狂わなかった「Z」の力 ~勇者王ガオガイガーif (睦月透火)
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GGG極秘資料ファイル ~if(更新日:01/12)

既に本編開始してんのにまだ予告貼ったままだったので資料置き場として改装しました。

オリジナルの設定や独自解釈などはココに集約されます。
単語とか分からなくなったら見直してみてね?

※ 07/29 シオンの外見に関する情報を追記。
  08/09 シオンの誕生日と関連情報を追加。
  08/24 アーマロイドの公開情報を一部更新。
  08/27 アーマロイド【蠍座】の情報を追加。
  09/18 アーマロイド【射手座】の情報を追加。
  09/26 アーマロイドの公開情報を一部更新。
  10/17 アーマロイド【双子座】の情報を追加。
  10/21 アーマロイドの公開情報を一部更新。
  10/22 アーマロイドの公開情報を一部更新。
  10/29 用語解説の項目を追加。
  01/27 用語解説に新情報追加、一部修正追記。
  01/30 アーマロイド【獅子座】、一部情報を修正。アーマロイド脳内出演声優の情報を追加しました。
  06/13 アーマロイド【牡牛座】の情報を追加。
  06/14 アーマロイド【山羊座】の情報を追加。
  07/25 アーマロイド【牡羊座】及び
     【天秤座】の情報(一部)を追加。
  08/05 アーマロイド【獅子座】の情報を更新。
  08/11 アーマロイド【双子座】の情報を更新。
  09/04 アーマロイド【水瓶座】の情報を追加。
  01/12 アーマロイド【獅子座】の情報を更新。
  01/29 オリジナルゾンダーロボの枠を追加。
    ゾンダーラフレシアの項目を追加。

―― CAPTION ――
以下は本作内のみの設定資料です
原作勇者王、及び関連ネタ作品とは一部が異なります



稀星(まれほし)シオン《Xion Marehoshi》

 sex:female  age:14  blood type:O

 誕生日:11月10日(蠍座)

 誕生石:トパーズ(希望・知性・繁栄)

 

 身長:160.2㎝  体重:48.2㎏

 スリーサイズ/B:83.8  W:60.2  H:84.5

 

 髪型:通常は飾り編みのある(クラウン)ハーフアップ

    戦闘時のアーマーによってはポニーテールに変わる。

 髪色:色は薄めの紫(ラベンダー)で、毛先より数㎝手前から水色へと変化(グラデーション)している。

 瞳色:通常は濃いめの青緑(いわゆる碧色)、戦闘・能力行使時には黄金へと変わる。

 

 見た目の総評としては、SAOの結城明日菜が最も近い。

 また、一部の能力行使中は胸元に『Z』の刻印が現れる。

 

◇ ■ ◇ ■ ◇ ■ ◇ ■ ◇

 

 本作オリジナル主人公。中学入学前から難病治療の為に渡米し、地球外知的生命の生み出したストレス浄化システムの中枢「Zマスタープログラム」と遭遇……奇跡の融合を果たし、超進化人類エヴォリュダーのプロトタイプへと至った経緯を持つ少女。

 

 元はアニオタの転生者で、この世界の出来事を“1つの作品”として知っていたが、それを自覚したのはガオガイガーの初合体シーンを目前にした時だった。

 その後、原作崩壊と自身の命の危機から逃れるべく行方を眩まそうとした所、偶然出会った少年「天海 護」を庇った事によりGGGへと連行……それから紆余曲折あって護少年と同様の特別隊員待遇としてGGGに参加し、陰ながら機動部隊や所属スタッフらのサポートを行っている。

 

 頭の出来は良い方で、姿を偽って都立総合病院の精神科医として働いたり、獅子王麗雄博士やGGGの研究員達との会話が成り立つ等、前世記憶も合わせた豊富な知識量も相まって頭脳派。また、超AIの育成方針にも関与しており、氷竜・炎竜のAI教育にも尽力した。

 

 護の前では「クールなお姉さん」を装ってはいるものの、精神的に大人になりきれない部分が残っており、感情に流されて行動してしまった結果、時折ポカをやらかす事も……

 

 本来は誰にでも優しく、少しばかり優柔不断……また、押しに弱い性格であった。

 

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◇ ゾディアートメイル ◇

 

 シオンが戦闘時または後述のアーマロイド召喚時に纏う戦闘用防護装備。

 高い自己再生能力による継戦能力に優れ、モーフィング可変機能によりあらゆる状況への適応能力も備える。

 ゾディアート(黄道十二星座)の名の通り、様々な能力や兵器の数々も内包しており、鎧を媒体にして任意で呼び出す事が可能な『アーマロイド』と呼ばれる半生体兵器群の召喚も保有能力として含まれている。

 

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■ゾディアート・アーマロイドシステム

 

 ゾディアートメイルに内包された機能の一部によって召喚・使役される半生体兵器群。

 主に黄道十二星座に(なぞら)えた姿や能力を持っており、主に「人型」「生物型」「無機物型」の3タイプに分類される。

 主に人型はシオン自身やサイボーグ凱が用いる装備という形で能力を発揮し、生物型は基本的に巨大なボディを有しており直接戦闘やガオガイガーの戦闘支援向き、無機物型は特定の事象制御による各種サポート能力に秀でている。

 

※ 以下、アーマロイド紹介(登場順)

 

→ 乙女座(ヴァルゴ)『機甲戦姫』フレームアームズ

 

 シオン自身が纏うゾディアートメイルを指向性変化させたもの。便宜上アーマロイドとして登録しているが、自身が装着する鎧扱いの為自意識は持たない……また、シオンは後々更なる改造をするつもりらしい。

 最初に纏った形態は『轟雷』、雲ゾンダー時の形態を『スティレット』と呼称・識別しており、それぞれ『攻撃力』と『機動力』に特化した形態である。

 

 また、その他にも幾つか違う呼称・能力の形態があるらしい……

 

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→ 魚座(ピスケス)双魚機獣(そうぎょきじゅう)』ピスケガレオン

 

■voice actor「竹内順子(サメ)」「水樹奈々(イルカ)」

 

 脳内で本格的な設計図を組み上げ、初めて眷属として作成した水棲生物型のアーマロイド。

 水上バイクの様なハンドルと座席を背部に有し、高い機動性と索敵能力を持つサメ型マシン。

「双魚機獣」の名の通り別にイルカ型が存在し、性能・武装は共通しているがそれぞれ異なる固有の性格を持っている。

 

 機体周囲に存在している任意物体の「表面」を『水面』として事象的に捉える事で物体をすり抜けたり、面に沿っての移動または面に対しての潜航を可能にする【空間位相潜航(フィールドダイブ)】という特殊能力を備えており、あらゆる地形を最短距離で移動可能。その為、聳え立つ壁であっても滝に突っ込む感じですり抜ける事が出来る為、コンクリート壁の様な遮蔽物は全くといって良いほど障害にならない。

 ただし、この能力は敵や味方などの意志を持つメカのボディには作用せず、また面積的に自身を上回るサイズでないと効果を発揮できないという欠点がある。

 

 なお、その他にも【超音波反響索敵(エコーロケーション)】など、海洋生物が持つ能力を多数保有している。

 

 本作第45話における対ゾンダリアン(ペンチノン)戦の最中にZコア・ドライヴを与えられてそれぞれが進化しており、機動性・柔軟性を始めとする各種性能の大幅向上と、浮遊能力の追加により全領域での活動も可能となった他、GGG勇者ロボ軍団の1人である「ボルフォッグ」との連携・合体機構が付与された。

 

【基本性能】

機体サイズ

  全長:3.75m 全幅:1.29m

  全高:1.24m 重量:1.57t

地形適応:陸A 海S 空B 宇A

移動速度:最高時速150km/h(水中時約81kn)

潜航能力:深度約5500m/最大24時間

    (対水圧フィールド展開中は深度無限)

跳躍高度:約250m(垂直跳躍時・助走含まず)

跳躍距離:約80m(水平跳躍・1ジャンプ最大距離)

動力源:高効率水素エンジン → Zコア・ドライヴ(進化時に搭載)

 

【武装・機能】

■頭部バルカン砲×2

■側面部展開式3連装魚雷発射装置×2

■折り畳み式ロングレンジバスターキャノン×2

■底部樽型ロケットミサイル「スパイラルランチャー」(進化後は撤廃)

■電磁ネット射出機構(捕縛・拘束用)

■水中機雷敷設装置

■対水圧防御フィールド発生器

■潜望鏡付属式水中投光システム

■変形・合体機構(ボルフォッグとの合体)

 

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→ 蟹座(キャンサー)機蟹武刃(きかいぶじん)』ダイキャンサー

 

 ■voice actor「小野健一(※人型形態時のみ)」

 

 アーマロイド初の大型機にして、ガオガイガーの戦闘サポート用に開発された甲殻類型戦闘機械獣。

 多脚型戦車の基礎設計に蟹やヤドカリを外装モデルとした機体で、地形を問わず走破性が高く、横方向に限り最高時速150km/hを出せる。

 旋回性能も高く、地上戦では持ち前の防御力を活かして盾役を務める。

 また、両腕部にあたる多機能型蟹鋏「シェルシザーアーム」による格闘戦も得意であり、刃部分を延伸・展開して発動する必殺技【ギガンティックシザーズ】はゾンダーロボをバリア諸とも空間的に切断する超威力を誇る。

 

 なお、戦闘力と汎用性を更に高める機構と、ガオガイガーの戦闘サポート機能も備えている。

 

【基本性能】

機体サイズ

  全長:30.8m 全幅:47.0m

  全高:35.2m 重量:763.9t

地形適応:陸A 海A 空ー 宇B

移動速度:約60km/h(最高時速:150km/h ※横移動限定)

水中速度:約65kn(フルブースト時:約80kn)

潜航能力:深度約15000m/時間無制限

跳躍高度:約150m(垂直跳躍時)

動力源:Zコア・ドライヴ(メイン)×1

(サブ):N2-リアクター×2

 

【武装・機能】

■シェルシザーアーム×2

■ウォーターブレスカッター

■バブルマイン

■ディメンジョンアーマー

■ギガンティックシザーズ【必殺技】

■変形機構(巨刃形態(タイタンフォートラス)へ変形)

 

(変形後)ダイキャンサー

 一部ではこの形態を「巨刃形態(タイタンフォートラス)」とも呼ぶ。

変形後はほぼ完全な人型となり、顔で感情を表せる様になる他「蟹座形態(シザーフォートラス)」時の弱点である移動速度も克服しており、短距離に限定するならば瞬間移動の如きスピードを(純粋な体術で)出せる。

 その他、主な攻撃方法も鋏から刀に代わり、その剣捌きで以てゾンダーを圧倒する。

 なお、一部武装が使えないのは仕様で、誤爆を防ぐ他【シザーズH&H】発動中の邪魔を排除する為。

 

【基本性能】

  全高:42.2m 総重量:763.9t

地形適応:陸S 海B 空- 宇A

移動速度:約160km/h

(※100m圏内なら瞬間移動が可能)

跳躍高度:約250m(垂直跳躍時)

 

【武装・機能】

■可変機構(蟹座形態(シザーフォートラス)へ変形)

■隠し腕「キャンサーエッジ」

    (背部・肩部・腰部に各2本ずつ、小太刀を搭載)

■斬蟹刀「蟹の巨刃(タイタンカルキノス)

    (以下、使用技はダイ◯ンガーとほぼ同様にて省略)

雲耀(うんよう)の太刀・空凪(そらなぎ)【必殺技】

 

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→ 蠍座(スコーピオ)重天魔蠍(じゅうてんまかつ)』グラヴィスコルード

 

 ■voice actor「子安武人」

 

ブラックホールに飲まれたシオンの危機に際し、異常進化したZコア・ドライヴを内包する超巨大な蠍型のアーマロイド。

ブラックホールの超重力に晒されても平然と動き回れるほどの馬鹿げたパワーを持っている他、エネルギー吸収能力や、再生能力と防御力に物を言わせた恐るべき環境適応能力も併せ持つ。

素体のフレームから素粒子段階で強化され、更に超重力による圧縮によって生成されたボディは凄まじい防御力と重量であるが、腕部と脚部の小型重力制御装置により自重を支えている為、地形を陥没させる事は無く、腕部の制御機構は攻撃にも転用可能な出力を誇り、腕部の鋏で捕らえた相手を軽々と圧砕する。

その他、攻撃面では全身に配された様々な武装や火砲、防御面も超強力なエネルギーシールド発生器を備え、全身に張り巡らせる事でマグマの中でも活動可能。

なお、本機の性能をフルに発揮させるには搭乗者が必要であり、無人稼働には幾分か性能低下を余儀なくされる。

 

余談だが、当初のコンセプトはサポート機だったものの、シオンの生命の危機に際してボディ建造前のコア・ドライヴのうち1個が暴走……危機に瀕したシオンの下へ転送された後、大量の無機物とブラックホールのエネルギーを吸収・異常進化したものであり、変質したそのコンセプトは『単機であらゆる危機を排除し、如何なる状況でも主を守り通す不落要塞』となっている。

 

【基本性能】※( )内は尾部の可動による変動

機体サイズ

  全長:194m(288m) 全幅:52.2m

  全高:107m(46m)   重量:不明

地形適応:陸S 海S 空- 宇A

移動速度:100km/h(走行時)/72kn(潜航時)

潜航能力:深度無限(地中・マントル層にも対応)

跳躍高度:約80m(重力制御中は約100m)

動力源:Zコア・ドライヴ(変質型)×1

(補助):マイクロブラックホールエンジン×2

 

【武装・機能】

■頭部レーザーファング×2

■腕部ストライクレーザーバイトシザーズ×2

■グラビコンブレード×6

(腕部×2 尾部先端×2 ブースター部×2)

■頭部バルカン砲×4

■ハイパーEシールドジェネレーター

■腕部収納式リニアキャノン×2

■テールビームガン×2

■尾部レーザーキャノン×2

■背部2連装重力衝撃砲(グラビティショックカノン)

■大口径荷電粒子砲(尾部先端)

■腕部内蔵重力制御(グラビコン)システム×2

■脚部内蔵重力制御(グラビコン)システム×8

■推進用ロケットブースター×2

 

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→ 射手座(サジタリウス)黒装魔弾(こくそうまだん)』クーゲルザウター

 

 ■voice actor「矢野妃菜喜」

 

不足が明確な空戦戦力のカバーと、高機動戦に対応するべくシオンがGGGの協力を得て開発した【射手座】(サジタリウス)の称号を冠する大型アーマロイド。

人型形態での自由飛翔を可能とし、ガオガイガーかそれ以上の空戦能力を期待された設計。

主に射撃戦闘を得意とする他、一対多の戦いを前提とした高い制圧能力を持っている。

 

主武装は両腕に持つ二丁一対のボウガン型射撃武器「ヴンダーワーフェ」。

長銃身のライフルモードへの可変機構と銃身同士の合体機構を備えており、パターンによって様々な射撃と火力の調整を行う事が可能。また、この武器は他の勇者たちも使用可能なユニバーサルデザインになっている。

他にも、円形の肩部バーニア内蔵シールドを敵に投げつける「ワイルドシュルター」、光学兵器を反射する攻防一体のマント「ナノラミネートリフレクター」などの特殊装備も充実しており、徒手空拳時の打撃力増幅や空中での急激な軌道変更を可能とする「インパクトプレッシャードライヴ」はGGG側の発案で搭載され、ディバイディングドライバーの空間制御技術が流用されている。

 

本体はシンプルな西洋甲冑を模しながらも流麗なデザインの鎧パーツを纏っており、露出している手足等だけは細いままな為一見するとアンバランスにも見えるが、鎧を外せば女性的なフォルムの素体が見える様になっている。

 

【基本性能】

  全高:49.2m 総重量:■■■t*1

地形適応:陸S 海C 空A 宇A

走行速度:約500~700km/h

(空中):約10,404km/h → マッハ8.5

跳躍高度:約700m(垂直跳躍時)

動力源:Zコア・ドライヴ(進化型)✕1

 

【武装・機能】

■可変式パワーボウガン「ヴンダーワーフェ」

 →ボウガンモード(通常弾形態)

 →バスターモード(ビームライフル形態)

 →デュアルスナイプ(直列連結・狙撃銃形態)

 →ツインバスター(高出力ビーム照射形態)

 →レヴ・クレイモア(ハイブリッド散弾銃形態)

 →レイ・ペネトレーター(貫通ビーム発射形態)

 →サジットアポロ(最強火力形態)

■肩部シールドブーメラン「ワイルドシュルター」

■腰部内蔵型散弾式ニードルガン「ナーデランツェ」

■マント型シールド「ナノラミネートリフレクター」

■四肢内蔵インパクトプレッシャードライヴユニット×4

■蓄熱・放熱システム「エアロインテークアキュメーター」

■変形機構(戦迅騎馬形態へ変形)

 

(変形後)クーゲルザウター「戦迅騎馬形態(プフェールト・モード)

 

システムチェンジにより、味方を乗せたまま音速の壁を突破する事を可能にする戦迅騎馬形態。

見た目はほぼSRWOGシリーズに登場する「DGG2号機」が変形する“ソレ”に似ている。

 

通常形態での火力に割り振られる出力全てを機動力に振り切って特化させ、乗り手の火力を相手に叩き付ける事だけを求めた超高速機動特化形態であり、その背に火力要員を乗せて運用する事が前提となる形態でもある。

その為自身の攻撃手段は乏しくなるものの、乗り手に高い機動力・俊敏性を付与して大きなアドバンテージを生み出す為、結果的な攻撃力の向上は凄まじいものとなる。

なお、この形態であっても攻撃自体は可能であり、前脚基部にあるウェポンラックごと「ヴンダーワーフェ」を前方へ向けて射撃したり、前・後脚を用いた“蹴撃”という実に馬らしい攻撃は行える。

 

実はシステムチェンジすると闘争本能に火を着けるが如く“走りたくなる”らしく、通常形態である人型へと戻ると、それまでの行動を思い出して激しく動揺したり、言動の後悔や恥ずかしがる事があるとかないとか……

 

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→ 双子座(ジェニミ)『◯◯◯◯』

 

 ■voice actor「佐久間レイ(姉)、日髙のり子(妹)」

 

かつては、意識不明となったシオンの身体を守る為、基礎データすらも未完成なまま活動を始めた姿なきアーマロイド。

不測の事態に際した活動故に、その力と存在は酷くアヤフヤであった為、来るべき原種との決戦に備えてシオンは【双子座】の基礎データを2つに分け、その名に準えた“姿”と“力”も2つ用意し、それぞれに与えた。

 

その結果生まれた似てない双子(二卵性双生児)の2人ではあるがその仲は良好で、特有能力「双星伝心(ツインズ・シンクロニティ)」によりどう頑張っても2人が誤解する事はない。またこの能力は空間的・次元的な制約を受けない為、喩え次元の壁や時間軸の違いを挟もうとも常に繋がっており、如何なる手段を用いても妨害する事はできない。

なお、本体は全長100m級の大型機らしく、亜空間内にて未だ建造中である為か詳細は不明。

 

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獅子座(レオ)六装獅機(りくそうしき)』ストラトスライガー

 

 ■voice actor「???」

 

パスダーとの最終決戦に向けてGGGの監修と協力の下、製造された獅子型戦闘機械獣。

基本運動プログラムはギャレオンを元に開発しているが、人型(ガイガー)への可変機構を廃し、代わりに換装装甲/追加装備システム「CAS」を実装した他、実験的にオリジナルとほぼ同クラスの「GSライド」を連動制御回路としてメインジェネレーターと直結する事で、従来よりも高品質の制御系を獲得。その為従来機よりも基礎能力が大幅に変動する代わりに最大値が上昇。「勇気」による限界突破の可能性も設計段階から視野に入れられている。

武装は素体であるライガー自体には最低限しか装備されておらず、大半は「CAS」による変更が効く為、状況に合わせて換装が可能。換装自体も亜空間ゲートを応用する為場所を選ばず、必要な所要時間*2さえ稼げば問題ない様になっている。

なおZコアに内包された遺伝子配合率は驚異の75%に達しており、初期段階から凄まじい運動性能と反応速度を誇る事が分かった為、稼働時における安全性の問題からコクピットブロックの搭載を断念……完全な無人機として設計変更されたという経緯がある。

 

 

【基本性能】

機体サイズ

  全長:25m 全幅:7.95m

  全高:8.2m 重量:72.5t

地形適応:陸S 海C 空- 宇B

移動速度:350km/h(通常時)/520km/h(最大加速時)

跳躍高度:約120m

動力源:Zコア・ドライヴ(特殊型)×1

(連動):GSライド(セミオリジナル型・GGG監修)×1

 

【武装・機能】

■ストライクレーザークロー×4(各脚爪部)

■AZ-330 二連装ショックカノン(胸部下方)

■エネルギーシールドジェネレータ(頭部上&両側鬣部)

■CAS専用ハードポイント×15

■小型マルチセンサー(尾部先端)

 

 ※ストラトスライガー『CAS』バリエーション

 

正式名称は「チェンジング・アームズ・システム」。

その名の通りストラトスライガー専用に開発された6種類の強化形態へと変化させる換装機構で、それぞれ機能や武装を特化・専用化した構造になっており、本体各部に配された15ヶ所のハードポイントに接続される追加武装/増加装甲システム。

各部追加パーツは高度にブロック化されている為、破損してもその場で放棄し、再換装によって容易に取り替える事が可能となっている。

 

 →(換装)高火力砲戦仕様「パンツァー」

 

ストラトスライガー専用CASの高火力・砲撃戦仕様。

基本的には近接格闘戦を切り捨て、重装甲による守りと砲撃戦に特化させたコンセプトであるが、装備重量の軽減策として搭載した“グラビコンシステム”が予想以上に効果を発揮した為、他の仕様にこそ劣るものの格闘戦にも対応可能となり隙が無くなった。

なお、グラビコンシステムによる質量軽減効果はパンツァー自身にしか及ばない為、敵からすればこの大質量がF1並の速度で突っ込んでくるという恐怖を味わう事になる。

なお、総重量のせいか水中戦が不可能となるのはお察し……

 

【基本性能】(装備後)

機体サイズ

  全長:25.2m 全幅:8.3m

  全高:10.5m 重量:269.7t

地形適応:陸A 海ー 空ー 宇B

移動速度:350km/h(通常時)/410km/h(最大加速時)

 

【武装・機能】(追加ぶんのみ)

■AZ-440 対装甲電磁レールガン×2

■125mmレーザーマシンガン(尾部)

■AMX-666 6連装ミサイルポッド×4

■AZ-447 8連装マイクロミサイルランチャー×4

■AMX-729 展開式クラスターミサイル×2(腰部左右)

■AZ-228M 12連装ミサイルランチャー(背部前方)

■AZ-901 2連装長射程(ロングレンジ)ハイブリッド砲「グレイヴカノン」×2

■AZX-225 3連装トマホークミサイル×2(後脚)

■AZ-405 3連装グレネードランチャー(胸部下方)

■マルチロックオンシステム

■3次元レーダー&複合センサーユニット

 

= = = = =

 

 →(換装)高機動特化・空戦仕様「イェーガー」

 

ストラトスライガー専用CASの高速機動戦闘仕様。

メイン装甲色は青。超高機動戦闘と空間機動性能に特化させた武装バリエーションで、通常形態を上回る機動性と高度な飛翔能力を本体に付与する。

背部ユニットには1基でガオガイガーの総推力と同等の出力を発揮する「大型イオンターボブースター」を背部左右に2基搭載。更に機体各部の軽量装甲「フェアリングカウル」は高密度マイクロスラスターベーンの集合体となっており、高速移動や空中での姿勢制御、安定性の確保に大きな効果を発揮する。

なお、追加武装は頭部のレーザーバルカンにウイング基部の旋回式レーザー機銃と超高初速レールガン、ブースター部の展開翼と尾部先端にはZi−メタル製の刃翼(リーオブレイド)を装備し、速度を最大限に利用した一撃離脱戦法を得意とする。

 

【基本性能】(装備後)

機体サイズ

  全長:25.5m 全幅:8.3m

  全高:9.1m 重量:80.5t

地形適応:陸B 海D 空A 宇A

移動速度:390km/h(通常時)/700km/h(最大加速時)

空中速度:4,284 km/h → マッハ3.5(最大加速時)

 

【武装・機能】(追加ぶんのみ)

■AZ-208 頭部レーザーバルカンポッド

■AZ-667 旋回式レーザー機銃×2

■AZ-990 超高初速レールガン×2

■大型イオンターボブースター×2

■刃翼「リーオブレイド」×3

 

※ その他の形態の詳細は本編登場までお待ちください。

 

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→ 牡牛座(タウラス)鐵甲金牛(てっこうきんぎゅう)』アイゼンナシュティア

 

 ■Voice actor「森川智之」

 

激化するであろう原種との戦いに備え、シオンが密かに建造していた【牡牛座】用の戦闘用ボディ……シオンの多忙により途中放棄されていたそれを元に、牡牛座(対応コア)本人が勝手にアップデートとチューンナップを施して完成した【牡牛座】の大型アーマロイド。

外観は真紅に彩られた“某・猛牛型戦闘機械獣”にも似ており、防御力とパワーに優れるが、背部には多連装突撃砲の代わりに中折式の大型リボルバーらしき物体や、四角い箱等が乗っかっている。

本機には簡易型の可変機構が採用されており、猛牛形態(タウラス・フォーム)から立ち上がる形で人型形態(リーゼ・フォーム)へと変形可能。

 

【基本性能】※猛牛形態(タウラス・フォーム)

機体サイズ

  全高:10.8m 重量:230.0t

  全長:20.6m 全幅:7.5m

地形適応:陸S 海D 空ー 宇C

走行速度:130km/h

 

【武装・機能】

■頭部クラッシャーホーン

■クラッシャーメタルスパイク(脚部先端)

■3連装加速衝撃砲

■8連装ミサイルポッド✕2

■5連装ガトリング砲(背部/左腕)

■小口径2連ビームガン(猛牛形態のみ・尾部先端)

■広域型弾頭炸裂放射システム「タウラスクレイモア」✕2

回転弾倉(リボルバー)式大型バンカーバスター

■可変機構(※人型形態(リーゼ・フォーム)へ変形可能)

 

(変形後)アイゼンナシュティア「人型形態(リーゼ・フォーム)

 

【基本性能】※人型形態(リーゼ・フォーム)

  全高:23.8m 重量:230.0t

地形適応:陸S 海B 空C 宇A

最高速度:250km/h

 

変形はまず立ち上がり、背部のバンカーバスターが右腕、5連装ガトリング砲と3連装衝撃砲が左腕へと移動し、四角い箱型(◯ルトアイゼン譲りの超危険)武装「タウラスクレイモア」は両肩に装着されている。

また尾部と頭部は内部に収納され、新たに人型用の頭部を展開。胴回りや背部等の一部が、猛牛頭部のミサイルポッドと共に後脚へと移動して変形完了となる。

移動元と先の装甲内には小型ながらも大出力のスラスターが内蔵されており、猛牛形態では不可能な高速でのホバリング移動やブーストジャンプ等が可能になる他、人型ならではの四肢を使った格闘戦も可能。

しかし、猛牛形態でも決して速くない素の旋回速度は据え置きのままとなっている。

 

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→ 山羊座(カプリコーン)魔羯槍機(まかつそうき)』シュトゥルムボルグ

 

■Voice actor「水谷優子(故)」*3

 

牡牛座と同じく、途中放棄されていた戦闘用ボディを勝手にカスタマイズし、自分専用のチューニングを施した山羊座の大型アーマロイド。

外観は各所に赤い宝石をあしらった白い装甲に、青や緑の差し色が入った騎士っぽい甲冑を纏った()()()()()()()()()()()()()

山羊座なのに悪魔の素体というのは、ヤギ頭の悪魔「バフォメット」をモチーフとしており、悪魔から転じた“魔術”を連想させ、悪魔を操る中身、つまり自分は魔女だから……と本人は語る(さすがに強引すぎないか?)

戦術的な特徴としては、携行するメイン武装「ガンスフィアリッター」を主軸とした中〜遠距離射撃と、機動力に特化させた高機動型砲戦機体。

鎧の如き外観も実はただの“空力カウル”のようなものであり、防御力はほぼ皆無なのだが、コア・ドライヴから供給されるエネルギーを用いた、異様な耐久力を持つ不思議なバリアシステムで脆弱性や構造維持をカバーしている。

その僅かな装甲の重さすらも限界ギリギリまで切り詰めた高機動能力……特に運動性・俊敏性は圧倒的で、長距離までとは行かなくともその瞬間加速力はマッハを軽く超えており、唯一、クーゲルザウターの最高速度に追い付く程の超加速……からの完全停止をコンマ秒単位で実行可能という凄まじいもの。

その為、あたかも分身している様に見える超機動すらも容易に行い、本当に“当たらなければどうということはない”を地で行く機体となっている。

 

【基本性能】

  全長:21.9m 重量:65.5t

地形適応:陸B 海C 空A 宇A

最高速度:12,240 km/h(マッハ10)

動力源:Zコア・ドライヴ(変質型タイプE)

 

【武装・機能】

■マルチトレースミサイル✕2(腰部)

■レーザーソード✕2(爪先)

■3連装ビームカノン(左腕)

■ハイブリッド式バスターライフル「ガンスフィアリッター」

 ├A*4モード(速射式貫通弾)

 ├B*5モード(炸裂式徹甲弾)

 ├C*6モード(分裂型拡散榴弾)

 ├D*7モード(近接用散弾)

 ├E*8モード(高エネルギービームライフル)

 └X*9モード(超収束エナジーブラスター)

■複合バリアシステム「アブソリュート・テラー・フィールド」*10

空間制御型戦闘飛翔翼(リッターバトルウイング)*11システム

 

──────────

 

→ 天秤座(ライブラ)『◯◯◯◯』???

 

■Voice actor「小野賢章」

 

シオンの現状に際し、自らの本体よりも通常用素体の制作を優先させ、シオンの傍らに現れた天秤座のアーマロイド。

性格は基本的に温厚だが、敵として認識した相手には完全に容赦なく、また慈悲も持ち合わせない反面、身内や味方には非常に甘く、特に生みの親であるシオンに対しては信奉に近い感情を向けている。

なお本体は科学的にあり得ない組成の超金属で構成された置き型の天秤で、中央の支柱や秤皿等に埋め込まれた多種多様な宝石類を媒介に戦闘幻影結晶体(スタンド)を展開し、戦闘やサポートを行う事が可能。

また、天秤としての本来の能力は“特定事象の意図的コントロール”であり、その効果が絶大である反面、関連する事象から特定の値を強制的に《対価として》同様に奪われる事となる。

(※一例として“相手の回避能力を一定値引き下げる”とした場合、対価として“自身の防御力”を対価として同様に差し引かれる……といった具合)

因みに幻影結晶体の種類は本体に埋め込まれた宝石類の種類と名称に対応しており、現状、活動記録のある戦闘幻影として確認されているのは、『白銀の煌星(スタープラチナ)』のみである。

 

【基本性能】

  全長:状況に応じて変動する為不明

  重量:状況に応じて変動する為不明

地形適応:陸A 海B 空ー 宇A

 

──────────

 

→ 牡羊座(アリエス)羊光霊機(ようこうれいき)』???

 

■Voice actor「神奈延年」

 

シオンの現状に際し、本体よりも通常用素体を優先的に構成、満を持して彼女の傍らに現れた牡羊座のアーマロイド。

粗暴な言動ながら性根の部分には彼なりの優しさがあり、厳しい物言いの裏には信頼や感心が隠されているという不器用キャラ。

原種編に登場したアーマロイドの中では最速で戦闘にも耐えうる本体の建造が間に合っており、持ち前の技量と勇敢さを併せ持つ切り込み隊長として牡牛座、蟹座と共にシオンの為、その拳を振るう。

戦闘スタイルとして手持ち武装や汎用火器類を一切持たず、徒手空拳や専用技能《氣功武闘者(オーラバトラー)》による特殊なエネルギーや、肘に取り付けられた『聳弧角(しょうこかく)』と呼ばれる一対のブレード等を用いた独自の武技のみ。

更に中国拳法を基礎にした独自の闘拳術を身に付けており、その破壊力は範囲以外、素体でも本体でもほぼ変わらない。

 

【基本性能】

  全長:41.2m  重量:129.6t

地形適応:陸A 海B 空C 宇A

最高速度:220km/h(瞬間最高速度:マッハ4)

動力源:Zコア・ドライヴ(中期進化型タイプS)

 

【武装・機能】

■青龍鱗

■舞朱雀

■白虎咬

■玄武剛弾

■奥義・麒麟

 

──────────

 

→ 水瓶座『◯◯◯◯』???

 

■Voice actor「水谷優子(故)」

 

シオンの現状に際して、通常活動に向く人型素体の製造のみで表舞台に足った【水瓶座】のアーマロイド。

水色の特徴的な髪をポニーテールにし、煽情的なシースルーの羽織りなど、明らかに布面積の少ないモノを着込んでいるが、体格が決定的に幼く女性的な起伏も皆無なためか、服装などには誰も突っ込まない……

しかし、精神的にはグラヴィスと同等に大人で理知的。しかも善悪の判断や思考も達観的なため、彼女の独特な言い回しや「〜〜ですの」という口調さえ無ければ完全に“仙人”とか“賢者”とか言われる娘である。

なお、能力は未だ謎に包まれており、目立つ活躍をしていないが故に戦闘能力は低いと思われる。

 

ちなみに、こう見えてシオンと同じく“ガンプラ”にハマっており、総合的なフィーリングや統一感のある外見で、非常に合理的かつスマートなオリジナル機体をいくつか制作している。

 


 

─ オリジナルゾンダーロボ解説 ─

 

ゾンダーラフレシア

 

閑話「君に捧ぐ花言葉」にて登場した超大型のゾンダーロボ。

その余りにも巨大な身体は人型ですら無く、世界最大の花ラフレシアを模した様な構造で、中心部上端の内部にゾンダーコアが存在している。

中心部を守る5枚の花弁の様なユニットそれぞれに約1万本の戦闘用小型有線式デバイス「テンタクラーロッド」が存在し、その先端部には高出力かつ速射性の高いビームカノンと重装甲を物ともしないチェーンソーが取り付けられている。

また、各花弁ユニットの上下端にメガビーム砲、中央ユニット下端には拡散メガビーム砲を装備し、その一発一発の威力はプロテクトシェードでも反射しきれない大出力であると推定されている。

なお各ユニットに接続部は無く完全に独立しており、それぞれが内蔵している重力制御機構で浮遊、各部に装備された熱核スラスターノズルで空中・宇宙を問わず飛行可能。

その外見は超大型クラスに質量が膨れ上がっているものの、“劇場版 機動戦士ガンダムF91(フォーミュラナインティワン)”に登場したMAラフレシアに酷似している。

 

【基本性能】

機体サイズ

  全長:約1000m  全高:約375m

  重量:測定不能

地形適応:陸ー 海ー 空B 宇A

最高速度:約200km/h(宇宙時の推定値)

動力源:ゾンダーコア(リラ)×1

    熱核融合炉×5

    大出力発電用ソーラーパネル(数万枚)

 

【武装・機能】

■テンタクラーロッド(約5万本)

 ┣先端部ビームカノン

 ┗磁場誘導式チェーンソーカッター

■メガビーム砲×10

■拡散メガビーム砲×1

■ゾンダーバリア

 


 

用語解説

 

■GGG(ガッツイー・グローバル・ガード)

 

国連公認の国際援助機関にして、世界随一の科学力を誇る国際防衛機関の通称。

前身は日本の内閣秘密諜報組織「ID-5」と宇宙開発公団であり、国際的機関として活動に支障が無いよう諸外国へも大なり小なり支部が置かれている。

原作同様に本部所在地は東京湾埋立地の「Gアイランドシティ」で、公団ビルの地下部が本部施設となっているのは同様だが、上層部のシティ部分は時代や世情の違いからか誘致が進んでおらず、都市化計画も未だ途上であるため建設中や誘致待ちの土地が多い。

 

初期から国連公認の国際援助機関として設立されており、宇宙開発公団はその下部組織として併合されている。

世界十大頭脳である「獅子王麗雄」とその兄である「獅子王雷牙」を擁する為、世界トップレベルの科学力を持ち、国際援助機関として様々な技術開発やインフラ整備、災害救援などを国際的に行っている他、大規模な国際犯罪やテロ事件等の解決にも援助の手を出している。

闘病中のシオンもその縁でスワン・ホワイトと知り合っており、彼女の運命を大きく変えるきっかけとなった。

 

──────────

 

■Zi-メタル(ズィーメタル)

 

稀星シオンの体内で、狂っていなかったZマスター由来のゾンダーメタルから自己進化を繰り返して生まれた未知の自律自覚型金属細胞で、その根幹制御には生命体の遺伝子情報を必要とする。

自己再生・自己増殖・自己進化の三大理論に、取り込んだ遺伝子情報に基づく自律自覚型制御機能を併せ持っており、意図的に遺伝子情報を消さない限り強力な自律制御能力が働くので、某デ◯ルガン◯ムの様な暴走などは起きない。

またゾンダーメタルと違い、与えられた遺伝子情報によってそれぞれが固有存在へと変貌するので、後述の「Zコア・ドライヴ」さえあれば、外部から追加で制御を行う必要もなくなる。

また、Zi-メタル採用機の動力源としても「Zコア・ドライヴ」は必要不可欠であり、シオンは自身の心臓が変貌したオリジナルのコア……アーマロイド達は各自の持つ量産型コア・ドライヴによってその細胞組成を自律制御している。

 

中でも強力な再生能力は、四肢の欠損程度なら秒で治す他、コアまたは脳機能が停止しない限り“ほぼ不死身”であり、生物的な細胞分裂の限界が存在しないため対象は老化をしない。

また、取り込んだ遺伝子情報に含まれるデータ量によって個体の様々な能力が上下する。

 

 

──────────

 

■Zコア・ドライヴ

 

稀星シオンが超進化人類へ至った際に誕生した新たな心臓であり、「生物の心臓」と「脳機能」が融合した生体組織。

各アーマロイド達の「動力源」兼「脳機能」や「固有人格」を形成している調律連動型生体動力ユニットでもある。

 

稀星シオンの体内を蝕んでいた頃、Zi-メタルが原初状態から最初に模倣したのが生物の“ソレ”であり、故にZi-メタルには必須かつ最適解の動力システム。

稀星シオンの体内に存在する物を“原初”(オリジナル)とし、各アーマロイドに分配された物をそれぞれ実装順に“○号炉”と位置付けら(ナンバリングさ)れ、アーマロイド各機の主動力源兼頭脳となっている他、自律制御の際に発生する様々なデータ処理や重大欠損時のバックアップなどのやりとりを“亜空間通信”を介しリアルタイムで連動制御している。

そのため炉自体を体外へ取り外す、または空間的に“存在ごと消去”しない限り自動的に修復されるし、基本的に外部から炉を止める事も不可能である。

 

しかし、弊害として炉自体が予期せぬ事態により“暴走”したり、()()()()()()()等で起こる継続的ダメージには致命的に弱く、強すぎる自己修復能力のせいで微弱なダメージは無視してしまう事から、「生体動力システム」特有の欠点は抱えたままとなっている。

しかも各アーマロイドのデータは()()()()()()()()という観点から“原初”(オリジナル)……つまりシオンへも送られてしまう為、各アーマロイドのコアが異常事態に陥ると、必然的に彼女へもダメージが波及する事になる。

しかも「Zi-メタルが今後も進化を続ける上でも()()()()()()()()()()()()()()()」為、どう足掻いても対処のしようがない致命的な欠陥と言える。

 

──────────

 

新規情報の追加も続々、乞うご期待!

*1
(※当人絶許により非公開)

*2
基本装備の“ゼロ・ストラトス”を含め、各アーマーは全排除〜再換装完了までに約30.7秒を必要する。

*3
※既にご逝去されているため(故)と付けております。

*4
アサルト

*5
バースト

*6
クラッカー

*7
ディフェンス

*8
エナジー

*9
必殺

*10
※安易に略したらダメですからね!?

*11
※頭文字を絶対に「G」にしてはいけません




君達に最新情報を公開しよう!!

西暦2020年……
原作とは異なる世界で、史実とは異なる
新たな『勇者王伝説』が幕を開ける!

美しき青の星……地球でゾンダーが活動を開始した!
対抗するのは、世界中から選りすぐられた科学者や専門家、そして戦闘のプロ……更に人類外の科学を研究する博士達を擁する、我等がGGG。

そして、奇跡とも呼べる出逢いが、禁断の力を呼び覚ます。
紫光の秘石に隠された「Z」の力とは?

次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第1話『勇者王誕生!!』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!

『天海護』← ※これが勝利と運命を導く鍵だ!!


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TVシリーズ1期「ゾンダー襲来編」
第1話 勇者王誕生!(と、その裏で)


運命の悪戯によって象られた、新たなる物語……
ifという世界の『勇者王伝説』……

これは……人類存亡を賭けて戦う、熱き勇者達と
自らの命運を賭けて奔走する1人の少女の物語である。



 西暦2000年代……

 頻発する未曾有の大災害などに対応する為、国連主導の下に主要国は様々なチームや組織を立ち上げ、一般の組織では手に負えない案件に対処していた。

 その中でも群を抜いて高い技術力と現場経験値を持ち、世界で最も信頼される組織があった……それが日本の首都、東京に本部を置く「ガッツィー・グローバル・ガード」……通称、GGG(スリージー)である。

 

 原作とは異なり、初期から国連公認の国際的な民生組織として発足され、世界中における近代テクノロジーを悪用した犯罪への対応や抑止、または大規模災害に置ける救助活動を目的とする組織として、一般にも広く認知されている。

 勿論、原作視聴者には裏で秘密裏に活動する部署もある事は認識しているであろう。

 

 

 そして、一見平和そのものに見えるこの世界にも……とてつもない危機が迫っている事に変わりはなかった……

 

 2017年……

 世界各地で謎の飛行物体の目撃情報が相次ぐが、日本の北海道での情報を最後に出現は途絶えてしまう。

 

 2018年……

 日本から打ち上げられた訓練用シャトルが、予定されていたコースを辿っている最中、何者かと接触事故を起こして破損、そのまま東京湾へと墜落してしまう。

 この時、操縦士であった「獅子王 凱」は瀕死の重傷を負うも生還……その際、同時に発見された謎のメカライオンが、秘密裏にGGGに接収された。

 

 そして2020年、東京……物語は、此所から始まる。

 

──────────

 

「本日の受診者はこれで全員です……2年間お疲れさまでした」

 

 白衣を着た男性の看護師が私へと労いの言葉を掛けてくれた。

 この「都立第一総合病院」の精神科に勤めてから、もう2年になるのかぁ……

 

「此方こそ、献身的なサポートありがとうございました……及川さん」

 

 若干疲れの見える彼の顔を見据え、私は今までの彼のサポート業務に対してのお礼で返した。

 少し照れ臭いのか、彼は若干赤くなった頬を書きながらそっぽを向く……この気持ちは嘘偽り無い私の正直な気持ちだ。

 

 私は今日……この都立第一総合病院を辞職する。

 その理由は「一身上の都合」……だが、その裏には「死の危機」に相当する事情があった。

 

 

 取り敢えず、こうなった経緯から説明しないとね……

 

 まず私はただの、れっきとした正規の医師免許持ってる精神科医です。

 周囲には内緒だけど、私は異能力持ちの転生者……それも非人類タイプの。

 

 厳密に言うと、転生者だった()()の「私」は大病で死にかけていた……そこに()()()()()だった「私」が入り込んだ事で、超常能力を持つ()の「私」へと生まれ変わった……だがそれぞれの精神構造や思考パターンが極めて近かったらしく、2人の精神までもが完全に同化してしまい、地球外存在の記憶と病弱な人間の記憶の両方をまるっと引き継いで新たな「存在」へと()()()してしまったのだ。

 

 モチロン、死にかけていた人間がウソのように全快した事には物凄く驚かれたのは言うまでもない。

 

 生まれ変わった()は、自身に備わった「能力」を上手く活用する事で、()()だった頃の「私」が夢としていた医師免許を取得した。

 ……え? 能力をどう使ったって? それは……秘密です。

 

 そんなこんなで2年前にこの病院で話題の精神科医としてスタート……順調に今の生活を満喫し、2年が経った数日前あの日……私を取り囲む日常が音を立てて崩れ去った。

 

──────────

 

『ファイナルッ・フュージョ──ンッ!!』

 

 都庁を破壊せんと出現した馬頭の奇妙な巨大ロボット……そして、それを迎撃せんと現れた白いメカライオン……更に金色の鎧を身に纏った戦士も現れ、メカライオンと合体して人型へと変形……しかし、果敢に立ち向かうもパワー不足やサイズ差のせいで勝負にならない……そして、この声が響いたのだ……

 

 白いロボットを覆うように緑色の竜巻が発生……馬頭ロボはそれに突っ込もうとするが、強力なフィールドなのか弾かれて倒れてしまった。

 あぁ、やっぱり間違いじゃなかった……()()は、私の生命を脅かす存在……それは死刑宣告にも等しい光景……何故なら、コレを「私」は知っていたから……そしてこれから起こる事も、()()が何者なのかも……人間だった頃の「私」が全て記憶している……それは、男の子なら誰もが憧れるだろう、巨大ロボットに乗って人類の為に戦う「勇者」の物語……

 

 ……勇者王ガオガイガー。

 

 この世界に転生したという事実を……転生前に親友とアニメを観て楽しんだ頃の()()を……この光景を見るまで、私は完全に忘れていた。

 

 

 緑色の竜巻……EMトルネードが空間を覆う、それは()()が開始される合図。

 中の様子など普通は誰にも分からないが……私は全て知っている……それは転生前の記憶に焼き付いているからに他ならない。

 

 まず、発生したEMトルネードに影響される事なく入り込んだ3機の支援メカがトルネードの内部に集まる……

 

 その後、白いロボット「ガイガー」の下半身が前後反転して爪先を下方へ畳むと、そこへ双胴型ドリル戦車の支援マシン「ドリルガオー」が接近、ドリル部分が動いて開口部を展開し、双胴が片足づつガイガーの脚部を受け入れながら接続され脚となり……

 次に、ガイガーの両腕が背中側へ基部ごと開き、胴体を貫く開口部へ新幹線型支援メカ「ライナーガオー」が右肩側から入り込んで中央の位置で固定……

 さらに背中へと移動した腕を覆い隠す様にステルス戦闘機型支援マシン「ステルスガオー」が上方から逆さまに接近して接続され、背部を形成する巨大な翼となっていく……

 続け様にステルスガオー本体に収納されていたパーツが展開されて斜め上に跳ね上がったライナーガオーの下を潜って両脇へと移動し、そのままガイガーの胸にあるライオン頭の横へ接続され(たてがみ)を形成すると、ライナーガオーの下部から二の腕となるパーツが降ろされ、ステルスガオーの翼下にあるエンジン部分がスライド移動……

 二の腕と接続されると下面のシャッターも開放され、そこから高速回転するナットの如く手首が回転しながら飛び出す

 締めにステルスガオーの尾部に格納されていた頭部パーツがガイガーに被さり、マスクが装着され額の宝石が迫り出す……そして最後に()()()()が煌めいた。

 

 合体を完了した黒い巨大ロボット……両腕の拳をぶつけ合う、幾度となく見たあの動きと共に()()()は力強く響くのだった。

 

『ガオッ! ガイッ! ガァァァァァッ!!』

 

 

 それから起こった事も、ほぼ原作通り……全てを思い出した私の前で、あの物語が、目の前の現実として推移していく……

 

『ヘルッ! アンド・ヘヴンッ!!』

 

 ゲル・ギム・ガン・ゴー・グフォ……

 

 紡がれるそれは、破壊の力を呼び覚ます呪文……

 

 ガオガイガーの両腕に攻撃と防御の力が集約され、一つに合わさる……その瞬間、何者も抗えぬ力が凄まじい竜巻を生み、馬頭のロボットを拘束する。

 

『ふんっ! ハァァァァァァァアッ!!』

 

 ガオガイガーは自身の攻撃と防御のエネルギーを束ねて突撃し、敵のコアを抉り取る必殺技「ヘル・アンド・ヘヴン」を用いて馬頭のロボットを粉々に破壊……更にその抉り出したコアを潰そうとした時……緑の髪の少年が現れた。

 

──────────

 

「それを壊しちゃ……ダメぇぇぇぇぇ!!」

 

『……ッ、君は……?!』

 

 ガオガイガーの手にある敵ロボのコア、そのすぐ上に飛来した緑の髪の少年……しばし見つめ合う1機と1人……そして少年が行動を起こす。

 

 クーラティオー! 

 テネリタース、セプティオー……サルース、コクトゥーラ!! 

 

 緑の髪の少年は謎の呪文を唱えた……すると少年の指先から発生する波動によって、一連の状況を見続けていた、私を除く全員が驚愕する光景が起こる。

 

 敵ロボのコアが次第にその形を変えていき……コアの形から、機械の身体を持った地球外生命体の様な変異生物へ……

 そして、変異生物らしき姿からさらに姿を変えていき……涙を流し神に祈る様なポーズをした、人間の男性へと変貌したのだ。

 

──────────

 

「……あれが、地球外生命体……なのか?」

 

「中間の形態の方はよく分からんがそうだろう……だが、今のあの姿は完全に地球人だ」

 

 GGGの指揮司令を担う本部発令所……その長官席から立ち上がった男、大河幸太郎は驚愕していた

 敵の正体は地球外生命体(?)らしき存在……だが謎の少年の力で、地球人とほぼ同じ姿へと変わっていったのだから……

 長官席の右側で同じく、事態を注視していた技術士長の獅子王 麗雄(レオ)博士もまた、モニターに映る光景に我が目を疑うしか無かった……

 

──────────

 

 遂に始まってしまった……こうなったらもう私は、人として生きることは出来ない……さて、実際問題……これから私、どうすれば良いのかなぁ……

 

 ゾンダーの地球侵略……それが始まったという事は、私の分身……というか、私と共に生み出された「Zマスタープログラム」が地球を機界昇華のターゲットとして選定したという事だ。

 そして私の存在は両方にとってイレギュラーであると同時に、ゾンダーにとっては最強の支配者と映り、人類にとってはゾンダー以上に厄介な存在と映るだろう……つまり遅かれ早かれ、私はGGGとゾンダーのどちらか、或いは両方に狙われ……確実に消される運命にある。

 

 もはや退路はない、私は今後どうすれば良いのだろうか……

 あまりにも突然に訪れた生命の危機……私の人生は、抗う間も無くお先真っ暗となってしまった。




……という訳で、皆様お待たせ致しました!
ifストーリー版「勇者王ガオガイガー」第1話でございます。

来歴は後日談として……のっけから絶望を突き付けられたオリ主ちゃん。
いきなりまさかの死刑宣告というのは不憫すぎ……
でも書かないと事態は好転すらしてくれません!
なので続けるしか選択肢がないんです……彼女のためにも!!

どうか生き残れるように導いてあげて下さい……

─ 次回予告 ─


君達に最新情報を公開しよう!

敵ロボのコアとなった人間を元に戻す力を持つ緑の髪の少年……
彼の正体を気にする暇もなく、次なる敵が地球を襲う!!

合体不能に陥ってしまうガイガー
彼に勝利の女神は微笑むのか?

そして、人生の岐路に立たされた彼女の運命は……?


次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第2話『機械を操る少女』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!

↓ コレが勝利(生き残る為)の鍵だ! ↓

《 オリ主の能力 》
(※次話以降はアンケートとなります)


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第2話 機械を操る少女(前編)

前回までのお話は……

目の前でガオガイガーの合体シーン見せられて、希望どころか絶望を突き付けられました……
とりあえず、ランナウェイッ!(脱兎)



 その日の夜……私は今までの生活から完全に脱却しなくてはならない為、備わった能力を駆使して対策を練る。

 まず外見は絶対に変更しないとダメだ……ゾンダーには通じないが、少なくとも人間から目を逸らすには1番手っ取り早い!

 

 ……てな訳で、20代の若々しい女医から見た目を『少女』へと()()、戸籍データの情報なども併せて修正する。

 

 私の名前は『稀星(まれほし)シオン』……先に触れた例の難病治療の為に外国へと渡っていたが、すったもんだあって完治……この度、晴れて日本に帰って来ました現年齢14歳の元・地球人です。

 

 昨日までの女医は(中身が14歳の子供である私には)少し難しかったが、やり甲斐もあり楽しかった。

 ……だが、昨日の『あの光景』……私は初めて『自分の置かれた状況』に足が震えた。

 

 このまま東京を離れようかと思ったが……元の子供ならあまり怪しまれないし、さすがに都会から離れると、今まで稼いだ給料とか下ろせない可能性もある。

 ……幸い持ち株とか諸々で稼ぎだけは困らないので、孤児院か施設に拾って貰おうと思う。

 

 とりあえず、今日は……ってしまったぁ!!

 今変えたらさっき予約したホテルとかもう入れないじゃん!? 折角いろんな改竄とかサクッと全部済ませたのに、このままじゃ寝床に困る!!

 

 また戻せば良いだろって? 今情報まとめて書き換えたんだからもうデータの欠片も何も残って無いわよ!?

 いくら人外化してもキッチリと痕跡を消しつつウィルス対策プログラムなんかも騙しながら同時並行でのデータ改竄は物凄く疲れるし下手をすればトラップやら逆ハックなんかに捕まって余計なリソース消費しちゃう上にそうなったら身体にも影響出て周囲から不審がられて通報からの拘束そしてあれよという間に正体もバレて実験台エンドまっしぐら……

 

 そんな結末、辿ってなるものですかッ!!

 

「……あぁぁぁぁぁぁ、どうしよ……」

 

 頭を抱えながら、アタフタと歩き回る私……もう夜としては少し遅い時間帯、こんな時間に中学生レベルの少女が夜の街を彷徨っているのは少年法的にもヤバい。

 

 だが、そこに響いた女性の声……

 

「こんな時間に、何してるデスカ?」

 

 声に気付いて振り返ると、そこに立っていたのは……物凄く見覚えのある、金髪ウェーブの女性だった。

 

──────────

 

「こっちの荷物は何処に?」

 

「アッチにRefrigerator(冷蔵庫)アリマス、他は向こうの棚に……」

 

「はーい」

 

 頭を抱えて途方に暮れていた私に声を掛けた金髪ウェーブの女性……それは渡米した時に知り合った「スワンさん」だった。

 あの場所は高級タワーマンションの駐車場のすぐ近くだったらしく、そのマンションに住む彼女が私の姿を見付けて声を掛けたと言う訳だ……

 

 彼女との出逢いは、闘病の為に渡米した時……当時、まだ英語に慣れてなかった私に宛がわれた通訳の方が、ロボットを使った空港テロに巻き込まれて負傷……GGGアメリカと地元警察の合同作戦でテロ事件は解決したものの、通訳を失った私の通訳代行として彼女が代わりを勤めてくれたのがきっかけだった……

 当時はGGGと聞いても記憶は戻らなかったが、彼女と過ごした数日間は今でもしっかりと覚えている……2年前とはいえ、彼女も私を覚えていてくれたのは不幸中の幸いだ……

 

 ……彼女がGGGの重要メンバーでなければ。

 

「シオンがもう日本に戻ってたとは驚きデシタ、あの病気は……」

 

「……私も良く分かんないんだけど、気が付いたら完治してたの」

 

「Oh……そうだったんデスカ、それは良かったデス♪」

 

 あまり突っ込んで欲しくないので、取り敢えず有耶無耶にして誤魔化す……宿無しという事情を話して家にお邪魔する……スワンさんは料理が苦手なので、私が夕食を作る事になった。

 元から天涯孤独なのはスワンさんも知っていたので、このまま家に居て良いと言われたが……今の実情からGGGにかなり近い彼女の厄介になるのは、崖っぷちに立たされた気分なので丁重にお断り……しようとしたのだが……

 

「シオンは……ワタシと居るのは、嫌デスカ……?」

 

 ……っ……そんな顔しないで下さいよぉ……

 

 私だって、こんな運命じゃなきゃ()()()()に飛び付いてますよ?!

 苦手なスワンさんの代わりに料理するのも嫌いじゃないし、前世のままだったらこの(つて)でGGGに入る事も考えましたよ! ええ、今の状態じゃなければ絶対にね!!

 

「……ごめんなさい、スワンさん」

 

──────────

 

 翌日、仕事に出るスワンさんを見送った後……一宿一飯の恩義を返すべく、私は普段手を出せそうにない場所をメインに部屋を掃除し、最近良く見られる自動調理器を使った簡単な料理のレシピをノートに書き留め、心配されないように服を幾つか買い揃えてマンションに戻り……彼女の帰りを待つ傍ら、原作2話目を思い出していた。

 

(確か、プロレスの悪役レスラーがゾンダー化させられるんだっけ……名前は……)

 

 そう思いながら、掃除中に偶然見つけたプロレスの屋外試合の案内チラシを見る……そして、その名前を見つけてしまった。

 

「……ッ……ボンバー死神……やっぱり、運命からは逃げられないのかな……」

 

 会場はさほど遠くない市街エリアの一角……ゾンダーの感覚なら、十分感知できる範囲内だ。

 

(何も言わないで出ていってごめんなさい……また会ったら、ちゃんと謝るから……)

 

 最後に、レンジで温め直して食べられる食事を作り置き……出ていく旨を書いた書き置きを置いて部屋を出ていく……昨今は「女性専用マンション」などセキュリティの厳しい物が多いが、()()()()には、何の障害にもならない。

 

 私は急いで中心街から離れる……だが、この先に待っていた「ある展開」が……私の運命を決定付けるとは、夢にも思っていなかった。

 

 

 その日の夜、プロレスの野外試合の最中……ボンバー死神が原作通りゾンダー化し、これをガオガイガーが撃破……その時に受けたダメージで獅子王凱は再起不能寸前の深刻なダメージを受けてしまう。

 それも原作通りの展開……だがこの時、私は海の見える風力発電所エリアでぼーっと夜の海を見ていた。

 

「……そろそろ、終わった頃かな……酷いね、私……人間であることを捨ててその気になれば、ゾンダーを全て支配下に置いて地球侵略を止められるのに……」

 

 ゾンダーを支配下に置く……私が人であることを辞めてしまえば、奴らを手懐けるのは容易い……しかし、私は機械生命体であると同時に、地球人でもある……どうしても、その一歩が踏み出せない、それは()()()()()()()()……ヒトである故に、私は恐怖心に駆られて「逃げる」という選択肢を取ってしまっていた。

 

(……しょうがないじゃない……怖いものは怖いよ……!)

 

 鬱憤を晴らすかのように海の方へと小石を投げ放つ……その直後、大地と空に無数の金属反応をキャッチ……さらにその数を上回る生体反応……そして、大人数の大人に追いかけ回される少年を見つけてしまった。

 

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ?!」

 

 見ず知らずの少年……そして、彼を追い掛ける大人たち……こんな時間にこんな場所を彷徨っている私が言うのも何だが、非常識すぎるわねどっちも!!

 

「君! こっちへ!!」

 

 深く考える間もなく、私は咄嗟に少年へと声をかけてしまった……当然、大人たちの視線もこちらに向く。

 

 何をやっているんだろうね、私は……他人の奇異の目から逃れる、ゾンダーから逃れる、死の危険から逃れる為に孤独を選んだのに……でも、見てしまった……理不尽な状況に憤ってしまった……声を掛けてしまった手前、もう後戻りなど出来ない。

 

「……お、お姉さん?!」

 

 特徴的な髪型の少年を庇いながら、私は機会を伺う……大人たちが手に持っている銃……能力を使えば、混乱に陥れるのは容易い……しかし、この少年にエゲツない光景を披露する羽目になる為、それは避けたかった。

 

(……これ、声かけたの間違いだったかなぁ……)

 

 ジリジリと詰め寄られ、大人たちの包囲網が徐々に狭まっていく……「何も心配はいらないよ」「私達は怪しい者じゃない」とか言ってるけど、この状況でそんな言動が子供に通用すると思ってるの?

 

 よっぽどその立場に自信があのだろうが……私から言わせれば「大馬鹿者の集団」としか思えない。

 

(こんな状況で怪しくない発言自体が怪しさ爆発です……墓穴も良い処ね……っ!?)

 

 その思考によって出来た一瞬の隙を突かれ……私は背後から羽交い締めにされてしまい、少年も大人たちに捕まってしまう。

 

「やだぁぁぁぁぁ!? お姉さん!! 怖いよぉ!!」

 

「ちょ……大の大人が寄って集って子供に乱暴する?! 普通じゃないわねアンタ達、離しなさいよ!!」

 

「助けてぇ!! お父さん!! お母さん!!」

 

 少年の悲痛な叫び……次の瞬間、少年の声と共に発せられたエネルギーの波動が、私の恐怖と防衛本能に突き動かし、大の大人数人をまとめて弾き飛ばすのだった。

 

「嫌だァァァァァァァ!!!」(キュィィィィン!)

 

「離せってぇの!!」(ブォォン!)

 

 私を押さえ付ける5人のうち、大人3人をまとめて背負投げの要領で投げ飛ばし……呆気に取られた残りの2人を、衝撃波を纏った両腕で薙ぎ払う。

 

 直後、少年の額に浮かぶ()()を見てしまい、私の背後に死の恐怖が舞い降りた。

 

ズゥゥゥゥゥゥン……!!

 

 地響き……背後、それも直近に降りてきた「恐怖の根源」……私に引導を渡すべく飛来したのは、先日あの都庁を襲った馬頭ロボに果敢にも立ち向かっていた、あの白いライオン……

 

 ガオガイガーの中核となるメカライオン……ギャレオンだ。

 

 そして、私が大人たちの非道から救おうとしていた少年こそ……私に死を(もたら)す元凶にして死神……Gストーンの使者、天海護だったのだ。

 

 またしても予想外……いや、これは完全に私の凡ミスかな……

 

 良く見ればこの子は他に類を見ない特徴的な髪型だし、こんな時間に一人で出歩く、況してやレスラーが変貌した敵とガオガイガーが戦った()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()といえば……彼以外にありえない。

 

「……ったく、これで大人しくなれよ!!」

 

「……?! しまっ、あがぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 公務執行妨害と判断されたのだろう、突然の死神の登場に呆けていた私は、大人たちにスタンガンを当てられてしまい……咄嗟の事で防御できずに意識を完全に飛ばされてしまった。

 少年……天海護が私の声に気付き何か言ってた様だが、ギャレオンに連れて行かれてしまう……気絶した私も、彼と別ルートでGGGの基地へと連行されるのだった。




良く見ると、原作の2~3話って同日内なんですよね……

なので、まとめる為にこちらも前後編に分けました。
次回予告と勝利の鍵アンケートは(前後編の場合)ありません!


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第3話 機械を操る少女(後編)

命の危険を回避すべく、都市部から離れ1人夜の帳の中を彷徨う少女……
そこに1人の少年と、彼を追いかける多数の大人達が現れる。

理不尽極まりない状況に、少女は少年へ手を差し伸べるが
多勢に無勢となり、少年は大人達に捕まってしまう。

大人達への憤りと、少年の恐怖の感情に掻き立てられ
少女は自身の力の片鱗を開放……
直後に発せられた少年の力が、自身の存在を脅かすものだと思い知ってしまう。

そして、現れた死神……
白いメカライオンに連れられて少年は去り
自身もまた大人達に不意を突かれて気絶……
連行されるのであった


- Gアイランドシティ GGG本部施設 -

 

「……うぅむ、こりゃ凄いわい……!」

 

 眼前に並べられた多数のモニター、それを一つ一つ注意深く確認しながら部屋の主……獅子王麗雄は呟く。

 

 モニターに映っているのは、敵ロボのコアを人間に戻す力を持つ「件の少年」……

 その保護作戦の折に少年を庇い抵抗した少女の身体データだった。

 

 その内容は「世界十大頭脳」に数えられる彼の知る限り……荒唐無稽かつ筆舌し難いものばかりであった。

 

「……スワン君、彼女は2年前に大病を患っていた……間違いないかね?」

 

「Yes、ワタシがアメリカ支部に居た頃に知り合いましタ……闘病の為に渡米した時ニ、通訳がテロの被害者となって途方に暮れてたのを、ワタシが代わりを務めたのがきっかけデス」

 

 2年前といえば、地球外文明の産物である「ギャレオン」の発見や「謎の流星雨現象」……そして「獅子王 凱」をサイボーグ化するキッカケとなった「件のシャトル事故」の時期とも一致している。

 もしかしたら、彼女も2年前に何らかの出来事によってこうなったのではないか……麗雄はそう推論を立てていた。

 

「シオン……彼女は、今後……どうなるデスカ?」

 

 助手であるスワン・ホワイトに難しい質問を投げ掛けられ、麗雄の表彰が複雑に歪む。

 

「彼女はおそらく地球外生命……その本人か、もしくは彼らによって何らかの改造を受けた被検体だ」

 

 その先を言わずとも、スワンの顔には軽く絶望の表情が見て取れる……

 

「彼女は近々、生命科学研究所の方へ移送する事になる……なにせ二度とお目に掛かれないであろう貴重なサンプル……しかも人間と見分けが付かん程完璧な擬態能力を持っておる。

 その上、彼女から得られるであろう情報は、ボクが見ただけでも()()()()()()()()()()()()()()()()()()程じゃからの」

 

 麗雄の言葉に、絶望の色を深めるスワン……だがしかし、麗雄の次の言葉は、科学者としての彼より、1人の人間としての言葉であった。

 

「だが、ボクは彼奴等(あいつら)に彼女は渡すべきではないと思っとる……曲がりなりにも、ボクの助手の知人だからね?」

 

 人道的配慮……それも身内の知人ならば、獅子王麗雄は「まず彼女が()()()()()()()()()を見極める必要がある」と思うのであった。

 

──────────

 

 その後、保護された謎の少年こと「天海 護」のボディチェックが終了した頃、GGGの監視システムが暴走機関車を捉え警報を鳴らす……

 その警報音に触発されたのか、別に運び込まれた少女もまた……意識を取り戻した。

 

──────────

 

(はぁ……不意打ちで気絶させられたのはまぁ、しょうがないとはいえ……この雰囲気、間違いなくここはGアイランドシティ、GGG本部施設内かぁ……)

 

 意識は覚醒したが、無用な混乱は避けたい……シオンはバイタルデータ検出の為に繋がれた医療機器を操り、非覚醒時のデータとすり替えながら現状把握に努めた。

 

(……研究部第1検査室、セキュリティレベルが高くてシステムクラックは無理ね……なら、素直に時を待つしか……ん?)

 

 警報音が鳴り響く……シオンは周辺の医療機器から現在時刻のデータを拝借し、状況を理解する。

 

(なるほど、あれからまだ数時間も経ってない……という事はこの警報、暴走機関車の奴ね……)

 

 少し騒ぎを起こせば、逃亡は十分可能だろう……しかし、それをやってしまえば、その後一生をGGGに追われる羽目になる……ココは大人しく、相手と何らかの取引をして放逐して貰う他無い……幸い、私がZマスターと同類だとバレる心配は今の所無さそうだし、人畜無害だと信じて貰えれば可能性はある。

 

(……スワンさん)

 

 ふと頭に浮かんだのは、今現在ココに勤めているであろう数少ない知人の存在……もし、可能なら彼女を通じて身の潔白を証言すれば、可能性は広がると思う。

 

 まぁ、信じて貰えるかは可能性次第なんだけどね……

 

 

 警報発令からそれほど間を置かずして、そう遠くない場所で「Gの力」を感じた……恐らく原作通り、護くんの能力による「Gストーンによる浄化と自己調整(のアジャスト)」が行われたのだろう。

 微弱だったサイボーグ……獅子王 凱の生体反応が目に見えて増幅し、ほぼ完全な状態にまで復活したのが感じられた。

 

(確か、この戦闘じゃコアの浄化が出来ないまま結局逃亡されちゃうんだっけ……?)

 

 原作を思い出しながら、状況整理と今後の予定を思案する……

 原作だと、市街地や住民の被害を抑える為に開発されたツール「ディバイディングドライバー」の初使用……そのままゾンダーの撃破には成功するけど、護くんの同行なしで撃破した為にゾンダーは逃亡……現場に同行できなかった彼は酷く落ち込むはず……可能なら、私がフォローしてあげれると良いんだけど。

 

 しかし、正体不明の存在……しかも現代科学を軽く超越した超科学文明「紫の星」で生まれ、同種体の暴走から逃れて地球へと落ち延び、現地人に紛れたという経緯……

 

(転生者だった私と、暴走を避けて落ち延びたZマスターが融合して今の私になったって話……荒唐無稽過ぎて誰も信じないわよね?)

 

 何かもう少し信じられる背景の昔話をでっち上げないと、友好関係で居られる筈がない……恐らく、私が人類とは違う存在だというのは既にバレているはず……

 

(……どう言ったら、信じて貰えるのかなぁ……?)

 

 私は結局、バイタルデータを偽装しながら気付かれないようにあらゆる機材を騙しつつ情報を少しづつ得ていくしかなかった……

 

 その僅かな偽装が、もう既にバレているとは知らないまま……

 

──────────

 

 それからの推移はもちろん原作通り……

 

 護くんのお陰で復活した凱は、ガオガイガーで暴走機関車ゾンダーと激戦を繰り広げる……だが、敵の攻撃を防御した際、僅かに逸れた流れ弾が市街地へ飛んでしまい、街はパニックに陥ってしまう。

 

 安全を確保しつつゾンダーを倒すべく、数日前に完成していた空間湾曲ツール「ディバイディングドライバー」の使用によって、戦闘フィールドの形成に成功……気兼ねなく戦える様になったガオガイガーは、暴走機関車ゾンダーの撃破に成功した……

 

 だが……護くんの能力による浄化が即時行われなかった為、コアは生物的な姿に変わり逃亡……

 敵は撃破したものの、敵ロボの発生原因を突き止める事は出来なかったのである。

 

 

「……さて、お前さんの身体は粗方調べさせて貰ったが……なぁに、別に変な事はしとらんよ

 少しばかり内部スキャンと血液、皮膚組織などのサンプルを幾つか取らせて貰っただけじゃて」

 

 私の目の前に座り、軽い口調でそう話すのは「世界十大頭脳」の1人にして、GGG研究開発の総元締め……そしてサイボーグ「獅子王 凱」の産みの親、獅子王麗雄博士だ。

 

「……じゃあ私がどういう存在なのか、もう知ってらっしゃるんですよね」

 

「うむ、確証は得てないがの……だが君の身体をスキャンしただけでも、人類とは比べ物にならん程の高度な科学力を用いて造り出されている事は分かっておる」

 

「……造られたんじゃなくて、変わったんですけどね」

 

「何じゃと?!」

 

 どうせ地球外の存在という部分も知ってるんだし、大元的な奴は濁して伝えるのも良いかと思い、私は打ち明けることにした。

 

「地球外生命体……多分、私は知らない内に身体を改造されてたんでしょうね……まぁ、ある程度の能力は把握してるんで、今更支障はないですけど……」

 

「シオン、貴女……それは本当デスカ?」

 

「記憶としては全く身に覚えないんだけど……

 経緯としてそう考えでもしなきゃ、現状にも説明が付かないし……一番違和感がなくて、私自身が納得できるから」

 

 尋問に同席しているスワンさん、麗雄博士も複雑な表情で考え込む。

 

 少々強引な手だが……地球外生命体の存在を知り、尚且(なおかつ)そういう存在の技術に触れた経験のある彼らだからこそ、有り得るという結論に行きやすい筈だ。

 

「疑問は幾つか残るが、その説以外に考えうる経緯はとんと浮かばん……一先ず経緯は考えんほうが良いじゃろて」

 

 ……第1関門は無事クリア……残るは私の立ち位置と、今後についてだ。

 

「……結局、私は今後どうなるんですか?」

 

「うむ、簡単な心理テストと身体機能のチェック……それと面談を受けて貰う。

 まぁ詳しくはその内容と結果次第……という訳じゃ」

 

 うぇぇ……やっぱりそうなるのね。

 

──────────

 

 その後、ゾンダー捜索が続けられている中……

 私は本部施設で身体機能のテストをさせられていた。

 

『まずは身体機能のテストじゃ……腕力、脚力、動体視力、反射速度、その他幾つかの項目別にテストを実施するぞい』

 

 目の前にあるのはゴテゴテに強化されたパンチングマシン……この形って確か2話でサイボーグ化した凱さんが殴ってた奴と同型かな?

 

「……、……フ~……ッ!!」

 

 ドムッ!!

 

 

 次に出てきたのはランニングマシン、これもさっきと同じ凱さんが……(以下略)

 

「…………♪~」

 

 タタタタタタタタタッ!!

 

 

 3つ目はバラエティ番組で出てきそうな複数の穴からピンポン玉が飛んで来るような奴だった。

 

「……ッ! よっ?! っとと…… わっ!?」

 

 

 その後も幾つかのテストが行われ、最後に出されたのは……

 

「……? コレって……」

 

『うむ、そのトランプを使ってピラミッドを作ってみてくれぃ』

 

(コレって、何のテストなんだろ……? まぁ、兎に角言われた通りにやるしかないか……)

 

 と、作業開始からものの10分ほどで8段くらいを組み上げてしまい、周囲からどよめきが起きる……

 

「この短時間で8段も組み上げるなんて……」

 

「凄い集中力と器用さだな……まるでロボットみたいだ」

 

 彼らにとっては何気ない一言だけど、今の私にはその言葉がズキッと来た。

 ……「ロボットみたい」……そうだ、今の私は半分がロボットなのだ……転生者とZマスターのハイブリッドヒューマン……世界を滅ぼしかねない存在を内包する私は、この先何をどうすれば良いのだろうか……?

 

 なお、このテスト中……原作通り護くんがゾンダーを見つけたものの逃げられ、彼も気絶……ほぼ原作通りに事が進み、結局ゾンダーの居場所は掴めないまま数日が経つ事になる。

 

 ちなみに私も、麗雄博士とスワンさんの監視下に置かれる事になり……結局寝泊まりもスワンさんの家に戻って来たのであった。

 

「シオンの手料理、また食べられるの嬉しいデス♪」

 

 監視下に置かれてる……んだよね?(;・ω・)




次回予告


君達に最新情報を公開しよう!

ゾンダーロボを撃破したものの、コアであるゾンダーは逃亡……
必死の捜索にも関わらず一向にその消息は掴めない。

だが、たった1人……ゾンダーの逃亡先を知り得る彼女は、
原作知識と知られる事なく居場所を伝えるべく奮闘する。

果たして、次なる戦いはどうなってしまうのか……?


次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第4話『逃亡者ゾンダー』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!


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第4話 逃亡者ゾンダー

物語の鍵を握る少年「天海 護」と邂逅し、GGGへと連行されたシオン……

その後、彼女の身体の秘密が一部明らかにはなるものの、世界十大頭脳の1人である「獅子王麗雄」の提案により、GGGのオペレーターであった知人の「スワン・ホワイト」の元へ身を寄せる事となった。

そして、前回の戦いから逃亡したゾンダーを発見すべく大規模な捜索が行われたものの、
結局は手掛かりすら見つけられる事もなく、ただ時間だけが過ぎていくのであった……


─ ??? ─

 

 不気味な空間が何処までも広がるこの場所……だが原作知識を持つ人なら、既にこの一言で判るだろう。

 

 ココは東京某所の地下深く……ゾンダーの幹部クラス「ゾンダリアン」や、指揮官が潜伏している場所だ。

 

『ポロネズよ、やはりあの程度では「黒いロボット」は止められなかった様だな……』

 

「……申し訳ありませんパスダー様」

 

 煙草用のパイプを口に咥え、サングラスに立派な髭を蓄え「ポロネズ」と呼ばれた男が跪く。

 隣に立つ妖艶な雰囲気を持った女「プリマーダ」も、心なしか寂しそうな顔であった。

 

 ……だが特徴的な髪型と、戦闘機の描かれた帽子を被る男「ピッツァ」が口火を切る。

 

「……だが、まだ終わった訳ではない……ゾンダーは逃亡し、現在潜伏して機会を待っている」

 

 むっ? と顔を上げ、ピッツァを見るポロネズ。

 同時にパスダーも彼の考えに興味が湧き、話の続きを催促した。

 

『ほほぅ……ピッツァよ、申してみよ』

 

「はい……この計画であれば、あの「黒いロボット」でも素早く対応など出来ますまい」

 

 自信満々に語り始めるピッツァ……そして内容を知ったパスダーは、早速実行に移せと指令を出すのであった。

 

──────────

 

「シオン、このお皿ハ?」

 

「こっちのサラダと、あとそこのドレッシングを……」

 

「OK♪」

 

 はい、私こと稀星シオン……現在GGGの監視の下、スワンさんの家に再び居候しております。

 監視と言っても、GGGの一部スタッフ……私が人外存在と知っている人達の誰かが一緒に居るってだけなんですけどネw

 スワンさんの家には自室を与えられてるし、スワンさんと一緒にGGGへ来た後も、特にやることも無いので麗雄博士や研究員の人達の話し相手になったり、時々色々な相談に乗ったり……

 前の精神科医での経験や知識もあって、結構な人達から相談相手として重宝されており、麗雄博士からも「彼女がその気なら、ココの医療スタッフとして雇いたい位じゃな」と、太鼓判を押されていた。

 

 だが、私自身はあまり居心地は良くなかった。

 

 え? 何でかって? そりゃ私の元は何だか忘れてない? ……そう、狂ってないとはいえ私は「ゾンダー」の最上位種である「Zマスター」の変異融合体ですよ?

 地球人だったかつての私がベースとなって融合したから死ぬ事は無い……けど、対極にして天敵である存在が放つエネルギー「Gストーン」の波動は、私の思考や運動能力を著しくはないもののある程度低下させている。

 

 原作のゾンダーと完全に同族、という事ではないので「対消滅」なんて事態になってないのが救いだけど……

 

 まるで、死にはしないけど解毒出来ない毒に冒されている……もっと直感的に言うのなら「何をしても疲れが取れない」状態。

 やる気が出ないとか、そういう状態ではないけど……何をするにも本気になれない、倒れる事はないけど、何だかボーッとしちゃう……さすがに手元は狂わないけどね。

 

 他の原作勢の動きとしては……逃亡したゾンダーの捜索は今も続けられており、原作と同じ様に護くんへ通信手段として専用端末が渡された……その名も腕時計型マルチツール「G-USB」。

 USBとあるが、それは「緊急(Urgent)対応(Support)システム・内蔵(Built-in)」を略したものだ。

 ちなみに形状は原作のGGGポケペルからはやや大きくなったものの、最高で6画面も展開可能なホログラフィックのモニターと操作(タッチ)パネル、そして腕時計の名の通り……伸縮性と通気性の高い素材のリストバンドが付いている……高機能なのに元々のサイズ(原作のポケペル)が小さいので、本体の大きさは普通に気にならない。

 

 何でそんなに詳しいのかって……?

 

 

 ……居場所特定用として、私も持たされてるからね。

 

 

 ゆっくりと思案できる時間が取れてから気付いたのだけど、この世界の時間軸と原作の「勇者王ガオガイガー」の時間軸は大きくかけ離れている……

 原作の時間軸は2003年が舞台、放送年の1997年から言えば「近未来」を想起させる設定……だが私がこの目で目撃し、現状ほぼ原作通りに物事が推移しているとはいえ……今は2020年だ。

 科学水準は既に根本から原作を上回っており、一般的な自家用車にも()()()()()()が付いている奴がある……ましてや、一般的な携帯電話も基本はスマートフォン……回線速度は()()()()5()G()とか言われているのです。

 

 ……メタい言い方をしないのなら、原作から17年も先の未来という訳だ。

 

 それでいてゾンダーの出現は原作通り、なのに……その上ガオガイガーの存在や、GGGという組織は既に国連公認と化している事には心底驚いた。

 

 GGGの認知度は一般的にも高く、数ある国連公認組織の中でもトップクラスの技術力と人脈を擁し、国境や人種などの(しがらみ)も関係なく……近年のロボット技術の発達に伴い、悪質化している凶悪犯罪や、技術格差の拡大による大規模災害に対して惜しみ無い協力や援助を行っている。

 

 そして、最近増えているという……怪異や異変の調査、ぶっちゃけるとゾンダーの仕業かもしれない案件を解決するのも彼らの管轄……

 だが、ゾンダーの正体や目的……そのほとんどが不明な(私以外知らない)ので、組織的には孤軍奮闘状態に代わりはないのであった。

 

──────────

 

 ゾンダー捜索開始から数日後の夜、あの子……護くんから『ロケットが狙われている!』と連絡が入った。

 

(確か、原作では最新型シャトルの打ち上げ……って辺りだったっけ)

 

 原作とは少し違うが、太平洋上……東京湾から少し離れた洋上に仮建造されたメガフロート施設の実験の一環として「国産ロケットの洋上打ち上げ」という大規模事業が行われていた。

 

「……博士、確かこれって……」

 

「おぉ、キミもこの件に興味があるのかね?」

 

「ちょっと違うんですが……多分、護くんの訴えはこの国産ロケットの事じゃないかと……」

 

 シオンの言葉に、麗雄の表情は一瞬で科学者の顔に切り替わる……確かにこの実験以外、シャトルやロケットの打ち上げは予定されていない。

 

「奴らが何を考えておるのかは分からん……だが、奴らは必ず何らかの意図を持って行動しておる……このロケットを狙う理由も必ずあるはずだ」

 

 そして念には念を……という感じで大河長官も了承し、大規模捜索隊が調査のためにメガフロートへと出発した。

 だが、私の心にはずっと何かが引っかかっている……

 

「何なの? この違和感……何かを見落としている? それとも……」

 

 

 ロケット打ち上げの前日……メガフロートに到着した捜索隊の必死の捜索にも関わらず、ゾンダーは未発見に終わる。

 そして、無情にも時は過ぎ……

 

- 打ち上げまで残り1時間 -

 

「長官……このままでは、打ち上げ中止の要請も……」

 

「無理じゃろうな……国家事業でもあるロケットの打ち上げ……中には新型の気象衛星も積まれとる」

 

 麗雄は今回のロケットが如何に日本にとって重要な案件かを理解しているが故、現状は厳しいとの見解を示す。

 このロケットは純国産であり、今回は最新鋭の気象衛星も搭載されている……国家事業として展開されている以上、もしこのロケットに何かあれば、内外から国としての信頼や評価は間違いなく失墜するだろう。

 

「ゾンダーが潜んでいる可能性があるとはいえ、我々が国家の一大事業を蔑ろにする訳にはいかん……だが今回は、()()()()に任せれば問題は無いだろうさ」

 

 大河長官は自分たちの立場を含め、今は打つ手がない事を言葉にするが……その表情は勇者への信頼故に自信に満ちている。

 しかし命は心配そうな表情のまま、本部のメインモニターに映る打ち上げの迫ったロケットの映像を見ているしか無かった……

 

 

 そして打ち上げ時刻となり、轟音と爆煙を撒き散らしながら国産ロケット『暁』が宇宙へと飛び立つ。

 

(フッ……如何にこの星の人類の技術が優れていようとも、我々ゾンダーを探すことも出来ない奴らに、我らの邪魔は……むっ、何故だ? 何故侵食が始まらない!?)

 

 メガフロートから少し離れた空中で、打ち上がるロケットを見ながらほくそ笑んでいたピッツァだったが、ロケットが一向に侵食されていない事に気付く……

 

──────────

 

 一方その頃、メガフロート中央部……打ち上げたロケットが固定されていた場所に、3つの人影があった……

 

「……まさか、キミがそんな力まで持っていたなんてな」

 

 1人は我らが勇者、サイボーグ凱……

 

「ゾォォンダァァァァァァ……!」

 

 もう1つは必死の捜索にも関わらず、今の今まで発見できなかったゾンダーの素体……

 そして最後の3つめは……

 

『できれば、この力は隠しておきたかったですよ……人間という枠を遥かに逸脱してますし。

 ……あ、ゾンダーを発見できたのは偶然ですからね?』

 

 凱に対して念を圧すように偶然だと口にしたのは……真新しいGGGの制服を身に付け、三編みにした特徴的な色合いの長い髪を風に揺らしながら立つシオンであった。

 


 

 ついに逃亡したゾンダーを発見!

 

 ロケット乗っ取りも阻止に成功し、あとは素体を浄解して貰うだけ……

 でも待って、なんか忘れてない?

 

 あっ、護くんが間に合ってない!?(2回目)




次回予告


君たちに最新情報を公開しよう!

ロケットを狙うゾンダーの阻止に成功した我らが勇者王。
だが、ゾンダーは訓練用の戦闘機を乗っ取り空へと逃亡する……

ガオガイガーの飛行速度を優に超えて飛び去ろうとするゾンダー
果たしてGGGはどう対処する?


次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第5話『異星人シオンの能力(ちから)

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!


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第5話 異星人シオンの能力(ちから)

GGGの必死の捜索にも関わらず、逃亡し潜伏する地球外生命体ゾンダー。
しかし、天海護と共にGGGへと招聘された少女
稀星シオンにより、逃亡したゾンダーは発見された。

だが、唯一ゾンダーの浄解を行える護が現場に居ない以上……
再びゾンダー逃亡の可能性は極めて大きい!

果たして我らが勇者王は、護の到着までゾンダーを抑えられるのだろうか?


(……さて、これからどうなるかな……)

 

 真新しい制服に身を包み、三つ編みにした長い髪を風に揺らす少女……稀星シオン。

 彼女の特殊な能力によって、打ち上げ寸前だった国産ロケット『暁』の強奪は阻止され……ゾンダーを弾き出す事にも成功した。

 

「よし、此所からは俺の出番だな……『イークイップッ!!』」

 

 サイボーグのボディを戦闘モードへと移行させ、ゾンダーと対峙する凱……シオンは凱の戦闘の邪魔にならないよう、その場から下がる。

 

『ゾォォォンダァァァァァ!!』

 

 触手を生やし、動きを制限しようと先制攻撃を繰り出すゾンダー……だが、その触手も瞬く間に、凱の手に握られた『ウィルナイフ』でまとめて斬り裂かれた。

 

「はぁぁぁぁっ!!」

『ゾォォォンダァァァァァ?!』

 

 触手を斬り裂かれ、怯んだ隙に飛び蹴りを喰らって吹き飛ぶゾンダー……しかし、運悪く吹き飛んだ先にはメガフロート内を往来する為の小型車両が……

 

『ゾォォォンダァァァァァ……!』

 

 着地せずにそのまま身体を小型車両へと融合させたゾンダーは、車両を操ってその場から逃走……もちろん凱はすぐさま追い掛ける。

 

「逃がすかよッ!!」

 

 平時でも時速60km/hに達するサイボーグの走力により、みるみる内に距離は詰まる……しかし、急ハンドルで追撃を躱したゾンダーは、メガフロートの一角にあった自衛隊の訓練用戦闘機と融合し、ゾンダー戦闘機となってメガフロートを飛び立とうとした。

 

「……そうは問屋が卸しませんってねッ!」

 

 事態の推移を見守っていたシオンが、その場に打ち捨てられた車両の破片を掴んで投擲……能力によって投げられた破片はその組成を急速に変質させていき、やがて単分子でできた細長い刃の様な板へと変わってゾンダー戦闘機のエンジン部に直撃した。

 

 ガスッ!! ボゥン!! ブスブス……

 

 エンジン部分を破損させ、ゾンダー戦闘機は離陸直後にバランスを崩して墜落……しかし、戦闘機のボディを変質させて人形のロボットとなったゾンダー戦闘機は、さらに周囲の残骸やパーツをかき集めて巨大化し、まるで複数の車両が合体した様なロボットへと変形したのである。

 

(うーん……これ以上やるとヤバい、かな……?)

 

 シオンはこれ以上の能力的な露出は不味いと判断して下がり、凱と交代……凱はすでにギャレオンを呼んでおり、咆哮と共に白いライオンが飛来していた。

 

《フュージョ──ンッ!! ……ガイッガァァァ!!》

 

 ガイガーとなった凱はシオンを掌に乗せて一時離脱、ロケットの台座付近へと降ろして現場へ戻り戦闘を再開……シオンは本部へ通信し、護を連れて来るように頼む。

 

「みんな前にも見たでしょ? 彼がココに来れなきゃまた……!!」

 

『安心せい、既に火麻(ひゅうま)くんに向かって貰っとる……それよりも良いのかね?』

 

「……何がです?」

 

 麗雄はシオンに再度の確認を取った……それはGGGへの加入の件である。

 シオンは加入の話を受ける前に、自身の目的……自己の安全確保が再優先であると打ち明けていた……もちろん、Zマスターの件に関しては一応伏せたままで。

 

『お前さんは自身の身の安全が第一なんじゃろ? しかし、君のその選択は目的に矛盾しとるとしか思えん……』

 

「……今は、言えません……時が来れば、必ずお話します……それよりも、アレを相手にガイガーだけでは……!」

 

 シオンの指摘通り……敵ゾンダーロボのサイズはガイガーの倍近くあり、巨体のくせにスピードは互角……しかし速度はあっても小回りは効かず、ガイガーはサイズ差を逆手に取り、反応速度の差でゾンダーを翻弄していた。

 しかし、敵ゾンダーロボを破壊しなければ勝利は見えてこない……

 

『長官!!』

 

「うむ、ファイナルフュージョン承認ッ!!」

 

『了解! ファイナル・フュージョン……

 

 プログラム、ドラァイブッ!!』 ガシャン

 

 承認された直後、すかさず卯都木 (みこと)はプログラムを発動(ドライブ)させた。

 

『ファイナルッ・フュージョ────ンッ!!』

 

 

── 今回の戦闘は割愛させて頂きます ──

(原作と同様に特筆すべきモノが何もないので……)

 

 

 それからはご想像の通り……合体によって体格はほぼ差が無くなり、戦闘経験の差で敢えなく撃破されたゾンダーロボ。

 火麻参謀のヘリによって護くんの現着も間に合い、合体ゾンダーロボの核となっていた鉄道好きの青年もしっかり浄解されました。

 

「護くんお疲れ~」

 

「あ、お姉さん……お姉さんもGGGに?」

 

 私の服装……真新しいGGGの制服に反応して護くんが問い掛けてきた。

 

「……ん、私もね……君たちと行く事にしたんだよ。

 そうでなくとも私は……君達の事が気になるから……」

 

 この時、私は決意した……今後もゾンダーは迫り来る、変えられないのなら()()()()()()()()()()()()()()()()()と。

 少なくともあのEI-01……パスダー戦までなら私の力が役に立つ。

 

 今、私の能力の把握している限りでは、あの決戦に手は出せないけど……それまでの間なら、何かしらのサポートはこなせる筈だし……確固たる信頼関係を築けたなら「ゾンダー」の詳細も教えてあげられる。

 

 本部務めは(Gストーンのせいで)少しダルいけど、それは必要経費や代償と考えれば妥当と言えるし……私自身も、どれだけの事が可能なのか完全に把握は出来てない。

 ……それを知る為にも、()()()()()()()()()()は必要だ。

 

「……お姉さん……?」

 

 私の表情に戸惑ったのか、護くんの声に少しだけ不安の色が混ざる。

 

「……あ、ゴメンね……何でも無いよ、これからヨロシクね、特別隊員の天海 護くん!」

 

「うわっは~♪ こちらこそよろしくお願いします……え~っと」

 

「あ、そっか……自己紹介もまだだったっけ? 私は稀星シオンよ」

 

 幸い護くんの側に立っていても、彼が浄解モードでなければさほど不都合はない……彼とも仲良くなれば、少なくとも浄解はされないだろう。

 

『オイオイ、俺を忘れて貰っちゃ困るぜ……ヨロシクな、シオン』

 

 漆黒のスーパーメカノイド、ガオガイガー……原作通りの地球製(イミテーション)のアンチ・ゾンダーマシンなら、Gストーンの影響もさほど苦では無い……これならば大丈夫だろう。

 

「ええ、よろしくお願いします……凱さん、護くん」

 

──────────

 

── ??? ──

 

『……またしてもあの黒いロボットにいい様に殺られてしまったな』

 

「……申し訳ありません……ですが、一つ……気になる事が」

 

「ウリリ? ピッツァ、やはり話すのか?」

 

「ああ、あの存在は異質だ……奴は我々の更なる脅威になり得る可能性も捨てきれん」

 

『ほほぅ……何者だ、其奴は?』

 

「はい、我々ゾンダーに対する正確な探知能力と、我々に似た組成編成能力……それに、我々すら凌駕する程の高い擬態能力を持ち……奴等(GGG)の懐に潜り込んでいるイレギュラーな存在」

 

 ピッツァは当初、この話をペンチノンにのみ打ち明け、どう扱えば良いか迷っていた……しかしペンチノンの助言と、我々ゾンダーの有利に事が運ぶならどうにか利用できないかと考え、持ち帰った情報を全てこの場で吐き出したのである。

 

『……我らに近しい存在、然して異なる存在……ピッツァよ、そのイレギュラー……どう見る?』

 

「近しい存在としても、味方であるとは限りません……更なる脅威にもなり得るかと」

 

 ピッツァとパスダーが問答を行っている間、プリマーダは無言を貫くポロネズを見ながら、ピッツァのもたらした情報を頭に入れ、次なる計画を密かに練っていた……

 

「ポロネズ……見てなさい、黒いロボット……!」

 

 そしてそれこそが、次の戦いの呼び水となるのである。

 

──────────

 

 メガフロートでの作戦も無事に終了し、ガオガイガーと共にGGG本部へと帰還した私を待っていたのは……

 

「さて……稀星シオンくん、君はGGGスタッフの内でも……少し変わった経歴と能力がある様だね」

 

 そう、最初に捕まっていた時の一連の所業、そして戸籍情報の改竄(かいざん)等々……彼らGGGに対しては、実はもろバレだった。

 それに加えて、あの身体能力テストや先の戦いでの能力行使など……色々と積み重なった点はもう消しきれない。

 

「まぁ、色々と気になる件はあるが……君の能力の事は現状、我々GGGの一部にしか教えとらん……我々メインスタッフと、機動部隊の凱だけじゃな」

 

 麗雄の言葉に意外だと驚くシオン……そして大河長官からは正式に辞令が下された。

 

「表向きは中途採用として……君にはGGGメインスタッフ、及び特別隊員のメンタルケアを担当して貰う。

 

 ……正直な話、有能なスタッフは貴重でね。

 特に、我々メインクルーは過酷な勤務に当たる事も多く、その上メンタルケアは個人の裁量に任せきりという状態なんだ……そしてこれなら、君のその()()()()()を活かせると考えた訳だ」

 

 こうして私こと稀星シオンは、GGG本部付きの医療スタッフとして中途採用……主にメインスタッフや護くん達のメンタルケアを担当する事になってしまったのである。

 


 

 シオンの能力(現在、披露しているもののみ)

 

 ◇擬態能力

 見た目をほぼ人間と同一に見せる。だが、実は本性もそれほど人間と変わらない。

 

 ◇組成編成能力

 触れた物の組成を物理的に変換し、分子配列や構造を変更して別の物を造り出す。

 一瞬でも触れてさえいれば変質が反映されるので、投擲から接触までの間に変質させる事も可能。

 物理的な攻防であればかなり広く応用も効く。

 

 ◇情報操作能力

 一定距離内の電子機器をハッキングし、任意の情報操作や引き出しを行う。

 触れずとも可能なため、秘匿性は非常に高い……反面、それなりの時間(ワークタイム)は必要。

 なお、接触して操作する場合はレスポンスが向上し、デメリットもほぼ皆無となる。

 

 ◇探知能力

 特定の物体、指定対象の擬態を看破する能力。

 ゾンダーの機械的な融合や、潜伏程度ならばいとも簡単に判別できる。




次回予告


君たちに最新情報を公開しよう!

国産ロケットの奪取を阻止し、見事ゾンダーを打ち倒したGGG。
そしてシオンは経歴を買われて、クルーらのメンタルケアを担当する事になった。

それからしばらくして、首都圏の交通渋滞から突如ゾンダーロボが現れる。
広範囲を巻き込んで暴走するゾンダーロボにより、救助活動には危険が伴う……

こんな時こそ、間違いなく彼等の出番だ……!
救助活動用ビークルロボ、氷龍・炎龍……発進せよ!


次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第6話『赤と青』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!


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第6話 青と赤

お待たせしました~♪
まさか本文だけで7000字突破するとは……!

潜伏時の経歴を買われ、GGGメインスタッフらのメンタルケアをする事になったシオン。
思っても見なかった重用に、シオンは嬉しさ半分……怖さ半分であった。

それからしばらく経ち……ガオガイガーのサポート及び救助活動を行う新たな仲間が加わる……!


ゾンダー初襲撃より数ヶ月前……

 

 GGGは秘密裏に回収したメカライオン……ギャレオンから得られた様々なテクノロジーを応用して、ガオガイガーのサポートや、戦闘以外での活躍を主とするビークルロボの開発を、半年前から既に着手していた。

 

 オーバーテクノロジーを用い、先んじて開発されたガオガイガーは、強大な敵との戦闘を目的としており……事後処理や救助活動、主に後方支援活動に対してはあまり考慮されていない。

 ……更に言えば、オーバーテクノロジーの塊であるギャレオンとは違い、再現とは言えども地球製のガオーマシンを用いたガオガイガーのシステムそのものが複雑であるが故に、実際の運用においても外部からの様々なサポートを必須としていた。

 

 その為、ガオガイガーの援護や、戦闘フィールドに取り残された人々がいた場合も想定した……多目的な活動を前提としたサポート要員の確保が急務とされた。

 そして誕生したのが、救助活動及びガオガイガーのサポートを目的として開発されたビークルロボ……氷竜と炎竜である。

 

 

「AIシステム、コンディション良好……各計測器、正常動作を確認」

 

「氷竜、炎竜……稼働テストの準備完了、いつでも行けます」

 

「了解、では始めるとするかのぅ」

 

 本部施設とは別に建造されたテスト施設内にて、超AI搭載のビークルマシン……氷竜と炎竜の稼働テストが行われた。

 

「……博士」

 

「ん? 何かね、稀星くん?」

 

「……私はこのテスト内容に関しては、部外者な気が……」

 

 そう、私……稀星シオンはGGGの医療スタッフとして雇われた筈だ、それなのに……

 

「なぁに、氷竜と炎竜のAIシステムはまだまだ発展途上、君の様に確固たる人格も性格も確立しとる訳ではないからの……先輩として何かアドバイスできる事もあるかと思ってな?」

 

 そっか……博士から見れば、私は固有人格を確立している機械生命体……氷竜・炎竜彼らから見れば同類、もしくは先輩という認識でもおかしくはない。

 経緯からすると何か違う気もするけど、そう見られて駄目という事は無い……むしろ誤解された今の方が、立場的にもゾンダー疑惑から離れられる。

 

 ……釈然としないのはしょうがないけど、乗るしかない。

 

「……ソウデスカ」

 

 おっと、言葉に感情が乗りすぎてる……気を付けないと。

 

「凄い……ビークルモードでのスペックは、初期の期待以上ですよ!」

 

 テストのオペレートを担当している牛山一男(うしやまかずお)が感嘆の声を上げた。

 ビークル形態……氷竜はクレーン車、炎竜は消防車を模した姿をしており、テストの結果は当初の設計データから算出された期待値を上回る数値を計測していた……

 

 それはクルー等にとっても、テストを受けている本人達にとっても嬉しい誤算である。

 

「ほぅ……瞬間最高速度、走破性能、対荷重量……そのどれもが期待値より30%以上もの良数値を記録しておる、各種センサーの精度や解析能力も想定値より高い……こりゃなかなか痛快な結果じゃ♪」

 

「ビークル形態でこの調子です、これならロボット形態の方も……!」

 

 当初の期待を上回る良い結果だ、否応なくロボット形態のスペックにも期待は高まっていた。

 

「……よし、では氷竜・炎竜、システムチェンジしてロボット形態のスペック計測に移ろう」

 

 ……しかし、ここで一つの異変が生じていた。

 その異変に気付いた牛山は、それまで見ていたモニターから麗雄の方へと振り向き……驚愕混じりの声でその異常を報告した。

 

「……?! 博士! GSライドの出力が、予定の70%にしか達していません!」

 

「なんじゃと?!」

 

 

 それからというもの……度重なるプログラムチェックや、制御系ソフトの改良を行っても……氷竜・炎竜のロボット形態への変形『システムチェンジ』を行う事は出来なかった。

 

 ……いや、変形不可能になっている原因については分かっていた。

 氷竜と炎竜には、ギャレオン及び各種ガオーマシンと同じ動力源……「GSライド」が用いられている。

 正確にはギャレオン修復の際に得られた各種データと、ギャレオンからもたらされた製造技術の情報を元に、地球の科学技術でコピーされた地球製(イミテーション)のGSライドだ。

 

 尤も……コピー品とは言え、既に稼働しているガオーマシンやガオガイガーが発揮する性能からもわかるように、あらゆる面で既存の動力源よりも数段以上は優れており、実働データでもオリジナルとほぼ遜色無い程の完成度を誇っているのだが。

 

『何が原因なのか、私達にもさっぱり分からないのです……』

 

『今日こそ行ける……と、思ったのですが……』

 

 当の本人達にも、何が妨げになっているのか……まるで掴めない様子。

 もちろん、私にだって分からない……原作でも、システムチェンジできない()()については『動力源である「GSライド」の出力が上がらない』としか語られていないのだから……

 

──────────

 

 テストから数週間経つが、未だにGSライドの出力はシステムチェンジ可能な規定値に達せず……氷竜・炎竜は心なしか悔しそうである。

 

(解決法としては、原作通りにゾンダー危機一髪で護くんに頼るのが最適解なんだけど……)

 

 恐らく近い内にゾンダーは来る……原作通り順当に行けば、巨大ロードローラー型のゾンダーが車を踏み潰しながら吸収して巨大化し続ける……そんな奴だろう。

 

「……でも、もし……彼らの精神がGSライドに深く影響を及ぼしているのなら……」

 

 私には何となくだけど分かる……GSライドの出力は、持ち主……搭載されたマシンの制御系から来るあらゆる情報と密接に関わっている筈だ。

 

 そもそもGSライドとは、厳密に言えば超高性能の情報集積回路と制御システムを内包し、更に「ある物質」を相殺・対消滅させて浄化する「反物質」でもある『無限情報サーキット』であり、外界から得られる様々な情報……その中でも生命体の感情に関わるデータ……

 平たく言えば「生きたいという意志」や、恐れを克服し前へと進もうとする「勇気」をデータとして取得、それに呼応する形で『Gパワー』と呼ばれるエネルギーを無限に精製する機能を持っている。

 

『つまり、彼らに感情が備われば……GSライドの出力も上がるのでは?』

 

 そう結論付けた私は、麗雄博士に協力して貰うため……足早に施設内を急ぐのだった。

 

──────────

 

 それから数週間後、護くんは学校行事……遠足で国立博物館、東京ドームシティ、そしてディズニーシーを巡る事になったらしい。

 

「……良いなぁ、ディズニーシー……行きたかったなぁ」

 

「Oh、シオンはDisney Sea……行った事ないデスカ?」

 

「ん~、完成年度にはもう入院してましたし……治ってからも今までずっと隠遁生活で仕事とホテルの往復しかしてませんでしたから……」

 

 皮肉たっぷりにこれまでの隠遁生活をサラッとぶち撒けてみる……勿論、メインオーダールームのクルーは全員私が機械生命体だというのは知ってるので隠遁生活の事情は周知の事実。

 

「……私も、2年前はロクに外にも出なかったし……分かるかも」

 

 この中で最も年齢の近い(みこと)さんが同情してくれた……

 彼女の場合、両親の事故死と凱さんの重症が重なって自暴自棄になりかけてたって経緯があるから……

 

 おっと、過去を詮索するのは私の主義じゃないからスルーするとして。

 

「護くん良いなぁ……」

 

 過去イチで羨ましさを全開にする私を見ながら、スワンさんと命さんは苦笑するのだった。

 

 ……しかし、そんな日常的な場面を引き裂く様に警報音が鳴り響いた。

 

「Whats!? 何事デスカ?!」

 

「首都圏交通ネットワーク上にて、複数の事故発生……」

 

 命さんがシステムから警報の詳細を受け取り教えてくれた。

 幹線道路の渋滞や事故は少なくとも0で終わる日などそうある事ではない……普通なら単なる事故の報告だと処理されるのだが。

 

「護くんからは、ゾンダー発見の報告はないし……」

 

「……じゃあ、事故は偶発的なものなの?」

 

「複数箇所で起きてる事を考えると……判断に困るのぅ」

 

 原作同様、護くんからのゾンダー反応の報告は無い……しかし、私の感知能力にはバリバリ反応が来ている。

 

「可能性は0じゃない……もしかしたら、万が一って事態も考えた方が……」

 

「そうね……凱、聞こえる? 幹線道路で複数の事故が起きてるの」

 

 ちょうど偵察活動に出ている凱さんに、事故現場の様子を見て貰う……現状では、それから判断するしか無いとし、命さんはすぐさま凱さんに連絡を入れた。

 

 

 命からの報告を受け、事故現場へと向かった凱だったが……事故の現場が複数であった為か、ゾンダーの出現場所の特定には時間が掛かっていた。

 

「……此所ではないのなら、次はレインボーブリッジ方面へ……!」

 

 凱は現在位置から最も遠いレインボーブリッジの現場を次の地点と定める……道中にはまだ未通過の現場が2ヶ所あるので、様子を伺いながら通過し、状況によっては急行も可能と判断したからだ。

 

『深川線の事故はトレーラーの脱輪、か……晴海線の方は……?』

 

 凱からの報告と監視衛星の中継で、少しずつ明らかになる事故の詳細……と、そこへ警戒警報が再び鳴り響く。

 

「凱! 晴海線の現場で巨大な暴走車を確認したわ! 他の車両を破壊しながら築地方面へと移動中!」

 

 監視衛星から晴海線の望遠映像が、メインオーダールームのスクリーンに投影される。

 そこに映されていたのは、原作と同じ……巨大なローラーの如きタイヤで周囲の車両を踏み潰し、吸収しながら鈍走するゾンダーロボの姿であった。

 

「イカン! 奴は破壊した車両を吸収して無限に巨大化するぞ!?」

 

 やはり現れたゾンダー……原作とは違い内陸部ではないが、場所が今年のオリンピック予定地にも近く、築地方面は食の観光地として人通りも多い……ゾンダーロボがそこへ突っ込めば、多大な被害は確実だ。

 

『クソッ、これじゃ住民の避難も間に合わない! ディバイディングドライバーの整備はまだか?!』

 

  ディバイディングドライバーが使えるのなら、ゾンダーだけを空間的に切り離し、安全に戦闘と救助活動を行える……のだが。

 

「ダメです! 突貫でも、約2時間は掛かります!」

 

 万事休すか……と、思われたが。

 

「長官! 氷竜と炎竜なら……!」

 

 このシーン、中から見てると思わずにやけるね……こんな時こそ彼らの出番! というシチュエーションが目の前で繰り広げられる。

 

「うむ……という事だが、君達! 出られそうかね?」

 

 既に2人への通信も繋がれており、2人の答えを待っていた。

 そして勿論、その答えは……

 

『我々に任せてください!』

『必ず期待に応えてみせます!』

 

 原作よりも少しだけ小気味良い返答……私も彼ら2人と、事ある毎にアレコレ会話をしたり経験を色々と重ねて貰ったので、原作よりも人間味を増した流暢な言葉を喋る様になっていた。

 救助活動のエキスパートとして、とても頼もしく成長してくれた彼等……原作と遜色無く、十二分に活躍してくれるだろう。

 

「よぉし、氷竜・炎竜! 緊急発進!

 逃げ遅れた市民たちを全力で救出せよッ!!」

 

 斯くして、氷竜・炎竜の初任務……大都市圏での広域救助活動が開始されるのだった。

 

──────────

 

「怖くない、怖くない……!」

 

「大丈夫だよ華ちゃん、もうすぐGGGが助けに来てくれるから……!」

 

 護たちの乗ったバスは、ゾンダー出現の少し前から勝鬨橋周辺の渋滞に巻き込まれており、ゾンダーと渋滞の板挟みに遭っていた。

 この世界にはカモメ第一小学校などないので、護くん達の通う学校はこの地区に程近い有明小……その為、必然的に高速バス等で都心方面へ行くには晴海線を使うのである。

 

「白いロボットが車の化け物と戦ってる……!」

 

「前の車が燃えてるぞ!?」

 

「車が邪魔で扉が開かないよぉ!!」

 

「怖くない怖くない……」

 

 なお、護たち乗るバスの現在位置は築地本願寺付近……対するゾンダーは既に築地六丁目付近にまで迫っており、最前線はもう目と鼻の先……しかも、バスの2台前にある車両は、前方の10台が絡む玉突き事故の被害をモロに喰らってボンネットから火を吹いており、すぐそばの対向車線にはガソリンを満載したタンクローリー……タンク車両と火を吹く車の運転手は既に逃げていたが、玉突き事故の被害車両にはまだ人が残された車両もあり、バスも急停止の影響で扉の前に大型の事故車が邪魔をして出られなくなっていた。

 

(凱さん……みんな、早く助けに来て……!)

 

 もう猶予はない、対向車線のタンクローリーが火に包まれる……その直前だった。

 

『おおおおおっ、間に合えぇぇぇ!!』

 

 紅い消防車が車両の向こうからラダーを伸ばして水流を放水、炎を吹き上げる車両がタンクローリーから徐々に離されながら消火されていく。

 そして護たちの乗るバスの周囲を塞いでいた無人の事故車両も、青いクレーン車のクレーンによって次々と撤去されていくのだった。

 

 

 ギャレオンへのフュージョンを完了し、護の目の前で単身ゾンダーロボを止めるべく果敢に挑み掛かるが、既にガイガーとゾンダーロボとの体格差は2倍近くになっており、周辺には人が取り残された事故車両がまだ残っている為、立ち回りにも支障が出ていた……このままではガオガイガーへとファイナル・フュージョンしても、満足に動けない。

 だが、少しでもゾンダーロボの侵攻を食い止めようと凱はガイガーのままで戦闘を継続する。

 

『これ以上先に行かせるかッ!!』

 

 どれだけ体格差があろうと、戦闘行動を取っていれば自然と敵対者(ガイガー)に意識が向くゾンダーロボ……その為辛うじて侵攻は食い止められているが、このままではガイガーに勝ち目が無いのも事実。

 

 歌舞伎座のビル屋上から様子を伺うプリマーダは、不利に喘ぐガイガーの様子を見てほくそ笑んでいた。

 

「ふふふっ、さすが私のプリティホイラーちゃん……さぁ、その小さな敵対者の身体を踏み潰しておやり!」

 

『……ッく、このままじゃスクラップにされちまう……!』

 

 ゾンダーロボのアームでホールドされたガイガーが抵抗するも、サイズ差だけでなくパワー差の激しい相手なだけに苦戦を強いられていた……だが。

 

『『隊長ッ!!』』

 

 猛スピードで紅い消防車と青いクレーン車が走ってくる。

 救助活動を完遂し、そのまま戦闘に合流した氷竜と炎竜は、ガイガーを助けようと敵ゾンダーロボへと吶喊……行われたラダーとクレーンの突き攻撃でガイガーはゾンダーロボのアームから開放された……しかし、ゾンダーロボは両腕から衝撃波を放ち、氷竜と炎竜へ意趣返しとばかりに反撃する。

 

『ぐぅぅぅぅ……!!』

『ぬぁぁぁぁ……!!』

 

 想定よりも強力な反撃に、苦悶に喘ぐ氷竜と炎竜……

 

『イカン! このままではまとめてスクラップにされてしまうぞ?!』

 

 麗雄博士の言葉に、一部のスタッフが驚きの声を上げる……しかし、2人の意志に諦めや恐怖といった負の感情は一切無かった。

 

 その時だった……バスごと救助された後、外へ出てそのまま戦闘の様子を伺っていた護……傍らにはいつの間にか本部から抜け出したシオンが居り、何やら言葉を掛けていた。

 

 その言葉に促され「ある決意」をした護は、戦闘の繰り広げられている場所へ……自身の胸中に渦巻く感情を乗せた一言を、大声で叫ぶのだった。

 

「ゾンダーのバカヤローッ!!」

 

 ダメージに喘ぐ氷竜と炎竜……しかし、護の感情が自身の能力を引き出したのと同時に、氷竜と炎竜のAIもその波動を感知……そして呼応するかのように、単なるプログラムではなく、固有の人格へと昇華し始めていた2人の自我を急成長させたのである……そして。

 

『この程度……で、諦める……なんてッ!』

『僕達には……プログラム、されてないッ!』

 

 言動こそ機械的な単語が含まれるものの……もう人間と遜色ないレベルで感情の乗った言葉を発し、AIシステムがフル稼働を開始……同時にGSライドの出力までも急上昇し始めた。

 

『何……ッ?!』

 

 護が発した波動はガイガーにも影響を及ぼしており、急激に上がった出力はそれまで必死に抑えていたゾンダーロボを軽々と吹き飛ばしていた。

 

「何が起こったんだ……!?」

 

「Oh! 氷竜と炎竜のGSライドの出力レベルが急上昇してマス!」

 

「博士! 氷竜と炎竜が……!」

 

 計測不能レベルの高エネルギーを発するGSライド……その出力は、今まで不可能だった奇跡をこの場に齎した。

 

『『システムチェーンジッ!!』』

 

 GSライドの出力不足……それが奇跡によって解消された今、氷竜と炎竜は同時にシステムチェンジ。

 青と赤……その鮮やかな装甲に身を包んだ2体のビークルマシン、そのロボット形態を初披露する氷竜と炎竜……その表情には自信が満ち溢れていた。

 

『氷竜!!』

『炎竜!!』

 

『『ハァァッ!!』』

 

 変形完了と同時に2人は脚部の武装格納ユニットから武器を取り出す……氷竜の持つ「フリージングガン」から放たれた冷凍ビームが、ゾンダーロボの足元を凍結させて動きを封じ、炎竜の持つ「メルティングガン」の熱線が、ガイガーを襲おうとしたゾンダーロボのアームに直撃し、当たった反動で狙いを狂わせガイガーの回避を援護した。

 

『……ッ?! 氷竜、炎竜!!』

 

『隊長、ここは私達に任せて!』

『今の内に、ファイナルフュージョンを!』

 

 頼もしき2人の声に後押しされ、凱は合体キーワードを叫ぶ……!

 

 

 後の展開は原作通り……ガオガイガーへと合体して「ヘル・アンド・ヘヴン」を叩き込み、爆発する前に海へと落として被害を抑え、護くんがコアにされた人を元に戻して一件落着。

 

 しかし、原作にない展開も幾つかあった。

 

──────────

 

『……今度は、青いロボットに……赤いロボットだと……!』

 

 さっきまで暴れていたゾンダーロボに「プリティーホイラーちゃん」というアダ名を付けていたプリマーダは、ガオガイガーを援護した氷竜と炎竜に怒りを覚えた……が、その視界に望外の存在を認識すると、急に表情が穏やかになっていた。

 

(……っ?! 何だ……この感情は……奴らは我々の使命を阻む敵だと言うのに……)

 

 一瞬だけ惚けたような顔になったプリマーダだったが、すぐに意識を持ち直し『覚えてらっしゃい!』と姿を消すのであった……

 

──────────

 

 そして……

 

「……ごめんなさい、僕が……友達と遊ぶのに夢中になって、ゾンダーの感知が出来なくて……」

 

 原作通り、凱へと謝る護くん……しかし、凱は「失敗は誰にだってある、俺にだってな……だけど、失敗から学んでいけるのが人間なんだ、そしてお互いをカバーし合うのが仲間ってモンだ」と持論をもって励ましていた。

 

 その言葉に元気を取り戻した護くん……氷竜と炎竜も自己紹介し、私も話に加わろうと足を進めるが……

 

「護くんはまだ小学生……なんだから……もっと、私達を……頼って……」

 

 気力で耐えていたけど、さすがにもう限界だった……全身の力が抜けてしまい、護くんの目の前で転倒してしまう……ダメだ、もう全く身体が動かない。

 

(……ヤバイ、護くんのGパワーの出力……舐めてたわ)

 

 更に意識までも朦朧とし……護くんが私の名前を呼んだのを最後に、私の意識はぷっつりと途絶えてしまった。




ほぼ原作通りに氷竜と炎竜の初戦闘は無事終了!
……しかし、シオンは護くんのGパワーをモロに喰らって大ピンチに?!

それに、プリマーダの様子も少しおかしかったね……

でも、事態は待ってくれないので次回予告行ってみよー!

──────────

次回予告


君たちに最新情報を公開しよう!

戦闘終了と同時に倒れたシオン

数日で復帰したものの、倒れた原因を追求され
仕方なく自身の秘密を少しずつ明らかにしていく……

その一方で、氷竜と炎竜に秘められた
真の力が必要となる事態が発生してしまう……

果たして、彼らに秘められた真の力とは?


次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第7話『その名は超竜神(ちょうりゅうじん)

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!


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第7話 その名は超竜神 ①(そしてまた秘密をバラす回)

毎度の如く非常に遅い更新ですが……
初回から閲覧継続し、感想・評価をされている方、また最近新たに閲覧を始めたり、評価をして頂いた方……
本当にありがとうございます!

……リアル(介護)の仕事は辛いけど、感想・評価を頂く事でもうしばらくは頑張れそうです。



 護の感情の高ぶりにより、Gストーンが活性化し……システムチェンジに成功した氷竜と炎竜。

 2人の活躍により、無事にゾンダーロボを撃破したガオガイガー……

 

 しかし、護の力を至近距離で浴びてしまったシオンは、戦闘終了直後に倒れてしまった。

 


 

回想

 

「……護くん、ゾンダーの居場所……分からなかったの?」

 

 私は今……GGG本部を出て、市街地でゾンダーロボを食い止めるガイガーと氷竜・炎竜の戦いを遠目に見ていた護くんへと話し掛けている。

 一応、居場所特定用に持たされているG-USBで『護くんの所に行く』と、抜け出した事後ながら連絡はしたので、本部までパニックにはならない……と思う。

 

「……っ……!」

 

 一瞬だけビクッとした護くん……如何に人類の未来を左右する能力者とはいえ、彼はまだ小学生。

 こんな重荷をいきなり背負わされて、普通にしている方が異常だし、本当なら私が代わるべきだ……だが、あの時以降……『私』も自己保存というか、臆病風に吹かれたらしい。

 

 今すぐにでも『本気出す』という気概にはなれない……種として不完全な人間故の感情、それが迷いに拍車を掛けていた。

 

「……ごめんなさい……」

 

 謝らなくても良い……私が臆病でなかったら、2年前の時点で全てを終わらせ、皆が平和な時間を謳歌できていたのだから。

 

 そんな目で見ないで欲しい……

 

『いや、謝るのは「私」の方だ……「私」が臆病なばかりに、罪を犯してしまった……許して欲しい』

 

「……シオンさん……?」

 

 私は護くんの側に膝を折り、彼を労る様に抱きしめる……原作を見ていた頃には気付かなかった事実。

 この世界はGストーンの導きによって彼の力に地球の未来が託され、世界そのものがそれを肯定し、時を推し進めている……それは本来、あってはならない事だと私は思う。

 

 この世界は、凄まじい程に残酷だ。

 まだ幼な過ぎる彼に、地球の未来など重過ぎる……況してや理解も追い付かないのに……

 そして私は、それを知って尚……自分可愛さ故に罪を犯した。

 

『もう遅いのに……始まってからでは遅いのに、私は何をしているんだろうね……』

 

「えっ?」

 

 自分の力はある程度把握している……だが、保身故に踏み切れない……子供の頃には無かった、複雑な感情の揺れ、大人故に理解してしまう現実と言う名の壁……力の差、そして未来を理解しているが故の、自身の“末路”。

 

 悔やんでも悔やみきれない……そんな思いで一杯だった私に、護くんはこう返してくれた。

 

「何だか、よく分からないけど……シオンさんは悪くないよ。

 だって、あの時……大勢の大人の人達から、僕を守ろうとしてくれたでしょ?」

 

 あの時か……よく、あの状況で彼を守ろうと必死になれたよな……と今更ながら『私』は自分に呆れた。

 

 あの時は彼の正体に思い至る暇もなく、子供一人に大の大人が何人も寄って喬って言うことを聞かせようとしている……そんな理不尽を見過ごせなかった、ただそれだけしか考えられなかったからだ。

 だから、彼はあの時の『私』の行動を好意的に受け止めてくれている。

 

「だから、シオンさんは悪くないよ……悪いのは、僕の方だから……」

 

 なんてこった……この一件だけで彼は自身の重荷を受け入れ、これからの命運をも背負う覚悟をしているというのか。

 

 それに比べて、今の『私』のこの体たらくは何だ……完全に立場が逆転しているではないか!

 ここで私が優しく諭し、励ますつもりが逆に弱みを晒し、励まされている。

 

 彼の優しさはあまりにも尊く……綺麗で、心が熱くなる。

 

 ……そうだ、『私』のこの『力』は奴らに近い……だからこそ『やれる事』もある筈と考えた。

 そしてこの『知識』も消えていない……それなら、不測の事態を回避する手立てを生み出せる筈だと考えた。

 

 罪は消えなくとも、罪滅ぼしはできる……!

 

『……ありがとうね、護くん……励ますつもりが、逆に励まされちゃったね』

 

 まだ心は、表に立つのを多少は躊躇っている……けれどやっぱり、何とか出来そうな力のある私が、何もしないのはダメだと思った。

 私は臆病だけど、力はある……怖いけど……このままずっと護くんに縋っていくほど、落ちぶれたままで居たくない。

 

 やっぱり止めた……皆の影に潜んで生存戦略とか考えたけど、原作思い返したら後味悪い展開もあるし……可能なら自分も生き残って、かつ、皆もちゃんと救える未来が欲しい。

 

「シオンさん……」

 

 その為にも、少しずつでも……今を変えていこう。

 

 感情の吐露か、決意の現れの影響なのか、私は『変異生命体』である()()()姿()へと戻っていた……が、護くんは特に何とも思って無いのかな……リアクションが薄かった。

 

 逃げ隠れしていた癖もあり、すぐ元に戻すと……私は彼にある事を頼んだ。

 

「じゃあ、1つ……お願いするよ。

 

 あのゾンダーロボに向かって、こんな事になっちゃった恨みをぶつけてくれないかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……私のぶんも一緒に『ゾンダーのバカヤロー』ってね」

 

回想終了

 

 

(いやはや、参ったね……まさかあれ程高出力のGパワーを浴びる事になるとは……)

 

 我ながらやっちまったなぁ……『世界の修正力』なのか、原作通りに凄まじいGパワーを言葉とともに発揮した護くん。

 その影響を受け、氷竜と炎竜はシステムチェンジに成功し、ガイガーは敵の巨体を単独で押し返して隙を作り……ほぼ原作通りに撃破に成功して戦闘終了となった。

 

 ……そんで私も、至近距離で護くんのGパワーをモロに浴びて一部に組成崩壊が起き、身体機能の大半が麻痺……

 更に自己保存システムが消滅の危機に反応して、全エネルギーを防御と回復に全振りさせ……その反動と影響で意識を保てず気絶してしまったのだった。

 気絶中にも経過(ログ)は記録されていたので、順を追って確認すると……護くんのGパワーは『私』の対G防護(エネルギー)フィールドを容易く貫通し、体内へと浸透……ゾンダーではないものの、類似した特性を持つ身体機能の一部をごっそりと破壊してくれていた。

 

 この時、もし意識を保っていたら……今まで少しずつ重なっていた累積ダメージと今回の直撃によって()()()()()()を受け、精神的にもビジュアル的にも悲惨な事になっていただろう……と分かったので、気絶しちゃってて良かった……と本気(マジ)で安堵した。

 

 その後、何とか意識を取り戻した私は、取り敢えず身体機能はだいたい回復している事と、検査以上は何もされてない事を確認し……気絶する前の行動を鑑みて反省する。

 

 護くんのGパワーは、原作第二部となる「機界31原種」との初戦闘からガオガイガーの敗北……そして両親から渡されるペンダントの「リミッター解除」を経て本来の力を取り戻す……そう思っていた。

 ……が、その現状の最高出力というか……基本の出力自体が私の想定を大幅に越えていた。

 そういう事なのだろう……実際、私の身体の3割を占めている“Z由来の金属細胞”は、持ち前の超再生能力故に一時的な状態とはいえ、未だ軒並みダウンしているのだから。

 

 え? 残りの7割は何なのかって? 一応、5割はまだ人間本来の細胞なんだけど……残りの2割は私でも理解不能な未知の組成なのよね……

 実の所、この『Gショック』によって消耗したZ由来だった3割部分……そして本来の人間の細胞も、少しずつ未知の組成に置き換えられ始めている……といっても、前よりGパワーによる怠さを感じなくなったし、身体機能や能力としても前より安定かつ強化されてきたので良い事尽くめなんだけども。

 

 

 あの戦闘から3日で完全復帰した私は、やはり出勤直後に長官直々の呼び出しを喰らった。

 

 原因は勿論、護の側で攻撃も受けてないのに倒れた事であろう……

 場合によっては、自身の秘密をバラす他無い。

 

「復帰直後早々に済まないね、キミを呼んだのは他でもない……護くんと同じ場にいて、何故倒れてしまったのか……その原因の事さ」

 

「キミの身体は特殊な金属細胞と本来の生体細胞……そして()()()()()()()()()()()で構成されている、ボクの理解し得る限りで精密検査を行ったが……倒れた原因については掴めなかった訳じゃ」

 

 以前にも精密検査は受けた……その時はZ由来の金属細胞と本来の生体細胞のみだったので、改造人間という枠で見過ごされた経緯がある……だが、今回の検査で完全な未知の領域と呼ぶべき新たな発見をされてしまったのだ。

 

「それは……私にも分からないんです」

 

「何故かね? 君は肉体を改造されてしまったと過去に答えた……だが実際は改造というには度が過ぎる程の状態じゃ」

 

 侵食度……というよりは同化度と呼ぶべきだろう。

 痛い所を突かれた、詳細な生体スキャン……俗にいうMRIなどを使えば、私の身体がどんな変わり方をしているのかなど一目瞭然だと思う。

 今回、麗雄博士はそれを目撃したという事だろう……正体不明の金属細胞や未知の組成に汚染されている肉体、それを見て、正気で居られる科学者など皆無な筈……だが、麗雄博士はあくまでも私の事情を聞いて判断をしたい……そういう考えで敢えて私から話を聞こうとしている。

 

「……、…………分かりました。

 でも、話す前に1つだけ……約束をして下さい」

 

 もう逃げられない……核心に触れるには些か早過ぎるだろうけど、こうなっては逃げ隠れする方が却って墓穴を掘る結果を招くと思い、私は観念して少しずつ語る事にした。

 

──────────

 

 それから、正式にGGGの特別隊員という待遇を受け、本部へと招かれた護くんを交えて……初の全体会議が始まった。

 原作にもある、ゾンダーの目的や行動を推測していたシーンだ。

 

 だが、原作とはやや違う点が幾つか……この場に私が居るという事、そして……私の姿も、他のゾンダリアンに近しい様な、機械的なパーツが見え隠れする姿へと変化している事だ。

 

『さて……改めて自己紹介しないとね、私は【Z・オリジン】とでも名乗りましょうか……あなた方、地球とは違う異星文明の下で生まれた生機融合体……』

 

 嘘ではない……異星文明である三重連太陽系・紫の星が出身だしね。

 

『そして、今現在……この地球(ほし)で散発的に破壊活動をしているのは【ゾンダー】と呼ばれる突然変異性の機械生命体です』

 

 ここで皆の顔が一様に驚愕に染まる……当然だ、これまで理解すら出来なかった敵の情報が出たのだから……そして『私』は、予め制作していたデータと、GGGスタッフが制作した資料を併せてモニターへと表示し、説明を続ける。

 

『ゾンダーは、人間のような知的生命体が持つ【負の感情】をエネルギー源に活動します……

 そして、ゾンダーロボの外見的な特徴や行動原理は【コアにされた人間の負の感情】に基づいて構築されており、それぞれの特徴を以て、これまでの破壊活動も行われていました』

 

「……なる程、これまでの敵が行ってきた特異な能力や奇妙な行動原理は、人間をゾンダー化させた存在ではなく、素体(コア)となった者の【負の感情】によって決まっていたと言う訳じゃな?」

 

 さすが世界十大頭脳……麗雄博士の返しが的確かつ簡潔なので、他の大人達も全員が納得できた。

 

『はい、そして……この4人が、人間をゾンダー化させる存在……今後は【ゾンダリアン】とでも呼びましょうか……この姿は被害者から得られた情報を元に作って頂きました』

 

 原作でもおなじみプリマーダ、ポロネズ、ピッツァ、ペンチノンの4人……被害者の情報を元に、私の記憶で詳細を補完した3D画像データになっている。

 不測の事態を避ける為、また原作崩壊による混沌化を防ぐ為にも……一気に全てをバラすのではなく「段階的に情報を出す」と決めているので、今この場で正体や核心に触れる事はしない。

 

『じゃあ敵の目的は……!?』

 

 核心に迫る凱の一言……それに『私』は、ある種の()()を効かせた言葉で答えた。

 

『地球人類の完全排除……それが彼らの最終目標でしょう

 恐らく、あの巨大なロボを使って……ね』

 

 この発言を機に、一気に周囲が重苦しさを増す……敵の情報はありがたいものの、イキナリこんな重大な情報が齎されるとは思っても見なかったし、想定外だった筈だ。

 

「しかし……これに唯一、対抗できるのが彼……護くんの持っている、この【浄解】の力です」

 

 私は説明を命さんと麗雄博士に繋ぎ、護くんの浄解能力についての説明に入って貰った……その間に、私は一度立っていた壇上から降り……実験の準備に入る。

 

 命さんの説明が響く中、私は掌から【()()ゾンダー核】を生成する……これは『私』を構成する「Z由来の金属細胞」で構成したもので、本来のゾンダー核に近い分子構造をしている……唯一違う点は()()()()()()()()()()()事だろう。

 

 生成が終わった所で、命さんの説明と護くんの囮作戦の提案が一段落つき……私は博士に用意して貰った荷台へと【疑似ゾンダー核】を乗せて護くんの前へと出す。

 

 あれ以来、護くんは自分の意志で緑の光……「浄解モード」へと移行できるようになっており、その力を断片的ながら自分で行使できるようになっていた。

 

『見ていて下さい……これが私の倒れた理由……そして私が皆さんを助け、かつ助けを求める理由……』

 

 護くんは命さんに促されてGパワーを擬似ゾンダー核へと放出する……すると、疑似ゾンダー核は弱々しく抵抗するものの、あっさりと自己防御(パワーバリア)を破壊され……原子の塵と化して消滅していった。

 

「……な、なんという……!」

 

「Oh……」

 

「これは……!」

 

 皆、一様に驚く……無理もない、これが嘘偽りない私の不調の原因だし……死にはしないけど、ずっと不調を抱えたまま生きているという事実だけは、知って欲しかった。

 

 今後も良い関係で居続ける為にも……ね。

 

『そして……私の身体の3割を構成しているのは、この()()()()()()()()組成をしている、一種の金属細胞です』

 

 沈黙する全員……今まで普通の人間を演じ、こうやって懐に入り込んで、呆気なく身バレする……今の私は、出来の悪いスパイを描いた映画の様な役回りだ。

 普通なら、敵に近しい存在として何らかの処分が下され……よしんば存命したとしても、研究材料と同一視されてもおかしくない……ぶっちゃけ物凄く怖いけど、もう覚悟するしかない。

 

「……つまりキミは、敵であるゾンダーに近しい存在……と、いうことなのかね?」

 

『……ゾンダーとは……元々私と同種だった存在が、何らかのバグによってコアプログラムが突然変異を起こして進化を重ね、知的生命体を排除する事に固執するようになってしまったもの……故に、私と彼らは最も近しい、似て非なる存在と言えます』

 

 ついに言ってしまった……これでもう、研究材料ルート一直線かな。

 

「「「…………」」」

 

 皆が長い沈黙を守る……唯一、護くんだけは私を心配するような視線で見つめてくれていた。

 だが敵の情報を持ち、敵の近似種である私の存在など……到底仲間として、受け入れる事はあり得ないだろう。

 

 それが人間が持つ「集団心理」……大勢の中にたった1つだけできた違いを受け入れ難く、突然沸いた違いに過剰に反応し、時に排除しようとする。

 

 まさに、今の私の置かれた状況がそうだ……

 

「……最後に、1つだけ質問したい」

 

 大河幸太郎……このGGGを仕切る文字通りの頭とも呼べる彼が、私に1つの質問をしてきた……その内容は……

 

「キミは、敵の思想……地球人類の排除に賛同しているかね?」

 

 私が敵の近似種と知ったのならば、当然の返しだ……だが、私はこれだけは主張したい。

 

『それは……それだけは、真っ向から否定をさせて頂きます……

 

 私は、彼等に最も近しい存在……ですが私には、半分とはいえ人間の血が流れています。

 そして……たとえどんな(そし)りを受けようとも、私は人間として在りたいと思っています!』

 

 たとえ敵と同一視されようと……たとえ受け入れられなくとも、この胸に秘める思いだけは伝えたかった。




……本当はゾンダーロボの登場辺りまで引っ張りたかったけど、区切りが付けられなくなるのでココで切ります。

TIPS:シオン『生機融合体』モード
Z・オリジン本来の姿でもあり、「稀星シオン」の身体に様々な超絶能力を付与する「Z(ゾディアート)メイル」を装着した形態。
メインカラーはクロムシルバーの下地に紫やピンクの差し(発光)色が目を引く。
……こらそこ、ELS擬態(MS)言うなやw

アーマー自体は着脱可能で、形状も武装も自由自在……ビジュアル的には「フレームアームズ・ガール」をイメージすると分かりやすい。
……後に「FINAL」で、IDアーマーの参考にされる(予定)。

この形態になると単純なパワーだけでなく、化け物レベルの自己治癒能力に各種センサーによる感覚の保護や補正……超速演算による行動予測や索敵など、戦闘能力も大幅に強化される。

ビジュアルは綺麗だけど、能力の起源故か完全にダークヒーローかヴィランですよ……


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第8話 その名は超竜神 ②(やはり敵は待ってくれない)

前話の投稿後から評価とお気に入り数が結構増えてまして……

ありがとうございますッ!!(歓喜&感謝)

ついに自身の秘密を打ち明け、秘めていた想いを語るシオン。
彼らの心に、彼女の想いは届くのか……?



 敵と祖を同じくする存在【Z・オリジン】の秘密を暴露したシオン。

 

 ……たとえどんな結果になろうとも、もうは後悔したくない……

 そう決意した少女の瞳は、真っ直ぐにGGGの指揮官である大河幸太郎の瞳を見つめ返していた。

 

「……シオン、さん」

 

「シオン……」

 

「シオンちゃん……」

 

 護くん、スワンさん、命さん……今までありがとうね。

 

 ……長い様で短い間だったけど、けっこう楽しかった……でも多分、私はもうココには居られないと思う……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……ココでの思い出は、例え死んだとしても……忘れないよ……だから皆も……私の事……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うむ、それを聞いて安心したよ」

 

『……はぁ……えっ?』

 

 長官の顔は、長年の憑き物が取れたかの様な満面の笑み……よく見ると、麗雄博士もやけにニヤニヤとして、まるで周到に準備した悪戯がついに成功した……そんな笑顔をしていた。

 

『……あ、あの……私は、皆さんの敵……』

 

「身体的な特徴などは確かに敵に近いだろうが、その心まで同じではない……君の思考パターンは奴らゾンダーではなく、むしろ我々人類に限りなく近いものじゃ」

 

 私の言葉を遮るように、麗雄博士はそう言ってくれた……

 

「稀星くん……キミの来歴や、我々と敵対しているゾンダーに近しい存在だという事は、覆しようのない事実ではある……

 

 ……だが、そんなキミが心に秘めているその想いは……我々地球人類と同じという事が分かった。

 

 例えキミが敵と同種だったとしても、いやどんな存在であろうとも……その心が我々と同じである限り、キミは立派な人間だと私は思っている……今回の件は、それを確かめたかったが故の事だった訳さ」

 

 若干の照れ隠しも含め、頭を掻きながら「古典的な芝居で試してしまって……すまなかったね」と、大河長官は謝罪までしてくれた。

 

 この物々しさも全て、今まで私がひた隠していた真意を知りたいが故の芝居……ようやくこの流れの全てに納得のいった私は、一気に緊張が解け……糸の切れた人形の如くその場へ座り込んでしまった。

 スワンさんが一番、私の事を心配してくれていたのだろう……すぐに駆け寄って、涙を浮かべながら「良かったデス、シオンとサヨナラしなくて良かったデス!」と抱き締めてくれた。

 

「まぁ……彼女は最初から、敵とは思えない行動を普段から取っておったし、凱も“彼女が敵対するなんてあり得ない”と言っておったからのぅ」

 

「……な? 俺の言った通りだったろ」

 

「うわっは~♪」

 

 凱さんは最初の厳しい表情から一転し、護くんと笑い合っている……思えば確かに、彼と初めて一緒に戦った時、私も「不義理はすまい」と可能な限り彼のサポートに徹した……彼と話した事は少ないけど、彼に対しては本音を隠して無かった気がする……多分あの時から、彼はずっと私を信じてくれていたのだ。

 護くんも満面の笑みで拍手までしてくれてるし、感極まったのか、命さんも私に抱き付いてきた……

 

 なんか、物凄く気疲れした感じがするけど……

 これで私は……大手を振って皆と同じ道を歩む事が、出来るようになったのかな……?

 

──────────

 

 シオン達が会議をしていた頃、とある港を一望できる海岸で……

 

「……ケッ、何が自動操舵システムだ……嵐に勝てねぇんじゃ、無くても一緒だろうが……!」

 

 不貞腐れた初老の男性がアルミ製のミニボトルを片手に、ズラリと並んで港に浮かぶタンカーやコンテナ船の列を恨めしそうに見ていた。

 

 原作では座礁したタンカーを眺めていたが、彼は今……原作とは違う理由で職を失っていた。

 

「俺達船乗りだからこそ、機械には分からねぇ僅かな変化を読み取って船を動かす……どんだけ機械が発達しようが、それだけは簡単に真似なんざ出来ねぇ……!」

 

 ……彼は元々、優秀かつ人望もあるタンカーの船長だった。

 

 実際、彼が船長として乗り込んだ船は、何度も嵐やテログループの襲撃に逢いながらも全員が五体満足で戻れていた……原作とは違い、GGGが表立ってテログループの襲撃などを警戒しているのもあるし、それだけ運が良かったのもあるだろうが……ただの運では説明が付かない事も多々あった。

 

 勿論いつも無傷で済む訳はなく、多少は怪我を負ったり、積み荷を失う事はあるだろうが……武器を持つ凶悪なテログループ等を相手に、命を失わないで切り抜けられた時点で普通に凄い事であろう。

 

 ……彼等にはそんな幾多の経験があり、この仕事は自分達の天職である……

 そんな想いと、自負があった。

 

 だが、昨今声高に言われている「コスト削減」……

 何度も嵐やテロに遭い、襲われる……それをマイナス面として見た者は多かった。

 

 企業における最重要コストの1つ……「人件費」。

 

 物的な損失だけならば比較的安価で補填はできるし、作業用の機械ならば替えも効く……だが人的な損失となると、その稼ぎを以て生活している家族にも大きなダメージを与えるし、会社側としても欠員が補填できなければ同じく大ダメージを被る。

 

 その上、世間的にも人的損失が表沙汰になると、やれ「ブラック企業」やら「雇用する側の問題だ」と叩かれるのはほぼ確定だ……それ故に企業側は可能な限り人的損失を抑えるべく、多大な費用を掛けて対策を講じ、替えの効かない働き手を守る……雇用主である会社側としても必死なのだ。

 

 だがその人件費を、低コストに抑える手段……近年成長の著しい「自動化」によって削減出来るのなら、誰しもが真っ先に飛び付くだろう……

 

 つまりはそういう事だった……

 

 よくある「企業努力」「コスト削減」……聞こえは良いが、彼はその煽りを受け解雇されたのである。

 理由は勿論「船の運用コスト削減に伴う人事異動と、若手の育成」……そんな所だろう。

 

「俺が居なきゃ、アイツ等も本領を発揮できねぇ……それなのにあの男は、アイツ等をバラバラに……似合わねぇ部署に置きやがって!」

 

 おっと、彼は自分の事だけでなく……部下や仲間の行き先にも不満が有るようです。

 

 ……そしてそこに、原作通りの相手が現れ相槌を打つ。

 

『……なるほど、貴方はそんな横暴をした会社に恨みがある……』

 

 見た目は小肥りの……さながら笑○せぇる○まんに似た体型と顔をした、ただならなぬ雰囲気を発する金目の男……何故か片目は船の錨をデフォルメしたマークの眼帯で覆われ、白い水兵服と帽子が奇妙なマッチ具合だ。

 

「……な、なんだよ……お前さんは?」

 

『貴方のその恨み、この私が晴らすチャンスを与えて差し上げましょう……ウィィィィィィ!!』

 

 奇妙な嗤い声と共に不気味な男が取り出した……毒々しい紫色の結晶体、それから発せられる光を見た彼の身体は、己の意思に反して動けなくなっていた。

 

「……う、うわぁぁぁぁぁッ?!」

 

『ウィィィィィィッ!!』

 

──────────

 

『……良かったですね、稀星先生』

『あぁ、一時は決別もあり得るんじゃないかってヒヤヒヤしちまったぜ……』

 

 これまでの経緯を黙って見ていた氷竜と炎竜は、ようやく安心できたと言う風に場を締める。

 

『先生は止めてって……なるほど、氷竜も炎竜も知ってた訳か……!』

 

 少し理不尽にも感じたが、唐突に飛び込んできた既知の感覚が急激に思考を現実へと引き戻す……

 

「『……ゾンダーだ……!』」

 

 護くんと同時に発言した事で、彼の超感覚と私の感知能力はほぼ同等である事も実証され……すぐさま出撃体制が整えられ始めた。

 

「横浜市中区の製油所付近に、超大型のゾンダーを発見との報告あり!」

 

「サテライトビューからの映像を受信、メインスクリーンに出します。」

 

 命さんが外部からの連絡を受け取り、チーフオペレーターである猿頭寺耕助(えんとうじこうすけ)さんが受信した映像を、巨大な中空投影スクリーンへと転送・表示させる。

 やはり、現れたのは工業地帯……投影された映像に映っていたのは、海岸線に近い製油所と、その場所を襲う「巨大なタンカーを模した姿のゾンダー」だった。

 

「な……ッ?! 何という巨体だ……!?」

 

「Oh?! 推定300mは超えていマス!!」

 

「なんて事だ……敵ゾンダーの身体には、約数十万トンのガソリンが満載されています!!」

 

 腕の様に伸びた三対の長いパイプのような触手は蠕動運動を繰り返しており、施設のタンクへと突き刺して中身を吸い上げている……ヤツの巨体の中身は、やはりガソリンだった。

 

『……分かってはいても、予想通りすぎると逆に怖いわね……!』

 

 そう呟きながら私は、氷竜と炎竜に「ある装備」を渡す為……メインオーダールームへ戻ろうとするリフトから飛び降りる。

 

「シオンさん?!」

 

『相手が私の予想通りなら、対策を練ってあるからそれを実行するわ! 護くんは皆と一緒に行って!』

 

 声を上げていた護くんの返事も待たず、メインシャフトを上昇するリフトは見えなくなった。

 私はリフトサークルの外側に予め置いておいたコンテナの側に着地し、氷竜と炎竜へ声を掛けた。

 

『氷竜、炎竜聞いて! 敵の詳細はある程度予測が付いてるわ……コレはその対策よ、持って行って!』

 

 疑似ゾンダー核を生成するついでに、今回のゾンダー対策として創り出しておいた「とある装備」が入ったコンテナを2人へと渡す……コレがあれば、敵の足止めを行いつつ消火作業を行う2人へ、多少なりとも助力できる筈だ。

 

『……それと、もう1つ……今回は最初から全力でガオガイガーを援護しなさい。

 

 いざとなったら、あなた達2人の存在が勝利の鍵になるわ……それも忘れないでね?』

 

『稀星先生……?』

『どういう事ですか?』

 

 突然の言葉に、少し戸惑い気味の2人……

 

『……勿論、GGG憲章も1つの理由ではあるけど……私が、あなた達2人の成長を心から願っているから……これじゃダメかな?』

 

『『…………』』

 

 少し強引過ぎたかな……この戦いで彼等が成長しなければ、今後の予定や方針にも響いてくる……それに今回は『例の装備』(イレイザーヘッド)が必須になる相手なのだ。

 

 少しでも、勝利条件を整えておかないと……

 

『……分かりました、それが先生(あなた)からの助言であれば』

『今まで外した事も無いしな、先生の助言』

 

 まさか未来を知ってるから、とか理由に出来ない……でも、だからこそ……状況の悪化だけは何としても避けたい。

 

『ありがとう2人とも……さぁ、行ってらっしゃい!』

 

 激励を背に受け、氷竜と炎竜は出撃に使われる三段飛行甲板空母に乗り込んでいく……私も今回の推移を確かめるべく、人間用のルートを使って同じ空母へと乗り込むのだった。




渡した装備の詳細と、シオンが「先生」と呼ばれている理由……
それは次回のお楽しみ。

さて、敵も徐々に活動を活発化させてきたようですね。
徐々に攻略難易度が上がるのはしょうがないとして、不測の事態が起きなければ良いのですがね……


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第9話 その名は超竜神 ③(でも解決はいつも通りでした?)

筆がノってるので調子に乗って投稿したというw

胸中暴露……から無事に和解。
しかし、その感動に水を差すようにゾンダーが出現した!

シオンからサポートの為にとコンテナを渡されたよ。
上手く使って攻略を進めよう!



テストから数日後……

 

 性能テストで発覚したGSライドの出力不足問題……あらゆる方法を試しても、その解消には至らず、麗雄博士達は困り果てていた。

 

「一体、何が原因なんでしょうか?」

 

「分からん……GSライドはGストーンのエネルギー的な特性を利用した動力、というのは分かっておるんじゃがのぅ」

 

 GSライドのシステムは、ギャレオンからもたらされた未知の科学技術の結晶だ……さしもの麗雄博士も完全把握には至っていない……そこへ、自動扉が開きシオンが入ってきた。

 

『……お話し中すみません、氷竜と炎竜の事なんですが……』

 

 それから始まった説明を理解して、件の子細を知ったシオン……やはり思い付いた解決策で問題ないと確信を得た彼女は、博士にこう切り出すのであった。

 

『私が、2人の面倒を診ても良いですか……?』

 

──────────

 

 凱、氷竜、炎竜……そしてシオンを乗せた輸送メカ「三段飛行甲板空母」が水上へと浮上し、出撃モードへと変形する……この空母により、GGGは迅速に機動部隊を現場に送り込むと共に、各種サポートを行う為のツールを輸送しているのである。

 

《ガイガー、格納庫内にてフュージョン完了……ステルスガオー装着モードで先行発進!》

 

 ステルスガオーとドッキングしたガイガーは、先行してゾンダーの注意を引くために発進し……シオンからコンテナを受け取った氷竜と炎竜も、発進準備が整えられる。

 

《ミラーカタパルト、展開します! 氷竜・炎竜、スタンバイ……射出!》

 

 超電磁誘導により、物体を高速射出するミラーカタパルト・システムを用いた迅速な戦力展開は、GGGの十八番であるオーバーテクノロジーをフル活用した方法だ。

 特殊なミラー粒子を射出対象に付着させて電磁波を遮断するコーティングを施し、超電磁加速による磁気の影響を受けない様にして撃ち出すこのシステムは、精密機械の塊である超AI搭載のビークルロボや各種ツールを、素早く戦場に届ける事を可能にした。

 

 氷竜はさすがに空中制御も上手く、華麗な着地を決めたけど……あっ。

 

『うおぉあぁぁぁぁぁ?!』

 

 炎竜はバランスが上手く取れなかったらしく……頭から突っ込む様な形でダイブしたが、氷竜よりも数倍の制動距離を要して何とか無事に停止した。

 

 原作ではこの光景が毎回あるせいで、「炎竜はロボットの癖に着地が苦手」ってよく言われるけど……実際はちゃんとした理由がある。

 炎竜には、氷竜にはない防御用装備であり、合体にも使う「ミラーシールド」を携行させているため、氷竜よりもバランス制御が困難であり、姿勢制御の計算が複雑すぎて着地に間に合わない……という事らしい。

 

 地形データを事前に取得しての計算……は、現場決定から場合によっては可能だろうが、そもそも出動=緊急性を要するので、地形情報よりも敵のデータや避難状況の把握が優先される。

 実際そんな悠長な事をやる暇など無いし、シールドを後から射出すれば? とも思うだろうが……現場到着と同時に合体しなければいけない様な状況に陥ると、受け渡しそのものが不可能になるため『仕方なく現状維持』なのだそう……

 

『おっ? これなら僕でも……!』

 

 体勢を素早く整え直した炎竜は、氷竜と共に消火作業へ移行……2人に持たせたコンテナには『液体窒素』を充填したマイクロミサイルが搭載されている。攻撃がほとんど炎熱系であり、消火手段が放水しかなかった炎竜にも高効率の消火作業を可能にし……

 

『ゾォォォンダァァァァァ……!!』

 

 消火作業に集中する氷竜へ、ゾンダーロボからの攻撃が撃ち出される……が、コンテナから飛び出した4基の自律飛行型シールド・ドローンが受け止め、2人の手を煩わせること無く防御した。

 

『ッ!? これは……自律飛行のシールドですか……!』

 

 このシールド・ドローンには、受け止めた熱量を拡散させる事無く封じ込め、サプライヤーで自身の動力に変換する特殊なフィールド反射幕を内蔵しているので、熱量攻撃なら何発浴びようが破損しない……お陰で2人の作業効率は劇的に上がり、尚且つ敵の注意も上手く引き付けられている……その隙を見て、ガイガーもファイナル・フュージョンを完了していた。

 

 私は全員の様子を空母の艦橋から眺めつつ、敵である巨大なゾンダーへと目を移す……

 

(誘爆と消火作業の対応策はこれで良い……後は、イレギュラーさえ無ければ……)

 

 ゾンダリアンは、もう既に私の存在を嗅ぎ付けたと考えてもおかしくはない……少なくとも一度は(シャトルの回で)姿を見られている訳だし、バレている可能性は大いにある。

 

 だから、何となく妨害や対抗策を練ってきている……と、思っていたのだが……

 

(特に……変わった感じはしないわね……或いは、まだ罠に掛かってないだけ?)

