウダモン 」

「今まで大変御迷惑をかけ申した、獣の始祖殿

貴殿に配慮して貰えたお陰で拙者はなな殿達から見限られるのを紙一重で避けられたで候う・・・」

「おおうっ、何か君性格丸くなった?

後、オジサン入れ物だから!

ワー君達の真似しなくていいから!」

「はっはっはっ、これもまひる殿が殻を破ってくれた賜物で御座るよ

して、ストラビモン

 

あの棒は何で出来ているのだろうか?

鎧を徹して電脳核まで衝撃が来たのだがッ」

 

「ヴヴヴゥウウウーーー・・・!

エー、マー、もーぜったいおこらせなー!」

「ワォッ!、ワオ・・・ゥウン」

 

3体に恐怖を向けられている当の本人はというと

 

「まひるちゃーん!、まひるちゃーん!!

まーひーるーちゃーーーん!!」

「ん、ぅ、ぎゃく・・・めー・・・ふふふ♪」

「ダメ、やっぱり起きない」

「ひかりちゃんの時と一緒だねー

やっぱり、ルナモンにバシャーってやって貰わないと!」

「あれ、結構痛かった ん?」

「スズ、タル・・・ぅ、このまま・・・こーる・・・ど」

 

チーム・ホワイトここで選手の交代です

 

 

そこから一気に形勢逆転!

チーム・ホワイト強い!、チーム・ホワイト凄い!」

「うぅ!?、す、スズタ・・・ぅ・・・」

「ひかりちゃん!!?」

 

 

ロゼモンの技の影響が残っているのか未だ目覚める気配がない。

 

 

アオンアオーーーン! ケフ! 

 

 

「お、キタキタ☆」

「エリスモン、拙者も一緒に謝るで御座る

多くのモン・・・特になな殿や猫

いや、レオルモンには散々迷惑をかけたのだから」

「ウー?、わかったー!

エー、リューとあやまるー!」

 

などとやってる内にデッカードラモン号が到着。

 

「始祖さ・・・・・・・・・!!!」

「お、お爺さん!?」

「ワー爺?

!、まさか、ここは!!」

 

その直後、操縦席の窓からワー爺が慌ただしく飛び出した。

 

 

「ハァッ!、ハァッ!、ゲホ!

 

ハァッ!、ハァハァハァッ! オェ!」

 

 

白の混じった黒毛の老人狼は廃墟中を駆け回る。

 

 

玩具と揺籠の残骸が転がる広場を

 

 

歪な形に錆びた鉄骨が並ぶ間を

 

 

様々な破壊の痕跡が刻まれた建物の成れの果てを

 

 

「ハァー・・・!、ハァー・・・!、ハァー!!」

 

 

抜けた先にあったのは比較的損傷の軽い一件の家。

ワー爺が荒い息のまま、恐る恐るドアを開くと

 

 

そこには   誰も居なかった。

 

 

 

オウンッ、ウオゥン!!、カフ!

 

 

た、だいま! も"どりましたぁああ"!!

 

 

オオオオオオオゥゥゥンンン!!!」

 

 

『・・・・・・・・・』

 

 

埃にまみれた空き家の中で泣き崩れる老人狼に舞台少女もデジモンも誰も声をかけられない。

 

 

〔「まったく!、あんたって子は!

相変わらず図体ばっかだねぇ!!」〕

 

 

『え!!?』

 

 

「その、こえは・・・?、声は!!

 

 

ババモン様!?

 

 

ババモン様!!、ババモンさまぁあああ!!

どこに、何処に居るのですかあああ!!?」

 

 

〔「ちゃーんとお探しよ!

その立派な鼻と耳は飾りかい?

ここだよ!、こーこ!」〕

 

 

「!!、フォオオオオオオウン!!!!」

 

 

突如聞こえてきた謎の声に導かれるまま床板を全力で引っぺがすワー爺。

 

「あいだだだだだだぁ・・・!

やれやれ、やっと出られたねぇ・・・」

「ば、ババモン様?

ほんとうにほんもののババモン、さま?」

「アタシみたいな死に損ないが他に居てたまるかってんだい、カッカッカッ!」

「ぐうっ!、ゥゥゥ!、フオオオゥン!!!

よくぞ!、いきて!、ウォォォーーーン!」

「耳元でギャンギャン騒ぐんじゃないよ!

ったく!、地下で逃げ隠れしながら細々と生き延びた挙げ句がこれじゃあワリに合わないっての!」

 

毛むくじゃらな腕に抱き寄せられしかめっ面で悪態をつくのは、体のあちこちに包帯を巻いた老婆のような姿のデジモンだ。

 

「あの、お爺さん・・・

感動の再会の所、ごめんなさい・・・」

「だ、だいじょうぶじゃあジュンナさん!

すまんのぅ、取り乱してしてしもうたわい」

「それは!、それはしょーがないよぉッ!」

「無理もない

会いたい人に、やっと、会えたんだから!

グス!」

「ヒーないてるー!?、どっかいたいー?」

「心配するなエリスモン、華恋もひかり殿も痛いから泣いているのではないで御座る」

「ウー?」

「~~~~~~!"!"!"!"!"!"」

「テメェはテメェで泣き過ぎだァ!」

「さて、お爺さん

そのデジモンを私達に紹介して頂きたいのですが

よろしいでしょうか?」

「う、うむ!

ババモン様ははじまりの街の長老様なんじゃ

ワシがデジタマだった頃から、のぅ」

「いや!、婆ちゃん幾つだよ!?」

「双葉はん!

あきまへんえ、女性に歳の話振るなんて!」

「なーに、この御時世んなモン気にしてたらやってらんないっての!

最もアタシ自身自分がどんだけ生きてたかなんて覚えちゃいないけどねぇ、カッカッカッ!」

「長老ってだけあって器が大きいのね・・・」

 

 

「「「「「「・・・・・・・・・」」」」」」

 

 

豪快に笑うババモンに

 

ルナモン、ブイモン、ストラビモンは目を伏せ

 

ドルモン、フレイモンは手をきつく握り絞め

 

ベアモンはただ困惑している。

 

「な、なぁ?

なんで、みんな、アレ見えてないジャン?」

「普通は見えない、見えない方が良いからデシテ」

「そ、そっか!」

「わ、ワー、ガルルモ 」

「余計な事は言うなッ

ワー爺、多分気づいてるよ、うん・・・」

「わかった上で、ああやって接してるんだよ

それがあの子の答えなんだ

だから、黙って見守ってくれよ炎の」

「ううっ、ううう!

前は!、前は見ても何とも思わなかったのに!

なんで、こんなに、デス、ぅ?」

「やっぱ最速殿記憶も権現も取り戻してたのか・・・

 

 

なら、さ

 

 

そろそろ腹くくって全部話さない?

オレ達が知ってる事、全部

じゃないと、またロゼモンにちょっかいかけられて今度こそ取り返しがつかなくなるかもしれないよ?」

「知った所で何も変わらないと思うデシテ・・・

特にテンドーは」

「きっと、カオルコも、デス」

「実際ジュンナはそうだったよ、うん」

「???、何の話ジャン?」

「あー、君はいいよ闘争チャン

そのままの君でいて☆

後、炎の」

「改まってどうしたんだ?、光の!」

「君が傷ついたり、まして消えたりしたら

 

 

フタバチャンに負わなくていい傷を負わせる

 

 

自分の意思でパートナーと契約したんだから

それだけは絶対忘れるなよ、【オレ】」

「も、勿論だ!!

オレはただでさえ足を引っ張っているんだ!

これ以上フタバの重荷にならないよう全力を尽くさないと!」

 

(やっぱり、言わない方が良いか?

いや、ロゼモンに突き付けられて操られでもしたらフタバチャンが危ないし

そこからカオルコチャンにまで被害が及んだら目も当てられない

そうならない為にも【オレ】自身が前に進む為にも

今、ここで打ち明けないといけないんだよな

 

 

オレ達が、スサノオモンが成した

 

 

正義【悪行】を)」

 

 

 




ババモンは無力な老デジモンなので戦えません、非戦闘要員です


ホントダヨ?


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完全体総出撃! VS堕ちた巨人

☆レギオン群島・廃墟エリア中心部

はじまりの街、跡地

停泊中デッカードラモン号、中央通路

 

 

「と、いうワケで☆

 

沢山犠牲出したのに☆

 

創世神とか聖騎士とか神々とか番長とか☆

 

他にも沢山強そうな肩書き持ったデジモンが☆

 

雁首揃えてたってのに、レイド帝国の支配者の☆

 

顔すら見ないまま大敗したのでした☆

 

チャン☆チャン☆」

 

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

 

「んで、そん時あっけなくやられた

月光と闘争の神々

孤高と最速の聖騎士が転生したのが

マヤチャン、クロチャン、ジュンナチャン

カオルコチャンのパートナーだったりするんだよ

これが☆」

 

はぁ?

 

はぁああああああ!!?

 

せいきし?、聖騎士!?、騎士ぃい!!?

 

この泣き虫で弱虫な青瓢箪が!!??

ないわー、ほんまないわー」

「ほぉらぁああああああ!!、だから言いたくなかったんデスぅうううううう!!」

「ベアモン、あなた 」

「えっ!、ウチそうだったジャン!?」

「・・・・・・・・・だと思ったわ」

「つれないですね、ルナモン

そうならそうとあなたの口からもっと早く教えて貰いたかったのですが」

「これ以上貴様を付け上がらせたくなかった!

しかし!、貴様はそれとは関係なく際限なく!

付け上がりまくるから!、仕方なくッ!、デシテ!!」

「う、うん?、ベアモンはともかくとして君らそんな理由で黙ってたのかよ!?」

「「他に何があるデス/デシテ!?」」

「ま、まぁ、黙ってた理由は置いておいて

ストラビモン、よく、言えるわね・・・?

その、そういう事、そんな風に・・・」

「なんてったって開き直ったから☆」

 

渋い顔の純那の問いに答えるストラビモンが浮かべるのはやけに明るい笑み。

 

「・・・・・・・・・」

「フレイモン?、おい!、フレイモン!?

だ、大丈夫か?、おい!!」

「・・・・・・・・・」

「オヤジ、テメェはソレでいいんだろうがァ

こいつはそうじゃねぇだろうがァ」

「そう!、だよ・・・!

こんな!、こんなの!

簡単には受け入れられないよ!!、なのに」

「ロゼモンはそういう隙を突いてくる奴だった

パートナーが操られたら、後は芋づる式だって事はカレンチャンとヒカリチャンが証明してる

バナナチャンだってフタバチャンが人形扱いされるのは見たくないだろ?」

「ッッッ!!!」

「そう、だね・・・

あの時まひるちゃんが助けに来てくれなかったら私もひかりちゃんも、きっと」

「ロゼモンの手先にされてた」

「すまぬぅう!!!」「ごめーーー!!!」

「薔薇の香りや棘の鞭で相手の心を操り

強制的に舞台少女の役柄を棘姫にして眠らせ囚えてしまう

どれも、私や西條さんには見せてくれなかったモノですね・・・」

「ええ、そうね、天堂真矢

流石、異世界デジタルワールド

あんた以上にヤな女が存在するなんてッ!」

「この子ら一体どこにキレてんだい!?」

「ば、ババモン様

マヤさんとクロさんは、その・・・

プライドがムゲンマウンテンなのですじゃ」

 

 

「・・・・・・・・・」

「で、あんたはんは

いつまでそうしてるつもりどす?」

「・・・・・・・・・」

「まぁ、そのまんまならそのまんまでうちはかまいまへんえ

下手に前出てロゼモンゆうデジモンに操られて

そのせいで双葉はんが盗られるよりかはマシや」

「そう、だな・・・

カオルコの、言う通りだ・・・

オレは、もう、ここから出ない方が、いい」

「フレイモン!?

香子!、お前!!」

「双葉はん、あんたの夢は何やったっけ?

この子のパートナーやる事やったん?」

「!」

「フタバ、オレはもう君を手伝えない

 

だから!!!

 

これではもう!、取引は無効!、だな!」

「ま、待てよフレイモン・・・!

相棒!!」

 

 

フレイモンもまた、走り去る直前笑顔だった。

 

 

唇を噛み締め、目に涙を浮かべながら・・・。

 

 

「ねぇ、リュー君

フレイモン、大丈夫、なの?」

「真っ直ぐ機関部を目指していた故

かつての拙者に比べれば冷静であろうよ」

「ボーボー・・・ないてたー・・・エーのせー?」

「ううん、そうじゃない

そうじゃない、けど」

「くっそぉおおお!!!

あいつはいつもそうだ!、始めて会った時から!

何でもかんでも自分のせいにしやがって!!

大体!、呼び出す為の道具だったんだろ!?

お前らが!、大勢のデジモンを切り捨てるって決めたんじゃないんだろ!?

なのに!、何でフレイモンやストラビモンが

 

 

そんな、背負えるワケないもんを

背負わなきゃいけないんだよ!!?」

 

 

「さぁねぇ、それはオレにもわからない

ただ、オレの場合は情報として認識してたから

当たり前みたいに明日がまた来るって信じていた生命が転生すらも許されない空間の狭間にどれだけ落ちていったのかを、さ」

「だから!、それは 」

「道具だった時は良かったなぁ

デジタルワールドの運用データの一部

数字の羅列としか思わなかったから

でも、さ

この体を得て、ワー君達と関わってる内に

 

 

そう思ってた自分がどうしようもなく嫌で

 

 

今あるオレの命を使って、奪った命を1体でも蘇らせて欲しいって何度も何度も願った」

「!?」

「なのに、誰も叶えちゃくれないから自分で叶えようとしたのにさぁ

マヒルに出会ったのが運の尽きって奴?

そうゆうしがらみポイ☆して、好きに生きてやろうってオジサン思ったワケよ☆」

「・・・・・・・・・あたしじゃ、そうはなれないのか?

お前にとってのまひるにはなれないのか?」

「マヒルはマヒルで、君は君

オレと炎のはかつては同じ存在だったけど今は違う

だから、オレ達のクソッタレな因果に君が出す答えはきっとマヒルとは違うんじゃないかな?」

「・・・・・・・・・悪い、少し風にあたってくる」

「石動さん!

その、デッカードラモン号からは離れないで」

「ああ、わかってるよ委員長」

 

問答の末、甲板へと上がる双葉。

 

「はぁーあ・・・、こないややこしい時にまひるはんはグッスリなんて羨ましいわぁ」

「まひるは別に好きで寝てるワケじゃない」

「うんうん!」「うー!、うー!」

「ルナモンの技でも結局は目覚めなかったんですよね?」

「ヒカリの時と違って間が空いていない上に

融合体への進化でソウルを多く消費している

水をかけた程度で起きる訳がないデシテ」

「なら、今度はウチがやってみるジャン!」

「Arrêtez! Nounours!」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

「アン?、あいつ犬共の所に何の用だァ?」

「うん、あの青瓢箪

前とは大分変わったけど、弟分への面倒見の良さは変わってないみたいだ」

「弟?、フレイモン殿がで御座るか?」

「うふふっ♪

 

しっかりもので勇敢だけど空回りしがちな弟と

 

いつもは気弱だけどやる時はやるお兄ちゃん

 

良いと思います!」

 

 

 

 

 

 

☆デッカードラモン号、機関部

 

 

「突然すまない!、『明けの遠吠え』のみんな!

だが!、今のオレが働けるのはここしかない!

雑用でも何でも良いからやらせて欲しい!」

「え、えっとー

り、リーダーどうするんだなー?」

「あの話を聞いた後では断るのも受け入れるのも、なぁ」

「・・・・・・・・・ざっけんなよ

俺らより、ずっと強ぇのにッ、そんな!」

「言うな!、グルル!

今苦しんでるのはフレイモン自身だろ!?」

「まぁ、マヒルさんが目を醒ますまではデッカードラモン号を動かす予定はありませんし

気分転換もかねて自分達四つ足では出来ない場所を掃除して貰っては?」

 

 

「あ、それ、ちょっと待って欲しいデスぅ」

 

 

「「「「「!、ブイモン!?」」」」」

「はい、ブイモン、デスぅ

あの、ちょっとここ借りても、いいデス?」

「そ、それは構わないが・・・」

「あ、ありがとデス

フレイモン、その、あの!

 

 

面貸せ、デス!!」

 

 

「!!?、ぐはぁ!」

「「「「「え"!!?」」」」」

 

機関部にやって来たブイモンがやったのは文字通りの殴り込み。

 

「ぶ、ブイモン?」

「謝るの禁止、デス!

大体!、何が悪いのかわかってないのに謝るな!、デス!」

「じゃ、じゃあ

どうして、オレを殴ったんだ・・・?

いや!、そうだな!

こんな不甲斐ないオレは殴られて当ぜぅん!」

「その!、殴られて当然の奴に!

今まで助けられてきた!、ブイはなんだ!?、デス!!

ブイだけじゃない!、カオルコだって!、そう!、デス!」

「だ、だが!

オレはカオルコに、フタバのパートナーには相応しくないどぉう!?」

「あのヘソ曲がりの言う事!、一々間に受けるな!、デス!!

すっっっごくわかり辛いけど!、カオルコは!、フレイモンに負けるなって!、頑張れって!、言ってた!、デス!!

それを!、そのまんま!、間に受けて!、こんな所で!、何する気だ!?、デス!」

「・・・・・・・・・少し

でも!、みんなの役に立ちたかった!

だって、オレは!、オレは!!」

「守れなかったのは俺達だって同じなんだよ!

最速だなんだ言われて!、良い気になって!

マグや舎弟のブイドラモン侍らせて!、威張り散らして!

その癖!、何も出来ずに終わった!

カオルコの言う通り、ないわー、デスぅ・・・」

「ブイモン

アルフォース、ブイドラモンッ

いや、やはり!、君とオレとは違う!!」

「同じだろ!?

世界樹に命じられるままに動く道具だったのは!

創世神も聖騎士も神々も!、所詮はシステム!

歯向かえるのはそれこそボッチ野郎だけだ!

 

 

でも!、今は違う!、デスぅううう!!」

 

 

「!」

「ぶ、ブイはブイになってから・・・!

ずっと無理矢理働かされて、隣で失敗したデジモンが工場長に潰されるのを見てもッ

自分が失敗しないようにするだけで精一杯で!

それが終わったら少ないしマズいゴハンを食べて

屋上で宝物越しに見た事ない筈の青い空を夢見て

夢、見てるのに、叶わないって諦めてたデスぅ」

 

小竜は目に涙を浮かべながら亜人を殴ったばかりの青い拳を握り締める。

 

「お先真っ暗だったブイの世界を変えたのが

 

あのワガママで自分勝手でやたらと偉そうな癖に実際はフタバに頼らないと何も出来ないダメダメニンゲンだったデスぅ」

 

「お、おうッ

みんな今のは聞かなかった事にしよう!!」

「「「「「ワン!!」」」」」

「あいつに、カオルコに、ひっちゃかめっちゃかにされたブイはもうあの頃にも

アルフォースブイドラモンにもなれない、デスぅ

だから、ブイは今のブイとして

最後まで付き合ってやるって決めてる、デス

 

 

・・・・・・・・・後、もう一回ぐらい御褒美欲しいデス

 

 

この通り、ブイがレイド帝国と戦う理由にデジタルワールド全然関係ないんデスぅ」

「オレも、そうあるべきだと

ブイモンは、言いたいのか?」

「え?、違うデス」

「「「「「違うんかーーーい!?」」」」」

「ブイはただ自分のやりたいようにやってるだけ、デスぅ

フタバが盗られるって例え話だけでイライラして

その八つ当たりを何の疑いもなく間に受けて

力になりたくてもなれなくて、怪我して悔しい想いしてるみんなの好意に自覚ゼロで甘えてる

熱血馬鹿野郎の顔面をブンブン殴りたくなった

それだけ、デスぅ」

「「「「「うっわーーー・・・やっぱこいつ竜族だわーーー・・・」」」」」

「こんなブイだけど

前のブイよりも、前の前の俺よりも

好きにはなれた、デスぅ」

「自分を、好きに・・・?」

「多分、フレイモンには難しいんだと思うデス

レイド帝国よりも、何よりも

 

 

自分自身が大大大嫌いなきみじゃあ

 

 

でも、それでも!

あいつらと同じ舞台に上がるって決めたのは!

他でもない、お前自身だろ!?

なら!、最後まで足掻けよ!、食らいつけよ!

竜族の、俺達の始祖が簡単に諦めんな!!」

「・・・・・・・・・オレは、ただの入れ物だ!」

「チッ!、こんだけ言っても結局無駄ってか?

いいぜ、なら

 

 

フタバは俺が奪ってやんよ」

 

 

「!!!」

「お前はそこで指咥えて見てろ、デスぅ!」

 

そう吐き捨てた後、ブイモンは足早に機関部を

 

 

「いやぁ

絶対強くは言い返せんってわかってる相手には

あない大きく出れるなんて流石どすなぁ♪」

「            」

 

 

出た直後、待ち受けていたのは

 

 

はんなり笑顔の舞台少女・花柳香子。

 

 

「か、カオルコ、サン?

えっと、あの、いつから、そこに?、デスッ」

「うーーーん、せやねぇ

 

 

面貸せ、デス!!

 

 

から?」

「それ最初っかイヒャイイヒャイイヒャイ!

イヒュヒョヒョヒョヒィイヒャイエフゥウウウウウウ!!??」

「だーれーがーダメダメ人間なん?

それにアレは八つ当たりとちゃいますけど?

大体、なんなんあのチンピラみたいな喋り方?

あんたはん、この花柳香子のパートナーやってるって自覚あるん?

まぁ、これだけやったらまだ許して上げても良かったんよ?

うちは心が広いさかい♪、一万歩ぐらい譲ってあげよかなー思うとりましたけど・・・」

 

 

 

ギリッギリッギリッギリッギリィイッ!!!

 

 

 

「あの子は、双葉はんは

別にフレイはんのもんになった訳やないんよ?

最後までうちのパートナーやるつもりなら

そこんとこ、ちゃあんとわかってもらわなー

ほんま困りますわ」

「イビャア"イ"ィイイイイイイ!!??」

 

 

 

 

 

 

 

☆デッカードラモン号・中央通路

 

 

「ジュー!、エー!、いたいことしたー!

ごめーーーーーー!!」

「なな殿!、レオルモン!

出会った時より不敬ばかりを働いてしまい!

本当に申し訳ない!!」

「「え、えっと・・・」」

「なんだァ?、藪から棒に」

「あははっ、リュー君もエーちゃんも

帰ったら謝ろって言ってたんだよねー♪」

「それは、良いんだけど

何かこの子達雰囲気変わった?」

「2人共、スタァになるって決めたから」

「そっか、なら

レオルモンも負けてられないんじゃない?」

「ケッ!、ハナから負けるつもりはねぇなァ」

 

 

「それにしても、ベアモンはアレとして・・・

天堂真矢に会うまではコンゴウ親分に媚売って畑仕事してたあなたが神だなんてね」

「必要にかられたからやっていただけデシテ

主神が気紛れに開催する宴の度に、霊酒を飲んでは戻すアホが出れば酒豪や豊穣がキレて乱闘に発展するので

 

そ・れ・を・ふ・せ・ぐ・た・め・だ・け・に!

 

ひたすら料理作っていたのと同じデシテッ」

「なんだそいつ?、ただのバカジャン!」

「~ー~ー~ー~ー!!!!!!」

「わかる、わかるわルナモン

あなたの言いたい事が」

「くろでぃいいぬぅうう! ぐぇっ!?」

「あげませんよ?、西條さん」

「あら、それは残念」

「み、みみーーー!

だから、耳はやめるのデシテーーー!!」

 

 

「カッカッカッ!

どいつもこいつも肝っ玉が座ってんねぇ!

あんな話聞いた後でも誰一人として自分達が負けるって事考えちゃいない!」

「うん、まるで現実が見えてない奴ばっかだ

でも、そんな連中についていくって決めたボクらもマトモじゃないけど・・・」

「カッカッカッ!、自分で言ってちゃ世話ないよ

さて、アタシもちょいと外の空気でも吸いに行ってこようかねぇ」

「ば、ババモン様!

ならばワシがお運び フォッ!?」

「ガキじゃあるまいし、そんぐらいは自分で出来るっての!

まったく!、一々付きまとってんじゃないよ」

「フォ、フォーーーゥ・・・」

「振られちゃったね、ワー爺」

「フォウン

残念じゃが、それがババモン様の意思ならば

 

 

やりたい事をやれるだけやらせてあげたいのぅ」

 

 

「・・・・・・・・・ッ」

 

 

遠ざかる小さな背中にワー爺が向ける眼差しが

 

とても優しくて、とても温かくて

 

ドルモンは何も言えなかった。

 

 

 

 

 

 

☆デッカードラモン号、甲板

 

 

 

だぁーーー!、もーーー!、ダメだーーー!

 

 

いっくら考えても答えでねーーー!!」

 

 

「そりゃ、ゼェゼェ、かんたんに、ハァハァ!

だせたら、ゲホゲホッ、だれもくろーしない!、っての!!」

「!?、婆ちゃん!」

「みてんなら、はやくあげとくれ!

こ、こしが、もうッ」

「お、おう!」

 

息も絶え絶えに梯子を登るババモンを双葉はどうにか引き上げる。

 

「どうしたんだよ?、独りでこんな所に

爺さんは?」

「あんな図体ばっかの毛むくじゃらに四六時中ベタベタされてたらまいっちまうよ!

しっかし、きったない空だねぇー

こんなモン見る為にアタシはあんな暗くて狭っ苦しい所を生き延びたんだと思うと涙も出ないっての」

「・・・・・・・・・でも、婆ちゃん

フレイモン達を、守れなかった奴らの事は責めないんだな」

「今更あの小童共を殴った所でアタシが見捨てちまった子供達は帰って来ないからねぇ」

「!!、いってぇええ!?」

「一々そんな情けない顔してんじゃないよ!

こっちはあんたに同情される為に話してんじゃないんだっての」

「だからって!、頭ひっぱたかなくても

・・・・・・・・・ッ」

「なんだいなんだい?、急にしみったれた面して

腹でも下したのかい?、カッカッカッ!」

「ちっげぇよ!

ただ、その、あたしフレイモンとは

こんな風に思いっきり言い合いした事なかった

あの人見知りの香子でさえブイモンとあんなに全力でぶつかり合ってんのに、さ・・・

クロ子が言ってた通りあたしはあいつに甘えてたんだな、って

まぁ、リュウダモンやエリスモンみたいに操られて無理矢理ぶつけられるのはごめんだけど」

「いやー、こっちはちょいとつついただけで後のあれこれはあの子達自身のん"!、んんっ!

なら、今からでも遅くないんじゃないかい?

あの燻って燻って頭ん中はもう燃やすモンもなくなってる小童の扉を力ずくで開いて風通しでも良くしてやりぁいい」

「・・・・・・・・・なんか、その言い方だと開けた途端あたし丸焦げになるんじゃないか?」

「なんてたって炎の器なんだから

パートナーとしてそんぐらいは覚悟しときなよ

まぁ、精々派手に燃えて舞台を盛り上げておくれ

なんてたって、舞台少女なんだからさ!」

「ひ、他人事だと思って好き放題言いやがって!

・・・・・・・・・でも、あんがとな婆ちゃん

話したら、何か楽に   !!?」

「あらあら、最後に一報入れとくんだったねぇ」

 

 

目を見開く双葉と口の端をひくつかせるババモン

両者の視線の先にあるのは、紫空に突如出現した

 

 

ゲート。

 

 

そして、そこから舞い降りる

 

 

六つ目が浮かぶ鉄仮面、穴だらけのマフラー

 

 

グロテスクさを感じさせる青いボディ

 

 

右腕だけが異様に肥大化した   巨人。

 

 

「ーーーーーーッ!!!

出る舞台間違ってんだよぉおおお!!!

香子ぉ!、みんな!、敵が来たぞ!!」

 

沸き上がる恐怖と嫌悪感を根性で捩じ伏せた

双葉の声はデッカードラモン号中に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

☆デッカードラモン号、華恋・まひる・ひかりの部屋

 

 

「!?、ごめんマヒル オレ行ってくる」

「・・・・・・・・・」

「アッハッハァ☆、あんだけデカい口叩いたのに

あん時、君よりこの街に被害を出さない事を優先しちゃってさぁ!

オジサンってばマジ偽善☆、マジ自己満☆」

「・・・・・・・・・」

「最も☆、進化出来ないままついてって何が出来んだ?って話だけど!

とりあえず、賑やかしてくんね☆

んじゃ!、せめて良い夢見ててよねぇん☆」

「・・・・・・・・・

 

 

 

 

みれるわけ   ない、よ!」

 

 

 

 

 

 

☆レギオン群島・廃墟エリア

 

 

〔コフゥうううううう・・・!〕

 

 

不気味に呼気を吐き出し巨人は朽ちたビル郡の間を進んでいく。

 

「《メタルメテオッッッ!!》」

「《ボーリンストーム!!》」

 

すると、頭上から自分以上に高質量な鉄球が暴風を纏って迫ってきた。

 

〔《アクセルアーム》〕

「「「「なっ!!?」」」」

「呆けるでない!!」

「う"ん!?、わ、悪い!」

 

殴り返された自分の技からドルグレモンを救ったのは隣を飛ぶヒシャリュウモンの体当たり。

 

「あの技、私達が戦ったデジモンと同じ!」

「でも、それよりももっと強くなってるッ」

「ケッ!、デカいのはダテじゃねぇなァ!」

「《笹パァアアアンチ!!》」

〔《クリティカルアーム》〕

「ぐぇえええ!」

「今のも確か、うちらが倒したフシュフシュ言うとった奴の!」

「同じ、だけどあれより鋭くて速い、デス」

「って、事は 」

 

 

〔《ブリッツアーム》〕

 

 

「やっぱソレもあるよねぇえええ!!」

『うわぁああああああ!!?』

 

肥大化した右腕から放たれる電流は廃墟エリア全体を覆い尽くす程。

 

「離れていても、この、威力ッ

やはり私と西條さんが相手をした機械よりも」

「ーーーーーー!

あら・・・?、弱音だなんて天堂真矢らしくないじゃない!」

「あの巨体に加えて複数種類の技を扱える

恐らくは、まだ隠し球があるやも 」

 

 

「よくもやりやがっな!、コンチクショー!

《アニマルネイル!、目潰し!》ジャン!」

 

 

「・・・・・・・・・《アイスアーチェリー!!》」 

 

武将竜の背より月光魔人は氷の矢を放った。

狙うは、考えなしに暴れ回ってる白黒熊

 

 

ではなく、巨人の六つ目。

 

 

〔コフゥうううううう!〕

「効いてる!、効いてるよひかりちゃん!」

「顔が弱点、なら スティフィルモン!」

「わかったーーー!

《ヴァーミリオンボルテックス!!》」

 

すると、その隣から赤い槍が幾つも伸ばされる。

 

「ありがとうございます、神楽さん」

「!?」

「あー!、クロちゃんまでー!?

抜け駆けはノンノン!、だよ!」

「なら!、あんた達もさっさと来なさい!」

 

橋渡しがされるや否や、白とオレンジのソウルを眩く輝かせながら斬り込む真矢とクロディーヌ。

 

「あーーー!、出遅れたーーー!

ちょおブイはん!、あんたはん最速やったのに何ちんたらしてはるん!?」

「ブイのせいじゃないデスぅうううううう!

背中が地味に重いんデスぅうううううう!

何でスペース余りに余ってるヒシャリュウモンやボッチの方に行かないんデスぅうううううう!?」

「いやぁ最速殿メンゴメンゴ☆」

「・・・・・・・・・ストラビモン、お前」

「んー?、なぁにぃフタバチャン?

オジサンただの野次馬よぉ?、ヒンヒン☆

それより、顔が弱点ってのは早計かもしれない」

「「「!?」」」

〔コフルゥうううううう!!〕

「なっ!」「Quoi!?」

「ま、負けねぇジャーーーン!!!

うおおおおおおおおお!!!!」

 

顔に張り付いた氷を貫き、2人と1体に襲いかかるのは先端が槍と化している長い舌だ。

 

「《ダークアーチェリー!》」

「「はぁあああ!!」」

「「ふっ!!」」

「おおお!?、おおお!!

なんか!、お前らだけズリィ、ジャン!!」

「五月蝿い!、アホ熊!

貴様は兎に角!、その舌に掴まってろ!、デシテ!!」

 

巨人の視界が闇で塞がれる中

赤い槍の上、後続まで加わって舞台少女4人による激しい剣劇が繰り広げられる。

 

〔《クリティカル〕

「!、スティフィルモンが狙われてる!?」

「任せて純那ちゃん!」

「ケッ!」

 

 

〔アーム》〕

「みんなは、私が守るから!!」

「《ローダーモーニングスタァ!!》」

 

 

ドルグレモンから飛び出したななの二刀とローダーレオモンの棘鉄球が振り上げれたレーザーブレードを弾く

 

 

「え?」「ァ?」

 

 

筈が、接触の直前に消失。

 

 

ズバンッ!!!

 

 

「ヴァア"ア"ア"アアアーーーーーー!?」

「スティフィルモン!!?、くっ!!

3人共掴まって!!」

「あわわわ!?」

「ッ」

「おおおう!、うおおお!

これで!、このベロ!

う、うちの、ひ、ひとりじめ!、ジャン!」

「パンダモンは心配無用のようですが

どうかしましたか?、西條さん」

「Méchante va!!」

「激しく同意!、デシテ!」

 

ワイヤーを使い、振り子移動で巨人の胸に向かう4人の進行方向に氷の矢が何本も突き刺さった。

 

 

〔《グラットンファング》〕

 

 

「「「「うぇええええええ!!?」」」」

 

即席の足場に降り立とうとした彼女達に迫るのは

 

グロテスクに飛び出した肋骨。

 

「《ドラゴンインパルス!》」

「カレンチャン!、ヒカリチャン!」

「大丈夫か!?、クロ子!」

「て、てんどーはん・・・

これ、貸し、一つやで? うぷ!!」

 

間一髪、衝撃波を纏って割って入ったエアロブイドラモンにより難を逃れる。

 

「ふぇえええ!!

て、てーいんおーばー!、デスぅううう!」

〔《ブリッツアーム》〕

「《成龍刃!》ぬああああああ!!」

「リュー君!?」

 

しかし、すぐさま電流による追撃がなされたのでパートナー達を守るべくヒシャリュウモンは自らを避雷針代わりに。

 

「《ギガ!、クリムゾン!、ダイブーーーーーー!!》」

「《ルナティックダンス・・・!》」

「《ブラッディタワーッ!》」

「しゃあ!、舌とったジャーーーン!!」

「だったら早く下がって!!」

〔ゴブゥ!?〕

 

技を放った直後の隙を狙って、次々に造られていく損傷を純那は正確に射抜いてく。

 

 

〔《じ   ぁ   ぅ  ぃ うぅ!〕

 

 

「!!

ナナ!、ローダーレオモン!、頼む!!」

「え」

「純那ちゃん!!?」

「おたつくなァ!、ナナァ!」

 

ドルグレモンに振り落とされたのは、その最中。

 

 

〔ぃぃいいいっっっうぅううう!!!》〕

 

 

「絶対に抑えて、みせるッッッ!!!」

 

 

巨人は天高く飛び上がり空中で前転し蹴りを放ち

 

超大型獣竜は翼を力強く、大きく羽ばたかせ突撃

 

 

【英雄】と【敵】による

 

 

真っ向面からのぶつかり合い

 

 

軍配が上がったのは、果たして・・・。

 

 

 

 

 




香子のブイモンは公式の図鑑に優れた戦闘種族と書かれる上に気性が荒い古代種の竜族なのでワリと喧嘩っ早いデス
最も、ソレが発揮されるのは格下だけという


どうしようもないチンピラメンタルデスけど・・・


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立ち上がれフレイモン! 炎の融合進化アルダモン

☆レギオン群島・廃墟エリア中心部

はじまりの街、跡地

停泊中デッカードラモン号、艦内通路

 

 

「(なんなんだろうな、オレ

 

ブイモンにフタバを奪われると聞いた時

 

それでイイと思うオレ、それはイヤだと思うオレ

 

どっちのオレもフタバに失礼なオレ

 

 

キモチワルイ!!!、ヘドが出る!!!

 

 

どうしてだ!?、なんでだ!?

 

なんで!、こんなオレが!

 

多くの犠牲の上に生きている!?

 

消えたいッ、キエタイキエタイキエタイ!!

 

・・・・・・・・・でも

 

それも!、フタバには迷惑でしか!)

 

 

やっぱり!

 

契約なんて!、するんじゃ!、なかった!」

 

 

「それ、ストラビモンもいってた、よ?」

「!?、マヒル!、まだ動くのは無茶 」

「フレイモンは、自分から

おねがい、したんだっけ?、双葉ちゃんに

デジタルワールドをたすけて、って

それは、守れなかったから?」

「・・・・・・・・・ああ!、そうだ!

スサノオモンの中にあった後悔!、植え付けられた使命感!

光のように!、自分で悩み!、考える事もせず!

ただただ!、それに取り憑かれ!

自分の罪も知らぬまま!、フタバを巻き込んだ!

挙げ句!、今や何の力にもなれないんだ!

オレは!!」

「契約するって、自分で選んだのは私達の中で双葉ちゃんだけ

それはどうしてだと思う?」

「カオルコの為だろ!?

カオルコと無事に人間界に帰る!

場合によってはそれを優先しても構わない!

そう取引したんだ!

だから!、フタバはオレなんかと契約した!

契約してくれたんだ!!

なのに、なのにぃ!

 

 

オレは、何も報いる事が!、出来ない!!」

 

 

「私は、それだけじゃな 」

「などと!、ロゼモンの技に犯され!

体を動かす事すら未だに億劫な筈のマヒルに!

何を愚痴っているんだ!?、オレはぁ!!」

「・・・・・・・・・あんまり他人の事は言えないけど

フレイモン、自分に自信なさすぎるね

・・・・・・・・・本当に、私が言える事じゃないけど」

 

ひたすら自分を攻め続けるフレイモンに《ロージィクレイドル》の後遺症もあってか引きつった笑みを向けるまひる。

 

 

ズゥゥゥウウウ・・・・・・・・・ン!!!

 

 

「こ、この揺れは!?」

「待ってフレイモン、私も連れてって・・・!」

「しかし!」

「お願い」

「ッ、わかった!

だが!、危険だとわかったらすぐに戻る!

君に何かあれば、オレは!、オレは!!」

「う、うん、わかってるから、ね?」

 

突如デッカードラモン号を襲った衝撃の正体を探るべく、1人と1体が甲板に上がると・・・。

 

 

「うぅぅっ!、ん、ぅうう・・・!」

 

 

はじまりの街に入るか入らないかの地点で佇む、角や翼が所々欠けたドルグレモンが見えた。

 

「ど、ドルグレモン!?、ドルモンや!!

お前さん、まさか!、この街を守って!?」

「わ、ワーガルルモン・・・!」

「お爺ちゃんと、それにあなたは?」

「アタシの事なんざ気にしてる場合かい?

とっととこんな廃墟なんざ見捨てて早く離れた方がいいっての」

「!、そうですなババモン様」

「ま、待ってよお爺ちゃん!

だって、ここはあなたの 」

「マヒルさん、本当にありがとうのぅ

お前さんと始祖様のお陰でババモン様と再び会えたんじゃ

だから、もう、ええ

それでもう、ワシは十分じゃから・・・」

 

 

「いいワケ、ない、だろ!?」

 

 

諦めの混じった育ての親の呟きを手負いの獣竜は決して聞き逃さない。

 

「ど、ドルモン?」

「なにが、何が十分なんだよ!?

こっちはデジタマの時から意識あったんだ!

失った仲間の事!、護れなかった故郷の事!

ウラル大陸で出来た仲間まで次々に奪われた事!

 

 

思い出す度にワー爺泣いてたじゃないか!!

 

 

泣いてたのに、ボクは!

見てみぬフリしか出来なかった・・・!

でも、今は違うッ

 

どっかの頭良くて物知りな癖に、夢物語ばっかで現実に喧嘩売ってばっかな舞台バカの

共犯者【パートナー】やってるんだ!!!

 

夢見てやる!、何がなんでも実現してやるよ!

もうこれ以上レイド帝国なんかにワー爺の

 

 

とーちゃんの大事なモンは奪わせない!!!

 

 

だから、そんな簡単に手離さないでよ、うん」

 

 

「!!!、ーーーーーー!!!、ォウンッ」

「・・・・・・・・・ッ」

 

ドルグレモンの決意を聞いてもワー爺の涙を見てもフレイモンは何も出来ない。

ただただ、そんな自分を攻めるだけ。

 

「ばかばか言い過ぎよ!!、馬鹿!!」

「純那ちゃんも同じぐらいバカって言ってるー

グズッ!、うううううう!!」

「だからテメェは泣き過ぎだァ!、ったく」

 

一方、純那はななに支えられながら駆けるローダーレオモンの背に乗って流鏑馬ばりに矢を連射。

 

「私達がこの世界で与えられた役は救世主」

「それ以外は自由に演じていいのなら

私が目指すのは勿論

常勝無敗、完全無欠の存在!」

「おう!、なんかソレ強そうだな!

ウチもやってみるジャン!」

「もうやってるデシテ

・・・・・・・・・これから先そう上手くいくかわからないがその時はその時で面白いモンが見れる筈デシテ

例えば、テンドーがワタクシに泣いて許しを請う姿とか!」

「おや、取らぬタヌキの皮算用ですか?

あなたはウサギだというのに」

「キィイイイーーーーーーッ!!!」

「ふふふふふふ♪、今日のデュエットは一段と激しい様子

ですが、その上で救世主たりえるのがトップスタァの務め」

「《アニマルネイル!、えっと、えーっと

あ!、みだれひっかき!!》

ジャジャジャジャジャジャン!」

〔ゴブゥウウウ・・・!〕

 

真矢とクロディーヌはパートナーと共に

時に激しく、時に荒々しく、時に繊細に優雅に

ぶつかり、互いを高め合いながら足を遅らせる巨人の周囲を飛び交って青いボディに爪痕を残す。

 

「エーはスタァになるんだ!

だから!、ワーの大事なモンも守る!

《ヴァーミリオンボルテックス!!》止まれーーーーーー!!!」

〔ゴブゥン!〕

「もう、スティフィルモンは折らせない!」

 

異様に肥大化している右腕に絡まり、更に上へと伸びていくBlossomBright。

ソレだけでは赤い槍を叩き斬るのを防げない。

 

 

「リュー君!!!」「任されよ!!!」

 

 

だから、愛城華恋は呼ぶのだ。

スタァライトより煌めかんとするパートナーを。

 

「ぬぅん!、ぬぬぬぬぬぬ!!」

「ヴァーーーーーー!!」

「「くぅうううっ!!」」

〔ゴブブゥ!?、ぅううう!〕

 

前からは体の至る所を赤い槍に貫かれ

後ろからは短剣を咥えて飛ぶヒシャリュウモンにより引っ張られ

更に、ワイヤーから伝達される2色のソウルとキラめきにより動きが鈍る。

だから、巨人は左腕を振るって外そうとした。

 

「《ボーリンストーム!》

オラァアアアアアアアアアアアア!!」

 

それを阻止すべく放たれたのは、超高速回転する削岩機【タテガミ】から発生した暴風。

 

〔ゴブぅうううううう・・・!〕

 

さっきと同じ展開ね」

 

 

〔ゴブッ!?〕

 

 

荒々しく騒がしい嵐に乗って巨人へと届いた声は

 

 

静かで 甘くて 重い。

 

 

消失化、否、周囲の色と同化させた筈の左腕に

 

幾度なく折り返し、鍛えられてきたキラめきが

 

黄色い粒子を舞い上がらせ、輪りながら

 

何度も何度も斬りつけられる。

 

「私がみんなを守るの、この世界の救世主として

!?」

 

そのまま首元にまで到達したななを待ち受けていたのは足元から飛び出してきた肋骨。

 

「ばなな!、うわわわわっ!?」

「も、もうダメ・・・!」

「ヒーーー!、ヴァーーー!?」

「ぬぅんんん!!」

〔ゴブブブブブブぅううううう"う"!!!〕

「「「ッ!!?」」」

「あ、あいつ!、メチャクチャジャン!」

 

舌を失っても尚、全身傷だらけになっても尚

体中を串刺しにされても尚

自分で自分を貫いても尚、巨人は暴れ回った。

 

「み、みんな!、く!!」

「ナ、ナ・・・!

まってろ、いまボクが! ぅっ!」

「テメェはそこでハリボテやってなァ!

振り落とされんなァ、ジュンナァアアア!」

「!?、ええ!!」

 

 

「はぁーぁ、なんやみんなノリがよろしおすなぁ

うちはこんなワケわからん世界の救世主やなんて

そんなん頼まれてもやりたくありまへんえ

双葉はんかてそうやろ?」

「・・・・・・・・・」

 

 

舞台少女とパートナーが奮闘する最中、双葉は空飛ぶエアロブイドラモンの背の上で乗り物酔いを起こした香子を膝枕。

 

「いやぁ☆、流石は蒼穹を行く事にかけては聖騎士一の最速殿!

空気がよく読めるこって」

「ブイが決めたのはカオルコに付き合う事

デス

だから、別にデジタルワールドを救わなくても

ブイは全然構わないだけデスぅ」

「アッハッハァ☆、オジサンもドーカン☆

最も、それが本心ならの話だけど」

「きみたちって、やっぱり根っこが同じデス

そうゆうのワザワザ言わなくても良いんデスぅ」

「メンゴメンゴ☆」

 

その横では世界から受けた使命をゴミのように捨て去った2体が雑談している。

 

「・・・・・・・・・」

「あ"ーーー、まだグラグラするわぁ

後はやる気のある人達に任せてうちらはお船に戻ってもええんとちゃいます?」

「香子」

「なんどす?、双葉はん」

「あたしさ、自分の役から逃げてたよ

しかも、お前を理由にしてだ」

「それがどないしたん?

あんたはんがうちの安全を最優先にするんは当然どす、なんもおかしな事ありまへんえ」

「ただの石動双葉ならそうすべきなんだけどさ

 

 

ここに居るあたしは99期生で舞台少女なんだよ

 

 

それにさ、世界一になるなら人間なら誰でも救世主になれるこのデジタルワールドでも一番にならないといけない

だから!」

 

 

「・・・・・・・・・」

 

 

自分専用の膝枕が無くなった後、香子はゴツゴツザラザラで寝心地最悪な蒼竜の背中に体を預けた。

 

「すぅうううっ、はぁーーー・・・!

 

いい加減!!!、燻ってんじゃねぇよ!!!

 

フレイモーーーーーーンッッッ!!!」

 

「!!??」

 

デッカードラモン号の甲板に降ってきた紫の幕。

炎の亜人はソレを酷く恐れ、大きく飛び退いた。

 

「なーにビビってんだ!?

そんなに怖いのかよ!?、進化した時にあたしを燃やしちまうのが!?」

「!、フタバ!?

君は、気づいて・・・?」

「気づくも何もバレバレだって!

あんな話聞いたお前が一番に焼き尽くしたいのが自分自身だって事ぐらい!

だってあたしはお前の相棒なんだからな!」

「だ、だが!

取引は最早無効になった筈だろ!?」

「勝手に自分の都合いいように考えんな!

あたしはまだ!、何の手伝いもしてない!」

「!!、そんな事はない!!

フタバは!、この危険な世界でレイド帝国と全力で戦ってくれた!!」

「自分の為だけにな!!」

「それでも構わないとオレは言った筈だ!」

「お前は構わなくてもあたしが構うんだよ!

華恋も神楽もまひるも天堂もクロ子も!

星見もばななもみんなデジタルワールドの救世主

この物語の主役やってんのにッ

 

 

あたしだけがいつまでもその役から目ぇ反らすワケにはいかねぇんだ!!

 

 

その為にもフレイモン

あたしにはお前【相棒】が必要なんだ」

「ふ、フタバ・・・!

ッ、やっぱりダメだ!!

今、オレはオレ自身の感情を抑えられない!

そんな状態で君と繋がってしまえば 」

 

 

「ゴチャゴチャうるせぇえええ!!!!!」

 

 

「うわっ!、うわああああああ!!??」

 

双葉のソウルとキラめきはフレイモンへと突っ走り強引に包み込む。

 

「ガッ!!、グァアアアアアア!!!」

「ふぇえええん!!?

ブイの背中が火事デスぅうううううう!!」

「・・・・・・・・・」

「ワオッ☆

この子ったら自然にオジサン盾にしてる!」

 

その瞬間、彼女の全身から炎が噴出。

更に暴走状態特有の牙や鋭い爪まで現れた。

 

「フタバ!!、フタバ!!

やめてくれ!!、もうこれ以上!!

オレに何も奪わせないでくれぇえええ!!!

 

 

頼む!!! たのむ、からぁあああ!!!」

 

 

「うば、われねぇよッ

あたしがおまえを欲しいつってんだ!

だから!、ぜってぇ乗りこなしてやる!

そんぐらい出来なきゃ世界で一番、輝く奴の

 

 

隣になんて居られないんだよッッッ!!!」

 

 

 

 

ようわかっとるやん」

 

 

 

「デ、デター☆

カオルコチャンの後方理解者面ー!!」

「ブイから見えないけど絶対ドヤ顔してるデス!

自分は何もしてないのイヒャイイヒャイ!」

 

 

「ふ、たば!、フタバ!、オレの、相棒!!

 

 

ぐう!、ぐう"う"う"ぅうううううう!!

 

 

う"ぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!」

 

 

「でぇえええりゃああああああ!!!!!」

 

 

 

ギャオオオオオオオオオオオン!!!!!!

 

 

フレイモン、双葉

更には腕の神機までもが咆哮を上げる中

 

星形の画面を囲うように竜の意匠が追加される。

 

 

「物言わぬ物にさえなれず!」

 

 

『炎』の器から

0と1の紫と赤と黄が入り混じった粒子が噴火。

 

 

「故に、使われる事すらも叶わず・・・!」

 

 

2色のフレンジが揺れる幕の下

 

『人』も『獣』も炎に飲まれ、融け合った。

 

 

「そんなオレを見いだしてくれた!

 

噴煙も焦熱も断ち斬る一本道がぁあああ!」

 

 

紫の幕を一瞬で溶かし、焼き尽くす程の超高熱

それを放つのはヴリトラモンの翼と尾が生え

更にはルードリー・タルパナが両腕に装着されたアグニモン

 

 

「人獣同魂!!、アルダモン!!

 

この身!、この心!、この生命!

 

全て『炎』にくべ!!、オレ達は行く!!」

 

 

否、炎竜の融合魔人・アルダモン。

 

 

〔《じゃあぅぃうぅ!〕

「きゃああああああ!!?」

「クソッ!、タレがァアアア!」

「くうううううう!!」

 

その存在に脅威を感じてか巨人はドルグレモンを吹き飛ばした必殺技の体勢に入る。

骨の檻にななを閉じ込め、足にはローダーレオモンと純那がしがみついたままで。

 

「ボクがッ、ボクがおさえ 」

「ドルグレモン!、君の技を貸してくれ!」

「!?、それじゃジュンナ達が巻き込ま 」

「オレはもう誰も犠牲に出来ない!!!」

「うん!!?」

「だから大丈夫だ!!!」

「・・・・・・・・・《メタルメテオッッッ!!》」

 

アルダモンの謎の自信に満ちた発言にドルグレモンはツッコミを放棄して高質量の巨体鉄球を吐き出した。

 

「《ブラフマストラ・・・!》」

 

天高く飛び上がった巨人目掛け進む《メタルメテオ》に乗ってルードリー・タルパナの銃口から炎を注入。

 

「ローダーレオモン!、君なら出来る!

どうか耐えてくれ!!!」

「ア"ァアン?」

 

 

〔ぃぃいいいっ う"!!?〕

 

 

「ええええええ!?」「オオオオオオ!?」

 

鉄球を蹴り破らんとした脚が接触した瞬間

 

内部に封じられていた大量の超高熱弾が弾けて

 

同時に鉄の塊も四方八方に飛び散る。

 

「熱ッ!、え? ひいいいいいいん!!?」

「ッ!、ラァアアアアアア"!!」

 

骨の檻を砕かれ、空中へと投げ出されたパートナーを目指し機械獅子は全速力で駆けていった。

巨人の体を、飛び交う鉄球の欠片を足場にして。

 

 

「~~~~~~!、掴んで、みせます!!」

 

 

ドガンッ! ズザザザザザザザザザ!!!

 

 

「ケッ・・・・・・・・・」

「レオルモン!!」

「うるッ、せぇなァ!

テメェは、ジュンナの心配だけしてなァ!」

「きゅぅぅぅ・・・」

 

純那がななを受け止めた後、巨人と同時にローダーレオモンは落下。

地面に装甲を削られ、退化し、膝を折りながらもこの仔獅子は決して倒れない。

 

〔ゴブ!、ぅぅぅ!〕

「ジャスティモン!

正義の代名詞とも言えるヒーローデジモン!

それが帝国によってこんな姿にされるなんて!

 

 

まさに冒涜という他ない!!」

 

 

「炎のーーー!、それみんな思ってたけどー!

口にしちゃいけないヤーーーツ!」

「アレをその名で呼ぶ方が冒涜だって事・・・どうしてあいつわからねーんだ?」

「ブイはん?」

「ふぇえええん!?」

「あはははははは!!!

すっかりいつも通りだなー!、相棒!」

 

Determinaterを握り締めてエアロブイドラモンの背から舞台へと飛び込む双葉。

 

「フタバ!!

ッ、スティフィルモン!

《ヴァーミリオンボルテックス》だ!」

「うー!?、わ、わかったーーー!」

 

倒れ伏す巨人の方へ落ちていくパートナーを一瞥したアルダモンは指示を出しながら炎の翼を羽ばたかせた。

 

 

「はっ」

 

 

赤い槍の上で披露されるのは前方回転受け身

 

 

「でりゃあ!」

 

 

そこから流れるように振るわれるハルバードは

体格とのアンバランスさを一切感じさせない程に

 

 

ダイナミック。

 

 

「《ブラフマシル!!!》」

 

 

静止した双葉の背後にてアルダモンが

 

太陽を生み出す。

 

 

「ふっ!!」「はぁ!!」

 

 

「「せいやぁ!!!」」

 

 

逆光に照らされる中、交わされる

Determinaterとルードリー・タルパナ。

影絵のように浮かび上がる1人と1体の周囲を

キラめきと火の粉が大量に舞っていた。

 

 

〔ゴブブブブブブぶぶぶぶぶぶ!!??〕

 

 

それらを一身を浴びた巨人の体が崩壊を始める。

己の真骨頂を存分に振るう双葉のキラめきと

アルダモンが極限まで高めた電脳核の聖なる炎が

今まで舞台少女とパートナー達が積み重ねてきた成果に入り込み、体内から焼き祓っているのだ。

 

「                 」

「ア・ホ・く・まーーーーーー!!!、

見入るのはいいが息をするのを忘れるな!、デシテッ!」

「ハッ!!?、やっべぇえええ!!!」

「ここまで来るともうお手上げね・・・」

「!、それって降参ってことかクロ公!?」

「降参かどうかはともかくとして

今回ばかりは主役を譲るしかありませんか

そう、今回だけですよ?、石動さ 」

 

 

「あいや待たれよ!!!

この物語の主役は!、すたぁは!

御主らだけではないで御座る!《成! 龍! 刃!》」

「おお!、ヒシャリュウモン!

力を貸してくれるのか!?、心強い!」

「お前らってさ本当に空気読めねぇよな!」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ブフゥッ!、プギャーーーーーー♪♪♪」

 

アルダモンは乱入してきた巨大な刀を引っ掴み

 

 

「ああああああああああああ!!!!!!」

 

 

「ぬ?、あぢっ!?

あぢち"ち"ち"ち"ち"ーーーーーー!!??」

「リューーーくぅーーーーーーん!?」

「リューーーーーー!?」

「こ、ここからでも、熱がッ」

 

白光にまで極めた炎を刀身に収束!。

 

「な、なぁワンコはん?

フレイはんなんか、その、あの!、色々と悪化しとらん!?」

「アッハッハァ☆、はは!、ははは・・・

いやぁ、炎のって今まで『オレの思いつきなどでみんなに迷惑をかける事などあってはならない!』だったのに・・・

フタバチャンの熱烈な告白受けた結果『みんなはオレの思いつき程度で倒れる程柔じゃない!』になっちゃったみたいで・・・

創造神の武力担当として備わってる刻一刻と変わる戦局の中で直感的にわかる最適解をフルに行使してるんだ・・・

それこそ使われる側ガン無視で・・・」

 

『光』が遠い目で見守る中

 

「フタバ!!!

これからオレは!、オレがオレに向ける!

怒りを!、憎しみを!、全て!

 

 

解き放つ!!!」

 

 

「      ゑ?      」

 

 

「乗りこなして、くれるか? 相棒」

 

 

「あ、あのアルダモンどの?

し、しそさま?、せっしゃ、もうむりっ」

 

 

「当たり前だろ? 相棒!」

 

 

「ふたばどのぉおおお!!?

ま、またれよ!、おふたかた!

せ、せっしゃこのままだとすたぁはすたぁでも

ながれぼしぃい!!、もえつきちゃう!!」

 

『炎』は切っ先にパートナーを乗せ

 

 

「《炎」

 

 

彼女に負けない程に堂々とした構えで振りかぶり

 

 

「龍」

 

 

そこに立つ舞台少女もまた一切姿勢を崩さすに

 

 

〔ゴ、ブ、ぅウウウぅう!!!〕

 

 

右腕を更に肥大化させ

レーザーブレードに電流を纏わせた巨人目掛け

 

 

「「撃》」」

 

 

「あんぎゃあああああああああ!!??」

 

 

矢として放った。

 

 

 

「これがあたしの

 

 

 

あたしらの、殺陣だぁああああああ!!!」

 

 

 

紫に輝く己の魂を、キラめきを迸らせ

 

太陽にも負けない程に燃え盛る相棒の炎を

 

握ったDeterminater【決意】に束ね

 

歪められた【正義】の

 

刃も、拳も、腕ごと全部カチ割った。

 

 

 

〔「   見事だ 勇敢な少女よ   」〕

 

 

 

その一撃により巨人【ヒーロー】は消える。

 

 

ゆっくり、ゆっくりと地面に倒れながら

 

 

自分を撃ち破った双葉を抱えながら・・・。

 

 

「じゃ、じゃすてぃもんざぁあ"ああんんん!

ォォォーーーゥゥゥーーーゥ・・・!」

「みっともなく泣いてんじゃないよバカタレ!

精々笑って見送ってやんなっての

あいつが守りたかったのは、あんたらガキ共のそういう顔だろうからねぇ」

「フォウン!、ォゥン!

す、すみ"まぜんっばばもんざまぁ!

!?、マヒルさん!!」

「あうぅう~・・・・・・・・・ん」

「あらあら、まだ体が痺れてるだろうに

それを回復出来ないぐらいソウルがスッカラカンな癖に無茶するからブッ倒れんだよ

ったく、こっちが寝かしつけてやったってのにッ

これだから舞台少女って奴は!」

「フォウ?」

「ん"!、んんっ!

いいからとっととベッドに運びなっての!」

 

 

「あーあ

せっかく、双葉はんがええ感じに盛り上げて

最後にうちが美味しい所頂こ思うてましたのに~

どっかの羽根つき青瓢箪が遅いから」

「本当デスぅ、ブイがかっこよく決める筈だったのに予定が狂っちゃったデス~

これもどっかのダメダメニンゲンが重いから」

「「・・・・・・・・・誰が重い/遅いって!!?」」

「こぉらぁ☆、2人共ぉ!

炎のとフタバチャンの活躍上書きするような空中ドッグファイトしないの!

ってか、カオルコチャン最速殿が起こした風にソウル加えて足場にすんのやめて!

オジサン怖いから!、見てらんないから!」

 

 

「          」

「リュー君がこんがり焼けちゃったぁ!!」

「リューーー!、ジュウジュウーーー!

ヒー!、たべちゃーメーーーーーー!」

「食べたりしないから

しがみつかないでエリスモン、痛い」

 

 

何はともあれ、当面の安全は確保出来たとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆レギオン群島・廃墟エリア中心部

はじまりの街、跡地 ババモンの家の前

 

翌日

 

「では、皆の衆

これよりワシらはこのはじまりの街よりアクセスコードを用いて世界樹の中枢たる天界へ転移する、んじゃが

 

 

・・・・・・・・・ただ、その、あのッ

 

 

音頭取るのがワシで本当にいいのかのぅ?」

「この子は今更何言ってんだろうねぇ!?

満場一致で決まったんだからウダウダすんじゃないっての!」

「そうよ、お爺さん

私達がここまで来れたのはあなたがずっと昔から積み重ねてきた頑張りのお陰なんだもの」

「これからも頼りにさせて貰っちゃいます♪」

「だってさ、ワー爺」

「いい加減腹ァくくれよなァ」

「世界を救う物語の主人公には経験豊富な導き手が付き物ですからね」

「怪我をしたババモンにそんな大役を任せる訳にもいかないでしょ?」

「そう、じゃのうクロさんや

ババモン様にはあまり無理はさせられん」

「く、クロ公それ 」

「黙ってるのデシテ、アホ熊」

「まひるちゃん!、リュー君!

もう体はだいじょーぶ?」

「大丈夫だよ、華恋ちゃん

今まで休んだ分これから取り戻さないと!」

「拙者も問題御座らん!

ただ・・・、暫くアレをやるのは・・・

その!、遠慮したいのだが!」

「リュウダモンすまない!

本っっっ当に!、すまない!!

あの時のオレは燃え上がり過ぎだった!!」

「ハイハイ☆、炎のソレ何度目だっての」

「石動さんも元気そう」

「フバー!、げんきーーー!」

「ああ!、むしろ暴れたくってウズウズしてるぐらいだ!」

「だからってうちの出番取るんはあきまへんえ」

「あっれぇー?、救世主なんて頼まれてもやらないんじゃなかったのかー?」

「ふん!、このデジタルワールドでうちの名を広めるにはそれが一番手っ取り早い思うただけどすー

だって、花柳香子を知らん世界なんてそんなん可哀想やろ?」

「・・・・・・・・・たしかに、デスぅ」

「はははっ!、そうだな!

んじゃ爺さん、後はビシッと決めてくれ!」

「う、うむ!

 

 

ニンゲンの、舞台少女の皆にはワシも多くのデジモンも助けられてきた

ウラル大陸や士武大陸をレイド帝国から解放し

二度と戻れんと思っていた故郷にこうして連れてきて貰えた

皆の衆が現れねば成し得なかった事ばかりだというのに・・・

これから先もワシは戦いの役には立てんと思うッ

ババモン様の言う通り図体ばかりの毛むくじゃらじゃから、のう

 

 

それでも!、ワシは皆の衆に許される限りは!

共にあり続けると!、この街に

故郷たるはじまりの街に誓わせて貰おう!」

 

 

「もちろん自分達も!」

「なんだなー!」

「『明けの遠吠え』は長だけじゃねーぜ!

なぁ?、ガルル!」

「ああ!、俺らを忘れてもらっちゃ困る!」

「ええ、可能な限りサポートさせて貰います」

 

 

「総員!、デッカードラモン号に乗船せよ!

 

出航じゃあああーーーーーー!!!」

 

 

『おおおーーーーーー!!!』

 

 

 

こうして、99期生9人とパートナー達による

 

 

レギオン群島での冒険は幕を降ろし

 

 

次なる舞台への幕が開くのであった。

 

 

 

 

 

第一部・下界編 完

 

 

 

第二部・天界編に続く!

 

 

 

 

 

 




※改造ジャスティモン
各サーバーを自由に渡り歩き活躍していた幼年期達の憧れとも呼べるヒーローがレイド帝国に敗れ、原型を留めない程に改造された存在。
モチーフはアナザーライダー+エイリアン型サイバードラモン
超大型なドルグレモンに匹敵する100m級の巨体に加え、異様に肥大化した右腕から繰り出される技の数々や周囲の色との同化、肋骨攻撃等々で99期生とそのパートナーは苦戦を強いられた。




心も体も一切の容赦なく弄られたジャスティモンだったが



それでも残された魂の一欠片が双葉を受け止めてくれたのである。


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パートナー&その他のデジモン紹介

☆パートナーデジモン紹介

 

リュウダモン

パートナー・愛城華恋

好きなこと・鍛練

苦手なこと・自分の邪魔をされること

好きな食べ物・デジナマズの踊り食い

嫌いな食べ物・酸っぱいモン

進化形態

リュウダモン→ギンリュウモン→ヒシャリュウモン→???????

「御座る」などの武士のような口調で喋る我が道を形振り構わずに進む鎧蜥蜴。

そんな性格の為、視野が狭く暴走しがちだったが華恋と出会い、スタァライトを越える武勇伝を造るという目標が出来て多少はマシになった。

因みに、種族上は獣型であるが本人(?)としては竜のつもりである。

 

 

エリスモン

パートナー・神楽ひかり

好きなこと・ひかりと遊ぶこと

苦手なこと・ひかりをいじめる奴

好きな食べ物・肉林檎(ひかりが最初にあげたから)

嫌いな食べ物・プルプルしているモン(食べたことないけどひかりが嫌いだから)

進化形態

プスモン→プスリモン→エリスモン→フィルモン→スティフィルモン→?????

ひかりに拾われたデジタマが驚異的なスピードで孵化、成長を遂げたハリネズミ。

肉体こそ成長期だが精神は幼年期以下で早とちりしやすいし話し方が舌足らずな甘えん坊。

スティフィルモンの時だけ流暢に話せるのはスタァになるという決意が反映されている。

全てはひかりと別れても再び会うという約束の為に。

 

 

ルナモン

パートナー・天堂真矢

好きなこと・月光浴

苦手なこと・日差し

好きな食べ物・生野菜

嫌いな食べ物・酒豪の神が造った酒(製造工程を見て以来、口に出来なくなった・・・)

進化形態

ルナモン→レキスモン→クレシェモン→??????

神経質、慎重派で真矢に振り回されてはキレるツッコミ役、口癖は「デシテ」。

月光の神の転生体で記憶は完全に保有しており、交遊のあった豊穣の神からの受け売りで農業や薬草の知識が豊富で宴の際に10体の神を満足させていた経験からデジタルワールドの食材を用いた料理の腕はかなりのモン。

実は結構寂しがり屋、だってウサギだから。

 

 

ドルモン

パートナー・星見純那

好きなこと・デジモン観察、人間観察

苦手なこと・整理整頓

好きな食べ物・干し肉

嫌いな食べ物・くさった肉(自分で干し肉作ろうとして・・・)

進化形態

ドルモン→ドルガモン→ドルグレモン→??????

抑止の聖騎士アルファモンの転生体、意地っ張りで斜に構えた性格は前世からの筋金入りな紫の獣。

記憶を保持していた影響かドルモンにまで進化した所で現実主義者を自称し出し育ての親であるワー爺とも疎遠になっていたのだが純那の影響を受け大分自分の気持ちに素直になれるようになった。

因みに、前世の時の進化形態はドルモン→ストライクドラモン→グレイドモンである。

 

 

ストラビモン

パートナー・露崎まひる

好きなこと・みんなでパーティー☆

苦手なこと・独りの時間

好きな食べ物・まばゆいカルパッチョ☆

嫌いな食べ物・独り飯

進化形態

ストラビモン→ヴォルフモン/ガルムモン→ベオウルフモン

獣族の始祖の魂が封じられた創造神召喚の為の祭具が生命を持った事で生まれた仔人狼。

ひょうきんで軽薄でノリが軽いのでまひるも最初は呆れる事が多かったが、今は決して欺かれる事はない。

『明けの遠吠え』には所属こそしていなかったがメンバーを影からフォローしていたので、その出自も踏まえた上でワー爺から慕われている。

 

 

レオルモン

パートナー・大場なな

好きなこと・ナワバリでの昼寝

苦手なこと・ナワバリを荒らされること

好きな食べ物・辛いモン

嫌いな食べ物・熱いモン

進化形態

レオルモン→ライアモン→ローダーレオモン→?????????

乱暴かつ粗野、好戦的で協調性が皆無な仔獅子。

ななにすら遠慮なく暴言をぶつける事もしばしばだが笑って受け流されている。

そんな性格のワリに今までの戦闘で目立った成果を上げていないが本人(?)は一切気にしていない。

 

 

ベアモン

パートナー・西條クロディーヌ

好きなこと・勝つこと

苦手なこと・頭使うこと

好きな食べ物・笹、竹、タケノコ

嫌いな食べ物・食えないモン

進化形態

ベアモン→グリズモン→パンダモン→?????

考えるより先に手やら足やら全身が飛び出すノリと勢いで生きてる野生の小熊。

闘争の神の転生体なのだが記憶は皆無の状態で本能で自分の好敵手を探しつつ

竹を殴って己を鍛え、笹食って生きてた

そう、つまりはアホなのである。

こんなんなのでクロディーヌは若干放置気味だが勝手に追っかけてくるので問題ない、筈。

 

 

フレイモン

パートナー・石動双葉

好きなこと・奉仕活動

苦手なこと・水に関連する全て

好きな食べ物・激ホットドリンク

嫌いな食べ物・魚介類(水を連想させるから)

進化形態

フレイモン→アグニモン/ヴリトラモン→アルダモン

竜族の始祖の魂が封じられた創造神召喚の為の祭具が生命を持った事で生まれた子供の亜人。

真面目で正直、自分よりも他人を最優先する性格なのだがどこかズレており空回りしがちな熱血野郎。

9体の中で唯一自分から双葉に契約を持ち掛けていたが、断られていたら玉砕覚悟で武器工場に突っ込む気だった。

 

 

 

ブイモン

パートナー・花柳香子

好きなこと・空を飛ぶこと

苦手なこと・狭くて暗い所に閉じ込められること

好きな食べ物・はやあし草の実

嫌いな食べ物・味のしないパサパサした塊、ベトベトしていて工場用の油臭い謎の液体

進化形態

ブイモン→ブイドラモン→エアロブイドラモン→????????????

最速の聖騎士アルフォースブイドラモンの転生体

エアロブイドラモンに進化するまでは何も覚えておらず、それでも空への想いだけは残っていた。

最も、記憶が戻っても泣き虫で弱虫で臆病な性格は直っておらず強制労働時代に染み付いたへりくだった口調も基本はそのまま。

正直痛いのは嫌だし、この状況から滅茶苦茶逃げ出したいけれど香子の御褒美が欲しいので必死に頑張っている。

 

 

☆サブキャラなデジモン紹介

 

ワー爺

ツナギを上下カッチリ着込み、機械弄りの為に爪を短くしている年老いたワーガルルモン(黒)。

その上、腰痛持ちなので《カイザーネイル》も《円月蹴り》も使えない。

『明けの遠吠え』の長としてウラル大陸全土に獣型による遠吠えによるネットワークを構築、情報収集の傍ら独りでデッカードラモン号の設計及び制作にあたり

オメガモンから託されたアルファモンの転生体であるドルモンがいずれ立ち上がってくれる事を祈り、独り暮らしを始めても遠くから見守っていた。

元々ははじまりの街で生まれ育ち、通常は早くて成長期、遅くても成熟期になったら独り立ちする筈なのに完全体になっても居着いていたのでババモンには頭が上がらない。

ストラビモンや舞台少女達に対して今現在の自分達を助けてくれている存在として最大限の敬意を表している。

 

 

『明けの遠吠え』精鋭メンバー

ワー爺がレイド帝国にデータを改竄される前に回収出来たデジタマから育てられてきた5体の獣型デジモン達。

ワー爺同様にストラビモンや舞台少女達に敬意を持ち、ドルモンの事は同じ群れの仲間・・・家族のように想っている。

リーダー・ファングモン

現在中傷

キテンの街で華恋とななに命を救われて以来

強い恩義を感じている茜色の毛並みに細身の狼

サブリーダー・ドーベルモン

現在軽傷

5体の中では影が薄いが締める所はキッチリ締める生真面目な黒毛の猟犬

ガルル&グルル

現在どちらも軽傷

同じデジタマから産まれた双子のデジモン、そのせいか通常の個体に比べ小柄(人間界の狼より一回り大きいぐらいのサイズ)

ガルルは硬派で気丈な黒狼

グルルは軟派で負けず嫌いな白狼

シーサモン

現在海戦の時に負った傷が完治

のんびり屋でどんくさい狛犬

 

 

ババモン

はじまりの街の長老、ワー爺をデジタマの頃から面倒見ていた程の超高齢デジモン。

自宅の地下に隠れレイド帝国の魔の手から逃れていたが長い潜伏生活の間に負傷しており、体のあちこちに包帯を巻いている。

特に腰を酷く痛めており、走るのは無理。

肝が太く、舞台少女やそのパートナーに対しては厳しい言葉を投げ掛ける事が多い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロゼモン

レイド帝国四天王の1体、麗将。

芝居がかった仕草をする妖艶な薔薇の化身。

常に黒のローブを身に纏い、片手をその内に隠したまま舞台少女やパートナーによる連携を凌ぐ程の実力者。

直接的な戦闘のみならず搦め手をも得意とし

魅了の芳香や《ソーンウイップ》を用いて心の隙を突き目標を意のままに操る事で戦局を、舞台を自分の意のままに動かしてみせた。

更には舞台少女1人1人のプロフィールを把握していたり、神機の知られざる機能を知っていたり、漆黒のソウルとキラめきが使えたり

果てには舞台少女自身のソウルとキラめきを触媒にして舞台装置を造り上げ、強制的に役柄を棘に囚われ眠る姫に書き換え無力化する

《ロージィクレイドル 戯曲・棘姫》を編み出す等底知れない存在。

現在は傷を癒すべく何処かで療養し次なる策を弄しているらしいが・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

コンゴウ教祖

真矢達がロコモンに飛び乗って旅立った後、突如レギオン群島との交易が無くなり、混迷と化した士武大陸のデジモン達に天堂教なる教えを子分(現信徒)のコカブテリモン達と共に日夜布教している元山賊。

信者達はその黄金ボディーに穿たれた慈母の痕跡たる大穴を拝む事で御利益を得られるとか、なんとか・・・。

 

 



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悲劇開幕、激昂渦巻く暗黒進化

無印アニメ、リスペクト回


 

 

「がっ!?」「ぐぎゃ!」「げぶ!」

「・・・・・・・・・」

 

 

重量級のクロンデジゾイド製の鎧に身を包んだ巨体な騎士達を紙のように裂いていくのは怪しい光の軌跡。

 

「クレニアムモンには逃げられたか

ドゥフトモンめ、つまらん横槍を入れてくれる」

「う、うわああああああ!!! ぁ"」

「足止めにしても、もう少し骨のある奴らを出して欲しい物だ」

 

大量のデジタマが転がる戦場を気だるげに歩くのは黒鋼の甲冑を纏う人型の竜

 

 

レイド帝国四天王が1体、武将・ガイオウモン。

 

 

「これでは何の足しにもなら ん?」

 

その視線が捉えたのは

 

大小様々なサイズの岩場が浮かぶ

 

濁った紫と眩い虹色がせめぎ合う空に

 

突如発生したゲートだ。

 

「ほう、あれは」

 

ガイオウモンが見つめる中、下界からのアクセスでこの天界へと転移してきたのは

 

 

鰐を思わせる形状をした巨大メカ。

 

 

「・・・・・・・・・」

 

 

おもむろに武将は愛刀たる菊燐を構え

 

巨大メカ・デッカードラモン号が着陸した岩場を

 

 

「《燐火斬》」

 

 

虚空に怪しい光の軌跡を刻みながら 斬った。

 

 

 

 

 

 

 

☆天界 分かたれし戦場

 

 

〔「天界への転移、成功かのぅ?

皆の衆、怪我とかはしとらんか?」〕

「うん、こっちは大丈夫だよワー爺

・・・・・・・・・ついに!、ここまで戻ってきたッ」

「ああ!、やっと!、やっとだ!!」

「ふぇえええっ

ほ、ほんとにきちゃったデスぅううう!」

「生き恥を晒してまで食い繋いできた甲斐はあったのデシテ」

「アッハッハァ☆、言うねぇ月光チャン」

「ん?、お前らどうしたジャン?」

「あんたは何も感じないの?」

「?、???、??????」

「・・・・・・・・・でしょうね」

「ケッ」

「ねぇねぇ!、みんなー!、早く外に出ようよー!」

「待って華恋、独りは危ない」

「ひかり殿の言う通りで御座る!」

「カー!、メー!」

「あ、ちょっと!

だから団体行動乱さないの!、バッ華恋!」

「だいじょーぶ!、みんな一緒だから!」

「そういう問題じゃないでしょ!?、まったく」

「あはははっ♪、華恋ちゃんったら新しい舞台にすっかり興奮しちゃ 」

 

 

 

 

 

   パ   ン   ッ   !

   ‎

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぇ?」

『!!?』

〔「皆の衆掴まれぇえええいッ!!!」〕

 

 

天界に到着したばかりのデッカードラモン号を襲ったのは僅かな振動と

 

 

浮遊感   後   のし掛かる重力。

 

 

『うわぁああああああーーーッ!!??』

「ちょおま!、まままーーー!

いきなりすぎとちゃいますぅううう!?」

「無理に喋んな!、舌噛むぞ!?」 

「華恋ちゃん達は!?」

 

 

「みんなぁあああーーーーーー!!!

ぶじぃいいいーーーーーー!!!???」

 

 

「!、はい!!

今の所は無事です!、愛城さん!!」

 

自由落下中なデッカードラモン号の横を華恋、ひかり、スティフィルモンを乗せヒシャリュウが飛んでいた。

 

「よかったぁー!

リュー君!、デッカードラモン号をあの島まで運べる!?」

「任され ッ!?、スティフィルモン!!」

「ヒー!、カー!」

「「痛!?」」

 

全身の鋭利な針毛がパートナー達に刺さるのも構わず覆い被さるスティフィルモン。

 

 

ス   パ   ン   ッ   !

 

 

「ぬああああああ!!」

「りゅ、リュー君!?

そんな、リュー君の鎧がこんな簡単に!」

「あん、ずるな華恋!

お陰で見えたで御座る!、敵の所在!!」

「リュー!、アレ当たったらみんな危ない!

そこまで行ける?」

「無論・・・!

皆すまむ!、デッカードラモン号は 」

 

 

「言われるまでもないよ、うん」

 

 

斑な空に水色のキラめきが弾けたかと思うとドルグレモンがデッカードラモン号を抱えて黒い大翼を羽ばたかせる。

 

「華恋!、神楽さん!

私達も後で必ず合流するから!」

「わかったよ!、じゅんじゅん!」

「ヒシャリュウモン、お願い!」

「リューはエーが守る!、だから飛んで!」

「では、早速

頼りにさせて貰うで御座る・・・!」

「!?、ヴッァアアアーーーーーー!!」

「スティフィルモン!?」

「だい!、じょぶだよ!、ヒー!」

 

直後、ヒシャリュウモンを狙っての斬撃が再び飛来するがスティフィルモンが両手のハリケンナックルを半壊させながらも防ぐ。

 

「これ以上はやらせん!《縦横車ぁ!!》」

「「はぁあああ!!」」

「・・・・・・・・・」

 

その隙に武将竜は下手人が佇む浮遊島への急接近を果たし、舞台少女達とのコンビネーションによる全方位攻撃を仕掛けた。

 

「拍子抜けだな」

「「「「!?、ぁぁぁあああ!!」」」」

「ヒー!、カー!、リュー!

ヴゥー!、ヴァアアアーーーーーー!!」

 

刀の一降りで2人と1体の包囲を破った人型の黒竜に針毛を逆立て獣人が強襲。

 

「《ギガ!、クリムゾン!」

「・・・・・・・・・」

「ダイブーーーーーー!!》」

 

 

「ふん」

 

 

「・・・・・・・・・ヴァ?・・・・・・・・・あ、れ?」

 

 

「!!、スティフィルモン!!?」

「エーちゃん!?、エーちゃん!!」

「伝説の存在たるニンゲンとそのパートナー

実物はこんなモンか?、期待して損をした」

 

高速錐揉み回転しながらの突進

 

レッドデジゾイドにも匹敵する硬度を誇る針毛

 

それを高密度に圧縮させたハリケンナックル

 

どれもが怪しい光の軌跡の前にひれ伏す羽目に。

 

「ま、だ!、まだだ!

エーはスタァになるん ヴ!」

「何だそれは?

戦いにくだらんモンを持ち込むな、不愉快だ」

「ァウン!?」

「ッ!、御主!!

この恐ろしい程に澄み切った雑じり気の無い闘気はレイド帝国のモンではないな!?」

「「え!?」」

「奴らにデータを改竄されていないというのに!

何故デッカードラモン号を、拙者らを襲う?

もしや賞金稼ぎか!?、それにしてはやり方が大雑把過ぎるがッ」

「賞金等には興味がない

だが、千載一遇のこの好機を逃す訳にはいかない

 

 

奴に、レイド帝国の支配者に近づく為にな」

 

 

「どういう、こと?」

「あなたは一体、何?」

「聞かれたからには答えてやる

でないと、魔将が五月蝿いからな・・・

 

レイド帝国四天王が1体、武将・ガイオウモン

 

レイド帝国の支配者を討ち

 

このデジタルワールドの頂点に立つデジモンだ

 

全ては俺の強さを証明する為に」

 

華恋とひかりの問いに答えながら人型の黒竜・ガイオウモンは彼女らに菊燐の切っ先を向ける。

 

「わ、わかんない!、全然わかんないよ!

どうしてレイド帝国を倒したいのにレイド帝国に入ってるの!?」

「奴に近づくにはそれが一番手っ取り早いからな

何より、聖騎士や神々や番長といった強者達と思う存分に死合いが出来る

そう思っていたが最近はどいつもこいつも逃げ隠れしてばかりで退屈で仕方ない・・・

そろそろ大物とやりたいと思っていた所に丁度良い獲物が俺の前に現れた」

「それが、私達?」

「ああ

 

 

ニンゲンの首でも持っていけば

 

 

流石の奴も顔を出すだろうからな」

 

 

「「!ーーーーーーッッッ!!!」」

 

 

今まで感じた事のなかった殺気というモノにふたりでひとつの運命が凍りつく中

 

 

「く、くくく・・・

ぶふっ、ぶふふふ!

ぶははは!、あーっはっはっはっ!!!」

 

 

武将竜・ヒシャリュウモンは大声で嗤った。

 

 

「りゅ、りゅうくん?」

「ぷくくく!、すまぬ華恋ッ

こやつの言葉が余りにも可笑しくて、つい」

「・・・・・・・・・何が可笑しい?」

「ああ!、可笑しくて堪らんとも!

自分がどれだけ周りを害しているかをまるで見ようともせず、考えもせず!

ただただ自分の威を示さんと力を振るう!

 

 

まるでどこぞのトカゲ野郎そのものではないか!

 

 

そんなモンがレイド帝国の四天王で、ぶふっ!

武将等と名乗っているのかと思うと、くくく!

笑いが、止まらんでござるぅ!

 

 

あーっはっはっはっはっはっはっ!!!」

 

 

「黙れ、不愉快だ」

「「今すぐその口を閉じろ」」

「ッッッ!!?」

「ぶはははははははははははは!!!

語彙まで糞餓鬼と同じときたぞ!?

嗚呼っ、愉快愉快!、傍から見ればここまで滑稽なのか!

 

 

トカゲ野郎というのは・・・ッ!!」

 

 

 

「ノンノン、だよ」

 

 

 

「・・・・・・・・・華恋?」

「私の知ってるトカゲヤローはね

目の前の壁に全力でぶつかっていって

時々、周りが見えなくてつまずいちゃうけど

それでも頑張って頑張って前に進む

 

 

この世界で私が始めて見つけたキラめきなんだよ

 

 

だから、1人ででもレイド帝国に立ち向かおうとした時放っておけなかったんだ」

「か、れん・・・しかし、拙者は、恐らく!

御主と出逢わなければッ

あやつと同じ事をしていたやもしれん!!」

「でも、もう私達は出逢ってるよね?」

「!」

「リュー君が造る舞台は!、武勇伝は!

 

 

私とひかりちゃんの

スタァライトを越えるモンなんでしょ!?

 

 

だから

リュー君はそんな事しないし、私がさせない!

それが私のこのデジタルワールドでの役!

リュー君の相棒として!

 

 

絶対に成し遂げなくちゃいけない事だからッ」

 

 

「む!?」

 

殺気の呪縛を打ち破り、構えるキラめきの名は

 

Possibility of Puberty【青春の可能性】。

 

「私達の物語はこんな所で終れない!

首なんてあげられないし、負けられない!

御覚悟、だよ! 武将ガイオウモン!!」

「くっ、一々癪に触る事ばかりを!」

 

華恋の切った啖呵を皮切り鮮烈な赤と怪しい光

 

2つの軌跡がぶつかり合う。

 

「何!?、さっきとは動きがまるで違う!」

「舞台少女は日々進化中!!」

「づぁ!」

「今、あなたと向き合ってるこの瞬間にも私は進化し続けるの!

成長期よりも、成熟期よりも、完全体よりも!

究極体よりも!!、もっと!、もっと!」

「ぐぅううう!、く、くくく!

それは、楽しめそうだな・・・ニンゲン!!」

「舞台少女と言っているだろうがぁああ!?

こんのトカゲやろぅううう!!」

「!《燐火斬!!》」

 

互角に斬り結ぶ1人と1人の間に武将竜が割って入れば、あの斬撃が飛ばされた。

 

「《縦横車ぁ!!》華恋!!」「うん!!」

「馬鹿な!?

手負いだというのに、こいつも!」

「当然だ!、拙者が描く武勇伝は!

スタァライトを越えるモンなのだからな!」

 

鎧の傷を感じさせない滑らかな動きでガイオウモンの技を避けつつ、四方八方から斬り込むパートナーの足場となり

更には、自身も果敢に攻めるヒシャリュウモン。

 

「舞台少女が進化を続けるのならば!

拙者達には止まっている暇等ありはしない!

 

 

そうだろう!?、スティフィルモンよ!!」

 

 

「・・・・・・・・・うん、そうだよリュー!!」

「!」

「エーだってカーには、絶対負けられないッ

ヒーの中のカーはキラキラピカピカだった!

そのカーよりエーはキラキラピカピカな

スタァになる!、ならなきゃいけない!」

 

同胞の呼び掛けに応え、獣人は散らばった針毛をかき集めてしっかりと握り絞めた。

 

「ええ、なってみせてスティフィルモン

誰にもくだらないなんて言わせないぐらいの

スタァに!」

「勿論だよ!、ヒー!」

「ふふっ!」

 

スティフィルモンと笑い合ったひかりもまたガイオウモンの発する殺気を撥ね除けた

 

 

次の瞬間、青い閃光が爆ぜる。

 

 

「!?、づらぁあああ!!」

「ヴァアアアーーーーーー!!!」

「ごはぁ!」

 

もう一刀の菊燐を抜き放ち猛然と迫るBlossomBrightの切っ先を防げば、ハリケンナックルが黒鋼の顔面を穿った。

 

「みんな!」「うん!」

「《成! 竜! 刃!》」「《ギガ!」

「ぐ・・・!」

 

よろめく武将に向け華恋、ひかり、ヒシャリュウモン、スティフィルモンが繰り出すのは

かつて麗将を後一歩の所まで追い詰めた合体技。

 

 

「「ーーー~~~ッッッ!!!」」

「ぬ、ぬ"うううっうううんんんん"!!!」

「クリムゾン!ダイブーーーーーー!!!》」

「ぐぁああああああ!!?」

 

 

赤と青の輝きが交わる渦を纏った巨大な刀をガイオウモンは二刀の菊燐で受け止め

 

 

 

「《ガイア!、リアクターーー!!!》」

 

 

 

大気中の全てのエネルギーを集中させて爆発

 

 

「「「「!!??」」」」

 

 

僅かに距離が開いた隙に手にしている2本を合体

 

 

「最終奥義ッッッ!《燐! 火! 撃!》」

 

 

怪しい光を一点集中させた砲撃を零距離で発射。

 

 

「ゼェイッ!、ハァアッ・・・!

 

 

訂正しよう、ニンゲン

いや、舞台少女とそのパートナー共ッ

お前らは俺が戦うに値する強者だった!!」

 

武将が称賛する先に居るのは

 

 

ボロ布と化した赤と青の上掛け

 

ヒビの入ったサーベルと短剣

 

所々、装飾が欠けてしまったレヴュー衣装

 

それらを手にし、身に纏ったまま地面を転がり

 

 

ピクリとも動かない愛城華恋と神楽ひかり。

 

 

その傍らには傷だらけの状態で横たわる

 

 

鎧蜥蜴と針鼠も居る。

 

 

「せめて、この一太刀で終わらせてやろう

 

 

さらばだ、トカゲ野郎」

 

 

「・・・・・・・・・ッ・・・・・・・・・!

 

 

おわらせない!!!!!」

 

 

「《燐火斬!》」

 

 

リュウダモン目掛け飛ばされた斬撃を華恋は

 

 

止められない。

 

 

「あ」

「か、れん?、華恋!?、華恋!!」

「かぁー・・・!、りゅ、ー・・・!」

「まっ て まって!、待ってよ!

 

 

 

待ってったらぁああああああ!!!!!!」

 

 

 

ガイオウモンの一撃によりただでさえ不安定だった空間に亀裂が走る中でひかりが必死に手を伸ばしても

 

《燐火斬》の直撃をモロに食らい吹き飛ばされた

 

華恋とリュウダモンには届かない。

 

 

そのまま1人と1体は

 

転生すら許されない空間の狭間へと飲み込まれ

 

 

データ【肉体】を末端からバラバラに分解され

 

 

 

          完全削除

 

 

 

されるのであった。

 

 

「あ   あぁ   ああ!

 

 

ああああああああああああ!!!!!!!」

 

 

「五月蝿い」

「がぁっ!」

「ヒ、ー・・・!、ヒーーーーーー!!!」

「こんな事で一々騒ぐな、興が削がれる」

 

運命の相手が消え去った方へと伸ばした手は不躾に踏みにじられる。

 

「戦えば傷つき、消える・・・当然の摂理だ

それとも、自分達は違うとでも思っていたのか?

随分と御目出度いな」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ふん、最早戦意の欠片もないか

まぁ、いい」

「!!、メ・・・メーーー!!、メーーー!!

ヒー!、ヒーーーーーー!!!」

 

エリスモンの悲痛な叫びを無視して

 

ガイオウモンはひかりを片手で掴み上げると

 

もう片方に持った菊燐を構え無造作に振るった。

 

 

 

すると、地面にボトリと落ちていく

 

 

 

神楽ひかりの体が五体満足のままに。

 

 

 

「!!?、なんだッ

なんなんだコレはぁああああああ!!?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

狼狽するガイオウモンの視線の先では彼女に触れた刃が

 

彼女を持っていた自分の手が

 

ゴッソリと削除され、内部のデータが露出している。

 

「ヒー!、よか、た?

 

ヴ ヴヴ? ヒー?

 

ナニ『コレ』ー?、ね、ぇ?」

 

 

「強く伸ばした掌スリ抜け

 

奈落に落ちた   私だけのフローラ」

 

 

無垢なパートナーの不安な声に耳を貸さず虚ろな顔で歌い始める舞台少女

彼女の神機から、身体から漏れ出し

 

地面を這いずり回るのは

 

 

薄暗い色をした青のソウル。

 

 

「もう何もない

 

あの日の誓いも、運命の舞台もッ・・・」

 

 

「ヒー?、ヒ、いー!

 

エー   !   『コレ』ェーーー!

 

 

やーーーーーーーーー!!!!!!!!!

 

 

や  だ よぉ    ヴグゥ!?

 

 

ヴヴヴ、ァァァーーーーーー!!!???」

 

 

ソレはエリスモンを一瞬で飲み込み

 

 

大量の突起物を盛り上がらせながら膨張

 

 

そして

 

 

 

「だから

 

 

 

全部終わらせて ラセンモン・激昴モード」

 

 

 

「ーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

 

 

 

暗幕をブチ破って姿を現したのは

 

今のひかりのソウルと同じ色をした九尾の妖獣。

 

「!!

ふる、えている?、この俺が!?

ふふっ!、ふはははははは!!

面白い!、やはりお前らは面白いな!!」

 

自分より一回りも二回りもある異形を前にレイド帝国四天王武将・ガイオウモンは愉悦を感じながら残る片手で菊燐を抜き放つ

 

「いいだろう!、それでこそ俺の強さを証明する

 

 

      あ、あれ?、俺の、おれのうで

 

 

どこいった?」

 

 

「ーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

 

 

ラセンモン・激昴モード

 

究極体。

 

他者から悲しみ、怒り、絶望といったマイナスの感情データが大量に流れ込みそれを恐れ、拒絶する葛藤の苦しみから生まれた

 

自分の中で渦を巻く負の感情が、破壊衝動が

 

制御不能となった九尾の凶悪な妖獣型デジモン。

 

「ま、まて!   あぎぃ!!」

 

必殺技は螺旋状の尾を伸縮させ何度も

 

「あ、あしぃいいい!?

 

うで!、うでもうないぃいいい!!

 

あがっ!、がががががががががぁあ!!」

 

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も

 

 

何度も

 

 

串刺しにする《デスペレイトボルテックス》

 

 

「あ、ぁぁああぁあぁあああああ!!??

 

おれの、からだぁ!、おれのぉつよさぁ!」

 

 

「ーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

 

 

もうひとつが

 

 

「ま、て!、いやだ!、それはッ

 

 

いやだぁあああああ      !"  」

 

 

 

《プレデターズバイト》。

 

 

 

 

 

 

 

ゴリ・・・ 

 

     ブチィ        グチャ

  ‎  ‎

  ‎       ガリッ!ガリッ!

 

 

7人の舞台少女と7体のパートナーデジモンがそこに辿り着いた時

 

 

まず聞こえてきたのはナニかの咀嚼音。

 

 

「ーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

 

 

「な、ぁ、ふたば、はん

あの、でじもん、ナニたべてはるの・・・?」

「ッ!!!、見るな!!!、香子!!!」

「うぶっ!、おええええええ!!」

「しっかりしろ!、エアロブイドラモン!

なんなんだ!?、アレは!

本当に、オレ達と同じデジモンなのか!?」

「え?」

 

 

「ーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

 

 

「でじたまが、はかいされた?

ばかな!、馬鹿な!!、完全削除だと!!?

そんなモン一個体が持つ事等!、あってはならないのデシテッ!!」

「うん、既存のルールを明らかに逸脱してるッ

こいつは、レイド帝国なんて目じゃないくらいに

デジタルワールドに居ちゃいけない!!!」

「は?、ちょっと」

 

 

「ーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

 

 

「!?、気づかれたァアアアッ!」

「くそ!!、こっちはカレンチャンやヒカリチャン達を探さなくちゃいけないってのに!!」

「なら、あいつに聞けば良いだけジャン?」

「Quoi!?、こんな時までおかしな事言うのはやめてよ」

「おかしいってそれお前らジャン?