 

 

『うおぉぉぉぉ! ブロウクン・マグナムッ!!』

 

 前腕を射出せず、直接地面に撃ち込んで足場を崩し……巨大ゾンダーロボを転倒させるガオガイガー。

 

 コンビナート地区の足場は簡単に崩壊し、ゾンダーロボのバランスを容易く失わせ……更に足場を破壊したガオガイガーの右腕(ブロウクン・マグナム)が巨体の太い足を突き上げてゾンダーロボの転倒を加速させる。

 原作では途中で滑る様に海岸線まで動いていたが、現実にそんな挙動はしない……巨体は海岸線へ向かって頭から倒れ込み、海岸線から胴体は半分ほど越えてしまっている。

 そこに、元々頭が重たいゾンダーロボと、その体内の半分を占めていたガソリンが倒れた反動で頭方向へと一斉に重心移動し始め……倒れた勢いのままゾンダーロボはズルズルと海へ滑り落ちて行ったのである。

 

「ゾンダーロボ、海へ転落! 周辺海域に民間船舶無し……戦闘エリアの確保、継続中!」

 

「ディバイディングドライバーの射出準備、急げよッ!!」

 

 火麻参謀の号令が飛び、ディバイディングドライバーが準備される……さて、こうなるとやはり原作通り、氷竜の予測で危険だと分かり、『迷ってる暇は無い!』と凱さんは強行……そしてあの()()()()()が繰り広げられる筈だった……

 

『……ッ?! 隊長! 危険です!』

 

 氷竜の指摘に気付き、咄嗟に身を翻すガオガイガー……至近距離を巨大ゾンダーロボの触手が掠め、ガオガイガーの足元を抉った。

 

『何ッ?! ぐぁぁぁぁぁ!?』

 

 鞭の様に振るわれる触手がガオガイガーを撃ち据え、撥ね飛ばす……中空へと撃ち上がったガオガイガーだが、すぐに自ら体勢を整えてゾンダーロボの方へと向き直った。

 

『ゾゾゾゾンダァァァァ……!』

 

 なんとゾンダーロボは倒れた直後、自らを恐るべき速度で変形させ……サイズそのままのタンカーへと変貌し、まるで戦艦の様に増設した砲台からガソリンを用いた火炎放射と触手で反撃してきた。

 

『クッ……このままでは……!』

 

 敵に近過ぎるが故に反撃もままならず、ガオガイガーは少しずつダメージを蓄積させていく……かといって迂闊に遠距離攻撃をすると、途端に大爆発だ。

 

(まさか、こんな手段でガオガイガーの動きを封じるなんてね……)

 

「装甲へのダメージ、30%を突破! 追撃で更にダメージが……!」

 

 ディバイディングドライバーの射出準備は完了し、すぐにでも射出できる……が、肝心のガオガイガーが敵の猛攻に晒されては受け取りも不可能……

 

『『隊長っ!!』』

 

 ガオガイガーのピンチに、氷竜と炎竜に過去の記憶が甦る。

 

 ……それは、以前にシオンと過ごした()()()の一幕だった……

 

 

── 回想シーン ──

 

『稀星シオンよ、よろしくね』

 

『『よろしくお願いします』』

 

『さて、早速だけど……2人にはこの映像データから、思った事を私に教えて欲しいの。

 単純な疑問から、感想……勿論、戦闘シーンもあるから、選択の善し悪しとか……何でも良いわ』

 

 私が取り出したのは、かつての私の記憶を元に造り出した「映像資料」……中身は勿論、転生前の記憶から引っ張り出した「全勇者黙示録」とも呼べる映像記録……

 

 早い話が()()()()()()()()()()()()()()()()B()D()()()()()()である。

 

 ……何でこんなモノを用意出来たかって? 当然、麗雄博士にも協力して貰ったよ。

 

 まあ、こんな記憶……何故持っているのかって当然聞かれたけど、「故郷の星で流行ってた映像作品」って言ったら、何故かすんなり納得してくれた。

 

 普通こんな回答したら、ますます疑うと思うんだけどなぁ……物語を異星文化風に書き換えるなんてとても無理だったから「日本をベースにアレンジしました」って設定も加えちゃったし。

 

 で、そういう訳で氷竜と炎竜には()()()()()()()()()を見せ、どんな反応をするかをまず見てみた……意外だったのが、戦術云々よりも登場人物達の機微や、考え方の変化……敵の思惑など、理論的な事よりも感情的な部分がほとんどだった……そして理解する度に、2人の声が『感情を帯びていく』のが分かった。

 

『……何故、この子供は……宇宙から来た彼の事を「周りに秘密」としているのですか?』

 

『突然「宇宙から来た」……なんて、人間は信じられないのよ……突拍子もないからね。

 ……でも、唯一この子だけが信じてくれた。

 

 仲間っていうのは、ただ力を合わせる為の存在じゃないわ……

 

 秘密を共有する、共通の目的意識を持つ、離れていても互いを思い信じ合う……そういう事ができる存在、()()()()()()()の事を言うのよ』

 

『離れていても、信じ合える……』

 

『信頼できる相手……』

 

 その後も何かと質問を繰り返しながら、映像資料を食い入る様に見続ける2人だった……

 

 

── 回想終了 ──

 

『『隊長ッ!!』』

 

 ガオガイガーの窮地に、互いを見合った氷竜と炎竜……心から涌き出る思いを、2人は互いに口にした。

 

『氷竜、僕達が……』

『炎竜、私達が……』

 

『『隊長を窮地から救わなければ……ッ!!』』

 

 ただ、彼の命が大切だから……ではない。

 

 自分たちを信頼し、背中を任せた凱の……彼の信頼に応える為に、今、自分達がやるべき事を求めた結果そう思ったのだ。

 

 その時、オペレートモニターに表示された氷竜と炎竜のAIシステムのシンパレート数値が急上昇……一気に100%に達したのである。

 

「……あっ、シンパレートが!?」

 

「シンパレート、100じゃあッ!!」

 

 状況を理解した長官は、早速とばかりに2人へ承認(願い)を下す。

 

「シンメトリカルドッキング、承認(しょお~にん)ッ!!」

 

 承認を受け、氷竜と炎竜は自身に秘められた力……その姿を表す。

 

『『シンメトリカル・ドッキングッ!!』』

 

 通常の変形でビークルモード(車両形態)へ戻る途中から、更に違った形へと変わる2人……ちょうど向かい合う様な状態で互いのボディが接続され、腰にはクレーンとラダー、腕と頭、そして胸へとパーツが接続されていく……

 

 そして姿を表したのは……半身をそれぞれ赤と青に染めた、銀の胸を持つ勇者ロボ。

 

超竜神(ちょぉぉりゅうぅぅじぃぃぃん)ッ!!』

 

 合体を完了した超竜神……腰に接続されたクレーンとラダーを手に、最大速度でガオガイガーの前へと躍り出る。

 

『うおぉぉっ! 「ダブル・トンファー」!!』

 

 当然、何本も触手が撃ち据えようと繰り出されるが、超竜神はその全てを悉く薙ぎ払う……その度にトンファーの威力で触手が弾け飛び、瞬く間に触手を全て切断……

 ゾンダーは本体に残された砲台からガソリンの砲撃を飛ばしてくるが、超竜神は渡していたドローンで防御しながら、マイクロミサイルの液体窒素を利用して砲台ごと凍結させ、全て作動不能に陥らせていった。

 

『今です! 爆発の処理は此方に任せて、隊長はコアを!』

 

「ディバイディングドライバー、イレイザーヘッド! 射出ッ!!」

 

 目を見張る超竜神の動き……予想外の展開に吃驚する私を他所に、事態は更に推移。

 ディバイディングドライバーを受け取ったガオガイガーが、タンカー型ゾンダーロボの浮かぶ海を割って身動きを止め……

 

『ヘルッ・アンド・ヘヴン!!』

 

 ディバイディングドライバーを外し、そのまま速攻でコアを抉り出しに掛かるガオガイガー……超竜神もガオガイガーの動きに併せ、爆発をイレイザーヘッドで処理する……終わってみれば、ほぼ原作通りの結末を迎えたのであった。

 

 

『やったな、超竜神!』

 

『隊長、ご無事で何よりです』

 

『ああ、あのままじゃ確実にやられていた……お前らのAIは世界最高だぜ!』

 

 経緯は多少違うけど、ほぼ原作通りに解決! 思わぬ反撃には、ちょい驚いたけどね……

 

──────────

 

『……ウリュウゥゥゥ! やはり、一筋縄では行かない様だな……!』

 

 悔しさ滲む言葉と共に、ペンチノンは音もなくその場を去っていった……




イレイザーヘッドには、主に2通りの動作がある。
1つは消去対象を宇宙空間へと放出し、地上への被害を抑える方法……これは主に、今回みたいな「物体が原因の物理現象」に対して使われる。
もう1つの動作は、また次の機会で披露されるからお楽しみに♪

なお、氷竜と炎竜……
あの後も時々、勇者シリーズ全巻セットを暇な時に見直してるみたい。

その結果どうなるか……
たぶん精神的な成長が早まる、だけと信じたい。
(;・ω・)

──────────


次回予告


君達に最新情報を公開しよう!

日本は新幹線事業を世界に輸出している
世界的に信頼される日本の新幹線の開通を
心待ちにしている人々は多い……

とある国で結実しようとしている新幹線事業……
快く思わない人の心を、ゾンダーは見逃さなかった。

怪電波や騒音、電磁波を撒き散らして
周囲を破壊しながら高速で走るゾンダーロボに
勇者達はどう立ち向かうのか?


次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第10話『黒の700を追え!』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!


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第10話 黒の700を追え!(前編)

なんか筆が進むのでこちらも投稿!

今回は原作リスペクトの多いオリジナル回です。
時代背景の差から全体的な経緯が原作とは違うので、混乱するかと思いますが……
ご都合主義を含め、アニメ番組を視聴するくらいの軽い気持ちでどうぞ。



 かつて2度起きた世界大戦時代前後から、日本は急速に「技術」を発展させてきた。

 それは現代において「日本製」というブランドが高く信頼される事が如実に表している……

 

 世界的にも、日本のメーカーや日本人が関わった製品や建造物の多くは「とにかく凄い」と利用者から絶賛されているのである。

 

 自国の保有する最新技術を用いた製品の「輸出」は、日本の国家事業の1つとして打ち出されており……中でも「新幹線」は、迎え入れた国の輸送や観光の発展にも寄与する一種の「奇跡の魔法」的な扱いを世界から受けていた……

 

──────────

 

 私は勤続スタッフらの定期検診で、東南アジアにある新興国で進行していた日本の「新幹線事業」の開通式が間近に迫っている……という情報を得た。

 

 石油コンビナートを襲撃したタンカー型ゾンダーロボの件から……私は可能な限り原作のゾンダー出現傾向に近いネタを探す為、世界中の情報が飛び交うGGGのスタッフからの噂話やリアルタイムの情報にいっそう注目するようにした。

 

 GGGの精神科医として勤務するようになって間も無くから始めていた事ではあるが、原作よりもペースは遅く、所々原作とも違う片鱗を見せ始めたゾンダーロボ戦に対し、原作から乖離した情報から推測を建て「先行して対策を練る」事に重点を置く事にした。

 

 そのタンカーゾンダー戦でも、転倒からディバイディングドライバー使用まで無防備だった敵が思わぬ反撃をしてきた為、原作よりもガオガイガーの損傷が激しく……最近流行り始めた感染症の影響もあって、修復やその他のスケジュールも遅延し……スタッフの心労は日を追って重傷化し始めている。

 スタッフの心労対策には、私の制御下にある「Z細胞(仮称)」を使って擬似的に「浄解」後に近い状態に持っていく「治療」を本格的に行える「施設」を構築・設置させて貰い……セルフ()()()()で通って貰う事に……

 実をいうと……この方法で取り除いたストレスが、私のエネルギー回復手段(もう1つのごはん)だったりする。

 多少、聞こえは悪いが……これぞ、狂ってない「Z」の力の()()であろう。

 

 

 今回の情報は、私から直に「浄解治療(仮称)」を受けていた、あるスタッフから得たものだ。

 恐らく、ゾンダーは来る……この新幹線を狙って。

 

──────────

 

 東南アジアで初めて展開された、日本の新幹線事業……受け入れ先の国では数ヶ月に渡り紆余曲折があったものの、最終的には国民投票において大差で受け入れが可決され、工事が開始されていた。

 地盤事情、環境問題、住民への納得など……諸問題も地道な努力と過去の実績で徐々に解決していき、先月末……ついに全路線が繋がり、月を跨いだ今月、国を挙げての歓迎会が催される事となった。

 

 式典も数日後に迫り、技術提供と専門分野協力者として麗雄博士が招かれ……当然、息子である凱さんは関係者として同行、そこに命さんもセットになる……だけなら理解できたが、何故か私や護くんも関係者としてカウントされており、突然航空チケットやら何やらを手渡され『出発は明日だから、遅れないでね?』と言われ、2人して呆然となってしまったのは過去の話。

 

 ……はい、只今私達は問題の事業が完成し、式典が行われる東南アジアのとある国へと来ています。

 

「うわっはー、日本よりも暑いや……」

 

「赤道に近いぶん、気温は日本よりも高いのよ……湿度もそうだけど、気候的に日本人には辛いと思う」

 

 私は半分メカだし、この程度なら生体パーツへのダメージもほとんど無い……部位ごとのダメージが蓄積しても、地球上で想定できる環境ダメージなら、自己修復だけで解決可能な範囲だしね。

 

──────────

 

 所変わって、式典会場付近の市街地の一角……そこには立派な髭を蓄えた初老の男と、性格や目付きの悪そうな中年男性が相対していた。

 

 初老の男が何やら相手に話し掛け、相手の男は激昂する素振りを見せた。

 

 その後初老の男は、何処からか取り出した紫色の光を放つ謎の物体を相手に押し付け……みるみる内に中年男性の容姿が異形へと変化していく……

 

『そうそう、そうです……貴方の恨みを、思う存分破壊に傾けなさい……』

 

 機関車の汽笛の音を立てて、初老の男が持つパイプから勢い良く煙が吹き出す……

 初老の男は不気味な笑い声と共に姿を消し、異形へと変身した中年男性も何処かへと姿を眩ましたのだった。

 

 

 案の定……というか、予定調和ってこういう事を言うんだっけ?

 

 私と護くんのセンサーが感知したゾンダー反応、すぐ近くの市街地から移動してきた反応は会場内へと潜り込み……護くんの探知から逃れた。

 

「……ッ!? 消えた?」

 

 ゾンダー反応が消えた事に護くんは動揺するが、私のセンサーはまだ探知できている……とはいえ、人混みの中からゾンダーを探し出すのは一苦労だし、必ずメカを乗っ取ってボディにする筈だ。

 

(落ち着け……相手を誘き寄せるか、先回りするか?)

 

 対抗策は2つ……既にゾンダー探知の件はGGG本部にも連絡が行っている。

 すぐに対策班と機動部隊が来るだろうから、敵のおおよその位置を伝えて取り囲む……または、敵の予測進行ルートを分析して先回りし、メカと融合する直前の無防備な状態を狙い撃ちする。

 

(どっちもぶっつけ本番だから、成功率は低いけど……!)

 

 私は凱さんとの通信回線を開きながら、ゾンダー反応の後を追う事にした。

 

『こちらシオン、敵ゾンダーを発見し追跡中……ゾンダーは素体状態のまま会場内に侵入し、新幹線を目指している模様!』

 

《こちら凱! シオン、無茶するなよ? 俺もすぐそっちへ行く!》

 

《シオン、聞こえる? 新幹線付近には一般客が多いわ……現地の警察にも協力を要請したから、一緒に避難誘導をお願い!》

 

『……(先に釘を刺されちゃったな)了解!』

 

 ゾンダーの素体が相手なら、私だけでも対処は容易だけど……ヤツは多分、新幹線を乗っ取ってロボ化するはずだ。

 距離的にはもう全速でも追い付けない……ココは素直に避難誘導を手伝いつつ、解析や分析でサポートしよう。

 

 『ゾォォォンダァァァァ……!!』

 

 最新型のX700系新幹線を、まとめて3両も取り込み……完成したばかりの路線を疾走し始める黒い新幹線ゾンダー……

 そこへ凱さんが到着するも、新幹線ゾンダーは既に線路を走り出しており……そのボディには、原作通りの凄まじい電磁波を纏っていた。

 

『……っ?! 凱さん逃げてッ!!』

 

『何ッ?! ぐぁぁぁあぁぁぁ!?

 

 初速から200キロオーバーで迫る新幹線ゾンダーを避けきれず、凱さんは電磁波をマトモに浴びてしまう……私ですらこの距離で視界が霞むのだから、直撃した場合のダメージは計り知れない。

 

 新幹線ゾンダーは路線を伝って逃走し、凱さんは意識不明の重体……この日、GGGは始まって以来の黒星を喫してしまったのである。




原作通り、凱は強電磁波を浴びて戦闘不能に……
いくら原作知識があっても、こうガバられるとどうにもなんないですね。

さて、状況はわりと原作通りだったり、違う感じで半々かな……?

解決編と攻略法は……きっと皆が何とかしてくれるよ、きっと。
(他力本願w)


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第11話 黒の700を追え!(後編)

最新型のX700系新幹線3両を取り込み、サイボーグ凱にも重傷を負わせて逃亡したゾンダー新幹線は、島の外周を回遊する沿線ルートを数時間に渡って疾走……道中のトンネルを利用して警戒網をすり抜け、その行方を眩ませてしまう。

一方GGGは、緊急発進した三段飛行甲板空母と水陸両用整備装甲車が現場に到着し……
強電磁波によってダメージを負った凱の治療をすぐさま開始……

同時に、ゾンダーの攻略法とその行方を掴むべく……緊急対策会議が開かれる。


 強力な電磁波をマトモに浴びてしまい、瀕死の重傷を負ったサイボーグ凱。

 だが、同行していた護少年の能力により、生命の危機は脱していた……

 

 

『解析の結果、あのゾンダー新幹線は高速走行と同時に周囲の磁場を狂わせ、一種の電磁バリアを展開……更に内部に発生させた磁界を自身の加速に活用しています。

 

 外部からの干渉で電磁バリアは容易に破壊できますが、問題なのは電磁干渉・磁場破壊に必要な最低接触時間は約20秒以上……そして、あのゾンダーに追い付く為には時速700km/h以上が必要だという事です』

 

 私の解析結果の報告に猿頭時さんが頷き、それが間違いなく事実である事を全員が理解する……原作ではライナーガオーで減速を掛けれた程度の速度だったが、今回のヤツはなんとライナーガオー(最高時速526km/h)よりもかなり速い。

 

「うぅむ……ライナーガオーよりも速いとなると、やはりミラーカタパルトでの加速が前提になるのぉ……」

 

「氷竜と炎竜をカタパルトで射出し、並走させる……か」

 

「ですが、あの2人だけでゾンダー新幹線を減速させるのは不可能です……相手は時速700km/hですから」

 

「ライナーガオーよりも速い……というのも難題ですね」

 

 ブースターによる加速維持が可能な氷竜・炎竜と違い、ライナーガオーの速度は車輪に頼るしか無い為、最高時速が劣っている時点で後方からの接近はほぼ不可能……更に言えば前方から接近したとしても、電磁バリアの反発作用と、100km/h以上もある速度差によって巻き上げられ、進路から排除されてしまう為……後ろから追いつけない時点で肝心のブレーキ役には適さないのである。

 

 軽く詰み掛けた現状……ただ、私は解決案を持っていた。

 

 私が前線に出るのが前提となってしまうが、あの時ゾンダーの電磁波を解析出来たので、対抗手段としての電磁場遮断システムは既に完成している……

 ただし効果範囲は直径2m弱しかないので、原作通り氷竜と炎竜に両サイドから電磁波干渉をして貰い……その隙に私がゾンダー内部に侵入してブレーキを掛けさせるのだ。

 

 ……マスター権限的な命令権は恐らく無いだろうから、運転席へ潜り込んで直接操作するしかないけど。

 

「しかしのぅ、ヤツの走行速度に追い付くには氷竜か炎竜に乗り込まんと無理じゃぞ?

 お前さんの身体は、ミラーカタパルトの初速に耐えられるのか……?」

 

 案の定、麗雄博士から「待った」が掛かる。

 

 でも、相手はライナーガオーより圧倒的に速い……この方法以外に有効な手立ては用意できないし、よしんば用意できたとしても、作戦時間は約20秒……それまでにゾンダー新幹線を止められなければ、氷竜・炎竜は振り切られ、再び電磁波を撒き散らしながら再加速されて捕獲は叶わない。

 

 ゾンダリアン側も、成功/失敗に関わらず捕獲作戦を感知すれば動き出すだろう……チャンスは一度きりしかない。

 

『対G性能は、私の能力で何とかしますし……それに、電磁波遮断システムを凱さんに渡すとしても……まだ彼は治療中ですから』

 

「他に方法は無い、か……その案で行くしかあるまい……済まないね、稀星くん」

 

 遅かれ早かれ……ゾンダリアンとの直接対決は避けられないし、私も戦わなければいけない事態もいずれ来る……これはその予行演習の様なものだ。

 

 ……絶対に失敗できないヤツだけど。

 

 本当なら逃げ出したくなる緊張感の中……私は精一杯、自信たっぷりに笑って誤魔化した。

 

──────────

 

 この会議から数時間後……凱の容態は、護少年の補助もあって回復。

 

 作戦内容も、侵入メンバーをシオンと凱の2人体制にして万全を期す事となり……ゾンダー新幹線の発見と同時に作戦を開始する事となった。

 

 

「……ッ!? 居た、あっちの海岸の方だよ……!」

 

 護くんが再出現したゾンダー反応をキャッチし、島の東側を走る沿岸ルートを示す。

 

「ゾンダー新幹線、島外苑部の回遊ルート東側に再出現!」

 

「周辺地域に強力な磁場の発生を確認、ゾンダー新幹線は東の沿岸ルートから北西に向かって時速約600km/h以上の速度で疾走中」

 

 作戦準備を完了させたその日の夜……件のゾンダー新幹線が再出現。

 

 三段飛行甲板空母には機動部隊全員が乗り込んでおり……私はビークルモードの氷竜、凱さんは炎竜の運転席で待機していた。

 

(GGGに正式加入して、初の戦闘作戦への参加……思ったより緊張してるなぁ、私……凱さんも、最初はこんな気持ちだったのかな……)

 

 そうこう思案していると、氷竜の運転席にある通信システムから声が響く……

 

《ようやくゾンダー新幹線を確認した、電磁波ノイズの影響で作戦開始後しばらくは恐らく通信が出来ん。

 稀星、お前がいくら改造人間にされてるとはいえ戦闘は初だ……必ず凱の指示には従えよ、良いな?》

 

『分かってますよ、参謀さん……私だって死にたくはないですからね』

 

《分かってりゃそれで良い……凱、足手まとい付きだが……頼むぞ?》

 

《大丈夫ですよ参謀……それに、シオンもやる時はやる奴ですから》

 

『凱さん?! 持ち上げないで下さいよ……私、これでも結構緊張してるんですから……あっ』

 

 通信を聞いている氷竜と炎竜からのリアクションもなく、私は自分で緊張してると発言してしまい物凄く気恥ずかしくなった……が、逆にそのお陰で緊張が解れている事に気付く。

 

(……こういう所は、2人とも凄いよなぁ……)

 

『先生は参謀殿や隊長に比べれば、精神的にまだ若い……それに戦闘も初めてなのですから、緊張は当然でしょう』

 

『……ありがとね、氷竜』

 

 ……斯くして、ゾンダー新幹線の捕獲作戦がスタートした。

 

──────────

 

 三段飛行甲板空母のミラーカタパルトによって、弾丸の如く射出された氷竜と炎竜……沿線を走るゾンダー新幹線の両サイドへと着地し、速度を維持しながらラダーとクレーンを使って電磁波を弱めつつ速度を落とさせ……その間に私と凱さんが内部に侵入し、ゾンダー新幹線自体にもブレーキを掛けさせる。

 

 字面だけで見れば簡単にも思えるが、ミラーコーティングの効果時間は最大でも5分しかなく……速度差のせいでゾンダー新幹線との接触は約20秒しか維持できない。勿論それを超えた時点で氷竜・炎竜は振り切られてしまい……恐らく二度と同じ手は使えないだろう。

 私と凱さんは、その20秒以内にゾンダー新幹線の運転席に侵入し、ブレーキを掛けさせなければならないのだ。

 

 はっきり言って無謀だと思ったけど……結果は大成功だった。

 

『……○ラヴィトン○ルネード、パァンチッ!!

 

 開幕直後……思いつきで私は、自身が纏う強化外骨格『ゾディアートメイル』右腕のアーマーパーツからドリルを展開させ……さながらドリル付きロケットパンチの如く射出……ゾンダー新幹線の運転扉へ向かった右腕パーツは扉を容易に吹き飛ばし、反対側の扉まで5秒と掛からずに貫通……開け放たれた扉を潜って凱さんが内部に侵入し、楽々とゾンダー新幹線のブレーキングに成功したのである。

 

 

 まぁ、こうなれば後はほぼ原作通り……

 

 停止させられたゾンダー新幹線はわざと自爆して私達全員を吹き飛ばし、その間にロボット形態へと変形……超電磁誘導を利用した高出力のビームで私達を排除しようと迫る。

 

 まだ住居など一つもない、発展途上国の島の開発予定地とはいえ……多くの自然が残るこの地を戦闘でダメにする訳にはいかない。

 ガオガイガーはゾンダーロボを迎撃し、氷竜と炎竜は被害拡大を防ぐべく消火活動……私も敵の能力分析と甲板空母への通信ライン確保を行いつつ、戦局を見守る……

 

 途中、ゾンダーロボが私も排除しようと豪腕を振り翳すが、その隙をガオガイガーが見逃す訳もなく……振り上げた豪腕の肩関節をブロウクン・マグナムで撃ち抜き、再生で動きが鈍っている間にディバイディングドライバーを装着……同時に氷竜・炎竜も超竜神へと合体し、イレイザーヘッドを構える。

 

 ゾンダーロボが腕を再生し終えたのと同時にガオガイガーはディバイディングドライバーを直接ゾンダーロボにねじ込み、その空間反発作用を利用して拘束……ワンテンポ遅らせて、イレイザーヘッドのもう一つの使い方である力場・磁場消去能力でゾンダーロボの電磁バリアを完全に消し去り、そこへガオガイガーの「ヘル・アンド・ヘヴン」でコアを摘出……爆発もイレイザーヘッドで打ち消し、無事に作戦は終了となった。

 

──────────

 

『……やはり、あの少女は、我々ゾンダーに似て非なる存在……パスダー様の懸念よりも、もっと恐ろしい者に成りかねん』

 

(しかし、あの姿……何故、私はあの少女を攻撃しようと思わなかったのだ……?)

 

 昆虫……巨大なカブトムシにも似た頭部から、煙突のように突き出た角を持つゾンダリアン「ポロネズ」は、戦闘中だというのに無防備にも自分に対して背中を晒していた異分子たる少女を襲おうという気にならない自分に疑問を持った。

 

 ゾンダリアンは本来、敵対する者に対して情け容赦など一切しない……それに、現状でのシオンとポロネズの戦闘力差は、俄然ポロネズの方が上だった。

 

 しかし、それでもポロネズは無防備に背中を晒すシオンを襲う気になどならなかったのだ……

 

(あの少女の姿に、何かを感じたとでもいうのか……いや、それは有り得ない。

 ……我々ゾンダリアンは、パスダー様の忠実なる下僕なのだから。)

 

『それに……あの力、まだまだ我々には遠く及ばない……。

 今回は放置でも良いでしょう、ですが次に会った時は……あの黒いロボットもろとも、必ず仕留めますよ』

 

 そう言い残し、ポロネズは潜んでいた森の中から消え去るのだった……

 

──────────

 

 なお私は、この作戦で経験値を得たのか……環境適応能力が回復し、物質干渉能力も強化され、そしてゾディアートメイルを任意に形状変化・機能変更させる能力まで覚醒……しかもその事が麗雄博士にバレて、再検査とスペック計測をさせられてしまいましたとさ。




各ガオーマシンのスペックはしっかり原作通りだけど、氷竜・炎竜のスペックは小説内に限り大幅にブーストが掛かっています。
理由? そりゃあの教材でしょうね……ぶっちゃけると、原作スペックの1.5倍。

……さすがにヤバすぎかな?(;´・ω・)

なおシオンも、自身の持つ原作知識と、リアルに見るガオガイガー世界の技術が影響して、能力が徐々に覚醒し始めたよ!

今回、覚醒したのはゾディアートメイルの形状変化・機能変更……
そして完全に失っていた環境適応能力の一部回復。

そもそもゾンダーは超高速で自身を再生・修復する能力を標準で持っている。
上位種であるゾンダリアンも同様だけど、あくまでも彼らの能力は再生・修復……

でもシオンは最上位種である「Zマスター」と「人間」の完全合一によって誕生した生機融合体だから、彼らと違って機能の回復に時間が掛かる代わりに、最適解へと進化・成長したり、過去の形状と能力を記憶しておく事が可能になってるんだ!

おっと、次回はそのゾンダーの秘密に迫る重要な回になるね。
次回予告行ってみよ~♪




― 次回予告 ―


君達に最新情報を公開しよう!

ある日、九州から太陽が消えた……

九州・佐賀県で行われる熱気球の世界大会
「佐賀インターナショナルバルーンフェスタ」
その会場を中心に、直径約300kmを超える巨大な黒雲が発生……
大会に参加していた多くの熱気球と参加者たちが黒雲の中に囚われてしまう。

危険を承知で黒雲の内部へと飛び込む凱。
そこで彼が目撃したものとは……?


次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第12話『太陽が消える日』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!


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第12話 太陽が消える日(前編)

世界観をリアルの2020年辺りに落とし込む作業は面倒だけど、出来上がりを読むとやっぱり楽しい。
ガオガイガーの世界を現実化してるみたいで何か……ね?

さて、今回は序盤の超重要なシナリオ……
原作でもゾンダー本来の目的が判明する回です。


 ゴールデンウィークを利用し、私は今……故郷、九州を目指して新幹線に乗っている。

 

『稀星さん、ありがとうございます……引率役を引き受けて頂いて……』

 

『良いんですよ、知人の所に行くついでの観光ですし……目的地がすぐ近くでしたから』

 

 申し訳なさそうな護くんのお父さんとの電話に、大丈夫だと返す私……原作と違ってGGGが認知された世界……護くんのご両親も、息子がGGGに特別待遇を受けている事は認識しており、私が所属している事も知っている。

 

 もちろん、GGGの医務官である()()としてね?

 

 ちなみに護くんのお父さんは、この世界では外部関連組織となっている『宇宙開発公団』の重役の1人……チーフプログラマー達を率いる開発部所長だ。

 

 今回は多忙な彼に代わり、護くん達小学生ズを引率しながらの佐賀観光……護くん達は、明日行われる「佐賀インターナショナルバルーンフェスタ」を見に……私はその会場近くに住んでいる知人に会うのが目的だ。

 護くん達が泊まるホテルと、私が予約していたホテルが同じで、護くんの友達の1人はフェスタ参加者……そして会場と私の目的地が近いという偶然が重なり、現在に至っている。

 

『あんまり騒ぐと怒られるから、電車内は静かにね?』

 

「「「「「はぁーい」」」」」

 

『みんな元気そうだね……それじゃあ稀星さん、2日間よろしくお願いします』

 

『はい、お任せください!』

 

 とは言ったものの……内心私は気が気でなかった。

 

(佐賀のバルーンフェスタ……雲ゾンダーのシナリオ起きそう!)

 

 そう、原作では東京の上空に現れ……数日間、東京とその周囲から太陽光を奪い続け、危うくゾンダー胞子の拡散直前で撃破に成功するという……

 

 あのシナリオを彷彿とさせる様なシチュエーションだったから。

 

──────────

 

 その人は母の知人で、私の兄代わりでもあり……闘病で渡米して以来、実に2年ぶりに会う事になる。

 

(やっと再会できるのに、ゾンダーに邪魔されるとか絶対に嫌だし!)

 

 バスを降り、護くん達を引き連れながら……フェスタに参加する宿泊者も多い、会場近くにあるホテルへと歩いて向かう。

 私はフェスタ前にある予約競争よりも前から確保していたし、護くん達は友達の成金小学生が親から確保して貰っていたらしい……奇しくも同じフロアで繋がれた近い部屋だった。

 

『……護くん、万が一ゾンダーが出たら……』

 

「分かってます、GGGに即コール……ですよね?」

 

 頷きながら笑顔で護くんの頭を撫で、それぞれの部屋で荷物を解く……ここ最近は護くんの傍に居てもGパワーによる影響がほとんど無くなっていた。

 それは同時に、私がゾンダーですらない者に変わりつつある……その証左でもある。

 

 だけど、あの時……GGGの人達は、私が何者だろうと関係ない……

 私が人間らしくあろうとする限り、彼らは私を仲間として扱うと約束してくれた。

 

『……我思う、故に我あり……よ、私は私……絶対に消えたりするもんですか……!』

 

 荷物を解きつつ、私は何度も口に出し反芻する……絶対に、私は人間である事を諦めたりしない……

 

──────────

 

 護くん達は長旅で疲れたのか……夕方までホテル内で過ごすと言うので、私は今日の内に彼に会おうと連絡を取り、フェスタ会場の最寄り駅で彼を待った。

 

「……ん? その髪型……また伸ばしたのか? 特徴的だからすぐに分かったぞ」

 

 第一声が髪型の事……誉めたのか正直微妙な言い方で男が声を掛けてきた。

 

『……せっかく訪ねてきた女の子を誉めもしないなんて、そんな態度なのにモテるとか……相変わらずですね、一馬さん?』

 

 彼だけには言葉を飾らずにぶつける……それが彼との約束だから……

 私に声を掛けてきたのは、両胸部分と背中に刺繍で龍を描いたスカジャンに紺色のスラックス……厳つい顔と声だけど、男気と優しさ溢れる雰囲気を持つ男性。

 

 彼が私の会いたかった人、「桐生一馬(きりゅうかずま)」さん。

 ちなみに初対面の時……普通にヤ○ザかと思ったのは絶対に内緒である。

 

 

「だいたい2年ぶりか……元気そうだな」

 

 ぶっきらぼうな言い方だけど、心から心配していたのは声色で分かる……渡米してから音信不通だったし、最新の医療施設だから携帯とかも持ち込み禁止だったからね。

 

「うん……戻って来たのは、半年ぐらい前だけどね」

 

「そうか……」

 

「それより、そっちは大丈夫なの? 感染症対策とか……お店、大変じゃない?」

 

「一番酷い時期は閉めてたよ……今は少し落ち着いてるし、店も感染対策を取ってる……公認申請も通ったしな」

 

 彼は何かのお店のオーナーらしく、場所や内容は何一つ教えてくれないけど、世間の荒波に上手く乗れている様で、彼の表情は前とほぼ変わらず……ほんの少しだけ口角が上がる笑い方をしていた。

 

「そう言えば、お前……まだ一応学生なんだろ?  学校は大丈夫なのか?」

 

「少し前から、チョットした事が切っ掛けで……私、今GGGにお世話になってるの。

 事情があって学校は無理だけど……獅子王麗雄博士の所で、助手見習いをやってるから」

 

「GGG……? あの獅子王博士の助手? お前がか?!」

 

 ここ一番の驚きを見せる一馬さん……そりゃそうよね、ただの中学生だと思ってた知人が、世界的に有名な民生組織のお世話になり……しかも世界十大頭脳と名高い人物の助手見習いにもなっているとか……

 

「嘘みたいでしょ? でもちゃんと事実だから」

 

 そう言って、ポケットから身分証を取り出し……ついでに襟元の隊員証(バッヂ)とG-USBと併せて見せ付ける。

 

 身分証には『GGG特別隊員・技術開発部主任補佐(見習い)官 稀星シオン』と刻まれており、私の対外的な存在と立ち位置を示している。

 所属が技術開発部となっているのは、セキュリティ的に出入りを容易にする為と、万が一の情報漏洩対策……そして、非常時には現場でサポートをこなせる様に、という私の意志が反映された結果だ。

 

 一頻り身分証とにらめっこをしていた一馬さん……まだ少し納得が行かない様子だけど、身分証を返してから話題を変えてきた。

 

「……東京はどうだ? 一人暮らし、大変じゃないか?」

 

「住んでる所は、アメリカでお世話になった代理通訳のスワンさん……ほら、片言話してた美人さんの所に居候させて貰ってるの……というか、あの人が私の料理食べたいからって少し強引に……」

 

「……そ、そうか……アイツなら一先ずは安心か……防犯に関しては……」

 

 最後に小声で何か付け足した感がバリバリするけど……一馬さんとスワンさんには、例の空港テロ前後に連絡を取った時から面識があり、直接会ってもいるので心配されなかった。

 

 ……ただ、一馬さんはスワンさんに対し……変な心配が残っている様だけど……

 

 

 その後も何気ない会話が続いたが、一馬さんの知人である『真島さん』が迎えに来た事で中断され……また会いに来ると約束をして直通の連絡先(G-USBのナンバー)を教えて別れた。

 

「……変わってなかったなぁ、昔はホントに凄かった……って春日さんや真島さんが言ってたけど……」

 

 50代の後半に入り、一馬さんは強面というより……昔風の老齢有名人っぽい気がする。

 老齢……と言うには、まだまだ若いかもしれないけど……

 

──────────

 

 それからホテルで予約していたディナーを護くん達と済ませ、ベッドに入り早めに休む……

 

(明日はいよいよフェスタ……もしかしたら、ゾンダーが出るかもしれない……)

 

 心構えはしておこう、と気合いを入れ……眠気が来るまでスマホを弄ろうと起動する……

 

『……おっ、ア○レンは年末も年明けもコラボあるじゃん、チェックしとかないと……えっ、○マ娘に新キャラ?! カネタン、イクノに……ターボ師匠ぉ?!』

 

 プレイ中や配信間近なアプリゲームの続報に心踊らせ、逆に眠気も不安も吹き飛んでしまいましたw

 

──────────

 

 翌日、天候は快晴! 雲はさほど無し! これなら憂いなく、フェスタを楽しめるッ!!

 

 ……と、一時間前はそう思ってました。

 ですが、そうは問屋が卸さない様です……

 

「護くんより入電……ッ?! ゾンダー出現の報告ですっ! 場所は佐賀県のバルーンフェスタ会場上空!」

 

「何ッ?!」

 

「佐賀のバルーンフェスタ……って、シオンが護達の引率を引き受けて見に行く奴じゃないか!?」

 

「あっ……!?」

 

「イカン! まさか奴ら……護くんとシオンの存在に気付いて、先手を打って来たか?!」

 

「長官!」

 

「うむ! 三段飛行甲板空母、急速発進準備! 機動部隊は直ちに現場に急行せよ!」

 

 やはり、原作通りに事は進行するようです……でも、時間軸や進行具合とか色々どんどんずれて行ってますね?

 

 果たして、このズレが一体何を生み出す事になるのやら……




だいたいこの辺でアイキャッチ画像入るかな?
と言う所で区切りましょう……今後もこれくらいで良いかな?

さて、場所は違えども雲ゾンダーと目される反応は原作通りに出現……
ここまでは多分誰も覆せない状況。
ここからどう動くかが今後に大きく影響しますね……

さて、シオンの(対外的な)立ち位置については本文通り。
シオンには2つの身分証が渡されており、原作と違ってGGGが認知済みのこの世界では、外部から本部施設に入る時の(今回見せた)奴と、内部専用の『機動部隊補佐/医療特務官』と言う肩書きの奴があります。
最初はG-USBのホロモニターを展開して表示させるという……『仮面ライダーゼロワン』でも使われた近未来的シーンをやろうかとも思いましたが、さすがに含めるネタが違うだろうという事で。

感想お待ちしてま~す。


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第13話 太陽が消える日(後編)

アイキャッチ復帰……ッ!
原作ガオガイガーでは、勇者ロボ軍団や敵のゾンダーロボからゾンダリアン、発明アイテムに至るまでの詳細なスペックノートが描かれていました。

さすがにそこまでは準備出来ませんが……そういうのがあると雰囲気高まりますよねぇ?



 やはり、事は起こった……突如会場上空に黒雲が広がり始め、私と護くんはその中心にゾンダー反応を感知する。

 

『護くん! GGGに連絡して!』

 

 青ざめている場合ではない……不思議現象の中心となったフェスタ会場の、更なる混乱を避けるべく……私は大会を運営する団体に直談判を行い、余計な混乱を招かない様に無事な参加者を会場から遠ざけさせる為にG-USBで大会運営に問い合わせ、護くんにGGGへの連絡を任せる。

 異変は大会運営側も察知していた様で、私がGGG職員だと明かすとすぐに対応を始めてくれた。

 

《大会運営より、フェスタ参加者にお伝え致します……急激な天候不良による上空の視界不良が確認された為、バルーンの飛行を中止して下さい……繰り返します、急激な天候不良による……》

 

「……あれぇ? 何か声が聞こえてきたよ?」

 

「大会運営からの通達だね……成る程、上空の視界不良か……」

 

「どうしたんですか?」

 

「上の見晴らしが悪いから、バルーン同士の事故を防ぐ為に、一度降りなさいって運営からのお達しだよ……残念だけど、一度降りよう」

 

「「えぇー?!」」

 

 不幸中の幸いか……雲ゾンダーに巻き込まれずに済んだらしい、護くんの友達が乗ったバルーンは降りて来ている。

 ……でも何だろう、この違和感は……タダのバルーンだというのにこの異様な雰囲気……振り向いた私の目に映ったバルーンは……

 

 ……なんと言えば良いか……とても独創的な形状と色彩をしていたのであった。

 

──────────

 

 しかし、雲ゾンダーに多数のバルーンが取り込まれた事は変わらず……私は、GGGが到着するまでの時間経過で予測できる状況を推測しつつ、雲ゾンダーの構造把握や能力調査を行う為……護くんにGGGとの繋ぎを任せ、飛翔した。

 

《シオンさん、GGGも急行中だって……ゾンダーの方は?》

 

『……不気味なほど静かね、だいぶ近付いてるのに……向こうから攻撃される気配すら無い……でも、攻略は難しそうね』

 

 Zメイルの構造を変更し、飛翔に特化した……「スティレット」と命名した形態(アーマー)を使って飛ぶ私……

 雲ゾンダーの構造を分析している最中も、相手はアプローチ処か何のリアクションも起こさず、ただ異様な雰囲気を感じるだけで何もして来なかった。

 

 しかし、構造把握を半分ほど済ませた時点で……私は原作との大きな違いを思い知ってしまったのである。

 

(……ナニコレ? トンでもない構造じゃん……!)

 

──────────

 

 通報から2時間程で三段飛行甲板空母が来るのが見えた……道中で私が送った構造解析データを受け取ったGGGは、三式空中研究所の発進も決定……その到着も待つ中、私は空中で空母と連絡を取る。

 

 雲ゾンダー内部は乱気流の嵐、そして濃縮された水素と酸素が充満しており、完全に火気厳禁……外側の雲には雷が走りまくって迂闊に踏み込めず、形態維持を兼用するゾンダーバリアも健在……更に雷で発生した磁力により微細な金属片を空中固定してて……ジェットエンジン対策かなぁ……おまけに磁場は精密機械の電送系に異常をもたらす……そんな出鱈目な構造をした黒雲が上空に漂っていた。

 

『……コレ、さすがのガイガーでも突入出来なくない?』

 

 こんな馬鹿げた構造解析データを受け取った空母側の麗雄博士も、首を捻り唸るばかり……しかし、ステルスガオー装着モードのガイガーで合流してきた凱さんは……

 

『だが、突入しなければ中に取り込まれた人達を救出できない……それに、ゾンダーがいつ暴れ出すかも分からないんだ……手段を選んでる余裕は無い!』

 

 原作でも解決までにある程度時間が掛かり、あわや完全体目前の状態で辛うじて撃破に成功した手前……放置した結末を知り得るが故に私は押し黙る。

 

(やっぱり彼は真の勇者だ……どんな困難だろうと、誰かの為に為すべき事を成す……命さんが居る手前、口には出せないけど正直言ってマジで惚れそう……)

 

《凱、一度帰還するんだ……ガイガーに対電磁防御を施す、稀星くんも協力してくれ》

 

『『……了解(しました)』』

 

──────────

 

 以前に使用した対電磁波防御フィールド発生器と、ガオガイガーの防御システム『プロテクトシェード』の機能を利用した『対電磁光波シールド』……これを用いて、ガオガイガーの状態で強行突入する案が出された。

 理由はもちろん、ガイガー単体ではこの『対電磁光波シールド』を稼働させられるだけの出力が得られないのと、プロテクトシェードの発生器を転用する形で稼働するシステムだからである。

 

 コレを稼働させていれば、外殻部の電磁波の嵐は簡単にやり過ごせるが……内部へ到達してからはスラスター推進等が一切使えない濃縮酸素の暴風の真っ只中となる。

 最悪徒歩で移動するしかなく、合体解除した方が速度的に早く中心部に辿り着ける可能性が高い……とはいえ、何の対策も無しにガイガーを突入させる事も出来ず、対電磁防御用素材として開発中だった特殊塗料を急遽施し、システムが異常をきたす前に内部へ到達するという更なる強行策が採られた。

 

『……仕方ありません、私は雲ゾンダーの直近で待機します……最悪の場合、私の方でゾンダー核を何とかする方法も考えますので……』

 

『いや、シオンもここで皆と待っていてくれ……君の存在は今後も必要になる! なぁに、心配ないさ……俺は不死身のサイボーグだぜ?』

 

 ソレ、半分ほど私にも当て嵌まるんですけど……?

 とか突っ込みたくもなったが、今はなにぶん時間がない……諸々の準備を終えたガイガーは、再び『ステルスガオー装着モード』で発進し、雲ゾンダー内部へと突入するのだった。

 

 

 はい、その後がもう普通に原作通りだったのでバッサリ切除(カット)です……

 

 突入から僅か数分で通信途絶し、それから約1日半ほど経過した日の朝……強電磁波バリアーの影響で途絶していたガイガーから突然連絡が入り、その指示を受け速攻で機動部隊と母艦らとのフォーメーションが組まれ……原作よりもスムーズに雲ゾンダーは撃破されました。

 

 もちろん、スムーズに事を運べたのは私の存在もありますが……最大の要因はやはり、護くんや皆が凱さんを信じていたから……でしょうね。

 私が仮説として凱さんの状況をクルー等に説明し、護くんの不思議な感覚と、その直感を信じるという姿勢が、私の仮説の信憑性を後押しくれたからこそ……復帰を信じて事前の準備を整えておけたのだから。

 

 しかし、解決したという事は多分……いや、間違いなく凱さんは「アレ」を見た筈だ。

 

 ゾンダーが成長しきった時、何を起こすのか……そしてそれが何を引き起こすのか……もう隠す事は出来ない。

 

(素粒子Z0についても、もう感付かれてるだろうし……原作より少し早いけど、ゾンダーの目的について、もう一度しっかりと話す必要があるかもしれない……!)

 

 私の身体の変異率も、そろそろ40%を超える……Zマスターとは違うモノに成りつつある故の複雑な感情所以か……早めにゾンダーの真の力を予め示しておく方が、今後の為になる筈だと踏んだ私は、ついに「機界昇華」のメカニズムや「ゾンダーを産み出す理由」について、の核心に触れる為……

 

 この騒動解決後、日を改めて……私は再びビッグオーダールームで話をしようと決めたのだった。




戦闘は……ほぼ原作通りだし、余計な茶々入れなくても視聴者(視点)なら言わずとも分かる部分だからバッサリと。
それに学生時代の思い出っぽくなってるけど、わりと重要なシーンだし、命さんの邪魔をするのも個人的にやりたくないのでね?(´・ω・)

さて、次回は原作とは違う展開……
ゾンダーの真の目的と、機界昇華についての回です。

ここでオリ主ちゃんの起源が白日の元に晒される事に……?

感想待ってます~

次回予告


君達に最新情報を公開しよう!

謎の機械生命体ゾンダー
彼等の目的は、本当に地球人類の排除なのか?

不可解なゾンダリアンの行動に対し
ついにシオンは、彼等の真の目的を明らかにする……

次回、勇者王ガオガイガーif、NEXT...
第14話『根源は斯く語りき』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!


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第14話 根源は斯く語りき

長らくお待たせしました! 第14話、ようやく一区切りです。

今回は完全にオリジナル回。
かつての三重連太陽系が機界昇華されるまで……
そして狂わなかったZマスターことシオンの秘密など、もう隠さなくても良い部分を完全にさらけ出し、物語の核心に迫ります。

原作ファンの皆様には、伏してお詫びを……恐らく原作崩壊事案です。


 この日、ビッグオーダールームは沈黙に包まれた。

 

 勿論これはただの偶然ではない……私があの時、星の彼方から訪れた奇跡に遭遇したあの日を境に、確実に起こると確定された事象であった。

 ……であるならば、もう私が秘密を隠し通す必要など何処にも無い……私は自身の全てを解き放とうと思う……それが今後において、彼らの一助となるならば……

 

──────────

 

 GGGのメインスタッフ全員がビッグオーダールームに集まるのは、氷竜と炎竜の一件以来だ……大河長官と火麻参謀を初めに、チーフオペレーターの猿頭寺さんと牛山さん、機動部隊オペレーターの命さんとスワンさん……GGGの頭脳である麗雄博士、機動部隊の凱さんに氷竜と炎竜……そして護くん。

 

「さて、稀星くん……折り入って話したい事とは、何なのかな?」

 

 大河長官はいつもと変わらぬ声色で私にこの集まりの理由を聞いてきた……この数ヶ月間、私こと稀星シオンは……地球外変異生命体「ゾンダー」に対抗し得る唯一の組織、このGGGに籍を置かせて貰った。

 それは何も、当初の単なる自己保身ではなく……この世界の未来を憂い、私に出来る事をしようと決心した結果である。

 

『……はい、皆さんには今一度……ゾンダーの根源や目的について、私なりに調査し判明した事実を周知して頂きたいと思いまして……』

 

「何か思い出したり、気付いた事があったのかね?」

 

 本来の私を最も理解しているのは……科学者である麗雄博士と、同居させて貰ってるスワンさんだ。

 この2人だけには「現状、伏せるべき事」以外の隠し事はしていない。

 麗雄博士の知識は、私の現状を把握するのにとても重要だし、単純にガオガイガー関連の知識・技術面の話は興味が尽きないし……スワンさんの存在は、天涯孤独である私の保護者的な役割を買って出たり、時折孤独に潰されそうな不安を親身になって心配してくれた。

 

『……というよりは、皆さんの混乱を防ぐ為と……私自身の身勝手な保身故に隠していた情報です。

 今更こんな事を言われても、困惑するばかりでしょうが……以前の私は決して争わず、互いに極力不干渉の立場を貫き、ただこの日々を送る事だけを考えてきました……』

 

「……シオン……さん?」

 

 こんな言い回しは小学生には理解しにくい事など分かりきっていたが、簡単に言えば私は今までずっと逃げて来たのだ……自分の立場から、力を持つ者の責任から……そして同胞だった者達の暴挙を知らせ、警鐘を鳴らすという行為から……

 

「……薄々は気付いとった、確証はなかったがな……シオン、お前さんは……」

 

『……はい、私は……私の正体はゾンダーの、その根源とも言える存在……オリジナル……つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()です』

 

 一度決意した事がキッカケだったのか、以前ならあれ程言うのを憚った言葉すらスラリと口から出た。

 

「ち、ちょっと待ってくれ……ならシオンは、2年前に地球に落下し、俺を事故に遭わせ、今も起きてるこの混乱の……全ての元凶だって言うのか?!」

 

『……正確には【私】を元に産み出された【マスタープログラム】が、自らの存在理由と目的を曲解して暴走……故郷だった星達を滅ぼし、知的生命体の排除……いえ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を目的として活動しているからです』

 

「「「「「……ッ?!?!」」」」」

 

 この言葉に含まれたあまりの情報量に、一同は理解を超越した衝撃を受けただろう。

 ……当たり前だ、この混乱を招いた全ての元凶と同じ存在……本来の私は、そう呼べる存在なのだから。

 

「……稀星くん、私にはとても悪い冗談にしか聞こえないのだがね……?」

 

 多少は焦りがあるのだろう、大河長官の声は少しだけ上擦っている……でも、この中で1人だけ……この暴露に動揺せず、納得の表情をしている人物が声を上げた。

 

「イヤ、彼女は真実を語っとるよ……長官。

 

 彼女は今まで我々の気持ちを考え、要らぬ苦労を掛けぬよう語り、行動し……ボクの個人的感覚ではあるが、恐らく妥協点を探しながらも惜しみ無い協力をしてくれた……

 

 単に彼女は、我々地球人類と争わずに生きる為の道を、手探りで探していただけなのじゃろう……これで全て合点がいったよ」

 

 この世界で最も真実に一番近いのは、やはり麗雄博士だった……

 

「シオンの言った事、ワタシには……嘘には聞こえませン、それに……本当にジョーダンなら、いつもシオンは目を逸らしてマス」

 

 自分でも抜けない癖……嘘を吐く時、相手の目から視線を逸らしてしまう癖を見抜いたスワンさんの言葉もあり、長官や皆も、コレが真実だと分かった。

 

「……じゃあテメーは俺達に甘い事を並べ立て、自分は元凶の癖して保身に走る、身勝手な異星人って訳かよ、なぁ?!」

 

 しかし、そうなれば逆にそこへ噛み付く人も出る……火麻参謀だ。

 

「止めないか火麻君! ……稀星くん、我々には腑に落ちない点が幾つもある……しかしまず聞いておきたい事が一つ……今までの君の行動に()()()()()()()()()()()()()()、そして()()()()()()()()()()()()……それだけは今、この場で改めて聞いておきたい」

 

 その怒りは尤もだが、無遠慮にぶつけてくる火麻参謀の怒声に対し、長官が声を上げて制する……参謀は自身の不愉快さを私に表す様に「ケッ……」と視線を切った。

 そのまま長官は、GGGの総司令官……組織を纏める長として、私が取った今までの行動が『何の為か』と聞いてきた。

 

 ……敵対? 貶める? 馬鹿言わないでよ……私はただ……

 

『もちろん、敵対の意思などありません! 貶めるつもりなど、断じて……!』

 

 これから話すのは、私が知り……今彼等に知っておいて貰いたい『ゾンダー』の全て。

 

『……だから、今この場で私の知る限り、ゾンダーの真実……かつての私が生み出され、今の私となった真実……この世界がやがてどうなるのか、ゾンダーに負けた星達が辿る道……その全てをお話しします』

 

 

 それから語った情報は、主に物語中盤から後半に掛けて……原作ならば、ある程度原種戦を経た後でようやく知り得る情報の数々。

 ゾンダーが地球を狙う目的、ゾンダーの持つ基本能力と対処法……そして上位存在である「原種」と、その統率体である「Zマスター」について。

 

 本来なら知る由もなく、苦戦を強いられただろうが、今この場には『私』が居る……恐らく、もうこの時点で原作とは違う世界となってしまった筈だ……決意と共に、ある種の開き直りもあった私は、実にアッサリと全てを公開し、投げ掛けられた質問には全て答え、後顧の憂いを完全に断つ事にした。

 

 尤も、あまりに濃厚かつ複雑に絡まった情報なので、基礎部分……ゾンダー本来の目的から再度周知する事になったのは当然、()()()()()()()()()()()()も語る事になった……

 

『……それから……システム開発者(エンジニア)達の最後の力で故郷の星を脱出させられた私は、単身次元転移を繰り返しつつゾンダーから逃亡の日々を送り……約2年ほど前に地球へ到達し、原因不明の病で渡米し治療を受けていた少女の下へ……』

 

「それが、本来の稀星くん……という事かね?」

 

『……ハイ、正確には「私となる前の」私……半身のようなものです』

 

「どう言う事だ? 今のシオンとは、何が違うんだい?」

 

『結論から言えば、当時の彼女とZマスターの原型となった存在の精神構造……性格や思考、そのほとんどと、僅かな外見の差以外は完全に一致……言うなれば、極めて近い存在(ドッペルゲンガー)の様なものでした……』

 

 これは当時から湧いていた疑問でもあった……しかし、今ならば理解できる。

 

「地球外生命体に創造物として生み出されたシオンと、地球で産まれたシオン……それがまるで鏡合わせの様に同じだった、か……俄には信じられないぜ」

 

『ですが、それが元で……双方の意識や記憶は全て統合され、今の私となったのです……』

 

 これは『転生』の弊害として生まれたイレギュラーだろう……

 本来なら多分、転生した私の意識は……地球で死ぬ筈だったシオンではなく、Zマスターの雛型となったシオンに宿る筈だったのだ。

 

 その際に記憶は消去され、高度な知能だけがコピーされたZマスターは暴走し……原作へと続く筈だった……でも、転生先がZマスターから地球の少女へと変更され、しかも転生する前の少女と私の人格が意図的に摩り替えられた事で記憶消去が双方に行われず、前世の記憶を全て持ったまま入れ替わり、結果、Zマスターは計画の都合で人格を消したコピーが造られ暴走……雛型は人道的配慮から脱出させられ、地球で本来の身体に宿った転生者の私と更なる統合が引き起こされて今に至ったのではないか……と。

 

「既に故郷と呼べる星が無い以上、過去を調べる事は不可能じゃ……よって、詳しい経緯は不明としか言えん……じゃが、今の稀星くんの人格がその『元・Zマスター』でなければ、我々は何の情報も得られないまま、いずれ敗北しておったかもしれんのぅ」

 

「……じゃあ、シオンさんが今ココに居るって事が『1つの奇跡』って事だね、うわっは~♪」

 

 奇跡、か……確かにそうかもしれない……或いは()()()()()がそうさせたのかもしれないけど……

 

「兎に角だ、稀星くんは今後も我々と敵対はしない……そうだね?」

 

『勿論です、今後は今まで以上の協力も出来るはずです……何より、一番の問題……後顧の憂いを、この場で断てたのですから……』

 

 大河長官の再確認に、私は改めて協力という意思表示……こんな私を「仲間」として受け入れてくれた心の広さに、何とか感謝の言葉を探した。

 

「シオンがたとえどんな姿、生まれだとしても……今はワタシ達の仲間で、ワタシと命の妹みたいなもの……美味しいご飯を作ってくれマース♪」

 

「「「「……はぁ……」」」」

 

 そこへ唐突なスワンさんの「妹」発言に、ついさっきまで怒り心頭だった火麻参謀すら毒気を抜かれ、深刻な表情の麗雄博士や長官、凱さんまでもが少々呆れ顔に……当のスワンさんだけが、自慢しているかの様な表情。

 

 命さんと護くんは、スワンさんらしいなぁ……と笑うのであった。




語られたゾンダー関連の情報そのものは原作とほぼ同様なので割愛……
シオンの来歴も、結局は調べようがないので憶測となっています。

さて、次回は原作に戻り……ついに完成するゾンダー探知機の話題をば。

次回予告


君達に最新情報を公開しよう!

ついに完成した、ゾンダー探知機……
その名も『Zセンサー』!

護かシオンの2人に頼らざるを得なかった
ゾンダー探知を実現するこの画期的な発明。

そのセンサーを使い、GGGは奇妙な事件を捜査する。


次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第15話『素粒子 Z0(ゼットゼロ)

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!


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第15話 素粒子「Z0(ゼットゼロ)

前回、ついにゾンダーの全貌を明らかにしたシオン……
批判覚悟で自身の正体も晒したが、今までの行動から悪意がない事を認められ、暖かく迎え入れられた。

それから数週間が経ち……

ついに本格的な協力体制の下……とある装備が完成する。


 各種センサーや外的要因の観測情報を表示するディスプレイを内蔵したグラスモニター……それを別に造ったヘッドセットと繋ぎ、接続部分や開閉機構の可動をチェックする。

 このパーツは分子構造から透明度、さらに強度にも拘り、万が一に破損した時でも微粒子が目に入らないよう苦心した特別製のバイザーだ。

 

 PCのモニターから私に視線を移した猿頭寺さんもサムズアップ……システムのインストールも無事に完了した事を報せてくれた。

 

 最後に私は可動部分を手動で動かし、余計な干渉が無いか、可動に不備が無いかをチェック……どうやら問題は無さそうだ。

 

『……完成、です……!』

 

 一息吐きながら私は額の汗を袖で拭う……この装備、原作ではさほど戦局を左右する程の物では無かったが、私が持つ原作知識で、当時からの問題点と利便性を最初から考慮して開発に関与……問題点やら利便性の改善にかなりの時間を要したが、原作同様の時期に間に合ってくれた。

 

 その使い道こそアレだが、その外観や性能は大きく進化している……これが在れば、未発見状態のゾンダー探知を容易に行えるハズだ。

 

 

「……コレが、Zセンサーかね?」

 

 大河長官と火麻参謀が、テーブルに置かれた装置を興味深く覗き込んでいる。

 

「ウム……稀星くんの全面協力もあり、ゾンダーの特性……主に潜伏や擬態性能は我々が考えていた想定より遥かに高い事が分かっておる……

 現状では護くんと彼女しか、ゾンダーの居場所を察知できる能力を持つ者は居らん……じゃがゾンダーは、活動の際に地上では観測されない特殊な素粒子を常時放出している事が判明した」

 

 麗雄博士の解説に合わせ、スワンさんがメインスクリーンの画像を切り替えてデータを表示……その間に私はオーダールームに持ち込んだケースから更に数個、同じ物を取り出してテーブルに並べ……説明を引き継ぐ。

 

『それを「素粒子“Z0(ゼットゼロ)”」と名付けまして……ゾンダーの擬態を見破る為の装置を開発したんです、それがこの……』

 

『「Zセンサー(じゃ)デース!」』

 

 最後に麗雄博士やスワンさんまで声を合わせて来たのにチョット吹きそうになったが、私は澄まし顔で博士達にセンサーを手渡す。

 

「稀星くんの技術協力や、新素材の開発により当初よりも高性能化を実現、利便性まで大幅にアップしておるぞぃ!」

 

 形状は左右どちらの耳にも対応している側頭部装着式、バンドは硬質ゴム製で、フィット部分を痛めにくい低反発素材をコーティングしており、折り畳めばポケットにも入る。

 バイザーは特殊素材を使用し、基部から粒子を展開してモノクル型ディスプレイを形成するという(FINALでルネのイークイップバイザーにも使われた)技術を採用……勿論、このディスプレイは両眼表示(バイザー)モード対応で色も選べるし、量子通信を用いた通信機器も内蔵しているから電波障害もヘッチャラ……毎度の如く手持ちの通信機を握り潰す参謀の始末書対策にも一役買っているのである。

(ついでに暇と予算が付けば、凱さんのイークイップアーマーにも同様のシステムを更に簡易化して追加する予定)

 

 待ち焦がれた完成品に、麗雄博士のテンションはさっきからずっとダダ上がりして……あっ、ジェットブーツで飛んだ。

 

「ほぉん、コイツがねぇ……?」

 

 さてさて、一番興味無さそうな雰囲気を出している火麻参謀だが……その内心はきっと。

 

──────────

 

 ……あれから私は博士や長官に許可を取り、火麻参謀の動向をこっそりチェックしている。

 

 何故かって? それは勿論【原作シナリオ】の為だ。

 

(原作通り、参謀はアレを使ってゾンダーを捜索するハズ……)

 

 原作では技術的に小型化が間に合わず、携帯性を犠牲にした試作物を無断借用し、独自捜査で目星を付けたゾンダーの素体と思しき容疑者を尾行していた……

 

 原作と同じく、牛山さんやスワンさんが同行してたのに当初は驚いたが、スワンさんの性格上「面白そうだから」という理由で来てるのだろう……反対に牛山さんは試作機を壊されない様にって考えてると思う。

 詳細はどうあれ……実際に3人は探索に出てるし、原作では火麻参謀のカンは外れたものの、Zセンサーの有効性はある程度証明されていた。

 

 ……ぶっちゃけ「役に立ったか?」と問われたら首を捻るしかないのだけど。

 

(……でも、今回は違う……アレならほぼ確実に、擬態したゾンダーなら探し出せる)

 

 今回は完成品……しかも長官の指示もあって最初から量産性を考慮し、捜索隊員にも実際に渡す事になっている予定の代物(の初期ロット)だ。

 通信機能や利便性を求めたのも、この事態を敢えて起こさせる為……勿論、今は私だけが追跡中だが、凱さん達機動部隊は何時でも応援に駆け付けられる様に離れた場所で待機して貰っている。

 

 参謀達だけ何も知らないのは少々心苦しいけど……長官曰く「日頃から独走が目立つ」との事で、何かお灸を据えてやりたかった様だった。

 

(渡りに舟、にしてはチョット危険過ぎな希ガス……)

 

 そんな事を頭の隅で考えながら、私は展開させたゾディアートメイルの一部を身体から分離させ……頭の中に()()()()()()を浮かべる。

 アーマーはイメージを正確にトレースして膨張・変形し……徐々に別の形を成していく。

 

(原作通りなら素体はバイクになっていた……なら、追い付くにも速さが必要不可欠)

 

 相手はルール無用の大暴走を平然と行って来るだろうが、コチラは市街地や幹線道路を堂々と爆走する訳には行かず、正攻法での追跡は困難を極める……なら、こっちも相手の思惑を超えれば良い。

 

『ゾディアート・アーマロイド【ピスケス】……かな?』

 

 完成したのは人が跨がる大型バイク位のサイズのサメ型マシン。

 暗い蒼と金色のラインが目を引く上部と、白や灰色といったモノトーンの下部に色分けされており、機体と地面が接触している部分はまるで水の様に波打っている……

 

(イメージトレースによる僚機生成は一応成功……だと思う)

 

 この機体は私の能力を能動的に外部へ反映させる方法の一環として「ゾディアートメイル」の拡張機能を利用したサポートマシン……機体デザインは海洋生物と潜水艇、そして水上バイク等を参考にしており、速度や戦闘力といった要素を追加しつつ、水棲生物の特性を特殊能力として展開する事を目的に作成している。

 

『……これからヨロシクね、ピスケガレオン』

 

 シャアァァァァ……!!

 

 イメージ元の生物に合わせた思考を持つ人工知能を標準搭載しており、この子……ピスケガレオンは人と遊ぶ事が好きなイルカや知能の高いシャチなどの思考パターンをモデルにしている。

 使い手の意図を読み取って自律的に行動してくれるし、音声での指示も聞いてくれる……とても優秀で便利なサポーターになってくれるだろう。

 ……さながらショーで人を乗せて泳ぐイルカの如く、私を乗せたピスケガレオンは内蔵センサーを頼りに最短距離で火麻参謀達の後を尾行し始めた。

 

──────────

 

 ……それからの展開はしばらく原作通り。

 

 参謀が目星を付けていたバイクマニア、暴走族のリーダー……そして白バイ警官、とアテが外れ続けた所に件の暴走ゾンダーバイクが出現し、ピンチの所を凱さんが救った辺りまでは変わらなかった……

 

『参謀、お待たせ!』

 

「凱?! 氷竜に炎竜まで……お前ら何で此処に!?」

 

『シオンが教えてくれたんですよ、参謀が夜にまたムチャな事やるって……』

 

「……アイツか……余計な真似を……!」

 

 私は凱さん達より少し離れた場所で、件の暴走バイクを見ていた……

 

(……原作よりも速度が速い……もしかして、原作よりも少し進化してる?)

 

 一度は氷竜と炎竜に叩き落とされ破損したが、隙をみて超速再生しこの場を離脱……近所で開催予定だったモーターショーの会場に侵入し、内部に展示されていたマシンを全て平らげ……巨大なゾンダーロボへと成長した。

 

『くッ、巨大化か……氷竜、炎竜、足留めを頼む! 参謀やシオン達は民間人を!!』

 

 トンファーで果敢に挑む氷竜と炎竜だが、巨体の癖に軽快な速度で2人を翻弄するゾンダーロボ……あっという間にチューブ状の触手で動きを封じられ、オモチャの様に振り回され叩き付けられてしまう。

 

『……ッ、しまっ……ぐあぁぁぁッ?!』

 

『炎竜?! うわっ?!』

 

『氷竜! 炎竜! ちぃッ、ギャレオーンッ!!

 

 ギャレオンを呼び、更にファイナルフュージョンする凱さんだが、相手はガオガイガーをも超える程の体格差に加え、速度まで上回るゾンダーロボ……

 序盤こそ猛攻を加えて大きく破損させたが、ゾンダーロボは破損して脱落した部分を分身として再生させてどんどん数を増やし、ガオガイガーは徐々に劣勢へと追い込まれてしまう。

 

『クソッ、破損した部分を分身として使うとは……!』

 

 それからゾンダーロボはガオガイガーをワイヤーで雁字搦(がんじがら)めに拘束……分身が同じ形状なのを良い事に走り回って撹乱し、その上更に無限増殖しながら分身で自爆特攻まで始めたのである。

 

『あのままじゃ凱さんが……ピスケガレオン、お願い!!』

 

キシャアァァァァッ!!

 

 私の願いを聞いたピスケガレオンは、勇ましい咆哮と同時に僚機であるもう片割れを召喚……2機はすぐさま阿吽の呼吸の如く連携し、原作と同じ様に縛られていたガオガイガーの周囲を取り囲んでいる分身を攻撃し始め、同時にガオガイガーを縛っているワイヤーも断ち切ったのである。

 

『コイツらは……一体……?』

 

『凱さん! その子達が援護します、今の内に本体を探して!』

 

「それなら僕に任せて! ……居た、あそこだ!」

 

 タイミング良く護くんがゾンダーロボの本体を探し出して報せる……一拍遅れでブロウクン・マグナムが放たれるも、分身して小型化したゾンダーロボの本体は再びバイク形態で逃走を再開したが……

 

「……今だ、氷竜ゥ!」

 

『ペンシルランチャー、発射ッ!』

 

 なんと、Zセンサーを頼りに参謀が逃走ルートを予測……氷竜のペンシルランチャーから放たれた超硬ワイヤーネットが本体を捕縛したのである。

 

 

 それからはもうほぼ定期……ヘルアンドヘヴンでコアを摘出し、護くんが浄解。

 コアにされたのはなんと、今流行りの「U◯er Eats」に所属している配達員のお姉さんでした……




今回コアにされたお姉さんはバイク好きの大学生で、自分のバイクを買おうと配達員になったは良いものの……世間の荒波か、利用者の心無い扱いに泣いていたらしい……
そしてその理不尽な目にあった事に漬け込まれて、ゾンダー化させられた模様。

因みに犯人はプリマーダさんです(原作通り?)w

──────────


【TIPS】ゾディアート・アーマロイド『ピスケス』
機体名称:双魚機獣ピスケガレオン

ゾディアートメイルの拡張機能を発展、進化させたサメ型の独立思考制御サポートマシン。
イメージは水族館ショーの人気者イルカやシャチ。
水上バイクの様なハンドルと座席を背部に有しており、高い機動性と索敵能力を持つ。
なお「双魚」の名の通り別にイルカ型が存在し、性能・武装は共通しているがそれぞれ性格が違う。

機体周囲に存在している()()の「表面」を『水面』として事象的に捉え、如何なる場所でも高速遊泳や潜航を可能とする特殊能力【空間位相潜航(フィールドダイブ)】を持っており、あらゆる地形を最短距離で移動する事が可能。
また、壁ならば滝に突っ込む感じですり抜ける事も出来る為、普通のコンクリート壁の様な遮蔽物は全くといって良いほど障害にならない。

その他にも海洋生物の能力を多数保有している。

【基本性能】
機体サイズ 全長:3.75m 全幅:1.29m
      全高:1.24m 重量:1.27t
移動速度:最高時速150km/h(水中時約80ノット)
潜航能力:約2500m/最大4時間
    (対水圧フィールド展開中は深度無限)
跳躍高度:約200m(垂直跳躍時・助走含まず)
跳躍距離:約40m(水平跳躍・1ジャンプ最大距離)

武装・機能
■頭部バルカン砲×2
■側面部展開式3連装魚雷発射装置×2
■折り畳み式ロングレンジバスターキャノン×2
■底部樽型ロケットミサイル発射機構『スパイラルランチャー』
■電磁ネット射出機構(捕縛・拘束用)
■水中機雷敷設装置
■対水圧防御フィールド発生器
■潜望鏡付属式水中投光システム

ゾディアート・アーマロイドは今後も追加予定。
次のマシンはどんな姿になるのかな? 乞うご期待!




次回予告


君達に最新情報を公開しよう!

深海調査船がゾンダーに乗っ取られた?!

最新鋭の深海調査船を乗っ取り
深海でゾンダー核を量産しようと企むゾンダー。
さしものガオガイガーも、深海10000mの水圧には耐えられない……

果たしてGGGは、逃げられる前にゾンダーを撃破出来るのか?


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第16話『光届かぬ世界』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!


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第16話 光届かぬ世界(前編)

前話公開の後、本作初の☆10評価を頂きました。
それにお気に入り登録もますます増えて500超え……
(。>д<) ……感無量です!!

さてさて、前話にてゾンダー側にもまた僅かながら変化があり……

そして今回も何かしらあるようです。
原作再現の第16話、始めましょうか!


 前の暴走バイクゾンダーの件以来……私はどうにも腑に落ちない事があった。

 

(あの時のゾンダーロボ、確実に原作よりもパワー……いや、速度が増していた……)

 

 確かにあのゾンダーロボは速度自慢ではあったが、あれ程の速度ではなかったハズ……なのに……

 

(……ガオガイガーの行動に後出しで反応できていた……そしてあの再生速度と汎用性……)

 

 原作では機動性こそ高かったものの、反応はあまり良くなかったハズだ……だが今回相手にしたゾンダーロボは明らかに反応が良く、挙動に合わせて対策を講じる様な動きも見せていた。

 

 少なくとも今後は、原作よりも強化されたゾンダーロボが立ち塞がる事になるだろう……

 

『……早急に勇者ロボ軍団を編成、ないしは強化しないと……!』

 

 このまま行けば、そう遠くない内に対抗手段を講じる間も無く殲滅され……機界昇華を止める術を喪いかねない……そうなる前に、手札を増やし戦力を増強しなくては。

 

──────────

 

(……この頃なら、既にボルフォッグも護くんの護衛任務に就いてた筈……)

 

 ボルフォッグは、GGG諜報部所属のビークルロボ……ガンマシンと呼ばれる僚機と連携し、合体する事で戦闘にも貢献できる勇者ロボ軍団のメンバーだ。

 

(ボルフォッグに関しては猿頭寺主任の直轄だから、特に問題はないけど……気になるのはガオガイガーの周辺だ)

 

 現状は超竜神しかサポーターが居ない……もし、ガオガイガーと超竜神が引き離されでもしたら、只でさえギリギリの戦いを強いられているガオガイガーに掛かる負担は明らかに増大するだろう……そしてそうなれば、度重なる戦闘でボロボロに近い凱さんに、さらに余計な負担を強いる事になってしまう。

 

『乙女座と魚座はゾンダーロボとの直接戦闘には向かない……残りで直接戦闘に耐えれそうなのは、(かに)座に獅子座、それと(さそり)座……って所かな』

 

 黄道12星座をモチーフにした能力枠を付与できるゾディアートメイル……最初に形にした【スティレット】は初期のバージョン違いなども含めて「乙女座」として登録、最初のアーマロイドとなった「魚座」のピスケガレオンも戦闘こそ可能ではあるが、あの子はあくまでも移動をメインとした機体だ。

 この前の戦闘でピスケガレオンはサポート役に徹したお陰で戦果こそ上々だったが、今後も上手く行く保証は無い……

 

 つまり、ガオガイガーの援護と直接戦闘を行える……大型タイプのアーマロイドが必要になる。

 

(やっぱり、先に蟹座や蠍座を形にするのが先決……かな?)

 

 既にイメージが固まりつつある戦闘用アーマロイド、ガオガイガーのサポートに回すなら……

 

『……まずは、蟹座だ……!』

 

 溢れ出る脳内イメージを出来るだけ正確に、図面として起こす……ピスケガレオンを組んだ時に分かったが、設計図としてイメージを展開した方が、漠然としたイメージだけで組んだ「乙女座」よりも高度な機能を持たせる事が出来た……ならば細部まで拘り抜き、緻密に練られた設計図を組めば、より高い能力を形に出来るのではないか、と……

 

(求められるのは、まず強度……可能な限りバランスを損ねず、汎用性や攻撃力も両立させたい……なら面や方向をわざと限定して付与すれば……)

 

 イメージを一度PCに出力して更に手を加え、可能な限り詳細な設計図を組み立てる……ガオガイガーに倣い、攻撃と防御を左右に分けて特化させ……カニ歩きを彷彿とさせる横方向に特化した機動力と硬い甲殻をイメージした重装甲……多脚によって走破性能や旋回能力が上がったのは嬉しい誤算だった。

 

「お、シオンじゃないか……何してるんだい? ん、メカの……設計図か?」

 

『凱さんの負担軽減を形にしてる所ですよ……もう少しで仕上がります』

 

 噂をすれば、のタイミングで凱さんが研究室に来た……聞けば定期メンテの為らしい。

 

 ちょうど良い、と凱さんが興味を持った画面を大型スクリーンに転写して説明する……私自身は直接戦闘こそ能力的に敵わないものの、サポートマシンを可能な限り高性能機として造れば、役に立てる筈……

 凱さんの負担軽減になれば……と苦心した設計を見て、凱さんはとても嬉しそうだった。

 

「凄いな……コイツと超竜神が一緒なら、どんな相手にだって勝てそうだぜ……!」

 

『……空中戦は全く出来ませんけどね……』

 

「……そうなのか?」

 

 一見、万能にも見えるゾディアートメイルの能力だが……最大性能を発揮させ、尚且つ、いつでも呼び出し可能な様に登録するには()()()()()()()()()()が存在する。

 ……それは『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()は付与できない』事だ。

 

 元々が「人型」やそれに近い乙女座や双子座、射手座などなら非常に緩いものの、非人間型の生物である前回の魚座達や、天秤座・水瓶座に該当する物体タイプは、存在のイメージを損ねる能力……今回の蟹座を例として挙げれば勿論「飛行能力」は付与できない。

 追加武装……ならば一部、例外にできるものの、主に本体の挙動や地形適正に当たる部分には著しい制約が掛かるのである。

 

「成る程……確かに、カニは飛べないもんな」

 

『まぁ、その代わり……イメージに沿う範囲でなら、かなり強いんですけどね』

 

 蟹座に引き続いて、ほとんど完成している獅子座と蠍座の設計図も表示させる……そこで研究室の扉がまた開き、麗雄博士やスワンさんも来た。

 

「What? シオン、ソレは何の図面デスカ?」

「凱も来とったか……む? シオン、この図面は……設計図か?」

 

 ガオガイガーの戦闘サポートを目的として新型のアーマロイド……蟹座、獅子座、蠍座の設計図だと2人にも説明する。

 

「It's amazing……!」

「こりゃ凄いわい……!」

 

 バランスを重視し、選択式の追加武装による能力変化で高い汎用性を誇る獅子座。サポーターとしての能力を追及しながらも、単独戦闘まで行える蟹座……そして超火力と重装甲を併せ持ち、局地戦向けとして開発している蠍座。

 つぶさに確認しながら、博士とスワンさんは揃って驚嘆の声を上げた……想像通りの性能を発揮できるなら、この3機のサポートの下……ガオガイガーや超竜神の戦闘負担は格段に改善される筈だ。

 

(高性能機となれば、それなりの動力源がそれぞれに必要ではあるんだけど……なんかこう、何となく上手く行ける気がする)

 

 

 数日後……学校の社会科見学で造船所を訪れていた護くんから『ゾンダー発見』の報を受け、緊急出動したのだが……

 

『そんな……護くんと華ちゃんが?!』

 

 ゾンダーに奪われた新造の深海調査艇「ノーチラス号」に、護くんと華ちゃんが乗っていた事が判明……海へと逃げた深海艇ゾンダーを止め、2人を救出する作戦が練られる事となった。




深海調査艇を奪ったゾンダーは原作通りに海へと逃亡。
救出作戦が展開される事になる……

なお、コアにされた人物は原作通りの羨まベテラン船長ですが、
奪われた船はなんと、深海10000mすら余裕らしい最新鋭の大型深海艇。
名前負けしてない処か、ネタ元よりも高性能では……?

今回設計図に起こしたアーマロイドたちの活躍はまだ先……
感想、お待ちしています♪


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第17話 光届かぬ世界(後編)

最新鋭の潜水調査艇「ノーチラス号」がゾンダーに乗っ取られた!
しかも中には護くんと華ちゃんが……?!

奇しくも原作寄りのシチュエーションとなってしまった17話!


 万能潜水艦「ノーチラス号」といえば、伝説的な潜水艦の名として語られている。

 今回ターゲットにされたその名を冠する潜水艇も、世界最新鋭の技術の結晶とも言うべき技術の塊として今週末に一般公開予定だった船だ。

 

「敵はこの船の性能を知ってか知らずか……深海に逃げ込まれれば、いくらガオガイガーとて手出し出来んぞ」

 

 敵ゾンダーの解析を開始したGGG、ゾンダー化された人間が潜水艇の艇長だと判明した時点で行き先が深海である事を見抜き、麗雄博士は潜水艇「ノーチラス号」のスペックを元に行く末を危惧する。

 

 ノーチラス号はこの世界の最新技術と、それが生み出した特殊素材の塊だ……

 何よこの外装、表面に張り巡らせたエネルギー偏向力場で水分子と圧力を偏向・分散させ、水圧から内側を保護するってほとんど◯シュマイディッヒ・◯ンツァーやん……

 動力システムに関するヤツも、何か見覚えある黒塗り(ヱヴァンゲリヲンみたいな)資料だなぁと思って、黒塗り前の文字を可能な限り拾い上げ(インクの組成や構成の違いで色分けし)前後の文面の整合性を取れる様に演算しながら解読したら……何やらS◯理論や対◯滅とかいう仮想理論が実証されてて……ってちょい待ち、この理論体系……既にココまで組み上がってるならいずれ常温凍結(アイス・セカンド)型縮◯炉が造れるやん……!

 

『はぁ……頭痛い……ノーチラスの名に恥じない万能潜水艦とか、何てモン造ってんのよこの世界の日本は……』

 

「What? どうしたデスカ、シオン?」

 

『……あー、なんでもないです~……はぁ……』

 

 ノーチラス号の設計データと秘匿資料に頭を痛めながらも、私は演算予測を併用してノーチラス号が変貌したゾンダー潜水艇の現在位置をマップへ投影させる。

 幸い、三段飛行甲板空母の飛行速度なら距離的にはまだ十分追い付ける……が、敵は深海を目指して潜航を続けているのだ。

 

「ガオガイガー単体では奴の潜航速度には追い付けん、よってガオガイガーを潜水艇に搭載して一気に潜航し、そこからディバイディングドライバーの空間制御機能を利用した裏技で接近するしかあるまい……」

 

 その追撃は勿論、原作通りの作戦となった。

 まずはGGGの保有する深海調査艇「ガンダイバー」を使って可能な限り潜航……その先はディバイディングドライバーの戦闘空間形成能力(ディバイディングフィールド)で耐圧殻を形成し、ゾンダー潜水艇に追い付く……という流れだ。

 無論、ディバイディングドライバーの効果時間は最大でも1時間ほどしか無いので、万が一の事態を予測し、凱さんにピスケガレオンを連れて行くように頼んだ。

 ピスケガレオンなら自前の耐圧フィールドがあるし、海中での機動性も高い……援護くらいには役に立つはずだ。

 

「準備が整い次第、作戦を開始する……三段飛行甲板空母、及び、強襲揚陸補給船は発進準備急げ!」

 

 大河長官の号令が響き、基地内は平時と違う独特の緊張感に包まれていった……

 

──────────

 

 斯くして、ガオガイガーを搭載したGGGの潜水艇「ガンダイバー」が、ピスケガレオン2機を伴い潜水を開始……ピスケガレオンの武装は「スパイラルランチャー」以外は全て機体内部に格納出来るので、見た目は限りなく生物に近い……端から見れば、イルカとサメを伴った潜水艦が海の底を目指して潜っている様にしか見えないのである。

 

《ガンダイバー、これより急速潜航を開始します。》

 

 猿頭時主任の遠隔操作により、潜航を開始するガンダイバー……私も三段飛行甲板空母に乗り込み、甲板上でピスケガレオンへと思念波で指示を出している。

 まだ相当距離があるものの、ガンダイバーの潜航速度はゾンダー潜水艇よりも早いので、計算上はまだ安全圏内で追い付ける筈だ。

 

 

《深度、8500を突破……ガンダイバーの装甲に亀裂発生、耐圧限界まで後1500》

 

 GGGの保有する深海探査艇「ガンダイバー」の耐圧限界深度は約10000……ノーチラス号はそれ以上すら余裕なのだが、急激な圧力変動にノーチラス号の繊細な推進機関が対応しきれないので、潜航速度は古くても頑丈なガンダイバーの方が勝っていた。

 

「随行機のセンサーが機影を捕捉……ノーチラス号と確認しました、相対距離……約450」

 

『……思ったより速度を出してなかったのね……これならすぐに追い付ける!』

(ピスケガレオンは、目標を足止めしつつガオガイガーの援護を……!)

 

 ゾンダー潜水艇を捕捉したのは深度9000手前……ガンダイバーの装甲に亀裂は入っているが、想定内の状況だ。

 ピスケガレオンは2機で耐圧フィールドを最大展開して、ガンダイバーの周囲を地上と同じに戻し、格納庫からガオガイガーが飛び出すのを補助する。

 減圧による補助時間は短いが、ディバイディングドライバーを作動させるには十分だ。

 

『ようやく戦えるぜ、ゾンダー潜水艇……護達を返して貰うぞ!』

 

《ゾォォンダァァァー!!》

 

 ディバイディングドライバーのフィールドを展開し、そのまま戦闘態勢に入るガオガイガー……ゾンダー潜水艇は最早潜水艇とは呼べない程に外観が変貌しており、その姿はさながら巨大なマッコウクジラのよう……ガオガイガーよりも巨大な鯨ゾンダーロボは、巨体に似合わぬ高速遊泳を初め、ガオガイガーに迫る。

 

『ブロウクン・マグナムッ!!』

 

 だが、ガオガイガーはカウンター気味に発動させたブロウクン・マグナムで直接鯨ゾンダーロボを殴り付け、そのまま射出して大きく体勢を崩させる事に成功……この辺りの戦闘センスは、凱さんが持つ天性の才能みたいね。

 

 鯨ゾンダーロボは大きく体勢を崩し、そこへピスケガレオンが波状攻撃で体勢復帰を阻む……射出されたブロウクン・マグナムを戻したガオガイガーは再びファイティングポーズを取り、タイミングを計りながら、私はコアの位置を探りつつピスケガレオンに指示を飛ばす。

 

『コアの位置は……凱さん、敵のコアは顎の下です!』

(反撃させないで! タイミングを合わせて、ヤツを釘付けに!)

 

《応ッ! ……アレか!?》

 

 ガオガイガーが体勢を整え初めたと同時に、ピスケガレオンの片割れ(イルカ型)がガオガイガーの背後に周り、耐圧フィールドでガオガイガーを覆ってディバイディングドライバーの代わりとなり、もう片割れ(サメ型)がゾンダーロボの両舷から生えた腕を狙い撃ちして破壊し、必殺のタイミングをお膳立て……

 

『よぅし、それなら……【ヘル・アンド・ヘヴン】ッ!!』

 

 ガオガイガーのエネルギーが急増、右腕にブロウクンエネルギー……左腕にプロテクトエネルギーを最大収束させながら、凱さんはあの言葉(融合の呪文)を唱える。

 

ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ(ふたつのチカラをひとつに)……!

 

 収束された2つのエネルギーは呪文によって反発力も纏めて圧縮されつつ融合……更にGストーンのエネルギーによって外側から封をされ、ガオガイガーが組む両手の中に荒れ狂うエネルギーの塊が生成される。

 

『ハァァァァァッ!!』

《ガオォォォンッ!!》

 

 凱さんとギャレオンの声が重なりあい、一つの獣の咆哮となって聞こえてくる……エネルギー融合の余波を利用して展開されるEMトルネードによって、相対するゾンダーロボは拘束されており、逃げ場も無く【ヘル・アンド・ヘヴン】が直撃する。

 ゾンダーロボの体内に深々と抉り込まれた両腕がゾンダーコアを引き摺り出すと同時に、イルカ型のピスケガレオンが華ちゃんを、サメ型が護くんを回収して離脱……

 更にガオガイガーを含めて耐圧フィールドを再び最大展開する事で、ガオガイガーも爆発から遠ざかる事に成功したのであった。

 

 

「……ん……ぅ……ッ?! は、華ちゃん?! え? ココは……?」

 

『気が付いたか、護。無事で良かったぜ……』

 

「え、凱さん……?!」

 

 戦闘フィールドから遠ざけていたガンダイバーへと戻る途中で意識を取り戻した護くんは、サメ型の背中に乗った状態で輸送されていた。

 気が付くと目の前は深海……水中なのに呼吸は出来るし、すぐ側にはガオガイガー……一緒だった華ちゃんも隣のイルカみたいなマシンで運ばれている事に大混乱していた。

 

《その様子なら、怪我も無さそうね……護くん、華ちゃんも無事で何より》

 

「シオンさんまで……じゃあこのマシンってGGGの……?」

 

《正確には私の従者……その子達は【双魚機獣 ピスケガレオン】よ》

 

 シャアァクァァァ!! キュクゥゥゥルッ!!

 

「うわっは~!」

 

 光すら届かない深海という異質すぎる環境だが、ピスケガレオンとガオガイガーが並走しながら潜水艇へ戻るまで、護くんはピスケガレオンに興味津々といった感じだった。

 ピスケガレオンとガンダイバー……そしてガオガイガーの投光システムに照らされながら、護くんと華ちゃんを乗せたピスケガレオンは、ガンダイバーの格納庫へ入るまで、ゆっくりと海中を遊泳するのであった。




時代背景が変わった事で、現行技術もアップデート……
というか超進化してませんかねぇ?
……筆が狂ってやがる(自分で書いといて言うかw)

後日、未決定となっているゾディアート・アーマロイドシステムのネーミング選手権をやろうと思います。
詳細もそこで……

あと、感想もお待ちしています。




次回予告


君達に最新情報を公開しよう!

世界最大規模の粒子加速実験施設に招待された獅子王博士達……
だが同時に、この施設がゾンダーの魔の手に落ちていた事が判明する!

捕らわれた博士達の救出に向かう機動部隊だったが
彼等の行く手にも、敵が待ち構えていた?!


次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第19話『イゾルデの門』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!


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第18話 イゾルデの門

今回も原作寄りの改変シナリオ……改変具合が大きいので、原作と変わらない部分はカットしてお送りします。

北海道、苫小牧市に建造されたゲマトロン型粒子加速実験施設「イゾルデ」に向かった獅子王麗雄とスワン・ホワイト。
だが、その施設はすでにゾンダーの手に落ちていた。

博士達の定時連絡の途絶や状況の類似点に嫌な予感を感じたシオンと、ゾンダーの動きを微弱ながら察知した護少年が同時に危機を発した為、GGGは直ちに北海道へと急行したのである。


 嫌な予感が当たってしまった……北海道にある粒子加速実験施設「イゾルデ」と、そこで起きた大規模なゾンダーメタルプラントの事件。

 

(敵が巧妙な罠を仕掛けてきた……というより、原作以上に慎重に事を運んでるって感じね)

 

 原作通り獅子王博士とスワンさんは、この施設に出向いていた……理由はもちろん、イゾルデの総責任者が博士の後輩であり知人だから。

 

(確か……イゾルデをプラント化する計画はパスダー本人が直々に指揮を取って始まった作戦よね……)

 

 おそらく原作通りにパスダーが直々に指揮を取り、機界四天王を直接防衛に充てていると考えて良いだろう……恐らく今回も、原作通りに事が運ぶとは考えにくい……となると、此方も対抗策を準備しておく必要がある。

 

『するとやっぱり、攻略の鍵はボルフォッグかな……となると、直接戦闘の対策よりかは、救助作戦をフォローする方が重要……?』

 

 原作の戦闘でも、ボルフォッグの活躍で敵ゾンダーロボの攻略が容易になっている……ならば、敢えて戦闘自体には手を回さず、早めに機動部隊の援護へと移れるよう手を貸す方が得策だ。

 

(……なら、あの時の電磁波遮断システム……それとZセンサーの量子通信、後は……)

 

 過去のデータと、経験……そして原作知識を元に予測を立て、起こり得るであろう状況に対処すべく準備を整える。

 ピスケガレオンを使えば地下施設への突入も容易だし、ドリルガオーとは違い気付かれる心配も無い……電磁波対策をしてボルフォッグの支援に回れば、合流も早まる筈だと確信した。

 

──────────

 

《機動部隊、各ポジションに到着……同時に進入を開始しました。》

 

 三段飛行甲板空母に設けられた指揮スペースからの通信で、命さんの声が響いてくる。

 イゾルデにある4つのゲートからそれぞれ北から凱さん、東から炎竜、西から氷竜、南からはボルフォッグ(護くんには秘密)と更に私(救助サポートとして)が突入する。

 

「?! 南門には誰が……え? この感じ……もしかしてシオンさん?」

 

 護くんにはまだボルフォッグの事は秘密だし、私が同行している事は報せていない……当然の反応だが、私が現場に居る事を気付かれてしまった。

 

《博士達の救助のサポートよ……ピスケガレオンなら、感付かれずに潜入できるわ》

 

 ピスケガレオンの【位相空間潜航(フィールドダイブ)】を使えば、施設の構造物を気にする必要もないし、生体ソナーで要救助者の位置も分かるのだから。

 

『この悪条件でも通信がココまでクリアとは……この新型通信システムは凄いな!』

 

 凱さんや氷竜・炎竜達の通信システムも原作での問題点を踏まえ、悪条件に左右されないZセンサーと同様の「量子通信」システムへとアップデートしている為、イゾルデの高出力パルスが巻き起こす大気のイオン化現象の只中でもクリアな通信を確保できる様になっている。

 

「全員分かってるだろうが……十分に気を付けて行けよ? 何かあったらコッチもフォローに回る!」

 

『『『『了解(です)!』』』』

 

 火麻参謀の確認に応える凱さん達……私も声を揃えて返し、ピスケガレオンのハンドルを握り直した私は、ゲートを開いて一足先に入って行ったボルフォッグの後を追った。

 

 

 ボルフォッグと同じ南ゲートから潜入するという事は、待ち構えている機界四天王は「ペンチノン」という事になる。彼の戦闘能力は他のゾンダリアンと同等……高い再生能力も兼ね備え、持ち前の狡猾さを武器にボルフォッグと何度も渡り合う事になる。

 

 原作の今頃では軽く流されているが、油断は出来ない相手だ……

 

『前方、約250に反応、静止中……この反応は、ゾンダリアン……?』

 

『稀星隊員、私が前に立ちます……貴女は後方で支援をお願いします。【フォッグ・ガス】!』

 

『了解よ、ボルフォッグ……【エコーロケーション】、発動』

 

 特殊な超音波を発振し、地形や対象の詳細を把握する【エコーロケーション】を利用して、前方を探査……ゾンダリアンの人間形態は素粒子Z0を発しないので、Zセンサーでは捉えられない為、動体全てをエコーロケーションで把握する必要があるのだ。

 

『ウリィィィ……何だこの音は?』

 

 強電磁場の中では、センサーやレーダーシステムは使えない……それは私達と同じくペンチノンも同条件。だから電波やエネルギーに頼る捉敵ではなく、音や光で確認するしかない。

 しかし、ボルフォッグが出す【フォッグ・ガス】で視界を奪われ、更にピスケガレオンの【エコーロケーション】の超音波が反響している為か、ペンチノンは戸惑いながらも警戒している。

 

『…………』

 

 ヴオォォォン……! ヴオォォォン……!

 

 一見すれば普通にパトカーと見間違うビークルモードのボルフォッグ……マフラーから吐き出される特殊粒子入りのガスが、周囲の光を乱反射して薄暗い建物内を微妙な光量に変化させていく……

 ピスケガレオンのエコーロケーションで観測したデータを、量子通信でボルフォッグに渡しつつ、私はピスケガレオンの片割れ(イルカ型)をこの場の援護に残し、もう片割れ(サメ型)で博士達を捜索しにその場を離れた。

 

──────────

 

『……どう? 博士達の居場所は分かる?』

 

 サメ型(ピスケガレオン)にも【エコーロケーション】を使わせ、地形情報を確認しながら暗い地下施設内を進む……ピスケガレオンにはGGGを味方として登録してあるので、仲間意識の強いイルカ型ならサポートに最適……さほど時間を掛けずボルフォッグと連携してペンチノンを撃退し、合流してくるだろう。

 

『それまでに、博士達は見つけておきたいね……!』

 

 その時、サメ型が生体反応をキャッチ……隔壁をすり抜けて内側の様子を映像として送ってくれた。

 

『そこね、でも隔壁が降りてる……ならっ!』

 

 長い髪の一部を束ね、分子構造を変更……即席のプラグとケーブルに変化させ、隔壁横の端末へ差し込む。

 非接触でシステムのセキュリティを突破するのにはまだ時間を要する為、強引かつ手早く開けれる様に有線接続で電子機器を支配し、隔壁の電子ロックを解除する。

 

 ガゴォン……グォングォングォン………………ゴォォォン

 

 セキュリティは接続から秒も掛けずに黙らせたので、サイレンや緊急停止、他部署への連携も解除済み……これなら敵に悟られる心配もないだろう。重い隔壁の解放音だけが響き、完全に開かれたその先に見えたのは、細いケーブルのような物で壁面や設備の側面に縛り付けられた職員や博士達の姿だった。

 

──────────

 

「Oh、シオン! 貴女が来てくれるなんて感激デース!!」

「やれやれだ……稀星くん、君が来るとは思わんかったぞ?」

 

『お二人とも無事で何よりです……ボルフォッグもすぐに此処へ来ますから、急いで退避……』

 

『お待たせ致しました』

 

 私の言葉を喰い気味にボルフォッグも合流。手分けして職員達を壁面から剥がし、脱出するべく非常用通路へと向かわせる。するとそこへ……

 

《こちら氷竜、ゾンダリアンと思われる存在を発見……現在、追跡中です》

 

《こちら炎竜、同じくゾンダリアンらしき奴を追跡中……》

 

《こちら凱、2人とも油断するなよ? ッ?! お前は……!?》

 

 どうやら機動部隊もゾンダリアンと接触したようだ……そうすると戦闘までの時間はもうあまり残されてない。

 

『ボルフォッグ、貴方は機動部隊のサポートに先行して! 博士達と職員の脱出は私がフォローするから!』

 

『了解しました』

 

『それと、コレを持っていって!』

 

 ピスケガレオンのコンテナスロットを解放し、取り出した小型のコンテナケースをボルフォッグへ渡す……コレが今回の為に用意したお助けアイテムだ。

 

『それがあれば、機動部隊の役に立つ筈よ』

 

『これは……! 分かりました、それではッ!』

 

 ビークルモードに変形し、機動部隊の下へ急行するボルフォッグを見届けた後……私も私の目的を達成するべく、別ルートからゾンダーメタルプラントを目指してピスケガレオンを駆る。

 

(未使用のゾンダーメタルを活用し、私の能力でアーマロイド用のジェネレーターを生成すれば……大型機の動力問題を解決できるハズ……!)

 

──────────

 

 その後、ボルフォッグは原作よりも早く機動部隊と合流し、ゾンダーロボと化したイゾルデの電磁波攻撃を、コンテナケースで渡しておいた強電磁波相殺システム【アンチ・プラズマリーダー】で無効化……敵が動揺しているその隙に凱さんはガオガイガーへと合体。

 

 暴れ回る敵のビーム攻撃を【プロテクトシェード】で弾くガオガイガー、流れ弾が天井の岩盤を貫通した所で、地上の三段飛行甲板空母はすかさずディバイディングドライバーを射出……

 今回の戦闘で氷竜と炎竜は敢えて合体せず、射出されたディバイディングドライバーを一旦受け止め、ガオガイガーへ渡す役に回ったのであった。

 

『『隊長、受け取って下さいッ!!』』

 

『応ッ!《ディバイディングドライバー》ッ!!』

 

 天井崩落による生き埋めをディバイディングドライバーで回避し、氷竜・炎竜はピスケガレオンとのコンビネーションで攻撃を回避し、そのままボルフォッグと共に機動力で撹乱……隙を見てガオガイガーは《ヘル・アンド・ヘヴン》を発動して突撃し……結果的には誰も大してダメージを負う事無く戦闘は終了したのである。

 

──────────

 

『……な、何という事だ……我がゾンダーメタルプラントが……ッ?!』

 

 自ら計画し、完璧間近だった筈のプラント生成作戦が潰えた……凶報を受け、パスダーは怒り心頭のご様子。

 

『あのサイボーグ……凱、と言ったか……次こそは……!』

 

『あの紫のロボット……そして、一瞬だったがあの反応は我々に近しい……いや、似て非なる存在……アレこそ、我々に対する最大のイレギュラーに間違いありません……ウリィィィ!!』

 

 ピッツァは凱との戦闘で僅かとは言え辛酸を舐めさせられ、対抗心を燃やすが……ペンチノンはボルフォッグに加え、一瞬だけ捉えたシオンの存在に気付き、パスダーへと子細を報告していた。

 

『我等に近しい存在……やはり捨て置けぬ様だな……!』

 

『パスダー様。その者は以前、私の計画を台無しにした奴に似ています!』

 

『私も……その者には覚えがありますぞ……!』

 

 プリマーダとポロネズにも、シオンの存在には覚えがある……自分達と同質の力を持ちながら、袂を分かち、敵に与する……ゾンダリアンにとってシオンの存在は、憎き裏切り者と映ったのだ。

 

『機界四天王よ。その裏切り者には死すらも温い罰……そして我がゾンダーメタルプラントを台無しにした、その報いを受けさせるのだ!』

 

 パスダー様にはまだ直接会ってないので、正体はバレてませんが……完全に敵と認定されました。




次回予告


君達に最新情報を公開しよう!

ギャレオン、護、そしてシオンを狙うゾンダリアン。
地球外知的生命の遺産と遺児に魔の手が迫る……!

ボルフォッグを加え、戦力を増強するGGGだが
ゾンダリアン達は独自に動き、それぞれを付け狙う……

果たしてGGGは、護達を守りきれるのか?!


次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第19話『三重連太陽系の遺産』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!


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第19話 三重連太陽系の遺産 Act.1

今回は原作13話~15話がセットになった回なのでメチャクチャ長いです。

その代わり、活躍する人もマシンも多め……
そして皆さんお待ちかねぇ! 待望の新型アーマロイドが登場します。



 北海道のプラント事件から約1ヶ月……私はGGGの研究グループと協力して、ガオガイガーの援護を担える新型アーマロイドの製作作業を進めていた。

 

「……それにしても、凄まじい威容だなぁ……ホントに蟹型だぜ?」

 

「何でか聞いたか?」

 

「聞いて何になるよ? 中身はちゃんとメカなんだし、動きゃ良いんじゃねーか?」

 

 手伝ってくれているスタッフに対して、この威容の理由は明かしていない……まぁ、明かしたからといって理解できないだろうし。

 

 建造中の新型アーマロイド、大型機第一号は蟹座……銘は『機蟹武刃』とした。呼び名の方はまだ決めてないが、いずれ最高に似合う呼び名を付けるつもりだ。

 

(進捗は約70%、内部機構はほぼ完成……後は動力と、装甲……か)

 

 未使用のゾンダーメタルを利用した動力源はまだ未完成なので、代用品として以前資料で見たN2リアクターを使っている。

 出力は十分だが、如何せん格闘戦を行う機体なので、本当なら破損で爆発してしまう危険を孕む動力は乗せたくない……が、私の能力による機構再現は改造や進化が前提なので渋々だ。

 

「ようやく完成度70%……もう少しですね、稀星さん」

 

『皆さんの協力のお陰です、ありがとうございます』

 

 こうやってお礼を言うのはちょっと照れ臭いなぁ……でも、私はやっぱりこういう裏方の方が性に合ってる気がする。勿論、表立って活躍し称賛を浴びるのも悪くはないけど、気恥ずかしさやら不安やらで選択を謝ってしまいそうになる……私は根っからのサポート派なのだろう。

 

『この機体が完成すれば、ガオガイガーの負担も減るハズですし、作戦行動にも余裕が出来ると思います』

 

 私の言葉に「では、可能な限り完成を急ぎましょう!」と発破を掛けてきた職員達と共に……私も作業を進める。

 

 ……願わくば、この物語をハッピーエンドにする為に。

 

──────────

 

 その数日後、家族で沖縄旅行に出ていた護君から『ゾンダー出現』の報を受け……GGGは直ちに沖縄へと急行。護君の危機にギャレオンが反応し先行した為、GGG機動部隊を乗せた三段飛行甲板空母は現場に急行した。

 

 

「うわぁぁぁぁ?!」

 

 ガオォォォォンッ!!

 

 到着と同時に目にした光景はほぼ原作と同じ……現地のローラーコースターを取り込んで龍の如きロボと化したゾンダーと……単身で大立ち回りをこなしつつ、どうにかしてゾンダーロボの右手に拘束されている護くんを取り返そうと奮闘するギャレオンだった。

 

『……ッ……あのままでは、ギャレオンでも近付けない……!』

 

 私は敵のゾンダーロボを見据える、そのボディには原作に無かった特徴……鱗の様な形状をした小型の虫みたいな奴がバリアーを展開してギャレオンの往く手を阻み、本体に近付けまいと乱舞していたのだ。

 

(やっぱり……進化してる。よく見ると細かな形状も変わってるし……)

 

 原作でのコイツはカメレオンみたいな頭と赤いボディが特徴的で、戦闘の後半にはカエルの様に膨れ上がった胴体をした奴へと変化している……だが、今目の前にいる奴は……

 

 ギャォォォォォオ!!

 

 完全に東洋のドラコン……龍をモチーフにし、万人の美的感覚に訴える程整った形状をしている……場が場なら、龍虎対決の様にも見えるだろう……ギャレオンは獅子だけど。

 

 ……兎に角だ、この戦場は完全にメカニカルなモンスターが繰り広げる大怪獣決戦の様相を呈していた。

 

『ギャレオン、待たせたな!』

 

 空母から飛び出した凱さんがギャレオンに合流……ガイガーへと変形するが、龍ゾンダーは巨体に似合わぬ俊敏さとお供の鱗ビットで巧みにガイガーの接近を許さない。

 

「不味いのぅ……ガイガーのスピードでも捉えきれんとは……!」

 

「氷竜、炎竜! 民間人の避難状況は?!」

 

『民間人の避難率は78%……もう少しで避難も完了します!』

 

『コッチももう少し……隊長、待ってて下さい!』

 

 場所が遊園地だった為か、広域に渡る避難作業のせいで氷竜と炎竜はガイガーのサポートに向かえない……ガイガーも護くんを取り返そうと奮戦するも、鱗ビットのバリアーと動きで邪魔をされ思う様に近付く事が出来ない。

 

(ピスケガレオンじゃ接近できても、空中じゃ無防備過ぎて離脱の隙を狙われる……!)

 

 機動力に長けるピスケガレオンでも、元が海洋生物だから空中では無防備……それに、潜航するにも何かの物体の表面を必要とするし、敵のボディやその辺の瓦礫は能力の制限に引っ掛かるので潜航には使えない……

 

 ちなみに【位相空間潜航(フィールドダイブ)】能力行使上の制限とは『自意識や知性を持たない事』と『通過可能なサイズは表面積と同様』の2つ……つまり、敵や氷竜達のボディなどは能力行使の対象外であり、すり抜けるには自らより大きな面……それも“平面”でないとダメなのである。

 

 なお、平面とは言うが、構成素材の違いや壁の窓枠……といった“少しの段差”位なら例外的に可能……と微妙に緩かったりする。

 

『……どうすれば……!』

 

 キィィィン……! ジャキンジャキン!!

 

 思考の袋小路に入った瞬間……聴こえてきたのは金属が震えて鳴り響く音……そして巨大な鋏が交差する独特な音だ。

 

(この音……まさかあの子が?)

 

 確かに少し前に“火は入れた”……間に合わせだけど動力は馴染んでるし、動くには問題ない。だがさすがに組み上げ直後だし、全体の最終チェックや戦闘を前提にした稼働テストはまだ済んでない……最悪、敵前で分解事故とかなったら更なるピンチである。でも……

 

 ジャキンジャキン!! ジャキンジャキン!!

 

 この音は「他に手があるのか? でなきゃ共倒れで全部消えるぞ?!」とでも言ってるのだろう……確かにこのままでは護くんを失い、終わらない戦いの末に凱さん達も疲弊して倒れ、最終的に地球は機界昇華される。

 

(ダメだ! そんな事になったら、私も……!)

 

 浄解の担い手がもう一人居る事すら忘れ、私は弱気になった己の頬を叩き直し……甲板空母の甲板へと飛び出す。

 

《オイ稀星、下がれ! 敵の目的が護なら、お前も後からターゲットにされるのは目に見えてるんだ!!》

 

 呼吸を整え、自らの姿を変える……大型サイズの召喚には、今なお続く機能制限の都合でアーマー全てを変換する必要がある為、展開したアーマー全てをパージし召喚陣を組ませる。

 

『……来たれ、黄道を庇護せし者……古の楔を解き放ち、我が下へ……悪鬼羅刹を断罪せよ、斬戟なる武刃!』

 

 編まれた陣を潜り抜け、巨大な何かが徐々に姿を現す……

 

 その体躯は敵の巨体にも劣らず、鈍く輝くエメラルドグリーンの装甲と、更に体躯の半分に匹敵する一対の巨大な鋏……ふざけたそのシルエットからは想像も付かない程の圧倒的なパワーと、比類無き重装甲を持つ……巨大な蟹型の何かだった。




登場シーンで区切るのは、盛り上げのお約束w

あと、活動報告でアーマロイドの名前を募集します!
詳細もそちらで。


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第20話 三重連太陽系の遺産 Act.2

前回からの続き……

沖縄旅行中、ゾンダーに襲撃された護少年。
凱らGGGが駆け付けるも敵ゾンダーの抵抗は激しく、拘束された護少年の奪還は不可能かと思われた……だが、その時。

来たれ、黄道を庇護せし者
古の楔を解き放ち、我が下へ
悪鬼羅刹を断罪せよ、斬戟なる武刃


空間に投影された不可思議な陣より現れたのは、ガオガイガーに匹敵する巨大な何か……

果たして、その正体とは?!


 召喚陣を展開、呼び出す際における対象の選択とエネルギーラインの確保、そして起動シークエンス演算などの手間を最適化する為に予め組み込んでおいた術式を起動……それらを円滑に動作させるキーワードを編み込んだ【祝詞】(じゅもん)を唱える。

 そうする事で起動から遠隔転送、即戦闘へと持ち込める様に最適化を施しておいた……尤も、どう足掻いても中二病っぽい言葉を並べ立てないとマトモに術式が動かないのは如何ともし難かったが……

 

 ズズズズ……

 

 三段飛行甲板空母の正面、上空数百mに展開された召喚陣……その下から徐々に姿を表していく巨体……

 8脚の歩行用多関節脚と武装用である一対の大型腕部……見るからに分厚い装甲で覆われた全身がその姿を晒していく……金属質の色(メタルカラー)と、鈍く輝くエメラルドグリーンが配された装甲……見たまま言えば「甲殻」と言えるソレは、最大の特徴である防御力と攻撃力を両立させたものだ。

 

 ヒュン…… ズドォォォォンッ!!

 

 召喚陣から完全に姿を表しきり、離れ、重力に従って地面に落下する。

 多脚型戦車の構造を模し、更に生物的挙動と能力を完全な形で組み込んだそのボディは、この程度の衝撃など物ともしない強度と柔軟性を発揮、立ち上った土煙を片腕で振り抜き払う。

 

 ジャキンジャキン!!

 

 一対の巨大な蟹鋏を鳴らし振り上げた姿は、某狩りゲーの大型甲殻種モンスターを思い出す動きだ。

 巨大な鋏と、巨大な背中……その背中には、只の蟹には無い身の丈と同じサイズの巨大な背部ユニット……全体的な印象はヤドカリと蟹を足して割った感じだ、ますます某狩りゲーのモンスターだなぁ。その中身はビックリ技術の塊だし、大まかなデザインは遺伝子特性と演算による進化に任せたので、ココまで似るとは思わなかったけど。

 

 …………!!

 

 ゾォォォンダァァァァッ!!

 

 一目見て敵だと認識したのか、龍ゾンダーロボと機蟹武刃は互いを威嚇し合う。

 長大な身体を中空に漂わせ、咆哮を繰り返すゾンダー……それに対するは、いつでも殴り合い万端、といった感じで両の鋏を振り上げる機蟹武刃だ。

 

『……せめて、アイツの動きが止まれば……』

 

 凱さんの呟きが通信越しに聞こえてくる……その数秒後、しびれを切らしたのか龍ゾンダーロボが先制攻撃を掛けた。

 お供の鱗ビットが数機、編隊飛行で突撃してくる……僅かに遅れて、機蟹武刃も敵の本体へ向けて突撃を開始し、鱗ビットは使い捨て前提なのか、自爆も厭わぬ特攻で装甲に激突、爆発した。

 

「な……ッ、自爆だと?!」

 

「観測結果が出ました……あの鱗ビットの自爆による破壊力はダイナマイト数百発に匹敵しています。ガオガイガーのボディでも、あの攻撃を受け続けるのは危険が伴います……あの蟹メカの装甲は、持つのでしょうか?」

 

 機蟹武刃の装甲へ向け、次々と特攻を掛ける敵ゾンダーの鱗ビット。本部のクルー達はその威力と戦術に機蟹武刃の耐久力を心配するが……

 

 グォォンッ……

 

 まぁ、あの程度の威力じゃ機蟹武刃の装甲を抜くなど何万年掛かっても不可能じゃないかな。

 

 …………? …………!

 

 最初の爆発こそ「ん? オメー何かした?」程度の反応をしたが、自分の身体に何も影響が無い事を認識すると、鱗ビットを無視して行動再開……爆発に怯まない相手に動揺した龍ゾンダーロボは、たじろぐ様に後退りする。

 

 ゾ……?! ゾンダァァ?!

 

 動きに精細を欠いた時点で、この結果は目に見えていた。

 機蟹武刃の両鋏が龍ゾンダーロボの胴体を捉え、その巨体で以て捩じ伏せたのだ。

 

『……ッ?! 今だッ!!』

 

 左の鋏が龍ゾンダーロボの腕の付け根をガッチリ挟み込み、大地へと縫い付けている……ガイガーはその隙を見逃さず、護くんを捕えていたゾンダーロボの腕をクローで分断し、素早く離脱……機蟹武刃の重量を直で受ける龍ゾンダーロボは自慢の長大なボディが仇となり、飛行して移動する事が出来なくなるも、下半身を使って何とか脱出しようと足掻く。

 

 …………!

 

 だが、機蟹武刃の重量は700トンオーバーの超重量マシン。頑強さも折り紙つきなので、そんな抵抗もどこ吹く風……ガイガーが護くんを救出するまでじっと待ち続け、安全に離脱するまで攻撃を受け止めていた。

 

『護、大丈夫か?!』

 

「凱兄ちゃん! あの蟹のロボットは……?」

 

『アイツはシオンが造ってくれたんだ、何というか……凄まじい性能だな……!』

 

「シオンさんが? うわっはー♪」

 

 機蟹武刃は、護くんを救出したガイガーが離脱したのを確認すると、龍ゾンダーロボを持ち上げて投げ捨てる……ようやく解放された龍ゾンダーロボは、機蟹武刃を無視してガイガーへ向けて口から火炎放射を吐いてきた。

 

「うわぁぁぁぁ?!」

『ッ?! しまった、護っ?!』

 

 しかし、機蟹武刃は凱さんの戦闘をサポートする為に開発した機体。自慢の横移動でカバーに入り、龍ゾンダーの火炎放射に対抗して水ブレスを放射した。

 

 ジュッ……スパァン!

 

 発射された水ブレスは一瞬で炎を突き抜け、火炎の先……龍ゾンダーロボの身体を捉え、取り巻きの鱗ビットを巻き込んで瞬断したのである。

 

「す、凄い……あのゾンダーロボを簡単に……!」

 

「あのメカの重量は推定700トン以上、パワーはガオガイガーを上回っているかもしれません……それに、あの水ブレスはおそらく微粒子入りのウォーターカッターでしょう」

 

「あの爆発に耐える装甲と、敵を抑え込むパワー……それに水ブレスのあの威力、さすが驚異的じゃのぅ」

 

「実に頼もしい仲間が増えたな!」

 

 本部のクルーや長官達は、機蟹武刃の性能に揃って湧いている……だが、ゾンダーロボを倒した訳ではない。

 龍ゾンダーロボは上空へと逃げ、機蟹武刃の攻撃を露骨に警戒している様だ……

 

 勿論、機蟹武刃もガイガーも……これで終わりとは思ってない。

 

『凱さん、今の内にファイナルフュージョンを! 敵はあの子が抑え込んでくれますから』

 

『おう! ガオーマシンッ!!』

 

 凱さんのキーワードに反応し、ステルスガオー、ライナーガオー、ドリルガオーがそれぞれ出現……続けてガイガーは跳躍し、合体キーワードを叫ぶ。

 

『ファイナルッ、フュ――ジョンッ!!』

 

──────────

 

 機蟹武刃と龍ゾンダーロボが互いを攻めあぐねている横でガオガイガーは合体を完了、後はコア摘出とロボ撃破となったが……ココで予想外の事態。

 

『ブロウクンマグナムッ!!』

 

 巨体の癖に飛行してて意外と速く、ガオガイガーの攻撃の要ブロウクンマグナムが当たらない……

 

『動きを止めて!』

 

 …………! …………?? …………!

 

 しかも機蟹武刃を天敵と見なしたのか、露骨に警戒して上空へと逃げ初めたのだ。

 機蟹武刃は敵が降りて来ない事に腹を立てて威嚇ポーズ……「降りて来いやぁ!?」とでも言う風に怒ってる気がする。

 

「イカン! 奴を逃がすとゾンダー胞子の拡散を許す事になるぞ!?」

 

『逃がすかぁッ!!』

 

 ガオガイガーはスラスター全開で追い縋り、龍ゾンダーロボに接近するが……

 

 ゾォォォン……ダァァァァ!!

 

 ガギィンッ!!

 

『ッ?! クソッ、鱗ビットが邪魔だ……!』

 

 やはり、ガオガイガーでは鱗ビットに邪魔されて思う様に動けない……追い付けても動きを止めるには至らず、鱗ビットの自爆はガオガイガーにとって驚異なので可能な限り避けたい所……

 

「速度ではガオガイガーの方が速いが、奴の取り巻きを無視して攻撃するには……もうヘル・アンド・ヘヴンしかないぞ?」

 

「でも、あの爆発に直接晒されたら……いくらガオガイガーでも……!」

 

 ガオガイガーの必殺技【ヘル・アンド・ヘヴン】唯一の弱点……それは、発動直後の推進システムに僅かな隙が出来るというもの……

 その隙に敵が防御の為に鱗ビットを大量に撒いたら、ガオガイガーの防御力を超える爆発の真っ只中に自ら突撃するという事になるのである。

 

『……だが、奴を逃がさず撃破するには……やるしかない!』

 

 凱さんは自身の危険すら省みず、ゾンダーを逃さない為に必死だ……やっぱり、この子を造っておいて良かった。

 

『大丈夫……希望はあります。ガオガイガー、機蟹武刃(この子)を使って下さい……ぶっつけ本番になりますが、奴に対抗出来ます!』

 

 …………!! ♪~~

 

 ユラユラと踊る様に機蟹武刃がガオガイガーの前でダンスをし始める……それは彼の簡易AIがガオガイガーのサポートを承諾し、喋れない代わりに自ら考案したトッテオキの待機状態だ。

 

『凱さん、コマンドワードを……【アーズド・ツール】です!』




まだ続きます、憎らし演出w

機蟹武刃のネーミング締め切りはこの次まで待ちます。
……というか、この戦闘終わるまでかな?
奮ってご参加下さい! 感想もよろしくお願い致します。

あと、予告編を消して資料置き場にしました。


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第21話 三重連太陽系の遺産 Act.3

またもや前回からの続き……

お待たせ致しました!
命名選手権は今話の公開時点で終了となります。
ご参加本当にありがとうございました♪
次話にて結果発表となります。



ガオガイガーの追加サポーターとして建造された『機蟹武刃』。
召喚された()()は瞬く間に龍ゾンダーロボを捩じ伏せ、ガイガーを補助し、護少年の危機を救う。
……だが、敵ゾンダーロボの目的は護だけではない。
熟しつつあるゾンダー胞子の拡散前に、奴を倒さなくてはならない……

その時、シオンは凱に『ある言葉』を伝える……
それはまさに「勝利の鍵」となり得るものであった。



 ゾディアート・アーマロイドの一部に組み込まれた、ガオガイガーのサポート用オリジナルアタッチメント『アーズド・ツール』……

 ガオガイガーの戦闘補助ツールであるディバイディングドライバーやディメンジョンプライヤー、そしてゴルディオンハンマー……一貫してそのデザインコンセプトは「工具」だ。

 

 そしてアーズド・ツールとは、そのコンセプトに倣いつつシオン独自の技術を以て組み上げられた「アナザータイプ」と言える装備なのである。

 

『扱い的にはディバイディングドライバーと同じですが、アーズド・ツールの仕様は独特ですから……何はともあれ、まずは装着を!』

 

 私の声に促され、凱さんはキーワードを叫ぶ。

 

『アーズド・ツール』ッ!!

 

 機蟹武刃はすぐさまコマンドワードを承諾、それと同時にガオガイガーにも僅かながら変化が訪れる……

 

『……こ、これは!?』

 

 機蟹武刃の両腕に当たるシザーアームが本体から分離して変形……ガオガイガーの両腕となっていたステルスガオーのエンジン部分がステルスガオー側に収納(もど)された後、代わりとして装着されたのだ。

 装着後、自動的にシザーアームは再度変形……本来の腕より少しだけ大きめの前腕部が形成され、ガオガイガーの両腕となった……

 大まかなカラーリングはガオガイガーとほぼ同じ……違うのは僅かに増加した大きさと、関節毎に刺々しく、攻撃的な印象を与える五指……そして腕部から外側を向く、如何にも切断力のありそうな刃と、その対になるようにセットで装備されているアームカバーだ。

 

『それがアーズド・ツール、バージョン【蟹座】(キャンサー)……「ギガンティック・アームズ」とでも言いましょうか……

 その両腕は機蟹武刃(あの子)と同じレベルの防御力を備えています。そしてその腕ならば……!!』

 

「……そうか?! これならッ!!」

 

 凱さんはすぐに私の意図が掴めたみたい……龍ゾンダーを再び追い始める。

 

 先程と同様の追いかけっこ……だが今度は、鬱陶しく邪魔をする鱗ビットを腕で直接破壊しながら追い縋っているのだ。

 鱗ビットの爆発を連続で浴びれば、本来ならガオガイガーの装甲すらも危うい……だが、ギカンティック・アームズの持つ防御フィールド『プロテクトディバイダー』がそれを良しとしないのである。

 

「もう逃しはしないぜ! 観念しろッ!!」

 

 先程よりも距離を詰めてきた事に、ゾンダーは迎撃を諦め逃げに徹しようとする……だが、ゾンダーよりも飛行速度で勝るガオガイガーはそれを許さない。

 

 右腕がブロウクン・マグナム発射直前……赤い輝きを纏って唸りを上げていた。

 

「そこだッ!【ディメンジョン・マグナム】ッ!!」

 

 空中でブロウクン・マグナムを放つ挙動、それに呼応して打ち出される右腕……だが、撃ち出された右腕は数メートルほど飛ぶと虚空に穴を空けて消え、次の瞬間には敵の懐……長大な胴体の中心を捉えて貫通し、その下半身を破砕の勢いだけで上半身から泣き別れさせたのである。

 

《な、なんという威力……しかも空間を飛び越えよった……!》

 

 さすがの麗雄博士も、そりゃビックリするよね……人類科学じゃまだ糸口すら掴めてない空間転送技術だもん。

 ちなみに凱さんがすぐに「あの両腕」を使い熟せた理由……もちろんそれはチュートリアルをセットにしているから。

 

「なるほど……これなら意表を突いたり、相手の隙を狙える……!」

 

 さっきの一連の動きは、運用サポートとして出されたチュートリアルを上手く利用して放たれたものだった。

 

 ゾゾゾ、ゾンダァァァァ……

 

 しかしまだゾンダーを撃破した訳ではない……だが、泣き別れした下半身を再生させるのにエネルギーを浪費してしまい、龍ゾンダーロボの動きは目に見えて衰えていた。

 

『今ならコアも狙えます、トドメを!』

 

《でも、あの取り巻き(鱗ビット)の爆撃が……!》

 

『大丈夫です、()()()を使うガオガイガーならば……!!』

 

「ヘルッ! アンド! ヘヴンッ!!」

 

 必殺のコマンドワードと共に、両腕を広げあの体勢を取るガオガイガー……だが、今回は機蟹武刃のパーツを使った特別版。

 広げた両腕が変形を開始し、分離時の蟹鋏……そこから更に変形して巨大な一対の刃を形成する。

 

《ガオガイガー、H&H(ヘル・アンド・ヘヴン)モードへ移行……ってあの両腕は?!》

 

 両腕を一対の巨大な刃へと化したガオガイガーは、そのまま両腕を前へ伸ばし刃の根元を合わせる……すると連結機構が展開されて一部が接続され……分厚く巨大な鋏のようなモノへ変貌したのだ。

 

ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ……!

 

 鋏を開きつつ前へ向け、必殺の定型文を詠唱し、全身をエメラルドグリーンに光らせるガオガイガー……龍ゾンダーロボは発生したEMトルネードに捕らえられ、最早身動きすら取れない。

 

「ハァァァァァァァッ!!」

『ガオォォォォォンッ!!』

 

 腕と刃を重ね合わせた鋏が、敵ゾンダーロボのコアのある胴体部分、その両腕の付け根を挟み込み……メキメキと金属がひしゃげる音と共に胴体を加圧し続け……ついにまるごと輪切りにした。

 

《イカン?! 凱、すぐに離れるんじゃ!?》

 

 コアを失い、制御を失ったゾンダーロボのエネルギーが荒れ狂う……それは至近距離のガオガイガーすら飲み込んで巨大な爆発を引き起こし、周囲の一切を跡形もなく吹き飛ばした。

 

《……Oh, jesus……!》

 

《こ、こんな規模の爆発、とてもガオガイガーの装甲が持ちませんよ?!》

 

《……そ、んな……凱……っ!?》

 

 予想を遥かに上回る規模の大爆発……牛山オペレーターの言葉に、クルーの誰もが絶望せずには居られなかった……

 

 

 ……突然ですが、皆さんは「ニッパー」という工具を知ってますか?

 

 ええそうです。素材や目的に応じて使い分け、握る圧力を切断に利用するアレです。

 その中にある「ケーブル類の被覆を剥がす専用」のニッパーには、刃の中ほどに()()()()()()()()()()()()()()()()()()んですよ。

 

 なんでそんな話を今するのかって? そりゃこの必殺技が同じ理屈を用いたツールだからです。

 

「……これは……!?」

 

「Oh!? It's miracle!!」

 

 ツールの刃に空いている穴に挟み込まれたゾンダーコア……そしてエメラルドグリーンの光膜で覆われ、先程の大爆発をほぼ無傷でやり過ごしたガオガイガーが爆炎の中から姿を現したのだ。

 

「ガオガイガー健在! ゾンダーコアも確保されています!」

 

「ガオガイガー、装甲部のダメージは27%……先ほどの爆発による損害も軽微です! でも内部ダメージは……え、嘘……っ?! H&Hによる反動ダメージは、今までの1/3にまで低下しています!!」

 

 命さんの報告が示す通り、というかこれが「アーズド・ツール」最大の目標……ガオガイガーの戦闘における内部ダメージ……つまり凱さんへの負担軽減、それも一応成功といって良いレベルだった。

 

《これぞ【蟹座】(キャンサー)必殺、【シザーズ・ヘル&ヘヴン】……って所ですかねぇ》

 

 初起動から何もかもがぶっつけ本番……にも関わらず、こうしてガオガイガーのサポート用アーマロイド【機蟹武刃】の初陣は"大勝利"となったのである。




TIPS:アーズド・ツール
正式名称『アドヴァンスド・アーマロイド・アームズ・ツール』。
ガオガイガーの戦闘行動におけるパイロットへの負担軽減と、戦闘力強化の両立を主目的として開発されたサポートツール。
基本的には地球製ガオガイガーの既存ツールと同じ感覚で使用でき、既存ツールでは手が届かなかった戦闘行動による凱への負担軽減に配慮されているのが特徴。

──────────


TIPS:ギガンティック・アームズ
アーズド・ツール【蟹座】(キャンサー)の通称。本来の腕部より一回り大きくなり、刺々しい五指と外側には鋏が変化した刃状のパーツ、内側にアームカバーが付いているのが特徴。
刃とカバー部分はプロテクトシェードの改良型である空間干渉型攻勢防壁「プロテクトディバイダー」の発生器になっている他、ブロウクンマグナムに代わる遠距離攻撃「ディメンジョンマグナム」の際には空間に干渉して距離を縮める穴を開け、短距離の空間跳躍を行える。
また、パーツ全体から既に機蟹武刃と同等の防御力を誇っており、動力回路の効率化によって打撃力も大幅に向上している。
なお、左右の腕は距離を問わずエネルギーの受け渡しが可能で、ディメンジョンマグナム及びプロテクトディバイダーは左右どちらの腕でも行使可能となっている。

──────────


TIPS:シザーズ・ヘル&ヘヴン
アーズド・ツール【蟹座】(キャンサー)ギガンティック・アームズを用いて行われる、ガオガイガーの必殺技(ヘル・アンド・ヘヴン)の強化仕様。
専用形態である「ギガンティック・シザーアーム」へと変形させて発動する。
コアを摘出する方法は配線工事用の「ニッパー」から得られており、コアの周囲を空間ごと斬り潰しながらコア自体は「セーフティポケット」と呼ばれる退避場所へと確保し、その過程で露出した弱点部分へH&Hによる破壊エネルギーを流し込んで強制的に爆散させるという本家以上(w)の超荒業。
ガオガイガー本体はEMトルネードの余剰エネルギーを「プロテクトディバイダー」に取り込んで展開する超空間防壁「クリスタルプロテクター」とシザーアーム自体の頑強さで二重に保護されており、戦闘やH&Hにおける反動ダメージを通常の1/3にまで抑える事に成功している。



アーズド・ツールはガオガイガーの戦闘補助も視野に入っており、本来ガオガイガーが可能な行動は阻害しない造りなので、実質的なパワーアップにもなります。
ただし、新技となった『シザーズ・ヘル&ヘヴン』の反動は、システム側の問題なのか解析が不十分だったのか……大幅な負担軽減こそ出来たものの完全な解消、とはなりませんでした。
至極残念。(´・ω・`)ショボーン

感想よろしくお願いします~♪

あと、実はまだタイトルのフラグは回収されてませんので……
「まだだ! まだ終わらんよ!?」


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第22話 三重連太陽系の遺産 Act.4(ってかようやく本題w)

ようやくタイトルのネタ回収が始まります。
ついでに蟹さん大活躍回ですw

また、蟹座アーマロイド命名選手権の結果は、本編とあとがきを見てね。



 沖縄での龍ゾンダーロボ戦から一夜明け……私は機蟹武刃の戦闘データを確認しつつ、消耗率をチェックしていた。

 

(想定よりもツール部の消耗が大きい……やっぱりH&Hの運用データが足りなかったから?)

 

 機蟹武刃のパーツを再構成してツール化する『アーズド・ツール』、その初号機として開発した“ギガンティック・アームズ”だったけど……必殺技『シザーズ・ヘル・アンド・ヘヴン』は発動こそ成功し、反動ダメージも1/3に収まった。

 本当なら「完全解消」させたかったが、現状のガオガイガーが運用する『ヘル・アンド・ヘヴン』のデータを含め、未だに不完全……

 

 当初は原作知識から、呪文の(解読不足&詠唱してないから)不完全さ故……と考えていたが、どうやらそれだけではない事が麗雄博士との対話で判明したのである。

 

『まさかの設計構造……デッドコピー(地球製)だったのが原因……それに、運用者の特性も含めて“アレ”だったとは……』

 

 そう、本来のガオガイガー……つまり『あの機体』が放つ“本来のヘル・アンド・ヘヴン”を再現するには、素材から全く同じ腕部機構……要は完全コピーが前提であり、使用者である凱さんも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だった。

 

(さすがに今の段階じゃ、いくら私でも“ゴルディオンネイル”とか造れないし……)

 

 凱さんの身体はシナリオの都合もあり、私では解決出来そうにない問題だから放置(パス)しかない……

 それに、開発の鍵となるガオガイガーの最強ツール……金色の破壊鎚ことゴルディオンハンマーは、GGGの秘匿技術として現在進行形で開発中であり、その危険性も相まって博士が全て管理している。

 

 推測として、ツールのシステムはほぼ完成しているだろうけど、実際に形になるのはもう少し先になる筈……ただ、博士は機蟹武刃の装甲や防御システム「ギガンティック・アームズ」の運用データに興味津々だったので、後でデータを渡すつもりだ。

 

(もし、代わりにハンマーのデータを貰えたら……誰かに転用するのも有り、かな?)

 

 ゴルディオンハンマーは理論上、当たれば“必殺”と呼べる攻撃だ……もし関連機構のデータを貰えたら、誰かのパワーアップに役立つ可能性が非常に高い……ぶっちゃけマジで欲しい。

 

──────────

 

 同日、護くん達は学校の遠足で箱根山に登っていたが……その道中、深い霧に囲まれてしまう。

 ロープウェイから降りた護少年たちを待ち構えていたのは、米軍戦車「M1 エイブラムス」が放つ砲撃であった。

 

「うわぁぁぁぁぁ?!」

「きゃあぁぁぁぁ!?」

「あばばばばばば?!」

「あわわわわわわ!?」

「イヤァアァァァ?!」

 

 護達5人は深い霧の山中を戦車に追い回される……普通に命の危険性は高い。

 ……だが当然、この事態を彼は良しとしない。

 

『システムチェーンジッ!』

 

 諜報部所属のビークルマシン、ボルフォッグ……天海 護の護衛の任に就いている彼は、護達から戦車を引き離しつつ、同じく空から攻撃してくる米軍の攻撃ヘリ「アパッチ」を次々と片付けていく。

 

 しかし、ボルフォッグの健闘も虚しく……護達は一人、また一人と引き離されていき、ついには護と華の2人だけとなってしまった。

 

(確か、ボルフォッグだっけ……でも1人じゃ危ない、誰かに連絡を……そうだ! これなら?!)

 

 護は、ウェアラブル端末としてバージョンアップされたGGG隊員専用端末『G-USB』を思い出し、すぐさま通信を試みる……グループ通話も可能なG-USBの通信機能には“量子力学”を応用した通信技術が用いられており、電波を遮断するこの霧の中でも正常稼働……

 

 ちょうど手が空いていたシオンと命に繋がり、事の次第が伝えられ……哨戒任務中だった凱と共に、アップグレードの完了した機蟹武刃が現場へと急行する事になった。

 

──────────

 

 機蟹武刃と凱が合流するまでの間、ボルフォッグは単独で米軍ヘリと戦車の集団を相手に大活躍……指揮下のガンドーベル、ガングルーと共に縦横無尽に連携……痺れを切らした相手は囮に使っていた大型輸送機を特攻させ、更にその残骸全てと融合……ついにその原因はゾンダーと確認する事ができた。

 

『……やはり、この騒ぎはゾンダーの仕業でしたか……!』

 

 ゾンダーは輸送機の中から出ずに潜み続けており、搭載していた戦車とヘリを大量にコピーして戦力を増やし十分な数を確保した後、輸送機はGGGの目を欺くべく囮に……そして増やした戦車とヘリを使って護達を襲っていたのである。

 

『…………!!』

 

 ゾンダーロボと化していた輸送機は戦車とヘリも全て取り込み、人型形態へと進化……ボルフォッグもガンドーベル・ガングルーと合体し「ビッグボルフォッグ」となって応戦するが、本格的な戦闘向きではないビッグボルフォッグにとって、敵ロボの火力と防御力は脅威だった。

 

『……護隊員の安全確保の為には、奴の注意を引き続けるしかない……しかし、私だけでは……!』

 

 単独戦闘は可能であっても、相性や適正的に戦闘向けではない事に敵も気付いたのか……火力ではなく、接近戦を挑んできたゾンダーロボ。

 

『ッ?! いけません! 護隊員ッ?!』

 

「……?! うわぁぁぁ?!」

 

 ビッグボルフォッグは戦闘に迷い込んできた護に気を取られ、隙を晒してしまう……同時に、ゾンダーロボも護に気付き、その矛先を変更……だがゾンダーロボが進行方向を変えた直後、頭上に転送陣が開かれ、一瞬とはいえそれに気を向けたゾンダーロボは、不意に現れた黒い巨大な弾丸のようなもので吹き飛ばされた。

 

『何とか間に合ったな……無事か? ビッグボルフォッグ!』

 

『ガオガイガー?! ええ、助かりました……ですが護隊員は?』

 

『それなら大丈夫だ』

 

 ブロウクンマグナムとして撃ち出した右腕を戻しながら降りてくるガオガイガーは、ビッグボルフォッグの問いに大丈夫と答え、護の方を指差す……

 

「うわっは~♪」

 

 そこには地面を水面の如く飛び跳ねるサメと、人懐っこいイルカそのままに護くんへとじゃれ付くピスケガレオン。そして彼等の後方で『まかせろ』とばかりに鋏を上げる機蟹武刃が居た。

 

『彼等は……』

 

「アイツ等はシオンの御伴だ、任せて問題ない……さぁ超竜神、頼むぜ!」

 

 霧のせいで離れている相手こそ見えないが、凱さんから声援を受け取った超竜神は気合いを入れ直してツールを構える。

 

『了解! 無照準発射モード、消去対象「霧」……イレイザーヘッド、発射ぁッ!!』

 

 特定周波数の超振動を発する事で、霧を構成する水分子と電波撹乱の原因を同時に取り除く……イレイザーヘッドに掛かればお手の物だ。

 瞬く間に霧は晴れていき、箱根山一帯を隠していた濃霧は全て一掃された。

 

『ゾォォンダァァァア!!』

 

 だが、喜びも束の間……ゾンダーロボは兵士の如き姿から変形し始め、さらに分身……3体に増えた上、剣士、砲兵……そして軍服を来た指揮官の様な姿へとそれぞれ変貌。

 

『何と……!?』

 

 指揮官型は指示を出し、剣士型が機蟹武刃を……砲兵型がガオガイガーを狙い、それぞれに猛攻を仕掛けてきた。

 更に指揮官型もビッグボルフォッグを足止めしようと戦車やヘリを大量に再生して砲撃を再開……この僅かな時間で形勢が再度逆転してしまったのである。

 

「ああっ?! ガオガイガー!?」

 

「クソッ、奴の砲撃が激しくて身動きが取れない……!?」

 

 最初こそダメージを負ったガオガイガーだが、すぐにプロテクトシェードを展開して防御……しかし、反撃の隙を掴めぬ程の砲撃の嵐で釘付けにされてしまっている。

 

『ガオガイガー!? ……ムッ? 超竜神! ぐぁッ?!』

 

『ビッグボルフォッグ!? コイツら……まだこんな数を!』

 

 指揮官型に操られた戦車とヘリの大群が、雲蚊の様にビッグボルフォッグと超竜神の周囲を取り囲んで攻撃し、お互いの助け船すら阻んでいる……

 

「……このままじゃ、みんなが……!」

 

 ピスケガレオンに誘導され、遅れて到着した私と護くんは合流できたが、ガオガイガー等のピンチに護くんはハラハラしている。

 

(敵の攻勢が予想より激しい、またイレギュラーの影響……? しょうがないわね……!)

 

 私はサメ型に跨がり、護くんもイルカ型に乗せて戦場を移動……ピスケガレオンのセンサーで安全なルートを割り出しつつ、機蟹武刃へ“新しい指示”を出した。

 

『機蟹武刃、コード:630解除……こうなったら変形して対処!!』

 

 指令を受けた機蟹武刃……ふざけた体躯からコミカルな雰囲気が完全に消え去り、剣士型ゾンダーロボの剣撃を鋏でいなし、相手の剣を地面に縫い付ける様に挟み込み、自身は飛び上がって多脚で飛び蹴りを披露して剣士型を吹き飛ばす。

 

 着地からゆらりと立ち上がる機蟹武刃……その姿が、徐々に変わり出す。

 

 全身の装甲がパキリと分割、流れる水が渦を巻く様に複雑な動きで組み替えられ、その内部も同時に組み替えられていく……最も強固な部分である背部の装甲も全身に分配されていき、全体の形状は瞬く間にヒトの様な姿へと変わっていき……

 

『……オォォォッ!!』

 

 ……機械の合成音声にも似た咆哮を響かせ、ゆらりと人影が立ち上がり始める。

 

 まだ細かなパーツは機体表面を行き来しているが、踞った体勢から立ち上がる間にパーツの位置は次々と固定され、分断されていた装甲も再び繋ぎ合わされていく……完全に変形を終えた姿は、主に緑と黒、そして黄色や白の差し色が目を引く装甲で構成された……まさに鎧武者の如き人型ロボットだ。

 顔はヒトを模した仮面で覆われ、武者鎧テイストの強い全身の甲冑は重厚でも動きを阻害しにくい……まるで最初から実戦向けに造られた鎧兜のよう……

 変形前の腕部分だった鋏は人型用ではないので、予備のハードポイント……バックパックの左右に接続されている。

 

 そして立ち上がった鎧武者……蟹座アーマロイド『機蟹武刃』、その変形した姿が全貌を現すと、私は感慨深い()()を感じながら改めて名を呼んだ。

 

『……往きなさい、機蟹武刃。いえ……機蟹武刃、ダイキャンサー!』

 

 悪ノリに近い感じだけど、なんかしっくり来るわぁ……いやね、変形から何か某洋画の変形する機械生命体(トランス◯ォーマー)みたいにギッチョンガッキョン動きまくってたけど、いざ変形完了してみたら色こそ違えど何となくダイ◯ンガーっぽい。

 

 ……兜の角とか蟹鋏みたいだし、顔もイケメンフェイス(重要)。

 

 ダイキャンサーは腰に付いている鞘から太刀を抜き放ち、更に刀の鍔付近を展開させて流体金属で元の刀身を覆い、明らかに巨大質量の重斬刀を形成……質量保存法に真っ向からケンカを売ってるが、相手と同じ能力持ち(こっちも元はゾンダー)なので今更だ。

 

 剣士型ゾンダーロボに詰め寄り、真っ向から攻撃。数合の打ち合いの後……剣での防御体勢の上から、質量と剣速にモノを言わせた袈裟斬りで止めを刺した。

 

(何あの得物の切れ味……いや、質量差かな……?)

 

 軽々と大質量を扱うダイキャンサーは、次に砲兵型へと接近を開始……気付いた敵はガオガイガーへの砲撃をダイキャンサーへとシフトしようとするが……

 

(……え、嘘……早っ?!)

 

 砲弾の嵐をなんと剣と鎧の硬さと角度を利用して弾きながら速度を緩めず、脇をすり抜けると同時に斬り付け、十字に斬り裂く……

 

「……?! コイツは……!」

 

 ガオガイガーを救助し、次の獲物を睨むダイキャンサー……指揮官型は操っている戦車とヘリをけしかけるが、ダイキャンサーの装甲に戦車とヘリの攻撃は全く歯が立たず、どんどん数を減らし続けていく。

 

 ゾォォンダァァァア!!

 

 怯まず連携をと取らせる指揮官型、だがダイキャンサーは腰にあった鞘を得物の柄に接続して持ち手を伸ばし、大きく振りかぶって構えた。

 

 ヴォオォォォォォ……!!

 

 動きに合わせて刀身を伸ばしながら凄まじいエネルギーを放つ巨刃を握り、ダイキャンサーは紫電を撒き散らしながら叫び声の如き轟音と共に横へと一閃。

 振り抜いた直後から起きる爆音の嵐が、雲蚊の如く迫るヘリを全て消し飛ばし、地上の戦車達すらも迸る雷撃と余波でまとめて爆砕していく……

 

 爆音が全て消え、大量の爆煙が覆い尽くす地に風が吹く……ダイキャンサーは紫電を纏う巨大な得物の柄を地に突き立て垂直に持ち、風に流れていく爆煙の中で悠然と立っていた。

 

(……えぇ~……?)

 

 ……うわぁ……やり過ぎたかも、なぁにこれぇ……??

 

 全滅に(おのの)く指揮官型の敵ゾンダーロボ……そしてその眼前に立つダイキャンサー、相手がコアを保有すると看破したのか、自らガオガイガーへと背部の鋏パーツを射出……まさに『コレを使え』とばかりの行動を取った。

 

 一瞬戸惑うも、ガオガイガーはしっかりとパーツを受け取り【シザーズ・H&H】を発動……困惑を残しつつも、無事にコアを抜き取るのであった。




はい、これにて護くん危機一髪は終了……だっけ?(すっとぼけ)

機蟹武刃の名称は和鷹聖さんから寄せられた「ダイキャンサー」に確定しました。
皆さまのご寄稿、誠にありがとうございました。

……ですが、当選は何も一人とは言ってません。
名称アイディア的に、結構みんな捨てがたかったんですよねぇ~
詳細まで全部書こうかと思いましたが、なんか妙な問題になりそうなので
やっぱり選手権の活動報告に書いときます。

一応下記の簡易解説も見てね♪

──────────


TIPS:『機蟹武刃』ダイキャンサー
蟹座アーマロイド『機蟹武刃』の擬人化形態、その通称として使われる名。
一部ではこの形態を「巨刃形態(タイタンフォートラス)」とも呼ぶ。
変形後はほぼ完全な人型となり、顔で感情を表せる様になる他「蟹座形態(シザーフォートラス)」での弱点である移動速度も克服しており、短距離に限定するならば瞬間移動の如きスピードを(純粋な体術で)出せる様になる。
その他、主な攻撃方法が鋏から刀に代わる事となり、その剣捌きで以てゾンダーを圧倒する。
なお、群を抜く強さの代償なのか遠距離攻撃手段を失うのはご愛敬w
蟹型時の一部武装が共有されないのは仕様であり、誤爆を防ぐ他【シザーズH&H】発動中の邪魔を排除する為である。

ちなみに、蟹座として性能が落ちないのは擬人化形態を「バトルス◯リッツ」に登場する十二宮Xレアの蟹座「巨蟹武神 キャン◯ード」を元にイメージしている故。
実際はだいぶダイ◯ンガーじみてしまっているが、鎧の形状にその名残が色濃く残っており、背部・肩部・腰部にもそれぞれ隠し腕(非展開時は鎧の一部に擬態)が2本ずつ……合計6本内蔵されている。

【基本性能】
 全高:42.2m 総重量:763.9t
 移動速度:約160km/h(※100m圏内なら瞬間移動が可能)
 跳躍高度:約250m(垂直跳躍時)

武装・機能
■可変機構(蟹座形態(シザーフォートラス)へ変形する)
■隠し腕「キャンサーエッジ」
    (背部・肩部・腰部に各2本ずつ、小太刀を搭載)
■重斬刀「大太刀・蟹の巨刃(タイタンカルキノス)
    (以下、使用技はダイ◯ンガーとほぼ同様にて省略)
雲耀(うんよう)の太刀・空凪(そらなぎ)【必殺技】




戦え、機蟹武刃ダイキャンサー!
馬鹿みたいに強いけど、使用条件とか実は結構厳しいです。

……え? 次回予告? まだ終わりじゃないです。


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第23話 三重連太陽系の遺産 Act.5(何か題名関係ない希ガス)

ようやく締めですか? いえ、フラグです。

※ 2022/07/29 追記
  シオンが原作の話を思い出す件で、一部原作と整合性が取れていない部分を修正しました。


 前回の戦闘……あの箱根山戦の後、ダイキャンサーの動力源としていたN2リアクターはその機能を停止した。

 まぁ、あれだけの所業をやって何もない動力源なんて、今の地球の技術では到底不可能だ……麗雄博士を擁するGGG以外は。

 

 例外的にGGGマシン扱いでない他、活動の際のTPOやら配慮を怠らないお陰で、独断行動を半ば黙認されている私のアーマロイド達だが、いざという時に動けないのでは折角造った意味も失くしてしまう……その為にも、早急に本来の動力源である仮称「Zコア・ドライヴ」の完成が急務だ。

 今の過程としては(第18話にて)入手したゾンダーメタルに、予め入手しておいた特定生物の遺伝子データと、私自身から取り出した例の“謎の金属細胞”を組み込み、その完成を待っている……

 それはさながら、半自動で特定組織を培養する【人工臓器】の生成作業に似ていた。

 

 この作業は、倫理上の問題からGGG施設内では出来ないので個人的に倉庫を借り、そこに専用設備を整えて極秘裏にやっている。

 

(完成度は……92%……か。突貫とはいえ、よくココまで漕ぎ着けたわよね……)

 

 ゾンダーメタル奪取からすぐに実行に移したものの……3基同時の生成作業故に大幅に時間を要したが、ようやく完成まで後一歩……

 

 ゾンダーの襲撃さえ無ければ、明日明後日には完成する筈だ。

 

──────────

 

 ……とか言うと絶対やられるとは思いましたけど、本当にその通り襲撃してくるとかマジで恨むぞパスダーめ!?

 しかも襲われたのはGGG本部施設……その時点で犯人は関係者に確定である……それってつまり、原作15話の本部襲撃じゃん?!

 

(確か、あの襲撃ってマイクロサイズのゾンダー……ナノマシン的なヤツが原因だったっけ? 集団催眠で職員を操って、本部と機動部隊を身内の手で倒させる……あ、違う……ソレは18話だったか)

 

 一部の作戦はあのパスダーが直接指揮を執っていたのだから、その場合は厄介極まりない……その上、此方の抑止力である護くんを間接的とはいえ狙っていたのだから尚更質が悪い。

 

『……でも、残念だったねパスダーくん。その作戦は既に予測済みなのだよ』(ム◯カ風)

 

 原作知ってるんだから、対処しない理由はない……こんなこともあろうかと、重要区画に勤務するGGG隊員には、私と麗雄博士で造ったバッヂ型の対催眠音波キャンセラー……通称【クルペッコくん】を渡してあるし、施設内の放送設備にも【クルペッコくん】を搭載した機器を設置済みなのだ。

 

 ゾンダー絡みの異変だと分かれば、すぐに【クルペッコくん】のシステムが動いて催眠音波を打ち消してくれるし、ゾンダー自身にも【クルペッコくん】の対催眠音波はノイズの様に不快な筈……

 

(……? アレは……)

 

 私の視界が捉えたのは、東京の街並みを密かに移動しているゾンダリアン……ペンチノンの人間擬態だった。

 

(……このタイミングでゾンダリアンが……一体、何を……?)

 

 だが、私は本部施設内の破壊活動の騒音に意識を向けてしまい……それ以上追跡する事もできず見逃すしかなかった。

 

 この後、私はこの世界で初めての後悔を経験する事になる……

 

──────────

 

 結局、マイクロマシンのゾンダーが引き起こした騒動は発生こそしたものの、重要区画の職員は対策のお陰で被害ゼロ……損害は原作より少ない状態でロボ戦まで推移し、ダイキャンサーが動けない為ツールアームだけミラーカタパルトで射出して貰い、ゾンダーコア摘出は成功したのであった。

 

「……ふぅ……ここんとこゾンダー騒ぎで参っちゃうなぁ~」

 

 浄解モードを解除し、護くんはため息を吐く……確かに、ここ数日連続してゾンダーの襲撃に遇っているのだ。そりゃ鬱陶しくもなるよねぇ?

 

『じゃあ、私の後輩が職員をしてる千葉の水族館に行ってみる? 無料招待チケット貰ったんだけど……期限が明日までなんだ、私は用事があるし』

 

 命さんの後輩かぁ……どんな人なんだろ……

 

「うわっはー♪」

 

『俺もアイツに会いたいけど、明日は重要なメンテナンスがあるからなぁ』

 

 チケットの期日を見ると、確かに明日まで……だが、命さんと凱さんに、GGGに関する予定は特に無かった筈……コレは()()()()()()な~?

 

『じゃあ、友達を誘って行っておいでよ』

 

「うん!」

 

 明日は私も非番だし、さっきのペンチノンが何を企んでいるのか……先に確かめる必要がある。

 

(この時点でペンチノンが動くのは、私の知らないシナリオだ……用心に越した事はないわね)




はい、ダイキャンサーは反動で動力ロスト……
しばらくお休みです。

そして何やらフラグががg……
しかもシオンちゃんの知らないシナリオだという……
コレはまさか……?

──────────

次回予告


君達に最新情報を公開しよう!

千葉にある「鴨川シーワールド」で人気のシャチ、ヴァルナー。
知能が高く、人間の子供と遊ぶのが好きな彼だが
昨今のコロナ渦の影響で遊べなくなり、ストレスを抱えていた。

そんな彼を狙い、ゾンダリアンの魔の手が迫る。
果たして、シオンは暗躍を止められるのか?!


次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第24話『海のヴァルナー』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!


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第24話 海のヴァルナー(1)

お待たせ致しました!
ゲーム版で描かれた重要シナリオ……それをifオリジナル風味に改修した超重要回の始まりです!
※ 07/24追記 修正前を読まれた方へ……
  設定を一部変更し、原作同様に少し軌道修正してます。



GGG本部を襲撃したゾンダー迎撃の折に、ゾンダリアンの1人『ペンチノン』を見掛けたシオンだったが……襲撃とは関係ない奇妙な行動を発見しつつも対応に追われ、見失ってしまう……

翌日、護少年は命から貰った『鴨川シーワールド』のフリーパスを使い、気分転換へと乗り出し……

シオンもまた、ペンチノンの行方を追い掛けるのであった。



 千葉県鴨川市にある水族館、鴨川シーワールド……

 日本で唯一であるシャチのショーが観られるこの水族館は、隣接するオフィシャルホテルや種族毎に変わる大規模な展示施設が特徴の海洋総合レジャーランドだ。

 中でもココで産まれ、人馴れしたシャチ達によるパフォーマンスショーは海外から態々足を運ぶ観光客も居るほど大人気であり、最大の目玉と言っても過言ではなかった……

 

 ……あの『世界的ウイルスパンデミック』さえなければ。

 

──────────

 

「……ねぇ、ヴァルナー……何でゴハン食べてくれないの?」

 

 …………。

 

 無言を貫く黒い塊……身体に白い大きな斑模様を持つ、体長6~8mの海洋哺乳類。

 オスのシャチである彼はココ、鴨川シーワールドで最も人気の個体……名をヴァルナーと言った。

 

 現在の彼は絶不調……重症でこそ無いものの、摂食不良や命令無視が目立ってきていた……獣医によれば、明らかに“ストレス障害による不調”と診断されるのだが、昨今騒がれているウイルス災害の影響で重篤な生き物の治療が優先されており、ヴァルナーは症状的にまだ軽いとされてしまい、未だ詳細な診断は行われていなかった。

 

 そもそも、海洋哺乳類のシャチは知能が高い……更に言えばヴァルナーは人工保育で育ったシャチなので、人間の指示には余程の事がない限り素直に従うし、不満や好き嫌いには明確な意思を持った行動で示していた……

 

 それ故か、ヴァルナーが無言を貫き一切の行動を起こさない事に不安を覚える飼育員も少なくなかった……だがしかし、少なくないウイルス災害の影響で不調を訴える生き物は数多く……施設側も獣医を増やして対応してくれているが、人間と違って話せないが故の難しさもあって、重篤生物の治療の手を緩める事は出来なかったのである。

 

「……アナタが何も言ってくれないのは、私も悲しいよ……」

 

 ヴァルナーを担当する飼育員の風祭スミレも、彼の不調に頭を抱えていた。

 

(好き嫌いや興味のある事は凄く分かりやすいのに、なんで何も言ってくれないの?)

 

「……ヴァルナー……」

 

 ……………………。

 

 相変わらずの無言だが、スミレに撫でられるのを嫌がらないヴァルナー……嫌われてないのはすぐに理解できたが、不調の原因についてはサッパリだった。

 

 

 昨今騒がれた世界的なウイルスパンデミックだったが、この世界では既にほぼ駆逐されており、人間の目で言えば感染拡大は終息、撲滅に成功したと言えた……

 だがそれは人間の観点から見たものであり、人に近い生活圏を持つ生き物達からすれば、事後の影響は未だに深刻である……

 

 直接の感染こそしないものの、パンデミックによって変わった環境の変化に追い付けずストレスを抱えたり、極稀に消毒等の影響を受けたり……原因は様々だが、環境の変化に敏感な生き物達からすれば、まだまだ完全解決に至っていないのが現状である。

 

──────────

 

『……ペンチノンが向かっていた方角……コッチだったわよね……ん? あれは……』

 

 昨日の事件の折に目撃していたペンチノンの行方を追って、シオンは千葉県へと足を踏み入れていた……その道中、道路を走る車の車列に、護達小学生組が乗っている天海夫妻の車を発見したのであった。

 

(そっか……この先にあるのが鴨川シーワールドだっけ……私も休憩がてら覗いてみようかなぁ)

 

 

 人の目があるため、ゾンダリアンに見られてない大人モードでシーワールドへ入ったシオンは、護達の側にある奇妙な生体反応が気になり移動してみる……

 

 するとそこには……護達と遊んでいるシャチと、それを見守っている1人の飼育員が居た。

 

 普通なら子供とシャチを近付ける飼育員など居ないのだが、どうやら護達とあのシャチ……そしてこの飼育員は一昨年ほど前からの付き合いらしく、あのシャチは人を襲う事など無い非常に頭が良く大人しい個体で、前からそうやって護達と遊んでいたのだとか……

 

「……はぁ……」

 

 護達との間柄を説明し終えた飼育員……風祭スミレは、護達がシャチと遊んでいる光景を見て何故かため息を吐いた。

 

『なるほど、何をしてるかと思ったら友達のシャチと遊んでたのね……って、貴女……何か心配事でもあるの? 随分なため息だけど』

 

「……あっ、すみません! ヴァルナー……あのシャチなんですけど、最近担当の私の指示も聞かなくて……」

 

『ふぅん……そう言えば、そのヴァルナーも何だか元気が無いわね……?』

 

「……やっぱり、そう見えますか? ココ最近、ヴァルナーはゴハンもあまり食べてくれないんです……そりゃココにも獣医は居ますけど、パンデミックの影響が酷くて、重傷の子や他の子から手が離せないので原因も分からなくて……」

 

『そう……ってそうだ……私、専門じゃないけど、良かったら診ましょうか?』

 

「え……?!」

 

 なんか無性に気になって、私はお節介を焼き始める……獣医じゃないけど、前に関わった患者さんのペットの話やら、ついでに診た事もあるし、最低でも不調の原因くらいは掴めると思う。

 

「あの、一応ご専門を伺っても……?」

 

『そう言えば、私の自己紹介してなかったわね……GGG技術開発部所属、元・精神科医の稀星シオンです。……獣医じゃないけど、ペットのメンタルケアも経験ありますし、最低でも原因の判別くらいは出来ると思うわ』

 

「精神科医、稀星……え……前に雑誌に乗ってた、()()?!」

 

(ぐはっ、またしても()()()()の影響が……マジで恨むぞあの記者! 医者時代にちょっとばかし好奇心に負けて受けた取材で聞いた奴を誇張しやがって~)

 

 唐突にスミレから放たれた精神的ダメージをノーガードで受けたものの、それに耐えながら必死に笑顔を顔に貼り付けて過去の(ダメージ)原因を作った人物を恨むシオン……

 一方のスミレは、突然現れた美人さんが一時的とはいえ雑誌に載った有名人である事に驚いている様だった。

 

 

 気を取り直してシオンはスミレから現状と患者(ヴァルナー)のこれまでを詳細に聞き取り、予測が当たった事に安堵する……それはまさに、自分が診るのに相応しい案件だったから。

 

(食欲減退に指示の無視、そして無為の呆然……パンデミック時に多くのペット達が訴えていたのと同じ症状だわ、間違いなく精神的ストレスが原因ね)

 

 自身の患者としたヴァルナーの不調の原因を探り当てたシオンは、スミレに最近の環境の変化を問い質した。

 

「ヴァルナーの不調はパンデミック終息宣言の直前くらいからです。

 それまではシャチショー自体も人気絶頂で、ヴァルナーも張り切ってました……でも、数ヶ月前のパンデミックからショーは中止に追い込まれて……」

 

 世界的なウイルスパンデミックは、この鴨川シーワールドにも大きな爪痕を残した訳か……

 感染防止でショーの中止は当然だけど、当のシャチ達……特にヴァルナーにとっては、大きなショックだったんでしょうね。

 

「先週やっと終息宣言も出たので、来月にはショーも再開されるんですが……でも、花形を務めるヴァルナーの不調が長引いてて……」

 

『なるほど……やっぱり原因はパンデミックだった訳か……』

 

「え……?」

 

『名前を聞いてちょっと思い出したのよ……確かこの子、人工保育で育った子よね? その分、人馴れしてるけど……逆に慣れすぎてるのが原因かもしれない。

 ほら、パンデミックの影響で観客数も激減したでしょ? その上、頑張ってたショーも中止になっちゃって……やりがいある仕事や楽しみまで奪われちゃったら、誰だってストレスを感じるものよ』

 

 ヴァルナーの記事は前に目を通したから覚えていた。

 海洋哺乳類は育成から難問が多く、幼体の人工保育に成功した例は極めて少ない……その為、鴨川シーワールドで産まれ、人の手でココまで大きく育ったヴァルナーの事は、医者生活の中で読むようになった外国のサイエンス誌でも結構話題になっていたのだ。

 

「……ヴァルナー」

 

 ヴァルナーの不調の原因がストレスだと分かり、スミレはある種ホッとした様子……原因不明よりかは遥かにマシだし、人間との関わりを求めているのなら改善の余地は大いにある。

 

 話が一区切りした頃、護達は遊び疲れたのか……近くの日陰で休んでいた。

 ヴァルナーも……護達が離れるとまた意気消沈、といった感じでプールにポツンと浮いている……

 

 私は診察の為にスミレさんに頼み、ヴァルナーの名前を呼んで側に来て貰う。

 

『……アナタ、人間は好き?』

 

 この子が理解できるかは分からないけど……無性に言葉を掛けたくなった私は、プールの側に寄って来てくれたヴァルナーにしゃがんでそっと触れ、一言だけ声を掛けた。

 

 ………………!

 

 触れた瞬間、微かだが何かが私に伝わったのを感じる……そのままヴァルナーの頭を撫で、スミレさんの様子を見ながら、精神科医の時に何度も行っていた()()()()を久しぶりに使おうとした。

 

 だが、その時……

 

『ウリィィィィィィ! 感じるぞ……その生き物が抱えるストレス、極上のモノだ……これは良い素材になる』

 

 後方から響いてきた聞き覚えのある声……しまった!?

 

『護くん、スミレさんと一緒に逃げて!』

 

「え……ッ?! ぞ、ゾンダリアン……!!」

 

『ウリィィィィィィ!!』

 

 ガキィンッ!!

 

『何してるの早くッ!!』

 

 …………!! …………?!

 

 護達を呼び起こし、スミレと一緒に逃げる様に促しながら、シオンはアーマー展開終了と同時に左足に装備されたコンバットナイフを掴んでペンチノンへと投擲する……が、それは簡単に防がれてしまい、少しも動きを止められなかった。

 

 すぐさま右肩にある無反動砲の照準を合わせようとするが、シオンは直前のペンチノンの言葉を思い出し……

 

(その生き物……極上のストレス……まずい!? ペンチノンの目的は!!)

 

「スミレ姉ちゃん?!(まさか、ゾンダリアンは……?!)」

「『……逃げてッ、ヴァルナー!!』」

 

 護がスミレの様子に気付き、ペンチノンの目的が自分でない事を察した直後、ほぼ同時にシオンとスミレが咄嗟に振り向いて叫ぶも時すでに遅し……紫色の怪しい光が視界を覆い尽くし、護とシオンの全身が危険信号(アラート)を鳴らす。

 

(……ック……!?)

 

 護達とスミレは走って建造物の影に隠れ、シオンも巻き込まれない様に転進して跳躍……そのまま急いで場を離れる……だが、シオンの胸中は不安と焦燥で混乱しそうだった。

 人間がゾンダー化したとしても、護の浄解能力があれば元に戻せる……だが、()()()()()()()()()()()()()()()のか? ゾンダー化しても()()()()()()()のか?

 

(そんな事象なんて、私は知らない!! 考え得る最大の最悪を軽く超えてる、非常に不味い事態だわ……!)




以上が、出会いからゾンダー化までの流れでした。

前は既知者としてなかったですが、加筆修正しました。
やはり護くんとヴァルナーの交遊関係は捨てがたいので……
(。>д<) やや強引ですが。

次回、ゾンダー化したヴァルナーとの戦闘

奇跡というのは、起こるべくして起きるのか……?

感想、お待ちしてます。


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第25話 海のヴァルナー(2)

※ 原作を見直し、納得の行く様に前話を書き換えました。
  宜しければ前話から再度読む事をオススメします。

前回からの続き……

鴨川シーワールドの人気シャチ、ヴァルナーがペンチノンによってゾンダー化してしまった!
人間ならばコアの浄解で元に戻せるが、現場に居合わせたシオンは人間以外の実例を知らない……

果たして、ヴァルナーはどうなってしまうのか?!



 ゾンダーメタルの侵食には、大きく分けて2つの段階がある……

 

 まずはコアとなった存在の遺伝子構造をコピーし、メタル自体の保有する重原子が遺伝子構造を模倣する……その後対象の生物を物理的に取り込み、組成から同化して機械融合可能な肉体へと強制変化させる事で、ゾンダー化は完了するのである。

 

 速度的に間に合うのであれば、肉体の取り込みを阻止できればコア化は不完全となり、完全になり切れないゾンダーはやがてエネルギーを使いきって停止……メタルから派生した組成は塵と化して消えるのだが、人知れずゾンダリアンがメタルの植え付けを行うので基本的に阻止できずゾンダー化してしまう。

 尤も、ゾンダーメタルの植え付けからものの1分あれば侵食は完了する為、普通に阻止など出来る筈も無いのだが……

 

(不味いマズい不味い?! ゾンダーメタルの侵食を阻止できなかった……! 人間以外の復帰例なんて知らないし、そもそもゾンダーメタルの侵食を受けて、人間以外が耐えられるかも分からない……そもそも浄解を受け付けるのか、一緒に消滅しかねない可能性もある……!)

 

 ゾンダーヴァルナーの破壊活動から退避しつつ、現状打破の方策を練るシオン……しかし、()()()()()()()()()()()()()()()()な為、可不可や予測ばかりが頭を巡ってしまい冷静な思考が出来ていない。

 

「ッ!? 先生、前っ!!」

 

『……ッ! ガイガー……!?』

 

 瓦礫を避けて走るシオン達の上を、低空飛行でガイガーがすれ違う……この騒動で護くんの危機を感知し、ギャレオンが先行していたようだ。

 

『……! 護に、シオンか?! 民間人の避難は?!』

 

『私達が最後です! 他の方は既に退避完了……なお、コアは人間ではありません! 注意してください!!』

 

『「……な、何だって(じゃと)?!」』

 

 凱と同じく驚愕したのは麗雄博士……人間以外がゾンダー化した事例など今回が初であり、何もデータが無い状況で対応しなくてはならないのだ。

 シオンと同じく、万が一の事態や予想外の推移に注意しなくてはならない……

 

《凱、気を付けるんじゃ! 人間以外の思考パターンとなると、行動の予測が付かんぞ?!》

 

「凱兄ちゃん! あのゾンダーは……!」

 

「凱……? もしかして獅子王先輩ですか?!」

 

『風祭も一緒だったか、良かった……!』

 

「先輩、あの怪物は……!」

 

 スミレの表情と護の焦り様……そして思い詰めた様なシオンの雰囲気に、ただならぬ状況だと察知する凱……焦りは禁物と凱は考え、コアとなった生物の情報をシオンに問い質す。

 

『……コアとなった生物は……オスのシャチ、ストレス障害で……私が、解決策を練っている途中でした……』

 

『……ッ、そういう事か……!』

 

 戦闘は極力避けたいが、現状それが許される筈もなく……否応無しに相手取らなければならない。

 護は仲の良い友達を、スミレは生き甲斐にもなりつつある相棒を、そしてシオンは自分の不甲斐なさを吐露する様に「ヴァルナーを助けて」と凱へ叫ぶ……

 

『……あぁ、俺に任せておけ!!』

 

 そう言い残し、ガイガーは戦場へと飛び込んでいった。

 

──────────

 

 護くん達とスミレさんを逃がした後、現場に到着していた三段飛行甲板空母へ合流した私は、冷静になれと諭してくれた麗雄博士と共に現状打破の方策を練る……

 

 途中ガオガイガーへの合体を、ゾンダーヴァルナーがライナーガオーに噛み付く事で阻止した為、ガイガーはダメージを受けて後退……ビッグボルフォッグが場を交代する。

 私も援護の為にピスケガレオンを2体とも呼び出し、遠距離からビッグボルフォッグの援護をさせるが……

 

(ピスケガレオンの反応が鈍い……いえ、これはヴァルナーへの攻撃を躊躇ってる……?)

 

 ピスケガレオンは海洋生物……特に、ヴァルナーと同種であるシャチの思考パターンを組み込んだ制御システムで動いている為、ゾンダー化したヴァルナーが同種であると本能で気付き、私の命令に疑問を持っているのだ。

 イルカ型は顕著だが、心なしかサメ型も手加減をしている……

 

(私も助けたいよ……だから今は躊躇わないで! ガオガイガーがコアを摘出して、護くんに浄解して貰えば助かる筈だから……!!)

 

 ゾンダー化した事が、ヴァルナーにどんな影響を与えるのかなんて予測が付かない……しかし現状、コアを摘出して浄解する以外にヴァルナーを助ける方法は無いのだ。

 

『ファイナルッ! フュージョ――ンッ!!』

 

 ビッグボルフォッグがゾンダーヴァルナーの隙を突いてライナーガオーを取り戻し、ガオガイガーへの合体(take2)を敢行……ようやく救出の手立ては整った。

 

 

「……獅子王先輩、ヴァルナーを……!」

 

 ディバイディングドライバーで形成された戦闘フィールドの外……建物の上から、スミレは高校の先輩だった凱にヴァルナーの事を託す。

 

『……大丈夫だ……俺を、GGGを信じろ……ッ!』

 

 ブロウクンマグナムを放ち、ゾンダーヴァルナーの攻撃の出鼻を挫くガオガイガー……続けて接近戦を挑もうとするがゾンダーヴァルナーの再生が早く、再度の突撃でダメージを受ける。

 

『ちぃッ、でゃあぁぁぁぁっ!!』

 

 だがガオガイガーも果敢に反撃……吹き飛ばされる反動を逆利用してオーバーヘッドキックの要領でゾンダーヴァルナーの尾部に蹴りを浴びせ、バランスを崩したゾンダーヴァルナーは地面に墜落。

 

『……ゾォォォンダァァァァ……!』

 

 僅かな差異だが、ゾンダーヴァルナーの声が掠れている……もしかしたら、予想以上にゾンダー化のダメージが蓄積しているのかもしれない……

 

『凱さん、早くコアを浄解しないと……もしかしたらヴァルナーが……!』

 

『何ッ?!』

 

 シオンの目には明らかに鈍っているゾンダーヴァルナーの挙動が見えていた……まだ戦闘開始から数分しか経っていないのに、この疲弊具合……人間以外のゾンダー化は適切では無いのだろう。

 

(元々ゾンダーメタルの効能は人体に最適化されている……マイナス思念をエネルギー化し、人体から抽出するのが目的、でも暴走から今までの間にどんな変異が起きているのか分からないし、その影響で対象を保護する生命維持システムも暴走していたら……!)

 

 最悪の想定が頭を(よぎ)る……だが、もう迷っている時間もない。

 

『ヘルッ・アンド・ヘヴンッ!!』

 

 無情にも時は止まらず、ガオガイガーにギガンティックシザーアームが接続され……ヘルアンドヘヴンを発動するガオガイガー。

 

ゲム ギル ガン ゴー グフォ

 

『今、助けてやるからな……!』

 

 左右の腕に接続されたアームユニットを通して、ガオガイガーの右腕から発するブロウクンエネルギーと、左腕から送られるプロテクトエネルギーが接続基部「ユナイトジェネレーター」へと送られ、エネルギー融合で起きる空間反発力をブレード部へ送り込んで反転させ、周囲に発生したEMトルネードへと更なるエネルギーを放出。通常よりも遥かに拘束力の高い、青白い雷光を迸らせたEMトルネードがゾンダーヴァルナーに直撃し、更に対象をガオガイガーへと引き寄せていく……

 

『ハァァァァァッ!!』

「ガオォォォンッ!!」

 

 獅子の咆哮と共に、巨大なニッパーを構えたガオガイガーは全速前進。

 

 コアのあるゾンダーヴァルナーの口腔内……コアユニットへと刃を突き立て、エネルギーの流れを把握するアームパーツのセンサー情報とガオガイガー本体の各種センサーの連動によって正確なコアの位置を特定、刃の内側に設けられた「セーフティポケット」に確保。

 同時に爆発の衝撃に備えてコアと全身を、EMトルネードの余剰エネルギーを取り込みエメラルドグリーンに輝く「クリスタルプロテクター」が覆うと共に、刃部の外側へ向けてヘルアンドヘヴン本来のエネルギーを爆発解放させ、ゾンダーコア以外の全てを完全に塵と化したのであった。

 




ラストに今一度、シザーズH&Hの詳細をぶっ込んでみる。

問題の浄解シーンとその後の顛末は次回へ持ち越し……

あ、前書きにも書きましたが前話を加筆修正しました。
感想お待ちしてます。


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第26話 海のヴァルナー(3)

前回からの続き……一応、これで〆です。

シザースH&H(ヘルアンドヘヴン)により、ゾンダー化したヴァルナーのコア摘出には成功したものの……一抹の不安が残る。
浄解でちゃんと元に戻るのか? 耐えられず消滅してしまうのか? 浄解出来ても死んでしまうのか?

……この先は恐らく、()()だけが知っている。



 シザースH&Hにより、摘出されたコアがブレードパーツの間にあるセーフティポケットで光っている……この光の明滅はゾンダー化した対象の()()()()()の様なものであり、発光が収まればそれはコアの完全停止……つまりゾンダーのコアと化した生物の死も意味する。

 

 通常は規則的に明滅を繰り返し、刺激を受けぬまま一定時間が過ぎれば再び活動を再開……手近な機械を侵食して再びボディを形成し、ストレス発散行動を再開するのだが……

 

「ゾンダーコア、明滅間隔が不安定デス……!」

 

「護くん、急いで浄解を!!」

 

《あ……は、はいっ!》

 

──────────

 

クーラティオー!

テネリタース セプティオー……

 

サルース コクトゥーラ!

 

 浄解の呪文に応じて溢れるGパワーがゾンダーコアを覆い、Gパワーとゾンダーパワーが反応して起こる対消滅の波動が中心部まで浸透……ゾンダーメタル由来の重原子が持つ複雑な模倣遺伝子構造を分解して無力化し、強制融合状態を巻き戻す……

 

 ゾンダー化によって崩壊した形状が逆再生の様に蠢き、元の生物……ヴァルナーの身体へと還元されていく。

 

『……間一髪、だったか……?』

 

 凱もまた、ヴァルナーとスミレの関係を知る仲なので、今回の件は寝耳に水でもあった……

 

「……? ヴァルナー……? ねぇ、どうしたの?」

 

 力無くガオガイガーの掌の上で身体を横たえたまま動かないヴァルナー……シオンの頭に過るのは、最悪の想定。

 

《……まさか……いえ、やっぱり……ゾンダー化か、浄解の影響に耐えられなかった……?》

 

 シオンの言葉に激しく動揺し、浄解モードが解ける護……シオンはすぐにヴァルナーの元に駆け寄り、バイタルを計測……完全死亡には至ってないが()()()()()()()()という事も理解してしまう。

 

『……辛うじて、生きてはいるけど……多分、持ってあと数時間で……ヴァルナーは……っ』

 

 途切れつつもヴァルナーの状態を語るシオンの言葉に護は続きを察し、ヴァルナーを揺り起こそうと近づく。

 

「嘘だよね……ヴァルナー……! ねぇ、死んじゃダメだよ……また遊ぼうって約束したでしょ?! ヴァルナー……!?」

 

「……ッ?! ヴァルナー……うぅ……」

 

 護の悲痛な言葉に、遠目から事態を見守っていたスミレも現状を察してしまい……目には涙が溢れていた。

 

《いや、まだじゃ! まだ希望はある!》

 

 通信越しに響く、麗雄博士の声……博士なら、もしかしたらこの胸糞バッドな結末を覆せるかもしれないとシオンは思い、震える声でその方法を問う。

 

『もしかして……何か、方法が有るんですか……?!』

 

《ああ、上手く行けばヴァルナーは助かる! 長官、大至急「三式空中研究所」を現場に向かわせてくれ!》

 

 非常事態を除き、ほぼ出番の無い「三式空中研究所」……だが、想定外の事態を解決する為の奇跡が、そこにはあるのだと博士は言う。

 

《うむ! 緊急発進を許可する! 速やかに鴨川シーワールドへ直行せよ!》

 

 大河長官のダンディーボイスが、過去最高の好感度を伴って私の耳に届いた。

 

──────────

 

 三式空中研究所とは……GGGの有する幾多の最新技術を世に生み出し、Gストーンを用いた数々のオーバーテクノロジーを一括で管理する『特別管理区画』でもあり、通常はベイタワー基地から発進する事は無い。

 前の雲ゾンダー戦(本作第13~14話、原作8話:サブタイトル『太陽が消える日』より)や今回の戦闘の様な異常事態に限り、大河長官の許可を経て発進するので、原作でも披露された機会はわりと少ない。

 

 その中でヴァルナーは、凱さんと同様のサイボーグ化手術を受ける事になり、私も後学と万が一に備えて参加していたのだが……

 

「イカンな……ボディに最適なコントロールシステムと脳機能、そしてGSライドとの親和性が思っていたよりも低いぞ」

 

 行程としてはまず、ヴァルナーの脳組織を一時的に保護しながら身体機能を機械化……つまりシャチ型のサイボーグへと改造し、コレに小型化したGSライドを動力源として搭載、制御とボディ維持に必要なエネルギーを確保しつつ、脳組織とボディを繋ぐ為のコントロールシステムに運動制御プログラムをインストールする。

 

 GGGが予め用意していたプログラムだけでは、ヴァルナーの脳組織とGSライドの親和性が安定しないと判明……またGSライドの制御機構も小型化に伴ってギリギリの演算領域しかないのに、脳機能の保護と安定化を確保する為には更なる演算容量の追加が必要と判断され、ソフトウェア開発の段階では予測しきれなかった問題が表出したのである。

 

 生物の脳組織は非常にデリケートであり、況してやヴァルナーはゾンダー化した影響で極端に衰弱している……一応、サイボーグ手術は続行可能ではあるものの、生命維持は常にギリギリとなり……仮に成功してもろくに動けず、ぶっちゃけ植物状態……機械による外部補助が常に必要となり、逆に前よりも酷い目に遭わせているも同然となってしまう。

 

『……博士、ソフトウェアなら「ピスケガレオン」の運動制御プログラムなら改良のベースに使える筈です。すぐにそちらへ送るので!』

 

「本当かね?! ならば早速頼む!」

 

「Oh! シオン~♪」

 

 言うが早いか、私はポケットからデータ端末を取り出し、研究所のPCと接続……ピスケガレオンの運動プログラムを転送し表示させた。

 

「……うぅむ、こりゃ凄いわい……!」

 

 一目見て唸る麗雄博士……ピスケガレオンの運動制御プログラムは、誕生からこれまでの挙動の一挙手一投足を常に最適化し続け、ダイキャンサー完成と同時期に完全最適化を終えた理想の海洋生物型運動制御プログラムとなっている。

 このデータをベースに、武装制御機構の部分を除いて元のプログラムと掛け合わせ、更に最適化すれば、イルカやサメ……シャチ型の日常活動としては十分な制御プログラムになり得るのだ。

 

「プログラムデータ、受け取り完了……サイボーグボディへの最適化を開始します」

 

 制御プログラムとしてはやや大きめだが、最適化が済めばソフト面の問題はこれでクリアーされ……

 

「?! ダメです! 容量も前より減りはしましたがまだギリギリの状態、脳機能の保護プログラム演算分にはほとんど余裕がありません!」

 

「やはり小型化の弊害……ですが、物理的に演算容量を増やすとなると、ボディに再度対応させるのにタイムロスが大きすぎます……!」

 

 部下の所員さん達も困惑を隠しきれない……ココまで順調だったかに見えたサイボーグ手術が、想定外の事態でストップしてしまっている。

 

(ヴァルナーのサイボーグ化には、GSライドを用いるこのボディを使うしか……もう時間が無いのに……!)

 

 主動力源にGSライドを用いる以上、制御とエネルギー伝達には必然的にGリキッドと呼ばれる常温流体特殊溶液……要はロボット用の血液が必須なのだが、この溶液には生体保護機能が無い為、専用にプログラムを組み、調整された特別版を使う事になっている。

 それと脳組織を保護する為のプログラムもGSライドの連動制御機構に合わせて組み込むのだが、GSライドを小型化した弊害なのか、連動制御機構にインストールするデータ容量が予想を大きく上回り……このままでは、GSライドを用いた運動制御の演算にも悪影響が出てしまう。

 

 ……ドクン……

 

(何か……何か問題を改善させる方法は……)

 

 ……ドクン……!

 

 必死に脳内を検索、保持していたあらゆる文献資料を片っ端から展開……前世の記憶からも生体保護を目的に開発された空想科学を探す……

 

 ……ドクン……ドクン……!

 

 未知の金属細胞によって、既に造り替えられた心臓が鼓動を響かせる……私の焦りを知ってか知らずか、耳鳴りの様に思考を邪魔してくる。

 

(煩い……自分の鼓動が煩く感じる……何でこんな時に聞こえてくる? このままじゃヴァルナーが……ヴァルナーを助ける事が……!)

 

《……? …………、…………? …………!》

 

(……ぇ……っ?)

 

 その時だ……誰かに「自分を信じろ、君は奇跡の体現者だ」と言われた気がした。

 奇跡なんて、そんな大それた存在じゃない……私は狂ってなかった「Zマスター」と、人間が混ざったイレギュラーな存在……それに奇跡なんて。

 

「稀星くん……!」

 

「……シオン!」

 

 声に気付いて顔を上げる……するとそこには、顔を覗き込むスワンさんや「まだ希望を捨てちゃおらんよ」と笑顔を浮かべる麗雄博士、ダイキャンサーの完成に協力してくれた技術開発部の所員さん達が私を見ていた。

 

「ずっとそんな顔してたら、ヴァルナーも心配しマス……」

 

 精神的に追い詰められていたのか……添えられた手に促され、渡された手鏡に映った私の顔は絶望と不安で顔が強張っていた。

 

「GGG憲章は、諦めない勇気を示すものだ……君も、GGGの隊員なのだろう?」

 

 ……ドクン……ドクン……

 

 相変わらず鼓動が煩い……でも、私は完成された生機融合体(元・Zマスター)の変異体……

 

『……あ……っ……』

 

 そうだ、私の半分は元々Zマスター級の機械生命体……人間と完全融合した後、歪になった私の身体で、機械と生体を結び付けているのは何だ? ……それは……

 

『未知の金属細胞……コレしかない……!』

 

「What?! シオン、何を……」

 

 スワンさんの疑問を他所に、私は制服のボタンを外して胸元を露出……ちょうど心臓の辺りに手をかざし、金属細胞の結晶体を取り出す。

 

「稀星くん、それは……?!」

 

 一体何なのだ?! そう麗雄博士の視線が問い掛けるが、私は『見ていて下さい』とだけ答え、ヴァルナー用に調整中のGSライドのカバーに取り出した金属細胞を当てる。すると金属細胞はすぐさま形を変化させてGSライドの中に侵入し……中で新たなパーツへと姿を変え、システムにもすぐに影響が反映される。

 

「侵入した未知の金属が、GSライドの中に新しいパーツを構築……演算回路とコアプログラムに複数の物理バイパスを形成?! それに、基盤の回路図も書き換えられて………そんな?! これ程緻密な回路を瞬間的に判断して自己生成したというの……?!」

 

 そこに有ったパーツをまるごと取り込み、回路を書き換え、足りないパーツを増やす……

 

「あり得ない……ただの金属素材がプログラムではなく、基盤を書き換えてGSライドを組み換えるなんて……」

 

 予感はあった、かといって確証はなかった……でも、そうした方が良いという直感に従った。

 

 その結果が先程の出来事……ヴァルナー用に調整中だった小型GSライドを元に、私の身体を今なお強靭に造り変え続けている金属細胞の一部を塊として抽出……遺伝子情報を削除し、初期化させて結晶化した金属細胞の性能を利用して補強する……

 

 実際には補強という生易しいモノではなく、GSライド自体を素材から全て取り込み、取捨選択を済ませ送られている制御プログラムの情報に基づいて全てに合う様に自己を最適化……サイズや接続規格はそのままに、使用可能な状態を保ったまま、回路基盤やその中身を完全に造り変えてしまった。

 結果から言えばシステム面からも、適合面から見ても全く問題の無い……生体サイボーグに最適化された小型GSライドを、それまで抱えていた問題を全て解決させた上……現行技術を上回る『奇跡の結晶』として生まれ変わらせたのである。

 

 

 

「……稼働チェック、全て問題アリマセン……それ処か、変異前より演算領域は300%以上に増加……プログラムの書き込み領域も200%以上に増えていマス……!」

 

「何と言う事だ……小型化処か、出力以外はギャレオンに搭載されとるオリジナルに匹敵する性能を発揮しておる……コレなら行けるぞぃ!」

 

 麗雄博士直々に検品された変異性GSライドはその高性能ぶりを遺憾なく示しており、麗雄博士の太鼓判を押され、使用にもゴーサインが出される。

 サイボーグ手術の最終段階……動力系と制御系の最終チェックが、変異GSライドの搭載と共に開始され……そして数時間後、ついに手術行程は全て終了した。

 

──────────

 

「……ヴァルナーっ!」

 

 ……! ~~~♪

 

 以前と遜色ない……いや、以前よりも活発に、そして力強い挙動でスミレの周囲を泳ぐ1匹のシャチ。

 スミレの声と合図に合わせ、最高のタイミングで水面から跳躍……飛んできたボールを尾で弾き返し、絶妙な角度に変わったボールは弧を描いてプールサイドに設置されたバスケットボールのゴールへと吸い込まれる様に入る。

 

 ショーを見ている大勢の観客からどよめきと拍手が巻き起こり、ウェットスーツ姿のスミレさんとヴァルナーは、それぞれのアピールで観客の拍手に応えていた。

 

 手術から1ヶ月後……予定通り、終息宣言が出された翌月に鴨川シーワールドのシャチショーは再開……

 ショーの花形シャチであるヴァルナーも、それまで生死の縁を彷徨っていた面影すら見せない程元気になり、以前にも増して観客の脚光と注目を浴びる様になっていた。

 

《うわっは~♪ ヴァルナーっ!》

 

 …………! …………♪

 

 脳組織も損傷なく無事であり、目覚めてすぐにスミレさんや護くんを見てヨタヨタとぎこちなく泳いで接近した時は私も感動して泣いちゃったよ……

 あ、現状は凱さんと護くんと一緒にショーを観に行って貰い、凱さんを通して本部からショーの様子を見ています。

 

「しかし、稀星くん……あの金属素材、ゾンダーメタルとも違う未知の組成……制御はどうなっておるのだ?

 ヴァルナーに使ったモノはGSライドを侵食してより高性能化させ、生体組織とサイボーグボディの仲立ちを見事にこなしておる……」

 

 そう、あれから博士にも件の金属を研究素材として提出……私でもよく分からない部分を博士に解明して貰おうと思っていたが、博士でも理解が及ばない部分が有ったのには驚いた。

 

『私が理解できたのは、あの金属は遺伝子情報を元に自己を擬態し、宿主の身体をより強靭に造り変えます……私の身体も、実は目下改造が進行中ですし』

 

「……では何故ヴァルナーの方はアレ以上侵食しない? 自己増殖は可能だろう? 何故ヴァルナーの身体を造り変える事に及んでないのだ?」

 

『……私もよく分からないんです。でも、ヴァルナーの場合は、()()()()()()()()()()()()と自己判断したんじゃないかって思います……憶測ですけど』

 

 私の答えを聞き、再び考え込む麗雄博士……私ですら、私の身体を今なお改造し続けているこの金属細胞の全容は掴めていない。

 ただ……私が今回の件を踏まえて確信したのは、この金属細胞は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……()()()()()()()()宿()()()()()()()()……まさに、生物と機械の仲を取り持つ()()()と言うべき物なのだろう。

 

 ……ただ麗雄博士は、私の身体を()()()()()()()()()()()……という言葉に何か引っ掛かりを感じている様だった。

 でも、自分自身の事なのに、ほとんど何も分からないのは事実……私が分かっているのは……

 

『生体適合率、41.3%……機械組成侵食率、88.9%……か』

 

 現状、既にゾンダーメタル組成はほぼ喰い尽くされており……僅かに神経系と制御系に残るのみ……ただ神経と制御系は生体組織側に影響が出るのかパッタリ侵食を止めており、今は徐々に生体組織との適合率を高めていっている……

 

(日常生活に影響はないけど……この生体適合率が一定値を超えたら、何かが起きそうね)

 

 少し不安はあるが、これまでを考えれば悪い様にはならないだろう……




……以上が、本作版『海のヴァルナー』です。
途中の専門的な話は読み飛ばしても構いません……
ぶっちゃけ、理解せずとも『原作と少し違う流れでフラグ付きの良エンドになった』だけですので……

以降は、制御プログラムの(くだり)を理解したい方の為に……

ヴァルナーの脳機能を保護しつつ制御させる為の演算領域が、最初のGSライドに付属していた統合制御機構の容量では足りず、プログラムのインストール領域まで圧迫。

ピスケガレオンのデータ流用でインストール領域の必要量は減らせたが、それでも演算領域の不足は解消されなかった。

演算領域不足の原因は、衰弱しつつあるヴァルナーの脳組織の保護する為に、Gパワーの精密制御を想定以上(数倍)の精度で演算しなければいけなくなった為……
もちろん演算領域の割り当てを削る訳には行かず、物理的に容量は増やせるものの、それでは手術のタイムリミットを確実に超え、ヴァルナーの脳組織がダメージを受けてしまい、いずれにせよ良くても植物状態……最悪脳死してしまう。

シオンは自身の半分を構成し、未だに己を改造し続けている金属細胞の一部を取り出して、自分に関係する全てのデータを消して初期化し、GSライドに流していた組み換えた制御プログラムを用いて刺激させ、GSライドのプログラムに合わせた変異を誘発。
GSライドそのものをサイズ規格そのままに大幅強化させ……エネルギー出力面以外を、ギャレオンの持つオリジナル相当にまで引き上げたのであります。

……ぶっちゃけやりたい様にやらせて貰いました。
ご都合主義万歳ッ!!
色々とフラグを立てながら、後々の展開に色々と妄想を掻き立てつつ……ある方に頂いた設定も組み込んで……ッ?!(マイクが途切れる音)

……感想、お待ちしてます……ザザッ。(テープの録音音声)

──────────


次回予告


君達に最新情報を公開しよう!

12時の時報と共に、宇宙から何かが飛来。
それは地球の地図から1つずつ、
世界に名だたる有名大学を消し去っていく……

同時に日本では白いタイヤの怪物が出現し、
大阪の街を我が物顔で闊歩し始めた。

国際テロの可能性も視野に入れ、
GGGは総力を上げて対策に乗り出すが、
そこに現れたのは……?!


次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第27話『悪魔たちの饗宴』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認ッ!!


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第27話 悪魔たちの饗宴(1)

前回のゲーム版シナリオ回かいかがだったでしょうか?

お気に入りや閲覧数が増えていくのを見ていると「書いて良かった」……と思う反面、この先も読者を楽しませる事が出来るのだろうか……と、不安もあります。

その一方で、アレはどうなってるの? この先こういう予測できそう……という読者の感想に一つ一つ返信するのが楽しみにもなっています。

拙い文章ですが、これからも頑張って書いていく所存です。

※ 読者からのご指摘があり、後半のシオンのセリフが変わっています。
  また、プライヤーズにも台詞を充てました。



 鴨川シーワールドでの一件から数日後……

 

『……ようやく、完成しました……!』

 

 ややこしい命名法則やら何やらかなぐり捨てたいが故に、それを未だに「仮称:Zコア・ドライヴ」と呼ぶ……

 大型アーマロイド専用に設計したソレを、未使用のゾンダーメタルを材料に……シオンは自らの能力と、この世界の知識を得てその動力源を完成させた。

 

(コレでようやく、ダイキャンサーのエネルギー不足も解消できる……!)

 

 何やかんやあって完成が遅れはしたものの、ようやく完全な形でダイキャンサーを動かせるのだ……気合いを入れ直したシオンはその内一つを、空間ごと圧縮格納する特製の収納ケースへと封入し、厳重に鍵を掛けて秘密の貸倉庫を後にした。

 

──────────

 

 同日早朝……GGGベイタワー基地に程近い物資搬入用の湾岸施設に、アメリカ合衆国からの特別運搬船が到着……

 火麻参謀と牛山隊員は乗組員との受領応対を済ませ、載せられた荷物……GGGアメリカから送られて来た3体の中型ロボットを確認していた。

 

「ほぉう……コイツが、アメリカから送られて来た……プリマ……プラチ……」

 

「参謀、()()()()()()ですよ」

 

 然り気無く牛山隊員がフォローし、火麻参謀も「おっと、そうだったか」と受け取る。

 

「AIシステム、起動させます」

 

 牛山隊員は手に持つノートPCを操作して、システムを立ち上げる……数秒で本体の起動シークエンスが完了し、3体の中型ロボットがそれぞれのカメラアイを光らせ、起動完了の報告を2人に宣言した。

 

 プライヤーズとは、GGGアメリカが開発した『空間修復専用ツールロボ』……予てより危険が伴う「ディバイディングドライバー」の戦闘フィールド形成に対し、万が一の事故を想定したカウンターシステムとして開発されたのであった。

 

…………(はじめまして)! …………(貴方が火麻参謀ですね)

 

「おう、そうだ! よろしくな」

 

「対象認識プログラム、及び音声コマンド認識も正常稼働……これなら何時でも出撃できますね」

 

「そうだな、まぁ……俺達の出番が無い方が、平和なのは間違いないがな……」

 

…………(そちらは牛山隊員ですね)? …………(よろしくお願いします)

 

 プライヤーズには、ボディに余裕が無いため発語機能はない……原作では代わりに機械的な合成音とカメラ発光が感情表現に使われたが、この世界ではGGG隊員全員に支給されている「新型Zセンサー」の通信機能を流用して会話しているのである。

 

「出番が来れば即出動だ、何時でも出られる様にしておけよ?」

 

…………(分かりました)…………(期待に応えられるよう最善を尽くします)!」

 

 コミカルな挙動ながら、3体揃って敬礼ポーズをするプライヤーズ……頼もしい仲間に、2人の顔も何処か嬉しそうだった。

 

──────────

 

 その日、GGG本部施設は外部からのハッキングによって混乱状態に陥ってしまう。

 

 犯人は「犬吠埼(いぬぼうさき) (みのる)」……元GGG職員であり、ベイタワー基地第3エリアの初代管理責任者だった人物……

 

 フフフ……ゾォンダァァァ!!

 

 彼は猿頭寺さんの同僚だった人で、GGGの内部……主にシステム環境に詳しい。

 その為ゾンダー化してベイタワー基地のコントロールシステムに人知れず侵入、パスダーのGGG壊滅作戦の一環として基地そのものを乗っ取ろうとしていた。

 

「犬吠埼くん! 馬鹿な真似は止すんだ!」

 

「ゾンダーによるハッキングは、直近から行われています……場所を特定しました。ベイタワー基地上部、宇宙開発公団の電算設備……いえ、基地内部にも反応が?!」

 

 原作では基地内部の電算設備に潜んで居たが、今回は複数の場所から一斉にハッキングをしている……コンピュータの中を移動出来るのだから、増殖して複数でハッキングする事も訳ないだろう。

 

「No?! システムが次々に書き換えられていマス!」

 

「三段飛行甲板空母、及び水陸両用整備装甲車、発進出来ません!!」

 

「イカン! 奴は基地そのものを乗っ取る気だ! 急いで機動部隊を、基地の設備から遠ざけるんじゃ!!」

 

「えっ?!」

 

「奴の狙いは機動部隊の封じ込めも兼ねておる! 何とか彼らを外へ出せれば……!」

 

「そうか?! 基地内で動けなくなるより、反撃出来る可能性はある……!

 氷竜・炎竜、設備は多少破壊しても構わん! すぐに基地の外へ脱出せよ!!」

 

『『それは出来ませんッ!!』』

 

 機動部隊さえ動けるなら、反撃のチャンスもあると考える長官達だったが、脱出の指示を氷竜達は拒否した。

 

『少なくとも、私達だけ脱出する事は絶対に致しません!』

 

『脱出するなら、皆揃ってだ! 僕達だけ逃げ出すなんて、絶対に嫌だね!』

 

 自分達だけ脱出するなんて、何があろうともしない……逃げるなら、全員で……と彼等は譲らなかった。

 

「お前達……!」

 

 しかし、一所に留まる事は得策では無いため、氷竜・炎竜は一時的ながら物理的にシステムから切り離す事が出来る「ビッグオーダールーム」へと退避……メインオーダールームの主要メンバーもリフトで辛うじて合流したが、その直後に別の問題が発生したのである。

 

「大阪で巨大なタイヤの怪物が出現! 護くんからもゾンダー出現を感知したと……!」

 

「なんじゃと?! この忙しい時に……!」

 

 大阪の繁華街に程近い地域で、巨大なタイヤの形状をした怪物体が出現し、大阪城公園へと侵入……周囲を踏み潰しながら暴走しているとの報告が来たのだ。

 勿論、基地の通信システムはハッキングされている為使えないが、幸か不幸か……設備としては完全に独立している固定電話(万が一の事態に備えて、結成当初から設置されていたGGGダイヤルの初期型)からの一報だった。

 

 ちなみに、凱は原作と違い哨戒任務中なので事態を知らない……

 

「えぇい、哨戒中の凱と連絡も取れんとは……!」

 

 基地の機能が麻痺している為、マトモに外と連絡が取れない事を嘆く長官……だが、そんな空気を切り裂いて麗雄博士の胸ポケットに入っていたZセンサーから通知音が鳴り響いた。

 

「……むっ?! この音は?」

 

「Zセンサーが……!」

 

 突然の事態に困惑を隠せないクルー達だったが、意を決して麗雄はZセンサーを展開……自分の左耳に装着した。すると、Zセンサーから聞き慣れた人物の声が響いたのである。

 

『あ、繋がった……稀星です! 通勤中に、外と公団施設の電算室でゾンダーの気配を感じました!! 私は今エレベーター前に居ます、通常の通信設備が使えないのでコッチの回線を使いましたが……基地内でも何かあったんですか?!』

 

「稀星くんか?! いやはやなんと言うタイミング……エレベーター前という事は、基地施設の外という事だな?!」

 

「Oh、シオン~! Good timing(グッドタイミング)デ~ス♪」

 

《えっ?! えぇ、そうですけど……》

 

「稀星くん! 今、ベイタワー基地はゾンダーによるハッキングを受けている!」

 

 それは最早抗う事の出来ない、この世界の崩壊と変革の兆しでもあった……




シーン切り替えが激しくなるので短めにします。

更新間隔、なるだけ早めにしたいけど仕事忙しいねん……


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第28話 悪魔たちの饗宴(2)

筆が乗ったので続き。

GGGベイタワー基地が乗っ取られ、外と連絡が取れない?!
そんな事は露知らず、シオンはZセンサーで麗雄に連絡……

聞けば、ベイタワー基地が乗っ取られているのだという。



《……え、乗っ取られ……ってえぇぇぇッ?!》

 

 思わず素っ頓狂な声を上げてしまうシオンだったが、それもその筈……ハッキングによる基地の乗っ取りシナリオは、マイクロマシンゾンダーの件や、ヴァルナーという未知のシナリオで原作の流れとの違いもあり、既に原作から大幅に乖離し無くなっている……とシオンは誤認していた。

 

 実際にはマイクロマシンゾンダーが先になり、ヴァルナーの件はシオンが知らなかっただけ……原作で(本来)先に基地の乗っ取りを企てるハッキングゾンダーは、単に今まで現れていないだけだった。

 

「稀星くん! 外に居るのなら、そちらから凱にも伝えてくれ!」

 

《……全部聞こえてるぜ? 全く、無事ならそう言ってくれよな長官》

 

 割り込み……ではなくグループ通信に切り替えて、事態を凱にも直接伝えたシオン。

 クルー達は凱にも繋がった事に驚愕するが……

 

《……博士、私が機能拡張したの忘れてませんか? コレ(Zセンサーは)、基地機能から独立した量子通信システムでグループ通話も出来るんですよ?

 万が一、基地機能が麻痺しても、隊員の安否確認やら救援やら出来る様にって、私が言ったら長官も即OK出したじゃないですか~》

 

 若干ながら呆れた様子のシオンの声に、大河幸太郎と獅子王麗雄は揃って顔を見合わせた。

 

「「……あぁ」」

 

──────────

 

 その後、凱さんがタイヤゾンダー……私が基地のハッキングに対処する事になった。

 勿論、基地のシステムが戻らないとダイキャンサーにドライヴを搭載する作業が出来ないからだ。

 

《凱、基地のシステムを取り戻したら、ガオーマシンは最優先で発進させるから。それまで、無理はしないでよ?》

 

《分かってるさ、命……シオン、お前も無理はするなよ?》

 

『……保証は出来ませんけど、一応頑張ります』

 

《おいおい、そこは「お互い様」とか言う所だろ?》

 

(何だか最近、凱さんは私を妹みたいに扱ってくる……サイボーグ仲間……みたいな感じかな? 確かに、凱さんよりも私は3つ下だし)

 

 斯くして、基地奪還とタイヤゾンダー戦……GGG初の二面作戦が展開される事になった。

 

 

『猿頭寺さん、私からも逆ハッキングして復帰を試みます……この近くにコネクターポートはありますか?』

 

《地上用エレベーターの直近なら、手前の通路脇に「G-9」と書かれた場所がある……そこに物理アクセスポートがある筈だ》

 

 猿頭寺さんの返答を聞きながら、私は視線を走らせ……目的の「G-9」ポートを発見した。

 

『……ありました』

 

《通常のコントロールポートは既に奴の手が回ってて使えない、非常用の57番から80番ならまだ手付かずだから……》

 

『了解、アクセスチェック……良かった、まだ空調や生命維持システムは無事ですね……なら』

 

 そこまで言い掛けたが、続きを大音量の基地内サイレンが掻き消す……

 

《な、何事だ?!》

 

《待って下さい……。……ッ?! 何て事だ……ゾンダーが基地の動力炉にアクセス、冷却システムを停止させました! このままでは、あと15分で基地が爆発します!?》

 

《イカン! 基地の動力炉が爆発すれば、この基地処ではない……東京が全て地図から消えてしまうぞ?!》

 

《なん……だと……?!》

 

 マジで大ピンチ……こうなったら直にゾンダーとハッキング合戦(直接対決)するしか無いわね……!

 

『猿頭寺さん、私が彼と直接戦います……!』

 

《シオン?!》

 

『もう時間がありません! 私なら何とかなります、猿頭寺さん……ナビゲートとモニタリングのサポートをお願いします……もうすぐボルフォッグと護くんも到着しますし』

 

 私の言葉に、僅かながら歓喜の雰囲気が沸く……ボルフォッグなら、物理的に基地施設へと侵入するルートを知ってるし。護くんが一緒なら、直接浄解のチャンスもある。

 

《分かった……無理はするなよ?》

 

『大丈夫ですよ。せっかくダイキャンサーのドライヴも完成したのに、乗せずに死ぬとかあり得ません!』

 

 完全な形でダイキャンサーが稼働すれば、ガオガイガーの負担は大幅に減る……プライヤーズも来てるみたいだし、此処さえ乗り切れば何とかなる筈だ!

 

《……頼む、猿頭寺くんは彼女のサポートを!》

 

《はい!》

 

 よし、後はアイツとの性能比べ……こちとら自称「()()()()()Zマスター」、何とかなる!

 

──────────

 

『……って、どういうっ!状態ッ!ですかコレぇ?!

 

 現在、どうなってるかというと……

 

 基地内システムをバーチャル空間に変換した戦闘フィールドの中……私は今、ガオガイガーになって敵ゾンダーの尖兵である黒い羽虫型の小型メカの群相手に、切った張ったの大立回りをやってます。

 

『ブロウクンマグナムッ!』

 

 右腕を射出、同時に腕を突き出す反動相殺モーションから飛び回し蹴り、足払いと繋ぎ……

 

『だぁぁぁぁ! もうウザったいッ!!』

 

 プロテクトシェードを展開し、強引に羽虫の群を薙ぎ払って行く……

 

『猿頭寺さん、何で姿がガオガイガー(コレ)なんですか?!』

 

《済まない、本当は護衛も含めて数を揃えたかったんだが、VR空間用のモデリングが間に合わなくてね……今使っているソレは、別の目的でモデリングを済ませていた物なんだ》

 

 あぁ、そういう事ね……とりあえず、ガオガイガーだと身体の感覚が違いすぎて動き辛い。

 

『このデータッ! 動き辛いんでッ! 変えてもッ! 良いですかぁっ?!』

 

 大立回りをしながら、私は猿頭寺さんにデータ改編の許可を取る……猿頭寺さんも。

 

《……そうか、あぁ大丈夫だよ。そのモデリングは時短として使っているだけだし、元々がコピーだ。そちらの好きに変えて構わないよ》

 

 はい、言質取りました~。さて、それじゃ……

 

『それじゃ……好きにさせて貰いますよッ!!』

 

 猿頭寺さんから、VR用ボディの全制御権を委譲され、早速私は戦闘に平行してデータを書き換える……セッティングは勿論【乙女座(ヴァルゴ)】、でも「スティレット」じゃ明らかに火力不足……火力と装甲もある「轟雷」でも、まだ面制圧力が足りない。それなら新しい形態(ヤツ)を試してみるか……!

 

『アーマーライズ……「ゼルフィカール」、起動!』

 

 音声選択が認識され、一度ガオガイガーの姿を模したアーマーが粒子となって消える……その後から白や黒の部品と、ウサギの様なシルエットの頭部パーツが目を引くアーマーが中空に浮かび上がり、私の身体に次々とセットされていく。

 

 白いスク水っぽいボディスーツ、脚部の白い装甲……腰の後ろからは2対のサブアームが展開し、上部は両肩の外側……下部は腰の左右で武装とスラスター類の保持を兼ねる重要な支えとなる。

 そこに装甲と武装が積み重なり、更に両手にも「ガンレイピア」なる手持ち装備が展開……スラスター内蔵型の黒い追加装甲は主に両肩のサブアームと腰の両脇、そして太腿の外側に付けられ、サブアーム先端には2種類の攻撃ユニットと、追加のガンレイピア……そして後方へ向いた大型バーニア等、装甲の重さをカバーする加速装備が目立つ形態……

 

 これが【乙女座】の新形態、ゼルフィカールだ。

 

『全武装、各個別にロックオン……撃ちまくる(フルバースト)ッ!!』

 

 展開完了と同時に多数の敵をロックオンしつつ、濃密な弾幕を展開……メイン武装のセグメントライフルは、両肩のサブアームにあり通常型ライフル武装4丁ぶんの火力を出せる半固定武装……手に持つガンレイピアとサブアーム先端のカノンユニットも含めれば、同時に6方向へ対応が出来る。

 その上、武装切り替えで斬撃対応の大型ビーム兵器「試作型ビームスマッシャー」や攻勢防盾システム「ABSAユニット」も持ち出せるし、6枚あるこの黒い増加装甲「ブラストシールド」……実は装甲ではなく追加のエネルギータンクなのである。

 

『見た目に反したゴリゴリの高火力高機動型……ね、何か良いかも……♪』

 

 頭部パーツのウサギっぽさが何とも可愛いし、ボディの正反対な過剰武装っぷりが私の細やかなミリタリー欲を刺激してくる。よし、お気に入りに入れようそうしようハイ決定!

 ……と、そう思いながらも、黒光りする羽虫の様なお邪魔ウィルスユニットをバンバン消し去り……正味5分も無いくらいで周囲の敵は全滅させる事に成功した。

 

『……ふぅ、これで終わり……な訳無いよねぇ? ゾンダーだもの……やっぱG◯KI◯URI(乙女と台所の敵)並にしぶとい!』

 

 一息吐こうとした矢先、私のセンサー圏内に赤い光点(敵性反応)の群れが再び現れる……ガンレイピアを量子収納し、ビームスマッシャーへ持ち替えた私は、悪態と共に第二陣である雑魚敵のお掃除を再開するのだった。




いきなりサイレント追加したFAガ……もとい、乙女座の新形態。
バーゼラルドすっ飛ばしていきなりゼルフィカール実装!
見た目はほぼFAガールのゼルフィカール(白)なので画像を見たい方は【FAガール ゼルフィカール St.ver】でググってね?

実は、メインシナリオ以外に考えている小ネタがあります。
本編にも少し絡めたい事柄ですし、活動報告書きました……見てね?


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第29話 悪魔たちの饗宴(3)

筆が止まらない! 楽しみな方には嬉しい誤算だけどネ。

毎度の誤字報告や訂正……とても助かっています!
27、28話にも「設定と矛盾が~」とご指摘がありましたので修正しましたです。

ホント拙い私ですみません!(。>д<)

そして前回からの続き……
原作と状況は違えども、ヤバい事に変わりはない29話!



 あれからそんな時間は掛からず……ベイタワー基地は復旧した。

 

 最大の功労者はやっぱり護くんとボルフォッグでしたね……原作通りに2人は密かに基地へ潜入し、私が奴の注意を引いている間に護くんと「多次元諜報潜水艦」へ移動……

 ゾンダーがそれに気付いて追うも、猿頭寺さん謹製の「侵入者破壊プログラム」で逆に大ダメージを被り……這々の体で脱出した所を私が物理的に確保した。

 

 でも……ハッキングをしていたゾンダー、あの後すぐピッツァに奪還されちゃったんだよね……

 

 

回想シーン

 

(さて……確保したは良いものの、私は浄解なんて出来ないし……護くんとボルフォッグを待つしか無いよねぇ)

 

 格納庫スペースで蠢くゾンダーをひっ掴み、思案にふけるシオン……たまたまゾンダーの逃走ルートと、シオンが護少年と合流しようとしたルートが重なり、絶妙なタイミングで両者が遭遇……そして今に至る。

 

 だが、ほんの僅かな時間でその現状は壊された。

 

『……貴方も来てたんだ……流石、噂通りのスピードね……』

 

「ソイツを返して貰……む……貴様、例の裏切り者か……!」

 

 機界四天王ピッツァ……原作よりも強化されている筈のGGGのセキュリティでさえ、彼を捉える事など出来なかったのか……お互いに気付いたピッツァと私は、その場で油断無く構える。

 

『裏切り者、ねぇ……私からすれば貴方達の方こそ、トチ狂って変な行動ばかりしているとしか思えないのだけど?』

 

「ほざくなッ!!」

 

 超高速で懐に飛び込んでくる機界四天王ピッツァに、私は展開していたゼルフィカールの武装を向けようとするも、その圧倒的速度差に反撃の暇さえも許されず、右手で確保していたゾンダーを奪還されてしまった。

 

(……やはり速い。この速度差じゃスティレットでも、追い付けるかどうか……轟雷でも、恐らく砲撃は掠りもしないわね)

 

「……まだ子供、そして女か……フン、我々の前に立ち塞がるなら……次に(まみ)えた時は覚悟して貰うぞ」

 

 そう言ってピッツァは超高速で姿を眩ます……顔こそポーカーフェイスは貫けたものの、内心実は超ドッキドキの瞬間でした。

 

回想終了

 

 

 原作を知る私からすれば……()()()()()()()()()()()()()赤の星の戦士……ソルダートJ。

 

(理由は分からないだろうけど、私が自分(ピッツァ)に攻撃できない事に彼自身も気付いたかな……私の我が儘だけど、これは仕方ないよね……)

 

 ふと溜め息が出そうになるも……各ガオーマシンと氷竜・炎竜を乗せた三段飛行甲板空母が発進していくのを映像で見届けながら、私は意識を切り替える。

 

『とりあえず、早くドライヴの搭載作業始めないと。……間に合うかなぁ?』

 

──────────

 

 ……その後、大阪では。

 

『……クソッ、やはり打撃が吸収される……コンニャクみたいなゾンダーだな……!』

 

《凱、お待たせ!》

 

《ミラーカタパルト展開! ガオーマシン各機、並びに氷竜・炎竜、順次発進!》

 

『隊長! お待たせ致しました!』

『街の方は僕達に任せて下さい!』

 

『あぁ、待ってたぜ!』

 

《ファイナルフュージョン、承認(しょお~にん)ッ!!》

 

《了解! ファイナルフュージョン……プログラム、ドラァァイブッ!!》ガシャン!!

 

 基地施設が正常に戻り、ガオーマシンも現場に到着……膠着状態だったガイガーとタイヤゾンダーの戦いは好転……凱さんはガオガイガーに合体し、タイヤゾンダー戦第2ラウンドとなった。

 

『……勝負だ、ゾンダーロボッ!』

 

 ガオガイガーは果敢にタイヤゾンダーロボに挑むが、パンチやキックは弾力のせいでロクなダメージにもならず、ブロウクンマグナムも易々と弾かれる……

 

 残る手段は……ヘルアンドヘヴンのみ。

 

『これを使うしか……ない!』

 

 しかし、ダイキャンサーはドライヴ搭載の為に整備中なので、仕方なく通常のヘルアンドヘヴンで対応する事に……

 

『ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ……うぐっ?!』

 

 久々に受けるヘルアンドヘヴンの反動……それまではダイキャンサーの腕で反動軽減されてはいたが、戦闘自体で蓄積する疲労やダメージで凱の身体にはかなりの負担が溜まっていた。

 

 ゾォォォンダァァァ!!

 

 それを見逃さなかったゾンダー……全身のタイヤを高速回転させ、EMトルネードの拘束を和らげたのか……ジリジリとガオガイガーへ接近してくる。

 

《なんと?! EMトルネードの拘束をタイヤの高速回転で相殺しておる!》

 

 タイヤの回転数は徐々に上がり、遂に空気を纏う程となる……それまで拘束されていたタイヤゾンダーロボが拘束を振り切り、両腕を組んだ直後で硬直しているガオガイガーを体当たりで突き飛ばし、直後になんとガッツポーズ……

 

『ぐぁぁぁぁっ!!』

 

 両腕が解かれ、EMトルネードが完全に消失……不意のダメージを負ったガオガイガーは転倒、ダメージが響いているのか、なかなか体勢を戻せない……

 

『『た、隊長ッ?!』』

 

 まさかの事態に、氷竜・炎竜は動揺を隠せない。万事休すか……そう思われた直後。

 

 ガギィンッ!!

 

 再度突撃中のタイヤゾンダーの片足が、地面から生えた巨大なモノに挟まれ……ゾンダーロボは盛大に転倒……ゾンダーの足を掬ったモノは即座に地面へと消え、僅か数秒後にタイヤゾンダーは再び生えてきた何かに追撃を喰らい、高々と突き上げられたのだった。

 

 ゾッ?! ゾォンダァッ?!

 

《何とか、間に合いましたね……ガオガイガー、無事ですか?》

 

『……シオン、か……助かったぜ……』

 

 ガオガイガーが体勢を整えるまでの間、何度も突き上げを喰らい……タイヤゾンダーロボの動きのキレは明らかに落ちている。そして、その突き上げを行った奴の正体が地面から這い上がって来るように姿を現した。

 

 ギィィィィッ!!

 

《ダイキャンサー?! 完成したのか……!》

 

 またもや某狩りゲーの如く、穴を掘って登場したダイキャンサー……いつぞやと同じ様に両腕の鋏を振り上げ、我が姿をアピール。足元にタイヤゾンダーが倒れている姿を合わせて見ると、プロレスかボクシングの決定打が決まった直後に見えなくもない……

 

『……今なら、ッ! ダイキャンサー、力を貸してくれ!』

 

 ガオガイガーへと向き直り、以前の如く踊り出すダイキャンサー。

 

『《アーズド・ツール》ッ!!』

 

 凱さんはコマンドワードを叫び、ダイキャンサーもしっかり反応……両腕の鋏が変形しながら切り離され、ガオガイガーの腕と入れ替わる。更に装着後も変形を続け、必殺技モードへ……

 

『ヘルッ! アンド・ヘヴンッ!!』

 

 体勢が整ったタイミングでタイヤゾンダーもようやく起き上がるが、強化されたEMトルネードの出力は先程の様な相殺を全く許さず……強力なエネルギーフィールドで縛り付ける。

 そのまま見事にコアを摘出し、ゾンダーロボも倒した……けど、ガオガイガーはこれまでの戦闘によるダメージが祟り、ゾンダーロボの爆発でバランスを崩し、確保していたコアも中空に投げ出されてしまう。

 

『ゾンダーコア、確保しました!』

『間一髪……だったな』

 

 一応コアは、氷竜と炎竜が確保……でもガオガイガー自体はディバイディングフィールド内で膝を付いた所を敵の罠に嵌まり、タイヤゾンダーの残骸を利用して造り出された「超次元ポッド」に閉じ込められてしまった。

 

『な……何だ、これは……?!』

 

 タイヤゾンダーの残骸と、奴が溜めまくっていた回転エネルギー……ヘルアンドヘヴンで消し飛ばされたボディから解放されたその回転エネルギーと、残骸に残された最後の意思が発動した、次元の落とし穴……

 

 それこそがゾンダリアンの罠となり……まさに積年の恨みが如く、ガオガイガーを閉じ込めてしまったのだ。

 

『ッ?! 隊長、今助けに行きます!』

 

『待て炎竜! これはただの竜巻では……』

 

 突撃する炎竜だが、捻じ曲げられた空間に秒で返され、氷竜の方に突っ込んでしまう。

 原作通りの展開だ……でも、それなら……

 

《長官、博士! データは見ました。この超次元ポッドは既存の方法じゃ破れません……でもアメリカから来た、あの子達なら!》

 

「そうか! プライヤーズならば」

 

 麗雄博士もすぐに気付き、事態は急展開を迎える。

 

 プライヤーズは空間の歪みをコントロールし、修復できる唯一のツール……この超次元ポッドの空間の歪みを捉え、狭い穴を抉じ開ける事も可能なツールなのだ。

 出動命令が下るも、高速の輸送手段が無いので自力で大阪に飛んできたプライヤーズ……時間的には結構ギリギリだったが、何とか間に合ってくれた……

 

…………(間に合いましたね)………(ガオガイガー)!』

 

『お前達は……そうか、雷牙叔父さんが送ってくれたプライヤーズだな!?』

 

……(そうです)…………(ガオガイガー)………………(我々をお使い下さい)!』

 

『ああ……早速、力を貸して貰うぜ! 《ディメンション・プライヤー》ッ!!』

 

 コマンドワードを受けて3体のロボが変形し合体……巨大なペンチ型のツールモードへと姿を変えたプライヤーズが、ガオガイガーの両腕に接続される。

 

『ツール・コネクトッ!』

 

《……! ディバイディングフィールド、自然復元時間デス! 数値安定……湾曲空間が復元されマス(アレスティング・アウト)!》

 

 ほぼ同時にディバイディングフィールドの限界時間が過ぎ、湾曲空間の自然復元が始まる……

 

 その直後、まさに間一髪……ガオガイガーから供給されるエネルギーを利用し、ディメンションプライヤーは空間に干渉……

 歪曲された空間を強制的に抉じ開けて脱出口を造り出し、ガオガイガーは超次元ポッドを脱出。

 

『うおぉぉぉぉぉッ!!』

 

 そのまま歪曲空間そのものをディメンションプライヤーで掴み、上空へと放り投げる……超次元ポッドは重さもなく、されるがままに宇宙まで到達し、ディメンションプライヤーの効力で歪曲率を正常に戻されて消滅。

 

『我々もサポートします、三身一体ッ!』

『シンメトリカル・ドッキングッ!』

 

 ガオガイガーの脱出に合わせて氷竜・炎竜とボルフォッグも合体……ビッグボルフォッグは戦闘フィールド内のディバイディングドライバーを回収し、超竜神がエネルギー切れ直前のガオガイガーを救助……

 

 その約十数秒後……ディバイディングドライバーで造られた湾曲空間の自然復元も完了し、大阪の街は消滅を免れたのであった。

 勿論、タイヤゾンダーのコアとなっていた元・大食いさんは既に浄解済みなので、とりあえずは一件落着……

 

 しかし結局、ゾンダー化した「犬吠埼(いぬぼうさき) (みのる)」氏は行方不明のまま、コアの行方も掴めず……前回までの戦闘も含め、サイボーグ凱に蓄積したダメージは癒え切らないままである。

 

──────────

 

『凱さんの身体ダメージ、どうにかならないんですか?』

 

 もう見ていられなかった……原作とは多少違うものの、凱さんの蓄積ダメージはもう限界の筈だ。

 私は彼の父親である麗雄博士に、どうにか回避……または回復が出来ないかを相談する。

 

「ヘルアンドヘヴンによる反動こそ、ダイキャンサーお陰でずいぶんと減っておる……だが、戦闘自体で受けているダメージは、着々と凱の体を蝕んでいるのだ……既にもう、パーツ交換だけではどうにもならん状態までな……」

 

『だったら……!?』

 

 戦わなくても良い……そう言いたかった。

 

 ……でも、凱さんの思いと、麗雄博士の思い、そしてこの世界の重要な流れを考えると言い出せない……それこそ、ダイキャンサーが完全稼働した今なら、ガオガイガーは核の摘出に専念しても良い訳だし、無駄なダメージを負わずに未来の戦いも優位に運べる。

 

 その際に変わる事は、なるべく私が対処すれば良い……最初はそう思っていた。でも……

 

《長官……凱の思うようにさせてやってくれんか?》

 

 ふと、原作で語った麗雄博士の()()()()がよぎる……

 

 麗雄博士の……凱さんを思うこの言葉を知っている以上、私がとやかく言う立場じゃない……例えそれがただの物語であっても、目の前の現実であっても。

 

「だから、お前さんの力が借りたいんじゃ……凱の為に、このツールを完成させたい」

 

 麗雄博士はそう言って、私に紙の設計図と資料の束を手渡した。

 

「……このツールの持つ力は、使い方を間違えれば世界全てを消しかねん……じゃが、お前さんなら信頼できる。

 ……この資料を見れるのは、ボク以外では君だけだ……稀星くん、いや……()()()()()()()()()()()()()、稀星シオン君!」

 

『……?! こ、この資料は……!』

 

 私は驚愕するしかなかった。それは当然だ……博士から手渡されたこの資料は、博士とごく一部の者しか閲覧を許されなかった超極秘資料の1つ。

 「Gツール」……あの「ゴルディオンハンマー」の設計図なのだから。

 

「お前さんから貰ったダイキャンサーの情報は大いに参考になった……しかしこのツールの力はあまりにも強すぎて、凱の身体に更なる負担を課しかねん……

 じゃがお前さんの力を借りる事が出来れば、真の意味での完成も間違いない……このツールは必ず、凱の力になるはずじゃ!」

 

 あぁ、そうか……やっぱり麗雄博士は凱さんのお父さんだ。

 

(「凱の思うようにさせてやってくれ」……か、父親として精一杯、彼の道をサポートしてあげたいんだね)

 

『……麗雄博士……貴方の覚悟、父親としての思い……この鋼の身体を貫いて、心に響きました』

 

 麗雄博士の手を優しく握り、息子の為にと尽力する彼の力になりたいと強く思う。

 感動で泣いたのは、あの時護くんに諭された以来かな……博士の顔が、涙で少し歪んで見えた……

 

「稀星くん……」

 

『私の全能力を貴方にお貸しします、一緒にこのツールを完成させましょう!』

 

 こうして私は、念願だったゴルディオンハンマーの設計図と理論情報を入手……麗雄博士と共に、Gツールの真(ゴルディオンハンマー)の完成を手伝う事となったのである。

 

──────────

 

 それから数日後……やはり事態は急変した。

 

「あの◯◯予備校が……消えただと?!」

 

「……はい、これがその跡地に残されたクレーターの画像です」

 

 猿頭寺さんがモニターに映像を出す……そこに映ったのは、直径500mほどのクレーターだった。

 

(おかしい……順番的に、次は列車砲ゾンダーだったはず……でもこのクレーター)

 

 原作での列車砲ゾンダーの爆撃跡は、落ちる水滴を横から見た様な形状になっていたが……映像に映されたクレーターは、(まご)う事なき正円……そして円の直径と同じ球体の内側に存在した筈の全てが消え去っていたのだ。そして……

 

『周囲の建物が、なんで内側に……爆発が原因なら、外側に薙ぎ倒される筈なのに……』

 

「地元警察からは、現場付近で()()()()()()()()()()()()()()()()言う聞き込み情報も入っています」

 

 ますます以て不可思議な現象……いえ、もしかして。

 

『……猿頭寺さん、クレーター内部の表面を拡大できますか?』

 

 私の提案に頷き、猿頭寺さんが映像を拡大する……拡大されて画質は少し荒くはなったが、私はクレーターの内部に奇妙な痕跡を発見した。

 

『地下部分の痕跡……まるで削り取られたかの様な感じ、これって……』

 

 何か、次の相手も原作以上に超ヤバい雰囲気……




連戦は、長くなる……この話はいつもの倍だね……
ハッキングゾンダー取り逃がしちゃったし、かなりヤバヤバ。

しかし、ゴルディオンハンマーのフラグも立ちましたね……
しかも麗雄博士が直々にシオンちゃんへ協力を要請。

……つまりゴルディ超強化待ったなし?!

感想、お待ちしてます。


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第30話 悪魔たちの饗宴(4)

前回のプライヤーズの活躍……

原作通りにプリマーダさんも見ており……
「……下らないガラクタプライヤー……でもちょっぴり美しかったわよ♪」

……と、何故かデザインだけは誉めてましたw
なんなんですかね、あの独特の美的感覚は……(;・ω・)


 都内の有名予備校が消失した事件を追うGGG。

 その奇妙な痕跡に、1つの発見をしたシオン……その痕跡とは、次なる戦いが厳しいものとなる……そんな予感を彷彿とさせるものであった。

 

『コレを見てください……』

 

 猿頭寺さんが私の言葉に合わせて映像を映してくれた……今、メインスクリーンに映し出されているのは、例の襲撃跡……巨大なクレーターの地下部分の痕跡だ。

 

『この痕跡は、先の予備校消失事件で出現したクレーターですが……この部分、地下があった領域の消失状態が、この現象の正体を教えてくれました』

 

 確信はまだ掴めていないが、他に方法は考えられない……最も高い推論だと念を押した上で私は、持論を展開し始めた。

 

「この痕跡を残した現象に、何か心当たりでもあるのかね?」

 

『はい、推論ではありますが……確率は80%強、通常では考えられませんが……恐らくこの現象は()()()()()()()()による「消滅」だと思われます』

 

「重力崩壊……?!」

 

『はい……まず、爆心地にMBH……概算では直径約数十センチ程のマイクロブラックホールが発生……周囲のあらゆる物体を根刮ぎ吸い込み、約10秒後には消失……コレにより、爆心地へと流れる風と、内側に倒れ込む周辺の建物が残されます。

 それと同時に、地下部だった場所も削り取られ……地下に埋没させてあったインフラのパイプ等をへし折りながら吸い取り、この痕跡を残したのです』

 

 拡大された地下部分の痕跡のアップ画像には、半ばからへし折られ地中から引き抜かれ掛けたインフラのパイプ達が映っている。中には消失の瞬間に吸い込まれ掛けていたのか……まるでビーバーに齧られた丸太の様に、一部だけが削れているパイプも乱雑に落ちていた。

 

「ごく短時間とはいえ、地上でブラックホールが発生したとなれば、この現象にも納得は行く……じゃが、肝心の発生方法はどう考えとるんだ?」

 

 麗雄博士の質問に、私は原作知識と現状から導き出した推測を語る……

 

『それは、人類が未だに未発見のボース粒子の1つ……「重力子」による重力崩壊現象です』

 

 人類の科学の歴史の中でも、未だに多くの謎を抱えている量子力学の世界……ここでその詳細まで語ると確実に日を跨ぐ事になるので以下省略。

 

『この先は既存の理論では説明が付かないので詳細は省きますが、この「重力子」は一定の圧縮率を超えると周囲の物理法則を書き換えて重力を反転させたり、重力崩壊を招き(ブラックホールを発生させ)ます。

 恐らく敵は、何らかの方法で重力子爆弾を生成し、それを砲弾として撃ち出した……と結論付けました』

 

 唐突に「重力子爆弾」なんか言われても、返答に困るだろう……でも、この現象を起こす方法が他には思い浮かばないし、現状で最も公算が高い。

 重力、と言えば……ゴルディ登場回の()()()まで既にゾンダー化している可能性もある。

 

「うーむ、推論が正しければ……敵のゾンダーロボは2体、という事になるのかね?」

 

『恐らく……ですが、先の戦闘からそれ程時間が経ってない事から、演算役のゾンダーはロボ化せず、コアの状態のまま演算に集中してる可能性が高いです』

 

 何にせよ、砲弾を撃ち出したゾンダーの目的は原作通り……浪人生のストレス発散と思って良いだろう。

 

 ビーッビーッビーッ!!

 

「サテライトサーチが地上から撃ち出された()()()をキャッチしました……発射場所と思しき地点に、大量の素粒子Z0の反応も検出」

 

「何ッ?! 発射された場所は?!」

 

 大河長官に聞かれ、猿頭寺さんが踊るようにキーボードを叩き……発射場所を割り出す。

 私も気象庁のデータベースにお邪魔し、気象データと地図データから演算……猿頭寺さんと同じ場所を口にしたのであった……

 

『「発射場所は……(恐らく)代々木公園です!」』

 

──────────

 

 ここで時は少し巻き戻り、都内某所……ポロネズのお眼鏡に叶ったゾンダーに相応しい人間は、一度コンピュータからインターネット回線を経由し、何処かへと消えた後……特異な能力を身に付けて日本へ戻ってきた。

 

「……ほぅ? このゾンダー、通信回線で何処へでも移動出来るのですか……そして」

 

 ゾンダーはロボ化する時に大量のメカや素材を取り込むのだが、それを何処かで行った後……素体状態に一度戻って移動、戻った先でロボ化……という、神出鬼没さを発揮したのである。

 

「フフフッ、受験競争を控えストレスが貯まって居たの処を見つけましたが……コレは思わぬ発見をしたようですな」

 

 ゾンダーとなったこの浪人生、趣味がネットサーフィンだったらしく……偶然PCも側にあった事で能力の一部に反映された様だ。

 そしてゾンダーは何処かで巨大な構造物を取り込んでロボ化する能力を得た後、ネット経由で移動……ポロネズに己の能力を誇示するかの様に戻ってきたのだった。

 

「これはこれは……さて、ピッツァとペンチノンも何か考えている様です。癪ではありますが、我々の計画を確実に進める為……今回はその考えに乗るとしましょうか」

 

「……そう、そうね……GGGを完全に抹消し、この星を機界昇華する為に……!」

 

 いつの間にかプリマーダがポロネズの側に現れ、仲の良い夫婦の様な睦まじさで会話を続ける。

 

 原作には無かった展開、これも乖離の影響なのか……

 

──────────

 

《……しかし、何で中央防波堤なんだ?》

 

 火麻参謀が疑問を呈してくる、確かに今までゾンダーの出現場所は、人口密集地にわりと近い場所が多かった。

 

『今回のゾンダーは、その高い砲撃能力でのピンポイント爆撃……特定の場所を狙い撃ちする事が可能です……つまり、出現に求められる場所は砲台として都合の良い、周囲に遮蔽物が少なく、自身の身体……砲台としてのゾンダーが安定しやすい場所です。何故か気軽に移動が出来ると言うのはさすがに予想外でしたけど……』

 

《敵の移動方法は不明ですが、明らかにロボ化せず……素体に一度戻って移動をしていると推測されます。

 襲撃場所では素粒子Z0はおろか何も検出されず、気象データと弾道予測……そして地形データを演算して割り出した発射場所から大量に検出できた事。そして最初の◯◯予備校と2回目の砲撃の弾道データから、敵の砲撃能力はかなり高精度の弾道計算能力を持っています》

 

 私と猿頭寺さんで、敵の残した情報から推測される敵の詳細を交代で語る……観測された2回目の砲撃の対応として氷竜と炎竜が緊急出撃。

 空中で砲弾を起爆させるべく三段飛行甲板空母からの迎撃を慣行したものの、結局阻止は叶わず……早稲田大学のキャンパスの一部が消し去られてしまった……

 

 しかし、発射直後に猿頭寺さんが発射場所を特定……私も発射場所と気象データから演算を行い、素早く正確な着弾予測を割り出せたお陰で避難が間に合ったのは不幸中の幸いであった。

 

(私の演算能力……何かもうスパコン並になってる。自分でも引くぐらい恐ろしく演算が速いんだけど……?)

 

 内心で自分の変化に少し驚きながらも私は、大河長官が自信満々に「次に狙われるのは東大(東京大学)だ!」と言い放った事から、次の発射場所を演算……

 

 ……そして現在、火麻参謀と通信しながら機動部隊に同行しているのであった。

 

 ちなみに同行した理由……敵の移動方法が分からない上、護くんは相手がゾンダー素体だと感知できない……でも私なら素体が相手でも正確にゾンダーの動向を探れるからである……まぁ、そういう所もイレギュラーだしね。

 

『敵は恐らく、前回コアのまま回収した犬吠埼氏の能力で気象データをハッキングし、弾道計算をしていると思われます……実際、僅かながら気象庁のデータベースに痕跡が遺されていましたし、ほぼ間違いありません。

 そして、放物線弾道の演算予測がしやすく、正確な気象データと安定した発射場所……そして重力子爆弾やその他の要因から砲撃が行われるのは』

 

《……今日の午後12時、江東区の中央防波堤……つまり、此処なんだな?》

 

 予想現場の上空に到着した凱さんからも通信が入る……ガイガー(ステルスガオー装着モード)と三段飛行甲板空母が現場に到着し、私は地上……中防処理施設の建物上から周囲の監視を開始した。

 

《……ッ?! 素粒子Z0、中防処理施設付近で急速に増大! ゾンダーロボが出現します!》

 

 ゾンダーロボが出現したのは、何と私の足元……中防処理施設の中からだった。

 

『……ッ?! 既に潜んでいた……いえ、反応は唐突に出てきた……となると、物理的移動ではない?』

 

《推論は良い! 早く待避しろシオン!?》

 

 参謀が通信で待避を促す。戦闘前提の場合はZセンサーの通信システムなので回線切れにはならず、私も指示に従って待避……直後に足元の施設が破壊され、中から現れたのは……

 

《……何て大きさだ……!》

 

《コレは……砲身長約6.7m、口径約91cm……グスタフ(80cm列車砲)より大きいなんて?!》

 

 牛山さんが敵の情報を教えてくれたお陰で合点がいった……敵は原作の80cm列車砲『グスタフ』よりも更にバ火力に偏重した……いや、この場合は重力子爆弾を撃てる仕様を求めた訳か。

 

『なるほど、元はアメリカの造った超巨大迫撃砲「リトル・デーヴィッド」という訳ですか……!』

 

 黒光りする砲身、寒気のする程の口径を上に向け……迫撃砲ゾンダーはゆっくりとその巨体を動かし、狙いを付け始める……

 リトル・デーヴィッドは射程距離約9km程度だった筈、しかしそれがゾンダー化した影響か……ココから東大を狙える位の射程になった。つまり今までは()()()()()()()()って事になる……

 

(ココで止めれなきゃ、世界終了のお知らせね……半分機械なのに寒気がしてきたわ)

 

 相手は重力子爆弾を抱えた迫撃砲の怪物、対処を間違えれば量子まで圧縮されてお陀仏(THE END)……私は改めて、己の産まれを呪ってしまった。




……という訳でかな~り強引ですが、列車砲よりも更にバ火力にする事に致しまして……敵を超巨大迫撃砲にしてみました。
ちなみに原作登場の「グスタフ」ですが、此方では意外な使われ方をしますので今後をお楽しみに♪
でもコイツさ、完全にチートじゃね?
……ネット回線で移動とか電○超人かっつーの()
既に育つ土壌やら次元が違うからか、ゾンダー側の進化が容赦ない……

そして次回……ガオガイガーとシオンが同時にピンチになります。

オマケにお待たせ、新しいアーマロイドも出るよ?
ついでに取り敢えず、ここで饗宴も一応終了という事で……

──────────


次回予告


君達に最新情報を公開しよう!

超巨大迫撃砲ゾンダーは、東大を目標に重力子爆弾を装填、
ついに狙いを定めた!
決死の覚悟でガオガイガーはヘルアンドヘヴンを叩き込む。

しかし、撃破と共にガオガイガーは光の渦へ……
そしてシオンまでも、重力の檻へと捕らわれてしまう。

ついに姿を表す、究極のGツール……!
そして、闇を斬り裂いて現れた謎の巨大メカの正体は?!


次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第31話『光と闇の向こうから』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!


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第31話 光と闇の向こうから(前編)

時の流れとは早いもので、あの予告編を出してからもう一度2年を超えたんですね……(  ̄- ̄)

東大を目標に重力子爆弾で狙撃する為、江東区の埋め立て地に突如出現した迫撃砲ゾンダー。

ディバイディングドライバーを使う為ガオガイガーは構える……が、シオンが敵ゾンダーの移動手段がネット回線を利用したものであると気付き、フィールドを作る前に移動されたら予測地点の選定からやり直す事になる為、此処で仕留めなければ逃げられた場合最悪、次が間に合わなくなる。と指摘……
幸い避難誘導は短時間で終わった為、ガオガイガーと超竜神は何としてもこの場で重力子爆弾の発射を阻止する為、已む無く戦闘フィールド形成無しで攻撃を慣行した。



『隊長! 今ですッ!!』

 

 超竜神が射撃を続けながらゾンダーの動きを鈍らせる……超竜神の攻撃そのものはゾンダーバリアに弾かれてはいるものの、何もしていない時よりはゾンダーの挙動を確実に鈍らせている。

 

 フォンフォンフォッ……ギュルルルル!!

 

『うぉぉぉぉッ! 《ブロウクン・マグナム》ッ!!』

 

 ズドォッ! ギュルルルル…… ゴシャァンッ!! ……ュルルルルガシュンッ!!

 

 赤熱化したエネルギーを纏う己の右腕……高速回転する肘から先を敵目掛けて射出し、敵ゾンダーのバリアシステムごと横からボディを貫いたガオガイガー。

 Gストーンから得られる莫大なエネルギーで右腕を覆い、ロケットパンチを繰り出す『ブロウクンマグナム』。

 

 その威力はゾンダーのバリアシステムごとボディを撃ち貫く破壊力を持っている……のだが。

 

 ぞるるるっ ずりゅりゅりゅっ ギュウンッ

 

『なにっ?!』

 

《迫撃砲ゾンダーの再生速度は、これまでの比じゃありません?!》

 

 ブロウクンマグナムによりバリアシステム諸とも破壊された筈のボディ構造が、ものの数秒で完全再生を終えた……これまでも高い再生能力を持つゾンダーは何度も相手にしたが、ブロウクンマグナムで貫かれた痕を5秒以内*1で再生する敵は今まで居なかった。

 

『クソッ、ならば中枢を……!』

 

 大砲ゾンダーの正面へと水平移動するガオガイガー、だがその足元が不意に歪み始める。

 

『ッ?! ガオガイガー! 足元ですっ?!』

 

 シオンの警告も僅かに遅く……地面から何本もの黒い触手の様なモノが蠢きながら生え、地上から飛び上がった直後のガオガイガーの足に絡まったのだ。

 

『?! コレは……ぐぁぁぁぁッ!?』

 

『隊長ぉッ?!』

 

 大砲ゾンダーは自身の土台部分……半埋没した基部と繋がったケーブルを操り地上へと放出、ガオガイガーを絡め取り更に電撃攻撃で苦しめる。

 

《恐らくあれはインフラ用に敷かれた高圧電流のケーブルじゃ……奴め、周囲のインフラからも電力をかき集めておるのか!》

 

『クソッ、隊長を放せぇ!!』

『ぐぅッ……うぉぉぉぉぁぁぁあッ!!』

 

 超竜神の援護射撃を貰いつつ、電撃に苦しみながらもガオガイガーは、スラスターと脚部の反動で全身を振り回し、ケーブルの拘束から脱出……ようやく大砲ゾンダーの正面上空へと移動。

 

 ヴォンヴォン ヴォンヴォン……

 

《重力子弾頭は既に装填済みの模様! 発射まであと20秒切りましたッ!!》

 

 刻一刻と迫る発射時間(タイムリミット)……並の損傷程度では時間を遅らせる事も叶わない。

 

──────────

 

『……こうなったら、一か八かだ……ッ! シオン!!』

 

『はいっ! 黄道より我が下へ……来たれ、機蟹武刃(ダイキャンサー)!!』

 

 満を持して搭載された「Zコア・ドライヴ」により、転送用のエネルギーまでも自前で確保できる様になったダイキャンサー……遂にアーマロイドとして完全な稼働を実現し、召喚に応じて自ら虚空に転送陣を描き、指定座標へと空間転移してくる。

 

『アーズド・ツール、《ギガンティック・アームズ》ッ!!』

 

 バシュッ ガゴォン ヴォンッ……ガシュンッガシュンッ!

 

『ゾディアーツ・コネクト!!』

 

 調整と完成に併せ、拡張性の確保に応じ改めて設定されたコマンドワードを叫び、ガオガイガーの両腕がギガンティックアームズへと入れ替わる。

 

《発射まであと10秒!》

 

『ヘルッ! アンド・ヘヴンッ!!』

 

《9、8、7……》

 

 ギガンティックアームズを装着し更に変形させ、シザーズ・H&Hの体勢を取るガオガイガー。その間にも無情にカウントダウンは続く……

 

『ゲム、ギル、ガン、ゴー、グフォ……』

 

《6、5、4……》

 

『ハァァァァァァッ!!』

『ガォォォォォンッ!!』

 

 凱とギャレオンの咆哮が重なり、大砲ゾンダーへと突き刺さる……その直前、護くんが何かに気付いた様に叫んだ。

 

「ッ?! ダメだ凱兄ちゃん! ソイツのコアは……ッ!?」

 

《3、2、1……!》

 

 ボフッ……ドゥオォォォンッ!!

 

 僅かな無音の時間、そのすぐ後に大爆発が発生し、眩いばかりの巨大な光球に包まれたガオガイガー……遠巻きに戦況を見守っていた一般人の誰もがゾンダー撃破を確信し、歓喜の声を上げる中……小さな気配が1つ、密かにその場を離れていくのだった。

 

──────────

 

 東京の某地下部……そこにはパスダーと幹部ゾンダリアン4人が勢揃いしていた。

 

「如何にあの黒いロボット、ガオガイガーが強くとも……裏切り者が我々の想定を超えようとも……この作戦で生み出したゾンダーロボが造り上げる二重の罠を破る事は、決して容易ではありません」

 

 最初に語り出したポロネズ……その言葉に続くようにプリマーダが付け加える。

 

「あの裏切り者は奇妙なほど我々に近い……しかし彼奴の想定を超えたこの罠に嵌めてしまえば、対処も困難を極めるでしょう」

 

 ペンチノンの目が怪しく光り、更に続ける。

 

「ウリィィィィイ! ガオガイガーとあの小娘、如何に奴等が我々の予想を超えようとも……太陽やブラックホールに匹敵する強大な力には敵う訳がありません」

 

 最後にピッツァが繋ぎを締める。

 

「そして奴らの戦力の中核と、我々の想定を超えてくるあのイレギュラーさえ居なくなれば……後は我々の手でゆっくりと、機界昇華を進めるだけです」

 

《フフフッ、よくやったぞ四天王よ。カインの遺産、そしてあの裏切り者を同時に下す事が出来れば……正に今こそ、我々の勝利の時……期待しておるぞ》

 

 薄暗い地下の狭間に、パスダーの合成音声が木霊する様に響くのだった。

 

──────────

 

 そして戦闘現場……決死の覚悟で「シザーズ・H&H(ヘルアンドヘヴン)」を敢行したガオガイガーは、ゾンダリアンの想定通り、眩い光量を放つ大爆発へと捲き込まれた。

 

《……変です、これは……ただの爆発ではありません! 素粒子Z0、そして未知の放射線を観測……これは……!?》

 

《何ぃッ?! まさか……!!》

 

《ガオガイガーは……?!》

 

『ま、まさか……コレって……?!』

 

 本部からの通信に、私はガオガイガーの方へ各種センサーを向ける……その直後に得られたデータに、私は驚愕するしかなかった。

 

『未知の放射線は別の起爆手段(代役)と考えても、このエネルギー量(……まさか、このタイミングで使ってくるなんて)……!?』

 

 それこそ、原作で超竜神を限界ギリギリまで疲弊させ、已む無くゴルディオンハンマーを使うしか無かった敵の策略。膨大なエネルギーによる太陽の如き光と熱量の檻……通称「グランドノヴァ」と呼ばれる現象が起きていたからだ。

 

《……スペクトル分析完了、内部温度は6000度超えています》

 

《博士、あのグランドノヴァは……?!》

 

あの大砲ゾンダー(リトル・デーヴィッド)の内部には、重力子爆弾を臨界到達寸前の状態で保持し、適切なタイミングで起爆させられるだけのエネルギーが蓄えられていた筈じゃ……そのエネルギー反応を囮として、周囲のインフラからかき集めた電力と、ヘルアンドヘヴンのエネルギーを起爆剤代わりに、地下部に蓄えておった大量の()()を使って連鎖的なエネルギー融合反応を発生させておる。

 恐らく敵の目的は、ガオガイガーを倒すだけでは無い筈じゃ……!》

 

 あれだけ攻撃しても反撃がケーブル拘束からの電撃程度しかして来なかったのは……この為の布石だった訳だ。砲撃そのものに利用する膨大なエネルギー蓄積反応を隠れ蓑にして、私やガオガイガーのセンサーをグランドノヴァの下準備から逸らす……完全にしてやられた形である。

 

『待って……じゃあ、あの重力子爆弾は……?!』

 

《Oh no?! 戦闘エリアから、高速で離脱していく物体を確認……?!》

 

《重力子爆弾、予定の弾道から外れて……落着予定地点は……こ、皇居付近ですッ?!》

 

 コレはさすがに不味すぎる! 皇居周辺といえば政治(霞が関)治安組織の本拠地(警視庁)も近い……万が一、このエリアが被害を受ければ、国の治安維持や政治機能が麻痺してしまう。

 

『ダメだ……そんな事になったら、この国(日本)そのものまで……!』

 

 居ても立っても居られず、私はすぐさまスティレットを展開……戦闘エリアから飛び去っていく重力子爆弾に追い縋る……

 安全に処理するには上空にある今の内に破壊するしかない為、射程内に捉えてすぐ60mmガトリングガンやハンドミサイルを全力でばら蒔く。

 

《No!! シオン近すぎデス! 重力半径から離レテ!!》

 

『コレでも射程距離ギリギリなの! それにこのスティレットじゃないと追いつけない……!』

 

 空中での速力は、スティレットと他の「乙女座(フレームアームズ)」達とは大きな開きがある……轟雷やゼルフィカールを超え得る攻撃力と、スティレットに迫れる速力を両立できる「フレズヴェルク」はまだ設計段階であり、スティレット用の強化装備「XF-3」は未完成……

 現状で最高火力を出せる轟雷は飛行不可能だし、次点のゼルフィカールでも加速力不足で追い付けない……今現在最も高い飛翔能力を持ち、唯一この速度と距離を維持できるスティレットで何とかするしかない。

 

『あと少し、あと少しなのに……!』

 

 だが、重力子爆弾を臨界突破に導ける火力をスティレットでは出せない……現状装備されているガトリングやミサイルには、爆弾の内部にまで影響を与える程の攻撃力は無いのだ。

 

(こうなったら……ッ!)

 

 飛翔する弾頭を一度追い抜き、反転して「スティレット」から「ゼルフィカール」へと換装……全砲門を弾頭へ向け、一斉射撃の準備をする。

 

《イカン!? 稀星くん、僅かでもタイミングを逃せば離脱出来なくなるぞ……! 止めるんじゃ?!》

 

(事前に爆発のタイミングさえ掴めれば、ゼルフィカールの速度でも離脱くらいはできる筈……!)

 

 重力縮退反応に最大限の気を付けつつ、トリガーに指を掛ける……直径500mの痕跡を遺すブラックホールなら、重力半径も相応に小さい筈だ。

 だが、一斉射撃のトリガーを引くと同時に……私の背後に凄まじく嫌な気配がした。

 

(ッ!? 後ろ?! しまっ……!?)

 

 横槍に気付いて振り向いたタイミングと、私の攻撃による重力縮退反応の臨界点突破が悪い偶然の如く完全一致……ゼルフィカールの全速を以てしても離脱の叶わない距離で、空間に漆黒の穴が穿たれる。

 

《Oh my God……シオン、そんな……ッ?!》

 

《な……何と言う事だ……!》

 

《クソッ、あのバカ娘……ッ!!》

 

《まさか、こんな事になるなんて……》

 

《……凱……、稀星くん……!》

 

《……嘘よね、凱……シオンも……嫌ァァァァッ!!》

 

《凱兄ちゃん……シオンさん……!!》

 

 時間にして僅か10秒弱……空間に穿たれた漆黒のソレは、私の意識ごと必滅の距離(シュヴァルツシルト半径)内に存在する全てを飲み込み、その姿を完全に消し去ろうとした……その直前。

 

 ギィィィッ!! ドォォォンッ!!

 

 寸での処で消え去る直前の黒い穴に両の鋏を翳し、その身を満たす莫大なエネルギーを注ぎ込むエメラルドグリーンの巨体……

 

《アレは、いつの間に……!?》

 

 総重量700トンオーバーの筈の巨体が突然中空に現れ、()()()()()()()()()()()()()()()()を以てブラックホールを確保……腕部の空間制御機能のフル活用して周囲から隔離しつつ閉じてしまわない様に必死に抑えていた。

 

《博士! 何故あんな事が……》

 

《……理論上だが、ブラックホールに投入される質量が適切であれば消滅する事無く、重力半径の維持ができるとされておる。

 恐らくダイキャンサーは自身のエネルギーを質量に変換してこの奇跡のバランスを確保し、自身の空間制御能力を以て事象の地平面に干渉、あの人工ブラックホール現象が消滅しない様に維持しておるんじゃ……

 

 しかし、一度ブラックホールに引き込まれたものは……喩え光の速度を以てしても、脱出不可能のはず……》

 

 グランドノヴァに飲み込まれたガオガイガー、そして人工ブラックホール現象に飲み込まれたシオン……

 絶体絶命の2人を救出する方法は……果たしてあるのだろうか?

*1
原作アニメ第1話にて、馬頭ゾンダーロボの再生速度は10秒以内、と言及されている。以降のゾンダーロボ戦ではほぼ完全に言及されていないのだが、基本的には同等レベルと思われる。




グランドノヴァの件は強引ですが、ちゃんとハンマー活躍をやらせたいので慣行……
なお、シオンの方は()()()()の横槍で起きたとばっちりです。

……って、こんな終わり方ある訳無いでしょ! 続きますよ?!


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第32話 光と闇の向こうから(中編)

太陽の如き光熱の檻「グランドノヴァ」と、光さえ抗えぬ重力の牢獄「ブラックホール」……
それぞれに囚われてしまったガオガイガーとシオン。

果たして、2人の救出は叶うのだろうか……?



 グランドノヴァ発生から30分後……GGG機動部隊は水陸両用整備装甲車で補給と整備を受けた後、ガオガイガー救出の作戦に取り掛かる。

 ブラックホールに飲み込まれたシオンも気に掛かるが、現代科学ではブラックホールに対抗する手段は一切無く……ダイキャンサーが奇跡の如く維持している中で、下手に手出しは出来ないと判断された。

 

「イレイザーヘッド、射出ッ!」

 

 沿岸に待機させた三段飛行甲板空母と強襲揚陸補給船に、ありったけのイレイザーヘッドを積み込み……可能な限りグランドノヴァのエネルギーを消費させる。

 

 それが現状のGGGが採れる、最も有効な作戦だった……

 

『隊長、必ず救出します……! イレイザーヘッド、発射ァッ!』

 

 小型の太陽とも言うべきグランドノヴァへ向けて、イレイザーヘッドの先端部が射出される……光の中に飲み込まれた直後から明らかに反応は起き、グランドノヴァの直径が歪み……萎んでいく……

 

「……ッ!?」

 

 だが、それもつかの間……すぐに直径は最初と同じ程度に戻り、減っていたエネルギー反応そのものも回復……振り出しに戻ってしまう。

 

「クソォッ! この程度しか変わんねぇんじゃ意味が無ぇぞ!?」

 

「あれだけのエネルギー量じゃ、そう簡単には消しきれん……だが、続けるしかあるまい」

 

『諦めて堪るか……! 絶対に隊長を助け出す! 次だぁッ!!』

 

 終わりの見えない戦い……だが、超竜神は泣き言なんてクソ食らえだと言わんばかりに奮闘していた。

 

──────────

 

 同時期、ブラックホールを観測していた猿頭寺とスワン、大河長官の方は……

 

「現在、事象の地平面は直径約1.5m……本来なら質量不足から、あと5秒ほどで消失してしまう大きさです。それをダイキャンサーのコアから供給されるエネルギーと、腕部の空間干渉システムで強引に圧し留めている……そんな状態です」

 

「ブラックホールから脱出する事ハ……現代科学の如何なる方法を以てシテモ、不可能デス」

 

「我々人類は、何と無力な存在なのだ……たった一人の仲間を……未だ若き少女一人さえ、救えないとはッ!!」

 

「ブラックホールの実態すら、現代ではまだ未解明なのです……相手が悪すぎますよ」

 

「しかし……ッ! コレでは彼女があまりにも……」

 

「シオンはいつも『GGGに入ってから、何かと細かな苦労はするケド……皆が、私を仲間として扱ってくれるカラ……やっぱり入って良かったなぁ』って……言ってマシタ」

 

 スワンだけが知る、シオンの本音……プライベートを共にしているからか、スワンを姉のように慕う彼女は、スワンに対してよくそんな事などを話していた。

 

「……もう一度、何とか内部を観測する方法が無いか……論文からも徹底的に調べ直してみます」

 

「……頼む、護くんも戦っているのだ……我々大人が、此処で挫けては、子供達に笑われてしまう」

 

 大河長官の言葉に、猿頭寺とスワンも頷き……観測機器から送られてくるデータを確認しながら、それぞれの仕事を片付けていくのだった。

 

──────────

 

 その後……ガオガイガーの状態が判明、同時にグランドノヴァの内部にはゾンダーメタルプラントが存在する事も判明した。

 しかし、グランドノヴァのエネルギー量は一向に減る事無く……イレイザーヘッドを撃ち続ける超竜神の疲弊状態も深刻となっている。

 

《もういい、超竜神! これ以上続けたら、お前の身体まで……!》

 

 Zセンサーによる通信で火麻は超竜神の身を案じ止めようとするが……

 

『せめて、この一発を撃つまでは……ッ! イレイザーヘッド、第8射……グアァァッ!!』

 

 満身創痍の中、苦悶の声と共に発射された8発目のイレイザーヘッド……それまでと同じ軌道でグランドノヴァに直撃し、エネルギーを消費させていく。

 

 ……が、無情にもグランドノヴァは消滅する事なく、再びエネルギー量を増していく……

 最早、打つ手無しか……と思われた直後。

 

『……ぉぉぉぉおおおッ!!』

 

 借り受けた巨刃の腕をそのままに、緑色の輝きを纏ったガオガイガーが疲労困憊ながらほぼ無傷でグランドノヴァを強行突破し、超竜神のすぐ側へと脱出して来たのである。

 

「「凱……ッ!」」

 

 命と麗雄の声が重なり、クルーの誰もが奇跡の脱出成功に湧く。

 

 ガオガイガーの全身はエメラルドグリーンに輝いていたが、着地と同時に変化が戻り……甚大なエネルギー消費と疲労で膝を折る。

その後、借り物の腕に幾つもの亀裂が発生、ジワジワと色が抜けていき……やがて岩が風化していくように消滅していったのだった。

 

「……そうか……あの内部状況で無事だったのは、プロテクトエネルギーを利用してギガンティックアームズが形成するエメラルドプロテクターの効果か! ……コレも、稀星くんに助けられた形じゃな……」

 

 麗雄の慧眼は、ガオガイガーが無事だった理由を一瞥で突き止め、シオンの協力があった事に心から感謝した。

 

 原作ではギャレオンの独自判断でプロテクトシェードを全身に張り巡らせて防御していたが、今回は腕がダイキャンサーから借りている「ギガンティックアームズ」……つまり、元から全身防御を可能にしており、如何なる衝撃をも防ぎ鉄壁の防御を誇るエメラルドプロテクター……あのグランドノヴァの強力なエネルギー放射の中でも耐えきれたのは必然であった。

 

「この野郎、さんざん心配掛けやがって……!」

 

『ははっ、悪かったよ参謀……父さん、命……何とか、帰ってきたぜ……はぁっ……はぁっ』

 

「すぐにガオガイガーを回収するんじゃ! 凱、お前も兎に角すぐに戻って休め」

 

「……良かった……凱……っ」

 

『なぁ、命……シオンは……?』

 

 ふと口にした言葉に場の雰囲気が変わった事を敏感に察知した凱……参謀と命が沈黙を貫く中、父親である麗雄が息子に現実を伝えた。

 

「……稀星くんはあの時、間に合わず発射された重力子爆弾の空中処理中、何者かの妨害に遇い……人工ブラックホールに飲み込まれた……今、彼女が飲まれた穴を閉じさせまいとダイキャンサーが必死に留めておる」

 

『……な……何だって……?!』

 

──────────

 

 光も音も、全て何もない……ただ静寂だけが全ての世界に、件の少女(シオン)は放り込まれていた。

 

 ブラックホールの内部を観測する方法は如何なる知識や技術を以てしても不可能であり、また脱出も出来ない……一度取り込まれたら最後、死すら許されず、永遠を彷徨う運命にある。

 そしてその永遠は現実とは切り離された、偽りの永遠であり……物質世界と定義される現実では消滅に等しい現象で本来の死というものを迎えているのである……

 

 だが、偽りの永遠だとしても……一秒を永遠に引き延ばされたこの虚無の世界において、彼女はまだ生きていた。

 

 

 途方も無い程の虚無が支配する世界……その中で周囲の静寂を知らぬまま一人、少女は思考を巡らせる。

 この虚無の空間は行動するエネルギーの消費すら無意味な世界であり、現時点での脱出は絶対不可能であると分かりきっている為、余計な消費を抑える意味で思考のみを巡らせている。

 

(ブラックホール……か、この時点で罠に掛かる事は想定内だったけど……まさかグランドノヴァと同時にコッチまで仕掛けてくるなんて……)

 

 一度嵌まれば二度と脱出不可能、光の速度を以てしても逃げる事すら敵わない……絶対不可避の敗北。

 いずれ仕掛けられるだろうとは思っていたし、対策も講じる予定ではあった。しかしこのタイミングだとは夢にも思わなかった……

 

(こんな事なら、もうちょっと必死に色々勉強しとくんだった……)

 

 シオンは記憶復活前の時点から自身の可能性を模索し続け、強化された力に任せて貪欲に知識を吸収していた……その中に、量子力学や素粒子物理学、医学、宇宙科学も入っている。

 その知識は数々な装備開発や、アーマロイドの作成の一助になっていた……が、幅広く得ていたが故にその応用は机上の空論や独学であり、先人の知恵によって確立されたよりディープな理論や構想までには意識が向いていなかったのである。

 

(光の速度でも脱出できないとなると、移動じゃ無理……恐らくココは特異点、常識なんて通じない場所のはず。なら、常識なんてかなぐり捨てて考えないと……)

 

 少女は諦めてなかった……なにか方法はある筈だと、GGG憲章に則り、少女は足掻く。夢見た明日を見る為に……

 

──────────

 

 全く……イレギュラーを潰すならイレギュラーしかないってのは当然の帰結よね。

 ブラックホールから脱出しろとかいう無理ゲー、まさか自分がやらなきゃならないなんて誰が思う? 私はゴメンだよ? 現在進行系でやらされてるけど……

 

 こんな事なら偶然GO◯TUBEで見つけた「白河博士の重力講座」……ちゃんと最終回まで見とくんだったわ……

 アレ、他愛無い会話の中にメチャメチャ重要な単語とか構造を理解するためのキーワードとか散りばめられてて、お陰でかなり物理学の勉強捗ったし、あと2~3回って処に「アレ」で記憶戻っちゃうんだもん。マジで勿体無かったなぁ……

 

 ……と、愚痴ってもしょうが無い。

 

 この超重獄から脱出するには最悪、空間ごと破壊するしか無い……

 

 しかし、そんな事は普通できない。多分最高の状態に戻った私でも無理ゲー……そもそも空間に干渉を起こす程のエネルギーは私の身体じゃ精製不可能である。それに加え、地球上では何らかのネットワークを通じてゾンダーメタルプラントならぬ、エネルギー精製プラント……要はGGG本部に置かせて貰っているメンタルケア施設からのエネルギー供給も断たれているのだ。仮に地上であっても、私じゃそれだけのエネルギーを扱う事が出来ない……幾ら超進化人類と言っても、そんな頑丈じゃないのだから。

 

 じゃあ、一体どうすれば良いのか……

 

(タダでさえ薄氷の運命だったのを、ようやく細い一本道ながら道を造れたのに……ココで終わりとかないわー。だってグランドノヴァ回よ? この後絶対ハンマー使うし、多分プライヤーズの補助で半壊になりつつもグランドノヴァ消し去ってゴルディ完成を待つじゃん? 私が協力してたから完成は速いだろうけど、重力ゾンダーはどうせもう使ってくるだろうからゴルディの強さ強調回になるのは目に見えてる。そんでその後マイクが登場して合体ゾンダーと音波対決……それを制したら多分その後東京大決戦……四天王が直接襲ってくる)

 

 私はこれまで、自分の運命に抗いながらもGGGという組織や護くん(ゾンダーにとっての天敵)に対して、可能な限りの援助をしてきた……それは単なる生存戦略、というだけではない。自分がこの世界に生まれたが故、大切にしたい存在(GGGの人達)や……彼ら(勇者)の仲間になれたからだ。

 

(パスダーを屠っても、その先には原種がいるし……本来の私の派生、Zマスターもいる。

 どう足掻いても危険極まりない運命だし……それすら倒せても、更に未来にはソール11遊星主が控えてる)

 

 転生前の自分が、この世界として知る最後の記憶……希望の灯火を2つ、生き残らせる為に選んだ残酷な運命、何としてもこのクソッタレENDに希望を挟み込みたい。

 

 ※シオンは『覇界王』を知らないので、例のアレ(FINAL)の結末が気に入らないご様子。

 

(何が何でも、生き残って、遊星主も全員ブチのめすって決めたのに……運命って残酷……)

 

 孤独に生きるしか無いと当初は思っていた……でも、仲間が出来た。そうなれば、志半ばで倒れるのは非常に不本意だし、それはかなりのストレスである。

 

(でもさ、よくよく考えたらこの直後にも重要イベントあるけどそれも全部見逃す事になる訳よね……やっぱ不愉快超えて完全にプッツン案件だわコレ、もし誰かに仕組まれた結果ならソイツ絶対許さない、絶許よ絶許!!)

 

 その意識のお陰であろう……いまだかつて無い出力でエネルギーを蓄積している己の身体が、周囲に存在しているであろう、このブラックホールがそれまでに吸い込んだ全てを引き寄せ、何かを形成してく。

 

 ……そして芽生えたやり場のない怒りと理不尽さに、少女は猛然と吠えた。

 

『とりあえず此処から出れたら、元凶()徹底的に叩き()めすッ!!』

 

 その咆哮に応えるかの様に……自身の胸に浮かぶ「Z」の紋章から、閃光と共に1つの球体が生成されたのであった。




すみません続きます、脱出自体は次話に……長いわ!

感想お待ちしてます。


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第33話 光と闇の向こうから(後編)

ブラックホールの中で、ストレスを発散するが如く吼えたシオン……
その意思に呼応して、不思議な力が勝利の鍵を手繰り寄せる。

果たして、この後に何が起こるのだろうか……?



 胸の紋章……ゾンダーメタルとは違う、幾何学的な紋で描かれたZの紋章。

 

 Zマスター化した私の胸に刻まれたこの刻印は、私が超進化人類(後のエヴォリュダー)へと変貌した証でもある……その紋章から出てきたのは、あの時貸倉庫で生成していたコア・ドライヴの1つであった。

 

(な、何でZコアが……私、何もしてないのに……)

 

 しかし、召喚されたコア・ドライヴは私の知らない変異の痕跡が残されており、確実にこの前完成を見たコアとは違って見える……有り体に言えばデカい、マジでデカい……具体的には直径2mぐらい。

 この前生成したコアは直径約15cm位のサイズであり、元となる重金属の塊や発動機の様な動力システムなんかを取り込んで本来のコア・ドライヴへと変化をする筈だった。

 

 ……だが、今現在、私の目の前にあるコアは……

 

(もうドライヴ化を果たしている……何も取り込んでない筈なのに)

 

 それは既に生物の心臓の如く胎動し、早く我が身体を寄越せと胎動を続ける……何が原因なのかはサッパリだが、コレはコレでおあつらえ向きの状態でもあった。

 

(何が原因かは分かんないけど、コレならスゴいのが生まれる……!)

 

 私は早速、周囲に漂う残骸を意識して掻き集め、コア・ドライヴの周囲へと動かす……Zコア・ドライヴを持つ機体はどれだけ破損をしたとしても、心臓であるコアが無事な限り身体を再生……元になった遺伝子情報から導き出された「生まれ持つ本来の姿」を取り戻す。

 それはコアに直接埋め込まれた「生物の遺伝子情報」がコアの持つ「理の回帰」に作用して、生物の持つ自己治癒能力を引き出す為に起きる現象……

 

 ……そして()()()()()()()()()()()()()()のは、もちろん「ボディを製造する時」だ。

 

 ヴォン……ヴォン……ヴォン……ヴォン……

 

 通常より大きく、エネルギーに満ち溢れるコアは周囲の瓦礫から金属を抜き取り……自己の身体とすべく、素粒子レベルで再構成、瞬く間に身体を構成するパーツへと変換していく。

 

 コアが巨大であるぶん、その貪欲さは異常なほどに強く……既に周囲の瓦礫のうち、金属類はほぼ全て吸収を終えており、まだ足りない……とばかりに遠方の金属塊や、特殊な元素を含む合成物を銀色の触手で掻き集め、取り込んでいく。

 

(……ナニこのサイズ、デカ過ぎ……うっそぉん)

 

 やがて完成した金属の塊のサイズは直径約200mを超えており、その質量に至っては最早計測不能なレベルの代物……それがまるで生物の卵のように脈動を繰り返し、周囲に発生している重力エネルギーすらもかき集めて啜っている。

 

(ちょ……ちょっと待って、この子……このブラックホール自体のエネルギーまで吸収してる?!)

 

 我ながらこの事態には驚きを隠せなかった……こんな極限環境で金属生命が己の身体を形成し、あまつさえ周囲からエネルギーを蒐集するなど、如何に常識はずれだとしてもあり得ない。

 

 ブラックホールは基本、凄まじい質量によって空間内に発生した重力というエネルギーが周囲を巻き込んで陥没し、空間自体の支えですら耐えきれずに生まれるモノ……

 重力は素粒子物理学で最も非力ながら、元となるモノの質量に比例して加速度的に強力になり……やがて空間自体のキャパシティを超える事で重力崩壊を発生させるという「数の暴力」を体現したトンデモエネルギーだ。

 

 そんなものに晒されながら、直接その中心でエネルギーを貪る規格外の化け物っぷりに……私は何だか奇妙な焦燥感に駆られそうになった。

 

──────────

 

 ガオガイガーがグランドノヴァから脱出してから、約20分後……応急修理と補給が終わろうとしているガオガイガーは、ブラックホールに消えたシオンの救出を後回しに、グランドノヴァへの対処という無情な選択を迫られていた。

 本来ならシオンは居ないのでスムーズにグランドノヴァの対処へと赴き、Gツールの発動を以てこの戦闘は終了する筈なのだが……今回ばかりは話が違う。

 

《グランドノヴァの影響により、周辺の気温は既に2度も上昇しています……幸い、気温変動は周囲5キロ圏内に留まっており、それ以上の距離ではほぼ影響は及んでいません……ですが、日本政府から早急な対処を……と打診が来ています》

 

《クソッ、シオンは無事なのか……確認さえも出来ないなんて》

 

「ブラックホールの内側……事象の地平面より先は全てを圧し潰し落とし込む井戸の底のような世界、その上内側へと引き込む力は光の速度ですら歪めて取り込もうとする程だ。現代の技術では観測など……」

 

《……隊長……》

 

 超竜神もまた、自ら師と仰ぐ彼女の安否を気に掛けている……だが自分達は「勇者である」という強い責任感からか、後ろ髪を引かれる思いでグランドノヴァ対処のため、破損箇所の応急修理を黙って受けていた。

 

「超竜神の応急修理、あと20分で完了します……」

 

「ガオガイガーの応急修理は完了……補給作業の終了までは、あと15分です……」

 

 それぞれのオペレート作業を黙々と進める命と牛山隊員も、シオンの安否が気になるのか……声のトーンに元気がない。

 

「ブラックホール、依然として変わらず……直径1.5mのまま、沈黙を保っています。ダイキャンサーのエネルギー残量、概算で残り約20%……時間換算であと約30分で限界です」

 

 ギギッ……ギギギ……ギィィ……

 

 それは苦悶の声か、はたまた彼の悔し涙か……己が主を守り切れなかった自責の念が混じった様な独特な音が周囲に響く……ブラックホールの消滅を必死に防ぐダイキャンサーの各部には微細なヒビが生じており、目にあたる突き出したセンサーからは、まるで涙を流す様にオイルが漏れている……それがこの状態を維持し続けるという難易度の高さと、彼自身の必死さを物語っていた。

 

「……作業が完了し次第、グランドノヴァの消去作戦に移行する……プライヤーズ全機、ウォームアップ終了後にGツールを運搬し、その後現場で待機。ガオガイガー及び、超竜神の整備作業が終了し次第、作戦を実行する……!」

 

 大河長官も、拳を握り締め……涙で震えそうになる声を必死に隠しながら、振り絞るように指令を出す……

 

 

 それからもうまもなく、プライヤーズがGツールを携え現場に到着する……その時、異変は起こった。

 

「ブラックホールに変化あり! 異常重力場に急激な変動……シュヴァルツシルト半径が、内側から押し広げられています!!」

 

(; ・`д・´) ナ、ナンダッテー!!

 

 猿頭寺の報告に、現場クルーの全員が驚愕する……それも当然、重力場の異常変動に呼応しての、シュヴァルツシルト半径の再拡大……通常なら消えゆくはずのブラックホールの直径が再び拡大し始めるなど、理論上有り得ない現象なのだ。

 

「猿頭寺くん! 重力場の乱れは何処を起点にしておる?!」

 

「それが……ダイキャンサーの腕の先……ブラックホールの内部からです!」

 

「What?! ブラックホール表面に亀裂発生! 中カラ……Oh my god……!!」

 

 スワンの言葉に、ブラックホールの表面を全員が注視する……そこには、白いヒビ割れの様な1つの亀裂と、そこから生えている2つの金属の刃の如き物体だった。

 

《な……何が起こっているというのだ……?!》

 

「分からん……しかし、この状況は我々の理解を超えておる!」

 

《シュヴァルツシルト半径、更に拡大……直径4mを超えました。尚も拡大中、加えて異常重力場も拡大。周囲の物体を押し退けて……これは……斥力場?》

 

 重力の異常な乱れ、そしてブラックホールの周囲に発生する斥力場……斥力とは引力、つまり引き寄せる力の対極であり、物体を押し退ける力である。

 

「斥力場、直径100mを超えましタ! 尚も拡大中デス!」

 

《重力変動値、乱数が目まぐるしくて計測不能です……! このままシュヴァルツシルト半径が拡大を続けたら……!》

 

「……何だ、この音は……?」

 

 ビキッ……ビキッ……ビキビキッ……!

 

《シュヴァルツシルト半径の内部に、高エネルギー反応……まさか、あり得ません!? 内側からのエネルギー放射を観測するだなんて……!》

 

 牛山オペレーターの通信が、更に常識を覆す事態を報告してくる。物理的なアクセス手段を閉じ込める筈のシュヴァルツシルト半径の内側から反応が返ってくる事など、物理学的にあり得ないのだ。光すらも閉じ込めてしまうブラックホールから、何かが出てくるなど……

 

 ビキビキッ……ビキッ……!

 

「重力異常、尚も変動……止まりませン、加えて内部からの反応ト……金属反応ガ……!」

 

 ギギギッ……ギィィィ……!!

 

 ダイキャンサーの発する声とはまた違う……独特の響きで聞こえてくる、謎の音。

 同時に、黒い穴の表面に発生したヒビがどんどんと拡大をしていく……

 

「事象の地平面に、謎の亀裂を確認! どんどん拡大していますッ……重力異常、更に拡大!」

 

《シュヴァルツシルト半径、150mを突破……尚も拡大中、斥力場も200m域に達しています》

 

「……アレは、何……?」

 

 命が気付いたのは、ついに物理的に認識できる範囲で姿を現した……ブラックホールの表面から突き出した刃のような金属塊……僅かながら震え、根本に発生しているヒビを拡大させていっている。

 

「まさか……ブラックホールから、何かが這い出て来ておるのか……?!」

 

 麗雄は尚も異常拡大を続けるブラックホールから、何かが此方へと侵入……いや、這い出して来ていると推測……事態はその予測を裏付けるかの様に、尚も異常を訴えてきた。

 

ギギギッ……ギィィィ……ィィィィイッ!!

 

 まるでガラスが割れる様に、ブラックホールの表面が内側から空間そのものが壊され……巨大な腕……いや、ダイキャンサーの物とは違う形状の……一対の巨大な鋏が飛び出した。

 

「……ッ?!」

 

『隊長……!』

 

『……何なんだ、あの腕は……?!』

 

 ガオガイガーと超竜神が整備を終え、ようやく水陸両用整備装甲車から降りてくる……通信の会話から外が異常事態だというのは既に把握していたが、降りてきた矢先に空間を割って現れた鋏腕を目撃し、改めて事態の異常さを噛み締める。

 

 重力場異常の拡大は収まったが、依然として変動値は異常を示し続け……薄ぼんやりと光る鋏腕が動き出す。

 

 ガチャガチャ……ガチャガチャ……

 

 巨大な複数の足が規則的に動き、独特な駆動音を奏でる……巨大な鋏腕の持ち主は、深海の様に青黒い装甲で全身を覆った……超巨大な蠍の如き生物型マシン。

 両腕の機構により、重力場を操り……あろう事かブラックホールを中から抉じ開け、強引に這い出てきたのだ。

 

「……な、何という……超重力のブラックホールを、まるで空間を繋ぐゲートの様に潜り抜けて来るとは……」

 

 蠍型メカがその全身を現し、ブラックホールを完全に潜り抜けて来た直後……ダイキャンサーの干渉と斥力場、そしてブラックホールそのものまで同時に消滅、ダイキャンサーが力尽きる様に崩れ落ちる。

 

 ……ギィッ、ギギギッ

 

 ギギギッ……キシャアッ!

 

 崩れ落ち、もう1歩も動けない……そんな表情が見て取れる程疲弊したダイキャンサーを、振り向いて己の鋏で支え、まるで仲間を支える様な体勢になる蠍型メカ……青黒い蠍と、緑の蟹……同じ鋏腕持ち故の仲間意識なのか。

 

『……何が……どうなってるんだ……?』

 

 途中から生で見てはいたが、何が繰り広げられたのか理解に困る状況を……凱は辛うじて言葉にする。

 その時、蠍型メカの頭部装甲が音を立ててスライド展開され……中から体躯相応の複眼と、コクピットらしき構造物……そして、そこに収まっていた人影が現れた。

 

『……え、此所……まさか、ホントに出てこれた……?』

 

『……せ、先生……?!』

「『シオン……?!』」

「「「稀星(くん)……?!」」」

 

 混乱極まる状況を一切理解していない、呆気に取られた一言……驚愕するGGGな面々。

 

 ……ワケガワカラナイヨー。(by.全員)




もう化けモン通り越してます……ネタは知る人ぞ知るアレ。
シオンの星座は蠍座ですヨ。

進行に合わせて情報は資料に追加されてます。

なお、次回予告はもう少しお預け……


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第34話 滅ぶべき右腕・乖(その頃、護くん達は?他)

さて、前話で無事にブラックホールから脱出してきたシオンちゃん。
……その頃、護くんが何をしていたのか……

フラグ的なヤツがあるかもしれませんなぁ……見てみて下さい。
なおタイトルの関連性とか、原作通りだとかその辺りは意図的です。



……次回予告作るのを(すっかり忘れて)めんどくさがった訳ではない、決して。



 ガオガイガーがグランドノヴァから脱出してくる少し前……護はボルフォッグと共に、グランドノヴァを作り出しているゾンダー核の捜索に出発していた。

 

 東京の地下には、洪水や大雨による浸水被害を軽減する為の……巨大な地下空洞が整備されている……護は己のGパワーセンスにより、その地下空洞にゾンダーが潜んでいる事を突き止め……ボルフォッグの護衛の下、慎重を喫して捜索しているのである。

 

『……では、あのグランドノヴァを作り出しているゾンダーの核だけが、この地下に潜んでいると?』

 

「うん……反応は2つあるけど、多分あのグランドノヴァのコントロールで手一杯なんだと思う」

 

 2つの反応……ボルフォッグは前回取り逃がしたハッキングゾンダーの件を思い出し、納得する。が、ボルフォッグはゾンダー核が2つとも動かない事に疑問を感じていた。

 

(いくらグランドノヴァの制御で手一杯だとしても、コア2つをその様に利用する必要性は無い筈……何らかの罠を張っている可能性がありますね)

 

 慎重に歩みを進める2人……その時、ボルフォッグは空間的な揺らぎを感知する……揺らぎ自体はすぐに収まったが、ボルフォッグは直後のデータに驚愕せざるを得なかった。

 

『こ、コレは?! GPSデータを書き換え……いや、この反応は……』

 

 ボルフォッグのGPS位置情報が、揺らぎの観測前後で明らかに違っていたのだ。それもただ移動しただけで……しかし、ボルフォッグは勇者ロボ。Gストーンを動力とする為、直接的に得ているデータを改竄するなどほぼ不可能であり、仮にゾンダーが接近していたのであれば護少年が警鐘を鳴らす筈である。

 慎重に護をその手に抱え直し、ボルフォッグは再び元来た道を歩いて戻る……

 

 すると先程関知した揺らぎを再び感じ、GPS位置情報が書き換えられる……いや、書き換えられたのではなく、数値的にズレた位置を補正する様な変化を起こしていた。

 

「ど、どうしたの? ボルフォッグ……?」

 

 物理的な接触もなく、特定の場所をただ移動するだけでズレる様に位置情報が変わったのなら……考えられる事は1つ。

 

(どうやら、この地下空洞の通路は空間ごと入れ替えられて……迷路と化している。しかも区切りを越える度に、毎回違う場所へと転移させられる様ですね……)

 

『護隊員、私から離れないで下さい……此所は既に、敵の罠の中の様です』

 

──────────

 

 それから40分以上が経過。ボルフォッグと護の地下捜索は難航を極めていた……それもその筈、何者かの干渉により地下空洞の通路は迷宮と化しており、行けども戻れども違う場所へと飛ばされ、脱出すらも儘ならない状態なのだ。

 

 慎重に歩を進めるボルフォッグの頭に浮かんだのは、いつぞやかに姿を見た……水兵の様な外見のゾンダリアン。ヴァルナーの件に遭遇したシオンからも奴の目撃報告が上がっており、ボルフォッグ自身も、護の護衛の際に遠目から何度か目撃していた……

 

(転移先の法則性も掴めない、流石ですね……この罠を張ったのは、恐らくあの時のゾンダリアンでしょう……何か、攻略の糸口は……ッ?!)

 

 ヴォォンッ! ギュルル!

「うわぁっ?!」

 

 何とかして迷路の攻略法を読み解こうとし始めたその時、地上で凄まじい重力異常が観測され……ボルフォッグは護を保護する為に両手足のタイヤを接地、いつぞやでも使用した高速移動でその場を離脱……直後に天井の一部が崩壊し、九死に一生を得た。

 

(この重力異常……地上で何かあったのかもしれません)

 

『……大丈夫でしたか? 護隊員』

 

「う、うん……ボルフォッグは?」

 

『私は問題ありません……ですが、この先が通れなくなりました。ルートを見直す必要があります……』

 

「う~ん、ゾンダーは近いと思うんだけど……何だか遠くにも感じるんだよね……」

 

『……どういう事ですか?』

 

「1つは移動する度に場所がちょくちょく変わってるんだ……すぐ近くに感じるのに辿り着いてる気がしない……でも、もう1つは感じ方が遠いけど、匂いみたいに気配が漂って来てるんだ……多分、迷路になってる事と何か関係があるかもしれない」

 

 常に変動する迷路を攻略するには、何かしらの指標が必要になる……護はゾンダー核の反応の1つが、匂いの様に漂って来ると感じていた。ならばいっそ、その気配を辿る方が良いのかもしれない。

 

『……成る程、では一度……試してみるとしましょう。護隊員、漂って来る方の指示をお願いします』

 

「うん、この先からだよ!」

 

 複雑に入り汲んだ迷路……しかし、護はゾンダー核の気配の先を追い始め、順調に道を進むボルフォッグ……すると護達の前に、2つの黒い何かが飛び出してきた。

 

『……ムッ?!』キキィッ!

 

 キュックルゥゥゥ! シャアァァァ!!

 

「え……ヴァルナー? でも、背中にあんなのは……」

 

『彼等は、ピスケガレオン……稀星隊員が従えている自律稼働型のメカです。そう言えば、あのタイプは物理的な障害を無視して移動できる能力が有りましたね』

 

 天井をすり抜け、能力で水面に見立てた床から顔を出すピスケガレオン2体……停止したボルフォッグから降りた護は、そのそっくりな外見にヴァルナーと見間違えてしまった。

 

「……もしかして、あの時助けてくれた……?」

 

 ピスケガレオンの名に聞き覚えのあった護は、過去に深海へと連れ去られた時の事を思い出した。イルカ型がその言葉に反応し、護の体に顔を擦り寄せてきた。

 

「うわっは~♪ やっぱりそうだったんだ! あの時はありがとう」

 

 シャアァァッ! キュイィィッ!

 

 サメ型の声に呼ばれてイルカ型は護から離れ、2体は揃ってボルフォッグの前の壁に飛び込み、再び顔を出す。その壁面は波打つ水面の様に揺らいでおり、イルカ型が呼び込む様にボルフォッグを見ていた。

 

「……もしかして、ゾンダーの所に案内して(ショートカットさせて)くれるのかな?」

 

『その様ですね……彼等の能力を借りれるならば、この迷路の攻略も容易になりそうです』

 

 護はビークル形態となったボルフォッグに乗り、シートベルトを確認したボルフォッグも発進……ピスケガレオンの造り出した波打つ壁面へと突入し、迷宮をショートカット。

 ピスケガレオンもボルフォッグの動きに合わせ、護の感知能力が示す先の壁を次々に揺らぎ波打つ壁面へと変えていくのだった……

 

──────────

 

「ウィィ? この反応……迷路を強引にショートカットしている、あの紫のロボットにはそんな芸当など出来ない筈」

 

「ポロネズの報告にあった裏切り者のメカか……確か、サメとイルカは地形を無視して移動してくると……ムッ!?」

 

 

『前方にバリアー確認、分解します……《メルティングサイレン》!』

 

 ファンファンファン……!

 

 ボルフォッグには、様々な状況に対応するべく、特殊な機能が多数内蔵されている……

 この【メルティングサイレン】は、ギャレオンの持つ咆哮でゾンダーバリアを分解する機能を参考に開発されており、特殊な波長の音波とエネルギー振動波でゾンダーのバリアーを分解し一時的に無効化できるのである。

 

『ウィィィィ! やはり現れたな、紫のロボット』

 

『ゾンダリアン?! 護隊員、ピスケガレオンの方へ!』

 

『あの子供も一緒か、ならば飛んで火に入る何とやら……!』

 

 ペンチノンの思わせ振りな台詞に、一瞬気を取られるボルフォッグ。その一瞬の隙を突いてピッツァが物陰から飛び出し、護を狙う……だが、護の側には()()()()()()が居た。

 

『貰ったァッ!!』

 

 ガキィンッ!!

 

『ック……貴様等……!』

 

 キシャアァァァ!!

 

「うわっは~♪」

 

 サメ型のピスケガレオンはピッツァの動きを読み切り、爪の攻撃を強靭な自身の尾で叩いて阻止……護の回りを泳ぎ回りながら威嚇の声を上げた。

 

『ピッツァの攻撃をああも簡単にいなすとは……』

 

『隙あり、です! ダブル・ブーメランッ!!』

 

『ウィィィィ?!』

 

 キシャアァァァ!!

 

 ボルフォッグに隙を突かれ、ピスケガレオンとの即席連携攻撃でダメージを負うペンチノン……しかし、そこはさすがにゾンダリアン。すぐに体勢を立て直しダメージも回復される……そして更に……

 

『今度は付いて来られまい!?』

 

 キュルル?! キュイィィッ!!

 

「うわぁぁぁぁっ?!」

 

 イルカ型もやらせまいと必死に喰らい付こうとするが、先程よりも更に加速し音すら置き去りにするピッツァの速度にはさすがに対応しきれず、護の至近距離に接近を許してしまう。

 

『?! 止めろピッツァ! その子供は……!?』

 

 キィィィン ぶわっ……!

 

 護のすぐ近くまで迫ったピッツァの攻撃に、防衛本能から咄嗟にGパワーを開放……緑色の衝撃波が空間を伝播し、ピッツァを吹き飛ばす。更に……

 

『ぐあぁっ!? こ、この光は……?!』

 

「……っ?! ……、……」

 

『……何という事だ……これでは作戦の意味すら、ウリュゥゥゥ!』

 

『仕方あるまい、出直すぞ……!』

 

 悔しさを滲ませる捨て台詞と共に撤退するペンチノンとピッツァ……一瞬だけとはいえ、護を殺せると錯覚してしまった……が、実際は護の防衛本能から発せられたGパワーによる手痛い反撃を受け、襲った側である筈のピッツァの方が片腕を消し飛ばされ、撤退を余儀なくされてしまう結果となったのであった。

 

──────────

 

 ブラックホールからの脱出劇に半ば思考停止していたGGGだったが、プライヤーズの到着により全員回復……残されたグランドノヴァを消滅させるべく作戦が始まった。

 

『あれは、Gツール……!(ふぅ……大事なイベントには間に合った訳ね)』

 

 プライヤーズによって空輸されてきたGツールを見て、シオンは内心……物凄く安堵した。

 

──────────

 

 やはりこのGツールでなければ、グランドノヴァと……内部にあるゾンダーメタルプラントを何とかする事は出来ない。大河長官もそれを理解しての承認だろう……だが、せっかく整備を済ませた訳だし、凱さんに余計なダメージを与えたくはない……ここは私の出番だろう。ダイキャンサーの腕なら、想定外とはいえ耐えられる筈だ。

 

 そう思い、私は機能停止寸前のダイキャンサーに触れ、再起動を試みる……勿論、博打や根性論ではなく、ちゃんとした仕様による回復手段。私と直接接触している間、アーマロイド達の回復力は劇的に引き上げられ、コア以外が破片と化していようとも……2分もあれば完全回復だ。

 全身に細かな損傷や駆動系の機能不全が目立つ状態だったが、幸い中枢機能自体は無傷……無茶をした反動による駆動系のダメージや外部の損傷はものの数秒で回復しきり、エネルギーもコアの活性化で回復の目処も立った。

 

『凱さん、ダイキャンサーの腕を使って下さい……多分、そのままGツールを使うと……また整備班の皆さんを泣かせる事になりそうなので』

 

『……え? あぁ、うん……そんなにか?』

 

『そんなに、です! あの人達にまた3徹や4徹させる訳には行きませんから……!』

 

 何だか釈然としない様子の凱さんに、ダメ押しの如く理由を追加する……実際、初戦後のガオガイガーの補修やらでも整備班の皆さんは2~3徹していたらしく、私がメンタル含め身体のケアを始めるまでは彼等全員、取れない目の隈で奇妙な統一感すらあった程だ。

 

『あ~、うん……分かった』

 

 なお、整備班の連徹というリアルな情報を聞かせた直後……凱さんは何とも言えない表情で理解してくれた。防衛組織なのに労基に訴えられるのはシュール過ぎるからね……

 

──────────

 

 ギガンティック・アームズを装着して、ガオガイガーはGツール……ゴルディオンハンマーを握る。

 

 ゴルディオンハンマー……正式名称、グラビティ(重力)ショックウェーブ(衝撃波)ジェネレーティング(発生)ツール(装置)。発生させた重力場の中で空間振動波……つまり、物体を貫通する重力衝撃波を生み出し、対象の分子構造そのものを空間ごと超振動させて組成崩壊へと導きつつ、エネルギーや物質そのものを光の粒子へと変換してしまう恐るべき発明である……

 

 繰り出されるその圧倒的破壊力は、試算の段階で物理的な妨害はほぼ意味を成さない究極の攻撃……故に厳重な封印が施されており、その解除には内閣総理大臣の承認が必要。手続きの簡略化や必要時の緊急性を考慮し、渡されていた承認キーを大河長官が懐から取り出した。

 

「ゴルディオンハンマーァァ! 起動ォ! 承認ッ!!」

 

 黄金に輝く封印解除キーを機構に挿入し、解除キーを回す……2重の機構ロックの1つ目が外され、ガオガイガーのメインオペレーターである命の座るコンソールが一部変形……内部機構により、専用アクセスモニターとカードスリットが姿を現した。

 

「了解! ゴルディオンハンマー……封印機構(セーフティデバイス)解放(リリーヴ)ッ!!」

 

 コンソールの変形終了を確認し、命もカードキーを上着の内ポケットから取り出し、変形で出現したモニター脇のカードスリットに、黄金に輝く封印カードキーを台詞に合わせて通す。

 

 ピンポン♪

 

 一見不釣り合いな効果音が流れるが、この音はカードキー認証と声紋が一致したからであり、この音……実は鳴らなければいけない超重要な効果音なのである。

 

 その音を皮切りに画面が目まぐるしく切り替わり、封印状態を表示していたモニターの映像がひび割れたグラフィックと共に割れ……封印解除と、ハンマー機構の発動状態を示す画像へと切り替わった。

 

──────────

 

『よし……プライヤーズ、離れてくれ』

 

 ゴルディオンハンマーをプライヤーズから受け取り、元の腕より少し大きい右腕(ギガンティックアームズ)でハンマーを掴む。ガオガイガー専用に造られたこのツール……ゴルディオンハンマーは正真正銘、獅子王麗雄博士とGGGの研究スタッフが造り上げた地球製技術最強のツールであり、その力は原作でもあらゆる敵が警戒、または逆利用しようとする程に強力であった。

 オリジナルはジェネシックの五指【ゴルディオンネイル】であるが、麗雄博士達はその機構を純粋な地球の科学力で完全再現……サイズこそ大幅に巨大化してしまったが、それによって破壊力では模倣元を遥かに上回る物を創造したのである。

 

『……ゴルディオン、ハンマーァァァ!!』

 

 空中でハンマーを構え、振り下ろす動きを始めると同時にスラスターを全開……グランドノヴァの最上部へと突撃するガオガイガー。

 

『うおぉぉぉぉぉ……!!』

 

 あらゆる障害を消し飛ばし、対象を光の粒子と化す究極の絶対破壊ツール……ゴルディオンハンマーが、グランドノヴァと……その中心で育ちきろうとしていたゾンダーメタルプラントを同時に消滅させていく。

 

《……此方、ボルフォッグ……護隊員によるゾンダーコア2個の浄解を確認。護隊員と私、途中合流したピスケガレオン2機……これより要救助者を連れて帰還します……》

 

 僅かに遅れてボルフォッグから、ゾンダーコアの浄解成功の報告が入り……グランドノヴァの完全消滅を以て、今回の作戦は完全終了となったのであった。




ようやく終了です……
ちなみに、ボルフォッグは護くんと捜索任務に出る前にちゃんと連絡を入れています。
分かりにくいですが、前話の大河長官の台詞にありますよ。

さて、次話は完全オリジナル回の閑話を挟み、いよいよゴルディマーグが初登場します。
教頭先生がゾンダー化するシナリオは、よく考えたら安直な策だし……ボツ?
シオンの援助にて、どんな風に魔改造が施されているのか……お楽しみに♪

次回予告


君達に、最新情報を公開しよう!

稀星シオン……
GGG最年少の医療特務官である。

大概的な彼女は医療現場に突如として現れた新星……
その経歴を買われGGGに招聘されたとなっているが、
実際に働く彼女には、様々な顔があった。


次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第35話『稀星シオン(超越者)の憂鬱』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!