なんなんだよ、さっきから」

「貴様ッ!、この非常事態に!!」

「クレシェモン、今は抑えて下さい

・・・・・・・・・パンダモン、それはどういう意味か教えて貰ってもよろしいでしょうか?」

「どうもこうもないジャン

だって、あのデッカイトゲトゲしたのって

 

 

エリスモンだろ?」

 

 

『は?』

 

 

「なのに、お前らさっきから変な事ばっか言って

あいつが居ちゃいけないなら

 

 

あいつと同じウチらはなんなんだよ?」

 

 

「「「「「「ッッッ!!!」」」」」」

 

 

パンダモンの指摘にパートナー達が絶句する中で

 

 

「小さな国の、小さな村に伝わる夏の星祭

 

1年に1度、降り注ぐ流星の元で

 

私はフローラと、私はクレールと

 

運命の出逢いをした」

 

 

「      ひ、かり、ちゃん?     」

 

 

淡々とした語りのスタァライトが聞こえてきた。

 

「ね、ねぇ神楽さん・・・?

ソレ、本当にエリスモンなの?

それに、華恋は、どこ?」

「スタァライト、それは星の光に導かれる運命の舞台」

「あはっ、あははは♪

もう!、ひかりちゃんってば!

スタァライトが大好きなのは私達ちゃんと知ってるから!

今は、純那ちゃんの質問にちゃんと答えなきゃ 」

 

 

「あなたはだれ?、わからない・・・」

 

 

『!!??』

 

ひかりは純那やななの言葉に耳を貸さず夢遊病者のような足取りで上へ上へと登っていく

 

 

足跡から薄暗いソウルとキラめきを垂れ流し

て。

 

 

「お持ちなさい、あなたの望んだその星を」

 

 

「ーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

 

 

彼女が天に向けて手を伸ばすと九尾の妖獣もまた同じ仕草をする

 

手首のブレードを高速回転させ竜巻を巻き起こし天界の各所を無差別に斬り刻みながら。

 

「や、やめろエリスモン!!

ここにはレイド帝国以外のデジモンだって居る!

ヒカリも!、さっきから何してるんだよ!?

パートナーなら早く止めろ!、さもないとボクがそいつをッ!」

「ふたりの夢は叶わない

こうして、ふたりは永遠に離れ離れになり」

「アレは、暗黒のソウル・・・?

ニンゲンの怒りや悲しみ、絶望が生む破滅の力

 

 

ヒカリチャン まさか そういうことなの

 

 

か?」

「光の!?、おい!、光の!!」

 

膝をつくヴォルフモンの視線の先にあるのは鋭利な切断面とその先にある空間の亀裂。

 

「なに、いってるの?

そんなワケないじゃない」

「・・・・・・・・・ナナァ」

「だって、華恋ちゃんさっきまであんなに元気で

わたしたちといっしょだったんだよ?」

「ナナァ!、ッ!?」

「なのに、なのになんで!?

なんで、そういうこと言えるの!?

ねぇ!、答えてよ!、こたえなさいよ!!」

「バナナチャン、ごめん・・・」

「なんで謝るの!?、あやまらないでよ!

こんな、こんなことになるならッ

 

 

私は!、わたしはぁああああああ!!!」

 

 

「なな!!、やめて!!

おねがい!、もうっ、やめてよぉ・・・!!」

 

大場ななは最早止まれない。

 

パートナーとの繋がりを断ち切っても

 

俯きがちに紡がれた贖罪の言葉を聞いても

 

友の嘆きを間近にぶつけられても。

 

「・・・・・・・・・ッ!!

ジュンナ、君はナナの側に居ろ!、絶対に離すな!!」

「ぼ、ち?

どるぐれもん、きみ、まさか!

やめろぉ!、アレはエリスモンなんだぞ!?

お前あのチビスケを!、仲間を消す気か!」

「ぶ、ブイはん?」

「ーーーッーーー・・・・・・・・・かつての、君だって

『同じ』判断を下したろ?、アルフォースブイドラモン」

「アルファモンッッッ!!!」

「きゃっ!」

「香子!、大丈夫か!?」

 

世界を荒らす災いに向けて飛び立った獣竜を追い

蒼竜は飛ぶ、パートナー達を置き去りにして。

 

「おい!、出遅れてんぞクロ公!、何やってんジャン!?」

「なにって、あんたが自分で言ったんじゃないッ

アレは、エリスモン・・・ひかりのパートナーだって!!!」

「お前こそ何言ってんジャン!?、いっつもテンドーと戦ってんのに!

あいつとは戦えねぇっておかしいだろ!?」

「それとこれとは話が別だ!

そんな事もわからないのか!?、アホ熊!」

「わかんねーよ!、わかんねーけどッ

エリスモン、あのまんまにしとくのはウチ、なんかヤダ!!」

「・・・・・・・・・そう、ですね」

「真矢?」

「舞台の上でいつまでも棒立ちではいられません

でしょう?、西條クロディーヌ」

「!、Bien sûr!!」

「くっ!、アホな言葉に乗っかるのは甚だ不本意だが今はそうするしかないのデシテッ」

 

それに続き、首席と次席もまた

月光魔人と白黒熊を伴って動き出した。

 

「双葉はん、うちを連れてってや

こんな時だけカッコつけたがりの青瓢箪所まで」

「・・・・・・・・・へ!、わかったよ!」

「獣魂解放!

行くぞ!、フタバ!、カオルコ!」

 

置いてきぼりにされていた者達も紅蓮の魔竜に乗ってこの混乱の渦中へと飛び込む。

 

「止まれ!!《メタルメテオッッッ!!》」

「ーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

「《メタルメテオ!》《メタルメテオ!》

《メタルメテオッッッ!!!》

くそ!、どうして!、なんでだよ!?、なんで効かないんだよ!?、なんで!!」

「ーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

 

何度巨大な鉄球をぶつけれても妖獣の体はビクともしない。

それどころか、捻れた九尾をドルグレモン目掛けて伸ばしてきた。

 

「《ドラゴンインパルス!!》うぐぅ!?

ぐぁああああああ!!」

「!?、エアロ、ブイドラモン?

おい!、返事しろよ・・・青瓢箪!!」

「ブイはん!?、ブイはん!!」

「う、うそ、だろ?」

「くっ!!」

 

竜の波動を纏ったエアロブイドラモンはソレらをどうにか弾き返そうとしたが、5本目辺りでさばけなくなり残る4本が直撃した結果

 

墜落。

 

地面を抉りながら退化していった。

 

「また?、またなのか?、またまもられた?

また!、また!、ボクはボクはボクは!!」

「ドルグレモン!?

マズい、マズいぞフタバ!

ただでさえ今のエリスモンは手がつけられないのにみんなの心がバラバラだ!」

「ッッッ、香子!!

無理ならブイモン所行っとけ!、あたしは 」

「双葉はん、何勝手に決めてはるの?」

「か、カオルコ!」

「神楽はん、何があったかはしらんけど

今のあんたはんはスタァライトの主役に相応しくありまへんえ

だから

 

無理矢理にでも奪ったるわ!!!」

 

「!、って、ワケだ相棒!!」

「ああ!、任せてくれ!」

「は、ぁ、っ、ぁぁあああ!」

 

発狂する超大型獣竜の横に太陽が生まれる。

 

「《ブラフマストラ!!!》」

「《ダークアーチェリーーー!》」

「ーーーーーーーーー!?、!!??」

「天堂はん!?」「クロ子!」

 

双葉が香子と共に融合体となったパートナーの燃える背に乗り弾幕の中を飛んでいると、妖獣の顔半分が闇に覆われた。

 

「ええ、花柳さんの言う通りですよ!

神楽さん!」

「あんた!

それでクレールやってるつもりなの!?」

「・・・・・・・・・小さな、国の」

「おい!!、ヒカリ!!

ウチ、スタァライトゼンゼンしんねーけどさぁ!

今のお前絶対の絶対に違うジャン!!」

「・・・・・・・・・   ッ」

 

視界を奪われた異形が悶える隙に

 

真矢、クロディーヌ、パンダモンが

 

独り芝居を続けるひかりの元へ一気に接近。

 

 

「ーーーーーーーーー!!!!!!!!!

 

ィ、ー

 

   ヲ   オーーーーーー!!!

   ‎

 

メー!!ーーーーーーーー!!!!!!!」

 

 

すると、パートナーから何かを感じ取ったのか九尾の妖獣は両手首のブレードを地上へと向け、無差別攻撃《スパイラル・ヘル》を放つ。

 

「《ブラフマシル!》おおおおおおお!!!

い、まだぁあああ!、フタバ!、カオルコ!」

「「!」」

 

触れるモノ全てを斬り刻む残虐な竜巻を高密度に圧縮させた聖なる炎でアルダモンが焼き祓えば

その背中からもう一組の

 

ふたりでひとつの運命が飛び込んだ。

 

「ええ加減にぃ!!」「しろぉおおお!!」

「ーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

 

激流のように次々と迫る螺旋状の尻尾を以心伝心のコンビネーションでいなし、躱しながら進む花柳香子と石動双葉。

 

「《アイスアーチェリーッ!》」

「ぅ・・・」

「神楽!!」「ひかり!!」

「《アニマルネイルぅううう!!!》」

 

地上では首から下を氷漬けにされたひかり目掛け2つの刃と獣の爪が振るわれる。

狙うは青い上掛けを繋ぐ紐。

 

 

 

「ーーーーーーーーー!!!!!!!!!

 

 

 

イ"!   ジ

     メー   ーーー!!!

 

 

ェーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

 

 

 

直後

 

 

異形ラセンモン・激昂モードの全身から

 

 

暗黒のソウルが渦となって放出。

 

 

その量は浮島所かこの戦場一帯を飲み込む程。

 

 

「わたし・・・いき、てる?・・・・・・・・・ぁ」

「ガハッ・・・!」

「ドル、グレモン?、ドルモン!!」

 

離れていた純那達はドルグレモンの巨体が壁になった為に助かったが・・・

 

 

 

「ふたばちゃん?、かおるこちゃん?

 

 

まやちゃん?、くろちゃん?」

 

 

 

間近に居た者達はただではすまなかった。

 

 

「ふ、タ!、バ・・・ァ!」

 

 

全身切り傷まみれなフレイモンが手を伸ばす先では双葉が動けなくなった香子を抱える形で横たわり

 

 

「ン、ドー! ぐぅううう!」

「・・・・・・・・・ッ・・・・・・・・・ッ」

 

 

ルナモンはよろめきながら

レイピアを杖にして辛うじて立つ真矢の元へ

 

 

「ま、だッ

ウチは、まだ、まけて !」

「ヌ、ゥス!、ノン!」

 

 

クロディーヌは半ば意識が飛んだ状態でも戦おうとするベアモンを震えながら止めていた。

 

「ーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

「ふたりの夢は 叶わないのよ」

 

この惨状を前にしてもひかりの独り舞台は続きラセンモン・激昂モードはソレに合わせて天界の各所に破壊を撒き散らす。

 

 

もういや

 

いやぁ!、いやよ!

 

イヤイヤぁぁ!、イヤァア"ア"ア"!!!」

 

 

「《レオクロー!》」

「ガハ!?・・・ぁ・・・・・・・・・」

「ケッ」

「ボウヤ・・・レオルモン・・・」

「いつか、こんな日が来るとは思ってたァ

このデジタルワールドはァテメェみたいなヤワな奴がいつまでもやってける程甘くねぇからなァ

 

ナナァ」

 

子供のように泣き叫んでいたパートナーの鳩尾に爪を叩き込んで意識を借り取った後、悲痛な眼差しをする仔獅子。

 

「小さな国の、小さな村に伝わる夏の星祭」

「・・・・・・・・・」

「1年に1度、降り注ぐ流星の元で」

 

 

「      なんで?      」

 

 

「私はフローラと、私はクレールと」

「どうしてそんな簡単に諦められるの?」

「マヒル?」

「運命の出逢いを 」

「華恋ちゃんはあなたを諦めなかった

なのに、そのあなたがそんな簡単に華恋ちゃんを諦められるの?」

「うん、めいの、であい、をッ」

「ねぇ、ちゃんとこっちを見てよ

私を見てよ、ひかりちゃん」

「ーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

 

 

「エリスモンうるさい」

 

 

「ーーーーーーーーー!?!?!?!?」

 

 

「今、ひかりちゃんとお話してるから

ちょっと静かにしてて」

 

 

「ーーーーーーーーーゥゥン」

 

 

「ワオッ☆、ワォ・・・ゥ」

 

 

「わたしのなは、くれ、る」

 

 

「ああ、そっか

見てくれないなら、こっちから行けばいいんだ

 

そうだよね?   華恋ちゃん!!!」

 

「「「!」」」

 

重い鈍器を地面に叩きつけ、クレーターを作りながら緑のソウルとキラめきを弾けさせる

 

 

真昼の舞台少女が遂に動き出した。

 

 

「行くよ、ガルムモン」

「ハイハイ☆、っと!」

「!?

ーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

「・・・・・・・・・ごめん、マヒル

オレもカレンチャンの事」

「いいよ、私もさっきまでは、ね?」

 

彼女が白銀の機械狼に騎乗し凄まじい速度で荒地を駆け抜ければ、妖獣はやや鈍い動きで迎撃に移る。

 

「ーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

「《スピードスター☆》かぁらぁのぉーーー!

《リヒトアングリフ!!》」

「ーーーーーーーーー!、!?」

 

次々と伸ばされる螺旋状の九尾を高速移動で躱し、融合体となって腕のミサイルとレーザーを凶悪な形相に向けて全弾発射。

 

「ひかりちゃん

私は諦めない、絶対に諦めないよ

華恋ちゃんも!、次のスタァライトも!

全部!!」

「星摘みは、罪の赦しッ」

「マ、ー?ーーーーーー!!!!!!」

「アッハッハァ☆、電脳核に残ってんのかなぁ?

あん時、針をへし折られた時の衝撃がさぁ

だったら、忘れんなよ

もうマヒルを怒らせないんだろ?」

「ーーーーーーーー!!!!!!!!!

ヴ、ァー・・・!」

 

顔を激しく振るうのは顔への攻撃を嫌がってか、はたまた僅かに残った理性のせいか。

どちらにせよ、まひるとベオウルフモンから目を反らした事に変わりはない。

 

「オレも

オジサンもさぁ、もう忘れないようにするよ☆

絶対に舞台少女9人全員を人間界へ!

みんなのキラめく舞台に帰すって!

 

自分自身に立てた誓いをさぁ!!」

 

「帰ってきて!、ひかりちゃん!

私達の舞台に!」

 

その隙に光狼の融合剣士と真昼の舞台少女が互いの獲物を握り、横並びで走っていく

 

 

真っ直ぐ【ストレート】に。

 

 

「ァ、アァアーーー!

ーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

「《ツヴァイ ハンダーーー!!!》

グルァァァアアアアアアーーー!!!」

 

ラセンモン・激昂モードとベオウルフモンは

 

同時に咆哮を上げて必殺技をぶつけ合う。

 

「一緒に探そうよ・・・!、華恋ちゃんを!」

「ーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

「グルルルゥ!、グルァアアーーー!!!」

 

まひるの神機から溢れ出る緑のソウルとキラめき

 

それとパートナーのソウルが合わさり構成された

 

緑を主体にした白と紫のフレンジが揺れる

 

漢字の『光』を思わせる紋章が浮かぶ幕が

 

破壊の竜巻を大型双刃剣で抑え込む剣士を包み

 

 

 

「ッ、グァァァアアアアアア!!??」

 

 

 

込んだ、その瞬間

 

 

融合剣士は絶叫を上げ仔人狼に退化。

 

 

「私達のキラめきをーーーーーー!!!」

 

 

すると、9人の武器の中で唯一刃の無いLove Judgementに苛烈な緑光の刃が伸び

 

 

それを握る少女の手が獣のモノへとカワル。

 

 

「      あ      」

 

 

足場を断ち斬られ、瓦礫と共に吹き飛ばされる

 

 

クレール、否、神楽ひかり。

 

「まひる?」

「・・・・・・・・・やっと!、見てくれたぁ」

「え?」

 

輝きの戻った彼女の目に映る露崎まひるは

いつもの温かい笑顔を浮かべながら

 

 

 

口から鋭い牙を覗かせ

 

頭からはフサフサした狼耳を生やしていた。

 

 

 

「ーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

「!、きゃああああああ!!?」

「まひる!?」

 

しかし、横合いから振るわれた尾により吹き飛ばされすぐにその姿は見えなくなる。

 

「露崎さん!、え!?」

「び、びっくりしたぁ!」

「(今の、気のせい?)」

「純那ちゃん?、どうかしたの?」

「へ?、あ、なんでもないわ

それより、露崎さんこそ体は大丈夫なの?」 

「うん、思ったより痛くないよ

怪我も全然してないし」

「・・・・・・・・・本当ね、エリスモンが手加減したのかしら?」

 

駆け寄った純那もまひるの異常を見たのだが

瞬く間に消えてしまったし

 

 

「ーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

 

 

「「!?」」

 

気に止める暇もない。

 

「嘘でしょ?、あの子まだ!」

「そんなっ・・・!、ひかりちゃんは戻ったのに」

 

 

「あなたエリス、モン、なの?」

「ーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

「ねぇ?、エリスモン!、ねぇってば!!」

「ーーーーーーーーー・・・・・・・・・!

ーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

 

 

ひかりの声にラセンモン・激昂モードは答えない

 

それどころか徐々に禍々しい体躯が

 

不自然に膨らみ始める。

 

「まさ、か、エリスモンッ

君、ヒカリチャンだけじゃなくて!

ここに居る全てのモンの負の感情を・・・?」

 

 

「ーーーーーーーーー!!!!!!!!!

ーーーーーーーーー!!!!!!!!!

ーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

 

 

苦し気な咆哮を上げ、のたうち回る九尾の妖獣。

 

 

「どうしよう、どうすればいいの?

 

 

華恋、かれん!」

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!

 

 

「・・・・・・・・・え?」

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!

 

 

「あ、あれってまさかッ

いえ!、そんなの有り得ないわ・・・!」

「で、でも純那ちゃん!、あれはどう見ても」

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!

 

 

「ふ

ふふふ!、はははははは!!

本当にッ、あなたは!

私の想像の範疇を越えてスタァライト!、してくれる!!」

「な・な・なーーー!?

なんなんデシテ!、あの赤いモンは!?」

「あら、知らないの?

かのエッフェル塔から発想を得たって専らの噂の日本の高層建築物を」

「よくわかんねーけど!、強そうジャン!」

 

 

浮島付近に刻まれた

 

華恋とリュウダモンの飲み込まれた空間の亀裂

 

 

そこから突き出してきたのは赤くて高い電波塔

 

 

 

 

舞台装置・約束タワーブリッジ【東京タワー】。

 

 

 

 

 




※レイド帝国四天王武将・ガイオウモン
己の武力と野望だけで四天王の座までのしあがったデジモンの主張はこの弱肉強食の電脳世界では決して間違っていない



故に



オーディションを勝ち取り、望む舞台を与えられていた星罪の舞台少女の


舞台【デジタルワールド】の終わりという願い
ソレを叶える執行者【パートナー】という


圧倒的存在の餌食と化したのである。




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アタシ、拙者再生産! 究極戦刃オウリュウモン

こっからはスタァライトのターン!


 

 

 

そこには何もなかった

 

 

 

ただただ真っ暗な闇だけが広がっていた

 

 

 

ここはダークエリア

 

 

 

死したデータが送られる電脳世界の冥府

 

 

 

その筈なのに

 

 

 

〔「小さな星を摘んだなら

 

 

あなたは小さな幸せを手に入れる」〕

 

 

 

何故かそこでは

 

 

 

〔「大きな星を摘んだなら

 

 

あなたは大きな富を手に入れる〕」

 

 

 

声が 歌が 音楽が流れる

 

 

 

〔「「その両方を摘んだなら

 

 

あなたは永遠の願いを手に入れる」」〕

 

 

 

赤と青の衣装のふたりが踊る

 

 

 

〔「ほしつみはつみのゆるし!」〕

 

 

〔「ほしつみはよるのきせき!」〕

 

 

 

それを小さな女の子ふたりが見ている

 

 

 

〔「お持ちなさい あなたの、望んだ・・・

 

 

その!、星をッッッ!!!」

 

 

 

それは約束、それは運命、それは舞台

 

 

 

ダークエリアの、デジタルワールドの

 

 

処理能力を遥かに越えた容量を持つ

 

 

 

スタァライト

 

 

 

「アタシ  再生産!」

        ‎     

        ‎   

        ‎

奈落の底にてデータが再生産されていく

 

 

あの子と握り合った手が

 

 

あの子の隣に立った足が

 

 

あの子と一緒に聞いた耳が

 

 

あの子と一緒に観た目が

 

 

あの子と約束を交わした口が

 

 

その為に造ってきた躯が

 

 

その為に紡いできた思い出が

 

 

舞台少女、99期生 愛城華恋の全てがッ!

 

 

 

そして

 

 

 

「かれん?」

 

 

 

この世界で出来た相棒もまた共に再生産される。

 

「リュー君!、リューくぅううん!!」

「ぬぁあああ~~~!?

か、華恋!、や、やめるで御座る~~~!」

 

闇に浮かんだ1人と1体はクルクル回りながら抱き合った。

 

「あ、そういえば!、ここどこ!?、ひかりちゃんは!?」

「そこか!、今そこなのか!?

ええい!、御主は本当にッ・・・・・・・・・ここは恐らくダークエリアで御座る

ストラビモンが言っていただろう?

転生すらも許されない奈落の底、どういう理屈はわからんが拙者らはこうしてデータも意識も残っているがそれもいつまで持つかわからん

恐らく、このまま 」

 

 

 

「ノンノン!、だよ!

 

 

 

ここが奈落なら、私達はまだ舞台に居る!

ひかりちゃんの

みんなの居る舞台の上まで昇っていける!」

 

 

 

「・・・・・・・・・そう言うと思ったで御座るよ」

 

 

 

決意と共に真っ赤なソウルとキラめきを立ち上らせスタァライトする華恋にリュウダモンは呆れたような

 

誇らし気な笑みを浮かべる。

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!

 

 

 

「!?、これは!

華恋とひかり殿の、塔!! ぬぁ!?」

 

 

歌うパートナーの足元から迫り上がってきたのは

 

 

愛城華恋のソウルとキラめきを

 

 

そして、このダークエリア全体を満たしている

 

 

神楽ひかりとの思い出を約束を運命を

 

 

スタァライトを触媒に造り上げた赤き塔の橋渡し

 

 

舞台装置・約束タワーブリッジ。

 

 

再生産した時に彼女の記憶に触れたリュウダモンがこの光景に驚愕していると、ソレは自分らを乗せグングン伸びていった。

 

 

「うううううううううううう!!!!!!

 

約束、したんだから!!

 

ひかりちゃんと!

 

いっしょに、スタァになるってぇえええ!」

 

 

「あいや!!!、待たれよ!!!」

 

 

「!、リュー君!?」

 

 

ソウルとキラめき漲る赤き神機に添えられたのは無骨な前足。

 

「言った筈だ!、余所見もさせんと!

華恋とひかり殿のすたぁらいとに負けない程に

 

 

拙者も煌めいてみせると!!!」

 

 

「!、そうだねッ

そうだよね!、リュー君!!

 

 

行こう!!、一緒に!!」「任されよ!!」

 

 

 

キィン! キィン! ギィイイイン!!!

 

 

 

剣戟の音色と共に星形の画面を刃の翼が囲う。

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!

 

 

同時に、【東京タワー】が次元を突き破り

 

 

ライトアップと共に分解、0と1の粒子となった。

 

 

「戦場というステージへ

 

華麗に舞い上がるアタシの相棒!」

 

 

独特な形状の剣が描かれた金のフレンジが揺れる赤い幕となったソレの下で華恋は見た

 

 

リュウダモンが

 

 

「生まれ変わった鎧を纏い

 

煌めく刃で堂々見参!」

 

 

ギンリュウモンよりもヒショリュウモンよりも

大きく、より豪華で堅固な鎧に包まれるのを。

 

 

「武者竜覚醒!、オウ!、リュウモンッ!」

 

 

腰に手を当て、胸を張るパートナーを頭に乗せ

刃の翼を広げて飛翔するのは

あの赤い塔と同じぐらいの体躯をした

 

 

威風堂々とした和風の黄金鎧を纏う竜。

 

 

「拙者と華恋で!」

「スタァライトしちゃいます!」

 

 

華恋が構えるPossibility of Pubertyと同時に

両手の鎧竜左大刃と鎧竜右大刃を突き出し

 

 

「「御覚悟!!」だよ!!」

 

 

共に啖呵を切ってみせた。

 

 

「あ、あぁ・・・!」

「お待たせ!、クレール!」

 

 

ばか

 

 

バカ馬鹿!   バッ華恋!!

 

 

それじゃあ・・・!、逆ッじゃない・・・!!」

 

塔の上から地上の自分に向けられた声に涙声で応じるひかり。

 

「ほんっとよ!!!、バッ華恋!!!」

「よか、た!、よかったよぉおおお!!!」

 

華恋の無事に純那とまひるは抱き合って大喜び。

 

「うわぁぁぁあああああああああん!!!

ひっく!、うぐぅ!、がれ"ん"ぢゃあ"!!

うわぁぁぁあああああああああ・・・!!!」

「ケッ・・・」

 

意識を取り戻していたななはひたすら泣き喚く。

 

「空間の狭間から、ダークエリアから帰還したデシテ?

いったいどうやってーーーーーー!?」

「スタァライトしたんでしょう、きっと」

「でしょうね」

「すげぇジャン!、カレン!

それにリュウダモンも!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ソーデシテー」

「「うっ」」

「フタバ!、カオルコ!

よかった!、目を醒ましたんだな!?」

「あ、ああ・・・

ったく、こっちにメチャクチャ心配かけといて」

「本人はあない元気やなんて、なぁ・・・」

「デスぅ~~~」

「ブイモン!?、無事だったのか!!」

「どっかの痛いボッチのお陰デスぅ」

 

 

「ーーーィーーーーーー!!!!!!!!!

イーーーーーーーーーー!!!!!!!!!

ォーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

 

 

『!!?』

 

 

1人と1体の帰還に歓喜していた舞台少女とパートナー達に再び緊張が走った。

 

「リュー君、あれって!」

「エリスモン!?

進化、にしては何と禍々しい姿にッ」

「私の、せい・・・ッ」

「ひかりちゃん!?」

「私が、華恋を失った時の全部を

あの子に押し付けた、だから!」

「なら、取り戻そうよ!

ひかりちゃんの全部!

そうしたら、きっと

いつものエーちゃんになるから!」

「え?・・・・・・・・・うん!!」

 

華恋の言葉にひかりは力強く頷くとワイヤー移動を繰り返し彼女の隣へ。

 

「!?

ェーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

 

すると、ラセンモン・激昂モードは両手首のブレードを高速回転させオウリュウモンに《スパイラル・ヘル》を放つ。

 

「《黄鎧!!!》ぬああああああ!!!」

 

万物を斬り刻む竜巻を大河の土砂流の如く荒れ狂い、斬り裂きながら真正面から突っ切る武者竜。

 

「そこまでで御座るよ!、エリスモン!」

「ゥ"ーーーーーーーーー!?!?!?!!?」

 

そのまま妖獣の体に絡みつくと九つの尾を抑えながら鎧竜左大刃を口に突っ込んで、更には両腕に鎧竜右大刃を叩きつけた。

 

「ぬぬぬぬぬぬぅうううううう!!

華恋!、ひかり殿は頼んだ!」

「任されよ!、だよ!

行こう!、ひかりちゃん!!」

「2人共ありがとう!」

 

オウリュウモンがラセンモン・激昂モードの動きを封じている内にひかりは華恋を抱きBlossomBrightのワイヤーでパートナーの首周りへと乗り移る。

 

「エリスモン!、聞こえる!、ねぇ!?」

「ィーーーーーーーーー!!!!!!!!!

ォ"ォーーーーーーーーーーーー・・・!!?」

「やっぱり、エーちゃんはひかりちゃんを探してるんだよ!

もっと近くに行けばきっと !?」

「華恋!!」

「しまったぁ!!」

 

強引に押し込められた刃を吐き出し小さな餌に喰らいつかんとする妖獣。

 

「!!??

ゥゥーーーーーー!!、ァァゥーーー!!」

「え、エーちゃん?」

 

酷く怯えた眼差しな3対の目が捉えていたのは

 

自分の頭上で回転している緑色のキラめきだ。

 

「はぁ!、はぁ!、はぁーーー!

ありがとう!、純那ちゃん・・・!」

「こんなの、みんなの頑張りに比べたら全然ッ

それにしても、露崎さん

あなたエリスモンに何をしたの?

あんな状態でも見ただけで怖がるって・・・」

「あは、あはははっ」

 

まひるが全力で投擲したLove Judgementに

純那が翡翠弓の連射で起動修正と射程を伸ばしてくれたのである。

 

「・・・・・・・・・!、ふーーーっ」

「ーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

 

 

「エリスモン!!!!!!!!!!」

 

 

ラセンモン・激昂モードの動きが止まった隙に

ひかりがその鼻先に立ち、妖獣の咆哮にも負けない声を上げれば

 

 

「      ヒ ー  ?      」

「うんっ、うん!」

 

 

やっと、パートナーに届いた。

 

 

「ヒー、ダー

 

キラ キ デー ピカ  カーナー   

 

       ヨカ、ター・・・・・・・・・   」

 

 

すると

 

禍々しい形相にいつもの無垢な笑みが浮かび

 

 

ヒビが入る。

 

 

「エリスモン?、エリスモン!!」

「ヒー・・・ゴ・・・・・・ェー・・・・・・・・・」

「エーちゃん!!、エーちゃん!!」

「ならん!、ならんぞ!、エリスモン!

御主はスタァになるのだろう!?、なぁ!」

 

 

どれだけ叫んでもラセンモン・激昂モードの

 

エリスモンの崩壊は止まらない。

 

「待って!、ねぇ!!!、まって!!」

「ひかりちゃん!!

リュー君!、お願い!!」

「ッ、ぬああああああ!!」

 

消え行くパートナーの方へと飛ぶひかりを華恋はパートナーの体躯を使って追い掛けた。

 

「どう、なってるの?」

「・・・・・・・・・容量の、限界を越えていたんだ」

「!、ストラビモン!?」

「どれだけの範囲かはわからないけど

際限なく負の感情を取り込んだんだ無理もない

それに、暗黒のソウルは使えば代償を伴う

 

 

(そう、それは

 

 

オレの力も、同じだった・・・!!!

 

 

どうして、何で、今まで気づかなかった!?

 

 

このままじゃ、マヒルはッッッ)」

 

 

まひるの困惑の視線を受けながらストラビモンは体を震わせる。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ひかり、ちゃん・・・ッ」

「くぅううう!!、ぬううううううん"!!

拙者が!、拙者にもっと!、力があれば!

ぬぁあああああああああ!!!」

 

リュウダモンもまた後悔していた。

荒地の真ん中で涙を流す華恋に後ろから抱かれ

エリスモンを・・・エリスモンだったデジタマを無言で撫でるひかりを見て。

 

 

 

「(カワイソウ)」

 

 

 

「え?」

 

 

 

その光景を見ていたななの元に

 

 

 

「(カナシミ、ワカレ、ザセツ

 

ブタイショウジョヲクルシメルスベテノモノカラ

 

マモル?

 

マモレナカッタジャナイ)」

 

 

 

「!?」

 

 

 

どこからか声が・・・。

 

「(貴女ガ再演ヲ続ケテイレバ

 

コンナ悲劇ハ起キナカッタノニ・・・)」

 

「あ、ああ!」

 

ソレは他ならぬ彼女の中から聞こえてきた。

 

「(ひかりちゃんを悲しませたのは?

 

華恋ちゃんが消えてしまいそうになったのは?

 

まひるちゃんが

 

双葉ちゃんが

 

香子ちゃんが

 

クロちゃんが

 

真矢ちゃんが

 

純那ちゃんが

 

こんな異世界で傷ついてきたのは

 

一体、誰のせいだと思う?)」

 

「      わたしの   せい?   」

 

「(クスクスッ、よく出来ましたぁ♪

 

なら、これからどうすればいいと思う?

 

教えて、大場なな【私】の願い)」

 

 

 

「さいえ・・・、再 」

 

 

〔「ナナァ!!!、起きろ!!!」〕

〔「なな!、どうしたの!?

しっかりして!!、目を醒まして!!」〕

 

 

「!!

レオルモン?、純那ちゃん?」

 

 

甘い誘惑により禁断の果実に手を伸ばす寸前

 

パートナーと親友の必死な叫びが彼女に届く。

 

 

「(あーあ、ザンネン

もうちょっとだったのになー・・・)」

 

 

「あなた、誰!?」

 

いつの間にか他に誰も居なくなった荒地でななは輪と舞を抜刀。

 

「(まぁ、後は時間の問題だもの

それまではゆっくりさせて貰っちゃいます♪

はぁーーー♪、こんなに居心地が良い場所

初めてかも♪、うふふふふふふ!・・・・・・・・・そんな人間のパートナーがよりにもよってあいつなんて)」

「まさかあなたが居るのはッ、それなら!」

「(ダーメ)」

「・・・・・・・・・!?」

 

二刀を自分自身に突き立てようとした手が

 

彼女の意思に反して突如停止。

 

「この!!、このぉ!!、ぁぅ!?」

「(言ったじゃない、ゆっくりするって

だからそれまではこの事は忘れてて

大丈夫、心配はいらないわ

またすぐに会えるから♪、クスッ

 

 

クスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクス!)」

 

 

 

「ッ・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

脳に鈍い痺れが走ったかと思えば視界が暗転し

 

 

ななは崩れ落ちるように気を失うのであった。

 

 

 

「おやすみなさい、大場なな【私】

次に会う時には叶えて上げるから

 

私だけの永遠の舞台

 

ばなナイス♪」

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・う、ううんっ」

「なな!、良かった!」

「じゅんなちゃん?

あれ?、私・・・どうして・・・」

「わからないの?

レオルモンから急に貴女が倒れたって聞いて慌てて来てみたら酷く魘されてて

本当に心配したんだから!、あなたにまで何かあったら私、もうッ」

「純那ちゃん、ごめんね

私は大丈夫!、大丈夫だから!」

「・・・・・・・・・ケッ」

 

 

目覚めたパートナーが友と抱き合う様を見た仔獅子は鼻にシワを寄せ

 

 

黙ってその場を去るのであった・・・。

 

 

 

 

 

 




※エリスモンはデジタマに還りましたが、一度は究極体という高みへと到達したのでひかりちゃんのステータスは究極体に通用するモノになっております。


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敵は大場なな!? 這い寄る絶望シェイドモン

 

 

☆天界 分かたれし戦場

浮島停泊中デッカードラモン号、中央通路

 

 

天界での最初の夜を越えた舞台少女とそのパートナー達。

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

「華恋ちゃん!、リュウダモン

ひかりちゃんは、どう?」

「・・・・・・・・・ッ、!、!」

「あれから変わりはないで御座る・・・

エリスモンのデジタマを抱いたままで・・・

食事もとっていない様子・・・」

「そっか・・・・・・・・・ありがとう、2人共」

 

悲痛な表情でひかりの部屋から出てきた1人と1体にまひるは淡く微笑んだ。

 

「神楽さんの事も問題だけど

私達自身の事も考えなくちゃ

これから、どうすべきかを」

「どうするって決まってんジャン!

レイド帝国に勝つ!、だろ?」

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

「ん?、なんだよお前ら

エリスモンがああなってからずっと変ジャン」

「どうして、ワタクシ達がそうなったのか本当にわからないのデシテ?」

「?、??」

「!!、わからないならせめてその口を 」

「やめて、ルナモン

この子にだって知る権利はある筈よ」

「知る?、このアホ熊が?

理解出来るかどうかもわからないのに?」

「それでも、よ

ねぇ、ベアモン」

「なんだよークロ公まで、変な顔して・・・」

「あなた

あのエリスモンみたいになりたい?」

「ヤダ!」

「どうして?

あなた強くなりたいんじゃないの?」

「強くなってもあんなんウチヤダ!

絶対の絶対にならないジャン!」

「でも、嫌でもなるしかないのよ

私が絶望すれば」

「なら、お前が絶望しなきゃいいだけジャン」

「・・・・・・・・・出来れば、そうしたい、けど」

「!?、なんだよそれ!

何やる前から負けてんジャン!?

そんなんでテンドーに勝て テンドー?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「お、おい!

お前まで何だよ!?、何で戦う前から負けた奴の顔してんジャン!?

いつものすっげぇ強そうなテンドーになれよ!、なぁ!!」

「このッ、こいつ!

やはり何もわかってはいないデシテ!!」

「一旦落ち着こうルナモン!

仲間同士で争うのは良くない!」

「それ以上進化の心配が無い奴が余計な口出しをするなデシテ!!」

「!!」

「おい!!、お前今なんつった!?」

「双葉はん、こんなんただ小動物が当たり散らしてるだけやろ

一々付き合う義理はありまへんえ」

「ふ、フタバ・・・!

オレは大丈夫だッ!、大丈夫だから!」

「全然大丈夫じゃねぇだろ!?」

 

香子に制され、フレイモンに宥められても双葉はルナモンを睨むのをやめない。

 

「・・・・・・・・・」

「ストラビモン・・・」

 

いつもならばこういった場で最も口を挟む筈のパートナーが無言を貫く姿を心配そうに見やるまひる。

 

「暗黒のソウルによる進化

さながら暗黒進化って所かな、うん

舞台少女が負の感情に飲まれればボクらは否が応なく破壊と殺戮を繰り広げる災悪になる

 

 

ごめん、ワー爺

 

 

あんなに世話されてた癖に

やっぱり期待には答えられないみたいだ」

「ど、ドルモンや・・・!」

「きみみたいな扱い辛いひねくれモンを育ててた理由がそれだけだって本当に思ってるデス?」

「他にあったとしても、大部分がソレだ

じゃなければこんなに気の弱いワー爺が『明けの遠吠え』の長なんてやってないよ、うん」

「・・・・・・・・・はっ!、なんだよ、その湿気た面は?

ブン殴る気もしねぇな!、ああん?」

「ブイはん、あきまへんえ

まず突っ込まなあかんのは星見はんが絶望する前提で話進めてはる事やろ?」

「カオルコ、こいつを煽るのには手順があるんデス

それは一番最後に取っとかないとダメデスぅ」

「はぁー、なんや面倒くさい紫毛玉やなぁ」

「これでも大分マシになったんデスよ?、紫毛玉になって」

「そうゆう君はどうなんだよ!?

フタバに何かあればカオルコだってヒカリみたいになるかもしれないのに!!

どれだけボクらが必死に守ろうとしても!

守れないかも、しれないのにッ」

「ドルモン・・・」

 

自分の心すら定まっていない純那は傷心のドルモンにどんな言葉をかければいいのかわからない。

天界の過酷さを、暗黒進化の可能性を知った今

舞台少女もパートナーデジモンを動揺を隠せない中で、表面上平静を装っているのは香子とブイモンぐらいなモノ。

 

 

そして、彼女は

 

 

「・・・・・・・・・ッ・・・・・・・・・」

「!」

 

 

覚束ない足取りで中央通路を出ていく。

それに気づいたレオルモンは鼻にシワを寄せながら後に続くのであった。

 

「み、みんなピリピリなんだなー・・・」

「無理もねぇよ!

あのチビが、あんなんになって!」

「ドルモンの奴もすっかり自信無くしちまってる

せっかく、やる気になってくれたのに!」

「くっ!、こんな時こそ命を救われた恩を返さなくてはいけないというのに・・・!」

「仕方ありません、ここでは見回りもデッカードラモン号を動かす事も儘ならないのですから」

「まったく、余計な事考えてんじゃないっての!

あんたらにまで何かあったらそれこそあの子達がもたないからねぇ・・・」

「それはわかっています!

わかって、いますがッ

何故、自分達はこんなにも無力で 」

 

 

「クソッタレがァアアアアアア!!!」

 

 

『!!?』

 

 

「レオルモン!、どうしたで御座

ぬぁ!、これは!?」

「で、デッカードラモン号が斬られてる!?

まさか、ガイオウモンみたいなデジモンがまた」

「いや!、違う!

この切り口は内側から、それも2本の刀ッ

やったのはバナナチャンだ!!」

「は?、え、え・・・・・・・・・?」

「ジュンナ!!」

「ッ、ご、ごめ きゃあ!」「う"ん!?」

 

丸く斬り抜かれた壁の前に舞台少女とパートナー達が集まっていると

突如、純那とドルモンの首根っこが青くて逞しい腕により掴まれる。

 

「ったく!、急に何すんのかと思ったら!

いきなり飛び出すなんてらしくねぇな」

「しゃーないやん、天堂はんやクロはんまであんな調子なんやから

ここはうちが主役張らな」

「ついでに湿気たボッチを空気乾燥デスぅ」

「カオルコ!、エアロブイドラモン!

強いな、君達は」

 

3人と3体を乗せて斑模様の空をかっ飛ぶエアロブイドラモン。

 

「!、居たわ!!、なな!?」

「戦ってる?、相手は・・・レオルモン!?

何やってんだよ!?、あいつらまで!

くそ!、エアロブイドラモン!!

こっから投げろ!、後はボクが何とかするッ」

「!」

 

同胞の言葉を信じ全力で投げつければ地面にぶつかる寸前に紺色の獣竜へと進化。

翼を広げて落下の勢いを殺すとパートナーと共に、二刀と爪が激しくぶつかり合う舞台に飛び込む。

 

「やめてなな!、レオルモンも!!」

「・・・・・・・・・純、那、ちゃ

だめ、こな、いで おねがいッ」

「マヌケがァアアア!、クソッッッ!

どんだけオレサマは鈍っちまったんだァ!?

テメェのクセェ臭いを忘れちまうなんてなァ!

ええ?、戦場荒し!!」

「!!、戦場荒し!?

戦場荒しのシェイドモン!!!」

 

 

「戦場荒しだと!?

あの野郎、まだ生きてやがったのかよ!?」

「ぶ、ブイはん?

なんなんそのおどろおどろしい名前・・・?」

「レイド帝国が現れる前からのド悪党だ!

あいつのせいでッ俺の舎弟共が何体も!」

「消されたのか!?」

「それだけならまだマシだった!!

あいつは、形の無い影みたいなデジモンで

他の体に取り憑いて好き放題出来る!

しかもタチが悪い事に、取り憑かれてる間も意識があるときた!!

自分で自分の仲間を傷つけるのを見せつけて奴は心底楽しそうに嗤ってたんだよッッッ」

「なん、だよ!?、ソレ!!」

 

 

 

クス、ふふふ♪   懐かしいなぁ♪

 

いやっ、やめ、てぇ!」

 

 

『!?』

「ななぁ!!!

待ってて!、今助けるわ!」

「やめろジュンナ!

あいつはレイド帝国のデジモンじゃない!

君のキラめきが通用するかどうか・・・」

「でも!、あんなななを放っておけない!」

「落ち着けよ!!

いつもの君ならこんなのボクに言われるまでもなく自分で気づけるだろ!?」

「!!」

 

ドルガモンの怒声に

翡翠弓に矢をつがえたまま凍り付く純那。

 

「う!ぅぅあ"ぁぁあぁあっっ!!」

「ばなな!、しっかりしろ!

そんな卑怯な奴に負けんな!!」

「ブイはん!

そん時どうやって元に戻したん!?」

「・・・・・・・・・ッ」

「は?、ちょお待って まさか」

「消したん、デスぅううう!

それしか、方法がなかったからぁあああ!」

「そ、そんな!

それじゃナナはどうなるんだ!?」

 

エアロブイドラモンの悲痛な叫びに香子と双葉

フレイモンの顔色が真っ青に。

 

「み、んなぁあああ!!!

私から、はな、れて・・・はやく!   もうっ

 

 

はぁい♪、よく頑張りましたぁ【私】♪」

 

 

「ナナァ!、クソッタレがァアアア!!」

 

真正面に立つレオルモンは見た。

己のパートナーが浮かべる歪な笑みを。

 

「うーん、内観は最高なのに外観がちょっと・・・

私、白ってそんな好きじゃないのよねー」

「なな?、なな!

ねぇ、聞こえる!?、ななぁあああ!!!」

「なぁにぃ?、純那ちゃん♪」

「あなたじゃない!!!

ななは、本当のななをどこへやったの!?」

「ああ、あの子?

奥の方にしまっちゃったの♪

次、表に出る時は

守りたいみんなを自分の手でメチャクチャにした後になるかなー?

その時、どれだけ絶望してくれるのかなー?

ふふふ!、今からワクワクしちゃいます♪」

「やめてよ、やめなさいよッ

ななの顔で!!、声でそんな事言うの!!」

「あはははははは♪、純那ちゃん

その台詞、ありきたり過ぎだよー

 

もっと自分の言葉で話したらどう?」

 

「・・・・・・・・・!!!」

「《パワーメタルッッッ!!!》」

 

絶句するパートナーを乗せた獣竜は【なな】に向け力一杯鉄球を放った。

 

「もー!、危ないなぁ!

私は純那ちゃんとお喋りしたいだけなのに

邪魔しないでよ、気取り屋のケダモノが」

「黙れ、黙れ黙れ黙れ黙れだまれぇ!!!

それ以上ナナを穢すなシェイドモン!!!」

「私に向かってそういう事言っちゃうの?

なら、リクエストには答えなくっちゃ♪」

「「「ひっ!?」」」

 

怒りに満ちた攻撃をひらりと躱して

 

楽しげに指を鳴らすのと同時に彼女の影

 

真っ赤な目が大量に浮かぶ黒いナニカが蠢いて

 

白のレヴュー衣装を飲み込む。

 

「うんうん!、やっぱり私の衣装はこうでなくちゃ!

ばなナイス♪」

 

邪気たっぷりに無邪気を装い、クルクル回って新しい衣装を見せびらかす【なな】否、シェイドモン。

 

その姿は白い部分が艶の無い黒へと反転し

 

上掛けにはあの赤い目が所狭しと並んでいて

 

顔の上半分は黒と赤のおどろおどろしい仮面に

 

覆い隠されていた。

 

「ばなな!!?」

「か、れんはん・・・みなはん・・・

うち、どうしたらええの?」

「花柳さん!?」

「Qu'est-ce qui s'est passé !?」

「あの姿は、戦場荒しのシェイドモン!

まさかナナに取り憑いているのデシテ!?」

「だ、誰ジャンそいつ!?」

「誰だろうと構わない!

とっととバナナチャンから離れろ!!

グルルルルルルァアアア!!!」

「おのれ!、エリスモンに続いてなな殿まで!

御覚悟!!、戦場荒し!!」

「ガルムモン!、ヒシャリュウモン!、2人共落ち着いて!!

ばななちゃんを助けたいのはみんな一緒だから」

「あ、みんなやっと揃ったね!

じゃあ、始めましょうか♪」

 

ひかりを除く舞台少女とパートナー達が集まると

輪と舞を抜き放つシェイドモン。

 

 

「・・・・・・・・・!      ケッ」

 

 

キラめく2つの白刃を見たレオルモンは身を屈め見計らう

 

 

来るべき時を。

 

 

「こんなに素敵なお家を造ってくれたんだから

そのお礼にちゃあんと叶えてあげなくちゃ♪

大場なな【私】の願い、私だけの永遠の舞台」

「!!」

「テンドー!《ルナティックダンス!》」

「あははは♪、あなたのステップ単調過ぎ!

それで踊ってるつもりなの?」

「な!?、ぐぎぃいいい!!」

「クレシェモン・・・!」

「頂きにキラめく星は一つ

なら、近くに月なんてあったら邪魔だよね?

だから、私が消してあげる♪」

「ッ、大場ななぁあああ!!!」

「や、やめろマヤチャン!

アレはバナナチャンが言ってんじゃない!」

 

パートナーを害され柳眉を逆立てる真矢を獣化を解除したヴォルフモンが慌てて止めに入る。

 

「クレシェモン!、テンドー!

お前らどうしたんだよ!?

なんか、こう!、えっと!、いつもと違うジャン!!」

「・・・・・・・・・」

「クロ公も何か言えよ!

ウチじゃうまく言えねぇ!、言えねぇけど!

あんなんテンドーじゃねぇジャン!」

「そう、ね」

「!?、おい!!

なんなんだよお前ら揃いも揃って!!

もういいジャン!、ウチがあのバナナに勝つ!

んで!、いつものバナナにするジャン!!《笹パァ 」

「ワガママばっかり言ってクロちゃんを困らせないでくれる?」

「ァ?、ェ?・・・・・・・・・ぅ」

「!?、パンダモン!!」

「大変だったよね、クロちゃん・・・

こんな自分が勝つ事しか頭にない子の相手をして

でも、ほら!、これで大丈夫♪」

「ふざ!!!、けないで!!!」

「「はぁああああああ!!!」」

 

斬り伏せられ、足蹴にされた白黒熊を見た瞬間

クロディーヌは制止を振り切った真矢と並び

【なな】の眼前に距離を詰めた

 

 

「もう怖がらなくていいのよ

自分のせいでパートナーが消えちゃう事を」

 

 

「「   ぁ   !   」」

 

 

所で、構えた剣が震えた。

 

「クス♪、ふふっ!、あはははははは!!」

「「ぁぁぁあああ!!?」」

 

目を見開き、膠着する彼女達の表情を堪能した後

楽しげに嗤いながら両の刀を同時に振るって2人纏めて吹き飛ばすシェイドモン。

 

「はぁーーー♪、こんなに楽しいの初めてぇ♪」

「なんなの、なんなのよあなた!?

なんでそんな事!、そんな風に!?」

「言っても無駄だ・・・!

こいつは、こうやって幾つもの戦場を無作為にッ

遊び半分に荒らしてきたんだ!

苦しむ顔と不幸を楽しむ為だけに!」

「それはおまけだよー、名前ばかりの抑止力さん

メインはあくまでも取り憑いた相手の絶望♪

ふふふ!、今の【私】の顔ったら、もうっ

純那ちゃんに見せられないのが残念です!」

「見せられるモンなら見せてやればいいよ、うん」

「えーーー・・・それで挑発してるつもりなの?

これだから頭クロンデジゾイドって

あ、でもアルフォースブイドラモンの

自分で自分の取り巻きを消した後のみっともなく泣き喚く姿はとってもかわいかったと思います♪」

「!!!」

「あの時私を取り逃がさなければこんな事にはならなかったのに・・・

最速の聖騎士が聞いて呆れちゃうよねー、香子ちゃんもそう思わない?」

「これっぽっちも思いまへんえ」

「カオ、ルコ?」

「さっきからばななはんの体つこうて好き放題してはるけど

それって自分じゃなーんも出来んって言いふらしてるようなもんやないの?

なのに、さも自分が凄いみたいに見せびらかすやなんて

恥ずかしゅうて恥ずかしゅうて・・・

うちには到底真似出来ませんわー」

「ふぅん、流石香子ちゃん♪

どっかの元聖騎士なんかよりよっぽど挑発してるし頭も冴えてるよね!」

「くそッ!、気づかれてたのかよ!?」

「香子ちゃんの側に双葉ちゃんが居ないんだもの

それぐらい私にはすぐわかるわ♪」

 

一瞥すらせずDeterminaterを輪で受け止め

そのまま双葉の懐に潜り込むと、上掛けの紐目掛けて舞を突き出す。

 

「《ベビーサラマンダー!》」

「!、進化しないままで!?」

「だから戦えねぇって?

あたしの相棒見下すのも大概にしとけ!!」

「ぐぅう!」

 

赤毛の影から迸った炎の蛇にまとわりつかれたシェイドモンは豪快な一振りを避けるべくバックステップで後退。

 

「《カオルコアローーー!!!》」

「もうこれっきりの特別どすぅ!!!」

「えええ!?、ッ、受け止めるのは無理!

わかってよ【私】!!」

「「!」」

 

追撃として放たれた蒼竜による投擲を【なな】はぎこちない動作でしゃがむ事で避ける。

 

「ジュンナ!、今の見たか!?」

「ええ、ええ!

ななはまだ完全には取り込まれてない!

シェイドモンに抗ってる!、戦ってる!」

 

 

「だったらぁ!!」「《縦横車ぁ!!》」

 

 

僅かに希望が見えた途端

 

迷いを振り払って愛城華恋が相棒と飛び入り。

 

「香子殿!」

「おおきにリューはん、はっ!」

「ほらー、香子ちゃん大丈夫だったじゃない

もう!、本当に心配性なんだから・・・」

「それがばななだよ!、シェイドモン!!」 

「誰よりも優しく!、故に思い詰めてしまう!

迷惑をかけた拙者が言えた事ではないがな・・・」

 

戦場荒らしの周囲を包囲した武者竜の体に宙返りで着地し、再び舞い上がる桜色の花に合わせ赤い華もまた可憐に咲き乱れた。

 

「ヴォルフモン、私達も行こう

華恋ちゃん達と一緒に!」

「ばななを助ける為にも!

今はばななを倒さないとな!」

「マヒル、フタバチャン・・・・・・・・・だね☆

《ツヴァイズィーガー!!》」

「フタバ・・・!

ああ!、オレも覚悟を決めた!!

ナナを!、仲間を!、もう誰も!

これ以上犠牲にしない、覚悟をッ!!!

《バーニングサラマンダー!》捕らえろ!」

 

更にそこにまひる、ヴォルフモン

双葉、アグニモンまで加わると

 

「あはははははは!、みんなすごい!

【私】の事すっごく想ってくれてる!

でも、それでも【私】がみんなを想う気持ちは

もっと、もっと大きいんだよ?」

 

シェイドモンは仮面の下で目を細め

 

大場ななのキラめきの結晶を握り絞め

 

 

「舞台に実ったたわわな果実」

「「な!?」」

 

 

光の剣を炎の竜を容易く斬り裂き

 

 

「ええええええい!、わわ!」

「だけど、みんな柔らかだから」

「まひるちゃッ、きゃん!?」

「華恋!」

「誰かが守ってあげなくちゃ」

 

 

バトントワリングから繰り出される打撃をいなし

 

迫るサーベルを鎧にぶつけさせ

 

 

「99期生 大場なな 私が守るの

 

そう、何度でも

 

クス!、本当に本気で何度でもだったものね

 

【私】・・・」

 

 

どこか愛おしげに胸へと手をやるのであった。

 

 

「・・・・・・・・・ジュンナァ、ドルガモン」

「レオルモン?」

「こんな時になんだよ!?

大体、君パートナー放ってさっきから何 」

「頼みがある」

「え?」「うん?」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・デシ、テッ」

 

 

「あー!、もー!、どうなってん!?

なんでこんだけ攻めても倒せへんの!?」

「シェイドモンは取り憑いた相手の実力は勿論!

記憶まで完全に自分のモンにする、デス!」

「つまり、あたしらの手の内は丸裸って事かよ」

「それに、俺の時は50対1も軽くこなしてた!

多対一の経験は普通のデジモンと比べモンになんねぇ!、デスぅうううううう!」

「究極体すら手玉に取る成熟期とかさぁ!

オジサンもう勘弁して欲しい、なって!」

「うんうん♪

私もそろそろ進化したいって思ってた所なの」

「なら!、早くナナの体から出ていけばいい!

ニンゲンはオレ達デジモンのようには進化出来ないのだから!!」

「・・・・・・・・・クス♪、クスクスクスクス!

 

 

あははははははははははははははは!!

ぎゃははははははははははははははは!!」

 

 

「「ひ!?」」

「怯むでない華恋!、まひる殿!

おのれ!、戦場荒らしのシェイドモンめが!

なな殿の顔で下卑た笑いをするなぁ!!」

「だ、だってぇ・・・!、よりにもよってぇ!

クスクス!、ほんとなーんにも知らないんだぁ!

ぎひ!、ぎゃはははははははははははは♪」

「だから!、ばななの顔で!」

「下品な笑い方せんといて!」

 

見るに耐えない嗤いに対し怒りと共に振るわれるハルバードと薙刀。

 

 

「《ムーンナイトボム!!!》」

 

 

それらと同時に密かにシェイドモンの背後に回っていたレキスモンが催眠効果のある泡を放った。

 

 

「これならいいよね?   【私】♪」

 

 

「「な!?、わぷ!」」

 

え・・・・・・・・・?、は?」

 

 

完璧に技が決まったと思っていたのに

鉄仮面越しに見えたのは当たる寸前に

 

【なな】の姿が突如消え

 

全身全霊の《ムーンナイトボム》が香子と双葉に直撃するという悪夢のような光景で・・・。

 

「ねみ・・・ぃ、っ、や、べ! かおるこぉ」

「すやぴーーー・・・・・・・・・」

「寝るの早いデスぅううううう!!? あ」

「!、ブイモン!」

 

パートナーの意識が夢の世界へと導かれた為、空中で進化が解けた同胞を武将竜が受け止める。

 

「影に溶けて移動した、だとッ!?

そんな能力シェイドモンには 」

「はい♪、今までの私じゃ出来なかったけど

人間と融合する事で出来るようになったの

それこそ、あの時のまひるちゃんのように」

「!!!、ぅ、るあ・・・・・・・・・ぅああ!!」

 

狼狽するヴォルフモンの影より出現したシェイドモンはしなだれかかり耳元で甘く囁いて

 

「ありがとう、光の器さん☆」

「あ"」

「あなたのお陰よ、デジモンの私が☆」

「ぐ」

「人間の体に取り憑くのは☆」

「ぎ」

「決して不可能じゃないってわかったのは☆」

「ぅ、っ・・・・・・・・・」

 

砂糖菓子でも扱うかのような繊細な手つきで小太刀を使い、セントアメジストの一つ一つを

 

丁寧に丁寧に粉砕。

 

「ヴォルフモン!?、ストラビモン!!」

「はぁ、こんな簡単に壊れちゃうなんて・・・吠えるだけのワンちゃんのお世話する余裕なんて

まひるちゃんにはないのに、ね!」

「ッ!?、やめて!、もうやめてよ!

シェイドモン!、ばななちゃん!」

「ダーメ♪、やめないよ♪」

 

倒れ伏した仔人狼を狙う大太刀をメイスを振るって止めようとするが、影を出たり入ったりされ弄ばれるばかり。

 

「だから、早くこの子を連れて戻らないと

本当に消しちゃうよー?」

「ーーーーーー!!!、かれ、ちゃぁ!」

「大丈夫、大丈夫だから

まひるちゃんはストラビモンをお願い」

「ごめん!、ごめんね!!」

 

心身共に傷ついたパートナーを優しく抱き上げるとまひるは急いでデッカードラモン号へ。

 

「シェイドモン・・・!!!」

「なぉに?、華恋ちゃん♪

私をスタァライトしちゃうの?

ひかりちゃんがああなってもう出来ないかもしれないのに?」

「・・・・・・・・・ッ」

「【私】の再演さえ続いていれば

ひかりちゃんがこのデジタルワールドに来て

あんな想いしなくても良かったのに

それを変えてしまったのは、止めてしまったのは

だぁれ?」

「耳を貸すな華恋!!!」「デスぅうう!」

「!、リュー君!!、ブイモンも!?」

 

シェイドモンの口撃を遮ったのは

巨大な刀とその上から拳を振り回すブイモン。

 

「その仮面ぶっ壊してやらぁあああ!!

《ブンブンパンチ!!》」

「ふふふ♪、相変わらずかわいい!

そんなに昔の仲間の仇がとりたいの?

なら、今のパートナーはいらないのよね♪」

「あ!?」

「あやつ!、また影に!?」

「しまったデスぅ!、か、カオルコーーー!

 

 

 

って、言うと思ったか?、マヌケ野郎!!」

 

 

 

「は!?」

「《ブラフマシル!!!》」

 

影を使い、眠る香子へと忍び寄った【なな】を

 

待ち受けていたのは聖なる炎の大爆発。

 

「が!、ぎ!、ぐぅうう!!

な、んで?、双葉ちゃんは寝てる筈よ!?」

 

さっき言ったろ?

見下すのも、大概にしとけって・・・!!!」

 

 

「!!?」

 

ふらつきながらもDeterminaterを

しっかり握り、気合いで立っている双葉

 

彼女の全身から放たれるのは

 

今まさに口から炎を吐き出さんとする

 

竜を幻視させる程の闘気だ。

 

「(やっぱり

この場で一番警戒しなくちゃいけないのは

 

創世神との同調が進んでる双葉ちゃんか

 

まひるちゃんと同じで下界に居た時から兆候はあったけど、天界に来てデータの書き換えが目立ち始めてる)」

「火加減、間違えんなよ、相棒ッ」

「相棒こそ!、気合いを入れて耐えてくれ!

《ブラフマストラ!!》」

「(自分がその相棒に取り返しがつかない事してるって知ったら、この子

 

・・・・・・・・・やっぱり、やーめた♪、だって

 

二度も同じ遊びするのは勿体ないしツマラナイ

ん?、あは♪)」

 

 

〔(「ーッ!、ーーー!!!、!!?」)〕

 

 

炎竜の融合魔人による高熱弾の連射や同時に突き出される拳打のラッシュを掻い潜りながら戦場荒らしは胸の内で嗤いかける。

心の深奥にて自分の一部たる影の触手で顔の上半分以外を入念にくるんで棒立ちにさせた

 

宿主の精神に。

 

「(構ってあげられなくてごめんねー

もう少ししたら代わってあげるから♪

それまで我慢しててね【私】)」

〔(「!!、ーッ!?、~~~!!!」)〕

「(辛いよね・・・苦しいよね・・・

目を背けたいのに・・・目を閉じたいのに・・・

それすらも・・・私が・・・

出来ないようにしてあげたんだもの♪)」

〔「(!?、ッ、~!ー!~!・・・!)」〕

「(うふふふ!、オイシイなぁ

とってもオイシイよぉ、あなたの絶望♪)」

 

目に涙を浮かべながら激しく抵抗するななの顔を

 

シェイドモンは優しく愛撫する。

 

何せ、予期せぬトラブルにより手傷を負って以来

 

しかも、自分史上最高の住居兼玩具兼御馳走

 

このデジモンとしては気を使わざるおえない。

 

「(でも、進化するにはまだまだ足りないわ

かといって、やり過ぎると大場なな【私】が壊れちゃうから一匙の希望はあげないと

・・・・・・・・・どうしよう、今までで一番大変!

大変なのに

 

 

すっっっごく楽しい!!

 

 

タノシイタノシイタノシイタノシイタノシイ♪

 

 

今、私、とっても生きてるって感じがする!

 

 

本当にありがとう!、大場なな【私】!

 

 

こんなにやり甲斐のある遊び、初めて♪)」

 

 

全ては己の愉悦と快楽の為だけに。

 

 

いかに周囲の人間やデジモン達を壊さずいたぶり

この繊細で幼い心の宿主をより深く絶望させるか

楽しく頭を悩ませる戦場荒らし。

 

 

だからこそ、ソレに気づくのが遅れた。

 

 

自分の眼前を疾るワイヤーに

次の瞬間に迫るBlossomBrightの刃に。

 

「・・・・・・・・・!!!」

「!?、ひかり!、ちゃん!?

どうしてここにいるの!?

あなた、あんなに素敵に絶望してたのにッ」

「気安く名前を呼ばないで」

「チィ!、引き離せない!!

これじゃ剣も使えないし、影に入るのも!」

 

【なな】の体に密着し、その距離を維持することでひかりはこの小さな剣の利点を最大限に活かす。

 

「あ!、でも、これはこれでいいかも♪

ねぇねぇ!、ひかりちゃん!

どうして、この広い天界で戦場荒らしなんて呼ばれてる私がみんなを見つけられたと思う?

あなたのお陰なんだよ」

「・・・・・・・・・」

「だって、あんなすっごい事が起きてたんだもの

見に行きたくなるに決まってるじゃない♪

そしたら、私、【私】としちゃったの!

 

運命の出会い!!!

 

だから、ひかりちゃんには感謝 !?」

「だから何?」

 

 

「ひ、かり、ちゃん・・・?」

「なんと、冷たくて静かな闘気で御座るか

ひかり殿、御主・・・」

 

 

「私はあなたに興味なんてないけど

あの子がこれから産まれる世界に

あなたもレイド帝国も要らない

だから消えて、今すぐに」

「ーーーーーー!!!、何それ!?

私をこのデジタルワールドに産み出したのは!

 

あなた達、人間の暗くて薄汚い欲望なのに!

 

その人間のあなたが私を否定するの!?」

「それが私の贖罪、救世主として成すべき事

 

後」

 

「よ、避けきれな・・・!」

 

己の口撃も怒りも物ともせずに振るわれる冷酷無比な短剣を必死に身を捩って躱すシェイドモン。

 

「いつまでそいつの好きにさせておくつもり?

みんなを守るんじゃなかったの?、大場さん」

「!!

 

       ぁ  ぃ  ぁん・・・!

 

 

まだ出ちゃダメって言ったでしょ!!!」

「出るのはあなたの方・・・!

絶対に奪い返す!、私達の仲間を!

 

もう二度と失ったりしないッッッ!!!」

 

その動きが止まった瞬間

 

赤い目が蠢く中で唯一キラめく金のボタンを狙い

 

ひかりは全力でBlossomBrightを突き出した。

 

 

 

 

 

 

 

☆デッカードラモン号、ひかりの部屋(仮)

 

 

「あらあら・・・

 

 

クレールってのは負けん気が強くなきゃ

 

 

出来ない役なのかねぇ」

 

 

粉砕された窓の前で慣れた手つきで箒を使い

ガラスの破片を掃除するババモン。

 

 

「そんなモンをパートナーにするなんて

 

 

物好きなモンだよ   お互いに、さ」

 

 

そこに置き去りにされたデジタマは彼女の言葉に応えることはない。

 

 

「さてと

そっちはどうだい?、犬ッコロ共!」

「ば、ババモン様ぁ!」

「始祖様ー!、始祖さまぁあああ!!」

「目ぇ開けてくれよぉおおお!、なぁ!?」

「グルルの言う通りだぁあああ!!!」

「くっ!、薬草のストックが・・・もう!!」

「だったらせめて包帯巻いてやんな!

で?、マヒルとシーサモンは?」

「グズ!、みなのところへい"ぎま"じだ!」

「だろうね

ったく、これだから舞台少女って奴は・・・!

立ち止まるって事を知らないッ」

 

 

「・・・・・・・・・!」

「だ、大丈夫なんだなマヒルさん!

始祖様はとってもお強いデジモンだから!」

「うん、ありがとうシーサモン」

「!、見えてきたんだなーーー!!」

「ひかりちゃん!!」

 

 

シーサモンに乗ったまひるが舞台に舞い戻った時

 

「が・・・!、ぁ!」

「《ハンマーパンチ》なんてね♪

って、いったぁあああ~!?

ごめん!、ごめんね【私】!」

 

彼女の目にまず映ったのは

【なな】の拳がひかりの腹にメリ込む場面。

 

「ひかり殿ぉ!

華恋!、介抱を頼む!!」

「けほ!?、げほっ!!」

「ひかりちゃん!、息出来る!?、ねぇ!」

「あいつ!、俺の舎弟の技を!!」

「かつて取り憑いたデジモンの技すらも!、ナナの体で再現出来るというのか!?」

「でも、あんなムチャ何度もやられたら

ばなながもたねぇ!」

「う、うん・・・

出来れば私もこれ以上はやりたくないなって

だから、なるべくコレで行くね♪」

「!、シーサモン下がって!、早く!!」

「わ、わかったんだ なぁあああ!?」

「あははは♪、まひるちゃんってば

わざわざ弱点を連れてきてくれるなんて!」

「シーサモン!!!、だめぇえええ!!!」

「ぎひひ!」

 

シェイドモンはシーサモンの影から飛び出す

 

 

真の狙いは、このお荷物を庇いに入った

まひる【要注意人物】の上掛けを斬り飛ばす事

 

 

「《石敢当!!!!!!》」

「ッ!?、!!、うぎぁあ"あ"あ"!!?」

 

 

故に、渾身の必殺技がクリーンヒットした。

 

「・・・・・・・・・シェイドモンの言う通り

私は連れてきたよ、あなたの弱点!!」

「レイド帝国にはなんでか効かないけど!

お前みたいな奴にはおいらの技はバッチリ!

なんだなー!」

 

シーサモン

 

伝説の聖獣シーサーの姿をしたデジモン。

災いを払う力を持ち

邪悪なるものには絶大なパワーを発揮する。

 

 

「うん、ありがとう マヒルも、にーちゃんも

 

お陰でやっとそいつに隙が出来た!

 

《パワーメタルゥウウウ!!!》」

 

 

「ッッッ!?」

 

自分へと放たれた鉄球にシェイドモンは

 

「(防御、回避、ダメ、どっちも無理!

 

でも、待って・・・

 

白騎士の事がトラウマになってる隠士が

 

純那ちゃんから【私】を奪えるわけがない

 

なら、本当の狙いは!)」

 

 

「オラァァァアアアアアア!!!!!!」

 

 

 

ぎひひひ♪、ぎゃははははははははは!!!

 

やぁっとかぁ!?、百獣番長ーーー!!!」

 

 

聖なる力によるダメージの事も忘れ

 

本性剥き出しで

 

それに乗る因縁の相手たる仔獅子を迎撃。

 

「アアアアアアアアア!!!」

「見え!、見え!、だよぉおおお!!!」

 

【なな】に当たる寸前にレオルモンが踏み込んだ事で《パワーメタル》は彼女の足元に落下

 

この一連の流れを読んでいたシェイドモンは

 

自分へと襲いかかる牙にタイミングを合わせ

 

大太刀と小太刀を交差させる。

 

「アアアアアアアアア"ッッッ・・・!!!」

「!!?」

 

レオルモンはそれを真正面から受け止めた。

 

輪と舞、己のパートナーのキラめきを

 

 

顔の左半分に

 

 

深く、深く埋める事で・・・。

 

「!!、!!!?、ぉ、う、も?

お前ぇえええ!!

狙いは、コレかぁああああああ!!??

いやぁ、やだ!、やだやだやだぁああ!!」

 

刀越しの感触に最早取り返しがつかない事を悟ったなながシェイドモンの支配を振り切って絶叫する。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

友の悲痛な嘆きを耳にしながら純那は

ドルガモンの背の上で翡翠弓から矢を放ち

 

足元の鉄球に当てれば

 

あり得ない軌道で跳ね上がりななの手首に備わる

 

黄色い神機を射抜いた。

 

すると、そこから凄まじいキラめきが溢れだす。

 

 

「《クリティカル・・・バイト・・・!》

 

オラァアアアアアアアアア!!!!!!」

 

 

直後、顔の半分に十字を刻まれたレオルモンが吼え

 

 

大場ななの舞台へと飛び込むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「ナナの心に入ってシェイドモンを倒す!?

う、うん?、本当に出来るのか?、そんな事・・・」

「た、確かにエリスモンは神楽さんの記憶を見せられたけど」

「心も記憶もあいつの中に変わりはねぇ

入りさえすりゃ後はオレサマが何とかすらァ」

「ま、待ってよ!

どうすればそんな事出来るか私わから 」

「レイド帝国の奴がやれてテメェには無理かァ?

ブタイショージョってのはそんなモンかよ」

「・・・・・・・・・!!、言ってくれるじゃないッ

そう言うあなたこそ覚悟はあるの?

舞台少女、大場ななの全てを受け入れる覚悟が」

「アア"ン?、決まってンだろうがァ

 

 

ねぇよ、んなモン」

 

 

 

 

 




※戦場荒らしのシェイドモン
レイド帝国とは一切関係の無い野生の愉快犯。
他のデジモンに取り憑く能力をフル活用し、天界の各所にて誰彼構わず絶望を振り撒いていたのだが・・・


自身が企画立案し紅花番長の体を使って参加していた『番長デスマッチ』の最中、百獣番長により無理矢理引き摺り出された挙げ句かなりの手傷を負わされてしまう


以来、百獣番長への復讐を胸に長い年月を潜伏していた所



出会ってしまった、廻り会ってしまった



運命の相手に。


そんな彼女と『ハイブリッド』したことにより得たのは影を移動する能力。
これに舞台少女・大場ななのポテンシャルとシェイドモンが培った戦闘経験や精神攻撃が合わさり、99期生とそのパートナー達は翻弄される羽目になった。


・・・・・・・・・因みに、シェイドモンに取り憑かれた際のななの衣装は某セクシー系ジェネラルに比べればかなりマシである。


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不屈! 百獣番長バンチョーレオモン

みんな『が』大好き大場なな&レオルモンメイン回


 

 

 

☆『舞台少女・大場なな』精神世界

 

 

 

「!!?、ぐァ!、がはァッッッ!!!」

 

 

レオルモンは流されていた

 

 

「じゃァ、まァ、だァ!」

 

 

『舞台少女・大場なな』の全て

 

 

「失、せなァ!!」

 

 

幾度となく、何度となく

 

 

「オレサマがァ、用があんのはァアアア!」

 

 

折り返し、繰り返される

 

 

「テメェじゃねぇえええええ!!!」

 

 

再演の記憶に。

 

 

「      ケッ      」

 

 

ソレを抜けた先にあったのはあの地下劇場

 

・・・・・・・・・いや、正確には

 

記憶から形造られた大場ななの心象風景。

 

「んな所に居たのかァ?」

「・・・・・・・・・」

 

ステージの中央でボロボロのノートを抱え、横たわる制服姿のパートナーを半分欠けた視界で捉えたレオルモンが近づけば

 

「ダーメ♪、この子は誰にも渡さないよ

特にあなたにはね、百獣番長」

「ケッ、相変わらずだなァ戦場荒らし」

 

彼女と同じ顔と声で、彼女と全く異なる装いと表情をしたシェイドモンが現れた。

 

「大体、なんなのあなた?

運良く【私】のパートナーになったクセして

ただ偉そうにふんぞり返って好き放題言ってただけじゃない・・・

あ、でも!、それすらも受け入れちゃう真っ新な【私】ってかわいいよねー?

見てるだけで穢したくなっちゃいました♪」

「ゴタクはいい、来なァ」

「は?、まさか本当に私に勝つつもりなの?

究極体の、バンチョーレオモンだった時すら追い払うので精一杯だったのに?」

「テメェから来ないんならァ

オレサマから行くだけだァアアア!!」

「クス!、馬鹿じゃないの?」

「ァ・・・・・・・・・!」

「はい♪、おしまい♪」

 

真正面から襲いかかってきた隻眼の仔獅子を

 

手にした二刀で両断。

 

「邪魔モンが居なくなった今

これで私が、このシェイドモンこそが!!

【私】の、大場ななのパートナーだ!!

ぎひ!

 

ぎゃはははははははははははは!!!」

 

体から離れた首を足蹴にし、転がしながらデータが分解される様を喜悦の表情で眺め高笑いするシェイドモン。

 

 

【再演】

 

 

「へ?」

「ハァー・・・!、ハァー・・・!」

「なんで?、どうして?、いきてるの?」

「んなこたァ、オレサマが知るかァ!」

「!!」

「ガハァ!?」

 

 

【再演】

 

 

「嘘!?、確かに電脳核を貫いた筈なのにッ」

「オラァアアアアアア!!、ア"」

「これなら、どう!?」

 

 

【再演】

 

 

「アアアアアアアアア!!!」

「縦でもダメ!?、なんで!!」

「知るかってんだよ!!」

「ーーーーーー!!、だったらぁ!!!」

 

 

削除【再演】削除【再演】削除【再演】

 

 

削除 削除 削除 削除 削除

【再演】【再演】【再演】【再演】【再演】

削除 削除 削除 削除 削除

【再演】【再演】【再演】【再演】【再演】

削除 削除 削除 削除 削除

【再演】【再演】【再演】【再演】【再演】

 

 

削除【再演】削除【再演】削除【再演】・・・

 

 

 

シェイドモンは必死に二刀を振るい何度も何度も

様々な方法でレオルモンを削除するのだが即座に蘇る。

 

それはまるで終わりの見えない

 

 

生と死の輪舞曲【ロンド・ロンド・ロンド】。

 

 

「!!、これはあなたの仕業なの?

大場なな【私】!!!」

「・・・・・・・・・ッ・・・・・・・・・!」

「ケッ、通りで寝相が大人しいと思ったァ」

「なら、私自身の技であなたを消し去るだけ!

《フリーデスフォール!!》」

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん、で?」

「バカがァ、ここをどこだと思ってんだァ?

こいつん中でこいつの知らねぇモン

使えるワケがねぇだろうがァアアア!!!」

「ぐぎゃあ"あ"あ"ぁぁあああ!!?」

 

渾身の《レオクロー》に顔面を穿たれたシェイドモンはステージから転がり落ちていった。

 

「とっとと起きなァ、ジュンナ達が待ってんぞ」

「・・・・・・・・・ん、で?」

「アア"ン!?、なァに戦場荒らしと同じ声で同じ事言ってやがんだァ!?」

「だっ、て!

 

 

見たんでしょ全部!!

私がどんな舞台少女か!

私が、今まで何をやってきたのか・・・!

 

 

なのに、どうして?

なんで!!、そんな風に!!」

「テメェが人間界で何やってたってオレサマには

これっっっぽっちも関係ねぇなァ!

オレサマが用があんのはなァ

オレサマのナワバリに、デジタルワールドに

ズカズカ入り込んだ見てくれと口だけは立派なァ

 

弱っちいニンゲンだァ」

 

「!!、レオルモン・・・

でも、私、わたしぃ

あなたに、なにも、してないのに!

 

 

純那ちゃんやまひるちゃん、双葉ちゃんみたいに

寄り添ってない・・・!

 

 

真矢ちゃんやクロちゃん、香子ちゃんみたいに

引っ張ってない・・・!

 

 

華恋ちゃんやひかりちゃんみたいに

与えてない・・・!

 

 

なのに奪ったッッッ!!、奪っただけ!!!

 

なのに、なんで逃げなかったの?

 

あんな、何度も、何度も!!」

 

 

「知るかァーーーーーーーーー!!!!!」

 

 

「      ぇ      」

 

 

「んなモンはこっちから願い下げだっての!

 

オレサマはオレサマにしか興味ねぇからなァ!

 

 

だからァ!!!、あの時!!!

 

 

テメェの意思で前に出たクセにッ

 

途中で放り投げんのはキモチワリィ!!!

 

オレサマがテメェのパートナーな理由はァ

 

 

それだけだァ!!!」

 

 

「あ」

 

 

「オレサマはオレサマのやりたいようにやらァ!

 

だから、テメェもテメェで勝手にやってなァ!

 

守りたいモン守って、んでとっとと帰れ!!

 

そうすりゃオレサマもキモチよく昼寝出来らァ」

 

「そう、だよね・・・レオルモン・・・

 

いつも、寝たフリで・・・

 

いつも、何があってもいいようにしてた・・・

 

いつも、いつも、いつも、そうやって・・・

 

みんなを守って、私を、守ってくれてた!」

 

「ケッ、知らねぇなァんなこたァ」

 

 

「こうゆう時は素直に認めた方がいいなって思いまーす」

 

 

「「!」」

 

呆れ口調と共にステージに上がるシェイドモン。

 

「はぁーーー・・・、もー!、いたかったぁ!

女の子の、パートナーと同じ顔を全力で殴るとか

紅花番長から私を吸い出した時といい百獣番長ってば本当にデリカシーがないんだから」

「番長?、レオルモンが?」

「ケッ、んなこたァ忘れたなァ」

「ほら、またそうやって

ねぇ、【私】、今からでも遅くないと思うの

そんな乱暴モンよりも私をパートナーにしない?

私達、とっても相性が良いんだし♪」

「・・・・・・・・・ッ!!」

「そんな怖がらないで!、そんな顔されたら私!

 

 

すっごくいじめたくなっちゃうじゃない♪」

 

 

「チッ!!」

 

 

「いいよ!、好きなだけ再演すればいいわ!

【私】の心が折れるまで何度でも!!」

 

大太刀と小太刀を翼のように広げ迫り来る大場ななの写し身に

 

 

「させない・・・!!!」

 

 

「「な!?」」

 

 

立ち向かったのは他ならぬ大場なな自身だ。

 

 

「もう、これ以上

 

みんなを、私を守ってくれたパートナーを!

 

私のキラめきで傷つけさせたり、しない!」

 

 

「こ、のぉおおお・・・!

あれだけ絶望させたのに!、どうして!?

なんでまだそんなに動けるの!!?」

「おいナナァ!、テメェやめろ!

手ぇ突き抜けてんぞ!!!」

 

ボロボロのノートを足元に放り出して

日本刀を自分の手にメリ込ませながら握れば

 

 

黄色い0と1の粒子と化す。

 

 

「アタシ 再生産

だったよね?、華恋ちゃん・・・!」

 

 

すると、聖翔音楽学園の制服が分解され

 

白のレヴュー衣装と、赤い上掛けに。

 

そして、本来の持ち主の元に舞い戻った

 

大太刀・輪と小太刀・舞が

 

更には傷ついた手すら再生産されるのであった。

 

「99期生 大場なな・・・!」

「私が守るの?、何度でも?

そう言ってみんなから未来を奪ってたのに?

なーんて♪、今更私の口から言うまでもないか」

 

無手となったシェイドモンは自分の周囲に影の触手を何本も展開させる。

 

「もう一度、私の中に包んであげるよ【私】

もう絶対に離れられないように」

「シェイドモン

 

 

あなたってかわいそうなデジモンなんだね

 

 

どこにも居場所がなくて

 

 

奪って、傷つける事しか出来なくて・・・」

 

 

「うん!、そうなの!、ソノトオリ!

だからあなたが欲しくなっちゃいました♪

 

 

欲しくて欲しくて欲しくてホシクテホシクテ!

タマラナイ!!、たまらないの!!

 

 

本当にね、ホントニハジメテナンダ・・・

イツモナラ、こんなに追い込まれたらね

宿主を自分で消させて、その隙にニゲルンダ

でも、あなたは消せない、ケシタクナイッ」

「・・・・・・・・・ごめんね

それでも私はあなたとは一緒に居られない」

「謝らなくてもいいんだよ!

あなたの気持ちとか正直どうでもいいから!

百獣番長も言ってたでしょ?

カッテニヤッテロッテヨォ!!!」

「!?、むぐ!!」

「ナナァ!!」

 

だが、それはフェイク

本命はななの影から噴出させた触手による

先程と同様の、いやそれ以上の拘束。

 

 

ギリギリ・・・ッ   ギシギシギシィ!

 

 

「ゥ!?、!!、ーーーーーーッッ!!?」

「ごめん・・・ごめんね・・・

痛いよね・・・?、苦しいよね・・・?

でも、こうでもしないと今のあなたからは主導権が奪えないから・・・

例え精神世界でもこんな風に首を絞められるのは

とっても辛いと思うケド、ガマンガマン♪」

「オレサマを忘れんなァアアア!!!」

「忘れるかよバーーーカ!!!」

 

パートナーへと駆け寄らんとするレオルモンにシェイドモンは敵意を剥き出しにする。

 

「クソ!、ッタレ!、がァ!」

「クソッタレはどっちだ!?

ただでさえ、キラキラキラキラしてんのに!

その上、舞台少女のキラめきまで物にして!

こっちはドロドログチャグチャで地べた這いずり回った薄汚いモンの塊なのに!

こんな私を産み出した人間なんて大っ嫌いよ!

 

ダイッ、キライ、ダッタノニ」

 

「!、ーーーッ、?」

「アン?」

 

影の触手によるラッシュを放ちながら

戦場荒らしは足元のボロボロなノートを拾い上げ

 

今の自分と同じ顔をした舞台少女にすり寄った。

 

「なのに、ずっと追い求めてた

ね、私達ってオニアイデショ?」

「・・・・・・、ぅ・・・・・・・・・・・・」

「ナナァ!!、おいテメェ目ぇ開けろ!!」

「開けなくていい、もう頑張らなくていい

あなたはみんなの為にずっと頑張ってきたから

これからはゆっくり休んでいいんだよ

ワタシガ、アナタヲ、マモルカラ

 

 

ナナ

 

 

外はこんなにキラキラキラキラナノニ

 

中は真っ暗な絶望でイッパイイッパイナ

 

ヤット、ヤット!、見つけられた私の居場所ッ

 

ワタシノ、スタァライト・・・!」

 

 

まるで、母親に甘える子供みたいに。

 

 

「      !!      」

 

「ァ」

 

 

それを手にしたノートごと断じるのは

 

黒を突き破って出てきた2つの白刃。

 

「プハ!、えほ!、けほっけほっ!

 

ハァーハァーハァーハァー・・・!!!

 

まひるちゃんのときも、だけど!

忘れないでよ!、シェイドモン!

私達は人間だけど、舞台少女だって事!」

「・・・・・・・・・忘れたつもりはないんだけど

ドウシテモ、ネ!」

 

紙片が舞う中で荒い呼吸を繰り返し神機から黄色いソウルとキラめき漲らせるななに

シェイドモンは泣き笑いのような顔で応え

もう一度、彼女の影から触手をいくつも伸ばす。

 

「同じ事の繰り返しには慣れてるの!

 

知ってるでしょ?、【私】!!!」 

 

「!!」

 

洗練された二刀流で次々に迫る戒めを細切れにしながら己の写し身へと踏み込めば

 

「はい♪、勿論知ってまーす!

でも、こっちはどうかな?」

「がはァ!!」

「!?、レオルモン!」

「動かないで、幾らここでは再演できるからって

パートナーの残った目を自分の手で抉られるのは見たくないでしょ?、【私】」

「!!」

 

寸前に仔獅子の影へと移動されてしまった。

 

「オレサマの事なんざ気にしてんじゃねぇ!

とっととこいつを追い出せナナァアアア!」

「そんなの!、出来るワケないよ!

でしょ?、優しいみんなのばななさん♪」

「・・・・・・・・・ッ」

「ああぁっ!、いいよぉその顔ぉう!

とっても素敵でオイシソウな絶望の表情!!

って、イケナイイケナイ私ったら♪

イケナイから、そのイケナイ手を両方共

キリオトソッカ?、ナーナ♪」

「クソ!、放せ!、テメェエエエ!!

 

アン?」

 

影により頭以外をくるまれ、シェイドモンに馬乗りにされた状態で暴れていたレオルモンの右目が捉えたのは

 

 

自分達の周囲を舞うボロボロな紙片の群れ

 

 

そこに黄色く刻まれた、この世界の文字。

 

 

「ケッ!、言ったろうがァ

ここには、デジタルワールドにはァ

 

スタァライトなんざねぇって

 

なのに、こんなモンに

オレサマ達の名前、書いてんじゃねぇよ!」

 

「だって、仕方ないじゃない・・・!

 

 

欲しくなっちゃったんだもん、私の舞台に

 

 

この大変な世界でいつだって全力で

眩しいぐらいに、本気で生きてるみんながッ

 

 

でも、それだけじゃ

 

 

まだ、足りない! まだ、届かない!!!」

 

 

「「!?」」

 

 

ななは眼前に舞い降りた紙片の一枚に

 

大太刀を振るって、『ル』を削り

 

小太刀で、この世界の文字で、書き加える

 

 

『バンチョー』、番長と。

 

 

「ギヒャ!?」

「がァア"ア"ア"アアアァアアア!!??」

 

すると、大量の紙片が黄色い0と1の粒子と化し

 

濁流のようにレオルモンへと殺到。

 

「こ、れ、は・・・まさか マサカ!!!」

 

吹き飛ばされ、ステージの隅にしがみつき

流されまいとしていたシェイドモンは見た。

 

 

「(こいつは!、ここに入った時と同じッ

 

いやァ、それ以上に重っ苦しいなァ・・・!)

 

ケッ、上等だァ、ナナァ

 

この喧嘩ァ受けて立ってやらァアアア!!」

 

「うん、信じてるよレオルモン

 

あなたは、私のパートナーは!

 

私の再演なんか眼中にないって!!」

 

 

膨大な量の情報に決して屈さず、決して倒れず

 

爪を、牙を立てて一歩も引かずに歯向かっていた

 

仔獅子の姿が筋骨隆々なモノへと変わっていき

 

学生服によく似た黒い衣装を纏い

 

更には白いタテガミの上に同じ色の帽子を乗せ

 

二足で立ち上がるのを。

 

「オラァアアアアアア!!!」

「百獣、番長、バンチョーレオモン!!!」

「ありがとう、シェイドモン

あなたのお陰でわかったんだよ?

この物語、私達の舞台でのこの子の本当の役が」

「ッ、あなたのお喋りが移っちゃったから」

「そっか、そうだったんだね

でも、それももう終わりにしましょ?」

「オ、ワリ?

マダ、私達は出会ったバカリナノニ?

ヤット、私達の物語がハジマッタノニ?

 

 

いや、いやだ!、イヤダイヤダイヤダイヤダ!

 

 

オワラセタクナンテナイィイイイ!!!

アナタダッテ!、ソウダッタデショ!?

ナノニ!、ナノニィイイイイイイ!!!」

「!」

「やァっと本当の姿になりやがったなァ!」

「ウルッッッセェエエエエエエ!!!

コッチダッテナァ!!、コンナスガタ!!

 

 

ナナニッ、ミセタクナカッタノニィ・・・!

 

 

オマエガ!!、ソウナッタイジョウハ!!

モウ!!、アソンデラレナイッッッ!!!

ムリヤリニデモ!!、ナナノナカヲ!!

 

 

ワタシデ、シェイドモンデ、ミタス!!!」

 

 

「!?、ぐぅううう!!、ぁぁあ!!?」

 

シェイドモンはななの写し身をかなぐり捨て

本来の赤い目が幾つも浮かぶ黒い影になると

彼女の心象風景たる地下劇場の汚染を開始。

 

「ゴメン・・・ゴメンネ・・・ナナ・・・

デモ・・・コウシナイト・・・

アナタヲ・・・マモレナイ・・・!

ダカラ・・・ユルシテクレルヨネ・・・?

ダッテ、アナタハイツモソウイッテ

 

 

再演シテタンダカラサァ?

ギャハハハハハハハハハハハハ!!!!!」

 

 

「テメェ!!!

《フラッシュ!、バンチョーパンチ!!》」

「ギヒャァアアア!?・・・・・・・・・ギヒ♪

ギャハハハハハハハハハ!!!

ムダダヨォ!、ムダムダムダムダムダムダァ!

ココヲドコダトオモッテンダァ~~~?」

「ア"ァン!?」

「ぅ、くぁぅっ!」

 

バンチョーレオモンの気合の入った拳は確かにシェイドモンを貫いたのだが、その穴からすぐに影が溢れ出して舞台を穢していく。

 

「クリカエシテキタ再演ノナカデ

ミンナノオモイヲ、ダレヨリモシリナガラ

フミニジリツヅケタ、後悔

ソシテ、コレカラサキ

ジブンノシラナイミライヘノ、不安

 

アアァッ、ナンテ・・・!

アマクテ、ヤワラカクテ、オイシインダロウ

 

 

ナナノ絶望ハ!!

 

 

イクラデモ、タベラレル!

ナノニ、イクラデモ、アフレデル!

ダカラ、イクラデモ、チカラガミナギル!」

「ケッ、オヤジの言ってた無限湧きって奴かァ?

テメェほんとにめんどくせぇなァー」

「ご、めん、ね・・・ッ」

 

ジワジワと精神を汚染される感覚に膝を震わせながら舞台少女は堪えていた。

 

「ギャハハハ!、モウアキラメロヨー、ナーナ♪

ジブンガイチバンヨクワカッテルダロ?

コノ絶望ハケセナイッテ 」

 

 

「消さないよ」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハ?」

 

 

「消したりなんか、しない

あなたにあげたりなんか、しない!

だって、それは私に必要なモノだもの

もっと良いモノに、もっと良い舞台にする為にッ

 

 

だからァアアアアアアアアア!!!!!!」

 

 

「ヒィッ!?」

 

しっかりと両足に力を入れて

しっかりと両手に握り締めた

 

大太刀・輪と小太刀・舞越しに

シェイドモンが見たのは彼女に似つかわしくない

 

手負いの獅子の如き狂暴な形相。

 

「返してシェイドモン!!!

私は!!、全部!!、持っていくの!!!」

「だとよ」

 

吼え猛るななの前にバンチョーレオモンが差し出すのは傷だらけの武骨な刀身。

 

「シ、ラナイ、シラナイシラナイ!!!

コンナッ、コンナナナ、シラナイ!!!

マタダ!、マタオマエハソウヤッテェエエエ!

 

シェイドモンノジャマヲーーーーーー!!」

 

「アァン?、何言ってんだァ?

この甘ったれがキレてんのはなァ

テメェがあんだけおちょくったからだろうがァ

大体なァ

オレサマがテメェの邪魔をしてんじゃねぇ」

 

重なり合った3つの刃がゆっくりと振り上げられ

 

「テメェがァ

オレサマの前を塞いで邪魔してんだろうがァ

だからァ、食い破る!」

「食らい尽くす!」

 

 

「「それだけだァッッッ!!!」」

 

 

同時に振り下ろされた

 

 

「「《獅子!!!、羅王漸!!!》」」

 

 

「      !?      」

 

 

それらが放つ眩く輝く黄色いソウルの斬撃は

 

 

 

ガォオオオオオオオオオオオオン!!!!!

 

 

 

シェイドモンに牙を剥いて襲い掛かった。

 

 

「ァ"ァァア"アアァアアア"!!!???」

 

 

ななとバンチョーレオモンの想いの結晶たる隻眼の獅子を象ったオーラが舞台に落ちた影を荒々しく

 

何一つ取り零さずに食らっていく。

 

 

 

ナ、ナ、ァ・・・   !

 

 

 

ドウ

 

 

 

 

どうか、あの2人をお願い、ね?」

 

 

「え?」「アン?」

 

 

退場間際、戦場荒らしと呼ばれたデジモンは

 

 

「ちゃんと、守ってあげて

 

 

でないと、きっと、あなたは今よりももっと

 

 

絶望、する・・・から・・・」

 

 

「シェイドモン!!、どういう事!?

2人って誰と誰なの!?」

 

 

甘く 優しく

 

 

「それ、は、それは!

 

 

オシエテアーゲナイ♪

 

 

ミンナマモレバイイダケダロ?

 

 

マモレルモンナラノハナシダケドネーーー!

 

 

クスッ!、クスクスクスクスクスクス!!

 

 

ギヒヒヒ!、ギャハッ!

ギャハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

 

 

「ッッッ!!、テッメェェエエエ!!!」

 

 

 

重たい呪い【餞別】を残すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

☆天界 分かたれし戦場

 

 

「だい、じょうぶ・・・なのよね・・・?」

「う、うん・・・うん!