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第35話 稀星シオン(超越者)の憂鬱

おはこんばんちわ、睦月透火です。
何だかんだでもう35話ですよ……原作換算だとまだ20話辺りなんですけどねw
オリジナルの要素を挟むと話数が嵩むのは宿命、はっきり分かんだね。

そして日に日にじわじわとお気に入り登録者も増え、今や600名以上がこの物語を楽しみに……お陰で執筆のやる気は出ておりますが……時間がなかなか取れませぇん!!(バ◯ージ風)
重ねて、毎回の誤字報告もありがとうございます。
たまにある文章修正も納得いくモノは採用させて貰ってます……実を言うとマジで助かりまする(感涙)。

さて、今回は羽休め的なオリジナル回です。
テイスト的には原作とほぼ同じはず……あれ、バトルは?(すっとぼけ)

ちなみに……本来の筋書き通りなら、次話になる予定だった原作20話「ゾンダー先生」のシナリオはお亡くなりになりました(陳謝)。



 稀星シオン……15歳で人生最大の転機を迎え、今やGGGと肩を並べてゾンダーと戦う「もう一人のZマスター」である。

 

 ……そんな彼女の朝は早い。

 

(……ん……ぇ? あ、そっか……スワンさん、夜勤シフトだったけ……)

 

 目覚めてすぐに感じた違和感……本来ならまだ寝ている筈の同居人、スワン・ホワイトの姿が見えない事に気付き、シフトの都合で居ない事を思い出すシオン。

 

 寝惚け眼のままベッドから降り、歩き出そうとしたその時……

 

『ヴォン!?』

 

 大型犬の様な吠え声が響き、シオンは声のする方へ振り向いて……

 

 ガツッ

 

『……はぇ……?』

 

『クゥン……』ドシャッ

 

 テーブルに脛をぶつけてバランスを崩し盛大に転倒……ベッドの側で吠えた大型犬は、器用に前足を顔に持っていき、まるで「あちゃ~」とでもやる様に哭いた。

 

『……ったぁ……なぁにぃ……?』

 

 幸い怪我はなし、ダメージとすればテーブルの上にあった物が散乱してしまった事と……

 

『……っ?! ~~~~~!!(恥ずかしさのあまり声にならなかった叫び)』

 

 倒れた衝撃で眠気が吹き飛び、テーブルの角に脛をぶつけ転倒という如何にもな顛末に、久しく忘れていた羞恥心が暴走してしまった事くらいである。

 

──────────

 

『よし……作り置きOK、洗濯OK、予定の書き置きOK……っと。じゃあ、後はお願いね? テリー』

 

『ヴォン!』

 

 自分の昼食と、帰ってくるスワンさんの為に作り置きを用意し、全自動洗濯機のスイッチを入れて予定の書き置きを残し……万が一の警備と簡単な掃除を、新たに作成した汎用自律型アーマロイド(暫定)【猟犬(りょうけん)座】のテリーに任せて部屋を出る。

 

 テリーは、ペットが飼えないこの高級マンションでペットが欲しい私がスワンさんとの協議の結果新たに作成した子で、外見は純白の毛皮が美しい大型犬……一見、ホワイトシェパードにも見えるが、よく見ればドーベルマンっぽい顔だし、体毛はフワフワでボーダーコリーに近い質感、体格も世界最大の犬種と言われるグレートデーン並に大きな体長100cmなのである。

 なお、人工筋肉や生体組織の皮膚構造、関節と駆動系は新型システムだし生体内燃機関等々……私も学習した最新の技術をふんだんに使用し、見た目は完全に大型犬にしか見えない様になっている……唯一、違うのが。

 

『ヴォフッ』

 

 ピピピ……! ブゥゥゥン

 

 赤外線通信機能を用いた機材や、ネットワーク機器を操作し支配する事も出来る……【電子操査犬(私命名・誤字に非ず)】でもある。なお、今のはネット経由で家にある最新型のル◯バを操作し起動させて掃除を始めただけ……ちな、もちろん最強の自宅警備員。

 

──────────

 

 場所は変わって、GGG本部内にあるガオーマシン格納庫……

 

 先日のグランドノヴァ騒動により、予てからのダメージチェックと大規模修復の為オーバーホールが必要となってしまったガオガイガーは、損害状況の調査のためにガオガイガー(合体状態)のままハンガーに懸架されている……麗雄は調査結果を表示するモニターを見ながら、アレコレと頭を悩ませていた。

 

(ギガンティックアームズによる緩衝効果があって尚、ゴルディオンハンマーによる反動でこれ程深刻なダメージを受けるとは……)

 

 現在、ゴルディオンハンマーによる反動でガオガイガーが受けたダメージレベルはイエローのレベル8……無事に見えるのは、ギガンティック・アームズが壁代わりになった右上腕のフレームのみ、という状態である。しかしそれはあくまで外見のダメージであり、内部の状態は更に深刻。

 ちなみに原作でガオガイガーが受けていたダメージを同じ尺度で測るとイエローのレベル5……内部機構まで深く損傷はしたが、各部関節の連結そのものは何とか大丈夫、という具合だ。

 

(各部……特に右半身の関節モーターがほとんどダメになっておるし、ギャレオン側のコネクター部にも少しばかり歪みが生じておった……まさか、想定の倍近い出力を得られるとはのぅ)

 

 ガオーマシンにある各部関節を稼働させるモーター、つまり駆動系のダメージが最も酷く、直接繋がっていたライナーガオーの右肘関節はギリギリ何とか繋がっている状態……あと一撃でも喰らえば肘から先がポロリといきそうな程。外見とは正反対に、最もダメージが酷い箇所である。

 

《……博士、稀星研究員が到着されました》

 

「そうか、済まないが此方へ呼んでおいてくれ……」

 

《了解しました》

 

(性能の向上は目覚ましいが、逆にそれが原因で対処法に頭を痛める事になるとはのぅ……)

 

 何とか自分で問題を解決できれば良かったが、想定外に次ぐ想定外。やはり彼女の力を借りなければ解決は出来ない……そう思い、麗雄は詳細データとにらめっこしながら彼女の到着を待つのだった。

 

──────────

 

 専らGGGまでの通勤路を、私は徒歩で移動している。

 

 しかし、誰も居ない道をトボトボ歩くのはどうも味気無いし、好奇心に負けて少し前から……私は自分の姿をある者に変え、色々なシチュエーションを想定して通勤している。

 

『はちみー はちみー はちみー♪ はちみーをなめると あしが~ あしが~ あしが~ はやく~なる~♪』

 

 今日は鹿毛とも呼ばれる茶色い髪の毛に、白メッシュを一房前に追加し、身長も少し弄る……史実には無い学園の制服を着込み、独特なフレーズの歌を口ずさみながらの通勤だ。

 

 ちなみにこの変身通勤は既にご近所さんや周辺地域に認知されており、一部からは『名物』扱いを浮けている……そりゃ、アニメやゲームのキャラクターがナチュラルに現実化しているのだからそう扱われるのは自然だろう。

 

「……あっ、テイオーだ!」

 

「なん……だと……!?」(オレンジ髪の高校生)

「ヴェッ?! マズィネ?!」(黒髪バイク青年)

「……ウソでしょ……」(茶髪ロングの女子高生)

 

『おっはよー♪』( *・ω・)ノシ

 

 登校中の小学生の声で周りの人が私に気付き、私は手を振って応える……数秒後、待っていた歩行者用信号が変わったので、私は横断歩道をこの姿独特の(テイオー)ステップで渡りつつ通勤を続けた。

 

 曲がり角で私の姿が見えなくなると、見ていた近くの高校の制服を着ている男子数人が話し出す……

 

「相変わらずの高クオリティ……マジで本物かと思うよなぁアレ」

 

「だよなぁ……先週はFateの◯シュちゃんだったろ?」

 

「その前は禰◯子ちゃんだった……マジでヤベーよなあの再現度」

 

「そういえばあの人、この前宇宙開発公団のビルに入っていったの見たぜ?」

 

「マジかよ?! ってーと、公団……もしくはGGGの関係者って事か?」

 

「知り合いがプロレス観戦してた時、例の怪物騒ぎがあっただろ? そん時もGGGの関係者が近くに居たって誰かが噂してたぜ?」

 

「……意外と身近な人が多いんだな、GGGって」

 

──────────

 

 はてさて、出勤直後に麗雄博士からの呼び出し……時間軸的にも、多分ハンマーの反動対策かな? 確か出力が想定の1.94倍に跳ね上がってたからねぇ……

 

《GGG技術開発部・特別研究員、稀星シオン……確認しました》

 

 連動したセキュリティシステムに認証され、自動扉が開かれる……研究室は高度なセキュリティによる厳重な管理体制が敷かれており、私はG-USBを介した固有ナンバーと490桁の簡易機械暗号(ワンタイムパスワード)で認証を受けているのである。

 

「おぉ、待っておったぞ……!」

 

『博士、おはようございます』

 

 出迎えてくれた麗雄博士の顔には、少し疲れが見える……安心材料と休息が必要だね。と私は考えながら、挨拶を返し博士の隣に立ってモニターのデータを頭に入れていくのだった。

 

──────────

 

 博士とハンマーの反動対策で正味2時間弱を費やし、今度は公団側の施設へと移動……今日は週2回やっている定期面談の日だ。

 公団関係者とGGGスタッフは相当数居るが、私を含め12人の専門カウンセラーやケア専門の一般スタッフも居るので、私の受け持ちはそれほど多くない……私は主にGGGスタッフのケア担当だしね。

 

 公団関係者にも面談とケアは行うけど、基本私がやるのは例のストレス解消マシンでスタッフのメンタル回復をサポートする程度……元々このマシン自体が優秀なため稼働のモニタリングやアクシデントに対処するくらいであまりやる事が無かったりする。

 

 全く無い訳でもないけど……

 

 それが終われば昼食を済ませ、午後イチはまず勇者ロボ達との交流……と決めている。

 今回はボルフォッグも一緒に、例の教本映像典の感想を語る事になっていた……

 

 

『私はやはり、ジェイデッカーですね』(氷竜)

 

『僕はマイトガインだな』(炎竜)

 

『私はファイバードを推します』(ボルフォッグ)

 

『へぇ……意外と分かれたのね、推し作品』

 

 私の「個人的なイチオシ作品はどれ?」という質問に……氷竜はジェイデッカー、炎竜はマイトガイン、ボルフォッグはファイバードと回答……無論、各作品に対する琴線シーンも一緒に教えてくれた。

 

 氷竜のイチオシは、やはり第一話のデッカード再起動シーンだ……理論上あり得ない状況で主人公、勇太の危機に再起動を果たし、さらには消去されたはずの記憶を思い出し……カッコいい名乗りを上げるあの一幕。理詰め的な思考が目立つ氷竜だが……明らかに非理論的とはいえ、それまで劇中で彼等が培った友情が生んだ奇跡に大きな感動を覚えたのだろう。

 

 炎竜のイチオシはマイトガイン……しかも最高のシーンは複数あり、コピーされた哀しき勇者ロボ(ブラックガイン)や主人公のライバル、雷張ジョーの生き様……ラストシーンでヒロインや多くの人々の応援を受けてラスボスを撃破するシーン等々、やっぱり炎竜は良い意味で男の子なんだなぁ~とある意味感心してしまう私がいた。

 

 ボルフォッグも意外(?)に、名シーンを複数推してきた……正義の心を持った精神生命体が、とある発明家の造ったアンドロイドの身体に憑依し誕生した青年、火鳥勇太郎。発明家の孫である少年や周囲の人々とのふれあいを経て人類を学び、宇宙支配を企む悪の勢力ドライアスから、人類や自らの第2の故郷となった彼等の住む惑星を守る為、仲間と力を合わせて戦うその姿勢に……自分たちと通ずるものを感じたのだろう。

 

『皆のイチオシ、私も同じなんだ……私は嬉しいよ! こんなに皆が感情を、心を学んでいる事が……!』

 

『……なら、僕達にも先生のイチオシ……教えてくださいよ?』(炎)

 

『……っ……』

 

 アレ? 何かこれ……逃げられない雰囲気……?

 

『そうですね、先生の琴線に触れた物語……是非とも知りたいです』(ボ)

 

『稀星先生の一番推し……どんな名場面でしょうか』(氷)

 

 言える訳無いでしょうが!! 私のイチオシは今この世界……ガオガイガーだし、これから迫る危機と、それを乗り越えて未来を掴んだ数々の奇跡だとか……

 

(さすがに誤魔化せない……でも、言える訳がない……)

 

 ひきつった笑みのまま、私はつい最近覚えた「量子化」を利用して姿を眩ます……3人には、紫色の光の粒子が光ったと思ったら私の姿が消え去っていた様に見えただろう。

 

『『『……ッ?!』』』

 

 まるで煙のように消え去った私の姿を、センサー類をフル稼働させて探し出そうとする3人……

 

『ズルいぜ先生! 教えてくれたって良いでしょう?!』

 

『誤魔化しはお勧めしませんよ?!』

 

『……電波、動体、熱感知、いずれも反応無し……正に完璧な隠業、しかし……必ず何処かに居る筈です……!』

 

 量子状態なら通常センサーには掛からないが、いずれボルフォッグならこの隠れ方の対処法も見つけそうだなぁ……とぼやきながら、交流は時間制限付き鬼ごっこへと移行したのである。

 なお、氷竜と炎竜は戦闘訓練がこの後控えており、ボルフォッグも外部からの情報整理があったので、この鬼ごっこは1時間後に強制終了となった。




ダメージレベルのチェック、指標を示すと……
グリーン(装甲表面、または装甲そのものが破損する)
イエロー(内部機構、関節部に不具合または損傷を受けた)
レッド(機能中枢に重大な障害が出る程の深刻なダメージ)
となります。
数値レベルは1~9まで。

レッドのダメージ描写は原作FINALで、ガオファイガーがパルパレーパにボコられた時みたいな状態と考えてください。(レッド・レベル8)
あの状態、普通なら動かないよね……エヴォリュダー能力で無理矢理動かしたんだよ……

なお、原作2話で描かれたヘル・アンド・ヘヴンによる反動ダメージ換算はイエローのレベル3程です。

──────────

次回予告


君達に最新情報を公開しよう!

突如、東京を異常な重力が襲う。
同時に自衛隊の基地から大型輸送機が盗まれ
ゾンダー化して世界中の大都市を爆撃し始めた。

神出鬼没な敵が2体同時、機動部隊は補給線を断たれ
更にやむを得ず二面作戦を余儀なくされる……

その時、突如現れた謎のロボットとは?


次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第36話『金色の破壊神』

次回もこの小説でファイナルフュージョン承認!!


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第36話 金色の破壊神

……前回の更新時に、素で次回予告を書くの忘れてました。
ちゃんと書き足しといたから許して……ユルシテ……

さて、タイトル通り……ついに『金色の破壊神(ハンマァァァコネクトォッ!)』のお時間です!



 ガオガイガー本体への、ゴルディオンハンマーの反動ダメージ対策。

 それを行い、かつ戦力を増強させる手段……それこそ、ハンマーへの変形機構を持つマルチロボの開発。

 

(つまりはゴルディーマーグの開発って事なのよねぇ~)

 

 博士からの打診を受け取る少し前から、私は自発的にゴルディーマーグ開発に使えそうな素材開発や資料検索……そして技術開発にも手を伸ばしていた。

 

『……当初の想定の1.94倍の出力に対応するには、やはり新素材と装甲防御システムを見直さないと……それに、重力ゾンダーが本格活動してないのも気になるわね……』

 

 過去にゾンダー化させられた人物を見ても、重力子爆弾なんて代物をイメージして造り上げられる様な人物は居なかった……それは則ち、重力研究の第一人者のゾンダー化は既に行われており、プラント構築よりも先にGGGへの対処を優先してきた証左である。

 

(恐らくはあの人のゾンダー化直後から、先に爆弾生成を指示された可能性……)

 

 原作からの想定を大幅に逸脱した行動……パスダーが直接、ではない……それはパスダーが許さないから。恐らく四天王の誰か……プリマーダは直情的な思考が大半を占めるので、恐らくポロネズだろう。少なくともペンチノンとピッツァは、私よりも護くんに対して色々とアクションを起こしているから……多分護くんにアルマの面影を重ねて、無意識に追っているのだと思う。

 

(なら、彼女をゾンダー化したのはポロネズに変わった? ここも逸脱ルート……なら、今後も予測は付かないわね。……対処がいつもぶっつけ本番とか、勘弁して欲しいわ)

 

──────────

 

 ゴルディーマーグ開発そのものは、原作よりも順調に行われていた……AIの思考パターンも原作通り参謀からサンプリングを行い、そこから調整しつつ、教本映像を利用して序盤から氷竜達と同等に仕上げる予定……なのだが。

 

「AIシステムに問題はなぁぁぁぁいッ!!」

 

 参謀こそ何度もああ言ってはいるが、実は問題大有りだった……参謀の思考パターンって、ぶっちゃけ完全にいうこと聞かない駄々っ子なんだもん。

 精神年齢が小学生? 更にガキ大将系って何かの罰ゲームですか? AI育成にも関わり……しかも氷竜達から先生と呼ばれる手前、ゴルディだけが違う認識を持つと統率にも影響が出る可能性がある。なので短期とはいえ早々に同等の認識を持たせたが……上記の性格故にかなり御し辛かった。

 

『……何でアンタは、そんなに俺に構って来るんだよ!?』

 

 付き合い初めて4日ほど経った頃、ボソリとそう呟いたゴルディ……ようやく来た千載一遇のチャンスに、私は今後の彼の活躍に期待を掛けつつ例の教典映像集を準備するのだった。

 

 

 それからボディの製造も無事に終了し、先のグランドノヴァやその他諸々も含めて、開発開始から約2ヶ月とちょい……ガオガイガーのオーバーホール終了と同時にゴルディーマーグ開発計画も最終段階に入った。

 AIシステムもあれから順調に進み、最初は利かん坊だったゴルディのAIも何だかんだで指示を聞く様になった……後はボディへの移植と最終調整、稼働テストを残すのみ。

 

(……でも、何でゴルディは私に対してだけ妙な態度を……)

 

 あの時から、私に対してだけは何故か時々よそよそしかったり、微妙に優しかったり……まぁ、指示はちゃんと聞いてくれるし、以前からすればだいぶ素直にはなったと思う。氷竜達も、私を先生と呼び始めた頃から感情豊かになったし、態度も人間っぽくなったから同じ感じになったのかな?

 

 そんな事を考えていた頃……事は既に東京の地下で起こっていた。

 

──────────

 

 ゴルディのAI移植作業が完了した直後、都内の複数エリアで重力異常が発生と急報が入る……緊急事態の対処の為、システムの最終チェックを行う前に対処せざるを得なくなった。

 

(……出現のタイミングが神掛かってるわね、これも偶然なのかなっ?!)

 

 万が一に備えて、重力コントロールも可能なグラヴィスコルードをすぐに動かせる様に待機させ、ピスケガレオンを召喚して跨がり最短で地上へと上がる。グラヴィスも快諾してくれたが、何処で待つのかと聞くと、S◯Wでお馴染みの某蒼の魔神(スーパーロボット共演ゲームのチート機体)と同じく、重力の井戸の底に身を潜めて合図を待ってくれるらしい……ってちょい待ち、アレと同じ事やるの?! というか出来るの?!

 

 ……何か、急に頭痛くなってきた。

 

──────────

 

 地上での戦況はほぼ原作通り……重力を操るゾンダーロボ相手に、機動部隊は苦戦……最近、自らガオガイガーに加勢しているダイキャンサーも、触れずに相手を手玉に取るゾンダーロボ相手は苦手なので同じく苦戦を免れない。

 

(……やっぱり、グラヴィスを出す? でも、あの子火力が高過ぎるから、万が一コアごと撃ち抜くとヤバそうだし……)

 

 そう、グラヴィスコルードの火力は、ぶっちゃけ素でキングジェイダー並か……それ以上の可能性が高い。

 実は以前、GGGのシミュレータープログラムを借りて戦闘力のテストした時、地上からの砲撃で月の形まで変えている……この子が言うには()()()1()/()3()()()らしく、最大火力の攻撃は他にもある(高威力の攻撃は荷電粒子砲だけじゃない)との事。

 

 やっぱり頭痛くなってきたわ……

 

 そんな事を考えていた直後、本部の通信が慌ただしくなる。

 

《護くんから緊急入電、航空自衛隊入間基地にゾンダーの反応が……!》(猿頭寺)

 

《クッ、この期に乗じての囮作戦か……?!》(大河)

 

《第7区画の隔壁が破壊されました!》(命)

 

《重力攻撃の影響か……?!》(麗雄)

 

《いえ、これは……内部から……?》(命)

 

《こちら……第……格納庫……ゴルデ……マー……勝手……動いて……》(牛山)

 

 まさかの事態……自衛隊基地を襲撃するゾンダーの同時出現に、GGGは二面作戦を余儀なくされる……その上、原作通りのタイミングでゴルディが勝手に起動し、内部から隔壁をぶち破って出てきたのだ。

 

(……私、単独で基地に行った方が良いかな? でも、こっちも離れる訳には……)

 

 足元に潜むグラヴィスの重力制御能力により、私は重力異常に晒されていないのだが……本当はグラヴィスに本部を守って欲しかった……が、グラヴィスは私の側を頑として(寂しがり屋なので)離れないし、私は私で戦況の伝達を円滑に行う為に外に出ているので、本部に留まる訳にも行かない……これはさすがに不可抗力だと思う。

 

『どおぉぉぉりゃぁぁぁあッ!!』

 

 本部から海に出てしばらく……地上に立ったゴルディーマーグは、ゾンダーロボの起こすこの重力異常も何のその。

 多少動きにくくなった程度しか感じてない様子でズンズンと前進を続ける。

 

 ゾンダーロボは無数の触手を差し向け、先端にマイナス重力……斥力を発生させて吹き飛ばそうとするが、ゴルディはその太いボディに不釣り合いなほど軽やかに触手を回避していく。

 

『ケッ、見え見えなんだよ! テメェの攻撃はァ!!』

 

 更に深く踏み込み、スラスターを含めパワー全開で重力ゾンダーに突撃するゴルディ……繰り出すは有り余るパワーを全て上乗せしたショルダータックル。

 それは見事にゾンダーロボの胴体を捉え、ゴルディはそのまま、質量差十数倍はある相手を弾き飛ばしたのであった。

 

『……うぇっ!? ……えぇ……?!』

 

 ちょっと待って……そんなの聞いてない! そりゃ各部の回路とか組み直して、効率やら出力やら改善はしたけど、いくらパワーアップしたからってあんだけ体格差ある相手を一撃で弾き飛ばすとかあり得なくない?! しかも相手の加重フィールド内でよ?! どんだけ筋肉バカなの?!

 

『……ヘヘッ、テメーの力はその程度かよォ?』

 

 ゴルディのタックルを直撃され、ゾンダーロボは転倒したままジタバタともがく……今のタックルでゾンダーロボの胴体にある大型重力制御機構は見るも無惨に破壊されており、触手も自重を支えられず、下部の形状も転倒を防ぐ為箱形になっていた事も災いして、ゾンダーロボはろくな身動きが取れないでいる。

 成長の最終段階間近とはいえ、能力を円滑に行使する事に傾倒し過ぎたのかな……? 重力制御能力に頼り、機動力を捨てたその巨体が見せた呆気ない光景に、私は自信満々だった筈のゾンダリアン達の顔が驚愕した(エネル)顔になっていく様子を想像して吹いてしまった。

 

『オイ、何すっとぼけてんだ? 早く俺を使え、ガオガイガー!』

 

 さすがにこの光景は呆然とするしかないでしょ……凱さんが呆気に取られるのも分かる。だがゴルディーマーグは急かす様に俺を使えと檄を飛ばす。

 確かに、早くこのゾンダーロボを倒して、自衛隊基地の方へ救援に行くのが望ましい。

 

『……あ、あぁ……よし、行くぞ!』

 

《ゴルディオンハンマーァァァ! 発動ぉ、承認ッ!!》

 

《了解! ゴルディオンハンマー……封印機構(セーフティデバイス)解除(リリーヴ)ッ!!》

 

『システムチェェェンジッ!』

 

 異常重力攻撃から解放された本部から正規手順で封印が解除され、ゴルディーマーグが変形を開始……頭部と背部が一体化したパーツが外れ、接続部を収納。ボディ側も接続部中央が基部ごと回転し巨大な拳が展開される。

 腕部と脚部が折り畳まれ胴体と一体化し、拳の反対側にもう1つの接続部が展開。この形態こそマーグハンド……ハンマーと対を為し、ゴルディオンハンマー使用時の反動ダメージを完全に相殺する為の専用アームユニットである。

 

『ハンマァァァ、コネクトォッ!!』

 

 ダイキャンサーの時と同じ要領で右前腕を収納したガオガイガーはマーグハンドへと接近、接続部へ向けて右上腕を突き出して接続……巨大な拳を己の拳へと変え、更にタイミング良く降りてきたハンマーを握る。

 

『ゴルディオンッ、ハンマァァァッ!!』

 

 凱さんの叫びに呼応し、ガオガイガーとゴルディオンハンマーに搭載されたGSライドの出力が跳ね上がり、その全身を黄金に染め上げた。

 

 ゾォォォンダァァァッ?!

 

 異様な気配に命の危機を悟ったのか、無駄な抵抗とはいえ無数の触手を繰り出して止めようとするゾンダーロボだったが……

 

『フンッ……うぉぉぉォォォッ!!』

 

 黄金に輝くハンマーに触れた瞬間……いや、触れる直前に光と化して消えていく。

 

 ハンマー部の両端には強力な重力活断フィールドが固定されており、効果範囲に入ってきた物質はあらゆる方向から毎秒数億回以上の重力振動波を間断なく受け、コンマ秒すら待たずに全ての物理的結合を無力化され……更に超重力で質量そのものが全てエネルギーに変換され、僅かな光を大量に溢れさせながらその全てを問答無用で消し去るのだ。

 

 触手が届かない事に動揺したゾンダーロボ。ガオガイガーは、マーグハンドから引き抜いた白銀の光で象られた釘を手にゾンダーロボへと肉薄し……

 

『ハンマァァァ、ヘルッ!!』

 

 釘を正確にゾンダーロボの中枢……コアが配された部分へと突き立て、一時的に重力活断ウェーブを止めたハンマーで一撃。

 銀色の光釘はその一撃でコアに到達すると、コアの表面を強力な拘束空間(アレスティングフィールド)で覆い先端部に固定……物質化したエネルギーで構成された銀色の釘は先端にゾンダーコアを捕らえると先端の形状が変わり、まるで獲物を捕まえた鳥の足の如く割れた先端がコアを掴む。

 

『ハンマァァァ、ヘヴンッ!!』

 

 続けて凱さんの声に応じたマーグハンドの袖部分……ゴルディーマーグ時の脛にあたる場所から、釘抜きの先端の様に四角い爪パーツが展開。それを使ってガオガイガーは釘を引っ掛け、まさに釘を抜くが如くコアを強引に引き抜く……

 

『うぉぉぉぉぉおッ!!』

 

 強引に引き抜かれたコア……完全に引き抜かれ、ゾンダーロボのボディから切り離されると光の釘は役目を終えて消え失せ、抜かれたコアはガオガイガーの左掌へと収まる。コアをしっかりと左掌で掴んだ凱さんは、咆哮と共に再び右腕を振り上げ……

 

『光になぁれぇぇぇッ!!』

 

 残されたゾンダーロボのボディは極度に不安定なエネルギーを溢れんばかりに溜め込んだ巨大な金属の塊と化しており、非常に危険極まりない。

 安全かつ確実に解決する為にも、ガオガイガーはゴルディオンハンマーを残ったボディに振り下ろす……絶妙な力加減でコントロールされたハンマーは、ゾンダーロボのボディのみを光へ変えたのであった。




ゴルディーマーグ魔改造ポイント。
1、重力ゾンダーの加重フィールド内でもだいたい動ける。
2、脚部スラスターが強化され、ホバリング移動が可能に。
3、原作よりも機微に動ける為、回避能力もわりと高め。
4、教典映像とシオンにより、原作よりも少しだけ従順?

その他にもありますが、詳細は次回へ持ち越しです……




次回予告


君達に最新情報を公開しよう!

自衛隊入間基地を襲ったゾンダーは一時的に姿を眩まし
突然現れては世界中の大都市を爆撃していく……

その神出鬼没さに後手に回らざるを得ないGGG……
事態解決の為、シオンは次なる大型アーマロイドの開発に着手するのだった。


次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第37話『漆黒の魔弾』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!


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第37話 漆黒の射手(前編)

あ~日曜のお休みって久しぶりだなぁ……
……え、昨日はRGガオガイガーの発売日だったの?!

なってこった……(愕然)

前回の予告通り、新型アーマロイドが開発されます。
また、ゴルディーマーグの性能の秘密は後半に……



 東京を襲った重力ゾンダーロボは、ゴルディーマーグの参戦により新必殺技『ハンマー・ヘルアンドヘヴン』により撃破……だが、時を同じくして自衛隊入間基地を襲ったゾンダーは、同基地にあった大型輸送機「C-130」をボディとしてゾンダー輸送機となり、大量の爆弾とミサイル類を吸収して逃走……

 

《……ダメです……どうやら特殊な妨害電波で、サテライトサーチを掻い潜っている様で……雲に隠れられて追尾不能になりました》

 

 輸送機ゾンダーは並外れた機動力を発揮……追撃していたガオガイガーを振り切る様に雲に隠れ、サテライトサーチを掻い潜って姿を消す……しかも、不規則なタイミングで再度現れては世界中の航空基地や大都市を襲撃して戦闘機やミサイル、爆弾を取り込み、市街地に来ればそれを吐き出す様に爆撃を繰り返しているのである。

 

『クソッ、レーダーも金属探知もダメか……視界不良で探知システムも使えないんじゃ、追い掛ける事も出来ない!』

 

 取り敢えず奴が出現したらガオガイガーも出動し、市街地や基地施設に被害を出す前に追い払う……現状では、そんな感じの追いかけっこを繰り返す事しかできない。

 

《あれだけの爆弾や装備を吸収して、なお速度が落ちないとは……》

 

 麗雄博士の言葉が示す通り、奴自体も常識外れの制空能力を持っている……からくりは分からないが、何かしらの秘密はある筈だ……少なくとも速度で追い付けなければ、倒す事も儘ならない。

 

(新型のアーマロイドが必要ね、しかも飛行型に対抗出来る子が……!)

 

 残りの星座枠を考慮しつつ、私は思索を巡らせる……戦闘力も重視しつつ、サポートも行える子にするなら……やはりアレしかない。

 

『博士。急で申し訳ありませんが、本部の設備を借ります……敵の制空能力を封じる手立て。新たな機体(アーマロイド)を突貫で造ります!』

 

「そうか、なら僕も手伝おう……ゴルディ開発に協力してくれた礼もしたい」

 

「ワタシも手伝いマース、シオンの造る新しい子……実は前から、興味あったんデス♪」

 

 急な申し入れなのに、麗雄博士は拒否するどころか手伝うとまで言い出す……スワンさんも技術者として、大型のアーマロイド製作に興味があったとの事で、是が非でも参加したいらしい。

 

『博士、スワンさんも……是非、よろしくお願いします』

 

「必要な資材や技術も、我々GGGから提供させて貰おう。これまで我々に対して、君が身を呈してまで行い続けてくれた協力……私個人としては細やかで申し訳ないと思っているが、そのお礼とでも思ってくれたまえ」

 

 GGGのトップである大河長官まで、協力のお礼と称して設備だけでなく資材の提供までOKをしてくれた……ここまでされたら、何が何でもやる気が出るというものである。

 

『た、大河長官まで……はぁ……分かりました。

 私の全身全霊を以て、勇者達の助けになる新たな戦力を造り上げて見せます!』

 

 こうして私は再びGGGの全面協力の下……ダイキャンサーとグラヴィスコルードに続く、新たな大型アーマロイドの開発をスタートさせた。

 必要なデータと求めている条件……事態を解決する為の方法など、だいたいの情報は揃っている。ダイキャンサーの時と同じくGGGの全面協力もあり、資材もすぐに揃うし……残された課題は建造自体の時間だ。

 

『設計図などは既に準備しています……詳細なデータもお渡しするので、改善点があれば随時報告をお願いします』

 

 ダイキャンサーの時は必要な素材の確保や、資材の開発と平行していた為難航した事も多いが、今回は資材もあるし、研究データも技術も準備済み。細部のブラッシュアップだけは平行作業になるが、人海戦術が可能なので障害は無いに等しい……超短期間の突貫作業になるが、不思議と焦りは無かった。

 

──────────

 

 それからというもの、新型アーマロイドの開発は恐るべき速度で開発は進み……その間の襲撃は凱さん達が何とか食い止めてくれた。その為か、ゾンダー輸送機は空爆も補給も思うように出来ず、現れては迎撃されて撤退、を繰り返している。

 

 勿論、凱さん達も連戦で疲弊はしていたが……

 

《シオンが何かしらの手を打ってくれている最中なんだろ? なら、俺達はそれが完成するまで何が何でも守り通すだけさ!》

 

 完成すれば必ず奴を倒せると確信し……機動部隊はゾンダーの警戒と迎撃を続けている。

 そのお陰か、あのゾンダーが抱えているプラントはろくに成長できていなかったという事実を、グラヴィスの独自調査で後から知った……

 

 

 それから2週間後……日数にして何と17日で、件の新型アーマロイドは完成を見たのである……侮り難し人海戦術。

 しかもボディ製造には諸外国各地に点在しているGGG各支部も協力してくれたらしく、中国やアメリカ、フランス製のパーツも結構あった。そして……

 

『さぁ……これで完成です!』

 

 あの超重力空間(ブラックホール)内で変異していたグラヴィスコルードのZコア・ドライヴを参考に、機能を最適化し直して基本性能を底上げ……対応する生物の遺伝子データ量もアップした新型コア・ドライヴを搭載し終え、私は機体のメンテナンスハッチを閉じて離れる。

 漆黒のボディに白く長い毛の装飾……を再現した純白の特殊繊維、西洋の甲冑を装備した様な姿の人型ロボット。細部までブラッシュアップを重ね、見る者を唸らせるその独特なデザイン……

 

「これが、新型のアーマロイド……!」

 

 一見奇抜なデザインと思われるだろうが、計算され尽くしたこの形状、誰にも真似できない生物的な曲線と機械の直線を見事に両立させ、見るものを唸らせる程の美麗なスタイルを実現している。

 

『はい、この子がこの戦況を覆す鍵……【射手座】(サジタリウス)のアーマロイド、その名を「クーゲルザウター」!

 場所を選ばない射撃能力と機動力がウリの魔弾の射手です』

 

 漆黒の身体に西洋甲冑……黒と赤を基調にしたカラーリングで彩られた、黒き魔銃使い。

 

 その両手に装備された可変式クロスボウ「ヴンダーワーフェ」は、巨大な洋弓や猟銃への変形と、連結合体機構を有する二丁一対のボウガン型射撃武器……他にも、両肩の「ワイルドシュルター」は自己誘導性能を持つ自律飛行可能なシールドであり、ブーメランとしても使える。

 

 また、特殊な表面処理を何層にも重ね、あらゆる光学兵器を乱反射させるマント型防御システム「ナノラミネートリフレクター」を装備し、腕部と脚部には「ディバイディングドライバー」の技術を応用し、一時的な高圧縮空間を中空に形成してそれを足場にしたり、打撃インパクトの威力を高める事が出来る特殊装備「インパクトプレッシャードライヴ」を内蔵しており、空中でも陸と同様に動く事を可能にしているのである。

 

 詳細の説明に入ろうとしたタイミングで突然の警報……

 

「ガイガーより緊急連絡! 哨戒任務中に敵ゾンダーと遭遇との報告あり!」

 

《こちら凱、哨戒中に例の輸送機ゾンダーに遭遇した! 場所は広島上空、高度10000mだ!》

 

「むぅ、さすがに上空過ぎる……さすがに超竜神やビッグボルフォッグでも、これ程の高度の空中戦に対応する装備は無い……」

 

 ガイガーの現在位置は、広島県北西部の上空……高度1万m弱。通常ならジャンボジェット等の行き交う高度なので、超竜神は元々無理……ビッグボルフォッグも滞空こそある程度は可能だが、ガオガイガーほど高高度や長時間は飛べないのだ。

 

『……早速、この子の出番ですね?』

 

 しかし、このクーゲルザウターなら場を選ばない戦闘が可能だし……私と違って、十分な火力もある。そしてすぐにでも動けるのだから、まさに()()()()だろう。

 

「うむ、行けるかね……?」

 

『勿論です! さぁ、アナタの力を……私達に見せて!』

 

 私の問いに深く頷き、クーゲルザウターは脚部スラスターと肩部シールド内蔵のバーニアを解放……ハイジャンプから瞬く間に最高速度に達し、背負ったマントを翻しながらガイガーの救援へと向かう。

 

『私も先行します、通信連携はいつものように!』

 

《了解よ、バックアップは任せて!》

 

 命さんの返事に、私も【スティレット】を纏って飛翔……クーゲルザウターの後を追う事にした。




ちゃんとこの後、三段飛行甲板空母で後詰めは動いています。

勿論、クーゲルザウターの詳細は後ほどいつもの場所に……
未解放の部分は公開をお待ち下さいね?

次回は後編……
前の謎と、今回の解決はその時に。



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第38話 漆黒の射手(後編)

原作ファンで拙い私の改変も許せる心優しい読者の皆さま、お待たせしました。
ゴルディーマーグの魔改造っぷりが再び……

また、前話で開発された新型アーマロイド「クーゲルザウター」のとあるネタも……


 広島県の上空高度約10000m……人々を恐怖に陥れている大型輸送機ゾンダーと、ステルスガオー装着形態のガイガーは、雲1つ無い空で幾度と無く繰り返した追いかけっこの続きをしていた。

 

『待てッ!!』

 

 ゾォォォンダァァァ!!

 

 純粋な速度ではステルスガオーに軍配が上がるものの……機銃やミサイルによる抵抗が激しく、思うように距離を詰められない。それに加えてステルスガオーのエネルギーには、あまり余裕が無くなっていた……ゾンダー未発見だったならばこの後、ゴルディーマーグとの合流を兼ねて強襲揚陸補給船で補給を受ける予定だったから……

 

『……まさか、このままベイタワー基地を襲撃するつもりなのか?!』

 

──────────

 

「ガイガー、兵庫県上空へ移動……ゾンダー輸送機を追って、まっすぐ此方へ向かって来ています!」

 

 命の報告を受け、麗雄は敵の出方を予測する……これまで敵の行動を散々邪魔してきたGGGに対して、何もアクションを起こさない筈はないと確信していた。

 

「業を煮やしたか……敵は恐らく、このベイタワー基地を空爆するつもりだろう。クーゲルザウターの状況と現在位置は?」

 

《まだ、機体挙動には慣れてませんが……戦闘行動は可能です。現在位置は静岡県上空……ゾンダー輸送機の方へ向かいながら、空戦機動の慣熟を自分の意思でやってるみたいです》

 

 麗雄の問いに、新型アーマロイド(クーゲルザウター)に同行するシオンは通信にて現状を回答……クーゲルザウターは人間で言えば、まだ生まれて間もない子供……しかしGGG待望の空戦機体であり、総力を上げて建造した期待の戦力だ。

 

「……このままなら、敵との接触は恐らく滋賀か京都……大阪辺りになる。三段飛行甲板空母は京都方面へ! 強襲揚陸補給船と水陸両用整備装甲車はそれぞれ、伊勢湾と大阪湾にて待機。稀星くんと氷竜・炎竜も接触予定方面へ急行せよ!」

 

《了解!!》×3

 

 大河長官の指令を受け、各員それぞれが行動を開始。

 

「凱、聞こえた? シオンと一緒に、新型アーマロイドがそっちに向かってるわ。足止めはシオンとその新型に任せて、凱は一度大阪で補給を受けて!」

 

《そうか、ついに完成したんだな! さすがに燃料が心許なかった所だ、そうさせて貰う……頼んだぜ、シオン!》

 

《凱さん、また無理をさせてすみません……でも、もう大丈夫です。任せて下さい!》

 

 ガイガーは一度ゾンダー輸送機の追撃を中断し、大阪湾で待つ強襲揚陸補給船へ向かう……シオンもクーゲルザウターに指示を送り、揃ってゾンダー輸送機の迎撃予定地点へと向かうのだった。

 

──────────

 

 ゾンダー輸送機はガイガーの追撃が離れたタイミングで加速したものの、しばらくして横合いから放たれた数発のビームを回避……一度足を止めて警戒する。

 

(……敵も射程圏内の筈だけど、慎重ね……コアにされたのは従軍経験者かな?)

 

『山間部へ追い立てる、高度を下げさせて!』

 

 シオンの指示を受け、クーゲルザウターは両手のボウガンのうち、右の方をライフルモードへ変形……左手のを前にしてライフルを後方へ接続し、前方のサイドに飛び出してきたフォアグリップを掴み、実弾とビームのハイブリッド散弾を放つ。

 ヴンダーワーフェの『レヴ・クレイモア』モードが放つ実弾とビームの混合散弾がゾンダー輸送機を襲い、敵は堪らず高度を下げながら回避するも……反撃とばかりにローリングからミサイルを数発ばら蒔き、尚も此方へ向かって来る。

 

『……ッ!』

 

 クーゲルザウターはすぐさま反応してライフルの連結を解除し、右手のライフルでミサイルを迎撃。ライフルでは間に合わない弾道のミサイルへは、腰部にある散弾式ニードルガン「ナーデランツェ」の散弾針を浴びせ、全て撃ち落としながらも右へとスライド……相手の突撃から離れつつ左手のボウガンを向ける。

 

 ゾォォォンダァァァ……!

 

 だがそこはさすがに読まれていたか、加速を掛けて狙いを絞らせず……此方の頭上を取る様に機体を跳ね上げさせ、そのまま上昇しターンを決める。

 

(あの巨体でインメルマンターンを……なかなかやるわね!)

 

 相対距離を開けられ、ゾンダー輸送機は速度を上げて引き離しに掛かる……だが。

 

『後ろに付けて! 回り込んでから接近戦よ!』

 

 高度を合わせて左後方に付け、その間に左右のボウガンを腰から伸びる専用ウェポンラックに収納……徒手空拳の構えを取り、スラスターを切ると同時に空中で踏み込み(脚部インパクトプレッシャーを解放)、相手の意表を突いて眼前に躍り出る。進路を塞がれるのを嫌ってクーゲルザウターの反対側へと舵を切ったのを見計らい、両足のインパクトプレッシャーを再度解放……鋭角に軌道変更して腹側に超接近、再び「ナーデランツェ」の広角放射を2発同時左右に撃ち込んで4基あるエンジンを全て損傷させる。

 

 ギュウゥゥゥ……!!

 

 エンジンを全て破壊され失速し、墜落するゾンダー輸送機……下は京都と大阪の境目付近の山中なので、市街地への被害は抑えられそうだ。

 

 ゾゾゾ……! ゾォォォンダァァァ!!

 

 必死に墜落を阻止せんとエンジンを左右1基ずつに絞って回復させたゾンダー輸送機だったが、さすがに巨体を元の高度には戻せず胴体着陸……盛大に土煙を上げながら山肌を削り、500mほど滑って止まる。沈黙するゾンダー輸送機だがクーゲルザウターは油断せず、低空飛行で警戒を続ける……そこへ氷竜と炎竜、更にゴルディーマーグも駆け付けてきた。

 

『撃墜はしたけど油断しないで、まだ何かしてくる筈よ』

 

『ええ、分かっています』

 

『もう逃さないからな!』

 

『俺様が居ればもう心配ねぇ!』

 

 シオンの指摘に対し、氷竜達の返答は非常に頼もしい……が、ゴルディは対空攻撃手段に乏しい為あまり宛てには出来ない。

 

 ゾォォォンダァァァ……!!

 

 そして案の定……ゾンダー輸送機は再生ついでに手足を生やしてロボット形態を取り、低空飛行から大量の爆弾を投下してくる。

 

『早速か! 硬化材ブルー!』

『硬化材レッド!』

 

 携行していた武装「ペンシルランチャー」を利用して硬化材を放ち、爆弾を誘爆させること無く処理し続ける氷竜と炎竜……災害救助にも役立つこの特殊硬化材2種類は、硬化すると衝撃吸収・対荷重に優れた特殊硬質樹脂へと変貌するが、混ぜ合わせた瞬間から化学反応で硬化を始めるので、息を合わせた運用が前提となる。

 しかし、同型AIである氷竜と炎竜は寸分の狂いもなく次々にターゲットを狙い撃ち、落下してくる爆弾のセンサー部を樹脂で覆って信管の機能を麻痺させていく。

 

『あんなモヤシにアイツが撃ち落とせるか! システムチェェェンジッ!!』

 

 上空から敵の頭を抑え、上空へと逃れるのを防ぐクーゲルザウターだが、ゴルディーマーグはその動きに不満を募らせ、自ら撃ち落とさんと変形……

 

『ゴルディータァァァンク!! オラァ! 落ちやがれぇ!!』

 

 タンク形態へと変形したゴルディは、主砲「マーグキャノン」を連発して下から攻撃……輸送機ゾンダーロボを撃ち落とそうとするが……

 

『止めたまえ! 奴の体内には、まだ大量の爆弾が残っている!』

 

『市街地じゃないとはいえ、こんな所で誘爆させたら、辺り一面吹き飛んじまうぞ?!』

 

『えぇい! 分かっとるわそんな事ッ!!』

 

 だが、射撃に集中し過ぎて足元の不発弾に気付かないゴルディ……方向転換の最中にうっかり爆弾を踏み付け、散らばった物まで誘爆……複数回の爆発音が辺りに響いた。

 

『ゴルディータンク?!』

 

 小型とはいえ、一発一発が500ポンド(227kg)の投下爆弾……踏み潰した物と、誘爆したのを合わせた衝撃とダメージは尋常ではない筈、だが……

 

『馬鹿野郎ォッ! 不発弾をそのままにしとくんじゃねぇ! さっさと撤去しておけッ!!』

 

『あ……す、済まない……』

 

『……なんて装甲だ……!』

 

(……うわぁ……改めて見ると異常過ぎるわね。気持ち悪いほど無傷とか、改良し過ぎたかな……)

 

 想定通りとはいえ、あの数の500ポンド爆弾喰らってサラッと無傷とかヤバイわ……

 

 そうこうしている内にクーゲルザウターは「レイ・ペネトレーター」モードを使用し、再びエンジン1基を貫き、輸送機ゾンダーロボの高度を下げさせた。

 

『今度こそ逃すかよォ!』

 

 やや私怨染みた声を上げ、再度変形したゴルディーマーグはスラスターを吹かし大ジャンプ……輸送機ゾンダーロボの背中にしがみ付く。そのせいでバランスを取り戻そうと必死だったゾンダーロボは更にバランスを崩し、ゴルディを振り落とさんと滅茶苦茶に飛び始めた。

 

『ゴルディーマーグ?!』

 

『ぬォォォおォ?!』

 

《馬鹿もん! 何をやっているゴルディーマーグ!? 早くそこから降りろ!!》

 

『チンチラやってたらゾンダーメタルが完成しちまうだろうが?! このまま叩き落とす!』

 

《バカタレ!! それはお前の役目じゃ無いだろうが!? 直にガオガイガーも来る、早くソイツから離れろ!!》

 

『コイツを落としたら離れてやる……それに、俺様のAIはアンタがモデルだ。俺様がバカタレなら、アンタもバカタレって事だな!?』

 

《何をォ?! この考え無しの石頭め!》

 

『何だとこの、ゴ◯ラモヒカンが!!』

 

《ぬぁんだとォォォ?!》

 

 あ~あ、原作よりも心なしか酷くなってない? ……ホントに兄弟ゲンカみたい、もしくは同族嫌悪?

 

 ゾンダーロボは滅茶苦茶に飛び回り、まるでジェットコースターの様に高高度から地上スレスレへと駆け降りたり、桐揉み回転とバレルロールを組み合わせた高難度のアクロバット飛行技を次々と決めていく……

 

《やれやれ、全く酷いもんだわい……》

 

 麗雄博士も呆れてるじゃん……まぁ、これは起こるべくしてなんだけど。

 

『……ダメだ、滅茶苦茶に飛び回ってて狙いが付けられない!』

 

『低高度の内に手を離せゴルディーマーグ!』

 

 氷竜と炎竜もゴルディの安否を気遣って手を離す様に叫ぶが、頑固者は全く聞き入れない……

 そこへ補給を済ませ、ついでに合体もしてきたガオガイガーが戦闘エリアに到着。未だ続くゴルディと参謀の口喧嘩を聞いて唖然とした……

 

『……ど、どうしたんだ?』

 

『あ~、あの子(クーゲルザウター)が信用ならないからって、敵を落とそうとゴルディが……』

 

『ぐぬぬぬ……うぉぉぉりゃァァァ!!』

 

 私が凱さんに説明しようとしたタイミングでゴルディはゾンダーロボの翼をへし折り、ゾンダーロボは完全にバランスを喪失……しかも最悪な事に、三段飛行甲板空母が待機している高度5000m弱という高さでゴルディの手が離れ振り落とされてしまう。

 

『ヌグッ?! どわぁぁぁ?!』

 

『『『ゴルディーマーグ?!』』』

 

《ッ?! ディバイディングドライバー、射出急げッ!!》

 

 長官の電撃指示により、三段飛行甲板空母から緊急射出されるディバイディングドライバー……ガオガイガーは高度を上げてすぐさま受け取り、DDモードへ移行。空間制御能力を利用してゴルディーマーグに襲い来るであろう衝撃を和らげるため再降下を急ぐ……だがそれぞれの位置関係が悪い上、更にゴルディの高度低下は思ったよりも早い。

 

『クッ……間に合わないッ?!』

 

『……ッ?! …………!!』

 

『……?! ……お前……』

 

 クーゲルザウターも異変に気付き、高高度からマッハでガオガイガーを追い抜きゴルディへと手を伸ばす……が、それも僅かに間に合わず、静止限界高度へ到達した為止まるしかなかった。

 

 あと僅かが届かなかった……悔しい、気付くのがもう少し早ければ……そんな悔しさの滲む表情をしながら、落ちるゴルディを見送るクーゲルザウター。ゴルディ自身、クーゲルのそんな表情に気付きながら落ちていき……爆発と見紛う程の轟音と土煙を上げて地面に激突した。

 

《……な……何と言う事だ……!》

 

『土煙が酷くて、レーダー波が通らない……ゴルディはどうなったんだ?!』

 

《博士っ?!》

 

《あの空の高みから落ちたのだ。幾ら頑強でも、あれだけの高度からあの速度で落ちれば……》

 

《ぬぅ……またしてもガオガイガーは、必殺技を喪ってしまったという事か……!》

 

 さすがにこれは想定外過ぎる……原作よりも遥かに高高度からのノーブレーキ墜落。それも原作みたいなディバイディングドライバーのクッションすら間に合わず、ほぼ垂直に山肌へ……

 原作より強化こそしてはあるものの、こんな事態になるなんて……同様の事態には備えてたけど、状態悪化しすぎでしょ!!

 

『……ゴルディ……』

 

 私もこの最悪の事態に、辛うじて言葉を吐き出す……だが、ゾンダーロボはそんな状況でも待ってはくれない。

 

 ゾォォォンダァァァ!

 

『……ッ!! …………!!』

 

 土煙の立ち上る痕を見ながら呆然とする氷竜と炎竜、ガオガイガーは同時にゾンダーロボの警戒も怠ってはいないが、明らかに動揺している。でもクーゲルだけは、『よくも仲間を……!』という風に敵意剥き出しの顔で、相対するゾンダーロボを睨み付けていた。

 

 ゾォォォンダァァァ……!!

 

 再び飛び上がり、爆弾とミサイルの雨を降らせようと構えたゾンダーロボだったが、不意に撃たれたビームで3度目となるエンジン損傷……飛び立てずバランスを崩し、その場に倒れ込んでしまう。

 

『『『ッ?!』』』

 

(……え? このビーム……って、まさか?!)

 

 射線を辿り、思わず2度見……土煙の中に動く人型の影を見つけて私はギョッとした。

 

『やれやれ……ったく、ヒデェ目に遭ったぜ……』

 

 関節の動きを確かめる様に動かしながら、土煙から姿を現すゴルディーマーグ。本部の皆は勿論揃って絶句……私も理解が追い付かない。

 

 ……は? マジで? 嘘でしょ……?

 

『オラ、何をボーっとしてやがる! 今がチャンスだろうが?! 俺を使えガオガイガー!!』

 

 大したダメージも無かった事を確認し終えたゴルディは、前と同じく再びガオガイガーに【オレ】(ゴルディオンハンマー)を使えと催促……その声にガオガイガー達は我を取り戻し、本部でも発動承認がなされたのであった。

 

 ホント、嘘でしょ……?

 

 

──────────

 

『……あ~、何だ……お前をモヤシだの言って……悪かったよ。お前も、俺達の仲間だからな……』

 

 戦闘終了後、ゴルディはクーゲルに対しての「モヤシ」発言を謝罪しに来た。当のクーゲルザウターの方はあまりよく覚えてないみたいだけど……意外にも素直なゴルディの謝罪に、悪い気はしてない様子。

 

『…………、…………?』

 

『いやその……お前も奴に高度を取らせない様に、上から抑えてた訳だしな……ほら……見直してんだよ、結構デキるヤツだってな……』

 

 しどろもどろなゴルディだが、クーゲルは黙って聞いている……

 

『それにお前は、落ちる俺を助けるつもりで手を伸ばしたんだよな……届かなかったのは、俺のせいだ。もう気にするな!』

 

 気にするな、というゴルディの言葉に、クーゲルの顔がぱぁっと明るくなる……やはり気にしてた訳か。ゴルディの意外なフォローに、私は感心した……だが、ゴルディの放った次の言葉に『やっぱないわ~』と掌ローリングするしかなかった。

 

『お前も勇者! そしてデキる男だ!!』

 

 ドォゴォンッ!!

 

 突如、爆音と聞き間違う程の音が響く……勿論音を立てたのはクーゲル。その足元はクッキリと半球状に抉れている、あれ程ゴルディの言葉に悪い気はしてなかったクーゲルザウターの纏う雰囲気は見事に一変しており、ワナワナと拳を握り締め、何かに激怒している。

 

『な、何だよ……?! 俺様はお前を誉め グボォァァァッ?!

 

 ゴルディは突然態度を急変させたクーゲルを見て混乱……よく分からないまま弁解(?)をしようとし、その態度に更に腹を立てたクーゲルはゴルディの胴体中心を狙い、後ろを向いたまま爪先を捩じ込む様に一蹴……しかもなんと蹴撃と同時にインパクトプレッシャーまで使い、盛大に吹き飛ばしたのである。

 

『な、ゴルディーマーグ……?!』

 

『オイオイ、今度はクーゲルとゴルディのケンカかぁ?』

 

 氷竜と炎竜が騒ぎに気付いて声を掛けてきた。

 

『て、テメェ……! 俺はお前を誉めてやってるんだぞ?! それを足蹴にしやがって……!』

 

『……ッ?! …………!!』

 

『もぅ……何してるのよ……』

 

 これはさすがに流れが悪すぎるので私は止めに入る……やり取りを辿れば、すぐに原因は分かるものの、ゴルディは自分が犯した【失態】に全く気付いていない様子。

 

『お前からも言っておけよ! コイツ、人が折角誉めてんのに俺様を足蹴にしやがって……』

 

『ゴルディ……もう一度、さっきまでのやり取りを思い出して。何でこの子が怒ったか……分かる?』

 

『あぁ?! やり取りも何も、今俺様が被害被ってるだろうが!? 何を馬鹿な事を』

 

『ゴルディ……1つだけ言っとくわよ? ……クーゲルはね、歴とした()()()なの』

 

 その場に座り込んで泣いて*1いるクーゲルザウター……人型ロボットの巨体とはいえ、その動きは明らかに「同年代の男の子に泣かされた女の子」と見違える程自然な動きである。

 

『『『…………は?』』』

 

 ……え? 待って氷竜、炎竜も……何で宇宙猫顔なの?

*1
(涙は出ないし音声も無いから単なるモーションだけだけど)




ゴルディーマーグ魔改造の詳細その2
1、反応速度とパワーの向上により、相対的に格闘能力も向上
2、内部構造の効率的組み換えによるスペックアップ
3、高度10000mからの落下にも余裕で耐える頑強さ

この異常な頑強さは、製造過程にアーマロイド達が悪戯感覚で仕込んだドッキリであり、装甲部材の生成と構成をアーマロイド(グラヴィスコルード)に任せたのが主な原因。
グラヴィスはゴルディ用の装甲部材生成の過程で、自分の装甲と同じ様に高重力環境を用いて鍛え、寸法違いを誤魔化す為に内側へ複数の素材を張り合わせた結果……非常に高い衝撃吸収能力と異常な頑強さを獲得している。
ちなみに素材の分子構造から弄っている上、設計上の寸法と重量の帳尻が合っている為か、シオンを含めGGG側も全く気付いていなかった……
なお、この装甲の持つ対衝撃能力は核爆弾(爆心地)並の破壊力の物理衝撃すら余裕で耐えれる(グラヴィス談)との事。

そしてなんと、クーゲルザウターは『女の子』だった……!?



さて、次回は本編から少し離れて……
【蟹座】アーマロイドに『機蟹武刃(きかいぶじん) ダイキャンサー』の名を与えてくれた有志。
和鷹聖さんのネタ提供により実現したプチコラボ回!
まるっと1話の為、長編になるかもしれないので公開をお待ち下さい……



次回予告


君達に最新情報を公開しよう!

とある夏の日、東京で不可思議な雷雲が発生。
落雷により、基地施設の空調がダウンしてしまう……

涼を取るために街へ繰り出したシオン達の元に現れた、
「カルナ・ミステールグラスロノメ」と名乗る謎の少女……

彼女を追う様に襲撃してきた、原作に無い3体のゾンダーロボ……
そして「ジェネシック」にも似た黒いロボットの正体とは?!


次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第39話『GGG、真夏の怪談話』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!


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第39話 GGG、真夏の怪談話

前話の暴露ネタは如何だったでしょうか?
クーゲルザウターの中身は女の子……
ちなみに『ウマ娘プリティダービー』に登場している“ある黒髪のウマ娘”をイメージして書きました。
読者の皆様に中身の予想アンケートを投じた結果……1位は何と『ライスシャワー』。

ウチの読者みんなしてライスちゃん好き過ぎかァ?!
ネタとしては使えそうなそうでないような……

※ この回は和鷹聖さんのネタ提供に報いる為の報酬回です。
  原作に無い展開や人物・マシンなどが登場します。
  また、演出上戦闘シーンはギャク路線気味なのでその辺りはご了承下さい。



 ある日の夜、関東全域にて不可思議な積乱雲が発生……僅かな間に激しい雷雨に見舞われた。

 特に首都圏では落雷が集中的に発生し、東京中の家電……主にクーラー等の空調設備が軒並みショートする事態となってしまう……

 

 その翌日……宇宙開発公団とGGGでも、被害を受けた設備の復旧に追われていた。

 昨夜の落雷の影響によりショートした機器の修理は、施設規模も数もあってなかなか終わらない……一部の重要な機器類は最初から対策を講じられており特に問題はなかったが、一時的ながら各所で停電によるシステムダウンも発生しており、GGGベイタワー基地も少なくない影響を受けている。

 

 現在は重要設備を優先して復旧作業中であり、その大半は元に戻っている……が、施設内だけでも数万箇所はある空調だけは直すのに人手が足りず、完全復旧には数日を要すとの事。

 

 だが、よくよく考えれば不可解な話である……

 ピンポイントで家電類がショートするという大規模不可思議現象が起きたのに、蓋を開ければ家電の修理屋さんや、一般の皆さんが右往左往する程度の影響で済んでいるというのも……

 

──────────

 

『……暑い……』

 

 そんな中で私、稀星シオンは……暗い公団施設の電算室で、他の職員さんと一緒に作業をしていた。その理由は……

 

「……よし、こっちは終わりました。照明周りの電源も、あと30分ほどで終わるとの事です」

 

「通信の方は? あっちも相当な負荷が掛かった筈だからな……」

 

『……ここからチェックできる設備はもう少しでテストも終わります、設備全体の復旧率は52%弱……電源周りが特に酷かったですからね。特に復旧を急ぐ箇所は既にリスト化してありますので、作業班の方へ此方を渡してください』

 

 傍らに用意していた紙束を職員さんに渡すと、少しの驚きと共に受け取り一言……

 

「さすがですね、噂の女医さんが機械にもお強いとは……」

 

 直後に電算室の照明が復旧し、明るくなった事で笑顔の返事を返すと、男性職員さん達は皆して顔を赤らめる。……止めてよ、本当はまだ中学生程度しか育ってない中身不明の地球外産生機融合体よ?

 見た目は理想の成長で誤魔化してるだけ……残念だけど、見た目は大人で頭脳は子供なんだから。

 

(本当は公団施設のPC全部に『Zi-メタル』を一時感染させれば、修復も簡単なんだけどね……)

 

 あの奇跡の出会いから……私の身体はどんどんとゾンダーメタルから変質した“謎の金属細胞”に取って変わられており、徐々にその変貌は顕著になった……といっても見た目はほぼ人間と変わりなく、ゾンダーメタル由来の超人的生命力や機械融合、組成組み換え等の能力も尋常じゃない位にアップグレードされており、ゾンダリアンとほぼ同じ事が彼等よりも速い速度で行える様になっている。

 その上、表の日々のお仕事(公団関係者のメンタルケア)によりエネルギーも充実しており、端から見ればチームでもオーバーワーク染みた作業や行程を1人で同時にこなすのにも慣れ……というか余裕になっていた。

 

 この超人的な能力を私に与えてくれているこの謎の金属細胞……何時までも「謎の」では不都合になってきたので、安直だけど『Zi(ズィー)-メタル』と命名した。イミテーション、似て非なるゾンダーメタル……略してZi-メタルだ。

 

『……ッ……ふぅ……』

 

 まただ、謎の頭痛がする……ここ最近、私はかなり不定期だが頭痛に苛まれていた。

 

 勿論、自分の身体の状態は手に取る様に分かるし、生機融合体としてのスペック上「頭痛」なんて普通にしてれば起きない……そもそも私は名目上とはいえ精神科医だし、それなりに人体に関する勉強は修めている。それに普通の人間だった時も、頭痛なんてものとは無縁だった。

 

 勿論、この事は麗雄博士やスワンさんにも相談したし、博士の勧めでサイボーグ由来のボディチェックも受けた……が、その結果は全くの異常無し。

 

(……何でかな。嫌な予感はしないけど、何か色々と忘れてる様な……)

 

 そしてどうしても、精神は人間なのだから忙殺という言葉は当て嵌まるのであった……そんな折に、なんとダイキャンサーから電文(G-L◯NE)でメッセージが届く。

 

《“……友ができた”》

 

 ……は? 今なんと?

 

《“図体のわりに、料理や菓子作りが趣味だという”》

 

 図体て……人外か何か? そもそもダイキャンサー達アーマロイドは普段、亜空間で待機してるから外と相互交信(コミュニケーション)なんて、専用チャンネルでも拓かなきゃ無理だと思うんだけど……

 

《『どういう事? っていうかいつ出来たの?』》

 

《“つい、今しがた……になるな”》

 

 全然理解が追い付かない……頭が暑さでバグってる? あのダイキャンサーが? あり得ないし。

 ……それじゃ、おかしくなったのは私の方? 嘘でしょ……

 

 

「基地内の復旧状況は?」

 

 GGG本部、メインオーダールーム……水中にあるため、連日の猛暑もここには影響が無い筈だった。

 しかし、昨日の悪天候の影響で公団ビルに落雷があり、設備的に密接な関係にあるGGGベイタワー基地も、一時的とはいえ電力供給が完全ストップした場所があった……そして今、現在進行形で損害を受けた大型設備や機器類の復旧作業が進行中なのである。

 

「……ヤレヤレ、地上施設にある通信設備の最終チェック中に落雷の直撃を受けるとはのぅ」

 

「メイン動力炉や、生命維持システムは無傷だったのが不幸中の幸いですよ……各セクションの復旧状況、モニターに出します」

 

 猿頭寺オペレーターの操作により、メインモニターには本部施設内の復旧状況が表示されている……ベイタワー基地全施設のうち、稼働状態にあるのは最優先で修理させた電算システム室と休憩室、各部の通信設備など……一方で復旧が最も遅れているのは空調であった。

 地上部の施設内だけでも数万箇所はあるし、ベイタワー基地の大半は地下にある為、内部循環に用いられている空調設備の総数はとんでもない数な(地上施設よりも遥かに多い)のだからしょうがない。

 

「とりあえずは通信や電算設備と、食事が止まっていないだけマシという事か……」

 

 長官である大河幸太郎は、この状況に歯噛みするしかなかった……こんな時にゾンダーに襲われたら、撃退こそ出来ても事後処理や、勇者達のメンテナンスに更なる時間を取られるのは目に見えている。波状攻撃や伏兵などの策を用いられようものなら、僅かな時間で防衛線も瓦解してしまう可能性があるからだ。

 

「各メンテナンス設備への電力供給は、1時間後に完全復旧の予定です」

 

「それまでに襲撃さえ無ければ、御の字なんじゃがのぅ……」

 

 フラグめいた麗雄の発言に、大河・猿頭寺・牛山の3人は苦笑いを返すしかなかった。

 

──────────

 

「……あっつい~、シオンさん……その格好で暑くないの?」

 

『……? 大丈夫よ、流行りの冷感素材だから』

 

「私も中に着てくれば良かった~」

 

 もちろん冷感素材というのは嘘で、実際は冷却媒体で構成した膜状の放熱シート……巻いておけば内部の熱量をコントロールし、中身を設定した温度に保ってくれる……所謂「着るエアコン」のようなものである。

 元がゾンダー由来の生機融合体とはいえ、私は生身の人間と変わり無い感覚を持つボディなので、冷却は必須であり体温が高過ぎると思考や活動に酷く影響する……その為、こういう冷却機能は必須なのだ。

 

 自宅地域も落雷で送電停止してしまった事で避暑しようと護くんが本部に来たけど、本部も空調設備が復旧作業中である事に落胆……

 空調は本部だけでも数万箇所あるため、復旧作業はかなり忙しそうだ……そこで命さんが「暑さで皆参ってるもんね……外でアイスでも買って差し入れしよう!」とナイスアイデアを閃き、護くんと外出許可を貰ってスワンさんと命さん、そして用心棒として家からテリー(【猟犬座】)を呼んで連れ歩いている。

 ちなみにテリーは護くん達小学生ズと大の仲良しであり、華ちゃんが自分の家の飼い犬「よーぜふ」と色々比べては羨ましがってたっけ……

 

『ヴォンッ!』

 

 頭上に屯している鳩の群れを一吠えで散らし、鳩の糞爆撃を阻止……チョット優秀過ぎませんかねこの子。……そんな事を考えていると、何やら腕時計らしきものを覗き込みながら1人で口論している少女を見つけた。

 

 見た目は私(の精神年齢)と同い年(14歳)か、1~2つくらい下かな? ライトブルーのワンピースに麦わら帽子、そしてアレは……もしかしてグラディエーターサンダル? 初めて生で見たわ……

 

(赤い瞳……アルビノか。何処かのお嬢様っぽい感じがするわね)

 

 白い髪が夏の太陽で銀のように光り、まるで人形みたいな雰囲気を醸し出していた。その少女が此方に気付いて軽く会釈をすると、誰かに監視されている様な視線を感じた。

 

「あ、あの……何かトラブルですか?」

 

 アレ? おーい護くん、命さんまで……何でもうそっち行ってるの? え、困ってそうだったから? そう……

 

 どうやら彼女はフランスからの旅行者で、連れが何人か居るらしく……今はそれぞれ自由行動中。 合流するまでお手製のウェアラブル端末(腕時計型スマートフォン、らしい)で東京観光に繰り出そうとしたのだが、肝心の端末に不具合が出たらしく途方に暮れていたのだそう……

 

「……失礼、私はカルナ・ミステールグラスロノメと申します」

 

 何故か付けていた飛行気乗り向けデザインの男性用グラサンを頭の上に上げ、自己紹介をする少女……ワンピースと麦わら帽子に何故そんなグラサンまで? 清楚な格好にはあまりにも不釣り合いなので胡散臭さが半端ない……

 

『私は稀星シオンよ……カルナさん、ね』

 

「What? フランス語で“謎の食通”とハ、どういう事デース?」

 

 ツッコんじゃったよこの人?! 私、敢えて避けたのに……スワンさぁ~ん!!

 

「そう難しい事じゃ無いわ、ただのポーズ……面倒を避ける為の偽名ですもの」

 

 ってぇ?! コッチもアッサリし過ぎだし、自分から偽名って言っちゃう?! 言わないよね普通は?!

 

「……シオンさん?」

 

「……? どうしたのシオン?」

 

『……何でもないわ、何でも……』

 

 命さんと護くんが見てるけど愛想笑いで誤魔化すしか……って、カルナさんの視線が痛いっ! 彼女の言動に1人ツッコミをオーバーアクションでやってたんだから何か誤解されてるっぽい?!

 

 

 出会いはそんな感じだったが、カルナさんと話す内に……何と言うか、漠然とした感覚が頭を(よぎ)る……単なる転生者だった時の、まだ今の運命を知らなかった頃の私に似ている気がした。

 直接()れさえすれば、多分精神分析(メンタルサーチ)で確証も持てるだろう……今は雰囲気的な予想でしかないし、もし間違いだったら超失礼なんだけどね。

 

──────────

 

「ねぇ、シオン……この街でオススメのスイーツを教えてくれない?」

 

『スイーツ? そうね……私がオススメするなら、まずは……』

 

 話す内に、私と彼女は素で名前を呼び合う様になっていた。何となくだけど、彼女からは“気兼ねしないで”っていう雰囲気を持っている風に感じる。

 それに、時々怪しむ事もあるけど……何処か労る様な優しい眼も向けてくるのだ。

 

「ワタシからもオススメのスイーツ、有りますヨ?」

 

「だったら、私も……秘密のお店、教えちゃおうかな~?」

 

「ッ?! 是非、お願いします!!」

 

(うわぁ、食い付きが半端ない……嬉々としてるなぁ。もしかしてスイーツ好き? いや私もだけど)

 

 そんな風に感じるのも、やはり彼女も“転生者”……? いや、確証が持てないのに疑うのは失礼だ……

 

 

 

 

 

 この時は本当にそう思っていた。

 

 

 そんな話をしながら歩き、私たちは本部で頑張ってるみんなの為にアイスや冷感グッズを購入……カルナは理由を問うて来たが、私達がGGGの職員だと話すと妙に驚いていた。

 

「……貴女もGGGに!? 所属部署は?!」

 

(フランスにもGGGの支部はあるし、シャッセールという外部協力組織もある……GGGの存在を知らない筈はない。じゃあ何に驚いたというの? 彼女は……)

 

『え? あ、部署ね……技術開発部の所属だけど、医療特務官も兼任してるわ』

 

「医療、特務官……」

 

「シオンは、ワタシ達の健康を守ってくれる()()()()()()()()デース♪」

 

「専攻は精神科だけど、一般的な医療行為も習得はしてるし、簡単な外科治療……あ、薬剤師と調理師免許も持ってるから、薬膳料理や調剤も出来るわよ」

 

「……そうですか……まさかの身内とはね……」

 

 最後の方は聞き取れなかったけど、一瞬だけ見えたカルナの……心底安堵した表情、どうやら私は何か疑われていたらしい……確かに(今の)見た目は大人なのに、カルナのタメ口を普通に受け入れている私も、内心カルナを転生者と疑ってるからお相子なんだけどね。

 

──────────

 

「コレ……はあっちの棚かな?」

 

「う~ん……あ、そうそうこの先!」

 

 命さんは手に持った買い物メモを、護くんと覗き込んでいる……量販店の店内で私は買い物カートを担当し、命さんとスワンさんと護くんがメモを頼りに商品を持ってくる。ちなみにテリーは店の入り口でお行儀良く待機中だ。

 

「そういえばさっき……別行動中だったの私の連れの1人から『今日は良き友と出会えた。』って言ってたけど……どんな子かしら?」

 

 唐突に此方を見てそんな質問をしてくるカルナ……へぇ、連れの1人に友達ができたんだ……で? 何で今それを聞いてきたのかな? というか何で私を見てるのかな……?

 

 

 ズズゥゥゥン……!

 

 店から出て少し歩いた頃……突如、遠くで何かが崩壊する音が響く。

 

 私と護くん、そして何故かカルナも音より少しだけ早く何かを関知して音の方向を振り向いていた……アレ? 私と護くんはともかく、カルナは何に気付いたというの……?

 

「シオンさん……!」

 

『ええ、間違い無いわね……全く間の悪い……!』

 

 ゾンダーの事は伏せて事情を説明し、私達はカルナと別れて急ぎ本部に戻る……護くんは途中でボルフォッグに拾って貰い、スワンさんと命さんにはピスケガレオンを使わせて本部へ……私は自主鍛練中だったクーゲルザウターを呼び出して現場に向かう事にした。

 

──────────

 

 シオン達の姿が見えなくなった後、彼女の後ろにはいつの間にか6人の男女の黒服が現れていた……そして不具合を起こしていた筈の腕時計(端末)から声がする。

 

《ただいま戻りました……地下遠征は中々楽しめましたよ》

 

「ほんっとに羨ましいわね……で、お土産は?」

 

《色々と詳細なデータがコピー出来ました……ついでですが、極秘資料も幾つか》

 

 端末の画面に表示された内容を見て、カルナは驚愕する。

 

「な……コレって?!」

 

《その際に『マモン』が“良き友ができた”とはしゃいでいましたが……》

 

「ああ、『蟹』(カニ)というのには少々驚いたが、健剛で剣豪……実に頼もしい。まさしく“友”と呼ぶに相応しい漢だった」

 

 稲◯ボイスでウンウンと感慨深く頷く、ゴツイ男の黒服……

 

「私は側にいたイルカとサメに懐かれたわよ♪」

 

 隣の小柄な少女も、釘◯ボイスで嬉しそうに語る。

 

『蠍』(サソリ)からは当初、思いきり怪しまれましたがね……理解が早くて助かりましたよ」

 

 3人目の男は、ダンディで優しそうな速◯ボイス……

 

「そう言えば……もう1人、女の子(?)が居るって話してたけど……その子だけは会えなかったんだよね……」

 

 4人目に口を開いた男性は花◯ボイスで、残念そうに付け加えてきた。

 

 黒服の男女は口々に己の感想を話し、一喜一憂するその姿を微笑ましく思いながら、カルナは資料にも目を通しつつ思案する……

 

「……カニ、イルカにサメ……そしてサソリ、ねぇ。こっちもゾンダー関連で非常に興味深い人と会ったわ……っていうかGGG職員(ほぼ身内)だったし、その子達は恐らく《彼女》の関連なのでしょう……」

 

《……であれば、タイミングが悪かったですね……私も、出来れば直にお会いしたかったです》

 

 端末からの声は、意外にも残念そうだった。

 

「それって彼女が、アナタが以前に言ってた『究極の到達点』って事かしら?」

 

《そうですね、データ上では似て非なる……ですが現在(いま)の処、一番近しい存在ではないかと》

 

「そういう事……か。お菓子の取材をしに来たついでで張ってたけど……正解だったわね。彼女の潜在能力をもってすれば、いずれはエヴォリュダーをも超えるでしょう……さすがは紫の星の、って処かな」

 

《仰る通りです……ちなみに、この後はどうなさるおつもりですか?》

 

「そうね……ひとまず先回りして、とりあえずは傍観かしら」

 

《了解しました、出歯亀(デバガメ)ですね♪》

 

「……言い方」

 

 黒服を連れて東京の街を歩くカルナはそう言いながら、自身の腕に付いている端末を小突いた。

 

「ところでお嬢。一応、私物なので……いい加減ソレ(グラサン)は返して貰いますよ?」(稲○ボイス)

 

「……もう少し楽しみたかったのに」

 

──────────

 

 伊豆方面の上空に漂う謎の超巨大積乱雲……そしてそれから放たれた雷撃で、先程の崩壊は起きたらしい。

 

《三段飛行甲板空母、伊豆方面に向けて飛行中!》

 

《稀星くん! 敵の詳細が知りたい、すぐに合流できるかね?》

 

『クーゲルザウターを呼びましたが、合流にはまだ……合流でき次第急行します! 分析に使えそうな映像をコッチに転送(まわ)して下さい!』

 

 G-USBを緊急モードで展開、6面に増えたホロモニターのうち4面に現場の映像が転送されて来る……映し出されているのは、巨大な積乱雲。周囲には強力な電磁波と強風でバリアーを作っており、大気状態が非常に不安定……なるほど、昨日の嵐の原因もコイツだったって訳ね。

 

『巨大積乱雲……何時ぞやの黒雲ゾンダーに酷似してますが、規模が半端なく巨大ですね。それに……ッ?! この素粒子Z0の発生パターン……まさか、拡散用の胞子がもう完成しているとでも言うの?!』

 

《な、なんだって?!》

 

 冗談じゃない!! 現在位置は伊豆の上空高高度だけど、コレがもし市街地まで降下してきたら、確実にゾンダー胞子が撒かれて逃げ遅れた人は一瞬でゾンダー化するし、そこからねずみ算式で増えていく。

 

『最悪過ぎます……もう一刻の猶予もない。アレを今すぐ止めないと、伊豆が一瞬でゾンダーメタルプラント化されます!! クーゲル、最大速度で伊豆方面へ!!』

 

 文字通り飛んで来たクーゲルザウターに飛び乗ってすぐに指示、最高速度マッハ8.5を叩き出せるクーゲルザウターなら、此処からでも数分で行ける。

 

《?! 待って下さい! 雷雲が……!》

 

 その直後だった。牛山さんの声と共にホロモニターの一面が切り替わり、三段飛行甲板空母の外を映す偵察カメラの映像。そこに映し出された光景は、巨大積乱雲から伸びた腕のような形の雲が伸び……ちょうど三段飛行甲板空母を飲み込むように覆い隠した所であった。

 

《え……そ、そんな?! 三段飛行甲板空母との通信途絶!?》

 

《氷竜・炎竜、ガイガーとも交信不能です!?》

 

(まさか、あの積乱雲が囮……もしくは罠だとでも言うの?!)

 

《サテライトリンク、回復しません……レーダー波も全く応答なし、強力な磁場と電磁波で内部の解析も不可能です》

 

 だが私には、巨大積乱雲の内部に確かにゾンダー反応とプラントの反応、そして空間の乱れを感知できている……敵の狙いは巨大な囮兼プラントに機動部隊を閉じ込め、その間に成長しきったゾンダーが胞子をバラ撒き……伊豆方面全域をゾンダーメタルプラントにするつもりだったって事?!

 

『……長官、ゲートの開封許可を! 私の戦力だけで、どこまでやれるか分かりませんが……』

 

《うむ、これは正しく緊急事態だ……ゲートの開封を許可するッ!!》

 

 万が一に備えて、私の戦力は亜空間内に待機させており……ゲートを使用して任意の場所に呼べる様にしている。背に腹は代えられない事態……こういう事に対する心構えや、策による慢心を避ける為にも、私は自ら大河長官に使用許可の可否を委ねる事にしていた。

 

『はい! 天を結びし黄金の航路(みち)、遍く虚空(そら)に輝くものよ……我が祈りを聞き届け、その御業(みわざ)を以て()の地へ(いざな)え!

 

 コラそこ、中二病いうな! この呪文には空間先の座標の演算とゲートの生成、安全対策その他の情報の算出プログラムを乗せてるんだから! コッチだって本当は言うの恥ずかしいんだってのに!!

 

 全ての演算が終了し、私を乗せたクーゲルザウターは眼前の穴へと突入……

 それから数秒後に見えた光景……そこは件の現場上空だった。

 

──────────

 

 しかし、シオンの持つ戦力で大っぴらに空中戦が出来るのはクーゲルザウターのみ。ピスケガレオン、ダイキャンサーは勿論飛べないし、最大戦力であるグラヴィスコルードなら射程圏内ではあるが、相手が巨大過ぎるのでコアの位置は不明……万が一、コア諸共ゾンダー被害者を消し飛ばしでもしたら間違いなくアウトだ。

 歯噛みする様にダイキャンサーは鋏を打ち鳴らし、ピスケガレオン達も声を上げて巨大積乱雲へ向けて猛抗議……グラヴィスは最初から手が出せない事を理解しており、自分で開けた穴(ワームホール)からジッと見ているだけだった。

 

(本部との通信もダメになってる……奴の防壁は空間的にも閉鎖できるという訳ね。……こんなヤツ相手に、クーゲル1人だけじゃ荷が重すぎるわ!)

 

 これではせっかく来たのに手も足も出せない……だがその時、私の超感覚が巨大積乱雲よりも上にエネルギーの発生を感知した。

 

「ギリギリまで手出しはしないつもりだったけど、状況が状況ね……仕方ない。『ヘル・アンド・ヘヴン』ッ!!」

 

 そして急に発生した、ガオガイガーよりも強力なEMトルネード……それが巨大積乱雲へと突き刺さり、急速に積乱雲は拡散。みるみる内に積乱雲を操っていたゾンダーと、内部に居たであろう風神と雷神を模したゾンダーロボが姿を表し……

 

『────ウィータァァァッ!!』

 

 空に轟くのは、聞き覚えのある声……そしてそれは間違いなく、完全版ヘル・アンド・ヘヴンにしか無い、最後の一文だった。

 

 それが巻き起こす緑色の竜巻は積乱雲を残らず消し飛ばし、丸裸になった積乱雲ゾンダーの本体を拘束……余波で風神・雷神ゾンダーロボを吹き飛ばし、その間をガオガイガーにも似た()()()が駆け抜ける……標的となった積乱雲ゾンダーは強力なエネルギーの奔流に成す術なく消し飛ばされ、拡散しようとしていた素粒子Z0諸共あっと言う間に消え去った。

 

(……黒い……ジェネシック……いや、違う?! 結構、似てはいるけど……)

 

 黒い巨体……その両手には、消し去った敵のゾンダーコアが確保されている。一見すれば黒いジェネシックガオガイガーだが、よく見れば似ているのは大まかなシルエットのみ……

 

(アレは趣味のデザインね……両足は(ドラゴン)、両肩は……右が一角狼(ガルム)に、左は一角馬(アリコーン)……背中は多分不死鳥(フェニックス)かな?)

 

 聖書に記された黙示録の獣、それを象ったガオーマシンらしき物と合体しているギャレオンの顔も、何処となくジェネシックと違う……大体は似ているが、主観的な調整か……何らかの都合で泣く泣く変えるしかなかったという意図が読めてしまった。

 

 アレ? 私なんでそんなの分かったの……?

 

 そして、ギャレオンであろう胸の獅子の口がゆっくりと開き、人影が出てくる……背には白い鳥の翼と黒い蝙蝠の翼、凱さんと同じ炎のようなオレンジ色の髪に、太陽の如き白銀に輝く装具。

 

 その人物はゾンダーコアを護くんと同じ様に浄解……コアにされた人物を元に戻すと、簡易ゲートのようなものを開いて私の所へ飛ばしてきたのだ。

 

 多少シルエット的な違いはあれど、あの目が持つ雰囲気はそうそう間違える筈がない……第一、私の直感が言っている。『あのガオガイガーは個人的な趣味でアレンジっぽい事がされたもの……()()()()()()()()()的なヤツ』だと……

 

『……カルナさん、ですよね……?』

 

 衝動的に口にした名前に、過剰反応(オーバーなほどビクッと)した人影……今、確信に変わった……アレは絶対カルナだ。

 

『……いえ、私は星の彼方より遣わされた宇宙警察機構の……』

 

『ハイハイ、見え見えの嘘ね……私に嘘は通じないわよ? 声紋分析すれば一発なんだから……』

 

『ン"ン"ッ……見ての通り、ただの食通ですが何か?』

 

(#゚Д゚)『そんな格好でロボット操る食通が居るかァッ!!』

 

 煙に撒こうったってそうは行かない。この世界の情報は前に一度洗い浚い調べ尽くしている……私以外に地球製ガオガイガーを超越する技術を使った(ジェネシックと同等レベル)のロボットが造れる存在はあり得ないのだ。なのにココには、ジェネシックと同等の強さを誇れるロボットがあり、それをカルナが操っていた……つまりカルナは違う世界から来た転生者、しかも自力で世界を超えてきた可能性が高い。

 

(もしかしたら、バッドエンド回避のヒントか何かを得られるかもしれない……! 絶対に逃がすもんですか!!)

 

『第一、仮に身体が宇宙人だとしても精神分析(メンタルサーチ)すれば分かるわ……そもそも格好以前に地球人類と同じ倫理・思考的な行動をしてたからその時点で人類だと分かる。それに今、貴女の身体をスキャンした結果は完全に人類と同じ骨格に身体構造。同時に宇宙人の擬態じゃない事も確認済み……さらに言えば、声紋分析の結果、該当者1名……《カルナ・ミステールグラスロノメ》だっけ……? あぁそうそう、喩え機械で変声してたとしても私には分かるから意味が無いわよ? 敢えて私の前で他人のフリをするなら、喋らず・何にも触れず、X線とかで透視出来ない素材で体型を隠せる全身鎧でも着込んで精神防壁とか全開にして挑む事ね?』

 

『うぐぅ……バレバレな所もデフォルトですわ!!』

 

(何かめっちゃ悔しがってるなぁ……もしかして自信満々だった? その格好してれば絶対バレないって思ってたんだ……うん……なんかゴメン……)

 

 そんなやり取りをしていると、先程積乱雲ゾンダー破壊の余波で吹っ飛んでいた風神・雷神ゾンダーロボが再び浮上してくる。どうやら罠自体は彼らの方が担当であり、現実に凱さん達機動部隊との通信は回復していない……空間的な断絶状態は続いているという訳か。

 

《機動部隊との通信、途絶したままです!》

 

《やはり、あの2体のゾンダーロボが鍵なのじゃろう……恐らく、敵の能力は空間操作だけではあるまい》

 

 麗雄博士の指摘は正解だった……風神・雷神ゾンダーロボは連携しながら風と雷を駆使して此方を牽制……黒いガオガイガーも応戦するが、直撃だった筈の攻撃……一撃で体力を削り切れる筈のダメージが全く通用していない。

 

『このエネルギーの流れと、次元遷移のパターン……コイツ等もしかして、同時に同じ部位へ攻撃しないと損傷しないって訳?!』

 

 私の眼が捉えたのは、特殊な空間エネルギーの防壁と局所的事象改変によって起きる次元の歪み……そしてそれがもう片方とお互いに影響し合っており、異なる次元の流れは強制的に否定され元側の事象までキャンセルされたのだろう。

 

『……圧倒的に手が足りないわね、こうなったら()()()()の力もお借りしますか。ラファエル、サタン!』

 

 カルナの声を皮切りに、黒いジェネシックもどきはフュージョンアウト……ガイガーと5体のガオーマシンへと分離する。そしてその内の2体、1対のドラゴン型ガオーマシンが最速で地上へと降下していった。

 

『……何を始めるつもり?』

 

()()()()の力をお借りするだけですわ、でもそれには少し……下準備が必要ですの。……来ますわよ!?』

 

 風神・雷神ゾンダーロボは再び連携攻撃で此方を狙う……クーゲルザウターは両方を射程内に収めて「レヴ・クレイモア」を放つが、どうしてもヒットのタイミングをずらされてダメージを負わせる事が出来ない。

 

(フュージョンアウトしたのは、何か理由がある筈……でも聞いてる余裕がない!)

 

 私はクーゲルザウターに指示を出しながら、地上のピスケガレオン達にさっきのガオーマシンの捜索を伝えるが、何故か“その必要はない”と返答……そして飛べない筈のピスケガレオンとダイキャンサーの反応が空中に表示され、そのまま接近してきていた。

 

(……あのさ……キミ達、何をしてるのかなぁ?)

 

 何故かさっきの竜型ガオーマシン2体の背中に、ピスケガレオン2体と、巨刃形態のダイキャンサーが乗っかって飛んでいるのだ。

 

《“フフフ……では行くぞ、友よ!”》

 

《“承知ッ!”》

 

 ダイキャンサーを乗せたドラゴン型ガオーマシンが速度を上げ、風神・雷神ゾンダーロボに迫る。風神ゾンダーが風を発するが、ダイキャンサーは蟹の巨刃(タイタンカルキノス)を一閃……放たれた風そのものをぶった斬った。

 

『『……はぁぁぁ~~~っ??!!』』

 

 私とカルナは、この意味不明な光景に同時に驚く声を上げた……竜に跨る武者はそのまま風神ゾンダーロボに肉薄しようとするが、雷神側が攻撃して邪魔をしてくる。だが、クーゲルザウターが独自判断で雷神の持っている武器を撃ち落とし、足止めするように加勢し始めた。

 

 もう1体の竜型に乗ったピスケガレオンは、足場となっている竜と3体同時に空間干渉の波動を雲へと送り、強引に空間障壁を抉じ開けようとしていた……

 

(もしかしてこの子達……勝機を確信してる? なら、任せるわよ!)

 

 やっちゃえ! とクーゲル達の判断を後押しし、私はゾンダー被害者を連れて邪魔にならないようにクーゲルから離れる。黒騎士が両手の銃で追い込み、竜に乗った武者が迫る……すると風神・雷神はなんと超竜神が如くシンメトリカル・ドッキング染みた合体をして両手から風と雷を放ってきた。

 

(これは……焦ってるとでも言うの?)

 

 このタイミングで合体するのは何かの意図があったんだろうけど、あの3体は動揺してないみたい……「さっきよりも楽になった」とでも言わんばかりにキレが増し、追い込みも確実に効いている。しかも合体時はさっきのダメージ無効が使えないのか、損傷しては再生する姿も見えていた。

 

《“友よ、今が駆け抜ける時……!”》

 

《“応ッ!!”》

 

 僅かな隙が見えた直後、武者を乗せた竜は最速で突撃……武者もそれに呼応する様に咆哮。

 

《“刮目せよッ!!”》

 

《“これぞ我らの……!”》

 

《“乾坤一擲の一撃なりぃぃぃッ!!”》

 

 タイミングを合わせ、構えた武者を乗せた竜が上昇気味に突っ込む。迎え撃つ合体ゾンダーロボだが、肘関節を不意のタイミングで撃ち貫かれて両腕を失い、再生に時間を取られてしまう……勿論、関節を狙い撃ったのはクーゲルザウターだ。

 

《奥義ッ!! 斬蟹刀・竜騎翔閃(りゅうきしょうせん)ッッッ!!!》

 

《“切り裂くッ!”》

《“チェストォォォッ!!”》

 

 こうなるともはや止める術など有りはしない……合体ゾンダーロボはダイキャンサーの持つ巨大な刃によって縦に一閃、僅かに遅れて発生した炎と雷の追撃で外装のほとんどを焼かれて大ダメージを被る。

 更に損傷から内部回路もショートして何度も爆発を起こし、それによって合体を強制的に解除させられる風神・雷神ロボ。その光景を、武者を乗せた竜が上から見下ろす様に眺めていた……

 

《“……フッ、我らに”》

 

《“断てぬモノ無しッ!!”》

 

 更にその影響で空間に巨大な歪みが生じ、ピスケガレオン達が干渉していた雲の壁の向こう側に三段飛行甲板空母が姿を表し始めていた。

 

《レーダーに反応あり! 雲の向こうに三段飛行甲板空母を確認しました! 機動部隊も健在です!!》

 

 合体ゾンダーロボは受けたダメージを回復しきれずに合体も解除され、その際に謎の防御システムの中枢が破損したらしく、クーゲルザウターの追撃に風神ロボは堪らず凱達の方へと逃走……雷神ロボは反対に死に物狂いで向かってきた。

 

《凱! 聞こえる? ゾンダーロボが2体居るわ、そのうちの1体がそっちに!》

 

 凱への通信が届いたのかは分からないが、空間的な隔たりに穴は空いたものの……まだ完全には解除されていないため返答は来なかった……しかし、コンソールに座る命の手元……ファイナル・フュージョン要請シグナルが音を立てて光り始めたのだ。

 

《あっ……ファイナル・フュージョン要請シグナルが……!》

 

《うむ! ファイナル・フュージョン、承認ッ!!》

 

《了解! ファイナル・フュージョン……プログラム、ドラァァァイブッ!!》 ガシャン!!

 

──────────

 

 

-< FINAL FUSION >-

 

 

CYBOG GUY      ------   DRIVE

MECHANOID GAIGAR  ------   DRIVE

G.M LINAR-GAO    ------   DRIVE

G.M STEALTH-GAO   ------   DRIVE

G.M DRILL-GAO    ------   DRIVE

 

 

-< FINAL FUSION >-

 

 

 

MASTER ???      ------   DRIVE

MECHANOID M.GAIGAR  ------  DRIVE

M.M ALICORN-GAO   ------   DRIVE

M.M GARM-GAO     ------   DRIVE

M.M PHENIX-GAO    ------   DRIVE

M.M DRAGON-GAO    ------   DRIVE

M.M DRAKE-GAO    ------   DRIVE

 

 

 

──────────

 

 

 

 

 

-< FINAL FUSION >-

 

- GAOGAIGAR -

- MAGIUS GAOGAIGAR -

 

 

 

 

 

──────────

 

《『ファイナルッ・フュ――ジョンッ!!』》

 

 風に乗って聞こえる声……カルナの操るガイガーが、ガオーマシンと合体を開始……発生する銀の電磁竜巻(EMトルネード)……私はセンサー類を駆使して内部をスキャン、電磁防御フィールドを貫通して視認だけはできるようにする。

 

※ ココからは是非、ジェネシック・ガオガイガーの合体BGMを頭に思い浮かべながらどうぞ。

 

 渦巻く銀色の電磁竜巻(シルバリオン・トルネード)の壁の左右から、頭部(ドラゴンヘッド)にGバリアを展開して突入するドラゴンガオー(雄飛竜)ドレイクガオー(雌飛竜)……

 一角にGパワー集束させながら銀の竜巻を突き破り、空を駆けるガルムガオー(一角狼)アリコーンガオー(一角馬)……

 渦の真下から突き上げて急速上昇するフェニックスガオー(不死鳥)……

 

 ガイガーを中心に旋回運動をする5機のマギウスマシンが、ギャレオンの咆哮と共に放たれた閃光を受けてその眼を光らせ、一斉にその動きを変える。

 

 ……そして始まった、(シオン)の知らない「未知なるファイナル・フュージョン」。

 

 下半身を反転し、腰部の黒いスカートパーツを表にしたガイガーの下に、駆体をひねって急速降下するドラゴンガオーとドレイクガオーがガイガーの脚の下で両翼を拡げて静止……更に逆さのままで翼を動かすと同時に、下側となった竜頭の上下の(あぎと)がそれぞれ90度展開し、首の関節も収納されて足を象ると、上を向いてドリルと化した尻尾の根元が前方へ倒れてガイガーの足を収納する挿入口へと変わり、その両足を受け入れて翼を含めた全身が可動……余剰スペースを収縮させ、全体が脚部装甲としてロックされる。

 

 次にガイガーの両腕が肩の基部ごと後方へ開かれ、現れた開口部の右側にガルムガオー、左側にアリコーンガオーが接近……両機とも変形し、前脚は肘を突き出すように固定。後脚が開口部からガイガーの内部へと侵入した後、脚に仕込まれた連結機によってそのまま内部で連結される。

 

 その後、首下から胴体にかけての下部装甲が開放されると、中から上腕部となるパーツが出現……直後にガイガーの背部の下方からフェニックスガオーがガイガーの背に折り畳まれた両腕をレールのように伝って固定位置に停止、両肩の基部をその足で掴むと同時に機体そのものも完全固定(パーフェクトロック)

 

 ギャレオンの首周りへ、ジェネシックと同じようにスライド展開する(たてがみ)が装着され、ギャレオンの双眼に強く鋭い眼光が漲る……その後フェニックスガオーの魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)が本体のアームユニットからスライドして上腕部へと接続され、ジェット部のフィルターが解放されると、そこから漆黒の両拳が高速回転しながら飛び出す。

 

 フェニックスガオーの頭部が長く白い無数の尾(エネルギーアキュメーター)を引きながら上へと持ち上がり、その(くちばし)が左右に開かれると同時に全体の形状も変化……ジェネシックに酷似したヘッドカバーへと変わってガイガーの頭部に装着されると、地球製ガオガイガーと同じデザインのフェイスカバーが展開、白銀に光るエネルギーアキュメーターが風に靡く白い髪のように解き放たれる。

 

 最後にヘッドカバーの額の窪みから迫り出した『Gストーン』が光り、左手甲に『G』、右手甲には『J』の紋章……そしてギャレオンの瞳にも『V』の光が煌めき……ついに全てのプロセスを終え、異世界の勇者王が顕現したのであった。

 

『ガオッ! ガイッ!! ガァァァッ!!!』

 

 

 

──それは、数多の可能性の集合体。

 

──それは、ある少女が誓った勇気の証。

 

──それは、魔法と科学の融合にして、勇者王の次なる姿。

 

──我々の想像を超えて顕現した、異世界の勇者王……

 

 

 

 

 

 ……その名は、勇者王 マギウス・ガオガイガー。

 

 シュゥゥゥ……!

 

 ヘッドカバーの両頬にある排気口から熱を含む空気が強制排気され、合体による熱量負荷の上昇に対応する……

 悪魔の如き顔と牙、元は鳥の顔だったモノのどこをどう動かしたらこんな悪役面になるのか、常人には理解できないだろう……だが、この悪魔の如き強面であればこそガオガイガーと言える。

 究極の破壊神ことジェネシックもこんな面構えだし、ガオガイガーと名乗るならばコレ位の悪役顔でなければいけないとまで思っている。彼女もそんな風に思ってくれてたらいいなぁ……

 じゃないっての!? マジかよ……凱さんも一緒に向こうでF・F(ファイナル・フュージョン)してたし、同時に合体とかロマンかよ!! 混ざりてぇ!!(合体するマシン持って無いけど)

 

(……っていうか、さすが長官ね。通信は回復してないけどFF要請シグナルだけで意図を理解して合体を承認するなんて……!)

 

 実はこの要性シグナル……凱ではなくカルナの操る『マギウス・ガイガー』から発されたものであるが、偶然とはいえ凱も同タイミングで発信しており、全くの偶然であるが認証ドライブによって凱のファイナルフュージョンにサポートプログラムが適用された状態となり、いつもより無駄なく合体が完了していたという事実が、後の調査で判明したという。

 

 ……なお、その時のログを元に合体プログラムも大幅な改善が見込める事が分かった。

 

『《ブロウクンマグナム》ッ!!』

 

 カルナの機体……その右腕が唸りを上げ、赤熱化した右の拳が腕から飛び出し、雷神ゾンダーロボを打ち据える。直撃を受けた雷神ゾンダーロボは大きくノックバックし、 突き抜けた拳はそのまま風神ロボの方へ……しかし、風神ロボは風を使って何とか弾き飛ばし、そのままマギウスへと狙いを定め、雷神ロボも体勢を立て直して雷撃を放って来た……だが。

 

『《プロテクトシェード》ッ!!』

 

 右腕を戻したマギウスが今度は左腕を前にかざし、袖部分が僅かに変形すると同時に魔術紋様の陣と強力な空間障壁が展開され、風と雷撃を受け止めると同時にフィールド内で圧縮……凝縮されたエネルギーは光弾と化し、尚も向かって来る雷神ロボへと返されまたしても直撃……その光景に風神ロボの方は雲の向こうへと逃げ去ろうとする。

 

 雷神ロボが落下していくが、両方とも逃す訳には行かない……下で待っているグラヴィスに2体のロボの位置を報せると、凄まじい数の不気味な黒い『穴』が周囲に展開され、その穴から次々と飛び出す黒い帯の様な攻撃でまずは雷神ロボを打ち上げてきた。

 

 ……え? コレ撃ち込んでも大丈夫なヤツ? ……手加減はしてる? ……なら良いけど。

 

 無数の黒い帯で再び上空へ打ち上げられた雷神ロボに対し、マギウスは何やら下方へと目配せ……何とそれで意図が伝わったのか、転送陣を開きダイキャンサーの背部マウントからシザーアームが射出され、マギウスはそれと両腕を換装……そのまま【シザース・H&H(ヘルアンドヘヴン)】の構えを取ったのである。

 

『システムコネクト……調整、終了。行くわよ、《ヘルッ! アンド! ヘヴンッ!!》』

 

 雷神ロボは既にフラフラ……逃げようとしていた風神ロボにも、グラヴィスのあの黒い帯攻撃が差し向けられており、分厚い雲の向こう側からも戦闘音がしている……というか、実はグラヴィスが自分のセンサーで捉えている敵の映像を、わざわざG-USB経由で見せ付けていた。

 

 ……あぁ、こりゃ絶対に逃げられんわ。

 

『ハンマーコネクトォッ! ……ゴルディオンッ、ハンマァァァッ!!』

 

 更にG-USB経由で届く映像を見ると、しっかりとガオガイガーも風神ロボを捕捉しており、ゴルディオンハンマーを発動……ガオガイガーの右腕がマーグハンドに置き換わり、金色の光が全身を包む。

 

(ヴェッ?! まさかコッチも同時?!)

 

 マギウスがどうやったのかは分からないが、基礎システムとコネクターはガオガイガー用なので規格的にはそのまま合うのだろう……機体の制御システムをどうにかしてリンクさせたらしく、マギウスはEMトルネードを放出。紫電を迸らせる銀色の竜巻に打ち上げられた雷神ロボは中空に拘束され……

 

『ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ……ウィータァァァッ!!』

 

『ハンマー・ヘルッ! ……ハンマー・ヘヴンッ!!』

 

 映像では風神ロボを取っ捕まえて弄ぶグラヴィスのお膳立て攻撃が決まり、ガオガイガーがゴルディオンハンマーを振り翳す……そしてほぼ同時に、両者の必殺技が相手に炸裂したのだった。

 

『ハァァァッ!!』

『光になれぇぇぇッ!!』

 

 双方がほぼ同じタイミングでコアを摘出……止めを刺し終え、凱さんの方は護くんが。マギウスの方は再びカルナが出て来て浄解……

 

 今回のゾンダー化被害者は3人……風神・雷神ロボだった2人は浅草観光をしていた外国人観光客、そしてもう1人は普段からTVで見る現役の気象予報士だった。

 

(まさかの石原◯純……!?)

 

──────────

 

《シオン! 無事だったか?!》

 

『それはコチラの台詞です……凱さん達こそ、よく無事で』

 

 全てのゾンダーロボを倒せたので通信も回復……凱さんが早速心配してくれている。けどどう見たって凱さん達の方がヤバそうな成り行きだったからそっくり言葉を返しておいた。

 

『あ、そうです! ピンチの所を助けてくれた娘が居て……あれ?』

 

《……? どうしたの、シオン?》

 

 クーゲルの掌には、いつの間にかカルナが浄解した被害者が追加され……変わりにカルナとあの機体が忽然と姿を消していた。

 あの巨体だから幾ら高速移動しても金属反応くらいすぐに分かる筈なのに、そんな素振りすら無くいきなり消えていたのである……

 

『博士! さっきの黒いガオガイガーは……?!』

 

 一応、戦闘の一部始終は録画しており、同時に本部へも転送していたのだが……

 

《済まない、稀星くん……中継を此方でも録画していたのじゃが、何故かあの機体は映っとらんかった。送られてきた生の映像で確かに僕らも見た筈なんじゃがのぅ……》

 

 中継の生映像では確かに、マギウスが戦闘をしていたのを本部の全員が見ていた筈なのだが、記録媒体には一切残っていないのだという。

 そんな馬鹿な……じゃあ、あの機体は幻だとでも言うの?! 三段飛行甲板空母の方は……

 

《悪いが稀星、こっちも空間干渉のせいでロクな戦闘データが取れてねぇ……その所為でさっきのゾンダーロボに認定ナンバーも振れねぇときた》

 

 前の事件もあり、磁気嵐対策までバッチリだった筈の甲板空母でも、何らかの干渉で記録映像やデータには、何も書き込まれていないらしい……マジかぁ……

 

《そうか……戦闘データは確かに惜しい事ではあるが、ゾンダーメタルプラント化というリスクを背負ってまで、今回の戦闘データを求めるのは本末転倒過ぎる。まぁ、良いじゃないか? 全員が無事に戻り、事件も解決したのだから……》

 

 まぁ、今回は危うくゾンダーメタルプラントの完成直前で阻止……しかも胞子拡散も秒読み段階だったものを止められたのだ。危険すぎる土壇場の賭けに、辛うじて勝った様なものだ……

 

(そう言えば……カルナは街にもいた。そっちなら映像が残っているんじゃ……)

 

 急ぎ回線を確保し、街の防犯カメラの履歴も全て洗い直す……しかし結局、カルナが映ってる映像は何一つ残ってなかったのである。

 

──────────

 

 事後処理も終わり、私は夕暮れの帰り道で1人……昼間の出来事を思い返していた。

 

(結局、カルナが居たという証拠は何一つ出て来なかった……護くんやスワンさんにも記憶はあるのに、映像には残ってないって……一体何なのよ、あの子(カルナ)は……)

 

 戦闘データ、サテライトリンクやサーチにも痕跡無し……ガオガイガー程のロボットがサテライトサーチにも引っ掛からずに戦場を好き勝手動ける訳が無いし……第一、映像に残ってないというのが一番不可解だ。

 

(それにあの機体、Gストーンだけじゃない……Jジュエルの他にも、謎のエネルギー反応が2つあった。……白銀化(シルバリオン)現象はGとJの共振作用とみて間違いないけど、残る2つのエネルギー反応……全く覚えがない………それに、機体のエネルギー経路には未知の金属反応と文字が見えた。見間違えでなければ、アレって()()よね……所謂、魔法的な……)

 

 記録には全く残ってないが、私の脳内には残っている……機体に施された幾つかの紋様と、びっしりとエネルギー経路に刻まれた術式……その詳細は不明ながら、『何かの為』であるかは分かる。

 あの術式と紋様には、あの機体にとって『重要な何か』を高める意味があるのだろう……

 

(確か、Gストーンにはリンクシステムがあるって話だったわよね……もしかしたら、あの機体のGストーンともリンク出来るかもしれない……)

 

 無論、その方法は全くといって不明だが……もし可能になったら、いつかはやってみたい。

 

 

 家に帰り着き、お風呂や夕食で一息いれた後……テリーを撫でながらソファーで寛ぐ。ふと、G-USBにメールが入っているのに気付いた。

 

(差出人は……無記名? 誰よ一体………………ッ?!)

 


 

『紫の星の人々が望み、臨んだ、究極の到達点へ唯一、到達しうる可能性を持つ貴女へ。

 いつか直接の会合を願います。

by:紫の星の中枢だったものより 

 

 追伸:先程、冷蔵庫に試作したお菓子を入れています。

 ファイナル・フュージョンの誤発信のお詫びです。

 賞味期限が短いものなので、皆さんで早めに召し上がって下さい。』

 


 

 無記名メールの内容、この差出人は紫の星の関係者……というか中枢だったものって何?!

 

 “だったもの”という過去形とは言え、この相手は私の過去が『Zマスター』だという正確な認識を持っている……私の端末の連絡先はGGGの関係者か、一馬さんくらいしか教えてないし、カルナは知る由もない筈なのだが、ファイナルフュージョンの誤発信……つまり直近の関係者しか知り得ない事も書かれている。

 

 ……忽然と姿を消した相手からの、再会の約束とお詫びメール……一瞬だけゾッとしたのをテリーが気付き、甲斐甲斐しく私の身体を暖めようと乗っかって来るのを手で制しながら立ち上がる。

 

 こんな不可解過ぎる出来事が続くなんて……今日の蠍座、運勢は最悪だったのかも知れない。

 

 ともかく、沸き上がる衝動を抑えきれず……私は日が暮れて涼しくなったベランダに出て、思いの丈をぶつけるが如く……この混乱をどうにかしたい一心で叫ぶのだった。

 

『……もう……ワケワカンナイヨー!!』

 

PS. 後でダイスを振ったら、SAN値-2でした…… 

 




閑話は此にて終幕……如何だったでしょうか?

プチコラボとはいえこんな長編になっちゃうとは思っても見ませんでした……
しかし、書いててメッチャ爆上がりテンションになったし、色々とシーンを想像しながら台詞を書き込んでいる時はニヤケ顔が止まらなかったですねw

また、即興とは言え双方のオリジナルメカが協力して合体技を披露するという激アツ展開を設けましたが……ちゃんとネタ元のスパロボ風味になってましたでしょうか?
その辺りは是非とも感想を頂きたいものです。

なお、マギウス・ガオガイガーの合体プロセスや解説その他は、ネタ提供者である和鷹聖さんの執筆作品「公爵令嬢はファイナル・フュージョンしたい。」から少し私風にアレンジして流用。もちろん、その勇姿と活躍は推して知るべし……つまり向こうも読んでねって事です! マジ楽しいですよ~♪

公開済みの各話含め、感想よろしくお待ちしてます!

──────────

次回予告


君達に最新情報を公開しよう!

アメリカから送られて来たCR「マイク・サウンダース」……
無邪気な子供の様な彼は、とても戦闘に耐えられるとは思えない。

だが、残り少なくなったゾンダーメタルを複数用いて
ゾンダリアン達は過去最悪の非道な作戦を開始。

次々と勇者達が倒れる中、突如響くノリノリのサウンド……
「COME ON! バリバリーン!!」
ギターを掻き鳴らし空に舞う、謎のロボットの正体とは……?!


次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第40話『滅びを呼ぶ声』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!


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第40話 滅びを呼ぶ声(マイク・サウンダース) (前編)

1話限りの合体技『斬蟹刀・竜騎翔閃』のインパクトが全てを持っていった前回ですが、如何だったでしょうか?(;´∀`)
今回もまた予告どおりに新キャラが登場します。
タイトル的から既にモロバレしてますが、マイク・サウンダース13世の登場ですw

マイクの口調再現、けっこうむっずいわ……



 先日の嵐で一時的にコンテナが行方不明にはなったものの、無事にGGGアメリカの開発した新戦力。コードネーム「CR」……コスモロボと銘打たれた特殊機体。

 原作でもお馴染み「マイク・サウンダース13世」がGGGベイタワー基地に来訪した。

 

『ハローエブリバディ~! マイネーム、イズ、「マイク」! ヨロシクネー♪』

 

 原作通りのお気楽口調とコミカルなビジュアルが特徴の勇者ロボ……獅子王麗雄の兄であり、世界十大頭脳の1人「獅子王雷牙」が基礎設計を行い、NASA(アメリカ航空宇宙局)とGGGの共同開発……所属こそNASAではあるが、AI開発と育成にはGGGが主導しているのである。

 なお、今回の訪日目的はCR(マイク)のAI育成やGGG本部のメンバー……主に機動部隊との交流、となっているが……原作を知っているシオンからすれば、裏の事情がある事は目に見えていた。

 

(原作通りのマイク訪日……雷牙博士も一緒なら、十中八九「ゾンダーメタル」の回収とゾンダーロボの戦闘データ解析でしょうね……さて、このシナリオをどう捌くか……)

 

 実際問題、シオンが手を出さなくてもこの案件は丸く収まる為……特に気にする必要性は無いのだが、シオン自身はそう思っていない。

 

(私の裏事情とアーマロイド(グラヴィス達)との本来の関係が知れれば、混乱は必至……下手をすれば世界各国やGGGとの関係にも軋轢を生みかねない……慎重に事を運ばないと)

 

 そう……シオンの正体や裏事情はGGGの一部スタッフ(メインクルーや整備・研究開発部所属の者)しか知らず……混乱を避ける為にも彼女が地球外生命であり、敵の親玉の類縁的存在(Zマスターのプロトタイプ)である事は内部ですら極秘扱いとなっている。

 ……しかし、弟である麗雄と同様に頭の回転が早い雷牙は、本部の抱える膨大なゾンダーに関する研究情報を見れば、真相に辿り着く可能性が非常に高い……その為、シオンは極めて慎重になっているのである。

 

「凱、稀星くん……伏せておいた方が良いぞ?」

 

『え……っ?』

 

 麗雄の指摘に凱は懐疑的だが、シオンは納得済みの様に頭を下げ姿勢を低くする……

 

「……ィィィヤッホォゥゥゥィイ!!」

 

 扉が開くと同時に向こう側から勢い良く飛び出してくる何か……ソレは凱のすぐ傍を通り過ぎ、シオンの頭の上を通過、その後も何度か壁ギリギリでターンを繰り返し麗雄の眼前に来て急上昇(インメルマンターン)……が、その後のコントロールが効かなくなり、天井の突起物に頭を強かに打ち付け、盛大に落下してきた。

 

「痛たたた……は、Hallo……♪」

 

「全く……年甲斐もなく遊んどるから、そうやって痛い目を見るんだ兄ちゃんは! 自分の年齢(トシ)考えんかぃ!!」

 

 麗雄は装備していたジェットブーツで急加速し、立ち上がった雷牙の背後からのラリアットで追撃を慣行。ジェットブーツによる最大加速のラリアット攻撃……コレが「麗雄ラリアット」、その威力は想像を絶する(らしい)。

 

「ブハァァァッ!! や、やりよったなァァァッ?!」

 

 一度は地に伏せる雷牙だったが、負けじとジェットグローブを展開。最大加速を掛けた一撃を麗雄の顎に向かってねじ込む……コレが「雷牙アッパー」、その破壊力は神々をも震わせる(らしい)。

 

「グフゥゥゥッ!! もう怒ったァァァッ!!」

 

「なにをぉぉぉう?!」

「なんだぁぁぁっ?!」

 

「はぁ……やれやれ、相変わらずですね雷牙叔父さんは」

 

「待てジジイィィィ!!」「だぁれがジジイだァァァ!!」

 

『……凱さん、この人が……?』

 

「うん、獅子王雷牙……父さんの兄で、GGGアメリカのスーパーバイザー。研究開発のトップを勤めてるんだ」

 

 間近で見る2人の大人気ない兄弟ゲンカ……知ってはいたけど、実際に目の前でやられるとこんなにも呆れるものなのか……

 

 

 此方が呆れ返る程に兄弟ゲンカを繰り広げた後、凱さんのストップでようやくケンカは落ち着いた……

 

「久しぶりだな、凱……僕チャンの送ったプライヤーズは役立っとるかね?」

 

「ええ、何度か窮地を助けて貰いましたよ」

 

「そうだろそうだろ! ……そして君が噂の美人見習い君かね?」

 

『え、えぇ……稀星シオンです、よろしく』

 

「……今夜、予定は空いとるかね?」

 

 社交辞令として握手を差し出すシオンだったが、雷牙はそれを避け、持っていたジェットスケボーでホバリングをしながらシオンに急接近……顔を間近で見ながらシオンを口説きに掛かったのである。

 

『……ぇ……? あ、あの……』

 

「くぅぉぉぉらぁぁぁ! 兄ちゃんッッッ!! 稀星くんはウチの大事な研究者だ! 絶ッ対に兄ちゃんの好きにはさせんぞぉぉぉ!!」

 

 性懲りもなく欲望全開の行動に走る雷牙に、再びキレる麗雄……兄弟ゲンカの第2ラウンドはすぐさま開始され、何とも慌ただしい初顔合わせとなったのであった。

 

──────────

 

 その後、護くんや機動部隊の面々とマイクの顔合わせも終わり、GGGの協力により開発されたアーマロイド2体の御披露目が始まった……もちろん、ダイキャンサーとクーゲルザウターの事である。

 

《“よろしく頼む”》

 

《“よ、よろしくお願いします……”》

 

 固有の性格上か……ダイキャンサーは物怖じせず雷牙やマイクに挨拶するが、まだ幼いクーゲルザウターは若干緊張気味の様子……

 

『オゥ♪ ダイキャンサー! 鎧武者みたいでベリーストロング! スッゴく強そうだもんネー! それにクーゲルザウターはベリーキュート♪ ピギーちゃんとハまた違う感じでカワイイもんネー♪』

 

《“そ、そんな……カワイイだなんて……♪”》

 

『良かったわね、クーゲル』

 

 非戦闘時、そして自己紹介という事もあり、クーゲルザウターは防具の鎧をパージした状態で居た為か……マイクは間違う事なくクーゲルを女の子として認識。その上初対面のマイクから即“可愛い”と誉められたので、クーゲルザウターは嬉しさのあまり顔がにやけて止まらないご様子。

 

「ほほぉ……生物の意匠を取り入れつつも無駄の無いデザイン、ジェネレーター出力も巨体に見合うだけの高出力……そして装甲も新素材か……」

 

 ダイキャンサーとクーゲルザウターは音声……とまではいかないものの、相手のロボや端末へ文章を送信する事で擬似的ながら(筆談する感じで)会話を行える。

 音声を用いる事が出来ないのは戦闘サポートを重視している故の仕様だとしているが……本当は単なるコアとボディの馴染み具合が規定値に達していないが故のエラーが原因である。

 ダイキャンサーのコア成熟度は現在47%、クーゲルザウターはまだ16%と低い……コアの成熟と機体との馴染み具合が進めば、新たな能力の開花も含め、その性能は飛躍的に向上。

 

 ちなみに現在、公開している情報は初期データの羅列なので、実数値は成熟度により大幅に変動する事になる……

(※新規に覚醒する能力は本編内で発現したら追記します)

 

 少なくともZコア・ドライヴはゾンダーメタルを改造して生み出された物であり、効能や特性こそ違うものの近似種である特徴は色濃い為、何がなんでも伏せておく必要があるのだ。

 

(……ふぅむ、この装甲材の組成は見たこともない新基軸の構造だ……このデータだけで正確な詳細までは分からんが、この素材特性は強度だけでなく、ある程度の柔軟性も兼ね備えておる。

 そしてこのジェネレーター出力。一般的なジェネレーターでは理論上絶対に有り得ない数値……このレベルは既に、アメリカで研究中のHPHGCPに想定されておる予測値並ではないか!? これ程の高出力、一体どうやって……?)

 

 顔には出していないが、雷牙は内心でダイキャンサーとクーゲルザウターの基礎スペックに驚愕していた。これ程の性能を発揮できるマシンは、本来Gストーンを持つ勇者ロボをおいて他に無い……以前に協力要請のあった、パーツ製造の段階で予想された数値からも大きくかけ離れているのだ。

 (ひとえ)にこの性能の秘密は、その動力源に秘密がある……雷牙がそう思い当たるのに、それほど時間は掛からなかった。

 

──────────

 

 その日の夜……寝静まった筈のGGGベイタワー基地。分離すれば「多次元諜報潜水艦」に相当するエリアの中枢部で1人、マイクは基地のシステムへとアクセスしていた。

 

『GGG戦闘記録呼び出し……パスコード、解析完了。音声照合システム、感知……コマンドワード、入力』

 

《ボルフォッグ……コードNo.G-09。GGG戦闘記録、呼び出し》

 

 強固なセキュリティをロボット特有の裏技で解除し、部外秘の戦闘記録を呼び出すマイク……この戦闘記録はGGG研究開発部がゾンダーの解析と攻略の糸口として保存している物であり、部外者のアクセスを固く禁じているものでもある……マイクはまだアメリカ支部の所属のため部外者であり、本来は禁則事項なのだが、裏技とはいえセキュリティを正攻法で解除されているので機密保持システムも反応しないのである。

 

 やがてシオンが戦闘に関わり始めた頃のデータが呼び出され、シオンに酷似した人物が「獅子王 凱」と会話しているシーン、緑の髪の少年こと「天海 護」と親しげに話すシーン……そして、最近の記録であるブラックホール脱出の際に撮られた超巨大マシンから出てくるシオン(この時はなんと仕事中で見かける女医姿)が記録されていたのだった。

 

『全戦闘記録、コピー終了……電源OFF』

 

 全戦闘記録のコピーを終え、システムを終了させてその場を去っていくマイク……部屋の扉が閉まって数秒後、壁の一部が歪み……ホログラフィックカモフラージュを解除したボルフォッグが姿を表した。

 

『……マイクが来日した目的は、自身のAlの育成以外にもあったという訳ですか……』

 

《“……どういう事だってばよ?”》

《“あの子、ちょこっと訳あり……?”》

 

 ボルフォッグへ直接文章を転送しながら、2匹の海洋生物……サメとイルカ、ご存知ピスケガレオンが床から姿を表す。

 

『戦闘記録を解析すれば、これまで戦ったゾンダーロボの詳細なデータと、我々の能力を知る事が出来ます……しかし、ゾンダーと我々のデータであれば、正規の手続きをすればこのような事をせずとも入手できる筈……態々このような手段を取る必要があるとすれば……』

 

《“……もしかして……!”》

 

『確証は持てませんが……恐らく、そういう事でしょう。ですが、今マイクを問い詰めたとしても、彼は何も知らない可能性が高い……あの瞬間のマイクは、普通の状態では無かった。

 仮定ではありますが、戦闘記録を呼び出していたのはマイクではなく……()()()()()()()()()()()()()()()()()可能性があります』

 

《“んじゃその細工をした奴を探して、問い詰めりゃ良いって訳だな?”》

 

『細工を施した人物は、既に見当は付いています……ですが……』

 

《“……が、どうしたの?”》

《“……が、なんだってばよ?”》

 

 ピスケガレオンはお互い顔を見合わせ、ボルフォッグの次の言葉を待つのだった。

 

──────────

 

 その次の日の夜、ちょっとした事件が発生する……本来なら「超」が付く程の重要機密の塊であるマイクが、なんとお台場で開催されたイルミネーションパレードに乱入……あろう事かパレードの列に入って悦に浸っていた。

 

『ハロ~♪ エブリバディ~! キラキラなマイクをヨロシクだもんネ~♪』

 

 待ち合わせてパレードを見に来ていた私達も、アメリカ生まれのマイク(お調子者)の行動には呆れるしかなかった……

 

「……NASA(アメリカ)の重要機密が、こんな事してて良いのか……?」

 

「Oh My God……またDr.(ドクター)雷牙に怒られマース」

 

「私、熱出てきちゃった……」

 

『……さすがにコレは……ハァ……』

 

(内情を知る身という視点で現実に見せられたら……ホント、頭痛くなるわねコレ)

 

 

 マイクを見た後、反対側に護くん達が居るのを発見……イルミネーション行列が途切れた頃合いで、アイスを買いに行っている凱にG-USBでその旨を伝えてから移動して合流。アイスを手に戻ってくる凱と、折り返しの行列を待っていた時だった。

 

(ッ!? この波長……ゾンダリアン?! まさか……?!)

 

 一瞬だが確実に捉えたゾンダリアン、ピッツァの反応……それが頭上を通り過ぎた直後、背後のフ◯テレビのビル屋上にある球体展望台が強風と共にその場から外れ、真下に居た私達目掛けて落ちてきたのである。

 

「!? イカン!!」

 

 アイスを手にしようとしていた凱は気付いて踵を返し走り出すも、この距離では到底間に合わない!

 

「「「きゃあぁぁぁ!?」」」

「うわぁぁぁ?!」

 

(油断した!? マイクが来たなら次に起きるのは……)

 

 付近に居た大勢が恐怖で立ち竦む。真下に立つ私達を含め、多数の死傷者が出ると思われた直後……

 

 ギュイィィィンッ♪

 

 大音量のサウンドと共に展望台の球体は凄まじい程の音圧によって弾き飛ばされ、100m以上も飛んで誰もいない海面へと落着したのである。

 

(……っとぉ……まったく、心臓に悪すぎよ……このイベント)

 

 ギュゥゥゥン♪ ギュアァァァンッ♪ ギュリリリィィィンッ♪

 

「計算されたサウンドウェーブによる音圧攻撃……! 何なんだ、アイツは……?!」

 

 その場に居た全員が圧倒される中、音圧攻撃を放った張本人……水色のボディに赤い肩と腰、ギターを掻き鳴らし、黒い脚部に備えたスピーカーからサウンドを発するスリムなロボットは大ジャンプ……何処からともなく現れた台座に飛び乗った後、ギターの音のみを残して夜空へと消えていった。

 

(何故だ?! 何故あのプロテクトが解除されたのだ!? 有り得ん!!)

 

 人混みに紛れ、様子を伺っていた雷牙は驚愕の色を隠せず……

 

『……確認しました。あのロボットは間違いなく……!』

 

 遠目からその全てを見ており、一部始終を記録していたボルフォッグはその正体を悟り……

 

「……ッ!!」

 

 未だ混乱している人混みの中……1人の少年が騒ぎの犯人の気配を察知、ビルの上に居たピッツァを睨んだ直後、ピッツァもその気配に気付いてその場から飛び退いた。

 

「何……?!」

 

(……あの少年、この騒ぎの中で私の気配を察知し、超能力(サイコキネシス)で攻撃して来たというのか?!)

 

 GGGの関係者が近くに居る事もあり、これ以上この場に居る事は得策ではないと判断したピッツァは素早くそのまま現場を離脱するのだった。

 




長くなるのでココで一旦カットぉ!!

後半へ続く……


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第41話 滅びを呼ぶ声(マイク・サウンダース) (後編)

前回の続き……

来日したマイクは、トラブルを起こしながらも仲間達と交流を深め……
順調にスケジュールも終了し、アメリカへの帰路に着く事になった。



 数日後、雷牙博士とマイクは来日スケジュールを終わらせアメリカへの帰路に着き……原作通りマイクと友達になっていた護くん達と一緒に見送った後、護くん達は学校の終業式へ……麗雄博士はガングルー、凱さんと命さんはガンドーベルでGGG本部へ帰還。

 

 なお、私は原作警戒の為別行動を取り、一足先に市街地へと赴いていた。

 

(マイクはどうせすぐ戻ってくるし、私は出てくるであろうゾンダーロボの対策を講じないと……)

 

 ビルが立ち並ぶ市街地の中心部、住宅街との境目付近で警戒していた時だ……急に身体機能の制御が失われ、平衡感覚が混乱し全身が言う事を利かずビルの屋上から落下する。

 

(な……に……こ、れ……身体が……動か……な……)

 

『……ッ!? 稀星隊員ッ!?』

 

 コンクリートの地面に叩き付けられるまで残り数メートル、というタイミングでボルフォッグに救出された。

 

『……あ……っ、く……b……ボル……フォ……』

 

『これは……一体何が……!?』

 

 意識が朦朧とし、身体機能もどんどん麻痺していくシオン。

 

(……ダメ……だ、外部感覚……プログラム、や言語……システム、まで……)

 

『一刻を争う事態ですね、すぐにGGGベイタワー基地へ搬送しなければ……!』

 

 だが、それを遮るように2体のゾンダーロボが突如として市街地の2箇所に同時出現……当然、街は大パニックを引き起こし、GGGは氷竜と炎竜を市街地の避難誘導へ、ガイガーはステルスガオーを装着してゾンダーの偵察へと飛び立つのであった。

 

──────────

 

『……コイツ等、一体何を……?』

 

 出現したは良いものの、一向に攻撃する気配を見せないゾンダーロボ……ピンクと紫、単色のタワーの如き威容の2体のゾンダーロボは、市街地上空をゆっくりと移動……勇者達は何が起きても対処できる様に警戒しながらゾンダーロボから一定距離を保っていた。

 

 ……………………。

 

 ……………………。

 

 やがて勇者達を挟み撃ちの状態にするように位置取りを終えた2体のゾンダーロボは、単一波長の超音波をそれぞれ発し始めた。

 

『何だ、この音は……?』

 

『単一波長の超音波の様ですね……』(氷)

 

(やかま)しい連中だぜ』(炎)

 

 感知された単一波長の超音波……だが本部でその様子と波長を確認した麗雄は驚愕と共に凱達へ指示を出した。

 

《イカン!? 全員すぐにそこから離れるんじゃ!!》

 

 だが、時既に遅し……超音波は徐々に指向性を帯びて機動部隊の位置へ収束……2種の超音波が合成されて強力な音波攻撃へと変貌し、機動部隊を襲ったのである。

 

『ぐッ、うぁぁぁ……ッ!!』

 

『た、隊長……ぐうぁぁぁ!!』

 

『ぐぅぅぅッ!? Gリキッドが……!』

 

《な、何がどうなってるんだ……?!》

 

 本部で状況を注視していた大河は、麗雄へ問う。その答えは……

 

「強力な超音波による分子振動だ! 2種の超音波を合成して、液体を瞬時に沸騰させるレベルにまで増幅させておるんじゃ……!」

 

「超音波加湿器の原理……その超強力版というヤツですな、周囲の物体にさほど影響がないのは、指向性もあるという事でしょう」

 

「彼らの体内にあるGリキッドが噴出しているのは、そういう事か……!!」

 

「Gリキッドの噴出を止めないと、エネルギーの浪費が激し過ぎて……このままでは動く事も出来ません!!」

 

 麗雄の回答に続き、実例を伴った猿頭寺の解説……勇者達の体内を流れるGリキッドは、Gストーンから得られるエネルギーを全身に巡らせる……言わば血液のようなもの。その喪失は文字通り、彼らの「死」を意味する。

 

──────────

 

 渋滞に巻き込まれ、終業式に遅れそうになっていた護達……そこに、アメリカへ帰っていった筈のマイクが再び現れ、スワンの車ごと空中輸送をしていた時、偶然にもその様子の一部始終を目撃……護達は戦闘エリアのギリギリ外にあるビルの屋上から戦闘の様子を見ていた。

 

「が、凱兄ちゃん……!!」

 

 そこへ、ボルフォッグが合流してきた……その掌には、完全に意識を失っているシオンが横たわっている。

 

「えっ?! シオンさん……?!」

 

「ボルフォッグ、どうしてシオンは気絶してるんデスカ?!」

 

『……皆目、検討も付きません。脱走したマイクを保護する為に後を追っていた所……突然、ビルから落下する彼女を発見し、すぐに救出したのですが……直後に気を失ったので』

 

 気絶したままのシオン、スワンはすぐに本部へと連絡を取る為、自分のG-USBを展開する……ボルフォッグはシオンを掌から静かに床へと下ろすと、すぐにビルから飛び降り、凱達の救援へと走っていくのだった。

 

──────────

 

 その後も原作通りに事態は推移し、合流したゴルディーマーグと共にゾンダーロボを何とかしようと攻撃を加える……ビッグボルフォッグに合体し【メルティングサイレン】でゾンダーバリアを分解した後、ゴルディと共に連撃を加えていく……が、ゾンダーの再生能力の方が強い上にパワーアップされ、更に機動部隊を窮地に立たせた超音波攻撃まで浴びせられ、一転して大ピンチに陥ってしまう。

 

 だが、今度は護のフレンドは自分のフレンド……彼らを痛め付けるのは許せない! と意気込み、マイクは果敢にもゾンダーロボに挑む。が……

 

『今こそ、マイクの隠された力が目覚める時ネー!』

 

 意気込みこそ十分ではあったが、望んだ結果には程遠く……超音波でシステムの一部を狂わされ、ビルに激突。

 

「わぁぁぁ……!?」

「Oh my god~!?」

 

 辺り所が悪くビルごと崩壊し始め、屋上にいた護やスワン達までもが命の危機に……!

 

『……ッ!?』

 

 100m近くあった場所から空中に投げ出され、絶体絶命。しかし、その時だった。

 

System change(システムチェェェンジッ)♪♪』

 

 なんと、護達の目の前でマイクが変形を開始……上下が反転しながら足は腕へと変わり、背中の巨大ユニットが左右に分割されて新たな脚部へ、元々頭だったパーツは後頭部を前面にして腰部となり……

 

『マイク・サウンダース! 13世(じゅうさんせい)ッ!!』

 

 変形を完了したマイクは、投げ出された全員を両手で確保……ビルの崩壊現場から少しだけ移動した駐車場に車と共に避難させたのだ。

 

「マイクが、変形した……?! やっぱり、あの時僕達を助けてくれたのはマイクだったんだね!?」

 

『……フッ、ココからはオレに任せときな!』

 

 あの夜と同じく飛び上がり、奇妙な台座……もといマイクのサポートユニット「バリバリーン」が飛来、変形前とは前後上下が入れ替わりフライトユニットを兼ねる「スタジオ(セブン)」へとターンオーバー。マイクが上に乗ると敵の近くまで接近……

 

『まずは軽く挨拶代わりだZE()Sound Standby(サウンド スタンバイ)!!』

 

 スタジオ7の左からディスクが飛び出し、マイクはそのディスクを胸部のデッキにセット……続けて右側から飛び出したのはなんと鍵盤パーツの付いた黄金のギター。

 

『Hey! ディスク「M」、セットオン! ……ギラギラーンVV(ダブルブイ)ッ!!』

 

 そのままマイクは淀み無い動作でギターを掻き鳴らし、ノリノリサウンドの演奏を開始……最初こそ何も起きなかったが、ゾンダーロボは音が届くと同時に苦し気に蠢き出し……身体の各所で小爆発が発生。

 

 ゾゾゾ……ゾゾゾ……ゾゾゾ……!!

 

 本来ある筈のゾンダーバリアーすら何の役にも立たない音波攻撃……マイクはディスク「M」の効力である強力なマイクロウェーブにより、ゾンダーバリアーを素通りして本体に直接ダメージを与えたのである。

 

『……ヘヘッ、次はコイツだ! ディスク「P」、アウト&セットオンッ!』

 

 胸部デッキのディスクを、2枚目の「P」へと交換……そして、膝の円筒形のパーツが飛び出し、マイクはそれを握る。

 

『ドカドカーン(ブイ)ッ!』

 

 2曲目は歌も含まれた楽曲……マイクは様々な声を真似する事が可能であり、その気になれば性別・年齢問わない再現も可能。そうでなくても、地声が良いので普通に歌うだけでもかなり上手い。

 

 そしてこの歌(2曲目)にはGストーンを活性化させ、消耗したエネルギーを急速に回復させるエネルギーウェーブを発し、凱達のGストーンのエネルギーを回復させていく……

 

『……ッ……こ、コレは……?』

 

『……何だか、身体中にエネルギーが満ち溢れて来たぜ……!』

 

 ガイガーや氷竜・炎竜、ゴルディにボルフォッグも、エネルギーの枯渇で瀕死だった筈が動けるまでに急速回復……Gリキッドの残量は心許ないのだが、通常以上のエネルギーが満ち溢れている為かさほど苦もなく動けている様だ。

 

『マイク……これがお前の力なのか……?!』

 

 ゾンダーロボは損傷の修復と同時にお互いに接近して融合……サイズを2倍以上に膨らませてパワーアップする。

 

『Oh,……合体かい? Baby?』

 

 ゾゾゾ……ゾゾゾ……

 

Alright(オーライ)! コイツの音波攻撃はオレが防ぐ。今の内に体勢を整えな、GGG!』

 

 いつものお調子ムーヴは影を潜め、冷静に……かつ熱いハートを胸に、マイクはサポートを申し出た。

 

《よぅしッ! ファイナル・フュージョン、承認ッ!!》

 

《了解! ファイナル・フュージョン……プログラム、ドラァァァイブッ!!》ガシャン

 

挿入歌:勇者王誕生!(歌:マイク・サウンダース13世)

 

ガガガッ ガガガ ガオガイガー!

ガガガッ ガガガガ ガオガイガー!

 

 凱のファイナル・フュージョン開始に合わせて、マイクはセル3曲目を歌い出す……その曲は原作OPテーマでもあるあの歌……その2番だった。

 

走れ! 頑強ロボ軍団!

赤い眼差し 銀の胸

 

 まずはビッグボルフォッグが初手を飾り、【メルティングサイレン】でゾンダーバリアーを分解……効果時間はさほど長くはないが、これで一定時間の間敵はバリアーを張れなくなる。

 

獅子の絆は「Gストーン」

宇宙の未来、救うため

今こそ発進だ!

 

 その隙に氷竜・炎竜はゴルディーマーグと猛攻を加え、音波攻撃すら許さぬ濃密な弾幕を形成……合体完了までの時間を稼ぐ。

 

ヒトの魂喰い破る

ゾンダーメタルを打ち砕け

 

『ガオッ! ガイッ! ガァァァッ!!』

 

ガガガッ ガガガ ガオガイガー!

ガガガッ ガガガガ ガオガイガー!

 

 合体を完了したガオガイガーはそのままゾンダーの懐に入り込みながら攻撃、敵の注意を引きつつ氷竜達の弾幕へとゾンダーロボを押し込んでいく。その間にゴルディーマーグも位置に付き、タイミングを見計らう。

 

『次は俺様の出番だぜぇぇぇ!』

 

ファイナル・フュージョン承認だ!

今だ! 超人合体だ!

 

 ゴルディーマーグもシステムチェンジし、マーグハンドへと変形……ガオガイガーは右腕をマーグハンドへと交換しハンマーコネクトする……

 

鋼・鉄・粉・砕

 

『ゴルディオンッ、ハンマァァァッ!!』

 

無限、純真、究極、愛

 

『ハンマァァァヘルッ! ……ハンマァァァヘヴンッ!!』

 

 合体ゾンダーロボのコアは2個……マーグハンドから2つの光釘を引き出し、ハンマーヘルでコアの位置を正確に貫く。

 

誕生! 夕日に雄々しくそびえる

 

『……よっと、Alright(オーライ)! ブッ潰せ、ガオガイガー!!』

 

 ハンマーヘヴンによって引き抜かれた2つのコアは、マイクが空中でキャッチ……すぐに安全圏へと離脱しながら、去り際にガオガイガーへとエールを送る。

 

僕らの勇者王!

 

『光になぁれぇぇぇッ!!』

 

ガ ガ ガ ガ ガオガイガーッ!!

 

 コアを失ったゾンダーのボディはゴルディオンハンマーの重力割断ウェーブによって強制分解され、光の粒子と化して煌めき、周囲へと拡散していく……コアを氷竜・炎竜へと受け渡し、マイクは最後に親指を立てて最高だと褒め称えたのだった。

 

『最高だッZE()♪』




話的にはココで区切られます……
シオンの安否が気になりますが、展開の都合なのでココは堪えて下さい。

そういえば、原作でも合体シーンにOPテーマ被せたのって後にも先にもこの回だけじゃないかな?

感想お待ちしてます……



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第42話 狂わされたものと、狂わなかったもの


この話に対する次回予告が無いのは演出の都合です。



 音波攻撃ゾンダーロボとの戦闘後、ボルフォッグからシオンの現状を聞かされたGGGは直ちにシオンを三式空中研究所へと収容。

 突如として機能を停止した原因を探るべく、徹底的な調査が行われていた……

 

「……父さん、シオンは何でこんな事に……?」

 

「原因については未だ不明としか言えん……だが、以前彼女は原因不明の頭痛に苛まれていた。それが何を意味するのかまでは掴めなかったが、まさか……こんな事態を引き起こす事になるとは……」

 

「……頭痛……?」

 

 稀星シオン……地球外生命(紫の文明)が生み出した機械生命体「プロトタイプZマスター」と、死を待つしかなかった地球人の少女との融合により誕生した、未知の新生命……

 

 本人すら知らぬ、謎に包まれた彼女の秘密が……今、明かされようとしている。

 

──────────

 

 数日後……シオンの眷属であるアーマロイド「グラヴィスコルード」から、獅子王麗雄にメールが届いた。その内容は、自らの生みの親であるシオンを助けて欲しいという懇願であった……

 

「これまで我々は、苦渋の決断をした彼女によってゾンダーの脅威を知り、対抗する術を手にし、我が身すら顧みない程の献身によって今日まで生き抜いてきた……そして今、彼女を救って欲しいと懇願する者達が現れた……無論私はこの事態を黙認せず、全力を以てこの事態に対処したいと思っている」(大河)

 

 シオンは自身の変貌当初、身の危険を伴う「GGGへの協力」は選択肢から外していた……だが、運命の悪戯か「天海 護」との出会いによって運命は流転し、現在に至る……

 それまでに彼女がGGGへと貢献した数々の成果は、一組織だけでなく地球人類の繁栄にも少なからず繋がったといっても過言ではなかった。

 

「……僕も同意見だ。異星文明の存在と接触し、数奇な運命を辿りながらも、彼女は我々に対して深い慈愛を示し、近縁種の脅威という危機を伝え、また対処において献身的に尽くしてくれた。僕は彼女に対して、最大限の恩義を感じている……そしてその恩を必ず返したいともな」(麗雄)

 

 中でも科学文明……材料工学分野は極めて大きな発展を示し、GGGを介して世界に様々な用途に特化した特殊素材を提供した。

 耐熱性・対燃性に優れた超耐熱繊維や、経年劣化しない柔金属や軟質素材、凄まじい対衝撃吸収能力を保有する軽量プラスチックに始まり……拒絶反応の極めて少ない人工臓器、ガン細胞を捕食するナノマシン治療法の確立……宇宙開発公団とGGGの各所に設置したマイナス思考除去システムも、鬱治療に極めて効果的であるとして一般でも有効活用されており、医療分野においても大きな波を起こしていた。

 

「ワタシ達が出来る事は少ないデスガ、やらないという選択肢は無いデス」(スワン)

 

 それまで女性専用マンションで独り暮らしであったスワンも、妹とも呼べる存在が出来た事で私生活が一変……家族と別居という孤独なプライベートは解消され、充実した日々を送れていた。

 

「私も彼女に色々と気を使って貰いましたからね……私の分野で恩を返せるなら、何でもやりますよ」(猿頭寺)

 

 原作では仕事に忙殺され、本部施設で寝泊まりする事がほとんどだった彼も……日々のケア方法や実質の手伝いなど手厚く援助され、随分と変わっていた。

 

「僕も彼女には随分と救われました。仕事(GGG)でも、プライベート(兄弟達の事)でも……」(牛山)

 

 彼も仕事だけでなく、私生活で弟達に振り回される事が多かったが……彼女と関わる様になり、その身に掛かるストレスはほぼ解消されている。列挙こそあまりないが、一番彼がストレス解消効果は高かっただろう。

 

「シオンちゃん、本当はまだ中学生(14歳)なんですよね……でも、大人でも躊躇う事をやり遂げて、皆の信頼を勝ち取って……私も勇気を貰えました」(命)

 

 年齢も近く、後輩も同然なシオンの存在は、命にとっても掛け替えの無い存在となりつつあった……彼女の存在は少なからず命にとっても好転的な影響を及ぼしており、特に凱とのプライベートな時間が増えた事が最大の変化であろう。

 

 

 そして、彼女の献身的な協力と惜しまぬ助力により、これまで幾多の戦いを征する事ができたGGG首脳達はこの懇願を受け、総力を挙げてシオンを再び目覚めさせるべく……あらゆる分野から専門家を呼び寄せ、調査と研究を開始する……

 しかし……どんな手段を講じようとも、あらゆる手を尽くしても……彼女は一切の反応を見せず、ただ静かに眠っているのであった。

 

(彼女の生命活動そのものは止まっておらん……むしろ身体機能の一部は活性化の一途を辿っておる。しかし、一体彼女に何が起きているのか……)

 

 麗雄を始めとする、GGG研究開発部署員達の不眠不休の努力を嘲笑うかのように……徒に時は過ぎていく……そしてそれは、終焉の始まりも近付いている証拠でもあった。

 

──────────

 

《機界四天王よ……例の計画はどうなっている?》

 

「ご心配には及びませんパスダー様。私とプリマーダがこの身を以て行う本作戦……既に準備も残る一手のみ……例の裏切り者にピッツァが接触し、仕掛けを施す事で全ての準備は整います」

 

「あの小娘が我々の想像通りの者ならば、否応なく従わざるを得ません……仕掛けさえ済めば、後は我々の意のままに」

 

《フフフ……だがカインの遺産や、あの破壊マシンに嗅ぎ付けられぬよう十分に気を付けよ。彼奴らの力は我々の対極……思わぬ障害になり得る可能性は十分にある》

 

「「はっ、仰せのままに……!」」

 

──────────

 

 後にGGGが、亜空間を自由に往来する水上戦闘機ゾンダーに対処するため出撃する前……ピッツァはGGGベイタワー基地の地上部分、宇宙開発公団ビルへと潜入していた。

 

(人間の姿を取っていれば、奴らの基地に潜入するなど簡単な事……さて、あの裏切り者は確か……むっ?)

 

 人間体の状態で潜入したピッツァ……シオンを探している様だが、その時に奇妙な情報を入手する……

 

「………………? ……………………。」

 

「………………?! …………、………………」

 

(……奴が不調、だと? あり得ん。完全な生機融合体ならば、不調など起きる筈が無い……奴は生機融合体ではないと言うのか……? いや、それこそあり得ん。我々を相手にあれ程の邪魔をやってのけた相手なのだ……)

 

 ピッツァは休憩中だった職員達の会話から、標的の人物……つまりシオンがココの職員だとすぐに理解したが、今は不調で来ていないと職員間で語られていた。しかし、ピッツァはシオンが自分達と同レベルの生機融合体だと知っている為、あり得ないと考えている。

 本来、ゾンダリアンと同等の生機融合体ならば人間の尺度でいう身体的疲労など感じる事もなく、聞いた話に語られた様な不調など起こり得る筈もない……だがしかし、実際にシオンは不調によって倒れている。

 

(仕方がない……奴の反応は……むっ?)

 

 シオンの反応はゾンダリアン達には分かるらしく、すぐに位置は掴めたが移動している事が分かった。外を確認すると、ちょうど三式空中研究所が出撃し……原作通りにゾンダー対応へと出向いていたのである。

 

(チッ、やはり奴はあの中か……隙を見て入り込むしかあるまい)

 

 後を追うべく飛翔するピッツァ……遠ざかるその姿を、街の中から1人の少年が見ていた。

 

──────────

 

 今回のゾンダーロボは、亜空間を自由に往来する戦闘機ゾンダー……その神出鬼没な行動に対抗するべく、亜空間の調査に三式空中研究所が呼ばれたのである。

 

※ 今回の戦闘は完全に原作通りの推移の為、丸々カットさせて頂きます。

 

 

 帰還中の三式空中研究所に潜入したピッツァ……程なくしてシオンが収容されている区画を発見したが、ピッツァはシオンを一目見てこの状況を理解してしまった。

 

(馬鹿な……?! コイツは……いや、この方は……!! だとしたら、我々の行動は一体……いや、我々とこの方の系統は違う様だな……)

 

「休眠……? いや、コレは更なる進化の為の準備期間か。眠っているのは、性能向上から来る身体的負荷を受け流す自己防衛措置だろうな……だが、その時には自律防衛プログラムが働く筈……」

 

 ピッツァはシオンの更なる進化を感じ取り、驚きと共に不可解さに気付く……彼のいう、自律防衛プログラムとは……?

 

「?! 誰か、そこに居るのデスカ?」

 

(チッ、間の悪い……だが、この様子なら……ヌッ?!)

 

 スワンの声に、ピッツァだけだなく眠っている筈のシオンまで反応し、突然開眼……その瞳は虹色に輝いており、ピッツァを確認すると念動力でペンを操り一瞬で組成変換、医療用のメスを生成してピッツァに投擲してきたのである。

 

 ヒュ……ガガガッ!! ガシャァンッ!!

 

「チィッ! 今ので自律防衛プログラムが覚醒するとは……やむを得ん!!」

 

「What?! 誰デスカ?! きゃっ?!」

 

 スワンの隣をすり抜け、超高速で三式空中研究所から脱出していったピッツァ……

 

「……今のハ……?!」

 

《……逃げましたカ……アレはゾンダリアン、いエ……赤の戦士(かの眷属)の成れの果てですカ……。喩え何処の誰であろうト、我等が主の身体に危害を加える事ハ、何人たりとも許しませン》

 

 機械の合成音声のような、奇妙な響きのある別人の声でそう語ったシオン……いや、シオンの身体の自律防衛プログラムは、ピッツァの去った方向をキツい目付きで睨み続けていた。

 

──────────

 

 その後、三式空中研究所はベイタワー基地へと接合……スワンの案内で、シオンの身体を動かす謎の存在はビッグオーダールームへと通された。

 

『稀星先生?! もう平気……違う、何者だ!? 先生を何処へやった!?』

『稀星先生?! 目を覚ま……いえ、貴女は先生ではない……誰ですか!?』

 

 氷竜と炎竜が真っ先に気付くも、シオンではない事に違和感を感じ取り「お前は誰だ!」と厳しい追及を始めた。

 他の勇者ロボも同じく違和感に気付いて厳しい目を向けるが、凱や命達メインクルーは勇者ロボ達の急変した態度に困惑している……

 

《……その困惑は当然、順を追って説明すル。まずは誤解無きよウ……我は【双子座】(ジェミニ)、今はこノ……我等が主の身体を代わって守護すル、主の影なるモノ……》

 

【双子座】(ジェミニ)? ……という事は、君はアーマロイドなのかね?」

 

《肯定。しかシ、此度の我は姿を……象る形を持たヌ。此度の我は主の影にして盾故ニ》

 

 大河の問い掛けに「肯定」と返し、己の存在を示す【双子座】……彼女の心情を示す今のシオンの顔は、無表情……一切の感情を表さない。ただ機械的に言葉を語るのみだった……

 

《我等が主ハ、次なる運命に立ち向かう為……己を新たな存在へと昇華し始めタ。故に我は主の身体を護る義務を果たス……何人たりとも、我等が主の道を妨げる事能わズ》

 

「準備中だから邪魔するな、って事か? 生憎だが、俺達はお前らに付き合う程暇じゃねぇんだぞ……!」

 

「火麻参謀、喧嘩腰は良くないですよ? ……教えてくれ、シオンはどうすれば目覚めてくれるんだ?」

 

《……何人たりとモ、主の眠りを妨げる事能わズ……たダ、目覚めの時を待つのミ……緑の力を受け継ぐ者ヨ、己が運命を乗り越えヨ……さすれば希望は南より(いず)ル。

 

 赤き戦士の方舟、その訪れを待テ……》

 

 予言めいた言葉を残し、黄金に輝く瞳を閉じる【双子座】(ジェミニ)……用意されていた椅子へと座ると、再び眠りについた。

 

「己が、運命……」

 

「南より出る、方舟……か」

 

 謎多き眠りに揺蕩う主を護る、新たなアーマロイド……「南から来る方舟」という予言、そして凱を指して「己が運命を乗り越えよ」という言葉。

 

 その翌日、我々は謎を抱えたまま……決戦の時を迎えるのであった。

 

──────────

 

 変わらぬ日常を謳歌する地上の人々……それを駅のターミナルの上から眺めるポロネズ。

 

「フフフ……さぁ、人類最後の幕開けです……出発進行!」

 

 

 高速道路の標識の上で、車の流れを見て楽しむプリマーダ。

 

「この星の最後、絶望に向かって……発車、オーライ~♪」

 

 

 空港施設の最上部、管制塔の上から離着陸する飛行機達を眺め……薄ら笑みを浮かべるピッツァ。

 

「いざ、終焉の始まりへ……離陸、開始!」

 

 

 レインボーブリッジの上から、行き交う船を眺めるペンチノン。

 

「我々が、終わり無き混沌の海へと誘おう……出港の時は来た! ウリィィィ!!」

 

 斯くして、終焉の序曲が始まる……




中二病患者なら分かると思う【双子座】の言動……
でもこの予言、そのままだとこの後のパスダー戦やらとシオンは無関係……?

次回はついに始まる、ゾンダリアン達との決戦!
感想お待ちしてます。

次回予告


君達に最新情報を公開しよう!

ついに、ゾンダリアン達の最終作戦が始まった。

首都高と環状線を利用し、巨大なバリアーと
エネルギーを造り出すポロネズとプリマーダ……
空と海を自ら守るペンチノンとピッツァ。

東京都民約一千万人を人質にした
巨大プラントの生成を阻止するべく
GGGは総力を結集して決戦に挑む!


次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第43話『大東京消滅の危機』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!


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第43話 大東京消滅の危機(前編)

いよいよ物語も1つの山場を迎えます……
ついに始まる、ゾンダリアン達の一大作戦。

その後に待ち構える絶望……
そして全てが終わり、最後に残るのは……?