レオルモンを信じようッ」

 

手首に食らいついたまま、食らいつかれたまま

 

制止している1人と1体をドルガモンと並んで

 

見守るのは星見純那。

 

「ばななぁーーー!!」

「ばななちゃん!!」

「大場さん・・・」

「レオルモン!、御主ならば

必ずやなな殿を救えるで御座る!!」

「ああ!、オレ達全員が!

そう信じている!、だから!、頑張れ!!」

「なんだなー!」

「おい!、いい加減起きろ香子!!!」

「むにゃぁ・・・・・・あとさんじっぷん・・・・・・」

「いつまで寝てるデスぅうううううう!?

フタバはもう眠気なんてとっくの昔にぶっ飛ばしてんのに!、デスぅうううううう!」

 

他の舞台少女やデジモン達も固唾を飲む中で

 

 

 

ガォオオオオオオオオオオオオン!!!!!

 

 

 

『!?』

 

黄色の神機が獅子の咆哮を上げ

 

星形の画面を囲うようにタテガミの意匠が加わり

 

 

「舞台に落ちた果実がひとつ

 

中身はとっても柔らかだから

 

すぐ傷つくし、崩れちゃう・・・」

 

 

十字傷が描かれたボロボロなフレンジが揺れる

 

黄色い幕の下で背中合わせで並び立つのは

 

二刀を手にした白い衣装を纏う舞台少女と

 

 

「だったらァこのオレサマ、不屈の獅子!

 

バンチョーレオモンが受け止めらァ!」

 

 

黒い衣装を羽織り、顔の左半分を帽子で隠す

 

傷だらけの刀を持った筋骨隆々な獅子獣人。

 

 

「・・・・・・・・・何度でも?」

「アア、何度でも   だァ!!!」

「ぁ」

 

 

百獣番長・バンチョーレオモンが乱暴に幕を払い除けると、そこにあったのは

 

 

己のパートナーと繋がる星々の絆が

 

 

目に涙をいっぱいためて駆け寄ってくる光景。

 

 

「ななぁあああ!!!、な、なぁ!!!」

「お"がえ"り"ぃ"ばな"な"ぁあああ!!!」

「ばななちゃん!!!、ばななちゃぁんっ

ほんとにほんもののばななちゃんだぁ!!」

「みんな・・・・ごめんッ・・・私・・・わたし・・・!」

「あやまんのなし!、グスッ!

どうせなら、かおるこがおきてっときに!

してくれよぉ!!!、ばななぁ!!!」

 

 

「「お"お"お"お"お"お"お"お"お"ん"んん!!

よ"がっだぁ"ぁあああああああああ!!!

こんどは、こんどこそはぁあああ!!!」」

 

 

「・・・・・・・・・ヒカリ、ほんっとにごめんデスぅ

竜族を代表して空気読めないこいつらの分ブイが謝るデスぅ」

「大丈夫、気にしないで

それにきっと大場さんが元に戻った事

あの子も、エリスモンも

喜んでくれると思うから」

「ヒカ 」

「むにゃーーー・・・・・・・・・ん・・・・・・・・・」

「カオルコォーーーーーー!!!

今!、ブイ!、珍しく!、シリアス!、してる!

所!、デスぅうううううう!!!」

 

 

パンパンパンパンパンパンパンパン!!!!

パパパパパパパパパパパパンッ!!!!!

 

 

「・・・・・・・・・起きた時、花柳さんに怒られても

私知らないからね?」

 

 

「そ、そうなんだなー!

ナナさんが元に戻ったって!

リーダー達に報せないとなんだなー!

アゥン!、アゥン!、アゥーーーン!!」

 

 

オオオオオオゥーーー・・・・ン!!!!!!

 

 

アォウ! ワォーーーゥッ!!!

 

 

「ッ、ストラビモン目を醒ましたの!?」

「グズン!、よかったね!、まひるちゃん!

・・・・・・・・・あれ?」

 

 

「バナナーーー!!!、バナナバナナバナナ!

バナナジャン!、いつものふわふわバナナ!

バナナバナナバナナーーーーーー!!!」

 

 

『え"!?』

「ケッ」

「パ、パンダモン・・・怪我、大丈夫?」

「斬られた所と蹴られた所メチャクチャいてぇ!

いてぇけどウチ平気!、全然平気ジャン!」

「なら、黙ってなよ、うん

後、今ジュンナ達はねのけようとした事

クロディーヌに言いつけるからな!」

「お!、そうだ!、そうジャン!

クロ公!、クロ公ーーーーーー!!

ほらバナナ!、バナナがバナナになった!

バナナッッッ!!!!!!」

「テメェは何を言ってんだァ?」

「ば、バンチョーレオモン

そろそろパンダモンの頭から手を

 

 

クロちゃん?」

 

 

「      Où・・・?      」

 

 

『?』

 

 

「Où・・・est・・・ma・・・Maya?」

 

 

「は?、テンドーどこいったって?

 

 

あーーー!!?、居ねぇジャン!!?

 

 

テンドーも!!!、レキスモンも!!!」

 

 

『ッッッ!!!???』

 

 

クロディーヌが俯きがちに呟いた指摘により

ななを取り戻した事を喜んでいた

舞台少女とデジモン達の表情が凍りつく。

 

「クソッタレ!、戦場荒らしが言ってたのはこうゆう事かァ!!」

「な、ちょ、まって、待ってよ!!!

やっと、なながもどったのにッ

今度は天堂さん!?、いい加減にして!!」

「ジュンナッ」

「ってか、あいつらいつから居ねぇんだ!?

あたしらに泡ぶつけた後からか!?」

「・・・・・・・・・ひかりちゃんが来た時までは

確かに真矢ちゃんもレキスモンも居たわ」

「大場さん?」

「わ、わかるのばななちゃん!?」

「シェイドモン、目はいっぱいあったから

みんなの事、全部見てたの

・・・・・・・・・私はそれをずっと見せられてたから」

「ばななッ

 

 

!!、クロちゃん!!?」

 

 

「Maya? Maya!? 天堂真矢ッッッ!!!

 

どこよ?、どこにいったのよッ!!?

 

笑えない冗談はやめなさいってば!!!

 

やめ、て、よ・・・ぉ・・・ぅ・・・

 

まやっ、まやぁああああああ!!!!!!」

 

 

「お、おいクロ公

 

ソレ

 

あの時のヒカリと一緒ジャン?」

 

 

「いけないッ!!、西條さん!!」

「そ、そんなッ・・・これでは・・・

パンダモンが、ベアモンが!

エリスモンと、同じように

拙者は、せっしゃは、また」

「!!、シーサモン!!!

君の力を貸してくれ!!!

一か八か!、オレが太陽となって!!

君の聖なる力を増幅させてクロディーヌの暗黒のソウルを祓う!!!」

「わ、わかったんだなーーー!!!」

 

 

「クロ公・・・

 

ウチ、言ったよな?

 

強くなってもあんなんヤダって

 

絶対の絶対にならないって!!!

 

なぁ? なぁ!!?」

 

 

 

「      Ma Maya・・・     」

 

 

 

パンダモンの、パートナーの声にも応えずに

 

 

西條クロディーヌは天堂真矢の影を追い続け

 

 

神機から、仄暗い橙色のソウルを

 

 

地に落としていくのであった・・・。

 

 

 

 

 




※ばななのバンチョーレオモンには原作のイラストにある他の傷はありません
顔の左半分を目ごと潰した十字傷のみです
この傷は彼女のキラめきがデータの深部にまで到達している為、例え転生しても残り続けます


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月光のポジション・ゼロ This is 天堂真矢!

月は自分だけじゃ光れない

だけど、この世界にもう半身と呼べる日は居ない

だから、星を代用してみたけど

このトップスタァ主張が強すぎる


☆天界

 

 

神々のコロッセオ

 

 

「ここは」

 

 

その闘技場の中心で兎獣人レキスモンが佇んでいると

 

「君はあまり来る機会がなかったとはいえ

やはり懐かしいかい?、月光のディアナモン」

「!、十二の神々の主神

雷霆のユピテルモン、デシテ?」

「フッ、衰えたとはいえ流石にこれだけ近づけばわかるか

だが、今はアイギオテュースモンなのだよ

そう、今の所は」

 

前方から下半身は有蹄類、腕と胴体は竜の鱗を思わせる外殻に包まれ、長い白髪の頭頂部から3本の角を生やした亜人・アイギオテュースモンが歩み出てきた。

 

「・・・・・・・・・テンドーをどこへやった?」

「フム、ワザワザこの私自ら神域に招いたというのにその言い草とは

随分とあのニンゲンに肩入れしているじゃないか

十二の神々の中で最も冷酷だった君らしくない

まぁ、それはあの無様な戦いを見れば一目瞭然か

戦場荒らしと遭遇した際は宿主諸共に即刻削除

それが困難な場合は優先順位の低いモンを囮にし撤退するのが最善じゃなかったか?

なのに、自分から矢面に立って手傷を負い

あまつ、宿主に下手な温情をかけて戦力を減らすなんて呆れて物も言えないのだよ・・・」

「ワタクシの失態を詰る為だけに無理矢理引っ張りこんだのデシテ?

不用意にゲートを開けばそこからレイド帝国の侵入を許しかねないというのにッ」

「勿論、本題は別にあるのだよ

 

 

ユノモン」

 

 

「はい!!!、ユピテルモン様ぁん!!!」

 

 

「!!?」

 

無人の闘技場に響き渡る甘ったるい声にレキスモンが肩を震わせながら振り向くと

 

「テン、ドー・・・!」

「・・・・・・・・・ッ」

「あらぁん、私には何の挨拶もないのぉん?

まぁん、イイケドねぇん

私だってあなたに興味はないものぉん

ユピテルモン様ぁん、お連れしましたぁん」

「ありがとう、愛しの君

すまないね、こんな雑事をさせてしまって

だが、万が一にもそのニンゲンに逃げられてしまっては私はとても困ってしまうんだ

そんな大事な事を任せられるのは君しか居ない」

「あっ!!!、はぁあああんっ!!!

勿体ないお言葉ですぅうううんんん!!!」

「うっ」

 

観客席では女性型の究極体デジモン・神の一柱、ユノモンが歓喜に打ち震えながら真矢の首筋を

 

手首に備わる刃でなぞっていた。

 

「ユピテルモン!!!、貴様ッッッ!!!」

「怒らないでくれ、知っているだろう?

ユノモンはいつでも私の為に全力を尽くしてくれる事を

だからこそ、この手の加減が難しいのだよ」

「ならばあの剣山をとっとと引っ込めろ!

貴様が用があるのはワタクシだろう!?

テンドーはなんの関係もない!!」

「それがあるのだよ、私がこのデジタルワールドに蔓延する歪みを正す

その為にも本来の力を早急に取り戻すのには君達がどちらも必要だ

だからこそ、多少のリスクを犯してでもこの神域へと招いたのだよ」

「!、まさか貴様!

テンドーを使って進化するつもりデシテ?」

「ああ、ユノモンに手伝って貰って信者を数百程

【ロード】したのだがね

どうやら、現在のデジタルワールドではその方法では今の姿までが限界らしいのだよ」

「ッ、止めるモンは居なかったのか!?」

「あらぁん?

止める必要がどこにありますのぉん?

ンフフ!、愛らしかったですわぁん!

私のぉん!!!、手ずからぁん!!!

信者達を【ロード】しているぅん!!!

ユピテルモン様の幼年期ぃん!!!」

「ぐ!、う!」

「疼くな!、悶えるな!

それが無理ならテンドーから離れろ!!」

「あらぁん、私だってユピテルモン様と離れてしまっているのは不本意なのよぉん?

はぁんっ!、このニンゲンが決して逃げられないようにさえなればー

 

例えばー、何をしても起きれないぐらいにー

深く眠ってくれさえすればー

どこかの誰かさんがそんな技を使ってくれたらー

 

今すぐにでもユピテルモン様のお側に行けるのにぃん!、残念だわぁん!!」

「!、・・・・・・・・・《ムーンナイト、ボム》」

「!?、レキスモン!、うぁ!!」

「邪魔デシテ、ニンゲン

この場はワタクシの舞台だ、貴様の出番は無い」

「る、なも・・・・・・・・・・・・んっ・・・」

 

グローブから放たれた泡が舞台少女の全身をすっぽりと包み込むと彼女の目は瞬く間に虚ろになり、瞼が閉じていく・・・。

 

「これで満足デシテ?」

「ああ、お陰で話し合いに集中出来るのだよ

おいで、愛しの君」

「はい!!!、ユピテルモン様ぁん!!!」

 

進化が解ける前に《ムーンナイトボム》を闘技場の祭壇へと移動させれば退化と同時に弾け

 

中に入っていた真矢の体は力なく落ちていった。

 

「テンドーだったか?

現在あのニンゲンと契約しているのは君

ならば、私が君を【ロード】すれば

契約そのものを引き継げるだろう?」

「ニンゲンとの契約には不明な点が多いデシテ、そう上手くいく保証はどこにも 」

「だとしてもぉん、一刻も早くゴミ共を殲滅しユピテルモン様との時間を育まなければいけませんものぉん

その為にやれる事は全てすべきではぁん?

何より、愛らしいユピテルモンも勿論素敵ですが

やはり、あの凛々しい御姿の方が私と

 

 

ンフフフフフフフフフフフフ!!!!!!」

 

 

「まぁ、そういう事なのだよ」

「・・・・・・・・・貴様らは相変わらずデシテ」

 

すり寄るユノモンのあちこちに触れるアイギオテュースモンにルナモンが向ける眼差しは酷く冷たい。

 

「何より、ニンゲンは有益だが危険な存在だ

君の手には余る、いや実際余っていたか?

もうあのような事が起こらないように私がこの手で管理しなければならないのだよ

 

 

全ては

 

このデジタルワールドの運行が円滑に行われ

 

その中で愛しい君と過ごす為にね」

 

 

「あああん!!!、あっはぁあああん!!!

 

 

そういう訳よぉん、ディアナモン!!」

 

 

「!?」

 

 

歓喜に震えていた貞節の神は供物たる小動物目掛けて刃を突き出す。

 

「くっ・・・!」

「あらぁん、なぁにぃ?、なんで避けるのぉん?

ユピテルモン様の一部になるなんてこの世界で最も光栄な事じゃなぁい?、信者達だって涙を流して歓声を上げていたっていうのにぃん!」

「だったら!

まずは貴様が【ロード】されろ!、デシテ!!」

「だって、それではユピテルモン様を癒してさしあげられないものぉん

 

 

アポロモンだってそうだったじゃなぁい?」

 

 

「!!!」

「あの土壇場でまさかあんな、ねぇん?

とっっっても情熱的で羨ましかったわぁん!

でも、世界樹の補佐を務める神々としては!

何より、ユピテルモン様に仕えるモンとしては!

愚かとしか言いようがないけれど!!!」

「ぐ、ぎぃ!」

 

必死に攻撃を掻い潜るルナモンだったが究極体のソレは掠めただけでも容赦なくデータを抉っていった。

 

「ああ、ユノモン

少し待って貰ってもいいかな?」

「はい!!!、ユピテルモン様ぁん!!!」

「ハァ・・・!、ハァ・・・!

なん、デシテ?、こんな脆弱なワタクシに情けでも?

ハッ!、非常なる神罰の代行者がッ、随分と!

優しくなったモン!、デシテ!」

「何せ今はアイギオテュースモンなのだよ

世界の調停も大事だが、かつての同胞が何故こんな無駄な足掻きをしているのか

気になってしょうがないのさ」

「無駄、デシテ?」

「ああ、成長期が究極体

それも神に勝てるワケがないというのに・・・

まさかとは思うが同情でも誘いたいのかな?

残念ながら私が君を【ロード】し、テンドーの全てを奪い尽くす事でかつての姿と権現を取り戻すのというのは確定事項 」

 

 

「アホめが」

 

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」」

「マルスモンを探すなデシテ

奴は今頃、戦場荒らしのシェイドモンに勝って

ナナを、仲間を、取り戻すので忙しい」

「まさかとは思うけど

今のは私に言ったのかな?、ディアナモン」

「貴様ら両方に言ったつもりデシテ

何せどちらもテンドーを

 

 

『舞台少女・天堂真矢』を何も知らないッ」

 

 

「ン!、まぁああん!!!、不敬!!!」

「ユノモン、私は待って欲しいと言ったよ」

「はい!!!、ユピテルモン様ぁん!!!」

「舞台、少女、ねぇ

どちらの単語もありふれたモンだが

それこそがあんな路傍の石の如きモン達が究極体にまで進化出来た秘密なのかな?」

「逆に問おう、雷霆と貞節の神々よ

貴様らの言う進化とはなんデシテ?」

「「は?」」

 

狩られるだけの獲物からの思わぬ問いに思わず呆ける二柱。

 

「幼年期が成長期になる事か?

成長期が成熟期になる事か?

成熟期やアーマー体が完全体になる事か?

完全体が究極体になる事か?

究極体が究極体を掛け合わせる事で更なる領域に至る事か?」

「それ以外に何があるというのだよ?

ッ、まさかあるというのか!?

ニンゲンには!!」

「生憎、ワタクシが知っているのは

ニンゲンではなく舞台少女、デシテ

どいつもこいつもワタクシの枠など簡単にはみ出して好き勝手やってばかりの!

 

 

カレンにいたっては本当になんなんデシテ?

ダークエリアでスタァライトした?

というか!!、スタァライトするって!!

 

 

な・ん・な・んデシテーーーーーー!!?」

 

 

「・・・・・・・・・ディアナモン、あなた

転生してもそのよくわからない所でヒステリックになるのは治らなかったのねぇん」

「き・さ・ま・に・だ・け・はーーーーーー!

ヒステリック言われる筋合いはない!、デシテ!

兎に角!、デジモンの概念に囚われたまま奴らの進化を目の当たりにすれば奪われるのは貴様らの方、デシテ

その覚悟がないなら契約などしない方がいい」

「奪われる、ね・・・

なら、君は

テンドーに何を奪われたのだよ?」

 

 

「全て」

 

 

「はぁあん?」

「奴はワタクシの全てを根こそぎ奪っていった

ワタクシだけではない、舞台少女のパートナーになったデジモンは己の全てを奪われている

過去や現在はおろか未来すらも、デシテッ」

「・・・・・・・・・意味がわからないのだよ」

「ああ、貴様らはそれでいい!

それはとても幸福で不幸な事なのだから!」

「フム、わからないながらも俄然興味が出たのだよ

 

 

あのニンゲンを刻んで貰って【ロード】するのは

 

 

もう少しお互いの時間を育んでからでも良いのかもしれない」

「ゆ、ユピテルモン様ぁん!!??」

「やはり、貴様そのつもりデシテ・・・」

「勿論、それは最終手段さ

契約してすぐに私をユピテルモンに進化させてくれれば、まぁ

 

 

デジタマ造りの相手にさせてあげても構わないな

 

 

顔と体はとても好みなのだよ」

 

 

「                  」

 

 

「貴様のその軽過ぎる口によって!!!

今までどれだけの生命が消されたのだろうなぁ?

デシテーーーーーー!!!」

「ん?、居たのかい?、そんなモンが?

おや?、ユノモンの様子が変だね・・・どうしたのだろうか?」

「~ー~ー~ー~ー~ー~ー!!!!!!」

 

アイギオテュースモンの発言に

 

ユノモンは白目を剥いてフリーズし

 

ルナモンが激しく地団駄していると

 

「                  」

「フム、これは暫く時間がかかりそうだ

仕方がない《チャージングストライク》」

「!?」

「久方ぶりに体を動かすとするのだよ

《ボルトブレイクノックダウン》」

「ぐ!、ぎ!」

 

突撃する角が、雷を纏う拳によるラッシュが襲ってきた。

 

「《ルナ、クロー!》」

「それは抵抗のつもりかい?

まぁ、いいのだよ《ウィングカッター》」

「!?、きさッ、その姿 」

「面白いだろう?《ライトニングシャワー》」

「ぐぎゃあ!」

「《ブランブルバイト》」

「!、ぐう!!、ぅああああああ!!!」

 

アイギオテュースモンは腕と胴体部分を竜から

 

サイボーグ、天使、植物と次々に切り替え

 

闇を纏う爪を腰に搭載した機械の翼で弾き返し

 

地面に叩きつけられたルナモンに聖なる短剣の雨を浴びせた挙げ句、魔物化させた植物を召喚し

 

食らいつかせた。

 

「すまないね、ユノモンならば痛みを感じる間もなく電脳核を抉り取ってくれたのだが」

「よく、いう、デシテッ

やはり、貴様、変わったな!

以前、ならば、こんな無駄な、こと、は!

ぐうぅぅぅ・・・!」

「無駄ではないさ、自分の能力を試すのは今後の為にも必要なのだよ

それに変わったのは、無駄な事をしているのは

君の方じゃないか」

「ーーー!、ッーーー!!」

 

必死に頭や四肢に力を入れ、口が閉じられるのを全力で阻止するウサギ。

 

「無駄、か・・・

貴様からすれば、そうかもしれない、デシテ

日輪に、アポロモンに、庇われたのに結局消され

デジタマが流れついた、下界では

お山の大将の庇護の元、農奴の真似事をして

へらへら、笑って、ペコペコ、頭を下げて!

日々を、くいつないで、いた・・・

ワタクシの、せい  は!」

「ーーーーーー!!!、聞くに堪えないッ

よくそんな無様を晒しながら生きていられたな!

ユノモンがあの時頑張ってくれなければ

私がそうなっていたかと思うと寒気すらする!

もういい、そろそろ私の糧に

 

神への供物として、その身を捧げるがいい

 

 

《デスディナー!》」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

それを狙い悪魔の如き姿になったアイギオテュースモンが大口を開く。

 

 

グチャァッ!!!

 

 

「!!?、グェ!、ゲブゥ!」

「《ロップイヤーリップル》の苦味はお子様舌な貴様の口には合わなかったか?」

「でぃ、あな、もんッ!!!

いや!、最早君をその名で呼ぶ事自体が!

私達神々に対する冒涜に他ならないのだよ!

ルナモンよ!、世界調停の為の供物よ!

何故そこまで生き恥を晒す!?

まさかとは思うがマルスモンの転生体の助けでも待っているのか?

残念ながら、あいつにはこの神域へのゲートを開く事等到底不可能なのだよ!

何故なら 」

「あんなアホ熊お呼びじゃない、デシテ」

 

魔物達の顎から逃れ、フラつきながら地面へと降り立ったルナモンは

 

「言った筈デシテ、ここはワタクシの舞台だと

 

他のモンなど邪魔でしょうがない

 

だから精々

 

 

貴様はそこで、ふんぞり反って観ていろッ」

 

 

 

 

ええ、鑑賞させて貰いますよ

 

 

共演者【パートナー】の舞台を」

 

 

闘技場で最も高くに位置する祭壇の上

 

口の端を上げながら足を組み

 

手にしたOdette the Marvericksを弄びながら

 

神々をも見下ろす

 

 

天堂真矢【パートナー】を   睨み付けた。

 

 

「は?、な・・・・・・・・・なぁっ!?

なんだ、なんなんだあのニンゲンは!!?」

「どうした?、神々の主神よ

奴はあの通り貴様好みの顔と体を惜し気もなく見せつけているというのに」

「それが問題なのだよ!!

さっきの技は間違いなく君の全力だった!

完全体の私でもあんな無防備に直撃すれば即座に倒れ、暫くは目覚められない程に強力な!

大体!、あの剣が何故ここにある!?

没収して念入りに封じていた筈なのだよ!」

「ソウルとキラめきを用いた健常な状態のデータの再構築、再生産

 

 

西條クロディーヌ【次席】に出来た事が

天堂真矢【主席】に出来ぬ道理はないデシテ

 

 

最も、ワタクシの舞台が終わるまではあのやたらと迫真な狸寝入りを続けて欲しかったのだが?」

「すみません

あの体勢ではよく見えなかったので、つい」

「フン!、だと思ったのデシテ

・・・・・・・・・貴様ならば百も承知だと思うが

観客が舞台に上がるのもモノを投げ入れるのも」

「マナー違反、わかっていますとも」

「ならば、いい《ティアーシュート!》」

「ブハ!?」

「ああも目立つ観客に見られて落ち着かないのはわかるが集中しろ、色ボケめ」

「こ、の!《プラズマッドネス!!》」

 

顔を濡らした悪魔が怒りの形相で両手に赤い電撃を収束させ、己の供物に目掛けて放出。

 

「《ルナクロー》」

「!?、と!《トライアングラーーー!》」

「返す、デシテ」

「グァウ!、グァア!」

 

しかし、ウイルス入りの闇のエネルギーは短い爪に容易く絡め取られ、急接近して振るった両手や尾に備わる鎌を押し返すのに使われる。

 

「夜を司るワタクシに闇で挑むとは」

「なら、ば!《プラントゾーンクレイドル》

電脳核以外、八つ裂きにしてくれる!!」

「はぁーーー・・・」

 

ルナモンは心底うんざりした表情をすると魔物と化した植物に埋め尽くされた闘技場【ステージ】で

 

飛び跳ねる、まるで踊るかのように。

 

「ステップは先程よりは上達していますが

まだまだ表情が固いですね」

「フン!」

「ブフ!?」

「こんなモンか?」

「クスッ!、よく出来ました」

 

そして、アイギオテュースモンの顔面に着地。

 

種族的な愛らしさを何処かに捨て去った

 

不遜な笑みを浮かべてみせた。

 

 

「調子にぃ!、乗るなーーーーーー!!!」

 

 

「今度は機械?

ですが

折角多くの衣装を取り扱っているというのに

どれも、まるで着こなせていないようですが」

「ッッッ!!??」

「言ってやるなテンドー」

 

ルナモンを乗せたまま急上昇したアイギオテュースモンだったが、真矢の指摘に表情が固まる。

 

「転生してからずっと、番の神に甘やかされて

与えられたモンの全てを自分の実力と勘違いして

調子に乗っていた色ボケのガキには

貴様の言葉は重すぎるのデシテ」

「ああ、そうでしたか

それは失礼しました、アイギオテュースモン

どうか、これからも頑張って下さい

応援しています」

「!!!、!!!、!!!

テン、ドォーーーーーー・・・!!!

きみはッ、一体、何様だぁーーー!!??

《パワード!!、イグニッション!!》」

 

白髪を逆立て

 

文字通り怒髪天となり左手のパワードアーム

 

その掌にエネルギーを集中。

 

 

「This is 天堂真矢   だそうデシテ」

 

 

そのまま祭壇へと突撃する直前

 

頭部に張り付いていた供物だと思っていたモンに

 

3本同時に角をへし折られた。

 

「ガァアアア!!?、ァァァアアア!!!」

 

「《ルナクロー》からの・・・

 

《ロップイヤーリップル》そして

 

《ティアー!、シュートッッッ!!!》」

 

激痛に悶絶するアイギオテュースモンをシャボンの渦に巻き込み、零距離から水球を浴びせて

 

地上へと叩き落とす。

 

「ハァーーー!!、ハァーーー!!

言った筈、デシテッ

ワタクシとの舞台に集中しろ!、と!」

「・・・・・・・・・ああ、そうだね

でも、本当にいいのかい?

最早、君には

この技から逃れる余力はないというのに」

 

疲労とダメージにより体を震わせているルナモンの前で浮遊し、聖なる短刀の群れを稲妻で繋ぎ合わせた蛇腹剣を構えるのは

 

 

アイギオテュースモン・ホーリー

最もユピテルモンに近しい姿。

 

 

「フン、ちゃんと一張羅があった 」

「《サンダースラッシュ》」

「ぐぎ!?、ぎゃん!!」

「本当に、聞くに堪えないよ今の君の言葉はッ

かつての君はもっと従順だったじゃないか!

それこそ世界樹からの指令に従い

レイド帝国を完全削除すべく

 

 

日輪のアポロモンとのジョグレス体

銀河のグレイスノヴァモンとなり

このデジタルワールドの為にその身を捧げる事も

 

 

受け入れていたというのに!!

何故今更そうも無様に汚ならしく抗う!?」

 

 

「・・・・・・・・・受け入れてなど!、いなかった!

 

 

怖かった!!!

自分が自分でいられなくなるなんて!!!

 

 

消えてしまうなんて、絶対に嫌だった!!!

 

 

でも、それでもッ

世界樹に!、神々の全員からそう求められたら!

ワタクシは!、従うしかないだろう!!?」

「残念ながら全員ではなかった・・・!

あの愚かな日輪アポロモン!、君の半身だけは!

それをよしとしなかったのだよ!!」

「ぐぎぃいいい!!

てを、だすなと、い"っだだろぉ!?」

「ーーー・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

闘技場の中心で行われる鞭打ちの刑罰。

アイギオテュースモンが蛇腹剣を振るう度に

ルナモンの小さな体の至るところに刃が、稲妻が叩きつけられる。

 

「下らない意地など捨てて

テンドーに助けを求めたらどうだ?

そうすれば纏めて罰を与えてくれる!」

「あぐぅ!

生憎ッ、奴からのソレはいつでも大歓迎だが!

まだ、一度も、言われた事が、ない、デシテ」

「だから自分からは言えないと?

フハハハ!、すっかり変わったと思ったが

そのプライドの高さは変わらなかったか!?

 

 

愚かモンめッッッ!!!」

 

 

 

 

           どっちがだ

       ‎

 

デシテーーーーーー!!!!!!」

 

 

その最中で突き出されたのは闇の爪。

 

稲光をも飲み込み、連なる短刀を奪い尽くすと

 

短い手でひたすら投げまくった。

 

「《サークレットディフェンス》」

「な!、んデシ 」

「返すぞ

いや、元々これは私のモンか」

「ぐぎゃぁああああああ"あ"あ"!!!」

 

するとアイギオテュースモンは両手の盾を使い攻撃を反射。

更なる電撃を加えられ跳ね返された短刀が凄まじい勢いで殺到し、ルナモンは絶叫を上げながら闘技場を転がっていく。

 

「訂正しよう

かつてはディアナモンと呼ばれたルナモンよ

例えちっぽけで取るに足りないような下らない誇りだとしても、君は最期までソレを貫き通し

成長期の身でありながら、完全体の私に脅威をも感じさせたのだよ

 

 

故に、敬意を表して【ロード】させて貰う」

 

 

「ガ、ハッ・・・ぅぅ・・・あああ!!」

「助けには入らないのかい、テンドー?

まぁ、入った所で最早手遅れなのだよ」

「ええ、あなたの言う通り今更私が何をしても意味はありません

 

 

だって、その必要はないのだから」

 

 

「・・・・・・・・・な・・・・・・・・・にぃ?」

「ふっ、ふふ!、ははは!!

本当にッ、気づいてないのですか?

それで良く私を求められましたね?

レイド帝国に為す術もなくやられただけの事はあります」

「テン、ドー!

その言葉は!、ワタクシや他の奴らにとってもッ

耳が痛い!、デシテ!」

「なら、後で慰めてあげますよ」

「お・こ・と・わ・り!、デシテ!」

「・・・・・・・・・テンドー、君は見た目はいいが

頭はかなり残念なようなのだよ

この死に体の小さなウサギ一羽に、私の供物になる以外何が出来 」

「もう、終わっています神々の主神様

いえ、これから始まるというべきでしょうね」

「?、!、!!?、アガァアーーーッ!?」

「ルナモンがあなたに届けてくれた

この私のキラめきが魅せる時が」

 

超然とした態度の真矢が見下ろす先では

 

アイギオテュースモンの各所を純白の0と1の粒子

 

彼女自身のソウルとキラめきが蹂躙していった。

 

「ば、かな!

この姿はいわばワクチンそのもの!

あらゆる害悪の侵入を遮断し、例え入り込んでも

即座に解毒出来る、のにぃいいい!!」

「ソレにつけるワクチンがあるのなら

今すぐにでも、ワタクシに打ち込んで欲しかったデシテ・・・」

「なぁあ!、にぃい?」

「同じ事ばかり言わせるなデシテ、ワタクシの全てはテンドーに奪われたと言っただろう

契約した時・・・・・・・・・いいや、戸を開いたあの瞬間から

ワタクシのデータの全てにテンドーが

 

 

トップスタァのキラめきが刻み込まれてしまった

 

 

今、貴様を犯しているのは

 

ワタクシの、この爪の先程の量でしかないが

 

それでも

 

そこまで見事に広がったのは何故だと思う?

 

 

貴様自身が奴を求めていたからデシテ」

 

 

「ーーーーーーッッッ!!!、でぃ、あなも!

きみは!、さいしょからぁ!、アヒン!?」

「かつてのワタクシが!、ど・れ・だ・け!

貴様らの尻拭いをしてきたと思っている!?

迂闊な発言でユノモンがああなる事も、そうなった後にテンドーに負けず劣らず目立ちたがり屋で自惚れ屋の貴様が自ら出張る事も

 

 

全て想定済みに決まっているだろう?

故に、貴様の敗北は

 

 

戦う前からの確定事項、デシテ」

 

 

「!   !   !   !      」

「レイド帝国のデジモンならば

それだけキラめきに犯されれば削除は免れないが

貴様ならば、まぁ恐らくは大丈夫デシテ

・・・・・・・・・色ボケのガキでも数少ない有効戦力

今のデジタルワールドには必要なのだからな」

 

未だ消えぬキラめきによりビビックンビビックン痙攣しながら仰向けにぶっ倒れたかつての上司に向ける眼差しは、やはりどこまでも冷たい。

 

「くっ」

「!!!、・・・・・・・・・・・・ッ」

「ぉぅ、デシテ、それで、いい

 

はぁーーーーーー・・・!

 

まったく!、本当に!、どうかしている!

どこぞのアホ熊ではあるまいし!」

 

全身余す所なく傷だらけで、疲労困憊。

 

「主神に、弓を引くなどという無謀過ぎる行為!

考えた事すら、なかったというのに!

全て貴様のせいデシテ!!、テンドー!!」

 

しかし、ルナモンは

 

光源【日輪】を無くし、地に堕ちた月は

 

例えどれだけ鈍くても、みっともなくても

 

意地で登っていく。

 

「貴様さえ!、貴様さえあの山に現れなければ!

 

貴様と出会いさえしなければ、ワタクシは!

 

ユピテルモンはおろか

 

レイド帝国にもッ、コンゴウ親分にもッ

 

逆らわず!、かつてと何も変わらない!

 

せこせこ働き、飼い殺され、隅で縮こまる生を

 

 

甘受出来たというのになぁ!!!」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

闘技場の祭壇・・・頂きでキラめく星を目指して。

 

「ハァー!、ハァー!、ハァー・・・!!

どう、した?、ぶたいのうえであくびなど

きさまらしく、ない・・・

まだ、ねむい、デシテ?

フン!、べつにねていても、かまわな・・・った

いう、のに」

「今の私はただの観客、ですから

だから、こそ

見逃すわけには、いかない、でしょう?

 

 

自分のパートナーが誇りをかけて戦う姿を」

 

 

「・・・・・・・・・らしくないかお、するな、デシテ

あと、みみは、やめろー」

 

真横に崩れるように倒れたウサギを撫でる手。

 

一世一代の大舞台が終わり

 

自分達以外は誰も居ない観客席に座る今の彼女は

 

演劇界のサラブレッドでも

 

聖翔音楽学園99期生主席でも

 

ましてや、デジタルワールドの救世主でもない

 

 

ただの年相応な少女だった。

 

 

「テン、ドー・・・」

「はい」

「ワタクシは、しばらくうごけない、デシテ

だから・・・」

「ええ、これから先は私の 」

 

 

 

 

「ゆ   ピ   て   ル   モン

 

 

さ   ぁ   ア   ま   ァ?

 

 

ンふフフっ、お戯れガ過ギますワ~ッん」

 

 

 

 

「            へ?」

 

 

だからだろう、闘技場の真ん中でユラユラ揺れ

 

 

仮面の奥でギリギリ・・・ギリギリ・・・と歯ぎしりし

 

 

その隙間から血走った眼光を覗かせ

 

 

長槍と化した両腕同士を研ぎ合わせ

 

 

ホラー映画よりホラーなオーラを出しながら

 

 

自分を見てる   マントの怪物が超怖い。

 

 

「ヒステリック、モード・・・

フン、案の定デシテ」

「る、ルナモン?、ルナモンッッッ!!?」

「安心しろ、テンドー

あれは暗黒進化等ではなく

あいつにデフォルトで備わってる機能デシテ」

「ぇ」

「ユピテルモンとの時間を邪魔するモンに対する

嫉妬やら何やらが最高潮に達した際に現れ排除する特殊形態デシテ

そして、今の奴のターゲットは

 

 

貴様だ

 

 

精々、その均整の取れた体を

穴だらけか細切れにされないように気をつけろ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

真矢は思った

 

 

どうしてこの子、普段あんなに臆病なのに

アレを見ても平気なんだろう?

 

 

だが、すぐに先程のアイギオテュースモンとの会話を思い出し合点がいった。

 

 

「慣れとは、恐ろしいモノ、です、ね」

「テンドー?」

「ふーーー・・・!!、はーーー・・・!!!

大丈夫、今の私は救世主救世主救世主!

あのエリスモンや巨人に比べればこわ 」

 

 

「あ  ア"   アぁああアァあ"!!!

 

 

に   ンゲ、ン!!??"?

 

 

ニンゲンニンゲンニンゲンニンゲンニンゲンニンゲンニンゲンニンゲンニンゲンニンゲンニンゲンニンゲンニンゲンニンゲンニンゲンニンゲぇああああああッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

ゆ   ルさ   ナ   ぃ」

 

 

 

「こわい・・・・・・・・・」

「テンドー!?」

「ルナモンッ疲れている所、本当に!

ほんっとに申し訳ありません!

でも、アレ、ちょっと、ひとりじゃムリ

 

 

助けて、くれませんか?」

 

 

「は?、なんだって?」

「!」

「うーーーん?、きこえないデシテーーー

ワタクシーミミがーよくなくてーーー」

「!!」

「もう一度、ちゃんとお・ね・が・いしてみせろ

そのどこまでも高く、よく通る声でなぁ!」

「!!!、~ー~ー~ー~ッッッ

 

 

            たすけてぇ」

 

 

せめてもの抵抗か紡がれた声はめっちゃか細い。

 

 

「死! 刺! シ刑ぃンッ!!!!!!」

 

 

祭壇に長槍が神速で突き立てられたのは

 

その直後である。

 

「感謝する、ユノモン」

「ぁハーー~?」

「貴様のお陰でこの高慢ちきの最高に笑える顔が見られたデシテ!!、プギャーーーーーー♪」

「・・・・・・・・・意地悪」

 

仮面越しにユノモンが見たのは白い幕の残滓纏い

 

膨れっ面の■■■■を抱いて高く高く跳躍する

 

月光魔人クレシェモン。

 

「などと言ってる場合ではない

言っておくがワタクシ神々同士の一対一での直接戦闘では最弱だったデシテ」

「えええ!?」

「ユピテルモンに勝てたのは奴のあの姿での経験不足とワタクシを見下しまくっての驕り

そして」

「私ですね」

「フン!、わかっているなら

震えてないでいつも通りキラめいて魅せろ

トップスタァ!!」

「言われるまでもありませんッ」

 

未だ若干震える手でOdette the Marvericksを握り直し、地上で自分を睨むユノモンを

 

「刺ネ」

「!!?」

「《アイスアーチェリー!》」

 

見ようとしたら、眼前にまで接近していた。

 

「《ルナティック!、ダンス!》」

「くぅっ!、はぁあああ!!」 

「死!、シ!!!、しッ、刺!!!!!」

 

闘技場の上空にて始まる神秘の舞踏を足場にして

 

冷や汗をかきながら真矢は凍える刃を振るう。

 

「あ!!ァ!ァあ"ぁ!!!」

「ぐぎっ!」「がはぁ!」

 

しかし、荒ぶる神が神速で繰り出す刺突は彼女の想像を遥かに上回って凄まじくパートナー諸共吹き飛ばされてしまう。

 

「《ダーク、アーチェリー・・・!》」

「ッ!!」

 

咄嗟にクレシェモンが放った闇に全身から白い0と1の粒子を放ちながら突っ込めば、実体を伴い受け止めてくれた。

 

「にィいいンッげえエエん!!!!!!」

 

斑模様の天にぽつんと浮かぶ闇夜へと両の長槍を突き立てるユノモン・ヒステリックモード。

 

「あぁッ?、アは~ー?」

「・・・・・・・・・!!、・・・・・・・・・!!」

 

真矢の身を遥かに越える凶器を防いだ得物は

 

三日月の形状をした鎌と盾ノワ・ルーナ

 

では、彼女自身のキラめきはというと・・・。

 

「ユノモン、本っ当に貴様は相変わらずデシテ!

ワタクシが何度も忠告してやったというのに

すぐそうやって周りが見えなくなる」

「!!??、でアぁおおおゥンンン!!!」

「飛べ黒鳥!、白鳥【貴様】の元へ!」

 

地に落ちた月の手により氷によって形造られた闇色の翼を与えられる。

 

「神々の中で最弱、ですか・・・

つまり、西條さんのパートナーよりも」

「ア~ぁーハ?」

「これは、確かに

震えている場合ではありません、ね!」

「バ!?」

 

すると、真矢はユノモンの仮面に盾を投げつけることで僅かながらのヒビを入れて怯ませると

両手に持った鎌にソウルとキラめきを纏わせながら闇夜の中に突き立て、細長い柄に恵まれた体躯を絡ませた。

 

 

「パぁーンッ?」

 

 

仮面越しの全てが害悪に見える世界で

 

ユノモン・ヒステリックモードが間近で見たのは

 

 

重力から解放されたような軽やかさで回りながら

 

 

その手に黒鳥を留まらせたかと思うと

 

 

一瞬で白鳥に変えてしまう

 

 

今、最も憎い最優先排除対象のニンゲン

 

 

の、筈、なのに・・・。

 

 

「クレシェモン」

「こんな時になんデシテ?」

「大場さんが

いえ、シェイドモンが言っていましたね

星の近くに月があるのは邪魔だと

あなたはどう思います?」

「ずっと重なり合っていればそうデシテ

だからこそ、ワタクシ達はああもらしくない事をしてしまったのかもしれない」

「そうですね

でも、月がない夜空というのはやはり

 

寂しいでしょう?」

 

「・・・・・・・・・星がないのも寂しいデシテ」

 

 

 

「 ン、な

 

わタしの愛は、ゆピテ あん ェニ」

 

 

 

その間に天と地で

星と月のダイヤローグが行われる。

 

「だから、星は、スタァは、貴様ら舞台少女は

存分にキラめいて真っ暗な夜空を賑やかせろ

月は、ワタクシは

それを一番よく見える特等席で拝んでやるデシテ

共演者【パートナー】としてな」

「ええ、魅せてみせますとも最後まで

・・・・・・・・・途中退場なんて絶対に許しませんからね」

「フン!、出来るかそんな勿体ない事ッ」

「クスッ、ふふふ!」

 

 

 

コォォーーー・・・!   コォォーーー・・・!

 

 

 

「嗚呼!   アッは~~~ぁ!!!

 

 

うつ   く 刺イぃぃいン!!!???」

 

 

手に留まり、戯れていた白鳥が鳴くと

 

その近くに収まる神機に

 

星形の画面には重ならない三日月の意匠が

 

加わった。

 

 

「地より登る月」「天に居座る星」

 

 

「ぱパぱぱバ?、ばァ!」

 

 

闘技場に舞い降りるのは星と月が描かれた白い幕

 

が、2つ。

 

 

「2つの誇り」「各々に今宵」

 

 

「み、えな、ぃ!   見たいいい!!!」

 

 

仕立ての良いフレンジすらも純白のソレの下

 

ウサギはかつての姿を取り戻し

 

少女は羽のように舞台へと降り立った。

 

 

「遍く夜空へ届けましょう!」

「映えある月光ディアナモンと!」

「トップスタァ!、天堂真矢が!」

 

 

レイピアと化した孤高の白鳥構える共演者

 

そのどこまで高く、大きな存在と

 

つかず離れずの距離に浮かぶ月光

 

白と青を基調とするアーマーが細身の体躯を覆い

 

手には両端が弧を描く刃が備わる鎌を持つ

 

十二の神々の一柱ディアナモン。

 

「あ、はぁんっ、はぁう~~~ん!!!」

「「ん?」」

 

すると、どういう訳か

ユノモンのヒステリックモードは勝手に解除され

・・・・・・・・・赤面しながらプルンプルンしている。

 

 

カァン! カァン! カァン! カァン!

 

 

「って、この音は!?」

「!!」

「ゆぴ、てる、モン様ぁん?」

「!、!、!、!、!!!」

 

 

カァン! カァン! カァン! カァン!

 

 

カァアアアン!!!

 

 

戸惑う暇なく、更なる異常事態到来。

忘れ去られていたアイギオテュースモンが

羽毛のマントをつけた黄金鎧の神人

 

 

天空の最高神ユピテルモンに進化していた。

 

 

「ディアナモン、あれは一体?」

「え、えっと《パニッシュジャッジ》デシテ」

「両手に備わる戦鎚で罪人にその証を刻む

でも、それを何故自分自身にぃん?」

 

 

「決まっているだろう愛しの君

 

私は許されざる罪を犯したのだよ」

 

 

「「「ッ!!?」」」

 

 

穏やかな声が聞こえた次の瞬間

自らの雷撃により処罰される雷霆。

 

「・・・・・・・・・やはり、意味はない、か

だが、それでもせざるを得なかったのだよッ

ああ!、先程までの私は!!

何という愚かモンだったのだろうか!?

今までの非礼をどうか許してくれディアナモン!

そして、テンドー、いや!!!

 

 

 

愛するマーヤ」

 

 

 

「「                 」」

 

 

「ゆ、ユピテルモン様ぁん!!!???」

「マーヤ!、おおマーヤ!、マーヤッ!!!

君こそ私達デジモンの光!、世界樹が!

デジタルワールドが与えてくれた福音なのだよ!

それを全て奪う?、極一部だけでも無様を越えた無様だったというのに?

ディアナモン!、ああ!、本当に申し訳ない!

君の下界での生、その苦行は全て

マーヤと出会う為の試練だったのだよ!!!

無駄?、どこが無駄だと?、無駄ではない!

寒気?、そんな事を言う口に寒気がする!

そして、やっとわかった!!!

君の言葉の意味がこれ以上ないぐらいに!!

マーヤは奪っていった!、私の全てを!

何て幸福なのだよ!、そして何て不幸なのだよ!

もうマーヤを知らなかった私には戻れない!

 

 

とにもかくにも私は!

 

 

デジタマが欲しい!!!

 

 

私は!!!、君の仔が欲しいのだよ!!!

 

 

愛するマーヤぁあああ!!!」

 

 

「      は?」

「聞き返すなッ、流せ!、デシテ!」

「そ、ん、な

ゆ、ゆ る サ・・・・・・・・・!!!!!!」

「んぎゃあーーーーーー!!?

また、ヒステってるデシテーーーーーー!」

「や、やめ、もう、わたし、もうっ」

 

 

「ゆ、ゆぅうううん!!!

 

 

されるのっ!!!、ですかぁん!!??

 

 

この世界で最も目映いユピテルモン様ぁんと

 

 

あんなにも燦然と輝くマーヤ様ぁんを

 

 

一緒に、なんてぇええええん!!!!!」

 

 

「そうなのだよ愛しの君ユノモン!!!

 

 

君達と一緒ならば必ずや私は!!!

 

 

この世界に新しい生命を造り出せる!!!」

 

 

「あ、あっっっはぁああああああん!!!

 

 

そんな創造!!!、想像しただけで!!!

 

 

私ぃん!!!、わたしぃんんんぅん!!!」

 

 

「ふぅ・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ」

「テンドォオオオーーーーーー!!!!!!

やめろー!、意識だけは失うなデシテー!!

今、ワタクシがルナモンになったら貴様ッ

本当に!!!、ほ・ん・と・う・に!!!

マズい事になるからーーーーーー!!!」

「天を、気象を司る私をあんなにも見下したのは君が始めてだった

だからこそ、私は君のは 」

「《アロー!、オブ!、アルテミス!》」

「ンフフフフフフ!!!

ユピテルモン様ぁんの雄大な稲光と

そこにマーヤ様ぁんの優雅な極光がま 」

「《グッドナイトムゥーーーン!!!》

寝てろ色ボケ共ーーーーーーッッッ!!!」

「何を言っているんだディアナモン」

「そうですわぁん」

「「今の私達、体のあっちこっちがも 」」

「《くれっせんとはーけーーん!!!》

テンドー!、しっかりしろ!、デシテ!」

 

 

ディアナモン

 

 

 

私のこのデジタルワールドでの配役は救世主

ですよね?」

「え、あ、うん、そうだけど

今その話必要デシテ?」

「ならば、レイド帝国より先にあの2人を何とかしましょう」

「な、なんとか、デシテ?」

「何とかは何とかです、何とかするんです

大丈夫出来ますとも、私は99期生主席天堂真矢

トップスタァ、頂きにキラめく星はただひとつ

そしてあなたはそのパートナーにして月光の神

神には神をぶつければいいんです」

「テンドー?、おいテンドー、さん???」

「お呼びですか?、天堂真ッ矢です!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁーーーーーー

ならば貴様ここで進化してみせろデシテ」

「「「え?」」」

 

この予想外過ぎる言葉には、乱心状態だった1人と二柱も思わず正気を取り戻す。

 

「この世界の誰よりもキラめいて魅せるがいい

あの時のカレンよりもな」

「!?、ふふっ♪、そうきますか・・・」

「演出その他諸々はワタクシがやってやる

 

 

あの色ボケ共のデータ

 

 

一片残らず『天堂真矢』で染め上げてやれ!

 

 

《クレセントハーケン・・・!」

 

 

ディアナモンは先程乱雑に振るったソレを足元に

 

 

波紋と共に沈ませ

 

 

石造りの闘技場を

 

 

闇夜の湖に一変させた。

 

 

「「!!??」」

 

 

その上に浮かぶ雷霆と貞節は知っていた

これは月光の神秘が魅せる幻覚だと。

 

だからこそ、動揺を隠せない。

 

水の匂いも肌を刺す冷気も

 

吸い込まれそうになる程に深い闇も

 

本物にしか思えないのだから。

 

 

 

〔「      戯曲      」〕

 

 

 

何故ならこれは舞台装置。

確かに存在する現実であり幻覚【夢】である。

 

 

 

〔「Odette the Moonlit》」〕

 

 

 

そして、始まる

 

水面に映る月をスポットライトにして

 

この闇夜の中、唯一キラめく白鳥の舞台が。

 

 

「「マーヤ/様ぁん?」」

 

 

電脳世界の神前で

 

生まれながらの舞台少女が己の全てを込め

 

優雅に羽ばたき、湖を滑っていく白鳥を演じる。

 

だからこそ、水面下の月も必死だ。

 

舞台全体を所狭しと踊る主役を追い回すのだが

 

その奮闘を無視し、まるで弄んでいるかのように

 

この白鳥はすぐに闇へと消えてしまうのだから。

 

 

「あ、あ!、ああぁ!!」「あっぁあん!」

 

 

プリマドンナの軌跡はキラめく純白の羽毛と化し

 

周囲一帯に舞い上がる

 

 

「「ぁ」」

 

 

ユピテルモンとユノモンの浮かぶ空間を中心に。

 

 

「さぁ、フィナーレです」

「良い幻覚【夢】は魅られたか?、デシテ」

 

 

気がつけば

足元には月が、ディアナモンが居て

頭上には星が、天堂真矢が居た。

 

 

「「

 

 

はッぁぁあ"ぁああ"ん!!!!!!!

 

 

ああぅうううう!!!!!!!

 

 

っっっんんんぅん"!!!!!!!

 

 

                  」」

 

 

幻覚【夢】の終幕と共に二柱は自分達の心と体

 

ありとあらゆるデータの全てが純白のキラめきに

 

貫かれ、踏みにじられていく未体験の感覚に

 

 

疼き   震え   悶え   啼き

 

 

夢うつつとなりながら果てていく・・・・・・・・・。

 

 

「あの、ディアナモン、大丈夫なんですか?

コレ?」

「安心しろテンドー

こいつらが使いモンにならなくても問題はない

むしろ、これで

ワタクシ達が神域で行動するにあたっての障害は全てなくなったのデシテ!!!」

「そ、そうです 」

 

 

ド!   ォ!   ゥ!   ン!!!

 

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・、!?」」

 

真っ白になって動かなくなったユピテルモンとユノモンの前で顔を見合わせる真矢とディアナモン。

 

 

ドォン! ドォン! ドォンドォンドォン!

 

 

ドォォォオオオンッッッ!!!!!!

 

 

彼女らに届いた衝撃は闘技場どころか神域全体が揺れる程に凄まじい。

それにより、斑模様の空が破れたかと思うと

 

 

 

 

見つけたわよッ

 

 

 

天堂真矢ぁあああーーーーーー!!!!!」

 

 

 

「!!、西條クロディイイイヌ!!!!!」

 

 

 

目を爛々とさせながら飛び込んできた次席が

 

 

喜色満面の笑みを浮かべる主席へと斬り掛かって

 

 

「ジャ!!、ジャ!!、ジャ!!」

「へ?、え、ま!!」

「ジャーーーーーーン!!!!!!」

「ぐぎゃあ"あ"あ"あ"あ"あああ!!?」

 

 

同時に闘争の神が月光の神の顔面を

 

 

思いきり殴り飛ばすのであった。

 

 




※《クレセントハーケン 戯曲・Odette the Moonlit》
月光神ディアナモンの必殺技クレセントハーケンを

主演・天堂真矢による

天堂真矢の舞台を天堂真矢の為だけに

月の神秘が見せる幻や水や氷を司る能力等

己の全てを捧げて舞台装置へと発展させたモノ。

周囲一帯の空間データを水面に月【自分】が映る闇夜の湖畔に塗り替え、そこに浮かぶ共演者【パートナー】が最高にキラめける環境を造り上げることで

天堂真矢無しではいられないレベルで相手を魅了するという

攻撃性は皆無だが、ある意味とても恐ろしい特殊技。


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西條クロディーヌVS闘争神マルスモン 私は負けていられない!

ルナモンが難易度lunaticな状況に挑んでいた頃
他の99期生にもまた危機が訪れていた。


 

 

 

 

 

 

 

 

「イヤだっつってんジャン!!!」

 

 

「ッッッ!"!??」

 

 

『え"!?』

 

 

舞台少女達やデジモンの目の前で

 

パンダモンに、パートナーに殴り跳ばされた

 

西條クロディーヌが宙を舞う。

 

「おい!、クロ公!

お前!、アホか!?

もっとよく考えろよー!!

 

 

あのテンドーが地味に消えるワケないだろ!

 

 

あいつが消える時は絶対の絶対ハデハデだ!

だから!、まだテンドーは消えてねぇ!!

大体!、あいつはお前の獲物ジャン!?

だから今までウチ我慢してたんだぞ!

お前に狩られる前に消えるなんて!!

そんなの絶対の絶対の絶対に絶対絶対 」

 

 

「るっさい!!!」

「ぐぇえええ!?」

 

すると、彼女は見事な着地を決めたかと思うと

 

全力でやり返した。

 

「ふぅっ、まさか

あんたにアホ呼ばわりされる日が来るなんて

この西條クロディーヌ、一生の不覚よ・・・」

「く、クロちゃん、その、大丈夫?」

「ななにだけは言われたくないわ」

「ご、ごめんなさい・・・」

「クスッ♪、冗談よ

無事でよかった」

「クロぉちぁゃん"!!」

「ったく!、心配させやがって!」

「ほんとうよぉおおお!!、グズン"ッ!」

「純那ちゃん、ばななちゃんの事だけで

もういっぱいいっぱいだったもんね・・・」

「すぴーーー」

 

暗黒のソウルの流出が止まったクロディーヌを見て舞台少女達は一安心。

 

「パンダモン」

「ん?、なんジャン?、ヒカリ」

「あなた、どうして、平気なの・・・?

ソレ」

「?、??、???

 

 

!!、ぎゃあああーーーーーー!!??

 

 

なんか変なのウチにひっついてる~~~!?

うっわー!!、めっちゃベタベタ!!

ドロッドロッできもちわりぃいいい!!!」

 

 

ポポポポポポイ!! ポイポイポイ!!!

 

 

「「「「投げ散らかすなァッ!!!」」」」

「《ぶ、ブラフマシルぅううう!!!》」

「《ティーダ・イヤ!》なんだなーーー!」

 

 

・・・・・・・・・しばらくお待ち下さい・・・・・・・・・。

 

 

「で、パンダモン

あなたどうやって西條さんの暗黒のソウルに打ち勝ったの?」

「え!、クロ公にウチ勝った!?

やっりぃ~~~♪」

「~ー~ー~ー~ー~ー~ー!!!

だ!、か!、ら!、その!、ねぇッ!!!」

「やめなさい純那、この子にそういう説明求めても頭と胃が痛むだけだから」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ひ、ひかり殿!

パンダモンは、ベアモンは!

あの通り何も考えていないから無事だったので御座るよ!

エリスモンは生まれたてだというのに!、あやつよりも余程色々考えて 」

「やっぱり、私の、せい」

「ひ、ひかりちゃーーーん!!」

「ヒシャリュウモン、人間にもデジモンにも不向きな事ってあると思うんだ私」

「ぴぃ!、ぼ、棒だけはッ御勘弁を!!」

 

 

「クンクン!、クンクン!

やっぱり・・・ダメ・・・なんだなー・・・」

「ギラギラニンゲンの匂いも仔ウサギの匂いも途切れてらァ」

「ナナ

無理に思い出さなくていいよ、うん・・・」

「でもッ、真矢ちゃん達が最後にどこに居たのかの手掛かりはシェイドモンを通して見てた私しか!!」

「確かにそうだけど・・・!

ったく、この一大事にいつまで寝てんだ!?

香子!!」

「起ーきーるーデースーぅーうー!!!」

「にゃっにゃっにゃっ、ぁん」

「フタバ!、ブイモン!

もうカオルコはデッカードラモン号で休 」

 

 

 

「あああぁぁぁ・・・!!!、あべしっ!?」

 

 

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・はいぃいいい!?』

 

 

混迷する浮島に突如落ちてきたのは

 

薄汚れたボロ布のような状態な

 

青緑色をした狼マスクを被った人型デジモン。

 

「え?、俊足の神?、・・・・・・・・・・・・・・・・・・!

 

 

あああーーーーーー!!!

 

 

お前ーーー!、絶ッッッ対にお前デスぅ!

テンドーとレキスモンを拐った犯人!!」

『!!』

「うん、そうか、そういう事か!

六足並みの速度に加えて

隠密性ならデジタルワールド随一の俊足なら

シェイドモンの目にも捉えられずにあいつらをゲートに引き摺り込むなんてワケないねッ」

「え?、え?、え!?、えええ!!?

違う違う違う!、お、俺じゃないってぇ!」

「「嘘つけぇえええーーーーーー!!!」」

「ちょ!、ちょっと!!、2人共!!

確かにすっごく怪しいけど!

そんな風に決めつけるのは 」

 

 

「や、やったのはユピテルモンさんだって!

お、俺はシェイドモンの隙を伝えただけ・・・

 

 

後、あわ、あわよくば、宿主ごと削除 」

 

 

「被疑者確保ぉおおおーーーーーー!!!」

『御覚悟ぉおおおーーーーーー!!!』

「オラァアアアアアア!!!」

「えええ!?、えええぇぇぇ!!?

に、逃げ

うっわ!?、うわぁあああ!!?

あし!、足に紐絡まってるぅううう!!?」

「逃がさない!!!」

 

怒れる学級委員長の号令により大捕物開始。

 

「真矢を!、天堂真矢をどこにやったの!?

言いなさい!!、早く!!」

「言わないとこの燃え残ったブヨブヨ!

顔に塗ったくるジャン!!」

「いやぁあ!、いやだいやだいやだぁあ!!

言いますぅう!、言いますからぁあ!!

だ、だから、その、あの、あの!

せめッ、せめて場所変えません・・・?

こ、この、このままだと 」

「神々の最速のクセして露骨な時間稼ぎすんなデスぅうううううう!!!」

「口を割らんというのなら!

まひる殿の棒が黙ってないで御座る!!」

「うん!! 私!! 頑張る!!」

 

 

ブォウン!! ブォウン!! ブォウン!!

 

 

「ひぃん!?、ひぃいいいん!!!

ひゃ、百!、百獣番長ぉおおおおおお!!!

た、たす、たすけてぇええええええ!!!」

「ア"ァ"ン"ッッッ!!?」

「よりにもよって!!

バンチョーレオモンに!!、助けを求める!!

だと!!?、ナナを消そうとしたモンが!!!」

「グゥウウウ!!!、許せないんだなぁ!」

「み、みんな 」

「ばななはーきゅうけい、きゅうけい♪

ね?」

「香子の事頼むな」

「え、えっと・・・はーい・・・」

「もういい!

とっとと神域へのゲート開けろ!、詳しい座標はボクらでこのエリアのログから辿る!」

「天堂さん達にもしもの事があったら!

私達はラグナロクだって辞さないッ!」

「だ、だか、だからぁあああ!

ああ!、もう!、踏んだり蹴ったりだぁ!」

 

 

「見つけたぞ、俊足のメルクリモン

む?」

「おうおうおう?

ありゃあニンゲンに・・・・・・・・・

おうおうおう!、あれはお前じゃないか~?

 

 

マルスモンよ」

 

 

「正確には不純物だ、ネプトゥーンモンよ

我がレイド帝国に勝利を捧げるのに

不要だと判断され廃棄された雑念がよもや転生していたとはな」

 

 

「ホラ!、ホラホラ!、ほぉおおらぁああ!

来ちゃったぁ!、来ちゃったじゃないかぁ!

ど、どどどうしてくれるんだよぉおおお!」

 

メルクリモンの尋問中に浮島に現れたのは

 

マスクや下半身が魚のソレで、手に持つ三ツ又槍も魚をモチーフにしている青く固い鱗鎧に体を覆われた

 

大海の神・ネプトゥーンモン

 

そして、もう1体が・・・炎がデザインされた黒いマントを羽織り、額から角が突き出た豹のマスクを被って

真っ赤なボディスーツ越しに盛り上がった筋肉を見せつける

 

 

闘争の神・マルスモン。

 

 

「・・・・・・・・・あ、うん、それで」

「こいつ、こんなにアホだった、デス?」

 

二柱の会話からパンダモン事ベアモンの出自を察した元聖騎士達は納得するしかない。

 

「おい!、お前ら!

ウチら今すっげぇ忙しいジャン!!」

「Gêner!! Va-t'en!!」

「そうそう!、どっか行ってろジャン!」

「かつての我、その不純物よ

そして、レイド帝国に仇なすニンゲンよ

お前達は何を言っている?」

「「Tais-toi!/うるせぇ!」」

「あべしっ!?」

 

胸ぐらを掴んでいたメルクリモンを投げ捨てて、頭に血が上った様子の1人と1体がマルスモンへと襲いかかる。

 

「《アニマルネイル!、やつざき!》

ジャン!!」

「あんた達に用はないの!!、とっとと消えなさい!!」

 

 

激情に駆られた爪と刃

 

 

 

 

「そうは」

 

 

触れるより早く、振るわれる頑強な両腕。

 

 

「いかん」

 

 

両者にラリアットを食らわせた後

間髪入れずにマフラーを、上掛けを掴み

 

 

「お前達には我が勝利の礎となって貰わねば

 

全てはレイド帝国の為に」

 

 

遠くの浮島に投げつければ

 

2つの大穴が穿たれ崩壊していった・・・。

 

「・・・・・・・・・くろ、こ?」

「「「クロちゃんッ!!?」」」

「「西條さん!!」」

「「「「「パンダモォオオオン!」」」」」

「ケッ!、アホ共がァ!」

「おうおうおう!、お前らは我の手柄だ~」

 

他の面々が助太刀に入ろうとすれば、三ツ又槍を構えたネプトゥーンモンが立ちはだかる。

 

「邪魔しないで!! 」

「そうだ!! 」

 

 

「《ウェーブオブデプス》」

 

 

「「

 

 

イ"ィ"イ"イ"ぁあああアアア"!!!??」」

 

 

 

大海の神が巻き起こしたのは、極大の津波。

 

「《黄鎧!!!》ぬぁああああああ!!!

華恋!、みんなも!、今で御座るッ!!」

「リュー君!、ぐっどぐっど!」

「「やぁあああ!」」

「でぇりゃあああ!!」

「おぅううう!?」

 

ヒシャリュウモンが進化し相殺しながら接近すれば、その体躯の上を舞台少女達が一気に駆け上がりネプトゥーンモンを斬り、殴る。

 

「ね、ねぇ君!、ねぇねぇねぇ!!

そ、そろそろ!、そろそろこの紐離して!

ヒモ!、ヒモはなしてぇえええ!!」

「ダメ」

「《メタルメテオッッッ!》

うん、ちゃんと成長してるねジュンナ・・・」

「「ひぃい"い"いぃい"い"ん!!」」

「カーーーオーーールーーーコーーー!!

敵!、また敵来た!、デスぅううう!!」

「すゃーーー・・・・・・・・・」

 

オウリュウモンを後方から援護するドルグレモンの背中ではひかりが捕虜を拘束

 

純那とアルダモンが半泣きで抱き合い

 

ブイモンは必死に眠る香子を揺さぶっていた。

 

「闘争ッッッ!!!」

「百獣番長、か」

 

バンチョーレオモンとマルスモン

筋骨隆々な2体による大迫力の肉弾戦

 

「お前の相手は我ではない」

「アァン!?

!、ケッ!、こんなモンかァ!?」

「おうおうおう!

あれが情報にあったGAKU-RANか~?」

 

が、始まった途端

 

背後から水滴が散弾のように襲いかかるのだが

 

隻眼の獅子獣人はまるで意に介さない。

 

「なら、これならどうよ?」

「!?、がァぼ!!」

「ぐぬぬぬぅうううん"!!?」

「バンチョーレオモン!?」

「リュー君!!」

「み、水が魚みたいになった!?」

「こいつ!、あたしらの相手しながら!?」

「おうおうおう!、マルスモンよ

とっととあの不安要素を削除してこ~い」

「ならばネプトゥーンモンよ

それまでにこいつらを消耗させておけ

我々の確実な勝利の為にな」

「テメ!、待ちやがァ ぐむ!?

クソッタレがァ!、鬱陶しいなァ!!」

 

 

「・・・・・・・・・ねぇ、アレって

本当にベアモンだったの?」

「ヒカリ、君が知ってるあいつと

闘争の神マルスモンは全くの別モンだ」

「勝つ為ならどんな卑怯な事でもするしッ

その癖、同じ神々なのに

月光を、昔のルナモンを小馬鹿にしてて

いけすかない奴だった!、デスぅ!」

「ちょ、ちょちょ!、ちょっとちょっと!

ディアナモン!、・・・・・・・・・さんについては

し、仕方ないって!

だって、弱かったし!、お、俺よりも!!

 

 

なの、なん!、なんで!?、なんでなんで!

し、しめが!、しめつけがつよく!!?」

 

 

「あなたは黙ってて」

「ふぅううーーー!、はぁああーーー!

もうっ!!、だいじょーぶー!」

「ジュ、ジュンナがガンバっているのなら!

お、オレもぉおおお!!」

 

 

ピチピチピチピチピチピチピチピチ!!!

 

 

「「ィギャやァァあああ"ぁあ!!??」」

「う、ううん!!

こいつら!?、いつの間に!!」

「ふぇええええええん!!」

「ふにゃーーー・・・・・・・・・」

 

ネプトゥーンモンが《ウェーブオブデプス》から派生した水で構成された魚は物理攻撃を受けると弾けてしまい

その滴の一粒一粒が魚になる上に集まるとまた元の大きさになって再びまとわりついてパートナー達の動きを阻害。

 

「本体である我から切り離されても尚

消える事はなかった我々には不要な不純物

 

飽くなき闘争本能、その転生体

 

万が一の可能性も排除しなければならない

レイド帝国に確かな勝利を捧げる為にもな」

 

マルスモンは混乱する戦場から背を向け、落下を始める浮島へと足を運ぶ。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・おい、クロ公」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・なに?」

「お前、今の調子はどうジャン?」

「そうね

 

 

やっと頭が冷えた所、かしら」

 

 

「そっか

 

 

ウチはやっと体が温まってきた所、ジャン」

 

 

そこでは西條クロディーヌとパンダモンが

 

 

穴の中から這い上がり、立ち上がっていた

 

 

昨日のラセンモン・激昂モードや

先程のシェイドモンとの戦いから蓄積している

 

 

疲労やダメージを

 

 

物ともしない好戦的な笑みを浮かべながら。

 

 

「ねぇ、ベアモン

私ね、あんたをパートナーだなんて思った事

この世界に来てから一度もないの」

「うん!、知ってる!

で?、それが?

パートナーとかウチらに関係ねぇジャン!」

「・・・・・・・・・ルナモンがパートナーならって

何度思ったかしら?

でも、それでも

 

 

私のせいであんたが消えるかもしれないって

 

 

ひかりとエリスモンから突きつけられた

現実に及び腰になってた

もしかしたら、あいつもそうなのかも・・・」

「?、??、???

エリスモンが消えたのはエリスモンのせいだろ

なんでクロ公やテンドーがビビるジャン?」

「それ、他の誰にも言わないで

絶対の絶対に」

「お、おう!」

「でも、そう言える

周りの空気とか気持ちとか

歯牙にもかけないあんただからこそ!

私も、覚悟を決められたわ・・・!

もう絶対に振り向かない、前だけを見るッ

精々あんたは私の後ろを勝手に追い回してなさい

 

 

Nounours」

 

 

「それってさ、今までと何が違うジャン?」

「ふっ、ふふ!、そうね!

何も変わらない!、変わらないわ!

変わったとすれば

 

 

乗り越えるべき壁が高くなったってだけよ」

 

 

「やはり、まだ存在していたか

かつての我の不純物とニンゲンよ

これより確実な削除を行う

我々レイド帝国に勝利を捧げる為に」

 

1人と1体が見据える先に降り立つは

 

堕ちた闘争の神。

 

「壁?、あいつが?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・!、そっか!!

テンドー探すのにあいつ邪魔ジャン!!、とっととブチ壊さないと!」

「クスッ、ルナモンじゃないけど

アホな言葉に乗るなんて甚だ不本意

でも、今だけは特別!!!」

「《笹パァアアンチ!!!》」

「我を相手に肉弾戦?、馬鹿めが」

「「知ってる!!!」」

「そして、何より愚か」

 

ただただ勝利を目指して

 

刃を、拳を全力で叩きこもうとすれば

 

巧みな重心移動で躱され、タックルで纏めて

 

「!?」

「「負け!!!   ない!!!」」

 

吹き飛ばされるかと思いきや止めてみせた。

 

「《アニマルネイルぅううう!!》」

「ああああああ!!」

「・・・・・・・・・ッ」

 

マルスモンは零距離から繰り出される攻撃をグローブやブーツに仕込んでいた刃で弾き、一旦離脱

 

「「逃げるなぁあああ!!!」」

「!?、!、く!!」

 

しようとするが、クロディーヌもパンダモンも

 

構わず食らいついてくるので離れられない。

 

「肉弾戦であって肉弾戦ではない!?

なんなんだコレは?、我々のデータにない!

不確定要素が多すぎる!

これでは確実な勝利に支障が 」

「お前頭悪いジャン」

「・・・・・・・・・何?」

「絶対の絶対に勝てる勝負なんてないから!

絶対の絶対に勝つって気持ちでやんなきゃ!

絶対の絶対に負けるに決まってんジャン!」

「を、言いたいのか、まるでわからないッ」

「ごめんなさい、この子頭が悪いの

クスッ♪、知らなかった?」

「ニン、ゲン!」

 

防戦一方となる中、マルスモンはEtincelle de Fierteを握る指に狙いを定め

 

へし折る。

 

「これで がふぅううう!?」

「お生憎様

今の私もね、常軌を逸して頭が悪いの・・・!!」

「大チャンス!、到来!、キターーー!!」

 

痛み等どこかへ放り捨てたクロディーヌに顔面を蹴られ、怯んだ隙を狙いパンダモンは一気に懐へ。

 

「ジャンジャンジャンジャンジャンッ!!!

ジャンジャンジャンジャンジャンッ!!!

ジャンジャンジャンジャンジャンッ!!!

ジャンジャンジャンジャンジャンッ!!!

 

 

ジャッ!!!、ジャーーーーーーン!!!」

 

 

黒い拳を連打し、最後に爪でフィニッシュ。

 

 

「《無限波動!!!!!!》」

「く!?、ぁああ・・・!」「ぐぇええ!!」

 

 

直後、マルスモンの全身から歪んだ闘気が放出され1人と1体は

 

 

吹き飛ばされてしまうのであった・・・。

 

 

 

 

 

☆天界 分かたれし戦場

デッカードラモン号停泊中浮島

 

 

「だぁーーー!、こいっつぅーーー!

のらりくらりとぉーーーーーー!!」

「なのにリュー君達にはあんないっぱいー!

水のお魚ーーーーーー!!」

「ブイモン!、純那ちゃん達は!?」

 

 

「「      ぁひ♪      っ」」

 

 

「どっちもダメデスぅううう!!

ふぇえええ!?、カオルコーーーー!!?

食べられてるデスぅうううううう!!」

「あ、あ、あのあの! ゥッ

も、ももう俺!、おれにげな ァ!

やめ、やめて!、紐に流すの!! ォォウ!

ひも、ひもにソウルを流さ ィエェス!?」

「逃が、さない!!、絶対に!!

天堂さんもレキスモンも、必ず取り戻す!」

「ヒカリ!、無理はするな!!

まずは自分の身の安全と、出来ればジュンナも!

優先してよ!、うん!!」

 

 

「あっちもすっごく大変だよぉー!

ううっ、こんな時あなたが居たら・・・」

「おうおうおう!、もがけもがけ~!

我々と違ってお前らの体力には限りがある

マルスモンが不安要素とニンゲンを消す頃には

奴と打ち合えるモンなど居ないだろうよ~《ボルテックスペネトレート》」

「ぬぁあああ!!」「がァアアア!!」

「「「「うぁああああ!!」」」」

「み、みんなぁーーーーーー!」

「最も、その前に我が仕留めても何の問題もないか~」

「ぐっ、グゥウウウ・・・!

く、くやしいんだなぁ・・・!」

 

すぐ側で立ち竦む自分の事など眼中になく、舞台少女やパートナー達をジワジワと攻めるネプトゥーンモンにシーサモンは歯を食い縛り涙を堪えるばかり。

 

 

「んもう☆、やれやれ☆、しょうがないなぁ☆

選手交代だ、シーサモン

マヒルを、バナナチャンをありがとな」

「!?、し、始祖さまぁあああ!!!」

 

 

「!!」

 

その背後から現れた包帯まみれの影に向け、まひるは神機から展開させた幕を降ろす。

 

「アッ☆ハッ☆ハァ☆、オジサン☆、復活☆

祝砲☆《リヒト☆アングリフ☆》」

「ケッ!、礼は言わねぇぞオヤジ!」

「イラナイ☆イラナイ☆ナイ☆ナイ☆ナイ☆

よく、やってくれた、百獣番長・・・!」

「ったく!、どいつこいつもめんどくせぇなァ!!」

 

ミサイルとレーザーの熱により小魚の戒めから解き放たれたバンチョーレオモンはベオウルフモンと並んで斬り込んだ。

 

「オラァアアアアアア!!」

「グルァアアアアアア!!」

「おうおうおう!、手負いのケダモン如きが~

我に、神に、噛み付くとはよぉ!」

「あっちゃあ☆、魚だけあって☆

お口のチャック☆ユルユルだこって☆」

「おう?

おヴ!、おうんッ、おうんおううん!!?」

 

ネプトゥーンモンにとっては何気ない軽口。

 

 

しかし、ソレは

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

今の彼女にとって到底許せるモノではない。

 

小太刀で鱗をしっかり『処理』した所に

 

大太刀を何度も叩きつける姿は

 

みんなのばななからは程遠かった・・・。

 

「ば、ばななすっごくすっごく怒ってる!」

「2人の怪我はばななちゃんのせいなんかじゃないのに・・・」

「つってもよ、やっぱ責任感じ

 

・・・・・・・・・ったく、いつも言ってるだろ?」

 

 

「《ふぅいんふぇうんふぇええほぉ!》」

「この!、この!、この!、このぉー!!」

 

 

「それは後にしろって!!、香子!!!」

 

上空からネプトゥーンモンを強襲するのは、やけに幅が広いV字状のエネルギー体。

 

「おっ!?、うお!、うおぅ!!

ぼ!《ボルテックスペネトレート・・・!》」

「それはもう、さっき見た!」

「だが!、こいつはどうにも出来まいて!

 

 

《ウェーブ!! オブ!! デプス!!》」

 

 

『!!?』

「「うええええええ!!?」」

 

投擲された思念持つ三ツ又槍を輪と舞で弾くと

 

あっという間に天へと昇り

 

そこからあの極大津波が発生する。

 

「ドルグレモン《メタルメテオ》だ」

「う、うん?、う"んッ!?」

「早くして」

「め!《メタルメテオーーー!!?》」

 

すると

 

天から降り注ぐ大洪水をしっかり見据えながら

 

“あの”1人と1体が突如動き出した。

 

 

「Heaven doesn’t extend a hand of help to the person who doesn’t behave personally・・・・・・・・・」

「《ブラフマストラ》《ブラフマストラ》

《ブラフマストラ》《ブラフマストラ》

《ブラフマストラ》《ブラフマストラ》

《ブラフマストラ》・・・・・・・・・」

 

 

純那とアルダモンは超大型獣竜の口から放たれた巨体鉄球に乗り小声でブツブツ呟きながら・・・

 

手の動きが見えないレベルの早撃ちで矢と

高速連射で超高熱弾を内部へと大量に注入。

 

 

「《ブ ラ フ マ シ ル》」

「ウィリアム・シェイクスピアの言葉よ」

 

 

真っ赤になるまで熱されたソレに

 

極限にまで高められた聖なる炎の爆弾と

 

弓に備わる翡翠を同時にぶつければ

 

神界の天が水色にキラめく

 

連射連発花火【スターマイン】に埋め尽くされ 

 

神の巻き起こした極大津波を触れた端から蒸発させる。

 

「んぎょぅおうおうおう~~~!!?」

「こ、これは!

熱波だけでも水の魚達が消えていく程に高められたキラめきか!?

流石で御座

 

 

純那殿ぉおおお!!、始祖様ぁあああ!!

それ!、ほしはほしでもしちょうせーい!!

ゆくなぁああああああ!!!」

 

 

「縁起悪い事言わんといてや!

2人共ピンピンしとしるし!、なぁ?」

「知能♪指数♪なら!、負けません♪」

「Ho♪」

「芸事の!、裏には♪知識量♪」

「Hi♪」

「スタァ☆を目指して!、日々♪勉強♪」

「Oh♪」

「掴んで!、みせます♪自分星☆」

「Me~La~♪ Me~La~♪」

「・・・・・・・・・なんかインドの映画みたいに激しい振り付けで踊っとるけど!!!」

「みんなブイの背中で好き放題し過ぎるデスぅうううううう!!」

 

だが、その代償はとても大きいモノで・・・。

 

「あい!、ぼぉーーー!」

「純那ちゃあああーーーん!?」

「純那ちゃん・・・お疲れ様・・・本当に・・・」

「ぎょぉう・・・!、ニンゲンめぇえええ!

調子に、乗るな~~~~~~!!」

「!?、こいつのチートはッ、インチキは!

水の魚だけじゃなくて地中水泳能力も!?」

「ケッ!、しゃらくせぇ!!

《フラッシュ!、バンチョーパンチ!!》」

 

ヨロめきながら地面を『潜水』する大海の神を狙って叩き込まれたのは気合いの入った拳。

 

「ッ、テメェらァ!

まァた逃げんのかァアアア!?」

「この状態で馬鹿正直に相手等出来るか~!

い、一旦離れて回復を 」

「それはー!!、ノンノン、だよ!

リュー君!!」

「任されよ華恋!

 

《永世! 竜! 王! 刃!!》」

 

凄まじい遊泳速度でソレを回避すれば

 

巨大な二刀が浮島自体をぶった斬った。

 

「うん、アレじゃまだ泳がれるね・・・

ヒカリ、ちゃんと掴まってろよ!《ブラッディタワー!》」

「・・・・・・・・・コレ、どうしよう?」

「ハッ!、ハッ!、ハッ!、ハッ!、ハッ!

ハッ!、ハッ!、フハッ!、ハッ!、ハッ!

ハッ!、ハッ!、ハッ!、ハッ!、ハッ!」

「後でちゃんと喋れるようになるのかな?」

 

直後、人と神を乗せた超大型獣竜が羽ばたき

 

尾を突き立て、放る事で更に大地を細分化。

 

「ぎょ~~~ぉう!?、くっ!!」

「《ツヴァイ   ハンダーッ!!》」

「「「「!」」」」

 

堪らず飛び出たネプトゥーンモンを狙い

 

亜高速で振り抜かれた大型双刃剣の上から

 

舞台少女4人が猛スピードでかっ飛んだ。

 

「《ウェーブ、オブ・・・デプスッ》」

「ハッ!、そう何度も」

「同じ手にやれたりしないよ!」

 

苦し紛れの津波は双葉がDeterminaterで断ち

 

まひるが回すLove Judgementが散らす。

 

「馬鹿め、網にかかったな!

《ボルテックスペネトレート!》」

「「それ!!」」

「ぎょ!?」

 

華恋とななが投げたのは物理攻撃を89.9%無効化する防御機能が備わる学生服によく似た黒い衣装

 

GAKU-RAN。

 

渦を巻く三ツ又槍はそれこそ網にかかった魚のように絡め取られた。

 

 

「お、う、うおおおおお!!?」

 

 

「《永世! 竜! 王! 刃!》」

「《獅子!!!、羅王漸!!!》」

「《リヒトアングリフ!!》」

「《ドラゴンインパルス!!》」

「《メタルメテオッッッ!》」

 

 

鱗を剥かれ、抵抗する術を失い

虚空を泳ぎながらまな板の上の魚となった海神は

 

 

幾重にも斬り裂かれ、砕かれ

 

 

消滅。

 

 

最後に残ったのはデジタマのみ。

 

「や、やっと倒せた・・・けど!

まだ、終わりじゃないよ、うん!

オウリュウモン、そっちは全員乗ったか?」

「ああ!、いつでもクロ殿達の元へ

 

 

!?、この闘気・・・!

 

 

あやつか!!」

 

 

 

 

 

 

☆天界 分かたれし戦場

 

 

 

 

崩落中の浮島

 

 

 

 

 

「なん   なん、だ   ?」

 

 

 

マルスモンは眼前の光景に目を見開いていた

 

 

かつての自分

 

 

その不純物と廃棄物と断じたソレと

 

 

自分達に仇なすニンゲン。

 

 

今後の戦闘に備え温存していた必殺技まで

 

 

使ったというのに、こいつらは・・・!

 

 

「ふふふっ・・・」

 

 

笑っている、氷のように

 

 

「へへへっ!!」

 

 

笑っている、炎のように

 

 

周囲に砕けた刃の欠片を撒き散らしながら

 

 

笑っている!!!、攻撃的に!!!。

 

 

「!!、!、おおおおおおおおお!!!」

 

 

この堕ちた闘争の神に感情等という我々【レイド帝国】にとって不必要なモノはない。

だというのに、何故か肉体が、データが

震えてしまうのを止められないでいる。

 

「(こ、こいつらはッ

 

今ここで確実に消さなければならない!)」

 

それは決して我々の為ではなく、我の為

自分自身の為の思考【バグ】。

崩落中の大地を全力で踏み締め空中で身動きが出来ないでいる1人と1体の元へと跳べば

 

 

眼前の白熊熊は大熊に退化して

 

 

自分達の周囲を舞う刃の欠片を

 

 

Etincelle de Fierte【誇りの火花】の残骸を

 

 

滅多矢鱈に掴み取っていた。

 

 

「たりっ、ねぇえええええ!!!

「!?」

 

 

先程より大きくなった手で大声で叫びながら

 

 

振り回すのは、オレンジにキラめく熊爪。

 

 

「おおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

 

ソレに対抗すべく炎を纏いながら繰り出すのは

 

頑強な肉体とあらゆる格闘技の知識を活かした

 

空中刹法。

 

目にも止まらぬ早さで突き出す拳の乱撃

 

縦や横に回転しながら連続で放つ蹴り

 

それらに混じって振るう暗器による刺突や斬撃

 

どれも成熟期が食らえば一溜まりもないのに

 

「もっと!、もっともっともっともっと!!

 

もっともっともっとジャアーーーン!!!」

 

「こ、いつ・・・!?」

 

全て弾かれる

 

刃の欠片を熊爪に取り込むついでに・・・!。

 

「まだだ!、まだジャン!

全然ジャン!、これじゃ絶対の絶対に!」

「ぅ!?、あああああああああ!!!??」

「届かねぇ!!!、あいつは!!!

もっともっともっともっともっとぉ!!!」

 

大熊の接近を阻止すべく放った大振りな拳に

筋肉で盛り上がった腕に小熊は乗ると

 

 

《ベアロール》

 

 

つまり、でんぐり返ししながら

 

より一層鋭く大きくなった爪で引き裂きながら

 

マルスモンの胸元へと飛び込んだ。

 

 

「なん、なんだ、なんなんだぁあああ!?

 

 

お前らはぁあああああああああ!!!??」

 

 

それすらも覆す程に鮮烈で熱く輝くオレンジの

 

 

ソウルとキラめきを宿すクロディーヌと共に

 

 

「《小熊   正拳   突きぃ  !

 

 

PlUUUUUUuuuuuuuuuuus!!!!!》」」

 

 

限界にまで腕を引き絞り

 

衝動のまま、本能のまま、全身全霊で穿つ

 

 

 

獲物の心臓【電脳核】を。

 

 

 

「【ロード】」

 

 

デジタルワールドに原初から存在する

 

 

弱肉強食の理のまま敗者は勝者の糧となる。 

 

 

 

カァアアアーーーーーーンッッッ!!!!!

 

 

 

すると、クロディーヌが振り抜いた腕に宿る

 

神機からゴングが鳴らされ

 

星形の画面を掴むように拳の意匠が加わった。

 

 

「輝くチャンスは 」

「絶対の絶対に掴むジャン!!

だからこの体で!、この拳で 」

 

 

炎のようにフレンジが揺れ

 

ぶつかり合うロングソードと拳が描かれた

 

オレンジの幕の下。

 

 

「誰より熱く!!、自由の翼で 」

「てっぺん取るジャン!!」

 

 

傷だらけのクロディーヌが全力で対抗するのは

 

先程まで戦っていた相手と同じ闘争の神

 

だけど、言動は比べモノにならないぐらい

 

アホ。

 

 

「キタキタキタキターーー!!

マルスモ 」

「C'est moi!

 

la star/le sommet!!!」」

 

 

最終的に両者のガチンコによる衝撃で

 

幕がどっかへぶっ飛んだ。

 

 

「・・・・・・・・・あいつらァ何やってんだァ?」

『・・・・・・・・・さぁ?』

「ハァ!、ハァ!、ハァ!、ハァ!、ハァ!

ね、ねぇ!、ねぇねぇねぇねぇねぇ!!

そ、その剣!、剣使わないの?、ねぇ!?」

「なんでそんな事しなくちゃいけないの?」

「アフンッッッ!!」

 

パートナー同士で素手でやり合う姿に、救援に来た筈の舞台少女もデジモン達もどう声をかけたらいいのかわからない・・・。

 

「よっし!、んじゃあ行くジャン!、クロ公!

テンドーとこ!!」

「そうね

待ってなさいよ!、天堂真矢ーーー!!」

『え?』

 

 

バリーン!   パリンパリンパリン!!

 

 

「う"ぅ!、ううんッ!?

お、おいコラー!!

そんな雑にゲート開けるなぁあああ!!」

「は、早くロックしないと帝国が神域に入ってきちゃうデス!、ボッチ!」

「ボッチ言うな青瓢箪!

まったくッ、どいつもこいつも好き放題して!

オウリュウモン、ボクらは先に行く!

君はデッカードラモン号を頼んだ!」

「へ?、え?、あ、あいわかったー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆天界 神々のコロッセオ

 

 

 

「って、ワケジャン!」

「んまぁ♪、ひっさびっさだけど神々同士のデータ連動ってやっぱりとっても便利デシテ♪

アホが説明するのもアホな説明聞く手間もゼーンゼン要らないんだもーん♪

 

 

だが、ワタクシを殴るひ・つ・よ・う・が!

 

 

どこにあった!、デシテーーーーーー!!?

 

 

クロディーヌがテンドーに斬り掛かるのは!

一歩も譲らずもっとやれ!、だけど!

お陰でテンドー超元気ーーーーーー!!」

「決まってんジャン!、ノリ!!」

「だと思ったーーーーーー!!!」

「あ!、ユピテルモン!、おまけのユノモンも!

お前ら!、ちゃんと順番守れよなー!

テンドーはクロ公の獲物ジャン!!」

「ふふふっ、そうか通りで・・・」

「マーヤ様ぁんったら

あんなに素敵にキラめいて・・・」

 

 

 

「「      尊い      」」

 

 

 

「でぃ!、ディアナモーーーン!?

こ、こいつら誰ジャーーーン!?」

「見ての通り、主神とその妻気取りデシテ」

「そ、そっか!」

 

 

「ふぇええええええ・・・!

ゲートのロックとか、久しぶり過ぎて・・・

ブイ、疲れたデスぅ・・・」

「ボクだって、そうだよ、うんッ」

「!、華恋見ろ!!、天堂殿で御座る!!」

「本当!?、本当に本当の天堂さん!?」

「真矢ちゃん・・・!、よかったぁ・・・!」

「あいつらもあいつらで何やってんだァ?」

「アッ☆ハッ☆ハァ☆

ま☆あの子達なりの挨拶的なモンでしょ☆」

「そ、そうなんだけど・・・

ストラビモン、無理に空元気しなくても」

「まぁ、あたしの相棒よりかはマシだって」

「「Ho! Ho! Ho! YoYoYo!! Yeeeeee!!!」」

「ば、ばななはんが元に戻ったんはええけど

うちが寝てる間に何があったん!?

・・・・・・・・・いや、聞かん方がええな、これは」

「ハッ!、ハッ!、ハッ!、ハッ!」

「もうあなたは必要ないから、どっか行って」

「アアァッ!、イィイインーーー!!」

 

破れた空の向こうから

舞台少女とそのパートナー達、更には母艦を運んだオウリュウモンは闘技場に降り立つのと同時に退化。

 

「・・・・・・・・・今日の所はこれぐらいで」

「・・・・・・・・・ええ、そうね」

 

それを見た真矢とクロディーヌは鍔迫り合いを止めて仲間達を迎える。

 

「てんどうさぁあ"あ"ん!!!」

「てんどうどのぉお"お"お!!!」

「ハイ☆ハイ☆、2人共☆ドウ☆ドウ☆

いきなりダイブはマヤチャンも困っちゃーう☆

よく、無事で、居てくれた・・・ッ」

「無事、というなら

あなたもですね大場さん」

「激しく同意、デシテ

まさかあの戦場荒しを撃退するとはな」

「真矢ちゃん・・・!、ルナモン・・・!

私!!、わた 」

「今はディアナモン、デシテ

後、貴様の謝罪等不要だナナ

その刃に倒れ伏したのはワタクシ達自身の弱さが故 」

「ケッ!、究極体になったからって調子乗ってんなァ仔ウサギがァ!」

「・・・・・・・・・ど・お・り・で!

貴様は!、無粋な奴だと思っていたデシテ!

百獣番長!!」

「クスッ、立派になりましたねレオルモン

思わぬトラブルに見舞われましたが

お陰で更なる成長の機会を与えられたんです

今回はそれで良しとしましょう」

「真矢ちゃん・・・うん・・・そう、だね・・・!」

 

 

 

「「      尊い      」」

 

 

 

「お、おい天堂!

誰だよ!、あのやたらギラギラしたの!?」

「雷霆と貞節ッ

う、うん・・・?、なんか様子が変だけど?」

「それはワタクシの台詞デシテ

ヒカリ、貴様メルクリモンに何をした?」

「?、何もしてないけど」

「ハッ!、ハッ!、ハッ!、ハッ!、ハッ!

ご、ごごしゅ!、ゴシュジン!!」

「《グッドナイトムーンッ!》」

「うっ!?、ぅぅー・・・・・・・・・ん」

「あ、寝たわ」「寝たデスぅ」

「おい、そこの漂白された色ボケ共

コレ持って帰れデシテ」

「ああ、マーヤ達の案内は任せたよ」

「マーヤ様ぁん、また後程ぅん」

『・・・・・・・・・マーヤ!!?』

「お願いします、触れないで下さい」

「て、天堂さんも色々あった 」

 

 

「「Hey♪ Hey♪ HooooooOOO♪♪♪」」

 

 

「でぃ、ディアナモン!

さっきの純那ちゃん達にもお願い!

もう2人共ッ、本当の本当に限界なの!」

「見ればわかるのデシテーーー!!

寝ろ!、休め!、貴様らーーー!」

 

 

 

 

 

 

 

☆天界 神々のコロッセオ

停泊中デッカードラモン号、中央通路

 

 

「クックックッ!、カッカッカッ!

そ、それじゃ何かいマヤ?

あ、あんたってばッ

 

 

神を自分のファンにしちまったのかい!?

 

 

おっどろいたー!!」

「ええ、まぁ、そう、なりますね・・・」

「ウチらはしっかり仕留めたジャン!

な?、クロ公!」

「ええ、この手でね・・・・・・・・・最も

アレ、一応はあんただったんじゃないの?」

「おう!、ウチにウチ勝った!」

「ー~ー~ー~!!!」

「やめておけクロディーヌ

こいつ、本能以外を取り戻してもアホは治らなかったようデシテ」

 

 

「シーサモン!、お前!

ナナさんの助けの助け!、よくやってくれた!」

「ああ、お前は『明けの遠吠え』の誇りだ」

「俺ら差し置いて大活躍しやがって!

なぁ?、ガルル!」

「ああ!、グルルの言う通りだ!

羨ましいぞ!、このこのこのこのぉ!」

「み、みんなぁー!

や、やめてなんだなー!」

「コラ☆コラ☆、そんな楽しい事してたら☆

オジサンも混じっちゃうよぉ☆

ワッフゥウウウウウウ☆」

「うるっせぇなァ犬共がァ」

「そう言うなよ、うん

マヒルとシーサモンが上手くやってくれなかったらシェイドモンに一番警戒されてた君はナナに近づく事すら出来なかったんだから」

「私は、そんな、全然・・・ばななちゃんを助けるのに一番頑張ったのは

やっぱりレオルモンだよ」

「アァ?、オレサマは助けてなんてねぇなァ

こいつが勝手に助かっただけだァ」

「れ、レオルモン・・・しかし御主その目 」

「《レオクロー!》」

「ぬぁうん!?」

「りゅ、リューくーん!

今のは、ちょっと仕方ないかなー」

「大場さんの気持ち、ちゃんと考えて」

「す、すまぬぅなな殿ぉ!」

「だ、大丈夫だから、ね?

レオルモンも、すぐ手を出すのはやっぱりよくないよ」

「ケッ!」

 

 

「「                」」

 

 

「2人共死んでるみたいによぉ眠ってはるなぁ

まぁ、今はもう

ほっぺ本気でビンタしまくられる事もないから

安心どすえーーー」

「ふ、フタバぁああああああ!

まだ根に持たれてるデスぅうううううう!」

「こいつしつこいからなー

ま、諦めろ」

「ふぇえええええええええ!!?」

 

朝の暗い雰囲気が嘘のように、明るく語り合う一同。

 

「さて、ワーガルルモン」

「フォッ!?、は、はいぃいいい!

なんでしょうか月光様!?」

「今更そうゆうのは良いのデシテ

これからワタクシの神殿へのゲートを開く

そこならば恐らく補給も可能だろうし、何より一度腰を落ち着けなくては現在の天界の情勢を探る事も儘ならないデシテ」

「わ、わかったぞい!

皆の衆!、発進準備じゃ!」

『ワン!』

「・・・・・・・・・ねぇ、ルナモン

一応訊くんだけど、この子の神殿って」

「ん?、ウチの神殿?

 

 

ここ!!!

 

 

どうジャン!、クロ公!、すごいだろ!?」

 

      ええ、とってもすごいわ」

 

 

「ふふっ、素敵な笑顔ですよ西條クロディーヌ

まるで、あらゆる感情を超越し悟りを開いた僧侶のような・・・」

「ソーデシテー」

 

 

レイド帝国四天王の強襲と暗黒進化

 

戦場荒しという名の悪意

 

そして、神々のエゴイズム

 

多くの苦難を乗り越えた99期生達を

 

次に待ち受けるのは

 

 

 

〔「聞こえる?

 

 

アルフォースブイドラモン

 

 

アル!」〕

 

 

「!」

 

 

〔「やっと

 

 

やっと、繋がった・・・!

 

 

早く君に会いたい、会いに行きたいのにッ

 

 

ボクは、ここから動いちゃいけないんだ・・・

 

 

だから

 

 

きて、くれるよね?

 

 

アルぅッッッ!!!」〕

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

この世界、デジタルワールドの

 

 

ネットワークセキュリティの最高位

 

 

世界樹の守護を司る

 

 

聖騎士。

 

 




※【ロード】=デジモンテイマーズのロード
倒したデジモンのデータを自分に取り込む言わば捕食行為。
このデジタルワールドでは聖騎士や神々といった上位種にしか出来ず、【ロード】されたデジモンはデジタマには還れるがデータの容量がかなり減ってしまい孵化がほぼ不可能となるので、完全削除とはまた違った死と言える。
ベアモンは本能でコレを応用しレイド帝国にデータを改竄された本体を自分の身に取り込むことで主導権を奪った。


因みに、ラセンモン激昂モードが武将にやったのはコレに値しない
本当にただ消しただけである。


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暗がりノクチュルヌ ざわめきの小休止

☆天界

 

 

月光の神殿へと繋がる暗夜の森

 

 

『はぁああ~~~♪ ぁ~あ~あ・・・・・・・・・♪』

 

 

そこでは魚と鳥が融合したような姿の神人型デジモン・セイレーンモン達は陰鬱な曲を溜め息混じりに歌っていた

 

自分達の行く末に絶望し悲嘆にくれながら。

 

「・・・・・・・・・次は、誰、なんだろうな?」

「さぁな、もしかしたら

ここに居る全員なのかも」

「嫌だ、っていう権利すら私達にはないわ」

「いい加減、覚悟決めないとな」

「それが、神に仕える信者としての 」

『!!?』

「こ、この気配!、そんな!」

 

 

『まぁ~♪ さぁ~♪ かぁあ~~~♪♪』

 

 

メロディが変わる

 

闇の中に生まれた僅かな光明宿す

 

希望を信じるモノに。

 

「わぁーーー!

真っ暗だね!、ひかりちゃん!」

「ルナモン、夜の方が好きだから」

『!!?』

 

突如森の中に発生したゲートから現れた鰐型の大型機械の背中で歓声を上げる赤と青の人間【招かれざる異分子】

 

『だ!《第一曲!! 』

「や・め・ろ!、貴様らーーー!!」

 

でぃ

 

 

ディアナモン様ぁあああああ~~~♪♪♪』

「うおっ!?、すっげぇ!!」

「うんうん!、とっても綺麗なコーラス!

・・・・・・・・・あの子、元気かな?」

「ケッ」

 

の間から飛び出たウサギを見た途端

仕える主の再臨に歓喜し美声を響かせた。

 

「よ!、お前ら久しぶりジャン♪」

『・・・・・・・・・ん?』

「え?、アレ?、マルスモン様?」

「何か、雰囲気違くね?」

「い、いや!、でも気配は間違いなくッ」

「なら!、入場曲やらなくちゃ!

うかうかしてたら技を掛けられるぞ!!」

 

 

『Boma ye! Boma ye! Boma ye♪』

 

 

「あ、今そういうのいいから」

『ッッッ!!??!!』

「あ、あんた!、ねぇ・・・!?」

「く、クロちゃん!

ベアモンも悪気があって言ってるんじゃない

と、お、思うよ?」

「アッ☆ハッ☆ハァ☆

闘争チャンったら☆記憶取り戻してパワーアップ☆したカンジだねぇ☆・・・・・・・・・良くも悪くも」

 

あんまりな言い草に拳を震わせるクロディーヌを宥めるまひる。

 

「こ、ここどこーーー!?」

「し、神域!?、いつの間に!?」

「う、うん・・・おはようジュンナ・・・」

「あらまぁ、随分と早いお目覚めで

うちの時とは大違いどすなぁ

ブイはんもそう思いまへん?」

「・・・・・・・・・」

「ブイはん?」

 

その横から正気を取り戻した純那とフレイモンが割って入ってきた。

 

「ディアナモン様!

私共一同、貴方様の御帰還を心待ちに 」

「前置きは良い、デシテ

ワタクシの神殿に変わりはないか?」

「は、はい!

・・・・・・・・・ただ、その!、食料や資材の大半は酒豪様や鍛治様がッ」

「構わない、想定内デシテ

貴様らでは奴らの暴挙を止められる筈もないからな

ああ、後

 

 

ユピテルモンが元の力を取り戻した

 

 

これ以上【ロード】の必要はないだろう」

『!!?』

「ワタクシはこれより自分の神殿へ向かう

その間貴様らは、この情報を他の神の信者にも伝えておくがいい

恩を売るには良い機会デシテ」

 

御心の、ままにッッッ!!!』

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「その顔はなんデシテ?、テンドー」

「いえ、なんでもありません   ふふ♪」

「フン!」

〔「る、ルナモンや・・・

このまま真っ直ぐで、いいのかのぅ?」〕

「遠慮する必要はない、進路上の樹々ならばワタクシが近づけば勝手に避けるのデシテ」

〔「フォウンッ!?」〕

「おい、あいつ

さらっと、とんでもない事言ってんぞ!?」

「さ、流石は神の一柱で御座る!」

「専用のサーバーでならボクらだってこれぐらいは出来るよ、うん」

「おう!、ウチも出来るジャン!

観客席増やしたりとか!、檻出したりとか!

信者用のデッカイ奴!!」

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・そっか、すごいね』

 

舞台少女やパートナー達が悟りきった笑みを浮かべている間にもデッカードラモン号は進んでいき

 

やがて

 

荘厳な雰囲気漂う純白の神殿前まで到達。

 

「ここが、あなたの

月光の神が住まう地、ですか・・・?」

「そうデシテ

おい、アホ熊手を出せ」

「ん?」

 

 

パン! パン!

 

 

「データ連動完了デシテ

そのまま豊穣、ケレスモンの所へ行ってこい

貴様ならばここでも奴を探せるだろう?」

「おう!、余裕ジャン!

んじゃクロ公!、ウチ行ってくる!」

「Attends!、本当に大丈夫なのッ!?

あの子にお使いなんてさせて!!」

「く、クロちゃん!

心配になる気持ちはすっごくすっっごく!、わかるけど!!

自分のパートナーを信じないのはノンノン!、だよ!」

「か、華恋の言う通りで御座る!

ベアモンとてアレでも、えっと・・・一応は!

神の一柱なのだから!」

「ああ、奴がこの神域で迷う事等有り得ない

唯一の問題点は盗み食いの常習犯の不法侵入を豊穣が許すかどうかだけデシテ」

「う"ん!?、不味いだろソレ!!

あの空飛ぶ樹海の怒りを買いでもしたら!

 

 

最悪ボクら全滅するかもしれないのに!!」

 

 

『うんッ!!?』

「余計な情報で場を混乱させるなデシテ

奴はがたいこそ凶悪だが神々の中では比較的話がわかる奴デシテ

この状況で不用意に戦力を減らすような暴挙に出る訳がない

貴様らの所の竜帝とは違うのだからな!

本当に何なんデシテ!?、あいつ!!

成果と被害の釣り合いがまるで取れてなかったデシテ!!」

「そ、その件に関しては返す言葉も、ないッ

ボクらもまさか外来の不穏分子ごと山を2つ3つ一辺に消し飛ばすとは思わなくて、うん」

「ならまず大気圏外まで飛ぶのを止めろ!

奴が出張る度にワタクシがど・れ・だ・け!

事後処理に追われたと思っているッ!?」

「う、うん・・・ごめん・・・ごめんなさい・・・」

「はぁーーー、何や聖騎士って

チンピラ紛いの方が多過ぎとちゃいます?

なぁ?、ブイはん」

「・・・・・・・・・」

「ん?、どうしたブイモン?」

「まさか!、どこか手傷でも!?

すまない!、オレはまた足手纏いに!!」

「私もッ、覚悟してたつもりだったのに!

途中で意識を失うなんて!!」

「え?、純那、ちゃん?」

「まひるちゃん・・・そっとしてあげましょ?、ね?」

「コホンッ!、兎に角!

ここならば帝国の侵入をある程度は防げるし

よしんば攻め入られたとしても異変を察知すれば即座に防衛システムが作動するようにしてある

不意を突かれる心配はまずないのデシテ」

「へぇー、そいつは

 

安心

 

だねぇ・・・、天界に来てから色々あったんだ

ここいらで一旦休んでもバチは当たらないんじゃないかい?」

「ババモン様の言う通りじゃ!、始祖様に至っては未だ傷が治りきっていないというのにあんな無茶を!」

「ワー君☆それ☆オジサン的にはさぁ☆

出来ればナイショ☆にして欲しかったなぁ☆

・・・・・・・・・ジョーダンデース、マヒルサン

ダカラ、ボウブンブンハヤメテクダサーイ」

「ぴぃ!」

「リュウダモン、まひるに脅え過

 

 

・・・・・・・・・ッ・・・・・・・・・」

 

 

「・・・・・・・・・ひかり、ちゃん」

 

 

 

 

 

☆デッカードラモン号、中央通路

 

「本当に!、あんたの心配なんてするんじゃなかったわよ天堂真矢!!」

「すみません西條さん・・・

ですが、大変だったのは事実なんですよ?

問答無用でゲートに引き摺り込まれた挙げ句首に刃物を突き付けられて降伏を余儀無くされてしまって」

「その相手すらファンにしておいて良く言う!、この世界に来てヤな女に拍車がかかったんじゃないの?

 

 

あの子の為?」

 

 

「ふふっ、それを言うなら

 

 

異常な程に好戦的な自分を演じているのは

 

 

誰の為ですか?、西條クロディーヌ」

 

 

「Méchante va!・・・・・・・・・もう休むませて貰うわ

あんたも次の舞台に備えなさいよ」

「ええ、そうします」

 

通路を挟んで火花を散らした後、真矢とクロディーヌは互いの自室に入り

 

 

扉が閉じるのと同時に崩れ落ちる。

 

 

「ハァッ!、ハッ、ハァハァハァ・・・!!

涼しい顔!、しちゃって!

お陰で、こっちまでッ

 

ひっこみ、が」

 

 

 

「フーーー・・・・・・・・・

 

つかなく、なってしま・・・って・・・・・・・・・」

 

 

 

周りの目が無くなった瞬間に重くのし掛かってきた疲労感に身を委ねた主席と次席の意識が途絶えたのは

 

 

やはり、殆ど同時だった。

 

 

 

 

☆暗夜の森 森林地帯

 

 

「ケッ・・・」

「片目だけでは見回りも不自由ではないか?

拙者も同行しようぞ」

 

独り森の中をウロつく隻眼の仔獅子の背後から鎧蜥蜴がのっそり姿を現す。

 

「アァン?、何の話だァ?

オレサマは昼寝の場所を探してただけだァ」

「はっはっはっ!

まぁ、そういう事にしておくで御座るよ」

「ケッ、勝手にやってなァ」

「ならば、勝手ついでに言わせて貰おうか

レオルモン、いやバンチョーレオモン殿

御主、拙者と会う前

・・・・・・・・・いや、それ以上前から

 

 

かつての記憶があったのではないか?

 

 

だから、あのような場所を縄張りにしバコモン達を帝国の魔の手から守ろうと」

「アァン?、したり顔で語ってんじゃねぇ

大体なァ、オレサマが何処で何しようがァテメェには関係ねぇだろうがァ」

「いいや!、関係はあるで御座るよ!

拾ってくれたバコモン達の善意につけ込み!

あわよくば、打倒帝国の為の兵にしようと企んでいたトカゲ野郎にはな!

御主が、体を張って止めてくれなければッ

そのお陰で華恋やなな殿に出会わなければッ

拙者は!!」

 

 

「リュー君!!、すとっぷすとっぷー!!」

 

 

「!?、華恋!!

それに、なな殿とまひる殿まで」

 

リュウダモンが感情的になっているとパートナーと共に2人の舞台少女が登場。

 

「もーーー!、だからそれもうノンノンって

私言ったよ!、言ったよね!?」

「す、すまぬぅううう!!」

「そっか、そうだったんだ

あなたらしいねレオルモン」

「ア"ァ!?、トカゲ野郎のくだらねぇ妄想真に受けてんじゃねぇぞ!」

「はーい、わかってまーす」

「ケッ!、どいつもこいつも!」

「あはは・・・ストラビモンもそうだったけど

みんな私達と会う前から色々あったんだね」

 

 

「            フォン」

 

 

「あ!、お爺ちゃんだ!」

「はい!、爺ですじゃ!

・・・・・・・・・フォッ!?、しまったぞい!!」

「ぬ?、何がしまったので御座る?」

「大方あのオヤジがまァた艦から逃げ出したからそいつに見つからねぇ内に連れ戻そうってハラだったんじゃねぇかァ?」

「そうなの?、お爺ちゃん?」

「ま、マヒルさんッ

始祖様にもきっと恐らく何か考えがあって!

だから!、その!、お手柔らかにぃい!」

「ぴぃいいい!」

 

更に通りすがりの老人狼まで話の輪に加わってきた。

 

「フォゥン・・・」

「お爺さんどうしたの?、何だか元気がないみたいだけど、疲れちゃった?」

「ストラビモンなら私が探して叱っておくから!

お爺ちゃんは休んでていいよ」

「い、いやいや!

天界に来てから頑張り通しじゃった皆の衆!

特に一番大変じゃったナナさんを差し置いてそんな!

・・・・・・・・・ただ、その、のぅ

成長期達が頑張っとった時に完全体のワシは

ゴミに紛れてコソコソ隠れとったと思うと

自分が、情けなくなってしもうて・・・」

「アァ?、なァに言ってんだァ?

コソコソしてなきゃ帝国に狩られてただろうがァ」

「それは、そう、なんじゃが

フォゥーン・・・、ドルモンも言っておったが

やっぱりワシ、レジスタンスの長とか向いておらんのぅ

なのに、雲の上である天界の、しかも神域にまで来てしもうて・・・場違いにも程があるぞい」

「!、ワー爺様それは 」

 

 

「ノンノン!、だよ!」

 

 

「フォッ!?」

「言うと思ったで御座るよ、相棒」

「お爺ちゃん!!

私達のこの舞台での役!、何!?」

「え、えっと・・・救世主、ですじゃ」

「なら!、救われる人・・・・・・・・・じゃなくって!

デジモンが居なくちゃダメだよ!、絶対に!

お爺ちゃんはその代表なんだから!

場違いなんかじゃない!!

だって、私達と一緒に居るってお爺ちゃんの大切な場所で約束したんだから

 

ね?」

 

「カレンさん・・・・・・・・・ォゥンッ!」

 

華恋の言葉に感極まったのか、ワー爺は毛むくじゃらな手に握った布で涙を

 

「フォオオオ!?、危ない危ない!

濡らす所じゃった!!」

「「「「?」」」」

「なんだァ?、ソレ?」

「コレは、のぅ

ワシが使っておったデジタマ袋なんじゃ」

 

拭く寸前だった動きを急停止させ、3人と2体の前に差し出したのは色あせた肩掛けの袋。

 

「もしかしてドルモンを育てていた時のなの?」

「古いけどあんまり傷んでない、ずっと大事にしてたんだね」

「じゃが、もう使う事もあるまいて

なんでヒカリさんにと思ったんじゃが

どちらとも会えず仕舞いで・・・」

「アァー、この森

仔ウサギ臭くて鼻が効かねぇからなァ」

「よーし!、なら私達も探すの手伝うよ!

ひかりちゃん!、きっと喜ぶと思うから!」

「任されよ!」

「い、いやしかし!

やはり皆の衆は休んだ方が 」

「大丈夫よ、お爺さん

それに、今は、ちょっと体を動かしたくて

 

 

 

 

 

 

 

(・・・・・・・・・シェイドモンが言ってたのは

 

 

真矢ちゃんとルナモンの事じゃなかった

 

 

なら、『2人』って誰なの?

 

 

ただの嫌がらせなのかもしれないけどッ

 

 

やっぱり、気になる・・・)」

 

 

 

歩きながら思案に耽るなな

 

 

 

「(ん?、アレ?

 

 

ストラビモンと、ひかりちゃん?

 

 

一緒に居るの?)」

 

 

そのすぐ隣でまひるは探し人達の所在を漠然とだが把握していた

 

 

 

 

入った者の感覚を狂わせる幻惑の力が満ちる

 

 

この森、月光の神の領域で。

 

 

 

 

 

 

☆暗夜の森・神域の境界線

 

 

〔「そちらは上手くやっているようで何より

 

お陰で此方はてんてこ舞いなんだが!?」〕

 

「カッカッカッ!

四天王の一角に加えて神の二柱まで消されちゃあねぇ!、そうなるだろうよ!

ま、大変だろうが頑張んなムーさん」

〔「チィッ!、他人事だからと軽く言って!

 

後!、ムーさん呼びは辞めぇい!」〕

 

「で?、準備の方はどうだい?、ムーさん」

〔「万事万端整っているとも、お前がお尋ねモン共を生け捕りにしてここまで連れてくればいつでも儀式を始められる

 

が!、ムーさん言うな!」〕

 

「そいつは御機嫌だねぇ、ムーさん

だけど、もうちょいと様子見させておくれ」

 

〔「ムーさんではないと!、何度言えばッ!

 

・・・・・・・・・私は構わないが

問題はお前自身だろう?、間に合うか?」〕

「勿論、間に合わせるさ

それがアタシの おっと!

 

悪いが今日はここまでにしとくよ

近い内に直接会おうねぇ ダルクモン」

〔「

 

ああ、文句は直接言わせて貰う・・・!」〕

 

 

「やれやれ、どいつもこいつも血の気が多くてやんなるっての」

 

 

「あ!、バッチャン!

帰ったら丁度バッチャン居た!

やっぱりウチすっげぇー!

ん?、今誰かと話してたジャン?」

「あーーー、そうだねーーー

年取るとねーたまーに見えない何かとお喋りしたくなるのさーーー」

「そっか!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・と、ところで!

アタシに何の用だい?、そんな泥だらけになってさぁ」

「おう!、ケレスモン所行って

 

 

ついでにあいつに勝ってきたジャン!!

 

 

これ!、戦利品!、すごいだろ!?」

「・・・・・・・・・うん、すごいねぇー」

 

得意気に神々しい実を掲げるベアモンにババモンはツッコミを放棄。

 

「まさかとは想うけど、それ神実かい?

そんな貴重なモンをなんでアタシなんかに」

「だって、怪我は治した方が良いジャン?」

「それはそうだけどねぇ、今更そんな事しても無駄だって事はあんた達の方がよーくわかってんだろ?」

「・・・・・・・・・なぁ、バッチャン」

「なんだい?」

「バッチャンはさぁ

 

 

もうすぐ消えるのに怖くねぇの?」

 

 

「なぁに言ってんだい

 

 

怖いに決まってんだろ」

 

 

「なら、どうしてウチらに頼まないジャン?

ジッチャンもだけどさ

消えたくない、消さないでくれって

みんなそう言うジャン?」

「頼んだら何とかしてくれんのかい?」

「無理ジャン」

「だろ?」

「でも、でもさ!

ウチは、前のウチはッ

レイド帝国に、頼んだ、ジャン・・・」

「その癖自分の負けは認めたくなかったってんだからたちが悪いねぇ」

「うん!、ウチもそう思う!」

「自分で言ってんじゃないっての!

はぁー、クロの苦労が骨身に染みるよ・・・」

「なら!、バッチャンこれ食うジャン!」

「・・・・・・・・・そうした方が良さそうだねぇ」

 

老婆が諦めた顔で地べたにゆっくり腰を降ろせば小熊はその横に並んで座り、神実を豪快に割って渡す。

 

「あぁー美味い、流石豊穣神の力の結晶体

嫌味なぐらいにすんごい美味い」

「だろ!?、でも採るとあいつすっげぇ怒るから!

バッチャンだけの特別ジャン!」

「・・・・・・・・・うっまいねぇー、後先の事とかどうでもなるぐらいにー」

「?」

「なんでもないよー

ま、あんたは余計な事考えずに

どーーーん!、とやってればいいのさ

じゃないと、クロに、あんたのパートナーに

筋金入りの舞台少女に勝つなんて絶対無理だ

 

 

それこそ永遠に、ねぇ・・・」

 

 

「!、ヤダ!!

ウチ絶対の絶対に絶対勝つジャン!!!」

「だろ?

なら、アタシの事構うのはこれで終わりにしときなっての」

「うん!、そうする!

でも、今は、もうちょっとだけ・・・

こうしてて、いい?、ジャン?」

「カッカッカッ!

なんだい?、なんだい?

本能以外を取り戻してやる事がそれって!

おっどろいたー!!」

「わ、笑うなよー!」

「カッカッカッカッカッカァ!!

所でさぁ、後どれくらいだい?

 

 

アタシの寿命」

 

 

「あ、えーっと

 

 

今、ピッタリ

 

 

60時間になった、ジャン」

 

 

「へぇー、思ったより残ってたねぇ

 

 

これなら、見たいモンが見れそうだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘘」

「あの、アホ・・・!」

 

 

 

その様子を偶々散策に出ていた純那とドルモンが目撃していた。

 

「し、ってたの?、あなたも?」

「・・・・・・・・・うん

ボクもあいつらと同じでデジタルワールドの管理に関わる存在だから、ね」

「どう、して?、なんで!?」

「言わなかったのかって?、言う必要がないだろ?

ババモンの寿命と君達が人間界に帰るかのどっちが早いかなんてわからないんだしさ」

「でも!、だって!、ねぇ!!

ッ、お爺さんは!!?」

「わからなくても多分気づいてる

その上で残された時間をどう過ごすかババモン自身に委ねているんだ

だからジュンナ、難しいかもしれないけど

 

 

黙って、見てて欲しい

 

 

この世界には

君達舞台少女でも、救世主でも

神々でも、聖騎士でも、番長でも

 

 

どうにもならない事はあるんだから、うん」

 

 

「そ、ん、な!

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・ッ

 

 

ダメね      私

 

 

こんな時に、何も、言えない

 

 

自分の言葉すらも!!」

 

 

「無理に気の効いた台詞捻り出さなくていい

大体、ボクらデジモンは消えても

 

 

デジタマに還るだけだ

 

 

それに、運が良ければボク達みたいに記憶が残ってるかもしれないんだし

君が気にする必要なんてないんだよ

うん、うん」

 

 

「ドルモン・・・ッ

 

 

(そう、この子達にとっての死は

デジタマに戻る、だけ

 

 

だけ・・・、だけど!

 

 

でも!、だからって!

 

 

このまま黙って見てていいの!?

 

 

他に、何かお婆さんの為に出来る事が!

 

 

・・・・・・・・・ううん、こんなのただの私のエゴ

 

 

でも、せめて)

 

 

見るのは、お婆さんの方よ

 

 

私達の舞台をッ

 

 

この世界が救われるのを!!」

 

 

「・・・・・・・・・うん」

 

 

眼鏡の下に新たな決意を燃やすパートナーを

 

元聖騎士は眩しいモノを眺めるように

 

見上げるのであった。

 

 

 

 

 

 

☆月光の神殿 祭壇の間

 

 

「アホ熊は戻ったが

案の定豊穣に喧嘩を売ったようデシテ」

「はぁあああ!?」「ちょおおお!?」

「・・・・・・・・・」

 

サイズが合わない玉座に腰掛けたルナモンが

虚空にこの世界の文字を大量に浮かべながらの呟きに双葉と香子ドン引き。

 

「治療薬の手配はワタクシからしたというのにあのアホやはり内容を確認していなかったな」

「お、おいソレって大丈夫なのかよ・・・?」

「隠士の戯言を鵜呑みにするなデシテ

少なくとも、貴様ら舞台少女は無事だろう

奴とて色ボケ共の二の舞は御免だろうからな

干物にされるとすれば貴様らだ、青瓢箪」

「・・・・・・・・・」

「ん?」

「あー、ウサギはん

何やブイはん、こっち来てからずっとこの調子なんどす

気にせんといてや」

「気になるとすれば貴様ら2人だ

わざわざこんな所まで来て、ワタクシに何の用デシテ?」

「えっと、あのさ

天堂から聞いたよ、お前の昔の話

あんな事があったんなら暗黒進化なんて知って冷静でいるなんて無理なのに、あたし」

「・・・・・・・・・ナナにも言ったが謝罪は不要デシテ

寧ろ、謝るべきはワタクシの方だろう?

八つ当たりをしていたのは事実なのだからな

この作業が一段落した後、改めて貴様の相棒と話をさせて貰うのデシテ」

「あれ?、そういえばあいつどこ行った?」

「というか、あんたはん何してはるの?」

「神殿からシステムにアクセスし

現在のデジタルワールドがどれだけレイド帝国に汚染されているのかを調べたのだが

 

 

正直、後悔しているのデシテ」

 

 

「「!?」」

「・・・・・・・・・ッ」

 

短い手の動きに合わせ、2人と1体の眼前に映し出されたスクリーンにあったのは

 

 

全体の大半が濁った紫に染まった1本の樹。

 

 

「ワタクシ達が居た以外の下界は

他のサーバーは既に陥落済み

天界も時間の問題と言った所デシテ」

「急がないと、間に合わなくなる前に」

「ブイはん?」

 

それを睨む青い小竜の拳は固く握られており

 

普段の弱気を感じられない程に

 

強張った表情をしていた。

 

 

 

 

 

☆月光の神殿 裏手

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

人気の無い場所に潜み、物思いにふける

 

舞台少女・神楽ひかり。

 

 

「おい!!、光の!!、今何て言った!?」

 

 

「!?、フレイモン?」

 

 

彼女の耳が捉えた怒声は烈火の如く激しいモノだった。

 

「どういう事だ!?、降りるって!!」

「言葉通りの意味だ、炎の

神々の助力を得られるようになった今

オレみたいな口だけで中途半端なデジモンが無理に着いていく必要はないだろ?」

「ッ!、お前!!

やけに明るくしてると思ったら!!

またそうやって開き直ってたからか!?

大体!、お前どうやってウラル大陸に戻るつもりだ!?」

「次の目的地は恐らく聖騎士達に守られた重要エリアだ

そこからアクセスすれば下界へのゲートを開けるなんてワケないさぁ☆

ま☆後は☆ヨロシク☆頼ん 」

 

 

「ストラビモンッッッ!!!」

 

 

「・・・・・・・・・なんだよ、フレイモン」

「!!、くっ!!!」

 

フレイモンに顔面を殴り飛ばされたストラビモンが無表情で問い掛ける

 

「待って2人共」

 

そのタイミングでひかりが割って入った。

 

「!?、ヒカリ!

こ、これは違う!!、違うんだ!!

その!、光のの、何時もの冗談だから!!

だから! 」

「うん、まひるにも誰にも言わない

 

 

その代わり、お願いがあるの

 

 

 

 

                    」

                  

 

「!!?、ヒカリッッッ!!!

君まで何を言っているんだ!?

そんな!、そんなの、あまりにも!!!」

「・・・・・・・・・『光』だけに考える事は一緒だったってか?」

「そう、かも」

「アハハ、わかった

君の願い、オレが必ず成し遂げる

だから、さ」

「うん、あなたの分もまひるは私が」

「お、おい!、おい!!

 

 

なんで!、なんでだよ・・・!?

 

 

くっそぉおおお!、オレはオレはぁ!!

 

 

どうしたら、いいんだよぉ・・・ッ」

 

 

 

 

 

 

 

☆月光の神殿 祭壇の間

 

 

数時間後・・・。

 

 

「さて、そろそろ豊穣が現れる時間デシテ」

「いよいよ、新たな神との対面ですか

・・・・・・・・・ユピテルモンやユノモンのようなデジモンでない事を祈りましょう」

 

ちょっといい?、天堂真矢

 

 

なんであんたそこに座ってるの!?」

「それは勿論パートナーですから」

「ソーデシテー」

「くっ!!、見下ろしてくれちゃって!!」

「落ち着けってクロ子」

「「・・・・・・・・・」」

「増えとるー!?

もぉ!、フレイはんまでなんなん!?」

 

ルナモンと並んで玉座に腰掛ける真矢にクロディーヌがいきり立っていると

 

「ディアナモン様!

豊穣、ケレスモン様おなりなされました!」

「通せ、デシテ」

 

 

「もう通っています」

「ぐぇええええええ!!?」

 

 

「な!?」

『!!?』

 

パートナーが足元から発生した様々な植物に襲われ、天井に叩きつけられた。

 

「そして、これは先程のお返しですよ

神々の中で最も野蛮で一番品性がなく

下劣の頂点に立つ闘争の神・マルスモン

よくも私の森を荒らしてくれましたね?」

「お、おいメディウム!

不意打ちしながらほめるなよ!

ウチ怒っていいのか照れていいのかわからなくなるジャン!!」

「ならば、その必要がないように

その余りに余っているエネルギー

その全てを奪い尽くしても構いませんか?」

「構う!!!」

「《ファミス》」

「うおおおおお!?

ま、負けねぇジャアアアン!!

あ!、絡まった!?、動けねーーー!!」

「馬鹿ですか貴方?

すみません、馬鹿でしたね貴方

貴方のような馬鹿のパートナーとなったクロディーヌというニンゲンが不憫でなりません」

「ぁぁぁああぁあ"あ"・・・!!」

 

 

『               』

「やはりこうなったデシテ」

 

 

・・・・・・・・・しばらくお待ち下さい・・・・・・・・・。

 

 

「ぐぇっ ぐぇっ ぐぇっ ぐぇっ」

「見苦しい所を見せましたね皆さん

しかし、こんな醜態を見せてしまった原因は自分で私の元へ来なかったそこの見た目も中身も小動物のせいなので

私は一切の責任を負いません」

「ぐぇぃ!?」

「貴様も変わりはないようデシテ、メディウム」

「・・・・・・・・・あの、ルナモン

今、質問してもよろしいでしょうか?」

「壁に張り付いてるアホのミイラなら

お湯でもかければ恐らく元に戻るのデシテ」

「み、皆の衆!!、お湯じゃーーー!!」

「「「「「ワン!!」」」」」

「いえ、そうではなくて、ですね」

「う、うん・・・誰だよ・・・?、そいつ・・・!」

 

ドルモンがビクビクしながら指を指すのは

 

 

顔の上半分と両手足に重厚な装甲をつけ

桃色の髪から花を咲かせ、蔓を伸ばす

 

 

ユノモン以上に露出の激しい女型デジモン。

 

 

「アルファモン、その転生体よ

空白は会議の席だけにして下さい

私と貴方は何度か会っている筈ですが?

ああ、そうでした

頭クロンデジゾイドと会話なんてとても耐えられなかったのでカルポスヒューレの最奥に身を潜めていましたね私

すみませんでした、一瞬でレイド帝国にやられたデジタルワールドの抑止力殿」

「こいつはメディウム

豊穣の神、ケレスモンの本体デシテ」

「その本体に直々の召集を掛けるとか

私が余人にこの姿を晒すのがどれだけ嫌か理解した上で呼び出すとか

しかもその伝令役がよりにもよってアレとか

宣戦布告と取ろうかどうか散々迷いましたが

私は神々の中で最も温厚で最も聡明なので

今が緊急事態だという判断だってちゃんと出来ますとも

だから全身全霊で我慢しますとも、ええ」

 

 

『(め、滅茶苦茶怒ってるぅううう!!)』

 

 

「安心しろ貴様ら、こいつはこういうひねくれた物言いでしか会話が出来ないだけデシテ

植物型デジモンにはよくある特徴デシテ」

「・・・・・・・・・とんだ風評被害だよッッッ!」

 

 

「よし!、ウチ!、復活ジャぐぇえええ!!?」

「「「「「「ベアモン!!?」」」」」」

 

 

「騒がしくしてごめんなさいねメディウム、どうか話を続けて」

「わざわざ申し訳ありません、クロディーヌ

貴方とは節度ある関係を保ちたいモノです」 

 

色々トラブルはあったが・・・これで漸く舞台少女達は天界の現状について知るに至る。

 

「端的に言えば今の状況はまさしく災厄級に最悪ですね

最早私達デジモンの滅びは避けられません」

「メディウムさん!!

諦めるのはノンノン!、だよ!」

「そうで御座る!、拙者達はその滅びを打ち砕くべくこの天界へとやってきたのだから!」

「ハイ☆ハイ☆、2人共☆

豊穣チャンもその辺りはわかってるって☆、でしょ?」

「ええ、ディアナモンのメモリーの一部を拝見し

私も慈愛の神たるウェヌスモンも貴方達にはこの現状を変えうる確かな力を感じられました

なので、私達二柱は出来うる限りの協力はさせて貰います

・・・・・・・・・あの堕神三柱共は貴方達に全てを捧げる気満々でしたけど」

「あ、は、あはははっ」

「?」

 

メディウムに顔を向けられた真矢は口の端をひくつかせ、ひかりはやっぱりよくわかってない。

 

「えーっと?、これで神様の中でうちらの助けになるんは7人って事になるけど・・・」

「あの魚を除いたら残りは4人か

そいつらはどうなんだ?

まさか、全員やられたとかは」

「いえ、約1体を除いては存命している筈

まず、蛇姫のミネルヴァモンですが

レイド帝国との戦いにより己の力不足を感じたのか、弟のイグニートモンと共に修行の旅に出たっきり

 

 

消息不明になりました」

 

 

『え!?』

「そ、それはワタクシの想定外デシテ!」

「酒豪のバッカスモンと鍛冶のウルカヌスモンはユピテルモンが転生してからというものの

すっかり自分達の神殿に引きこもってしまい

 

 

趣味に没頭しています」

 

 

「あ、それはワタクシの想定内デシテ」

『えええ!!?』

「最後に日輪のアポロモンについてですが

 

 

私の説明は、必要ですか?」

 

 

「!、要らない、デシテ

半身の行方がわからぬ程

落ちぶれてはいない、デシテッ」

「ルナモン・・・

 

 

ああ、そういえば、メディウムさん

そのアポロモンが行ったという情熱的な告白とはどんなモノでしたか?」

「確か、世界よりも己の使命よりも

 

 

ディアナモンを愛してしまったとか直球で言っていましたっけ?

 

 

最も、直後にレイド帝国に削除されたのでムードも何もありませんでしたが

・・・・・・・・・まぁ、お陰で私達は助かったので一応は感謝しないでもありませんが」

 

 

「「「「「「「「

 

 

            」」」」」」」」

 

 

 

「アァン?」

「め、めでぃうむっ、きききさまなにを?」

「そうジャン!、クロ公達にウソ言うな!」

「お、おおデシテ!、言ってやれアホ熊!」

「あいつはディアナモンが泣くのも消えるのもイヤだって言ってたジャン!

それに、残飯処理とか言いながら出してくれる料理また食べたいって!

 

 

ちゃんと笑った顔の方が好きだって!

ほら!、愛したなんて言ってねぇジャン!」

 

 

「ぐぎぃぃぃいいいいいいぃぃぃ!!!?」

「!、そうジャン!

ごめんなルナモン!、ウチだって怖じけづいたのに・・・お前が隅っこに隠れて消えたくないって泣いてたの馬鹿にしてた!!」

「私も、いくら世界樹の決定だからといって

いくらそれしか手段がないからと突き放すような態度をとって、すみませんでした」

「あ・や・ま・る所そこじゃなーーーい!!、デシテ!!

おい、テンドーなんだそのニヤけ面は!?」

「ねぇ、ベアモン

そのアポロモンについてもっと詳しく教えてくれない?」

「「「「「うんうん!!!」」」」」

「おう!、あいつは 」

「訊くな貴様ら!、そして黙れアホ熊!」

「カッカッカッ!

いやぁ、おっどろいたー!

いくら女型多いからって乱れ過ぎだねぇ神々って連中は!

後!、あんたら食いつき過ぎだっての!」

「お婆、さん・・・」

 

豪胆に笑う包帯の取れたババモンに純那が向ける視線はどこか悲哀に満ちていて・・・。

 

「ゴホン!、ゲフン!、エフン!

は、話を進めるのデシテッ

メディウム、例のモンは?」

「ちゃんと持ってきていますとも

ただ、現在私の森で保護しているか弱きデジモンや傷ついたデジモンの為の分もあるので

あまり数を用意出来ませんでしたが・・・」

「うん!?、ちょっと待て豊穣!!

じゃ、じゃあ!

あの時の!、被害は!?」

『!』

「レイド帝国側だけです

それでも、アレは決して褒められた行為とは思いませんが

まぁ、武将による天界の損失と比較すれば情状酌量の余地はあるとも思いますので

私からとやかく言うつもりはありません」

「・・・・・・・・・!

ありがとう、ございますメディウムさんッ」

「感謝の言葉ならばテンドーとクロディーヌに言いなさい

貴方の行いに一番文句をつけるであろう神々を籠絡してくれたのですからね」

「おう!、前のウチならヒカリ消してた!」

「「ベアモン、ちょっといい?」」

「ん?、なん・・・・・・・・・」

「ぴっ!」

「華恋、まひる落ち着いて

そう言われても仕方ないから・・・」

「止める必要は無いデシテ

あのアホ、本能以外を取り戻してから口が軽くなり過ぎているからな

セイレーンモン達よ、豊穣から託されたモンをここに」

『はぁあああ~~~い♪♪♪』

 

歓喜に満ちた合唱と共に舞い降りる信者達。

その手により運ばれてきたのは小瓶が30本程入った木箱だ。

 

「?、ジュース?」

「ジュースではないデシテ、ナナ

豊穣の神の森たるカルポスヒューレで採れる神実から造らせた最上級の回復薬デシテ!

 

大抵の傷ならばたちどころに治る上!

 

どんな状態異常に陥っていても本能的に飲み干してしまう程の甘美な味わい!

 

勿論!、しっかり完全回復!

 

これさえあれば・・・

 

ロゼモンの魅了も催眠も恐れる必要はない!

 

デシテ!!!」

 

「ふーーーん?、へぇーーー?、ほーーー?

そりゃあーーー、すごいねーーー」

「ついでに言えば!、奴のけったいな小技等!

本来の力を取り戻したワタクシの前では無意味だと思い知らせてやるのデシテッ!」

「ええ、例え役柄を棘姫に書き換えられても

あの戯曲さえあれば、その上から更に上書き出来ますものね

私達を侮った事、後悔させましょう」

「「ふっふっふっ・・・!」」

 

            かっふん!!?」

 

 

「バ、ババモン様ぁあああ!?」

「お婆さん!!、大丈夫!?」

「な、なんでもないっての!

ちょぉぅ、ちょっと!・・・・・・・・・そう!

ツバが、ねぇ!、変な所、入って!!

 

うっそだろぉ!!?

 

 

アタシ!、アレ編み出すのに!

何十年掛かったと思ってんだい!?

それを話聞いただけでやってのけるってぇ!

ああ"ー!、やだやだ!、やだねぇ!!

これだから上位個体ってのはさぁ!!)」

 

ワー爺と純那に背中を摩られながらババモンは何故か、玉座で踏ん反り返っている月と星コンビに恨めしそうな視線を向ける。

 

「アッ☆ハッ☆ハァ☆、流石は月光チャン☆

ずーっと奴の対策を考えてたってワケかぁ☆

あ☆そうそう☆豊穣チャン☆

 

 

聖騎士は今何体生き残っている?」

 

 

「ッ」

「スト、ラビモン?」「ひかりちゃん?」

「ぐぇぇぇぃッ・・・!!」

 

パートナーと運命の相手の雰囲気が変わった事を察し、まひると華恋は教育的指導を中断。

 

「先の総攻撃の際に先陣を切った13の聖騎士達

あ、いえ、それよりも前に出ていた無謀で無法者な猛獣と害虫がいましたっけ?

しかも、あっさり返り討ちにされてましたっけ

ねぇ?」

「ア"ァン!

喧嘩売ってんのかァ!?、デカ物がァ!!」

「やめて!、レオルモン!

メディウムさん、ごめんなさい・・・」

「貴方が頭を下げてもそのケダモノは何とも思わないでしょうから気にしないで下さい

そして、番長という集団は大体がこうなので協力の要請はするだけ無駄だと思いなさい

まぁ、そこに転がっている馬鹿と同じくらい私の森を荒らす害虫が居ないだけ・・・・・・・・・話が逸れましたね

現在存在が確認出来ている聖騎士は

軍師ドゥフトモン、矛盾クレニアムモン

神威ガンクゥモン、そして

 

 

黄金マグナモン、以下の4体です」

 

 

「!、・・・・・・・・・」

「少なッ!、神様の半分以下やん!!」

「や、やはり、オメガモン様はあの後・・・」

「うん、わかってたよ、うん うん」

「ドル、モン・・・

ッ!、もうこれ以上あなたの仲間を減らす訳にはいかない!、この世界を救う為にも!!」

「わかっているのデシテ

故に、ワタクシ達が次に目指すのは 」

 

 

「デジタルワールドのシステムの最奥

世界樹のコアに敷かれた最終防衛ライン」

 

 

「え?、ブイ、はん?」

「圧倒的な物量と兵力を持つレイド帝国の本隊を相手にたった4体で絶望的な防衛戦を繰り広げてる

武将があんな所に居たのも、そのせいで」

「ええ、矛盾の聖騎士を餌に

武将をあの場所まで誘い込んだ所に

更に陽動部隊を展開し、数少ない有効戦力が撤退するだけの時間を稼ぐという

 

単なるその場凌ぎの消耗戦ですね

 

軍師の手札も既に尽きていると見て間違いありません

次に武将に匹敵する戦力がぶつけられれば

防衛ラインの崩壊は免れないでしょう、そうなれば・・・」

「!、全部終わりジャン!!

世界樹の核が帝国のモンになったら!

デジタルワールドもデジモンも!

みんなみんな!、あん時のウチになる!!」

『!?』

 

ベアモンの、かつて敵の手に堕ちた経験者の実感のこもった言葉が舞台少女達の心に重くのし掛かる。

 

「ですが、ユピテルモンが力を取り戻した今ならば 」

「テンドー、それ無理ジャン

あいつはお前に言われたら絶対の絶対に従うけど、聖騎士達の方が絶対の絶対に突っ返すから」

「な、なんでなんでぇーーー!?」

「何故!、この窮地に神々の助けを拒むで御座る!?」

「それは

 

 

神々にはかつての外来種・・・

七大魔王の侵略に加担した疑惑があるからだ

 

 

万全の状態でボクらの方が数的にも優位

しかも創世神の目がある中でなら共闘もやむなしだったけど

この状況で軍師が神々の協力を受け入れるのはまず有り得ないよ、うん」

「そんな!!、そんな大昔の疑惑だけで 」

「残念ながら疑惑ではないのデシテ、ジュンナ」

「ええ、頭がタコで中身もタコな先代の鍛治神が

暴食の魔王に惚れ込んで自分の造った力作を

 

 

武器を、横流ししたのは

 

 

紛れもない事実なのですから」

「ウチら何も言えねー!」

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

まさかの理由に一同絶句。

 

「という訳なので、ワタクシ達はこれより

あの頭クロンデジゾイド共の説得を試みる

貴様ら舞台少女のキラめきならば可能だろう

奴等の凝り固まった思考データ等

 

 

丸っと吹っ飛ばしてしまえデシテ!!!」

 

 

「げ、月光チャン☆

それさぁ☆、下手すると☆

マヒル達を奪われるってリスクがあるの忘れるなよ?

本当に大丈夫か?、特に貞節の奴

あいつ、マヤチャンが人間界に帰る時妨害してくるかもしれないだろ?」

「先の事など一々気にしていられないデシテ

それに、もしそうなったとしても

テンドーの髪一本でも放れば奴は確実にそれに気を取られる

その隙に帰らせればいいだけの話デシテ」

 

 

「いい訳ないでしょッッッ!!?」

 

 

「ルナモン、今の内に渡しておきますね」

「いや、直前に抜いた物の方が効果が高い筈デシテ」

「わかりました」

 

 

「あんたはあんたで!!、わかってんじゃないわよッッッ!!!」

 

 

「お、落ち着けってばクロ子!

お前は何にキレてんだよ!?」

「メディウムさん、色々ありがとうございます

お陰で私達がやるべき事がわかりました

後は、行動あるのみッ

みんな!、早く行きましょう!」

「アァン?」

「じゅ、純那ちゃん・・・?」

 

明らかに様子がおかしい純那にレオルモンとななが困惑する。

 

「ねぇ、ひかりちゃん

どうかしたの?」

「どうって何が?

それより星見さんの言う通り急がないと」

「だね☆だね☆駆け足☆駆け足☆

ワッフル☆ワッフル☆」

「ま、待ってよストラビモン!」

「ぬぅん?」

 

彼女達の近くでは華恋やまひるもまた2つの『光』から違和感を覚えていた。

 

 

そして

 

 

「・・・・・・・・・」

「ブイはん!、なぁ!?

なぁにさっきからうちの事無視してん!?」

「カオルコ」

「!、話する気あるんなら!

顔ぐらいちゃんと合わせ 」

 

 

「ありがとう」

 

 

「・・・・・・・・・は?」

「ーーーーーー!!!」

「はぁあああ!?、ちょお!?

なんでそないな事言い逃げしてん!?」

「どうした?、香子?」

「ッ、別に、なーんもありまへんえ!」

 

 

「(なん、なんだ?

 

なんで、みんな心がバラバラで・・・!?

 

 

怖い、コワイコワイコワイコワイコワイ!!

 

 

何か、おそろしいことがおきそうで こわい

 

!、いや!!

 

弱気になるなッ!!!、オレッ!!!

 

フタバの相棒として!

 

成すべき事を!、やるべき事を!

 

全力でやり遂げるんだ!!

 

そうすれば、きっと・・・!)」

 

 

 

 

 

 

青の小竜は、かつて最速の聖騎士だった存在は

 

 

「あ、ああ!

 

もうすぐ!、もうすぐそこに行くからッ

 

だからもう少しだけ、待って、て、欲しい!

 

 

 

マグ・・・ナ、モン・・・!

 

 

 

(だいじょうぶ

 

きっと、だいじょうぶ、デスぅ

 

ブイみたいな

 

泣き虫で弱虫でみっともない青瓢箪

 

 

 

 

居なくなってもカオルコは

 

 

 

全然気にしない、デス)」

 

 

 

道を分かつ覚悟を固めていた。

 

 

 

 

 











独白劇『■■の汚点』








僕と『アル』のデジタマが孵ったのはほぼ同時だったらしい。
それから、僕らはずっと一緒だった。

チビモンになるのも、ブイモンになるのも


そして、聖騎士に至るのも一緒。


だからこそ『アル』は僕にとっての


光だった。


その光がある日突然穢された


戦場荒しのシェイドモン


この世界に存在してはいけないバグ


ニンゲン共の悪意の集合体によって。


「あ!、アル!、マグ!
おかえり!、早かったな!」


おまえッ、何やってん!・・・だ・・・?」


「ああ、これか?
へへっ!、すごいだろ?
これでもう


ガキ達が勝手にどっか行く心配はないぜ!」


「いたい!!!、いたいよぉおおお!!!」
「たすけ!、てぇ!」
「あるぅ!、ま、ぐぅ!」
「はず、し、てッぉ」


「良いアイディアだと思ったのに他の連中は怒ってさ!
しょうがないから


暇潰しで遊んでたんだ!   ぎひっ♪」


奴は、嗤ってた、ブイドラモンの


僕らの同胞の顔で


チコモンやチビモン、ブイモンを【繋げて】

50体ものブイドラモンを無残な姿にして


嗤ってたんだ


だけど、奴が一番楽しそうだったのは・・・


「うぁ"!!ぁぁ"あぁあああ!!!!
ちがうっ!、ちがうぅう!!!
ある、まぐ、コレ!!!


俺が、やったんじゃなァアいッッッ!!!


え?、【俺】だろ?
笑顔で近づいてきたガキ達を踏みにじったのは【俺】の足で
それに怒った仲間達を壊したのも【俺】の口と手だ
ちゃんと感覚、繋げてたんだからわかってるだろ【俺】?

ぎひっ!


ぎゃはははははははははははは!!!!!


流石は温室育ちの坊っちゃんドラゴン!

有頂天からドン底に叩き落とされた時の絶望

結構イケるぜぇ?」


守るべき幼子を、共にあるべき仲間を

害してしまった事に深く絶望する

宿主の泣き叫ぶ姿だ。

「お、まえ

お前はッ!、どうして!

なんで!、こんな事!!?」


「え?、特に理由はないぜ?
あ、強いて言うなら趣味と実益?
うーん・・・、ちょっと違うな


コレが楽しいからに決まってんだろ?


バーーーーーーカ!!」


「!!」


信じられなかった


今まで僕らが任務の中で戦ってきたデジモン達にあったモンが、こいつにはまるでない。


まるで、それこそ悪意そのもので・・・。


「よーし!、いっちょやったるか!

覚悟しろ!、アルフォースブイドラモン!」


「・・・・・・・・・!」
「!、アル!!」


呆ける僕の目の前で奴は『アル』に襲いかかる


同時に、『アル』の振るった光の剣が


宿主を、僕らの同胞の体を斬り捨てた。


「・・・・・・・・・ア、ル?」




こうするしか、なかったんだ!!!


そうだろ!?、マグ!!


だから!、俺は!


俺はッ!!



うわぁぁぁああああぁぁあ!!!!!!!」



「・・・ッ・・・・・・」


『アル』はやっぱりすごかった


迷う僕なんて置き去りにして


正しい選択を即座に決断し実行したのだから


例え、ソレがどれだけ辛いモノだとしても!


なのに、あいつは・・・!



〔「ヤッホー♪、元気?

黄金の聖騎士様~~~♪」〕


「!!、シェイドモン!!?
何故だ!?、お前はあの時!!
アルが消した筈だろ!!?」
〔「チガウヨー、ニゲタンダヨー
最速の聖騎士様カラネ!
ドウ?、スゴイ?、スゴイデショ!」〕
「くっ!、ここは僕の精神世界か!!
今度は僕に取り憑くつもりだな!?
そうは 」


〔「エ?、チガウケド」〕


「・・・・・・・・・は?」
〔「タダハナシニキタダケダヨ?
アルフォースブイドラモンッテサ~



カ ワ イ イ ヨ ネ ェ ?」〕



最初、何を言っているのかわからなかった 


〔「フダンハアンナイバリクサッテルクセニ

ミットモナクナイチャッテサ!


ホント!、カ~ワ~イ~イ~♪♪♪」〕


「!!?

うる、さい、うるさいッッッ!!!
アルを、馬鹿にするなぁあああ!!!」


〔「ギャーッハッハッハッハッハッハァ!!
ムダムダムダムダムダムダムダダヨ~♪
精神世界デ、コノシェイドモンヲドウニカデキルワケナイダロ?

ソレグライチャントカンガエロヨ、マグ」〕


いくら技を放っても、耳を塞いでも


〔「ギャハギャハギャハギャハギャハ♪


マーグナモン!、マーグナモン!

アーマーターイ!

聖騎士ユイイツノアーマーターイ!

ソトハキンピカ御立派ダケド!

ナカハお子ちゃまバーブバブ♪

守りの要?、ウン!、ソウダネ!


マモレルノハジブンダケダケドネー!!


ギャハハハハハハハハハ!!!!!」〕


奴の声が聞こえる、聞こえるんだよ!!!


今でも!!!


〔「ネェネェ、今ドンナキモチ?

ドンナキモチ?


憎い?、憎いデショ、トッテモ憎いヨネー


ナラ


コノシェイドモンヲ産み出したッ



ニンゲンヲ    憎め!!、怨め!!」〕



「      ニン、ゲン      」



〔「


サテサテ、アトハカッテニ燃え広がるのを


マテバイインダケド・・・


ソレハ、ツマラナイナー


ア!、ソウダ!


ソレマデ、バンチョータチトアーソボ♪


ギヒッ!」〕







奴の言葉通りだった


僕は、守れなかった


『アル』を



レイド帝国なんてワケわかんない連中から


だから、うん、わかってるよ『アル』


僕はちゃんとわかってるから安心して!


どうして、天界に来てすぐ


僕の所に来なかったのか


その理由はわかってるから!



あの薄汚いニンゲン共が居るからなんだよね



だから、今度こそ僕が君を守る、助けるよ



そして



後悔させてやるよ、ニンゲン



僕から友を奪った事を



お前の


トモヲ、ウバウコトデナァアアアッ!!!



くくく、ははハ・・・


ハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!






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幻の中のブイドラモン アルフォース瞬く刻

大陸出発後から回収してきたジャスティモンや元アンドロモン達、ネプトゥーンモン等のデジタマは月光の神殿に安置してあります。


☆天界

 

 

世界樹核付近 最終防衛ライン

 

 

神域からのゲートより

 

その場を訪れた9人と8体を待っていたのは

 

 

 

「な、何だか、とっても

 

 

ピッカピッカしてるーーー!!?」

「ま、まぶしいでござるぅううう!!」

 

 

目映く輝く黄金で造られた広大な壁。

 

 

「こ、これは一体何なんデシテ!?」

「メディウムさんの話には出てきませんでしたが・・・」

「とりあえず!、行ってみるジャン!」

 

 

バチバチバチバチバチバチバチッ!!!!!

 

 

「ぐぇええええええ"ぃ!!?」

「へぇ、不用意に近寄ればああなるのね」

「く、クロちゃん・・・

少しでいいからベアモンの心配もしてあげよ?」

「まァ、お陰でアレがヤバいってのはよーくわかったなァ

おい、ドルモン」

「ボクだってこんなの知らないよ!

ただ、この気配は間違いなくあいつだ

 

黄金の聖騎士マグナモン!

 

世界樹の守りの要!、見てるんだろ!?」

『!』

「お前だってボクの気配はわかる筈だ!、とっとと出てこい!!」

「お願い!、私達はあなた達に話があるの!

この世界、デジタルワールドを救う為に!

(残り2日、それまでに終わらせないと!!)」

 

ドルモンや純那が必死に声を掛けるが

 

返答はない。

 

「チッ!、黙りか!

青瓢箪!、出番だ!

あいつは君の言う事なら必ず耳を傾ける!」

「・・・・・・・・・」

「ドルはん、それどういう意味なん?」

「マグナモンとかつてのこいつ!

アルフォースブイドラモンは産まれた頃からの付き合いなんだよ!、だから 」

「は?、ちょ、ちょっと待て!!

そんなのあたしら聞いてねぇぞ!!」

「そ、そうだよ!、そうだって知ってたら!

もっと早くブイモンを連れて来たのに!!」

 

突然の暴露に双葉と華恋が色めき立つ中

 

「成る程なぁ

さっきのそういう意味だったん?」

「カオ、ルコ」

「うちに最後まで付き合う言うとった癖に

・・・・・・・・・まぁ、ええよ、好きにして」

「お、おい香子!

お前、まさか!!」

「双葉はんがこの子の立場なら

おんなじ事、するんやない?」

「!、だからって!!」

「フタバ、カオルコを

ううん、そんなの言う必要なんて、ない

・・・・・・・・・か」

「ぶ、ブイモン!?

待つんだ!、だって!!、君は!!」

 

ブイモンは黄金の壁に触れる

 

 

すると、呆気なくすり抜けていった。

 

 

「みんな、安心して、欲しい

ちゃんとあいつらに、頼んで、くるから

 

だからどうか、この世界をッ

 

 

ーーーーーー!!!」

 

 

「ぶ、ブイモン!!、待って!、待ってよ!!」

「いかん華恋!、下手に触れれば御主もベアモンの二の舞で御座る!!」

「でも!、だって!、こんなの!

香子ちゃん!、本当にいいの!?」

「あんな泣き虫で弱虫で、なのにすーぐ調子乗る青瓢箪居ない方が精々するわ」

 

 

 

〔「

 

 

うるさい

 

 

お前がアルを語るなよ ニンゲン」〕

 

 

『!?』

「この声!、マグナモン!!

お前、やっぱり見てたな!」

〔「相変わらずうるさいなボッチ

あれだけデカい態度取ってたのに

レイド帝国に瞬殺されたような奴が

 

 

ニンゲンのペットになったような奴が

 

 

この選ばれし存在

聖騎士創設の起源に連なる一族たる僕に偉そうな口を叩くなよ、ゴミめ」〕

「ご、ゴミって・・・!?

ドルモンはあなたの仲間じゃない!」

〔「ピーピーピーピーうるさいなー

そいつがゴミならお前達は公害だ

 

 

シェイドモンを産み出したニンゲンめ」〕

 

 

「!?、シェイドモン!!」

〔「だからお前は助かったんだろ!?そうに決まってる!!そうじゃなくちゃおかしいんだよ!!間違ってる!!お前が生き残ってなんで僕らの同胞は消えなくちゃいけなかったんだ!?ええ?

 

言ってみろよ!!、卑怯モン!!!」〕

 

「え、あ」

「!?、なな!!」

「テッメェエエエ!!!

どっちが卑怯モンだァアアア!?

隠れて好き放題言いやがって!!」

〔「ギャーギャーうるさいな!うるさいんだよ!どいつもこいつも!うるさくてうるさくて仕方ない!!」〕

「・・・・・・・・・おい、隠士、こいつは」

「言うな月光!!

それ以上は言うなよッ、頼むから!!」

「!、みんな伏せろぉおおお!!」

 

 

『《ブイブレスアローMAX!!!!!》』

 

 

ストラビモンが吠えるのとほぼ同時に

 

V字型の超高熱線による爆撃が

 

舞台少女とパートナー達を強襲。

 

「華恋!、大丈夫!?」

「う、うん!、リュー君も平気?」

「なん、の!、これしき!

!?、華恋!!

香子殿達が居ないで御座る!!」

「ぇ」

〔「奴等は僕が直接始末する、だから」〕

「わかってるさマグさん!

シェイドモンを産み出して!

俺らからアルさんを奪ったニンゲン!!」

「許せねぇえええ!!」

「消してやるッ!、消してやるぅ!」

「そんなモンに味方するお前らも同罪だ!」

 

 

「な、に、これ・・・・・・・・・?」

「マヒル!!、呆けるな!!、構えろ!!」

「ナナ!、おい!、テメェ!!」

「だ、だって!

この子達だって、シェイドモンの・・・!」

 

 

「なぁ!、クロ公!

こいつらシェイドモンに負けたのに

シェイドモンに勝ったウチらに

なんでこんなに偉そうジャン!?」

「わからないわよ!

わからない、けど!」

「ええ、降りかかる火の粉は払わなくては」

「くっ!、これでは共闘を持ち掛ける以前の問題デシテ!!」

 

 

「・・・・・・・・・ーーーーーー、ふざけないで」

「ジュンナッ」

「ふざけないでよ!!

私達は!

こんな所で足を止めていられないのにッ

 

 

邪魔!!!、しないで!!!」

 

 

「ジュンナ!、くそ!!

だから教えたくなかったんだよ!!」

 

 

剥き出しの憎悪と共に牙を爪を向け殺到する 

 

 

古代竜の集団。

 

 

その標的は長年追い続けてきた

 

 

ニンゲン【幻想の存在】。 

 

 

 

 

☆黄金の壁内部

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ!

遅く、なって、わる、かった!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

金一色の空間をブイモンとしての全力疾走で駆け抜け、漸く果たしたかつての友との直接対面。

 

「マグ、ナ、モン?」

「!、ごめんアル!

今、余計な事に気を使っててさ!

でも、もう大丈夫だよ!」

「そ、そ、っか

あの、マグ、ナ、モン」

「なんだい?、アル?

というかさ、どうして昔みたいに呼んでくれないの?」

「あ、そ、の、ごめ!」

「謝らなくてもいいんだよ!

僕の方こそごめん・・・

せっかく、肥溜めみたいな下界から戻ってきてくれた君をすぐに迎えに行けなくて・・・」

「し、しかたないッ

だって、世界樹のセキュリティシステムと

一体化、したんだから!」

「そう!そうなんだ!凄いだろ!見てくれよ!

 

この黄金色の空間!!これ全部僕なんだ!!」

 

「す、すごい、な

流石、マグ、ナ、モン」

「・・・・・・・・・ねぇ、アル

 

どうしてそんなに脅えてるの?」

 

「お、おびえてなんか 」

「ああ!、もしかして!

 

こいつらが追って来ないか心配だった?」

 

「!!?、ふ、フタバ?、フレイモン?

 

 

カオ、ルコ?」

 

 

「もう大丈だよアル何の心配も要らない

今度こそ僕が君を守るどんな奴等からも

 

 

レイド帝国からもこのニンゲン共からも」

 

 

「かは!」

「ぐ!、ぅ!」

「ふ、たりとも・・・!」

 

その少し離れた場所に、黄金の床に

 

乱雑に叩きつけられたのは今の自分の仲間達だった。

 

「ま、マグ、ナ、モン!

どうして、なんで、こんなことを!?」

「どうして?アルこそおかしな事言わないでくれよシェイドモンを産み出したのはこいつらニンゲンなのにソレを倒して英雄面しちゃってさ!マッチポンプもいいところだ!

君もそう思わないかい?、アル?」

「そ、それ、他のニンゲンに、宿主になった

ニンゲン、には!、言ってな 」

「勿論言ってやった!僕らの同胞が消えて!お前が存在してるのは間違ってるって!

卑怯モンってさぁ!」

「!!、ナ、ナぁ・・・!、ごめッ」

「どうしたの?、アル?

泣いてるの?、どうして?」

「ひっ!」

「・・・・・・・・・アル?」

「あ、ちが!、コレは!」

「どうしちゃったんだよ?

オドオドしちゃって君らしくない・・・

あ!そっか!今の君はブイモンだもんね!この情勢じゃ不安になるのも仕方ないか!でもさっき言ったろ?

君は僕が 」

 

 

「ええ加減にしぃや」

 

 

 

        うるっさいなぁ

 

 

                     」

 

 

「だ、ダメ、だ!

ブ、お、おれが!、なんとかする、か 」

「だから、黙ってろって?

こいつが、こんだけコケにされて大人しく出来るワケねーだろ?

勿論、あたしだって!」

「ああ!、オレもだ!

マグナモン!、今の君は・・・!

 

 

シェイドモンと同じ目をしているぞ!!」

 

 

「ハ?」

「だからブイモンは脅えてるんだ!

何故それがわからない!?」

「おまけに、喋り方のねっとり感まで

あの真っ黒目玉とおんなじやん」

「部屋を金ぴかにするより先に鏡でも用意してろっての!」

「だ、め!、みん、な!

 

はやく、逃げるデスぅうううううう!!!」

 

 

「《エクストリーム・ジハード》」

 

 

ブイモンの絶叫の直後

 

マグナモンの全身からエネルギー波が放たれる。

 

「おおおおおお!!!」

「うるさい」

 

すると、拳を固めたアルダモンが炎を纏って

強引にその技を突っ切り

 

「でぇりぁあああ!」「はっ!!」

「うるさいうるさいうるさいうるさい」

 

双葉と香子の道を造った

 

 

 

バキィィィンッッッ!!!

 

 

 

「「え・・・?」」

「!、フタバ!!、カオルコ!!」

「うるさいんだよお前ら」

 

が、Determinaterと水仙花

 

同時に振るわれた2つの刃は

 

黄金の鎧に接触した途端

 

 

粉々に砕け散る。

 

 

「《ブラフマストラぁあああ!!》」

「《ライトオーラバリア》」

「な!?」

「だから何度も言わせるなよ

 

 

うるさい」

 

 

2人が立ち直る時間を稼ぐべく

 

至近距離から高速連射された炎の弾丸は

 

光の壁により容易に掻き消され

 

 

「《シャイニングゴールドソーラーストーム》」

 

 

次の瞬間、2人と1体を襲ったのは

 

周囲の空間よりも目映い

 

黄金のレーザー光線による集中砲火。

 

「やっと静かになったねアル」

「ぁ!、ああ!、ぅぁぁあ"あ"あ"!!!」

 

ブイモンの目の前で力無く倒れ伏すのは

 

キラめきを完膚無きまでに粉砕され

 

レヴュー衣装までもがボロボロにされた双葉と香子

 

アルダモンにいたっては炎の翼が根元から消失し

 

ルードリー・タルパナが全壊していた。

 

「アルはやっぱり優しいねこんなゴミや公害なんかの為に涙を流して」

「ふぐ!、えぐぅ!、うあああああ!!」

 

 

「だぁ!、れがぁ!、公害、なん・・・!?」

 

 

「ぁ、ぁっ」

「ゴミ、か!

確かに、オレは!、そうだが!!

それでも!

憎しみに囚われ!、自分の使命を忘れ!

世界樹の恩恵を私物化している!

君・・・いや、お前よりはずっとマシだ!!」

「はは!、言うじゃんか、相棒!!」

 

それでも彼女達は最早柄の部分しか残っていない

 

ヒビだらけの武器を、震える足を

 

支えにして立ち上がる。

 

 

「うるさい」

「「がはぁ!!?」」

 

 

だが、マグナモンは何の躊躇いもなく

 

香子を、アルダモンを、踏み躙った。

 

頭上から巨大な黄金塊を幾つも落とす事で。

 

「か、香子!?、アルダモン!!」

「お、れは、いい!

はやくッ、かおるこを!!」

「わ、わかっ うぁああ!?」

「フタバ!!

ま、マグ、ナ、モン!!

どうして!、なんでフタバを!?」

「だって僕から君を奪ったのはそこで這いつくばってる薄汚いニンゲンだろ?

 

 

だから今度は僕が奪うんだ

 

 

こいつの大事なトモをさァ」

 

 

「!、マグナモ、ッ

まさか、その為にフタバをここに!?

や、めろ!、やめろぉおおおおおお!!」

「《プラズマシュート》」

「が!、あ"ッ!、があ"あ"あぁ!!」

「あい、ぼ!、ぐぅぅ!!?」

「双葉はん!、双葉はん!!」

「本当にうるさいな特にお前炎の器僕ら竜族の始祖って言っても所詮はその入れ物ってだけだろ?なのに逆上せ上がっちゃってさ!お前こそただのオマケなのに!ムカつくんだよ!」

 

押し潰された幼馴染みや

 

痛めつけられるパートナーの目の前で

 

首を掴まれ、片手で持ち上げられる双葉。

 

「ああそういえばニンゲンって削除したらデジタマになるのかな?まぁなったらなったでいっか!その時は精々扱き使ってやるよ

お前がアルにしたようにさぁ!!

 

 

くくく、ははハ・・・!

 

 

ハハハハハハハハハハハハ!!!!!」

 

 

「やっ、めぇ!、やめ、て・・・ぇええ!!」

 

 

黄金の下敷きにされた香子ではどれだけ必死に

 

腕を伸ばしても届かない。

 

 

「マグナモンッッッ!!!」

 

 

「なんだい?、ア、る?」

 

 

「ブイはん・・・・・・・・・?」

 

 

その中で彼女のパートナーは、ブイモンは

 

マグナモンの足元まで近づくと

 

深々とひれ伏し、黄金の床に頭をつける。

 

「お願いデス!、お願いデス!

ブイはどうなってもいいから!

どうか!、どうかフタバを助けて下さい!

お願いデス!、お願いデスぅうううう!!」

「アル?、アル?

あ、あれ?、きみ、なに、やってるの?」

「お願いデス!!、お願いデス!!

フタバを放して下さい!!

フタバが居ないと!、カオルコは!

ほんとのほんとにダメダメなんデスぅ!!」

「・・・・・・・・・!?」

「扱き使うならブイにして下さい!!

何でもやります!!、何だってやります!!

だから!、どうか!

カオルコ達を、この先に!

他の聖騎士達の所へ通して下さい!!

お願いデス!、お願いデス!」

「あ、アル?、冗談だよね?

わ、笑えないから!、全然面白くないって!

ソレ!、だから、やめてよ、ねぇ!!」

 

 

(〔「

 

カ ワ イ イ ヨ ネ ェ ?」〕)

 

 

「!!

違う!!!チガウ!!!こんなの!!!アルじゃない!!!

本当の君はそんなんじゃない!!!」

「ぶぇ!」

「は・・・?」

 

幻聴に苛まれながら黄金の聖騎士は

 

自分にすがりつくミットモナイ存在を

 

蹴り飛ばした。

 

「!?、あ、アル!!、今のは 」

「おね、がい、デスぅ!

どうか!、どうか・・・!

ブイのことなら!、好きなだけ!

蹴っても、殴っても、いい!

だから!、フタバを

 

 

カオルコに、かえしてぇ!、デスぅうう!」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

なのに、このデジモンは

 

憧れの光の転生体である筈の存在は

 

涙と鼻水まみれの顔を見せつけた後

 

地べたに頭を擦りつけていて・・・

 

 

すごく   ミットモナイ。

 

 

「は、ハハ、ははハははハ!!

わかった!、僕わかったよ!、アル!

よくわかった!

 

 

君、壊れちゃったんだね

 

 

下界なんて肥溜めで過ごしてニンゲンなんかと一緒に居たらそうなってもしょうがないよね!

 

 

ならさ、直さなくちゃ・・・!

 

 

辛いけど!、僕だってやらないと

 

 

あの時の君みたいに!!」

 

 

「!、~~~~~~ッ!!

(やっぱり、ダメ、だったデスぅ!

でも、ブイにはもう、これしかッ

思いつかなかったデスぅうううう!!)」

 

かつての友が涙を流しながら残る片手に高密度のエネルギーを収束しているのがわかる

直撃すれば削除は免れないのもわかっている

わかっていても、最早ブイモンにはどうしようもない。

 

「大丈夫、今度は君を手離したりしないよ

そうすれば、きっと元の君に ぐ!?」

「・・・・・・・・・」

「ニン!ゲンッ!?」

「お前さ、ブイモンの事

 

 

昔馴染みの事、何もわかってないだろ?」

 

 

「うるッさいな!

(何だ!?、こいつ!

どこからこんな力が!?)」

 

黄金の聖騎士の暴挙を止めたのは

 

反対側で首を掴まれ持ち上げられている筈の

 

舞台少女。

 

「・・・・・・・・・ずっと一緒だった奴がさ

変わっちまうのは、辛いよ

まして、お前の場合

無理矢理引き離されてたんだもんな」

「うる!さい!うるさいうるさい!!ニンゲンが!知った風な口を!!」

「でもさ、それを理由に

今のブイモンに、お前の『アル』を

押しつけんのは違うだろ?

しかも、そうじゃないからリセットしてやり直すって・・・

お前らデジモンがそれが出来る生き物なのは

わかってんだよ、わかってるんだけどさ

 

 

気にいらねぇんだよ!!!」

 

 

「!?」

 

彼女の掛ける指が、手が、徐々にメリ込む

 

13の聖騎士の中で最高の防御力を誇る鎧に。

 

 

「お お お おおおおおお!!!」

 

 

すると、相棒たる炎竜の融合魔人もまた

気合いを入れて自分の上に乗る黄金塊を持ち上げだした。

 

「オ、レは!

自分自身が一番気持ち悪くて、反吐が出る!

今までそう思っていたが!

マグナモン!、お前はそれ以上だな!

そんな奴に!、フタバを!

ブイモンを!、オレの仲間を!

 

 

産まれて初めて出来た!、友達を!

 

 

奪われて、たまるか

 

 

ぁああああああああああああああ!!!」」

 

 

双葉の、アルダモンの熱のこもった声が

 

想いが重なり構成されるのは

 

紫を主体にした赤と黄のフレンジが揺れる

 

漢字の『火』を思わせる紋章が浮かぶ幕。

 

 

 

「ーーーーーーッッッ!!?!、!"!!」

 

 

 

それに包まれた途端

 

融合魔人は、声にならない声を上げて退化し

 

 

「マグナモン、お前の曲がっちまった性根

あたしが

 

 

焼き尽くしてやる」

 

 

「!"!"?ぁづいいい"いい!!!??」

 

 

黄金の聖騎士の手の中で紫の炎が迸った。

 

 

「ぅんが!ががぁ!と!とけッ!?ぼくの!!よろいが!?

 

 

ひっ!!、ひぃいいいいいい!!?」

 

 

身に纏うゴールドデジゾイドが熔解していく中

 

マグナモンは慌ててソレを放り投げた

 

鋭い牙と爪を持ち

 

額から大きな2本の角を生やして

 

自分を睨みながら口から炎を垂れ流す

 

 

赤いタテガミと紫の鱗を持つ人型の竜族を。

 

 

「あつ!?、く、ないん・・・?

 

ふたば、はん?」

 

その存在が放つ炎は香子の上に乗る黄金塊だけを焼失させ、体の自由を取り戻させた。

 

「あづい"ぃいいい!あづいよぉおお"!!

あ、るぅ!、たすけ、ぇえええ"!!」

「マグ、ナ、モン・・・

ッ!、フタバぁあああ!!」

 

           ぁ"?

 

                     」

 

 

未だ燃え続ける炎に悶えながら伸ばされた腕を無視しブイモンは双葉の元へ。

 

「も、もどってる?

よかったぁ、デスぅ!」

「よく、ねぇって

おまえ、いまのは、けっこーひどいぞ?」

「ふぇ!?」

「・・・・・・・・・ま、ジゴージトク、か

ブイモン

 

あいつ たのむ・・・な・・・・・・・・・?」

 

「フタバ?、フタバ!、フタバーーー!!

ッ、そん、なの!

ブイには、無理デスぅうううう!!」

 

謎の変異が何事も無かったように消えたはいいが彼女の意識はそこで途絶えてしまう。

 

「・・・・・・・・・」

「!?、うぅぅ!!」

 

直後、背後から香子が近づいてきて

 

いつものように頬に手を伸ばしてきた。

 

 

「      あ、れ?      」

 

 

目を閉じて痛みに備えていたのに

 

 

 

弱虫で泣き虫で

 

 

なのに、ほんまはかっこつけたがりの癖に

 

 

よぉ頑張りましたなぁ」

 

 

ブイモンに触れる、あの柔らかくて細い手は

 

何故だか、とても優しくて・・・。

 

 

「ほな、うち行ってくるわ」

「!?、な、何言って!

武器だって、そんなだし!

フタバは、もう、助けてくれないのにッ

きみ、だけじゃ!」

「あんたはんがおるやろ」

「!」

「初めて会った時からそうやったやんか

ほんまは怖くて、逃げ出したいのに

 

 

顔、グッチャグッチャにして

 

 

ビービーギャーギャー喚きながら

 

 

あんたはんは、うちのパートナーはなぁ

 

 

ちゃあんとここまで付き合おうてきたんどす

 

 

でもな、それ

 

 

うちが前に進んで道造らなアカンのやろ?」

 

 

「!!」

 

 

「・・・・・・・・・信じとるで、ブイはん

どんだけ歩き出すんが遅くたって

あんたはんならすぐに追いつくって

 

 

そん時はまぁ

 

 

御褒美、あげてもええかも?」

 

 

「ォ、るこぉ」

 

 

 

「なんだよ

 

なんなんだよ

 

ゴホウビ!!ってぇええエェエえッ!!?」

 

 

 

「「!?」」

 

香子の発した単語に異様に反応するマグナモン。

その目は白目を剥いていて、放出される黄金のエネルギーは全身を焼いていた紫炎を吹き飛ばす程。

 

「アレ、ブイはんもやってた」

「古代種の、オーバーライト・・・!

激しい感情によって書き換えられたデータで

異常な程にパワーアップする、けど!」

「その分、データの劣化が激しくなるから寿命が短かくなる

まぁ、僕は世界樹のシステムによる恩恵があるし

 

すっっっごく!!!気に入らないけど!!!

 

アルもお前のソウルを使ってたからかあんまり削られていない

その点だけは感謝してやってもいいんだよ?ニンゲンッ!」

「なぁ、そんなら

外で血気立ってる子達はどうなるん?」

「な!?、まさかお前話したのか!?

『あの時』のチビ達に!!、シェイドモンの産まれを!!?」

「話さない理由がないだろ!?今頃は全員オーバーライトしてるさ!あのニンゲン共を消す為に!!それで寿命が尽きたとしてもあいつらだって本望だよ!!みんな!僕と同じ気持ちで今まで過ごして鍛えてきたんだからね!」

「・・・・・・・・・!!、ううっ!!」

「ええ加減にせえよッ、こんのチンピラ!

なぁにが黄金の聖騎士ぃ~?

 

見た目だけで中身の詰まっとらんメッキやん

それすら双葉はんにドロッドロッのボロッボロッにされて見る影もないし!

今日からのあんたは竜やなくてトカゲ以下の

『ドボカゲ』や!!

 

そんなんと手ぇ組むなんて、うちは絶対ごめんどす!」

「うるさいうるさいうるさいウルッサイ!!僕だって!どこぞのボッチや世界樹の小間使い共じゃあるまいし!誰がニンゲンのペットなんかに成り下がるかよ!

 

 

バーーーーーーカ!!!」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁーーーーーー」

 

最早呆れて何も言えなくなった香子は刃が無く、いつ崩れてもおかしくない水仙花を構えて一歩を踏み出す

 

「どひっ!?

ちょお!?、何してん!?」

「ーーーーーーッ」

 

と、パートナーにスカートの裾を掴まれた。

 

「まさかと思うけど

今更あのドボカゲに味方する気なん!?

確かに、うち好きにしていい言うたけど・・・

『アレ』は、もう!!、アカンやろッ」

「わかってるデスぅ

でも、だからこそ

きみだけにあいつへの道を!

造らせる!、わけには!、いかない!

だって!、そうしないと!

あんな!、御褒美!、もらっていい!、ワケが!!、ないん!!

 

 

デ ス ぅ う う う う う う!!」

 

 

「!?、アル!!

君、ブイモンのままでオーバーライトを?

 

 

いや、違う!、この、光・・・!?

 

 

うそ、だ、嘘だ嘘だ嘘だウソダァあァ!!」

 

 

「もぉー!、なんなんさっきからーーー!?

みんなしてうちを差し置いて目立ちおって

 

ええぇえええーーーーーー!!?」

 

周囲の空間を歪める程に強烈な輝きを放った

 

小竜の傷が癒えたかと思えば

 

体躯が盛り上がって幻竜に変わり

 

更には背中に大翼までもが生える。

 

「治癒の力、持ち・・・

より強靭な肉体を求め進化を促す聖なる力

 

 

『アルフォース』!!!

 

 

でも、でもだって、それは!それは!!

アル、アル!あるぅうううウウウ!!!

そいつがぁ!そのニンゲンがぁアッ君の!!

 

喜びや楽しみ・・・

 

まもりたい!たいせつなものだって!?

 

 

いうのかよぉおおおおオオオーーー!!?」

 

 

「・・・・・・・・・本当にカオルコはズルい、デス

ブイ、満足してたんデスよ?

あの地獄みたいな工場から救ってくれて

夢だと思ってた青い空を見せてくれて

自分で飛べる翼までくれて

 

 

それよりも、もっとすごい御褒美くれて

 

 

だから、きみの、みんなの為なら

我慢、出来ると思ったのにッ

普段あんななのに!、こんな時に限って優しくして!

 

 

お陰で!、ブイ!、まだ!、きみと!!」

 

 

「はぁー、いきなり何を言い出すかと思えば

 

 

うち、まだぜーんぜん本気出しとらんのに

 

 

あんなんで満足されたら困りますわぁ」

 

 

この空間で誰よりも光を放つ竜の隣に

 

余裕の表情で立つのは勿論、花柳香子。

 

 

 

ィィィーーーーーーー・・・・・・・・・ン!!!

 

 

 

彼女の神機はパートナーの輝きを横取りすると

 

ジェット気流に似た音を奏でながら

 

星形の画面の上下にVの字の意匠を重ねた。

 

 

「空と大地を往き還り 進み続けた道の果てに」

 

 

花吹雪が描かれた桜色の幕が

 

その花弁と同じ色をした蒼のフレンジが

 

突風に煽られるかのように大きく揺れる中

 

舞台少女はひとさし舞い。

 

 

「やっとわかった、勝つべき相手は

 

俯き脅え、立ち止まろうとする、自分自身

 

デスぅ!」

 

 

その隣で返り咲き、両腕のブレスレットから

 

 

「才能!、開花!

 

アルフォース!、ブイドラモン!!」

 

 

名乗りと共に伸ばした光の剣を振るい

 

一瞬で幕を微塵にし、舞い上がらせるのは

 

マントを模した翼持つ、最速の聖騎士。

 

 

「こうなったら、最後まで付き合ってやる!

 

デス!」

 

「ほなら、気合い入れな あかんよ?」

 

 

蒼の入り混じった桜吹雪の中

 

立派な鎧に身を包んだパートナーを見上げる

 

香子が浮かべる笑みは

 

やはり、はんなりとしていた。

 

「あアル!アルぅウウウーーー!!!」

「!」

「動かなくていい、デス」

 

アルフォースブイドラモンを目視した途端

マグナモンはオーバーライト状態のまま

《プラズマシュート》を連続で撃ち出す。

 

「認めない!認めないよ!僕は絶対に認めない!!おかしいよ!おかしいってば!こんなの!絶対に間違ってる!間違ってるってば!だって!ニンゲンだよ!ニンゲンなんだよ!そいつは!!僕らの同胞を害し!君を侮辱し!穢したモンの元凶じゃないか!そんな奴なんかの為に!君が!そうなっちゃいけない!いけないんだ!」

「マグナモン、きみってとっても」

 

超高速戦闘に特化した思考を加速させれば

 

目に映るモノ全てが止まって見える

 

その中で周囲の情報を瞬時に処理

 

乱れ飛ぶ大量の光弾の全ての弾道を予測して

 

光剣・アルフォースセイバーを一振りすれば

 

 

「うるさい」

 

 

「      ふぇ?      」

 

 

「わぁ~♪、なんやスッキリしたわぁ♪、色々と♪」

 

自分達に迫っていた大量の《プラズマシュート》は互いにぶつかり合い

 

全滅。

 

「・・・・・・・・・アルフォースブイドラモンならこれぐらい出来る

それを一番知ってるのは、きみの筈、デス」

「ブイはん、あのドボカゲが見てんの

今のあんたはんでも、前のあんたはんでもないわ

 

自分ん中の『アル』だけどす」

 

「!!

ニンゲンがぁッッッ!!!知った風なくちタタクなよぉオオオ!!!」

「人間人間って馬鹿の一つ覚えみたいに・・・

うちには花柳香子って由緒正しい名前があるんどす~、よぉ覚えときぃ?」

「ウルッッッサァあァあ"イ"!!!」

「「!?」」

 

ニンゲン【幻想】への激しい怒りと憎しみに囚われたマグナモンは自らが組み込まれたセキュリティシステムを意図的に暴走させる。

 

「コワしてやる!メチャクチャにしてやるカン単にはケシテなんてやらないッ

お前!おまえオマエお前だけは!!!」

「ぶ、ブイはん・・・

これ、絶対アカン奴やろ?」

「はいデス」

「そこわかってても即答するとこちゃう!」

 

香子が文句を言うのと同時に圧縮される空間。

それが一気に膨張爆発すると先程よりも凄まじい勢いで黄金のレーザー光が降り注いだ。

 

「ーーーーーー!、くぅ!?」

「ハは!はハッ!見えない!速すぎて全然見えない!流石『アル』!

でもさ僕だってまだ!まだ!まだまだ!!!こんなモンじゃないよぉオオオ!!!」

「ぅうううううう!!」

 

アルフォースブイドラモンは即座に神速状態に移行しオーバーライトに加え、世界樹からのバックアップがフルに活用され範囲と威力が増大された《シャイニングゴールドソーラーストーム》をVブレスレットから展開される剣と盾で必死に捌いていく。

 

「こうなったら!全部!そうゼンブだ!ニンゲンは勿論!気に入らないボッチも!ただの小間使いの癖に態度のデカイ神々も!

ゼーーーンブきえチャエばいいんだーァ!

 

 

くくくはははハハははハハハッッッ!!!」

 

 

「・・・・・・・・・ごめんな

お前がシェイドモンに何かされてたって

気づいてたのに何もしてやれなくてッ」

 

 

空間全体で金と蒼とが苛烈にぶつかり合う中

 

 

「でも、それでも!!」

 

 

「周りに当たり散らすのはちゃうやろ?

 

ほんまにあんたみっともないわぁ

 

ドボカゲ」

 

 

「      ハッ!?      」

 

 

悪意に植え付けられた狂気に駆られる聖騎士

 

のすぐ目の前に、いつの間にか立っていたのは

 

最も壊さなくてはいけない、ニンゲン。

 

「(な?ん?で?気づけなかった?

 

この、空間で、僕の中に居る異物が!

 

こんな近くまで来ている事に!

 

・・・・・・・・・僕?ぼく?ぼくぅウウウ!?)

 

 

ああァア!!ウワぁああああああ!!??」

 

 

「通過させてはいけない情報を阻むセキュリティシステム

 

それが、何て呼ばれているか

 

お前は知っているか?

 

 

ファイアウォールって言うんだ」

 

 

その事実に気付き動揺するマグナモンに

 

フレイモンはダメ押しとばかりに告げる

 

相棒が放ち、広げてくれた炎を操り

 

黄金一色だった世界を力強い紫に染めながら。

 

 

「黄金の聖騎士、世界樹の守護の要

 

マグナモン

 

きみの犯した過ちで一番大きかったのは!」

 

 

アルフォースブイドラモンは神速状態のまま胸のアーマーにあるV字を光らせ

 

 

「舞台少女

【うちの】

 

石動双葉を侮った事どす」

 

 

花柳香子は刃無きままに薙刀舞を披露。

 

彼女の実力ならば、再生産等容易なのに

 

それをしない理由はただ一つ。

 

 

「「《シャイニングVフォース・・・!》」」

 

 

自分でやるのがめんどくさいから

【パートナーを信じているから】

 

 

「        !"!"         」

 

 

最速の聖騎士が放った光の軌跡に合わせ

 

流れるように振るわれた水仙花は

 

黄金の残骸すらも粉々に粉砕

 

マグナモンは声にならない叫びを上げながら

 

自分の制御を離れた紫炎の空間を

 

ゴロゴロと転がっていく・・・。

 

「・・・・・・・・・ぁ!ぅ!」

「チィイイイッ!、まだ息があるん!?

今トドメを 」

「やーめーるーデースー!!

こいつ!、一応!、デジタルワールドの!

守護者!、目的!、忘れちゃ!、ダメ!

デスぅうううう!!」

 

いきり立つパートナーの前に最速の聖騎士が一瞬で回り込み立ち塞がる

 

 

消せよぉオオオーーーーーー!!

けせ!とっととけしてくれよぉオオオ!

 

 

くそ!くそくそくそくそくそくそぉウ!!なんだよ!なんなんだよおまえらぁ!どいつもこいつも!『アル』だけじゃなくてぼくのぜんぶ!全!部メチャクチャにしてさぁーーー!?

こんなッこんなのってあるかよぉおおお!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ほんましょーもないわ、このドボカゲは」

 

が、あまりにみっともなく泣き喚いてたので彼女はすぐに振りかざしていた薙刀を収めた。

 

「『アル』は君が想ってるような奴じゃない

周りに良く思われたくてかっこつけてただけでほんとは臆病で弱虫だった、デス」

「ぇ」

「・・・・・・・・・だから、すぐ諦めた

舎弟の、同胞のブイドラモンをシェイドモンから救う事を

ナナが助かったのは何もおかしくなんてない

みんな、誰1人として仲間を助けるのを諦めてなかったんだから!!

 

 

俺と、違ってさ」

 

 

「!」

 

 

「こいつらはすごいんだ

この世界に、舞台にどんな時も全力で挑んでて

だからこそ、何度だって起こせるんだ

 

 

それこそ、『奇跡』みたいなすっごい事を」

 

 

「!!」

 

 

「・・・・・・・・・本当のお前ならきっとすぐソレに気づけたのにな

そのデジメンタルに選ばれた時の

俺らの中で一番キラキラしてたお前ならさ

そんな、きみの兄貴分気取ってた『アル』は

 

 

黄金に映る自分の姿に酔ってただけ、デス

 

 

でも、ブイはもう、そうじゃないから・・・」

 

 

「ま、てぇ!、いかないで!!   ア 」

 

 

「あばよ、マグ」

 

 

「!!!

 

 

ぅぅっ!!!、ぁぁぁああああああ!!!

 

 

うわぁぁぁああああああーーーん"!!!」

 

 

誰よりも、何よりも、呼ばれたかった筈なのに

 

憧れの光の放ったその言葉は

 

双葉の炎より、香子との連携よりも

 

もっと、ずっとマグナモンを抉っていった。

 

「あーあ♪、なーかせたー♪、いけずやなー♪

うちよりあんたはんの方がよっぽどズルいんとちゃいますー?」

「カオルコ、ブイ先行ってるデス」

 

はいぃいいい!?

 

 

って、早ッ!、もう見えへんやん!?

ちょお!?、双葉はんどないするん!?

うち!?、うちが運ばなアカンの!?

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・んもぉーーーーーー!!

 

 

ほんまのほんまに今回だけの特別サービスや

 

 

重ッッッ!?

 

 

双葉はんめっちゃ重いーーーーーー!!?」

 

 

 

 

 

☆天界 世界樹核付近・最終防衛ライン

 

 

『うおおおおおおーーーーーー!!!!!』

 

 

「くそっ!!

どいつもこいつもオーバーライトして!!

お前ら!、それがどういう力かわかっているのか!?、ううんッ!?」

「うっせぇボッチ!、わかってんに決まってんだろ!?」

「あのシェイドモンの元凶!、ニンゲン!」

「それを消せるなら!、今ここで消えたって構わねぇ!」

「それがッ、それしか!、あの時・・・!

 

シェイドモンのおもちゃに!、見せしめに!

 

されるしかなかった俺らが!

 

アルさん達に償う方法がないんだよぉ!!」

 

「ッ」

「刀降ろすなァ!!」

「そうよ!、なな!

みんなも迷っちゃダメ!!」

「で、でも純那ちゃん・・・!

私達が、ブイモンを

この子達の大切な相手を奪ってたのは 」

「だからって!、マヒルの命をこいつらにくれてやるワケにはいかないんだよ!!

戻るんだろ!?、キラめく舞台に!!

 

スタァライト!!、するんだろ!?」

 

「・・・・・・・・・ヴォルフモンの言う通り

私達にはやらなくちゃいけない事がある

だから!」

「ひかりちゃん!?」

「華恋!、悪いが拙者も最早我慢がならん!

大局を見ずに私情だけを優先する竜族の面汚し共め!、御覚悟!!」

「リュー君まで!?、2人共やめてよ!!

こんなの、ノンノン、だよぉッ」

「いやカレン、これ力ずくで止めるしかねージャン

じゃないと、こいつら・・・」

「Quoi?」

「あ"ーーーーーー!、あ・ん・の青瓢箪!

貴様独りが黄金の元へ行った所で収まるモンではないというのに!、何故それがわからないデシテ!?

これだから頭クロンデジゾイドは!!」

「それは今は関係ないと思いますよ」

 

白目を剥いて猛攻を仕掛けるブイドラモン達にヴォルフモンとドルガモン以外は完全体で対応しているのだが・・・

戦意を喪失している舞台少女を庇いながらオーバーライト状態の古代種の集団を相手取るのは、やはり難しい。

 

「チッ、こうなれば

テンドー!、ディアナモンで行くデシテ!!

その場しのぎだが・・・!」

「一旦、眠らせるしかありませんか

わかりまし 」

 

 

「それ!、ちょっと待って欲しい、デス!」

 

 

『んがががががががががーーー!!?』

『え!?』

 

そんな怒りと憎しみに満ちた空気を

 

一迅の蒼い風が文字通り、ぶっ飛ばす。

 

「こ、この早すぎて見えねぇゲンコツ・・・!

間違いねぇ!」

『アルさんッッッ!!!』

「ーーー・・・・・・・・・

 

 

デジモン違い、デスぅうううううう!!!」

 

 

『ふぇ!?』

 

突如乱入し、自分達を殴ってきたアルフォースブイドラモンの思わぬ発言に言葉を失うブイドラモン達。

 

「ブイは『アル』じゃないデスぅ!

真っ青な他モンデスぅうううううう!」

「え、えええーーー!?

ぶ、ブイモン!、どうしてそんな!?」

「この子達は!、ずっとあなたに会い 」

「待ってまひる、華恋も」

「ここはブイモンに任せるで御座るよ」

「ひかりちゃん・・・リュー君・・・」

「シェイドモンのせいで曇ったあいつらの心には君達のキラめきは届かない

届くのはそれこそ最速殿の光だけだ」

「テメェらにだってどうにも出来ねぇ事なんざ

この世界にはいくらでもあんだよ」

「!!

それでも、私達はッ」

「ジュンナ・・・」

 

 

「大体!、きみ達!

シェイドモンが大大大嫌いなのに!