 4人のゾンダリアン達が直接、動いた……

 

 彼らは自ら東京を占拠し、その身を持って巨大なゾンダーメタルプラントを生成しようと企んだのである……そう、東京都民約一千万人を人質として。

 

「首都高と環状線に、強大なエネルギー反応を確認! コレは……!!」

 

「No!? 空間歪曲反応、増大! 極めて高出力なエネルギーバリアが発生していマス!」

 

「何が起こっているというのだ……!?」

 

 首都高と環状線を境界として、凄まじいエネルギーの防壁が東京を囲む……そして内部からの情報は一切断たれてしまった。

 

──────────

 

「諸君! GGG始まって以来の非常事態……あの光の壁の向こう側には、一千万人の人間が閉じ込められている」

 

 GGG創設以来、数々の災害やテロ事件……そして近年増加してきたゾンダー被害に対処し続けているGGGだったが、前代未聞の状況に大河長官も焦りを隠せないでいる。

 

「地上、空中、地下。あらゆる交通網が寸断され、首都圏はまさに陸の孤島状態だ……あの光の壁を突破できなければ、中に閉じ込められた人々の救出も不可能だろう」

 

「分析の結果ですが、最も可能性の高いゾンダー反応……つまり、素粒子Z0の反応は一切見受けられませんでした……」

 

「じゃあ、ゾンダーの仕業じゃねぇって事なのか?」

 

「不明です……ですがこんな現象を、ゾンダー以外に引き起こせる筈がありません」

 

 火麻の問いに牛山は不明と応えるが、そもそもこれ程の異常現象をゾンダー以外が引き起こせる筈がない……だが、決定打となる素粒子Z0反応が全く確認されていないが故に、確定情報として捉える事が出来ない。

 

「……シオンなら、すぐに見分けが付くと思うんだがな……」

 

 凱はシオンならば……と溢すが、その顔は苦々しい。

 

「でも、シオンちゃんはアレ以来……ずっと休眠状態のまま。私達の呼び掛けにも、一切応じてくれないんです……」

 

「代行者たる【双子座(ジェミニ)】も応答無しじゃからのぅ……」

 

 命と麗雄の言葉に、意気消沈する凱……

 

「護からも、ゾンダー反応の連絡は無かったのか?」

 

 ならばと火麻は護少年からの連絡があったのかを問い質すが……

 

「それが……今日は社会科見学で、東京タワーへ行く予定になってて……」

 

「それじゃあ、護もあの中に居るって事なのか?!」

 

 命はついさっき入手した、護の学校行事予定を答える……東京タワーは環状線や首都高の内側に建っている。それはまさしく、最悪の事態を予期させるものだった。

 

「護衛に付いていたボルフォッグとの連絡は?」

 

「現在位置は、東京湾沿岸……報告では、ゾンダリアンの策に嵌まって引き離されたとの事です」

 

「ゾンダリアンだと?!」

 

 ボルフォッグは諜報部として護少年の護衛任務に付いていたのだが、ペンチノンによって地下へと誘い込まれ……まんまと罠に嵌まり、東京湾へと流されて引き離されたのである。

 

 ……しかし、意趣返しとしてペンチノンも現場付近から引き剥がされ、痛み分けの様な状態になった。

 

「ボルフォッグから、自衛隊の対応を撮影した動画が転送されて来ています」

 

 その後、ボルフォッグは自衛隊が光の壁にどう対処したかを映像に収め、帰還よりも先に転送していた。

 映像を食い入る様に見つめる全員……映された映像には、航空自衛隊の戦闘機2機が光の壁へ接近していき……超高速ですれ違った「何か」に撃破された様子が残されていた。

 

「何だ!? 今のは……?!」

 

「拡大してハイパースロー化します」

 

 大河の驚きに猿頭寺が反応し、解析機能を併用し映像をスローにして繰り返す。

 

「……デカい鳥みてぇなヤツだな……」

 

 的を射た様な火麻の言葉……猿頭寺は画像に更なる手を加え、解析結果を映し出す。言葉と共に解析結果をモニターに出し、一部の拡大画像を合わせて表示させた。

 

「解析の結果、極めて強力な衝撃波を纏って飛行する大型の戦闘機らしき物体の様です……」

 

「……ッ!? 間違いない、機界四天王ピッツァ……!!」

 

 解析結果の拡大画像に、凱はピッツァの面影を見つけ……確信する。

 

「ゾンダリアンが直接作戦行動を取るとは……油断ならない事態だ!」

 

「あの光の壁を解析した所、過去にゾンダーが起こした現象に酷似した4層構造の多重バリアである事が判明しました。

 便宜上ですが、この防壁をその構造から多重複合防壁(コントラフォール)と呼称します」

 

 牛山の報告に合わせ、猿頭寺はモニターの映像を切り替える……映されたのは、コントラフォールの多重構造を簡単に示した物だ。

 

「第1層は超強力な電磁場領域。粒子加速器イゾルデにおいて、機動部隊を苦しめた電磁バリア……そのエネルギー量が桁外れにパワーアップしたものです」

 

『イゾルデと言えば、ゾンダリアンとの初遭遇……』

 

『忘れもしないぜ、あの奇妙な奴等……!』

 

 氷竜と炎竜はイゾルデの事を思い出し、その時に現れたゾンダリアン……プリマーダとポロネズの事を頭に思い浮かべた。

 

「第2層は濃縮酸素を蓄えた変質大気層……何時ぞやの雲ゾンダーの内部と同じ物か」

 

 麗雄はコントラフォール第2層のデータから、その正体にすぐ気付く。

 

『するってーと……攻撃したら大爆発、って事か……』

 

「そういう事です。迂闊に手は出せません……」

 

 ゴルディマーグが呟き、それに猿頭寺も同意する。

 

「第3層ハ、大阪でガオガイガーを閉じ込めた超次元ポッドと同じものデス」

 

「あの時のアレか……あの攻略には苦労したぜ。プライヤーズが居なきゃ、どう足掻いても外へ出られなかったんだからな」

 

「もう一度、彼らに頑張って貰うしかないですね……」

 

 第3層の解説はスワンが行い、凱は渋い顔でその時を思い出す……あの時はプライヤーズが居なければ完全に絶体絶命だったから。牛山は彼等の活躍を再び期待しつつ、解説を続ける。

 

「そして第4層は、地上の太陽……グランドノヴァと同じエネルギー反応が検出されています」

 

「じゃあ、内部にいる人達や護は……?!」

 

 グランドノヴァと聞き凱は驚くが、猿頭寺は内部の状態が以前と違う事を指摘する。

 

「それが……内部の温度は、極めて常温に近い状態に保たれている様です」

 

 桁外れの各種バリアに守られ、その内部が常温に保たれているのなら……考えられる内部の状況は……

 

「やはり、奴等は中でゾンダーメタルプラントを造っておるようだな……!」

 

「一千万人の都民を、残らずゾンダー化するつもりか……!!」

 

 麗雄の推測に、火麻は結論として最悪の推移を口にする。もし、そうなれば……地球は間違いなく、機界昇華されるだろう。

 

「兎に角! あの防壁を突破し、中に閉じ込められた一千万人の救出が目下最大の目標として動く他ない! 実働部隊は総員直ちに現場ヘ急行! 三段飛行甲板空母、水陸両用整備装甲車も順次発進せよ!」

 

「「「「了解!!」」」」

 

 事態は急を要する……総力戦の様相。大河長官の号令により、GGGは動き出すのであった。

 

──────────

 

 シオンは再び休眠状態にある……場所は三式空中研究所の内部区画にある特別室。最初の緊急時に運び込まれた部屋だった。

 各種センサーにより生体活動を監視するモニター機器が繋がれ、一見すれば生命の危機に瀕した重症患者に見えなくもない状態で眠っているシオン……

 

 そこへ、半透明の人影が虚空から現れる……

 

 薄い黄色のワンピースを身に付けた、短めの茶髪の女性。今にも消えてしまいそうな状態で憂いを秘めた緑色の瞳でシオンの様子を伺っていた。

 

《………………》

 

 言葉を発する事なく、幽霊の様な女性はシオンをただ見つめる……が、やがて何かに気付いて驚愕の顔を浮かべ、虚空へと消えていく……

 完全に消えた直後、シオンの寝ているベッドの下の床に黒よりも黒い影がシミの様に現れ……その大きさを徐々に広げていくのだった。

 




シオンへの言及とボルフォッグの会議不在が原作との相違点。
やはりシオンの存在は作戦立案にも大きく影響を与えますね……頼られてます。
ちなみに原作では作戦立案が済んで出動していましたが、今回は緊急時という事を考慮し、出動準備と平行作業で立案する……という流れになっています。
単なる描写不足ではない事をお間違いなきよう……(´▽`;)ゞ

そのシオンの元に現れた、憂いを秘めた瞳の謎の女性。
そしてヤバそうな黒い影……
これからの物語にどんな影響を与えるのでしょうか?

次回は少し時間が進んで、コントラフォール攻略作戦開始から……


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第44話 大東京消滅の危機(後編)

要所要所でテーマ曲が入る原作後半は必見の価値あり!
興味のある方はAmazon prime video等の見放題アニメチャンネル、またはDVDをどうぞ!

此方も後半に向けてテンション&パワーアップしていきますよぉ!



 ……コントラフォール攻略作戦。

 

 コントラフォールそのものは、過去に現れたゾンダーの引き起こした現象と同様の原理であるため、攻略方法そのものはすぐに立案できた。

 

 第1層の電磁バリアは、超竜神のイレイザーヘッドによる超振動効果で電磁波そのものを消し飛ばし……

 第2層の濃縮酸素大気は、ガオガイガーのディバイディングドライバーで空間ごと穴を開け……

 第3層の超次元ポッドは、プライヤーズのディメンジョンプライヤーを使って強制排除し……

 ラスト第4層にあるグランドノヴァは、ゴルディオンハンマーでエネルギーを光の粒子へと分解する……

 

 単純明快。前にやった事の繰り返しな訳だが、作業に掛けられる時間はなんと僅か数十秒……

 それ以上に時間が掛かると第1層から穴が塞がれてしまう為、1~4層の穴空け作業をたった数十秒で行わなければいけないのである。

 

「たった数十秒で作戦を実行しろとか……冗談キツいぜ」

 

《しかし、何としてもやらなければ……誰一人救う事も出来やしない。絶対に、やり遂げるしかないんです!》

 

 三段飛行甲板空母の出撃準備中、火麻は軽口で流すが、通信相手の凱は真剣そのもの……勇気ある者の1人として、挫ける訳には行かないと自分を鼓舞していた。

 

 

『『『システムチェェェンジッ!!』』』

 

 氷竜、炎竜、ゴルディマーグが同時に変形し、臨戦態勢を整える……空中ではマイクとプライヤーズも待機しており、全員の準備は万端。

 

 コントラフォール攻略中は各自交代しながら空中のピッツァを牽制しつつ、ボルフォッグにはペンチノンを抑えて貰い、全員の連携プレーでガオガイガーをコントラフォール内に突入させる作戦だ。

 

《“……我々も手を貸す。我が主も、この星の機界昇華を望まぬが故”》

 

『ダイキャンサー?!』

 

 合体を済ませた超竜神の近くに召喚陣が現れ、先に人型形態となって姿を見せたダイキャンサーが超竜神へと声を掛けた。

 

《“母さまはいつも言ってたの……「私はこの世界が、みんなが大好きだから……皆と力を合わせて守りたい」……って。だから、私も守りたい……母さまが大好きな、この世界を!!”》

 

 両腕を交差させ、腰のホルダーからヴンダーワーフェを抜き放ちながらクーゲルザウターも歩いてきた。ゴルディはクーゲルの言葉に何やら刺激を受けている模様……

 

『クーゲル……お前……』

 

《“オレ達全員で、守り抜いてやるってばよ!!”》

《“私達全員の力で、必ず守り抜いて見せる!!”》

 

 声高に宣言するサメとイルカ……ピスケガレオン達の声に、ボルフォッグは静かな感動を覚える。

 

『貴方達まで……なんと心強い……!!』

 

《“我々も出来る限りサポートします、ガオガイガーは攻略に集中して下さい”》

 

 姿は見えなくとも、グラヴィスコルードから送られてくる言葉に支えられ……GGG機動部隊は全力で事に当たる事を改めて誓い、作戦は決行された。

 

──────────

 

 コントラフォール攻略作戦の第1段階……まずは超竜神のレイザーヘッドによる電磁バリア消去。

 

『おりゃおりゃおり「……邪魔だッ!!」オゥノォ――ッ?!』

 

 ちゃぽん……

 

『オラオラァ! あっち行きやがれッ!!』

 

《“地の果て、空の彼方まででも……追い回してやるんだからッ!!”》

 

 マイクとゴルディータンク、そしてクーゲルザウターの連携により……ガオガイガーを止めようとするピッツァを食い止める。マイクは早々に吹き飛ばされるが、ゴルディとクーゲルの……即席とはいえ息の合う砲撃を躱しつつでは、思う様に飛べないピッツァ。

 

 その間に超竜神は、過去最大級特大サイズ版のイレイザーヘッド(ver.LL)(ツーエル)を受け取り、発射体勢に移行……

 

『誤差修正……仰角よし! イレイザーヘッド、発射ァッ!!』

 

 放たれたイレイザーヘッドはまっすぐに飛翔し、コントラフォール第1層へと接触……撒き散らされる超振動効果によって接触面から一定範囲の空間にある電磁波が強制的に拡散され、猛烈な勢いで周囲へと吹き散らされる。

 本来なら消去対象を宇宙空間へと導きながら霧散させていくのだが、今回は対象そのものがあまりに巨大すぎて根刮ぎ……という訳には行かず、周囲の磁場がそのままの為全ての勢いが拡散へと転化されてコントラフォールの表層に巨大な穴を開けるに留まった。

 

《コントラフォール第1層貫通! 続けて第2層の攻略に入ります!!》

 

 気を抜く暇もなく第2層、濃縮酸素を抱える変質大気層の突破だ……滑り込むように超竜神とガオガイガーはその場を交代し、前進の勢いそのままにガオガイガーはディバイディングドライバーを突き立てた。

 

『ディバイディングドライバァァァッ!!』

 

 濃縮酸素の充満した領域へと先端を突き立て、その場で歪曲空間(アレスティングフィールド)を発生させるディバイディングドライバー。地上では直接地面に突き刺した穴を起点にアレスティングフィールドで空間そのものを湾曲拡大させ、広域戦闘フィールドを造り出す物だが、先端部を起点に空中で起動させ、空間を筒状に押し広げる事でアレスティングフィールドのトンネルを発生させる事も可能なのである。

 

《コントラフォール第2層を貫通! 残り時間、後僅かです!!》

 

『よし、行くぞプライヤーズッ!!』

 

 ディバイディングドライバーをすぐに解除し、凱は間髪入れずプライヤーズを呼び寄せる。

 彼らの空間修復・制御能力を使い、最速で3層目の攻略に移る……

 

「やらせると思うか!?」

 

『それはこっちの台詞だ!!』

 

「フッ、貰ったッ!!」

 

《“邪魔はさせんぞ!”》ガキィン!!

 

 プライヤーズへの誤射を避けるため、超竜神は攻撃の手を僅かに緩める……しかしその隙を掻い潜り、ガオガイガーへと突撃するピッツァ。

 ……だが、残り数メートルの所でダイキャンサーが前方に割って入り、握る得物の巨刃(タイタンカルキノス)によって受け止められ、切り払われた。

 

『ディメンジョンプライヤーッ!! ……ツール・コネクトッ!!』

 

 その間にガオガイガーはツールコネクトを果たし、ディメンジョンプライヤーを起動……

 

 ディメンジョンプライヤーのペンチ状の先端部は、任意の座標を空間ごと掴み、抉じ開け、周囲から切り離す事も可能な万能空間制御ツール……本来はディバイディングドライバーのアンチツールとして開発された物だが、効果範囲こそ限られるものの、異常をきたしている空間を原因ごと取り除く事が出来る為、その利便性は高い。

 

『おぉぉぉォォォ……ッ!!』

 

「貴様らの好きにはさせん! ウリィィィィィィ!!」

 

「クッ、下からの砲撃……もう1体は地下(ペンチノンの仕業)か!?」

 

 ディメンジョンプライヤー発動中であるガオガイガー、その足元が少しづつ崩れ始めた事に超竜神が気付く。するとピスケガレオンは能力を行使して地下の戦闘に直接介入を開始……

 

《“対処は私たちに任せて! 行くよ兄さん!!”》

《“オレ達の連携、見せてやるってばよォ!!”》

 

 機動部隊の居る場所の地下に陣取り、足元から砲撃してくるペンチノンの砲撃……それをピスケガレオン2体は弾道の先にある天井に空間の穴を開け、連携してペンチノンの攻撃を受け流しつつ、なんとワームホールの様に砲撃を誘導して撃ち返す。

 

「ウリィィィッ!? 小癪な真似を!!」

 

『……なかなかやりますね、私も負けては居られません!! ガンドーベルッ! ガングルーッ!』

 

 ペンチノンの砲撃を少しでもガオガイガーから逸らすべく、ボルフォッグもガンドーベルとガングルー……ガンマシン2体と連携を取って更なる撹乱を開始。

 

《コントラフォール第3層を攻略! しかしもう時間がありません!?》

 

 猿頭寺の声に焦る事なく、ガオガイガーはツール・アウト……そこへピッツァへの牽制を一時中断してゴルディータンクが合流してくる。

 

《ゴルディオンハンマァァァ! 発動ぉ、承認ッ!!》

 

《了解! ゴルディオンハンマー……封印機構(セーフティデバイス)解除(リリーヴ)ッ!!》

 

『……ゴルディオン、ハンマァァァッ!』

 

 既の所……開放されていたコントラフォール第1層の穴が閉じ始める直前に、ガオガイガーはコントラフォール第4層へとゴルディオンハンマーを叩き付け、ついにガオガイガーはコントラフォールの全4層を完全攻略……勢いのまま内部へと突入した。

 

 しかし、そこで凱が眼にしたのは……

 

『……なんてこった……東京が地盤ごと隆起しちまってる!?』

 

 眼前に広がる垂直に切り立った崖……上下に切り分けられた市街地を見やり、ガオガイガーは上空へと移動、崖の上に到達した直後……ガオガイガーは、広大なゾンダーメタルプラントを目撃するのであった。




原作通りの場所で一区切り。
なお、アーマロイド達がシオンをどういう立場で捉えているのか……彼女をどう思っているのか少し分かりましたね。
なお、勇者ロボ軍団における魔改造パワーアップのタイミングに悩み中……
一部はこの戦闘でも良いかな、とは思うけど……ね。

次回予告


ついに、始まった大東京決戦……
広大なゾンダーメタルプラントの各地で、それぞれが激闘を繰り広げる。

目にも留まらぬ音速で互角の戦いを繰り広げるガオガイガーとピッツァ。
地下で己の全力を振り絞るボルフォッグとペンチノン。

しかし、不利な戦いを強いられる超竜神の下へ
謎の人影が現れた時……我々が眼にした驚愕の真実とは?!


次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第45話『激突!機界四天王』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!


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第45話 激突!機界四天王(前編)

最近は「祝福/YOASOBI」を聞きながら執筆してます。
歌詞から連想するイメージが近いのか、聞いてるとだんだんアーマロイド達がシオンちゃんに向けて歌ってる……そんな風に聞こえてくるので不思議です。

さて、今回もちょいちょいオリ展開が入ります。



 都心部が数百メートルも隆起し、まるでギアナ高地のように天へと聳え立つ……何らかの作用なのか、はたまた誰かの力の影響なのか……環状線と首都高に2色の光が走る都心部は、辺り一面が紫色の機械的で植物の様なモノで覆われている。

 ソレはエネルギーを浴びて凄まじい速度で成長しており、1つ……また1つと、花を咲かせていた。

 

『……コレが……ゾンダーメタルプラント……!』

 

 コレまでもゾンダーメタルプラントそのものはあったし、その破壊も何度か行ってきた……しかし、コレ程の規模、そしてこうまじまじと見る機会は得られていなかった。

 

 だが、ずっと見ている暇など有りはしない……

 

『……何処だ……プラントを成長させているエネルギー源は……?! 彼処(あそこ)かッ!!』

 

 環状線と首都高が折り重なる地点……青と赤のエネルギーが集束し、交差する一点を狙い、ガオガイガーはその右腕を振り上げた。

 

「ッ?! ガオガイガー!? 何故コイツが此処に?!」

 

「あの防壁を突破するとは……やはり侮れない……っ?!」

 

『ゴルディオンッ、ハンマァァァッ!!』

 

 凄まじい速度で交差するポロネズとプリマーダのエネルギー目掛け、凱はゴルディオンハンマーを振り下ろす。全てを光に変える力は交差点に差し掛かった2人を襲うが、2人は咄嗟に路線から外れ、エネルギー生成を中断する事で難を逃れた。

 

「……ぐぅ……ッ?!」

「……うぅ……ッ?!」

 

 しかし無傷という訳にも行かず、余波を喰らって身に纏うエネルギーと身体の一部を持っていかれ、ガオガイガーから距離は取れたものの大ダメージを負わされて転倒してしまう。

 そしてエネルギー供給が断たれた事でコントラフォールも完全に消失し、影響で途切れていた外部との通信も回復したのであった。

 

《コントラフォール、完全消失しました。機動部隊の位置を確認!》

 

《な、何だコレは……?!》

 

《……ゾンダーメタルプラントじゃな……!》

 

 通信に、いつの間にやら雷牙の声が入る……彼は回収されたマイクに“ある事”をする為に再び来日していたのだ。

 

──────────

 

「……やってくれたな、ガオガイガーッ!!」

 

『隊長……!? ゾンダリアンめ、逃がすかッ!!』

 

 コントラフォールの消失により、ガオガイガーの健在を知ったピッツァと超竜神……それぞれ後を追うべく、高い崖を乗り越えてプラント内に突入する。

 

《“……我等も往くぞ、クーゲル”》

 

《“は、はいっ……行きますっ!”》

 

《“私と兄さんは、残る敵の撃破とボルフォッグの援護を”》

《“そっちも気を付けてな”》

 

《“私は随時、支援に回ろう……各自、健闘を祈る”》

 

 ダイキャンサーは超竜神と同じく崖をよじ登り、ピスケガレオン達はボルフォッグの元へ、クーゲルザウターは飛翔し……残るグラヴィスはワームホール内から味方のサポートをするべく、解放点の再選定と移動を開始した。

 

──────────

 

 機械の植物とも言えそうな、奇妙な生態をしているゾンダーメタルの生成プラント……その中を、1人の少女が逃げ場を求めて移動していた。

 

「はっ……はっ……はっ……」

 

 ある程度走っては、影に潜り込み……上空を飛ぶ巨大な“何か”から姿を隠し……

 

(……慧理那ちゃん……みんなは何処に……!?)

 

 気配が消えるのを待って再び走り出す……

 

 彼女の名は『長友(ながとも)結維(ゆい)』。特徴的な、腰まで届くツインテールという事を除けば、黒髪黒目の至って典型的な日本人……

 

 何故、彼女がココでこんな事になっているかを有り体に言えば……彼女は転生者である。

 

 何とも間の悪い……としか言い様がない。彼女が転生したのは、ほんの数十分ほど前……コントラフォールが発生する直前にこの次元へと飛ばされ、この世界の自分へと憑依し……記憶の混乱に加え戦闘に巻き込まれ、訳も分からず逃げるしかないのだから。

 

(何で怪人じゃなくてロボットが戦ってるの?! っていうかココ何処なのよぉ?!)

 

 上空を飛び交うのは、ガオガイガーとクーゲルザウター……そして高速旅客機と融合したピッツァであるが、彼女はこの世界の事をまだ何も知らない。

 

「何でこんな事になってるのよぉ~っ?!」

 

──────────

 

「ハハハッ、遅い遅いッ!!」

 

『チィッ?!』

 

《“狙いが、定まらない……!?”》

 

「空に生き、空で育った私の速さに、貴様達程度が敵う筈もなかろう!」

 

『ほざくなァッ!!』

 

 超高速飛行するピッツァの動きは、飛行機のソレではなく……急旋回からの降下・上昇から、急停止から間髪空けずに鋭角ターンして急加速……自由自在に飛び回る姿は最早鳥そのものだ。

 

「奴は私が抑える、さっさとゾンダーメタルプラントを完成させろ!」

 

「……言われなくとも!!」

「……そのつもりです!!」

 

 再生を終えたプリマーダとポロネズが再び疾走を始め、消え去っていたコントラフォールが再び展開されていく……だが長官の指示により、ゾンダーに関連する大半の機材は順次「Zセンサー」を利用した量子通信へと切り替えられていた為、本部との通信網は確保を継続出来ていた。

 

《超竜神、ダイキャンサーと共にエネルギー供給源に接近中》

 

 崖を登り終えた超竜神とダイキャンサーは、揃ってプラントのエネルギー源を破壊するべく接近……ポロネズとプリマーダが走る環状線と首都高のレールの存在に気付く。

 

『コレは……首都高を利用した、加速エネルギー発生機構か?!』

 

《“向こうもだ、此方は環状線を利用した物のようだな?”》

 

『ならば、そこを走るゾンダリアンを倒す!!』

 

《“……承知ッ!”》

 

 それぞれの立ち位置で構えを取る超竜神とダイキャンサー。しかし……

 

「あ~ら、不細工なロボット達……踏み潰してあげるわ!」

「その程度で我々を止められるとは……甘く見られたものですね!!」

 

『ぐうぅ……がぁぁぁっ?! ……ぐァッ?!』

《“ぐぬッ……ぬぉぉぉっ?! ……ぐふっ?!”》

 

 プリマーダとポロネズは、2人を嘲笑うかのように弾き飛ばして走り去る……加速エネルギーによる防壁に加え、自身のボディとしたメカは原作よりも高性能かつ使用数も多くなっており、直撃させれば即死同然のゴルディオンハンマー以外では最強に近い、ダイキャンサーの蟹の巨刃(タイタンカルキノス)でも歯が立たない程強くなっている。

 また、ダイキャンサーは戦闘開始から今までずっと巨刃形態(タイタンフォートラス)を維持し続けていた為、人型形態で戦闘を行う為のエネルギーは尽き掛けていた。

 

《“……ぐぅ……無念……っ”》

 

 心残りのような一言を告げ、蟹座形態(シザーフォートラス)へと戻るダイキャンサー……残り少ないエネルギーでやりくりするべく、会話機能すら満足に操れない蟹の姿へと戻ってしまうのは仕方の無い事だが、戦闘続行は可能……しかし先程のダメージが響いているのか、目に見えて動きが鈍い。

 

『……ダイキャンサー……いや、私が何とかせねば!』

 

 両腕の鋏もだが、多脚関節の足のうちの数本も機能不全で他の足と足並みが揃わず、移動にも支障を来している。仕方なく自己修復を待つ事にするダイキャンサー……超竜神は単独でプリマーダとポロネズを阻止すべく走り出すのだった。

 

──────────

 

 その頃、地下で戦闘を継続するボルフォッグ達……ガンマシン及びピスケガレオン達との連携はペンチノンに着実なダメージを与えてはいたが、そこはさすがにゾンダリアン。修復能力はゾンダーロボの比ではなく、喰らった傍から修復されるため決定打に欠ける状態……

 

『三位一体ッ! ビッグボルフォッグッ!!』

 

《“スパイラルランチャー、発射ッ!!”》

 

『必殺・大回転魔断ッ!!』

 

《“オラオラァ! 喰らいやがれェ!!”》

 

『超・分身殺法ッ!!』

 

 ならばと合体し、ビッグボルフォッグ達は更に苛烈な連携攻撃で立て続けに攻撃を重ねる……が。

 

「ウリィィィ! その程度の攻撃では、私に致命傷を与えるなど不可能!」

 

 ペンチノンの修復能力の方が数段上らしく、10秒もせずに完全回復……更に戦艦を模したボディにある、合計40門に及ぶ大小様々な砲塔から激しく砲撃を返され、一転して回避に手一杯となってしまう。

 

《“避けれはしますが、このままでは決定力に欠けますね……”》

《“何かこう……ドカーンと1発デカい攻撃は出来ないもんか……”》

 

『……このままでは、こちらが消耗する一方ですね……“アレ”を使うしか無いようです』

 

《“……もしかして、自爆でもするつもり? それは私と私達が許さないわよ?”》

《“そうだぜ? ココまで肩を並べて戦ったんだ……アンタを犠牲になんてさせねぇってばよ”》

 

『アナタ達は……!』

 

 そんな時だ、不意にピスケガレオン達へ簡易メールと共に制御プログラムの遠隔書き換えが始まり……ものの数秒で再起動されるピスケガレオン達。

 

《“?! これ……は……?!”》

《オイオイ……マジかよ?!》

 

 ブヴォォォゥゥゥ……ンッ

 

 突如、空間転移現象によって、ピスケガレオンの体内へと新型のZコア・ドライヴが移植され……その拍動がピスケガレオン達の身体を進化へと導いた。

 

『何が起きたのですか?』

 

《“嘘だろ……いや、マスターなら対策してて当たり前か……”》

 

《“……私たちは、新たな姿(カタチ)へと進化した様です……それに……”》

 

 装甲を分割して構成されていた尾部やヒレの一部は、滑らかに動く生体装甲へと変化……機械的な直線だった頭部も、より生物的な曲線へと変わる。

 何より、胴体下部両端の水中用推進システムが無くなり、ボディ構造はより生物的な動きを可能とする多重関節化……要は運動機能を司る内部機構が、完全に生物のソレと同様の構造へと変わったのだ。

(※今までは最低限の関節数しかなく、尾部だけで十分な推進力は得られなかった)

 

『コレが……ピスケガレオンの、進化……?!』

 

『あぁ、オレ達……けっこう強くなったみたいだぜ?』

 

『それに皆さんと同じく、声で会話も可能に!』

 

《ビッグボルフォッグ、朗報だ……ピスケガレオンとの連携手段がシオンから届いたぞ》

 

『猿頭寺オペレーター、それは本当ですか?!』

 

《ああ、ぶっつけ本番だが……試してみる価値は十分にある!》

 

『ヘヘッ、早速かよ! 気前が良いな?』

 

『しっかりしてよ兄さん? ぶっつけ本番なんだから』

 

『私はアナタ達を、稀星隊員を信頼しています……やりましょう!』

 

《ふふっ……了解した、今からコードを送る》

 

 その後、ビッグボルフォッグへ新たな連携コードが発信される。

 

『……認証コード「G-09=βUNISON」……コード送信、システム起動!』

 

『『トランスコード認証、システム起動!』』

 

 ビッグボルフォッグが輝き始め、凄まじいエネルギー反応が周囲を覆い尽くす。Gストーンの反応に混じり、今まで感じた事もないエネルギー反応……その未知の現象に猿頭寺は驚愕と共に感嘆し、ペンチノンは大いに困惑した。

 

「ウィィィ!? なんだ、このエネルギー反応は?!」

 

 一度分離したボルフォッグとガンマシン……そしてピスケガレオンの計5体が、赤・青・黃・白・黒……それぞれ5色の炎となって空間を駆け巡り、やがて緑に輝く1つの炎となる。

 

 集まり膨張し、荒れ狂う炎。やがてそれを切り裂いて現れたのは……ビッグボルフォッグより少しだけ大きく、黒い半透明のマントを羽織り……5つの光を身に纏う、新たなボルフォッグの姿だった。




ちょおっと強引すぎる気もするけど……
やっぱココしか無いかな? と思ったから混合系オリジナル合体ロボの登場イベントぶっ込んじゃうぞぉ!!

詳細はもちろん次回の後半戦!!

……こういう所で切るのは、お約束って感じかな?
感想よろしくお願いしまっす!


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第46話 激突!機界四天王(中編)

物語のシリアスシーン展開は基本、上げて落とす!



 緑色の炎を切り裂いて現れたロボット……ボルフォッグの基調色である紫を引き継ぎながらも、各所に色とりどりの変化が現れ、一回り大きくなったビッグボルフォッグ。

 

「ウィィィ?! なんだその姿は……データにないぞ?!」

 

『当然です、私もこの姿は初めてなのですから……』

 

《当然、私たちがフォローします!》

《遠慮すんな、ガンガンいこうぜってばよ!》

 

『了解、行きます!!』

 

「ウィィィ!!」

 

 先制砲撃とばかりにペンチノンは大型砲を放つ……が、その僅かな間にボルフォッグはペンチノンの背後へと移動し、狙いを付けていない砲塔を切り裂く。カウンター気味にペンチノンの腕部がボルフォッグを襲うが、その姿は虚空へと消え……今度は前方の真下から地面をすり抜けて出現し、ムラサメソードで攻撃する。

 

「ウィィィ?!」

 

『ハァァァッ!!』

 

 先程まで5体がかりで行っていた連携を、更に上回る速度での連続攻撃……それをたった1体でやっている今のボルフォッグ。

 目に見えてその移動速度は際立っており、攻撃自体も相変わらず正確無比……更に一撃の威力もかなり上昇しており、斬撃一つで砲塔そのものが1つ消し飛んだり、以前よりも回復に時間の掛かるダメージをこれでもかという程に叩き出していた。

 

「ウリュウゥゥゥ?! 何なのだその速度とパワーは?!」

 

(凄まじい速度と威力だ……Gストーンから得られるエネルギーだけでは到底考えられない。ピスケガレオンに搭載された“例の動力源”が、コレを実現しているのか?)

 

 猿頭寺は見違えて強力な力を発揮するボルフォッグの姿に、ピスケガレオンの性能の影響ではないかと考察を巡らせる。

 

『ここで終わりにしましょう、ゾンダリアン!!』

 

 ムラサメソードを構え、再び突撃を開始するボルフォッグ……

 

「……それは此方の台詞だ、紫のロボット!!」

 

 ペンチノンの返答と共に、2人を中心とした周囲一体に凄まじいエネルギーが駆け巡った。

 

──────────

 

 ボルフォッグ達が変化を起こす、その少し前……超竜神は単独でプリマーダとポロネズを相手取り、傷だらけになりながらも止めようと必死で追い縋っていた。

 

『……クッ……今すぐ奴等を止めなければ、ゾンダーメタルプラントが……完成してしまう……!』

 

 しかし、満身創痍の状態……かつ、ここまでの無理が祟りエネルギーも残り少ない。次に阻止失敗すれば、行動不能に陥る危険性すらあった……

 

『だが、私は屈しない……最後まで抗い続ける!!』

 

 その時、超竜神のセンサーが生体反応を捉える。それはプラント内の植物擬きに捕らえられた動きではない、現在進行系で逃げている移動パターンだった。

 

『い、いかん!!』

 

 人命救助を第一に考える超竜神は、咄嗟にその民間人の反応へと急ぐ……そのタイミングで、プリマーダとポロネズもその反応に気付いてしまった。

 

「おや、こんな所に人間(害虫)? 轢き殺してあげるわ!!」

 

『うおぉぉぉ間に合えぇぇぇッ!?』

 

──────────

 

「フフフハハハ……ッ!!」

 

『ク……ッ、奴に……奴に追い付けさえすれば……!』

 

《“一瞬でも良い……あの動きさえ止められれば……!”》

 

 此方を嘲笑うように縦横無尽に飛び回っているピッツァ……対するガオガイガーとクーゲルザウターは、どちらも残りエネルギーが少なくなってきていた。

 

『なぁ、クーゲル……アレに追い付けるか?』

 

《“え? えぇ……追い付けはしますが、こっちの弾はすぐに避けられちゃって……”》

 

『いや、近付けさえすればそれで良い……やれるか?』

 

《“……はい、やってみせます! 私の「脚」で……ッ!!”》

 

 クーゲルザウターの瞳に、何故か燃える炎を幻視した凱……その時、先のピスケガレオンと同じくクーゲルにも謎のメールと共に制御システムが更新され、カメラアイの色が緑からオレンジへと変化する。

 

『システム・チェェェンジッ!!』

 

 眼の変化が現れた直後、クーゲルザウターは掛け声と共に急速上昇……両手の武器を格納し、肩と腰のアーマーを除いた各部の鎧を全てパージした後、胴体は首を残して縦に3分割。

 左右は腰を軸に後方へと移動し、肩アーマーごと背中と腰の後ろを挟み込むように接合され、腕部も変形……同時に脚部も腕部と同様の形状へと代わり、外れていた鎧が再び接続されていく……

 

 最後にクーゲルの顔部分へ、鎧パーツの一部が変形した別の頭部が接続され……その姿はまさに黒き鎧を纏う戦馬へと変形したのであった。

 

『クーゲルザウター、戦迅騎馬形態(プフェールト・モード)ッ!!』

 

 変形完了後、ある程度ガオガイガーの周囲を周ってから、その隣へと漆黒の軍馬が降り立つ……その4脚は空を掴み、踏み締めており、クーゲルはまるで駆ける様に宙を滑っていた。

 

『クーゲル、お前……』

 

『さぁ、私に乗って下さい! すぐに追い付いてやりますから!!』

 

 馬の胴体からパーツが伸びて足掛けとなり、顔の側面からビームの紐まで展開……軍馬に跨がるガオガイガーという姿は非常にシュールではあるが、手段があるのだったらやるだけだ。

 

『……よし、行くぞぉッ!!』

 

 勇者王をその背に乗せ、若き軍馬は騎馬として大空を駆け出す……物理法則など関係無いか(ホント、どこ行ったの?)の如く、その速度は空を踏む毎に加速、更に、更にと加速を続ける……空を舞う鳥を追う騎馬は勇ましく嘶き、遂にその速さは音すらも置き去りにしたのだった。

 

──────────

 

 赤と青のエネルギーが交差する……突如現れた民間人を、プリマーダとポロネズの突撃から救助すべくその身を以て庇う超竜神。

 

『間に合えぇぇぇぇぇぇッ!!』

 

「………ッ?!」

 

 身体の芯にまで響く衝撃、エネルギーに身を焼かれる感覚、そして間を置いて吹き込む強烈な風……眼前に迫ろうとする死の危機を感じ、身を竦めてしまう少女……超竜神はその小さな身体を庇い、サッカーのゴールキーパーの如くプリマーダとポロネズの攻撃をその身体で受け止める……筈だった。

 

『……ッ……!? この腕は……?!』

 

「「な……なにぃッ?!」」

 

 超竜神の手前……虚空から生えた一対の鋏を持つ、その青い腕。虚空の穴は徐々に拡大していき、繋がった胴体が半分ほど現れる。

 

『“やれやれ……こんな罪もない、無抵抗の民間人まで襲うとは。やはり、アナタ達の存在は……この宇宙から消し去るべき……ですかね?”』

 

 ワームホールから半身だけ身を乗り出し、ポロネズとプリマーダの突撃を軽々と受け止めるグラヴィスコルード。その頭部カバーが開き、中から1人の人影が出てくる。

 

『《そんな物騒な事言わないで……でも、ギリギリだったわね》』

 

 人間態……GGGの制服姿に謎のオーラを纏ってはいるが、その人影は間違いなく……稀星シオンだった。

 

「どうして?! 私達の全力をこんな簡単に……!?」

「な、何なのだそのロボットは……! 我々の攻撃がまるで……」

 

 グラヴィスコルードは腕の重力制御機構で空間を歪ませて慣性制御を行い、その鋏でポロネズとプリマーダを軽々と挟み、ガッチリと抑え込む。空間ごと対象を捕えて離さないその鋏は、その気になれば確実に対象を圧壊させるのだが、敢えてそれはしなかった……いや、シオンの感情に引き摺られ出来なかったのだ。

 

『《その顔……その声……!? ま、まさか……貴方達は……》』

 

──────────

 

 事の一連の流れを、東京タワーから見ていた小学生ズ……しかし、護だけは地下から漂う気配に言い知れぬ悪い予感を感じてしまい、皆から離れて1人地下へと迷い込む。

 

(……何だろう……物凄く悪い予感がする……GGGの皆は大丈夫そうだけど……この悪寒の正体は、何故か……確かめなくちゃいけない気がする)

 

 照明も全て落ちた真っ暗な東京タワーの地下部。その底へ続く階段を、ゆっくり時間を掛けて降りていく護……その先に、特大の絶望という運命が待っている事など知る由もなく。

 

《……フフフ……心弱き者達よ。貴様達自身が招いた厄災、存分に堪能するが良い……!》




テンション爆上げタ~イム……はそろそろおしまいかもです。

その落差に怯えろ!竦めッ!!


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第47話 激突!機界四天王(後編)

前回の更新時に公開された情報を含めて、資料集を更新しています。
新情報が公開される毎にそちらも合わせて更新していますので、たまには見直してみて下さい。

……一部、裏話的な情報もあったりなかったりw



『おぉぉぉォォォッ!!』

 

「何っ!? この私に追い付いてくる……?!」

(な……馬……だとッ?! なんという非常識……いや、奴はあの裏切り者の下僕。クソッ……厄介すぎるぞ!?)

 

 ピッツァは再び後方から迫る凱の声に後ろをチラ見し、ガオガイガーの姿を見て思わず二度見した。

 戦騎馬となったクーゲルザウターに跨り、ガオガイガーは音速で空を舞うピッツァに追い縋る。その速度は既に双方とも音を置き去りにしており、もはや誰の眼にも止まらない。

 

『……ぐぅ……なんてスピード出しやがる……!』

 

『耐えてくれゴルディ、後少しで追い付けるんだ……!!』

 

 なんとガオガイガーの右腕は未だにマーグハンドであり、ゴルディオンハンマーも握られたまま……つまり今のクーゲルはガオガイガー+ゴルディーマーグという重量を背に乗せたまま、音速の壁を突破していると言う事になる。

 

「……チィッ!? 振り切れん!?」

 

『……あと、少し……あと……少し……ッ!!』

 

「クッ……舐めるなッ!!」

 

 翼を開き、暴風を巻き起こすピッツァ……だが、クーゲルの脚は止まらない。小さなダメージは無視し、大きな竜巻の僅かな隙間に身体を捩じ込み、避け切れないものはゴルディオンハンマーが掻き消す……言葉すら交わさずとも、クーゲルは凱の考えを無意識に読み取り、その狙いを頭に入れ……自身で最適なコースを取っていた。

 

『だぁぁぁ~~~ッ!!』

 

『機界四天王ピッツァ! お前を今、ココで倒すッ!!』

 

「チィッ! ……なっ?!」

 

 一心不乱に駆けるクーゲルの背に跨り、真っ直ぐに突貫してくるガオガイガー。

 

 苦し紛れにピッツァの放った更なる竜巻をゴルディオンハンマーで打ち消し、バルカン砲を受け止める……反撃とばかりにクーゲルの前脚基部にあるホルダーが前を向き、ヴンダーワーフェが牽制射を放つ。ピッツァは弾道を予測し、翼を畳んで後方へすり抜けようと速度を落とした直後……

 クーゲルザウターの前肢がピッツァの胴体を捉えて踏み付け、ピッツァは動きを誘われた事への驚愕と共にバランスを崩した瞬間……ガオガイガーはその右腕を振り上げきっていた。

 

『ピッツァよ、光になぁれぇぇぇッ!!』

 

「う、うぉぉぉぁぁぁ……!!」

 

 為す術なく団子状態のまま速度すら落とさず、空を滑り……大地に落ちる3人。その後、土煙と大量の光の粒子が爆発的に溢れ広がる。

 

『……………………』

 

『……隊長……さん……』

 

 それまで乗せていた相手が背に居ない事に気付き、クーゲルはガオガイガーの方を振り向き声を掛けたがそれ以上の言葉は出なかった……

 着地の直前にクーゲルから飛び降りていたガオガイガーは、溢れる光の粒子を背にしながらハンマーの柄を大地に立て……無言のままピッツァとの戦いの一部始終を思い返しながら立ち尽くしていた。

 

──────────

 

 地下の激闘も激しさを増し続け、無限再生にも陰りが見え始めたペンチノン……しかし超速機動を繰り返すボルフォッグにも小さな反撃ダメージが重なり、さすがに無視できない状態となっている。

 

「ウリィィィ……! よもやココまでしぶといとは……」

 

『ぐ……ッ、もう少し……あと一手……!』

 

 センサーの一部が破損しており、側面の攻撃に対処が遅れているボルフォッグ……無論、それも考慮はしているが、如何せん慣れない機動速度に消耗が重なり、エネルギーが枯渇しかけている。

 

《……ったく、いい加減くたばれってばよ!》

《……あと、一手が……届かない……!》

 

 全力サポートしていたピスケガレオンも、初合体という事もあり、ココまでの超機動の連続にはさすがに堪えていた……

 

「だが、これで私の勝ちだ! ウリィィィィィィ!!」

 

 満身創痍だが、勝ち誇る様にペンチノンはボルフォッグに迫る……しかし。

 

『……残念ですが、それは此方の台詞です!』

 

 その返答に、ペンチノンが疑念を浮かべた直後……側面の壁を破って巨大な潜水艦が姿を表す。

 

(……絶好のタイミングだぞ、ボルフォッグ……!)

 

 それはGGG諜報部の誇る「多次元諜報潜水艦」……ボルフォッグはペンチノンとの戦闘の最中に遠隔操作で出撃させており、本部の猿頭寺がタイミングを見計らい突撃させたのである。

 しかし、ペンチノンのボディに接触した部分から瞬く間に侵食が始まり……どんどんと多次元諜報潜水艦のボディはペンチノンの中へと引き込まれていく……

 

「無駄だ! ……Gストーンを持たぬ機械など、我が身体に融合されるだけよ!」

 

『……いいえ、むしろそれが狙いです!』

(喰らうが良い……多次元諜報潜水艦、最後の切り札を!)

 

《動力炉冷却システム停止……臨界点を突破》

 

 ボルフォッグの声と共に、多次元諜報潜水艦の動力炉は瞬く間に暴走……繋がっているペンチノンへも、その莫大なエネルギーの影響と熱量が直に伝わってくる。

 

「な、何だコレは?! 身体が熱い……!?」

 

 コントロール下を離れ暴走したエネルギーはたとえゾンダーであろうとも押し留める術はなく、少しでもダメージを避けるべくペンチノンは本体である目玉の様なパーツを射出して原因から遠ざかろうとした……が、その本体をボルフォッグ達が逃す筈もなく。

 

《逃がすと思うかってばよ!?》

《絶体に離さないんだから!!》

 

『……アナタは、ココで終わりです!!』

 

「ウリィィィィィィ?!」

 

 目玉パーツに未だ繋がっていた数本のケーブルに己の得物(シルバームーン)を突き立て、その場へ縫い止めるボルフォッグ……原作ではガンマシンを破壊され、合体前かつ満身創痍であったが、今回はその超速度を遺憾なく発揮できる新たな姿のままだった。

 

『しかし……さすがにこの距離では……後は、頼みます……!』

 

 動力炉の臨界爆発に巻き込まれ、ペンチノンはエネルギーの奔流に飲み込まれていく……ボルフォッグも、ペンチノンを縫い止めるその手を一切緩める事なく、共に光の中へと飲み込まれていった……

 

──────────

 

 シオンから伝わる動揺に、圧殺の手を止めたグラヴィス……シオンは、薄ぼんやりと残っていた記憶の欠片を思い出し、動揺を隠せなかった。

 

『……あ、アナタ達は……やっぱり……!』

 

《“主……如何したのです?”》

 

 不思議に思うグラヴィスだが、シオンの動揺がハッキリと伝わってくる為、最初は目障りだと思っていたこの2人(ポロネズとプリマーダ)を掴んだまま、頭の上に居る己の主を心配する。

 

「あ……あぁ……っ」

 

『……良かった……何とか、助けられたか……』

 

『……っ……超竜神!? 大丈夫?』

 

 しかし、背後の声にシオンの動揺は薄れ、振り向いて見えた超竜神の損傷具合に思わず声を掛けた……勿論、ポロネズとプリマーダはグラヴィスに『抵抗しない様に、でも潰さないでね』と指示を与えて。

 

『……えぇ、まだ捕まってない民間人が居たので』

 

 超竜神の言葉に、背後で守られていた少女を見る……黒髪ロングツインテールという変わった髪型の日本人。目の前の光景にかなり動揺しているが、取り敢えずは無事なようだ。

 

『超竜神、貴方は少し休みなさい……その娘とこの2人は、「私」に任せて』

 

 超竜神に労いの言葉を掛けたシオンは、再びポロネズとプリマーダに向き直る……異様な雰囲気に敵愾心を隠さない2人だが、シオンの胸元で光り始めた『Z』の紋章と、浄解にも似た波動を感じた2人は揃って驚愕……その後、何故か遠い過去を懐かしむ様な顔で涙を流し始めたのである。

 

「っ?! ま、まさか……貴女様は……?! お、おぉぉぉ……」

「っ?! ま、まさか……貴女は……?! ……うぅ……っ……」

 

『“……entwirren”』

 

 ポロネズとプリマーダ、2人の前に両手を突き出したシオン……紡ぎ始めた言葉は、護少年とは明らかに違う……不思議な“浄解”だった。

 

 ────seele abgrund

 

 ────fluch

 

 ────zerstreuen

 

 ……敢えて言うが、それは人類にとって発音そのものすら難しいモノ。

 

 その呪文と共に、周囲へと光の粒子が溢れ出す……

 

 素粒子Z0とは違う、その温かな光を宿した粒子はポロネズとプリマーダの周囲を囲い、次第に2人を覆い隠していく……

 

「「……こ、これは……?!」」

 

 2人の周囲を覆う光の粒子は、徐々に体へと付着し、まるで雪のように溶けて浸透していく……その度に、言い様のない暖かな熱と、未知のエネルギー。そして、それまで失っていた狂おしいまでの感情の渦が体中を駆け巡る……

 

 ある程度粒子が馴染み、2人の全身が光に包まれた後……散らばるガラスの破片の如く殻を破って現れた2人の男女。

 

「……あぁ……ゼーヴ……アナタ……!」

 

 女はもうプリマーダではない。ピンク色の髪にオレンジの瞳、慈愛に満ちた表情で隣に立つ男の名を呼び、見つめ返す……

 

「プリ……いや、メティス……君にまた会えるとは……!」

 

 呼ばれた男は薄い目を見開き、自分の名を呼んだ女の姿に一瞬驚くも、すぐに目を細めて満面の笑みを返しながら……もはや欠片となって消えていく“それまで”ではなく、忘れ去っていた“かつて”の記憶にあった愛しき妻の名を呼び、ゆっくりと2人は近付く。

 

 どこかの神話の時代にあった様な白布で織られた服を着込む2人は、互いの姿が“いつかに似た姿”という事に感極まり、長らく失っていたものをやっと取り戻したかの如く……優しく抱きしめ合うのだった。

 

 

(不思議な感じ……この人、何か……他の人とは明らかに違う感じがする)

 

 超竜神によって救われた少女『長友(ながとも)結維(ゆい)』は、不思議な雰囲気を纏う目の前の女性……シオンに何かの既視感を覚えていた。

 本人にも言い表せないが、その感覚は彼女にしか感じられず、またシオンにしか同じ感覚を覚えない……しかし結維はこの時、先ほどの記憶の混乱や見たこともない周囲の状態に“自分は再び転生したのでは?”と感じずには居られなかった。

 

 そもそも彼女には、転生という出来事は既に経験済みであったから……そして。

 

(この人……たぶん転生者、だよね。……でもなんか、見た目と精神がチグハグに見える……コレって、魔法とか何かで色々と誤魔化してる? あ、でも巨大ロボットがあるから魔法じゃないか……この世界、ほとんど現代の日本みたいだし)

 

 この異常事態に慣れつつある結維の頭は、冷静になるにつれて、この世界や自分、そしてシオンの事を考え始めていた……




クーゲル()ピッツァ()を超える……そりゃ驚愕もするってw
ちょこっと変わった形になったけど、GGG側はほぼ原作通りの状況で決戦を乗り切りました……ただ、大きく変わった点が2つ。

ボルフォッグ。ガンマシンその他の合体形態のまま消息不明に……
ポロネズとプリマーダ。シオンちゃん(?)が浄解(?)した事により元の姿(?)へ……

事態解決と同時に不可解な謎も残ったのは事実……原作視聴済みの方は気になりますよね?
こんだけ騒がしかったのに、まだ不干渉を貫いてるパスダー……
そして、この事態に突然招かれ置いてけぼり喰らってる娘の処遇やとプラントの処理も。

お約束だけど、その辺はまた次回かな……?

……そして原作既知の皆さまへお願いです。
アレコレ考察するのは構いませんが、ウチは最近覇界王読み始めたばかりだし本作の今後に対する私の心労がマッハなので、原作比較による考察ツッコミなどは勘弁してほしいであります……
(;゜∀゜)オオゥ……

──────────


次回予告


君達に最新情報を公開しよう!

遂にゾンダリアン全てを打倒したGGG……

残るゾンダーメタルプラントを処理するべく
ついにマイクの真の力が発揮される……!

しかし、一連の元凶たる『パスダー』によって
更なる混沌が撒かれる事など、我々は知る由も無かった……


次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第48話『全ての元凶たるもの』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!


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第48話 全ての元凶たるもの(1)

これまでゾンダーを生み出し、世界を危機に陥れていたゾンダリアン達との直接対決は滞りなく終了……後はゾンダーメタルプラントをどうにかするのみ!

原作では同時に“EI-01”この「パスダー」の動向を気にしていましたが……
今回はなんかパスダーはすぐ出て来ないっぽい……?

どうなるのよこの先さぁ……?!

今回は短めです。


『イェ──────────イ!』

 

 後方で何らかの作業を行われていたマイクがようやく発進……原作通りなら、変形に関するプロテクトが解除され、真の力を発揮できる様に調整が行われた筈だ。

 

『システムチェ──ンジッ!!』

 

 専用の飛行ユニット「バリバリーン」から飛び出し、機体の上下が反転……脚部だった部分は肩へ、背負っていたパーツが足となり、後頭部だった部分は腰、最後に新たな頭が胴体から迫り出し、マイクの変形は完了する。

 

『マイク・サウンダース、13世ッ!! ……最高、だッZE!』

 

《今こそ、マイク・サウンダーズの真の力が必要な時!!》

 

『Yeah! “ディスクX”……SET ON!』

 

 変形を終え、プロテクトが解除されたマイク……ゾンダーメタルプラントを完全破壊する為、使用そのものを制限されていた最高機密「ディスクX」を取り出し、胸部ディスクシステムへと装填。

 この「ディスクX」は、ソリタリーウェーブによる物質破壊……要は単一波長の振動波と対象の固有振動波を同調させて疲労破壊を導く攻撃手段であり、対象の分子構造を把握さえしていれば破壊できない物質はないとされている。

 

『ギラギラーン・VV(ダブルブイ)ッ!!』

 

 金色のギターを掻き鳴らし、マイクは最大音量でディスクXに書き込まれたデータを忠実に音楽として演奏する……その音楽に合わせ、超広域へと放たれるエネルギーソリトン……その固有波長が破壊をもたらす物は。

 

 ……ギギッ……ギッ……パァン! パリィン!

 

《超高密度のエネルギーソリトン発生!》

 

《首都圏全域において、ゾンダーメタルが次々に破壊されています……!》

 

 東京を覆い尽くしていたゾンダーメタルプラント全域において、後僅かで完成すると思われていたゾンダーメタルが、次々と自己破壊していく……マイクが発しているこの「ソリタリーウェーブライザー」と呼ばれる音波攻撃は、対象物とした固有振動波長の物質のみをピンポイントで破壊、その他には一切影響を与えないという画期的な攻撃手段であり、その驚愕の特殊性と回避不能の破壊能力から、使用には非常に厳しい制限が求められた。故に“それ”を攻撃手段として持つマイクにも、厳重なプロテクトが掛かっていたのである。

 

《この“ディスクX”の攻撃目標はゾンダーメタルのみ、他の物質は一切破壊せんのだ!》

 

 私の耳にも、その独特な音階を重ね合わせた不思議な音色が聞こえてくる……不快、ではないが、聞いててあまり気分が良いものでもない……

 

(なんかさ、こう……メッチャ聞き取りにくい歌詞が矢鱈滅多に詰め込まれた「デスメタ」を聞いてる感じみたい……)

 

 既に隔絶した物へと変質し、ゾンダーとは明らかに違う種として成立しているシオンにとって、この“ゾンダーメタルを目標としたソリタリーウェーブライザーの音楽”は「デスメタル」の様に聞こえるらしい。

 そしてシオンの音楽に関する知識は普通に一般的な教養レベルしかないので、デスメタルへの理解はそもそも高くなかった……

 

──────────

 

『……発信終了っ!』

 

 やがてマイクの演奏も終了し、プラント全域のゾンダーメタルの反応は全て消失したのであった。

 

(……やれやれ、この先を考えると……やっぱり不足分を先に採っといて良かったわ)

 

 地上から約500mも地盤ごとそのままに隆起し、陸の孤島と化していた市街地一帯から、ゾンダーメタルの反応は根刮ぎ消された……その光景に、シオンは改めてマイクの性能に驚く。

 

 物理防御さえ許さない、特殊なエネルギー振動波によるゾンダーメタルのピンポイント攻撃……空間的防御を施すか、物理的に距離を取らなければものの数秒で対象物を自壊させる……

 それが、マイクの持つ「ソリタリーウェーブ」の能力である。

 

『純粋地球科学でコレだけの結果が出せるんだから、もし超科学文明域で再現なんかしちゃったら目も当てられないわね……』

 

 当時視聴していた時のパリアッチョの言葉が、シオンの頭の中に浮かんでくる……あの時は単に“文明レベルを比べての発言”だけだと思っていたが……改めてあの発言を思い浮かべると、この後に待ち受ける後半戦が()()()()()()()()()()()()()、嫌に寒気がする……想像したくもない。

 

 ……この時シオンは、ココに来る前の事も思い出していた。

 

 

回想シーン

 

 暗く、儚い、意識が微睡む……

 

 私はその時、微かな声と悪魔の囁きを耳にしていた……

 

 

……貴女には、辛い道を歩ませてしまう

 

何故、躊躇う……

 

許しを請うても、許されないでしょうね……

 

……何故、お前は躊躇う

 

でも、そうしなければすべてが消える……

 

……欲望に身を委ねよ

 

 

 片方は僅かながらも、強く、眩しく、そして温かい光……

 

 もう一つは昏く、狂おしく、そして冷たい闇……

 

(……絆、さん……?)

 

 意識がぼんやりと浮かんでくる……暖かな光に薄目を開けると、そこには居るはずのない……生きている筈のない人の顔。

 獅子王麗雄博士の奥さんであり、凱さんの母親……獅子王絆さん、その少女時代の姿で……明らかに違う雰囲気をした人っぽいヒトが立っていた。

 

勘違いさせてゴメンナサイ……

 

(う~ん……絆さんの顔で神妙に謝られると、妙に居心地が悪いなぁ……)

 

 原作後半序盤で、凱さんにだけ見える謎の少女……原作では後に“ザ・パワー”の力の一端で、絆さんが警告や伝達を目的に飛ばしていた思念体だという事が分かるのだが、今私の目の前にいる彼女(?)はそうではないらしい。

 

こうでもしないと、上に勘付かれて怒られちゃうので

 

(あ、そうなんですか……って、上? このヒト、上司の目を盗んでココに介入してるって事?)

 

 上、という単語に妙な既視感を覚える……上下関係があるという事、そして怒られる……このヒトはどうやら他に見られると反則行為と取られる手段で私とコンタクトしているご様子。

 

……そういう事になります

 

(ふーん……で、何で短文で切ってるの?)

 

長文だと、データ量が多くなるので

 

(データ……もしかして、監視の眼を盗んでってそういう……)

 

 データ量……何らかの通信技術による介入って事かな、そしてそれは使われるデータ量の差異で誤魔化す事が出来る……と。

 

はい……通信量が多いと、検閲に引っ掛かるので

 

(じゃあ、私が言葉にしてないのに伝わるのは?)

 

言葉にされると、拾われた発言内容から勘付かれるので

 

 どうやら対象の思考を拾うのなら感知されず、この誤魔化しも勘付かれないらしい。

 

(なるほどねぇ……私の思考をピンポイントで拾うのなら、逆に都合が良いって訳か……)

 

理解が早くて助かります

 

(……まぁ、コッチは意図せず身体が半分機械なもので)

 

 なにせこの身体は、アニメ版最大の脅威と同等の存在と融合している訳だし。

 

それについては、私の一存です……申し訳ありません

 

(……? どゆこと? 一存って……というか、私のって……もしかして?)

 

はい……私は、この世界の暫定(仮免中の)管理者です

 

(……は? ……どゆこと……?)

 

 なんてこったい……世界崩壊級の爆弾投下されちゃったよ……

 




(大事な事なのでもう一度)
 なんてこったい……世界崩壊級の爆弾投下されちゃったよ……

Q. ……ってゆーか、いきなり世界の管理者(見習い)だぁ?
  もう原作崩壊じゃね?

A. かもしれませんが、世界は普通に回ります……
  むしろ回さなきゃダメな方です。

次回予告しないのかって?
ここでブチ切るとタイトル詐欺になるから続けます。

突然現れた世界の管理者(見習い)、彼女の語る理由とパスダーの動向は……?


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第49話 全ての元凶たるもの(2)

……なんかさ、裏話的な匂わせするとお気に入りが増える。
皆さん飢えてるんですか? そういう話題……

この物語にはカクカクシカジカな裏話が……とか?



 突然、シオンの精神に干渉してきた世界の管理者(見習い)……謝罪から始まった会話の中で、管理者はシオンのZマスター化は自分の一存の結果だと明かす。

 

 だがそもそも、この世界に転生者を送り込んだ理由が分からない……

 

(どういう事? 私がZマスターだった過去はアナタの一存……って言うか、そもそもこの世界に何で転生者を送り込んだ訳? 確定した世界の流れを、わざわざ変革させる事が分からないわ……)

 

それは……私達の試験の為なのです

 

(……? は……い……? 試験……?)

 

管理者として、私達にはコピーされた(原典とは違う)世界を宛がわれます

 

 何を……言っているのだろうか……理解が追い付かない。

 

要は、この世界そのものが単なる試験の舞台であり……

 

(……待って……待ってよ…… 待ちなさいッ!!)

 

……は、はひっ?!

 

 私は理解をしてしまった……この胸くそ悪い理由の上に存在する1つの事実を……

 

 認識をしてしまったのだ……全く冗談キツいよね……

 

 この世界は所謂“フラスコの中の実験場”……研究者の箱庭が如く、未知を既知に変える為だけに使い捨てられる様に、世界の管理者の試練と称して、贋作よろしく模造品の様に“使い捨てられる世界”の1つだったのだ。

 

 よくよく考えれば確かに最初からおかしい所は幾つもあった……近未来を想起させる科学の発展した現代という感じで原作の物語(勇者王ガオガイガー)はあるが、それは元々“2005年”の地球が舞台の筈だった。

 それなのに……私が認識する今のこの世界は、経緯こそ良く似てはいるが“2020年”である。

 

 ……明らかに、この“15年”のズレは世界のコピーだけでは説明が付かない。

 

 もう1つは、Zマスターである……

 

 Zマスタープログラムに「プロトタイプ」が存在するなど、原作には無い……仮にあったとしても、早々に存在は抹消……ないしは秘匿され、そうそう世に出る情報などではない。

 

 おかしい点はまだある……ゾンダリアン達の自意識の変調だ。

 

 年代設定の変更から、ゾンダーロボの性能や能力は然るべき強化されて当然だったが……ゾンダリアン達の精神に関わる点まで、変革している筈がない。

 

 プリマーダとポロネズは“カインの遺産”こと「ギャレオン」に原作ほど執心しておらず、代わりにイレギュラーである私への心移りが見られたし……ピッツァとペンチノンにも、若干ながら護くんに対する当たりが違っていた。

 何より、絶対的上位存在として考えられる「パスダー」の指令をある程度“自分勝手に解釈して”行動に移しており……結果的に原作に近い状況となっていたとはいえ、部下の暴走気味な状態をパスダー本人も黙認していたのだから。

 

 何処までコピーの際に手を加えられたのかは分からない……しかし、この世界が“管理者に対する試験(横暴過ぎる目的)”の為に用意されたのは事実であり、何らかの意図を持って改編されているのは確実だ。

 

……あ、あの……

 

(……ごめんなさい、取り乱したわ。あまりにもムカッ腹立ったもんで……)

 

そ……そうですか……

 

(状況を整理したいわ……何故こういう状態なのか、時系列順に説明してくれる?)

 

……分かりました。

情報を掴み易い様に、動画データとしてお送りしますね

 

 それからしばらく、この見習い管理者からはずっと“申し訳ない”という感じが漂っていた……

 

 そしてその理由は、送られてきた動画を全て視聴し終えて……始めて理解したのだった。

 

──────────

 

 俗に言う「多次元世界論」……それはこの世界における真理だった。

 

 私達の認識している世界と……極めて近く、限りなく遠い世界……“ソレ”は無数に存在しており、物語として成立し、概念を設けられ、時間の流れに乗った時点で世界は新たに生まれ続けており……今もなお、拡大・増殖の一途を辿っているのだという。

 そのせいで、多忙を極める“次元の番人”は、増え続ける世界を管理する為……現存し、認識される全ての世界へ、1つにつき1人……担当の“管理者”を任命し、監視・監督権限を与える事にした。

 

 先輩管理者には「担当世界の維持運行」と「後輩の育成」が課せられており、彼女(見習い管理者)はもう1人の見習いと共同で管理試験を受ける事になり、『勇者王ガオガイガー』の世界を指して「物語を導いて見せろ」と先輩から指示を受けたという……

 

 勿論、管理とは物語としての始まり以前……つまり、世界の発生から監視を続け、時間の流れで発生する様々な事象を監視・管理し、時には然り気無い手助けを様々な形で行う。

 

 ……最初は順調そのものだったらしい。先駆者の情報を参照し参考にし、三重連太陽系の発展と栄華を極めるに至った所までは……

 

 ……きっかけは不明だったが、いつの間にかもう1人の見習いが居なくなっていた。

 

 それからしばらく経ち、三重連太陽系最大の誤算である「Zマスタープログラム」の完成直前にようやく違和感を感じた。

 

 ……正史には無かった、プロトタイプの存在だ。

 

 先駆者の記録や正史には無かったプロトタイプの存在……最初はそれまでの関わりから生み出された分岐点として考えていたが、その後の流れは何故か奇妙な程にズレが無い。

 本来なら分岐点ができればそこから正史と分離し、別次元の物語として扱われ、そのまま分枝世界として進み始める筈だ。しかし、幾つもの分岐点が出来てなお原作通りに進む奇妙な流れ……気になった彼女は分岐点の原因を辿ると、やはりプロトタイプの存在がキーだった。

 

(……このプロトタイプ、もしかしなくても私……だよね?)

 

……最初は何の問題もありませんでした

問題なのは……この後なのです。

 

 そう言って、管理者さまは先を促してくる……私は少し時間を進めてみた。

 

《……ええぃ?! 何という事だ……虎の子のアーク艦隊が……!》

 

 進めて、再生速度を戻した直後……映っていたのは、次々と爆発していく幾つものジェイアーク……無惨に打ち捨てられた、何人ものソルダート……アルマタイプと寄り添ったまま息絶えた者もいる。

 その中で中空に佇む、1人の影……バックで揺らめく炎でよく分からないが、小柄な女性のシルエットに、私は既視感を覚えてしまった……

 

(……何……アレ……? というかコレが……赤の星が壊滅した理由……?)

 

……はい。今回の赤の星は……

 

(今回? じゃあ、このシミュレート自体は何度も実行されているという事?)

 

いえ、今の“今回”というのは……

私達の課題としての時間軸、という事です

 

 ……なるほど、他のコピー世界が同じ時間を辿る場合は少ない事が多い。ならこの時、私が感じた既視感は……?

 

……それは……

 

 一際大きな爆発が起き、照らし出された顔……その顔が誰かを認識した直後、私の脳内に大量の情報が流し込まれる。

 

ハハハッ! よもやこうも上手く事が運ぶとはなぁ!

駄目です! 侵食、止まりません!!

どんな手を使っても構わん! 奴らの侵攻を食い止めろ!!

 

ウリィィィ! 頭脳を失った艦隊など、木偶の坊も同然だ。

まさか……ゾンダー共が、これ程までに巧妙な戦術的行動を……

 

ダメです! 艦隊陣形が、もう維持できません!

フフフ……頭を潰されれば、脆いものです……

まさか、このアーク艦隊を真正面から喰い破るなんて……!

ガラクタで私達を相手するなんて……愚かすぎるわね?

 

心弱き者達に……我が力を与えましょう……

 

奴め……まさか、もうGストーンへの耐性まで……?!

済まない……許してくれ、ラティオ……

 

……やはり、あの力は……我々は自ら……滅びの引き金を……

 

そう……全ては、滅びる運命なのです……この世界、全て……

 

 

 目を疑う蹂躙劇の後……

 

 虚空に浮かぶ、残らず大破させられたアーク艦隊……

 大勢のソルダートやアルマタイプ。恐らく完成に漕ぎ着けたであろう最強の破壊神ジェネシック・ガオガイガーすらも、一目で再起不能と分かる状態で機能を完全に停止させて浮いていた……

 

 果敢に立ち向かっていった多くの戦士達の屍を周囲に漂わせ……黄金色の異質なオーラを纏った“私”は、4人のゾンダリアンらしき人影を従え、静かにそう溢しながら笑う。

 

 

 ……違うと言って欲しかった。嘘だと言って欲しかった……

 爆炎に照らされ、映されたその顔は……多少の違いはあれど、“私”の顔だったのだから。

 

私の気付かぬ内に、貴女はこの世界に引き込まれ……

 

人格を消され、Zマスターとして利用されたのです

 

当然、私はあらゆる手を尽くして回避を試みたのですが……

 

 途中から言い淀む管理者……その顔からは“何も出来なかった”という悔しさが滲み出ていた。

 

(……それから……どうなったの……?)

 

……想像の通り、世界は全て機界昇華されました。

 

 最強の破壊神、ジェネシックをも退ける圧倒的な力に対して、抗える訳もなく……

 

勿論、予測の域で中断し……

 

 無論全てを消される前に、やり直しを行った様だが……

 

その後、何度も何度も……

貴女に関わる人を代え、条件や環境を変えてやり直しを図りましたが……

 

 その時に取れる全ての手を尽くしても……

 

……結果はさほど変わらず……機界昇華は免れませんでした。

 

 ……最悪の絶望は、止められなかったのである。




かつて訪れたであろう最悪の絶望……
しかし、彼女は今ココに生きている。

“ソレ”は何を示すのか、何が原因で“そう”なったのか……
……その答えは、次の語りの続きにて。

感想、お待ちしてます。


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第50話 全ての元凶たるもの(3)

そろそろ過去語りを止めないと飽きられちゃうかな……

時系列で纏めると次の通り……

1.とある“転生者の人格”と“何か”が、開発中の“マスタープログラム”に放り込まれ、“ソレ”を利用して完成した“ゾンダーメタル”に、致命的なバグが発生。

2.バグにより制御が狂い、“マスタープログラム”は固有人格を発現させ暴走。
ゾンダーメタルが制御を離れ、紫の星の機界昇華を開始。

3.暴走を危惧していた赤の星が建造を進めていた『アーク艦隊』と、緑の星が開発した『ジェネシック・ガオガイガー』により一時は拮抗したものの、唯一の対抗手段であったJとGパワーに完全耐性を得られてしまい、三重連太陽系は機界昇華……その後、全宇宙もまとめて機界昇華される事に……

4.見習い管理者、全宇宙滅亡の危機に世界をリセット……直接的元凶となる“マスタープログラム”に対する干渉を開始。
幾度も開発中の環境を変えてはリスタートするが、効果的な成果を得られず……

5.見習い管理者、“マスタープログラム”に対する最後の手段として已む無く『人格転送』を強行……開発中の“マスタープログラム”に、何者かによって植え付けられていた『転生者の人格』を違う時間軸へと強制転送。
同時に“デッドコピー”として『プロトタイプ』の存在を事象的に用意し、コピー人格を与えてカムフラージュ……転送された転生人格は、2006年の地球で『稀星シオン』として生を受ける。

6.三重連太陽系、史実通りの展開により滅亡……
その後は史実通りの展開へと戻り、致命的欠陥事象を回避する事には成功する。

7.2018年。稀星シオン、滅亡寸前の“紫の星”から“何者かの手により脱出させられていた”『プロトタイプ』と接触……人格融合を果たしZ・オリジン“稀星シオン”となる。

8.“プロトタイプ”が脱出時に弄していた“策”により、ゾンダーの活動と機界昇華のペースが史実より大幅に遅れ、パスダーの地球到達が2018年へとズレる。

9.2020年、地球でゾンダーによる機界昇華作戦が開始される。
稀星シオン。ゾンダーとGGGの初戦闘時に、失っていた転生前の記憶を回復……
その後紆余曲折あってGGGに加入し、ゾンダーへの反抗作戦に全面協力する。←(イマココ)



(こりゃ……絶望も絶望、完全にお手上げルートよねぇ……でも、ちょっと待って。私の人格以外にマスタープログラムに混入した“何か”って何?)

 

それは……“#&@※ヰ♪*”……です。

 

 は? 何でその単語だけバグってるの? 何故か伝わらない肝心な単語……まだ解いてはいけない謎のように、ヒントをひた隠しにされる感じだ。見習い管理者も違和感に気付き、数回繰り返して伝え直すが、全くと言って良い程伝わる様子は無かった……

 

(……確定じゃないけど、その……今、この場で正体を明かされちゃ困る“誰かさん”の干渉かな? おおよその検討は付くけど……ん?)

 

……ッ!?

 

 直後に感じ出す奇妙な違和感……見習い管理者さんは過干渉を警戒したのか、そのまますぅっと気配を消して遠ざかる。

 

 そして地の底から徐々に這い上がって来るような、おぞましい気配が水のように染み出してくる……

 

心弱き者共よ、我が力を授けようぞ……

 

 ……その言葉で相手が何者かを完全に理解した。

 

『……機界指令、パスダー……!』

 

フフフハハハ……! 我等が同質の力を持つ裏切り者よ。ようやく貴様の息の根を止める事が出来ようとは……

 

『……それはコッチの台詞。 ようやくアンタを表に引き摺り出して、この手で叩きのめす事が出来る……それでようやく一区切りよ』

 

 フフフ……この私を倒せると?

 

『……アンタ達ゾンダーの目論みは全て知ってるし、アンタを倒せても終わりじゃない事くらいとっくの昔に認識してるわ!』

 

 強がるな。我々ゾンダーは不死身の生機融合体……似て非なる貴様の力は……

 

『……アンタの眼、やっぱり節穴なのね』

 

 私は虚空に浮かぶ、パスダーの幻影の顔(ヴィジョン)を指して皮肉混じりに貶しながら、管理者さんとの接触で認識できる様になった自身の本来の力を解放する。

 

 胸元に『Z』を象る幾何学模様が現れ、それを皮切りに全身が鎧で覆われていく……

 

『……覚えておきなさい。“命の力”は、有限であるからこそ受け継がれる……だから、限界も終わりもない……!』

 

 溢れ出す力は、以前よりも明確になった私のイメージを汲み取って虹色の光を放ち……全身を覆う鎧の形を変えていく……それはあまりにも巨大過ぎる力だが、不思議と怖くはない。

 全身を覆う鎧は白く輝き、右手には絡まる二対の蛇を象った錫剣が現れ、白く長い体躯を持つ4匹の眷属が傍に控える様に現出する……

 

 なん……だと……!? その姿……その力……まさか、貴さm……?!

 

 紫電を纏う青白い光を溢れさせた錫剣を振り抜き、パスダーの幻影の顔(ヴィジョン)を掻き消す……

 

う、うぉおぉぉぉ……ォォォッ?!

 

『首を洗って待ってなさい! 必ず……アンタを完全に消し飛ばしてやるから!!』

 

 錫剣から溢れ出す閃光は凄まじく……しかし暖かなエネルギーとなり、幻影の残滓も残さず吹き飛ばす……幻影なので手応えは無いのだが、幻影を消し飛ばしてパスダーを驚かせた事は理解できた。

 

 多分、黒幕にとって私の存在はただの実験用の犠牲者(モルモット)だっだのかもしれない……でも、見習い管理者さんのお陰で命を拾い、彼等(GGG)に出逢えた。

 

(見習い管理者さんがこの世界の存続を願うなら、私も力を示すわ……私なりのやり方で、私が思う理想の為に!)

 

《“……御意、我が主(イエス、マイロード)”》

 

 パスダーの干渉が消え去り、ようやく【双子座】とのリンクが回復する……プログラムすら未完成だというのにこの子は私の身体を保護する為に身体制御に対して掛かっていた負荷を肩代わりしたまま、さっきまでパスダーの干渉防壁を壊そうと果敢にアタックを繰り返していた。

 その為プログラムで構成された【双子座】の仮ボディは見るからにボロボロ……四肢の関節なんてほとんどがあと少しでポロリと取れそうだし、頑丈だった筈のボディフレームもあちこちひん曲がって稼働にも大きな支障が出ている。

 

『……ムチャし過ぎよ? まだ仮組みのVR用ボディデータなのに、こんなにボロボロにして……』

 

《“……申し訳ありません。あの侵入者を即時排除出来ないばかりか……ここまで深い干渉を許し、あまつさえ逃げられるとは……ッ”》

 

 涙目で声を震わせ、一生の不覚! とでも言いたげな感情を全身で表しながら【双子座】は懺悔してくる……そんな健気に尽くしてくれる子を、私は叱る事なんて出来ない。

 

『……まだアナタは完全じゃないの。此処でムチャして完成が遅れる事の方が私は怖いし、そのせいで壊れるなんて事になったら、手伝ってくれた皆にも申し訳ないわ……それに、アナタの本領はもっと違う所にあるの……ちゃんと完成したら、みっちり働いて貰うから……もう休みなさい』

 

 泣いている子供をあやす様に抱きしめ、頭を撫でながら諭す……【双子座】は目を閉じたままその全てを受け入れ、ボロボロのVRボディをシャットダウンして休眠状態に戻った。

 

 さて……多分、ゾンダリアン達も分断されてる筈……グラヴィスか、クーゲル辺りと合流して決戦に備えなきゃね!

 

回想終了

 

──────────

 

 静かに深い思考をしているシオンを、少女……結維はじっと見つめていた。

 

(稀星さん……で良いんだよね? そこの半分こロボットさんがそう呼んでるし)

 

 少女にとって、シオンの存在はこの混乱を何とか乗り切る唯一の手掛かりだ。訳も分からぬまま突然この世界に転移させられ、大規模な戦闘に巻き込まれ、その余波で命の危機に脅かされ、寸での処でGGGに命を救われたのだ。

 

(……というか……)

 

「……何で東京が……こんな状態に……?」

 

 結維は別の世界から来た為、この状況を全く理解できずにいる……それもその筈、彼女の元の世界は“ロボットなど存在しない世界”だったのだから。

 

『……貴女、何故こんな所に1人で?』

 

 シオンの問いに、どうしようとオロオロする結維。しかしシオンには何となく想像が付いていた……

 

(既に東京がこうなって数時間は経ってる……この状況で民間人が助かっているとは思えない。可能性として最も高いのは、何者かによって放り込まれた……この世界の存在にそんな事をして特をする奴なんて……という事は、外部から? ……でも、さっきの“あの人(見習い管理者)”にはメリットが無い……なら、別の誰か……?)

 

「……あ、あの……私、いきなり此処に来てて……直前まで居た筈の友達も居なくなってるし……」

 

 しどろもどろな感じだが、嘘ではない……シオンは間違いなく彼女が外から来た事に確信を得て、結維の言葉を受け入れた。

 

『……そうだったのね。やっぱり貴女も、違う世界から連れて来られた訳か……』

 

「え、分かるんですか?!」

 

『ええ、私も似たような者だし……何より、少し前にそういう事が出来そうな人と知り合ったから』

 

「……そ、その人とまた会えますか?」

 

『……たぶん無理、ね。私も、その人へのコンタクト方法はさすがに持ってないの。ゴメンね……っと、それ処じゃない状況だったわ。そろそろこの辺りもヤバくなるから、一緒に収容して貰いましょ』

 

 驚愕から安堵、そして困惑……急激に変わる状況に頭が追い付かない結維だったが、“一緒に収容”というなら、悪い事にはならないだろうと結維はとりあえず頷く。

 その直後、2人の足元に頭上からの影が広がり……三段飛行甲板空母(巨大な飛行物体)が接近している事に気付くのだった……




現在に戻りました。
次はいよいよ、機界指令パスダーとの決戦だ……!!

次回予告


君達に最新情報を公開しよう!

ゾンダリアンを倒し、巨大プラントをも制覇したGGG。
……しかし、一抹の不安は拭えない。

機界指令パスダー……かの存在がついに動き出す。

静寂を破り現れる、巨大な悪魔の如き姿……
人智を超えた敵の攻撃に、GGGはどう立ち向かう?!


次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第51話『機界指令 vs 勇者ロボ軍団』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!


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第51話 機界指令 vs. 勇者ロボ軍団(1)

前回の投稿後になんとUA10万回を突破しました。
達成自体は2作目だけど、やっぱり嬉しいものですね……

これも応援して下さる皆さまのお陰です!
毎回の誤字報告&感想ありがとうございます!!


 GGGとシオン達がゾンダリアン達と巨大メタルプラントを阻止していたその頃……護少年もまた、運命に導かれる様に東京タワーの地下へと潜入していた。

 

(……この奥から、感じる……物凄く、悪い予感……でも、行かなきゃ行けない気がする)

 

 運命の悪戯か、はたまた必然か……護は何かに導かれるまま、暗闇の奥を目指す……周囲からは鼓動の様な音や、機械の唸る音……そしてガスの噴出音などが重なり、不気味なコーラスを奏でていた。

 

(……ッ?! 何……だ……これ……?!)

 

 最深部に辿り着いた護は、暗がりに映し出された顔の様な映像を発見した……そしてその映像から、底冷えするような不気味な声が響き始める……

 

《……ついに此処まで辿り着いたか、カインの作りし“破壊マシン”よ……!》

 

「?! “カイン”? “破壊”? “マシン”?!」

 

 その顔こそゾンダリアン達に指令を下し、地球を機界昇華しようと企む存在“機界指令パスダー”だった。

 

 護が動揺している隙を突き、エネルギー膜で護を封じ込め捕える……突然の事に、状況が飲み込めない護。パスダーは護を封じ込めた球体を宙に浮かばせ、忌々しき思いを乗せて言葉を発した。

 

《直接手を下す事が叶わぬのは口惜しいが、対消滅で無駄なエネルギーを使う訳には行かぬ……だが封じるだけであれば造作もない》

 

「……ッ……!」

 

(……た、確かコイツ……シオンさんが……!)

 

 数奇な運命に翻弄される幼き少年であった護だが、護は数々の教えに従い息を吐き、己の精神を整える……原作と違い護はシオンやGGGの皆から、自分を取り巻く現状と自身の運命……そして立ち向かう為の方法を自ら願い、その教えを乞うていた。

 

(確かコイツ、シオンさんが言っていたゾンダリアン達の司令塔……パスダーだ!)

 

───────────

 

 その少し前……三段飛行甲板空母と水陸両用整備装甲車で補給と整備を受けていた勇者達だったが、民間人救出部隊から『護少年が行方不明となっている』事を知らされ、シオンは動けるアーマロイド達に捜索を命じた。本来なら凱が単身でいの一番に捜索へ飛び出るのだが、シオンによって半ば強制的に止められ、メンテナンスを受けさせられていた。

 

(……シオンのアーマロイド達なら護も知ってるし、必ず捜し出してくれる筈だ……だが、何か嫌な予感がする……)

 

 凱には何故か、言い知れぬ予感がしていた……シオンならば必ず有言実行、間違いなく護を見つけ出し助けてくれる筈だ。しかし、彼女は以前にも本人の予期せぬタイミングで不調をきたし、活動を制限されてしまった過去がある。

 肝心な不調の原因は結局のところ不明とされた事もあり、凱の胸中には拭いきれぬ不安感が再び忍び寄って来ていた。

 

 

《……主よ、何かおかしくは無いか?》

 

『……急に何よ? 藪から棒に。……珍しいわね、貴方の方から話して来るなんて』

 

 両腕を組んだまま、倒壊したビルの上で捜索隊の情報提供や報告を耳にしながら、シオンは珍しく自分から声を掛けてきたダイキャンサーに返答する。

 

《いや……先程から胸騒ぎが止まらぬのだ。あの少年は“緑の星の末裔”……まだ年端も行かぬ幼き者とはいえ、我等が主と同じく“力を受け継ぐ者”。そうそう潰れぬとは思うが……》

 

 ダイキャンサーをはじめアーマロイド各機に搭載された「Zコア・ドライヴ」は、先の闘争において“第2覚醒”を果たし……それぞれに固有の人格が定着している。

 「ピスケガレオン」には、“個性的な兄妹”、「クーゲルザウター」には“前世が◯なランナー系健康少女”、「グラヴィスコルード」にはなんと“主至上主義の自称悪魔”……そして当のダイキャンサーには、“武人”の如き雄々しさと、身を賭してでも尊き命を守る“漢”の精神が宿っている。

 

『……そう……ね、確かに心配だわ……』

 

(原作の流れをぶった斬って、凱さんにメンテ受けさせちゃってるもんなぁ……まさか素直に応じるとは思わなかったもん。不可抗力よね……でも、こうなるとホントに護くんが心配だわ……)

 

 これまでの苦労が報われ獲得できた“GGGから寄せられる信頼”効果……ではあるのだが、奇しくもこの流れはその()()で起きたという事実に頭を抱えた。このままではパスダー出現まで時を稼がれ、原作で行われるボルフォッグの(復帰)合流イベントすらもすっ飛ばしてしまう……何か手を打たねば、と焦るシオン。

 

《クーゲルの話では、隊長は鳥のゾンダリアンと激戦を繰り広げ、少なくないダメージを負ったと聞く……ならば、乗っていた機体(ガオガイガー)も相応のダメージを負ったであろうな……》

 

 ダイキャンサーは戦友として、純粋にガオガイガーと凱さんの心配をしている……が、私はその話を聞いて妙案が浮かんだ。

 

『……そうか、ガオガイガーがダメージを負ってるから、中の凱さんは……ならギャレオンも!』

 

 思い立ったが吉日……私は知略担当としても優秀なグラヴィスコルードを呼び出す。

 

《これはこれは……如何致しましたか?》

 

『グラヴィス、ガオガイガーを“例の合金”でなら修復出来る?』

 

《可能/不可能を問われるのならば、“可能”です。……修復後に、統括制御回路のプログラムを変更して“Gファイバー”に担当させ、制御権を彼方に渡す必要はありますが……》

 

『よっし、ならプログラムをすぐに準備して! 作業員と“合金”はこっちで何とかするわ』

 

《は? 主様、一体どういう……》

 

『このままじゃ護くんが危ないの! それに凱さん以外が行くとフラグが折れ(話が余計に拗れ)るわ! 何とか修正しないと……』

 

《……事情は分かりませんが、御命令は承りました。ですが制御プログラムの変更はさほど時間は掛かりません、作業員の確保と“上の許可”を急ぐのが懸命かと》

 

『頼むわね! さぁて……待っててよ、護くんにボルフォッグ……!』

 

 何故か立った“ガオガイガー修復&強化フラグ”……それはこの後に、どう作用するのか。

 

──────────

 

 結論からいうと、ガオガイガー修復作業はあれよと言う間に事が運び……作業中に凱さんが飛び出し、僅かに遅れて作業完了と同時にギャレオンも後を追って出撃。作業中に起きた揺れで、東京タワーがあった場所に大穴が開き、凱さんとギャレオンはその大穴へと突入……私はギャレオンを見送った直後に一瞬だけ意識が飛び掛けたが、“パスダーに啖呵を切った時の反動”だろうと考え、グラヴィスに観測を任せて休息を取る事にした。

 

 

……だが、次に眼を覚ました私が見た光景は、

あまりにもショッキング過ぎるものだった。

 

──────────

 

 

心弱き者達よ……我が力を授けましょう

 

 最初に見えたのは、暗雲立ち込める空……しかし視界は己の制御を受け付けず、徐々に視界を下へと落とす。

 

 

 

  そこに見えたのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無理矢理縦に引き裂かれ、全身の装甲にもヒビが入り、両腕のトンファーも無惨にひしゃげ……此方に手を伸ばしたまま倒れ伏す超竜神。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 四肢をもぎ取られ、頭部のGストーンを破壊するついでに突き立てられた槍で……張り付けの如くビルに打ち付けられたビッグボルフォッグ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目立つ色の装甲が見るも無惨に剥げ落ち、更に残った装甲も大部分が融解しかかったマーグハンドと、取り落としたゴルディオンハンマーも同じ状態……更にギャレオンの顔まで破壊され、胸に大穴の空いたガオガイガー。

 

 ふと、右腕に動いた視線……その手にしていたのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まとめて握り潰された直後であろう……ボディを粉砕され、辛うじて右腕と頭が残っている獅子王 凱と……彼の右腕に埋め込まれていたGストーンに手を振れようとしたまま血の海に倒れ伏す、護られるべき少年だった天海 護の死体だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……何故、私は見ているだけなのか……

 

 

 

 なんで皆が……倒れ伏す姿を見ているのか……

 

 

 

 どうしてこんな事になっているのか……

 

 

 

 認めたくない光景……心音は煩い程に高鳴り、呼吸が乱れる……

 

 

 

 あってはならない光景、否定したい未来。

 

 

 

 認めたくない……その一心で自由にならない身体を必死で動かそうとする。

 

 

 

 ダメだ……こんな未来を見てはいけない……私が止めなくては……

 

 

 

 私が……私は……!!

 

 

──────────

 

『あぁぁぁッ?!!!』

 

 曇り空が窓から覗く、水陸両用整備装甲車に設けられた仮眠室の中で私は自分の声と雷鳴に驚いたのか飛び起きた。

 何故か全身汗まみれだし、手の震えも止まらず、過呼吸になりかかっている……

 

 呼吸を無理矢理整え、周囲を見渡し、時計を発見……仮眠を取らされ、この部屋に押し込められてからそれほど経ってない事を確認する。

 窓の外を見ると、東京タワーのあった跡地に空いていた不気味な穴は消え去り……悪魔の如き巨人、機界指令パスダーの本体が姿を現していた。

 

『……時間がない。まだ未完成だけど……やるしかない!』

 

 状況は最悪の一歩手前だろう……私は両手を開き、術式を描く……ダイキャンサーを呼び出す召喚術式ではない、違う機体……中央に描かれたマークは【獅子座】を表す星座の紋章。

 

(全体の完成度は72%。素体のシステム調整は完了してるけど、装甲の4割はまだ組んだだけで未調整だし……換装ぶんも半分しか組めてない……でも……)

 

『……やれるわね?』

 

《ガオォォォンッ!!》

 

 陣を通して室内に響く“任せろ”と力強い声……ギャレオンの咆哮(こえ)とは違う、機械的に再現された合成音のような獅子の咆哮。

 敵は此方の出方も想定して策を練り、時間を空けた……なら、今までの対策は全て封じられていると考えて良い。なら、此方も新たな対策を講じなければ対抗は出来ない。

 

 その切欠になれば、と用意した新しいアーマロイド……【獅子座】の大型機。

 

 陣を開いたまま、私は通路へと飛び出し……勢いそのままに外へ出た後、ありったけのエネルギーを注いで陣を拡大させ、声を張り上げた。




途中にある筈の、パスダー出現までの経緯は次回に持ち越し。

ちょいと繋がりは悪いけど、シーン的な演出重視で!


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第52話 機界指令 vs. 勇者ロボ軍団(2)


今回は前話の時間軸的な穴埋めの1つです……



 シオンによるガオガイガーの突貫修理が進行中、突如として地震が発生……

 

 本来日常でなら余程酷くない限りスルーされる地震だが、今回は状況が状況だけに、不測の事態の前触れである可能性を鑑み、GGGはすぐに動けるマイクに偵察を出す。

 ……だが凱は己の胸騒ぎが止まらない事に不安を募らせ、メンテナンスを中断し単身で強行偵察を始めたのであった。

 

《……凱!? 何やってるの!! まだメンテナンスの途中なんだから、戻って……》

「そんな悠長に構えて、護が危険な目に遇ってたらどうする?!」

 

 凱は続けて「護もシオンと同じ様に、我が身を省みず俺達の為に動いてくれたんだ……本来は俺達GGGが護を助ける側だろ? ここで動かなきゃ、勇者の名が泣くぜ!」と訴えた。

 

 その時、上空を偵察していたマイクがタワー跡地上空に張られたバリアーに接触して墜落。揺らぐ境界面が見えた事で凱もその存在に気付く……

 

「マイク、大丈夫か?! あのバリアーは……」

 

 ガオォォォンッ!!

 

 直後、遅れて飛来したギャレオンも咆哮と共にバリアーへ突っ込む。

 勿論、バリアーは侵入を阻むべく抵抗しギャレオンを押し留めるが、ギャレオンは口腔から特殊なエネルギー振動波を放射してバリアーを分解し、地下へと続く縦穴に突入……

 

「ギャレオン……護は彼処に居るのか? なら俺も!」

 

 ギャレオンに続いて凱も縦穴へと飛び込み、凱が通り過ぎた直後にバリアーは復活……

 

「ガイ隊長……」

 

 ……周囲を微かに漂う良くない気配を感じ、心配そうな声を発しながらマイクは凱を見送るのであった。

 

──────────

 

「……東京タワーの地下が、こんな風になってるとは……!」

 

 縦穴を降下する凱は、東京タワーの地下だった筈の場所が劇的に変化している事に驚きつつも降下していく……ギャレオンは既に最深部へと到着しており、反応がほとんど動いてない。

 護の周囲にはもう1つ巨大なエネルギー反応が感知できた為、凱は急いで降りようとするが……

 

「……待っていたぞ、サイボーグ……!」

 

「ピッツァ?! 生きていたのか……!」

 

 既にボロボロのピッツァと、ある程度メンテナンスを受けて回復している凱が対峙する……しかしピッツァの闘志は全く衰えておらず、対する凱は護を気にして焦っていた。

 

「お前に関わっている暇は無い!!」

 

「……ならば、この私を倒して進むが良いッ!!」

 

 言うが早いか両手の爪を振りかざし、凱へと飛び掛かるピッツァ……凱も左腕のガオーブレスから『ウィルナイフ』を取り出して迎撃。しかし圧倒的な速度差により凱は劣勢に追い込まれ、ピッツァはほくそ笑む。

 

「どうした? その程度の速さでは、私に勝つなど不可能だぞ?」

 

「ほざくなッ!!」

 

 焦りから冷静さを欠く凱はピッツァの挑発に乗って“ハイパーモード”を発動……しかしピッツァは冷静に猛攻を凌いでいく。

 

「……そうだ、そうでなければ手応えが無い!!」

 

「ちぃ……ッ!?」

 

 時間制限のある“ハイパーモード”で更に焦りを禁じ得ない凱へ、ピッツァは冷静に手数で対抗する……先の直接対決で凱の“ハイパーモード”には時間制限が存在する事はピッツァも承知していた。だからこそ敢えてこの猛攻を凌ぎ、時間切れを誘って決着を付けるつもりなのだ。

 

「とあぁぁぁッ!! ぐぅ……ッ!?」

「デヤァァァッ!! がは……ッ?!」

 

 しかし、時間がない事に焦りながらも凱は勝機を探し続けていた……空中で交差する凱とピッツァ、凱のウィルナイフがピッツァの爪を捉え斬り裂く……が同時にピッツァのカウンター蹴りが凱の胴体に入っており、圧し負けて壁へと叩き付けられる凱。

 

 そこへ空かさずピッツァは急接近……容赦なく拳のラッシュを浴びせ、凱の身体を覆うアーマーを砕いていく。

 

「らららららッ!! とあぁぁぁッ!!」

 

 ……だが、ラッシュに負けじと凱は己の身体と闘志を奮い起たせ、叫んだ。

 

「……俺は……負ける訳には……行かないんだァァァッ!!」

 

 叫びと共に無我夢中で振るわれる凱の左腕……ガオーブレスから放たれたプロジェクションビームの光がピッツァを視界を奪い一瞬だけ怯ませる。凱はその僅かな隙を見逃さずそのまま左ストレートをピッツァの右頬へと叩き込む……が、しかしピッツァも負けじと“ハイパーモード”の時間制限が来てしまった凱の腹へ左手の爪を突き込み、アーマーの装甲を貫通させ凱に大ダメージを与えた。

 

「がは……ッ!? グッ!!」

 

 致命傷ではないとはいえ、ボディを貫通された凱はダメージに喘いでナイフを落とすも、再び闘志を燃え上がらせ、咄嗟に両腕でピッツァの身体をホールドする。

 

(ッ?! 翼が開かん!!)

 

「このまま……地の底まで、付き合って貰うぞ……ピッツァ!!」

 

「ぬおぉぉぉ……ッ?!」

「うおぉぉぉーーッ!!」

 

 左腕のGストーンが眩く輝き、溢れ出るパワーを纏う凱はピッツァに対して飯綱落としをするが如く、揃って最深部の地面へと激突……大爆発を起こす。

 

 爆発の中からゆっくりと歩いてきた凱。一連の経緯はパスダーも感知しており、護は途中から聞こえてきた戦闘音に気付いて振り向いた矢先の大爆発……

 

 満身創痍ながらも現れた凱に安堵する護と、ピッツァの敗北に少しだけ動揺するパスダー。

 

「お前は……?!」

「凱兄ちゃん!!」

 

 護を封じ込め、中に浮かせたエネルギー膜の球体と、奥に見えるヴィジョンに同種のエネルギー波長を感知した凱は、相手を確認すべくGGGのデータベース(ライブラリー)を開く。その検索結果は……

 

「……お前はパスダー! 裏で四天王に指示を与えていた、ゾンダリアンのボスか!?」

 

《フフフ……答える義務は無い……!》

 

 パスダーは凱の言葉を一蹴し、大量の触手で凱の身体を雁字搦めに拘束した……先に来ていた筈のギャレオンも同様に絡め取られており、次に行われるであろうパスダーの暴挙を止めようと今も足掻いているが、一向に逃れる事が出来ないでいた。

 

「ぐ……っ、しまった……ピッツァとの戦いで、もうエネルギーが……ッ?!」

 

《フフフ……愚か者よ。そのまま潔く死ぬが良いッ!!》

 

 触手を束にしてドリルを形成し、凱へと突き立てようと伸ばすパスダー……しかし、その攻撃は予想外の相手に止められたのだった。

 

「……ぐ……がはッ!?」

 

「……ッ!? ピッツァ?!」

 

《フン、この私に逆らうとは……所詮は心弱き者の宿命か》

 

 苦悶の表情のまま腹を貫通したドリル触手を払い退けた後、膝を付くピッツァ……凱が彼の肩に手を添えると、ピッツァは精一杯の笑みで振り返り「お前のお陰で大切な事を思い出す事が出来た……礼を言う」と、伝えるとヨロヨロと立ち上がり、反逆の意思を滾らせた瞳でパスダーを睨み付けた。

 

《……?! 何をする気だピッツァ……!》

 

「私はピッツァではないッ!! 私の名は……ッ!!」

 

「……ッ!? ピッツァぁぁぁッ!!」

 

 何かを口走った後、ピッツァは全身に深紅の閃光を纏い、パスダーの幻影に特攻を仕掛ける……大爆発を起こし、紅き光は縦穴を抜けて大空へ……そしてパスダーの幻影が消え去ると同時に護を封じ込めたエネルギー膜の球体も消え失せ、落ちる護は一瞬慌てたがすぐに凱がキャッチして事なきを得た。

 

 ……だがその僅かな間の後に地響きが鳴り響き、凱と護は言い知れない不安に心を掻き乱されそうになる。

 

《フフフハハハ……心弱き者共よ。汝等の招き寄せた恐怖……とくと味わうが良い……!!》

 

 パスダーの捨て台詞に、動揺を隠せない護……凱も表情にこそ出していないが、内心は不安でしょうがなかった。しかし、さすがにこの場から脱出しなければ勝機すら見えない。

 

 暗がりの続く通路を戻ろうとした直後、高い天井から取り込まれた乗用車が1台……凱と護の直上に迫る。

 

「「……っ?!」」

『……ッ!!』

 

 しかし、乗用車が凱に直撃する僅か数メートル前で乗用車は何かに弾き飛ばされ……更に凱達の姿もその場から無くなっていた。

 そこから数メートル移動した場所に、見慣れた姿のロボットが虚空から姿を現し……凱と護を足元に降ろす……

 

「……?! ボルフォッグ!? 無事だったんだな!!」

 

『はい。先のゾンダリアン戦で、合体まで出来る様になった彼等のお陰で……』

 

《……いやぁ、さすがにアレはヤバかったってばよ……》

《全く……アナタがノリノリで彼を焚き付けたんですから自業自得です! 危うく私まで……》

 

「お前達は……ピスケガレオンか? お前達がボルフォッグを助けてくれてたんだな!」

 

 ボルフォッグの足元の地面から揃って顔を出すサメとイルカ……コア・ドライヴの成長により進化した身体を得た、GGGの頼もしき協力者……【魚座】のアーマロイド「双魚機獣 ピスケガレオン」だった。

 

「うわっは~♪ 前よりもカッコ良くなってる!」

 

 以前よりも生物的かつ流麗なデザインとなってメカメカしさが抑えられ、火器類はパワーアップしつつも完全に内蔵型へと変わって身軽に。更に身体の一部はボルフォッグに寄せてお揃いの意匠となっており、合体した際の一体感を損なわない様になっていた。

 

 ガオォォォンッ!!

 

 再会を喜ぶのは良いが、まだやるべき事は終わってないぞ! そういう風なギャレオンの咆哮(訴え)に凱は真顔に戻り、脱出を指示……

 

《では、私達が先導します!》

《こんな辛気臭い場所……さっさとオサラバだってばよ!》

 

『2人とも私に乗って下さい。彼等の能力を使って、最速ルートで脱出します!』

 

「うわっは~♪」

「頼むぜ、ボルフォッグ!」

 

 ピスケガレオンの能力で壁をすり抜け、一行は脱出を謀るのだった。




えー、ピッツァとのやり取りやらボルフォッグの合流シーンを削りたくなかったので、新型はまたお預けです。
……ゴメンナサイ(-人-;)

その代わり、ボルフォッグの“超”合体が見れるかもしれませんよ……?


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閑話:アクセル全開!ネタ的暴走トライアル集

度重なるシリアス展開に頭がイカれそうなので息抜きに走る。
無論、ネタをぶっ混むのが目的w

真面目度? 知らない子ですね……
※ 本作のオリキャラの元ネタが密か(?)に隠れていますw



─ 風邪で熱暴走したシオン ─

 

 頭からリアルに湯気が立ち上ぼり、まさに「THE 風邪ひいてます」という状態のシオン……元々朝の時点で体調不良としてスワンから連絡が行っていたのだが、本人が「私しか処理出来ない案件がある」と称して強引に出勤してきたのである。

 

「……だ、大丈夫なのかね? 今日は無理せず休んでおいた方がいいんじゃ……」

 

 フラフラと夢遊病患者の如く、本部施設内の廊下を歩くシオンとすれ違った大河。普通では考えられない状況に驚愕し、思わず声を掛けたのだが……

 

『貴方のその配慮に感謝を……しかし、私でなければ不可能な処理を……そのままにはしておけない。……貴方の心優しき配慮に対し、己自身の手前勝手な意地のせいで快く同意できない事を、私は謝罪する……』

 

 熱暴走で正常な判断が出来ないのでは? という麗雄博士の見解はあったが、口調こそ違えど律儀に返事。行動そのものは正常に近かった……その表情とのギャップ以外は。

 

「……だが、どうみても……その顔では、ちゃんと仕事が出来るとは……思えないのだがね?」

 

 熱で惚けた、普段からは想像し辛いシオンのあられもない顔……一歩間違えば18禁的な表現にでも用いられそうなその顔に、大河は引き吊った笑みでそう返すのだった。

 

 

 ちなみに、何故シオンが風邪をひいたのかというと……

 

 昔懐かしい粘土人形を用いたストップモーション撮影作品「ピ◯グー」の動画を用いた吹き替えネタ動画(本人はピ◯グーを一切知らない)を(酒成分入り)チョコを食べながら見ていたせいで酔ってド嵌まり……「リアルのペンギンもこうなのか?」とわざわざ南極に赴いて一晩中探し回ったが故であった。

 

 なお、シオンは体質的にすぐ酔うし度合いも激しいが後残りはしないタイプで、酒に酔うと「発想力」以外のほぼ全ての知能が小学生以下のレベルにまで低下し、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()様になる事が今回の一件で判明したのである。

 

──────────

 

─ ある日のクーゲルザウター ─

 

※ 本編に登場させるかはまだ未定ですが「アーマロイド達に本人が望むタイプのサブボディが与えられている」という前提のお話です。

 

 いつかのとある日から、人間と同様にも見える生体ボディを手に入れたクーゲルザウターの朝は早い……

 

『……はっはっ……はっはっ……はっはっ……』

 

 彼女は毎日、早朝5時から約10キロメートル程のランニングを日課にしている。

 

 何が彼女にそんな事をさせるのか、皆目検討は付かない……だが、何故かランニング後は本体のコア・ドライヴの調子が良いらしく、そのエネルギー効率や最大出力も不定期ながら継続してアップしている事が多い……それ以外にも、彼女自身の気分も上向きになるので、どんな天候だろうと欠かす事は無かった。

 

 朝靄が残る肌寒い川沿いをひたすらに走る赤い瞳の少女……着込んだ黒いジャージの袖と襟には赤と黄色の三本線が入っており、短めで少し癖のある黒髪を揺らながらひた走る。

 彼女の頭は見るからに特徴的で、額部分の一房だけ白いメッシュに、頭から生えた馬っぽい耳……その根元の左右には、菱形にも見える花飾りを付けていた。左側の花飾りにはリボンの様にあしらった赤い房紐も付いており、どことなく和風な印象である。

 

「……おっ、クーちゃんか。今日も早いねぇ~!」

 

 ランニングルートにある商店の店主が、クーゲルに声を掛けてきた。

 

『おはようございます! オジサンだって、毎日この時間にお店の準備してるじゃないですか。お互い様ですよ~』

 

 毎日同じ時間に顔を合わせる2人……日課を開始して早朝挨拶から土日以外は必ず顔を合わせる事ですっかり顔馴染みとなり、ご近所という事もあって店主の目利きによる新鮮野菜にもすっかりハマったクーゲルは、毎朝行うこの店主とのやり取り自体も、ランニング中の楽しみとしていた……

 

「ハハッ、ちげぇねぇ! お、そうだ……帰る時にまた寄ってきな! 取れ立てニンジンをお裾分けしてやるからよ~」

 

『ッ?! ありがとうございますッ♪』

 

 ……時々ではあるが、こういう事もあるからね。

 

 

『たっだいまぁ~♪』

 

 早朝ランニングを終えて帰宅したクーゲル……手に下げた小さめのビニール袋には、瑞々しい葉っぱと生乾きの土付き(比喩無し)という如何にも新鮮そうなニンジンが数本ほど入っていた。勿論()()は彼女の大好物なので、気分上々なのは言うまでもない。

 

 玄関の扉を開けて入ってきたクーゲルの気配に気付き、部屋の中で朝食の準備をしていた長身の男がクーゲルを出迎える様に声を掛けた。

 

『相変わらずの早朝ランニングでしたか……ではシャワーで汗を流したら、朝食にしましょう。おや、新鮮なニンジンですね……スムージーにでもしましょうか?』

 

『じゃあお願いグラヴィス♪ ささっと汗流して来る……ところで、今日の朝御飯は?』

 

 ニンジンの入った袋を男に手渡し、足早に去ろうとして思い出した質問をするクーゲル。グラヴィスと呼ばれた長身の男は、紫の髪にタートルネックのシャツ、その上から青色のエプロンをしていた……エプロンの胸部分にはデカデカと()()()()()()()()()()()()()()()()()()幸せの青い鳥(ロー◯ェン)」の刺繍があり、手作り感満載な事からも彼専用である事が伺える。

 

『今朝はポーチドエッグに、ほうれん草とニンジンの胡麻和え。粗挽きウインナーと塩麹の焼き鮭はお好きな方の選択です……貴女用には追加でニンジンハンバーグと、胡麻和えのニンジンも増量してますよ』

 

『はぁーい♪』

 

 答えを聞くや否や足早にお風呂場へと駆け込むクーゲル……それを見送るグラヴィスもニンジン袋を手に、少しだけ微笑ましく笑みを浮かべるのだった。

 

 

『……ところで、先程貴女がシャワー中に唄っていた歌……確か、大物歌手の演歌では?』

 

『よく分かんない……けど、聴いた人は皆上手いって言ってくれるし、何となく好きだから』

 

『そうですか……』

 

 ちなみに彼女が唄っていたのは超大物演歌歌手(北◯三郎)の人気曲「北の漁場」で、その歌声は実力派の職業歌手にもひけを取らないレベルの上手さである……

 

──────────

 

─ プライベートタイムの使い方 ─

 

※ 本短編中のみ、時間軸がFINAL編シナリオなので、この時点では本編未登場のアーマロイドが混ざっています。一体どんな子かな?

 

『……う~ん、どれにしようかなぁ~?』

 

 テーブルに並べられた数々のスイーツ……以前、スイーツ巡りと称して迷い混んできたカルナ絡みで名の上がった有名店の絶品達。ひょんな事でそれらを一度に手に入れるという奇跡に遭遇し、シオンとスワンに命……そしてルネやパピヨン(+アーマロイド一体)達は、オービットベースの休憩ラウンジで華を咲かせていた。

 

 原作キャラの輪に混ざり、日常会話に華を咲かせるシオン……年相応に笑顔を見せるこの光景は、これまでの過酷な道程をひた走ってきた報酬とも言えるだろう。

 

「そう言えば、シオン……食べ物の好みは前に聞きましたケド、オービットベースに移ってからのオフの日は何してるデスカ?」

 

「……それは私も気になってた。何してるの?」

 

『あらあら、シオンちゃ~ん。お姉さんにも秘密にしてるプライベートなお話をやり玉に挙げられちゃってるわよ~?』

 

 派手なデザインの赤いアンダーウェアに包まれた豊満な胸部装甲と、癖の強いポニーテールの金髪を揺らし、小悪魔的な笑みを浮かべながら「見た感じ親子逆じゃない?」と言われそうだが実は生みの親であるシオンのほっぺたをつつく長身の美女……背中には2対の悪魔の羽根の様な模様がペイントされた白を基調とするアーミージャケットを羽織っており、髪の隙間からは山羊の角が見え隠れしている。彼女は【山羊座】のアーマロイドのサブボディで、いつもは無愛想で赤い相方の【牡牛座】と一緒に居るのだが、今回はスイーツを囲んでのプチ女子会みたいな形なので別行動しているのであった。

 

『……う~ん、大体は部屋でガ◯プラかゲーム……または地上に降りて子供達と遊んでる……かな?』

 

 ……とても中身が10代の乙女とは思えぬオフの使い方に、物凄い形相でドン引きする一同。シオンはこう見えて素の部分……自分自身に関してはわりと無頓着だったり、感心が薄い。

 

 地上で生活していた頃はスワンの目があったからなのかマトモな感じではあった為か、個室でプライベートな時間が増えるオービットベースでの生活が始まった頃から、彼女のプライベートは正直言って謎だった……それが白日の下に晒された訳なのだが、その実態に一同は我が耳を疑ったのである。

 

 ……そして何故か【山羊座】までスワンや命と同じリアクションをしている。親より人間(女)らしいプライベートを理解しているのかコイツ?

 

「ねぇシオン……ゲームやらガ◯プラ云々はアンタ個人の趣味だから、あんまり言いたくないんだけど、さすがにそれはおかしくない?」

 

 それからやや間を置いて呆れの溜め息と共に、真面目な顔でツッコミを入れてくるルネ……原作と同様Gストーン動力を持つサイボーグである彼女だが、本作の彼女のボディはシオンが原作を知るが故に早期から病的なまでの魔改造(内容と詳細は本編シナリオ出演時に公開予定)が施されており、()()()()()が解決しているので人当たりは原作ほど悪くない。

 

「シオンちゃんってもしかして……隠れオタク気質、なのかな?」

 

 ズバリ、シオンは前世がそうだった故……命の考察は正鵠を射ていた。

 

『……あはは……まぁ、なんというか……ね』

 

「Oh my god……」

 

「……まぁ、シオン(彼女)が充実しているのなら……何も言う事など無いと思いますが……」

 

『甘いわよパピヨンちゃん! シオンちゃんは本来まだ学生なんだから、青春を謳歌すべきなのよ!! 同じ意味では昔のルネちゃんもなんだけどね!?』

 

 パピヨンの持論に声を張り上げ反論する【山羊座】……突然己の名まで挙げられ、ルネは忌々しそうに【山羊座】を睨み付ける。しかし、逆ギレ気味にテンションの上がった【山羊座】は意にも介さない……

 

『貴女達は殺伐とし過ぎなの! もう少しぐらい乙女らしく、青春を謳歌すべきなのにぃ~!!』

 

 オーバーアクションを交えながら一人で盛り上がる【山羊座】に、命は「どうしようか?」といった感じで引き吊った笑みを浮かべ、スワンとルネは揃ってお手上げリアクションで首を横に振る……パピヨンは早々に「我、関せず」と決め込み、元凶となったシオンは【山羊座】の発言をクソ真面目に受け止め、青春を謳歌する前提で「これまで」の事を再検証し始めるのであった……

 

 なお、シオンは毎度のごとく非番の時は地球に降りてガ◯プラショップを巡り、琴線に触れたキットを見掛けたら即買い……最寄りのワークスペースまたはオービットベースの自室で、ガチ全塗装&仮想バトル(某・ガン◯ラ関連の)ゲーム仕様向けの改造まで施していたのである。




……読んで思わずニヤリとしたのは私だけじゃないはず。

ちなみにシオンの魔改造済みお気に入りガ◯プラ。
ベース機が判明している物としては……

ガンダム・バルバトスルプスレクスWS
(腕部拡張フレームと爪・テイルブレードの刀にサイコフレームを搭載、ワイヤー部をγナノラミネート化し任意発動可能。膝と踵に小型パイルバンカーを内蔵して脚部の打撃力を強化。腕部レールガンの搭載位置を調整して半埋没可動式にし、その蓋として内側にナノスキン処理を施した複合装甲(シールド)を貼り付けた近接攻撃&防御力強化仕様)

ウイングガンダムゼロ(EW)【堕天使(ザドキエル)】type.A
(オリジナル太陽炉ツインドライヴを副翼に内蔵し、GNフィールド展開機構を搭載。ゼロフレームも全てサイコフレームで再構成。装甲はオリジナルのまま内側にナノスキンを仕込み、突起物の一部と主翼にもクラビカルアンテナを仕込む。ツインバスターライフルにも手を加えて銃身保護用に対ビーム装甲を追加し、更にビーム刃の展開まで可能にした他、ダブルオークアンタと【白雪姫】を参考に開発した専用ソードビットによる強化システムを搭載した超絶強化仕様)

ユニコーンガンダム『超豪華全盛り仕様(擬似ペルフェクティビリティ)
(同スケールで規格統一した全ての「アームドアーマー」を搭載し、敢えてカラーリングをユニコーン1号機仕様に揃えた機体。なお、アームドアーマーDEは「ガンダムーNT」のフェネクス仕様。なお、運用上の問題でビームマグナムは外された)

その他にも、頭の悪い謎強化を施した『ヅダ』や『ヒルドルブ』……見た感じはまんまガオガイガーやキングジェイダーとそっくりで、攻撃・防御機能や必殺技まで完全再現という魔改造を施した『原型不明のMF』……どうやって再現したの?等々、列挙したらキリがない程の数を所有していたりする。


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第53話 機界指令 vs. 勇者ロボ軍団(3)

ゾンダリアンの司令塔であるパスダーと対峙し、脱出を試みる凱と護少年……
しかし、大地が不気味に鳴動する最中……地獄の底から這い上がって来たのは、巨大な物体……

果たしてGGGは、パスダーの野望を食い止める事が出来るのであろうか……?



 完全に停止してはいるものの、不気味な雰囲気を醸し出すゾンダーメタルプラントからようやく救助され、平静を取り戻しつつあった一般市民から再び悲鳴が上がる……

 

 鳴り止まぬ大地の鳴動の最中……まるで地獄の釜の様に空いた穴から、巨大な構造物がせり上がってくる……それは塔の様に聳え立ち、その威容の全貌を晒し……やがてその高さは300mを超え、もと在った東京タワー並にまで天に伸び……巨大な翼を擁する上半身を形成した。

 

「……魔王……サタン……?」

 

「し、信じられません……高さ300m以上はあります! それにこのエネルギー反応は……!」

 

「……覚えておるかね長官。2年前に確認された地球外知性体、認定ナンバー1号を」

 

「……忘れる訳がない。奴が起こした数々の被害で、多くの人々が亡くなったのだから」

 

「私の両親も……あの時の事故で……!」

 

「そう……そして今、あの塔から確認されたのは、2年前のあの時と同じエネルギー反応。つまり奴こそ……」

 

地球外知性体(エクストラ・インテリジェンス)認定ナンバー1号……EI-01か!」

 

「あれが、EI-01……パスダーの本当の姿……!」

 

 シオンはゾンダーの驚異を明確にした頃からパスダー(黒幕)の存在を明示し、地球における悲劇の元凶だと明言していた。詳細については根本問題からかあまり深掘りこそできなかったものの、シオンの鬼気迫る語り口ともたらされる情報から、恐るべき存在である事は最初から明確であった……

 

「奴は2年前の事故を引き起こした後、何処かへと去った……だが、奴は地下へと潜伏して時を待ち……人知れずあそこまで成長し続けていたという事だ」

 

「……アレが……全ての元凶……!」

 

「EI-01。発電所からの電力供給網を利用して、内部に膨大な電力を蓄積中」

 

「奴はこの場にあるエネルギーをかき集めて、宇宙へと逃走するつもりだ! もし今、奴を逃せば地球は再びゾンダーの驚異に晒されるぞ?!」

 

「……今動ける戦力は手元に無く、アーマロイド達も護くんの捜索でこの場を離れている。我々は、ただ指を咥えて待っている事しか出来ないのか……?!」

 

 大河の言葉に、メインオーダールームの誰もが歯痒い思いでモニターに映る光景を見ているしか出来ない……しかし、最後の希望はまだ絶たれていなかった。

 

《……聞こえるか? メインオーダールーム! 応答してくれ、命ッ!!》

 

 誰の耳にもハッキリと聞こえた、希望を携えし者の声……決して諦めない熱き感情(ハート)を持つ、我等が最強勇者の声が。

 

「「「「「凱ッ?!」」」」」

 

《俺と護……それにボルフォッグも、ピスケガレオンのお陰で無事だ。心配掛けたな……命!」

 

(やはり生きていてくれたか、ボルフォッグ……!)

 

 凱の生存報告に湧くメインオーダールーム。勿論、原作でも同様に生還こそしているが、護以外は満身創痍という状態だった……しかし、今回は凱の負傷のみで収まっている為、予断は許さないがだいぶマシな方である。

 

《……長官! 外の状況はピスケガレオン達から教えて貰った。ガオーマシンを直ちに発進させてくれ!》

 

「凱?! もうボロボロなんだから無理しないで……」

 

《行かせてくれ、命! 奴を倒せるチャンスは今しかない……此処で奴を取り逃がせば、また振り出しに戻っちまうんだ!》

 

「……護君、凱のアジャストを頼む。卯都木君は整備班から、非常用のアンプルを受け取って持って行ってやってくれ」

 

「……っ……はい……」

 

「牛山くん、各機の修理状況は?」

 

「氷竜と炎竜の応急処置は完了しています。ガオーマシン各機、グラヴィスコルードから提供された制御プログラムの搭載と、量子金属素子の定着作業終了! 全機、いつでも発進可能です!」

 

 牛山からの報告を聞き、大河幸太郎は声を整えた後通信を併用して全員に通達を始めた。

 

「分かった。……諸君。これより我々は敵ゾンダリアンの首魁、EI-01との最終決戦に挑む。今この場に居る一人一人が地球の希望だという事を忘れるな? GGGの全戦力を投入せよ! 何としてもEI-01(ヤツ)を宇宙へ逃してはならない! 各員の奮闘を期待する……この未曾有の驚異から脱する為に、我々に残された道は……勝利しかない……!!

 

 総員! EI-01殲滅作戦を開始せよッ!!」

 

「「「「「了解ッ!!」」」」」

 

 ……斯くして、EI-01こと機界指令パスダーの殲滅作戦がスタートしたのである。

 

──────────

 

 三段飛行甲板空母から修復を終えた氷竜と炎竜が発進……近海に乗り付けた強襲揚陸補給船からはプライヤーズ、現地に来ている水陸両用整備装甲車からはゴルディータンクがそれぞれ出撃。ガオーマシンの修復作業も終了しており、順次発進シークエンスを開始している。

 

 凱は応急処置として護にGストーンの自己調整(アジャスト)を行って貰い、破損したアーマーも即時交換可能な部位のみながら取り替え、()()()としてシオンが用意していたアンプル剤を投与して貰う……

 このアンプルには治療向けの精神安定剤の他、ナノマシン治療を応用した自己治癒能力の促進効果とサイボーグボディの緊急修復措置を可能にした所謂ゲームの蘇生回復薬のような物だ。とはいえ配合されたナノマシンの効果は一時的だし、効果を失ったナノマシンも無害化して体内に吸収されるまでには一定の時間を要する。副作用も可能な限り抑えてはあるものの、皆無ではない為乱用は禁物……と言われている物だった。

 

 それらを大急ぎで処置して貰い、凱は戦線に復帰すべくギャレオンにフュージョン……目前に迫る戦いの準備を行う。

 

(凱兄ちゃん。皆……無事に帰って来て……!)

 

 護の想いは煌めくGストーンを通じて、全員に届く筈だ……

 

 理不尽に立ち向かい、もがき足掻く命の力を体現する『Gストーン』……他者と繋がり、共鳴する隠された能力は、原作FINALにおいて初めて観測されている。しかし護はこの時から無意識ながら、その存在を感じ始めるのであった。

 

 

『フフフ……心弱き者共よ、我が力……その身に知らしめてやろう』

 

「そっちこそ、2年前の借りを纏めて返してやるッ!!」

 

 ゾンダーは漏れなくバリアシステムを有する為、手始めにガオガイガーは【ブロウクンマグナム】を発射……しかし凄まじいバリアのエネルギー量により易々と弾かれる、当然これでは【メルティングサイレン】による分解すら通じない事も明白であろう。

 

『フハハハ……愚かな者共よ!』

 

 ゆっくりと左腕を持ち上げた後、少しだけ速く斜めに振り下ろす……たったそれだけの動きなのに、凄まじい圧力に襲われ……ガオガイガー達は揃って足場ごと吹き飛ばされた。

 

《や、野郎……腕の一振りで……?!》

 

《勇者達を弾き飛ばしたというのか……!?》

 

 なす術なく吹き飛ばされるガオガイガー達に、火麻と大河は呆然とする……しかし、こんな事で諦める者はGGGには居ない。直ぐ様次なる手を打つべく、大河は指示を飛ばす。

 

《卯都木くん、プラチナ・フォーメーションだ!》

 

《了解! 凱、皆! フォーメーション変更よ!》

 

 プラチナ・フォーメーションとは、【メルティングサイレン】や【ブロウクンマグナム】でも突破できないバリアシステムを想定して編み出された対バリア対策……空間修復ツールである『ディメンジョンプライヤー』を活用する裏技の1つでもあり、左右から挟撃して敵の注意を惹き付け……隙の出来た中央をディメンジョンプライヤーで強行突破し、敵の防御機構を空間ごと引き剥がす戦術である。

 

『オラオラオラオラァ!!』

 

『ダブルガン、バースト射撃ッ!』

 

《……今だ、中心を狙え!》

 

「おおぉぉぉッ!! ディメンジョンプライヤーッ!!」

 

 ゴルディタンクと超竜神が挟撃し、鬱陶し気にパスダーは左右に気を向ける……その隙を突いて、ディメンジョンプライヤーとコネクトしたガオガイガーは突撃……だが、EI-01のバリアはびくともせず、逆にディメンジョンプライヤーの歪曲空間を跳ね返しつつ反転させてガオガイガーを歪曲空間に閉じ込め……反発の圧力を増幅させ弾き飛ばしたのである。

 

「ぐっ……がぁぁぁッ?!」

 

《なん……だと……?!》

 

《No!? 歪曲空間ごと弾き返してマス!?》

 

《空間をも歪める程の膨大なエネルギーだ! 奴め、もうそこまで……》

 

 吹き飛ばされ、叩き付けられたガオガイガーを一瞥した後……EI-01は更に両腕を天高く掲げ、光る何かを大量に浮かせ始める。

 

『……目眩ましのつもりか?! 生憎だがそうは行かん!』

 

 超竜神は光る断片を無視し、苛烈な砲撃を再開……しかし、【ブロウクンマグナム】ですら易々と弾き返すバリアは砲撃を全く通さない。そしてEI-01の額にエネルギーが集束され、ガオガイガーのセンサーが高出力のレーザー反応を捉えた。

 

「レーザー反応……?! ならばッ!!」

 

 エネルギー攻撃ならば【プロテクトシェード】でカウンターに利用してやると意気込み、凱は左腕を構えた……が、EI-01の放ったレーザーはガオガイガーを直接狙わず、周囲に煌めいていた断片に当たると、まるで跳弾する弾丸の如く軌道を急激に変化させていき、左足のキャタピラ……右肩の装甲……頭部アンテナの左側……と連続で瞬く間に損壊させたのである。

 

《レーザーが……曲がったァ?!》

 

《あの光は、ガラス片か!?》

 

《浮かせたガラス片にアルミニウムを瞬間蒸着させ、反射板として利用している様です》

 

《信じられん……あれだけの数の反射板の軌道計算を一瞬で……?!》

 

 接近戦では桁違いの圧力で薙ぎ払われ、距離を取れば回避不能の反射レーザー……全く隙の無い攻撃手段に、桁違いのエネルギー量による強大なバリア……なす術が無い勇者達を前に、EI-01は不適な笑みを浮かべる……

 

『フフフハハハ……!』

 

 ……そしてEI-01を中心に、観測史上最高レベルの素粒子Z0反応と謎のエネルギーが観測され始める。

 

──────────

 

「信じられない規模のエネルギー反応です! EI-01を中心に、半径数十キロまで拡大……これは……?!」

 

《……な、んだ……身体に力が入らねぇ……?》

 

《ぐ……っ、何故だ……パワーが上がらない?!》

 

《な、んだ……?! GSライドのエネルギー出力が……低下している……!?》

 

 通信から聞こえてくる、困惑の色濃いゴルディマーグの声……続けて超竜神やガオガイガーからも同様の困惑に染まった声が伝わってきた。

 

 モニター越しに見えるのは、空間そのものを色付けするレベルのエネルギー放出……そして不敵な笑みを絶やさないパスダー。麗雄博士がその意図に気付いたのと同じタイミングで通信ウィンドウがもう1枚開かれ、映し出されたシオンと麗雄は同時に叫んだ。

 

「《(アレは)ゾンダーメタルの純粋固有(フル)エネルギーだ(です)! あのエネルギーフィールドの中では、Gストーンのパワーが減衰してしまうぞ(います)!!》」

 

 2人の声が重なり、更に麗雄から驚愕の真実が明かされる……

 

「ゾンダーメタルとGストーンは、相反するエネルギー同士……双方がお互いを消し合う関係じゃ!」

 

「でしたら、敵も同じ条件の筈では?!」

 

 牛山は疑問を口にするが、麗雄は即座に比較の条件を追加する。

 

「馬鹿を言っちゃイカン!! EI-01()は都市のライフライン……東京を支える膨大なエネルギーを味方に付けておる! 相反するエネルギー同士の相殺で、残るのは出力で上回る方だけじゃ!!」

 

「各機のGSライドの出力、48%に低下!!」

 

「?! それじゃ……Gストーンで生きている凱は……?!」

 

 命は、Gストーンのエネルギーで活動している唯一無二の……己の最愛の存在と言える凱に、訪れるであろうこの後の末路を想像してしまう。

 

 突き付けられてしまう特大の絶望……目の前にまで迫った、勇者達の敗北という結末……しかし。

 

《……そうはさせませんッ!!》

 

 通信から響いたのは……GGGの誰もが聞き覚えのある、予想外の希望の声であった。




取り敢えずここまでで一旦切ります。

なんかさ……この辺りは簡単に書いちゃダメな気がしてね。
筆が動くんですよ……絶望をもっと描くんだって……

ウチは早よ獅子座を書きたいのに……
年末までに出せるかなぁ?


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第54話 機界指令 vs. 勇者ロボ軍団(4)

状況が好転します。



 声の主はフィールドの外……しかしその境目のすぐ近くに現れ、4つの影を引き連れていた。

 

「あれは……?!」

 

「まさか……!」

 

「……ボルフォッグ……!」

 

 ボルフォッグの傍にはガンドーベルとガングルーが同じく佇み……その周囲を、ついに中空をも遊泳可能となったピスケガレオンの2体が回遊している。

 

《オレ達も一緒だぜ! もうテメーの好きにはさせねぇってばよ!!》

《私達が一緒なら、アナタなんかに負けはしません!!》

 

 回遊を止め、パスダーへ向かって啖呵を切るピスケガレオン達……その後、ガンドーベルとガングルーは高く跳躍……ピスケガレオン達も揃ってその場を離れ、最後にボルフォッグが飛び上がり、高らかに声を上げた。

 

『五獣纏身ッ!!』

 

 ボルフォッグの掛け声と共に、ガンマシンとピスケガレオンがそれぞれ変形を開始。

 ガンマシンとボルフォッグは通常の合体と同様にそのまま左右の腕と胴体を形成し、サメ型が右膝、イルカ型が左膝へと接近……それぞれ左右対称に位置取り、ピスケガレオンの胴体が縦に分割され、ボルフォッグの方に向いた内側が尾先のパーツごと上へ分離してボルフォッグの腕部接続位置を起点に背中側へ回り込んで挟まり、外側半分は拡張された脚部の外側から足裏までを強化するパーツへと変わる。

 残った頭部も変形して膝の上部装甲へと接合され、全てのパーツがボルフォッグへと接合完了。

 足裏にパーツが追加された事で、肩幅が増した分の釣り合いが取れる程度に足の長さも変わり、推進器と特殊機構が追加で加わる脚部……背中に回り込んだ尾先のパーツから、銀と紫色の布の様なものが展開され、展開と共にボルフォッグは激しく数回ほど回転……鏡面の如き銀色の表と深淵の様な紫色の裏側で構成された長布は輪を描く様に追従し、回転を止めて腕を組むいつものポーズを取ると布はマフラーの様に首を起点に風に靡き始める。

 その後、両肩にそれぞれ猟犬と隼の意匠が新たに刻まれ、最後に頭部の形状がモーフィングの様に変化し、忍の鉢金を付けた狼の頭を模した物へと変化した。

 

『ビッグバン……ボルフォォォッグッ!!』

 

 木・火・土・金・水……所謂“五行”と呼ばれ、陰陽道にも通ずる『五つの力』をその身に宿せし新たなる姿……その全てに置いて『三位一体』を上回る忍者ロボ……

 

 ……その名は、ビッグバンボルフォッグ!

 

『マジかよ……カッコいいじゃねーか……!』

『ピスケガレオンとボルフォッグが……本当に、合体した……!』

 

 ピスケガレオン等とボルフォッグの5体合体という想定外に、ゴルディーマーグと超竜神の……ビッグバンボルフォッグの勇姿を見ての感想であった。

 

 合体によりサイズこそ一回り大きくなり、手足が少し長くなったものの、強化された脚部はなんと無音*1走行や重力を無視した壁面・天井立ちをも可能にし、最高速度も約550km/h……瞬間最大速度に至ってはマッハ1にまで上昇。重量はピスケガレオンの合体による増加分しか無い筈なのに、ピスケガレオン側の武装である複数の大型火器や浮遊機雷、トラップや特殊なエネルギーネットまで内蔵武装扱い……更にマフラーの如く靡く二本の長布『ミラージュディバイダー』は最大で100m*2(幅も同様)まで伸縮自在の他、簡易的な空間転移機能を持っており、紫色に見える内側は対面側と空間を繋げる事で空間的に全てを素通りさせ、銀色の外側は衝撃やエネルギーを空間ごと反転させて遮断し弾き返す「ディバイドディバイダー」と呼ばれる空間隔絶防御能力を持っている。

 ……ペンチノンを下した多次元諜報潜水艦の自爆に捲き込まれながらも無傷だったのは、このマフラーの機能のお陰であった。

 

『おおォォォッ!!』

 

 ゾンダーメタルの純エネルギーに満ちた空間をモノともせず、その俊足でパスダーに迫るビッグバンボルフォッグ……パスダーはその身に纏う強大なゾンダーバリアを纏った右腕で突撃を弾き返さんと意識を傾けるが、ビッグバンボルフォッグは腕の接触直前に掻き消え、僅か数秒でパスダーの首筋に到達していた。

 

《消えたぁ?!》

 

《いや、接触の直前に地面を潜り抜けて後方へ回り込んだのだ!》

 

『ムラサメソードッ!!』

 

 パスダーの首筋に取り付き、ムラサメソードで瞬く間にパスダーの全身を切り刻む。だがパスダー自身のバリアでダメージはさほど通らず、更に再生能力により瞬く間に回復されダメージを稼ぐ事が出来ない……

 

『……やはり、この程度では駄目ですか……! ならばッ!!』

 

《オレ達の出番だってばよォ!!》

《アナタの好きにはさせません!》

 

『超絶ッ! 分身殺法ッ!!』

 

 ビッグバンボルフォッグの全身が銀色に光輝き、ミラーコーティングが展開される……その中ではあらゆる攻撃やエネルギーが反射・拡散され、誰にも邪魔する事は出来ない。

 その状態を維持しながらビッグバンボルフォッグは、ボルフォッグ、ガンドーベル、ガングルー、ピスケガレオン2体へと分離……ミラーコーティングの塊からそれぞれが飛び上がりパスダーの全身を先程よりも5倍の速度で傷付けていく。

 

『……ぬぅ……鬱陶しい!!』

 

 バリアでダメージはほぼ抑えられるし、即修復可能とはいえ、さすがに鬱陶しいとパスダーは腕を振り払う……が、ボルフォッグ等の影すらも捉える事は出来ず、肉薄する5体の連携を止める事は叶わなかった。

 

《ゾンダーエネルギー。出力の増幅は停止していますが、放出レベルとフィールド自体は依然として変化なしです》

 

《ボルフォッグのお陰でエネルギーを戦闘に回さなければならない分、ゾンダーエネルギーの放出が抑えられた形じゃな……》

 

《首の皮1枚繋がった形だが、このままではガオガイガーでも勝機は……!》

 

《ガオガイガー及び超竜神、ゴルディマーグのGSライド出力……27%前後で停滞中。生命維持の限界値まで、後僅かですからね……》

 

 凱の生命維持に必要なサイボーグ体のGSライド出力は、平常ならば定格出力の3%もあれば十分なのだが……戦闘時、特にファイナルフュージョン中は最低でも15%以上を維持してないと、生命維持に深刻な影響を及ぼす為、後僅かでも低下していたら凱の生命維持機能も危険になる処であった。

 

《だが何故、あの形態のボルフォッグは“敵のフィールド”の影響を受けてないのかね?》

 

《……恐らく、ピスケガレオンとの合体でGストーン自体がエネルギーフィールドの効果を直接受けない様になっている。もしくはピスケガレオンの動力源(Zコア・ドライヴのエネルギー)がGSライドのエネルギー発生システムに何らかの影響を与えて、出力維持を可能にしておるのか……

 いずれにせよあの形態のボルフォッグは現状で唯一、ゾンダーメタルの純エネルギー放射(あのフィールド内の状況)に耐えられる……という事じゃな》

 

 ビッグボルフォッグの時よりも更に速く、5体ぶんの破壊力をパスダーに与え続けるビッグバンボルフォッグ……しかし、圧倒的過ぎるパスダーの再生能力の前には、いくら何でも多勢に無勢であった。だが……

 

『義によって、助太刀する……

 

 ダイキャンサーの咆哮とほぼ同時にパスダーの左腕が肘から切断され、また瞬時に再生される……しかし、その一撃だけで終わりではない。

 

連装大出力形態(ツインバスター・モード)……フル・シュートッ!!』

 

 クーゲルザウターが大型ボウガン2丁を変形・合体させて放つ光の帯が、空からパスダーの脇腹を盛大に抉る。

 

『……貴方の存在は、この宇宙から消え去るべきです!』

 

 大地を割って現れたグラヴィスコルードの尾先……そこから放たれるもう1つの光の帯が、地上からパスダーの下半身を焼き焦がしていく……

 

『……貴様達か。フフフ……無駄な足掻きを』

 

 付けられた傷を即座に再生させながら、パスダーは何故か不敵な笑みを崩さない……

 

《奴は……アーマロイド(コイツ等)の攻撃が無駄だっていうのかよ?!》

 

 火麻はパスダーの言葉に激高し、持っていた通信機を握り潰す。確かにアーマロイド達(彼等)はパスダーにダメージを与えているのだが、果たして無駄と断じれるのかと疑問が残った……だが、麗雄はその言葉に合点がいった。

 

《それは……ゾンダーメタルとZコア・ドライヴ、その性質故の類似点の所為だ。ゾンダーメタルは性質上、ストレスをエネルギー発生に用いる。Zコアも、構造こそ違うが生物的要素を持つ生体動力源だ。そのエネルギーの性質にも一定の類似性があるのだろう……パスダー(EI-01)は、アーマロイドの攻撃ではダメージこそ受けるが、同時に一定量のエネルギー補給をされているという可能性が高い》

 

 そう、アーマロイドの有するエネルギーは「Zコア・ドライヴ」から発生する……凶悪かつ無差別的な侵食性こそ完全に失ってはいるが、ゾンダーメタルと一定の類似性を持つ半生体動力システムなのだ。そこから発生するエネルギーなのだから、それほどの違いはないだろう。

 

 ……しかし、正しき心を持つ彼等はそんな戯言に惑わされる事などなかった。

 

『たとえ無駄であろうとも、共に肩を並べ戦う戦友(とも)を見捨てる理由になどならぬッ!!』

 

 身の丈を超える巨剣を振り上げ、その手を一切緩めず……巨蟹の鎧武者は吠える。

 

『そうですっ! 私達がこうするだけでも!』

 

 黒き甲冑を纏う女性騎士が、華麗な舞と共に中空から無数の光槍を撃ち放つ。

 

『たとえ僅かでも……彼等の一助となるなら、行う意味は有る!』

 

 ビルの隙間を縫うように走る蒼き蠍が、大量の放火を上向きに撃ち放つ……そしてその巨大な背部にビッグバンボルフォッグが降り立ち、振り向いて言い放つ。

 

『そして、我々は前に進むのです。アナタという驚異を討ち倒し……平和を掴むために!!』

 

『……だが、この私を倒せるのか? 今の貴様達の力で?』

 

 パスダーの言葉は正論だった……たとえアーマロイド達がいくら協力しても、現状の戦力ではEI-01は到底破壊できない。

 

《……そうね。確かに“今の状態”じゃ無理だわ……でもさ、前にも言ったよね? アンタの好きにはさせないって!!》

 

 そこへ割り込まれる通信、それはこの世界の例外たる者の声……

 

──────────

 

 私は手にした光の術式陣を掲げ、変わりつつある自身の心臓(Zコア・ドライヴ)からありったけのエネルギーを送り込む。術式陣はそのエネルギーを受けて直径50mまで拡大し、水色の光を放つ……大小様々な幾何学模様や術式が緻密に織り込まれた転送陣。その中心には新たなアーマロイドの紋章【獅子座】の紋が刻まれている。

 

『効かないのなら、効くようにすれば良いだけの話……博士、ありがとうございます。お陰さまで攻略の糸口を見つけました』

 

《……ん? 何かは知らんが、お前さんの役に立ったんなら良いわい》

 

 G-USB経由で麗雄博士にお礼を言い、私は意識を術式の最終工程に集中する。

 

『(早口)エナジーチャンバーの流入経路と吸入圧力の(パワーフロー)調整終了。外部装甲のハーフリンク設定を初期値から±15%へ振り幅更新。エレメントスフィアをエリアル・ゼロへ変更、運動ルーチンプログラム更新、最適化シークエンス正常。コリオリ偏差修正、誤差許容範囲を再設定。各部ユニット動力伝達を開始、ナノ粒子注入状態正常。コアユニット、全システムの主幹制御を移譲(オンライン)。アーマロイド【獅子座(レオ)】、システム起動……!』

 

 ぶっつけ本番……テストも何もなし、出たとこ勝負の大一番。しかし、この子ならやれると確信している。だから信じて送り出す……あれから“更なる進化”を果たしたコア・ドライヴを持つ、【獅子座】(勇気を象る獣)のアーマロイドを……!

 

『空間転送ポート固定、カタパルト解放……往きなさい、アーマロイド【獅子座(レオ)】……ストラトスライガー!!』

 

 私の声に応じて、最大解放された水色の転送ポートから飛び出し、瓦礫の大地を疾駆する獣……それは強靭な四肢を使い大地を駆け、鋭い爪と牙、そして眼光を持つ純白の獣。

 機械的な内部フレームだが、その複雑な連動がおよそ機械とは思えない生物的な挙動を完全に再現している……それがこの、白き鎧を纏う機械仕掛けの獅子の特徴だ。

 一定距離を走り抜けてから止まり、ガオガイガーと同じオレンジ色の眼光で周囲を見渡し、ガンメタルの尾をゆらゆらと揺らしながら、敵と味方の識別を済ませる……そしてパスダーを敵と認識して睨み付け、最大音量の咆哮を響かせた。

 

 

*1
正確には20dB(デシベル)以下程度にまで各部の駆動音が抑えられている。ちなみに20dBとは内部に音源が一切無い遮音室の中に一人で何もせず立っている時と同じ状態

*2
※片側の拡張伸延の最大数値。もちろん片側だけしか伸ばせなかったり、片側を伸ばすと反対側がそのぶん短くなる……なんて事は無い




TIPS:ビッグバンボルフォッグ
諜報用ビークルロボという目的故、敢えて低めになっているビッグボルフォッグの戦闘能力を補いつつ、先を見据えた新機能の追加を目的に採用された新しい合体形態。

基本的にビッグボルフォッグ側へは合体に必要な最低限の改造しか施されていない為、ビッグボルフォッグが可能な事はビッグバンボルフォッグも全て行える。
Zコア・ドライヴの補助による出力の劇的な向上をはじめ、全体的な性能アップや特殊機能の追加が顕著になっており、違う事なく忍者そのものの挙動をトレース可能。新たに追加された特殊機能の数々と、ピスケガレオン由来の内蔵火器により、更なる隠密性の向上に加え、高汎用・重武装化まで成立させた。
また、ピスケガレオンの固有能力『空間位相潜航』がGストーンのエネルギーにより強化発展した物体透過・固着システム『深羅万渉(しんらばんしょう)*1』により、障害物や任意の面を『水面』または『地面』として捉え、ピスケガレオン同様の“潜航”の他、万有引力を無視して壁や天井に立つ(着地・足場にする)事も可能になっている。

なお、合体中のみ作動する相互補完型複合動力システム『五行器』を元に全身のエネルギー経路が見直された結果……それぞれ「ボルフォッグ(土・信)」「ガンドーベル(金・義)」「ガングルー(火・礼)」「ピスケガレオン・サメ(木・仁)」「ピスケガレオン・イルカ(水・智)」と、相互に補完や作用を発する“属性”を獲得……そこから来る“太極”や“八卦”、“風水”などの派生識から来る“超常現象”なども理論上では行使可能となっている。

武装・機能(ビッグボルフォッグへの追加ぶんのみ)
■相互補完型複合動力システム『五行器』(GSライド×3、Zコア・ドライヴ×2)
■捕縛・拘束用電磁ネット
■全領域浮遊機雷(ステルス機能あり)
■対水圧防御フィールド発生器
■3連装魚雷発射装置(胸部両端・脚部側面)
■背部展開式ロングレンジバスターキャノン×2
■拡張空間制御纏布『ミラージュヴァイザー』
■物体透過・固着システム『深羅万渉(しんらばんしょう)
■特殊消音機構(全身)
■超絶・分身殺法(5体バージョン)
■必殺・大回転轟破弾(断)

*1
「深羅」とは閉ざされた洞窟の最深部や底知れない深海を指し、「万渉」はあらゆる地形をその足で歩む……という本作オリジナルの造語。もちろん森羅万象とは似て非なるものである



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第55話 機界指令 vs. 勇者ロボ軍団(5)

いよいよ大詰め。
ついに東京大決戦終幕の時……!



 白を基調とした軽量装甲……動きを制限しないという事は、それだけ防御力は低いという事。

 

 しかし、この【獅子座】ストラトスライガーにとって重たい装甲は却って邪魔であり、本来の性能と本能を縛る事は、最大の持ち味を殺す……意味の無い事に直結する。

 

 グゥルルル……! グオォォォンッ!!

 

 名前からも分かる通り、ストラトスライガーの素体は今から約40年も前に登場し、今なお根強い人気を誇る某戦闘機械獣から着想を得た物……

 基本モデルは無論、百獣の王と呼ばれるライオンで、その生物的挙動を寸分違わず再現可能な特殊フレームに人工筋肉と圧力式サスペンションのハイブリッド駆動システムを搭載し、流体力学を応用して計算尽くの空力特化型のエアロテックデバイスアーマーを一次装甲として採用。

 その上に二次装甲として状況に合わせ自在に換装可能な追加武装&増加装甲であるチェンジマイズ・アームド・システム……通称「CAS」を纏うのである。

 

『そんな獣一匹でどう変わる……ッ!?』

 

 パスダーは腕を振り、衝撃波を飛ばす……が、ライガーは身体を捻ってひらりと避け、反撃開始とばかりに疾走を再開。胸部……前肢の間に固定された基本武装である「AZ-330 三連装ショックカノン」をパスダーへ向けて一斉射した。

 

『その程度……ヌッ?!』

 

 パスダーはバリアで弾かれる、と考えていた様だが、生憎とそうはならなかった。ショックカノンの砲弾は実弾でもエネルギー弾でもない……高圧縮された ただの空気だ。しかもこの空気弾にはコア・ドライヴの進化によって高純度のGパワーを内包している為、ガオガイガー等と同等の対ゾンダー破壊能力を持たせる事に成功したのである。

 

『何故だ?! 貴様達は我等と源流を同じくする存在の筈……!?』

 

 たっぷりとGパワーを内包した砲弾を浴び、更に爪等の攻撃も喰らいながらパスダーは驚愕と共に叫ぶ。その言葉に私は、ようやく叶った本命の言葉を聞かせてやるのだった。

 

「……“進化”したのよ。アンタ達とは全く違う方向性にね!」

 

──────────

 

 麗雄はついにシオンが“実現した結果”を、他のクルー等と共に驚愕と共に目にした。

 源流はGパワーと相反するゾンダーエネルギーの大元……それが多様な生物の遺伝子を取り込み、暴走する事なく、共生可能な存在へと進化を果たしたのだから……

 

「アーマロイドが……Gストーンのパワーを……?!」

 

「こりゃあ、アイツ等……完全にゾンダーとは違う奴等になっちまったって事じゃねーか?」

 

「そうじゃな……稀星くんの支配下にあるアーマロイド、あの【獅子座】には……実験的にコア・ドライヴとGSライドを同時に搭載している。ピスケガレオンから得られた連動データを検証するため、本来なら決戦に間に合う筈では無かったのだが……」

 

 そう言って麗雄はシオンから提供されている各アーマロイドの設計データをモニターへ出し、獅子座……ストラトスライガーの設計データをピックアップさせる。

 分かりやすく図解されている動力システムの接続仕様情報……そこには、コア・ドライヴに直接繋がれる形でGSライドが書き込まれていた。

 

「……机上の空論。彼女もそう言っておった……じゃが、ついに“アレ”で実現しおったんじゃ。恐らくストラトスライガー(あの機体)のコア・ドライヴは、もう完全にゾンダーメタルとは違う物へと変わった様じゃな」

 

 麗雄の言葉に、しばらくの沈黙……だがそれを破ったのは、我等が勇者王の声だった。

 

《長官、チャンスはシオン達が奴を止めてくれている今しかない! 目には目を……エネルギーにはエネルギーだ!》

 

「……ッ?! 弾丸X(だんがんエックス)か」

 

 麗雄は息子である凱の言葉に、不安交じりの声で答えを出す……弾丸Xとは、Gストーンに内包されている高密度エネルギー集積体を解放させ、爆発的なエネルギーを生み出すシステムである。しかし、その代償はあまりにも大きく……下手をすればGストーンのエネルギー全てを使いきる事になりかねない。それはまさしく凱にとって、己の生死を賭けた選択であった。

 

「……ッ……!」

 

《頼む、長官! ココで奴を倒すにはもうそれしかないんだ!!》

 

 それを使ってしまえば、凱や超竜神含め勇者達全員が死ぬ可能性の高い……最悪の結末を迎える危険性がある。だが、現状最も勝算の高い方法は他に残されていなかった。

 渋る大河に、懇願する凱……メインオーダールームの誰もが、この選択の先に起きるであろう結果を思い、その口を閉ざしていた。

 

「……長官。凱の思う通りにさせてやってくれ……」

 

 沈黙を破ったのは、父親としての麗雄の……今生の頼みだった。

 

「今思えば、凱が今まで生きてきた中で……僕は何一つ父親らしい事をしてやれなかった。……それなのに凱は笑って、僕を“父さん”と慕ってくれている。僕はあの時、凱が生き伸びてくれた事で、今度こそは、息子の為に全てを擲ってでも手を差し伸べてやろうと誓った……僕からも頼む!」

 

 麗雄の言葉が終わり、メインオーダールームは再び沈黙に包まれる……

 

「……分かった。弾丸Xの使用を許可する……ッ!」

 

《……! ありがとう、長官!!》

 

 それは苦渋の決断……そして己が死ぬかも知れない選択……しかし我等が勇者王は笑ってその命令を受け、通信を切った。

 

「……よし、今こそ封印を解く……!」

 

 麗雄の座る座席……GGGスーパーバイザーのコンソールには、近代的な外観には似つかわしくない……ガムテープで封じられた画面が2つある。それこそが弾丸Xの封印……麗雄はそれを全て剥がし、画面のロックを解除……モニターには、達筆な文字で“弾丸X”と表示され、更に封印解除を示す表示が現れた。

 

「……各部問題なし。GSブースター、起動確認!」

 

「座標軸合わせ、首都圏方面……軌道修正完了!」

 

(……凱……生きて戻ってくれ……っ!)

「ぬあぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 息子への万感の思いを込め……麗雄は弾丸Xのモニターを兼ねていた画面を己が拳で殴り付ける。……1枚目、そして2枚目。

 すると2つの画面が切り替わり、起動完了した「GSブースターシステム」を内包する分離施設セクションの1つ「弾丸X」が、正に拳銃から放たれる“弾丸”の如く本部から切り離され、海を飛び出して凱達の下へと飛び立った……

 

──────────

 

 ストラトスライガーの攻撃に思わぬダメージを負い、困惑するパスダー……他のアーマロイド達も止めていた手を再び動かし、“塵も積もれば……”の精神で苛烈な攻撃を加えていく。シオンは砲台の如く地上から猛攻を加えるグラヴィスの頭に移動し、本部の様子を聞き取っていた。

 

(やっぱり、弾丸Xを使わざるを得ない……か。なら、陽動と撹乱は私達がやるべきね……!)

 

 本部のやり取りから「弾丸X」の使用に踏み切った事を察知し、より確実に成功へと導くために自身らが手を打つ必要があると感じる。

 

 だが、行動に移そうとした直前……パスダーから思わぬ言葉が告げられた。

 

『……何故だ? 貴様は我々と同質の存在。それが存在意義を捨て、この私に敵対する……その代償が如何なものか、知らぬ訳ではあるまい?』

 

 パスダーはそう言うと都市圏全てのネットワークをハッキングし、あっという間に掌握……そして、ピッツァがGGG本部に潜入した折に盗み出させていたデータを漏出させていく。

 

《……ッ?! こ、コレは……?!》

 

《そ、そんな馬鹿な……?!》

 

《Oh my god……?!》

 

《そんな……いつの間にこのデータを?!》

 

 通信先で驚くオーダールームの面々、それもその筈……流されていたデータは、GGGで極秘裏に扱っていた筈のシオンに関する情報。

 その最重要機密としていた筈の「元・マスタープログラムであり、母星消滅の際に脱出して逃れ着いた」事……そして「極秘裏にGGGへと接触し、協力関係を築いた」という事実が克明に記録されたファイルであった。

 

《長官……!?》

 

《な……なんという事だ……ッ!?》

 

 麗雄の声に、大河は事の重大さに息を呑んだ。

 本来ならば部外秘の秘匿情報……その漏出という失態だけでなく、その中身は混乱を制する為に隠し通す筈だったシオンの秘密。

 

『…………え……っ……??』

 

 これには流石にシオン自身も困惑するしかなかった……

 

 一般人が知れば、誰もが混乱するであろう情報……「稀星シオン」と呼ばれる人物は、()()()()()()()()……

 世に新技術の数々をもたらし、繁栄の一助を担い、未来を照らしてくれるであろう人物が……敵と同類(Zマスタープログラム)だったという驚愕の真実が、全てこの場で暴かれたのである。




本年度最後の更新に、大暴露されてしまった秘匿情報。
本当なら、GGGの一部職員だけが墓の下まで持っていく筈だった事実……

パスダーが行った情報テロに、果たして世の答えは……?

──────────

次回予告


君達に最新情報を公開しよう!

EI-01の情報テロにより、大混乱に陥る人類。
稀代の天才女史と謳われた「稀星シオン」は人類の敵(ゾンダー)だった?

疑心暗鬼が漂い、更なる混乱を助長し
ありもしない情報が人々の悪意を曝け出す……

このまま彼女は敵として扱われ、
断罪を余儀なくされてしまうのか……?!


次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第56話『世界の答え』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!

……来年も良いお年を。


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第56話 世界の答え(前編)

あまりにも唐突な、パスダーの暴露……

世に放たれたGGGの秘密。
そして……稀星シオンは、忌むべき敵と同類の存在(Zマスター)……

混乱する世界は、どんな答えを出すのか?



“美人女医は人類滅亡の元凶?!”

 

“忌むべき過去? 稀代の天才は悪の親玉だった?!”

 

“稀星シオンは地球外存在! 果たして人類の敵なのか?!”

 

 各種ネットニュースやSNS、あらゆる情報媒体で飛び交う……シオンが地球外生命であるという情報。女医時代に受けた幾つかの取材や、公的機関として存在するGGGの職員として、世間に見られる事は少なくなかったこれまでの「稀星シオン」という人物像は……

 

 気さくで優しい、美人女医にして科学者……そういう存在として確立されていた。

 

 しかし、パスダーの暴露はその情報を上書きするのに十分すぎるインパクトを世界中に与えたのだった……

 

“稀星シオンは、我等が源流と存在を同じくする同類である”

 

 地球滅亡……知的生命のゾンダー化を目論む機械生命体ゾンダリアン、その前線指揮官であるパスダーから、シオンは同類だという情報がもたらされたのである。

 

「……長官。日本政府から、“事態の説明を求める”という連絡が届いています」

 

「諜報部へも、マスコミや新聞社からの情報開示請求が後を絶ちません……一般の通信回線はもはやパンク寸前です」

 

「この様子では各支部へも、マスコミ等からの要求が殺到しているじゃろうな」

 

「救助された一般市民の間にも、動揺が広がっています……」

 

「無理もあるまい……自分達の目の前で、救助活動に従事する彼女を見た者は少なくないからのぅ」

 

「……しかし……敵がこんな作戦に出てくるとは……!」

 

 公的機関の情報漏洩……そして秘匿情報の中身。あまりにも手痛い失態ではあるが、今は其れ処ではない。

 

「弾丸Xはどうなっている!?」

 

「現在位置は、江東区上空……間も無く戦闘区域に突入します!」

 

 弾丸Xを使用した決戦まで、もう間がない……しかし、シオンの件で発生した混乱を放置する事も出来ない……大河は歯噛みする。

 

《……長官、私が直接話します……回線を回して下さい》

 

「……稀星くん……」

 

──────────

 

《……グラヴィス、指揮をお願い。ライガーを軸に防衛線を張って弾丸Xの稼働時間を稼いで。ピスケガレオンはそのままボルフォッグに帯同継続……全員で生き残って、明日を掴むのよ!》

 

『グオォォォンッ!!』

 

 ライガーの惚れ惚れする力強い咆哮に合わせ、アーマロイド全員が賛同の声を上げる……この先はグラヴィスが戦闘指揮を頑張ってくれるから、もう細かな指示は要らない。私は回線を全て一般通信へと回し、要請の入っている全ての回線へと映像を回す……

 

(私の言葉なんかで、状況は改善しないと思う……でも、なにもしないよりはマシよね)

 

 回線状況を2回に分けてチェックする……ネットワークの状況はこの大混乱の最中だというのに良好で、この騒動が如何に局地的影響で済んでいるかという事実を改めて知る事になった。

 原作ではそこまで追及した描写があまりなく、東京という都市近辺のみに影響が留まっているという確たる情報は無い。しかし、原作とはあまりにも違う時代とはいえ、同様の事態がこれだけ局地的に留まっているのは、偏にこの世界のGGGから提供されている画期的新技術などのお陰であろう。

 

 少なくとも、この混乱さえ収まれば……後顧の憂いは無くなる。ならば、混乱の元凶である私が何とかするしかない。

 

『……私は、稀星シオンです……』

 

 それから、私は淡々と語り続けた……混乱を収めるべく。自らの出自と、意思を語り……包み隠さず、私が今この場でこうしている理由を……そして、私の目的を。

 

 

 ……結果的に言えば、混乱そのものは収まらなかった。

 

 世間の大半の意見は「私の言葉だけでは確証がない」「信用できない」「この混乱自体も策略ではないのか?」という疑心暗鬼が大半を占めている。

 もちろん、私の存在を肯定的に受け止めてくれる意見もあるにはあるが、大多数は否定的または疑いが先に立って肯定的に受け止められない者が圧倒的である……

 

《……やはり、この状況では……》

 

 大河長官の声が通信から響く……一度、疑心暗鬼に陥った人が正常な判断を取り戻すのには、それなりに大きな切っ掛けが必要だ。やはり現状では、混乱の元凶である私が何を言おうと、混乱の終息までには至らない……

 

 本部がモニターしている有名SNSの幾つかは『人外の言動は信用できない』『甘い言葉で信用を得て、後から牙を剥く。狡猾で悪辣な手段』という否定派と『彼女のお陰で数々の新技術が世に出てる』『これだけ人類に貢献してんのに、人類滅亡? 明らかに矛盾してない?』『私は見たことあるよこの人。めっちゃ優しかったし』と好意的意見がせめぎ合っている。

 

 好意的な意見はほとんどが長い付き合いや、少なからず面識のある人達だろう……だが、大半を占める否定派は、私を“切り取られた情報”でしか知らない人間なのだ。

 

《弾丸X、戦闘区域に到達。各アーマロイド、防衛体勢に移行しています》

 

『HEY! 皆ぁ~、お待たせしたもんね~♪』

 

 道中の護衛は原作と違い、マイクが勤めていた。そしてマイクの声を皮切りに、ガオガイガー、超竜神、ゴルディマーグ、そしてビッグバンボルフォッグが弾丸Xの内部へ入っていく……

 

《……マスター、私達は……!》

 

『……2人の好きにして良いわ。離れるも付いて行くも……』

 

 ピスケガレオン達は何かを訴える様な声で自分達への指示を問うてくる……私は少し考え、好きにして良いとだけ伝えた。ボルフォッグと彼等の付き合いはそれなりに長いし、先の戦いやこれまでの調整の時間など、思う所はある筈だ。

 

《分かりました……!》

 

 この指示はホントに私らしくない……後々考えたらそう思うんだろうけど、今はあまり頭が上手く回らないのだ。私は地球外生命ではあるけど、心はずっと人間のつもりだった……

 ……GGGに入った当初は確かにGパワーの影響に結構悩まされたけど、症状が収まってからは毎日が楽しかった。

 

 ……精神科医の経験を求められてGGGに勧誘され、また1人の科学者として世界十大頭脳である獅子王麗雄博士やGGGの研究員さん達と付き合い、超AI搭載の勇者ロボ達とのコミュニケーション……彼等を率いる凱さんや、同じくサポートする立場に居る命さんやスワンさん……参謀さんに長官さん……私生活面でアレコレ指導を入れた猿頭寺さんや、大家族を養う牛山さん。

 GGGの人達だけじゃない……ご近所さんや、通勤途中の道で知り合い仲良くなった人達、これまでの活動で知り合い、少なからず連絡を取り合う関係を持った人達……そして、この切っ掛けをくれた護くん達仲良し小学生グループ。

 

 皆との日々は、この先に来るであろう多くの苦難を忘れるほど楽しかった……だけど。

 

稀星シオンは敵の同類(私は彼らと同じではない)

 

 覆せないその真実が、私の心を苛む……

 どう足掻いても、変える事が出来ない事実。

 

 結局のところ、人間は本能的に『他者との違いを恐れる』存在なのだ……それは集団でなければ生きられない代償みたいなもの。

 特に日本人はその傾向が強く、未だに『統一性を強要する概念』がそこかしこに残っている……

 

 だがそれは人間だけではない、あらゆる生物が持つ防衛本能の一部なのだ。

 恐れる事……恐怖は生き残る為に必要な精神性なのだから、無くてはならないものだ。

 

 恐怖を知らないという事は、知的生命たり得ない……これは一つの心理と言える。

 

 恐怖を知らなければ、間違いに気付かない。恐怖を感じなければ、助かる為の努力をしない。恐怖を覚えなければ、どうすれば良いのか学習しない。

 知的生命とは、考え、努力し、今日という日々を糧に生きる存在だ……その道を他者にも伝え、間違いを正し、より良い道を模索するのが人類なのだ。

 

 だから私はその選択を拒否しない……

 

《……何で……そんな……自分勝手なんですか?》

 

 ふと通信先から、涙ぐんだ声が聞こえる……

 

《何で……みんな……あの人を信じてあげられないんですか?!》

 

 この声、つい最近聞いたよね……確かあの娘は……

 

《出会って間もない私が、()()()()()()()()()()って思ったのに……何で皆さんは、あの人を信じてあげられないんですか?!》

 

 そう、私とは違う世界から連れて来られたもう一人の転生者……長友結維ちゃんだ。




どシリアスムード真っ只中……戦闘も継続中。
取り敢えず、この間のバトルシーンは皆さんそれぞれ脳内補完よろ!!


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第57話 世界の答え(中編)

前回のアンケートの結果、ご要望にお応えする形にしました。
私なりのイメージなのでお見苦しいかとは思いますが……

では、57話をどうぞ。



 濃密なゾンダーエネルギーのフィールドを突き破り、無効化した漆黒の物体……弾丸Xが戦場に到着する。

 その案内役はマイク……ガオガイガーら勇者達は必ず勝つ、と心に誓い中へと入り始めた……グラヴィスコルードは彼等を見送ろうとするが、パスダーの攻撃を察知して地中に潜りやり過ごす。

 

『彼等が出てくるまで、ココを死守です! 貴女(クーゲル)ボス(ダイキャンサー)と共にパスダー(ヤツ)の注意を……私は新戦力の彼(ストラトスライガー)と防御に徹します』

 

 攻撃をやり過ごした後、地面から頭だけ出したグラヴィスは主からのオーダーを達成すべく、他の主戦力らに指示を出す……

 

『そんじゃ、オレ達はボルフォッグと一緒に行くぜ!』

『例え力及ばなくても……少しでも役に立つ為に!』

 

『そうか……ならば我等が必ず守り抜く。送り狼など一匹も通さん』

 

 防衛戦力としては戦力外とされたピスケガレオン達だが、それならばとボルフォッグと共に行く事を選んだ……

 

『……頼みます……!』

 

 グラヴィスの声を最後に、弾丸Xのカバーが閉じられ……ビッグバンボルフォッグ、ゴルディマーグ、超竜神……そしてガオガイガーが内部で向かい合う。

 

「皆、分かってるな? この“弾丸X”は……!」

 

『覚悟の上です、隊長』(超竜神)

『勇者として望むところ!』(ボルフォッグ)

『さっさとおっ始めようぜ?!』(ゴルディ)

 

『ヘヘッ、腕がなるってばよォ!』

『……最後まで、御供しますッ!』

 

『『『『『「全ては、パスダー(EI-01)を倒す為に……ッ!」』』』』』

 

──────────

 

 パスダーが乗っ取って戦況を見せつけるカメラや、すぐそばで戦場を見つめる人々の耳に、一人の少女の声が電波に乗って響く……それは逆転のきっかけとなるべく、猿頭寺が現在進行系で情報収集している時に発見した結維の生演説の声だった。

 

「どうして彼女を信じてあげられないんですか?!」

 

 声を上げた結維……彼女はプラントから救助された一般市民と共に、安全区域への搬送を待つ集団の中に居る。そして周囲の人々はパスダーの声に扇動され掛かっており、疑心暗鬼からシオンの事を敵対存在と同じく排除するべきだと声を上げようとしていた直前だった。

 

「だ、だってさ……あの人、アイツ等と同じ地球外の種族なんだろ? 俺たちと同じ地球人ならともかく、異星人が安易に俺たちを助けるか?」

 

 これが最初期であれば最もな反論ではあるが、シオンは序盤の例外(護くんを助けようとした時)を除き、地球人を害する行為は一切やっていない……これは初期にあったGGGの監視下で証明されており、正式な情報開示が為されれば真偽も判明する……が、現状で一般市民が確かめる術はない。

 

「異星人だから人の心や優しさが無いなんて、勝手に決め付けないでよ! 話し合いする前から問答無用で撃たれるなら、敵対もするわ。でもちゃんとこんな風に話も通じるのに、分かり合えないなんて誰が思うのよ?! それは当事者が判断する事でしょ?! 蚊帳の外である私達じゃないわ!!」

 

《だぁぁぁッ!!》

 

 結維が声を荒げるその向こう側で、クーゲルザウターが両手のボウガンを乱射し、パスダーの腕を穴だらけにしていく……その傷はものの数十秒で回復しきってしまうが、傷を負わされるという事は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()事に繋がる。

 ……巡り巡って、ガオガイガー達が切り札を使うまでの時間稼ぎになるのだから、決して無駄ではない。

 

《……鬱陶しい。もはや何をしても無駄だと解らぬか?》

 

《分かりませんねぇ……いえ、アナタの何もかもがです》

 

《この世に無駄な事など無い! 己の所業は巡り巡って、我が身に帰る……貴様のその行いの先に待つのは、己が身の破滅だぞ!!》

 

《我々は不滅の存在……脆く弱く、老いに怯え、存続の短い肉の身体など、マイナス思念の元凶でしかない。永劫の時を生き、優れた機械の身体へ生まれ変わる……機界昇華こそ最適解である》

 

《そんな事無いッ!!》

 

《EI-01……いえ、パスダー。やはりアナタは短絡的過ぎますね……人間(ヒト)は弱くても、間違いを正せる。例え命は有限でも、彼等は世代を繋ぎ、意思を受け継ぐ事で、未来を築いていけるのですよ》

 

 乱戦模様のアーマロイド達とパスダー(EI-01)……

 その戦闘を背景に、結維は自分の思いの丈をぶつけ続ける。

 

「私は直接あの人に助けて貰った……あの人は誰にでも優しいわ。私は突然こんな目に遭って……正直言って、パニックになってた。でもあの人は優しく声を掛けて、助けてくれた……会って間もない相手なのにね。

 違う状況とはいえ、誰かに命を救って貰った人なら分かるでしょう? その時に感じる安堵感を……!」

 

 グラヴィスが全てのグラビコンブレードを展開しつつ、背部の重力衝撃砲へエネルギーチャージを開始する。無論パスダーも傍観せず阻止に動くが、向けた右腕を肘から寸断……ダイキャンサーの握る大太刀が翻った。

 

《貴様の思い通りには、させんと言ったッ!!》

 

《ガオォォォンッ!!》

 

 怯まず左腕で攻撃を繰り出そうとするパスダーだが、その左腕へとストラトスライガーが噛み付く。直後に放たれたエネルギー波が弾丸Xのボディを捉えそうになるものの、ライガーが噛み付いたお陰で腕がブレ、直撃は避けられた。

 

 噛み付かれた左腕から振り払おうと右腕を再生させつつ伸ばすパスダー。……だがライガーは飛び退いて右腕を避けつつ、パスダーの頭へとショックカノンを浴びせて視界を奪い、その隙にグラヴィスコルードはチャージ完了した最大攻撃を放つ。

 

超重力拡散波動弾(グラビトロン・カノン)、集束モード……発射!》

 

 グラヴィスの声を引き金(トリガー)に、上空へと放たれた漆黒の球体はパスダー(EI-01)の頭上へと舞い上がり……幾重もの数へと分裂。それぞれが超重力を発生させるマイクロブラックホールと化してパスダーへと振り注ぐ。

 

《……ヌ……ゥ、小癪な……!》

 

 バリアの出力を上げ、四方八方から襲う重力波を和らげながら、額のレーザーで以て一つ一つ重力球を破壊していくパスダー。

 

《……やはり、大した時間は稼げませんか……ですが、瞬間的なエネルギーの消耗は大きいはず》

 

 予測はしていたが、こうもアッサリと凌がれると少しは落胆もする……だが冷静さは失わず、グラヴィスは相手の消耗を誘う事が出来たと分析する。

 

《ならば畳み掛けるまで……征くぞ!!》

《はいッ!!》

 

 その結果を踏まえ、大技を叩き込み続ければ勝機も見える筈だとダイキャンサーは声を上げる。それに同意したクーゲルは漆黒の軍馬へと姿を変え、ダイキャンサーもタイタンカルキノス(己の得物)を最大開放……一振りの超巨大な刃と変え、変形時に外れたマントを羽織って軍馬へと跨る。

 鎧武者を背負い、軍馬は地を蹴って飛翔……地上からの援護射撃を貰いながら上昇し、パスダーの頭上へと陣取る。

 

 その光景を背に、結維は叫んだ。

 

「人間同士でも、そんな事ができる人は少ないわ……でも、あの人は“ソレ”を……何処の誰が相手でも、別け隔てなくやってるのよ?!

 そんな事が出来る?! 同じ星の人間同士でも争い合う、私達に出来るの?!」

 

 軍馬に跨る鎧武者は上空へと駆け上がる最中、乾坤一擲を為すべく一つの念を口に溢す……

 

《届け……ッ、雲耀の疾さまでッ!!》

 

 結維は三段飛行甲板空母へ収容された後、あの時見てしまった光景の説明と状況の確認原作では無かったゾンダリアン2名の浄解の為にシオンから簡易的に説明を受け、その後事態を察知したGGGメインオーダールームからも軽く尋問を受けた。その際にシオンの正体や能力……置かれた立場等を明かされ、衝撃を受けた。

 

 命を助けてくれた恩人は人類の脅威(ゾンダー)の近似種……

 しかし人類に協力的であり、これまで何度も組織を窮地から救い、現在も数多くの技術提供で以て人類そのものへも多大な貢献を行っている。

 

 そんな彼女の真意は『人類との共存』……

 

 故に人類への害意は皆無であり、既に組織内(GGG)でも大きな信頼を勝ち得ている……と。

 

 ……既に事は世に露見しており、非常に危うい立場でありながら、未だ人類に好意的な地球外生命であり続ける彼女を、何故人類は受け入れられないのか……結維は憤慨した。

 

「あの人は私達人類が好きなのよ! 滅ぼされるのを黙って見ていられない! だから自分の立場も顧みずに戦っているんですよ?! 見返りなんて考えずに!!」

 

《一刀、両断ッ!!》

 

 結維の言葉の直後……中空を駆ける軍馬の背から更に飛び上がり、絶好のタイミングで振り下ろされる大太刀。雲耀の疾さで振り下ろされた鋒先は、最大出力のバリアと拮抗……バリアにヒビを入れるも、内側から放たれたパスダーの圧力に阻まれてダイキャンサーは身体ごと吹き飛ばされる。

 

《ヌッ、無念……ッ》

 

 吹き飛んでいくダイキャンサーだったがクーゲルがその背で受け止め、落着は免れた……が、現状の最大攻撃を立て続けに防がれ、両者は再び睨み合う。

 

《……そんなに“それ”が大事か……ならば仕方あるまい》

 

 唐突にパスダーはそう言い放ち、無造作に腕を振る……その先には、ゾンダーメタルプラントから救助され、搬送を待つ集団……勿論、その中には結維も居た。

 

《ッ!? イカン!! 避難民が?!》

 

 麗雄が衝撃波の行き着く先に気付き、声を上げた。

 

《勇者達は?!》

 

《駄目です! 間に合いません!!》

 

 大河はガオガイガー等の状況を確認させるが、牛山は無理だと悲痛な叫びを上げる。

 

《ちぃっ、この距離では……!?》

《ええぃ!?》

《駄目ぇぇぇッ!?》

 

 グラヴィス、ダイキャンサー、クーゲルもそれぞれに反応……ストラトスライガーも急速反転して駆け出す……

 しかし、避難民の集団へ向け放たれたエネルギー波は無情にも突き進んでいく……全員の位置的にもはや誰も間に合わない。

 

「う、うわぁぁぁ!?」

「きゃあぁぁぁっ!?」

 

 気付いた者が口々に悲鳴を上げ、結維も“それ”に気付いて振り向き始める……衝撃波到達まで残り100m。

 

 迫り来る命の危険……しかしそれが何か、結維はまだ理解しきれていない。

 

 残り75m……避難民はこれまで安全圏とされていた囲いの中だ。周囲は残骸や瓦礫の山で覆われており、退路は衝撃波と同じ方向……その為既に退路は潰れており、もはや絶体絶命。

 

「……ッ!?」

 

 結維が振り向き終え、迫り来る命の危険に気付く……残り50m。

 

 その時、上空から1つの人影が高速で降りてくる。……それはシオンだった。

 シオンは両手を前に突き出し、防御フィールドを形成しようとするが、その外に先程と同じ【獅子座】の召喚陣が現れ、機械の獅子が姿を表した……残り25m。

 

『ッ?! お願いっ、防いでライガーっ!!』

 

 グオォォォンッ!!

 

 一瞬だけ悩んだが助けに来た子(ストラトスライガー)を信じ、シオンは己の願いを口にする。

 機械の獅子は咆哮と共に鬣を可動させて巨大なエネルギー防壁を作り、パスダーの放った衝撃波に備え踏ん張る……残り1m。

 

 ……0m。凄まじい衝撃波と暴風がその場を襲った。

 

──────────

 

 パスダーの衝撃波が避難民の居たエリアを直撃し、盛大な爆発音が轟いた直後……アーマロイド達が死守していた“弾丸X”のカバーが動き始める。

 隙間から光が漏れ始め、カバーが全開にされたと同時に天空へと緑色の光の柱が上がり……その発生源から4つの影が浮かび上がってくる。

 

『……始まったか……』

 

『……これで、良いんでしょうか……?』

 

『……ええ、良いんですよ……これで……』

 

 アーマロイド達がゆっくりと道を空ける中、緑の極光から姿を表した4つの影……ゴルディーマーグ、ビッグバンボルフォッグ、超竜神……そしてガオガイガーが、忌々しい眼で此方を睨んで来る相手……パスダー(EI-01)と対峙する。

 

「……行くぞォォォッ!!」




家族がコロナ罹患してるので結構リアルが忙しい……ココでちょっと区切ります。

弾丸Xによるブーストは成功した……
後は……“彼等”の勇気を信じるだけ。

感想・評価よろしくお願い致します。
(あまり乞いたくは無いけど、無いのも寂しいので……)


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第58話 世界の答え(後編)

天へと伸びる、緑の光……
満身創痍ながら、力強く佇む勇者達……
全てを見守るのは、漆黒の空に光る月と人々のみ……

……さぁ、今こそ決着を付けよう。



 厚い雲に覆われた空が、緑の光の柱によって掻き消され……空からは月光が降り注ぐ。

 既に時刻は夜半を超え、未明に入っていた。

 

「………………」

 

 その光景を見た全員が息を呑む……

 

 弾丸Xの封が開き、その中から現れた勇者達は……その全身を緑に光輝かせながら立っていた。

 

『出力は最低でも、通常の6000倍以上……最高出力は恐らく、計測不能でしょうね……』

 

 呟く様なグラヴィスの声……彼には今の勇者達がどれだけの力を持っているのか、ある程度ではあるものの把握できていた。

 

 膠着は時間にして凡そ10秒。パスダーは再びフルエネルギーの放出を行うも、フィールドそのものが勇者達まで届かない……勇者達から溢れるGストーンのエネルギーと反発し、押し留められているのだ。

 都市のライフラインを味方に付けたパスダーを相手に、その余剰出力の放出だけで張り合っている……圧倒的なそのエネルギー量に、誰もが目を疑った。

 

「……! 往くぞォォォッ!!」

 

 月夜に轟く凱の声に合わせ、緑の勇者達が動き出す……先手は勿論ガオガイガー。

 

 突撃と同時に【ブロウクンマグナム】を起動……そのままバリアへと殴り掛かり、右腕が赤熱化と同時に高速回転を始める。

 

「でぇやぁぁぁッ!!」

 

 元々【ブロウクンマグナム】は、これまで何度もゾンダーバリアを余裕で貫いて来たのだ。当然、エネルギー量の不利が無くなれば……

 

『ぬぅあぁぁぁッ?!』

 

 これまでの攻防がまるで嘘の様に呆気なくバリアを突き破り、本体表面に張られたもう一枚のバリアへと辿り着く……本来ならここで更にエネルギーを削られる。

 だがその前に、ビッグバンボルフォッグが【メルティングサイレン】を起動し、一枚目と同様呆気なく消し飛ばした。

 

 勿論、パスダーはガオガイガーの突撃を止める事が出来ず、直撃を受けざるを得ない……赤き弾丸と化した拳は左胸を深々と抉り、ガオガイガーの纏う緑の光がその傷から体内にまで影響を及ぼし、パスダーの体を焼き焦がす。

 

 予想を遥かに超えた結果と、それをもたらした攻撃……そして自らを焼く想定外のダメージで、苦悶に喘ぐパスダー……しかもダメージは目の前だけでなく、足元からも加えられていた。

 

『どぉりゃぁぁぁっ!!』

 

『はあぁぁぁッ!!』

 

 ゴルディーマーグの【全力タックル】、超竜神も【ダブルトンファー】でパスダーの下半身を滅多打ちにしており、更にビッグバンボルフォッグの新技【超絶・分身殺法】による追撃で更にダメージは重なり、パスダーは更なる苦しみに喘いだ。

 

──────────

 

「こ、コレが……“弾丸X”の力なのか……?!」

 

 モニターに写る光景に、息を呑むメインオーダールームの面々……大河は辛うじてこの言葉を絞り出す。

 

「……反エネルギー同士がぶつかれば、お互いに消し合うのみ。しかし、出力が上であれば……最後に残るのは……!」

 

 麗雄は息子の、勇者達の無事を祈る様に願いを込めながら……唯一の希望、逆転の詳細を口にする。

 

──────────

 

 その頃……民間人を狙ったパスダーの衝撃波を防いだ白き獅子(ストラトスライガー)とシオンは、此方も想定外に直面していた。

 

『……グゥ……ォォォ……ァ……』

『……ぁ……っく……ぎ……ぁッ……』

 

 2人を襲う想定外……それはGストーンに隠された連動性能により、ストラトスライガーに内蔵されたGストーンへも“弾丸X”の効果が及び、データの相互共有など運用面から高い連動性を確保されている「Zコア・ドライヴ」へ想定外のエネルギー逆流現象が起きていたのだ。

 本来ならこの時点でGストーンの連動機能は未覚醒、または未発揮状態の筈なのだが、ストラトスライガーのGSライドはZコア・ドライヴと実験的ながら直接接続されており、ダブルドライヴの仕様でGストーンとZコアのデータを相互受信、その調整もビッグバンボルフォッグの運用情報から抽出される連動データを用いて随時リアルタイムで調整される様になっている。

 ……その為、ビッグバンボルフォッグが“弾丸X”に入り、ピスケガレオン経由で送られた調整用データが“弾丸X”のデータを送った事で、ストラトスライガーのGストーンもエネルギー飽和状態へ突入。更に連動が前提であるZコアにもエネルギー飽和が波及し、その運用情報を統括するマスターコア……つまりシオンへもフィードバックされ、この様な事態に陥っていた。

 

 間近で見る彼女の苦悶の表情……先程の防御でダメージを負った、と勘違いこそしてはいたが、結維は空中からライガーの側に落下し苦しむシオンへと駆け寄り、あるであろう傷を探りながら声を掛け、何とかしようと知恵を振り絞る……

 

(傷は……え、無い?! それに、明らかに胸を抑えて苦しんでる……今ので心臓に負荷が掛かった? でも、今の攻撃はちゃんと防ぎきってたし、苦しみだしたのは防御し終えてバリアを解除してからだ……それに、直接防御してたのはあのライオンみたいなメカだし……)

 

 独特な印象を見る者に与えるGGGの制服……その上から両手を心臓を掻き毟る様に苦しむシオン。想像を絶する痛みを想像し、結維は「この人が死んでしまうかもしれない」という不安感に駆られそうになっていた。

 

──────────

 

(……何処だ?! コイツのコアは?!)

 

 エネルギー量による不利が無くなったとはいえ、コアを浄解または破壊しなければ、ゾンダーはほぼ不死身だ。それ故確実にコアを破壊するべく、凱はコアの正確な位置を探る……その時、凱はふと思い出す。

 

 東京タワーの地下でピッツァと競り合った時、【ウィルナイフ】を落としていた事を……

 

「ウィルナイフッ!!」

 

 それは一種の執念にも近い……しかし、人類の存亡を掛けて戦う凱の熱き思いに応え、Gストーンは遠隔で【ウィルナイフ】へとエネルギーを送る。【ウィルナイフ】は持ち主の意思に呼応して性能が変わる短剣……刃はこの荒れ狂うエネルギーの渦の中、正確に主へと自らの存在を知らせる。

 

「そこかぁッ!! ゴルディーマーグッ!!」

 

『おぅよッ!!』

 

 【ウィルナイフ】の反応がある場所。それは間違いなく、パスダーの元居た場所……つまり、コアがある場所に近い。【ウィルナイフ】を辿り、強烈なエネルギーの発生源……パスダーのコアを察知した凱は即座にゴルディーマーグを呼び、ハンマーコネクト……

 

「ゴルディオンッ! ハンマァァァァァァッ!!」

 

『……ッ?! ぬぅあぁぁぁ!!』

 

 必殺の体勢。黄金の破壊鎚を手にガオガイガーはパスダーの上へ陣取り、そこから右腕を勢い良く振り下ろす……無論、パスダーも黙って殺られはしない。此方も自身の右腕を突き出し、ありったけのエネルギーを込めたバリアで相殺を図る。

 

 GとZ。相反する2つのエネルギーが凄まじい反発を生み、発生する衝撃波と反発エネルギーで双方が想像以上の抵抗を受ける……が、無論その程度では2人とも止まらず、双方が更に押し込もうと力を込める。

 激しい押し合いの最中、少しずつ……ゴルディオンハンマーに亀裂が入り、広がる度にパスダーの圧力が増していく。

 

『……フフフ……。……ッ?!』

 

 だが、それも束の間……何がきっかけか。パスダーのエネルギーが急激に減退していき、パスダー本人が“それ”に反応した直後、一気に釣り合いが乱れパスダーの右腕が光の粒子へと変換され始める……

 

「EI-01! 光になれえぇぇぇェェェッ!!」

 

 脳裏には、全ての始まりとなった接触事故から今までの思い出が走馬灯の様にフラッシュバックし……凱は万感の想いを込めて叫んだ。コレが自分なりのケジメ……まだ全て終わりではないが、ようやく一つの“区切り”を付けられる。

 

 コアの側に刺さった【ウィルナイフ】が緑色に光輝きながら、周囲を包む閃光に消えていく……

 

 全高300mを超える巨体、その全てを光にし終えた後……罅の入った巨鎚を持ち上げて柄の先を大地に突き立てる。それと同時に大量の光の粒子がガオガイガーが背を向けている大地に空いた穴から噴出、同時に空が白んでゆき……長かった夜がようやく明け始めた。

 

───────────

 

『……あ…………が……はッ…………はぁ……はぁ……』

 

 EI-01の消滅を確認した直後、エネルギーの暴走により動力系に掛かっていた過負荷もようやく収まり、尾を引く様な深刻なダメージによる痛みだけが残る……弾丸Xの効力が切れたのならば、勇者達は死に等しい状態だろう。だがシオンも、己の受けたダメージのせいで状況把握すらままならず……辛うじて繋ぎ止めた意識の中、己の身に起きた想定外の原因を特定するのも億劫になっていた。

 

『主?! 主よ!! 大事無いか?!』

『何で、動力系に異常負荷が……大丈夫なの?!』

 

『……これは?! ……成る程、想定外は起こるもの……という事ですか……』

 

 話には聞いていたものの、ここまで圧倒されるとは思わなかった激戦の一部始終……その全てが終わるまでダイキャンサーとクーゲルザウター、グラヴィスコルードは微動だに出来なかった。

 その後ようやくシオンの異変に気付き、大慌てで駆け寄り声を掛ける……

 

(……大丈夫……大丈夫よ……まさか“弾丸X”のデータまで事細かに拾うとは思わなかったわ……)

 

 覗き込んでくる顔ぶれにピスケガレオンが居ない事で、シオンはこの想定外の原因がGストーン由来の現象から来るものであったと納得、何故起きたのかという想定にもおおよその見当が付いた。だがまだ意識は朦朧としており、負荷の掛かり過ぎたコア周辺の動力回路や神経回路はまだダメージが酷く、自己修復こそ始まっているものの完全な回復にはそれなりの時間を要するだろう。

 

『……グルルゥゥゥ……』

 

 過負荷のダメージでまだふらついてはいるものの、ライガーはヨロヨロと立ち上がり心配そうに喉を鳴らしながらシオンの顔を覗き込んできた。自身も相当な負荷でダメージを受けただろうに、己の事などそっちのけで主を心配する……言葉こそ話さないがその行動は眷属の鏡であろう。

 

(もう大丈夫だよ……ゴメンね……心配掛けて……)

 

 ダメージの影響か、シオンは声を出そうとするが声にならず……口パクのままだったが構わず語り掛ける。その姿を見て結維は涙ながらに叫んだ。

 

「こんな事になってまで、私達を……何故なんですか?! なんで何も言わないんですか?! 貴女が体を張ってこんなに傷付いて私達を救っても、貴女を良く思わない人は大勢居るのに……!!」

 

 結維の涙と言葉に、近くまで来ていた他の一般人達は申し訳なさそうに目を伏せる……結維はもちろん違うが、この場のほとんどの大人達はむしろ彼女を敵であるゾンダーと同じく排除の対象だと考えていた者が圧倒的多数だった……

 だが身を呈してEI-01からの攻撃を防ぎ、何かしらの影響で死ぬ程酷いダメージを受けながらも、恨み言一つ言わず自分達を死守しきったシオン……更にそこへ突き刺さる結維の怒りと呆れの混ざった指摘に、彼等は最早反論の余地すら皆無となっていた。

 

「……! やっぱり、稀星のねーちゃんだ!」

「酷く煤けてますわね、どうしたんですの?」

「もしかしてさっきの攻撃から、僕たちを守ってくれたんじゃ……」

「シオンお姉さん……大丈夫?」

 

 そんな時、声と共に大人達の間をかき分けて現れたのは、護のクラスメイト達……シオンはまだ声が出せないが、彼等に怪我一つ無い事に安堵し薄汚れた顔のまま笑顔を浮かべた。

 純粋にシオンを心配する小学生達や結維を見ていた大人達は、最早人生最大の罰ゲームの如き心境……もはや誰一人として動く事が出来ない。

 EI-01の扇動によって排斥ムードに染まり、自ら善悪の判断をせず、流されるままに滅亡の道を歩かされていた自分達は、ただ純粋に彼女を案じているあの子供達と同じ態度など取れない……

 そんな厚顔無恥な行動を取れば、それこそ後の世間から大バッシングを受けるだろう……

 

 そしてそんな大人達を尻目に、ただ一言「みんな、無事で良かった……」とだけ残し、シオンは子供達に見守られながら意識を手放すのだった……




勿論この直後に勇者達は原作通り仮死状態となり、護の涙パワーで復活。ただし、描写そのものは原作と変わらないので無念のカット……

シオンも気絶しましたが、毎度の如く数日で復帰するのでご安心を。
まぁ、この一連は歴としたフラグ建設の下地でもあるので予定調和……

そもそも、実は一般人の大多数はついでに守られただけであり、シオン自身は結維や小学生達が居たから行動を起こしただけ……世の有名な英雄的行動も、実情やら真実はだいたいこんなもの。
……ま、結果的に全員無事だったからオールオッケー♪(暴論)






……実はついこの前まで、コロナで思考が半分おかしかったんですよね。
でもちゃんと復帰しました。

感想・評価もヨロシクぅ♪

──────────

次回予告


ついにEI-01を打倒したGGG……
だが事はまだ、始まりに過ぎない。

シオンのかつての忠告通り、唐突に襲来する“原種”……
修復が間に合わず、絶体絶命に陥るガオガイガー。
アーマロイド達も“謎の不調”で全力が出せない……

そんな中、ついに現れる“白い戦艦”……
“原種”と“アーマロイド”に対し、白い戦艦はどう動くのか?


次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第59話『原種、襲来!』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!

※ 第59話の前に、以前アンケートで採択された『ドラマ撮影風のNGシーン集』を投稿予定!
範囲はTVシリーズ1期(閑話含む)。
もちろん2期バージョンも本編終了後に執筆予定なので、どうぞお楽しみに♪


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閑話:残念NGシーン集 ~ドラマ撮影仕立て

年末などによくある「有名ドラマ作品のNGシーン集」風にアレンジした本作のNGシーンを作ってみましたw
度重なるシリアス展開や争いに疲れた心を、キャラ崩壊(?)やNGシーンの数々で癒しましょう♪

なお、本来のOKシーンは本編の方でお楽しみください。


─ 第3話 機械を操る少女(後編)より ─

 

 その後、保護された謎の少年こと「天海 護」のボディチェックが終了した頃、GGGの監視システムが暴走機関車を捉え警報を鳴らす……

 その警報音に触発されたのか、別に運び込まれた少女もまた……意識を取り戻した。

 

「…… ぶぁっくしょい!! ……あっ」

 

 気絶してたのでこれ幸いと徹底検査がされたので、シオンの格好は検査着……薄着なのは言うまでもなく、撮影に使われたこの部屋には暖房設備が無かった為、少し冷えていたのだった……

 

 ……さすがに“くしゃみ”はしょうがないよね?

 


 

─ 第8話 その名は超竜神 ② より ─

 

 敵と祖を同じくする存在【Z・オリジン】の秘密を暴露したシオン。

 

 ……たとえどんな結果になろうとも、もうは後悔したくない……

 そう決意した少女の瞳は、真っ直ぐにGGGの指揮官である大河幸太郎の瞳を見つめ返していた。

 

「……シオン、さん」

 

「シオン……」

 

「シオンちゃん……」

 

 護くん、スワンさん、命さん……ありがとね。

 

 ……長い様で短い間だったけど、けっこう楽しかった……でも多分、私はもうココには居られないと思う……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……ココでの思い出は、例え死んだとしても忘れない……だから皆も、私の事……

 

 ガタッ

 

ヤッベ ……スマンみんな、な? はははっ…………ゴメンナサイ」

 

 火麻参謀が間に耐えきれず足を動かした事でセットされていたテーブルの一部に当たり、音を立ててしまった……なお、このシーンはこの後3回取り直され、その全てが火麻参謀の我慢弱い部分が原因だった事を記載しておく。

 


 

─ 第11話 黒の700を追え!(後編)より ─

 

 三段飛行甲板空母のミラーカタパルトによって、弾丸の如く射出された氷竜と炎竜……沿線を走るゾンダー新幹線の両サイドへと着地し、速度を維持しながらラダーとクレーンを使って電磁波を弱めつつ速度を落とさせ……その間に私と凱さんが内部に侵入し、ゾンダー新幹線自体にもブレーキを掛けさせる。

 

 字面だけで見れば簡単にも思えるが、ミラーコーティングの効果時間は最大でも5分しかなく……速度差のせいでゾンダー新幹線との接触は約20秒しか維持できない。勿論それを超えた時点で氷竜・炎竜は振り切られてしまい……恐らく二度と同じ手は使えないだろう。

 私と凱さんは、その20秒以内にゾンダー新幹線の運転席に侵入し、ブレーキを掛けさせなければならないのだ。

 

 はっきり言って無謀だと思ったけど……

 

(ガワさえ貫ければ、入り込めるッ!)

 

 私のアーマーは無意識の内に全体的に青と白、胸部と両腕は黒く、赤い頭部が目を引く人型形態へと変貌……ガオガイガーの代表的な貫通攻撃である『ブロウクンマグナム』を真似するが如く、右腕を更に変形させ……ドリルを形成。

 私はそのまま両足の後部から姿勢保持用のアンカーを展開させ、狙いを定めつつ右腕を前へ……

 

『グラヴィトントルネード、パァ──ンチッ!!』

 

 掛け声と共に踏ん張りを強め、“右腕ごと”アーマーが外れそのままスラスターを吹かして射出される。飛んだ先は狙い通り“X700系の運転席に続く扉”……反対側まで貫通したアーマーは天井の上を通り越して再び私の右腕へと戻り、接続後にドリルを収納して元の状態へ……

 

《カ────ットォォォ!!》

 

『……え……っ?』

 

「……あ……あのさ、シオンちゃん……腕……大丈夫……なの?」

 

 突然、私の演技に対し監督が急に焦った顔して心配してきた。話を聞くと、どうやら「腕ごと飛ばすパンチ」というのはさすがに駄目らしい……アレ? ガオガイガーのブロウクンマグナムもおんなじだよね……?

 

 ……なんでかなぁ……?(*´・ω・)

 


 

─ 第12話 太陽が消える日(前編)より ─

 

 護くん達は長旅で疲れたのか……夕方までホテル内で過ごすと言うので、私は今日の内に彼に会おうと連絡を取り、フェスタ会場の最寄り駅で彼を待った。

 

「……ん? その髪型……また伸ばしたのか? 特徴的だからすぐに分かったぞ」

 

 第一声が髪型の事……誉めたのか正直微妙な言い方で男が声を掛けてきた。

 

『……うわ、ヤクザが来た……』

 

 彼が私の会いたかった人、「桐生一馬(きりゅうかずま)」さん。

 

『……良い度胸してるな相変わらず(# ゜Д゜)』

 

 ぶっちゃけネタ的に間違ってないけどシナリオとしてはアウトであるw

 

同話よりもう一幕……

 

 それからホテルで予約していたディナーを護くん達と済ませ、ベッドに入り早めに休む……

 

(明日はいよいよフェスタ……もしかしたら、ゾンダーが出るかもしれない……)

 

『……、…………Zzz』

 

《カァァァット!! ちょっとシオンちゃん?!》

 

 さすがに寝ちゃダメでしょ……

 


 

─ 第13話 太陽が消える日(後編)より ─

 

《大会運営より、フェスタ参加者にお伝え致します……急激な天候不良による上空の視界不良が確認された為、バルーンの飛行を中止して下さい……繰り返します、急激な天候不良による……》

 

「……あれぇ? 何か声が聞こえてきたよ?」

 

「大会運営からの通達だね……成る程、上空の視界不良か……」

 

「どうしたんですか?」

 

「上の見晴らしが悪いから、バルーン同士の事故を防ぐ為に、一度降りなさいって運営からのお達しだよ……残念だけど、一度降りよう」

 

「「えぇー?!」」

 

 不幸中の幸いか……雲ゾンダーに巻き込まれずに済んだらしい、護くんの友達が乗ったバルーンは降りて来ている。

 ……でも何だろう、この違和感は……タダのバルーンだというのにこの異様な雰囲気……振り向いた私の目に映ったバルーンは……

 

『……ぶっ?!』

 

(待って待って待って?! 何その色?! 何その形?! 明らかにウ◯コじゃん?! デザインしたの誰よ?! アレ、公序良俗違反じゃないの?! というかマジでアレ、気球のデザインにする?! 普通じゃないわ?! 正気を疑うわ?! ダメダメ、待ってお腹痛い……ヤバい……呼吸苦し…………)バタンキュー

 

「「「シオンちゃん?!」」」

 

 突然の呼吸困難と腹痛に苛まれ、転倒したシオン……その原因は言わずもがな、原作同様のデザインとなった“あるフェスタ参加者の気球デザイン”である。

 


 

─ 第16話 光届かぬ世界(前編)より ─

 

イメージを一度PCに出力して更に手を加え、可能な限り詳細な設計図を組み立てる……ガオガイガーに倣い、攻撃と防御を左右に分けて特化させ……カニ歩きを彷彿とさせる横方向に特化した機動力と硬い甲殻をイメージした重装甲……多脚によって走破性能や旋回能力が上がったのは嬉しい誤算だった。

 

「お、シオンじゃないか……何してるんだい? ん、メカの……設計図か?」

 

『凱さんの負担軽減を形にしてる所ですよ……もう少しで仕上がります』

 

 噂をすれば、のタイミングで凱さんが研究室に来た……聞けば定期メンテの為らしい。

 

 ちょうど良い、と凱さんが興味を持った画面を大型スクリーンに転写して説明する……私自身は直接戦闘こそ能力的に敵わないものの、サポートマシンを可能な限り高性能機として造れば、役に立てる筈……

 凱さんの負担軽減になれば……と苦心した設計を見て、凱さんはとても嬉しそうだった。

 

「凄いな……コイツと超竜神が一緒なら、どんな相手にだって勝てそうだぜ……!」

 

『……空中戦は全く出来ませんけどね……』

 

「……そうなのか?」

 

 それから私は、時間を忘れて凱さんと一緒に【蟹座】の外部装甲をデザインしていく……大雑把に基本形を決めたら、肉付けをし、色を決めていく……そして……

 

「カァァァット!! ダメだよ2人とも! そのデザインはさすがにアウトだってば!!」

 

 監督の指差す画面の先……そこに投影されているデザイン画面には、何処からどう見ても某狩りゲー(◯ンスターハンター)に登場する甲◯種の大型モンスターが映っていたのだった……

 

 う~ん、版権問題。

 


 

─ 第22話 三重連太陽系の遺産 Act.4より ─

 

『機蟹武刃、コード:630解除……こうなったら変形して対処よ!!』

 

 指令を受けた機蟹武刃……ふざけた体躯からコミカルな雰囲気が完全に消え去り、剣士型ゾンダーロボの剣撃を鋏でいなし、相手の剣を地面に縫い付ける様に挟み込み、自身は飛び上がって多脚で飛び蹴りを披露して剣士型を吹き飛ばす。

 

 着地からゆらりと立ち上がる機蟹武刃……その姿が、徐々に変わり出す。

 

 全身の装甲がパキリと分割、流れる水が渦を巻く様に複雑な動きで組み替えられ、その内部も同時に組み替えられていく……最も強固な部分である背部の装甲も全身に分配されていき、全体の形状は瞬く間にヒトの様な姿へと変わっていき……

 

『……オォォォッ!!』

 

 ……機械の合成音声にも似た咆哮を響かせ、ゆらりと人影が立ち上がり始める。

 

 まだ細かなパーツは機体表面を行き来しているが、踞った体勢から立ち上がる間にパーツの位置は次々と固定され、分断されていた装甲も再び繋ぎ合わされていく……完全に変形を終えた姿は、主に緑と黒、そして黄色や白の差し色が目を引く装甲で構成された……まさに鎧武者の如き人型ロボットだ。

 顔はヒトを模した仮面で覆われ、武者鎧テイストの強い全身の甲冑は重厚でも動きを阻害しにくい……まるで最初から実戦向けに造られた鎧兜のよう……

 変形前の腕部分だった鋏は人型用ではないので、予備のハードポイント……バックパックの左右に接続されている。

 

 そして立ち上がった鎧武者……蟹座アーマロイド『機蟹武刃』、その変形した姿が全貌を現すと、私は感慨深い何・か・を感じながら改めて名を呼んだ。

 

『……往きなさい、機蟹武刃。いえ……機蟹武刃、ダイキャンサー!』

 

♪(乾・坤・一・擲!)スー◯ーロボット◯戦OGシリーズ より

 

 私の台詞終わりに重ねられた、何処か聞き覚えのある……しかし予定されてないBGM。

 

 ダイキャンサーは徒手空拳で構え、先ほど吹き飛ばした人型ロボを睨んで相対……体勢を整え直した人型ゾンダーロボもダイキャンサーの構えに応じるが如く……

 

《カァァァットッ!!》

 

「ダメダメ! 何このBGM予定に無いよ?! ……ものすっごく合いそうだけど

 

 音楽担当さんの悪戯だった……

 


 

─ 第24話 海のヴァルナー(1)より ─

 

 私は診察の為にスミレさんに頼み、ヴァルナーの名前を呼んで側に来て貰う……

 

『……アナタ、人間は好き?』

 

《キュイィィィッ♪》

 

『「………………返事来ちゃったよ」』

 

 無言で通す筈がまさかの“元気な”お返事……私とスミレさんはもう声を揃えてツッコむしかなかった。

 

 しょうがないよね、生き物だもん……

 

 もちろん撮り直しになりました。

 


 

─ 第28話 悪魔達の饗宴(2)より ─

 

 現在、どうなってるかというと……

 

 基地内システムをバーチャル空間に変換した戦闘フィールドの中……私は今、ガオガイガーになって敵ゾンダーの尖兵である黒い虫型の小型メカの群相手に、切った張ったの大立回りをやるハズが……

 

『……ちょ……待って待って待って待って?! やっぱムリ無理むりぃぃぃ~~~!!』

 

 サイズ感が少し違うとはいえ、黒光りするボディに薄茶色の羽根、高速で地面を這い回りる姿、忙しなく動かす長い触覚……

 

 何処からどう見ても、台所等に潜む例の害虫(ゴキ◯リである)……それが地表を覆い尽くすレベルで大量に蠢き、そこら中を這い回り……ついにシオンを“敵”として捉え、攻撃せんと殺到する……それまさに()()()だ。

 事前に状況は伝えられていたとはいえ、実際に見るのとは“雲泥の差”であった事は言うまでもない……

 

 ちなみにこの映像は、最新3DCGを駆使して作成された“本物と同レベル”のVR映像であり、撮影後に部分的な手直しをして戦闘を再現する予定でした。

 

 ……しかしながら、さすがにコレは抵抗あるよね? ね?!

 


 

─ 第38話 漆黒の射手(後編)より ─

 

『お前も勇者! そしてデキる男だ!!』

 

 ドォゴォンッ!!

 

 突如、爆音と聞き間違う程の音が響く……勿論音を立てたのはクーゲル。その足元はクッキリと半球状に抉れている、あれ程ゴルディの言葉に悪い気はしてなかったクーゲルザウターの纏う雰囲気は見事に一変しており、ワナワナと拳を握り締め、何かに激怒している。

 

『な、何だよ……?! 俺様はお前を誉めグボォァァァッ?!』

 

 ゴルディは突然態度を急変させたクーゲルを見て混乱……よく分からないまま弁解(?)をしようとし、その態度に更に腹を立てたクーゲルはゴルディの胴体中心を狙い、後ろを向いたまま爪先を捩じ込む様に一蹴……しかもなんと蹴撃と同時にインパクトプレッシャーまで使い、盛大に吹き飛ばしたのである。

 

『な、ゴルディーマーグ……?!』

 

『オイオイ、今度はクーゲルとゴルディのケンカかぁ?』

 

 氷竜と炎竜が騒ぎに気付いて声を掛けてきた。

 

『て、テメェ……! 俺はお前を誉めてやってるんだぞ?! それを足蹴にしやがって……!』

 

『……ッ?! …………!!』

 

『もぅ……何してるのよ……』

 

 これはさすがに流れが悪すぎるので私は止めに入る……やり取りを辿れば、すぐに原因は分かるものの、ゴルディは自分が犯した【失態】に全く気付いていない様子。

 

『お前からもちゃんと言えよ! コイツ、人が折角誉めてんのに俺様を足蹴にしやがって……』

 

『ゴルディ……もう一度、さっきまでのやり取りを思い出して。何でこの子が怒ったか……分かる?』

 

『あぁ?! やり取りも何も、今俺様が被害被ってるだろうが!? 何を馬鹿な事を』

 

『ゴルディ……1つだけ言っとくわよ? ……クーゲルはね、歴とした女の子なの!』

 

『………………ぇ……?!』(氷竜)

 

『………………は……?!』(炎竜)

 

『………………あ"……?!』(ゴルディ)

 

『『『………………はぁぁぁぁぁぁ?????!!!!!』』』

 

 ……うん、台本とは違うけどそういう反応になるよね~知ってた。




読み直しながら書いて、思わず吹き出すシーンを想像しました。

ここで一つお知らせです。
今年でWindows10の公式サポートが切れるとの事で、私事ながらPCを新調しました。
今まで“ちょい重”だったゲームもサクサクでかなり快適♪
……ですが、今までHDDに溜め込んでたデータをPC本体に内蔵できない(発熱によるパーツ劣化と性能低下を憂慮した)仕様となったので、原作見直し等の環境が間に合わず執筆が進みませぇん。( TДT)

この場で次話の公開が大幅に遅れる事を先に報告させていただくと共に、深くお詫び申し上げます……


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閑話:残念NGシーン集 & 激戦の果てに……

続きが気になるか……? 
悪いが、コッチをおかわりだ!!



─ 第39話 GGG真夏の怪談話より ─

 

 そして、ギャレオンであろう胸の獅子の口がゆっくりと開き、人影が出てくる……背には白い鳥の翼と黒い蝙蝠の翼、凱さんと同じ炎のようなオレンジ色の髪に、太陽の如き白銀に輝く装具。

 

 その人物はゾンダーコアを護くんと同じ様に浄解……コアにされた人物を元に戻すと、簡易ゲートのようなものを開いて私の所へ飛ばしてきたのだ。

 

 多少シルエット的な違いはあれど、あの目が持つ雰囲気はそうそう間違える筈がない……第一、私の直感が言っている。『あのガオガイガーは個人的な趣味でアレンジっぽい事がされたもの……()()()()()()()()()()()()()』だと……

 

『……カルナさん、ですよね……?』

 

 衝動的に口にした名前に、過剰反応オーバーなほどビクッとした人影……今、確信に変わった……アレは絶対カルナだ。

 

「……いえ、私は星の彼方より遣わされた宇宙警察機構の……」

 

『宇宙警察機構? 空想科学や特撮ヒーローじゃあるまいし……この世界じゃまだ外宇宙進出してないから子供騙しの嘘ってすぐに分かるわよ? それ以前にそのタイプの主人公って成人男性が相場じゃなかったっけ? 初期作品で女性キャラはサポート要員って明確に表現されてたし、そもそも警察組織みたいな枠組みはその目的や任務内容の制限から一定以上の体格を持つ成人でないと勤まらないって風潮があるからその体格で宇宙警察機構を名乗るのにはちょっと無理があるんじゃない?』

 

 前世とはいえ、地球で放送済みである特撮作品や勇者シリーズにも宇宙警察機構は存在するが、どれも全員が成人男性……女性キャラも居なくはないが、立場上戦線に出る事は無いサポート要員である。それに警察官というのは一部ながら“対暴力”や“対集団”を想定している任務があるため、必然的に“成人もしくは一定の体格を有する人物に限る”とかあるんじゃなかったっけ?

 

「………………ぐすっ……ふぇぇ……」

 

 あまりにもガチな私の返しにカルナは思わず泣き出し、その場が凍り付いた……もちろん、私の黒歴史となったのは言うまでもない。

 


 

─ 第54話 機界指令 vs. 勇者ロボ軍団(4)より ─

 

 ぶっつけ本番……テストも何もなし、出たとこ勝負の大一番。しかし、この子ならやれると確信している。だから信じて送り出す……あれから“更なる進化”を果たしたコア・ドライヴを持つ、【獅子座】勇気を象る獣のアーマロイドを……!

 

『空間転送ポート固定、カタパルト解放……往きなさい、アーマロイド【獅子座(レオ)】……ストラトスライガー!!』

 

 私の声に応じて、最大解放された水色の転送ポートから飛び出し、瓦礫の大地を疾駆する獣……

 

 ♪◯イド新◯紀/ZEROより【BGM】ストライクレーザークロー

 

 疾走感溢れる音楽と共に瓦礫の大地を駆け抜ける白き獅子……装甲は月明かりを浴びて仄かに光り、躍動感抜群の挙動と相まって幻想的な雰囲気も感じられ……

 

「カァァァットォォォ!! またお前か?! くぉらぁぁぁッ!!」

 

 また音楽担当さんのイタズラだった。絶妙なトコロ突いて来るよね……それとも、私も知らない“何か”を知るとでもいうの……?

 


 

 ついに、機界司令パスダーの打倒を成し遂げた我らがGGG……

 

 だが、まだゾンダーとの生存競争に勝った訳ではない。

 

 先んじて危惧されている「原種」の存在……そして、来るであろう決戦の時に備えて、我々は止まる事は許されないのである。

 

 しかし……ここに来て、思いも寄らない事態が刻一刻と近付いている事を、まだ誰も知る事はないのであった。

 


 

 

――――――――――

 

 パスダー打倒から丸一日が経過した。

 

 アーマロイド達も、今回ばかりはなかなかに無茶をした……想定していた戦闘だった為か、直接的な損傷こそ少ないものの、まる1日掛かったこの決戦中に少しずつ蓄積していたダメージが響いているのか、駆動系や制御系にタイムラグや不完全処理による悪影響が生じている。

 

 勿論、同じ戦場に立っていた勇者達も相当なダメージを受けているので、私が持つアーマロイドの技術を転用可能な限り大盤振る舞い……後々の為に、と造っておいた半自動物資成形装置「Zi-ビルダー」を活用して交換用パーツの生成を手伝い、駆動システム周りも担当さん達を交えて何度もブラッシュアップを重ねてレスポンスや整備性の向上に努める事となった。

 

 ……代わりに、アーマロイド達のオーバーホールを手伝ってくれるという交換条件でね。

 そしてオーバーホール中は活動が極端に制限……というかほぼ不可能になる為、アーマロイド達には「コアボディ」という新しい身体を各個に与えた。

 

 なお、当初は簡易的なボディフレームに簡易装甲システムやネットワークリンクを内蔵した一時凌ぎのボディとなる予定だったのだが、命さんやスワンさん、護くんや凱さんにまで揃ってダメ出しされ、その意見に眷属達が感化されてしまい懇願……麗雄博士と揃って苦笑し、最終的に「希望のサイズ」で「自律行動可能」な、ガチで「コア」と呼べる超技術満載のユニットとなった。

 

 このボディは当初予定していた一時退避用の簡易ボディではなく、各自の特徴や能力の一部を限定的に発現可能な機能と独自の代謝システムを内蔵しており、致命傷ではない損傷率50%以下ならば自己修復が可能な他、生物が原型の子は捕食……もとい食事が出来るのである。ぶっちゃけ、非戦闘時の暇潰しを可能にした訳だ。

 

『『ありがとうございます!!』』

 

 ……しかし、元が元なのにクーゲルザウターとグラヴィスコルードは何故か人間型(ヒューマノイド)タイプ。しかも凄まじく拘った細かい外見の指定があるボディを要求してきた。

 まぁ、制作難易度は高い方が達成感ある*1し、私の個人的な理由やエゴで戦わせてる訳だから、この程度の要望くらい出来る限り叶えてやらなくちゃね……

 

――――――――――

 

 おっと、忘れちゃいけないのが元・プリマーダだった『メティス』さんと、元・ポロネズだった『ゼーヴレゲヒト』ことゼーヴさんの処遇なんだけど……この2人の口から、過去一ヤバくて物凄い三十連太陽系の過去が語られた。

 

「……私たちは『プロジェクトZ』の研究者。我々の研究成果を元に、太陽系マイナス思念浄化プログラム『Zマスター』は創り出されたのです」

 

「その……元になったのは、私達の愛の結晶。……愛娘()()()()なの」

 

 ……彼ら夫婦の愛娘「リュシオ」は身体が弱く、いつ死んでもおかしくない子だった。無論、彼らは愛娘を失いたくない一心で研究を重ね、1つの成果を出す。

 

 それが、現在の私の身体を構成する自覚型金属細胞「Zi-メタル」の雛形であり、ゾンダーメタルの元となった重金属粒子合成素材だ。

 それは遺伝子構造を模倣して対象を完全にコピー、構成素材の違いはあるものの完全な分身を創り出せる奇跡の素材だった。

 夫婦は愛娘の遺伝子データをベースにして彼女の分身体を創り出し、ナノマシンによる保全をしていた彼女の脳を移植して健康な身体を与える事に成功……するはずだった。

 

 しかし、些細な違いが引き起こした影響……命を弄ぶ行為と見做された天罰なのか、新しい身体は何故か自己治癒能力が働かない為、些細な機能不全すらも解消できず、彼女は自分の身体を満足に動かせないまま、半年後に眠ったまま息を引き取った……

 

 夫婦は失意の内に自殺を図ろうとしたが、夫婦の研究を鑑み、当時の紫の星の指導者の勧誘を経て夫婦は再び愛娘を取り戻すべくゾンダーメタルの研究者となり、紆余曲折を経て「昔の私たち」(Z−オリジン≠Zマスター)が生まれたのだという……

 

 それから、夫婦は「私」にある事を教えてくれた。

 

「……リュシオは、今の君にソックリだったよ。生きていれば、ちょうど今の君と同じくらいだと思う……」

 

 ゼーヴさんの言葉に、私は絶句してしまう……

 

 それは、今の私の姿が2人にとって……幾ら望んでも掴む事の出来なかった、触れられない未来のように見られていたから……

 

――――――――――

 

 それから更に数日後……私は原因不明の全身の痛みに魘されて十分な睡眠が取れなくなっていった。

 

 いや、この痛みはあのパスダーを倒した後辺りからずっと続いていた……

 それまではチリチリとしたものだったし、感覚的にも不定期で痛む場所もバラバラだし、注射針で刺された程度のものだった。

 勿論、麗雄博士には早期の内に相談もしたが……あらゆる検査を受けても原因は特定出来ず、何度も自己調整や修復を走らせても何も変わらない……

 

 感覚プログラムの修正? 真っ先にやったけど“無駄だった”。

 

(これは……もしかしたら、“例の敵”の方かな?)

 

 パスダー戦の前……あの時、見習い管理者さんに示唆されていた『私を使って歴史を壊そうとした誰かさん』の存在。

 

 当時の三重連太陽系の超技術ならば、あらゆる相手を超越していると踏んで利用したのだろう……そうでなくとも、原作通りの時点で文明を滅ぼせる『Zマスタープログラム』なのだから。

 

 そう遠くない内に『原種』は地球へ来るだろう……原作ではそれほど間を開けずに来ていた訳だし、私の不調は誰にも知られてはいけない。

 

 

 

 

 

 勿論、眷属達にもね……

*1
ガチのビルダー魂に感化された。




驚愕の過去と、蠢動する闇……

原種編は波乱に満ちた展開が待っている様子。
次の次から本編に戻ります。


……それはさておき、リアルが忙しい。
そりゃPSO2はイベント中だし、仕事もコロナの煽りで圧迫され気味……

オノーレェ!


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TVシリーズ2期「原種編」
第59話 次なる暗躍、そして……


EI-01との決着は付いた……
しかしゾンダーとの戦いは、まだ終わりではない。

次なる試練は、もうすぐそこまで来ている……

そして、それに呼応して招かれざる者と
世界の裏で胎動するモノも……



 地表から高度約160kmより上にある空間……そこは地球周回軌道とも呼ばれ、主に人工衛星や気象観測衛星などがある領域だ。

 

 その場に静止すれば、間違いなく地球の重力に引かれ落下する為、その高度を維持するために最低でも約3km/s*1という速度で移動し続けなければならない……

 とはいっても、この領域はほぼ宇宙空間なので速度の減衰は起きず、初速さえ確保できれば速度を維持する必要は無い。

 

 しかし、場にある物の数が増すと、互いに接触して破損する可能性が出てくる為、お互いに距離を取って移動する必要がある……

 

 そんな領域の只中……数多く飛び回る人工衛星などから一度たりとも捕捉されず、軌道をゆっくりと離脱する金属の塊があった。

 それは全体的にくすんだ紫色をしており、中央には意味深に空いた穴……

 やがてその物体が高軌道にある最後の人工衛星をやり過ごすと、中央の穴に変化が現れる。

 

《……フフフッ……フフフハハハッ!!》

 

 穴に浮かび上がったのは、先の東京における戦いで消滅した筈のEI-01……パスダーの顔幻影。

 そしていつの間にか……付近に高さ数キロ近い巨大な柱の様な3つの構造物と、ボール状の物体を足場にして立つ、色白で人型の存在が居た……

 

 その人型の存在は道化師の様な服装とメイクをしており、徐に口を開けると、パスダーの顔幻影を浮かび上がらせた金属塊を飲み込み吸収、ただ一言を放つ……

 

『……情報収集、完了』

 

 高軌道からある程度離れているとはいえ、こんな巨大な構造物を人工衛星が認識できないのはおかしい。しかし、衛星もソイツらも、お互いをまるで認識していない……

 

《……やはり一筋縄では行かぬ、か。だが最早“暁の予言”は変わらぬ。ただ、この世の全てを“無”に帰すのみ……》

 

 道化師の傍ら……宇宙の闇に溶け込む闇がそう呟く。その“闇”には姿も形も無く、ただ宇宙の暗闇に赤い切れ目が一対の目のように浮かぶのみ。

 

《貴様が如何に足掻こうとも、終わりは変わらぬ……“闇より生まれし光”よ。世界を飲み込む終焉の前には、全て無駄な足掻きと知るが良い》

 

 

 その不気味な光景……それは、これから始まる更なる苦難への始まり。しかし、その様子を空間を隔てて観察する、多種多様な色をした“光球のようなもの”が見ていた。

 

《……始まったな》

 

《………………》

 

 水色の光がそんな一言を放つ……他の光は無言だが、全員が肯定の雰囲気を出していた。

 

《……奴らがどんな手を使おうと、俺達が全員揃えば勝ちの目を出せる》

 

 紅の光は「自分達が揃えば“勝てる”」と言い放つが、隣の白い光は不思議そうに訪ねた。

 

《あらダーリン、今回は“分の悪い賭け”とは言わないのね?》

 

《……この世界は元々が()()()()の状態だ。だが、これからは“主に加え、俺達も”打って出る……よほど下手な策士が盤面を狂わさない限り、俺達が全員揃えば勝ち戦だ》

 

 「紅」の言葉に嬉しそうな「白」ではあるが、水色の隣にいる方の「白」からは忠告が飛んだ。

 

《【牡牛座(タウラス)】……油断は禁物、という諺がありますの》

 

《ああ、分かっているさ【水瓶座(アクエリアス)】……だが、俺達は負けない。負けられないんだ……この世界の人々と、主の為にも》

 

《……そうね》

 

 その忠告に「紅」……【牡牛座】は真剣な雰囲気で返す。その声のトーンに、も雰囲気を一転させ、真面目トーンで答えた。

 

《……【牡牛座】、何だか楽しそうですの》

 

 だが【水瓶座】は逆に雰囲気を緩ませ、【牡牛座】を“楽しそうだ”と評する。

 

《……だな。先に出た奴らがちょっとばかり羨ましいぜ》

 

 それまで無言を貫いていた「金」の光が接近してきて【牡羊座】に同意を示し、“先達”を羨んだ。

 

《俺達の身体(ボディ)は、いずれ(アイツ)が用意してくれる……その時まで各々力を高め、その時を待てばいい》

 

《……主さまに……無理はさせられない……ですの》

 

 「水色」が“その時を待て”と締めるが、【水瓶座】は心配そうな雰囲気を出す……

 

《心配するな【水瓶座】、アイツは少々無鉄砲だが馬鹿じゃない。それに先に出た奴等も居る》

 

 それを察し「水色」……【牡羊座(アリエス)】は己の持つ「主の評価」を告げ……先達も居る、と【水瓶座】を励ました。

 

《もち、私とダーリンはセットでの参戦を希望するわ♪》

 

《……俺は単独でも構わないんだがな》

 

《あぁん、もぅ……つれないわねぇ》

 

《【山羊座(カプリコーン)】……そういうのは他所でやってくれ。何だかモヤモヤする》

 

 唐突に【牡牛座】の隣の「白」……【山羊座】が“セット参戦希望!”と言い放ち、【牡牛座】は単独でも良いと切り捨てる……その惚気に「金」……【天秤座(ライブラ)】はヤレヤレといった感じでため息を吐いた。

 

《フフフ……》

 

 その漫才のような光景に【水瓶座】も完全に緩み、含み笑いが出た。

 

 彼らは主の命あらば、何を置いても駆け付けるだろう……しかし今はただ、その時を静かに待つのみ。

 

 

── 全アーマロイドの実現化(マテリアライズ)完了まで、あと…… ──

 

 

──────────

 

 この数時間後……GGGアメリカの輸送艇で帰国の途に付いていた獅子王雷牙とスタリオン・ホワイト、マイク・サウンダース13世らは、謎の飛行物体との遭遇を最後に行方不明に……

 

 また、東京のGGG本部へも同様に謎の飛行物体が飛来……

 

 シオンの持つ情報と、ギャレオンのブラックボックス解析によって得ていたデータを用いて、謎の飛行物体を「原種」と断定していたGGGであったが、迎撃準備が整う前に襲撃を受けた事で、修復こそ間に合ったものの、各部の調整が不完全なままガオガイガーは出撃。

 

 更にGGGベイタワー基地ごと東京湾埋立地……Gアイランドシティが丸ごと灰燼と帰した為、獅子王凱は孤立無援状態に……

 

『……オレの……俺の勇気は、死なない……ッ!』

 

 ガオガイガーの持つポテンシャルや戦闘能力はこの時点で、原作におけるスターガオガイガー以上のレベルにパワーアップを果たしていた。

 だが、シオンが恐れていた改変の影響か……原種は形状や能力こそ原作と同一ではあるものの、その攻撃力は原作を逸脱する程になっており、ガオガイガーは原作以上の危機的状況に陥ってしまう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、その事態を救ったのも……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ジェイ・クォースッ!!』

 

 突如として現れた白亜の戦艦……それが全高100m級の巨大ロボットへと変形し、人知を超えた凄まじい戦闘能力で原種3体を瞬く間に撃沈……

 

「……何なんだ……コイツは……!」

 

 重症ではあるが意識を保っていた凱は、3体の原種を撃破した白い巨大ロボを呆然と見上げる。

 

「凄く強い、凄く大きい。凄いロボットだ……!」

 

 凱を心配し、シティ近くまで来ていた護少年もまた、遠目からもよく見える白亜の巨人の姿を驚愕の表情で見上げていた。

 

──────────

 

《ゾンダーとは似て非なる反応が2つ、高速で此方へ接近してくる》

 

『……なに?』

 

「……トモロ、最大望遠で映せるか?」

 

 件の戦艦ロボ内部にて……(ゾンダー)に似た反応を捉えたと合成音声が告げる。ロボを操る男が怪訝な声を上げるが、同乗していた少年は映像を映すよう指示を出し、外の風景がカメラの映像へと切り替わる。

 

 そこに映し出されたのは、本土側方面の低空と地上を、疾走しながら接近してくる2つの姿……低空を駆けながら飛ぶクーゲルザウターと、追従して地上を疾走するストラトスライガーだ。

 

「……やはり、あの時のマシン……!」

 

『……という事は、お前の話にあった“例の女”の眷属か……!』

 

 戦艦ロボは戦闘体勢を取るが、少年は進言する。

 

「でも今、彼女と事を構えて……万が一、僕らの本懐を果たせなくなるのはさすがにマズい。J、ここは戦域離脱を」

 

『……分かった。フュージョンアウト! ……ジェイアーク、急速離脱!』

 

《了解》

 

 少年の提案に、Jと呼ばれた男は少しだけ思案し、コンピューターであるトモロへと指示を下す……

 そして白亜の巨人は元の戦艦の姿へと戻り、その巨体に似合わぬ超高速で空域を離脱していくのだった。

*1
「秒速約3キロメートル」。この速度は“高軌道”での静止衛星が必要な周回速度で、それよりも少し低い“中軌道”領域では秒速約5キロメートル。地球に最も近くなる“低軌道”領域では秒速約8キロメートルを必要とする。




ほぼ原作通りの推移……

しかし、戦艦ロボ側にはシオン側の情報がほとんど無く……彼女の真意を測りかねている他、本懐を果たせなくなる危険性を危惧してこの場を退いた模様。

それぞれの思惑がある中、満身創痍のガオガイガーを残して去る巨大な戦艦ロボ……彼らはいったい何者なのだろうか?




次回予告


君達に、最新情報を公開しよう!

ついに現れた、機界31原種。
そしてそれを撃破した“謎の白き戦艦ロボ”……

物語は更に加速を続け、舞台はより混迷を極めていく。

そんな中シオンは、この先に待ち構える激戦を乗り越えるべく
その身に人知れず爆弾を抱えたまま、戦力強化に勤しむのであった。


次回、勇者王ガオガイガーIf NEXT...
第60話『逆襲、機界31原種』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!




さて、始まりましたね「原種編」。

ここで一番に盛り上がるだろうジェイアークの出現シーンですが、やはり下手に文章化して雰囲気を損ねたくないのと歌詞まで載せて雰囲気を感じたいのとせめぎ合ってしばらく悩みましたが、さすがに無駄な遅延も雰囲気を損ねると思い苦渋の決断。
泣く泣くカット……

パリアッチョのシーンを俯瞰して見ていた残りの星座達はいつ頃実体化するでしょうか……
このまま突っ走ると「FINAL」やら「覇界王」でどうなることやら……自分でハードル上げといて今さら後悔してますw

まだ続きが見たい方は感想よろしくお願い致します!


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第60話 逆襲、機界31原種(前編)

推移は概ね原作通りだけど、一部は描写が異なります。



 謎の白き戦艦ロボが去り、残されたのは再起不能状態にまで大きな損傷を受けたガオガイガーだけ……

 

 ストラトスライガーとクーゲルザウターには、この状態のガオガイガーを輸送する手立てが無い為、2機は揃って頭を垂れた。

 

『……ごめんなさい。ここまで損傷が酷いと、私達では……』

 

《グルゥゥゥ……》

 

「いや、そんな事はどうでも良い……問題は奴等がまたいつ来るのか分からない事の方だ。ガオガイガーがこの状態じゃ、俺は戦えない……お前達(アーマロイド)に頼るしか……」

 

 凱は己が戦えない事に悔しさを滲ませるも、事実として受け入れる。だがその右手は悔しさを表すかのように強く握り締められている……

 

「……凱兄ちゃん……」

 

 この少し前……荒れた道路をガオガイガー目掛けて進んでいた護。

 原作同様に護の両親が車で突撃してきたまでは原作通りだったが、その様子をストラトスライガーが何時の間にか近くに来てジッと見ていたので護の両親は“北極ライオン”と盛大に勘違い……

 護が誤解を解いた為その場は納まったものの、当分ストラトスライガーには慣れないだろう。

 

 閑話休題(それはさておき)、護は凱の心情を察し、悔しさを滲ませる姿を見ているしかできない……それに加えて、同級生だった戒道幾巳も、“自身に似た能力を持つ子供”だと分かった為、複雑な思いを抱えていた。

 

 だがそこへ、重厚な駆動音の混じった飛翔音が聞こえ、周囲が影になる……全員が気付いて見上げるとそこには「黄色い装甲をも持つ、超巨大な飛行物体」が頭上に浮いていた。

 

――――――――――

 

「お久しぶりです、勇さんに愛さん」

 

「……え……? 稀星……さん?」

 

 頭上を飛んでいた船が付近に降り立つ。呆気に取られる天海夫妻と護くん……そんな事は露知らず、船から降りた私は、前と同じ様に天海夫妻へと挨拶を発した。

 

「はい。GGG医療特務官、稀星シオンです……申し訳ありませんが、あまり時間が無いのでよく聞いてください。少しの間、彼を……護くんの身柄を、我々の方で預かっても宜しいでしょうか?」

 

 私の突然の申し出に、言葉を発せないご両親……当然ながら、こんな事を言われて普通で居られる筈はない。

 地球の存亡に関わるとはいえ、急に“お子さんは宇宙の存亡に関わる存在なんです”とバカ正直に話しても、更に混乱するのは必至だし、そもそも信じて貰えないだろう。

 

「現状では、詳細までお話はできません……ですが、護くんの存在が、今の我々にはどうしても必要となっています。……勿論、彼の身の安全は保証しますし、事が済み次第、必ずお二人の元へお送りします。……こんな事を言うのは何ですが……私個人としても、護くんの存在は、私の心の支えにもなっていますので……お願い致します」

 

 最後のは“もしもの時”の保険だ。今後私の存在がGGGの皆にとって……地球にとっての脅威となるなら、私は彼等に抵抗せず討ち取られる覚悟をした。……我儘かもしれないが、どうせ敵に回って消えるのなら、他ならぬ護くんの手で浄解されたいからね。

 

 護くんのご両親……特に父親である勇さんは、私の隠している本音に気付いているだろう。私も、小さい頃は母よりも父に懐いていた記憶が今も朧気に残っている。かと言って母と不仲ではなかったが、どちらかといえば父と何かをしていた事が多い……

 それが理由なのか……父親という存在に対して、私は無意識に無防備になりがちだ。今でもさ、麗雄博士とか大河長官にも……何かこう……ね。

 

「……。……分かりました。私達の息子が、あなた達の役に立つのなら」

 

「パパ?!」

 

 当然、母親として愛さんは反対したい……それも理解できる。子供を慈しみ守るのが親の役目。

 

 ……父が子を支えるならば、子を守るのは母だもの。

 

「大丈夫さ。彼女は今までも、嘘や出来ない事は言わなかったし、護も彼女に懐いている……それにGGGなら、何よりも人命第一、不可能すら可能にするとまで言われる有名所だ。出来ない約束はしないだろう。それにほら……」

 

 そう言って勇さんは当の本人……護くんの顔を母に見せる。その顔には“反対されても絶対に行く!”と言わんばかりの顔をしていた。

 

「本人がその気なんだ……子供のやりたい事を、大人が邪魔しちゃいけない」

 

 愛さんは母親として、護くんを危険な目に合わせたくない。でも、我が子の未来を閉ざす行為もしたくない……どちらかを妥協しなくてはならないなら、子のためを思うのが親の務めと理解している。

 

「……分かったわ。……護ちゃん……必ず、無事に帰ってくるのよ?」

 

 未練はある。でも、我が子のためを想い、帰れる様にと願う愛さんは、愛しい我が子を抱き締めて涙ながらの言葉に想いを託す。

 

「……うん。行ってきます、お母さん」

 

 護くんも、愛さんの背に手を回して抱き返し、溢れる愛情に素直に応えるのだった。

 

 

 シオン達を乗せた巨大な黄色い船……新生GGG所属、全域双胴補修艦アマテラスはゆっくりと浮上し、宇宙へ向けて飛翔する。

 

 揃って空を見上げる天海夫妻の後ろには、何時の間にかもう一組の夫婦が佇んでおり、天海夫妻と同じ様に我が子を憂う想いを胸に秘めながら、天へと登る船を見上げていた。

 

――――――――――

 

『……大丈夫?』

 

 私は船の窓から地球を見下ろす護くんに声を掛けた。なんだか寂しそうな雰囲気をしてたし、さっきの事もあるから……

 

「……はい。大丈夫です……ゴメンナサイ。お母さん、心配性だから」

 

『我が子の事だもん、あれくらいは当然だと思うよ……況してや、危険な事に巻き込まれる可能性があると分かってるのならね』

 

「……シオンさんも、ご両親に会いたいって思う事はありますか?」

 

 護くんには伝えてない……私の生みの親は2人とも既に他界しており、護くん位の歳から私は天涯孤独に育った。確かにZオリジンとしての私なら、生みの親はあの2人(ゼーヴとメティス)……頭では理解していても、意識としては根っからの地球人である私の精神は、あの2人を親としては見れなかった。

 

(……私の両親は……もう……)

 

 稀星シオンの戸籍上の両親……父の正樹と母の琉音は、今から約10年ほど前の結婚記念日に旅行先で事故に遭い、未だに行方知れずのままだ。

 当然ながら10年も前の事故である為、日本からの捜索隊派遣は引き上げており、現地でも既に未帰還者リストから死亡扱いで外されている……シオン自身も既に他界したと割り切っている為、遠縁である桐生一馬らも黙認しているのである。

 

『……会えるものなら、もう一度くらいは会いたいわね』

 

「……ぇ……?」

 

『それよりも、せっかく宇宙に来てるんだから、今しか見れないかもしれないこの光景を目に焼き付けておかなくて良いの?』

 

 あまり辛気臭い雰囲気のまま居たくはない……その一心で露骨に話題を変える。護くんも私の心境に配慮してくれたのか、気付かないフリして応えてくれたのだった。

 

――――――――――

 

 GGGオービットベース……数年前から建造中であった国際宇宙ステーション『アイランドⅠ』を地球防衛に転用した、衛星軌道に浮かぶ国連所属の防衛拠点である。

 

 EI-01撃退の顛末は、宇宙から来る恐るべき脅威をありありと示し、国連総会に地球防衛組織の設立を急がせた……その時短のために以前からゾンダーの存在を認識し人知れず対抗しているGGGを筆頭に、世界各国から技術者を集結させ、計画途中であった第2国際宇宙ステーションを大規模改修し、本部施設兼最前線基地としたのである。

 

 ……最も、急な計画変更により、アイランドⅠ建設に従事する技術者達は苦言を呈したが、シオンを引き連れた国連事務総長直々の技術提供と疲労軽減策を引っ提げての視察……それと偶然と不可抗力が重なった一幕により、建設者達はある種の「凶走状態」となり、計画変更後の進捗は数ヶ月の前倒し……

 

 今回の「原種襲来」で危機感も高まった事により、完成まであと僅か……という所に漕ぎ着けたのである。

 

 なお、最大のキッカケとなったのは「不可抗力」なのだが、何が起きたのかはシオンの名誉のために当事者だけの極秘扱いとされている……

 

 

「……うわぁ……!!」

 

 あまりの巨大さに言葉を失う護くん。あの後、護くんは凱さんの応急処置が終わったので一度そちらへ向かった……己の不甲斐なさに自傷しかねないほど苛立っていた凱さんだが、護くんの執り成しにより表面上は平静に戻っている。

 

(……私は全部知ってるからだけど……ちょっと気の毒過ぎるかな?)

 

 Gアイランドシティが壊滅状態に追い込まれた時、GGGベイタワー基地そのものも直接攻撃を受け、大河長官をはじめとするメインスタッフ達は基地施設ごと消滅した……と、凱さんは思っている。

 実際攻撃は受けたが、ベイタワー基地の中央司令センター兼脱出機構である「ヘキサゴン」と、それに搭載された新開発の「ウルテクエンジン」により、ギリギリながら大気圏外まで脱出に成功しており、全員無事である。

 

 ただし、原作と同じ様に敵の目を欺く事に繋がる為、敢えて公表せず、国連主導の情報操作によりGアイランドシティ壊滅の件は詳細を伏せられている。その為、誰一人としてGGG関係者の生還を語らない故に凱さんの精神は少し不安定だった。

 ……後ですぐ回復するとはいえ、この状況を敢えて見逃すのは「精神科医」として失格だろう。でも、この流れは敢えてそのままにしておく方が、()()()()()()()()()()()()()()()()筈だ。ガマンガマン……

 

《こちら、GGGオービットベース。アマテラス、応答願います》

 

 私にとっては聞き慣れた……そして凱さんと護くんにとっては、最も聞きたい人物の声が通信越しに艦内へ伝わってくる。だがオービットベースではまだ量子通信機器が本格稼働していない事もあり、既存の電波通信のため僅かながらノイズ混じり……その為、凱さんも誰かまでは特定できていない。

 

『こちらアマテラス。第23通常ルートより慣性航行にて接近中。天海護と獅子王凱、両名を保護を完了。長官へ連絡願います』

 

 本作戦のアマテラス全権委任者。同乗していたスタリオンさんが通信に答えていく……その時、始めて見るオービットベースに圧倒されていた護くんへのサプライズとして、私はコンソールを操作し、壁面の一部をアップ画像で映し出させた。

 

 そこには、輝く緑色に塗装された3つの「G」……GGGのエンブレムが画面中央に大きく映っていた。

 

「……! あのマークは!」

 

 護くんの声に、目を背けていた凱さんも通信ウィンドウやオービットベースが映るメインモニターへと視線を向けた。

 もちろん凱さんも映像に映るGGGエンブレムに気付き、驚きと困惑の入り混じった表情……そして、相対距離の接近とノイズキャンセリングにより、それまで映像を不鮮明にしていた通信ノイズが完全に解消され、通信相手が映像に映る。

 

「……命……?! 生きてたんだな!? ……でも、あの状況でなんで……?」

 

 驚愕と困惑から一気に笑顔へと転じていく凱さん、通信越しに涙目で微笑む命さんは、謝罪と共にあの時の顛末を語り始めた。

 

《……騙す様な形になっちゃってごめんなさい。あの時、私達もギリギリでヘキサゴンを使って宇宙へ脱出できたの……その後、此処に収容されたんだけど。国連から情報封鎖の通達があって……今まで連絡を取れなかったの》

 

 原作でも、ヘキサゴンの脱出は本当にギリギリの状況であったとされている……私はヘキサゴンに搭載さてているカメラを通して事の状況確認をしたが、アレは本当にヤバかった。

 もう数秒ほど遅れていたら、ヘキサゴンは基地施設の爆発に巻き込まれて諸共大爆発……間違いなく、全員全滅だったのだから。

 

「……そうだったのか……いや、そんな事はどうでも良いんだ。生きててくれたんだからな……!」

 

 特大サプライズ成功……! 黙ってる私からしたら、メチャクチャもどかしかったけど、何とか成功したわ……。




はい、アマテラスによるお迎えは私でした。
ちゃんとスタリオンさんも乗ってるけどねw

さて、感動の再会で一旦区切り……
後半はバトルメインの展開。

アンケート結果反映のため、だいぶ原作と違う事になりますのでまたお時間が掛かります。ご了承下さいね……
(´・ω・`)ゴメンネー


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第61話 逆襲、機界31原種(中編)

大変長らくお待たせ致しました……

前回の更新からしばらく経ち、お気に入りも1000件を突破。
これも読者の皆さまが継続して読んで、感想を書いてくれるからですね!ありがとうございます!
m(_ _)m
そして、これからもよろしくお願い致します。

さて、前回からの続き……ついにオービットベースへと到着。
ガオガイガーは修復を兼ねた大規模改修のため、しばらく戦闘に出れない凱さん……
とりあえず、治るまで命さんと仲良くしてて下さいね〜(ゲス顔)

その間に、さっき発見した原種の長距離ワープ兆候を元に到着場所に出待ちして一網打尽作戦だ!


 オービットベース到着後、その司令部にて大河長官や麗雄博士等とも再会した凱さんと護くん……だが、再会を喜び合うのも束の間、麗雄博士と大河長官から「原種」の情報解禁と、新生GGGへの転属を事後承諾で受け取った。

 

『……あの……私も、この国際組織……に?』

 

 本来ならイレギュラーだし、(EI-01)の件もあるので、半ば強制的に身柄を何処かに移されるだろうと思っていたのだが……実際は国連直属組織となった新生GGGへとそのまま配属。しかも過去の経歴と能力も改めて考慮され、正式に医務官兼特殊技術サポーターとしての任官となった。

 

「勿論、君はこれまで我々と協力して数々の作戦をサポートしてくれただけでなく、我々を通じて君が地球へ齎してくれた技術や、過去の医療従事や特務官としての活躍も含めた貢献の数々……それは間違いなく、君自身の行動に対する正当な評価だよ」(大河)

 

「僕達地球人だけでは、ゾンダーに対抗する事は出来なかったかも知れない。しかし君の陰日向の献身によって、僕達はこの脅威に対し、今日までを共に打ち勝って来た……それは疑いようのない事実だ」(麗雄)

 

氷竜や炎竜(他の勇者)達の事でも、僕らだけじゃ解決出来なかったかもしれない……それをやれたのは、やっぱり君が居てくれたお陰だよ」(牛山)

 

「この任官はGGGへの正式な配属だけでなく、民間レベルで君が世界に認められた証左でもある。君の任官は、国連事務総長たっての要望だ……地球の国際組織に、異星文明関係者が任官するなんて、他のどんな偉業であっても霞む様な輝かしい勲章だね」(猿頭寺)

 

「ワタシ達、故郷が違ってモ……こんなに仲良くなれマシタ。これからモ、ヨロシクお願い致しマス」(スワン)

 

 長官や麗雄博士……牛山さんや猿頭寺さん、スワンさんからも私の正式任官を祝い、歓迎してくれている。

 

「私も……貴女が居てくれたから、凱も無事だし、私自身も本当に助かってる。……だから、ありがとう。これからもよろしくね、シオンちゃん」(命)

 

「うわっはー♪ シオンさん、おめでとう!」

 

「俺からも……今までありがとう。そして、これからもよろしくなシオン!」

 

 護くんと凱さんまで……私の正式任官を祝ってくれた。なんか……もう涙腺ヤバい。

 

『みんな……ありがとう……』

 

 生まれや由来は異星文明でも……やっぱり私の心の故郷はこの青い星、地球なんだ……!

 

──────────

 

「さて、諸君……我々を襲う未曾有の危機は、未だ去っていなかった。ギャレオンのブラックボックスに遺されていたメッセージの中にあった()()()()()()()……稀星くんとが持つ異星文明の情報を元に以後、我々は奴等を『原種』と呼称する」(大河)

 

 長官から正式に、後半戦の対抗勢力……原種の情報が開示される。これから戦う相手は、これまでとは比較にならない規模の攻勢を掛けてくる事もあるだろう。

 だが、今は奴等も此方へは到達していない……

 

「原種は、遠い宇宙から瞬時に此方へ転移する為のゲート《ESウィンドウ》を通る事で、超長距離を瞬時に移動してくる……だがこの技術は稀星くんの協力もあってようやく解析が完了しての。つい最近、発現の兆候を察知出来たんじゃ」(麗雄)

 

 シオンは完全なESウィンドウに関する様々なデータを持っている為、GGGに共有して関連技術の研究を進行させていた。しかしながら、初襲来には間に合わなかった……

 

(演算システムの構築に時間が掛かり過ぎた……もっと早くから研究開発を始めておく必要があったわね)

 

 GGGに加入して間もない頃から、シオンはESウィンドウの座標を算出するシステムの研究開発を始めさせていた。

 勿論、関連技術や詳細なデータは麗雄博士らにも共有し、周囲を巻き込んでの共同研究を重ねていたのだが……立て続けに起こるゾンダーの強襲や、護少年を狙ったゾンダリアンの行動、アーマロイドの先行開発によって時間を取られ、システムの構築が思う様に進まなかったのである。

 

「父さん、ガオガイガーの修理状況は?」

 

「中核となるギャレオンの損傷は深刻だが……修復の目処は稀星くんの研究と、これまでの技術蓄積で何とかなる。だがガオーマシン側の修復作業は反対に難航しておっての……当分の間は出撃できん」

 

『私の方でも、不眠不休で作業に従事できる整備用ドロイドを並行で生産してるわ……今のペースじゃ、外装の修復だけでひと月は掛かるもの』

 

 シオンはオービットベースへ来てから、まず増えた人員を活用しつつ整備体制を見直し、作業員の負担と作業難度を軽減すべく、整備用ドロイド「ドリアード」の開発に着手した……

 それはマルチセンサーと多機能型作業アームを搭載した多脚タイプの小型*1ドロイドで、軟質素材の外皮に多重関節構造の脚部が特徴。そして電磁石による機体固定機構を持ち、あらゆる場所に機体を固定したまま作業が可能。腕部は繊細な基盤パーツの再生処理も可能な特別仕様であり、専用ネットワークによる群体行動や危険部位の作業代行で整備班をサポートする。もちろん、指令系統も既存のタブレット端末にアプリを入れるだけという親切設計で、操作画面も作業内容毎に最適化されており、大まかな部位と作業内容の選択だけで指示出し可能……ちゃんと完了予想時間まで表示してくれるタイマー付きである。

 

 激戦が続くであろう今後を見据え、万が一、億が一を排除すべく……シオンはあらゆる手段を講じている。その一環ではあるが、ドリアードの配備が済めば以前とは比べ物にならない程作業効率は上がる筈だ。

 

「話を戻すが、原種はこの『ESウィンドウ』を通って遠い宇宙から此方へ来ている……そこで、奴等の本隊が地球へ到達する前に、この兆候を察知して先制攻撃を仕掛ける事になった」(大河)

 

「マイク・サウンダース全13機によるソリタリー・ウェーブの一斉攻撃ならば、原種のバリアーを貫き、消滅させる事も可能だ」(雷牙)

 

 原作と同じく、飛来する前に原種の本隊をソリタリー・ウェーブ・ライザー収束攻撃で叩く作戦……

 

『万が一の護衛と迎撃失敗時のリカバーも想定して、私の方からもクーゲルザウターとダイキャンサーを出します』

 

 宇宙空間での活動は空中や水中と似ているので、対応しやすいダイキャンサーとクーゲルザウターならば不利ではない。完熟訓練ももうすぐ終わるし、作戦に組み込ませて数の不利を補おう。

 

「NO?! ESウィンドウの重力場、急激に拡大中!」

 

「奴等は此方の出方を伺っていたのか……!」

 

「慌てるでない! 此方の準備は既に整っておる!」

 

「マイク部隊、全機Scramble!」

 

『ダイキャンサーとクーゲルザウターもすぐに出て! 会敵予想時間が早まったわ!』

 

《了解!》

《はい!》

 

「これより、原種撃退作戦を開始する! 総員、第一種戦闘配備!」

 

──────────

 

 将来的に資源衛星などを置いたり、居住施設を建造可能な惑星引力の均衡が取れている宙域を俗にラグランジュポイントという。

 

 数日前、その1つの付近で観測された異常重力場……それがESウィンドウの兆候だった。

 

 その現象が今、急速に拡大し……瞬く間にワームホールの如き空間の穴へと姿を変えていた。

 

「マイク、ガオガイガーの分まで頑張るもんネ!」

 

『マイクよ、我々が援護する』

 

『君は攻撃に専念してね』

 

 そしてついに、マイク部隊+クーゲル&ダイキャンサーと、機界31原種との戦いが始まろうとしていた……

*1
全高1.5m、重量約20.5kg。その外観はファンタジー世界の樹木精霊「ドリアード」を模し、全体的に緑系のカラーリングをした少女型の上半身に植物塊の下半身を持つ。頭部の花状パーツは複合センサーの塊、体表の軟質素材は強電磁波や放射線等の有害影響を完全遮断し、±1000℃もの温度変化に耐え得る。




ドリアードは可愛い……コレ常識。
あの子達の外観は聖剣伝説のヤツに赤いお花がプラスで付いてる感じ。もちろん常時全裸っぽいイメージを持たれない様に、胴体部分は着衣済みの様なデザインへ変更している。
1体でも居れば、作業効率が程よく上がるので今後重宝するのは間違いなし!

ちなみに家事代行用にプログラムを変えたバージョンだったり、類似系列として「ウンディーネ」「ノーム」「サラマンダー」タイプもあり、高級AI家電という括りで一般販売を画策しているとかいないとか……

感想お待ちしてます!


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第62話 逆襲、機界31原種(後編)

少し長くしすぎたかな……?
原種本隊の迎撃戦、とりあえず幕引きさせましょう。



「ESウィンドウ偏向率、更に上昇中!」

 

「空間歪曲係数も増大! 何者かがワープアウトしてきます!」

 

『システムチェ――ンジッ!』

 

『『『マイク・サウンダースッ!!』』』

 

『全機、Formation(フォーメーション)!』

 

 マイク・サウンダース全13機が一斉に変形し、ブームロボ形態へと変わるとそのまま全員が一定間隔で並び、輪を描く様に移動する……

 この円形面の先を軸線上としてソリタリーウェーブ・ライザーを集束発射し、ESウィンドウから現れる原種を分子分解してしまおうという作戦だ。

 

 本部からの通信音声が慌しくなり、マイク部隊の準備も完了しようかという所で、私のセンサーとアーマロイド達が危険を察知する……

 飛んできたのは金色で三角形の飛来物……原作通り、あの時に逃げ去っていた原種からのミサイル攻撃だ。

 

『させませんっ!』

 

 クーゲルは素早く射線上へと回り込み、ミサイルを迎撃……マイク達は一瞬だけ浮足立つも、クーゲルとダイキャンサーの背中を見て安全と判断し、攻撃の準備を続ける。

 

『小癪な……!』

 

『相手は、何処から……?!』

 

(確か……『口』原種だったっけ? ミサイルも、当たれば幸いな感じでバラ撒いているだけの様ね……此方の出方を警戒している)

 

 断続的に襲い来るミサイルを、クーゲルとダイキャンサーは冷静に処理し続ける……だが、この程度で原種が諦める筈はない。私は何があっても良い様に、クーゲル達にミサイル処理を任せ、念の為グラヴィスをオービットベースの直上に呼び出しておく。

 

『後方援護はお任せを』

 

 進化の都合、または稼働データ不足か……グラヴィスは宇宙空間をまだ自在には動けない。でもしっかりした足場があれば砲撃に支障は無いし、コツを掴めれば自身を重力で座標に固定出来るし、今でもワームホールを介して援護射撃くらいなら出来る……もう少しの辛抱だね。

 

(このタイミングでわざと口原種を犠牲にして、J達と私達を同士討ちさせる可能性も捨てきれない。……どうするべきか……)

 

 原種は一体でも居れば、惑星1つの機械昇華など難なく可能だ。それ故に早い内から大攻勢を仕掛けられでもしたら、あっという間に戦線は瓦解し、地球は機械昇華される……それを防ぐ為にも、この作戦は()()()()()()()()()()()進めなければならない。

 

 無論、GGGには過酷な戦いを強いる結果となるが……ココで原作から外れると逆に対処し難くなる上、最後の勝利の鍵を消さない為の前提条件に関わるため、僅かでも対処を間違う事は許されない。

 

 ……だが、そんな私の苦労を嘲笑うかのように事態は急変する。

 

「こ、これは……?! 高エネルギー体複数、急速接近!」

 

「イカン! この軌道ではマイク部隊が……!!」

 

『ヌゥ?! 此奴等……!』

 

『マイク! 避けてぇッ!?』

 

『What?! 何だ、コイツ等……ぐぁぁッ?!』

 

 突然、戦闘宙域に飛び込んで来た複数の発行体……それが凄まじいスピードでクーゲルとダイキャンサーのセンサーをすり抜け、マイク部隊へと殺到。Ⅳ世とⅥ世、Ⅺ世が大ダメージを受けて損傷してしまう。

 

(何なのよアレ?! 原作には無い展開。イレギュラーだわ……)

 

 私の驚愕を余所に謎の発行体は慣性の法則すらも置き去りにしたデタラメな軌道で宙域を疾走……ある程度距離を取って再びマイク部隊を襲おうと突撃してくる。

 

『それ以上はやらせません!』

 

 グラヴィスからのワームホール越しの援護射撃により、3機編成で飛び回る謎の発光体の2機が撃破されるも、瞬く間に数は元通りに戻り、お返しとばかりにホーミングレーザーを乱射してくる。

 グラヴィス自体は装甲とEシールドで無傷だが、足場としているオービットベースの外壁にも着弾しており、被害が広がっている。

 

《グラヴィスは防衛モードに移行! オービットベースへの被害を食い止めつつ発光体を迎撃!》

 

『お任せを』

 

《クーゲルは原種を追い立ててマイク達から引き離して! ダイキャンサーは引き続き原種からのミサイルを迎撃! 全員でこの場を凌ぎきるわよ!》

 

『了解!』

『承知っ!』

 

 グラヴィスは各脚部と腕部の重力制御機構を連動させ、歪曲フィールドを形成……それと同時に自身の周囲に複数のワームホールを形成。発光体の移動を演算予測し、ワームホールを直列に繋ぎ合わせて先読み攻撃を仕掛けた。

 

『これ以上……好きにはさせません』

 

 複数のワームホールを経由する事で、放たれた重金属粒子砲が収束されて破壊力を増していき……8回目のワームホール通過と同時に空間座標を飛び越えて発光体に直撃。そのエネルギーを全て消し飛ばしながらダメージを与えた。

 

『……?! この手応え……まさか、この発光体は……』

 

 発光体の撃破に成功したグラヴィスだが、何故か意外な事に驚いている……一体何だというのか。

 

『くッ……あっち行ってッ!!』

 

 口原種へ牽制を繰り返し、マイク達から引き剥がそうとクーゲルは奮闘する……が、さすがは腐っても原種。攻撃の切れ目や僅かな隙を狙ってミサイルを放ち、マイク達を撃ち落とそうとしている。

 

『クーゲル、ミサイルに気を取られ過ぎるな。本体を狙い続けよ! ミサイルは俺が1つたりとも通さんッ!!』

 

 ダイキャンサーから激を飛ばされ、クーゲルは更に加速……口原種も負けじと加速するが、加速力と持久力はクーゲルの方が上だ。

 

『今度は外しませんッ!!』

 

 瞬く間に距離を詰め、すれ違い様に散弾を浴びせる。直撃した口原種は連続的な小爆発にバランスを失い失速……

 

《これは……?! 高エネルギー反応、更に接近! この速度は?!》

 

 クーゲルの後方から飛来した火の鳥が瞬く間にクーゲルを追い抜き、口原種を一撃で撃破する。

 

『な……なんなのよ突然……』

 

 狼狽えるクーゲル。火の鳥は原種核を保持したまま更に移動していき、待っていた本体へと帰還する……

 

「……アイツは?!」

 

「白い戦艦?!」

 

 次なる乱入者は、やはりジェイアークだった……

 

 口原種のコアは原作通り彼等に渡す予定だったので、このタイミングならば流れ任せで大丈夫だろう……

 

『マスター……』

 

 グラヴィスをはじめアーマロイド達は警戒するが、私は敢えて指示を出さずに見守る。

 

『貴方達は、原種核(それ)を集めて……何をするつもりですか?』

 

 クーゲルが剣呑な雰囲気でジェイアークへと問い掛ける。ダイキャンサーとグラヴィスも合流し、武器こそ構えてはいないがいつでも動ける様にはしていた。

 

 GGGやアーマロイド達には敢えて彼ら赤の星の戦士や、原種核に関する情報は共有していない。

 

 最大の理由は勿論、原作乖離からの対処不可能……となるのを避ける為でもあるが……この子達は私や地球の守護者であると同時に、彼等の良き隣人になって貰いたい。

 

 その為にも信頼の大切さなど、様々な事を彼等から学んで欲しいのだ。

 

 だからこそ、敢えて過剰な情報提供をせず、原作通りに進ませている……

 

『……お前達に教える必要はない』

 

『なら、貴方達は地球の事をどうするつもりです?!』

 

『……青の星の事など、我々には関係ない』

 

 想定通りの答え……現状ではまだ仲間意識も無く、Jジュエルの戦士という肩書さえ此方は把握していないのだから仕方ないのだが……この場の雰囲気は少しばかり不安が付き纏う。

 

『……関係ない。ですか……その言葉の裏には、()()()()()()()……いったいどちらの意味があるのでしょうね?』

 

 私の言葉に、戦艦を操る男は僅かながら反応する。

 

(地球育ちのアルマ……戒道幾巳を擁する彼等なら、悪いようにはならない筈だわ)

 

『……フン。我々の目的は、あくまで原種核の回収だ。それ以外に興味は無い……』

 

 言葉を選んだのか、本当に興味の外なのか……どちらとも取れる返しを最後に、ジェイアークはマイク達が対処している原種の本隊の方へと意識を向け移動し始めた。

 

――――――――――

 

 口原種と謎の発光体の撃破によって妨害は全て無くなり、マイク部隊は損耗こそあったものの、ほぼ原作と同じ様にソリタリーウェーブ・ライザー攻撃によって原種の本隊の分解に成功。

 

 ……しかし、やはり核は分解攻撃を逃れて地球へと分散しながら落下していった。

 

『……残り、28か……』

 

 その一言を残し、飛び去っていく白い戦艦(ジェイアーク)……

 

(できれば早い内に繋がりを強めて共闘できれば、今後も楽になるのだけど……ね)

 

 ここからは時間との勝負も重なる事になる……原種達は復活後すぐに現地の人達を取り込んでゾンダー化させ、万全の体制を敷いてくる筈だ。

 

 こちらも計画通りに事を進め、来るべき最終決戦に向けての準備を整えなきゃね……!




J達に関する情報は先出ししちゃうとシナリオの都合やらも変わるので敢えて原作通りに進ませます。

さて、クーゲルの質問に定番な返事を返すJ……
とりあえずこの頃はまだデレてないからしょうがない。

次回もお楽しみに!

― 次回予告 ―


君達に最新情報を公開しよう!

原種の感知や浄解ができない事に動揺する護。
だが、そこへ白い戦艦ジェイアークと共に戒道少年が現れ、護は原種との戦いに同行する事になる……

その頃GGGでは、アーマロイド達のからの情報提供によって白い戦艦を捕捉……
同時に、北極海の海洋調査施設が原種に乗っ取られているという事実を知り、修復完了したガオガイガーも迎撃に向かう。

シオンもまた、激しさを増すであろう原種との戦いに備え
建造していた新たなアーマロイドを起動させるのだった。


次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第63話『勇者の復活と新たなる目覚め』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!


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第63話 勇者の復活と新たなる目覚め(前編)

勇者王ガオガイガー、初回放送からもう25年も経ったんだね。

それはそうと
最近コメントが来なくて寂しい……

アクセス数カウントは投稿直後とかメッチャ多いし、それ以降も一日毎にもジワジワカウントされてるから継続して読んでくれてる方は多いと思うのよ?

でもまさかその大多数からノーリアクションのまま次話投稿を待機されるのは、さすがにクるものが……

モチベ維持の為の楽しみ(読者との感想やり取り、あとネタへのツッコミ待ち)が無いのはやっぱツラたん……
(⁠。⁠•́⁠︿⁠•̀⁠。⁠)



 アレから数日後……地球へ落下していった原種核の行方はまだ掴めてはいないものの、ガオガイガーの修復と改良は完了した。

 

 原作ならばステルスガオーに、大型ウルテクエンジンとリングジェネレーターを搭載した追加ユニットを取り付ける事でパワーアップ形態「スターガオガイガー」へと換装可能になるが、今回はステルスガオー自体を再設計し、ガオガイガーの腕部となるエンジンユニットを全領域型のオービタルエンジンユニットへと改良、ドリルガオーにも小型簡素化したグラビコンシステムを搭載し、全体的な機動力と空間適応能力を向上させた。

 その上で、ステルスガオーには原作よりも改良・小型化したリングジェネレーターや追加武装用のプラットホームを搭載……

 

 名付けて「スターガオガイガー(ver.H)」への強化も完了したのである。

 

「いやはや、さすがに頭が上がらんわい……リングジェネレーターの大型化は免れん筈じゃったんだがのぅ」

 

『いえ、私からすればウルテクエンジンの方が凄いですよ……理論上は無限出力、その稼働効率は脅威の99.999%。それを特別な条件も無しに実現するなんて』

 

 GSライドからのエネルギーを元に反重力を発生させるウルテクエンジン……無尽蔵かつ超高効率を誇るこの駆動機関は、修復完了したガオガイガーをはじめ、再起動を待つ各勇者達にも順次追加装備する予定だ。

 

「何を言っとる! 僕からすればリングジェネレーターの小型化と、リングの欠損に対する施策。難なくそれを成した君の方が……」

 

 本来ならば数年後……ギャレオン無き地球を守る為に新生するファイティングメカノイド「ガオファイガー」に搭載される筈だったエネルギー型のファントムリング生成機構。シオンはそれをこの短期間で創造し、スターガオガイガー(ver.H)に実装するという暴挙をやったのであった。

 

(……ぶっちゃけ、これくらいはやらないと後が怖いもん)

 

「……私の今があるのは、皆さんの……GGGのお陰なんですから……コレくらい、恩返しだとしてもまだまだ足りません」

 

 照れるシオンと煽てる麗雄……しかし平時ではない今の状況は、それを見事に切り上げさせてしまう。

 

「民間からの緊急通報です! 東京近郊に例の白い戦艦が出現。現在、日本上空を北上中!」

 

 白い戦艦……ジェイアークが東京に出現し、北上しているという急報。シオンは同時に原種の活動反応を感知し、通報によるジェイアークの出現もそれを裏付けていると確信した。

 

『……恐らく、彼等の行き先には原種が居ます。まだ本格活動はしていない様ですが……』

 

「成る程……彼等にも原種と敵対する都合、感知する何らかの術はあるという訳か」

 

「護くんの発信ビーコンも、白い戦艦と同じ軌跡・速度で移動しています。もしかしたら……」

 

「まさか、護はアイツ等に捕まってるのか?!」

 

 G-USBには、量子通信技術を用いた発信ビーコンが付いている。元々はシオンの監視目的で取り付けられた機能で、発信を切る事は出来ない様になっている……今回はそれが功を奏して護の居場所を特定し、通報と相まってジェイアークの追跡に役立ったのだ。

 

「……行ってみなければ分かるまい。長官!」

 

「うむ! イザナギ緊急発進! 護くんの救出と原種の撃破へ急行せよ!!」

 

 斯くして、新生GGG初の本格的な対原種戦が始まろうとしていた。

 

――――――――――

 

 北極海での原種戦……確か原作では、超強力な電磁波による分子振動を利用して氷を操るゾンダーだった筈だ。

 

『海中ならば俺も自由に動けるが……相手が海上では張り付く訳にもいかん。足場をクーゲルに頼る必要がある』

 

 ダイキャンサーは格闘戦前提の汎用機故に、大気圏内の空間機動戦闘は不得手だし、そもそも飛行能力を持ってない……というか、複雑極まる可変機構にあの防御力を持たせたのだから機能的な余裕などありはしないからねぇ……

 

『……でも空中が私達だけじゃ、手数が足りないよね?』

 

 初の空戦前提機体であるクーゲルだが、変形後にキャリーできるのは1機だけだ。頭数が1つ増えた程度じゃ戦況の改善は見込めない……

 

『私も、海中からの対空砲撃はまだデータ不足で……実戦中に修正は効くでしょうが、事態は一刻を争いますからね』

 

 グラヴィスも、今回の海中は初になる……それまで地上・対空戦が主だったのだから無理もない。

 

 やはり足りないのは、空戦戦力……相手は海上を自由に動ける上、氷壁や氷塊を自在に生み出し操るのだから、臨機応変に事を運ぶ都合、必要なのはクーゲルと同等かそれ以上の高火力が期待できる空戦戦力だ。

 

(アレが相手では、接近戦を仕掛ける前に不利すぎる……原作でも、ジェイアークのESミサイルとか、不意を突く事で倒せたようなもの。今回も同じ様にいくとは考えない方が良い……せめて、空戦機での援護がもう一機あれば……)

 

《ハァーイ♪ お困りみたいね、シオンちゃん?》

 

《……ようやく手札が回ってきた様だな》

 

 頭に響くのは、まだ身体を与えていないアーマロイド達の声……

 

『その口調……山羊座(カプリコーン)に、牡牛座(タウラス)ね。どうしたの?』

 

《私達のボディメイク……シオンちゃんがある程度進めてたのを拾って、自分達で組み上げてみたの。このコンセプトなら、現状の戦力不足解消と、空戦戦力の拡充もできるわん♪》

 

 山羊座の声と共に、私のG-USBにデータが送られてくる……確かに現状の私はGGGへの助力で他のアーマロイド達のコンセプトまで考えている余裕が無く、ある程度で止まっていた。どうやらそれを自分達で拾い上げ、それぞれの好みと現状を鑑みてカスタマイズしていたらしい……なんという事でしょう?!(劇的ビフォーアフター感)

 

《今回の相手に最も有効な手は……相手の手札を上回る火力と、手数だ。俺達なら手数と火力、その両方をカバーできる》

 

 自信満々の牡牛座……そして更に山羊座がダメ押しの一言。

 

《私とダーリンの愛が、シオンちゃんを助ける……最高のシチュエーションじゃない♪》

 

『『『………………』』』

 

 私は何とか笑顔で耐えたが、クーゲル達はさすがに呆れ顔であった……

 

 ……というか、そうまでして出番が欲しかったの?!

 

――――――――――

 

 山羊座から両機とも既に完成済みだと言われ、急いで量子格納庫を覗いてみたら……

 

(……ホントに完成してるし。……というか、どうやって資材とか集めたのよ……)

 

 そこに鎮座しているのは、赤い装甲が目を引く無骨な牡牛と、優美な白い装甲を纏う悪魔……山羊座なのに悪魔的な外見なのは、恐らくイメージとコンセプトを擦り合わせた結果だろう。

 その手には長く巨大な得物を担いでおり、見るからに射撃戦用の機体だと分かる……対する赤い牡牛は太い前後の脚部と盛り上がった肩から、突撃戦法をコンセプトにしていると理解できた。

 

『……2人共、良いのね?』

 

 シオンは改めて、山羊座が牡牛座に返答を求める。

 

『モチのロンよ? シオンちゃんの力になる事が、私達の生まれた意味ですもの』

 

『お前自身が彼等と共に歩む決意をしたんだ……その覚悟を、配下である俺達が支えなくてどうする?』

 

 ……何とも頼もしい言葉に、シオンの眼には光るものが溢れていた。

 

『……っし、コレでようやく私とダーリンの出番! 長かったわ〜』

 

 ……何やら呆れた言葉が漏れた様だが……?

 

――――――――――

 

 道中そんなやり取りもありながら、「高速転槽射出母艦 イザナギ」で地球へと降下するGGG……

 

 眼の前で繰り広げられていたのは、先行して降下していたガイガーとマイク。そして巨体ながら柔軟な対応をして洋上を滑るように移動する原種ロボだった。

 

「イザナギか?! シオン、奴の解析を頼む!」

 

『了解! クーゲル、ダイキャンサーは足止めを! 準備ができ次第、山羊座と牡牛座も出て!』

 

『『『『了解!!』』』』

 

 ダイキャンサーとクーゲルもイザナギから射出され、空中で騎乗し戦闘に加わる。アーマロイド達は初期段階でボルフォッグ並の電磁波対策を施工済みなので特に問題も無し。

 

 山羊座達にも準備を急がせ、私は敵である今回の原種ロボの詳細解析を開始する……解析情報はリアルタイムで麗雄博士にも共有され、行動指針の選定に活用されるので、原作よりもしっかりしたサポート体制になっているのだ。

 

『(原作通り……強電磁波による自由電子制御能力。改めて見ると恐ろしいわね)……博士、敵の解析データを送ります』

 

 私が送った詳細なデータから、原作通り麗雄博士によって敵の攻撃原理が周知される……

 詳しい内容は本編視聴推奨だけど、原理としては電磁波を介して対象から熱エネルギーを強制的に除去し、急速冷却する事で対象を摂氏-273.05℃(絶対零度)へ導いている。

 

 ……つまり、電子レンジ(電磁波による分子運動促進で加熱)とは真逆の能力を持ってる訳だこの敵さんは。

 

 その規模は凄まじくヤバ過ぎるけど……

 

 あと、前世の脳内情報だとコイツ「巨脚原種」って……え? 能力とぜんっぜん関係ないじゃん……

 

(とはいえ……今のままだとジリ貧もいい所ね。現状の戦力じゃ決定打が打てない)

 

 相手は全長数百メートルの怪物。……対する此方で最強の攻撃力のガオガイガーは、ガオーマシンがアマテラスで現在運搬中なのでまだ合体できず。

 同等の攻撃力だけならダイキャンサーでも出せるが、敵の攻撃が激しくて懐に飛び込めず。クーゲルも飛び込む為に加速しようとする所へ攻撃されて思うように動けない……

 当然、原作通り先行出撃していたガイガーとマイクも攻めあぐねており、辛うじて回避。の連続で疲弊し始めている。

 

「ッ?! しまっ……ぐぁぁぁッ!?」

 

 一瞬の隙を突かれ氷の柱で縫い止められるガイガー。マイクが救出に駆け寄ろうとするが、海面から生えてくる無数の氷柱に塞がれて近寄れない。

 

『おぉぉぉぉッ!!』

 

 ダイキャンサーも太刀を振るい、氷柱を斬り飛ばす……しかし、敵の氷柱の生成速度の方が圧倒的で助けには行けそうもない。

 

『……ッ……サイレンの音……?』

 

 さすがの私も戦況の悪化に焦る……打つ手が無くなり気持ちが沈みかけていた処に、何処からか懐かしい音が聞こえてきた。

 

(こんな時に幻聴とかマジで私、精神的にヤバイって事……? ……アレ? このシーンで幻聴とか、妙に覚えがあるんだけど……)

 

『システムチェーンジッ!!』

『ダブル・テールスライサー!』

 

 その時、3つの影が瞬く間にガイガーを拘束している氷柱を粉砕し、ガイガーを救出……しかし、退路を絶たんと氷柱はどんどん生成されていく。

 

『ッ! ガンドーベル! ガングルー!』

 

 その呼び声に呼応し、更に影が増える……5体の影が連携し、無数に生み出される氷柱を一気に薙ぎ払う。

 

(ッ!? 直接攻撃が……!!)

 

『うぉっとぉ?!』

 

 体勢を立て直していたガイガー目掛け、氷塊が飛んでくる……が、赤い物体が横槍を入れて氷塊を粉砕した。

 

「お、お前達は……!」

 

『いやぁ、ビークル形態ならイケるかなと思ったんだけどなぁ……』

 

「炎竜!!」

 

『お待たせして申し訳ありません、凱機動隊長』

 

「ボルフォッグ!!」

 

 という事は……と視線を変えると、氷柱の投射にバランスを崩され、海に落ちたマイクを氷竜がクレーンで救出していた所だった。

 

『助かったっゼ!』

 

「氷竜!!」

 

『私達も!!』

『一緒だってばよ!!』

 

 声と共に氷の隙間……海面から顔を覗かせる、2つの見慣れた顔。

 

『やっと起きたのね、ピスケガレオン!』

 

 対抗戦力考察の時に、ピスケガレオンが入っていなかったのは彼等が氷竜達と同じく“弾丸X”の影響でシステムがオーバーロードし破損、再起動が可能になるまで彼等と同じ様に休眠状態だった為……

 それだけ“弾丸X”の影響が大きかったという事と、Gストーンとのリンクが想定よりも強くなっていた証左だ。

 

『遅れた分はキッチリ仕事するわ!』

 

『オレ達が揃えば、もう敵は居ねぇってばよ!!』

 

『……彼等が帰ってきた。頼もしい援軍ね……!』

 

『……オイ! 俺様を忘れるんじゃねぇ!!』

 

 砲撃音と共に氷上を疾走してくる黄色い戦車……ゴルディーマーグも、原種へ向かってマーグキャノンを連射しながら接近してきた。

 

「ゴルディも目覚めたか!!」

 

『あたぼうよ! 地球がピンチだってのに、オチオチ寝てられるかってんだ!!』

 

 ズズズ……!!

 

『な、なんだ?!』

 

 原種ロボの直下、氷塊の浮かぶ海面から急速上昇する機影……原作とは若干タイミングが違うものの、ジェイアークもやはり健在の様だ。

 

「全砲門、一斉射!!」

 

 錐揉み回転しつつ上昇するジェイアークは、そのまま一斉砲撃で敵の懐にダメージを浴びせ、頭上へと位置取る……

 

『白い戦艦?! やはり原種を狙っていたのか!』

 

『凱さん! 今は原種の方を……!』

 

《アマテラス、現着しました! ガオーマシン各機、発進準備完了!!》

 

 氷竜達とガオーマシンを載せてきたアマテラスも現場空域に入り、ガオーマシンも全機発進体制が整う。

 

 状況の好転……大河長官も“気は熟した!”とばかりに声を張り上げた。

 

「よぉし! ファイナルフュージョン、承認ッ!!」

 

「了解! ファイナルフュージョン……プログラム、ドラァイブっ!!」

 

 そしてついに、待ちに待った瞬間……

 幾多の戦いをくぐり抜け、地球を守った黒き巨人が、今再び顕現する。




この後はご存知、いつもの合体ですが
中身は結構な魔改造をされているため、ソフト・ハードの両面が大幅にパワーアップしています。

そしてジェイアークも戦線に合流……
果たして彼等はどう動くのか……?

次回、後半戦もお楽しみに!!


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第64話 勇者の復活と新たなる目覚め(後編)

前回からの続き……
さぁ、役者と舞台は揃った。反撃開始だ!

※ 既にご想像されてるかと思いますが、完全にやらかしますw



「ファイナルッ、フュ――ジョンッ!!」

 

 久々に聞く、凱さんのシャウト……改良を済ませ、完璧に再調整を施した各ガオーマシンが合体に際し各部位へと変形稼働。

 

 バンクこそほぼ変わらないものの、中身は魔改造にも等しき改良を経て完成した“勇者王”が出現する……

 

『ガオッ! ガイッ! ガァァァッ!!』

 

 合体完了と共に、周囲へと竜巻に乗って迸る緑のエネルギー……

 今回施された各部の改良により、エネルギー効率や配分なども見直され、合体時の保護を行う電磁竜巻にもかなりのGパワーが乗るようになっており、一定の攻撃は完全に遮断される様になっている。

 前半によく起こる合体阻止のお約束は(ヴァルナーの時既に)クリアーしたので、ついでだからと対策を施した……まぁ、半分くらいは偶然の効果なんだけど。

 

(……いつからかな……? これだけGパワーを浴びてもほぼ平然とできる様になったのって……)

 

 私のこの身体も、いつの間にかGパワーへの耐性……もうほぼ完璧になってる気がする。最近はむしろGパワー浴びた方が調子が良いかもしれない……とまで思える程だ。

 

「メガ・フュージョンッ!!」

 

 ガオガイガーの合体と同様にジェイアークも変形し始め、キングジェイダーへ……

 

『……キング、ジェイダーッ!!』

 

 合体中も氷竜達に迎撃され満足に動けなかった原種ロボだったが、ガオガイガーとキングジェイダーの合体完了に焦ったのか、攻勢を強め始めた。

 

『オラオラオラオラ!! ……何ッ?!』

 

 自ら回転しつつ電磁波で氷を生成し、炎竜たちの猛攻を何重もの波を氷壁に変える事で防いでいく……

 

『反中間子砲ッ!』

 

 キングジェイダーが事態を察知し、中心部へ砲撃を加える。しかし、破壊された氷壁と中心に原種ロボの姿は無く……

 

『……むっ? 下か!!』

 

 分厚い足場の氷を粉砕し、キングジェイダーの足元辺りから飛び出してくる原種ロボ。その際に破砕した氷と波飛沫が凍った破片が大量に降り注ぎ、更に残った足場も振動で揺れ動き原種ロボから遠ざかる。氷竜達は揺れ動く足場にバランスを取るのが精一杯で、攻撃どころではなくなってしまう……原種ロボは更に海上と海中を往復し、大波を作りながらその場で凍らせて氷壁を築き、更に砕いて弾幕にする……まるで叩かれるのを全力で阻止してくるモグラ叩きのモグラみたいだ。

 

『《グラヴィス! ダイキャンサーと水中から原種の動きを止めて!》』

 

『お任せを!』

『承知!』

 

 ダイキャンサーはクーゲルの背から飛び降り、落下中に蟹形態へと変形……下で待っていたグラヴィスと合流して海中に再び潜んだ原種を封じ込めようと動く。

 

《コレ以上奴を極北に近付けてはならん! 奴の影響で既に地球の地場が乱れ始めておる。このままでは“バンアレン帯*1”が消失し、そのバリア効果によって防がれていた有害な放射線が直接降り注ぐ事になり、地球は死の星になってしまうぞ!!》

 

 もう時間がない……次に出てきた時に動きを止め、撃破に至らなければ影響は深刻化の一途を辿る。決め時だ……!

 

『この先は通行止めです、大人しく止まって頂きましょうか?』

 

『観念するが良いッ!!』

 

 海中ではダイキャンサーとグラヴィスが原種ロボと取っ組み合い状態らしく、移動は制限されている様だが、追い立てるまでには至っていない……

 

(もう少し、力のある頭数が欲しい所ね……)

 

『………………』

 

 そんな逡巡をしていると、思う所があったのか……徐ろにキングジェイダーが無言で海中へと潜り、ダイキャンサーとグラヴィスに加勢し始めたのだ。

 

『お主は……』

 

『勘違いはするな。原種を確実に叩く選択をしたまで』

 

 キングジェイダーの加勢に一瞬驚くグラヴィスとダイキャンサー……しかし、突然響いた2人の声に冷静さを取り戻し、タイミングを合わせるべく力を込め直す。

 

『お・ま・た・せ〜♪』

『決めの手札は揃ったか?』

 

『あれは……?』

 

 ガオガイガーが、イザナギから射出された2つの弾丸に気付く……ミラーコーティング技術を応用して形成された弾丸は一定距離で空中分解……その中から現れたのは、赤い獣と白い人型だった。

 

『……では、いきますよ!』

 

『応! ぬぅおぉぉぉッ!!』

『ムッ、とあぁぁぁッ!!』

 

 グラヴィスとダイキャンサーの投擲モーションに合わせ、キングジェイダーの全力キックが炸裂。さすがの原種ロボもこの馬鹿力✕3には抗えず、既に割られた足場の間から海面まで強制的に叩き出されてきた。

 

『今だ! シンメトリカルドッキングッ! ……超竜神!!』

『五獣纏身ッ! ……ビッグバン、ボルフォッグッ!!』

 

 海中の変動に合わせ、ボルフォッグと氷竜・炎竜も、ビッグバンボルフォッグと超竜神へと合体。戦闘の余波で形成された巨大な氷柱の上にビッグバンボルフォッグは降り立ち、超竜神はクーゲルの勧めでその背に乗せてもらう。

 

『突っ込むぞ、援護しろ!』

 

『ハイハイ……それじゃ、いっくわよぉ〜♪』

 

 白い人影、山羊座はその速度を急激に上げ、音も光もなく鋭角にその軌道を変えながら上空へと位置取り、その手の得物……長大なライフルを構える。

 同時に赤い獣、牡牛座がその姿を人型へと変え……頭部に備えた角に電撃を迸らせながら海上を滑るように超加速。

 

 原種ロボは突撃してくる牡牛座に気付き、氷壁を生み出そうとするが……

 

『それ以上はやらせないわよん?』

 

 白い山羊座の機体が構えるライフルが火を吹く……音と認識を置き去りにしそうな程の速度で実弾が放たれ、原種ロボの頭頂部にあった電磁波発信部位を狙撃。破損させて氷壁生成を封じる。しかし既に牡牛座の前方には、厚さ数十メートルの氷壁は3枚ほど形成されていた……

 

『その程度で、猛牛(オレ)は止められん!』

 

 だが、牡牛座も構う事なく突進。それほど大きくないその身体にどれだけのパワーがあるのか、氷壁は接触と同時に完全崩壊していき、原種ロボの胴体に牡牛座の角が突き刺さった。

 

『ゼロ距離……取った!』

 

 そのまま原種ロボは海面から氷上へと押し上げられ、突撃された箇所には大きな罅が入る。氷上へと原種ロボを押し込んだ牡牛座は地上に降りると、異様な形状の機構を持つ右腕を腰溜めに構え……下から抉り込む様に原種ロボの足へとアッパー。右腕に取り付けられた機構……パイルバンカーの撃鉄が稼働し、凄まじい破砕音が敵の内部から発せられた。

 

『釣りはいらん、全弾持って行け!!』

 

 そのまま牡牛座は体勢を変えずに腕のバンカーを更に抉り込みながら攻撃を続行……最終的に6回、爆発にも等しい破砕音が響き、ついに原種ロボの足は粉々に粉砕された。

 

『我々も続きます! 大回転大魔断ッ!!』

『オラオラオラオラァ!!』

 

 その間に超竜神を乗せたクーゲルが上空へと舞い上がっており、電磁波発生部位の再生を阻止すべく山羊座と共に猛追撃。ビッグバンボルフォッグも敵を逃すまいともう一本の足へ突撃を敢行。

 ミラーコーティングと高エネルギーを纏う独楽となったビッグバンボルフォッグは、原種ロボの足の……根本で細くなっている部分を一撃で分断。この僅かな時間で3本中2本を失った原種ロボはバランスを取れず氷上に転倒……

 

 電磁波発生部位も山羊座と超竜神、2機の猛追撃で再生が追い付いていない……トドメを打つ絶好のチャンスである。

 

『よぉし、俺様の出番だ!!』

 

《ゴルディオンハンマァァァ! 発動、しょぉ〜《こ、これは?!》……っ?! どうしたのかね?!》

 

《上空から高速接近する機影を確認!》

 

《あの時の奴じゃ!!》

 

《まだ生きてやがったってのか!?》

 

 先の原種本隊の分解作戦で突然現れ、戦場を一時混乱させたあの飛翔体がまたしても乱入してきた。

 

『アレの相手は私達に任せて、ガオガイガーは原種を!』

 

『分かった。頼むぜシオン!』

 

 シオンはガオガイガーに、乱入者の迎撃よりも原種ロボの方を優先させるべく、即座に対処を買って出る。凱もシオンを信頼し受け入れるのであった。

 

――――――――――

 

 ここまで行けば、原種の方は流れ任せでも良い筈だ……私達は上から来たイレギュラーな乱入者を迎撃に向かう。

 

『グラヴィス、アレって……』

 

『はい。アレは恐らく無人機……しかし、原種とは違う力を感じます。迂闊に近付くのは止めた方が賢明でしょう』

 

『……ならば、速攻で落とすまで!』

 

 グラヴィスの進言に、牡牛座が反応する……右腕の機構(回転式弾倉)を開き、弾丸が束ねられたパーツを押し込んで給弾を済ませると、肩と背中にあるウイングバインダーを展開、爆発的な加速で飛び上がった。

 

『一気に行くなら、“暴れまくり幽霊ちゃん”の出番ね♪』

 

 一歩遅れて飛翔し追い付く山羊座も、2人ならばと余裕綽々で会話している……これは出番だからって張り切ってるわね。

 ……ちょっと独断専行っぽいけど、適任でもあるしココは任せようかな?

 

『コチラの手は読ません、パターンを変えていくぞ!』

 

『りょーかい。弾幕、行くわよぉ〜♪』

 

 山羊座は最初よりも更に鋭く加速し、急停止からのビーム砲撃……それを繰り返しながら1人で濃密な弾幕を形成し始める。

 

 ちょっと待って、何かさっきよりメチャクチャ速くない???

 

 ビームの乱射具合からもちろん囮だとすぐに分かるのだが、この弾幕に混じって普通に直撃弾も含まれており、更に弾幕の只中で牡牛座が乱入してきた相手の頭上を取り、頭の角を振り下ろしながら身体ごと突っ込む。

 案の定、モロに喰らった相手はバランスを崩し、フラフラとしながら落下を始めた……

 

『ハァーイ、こっちこっち~♪ ……と、思わせといて』

 

 空かさず山羊座が何時の間にか相手の目前へと迫る……相手は慌てて体勢を立て直そうとするがそれはフェイクだった。

 

『こちらが仕掛ける……!』

 

 山羊座は一瞬で相手の視界から外れ、その後ろに陣取った牡牛座が左腕のガトリングを撃ち込みながら超接近して右腕を捩じ込み、先程と同じく爆発音が響いて相手をまっすぐに吹き飛ばす。

 

『更にもひとつ!』

 

 そこへ山羊座がまたもや飛んでいく相手に追い付いて実弾を3発……更に位置取りを変えてライフルを槍の様に突き立てると、そのままビームをぶっ放し始めたのである。

 

 ……ねぇ、なんで普通に追いつけてるの???

 

『キャッチボール、スタート♪』

 

 如何にも嬉しそうな山羊座の声を皮切りに、ビーム照射とパイルバンカーによる応酬がスタート……

 

 うわ、これ絶対メチャクチャ痛いヤツだ。

 

『……良い位置だ!』

 

『返すわよ、牡牛座(◯ョウスケ)!』

 

『戻すぞ、山羊座(◯クセレン)!』

 

『カッキーン!』

 

 二往復ほどキャッチボールを楽しんだ山羊座は、いきなりライフルで相手を殴った……え? それ殴っていいヤツなん?

 

 しかもまだ連携は終わっておらず、飛んでった先で相手を待ち構えていた牡牛座の両肩が開放され……

 

『大盤振る舞いだ! 持っていけッ!』

 

 至近距離の相手に向かって、牡牛座の両肩から大量の小さい鉄球みたいな弾丸が一斉に放射される。アレって確か“クレイモア”とかいうマジキチ武装じゃない……?

 

『……コイツもなっ!!』

 

 畳み掛ける様にクレイモアから右腕のパイルバンカーを突き立てて3連射後、そのまま持ち前のパワーを活かして頭上へと抱え上げる。

 

『山羊座、ココへ撃ち込め!!』

 

『わおわお〜ん♪』

 

 牡牛座の指示に嬉々として()()()()()()()()()を上げた山羊座は、構えたライフルから大出力ビームを、牡牛座の抱え上げた相手に真上から照射。

 しかも牡牛座は相手を傘の様にして大出力ビームの射線を逆に垂直上昇して行く始末……

 

 待って、もう相手がかわいそうになってきた……

 

 やがてライフル銃と相手が接触する直前に山羊座は照射を止め、牡牛座も相手から離れる。

 

 ……これでようやく終わりかと思ったけど、全然そうじゃなかった……

 

『仕上げだッ!』

 

『了解! せぇのぉ……』

 

 先程の原種ロボ相手にそうした様に、一歩下がって再び右腕でアッパー。山羊座も牡牛座の隣に移動してライフルの砲口を相手のボディに突き立て、牡牛座の右腕……パイルバンカーの撃鉄が起こされる。

 同時にライフルの砲口の形状が変わり、砲身よりも大口径で禍々しいデザインへと変貌した。

 

『『いっけぇぇッ!!』』

 

 ラストと言わんばかりに揃えられた掛け声……パイルバンカーの撃鉄が打たれ、同時に山羊座のライフルも大出力ビームを再びぶっ放す。

 

 哀れ標的となった乱入者はロクな反撃も取れないまま、有無を言わさぬ問答無用で滅多打ちにされ……短い出番の最後に大爆発を起こして消滅していったのだった。

 

『……コレが俺たちの……!』

 

『愛の打ち上げ花b……もとい、()()()よん♪』

 

 全てを終えて着地し、回転式弾倉から空薬莢を排出……そのまま弾を再装填しながら爆発の様子を見上げる牡牛座。

 山羊座もその近くにホバリングしながらライフルをくるくる数回ほど回して肩に担ぎ、牡牛座と共に空を見上げる……

 

 山羊座は“むふー♪”とやり遂げた感バリバリだし、心なしか牡牛座も同じ様に思える……

 

 その反対に私は、この場で繰り広げられた一連の連携攻撃の執拗さと容赦無さ……

 

 そして……山羊座の奇妙な言動に、言葉を失うしかなかった。

 

 ……というか山羊座って、あんな設定にしてたっけ?

 なんか、すっごく頭痛くなってきた……

*1
「ヴァン・アレン帯」とも言う。地球の地磁気によって形成されている一種のバリアであり、宇宙空間……特に太陽が放出している有害な放射線等を遮断し、地上へ降り注ぐのを防いでいる。




乱入者が喰らったのはご存知“暴れまくり幽霊(ランページ・ゴースト)”……
モーションは開幕OGs版の弾幕からスタートし、30版のフェイントを割り込ませて、MD版のキャッチボールに繋ぎ、2次OG版のラストかと思いきや、少しアレンジを噛ませてからの打ち上げ花火で〆……マジで容赦なくない?
わおわお〜ん♪とキャッチボールは個人的に好きな過程なので外せないわw

なお、〆後に打ち上げ花火を切り札と言い直したのは
シオンちゃんの前で(あまりに)おふざけが過ぎる(と判断され)ると(グラヴィスから精神的に)お仕置きされるからです。


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第65話 勇者の復活と新たなる目覚め(オマケ)

前回に無かった次回予告?
それよりも重要な語りがまだ終わってない!



 イレギュラーな乱入者にお仕置きを敢行した牡牛座と山羊座……

 まぁまぁ盛大にやらかしはしたものの、とりあえずは原作通りっぽく〆れたのでマシかな?

 

 ……え? 護くんがまだフレームインすらしてないって?

 

 実はこれからなのよね……

 

――――――――――

 

「凱兄ちゃ〜ん!」

 

『護! 無事だったか!?』

 

 原種ロボをゴルディオンハンマーで消滅させ、イレギュラーの対処をし終えてシオンも合流した所で、意味深なキングジェイダーの視線に気付く……

 

 態度を一変させるGGGの一同だったが、そこへ護が飛び出し、彼等は無実だと語った。

 

『……お前達は、何者なんだ?』

 

 ガオガイガーの質問に、無言で踵を返すキングジェイダー。

 

『…………』

 

 そのまま去ろうかとした所に、シオンから驚きの言葉が発せられる……

 

『……原種核は持って行って。後で掠め取る必要は無いでしょ』

 

『シオン!? 何を言ってるんだ?!』

 

『コイツ等、ソレを集めて何をしているのか分からないだろ?!  危険過ぎる!』

 

『稀星隊員、さすがにその判断は……!』

 

 さすがにその発言には、凱をはじめ勇者達からの反発が上がった……しかし、シオンは表情ひとつ変えずキングジェイダーを見続けている。

 

『殊勝な心掛け……いや、お前なら全て知っているという訳か』

 

 再び此方を向いたキングジェイダーは、ガオガイガーの掌に乗った原種核を一瞥し、途中から視線をシオンに切り替えた。

 

 シオンは固有アーマーを纏っており、ガオガイガーの掌に乗る原種核を宙に浮いたまま撫でた後、護へと声を掛けた。

 

『……現実を知れば、そうするしか無いと分かるもの。護くん……いつもの様に、この核を浄解してみて?』

 

 唐突に声を掛けられた護は一瞬動揺する……が、核の浄解はいつもの事だったので気を取り直し、浄解を試みた。

 

 ……が、その結果は……

 

「……駄目だ。浄解、できない……?!」

 

 これには勇者達だけでなく、通信越しのオーダールームからも大きな動揺が伝わる。

 ただ1人シオンだけは「やっぱりね……」と一言。

 

《稀星くん! どういう事かね!? 護くんは何故、原種核を浄解できないんだ?!》

 

 麗雄博士の声に、見守っていたシオンはゆっくりと話し始めた……

 

『今の護くんには、ピースが欠けてるんです。ゾンダーに対しては、今のままでも問題なく対処できますが……相手が原種となると、条件が違うんです。そのピースを揃える為には……護くん自身も知らない秘密と、全ての発端に迫る必要があります……!』

 

 自分の失くした記憶……その単語に反応し、シオンの顔を見る護。彼女は優しい笑みのまま護に近付き、膝を折って視線を合わせ、ゆっくりと抱き寄せた。

 

『ごめんなさいね……前にも言った通り、私は全てを知っていたわ。三重連太陽系で生まれ、世界の外から全てを見ていた私には……』

 

「……シオン、さん……」

 

 その言葉が何を意味しているのかは、護には分からない……しかし、知っていても手を出さなかった……恐れて手が出なかった事を後悔している事だけは、辛うじて理解できた。

 

――――――――――

 

「護くん自身も知らない秘密……か」

 

「彼が天海夫妻の実子でない事は、初期の調査で判明しています。恐らくは、そこに秘密があるのでは……?」

 

 ……オーダールームにて。大河の呟きに、猿頭寺はヒントになるであろう事実を口にする……

 

「護くんには、Gストーンと同質波長のパワーを持っているのは確かだ。その点からも、ギャレオンと何らかの関係性があると思っておる……」

 

《……その辺りは、私も概ね把握はしていますが……彼の秘密を解明し、真実に迫るには……直接、天海夫妻と話をした方が良いと思います》

 

 ギャレオンとの関連性は、私からよりも当事者である天海夫妻から話して貰った方が良い……変に事を荒立てる必要はないし、何より、護くんの封印解除の鍵を握るペンダントは天海夫妻が持っている。

 ……そもそも、この流れを変える(わざわざイレギュラーを起こす)必要性も無いからね……

 

「……分かった。天海夫妻には、私が直接話をしに行こう」

 

――――――――――

 

『……問答は終わったか?』

 

 一連の話の流れを止めず、大人しく待ってくれていたキングジェイダー。シオンは改めて原種核をガオガイガーの掌から持ち上げてキングジェイダーの方へ移動させ、もう一人の運命の子……戒道幾巳の様子を伺う。

 

『彼等はかつて原種と心中覚悟で戦い抜いた、三重連太陽系、赤の星の戦士。彼等は今、己の矜持……いえ、果たすべき宿願の為に今も戦っています。彼等の宿願を果たす為には、原種核を全て集める必要がある……』

 

「……やはり、貴女は全て知っているんですね」

 

 ゆっくりと現れた戒道少年の言葉に、シオンは頷く。

 

『……ならば今後一切、我々の邪魔はしないで貰お『そういう訳には行かないわ』……何?』

 

 しかし、邪魔をするなと釘を刺そうとしたキングジェイダーの言葉をシオンは敢えて制し、こう続けた。

 

『本来は紫の星の者が責を負うべきだったものだし、私は元から関係者……責を負うべき私が今更「ハイそうですか」って引き下がる訳には行かないわ』

 

「……なら、貴女だけが僕達と来れば良い。そうすれば、貴女の……」

 

『事は既に個人の力の範疇を超えてると言ってるのよ。貴方達が如何に強くとも、どれだけ事を荒立てずに凌ごうとも……手に負えない事態はやって来るわ……()()()()()()()()

 

『貴様……』

 

 さすがにキングジェイダーからも剣呑な雰囲気が出されるが、シオンは一歩も引かない。

 

『この世に絶対はあり得ない……確定した未来なんて、物語の中だけ。……ましてや全てを知った私が、同胞の過ちとも言えるこの無価値で愚かな戦いに、たった3人で挑む戦士を何もせずに見送ると思って? 紫の星で生まれたこの“私”が……っ!!』

 

 “狂う前のZマスター”……マイナス思念消去システムの中枢として生み出された彼女は今、後悔と反省を経て、今なお脅威として蔓延る“狂った力”にどうしようもない程の怒りを覚えていた。

 

 後悔先に立たず。

 しかし、事は己の出自から出たもの……自分は何もしていない。だからこそ、怒りが湧いた。

 

 理不尽に無辜の生命を刈り取っていく、かつての同胞に……

 

 その理不尽に立ち向かい、恐らく負けるであろう戦いに身を投じようとする戦士たちに……

 

 いや、元は我が身可愛さ故に、手を出す事を恐れた自分こそ……だ。

 

『……行くなら、“私たち”を超えて行きなさい』

 

『な、何を言ってるのですか?! 稀星隊員!?』

 

『……ほぅ?』

 

『シオン、正気か?!』

 

 今のガオガイガーですら手を焼く相手を……本来一蹴できる力を持つキングジェイダーに、真っ向から啖呵を切るシオン。

 

『……忘れたとは言わせないわよ? 貴方達の致命的な弱点……私達は、そこに対して徹底的なメタを貼れるんだから』

 

 怒りで我を忘れたのか……はたまた策謀の果てに対する答えなのか。

 

 唐突に決まった、キングジェイダー対アーマロイド……

 物語の趨勢は、未だ混乱を極める。




……あっれれ〜? おっかしいなぁ??
ちょいちょい出てきては目的達成して紆余曲折あって共闘により至る筈が、ココでシオンがなんと実力行使に……

事の発端……確かにシオンの生まれ辺りが原因なのは確実だけど、色々複雑だし……もう誰の所為とか言えなくない?

とはいえ、身から出た錆びというか……己の不始末を行うシオンと、使命だからと孤独に戦うJ達。
さすがに共闘しないと無謀過ぎる戦いに挑む彼らを引き入れる為か……
それとも“死ぬ事すら使命だから”と最初から相打ち覚悟で挑もうとするこのお馬鹿さんに、さすがのシオンちゃんもブチ切れたか?

シオンちゃん。何気に初めてキレたかも……?

……コレが若さか?!(違う)
さぁて次回も、サービスサービスぅ〜♪



― 次回予告 ―


君達に、最新情報を公開しよう!

己の使命を全うしようとする赤の星の戦士達……
彼等の、無謀過ぎる戦いの果てを知るシオンは
真の勝利を掴む為に、敢えて戦いを挑む。

強大な戦闘能力を誇るキングジェイダーの前に
未知のアーマロイドがまたしても現れる。

果たして、この戦闘に意味はあるのか……?


次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第66話『戦士と戦士、そして……』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!


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第66話 戦士と戦士、そして……

前回登場した2人も先日、資料集に追加しました。
もう見てくれたでしょうか?w
各ネタの好意的なツッコミは歓迎しますが批判はやめて下さいお願いします(震え声)

さて、今回は完全オリジナル回。
……どうしてこうなった?!

対キングジェイダー戦へと強行策を取ったシオン。
迎え撃つ赤の星一の戦士……ソルダートJ。

果たして、この戦いの結果は……?