そのシェイドモンを喜ばせる事ばっかして!

あいつが今のきみ達見たら!

お腹抱えて大笑い間違いなし!、デ

・・・・・・・・・ふぇえええええん"!!

ナナの顔で想像しちゃったデスぅううう!

ゾワッ!、ってなったデスぅうううう!」

 

 

「ちょっと!、そういうの口に出すのやめて!!

思わず想像しちゃったじゃないッ、うう!」

「せっかく、わすれかけてたのにぃ・・・!」

「ご、ごめんねクロちゃん!、真矢ちゃん!

本当にごめんなさい!!」

「?、なんでバナナが謝るジャン?」

「黙れアホ熊」

 

困惑する99期達を置き去りにして、最速の聖騎士によるマシンガントークは続く。

 

「大方!、マグナモンにある事!、ない事!、吹き込まれたんデス?

それを真に受けて!、きみ達が消えたら!

 

あの日!

お前らを傷つけた事に泣いたあいつや!

お前らを助けようとしたあいつらの!、その想いを!

 

お前らが憎んでるシェイドモン以上に!

踏みにじるんだってのが!

なんでわかんねぇんだよ!?、チビ達!!」

 

『あ・・・・・・・・・』

「って、きっと『アル』ならそう言うデス

真っ青な他モンのブイにわかるのに

『アル』を知ってるきみ達がどうして気づかないんデス?

そんなんじゃ、きっといつまで経っても

『アル』はきみ達の所へは戻らない、デス」

「!、い、イヤだ!!

イヤだよぉ!、アルさん!!」

「やっとッ、やっと会えたのに!!」

「また一緒に居られるって・・・!

マグさんだって、ずっと待ってて・・・!」

「だから!、ブイ!、『アル』!違う!、デスぅうううううう!!」

『ふぇえええええ~~~ん!!?』

 

・・・・・・・・・ついでに神速鉄拳制裁も継続中。

 

「とりあえずきみ達謝れ!、特にナナに!

いや!、まず!、ブイが謝る!、デス!

ナナぁあああ!、ごめんデスぅううう!」

『!!??!!』

「や、やめてブイモンッ!!

この子達、あなたに殴られた時より辛そうな顔してるから!!」

「させればいい!、デス!

デジタルワールド救う為に頑張ってるみんなの邪魔して何とも思ってない連中なんて!

ブイ!、どうなっても知らない!、デス!」

「ううう!、ごめんなさーーーい!!」

「あ、あやまるからぁーーー!」

「だから、やめてよぉアルさぁん!」

「あんたが、そんな!

地べたに這いつくばって頭下げるなんてぇ

おれたちみたくないぃッ」

 

憧れの存在の土下座を見せつけられたのが余程こたえたのか、ブイドラモン達は遂に折れた。

 

「おい、最速

結局黄金はどうなったのデシテ?」

「フタバにゴールドデジゾイドの鎧を

ドロッドロッのボロッボロッにされて

その上カオルコとボッコボッコにしたから

色んな意味で戦力外、デス」

「ちょ!、ちょっと!

私だって、ななに酷い事を言ったマグナモンは許せないけど!

でも、それじゃ・・・!

私達何の為にここへ来たのかわからないじゃないッ」

「大丈夫デス、ジュンナ

生き残りの聖騎士でニンゲンに敵意を持っていたのはあいつだけだったから

他の3体なら必ずきみ達に協力してくれる

だから、ブイ達はすぐにでもこの先に行かなくちゃいけない、デス

その間、どうか

 

 

マグを頼んだぞ、チビ達」

『!!』

 

 

「・・・・・・・・・きみ達の『アル』じゃない

ブイがお願いしたって意味はない、デス

それでも 」

「ああ、あんたは俺らのアルさんじゃない!

ないッ、けど!」

「それでもあんたは!

アルフォースブイドラモン!

俺らブイドラモン族の、誇りなんだ!!」

「そんなデジモンから頼まれちゃあ・・・

断れるワケ、ない!

だよな!?、お前ら!!」

『お"う!!!』

「ーーー・・・・・・・・・!、ありが 」

 

 

「おーーーもーーーいーーー!!!

はよ、だれかーかわってぇーーーん!!!」

 

 

「カオルコーーーーーー!!

ブイ!、今!、すっごく!、良い雰囲気!、だった!、デスぅうううううう!!

大体!、フタバの方がちっちゃいんだから!、重いワケない!、デス!」

「いや、ほんまにおもいんよ・・・!

ふたばはん、こっちのせかいきて!

ふとったんとちゃいますッ!?」

「あんた達、それどっちも双葉が聞いたら怒るわよ?」

 

そのタイミングで双葉をおんぶした香子が顔を真っ赤にしてプルプルしながら登場。

 

「ハイ☆ハーイ☆

カオルコチャン☆おつかれチャーン☆

オジサン代わってあげるかんねぇ☆」

「おおきにー、ワンコはーん

はぁーーー、つかれたわぁーーー

んもぉ!、ただでさえドボカゲの相手してクタクタな淑女を放って先に行くなんて!

聖騎士が聞いて呆れますぇ・・・!」

「か、香子ちゃんブイモンも色々あってね

ヴォルフモン?」

「エ?、なに?、マヒル?」

「どうしたの?、何だか顔色が 」

 

 

〔「マグナモン!、マグナモン!

わたしのこえ、きこえてるんだよね!?

はやく、おとーさんをたすけにきて!!」〕

 

 

『!?』

「な、なになになにぃーーー!?」

「壁から声が聞こえてきたで御座るよ!?」

「チッ!、おい白ガキ!!

テメェらん所の総大将に・・・

ガンクゥモンに何があったってんだァ!?」

「ローダーレオモン?」

〔「ば、ばんちょー!?

ううんっ、もうばんちょーでも

だれでもいいからおとーさんをたすけて!

 

 

デュークモンと

 

 

オメガモンから!!」〕

 

 

「ッッッ!!!」

 

 

 

さて、一難去ってまた一難

 

 

次なる演目もまた聖騎士によるもの

 

 

煉獄竜と同一の存在たる最凶の騎士と

 

 

終焉の名を冠する最強の騎士を相手に

 

 

舞台少女と抑止の騎士の成れの果ては

 

 

どんな舞台を紡いでくれるのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







マグナモンファンの皆さん本当にすみません。


ふたかおとの頂上決戦に相応しいようにキャラメイクした結果、すっかり恍惚のヤンデレポーズが似合うデジモンになってしまいました


・・・・・・・・・ゴールドデジゾイドの鎧が熔解し


歪んでいたとはいえ思い出忘れられてなかったのに


心抉られていった黄金の聖騎士の輝きが


戻る日は来るのだろうか?







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究極の敵現る 掴め純那、自分星!




前日譚『聖騎士会合』




それはまだ強大なる侵略者の存在すら確認出来ていなかった頃の話・・・。


「さて、今回の議題についてだが 」
「シェイドモンみたいな邪悪なデジモンを産み出したニンゲンをどう滅ぼすかだろ?
勿論、僕が直接人間界に行って根絶やしにしてやるさ!!」


円卓に集いし聖騎士達の進行役を務める軍師に黄金は声高に過激な思想をぶつける。


「黄金よ、根絶やしにしてどうする?
奴等が世界樹の栄養源である事に変わりはない
故に、私達の手で美しく管理してやらねば」
「友の言う通りだ!、大義は此方にある!
大体、何を迷う必要があるというのだ!?
このような話し合いをする暇があるなら!
即刻、実行に移すべきだ!!」


王騎は薔薇を掲げながら優雅に告げれば、盟友たる飛竜が卓を叩きながら力強く同調。


「待って下さい!、御三方!
確かに、師匠・・・・・・・・・いえ!、神威殿の好敵手たる百獣番長が体を張らねば撃退する事も儘ならなかったシェイドモンの所業は到底許せるモンではありません!
その原因がニンゲンにあるのだとしても、己らが人間界に攻め入るというのは
やはり!、間違っています!!」
「フン、若造が随分とデカイ口が叩けるようになったじゃねェか」


すると、最近聖騎士に任命されたばかりの救世が強硬派達の意見をきっぱりと否定し、その師匠たる神威は口の端をつり上げた。


〔「「だが、昨今
人間界から流入されるデータに負の感情が多く含まれているのは紛れもない事実・・・
何かしらの手を打たねばそう遠くない未来
この世界はニンゲン共の悪意によって滅ぼされるやもしれないのではないかな?」」〕
「竜帝殿が抱く危機感については己も理解しています!
しかし!、皆さんはお忘れではありませんか!?
かつて、この世界を外来の驚異たる七大魔王から救ったのは救世主たるニンゲンである事を!!」


一身上の都合で卓に着けず、回線を介して厳かに意見を述べる竜帝にもこの若輩モンは一切怯まない。


「そんなカビすら生えない大昔の話を得意気に語ってんじゃないよ!!、新参モンが!!
アル!、君だってそう思うよね?」
「・・・・・・・・・俺は」
「おやおや?、アルフォースブイドラモンよ
いつもの威勢はどうしたのデアルか?
うぬがそんな体たらくだから成熟期如きをおめおめ取り逃がし、無法モンなんぞに尻拭いをされたのデアル」
「ッ」
「クカカ!、やはりうぬのような痴れモンに最速の称号は荷が重いと見える!
どれ、ワガハイがありがたく頂戴してやるのデアル」


黄金の隣で沈黙を保っていた最速を六足はここぞとばかりに糾弾。


「!!、うっるさいよ六足!!!
アルがお前みたいな馬なんかに聖騎士最速の名を渡すモンか!!」


今ワガハイを馬と呼んだデアルかッッッ!?
このクソガキは!!!」

 
「うるさいうるさいうるさいウッルサイ!!
僕は!、僕はガキじゃない!!!」
「や、やめろお前らぁー!!
ここでの戦闘行為は禁止していると何度言えばわかる!?」
「おいおい、俺ん所のガキ連中以下かよ
付き合ってらんねェわ・・・」
「って、待て神威!、ガンクゥモン!!
まだ会議の途中だぞ!?」
「俺の言いたい事はどっかの若造に全部取られたんでな、後は勝手にやってくれェい」
「だからとて!、途中で退席するなぁー!
真紅!、矛盾!
お前達も黙ってないで何か言ぇーい!!」
「生憎とこのデュークモンは戦場で敵を刺すしか能がない故に・・・」
「私達はただ世界樹の意思に従うのみ」
「いや!、それはそうなんだが!
肝心の神託がまるで降りないから、こうして聖騎士同士意見交換の場をだなぁー・・・!


だから!、やめろ!、黄金!、六足!
他のモンも見てないで止めろぉー!
ええい!、奴に至ってはまたも席が空白!!
とっとと連れてこい!、白騎士ぃー!」


円卓に軍師の叫びが木霊する中


「「またここに居たのか?、アルファモン」」
「・・・・・・・・・」


そこから大分離れた場所で白と黒の騎士が対峙していた。


「「どうだった?、下界の様子は?」」
「別に変わりはなかったよ、うん」
「「そうか、それは良かった
しかし、全員参加が義務付けられた会議に参加しないのはやはり関心しないな・・・」」
「他の聖騎士と馴れ合うつもりはない
忘れるな、オメガモン」
「「!」」
「このアルファモンが君達12体の
ううん、世界樹の抑止力だという事をな」
「「・・・・・・・・・忘れてはいないさ
でも、そんな君だからこそ
私は君の友でありたいと願っている」」
「戯れ言を !?」


首元に突きつけていた聖剣が左手と一体化している剣に弾かれるのと同時に両者は大きく飛び退く。


「「私達の選択が間違っていたその時は


君が必ず止めてくれる


そう信じられるからこそ、私はこの剣を迷いなく振るえるんだ」」
「・・・・・・・・・まず、間違えるなよッ、うん」
「「それは、出来ない
君と違って、私達聖騎士や神々は世界樹の決定には逆らおうとする意思すら認められないのだから
そして、今
私達は過った方向に進み始めているのかもしれない・・・」」
「ニンゲンだったっけ?、揃いも揃ってそんな見た事もないモンに振り回されるなよ」
「「なら、君はどう思っているんだ?」」
「わからないからこそ知らなければならない
だからもし、見かける機会でもあれば
まずは遠方から観察して情報収集を 」
「「・・・・・・・・・く、くくくっ!!」」
「うん?、何がそんなに可笑しい?」
「「い、いや!、そんな事を言って!
そのニンゲンが困っていたらッ


きっと君は助けるんだろうなと思ってな」」


「な!、何を言っているんだよ白騎士!?
このボクが、得体の知れない未知の存在なんて助ける訳がないだろ!
うん!、そんな未来は絶対に訪れない!!」
「「はははははは!!
まぁ、そういう事にしておこうか」」
「・・・・・・・・・ったく、もうっ!

って
また竜帝が大気圏外に飛ぼうとしているな」


「「どうやら思った以上に会議が紛糾しているらしい・・・」」
「うん、そうみたいだ
でも、だからって《ペンドラゴンズグローリー》やら《ドラゴニックインパクト》で全員纏めて吹っ飛ばすのは止めて欲しいよ」
「「この前、月光の神からそういった旨の抗議メールが大量に届いたそうだが・・・案外その神と君は気が合うのかもしれないな」」
「それこそ有り得ないよ、うん!」


竜帝を止めるべく、始まりの名を持つ黒騎士は裏地が青の白いマントを翻して飛翔。
すると、その隣に終焉の名を持つ白騎士が裏地が赤の白いマントをはためかせて並ぶ。


「「いくら君でもエグザモンの相手は骨が折れるんじゃないか?」」
「うん、そうだね
だけど、あんなの放置出来るかよ」
「「ならば、私も手伝おう」」
「ーーー・・・・・・・・・ッ
オメガモン、何度も言うが決して忘れるな!
例え君がどれだけボクを友と呼ぼうが!
道を違えたその時は、必ずボクがこの手で



君を討つ!」



「「ああ、その時はお互いに全力を尽くそう



己の誇りと正義を賭けて」」






 

☆世界樹核へと繋がるゲート内

 

「いやぁ☆炎のとフタバチャンのお陰で助かったねぇん☆

まっかぁさぁ☆黄金殿からセキュリティシステムの権限乗っ取っちゃうなんて☆

オジサン☆ビックリ☆仰天☆」

「でも、そのせいで双葉ちゃん倒れちゃったんじゃ・・・」

 

紫炎に彩られた黄金の空間を雄大に飛ぶのは巨大な体躯を誇る武者竜。

その背中で光狼の融合剣士が軽薄に笑う一方、パートナーは対称的な暗い表情を浮かべていた。

 

「ワタクシの信者達を呼びつけてデッカードラモン号に運ばせてある、何の心配もいらないのデシテ」

「ありがとう、ディアナモン

お陰でオレは心置き無くみんなの力になれる」

「ふふっ、神の力を取り戻してからのあなたは本当に頼もしい」

「なぁなぁ、ウサギはん

うちまだドボカゲにやられた所痛いからもう1本ジュース・・・・・・・・・やなくて、お薬飲んでもええ?」

「カオルコー、ケレスモンの神実って中毒性あるからいっぺんに沢山飲むのは止めた方が良いジャン」

「Quoi!?、ちょっとあんた達!

そういう事はもっと早くに言いなさいよ!」

「これだからお高く止まった連中は嫌なんデ

ふぇ!?、コラ!、だから!

飲んじゃダメ!、デスぅうううううう!!」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ドルグレモン?、ドルグレモン!!」

「駄目で御座る華恋、御主の声はまるで耳に入っていない様子」

「無理も、ない

だって、これから倒さなくちゃいけないのは

この子の」

「ねぇ!、バンチョーレオモン!!

本当に!、本当にドルモンの大切な友達を助けられないの!?」

「無理だっつってんだろうがァアアア!!

レイド帝国のデータの書き換えはなァ・・・

テメェの時とはワケが違うんだからなァ

闘争の奴だって、中身が別に転生していたからどうにかなったモンだァ

 

割り切れナナァ、今までそうだったろ?」

 

「でも!、でもぉ・・・!!」

「いいの、なな」

「純那ちゃんッ」

「この子だって、こうなる覚悟はあった筈

でしょ?」

「・・・・・・・・・うん

神々だって支配下に置かれたんだ

あいつがそうならない保証なんてどこにもない

 

あの帝国が、聖騎士最強の白騎士を!

手駒にしない理由が!!、ない!!」

 

オウリュウモンと並んで飛ぶドルグレモンが血を吐くような叫びを上げる中

 

 

「みんな、もうすぐゲートを抜ける

どうか気をつけてくれ」

 

 

フレイモンが静かに回廊の終わりを告げた。

 

『!!?』

「想定内!、だがッ

実際に見るとやはり堪えるのデシテ!!」

 

ゲートを抜けた9人と8体が目の当たりにしたのは

 

 

透明なクリスタルで構成された広大な空間

 

 

 

 

濁った紫による侵食の真っ只中にある光景。

 

「でぃ!、ディアナモーーーン!!?

これ!、これ本当に間に合うジャン!?」

「アホめ、間に合うかではない!

何としてでも間に合わせるのデシテ!!

まずは神威と合流する!、最速!!」

「言われるまでもない!、デス!!」

「どひっ!?・・・・・・・・・え?、あら?、何で?

前よりずっと早いのに全然揺れへんの!?」

 

アルフォースブイドラモンは香子を肩車させたまま神速を発動、天高く伸びるクリスタルを掻い潜り縦横無尽に飛翔する。

 

「!、居たデス!、ガンクゥモン!!」

「おいッ、おいッ、同窓会かってェんだ!?

まーた、懐かしい顔が出てきやがってェ!」

 

 

「新たな障害を確認、情報照合・・・

最速の聖騎士、アルフォースブイドラモン

Gyruuuuuuuuuーーーーーー!!!」

「排除、スル」「全テ、ハ、我々、レイド

帝国、ノ、為二」」

 

 

「ーーーーーー!!

どっちが、ドルはんの友達か、知らんけど

 

どっちも、ドボカゲよりずっと、アカンわ」

 

壁に力無く寄りかかる白いマントを羽織り、高下駄を履いた人型デジモンを追い詰めていたのは

 

黒い魔鎧に身を包み槍と盾で武装する暗黒騎士

 

 

その下半身は煉獄の化身が如き凶悪な風体の紅き邪竜の胸に埋め込まれていた。

 

 

もう一方のかつて白騎士だったモノもまた

かつての面影は、ない。

 

 

鎧もマントも武器も真っ黒に染め上げられて

 

体の各所は包帯のような何かで無理矢理繋ぎ止められており

 

左手の竜の頭部、右手の獣の頭部に備わる

 

目玉が

 

不規則に蠢いている・・・。

 

「《ジュデッカプリズン》/《メギドフレイム》」

「!?《テンセグレートシールドォ!!》」

 

かつての同胞達の変わり果てた姿に呆けていたアルフォースブイドラモンは傷ついたガンクゥモンの前に瞬時に移動し、Vブレスレットからシールドを形成。

 

「ぅ"ぇぇぇええええええ"!!?

か、カオルコーーーーーー!!!

さっきの!、薬!、早く!、そいつに!」

「わ、わかっとる、けど・・・!

なんや、きゅーに、ちからぬけてぇ~!?」

「当!、然!、デスぅうううううう!!

ブイ!、今!、『アルフォース』!!、全開!、なんだからぁああああああ!!!」

「おめェら仲良いなー、おい」

 

万物を腐敗させる暗黒波動と

万物を灰塵と化す煉獄火炎を

 

《テンセグレートシールド》は同時に受け止めながら超高速再生を続け、どうにかこうにか凌いでいた。

 

「「《グレイ!」「ソード・・・!》」

「「・・・・・・・・・ふぇええええええ!?」」

「って、おい!

こいつは流石にやべェか!?、ぐっ!!」

 

 

「オラァアアアアアア!!!」

「ジャーーーーーーン!!!」

 

 

竜の頭部から生える剣が振るわれる寸前、白騎士の成れの果てに左右から殴りかかるのは筋骨隆々な2体。

 

「おいおい!、今度はおめェかよ・・・!?」

「ケッ!、まァだ生きてやがったかァ!?

総大将!、ガンクゥモン!!」

「バンチョーレオモン何かすっげー嬉しそうジャン?

あ!、でもウチも嬉しい!

やっとマトモな聖騎士に会えたジャン!」

「「うるせぇ/うるさいデスぅ!!」」

「百獣、番長」「闘争、神

 

 

排除!!」」

「Gyruuuuuuuuuーーーーーー!!!」

 

 

「って、呑気に話しとる場合ちゃうやん!」

 

更なる敵の登場により邪竜と一体化した暗黒騎士が技を中断して急接近すれば

 

「《黄鎧!!》」

「Gy!?、未確認の障害を、確認!

情報照合・・・・・・・・・!、イリーガル!?」

「デカブツ同士、仲良くやろうではないか!

聖騎士だったモンよ!、御覚悟!!」

「Gyruuuuuuuuu・・・!《デモンズ/ヘル」

「「やらせないッ!」」

 

かつてデュークモンと呼ばれていたソレをオウリュウモンと華恋、ひかりで強引に引き離した。

 

「「ゼェ!、ゼェ!、ゼェ!」」

「貴様らは休め!、ついでに神威の治療を!

白騎士は、ワタクシ達が相手するデシテ!」

「・・・・・・・・・しろ、きし、ですか?

アレが?」

「随分と、帝国に弄ばれたみたい、ね」

「~~~~~~ッッッ!!!」

「酷い!!、ひどすぎる!、よぉ!!」

「同情するならさ、早く消してやろう・・・!

 

 

それだけが今の白騎士殿にとっての救いだ」

 

 

オメガモンだった筈のデジモンの変わり果てた姿に、99期生達が衝撃を受ける中

 

「《ブラッディタワァーーー!!!》」

「ゃぁぁあーーーーーー!!!」

「じゅ、ジュンナ?」

「テメェが団体行動乱してどうすんだァ!?」

「・・・・・・・・・」「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

独断専行で突っ込んでいったのは

超巨大獣竜とその頭上に立つパートナー。

 

「「接近スル完全体、障害ニ値セズ」」

 

 

「      う?   ん?   」

 

 

「「《ダブルトレント》」」

 

すると、左手の竜の口から炎が

 

右手の獣の口から氷が交互に放たれ

 

左右の拳を振り切る『ついで』に蹴散らされる。

 

「アッチチ!、サッムーーー!

って!、どっちジャン!?」

「どっちも同じだァーーー!

ナナァ!!、ジュンナとドルグレモンはどうしたァアアア!?」

「わ、わからない!、わからないの!!

あっという間に、とんで、てぇ!!」

「チッ!、とっとと行って来なァ!!」

「ごめん、なさい!、ありがとう!!」

「ナナ、オレも一緒に行こう」

「・・・・・・・・・炎の」

「光の、ここは任せた

必ず切り抜けてくれよ、先に進む為に

「(バレてる、か)

オッケ☆オッケ☆任せてチョンマゲ☆《リヒトアングリフ!》」

「《アロー!、オブ!、アルテミス!》」

「「《ガルル」「キャノン!》」

『ううぁあああ!!?』

 

次いで行われる砲撃戦においても、この黒に染め上げられた白騎士は圧倒的な実力を見せつける。

 

「くっそ!、飛べんの君ら神々だけだけど」

「無理ジャン!、だってウチら飛ぶってより

浮かぶ!、だし!!

こんなに上からバンバン撃たれてたら落とされるだけジャン!」

「ならば、飛べるモンを増やすだけデシテ

 

 

《クレセントハーケン・・・!」〕

 

 

「これは!」

「例の戯曲?、だけど!

このタイミングであんなのを相手に天堂真矢を独演させてもッ」

「そ、そうだよ!

いくら天堂さんでも独りじゃ!」

〔「独りではない、今宵の主演は貴様らだ!

 

 

戯曲、改編! Stars the Moonlit!!》」〕

 

 

三日月の鎌がクリスタルに沈むのと同時に世界樹核の一区画が

 

月が大きく映る湖と星が瞬く夜空へと一変。

 

「う

 

うひゃあーーーーーー!?

 

と、飛んでるぅーーーーーー!!?」

 

〔「貴様ら舞台少女はスタァ!

星に宙を行けぬ道理はない!、デシテ!

さぁ!、最強の聖騎士に貴様らのキラめき!

存分に魅せつけろ!!」〕

 

「え?、あれ?、それじゃあ 」

 

 

ドボン!   ドッボーーーン!

 

 

「や、やっぱりーーー!

ベオウルフモーーーン!、バンチョーレオモーーーン!」

「しゃあ!、これで勝負になるジャン!、クロ公!!」

「自分で浮かべるだけって言ったのに

今の私に勝つ気なの?、Nounours!」

「あったり前ジャン!!

バッチャンにわからせねーといけないんだかんな!!、ウチがお前に勝つってよ!!」

「「!?」」

 

戯曲による役柄の補正により舞台少女達に飛行能力が付与された途端にマルスモンの闘志が燃え上がり、両手足から炎を吹き出しながら空中殺法を繰り出す

 

「ふふふっ、相変わらず熱烈な事で・・・」

「あら?、羨ましいの?

良ければいつでもあなたのパートナーと交換してあげる!」

「!」「!!」」

「お断り!、します!」

「うおおおおおおおおおおおお!!!

絶対!、絶対の絶対に!!、絶対勝つ!!」

「ッ、私だって負けないよ!」

 

と、それに追随して

 

剣劇とバトントワリングが冴え渡った。

 

「か、間一髪やったわぁ~

危うくうち濡れる所やったやん・・・」

「ここ!、舞台少女!、飛べる!、デスぅ!、ブイに乗る必要どこにあるデスぅうう!?」

「はてさて~?、あの高下駄の偉丈夫はどこへ行ったのやら~?」

「無視!?、無視されたデスぅううう!」

 

 

 

「《ちゃ ぶ 台 返し ! ! !》」

 

 

 

「「ん?、ひゃぁ~~~~~~ん!!?」」

 

一方、夜空を飛んでいた最速の聖騎士は何の前ぶれもなく下から飛来してきた

 

 

クロンデジゾイド製の巨大なちゃぶ台により

 

 

物理的な意味で星になったとさ・・・。

 

「ぷはぁ!、傷に染みやがるぜェ!、おい」

「あ、ははっ

流石神威殿、情報に違わぬ豪放さ・・・」

「ケッ!」

 

湖に沈んでいた3体はアルフォースブイドラモンと香子がぶっ飛ばされたとは知らぬまま水面へと落下してきたソレに這い上がる。

 

「おい、ところで、薬ってのは、まだか?

俺、今ので、もう・・・」

「月光チャンがあの状態だから

アレ今持ってるのカオルコチャンなんだけど」

「最速の奴もヒラヒラニンゲンもどこ行きやがったァ?」

「ねェなら、仕方ねェ、わ

俺は、ここで、休ませて貰うぜ・・・ェ・・・・・・」

「・・・・・・・・・アァ、そうしときなァ

テメェに何かあったらァあの三ガキがうるせぇからなァ」

「百獣番長

そーゆー顔さぁ、意識ある内に見せたら?

ってか、まずバナナチャンに見せたら?」

「うっるせぇぞ!、オヤジ!」

「あはは!、はははっ・・・・・・・・・君がそう呼んでくれるのオレ、結構好きだったなぁ」

「アァン?」

「《リヒトアングリフ!!》かっ飛ばせ!、マヒル!!」

「!、うん!!」

「威力!?」「増大!?」」

「余所見は!」「禁物!」「ジャン!!」

 

パートナーの援護射撃をLove Judgementで打ち返せば白騎士だった存在の防御が崩れた

 

次の瞬間、無防備になった華奢な腰に

 

Etincelle de FierteとOdette the Marvericks

 

更には、燃え盛る拳打が炸裂。

 

「「!!!」」

「損傷、甚大」「再生機構、不具合、発生」

「「各障害、警戒レベル最大値突破

 

 

完全削除 執行、開始」」

 

 

「!!、オヤジ!!」

「《ツヴァイッ、ハンダーーー!!》」

 

 

3つの頭部に備わる6つの目が発する怪しい光に脅威を感じた百獣番長は亜高速で振るわれる双刃剣に乗り、かっ飛んだ。

 

「テメェらァ邪魔だァアアアアアア!!!」

「「「「な!?」」」」

 

 

「「《グレイソード》」」

 

 

〔「ぐぎ!?、ぐぎゃあああぁああ!!」〕

 

 

直後、術者である月光の神ごと

 

舞台装置を蹂躙し尽くしたのは

 

漆黒の炎が燃え滾る竜の剣。

 

 

 

 

 

 

「「ぁ~~~あ~~~ああぁ~~~!?」」

 

 

 

一方、戯曲の範囲外では

 

・・・・・・・・・何とも情けない悲鳴が響いていた。

 

「シエル、あれって」

「ええ、間違いないわ」

「どうするの?」

「決まってんじゃないの!、ブラン!

 

こうすんのよーーーーーー!!」

 

「え?、えーーー!?」

「ほら、ブランちゃんも」

「シエルおねーちゃんまで!?、ま、まってよーーー!!」

 

クルクル回りながら飛んでいるソレを狙い、天高くそびえるクリスタルから黒と水色と白の頭巾が飛び込む。

 

「あ!、あいつ!、あの頑固モン!

よくも!、やりやがったな!、デスぅ!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「カオルコーーー!、無言はやめるデスぅ!

逆に怖いデ カオルコ?」

「そのまま飛びなさい、最速さん」

「じゃないと、このニンゲンが蜂の巣になるよ」

「え、えーっと、ごめんなさい!

でも、わたしたち、おとーさんを!」

 

(緊急速報!

ブイの肩でハイジャック事件発生!、デス!)」

 

 

空中で体制を立て直したアルフォースブイドラモンの肩に無許可で乗り上げ

 

香子の首筋にナイフを突きつけるのは

シスタモン・シエル

 

香子の背中に銃口を2つも突きつけるのは

シスタモン・ノワール、シエルとは双子の間柄

 

そして、2体の後ろから謝っているのは

シスタモン・ブラン、シエルとノワールの妹。

 

3体共ガンクゥモンの弟子である。

 

「こ、コラ!、きみ達!、そういうのは!

 

フタバが居る時にやれ、デス」

 

「はぁ~~~?、何ワケわ へ」

「!、ブランちゃん!!」

「きゃーーー!?」

 

突然の理不尽な要求に対し

 

最速の聖騎士が行ったのは神速の急降下。

 

 

「ふ ふ ふ ふ ふ ふ・・・・・・・・・♪」

 

 

「「「ひん!?」」」

「じゃないと、そいつは

 

大人しく人質役なんて絶対やらない、デス」

 

空中に投げ出された3体

 

を見下しながら、香子は微笑みを浮かべると

 

パートナーが巻き起こした旋風を桜色のソウルとキラめきを用いて踏み締めて・・・

 

 

 

ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュゥンッ!!!

 

 

 

刃が戻ったばっかりな薙刀による『舞』をすっごく良く見えるように披露してあげた。

 

「よっと、はっと、ほっと、デスぅ」

「「「            」」」

「なぁーなぁー、頭巾はんたちぃ?

さっきなぁーうち頭グワングワンしててぇん

よぉー聞こえなかったんよぉー

 

 

今度はちゃあんと聞いたげるから

もういっぺん言うてみ?、なぁ?」

 

 

「ひ!、ひぃ!、ぃゃぁあッ」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ・・・・・・・・・!!!」

「うぇえーーーーーーん!!」

「(またまた緊急速報!

ブイの肩で調教完了!、デスぅううう!)」

 

舞台少女の放つオーラに圧倒されたのかシスタモン達は体の震えが止まらない。

 

「はぁーーー・・・

あんたはんやろ?、あの時

おとーさんたすけてぇって言うてはったん」

「グス!、は、はい!、そうです!

わたしです!、カオルコさま!」

「ほなら、もっとちゃんとした頼み方ってもんがあるやんか・・・・・・・・・まぁ、ええ

今からあんたはんらにもうちの為に働いて貰いますえ、返事は?」

「「「はい!!!、もちろんです!!!、カオルコさま!!!」」」

「・・・・・・・・・ブイ、ツッコまないデスよ?」

「ええから、はよあの下駄ん所戻ってや

結局、この薬渡せへんかったし」

「それは!、まさかケレスモンの!?」

「し、知ってんの!?、シエル!」

「ええ!、それを飲めばお父様の怪我だってすぐに治るわ!

そんな貴重なモンを何の躊躇いもなく与えてくださるなんて!

 

カオルコ様はとても寛大で慈悲深い御方なのですね!!」

 

「ふっふっふぅん♪、もっとうちを誉めまくってもええんよ?」

「だから!、ブイ!、ツッコまないデスよ!、絶対に!!」

 

自分の肩で踏ん反り返るパートナーに最速の聖騎士が声を荒げていると・・・

 

 

「ぬ"ぁああああああ"ああ"あ"!!??」

 

 

「!?、リューはん!!」

「な、何あのドラゴン!?」

「エグザモンとおんなじくらいおっきい!」

「ブイの今の仲間!、デス!

カレン!、ヒカリ!、無事デスぅうう!?」

 

 

「私達は!、何とか平気だけど!」

「リュー君!、しっかりして!!」

「案、ずるな華恋!

腐ったのは・・・燃えたのは・・・鎧だけ、で、御座る!」

「Gyruuuuuuuuu・・・!」

 

豪奢な和風鎧の大半が腐敗し、灰塵と化したオウリュウモンの規格外な巨体が見えた。

 

「真紅の聖騎士、デュークモン!

俺らん中でオメガモンと並んで騎士の中の騎士だったお前が!、なんつーザマだよ!?」

「・・・・・・・・・ハー、くん

ハーくんも、ああなっちゃったの?

わたし、そんなの!、やだよぉ」

「え?」

「心配すんな、デス

あいつならきっと無事だと思う、デスぅ」

「そうよ、このタイミングで戦力を出し惜しみする理由がないもの

だからきっと、ううん絶対!

あの子は奴等の手には堕ちていないわ!」

「あたしらが信じてやんないで!

誰があいつを信じてやんのよ!?、ブラン!」

「でも!、なら、どうしてハーくん!

おとーさんがあぶないのに、たすけにきてくれないの!?」

「うちらじゃあかんの?」

「!、ち、ちが」

「なーんて、言うまでもないわなぁ

会いたい相手が、助けに来てくれた方が嬉しいんは当たり前の事どす

 

 

なぁ?   双葉、はん」

 

 

「「「!、カオルコ様・・・!」」」

「フタバは生きてるデスぅううううう!!」

 

香子とシスタモン三姉妹を乗せたアルフォースブイドラモンはデュークモンだった存在の眼前に一瞬で移動。

 

「Gyruuuuuuuuu!、最速!!」

「オウリュウモン!、デカい方は任せたッ

デスぅううううう!!」

「まか、されよ!《永世・・・!」

「ひかりちゃんお願い!」「ええ!」

「Gy!?」

 

鎧龍左大刃と鎧龍右大刃が同時に煌めけばBlossomBrightから伸びるワイヤーが邪竜の口に巻きつき技を封じる。

 

「《ジュデッカプリズン!》《デモンズディザスター!》」

「カオルコ!!」「しゃーないなぁ!!

 

ほら!、あんたはんらも!!」

 

「「「はい!!!」」」

 

暗黒騎士の盾と槍から順次放たれる必殺技を

『アルフォース』全開の《テンセグレートシールド》で防ぎながら最速の聖騎士は同胞だったソレの懐へ。

 

「竜! 王! 刃!!》」

「やぁあああーーー!!」

「《アルフォース!、セイバー!》」

「はっ!!」

「「《グランドシスタークルス!!》」」

「《白詰一文字切りッ》」

 

竜にはオウリュウモンと華恋

 

騎士にはアルフォースブイドラモンと香子

 

渾身の斬撃が同時にクリーンヒット

 

更にはノワールとブランの合体攻撃が炸裂

 

ダメ押しとばかりにシエルが刀を一閃させ

 

脆くなった装甲を狙い、首を切り飛ばした。

 

 

「Gyruuuuuuuuuuuuuuuuu!!!!!!」

 

 

「「「「ぇ」」」」

 

 

「!?、香子ちゃんッッッ!!!」

 

 

宙を舞う兜は、一瞬で邪竜の頭部へと変貌。

 

 

聖騎士の背に着地したばかりの者達を狙い

 

 

牙を剥く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ!、うぐぅ!

 

ドル!、グレモン・・・!!

 

まだ、やれるわよね!?」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

「私達はこんな所でモタモタしてられないッ

あなただって!、オメガモンを!

 

昔の友達をあのままに出来ないでしょ!?

 

だから!!、立って!!」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

その頃純那は一撃で空間の隅まで吹っ飛ばされ、力無く横たわるドルグレモンに檄を飛ばしていた。

 

「・・・・・・・・・無理だよ、今のボクじゃ

完全体じゃ、あいつの眼中にすらないんだ」

「ッ、じゃあ!

あなたはこのままこうしてるつもり!?」

「そんなワケないだろ?

なってやるよ今すぐ究極体に

だからさ、ジュンナ

 

 

 

君の全部をボクによこせ」

 

 

 

「へ?」

 

 

呆ける彼女の眼前にて超大型獣竜の

 

 

口が大きく開かれる。

 

 

 

パキ   バキ・・・!   ゴッックン

 

 

 

「じゅんなちゃん?」

 

ななが、1人と1体の元に辿り着いたのは

 

そのタイミングだった・・・。

 

「なにを?、している?、ドルモン?」

「うん?、見てわからない?」

「わからない、わかりたくもない

ジュンナの、自分のパートナーの

 

 

神機を食べる理由なんて」

 

 

「進化するにはコレが一番手っ取り早い

ジュンナだって早く終わらせたいんだろ?

だから文句なんて言わせないよ、うん」

「ぇ? ぁ? へ? え?」

「純那ちゃん!、純那ちゃん!!

ドルモンッ、あなた!!」

「ナナ、君を助けられたからボクは

 

あいつも、大丈夫なんじゃないかって

 

そんな夢物語を見ちゃったんだよ、うん」

「!?」

「でも、結局ソレはボクの都合の良い妄想でしかなかったんだ

現実はそんな甘いモンじゃないってあんなに思い知らされてたのに今更そんなモンにすがるなんて馬鹿だよね、うん

 

でも、そんな馬鹿なボクは今日限り

 

今、最も現実的で確実な手段であいつを・・・

 

誰よりも、世界を守る事に誇りを持っていたオメガモンを冒涜する存在を

 

 

この世から消し去ってやるッッッ!!!」

 

 

パートナーのレヴュー衣装の袖をズタズタにした怪物が吠えるのと同時に額の宝石・インターフェースによって電脳核自身の創造力が強制的に解き放たれる。

 

 

「ドルグレモン進化!、ドルゴラモン!!」

 

 

より固く より大きく より鋭く

 

そして何より、より強い姿となるべく

 

肉体を構成する0と1を荒々しく流動させれば

 

電脳核に刻まれているドラゴンの情報が

 

破壊の権化、究極の敵の化身への進化を誘った。

 

「うん、うん!、うんッ!!

これだ!、これこそがボクの究極体!!!」

「ド、ドルゴラモン?

だが、君は 」

「アルファモンだった?、それがどうした?

成熟期の時点で前のボクとは違ったんだから

 

 

また成れる訳がなかったんだよ、うん」

 

 

「!、ドルモン!!

純那ちゃんを置いていくの!?、ねぇ!!」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

フレイモンの疑問も

 

ななの叫びも

 

純那の眼差しも

 

何もかも無視してドルゴラモンは翼を広げ

 

飛翔する

 

 

許されざる存在を消す為に。

 

 

 

 

 

 

 

〔「ぐ!、ぎ!、ぃぃ"・・・!

 

貴様、ら、全員無事かーーーーーー!?」〕

 

 

「そっ、ち、こそ!

ディアナモンお前、コレ!

空間そのもの自分にしてっジャン!?

だから、今のモロに食らって 」

〔「ワタクシの事等どうでもいいッ

テンドー!、クロディーヌ!、マヒル!

返事をするのデシテ!!」〕

 

ソレが向かう先

 

綻びの見え始めた星空と湖に

 

水面に映る月光の必死な叫びが木霊する。

 

「おいおい、あいつおめェ無視してっぞ?」

「いいんだよ、それでなァ・・・」

 

クロンデジゾイド製の巨大ちゃぶ台の上で隻眼の獅子獣人が大の字に倒れながら眺めるのは

 

「・・・・・・・・・!」「!、!!」」

「おっと、死角をついたつもりだったのですが」

「その手にある頭は飾りじゃないって訳?」

「なら!、3人一緒に行こう!」

「く、クロ公!、お前ら!?

 

何GAKU-RANバサバサさせてんジャン!

 

ズッリィぞ!!、ウチもそれやりたい!!」

〔「マントならば貴様もあるだろう!?」〕

 

白騎士の成れの果てを四方八方から襲うのは

 

学生服に似た黒い衣装の切れ端を

 

闘牛士のように華麗に翻す99期生3人。

 

〔「そいつの防御力を過信するな!、GAKU-RANが無効化出来るのは物理攻撃のみ!

それとて、先程の必殺技が直撃すればひとたまりもないのデシテ!」〕

「わかっていますから!、兎に角あなたは戯曲の維持に専念して下さい・・・!」

「今私達が飛べなくなったら本当に終わりよ!」

「!、やっぱり2人共すごい

でも、私だってぇ!!」

 

 

「おいおい、あいつらおめェのモン

おめェより使いこなしてねェか?」

「いいんだよ、アレでなァ」

 

 

技を使う間を与えず、攻防を瞬時に入れ換え目まぐるしく動き回る主席と次席の連携にまひるは全身全霊で食らいつく。

 

「「・・・・・・・・・各障害データ分析終了」」

「「「!?」」」

〔「!、マルスモンッ!!!」〕

「おう!、うおおおおおお!!!」

 

だが、それすらもこの白騎士の成れの果てには瞬時に対応されてしまい

 

獣の口に冷気が集束。

 

「「《ガルルキャノン》」」

「ジャン!?」

〔「ァぐぅう!!、ぎぃぃいいい!!?」

 

乱入してきたマルスモンの接近すら読んでいたのか燃え盛る拳を剣で容易く防ぎ

発射の寸前、右手を下に向け

 

 

水面に映る月を穿った。

 

 

「ルナモン!?、く・・・!!」

「「特殊空間ノ消失ヲ確認

最優先排除対象、ニンゲン、削除!」」

「ウチを無視すんなぁーーーーーー!!!」

「「《ダブルトレント》」」

「うおおおおおお!!、負・け・ね 」

 

 

「「《オメガブラスト!!》」」

 

 

「      ぇ      」

 

 

「マル、ス、モン?

 

 

ーーーーーーッッッ、ベアモン!!!」

 

 

炎と氷を強引に突破したマルスモンの顔面に

 

竜と獣の口から放つ衝撃波が零距離で炸裂。

 

これにより闘争の神の意識が完全に絶たれ

 

退化しながら、クリスタルの上を何度もバウンドしていく。

 

「マヒル!!」

「べ、ベオウルフモン・・・!

ルナモンとベアモンが!、どうしよう!?」

「くそ!、マヤチャン!、クロチャン!

月光が持ってる薬飲ませて叩き起こせ!

その間、ここはオレ達で持たせる!!」

「出来るの!?、アレを相手にそんな事!」

「無理でもやるっきゃないんだよ!!!」

「・・・・・・・・・露崎さん、すぐ戻りますので」

「!、うんッ」

「番長!、神威!、まだ動けるか!?」

「ったりまえだァ!!」

「おいおい、世界樹の同格ってだけあんな

デジモン使いが荒いこってェ・・・!」

「「《ガルルキャノン》」」

 

飛べなくなった舞台少女達が次の行動に移るのを阻止すべく、絶対零度の爆撃が開始。

 

「ちったぁ休めたか?

出番だぜェエエエ!、ヒヌカムイ!!!」

〔《地神ッ! 神鳴ッ! 神馳ッ!

親父ぃいいいいいいいいいいッ!!!!》〕

 

空からの砲氷をガンクゥモンの体から浮き出た人型の竜が如き重厚なオーラがひたすらに殴り返し

 

「《フラッシュ!、バンチョーパンチ!!》

オラァアアア!!」

「《リヒト!、アングリフ!》

《ツヴァイッ・・・ハンダーーー!!!》」

「ええええええい!!」

 

獅子の拳圧と重火器による一斉掃射に紛れLove Judgementを頭上に掲げたまひるが亜高速でかっ飛ばされた。

 

 

「「《グレイソード》」」

 

 

すると、まるでそこに現れるのが

予めわかっていたかのように振るわれた

 

 

竜の頭から生える炎の剣が

 

 

彼女の体躯を真横から両断。

 

 

「・・・・・・・・・マヒル?

 

まぁ、いっか」

 

この光景にパートナーたる仔人狼の口から溢れたのは、諦め。

 

「もういいよ、好きなだけ使っちゃって☆」

「オヤジ!、テメェ何を!?」

「お、おいおい!、なんだぁありゃあ!?」

「ア"ァンッ!?」

 

ガンクゥモンの驚愕の声にひかれ

 

バンチョーレオモンが残った眼を向ければ

 

 

白騎士の背後に緑のキラめきが瞬く。

 

 

「電脳空間を流れるデジタルウェイブ

光回線との一体化、か・・・

アレだけの代償を支払うだけの事はある」

 

ストラビモンの滲む視界に映るパートナーの姿は

 

 

「がるるるるるぅうううううう!!!」

「「!?、データ照合・・・・・・・・・

該当0!?、未確認!、アンノウン!」」

 

 

最強の聖騎士だったデジモンさえたじろがせ

クリスタルの大地に力ずくで叩き落とす

 

 

紺のタテガミと緑の毛並み持つ人狼。

 

 

「(なに?、これ?、わたしどうなって?

 

わからない、わからないけど

 

たたかわなくっちゃ!)

 

がるぅううう!、がるるるるるる!」

 

「データ!、照合・・・」「不可能!?」」

 

毛むくじゃらな腕から振るわれるメイスによる殴打の威力は先程までの比ではない。

しかも反撃しようにも、剣や銃や炎や氷では『光』を捕らえる事は叶わず一方的に黒い体が削られていく最中に

 

 

 

「《ブレイブ!! メタルッッッ!!》」

 

 

 

究極の敵が出現した。

 

 

 

「「!」」

「きゃん!?、あ、ぅ・・・・・・・・・」

「マヒル!!

お前!、まさか隠士か!?」

「その呼び方はやめろって何度言えばわかるんだ!?

よく見ろ、この姿のどこか孤高の隠士だ!?

どこが聖騎士なんだよ!?、ううんッ!?」

「・・・・・・・・・おい、おい」

 

かつての友だった存在を今の仲間諸共に蹴散らしドルゴラモンは吠える。

 

「まひるちゃん!!!

まひるちゃんにまで、こんな、ひどい事ッ」

「バナナチャン!、炎の!

あいつに何が、!、ジュンナチャン!?

その腕はどうしたんだ!?、怪我は!?」

「怪我は、ない、が」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

荒れ狂う獣竜を追ってきたななは謎の変異が消えてぐったりとしたまひるを抱え、彼女の背後ではフレイモンが固く拳を握り

 

 

純那は虚ろな表情で頼りなく歩いていた。

 

 

「「新タナ障害ヲ確認」」

「うん、そうさ!、お前の敵はこのボクだ!」

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

「うん!?、なん!、なんだよ?

なんだよ!?、なんで反撃しないんだよ!?

とっととやり返せよ!!、戦えよ!!」

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

「ーーーーーー!、無視!!、するな!!」

 

ドルゴラモンが全力で振り回す爪を牙を翼を尾を、見切り躱す『だけ』の元・白騎士。

 

「ったく、どいつもこいつも何やってんだ?

 

 

道を違えたその時は

 

 

騎士として、互いに誇りと正義を賭けて戦う

 

 

そう誓い合ってたのはおめェら自身だってのに

 

 

今やってんのはガキの喧嘩以下じゃねェか」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」

「総大将、ソレ

前のあいつらが言ってたのかァ?」

「ああ、会議の帰りにでかい声で言い合ってたのがよーく聞こえたぜェ」

「だとよ、ジュンナァ

いいのかァ?、あいつをこのまんまにして」

「・・・・・・・・・ッ」

「アレは暗黒進化じゃねぇ

あのまま放っておけばオメガモンだって倒せるかもしれねぇ

だから、オレサマに止める理由はまるでねぇ

でもなァ、ジュンナァ

 

あいつとテメェにはデカイ借りがあんだァ」

 

「バンチョー、レオモン・・・それって・・・」

「だから 」

「なら、お願い出来る?

暫くの間、オメガモンの相手を」

「!、純那ちゃん!?」

「アァ、やってやらァ

けどなァ!、あんまりチンタラやってたらァオレサマがあいつをブッ倒すかんなァ!!」

「おいおい!、おめェって奴は生まれ代わっても口がデカイのは変わんねェんのか!?

自慢のGAKU-RANがそのザマだってのによ」

「大丈夫、それならここにありますから

ストラビモン、フレイモン

まひるちゃんをお願い」

「バナナチャン」「ナナ」

「なな・・・」

「ちゃんと見つけてあげてよ?、委員長さん

 

 

ひとりぼっちで隠れてる

あなたのパートナーが本当にやりたい事を」

 

 

「ええ

必ず掴んで引っ張り出してみせるわ・・・!」

 

 

「ふふふ♪」

 

眼鏡の奥で新たに灯された決意を燃やす純那にななは甘く柔らかい笑みを見せると、まひるの持っていた黒い衣装の切れ端を手にバンチョーレオモンの左側に並んだ。

 

 

「・・・・・・・・・ふーーー、はーーー

 

 

!!!」

 

 

親友がパートナーと共に駆けるのを見届けた後

 

舞台少女は本能のまま、その手に掴んだ矢を

 

自身の胸へと勢い良く突き立てる。

 

「!?、ジュンナ、君!、何やって!!?」

「行ってきなァ!、あいつの舞台に!」

「戻ってくるまでは私達が引き受けるわ!」

「「!」」

「か!、てな、まねするな!

 

んぅ!?、ぅんんんうううあああ!!??」

 

すると、ドルゴラモンも同じ箇所を手で抑え

 

・・・・・・・・・抑えるも、まったく止められず

 

暴れる獣竜の巨体は水色のキラめきに

 

呆気なく飲み込まれるのであった。

 

 

 

 




※《クレセントハーケン 戯曲、改編・Stars the Moonlit》

Odette the Moonlitの改訂版。
月が大きく映る湖と星が瞬く夜空の舞台装置内【限りなく現実に近い幻覚】において舞台少女をスタァ、つまりは星に見立てることで飛行能力を与える。
更にOdette the Moonlit時の真矢程ではないが、キラめきを引き立てる効果もあり対レイド帝国のデジモンとの集団戦においては非常に効果的と言える


・・・・・・・・・が、天堂真矢的には


みんなが一緒にスタァになるのはあんまり好きじゃなかったりする。


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友との誓い・・・アルファモン騎士の決闘!

※改造デュークモン
真紅の聖騎士デュークモンに内封されていたデジタルハザードがレイド帝国により強制解放させられた存在。
100m級の巨体を誇る煉獄竜とその胸から生える暗黒騎士の同時攻撃は万物を灰にし腐らせる、まさに生きた災厄と呼べる邪竜騎士。

改造オメガモン
モデルは執行者。
最後の最後までレイド帝国に抵抗していた終焉の白き聖騎士オメガモン、そのデータは酷く損傷しておりレイドプログラムによる超回復により再生させ続けなければ自壊してしまう程。
こんな状態でも運用しているのはレイド帝国はこの最強の聖騎士という存在を


自分達の侵略を示す『トロフィー』として認めたからに他ならない。


完全削除執行モードになると3つの頭から観測した情報をレイド帝国がリアルタイムで解析する疑似未来予知【偽オメガ・イン・フォース】により敵対する相手の動きをほぼ完全に読み取り、対応することが出来る。


 

 

 

☆『舞台少女・星見純那』精神世界

 

 

 

「う!、うぅん・・・!

こ、こはッ

ジュンナが舞台少女に生まれ変わった劇場?

 

 

くそ!、何のつもりだ!?

君だって早く終わらせたいって言ってたじゃないか!?

なら!、こんな事やってる暇ないだろ!?」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

パートナーの全てを叩きつけれ

 

彼女の精神世界に連れて来られても尚

 

ドルゴラモンの心を占めるのは

 

許されざる存在の抹消だけ。

 

「ガンクゥモンから聞いたわ

あなたがオメガモンとした約束について」

「!、あいつめ!!

でも、それがどうしたって言うんだよ!?

君には!、ううん!、今のボクにだって関係ない!

あいつはレイド帝国のデジモンで!、この世界を脅かす敵!

 

一刻も早く消さなくちゃいけないバグだ!!

 

それ以上でも以下でもない!

 

だから、だからボクは!

 

こんな場所でモタモタしていられないんだよ

 

 

《ドルディーーーンッッッ!!!!!!》」

 

 

「くっ!!」

 

強大な破壊の権化が全力で放つ衝撃波

 

それに激しく煽られる純那がしがみつくのは

 

観客席に座る眼鏡をかけた子供のマネキン。

 

「!?《ブレイブメタルッッッ!!》

《ブレイブメタル!》《ブレイブメタル!》

《ブレイブメタルッッッ!!!》

くそ!、どうして!、なんでだよ!?

なんで壊れないんだよ!?、なんで!!」

「どれだけ攻撃したって私が望む限りこの世界は消える事はな い"ッ!?」

「だったら!!、今すぐにボクをここから出せ!!

 

 

さもないと!、このまま!、握り潰す!!」

 

 

「ーーーーーー・・・・・・・・・や・・・!、よ!!」

「!!、ボクは、ボクは本気なんだぞ!?

この進化には君はもう必要ないんだからな!

言った筈だ、ダメだってわかったら

ボクは君を見捨てるって!!

頭良いんだから覚えてるだろ!?」

「もち、ろん、忘れたことなんてッ、ない!

でも!、でもねドルモン!

 

じゃあ、どうして 私を早く消さないの?」

 

「!!?」

「・・・・・・・・・さっきだってそうよ

ほんとに、形振り構っていられないなら

私の腕ごと食べた方が簡単だった筈なのに

それをしなかったのは?

今だって、私の意識を

奪うだけにしようとしているのは?

 

 

どうして?」

 

 

「ッッッ!!!」

「答えは簡単

私は、まだ、あなたに見捨てられてない!」

 

捨てられる、ワケが!!、ないだろ!?

 

 

君と出会えたからッ、巡り会えたからッ

ずっと裏切り続けてきた期待に

やっと、やっと!、答えられたんだから!!

 

 

だけどそれは!!!

あいつが!、オメガモンが!

ボクを助けてくれたからなんだよ!!

 

 

なのに、そのあいつが、あん、な・・・ぁ!」

 

 

「ごめんなさい、ドルモンッ

大切な友達の体を!、意思を!

踏みにじられるのを見るのが!

どれだけ辛いか!、私、知ってたのに!!」

「謝るな!!、あやまらないでよ、うん・・・

ババモンが生きている内に平和になったデジタルワールドを見せたいって君の気持ちは!

 

何も間違っちゃいない!!

 

あんな寿命が尽きるか尽きないかって状態で

もう一度とーちゃんに会ってくれた事に満足していたボクなんかより、よっぽどッ」

「ドル、モ」

 

究極の敵と称される獣竜の目から零れ落ちる大粒の涙を舞台少女は掴まれたまま見上げていた。

 

「それに謝るのは、見捨てられるべきなのは

うん、ボクの方、だ!

安易に力を求めて!、神機を噛み砕いて!

君のパートナーである事を自分で放棄したんだから 」

「なら、どうしてあなたはここに居るの?」

「え」

「神機なんて無くたって私達は

 

共犯者【パートナー】になれた

 

 

だから!、こうして立ってるんじゃない!

 

 

この星見純那の舞台の真ん中に!!!」

 

 

「!」

 

見上げられる形で向けられた鋭い視線に射抜かれ

翼と尻尾をピンと立てて膠着するドルゴラモンにスポットライトが当たる。

 

「う!?、んんぅうん!?」

「右も、左も、わからなくて

しかも、眼鏡を鉄屑の山に落として

途方にくれるしかなくて・・・

独りだけじゃ何も出来なかった私に

この世界で一番最初に差し伸べられたのは

 

あなたの、この手

 

 

だから、今度は私の番ッッッ!!!」

 

 

「ぅうううぁああぁあん!!?」

 

星見純那の情熱を現したかのような光に炙られたかと思えば、獣竜の巨体が突如発火。

 

 

その炎は、劇場の天井にまで届き

 

 

世界を灰にしかねない勢いで熱く燃え続け

 

 

パートナーを焼き尽くした。

 

 

「私だって、舞台少女よ

 

 

私だって、スタァになるの

 

 

あの日のキラめきで私が生まれ変わったように

私のキラめきであなたを必ず生まれ変わらせてみせるッ

それが、この物語で私が掴んだ自分の役目!

あなたがずっと夢見てきた成りたい自分を!

 

 

妄想なんかで終わらせたりしない!!!」

 

 

「      どうして?、君は

 

 

そこまで、がんばれるんだよ?、うん・・・」

 

 

「それは

 

 

そうね

 

 

約束を果たしたいからじゃ、ダメ?」

 

 

「・・・・・・・・・ううん、ダメ、じゃないよ

 

 

ジュンナ

 

 

下しか見てなかったボクに上を見上げさせた

 

 

掴んでみさせた、自分星【ボクのスタァ】」

 

 

炎に包まれたドルゴラモンの体が

 

すっかり縮み、黒へと変色している中で

 

 

 

   !   !   !   !   !

 

 

 

音なき音と共に劇場の空席に落ちてきたのは

 

1人と1体の罪に惹かれた星形の画面を持ち

 

水色の機体に重厚な黒と金のラインが

 

幾重にも走る神機【パートナーの証】。

 

 

 

 

 

☆世界樹核空間

 

 

 

「Gy ru ruuu uu・・・・・・・・・」

 

 

 

「とりあえず、香子がヤバそうだったから

 

ぶった斬ったんだけど問題ないよな?」

 

 

「「!!、双葉ちゃん/石動さん!!?」」

「そ、それはゲート!?

一体どうやったので御座るか!!?」

 

アルフォースブイドラモン達を襲おうとした

 

邪竜の頭を縦に両断したのは

 

紫炎のゲートから姿を現した双葉だった。

 

「は?、何言ってんだよオウリュウモン

 

 

ログ残ってたんだから普通に出来るだろ?」

 

 

「「「え?」」」

「双葉はん、あんた

なぁにデジモンみたいな事言うてんの?」

「?」

 

 

「「「お、王子様ぁ・・・・・・・・・!!!」」」

 

 

「(またまたまたまた!、緊急速報!

ブイの肩でロマンス発生!、デスぅ!)

コラ!、きみ達!、フタバはカオルコの!、デスぅうううううう!!」

「つまり」「カオルコ」「さまは」

「「「姫様!!!」」」

「・・・・・・・・・ソーデスネー、あ」

「「「「ええええええ!!?」」」」

「す、まぬ、拙者も・・・!」

「リュー君!?」「!、華恋!!」

 

強敵を討ち倒し、気の抜けるやり取りをしていると2体揃って退化し全員揃ってクリスタルの大地に落下。

 

 

「最後の最後まで気を抜くなよ、青二才共」

 

 

その寸前、消えかけていた筈の紅の尾が動き出し舞台少女やデジモン達を受け止め、ゆっくり地上に降ろしてくれる。

 

「デュークモン!?、きみ!、意識が!」

「・・・・・・・・・ああ、たった今戻った所だ

しかし、最早消えるのは避けられないだろう

最速よ、そして名も知らぬデカブツよ

次生まれ変わった時、一対一での再戦を求む

 

 

その時まで、さらば・・・だ・・・・・・・・・」

 

 

「ーーーーーーッ、あい!!、わかった!!

腕を磨いて待っているで御座る!!

真紅の聖騎士、デュークモン殿よ!!」

「今度やる時は背中軽くしてやってやる!、デスぅ!!」

「生まれ変わった、時」

「エーちゃんだって!、きっともうすぐ!、帰ってくるよ!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「?、ひかり、ちゃん?」

 

 

「って!、どないすんの!?

これじゃあの高下駄ん所歩いて戻らなアカンやん!」

「いや誰だよ!?、高下駄って!」

「私達のパパです!、王子様!」

「どうか、どうか!

姫様と一緒にお父様を助けて下さい!」

「おねがいしまーーーす!」

「お、おう・・・?」

 

 

「ドルモンも心配だし、急ぎましょう」

「え、あ、うん!」

 

真紅の聖騎士の最期を見届けた後、仲間達の元へ向かえば・・・

 

 

 

ガォオオオオオオオオオオオオン!!!!!

 

 

 

「「ァアアアアアアアアアッ!!!!!」」

「「ーーーーーー!!、!!??」」

 

 

 

「「「ばなな/はん!?」」」

「それにアレ、ドルモン!?

ま、さか・・・ッ!!」

「いや違うぞ!、ひかり殿!

見た目こそ凶悪だが禍々しい気配はしていないで御座る!!」

「けど、ボッチ、お前その姿は・・・!?」

「パパ!」「お父様!」「おとーさーん!」

「おいおい!、おめェら!、とっとと逃げろっつったろ!?」

「来てたんだな、フタバ」

「体の具合は大丈夫?」

「え?、全然平気だけど?

むしろ、何かどんどん力が溢れてきてる!」

「「そう、か」」

「フレイモン?

ストラビモンまでなんだよ?、その顔は」

 

帝国にデータを改竄されたせいか限定的な未来予知が可能となった最強の聖騎士を相手に

 

隻眼の獅子のオーラを纏った

ななとバンチョーレオモンが空を飛び交い

 

大立ち回りを演じていた。

 

「障害、データ」「収集、終了!

行動パターン把握!《グレイソード!》」」

「どれだけ未来がわかってたって!

どうにもならない事なんていっぱいあるの!

だからァアアア!!!」

「オレサマ達の全部がァ!、テメェの思い通りに動くと!、思うなァアアア!!!」

「「な!?」に!?、だが!!」

 

1人と1体は吠え猛りながら得物を投擲。

黒に染まったマントに3つの太刀が突き刺さりながらも、堕ちた騎士が竜の剣を振るえば

 

 

「《フラッシュ!、バンチョーパンチ!!」

「獅子!!!」

 

 

百獣番長の気合いの入った拳を推進剤にした

 

ニンゲンが名高き防具を翻し

 

燃え滾る切っ先を受け流がされた挙げ句

 

懐に飛び込まれた。

 

 

「羅王!!!」

 

 

焼かれた黒の切れ端が舞う中

 

恵まれた体躯と広い視野をフルに活用し

 

マントに突き立てられた大太刀、小太刀

 

傷だらけの無骨な刀を次々に引き抜きつつ

 

 

「「輪舞劇!!!》」」

 

 

輪を描きながら斬りつけるのを

 

何度でも繰り返すは舞台少女・大場なな。

 

「ぐ」「ぅ」「「が、ぁああ!!?」」

「!?、ナナァアアア!!!」

「・・・ッ・・・・・・、・・・・・・・・・・・・」

 

聖騎士最強すらも仰け反らせる程の舞台を演じたはいいが、彼女の意識はそこで途切れてしまう。

 

「「はぁっ!!」」

「天堂さん!、西條さん!」

「よ、よかったぁーー!」

「やるじゃない!、なな!」

「見せつけてくれましたね、あなたの本気」

 

間一髪、復帰した真矢とクロディーヌが力の抜けきった体を見事にキャッチ。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ケッ、ありがとなァ

マヤァ、クロ」

「レオルモン!、そうゆうの

ちゃんと顔見て言った方が良いジャン!」

「不本意ながらワタクシも同意見デシテ」

「うっるせぇなァ!、神共!

で?、テメェらまだやれんのかァ?」

「おう!、ウチ元気になった!

でも、マルスモンになんのは無理ジャン」

「・・・・・・・・・またもや不本意ながらワタクシも同意見デシテ」

「ケッ、だろうなァ」

「じゃあ、今究極体ぐらいに進化出来んのフレイモンだけってことか?」

「だとさ、炎の」

「やれるだけはやるだけだ」

 

 

「か、華恋!、みんなもアレを見ろ!

ドルモンの様子がおかしいで御座る!!」

 

 

『!?』

 

 

「「       ヤット カ     」」

 

 

突如、巨体が縮み出し黒への変色が始まった

 

ドルゴラモンの頭上から幕が降りる。

 

 

「13番目の聖騎士

 

空白の席の主

 

電脳世界の抑止力」

 

 

パートナーたる眼鏡の舞台少女が

 

生まれ変わった神機を掲げながら歩み寄り

 

異名の数々を朗々と読み上げれば

 

 

「その名をただ・・・

 

ただ!、見上げるボクは!

 

今日ッッッ!!!、限りッッッ!!!」

 

 

自身を覆う幕を勢い良く掴んで羽織り

 

裏地が『水色』な白のマントに変えた

 

黒を基調に金の装飾が施された全身鎧を纏う

 

聖騎士が彼女の前に姿を現した。

 

 

「孤高の隠士!、アルファモン!!

 

夢も、星も、この手の中に・・・!」

 

「掴んだのなら、離さないで」

 

「うん・・・!」

 

 

アルファモンは握り締めていた手を突き出し迎撃する。

 

「アルファモン」「我ガ最大ノ障害、確認

完全削除、執行開始!!」」

「・・・・・・・・・うん、待たせてしまって悪かった

 

オメガモン

 

かつてのボクの唯一の友よ!」

 

その相手は勿論、こうなる未来を見据え

 

使命【約束】を果たさんとするオメガモン。

 

 

「「ォ"!?」ォォォオオオ!!」

「《聖剣グレイダルファー》」

 

 

「んなぁ!、なんなんアレ!?

ブイはんよりずっと早いやん!!」

「早いんじゃない!、デスぅううううう!」

「噂は何度も耳にしていたが、これ程とはッ、想定外デシテ・・・!」

「すっげぇ!、やっぱすっげぇジャン!

アルファモン!!」

「ケッ、体張った甲斐はあらァ」

 

瞬きより早く、展開された魔法陣から召喚された聖剣と竜の剣が打ち合ったのは周囲の目からはたった一合にしか見えない。

 

なのに、黒に染まった白騎士の体には

 

幾重もの亀裂が走っており

 

獣の頭にいたっては、斬り飛ばされている。

 

「行動、予測」「大幅乖離、データ照合・・・

該当、有リ アルファインフォース!!」」

「今の君に未来が見れるっていうんなら

好きなだけ見ればいいよ、うん

でも、オメガモン

未来はいずれ今になって、過去になる・・・

その瞬間に

 

 

ボクはソレを掴んでみせる!」

 

 

「戦いにおいて過ぎ去った時間を瞬間的に取り戻す究極の力!

他の12体の聖騎士を相手に出来る抑止力たる由縁!、ってね☆」

「つ、つまり今のあいつって時間を巻き戻せるのか!?

そんなの、それこそ無敵だって!!」

「だが、フタバ忘れないでくれ

今のオレ達は君達舞台少女の力に依存している事を・・・」

「!?、じゅんじゅん!!?」

 

 

「ハッ・・・!、ハッ・・・!、ハッ・・・!

ケホッ!、ゲホッゲホッ!、ハァ・・・!!」

 

 

「星見さん、顔色が・・・汗も・・・ひどい・・・」

「ほ、ほんの数秒使っただけであの負担で御座るか!?」

 

人智を越えた戦闘が行われるすぐ側では、純那が持ち前の精神力で必死に踏ん張っていた。

 

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

「この緊張感ッ、恐らくは」

「ええ、純那の限界が近いし

あっちだって私達やななとのダメージが溜まってる

 

 

どっちも、次で終わらせるつもりよ」

 

 

「オメガ、モン・・・!」

 

眼鏡を通して霞んだ視界に映るのは

 

始まりの名を持つ黒騎士と

 

終わりの名を持つ白騎士が

 

互いに剣を構えて対峙する気高き光景。

 

 

 

「あなたの友達を

私のパートナーを信じてくれて ありがとう」

 

 

 

この言葉を引き金に両者は一気に踏み込み

 

瞬時に先を読む力と その先を掴む力が

 

交錯した。

 

 

 

 

       ぐ、ぅんッ!!!      」

      ‎

 

 

直後、鎧を大きく斬り裂かれたアルファモンが

 

膝をついて退化。

 

「「

 

 

ク、クくくっ! はははははは!!

 

 

 

      礼を言うのは、私の方さ

 

 

 

こいつを見つけてくれて、連れてきてくれて

 

 

 

アリ・・・が、とウ・・・・・・・・・」」

 

 

 

そして

 

聖剣で電脳核を貫かれたオメガモンは

 

とても満足そうに2つのデジタマに還った。

 

 

 

「ハ、ァ!、ハァハァハァッッッ・・・!」

「じゅんじゅん!!、大丈 」

「あいや!!、待たれよ華恋!!

まだ、舞台は終わっていないで御座るッ」

「あ」

 

 

「ジュン、ナ」

「・・・・・・・・・うん」

「あいつ、笑ってた?」

「うん・・・」

「ボク、約束、守れた?」

「うん」

「そっか

 

 

でも、それでもさ

 

 

やっぱり

 

 

あいつを、たすけたかったなぁ・・・!!!」

 

 

「うん!、うん!、うん!!」

 

 

星見純那はドルモンを後ろから抱き締める。

 

 

この意地っ張りなパートナーの

 

 

今の顔を見ない為に・・・。

 

 

 

 

 

 

その後

 

 

世界樹核の汚染を洗浄し終えた99期生達は・・・

 

 

「おいおい、だから言ってんだろ?

その炎は舞台少女がやったんだってェ!

いーじゃねェか!、セキュリティのレベルは上がったんだ何も問題はねェ

は?、問題だらけェ?

それは単におめェの面子ってだけだろ?

 

世界が滅ぶかどうかの瀬戸際にくだらねェ事に拘ってんなら俺は今すぐ降りるぜェ?

 

・・・・・・・・・おう!、つー訳だ!

今後は神々とも共闘すっからヨロシクな!」

 

 

ガッチャーーーン!   バキィ!!

 

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

「きみ、相変わらずその変な通信機使っては壊してるんデスぅ?」

 

通信内容もそうだが、この電脳世界で黒電話

 

しかも粉々にしているガンクゥモンにドン引き。

 

「ま、まぁ!、何はともあれ!

これで当初の目的は果たせたのデシテ!!」

「おう!、もうガンクゥモンと戦いたい時闇討ちしなくて良くなったジャン!」

「「「~ー~ー~ー!!!」」」

「頭巾はん達ぃ、気持ちはよぉわかるけど今は我慢しときなはれ」

「香子、我慢させる必要はないわ

クライマックスの前にこの子にはきちんとわからせないと!」

「ふふふ!、あなたもあなたで熱烈ですね西條さん・・・」

「おいおい、まだ終わっちゃいねェぞー?

デュークモンとオメガモンは倒せたが

まだ大本命は残ってんだからよ」

「帝国の親玉かァ

ケッ!、今度こそブッ倒してやらァ!」

「なら、前みたいに独りで突っ込んじゃダメよ?」

「バナナチャン☆その心配はナイ☆ナイ☆

今のボウヤってば君にゾッコンなんだし☆」

「《レオクロー!!》」

「《リヒト☆ナーゲル☆》」

「ストラビモン!、茶化さないの!」 

「ぴっ!」

「神威、ガンクゥモン

本当に、もう他の聖騎士がここに攻めて来る事は・・・?」

「聖騎士の両翼が2体揃って漸く潜り抜けられんたんだぜェ?

他のモンじゃそうはいかねェよ

 

 

どこぞの馬鹿弟子含めてな」

 

 

「パパ・・・」「お父様ッ」

「う、ううー!、ハーくん!」

「んな湿っぽい顔すんなってェ!

このお・う・じ・さ・まのお陰でファイアウォールもパワーアップしたんだ!

何の心配もいらねェから一端休んできな!」

「いってぇー!?、やーめーろーよー!、頭もげるってーーー!!」

「う、うん・・・わかったからフタバを離してくれない?」

「おうじさま?、王子様!?

石動さんに何があったの!?

大体、どうやってここへ?」

 

 

「・・・・・・・・・」

 

 

純那が疑問ばかりを抱く横でフレイモンは

 

何かを諦めた眼差しを双葉に向ける。

 

「・・・・・・・・・」

「ひかりちゃん!、さっきの話だけど」

「戻った後でもいい?、華恋だってリュウダモンを究極体にして疲れたでしょ?」

「それは!、そうだけど・・・

ひかりちゃん!、何だが変だよ!

 

 

まるで、あのオーディションの時みたいで」

 

 

「・・・・・・・・・」

 

 

そして、ソレは

 

 

贖罪の舞台少女もまた同じだった・・・。

 

 

 

 

 

 

 









☆デッカードラモン号、操縦席


「ゼェ、ゼェ、ヒィヒィ・・・!
腰ぃ!、治ってもぉ!
やっぱこの体に梯子はキッツイねぇ!」
「ば、ババモン様!?、どうしてここへ!?
呼んで下さればワシが下へ 」
「それじゃ意味ないんだってのッ」
「フォン?」
「ん"!、んんっ!
な事より!、例のモンは出来たかい?」
「は、はい!!、見て下され!、この機械爪!
そして!、腰サポーター!
これでいざという時ワシも戦えますぞい!」
「いやー、そっちも大事なんだけどさー
アレだよ!、アレ!」
「アレ?、・・・・・・・・・ああ!
え、ええ、一応出来てはいるのですが
こんな急拵えなモンで本当に麗将の技を防げるのやら・・・」
「どれどれ、っと
ああ、こんだけしっかりしてれば大丈夫さ


アタシの香りは通らないよ」


「フォ?、ババモン様一体何を ガ!?」


「ったく、騒ぐんじゃないっての
下の連中に聞こえるじゃないか」
「・・・ゥ!・・・ウゥ・・・・・・ッ・・・・・・・・・・・・」
「カッカッカッ
本当にどうしようもないねぇ、あんたって子はさ
ま、今まで手をかけてやった分
しっかり働いて返して貰うよ


いいね?」





         ガルルルゥ


                     」


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衝撃展開 絶たれる望み

 

 

☆天界 神域

 

 

月光の神殿前

停泊中デッカードラモン号、中央通路

 

 

「さて、紆余曲折はあったが・・・

 

ほ・ん・と・う・に・あ・っ・た・が!!!

 

どうにか聖騎士達との共闘を取り付けられたのデシテ」

 

 

「う、ううっ、悪かった、デスぅううう!」

「うん、ボクも、ごめん・・・」

 

絶対零度の眼差しを前に聖騎士2体は平伏するばかり。

 

「落ち着けよルナモン、何とかなったんだから別にいいだろ?」

「そうよ、結果だけ見れば2人共聖騎士の力を取り戻せてプラスにはなったんだし」

「・・・・・・・・・最も被害を被った貴様らがそれで良いならばワタクシからこれ以上言うのは無粋デシテ

ただし、次はないと思え頭クロンデジゾイド共ッ」

「「う、うん!」」

「でも、あの高下駄はまぁええとして他の聖騎士ってほんまに当てになりますぅ~?」

「当てになんなんても大丈夫!、戦ってる最中に後ろから刺されないってだけで安心ジャン♪」

「・・・・・・・・・ねぇ、ソレ本当に大丈夫?」

「所詮、ガンクゥモンを通して一方的にした口約束ですし

破られる可能性を考えた方が良いのでは?」

「心配するなクロディーヌ、テンドー

軍師がこの状況でワタクシ達に弓引く可能性等最早皆無

見た目以外は完璧な聖騎士たる矛盾は例え口約束でも一度交わした誓いを安易に反故にはしないデシテ

王騎や飛竜それに竜帝と六足が居れば警戒は必要だったがな

 

 

特に竜帝!、あいつが居たら大気圏外から何もかも消し飛ばすに決まっている!!!」

「「うんうん!!!」」

 

 

「ハイ☆ハーイ☆

居ないモンの話題はそこまでにしてぇ☆

みんな☆オジサンに☆ちゅーもーく☆」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

『?』

「ストラビモン?」

「フレイモンまでどうしたんだよ?」

 

話の最中に突然輪から外れ

 

パートナー達から怪訝な眼差しを向けられながら

 

2体は中央通路の真ん中に歩み出る。

 

「いやぁ☆まさか☆まっかぁさぁ☆

ここまで来れるなんてゼーンゼン思ってもなくってさぁ☆

だからねぇ☆もうオジサン限界☆

なんで☆ここでみんなとお別れしたいと☆

 

 

思いまぁす☆」「オレもそうさせて貰う」

 

 

「「・・・・・・・・・へ?」」

「な、に、を?

御主らは何を言っているで御座るか!!?」

「オヤジ、ソレ笑えねぇぞ?」

「そ、そうだよ2人と

 

 

        ひかり、ちゃん?」

      ‎

 

「ストラビモンお願いね」

「おっけおっけ☆まかせてチョンマゲ☆」

 

何の前触れもなく行われた離脱宣言に誰もが驚く中でひかりだけは冷静に

 

古びた袋に入ったデジタマを手渡す。

 

「し、始祖様!?」

「どうしちゃったんだなー!?」

「ヒカリさんまで何だよソレ!?」

「とーちゃんはそんなつもりでその袋を渡したんじゃない!!」

「長ッ!、長ぁーーーーーー!!

一大事です!!、早く来て下さい!!」

「お前らも今まであんがとねぇん☆

ワー君にもシクヨロ☆

んじゃ☆そゆことで☆バイチャ☆

 

 

マヒルチャン☆」「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

「「!!」」

「ゲート!?

貴様ら本当にどこへ行くつもりデシテ!!」

 

矢継ぎ早の展開についていけない仲間達の事などお構い無しに、ストラビモンとフレイモンは足元に展開した異空間に体を滑らせる。

 

 

「ジャーーーーーーンッッッ!!!」

 

 

「!?、ベアモン!!」

「て、つだえぇ!!、お前らぁーーー!!」

「「「!、うおおおおおお!!!」」」

 

閉じる寸前だった入り口に爪を突っ込んだベアモンにルナモン、ブイモン、ドルモンが続く。

 

「やく、行けって!

マヒル!、フタバ!

今のあいつら、ウチより アホだから!!」

「・・・・・・・・・ッ、かれん!、ちゃん!」

「うん、ひかりちゃんは任せて」

 

 

 

バンッッッッッッ!!!!!

 

 

 

「い"!!?」

「はよ行き双葉ぁ!!!」

「ーーーーーー!!、ごめん香子!!!」

「「「「ぷっはぁーーー!」」」」

「Bvavo♪、たまにはやるんじゃない?」

「へ、へへ・・・だろ?」

 

まひると双葉は異空間へと飛び込むのと同時にゲートは閉じられ、跡形もなく消失。

 

 

「ひかりちゃん   またなの?」

 

 

そのすぐ後、華恋は普段では考えられない

 

冷えきった声を運命の相手にぶつける。

 

「また、って

前とは、違うじゃないッ

ちゃんと、あなたの側に居るでしょ?」

「ノンノン・・・、ノンノン!、だよ!

ひかりちゃんはまた奪おうとしてる

 

 

ひかりちゃんを

あなたを想う相手の、世界を!!!」

 

 

「そんな、そんな資格!、私にはない!」

「パートナーがあなたをどう思うかに資格は必要ないのでは?

最も、この世界での一番のファンの想いを蔑ろにするのは舞台少女失格と言っても過言ではありませんが・・・」

「で、も、だって! 私は!!」

「自分の気持ちに負けて、そのせいで周りに迷惑をかけてパートナーに取り返しのつかない事をした

 

それって私も同じじゃない?」

 

「!?」

「なな・・・」「ケッ」

「ねぇ教えてよ、ひかりちゃん

私にもパートナーを持つ資格はないの?」

「ち、が!

私とあなたは違う!!

だって、だってエリスモンは!!

 

 

神でも騎士でも番長でもない

普通の、デジモン・・・!

 

 

なのに!!、私が巻き込んだ!!

私と出会いさえしなければッ

 

 

あの子はあんな姿にならなかった!

あんな風に、苦しまなかった!!

まだ生まれた、ばっかりなのに!

 

 

きえなくて   よかったのに・・・!!!」

 

 

「ううーん、そうなのか?

あいつはヒカリと一緒だったからずっと楽しかったんジャン?」

「ぇ」

「甚だ不本意ながらワタクシもこのアホと同意見デシテ

ヒカリ、貴様は知らないだろうな・・・

このレイド帝国に支配され、歪んでしまったデジタルワールドでたった独り過ごすのが

 

どれだけ辛くて、さびしいのかをッ」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「な、なんだよ?

言いたい事あるなら言えよ青瓢箪!

悪かったな!、ボクだけワー爺に匿われて楽してさ!」

「いや、ドルモンだってキツかったろ?

なぁ、ガルル?」

「ああ、ドドモンだった頃からずっと辛そうにしかめっ面してたのを良く覚えているぞグルル」

「そうなんだなー・・・」

「仕方ないさ、長の悲しみに寄り添い

オメガモン様の事で悩み続けていたのだから」

「でも、今はもう

ジュンナさんのお陰で大丈夫だろ?、兄弟」

「・・・・・・・・・うん、ありがと、にーちゃん達

ねぇ、ヒカリ

こんなに恵まれたボクが言うのも何だけさ

産まれて初めて見たモノが

舞台少女だなんて

 

あいつはとんでもない贅沢モンだと思うよ」

 

「ッ、でも、でもぉ!

もう、この物語の終わりは近いのに

あの子はまだ、産まれてくれない!!

それに、産まれても・・・!

 

 

私を、おぼえてないかも、しれない!!!

 

 

だから!、せめて!

あの子がこれから産まれる世界が 」

 

 

 

「あいや!!!、待たれよッッッ!!!」

 

 

 

『!?』

「りゅう、くん?」

「自分の気持ちを誤魔化す為の言い訳に世界を救う等とデカイ口を叩くのは

 

どこぞのトカゲ野郎だけで十分で御座る・・・

 

だから、例え

自分を見てくれないかもしれなくとも!

この舞台の救世主役として、スタァとして

 

 

パートナーから目を背けるな、神楽ひかり

 

 

これは、神でも騎士でも番長でもない

華恋に、御主の運命に出逢わなければ

何物にもなれなかった普通の、デジモンの!

 

 

御主のパートナーと!、同類たる拙者の!

 

 

切なる願い!!、で、御座るぅッッッ!!」

 

 

「!、・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

ひかりへとぶつけられる言葉の中で

 

リュウダモンの懇願が一番彼女に突き刺さった。

 

「ひかりちゃん」

「か、れん?」

「ひかりちゃんだって私のこと忘れてたよね?

でも、ちゃんと思い出せたでしょ?」

「・・・・・・・・・思い出させた、でしょ?

バッ華恋」

「なら、ひかりちゃんだって

ううん、ひかりちゃんじゃなきゃダメなの!

エーちゃん、あなたのパートナーの運命は

この世界で!!、舞台で!!

 

 

ひかりちゃんしか、居ないんだからぁ!!」

 

 

 

あなたは、いつも そう

 

どうして?

 

どうしてそんなこと、そんな風に言えるの?

 

 

バカ

 

 

バカバカ!、バッかれん!!

 

 

そんなに、いわれたら、わたし

 

 

会いたく   なっちゃうじゃない・・・!

 

 

エ・・・リス!、モン! にぃ・・・・・・・・・!!」

 

 

その心の奥底にまで飛び込めたのは

 

やはり、愛城華恋。

 

「これにて一件落着、かしら?」

「それは露崎さんと石動さんが戻って来るまでわからないわ」

「ほなら、なーんも心配いらんなぁ」

「良く言う、デスぅ

さっきからずっーーーとソワソワしてイヒャイイヒャイイヒャイ!」

「おや、丁度終わった所かい?」

「あ、お婆ちゃん!」

「・・・・・・・・・お騒がせしてごめんなさい」

「いやー、アタシとしては助かったよ」

「?、おや?

お婆様それは私達の手配書では」

「ああ、結局私の賞金の方が天堂真矢よりも

 

 

!?

 

 

ちょっと待ってババモン!!

あなた『ソレ』どこで手に入れたの!!?」

「?、クロ公お前何言ってんジャン?

そんなんどこでも貰えた 」

「いや、いやッ!、確かにおかしい!!

ウラルの手配書ならばまだここにあっても良いが

 

 

ワタクシ達の居た士武大陸の手配書を

レギオン群島に潜伏していた筈の貴様が!!

何故持っているのデシテ!!?」

 

 

「そりゃあ、ねぇ・・・」

 

 

ババモンはいつも通りだった

 

表情も歩き方も何もかも。

 

 

「コレを出したのはアタシだからさ」

『ッッッ!!?』

「カレン!!、ヒカリ!!

そいつから離れなァアアアアアア!!!」

「「!」」

「遅いよバカタレ共」

 

唯一異なるのは手首に収まる

 

星形の画面を囲う真っ赤な薔薇の意匠以外が

 

全て漆黒に染まった

 

 

神機。

 

 

「カーッカッカッカッカァ!!!」

「え 」「な 」

「華恋!!、ひかり殿ぉ!!」

 

 

豪胆な高笑いと共に降りてきた黒い幕により

 

ふたりでひとつの運命覆い隠される中・・・

 

 

「こういう時

洒落た名乗りでもすんのが筋なんだろうけど

生憎、今回はそういうのは無しさ!」

 

 

丸まった背が伸びて

 

手が、足が、髪が、顔が若々しさを取り戻し

 

頭部が赤い蕾へと変じていった。

 

 

「あらよっと!」

「「うわぁーー!?」」

 

 

最後の仕上げとばかりにババモンは・・・

 

いや

 

レイド帝国四天王が一体 麗将・ロゼモンは

 

黒い幕をローブとして纏いつつ

 

華恋とひかりを絡め取った。

 

「後

あのあからさまな悪の組織の女幹部キャラもねぇ・・・

 

 

アレやるには3日ぐらい独り部屋に籠って役作りしなくちゃ、アタシにゃ無理なモンでさー

 

 

カカッ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆記録の泉

 

 

このデジタルワールドの根幹を成す世界樹

 

その中枢たる天界には全ての世界のあらゆる

 

情報、知識、事象、果ては感情までもが集積され

 

自在に活用出来るとされる泉が存在する。

 

 

「昔も昔☆大昔

ここに死を司る天使サマが片眼をポイ☆して

ソレを知りたい事がなんでもわかっちゃう大粒ルビーにしたっていう

 

文字通りの意味での☆パワースポット☆

 

勿論それ相応のセキュリティだってあるんだけどもさぁ☆今のオジサンにはハイパーでスーパーな合鍵があるので問題ナッシング☆☆☆」

「・・・・・・・・・オレがそうならなかったらお前はどうするつもりだったんだ?」

「強行突破」

「それじゃまるでベアモンじゃないか」

 

そんな神聖な場所の前で世間話をしているのは

 

デジタマの入った袋を持った光の仔人狼と

 

火の亜人。

 

「実際、これからやるの闘争チャン以上のアホの極みっしょ?

マジ前代未聞よ?

デジタルワールドに来たばっかの時のデータと今のデータを照らし合わせて

 

 

パートナーをリブートさせるなんてさぁ」

 

 

「だが、もうそれしか方法がないんだろ?」 

「ああ、オレ達を通じて創世神に・・・デジモンに近づきすぎてる2人を元通りにするには

 

オレ達と出会ってからのデータも、メモリも

 

全部纏めて初期化しなくちゃいけない」

「でないと2人は、例えこの世界を救えても

 

 

人間界に戻れない

 

 

デジタルワールドに、取り残されてしまうッ

フタバとカオルコが、引き離されてしまうッ

そんな事は絶対にあってはならないんだ」

「・・・・・・・・・炎の、いや

付き合わせて悪いなフレイモン

本当はオレだけで済ませるつもりだったのに」

「冗談じゃないぞストラビモン

例え、お前であっても

他のモンに相棒の命運を任せられるものか」

「だろうな、そんなのオレだってお断りだし

 

 

なぁ、【オレ】」「なんだ?、【オレ】」

 

 

「今からすっげぇ不謹慎な事言っていい?」

「じゃあ、オレも言わせて貰おうか

 

 

生きるのってメチャクチャしんどかったけど

 

 

メチャクチャ楽しかったな!

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・アッハッハァ☆」」

 

 

 

2体は同じ笑みを浮かべながら

一歩、また一歩と泉へと進んでいく

自分達の願いを叶えるべく

もうこれ以上の同調を阻むべく

 

 

大切な存在がこの世界で過ごした情報が

最も詰まっているその身を捧げる為に・・・。

 

 

「エリスモンは、本当に大丈夫なのか?」

「ダイジョブ☆ダイジョブ☆

むしろ、今のデジタルワールドで一番安全な場所にしまっちゃうんだからさぁ☆

みんなが世界を救って人間界に戻る時

2人のリブート発動と一緒にワー君んとこに転送されるようにしとくって☆

・・・・・・・・・ごめん、な

でも、オレにもヒカリチャンの気持ちは

 

 

ッ」

 

 

「光の?   うわぁっ!?」

 

 

ストラビモンとフレイモンの行く手を遮るは

 

旋回するLove Judgement

 

そして

 

 

「どぉおおおりゃあああッッッ!!!」

「「がはっ!!?」」

 

 

豪快に振るわれるDeterminater。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ここ、何もないからさ

 

全部聞こえたぞ?、なんだよ初期化って?

 

それってドボカゲがブイモンにやろうとしたのと一緒だろ?

あたし気に入らないって言ったよな?

それをよりによって

 

 

お前が!!、あたしにすんのかよッ!!?」

 

 

「・・・・・・・・・ああ、そうなるな」

「!!、ふっざけんなぁあああ!!!」

「《フレイムテイル》」

 

追撃のハルバートは炎の尾で受け流され

 

「《ベビーサラマンダー》」

「ぐっ!?、ぁあああああ!!?」

 

レヴュー衣装のあちこちを燃える仔蛇に這いずり回られ、悶える双葉。

 

 

 

ガキィン!!

 

 

 

「アッ☆ハッ☆ハァ☆☆☆

防がれちったぁ☆ザァンネェン☆」

「!、うぅ!!」

 

火の影から音もなく忍び寄った光輝く爪を先読みしていたまひるが受け止めたのだが、徐々にメイスが押し返されていく。

 

「なんで来たんだよ?

ってか、どうやって来れたんだよ?

ヒカリチャンはどうした?

今のあの子を放ってていいのかよ?」

「私、ひかりちゃんの保護者じゃないもん

後」

「!?」

「あなたに守られるだけの舞台少女でもッ

ない!!」

「あ・た・し、だってぇ!!」

「くっ」

 

窮屈な姿勢にも関わらず全力で振り抜かれたスイングがストラビモンを引き離し

フレイモンの炎もまた、裂帛の気合により吹き飛ばされた。

 

「ねぇ、どうして?

なんで、私達に話してくれなかったの?」

「当時者置いて盛り上がんな!

って、前に言ったのお前ら忘れたのか!?」

「そっちこそ、ずっと側に居たんだから

オレ達がこんなモンだっての知ってるだろ?」

 

うん・・・・・・・・・知ってる

 

 

いつもワザとらしいぐらいに明るく振る舞って

暗い気持ちを無理に隠そうとしてて

周りばっかり優先して

それを自己満足だって言って

自分で自分を傷つけて、ばっかりッ

それが私のパートナーなんだって」

「そんだけわかってるなら、さぁ

 

 

早く戻れよニンゲン!!!

 

 

グルァアアアアアアッッッ!!!」

 

 

願望を吐き出しながら光は唸り、牙を剥く。

 

 

「この際だ!

その馬鹿がつくぐらいに真っ直ぐ過ぎな所も!

何でもかんでも自分のせいにする所も!

全部纏めてあたしが叩き直してやるッ!!」

「直さなきゃいけないのは

 

 

治らなきゃいけないのはそっちの方だろ?」

 

 

対する炎は静かに決意を灯して拳を固めた

 

直後

 

 

ストラビモンは双葉へ フレイモンはまひるへと

 

 

跳躍。

 

「え?」「おま!?、えら!!」

「卑怯モンと言いたければ好きなだけ言え」

「今のオレ達はどんな手段だって厭わない

だから君達の

心も体もキラめきも全部踏みにじれる」

 

その宣言通りに2体は動揺する2人の武器を踏みつけて一気に懐へと飛び込む。

 

 

「《リヒト・ナーゲル》」「《フレイムテイル》」

 

 

狙いは勿論、上掛けの紐。

 

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふーーーーーー」」

 

 

「!?、!! な」

「に、を?

なにを!!、やってんだッ!!?」

 

眼前で振り下ろされた輝く爪を炎の尾を

双葉も、まひるも止めてみせた

 

 

素手で。

 

 

しかし、最早ソレはヒトのモノでない・・・。

 

「どうした?、ストラビモン

あたしらをニンゲンに戻すんだろ?

やれるモンならやってみろ!!」

「ァ、アア・・・ッ・・・ルァぁああ"あ!!!」

「フレイモン

手段を選ばないのは私達だって一緒だよ?

あなた達の願いを踏みにじれるのも」

「ち、が

ちがうチガウちがう違うチガウぅう!!!」

「違わねぇよ、何も違わないッ

相棒が取り返しつかなくなるのがイヤなのは

あたしだって同じなんだよ!」

「私も、イヤ!

あなたも、この世界で過ごした思い出も

私のキラめきなのにッ それを奪わないで!!」

「「ーーー!ーーーーーー!!!」」

 

へたり込み、頭を抱えるデジモン達の前に佇むパートナーの姿は完全に異形へと変じていた。

 

 

しかも、双葉もまひるも今までは無意識にかけていたブレーキを意図的に壊し

 

 

完全に創造神と同調してしまっている。

 

 

「わ、か、てるか?

ニンゲンじゃなくなってるのが!?

かえるんだろ!?、大好きなキラめく舞台に!

カレンチャンやみんなと!、家族ん所!

なのに、そう、なったらもうリブートしても!」

「うん、わかってるよ

私の全部がデジモンになっちゃったから

もう初期化してもニンゲンにはなれないんだって」

 

 

絶叫する仔人狼の前に歩み出て微笑む人狼

 

 

「自分の体なんだから、あたしらが一番わかってるって」

「なら!?、どうして!?、なんでだ!?

フタバァ!!?」

「ま、なんとかなるって

華恋だってバラバラにされても元通りになったんだし

あたしだって、コレぜってぇ乗りこなしてやるから

もう泣くなよ・・・な?、相棒」

「ぐう"う"う"ぅうううッッッ!!!」

 

 

泣きじゃくる亜人の頭を撫でる竜人。

 

 

「落ち着いた?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・一応、ね

本当にどうするんだよ?、マヒル

カレンチャン達になんて説明すればいいんだよ?

特にヒカリチャン」

「それはお前の自業自得だかんなー、どうせ神楽には初期化の話とかしてないんだろ?」

「ああ!、光の言っていないぞ!

それどころか!、ウラル大陸に戻るって嘘ついてたな!」

「炎のーーー!!!

それ今言っちゃいけないヤーーーツ!!!

ごめんなさいごめんなさいごめんなさい

戻ったらちゃんと誠心誠意謝ります

だから棒だけは御勘弁をッ」

 

 

 

ガタタタタタタタタタ!!!!!!!!!

 

 

 

「「うおっ!?、デジタマが動いた!!」」

「・・・・・・・・・続きはエリスモンをひかりちゃんに返してからね」

「            」

 

顔が狼なせいで迫力増し増しなまひるにストラビモンがマナーモードに陥っていると・・・

 

 

 

ビー!   ビー!   ビー!

 

 

 

泉の周辺に異音が鳴り響いた。

 

「ん!?、んん!!?、どうなってる!?

ルナモンのサーバーに接続出来ない!」

「はぁ!?

ちょっと待って!、あたしもやってみる!」

 

 

 

ビー!   ビー!   ビー!

 

 

 

「くそ!、ダメか!」

「ど、どうしたの2人共?」

「サーバーに接続出来ないって・・・

!、炎の!!、闘争のサーバー開け!!

ログから辿れる筈だ!」

「え?

あ!、そうか!

あそこからなら神殿間のプライベート回線からゲートを開けるかもしれない!」

「急げフレイモン!

何か、イヤな予感がするッ」

「華恋ちゃん・・・!、ひかりちゃん・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

☆天界 神域

 

 

月光の神殿前

 

 

「!?、みんな息を止めて!!!」

「「「!!?」」」

 

 

神々のコロッセオを経由し、月光の神殿へと転移するや否やまひるは口元を手で覆いながら仲間達に警告を発する。

 

「この香り・・・間違いない!、ロゼモンのだよ!」

「お、おい!

よく見たら森がバラまみれだし!

ルナモン所の連中みんな倒れてるぞ!?」

「炎のッ」

「任せろ!!《ベビーサラマンダー!!》」

「あたしも 」

「フタバチャンはタンマ!

火加減間違えて森林火災にでもなったら月光チャンがヒスるっての」

「そ、それにセイレーンモン達が、その

焼き鳥とか焼き魚になっちゃうかも・・・」

「あ」

 

狼達が竜人を制止している間に亜人は精密なコントロールでバラの花弁と周囲に漂う残り香を焼失させていった。

 

「どうだ!?、マヒル!」

「・・・・・・・・・うん!、もう大丈夫!」

「まずはデッカードラモン号へ急ごう

ただし、慎重に

いいね?、フタバチャン」

「ッ、わかってる!」

「(ハッチは開きっ放し、か

大体、こんな異常事態にも関わらず誰も出てこないなんて

それとも、もう、誰も中に居ないのか?

 

 

だとしたら・・・!)」

 

 

ストラビモンは内心の焦りを必死に圧し殺し

先頭に立って物音一つしない艦内へ・・・。

 

 

「「「「ッッッ!!!」」」」

 

 

ハッチを上がり、辿り着いた中央通路では

 

横たわるリュウダモンの上にひかりが覆い被さり

 

レオルモン

 

ブイモン

 

ドルモン

 

ルナモン

 

ベアモンが点々と倒れ伏し

 

純那にいたっては『明けの遠吠え』の5体と一緒に

 

 

 

顔面から壁に打ちつけられていた。

 

 

 

「そ、んな」

「かおるこ?、香子!、香子どこだ!?

返事しろって!、なぁ!!?、香子!!!」

「待つんだフタバ!!、まだ敵が残っているかもしれない!!」

 

昏倒している仲間達の姿に困惑する最中

 

「ゥウウウ」

「!、ワー君無事だ・・・・・・・・・た?」

 

 

「ガルルルルルゥウウウ!!!」

 

 

操縦席から現れたワー爺は顔の下半分をガスマスクで隠しており、露出する上半分から見える眼に

理性の光は、ない。

 

「おじいちゃん?

まさか、ロゼモンに操られて・・・!?」

「や、やめろ爺さん!!」

「ガルルルルル!」

「くっ!!」

「ワー、く 」

 

 

 

カン!      パキッ!

 

 

 

「フォッンゥ!?・・・・・・・・・・・・・・・・・・フォ

フォウン?、ワシ、何しとったんじゃ?」

 

振り上げられた機械爪が降ろされる寸前

老人狼の後頭部に小さな小さな鉄球が直撃。

 

 

そこから水色のキラめきが弾けると

 

 

ワー爺の眼がいつもの柔和なモノに戻る。

 

「「お爺ちゃん/爺さん!!」」

「フォッ!?、どちら様ですじゃ!!?」

「ワー君!、説明後!、何があった!?」

「そ、それが、その

ワシにもよくわからんのですじゃ

ババモン様と話していたら急にビリっと 」

 

 

「ババモン・・・・・・・・・だったの・・・」

 

 

それをやったのは

 

顔中に眼鏡の破片が突き刺さった状態で

 

壁にもたれる星見純那。

 

「ババモンがロゼモンで!

わた、と、かぐらさ・・・いが・・・

 

 

ッ、みんな!!!

 

 

つ、れ・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

「純那ちゃん!!」

「委員長!、星見ぃ!!」

 

 

彼女は朦朧とする意識の中でもひたむきに言葉を捻り出し、狼と竜の腕に抱き止められた所で気を失うのであった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








レイド帝国四天王


魔将・ムルムクスモン拠点 空中戦艦



「漸く、この時が訪れたか・・・」



その内部にある祭壇にて儀式を執り行うのは

この艦の主たる魔王型デジモン



「後一歩の所でどこぞのイレギュラーにより奪われた
現在の天界に渦巻く負の感情の代替品
届けてくれて感謝する、麗将」
「・・・・・・・・・」



ムルムクスモンの隣でロゼモンが見下ろす先にあるのは、怪しく脈動する魔方陣を囲うように突き立てられた



5つの十字架

 

「散々こちらに損害を与えてくれたんだ
究極体相当にまで肥育されたそのソウル
私の宿願の為、有効活用させて貰うぞ?



救世主諸君」



そこに囚われ

十字架を通じて魔方陣へとソウルを吸収される

5人の舞台少女達の瞼は固く閉じられており

開かれる様子は



ない。



「さぁ!、今こそ甦るがいい!

この那由多の屍の上に存在する歪んだ世界ッ

その幕を降ろす天蓋!

星をも砕くとされるヴァロドゥルモンの比翼



超古代の巨鳥 オニスモンよッッッ!!!」









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レイド帝国猛攻 さらば、デッカードラモン号

※リブート=モチーフはtryのリブート
世界樹と並びこのデジタルの創世を司るスサノオモン、ソレを呼び出す祭具から産まれたストラビモンとフレイモン。
度重なる激闘により高められていたソウルとキラめきは2体のキャパシティを越えていたことと世界樹の中枢たる天界に来たことにより

デジモンのデータがパートナーに逆流。

2人の肉体や能力が変質を始める。
このままでは使命を果たしたとしても他の7人と一緒に帰還することは叶わないと予測したストラビモンは電脳世界のあらゆる情報が集約され、代償さえ払えば活用可能な記録の泉の使用を決断。
マグナモンとの戦闘時にこの事実に気づいたフレイモンと共に

その身を捧げることでパートナーのデータ・・・つまりは肉体や記憶をこの世界に来た直後のモノにまで初期化しようとした



まひると双葉が意図的に同調を早め、完全にデジモンと化してしまったことで

この計画は破綻した。



☆天界 神域

 

 

数十分前・・・・・・・・・

 

 

月光の神殿前

停泊中デッカードラモン号、中央通路

 

 

 

「おばあ、ちゃんが・・・」「ロゼモン?」

「ああ、そうだよ

んで、あんたらはまんまと

 

 

そのロゼモンに捕まっちまったってワケさ」

「「!!」」

 

 

「ババモンど・・・いいや!、麗将よ!

2人を離せぇえええい!!」

「やぁなこったぁ!!!

そしたらそこの怖い連中にボコボコにされるに決まってんだろー?」

「ア"ァ"ンッ!?」

「レオルモン!!!、ダメ!!!」

「抑えて下さいルナモン」

「ワタクシの神殿でワタクシの目の前でこの無礼!

しかも、侵入の手引きしたのは他ならぬワタクシ自身!

この屈辱ッ、どう抑えろと言うのデシテ?」

「それでも堪えろ月光!!

今この場は完全に奴のモンだ!、デスぅ!」

 

その身に纏う黒のローブで華恋とひかりを頭から下を覆い尽くして捕らえているロゼモンを前に

舞台少女もデジモンも膠着状態に陥る中・・・

 

「バッ、チャ?、なんで?

なんで寿命増えてんジャン?」

「え!?

ほ、本当なの!!?、ドルモン!!」

「う、うん・・・それも・・・すっごく・・・!」

「あぁ、それかい?

老い先短い年寄りの方が色々と都合が良かったってだけさ

実際、どいつもこいつもすっかり騙されてくれたねぇ?

礼を言わせて貰うよ、闘争の神サマ

あんたのお陰でこいつらにやられた傷がやーっと治ったんだからさぁ!」

「!!、・・・!・・・・・・う、うぅうぁ!!!」

「ベアモン!?」

「カッカッカッカッカッカァ♪

な、なんだいなんだい!

泣く程ショックだったってのかい!?

おっどろいたーーー!!」

 

容赦のない口撃によりベアモンが泣き崩れた。

 

 

なにが    何がおかしいのよ?

 

 

ベアモンが、どんな想いで

あなたを労ったのか知ってるでしょ!?

なのに、なのにッッッ!!!

 

 

絶っ対に許せない!!!」

 

 

「あんたに許されなくたって構いやしないよ委員長

アタシはアタシの好きにやらせて貰うだけさ

まぁ、今回はアレだよアレ!

あんたらのせいでてんてこ舞いだったムーさんに土産でもと思って、ねぇ・・・?」

「ほーーーーーん、それはまぁ随分と殊勝な心掛けどすなぁ~

でも、お婆はん?

これみよがしに手配書ひらひらさせんといてくれますぅ~?

うち、その折角の素材が台無しな写真

好きやないんよ」

「そいつぁ悪かったねぇー

でも、こんなヘッタクソな写真なんかでも

あんたの魅力はムーさんに伝わってるって!

とっとと実物持ってこいってアタシに何度も催促してくるぐらいにさ」

「あらあら~、それはそれは~

もっとマシな誘い文句考えてから出直してきなはれ」

「ああ、そうさせて貰うよ

何せ、あんたらの後にはマヒルとフタバ

それにエリスモンのデジタマも回収しないといけないからねぇ?

あの子にはまた色々仕込んでやらないと」

「ッ!、それはぁあああ!!!」

「ノンノ 」

 

 

「ノンノンは無しさ」

「「ん!」」

 

 

否定を否定したロゼモンの全身から溢れ出る

 

見るモノの心を奪う花弁の群れと

 

嗅いだモノの思考を蕩けさせる濃密な芳香。

 

「「・・・ぁ・・・くぅーー・・・・・・・・・」」

「《ロージィクレイドル》

魅了の分のリソースも全部注ぎ込んで即効性上げてんだ、前みたいにはいかないっての」

 

ソレが一瞬で艦内全体に広がると、華恋とひかりの表情が緩んでいって・・・ふたつでひとつの運命は揃ってローブにくるまったまま寝息を立て始める。

 

「か!!、ぇー、ひかぃおぉー・・・・・・・・・」

「ふや~~~ぁ」

『~~ーーーッ・・・・・・・・・、!』

 

眠らされた彼女らを助けようとしたリュウダモンは前のめりに倒れ、他の面々もまた次々と膝を折っていった。

 

「さーて!、後は全員寝落ちるのを待つだけなんだけども念には念を、ってねぇ

ほら!、さっさと降りてきな!」

「う、ん?」

「「「「「とぅ、ちゃ?」」」」」

 

 

「ガルルルルルゥ!」

 

 

ロゼモンの命令に従い姿を現したのは

 

完全に彼女の虜と化したワー爺。

 

「おじ、さ?」

「ガルルルルッ!」

「「「「「やめろぉ!!!」」」」」

「ガァ!!、ガルルルルゥウウウ!!」

「あ、ぁ・・・・・・・・・!」

 

霞む視界の中でドルモンが見たのは

 

自分の『親』が『兄弟』を蹴散らし『星』を

 

叩きのめすという悪夢のような光景で・・・。

 

「ァッッッあ"ぁあああぁ!!!」

「なんだいなんだい?

その大声の割にショボい球っころは?

こんなんじゃ、なーんも守れないっての!

あんたもそうは思わないかい?、ナナ」

 

「・・・・・・・・・」

 

「ああ!、そうそう!

いっくらアタシの方が付き合い長いからって

この毛むくじゃらがこうもアッサリ虜にされるってこたぁ、あんたのキラめきってば

やっぱ大したことないねぇ、マヤ」

 

「・・・・・・・・・」

 

「後さぁ、クロ

アタシを怒るのはお門違いじゃないかい?」

 

「・・・・・・・・・

 

ざけ、る

 

 

なあぁあーーーーーーあああ!!!!」」」

 

 

友を、誇りを、パートナーを踏みにじられた

 

怒りが

 

黄、白、橙のソウルとなって激しく迸る。

 

「カーッカッカッカッカァ!

揃いも揃って若いったらありゃしない!

 

 

《戯曲! 棘姫!》」

「《戯曲改編 Stars the Moonlit!!》」

 

 

「んな!?」

〔「ワタクシの、領域でぇ!

これ以上、好き勝手、させるモ、ンか!」〕

「オ、ラァア!」

「「「ッッッ!!!!」」」

 

薔薇の花弁と蔓が舞台少女達に殺到した途端

 

突如艦内の景色が星空へと一変。

 

ロゼモンの花も香りも何もかも塗り潰され

 

凄まじい気迫が込められた傷だらけの刀身が

 

4つの刃と共に彼女へと迫る。

 

 

頭が良いってのも考えモンさねディアナモン

 

思い浮かぶ選択肢が多いからこそ

 

ここぞって時に判断を誤る」

 

〔「・・・・・・・・・ぐう」

「!?、ルナもッ」

「Ma!、ya!」

「だ、め!!

ねちゃ、みんなを!、ま・・・・・・・・・」

「もうすっかり眠気に蝕まれてるあんたが他の連中までカバー出来るワケないだろ?

本気でアタシの戯曲と張り合いたかったら

マヤだけに集中しとくんだったね」

 

Odette the Marvericks、Etincelle de Fierte

そして輪と舞が振り下ろされる寸前、崩れゆく夜の隙間からまろび出た赤い花弁と蔓が3人に纏わりついて・・・

 

舞台装置の形成が再開。

 

「百獣番長、あんたもあんただよ」

「ク!、ソが、ァ」

 

パートナー達が薔薇に飲まれるすぐ横ではバンチョーレオモンが突き出された華恋とひかりを前に構えた剣を震わせていた。

 

「かつてのあんたならさぁ、アタシが『盾』を構えるより早く踏み込んで脳天から真っ二つに出来たってのに

パートナーの甘ちゃんが移っちまったのかーい?

 

 

って、もう誰にも聞こえなかったねぇ」

 

 

ロゼモンは中央通路を我が物顔で進んでいく

 

立ったまま寝入るレオルモンを足で払いのけ

 

棘の中で眠る姫を演じさせられている

 

真矢、クロディーヌ、ななを囚えた

 

3つの薔薇の揺り籠を侍らせて。

 

「ぶぇ!!」

「ガルルルルル」

「んにゃーーー・・・・・・・・・」

「やれやれ、あんまりアッサリ寝るから演技かと思ってたのに本気で寝てんのかい?

怠け癖も大概にしときなっての

って!、おおっとっとー、こりゃー困ったー

アタシ腕が2本しかなかったよー

これじゃー、お尋ねモンじゃないニンゲンまで連れていけない、ね!」

「「ぅぅ」」

 

彼女はひかりを放り投げ、ワー爺から香子を受け取ると華恋とは反対側の小脇に抱える。

 

「よっ!、こい!、せっとぉ!

んじゃまた後で来るから、あんたはマヒルとフタバを仕留めといておくれ」

「ガルゥ!」

「ジュンナー、あんたも大人しくしときなよ

って、もう何も出来ないかったねぇ!

 

カーッカッカッカッカッカッカァ!!!」

 

 

高笑いと共にクラスメイト達が拐われていく

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

(私に何も出来ない?

 

いいえ 出来るわ

 

他ならぬ、あなたのお陰で

 

眠気が!、少し!、醒めたからッ!!!)」

 

 

それを背中で感じながら

 

学級委員長は壁に頭から突っ込んだ状態で

 

煮えたぎる情熱【ソウルとキラめき】を

 

体内に留め、酸素の代わりに循環。

 

入り込んだ毒素を少しずつ燃やしながら

 

パートナーの想いが凝縮した鉄球を掴み

 

来たるべきチャンスを待つのであった。

 

 

 

 

 

回想終了

 

 

 

「と、いう訳で!

 

今!

 

私達はかつてない窮地に立たされているわ!

 

・・・・・・・・・だ け ど 露崎さん、石動さん

 

 

 

あなた達の身に起きてる事はッッッ!!!

それ以上に一大事なんじゃない!!!??」

 

 

 

「ぬ"ぁあ"あ"あ"ぁあああ!!!

まーーーひーーーるーーどーーのぉ!!!」

「ア"ーーーーーッ!!、ア"ッーーー!!」

「お、落ち着いてみんな!!」

「あたしより今は香子を 」

「《ブンブンパンチ!》」

「うお!?」

「フタバ!、それ!、カオルコの前で!

言えんのか!?、あぁん!!?

あいつ!、絶対!、泣くぞ!

いや!、まず!、ブイが泣く!、デスぅ!

 

 

ぶぇえ"え"え"え"えええん!!!

殴った感触チビ達といっしょおおお!!!」

 

 

「ぬ"ぅおおお"おおぅうううん"!!!

ふーーたーーばーーどーーーのぉお!!!」

「ア"ァーーーーーーアーーー!!!!!」

「テメェら全員うるせぇなァ!!、ギャーギャー騒いでも何にもなんねぇだろうがァ!!」

 

純那が倒れた後、5体がかりで昏睡していた仲間達に回復薬を飲ませて気付けをしたのだが・・・

 

艦内はもう色々と大混乱。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ご、ごめんヒカリチャン!

本当の本気でごめんなさい!!」

「オレもすまない!!

光のの真意に気づいた時点で君にはちゃんと話しておくべきだった!!」

「話をするべきだったのは私だけじゃないでしょ?

まひると石動さんもそうなる前に、まずみんなに相談するべきだったんじゃないの?」

「ううぅ」

「まさか神楽に説教されるとはなー・・・」

「あら、石動さん

私からもまだまだ言いたい事あるんだけど?

勿論、露崎さんにも」

「「                 」」

 

再生産されたばっかりの眼鏡が逆光で見えなくなると人狼も竜人も尻尾を丸める他ない。

 

「ア"ァアアーーーーーーーーーッッッ!!

 

よし!

 

神殿内全ての正常化!、及びチェック完了!

 

デシテ!

 

あ・ん・の山婆ァーーー!、ワタクシのサーバーをクラッキングし放題してーーーーーー!!」

「おい!、月光!」

「その言い方はないだろ!?

なぁ!、ガルル!」

「ああ!、グルルの言う通りだ!!」

「自分達だってカレンさんやナナさん達を連れ去ったのは勿論許せないが!、それでも!」

「ババモンは、長の・・・!

とーちゃんの大切なデジモンなんだなー!」

「やめろドルモン!、リーダー達もだ!

この状況で群れの和が乱れるのは長も不本意の筈ッ」

「・・・・・・・・・ドーベルモンの言う通りじゃ」

「ワー爺、でも」

「ジュンナさん、本当にすまんかったッ

ワシが弱かったばかりにドルモンを救ってくれたお前さんに酷い事をしてしもうて

その償いの為にもワシも戦わねばなるまい

レイド帝国四天王の麗将と!!」

「お爺さ 」

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」

 

 

「あぅうん!!?」

「マヒル!?

あ、そっか・・・・・・・・・今の君耳も良いんだ」

「ケッ、珍しくしおらしいと思ったらァ

テメェが一番うるせえなァ!、アホ熊ァ!

で?、テメェはこれからどうすんだァ?」

「決まってんジャン!、バッチャンに勝つ!

んで、クロ公を奪い返してクロ公にも勝つ!

そしたら!、バッチャンもう許さねぇ!!

謝って謝って謝ってどんなに謝ったって!!

絶対の絶対の絶対絶対許してやんねぇ!!

 

 

だから!!!

 

 

ずーーーーーーっと謝らせっかんなぁ!!!

待ってろーーー!!!、バッチャン!!!」

 

 

「・・・・・・・・・さ、最悪デシテーーーーーー!

アホのアホさが大爆発しているッ

だが、何より最悪なのが!

ワタクシも貴様に同意見という事だ、闘争」

「うお!?、すっげぇ珍しいジャン月光!

ジャ!、とっとと行くぞ!

 

 

あの金ぴかでバッチバチな壁んとこに

バッチャン居っから!、多分クロ公達も!」

 

 

 

      はいぃいいい!!??』

 

 

「ちょ、ちょっとベアモン!!

ソレどういうこと!?」

「うん!?、お前まさか!

あの時ババモンに食べさせた神実に自分のデータ仕込んでたのか!?」

「?、弱いモンってすぐどっか行くからそんぐらいやんのが普通ジャン?」

「ぬぅっ、何が普通かはよくわからんが・・・でかした!!」

「炎の!」

「ああ!、今からゲートを開く!!」

「申し訳ありません、竜の始祖様

どうか、ワシらと共にこのデッカードラモン号も連れていっては貰えませぬか?」

「?、あ、ああ!、大丈夫だ!!」

「そうね、2人を元に戻すにはみんなを救出してレイド帝国を打倒してからよ!」

「?、???、??????

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!

 

 

マヒル!?、フタバ!?

お前らいつからデジモンになったジャン!!?」

 

 

「「え!?、今!?」」

 

 

 

 

 

 

☆天界 世界樹核付近・最終防衛ライン

 

 

『うおおおおおおーーーーーー!!!!!』

「ギェア!?、ギェェ"」

 

 

「ハァーーー!!、ハァーーー!!

レイド帝国の究極体がナンボのモンだッ」

「古代種舐めんなーーー!」

「死ぬ気でオーバーライトして全員でフクロにすりゃあどうとでもなるんだっての!」

「ちょっとちょっとー!、あんた達ー!」

「む、むりしちゃだめー!」

「うっせぇ!、チョロチョロすんな!」

「ここの守りは俺達が

アル・・・・・・・・・フォースブイドラモンから!

頼まれてんだよ!!」

「だから!、神威ばっかに良い格好させてたまるかってんだ!」

「次行くぞ次!

1体たりともマグさんの所には行かせねぇ!

だよな!?、お前ら!!」

『おう!!!』

「もう!、これだから竜族って・・・!

ノワール、ブランちゃん

しょうがないから私達で援護しましょ」

「「うん!」」

 

 

「〔でェェェェエエエエい!!!!!!〕」 

 

 

ブイドラモン達やシスタモン三姉妹、更にはヒムカムイと共にガンクゥモンが相手取っているのは鳥の頭と翼や前足を持ち胴体は獣な究極体・グリフォモンの大群。

それらが飛び交うよりも遥か高みでは・・・

 

 

 

「〔〔「「

 

"ー!ーー!!ー・ー?!~!ーーー・"""!

 

                 」」〕〕」

               ‎

 

 

あまりにも巨大過ぎるナニカが不協和音の絶叫を上げながら天界の空を覆っていた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「刺?、死?、し?、シ!!?」

「ぐぅうぅーーー!、一体何のつもりだ!?

雷霆!、貞節!」

「返答次第では貴公らとの共闘を破棄し、障害として排除せねばならない」

 

背中に翼を生やす獣の鎧纏うドゥフトモン

 

矛と盾を持つ髑髏を模した甲冑のクレニアムモン

 

黄金の壁を破壊せんとする脅威の討伐に乗り出した聖騎士2体の行く手を阻むのはユノモン・ヒステリックモードと

 

「何のつもり、だと?

君達こそ、今、何をしようとしたのだよ

軍師、矛盾」

 

肉体を構成するデータを全て雷霆へと変換し

 

稲光の化身たる大剣を足元に突き立てる

 

怒れる鳴神、ユピテルモン・ラースモード。

 

「見てわからんのかぁーーー!?

あの規格外に巨大なデジモンのエネルギー配給元たる空中戦艦を撃墜 」

「く、口の利き方には注意した方がいい!

い、今のユピテルモンさんもユノモンさんも

じ、自分を抑えんの無理だから!」

「刺!~ー~~ーー!ッ」

「ドゥフトモン・・・!?」

「遅すぎるなクレニアムモン

それでは世界樹より授けられた鎧も楯も宝の持ち腐れなのだよ」

「その世界樹の、デジタルワールド存亡の危機を前に神々は何故私達を妨害する?」

「決まっているだろう

あの艦にはマーヤが囚われているからだ

 

 

・・・・・・・・・おおぉおお!!!、マーヤ!!!

 

 

君のキラめきが!、ソウルが!、あんなッ

あんな不細工なモンに注がれているゥ!!

そんな許されざる存在は一刻も早くッ

消し去されねばならないというのにッ

君のソウルを強制的に吸収しているから!

削除しようモンなら君の身に何があるかッッ

 

私が!!

 

君を!!

 

傷物に出来るのは!!

 

 

君自らが私と愛しの君の寝台に来てくれた時

それだけだと、いうのに・・・・・・・・・ッッッ」

 

 

「アあぁん! あっふぅうううん!!」

「お、俺は!、俺はぁあああーーー!!

ゴシュジンの寝台に!、なりたーーーい!

ハッ!、ハッ!、ハッ!、ハッ!、ハッ!、ハッ!、ハッ!、ハッ!、ハッ!、フハッ!」

 

 

「ドゥフトモン、どうやら神々は、もう」

「ああ、こいつら

 

 

         狂っているッ

 

 

それも、最早つけるワクチンが無い程に!」

 

 

『                 』

 

 

デッカードラモン号ごとゲートを抜けた

舞台少女や彼女らの仲間のデジモン達が遭遇したのはこの

 

 

どこからツッコんでいいのかわからない場面

でした・・・。

 

 

「!、貴様はぁあああーーー!!

よくも!、よくもぉおおおーーー!!

ヌケヌケと私の前に姿を現せたなニンゲン!

・・・・・・・・・じゃない、だとぉーーー!!?」

「な、なんだなんだ?」

「軍師!、ドゥフトモン!

マグ!、ナ、モンがああなったのはフタバのせいじゃないデスぅ!!」

「ああ!、そうだろうなぁーーー!!

システムから解き放たれたというのに奴が最奥に引きこもったままの原因は間違いなく貴様だなぁーーー!!、最速ぅーーー!!

 

 

だがなぁーーー!、それはぁーーー!!

 

 

私が死に物狂いで構築し!、随時更新しコツコツ改良してきたセキュリティプログラムがぁーーー!

ワケわからんモンによって一瞬でそれ以上のモンに書き換えられたという事実に比べればどうということはないわぁーーー!!!」

「・・・・・・・・・えっと、何か、ごめん!」

「お、オレもすまない!」

「あ"やまるなぁーーーーーー!!!

よけいにつらくなるぅーーーーーー!!!」

「ケッ、ようはテメェの面子かァ?

総大将が言ってた通りくだらねぇなァ」

「う、うん・・・それはそうなんだけど

出来れば、言わないでやってくれない?

軍師の奴ってすぐ頭に血が登るからさ」

「空白ぅーーーーーー!!!

とっととアレを消せぇーーーーー!!!

お前ならば容易だろう!?、抑止力!!!」

「今の話を聞いて出来る訳ないでしょ?」

「だがアルファモンのパートナーよ、このままでは世界樹の核への侵略は止められない

そうなれば、デジタルワールドの全てのデジモンはレイド帝国の支配下に置かれてしまい

貴公らとて物量の前には消される他なくなる

故に、ここは犠牲を払ってでも

かの脅威を排除すべきだと思うのだが?」

「アッハッハァ☆、情報通りワッルイ見た目で言ってる事が丸っとゴモットモーだねぇ☆、矛盾の聖騎士殿☆

だけど、それは」

「のんのん!!、で、御座るよ!!

拙者達が必ずや華恋達を

この世界の救世主を救ってみせる!!」

「だから!、あの艦を攻撃しないで!」

「お願いします!、クレニアムモンさん!」

「・・・・・・・・・ドゥフトモン」

「チィイーーーーーー!!、致し方なし!」

 

ひかりとまひるの懇願が決め手となったのか四面楚歌な2体は漸く折れる。

 

「話は終わったか?

ならば、早くマーヤ達の救出に向かうのだよ

このラースモードを構成する怒りの大半は

 

 

アレだけ私に大口を叩いたというのに

まんまとマーヤを奪われた君達の不甲斐なさ

それに対する苛立ちで出来ているのだからな

 

 

ディアナモン、マルスモン」

「死刺死ッッッ刺刺いーーー!!!!!!」

 

 

「ひぎっ!?」

「あ、あああったたりまえジャン・・・!!」

「ハッ!、ハッ!、ハッ!、ハッ!

ごごご!、ゴシュジン!、ゴシュジン!!」

「足元で寝ないで、邪魔」

「アア"ァッ!、イ"ィ"イ"イ!!」

「ヒカリチャン、ソレ蹴っちゃダメだからね

これはフリじゃないよ?」

「?、元々そのつもりだけど・・・

だって、触りたくないし」

「      ゥィン      」

 

 

「〔〔「「

 

"ー?!ーー・!!ー・ー!!ーーー・"""!

 

                 」」〕〕」

 

 

『!!?』

 

すると、天を塞いでいた存在が空間を歪ませながら動き出し、口から破壊光線を発射。

 

「世界樹の加護の元・・・!

絶対なる楯をここに!《ゴッドブレス!》」

「《スピリチャルエンチャント!!!》」

「《ウ ェ ル カ ム ロ ス ト》」

 

 

「〔〔「「

 

"・・・?!ーー・!!・ー!?!・"""!ーーー

 

                 」」〕〕」

 

 

「やばい!、もう一発くるぞ・・!!」

 

聖騎士の楯と神2体の必殺技により初撃を反らせば、間髪入れずに追撃が放たれた。

 

「心配いらないよ、フタバ」

「え、うぁ!?」

 

極太の破壊光線を両手に展開させた魔方陣で

 

強引に抑えつけ、消滅させるのは

 

裏地が水色の白いマントを翻して浮遊する

 

 

漆黒の聖騎士・アルファモン。

 

 

「流石は孤高の隠士、誉めてやるのだよ!」

「〔〔「「!!?ー・ーー"!!」」〕〕」

「ーーー!、それ!、以上ッ

私だって!、極微量しか耐えられなかった!

マーヤのソウルを!、キラめきをーーー!!

好き勝手に

 

無断! 借用! するな!!」

 

「〔〔「「~~ーーーー・・・・!」」〕〕」

 

憤怒の雷霆は己の衝動を全力で御しながら

 

砲撃中の巨体に大剣を突き立てると

 

天空全体に稲光を疾らせ動きを止める。

 

「い、そげぇえええ!、パートナー達ぃ!!

ダメージを与え続けるのも・・・!

決して得策とは言えない!!、のだよッッ」

「!、感謝する主神よ!!、デシテ!!」

「フレイモン!、とっととヴリトラモンに進化するジャン!」

「今の内に乗り込むぞ!、デスぅううう!」

「ああ!、わかった!」

「待ってろよ、香子ぉ!!」

 

相棒と想いを重ねた竜人の腕で紫の神機が

 

応えない。

 

「え・・・?」

「石動さん?」

「双葉ちゃん、どうしたの!?」

「奴が再び動き出せば華恋達が絞り尽くされてしまうで御座る!!!

だから早 」

「わかってるよ!!

・・・・・・・・・わかって!、んのにぃッ」

「すまない、オレ 進化が出来ない!」

「な!?、まさか!

マヒル!!、君の神機は!?」

「だ、ダメ・・・!、私のも動かないよぉ」

「ちょっと!、ソレどういうことなの!?」

 

 

「どうもこうもない、神機に対応するのはあくまでもニンゲンのソウルのみ

完全にデジモンと化した貴様らではパートナーを進化させらないのは道理だろう?

ツユザキマヒル、イスルギフタバ」

 

 

『!!?』

 

異常事態に戸惑う純那の問いに答えたのは

 

4体ものグリフォモンを従えて舞い降りる

 

レイド帝国四天王、魔将・ムルムクスモン。

 

「《ゲヘナ・フレイム》」

「「「「ギェア"ア"ア"ア!!!!」」」」

「!?、自分の配下を自ら・・・・・・・・・いや!

これは!!」

「流石聖騎士随一のキレモン、よく気づく」

 

その手から放たれた地獄の業火に纏わりつかれた幻獣達は甲高い叫びを上げたかと思うと

 

「「「「ギェーーーーー!!!!」」」」

「嗚呼"~ーーー!!」

「ゆ、ゆゆユノモンさぁんッ」

「この!、力は・・・!」

「チィイーーーーーー!!、魔将めが!

自身の配下を!、私達や神々と打ち合えるレベルにまで強化しおって!

だが!、しかし!

いくらレイド帝国の究極体とはいえ

これ程の炎、到底耐えられるモンでは!」

「デジタマにレイドプログラムを挿入されただけの従来のデジモンならばそうだろう

しかし、この4体は違う

 

デジタマ自体がレイドプログラムより造られた純帝国産である新世代のデジモン

 

お前達旧来のデジモンを駆逐し

 

レイド帝国によるレイド帝国の為の世界

 

その創造と維持のみ存在を許されたモンだ」

 

濁った色をした紫炎の化身となり

 

世界樹の守護者達へと一斉に襲いかかった。

 

「こ、のッッッ

お前達は!!、またそうやって!!

デジモンの命を、心を踏みにじるのか!?」

「フン、白騎士の事か?

安心するがいいアルファモン

貴様らを討ち取った暁には

 

 

新しい『オメガモン』を造ってやるさ

何せ奴はかの支配者のお気に入りだからな」

 

 

「・・・・・・・・・それで挑発してるつもりか?

でも、まぁ、うん

 

 

その喧嘩買ってやる」

 

 

「フッ」

 

瞬時に眼前にまで迫ってきた聖剣を細身剣で受け止め、余裕の笑みを浮かべる魔将。

 

「アルファモン!!」

「大丈夫だ、ジュンナ

ボクは!、ちゃんと!、冷静!、だから!」

「どこがよ!?」

「どのみち!!

今こいつを抑えられるのはボクだけだろ!?

だから、速攻終わらせてナナ達を助け 」

「握りが甘い」

「う!、ん!?」

「脇も開いているな

フン、空白だけにブランクの影響もひとしおと言った所か?」

「この!!」

「悔しかったら、無敵のアルファインフォースで私をなんとかしてみるがいい

 

 

使えればの話だが」

 

 

「「!」」

「ア"ァ?」

「豊穣の、神実でも

ニンゲンのソウルは回復出来ない、デシテ」

「だから、あいつジュンナの消耗を抑える為に

まだ馴染んでない剣で戦ってる、デスぅ」

「そ、そんなっ・・・!

だって、お爺ちゃんを元に戻すにはそうするしか

あ!!」

「それすらもお婆さんの、麗将ロゼモンの脚本だったの?

ッ、列車の時からずっとそうだった!

私達、踊らされてばっかり!」

「それは違うぞカグラヒカリ

お前達は最初から奴の手のひらの上で

救世主なんてモンを演じていたに過ぎん」

『な!?』

「誰もおかしいとは思わんかったのか?

多くの枝葉の中で9人が揃って同じサーバー

しかも、奴の支配圏たるレギオン群島との交易により懐柔されていた士武大陸と

奴の育てたモンが暗躍していたウラル大陸だった事を」

「・・・・・・・・・じゃあ、やっぱり

私達をこの世界に引き込んだのはお婆さん

ロゼモンだったの?」

「「「え」」」

「フン、頭部への強い衝撃で奴に弄られていたメモリーが復旧していたか」

「ええ、だからこそわかった事があるわ

でも、それは全部後回し!!」

「フン!!」

「今はあなたを倒すのが先決よ!

そうでしょう?、アルファモン!!」

「!、うん!!」

 

パートナーが放つ矢に合わせ、アルファモンはムルムクスモンとの技量の差を埋めんと必死に聖剣を振るう。

 

「〔〔「「・・・・!!!ーーー"""」」〕〕」

「ぐ!、ぬぅ!、がぁあ"あ"あ"!!」

「ゆ ピ テるもぅン!

さマぁアー~~ー!~!!ンッ!ッ」

「やっべぇ!、急がねぇと!

ユピテルモンもクロ公も本当にマズいジャン!」

「こうなったら!!、アルフォースで無理矢理にでもエアロブイドラモンに!!」

「や・め・ろ最速ーーー!

そんな不安定な進化にワタクシは命を預けるつもりはない!、デシテ!」

「途中で落ちたら誰がナナ達助けんだァ!?」

「でも!!、このままじゃカオルコが!!」

「ブイモンッ

くそ!、もうどうしようもないのかよ!?」

 

 

〔「諦めるでない皆の衆!!!」〕

 

 

「お爺ちゃん!?」

〔「早くデッカードラモン号に乗るんじゃ!

これからあの戦艦の所まで 飛ぶぞい!」〕

「へ?、ええええええ!?

わ、ワー君ソレって飛べたの!?」

〔「フォッ☆フォッ☆フォッ☆フォー☆

こんな事もあろうかと!、ですじゃ!」〕

「流石はワー爺様で御座る!」

「行こう、リュウダモン

華恋の、私達の運命の所まで!」

 

デッカードラモン号にひかりやパートナーデジモン達が次々と乗り込む最中

 

「!!」

「マヒル!?」

 

まひるの狼耳がピクリと動くのと同時に

 

肉体がデジタルウェイブと一体化。

 

「ギェアアアーーーッ!」

「がるるるぅ!」

「グリフォモン!、こっちまで来ていたのか!?

光の!」

「言われるまでもないっての!」

「まひる!!」

「るるるるるぅ!

行って!、ひかりちゃん!」

「でも 」

「こいつはあたしとまひるが引き受けた!!

ブイモン、香子を頼んだぞ・・・!」

「ふ、フタバぁ!

ッ、任せろ!、デスぅうううううう!!」

「ワー君・・・・・・・・・いや!

『明けの遠吠え』の長ワーガルルモン!

オレの仲間達をどうか導いてくれ」

〔「!、アォォォオオオン!!!」〕

 

力強い遠吠えを背中に受けたストラビモンは双葉やフレイモンと共に、空中でグリフォモンと戦うパートナーの元へ。

 

「《ベビーサラマンダー!》」

「《リヒト・ナーゲル!》」

「でぇりゃあああーーー!」

「ギギェ・・・ギエエエァアアア!!!」

「「「「がは!?」」」」

 

しかし、渾身の攻撃はどれも分厚い毛皮に遮られ届かない。

それどころか超高周波の音波《スーパーソニックボイス》によって4体纏めて吹き飛ばされてしまった。

 

「ダァーッハッハッハッ!!

ど、どうやらあの元ニンゲン共

すっかり救世主の恩恵を失ったようだなぁ!

曲がりなりにも創造神の一部がッ

ククク!!、とんだ無様を見せてくれる!」

「余所見をするなよ魔将!

お前の相手はボクとジュンナだろ!?」

「お前達こそ私の相手などしていていいのかな?」

「またそうやって時間稼ぎ 」

 

 

 

「「「「「とぉちゃあああん!!」」」」」

 

 

 

「「!!」」

「どうしたお前ら!?、何があった!!?」

「し、しそさまぁ・・・!」

 

乱戦の真っ只中で動き出したデッカードラモン号が排除したのは動力を司る筈の機関部。

 

 

〔グォオオオォォォーーーーーーン!!〕

 

 

「うん!?、デッカードラモン!!、遂に覚醒したのか!?

オメガモンが暴れるどさくさに紛れてワー爺が回収してた・・・

はじまりの街を守りしモンの電脳核が!!」

「ま、待って、待ってよアルファモン!

じゃあ、何?

デッカードラモン号はデッカードラモンで

え?」

「・・・・・・・・・ううん、デッカードラモン号は

肉体を失っても消滅しなかった電脳核の周りをジャンクで組み上げただけのマシーンでしかないよ

 

だけど、それでもあいつには届いていたんだ

 

君達みんなのキラめきは」

 

 

〔グァアアアァァァーーーーーーッ!!〕

 

 

「フン

地を這うだけのモンなんぞに何が出来る?」

 

吠え猛りながら疾走する鰐を思わせる形状をした巨大メカをムルムクスモンが嘲笑えば

 

 

空中戦艦からの砲撃が開始。

 

 

全速力で接近していたデッカードラモン号の

 

頭部が、背中が、尻尾が次々と穿たれ

 

継ぎ接ぎだらけの装甲が弾け飛ぶ

 

 

その勢いは止まらない。

 

 

〔グ!、グァアアアァァァーーー・・・!!〕

 

 

天までそびえる黄金の壁を駆け上がると

 

この場に到るまでずっと動かし続けてきた

 

四足が砕ける程に力強く踏み込んで跳躍。

 

自分より大きな艦に上から襲いかかり

 

 

大口を開けて食らいつく。

 

 

〔ヤット イエル

 

 

イッテ・・・・・・・・・シャ・・・・・・・・・イ・・・・・・〕

 

 

全身汲まなく炎に包まれ

 

寄せ集めの部品が炭化しながら崩れ落ちる中

 

 

みんなの家が紡いだのは

 

 

みんなが無事に帰れる祈り。

 

 

 

 

 

 

 




※デッカードラモン号
世界樹へと連なる枝の根本、つまりははじまりの街の守護神たるデッカードラモン。
その場所がレイド帝国による空襲を受けた際、防衛に当たるがあえなく轟沈。
しかし、愛するモンを護らんとする強い意思にて肉体を失っても尚、電脳核だけは残っていた。
脱出の折にソレを回収していたワー爺は流れついたウラル大陸のゴミ捨て場にてジャンクをかき集めかつての肉体を再現、動かすことに成功。
最も、電脳核に残されていたエネルギーは限られていたので普段はタービンを回して稼働させていた





最期の大仕事を成し遂げるべく、愛の為に


デッカードラモンは


その生命を燃やし尽くしたのである。



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復活のエンシェント 古代始祖降臨!

 

 

 

「でっかー、どらもん?」

「オレ、もうだれも犠牲に

しない、って・・・きめ・・・・・・なのに・・・」

 

 

「犠牲じゃないッッッ!!!」

 

 

「ほう?」

「デッカードラモンが自分としての意思を取り戻して決めたやりたかった事を!!

そんな言葉なんかで片付けるなよ!!」

「フン・・・!」

 

呆然と立ち尽くす双葉とフレイモンに、アルファモンはムルムクスモンとの剣劇を繰り広げながら全身全霊の叫びを叩きつける。

 

「そう、だよな!、兄弟!

《ブラストコフィン!!》」

「ギ?」

「やってやろうぜ!、ガルル!」

「ああ!、勿論だグルル!」

「「《カオス/フォックスファイアー!》」」

「み、んな?」

「マヒルさん!、始祖様!

おいら達も手伝うんだな!

だから!、頑張るんだなーーー!」

「とーちゃんが、長が!

自分達の身を案じたというのはわかっています

・・・・・・・・・ですが、それでも!

皆さんがこの世界で、舞台で見せてくれたキラめきに応えたいのは自分達だって同じ!

《グラオ・レルム》ォォォオオオゥン!!」

「ギギッ!?」

「お、おまえら・・・」

 

すると、まひるやストラビモンの目の前で『明けの遠吠え』の5体がグリフォモンに牙を剥いた。

 

「ギェア!、ギエエエァアアア 」

「《石敢当!!!!!!》」

「!?!!?、グェップ!!」

 

ドーベルモンの封印が破られ《スーパーソニックボイス》が放たれる寸前に口の中に飛び込んだシーサモンが壁を張れば大半が体内に逆流。

 

「ギエエエァアアア!!!」

「「「「「ギャゥンッッッ!?」」」」」

 

だが、即座に再生され他の4体と一緒に超高周波の音波の餌食に。

 

「フン、ただの成熟期が無駄な事を」

「ムルムクスモン

あなた、学習能力がないのかしら?」

「ゴミ溜めで産まれ育ったモン達をさ

舐めてばかりいると!」

「ブハッ!?、が!!」

「腹を下しても知らないぞ、うん」

 

魔将のニヤケ面に頭突きをくらわせ、怯んだ隙に鳩尾に膝を入れると体勢が折れ曲がったタイミングで頭をボールのように蹴り飛ばす。

 

 

ガコンッッッ!!!

 

 

聖騎士にあるまじき行為のオンパレードが披露されるのと同時に幻獣の口に突っ込まれたのは

 

Love Judgement。

 

「ギ!、ンギェ・・・!」

「双葉ちゃん!、フレイモン!」

「最大火力だ相棒!!」

「中までしっかり火ぃ通してやろうぜ!!」

 

まひるの投擲により開かれたままのそこに

フレイモンと双葉がDeterminaterを突き立てれば

ムルムクスモンの濁った物とはまるで違う

 

 

力強い紫炎がグリフォモンの体内を蹂躙。

 

 

「美味しい所は食わせて貰う・・・!

《リヒト・バイン》グルァアアアアアアーーーーーー!!!」

「ァギェア"!・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

脆くなった喉元を光る牙が丸々抉り取って漸く究極体デジモンの消滅が始まった。

 

「や、やっとたおせたぁー・・・」

「でも!、今のでもう武器が使いモンになんねぇ・・・」

「2人共再生産まで出来なくなっ、くっ!」

「無理、すんなよ炎のッ

オレ達自身も、限界なんだか 」

 

 

「〔〔「「ー・ー?"!~!ーーー・・・・」〕

 

 

満身創痍な4体の頭上を塞ぐ天蓋の翼持つ怪鳥。

その体躯が徐々に収縮し、牙のある嘴から漏れる叫びは先程に比べると弱々しい。

 

 

舞台少女5人によるソウルの配給が止まったのだ。

 

 

「や、やややったー!、流石はゴシュジン!

ユピテルモンさん!、いいい今ですって!!

・・・・・・・・・ユピテルモンさん?」

「!?、ユピテルモン様ぁああん!!!」

「ーーー・・・・・・・・・ッ・・・」

 

天を塞いでいた存在の全貌が明らかになる中

消耗しきったユピテルモンの手から稲光の大剣が消え、ラースモードが解除。

 

〔「ー・ー!"!~!ーーー・!!」〕

「やらせ、ない!、のだよ・・・ぉ!」

 

だが、それでも雷霆の神は残る力を振り絞り

 

戦艦に向けて放たれた破壊光線を防いだ 

 

 

 

「マーーーヤァ・・・・・・ッッ!・・・・・・・・・」

 

 

 

自分の身を盾にして。

 

 

 

「い

 

 

いやぁああああああああ!!!!!!

 

 

ユピテルモン様!、ユピテルモンさまぁあ!!」

 

 

「ゆゆゆユノモンさぁーーーん!?

ど!、どどど何処行くんですかぁああ!?

おおおぃいいい!、ややややめろぉおお!!

お、俺、ゴシュジン以外に痛めつけられんのいやだいやだいやだぁあああああ!!!」

「「ギェア!!、ギェア!!」」

「《エンドレス・ワルツ・・・!》」

「《アウスターベン》そしてぇーーー!《エルンストウェル!》

空白!、こちらはまだ時間がかかるッ

奴は貴様が仕留めろぉーーー!!」

「うん!!

ジュンナ!、アルファインフォースを使って一気に終わらせる!」

「わかっ !?、アルファモン!!」

 

 

「《ゲヘナ・フレイム》」

〔「!!!ー・ー!"!!ーーー・!"!」〕

「さぁ、オニスモンよ

こんな世界!、焼き払ってしまえ・・・!!」

 

 

アルファモンの準備が整うより先に

 

怪鳥・オニスモンの巨翼に地獄の業火が宿る。

 

『ふぇえええん!?』

「なによ?、アレ?」

「呆けないでノワール!、ブランちゃんを守るわよ!!」

「お、おねーちゃん・・・おとーさん・・・!」

「おいおい!!、本気でデジタルワールドを焼け野原にすっきかってェんだ!?」

 

 

「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」

「し、シーサモン!、みんなぁ!」

「ファングモン!、グルルモン!、ガルルモン!、ドーベルモン!」

「おまえ・・・・・・ら・・・起きろ、って!!」

「くそ!、くそぉおおおおおお!!」

 

暴風の如き羽ばたきにより勢いを増した

 

《ゲヘナ・フレイム》が地上の全てを一掃

 

 

「《デジタライズ・オブ・ソウルッッッ》」

 

 

する筈だった

 

抑止の聖騎士がパートナーの負担を度外視し

 

全力で放った必殺技で相殺しなければ。

 

〔「・・・ー・・・・・・ーーー・・・」〕

「この損壊では再生まで数分はかかるか

フン、命拾いしたな有象無象共

だが、こちらとしても助かった

お陰で最大の不穏分子たる

孤高の隠士とそのパートナーを討ち取れる」

「ジュ!、ナッ」

「かはっ!!、はっ!!、は!!」

 

地べたに這いつくばるドルモンと純那にムルムクスモンは細身剣を弄びながらゆっくりと歩み寄った。

 

「ぎゃおおおおおおう!!」

「ほぅ?、火を吹くか!

ますますニンゲン離れしてきたな」

「るっ、せぇえええ!!」

「がるるるるる・・・!」

「フン!」

「きゃん!?」

「その芸には飽きたぞ、ツユザキマヒル

最速の聖騎士ならばいざ知らず

お前の思考は光速の動きにまるでついていけていないではないか

そして、イスルギフタバ」

「ぎゃっ!」

「ファイアウォールの特性を持つ炎

だというのに、お前のソレはムラが多すぎる

薄い所を突いてやれば、この通り簡単に抜けるぞ?」

「ちく!、しょ!

(ダメだ・・・今のあたしじゃ・・・)」

「(何も・・・できない・・・!)

う、ううぅ!」

「哀れだな、創造神に連なるモンのパートナーになったばかりにニンゲンを辞め

だというのに、デジモンにすら成りきれていないとは・・・・・・・・・冥土の土産だ

 

 

最期に面白いモンを観せてやろう」

 

 

紫炎を吐き出してきた竜人を

 

緑光と化して爪を向けてきた人狼を

 

軽々一蹴した魔将の背中に

 

 

輝く二対の翼が現れる。

 

 

「「てん、し・・・・・・・・・?」」

「そう、かつてこの弱肉強食たる戦乱の世界で無意味にも治安維持を務めた挙げ句

レイド帝国の最初の侵攻の折、失われたデータの補填として養分とされた天使型デジモン

その生き残りが

 

 

私だ」

 

 

「「ッッッ!!?」」

 

ムルムクスモンの正体にストラビモンもフレイモンも顔色を失う

 

「私の同胞や私が仕えていた三大天使

他にも多くの命を切り捨てられたというのに

この世界は何も変わらなかった・・・

いや、それどころか侵略されても尚

いがみ合い、他のモンを踏み台にして

自分の都合を優先するモンばかり

 

 

これならば

あの時デジモンは、デジタルワールドは

全て滅びるべきだったのではないか?

 

 

そう想い至った私は

この歪んだ世界を消すと誓ったのだ

侵略者たるレイド帝国に全てを捧げてでもな」

 

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・んだよ、ソレ」」

 

が、余りの物言いにすぐに色が戻った。

 

「いがみ合って、他のモン踏み台にして

自分の都合を優先しているのは!

お前だって同じだろう!?」

「ほう?、言うではないか

多くのモンを切り捨てた創造神の一部にして

今まさに護るべきパートナーを害している

唾棄すべき存在がッ」

「オレの相棒は!、ただ護られるだけの舞台少女じゃない!!!」

 

 

「・・・・・・・・・」

 

 

「オレ達や、この世界がクソッタレなのは百も承知だっての!

だけど、舞台少女のみんなに出逢えたのはそんなデジタルワールドが

これからキラめく舞台があったからだ!

 

後!!、2人共ニンゲンを辞めちゃいない!

 

カレンチャンがそうだったように・・・

 

絶対ッ、元通りになるんだよ!

 

オレ達のパートナーの行く末を

 

この舞台の終幕を!!

 

お前が!、勝手に決めつけんな!!」

 

 

「・・・・・・・・・ッ」

 

 

パートナー達の想いに折れかけていた

 

双葉とまひるの心に『火/光』が灯る。

 

「フン!!

中身の無い器如きが吠えた所で何もならん

オニスモン!、次こそは仕損じるなよ!!」

〔「?~ーー!ーーーーー!"!"!"」〕

 

ムルムクスモンは天使だった証を輝かせると再び《ゲヘナ・フレイム》をオニスモンの翼に付与。

 

「ストラビモン」

「あはは・・・ごめんマヒル

かっこつけてはみたんだけど、さぁ・・・」

「フレイモン」

「進化出来ないオレじゃ、もう、どうにも」

「ならさ、あたしが進化するよ」

「「え?」」

「舞台少女は、日々進化中

だから、華恋ちゃんがやったように・・・

 

 

じゃ!!!   ないッッッ!!!

 

 

華恋ちゃんよりも、他の誰よりも!

 

 

私進化するよ!

ストラビモン、あなたと一緒に!」

「忘れてないよな?、相棒

あたしが、この舞台で主役張るのに

 

 

必要なモンが何なのかを!?」

 

 

「「・・・・・・・・・!!」」

 

衣装の残骸から獣毛や鱗を覗かせながらもストラビモンとフレイモンはパートナーは

 

 

やはり、どこまでも舞台少女であった。

 

 

 

アォォォオオオオオオーーーン!!!!!!

ギャオオオオオオオオオオオン!!!!!!

 

 

 

直後、戦場に響き渡ったのは狼と竜の咆哮。

 

 

「こ、れは・・・!」

「ソウルとキラめき!?

オレ達の体からどうし

あ、そっか・・・・・・・・・器、だから

自分でも気づかない内に溜めてたんだ

 

マヒルの『光』を・・・」

「フタバの『炎』を・・・

 

でも、もうオレ達は入れ物なんかじゃ

 

 

いられない!!!

 

 

そうだろ!、【オレ】!?」

「ああ、そうだな【オレ】

こんなにも眩しくて、熱いパートナーに

相応しい存在に・・・!

ずっと、言い訳並べて目を反らしてモンに!

 

 

なっちゃっおっかぁ☆ 本物に☆」

 

 

2つの器が今まで蓄積していた

 

ソウルとキラめきを全て解放させれば

 

緑と紫の神機がようやっと起動する。

 

「でも、オジサンだけじゃムリムリだから☆

マヒル☆」

「うん!」

「フタバ!!」

「ああ、思いっきりやってやろうぜ!!

相棒!!」

 

まひるとストラビモンには

白と紫のフレンジが揺れる『光』と書かれた

緑の幕

 

双葉とフレイモンには

赤と黄のフレンジが揺れる『火』と書かれた

紫の幕

 

 

「「「「ーーー!!!ッッッ!!!」」」」

 

 

かつて、受け止められず弾かれたソレらが

頭上から降りてくれば

案の定、凄まじい圧迫感が4体を襲った

 

 

が!

 

 

今は、もう   負けられる筈がない。

 

 

「(

 

ばななちゃんも、天堂さんも、純那ちゃんも

 

 

華恋ちゃんも!!!)」

 

 

「(クロ子も・・・・・・・・・香子も!!!

 

 

とんでもないピンチをチャンスに変えたッ)

 

 

だったらぁ!!、あたし達はぁ!!」

「もっとッ   もっとぉおおーーー!!」

 

 

みんなが見せてきた魂のキラめきをも越える

 

 

その為の超越進化なのだから。

 

 

「キラめくみんなは大好きだけど・・・!」

「キラめく君はもっと好き☆」

 

 

二条の剣閃により断たれた粒子の幕を

再生産させたレヴュー衣装の赤い上掛けを

モフモフとした緑色のファーへと変える

 

人間

 

その頭頂部からはピコピコ動く狼耳

スカートからは細長い尻尾が覗き

手には爪、口から牙も見えている。

 

 

「回る」「回る」

 

「「デュエットが

 

終わるまで 一緒に 踊りきろう!!」」

 

 

新調させた『衣装』を着た舞台少女の

 

隣に並び立つのは眩い輝きの鎧と

 

身の丈程の双刃剣を両手に各々携えた

 

光り輝く至高の獣

 

 

またの名を・・・。

 

 

「「獣が始祖 エンシェントガルルモン」」

 

 

「ずっと、君が側に居てくれた・・・」

「だから、進化出来たんだよ、私達」

「だね☆」

 

 

古代獣へと至った『光』は

やっと、心の底から明るく笑えた

足元で微笑むパートナーのお陰で。

 

 

「互いの火と火が!、熱く!」

 

「激しく!」

 

「「炎のように!!」」

 

 

爆炎と共が燃え上がった粒子の幕を

再生産させたレヴュー衣装に引火させ

赤い上掛けを紫炎の翼へと変える

 

人間。

 

その額からは大きな2本の角

スカートからは逞しい尻尾が覗き

手には爪、口から牙も見えている。

 

 

「燃え重なったオレ達の道!!」

「それがあたしが見つけられた・・・

夜空を焦がす一本道!!!」

 

 

新調させた『衣装』を着た舞台少女の

隣に並ぶのは炎を連想させる厚い装甲と

太陽フレアの如き熱を放つ大翼を背中に持つ

轟火の焔翼竜

 

 

またの名を・・・。

 

 

「「竜が始祖 エンシェントグレイモン」」

 

 

「最後まで付き合って貰うぜ! 相棒!!」

「気合い!、入れて!、突き進むさ!!

 

 

相棒!!!」

 

 

古代竜へと至った『炎』に

もう迷いなど無い、恐れるものは無い

足元で堂々と構える舞台少女のお陰で。

 

 

 

「ほう!、創世神に同調したせいで変質した肉体のデータを『衣装』へと書き換えた上!

器でしかなかったパートナーを始祖へと至らせるとは!」

「やぁあああーーー!!」

「・・・・・・・・・だというのに、結局それか?」

 

Love Judgementを構え緑光と化したまひる。

目には見えずとも直線的な彼女の動きを予測しムルムクスモンが《ゲヘナ・フレイム》を放てば綺麗に直撃した

 

 

光輪と化したメイスに。

 

 

「!?」

「頭が追いつかなくたって!

体はわかってるの!、私がやれること!!」

 

地獄の業火を霧散させ魔将を弾いた己のキラめきの元へ滑るように駆けつけ、また投擲。

 

「ま、マヒルさん飛んでるんだなー・・・?」

「いや、違うぞアレは!」

「体が落ちる前に空中で光になっているのですか・・・?」

「マヒルさんヤッベーな、ガルル」

「マヒルさんヤッベーよ、グルル」

 

狼耳を立て、右に左に尻尾を揺らしながら空を駆け回る舞台少女に獣達は口を開けて呆けるばかり。

 

〔「!!ーーーーー!"!"!" ・?!」〕

「あたしの炎にムラがあるって?」

「ひ、るむな・・・!

やれぇい!!、オニスモン!!」

 

一方、双葉は紫炎の翼を広げて飛翔し《ゲヘナ・フレイム》を纏って突風を巻き起こすオニスモンの目の前へ。

 

 

「はっ!!! やぁっ!!! せい!!!」

 

 

そして、得意の殺陣を思いっきり披露する。

 

斧部に彼女が認めない情報【データ】を全て

 

遮断する火【ファイアウォール】を

 

内包させながら。

 

 

「どうだ?、これなら文句ねぇだろ?」

 

 

「「「きゃーーー!!!、きゃーーー!!!

おーーーじさまぁああーーー!!!」」」

『チィイイィイイイッッッ!!!!』

「おいおい・・・おめェら黄金の事根に持ち過ぎだっての」

 

自分らでは消される他ない攻撃をあっという間に蹴散らし、黄色い歓声を一身に浴びてる

舞台少女に竜達は嫉妬の眼差しを向けるのであった。

 

「フタバチャン☆ナイスナイス☆でもさぁ!」

「オレ達にも見せ場はとっておいてくれ!」

「《アブソリュート☆ゼロ!》」

「《ガイア!!、トルネーーード!!》」

〔「!?"!?!!"・ーーー!」〕

「・・・・・・・・・炎の、お前変わったなぁ

モチ、イイ意味で☆」

「ははは!、何せオレは!

世界一の舞台少女のパートナーだからな!」

 

技を放った直後のオニスモンに炸裂したのは

 

電子すらも止める絶対零度の超凍気と超光

 

更には、大地の息吹きを収束させた竜巻。

 

〔「!"?" ・・・・・・・・・ ・!」〕

 

芯まで凍結した後、熱風によって肉体諸共溶解させられた怪鳥が天空から墜ちていく・・・。

 

「オニスモ   !?

 

ホシミ、ジュンナ・・・?

 

お前、何故 アルファモンの魔方陣をッ!?」

 

 

「ドルモンに戻っているから使えない筈?

この子がさっき言った事を忘れたのかしら

 

 

ゴミ捨て場育ちを舐めるなって・・・!!」

 

 

四方八方から緑光に殴られ続ける魔将を見上げながらパートナーから託された聖なる力を

 

足元から体を伝って腕に、翡翠弓に・・・

 

矢尻の先端へと集中させる舞台少女。

 

「ムルムクスモン

あなたって学習能力が無いんじゃなくて・・・

自分の先入観と固定観念に囚われた

頭のお固い、真面目な天使様だったのね

そんなあなたにこの言葉を贈るわ

 

 

 

しきたり【常識】は破る為にあるッッッ!!

 

 

 

《デジタライズ・オブ・・・アローー!!》」

 

 

 

『ギェアーーーーーー!! ァ"』

 

 

 

!   !   !   !   !   !

 

 

 

「ダァーーーーーーアア"ア"!!!!!」

 

咄嗟にグリフォモンを集結させ壁にすれば

 

弦から矢が離れるの同時に

 

異次元より伝説上のモンスターが

 

 

水色のキラめきを纏いながら召喚。

 

 

幻獣の群れを一瞬で食らい尽くし

 

ムルムクスモンをも飲み込んだ。

 

「純那ちゃん大丈夫!?」

「そ、れ私の台詞ぅ」

 

まひるが閃光と共に着地するのと同時に、純那は横たわるドルモンの隣に倒れてしまう。

 

「ねぇ、ジュンナ・・・

いまのは、だれのことば?」

「決まってるじゃない、私の、ことば、よ」

「うん・・・だと・・・おもった・・・・・・・・・」

「ドルモンもお疲れ様、それにありがとう

2人が頑張ってくれたお陰だよ

私と双葉ちゃんが人間に戻れたのは !!」 

 

 

「フン、救世主でありながら・・・

デジモンの、獣の感覚も、兼ね備える、か」

 

 

粉塵の中で魔将が動くのを狼耳が察知。

 

Love Judgementを手元で回し、構え直せば

 

「忌々しいッッッ」

〔「・"!!?・・・・・・・・・」〕

「あいつ!

オニスモンを【ロード】したのか!?」

「どうやら、それだけじゃないみたいだ

炎の・・・!」

 

 

「レイドプラグラム・緊急コード 解!!」

 

 

斑模様の空に亀裂が走り、崩壊が始まった。

 

「わ、たし?、我々?

どちらでも、いいッ!!

デジタルワールドを、けせるならば!!」

 

純那によって欠損していた部分が

 

異音を立てながら過剰な程に盛り上がり

 

天使だった証は怪鳥の大翼の一部と化して

 

手にした細身剣は最早ただの業火の塊に。

 

「ワォッ☆、ワーーーオ

・・・・・・・・・そんなになるぐらい、憎いのか?

仲間を奪った世界樹が、この世界が

スサノオモン【オレ達】が」

「ニクい?、チガう

コレは我々が生きとし生けるモンにアタえる

慈悲!!、博愛!!、つまりアムール!!

我々!、愛之洗礼にテコノ世界ヲ救う

救えるのはッ、お前らではないッ

 

 

このダルクモンだけダァアーーー!!!」

 

 

ムルムクスモンだったソレから蠢く0と1の粒子が弾け、全身から垂れ流されていた《ゲヘナ・フレイム》が飛散。

 

「グルルルァアアア!!」

「たぁ!!」「せいっ!!」

 

《アブソリュート・ゼロ》で濁った色の炎を消火すれば暴走する魔将を舞台少女2人が天と地から同時に攻める。

 

「《バテームぅ・デぇ・アムールぅ》」

「「!?」」

「《ガイア・トルネードぉおおお!!》」

「コレが!!、私之愛!!

《ゲヘナ・テンペスト!!》」

 

 

しかし

 

 

光輪のLove Judgementは剣術で絡め取られ

 

紫炎のDeterminaterは体術で躱され

 

古代竜の必殺技は相手の必殺技により相殺

 

「オ ニ、モンさ !!

愛、アイ、あい、アァアイィイイッ!!!」

「ムルムクスモン、あなたのそれは・・・!」

「あい?」

 

 

その瞬間

 

 

デジタルウェイブと一体化したまひるが

 

 

巨大な双刃剣を頭上に掲げながら突撃し

 

 

「愛なんかじゃないっての・・・!」

 

 

エンシェントガルルモンもまた

 

眩い輝きを放ちながら残る1本を振りかぶり

 

 

 

「「《シャープネス クレイモア!!》」」

 

 

 

一閃。

 

 

「   ぁぃ   ?   い   」

 

 

「「行くぞぉおおお!!!、相棒!!!」」

 

 

四等分にされたムルムクスモンだったソレは

 

明るまない空を燃え重なって照らす

 

2つの太陽を見た気がした。

 

 

「「《オメガバースト!!!》

でぇりゃあああああーーーーーー!!!」」

 

 

周囲数キロに渡り、引き起こされる超爆発

 

その中で竜と人が魔に

 

熱く、鮮烈なアクションを魅せつける。

 

 

 

・・・・・・・・・これがキラめき  か   ?

 

 

ダハッ

だはははははははははははは!!!!!

 

 

 

敵わぬぅんッ、まるで敵わぬぞぉ~~~?

 

 

 

こんなモンでレイド帝国に敵うモンかぁ!」

 

 

 

「「「「!!??」」」」

 

ファイアウォールの炎に存在そのものを

 

世界から遮断され、末端から炭化しても尚

 

ムルムクスモンは嗤い続けた。

 

「カグラヒカリも!、他のパートナー共も!

今ごろは最後にして最強!、かつ最新鋭!

産まれながらの純帝国産殺戮兵器たる機将に

消されているだろぅよぉーーーう!!!

 

 

 

せいぜいッ!!!、いそぐことだ!!!

 

 

だはははははははははははははは!!!」

 

 

 

「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」

 

 

歪な高笑いを上げながら魔将は完全に消滅

 

その跡には、デジタマすらも残らない・・・。

 

「ねぇ、双葉ちゃん」

「ああ、あいつもしかして 」

「やめなって2人共」

「もし、そうだとしたら・・・オレは・・・

いや!!、例えそうだったとしても!!

あいつのやった事も!、やろうとした事も!

オレは決して許さないとも!!!」

 

 

「《鉄拳制裁!」

〔地神! 神鳴! 神馳! 親父ぃ!!》〕

「《さささサウザントフィストととと!》

や!、やややったぁーーー!!

お、俺やりましたよゴシュジーーーン!!」

「2体纏めて消え去るがいい!

《ヴォルケンクラッツァー!!》ヴルァアアアアァ!!」

「「「「ギァ!、ギェ・・・ッ・・・」」」」

「・・・・・・・・・世話をかける、ドゥフトモン」

「ヴルァー!、気にするなクレニアムモン

世界樹直々のコード操作が逆効果になると予想出来なかったんだ落ち度を挽回したまでの事よ」

「おいおい、崩壊そのものは止まったけどよ

これ本当にやばいんじゃねェか?」

「・・・・・・・・・ああ、私達が想定していた以上に世界樹の衰弱は激しい

恐らく、レイド帝国を排除しても最早手遅れ

 

 

遠からず、デジタルワールドは消滅する

そこに生きる全ての生命も共に」

 

 

濁った紫炎の化身を削除し終えた聖騎士達

 

 

「うっ、ぅうん・・・!」

「ドルモン!?」

「まだ休んだ方がいいんだなー!」

「「そうだぜ兄弟!」」

「ジュンナさんもです!」

「そうも、言ってられないのッ

ななを!、学級委員長としてみんなを助けに行かなくちゃ・・・!」

「ああ、そうだな

いい加減あいつん所行ってやんねーと!」

「ジュンナとドルモンはオレの背中に!」

「炎の悪いけどオレも頼む」

「華恋ちゃん、ひかりちゃん、みんな!

 

 

           え?」

 

 

 

そして、舞台少女達の頭上を浮かぶ空中戦艦

 

 

 

 

突如、轟音を響かせながら

 

 

 

爆発      炎上

 

 

するのであった・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 








『悪役達の舞台裏』







ゼハァーーーーーー・・・・・・・・・!!!


しんっ、どいったらありゃしないね、ぇ!」
「やっと喋れるようになったか?
体の大半棺に突っ込んでる死にぞこないのババアが無理するからだ」
「こん、ぐらいやんないと!
途中で起きてきそうで怖いんだってのッ、こいつらは!」
「・・・・・・・・・舞台少女というのはアンデット型か何かか?」
「いやぁ、それよりももっとずーーーっと!
しぶとい連中だよぉ」
「フン、そうこなくては試す価値がない
あの御方が・・・・・・・・・オファニモン様がッ

《八雷神》にデータも魂も
何もかもを焼かれる痛みに悶え、叫び!
苦しみのあまり涙を流しながらも!


信じ続けた、確かな未来を造れるかどうかを


な」


「・・・・・・・・・ねぇ、ムーさん
いやさ、ダルクモン
今ならまだ間に合うって
あいつらのキラめきを受け入れなくちゃ、あんたは 」
「過剰なまでに投与されたレイドプログラムによりデータの根幹までもが破壊され灰塵と化して真の消滅を迎える
つまりは、デジタルワールドの一部となり
長らく待たせてしまっている御身の前に

再び馳せ参じられるという私にとって至上の喜び!

それを奪おうとしてくれるな


かつてこの世界を七大魔王の脅威から救いし
救世主のパートナーよ」


「・・・・・・・・・アタシらは救ったんじゃなくて


魔王共を人間界に押し付けただけだっての!


お陰でアイツの同期なナンタラカンとかいう所の舞台少女達が玩具を与えられて玩具にされるしッ
それを斑の首長ってば

『わかります』ってさぁ!!!

何とかなったから良かったモンを
下手すりゃ人間界が奴らの戯れに滅ぼされたっての!!」
「それを切り抜けた結果、今この世界に居る舞台少女9人に繋がる未来を造ったのだろう?
なればこそ、この魔将・ムルムクスモンは
七大魔王にも負けない程の悪役を最期まで演じきってみせるさ


全ては、この世界を愛せなくなった私が
オファニモン様の御許へ胸を張って逝く為に


・・・・・・・・・長い間世話になったな、ババア
お前との馬鹿話は存外悪くなかったよ」
「あぁ、アタシもあんたと話すのは嫌いじゃなかったねぇ


でもさ


一つだけ言われておくれや、ムーさん


四天王ってさぁー、いくら何でも
ありきたり過ぎじゃないかい?」
「そ、そうか?
私はワリと気に入っていたんだがな・・・」



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私とあなたの第二幕『螺旋、まわるとき』





辺り一面真っ青な砂漠



「ウーーー!、ウーーー!、ウーーー!」



そこでハリネズミがヒビ割れた爪を使い

何かを堀り当てようとしている

掘って・・・掘って・・・また掘って・・・


「あったーーーーーー!!!

ウー!、ウーーー!!、ヴァアーーー!!」


砂の中から摘み取ったのは青い星

自分の体よりも大きなソレを

担いで・・・担いで・・・ひとつひとつ積んでいく


「はぁーはー・・・・・・・・・もーちょっとー?」


これを何度も繰り返す内に

青い砂漠には青い星で出来た青い搭が出来た

その天辺でハリネズミが見上げる

赤い空の真ん中にあるのはやっぱり、青い



「ーーーーーーーーー!!!!!!!!!」


「ヴゥウーーー!?、メー!、メー!」




後少しでそこに届く、そう思っていたのに


どこからともなく九尾の妖獣が現れて・・・


手首のブレードを回転させながら搭に近づくと



「ーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

「ヴァーーー!!?」



たった一撃で木っ端微塵に砕いてしまう


「ヴゥーーー・・・・・・もーいっかいーーー!!


ウーーー!、ウーーー!、ウーーー!


あったーーーーーー!!!」


搭の残骸と一緒に吹き飛ばされたハリネズミは

青い砂漠をコロコロ転がった後

また砂を掘って星を摘み取り始めた



「ーーーーーーーーー!!!!!!!!!
ーーーーーーーーー!!!!!!!!!
ーーーーーーーーー・・・・・・・・・!」



眼下の光景に九尾の妖獣は大声で吠え立て

三対の眼に激昂の色を宿して睨み付ける

塔を何度も何度も崩しても


諦めないで   逃げ出さないで


約束の場所を目指し続ける


自分自身を






 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デッカードラモン号 操縦室

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

そこで神楽ひかりは『光』から返された

 

古びた袋に入ったデジタマを抱えていた。

 

「皆の衆、準備はいいかのぅ?」

「見ての通り、デシテ」

「急げジッチャン!」

「フタバに何かあったらカオルコに八つ当たりされるデスぅううう!!」

「ケッ、どっかの甘ったれもうるせぇだろうなァー」

 

操縦席からの問いに答えるパートナーデジモンの体には各々の舞台少女の武器が紐でくくりつけられている。

 

「「華恋・・・!、今行く!」」

 

唯一、Possibility of Pubertyだけはリュウダモンではなくひかりの腰に収められていた。

 

〔「長」〕

「ファングモン」

〔「俺らもいつでもいいぜ!」〕

〔「全力出してやるっての!」〕

〔「なんだなー!」〕

「グルルモン、ガルルモン、シーサモン」

〔「さぁ!、今こそ遠吠えを 」〕

「ドーベルモン

ワシが選んだ、子供達よ

 

 

すまん!!!」

 

 

〔「「「「「え   え?

 

 

ま!、まって・・・!!

 

 

とぉちゃあああん!!!」」」」」〕

 

 

「!、爺さんテメェ何やってんだァ!?」

「電脳核からのエネルギーに問題は無しッ

どうか、最期の力を貸して下され守り神よ」

 

 

〔アア、イコウ 愛の為に

 

 

グォオオオォォォーーーーーーン!!〕

 

 

「「「「「「ッッッ!!??」」」」」」

 

ワー爺の行動に驚く暇もなく

デッカードラモン号全体が震え出した

 

 

デッカードラモン自身の咆哮によって。

 

 

「?、???、??????

!、デッカードラモン号生きてんジャン!

何でだルナモン!?」

「ワ・タ・ク・シ・に!、訊くなーーー!

だが、大方の予想はつくッ

ワーガルルモン貴様、この艦の真の動力に

デッカードラモン自身の電脳核を・・・

デジモンの生命の源を使っていたというのデシテ?」

「な!!

そん、なの!、それじゃ同じじゃねぇか!?

レイド帝国と!!、何も変わらねぇ!!」

「ええ、その通りですじゃ

アルフォースブイドラモン様

 

デジモンの生命を、デジタマから育てたモンを

 

自分の都合で利用して!、使い潰してきた!

 

・・・・・・・・・フォフォ

 

本当にワシ、レイド帝国と同じじゃのぅ」

 

「「ノンノン」」

 

「フォ・・・?」

 

「で!!、御座るよワー爺様!!

同じなどではないッ

荒らされた故郷を目にして涙を流し・・・!」

「大切な相手との再会を心の底から喜んだ!

そんなあなたと帝国が同じな筈がない!」

〔ソウ、ダ

オマエ、ノ・・・・・・オカゲ・・・

 

 

こんなにも素晴らしい愛に巡り会えた

 

 

ダカラ、コソ!

 

 

グァアアアァァァーーーーーーッ!!〕

 

 

「皆の衆!!、しっかり掴まっとくれ!!」

「「「「「「~~~ーーー!!」」」」」」

 

1人と5体が操縦席の椅子や壁、床にしがみつくのと同時に襲ってきたのは凄まじい振動と息苦しさ

 

 

そして

 

 

〔グ!、グァアアアァァァーーー・・・!!〕

 

 

浮遊感。

 

 

「《カイザーネイル!!》ガルァ!!」

 

 

直後、操縦席のガラスが機械爪によって粉砕

老人狼は呆ける舞台少女や成長期達を纏めて抱くと空中戦艦へと飛び移った。

 

 

炎に包まれたデッカードラモンを置き去りにして。

 

 

「ま、待てよジッチャン!

デッカードラモン号が!!、デッカードラモンが!!」

「振り返るな闘争!!」

「テメェのやる事間違えんなァ!!」

「ふぐっ!、ぅあああ"あ"あ"あ!!」

「・・・・・・・・・!!」

「立ち止まるでないひかり殿ぉーーー!!」

 

 

〔ヤット イエル

 

 

イッテ・・・・・・・・・シャ・・・・・・・・・イ   〕

 

 

 

はいッ   はい!! いってきます!!

 

ォォォーーーゥゥゥーーーゥ・・・!」

 

 

途切れがちに聞こえる最期の言葉に、後ろ髪を引かれながらも全員無事に艦内への侵入を果たす。

 

「ふっふっふ!、待ちかねたでアリマスよ!

レイド帝国に逆らうお尋ねモン共!」

『・・・・・・・・・』

「ア"ァッ!?」

 

通路を進むひかり達の前に立ち塞がるのは、ゴム兵隊トループモンの集団と歩兵のような装備をした竜型サイボーグ。

 

「この先!

 

右に曲がって真っ直ぐ行った先にある祭壇!

 

その防衛を任されたモンとして!

これ以上キサマらの進行を許す訳にはいかないでアリマス!」

「そこにクロ公達居るんだな!?

教えてくれてありがとな!、ジャ!」

「え?

 

 

・・・・・・・・・ハッ!!

ま、またやってしまったでアリマス!!」

 

 

「こいつアホデシテ」「こいつアホデスぅ」

「これまた立派なトカゲ野郎で御座るなー」

「だ、だまらっしゃい!

知った所で消してしまえばいいだけの話!!

総員一斉掃射!、でアリマス!」

『!』

 

 

「《円月蹴り・・・!》ガルルルゥ・・・!」

 

 

「あだーーー!!」『ーーーーーー!?』

「お爺さん!?」

「こいつらはワシに任せて皆の衆は先へ行くんじゃ!

フォフォ♪、始祖様も言うとったがのぅ!

コレいっぺん言ってみたかったんじゃ!」

「あいだだ・・・!

お、おのれー!

邪魔立てするのならば容赦しないでアリマスよ《M16アサシン!》」

『・・・・・・・・・!!』

「フオッ!!」

 

機関銃の銃口が幾つも向けられ、弾丸の雨が吐き出されるのと同時にツナギが弾け飛び

 

 

そこに隠されていた鉄の牙・・・

デッカードラモンの形見が露になる。

 

 

「《スモーキーファング》じゃあああ!!」

 

 

『!?!?!!』

「と、トループモン!

何故同士討ちをしているのでアリマスか!?

!、もしやこの煙幕・・・

おのれ!、チャフとは小癪な真似をッ」

「あれだけワシらの住処にガワを捨ててくれたんじゃ

対策ぐらいいくらでも取れるわい!

さぁ!、ヒカリさんや!

カレンさん達を頼んだぞい!!」

「う、うん・・・!

お爺さんも、無理しないで!」

「拙者達が戻るまで持ちこたえるで御座るよ!」

 

通路に満ちた濃い白煙越しにワー爺と言葉を交わした後、デジモン達と共に華恋達の囚われた祭壇を目指すひかり。

 

「それは

 

 

約束   できん、かも、しれんの・・・ぅ」

 

 

彼女は知らない。

 

白いモノが混じった黒い胸毛に

 

一発の弾痕が刻まれた事を・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆空中戦艦 祭壇

 

 

 

「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」

 

 

 

魔方陣を囲うように立てられた5つの十字架

 

そこに磔にされながら眠る舞台少女達。

 

 

「華恋ッッッ!!!」

「・・・・・・か・・・ぃ・・・・・・・・・ん?」

 

 

祭壇に固い声が響けば華恋の瞼が僅かに動き

 

ワイヤーが伸びる短剣が天井に突き立てられ

 

青い上掛けが翻り、サーベルが振るわれる。

 

「オラァアアア!」

「ぶえ!?」

「デ!、シテぇーーー・・・!」

「ジャン!!」

「ひかり殿!、華恋は!?」

「大丈夫!、やっぱり寝てるだけ!

怪我とかはしてない!」

 

リュウダモン以外が戒めから解き放たれたパートナーを受け止める中、ひかりは運命の相手を抱いた状態で着地。

 

「と、兎に角、起・き・ろテンドー!」

「カオルコ!、フタバが!、フタバがぁ!」

「飲めーーー!、飲むジャン!、クロ公!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「レオルモン、なな殿は拙者が飲ませようぞ」

「ありがとなァ、リュウダモン」

「!、はははっ!

やっと名を呼んでくれたで御座るな!!」

「ケッ」

「華恋、起きて」

 

真矢、香子、クロディーヌ、なな、華恋の口に豊穣神が造った薬が注ぎ込まれると・・・

 

 

「「「「「!!!!!」」」」」

 

 

あまりの美味さに5人共意識を取り戻した。

 

「ルナモンおかわりはありますか?」

「あるかーーー!!」

「いって!、あれ?、痛くねぇ?

あ!、やっぱいてぇ!、いてて!!」

「もう起きてるのに馬鹿みたいに押し込んでんじゃないわよ!、Nounours!」

「ちょま、ブイはん!?、引き摺るんやめぇ!」

「だったら!、自分で!、歩け!

急がないと!、フタバが!、マヒルも!

ジュンナだって!、危ない!」

「それどういうこと!!?」

「青瓢箪テメェ先走んなァ!!」

「ひかりちゃん?、リュー君?」

「・・・・・・・・・説明するからみんな落ち着いて

特に大場さん」

「実は、皆がロゼモンに拐かされた後

純那殿がワー爺様を正気に戻したは良いのだがその分ソウルを消耗していて・・・

そんな状態にも関わらず今アルファモンと魔将めの相手をしているので御座る」

「純那ちゃん!!!

え?、あれ?、体が、動かない?、なんで?」

「ケッ、やっぱりテメェも

いや、ジュンナよりもよっぽどスッカラカンかァ?」

「どうやら、この大仰な舞台装置が

貴様らのソウルをあのデカブツに配給していたようデシテ」

「ケレスモンの神実ってソウルは元に戻んないから、今のお前ら体を動かす分も残ってないジャン」

「そんな事より双葉はんに何があったん?」

「・・・・・・・・・マグ、ナ、モンの時にカオルコも見た姿のまま戻れなくなった、デス」

「は?」

「まさか!、まひるちゃんも!?」

「うん、狼になってた

そのせいでストラビモンやフレイモンが進化出来なくて」

「おおよその事情は把握出来ましたが・・・

この状態の私達が向かっても」

「足手纏いにしかならないわね」

「真矢ちゃん!、クロちゃん!

でも!、純那ちゃんが!、みんながッ」

「無理矢理動くなァ!!

ったく、これなら寝かせてた方がマシだったかァ?」

 

現状を知ったななはソウル・・・つまりは生命エネルギーの大半をオニスモンに奪われた状態で這い回る。

 

「後、お爺さんも   !!」

「なん、で、御座る、か?

この、中身が無いというのに

気を抜けばあっという間に飲み込まれかねん

闘気はッッッ!!!」

 

 

 

ガギ・・・ン   ギギッ   ギギギギギギ

 

 

 

ひかり達が侵入した通路とは逆の通路

そこから、重く擦れた足音と共に

祭壇へと踏み込んできたのは

 

全身が赤錆と化した装甲で覆い尽くされ

 

身の丈程の大きさを誇る電磁砲を背負う

 

深緋の鋼竜、レイド帝国四天王最後の1体

 

デジタマすらも純帝国産の殺戮兵器

 

 

機将・ラストティラノモン。

 

 

『あ』

 

 

その詳細は知らずとも

放たれるプレッシャーだけで6人と5体は

 

 

このデジモンは危険だと本能で悟った。

 

 

「華恋」

「ひかり、ちゃん?」

 

預かっていたPossibility of Pubertyを返し

 

 

「おねがいね」

 

 

肩にかけていた袋を、パートナーを

 

華恋に託す時ひかりは笑っていた

 

 

悲劇のレヴューと同じように。

 

 

「強く掲げた掌すり抜け

 

奈落に落としたあの日の誓い

 

再び登る運命の舞台

 

例え、悲劇で終わるとしても

 

99期生 神楽ひかり・・・!」

 

 

「ガァアッ」

 

 

名乗りの途中にも関わらず

ラストティラノモンは背中の砲台を展開。

 

 

「全ては!

 

すべてはッ スタァライトのために!!!」

 

 

「《テラーズクラスター》」

 

 

魔方陣を挟んで

 

撃ち出される電磁砲   疾るワイヤー。

 

「ガガ」

「くっ!」

 

相手の必殺技を躱しながら接近し、すれ違い様にBlossomBrightで錆ついた装甲を斬りつける

 

 

まるで刃が立たない。

 

「《テラーズクラスター》」

「ーーーーーー!!

(だいじょうぶ、大丈夫!!

ちゃんと、しっかり私は狙われてる!!)」

 

頭上を旋回するひかりを補足しラストティラノモンは電磁砲を

 

 

「《テラーズクラスター》」

「!?」

 

 

「ひかりちゃん!!、ひかりちゃん!!」

「待たれよ華恋!!

満足に動けぬ御主では無理で御座る!!」

「動けなくても無理でも私行かなくちゃ!

だって、ひかりちゃんが!!」

 

貯めなく何発も連射する光景に華恋は必死に手を伸ばすのだが、本人の意思とは裏腹に

彼女の動きはどこまでも緩慢であった・・・。

 

「レオルモン私はいいか 」

「うるせぇナナァ!!、黙ってなァ!!」

「今飛び込んでってもウチらヒカリの邪魔になるだけジャン!」

「アルフォースでの進化もやめておけ最速

アレはそれが通じる相手ではないデシテ」

「う、ううぅ・・・!

結局、ブイ、見てるだけ、デス?

フタバだって!、あんなになっても!

戦ってるのに!、なんでだよぉ!?」

「ッ、泣いてる暇あるならせめて頭使い!

何としてでも神楽はんにあの小汚ないの追い払って貰わんと!」

「その為に今の私達が出来る事を考えなければいけませんね・・・」

「!?、ひかり!!」

 

舞台少女やパートナーデジモンが見守る中

ラストティラノモンの滅多矢鱈な砲撃によって

 

 

遂に天井が崩壊する ひかりの狙い通りに。

 

 

「ここッッ!!!」

 

 

ラストティラノモンの頭上より迫る瓦礫

 

そこへワイヤーで移動し、逆さまの状態で

 

BlossomBrightを構え

 

ソウルとキラめきを切っ先に全集中。

 

 

 

「あああぁぁぁーーーーーーー!!!!!」

「ガガ!?」

 

 

 

落下の勢いを利用して突き立てられた

 

乾坤一擲の青き輝きが赤錆を穿つ

 

 

 

「ガ」

 

 

 

すると、小さなキラめきは

 

 

根元から

 

 

へし折れて

 

 

「ガハッ!?」

 

 

瓦礫ごと鉄の腕により凪ぎ払われる

 

 

 

「《ラストブレス》」

 

 

 

直後、舞台少女達に残されていた希望の光は

 

深緋の鋼竜の口から放たれる

 

同色の炎に真正面から飲み込まれた。

 

 

「ひかりちゃん?」

 

 

ソレに触れた途端

 

剣の柄が、ワイヤーが、衣装が、装飾が

 

Mr.ホワイトが

 

 

 

「ひかりちゃん   ひかりちゃん」

 

 

 

運命を交換した証が

 

 

彼女自身が

 

 

錆と化して朽ちていく。

 

 

「え、やだ

 

 

やだやだ やだやだやだ

 

 

やだやだやだやだやだやだやだやだ

やだ

やだやだやだやだ

 

やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだ

 

 

わたしやだよ?ひかりちゃん」

 

 

「華恋!!!、華恋!!!

 

 

!?、こ、これは・・・!!!」

 

 

変わり果てた姿でひかりが墜ちていく最中

 

リュウダモンは見た

 

華恋から垂れ流される

 

怒りや嘆き、絶望に彩られた赤黒いソウルが

 

手元にあるモノに流れていくのを。

 

 

 

ドッッッグッッッン!!!!!!!!!

ドグンドグンドグンドグンドグンドグン!!!!!!!!!

 

 

 

神楽ひかりを奪われた愛城華恋から溢れ出た

マイナスの感情。

 

「い、いや!、まって、待って!!、ダメ!

 

待って!!!、ったら!!!」

 

その全てを取り込みながら

彼女が抑えようとしたモノは徐々に膨張

古びた袋を突き破って飛び出すと・・・

 

 

 

「ーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

 

 

 

巨大化したデジタマの殻を粉砕しながら

 

 

ラセンモン・激昂モード 再 生 誕。

 

 

 

「ーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

「ガア!!、ガ?」

 

 

 

生まれ変わるや否や

九尾の異形は姿勢を低くしながら走り出し

 

 

落下寸前の舞台少女に食らいついた。

 

 

「ひ、かりちゃん?

いやぁあああぁぁぁーーーーーーー!!!」

「落ち着けナナァ!!!」

「うち、もう、やぁ」

「カオルコ!!、カオルコーーー!!

うっうう!、フタバァ!!

やっぱり、ブイじゃ、ムリ、デスぅうう!」

「わけがわからない・・・なにもわからない・・・

テンドー」

「私だってどうしたらいいのかなんてわからない!!」

 

 

 

「ーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

「ガオオオオオォォォ!!!」

 

 

 

ラセンモン・激昂モードはそのままの勢いで突っ込み、ラストティラノモンを魔方陣の上に組み伏せる。

 

 

エリスモン、お前   やっぱすげぇよ」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・Quoi?」

『え?』

「あんなになってもヒカリ守って戦っててさ

でも、それ

 

 

ダメだって

 

 

そんなのやったらお前ほんとに消えるから

 

 

な?、もういいから、やめるジャン・・・

 

 

やめろって!!!、エリスモン!!!」

 

 

 

「・・・・・・・・・ベー  ガトー・・・・・・・・・」

 

 

 

『!!?』

「エーちゃん?、エーちゃん!!」

「御主!!、自我を取り戻していたのか!?

ならば!、ひかり殿も無事で御座るな!?

いや、無事だな!、絶対に!!」

「・・・・・・・・・ヒー」

「ガ!、ガァ!」

 

電脳核を食らう為にある筈の口の中に妖獣は錆ついた輝きをしまっていた

 

自分の下で暴れている鋼竜から守る為に。

 

「ゴ、メー・・・・・・・・・マッテ ニー

デモー、エー、コ ナダカラー

ヒー、ミンナー、 ットー

 

 

エー   きらいー   こわいー

 

 

・・・・・・・・・デモー

 

 

イーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

 

 

 

「ガオォ!!?」

「きらわれてもー!、こわがられてもー!

エー!、ヒー!、ミンナー!、まも

 

 

ルーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

 

 

「嫌うモンか!

今のお前こぇえよ!!、メチャクチャこぇえよ!!

でも、それでもお前はウチらの仲間だろ!?

だから!、消えんなぁあああ!!」

 

 

「きちゃ・・・メー・・・《スパイラルヘルー》」

 

 

「ぅああああああ!!?」

「ベアモン!!

エリスモン、あなた・・・ッ」

 

手首のブレードから放たれた鋭利さが一切無い竜巻によりベアモンがクロディーヌの隣まで転がる。

 

「ーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

「ガオオオオオ!!!」

 

 

 

ピシッ   ビシビシィ!!!

 

 

 

「!、崩壊が始まった!!

こんな短いスパンで生と死を繰り返せば

貴様のデータは完全にイカれるぞ!?」

「そうなったらもう本当に二度とッ

ヒカリに会えなくなるデスぅううう!!」

「・・・・・・・・・ルナー、ブイー」

 

 

恐れ

 

 

「テメェ!!!、いい加減にしなァ!!!」

「・・・・・・・・・レオー」

 

 

怒り

 

 

「う、ぅぅううう!!」

「・・・・・・・・・ベー」

 

 

悔しさ

 

 

「また、か?

また、せっしゃは

おぬしに!!、なにもできぬのかッ!?」

「リュー」

 

 

悲しみ

 

 

「くっ!、こんな時にッ、私は!!」

「やめなさいよ・・・もう・・・やめて・・・」

「わたしがまもるッ、まもるからぁ!!」

「あんたはんが居なくなったら!

神楽はんどうなってもうち知らんよ!?」

「テドー、クー、ナー、ルコー」

 

 

絶望

 

 

「エーちゃんお願い

おねがい!!、だから!!

ひかりちゃんを、これいじょういじめないでよぉ・・・!」

「カー」

 

 

別れ。

 

 

ラセンモン・激昂モードに

 

止めどなく流れ込むマイナスの感情の濁流。

 

 

「ミンナー、ドロドロー、グチャグチャー」

 

 

どれも前の時は拒んでしまったモノばかり。

 

 

「・・・・・・・・・エー、ヒー、にげたー

 

 

だからー、エー 」

「ガアァ!!」

「ーーーーーーーーー!!!!!???」

 

 

マウントポジションを取られていたラストティラノモンはラセンモン・激昂モードの肩に牙を立てながら強引に起き上がり

 

 

ヒビだらけの体を食いちぎってみせる。

 

 

「!・・・ー!ーーー!!!・・・ーーーー!!

《デスペレイトー!・・・ボルテックスー!》」

「ガ!?、ォ"オッ!!」

「ーーーー・・・ー!!、ーーーー・・・・・・」

 

 

自分の一部を咀嚼していた口目掛け

螺旋状の尻尾を伸縮させながら串刺しにした

ラセンモン・激昂モードだったが・・・

 

その無茶によりデータの崩壊が一気に加速。

 

肩からぶら下がっていた腕が落ちて砕け散り

 

 

足先から消滅が始まった。

 

 

「エー、モー、きえ・・・・・・・・・

 

 

エー、きえる?