『貴様……どういうつもりだ?』

 

 キングジェイダーからの疑問が飛ぶ……さすがに協力を自ら要請しておいて、まるで試すかのような挑発をしたシオンの真意が分からない……といった感じだ。

 それはGGGの面々も同じであり、誰もがシオンの言動に疑問を抱いている。

 

《稀星くん。彼らが敵ではないといったのは君自身だ……それなのに何故、彼らと此処で戦う必要があるのかね?》

 

 大河の指摘は最もであるが、シオンはこう返した。

 

『これから彼らと私達が挑むのは、三重連太陽系を滅ぼした元凶……すなわち、今の私よりも遥かに強い……そしてどうしようもなく、狂ってしまった存在。でもGGGは私以外、奴等の本当の恐ろしさを知らないし、彼らはそれを知っていながら無謀にも少数で挑もうとしている……私はそれを止めたい。彼らを、この無謀としか言えない運命の鎖から、解き放ちたいのです』

 

 シオンは原種……ゾンダーの本当の恐ろしさをGGGはまだ知らないと良い、キングジェイダーに対しては、それを知っておきながら無謀にも挑むという暴挙を止めようとしていた。

 

『原種共は全て倒す、それが我々の使命だ。……生憎だが、貴様の戯言に付き合う義理はない』

 

 そう吐き捨て、去ろうとするキングジェイダーだが……

 

『グラヴィス、全リミッター解除……キングジェイダーを拘束なさい』

 

 途端にシオンは感情を消し去った様にグラヴィスへと指示を出し、グラヴィスもまた無条件に従ってキングジェイダーの足を鋏で捉えた。

 

『……聞こえなかったのですか? 止めなさいと言っているのですよ

 

 冷徹な声色のグラヴィスが、その一言と共にキングジェイダーを軽々と氷上に叩き付ける……あまりにも想像を超えた出来事に、GGGのクルー達はおろか、勇者たちも言葉を失っていた。

 

『……本気だと言う事か……』

 

『でなければ、この私がわざわざ貴方達を止める事はしませんよ。……これは主命です。我々がアナタを、全力でお相手しましょう』

 

 グゥルルル……

 

 ライガーは低い唸り声を上げつつ躙り寄り、キングジェイダーを睨む……

 

『お前達の目的は崇高だが、全てを顧みないやり方は最早賭けではない……無謀が過ぎるぞ?』

 

『貴方達の境遇には同情しちゃうけど、だからって自分達が消えても良いっていうのは……さすがにお姉さんも黙ってられないわ』

 

 シオンの真意を理解しているアーマロイド達は、全員がキングジェイダーを……赤の星の戦士達を止める事に躊躇わない。

 

《……本来ならば、貴様達の事など俺には関係ないのだがな》

 

牡羊座(アリエス)、それは主の意に反しますの……メッ、ですの》

 

《僕達の使命は『主の目的を達する事』……その為には、あなた達の存在も必要不可欠です。しかし、悪戯に命を消費するだけの無駄な戦いに挑むのなら、僕はあなた達を止めます……!》

 

 言葉とともにシオンの傍らに現れた人物……それぞれ黒いローブを纏っている牡羊座、水瓶座、天秤座の3人だった。

 

(先に素体を組んでおいて正解だったわね……)

 

 シオンは表情こそ変えないが、牡牛座から彼等も自己チューンを施した本体を組み上げてきている事を知り、予想外と共に嬉しく思っている。

 呼び出される前から自己研鑽に励み、我が身を組み上げ、それぞれが目的の為にやれる事をやってくれている……『母』というには烏滸がましいとシオン自身は思っているが、ここまで頼もしき仲間ができた事は最高だった。

 

『……さて、貴方はどう来ますか? 赤の星の戦士』

 

『……よかろう。相手になってやる……!』

 

 幾分か逡巡があった様だが、キングジェイダーは立ち上がり構えを取った……

 

──────────

 

『5連メーザー砲!』

 

『効きはしませんよ』

 

『踏み込みの速度なら負けんッ!』

 

『チィッ、ESミサイル……!』

 

『やらせないわよ!』

 

『撃ち抜く……止めてみろ!!』

 

『ぐ……ッ、反中間子砲ッ!』

 

『おっと、それは見過ごせませんね?』

 

『わおーん!』

 

『《ジェネレイティングアーマー、最大出力》効かんな……!』

 

『……ならば、斬り捨てるまでッ!!』

 

『ヌゥ……!?』

 

 開幕に5連メーザー砲をグラヴィに撃ち込むが、グラヴィスには全く効かず、巨体の影からバンカーを構えたアイゼンナシュティアが突撃してくる。

 無論キングジェイダーも即座に反応し、ミサイルによる弾幕防御を展開しナシュティアの進行を阻む。

 しかし、シュトゥルムボルグが目ざとくナシュティアの進行ルート上を阻むミサイルを的確に破壊していき、乱戦模様の最中を掻い潜るナシュティア……ついにキングジェイダーの左太腿部へバンカーが炸裂。

 ただでは済まさないとキングジェイダーは反中間子砲を斉射するが、だがそれもグラヴィスの開けたワームホールによって逸らされ、シュトゥルムからガンスフィアリッターの極太ビームでお返し……直撃はしたがキングジェイダーはジェネレイティングアーマーで完全防御。

 それを見て、下手な射撃攻撃は効かないと判断したダイキャンサーは俊足の踏み込みと共に大太刀を振り下ろし、キングジェイダーは咄嗟に半歩身体を捻る事で直撃を躱す。

 

《な、なんという戦いだ……!》

 

『我々が手を出せる瞬間すらない……』

 

 大河と超竜神が驚愕の言葉を上げる……先の攻防は明確に戦闘開始と理解してから僅か数十秒弱程の間の光景であり、姿も大きさもバラバラなのに息のあった連携を繰り広げるアーマロイド達と、その怒涛の攻撃を的確に捌き、なおかつ反撃もしてくるキングジェイダー。

 大腿部に受けたダメージも時間が経てば回復できる為、単機でも原種を打倒し得る性能というのは伊達では無い……しかし、シオンは表情ひとつ変えず、戦いをじっと見つめ続けている。

 

 グォオォォォンッ!!

 

 アーマロイド全員が同じタイミングでその場からバックステップで間合いを取ったそのコンマ5秒後にストラトスライガーが咆哮と同時にキングジェイダーの片腕に咬み付く。

 

『チィッ! 離れろ……!』

 

 さすがに密着しての格闘攻撃は反撃もそこそこに引き剥がしに掛かるキングジェイダー。

 ジェネレイティングアーマーのお陰でダメージは無いが、四肢をフル活用しての格闘攻撃を何度も掻い潜られ、同じ手は喰わないと迫ってくるライガーの存在はかなり鬱陶しく感じるはずだ。

 

『……どうかしら? 私たち相手だからこの程度で済んでいるのに……数が揃えば、原種達も手加減などしない筈よ?』

 

 徐々に抑え込まれつつあるキングジェイダー、シオンは少し呆れた感じで話すが、戦士という名は伊達では無い。

 

『全砲門、ゼロ距離斉射……!』

 

 殺到するアーマロイド達をフルバーストで振り払い、最速でその場を離脱。そのままシオンへ攻撃を加えんと迫るキングジェイダー。

 

『……ッ?!』

 

 ……しかし、シオンを確保しようと伸ばされた腕は幻影によって止められてしまった。

 

《……ヤレヤレ、貴女の悪い癖だ。当事者としての自覚はどうしました?》

 

『今のは、あなた達を心から信頼しているから……私には、過ぎたる宝と言える程のね』

 

 キングジェイダーの腕を止める幻影は、どう見ても同スケールの人間としか思えない……が、その手は明らかにキングジェイダーの振るう腕を静止させ、少なくとも彼の精神に少なからぬ動揺を誘った。

 

《そこまで言われますか……ならば、尚更貴女の信頼に応えない訳にはいきませんね!》

 

 声の主……物怖じしない言動で主を守った天秤座はフードを脱ぎ、その手には“黄金の天秤”が握られている。

 

《主の憂う事を、まだ貴方には伝えていません……なので、此処からは僕が相手をしましょう!!』

 

 虚空から響いていた様な天秤座の声が実体化によって通常の音の響きを取り戻していき、黄金の天秤が巨大化する。

 天秤座は溶け込むように巨大化した天秤に融合……それと同時にキングジェイダーを止めた腕も酷くボヤけたものからどんどんと鮮明になっていき、透明感が少しだけ残る幻影の様な状態へと変わっていく。

 

 その異様は見る者の言葉を失わせた……筋骨隆々ながらもその顔色は紫一色。黒髪を逆立て、黄金の双眸は一般人ならひと睨みで恐怖を煽られるほどの威圧感を持ち、世紀末の様相を呈する防具を纏う大男……

 

 ……ただし、その体格はキングジェイダーとほぼ同じ100m級である。

 

『僕の力の一端……受けて貰いましょうか!』

 

 闘気を当てられ、反応するように構えを取ろうとしたキングジェイダー……しかし。

 

《オラァ!!》

 

 迎撃の構えを取ろうとしたキングジェイダーの頭部を、幻影の拳が捉えた。

 速度自慢であるJもこの速度には驚愕を禁じえない……しかも傍目には、掴まれていたキングジェイダー(自分)の腕を摺り抜けて迫った様にも見えたから驚くのも無理はないだろう。

 

──────────

 

「な……何が起こっているというのだ……?!」

 

「幻影の大男が、白い戦艦ロボを……殴ったようにしか見えませんが……」

 

「それだけではない! 奴は相手の身体……実体をすり抜け、攻撃の瞬間その部位のみを実体化させて、ダメージを与えておる!」

 

「しかも、大男の幻影が戦艦ロボを殴った速度は……秒速20kmを超えています!?」

 

 大河は驚愕の声を上げ、牛山が見たままを報告する……麗雄はその一連の動きから導き出された現象を言い当て、更に猿頭寺が攻撃の速度を算出……あまりにもあり得ない事が重なり過ぎており、最早常識破壊の大渋滞である。

 

 アマテラスから中継されている映像はその間も変遷を続けており、天秤座の操る幻影が放った拳の直撃を受け、盛大に吹っ飛ぶキングジェイダーが映る。

 轟音を上げながら倒れ込む巨大だが、そのまま動かなくなる事はなく、反動を利用して距離を稼ぎ、遠目からメインの攻撃を射撃に切り替え、天秤座を狙い撃つ。

 

『おっと、さすがに距離は離されるか……』

 

『反中間子砲ッ!』

 

 主砲を放つキングジェイダー、天秤座の幻影は反応こそするがその顔に焦りは全く無い。

 それもその筈、キングジェイダーの反中間子砲が直撃するも、幻影には全くダメージが無い……いや、そもそも幻影は実体を持たないので物理的な手段ではダメージにならない。

 

 幻影を貫通した反中間子砲は命中した氷壁を原子分解して消し飛ばしはしたものの、幻影に何ら影響はなかったのである。

 

『……攻撃が物理学の範疇なら、僕にとってのダメージにはならないよ?』

 

 物理攻撃は一切無効。無敵なくせに一方的に物理干渉してくる幻影……あまりにも驚愕過ぎる能力に、キングジェイダーはこの時点でほぼ詰み掛けている。

 

『……だが、本体はどうかな?』

 

『……そうだね、さすがに本体には物理ダメージも通るよ? でも、君に出来るかな?』

 

 まるで挑発し合うかのような天秤座とキングジェイダー……しかし、次の一言でキングジェイダーの態度は一変した。

 

『……答えは、()()()()。その“確率はほぼ0%”だもの』

 

『なん……だと……?!』

 

『それが()()()()()()さ……この幻影はあくまでも僕の防御機構の1つに過ぎない。僕本来の能力は、事象確率のコントロール……単一の確率演算なら、()()()()()()()()()を代償にしてその()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだよ』

 

 確率をコントロールするとかいう超チート。どう足掻いても勝ち目など無くなる……だが、天秤座自身も内心余裕……とは程遠いものであった。

 

『……どうする? 僕としては、このまま降参してくれると有り難いんだけどね……』

 

『……だからといって、諦める戦士など居ない! 《ジェイ・クォース》ッ!!』

 

 矜持故の頑固さか……戦士に“戦いを放棄する”という選択肢など最初から無いとし、キングジェイダーは必殺の《ジェイ・クォース》を発動させる。

 

『……やばっ?!』

 

 堪らず天秤座は幻影を操作して天秤を掴ませ、跳躍。《ジェイ・クォース》の範囲から外れる。

 

(さすがにハッタリは効かないわね……根っからの戦士だもの)

 

 シオンは推移を見て、やっぱりダメか……と溜め息を漏らした。あの頑固者を説得するには、やはり“あの手”しかない。と決意する……

 

《……代われ、天秤座。俺がやる》

 

 その時、フードを被ったまま牡羊座が天秤座に呼び掛けた。

 

『え? このタイミングで……?!』

 

 牡羊座はシオンの方を一瞥……シオンも気付き、暫しの逡巡の後再び溜め息を吐いてからゴーサインのジェスチャーで返す。

 その返答にフードの下の表情がニヤリと歪んだ……

 

《……次は俺の相手をして貰おう、赤の星の戦士。この……羊光霊機、牡羊座(アリエス)のな!》




Jと戒道くん達には、シオンが紫の星の者という事は既に勘付かれてますね……
でも早く協力体制を整えないと、敵を“勘違いしてる”J達はボコられる事になるんですよ?
そもそもシオンが危惧してるのは“原種ごとき”じゃない。

さて、未登場であったアーマロイド……天秤座、牡羊座、水瓶座も、先行して組み上げた固有活動用ボディのみですが揃い踏みしました。
残りは先行登場していた双子座と、目下大改造中の乙女座のみ!
で~も、天秤座さんさぁ……確率演算に割り込んで書き換えるとか完全にチート確定じゃん。
その上アレよ。幻影なのに物理干渉してくるとか……画面越しの何処かでアーマロイド達はみ~んな何処かで地球産の情報に毒されてませんか?

とりあえず見た目やら性能なんかの能力データは、次話前後辺りに例のファイルへ加えときます。

まぁ、元々この先の展開がアレなので、人サイズでの戦闘も視野に入れないと後で苦しくなるし、そろそろ新種(TV版ラストバトル)に対するアプローチも考えとかないと……

とりあえず今回は此処で1度区切り。
次回は牡羊座とキングジェイダー戦、そして本当に戦うべき相手のお話……

……本当は例の◯ッシュ攻撃までやりたかった……





― 次回予告 ―


君達に、最新情報を公開しよう!

激化するアーマロイド達と白い戦艦ロボ、キングジェイダーの戦い……
その裏でシオンはGGGに対し、己と赤の星の戦士たち。
そして護の本当の故郷……「三重連太陽系」の過去を公表する決意をしていた。

その為にも、キングジェイダー……赤の星の戦士達と和解し、協力体制を整えなくてはならない。
シオンは敢えて、時計の針を進める……

この後に待ち受ける、抗えぬ運命に立ち向かう為に……


次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第67話『過去と罪を償う為に』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!


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第67話 過去と罪を償う為に

原作乖離待ったナシ!!
キングジェイダー対アーマロイド【牡羊座】。

互いに譲れぬものがあるから、ヒトは戦う。
たとえそれが、共通の目的(宇宙の平和と人類の勝利のため)であったとしても……



『ならば、今度は俺の相手をして貰おう……羊光霊機、この牡羊座のな!』

 

 牡羊座は自身に秘められた異能により“多様な幻想”を現実へと引き出し、その身に宿して戦う……とグラヴィスから聞いている。

 最初は何が何だか分からなかったが、今……それがようやく解った。

 

 牡羊座が両腕をクロスさせたその瞬間、激しい光と共に空間が歪み、異なる世界を繋ぐ門が開口。同時にその門から牡羊座の本体が引き出され、本人と重なる事で実体化していく……

 どことなく、入院中に見ていた特撮番組の変身ヒーローが巨大化していく描写にも似ていて、強く印象に残る光景だった。

 

 そうして姿を変えた牡羊座は……青と白のツートンカラーに、丸い翡翠の宝玉を埋め込んだ装甲で身体を覆い、巻き角の様な冠を被った軽装鎧の戦士と化した。

 その手に武器は無く、得物は鎧の両肘から伸びる(ブレード)のみ……

 

 拳打や足技を以て相手を制する……所謂、格闘家をロボットにしたらこんな感じなのだろう。

 体格もかなり良いが、さすがに100m級のキングジェイダーとはまだ大きな差がある……戦闘モードとなった牡羊座の全高は、凡そ40m……といったところか。

 

『いざ、尋常に……勝負ッ!!』

 

 ゆらゆらと流れる様な構えから一転、電撃の如き俊足の踏み込みでキングジェイダーの懐に潜り込む牡羊座。

 キングジェイダーも、サイズ差を逆手に取られた事に一瞬反応が遅れるが、そこは歴戦のカンというヤツか……肘打ち、裏拳、正拳突きという神速の3連撃を紙一重で連続防御。

 

 しかし、牡羊座も防御された事に動じず、一瞬の溜めから両掌を獣の口の様にして重ね、防御の反動で無防備となった下半身へ圧縮されたエネルギー弾(?)を撃ち込んだ。

 

『破ァッ!!』

 

『ぐ……ッ?!』

 

 普通ならば、キングジェイダーのジェネレイティングアーマーが作動し、ダメージなど発生しない……のだが、何の手品か。攻撃を受けたキングジェイダーの装甲部分には小さいながらもポッカリと穴が空き、周囲に焦げ跡や凹み、そして幾つか罅も入っていた……明らかに物理的ダメージが入っている。

 

「Jッ!?」

 

《何だ、今の攻撃は? ジェネレイティングアーマーが機能していない。ダメージは見た目ほど高くないが、奴は此方の防御を抜ける……であれば、巨体では不利。此方も速度で対抗するしか無いぞ?》

 

 さすがにジェイアークのメインコンピューターは分析が早い……トモロの言う通り、キングジェイダーの状態ではサイズ差を逆手に小回りの効く牡羊座の方が優位。それをJも直ぐ様理解し、分離してジェイダーとなった。

 

 サイズ差も逆転し、今度は牡羊座の方が大きくなる……

 

『さっきの様な手はもう通じんぞ?』

 

『……あの程度で、俺の底を知ったつもりか』

 

 牡羊座はどことなく口が悪い……いや、悪気は無いんだろうけど表現が刺々しいんだ。今のは多分「今のは序の口、ここからが本番だ」という感じだと思う……私も、牡羊座と長時間話した事無いから当たってるかは分かんないけど。

 

『プラズマソードッ!』

 

『この切っ先……触れれば切れるぞ!』

 

 次はジェイダーの先攻……音を置き去りにする程の神速を以てプラズマソードで斬り掛かるが、牡羊座は肘に付いたブレードで対抗し、圧倒的なジェイダーの速度に初手から反応している。

 

『なかなか良い反応だ!』

 

『フン、貴様の速度はその程度か?』

 

『舐めるなッ!!』

 

 更に鋭く、速度を増すジェイダーの連撃。既にその連撃数は100を超え、速度も初手からなんと5倍以上に増している……しかし、両肘の刃を使い始めた程度で牡羊座は涼しい顔をしており、ただの一撃すらマトモに入っていない。

 

『……俺はこのまま続けても構わんが、貴様はどうだ? 速度を上げるだけで、俺が根負けするとは思わん事だ。……いずれ貴様の体力の方が先に尽きる』

 

「……ど、どういう事ですか?」

 

「牡羊座の方が圧倒的に不利なのに。何故、あれ程の余裕を……」

 

 牛山と猿頭寺は揃って不可解を口にする……それに対し、シオンはこう語った。

 

『……そこが、私達との決定的な差。最初から人工生命として創造されたアーマロイドと、あなた方との差でもあります』

 

『いつまでも防戦一方だと思わん事だ……舞朱雀(ツーシェ・フレア)ッ!』

 

『……チッ、予想よりも速い……!』

 

「?! そうか、アーマロイドとは“生物に似せて造られた”人工生命……いうなれば生きた機械だ。活動に必要なエネルギーさえ十全なら疲労もせず、損傷も自らで治せる。生命体を核として必要とする下級のゾンダーをはじめ、我々や彼ら異星文明の戦士にも存在する活動限界の概念も……彼らアーマロイド達には適応されないという事か!」

 

 麗雄博士の説明で、全員がアーマロイド達が持つ“優位性”を知る……

 低級のゾンダーには、由来や様々な関連性の問題から残されたままである“活動限界の概念”……だがアーマロイド達や、ゾンダーの上位存在である原種やZマスターには、そんな概念など存在しない。

 

 喩えどれだけ強い生命体だとしても、年単位ほどの時間ずっと絶え間ない攻撃はできないし、動けば疲労……戦えば破損する。でも、最初から人工生命としてデザインされ、最初から整えられた能力・性能を有する原種や、アーマロイド達には最初からないのだ。

 

 ……無論、その反面としての()()()()()のだが。

 

『想像してみて下さい……このアーマロイド達を超えるかもしれない強さを持つ31体。それがもし、地球全土で同時に活動を開始したら? 今でこそ残り27体とはいえ、私達は後手に回って一つ一つ対処するのが関の山なのに、全世界同時複数箇所で暴れ始めたら……? 原種はたった1体でも、惑星1つを機械昇華するのにさほど時間を掛けません……ガン細胞のようにその侵蝕速度は圧倒的です。それなのに、一丸として纏まらない我々が果たして勝てるでしょうか?』

 

 原作でも序盤は囮作戦が如く、原種の攻勢はGGGの限界ギリギリを狙ったかの様な展開の連続だったし、“最強7原種”に至っては「同時侵攻」も行っている。

 当時は物語として見ていた事もあり、シナリオ的な都合やら何やらで思考にフィルターが掛かっていたが、もしこの攻勢の変化が最初から仕組まれた罠であり、都合よく計算された運命だとしたら……?

 

 ギュイィィィ……!『受けろ……玄武剛弾(シェンヴ・インパクト)ッ!』

 

 ガギィンッ!『チィッ……反中間子砲ッ!』

 

『“それ”は既に見切った! 青龍鱗(ランセー・シェル)ッ!』

 

 バシュゥゥゥ……ドパァンッ!!

 

(仮に原作から乖離したとして、私や他の何かを要因に運命的な流れが破綻し、今度の変遷が変わる……もし、残りの原種が一斉に蜂起でもして来たら、今のGGGと私達では絶対に対処が遅れるし、何より連携しきれずに各個撃破される可能性が高い。……ただでさえ、キングジェイダーは原種に対して加減しなくてはいけない状況なのに……!)

 

『原種には、僅かな綻びさえ見られてはならないのです! ……赤の星は、彼ら最強の戦士たちが集う大艦隊を擁しても、勝てなかった……!』

 

 赤の星は、ジェイアーク級を主戦力とするアーク艦隊を擁しても……メインコンピュータであるトモロをゾンダー化されて無力化された。

 

 アーク艦隊は、トモロタイプの生体コンピュータによる大規模な連携が最大の強みだった……だが生体コンピュータであるという事は、ゾンダー化もできるという事。

 原種は、生体コンピュータ・トモロが最新鋭艦に搭載される直前を奇襲し、ゾンダー化された戦艦は味方を撃ち始め、乱戦の混乱に乗じてアルマやソルダートまでゾンダー化させていき……最強の艦隊は、その殆どを討たなければならない敵にされてしまい、赤の星は為す術なく陥落したのである。

 

『……そこまで知っている貴様は……やはり、あの星の……奴らと同じ……!』

 

『……そうです、私は……私は“Zオリジン”。三重連太陽系を滅亡させた張本人……その同類です……!』

 

 ゴォウ……ッ!!

 

『シオン! 下がれっ!!』

 

 ハッキリと、シオンはJ達に己の正体を打ち明けた。その直後、ジェイダーはプラズマウィングを起動……その神速を以てシオンへと迫る。

 ガオガイガーもシオンに迫る危機に踏み出そうと動く、がそれよりも早く牡羊座が反応……全身を白いオーラで包み、一足の踏み込みでジェイダーへと急接近。

 

『やらせんッ! リミット解除……“ファイナル・アタック(コード:麒麟)”ッ!!』

 

 主を守るべく牡羊座はジェイダーに追いつき、機体のフルスペックを発揮させた最大の大技を放つ。この僅かな間とはいえ、自身と同等の速度で動く牡羊座に、ジェイダーは僅かながら動揺し、防御が間に合ったとはいえ、牡羊座の怒涛の攻勢に大きく吹き飛ばされた。

 

『ぐ……ッ……貴様は何故、この星を機械昇華せず、(あまつさ)え守っている!? アレから更に狂ったか!?』

 

『……そうですね。狂っているのでしょう……アレ等も。そして私も……』

 

 赤の星の戦士であるJからすれば、シオンは故郷を奪い、戦士としての矜持さえも奪った怨敵の同類……しかし自身が怒りをぶつけるシオン(その相手)は殊勝な態度を崩さず、抵抗する素振りさえも見せずに真摯に言葉を返してくる。

 

 あまりにも想定外の態度に「狂ったか?!」と断じるJ……しかし。

 

『バカを言うなシオン! 君は狂ってなんかいない!!』

 

『そうです! 先生が本当に狂っているのなら、私達と共に、ゾンダーの脅威に立ち向かう事などしていない筈です!』

 

『先生は何度も、俺達が為すべき事や……“勇者とはどういう者か”を教えてくれた! そんな貴女が狂ってるなんて、どう考えてもおかしいぜ!!』

 

『我々と共に、この星を守りたいと……そう心から願う貴女が、自分の故郷を滅ぼした原種と同じ様に狂っているなど、断じてありませんッ!!』

 

「我々地球人類は、彼女によって多くの苦難と危機を乗り越え、共に歩む力を身につける事ができた……その多くは、彼女が自身すら顧みない純粋な献身から来たもの。彼女が敵と同類である事は百も承知! しかし、彼女は奴らとは違う!! 我々GGGの仲間であり、地球人類の良き隣人なのだ!!」

 

 本来ならば蹂躙されている側の……地球人類からの猛反発。

 

『……ッ……』

 

 一瞬、何故だと疑問を浮かべるJ……しかし、戒道少年から聞いていた事を思い出し、合点がいくと同時に彼女の真意……

 

 この地球(ほし)を、人々の生きるこの世界を守りたい……

 かつての過ちで滅んだ三重連太陽系(己の故郷)と、同じ道を辿らせない……あの惨劇は、二度と繰り返させない。

 

 ……心からそう願う存在として、初めてシオンを認識できた。

 

『……。……それが貴様の選んだ道か……』

 

 それまでの剣呑な雰囲気から一転……ジェイダーはゆっくりと構えを解き、後ろを向く。

 

「……ピッツァ……いや、ソルダートJ……」

 

《……J、アルマ。彼女の態度からは、人間特有の不合理さと感情が感じられる。そして彼女の予測……原種が連携をする事で、我々が不利になる可能性は確かに捨てきれない。本当の意味で、我々と敵対しないというのならば……私は彼女の提案を、受け入れても良いと思う》

 

『……トモロ。お前がそこまで言うとはな』

 

 生体コンピューターとして、トモロはシオンの真摯な言葉と態度をそう評価した……ゾンダーではなく、ヒトとしての想い。トモロはシオンの全てに“自分はヒトである事を辞めてない”という事を感じていたのである。

 

「僅かな間だけど、僕も彼女の事を知る機会はあった……僕も、彼女を信じても良いと思う」

 

 護の周囲にシオンが居り、共に動いている事で、護の近くに居た戒道幾巳もまた……直にシオンを見て、知り得た事で、彼女の想いは本物であると感じている。

 

 仲間である2人から、意外な答えが返ってきた事に少し驚くJ……しかし彼が信頼を寄せる2人が、“信頼しても良い”と評するシオンを受け入れるには、いま暫くの時間を必要としていた。

 

『……私は、貴様を信じきれん……だが、貴様がそいつ等と共に、原種と戦うというその意気は買ってやる』

 

 そう言い残してジェイダーを飛翔させ、ジェイバードに変形。そのまま上空で待機していたジェイキャリアーと合体し、ジェイアークとなって極北の空に赤い軌跡を残しながら飛び去っていった……

 

『……アイツは、シオンを認めてくれた……のだろうか?』

 

 飛び去ったジェイアークの軌跡を眺めながら、ガオガイガーは呟く。

 

《それは分からん……しかし、彼らが稀星くんを悪と断じるのを止めた事だけは確かのようだ》

 

 麗雄は息子の呟きにそう返しながら、勇者たちを映し出すモニターを見続けるのだった。

 

 完全に認められた訳ではないだろう……しかし彼らにとっても、GGGと共闘する事で大きなメリットはある筈だ。

 

(とりあえずは……丸く収まった……のかな?)

 

 内心鳥肌モノ(ルート的にも、命の危機的な意味でも)だった状況は脱し、仮にとはいえ赤の星の戦士に“敵対しない”事を認めさせたシオン……

 

 信頼を勝ち取る為には、まだ多くの理解と時間が必要なのだと思い……この場は“コレでよし”と考えるのだった。




もう少しシオンに対する理解が進まないと、味方としては見られない……Jからすればそんな感じ。
でも、とりあえず敵ではないし、敵対もしないという事は分かってくれたと思う……ちと強引だけど。

さて、次回は原作展開に戻り……
ついに出演する新型ビークルロボ。
中国で生まれた第二の兄弟が登場します!

お楽しみに!!

― 次回予告 ―


君達に、最新情報を公開しよう!

中国で造られた、新たなる勇者……
戦闘用ビークルロボ、風龍と雷龍。

その実践稼働テストに招かれたGGGの面々は、
彼らの人格に大きな問題を感じる。
シオンも原作通りの展開を予想していた……

そこに原種も現れ、原作通りの展開を想起させるが
イレギュラーにより、事態は予想外の展開を迎える事となった。


次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第68話『疾風迅雷』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!


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第68話 疾風迅雷(1)

勇者シリーズの最新作がなんと漫画でスタート?!
しかも以前の勇者たちとも共演前提ってマ?


より一層激しさを増すであろうゾンダーとの戦いに備え、GGGは宇宙へ上がった直後から世界各国に対し「超AI」と「GSライド」の構築技術を提供していた……

そして、極北の戦いから2週間後……
ついにそれらが結実し、中国にて現行の最新技術を惜しみなく投入された戦闘用ビークルロボ2体が完成したとの報が入る。

基礎開発元としてGGGは、そのロボット達の外部評価に招致された。

はたして新型ビークルロボは、地球防衛の戦力になり得るのか?
国連からの極秘任務もあり、麗雄は息子と助手らを引き連れて、一路中国へ飛ぶのだった。



 シオンはこの、“中国製ビークルロボ”の一件に並々ならぬ興味を示していた……

 

 それもその筈、自ら教育に乗り出し、結果を示したあの“竜シリーズ”の兄弟機。

 

 ……あの「風龍」と「雷龍」が、この世界で生まれたのだから。

 

 原作では初期に“性格面に難あり”と評され、戦闘用に調整されたプログラムに傾倒した教育のせいで彼ら本来の性能を発揮できず、最大の強みであるシンメトリカルドッキングも当初は不可能であった……無論、途中から自己学習によりその欠点も克服し、竜シリーズ最強の攻撃力を遺憾なく発揮できる強さを手に入れているのだが。

 

(そんな風龍と雷龍が、この世界で産声を上げた……此方ではどんな事になっているのか……私、非常に気になります!)

 

 実際はこの世界ベースの彼らが、どんな事になっているのかという興味本位……もし原作同様の欠点を持った状態だったなら、主任開発者である「楊博士」をこき下ろ……厳重に抗議するつもりであった。

 

― イザナギ内部 艦橋 ―

 

「そう言えば稀星くん、向こうの“楊 龍里”博士とは既知だったそうじゃないか」

 

『ええ、まぁ……』

 

 中国製ビークルロボの開発主任、楊 龍里(ヤン・ロンリー)と稀星シオン……この2人の関係は、あのガオガイガー初出撃よりも少し前に遡る。

 

 当時、話題沸騰中の美人女医として取材を受けていた頃のシオン……当然、海外からの取材やオファーも多く、当然、行き過ぎた行為に走る輩も少なからず存在していた。

 

 ある時シオンは、パパラッチ等の追跡を逃れてオフを満喫すべく、変装ついでに特殊能力を駆使して日本を離れ、中国で観光をしていた……

 そこまでは良かったのだが、行った先の中国でも追い回される羽目になったのである。

 

 だが、そこへ運良くマトモな“ある男”が通り掛かり、シオンを匿ってくれた。

 

 その男こそが、当時の“楊”である……

 

(あの時の事には感謝してるわよ……あの時の事にはね)

 

 

 その後、帰りに予約していた便が故障で遅れてしまうという事態となり、シオンは予定時刻まで中国で過ごさなくてはならず……出先でも追い掛け回されるという事に、苛立つのも無理はない。

 楊はそんなシオンをパパラッチ等から遠ざけてくれた現地人で、普通なら感謝して定時を迎え、別れる……のが普通の流れだろう。

 

 しかし、短時間とはいえ楊はシオンの整った容姿と、オフだから見られる彼女本来の性格を目の当たりにし、いつしか楊は本気でシオンに惚れてしまった。

 

 勿論、彼は1度も悪くどい手など使わなかったのだがそれ以降、女医として生活していた間……わりと結構な頻度で真剣交際を申し込んできたのであった。

 

(中国では才ある若者を囲い込む手段として、そういう関係を迫る……というのを聞いた事がある。でも私はできるだけ日本に居たかったし……)

 

 惚れた腫れたなど、中身が中学生であるシオンは“まだまだ先の話”だと思っていた上、何より優先すべきは当時まだ潜伏中であるが故の、各方面との折衝問題であった為、当時は何とか有耶無耶にし続けていた……

 

 しかし、先の“EI-01”による東京大決戦の際に公表された情報により、シオンの存在と由来は公然のものと化し、現在は正式なGGGの隊員となっている今……彼からのアピールも再加熱していたのだった。

 

「僕からすれば、楊博士は軍事的な思考に染まりつつあるが、性格自体は悪くない……まぁ、君が良ければの場合だがね?」

 

『……麗雄博士……1つ、忘れてませんか?』

 

「はて? 僕の助手は美人で器量よし、将来有望の貴重な人材だと思っとるがのぅ」

 

『……誤魔化さないでください! 私、地球での戸籍上はまだ中学生なんですよ?!』

 

「Alright! シオンはまだBride(お嫁さん)には早いデース。イザとなったらワタシが護りマース」

 

「……スワンさぁぁぁん!」

 

「Oh、心配ないデース」

 

「……父さん、あまりシオンを誂わないでくれよ」

 

「はっはっは! 冗談じゃ……だが、僕の稀星くんに対する評価は冗談ではないのだよ」

 

『ゔ〜〜〜っ(分かってますよ……博士は冗談こそ言うけど嘘は吐かない事くらい)』

 

 シオンは麗雄に誂われた事を敢えて本気で捉え、スワンからの助け舟に縋り付き、凱は父のお茶目にやんわり釘を刺す……

 

 ……目的地(中国)への旅はそんな感じであった。

 

──────────

 

 中国科学院 航空星際部……楊 龍里は若くしてその主任研究員となった天才である。

 

 中国における軍事科学技術の発展と、独自の機械化混成部隊の創設に大きく寄与し、いずれは世界十大頭脳の仲間入りを果たすのではないか、と言われている……

 

「ようこそお出で下さいました、獅子王博士にGGGの皆さん……楊 龍里です。以後、お見知りおきを」

 

 若くして主任となった楊……本来、対外的な対応は担当を立てて行うが、迎える相手が世界にも顔が効く人物という事で、自ら対応する。嫌な顔一つせず応対する彼の態度に、麗雄も笑顔で返した。

 

「これはこれは、ご丁寧にどうも……此方は息子の凱と、私の助手で……」

 

「スワン・ホワイトデス、Nyse to me you」

 

 美人の助手がいるというのは知っていたが、実際に見ると噂以上……そして、2人目の紹介に楊の顔が固まった。

 

「どうも……ッ……、君は……?!」

 

「……ど、どうも……」

 

 当時から容姿の差異はあれど、大部分の印象は変わらないので見間違える筈もない……楊の目に映った少女は、当時窮地を救った美人女医によく似ていた。

 

(……もう隠す必要は無いんじゃろ?)

 

(そ、そうですけど……)

 

(なら、故意に不和を起こす事も無かろうて)

 

(……はい)

 

 既に正体の方がバレバレだし、シオンが異星文明の出身である事も、敵と同類である事も……そして、地球を守る為に尽力している事も周知の事実。

 その為、今更な隠し事で要らぬ不和を起こす事もない……と、麗雄に諭され、シオンは意を決して打ち明けた。

 

「私……稀星シオンです。お久しぶりですね、楊さん」

 

 

「……成る程、君があの時の……いやはや、そういう事でしたか」

 

『あの時は……下手に関係者を増やして、取り返しの付かない事態に発展するのを恐れていて……あの……すみませんでした!』

 

 表面上はなんてこと無い……といった表情だが、彼の内心は複雑だろう。しかし、シオンの謝罪を聞いて最初の一瞬だけは難しい顔をしたものの、すぐに表情を戻して楊はこう言った。

 

「……まぁ、当時の貴女に惚れていた事は事実。そんな事情があった事には驚きましたが、そういう事ならば……非常に残念ではありますが……ね」

 

 ……とりあえず、不和の元にはならない様に解決出来たようです。

 

──────────

 

 その後……楊の案内で航空星際部の施設を見学していたシオン達だったが、そこに突然の地震と警報が発生する。

 

 事態を把握すべく楊は警備員に連絡を取り始め、事の子細を問うが……

 

「何事だ?!」

 

《分かりません! 突然揺れ出して……あっ?!》

 

「どうした?!」

 

《ば、万里の長城に……怪物が……?》

 

「なんだと?!」

 

(……ッ、原種ね……!)

 

 その直後、シオンの超感覚が相手の反応をキャッチ。周囲を警戒していた氷竜達からも緊急通信が入り、外の状況が伝わってきた。

 

「何だって……?!」

 

「まさか、この地震は……?!」

 

──────────

 

 万里の長城付近に現れた原種……観光客を内部に取り込んでゾンダーに変えつつ、自身は空高く伸びる塔の如く宇宙を目指し始めていたのである。

 

 無論、事態を察知した氷竜と炎竜は連携し、民間人の救助を始めたのだが……

 

『……クッ、こいつ等……強い……!』

 

『我々の装備では、ダメージにもならないのか?』

 

 取り込まれた人が続々とゾンダー化しており、尖兵として氷竜達の攻撃を防ぎ、救助が思うように進まない。

 

『……?! あれは……?』

 

 その時、緑色のミキサー車と黄色いダンプカーが颯爽と現れた。ゾンダー等の攻撃を華麗なドライビングテクニックで躱し、敵集団深く切り込んでいく……

 

『『組織交換(ズージイジャオファン)!!』』

 

『風龍!』

『雷龍!』

 

 緑色のミキサー車と黄色いダンプカーはそれぞれ変形、氷竜達によく似たロボットとなる。

 

『……目標確認。作戦行動、開始』

 

『了解!』

 

 緑色……風龍が合図し、黄色……雷龍と共に行動を開始。ゾンダーロボがひしめく敵集団へと突撃していくのであった。




……なんかさ、オリジナリティ出そうとしたらこんな事にw

風龍と雷龍の開発主任である楊博士に若返って貰いました。
原作当時の年齢は妻子持ちで相応の年齢だけど、本作では新進気鋭の若手筆頭!
ついでに言うと、原作みたいな堅物キャラでもありません。

次回もお楽しみに!!


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第69話 疾風迅雷(2)

勇者宇宙(ブレイブユニバース)ソーグレーダー。
ついに来たか、新たな勇者の伝説が……!
非常に楽しみでありまする♪

なお、前回そのまま続けると絶対に止められそうに無いので分けました……



 氷竜と炎竜だけでは対処しきれない程の敵集団……

 そこへ颯爽と現れた新型……風龍と雷龍。

 

 敵集団からの攻撃を華麗に捌き、敵陣深く斬り込んで変形……そのまま攻撃を開始する。

 

『ティガオ4、ヴァ──ンレイッ!』

 

 容赦なく攻撃を敢行する風龍と雷龍に、氷竜と炎竜は圧倒される……それもその筈、原作と違って風龍と雷龍は、単体でもゾンダーロボのバリアを貫通するほどの攻撃力を発揮しているからだ。

 

『……なんて攻撃力だ……!』

 

 そこへイザナギ、そしてオービットベースから発進したアマテラスも合流し、ガイガーもファイナルフュージョン……ガオガイガーへと変わり、戦線に加わった。

 

『氷竜、炎竜! 状況は?!』

 

『あの2人が戦線に加わって、盛り返してはいるのですが……』

 

『アイツ等、全く容赦なく攻撃してるんだ!』

 

 ゾンダーロボには、コアにされてしまった人間が中に取り込まれており、彼らを救出しない限り無限に再生するため一向に数は減らない……GGGの戦闘記録からも、人命に関わる最重要項目であるこの情報は国連を通して世界に共有されている筈なので、意図的でない限り彼らもこの事は知っている筈だ……

 

『何だって?!』

 

 氷竜達の報告に、驚愕の声を上げるガオガイガー……それを尻目に、背負っているミキサータンク……攪転槽(ジャオダンジィ)を前に向ける風龍。

 

『ティガオ2、風導弾(フォンダオダン)!』

 

 前方を向いたそのユニットの先端から、圧縮空気が充填されたミサイル弾が連射され敵を粉砕していく……しかしシオンが解析すると何故かコアへの損傷は殆ど無い様で、少し時間を置くと破壊されたゾンダーロボは普通に復活していた。

 

(あれだけ破壊されたにも関わらず、コアへの損傷が回避されている……なら、彼らは意図的にコアへのダメージを与えない様にしているという事? どういう意図でそんな事を……)

 

 原作とは明らかに違う彼らの戦闘行動……原作では軍事教練プログラムに基づいた行動パターンにより、人命尊重の優先順位は極端に低下しており、敵の撃破を最優先事項としていた。

 しかし今目の前で戦闘している風龍と雷龍は、ゾンダーロボを撃破しうる攻撃力を持ちながら、コアへのダメージは極力抑えている……行動と結果がチグハグで、ハッキリと意図が読めない。

 

 その時……

 

《風龍、雷龍! そんな雑魚に構うナ! サッサとアッチの大きな奴を破壊するネ!!》

 

『『……了解』』

 

 突然割り込んできた通信……楊とは全く似ても似つかない、無駄に偉そうな男の声。その声に指示され、風龍と雷龍は僅かな思案の後に原種ロボへとターゲットを変更し、攻撃を再開した。

 

『何ッ?! 止めろ!! 原種はお前達が敵う相手じゃ……』

 

 グォォォオォォォ……!! 

 

 ガオガイガーの発した静止の声を無視し、風龍と雷龍は揃って飛び蹴りを原種ロボに直撃させる……が、原種ロボはその長大な身体をくねらせて衝撃を吸収し、逆に反動を付けて風龍と雷龍を吹き飛ばした。

 

『……敵、損傷無し』

 

『攻撃行動、続行』

 

 明らかに無駄な行動だというのに、構わず攻撃を続行しようとする風龍と雷龍。その異様な思考パターンにシオンは呆れから怒りへとシフトし、アーマーを装着。足元にグラヴィスを召喚して一緒に跳躍……

 

『や・め・な・さいッ!!』

 

 グラヴィスの両腕……大鋏を拳骨に見立て、シオンは頭上から風龍と雷龍に直接的な“お仕置き”を敢行するのだった。

 

 

 その後、ガオガイガーとアーマロイド達の連携により、ゾンダーロボの大半はコアを抜き取った所に、ボルフォッグの独断で連れて来られた護によって浄解され事なきを得た……が、肝心の原種ロボは地中へと逃げられてしまい、GGG一行は体制を整える為に1度、科学院航空星際部の施設へと戻った。

 

──────────

 

「……全く、何なのだあの戦果は?! お前達は我が国最強の戦力なのだゾ?! 二度とあんな醜態を晒すでなイ!!」

 

『『…………』』

 

 返答こそしないものの、申し訳ない表情をしている風龍と雷龍……この辺りは軍事教練プログラム履修時と同じ様なので、シオンも気にしなかった……いや、他の事に気を取られていた。

 

「楊! お前が居ながらなんて体たらくダ?! 風龍と雷龍があの程度の敵に苦戦するなど……教練プログラムのレベルが足りてないのではないカ?!」

 

「……申し訳ありません」

 

(何なのよあの男は……?! 原作にはあんなの居なかった筈……)

 

 先程の割り込み通信で風龍と雷龍に司令を下した男、原作に出てすらいない矢鱈と偉そうな態度……そして楊に対しても厳しい文句を吐き捨て、椅子にふんぞり返っている。

 この男【劉 痞子(リュウ・ピィズ)】……実はこの中国科学院のトップである院長、つまりGGGのメンバー以外にとって決して逆らえない上司という立場であった。

 

 その後も手当たり次第の部下に対して小言を言いまくり、GGGのメンバーの存在も半ば無視する様に去っていった……

 

「スミマセン、見苦しい所を……」

 

「いえ、アレが此処の所長とはのぅ……君も苦労しとる様だな」

 

「…………」

 

 麗雄の言葉に、楊は無言で眼鏡の位置を整えるだけだったが、その表情には(全くです……)と疲れ切った感じがありありと浮かんでいた。シオンもコレには同情を禁じ得ず……帰ったら楊宛に《マインドセラピー》用の器具を贈ろうと考えるのであった。

 

──────────

 

『……楊さん。風龍と雷龍の事ですが……』

 

 シオンは氷竜等の整備を手伝った後、航空星際部の施設へ赴き……先の戦闘で風龍と雷龍に感じた違和感を突き止めるべく、直接楊の下に話をしに行った。

 

 シオンからの質問に対し、無言のままシオンへと目配せをして手近な個室へと案内し、カメラ等の機器が無い事を確認すると、楊は申し訳ないという表情でこう語りだした。

 

「……先の戦闘は、所長自ら指揮を執っていた。此処にいる我々は、誰にも所長には逆らえない……我々はタダでさえ、我が国の防衛に重要な研究を任されている身であり、所長に才能を見出され、この航空星際部に席を用意された者ばかり。此処では、少しでも所長の方針に従わない者は容赦なく切り捨てられる……我が国の失業率は知っているだろう? 皆、家族を養う為に必死なのだ……それ故、誰も所長には逆らえないのだよ」

 

 その言葉に、シオンは絶句してしまう……確かに中国は、驚くべき速さで列強国に比肩し得る経済成長を成し遂げた。しかし、その反動か……国内の貧富の差は他国と比べても圧倒的な上、失業率も年々上がり続けている。

 切り替わりが早いという事は、相応に捨てられる影響も大きいという事……発展の速さが逆に災いしてか、国内に蔓延る悪影響は悪化の一途を辿り、それが一部の権力者の台頭や思想の変化にも影響を及ぼしていたのである。

 

「……私だけならまだ良い。しかし、部下や皆には守るべき家族が居る……私が所長に逆らったとして、部下達まで切り捨てられないという保証もない。とにかく我々は、所長に従うしか無いのだ……」

 

 それから、風龍と雷龍の行動についても部下同様に「逆らわない様に」と厳命してあった様で、()()()()()()()()との思いで、コアへのダメージを極力避けているのだろう……と語ってくれた。

 

(命じられるままに戦う事しか許されない……そんな状況でも、人命尊重を考えられる。この世界の彼らは、最初から素晴らしい勇者なのね)

 

 楊から全てを聞き終え別れた後、シオンは猛烈に感動していた……既に多くの薫陶を得て、見事に勇者として活動している風龍と雷龍。

 楊やその部下達とも見事な信頼関係を結んでおり、彼らが切り捨てられるのを避けるべく、黙って所長の司令で従っている事を知り、シオンは何とか出来ないかと思考を回し始めるのだった。

 

──────────

 

(……何故ダ?! 風龍と雷龍はあの日本のガラクタ共(氷竜と炎竜)を超え得る我が国の最新兵器。我々の手で完璧になった筈なのに、何があのロボット共に劣るというのダ!!)

 

 その頃……所長室で劉は1人、執務机に備え付けられた所長専用端末の画面を見ながら歯軋りをしていた。

 その画面には風龍と雷龍のスペックと、竜シリーズ特有のステータスである【シンパレート値】の変動データが表示されている。

 

 先の戦闘時も劉は逐一、この画面を気にしながら司令を出していたのだが……想定し得る相手の行動に対して、的確な指示をしていたにも関わらず、最強モードたる【シンメトリカルドッキング】を実現する為に必要な【シンパレート値】は規定値にすら届かなかった。

 

(何が原因なのだ?! 風龍と雷龍は完璧な筈……楊達に教練をさせたのが間違いだったカ? ……いや、恐らくはGGGの連中の影響ダ。奴らは我々の戦略と全く違う手段で敵を撃破していタ……奴等には、元が敵の同種だった存在が助力をしていると聞ク……そうだ、あの小娘ダ! あの小娘が悪影響の原因に違いなイ!! さて、どうしたものカ……)




……とりあえず此処まで。
次回、想定通りに進めばちゃんと撃龍神が登場してくれるハズ……

お楽しみに♪


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第70話 疾風迅雷(3)

ソーグレーダーは7月末から連載かぁ……
ウチも負けてられないや!



 その翌日……1度地中に逃げた原種は、大地に聳える塔の様にして再び現れ、その長大な体躯を宇宙へと伸ばし始めた。

 

 その目的はただ1つ……オービットベースへの直接攻撃だ。

 

『敵の解析が終わりました、今データを送ります!』

 

 私は敵の再出現に備え、アーマロイド達を偵察に出し、事前に掴んだ情報と併せて原種ロボの構造データや解析可能な情報を纏めてオービットベースへ転送する。

 

《稀星隊員からのデータを受信、メインスクリーンに出します》

 

 通信で繋がった私からオービットベース、そして航空星際部施設の麗雄博士とスワンさんの下へデータが届き、画像が表示される……そのあまりにも異様な状態に、スワンさんは思わず絶望的な声を上げてしまった。

 

《Oh my god……モホロビチッチ不連続面を、完全に貫通してマース!》

 

 “モホロビチッチ不連続面”とは、大地や海底を構成する地殻層と、高温高圧の流動マントル層の境目を指す呼び名……恐らく逃げた際にココからエネルギーを取り込み、利用する算段を付けて再襲撃しに来た……という事だろう。

 

《奴は直接、このオービットベースを攻撃するつもりか?!》

 

《原種ロボの頭部。大気圏上層到達まで、あと15分っ!!》

 

《このまま黙ってやられる訳には行かん! 総員、第一種戦闘配備!! 動けるマイク部隊は直ちに発進し、原種ロボを迎撃せよッ!!》

 

『クーゲルとダイキャンサーをガオガイガーの直掩に付かせて向かわせます! 到着するまで、何とか持ち堪えてよマイク!!』

 

《頑張るもんネー!》

 

 斯くして、原種ロボの迎撃作戦第2幕が開始された……

 

──────────

 

『システムチェ──ンジッ!! マイク・サウンダース13世ッ!! 最高〜だッZE!』

 

 原種のデータはまだ完全解析には至っておらず、ディスクXのソリタリーウェーブ・ライザーはまだ使えないが、ガオガイガーとの連携による援護ならば問題ない。

 

 ガオガイガーは地上からクーゲルザウターとダイキャンサーを引き連れて大気圏を突破する為上昇……その間にも原種ロボの防衛に増殖し続けるゾンダーロボの相手は、氷竜と炎竜にライガー達アーマロイドと、航空星際部から風龍と雷龍も合流……

 

《今度こそ、我が国の敵を全て破壊しなさイ!!》

 

 ……そして、あのクソ上司こと劉所長も出張って来ていた。

 

(ダメダメ、今は原種の撃破に専念しないと……!)

 

 シオンは頭を振って悪い思考を追い払い、ストラトスライガーに触れながら語り掛けた。

 

『……ライガー、今回は多数を相手取れる、圧倒的な火力が必要よ。CAS……完成済みとはいえロクなテストもしてないけど……やれるわね?』

 

 ガオォォォンッ!!

 

 シオンの問い掛けに、小気味良い咆哮で返事を返すストラトスライガー。

 最近のゴタゴタでロクなテストも出来ていなかったライガー用の追加装備……“CAS”とは、ライガー自身の本能とコンバットシステムの最適解に基づいて設計された各種の専用パーツ群と、亜空間転送システムの応用により、状況に合わせて自在にその追加装備を付け替え可能なシステムを指す。

 

 今回の作戦では主に対多数……ガオガイガーも不在となるので、単騎でもコアの確保を行える程の火力が必須となる。

 

 つまり、今回の最適解は……

 

『ライガー。インストレーション・システムコール……“パンツァー”!』

 

 シオンの言い放ったシステムコールに反応し、待機するライガーの周囲に幾つもの亜空間転送ゲートが開放される。その中から無数のアームが伸び、ライガーのハードポイント……目的の追加装備を接続する場所にあるノーマルモード用の装甲パーツを本体から取り外していく。

 

 ピピピッ、ビーッ……ガゴン、ガシュン、ガギン、パシュゥゥゥ……

 

 シオンの眼前にもホロディスプレイが展開され、そこに作業工程の推移がリアルタイムで表示される。

 通常装甲は全解除……コールに基づき、“高火力・砲撃戦闘用の追加装備”が選択され、緑色の三次元フレームがライガーの周囲の空間に投影されると、位置関係をシステムが把握……各部ハードポイントの位置に亜空間ゲートが接近していき、中から現れた追加装備が、後部から順番に接続されていく……

 

 それは重戦車を思わせる分厚い装甲内に、針鼠の如く大小様々な火器類を仕込んだ超高火力砲撃仕様の各部追加アーマーと、“槍”の如く長大な背部の連装高出力ハイブリッド砲「グレイヴカノン」が2門、そして高性能レーダーやマルチロックオンシステムを内蔵した頭部パーツからなり、既存戦力で言えば一個大隊級の火力を詰め込んだ超攻撃仕様だ。

 

─ Stratos Liger(Panzer). “CAS”, Completed. ─

 

 全アーマーの接続完了後、ホロディスプレイにその旨が表示され、投影フレームが解除される……囲みが全て消えると、ライガーはまるで猫が寝起きの伸びをするように身体を動かした。

 

 見た目的は凄まじく重そうだが、実は装備に内蔵された「グラビコンシステム」の質量軽減効果によって、感覚的重量はノーマルと然程変わらない……

 

『ぶっつけ本番だけど……頼むわよ、パンツァー!!』

 

 グオォォォンッ!!

 

 シオンの激に応える様に最大音量の咆哮を上げ、そして走り出すライガー……重戦車の如き威容を放つ巨体がF1マシン並の速度で敵集団へと突撃を開始。

 

 まずその光景に気付いたのは氷竜と炎竜だ……

 

『アレは……ライガー? しかし何だ、あの装備は……?』

 

『物凄く重そうな見た目なのに速ぇ……!』

 

 ガオォォォンッ!!

 

 咆哮を上げて走って来るライガーに、何かを察知する氷竜と炎竜……直感に従い姿勢を下げ、そのまま周囲を警戒。ライガーは走りながらアーマー各部のパネルを展開し、氷竜と炎竜の間をすり抜けると、その先にあった岩をジャンプ台代わりにして跳躍……空中で向きと角度を調整して着地すると、開いておいたパネル内に搭載されたミサイルを一斉に解き放った。

 

 ボボボシュゥ…… パシュパシュ……ドドドォンッ!!

 

 周囲に撒かれたミサイルは一定距離を飛ぶと分裂して細かく別れ、急に意志を持ったかの様に敵へ向けて乱れ舞う。氷竜と炎竜の間近にも敵は居たが、鋭く曲がる小型ミサイルは高速で飛翔し……あらゆる角度からゾンダーロボにだけ狙いを定めて殺到していた。

 

『この乱戦の中、敵だけを正確に狙っている……?!』

 

『なんて正確な識別能力だ……!!』

 

 ストラトスライガーには、生物の本能が如く瞬間的に敵味方を識別する能力を持っている。その識別速度はなんと0.01秒間で約80体……それをただの1度もミス無く判別可能だ。

 更にパンツァーの高性能レーダーと各種センサーを組み合わせる事で一定空間内の全てを完全に把握し、これだけの数のミサイルをバラ撒いてもキッチリ敵味方を違える事無く識別……正確に敵だけへ誘導する事が可能なのである。

 

 ガオォォォンッ!!

 

『……?! 見ろよ氷竜、ゾンダーロボのコアが……!』

 

『ゾンダーロボの再生も、極端に遅くなっている……今なら、直接コアを抜き取れば!!』

 

 ライガーの咆哮に、炎竜はゾンダーロボの状態を見て驚く……氷竜もそれを見て、間違いなくチャンスだと判断した。

 

 そこにはマイクロミサイルの猛攻を喰らい、ボロボロになりながらも辛うじて立っているゾンダーロボ……その一部はコアが剥き出しになっており、もう一押しでコアを摘出できそうな状態にまでなっていたのだ。

 

『クレーン・トンファー!! はぁぁぁっ!!』

『ラダー・トンファーッ!! うぉりゃあ!!』

 

 氷竜と炎竜はその隙を見逃さず、確実にコアが見えているゾンダーロボへ追撃を加えてコアを抉り出すと、護を護衛するボルフォッグへと受け渡し……

 

「クーラティオー! テネリタース、セプティオー……サルース、コクトゥーラ!!」

 

「Oh yes!! ライガーの攻撃でコアが見えてマース!」

 

「良いぞ! この調子で敵の数を減らせれば、原種に専念できる!」

 

 ボルフォッグに護衛されながら、護が抉り出されたコアを浄解していく……ガオガイガーが不在であっても、アーマロイドとの連携でコアを浄解し、敵の数を確実に減らしていける事に、麗雄とスワンは破顔した。

 

 だが、この状況をヘリから見ていた劉所長は真逆に苦々しい顔……そしてその直後に劉は、誰もが予想していなかった指示を風龍と雷龍へ飛ばした。

 

《風龍、雷龍! あの獣型も敵と同じだ、纏めて破壊してしまえ!!》

 

(あの獣型……小娘の指示で動いてはいるが、アレはGGGのメカではなかった筈……コレは使えるゾ!)

 

 劉の指示は航空星際部側しか聞いていない為、無論GGGやシオンには聞こえていない……しかし、さすがに風龍と雷龍も、この指示には当然異議を唱え始めた。

 

『劉司令。あの獣型は現在、敵の排除に協力してくれています……なのに敵と判断するのは……』

 

『明確な敵対行動もしていない相手を敵として処理するには、相応の理由が必要と判断しますが……』

 

《煩いッ!! 奴等は元々(ゾンダー)の同類だぞ?! 今は味方として振る舞っていても、ゾンダーの次に脅威とならない可能性は無い! そもそも、あの小娘が我が航空星際部で培われた数々の研究を無駄にし、苦しめていた原因なのだ!! ……それとも、ココで私に逆らって彼等を更に苦しめる気かね……? ん?》

 

 最後の一言に、風龍と雷龍は押し黙ってしまう……

 

 事実、航空星際部の研究者達と彼等の間には、もう易い言葉では言い表せない強い絆が育っていた……彼等は航空星際部の研究者達の実情も知っているし、こうして盾に取られた事も既に何度かある。

 ……しかも実際に意に沿わないと判断され、辞職させられた研究者も少なくない。

 

 それ故に風龍と雷龍も、劉所長の命令に逆らう事ができなくなっていたのである……

 

『…………。了解』

『……ッ……了解』

 

 目を伏せ、力無く受諾する風龍。雷龍もまた、やるせない気持ちを強引に抑えながら受託の意を口にするのだった。




ソーグレーダーが待ち遠しい……!
しかし、悲しいかな。
此方の物語は今、非常にやるせなさ全開状態です……

……感想、お待ちしております。


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第71話 疾風迅雷(4)

うおぉぉぉ!! ソーグレーダー始まってるぅ!!
見なきゃ!!(使命感)
でもコッチも期待してる人が居るから書かないと……

さぁ、ここからが大一番。
ついに、風龍と雷龍が……!!



 原種が生み出すゾンダーロボに、コアとして囚われた観光客らを救出するため奮闘する氷竜と炎竜。ストラトスパンツァーの援護もあり、順調にゾンダーロボの数を減らしていた。

 

 勿論、風龍と雷龍も奮戦しているが、氷竜達とは違って連携も上手く取れず、時折ヒヤッとする場面も見られていた……

 

《何をやっていル?! 無様な姿を見せるナ!!》

 

 通信から響く劉の悪態を半ば無視し、風龍は背後の敵の動きに合わせてミキサーユニットを跳ね上げる事で敵の攻撃を潰し、更に振り向きざまのキックを浴びせて距離を取る。

 

 ガオォォォンッ!!

 

 するとそこへストラトスパンツァーが突撃して来て問題の敵を張り倒すと、そのまま前脚のストライクレーザークローで装甲をメッタメタに引き剥がし、ついでとばかりに強靭な顎と牙を器用に使ってコアを抉り出す。

 

『コレで148……観光客は推定でも5万人以上いた筈です。まだまだ遠いですね……!』

 

 パンツァーが抉り取ったコアは、すぐさまボルフォッグに渡されると護の下に運ばれ浄解……まさに“阿吽の呼吸”と呼べる連携プレーが眼の前で繰り広げられる。

 

 風龍はその光景に一瞬だけ羨望の眼差しを向けた。

 

 ………………。

 

 ストラトスパンツァーも、風龍の視線に気付き彼を一瞥……その瞳が何を語っているのかこそ分からなかったが、風龍には「お前も勇者なら、為すべき事をやれ」……と、激励している様に思えたのだった。

 

(……何と不甲斐ない……我々は国の期待を一身に受ける、勇者だというのに……!)

 

《風龍! 雷龍! 何をしていル!! サッサと奴諸共ゾンダーを破壊してしまエ!!》

 

『……し、しかし……』

 

《……楊達の命運は、お前達の働き次第だという事を忘れるなヨ?》

 

『……!?』

 

 上官の命令と、勇者としての矜持……風龍と雷龍は、ロボットであると同時に軍人としてこれまでを過ごして来た。それは確かに厳しく過酷な事だったであろう……

 しかし、彼らが今の心を持てたのは……確実に楊達研究者の皆が、誠意を以て2人をサポートしてくれていたからである。

 

(軍人としての、命令は絶対……だが、喩え命令だとしても、踏み越えてはならない事があると、私達は彼らに教えられた。……もしそれが、仲間を失う事に繋がるならば……我々は……)

 

『……出来ません……!』

 

 ついに、我慢の限界を超えた風龍……短いながらも、彼はハッキリと拒否の言葉を口にした。 

 

《……何だト……っ?!》

 

 ドス黒い感情を含んだ劉の聞き返しに、堪忍袋の緒が切れた雷龍はこう言い放った……

 

『で・き・な・い、と言ったんだよ……! 俺達は確かに国の防衛を担う軍人で、形式上はアンタの部下だ。だけどな……たとえどんな事があろうとも、踏み越えちゃいけない線がある!! それに俺達を含め、航空星際部はアンタの私物じゃねぇんだ!! いつまでも他人を良い様にできると思うなよ、腐れ外道がッ!!』

 

 雷龍の言葉は通信だけでなく、作戦に従事していた全ての人間に聞こえている……当然、GGGやアーマロイド達にもである。

 

《……はて、一体何事ですかな劉所長? 彼らが声を荒げるなど、余程の事態と見ますが……》

 

『雷龍……? どうしてそんな声を……』

 

 臨時の現場責任者としての麗雄、さらに連絡中継役であるシオンも、風龍と雷龍の態度が急変した事に気付き当事者へと疑問を問う。

 

《ム、それは……》

 

 劉はGGGの連中に聞かれては不味いと話を変えようとするが、そこへもう1人が通信に割って入る。

 

《風龍、雷龍……よく言ってくれた。2人がそこまで私達を気に掛けてくれていたとは……だが、もうお前達は好きな様に動け! 私達の事も心配するな!》

 

『楊主任……』

『俺達は……』

 

 風龍、雷龍に掛けられた楊の言葉……シオンは言葉の節々から何かを察し、納得した表情へと変わる。

 

《楊?! 何を訳の分からない事を……》

 

『やはりそう来ますか……裏を取っておいて正解でしたね』

 

『不当人事、裏金、セクハラにモラハラ……国益を生む為の組織を此処まで私物化するとは。人の上に立つ者として、貴様は最低最悪だ、これがな!』

 

『国益損害も追加ですの……(虐げられた人々が)可愛そうですの……』

 

 楊の言葉を、劉は世迷い言として切り捨てようとするが、そこへ天秤座達が揃って現れ、劉の悪事を簡潔に並べ立て糾弾し始めたのである。

 

《えぇい、楊!! 貴様ら全員解雇ダ! もう航空星際部に貴様らの居場所は無イ!! 何処ぞで野垂れ死ぬが良イっ!!》

 

 ついに劉は激昂すると同時に「全員解雇」を言い渡し、手元の端末で人事処理まで完了させてしまう……さすがにコレには楊や天秤座も驚いた。

 

『コレだから、腐った輩は質が悪い……!』

 

《劉所長?! 何を……!?》

 

《劉所長、これはどういう事ですか?!》

 

 さらに大河長官も、通信で見せられた雷龍の激昂やアーマロイド達の糾弾内容……そして今し方劉が叫んだ解雇の言葉に驚き、事の次第を問い質そうと会話に割り込む。

 

《……ッ……?!》

 

『……?! 危ない!?』

 

 しかし、運悪くゾンダーロボが劉の乗ったヘリに狙いを定めてビームを乱射し始めた。慌ててパイロットは回避行動を取るが、テールローターを撃ち抜かれ、ヘリはバランスを失いグルグルとその場で回転し始める……このままでは墜落してしまう。

 シオンはヘリの危機に飛翔し、何とか相対速度を合わせてヘリに取り付くと、半ば強引ではあるがパイロットをコクピットから引き摺り出して救出……

 

『……手を! 話は脱出してからです!!』

 

 命までは失わせまいと劉にも手を伸ばし、掴まれと催促するシオン……

 

「黙れッ! 貴様さえ……貴様さえ居なけれバ! 私の未来は安泰だったのダ!! それを……うわァァァ?!」

 

 しかし、劉は頑として拒否……その直後にゾンダーロボがメインローターまで破壊した事でヘリは完全にバランスと揚力を失い、劉はまだ生きていたが、そのままゾンダーロボの群れの中へと落ちていくのだった。

 

『……っく……?!』

 

『全く……お前の無茶は安易が過ぎるぞ』

 

 ヘリのメインローターが破壊された際の爆発で弾き飛ばされたシオンとヘリのパイロット、しかし2人は牡羊座が受け止めて事無きを得た……呆れた物言いをする牡羊座だが、主を心配している事はその表情が語っていた。

 

《稀星くん、劉所長は……》

 

『……救出の手すら、拒絶されました……あの人は、私を心底憎んで……』

 

《稀星くん……彼は立場上、君の貢献に対して不利益を被る側だった……それを世の流れとして受け入れ、腐らず職務を邁進していれば些細な出来事で済んだじゃろう。だが、他所様である我々が何を言おうとも、当人の問題は当人でしか解決できんのじゃよ》

 

 シオンの返答に物悲しい感情を感じた麗雄……悔しいだろうが、アレは当人でしか解決できないものだ、と諭すのだった……

 

──────────

 

 ゾンダーロボの数は確実に減っているが、さすがに多勢に無勢……パンツァーが如何に強力でも、この数が相手では氷竜達との連携を取りづらくなっていた。

 

 グゥルルル……!

 

 未だ大量のゾンダーロボに取り囲まれ、連携もままならなくなった氷竜と炎竜……パンツァーも前後左右を全包囲されてしまい、さすがにピンチである。

 

《風龍、雷龍……もう私達を縛る鎖は無い、これからはお前達の思う通りに行動しろ。我が国の防衛を担う者として、恥じない行動を取れ》

 

 劉は生死不明となり、部下であった楊達は全員が解雇済み……航空星際部という組織には、もう誰一人存在しない。

 その事を若干皮肉る形で“縛る鎖はない”と言い換え、楊は風龍と雷龍に全てを託した。

 

『……風龍』

『……ああ』

 

『『楊主任、行ってきます!』』

 

 最後の激励を受け……風龍と雷龍は頷き合い、決意を新たに戦場へと舞い戻る。

 

「……頼んだぞ、我が最高の仲間()よ……!」

 

 楊は己の人生最高の友の勇姿を、心に焼き付ける様に見続けるのだった。

 

──────────

 

『ぬっ……ぐぅ……!!』

『くぁ……あぁ……ッ!』

 

 グゥルルル……!

 

 四方から攻撃を浴びせられ、ジリジリとダメージを与えられている氷竜と炎竜……パンツァーも同じく全包囲からの乱れ打ちにジリジリと追い詰められている。

 

『『組織交換(ズージィジャオファン)!!』』

 

『風龍!』

『雷龍!』

 

『ハァァァッ!!』

『でぃやぁぁぁ!!』

 

 そこへビークル形態から変形しつつ乱入した風龍と雷龍……

 

 ゾンダーロボの集団に飛び蹴りを喰らわせて攻撃を中断させ、兄達とパンツァーを救い出した。

 

『氷竜先輩、いや……兄弟という事ですから兄さん、ですかね……此処は我々に任せて下さい』

 

『炎竜兄貴、今度は俺達の番だぜ!』

 

『兄さん……?』

『兄貴……?』

 

 前回の戦闘では言葉1つすら交わさないままだったのが、ここに来て突然の兄弟発言をその扱いに困惑を隠せない氷竜と炎竜。

 しかし、眼の前に迫るゾンダーロボ軍団は待ってはくれない……

 

『雷龍、分かってるな?』

 

『おうよ、ようやく本領発揮できるぜ!』

 

 示し合う風龍と雷龍……頷き合い、2人はその場から高く飛び上がり、決められたあのキーワードを叫ぶ。

 

『『シンメトリカル・ドッキングッ!!』』

 

 緑と黄……2つのマシンが横に並び、各自に変形を開始……左右鏡合わせの様に姿が変わり、超竜神の時と同じ様に背中合わせの形で1つに合わさる……

 超竜神と違うのは、両腕に巨大な武装ユニットが最初からあるのと、左右の色分け……超竜神は青い右半身と赤い左半身だが、彼らの合体は緑の右半身に黄色い左半身だ。

 

 最後に胸へと銀のプレートを付け、黄金に輝く雄々しき頭……その額に勇気の印(Gストーン)を戴く竜シリーズ第二の兄弟合体ロボがここに誕生した……

 

撃龍神(げきりゅうじぃぃぃん)ッ!!』

 

《おお……!! コレが、風龍と雷龍の合体した最強の姿か!?》

 

「うわっは〜♪ 凄い、凄くカッコイイよ!!」

 

 歓喜に湧く通信を聞き流し、撃龍神はそのまま突撃を開始……群れるゾンダーロボを蹴散らし始める。

 

『フゥゥゥ……アタッ! ホァタッ、アッタァッ!!』

 

 洗練された流れる動作から、たった一撃の拳打……ただそれだけを次々にゾンダーロボへと叩き込んでいく撃龍神。

 

 ただそれだけだというのに、喰らったゾンダーロボはコアだけを残してバラバラに吹き飛んでいく……

 

(撃龍神の両腕に、物凄いレベルのGパワーが集中している……それをインパクトの瞬間に、適切な量のエネルギーと衝撃を叩き込んで、周囲のパーツだけを吹き飛ばす……まるで“発勁”だわ)

 

『まだまだァ! ヴァァァンレイッ!!』

 

 左腕のシールドを兼ねる装備「電磁架台(デンジャンホー)」から強力な雷撃を放ち、ゾンダーロボを次々と行動不能にしていく……

 

『貰ったァ! 風導弾(フォンダオダン)ッ!!』

 

 更に動きの止まったゾンダーロボへ「風導弾(フォンダオダン)」を放ち、不要部分を破砕してコアを剥き出しにしていく……

 ストラトスパンツァーと同様、目を見張る程の大活躍だ。

 

 しかし、さすがに敵の数はまだまだ多く……このままでは護の方も危険に晒されかねない。

 

『……さすがにチマチマじゃ埒が開かないか……ならば、一気に叩く!!』

 

 そういうや否や撃龍神は高く飛び上がり、両腕に2つのエネルギーを集中させ始めた。

 

(うな)疾風(しっぷう)(とどろ)け雷光、……“(シャン)(トウ)(ロン)”ッ!!』

 

 撃龍神の両腕から放たれた莫大なエネルギーが龍の形を模し、緑と黄色の双龍が所狭しと暴れ回る……それぞれ龍の頭は正確にゾンダーロボのコアがある場所を貫き通し、次から次へと突き崩していく……

 

《な、何というパワーだ!?》

 

 この一撃で数十体のゾンダーロボを纏めて撃破せしめた撃龍神……

 やがて双頭の龍が消え去り、技を放ち終え振り向いた撃龍神の両腕には、撃破した総数と同じ数のゾンダーコアが抱えられていた。

 

『戦術目標第1位……敵、ゾンダー核の救出成功。コレが、国のために私がやりたい事です、楊主任』

 

「あぁ、見事だ……撃龍神!!」

 

 涙を堪え、楊は撃龍神の言葉に最高の賛辞を贈るのだった。




ついに、最強形態シンメトリカルドッキングを手にした撃龍神……彼らに相応しき心を与え育ててくれた楊達との“絆”が、原作以上の戦闘力を与えているのかもしません。
何で最初から2人が綺麗なのかって?
そりゃセットで送った例の“勇者列伝記録円盤集(ブレイブヒーローシリーズコレクション)”のお陰でしょ? 専用の育成映像記録だもん。

最後の台詞は、原作名言を少し改変したものです。
原作では勇者に相応しい心に目覚めたのが直前だった為「コレで良いんだろう?」という疑問形でしたが、本作では最初から相応しい心になっている為「私のやりたい事です」と告げる形に……

暑さにノリと勢いで書き殴った、後悔はしてない。
とりあえず今回はここまで……でもまだだ、まだ終わらんよ?!
まだ原種自体は倒してないもんねー!

次回もお楽しみに!!
……とりあえずソーグレーダー見に行こ♪


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第72話 疾風迅雷(5)

勇者宇宙(ブレイブユニバース)ソーグレーダー 第1話読了!
先が待ち遠しい……

さて、前回からの続き……
クソ所長の蓋も無くなり、真の力を存分に発揮してゾンダーロボ軍団を撃滅した撃龍神。
しかし、原種がいる限り真の勝利は訪れない……
宇宙へと上がったガオガイガー達は、無事に原種を撃破できたのか……?



 撃龍神らがゾンダーロボを何とかしている頃……宇宙では原種によるオービットベースへの攻撃を阻止すべく、ガオガイガー達も奮戦していた。

 

「ブロウクン・ファントムッ!!」

 

 対原種戦を想定し、初めから非物質エネルギーで構成される“ファントムリング”を用いた強化型の「ブロウクン・ファントム」により、原種のバリアを物ともせず破砕するガオガイガー……

 

《破損箇所に高エネルギー反応ッ?!》

 

「……ッ?! 危なかったぜ……」

 

 しかし、原種本体の再生能力は驚異的で、破損箇所を再生すると同時に新たな砲口まで生成し、逆にガオガイガーへと反撃する余裕すらあった。

 ガオガイガーは咄嗟にファントムリングを再展開してプロテクトウォールを発動、攻撃を受け流して事無きを得たが……

 

『一太刀入れようとも、瞬く間に再生する……これでは手の打ちようも無い』

 

『一撃で完全に消し飛ばす位でないと、こんなんじゃジリ貧ですよぅ……』

 

 ダイキャンサーとクーゲルザウターも、通常の攻撃では掠り傷にもならないと痛感している……相手が巨大過ぎるせいで、再生能力を上回るダメージにならないからだ。

 

《ゴルディーマーグの宇宙用調整は、もう少しで完了する……すまんが、それまで耐えてくれ!》

 

「ダイキャンサー……最悪、また“腕”を借りる事になるかもな」

 

『それは構わぬ……むしろお主等の助けになる事こそ、我等が存在意義故。今後も遠慮なく頼られよ』

 

『私もです! 世界を救う為に戦う貴方達への助力……それが私のやりたい事で、お母さまの願いでもあるんですから』

 

 2人の言葉に、凱は頼もしさと同時に若干の申し訳無さも感じていた……

 

 経緯はどうあれ、シオンは地球人であればまだ14歳(子供)という年齢……本来なら地球防衛とはいえ戦闘に駆り出すなど倫理的には大問題であり、護にも当て嵌まること故に凱の心苦しさは原作よりも大きい……

 

 しかし、シオンは自身を時折“異星文明の産物”と称している……

 

 事実、彼女の身体機能は既に人間から大きく逸脱した数々の能力を保持……更には《アーマロイド》と呼ばれる眷属を従える、言わば“地球外文明の一勢力”として世界に認識されているのである。

 

(本来は護もシオンも、俺達大人に護られるべき普通の子供なんだ……でも今の俺達だけでは、原種に対抗する力が無い……酷い現実だぜ)

 

 だが、その暗い雰囲気を打ち消さんというタイミングで朗報が2つ……ガオガイガー達の元に舞い込んでくる。

 

《地上部隊、ゾンダーロボ軍団の対処を完了! 並びに、ゴルディーマーグの宇宙用調整も終了しました! 発進準備、間もなく完了します!》

 

 牛山オペレーターの報告に、希望の炎が再び燃え上がるのを感じる凱……

 

『待たせたな、ガオガイガー! 早速行くぜぇッ!!』

 

 オービットベースから直接発進してきたゴルディーマーグ……後は必殺のゴルディオンハンマーを当てる為の隙を作るだけだ。

 

《遅くなった、此方も援護する》

 

《私達で隙を作るから、その隙にやっちゃって~!》

 

 ゴルディーマーグと共にアイゼンナシュティアとシュトゥルムボルグも増援として参戦、自分達アーマロイドが先陣を切り隙を作る作戦を提案する……

 

「よし、頼むぜみんな!」

 

『了解! まずは私からねっ♪』

 

 決まると早速、シュトゥルムボルグは高速分身からの砲撃乱れ打ちを開始。その間にナシュティアも切り札を切るべく位置取りをスタート……クーゲルザウターは戦刃騎馬形態へと変形し、ダイキャンサーを背に乗せて上方へ移動し体勢を整え始めた。

 

『“Eモード”のEは……()()()()()のEよん♪』

 

 シュトゥルムボルグの超高速分身……マッハからの急停止、そして再加速を連続で行うという実に脳筋な方法で実現している分身からの連続攻撃は、本当に複数体居るんじゃないか? と言えるレベルでレーダーやセンサーにも反応する。

 しかもその機動パターンは絶えず変化し続ける為、確率計算上、シュトゥルムボルグに攻撃を当てる事自体が至難の業であり……

 

『……って、コレ。“Xモード”だったわ……』(;^ω^)

 

 というアレな言動はさておき……分身撹乱からの本命を避けれる術はなく、極太の収束ビームが原種の頭部に直撃。アーマロイド達は独自に原種に対抗すべく、必殺技レベルの攻撃には原種の再生能力を低下させる追加効果を持たせる事に成功していた。

 

 しかし、苦し紛れに原種は溜め込んでいたマグマエネルギーを放射しオービットベースを狙う。

 

『やらせんと言ったッ!!』

 

 しかし、それにダイキャンサーが超反応してクーゲルの背から離脱し、“雲耀の太刀・空凪”を放って完全に相殺……仲間内の信頼を反映するようにフォーメーションの急遽変更にも動じず、クーゲルは人型へ戻りつつ必殺攻撃の発動を開始する。

 

『再生する暇など与えん! 全弾持っていけッ!!』

 

 シュトゥルムボルグの攻撃で大ダメージを追っている原種は再生を早めようとするが、それを阻害する様に間髪入れずナシュティアがクラッシャーホーンによる突撃からクレイモアを全弾空になるまで撃ち尽くし、更に流れる様にバンカーを突き立てて6連発……此方も弾倉を空にする。

 

 離れ際に脚部のミサイルポッドからダメ押しを追加しつつ射線をクーゲルザウターに譲り……

 

『この一矢で、全てを射貫く……!』

 

 自身の主武装であるヴンダーワーフェの銃床同士を結合し、変形させた最強攻撃形態“サジットアポロ”モード……その黄金色に変化した巨大な弓につがえられた黄金の矢は、中性子と反中間子を特殊な方法で空間的に閉じ込めたエネルギー物質の塊で、物体が中性子に直接触れると様々な核反応を引き起こし、更に反中間子によってバラバラに分解され、喰らった相手は自身の構成物質によって“ガンマ線を放出する“光崩壊”の連鎖によって全てエネルギー化し消え去る”か、または“反応の末に発生した重元素を核にマイクロブラックホールを自ら生み出し飲まれて消滅する”という二択しかない……文字通り、()()()()()()の必殺攻撃だ。

 

『“太陽神の一矢(サジットアポロ)”……ファイナル・シュートッ!!』

 

 狙い、放つ……光の速度で以て放たれた黄金の矢は、再生阻害に苦しみながらも復元されてきた原種の頭部を再び破砕し、構成物質を再び消し飛ばす。今回は威力を加減する為、矢に含む反応物質を調整してある様で、原種の超速再生と反応崩壊の連鎖が釣り合い、攻撃を喰らった首から上が一向に再生されない状態に……

 

 ……つまり、最大のチャンスだ。

 

「ゴルディオンッ、ハンマァァァッ!!」

 

 勿論その隙を逃さず、ゴルディオンハンマーを発動したガオガイガーは、原種の長い巨体をなぞる様にしながらハンマーを振るい……そのまま地上へと降下していく。

 

「うおぉぉぉッ!!」

 

 ……やがて接地面ギリギリまで原種の身体を光に変え、地上へと着地したガオガイガー。だがしかし……

 

《ッ?! 敵のコアは健在!! 地下部を移動中です!!》

 

《なんだと?!》

 

《またしても逃す事になるか……》

 

 猿頭寺の報告に大河は驚愕、麗雄と牛山も、さすがに手が出せない領域だと諦めムードである。

 

《地球の科学力では、到達不可能な領域ですから……》

 

 原種のコアが逃げ遂せたマントル層は、言わば地球そのものの莫大なエネルギーが眠る高温高圧の極限環境……そんな環境で活動する技術など、地球には存在しない。

 

『……おやおや、私をお忘れではありませんか?』

 

 途方に暮れそうになった全員の意識が、その声にハッとなった。

 

『その声……お前がグラヴィスか……』

 

 事態を見守っていた撃龍神……初めて聞く会話可能なアーマロイドの声に多少の違和感を感じたが、資料やデータでは完全に味方として扱われているので納得できた。

 

《そうか?! グラヴィスコルードの身体は、ブラックホールの超重獄にも耐えていた……!》

 

 麗雄の言葉に、メインオーダールーム全員が“当時”を思い出す……

 

 それは当時、神出鬼没の砲台ゾンダーロボが散り際に発射した重力子爆弾の排除にシオンは何故か失敗してしまい、ブラックホールに消える筈だった彼女をグラヴィスが救って現れるという“常識と理解を超えた”あの時……*1

 

『クラヴィスお願い、逃げた原種のコアを……あっ』

 

『……そうです、彼らも居ますよ』

 

 シオンは早速グラヴィスにコアの確保を命じようとした……が、ある事を思い出してハッとなり、グラヴィスもそれを肯定した。

 

《こ、これは……?!》

 

《キングジェイダー……か、何という性能だ……!》

 

 その直後にグラヴィスから送られてきた映像には、マントル層で行われる原種とキングジェイダーの戦闘が映し出されていた……

 

 超高温のマグマの中という、人智を超えた極限環境で繰り広げられる戦闘……

 その一部始終を撮影しているグラヴィスもそうだが、その中で原種と戦闘を繰り広げ勝利したキングジェイダーの驚異的な性能は、異星文明の超科学という驚異的な技術力を改めて実感させるのに十分過ぎる光景であった……

*1
※ 本作32~33話 光と闇の向こうから(中~後編)を参照。




原作では視聴者しか知らないマントル層での戦闘シーン……
本作ではグラヴィスのお陰もあり、皆で一部始終を目撃しました。

ホント、トンデモねぇ性能してるわ……

──────────


次回予告


君達に最新情報を公開しよう!

直接襲撃を乗り切ったGGGは、護の不思議な力の解明の為
1つの実験を実施する……

それは、ギャレオンの持つブラックボックスに護からアクセスしてもらい、新たな情報が得られないかというものだった。

実験後、シオンと護はそれぞれに不思議な声を聴く……
それこそが、この先の未来を決定づける“始まり”の合図でもあった。


次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第73話『運命の声』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!


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第73話 運命の声(1)

あ~! もぅ!!
ソーグレーダーはよ続きが見たいッ!!

この思いを糧に書き殴ってやるぅぅぅ!!
※08/20 文言等に一部修正を加えました。



 中国での原種戦も勝利に終わったものの、自業自得とはいえ管理責任者であった所長は生死不明。その為、組織として完全に立ち行かなくなってしまった航空星際部……

 

 政府は楊さんからの事後報告に驚愕し、事情聴取を行う為人員を派遣……

 

 事態が事態なので聴取は長引くであろうが、コレで楊さん達航空星際部の研究者達を抑え付けていた重荷は完全に外れる事になるだろう……

 

 しかし、報告の翌日に中国政府から発表された『航空星際部の組織解体』は寝耳に水であった。

 

『チクショウ! 俺達の居場所は……何処にも無ぇって事なのかよ?!』

 

『落ち着け雷龍、我々は国家防衛の為に造られた……早々お払い箱などにはならない筈だ。……ですよね、稀星女史』

 

 雷龍を嗜めつつ、シオンに同意を求めてくる風龍……ロボット故に表情からは読み取りづらいが、声色やシチュエーションから風龍も内心は不安で一杯だという事は容易に想像できた。

 

 下手な物言いで、却って心を傷付けてしまわない様に……不安な子供を優しく包み込む様に、シオンは慎重に言葉を選ぶ。

 

『そう……大丈夫よ。貴方達はこの国にとって……いえ、この星にとって無くてはならない大切な存在だもの。少なくとも私はそう思ってるし、貴方達を育てた楊さん達もそう信じているわ』

 

──────────

 

 その後、中国政府は調査報告を受けた後……楊らの境遇を鑑み、可能な限りの人員をGGGの中国支部に配置させてくれと打診してきた……

 裏では大河長官や麗雄博士……そしてあの国連事務総長まで手を回してくれたのだと後で知った。

 

『俺達も……GGGに……?』

 

「あぁ、書面上は事態が事態故“左遷”という扱いに近いが……君達にとっては実質“栄転”と言っても良い」

 

『しかし、それでは国家防衛の任務が……』

 

 国家防衛の任務……軍人として絶対に背かないと心に誓った事を妨げられるのではないか?と風龍は口に出すが、楊はその言葉にこう返した。

 

「それも問題はない……君達の本所属は“GGG中国支部”となる。GGGは急を擁する事態に対し、スムーズに連携を取る為に本部や各支部同士の融通や利便性を徹底的に追求し、所属や国家の垣根無く、緊急事態や各種の要請に応じて動く事が可能なのだ。そして私を含め、航空星際部の研究者全員がお前達と同じく中国支部に配属となった……所属の名は変わるが、お前達とは変わらぬ付き合いを継続できる……」

 

 そしてトドメを刺すかの如く楊が最後に告げた言葉に、風龍と雷龍はハッとなった。

 

「……それに、お前達ならば理解できるだろう? 我が国も地球にある国家の1つ……地球を守る事は、そのまま我が国の防衛にも繋がる事を」

 

『『……あ……っ!』』

 

「コレからも、よろしく頼むぞ……風龍、雷龍!」

 

──────────

 

 そんなこんなで風龍と雷龍もGGGに転属となり、楊さん達も含め、所属を新たに再出発……不穏要素は排し切れてないのはちょっと心配だけど、多分大丈夫よね……?

 

 

 それから数日後、風龍と雷龍の本部配備における準備が着々と進行する中……オービットベースでは“とある実験”が行われた。

 

 ……それは、ギャレオンの持つ『ブラックボックス』への再アクセス。

 

 2020年に初めてギャレオンからのメッセージを確認した時は、凱の左腕に移植されたオリジナルのGストーンがキーとなった……

 では、Gストーンと同種の力を持つ護がアクセスした場合、何か変化が現れないか? という疑問が出てきたのである……

 

 原作では原種に対抗する手段や、護の能力についての疑問を払拭できないかという点から始まったものだが、現状では戦力的にアーマロイド達の存在もあり、対抗策としても出遅れさえ無ければ解決が可能……護自身の問題は原作と同様だが、シオンの存在がある種の“セラピー効果”となっており、原作ほど卑屈な考えはしていない……それ故、単純で素朴な疑問から……という事の次第であった。

 

『……確かに、ギャレオンのメッセージ自体は、私も見てみたいものです。もしかしたから、より正確に解読する事ができたり、新たな解釈が見つかる可能性も……』

 

「そうじゃな……ギャレオンから得たあの情報は、稀星くんに解析をして貰った事も無い。ともなれば解釈の違いや、より深い意味で情報を捉えられるかもしれん」

 

 シオンは元々、紫の星出身の存在……それが地球人との融合により、新たなステージへと至った存在だ。しかもその“地球人”は転生者であり、『原典(勇者王)世界』の多くの情報を記憶する特異点……

 転生者の知識と、故郷の記憶……その2つを持つシオンは、三重連太陽系の言語を違える事無く翻訳可能であった。

 

(本音として、ギャレオンの情報に“何が書かれているのか”……単純に知りたいのもあるからね……)

 

 ……シオン自身も、ギャレオンのメッセージそのものに単純な興味があった。

 

──────────

 

 結論から言うと、アクセス実験は失敗に終わった……

 

 内容はほぼ原作と同様……護もアクセスできた事自体は問題なく、情報も引き出せた。しかし、肝心なその内容は最初のものと全く変わらず……解読結果も特に変わりなく、差異も認められなかった。

 

(ギャレオンからのメッセージ……それ自体もほぼ想定通りの内容だった。まぁ、想定通りではあるけど、本当にそのままだとは思わなかったけど……)

 

 ギャレオンから齎された情報……それは、ゾンダー襲来に関するメッセージと、対抗するための手段……

 

(まさかさ、本当にそのままだとは思わなかったよ……赤の星相手には秘匿してなかったっけ? ジェネシックガオガイガーの情報って……)

 

 シオンによって再度解析された情報は変化こそ無かったものの……シオン自身にはこう理解された。

 三重連太陽系から齎された数々の技術……その中に含まれる【ガオガイガー】に関する部分は間違いなく“ジェネシックガオガイガー”に相当する情報だったのだ。

 

(ボルティングドライバー、ブロウクンマグナムにプロテクトシェード……データ的には完全にジェネシック版をモデルとして組んであるわね……これは地球側との技術的な差異を考慮済みだったのか、それとも同レベルを期待していたのか……どちらにせよ、この情報が世に出るのは危険過ぎるわ)

 

 原作では完全な再現など絶対に無理、とさえ言われているジェネシック版装備の数々……勿論、不可能な部分はデチューンされ、変更点こそ多くなり不完全ながらも再現に至った“地球製ガオガイガー”だったが、今ここにはそんな超技術だろうと完全な設計図さえ見られれば完璧に理解し、再現すらも出来てしまうシオンが居る。

 

 しかしシオン自身もかつての麗雄と同様、この情報は絶対に世に出してはならない……と心に誓うのであった。

 

──────────

 

 その日の夜、護とシオンは夢で不思議な声を聞いた……

 

《……刻は来たれり……》

 

《……再誕の日は近い……》

 

《我が名はカイン……刻は来たれり……》

 

《無限の力……その禊を以て……運命を解き放て……》

 

──────────

 

 翌日の早朝……護からの緊急連絡により、原種が宇宙に上がっている事を知らされたGGGは緊急出動……迎撃体制に移行するが……

 

「……稀星くんは……どうして来ないのかね?」

 

 いつもならいの一番に駆け込んでくる筈のシオンが、何故かオーダールームに来ない……

 大河は何故なのかと問い掛け、猿頭寺がセキュリティシステムを利用して確認……するとそこにはトンデモナイ光景が広がっていた。

 

「……確認します。……こ、これは……?!」

 

「どうした、猿頭寺くん?!」

 

「彼女の自室に何か……コレを見てください!!」

 

 メインスクリーンに映し出された光景……その映像に全員が息を呑む。

 

「な……何なのだ、この光景は……?!」

 

「皆目、検討も付かんわい……これは……繭、とでも言えば良いのか?」

 

 部屋に転がっている黄金色の繭らしき物体……そしてそれを見守る2人の人影。

 見覚えのない2人の人影だがその挙動や特徴からシオンの眷属……アーマロイドに関する存在だという推測は出た。

 

──────────

 

 シオンの部屋から案内され、メインオーダールームに通された新参のアーマロイド2人組……ペアルックとはいえ目のやり場に困る様なハイレグレオタードに、ミドル丈のジャケット姿……いやらしい意図の籠もった視線を浴びそうな格好だが、現状そんな目をする輩など此処には居ない。

 

(わたくし)は【双子座】、姉のカズミと言いますの』

 

『同じく【双子座】、妹のノリコです』

 

 背格好からして大学生……雰囲気的に姉はどこかスワンに似ていて、妹は命に似ている感じのアーマロイド【双子座】。

 シオン自身が着込むアーマーであった乙女座を除けば、コレで黄道十二宮が全て揃った事になる……

 

「君達が【双子座】……あの時、稀星くんの身体を守っていた姿無きアーマロイドだと聞いたが、だいぶ変わった様だな……しかし、わざわざ人間態なのは何か意図があるのかね?」

 

『私達は来るべき原種との決戦に備え、戦闘可能な様に大型の本体を新たに追加されました。……その本体はまだ建造途中なので、無駄な混乱を招かぬよう亜空間にて待機させています』

 

『【双子座】は合体前提の大型機なんで、多分……この基地や輸送船には積めないかと思って……』

 

 詳細を聞くと、【双子座】へ新たに与えられた本体は、合体機構を備えた全長100m級の大型機との事……未完成であるという事情もあるが、確かにそのサイズではイザナギやアマテラスには搭載出来ない。

 

「な、なるほど……ご配慮、感謝します」

 

 全員がスケールの差に唖然としながらも、辛うじて牛山は【双子座】の配慮に感謝の言葉を告げたのだった。




とりあえずこの辺りで一区切りしよう……

やっぱり来たよ、台風。
皆さんもお気をつけて……


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第74話 運命の声(2)

最近、勇者シリーズのOPがリフレインされる……
通勤時間に車内で聞くのはお約束です。

来るべき日まで……あと……



 護から齎された危機……それは地球から最近打ち上げられた人工衛星に原種が同化しており、警戒網を抜けてまんまと宇宙に脱出していたというものだった。

 

「護、原種の居場所は何処か分かるか?」

 

「……多分、宇宙の何処か……凄く反応が弱くて、場所までは分からないよ」

 

 最近まで感知すら出来なかった原種の反応……しかし、先日の実験の際に渡された首飾りを得てから、護の能力は明らかに見違えるほど強化されていた。

 

『……我々にも正確には感知できません。せめて、マスターが真の覚醒に至っていれば……』

 

 通信でオーダールームの面々にそう話すグラヴィス……シオンが黄金の繭に包まれているのは、その“真の覚醒”に関わるものらしい、が……グラヴィス等は気になる事も口にしていた。

 

『……しかし、あの黄金の繭……何故あの姿となったのか……』

 

『予定では繭に篭る事など無かった筈です……それに、進化はもう少し後になる筈だった……この事態そのものが、我々の想定外です』

 

『ねぇ、グラヴィス……お母さまは大丈夫だよね?』

 

『クーゲル……』

 

『……俺は主の事を信じる。無論、最後の瞬間までな』

 

『ボスの言う通り! シオンちゃんがこの程度で道を踏み外すなんて有り得ないわ……もし、万が一そうなるなら……』

 

『俺達で止める……無論、相討ちになろうとな』

 

 牡牛座の一言にただならぬ結末を予感した凱……しかし、警報が鳴り響き事態は急変した。

 

「重力場異常だと?!」

 

 突如として発生した重力場異常、それに最近起きた付随する関連事象といえば……

 

「No?! ESウィンドウ、急速に拡大!」

 

「ESウィンドウから大量の小惑星群が……!」

 

 姿を隠した原種はそのままESウィンドウを開き、何処からともなく大量の小惑星を地球圏に呼び込んだのである。

 

「まさか、ESウィンドウを小惑星帯(アステロイドベルト)に繋いだのか……?!」

 

 小惑星群の動く道筋……軌道を計算していた牛山がその結果に驚愕し叫んだ。

 

「小惑星群を軌道計算……全てが地球への落下コースです!?」

 

「あのサイズ……1つでも地球に落ちれば、白亜紀後期の再現だ!」

 

 白亜紀後期……その時、繁栄の境地であった“ある存在”は、たった1つの出来事によって滅びたとされている。

 

「それって、恐竜が滅んだって言う……?」

 

「そうだ、奴等の目的は小惑星の大量衝突で地球上全ての生命体を疲弊させ、我々を排除してからゆっくり機械昇華を行うつもりだろう」

 

「冗談じゃないぜ!? 牡牛座、さっきのは戻ったら詳しく聞かせて貰う……ガオガイガーで出るぞ!!」

 

「うむ、機動部隊は小惑星迎撃へ直ちに発進せよ!!」

 

 白亜紀という単語に護は恐竜の滅亡を想起し、麗雄はそれを肯定……原種の想定を説明すると、怒りながら拳を握り、凱は出撃を宣言……大河も他の勇者達に向けて指令を出す。

 

 大人達の喧騒の中……護は1人、自身の掌を見つめ……何かを確かめる様に握り締めた後、その場をこっそりと抜け出していく……

 

『我々も出ます……準備は良いですか?』

 

 護の気配を察知したグラヴィスだが、敢えて無視して仲間へと向き直り、この危機を乗り越えるために今一度意思を問う……しかし、全員の心は既に1つだった。

 

『ハイっ!!』

『愚問だな!』

『了解した!』

『モチのロンよ!』

『承知ッ!!』

 

 原作ではマイク部隊もほとんど残っておらず、少ない数で迎撃を強いられたが、今此処にはアーマロイド達が居る。頭数で苦労はしないだろう……

 

『僕達は主の護衛に回ります』

『みんな、頑張ってね!』

 

 戦闘はまだできない双子座と水瓶座、そして基地内等の狭い所でも戦闘可能な天秤座をシオンの護衛として残し、グラヴィスを筆頭とする戦闘型アーマロイド達もイザナギとアマテラスに分乗して出撃するのだった。

 

──────────

 

『システムチェ──ンジ!』

 

 グォォォンッ!!

 

『マイク・サウンダース13世ッ! 最高だっZE!!』

 

 大河の指令を受け、マイクとストラトスパンツァーは先行して小惑星群の破壊に従事しており、縦横無尽に飛び回るマイクと、マルチロックオンによる同時攻撃を行うストラトスパンツァー……

 

 途中から宇宙用姿勢制御ユニット“SPパック”を装備した超竜神と撃龍神も合流し、頭数が増え始める。

 

『待ってたゼ、超竜神に撃龍神!』

 

『後から隊長とアーマロイド達も来る、可能な限り数を減らすんだ!!』

 

 ガオォォォン!!

 

 超竜神の檄に応えるかのように吠えたストラトスパンツァー、その咆哮と共に全身のミサイルのカバーやレールガン等の砲口が動く……

 

《クアドリオス・ビッグバン》ッ!!

 

 ちょうどパンツァーの後方に来たマイクと、後ろから合流してきた超竜神達の位置関係から、前方広範囲に障害物ナシと判断し、持てる火力の全てを叩き込むストラトスパンツァー。

 

 自機から半径約数km範囲の前方広範囲を、満遍なく埋め尽くすレベルの爆発の嵐……パンツァーのミサイルにはクラスター型やマイクロ型、多弾頭型など様々なタイプがあり、全種類を一斉に放つ事で各種ミサイルの欠点をそれぞれがカバーし、隙間なく効果範囲を埋め尽くす濃密な弾幕の壁を形成する。

 

『す、凄い範囲だっゼ……?!』

 

『我々も負けてられんな!!』

 

『おうよ! 行くぜ超竜神!!』

 

 SPパックによって追加された大型ブースターと姿勢制御用スラスターを駆使し、爆発の収まりつつある前方に出る超竜神と撃龍神。

 一方のストラトスパンツァーは、今の大規模広域攻撃の反動でかなりの熱が機体に溜まり、アーマー自体の強制冷却システムが作動したものの、その膨大な熱量を冷却するまでの間はほとんど身動きが取れない……

 

 グルゥゥゥ……

 

『今のでかなりの熱が溜まっちまったのか……Thank you, Liger! 後はオレ達に任せな!!』

 

 マイクはパンツァーに感謝を伝えてから飛び去り、パンツァーはそれを少し寂しそうな目で見送る。しかしあまり間を置かずガオガイガーとアーマロイド達が合流してきた。

 

『大技の反動ですね……貴方はしばらく休息を。我々も小惑星群の排除に向かいます』

 

「先行してくれて助かった、後は任せてくれ」

 

 グルゥゥゥ……

 

 グラヴィスの指示を受け休息に徹するパンツァー……そこに凱の労いも加わり、同じ獅子の名を持つ者としての信頼感を深めるライガー。低い唸りで返事をするとガオガイガーも頷き、スラスターを吹かして戦線へ合流していった。

 

──────────

 

(敵の目的が何であれ、地球を攻撃させる訳にはいかない!)

 

『ガトリングドライバァァァッ!!』

 

 ガオガイガーは右腕にゴルディオンハンマー、左腕に新型プラグ開発計画によって新しくなった「ガトリングドライバー」を装着している……この「ガトリングドライバー」は原作でも同様の事態等に活躍した空間歪曲ツールの1つだが、ココにある物はシオンの技術提供とGGG研究者らの努力によって大幅にアップグレードされ、エネルギー消費や効果範囲セッティングのリセットも専用コマンドによって簡略化、先端(ブレード)パーツの取り替えで「ディバイディングドライバー」へのお手軽換装も可能にするなど、大幅に利便性が高められた最新モデルである。

(実質、ジェネシックの「ボルティングドライバー」とほぼ同等に便利になった)

 

『獅子王隊長。ゴルディオンハンマーはエネルギー節約の為にも、今は使わない事をお勧めします……ココは我々が』

 

 そう言ってグラヴィスは重力衝撃砲を拡散モードで発射し、ガトリングドライバーでガオガイガーが止めた小惑星と一緒に周りの物まで纏めて破砕する。

 

『確かに、原種本体の居場所が掴めない以上……エネルギーの無駄使いは避けたいな。助かるぜ』

 

『礼には及びません。これも我々の務めですので』

 

 破砕後も迫り来る小惑星群を回避し、会話を続けながらも破砕を続行するグラヴィスとガオガイガー……しかし、グラヴィスによる数度の攻撃後、小惑星群が明らかに奇妙な動きへと変化していった。

 

『……?! 何だ……?! 小惑星の動きが……ぐぁっ?!』

 

『超竜神?! うわァァァっ?!』

「……わァァァっ?!」

 

 惑星間の引力に惑わされるのとも違う……明らかに勇者たちを狙った小惑星の衝突。超竜神が動きの裏を掻かれ直下から直撃を受けたのを皮切りに、ガオガイガーにも小惑星群が殺到し始め背後から衝突されてしまう。

 

 その時、凱のとは違う声がガオガイガーの背部……ステルスガオーのコクピットから聞こえてきたのだった。

 

『な……っ、護?! どうしてステルスガオーに乗ってるんだ?!』

 

「凱兄ちゃん……僕は、シオンさんみたいに一緒に戦う力は無いけど、僕だってGGGなんだから、凱兄ちゃんの役に立ちたい……原種を感じ取れる様になった今だから、前よりそう思える様になったんだ……!」

 

 未だ小学生とはいえ、既にここまでの覚悟が出来る人間などそう居ない……同じ子供とはいえ、年上であるシオンをずっと近くで見ていて、護は原作以上に戦いへの恐怖を感じていた……

 だが、それと同時に、自身の力を役に立てたい……前に立って戦う凱の手助けになるなら、どんな事でもやり遂げてやる……少年の心には、もう勇者に相応しき熱い心が強く根付いていた。

 

『……分かった。その時は遠慮なく頼らせて貰うぞ、護!』

 

「うん……!」

 

『……しかし、この動きは……明らかに人為的な操作。ここまで巧妙に隠れられては、我々のセンサーで原種の本体を捕捉できない……』

 

『ンもぅ……自分は隠れて高みの見物なんて、趣味が悪い奴ねまったく……!』

 

 アイゼンナシュティアは原種の本体を捕捉しきれない事に悔やみ、シュトゥルムボルグが原種の作戦に「趣味が悪い」と悪態を吐く……すると護は思い切って訴えてきた。

 

「なら、僕が原種の本体を探すよ!」

 

『出来るのか、護?』

 

『正直言って、藁にも縋りたい気分ね……出来たらご褒美あげちゃおうかしら?』

 

『だが、見つけられれば逆転の手もある……頼むぞ、少年!』

 

『……護、頼むぜ!』

 

「うん……っ!」

 

 それから護は意識を集中させ、原種の僅かな気配を探り始める……

 

『邪魔はさせないわよん!』

 

 護を死守しつつ邪魔しない様にガオガイガーは回避に専念し、アイゼンナシュティアとシュトゥルムボルグ……そしてダイキャンサーが直掩に入る。

 

『姑息な手が、いつまでも通じると思うな……!』

 

 ダイキャンサーは握り締めた大太刀を振るい、投げ放つ……大きく弧を描きながら複数の小惑星を破壊しつつ戻る間にダイキャンサーは振り向きざまに背後から迫っていた小惑星を隠し腕「キャンサーエッジ」で破砕、そのまま舞い戻って来た大太刀を再び掴み、頭上高く掲げる。

 

『一刀……両断ッ!!』

 

 大上段から神速の振り下ろしにより、眼前に迫って来た巨大小惑星を一太刀で斬り伏せ、粉々に砕く……

 

『何処からでも掛かって来いッ!!』

 

 その後ろでランダムに動き回り、明確にぶつかって来る細かな小惑星を丁寧に撃ち漏らさず、砕いて回るシュトゥルムボルグ。

 

『とはいえ、ちょ~っと面倒なのよ……ねッ!!』

 

 軽口を叩きながらも、その狙いは正確無比……敵によって動かされる小惑星の動きを完全に見切っており、メチャクチャに撃っている様に見えてハズレ弾は1つもないし、至近距離に迫る小惑星も、爪先に仕込まれたレーザーソードを展開して蹴り砕く。

 

「……?! 居た!! でも、あんな遠くに……!?」

 

 護の指し示す先……その宙域は地球を挟んでちょうど裏側に当たる場所。オービットベース経由で目標宙域のLIVE映像が繋がるとそこには、巨大な脳を模した形状の原種が鎮座していた。

 

《すぐにイザナギを回す、ガオガイガーは原種の撃破に迎え!》

 

 しかし、この距離を移動するにはどうしても時間が掛かり過ぎる……GGGの誇る高速艦であるタケハヤやイザナギでも、相当な時間を移動に費やす事は明白だった。

 

『……正確な座標をマークして下さい。此処から直接“跳び”ます』

 

《「……な、なんだって……?!」》

 

 事態を察知したグラヴィスが放った一言……それは、人類が持つ科学の限界を、あっさりと超えるものであった。




まだまだ長くなる長くなる……

この辺りからじわじわとアーマロイド達がサイレント進化し始め、本領発揮してきます。
それにしても、黄金の繭……
不穏を運ぶ前触れなのか、それとも……?

感想ヨロシクお願いします!


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第75話 運命の声(3)

……“刻は来たれり”。

真の力を開放した護と、新たな進化を遂げようとしているシオン……
その先に待つのは、未来か? 終焉か?



 グラヴィスは“直接跳ぶ”と言い放った……それは敵の戦術行動の1つ「空間転移」を行う、と麗雄と凱には聞こえたのである。

 

「馬鹿な?! いったいどうやって!?」

 

《敵の空間転移能力は理論上未だ説明不可能な現象としか認識できていない! 同じ方法で我々にどんな影響があるのかも分からんのだ……おいそれとそんな手は使えん!》

 

 凱は未知の技術による強硬手段に対して驚愕し、麗雄も技術的問題を把握しているからこその反論を述べ、反対を表明する……しかし、グラヴィスはこう切り返した。

 

『心配はご尤もです。ですが、間に合わなければ超竜神達(彼ら)が先に潰される……手段を選んでいる余裕など、無いのではありませんか?』

 

 その言葉に押し黙る獅子王親子……その光景を尻目に、グラヴィスは自身の腕部にある重力制御機構(グラビコンシステム)を使って空間を歪ませ、更に全身のグラビコンブレードを展開、共振させて物理法則をも纏めて捻じ曲げ、直径100m程の黒い穴を開けて(ワープゲートを形成して)しまう……

 

《……確かに、我々には手段を選ぶ余裕は無い。猿頭寺くん、やってくれたまえ》

 

《……分かりました。宙域の座標データを取得……グラヴィスコルードへ転送します》

 

 大河も渋々といった感じで指示を出し、猿頭寺が座標データをマークして確認……グラヴィスへと転送する。

 受け取った座標データを元にグラヴィスは空間の歪み(ワープゲート)を微調整し、目標宙域付近へと繋げる。

 

『オービットベースより、移動先の空間座標を取得。座標地点へ、ゲート接続……完了。目標宙域に障害物反応ナシ……跳躍準備、完了。……いつでもどうぞ?』

 

 ガオガイガーに背を向けたまま、グラヴィスはそう告げる。少し躊躇う凱を尻目に、アイゼンナシュティアとシュトゥルムボルグは躊躇なく前に進み、ゲートへと入っていく……

 

《……彼らによる常識破壊には慣れたつもりだったが、まだまだじゃったのぅ》

 

 ココに来て更に過激さを増すアーマロイド達の非常識っぷりに、通信で頭を掻きながらヤレヤレと嘆息する麗雄……

 

『心配無用です、敵の使うESウィンドウとは違い、コレは“転送先の空間へと直接移動する”……言わば空間跳躍ゲートです。理論上、別空間を経由する訳ではありませんし、1度繋げてさえしまえば大体は安全です』

 

 グラヴィスの説明によると、ESウィンドウとは別空間……いわゆるワームホールを経由した超空間移動による“空間転移”なのに対して、グラヴィスの開けたゲートは“空間座標同士を直接繋ぐ”事による“空間跳躍”……例えるなら、ESウィンドウによる「空間転移」が“小川に掛かる橋を渡る事”ならば、このゲートによる「空間跳躍」は“自分の足で小川を飛び越える行為そのもの”であるという。

 

『……よし、行くぞ!』

 

 意を決し、ガオガイガーもゲートを潜る……その先には既に遠目ながら敵である原種が見えており、地球外縁軌道の途轍もない距離*1を秒で移動した事となった。

 

──────────

 

─ ??? ─

 

 落ちていく────

 

 小さな光が落ちていく。

 

 無限の彼方のその先へ

 

 黒よりも黒い深淵の奥底へ

 

 小さな魂が落ちていく

 

 ────それはやがて、深淵の深奥

 

 黄金の湖へと沈んでいく……

 

 

 ♪PIPIPIPI……ガチャン

 

「い"っ……ったぁ……」

 

 柔らかな日差しが少女の顔に差し込んでいる……そこに目覚まし時計の電子音が響き始め、その音に寝惚け眼のままながら少女は目覚まし時計のある頭上の方へ手を伸ばし……止めようとした拍子に自らの頭へと落としてしまった。

 

「……んっ……ふぁ……」

 

 痛みに覚醒を促され、少女は大きな欠伸をしながらベッドから起き上がり、ボサボサの頭を櫛で梳かし始める……その時、少女の居る部屋の扉が外から開かれ、大人の女性が顔を覗かせた。

 

「アンタそろそろ……って、ちゃんと起きてたか」

 

「おふぁよぉ……お母さん」

 

 少女に“母”と呼ばれた人物……緩めの袖なしシャツを豊満な胸部装甲(意味深)が押し上げ、ヘソ出しルックスにも見える様な軽装の上からフリル付きのエプロンをしており、まだまだ新妻感が滲み出る様な格好をしたスポーティな金髪の女性だった。

 

「おふぁよぉ……じゃなくて、今日は予定あるから早く起きなきゃって自分で言ったんでしょ? 朝ご飯出来てるから、その頭何とかしたら降りて来なさい」

 

「ふぁ……ぁ〜い……」

 

 端から見れば、何とも日常感溢れる光景……

 

 しかし、何処かが何かおかしい風景……

 

 ……だが少女はその違和感に気付く事も無い。

 

 部屋の壁に掛けられた姿見……そこに写った、部屋の主と同じ顔で髪の色だけ違う少女……シオンが何かを訴え、鏡の表面を拳で叩きながら、何度も声を張り上げる様な動きをしているのに。

 

 

「おはよ〜クロ。シロもおはよ♪」

 

 にゃ〜ん

 

 な~ん

 

 階段の途中にある踊り場で寛ぐ猫2匹を少女は挨拶と共に頭を撫でる……少女に撫でられ、鳴き声を返す白黒2匹の猫。

 少女が通り過ぎるとその後を追いかけ始め、少女がダイニングの椅子に座ると、猫達も行儀良く食事用の定位置に着いた。

 

「父さん帰ってくるの、今日だよね?!」

 

 少女はその位置からカレンダーを見やり、日付を確認すると嬉しそうに母親へと問う。

 

「そうよ、父さんもアンタに会うの楽しみにしてたから、今日は早めに帰って来なさい」

 

「もちろん♪」

 

 少女の母親は席についた少女の前に、用意していた朝食を並べつつ問いに答えると、その後猫達にも餌を与え始める……手にしたのは黒地に高級っぽい柄が描かれた標準サイズのネコ缶だ。

 

 黒い方の猫はちゃんと缶から出し終えるのを待っているが、白い方の猫は目を輝かせて足踏みし、今にも待ち切れない様子……

 

「いただきます!」なぁん!

 

 にゃん!

 

 少女の声に合わせる様に黒い猫は一声鳴いてから食べ始める……白い猫も慌てて鳴いてから餌を食べ始めた。

 

「……本当、無事によく育ったわね……」

 

 母親はそう溢しながら、飾ってある写真を手に取る……そこには幼い頃の少女が病院の入院着を着て、両親と共に写っていた。

 その両親……母親は写真を見る彼女自身で、彼女の夫であり、少女の父親と思われる人物は緑色の髪で両肩に白と黒の猫、少女を膝に乗せて笑って写っている。

 

「……?」

 

 母親の小さな一言に、疑問符を浮かべる少女……同じく猫達もその声に頭を上げるが、猫同士顔を見合わせた後食事を再開するのだった。

 

──────────

 

 突然目の前が真っ暗になり、意識が朦朧とする……辛うじて踏み留まった凱だったが、気付いた直後に目にした光景は先程まで戦闘をしていた宇宙空間ではなかった。

 

「……?! 何だ……ココは……俺は、いったい……」

 

「気が付いたか、凱……!」

 

 声のした方を向くと、そこには父である麗雄が驚きと安堵の表情で凱の顔を覗き込んできた……

 

「良かった……ずっと目を覚まさないから、本当は死んでるんじゃないかって……」

 

 反対側には、幼馴染みの命が涙を流しながら立っている……

 

(どうなっているんだココは……?!)

 

「……っく……父さん、ガオガイガーは?! 原種はどうなったんだ?!」

 

 ベッドに寝かされていた凱……身体が何故か異様に重たかったが何とか起き上がり、麗雄に先程まで行っていた戦闘や作戦の事を問いただそうとした……のだが……

 

「な……何を言っとるんじゃ?」

 

「凱、貴方……2年間も眠ったままだったのよ? それに、ガオガイガーって……何なの?」

 

(な……っ、冗談だろ命……それに父さんまで、ガオガイガーを知らないなんて……!?)

 

 父達の返答に驚愕する凱。この2年間、苦楽を共にしてきた2人からの耳を疑う返答……しかし、反論しようと伸ばした腕を見て、凱は更に驚愕する。

 

(これが……俺の腕……?! サイボーグじゃない、人間の腕だ……!!)

*1
地球の直径は12,742 km、大気圏を離脱して更にある程度離れた座標の宇宙空間から地球の反対側へと到達するのに、普通の移動では絶対に何時間も掛かってしまう。




……はい、奇しくも原作どおりの展開に……

途中のナニカは賛否両論あるかと思いますが、“既に分岐が確定している”ので続行です。

感想お待ちしてます。


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第76話 運命の声(4)

戦闘中だった凱は、何故か突然人間の身体に戻っていた……
そしてシオンそっくりの少女は母と過ごしている……

どこか違和感のあるこの光景は、いったい何なのだろうか?



「な……何だよ命、父さんも……!」

 

 2年前のあの時から、苦楽を共にしてきた幼馴染と父親……その2人が揃って絆の象徴とも言える“ガオガイガー”を完全に忘れ去っている……いや、彼らの記憶には最初から無かった事になっている。

 

「大方、夢でも見ていたんじゃろ」

 

「凱ってば……随分とリアルな夢を見てたのね?」

 

 この反応はさすがにおかしい……知っているならばこんなリアクションにはならないし、違和感を覚える可能性はある。しかし、こうもサラッと流されるという事は、最初から知らないという前提なのか……

 

 そして、己の姿までも2年前の事故自体が無かった事になっている様に、元々の人間の身体を取り戻していた。

 

 結局、ガオガイガーの事は“夢だった”という結論にされてしまい……()()()()()()()()()()()()()()()()()()という現実に置き換えられた現状を思い知らされる凱。

 

(クソっ……俺は、どうすれば良いんだ?!)

 

 身体もまだ十分に動けない為か、しばらく休むよう麗雄に言われ、渋々横になる凱……ふと、部屋の外が見える窓の向こうから視線を感じた。

 

(……? あれは……)

 

 そこには、何処か懐かしい雰囲気を纏う少女……シオンとも違う、不満顔の少女が見えた。

 

「君は……何故そんな顔なんだ? 何がそんなに不満なんだ?」

 

 既に麗雄と命は部屋から去っており、凱はその少女に声を掛ける……瞳に映る少女はその問い掛けに応えず、ただじっと凱を不満げに見つめるだけだった。

 

「……もしかして、この状況に流されるな……ココは俺の居場所じゃない……そう言いたいのか?」

 

 自分に対して不満あり気な少女の視線に、凱は現状が先程までとは違い過ぎる事から“状況に流されるな”と警告しているのだと感じ取った。

 確かに先程まで宇宙で原種を相手に戦闘していたのだから、現状はあまりにもおかしい……それに理由は分からないが、何処か違和感も感じている。

 

「……そうだ、確かに俺はさっきまで戦っていたんだ。こんな状況……おかしいに決まってる! コレは“()()()()”だッ!!

 

 頭の中で、現状を全否定する凱……こんな状況、ありえなさ過ぎる。

 強く、強く、そう念じた直後。硝子の様な崩壊音と共に空間が砕け散り、全てが光に包まれていった……

 

──────────

 

《……ぃちゃん?! 凱兄ちゃん!?》

 

 最初に聞こえたのは頼もしい仲間であり、守るべき少年の声……そして次々と己の感覚が戻り、凱の精神は現実に帰還した。

 

「護……っ?」

 

《……! 良かった、凱兄ちゃん。元に戻ったんだね?!》

 

「ッ!? 俺の脳波に同調して、幻覚を見せるとは……!」

 

 眼前には、巨大な脳の様な外観の原種……そしてその周囲では、アイゼンナシュティアとシュトゥルムボルグ……そしてダイキャンサーが、ガオガイガーを攻撃しようとしている原種の触手攻撃を食い止め続けてくれていた。

 

『目覚めたか!』

 

『遅いお目覚めね、待ちくたびれちゃったわよ?』

 

『だが、コレで勝ちの目は揃った!』

 

 しかし、そこはさすがに原種……アーマロイド達相手に触手を振り続けながらもサイコウェーブによる物理攻撃へと移行し、触れずにガオガイガーを破壊しようとし始めた。

 

「ぐぁ……っ?! 物凄い圧力だ……!」

 

 数々の戦いを潜り抜け、勝ちを拾いつつ、ここまで来たガオガイガーは既に原作以上の完成度と性能を誇ってはいるが、原種の強力なサイコウェーブを防御する手段は無く、一方的に攻撃を受けるしかない……

 

(ガオガイガーにあの攻撃は防げない……でも、僕ならやれる!)

 

「僕だって、凱兄ちゃんの役に立てるんだ!」

 

 意気込みと共に浄解モードでステルスガオーのコクピットから飛び出し、サイコウェーブを中和し始める護。

 無意識下ながらも原種の放つサイコウェーブを解析し、攻撃を押し留める……護の頭にあるのは、憧れの存在である凱を守りたい。少しでも彼の役に立ちたい……その一心だけだった。

 

「うおぉぉぉ……ッ!!」

 

 護の強い想いが、自身の潜在能力を引き出したのか……徐々にガオガイガーへの圧力が減り、凱は身動きが取れる事を確認する。

 

「これは……?! 助かったぜ護! 後は任せろ!!」

 

 護の不思議な力で救われている、そう実感した凱……そして敵が動揺している隙を逃さず、攻勢に転じるガオガイガー。

 

「ガトリングドライバァァァッ!!」

 

 ディバイディングドライバーと同様の理論で空間に作用し、捻じ曲げ、敵の身動きを空間的に遮断する……ガトリングドライバーでねじ曲がった空間は渦を巻いて原種の本体を捉えて離さない。

 

『よっしゃ! 一発ブチかませぇ!!』

 

『ゴルディオンッ、ハンマァァァッ!!』

 

 ゴルディの檄に応え、左腕のガトリングドライバーを切り離し、白銀に輝く釘を掴み構えるガオガイガー。

 

『ふんっ……ハンマーヘルッ!!』

 

 原種のコア……核の在り処は、先の中国での一件とシオン達の協力により、ガオガイガーのセンサーで位置を割り出せる様になっていた。その為寸分の狂いもなくガオガイガーは原種核の位置を捕捉し、正確にそこへ釘を打ち込む。

 

『ハンマーヘブンッ!! ……ぉおぉぉぉッ!!』

 

 そしてマーグハンドに備わった専用パーツを展開し、打ち込んだ釘を引き抜いて原種核を確保……残るは不安定なエネルギーを溜め込んだ残骸を何とかするのみ。

 

『原種よ、光になれぇぇぇッ!!』

 

 重力活断ウェーブにより、対象を問答無用で光の微粒子に変換するゴルディオンハンマーを振り上げ、残った残骸を処理し尽くす……

 一連の光景を見守るナシュティア達は、揺るがぬ勝利を確信するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……だが、しかし……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《……駄目だ、抑え切れない……ッ!?》

 

 撃龍神の声には明らかな焦りが見える……それもその筈、先程まで原種が開いていたESウィンドウから、とんでも無い物が姿を現していたのだから……

 

──────────

 

『クソっ、大きすぎる……!?』

 

 超竜神も想定外過ぎるこの光景に、思わず悪態を吐く……

 

 そんな彼らが目にしているのは、原種が開いていたESウィンドウが閉じ切らず、詰まった様な感じでこちらに出てこようとしている“超巨大な小惑星”だった。

 

《バカデケェ……!?》

 

《直径10kmは確実にある……! コレだけでも確実に地球全土を冬に閉ざせてしまうぞ?!》

 

《Oh no!? ESウィンドウ、再拡大! このままでは通り抜けられてしまいマース!》

 

 再び慌しくなるオーダールーム。スワンの言葉から、ESウィンドウを確実に閉じるには、この巨大小惑星を何とかしなければならないと全員が悟る。

 

『私が撃ち砕きます……ッ?!』

 

 グラヴィスは自身最大の威力を誇る荷電粒子砲を撃とうとチャージを始めるが、直後に何者かの気配を感じて中断……慌ててその場を退き、その位置を黄金色のビームが突き抜けていく……

 

『誰ッ?!』

 

 ヴンダーワーフェを構えつつグラヴィスに寄り、ビームの軌跡をなぞる様に視線を移すクーゲル……その視線が捉えたのは、全身が灰色のクーゲルザウター……つまり、色違いの己の姿だった。

 

『クーゲルっ!?』

 

 グラヴィスの声に、一瞬呆けていたクーゲルは自身に迫るビームをナノラミネートリフレクター(羽織ったマント)で受け流し、お返しとばかりに実弾を撃ち返す。

 

 相手もクーゲルの弾をシールドで弾くと、2人は全く同じ動作で最適距離を保ち合い、撃ち合いを開始……

 グラヴィスにはそれで終わりと思えず、ヒシヒシと感じ始めた悪い予感に従ってその場を更に移動し始めた。

 

 そしてグラヴィスの予感は的中……彼のセンサーとカメラが異様な集団を捉える。

 

『な……っ、この数は……?!』

 

 グラヴィスが目視距離で捕捉した“何か”……は、グラヴィスが気付いた直後、一斉にグラヴィスの方へと向きを変えて殺到する。

 

 体表は若干ながら薄紫に近い灰色で光沢は無く、円錐形の単一形状ではあるが、大きさはグラヴィスよりも明らかに大きく、その速度や纏う雰囲気は明らかに尋常のモノではなかった……もしかしたら、小惑星による攻撃そのものが“囮”ではないだろうか、とも考えてしまう程に。

 

 だがグラヴィスは躊躇うこと無く迎撃を開始……最大チャージした重力衝撃砲の拡散照射やその他各武装の乱射で纏めて薙ぎ払うが、後詰めの如く次々と黄金の光の中から現れる同じ姿の相手に、最悪の展開を予想してしまう……

 

(不味いですね……このままでは、当初の予測通り……いえ、もっと悪い方向に!)

 

 原作では無かった、第3勢力の介入……

 

 少なからず想定していた事とはいえ、こうも易々と警戒の裏を掻かれ介入されるという事に、グラヴィスは焦りを禁じ得なかった……




……恐れていた事態、第3勢力の直接介入……
しかも、相手は全く未知の存在。

強引にGGGとの協力体勢を封じられ、アーマロイド達は焦り始める……
そして、ESウィンドウを抜けてこようとしている巨大小惑星……果たしてどうなってしまうのか?!

待て次回!!


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第77話 運命の声(5)

原種を撃破したは良いものの……その置き土産と、さらなるイレギュラーに動揺する我らがGGG。
果たして彼等は、この事態を乗り切れるのだろうか?



『落・ち・ろぉ〜ッ!!』

 

 両手に握るヴンダーワーフェを直列に接続し、内蔵した2基のジェネレーターと粒子圧縮機構を直結稼働、通常より圧縮率と貫通力を増した粒子ビームを放つクーゲル。

 

 しかし相手は自分と同様の姿のためか既にその手も把握済みらしく、強度と粘性の高い特殊な金属繊維で織られ、防刃処理を施したマントに、超微細プラズマ臨界制御層*1……そしてミラー粒子含有コーティング*2という2重の特殊処理が為されたナノラミネートリフレクターが尽く弾き、粒子ビームのエネルギーを全て拡散させ無効化する。

 

(……ッ、同じ見た目だからか。攻撃が通らない!)

 

 反撃に撃ってくる実弾……というのもクーゲル自身よくやる手ではあるが、戦法や見た目からなどからして、何もかもがそっくりだった。

 

『アナタは……何者なんですか?! 何故、私達の邪魔を……!』

 

 クーゲルの問い掛けに無言を貫き通し、弾丸が返答……とばかりに攻撃を重ねるクーゲルもどき。

 

 ガゥン!! ギャリィィィン!!

 

『クーゲル! 大事無いか?!』

 

 その返答に代わり放たれた実弾……しかしそこへダイキャンサーが射線に飛び込んで太刀の腹で弾き、クーゲルを庇った。

 

『キャンさん!? 原種は?!』

 

『ガオガイガーが既に仕留めた……しかし、此奴は何者だ?』

 

『あらら? 色以外はクーちゃんとおんなじ見た目ねぇ?』

 

『だが、奴はクーゲルに攻撃を仕掛けた。少なくとも味方ではあるまい……』

 

 そんな会話すら気にも留めず、白いクーゲルもどきは不敵にも加勢に来たアイゼンナシュティアやシュトゥルムボルグにも弾丸で挨拶してくる。

 

『わお?! 可愛いクーちゃんと違って無愛想ねぇ?!』

 

戦場(いくさば)の礼儀も知らんと見える……!』

 

 モドキの挨拶(攻撃)から始まった火蓋は、3対1の乱戦模様の様相となっていく……しかし、ココには超竜神の元へ急ぐガオガイガーも揃って来ていた。

 

《ダイキャンサー! 何者だコイツは……?!》

 

『我にも分からぬ……だが、お主まで此奴に関わる事は無い! 此処は我らに任せ、お主は超竜神の元へ征けぃ!!』

 

 ギャリィィィン!! キィィィン!!

 

 ガオガイガーにすら無遠慮に放たれる弾丸、それをダイキャンサーは大太刀で受け流し、正体不明の敵に関わる事を制する……仲間を想うならば先に往けと、ダイキャンサーは立ち塞がる正体不明の敵をこの場に留め置く事に集中していた。

 

「……分かった、負けるなよッ!!」

 

 凱も彼の想いに応えてそう言い残し、ガオガイガーを超竜神達の元へ急がせるのだった。

 

──────────

 

 一方グラヴィスは、突如現れた謎の相手を迎撃し続けていた……

 

 あらゆるコンタクトを受け付けず、一方的に敵愾心剥き出しの攻撃を仕掛けられるグラヴィス……しかし迎撃し撃破しても、遠目に開いた黄金の光のようなゲートから次々と増援が現れ、一向に数は減らない。

 

『……この数、そして絶えぬ増援……どうやら、この私を足止めするつもりの様ですね……!』

 

 さしものグラヴィスでも、一撃では全滅させられない数……しかし、倒される事が前提なのかそれほど強力な存在でもない事に、グラヴィスは自身を足止めする事が目的だと推測する。その考えは的中しており、敵対する謎の存在は、単純な突撃ばかりを繰り返していた。

 

 だが、そこへ思わぬ横槍が入る……数本の赤い光条が敵の数体を纏めて貫き、分子崩壊させていく……

 

『……ジェイアーク。赤の星の戦士ですか』

 

 赤いビーム(反中間子砲)を放ったジェイアークは、遠方から此方へと接近しつつ重ねた砲撃で謎の敵を更に撃ち抜き、いち集団を全滅……そのままグラヴィスの近くへ接近し、通信を送ってきた。

 

「貴様、確かあの女の眷属だったな……何故こんな場所を彷徨(うろつ)いている?」

 

 グラヴィスは、主の名をちゃんと呼ばないJの態度に少し不機嫌になりながらも『……足止めを食らっていたんですよ。助かりました』と礼は返す。

 

「足止めだと? 貴様ら、何を「……ッ、J?! あれを!」……どうしたアルマ?」

 

 戒道の驚き混じりの声に、Jが再び外へ意識を向ける。その目が捉えたのは、黄金の光のゲートから更に現れる謎の敵……しかもジェイアークの出現に呼応したのか更に数を増やしており、ゆうに100を超える数が一斉に彼らを襲ってきたのだ。

 

《敵集団、高速で接近中。ミサイルでの迎撃では抜かれるぞ?》

 

「ちぃっ、後で説明してもらうぞ! ジェイバード、プラグ・アウト! ……メガ・フュージョン!!」

 

 グラヴィスとキングジェイダーの連携を嫌っているのか、やたらと2機の間を縫うように高速で突撃してくる敵集団。ミサイルでの迎撃は間に合わないと言うトモロの言葉に、Jは事態の説明を後でやって貰うぞと言い置き、ジェイアークとメガ・フュージョンしキングジェイダーへと変形させる。

 

『キングッ! ジェイッ! ダァァァッ!!』

 

『ちゃんと事態が収束すればお約束しますよ!』

 

 グラヴィスも重力衝撃砲で擦り抜けようとする敵集団を削りながらそう答え、お互いに迎撃を再開するのだった……

 

──────────

 

 その頃……ガオガイガーは超竜神と撃龍神、そしてマイクと牡羊座が居る宙域を目指していた。

 グラヴィスの開いたゲートは維持されていたらしく、元の宙域に戻るまでワープゲートは維持されていたが、戻ってきた時には既に事態は進み過ぎていた……

 

 直径10kmを超えるレベルの巨大小惑星……それがESウィンドウを通り抜けて来ようとしていたのである。

 

《止めろ超竜神! 貴様、それが何処に繋がっているのか……知らんとは言わせんぞ?!》

 

 作戦に帯同させていた補給艦“クライマー1”とドッキングし、その推力と自身の超パワーで以て巨大小惑星をESウィンドウの中へと押し戻す超竜神……

 その身勝手な行動に憤りを隠さない牡羊座だが、その言葉には彼を心配している感情がありありと浮かんでいた。

 

 最初は撃龍神がこの役を引き受けると言って先行したのだが、超竜神は彼の背後からタックルしてクライマー1とドッキング……巨大小惑星へと突撃していったのである。その突然の行為に、一瞬理由が分からなくなった撃龍神だったが、『考える事は一緒か……』と直前に交わした言葉を思い出して全てを悟り(こんな時に限って兄貴面かよ……!)と何も出来ない悔しさを滲ませる。

 

《……超竜神……アンタは……!》

 

 オービットベースにも、マイクからの中継映像で事態は伝わっている……が、この事態をどうにかする手は他に無く、全員が黙って見守るしか無い。

 

《……撃龍神、これは私の役目だ。君の力は、これからのGGGに必要になる……激化する原種との戦いが続く以上、ここで強力な戦力を欠く訳には行かない》

 

 通信越しに聞こえてくる、撃龍神らの会話……すぐ近くではあるが、手が届かない凱やオービットベースの大河達には、この会話が何を意味しているのか……今にも感情が爆発してしまいそうであった。

 

『お姉様……やっぱり……』

『運命は変わらない……なら、行くしかないわね』

 

『……はいっ』

 

 メインオーダールームに帯同していた双子座は、事態の悪化を知り……不可避の事実に憂いを覚えながらも使命を全うするべく、敢えて動く決意をする。

 直後、双子座は赤と青の流星へと姿を変えてオービットベースを飛び出し、光の速度で巨大小惑星を押し戻す超竜神へ接近……姉は氷竜、妹が炎竜の側に現れるとそれぞれの内部へと入り込んでいく。

 

『な、二人共……何を?!』

 

『これも私達の使命の1つ……』

『貴方達に、寂しい想いはさせません』

 

 双子座はこの行動すらも“使命”と称するが、超竜神だけでなくアーマロイド達もその言動には驚いていた。

 

《待て双子座! そんな指示は聞いていないぞ!?》

 

《貴女達は、まだ本体も未完成なのに……何故そんな無茶を!?》

 

 牡羊座と天秤座が叫ぶも、既に巨大小惑星は完全に奥まで押し戻されており、超竜神と双子座を戻さぬままESウィンドウは閉じられていく……

 

《小惑星、99.9%後退! ESウィンドウ、消失していきます!》

 

 オービットベース内……超竜神と双子座らの行動に一度は驚くが、超竜神の安否を確認するためにオペレーター達は手を止めない……

 

「超竜神は?!」

 

「あの状況で此方へ戻って来る事は……不可能じゃ」

 

「じゃあ……超竜神は小惑星帯(アステロイドベルト)に?!」

 

「あぁ……火星と木星の間を、漂い続ける事になる……永久に……」

 

 大河の問いに力なく答える麗雄……火麻はその答えに末路を予想し、雷牙も力なくそれを肯定した。

 

「超竜神ッ!!」

 

 ガオガイガーも後少しでこの宙域に到達するが、既にESウィンドウの直径は超竜神よりも小さい穴しか残っていない……

 

『……俺は……まだアンタに教わりたい事が山ほどあったのに…… 馬鹿野郎ォォォッ!!』

 

「……超竜神、聞こえるか?」

 

 ようやく現場に辿り着いたガオガイガー。しかし、ESウィンドウの直径はもう1mを切っている……努めて冷静に……しかし、感情の籠もった声で、凱は超竜神に語りかけた。

 

《はい…聞こ…えています…》

 

 徐々に明瞭さが失われていく通信音声……しかし、仲間を絶対に裏切らない……そんな感情を帯びたお互いの言葉は、しっかりと相手に届いていた。

 

「必ず、迎えに行くからな……!」

 

《……了解しました》

 

「僕も、僕も一緒に行くからね! 絶対だよ!?」

 

 涙を堪え、護も必ず一緒に迎えに行く事を約束する。

 

《はい……待ってい…す……信じて…ます。必ず再会で…る日を……いつか、星の海で……ザザッ……》

 

 その言葉を最後に超竜神との通信は途絶え、彼の反応を示す全てのシグナルも消えてしまったのだった……

 

──────────

 

 ……超竜神の反応が消え去った直後、グラヴィスらを襲っていた敵の増援も無くなっていた。

 

『……どうやら、足止めは済んだ様ですね』

 

「おい、眷族。……貴様は何故こんな所を」

 

『貴方も見ていたのでしょう? 地球を襲う小惑星群を……その迎撃ですよ』

 

「……フン。だが先程の奴等は原種ではなかった……奴等は何者だ?」

 

『それが分かればこんな苦労もしません……すぐに正体が分かる程度なら、私単独で対処できます。しかし、奴等には感知した事の無いタイプの生体反応があった……我々と敵対する原種でないとしたら、奴等は一体……』

 

 謎しか浮かばない相手に、グラヴィスは考察を止めず……Jは正体不明という答えに半ば呆れたため息を漏らし、そのまま宙域を離脱するのだった……

*1
元ネタは「機動戦士ガンダムSEED Destiny」に登場する、オーブ秘蔵のMS「アカツキ」が持つ特殊装甲“ヤタノカガミ”。これはビームのエネルギーを任意の方向に偏向させるというトンデモ装甲で、限界熱量さえ許容内ならばどんなビームだろうと弾き返す脅威の能力を持つ……が、その製造コストは量産型MSの数十機分に相当する。

*2
原作にもあるミラー粒子を黒い塗料に混ぜてコーティングしたもの。クーゲルはこのミラー粒子を特殊な波長の電磁波で励起させてビームを防いでいる為、実質「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」に登場する“ナノラミネートアーマー”と同様の効果を発揮している。




……もう、何も言うまい。彼は使命を全うした……
双子座も、己の使命の為彼に帯同した、ただそれだけの事。

この選択が、後の運命に大きな変革をもたらす……

次回予告


君達に、最新情報を公開しよう!

突如、制御不能に陥るオービットベース……
犯人は人型の何か……
それは、人間の姿に擬態した原種7体だった!

機界最強7原種による基地の直接攻撃に
白兵戦を余儀なくされるGGG……

このままでは、オービットベースと
黄金の繭に包まれたまま動けないシオンが危ない?!


次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第78話『機界最強7原種』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!

──────────

これが(次回の)勝利の鍵だ!!

『*◁\=々#&@?!+』



感想、評価よろしくお願い致します!!


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閑話:夢が膨らむひととき

えー、誠に勝手ながら……
前回に予告しました本編をこのまま続けるとあまりにもシリアス過ぎて私自身が萎えそうに思いましたので、この辺でキャラ関連のネタやシオンの交友関係を取り上げた日常回を挟もうと思います。

もちろん本編もちゃんと書きますが……次回も閑話です!
なお、都合3度目の報酬回……
これにて、命名選手権第1弾の報酬も全て完了になる……かな?

前回の報酬と同様、本編シナリオにも深く影響する話となる回を予定していますので、そちらもご期待下さい!



 オービットベースに移住してから、しばらく経った頃……

 

 シオンは相変わらず、オービットベース内の研究施設で麗雄等との研究や、新装備開発に関するアドバイス、新型アーマロイド達に与える戦闘用ボディの設計、GGG所属スタッフ等の健康管理など、多忙な毎日を送っている。

 

 それとは別に、ひと度非番となると大気圏往還能力を持つアーマロイド*1、または定期シャトル便を利用して地球へと降り、Gアイランドシティや周辺の街に繰り出すなど、ほぼ毎日を地球の何処かで過ごしていた。

 

 無論、クーゲルや他のアーマロイド達も時折それに同行者として付き合うのが日常である……

 

 ……今回は、そんな彼女のとある非番の日の出来事。

 

 

 勇者王ガオガイガーif サイドストーリー

 『夢が膨らむひととき』

 

──────────

 

 稀星シオンはこの非番の日、朝から地球へと降り立ち……とある場所へと移動していた。なお、本日の非番同行者は毎回の如くのクーゲル(人間態)と、本日が初同行である天秤座だ。

 

「様々な人達がこの街を創り上げた……話には聞いていましたが、やはり実際に目で見る方が良いですね……!」

 

 普段の彼らは暇な時間のほとんどを人間態の姿でオービットベース内か、アーマロイド達が共有している境界空間(クラインスペース)で過ごし、地球の事は大半を知識としてのみ保有している……

 グラヴィスやクーゲルなど、先に本体を製造された者達はGGGベイタワー基地時代から地球の事を実地で学習しているのでさほど問題ないが、天秤座を始めとする後発隊のメンバーは、基礎知識こそデータ共有されてはいるものの実際の体験は皆無なため、こうやって少しずつ場慣れさせていく為にシオンも地球へ連れて来ているのである。

 

『ライガーだけは、来れる場所が極端に限られるから……あの子にはちょっと悪いけどね。どう? 実際に目にした地球()は』

 

「感動です! あぁ……我々も、この平和な世界のために戦っていると思えば、どんな試練でも立ち向かえますね!」

 

 少しオーバーな言動だが、天秤座は基本的にそれが平常運転……更にシオンに対してやや過剰で過保護な感情を抱いてはいるが、彼の言動は全てにおいて嘘偽り無く、シオンさえ絡まなければ普通に好青年である。

 

「そう言えば……天秤座がその姿の時、なんて呼べば良いの? 私はそのままクーゲルだけど……」

 

「そうだね……この姿での僕の事は、“ジョルノ”とでも呼んで欲しいかな」

 

 金髪の独特な髪型に、スマートな体躯……胸元を大胆に開いたデザインと、金属アクセ等で飾られたライトパープルのスーツっぽい上下に身を包んだ好青年。彼は自分のこの姿の時は“ジョルノ”という名で呼んでくれと催促してきた。

 

『……その姿でその名前、わざとなの?』

 

「……? 何がです?」

 

『……いや、何でもないわ……』

 

 人間態の基礎設計は本人の要望に基づいている為か、余計な思考が頭を過ぎるシオン。

 

(……コレで狙ってないとか、有り得ないわ!! この子……本当は隠れ残念男子ってコト?!)

 

「そう言えば、今日は何処に行くの?」

 

『今日はまず、例の“お店”かな……後はこの前、命さんに教えて貰ったケーキ屋にも寄ろうかと……』

 

「ケーキ?! やったっ♪」

 

 本来は食事など不要なアーマロイド達ではあるが、彼等は人間と変わらぬ感覚や感情を持つため、人間を理解し共に歩む為の一環として“同じ価値観を共有する”事をシオンは推奨した。

 嗜好品を嗜む事もその中の1つとして実施され、アーマロイド達は持て余した暇をそれぞれに宛ているのである。

 

 中でも山羊座と射手座……シュトゥルムとクーゲルはさながら女子高生の如くスイーツやインスタ映えスポット巡り等を好んでいるのだった。

 なお、その他としてグラヴィスは料理、蟹座と牡羊座は実益を兼ねて剣道や武術、牡牛座はギャンブル*2……そして水瓶座は驚く事に、シオンと同じく模型……否、“ガンプラ”*3に染まっている。

 

(まぁ、ミキシング用のパーツも補充しときたいし……まさか水瓶座がハマるとは思わなかったもの)

 

「僕も見つけられると良いな……自分に合う趣味、とかね」

 

「私は食べ物以外だと、走る事かな……? ライガーと並走するの楽しいし」

 

《グゥルルル……》

 

 アーマロイド達の中で唯一、体躯がどうしようもなく融通効かないストラトスライガーの声が通信から聞こえてくる……彼としては砂漠や荒野など、遠慮なく駆け回れる場所でクーゲルと並走するくらいしかやれる事がない為、毎回お留守番というパターンに寂しさを募らせていた。

 

『う~ん……やっぱり、ライガーにも何か都合の付くボディを与えるべきかなぁ……?』

 

 ストラトスライガーだけは、設計段階から獣形固定の非可変機として造られた為、知能こそ人間並みだがその精神構造は獣に近い。それ故、他のアーマロイドには出来ている人間態の制御が全くできず、疎外感や孤独感を感じていた……

 

 勿論シオンもライガーの寂しさは理解しているので、毎回の如くお留守番を命じ続けるのもさすがに気が引けていた……その為、何かしら御し易い小型のボディを与えるべきかなと思い始めている。

 

「小型ボディの都合が付けば、彼も喜びますよ。早めに見繕ってあげて下さい」

 

「……私も、並走以外でライガーともお出掛けしてみたいなぁ」

 

『2人とも……よし! それじゃ、みっちりデザインとか考えとかないとね♪』

 

《グオォン!》

 

──────────

 

 そんな話をしながら、辿り着いたのは個人経営の模型店……

 

 そこは小規模ながら、ガンプラ関連の品揃えは大型店舗にも負けないほど豊富で、一部では非売品に近い往年の初期モデルに始まり、初心者向けのEG(エントリーグレード)やお手軽なHG(ハイグレード)。最新シリーズの【水星の◯女】から過去の人気機体も多く、精密なディテールに超可動を実現したRG(リアルグレード)。玄人向け高級品のMG(マスターグレード)。1/60という大迫力スケールに発光〜変色機能など、多彩なギミックが売りのPG(パーフェクトグレード)など……あらゆるラインナップを一通り揃えている。

 しかも奥には少数ながら無料開放された制作スペースまであるなど、今すぐ始めたい希望にも応える粋な計らいまで備えていた。

 

『リン子さーん、また来ちゃった〜♪』

 

「あら、シオンちゃん。いらっしゃい」

 

 青いロングヘアの大人の女性がシオンの声に反応する……彼女はこの店の店長で、前回の来店でシオンを気に入り、シオンもまた、この店の雰囲気と豊富なラインナップに感動して度々足を運んでいた。

 

『おじゃましま~す』

 

『こんにちは』

 

「あら、初めてさんね……もしかしてガンプラに興味ある?」

 

『あはは……残念ですが、後の予定が一緒というだけの付き添いです』

 

『おなじく〜』

 

「あら、そう……」

 

 シオンが引き連れてきた黒髪の少女と金髪の青年を見て、リン子は新規のお客さんかと思ったが、青年からシオンと予定があるだけの付き添いと言われ少し残念そうだった。

 

『今日もお一人で店を?』

 

「いいえ、今日は奥で息子が作業してるわよ」

 

『お、今日はセイ君居るんだ!』

 

 それならと挨拶を兼ねてシオンも奥へ入っていく……クーゲルと天秤座はまだ店のラインナップを見回していた。

 

──────────

 

 奥へ入ると、独特な溶剤の匂いとエアーポンプの稼働音……そして何やら作業中の青い髪の少年が塗装用のテーブルで黙々と手を動かしていた。

 

(おっ、やってるやってる……!)

 

 少年が行っているのは、制作の最終段階……マーキングや塗装の剥げを防止する仕上げのコーティング作業だった。

 よく見ると、前に見た機体ではない……新しく制作した物の様だった。

 

「……ふぅ……よし、コレで終わりかな?」

 

『今日も元気にやってるかな、少年!』

 

「……えっ? ……あ、シオンさん!」

 

『コーティング剤……って事は新型造ったの?』

 

「はい、まだバックパックは未完成ですけど……」

 

 少年……セイは頭を掻きながらシオンに経緯の説明を始めた。

 

 何でも少し前の世界大会優勝後から、ファイターとしての今の自分が何処まで通用するか知りたくなったらしい。

 ……その為、世界大会に使った機体ではなく、新たに自分用の機体を造り、1から大会を目指すのだと言う。

 

『ふんふん……やっぱり良い出来だわ。強度と構造の対策もかなり練ってある……あ、やっぱりバックパックは既存流用も考えてるのね』

 

「勿論です。せっかく造ったし、素体が同じだから使わないのも勿体ないかなって」

 

『どの部位も文句無い仕上がりね。さすが世界大会の優勝経験者……妬けちゃうなぁ』

 

「えっ? シオンさんの作品も凄いじゃないですか!」

 

『私のヤツ、ほとんどはミキシングとかスクラッチで再現したモビルスーツ以外の巨大ロボットよ? 大会レギュレーションには当然当て嵌まらないし、仕事の都合で長期離脱も……ね?』

 

「だとしても、です! ダイナミックな可動に変形・合体機構、細かなギミックをあれだけ搭載してるのに強度は結構高いし、モールドやディテールもかなり緻密だし……」

 

 ここで言うシオンの制作物とは、ガンプラのパーツをうまく流用、足りない物はスクラッチしたりして制作した歴代勇者ロボ達の最強形態再現モデルの事である……

 中でも矢鱈と見た目の派手な“グレートゴルドラン”や、HG機体を贅沢に4体も使い、原作の合体変形を完全再現した“ゴッドシルバリオン”など、ド派手かつ現物に忠実な再現ギミックを搭載した機体を使い、この店でデモンストレーションバトルをしていた。

 勿論、この世界でのガンプラバトルシミュレーターはガンプラのみならず、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ちなみに各勇者達を始め、この店のシミュレーターで稼働に対応したモデル用のデータは、全てシオンが用意していたりする……

 

『まぁ……っと、それは置いといて。もう少し“その機体”について教えて欲しいなぁ〜?』

 

「……話をすり替えましたね? まぁ、良いですけど……」

 

 

 そうしてしばらくガンプラ談義をしていると、ふとシオンは興味から、利用者が感じるバトルシミュレーターの課題についての話を切り出した。

 

『……現行のシステムじゃダメージによる破損は免れないから、未だに“ガンプラバトルは玄人志向”って言われてるのよねぇ……』

 

「……あぁ」

 

 その言葉を聞き、セイも納得してしまう……

 

 現行のバトルシミュレーターは、レギュレーションやスキャンデータの反映などはガンプラ以外にも対応してこそいるが、初心者向けのチュートリアルプレイ*4以外では実機の破損は免れず、動かせば必ず何処かが破損するのが日常茶飯事……

 

 たとえ破損こそしなくても、ガンプラの実機そのものを特殊なフィールド内でパイロットの操作要求通りに動かしている為、パーツの不具合による可動部の劣化や脱落等がプレイや大会中に発生する事も多々あり、酷い時は実力を発揮する機会すら無く、レギュレーションによる判定負けを喰らう事も少なくなかった。

 

「せめて、スキャン時辺りに注意喚起くらいは欲しいですね……」

 

『そうねぇ……後は、レギュレーション的な完全非破壊モード……は難しいか……。いっそスキャンデータのVRビジュアル化を前提にしてシステムを構築すれば……ブツブツ……』

 

 いつの間にかシミュレーターのシステム面における改善相談へと移行し、熱い論議を繰り広げるシオンとセイ……シオンが奥からなかなか戻らない事に、覗きに来たクーゲル達はその光景を見て……

 

(何だか、邪魔しちゃ悪い雰囲気ですね……)

 

(う~、ケーキ……ま〜だ〜?)