 

 

やー

 

 

やーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

 

 

・・・・・・・・・だというのに、このデジモン

 

絶望【完全削除】の一歩手前で盛り返す。

 

 

「きえたくなー!   きえられーーー!!

 

 

なーーーーーーーーー!!!!!!!!!

 

 

ーーーーーーーーー!!!!!!!!!

ーーーーーーーーー!!!!!!!!!

ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

「ガ、ガオォ・・・」

 

 

「え、エリスモン・・・おぬしなにを・・・?」

「エーちゃんの周りで、色んな色が、グルグルしてる?」

 

足元の魔方陣を、周囲の空間を削りながら

 

超高速で廻り、渦を巻く螺旋。

 

その勢いには、目標の殲滅以外は思考に無い筈のラストティラノモンすらたじろいだ。

 

「?、???、??????

あれ?、え?、は?、えええ???」

「・・・・・・・・・どうしたの?」

「え、エリスモンの寿命さっきから

0になったり∞になったりしてる、デス」

「はいぃいいい!?」

「それは、良い事なの?

それとも、悪い事なの?」

「あえて云うならワケわかんねぇ事だなァ」

「ワケがわからないなんてモンじゃない!、デシテ!!

エリスモン貴様!、デジタルワールド中のあらゆる感情を・・・

いや!、それだけでなく!、次元を!、空間を削って!

その身に取り込んでいるのデシテ!?

そんなモン一個体が制御出来るワケがない!

兎に角やめろ!!!、今すぐやめろ!!!

そんな無謀を続ければ・・・!」

「どう、なるのでしょうか?」

 

 

「この戦艦はおろか、天界そのものが

消し飛ばされかねない、デシテーーー!!」

 

 

『!!??』

 

 

「やーーーーーーーーー!!!!!!!!!

 

 

エー!、もー・・・にげなーー!!

 

 

ヒーのドロドローグチャグチャー!

 

みんなのドロドローグチャグチャー!

 

キラキラもー!、ピカピカもー!

 

ぜんぶぜんぶー!、いっぱいいっぱいー!

 

 

ちょー

だーーーーーーーーーい!!!!!!!!!

 

 

 

ルナモンの制止を無視してラセンモン・激昂モードはヒビだらけの体にありとあらゆるエネルギーを

 

無秩序に無作為に無茶苦茶に無尽蔵に吸収。

 

 

「どう・・・・・・・・・して?」

 

 

「!、ひかりちゃん!!」

 

色とりどりに激しく廻る渦の中心

妖獣の口の中で錆ついた光が今目覚める。

 

「どうして、あなたはそんなにがんばるの?

わたし、あなたを食べようとしたんだよ?」

「ヒー、たべてるのエーだよー?

ヒー、たべて、ずっといっしょにいたいのも

エー、だよー」

「・・・・・・・・・なのに、食べてない

私を助けてくれた、守ってくれてる!

あなたは、いつもそう

 

 

だけど、私!   あなたに、何も

 

 

してあげられない・・・!!」

 

 

「してくれたよ、してくれてるよ」

 

 

「え?」

 

 

「ヒーと一緒に居てくれるだけでエーはとっても嬉しい!

ヒーと離れるのを考えるだけでエーはとっても苦しい・・・

だから離れ離れになっても

絶対また会えるようにエーはスタァになるんだ

 

 

ヒーの中のカーに、ヒーの中のスタァライト

 

 

ヒーの全てに負けないスタァになるんだ

 

 

だって、ヒーはエーの全て・・・

 

 

エーの世界のたった一つの   光だから」

 

 

それが、生誕と共にキラめきを刷り込まれた

 

 

獣の唯一無二【0と1のイチ】の存在理由。

 

 

 

 

うん、いいよエリスモン

 

 

私の全て   奪ってみせて」

 

 

神楽ひかりが

 

 

ラセンモン・激昂モードのナカへと落ちれば

 

 

 

 

ギュインギュインギュインギュイーーーン!

 

 

 

 

万物全てを削って唸る金属音が世界を穿ち

 

激しく渦巻くエネルギーの奔流が・・・

 

青く輝く0と1の粒子、ソウルとキラめきに

 

 

再生産。

 

 

「強く掲げた掌で!」

 

 

折り重なった光が華ひらくとき

 

その中から衣装、装飾、武器、運命の証・・・

 

全てを生まれ変わらせた舞台少女の手首より

 

星形の画面に9つの赤い棘が突き刺さった

 

青と金の神機が煌めく。

 

 

「悲劇も奈落も突き抜けて!

 

光の舞台に標をたてる!」

 

 

彼女の側で同じように

 

ブレードが備わる腕で天を衝くのは

 

全身の至るところに小さな棘を生やし

 

捻れた9つの大きな棘を背負った

 

凛々しい風貌の獣人。

 

 

「例え別れで終わるとしても・・・!」

「ふたりの夢が、約束が

 

螺旋となって・・・再び交わる道を造る!!

 

 

真なる覚醒!!!!、ラセンモン!!!!!

 

 

全ては」「スタァライト」

 

 

 

「《テラーズクラスター》」

 

 

 

「ひ、ひかりちゃーーーーーーん!!!」

 

 

ラストティラノモンはまた名乗りの途中にも関わらず電磁砲を撃ち出してきた。

 

 

「「する為に!!!!!!!!!!」」

 

 

「ガ!?」

 

《テラーズクラスター》を穿つのは腕のブレードを回転させながら、パートナーと一緒に突き出した拳《ジャイロスマッシュ》。

 

「ガ!、ガァアアア!!

《テラーズクラスター》《テラーズクラスター》《テラーズクラスター》《テラーズクラス 》」

 

 

「《クオリアライズブラストーーー!!》」

 

 

「ガガ!!」

 

更にブレードを超高速回転させれば、そこから発生した小型の竜巻が滅多矢鱈な砲撃に風穴を空けて

 

赤錆の装甲すらも容易く削ってみせる。

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

見てるか?、マグ

 

 

こいつらまた奇跡を起こしやがったよ」

 

 

 

 

 

 

 

「(・・・・・・・・・うん、見てるよ アル

 

今ならわかる、やっとわかったよ 僕)」

 

 

 

 

 

 

「ふーーーん、ほーーーぅ、へぇーーー?」

「な、なんデスぅ?

ただでさえだらしない顔がもっとだらイヒャイイヒャイイヒャイ!」

「あ、アレほどのエネルギーを制御、した、だと?

あ・り・え・な・いーーー!!

・・・・・・・・・いや、それは最早今更デシテ」

「クスッ!、ルナモンも変わりましたね」

「うおおおおおお!!!

エリスモン!、いや!、ラセンモン!

お前ってばやっぱすげぇジャン!!

すげぇけどさ!、ウチお前にも勝つかんな!

絶対の絶対の絶対に絶対絶対に!!」

「馬鹿みたいに一々言わないでくれる?

そんな、当たり前の事を!!」

「クロちゃん・・・

うん!、私も!、ひかりちゃん達に負けてられないッ」

「ケッ!、オレサマはハナっからそのつもりだァ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「華恋?、ぬ!?」

 

ラセンモンの独擅場に誰もが心踊る中で

 

華恋だけは泣いていた。

 

 

「ひかりちゃん、あんなにキラめいてる・・・

 

 

スタァライト!!、してるのに!!

 

 

なんで、わたし、ここにいるの・・・?

 

 

なんで、わたし、あそこにいけないのッ?」

 

 

「・・・・・・・・・」

 

震えながら悔し涙を流すパートナーにリュウダモンはただ黙って寄り添うのであった・・・。

 

「ガァーーーーーー!!」

「ヴァーーーーーーーーー!!!」

 

その間にも舞台上では

鋼竜と獣人の格闘戦が繰り広げられている。

 

「ガ・・・ガァ・・・?」

 

純然な兵器である機将は不思議でならない。

殲滅対象の大きさは先程までと違い

隣の人間より一回り大きい程度なのに・・・

 

どうしてあの拳はこんなにも鋭く、重く

 

四天王最高の硬度を誇る装甲を

 

ヒビだらけにしているのだろう?

 

と。

 

「ヒー、あいつはエーと一緒なんだ」

「え?」

「産まれた時から知ったモノ

・・・・・・・・・ううん、産まれる前から知ってるモノの為に自分の全てを賭けてる」

「そう

でも、あなたとあのデジモンは違う」

「うん!、違うよ!

だから、見せてあげたいんだ   世界を」

「うん、見せてあげよう   一緒に」

「ガ?、ガガ?」

 

産まれて始めて疑問を抱く自分自身に戸惑うラストティラノモンの前でひかりが投擲したBlossomBrightが天へと登れば。

 

 

「激昂! 情熱! 呪縛! 信仰!

 

逃避! 勇気! 嫉妬! 愛情!

 

絶望! 希望! 傲慢! 誇り!」

 

 

味方も敵も関係なくあらゆる感情を取り込んでラセンモンは全身から螺旋棘が射出。

 

 

「みんなの罪も夢も全て纏って!!!」

「私達はこの舞台に標をたてる!!!」

 

 

ソレらは全てワイヤーへと絡み付き

 

ふたりで一緒に造り上げたのは・・・

 

天辺に青い光【クレール】を幽閉した

 

搭が如き

 

 

 

巨   大   ド   リ   ル。

 

 

 

『                  』

「おい、テンドー

あいつら、またスタァライトしてるぞ?」

「これは本当に負けられないわね」

「Exactement. Ma Claudine」

 

その圧巻の様相に

観客達の大半は言葉が見つからなかった。

 

「ガ ガァアアアーーーーーー!!!!!

 

 

《ラストブレスッッッ!!!!!》」

 

 

「「《スパイラルーーーーー!!!!!」」

 

 

「ガアアア!!?、ガァアアアーーー!!」

 

機将・ラストティラノモンは必死に吐き出す

 

触れたモノ全てを錆つかせる深緋の炎を。

 

・・・・・・・・・なのに、自分へと迫るドリルは

 

それすら巻き込みながら

 

勢いを!、輝きを増している!?。

 

 

 

「「

 

 

ヴァニッシューーーーー!!!!!》

 

 

」」

 

 

「ガガガガガガガガガガガガァッ!!!!」

 

 

舞台少女とパートナーの捻って交わる螺旋を阻まんとする純帝国産の殺戮兵器。

穴だらけな口が削れているにも関わらず

天辺で廻るBlossomBrightへと牙を立てる

 

 

レイド帝国に仇なすモンの殲滅という

唯一無二【0と1のイチ】の存在理由の為に。

 

 

「やっぱり、お前の中は空っぽだ・・・」

「ガ、ガァ?」

「でも、きっとその中にはこれから先!

いっぱいいっぱい色んなモンが入ると思う!

 

 

だから、今は!」「さよなら・・・!」

 

 

 

         !     ?   

 

 

 

 

ラストティラノモンに大きな風穴が空くと

 

穿たれた二重螺旋が次元すらも突き破る

 

 

 

 

空中戦艦の背部にある動力炉すらも穿って。

 

 

 

 

 

 

「はっ・・・はっ・・・は、ぁ」

「ヒーーー!」

「ひぃいいかぁりぢゃあああん!!!」

「ぴ!?」

 

機将を撃破するのと同時に

ラセンモンはエリスモンに退化

ひかりは肩で息をしながら膝をつき

・・・・・・・・・華恋は這いずって彼女の元へ。

 

「ひかりちゃん!、ひかりちゃん!、ひかりちゃん!、ひかりちゃん!!、ひかりちゃぁん!!!」

「か、かれん・・・だいじょうぶ・・・だから」

「カー!、メー!」

「だ"あっでぇえぇえええん"!!!」

「やれやれ、舞台の締めも終わっていないというのに飛び入りとは・・・」

 

 

「      あ!!      」

 

 

「今か!?、今気づいたので御座るか!?

はぁーーー、御主本当にひかり殿が関わると

バッ華恋で御座るなー」

 

 

「・・・・・・・・・エリスモン、わたし」

「ヒー?」

 

 

「あいたかったよ」

 

 

「!、エヘヘー!

ヒー、いたーーい!、へへー」

 

贖罪の舞台少女はハリネズミを力いっぱい抱き締める

背中の針毛が衣装を突き破って肌に刺さるのもお構い無しに。

 

「いやはや、これにて一件落着!

めでたしめでたし!

 

 

・・・・・・・・・な、ワケ、あ・る・かーーー!!

 

 

加減しろーーー!、馬鹿共ーーー!」

「ふぇえええええん!!!

この艦落ちてるデスぅうううううう!!!」

『!?』

 

感動の再会もそこそこにウサギと小竜泣き喚く。

 

「よし!、とりあえず飛び降りるジャン!」

 

 

ボン!!

 

 

「ぐぇええええええ"ぃ!!?」

「あいつアホかァ?」

「Exactement」

「レオルモンまでそんな・・・」

「ばななはん!、クマはんの事はこの際置いといてぇん!

今はうちらが脱出する方法考えな

コレほんまにあかんって!!」

 

《スパイラルヴァニッシュ》によって吹き抜け状態になっているが、あちこちで火花や小規模な爆発が起きていて近づけない。

 

 

 

万事休す

 

 

「でぇえええええいッッッ!!!」

「たぁああああああーーー!!!」

 

 

かと、思いきや。

そこから紫炎の翼を広げた双葉と

緑光と化したまひるが各々の武器を振るい

障害を取り除きながら飛び込んできた。

 

「華恋ちゃん!!、ひかりちゃん!!」

「無事か香子!!?」

「・・・・・・・・・ふたば、はん?」

「まひる、元に戻ったの?」

「マー!、フバー!」

「あ、えっと、一応!

!?、エリスモン産まれたの!!?」

「良かったじゃんか!、神楽!」

 

 

 

「マグーーー!!!、見てるかマグーーー!!?

奇跡起きた!!、それもすっごいの!!」

 

 

 

 

 

 

「(・・・・・・・・・うん、知ってたよ アル

 

だけど、出来れば

 

僕 そいつの事は認めたくないな!!!)」

 

 

 

 

 

「おおおおおお!、間に合った!」

「サンキュッ☆、炎の☆

隠士殿、ジュンナチャンも大丈夫?」

「う、うん・・・!」

「なんとか、ね」

「純那ちゃん!!」

「なな!、みんなも!

ほんっっっとうに、よかったぁ」

「ケッ、どいつもこいつも・・・

ちったァテメェの事を先に考えろってのッ」

 

直後、竜の始祖が吹き抜けから滑り込み

背中に乗せた仲間達共に艦内へ侵入するのと同時に退化。

 

「「あれ?」」

 

パートナー達の進化が解けると

まひるの狼耳と尻尾、双葉の角と翼

更には上掛けの変化も綺麗に消えて・・・

 

2人揃って倒れてしまう。

 

「双葉はん!!?」

「「まひる/ちゃん!!?」」

「あ、あはは・・・なんかすっごく・・・」

「つっかれたーーー・・・

かおるこー、あしもんでくれー」

「うちも今動けんから無理

って!、どさくさに紛れて何言うてんの!?」

「どうやら、あの衣装もまた消耗が激しいようですね」

「そーゆーマヤチャン達もソウルがすっかり枯渇してんねぇ

まぁ、あんな使われ方すれば無理もないか」

「光の!、この状況はマズいぞ!

早くここから脱出して地上の聖騎士や神々と合流しないとみんなが危ない!」

「ま、まって!、お爺さんがまだ!」

「え」

「ヒー、ワーどうしたのー?」

「あーーーーーー!!

そうジャン!、ジッチャン忘れてたー!」

「わ・す・れ・る・なーーー!、アホめッ

そして隠士!、呆けるなデシテ!

奴とて完全体、何より『明けの遠吠え』の長

そう易々やられはしない筈だろう!?」

「う、うん!

そうさ、そうだよ!、そうに決まってる!」

「すぐにでもお爺さんの所へ行かないと!

 

 

・・・・・・・・・だから、今は見逃して欲しいの

 

 

お婆さん」

 

 

『ッッッ!!?』

 

9人共動く事さえ困難。

 

そんな状況で破壊された祭壇に舞い降りる

 

 

 

「カッカッカッカァ!

 

よーく気づいたねぇ!、ジュンナ」

 

 

 

レイド帝国四天王 その生き残りたる麗将

 

黒に包まれた真っ赤な薔薇・ロゼモンが。

 

「まさか、デジモン達すら気づいてなかったのに私なんかがあなたの気配がわかるわけないじゃない」

「あらあらー、じゃあカマかけただけかい?

そんなのに引っ掛かるとはアタシも老いたモンだよ・・・」

「機将が倒されるのも観てたんでしょ?」

「ああ、予想の斜め上どころか真上にブッ飛んだとんでもない舞台だったさ

流石はクレール

 

 

アイツと

 

 

アタシのパートナーと

 

 

同じ役を勤めるだけの事はあったよ」

 

 

「「!、クレール!?」」

「・・・・・・・・・やっぱり、そういう事だったのね」

 

彼女の口から出た役名に華恋とひかりが過剰反応するが、純那にとっては想定内。

 

「じゅ、純那ちゃん!?

それって、つまりどういうこと?

ロゼモンは、お婆さんは

私達の敵なの?、味方なの?」

「敵でも味方でもないのよ

強いて言うなら、このデジタルワールドでの

 

 

舞台の主催者、かしら?」

 

 

「アタシはそんな大層なモンじゃないっての

・・・・・・・・・まぁ、いいさ

ここまで舞台を盛り上げてくれたんだ

出演料代わりに

 

 

色々と語らせて貰おうかねぇ、カカカッ!」

 

 

 

 

 

 

 








独白劇『老いぼれ狼の走馬灯』




〔『いってきまーーーす!』〕
〔「ああ、いってらっしゃい」〕
〔「道中気をつけるんじゃぞ!」〕
〔「やれやれ、お前さんまた年下達に先を越されたのぅ・・・」〕
〔「フォッフォッフォッ!、ワシもうこの街を出るのは諦めておりますゆえに」〕
〔「だからとて、ワシばかりと話しているから
そんな年寄り臭い話し方になって・・・」〕
〔「いえいえ、この後はアンドロモンさん達4人の手伝いが


フォ?、なんじゃ?   空が」〕



・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



〔「ワーガルルモン!!
子供達を!、ババモンを!、お前の愛を!


グォオオオォォォーーーーーーン!!〕」〕


〔「ま、守り神!
デッカードラモン様ーーー!!


ゴホッ!、ゴホッ!


みんな!、ババモン様!


!!、あ、ああ・・・!!」〕


〔「「まだ、生き残りが居てくれたか」」〕


〔「あなた、さまは?
もしや!、かの聖騎士オメガモン様!?
も、申し訳ありませんが・・・!
ここには子供達が、ババモン様が居た筈
どこに避難したのか、わかりま 」〕


〔「「すまない、本当にすまない
私達の、力が足りなかったばかりに


誰も、守れなかったんだ」」〕


〔「ッッッ!!、ォォーーーウ!!」〕


〔「「・・・・・・・・・泣いている暇は無いぞ
再び帝国の軍勢が押し寄せる前に早くここから逃げるんだ」」〕


〔「にげ、られるモンかぁーーー!!
住処を!、仲間を!、こんなにされて!
せめて、せめて1人でも多く道連れに 」〕


〔「「それは困る、な
君には、こいつを頼みたいんだよ」」〕


〔「フォ?」〕


そうじゃったなぁ・・・この時じゃった・・・


アルファモン様


いいや


意地っ張りで気難しいワシの、自慢の子と


始めて出会ったのは、のぅ。



〔「かつての少年よ!
その胸に抱いた命を守れるのは君だけだ!


トォオオオーーーーーー!!!」〕


〔「じゃ、ジャスティモンさんッ
!、アンドロモンさん達まで何を!?」〕


〔「フシュー、決まってるだろ?」〕
〔「最後の大仕事、だ」〕
〔「門出の祝い代わりに取っておけ」〕
〔「達者でな、プニ坊よ」〕


〔「「「「フッシューーー!!!」」」」〕



〔「!、ォゥンッ!!


ォォォーーーゥゥゥーーーゥ・・・!!!」〕



みんな、この後


帝国に削除され、改造されたのだろうな。


でも、舞台少女の皆さんが解き放ってくれた


本当に、皆さんにはいくら感謝しても足らん


だから、のぅ


ちゃんと、恩返しせんといかんのじゃ


先生達の分、子供達の分


・・・・・・・・・足りるかどうかは自信はないが


それでも、ワシは



「フハハハハハハ!!
隊長より左遷を言い渡されて幾星霜!
ようやく訪れた特進の好機!
キサマさえ消せば原隊復帰間違いなし!
いや、それどころか隊長の右腕として認められるのも夢ではないでアリマスなぁ!
クゥーーーッ!、待ってて下さーーーい!


ドルルモン隊長ーーー!!」


「・・・・・・・・・あ、あのぅ~~~」


「ム!?、なんでアリマスか?
キサマは最早死に体なのだから、黙ってジブンに消されるのを待っているでアリマスよ」
「そ、そのつもりなんじゃが・・・
流石に、ちょっと長いかなと思うて、のぅ
や、やるなら、早くして欲しいんじゃ
いつまでも、傷口を銃でグリグリされるのは
お、落ち着かん、し」
「だまらっしゃい!
今丁度やる所だったのでアリマス!」
「・・・・・・・・・そうは思えんかったんじゃが」

トループモンの残骸がいくつも転がる中
大の字になって倒れるワー爺を踏みつけ銃を突きつけているのは
あの竜型サイボーグ・コマンドラモン。

「ワシもあんまり他のモンの事は言えんが
お前さん、こうゆうの向いておらんと思うぞい?」
「!!、隊長みたいな顔をして
隊長みたいな台詞を吐くなでアリマス!!」
「フォッフォッフォッ・・・
その、隊長とやらも
そう、思ったから
自分から離したのかもしれん、なぁ」
「だ、だまれと言っているでアリマスよ!
じ、ジブンはやれる!、絶対にやれる!


でないと!、消されるのはこっちなんだ!」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・フォウン」


「なんだよ、なんなんだよ?、その目!
消される側の癖に馬鹿にしてッ


ジブンを憐れんでんじゃない!!!


《M16!! アサシン!!》


ウアアアァァァーーーーーーン!!!!」



情けない絶叫と共に老人狼の胸の傷に刺さったアサルトライフルの銃口から


弾丸が放たれるのであった・・・。






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ロゼモンの告白、ババモンの真実



とあるデジモンは
ひょんなことから舞台に出会いました


とあるデジモンは
成り行きのままに舞台に登りました


とあるデジモンは
ひたすらに自分達の舞台にしがみつきました


とあるデジモンは
自分達の象徴を舞台に造り上げ、残しました


とあるデジモンは
自分達の舞台をどうにかやり遂げました


とあるデジモンは舞台に別れを告げました


とあるデジモンは自分達の舞台を広めました


とあるデジモンは自分で舞台を始めました


そして とあるデジモンは今


己のデータ全てを『燃料』にして


最後の大舞台の中心に立っている






 

 

 

「彼女がこの舞台の主催者?

通りで思わせ振りな台詞ばかりだと・・・」

「でも、どうしてそれがわかったの?」

 

墜落中の空中戦艦内にて首席と次席の視線が今最も真実に近いであろう学級委員長に集中する。

 

「頭をぶつけられた時に思い出したの

この世界に来る直前、神楽さんが戻ってきて

聖翔祭の準備を進めていたら

 

 

また、あのキリンからメールがきた事を

・・・・・・・・・でも、私達は」

 

 

「誰1人として見ようともしなかったねぇ!

ったく、こっちは時間無いってのにさ!

あん時は本当に焦ったよッ」

「それは至極当然の事で御座ろう!」 

「うん、賢い選択だね」

「アー、まっったくだァー」

「うーー!!、うーー!!」

「え、ちょっと待ってみんな

 

 

キリンって何!!?

オジサンの検索には斑模様で首の長い生き物とかしか出てこないんだけど!?」

 

 

「光の!、今は空気を読もうか!」

「きみに言われちゃおしまい、デスぅ・・・」

「大体、そのままの意味の筈がないのデシテ

キリンとは恐らく、何かの暗喩

そうだろう?、テンドー」

「え?、ストラビモンが言った通りのキリンですが」

「                  」

「うっわー、ルナモンカッコ悪ぃジャン」

「誰もメールを見なかったのにどうして私達はデジタルワールドに?

!!、もしかして!!」

「婆ちゃんがあたしらを連れて来たって・・・

そういう意味かよ!?、星見!!」

「ま、まひるはんも双葉はんもぉ!

自分達だけわかったような事言わんでちゃあんと説明しておくれやす!」

「薔薇の香りを嗅がせて相手を虜にし、自分の意のままに操る」

「「!」」

「華恋と神楽さんはよく知ってるでしょ?

ソレで私達にメールを

 

デジタルワールドと人間界を繋げるゲートを開かせたのよ

 

あの時の私達って救世主の役も何もなかったから、操るのは簡単だったでしょうね」

「簡単なモンかい!!、別の次元に気軽に干渉なんざ七大魔王連中ぐらいしか出来ないっての!!

あんな無茶を通したせいでさぁ」

 

純那の指摘にロゼモンは憤慨しつつ

 

「1人たりともアタシの手駒に出来なかったんだから、ねぇ?」

『!!』

 

衝撃的な事実を暴露。

 

「警戒しなくても大丈夫

もうその段階は私達が自分でパートナーを見つけられた時点で越えてるから

お婆さんも、今更そんな事言わなくてもいいんじゃない?」

「言いたくもなるっての・・・

アタシだってねぇ色々と準備してたんだよ?

 

手勢を使ってデジタルワールド中に散らばってる神機の元になる石をコツコツ集めたり

 

ムーさんに無理言って純帝国産のデジタマを3つも融通して貰ったりさー

 

それが全部オジャンになったんだから愚痴ぐらいは言わせておくれよ」

「はぐらかさないで

そろそろ貴女の口からちゃんと教えて欲しい

 

 

私達をこの世界に連れてきた目的を」

 

 

「・・・・・・・・・大方の検討はついてんだろ?」

「だからこそ、よ」

「はぁーーー、お堅いねぇ委員長様は

アタシの目的はまぁ色々とあるけど

一番は、そうだねぇ・・・

 

 

アタシとアイツで造った舞台の続きが

何の面白みもなく終わるのが嫌だったんだよ

 

 

だから、色々とテコ入れする為に

レイド帝国の幹部にまでのし上がったのさ」

「ああ、そういう事デシテ」

「え!、どういう事ジャン!?」

「ロゼモンお前ッ、レイド帝国側が掌握している権限を使ってマヒル達の所へのゲートを繋げたのか!?」

「そんな事をすれば人間界にどんな悪影響が

 

いいや!!、それ以前に!!

 

フタバ達の意思を踏みにじって無理矢理デジタルワールドに引き摺り込んだ事自体が!、オレには納得がいかない!!」

「この世界を救う為でも、かい?」

「当たり前で御座ろう!!

華恋が、ひかり殿が、皆が!!

何度生命を脅かされたと思っている!?」

「バー!、メー!」

「カオルコが来なければ・・・ブイは・・・きっと

そう遠くない内に工場長に消されてた、デス

 

でもなぁ!!、それでも!!

 

こいつらにはこいつらの舞台があったんだ!

それを俺達の世界の事情で邪魔して良い理由があるかっての!」

「あらぁーあらぁーまぁーまぁー

どいつもこいつもすっかり絆されちまって」

「うん?、それが狙いだったんだろ?

ボクらの成長を促して、パートナーとの絆を深める為に

時には敵として、時には味方として

・・・・・・・・・ううん、それよりもずっと前から

 

ニンゲンが世界を救うっていう伝承を残して

 

はじまりの街の幼年期達にソレを教えて

 

次の世代にも語り継がせるようにして

 

あんたはずっと動いていたんじゃないのか?

 

 

舞台少女が救世主を演じられるようにさ」

 

 

「じゃあ!、やっぱり!

お婆さんは私達の味方 」

「早まんなァ、ナナァ

あの首長野郎とツルんでる奴がァ、んな単純なモンじゃねぇってこたァ・・・

 

 

テメェが一番よく知ってんだろ?」

 

 

「!!」

「その通りさ

結局アタシは斑の首長とおんなじで

自分が見たいモンの為にあんたらのキラめきを好き勝手に利用してたに過ぎないよ

その結果、誰か1人でも欠けて

 

 

スタァライト、出来なくなっても構わない」

 

 

『・・・・・・・・・ッ!?』

「そう考えて動いていた外道さね、カカ!」

 

麗将は嗤う、ババモンの時よりもっと老猾な笑みで。

 

 

「バー!、うそつきー!」

 

 

「あん?」

「エリスモン?」

 

それを否定するのは、クレールのパートナー。

 

「バー!、うそついてるー!」

「うん、そうだねエーちゃん

お婆ちゃんはスタァライト出来なくなるなんて思ってない

自分のパートナーに・・・

 

 

あなたのクレールに!、もう一度会って!

 

 

スタァライト、したいんでしょ?

 

 

フローラ」

 

 

「!!!」

 

 

更に、追い撃ちとばかりに華恋の放った役名によりロゼモンの着けていた悪の仮面は

 

割れた。

 

「だから、私達を

私達が造ったスタァライトを信じたくて

私達をいっぱい試してた!

 

 

もう一度!

 

 

塔に登ってクレールを取り戻すフローラ 」

 

 

「アタシを」

 

 

「え?」

 

 

「アタシをッ!!

 

 

その名で!! よぶんじゃないッッ!!!」

 

 

『!、ぅわぁあああーーー!?』

 

直後、ロゼモンの足元から発生した《ローズベルベット》が怒涛の勢いで祭壇の床を埋め尽くし

 

デジモンだけを拘束。

 

「ぬ!?、ぐぅううん!!」

「うごけなーーー!」

「リュー君!?」

「エリスモン!

お婆さん、どうして!?」

「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・はぁー・・・!」

「バッチャン?」

「呆けるな!、足掻け!、デシテ!」

「くそぉ!!、全然燃やせない!!」

「相棒ッ、くっ!」

「レオルモン!!、無理に動かないで!!

トゲが!!、トゲが刺さって・・・!」

「うっるせぇーーー!!!」

「グルァアアアーーー!!!」

「ストラビモンもやめてよぉ!!」

「う、うぅん・・・!、今更何を !?」

「この気配はゲート、デス?

!、カオルコーーー!!」

「へ?、え?、きゃあああ~~~!?」

 

パートナー達が棘からの脱出を試みていると

 

 

突如、舞台少女9人の体が浮き上がり

 

 

引き寄せられる

 

 

侵入に使用した通路が変じたゲートへと。

 

 

「カ、カカッ、何も騒ぐこたぁないよ・・・

アレは人間界に繋がるゲート、だから、ね」

『な!?』

「始まりはおろか

終わりまでもあなたが決める、と?

 

 

どこまで私を下に見れば気が済むッ!?」

 

 

「下になんて見てないさ・・・

あんたらはよくやったっての・・・

特にマヤ、よくあのハナ持ちならない主神達を堕としてくれたね

お陰で、前と違って聖騎士と神々がちゃあんと団結してレイド帝国の支配者に挑めるって、モン、だよ・・・」

「それを下に見てるって言うのよ!!

真矢が!!、私達が!!

その程度の事で満足するような

 

 

舞台少女だなんて思わないで!!」 

 

 

「クロ・・・やっぱり・・・あんたも・・・

でも、これ以上ニンゲンの手を借りちゃ・・・

アタシらの時と同じ事の繰り返しさ・・・

だから、自分達の世界の事は・・・

やっぱり、自分達で何とかしなくちゃ 」

 

 

「同じじゃない

私達の舞台はあなた達が造った物と違う!」

 

 

「・・・・・・・・・意外だねぇ、ナナ

あんたは喜んでくれるって思ったのに、さ」

「喜べない、全然嬉しくないッ

こんな形でみんなとの舞台が終わるのは!!

絶対にイヤ!!」

「この物語をやり遂げないで戻ったりしたら

 

 

私達の!、キラめく舞台は造れないよ!」

 

 

「マヒルは、怖くないのかい・・・?

レイド帝国の支配者は、ねぇ・・・

デジモンにとっても天敵だったけど・・・

舞台を造るモンにとっても天敵なんだよ?」

 

 

「敵!!、ってぇ!!、そんなん!!」

「今更!、だろ!?」

 

 

「頑張ってる所悪いけど もう、無駄さね」

 

 

「無駄じゃない!!、私達は!!、必ず!!

この物語を完結させてみせるわッ

自分達の意思と!、実力!、で!」

 

 

真矢が

 

クロディーヌが

 

ななが

 

まひるが

 

香子と双葉が

 

純那が

 

そして

 

 

「「あああぁぁぁあああ!!!!!!」」

 

 

「か、かれん・・・!」「ヒーーー!!」

 

 

華恋とひかりもまたロゼモンの幕引きに

全力で抗う

 

 

 

 

退場口への接近は止められない。

 

 

 

「《獣狼大回転!!》フォオオオーーン!」

 

 

 

彼女達   だけならば!!!。

 

 

「皆の衆や

 

 

オヒネリって、こんな感じかのぅ?」

 

 

全身を回転させながらの突進により

 

力技でゲートを消失させて

 

トボケた事をのたまうのは

 

クロンデジゾイド製の『黒い』鎧を纏い

 

堰月刀を手にした 大柄な狼の騎士。

 

 

「・・・・・・・・・ノンノン、だけど

 

 

ぐっどぐっど!、だよ! お爺ちゃん!!」

 

 

「わ、ワー君?

ほんとのほんとにワー君?

え?、は?、なんで?、なんで君!

ガルルモン族の究極体の中でもSSRな

 

 

クーレスガルルモンになってんのぉ!!?」

 

 

「そ、そのぉ、先程

あ!、ワシ進化するなーと思った時に・・・

メタルガルルモンはイヤじゃ!

メタルガルルモンはイヤじゃ!

 

 

手が使えなくなるのはイやじゃーーー!!!

 

 

と、必死に念じていたら、こうなりまして」

「それでいけたの!?、いけるモンなの!?

オジサンもうついてけないよ!?」

「の・ん・き・に話してる場合かーー!?

とっととこの棘を斬れ!!、デシテ!!」

「フォッ!、そうじゃった!」

 

 

 

そうじゃった

 

 

じゃ!

ないよ!、こんのバカタレーーー!!!」

 

 

「とーちゃんッッッ!!」

「危ねぇ!!、デスぅうううううう!!」

 

怒号と共にクーレスガルルモンとなったワー爺の四方八方から襲いかかるのは棘の群れ。

 

「《黒獣堰月刀!》」

「チィイ・・・!《ローゼンレイピア!》

まったく!、あんたって子は!

キャストの退場途中にオヒネリとかッ

まして、裏方が表舞台にズカズカと出てくるなんて言語道断だっての!!」

「そりゃーすまんのぅー、何ってたってワシ

他のモンがイヤがる事はするなと

 

 

あんたに散々教わったモンで、のぉ!!」

「!!?」

 

 

「じ、爺さんすげぇー」

「立ち回りが双葉はん並やん・・・」

「確かに!、あの気迫!

フタバにも負けていない!!」

 

狼騎士は迫る棘を豪快にブッた斬ると

 

そのまま麗将相手に互角の剣劇を繰り広げ

 

「ったく!

連れてきた事に文句言って!、帰すのにも文句言って!

どいつもこいつもワガママばっか!、何でもかんでも自分の思い通りになると思ったら大間違いだっての!」

「その台詞!

そっくりそのままお返しじゃあーーー!」

「・・・・・・・・・ッ、!」

 

然り気無く放たれていた魅了の芳香を

 

周囲の空気ごと凍らせ、氷の堰月刀を形成し

 

連続で射出。

 

「もう、あんたの言いなりにはならんよ!

舞台少女の皆さんも!、パートナー達も!

 

 

無論ワシも!!!」

 

 

「カッ、カカ・・・!

はじまりの街始まって以来の落ちこぼれが!

やるようになったじゃないかい!

 

 

プニ坊!!!」

 

 

「捕まえた!」

「お爺ちゃんすごい!」

「調子乗んなァ!、そいつァ凍らせたって何してくっかァわかんねぇぞ!」

「わかっとる!、決して油断はせんとも!」

 

ロゼモンを壁に磔にし啖呵を切るワー爺にななとまひるが歓声を上げた。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

なぁ、プニ坊 アタシはさ

 

はじまりの街が戦場になった、あの日

 

 

帝国の軍勢から子供達を守れなかったんだ」

「ッ」

 

 

「その時点でアタシははじまりの街の長老って役には相応しくなくなって

だから、潔く消えるつもりだったってのに

 

あんなモン見せられたら、さ

 

もう一度、造りたくなっちまうだろ?

 

 

このデジタルワールドで、舞台を」

 

 

「!、それってもしかして!

オメガモンがアルファモン・・・ドルモンのデジタマをお爺さんに託した時の?」

「あの場面を見て、長い年月の間に枯れきってた筈のアタシの心が再生産されて

 

舞台への熱が蘇った事で

アイツから託された神機は応えてくれた

 

ったく、どうせなら、さぁ

子供達を助ける時に動いて欲しかったねぇ」

「ババモン、様?

よもや、ワシを操ったり先程ゲートを開いた理由は・・・

 

 

ワシに、発破を 」

 

 

「油断、しないんじゃなかったのかい?」

 

 

体の大半を凍らせられた状態で麗将は嗤う。

 

 

「《フォービドゥン・テンプティション!」

 

 

「!?、なんじゃとぉッ!?」

「手足は愚か頭すら凍らされようとも!

予め出しときゃ問題ないのさぁ!

香りを警戒して自慢の鼻を封じてたのがアダになったねぇ!」

 

直後、祭壇の真上から赤と黒の薔薇が

 

幾つも降り注いできた。

 

「ひ、ひかりちゃんこれって!」

「あの時の技!?」

「否!、それよりも凄まじい力が込められているで御座る!」

「ヒー!!、みんな逃げてーーー!!」

『・・・・・・・・・!!』

 

《フォービドゥン・テンプティション》の包囲から逃れようと足掻く華恋達だったが

 

 

 

「      全てはアタシの

 

 

         の為に》      」

 

 

 

最早、手遅れ。

花々から一斉に『熱』が放たれる。

 

 

「ーーー!!・・・・・・・・・フォウン?」

『え?、あれ!?』

 

 

しかし、誰も傷を負ってはいない。

それどころか、パートナー達を拘束していた棘が枯れ果てており

 

どういうワケか99期達の体には

 

 

ソウルが、キラめきが、満ち溢れていた。

 

 

「カ、カカ・・・・・・・・・おっどろいたかい?」

 

 

「バッチャン?

 

 

なんでジャン?

 

 

なんで?

 

 

だって、ウチら騙してたんだろ?

 

 

なのに・・・・・・? なんで・・・・・・・・・?

 

 

 

なんで お前消えてんだよぉおッッッ!?」

 

 

 

「ババ、モンさ

 

 

お   おっかあああぁあああ・・・!!!」

 

 

壁に張りつく氷の隙間から零れ落ちる

 

消えかけた黒に包まれた、小さな赤い花。

 

ロゼモンであり、ババモンであった

 

そのデジモンのデータが崩壊していく様に

 

ベアモンとワー爺が泣き崩れる。

 

「!!、ウサギはん薬!!、はよおっ!!」

「ーーーッーーーーーーッ・・・ッ」

「何首振ってんだよ!?、いいから出せ!!

あたしらまだ婆ちゃんには言いたい事いっぱいあんだよ!!

なのに!、こんなのって!、ねぇだろ!?」

「やめるんだフタバ!!」

「ババモンは、もうッ」

「もうってなんなん!?

うちはそんなんぜっっったい認めへんよ!!

好き放題やるだけやって勝ち逃げなんて!」

 

 

香子と双葉がパートナーに止められながらも食って掛かる中

 

 

「フローラモン・・・・・・・・・うん、そうか

だから、さっき

カレンにフローラって呼ぶなって」

「ぇ」

「ケッ!、自分はフローラモンなのに

パートナーのフローラには成れなかった、ってかァ?」

 

 

「その、とおり・・・

アイツ、さいごまで・・・

フローラモンって、よばなくて・・・

だから、こんどこそ・・・

 

 

アイツを、おっどろかせる舞台つくって・・・

 

 

ハナを!、あかしてやる!

 

 

って、おもってたんだけど・・・

 

 

それしきのことで・・・

 

 

なーにムキになってたんだろう、ね・・・

アタシ・・・」

 

 

フローラモンは弱々しく笑っていた

 

 

顔から下が消滅した状態で。

 

 

「それ、しきって・・・?

おばあさん!!、あなたまさか!!?」

「捧げたの!?、私達に!!

 

 

自分のキラめきを!!、舞台への想いを!!

 

 

パートナーとの、運命を!!」

 

 

すっかり『熱』を無くした彼女の表情から

ななとひかりは気づいた、気づいてしまった

 

 

このデジモンが次に生まれ変わった時は

 

 

もう、自分達の知っている存在ではないと。

 

 

「そん、なッ

やだ!、やだよ!、おばあちゃん!!

会うんでしょ?、あなたのクレールに!!

 

 

もう一度!!!」

 

 

「・・・・・・・・・カレン   いったろ?

 

 

なんでも、かんでも

 

 

おもいどおりにはならない、って

 

 

だれもがみんな

 

 

望む舞台、を、できるモンじゃ、ない よ」

 

 

「それでも!!!

 

 

望まなければ何も始まらない!!!

 

 

だから、だからぁ・・・!

 

 

そんな風に、あきらめてんじゃないわよッ」

 

 

「そう だ ねぇ・・・・・・・・・

 

 

あきらめ、ちまったんだ、ねぇ アタシは

 

 

だから

 

 

だから、どうかあんたたちは・・・・・・・・・」

 

 

 

「言われるまでもありません

 

 

私達は演じきってみせますとも

 

 

最後まで、観れなかった事をッ

 

 

後悔するような!、真のフィナーレを!!」

 

 

 

 

     カッ   カカカ♪     

 

 

                   」

 

 

 

華恋やクロディーヌ、真矢

 

 

99期生とそのパートナー達に見届けられながら

 

 

自分のクレールのフローラになれなかった

 

 

スタァライト、出来なかったフローラモンは

 

 

それでも顔をほころばせて

 

 

半壊した赤と黒の神機と一緒に落ちていく

 

 

デジタマへと   還りながら。

 

 

「!」

「すと、らびもん・・・?」

「それは、なんデシテ?」

「フローラモンが

 

舞台少女のパートナーとして

 

はじまりの街の長老ババモンとして

 

レイド帝国四天王・麗将ロゼモンとして

 

色々な役を通じて集積したデータ

 

オレの検索にも引っ掛からないような

 

この世界の裏側の情報・・・・・・・・・

 

例えば、そう

 

 

レイド帝国の支配者が潜んでいるサーバー

そこに繋がるアドレスとかも入ってる」

 

 

『!』

 

 

「ワー君」

「ウ・・・・・・・・・ォッ・・・ォゥゥ・・・!!」

「顔を、上げろ!、クーレスガルルモン!!

 

 

あいつの最後の時間を!

 

 

舞台に注ぎ込ませたモンとしての

 

 

責任を果たせ!」

 

 

「!!」

「お前ならば出来ると信じていたからこそ

あいつはあらゆる手段を用いてこれ程までの無理と無茶を通した

なら、それに応えてやるのが筋ってモン

だろ?」

 

ストラビモンがワー爺に差し出したのは

 

育ての親のデジタマと

 

遺産であるデータチップ。

 

「それは君達も一緒だよ、カレンチャン」

「え・・・」

「フローラモンはね、信じてくれたんだ

オレ達ならこの物語をキッチリ〆られるって

 

 

だから、そんな風に泣いてる暇はないって!

 

 

行こうよ☆、スタァライトしちゃいにさ☆」

 

 

「!、・・・・・・・・・う"ん"っ!!!」

 

 

そして華恋には黒い神機の残骸を手渡した。

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!!

 

 

 

「!、流石に、もう限界みたいッ

ーーーーーー・・・・・・・・・お爺さん!!」

「フォッ!?」

「今まで、本当に

 

 

ありがとうございました!!」

『ありがとうございました!!』

 

 

「!、ジュンナさん、皆の衆・・・?」

 

 

空中戦艦が激しく揺れる最中

 

9人と9体はここまで導いてくれた先達に

 

綺麗な姿勢で頭を下げ、感謝を告げる。

 

「後はボクらに任せて、とーちゃん

必ずこの世界を救ってみせるから

 

だから

 

とーちゃんは、とーちゃんのかーちゃんを

 

安全な所に連れて行ってあげてよ、うん」

 

「ドル、モぉンッ

ああ"!、お前さんの時のように!、のぅ!

 

 

それでは皆の衆!!、御達者で!!

 

 

また会える日を!、皆さんの次の舞台を!

 

 

家族と共に楽しみにしております!!

 

 

フォオーーーーーーン!!!」

 

 

導き手は目元を潤ませながら救世主達に別れを告げるとデジタマとデータチップを抱え

 

 

壁に空いた大穴から飛び降りれば・・・

 

 

 

同時に 魔将の居城は爆散するのであった。

 

 

 

 

 

 









デジモン達の舞台裏『明けに向かって吠えろ!』






ドォーーー・・・ン!!! ドォオーーーンッ!!!



「!!、戦艦がッ!?」
「爆発したんだなー!!」
「み、みんな、無事だよな!?、ガルル!」
「無事に決まってんだろ!?、グルル!」
「ええ!、信じましょうぅん!!?」

不安げに空を見上げていた『明けの遠吠え』達のすぐ近くに黒くて大きいナニかが落下。

「あ"い"だたたぁあーー!!
折角進化して治ったのに腰がァーーー!?」


「「「「「!


?・・・・・・・・・・・・・・・・・・???」」」」」

ソレが発した声には凄く聞き覚えがあるのに、匂いがまるで違うのでファングモン達が恐る恐る近寄れば・・・

「あ、皆の衆
さっきは、その、すまんのぅ・・・


でも、全員無事で良かったわい」


「「「「「!!!


どぉぅうおおちゃあああん!!!」」」」」



ゴチゴチゴチゴッチーーーン☆☆☆☆☆



「フォオ""オオゥウウン"ッッッ?!!?」

呑気な物言いと綻ぶ顔により大好きな親だとわかったので遠慮なく全力で飛び掛かった。

「「とーちゃん!!、とーちゃあん!!」」
「が、ガルルモン、グルルモンも
しんぱいかけてすまん!、けどぉ!」
「ぐずぅ!!、うううぉうううん!!」
「シーサ、も!、おもぉうぅっ!!
ファングモン!、ドーベルモン!
みなをとめてくれんかのぉおおうん!!」
「もう、あえないって、おもぅたぁ!」
「自分達には、まだ、あなたが!
必要、なん、だよ!、とーちゃん!!!」
「わ、わかったからおりとくれぇええ!!」

ワー爺は容赦なく自分に全体重かけてくる子供達を宥めつつも、育ての親のデジタマと遺産であるデータチップを決して手放さない。



ヒュンヒュンヒュンヒュン・・・・・・・・・サクッ



「フォウンッ!?、堰月刀が!!


って!!、アレはもしや!!」


一方、落下中に放り捨てた武器は


不自然な軌道を描きながら


灰の山へと突き刺さる


そう まるで、何かに導かれるように・・・。


「やはり電脳核じゃ!
しかも、舞台少女の皆さんのキラめきをも
感じられるぞい!?」
「ピッカピカだな!、ガルル!」
「それにキラッキラッだぞ!、グルル!」
「キレーなんだなー!」
「!、長!!
コレは魔将・・・・・・・・・いえ!
カレンさんやナナさん達のソウルを奪っていたオニスモンの電脳核かと」
「始祖様達の力も感じられます
恐らく、ムルムクスモンを倒した時に
マヒルさんとフタバさんのキラめきをも取り込んだのやもしれません」
「フォーーゥム・・・これさえあれば」


「あれば、なんなのだよ?」
「あらあらぁん?、あなた達まさかぁん
マーヤさまぁん達のキラめきを独占するつもりかしらぁん?」
「ゴシュジン!?、ゴシュジンのがない!
ゴシュジンのどこどこどこぉ!!?」
「「「おうじさまとひめさまの!?

・・・・・・・・・ゴクリッ」」」



『                 』



「おい待てゴラァ!!」
「俺らから逃げられると思ってんのかぁ?」
「調子乗ってんじゃねぇぞ獣共ぉ!!」
『あわわわわぅーーん?!』

気がつけば『明けの遠吠え』は神三柱と三姉妹と幻竜達にすっかり取り囲まれてしまっていた。

「さぁ、大人しくその電脳核を渡すのだよ」
「フォウウーーー・・・ッ、わ、わかった 」


「お爺さん達、目を閉じて」


『!?、ーーーーーーッ』


「《ルミナフラッシュ!!》」
『ぐぁ!?』「「「きゃあ!!」」」


すると、どこからともなく【なな】の声が聞こえてきて強烈な光が発生。

「み、皆の衆!、走るんじゃーーー!」
「「「「「ワン!!」」」」」

包囲しているデジモン達の目が眩んでいる隙に『明けの遠吠え』6体は脇目も振らずに逃げ出した


8色にキラめく電脳核を手にしながら。


「あ!、待ち 」
「何だよ折角顔見せに来たのに!


無視するなんてつれねぇなー!、チビ達」


『!??  え?


あっ??  ぁぁぅ? う?



あ  あ あ あ!?! ああ ぁ" っ』



獣共を追おうとした竜達の耳に届いたのは


あの【ブイドラモン】の声。


「・・・・・・・・・ギヒッ♪、ギャハハハーー♪♪
オットイケナイイケナイ!、ン"、んんっ
うん!、やっぱりこの姿にはななの声が一番
ばなナイス♪」
「!?、その品性の欠片もない嗤い方は!!
貴様ッ、もしや!!」
「戦場荒しぃん!!?」
「シェイドモン!?、どどどどぅして!?」
「残念!、私はもうシェイドモンじゃないの


ななに絶望を全部奪われて・・・


ななのソウルとキラめきをいっぱい貰って!


完全体に進化したルミナモン☆


よろしくね神様達♪、それから久しぶり!


タイタモンの時以来かな?、ギヒッ!」


長い耳に光輪を持つ妖精は狼狽える神々に悪戯っ子のような笑みを向ける。

「ひっ、ゃ、ぁ!!!」
「いたいたいいたいいたいいいいたいいたいいたいいいたたいいいいいいたいたたぃい!!!!!」
「やめてゆるしておねがいやめて」
「ごめんなさい!!!ごめんなさい!!!ごめんなさい!!!ごめんなさい!!!」
「あは?、ははは?、はははははは???」
「おいおいおい!?、おめェら!!」
「え?、え?」「へ?、は?」
「ブランちゃん見ちゃダメよ!!!
ノワール!、気をしっかり持って!!」
「・・・・・・・・・酷いな」
「黄金?、黄金!、マグナモン!!!
チッ!、奴も使いモンにならなくなったか」
「えーーー?


ななやみんなにはあんな酷い事言ってたのに


直接手を下した私にはなーんにも言えないの?」


『?!??!!』
「な!?、まさか貴様!
ニンゲン共が最初にここに来た時から!?」
「ずっと、姿を隠していたというのか!?」
「うん♪、そうなの♪、その通り♪


ななから離れて、進化して、透明になって

コッソリ見守ってたんだけど、ね・・・


ロゼモンの《ロージィクレイドル》でみんなと一緒に眠らされちゃって・・・
もし、機関部から覗いてなかったらデッカードラモン号と運命を共にする所だったの・・・」
「何故そうならなかったぁあーーー!?」
「落ち着け!!、ドゥフトモン!!」

ルミナモンの態度は聖騎士達が相手でも変わらない


そう


シェイドモンの時と何も変わっていない。


むしろ、見た目だけは愛らしい妖精になり

声をかつての宿主に変えられるようになって

言葉の一つ一つの威力が増している。

「くっ!!、何と羨ま
いや!!、けしからんのだよぉッ!!」
「ユピテルモン様の言う通りですわぁん!!
マーヤ様ぁんを盗み見るなんてぇん!!
許せナぃいイイイイイイーーーん!!」
「ごめんなさい
お裾分け上げるから許して、ね?」


「「

       ぁふぅ
          んっ      」」


「ゆ!?、ゆゆゆユピテルモンさん!!?
ユノモンさんまでななな何ががが!!?」
「大場なな、再演プレゼンツ
真矢ちゃん詰め合わせ☆クロちゃんを添えて
クスッ!、どう?、とっても尊いでしょ?」

しかも!

軽くタッチするだけで己が物にした記憶を

別の相手に流し込めるという凶悪さ!。

これにより


主神とその番は絶頂し果てるのであった。


「んでェ?、結局おめェは何が目的でしゃしゃり出た?」
「それは勿論!、お爺さん達を助ける為 」
「ヒムカムイ」
「ん"!、ンン!!
コレカラノセカイヲ!、トビッキリ!
オモシロオカシクスルタメニキマッテンダロ
ギヒッ!、ぎひひひひひっ!」
「ってェ、ことはだ


まだ、デジタルワールドは助かるんだな?」


「ぎひひ・・・・・・・・・あ、いけないいけない!
ななの声でこの嗤い方はダメよ!、私!
んっ!、ん!、そうよ、神威の聖騎士さん
でなければ、ババモンが、ロゼモンが


かつての舞台少女のパートナーが必死に


演出脚本敵役その他諸々やる意味がないもの
なのに!、あなた達ったらすっかり絶望すらしなくなっちゃって!
アンマリニモツマンナイカラオシエテアゲヨッカナーッテ
最も、私もう絶望を糧には出来ないけど♪



ギャハハハははははハハハはは!!!!」



「ったく、戦場荒しは所詮戦場荒しってか?
まぁー、いいぜェー
今回だけは見逃しといてやるよ」
「神威!?、ガンクゥモン!?
貴様は何を言っているぅうーーー!!?」
「そいつはデジタルワールドの秩序を乱すバグそのものとも言える存在
生かしておけば後に何を仕出かすか」
「その『後』があるかどうかの瀬戸際だ


精々一緒に祈って貰おうぜェ


舞台少女達が上手くやってくれるってよ!


なんてたってェ、あいつらへの信心は俺ん所のガキ連中以上だぜェー?
なぁ?、ルミナモン」
「!、・・・・・・・・・フーーンダ!!


(いずれ、あなたとは必ず決着を着ける!


だから


ちゃんとみんなを ナナヲマモレヨ?


百獣番長!!、バンチョーレオモン!!)」



ルミナモンは何も変わらない


中身はシェイドモンと同じ戦場荒しのままだ



でも、もしかしたら



ほんの少しだけ



何かが、変わったのかもしれない。









一方、その頃逃亡中のワー爺達はというと


「長ー!、その電脳核で何造るんだなー?」
「決まっとるじゃろ!


デッカードラモン号を越える大発明じゃ!」


「「おおーーー!、ヤッベぇーーー!!」」
「その身の進化に飽きたらず
更に高みを目指すのですね!、長!」
「ならば、自分達も進化してみせますとも!
カレンさんやナナさん達のファンとして!」
「おいらも頑張るんだなー!」
「なぁなぁ!、ならさ!
魔将の戦艦よりもすっげぇの造ろうぜ!」
「ああ!、空飛ぶ奴!
究極体になった長ならきっと造れるって!」
「フォッフォッフォッ!
お前さんらかるーく言ってくれるのぉー!」

次なる舞台に想いを馳せて語り合っていた

「空を飛ぶかどうかはさておいて
まず造るのは



風呂じゃ!!、風呂!!



それも9人全員で入れる大きい奴!!!」



「「「「「おおおーーー!!!」」」」」




全ては再び舞台少女達と巡り会えた時



喜んで貰う為に。



『明けの遠吠え』の戦いはこれからだ!!!




「あ!、でも長ー


もしも舞台少女さんが増えてたら


どうするんだなー?」


「フォフォフォ♪、安心せいシーサモン!


そんな事もあろうかと!


更にもう1個造っとくぞい!!


これなら例え4、5人増えても安心じゃ!」




そう、これからだ・・・・・・・・・











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最終演目 決別のレヴュー

 

 

 

 

何の背景もない

 

 

フレームが剥き出しの電脳空間。

 

 

「アッハッハァ☆☆☆

 

 

いやぁ☆ 間☆一☆髪☆ だったねぇん☆」

 

 

この静まりかえった空間では調子外れな笑い声がやけに大きく聞こえた。

 

「はは!、は、ははっ」

「ストラビモン大丈夫だよ

 

 

怖いのは、不安なのは

 

 

あなただけじゃないから」

 

 

「・・・・・・・・・ごめ

 

 

いや、ちがう   ありがと、マヒル」

 

 

今にも消え入りそうな声を上げる『光』を真昼の舞台少女はその温もりで優しく包み込む。

 

「ビビってんのはお前だけじゃないって

なぁ?、香子、ブイモン」

「ううううちはべべべつにぃ~~~???」

「ででデデデぅすスススううぅうう!!!」

「2人共!!

足が、すくむのを、隠す必要なんてない

これから挑む相手は創世神スサノオモンをも一瞬で、削除したんだから・・・

 

 

だけど!!!、今のオレ達にはパートナーが

 

 

こんなにもキラめく舞台少女達が居る!!!

 

 

だから!!!、負ける筈がないんだ!!!」

 

 

「ったく!、お前さぁ!

最後の最後まで照れること言いやがって!」

「あらぁ?、双葉はんお顔が緩んどりますえ?

ほんまは満更でもないんやないの~?」

「まぁな・・・・・・・・・もう、平気か?」

「平気

 

 

や、なくても

 

 

どっかの泣き虫で弱虫な臆病者の前に

 

 

舞台に、立つ以上は しゃんとせなッ

 

 

お師匠はんに叱られますえ」

 

 

「カオ、ルコ

 

 

ーーーーーー!!!、~ー~ー~ーッ!!!

 

 

そうデスよ!、ブイの・・・!

 

 

デジタルワールド最速の前に立つんなら!!

 

 

しゃんと!、して!、貰わないと!

 

 

ボヤボヤしてたら追い越すぞ!、デスぅ!」

 

 

炎に煽られた葉と花を見た小竜は自分で自分の頬を引っ張って未だに震える体を奮い立たせた。

 

 

「クロディーヌ」

「!?」

 

 

「勝つぞ、絶対に」「クスッ♪、Oui!!」

 

 

目元を乱暴に拭いながら静かに宣言する小熊に次席は髪をかき上げながら力強く応える横で

 

 

「ベアモンも成長しましたね」

「デシテ」

「・・・・・・・・・勿論、ルナモンも」

「フン!、よく言えましたのデシテ

 

 

最も、それは貴様が居たからこそだ

 

 

頼りにしているぞ、テンドー」

 

 

「ええ

 

 

今宵、キラめきを貴方と共に」

 

 

主席がウサギとぶつけ合うのは不遜な笑み。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ジュンナ、今君余計なこと考えてない?」

「そうね、そうかもしれない・・・

私がいくら頭を悩ませたって

お婆さんが、フローラモンが

どんな想いでこの脚本を描いたのかなんてわからないもの

 

 

でもね、ドルモン

偉人が生涯をかけて残した物語に想いを馳せて

 

 

自分なりに演じるのが舞台少女なんだって

 

 

私は、思うから

 

 

だから、これからも私は

 

 

その余計なことに頭を使い続けるの」

 

 

「お婆さんが

 

 

大切にしてきた物 守りたかった物

 

 

私達みんなで

 

 

次の舞台に、全部持っていってあげる為に」

 

 

「・・・・・・・・・うん、そうだね」

 

 

目尻に未だ涙を残しながら柔らかく微笑む友の隣で新たな決意を胸に灯す自分の星を紫の獣は誇らしげに見上げる。

 

「ケッ!!、あの婆さんのことなんざァ

オレサマにはこれっぽっちも関係ねぇなァ」

「そーでござろーなー

レオルモンにとって大切なのはー?」

「ナー!、なきやんだことー!」

「ア"ァ"ンッッッ!!?、ふざけたことぬかしてんじゃねぇぞガキ共がァア!!

・・・・・・・・・ケッ、テメェらも

 

 

覚悟、決めときなァ」

 

 

「無論」「うー!」

 

仔獅子の残された右目から放たれる鋭い眼光を鎧蜥蜴とハリネズミは真っ直ぐ受け止め

 

 

「華恋」「ひかりちゃん」

 

 

自分達のパートナー

 

 

ふたりでひとつの運命を見守った。

 

 

「お婆さんのパートナーに

 

 

フローラモンのクレールに届けよう

 

 

この神機も、想いも、全部!!」

 

 

「その為にも

 

 

この物語を私達の手で完結させましょう」

 

 

「うん!

 

 

星屑溢れるステージに、可憐に咲かせる愛の華

 

 

生まれ変わった私を纏い

 

 

キラめく舞台に飛び込み参上・・・!

 

 

99期生 愛城華恋

 

 

みんなを!!」

 

 

力強く、高らかな名乗りと共に舞台少女と

 

 

そのパートナーデジモン達は

 

 

 

「スタァライト!! しちゃいます!!」

 

 

 

ゲートへ 最後の舞台に 飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あれ?』      『は?』

 

 

9人と9体が意気揚々と踏み込んだ先には

 

 

         誰も居ない。

 

 

真っ暗なディスプレイが所狭しと並んでいる  

 

 

だけ。

 

 

 

〔『クリック ドラッグ エンター

 

 

《ジャッジメント》』〕

 

 

 

『!      え?      』

 

 

突如

ディスプレイの一つに『あるモノ』が映れば

 

 

〔『ERROR

 

 

再度、対象の削除を施行

 

 

クリック ドラッグ エンター

 

 

《ジャッジメント・・・・・・・・・ERROR』〕

 

 

 

その全てが『あるモノ』で埋め尽くされた。

 

 

「まって、待って!、待ちなさいよ!!!

 

 

何なの、これ!?

 

 

レイド帝国の支配者、って

 

 

まさか   そんな   」

 

 

星見純那が眼鏡越しに見た

 

 

ディスプレイに映る『顔』は・・・

 

 

              男だった

 

 

      女だった

 

 

   子供だった

 

 

               年寄りだった

 

 

    若者だった

 

 

 

つまりは

 

 

 

「人間 なの?」

 

 

〔我々はその問いを肯定する〕

 

 

『!?』

 

 

〔我々はその問いを否定する〕

 

 

「う、ううん!?、どっちだよ!!?」

 

 

〔我々は人間だ、人間より産まれた人間だ〕

〔否、我々は人間ではない

人間がネットの海に廃棄してきたデータ〕

〔それらが蓄積し、ひとつとなった存在

故に、人間ではない、デジモンでもない〕

〔否、我々は人間により産まれた人間だ

 

 

デジタルワールドが我々との最初の接触時

 

 

廃棄したデジモンをも取り込んだデジモンだ

 

 

これは   その証明だ〕

 

 

9人と9体の目の前で画面の全てから

 

 

あらゆるイロが無秩序に混じりあった濁色の

 

 

0と1の粒子、ソウルが迸る。

 

 

 

「ひ、光の!、これは!?」

「ああ!、間違いない!」

「ひとつひとつは塵芥に過ぎないデータの残骸が統一されることで異常なまでに高められたソウル!

これこそがレイドプログラムの源泉ッ!?

は、ハハハ!!

皮肉にも程があるのデシテ!!」

「アア!!、まったくだァ!!

ソウル使ってるモン同士でやりやってたなんてよ!!」

「マグの、言ってたこと!、間違いじゃ!

なかったッ」

 

 

〔我々は人間だ、デジモンだ

故に、人間として、デジモンとして

 

 

デジタルワールドの侵略が完了した後に

 

 

人間界への侵略を開始する〕

 

 

「ちょお!?」「なんでそうなんだよ!?」

 

 

〔それが人間だからだ〕

〔それがデジモンだからだ〕

〔否、我々は人間ではない〕

〔否、我々はデジモンではない〕

〔故に、人間にならなければならない〕

〔故に、デジモンにならなければならない〕

〔全ては証明の為に〕〔全ては否定の為に〕

〔その為に我々はひとつになった〕

〔その為に我々は散っていった〕

〔それこそが我々全員の目的〕

〔それこそが我々ひとりひとりの目的〕

 

 

 

『〔全ては我々レイド帝国の為に〕』

 

 

 

「その前にウチと勝負するジャン!!!

今度こそ負けねぇ!!!

ほら!!、とっととかかってこいよ!!」

 

 

 

『〔・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・〕』

 

 

 

「ねぇ、さっきからおかしくない?」

「そ、そういえば・・・

どうして私達に何もしないんだろう・・・?」

 

ベアモンの挑発にどの『顔』も何の反応も返さないのでクロディーヌとまひるが困惑していると

 

 

「しないんじゃなくて、出来ないんだと思うの」

「!?、大場さん?」

「ねえ、そうなんでしょ?

 

 

          キリン」

 

 

『!!?』

 

 

〔「はい

 

 

彼ら、或いは彼女達はそのままでは

 

 

舞台上の貴女達には手を出せません

 

 

ですが、同様に貴女達もまた

 

 

画面の向こう側には何も出来ません」〕

 

 

やけに耳に残る低い声が聞こえてきた。

 

 

「この声!!、奴で御座るかッ!!?」

「ヴゥウウアアァアーーーーーー!!!」

「落ち着いてエリスモン

私はもう大丈夫、大丈夫だから」

 

その正体を知るリュウダモンとエリスモンはあからさまに警戒心を剥き出しにする。

 

 

そっか

 

 

お婆ちゃんが言ってた『天敵』って

 

 

こういうことだったんだ・・・・・・・・・

 

 

なら!!、リュー君手伝って!!」

 

 

「ぬぅん!!?

 

 

・・・・・・・・・! あいわかった!!」

 

 

「華恋!!、あなた一体何を!?」

 

突如、Possibility of Pubertyの切っ先をパートナーに向ける華恋に声を荒げる純那。

 

「私達がこの世界に来てからのキラめき!

 

 

この舞台で!!! 全部魅せるの!!!」

 

 

「その為のれう"ゅーの相手は!!

拙者ら、パートナー以外にはおらぬであろう

 

 

違うか!?、同胞達よ!!」

 

 

「・・・・・・・・・ううん、違わないよ うん!」

「!、ドルモ 」

「ねぇ、ジュンナ

これが最後のチャンスなんじゃない?

 

 

この中で最も輝くスタァになるのはさ!!」

 

 

「!、言ってくれるじゃないッ

だったら全力で

 

 

掴んでみせます!! 自分星!!」

 

 

だが、そんな彼女もまたドルモンに向けて翡翠弓を引くこととなる。

 

 

「?、???、??????

どういうことジャン!?、ルナモン!!?」

「ワ・タ・ク・シに聞くなーーーーーー!」

「簡単な話よ、あんたが私に全力で挑めば」

「レイド帝国どころか

 

 

この世界の頂点になれる と、いうワケです

 

 

最も、その座を譲る気はありませんが?」

「そっか!!」

「納得するなデシテ!!」

「え?、ウチ納得してねぇよ?

 

 

だって、勝つのウチだし♪」

 

 

「フン、言ってろアホめッ

精々、そいつら共々

足をすくわれぬよう気をつけるがいい!!」

 

 

Etincelle de Fierte Odette the Marvericks

 

 

「あらあらぁ~、みなはん張り切っとる所悪いんやけど・・・」

「この物語の主役に!、デジタルワールドで一番になるのは!

 

 

あたしだ!!/うちどすえ?」」

 

 

「オレ達もやろうブイモン!!

フタバとカオルコに負けないように

 

 

いや!!、勝つぐらいに熱く激しく!!!」

「はっ!、きみってば

 

 

やーっと竜族らしくなってきたデスね!!」

 

 

水仙花 Determinater

 

 

「ケッ!、やっぱりテメェらめんどくせぇなァー!!」

「ごめんねレオルモン

でも、これでもう本当に終わりだから・・・

 

 

受け止めて、くれるよね?」

 

 

「アァッ!?、わかりきったこと聞くなァ!

テメェこそみんな守れよ 自分ごとなァ」

 

 

輪と舞

 

 

「そっか、だから、フローラモンは・・・

君達を、舞台少女をこの世界に呼んだんだ」

「うん、きっとそう

 

 

でも、これから先の運命の舞台を」

「伝説を造るのは、オジサン達なんだよ

 

 

ね☆」

 

 

Love Judgement

 

 

「エリスモン」

「ヒー、エー

 

 

今、スタァになるよ・・・!」「うん・・・!」

 

 

BlossomBright

 

 

〔「それではデジタルワールド最終演目

 

決別のレヴューの開演です

 

トップスタァを目指して

 

歌って 踊って 奪い合いましょう・・・」〕

 

 

少女達のキラめきが掲げられ

 

 

キリンが終わりの始まりを告げれば

 

 

赤、青、緑、黄、水、桃、紫、白、橙の

 

 

 

神機が輝き   メロディが流れだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

『〔何だ?〕』

 

 

 

「たぁああーーーーーー!」

「なんの!

《兜返し!》からの・・・《居合刃!!》」

「華恋!!」「ひかりちゃん!!」

「よそみめー!《ケンザンダイブーー!》」

 

 

『〔これは?〕』

 

 

「《ライトニングヴァアアーーー!?」

「ワォッ☆針全部弾くなんてさっすが☆」

「ほ、ほめてくれるのは嬉しいけど・・・!」

「どさくさに美味しい所狙ってんじゃねぇ!

《レオクロー!!》」

「《リヒト・ナーゲル!!》

おっととー!?、危ない危ない☆

危うく矢オジサンになる所たったぁ☆☆☆」

 

 

『〔何故?〕』

 

 

「あの体勢から避けるなんてね・・・!」

「《ダッシュメタルッッッ!》

《メタルキャノン!》《メタルキャノン!》《メタルキャノン!》《メタルキャノンッッ!》」

「いいよ、ドルモン!

思いっきりやっても大丈夫!

純那ちゃんは私が守るから!、何度でも!」

「うん、知ってるよ だから狙いは」

 

 

『〔同士討ちを?〕』

 

 

「ぶぇええええ!!?

おいコラ!、ボッチぃいいいーーー!!?」

「ちょおおおお!!?

ばななはん!、全部うちらん所きてるて!」

「「隙有りだ!!!」」

「「ふぇえええーーーん!!?」」

 

 

『〔理解不能〕』

 

 

「ジャンジャンジャンジャンぐぇえ!?」

「こんな力押し!

今更私に通用するなんて思ってんの!?」

「最も

頭を使っても通用するとは限りませんが?」

「ぐぎぎぎぃーーー!!!」

 

 

〔「戸惑っていますね   わかります」〕

『〔!?〕』

 

 

9人と9体が入り交じった【戦い】を画面越しに見やる数多の意思に壁を越える者が語りかければ

 

 

神機から更なるキラめきとソウルを放出。

 

 

「ならばこれはどうデシテ!?

《クレッセントティアーズシュート!》」」

「!、天堂真矢!!」「西條さん!!」

「「はぁああああ!!!」」

「うおおおおおお!!、ウチ負けねぇ!!

テンドーにも!!、クロ公にも!!

ふたりいっぺんにも!!、ジャン!!」

 

 

『〔わかる?、我々を理解出来る?〕』

〔「ええ、わかります」〕

 

 

「《Vブレス&カオルコアローーー!!》」

「ほんまにもうこれっきりどすぅうう!!」

「《サラマンダー!!」

「ブレイク!!》!?、嘘だろ!!?」

「いややわぁ~~~双葉はぁん♪

か弱いうちにそない無体なことするなんて」

「か弱い奴が!、ブン投げられた途中で宙返りなんてするかよ!?」

「しかもフタバの斧の上に着地するなんて!

流石だなカオルコ!!」

「ブイ!、無視!、すんな!、デスッッ!」

 

 

〔「何故なら、あなた方は私と同じなのですから」〕

『〔同じ?〕』

 

 

「来て!!、ライアモン!!」

「《クリティカルストライク!!》

オラァアアアアアアーーーーーー!!!」

「《キャノンボールッ》」「これもッ」

「ひゃあああん!?」

「《リヒト☆クーゲルッ》

ジュンナチャン達さっきから怖いってば!」

「しょうがないだろ?

真正面から鉄球ぶつけたって打ち返されるだけなんだからさ、うん」

 

 

〔「観たいのでしょう?

彼女達の舞台を、私と同じように」〕

『〔ありえない〕』

〔我々の侵略に〕〔ブタイ等不要〕

 

 

「《棒刃破ぁあああ!!!》」

「《クリムゾンスラッシューーー!!》」

「「ぁああああああ!!!」」

「ぬぅ!、フィルモン!」「リューーー!」

 

 

〔「では、何故

あなた方は彼女達を消せないのですか?」〕

『〔・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・〕』

〔「わからない?、わかります」〕

 

 

より激しく より鮮烈に よりキラめいて

 

少女達はパートナーと代わる代わる披露する

 

自分達がデジタルワールドで紡いできた物を

 

全身全霊で。

 

 

「《成! 竜! 刃!》」「《ギガ!

 

 

クリムゾンダイブーーーーーー!!!》」

 

 

「行くよ

 

 

じゅんじゅん!!、ばななぁーー!!」

「私達を、止められる?」

 

 

「当然!」「うん!

 

 

《メタルメテオッッッ!!!》」

「《ボーリンストーム!!!》」

 

 

「何度も

 

 

何度もッ私はあなた達に負けたりしないよ!

 

 

華恋ちゃん!!、ひかりちゃん!!」

「「!?」」

「私だってッ、リベンジのチャンスは

 

 

絶対逃さないわよ!!、2人共!!」

 

 

赤と青のキラめきが渦を巻く巨大な刀と

 

暴風と矢の連射により勢いを増した巨大鉄球

 

真っ向面から激突するのと同時に

 

かつて地下劇場で行われたレヴューが

 

大きく形を変えて再演された。

 

 

〔「舞台少女達が

 

電脳世界の獣達と織り成す化学反応!!」〕

 

 

「アッハッハァ☆、盛り上がってきたねぇ☆

だったら☆、オジサン達もやっちゃおっか☆

 

 

【オレ】!!」「そうだな【オレ】!!

 

 

獣魂解放!!!」」

 

 

「グルァアアア!!」「おおおおおお!!」

 

 

機械狼と紅蓮魔竜が取っ組み合いを演じれば

 

 

「さぁ!、ブイはん!、やってしまい!」

「《Vウィングブレード!!》《Vウィングブレード!!》《Vウィングブレード!!》《Vウィングブレード!!》

《V!、ウィング!、ブレェエエエド!》」

「うひゃあああーーー~~~ん!!?」

「くっそー!、バカスカ撃ちやがって!」

「おほほほほほほ♪、なぁに言うてはるか♪

ぜーんぜん聞こえまへんえ~~~♪♪♪」

 

 

そのすぐ近くで巻き起こるのは、調子に乗りまくった高笑いを背中に乗せて高速飛行する幻翼竜による空爆。

 

 

〔「那由多の意思を束ねた演算能力でさえも

 

予測がつかない舞台!!」〕

 

 

「《アイス&ダークアーチェリー・・・!》」

「しゃあ!

キタ!、キタ!、キターーーーーー!

《アニマルネイル!!

 

 

つめたいのとまっくら!!》ジャン!!」

 

 

「ぅ!?、ー~ー~ー~!!!

もっとマシな名前考えなさいッッッ!!!」

「やめておけ、クロディーヌ

このアホにその手のことを期待するのは

 

 

な!!《ルナティックダンス!!》」

 

 

「前に比べてステップが   !!?」

「上達したと言いたかったのか?

フン!、驕るなよニンゲン!

すぐ側に最高の手本が居る以上ワタクシが

 

 

貴様の想像をも越えるのは確定事項デシテ」

 

 

「・・・・・・・・・ふふふっ!、そうですか!」

「相変わらず熱烈ね、本当に羨ましいわ!」

 

 

主席と次席は笑い合う

 

冷気と闇を纏った爪が荒れ狂い

 

流麗な斬撃の舞踏が行われる中心で・・・!。

 

 

 

〔「あなた方は!、それが観たい!!!」〕

 

 

 

壁を越えて語りかける声が熱を帯びると

 

9つの神機が各々に奏でる

 

 

「スティフィルモンよ、わかっているな?」

「ーーーーーーッ、うん・・・!

レヴューの終わりが近いことも・・・!

このレヴューのおわりが、ヒーとの・・・

おわかれだって、ことも・・・!

 

 

だから!!!、だからぁーーー!!!

 

 

エーはスタァになるんだぁあーーー!!!」

 

 

「キラめきを、分かち合う為に・・・!」

「約束ッッッ、したんだからぁあああ!!!

 

 

離れても!、もう一度!

 

 

私達はまた、繋がられるんだってぇ!!!」

 

 

「その為にもッ、拙者達は今ここで!!!

 

 

すたぁらいとをも越えて見せるぅうう!!」

 

 

 

ギュインギュインギュインギュイーーーン!

キィン! キィン! ギィイイイン!!!

 

 

 

穿って唸る金属音 激しい剣戟の音色

 

 

 

ガォオオオオオオオオオオオオン!!!!!

 

 

 

「ケッ!!」

「もぅっ、また脱ぎ捨てて・・・」

「アァ?、テメェの弱っちい攻撃にはァ

GAKU-RANなんて要らねえだろうがァ」

 

 

 

アォォォオオオオオオーーーン!!!!!!

ギャオオオオオオオオオオオン!!!!!!

 

 

 

「バンチョーレオモン!!!

こんな時は!、ナナのキラめきを直に感じたいと素直に言った方が良いと思う!!!」

「炎のーそれ言っちゃいけないヤーツ☆

だけど、オジサンもハゲドーーーウ☆☆☆」

「うるっっっせぇなァ始祖共がァ!!!」

「あはは、みんな仲良しだね」

 

 

「      はれ?      」

 

 

 

「ま、マヒル?、フタバも、なんで・・・ッ?

融合体飛び越えてエンシェントしてる、デス?」

「そりゃー勿論、お灸を据えてやろうと思ったからだよ

なー?、まひるー♪」

「ねー?、双葉ちゃーん♪」

 

 

 

獅子   狼   そして、竜の力強い咆哮

 

 

 

ィィィーーーーーーー・・・・・・・・・ン!!!

 

 

 

「「ぶぇええ"ええええーーーん!!!」」

 

 

 

「こぉらぁあ!!、逃げんなぁあああ!!」

「どひーーー!?

ちょお!、ブイはん!、この炎の壁ぇ!!」

「突っ切ったりしたらマグ!、ナ、モンの!

二の舞デ・・・・・・・・・ふぇえええん!!?

マヒル追いついてきてるデスぅううう!?

今!、ブイ!、アルフォース!、なのに!」

「まってまってぇ~~~♪♪」

「「あ"あぁあぁあああっっっ!"!!」」

 

 

 

吹き抜けるジェット気流音

 

 

 

「はぁて☆さぁて☆

パートナーが聖騎士とじゃれ合ってんなら☆

オジサンも張り切っちゃうぞぉ☆」

「・・・・・・・・・うん、そうだったね

君もワー爺と同じでずっと僕の事を信じてくれてた」

 

 

 

!   !   !   !   !   !

 

 

 

「今こそ、その期待に応えよう

孤高の隠士として・・・!」

「ははは!、嬉しいこと言ってくれるねぇ☆

でも、剣での勝負ならまだ負けられないって

 

 

《シャープネスクレイモア!》」

「《聖剣!、グレイダルファー・・・!!》」

 

 

 

空白を示す音無き音

 

 

 

カァアアアーーーーーーンッッッ!!!!!

 

 

 

「どいつもこいつも盛り上がってんジャン!

だけど!、こんなかで一番 」

「C'est moi! la star/le sommet!!!」」

 

 

「ふふっ!」「へへっ!」

 

 

 

鳴り響くゴング

 

 

 

コォォーーー・・・!   コォォーーー・・・!

 

 

 

「《アロー!、オブ!、アルテミス!》」

「神様にだって負ける訳にはいかないのッ

私だって、トップスタァになるんだから!」

「相変わらず熱いなジュンナ!!

だけど!!、この舞台の主役は渡せない!!

だから!!、全力で相手して貰うぞテンドー!!《オメガバースト!!!》」

「クスッ!、あなたも成長しましたね・・・

 

 

ですが」

 

 

「な!?」

「天堂さん!、あなたッ

 

 

矢も火も両方自分で斬り捨てたの!!?」

 

 

「私はその上を征きますとも、それが」

「This is 天堂真矢、だそうデシテ

こいつを越えたければ貴様らも今ここで進化してみせるがいい!」

「「!!、上等!!」」

 

 

 

誇り高き白鳥の鳴き声

 

 

 

〔「ああぁっ!!!、わかります!!!」〕

『『『〔〔〔わからない!!!〕〕〕』』』

 

 

壁越しに語りかけられる度に

 

【舞台】に目を奪われる度に侵略の意思から

 

 

〔わからない!〕〔わからない!〕〔わからない!〕〔わからない!〕〔わからない!〕〔わからない!〕〔わからない!〕〔わからない!〕〔わからない!〕

 

 

 

『『『〔〔〔

 

 

わ   か   ら   な   い  !

 

 

                〕〕〕』』』

 

 

 

 

〔なのに

 

 

何故? 何故? 何故? 何故? 何故?

 

 

何故我々は    バラけて、いる!?〕

 

 

ディスプレイからひとつ、またひとつと

 

 

『顔』が抜け出ていく

 

 

もっと近くで舞台を観る為に

 

 

もっと、もっと! キラめきを感じる為に!

 

 

だが、それは

 

 

〔やめろ〕〔駄目だ〕〔我々よ!〕〔「いくな!!〕〔そんな〕〔そんな形で離れては!!〕〔我々は!!!〕

 

 

 

『〔我々ではなくなるのというのに!?〕』

 

 

 

さながら

 

光に引き寄せられ命を散らす虫のようで・・・

 

ディスプレイから抜け出て

 

9種のキラめきを浴びた端から

 

『顔』は次々と消滅していった。

 

 

〔この、ままでは・・・!〕〔消える、我々が!〕〔レイド帝国が!〕〔侵略の意思が!〕〔そうなる前に!〕〔こいつらは排除すべきだ!〕〔そうだ!、我々よ!〕〔我々に賛同する我々!〕

『〔その全てを今こそひとつに!!!〕』

〔「おや?、自ら舞台に飛び入りですか?

 

 

わかります

 

 

ですが、いいのですか?」〕

 

ソレを阻止すべく、レイド帝国は

自分達で自分達を造り上げる

 

 

竜、獣、水、機械、変異、聖、暗黒、虫、草木

 

 

電脳世界に存在するあらゆる性質がひとつとなったデジタルワールド最強たる究極体すらも凌駕するデジタル生命体を

 

 

 

『『『〔〔〔ゼロ・ジェネシス〕〕〕』』』

 

 

 

世界の破壊と創造を目的とした存在を。

 

 

 

〔「自分達を隔てる壁を失うということは

 

 

彼女達が造り上げた舞台に、世界に

 

 

巻き込まれるということになるのですが」〕

 

 

 

「アタシ!」『再生産!!!!!!!!』

 

 

 

瞬間、9色のキラめきがコワサレタセカイを

 

 

世界【舞台】に再び造り上げる!。

 

 

〔「ああ、そうでしたか・・・」〕

『〔何!?〕』

 

 

舞台に上がってきた群衆に神速で迫るのは

 

 

「「最後まで付きおうて貰うで/デス

 

 

 

《シャイニングVフォース 閃花!!》」」

 

 

 

蒼の入り交じった桜吹雪。

 

 

〔「やはりあなた方は私と同じでしたか」〕

『〔お、な、じ!?、だと!?、!!〕』

 

 

壁の向こうに居る相手に疑問をぶつける最中

 

 

「「「「シャイニング・バーンスラッシュ

 

 

 

エンシェント!!!!」」」」

 

 

 

火竜に全身を包まれ、聖光により両断。

 

 

「伝説は」「今!!」「進化する・・・!」「なんつってぇん☆」

「ケッ、締まんねぇこと言ってんなァ!?」

「なら、あなたはしっかり締めてくれる?」

「ア"ァ?、・・・・・・・・・ったく!

不屈の獅子!!、バンチョーレオモン!!

これで文句ねぇなァ!?」

「!、うんッ、うん!!、とっても素敵!

ばなナイス♪」

 

 

〔「消したいと、止めたいと言いながらも

あなた方もまたキラめきを求めていた

私や他のあなた方と同じように

 

 

わかります」〕

 

 

『〔・・・・・・・・・ーーーーーー!!?〕』

 

 

「「《フラッシュ!!バンチョーパンチ!!

 

 

重音!!!》オラァアアアアアア!!!」」

 

 

追い討ちの指摘に絶句していると

 

重なり合う雄叫びと共に気合いの入った

 

2つの拳が刻みつけられた。

 

 

〔あ、り、えな!〕〔我々にはキラめき等『不要!!!、故に削除する!!!〕』

『〔全ては我々レイド帝国の為に!!!〕』

〔「そうですか・・・

では、何故あなた方は今、そんなにも

 

 

キラめいているのでしょうね?」〕

 

 

『〔      !"?      〕』

 

 

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

 

 

舞台上で輝き始めた新たな電脳生命体は

 

魔方陣の中心で聖剣をつがえる弓が

 

自分に向けられていることに気づかない。

 

 

「「《デジタライズ・オブ・ソウルッッ

 

 

Know The Stars!!》」」

 

 

過ぎ去った時間を幾度となく繰り返して

 

産み出された流星雨にただ晒されるのみ。

 

 

〔あ〕〔ああ!!〕〔何故!?〕〔わ、われわれは〕〔違う!!!〕〔うそだ!!!〕

〔こんなこと!!!〕〔あってはならないぃいいい!!!〕

〔「我慢出来なかったのでしょう?

自分達の端末となるデジモン越しや画面越し

それどころか、観客側でも満足出来なかった

 

 

だから、あなた方は今そうして立っている

 

 

この決別のレヴューに!!」〕

 

 

〔バラけ〕〔る?〕〔我が?〕〔我々では〕

〔なく〕〔なって〕〔いる・・・?〕

 

 

空間全てを埋め尽くすディスプレイ

 

そこにはもう『顔』はひとつも映っていない

 

 

「《クレセントハーケンッ」〕

「戯曲 Odette the Moonlit」

「あんたの独擅場でも私は負けないッ

天堂真矢!! 」

「ウチだってお前には絶対の絶対に絶対絶対負けねえジャ 」

〔「き・さ・ま・ら・はーーーーーー!!!

本っ当に好き放題が過ぎるのデシテ!

 

 

なので、ワタクシも好きにやらせて貰う!

 

 

今宵の主演は」「誰にも渡しません」

 

 

唯一残された統合されし意思が立ち尽くす中

 

 

「「「「

 

 

PlUUUUUUuuuuuuuuuuus!!!!!》

 

 

                 」」」」

 

 

氷よりも冷たくて炎よりも熱い

 

高みへと挑み続ける4つの独擅場が開演。

 

 

〔「だからこそ、あなた方は私とは違う

 

 

私は所詮、運命の舞台の主催者に過ぎない

 

 

そう、ここまで舞台少女達を導いてきた

 

 

【彼女】と同じように」〕

 

 

〔麗将〕〔ロゼモン〕〔まさか〕〔奴が〕

〔数刻前〕〔全メモリーを〕〔我々に〕〔譲渡〕〔した〕〔のは・・・・・・・・・?〕

 

 

〔「何故、【彼女】が

 

 

あなた方の元へと下ったのか

 

 

やっと、わかりましたか?」〕

 

 

 

「「「「《究!、極ーーー!!!!」」」」

 

 

 

〔      ぁ      〕

 

 

 

舞台少女達がパートナーと共に造るキラめき

 

 

ソレが意思のひとつひとつに浸透し

 

 

最早崩壊寸前の群衆の頭上に掲げられるのは

 

 

捻れた棘が幾重にも備わる搭が如き

 

 

 

「「「「螺旋!!!」」」」

 

 

 

〔れ、は

 

 

 

      ほしのひかり?      〕

 

 

 

超   超   巨   大   剣。

 

 

 

 

「「「「王!   竜!

 

 

 

けぇええーーーーーーん!!!!》」」」」

 

 

 

 

ふたりでひとつの運命とそれらに囚われた獣達

 

 

2人と2体が結んだ約束が

 

 

今、廻り廻りながら突き立てられる

 

 

9人と9体が紡いできた物語の終幕

 

 

 

決別の標として。

 

 

 

 

 

          きれいだな

 

すごいな

 

 

              かっこいいな

 

 

                   〕

 

 

 

その切っ先に貫かれたレイド帝国と呼ばれた

 

 

壁を越えて侵略する強大なる脅威は

 

 

人々が廃棄してきた意思の集合体は・・・

 

 

 

 

我々も、われも、    も

 

 

 

あんな   に   キラめき  たい!

 

 

 

スタァに!!!   なり、たい!!!

 

 

 

なれる、かな   ?   なれるよな?〕

 

 

 

スタァライト、されたのであった。

 

 

 

『ポジション・・・!   ゼロ・・・!』

 

 

 

9人と9体の周囲で

 

 

デジタルワールドを蝕んでいた侵略者達が

 

 

一斉に弾けて消えていく時に聞こえる音は

 

 

まるで    万雷の拍手のようだった。

 

 

〔「決別のレヴュー、終了です

 

 

これを持ちまして全公演は完遂されました

 

 

では皆さん、最後の幕引きを

 

 

どうすればいいかは、わかりますね?」〕

 

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

 

キリンの声に導かれ、舞台少女達が触れるのは

 

手首に固定されたデジモン達との繋がり。

 

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

 

彼女達自身では決して外せなかった筈のソレが

 

 

目の前で簡単に外されていく光景を

 

 

黙って見守り、その時が訪れるのを待つ

 

 

自分達、パートナーとの別れを。

 

 

 

 




※レイド帝国の正体
データの海に大量投棄されたゴミ(削除されてきたデータ)による汚染物質が根を通じて世界樹(デジタルワールド)に悪影響を与えつつ独自の意思を持つようになったモン


いうなれば電脳世界の群衆
故に、同じく壁を越えて干渉出来る存在でも


キリンには勝てない
枝葉ごと反芻されるだけである



そして、何より



様々な理由の元で廃棄されてきた意思達が侵略というひとつの目的の元に統一されているので
その中のどれかが別の何かに惹かれ、離れてしまうと結合がほどけて即座に弱体化してしまう


舞台少女のキラめきがレイドプログラムに有効なのはこの為







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終幕 エピローグは画面の向こう側で

聖翔音楽学園99期生によるデジタルワールドでの冒険、これにて完結


 

「ほら、はよ受け取って」

「ふぇ?」

 

 

9つの神機の中でまず最初にパートナーへと突き出されたのは桜色。

 

「なぁにチンタラしてはるのー?

そんなんでデジタルワールド最速ー、なんて

よぉ言えますなぁー?」

「・・・・・・・・・カオルコ」

「はぁーあ!、これでもうあんたはんの御世話せんで済むかと思うとほんまに清々しま

 

 

いひゃいいひゃいひゃいいひゃいん!!?」

 

 

「話する気あるなら顔ぐらいちゃんと合わせるデス

というか、誰が誰のお世話したデスか?

ブイ、きみの世話した覚えはあっても

きみに世話された覚えはこれっぽちも無いデスけどー?」

「ぅむ"むむううううー~ー~ー~!!!」

「いやぁー、それにしても思ってた以上によぉく伸びるデ

 

 

いたいいたいいたいデスぅうううう!!?」

 

 

香子の頬っぺを引っ張っていたアルフォースブイドラモンを突如襲ったのは足の爪と爪の間を抉る水仙花がもたらす底意地の悪い痛み。

 

「ふん!!、ジゴージトク!!、どす!!

はぁーーー!!、あいたたたたたた!!

んもぉぅ!、乙女の顔をぞんざいに扱って!

その上!、これしきのことで一々一々ギャーギャーみっともなく大騒ぎして!

あんたはんみたいな情けない青瓢箪が聖騎士なんて!、ほんまないわぁー!」

「言ったなコンニャロー!!!

だったら!、ブイ!、なる!、デスよ!!

 

 

立派な聖騎士に!、きみがッ、居なくても!

 

 

だから!!!、・・・・・・・・・だ、からッ

 

 

か、カオルコも!、セーゼーがんばれ!、デス!

 

 

前よりも、もっと良い御褒美、期待!!

 

 

してる、から・・・!」

 

 

声と同じぐらいに震える手首に神機が引き寄せられ、Vブレスレットのすぐ側に収まれば

 

 

「・・・・・・・・・誰に向かって言うてはるのやら

 

 

はぁーーー!!、ほんまにいったいわぁ!!

 

 

いたくて・・・・・・なみだ・・・とまら 」

 

 

花吹雪を思わせる粒子がフワリと舞い上がり

 

 

花柳香子   退場。

 

 

「ったく、あいつらは・・・」

「フタバ!!」

「うお!?、い、いきなり何だよッ?」

 

その直後、竜の衣装を纏う舞台少女が焔翼に包まれた。

 

「こればかりは本当にすまない!!

だけど!、それでもオレは!、オレは!!

君の涙は見たくないんだ!!」

「・・・・・・・・・お前、これだと濡れるぞ?」

 

 

「構わない!!!」

 

 

「は、ははっ!

それ、最初に会った時も言ってくれたっけか

 

 

なぁ、相棒」「なんだ?、相棒」

 

 

「後悔、してないか?」

「・・・・・・・・・したさ、何度も

 

でも、それでもフタバと出会えて

 

そして、こうしてちゃんと別れを言えるのが

 

すごく、うれしい

 

 

なのに、いまオレは すごくさびしいんだ」

 

 

「ッ、・・・・・・・・・ごめんなフレイモン

それでもあたし 」

「謝るのは無し、だ

わかってるよフタバ、オレは知ってるから

君がカオルコを待たせる事が出来ないのは

わかって、るのに、どうしようもないんだ、オレ」

「・・・・・・・・・知ってるよ、あたしだって

お前のことはわかってるから」

 

全力で自分を抑え込むパートナーから双葉は抜け出し爪先へと手を伸ばす。

他ならぬ、エンシェントグレイモンから授けられた力を使って。

 

「だから、お前がこれからも頑張れるように

そんなお前に負けないぐらいあたしも頑張れるように!

 

 

これは!、その誓いの証だ!」

「!、・・・・・・・・・ああ!!!」

 

 

熱く真っ直ぐな想いと共に神機を返却すれば衣装から竜の要素が徐々に失われていって

 

 

「次があるかは、わかんねーけどさ・・・

 

 

その時はまたよろしくな、相棒 」

 

 

燃え尽きる寸前に紫炎の火の粉を散らしながら

 

 

石動双葉   退場。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「いつもはお喋りなのに、こういう時は何も言ってくれない

ううん、言えないんだよねあなたは

私のパートナーは」

「!、・・・ッ・・・・・・・・ぇ・・・・・・・ん!」

 

『火』に続こうと伸ばした『光』の指に触れるのは優しい温もり。

 

「無理しなくていいんだよ、飾らなくていいんだよ

 

 

だから、聞かせて あなたの本当の気持ち」

 

 

「・・・・・・・・・!!、ゥゥ・・・・・・・・・ッ」

 

まひるは今

今、だけは自分だけを見ててくれている

それがわかっていてもエンシェントガルルモンの口からはか細い鳴き声しか出てこないし

 

 

この大きな体では、握り返す事は出来ない。

 

 

「大好きだよ、ストラビモン」

「マ、ヒル・・・ぅ・・・・・・」

 

 

そんなパートナーの気持ちを舞台少女は表現する

 

ストレートな言葉と光速で飛び込む抱擁で。

 

「オ、レも・・・・・・・・・・・・

 

 

でも、それでも、さ

 

 

キラめく舞台でキラめくみんなと一緒の

 

 

マヒルは!、もっと好き!、だから・・・ッ」

 

 

やっと振り絞れたホンネとやっと返せたホンキ

 

 

「ありがとう」

 

 

それをちゃんと受け止めた後、神機を爪先に巻き付ければ彼女の衣装から狼の要素が抜け落ちて

 

 

「いっ、て・・・・・・・・・ラッ!、シャーイ☆」

「ふふ!、いってきます☆ 」

 

 

緑光に照らされた朗らかな笑みを浮かべながら

 

 

露崎まひる   退場。

 

 

「うん、そうだ、そうだよね、うん・・・

ジュンナ、君もこんな時だからって無理に言葉を選ばなくていい 」

 

 

「それなら言わせて貰うわねアルファモン

 

あなた、ちゃんと自分の部屋は自分で整理整頓しなさいよ?

 

それと!、見知った相手だけじゃなくて他のデジモンとも普通に接すること!

 

 

無駄に威圧的な言動とか絶対に駄目!!」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・う"ん"っ!!?」

 

何か思ってたのと違ったので電脳世界の抑止力

 

フリーズ。

 

「それから、これからはアルフォースブイドラモンのこと青瓢箪なんて呼ばないの!

ブイモンの時ならまだしもあの姿にその言葉は相応しくないから!

というか、あなた意味わかって使ってたの?

大方、花柳さんに便乗して呼んでただけなんじゃないの?」

「う、うん・・・おっしゃるとおり・・・」

「後はそうね

 

 

もうボッチ、なんて呼ばれこと、かしら?」

 

 

「!」

 

 

「孤高であることと、孤独であることは違う

 

 

だから、あなたはアルファモンになっても

 

 

もう、独りぼっちなんかじゃないんだから」

 

 

「・・・・・・・・・結局、君はいつもそうやって

 

 

ボクが欲しい言葉をくれるんだよね、うん」

 

 

お説教の中に隠された純那の想いを感じ入りながら、アルファモンはマントの裏地と同じ色をした神機を掴み手首に装着する

 

 

手放す為に。

 

 

「掴んでみせてよジュンナ

 

 

自分星【ボクのスタァ】」

 

 

「ええ!、勿論!、掴んでみせます 」

 

 

願いを乗せる流れ星のように水色が瞬き

 

 

星見純那   退場。

 

 

「はい、バンチョーレオモン」

「アァ?、テメェなァにやってんだァ?」

「何って、あなたが脱ぎ捨てたGAKU-RAN拾ってきたの」

「だァかァらァ、ったく!」

「!?、ま、待って・・・まってたらぁ!!」

「うるせぇ!!、とっとと寄越しなァ!!」

 

百獣番長は強引に奪い取らんとする

 

舞台少女が涙目で守る黒の学生服と

 

その下に隠された黄色い神機を。

 

「だって!、まだ!、まだ私!、わたし!!

 

 

あなたになにも 」

 

 

「知るかァーーーーーーーーー!!!!!

 

 

簡単に楽になろうとしてんじゃねぇ!!

 

テメェで勝手に苦しんで後悔してなァ!!

 

人間界に戻っても!!、何度でもなァ!!」

 

「・・・・・・・・・それだと

 

 

わたし忘れないよ?

 

 

口だけは乱暴で本当は優しいあなたのこと」

 

 

「ケッ!、よく言うぜ

忘れる気なんざァこれっっっぽっちもねぇだろうがァ

ったく、ほんとにめんどくせぇなァー」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ごめんね」

 

度重なる罵詈雑言により俯いていたななは漸くバンチョーレオモンの顔を見上げられた

 

 

そこに深々と刻まれた十字傷と向き合えた。

 

 

「あなたも、わすれないで、わたしのこと」

「そいつァどうだろうなァ・・・

顔でも見なくちゃすぐ忘れるかも、なァ!」

「ッ!」

 

その隙を見逃さず、乱暴モンの獅子は強引に彼女のモノも自分のモノも自分のモノにしてしまう。

 

 

「それ、なら!、思い出して貰えるよね!?

 

 

その顔を見る度に、何度でも!! 」

 

 

わがままな、子供っぽい泣き顔を見せながら

 

 

大場なな   退場。

 

 

 

 

ケッ、クソッタレがァ

 

 

見えねぇ癖して出てきてんじゃねえよ・・・」

 

 

甘い果実が連想させる粒子を見送る右目

 

そのすぐ隣で流れたのは、一筋の 。

 

 

 

「しゃあ!、どっからでもかかってこい!

 

クロ公!!」

 

一方、闘争の神は宿敵たる舞台少女の目の前で何故か無防備な姿を晒す。

 

「・・・・・・・・・一応聞かせてマルスモン

あなた、何がやりたいの?」

「決まってんジャン!!

 

これが最後の大一番なんだから!

 

まず、お前の本気をくらって!

 

 

ウチが本気でやり返してお前に勝つ!!!」

 

 

「あっ、そ

 

 

それなら、もう少し屈んでくれない?」

 

 

「お!、顔面か!?、顔面狙いだな!

ウチお前の攻撃はもう全部見たかんな!

どんなモンきたって耐えてやり返してやる

 

 

      し

 

 

           ゃ?      」

           ‎

 

「西條さんったら・・・」

「挨拶にしては贅沢が過ぎるのデシテ・・・」

 

クロディーヌが放った【必勝の一撃】。

ソレの前では、マルスモンの鍛え抜かれた肉体なんて全くの無意味でしかなかった。

 

 

「??、?!?っ?、???ッ??、?!?

 

 

!、あぁああああーーーーーー!!??」

 

 

アホ面丸出しで硬直している間に神機が取り付けられてしまい

 

 

「ふふふっ!

 

 

Au voir・・・・・・・・・Ma pote 」

 

 

「まままままてよクロこぉーーーーーー!」

 

 

そのまま、勝ち誇った笑みが崩されることはなく

 

 

次席・西條クロディーヌ   退場。

 

 

「クロ公のアホーーー!

ウチ勝ち逃げすんなっつったジャン!?

戻ってこいコラーーー!、ちくしょーーー!

絶対の絶対お前に絶対絶対勝つかんなぁ!

 

 

おぼえとけよぉーーー・・・・・・・・・!!!」

 

 

虚空に残る彼女の痕跡を滅多矢鱈に掴もうとしてもオレンジの粒子は零れて消えるだけ

 

 

だから、この負けず嫌いな脳筋な神様は

 

 

拳と共に変わらぬ挑戦を掲げるのであった。

 

 

「はぁー、前々から思っていたがあのアホには

クロディーヌのような良い女は心底勿体無いのデシテ」

「では、あの日あの時あの山に現れたのが

パートナーとなるのが西條さんの方が良かったのですか?」

「だ・と・し・た・らー?、なんデシテ?」

「・・・・・・・・・Méchante va」

「フン!

安心しろ、貴様には負けるのデシテ」

 

どういう訳か、月光の神とトップスタァの間に剣呑な雰囲気が流れ出す。

 

「心外ですね、私はあなたのことを連れ帰りたい程に想っているというのに・・・」

「何サラッと恐ろしいことをぬかしているのデシテ!!?

まったく!、最早幕は降りているというのに

いつまでその役にしがみついているつもりだ?」

「それは勿論

 

 

この世界で一番の、私のファンが居る限り」

 

 

「・・・・・・・・・本当にそういう所では

 

 

ワタクシは一生貴様には勝てないのだろうな

 

 

テンドー」「でしょうね、ディアナモン」

 

 

ディアナモンは再び光源を失う寂しさを感じさせない美麗な仕草で腕を差し出し

真矢はソレを察している事を悟られぬように気取った動作で白い手首に神機を授ける

 

 

さながら、ふたりだけの舞台を演じるように。

 

 

「ではな【共演者】、願わくば次の機会を」

 

「はい、楽しみに待っています 」

 

 

大きく羽を広げ、飛び立つ白鳥のように

 

 

主席・天堂真矢   退場。

 

 

「ヒー・・・」

「ラセンモン・・・・・・・・・ううん、エリスモン」

 

捻れた棘を背負う凛々しい風貌の獣人が滲んだ視界に映すのは

唯一無二【0と1のイチ】の存在理由。

 

「エーはヒーのスタァになれた?」

「ええ、あなたはデジタルワールドでの

 

 

私のスタァになれた、なってくれた

 

 

私のせいで消えてしまったのに

 

 

生まれ変わっても、また会いに来てくれた

 

 

だから、今度もきっと 私達は巡り会える」

 

 

「なら、エー   なか、なぁーーー!!!

 

 

ヴゥウウーーー!!、ヴァアーーー!!!」

 

 

「・・・・・・・・・ッ!・・・・・・!!」

 

 

いつか訪れるとわかっていた別れを目前にして、堪えきれなくなったラセンモンはひかりを力一杯に抱き締めてしまう。

 

「ご、めーーー!!

ヒー!!、ごめーーーーー!!!!!」

「謝るのは、私のほう!

ごめんね、エリスモン、ごめんね・・・!

いっしょに、いられなくてごめんね・・・!」

「やーーーーーーーーー!!!!!!!!!

ヒー!、あやまるの、メーーー!!

 

 

だって!、エーが一番大好きなヒーは!

 

 

キラキラでピカピカで! スタァライト!!

 

 

してるヒー、だから、だからーーー・・・!

 

 

ヴァア"ア"アァーーーーーー!!!!!!」

 

 

「えりす、も」

 

 

目に涙をいっぱい溜めながらブレードの備わる豪腕を振るい、舞台少女から摘み取るのは

 

 

青と金の神機。

 

 

「またねー   ヒー   約束、だよ?」

 

 

「違うよ   エリスモン   運命だよ」

 

 

生まれたての運命の確かな成長を見届けながら

 

 

神楽ひかり   退場

 

 

〔「   華恋、待ってるから   」〕

 

 

「      うん      」

 

 

する寸前

 

青い光の残滓が赤い華をすり抜けていった。

 

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

 

これで、電脳空間に存在する人間は

 

舞台少女は 愛城華恋ただ1人。

 

「あ、あれ?、あれれぇーー!?」

「ぬ?」

「どうしよー・・・言いたいこと

いっぱい、いーっぱい考えてたのに!

台詞、全部とんじゃったぁー・・・」

「ぬぅ、それはのんのんで御座るなー

そのような体たらくではデジタルワールドは救えても

スタァライトは出来ぬかもしれぬぞ?」

「で、できるよぉ!!、するよぉ!!」

「ならばこの物語、拙者の英雄譚

御主の手で締め括って貰わねばな」

「ッ、そう、なんだよね・・・!

リュー君、その為にずっと頑張ってたん、だからぁ・・・!」

「大言壮語なトカゲ野郎の夢物語で御座るよ

 

 

それを何一つ疑わずに信じ、体を張り

 

 

生命すらも賭して演じてくれた舞台少女

 

 

愛城華恋殿」

 

 

オウリュウモンは彼女によって与えられた

 

規格外の体躯で平服し

 

 

「拙者は御主のキラめきにより身も心も

 

 

すたぁらいと   されたので御座る

 

 

故に!!!」

 

 

「!?」

 

 

「すたぁらいとより煌めかんとする!!!

 

 

拙者の武勇伝!!、未だ道半ばにて候!!」

 

 

切っ先を突きつけるような勢いで

 

爪先を差し出した。

 

 

「御主によって得られたこの身体と!

 

御主によって得られた救世主の称号!

 

それらに見合った器となるべく!

 

拙者は御主から離れねばならない!

 

 

でなければ!、必ず別れる悲劇の結末・・・!

 

 

その先をも造り出した御主とひかり殿に

 

 

拙者の武勇伝が及ぶことはないのだからッ」

 

 

「あ・・・・・・・・・」

 

 

「御主とひかり殿のすたぁらいとより煌めく

 

 

世界を救うという大義以上の武勇伝!!!

 

 

それを拙者がこの先この手で造る為にも

 

 

御主と交わした約束を果たす為にも

 

 

手伝ってはくれぬか?、華恋」

 

 

 

         それって

 

 

すっ   ごく!!

 

 

ぐっどぐっど!!、だよ!!、リュー君!!

 

 

私!、それ観たい!、みたいッ、から・・・!

 

 

絶対!、観に!、いくから・・・ぁ・・・!!!

 

 

 

      舞台で 待ってて      」

 

 

 

 

          ッ

 

 

あ"い"ぃ!!   わ"がっだぁ"あ"!!!

 

 

 

ぅ"ぐぅううううううっっっ!!!!!!」

 

 

   

そこに栄光の象徴たる赤と金の神機が留めて

 

 

背筋を伸ばして、胸を張って、唇結んで

 

 

愛城華恋   退場。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー!!? !!?!!!ーーーー!?

ーー?!!ーーーー?"ーーー!?!"

!!ーー?!!!ーー???!????!!

 

 

 

9人の舞台少女が惜しまれながらステージから去った直後

 

彼女達の舞台であったデジタルワールドが

 

世界樹が、悲鳴を上げ出した。

 

「アッハッハァ☆、さっすがはレイド帝国

侵略すること火の如しってカンジィ☆」

「いやいや!、この速さは火というよりも!

光の如しという他ないな!」

 

 

 

!!?" 

~~~~~ーーーー???!?"???"!!

 

 

 

「え?、嫌だって?、助けろって?

そう言って泣き叫んでたディアナモンに

お前何したジャン?、何もしなかったろ?」

「まったくデシテ

アレが相手ではグレイスノヴァモン等ただのデカい的でしかないというのに・・・

危うくワタクシは無駄に消える所だったな」

 

 

 

ー?!!ーー!!!!~~~~~~ッ

 

 

 

「なぁ、世界樹・・・

俺が何の為にお前の守護を司っていたのか

ブイには!、やっとわかった!、デスッ!」

「彼女達の舞台となる世界と

彼女達の観客となる生命達を護る

それが、ボクが掴んだ自分の役だったんだよ

うん」

 

 

 

!!?? ・・・・・・・・・ー!!!

 

 

 

「アァ?、テメェの手を離れたらァ

これからの世界がどうなるかァだと?

んなことはァ、オレサマにはァ

 

 

 

これっっっぽっちも関係ねぇなァ!!!」

 

 

 

!"  !!ーーーーーーーーー??

 

 

 

「ヒーともう一度会う約束をしたのは

エーの運命はヒーだけだ、お前じゃない」

 

 

 

!?   ・・・!・・・・・・・・・・・・ !

 

 

 

「世界樹よ、デジタルワールドよ

拙者達デジモン全ての故郷よ

自分が変わることをどうか恐れるな

舞台少女が日々進化中であるように

御主も、そこに生きる拙者達も

 

 

 

いつまでも同じでは居られないのだから」

 

 

 

〔「それがあなた方の『決別』ですか

 

 

わかります」〕

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

〔「何故、私が

 

 

二度も舞台少女をあなたの元へ届けたのか

 

 

わからない?   わかります

 

 

ですが、その理由は・・・

 

 

更なるキラめきを観たいと、感じたいと

 

 

運命の舞台となりたいという多くの意思を

 

 

自分では拒むことが出来ないあなたならば

 

 

自ずと      わかる筈では?〕」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

徐々に、世界からの声は薄れてゆく

 

 

だが、消える訳ではない

 

 

何故なら、このデジタルワールドもまた

 

 

彼女達の   大きな舞台だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

DIGITALWORLD

 

 

 

 

 

        RE LIVE!!

        ‎

 

 

 

 

SHOW MUST GO ON!!

 

 

 

 

 

 

 

「うわわぁああああああああ~~~~~~~

 

 

ぁあああああ~~~~~~!!!???」

 

 

 

電脳と現実を繋ぐ回廊

 

 

そこを落ちて、落ちて、落ちていった先で

 

 

華恋を待ち受けていたのは・・・

 

 

「華恋!!!」「ひかりちゃん!!!」

 

 

勿論、ひかり。

 

 

「おっ、とっとっととおお!!?、とッ!」

「着地の姿勢が悪い!

後!、変な声出さない!」

「でも、倒れないでちゃんと持ち直せたから

うーーーん、20点ぐらい?」

「ええーー!?、じゅんじゅんもばななもきびしいよぉ!!」

「何言ってんの、1つの舞台が終わったからって気を抜いてたら」

「主役の座、奪い返されても知りませんよ?

愛城さん」

「クロはんも天堂はんもそないなこと言って

ほんまは、パートナーと別れて寂しいんとちゃいますぅ~?」

「よく言うぜ、泣き出す寸前だったからいの一番に神機突っ返した癖に・・・」

「あ、それで香子ちゃん・・・

私が戻ってきた時、双葉ちゃんと抱き合 」

「双葉はんも!、まひるはんも!

言わんでもええこと言うの!、移ったんと!、ちゃいますぅうううううう!?」

「花柳さんもブイモンみたいになってる・・・

?、華恋

 

 

あ」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

自分達以外は誰も居ない放課後の教室

 

そこで8人に出迎えられた彼女の手には

 

赤い花弁の細工が取れかけた

 

黒い神機の残骸が乗せられていた。

 

「渡せるかな?、お婆ちゃんのパートナーに」

「きっと渡せる、きっと会える

彼女が舞台少女だったのなら必ず

でも、その前に」

「・・・・・・・・・うん!、私達みんなで!

 

 

 

スタァライト!!!、しちゃいます!!!」

 

 

 

高らかな宣言を届けるのは

 

 

自分の顔が映し出されたスマホのディスプレイ

 

 

その向こう側にある世界と

 

 

 

そこに生きる愛すべき生命達。

 

 

 

 

 

 

 

 






これは9人の舞台少女が魅せた夢幻のあとの




「ディアナモン様!、また旧外界から難民が押し寄せて来ました!」
「このままでは食料も資材も尽きてしまいます!」
「物資は酒豪のバッカスモンと鍛冶のウルカヌスモンからアホを使って強制徴収する!
それより!、前に報告があった不穏な一団についてはどうなったのデシテ!?」
「はっ!、ディアナモン様の指示通り
縛りをつけたメルクリモン様の足にて現場へと急行なされたウェヌスモン様によって全面降伏したとのことです!」
「ディアナモンさまぁあああ!!
あ、あの!、天堂教教祖を名乗るモンから等身大純金製慈母像の検分を求むとの嘆願が!!、どうしましょう!!?」
「ソレのチェックは一昼夜で終わるモンではない!、全て片付けてから行くと返信しろ!


だ・い・た・い!!
主神の奴めは何をしているのデシテー!?
お陰でワタクシてんてこ舞ーーーい!!!」


「そ、その・・・ユノモン様と共に・・・」
「救世主様の旅路を巡る聖地巡礼へと・・・」
「ア"ァァーーーーーーーーッッッ!!!」
「あ、ディアナモン今暇ジャン?
暇ならウチと組手 」
「《くれっせんとはーけーーん!!!》」
「うお!?、不意討ちか!?、負けねぇぞ!」
「いいからタコとウワバミから諸々奪ってこい!!
貴様ならば奴らが相手でも問題ないだろう!?」
「お、おう!、余裕ジャン!」




歯車が回り始めた物語




『アルフォースブイドラモン先生!!
今日もよろしくお願いします!!』
「ふ、いいデ・・・・・・・・・いい!、だろう!
ブイに、ん!、ん"ん"!!
このアルフォースブイドラモンにしっかりと最後までついてくムがいいッ!!」
「ねぇねぇー、アルファモーン
ぼくたち聖騎士になれるかなー?」
「うん、そうだね
決して諦めずに努力を続けていれば
きっと掴める筈さ、君達の自分星が」
「そっかー!、いっしょにがんばろー!
ガブモン!」「もちろんだ!、アグモン!」
「ギルモンもー!、ギルモンもがんばるぅー!」
「・・・・・・・・・うん」




今、夢見るコトで明日を貫いて




「百獣番長覚ゴフッ!?」
「ケッ!、ゴチャゴチャうるっせぇなァ!
能書きたれる垂れる前にかかってきなァ!
全部纏めてこのオレサマが相手してやらァ!



何度でもなァ!!!」




困難を飛び越えた先にある未来を生きて




「いやぁ☆困ったねぇん☆
世界が丸っと再生産されたせいでオジサンのマップてぇんで使えモンになんないやぁ☆」
「だったら!、他の器探し!
気合い入れて!、しらみ潰しでやるしかない!」
「だねぇん☆、隅々まで回って回って見つけてやんないと☆
・・・・・・・・・特に、あの日の怨嗟を押し付けた
闇のを、さ」
「ああ、オレ達ばかりが救われては
不公平だからな」




過去の傷を背負い、旅の続きを行く




「こうして、フローラはもう一度塔に登って
クレールを取り戻したのでした・・・」
『わーーー!!、よかったーーー!!』
「ラセンモンラセンモン!!
ラセンモンはめがみたちやフローラ
クレールにあったことがあるの?」
「あるよ、とってもキラキラでピカピカな女神やフローラよりももっと
もーーーーーーっと!、光輝くエーのクレールに」





どんなに離れていても





「ここが新しいはじまりの街かー!」
「何でも世界を救った英雄様がガキの面倒みてるって話だけどよぉー?」
「へっへっへっ!、討ち取って名を上げるにはうってつけだぁ!」
「究極体つってもガキの1匹でも盾にしちまえばこっちのモン 」


〔「あいや!!! 待たれよ!!!」〕


「な!?、足元から声が!!」
「地面が揺れてッ、こ、これってまさか 」
「本日のすたぁらいとは仕舞いにて候・・・
上映時以外の入場はのんのん、で御座る!」
『ひ!!、ひいいいいい!!?
お、おたすけぇええええぇええ!!!』




また めぐり逢える舞台を



約束【標】を信じて









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ダソク




これは



電脳世界での冒険を終えた99期生達による


第百回聖翔祭『新訳スタァライト』を


越えた先に待ち受ける大きな嵐


それすらも過去の物となった未来の話。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


黒を纏うかつてのクレールが掌に乗せるのは今代のフローラより手渡された、腕時計に似た機械の残骸。


その塗装は殆ど剥げ落ちていて、ヒビだらけで

バンドは今に千切れそうで・・・



〔「いつか、あんたのその澄ました面!


おっどろかせて!、ハナを明かしてやるよ!


        サイダー!!!」〕



あの子と共演した証である赤い花弁に至っては


もう、1枚しか残ってなかった。


「最後まで名前を呼んでくれなかったのは


あなたもだったじゃないですか



         フローラモン



サイダー、じゃ・・・   ありませんよ・・・


私の、名前は








 

 

 

 

 

 

 

 

※これより先は本当の蛇足

 

 

聖翔音楽学園99期生達に

 

スタァライトされたラスボスが

 

その後どうなったのか・・・・・・・・・

 

気になった方だけ御覧下さい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デジタルワールド全土を侵略せんと

 

 

暴虐の限りを尽くしたレイド帝国は

 

 

人々が電脳空間に廃棄してきた意思の集合体は

 

 

9人の救世主とそのパートナー達9体により

 

 

再生産された結果、大きく形を変えて

 

 

崩壊寸前だったこの世界を存続させていた。

 

 

あるモノは舞台の一部となり

 

 

あるモノは観客の一部となり

 

 

そして

 

 

自らがキラめきたいと願ったモノは・・・。

 

 

 

「Hey!、待たせたなオーディエンス!

今日はこの俺!、シャウトモンのライブに

よく集まってくれたな!!」

「センキュッ!!!」『Yeeeeeah!!!』

「キューーー♪」

「行くぜ!、最初のナンバー 」

「お前ら、こんな所で何やってんだ・・・?」

〔フガッ、探シタゾ〕

 

 

「って!!、良い所で水差すなよぉ~

折角暖まってきたオーディエンスが冷めちまうだろ!?」

 

 

「安心しろ、そんなモンはどこにも居ない」

 

 

何もない荒野にてスタンドマイクを振り回し大声で喚き散らす赤き小竜型デジモン

名を、シャウトモンという。

 

〔シャウトモン、リリモンガ呼ンデタゾ〕

「おっと!、なら早く戻らなくっちゃな兄貴!」

『カンバック!、カンバック!』

「ぐぎっぎぎぎ・・・わぁったよ、ちぇー」

 

不貞腐れるシャウトモンにつきまとうのは

スピーカーが内蔵されたカブトムシ型のロボット・バリスタモンとスターモンという星形デジモンを中心とした小型デジモンの軍団・スターモンズ。

いずれもこの付近にある微笑みの里のデジモン達だ。

 

「ほら乗れ、キュートモン」

「キュ!、わかったキュ、ドルルモン!」

 

ウサギのような愛らしい妖精・キュートモンをオレンジ色をした豊かな鬣に乗せてシャウトモン達を先導しているのは

尻尾がドリルな狼・ドルルモン。

 

「ってかさぁ~、お前ら本当に行っちまうのか~・・・?

いいじゃねぇか!、もうちょっとぐらい里に居たってよぉ!」

「この辺りにキュートモンの一族の痕跡が無い以上は俺達が微笑みの里に留まる理由はないからな」

「シャウトモン、ごめんなさいキュー・・・」

「キュートモン共々感謝はしているが

それでも、俺の目的はレイド帝国のせいで行方がわからなくなったこいつの家族を探すことだ」

「レイド帝国、ね・・・

へっ!、俺が産まれる前にやられちまうなんて根性のねぇ野郎共だ」

「お前みたいな騒がしいモンがあの時代に居たら

あっという間に狩られていただろうよ・・・」

「にゃあにぃおおお~~~~~~!?

ぐぇっ!!?」

「隙だらけだぞシャウトモン

そうやって喚いて、さっきのように遊んでる暇があるなら少しでも鍛えることだな

 

 

でないと、微笑みの里は守れないぞ?」

 

 

大異変

 

 

レイド帝国が救世主により打倒された直後に発生したソレにより、枝葉のように別れていた下界や根幹たる天界が全て統合され

 

 

デジタルワールドは一つの大きな世界となった

 

 

その際にどういう訳か怪我や病気、はたまた寿命等で瀕死だった筈のデジモン達全てが回復

 

 

新たな世界で生きる力を取り戻したのだ。

 

 

強大なる侵略者が消え去り

 

 

多くのデジモンが戦う術を得た結果

 

 

新世界にて巻き起こったのは 群雄割拠。

 

 

デジタルワールドの次の支配者を狙う野心持つデジモン達により世は乱れ、微笑みの里のような穏やかなデジモン達の集落を狙うモンは後を絶たない。

だからこそ、成熟期とは思えない程の実力者なドルルモンや希少な回復能力を持つキュートモンの存在は心強かったのだ。

 

「遊びじゃあ!、ねぇえ!

アレは予行練習だ!

この俺がデジタルワールドの覇者に

 

 

デジモンキングになった時!!!

 

 

この何もねぇ荒野をオーディエンスで埋め尽くしてよぉ!

俺の魂のロックを響かせて・・・

 

 

世界中をドハッピーに盛り上げんだ!!

 

 

争いなんざ考える暇もないくらいに!!!」

 

 

「・・・・・・・・・またソレか」

「なんだよぉ~ノリ悪ぃなドルルモンは

だってキングだぜ?、王様だぜ?

産まれてきたんならいっぺんは憧れるモンだろ?

あ!、もしかしたらレイド帝国が帝国なんて名乗ってたのもそれが理由かもしんねぇな!」

「んなワケあるかぁーーー!!!」

 

 

〔「

 

 

      ぁ    る    よ 」〕

 

 

 

「!、なんだ?」

 

 

〔シャウトモン?、ドウシタ?〕『兄貴?』

「い、今何か声がしなかったかッ!?」

「キュー?、ぼくには何も聞こえなかったっキュ」

「キュートモンの言う通り

この辺りに俺達以外の気配は居ない、お前の空耳だ」

「そ、そうか 」

 

 

 

〔「あ、る・・・!、ある・・・!!」〕

 

 

 

「!、やっぱりだ!、空耳なんかじゃねぇ!

おい!、誰だお前!!」

「「〔シャウトモンッッ!?〕」」

 

自分だけに聞こえてきた声の主を探すべく

 

眼前に広がる遥かな地平を進むシャウトモン。

 

 

〔「ぁ!?、・・・ぅ・・・ぅぅ・・・・・・・・・」〕

「苦しいのか!?

俺が今すぐそっち行ってやっから待ってろ!

 

 

だからもっと腹から声出せ!、諦めんな!」

 

 

〔「ッ、・・・・・・・・・ある!!」〕

 

 

「ここか!?、ここだな!!」

「シャウトモン!、お前本当にどうしちまったんだ!?」

「ここって・・・ここには何も無いキュー・・・」

「あるんだよ!!!、俺にはわかんだ!!!

バリスタモン!、スターモンズ!

力を貸してくれ、ドルルモンも頼む!!」

「な、なんで俺が 」

「ドルルモン!、お願いキュ!

シャウトモンを手伝って欲しいキュ!」

「!?、・・・・・・・・・くそっ

わかったよ、キュートモン」

 

 

 

『《メテオスコーーール!!》』

〔「《ヘヴィスピーカー!!》」〕

「《ドルルバスター!!》」

 

 

 

シャウトモンが指差す先目掛け

 

星々が雨のように降り注ぎ

 

山をも震わす重低音が鳴り響き

 

巨大化したドリルによる竜巻が巻き起これば

 

 

 

〔「あ!、るっ、よ・・・・・・・・・!、ぅ」〕

『〔!?〕』

 

 

 

眼前の空間が揺らいで、他のデジモン達にも

 

声が、届いた。

 

 

 

「《ロックダマシィイイイーーー!!!》」

 

 

 

弾けたシャウトを炎に変えて拳に宿し

 

 

全力でブチかませば、世界に風穴が空く!。

 

 

 

「YEEEEEEAAAAAAH!!!!!!」

 

 

 

「「「「「え・・・・・・・・・?」」」」」

 

 

 

仲間達と共にそこに飛び込んだシャウトモンは

 

 

直接舞台に上がって9つのキラめきを浴びて

キラめきたいと夢見たモノの生まれ代わりは

 

 

自称、デジモンキングは

 

 

見事、開拓してみせたのである

 

 

何も無い荒野を進み、前人未到の金脈を。

 

 

 

 

It's SHOW TIME!!     !!

 

 

 



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番外編・遠き日のメモワール 僕の起源、きみとの小さな冒険



かつてのデジタルワールドの・・・


世界樹の根幹を成す天界。


そこに存在する幻の里は


希少な古代種たるブイドラモン族の隠れ里だ。


その里の中で


聖騎士を創設した偉大なる御先祖を象った


インペリアルドラモンの像から発生する結界や


大人のブイドラモン達に護られて暮らしていた


ぼくことブイモンと もうひとりのブイモン。


これは、そんなぼくらの小さな冒険


そして・・・・・・・・・


        僕ことドボカゲが


忘れてしまっていた   僕の起源の物語。





 

 

「ね、ねぇ・・・ほ、ほんとにいくの・・・?」

「あたりまえだろ!?、こんなチャンス!、めったにないんだから!」

 

 

ブイモンに手を引いて貰いながらやって来たのは

 

 

里を囲う結界の、ほんの僅かな切れ目。

 

 

ソレを偶然見つけたことをきみに伝えた時

 

 

すごく興奮しながら、こう言ってくれた。

 

 

「やっぱり!、おまえ!、すごいな!」

 

 

そして、今、ブイモンは

 

 

大人達の言い付けを破るのに尻込みしている

 

 

ぼくを引っ張って、励ましてくれている。

 

 

「(きみのほうがよっぽどすごいよ)」

 

 

外の世界は危険だ

 

 

他のデジモンに見つかればタダでは済まない

 

 

ブイドラモン達にそう何度も教えられているのに

 

 

きみは全然怖がっていない

 

 

それがぼくにはとてもまぶしくみえたんだ。

 

 

「だいじょぶだって!、気づかれるまえにかえってくればぜったいバレない!」

「う、うん・・・そう、だね・・・!」

「そう!、そう!、ほら!、いくぞ!」

 

 

未知なる世界に薄紅色の瞳をキラキラさせて

 

ぼくの手を取ってズンズン隙間を進んでいく。

 

 

 

「「うわぁぁぁあああ・・・・・・・・・!!!」」

 

 

 

そうやって、結界を抜けたぼくらが見たのは

 

 

燃え盛る大地 七色に輝く空 天に逆巻く滝

 

 

そこで生きる

 

 

ブイドラモンよりもずっと大きなデジモン達。

 

 

「すっげぇーーーーーー・・・・・・・・・!!!

あ!、あいつ!、そら!、そらとんでる!」

「ふぇ!!?、ま、まってよぉー・・・!」

 

 

駆け出すきみに置いて行かれないようにするのにぼくは必死だった。

だって、きみは産まれた日も進化するのも同じなのにぼくよりもずっと足が速かったから。

 

 

「いいなぁ、いいなぁ

おれも!、はやく!、そら!、とびたい!」

「き、きみならきっとしんかできるよ・・・!エアロブイドラモンにだって・・・!」

「そう、だよな!?

よし!、おれ!、ぜったい、しんかする!

ゴルたちよりも!、はやく!」

「う、うん・・・!、うん!!」

 

 

ぼくはきみを誰よりも信じていた。

 

 

同世代の・・・・・・・・・ううん、里の誰よりも。

 

 

実際、君は僕が知る限りで唯一エアロブイドラモンに進化出来たブイドラモンだった

 

 

いや、それどころ更にその先

 

 

予言上の存在【アルフォース】にまで至った。

 

 

ぼくはまちがっていなかった

 

 

それでも間違えたのは

 

 

他ならぬこの僕なんだ・・・・・・・・・。

 

 

「ヴォオオオオオオオ!!!!!!」

「「ふぇえ"え"ええ"んっっっ!!??」」

 

 

産まれて初めて目の当たりにした光景に見とれていたぼくらに襲い掛かってきたのは

 

 

完全体の火山竜・ヴォルクドラモン。

 

 

本来は見た目とは裏腹な温厚な種族なんだけど

 

 

この時は余程気が立っていたのか

 

 

問答無用でぼくらにマグマを吹きつけてきた。

 

 

「うえだ!、うえのぼれ!、はやく!!」

「う、うん・・・!

!?な!!なにやってるんだよぉ!!?」

 

 

「こっちだ!!、こっち!!

とっととこいよ!!、ノロマやろう!!」

「ヴォオオオオオオンっっっ!!!」

 

 

ブイモンはぼくをマグマの届かない大岩の上に押し上げた後

 

 

ヴォルクドラモンの注意を引き付けて囮になった。

 

 

自分を犠牲にして ぼくを、たすけるために。

 

 

「ヴォォォオオオ・・・!!!」

「ぁ"!?、っつく!!、ない!!

おれは!、おまえなんかに!、まけない!」

 

 

周囲をマグマで埋め尽くされて

 

 

格上の竜族に追い詰められても

 

 

きみはやっぱり全然怖がっていなかった。

 

 

「!!!

 

 

ぅぅっ!!!、ぁぁぁああああああ!!!

 

 

うわぁぁぁああああああーーーっ!!!」

 

 

そんなきみをぼくはうしないたくなかった。

 

 

だから、形振り構わず自分が乗っていた大岩を

 

 

ヴォルクドラモン目掛けて蹴り飛ばした。

 

 

「ヴォ"ッ!?!!・・・・・・・・・・・・・・・ォ・・・」

「ふえ?」

「だいじょうぶ!!?」

「ぇ、ぁ、うん・・・だいじょぶ・・・・・・・・・」

 

 

ソレは偶々

 

 

・・・・・・・・・『奇跡』的に急所に当たり

 

 

里のブイドラモン達の何倍も大きな体躯が燃え盛る大地に沈んだのだが

 

 

ぼくはこのとききみのことしかみてなかった。

 

 

「よ、よかったぁ・・・!、よかったよぉ・・・!

ふえええぇぇぇ~~~~~~ん・・・・・・!!!」

「な、なくなよ!!

 

 

おれよりすごいことしたくせにッ」

 

 

「ふえ?」

「な、なんでもない!

 

 

って、なんだ?、アレ??」

 

 

割れた大岩の中からブイモンが見つけたのは

 

 

1振りのロングソード。

 

 

「すっっっげぇ!!!、かっこいい!!!

なんだ!?、コレ!?」

「ぼ、ぼくには・・・わかんない・・・けど・・・

き、きみにピッタリだとおもう!!」

「!、そう

 

 

だよな!!!」

 

 

「うん!、うん!!」

 

 

剣なんて持つのは初めてな筈なのに

 

 

蒼く輝く刃を構えるきみは

 

 

このせかいのだれよりもかっこよかった。

 

 

『ヴォルルルルルルルル・・・!!!』

 

 

「「      あ"      」」

 

 

思わぬ収穫に浮かれるぼくらを取り囲んでいたのは

 

 

ヴォルクドラモンの群れ。

 

 

見知らぬデジモンに縄張りを荒らされ

 

 

挙げ句、同胞を害されては

 

 

いくら温厚なデジモンでも機嫌を損ねるだろう。

 

 

『《ヴォルカニックフォーン!!!》』

 

 

火山竜達の怒りを現したかのような灼熱攻撃が

 

 

ぼくらを飲み込む

 

 

「《ブイブレスアローー!!》」

 

 

「「!、ゴル!?」」

 

 

寸前、黄金の熱線がその全てを吹っ飛ばした。

 

 

「お前らうちのチビ達に何しやがる!!?」

『ヴォ!!?』

 

 

燃え盛る大地にその目映い姿を現したのは

 

 

ぼくとブイモンが憧れて止まない

 

 

幻の里唯一のゴールドブイドラモンのゴル。

 

 

「す、すっげ」「す、すごい・・・ね・・・」

 

 

呆けるぼくらを余所にゴルは完全体の群れを相手に大暴れした。

 

 

『ヴオーォーーーン・・・!!』

「へっ、おとといきやがれってんだ!!」

「「ゴ~~~ル~~~!!!!」」

「お前ら

 

 

自分らが何やったかわかってんのか?」

 

 

「「!」」

 

 

ヴォルクドラモン達を撃退した後、ゴルは駆け寄ってきたぼくとブイモンに厳しい眼差しを向けて

 

 

「俺ら何度も言ったよな?、里の外は危険だって

なのに、どうしてお前らここに居るんだ?

俺が間に合わなかったらさっきの連中に消されてたんだぞ?

それとも、消えたかったのか?

 

 

だったらこのままここにいろ!!」

 

 

「う、うう・・・!」

「ご、ごめんなさ・・・ぃ・・・」

「お、おれも!、ごめん、ゴル

 

 

ごめんなさい!!」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

なーーんて偉そうに言っても!!

 

 

俺もブイモンの頃に里を抜け出してるんだよなーー!!」

「「ふえ?」」

「やっぱさーー!!、里の外どうなってんのか気になるよなーー!!

 

 

でもさ、これでよーーくわかったろ?

 

 

お前らみたいな弱いモンじゃ、ここから先を生きていけないんだってことは」

「「・・・・・・・・・」」

「今回は俺でも頑張れば何とかなった

でもな、デジタルワールドには俺がどれだけ頑張っても勝てないモンなんていっぱい居るんだよ

 

 

だから、もし、お前らがまだ

 

 

外の世界を見たいって気持ちがあるんならさ

 

 

俺なんかよりも、強くなってみせろよチビ達

 

 

それこそ、御先祖様みたいにな!!」

 

 

その後にいつもの優しい顔で笑いかけてくれた。

 

 

「う、うん!

 

 

おれ!、ぜったい!、エアロブイドラモンに!

 

 

それよりも!、もっと!、すごくなって!

 

 

デジタルワールドぜんぶのそら!、とぶ!」

 

 

「ぼ、ぼくは・・・ぼくは・・・・・・・・・」

「ハハ!、そーーか!、そーーか!

それならまずは

 

 

里のみんなに謝んないとなーー

 

 

ホラ乗れチビ達、超特急で帰るぞーー!!」

 

 

ゴルがそう言いながらどもるばかりなぼくをグリグリ撫でてくれたのは

 

 

きっと、気を使ってくれたからだと思う。

 

 

 

 

 

 

それから何日か経って

 

 

 

 

 

 

ゴルの寿命が尽きた。

 

 

 

 

 

良く晴れた日だった。

 

 

里の結界がもたらす蒼い空の下

 

 

いつも通りにみんなと食べて、遊んだ後に

 

 

「いい天気だなーー」

 

 

こう言い残してゴルは デジタマに還った。

 

 

「ぁぁぁああああああーーー!!!

 

 

ぅぅぁぁぁああああああーーーーーー!!!」

 

 

「ーーーーーーッッッ、なくな!!!」

 

 

「だ!ってぇ!ゴル!きえたの!ぼく!

 

 

ぼくの!!ぼくのせいだろ!!??」

 

 

この時に他のブイドラモン達から教えられた

 

 

オーバーライトのことやぼくらの種族のことを。

 

 

ゴルはあの時、ヴォルクドラモン達と戦った時に

 

 

残りの時間の殆どを使ってしまった

 

 

ぼくがつかわせてしまったんだ。

 

 

「ないたって!、なんも!、かわんねぇ!

 

 

だろ!?」

 

 

「ぶぇ!」

 

 

ゴルのデジタマを抱いたまま

 

 

みっともなく泣きじゃくるぼくをブイモンは

 

 

思いっきり殴り飛ばすと

 

 

「ゴルはおしえてくれたんだ!!

 

 

つよくなれって!!、チビたちまもれって!!

 

 

じぶんのいのちぜんぶつかって!!

 

 

だから!、こんどは!、おれたちのばん!」

 

 

「!!」

 

 

偉大なる御先祖様を象った

 

 

インペリアルドラモンの像と同じように

 

 

地面に剣を突き立て

 

 

「だろ!?」

「・・・・・・・・・う"ん!うん!!、そうだね!」

 

 

そして、ぼくにむかって手をのばしてくれた。

 

 

 

これが僕の起源。

 

 

 

あの日のゴルの生命に恥じないように

 

 

きみと一緒に強くなろうと誓い合った。

 

 

 

「・・・ぁ・・・・・・ぅ・・・・・・・・・」

 

 

 

焼け焦げた喉の奥から声にならない音が漏れる。

今の僕【ドボカゲ】が居るのは

 

 

幻の里のぼくときみの・・・・・・・・・

 

 

僕しか居ない住み拠。

 

 

「・・・・・・・・・ぁ・・・・・・ぁ」

 

 

きみといっしょだったときはあんなにひろかったこのばしょは今の僕にはどうしょうもなく窮屈で

 

 

何より、壁に立て掛けられた

 

 

刀身が『黄金』に輝くロングソードが目に痛い

 

 

・・・・・・・・・コレをやったのは僕自身の癖にだ。

 

 

「ぁっ、ぁ"」

 

 

辛うじて焼き付くのだけは免れた瞼の隙間から零れ落ちた涙が火傷しかない顔の上を、溶けたゴールドデジゾイドが一体化した体の上を流れて地面に小汚ないシミを

 

 

・・・・・・・・・まるで今の僕のようなモンを造る。

 

 

『アル』を、僕の全部をメチャクチャにした?

 

 

違うよドボカゲ【僕】

 

 

それをやったのはアイツらじゃない

 

 

アイツらは関係ない、ってか関係あってたまるか

 

 

護らなきゃいけないモン全部蔑ろにして

 

 

挙げ句、自分で消そうとしたのは

 

 

自分の起源を穢したのは お前【僕】だよ。

 

 

だから拒絶されてんだよ

 

 

今も。

 

 

「ぅ"!!ぅーーー!!うーーー!"!"!」

 

 

里のすぐ近くに君は居る、居るのに

 

 

僕の前には来てくれない

 

 

・・・・・・・・・当然だよね。

 

 

だって、今の僕と今の君はもう

 

 

真っ青な他モン・・・なん・・・だから、さ。

 

 

 

でも、せめてここで

 

 

 

ぼくのともだちの

 

 

 

アルの残り香を感じることだけはゆるして

 

 

 

おねがいだよ アルフォースブイドラモン。

 

 

 







「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」




「ねーー!!、ねーー!!


アルフォースブイドラモーーン!!」


「!」


幻の里上空を浮遊する最速の聖騎士に地上から声を掛けるのは1体の幼竜。

「マグナモンにあいにきたんだよねーー?
なら、はやくあってあげてーー!!」
「・・・・・・・・・違うよ」
「えーー?、ちがうのーー?」
「うん、違うんだ」
「じゃーー、どうしてきたのーー?」
「どうして、だろう?」
「うーーん・・・うーーん・・・わかんなーーい!!」
「そっか」
「でもねーーでもねーー


アルフォースブイドラモンもーー


マグナモンもーー


おれよりずーーっとつよいよーー!!」


「ッ」


「だからーーだいじょーーぶーー!!


やりたいことぜんぶできるよーー!!」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん、ありがとう



ゴル」



小さな存在の大きな言葉に天を仰いだアルフォースブイドラモンの目に涙が浮かぶのを


知っているのは白亜の皇帝竜の像だけだった。



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特別公演『Howling Duo』

とある動画を見てたら思い付いたネタです。


 

 

 

 

ゥ゙ゥーーーーーーーーー・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「え?」

 

 

開演のブザーと共に薄暗くなっていく劇場内

 

 

その観客席にいつの間にか露崎まひるは

 

 

パジャマ姿のまま座っていた。

 

 

「ここって、あの劇場?

 

 

でも、どうして?」

 

 

 

ザ・・・   ザザザザザザザザザ・・・・・・・・・

 

 

 

「あ!」

 

 

困惑の最中ステージ上が0と1の砂嵐に覆われ

 

 

今宵の主演が登場する。

 

 

「ミクちゃん!!」

「♪」

 

 

笑顔で手を振り、フワリと舞うのは

天井にたった一つだけ備わるスポットライトの光によって青にも緑にも見える不思議な長い髪をツインテールに束ねた少女

 

 

 

電脳空間の歌姫・初音ミク。

 

 

 

「~~~♪、♪♪」

「(あ、歌わないんだ・・・・・・・・・ちょっと残念

でも、ミクちゃんが楽しそうなら 」

 

 

 

「グルルルルル・・・・・・・・・ァ・・・!」

 

 

 

「ぇ」

 

彼女の舞台を独り占めしていたまひるの耳に届いたのは地の底から響くような・・・

 

 

狼の唸り声。

 

 

 

ッザ! ザ! ザザザザザザァーーー!!!

 

 

 

「あっ・・・・・・・・・ああ!!」

 

 

 

直後、先程よりも激しい砂嵐が巻き起こり

 

 

光り輝く至高の獣がステージ上に出現し

 

 

「グルルルルルァーーー!!」

「?」

「ダメ!!、やめて!!」

 

 

叫ぶまひると同じ視線の高さに存在する

 

 

赤い双眸を細めながら重低音の唸りを上げ

 

 

歌姫へと牙を剥き出した。

 

 

「♪」

「ッ!?」「えええ!?」

 

 

すると、ミクは満面の笑みを浮かべたまま

 

 

その白くて長い鼻面に急接近。

 

 

「グァ!!」

「・・・・・・・・・!?」

「グルルルルル!!、グルルルルル!!」

「♪、♪」

「グルルルルルァアアーーー!!!」

「~~♪」

「グル、ァ・・・グル、ルルルルァアッ」

 

 

歌姫が近づいた途端、獣は大きく飛び退き再び威嚇するのだが彼女には全く通じていない。

まるで、怖いもの知らずな子猫のように何度もじゃれついてくるので狼の方が狭いステージ上を回る回るしかなかった

 

 

大切なモンの匂いが

 

 

ほんの僅かにも感じられるモンを

 

 

傷つけたくなかったから。

 

 

「(あなたは

 

 

いつも、そう・・・なんだよ、ね)」

 

 

 

周囲を明るく照らしながら自身は翳る『光』

 

 

そんな獣の本質を改めて目の当たりにした舞台少女が観客席から身を乗り出すのと同時に

 

 

 

「?、~~~??、・・・・・・・・・ !

 

 

 

ワォーーーーーン♪」

 

 

 

「・・・・・・・・・グルア?」「ミク、ちゃん?」

 

 

歌姫が   遠吠えを上げた。

 

 

「?、ワオ~~~~~~ン♪♪」

「(ニュアンスの問題じゃないよぉ!?)」

「グルルルルル・・・・・・・・・」

「ワオン♪、アオ~~~ン♪」

「グ、ルル、ァ

 

 

ゥ、ォーーー・・・・・・・・・ゥ・・・?」

「♪、ウ!、オーーーゥ♪♪」

 

 

光の獣が困惑しながら渋々付き合い始めれば

そのどこか情けない声を明るく楽しく真似するミク。

 

「(・・・・・・・・・そっか、ミクちゃん)」

 

 

「ォ、オウーーーン」

「オッ!、オウーーーン♪♪」

「ゥォーー・・・」

「ウオオーーーー♪♪♪」

「グルルル

 

 

 

アオーーーンッ!」「アオーーーンッ♪

 

 

ゥオオオーーーーーーンン♪♪♪」」

 

 

 

ソレが繰り返される内に、2つの遠吠えは

 

 

デュエット【音楽】へと変わっていく。

 

 

「(やっぱり、ミクちゃんはすごい)」

 

 

スポットライトの満月の下

 

 

ステージという大地の上

 

 

ポップでキュートな歌姫に導かれるまま

 

 

「(あなたのそんなに楽しそうな顔

 

 

私、ほとんど見たことない

 

 

ずっと、いっしょだったのに

 

 

・・・・・・・・・ううん、違う)

 

 

私が、ずっと側に居たからなんだよね

 

 

あなたが楽しめなかったのは」

 

 

背負った罪も   守るべきモンも忘れて

 

 

幾重にも絡まるしがらみから解放されて

 

 

一心不乱に遠吠えをあげる一匹狼。

 

 

「「ォオーーーゥー・・・・・・・・・ワン!」

 

 

ワフ!?」

 

 

真昼の舞台少女が胸元に手をやるのと同時に

 

 

無意味な無駄吠えのデュエットは

 

 

始まりと同じように唐突に終わり

 

 

「♪」

「グル?」

「!、・・・・・・・・・うん、そうだねミクちゃん

 

 

悲しみは、もう おしまい!」

 

 

笑顔の歌姫と視線がぶつかった。

 

 

 

パチパチパチパチパチパチパチパチ・・・!

 

 

 

「!!?」

「~~~♪♪♪」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

                    」

 

 

 

終幕を告げる観客の温かな拍手が

 

 

白い三角形の耳でとらえた狼は恐る恐る振り返り

 

 

その時浮かべた表情は・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、そんなことが・・・

 

 

通りで

 

 

3人揃って遅刻ギリギリになるワケねッ!」

 

 

 

「うわーーん!、じゅんじゅんゆるしてーー!」

「間に合ったのに・・・」

「あ、あはは、ごめんね2人共」

 

 

翌日の昼休み、テラスに集まった99期生達にあの舞台についてまひるが話せば・・・華恋とひかりが学級委員長からお説教を受ける羽目になったとさ。

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

「?、どうした香子?」

「別に・・・・・・・・・」

「別にって、どう見ても何かあっただろ

あ、もしかして

あいつらが仲直りする夢でも見たのか?」

「ハッ」

「いや、なんだよその顔」

 

 








☆おまけ



コラボ寸劇 PppP編



出演
愛城華恋&オウリュウモン
神楽ひかり&ラセンモン
天堂真矢&ディアナモン
花柳香子&アルフォースブイドラモン
石動双葉&エンシェントグレイモン


etc・・・・・・・・・


「み、みみーーー!
だから、耳はやめるのデシテーーー!!」
「ふふふふふふ・・・・・・・・・!」



「(いや、なんであの人
無理矢理膝枕なんてしてんだ・・・???)」


「天堂さん」
「って!、おい!
今明らかに取り込み中だから話かけんのはやめと 」
「あげませんよ」
「答えるんだったらせめて会話してくれませんかねぇ!?」
「・・・・・・・・・そっか、残念


すごく、すっごく ざんねん」


「会話になったー!!?
しかも同じこと2回言ってるし!!?」
「なら、せめてこれだけは・・・


ウサギの耳を撫でる時はね、こうするんだ」


「!ォ゙?う?!゙


ンッギ゙ィイイギイィーーーイイイ゙!!!」


「ほら、おっちゃん達みたいに後ろ足をバタバタさせて喜んでる」


「喜んでねーよ!!、痙攣してんだよ!!


ってか悲鳴汚ねーな!!!


見た目あんな綺麗なのに!!!」


「きみの方が綺麗だと思うデスよ


見た目も     その!   声、も」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?



はぁあああぁあああああああああああああああああああああ!!!!!??????



ば、バッカじゃねーの!!!?


いイいきなりナなナなにいいだしてっッ」



「かぁぁーーーーーーっっっ!!!!!!」



「おい香子!!!、早くその般若返せ!!!
4人がかりで止められてる内に 」


「おい!!お前!!オマエ!!誰に向かってバカって言ったんだよぉオオオおお!!?


ニンゲンんんんッッッ!!!」


「お前はお前でどっから生えてきてんだ!?


タケノコか!!?」


「相棒!、こんなコゲだらけで煮ても焼いても食えないモンと一緒にするのは


タケノコに失礼だとオレは思うんだが?」


「相棒ッ!!?


だ、ダメだ、コレ・・・!


あたしだけじゃツッコミきれねぇ・・・!!」



ギュイイーーーーーーン!!!



「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ぬ?、か、華恋?
何故御主は拙者の頭の上で見栄を切り
御師匠殿とひかり殿は足元で楽器を鳴らしているので御座るか?」


「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」


「ぴ!、視線が痛いで御座るぅううう!!
そ、そこな御二方、どうか助言をッ」
「え!?、えええっ!!?
い、いきなり振られても困 」
「うーん、そんなに自信はないんだけど・・・
多分、ギターのセッションと同時に飛び上がって欲しいんじゃないかなー?」
「そうなの!?」
「成る程!!、では、折角なので
そちらの同じ楽器を持っている方も 」
「ベースとギターは同じじゃないよ?」
「ぴぴ!!??」



「リュー、それ言われる前に自分で気づかないとメーだよー
ブイーはどうして素直になれないのー?
ボーボーは・・・・・・・・・まー、いっかー


それでルナー?、ヒーのせんせー



いつになったらエーにかえしてくれるの?」



「んん゙!?、ンギャーーーーーー!!?
色だけ激昂モードってるのデシテーーー!!
マヒルッ!!、マヒルーーーーーー!!!」
「露崎さんは今他のガールズバンドの皆さんにもふもふされていて手が離れないようですが?」


「モ・フゥーーーーーーッ!!??」





ハーイ♪ハーイ♪123ガルパpッ!PicoDA♪アイコトバーーー


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番外編・転生したら世界\(^o^)/なので使命破棄してスローライフしてます!!


世界の終末を前に抗えるモンなんて


実際問題ほんの一握りでしかなく大抵は


逃げて   隠れて   見ないフリをして


その時が来ることに内心怯えているだけだった。


これは、そんなありふれたデジモンの1体


とある自宅警備員


元・電脳世界最高セキュリティの一幕。





 

 

★■■の■■■プライバシーエリア

 

 

 

『エメラルドの宮』

 

 

 

「いやぁ!、よかった!、よかった!

 

 

たすかったぁあーーー!!」

 

 

大異変が収まった後、外観は立派な家の中ではどんちゃん騒ぎが行われていた。

 

「しっかしアレだ、アレ!、黄金も黄金だけど最速も最速だよ、あんなことすればああなるに決まってるって」

 

家主はトレードマークのとんがり帽子と杖を放り捨て『土』と『木』と『水』のエレメントによる豊かな土壌、更には『火』と『氷』と『風』のエレメントによる温度調節で育てられた肉や野菜、果物を食らい自家製の酒を呷る。

 

「隠士は・・・・・・・・・あいつ昔から何考えてんだかよくわかんなかったけど正直あそこまでとは思わなかったなー」

 

愚痴をぶつける相手は『鋼』のエレメントから精製し『光』のエレメントによる情報取得と『闇』のエレメントによる隠密性能を付与させた鏡。

コレを使ってこのデジモンは天界に訪れた救世主達の活躍を安全圏から盗み見た挙げ句

 

 

録画して現在絶賛リプレイ観賞中なのである。

 

 

「はぐ!、あむっ」

 

 

今まで綿密に計算して消費してきた蓄えをひっくり返して作った豪勢な食事

 

 

「ごっくごっく・・・・・・・・・ぷはぁーーー!」

 

 

目先の不安を少しでも和らげる為にしか飲めなかった酒

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

まいったなー   あんまり楽しくないや」

 

 

ソレら全てを持ってしても

 

 

家主の心は晴れなかった。

 

 

 

カチッ カチッ カチッ カチッ カチッ

 

カチッ カチッ カチッ カチッ カチッ

 

カチッ カチッ カチッ カチッ カチッ

 

 

上空に浮かぶデジタル時計は規則正しく時を刻む音だけが『エメラルドの宮』を流れていると

 

 

「・・・・・・・・・ーーー、ッーーーーーー!!!

 

 

《サン、ダークラウドぉおーーー!!!》」

 

 

家の中で『雷』のエレメントが炸裂した。

 

 

「はぁあーーーっ!!、はぁあーーーっ!!

 

 

仕方ないだろう?!

 

 

大体私が行った所で何も変わらなかった!!

 

 

そうだろう?!、ええ?!!」

 

 

デジタル時計を消滅させた家主は肩で息をしながらがなり立てる

 

 

責めるモンなど何処にも居ないのに。

 

 

「・・・・・・・・・何をやってるんだろうな

 

 

なにを、やってたんだろうな わたしは」

 

 

床に落ちてたとんがり帽子を目深く被り

 

 

戸棚の上で埃をかぶる

 

 

大1つ、少4つに割られ

 

 

輝きを無くした虹色の鉱石

 

 

デジタルワールドの、世界樹から託された信義

 

 

その残骸から目を反らす。

 

 

 

カチッ カチッ カチッ カチッ カチッ

 

カチッ カチッ カチッ カチッ カチッ

 

カチッ カチッ カチッ カチッ カチッ

 

 

 

「・・・・・・・・・ッ゙・・・・・・・・・く!」

 

 

反らした所で自分がやったことは消えないし

 

 

時計を壊した所で時は止まらない、戻らない

 

 

ゆっくり流れていくだけだ。

 

 

「うつくしくない

 

 

今の私は美しくないなー!

 

 

そうは思わないか?、友よ・・・・・・・・・」

 

 

ソレがわかっているからこそ、この家主は

 

 

         魔法使いは

 

 

『エメラルドの宮』を己だけでは出られない。

 

 

 

 

 

 

ここから飛び立つ意思を

 

 

 

 

 

 

運命の相手に与えられる、その日まで・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




片や、魔法を使ってのんびり農業

片や、手作業でハイペースな武器造り

片や、肉も野菜も食べて透明な水を飲んでいた

片や、味のしないパサパサした塊をベトベトしていて工場用の油臭い謎の液体で流し込んでいた

片や、いつ訪れるかわからない終末に脅えながら酒飲んで寝てた

片や、すぐ側にある脅威に震えながら眠るしかなかった






・・・・・・・・・この差って何デスか?






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番外編・牙無きモンの牙


『牙』の名を持ちながら牙になれず


『明け』というモンを知らぬまま


ただただ遠吠えを上げていた自分は


どうしょうもなく   負け犬でしかなかった。







 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・!

みつけたぞ!、きょーだい!」

「うん!?」

 

サイケモンだった頃の自分が、重なり合った鉄屑やら何やらの中から強引に引き摺りだしたのは

全身が紫色の硬い毛に覆われた幼年期デジモン

 

 

一番下の『きょーだい』であるドドモンだ。

 

 

「にーちゃんヤッベー!

なー?、シロガブー?」

「ああ!、クロガブのいうとおりだー!」

「かくれんぼー!、にーちゃんがおにだとすーぐみつかっちゃうんだなー!」

「・・・・・・・・・ボク、かくれんぼなんてしてないんけど?」

「?、そうだったのか?」

「うん、そうだよ

だから、さっさと離してくれない?」

「ならさ、これからいっしょにあそぼう!

なにしてあそぶ?」

「「ボールあそびー!!」」

「かけこっこー!、なんだなー!」

「みんなおちつけ、まずはドドモンにき 」

 

 

「だから、僕は遊びに来たんじゃないッ」

 

 

「あ!?、ドドモン!」

 

自分の手から無理矢理離れた丸っこい体がゴミの間をすり抜けるようにピョンピョン跳び跳ねていった

 

 

・・・・・・・・・んだけど

 

 

「(なんであいつはなれないんだ?)」

 

 

結局また、物影に隠れて自分や白ガブ、黒ガブ、ラブラモン、バグモン達5体を見ていたんだ

 

 

今ならわかるよ、兄弟

 

 

お前はずっとそうやって

 

 

いつ現れるかわからないレイド帝国の連中から

 

 

自分達を守ろうとしてくれてたんだよな

 

 

・・・・・・・・・ごめんな

 

 

お前にとって一番上の『にーちゃん』なのに

 

 

お前の気持ちに全然気づいてやれなくて。

 

 

ドドモンの・・・いや、その時はもうドルモンになってたな

ドルモンが本当はどんなデジモンなのかとーちゃん・・・じゃなかった

反抗組織『明けの遠吠え』の長から聞かされたのは、自分達5体が成熟期になった頃。

その辺りからレイド帝国の監視が厳しくなって

ウラル大陸の各地で隠していた肉畑が次々と見つかって、自分達より上の兄弟が減っていく中

 

 

「ハイ☆ハーイ☆みぃんなぁ☆

 

 

オジサンが肉持ってきたよー☆

 

 

さぁさ☆食べて☆食べて☆食べちゃってぇ☆」

 

 

傷だらけで笑いながら現れた始祖様は

 

 

正直、かなり怖かったけど

 

 

折れかけていた長の心を繋ぎ止めてくれたのは

 

 

あのヘタクソな作り笑いだったんだ。

 

 

だからこそ

 

 

泥にまみれて泣きじゃくるシーサモンから

 

 

貴方がレイド帝国に囚えられたと聞いた時

 

 

自分は形振り構わずキテンの街に駆け付けた

 

 

・・・・・・・・・最も、駆け付けた時には無駄足で

 

 

ならば、せめて追っ手の数を減らそうと

 

 

決して敵わない相手に戦いを挑んで

 

 

 

負けた。

 

 

 

思えば   自分は   いつだって

 

 

 

 

「「「「リーダー起きろぉ・・・!」」」」

「ッ!?」

「シュウッ、しぶとい」

 

意識が現実に引き戻されるや否やファングモンは跳躍し、真横から振るわれた一撃を躱す。

 

「(こ、こは・・・マルスモンの?

自分は一体何を、して?)」

「う、うぇーっ」

「やっべ、おおごえだしたら」

「き、もち、わりぃ」

「!、みんなどうし、ぐぁっ!!?

 

 

(そう、だった・・・!、思い出した!)」

 

 

酒精を多く含んだ空気に包まれた神々のコロシアム。

その中心ではファングモン以外の4体が酩酊状態に陥いり、力なく横たわっていた。

 

「シュウッ、あのまま場外に叩きつけられていれば楽になれたというのに

これだからケダモンという奴は気にいらん」

 

『明けの遠吠え』のメンバーを見下し、嫌悪感に満ちた言葉を吐き捨てるのは

 

 

十二の神が一柱、蛇姫ミネルヴァモンの狂信者

 

 

八首持つ魔竜・オロチモン。

 

 

「いい加減諦めろ、お前らがやっているのは無駄な足掻きでしかない」

「無駄、だと?」

「ああ、そうだ

あんなババアの加齢臭なんぞに惑わされるような駄犬如きに率いられた下界の有象無象が

 

 

至高なる神ミネルヴァモンたんを信奉する

 

 

私共に勝てる筈がなかろう」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・タンってなんだ?」

「至高なる神にのみ許された称号だ、覚えておけ」

 

 

※個モンの感想です。

 

 

「とにかく、もう気は済んだろう?

大人しくあの飛行艇をセイレーンモン達に引き渡せ

アレは翼も無く、手もロクに使えんお前らが我がモン顔で乗り回して良い代物ではない」

「断る・・・!!

それに、まだ、勝負はついていないッ」

「シュウウウ、そんな酔いが回った顔で吠えた所で戯言にしか聞こえんな

大体、お前らの役割はもう終わったろう?

あの飛行艇にこだわる必要がどこにある?

それとも、まだ栄誉が欲しいと?

 

 

どこぞのババアの右腕のように・・・!!!」

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

「アイツもそうだった!!

 

 

アイツもそうやって自分の欲を満たす為だけに

 

 

故郷を!、仲間を!、戦火で無くし!

 

 

それでも懸命に生きようとしていた!

 

 

小さく!、愛らしい!、見守るべき生命達を!

 

 

この私共の目の前で踏みにじった餓狼ッ

 

 

死神のォ!!!、風ェ・・・!!!

 

 

あのような非道かつ卑劣極まり無い行いをした奴も!、その指示を下したババアも!

私共は決して許さんッッッ!!!」

「・・・・・・・・・だから、気に、入らないのか?

ババモンを、再び、ロゼモンにさせた長や

長に従う、自分達、が」

「ああそうだ!!

大局的に見れば奴の行動は間違いなくデジタルワールドを救う為に必要だったのだろうがな

 

 

だからとて

 

 

その過程で流れた小さなモン達の涙を・・・!

 

 

蔑ろにして良い理由にはならんのだッ!!」

 

 

「「「「「・・・・・・・・・ッ」」」」」

 

 

酒精の霧越しに向けられる怒りの眼差し。

 

 

「シューーーゥ、下界にてディアナモン姉様の助力となったことにはセイレーンモン達共々感謝している

だがな、『明けの遠吠え』よ

お前らの戦いはもう終わった

今後のデジタルワールドの運行は、その役割を担う神々や信者に任せればいい

だからもう、弱い癖して出しゃばるな

不相応な行いでお前らが消えでもしたら・・・

私共は、大恩ある御方らに顔向けが出来ん」

「お、ん?」

「シュウッ、会ったこともないのに恩を感じるのはおかしいか?」

「いや、マグナモン達みたいに、ならないのは、よかった、と思って」

「・・・・・・・・・ああ、そうゆうことか」

「そ、れに、気にいらないと、言いながら

あんた、自分達を必要以上に、痛めつけて、ない」

「そう、なん、だなー・・・!」

「見た目程悪モンじゃ、ない、な

なぁ?、ガルル?」

「ああ!、グルルの、言う通り、だ!」

「シュウッ、長く話過ぎたようだな」

 

そこに込められた真意を知って、獣達は再び八首の魔竜と対峙する。

 

「《アメノムラクモ》」

「《石敢当!!!》」

「ガルル!」「わかってる!」

「シュウッ?、《酒ブレス》により目も鼻もロクに利かんというのに何故そこまで動ける?」

「その通り、目は完全に潰されているッ

だが!」

「ゴミ捨て場育ちを舐めてくれるな!

酒の臭いがどれだけ立ち込めていようが自分達ならば嗅ぎ分けられる!《ブラストコフィン!》」

「《グラオ・レルム》ォォォオオオゥン!!」

「ッ、そこまでするのは何の為だ?

救われた恩返しか?、それともやはり栄誉か?」

 

 

「「「「「どれでもない!!!」」」」」

 

 

「シュウ!?」

 

連携で格上の必殺技を受け流し、体勢が崩れた瞬間に5体揃って一斉攻撃。

 

「オロチモン!、言葉の端々は変だけど・・・

あんたは悪いモンじゃないし、間違ってもない

 

 

実際、自分はどうしょうもなく負け犬だからな」

 

 

自嘲気味に笑うファングモンの脳裏に

 

 

キテンの街や海での戦い

 

 

そして、命を懸けて放った必殺技が炸裂

 

 

するより早く、オタカラが自分で窮地を脱し

 

 

助けたかったのに助けられた 情けない光景

 

 

他にも様々な『負け』が過る。

 

 

「さっき、あんたは助力と言ってくれたが

正直、『明けの遠吠え』の中で力になれたのは長やシーサモンぐらいだ」

「り、リーダー?」

「そうですね」「「だな」」

「みんなまで!?」

「だがな、それでも自分達は諦められん

 

 

皆さんの舞台を、キラめきを!

 

 

間近で、胸を張って見ることを!!」

 

 

「・・・・・・・・・だから

 

 

ソレが不相応だと言っているッッ!!!」

 

 

己の弱さがわかっていながら吠える痩せ狼に

魔竜は苛立った様子で八首の歯を鳴らすと

 

 

「《酒ブレス   炎界!!!》」

 

 

口内で火花を起こし、酒精に引火させながら

 

 

全力で放った。

 

 

「今のデジタルワールドで、成熟期の群れなんざがあんなモン乗り回せばどうなるか・・・!

お前らとてわかっているだろうに!」

 

 

ただでさえ、《酒ブレス》が充満していたコロシアムは一瞬で火の海と化し獣達の姿が見えなくなる。

 

 

「ならば、進化するまでのこと」

「シュウ!?」

 

 

故にオロチモンはソレへの反応が遅れた。

 

 

「パートナーでも、神でも、番長でも、信者でも

 

 

聖騎士でもなくたって、自分達はデジモンだ

 

 

掴んでみせるさ   なりたい自分を!!」

 

 

四角錐の結界で兄弟達を囲い

 

 

手を、拳を握り   翼を広げる

 

 

細身で犬科の頭部持つ神人型デジモン

 

 

ファングモンが進化した、アヌビモンに。

 

 

「《アメミットォオオーーーーー!!!》」

「《アメノ・・・!、ムラクモ・・・!》」

 

 

遠吠えと共に展開された

 

 

デジ文字の魔方陣より地獄の魔獣が召喚。

 

 

尾の刃を振るう八首の魔竜へと襲いかかる。

 

 

「「「「「アォォォオオオン!!!」」」」」

「シューーーゥゥウウヴァ!!!??」

 

 

 

「そこまでデシテ」

 

 

 

必殺技同士が激しくぶつかる最中

 

 

割り込んできたのは、冷たい声と氷矢の雨。

 

 

「で、ディアナモン!?、何を!!?」

「よく見ろ、既に勝敗は決している」

「「「「「・・・・・・・・・あ!!」」」」」

 

半眼で獣達を見据える月光神の指摘通り、《アロー・オブ・アルテミス》により造られた壁の真後ろにある魔竜の体躯は観客席に埋もれていた。

 

『お、オロチモンッ』

「これで、納得したか・・・?」

『ーーーーーー!』

「少なくとも、私共は『明けの遠吠え』を認めた

いや、コレでは認めざるおえん、な」

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

未だ起き上がれないオロチモンの周囲を飛び交うセイレーンモン達の視線には未だ迷いがあった。

 

「弱きは罪、強さこそが絶対

それがワタクシ達デジモンの性

この理は世界が丸ごと再生産されても変わらん」

『ディアナモンさま・・・』

「その理の元、『明けの遠吠え』は力を示した

故に、次は貴様らの番デシテ

何、飛空艇なんぞに頼らずとも成すべき事は山程あるからな

 

 

精々、使い潰して舞台の肥やしにしてくれる!

 

 

その日が来るのを覚悟しておけ信者達よ!」

 

 

『!!、御心のッ、ままにぃい~~~♪♪』

 

 

しかし、ソレも自分達が信ずる神からの神託により無事解消されたのであった。

 

「ふぁんぐもォウ!!、フォゥンッッ!!」

「お、長!?」

「わ、ワシ!、ワシはァ!、もうんじんばぃでぇえーーー!!」

「・・・・・・・・・ごめん、とーちゃん」

「リーダーヤッベー!

なー!?、ガルル?」

「ああ!、グルルの言う通りだ!」

「まさか、完全体を飛び越して究極体になるとは」

「すっごいんだなー!」

 

一方、アヌビモン達の元へはツナギ姿の老人狼

鎧の無いクーレスガルルモンのワー爺が顔をグシャグシャにしながら駆け寄ってくる。

 

「こうなることも想定内でしたか?」

「いいや

だが、期待はしていたのデシテ」

「相変わらず貴方、辛うじて乗り越えられるであろう試練しか与えないんですね」

「それが神というモンだろう?」

「ハッ!!、そこらの究極体と変わんないクセして神名乗んなっちゅーの!」

「「・・・・・・・・・」」

 

ディアナモンとメディウムの会話に乱入してきたのは、8本もの腕を持つ鍛治の神。

 

「ウルカヌスモン、貴様を呼んだ覚えはないのだが?」

「ディアナモン、声をかけてはいけません

有事の際所か危機が去った後ですら神としての勤めを放棄している自称神なタコが湯で上がります」

「ああ、すまん、ついうっかり」

「自称神はそっちだっちゅーーーの!!

究極体成り立ての技なんかにあんな無駄矢放っちゃって!

アポロモンならあんなん一発で十分だったちゅーの!」

「だろうな」

「このタコは何をそんな当たり前のことをそんな偉そうに言えるのでしょうか?

ああ、すいません

貴方頭の中までタコでしたね、私もついうっかりしていました」

「んがっ!!?

もういい!、余興は終わりだっちゅーの!

おい!、下界の下等種族共

今度はこの 」

 

 

「おい!、ディアナモン!

お前ら何楽しそうなことやってんジャン!?」

 

 

「ーーーーーーーーー!!??」

 

 

そこにこのコロシアムの支配神登場!。

 

 

「おま!!、このアホ!!、ソレ!!

俺の武器とその材料!!

だから盗るなっちゅーーーの!!」

「ん?、ウルカヌスモン

ウチとここでやるつもりジャン?」

「ッ!!

ディアナモン!、お前ぇーーー!」

「これこそ想定内でしたね、ディアナモン」

「ソーデシテー」

「くっそ!、覚えてろっちゅーーーの!」

「?、???」

 

三下感満載な台詞と共に自身のサーバーへと逃げ帰るウルカヌスモンにマルスモンは大量の資材を抱えながら首を傾げ

 

「はぁー、例のデジコアを狙っていると思ったら案の定だったのデシテ」

「アレならば引きこもったまま飲んだくれているアレの方がマシですね

最も、アレはアレで問題ですが」

「こうなるなるなら    に奴の頭も

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・、??」

 

 

 

「どうかしましたか?、ディアナモン」

「あ、いや、何でもない、デシテ」

 

 

「ファングモン?、お前ファングモンジャン!?

進化したジャン!?、それも一気に究極体!

すっげ!!、すっげ!!、すっげぇ!!」

 

 

た後、アヌビモンの姿を見つけるや否や

全部投げ散らかしてすっ飛んでいった。

 

「しゃあっ!、ちょうどいいからウチと勝負するジャン!」

「え?、ええ!、望む所!

でも、その前に

 

 

・・・・・・・・・!、《ピラミッドパワー!》」

「うん!?」

 

 

『うん゙んっ!!?』

「貴様にも報せた覚えはないのだが・・・?」

 

 

毛むくじゃらな手が何かを掴んでみせる動作をすれば、コロシアム上空に四角錘の結界が発生。

 

 

空間の狭間に隠れ、ずっと自分を見守っていた

 

 

孤高の隠士/一番下の『きょーだい』を捕らえ

 

 

強引に引き摺り降ろす。

 

 

「見つけたぞ!、兄弟!」

「・・・・・・・・・うん、見つかっちゃったね

後、ここでマルスモンと勝負なんかしたら強制的に信者にされるから場所移した方が良いよ

 

 

 

          にーちゃん」

 

 

 

 

 

 

 



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番外編・This is 『【DELETED】』





副題:ワタクシの中のスペース





 

 

外界からの光が殆ど入らない地下工場に

 

 

ソレは音も無く降り立った。

 

 

「・・・・・・・・・」

『!?』

 

 

ソレはトップであるデビタマモンや下働きのデジタマモン達の横をすり抜け、我がモン顔で工場内を闊歩する。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

ソレは工場を動かす為の『加工前の部品』を収めた箱の前に立つと、誰からも了承を得ないまま

手首のブレスレットから伸びる光の剣を一閃させ

上部分を斬り捨てた。

 

 

「ーーーーーー!!!」

 

 

横暴だ!!!

 

 

デビタマモンはそう言いたかったが

 

声が出せない。

 

何故ならば、ソレはその存在自体が絶対的な秩序

 

 

逆らえば消されるだけなのだから。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「!!!」

 

 

ソレは無言のまま『部品』が大量に詰まった箱を抱えると、背中の翼を広げて地上へと飛んでいった。

 

 

好機!!!

 

 

即座にそう判断したデビタマモンは、自分の周りをたむろするデビタマモン達を撥ね除け

 

 

「逃げられるとでも思ったのか?」

「あ・・・!・・・・・・!?」

 

 

ようとした手がぶつかったのは

 

 

Vの字型の装飾が施された蒼の鎧。

 

 

「この、アルフォースブイドラモンから 」

「待つのデシテ最速よ」

『!?!』

 

聖騎士の名の元に振り下ろされる光の刃は

三日月の鎌により間一髪の所で止められた。

 

「月光、ディアナモン」

「気にいらんからと自分より弱きモンを消していってはレイド帝国と何も変わらないのデシテ

奴らを打倒したモンとして、自分自身がそうならないように心得るべきだとは思わんか?」

「・・・・・・・・・」

「それにこいつらにこのような真似をさせてしまったのはワタクシの不徳の為す所デシテ

どうかここはワタクシに免じて見逃して欲しい」

「・・・・・・・・・」

「頼む、アルフォースブイドラモン」

「次は無い」

 

そう吐き捨てるのと同時に最速の聖騎士の姿は薄暗い工場内から掻き消えていく。

 

「さて、災難であったなデビタマモン」

「で、ディアナモン!・・・・・・・・・さ、ま!」

「そう畏まる必要はない

貴様はワタクシの信者ではないのだからな

とはいえ、デジタルワールドの神としては

労働力が足らず困っているデジモンを見過ごす訳にはいかないのデシテ」

「!?、あ、いえ!、そ!、そんな!」

「遠慮は要らん

セイレーンモンよ、今後はこの工場で働き

デビタマモンの力となれ」

「ディアナモン様の御心のままに」

「!!」

 

頭上から自分を見下ろすセイレーンの冷たい視線から、すぐにデビタマモンは気づいた

 

 

「(この!、このぉおおお!!

竜の威を借る兎めがぁあああ!!!)」

 

 

かつて、デジタルワールドの頂点に至った

 

レイド帝国の『ノウハウ』を利用し

 

自分こそが次の支配者となる野望が挫かれ

 

周りのデジタマモン達と変わらない

 

ただのデジモンとして生きることを

 

最弱なんかに強いられたのだということに。

 

 

 

 

 

「(やれやれ、案の定バカが出たのデシテ)」

 

後のことは信者に任せ、地上へと帰還する最中

月光の神は思案に耽っていた。

 

「(これではアルフォースブイドラモンが下界でどういう生を送ったのか流布した甲斐がないのデシテ・・・)」

 

信者を使いデジタルワールド全土にこの情報を広めることで

 

 

レイド帝国と同じ行いをするモンなんて

最速の聖騎士に斬り捨てられても文句は言えない

 

 

と、言外に警告を発していたのである。

・・・・・・・・・余談だが、その結果

某里は阿鼻叫喚の地獄絵図に陥り、引きこもり聖騎士(元も含む)達は余計に精神が追い詰められたのだが

 

 

神のみぞ知る、ならぬ

神にとっちゃ知ったこっちゃないのデシテ。

 

 

「(しかも、やはりというか何というか

山姥に懐柔されたモンの手下とは・・・)

どうせ間引くのならば根こそぎやれデシテ」

 

現状のデジタルワールドでは、アヌビモンのような一部の例外はあるとはいえ究極体への進化には多大な時間が必要とされる。

しかし、何事にも抜け道はあるというもの・・・

データを多く含んだ希少なアイテムやサーバーなどをその身に取り込むという【ロード】の技術を応用した裏技は

 

 

かの麗将による甘い誘惑の一端。

 

 

コレを得る為、あるいはレイド帝国での地位を確立すべく保身や力に目が眩んだモン達は彼女に跪き

ある程度の『成果』を示した所で

 

 

死神の風に刈り取られていったのだ。

 

 

「(だが、一度広まった知識は容易く消せない

結果、残されたデータを元に大異変後から暗躍してたモン達が力をつけレイド帝国の猿真似を )

ん?」

「・・・・・・・・・」

「何だ、まだ居たのデシテ?」

 

地上へと降り立つディアナモンを待ち受けていたのは、先程別れたばかりのアルフォースブイドラモン。

その足元には大量のデジタマが詰められた箱がセイレーンモン達によって守られていた。

 

「早くそいつらをはじまりの街に届けろ

運んでいる途中に孵りでもしたら困るのは貴様デシテ」

「その前にきみに訊きたいことがある、デス」

「・・・・・・・・・信者達よ、耳を塞げ」

『はっ!!』

「それで?、ワタクシに何を訊きたいと?

ああ、あのデビタマモンのことか?

安心しろ、奴は近い内にアホのコロシアムへ送り込んで 」

「あんなのがどうなろうがブイ興味ないデス

それよりきみの方が心配、デス」

「心配?、フッ、笑わせるなよ最速

ケレスモンから聞いたぞ?

貴様、飛行中に居眠りした挙げ句

奴の森に突っ込んだらしいではないか

あの手の輩の監視や後進の育成も大切だが、ちゃんと休めデシテ」

「ぶ!、ブイの話はいい!、デス!

・・・・・・・・・ディアナモン、きみ

 

 

何がそんなに怖い、デス?」

 

 

「・・・・・・・・・そう、見えるか?」

「はいデス

今回だって、君自ら出なくたって信者だけで

過去の傷を抉られて暴走する最速の聖騎士を見事諌めた月光の神の威光は充分示せたのに」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「最近、きみ

無駄に動き回ってる気がする、デス

まるで、本当に向き合わなきゃいけないモンから必死に目を反らしてた

前の、俺、みたい、デス」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「今のデジタルワールドできみがそこまで脅えるようなことがあるんデス?

なら 」

「言えば貴様も背負うことになるぞ?

この、手の施しようがない恐怖と絶望を」

「!!?」

「その勇気が貴様にあるというのか?

ワタクシと同類の臆病モンな貴様に」

「ーーーーーー・・・・・・・・・ッ

そう、デス、ね、『ブイ』には、無理、デス」

「そうだ、それでいい

信者達よ、これより神殿へと帰還する

ゲート内でも警戒を怠るな」

『はっ!!』

「ではな、アルフォースブイドラモン

そのデジタマ達を、かつての貴様の救済は頼んだのデシテ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

セイレーンモン達を引き連れ、遠ざかるディアナモンの背中を見つめながらアルフォースブイドラモンは・・・

 

 

「ワー爺、マルスモンに通信を繋げて欲しい

 

デス」

 

 

Vブレスレットの側に収まる桜色の神機を通じ

 

 

神頼みをするのであった。

 

 

 

 

 

 

「(言える訳がないだろう・・・・・・・・・)」

 

 

月食の神殿。

 

 

大異変後、十二の神々のサーバーが統一されたことで産まれた昼と夜両方の性質を持つ神殿にて

光源を欠いた月はデジタルワールド全域のチェックを行っていた

 

「(いくらデータを解析しても原因がまるでわからない以上他のモンに話した所で無駄でしかない

幸いこの異常が起きているのはワタクシだけ

 

 

現在のデジタルワールドの円滑な運行には

 

 

何の、支障も・・・ない・・・・・・・・・デシ、テ)」

 

 

胸中に広がる寂しさから目を背け

 

 

「ジャ!!」

「へ?」

「ジャ!!」

「え」

「ジャ!!」

「ま!!」

「ジャーーーーーーン!!!!!!」

「ぐぎゃあ"あ"あ"あ"あ"あああ!!?」

 

 

・・・・・・・・・てたら

 

闘争の神の燃える拳が顔面にメリ込んだ。

 

「?、??、??????、!

ディアナモン!!、お前どうした!?」

「・・・・・・ッ・・・!゙・・・・・・・・・!!!」

 

 

き・さ・ま・の!、せい!

デシテーーーーーー!!!

 

 

そう言いたかったが、声が出せない

 

主に物理的な理由で。

 

「そっちじゃねぇよ!!!

おまっ、お前!、なんで!

 

 

どうしてテンドーのこと忘れてんジャン!?

 

 

おかしいだろ!!?、そんなの!!」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

そういう名前だったのか

 

 

ワタクシのパートナーだった 舞台少女は」

 

 

拳が離された後、凹んだ顔に浮かんでいたのは

 

 

冷えきった無表情。

 

 

「おま!!、本当の本当にいい加減しろ!!

ウチ怒るぞ!!、殴るぞ!!」

「もう既に怒っているし、殴っているだろう」

「だって!、お前!

テンドーだぞ!?、あのテンドーだぞ!?

あんなハデハデ忘れられるモンかよ!!?」

「そいつはそんなに派手だったのか?

あのクロディーヌや他の7人よりも?」

「ッッ!!?」

「ハッ、そうも情けない顔を晒すなよ闘争

貴様やどこぞの色ボケ共、それに山賊あがりの教祖がその舞台少女を覚えている

ワタクシにはそれだけで充分だ」

「何が充分ジャン!?

全然全然充分じゃないジャン!?」

「充分デシテ、絶対神たる世界樹無き

 

 

今のデジタルワールドの円滑な運行にはな」

 

 

「ーーーーーー・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

ディアナモンのその言葉を聞いた途端、取り乱していたマルスモンの顔からも表情が抜け落ちる。

 

「なぁ、ディアナモン

ソレ、ウチのせい?」

「藪から棒に今更何デシテ・・・」

「前のウチが泣いてたお前をバカにしたから

だから、今のお前はそんなに辛くても苦しくても

泣けないし、誰にも頼れないジャン?」

「そうだとして、今のお前に何が出来る?

どれだけ謝られようがかつてのワタクシの心は晴れないし、この異常が治る訳でもない

そんな無駄なことをする時間があるのなら、アルフォースブイドラモンのようにデジタルワールド中を飛び回っていろ

それだけで馬鹿げた真似をするモン達への牽制になるのデシテ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・そっ、か

お前の言う通り、ウチ、難しいこと考えたり

アポロモンやウェヌスモンみたいに励ましたりとか出来ねー」

「だろう?、だから 」

「だから

 

 

とりあえず   お前をブッ飛ばすジャン」

 

 

「!!?、くっ!?、んぎ!」

 

宣言と共に再び唸る豪腕を三日月の鎌で受け止めれば、容易くヘシ折られる。

 

「ウチ、コレしか出来ないから

お前みたいに難しいこといっぱい考えて

バッチャンに勝つ方法見つけらんない」

「な!、にを!?」

「それでもウチはバッチャンに勝ちたい

ってか!!、勝つ!!

バッチャンがやったことよりも、やろうとしたことよりももっと

 

 

もっと、もっともっともっともっとぉ!!」

 

 

「ぐぎ!、ぅぐ!」

「テッペン行くんだろ!?、ウチらは!!

クロ公達が、舞台少女が日々進化してんなら!

なのにッ、前のお前より弱くなんなー!!」

「さ・い・じゃ・く・がハッ?!

ソレ以上弱くなる訳が、ない!、デシテ!」

 

炎を纏ったラッシュを折れたクレセントハーケンで必死に捌くディアナモン。

 

「・・・・・・・・・やっぱ弱くなってる

でも、そんなの当然ジャン

だって今のお前、お前の中からテンドーが

 

 

お前のパートナー【全て】が消えてんだから

 

 

オウリュウモンだってラセンモンだって

 

バンチョーレオモンだって

 

エンシェントグレイモンだって

 

エンシェントガルルモンだって

 

アルフォースブイドラモンだって

 

アルファモンだって

 

 

ウチ、だって   絶対の絶対に弱くなる」

 

 

「ーーー!?、ッーーー~~~!!」

 

 

その華奢な体躯が徐々に浮かび上がり

 

ロープ際ならぬ天井へと追い込まれていく

 

闘争神マルスモンの必殺技たる空中殺法だ。

 

 

「お前のことだからやれること全部やってる

それならウチがやってやれることなんて無い」

 

 

頭を腿で挟み 逆さの状態でガッチリホールド

 

更に、天井を思い切り蹴り上げて!

 

 

「だから!!!、お前ブッ飛ばして!!!」

「ぐ?!、ぎゃあ~~あ~~あ~~?!!」

 

 

回転を加えながらのぉ!! 急速落下ぁ!!

 

 

「無理矢理にでも寝台にブチ込んでやる!!

ジャンッッ!!!」

「ぎ゙ゃぶっ!!!・・・ッ・・・゙・・・・・・・・・」

 

 

 

パイルドライバー決まったぁーーー!!!。

 

 

 

「うっし!」

「何が『うっし!』だぁーーー!?

おのれェよくも姉様をーーーーーー!!!」

「あ、オロチモン

今、そうゆうのいいから」

「シュウぅうンッッ!゙!?」

『オロチモーーーン!!!』

「セイレーンモン、ディアナモン運ぶジャン

ウチ、これからケレスモン所から

 

 

毒林檎いっぱい採って

 

 

こいつに食わせなくちゃいけないから

 

 

クロ公がテンドー奪い返すまで!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「って、ワケジャン!」

〔『~ー~ー~ーッッッ!!!』〕

 

事の顛末を神機を通じて知ったパートナーデジモン達+『明けの遠吠え』は一斉に頭を抱える。

 

〔「う、うん・・・

とりあえず、まぁ、言いたいことは色々あるけど

 

 

ソレ絶対キリンのせいだよッッ!!!」〕

〔「だろうなァ」〕〔「「うんうん!!」」〕

 

 

〔「だから☆ちょっと☆待って☆みんな☆

アレって本当にキリンなの!?、オジサンの検索に出てくるキリンの鳴き声と全っ然違ったけど!?

というか月光チャン大丈夫!?

心は勿論、体の方もオレ超心配!!」〕

〔「あ、あいぼうが、き、きえる?

おれの、なかから?、き、きえ、きえっ

きキキきェッッキエきえェェええええ 」〕

〔「エンシェントグレイモンッ」〕

〔「ハッ!!、す、すまない!!

アルフォースブイドラモン!!

相変わらずお前の拳はよく効くな!!」〕

〔「あ、最速殿お久

実際に顔合わせんの何年ぶり?

・・・・・・・・・じゃなくて

そこん所どうなの?、闘争チャン?」〕

「大丈夫ジャン!

 

 

口いっぱいに毒林檎詰め込んだから!

 

 

暫くは何があっても起きないジャン!!」

「ソレ!、全然!、大丈夫!、じゃ!、ない!

 

 

デスぅうううううううーーー!!!」

 

 

「うお!?」

「ぉぶぇ!!?」

「?、???、??????

!、アルフォースブイドラモン!?

お前もお前でどうしたジャン!?、ディアナモン程じゃないけどお前も何か弱くなってっぞ!?」

 

光の速度で神殿へと飛び込んできた最速の聖騎士の腹筋にカウンターを食らわせ、床に沈める闘争の神。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

そんな光景を通信越しに察して、孤高の隠士は眉をひそめるながら目的地へと飛ぶ。

 

 

「(この状況はやっぱり良くないな、うん)」

 

 

アルフォースブイドラモンとディアナモン。

現在のデジカメワールドの治安維持の要と呼べる2体

 

 

故に、そのプレッシャーがあの臆病モン達を

 

 

必要以上に追い詰めている。

 

 

「(パートナーの記憶だけが消えるなんて

生きる為に必要な臓器を丸々失ったも同然なのに

それでもディアナモンは働き続けてたのは

きっと、そのせいで・・・・・・・・・

 

 

なのに、あいつらがあんなに頑張っても

 

 

ボクらは多くを取り零してるんだ)」

 

 

大異変以降、パートナーデジモンだった9体は

各々の立場から世界の平定に死力を尽くしている

 

 

尽くしていても尚、この混迷を止められない。

 

 

「君が今の世界を見たら、どう思う?

 

 

オメガモン かつてのボクの唯一の友よ」

 

 

目的地へと到達したアルファモンの眼前に聳え立つのは、地面を無理矢理くり貫いたような形状の台座に突き刺さった一振りの白い剣。

 

 

〔〔『ォ』〕『オオ・・・ゥ・・・・・・!!!』〕

 

 

「!、来たかッ」

 

 

その下に山積みとなった

 

 

世界を護るという固い決意【鎧と盾】と

 

 

侵略者を打倒せんとする鋭い戦意【剣】の

 

 

残骸が蠢き出した。

 

 

〔『カ』〕〔〔『ン、ジゥ!』〕〕

〔〔『『レイ!ドテイコク!』』〕〕

〔『削除セヨ!!』〕〔『ヤツ!ラ!』〕

〔〔『デ!タ!』〕〕〔『イッペン』〕〔〔『ノココァズズー!ゥゥ!!!』〕〕

「何度も言わせるなよ、うん・・・

ソレはもうレイド帝国じゃない

君達の戦いは終わって 」

 

 

〔〔〔『『『否!!!』否!!!

 

 

ワタシ!!タチハマダ!!戦エル』』〕〕〕

 

 

『〔世界ヲトリモドセ

 

 

アル!ベキ姿ニ・・・ーーーィーー!!!』〕〕

 

 

「・・・・・・・・・ッ」

 

 

肉体や生命を失っても尚、決して止まらない強い意思の群れを前に電脳世界の抑止力は聖剣を構える。

 

 

 

「(今の世界はとても平和とは言えない

もしかしたら、レイド帝国に支配されていた時より酷くなっているのかもしれない

 

 

それでも、デジタルワールドの問題はボクらデジモン自身が解決しなくちゃいけないんだ、うん)

 

 

もう二度とニンゲンの手を煩わせない為にッ」

 

 

己が掴み、そして手放した

 

 

あの星のキラめきを胸に秘めて。

 

 

 

 













その後ディアナモンは、数ヶ月間もの昏睡状態に陥り生死の境を彷徨いましたが・・・
無事パートナーの記憶は戻りました






ディアナモンがこの異常の原因を突き止めた場合


『元凶』に対し『あの』オロチモンの派遣を


わりと本気で画策します。


最も、当のオロチモンからしたら


「対象年齢外です、今後の成長に期待します」


なんですけれどね・・・・・・・・・。





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