 

 ……なかなか2人の間に入り込めないでいた。

 

──────────

 

 熱い談義を一通り終えたシオンは時間が押している事に気付き、ショップ側に戻って手早く目的の物を購入すると、セイとリン子に『今度来る時は、何かしら新作でも持ってくるわ』と約束をして店を出た。

 

 その後、何をしていたのかと言うと……

 

「何だよニーチャン、俺等とヤル気だってか? ケヒヒヒッ!」

 

「気に入らねぇ目をしてるなァ……ブッ◯されたくなかったら、サッサと土下座して虫の言葉で謝りな!」

 

「あ、あの……何で……貴方は関係ないのに……」

 

『貴女はお気になさらず……僕は、コイツ等みたいな無益な害虫が蔓延っている事に我慢ならない性質(タチ)でして……』

 

(こりゃもう収拾つかないわね……警察もすぐ来るだろうし、全く……このド天然ボーイは)

 

 天秤座の性格からして……困った人は絶対に見捨てず、性根の腐った悪人には一切容赦しない。

 人間態の状態でも、アーマロイド達は“その道のプロ”と同等かそれ以上のレベルで強い為、怪我などの心配は全くしない。

 

 むしろ騒ぎで悪目立ちし、またスキャンダラスな事を書かれる事の方が問題である……

 

 ちなみに世間一般的なシオンの評価は、“あの時”こそ“負”に傾いたが、それまでに積み重ねた評価や、貫き通した真摯な態度……そして「逆境に屈しないで」という根強いファン(主に係わりの深かった人達)等の応援等により、注目を浴び始めた頃に近い(やや好意的な)評価を取り戻している。

 

 ……とはいえ、その正体は異星文明人*5という事や、国家レベルを超える戦力と技術を所有する点など、政治的にはかなり扱いに困る処も周知の事実となっている事から、多方面における有名人……という認識が強い。

 

 その為、あまり悪い方向の話題で目立つ事は、メディア露出の多い芸能人などと同様、できれば避けたいものである……のだが……

 

「澄ましたヤローだな。簀巻きになって東京湾に沈んで貰おうかァ?! ……っと、テメェ……!」

 

 脅し文句と同時に振るわれた拳をスルリと避けつつも、敢えてチンピラ男を無視する天秤座。

 

『ココは今から少々騒がしくなります……ですので、貴女はもう行った方が良い』

 

「ナメてンじゃねぇぞこのクソ餓鬼がァァァ!!」

 

 ノールックのまま攻撃を回避され、しかもそのまま無視され続けている事に我慢できず、男は再度拳を振るう……が、しかし……

 

 パシッ……ふわっ……ズダァン!!

 

「がァァァいだだだだだ折れる折れる折れるぅぅぅ?!」

『やれやれ……我慢の出来ない野良犬ですね。まるで躾がなっていない……』

 

 真後ろからのパンチを、天秤座は身体を捻るだけで避けると同時に出された相手の腕を取り、そのまま勢いを利用して相手と自分の位置を入れ替え、相手の背後に回りそのまま腕を極めて締め上げつつ相手の身体を地面に叩き付ける天秤座……

 

 眼の前で華麗に相手を叩き伏せた天秤座の行動に、助けられている女性の方まで呆気に取られていた。

 

『お姉さん……彼の忠告通り、もう行った方がいいですよ?』

 

「……えっ?! あ、そ、そうですね……あの……ありがとうございましたっ!」

 

 クーゲルの耳打ちに、ようやく正気に戻った女性は慌てて天秤座にお礼を告げた後、足早にこの場を去っていく……

 

(人助け成功……は良いけど、警察に事情を説明する私の身にもなって欲しいわ……本当、このド天然ちゃん達はッ!!)

 

 保護責任者という立場故、アーマロイド達の行動に監督義務があるシオンの憂鬱など露知らず……タンッタンッと足でリズムを取り、残りのチンピラ2人を警戒するクーゲル……この娘も性根が“人助け大好き”なので、天秤座と一緒だと大体こういう事態に出会す。

 

(……今日の運勢占い。蠍座は最下位……じゃないよね?)

 

 シオンは今日の運勢占いで、“蠍座の運気は最悪”じゃないだろうかと疑い始める……

 

 そして、天秤座とクーゲルによる“チンピラ蹂躙劇”が始まり……そして約3分後には幕を下ろしたのだった。

 

──────────

 

 その後、少しばかり遅くなった為中華街にてお昼を堪能した後……命から教えてもらった有名ケーキ店に向かい、お土産として大量のケーキを購入。

 その時、店の看板娘とペットのフェレットに奇妙な力(エネルギー)を感じたのは、また別次元のお話……

*1
該当はクーゲルザウターとシュトゥルムボルグの2人。また非常時に限るが、グラヴィスの“空間跳躍ゲート”も手段としての選択肢にはある。

*2
しかも分の悪い賭けを好み、最後には大勝ちを拾って収支プラスにしてしまう猛者w

*3
シオンは主に“〇〇だったら”……の様な設定を重視して組むが、水瓶座は主に扱い易さ(意味深)を重視し、見た目にも凝った造りを好む傾向。

*4
アーケードゲーム等にもよくあるやつ。フリー動作はほぼなく、指示された行動をクリアするだけで、全て終わらせると再びモード選択に戻される為、使い勝手はイマイチ。本当に初心者向けのモードである。

*5
かつてEI-01と、自身が行った暴露は世界に衝撃を与えたが、シオン本人の持つ精神性とその関係者達との良好な間柄から、異星文明の被造物という認識は極端に薄まっており、現在の彼女は“地球に友好的な異星文明人”という認識が一般常識となっている。




実際にあるなら見てみたい、金メッキであのボディのギラギラ具合まで完全再現したグレートゴルドランw

唐突にガンプラバトル世界を混ぜ込んでみた。
勿論シオンはバトルシミュレーターの開発にも大きく関与しており、後にこの談義からあの“GBN”が開発される……?

そしてラストのケーキ屋……
分かる人には分かるネタである。(⁠。⁠•̀⁠ᴗ⁠-⁠)⁠✧

よーし、次回はまたコラボストーリーじゃ!!
感想よろしくお願い致します♪


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閑話:君に捧ぐ花言葉(1)

最近はだいたい執筆するか感想の返信のみだった為、多くの方から高評価(☆6以上)を頂いてる事に今更レベルで気付く……
陳謝、そして感謝の極み。

……さて、長らくお待たせしました!

今回もまた、メインストーリーに絡む回……
この一連の出来事が、この世界の行く末とシオンの未来を確定させたのでは……?

執筆に際して、本稿(報酬)用プロットの草案
及びスポット出演キャラ原案を提供してくれた
バスクケーキさんに、深く感謝。


それでは、どうぞ良き終わりを……



 GGGの本部がオービットベースへ移行してからというもの、多忙ながらも充実した毎日を送るシオン……

 

 久しぶりの休暇をGアイランドシティへで過ごす事にし、1人で郊外を散策していた……

 

 吹き抜ける風が気持ちよく肌を撫でてくれる。暦ではもう秋なのだが、まだまだ日中は残暑が厳しい……しかしこの時間帯ならまだそれほど暑くないので、けっこう過ごしやすい。

 

「……はっ……はっ……はっ……」

 

 遠目に渡河線路の橋が見える川沿いをゆっくりと歩くシオン……

 ゆったりとしたロングスカートタイプのツーピースドレスに、水色のシースルーポンチョというコーデに身を包み、シティ郊外にある公園を目指していた。

 

 その後ろから、白い服を着た小さな少女が走って来る……

 

 その少女は何か恐怖に怯えたまま、前すらも見ずに只管に走っている……前にはシオンが歩いており、少女に一切気付いていない。

 

 その間隔はどんどん狭まるが、お互いを全く認識していない……無論、その距離が0となる瞬間にぶつかるのは必然だった。

 

「はっ……はっ……はぶっ?!」

『♪〜……うわっ?!』

 

 後ろからの不意の衝撃に、振り向くシオン……非常時ではないが、他人の目に触れる可能性が高い時は大人として振る舞う為、感触的に子供が前をよく見ずに突撃してきてしまったのだろうと思い、後方の足元を見やる……

 

「っ……ぁ……」

 

 ぶつかった衝撃で尻もちをつき座り込んでいたのは、うっすらと光っているかもしれないほど綺麗な銀髪に、アメジストと思える様な瞳と、同じ色をした大きな鉱石が飾られたペンダントを身に着け、病的なほど青白い肌をした……7歳くらいの少女だった。

 

(え……何、この子すごく可愛い?! ……でも、顔色が悪そう……走ってきてたからかな?)

 

 シオンは見下ろしていた少女と目線を合わせる様に膝を折って屈み、少女の身体に手を添えて立たせる。

 ここまでずっと走ってきたからか、涼しい時間帯とはいえ汗塗れになっている少女……力なく座り込んでいたのは、もう体力が残っていなかったのだろう。シオンは持っていたポーチからハンカチを取り出し、少女の汗を拭い始めた。

 

『まだ涼しい時間帯なのに汗だくだね、怪我はない? ゴメンね、気が付かなくって……』

 

 少女の視線と意識がシオンの方へ向く……シオンは気付いていないが、これまで少女は言いしれぬ恐怖に突き動かされて走っており、既に体力は限界を超えていた。だが、不意にぶつかってしまったにも関わらず、こうやって心配され優しく声を掛けてきたシオンに対し、好意を持つのは当然のことであろう……

 

「?! ……ッ……お母……さん……?」

 

 しかし、少女の出した答えは予想のはるか斜め上……顔を見上げる見知らぬ筈の少女に、既知の感覚を感じたのか。

 

 少女はシオンを“母”と認識したのである。

 

『……??? っ……?! ……ゔぇッ?!』

 

 ……そりゃ驚くよねぇ。

 

──────────

 

 見知らぬ少女に『母』と呼ばれ困惑するシオン……

 

 ちょうどそこに、護の登校の護衛任務を終了したボルフォッグが通り掛かる。

 

『おや、稀星隊員? ……今日は非番でしたね。何処かへお出掛けですか?』

 

『ボルフォッグ?! ちょうど良かったわ。近くの警察署まで乗せてってくれる? この娘、迷子みたいで……』

 

 シオンはボルフォッグに少女を見せた……シオンに世話を焼かれる見知らぬ少女を見て、ボルフォッグもシオンの説明に納得する。

 

『分かりました、どうぞ』

 

 ボルフォッグの声と共に助手席のドアが開かれる……反対側の運転席には誰も乗っていない事に少女はびっくり、更にシオンに抱えられ助手席に座らされると途端に寂しそうな顔をするが、運転席側にシオンが乗った事で少し安心した。

 

 ボルフォッグも、2人がシートベルトを着用したのを確認してから再発進する……

 

 ……その様子を遠目から見ていたフード姿の大男。

 

「……チッ、手間を掛かけさせてくれる」

 

 ソイツは何やら不穏な言葉を残し、その場から消え去るのだった……

 

 

 ……結論から言うと、警察に行った事は徒労に終わる。

 

「やっ! お母さん、一緒! やぁっ!!」

 

 簡単に言えば、少女がシオンと離れる事を頑なに拒否……

 

「あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!」

 

 何処かの泣き虫駄女神(こ◯すばのアクア)の如く、涙ながらにシオンの事を母だと主張し続けたのもあるが、警察側から提供された情報……所謂迷子等の捜索願いに、該当者は全く居なかったのである。

 

『……これは……困りましたね』

 

 警察署から出た後、広々とした駐車場の一角でボルフォッグとシオンは話す。

 少女は泣き疲れて眠っているが、シオンの服の袖を離さないのでそのまま抱かれていた。

 

『ごめん、ボルフォッグ……何だか変な事に巻き込んじゃったみたいで』

 

『いえ、お気になさらず……しかし、捜索願に該当者がいないとなると……彼女は何者なのでしょうか?』

 

 ボルフォッグから出た小さな疑問……

 

 確かに、警察の管轄内で起きた事件などの関係者なら、既に情報等は出回っている筈だし、迷子であれば捜索願などが出ている……しかし、少女の情報は何処にも無く、これだけ目立つ外見だというのに、この地域の公的情報には何処にも登録すらされていなかったのである。

 

『謎過ぎるわね……それに、この子の顔色もあまり良くない。このままだと病院もダメだろうから、私、この子を1度オービットベースへ連れて行くわ』

 

『その方が懸命かもしれませんね……私からも、先んじて報告を上げておきましょう』

 

『助かるわ、お願いね』

 

 その後、シオンはクーゲルを呼び出して迎えに来てもらい……謎の少女と共に一路、オービットベースへ向かう事にした。

 

──────────

 

 少女を連れ、オービットベースへ舞い戻ったシオン……

 

『……と、いう訳なんです』

 

 ボルフォッグからの先行報告を受け、既にオービットベースでも少女に関する情報が無いかを捜索し始めていた……

 

「……ダメですね。国内はおろかの世界中の公的データベースの何処にも彼女に該当する情報がありません」

 

「此方も同様です。迷子捜索願、行方不明者、児童保護施設……どの情報にもヒットがありません」

 

 シオンは帰還後、メインクルー等に改めて状況を説明……

 

 説明中も猿頭寺や牛山は少女の情報捜索を続けたが、該当はおろか掠りもしないという結果に終わった事に、大河と麗雄は怪訝に感じていた。

 

「うぅむ……こうも手掛かりすら掴めないとは……」

 

「あらゆる情報が(ひしめ)く現代のネットワークに、一切情報の無い少女……ともすれば、稀星くんを“自分の母親だと思っている”事に、何かヒントがあるのやもしれん……」

 

 残る可能性は、シオンと同じ、()()()()()()()()()()……

 

 異星文明に関するほとんどの情報には(転生前の記憶型ある為)、何かしらの既知があったシオン……しかし、シオンにすら初めて見る少女の情報には何1つ思い当たるフシがない。

 

(原作でもこんな出来事は無かったし、異星文明と言っても星の数ほどある……一体この娘は、何なの?)

 

 どれほど動き続けていたのだろうか、疲れ果てシオンの腕に抱かれたまま眠る少女……

 

 まだ誰も、この少女の正体には気付いてないのであった……

 

 

 その日の午後……突如、Gアイランドシティにゾンダーが出現。

 

 地上で警戒に当たっていた氷竜と炎竜は現場に急行し、待機中だった風龍と雷龍……そしてガオガイガーも、イザナギにて緊急発進。

 

 私用で地球に降りていたシュトゥルムボルグとアイゼンナシュティアが現場に急行し、ゾンダーの足止めを敢行。ガオガイガーの到着後直ちにコアの救出が為され、シティの被害は最小限に抑えられたのであった。

 

《こちら凱。ゾンダー核の救出完了……浄解を確認後、オービットベースへ帰還する》

 

「オービットベース了解。凱、お疲れさま」

 

 凱からの連絡に命は労いの詞を掛ける……そのタイミングで、少女はようやく目を覚ました。

 

『……あ、目が覚めた? だいぶ疲れてたみたいね……』

 

 シオンの言葉に、少し俯き加減から頭を上げシオンを見上げた少女……しかし、少女の目がメインモニターに映るガオガイガーを映した途端、少女の頭の中に幾つもの場面がフラッシュバックし始める……

 

 ……その中には、大人でも目を覆いたくなるような凄惨な場面や、傷付き倒れる幾多のマシン達……そして、シオンに似た大人の女性が少女の眼の前で事切れる瞬間もあった。

 

「……あ……あぁ……みんな……ダメ……嫌ァァァ……ッ!?」

 

 少女が急に狼狽え始めた事に騒然となるメインオーダールーム。

 シオンもこの急変には一瞬驚いたが、さすがは元精神科医なだけあり、人体に悪影響の極めて少なく、鎮静効果のある気化薬剤を瞬間的に調合し、緊急処置として少女を再び眠らせた。

 

『今の豹変具合……この娘はもしかしたら、過去にとても酷い目に遭って、ずっと逃げて来たのかもしれません。でなければ、あんな顔は……』

 

 シオンには、豹変した少女の顔が“絶望に染まりきった”様な表情に見えた……その場に居合わせた全員も、シオンの言葉に納得し、大河はこう司令を出す。

 

「彼女の正体または出身が判明するまでの間、彼女をGGGのの保護観察下に置く事とする。勿論、彼女に関する情報の捜索は続けるが、現状では手掛かり1つ掴めない故に、彼女の精神の安定を待ってから、直に問い正した方が判明する可能性が高い……」

 

 大河司令の英断により、謎の少女はGGGの監視下にて保護観察措置を取られる事になった……もし、彼女が異星文明の出身と確定し、今後同種ないしは関係者とのコンタクトに対して、穏便に備える事も出来るからだ。

 

 長官の判断に(さっすが出来た大人代表!)と心の中で太鼓判を押すシオン……だが次の一言で、彼女は素っ頓狂な声を上げる事になった。

 

「……よって、彼女の精神が安定するまでの間、最もこの子に信頼されている稀星くんを保護責任者に任命する!」

 

『……ぇ……? ……えぇぇぇぇぇぇッ?!』

 

 この特命により、シオンは未婚(実年齢14歳)のまま(形式上だが)一児の母となったのである。

 

 

 それからというもの、シオンの居る所……件の少女、リラは傍に居続けた……

 

 この“リラ”という名は、持っていたペンダントに(恐らく)持ち主の名前として掘られていたものだ。

 

 彼女の来歴を調査する為、発見した地域を中心に大捜索が行われ、発見地点から約数kmほど離れた海岸に小型の宇宙船が破損状態のまま不時着していたのを発見……

 既に何者かによって荒らされた船内を探索した結果、リラが乗ってきた事が判明。これにより事実上リラも地球外人類種と確定……

 

 宇宙船の航行システムや仕様から、大本は三十連太陽系……しかもあの“紫の星”から来たものと判明したのである。

 

 それ故か(半分被造物とはいえ)同郷の存在であるシオンへ信頼を置くのも(少しだけ)納得できた。

 

(これもイレギュラーなのかな……“私”が此処に在る皺寄せなのか、それとも“見習い管理者さん”或いは“原作外の敵”の策略なのか……)

 

 あの時、見習い管理者から告げられた謎の存在……

 

 世界は既に大きく歪み、自分を受け入れながらもほぼ原作通りに進んでいる……それはあの“見習い管理者”の絶え間ない尽力……“私”の存在を“世界”に認めさせ、存続させようとしているからだろう。

 

(それはさておき……この娘はどんな時でも、私の側を離れない……大勢の奇異の目に晒されても、私の傍の方が安全なんだと信じているのね……)

 

 シオンはその立場上、オービットベースを出て地球に降り、諸外国の研究者等とも会う機会は多い……が、その度傍らの少女の存在に驚かれ、難儀な説明をその都度行う羽目になったのは言うまでもない。

 

 勿論、“超”が付く程の有名人が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という絵面は、すぐにスキャンダラスな話題の如く取り上げられ、世間を大いに騒がせた……

 ……が、GGG諜報部やシオンの事をよく知る知人等の働きにより、徹底的かつ早々に鎮圧されている。

 

(対外要件は全て大人モードで対応していた所為か……初見・既知に問わずもれなく親子認定されるのは、ちょっと憂鬱だわ……)

 

 髪色や目の色など多少の違いはあるものの、シオンをグッと幼くしたような少女は、尽く誤解を生むのに役立っている……

 説明を受けて初めて赤の他人という事に驚かれる手前、暫定とはいえ“親代わり”となっている事に、大河への恨み事が出そうになるシオン。

 

 モニターに映ったガオガイガーを見て、()()()()()()()()()()()()()()()の方は分からない……

 

 しかしシオンは、彼女に頼られている……必要とされている事自体には、不思議と嫌な気持ちは持たなかった。

 

──────────

 

 その頃……とある倉庫街の一角では……

 

『あれ以来、奴等も慎重に行動している様だな。“鍵を“彼奴”の下に置いている……やはり侮れん』

 

 暗闇の支配するその人気のない所で、金髪で筋骨隆々の男は独り言を喋っていた……

 

《……ならば、何故あの時に“彼奴”ごと消さなかった?》

 

 ……いや、1人ではない。影に潜む“何か”と会話していた。

 

『あのタイミングで“彼奴”に手を出し、GGGに勘付かれれば、我々の計画もご破産となる可能性が高かった……それだけの事』

 

 男の言葉に、影は何やら胡散臭さを感じるも敢えて問わない。

 

《……ふん……そういう事にしておこう。しかし、これ以上の遅延は許されぬ……早々に“アレ”を始末しろ。でなければ、我々の望む終末の到来は……》

 

『分かっている、心配するな……我々は機界31原種。地球の文明如きに遅れは取らん。すぐにあの忌々しき小娘を引き剥がし、“鍵”とやらを始末してくれよう』

 

──────────

 

 リラを保護してから数日後の夜、東京湾の沿岸部に再びゾンダーが襲来……海岸線の夜景を楽しむ観光客らを襲っているとの急報が入り、GGGは再び緊急出動となる。

 

「ガオガイガー、横須賀市の沿岸沿いにて敵ゾンダーと接触! 

交戦状態に入ります!」

 

 命が敵ゾンダーとガオガイガーが交戦に入った事を報告……その直後、スワンが血相を変えてたった今入った追加情報を報告する。

 

「No!? 千葉市、船橋市にもゾンダーが出現シマシタ!!」

 

 なんと、横須賀からGアイランドシティを挟んで反対側の千葉と船橋にもそれぞれゾンダーが出現したのだ。

 

「千葉のゾンダーは市街地から海岸線に向かって侵攻中!」

 

「船橋市のゾンダーは上空にて、哨戒中のクーゲルザウター、シュトゥルムボルグと交戦状態に突入しました!」

 

「こうも離れた場所に3体も出現するとは……恐らくこのゾンダーは潜伏中の原種によって生み出された可能性が高い! 奴等の目的が地球の機界昇華にある以上、我々の目を欺く為の囮かもしれん。油断するでないぞ!?」

 

 3つの位置関係から順番に対応するには少しばかり遠く、戦力を分散させ同時に対応しなくてはならない……この絶妙な距離感でほぼ同時に3体ものゾンダー出現に、麗雄はこのゾンダー達が潜伏中の原種によって生み出された可能性が高いと睨んだ。

 

 事実、中国の一件でも観光客を次々とゾンダー化させてる原種を確認しており、そのプロセスはゾンダリアンによるゾンダー化よりも圧倒的に速い事も認識済みであった。

 

《了解! 氷竜、炎竜! 要救助者の救出に並行して、原種の警戒も頼む!》

 

《お任せ下さい、隊長殿!》

 

《怪しい奴は見逃さないぜ!》

 

「風龍、雷龍は千葉市に出現したゾンダーを迎撃! 稀星くん、アーマロイドの中でゾンダーコアの摘出を行える者は?」

 

『ストラトスライガーとグラヴィスコルードなら可能です……ですが、グラヴィスがコアを抜き取るには繊細な操縦を行う為の搭乗員が必要で……』

 

「……ならば、ストラトスライガーを船橋に送ってくれ給え。合流次第、アーマロイド隊で船橋市上空のゾンダー撃破。グラヴィスには風龍・雷龍の援護の方を頼む」

 

『分かりました。クーゲル達は市街地への被害を抑えつつ足止めよ、ライガーを向かわせるわ!』

 

《了解っ!》

《おーけー、お姉さんに任せなさぁい♪》

 

《船橋の相手は飛行型か……ならば我らも千葉の加勢に向かおう》

 

《分担作業だな……しくじるなよ? 山羊座》

 

 状況に応じて即出撃こそ可能なアーマロイド達ではあるが、ダイキャンサーは飛行能力を持たず、ナシュティアも空中での行動時間は極端に短い為、必然的に船橋戦域への参戦は難しく、彼らも千葉の増援へと向かう事に……

 

《ダーリンこそ、力み過ぎてヘマしないでよね?》

 

 斯くして、東京湾一帯を舞台にした三面同時作戦が幕を開けるのであった。

 

──────────

 

『ライガー、インストレーションシステムコール……“イェーガー”!!』

 

 イザナギに乗せられたストラトスライガーを空戦に対応させるため、予てから製作されていたライガー用の新装備……“イェーガー”ユニットを呼び出すシオン。

 

 このイェーガー装備は、高度な空力性能と姿勢制御能力を追求した高高度対空戦闘用の追加装備で、通常では飛行能力を持たないストラトスライガーに飛翔能力を付与する事が出来る専用パーツ群である。

 

 他の物より装甲厚や防御面こそ劣るものの、元来の反応速度や近接戦闘能力をそのままに、高度な飛翔能力を本体に付与する空戦用アーマー……

 武装は最低限ながら、精密射撃も可能な4門の頭部バルカン砲。背部の大型ブースターユニット基部に超高初速レールガン2門。ブースター付属の展開式ウイングや、整流板にもなるテイルユニットそのものも鋭い切れ味を持つブレードとなる為、射撃能力こそ低いが戦闘能力自体は他に見劣りしない物となっている。

 

─ Stratos Jaeger. C.A.S.Complited ─

 

 換装終了と同時にイザナギのミラーカタパルトを利用して加速、船橋地区へ向けて射出されるストラトスイェーガー。

 

 グオォォォンッ!!

 

 頼もしい咆哮ではあったが、何か言いしれぬ不安を感じたシオン……その時、何故かリラが傍に居ない事に気付く。

 

『……? リラが居ない?! 長官!! リラが……』

 

《オイオイ、どういう事だよ……何でアイツがあんな所に?!》

 

 その時、イザナギの艦橋から伝わった火麻の驚きの声……イザナギのメインモニターに映し出されたのは、シオンの傍を片時も離れなかった筈のリラが、千葉のゾンダーに追われている光景であった。

 

──────────

 

 ゾォォォンダァァァ……!

 

「……?! ひっ!? ……ッ……?!」

 

 突如として戦地に迷い込んだリラ……

 

 ライガーの換装後、シオンとリラはストラトスイェーガーを見送るべくイザナギの展望デッキに居た。その際イザナギは風龍・雷龍とアイゼンナシュティアを先行して射出した後、グラヴィスを下ろす為に千葉のゾンダー付近……つまり敵の近くに来ていた。

 

 その時ゾンダーは“誰か”の指示を受けており、イザナギの展望デッキに見えていたリラと、近くにあった小さな瓦礫との()()()()()()()するという“異能力”を行使し、イザナギの展望デッキに居たリラを、自らの近くに引き寄せたのである。

 

「……ぁ……あぁ……ッ……!?」

 

『ッ?! いけません! ……なッ?! ぐあァァァッ!!』

 

 戦域フォローのため、同じくゾンダーの近くに来ていたボルフォッグ……

 事態にいち早く気付きリラを救助しようとするも、ゾンダーの能力で現在位置をメチャクチャに変えられ、ゾンダーに対して攻勢に出た瞬間の動きを逆に利用される形で自ら瓦礫の山に突っ込まされてしまった。

 

『ボルフォッグ!? よくもやったな!!』

 

風導弾(フォンダオダン)っ!!』

 

 ボルフォッグを一蹴した事に激昂した雷龍も風龍と共に猛攻を加えるが、ゾンダーは自らの位置をその“入れ替え能力”でランダムに立ち位置を変える事で直撃を1つも受けず全て回避、更に風龍と雷龍の位置までをも入れ替えて、お互いの攻撃を直撃させたのである。

 

『『ぐあァァァ……!!』』

 

『手強い……! しかもあの能力、範囲内の対象を一瞥するだけで使える様ですね。これでは包囲しても、逆に全てを利用されかねません……どうすれば……?』

 

 ダメージは少なかった様子で立ち上がるボルフォッグ……しかし、ゾンダーの行使する異次元の能力故に、迂闊に攻勢を掛けれなくなっていた……

 

──────────

 

 その少し前……

 

「ファントムリング、プラスッ! ブロウクン・ファントムッ!!」

 

 エネルギーリングを生成し、その中央へ右腕を通しながら射出……従来の数倍の貫通力と攻撃力を持つに至った【ブロウクンファントム】が、ゾンダーロボの左脇腹を抉り破砕し尽くす……

 

 しかし、予めサーチしていた位置にコアは見えず、それ処か損傷を数秒で全回復してしまうゾンダーロボ。

 

「何っ……まだ再生するのか?!」

 

 既に戦闘開始からゾンダーへの攻撃は都合6回に及んでおり、最初は一撃で完全に動きを止められると誰もが予測していた……

 

 だが、現実は6度の直撃を受けながらもゾンダーロボは健在……

 

 反撃こそガオガイガーを討つには力不足ではあったが、その異様な持久力と、体内のコアの位置を変えるという搦手に迂闊な真似は出来ない……強化されたガオガイガーの、対ゾンダー戦に特化した能力故に、通常の攻撃ではコアを傷付けてしまう恐れがあるからだ。

 

《奴の体内のコアの位置は一定の時間か、ダメージを受ける度にランダムに変わっておる!このままでは、時間とエネルギーを浪費してしまうだけだぞ!?》

 

「クソッ……奴とコアの動きを、同時に抑え込む方法は無いのか……!?」

 

『お困りの様ですね……そういう事ならば、“僕”の出番です……!』

 

 横須賀の沿岸部で睨み合うゾンダーロボとガオガイガー……その間に、「自分の出番だ」と口にしながら紫色のスーツ姿の男が現れる。

 

「お前は……確か、天秤座の……!」

 

 凱は男の姿を見て記憶を辿り、行き着いた者の冠名を呼ぶ。

 

『はい。天秤座のジョルノ……今よりガオガイガー(アナタ)の援護に! そして今、披露しましょう、僕の新たな幻影(チカラ)……(いで)よ、【刃銀の戦車(シルバー・チャリオッツ)】ッ!!』

 

 声を張り上げながら自身の本体である黄金の天秤を握り、天高く掲げる天秤座……その声に呼応して黄金の天秤は光り輝き、台座に埋め込まれた銀の装飾や皿を釣る鎖が消え、その代わりに人影が実体化してくる。

 

「以前に見た幻影と違う……」

 

《これは……銀鎧の騎士……か?》

 

《天秤座の守護幻影は、あの時の拳闘士だけではないという事か……》

 

 それは以前に見た【白銀の煌星(スタープラチナ)】とも違う、銀色の全身鎧を身に纏う騎士……現出後、己の鎧と同じ銀のレイピアを眼前で垂直に立てた後、その切っ先をユラリと敵ゾンダーロボに向け直して構える。

 

《敵ゾンダーのコアの位置を特定! 今度は左の太腿です!!》

 

『……ッ! シャアァァァ!!』

 

 ガオガイガーのセンサーから得た情報は随時オービットベースで解析されており、判明したコアの現在位置を命は通信で叫んだ……その直後、天秤座は意を決して吠え、同時に銀の騎士も動く。

 

 銀鎧の騎士が繰り出した剣戟の速度たるや、肩から先は残像で酷くぶれ、腕の先へ向かう程にその残像すらも薄くなり、刃を持つ手などに至ってはもはや完全に見えなかった……

 しかし、その切っ先は確実にゾンダーロボの右腕を捉え、手首から先を根本から分離させてしまう。

 

 ゾ、ゾ、ゾ、ゾ……ッ?!

 

 攻撃でダメージを負い、ゾンダーロボのコアの位置が変わると、銀鎧の騎士は次の攻撃部位を即座に変更……今までコアのあった左足を狙い今度は足首から切り離す。更にダメージでコアが再び移動するとまたさっきまでコアのあった左腕を狙って肘関節から切除。

 そうやってみるみるゾンダーロボの四肢……つまりコアの移動先を端から狭めて奪い続け、ついにはゾンダーロボを剣戟の嵐で空中に縫い止めたまま胴体のみの状態と化したのである。

 

『そらそらそらそらそらそらァッ!!』

 

 無論、常にコアの位置を把握しつつ再生をも阻害し続け、ゾンダーロボの胴体を空中に縫い止め続ける攻撃の速度は最早光の速さに達しており、銀鎧の騎士の酷くブレた右腕の先に縫い留められたゾンダーロボの胴体は、まるで銀色の板の上で転がされている様にも見えた……

 

『今です、ガオガイガー! この状態なら、奴はコアを移動できない!』

 

 速すぎて最早レイピアの軌道すら全く見えない剣戟の嵐の中、再生しようとする傍から身体を削り取られ、なおも宙に浮かされ続けているゾンダーロボには、ここから逆転する方法など完全に無い。

 

「応! ゴルディオンッ、ハンマァァァッ!!」

 

 もちろんこの流れを止められる術など、ゾンダーロボにある筈もなく……高速再生とコア移動の法則を逆手に取られ、ハンマーヘルアンドヘブンによってコアを抜かれ撃破されたのであった。

 

──────────

 

 同時刻、船橋市街上空……

 

『はいは~い、そのままそのまま〜♪』

 

 シュトゥルムボルグが狙いを定め、構えたライフルが火を吹く……いつもなら狙い能わず次の瞬間ゾンダーロボの胴体に着弾し、ダメージとなるはずだったが……

 

『……?! 避けたっ?!』

 

 クーゲルとシュトゥルムに挟み撃ちにされ、十字砲火を浴びそうになった筈のコウモリ型ゾンダーロボ……しかし、一瞬でその身を翻し、コンマ秒の弾丸の隙間を縫う様なアクロバット飛行で完全に避けたのだ。

 

『これならどうッ?!』

 

 クーゲルは腰の【ナーデランツェ】と同時に両手のボウガンにも散弾を装填し、逃げ場のない広域面制圧攻撃を放つ……しかし、コウモリ型ゾンダーロボはそれすらもヒラリと躱し、更に闇夜に掻き消えるが如く姿を消してしまう。

 

『ステルス能力?! でも、消えた訳じゃないなら……っ!』

 

 静止位置から大気を踏み付け、クーゲルはインパクトによる急加速。シュトゥルムボルグもその動きに追従し、2機でコウモリ型ゾンダーロボの移動ルートごと囲い込む。

 

『包囲殲滅は数的優位側の基本戦術よん♪』

 

 たった2機で一対多*1の状況を作り出し、猛烈な弾幕を形成……さすがのコウモリ型ゾンダーロボも堪らず姿を表して回避行動に専念。

 

 無論、それこそがクーゲルの思惑通り……

 

 シュトゥルムボルグが包囲を狭め始めると、クーゲルは軌道を邪魔しない様に離れた位置に移動しつつ武器のモードを変更……

 

 左右両方を速射重視のボウガンモードから、長銃身のライフルモードに変形。更にそれを横に繋ぎ、大出力照射対応(ツインバスターライフル)形態へと変える。

 

『ざぁんねん、丸見えなのよね〜』

『今度は、外しません……ッ!!』

 

 2人の声がテンポよく繋がり、ビームの檻に囲まれ身動きの取れなくなったコウモリ型ゾンダーロボに、黄色い大出力ビームの束が直撃……

 

『《エリアル・ロケットドリルスマッシャー》ッ!!』

 

 両方の翼と耐久力を根刮ぎ削り取られ、力尽きゆっくりと落ち始めたコウモリ型ゾンダーロボのコア目掛けて、現着したストラトスイェーガーの必殺技が炸裂。

 

 見事コアを抉り取りつつ貫き……ストラトスイェーガーはコアを咥えたまま着地。

 

 グオォォォォォォンッ!!

 

 前足で器用にコアを足元に下ろしてから、勝利の咆哮を上げるストラトスイェーガー……シュトゥルムとクーゲルも、胸を撫で下ろすが……

 

《クソッタレ! 冗談だろ?!》

 

 突如通信から響いてきた火麻の声……千葉方面の戦闘は、異常事態に陥っているのだった。

 

──────────

 

 通信越しに聞こえてきた火麻の恨み言……それは千葉方面の戦いが、異常事態陥っている事を表していた。

 

『な、何と言う事……!!』

 

『何者だ……!?』

 

『……う、嘘よね……ねぇ……リラ……そんな……っ』

 

 ビッグボルフォッグ、撃龍神、そしてシオンの悲痛な声……その理由はただ1つ。

 

 ゾォォォンダァァァ……!!

 

 ゾゾゾ……ゾォンダァァァ!!

 

「フフフ……力無き庇護対象が敵となる……GGGよ、この事態。どう切り抜ける?」

 

 ビッグボルフォッグと撃龍神を翻弄するゾンダーロボとは別に、もう一体……そしてゾンダーロボの肩の上に立つ、薄桃のフードマントを羽織った謎の男が勝ち誇る様にほくそ笑むのだった。

 

⇐To be continued 

*1
クーゲルは分身してないが、シュトゥルムボルグは自身の速度を以ってすれば秒間約200体ほどの分身を余裕で作れる。





想定外にして最悪の事態……でも続きます。
……ちゃんと本編も書いてますからね?!

長くなったから誤字・脱字も多いかも……
……あと、感想もヨロシクオネガイシマス。


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閑話:君に捧ぐ花言葉(2)

※ 前回の続きですが、回想シーンから入ります。



 休暇を楽んでいたシオンの下へ現れた謎の少女“リラ”……

 

 あらゆる情報が行き交うネットワークを擁する現代社会の何処にも情報が存在しない。

 

 不思議な少女リラは、シオンを“母”と慕い片時も離れなかった──

 

 

── 回想 ──

 

「シオンちゃんゴメン! 売り子手伝ってッ!!」

 

 久々の再会直後、開口一番にそう頼んできたのはかつてのGGG職員……当時ツール系整備班の班長であった“水無川イズモ”。

 

 彼女はシオンがGGGに保護される前からの付き合いで、毎年盛んに行われている“大規模な同人誌即売会”で遭遇した事から始まっている。

 当時のイズモからすれば、保護下にある少女の事は知らされていた……が、まさかそれがシオンだとは思わなかった。

 

 現在……イズモは実家である町工場の社長を継ぎ、その裏でコミケ常連の売れっ子作家という、何とも奇妙な二足草鞋を履いている……

 

『……うーん、私は別に良いんだけど……この娘が、ね……』

 

 シオンは足元でキョロキョロと周囲を見回しているリラを目配せでイズモに気付かせた。

 

「……ッ…………」

 

 イズモの視線に気付いたリラだったが、最近は奇異の目にも慣れたのか、それとも毎度の如くというある種の“お約束”と捉えたか……まだちょっぴりオドオドしてはいるが、最初の頃みたいに逃げ出したり隠れたりはしなくなっている。

 

「……シオン……アンタ、いつの間に結婚したの……?」

 

「……はぁ~っ」(クソデカ溜め息)

 

 そして、その予感は当たっていたのだろうイズモの返しに、シオンは恨みと呆れの入り混じった盛大な溜め息で応えるのであった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

── 説明中 ──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁんだ、そういう事……オッケー、それじゃその娘も連れて来て良いわよ。というか今回メインがア◯レンのネタだからむしろ少女の方が最適よ! アンタ今回も衣装自作するんでしょ? 資料はコッチの方。その娘も連れて来るならコス着せた方が違和感少なくなると思うし、何か着せると良いかもね……」

 

「……?」

 

 話に付いて行けないリラはシオンの顔を見上げる……そこでシオンは分かり易い様にリラに話し始めた。

 

『あのお姉さんは自分で本を書いて売ってるんだけど、全部を1人でやるのはとても無理なの。だから今度のお休みの日に、私はあのお姉さんが本を売るのを手伝いに行くんだけど……リラもお手伝い、してみる?』

 

 保護下に置かれてからしばらくは塞ぎ込んでいたリラだったが、今では人見知りしつつも様々な事に興味があるらしく、先程もイズモの書く同人誌(全年齢)を見せて貰い、目を輝かせていた。

 

「……お姉さんの本、みんな待ってるの?」

 

 リラはイズモを見上げる……イズモがリラに見せてくれた本は空想の動物(ポ◯モン)達が喋りながらバカ騒ぎや友情を育む物語で、画風も子供向けの絵本のように柔らかく、見ていて惹き込まれる感じの優しいイメージだった。

 

「そうだよ~。私、今は工場の社長なんてやってるけど……昔は絵本作家になりたかったんだ。絵描きの才能は図面描くのに役立ってるし、祖父の代から続くこの工場を畳むつもりはないけど……絵本を描く事は諦めきれなくてね」

 

 この言葉は前にシオンも聞いていた。

 

 イズモの小さい頃……両親は仕事で家を空けがちだったが、家族の事を第一に考え、仕事でいない時に寂しくない様に……とぬいぐるみや絵本をたくさん置いていた。

 勿論、仕事を済ませ帰ってくればどんなに疲れていようと必ずイズモを抱きしめ、甘えてくる娘を精一杯相手したという。

 

 そんな両親を持ち、将来を考えられる様になった頃……イズモは孤児院等で寂しく過ごす子供達の事を報道などで知り、両親の様に励ましたい……と、作家の道に進んだという。

 

 しかし、作家という仕事は憧れだけでは務まらない……

 

 売れる作品、伝手、そして販路……それらを盤石にするまでの極貧生活……さすがのイズモも耐え切れず実家に戻ったが、それからあまり間を置かず両親は他界。あまりにも大きな大黒柱を失った町工場は存続の危機に陥ってしまう……

 

 しかし、元々手先が器用で多様な絵を模写するのが特技であったイズモは、父の遺した手書きの構想図を元に綿密な設計図を書き上げ、お抱えの技師達と共に驚愕すべき製品を複数創り上げ、町工場の危機を救い、満場一致で社長に迎えられた。

 だが、イズモは技術者としては素人同然……ゆくゆくは再び危機を迎える事を憂いた技師達の伝手と紹介もあり、最高峰の技術を誇るGGG技術開発部へと放り込まれ、1……いや0から鍛えられたのである。

 

「……やる……! お姉さんの絵本売るの、私も手伝う……!」

 

 

 そして当日……シオンはイズモの創作本に合わせ、艦船擬人化ゲーム「ア◯ールレーン」のキャラクター衣装を複数用意し、リラを連れて会場入りした。

 

「……相変わらず凄い出来ね。どんな魔法使ってんの?」

 

『企業秘密です~』

 

 ため息交じりに用意した衣装の事を訪ねるイズモ、彼女は毎年売り子用の衣装をシオンに用意して貰っている。今回はリラもいるので、仕上がりは兎も角数は少ないと思っていた……が。

 

「んで……はぁ?! この短期間で5着ぅ?! というか電動の艤装まであんの?!」

 

 ダンボール箱1〜2個程度かなと思っていた荷物(衣装)……しかし、現実はイズモの予想を大きく上回る軽トラ1台ぶん。

 しかも軽量金属製の各キャラ用艤装まで完全再現、発光&電動ギミックまで仕込むという徹底ぶりであった……

 

「……どんだけ楽しみにしてたのよアンタ……」

 

 イズモは呆れ返った様にシオンを見るが、本人は何処吹く風……既にトラックから全てのケースを下ろし終え、中身のチェックをし始めていた。

 

「……えーと……あ、衣装は本に合わせてくれたのね。明石にオイゲン……お、ユニコーンもあるじゃん……コレってあの娘の?」

 

 イズモが衣装ケースの中から目ざとく見つけたのは、気弱な少女の姿をしながらも歴戦の猛者である、白を基調としたワンピースドレスを纏う軽空母ユニコーン(改)の衣装セットであった。

 

『うん。体格とか近いし、本人もソレ気に入ってるのよ……イベント終わったら、服だけ手直しして普段着にするつもり』

 

「……もう立派な母親じゃん……っていうかその影響か5着も揃えたのは?!」

 

 シオン達と同じく、イズモの呼んだ友人数名が作業を手伝う中、衣装をケースから出している1人に付いて回り、自分が担当(ユニコーン改の)する衣装をキラキラした目で追いかけているリラ。

 

「……だってさ〜、あんな顔見せられたらね……反則でしょ」

 

 シオンからすれば、ずっと塞ぎ込んでいたリラがようやく見せた初めての笑顔……服を作る位の苦労など、リラの笑顔が見れるならば何着だろうと容易いと奮起した。

 

 その結果がこの、合計5着もの売り子衣装(発光・電動ギミック付き艤装完備)である……

 

「……そういうのを世間じゃ“親バカ”って言うのよ」

 

『えっ……普通じゃない?』

 

「……無いわー」

 

 イズモの溜め息混じりの発言にマジレスするシオン……その言葉で完全に呆れ返ったイズモは、ヤレヤレと両手を上げるのだった。

 

──────────

 

 会場への荷物搬入も全て済み、配置も終わった。開催まであと1時間ほどとなり、全員の担当割りを再確認……

 

 イズモは友人1人であるアヤとブース内で接客……呼び込みにアキラとカガリ。そして本の受け渡しはシオンとリラだ。

 

 今回の即売会で彼女達の着る衣装は、カガリは鉄血重巡プリンツ・オイゲン、アヤがユニオンの戦艦ニュージャージー。アキラは東煌のミサイル鞍山(アンシャン)改……そしてイズモは重桜の補給艦明石だった。

 

「んでユニコーンはリラちゃんとして……ってアレ? シオンは?」

 

「先に更衣室行ってるわよ。何着るのかはお楽しみだってさ」

 

 担当である衣装を各自がチェックする中、イズモはシオンが何を着るのかを聞こうとした。用意された衣装は5着なので、この中には無いのだ……だが、シオンは先に更衣室に行ったとカガリが言う。

 

「……あ、帰ってきた」

 

 毎年の如く見る者を驚愕せしめるシオンの仮装……時折身長や体格までもソックリにしてくるため疑問も持っていたが、先の“異星人バレ”後……()()()()()()()と有耶無耶な説明でも納得できていた。

 

『……すみません、お待たせ致しました』

 

 そして聞こえてきたのは、いつもと違う柔らかな口調……そこには、零れそうな胸を辛うじて支える白いドレス姿のシオンがイズモ達の側に立っていた。

 

「……うっわ……マジでイラストリアスじゃん」

 

 呆けながらも第一印象を口にするアヤ……彼女は性格も声も担当である「ニュージャージー」に近いので順当な配役だが、カガリの「オイゲン」やイズモの「明石」は普通に演技……

 

 リラは自然体のままやらせる予定だが、明らかにシオンが行う「イラストリアス」は見た目も雰囲気も原作からそのまま出て来た様に見える。

 

「ココまでソックリなら、絶対客も押し寄せるわね」

 

「カメコも相当群がるわよ、今回はリラ(ユニコーン)ちゃんも居るんだから……」

 

 アキラとカガリが、客引きより撮影目的で来る者の邪魔を心配するほど目を引くイラストリアス姿のシオン……毎度の如くだと一応予想していたイズモだったが、あまりのシオンの本気ぶりに後ろから肩を叩いて「アンタちょっとやりすぎじゃない?」と言う……が、それと同時に、我が目を疑う事実が目に飛び込んできた。

 

「……ちょっと待って、それ……胸……モノホン……?」

 

 震える右腕でシオン(イラストリアス)の胸部装甲(意味深)を指す……

 

『えぇ、自前ですけど──』

 

「当て付けか!? 私への当て付けかぁッ!!」

 

 この時、イズモがどんな顔をしていたかは……敢えて語るまい。

 

 

 アキラとカガリの予想通り……シオンとリラの扮したイラストリアス&ユニコーン改のコンビは瞬く間に客を呼び、ものの2時間で本は完売。残り時間で可能な限り撮影に応じる事となった。

 

「あそこの人達、もうほぼ本物じゃね?」

 

「あのユニコーンちゃんも凄く似てるよなぁ……演技には見えねぇよ」

 

「っていうか艤装も動くのかよ……マジパネェな!?」

 

 口々に衣装や演技に称賛を贈る客に囲まれ、イズモ達もノリノリで演技する……その一方でリラは人数の多さに驚くが、そのリアクションが如何にもユニコーンと同じであり、物凄く好評であった。

 

── 回想終了 ──

 

 

 いつしか、親子の如く振る舞う日々にも慣れてきていた頃……東京の3か所を同時に襲うゾンダーの出現──

 

 対処のために出動するGGG……

 

 シオンもリラを連れ、GGGの一員として行動するが、ほんの僅かな隙を突かれ、リラは敵の眼前に……そして──

 

「フフフ……此奴が“例の鍵”か」

 

「……ぁ……っ……」

 

 薄桃色のフードマントを羽織った大男が、リラを怪訝そうに見ている……リラは恐怖のあまり声も出せない。

 

「……成る程、彼奴の動揺を誘うにはうってつけの素材か。ならば……!」

 

 フードの男が片腕を出し、握り拳を開く……するとそこには、怪しく光るゾンダーメタルが出現していた。

 

「ひ……っ……?!」

 

 それこそ、かつて少女が全てを失った元凶……ゾンダーメタルを見た事がキッカケで、リラの頭の中にまたしてもフラッシュバックする惨劇の光景……

 息を呑み後退るも、そこはゾンダーロボの掌の上……逃げ場など何処にも無かった。

 

「対消滅とは違うが、我らの御し切れぬ忌々しきその力……貴様の恐怖からくる極上のストレスと共に、存分に役立って貰おうか!」

 

 男の掌の上からゾンダーメタルが浮遊し、恐怖に染まった顔のリラへと迫る……

 

『いけません! 奴らは、彼女にゾンダーメタルを……!』

 

『やらせるかよッ! 唸れ疾風、轟け雷光……双頭龍(シャントウロン)ッ!!』

 

 ビッグボルフォッグが事態に気付き、撃龍神は阻止せんと必殺の双頭龍を放つ。が、しかし……

 

「……フン、はぁぁぁっ!!」

 

 男は異様に太い己の右腕をマントから出すと、軽く気合を入れる様に声を上げた。それと同時に露出させた男の右腕から凄まじい衝撃波が放出され、双頭龍を繰り出し無防備な撃龍神へと襲い掛かる。

 

『何っ?! ぐぁァァァ……ッ!?』

 

『撃龍神?! これは……重力衝撃波!? ぐぉァァァッ!?』

 

 ビッグボルフォッグはオービットベースのメインコンピューターと連携して高速分析を行い、男の攻撃が重力衝撃波だと解析する……が、気付いた時には既にビッグボルフォッグも攻撃に曝され、撃龍神ともども大きく吹き飛ばされてしまった。

 

「……や……イヤ……っ、あぁぁぁ……っ!?」

 

 ついにリラの額に取り付き、ゾンダーメタルは大量の触手を蠢かせて宿主の身体を覆い尽くし、さらに周辺の瓦礫から破壊された車や建物の金属部品やパーツ等を中心にあらゆる物を取り込み、巨大なマシンの身体を創り上げていく……

 

「フフフ……庇護するべき者が敵となる。この状況をどう打開するか、見物といこうではないか……フハハハッ!!」

 

 ゾォォォンダァァァ……!!

 

 それは、空中に浮かぶ巨大な花の様に5つのユニットを広げ、下部のバーニアを更かしてゆっくりと上昇していく……

 

『な、何と言う大きさ……!』

 

『民間人のゾンダー化を、阻止できなかった……チクショウッ!!』

 

 ビッグボルフォッグは上昇する巨大な妖花の如きゾンダーロボに驚き、撃龍神はリラのゾンダー化少女阻止できなかった己に憤慨する。ほぼ同時にアイゼンナシュティアとダイキャンサーが加勢に現れるも、リラを取り込んだゾンダーロボの異容に声を失った。

 

『……えぇい! やむを得ん、こうなれば倒して救い出すのみ!!』

 

『……! 了解! ビッグボルフォッグ、撃龍神! 悔やんでいる暇はないぞ!!』

 

『……そうだ。捕らわれたならば、救い出せば良い……行くぞ! ビッグボルフォッグ!!』

 

『えぇ……必ず救出してみせますッ!!』

 

 いち早くダイキャンサーは次善策を打ち出し、ナシュティアへ檄を飛ばす。ナシュティアもすぐさま呼応し、撃龍神とビッグボルフォッグに声を掛けた。

 ナシュティアの声に喝を入れられた2人もダイキャンサーの策に活路を見出し、すぐさま動き出すのだった。

 

──────────

 

── GGGオービットベース ──

 

「横須賀のゾンダーロボ、撃破を確認! ストラトスライガー、船橋の戦域まで約2分!」

 

 牛山が声を上げ、横須賀の敵は撃破を確認……船橋も方もライガーの現着まであと僅かというタイミングである。

 

《長官!! リラが……》

《オイオイ、どういう事だよ……何でアイツがあんな所に?!》

 

 その時、千葉方面へ向かったイザナギからの通信からとんでもない事態が判明する……

 

 片時もシオンから離れなかったリラがいつの間にか戦場に迷い込み、ゾンダーロボの眼前に移動していたというのだ。

 

「なんだとっ?!」

 

「イザナギのカメラが、数秒前まで稀星隊員の側に居た彼女を確認しています」

 

 猿頭寺の報告で、リラを戦場に確認する数秒前にはイザナギ艦内……展望デッキでシオンと共に外を見ているのを確認していた。猿頭寺は証拠映像としてメインスクリーンにその時のイザナギ艦内カメラの映像を映し出す。

 

「……むっ? 猿頭寺くん、ハイパースロー再生! リラ君を中心に拡大!」

 

 映像を注視していた麗雄の言葉に、猿頭寺も即応……艦内カメラの動画を巻き戻し、指示された通りにスローと拡大を実行して再び再生させる。

 

 ……するとそこには、リラを中心に僅かながらエネルギーエフェクトが映り込んでいた。

 

「……このエフェクトは、先程のと同じ……?! 奴の“能力”は……離れた相手でも、見る事が出来れば移動させる事が出来るのか?!」

 

 麗雄は、ビッグボルフォッグと撃龍神を混乱させている敵の“入れ替え能力”でリラを艦外へ出した事を突き止めた。

 

「そうか、先ほどのビッグボルフォッグが突然違う位置に移動したのは、この“入れ替え能力”の所為か……!」

 

「1度に多数の目標を入れ替える事が出来るのかまでは分からん……だがその限度があるのなら、勝機はそこにある!」

 

 麗雄は敵の“入れ替え能力”の上限が掴めれば、そこに勝機があると解析する……が、しかし──

 

《な、何と言う大きさ……!》

 

《民間人のゾンダー化を、阻止できなかった……チクショウッ!!》

 

 ビッグボルフォッグと撃龍神から聞こえてくる通信越しの声に、モニターを切り替えた牛山が驚愕する。

 

「ち、千葉方面の上空に新たなゾンダーロボを確認!! お、大きい……!?」

 

 オービットベースのメインモニターに映る、宙に浮いた巨大な花の様なゾンダーロボ……

 

《……そ……んな……リラ……っ……》

 

 通信から聞こえてきた、シオンの悲痛な声……その声に、大河は最悪の事態を察知する。

 

「まさか……あのゾンダーロボは……っ?!」

 

《クソッタレ! リラがゾンダーにされちまった……!》

 

 イザナギから一部始終を見た火麻の声が、その予想を肯定する。

 

「全長1000mはある、しかもこの大きさで浮いておるとは……!」

 

「船橋のゾンダーロボ、撃破を確認! ストラトスイェーガー、コアを確保して横須賀方面へ移動開始しました!」

 

「凱っ! 急いで千葉方面へ!! リラちゃんがゾンダーロボに……!!」

 

《何だって?!》

 

「ガオガイガーはアマテラスで補給を受けつつ千葉へ! ストラトスイェーガーは急いでコアを護くんの所へ! 残るアーマロイド達は千葉方面へ急行せよッ!!」

 

グオォォォン(任せろ)ッ!!》

 

《了解、急ぎますッ!!》

 

《穏やかじゃないわね……!》

 

 組織の長として……大河はすぐさまこの状況に対応すべく指示を飛ばし、状況を理解したアーマロイド達も大河の指示に従い打開すべく行動を開始するのだった──

 

⇐To be continued 




この回想は入れたかった……

次回、激戦の後……果たして、リラはどうなるのか?


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閑話:君に捧ぐ花言葉(3)

※戦闘その他の迫力を増すため、前回の登場シーンに明記した“妖花ゾンダーロボ”の全長を今回の投稿に併せて修正しました。

そろそろ締めないと……でもまだ長い(自業自得)



 …………………………

 

 突如として現れた2体目のゾンダーロボ……その全長約1km弱という巨大過ぎる花の姿を模した身体を悠然と空に浮かべたまま、沈黙を守っている。

 

『コアの位置はおそらく、あの中央ユニットの最上部……彼処へ辿り着くのは、容易ではありませんね』

 

 ビッグボルフォッグは妖花ゾンダーロボを見上げながら、サテライトビューの画像データと併せて解析し、リラが封じ込められているコアの暫定位置を割り出す……しかし、そこまで辿り着くにはまず、下部から無数に伸ばされ、触手の如く蠢く大量のサブアームを全て回避しながら上部へ上り……これまた無数の砲塔からの砲撃を避けながら中央へ迫り、強固なバリアーに守られたコアユニットを剥き出しにしてコアを引き摺り出す他ない……

 

 当然ながら現状で最高の攻撃力を持つ撃龍神であっても、この妖花ゾンダーロボより上の高度700m以上*1まで無傷で辿り着くのは到底無理……ガオガイガーですら支援無しには不可能だと言えた。

 

『……ならば、先に厄介な1体目の対処を優先すべきだ』

 

 ビッグボルフォッグの情報を踏まえひとまず、上空で沈黙を続ける妖花よりも先に“入れ替え能力”持ちのゾンダーロボを優先すべきと言う撃龍神。

 

『しかし……奴の能力は底が掴めん、取り囲んで飽和攻撃をするか?』

 

 撃龍神の言葉に、敵の厄介な能力を指摘するナシュティア……手っ取り早い手段として遠距離からの“飽和攻撃”を考えつく。

 

『いや、我に策がある……グラヴィスに後詰めを任せ、奴の動きに依っては挟み込む。撃龍神とビッグボルフォッグはナシュティアと共にタイミングを合わせよ』

 

 しかしダイキャンサーは、“我に策がある”と切り出してきた。

 

『何か手があるのか? ダイキャンサー』(撃)

 

『……我が矢面に立ち、全員で四方から同時に踏み込む』(ダ)

 

『敵の能力の底を知る為……ですか?』(グ)

 

『奴は我らや己の位置を入れ替えてくるが……矢弾を逸らす真似はしておらん。だが此方が遠距離で攻め立てると己と我らの誰かを入れ替えて対処してくる筈……ならば、誰が入れ替わっても対処できるよう、我々全員が近い位置に立てば、奴の能力の裏を掻く事も出来よう』(ダ)

 

 ダイキャンサーの案はこうだ。

 自分が正面に立ちつつ、全員でゾンダーロボの四方を取り囲み、近接攻撃を仕掛ける。誰かが敵と入れ替えさせられればその誰かが被弾するリスクはあるが、立ち位置によっては相手の能力を封じる、或いは逆手に取る事も出来るかもしれない……

 

 そう考えての事だった。

 

『分かりました、貴方の策に乗りましょう』

 

 付近にワームホールが開き、グラヴィスが直近に現れ同意を示す……イザとなればグラヴィスは自身の操る超重獄結界に引き込む事も考慮したが、それはあくまでも最終手段……

 

(私の超重獄結界は、主と共に居なければ完全に稼働できず、不在のまま展開すればほぼ確実にゾンダーコア諸共全てを消し去ってしまう……ですが、この非常時に主の手を煩わせる訳にも行きませんからね)

 

 タダでさえ、リラがゾンダー化された為気が気でないシオンの事を鑑み、余計な心労を掛ける訳には行かない……とグラヴィスは考えていた。

 

『可能な限り、跳空追槍破城砲(ワームスマッシャー)で追い込みます……それ以外はむやみに放てるモノでもありませんしね』

 

『……任せるぞ。クーゲル達もじきに此方へ来る……後顧の憂い無く少女を救いに往けるよう、我らで奴を倒す!』

 

『『『応!』』』

 

 不気味に沈黙を続ける妖花の下で……勇者ロボ軍団&アーマロイド達の反撃が始まった。

 

──────────

 

 ゾォォォンダァァァ……!!

 

『此処からは先は、一歩たりとも通さん……!』

 

 巨大な刃を振るい、入れ替えゾンダーロボの正面に立つダイキャンサー……その左には撃龍神、右にアイゼンナシュティア、背後にはビッグボルフォッグが立つ。

 

 ゾォォォンダァァァ……!

 

 警戒心を顕にするゾンダーロボ。誤解されがちだが、アーマロイド達は曲がりなりにも原種と同等レベルの強さが下地にある……地球側の戦力として振る舞い、GGGと協力体制を築いている以上、赤の星最強の戦力たるキングジェイダー以上に手加減を強いられるのだが、それでもなお相手との相性や性能差……そしてマスターであるシオンからの指示が有れば、彼等の戦闘力は計り知れない。

 

 この“入れ替え能力”を持つゾンダーロボも、素体となった人物の頭の出来の良さから、彼らの底知れぬ強さを知らず知らずに嗅ぎ付けていたのであろう……

 

 だが、ゾンダーロボは“勝てない相手から逃げる”という選択肢を持たない……

 

 故に、不退転。

 

 ゾンダーロボは意を決し、正面に立つダイキャンサー目掛けて突撃する。その動きにダイキャンサーも応じ、真正面から迎え撃つ。

 

『不退転……その意気や良し。……真っ向勝負!!』

 

 ダイキャンサー目掛けて突撃するゾンダーロボ……しかし、1度は正面突破の構えを見せたが、そこから一転し周囲の瓦礫と己の位置を入れ替えて撹乱を始める。

 

『……?! 猪口才なッ!!』

 

 ダイキャンサーはランダムに位置を入れ替えつつ迫るゾンダーロボに臆せず、迎撃の構えを解かない。

 

 それは己の意地でもあれば……ある意味、仲間への厚い信頼とも言えた。

 

『その手ならば、既に予測済みです』

 

 ガキィンッ!!

 

 鈍い打撃音と共にゾンダーロボの体勢が強制的に崩される。音の正体はグラヴィスの放った空間跳躍攻撃。自前で相手の至近距離にワームホールを繋ぎ、自身の爪や尾を用いて攻撃するという若干チートじみた攻撃手段だ。

 

 ゾゾゾ……?!

 

 グラヴィスの搦め手封じに一瞬困惑するゾンダーロボ、そして相対するダイキャンサー等はその一瞬を逃したりはしない。

 

『我が一刀は、雷の煌めき……!』

 

『伊達や酔狂でこんな頭をしている訳では無い!』

 

『大人しくして貰いましょうか……!』

 

『動きがトロいぜ、貰ったァ!!』

 

 一足先にダイキャンサーの巨刃が雷光の如き速度で迫り、絶妙な間隔を空けて残る3人も突撃……ナシュティアの頭に蒼雷が迸り、ビッグボルフォッグがミラーコーティングの銀光に包まれ、撃龍神の両腕に収束した緑光が煌めく。

 

 ゾ、ゾゾ……?!

 

 この機転に入れ替えゾンダーロボは正面のダイキャンサーと立ち位置を入れ替えようと能力を行使する直前……側面と背後の動きにも気付いてその真意を悟る。

 

(確かに、この敵の“入れ替え能力”は脅威……ですが!)

 

(俺達は全員、至近距離での戦いこそ本領……!)

 

(我等は仲間の意図など、手に取る様に判る……!)

 

(良い位置だ……仕掛けるぞ!)

 

 敵のゾンダーロボは高い思考能力を必要とする“入れ替え能力”を行使するが故、ある程度は賢くあった……だがその知能が逆に仇となる。

 自分の能力による入れ替えを考慮した作戦に出てきた……という()()、いや、()()()に気付いてしまった。それも最悪のタイミングで……

 

 ゾゾゾ……?!

 

『ぬぅ……!? しかしッ!!』

 

 追い詰められたゾンダーロボは正面のダイキャンサーと位置を入れ替わり、同時に向きを残る3人の方へ修正する。

 

 だが、ダイキャンサー自身は入れ替わった事に気付くと同時に自身も向きを変え、先の踏み込みで付いていた勢いを“身を屈める”事で相殺しつつ、後方から来ていたビッグボルフォッグに道を譲る。

 無論、左右からの撃龍神とアイゼンナシュティアも入れ替えに気付くと追撃のパターンを変更してゾンダーロボを捕捉しつつ追尾し、“入れ替えられる事自体が織り込み済み”だという事に気付いたゾンダーロボに対する連携を即興で組み直す。

 

『超・分身殺法ッ!!』

 

 ビッグボルフォッグが銀光を纏ったまま3つに別れ、混乱するゾンダーロボを神速の剣戟で切り刻み──

 

『この距離……()ったッ!』

 

 ナシュティアが進路を変えてゾンダーロボに突撃。その頭に備えられた【プラズマホーン】が胴体を捉え、そのまま勢い任せに弾き飛ばす。

 

 ガキィンッ……!!

 

 そしてその飛んだ先には既に体勢を整えきったダイキャンサーが再び構えており──

 

『雷光……十文字斬ッ!!』

 

 巨刃が音を置き去りにして振るわれ、逆風から薙ぎ払いへと繋げる十字斬り……ゾンダーロボ特有の強力な再生能力が無ければ、この時点で完全に破壊され尽くす程の連撃により、両腕を失い浮かされたまま無防備状態となるゾンダーロボ。

 

『唸れ疾風、轟け雷光……双頭龍(シャントウロン)ッ!!』

 

 そして、極限まで集束されたGパワーを含む竜巻と雷撃が双頭の龍を象り、同時にゾンダーロボの胴体を喰い破り貫き通す──

 

『……ゾンダーコア、確保を確認しました。速やかに護隊員の元へ搬送します』

 

『頼むぜビッグボルフォッグ、残る俺達は……!』

 

 技を放ち終え、コアを確保した撃龍神。すぐさまビッグボルフォッグへとゾンダーコアは渡され、護の下へと緊急搬送される。

 

 コアを渡した撃龍神はそのまま視線を上げ、妖しくうっすらと光りながら浮かび、リラを閉じ込めた妖花を見上げる──

 

『お待たせしました!』

 

『此処からが本番ね……!』

 

 ちょうど到着したシュトゥルムボルグとクーゲルザウターを加え、ついに戦局は妖花攻略作戦へとシフトするのだった──

 

*1
リラが変えられてしまった妖花ゾンダーロボが浮いている高さはこの時点で高度約650m。初登場時は高度600mほどだったが、その直後から徐々に高度を上げており、理由は不明ながら現在もゆっくりと回転しながらその高度を上げ続けている……




ゴメンナサイ……まだ終われません(⁠ᗒ⁠ᗩ⁠ᗕ⁠)


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閑話:君に捧ぐ花言葉(4)

シリアス感を究極ワープ進化(当作比)させたつもり……



 厄介な“入れ替え”能力のゾンダーロボを撃破し、残るアーマロイド達とも合流した撃龍神とビッグボルフォッグ……

 

 その頭上で不気味な沈黙を保ちつつ、夜空に浮かぶ深紅の妖花ゾンダーロボ……

 

『……必ず助け出してやるからな』

 

 この撃龍神の呟きにダイキャンサー等アーマロイド達も頷き、それぞれ頭上の妖花を見上げる……

 

 イザナギから降りた後もずっと、現在進行系で己の事すらも頭から抜け落ち、ただ呆然と妖花を見ているシオン。

 

 稼働し始めてしばらく経ち、種としての人間の精神性や感情を学び、察する事を覚えた超AIにより、勇者ロボ達は今のシオンが戦えない事を察した。

 

(我が子も同然に心を許していた少女がゾンダー化したのだ……止められなかった事に無力感を痛感したのやもしれん。それに、最近は主自身も何か心境の変化があったのか、戦う事を避けていた様にも見える。何があったのか迄は判らぬが……)

 

 シオン自身の精神的変化を感じているダイキャンサーは、そう考えていた。

 

 事実、シオンはリラの保護者となってから極力戦闘を避け、技術者や親代わりとしての活動しか取っていない。

 アーマロイド達の存在もあり、GGG側としては充分にシオンの存在は貢献に値しているのだが、当のアーマロイド達には以前まで感じられた”敵意に対する積極性”が嘘のように消えたシオンの事を心配していた。

 

(人の親とすれば当然ではある……が、我らが主としては……)

 

 仕える身としてはある意味歯痒くも思えたリラの存在……だが「Z」の守護者として、少女も庇護下にあるが故に単純には割り切れず、アーマロイド達はほんの少しだけ憂鬱であった。

 

 しかし……シオンとリラを引き裂き、シオン自身が積極性を失っている今、主に代わって戦えるのは自分達である。

 GGGと協力すれば、間違いなくリラを救い出し、主の心を平穏に戻せると信じ、彼等は行動に出るのだった。

 

──────────

 

「ガオガイガー、アマテラス内で補給を受けながら東京湾を縦断中!」

 

「ビッグボルフォッグ、ゾンダーコアを確保してアマテラスへ移動開始しました!」

 

 GGGオービットベース内、メインオーダールーム。

 

 逐次入る報告の声をバックに、麗雄は原種の目的が撹乱だけではない事に気付きつつあった。

 

(潜伏中の目的として、人間をゾンダー化し囮にするのはあまりにも杜撰過ぎる……何か違う目的があるのは明白だ。そして、態々GGGの目に止まりやすい日本で事を起こした事も、何か関係があるのやもしれん)

 

「長官……横須賀の警戒はもう解いても良いかもしれん。敵の目的は揺動や撹乱ではなさそうだ」

 

「どういう事ですか、博士?」

 

 原種による人間のゾンダー化という事で、奴らの目的はGGGの目を欺く事が目的だろうと推察していた大河……麗雄のこの言葉に疑問を持つのは当然である。

 

 しかし、麗雄はこう続けた。

 

「僕は奴等のこの行動を、我々の目を欺く為の囮にする為だと思っていた。ゾンダーロボを量産するのは最終目的である“地球の機械昇華”に近付く訳だからな……しかし、それならば我々の目を欺きながら同時に行う方が戦略的にも効率的だ。そして我々の膝下である日本は、我々の監視の目を欺く為にも避ける筈……」

 

 勿論、日本以外で事を起こしてもあまり状況は変わらないが、発覚してもGGGの戦力が現地に到達するまでそれなりの時間は掛かる。戦力分散を狙うとするなら、それこそ世界各地でゾンダー化事件を起こせば良いのだが、敵は敢えて日本……しかも東京付近で事を起こした。

 

「もし……奴等の目的が撹乱による時間稼ぎではなく、自分達に不利な要素を潰す為だとしたら……?」(麗雄)

 

「まさか、奴等は既にあの少女の事まで……?!」

 

「恐らく最初から分かっていたのだろう……そして潜伏している己の存在を、敢えて危険に晒してまでリラ君をゾンダー化する強硬策に出た事といい……彼女には、奴等の不利に働く何らかの要素がある。そう考えれば今回の辻褄も合う」(麗雄)

 

「しかし奴らも、我々にはゾンダー化した人間を救う術が有ると知っている筈……」

 

「……奴等の目的は、リラ君をゾンダー化した時点で達成されているのかもしれん」

 

 地球にはゾンダーを浄解する術がある……それを知っていて、敢えて行う時点で、敵の目的は既に達成されている。その可能性が高い事を指していた……

 

(しかし、敵の不利に働く要素か……彼女にはどんな秘密が……)

 

「イザナギは1度戦線を離脱し、横須賀の氷竜と炎竜を回収へ向かってくれ。氷竜、炎竜はイザナギが到着し次第、横須賀から千葉へ急行せよ」

 

 大河は、これ以上敵は手を出して来ないという麗雄の進言に従い、氷竜と炎竜の回収をイザナギに指示する。

 

 麗雄は敵の真意を突き止めるべく、思考を続けるのだった……

 

──────────

 

『……えぇい、何と言う数……!』

 

 ダイキャンサーは上空から迫る無数の触手を相手に苦戦を強いられる。無論それは他の勇者やアーマロイド達全員にも言えた。

 

 妖花ゾンダーロボの花弁は1枚でも全長400mに匹敵し、そこから大量の触手型サブアームが展開されていた。

 サブアーム自体の直径は約2m程だが、とにかく数が多い……花弁ユニットの下部全体から伸びているサブアームの数は、単純計算でも花弁1枚につき約200本、妖花ゾンダーロボの花弁は5枚あるため、総数約1000本ものサブアームを備えている計算になる。

 

『破壊しても即再生されては……ジリ貧だな』

 

 ヒートホーンを振り回し、囲みを突破してきたアイゼンナシュティアもそう呟く。

 

 当然ながら、ゾンダーロボ特有の再生能力に加えて強力なバリアが全体を覆っている為、ある程度強力な攻撃でなければ突破すら出来ない……それ故必然的に数の暴力は驚異だった。

 

『しかも、コッチの考えを見透かしてるみたい……気持ち悪いです』

 

 ボウガンモードのチャージショットで触手を纏めて吹き飛ばすクーゲルザウターは、触手の挙動に違和感を感じていた。

 

 それもその筈……全ての触手は互いを認識しており、高度な連携を組んで追い込んで来る他、誘導して絡ませる様な対抗策に乗って来ない……非常に厄介な防衛能力である。

 

『……やはり、触手を迂回して上空から攻めるしか無いか……?』

 

 撃龍神の問い掛けに、今度はシュトゥルムボルグが返す。

 

『上は上で砲撃の嵐よ? 危うく被弾しそうになったわ』

 

 妖花よりも上は、分身能力を持つ筈の自分が、危うく被弾しそうになる程の濃密な弾幕が展開される……そう溢したシュトゥルムボルグ。

 ……その声には、いつもの巫山戯た様子など一切見られない。

 

《アマテラス、千葉上空に入りました。ガオガイガー、発進準備完了!》

 

《氷竜・炎竜、イザナギ内で簡易整備中。アマテラスから遅れて2分で到着します!》

 

 その時、通信から響く牛山の声……ようやく我らが勇者王が現場入りした事で、事態は大きく動き始めるのだった。

 

──────────

 

 アマテラスから出撃したガオガイガーを主導に妖花攻略作戦は組み直され、オービットベースからの作戦が伝えられる。

 

《まず、各機をイザナギのミラーカタパルトで順次射出し、ミラーコーティングの効果時間を利用して砲塔を可能な限り排除、ガオガイガーの進路を確保する》

 

 第一段階、ミラーカタパルトで展開されるミラー粒子コーティングの効果時間を利用して妖花からのビーム砲撃を相殺しつつ、先行部隊は上部の砲塔を速やかに排除……

 

《次に、ガオガイガーをゴルディオンハンマー装備状態で、同じくミラーカタパルトにより射出。各機は目標地点到達までガオガイガーを援護し、コア摘出までの時間を稼ぐ》

 

 上部の砲塔はシュトゥルムボルグによる事前調査で、再生にはある程度時間が掛かる事が確認済みであるため、砲塔排除後は下部からの触手サブアームによる直接的な妨害が想定された。その為、砲塔排除後はガオガイガー以外の全機でそれを阻止する事になる。

 

《サブアームの総数は約1000本……花弁状ユニット1基につき約200本はあります。その猛攻を防ぎ切るには、ガオガイガー以外の全機を防衛に回しても足りるかどうか……》

 

『だが、やらなければ少女を救うことは出来ぬ』

 

『そうです! リラちゃんを助けるにはやり切らないと!』

 

『今も少女は、我らが主の庇護下にある……彼女を救えずして、守護者などとは名乗れませんしね』

 

幼気(いたいけ)な少女1人救えないなんて、私達の沽券に関わるわん』

 

 ガオォォォンッ!!

 

 口々にやる気を発するアーマロイド達……勿論、我等が勇者ロボ軍団も全員が同意見だ。

 

『ああ、必ず救い出してみせる!』

 

『これ以上原種に、良いようにされてたまるか!』

 

「……頼もしいぜ、お前ら……!」

 

《……EI-01戦以来の総力戦になるだろう。各員、気を引き締めて作戦に臨んで欲しい!》

 

 大河の言葉を皮切りに、救出作戦はスタートした。

 

《イザナギの合流を確認! ミラーカタパルト展開、射出準備!》

 

 ガオガイガーを運んでいたアマテラスから2分ほど遅れ、氷竜と炎竜を迎えに行っていたイザナギもトンボ返りで戦場へと戻り、早速氷竜と炎竜の射出が開始される。

 

《氷竜、射出! ……続いて炎竜、射出!》

 

 イザナギのミラーカタパルト後部には、8基のリボルバー式待機デッキがある為、順次の連続射出を可能としている。

 氷竜と炎竜の射出と並行しながら待機デッキ内で次弾装填の如く他の射出準備作業を行えるので、出撃は非常にスムーズだ。

 

《風龍、続いて雷龍……射出!》

 

 氷竜、炎竜に続き、風龍と雷龍が射出される。

 

『我等も征くぞ!』

 

『はいっ!』

『あぁ!』

『えぇ!』

 

 ガオォォォンッ!!

 

 ダイキャンサーの問い掛けに応えるクーゲルとナシュボルコンビ、そして咆哮で気合を入れ直すストラトスイェーガー……勇者達に続いてアーマロイド達も、順次イザナギから射出されていく。

 なお、グラヴィスはサイズオーバーでこの一団には入れないが、アーマロイド達の誰かが妖花の上部に辿り着ければ座標を追ってワームホールで転移できるので問題ない。

 

『『シンメトリカルドッキングッ!!』』

 

 今回は火力が物をいう作戦のため、氷竜と炎竜、風龍と雷龍は妖花の攻撃が来ない内に合体し、超竜神と撃龍神になっておく。

 

《超竜神及び撃龍神、妖花ゾンダーロボの上空に到達。砲撃が来ます!》

 

 妖花の迎撃範囲に入り、容赦ない砲撃の嵐が超竜神と撃龍神を襲う……が、まだミラーカタパルトで使用したコーティングの効果時間内なので直撃コースでもビームは装甲に届かず霧散していく……

 

『ダブルガンッ!!』

風導弾(フォンダオダン)ッ!!』

 

 この“無敵時間”の間に妖花の上部にある砲塔を可能な限り排除し、ガオガイガーの進行ルートを確保したい処だが……

 

『このまま一気に中央ユニットへ……!』

 

『……そう簡単には行かない様だぜ?』

 

 想定通り、ビームが無効化される事に感付いた妖花は大量のサブアームを上部へ向けて展開してくる。

 

『ダブルトンファーッ!!』

『ヴァーンレイッ!!』

 

 しかし、超竜神と撃龍神は一瞬たりとも怯まず迎え撃つ。

 

『大回転轟魔断ッ!!』

 

 そこへ、ゾンダーコアを送り届けた後トンボ返り最中にピスケガレオンと合流したビッグバンボルフォッグが参戦。

 

 魚座のアーマロイド(ピスケガレオン)との合体により得た新技「大回転轟魔断」を放ち、超竜神と撃龍神を援護し始める。

 

『遅くなりましたが、作戦の概要は既に把握しています』

 

 大回転轟魔断により発生する乱気流に乗り、ビッグバンボルフォッグは縦横無尽に空中を踊る様に駆け回りながら、ミラーコーティングのエネルギーを纏った斬撃を無数に飛ばし、次々と触手サブアームを切断していく。

 

『これなら楽勝じゃねぇか?』

 

『しかし、数は相手の方が数段上です……!』

 

 ビッグバンボルフォッグの言う通り、この程度では幾らやっても焼け石に水……全方位を囲まれ一斉に襲い掛かられてしまえば、脱出の術も無くアッという間にスクラップにされてしまうだろう。

 

 なにせこの触手サブアームの先端には小型ながら自身の装甲さえ容易く切り刻むチェーンソーとビームカッターが内蔵されており、射程範囲ではビームカッター、至近距離ではチェーンソーと凶悪極まる攻撃能力を持っている……それが群をなして来るのだから、捕まってしまえばどうなるのか、想像したくもないだろう。

 しかも狡い事に、自身は無限再生で斬られてもすぐに元通りに生えて来る……

 

『臆するな! ガオガイガーがコアを確保すれば、それで全て止まる……我等も矢面に立つぞ!』

 

『了解!』

『このくらいで弱音なんて、吐いてられないものねぇ!』

『もう少しの辛抱だからね……!』

 

 ガオォォォンッ!!

 

 ダイキャンサーの大太刀が翻ると、サブアームを纏めて切り落とし、アイゼンナシュティアの両肩が開いて大量の炸裂弾がバラ撒かれ、サブアームの群れを粉々にしていく……

 

 もう一方でもシュトゥルムボルグの砲撃が長大なビームの刃の如く薙ぎ払われ、再生しつつある砲台や残存する触手サブアームをストラトスイェーガーがすれ違いざまに切り裂きながら駆け抜ける。

 

《ガオガイガー、ゴルディオンハンマー装着モード。射出準備完了!》

 

《よぉし、ガオガイガー射出ッ!!》

 

「待ってろよ……必ず助け出してやるからな!」

 

 ミラーカタパルトの弾丸に包まれ、ガオガイガーがイザナギから射出される。

 

 ・・・・・・・・・!!

 

《……何? この反応……ゾンダーロボの様子が……?》

 

 その光景に何かを感じ取ったのか、妖花の様子が急変……滞空していた場所から上空へと逃げるように高度を上げ始める……まるでガオガイガーから逃げるように。

 

《ど、どうしたというのだ……?》

 

《……?! そうか、敵の狙いは時間稼ぎだ!!》

 

 その時、何かを確信した麗雄が叫ぶ。敵の真の目的に気付いたのは現状麗雄1人……他のメンバーは攻略に必死だったが、麗雄だけは妖花ゾンダーロボの全体を俯瞰し、ある違和感に気付いていた。

 

──────────

 

「……長官、ヴァルナーの件を覚えておるかね?」

 

 麗雄の言葉にその場が少し静まる。

 

「? ええ、勿論ですが……」

 

 勿論大河を始め、GGGのほぼ全員が克明に覚えており、史上初の人間以外のゾンダーロボによるゾンダー被害としてデータベースにも記録されていた。

 

「あの時、僕等はゾンダーコアの明滅がゾンダーロボの寿命……ひいてはコアにされた者の生命に直結しているという事実を稀星くんから聞かされた……」

 

 当時、無理やりゾンダーのコアにされ、その影響で瀕死の危機に陥ったシャチのヴァルナー……麗雄は当時の事を思い出し、妖花ゾンダーロボのコアユニットの映像を拡大して見せた。

 

 そこに映されていた映像……ゾンダーコアを内包するセンターユニットの頂上。ゾンダーコアの明滅は通常の紫色ではなく、カラフルに変色し続け、まるで狂ったように不規則な明滅を繰り返していた。

 

「見たまえ、明らかに通常のコアの明滅間隔と違っている……敵の目的はまず間違いなく、リラ君の殺害だ! ゾンダーロボのコアは通常では人間のストレスをエネルギーに変換する……が、あの巨体であれだけの再生能力を維持するのに、どれだけエネルギーが必要だと思う?」

 

 麗雄のこの言葉に、大河は行き着いては行けない答えに気づいてしまった。

 

「……まさか、あのゾンダーロボは……?!」

 

「まず間違いなく……リラ君の生命力そのものまでエネルギーに還元しておる。あのまま時間稼ぎを続けられれば、ゾンダー胞子が完成する前にリラ君の命が……」

 

 リラの生命力すらも吸い潰すが如く、狂い咲く妖花……その行き着く先は、どちらにせよ破滅しか待っていないのだと麗雄は結論付けた。

 ……その残酷極まりない結末を想像し、オービットベース内が戦慄に包まれる。

 

《……なら! そうなる前に助け出すッ!!》

 

──────────

 

「……なら、そうなる前に助け出すッ!!」

 

 ミラーコーティングの破片を撒き散らしながらコアへと突き進むガオガイガーの中で、凱はそう叫んだ。

 

「時間勝負なら、まだ救い出せる可能性はあるんだろう?! ボヤボヤしてる時間もない、一気に突き進んで勝ちを拾ってやるッ!!」

 

 その時、凱の左腕のGストーンが煌めき、同時にクーゲルザウターも何かを感じて戦線を離脱……戦刃騎馬形態へと変形して突撃するガオガイガーに並走を始めた。

 

『貴方の……熱い想いが届きました。一緒に駆け抜けましょう!!』

 

「クーゲル……ああッ!!」

 

 最高速を維持したままガオガイガーを乗せ、黒き騎馬は嵐の如く砲撃が飛び交う戦場を一直線に駆け抜けていく。

 

「ゴルディオンッ、ハンマァァァッ!!」

 

 GSライドのエネルギーバイパスが開放され、クーゲルの背の上で全身を金色に染めるガオガイガー……右腕から銀色の釘を取り出し、コアへ向けて構える。

 

「間に合え……頼む……間に合ってくれッ!!」

 

『間に合って……お願い……っ!!』

 

『行けーっ!!』

 

『間に合え……!』

 

『救い出してくれ!!』

 

『間に合えぇぇぇっ!!』

 

 上空へと逃げる妖花……その上で、侵攻を阻む大量の触手サブアームからガオガイガーを援護する勇者ロボ達が口々に叫んでは触手サブアームを破壊し続け、アーマロイド達が直掩に入りサブアームの接近を阻む。

 

「ハンマァァァヘルッ!!」

 

 クーゲルの背から飛ぶと同時に釘を構え直し、垂直落下しつつ釘を正確にコアへと突き立てるガオガイガー。

 

 ・・・・・・!! ・・・・・・ッ?!

 

 断末魔の如く声なき声が妖花から響き渡り、大量の触手サブアームが出鱈目に蠢く……その最中でガオガイガーは触手サブアームに拘束され掛かるが、クーゲルの援護もあり触手を強引に引き剥がしつつ冷静に打ち込んだ釘を引き抜いていく……

 

「ハンマァァァヘブンッ!!」

 

 ようやく現状を把握したシオンも、金色に光る空を見上げながら万感の想いを叫んでいた。

 

『お願い……助かって……っ!!』

 

──────────

 

 光の釘の先端……そこに掴まれた七色に光るゾンダーコアを力技で引き抜き、左手に収めたガオガイガー。ここで終わりにすると力を漲らせ、右手に握った必殺の手段を振りかぶった。

 

『光になぁれえぇぇぇッ!!』

 

 金色の光が周辺を完全に染め上げ、あれほど巨大だった妖花の全体が光と化していく……

 

 夜の虚空を黄金に染め上げたこの一瞬の出来事は、摩天楼もかくやという程の幻想的な空間を生み出し……そして全て消え去っていった。

 

 

 お気に入りだったあの時の仮装を改造して作ったワンピースに身を包み、ゾンダー状態から開放され、ようやく浄解されたリラ。

 少女は無言のままシオンに抱きしめされ、しばらく困惑したが、周囲の状況を理解し、しばらくしてから口を開いた。

 

「……ごめんなさい。わたし……わたしのせいで……」

 

『…………いいのよ。もう良いから……』

 

 たった数日の疑似家族関係とはいえ、濃厚過ぎる日々を送った2人にとっては、多くを語る必要はない……

 

『帰って来てくれれば……それで良いのよ……』

 

「……うん……ありがとう……」

 

 この2人は、誰がどう見ても親子に見えるだろう……抱き締められた少女の足先と指先から、小さな光の粒子が零れ落ち始めていた。

 

「……あっ……?!」

 

 浄解のために立ち会った護が気付く……少女の身体は既に限界を超えており、もう持たない事に。

 

「……あのね……わたし、ぜんぶ思い出した……お姉ちゃん、わたしのお母さんに似てたから……ごめんなさい」

 

 ゾンダーにされた時のショックが、偶然にも少女の脳を刺激し、少女は過去の全てを思い出していた。そしてあの時、シオンを母と呼んだのは本当の母親とよく似ていたからだという……

 

『そう……私、そんなに似てたんだ』

 

「……えへへ……緑のお兄ちゃんも……わたしをもとに戻してくれて……ありがとう」

 

 満面の笑みでお礼を言う少女リラ……その身体は徐々に消え続けており、既に手足はほとんど消えている。

 ガオガイガーの掌の上でシオンに抱かれ、微笑みながら涙を流しはじめたリラ……その顔には、いままでこびり着いていた恐怖の感情も一切なくなっており、その表情から見て取れるのは溢れる喜びと、ほんの少しの寂しさしかない……

 

「あのね、お姉ちゃん……わたしね……この星にきて良かったよ……たくさん良い人に会えたし、楽しい思い出もいっぱいできた」

 

『……うん……』

 

「きれいなお姉さんや、カッコイイお友達もできた」

 

 視線をクーゲルや氷竜たちの方へ向け、精一杯の笑顔でリラは「ありがとう」の気持ちを彼らに伝える……本当なら手を振りたかったが、もう既に二の腕から先が無い。

 

《……リラちゃん……》

 

 オーダールームからも嗚咽混じりの声が通信越しに聞こえている……徐々に消滅していく境界線はもう胸まで来ており、残り時間は後僅か……それでも、たとえ涙混じりでも、リラは笑顔でいることを最後まで続けていた。

 

「わたし、かいぶつにされても……怖くなかったよ。みんなが助けてくれるって、信じてたから……」

 

 ついにその瞳から大粒の涙が溢れる……それでも精一杯、笑顔を崩さないように、小さな少女は微笑み続けた。

 

『そんなの……当たり前よ! だってあなたは……私の……!』

 

 感情移入が過ぎている……その自覚もある。しかし、もはや自分でも止められない……シオンは怒りとも、悲しみとも取れない顔でリラを再び抱きしめた。

 

 リラもそれを拒まず受け入れる。

 

「……ありがとう……おか……さん」

 

 この言葉が最後となり、少女の肉体はすべて金色の光へと分解され、天に登っていく……

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

 しばらくの沈黙の後……言葉にならない感情を制御しきれず、ついに限界を迎え泣き崩れたシオン。

 

 浮遊するアマテラスの上に立っていたガオガイガーと共に、少女の最後を見届けた勇者たち……

 

 地平線から夜明けを告げた陽光が、彼らの背中をそっと温め始めるのだった。




……最後の方だいぶ早足みたいになりましたが、とりあえず今回の閑話はここまでとなります。

ウチの文才ではコレが限界だよぉ……><

なお、実はこの閑話にはまだ続きがありますが
進行の都合上あっさり繋ぐのではなく
然るべきタイミングで掲載する予定です。

さて、次回からようやく途中放棄状態だった本編の再開となります。
なお、この閑話の時間軸は明確に決めてませんが、オービットベースの直接襲撃前辺りを想定しています。
他のところに差し込むもうにも、ちょっと流れが悪いですしね……

※再掲のため中略

次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第78話『機界最強7原種』

次回もこの小説でファイナルフュージョン承認!!



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第78話 機界最強7原種(1)

原作シナリオに復帰~
とはいえ、この辺りから原作とも違った感じに……



 あの戦いから数日後──

 

 海の向こうにGアイランドシティが見える小高い丘……シオンが自費で買ったこの土地に、シオンは小さな墓を建て、そこにリラの遺品を埋葬していた。

 

「………………」

 

 唯一、リラが肌身離さず持っていた……シオンにすら解析不可能だった謎の鉱石が埋め込まれたペンダントだけを手元に残して──

 

「……シオン」

 

 涙を堪えながら花を添えるシオンの後ろ姿に、同行していた命と凱は、彼女の悲しみを痛感していた。

 

(俺達が揃っていて尚、あの娘を救えなかった……シオンは目の前であの娘が消えるのを見ているしか……クソッ、まだ苛ついているのか俺は……!)

 

 自分の不甲斐なさに反吐が出る……そう思いたくなる凱。

 

 不可抗力とはいえ、目の前で消えた少女リラ……そして彼女を最も大切にしていたシオンの事を思うと、悔しさが止まらない。

 

 たらればの話をすれば数多く挙がるが、それは事実を知った今だからこそ言える事であり、当然ながら当時には思い付く筈もない……

 

(これ以上、犠牲者を出さない為にも……必ず原種を打ち倒してやる!)

 

 決意を新たに、寒空を見上げる凱。

 

 この1週間後……人工衛星を乗っ取った頭脳原種による攻勢が起きたのだった。

 

──────────

 

 地球全土を狙った原種による隕石落としの阻止後……GGGは、未だに地球各地で潜伏を続ける原種の捜索を全力で行っていた。

 

 ……だが、捜索の甲斐なく1ヶ月が経過した頃。護の超感覚に瞬間的な反応があった後、世界各地で退役軍艦が消失する怪事件が発生し、GGGはその行方を追う事になった。

 

 しかし、消失した軍艦7隻を発見することは出来ず、また、トレースしていた原種の反応もかき消えてしまい、オービットベースには言いしれぬ不安が漂い続けていた。

 

「敵の目的は、今まで我々が倒した原種の本体……つまり“原種核を回収する”事だろう。ここまでは稀星くんの推測どおりに推移しておる」

 

「うむ……ではこれより、オービットベースは特別体制に移行する!」

 

 麗雄の言葉に大河も頷き、オービットベース全域へ特例措置を出した……その内容とは。

 

 1.オービットベース外縁部の外壁を徹底チェックし、あらゆる隙間を完全に塞ぐ事。

 

「敵の能力、考え得る侵入手段……稀星くんの事前情報が無ければ、初手から完全に詰んでおったかもしれん。侵入されない事に越した事はないわい」

 

 2.研究区画内にある全ての原種核を特殊区画「GSルーム」へ封印し、特別監視体制を敷く事。

 

「原種とはいえ、GSライドから直接放たれるエネルギーに対抗するには、相応の出力が必要不可欠です。確保対象が奴らの手を出せない区画にあると知れば、否応なしに手段を変えざるを得ないでしょう」

 

 3.勇者ロボ軍団及びアーマロイド隊によるオービットベース内外の徹底警備。

 

 シオンが事前に伝えていた情報……最強と目される7体の原種の情報と、彼らの目的、そしてその手段。それらを前提とした迎撃体制の確立を、大河と麗雄は早くから整え始めていたのである。

 

「仮に奴らに侵入されたとしても……我々の回収した原種核がGSルームにある以上、敵が奪還する事はほぼ不可能な筈です」

 

 この「GSルーム」とは、人体には無害だがゾンダーに極めて有害であるGSライドから発せられる光エネルギーを周囲に拡散・乱反射させる特殊金属粒子「Gプリズム」を塗布した建材を用いた区画で、区画内には常時一定出力のGパワーが供給されており、ゾンダーや原種核に対する研究や実験における安全性を高める措置の一環として設けられた特別な区画である。

 

「稀星くんが作戦に参加できない以上、アーマロイド達との連携が十分でない処は如何ともし難いが……あの状態ではな……」

 

 しかし大河は、シオンが黄金の繭から開放されていない事に一抹の不安を感じていた。

 

「一時的に全権を預かっておる蠍座……グラヴィス君も、彼女の現状は把握できていないという」

 

「デモ、ワタシ達がピンチの時は、すぐに駆け付けてくれる筈デース」

 

「そうよね、あのシオンちゃんだもん」

 

 対する女性陣……スワンと命は、どんな状況でもシオンを信頼していた。彼女らはシオンと日常的な付き合いも多く、年齢もあまり離れていない同性という事もあり、オービットベース内では最早3姉妹という括りで見られる事も多かった。

 包容力のあるクールビューティなスワン(長女)に、度胸と行動力の高い一途な(次女)、そして謎の配下集団(アーマロイド達)を持つアイドル的なシオン(三女)と行った具合か……

 

「来るなら来い、原種め……返り討ちにしてやるぜ!」

 

 火麻はこの体制に自信を深め、返り討ちだと息巻くのであった。

 

──────────

 

 同時刻、地球上では──

 

(……?!)

 

 ただならぬ予感を感知した戒道幾巳。その驚き様を察知したJも「原種か?」と問い掛けたが、幾巳は首を横に振りこう答えた。

 

「……物凄く恐ろしい気配がした。原種とも違う、何かの……」

 

「何……?」

 

 その返答に怪訝な顔をするJだったが、トモロの声に更に困惑を隠しきれなくなる。

 

《……アーマロイドから、原種がオービットベースの直接侵攻を企んでいると報が入った。彼処で騒ぎが起きれば最悪、原種核を奪回される恐れがある》

 

 トモロに対して送られてきたのは、アーマロイド……先の戦いで一時的に共闘したグラヴィスからの報であった。

 

「トモロ、いつの間にお前……」

 

《勝手に伝わってきたものだ。私の意図では無い……しかし、このタイミングで奴等が動くのなら──》

 

「ああ、好機には違いない……あの女が敵でなければな」

 

 Jの言葉にはまだ少し棘があるが、それはかつての戦いの記憶の中に混ざり込んでいたあり得ざる記憶……最後の戦いで対峙した相手が女性型の影をしていたという瞬間の所為だった。

 

「J……」

 

「……ああ、分かっているさ。奴とあの女は違う……あの女は明確に我々を敵と見做していないからな」

 

 事前に打ち明けられたJの記憶の混乱……幾巳やトモロには存在しないこの小さな混乱に振り回される彼を、間違いから救えるのは共に戦う仲間である2人だけだ。

 幾巳の声にJは「分かっている」と返し、シオンは自分達の敵ではないと己に言い聞かせた。

 

「兎も角。原種がGGGと事を構えるなら、我々も動く方が良いだろう……それを見越しての報だろうからな。……よし、ジェイアーク、急速発進!」

 

《了解!》

 

 大気圏を飛行する白亜の戦艦は進路を変え、速度を増して天を覆う虚空へと向かうのだった。

 

──────────

 

 場所は戻り、オービットベース……その宙域付近。

 

「……どうだ、見つかったか?」

 

 ガタイの良い大男が、童顔の少女へと話し掛ける……しかし──

 

「念入りに隙間を塞いである……外壁に穴が見当たらない」

 

 少女は遠くに見える構造物……オービットベースの外壁全てを確認し、“隙間が塞がれている”と言った。その時点で、明らかに異常な能力だ。

 

 それもその筈、この場にいる7人は全員がこの宇宙空間で宇宙服は愚かなんの装備もなく、薄い紫色のマント姿のままで居る。

 

 そう、彼等こそ原種──人間の身体を入れ物とし、中に入り込む事で隠密活動を可能にした、原種の人間態であった。

 

「隙間が無けりゃ開ければ良いのよ、アタシの爪ならあの程度の壁なんて訳ないわ」

 

 スキンヘッドで痩せ型の男(?)がそう溢し、その隣の小柄な男が更に続ける。

 

「中で散るのではなく、最初から3方同時侵入にすれば特に変わりはない……私の“原子分解”に、壁など意味を為さないからな」

 

「さすがはGGG。対策としては中々だったが、我々の能力には及ばなかった様だな。……では、作戦を修正して三方同時侵入とする。腸は残って奴等に備えよ。(あばら)(きも)は奴等の戦力を、耳と爪は中枢部の占拠、目は私と来い。侵入後は各自、予定通りに……では始めよう」

 

 音頭を取った大男……腕原種が頷くと、小柄な男が頷き返し、己の能力を発動させる。

 

「“原子分解”、開始!」

 

 小柄な男の胴体から肋骨の様な器官が飛び出し、細かく振動し始める……するとフードの1人以外の6人が微細な粒子へと分解され、粒子の塊は一塊のままオービットベースへと向かっていく──

 

──────────

 

「……?! 原種だ! うわぁっ!?」

 

 能力の発動を察知した護が声を発した直後、オービットベースを衝撃が襲う。

 

─ 警告! 外部から侵入者あり、外部隔壁破損! ─

 

「何っ?!」

 

 事態の急変に驚く大河、オペレーター席の猿頭寺が状況を報告する。

 

「エリアB-21、D-55、F-17の外部隔壁が破損。空気が流出しています! 侵入者は6名、外から3ヶ所同時に侵入してきました?!」

 

「クッ、強硬策で来たか……!?」

 

 想定はしていたがタイミングが悪い……メカ形態を持つアーマロイド達は少し前に、偵察と称して付近の宙域へ向かったばかりなのだ。

 

「俺達で直接止める! 長官!!」

 

「おうよ!」

 

「うむ。対策があるとはいえ、くれぐれも気をつけてな……!」

 

 火麻と凱が頷き合い、大河は注意を促しつつ承認する。

 

『僕達も……主の受けた恩を、彼らへ返す為に』

 

『はい、ですの……』

 

 内部の警戒に残っていた天秤座と水瓶座も頷き合い、その場で分かれて迎撃に加わる為に動き出す。

 

 オービットベース内初の白兵戦が始まる──

 

⇐ To be continued... 




本気で掛かってきた最強原種7体に、GGGはどう立ち向かうのか……?

最近モチベが下がりつつあるので、
感想よろしくお願いしますぅぅぅ><


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第79話 機界最強7原種(2)

前回からの続き……

三方に分かれて侵入してきた原種達
オービットベース内で始まる白兵戦
しかし、原種の力は圧倒的……

迎撃に向かう凱達に、勝算はあるのか?



「ケヒヒッ、脆弱な奴等が揃ってお出迎えかぁ?」

 

 手足を床に付け、しゃがんだ格好で待っていた男……耳原種が溢す。

 

「幾ら数を揃えても、アタシ達を止める事なんて出来やしないのに」

 

 細身のスキンヘッド……爪原種も怪しい笑みでそう応える。

 

「なんてこった……ほぼ人間じゃねーか(ココも情報通りって訳かよ)?! 狼狽えるな! 射て撃てぇぇぇっ!!」

 

 駆け付けた火麻が原種の姿に一瞬驚くも部下に命令し、一斉にアサルトライフルを乱射する……が、原種はバリアに頼らず、爪原種が前に立ち己の爪を利用して防御していた。

 

「無駄よ、アタシの爪は何でも切り裂く」

 

「クソッ、やっぱ効かねえか……!」

 

 ケヒヒヒ! と不敵な笑みで耳原種が飛ばしてきたピアス攻撃を咄嗟の横っ飛びで避ける火麻……しかし、逃げ遅れた他の職員等は直撃を受け、額にピアスが刺さってしまった。

 

「……?! ………………」

 

 一瞬だけリアクションをとった職員達はその場でダラリと頭や両腕を下ろしてしまう……

 

「……な、何だと……?!」

 

 しかしその後、再び持ち上げた顔は皮膚が紫に変色し、目の焦点も合わないまま再び動き始める……ユラユラと危ういバランスを何とか保ちながら歩いてくる様は、まるでホラー映画のゾンビだ。

 

「あら、当て損ねたのが居るわね……」

 

 正気のままである火麻を見た爪原種が腕を振るい、それを掻い潜った隙を耳原種のピアスが突くも、火麻は大柄な身体に似合わぬ素早さで何とか回避。

 

「クソッ、なんてザマだ……ッ!」

 

 そのまま火麻は悪態を吐きながらも、続けられる攻撃を何とか回避し、緊急退避用に設けられていたスペースへと転がり込む。

 

「……あら、逃げられちゃったわ」

 

「ケヒヒッ、まァ良いさ。俺達の目的は……」

 

「この施設の中枢の占拠、だものね」

 

──────────

 

 三方から同時侵入してきた原種達……大河は火麻の一時撤退に驚くも、その際に敵の目的を聞いていた事を知り、オービットベースの主要通路は全て閉鎖。勇者ロボ達が居るビッグオーダールームへと退避し、風龍・雷龍、ゴルディーマーグ等と共に迎撃体勢を整える事を決定した。

 

 その頃、凱も原種の迎撃に向かい、遭遇した腕原種と瞳原種と戦闘を開始する……が、同行していた瞳原種の能力により苦戦を強いられていた。

 

「私の能力は“遠距離探知”と“未来予測”……如何なる攻撃でも、先を読んでいれば対処できる」

 

 地球文明の技術では“演算による予測”など可能性の高い確率でしかなく、確定した未来までは見えない……しかし、瞳原種の高い探知能力と演算能力による予測であれば、ほぼ確定した未来が見える。

 

 ──しかし、その能力にも穴はあった。

 

「……?! 後ろ……ッ!?」

 

 突如、腕原種の背後の空間が歪み、予測外からの攻撃に瞳原種の知覚が遅れ、巨腕原種は空間の歪みから現れたミサイルに背中を押されてバランスを崩し、凱へ放とうとした重力衝撃波の狙いを外されてしまった。

 

「“空間転移型ミサイル”には、こういう使い方もある……!」

 

「お前は……!?」

 

「……フン。機界昇華を終えても尚、無駄な足掻きを続けるか? 赤の星の戦士」

 

「あの時、貴様を倒しきれなかった雪辱……今此処で晴らさせて貰う!」

 

「ッ?! 勝手な事を……!」

 

「フハハハ……! 雪辱か、無謀なものよ……JとG、揃って消去してくれるッ!!」

 

 三者三様……それぞれの思惑が入り交じる戦場で、3人は再び火花を散らし始めた。

 

──────────

 

 その頃……他と分かれて進んでいた肋骨原種と肝臓原種。

 本来の目的である勇者ロボ達の破壊を遂行しようとしたものの、対象が全員ビッグオーダールームに集まっていた為、先に不可解なエネルギー反応を辿って居住区画へと来ていた。

 

「……おかしい。我々に近い、しかし同質ではないエネルギーを感じる」

 

「利用できるならそれで良し。しかし、我らの邪魔となるならば……」

 

『そこまでです……!!』

 

「「ッ?!」」

 

 原種2人が気配に気付き、その場を飛び退る……直後、床へ大きな凹みが発生。Gパワーの反応もなく現れた突然の襲撃者に、肋骨原種と肝臓原種は一瞬だけ慄いた。

 

『……この波長。やはり主を狙いに来たか、原種……!』

 

 声と共に現れたのは、握っていた己の本体である黄金の天秤を、大きく空いた服の胸部分から体内へとしまい込む天秤座……たった1人で原種2体を迎え撃つという状況だが、その顔に焦りは微塵もない。

 

 あるのは、平和の為に戦う事を決意した漢の顔そのものだった。

 

「お前は……例の裏切り者の眷属か。飛んで火に入る何とやら」

 

『……へぇ、随分と強気ですね?』

 

「お前が何者であろうとも、我々に敗北は無い!!」

 

 展開した肋骨を細かく振動させ、“原子分解”の能力を行使する肋骨原種……しかし、天秤座は少しだけ横にズレて範囲から逃れた後……

 

『……ッ! オォォォラァァァッ!!』

 

 己に備えられた防衛能力の1つ……「白銀の煌星(スタープラチナ)」を呼び出し、反撃に出る。

 

「ぐ?! おぉぉぉっ?!」

 

「な……なんだと?!」

 

 突然弾き飛ばされた肝臓原種に、驚きを隠せない肋骨原種……それもその筈、天秤座の守護幻影である「白銀の煌星(スタープラチナ)」の姿は原種に全く見えておらず、肝臓原種が吹き飛んだ原因を理解できないのだ。

 

『敵を知らぬ者に、勝利などありません……!!』

 

『オォォォッ!!』

 

 原種には見えない幻影の男……白銀の煌星(スタープラチナ)は、容赦なく肋骨原種に対しても猛攻を始める。

 

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!』

 

「ぐおぉぉぉおぉぉぉおぉぉぉ……っ?!」

 

 白銀の煌星(スタープラチナ)は熱探知、赤外線、電磁波……あらゆるセンサー類を掻い潜り、物理的なダメージを直接相手に与える事が出来る。

 具体的には、位相空間で活動する精神エネルギーの塊──

 ……所謂“エネルギー生命体”、或いは勇者達の“魂”に近いものであり、同系統の存在、またはその本質的な部分を識り得る*1者にしか姿を見る事は叶わず、如何なるセンサーだろうと捕捉できない。

 

 だが、逆に白銀の煌星(スタープラチナ)からは空間位相のズレを隠れ蓑にして物理的な影響を一方的に起こす事が可能……

 

 その為、機械生命体である原種にとっては“認識できない不可解な現象”としか知覚できない。

 

「……ば、馬鹿なッ?!」

 

 さらに言えば、白銀の煌星(スタープラチナ)の行動速度は音速を遥かに超えており、仮に打撃の音が聞こえたのであれば、それは()()()()()()()()のと同じなのである。

 

「リバース!!」

 

 驚愕の瞬間から数秒の間に大ダメージを受け、盛大に吹き飛ぶ肋骨原種。辛うじて肝臓原種の能力発動が間に合いダメージから回復するが、天秤座は再び肝臓原種へと狙いを変更し白銀の煌星(スタープラチナ)を向かわせる。

 

「えぇい、原子分解ッ!!」

 

 見えない相手に能力を行使する肋骨原種、しかし物理的にどうこう出来ないものを迎え撃つのは悪手過ぎる。

 

 そう思った肋骨原種は天秤座に攻撃を繰り出すが、天秤座は既に攻撃を予測しており……

 

『……想像していた相手より“芸が乏しい”ですね』

 

 天秤座自身が肋骨原種へと逆に急接近……そのまま背後へと回り、逆に肝臓原種へと向かわせた白銀の煌星(スタープラチナ)の攻撃をタイミング良く途中で引っ込め、改めて己の近くに出し直す。

 

 この動きは原種達にとってフェイントのように作用……

 

 ご丁寧に天秤座を目で追っていた肝臓原種は再び意識外からぶっ飛ばされ、肋骨原種も己の背後へと意識を持っていかれ、正面に再出現した白銀の煌星(スタープラチナ)の攻撃をマトモに喰らってしまう。

 

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオーラァッ!!』

 

「ぐあぁぁぁっ?!」

 

「な、何故だ……何故、奴の攻撃が見えない?!」

 

『……なるほど。どうやらアナタ方には、僕の白銀の煌星(スタープラチナ)が見えていない様ですね』

 

白銀の煌星(スタープラチナ)……だと?!」

 

 鸚鵡返しの様に言葉にする肝臓原種……肋骨原種を回復させながらも天秤座の動きには注意していたが、まさかこの場にはもう一人、見えない“誰か”が居るのか? と疑心暗鬼に陥るのだった。

 

⇐To be continued. 

*1
ぶっちゃけ位相空間の壁を越えて来る霊的な現象や存在と思えば理解しやすい。




原作とは少し流れが変わりましたね。
天秤座は水瓶座と別れてシオンの防衛……そこへ肝臓原種と肋骨原種が来てバトルスタート!
そして凱の方も……本来は一度宇宙に放り出されてから巨腕原種とバトり始めるのですが、本作では先にJが割り込んで……
とはいえ、アレは結構重要な展開だし、カットした訳ではないので次回をお楽しみに!

最近執筆のモチベが下がりつつあります……
エタりたくない……応援してくださいッ!!(切実)


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第80話 機界最強7原種(3)

実は前回の投稿直前、Amazon Prime videoでも配信始まってたんで「グリッドマンユニバース」を見ました。
アレも控えめに言って“神作”や……!!
スパロボにもグリッドマン出てたし、次はダイナゼノンも絡めて出してよプレイするから!

個人的には好きなロボ作品集めてスパロボ小説でも描いてみたい……勿論本作のシオンとガオガイガーもストーリーに絡む必須枠で!
……まぁ、別件(ヒロアカ×ウィザード、異世界×自衛隊+アークス、鉄オル妄想伝)もあるんだけど。



「フフフ……どうしたサイボーグ凱。お前の実力はその程度か?」

 

 ソルダートJとの急造タッグとはいえ、2人を相手に余裕を保つ腕原種……瞳原種により尽く攻撃を予測され、全くダメージを与えられない。

 

「えぇい、貴様はそこで寝ていろ!」

 

「冗談じゃない……まだまだぁッ!」

 

 何度も吹き飛ばされ、じわじわと深刻な状況に追い込まれる凱。

 Jはまだ凱に対して協調的な態度ではないのだが、さすがに状況を鑑みて下がれと警告する。

 

 ……が、当の本人は頑として拒否の姿勢。

 

「フン。時間も惜しくなってきたな……つまらんお遊びも此処までだ、はあァァァっ!!」

 

 しかし、凱の奮闘を嘲笑うかのように腕原種はJの攻撃をいなしつつ、タイミング良く突撃してきた凱に対して指向性重力波を放ち、隣の区画……その外壁諸共外へと吹き飛ばす。

 

「うわぁぁぁ……ッ!!」

 

 破損して数秒のうちに空気の流出を防ぐ為の緊急隔壁が作動し、破損した区画を丸ごと封鎖……その為、凱は宇宙空間に放り出されたまま閉め出されてしまった。

 

 

 宇宙をゆっくりと漂い、オービットベースから離されていく凱……

 

 地上とは違い、宇宙空間ではブレーキとなる大気や重力は一切無いので、一度付いてしまった加速は止まらない。ましてや、足場にできる物すら無い今の状態では、オービットベースへ戻る事など完全に不可能だった……

 

 しかし、運良くオービットベースの近くにある補助発電用ソーラーパネル群の1つに当たった事で、腕原種の攻撃で付けられてしまった加速も相殺され、緩やかにその場を漂う状態となった。

 だが幾ら地上最強のサイボーグとはいえ、宇宙空間での活動など想定されておらず……無酸素状態のままでは凱の生命活動が停止してしまう為、残された時間はそう長くない。

 

(……っ、また……あの娘の姿が……)

 

 その時……再び凱の視界に“あの少女”が、ソーラーパネルの上から凱を見下ろす様に現れる。

 

 時折見ていた幻影の様な彼女の顔は、諦めかけている凱を“不甲斐ない”と諌める様な怒気を孕んでいた。

 

(怒っている……俺に“諦めるな”と言っているのか……?)

 

 前と同じく、気付けば忽然と消えてしまう謎の少女……残り少ない酸素量や時間とはいえ、何も出来ない訳では無い。むしろサイボーグの身体だからこそ今もまだ生きて居られるのだし、ココで諦めては“勇者”の名が泣く……凱はそう思った。

 

「……ッ! はぁぁぁッ!!」

 

 一か八か……今一度自身に喝を入れ、力を振り絞ってソーラーパネルを足場にオービットベースの方へジャンプする。

 酸素の無い宇宙空間、凱に残された時間はあと僅か……だが、決して諦めない。

 

 ……その一心がこの後、小さな“奇跡”を起こすのだった。

 

──────────

 

 その頃……ビッグオーダールームで迎撃体勢を取っていた大河達の元へ、遂に爪原種と耳原種が到達。

 

「ヒヒヒッ、無駄な抵抗は止めなァ!」

 

「きゃあぁぁぁっ!?」

 

「……おや、この人間……まぁ良いわ。無駄な抵抗は止めなさい、大人しくしてれば、命までは取らないわよ」

 

 爪原種は易々と隔壁を切り裂き、身軽な耳原種が飛び込んですぐ近くの一般職員を数名ほど洗脳……その光景に命が悲鳴を上げ爪原種がその存在に気付いたが、何故かスルー……耳原種も洗脳した一般職員を操り大河達へと銃を向けさせて抵抗出来なくした。

 

「……この基地を占拠して、何をしようと言うのかね?!」

 

 銃を向けられ冷や汗を掻きながらも、大河は己の頭の中で答え合わせをすべく原種へ目的を問うた。

 

「そりゃあ勿論……アンタ達を無力化した後、この基地は宇宙に浮かぶゾンダーメタルプラントになるの。そして、この軌道上からゾンダー胞子を地球に撃ち込み、地球を丸ごと機械昇華するのよ!」

 

 大河の問いに、饒舌に答えた爪原種……目的達成寸前のこの状況で、少々舞い上がっている様子。

 

「……そうか。だが、君たちは1つ……重要な事を忘れてはいないかね?」

 

「……何よ?」

 

「アァン?」

 

 答えを聞いて少しの沈黙の後、大河は“何か忘れてないか?”と爪原種に問い掛けた。その言葉に麗雄と猿頭寺が頷き合い、手元のコンソールを操作して“あるシステム”を起動させる。

 

「何をコソコソして……ッ?!」

 

 爪原種がその動きに気を取られた直後、部屋の壁の一部が反転……緑色のプリズムが眩しいクリスタル状の小型ユニットが出現。

 ほぼ同時にビッグオーダールームの壁を破壊してギャレオンと護も現れ、原種2体へと強烈なGパワーを放った。

 

「うおぉぉぉっ!!」

 

「うぐぐ……とんでもないGパワーね……!」

 

「コイツまさか、オレ達と対消滅するつもりか……?!」

 

 護の放つGパワーは、原種達が洗脳して引き連れてきた一般職員達の額から耳原種のピアスを消し飛ばし、次々と洗脳を解いていく……

 

 何とかGパワーの放出を止めさせようと護に手を伸ばす爪原種、だがしかし……

 

「……ッ!? 駄目っ……本体に戻らないと出力が足りないわ。ココは撤退するわよ!」

 

「うぐぐ……しょうがねぇ……!」

 

 伸ばした腕ごと肘辺りまで消滅してしまった事で早々に諦め、耳原種と共に撤退……護の方も、いきなり最大出力のGパワー放射はさすがに負担が酷かったようで、原種達が撤退したのを確認した直後に膝を付いてしまう。

 

「護くん、大丈夫?!」

 

 原種達が去った事で安全も確保され、命は護を心配して駆け寄った。

 

「……大丈夫だよ、命姉ちゃん……それよりも、原種は?」

 

「原種核については心配ない、稀星くんの情報提供と技術協力によって造られたGSルームに確保しておる。あの“GSリフレクター”の機能を部屋全体に持たせた特別室じゃ、中には施設用の動力炉から供給されているGパワーが溢れておるからのぅ。奴等も迂闊に飛び込む事はするまいて」

 

 自分の事よりも、原種達の動向の方が重要だと思う護は麗雄へと尋ねたが、麗雄は原種核にも万全の備えをしていると返した。

 

 ビッグオーダールームの壁から展開したクリスタル状の小型ユニット……この“GSリフレクター”は、GSルームの壁面効果に強力な指向性を持たせ、任意の対象にGパワーを集めて照射する「反射エネルギー収束機構」を持ち、先程も護が発したGパワーの余剰エネルギーを吸収し、護の行動を補助するように原種へと照射していたのであった。

 

「襲撃自体は予測していたが、対抗策については稀星くんのアイディアじゃて」

 

「自分が動けない事態をも予測しての対策……毎度の如く、彼女の行動には頭が上がらないな」

 

 もう何度目か分からないシオンへの感謝の意を口にする大河……

 それだけシオンのもたらす行動や情報はゾンダーへの対策に活かされており、同時にまだ未成年である彼女と護を巻き込まなくてはならない現状に、彼自身も忸怩たる思いだ。

 

「よし、卯都木君は凱の状況を確認。牛山君はアーマロイド達へ連絡を取って……」

 

『《既に事態は把握しています。救援の過程で、施設の外壁を一部破損させてしまいましたが……》』

 

 大河は各方面へ指示出しを始めた所へ思わぬ相手……蠍座(グラヴィス)からの通信が入ってきた。

 

「なぁに、外壁や設備など直せば済む話……死傷者が出なければ安いもんじゃて」

 

「そのとおりだ……さてグラヴィス君。不甲斐ない我々で済まないが、力を貸してはくれないかね?」

 

『《元より主の下命ですし、貴方がたの存在こそ人類防衛の要……喜んで力をお貸しましょう》』

 

 グラヴィスの頼もしい返答を得てGGGは原種に対し、ついに反撃を開始する……

 

──────────

 

 そして、大河達がグラヴィスと話す少し前に……

 

「フフフ……無様だなソルダートJ、私を倒すのではなかったかな?」

 

「……ック……!」

 

 凱が外へと吹き飛ばされてからも、Jは単独で腕原種に立ち向かっていた……しかし、先程まで2人掛かりでも優位を崩せなかった相手を単独でどうにか出来る訳もなく、さすがのソルダートJもいよいよ進退窮まる事態に陥っていた。

 

 ……だがその時、瞳原種が気配を感じ取り口にする。

 

「……サイボーグ体、再び接近中」

 

「ふむ、外からか……」

 

 直後、なんと腕原種のすぐ傍の外壁が“何者かの衝撃波”によって破壊され、流れ出した空気に逆らって“何か”が入り込み、その“何か”が上下に割り開かれ中から凱が飛び出す……そのまま跳び蹴り体勢で腕原種に向かって来たのだ。

 

「デヤァァァッ!!」

 

「ッ?! 猪口才な!」

 

 この時、本来なら瞳原種は“未来予測”で攻撃してきているなら判断出来た筈だった……しかし、瞳原種は“何者かによって空間的に遮断され腕原種のサポートを中断されられて”いた。

 

「チッ、奴の眷属の仕業か……少々遊び過ぎたな」

 

 凱の奇襲を寸でで躱し、瞳原種の方を向く腕原種……そこにはかつてパスダーが護に対してやったように、瞳原種が“漆黒の障壁”に包まれている。

 

 腕原種は重力衝撃波で黒いバリアを破壊し、瞳原種を助け出す……すると瞳原種は別行動している仲間の状態を察知し、戦況の悪化を訴えた。

 

「耳と爪が撤退、肋と肝も例の眷属を相手に苦戦中」

 

「時間切れか、仕方あるまい……作戦を第三段階に移す、肋と肝も下がらせろ」

 

 この言葉に頷き、一足先にその場を離れる瞳原種。

 

「待てっ!!」

 

「サイボーグ凱……この勝負は預けておこう、だが機界昇華は止められぬ! せいぜい足掻いて見せるのだな。フハハハッ!!」

 

 捨て台詞と共に嗤いながら付近の外壁を破壊し、既に外で待っていた瞳原種を伴って去っていく腕原種……

 

「………………」

 

 Jも倒すべき相手が去った事で抜いていた剣をしまい、無言でこの場を去ろうとしていた。

 

「待てピッツァ……いや、ソルダートJ! 俺達は共通の相手を敵にしている、協力する事は出来ないのか?」

 

「…………。確かに奴等を倒すには、貴様らとの共闘する方が確実かもしれん」

 

「だったら……!」

 

「……だが、貴様は“あの女”を完全に信用しているのか? ()()()()()()()()()()()()()()()を!」

 

「……あの女……? シオンの事か……?!」

 

 彼は未だに悪夢を拭いきれずにいた。

 ……かつて故郷たる“赤の星”が滅ぼされた時に見た影……

 

心弱き者たちよ、我が力を与えましょう……

 

 それが時折、幻聴のように……Jの頭に囁いてくる声は日増しにハッキリとしていき、既にその声が誰であるかなど……聞き間違える彼ではない。

 

「……J、お前……」

 

 Jの気持ちを察した訳ではないが、簡単な理由ではない事をJの雰囲気から感じ取った凱……

 

(もし、シオンが敵になる……そんな未来になったとしても、俺は……俺は絶対に諦めないからな……!)

  

 ……去っていくJを見送りながら、凱はそう強く心に決める。

 

「さっきは拾ってくれて助かったぜ」

 

 グゥルルル……

 

 外壁を突き破って突っ込まれている物体……それはストラトスライガーの頭だった。

 

 その鼻先を撫でる様に触れ、凱はライガーの援護に感謝。

 ライガー自身も“獅子の名を冠する仲間”という視点故なのか……凱の役に立てた事が嬉しい様で、されるがまま*1に撫でられている……外に出たままの尻尾も機嫌よく振られているだろう。

 

 ライガーと軽めのスキンシップを終えた所に、メインオーダールーム……命からの通信が入ってきた。

 

《凱!? 良かった、無事なのね……!》

 

「命か! こっちは心配ない、ライガーが助けてくれてな……」

 

《こっちも襲撃を受けたけど、護くんのお陰で何とか……ね》

 

《凱……派手にやられたようじゃのぅ》

 

「コレくらいならまだ大丈夫さ父さん、そっちは?」

 

《こちらも問題は無い。護くんはちと疲れてはおるが怪我はしとらんし、稀星くんと練っておいた事前対策のお陰で全員五体満足じゃ》

 

《凱。護くんの探知で、原種は本部下層の動力炉に向かった事が分かった。我々は体勢を整えた後、反抗作戦に移る。一度此方に合流してくれたまえ》

 

「了解! ライガー、俺達は一度体勢を整えて反撃に出る。もう少しの間、力を貸してくれないか?」

 

 グゥルルル……ガオォンッ!!

 

 任せろ、と言わんばかりの頼もしい返答が返って来た事で笑顔を見せる凱。

 

 ……さぁ、反撃開始だ!!

 

 

 

⇐To be continued...

 


 

【◇緊急妄想企画◇】

シオンちゃん、遂にスパロボデビュー?!

~ 唐突にスパロボ世界へ放り込んでみた ~

 

 

 徹夜での整備作業が堪えていたのか、うたた寝から目を覚ましたシオン……彼女専用の作業場もあるディビジョンⅨ「ヒルメ」が寝ている間に動いている事に気付き、何か事件でもあったのかと飛び起きる。

 

 仮眠室から出てすぐ近くにある格納庫へと移動したシオン……そこで彼女が見たものは、全く予想していなかった光景であった。

 

『……な……何で? なんでココにマジンガーZが……』

 

 元祖スーパーロボットと名高いあの機体が、力なくそのボディを壁に預け座り込んでいる……それも、()()()()()()()()()()()()()で。

 

 全身にある大小多数の裂傷に始まり、特徴的な胸の放熱板も左側は外れ、右側も大きく欠損。破壊痕著しく外れた右腕ロケットパンチもほぼスクラップ状態であり……両脚部や左腕に至ってはあの“超合金Z”が一部とはいえ溶けている。

 

 奇しくもその光景は、原種が初襲来しガオガイガーが負けたあの時……それを彷彿とさせていた。

 

「あ、居た居た。シオンさん、もうブリーフィング始まりますよ?」

 

 シオンを呼んだ声の主は、ヒルメの艦橋へと続く通路側から現れた男……彼専用に誂えたシオン謹製ジャケットに身を包む、成長した姿の護だった。

 

『護くん!? うっそおっきい……というか何でヒルメにマジンガーZが……なんかすっごくボロボロなんだけど!?』

 

 初めて“リアル”に見るマジンガーZ……それが見るも無惨に大破して格納庫に鎮座しているという“予想外”の光景に、シオンは素っ頓狂な声を上げた。

 

「えぇ~、昨日説明ありましたよね? 数日前にイギリスで、“エヴァ8号機と謎のメカ群の戦い”を皮切りに、地上に主戦場が移りつつあるから、昨日の戦いで大破してしまったマジンガーZを光子力研究所に戻しに日本へ……」

 

『え、エヴァ……8号機?! ……というか今何処なの?!』

 

「えっと……今は南十字島を出て太平洋上で……」

 

『南、十字島……え、ナンデ?! 何でスタドラの島ナンデェ!?』

 

 護の口から立て続けに驚きのワードが連発され、混乱が収まる処か更に困惑を抑え切れなくなってしまうシオン。

 

 時に、2025年……

 

 レプリ地球おける一連の戦いを終え、天海護と戒道幾巳、稀星シオンの3名は地球へと帰還した──

 

 しかし護達の地球帰還後、稀星シオンは一連の事件の重要参考人としてGGGから更迭、当時の地上本部であったベイタワー基地跡地に建設された「超越技術研究所」へ移送、半ば軟禁状態にされてしまう。

 しかし、シオンは裏で世界各地の研究者等や既知の伝を頼りに、断絶空間に残されたかつて仲間を救う手段を求めつつ、日本にある複数の特機戦力を有する研究所や関連機関等と綿密な連携を取る形で、地球防衛共同体を設立すべく奔走。

 

 それから5年の月日が流れ、2030年……

 

 突如として起きた謎の現象“インビジブルバースト”の影響なのか、地球上に複数の次元断層が出現、地球は「複数の次元が重なり合い、奇跡のように1つの星を構成している状態」となり、極度の混乱状態と化してしまった……

 

 ……だが同年、シオンの呼び掛けに応じ密かに結成された地球圏防衛共同体「ガーディアンズ」が表立っての活動を開始。

 

 日本に残存していた特機を中心とした類稀なる戦力を持ち、如何なる窮地にも屈せず民衆を見捨てない高潔な精神を胸に、人々から強い信頼を勝ち取っていく「ガーディアンズ」の活躍を通じて、各国政府機関や国連も徐々に「ガーディアンズ」を支援する様になり、「ガーディアンズ」は名実ともに地球防衛の主戦力を担う事となっていく──

 

──────────

 

◆参戦作品(順不同)◆

 

 覇界王 〜ガオガイガー対ベターマン〜

 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア

 機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ

 機動戦士ガンダムUC

 機動戦士ガンダムNT

 機動武闘伝Gガンダム

 機動戦士ガンダムOO -A wakening of the Trailblazer-

 シン・エヴァンゲリオン劇場版:||

 ナイツ&マジック

 STAR DRIVER 輝きのタクト

 GRIDMAN UNIVERSE

 ふしぎの海のナディア

 真マジンガーZERO

 新(チェンジ)ゲッターロボ 世界最後の日

 超獣機神ダンクーガ

 獣装機攻ダンクーガノヴァ

 バンプレストオリジナル

 妄想小説オリジナル(※*2

 

──────────

 

GGGの帰還後、世界を襲った「インビジブルバースト」

それに呼応して地球各地を寸断した“次元断層”の壁……

この未曾有の大混乱に乗じるかのように

邪悪な野望を胸に秘めた地底勢力や、異界からの侵略者

 

……そして未知の敵もが地球を狙う!

 

──対抗できるのは()()しかいないッ!!

 

本来なら決して交わる筈のない“路”が重なった地球

この混沌極まる舞台に、平穏と日常を取り戻す為

 

彼女は今一度、封印されし剣を執る──

 

狂わなかった「Z」の力 〜勇者王ガオガイガーif

 

緊急参戦!!

※ 筆者の妄想です。

*1
余談だが、ストラトスライガーはお気に入りの相手以外にはこういった態度を一切見せず、下手に触ろうものなら大音量の威嚇ボイスを至近距離で浴びせられる為、シオンと護以外で彼を“撫でれた人物”は極端に少ない。

*2
作中完全オリジナル主人公&専用機




スパロボ妄想小説はもしかしたら実現するかも……?

さて、ついにGGGの反撃が始まる!
しかし未だに目覚めないシオン……
そしてJの心を苛む“謎の声”。

不安要素は尽きないですねぇ……

──────────

次回予告


君たちに、最新情報を公開しよう!

ついに始まったGGGの反攻作戦。
オービットベースの動力炉を利用し、
ゾンダーメタルプラントを作ろうと画策する原種達……

だが、我等が勇者ロボ軍団が易々と許す筈はない!
アーマロイド達と共に立ち向かえ!!


次回、勇者王ガオガイガーif
第81話『星の子供たち』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!


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第81話 星の子供たち(1)

スミマセン、前回の最後にブッ込んだ妄想ストーリー……
要はスパロボ参戦(妄想)ですが、ちょっとした勘違い含め、ストーリーがおかしな事になっていた為、ちゃんと原作との整合性を取れる形に書き直しました。

まぁ、重要な所はそんなに変わってないので、気が向いたら読み直すくらいでどうぞ~♪



 護は覚醒した能力をフルに使い、原種の行方を探す……程なくしてこの場を去った相手の波動を感知し、その行方を掴む事に成功した……が、その最中……行方不明であった幼馴染──

 

 初野華とクラスメイト達の生命反応を、近くに陣取る原種の本体である変異戦艦の1つから感じたのである。

 

「長官さん! 僕はギャレオンと、原種の中に捕らわれている華ちゃん達を助けに行きます!」

 

「なにッ?!」

 

 護の口から聞かされた情報……先の退役艦消失事件で行方不明となっていた護のクラスメイト達が、原種の体内にて未だ生存しているのだという。

 

「無茶よ護くん!?」

 

 当然ながら年若い護の身を案じる様に命が引き留めようとする……が、護の意志は固く、諦める事など無いとその表情は語っていた。

 

「…………」

 

 大河も、既に前例があるとはいえ、護が敢えて敵の罠の中に嵌りに行くのも同然なこの申し出をあっさりと認めたくはなかった。しかし、その揺らぎを察してか、意外な相手が救いの手を差し伸べてきた。

 

『《でしたら……少年の護衛……私が承りますの》』

 

 グラヴィスと違う回線から割り込んできたのは、水色で曲が強いポニーテールの少女……映像の背景から明らかに外部(宇宙空間)だというのに何の装備も付けずに微笑む……アーマロイドの1人【水瓶座】であった。

 

『《……どういう風の吹き回しです?》』

 

 意外……という意味では、グラヴィスも驚いていた。その為何か理由があるのかと問うと水瓶座は……

 

『《少年は……主の友人……であれば、私にとっても……大切なヒトですの》』

 

 彼女らしい感情の薄い抑揚での受け答え……ではなく、やけに熱の篭った言葉。生まれてまだ間もない頃から知るグラヴィスからすれば、彼女自身がヒトの感情を理解し、自身にもソレが芽生えてきた証左であると確信……

 

『《……ならば問題はありませんね。大河長官、この人選で(彼女に一任しても)宜しいですか?》』

 

 太鼓判を押すかの如く水瓶座の提案を了承し、大河に最終確認を委ねた。

 

「此方としても依存は無い。【水瓶座】君……護衛任務、よろしく頼む」

 

『《委細承知……ですの♪》』

 

 悪戯っぽく微笑みながら通信を切る水瓶座……その数秒後、腕原種との激戦を終えて帰還した凱がメインオーダールームに入り、反撃作戦の準備が始まったのである。

 

──────────

 

 原種の、オービットベースの動力炉を利用してゾンダーメタルプラントを生成する計画……オービットベースの動力施設は内部に大型のGSライドを内包する特殊なシステムのため、幾ら原種だろうと直接動力炉そのものをプラントに利用するにはある程度の時間を要する筈……と麗雄は予測した。

 

「つまり、俺達の反撃準備が整うのが先か……奴等がゾンダーメタルプラントを完成させるのが先か、という訳か」

 

 火麻の言葉に猿頭寺は頷き、オービットベースの概略図と作戦概要を簡素化した画像をメインスクリーンに表示させた。

 

「作戦はまず動力炉を強制的に切り離し、イザナギをも使って内部に侵入。待ち構えている原種を直接攻撃します。それと同時に、大型のアーマロイド隊は無防備となっている原種本体を強襲し、可能であれば撃破……パワーダウンした原種を1体ずつ確実に倒し、浄解して無力化します」

 

 アーマロイド達も、大型の戦闘用ボディを持つ者と持たない者で分担し、内外の同時進行作戦を援護……戦力差を逆転させ、一気に仕留める計画だ。

 

『《本体への強襲は我々のうち蠍座()、獅子座、蟹座、牡牛座、山羊座が当たり、内部の補助には牡羊座、天秤座と、帰還し次第、水瓶座にも当たらせます》』

 

 グラヴィスは、不確定要素の多い外の推移を危険視し……可能な限り大型の自分達を外に割り振ったが、過不足なくサポートも行えるよう、人型/大型どちらの姿でも大きな戦力になり得る牡羊座と天秤座を凱達のサポートに就かせる事にした。

 

『《ようやく奴等を直接殴れるな……!》』

 

『《地球には儚くも懸命に生きる、多くの素晴らしき命の輝きがある……その光を曇らせる機界昇華(行為)など、絶対に阻止しなくては!》』

 

 何やら物騒な雰囲気を出す牡羊座と、原種のやり口に憤りを隠さない天秤座……この2人なら放置してても原種を狙うだろう。

 

「……よし、イザナギの出撃準備が整い次第作戦を開始する!」

 

「凱、今のうちにメンテナンスを受けて」

 

「……あぁ、そうさせて貰う。だが、護の方は大丈夫なのか?」

 

「それは……」

 

「心配あるまい。護くんにはギャレオンも付いておるし、水瓶座もあの子の護衛を申し出てくれた。アーマロイド達は我々との共闘意識も高いし、原種核の浄解についても理解がある……それに、“あの答え”があれば十分じゃて」

 

「あの答え……?」

 

「水瓶座は護くんを自身の主……稀星くんの大切な友人と認識しておる。個人差こそあれ、元々アーマロイド達は人類とほぼ同等の倫理観を有しておる、心配は要らんじゃろうて」

 

 凱はこの場にいない護を心配する……命はそれを聞いて少し暗い顔をするが、麗雄の見解が安心材料となり凱と共に破顔したのだった。

 

──────────

 

 それから程なくしてイザナギの出撃準備も整い、緊急出撃……火麻はイザナギ艦橋から号令を発した。

 

「イザナギ、回頭ぉ! ……突撃ィィィッ!!」

 

 出撃後、オービットベースから一定距離離れたイザナギを180°回頭させ、艦首をある場所へと向ける。

 

 ……それはオービットベースの下部にある、大型動力炉を有する円筒形のユニット。

 

「いっけえぇぇぇ!!」

 

 その内部では原種6体の力でゾンダーメタルプラントが完成した直後……勿論、瞳原種には全て視えていたが、あまりにも想定外すぎるGGG側の行動に判断を誤り、情報伝達を途絶えさせてしまう。

 

「オービットベース、分離……予測進路……まさか……?!」

 

 直後、襲い来る衝撃……原種達はまさかGGGがこの選択肢は取らないだろうとタカを括っていたらしく、想定外に過ぎるやり方に声を上げた。

 

「自分達の基地の損害を無視して来るとは……!」

 

「とんでもない命知らずね……!」

 

 内外を隔てる分厚い隔壁を完全に貫き、動力室内部にまで侵入してきたイザナギの先端部……突撃で多少の傷は付いたが、作動に支障は無かった先端部のミラーカタパルト射出口が開き、中には勢揃いした最強勇者ロボ軍団と、それを率いる黄金の鎧を纏った青年……

 

「お前達の好きにはさせないぞ、原種ッ!!」

 

 我らが勇者、獅子王凱が腕原種を見据えて指を指し、宣言する様に叫ぶ。

 

「……面白い……!」

 

 しかし、強行突撃を仕掛けて来たGGGを前に、腕原種だけは不敵な笑みを崩さない……

 

「行くぞォォォ!!」

 

 ーー地球の命運を賭けた戦いは、第2ラウンドに突入する。

 

──────────

 

 一方その頃……護はギャレオンと水瓶座を引き連れ、オービットベースを取り囲みつつ静止している原種艦隊の1つに潜入……

 

 幼き人質達を奪還すべく、虚空を駆ける。

 

「待っててギャレオン、すぐに戻るから!」

 

『私は付いて行く……ですの』

 

 護と違い、なんの装備や能力もなしに飛んでいる水瓶座……護は幼馴染達の生命反応を頼りに突き進み、水瓶座もそれに遅れず追従していく。

 

 やがて2人は広々とした空間に出る……その空間の奥の方に、初野華をはじめとする子供たちが気を失ったまま浮いていた。

 すぐに護は近寄り、呼吸と生命反応を確認して安堵する。

 

「華ちゃん……!? 良かった、みんな生きてる……!」

 

 人質であろう子供たちは普通の人間なので、宇宙空間では生存など不可能。しかし、何らかの力でバリアーに閉じ込められている代わりに生命の保証がされているのだろう。

 

 しかし、この状況は完全に罠……

 

「……少年……そのまま、皆を連れて……ココを出るですの」

 

 水瓶座の言葉で、再び警戒心を取り戻す護……そして2人から少し離れた位置に小さな黒い“穴”が開き、中からフードマントで全身を隠す小柄な存在が出現した。

 

「待っていたぞ、カインの作りし破壊マシン……そして裏切り者の眷属よ……!」

 

「……?! そんな……さっきまで何の反応も無かったのに」

 

『蠍座と同じ能力……ですのね』

 

 見覚えのある能力に、水瓶座は“身内と同じ能力だ”とその方法を看破……腸原種も興味が湧いたようだ。

 

「ほぅ……裏切り者にも私と同質の能力を備える奴が居たか。私の能力は“重力制御”……幾ら貴様達のセンサーといえど、重力の井戸に身を潜めれば掛からぬという事だ」

 

 原種の中にも、あの蠍座と同等の巫山戯た能力を備えた相手が居たのだ。

 護は驚愕の顔を隠せない……が、もう1人……水瓶座はスンッ、と真顔のまま。

 

『……少年……急ぐですの』

 

 と護へ脱出を催促し、護もハッとなって動き始める。

 

「させると思うか?」

 

 マントの隙間から生々しく蠢く腸の先端を伸ばし、腸原種が行く手を阻む……だがその時。

 

「いいや、強引にでもさせて貰うさ……!」

 

 赤い光と稲妻が腸原種に対して放たれ、腸原種はその場から飛び退いて回避した。

 

「アベルの遺せし災い……!」

 

「戒道……?!」

 

 戒道幾巳……彼もまた、友人を救うべく敵地に乗り込んできた。

 

 

 

⇐To be continued...




年末まであと少し……

今年は前より忙しいので、この投稿が最後になるかも。
なので皆さん良いお年を……!

あ、でももし間に合ったら
もう一話上げるかもね……?


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第82話 星の子供たち(2)

遅れ馳せながら、あけおめことよろ!!
そして1日に起きた「能登半島地震」で被災した方に対し、心よりお見舞い申し上げます。

さて、皆様お待ちかねぇッ!
新年1発目の投稿はもちろん勇者王しかないッ!!
ついに水瓶座ちゃんが動くぞぉ!!



「三重連太陽系。全ての命と幾多の機械が溶け合い、貴様達の星は機界昇華された……故郷を失ってもまだ抵抗を続けるか」

 

 フードの影に光る双眸を細め、腸原種は懐かしむように語る……しかし、感傷に浸る気などさらさら無く、戒道幾巳は言い放った。

 

「……お前達を完全に滅ぼすのが僕達の使命だ!」

 

 その言葉を聞いた腸原種の脳裏に、原種らの司令塔であるパリアッチョの呟きが響く……

 

《GとJ、2つのエネルギー相互作用……裏切りのZ、未知のエネルギー反応……絶対危険度、極めて高レベル……直ちに消去せよ!》

 

「貴様たちを吸収し深き闇に閉ざせば、我らを脅かす存在は絶える……そして『……煩いのは嫌いですの』……何?」

 

 宣言するような腸原種の言葉を、水瓶座は冷めた一言で切って捨てた……その瞳は“のうのうと御高説を垂れるな”とでも言わんばかりに冷たく、威嚇する様に腸原種を睨んでいる。

 

『この宇宙は……雑音が絶えず……煩いですの……私は、静かな宇宙で……命の“鼓動”が聞きたいのに……アナタ達はそれを絶やし……雑音を掻き立てる……アナタ達は……邪魔な存在ですの』

 

 最早怒りさえ滲むような態度の水瓶座だが、腸原種も負けじと反論を繰り出す。

 

「貴様たちこそ! 我らと袂を分かち、況してや不完全な存在たる地球人に手を貸す……その見下げ果てた精神、我らが原種にして同種にあるま『違いますの……』……なっ?!」

 

 しかしまたもバッサリと腸原種の言葉を遮り、水瓶座は護と幾巳を優しい目で見つめた後……腸原種に対してこう言い放つ。

 

『私達は……アナタ達の原種でも……同種でもありませんの』

 

 何もなかったその手に、いつの間にか立派な拵えの鞘に収められた日本刀を握る水瓶座……そこから刃渡り約90cmほどの打刀をスルリと抜き放ち、切っ先を腸原種に向けて更に続けた。

 

 この言葉は主であるシオンや、GGGの仲間たちを通じて得た“己の矜持”……そして“心の支え”でもある。

 

『私達は“生命”と共に“進化”を続ける……狂わず、絶えず、未来を紡ぐ為に……それは“生命の在るべき姿”……道を違え、間違っているのは……アナタ達の方ですの』

 

 その言葉尻に合わせ、刀を振るう水瓶座……その刀身からは“無”から“有”を生み出すが如く水流が発生、やがて水瓶座の周囲に3つの水球を作り出す。その大きさは直径約30cmほど……

 

「……消去されたし! ブラックホール……!」

 

 水瓶座の行動に危険を感じ、腸原種は己の能力を行使。マントの隙間から伸ばした腸の先端にブラックホールを生成し、全てを吸い込まんとする。

 

「……っ?! ミィさん! 戒道!!」

 

 護は咄嗟にブラックホールの引力圏から飛び退く……が、前に立っていた2人が気になり、思わず幾巳達に声を掛けた。

 

「その手は喰いませんの……!」

 

「……心配ない! ……ハァァァッ!!」

 

 ブラックホールに吸い込まれれば、例えアーマロイドである水瓶座でもタダでは済まない。あんな非常識な存在(ブラックホールの中でも平気なの)は蠍座だけで十分だと、水球から大量の水を放出させ引力を相殺する水瓶座……同じく幾巳もサイコキネシスを使って引力の流れを直接受けない様に空気の流れを作り出し、自身に掛かるブラックホールの引力を無効化し始めた。

 

「今のうちに皆を……!」

 

「……?! う、うん!」

 

 幾巳の言葉に促され、クラスメイト達と共に離脱しようとする護……

 腸原種は幾巳に対し「青の星で過ごす内に、同族意識を持ったか」と卑下するが、幾巳は「違う! 僕はお前達を滅ぼすのが目的だ!」と反論。しかし腸原種は更に続ける……

 

「……ほぅ……では、これでも滅ぼせるかな?」

 

 腸原種の言葉に合わせ、深く被っていた腸原種のフードが風に煽られてめくれ……その顔が顕になった。

 

「「……ッ?!」」

 

『……無粋ですの……!』

 

 一瞬とはいえ見間違えようもない顔に驚く護と、動揺を悟られまいとする幾巳……そして唾棄するように「無粋」と吐き捨てた水瓶座。

 

「久しぶりね……幾巳」

 

 腸原種の人間態……それは戒道幾巳の育ての親、戒道婦人だった。

 

「……母さんと融合していたとは……!」

 

 心理作戦だと分かり切っているとはいえ、さすがに動揺を隠しきれない幾巳……なお、水瓶座はこの情報を事前に知らされていなかった為、幾巳の心情を利用しようとする腸原種の行動に対し、更に怒り心頭な模様。

 

 腸原種は幾巳の精神に更なる揺さぶりを掛けるべく、言葉を続けた……

 

「会いたかったわ……幾巳……」

 

「……猿芝居は止めろ。融合した時点で、母さんの意識は失われている筈だ……!」

 

 言葉では平静を装うが、声色には僅かながら動揺を隠せていない。それを知った腸原種は更に続ける……

 

「いいえ、母さんよ。目が覚めたの……さぁ、私の所にいらっしゃい?」

 

 お互いに攻撃の手は緩んでいない……しかし、今の幾巳に精神的な余裕はなく、隠し切れない動揺は徐々に疑心暗鬼を生む。しかし、此処には“真実を知る存在”がいた。

 

『……冗談が過ぎるですの……原種にとって……人間の身体は“仮の入れ物”……幾ら姿形を真似ても……原種には相違ないですの』

 

 水瓶座のその目には、何か……他の誰にも見えない“何か”が見えている。

 それは……“精神の形”とでもいえば良いか……

 

 水瓶座には幾巳の母の顔をした腸原種の姿ではなく、醜い腸原種本体の姿が見えている。しかし、幾巳の母は間違いなく身体を利用されているので、水瓶座の思考は冷静に隙を伺っていた。

 

『……少年……私が付いていますの』

 

「……!」

 

 水瓶座の言葉に、幾巳は驚く……まだ己を信じる事も出来ない相手に対して共闘の姿勢を見せた水瓶座の思惑に、当初考えていた意図が完全に崩壊したからだ。

 

「フン……どんな手を使おうとも、私のブラックホールから逃れる事はできない……!」

 

 自身の能力に絶対的な自信を持つ腸原種……普通に考えれば、至近距離で発生しているブラックホールから逃れる術など無い。だが水瓶座は不敵な笑みのまま、護の救助活動を支援するように腸原種の意識を護から外し、幾巳の行動もサポートし続ける。

 

「戒道!! 皆を助けたよ!!」

 

 空気の薄くなっている腸原種本体の内部空間……クラスメイト達を閉じ込めていたバリアを解除しつつ、Gパワーによる防護膜を作り出して確保。護は皆がまだちゃんと生きている事を確認し、幾巳へと叫んだ。

 

 ……だが当の幾巳からは、思わぬ答えが帰ってきた。

 

「……なら早く、此処から離脱しろ!」

 

「え……っ?!」

 

 互いに千日手状態の幾巳と腸原種……そこへ更に割って入っている水瓶座との駆け引きにより、腸原種は護の方へ意識を向ける事ができない。

 3人がこの状態を意図的に崩せば、それぞれが少なくないダメージを負う事が分かり切っているからだ。それに、幾巳は最初から護へクラスメイト達を託し、自らの手で決着を付けるつもりだった……

 

《僕なら心配ない。それに彼女(水瓶座)も居る……今のうちに、皆を安全な場所に連れて行ってくれ》

 

 テレパシーで伝わって来た、戒道幾巳の想い……それは拒絶からではなく、友達を想う彼の優しさから来る言葉だった。

 

《……うん。分かった……でも、辛くなったら何時でも呼んで! 地球人の「友達」として!》

 

 護もまた、シオンを受け入れた時と同じく……たとえどんな境遇であっても、共に地球で育った掛け替えのない友人として戒道幾巳を見ていた。彼の言葉に頷きながらも、護は何時でも頼ってくれと返す。

 

《……ありがとう》

 

 護からの思わぬ言葉に、戒道も存外の心地良さから少しだけ微笑みつつ、皆を引き連れ離脱していく護へ感謝の言葉を返した。

 

『護……頑張るですの』

 

 熱い友情を交わした2人、そして離脱していく護を見送った後……水瓶座は居住まいを正しつつ、千日手の相手である腸原種を見やる。

 

『主様も仰っていましたの……“機界31原種は倒すべき存在”……故に、私は……腸原種(アナタ)を倒しますの』

 

 

 

 

⇐ To be Continued...




此処のやり取りはもう少しだけ続くんじゃ……

さて、原作と違ってこの場で省かれた部分について。
原作ではこの場で語られた“護の生まれやGストーンの起源”については、原種の初襲来後辺りでシオンから既に明かされています。
この事は当然、故郷を同じくするJやアルマ達も「話してるだろう」と推測していたので大して驚かず……

勿論、三重連太陽系の悲劇や生みの親の事は、護に大きな動揺を与えましたが、シオンは「護くんのご両親は両方よ」と、世間一般にも存在する“生みの親と育ての親が違う例”を挙げたり、自身に残された僅かな記憶から「どちらの両親も君を心からの愛している、それだけは紛れもない事実だから」とフォロー。
そして「地球人か、異星人か……選ぶのは自分だ」と優しく諭しています。
もちろんすぐには受け入れ難い事だけど、それからしばらく経っている為か、護は己の能力の事も自分なりに受け止め、既にある程度折り合いをつけ始めています。

……この辺りもできれば盛り込みたかったんですが、メインのお話が遅々として進まなくなる為、已む無くこの場はカット……

そして外の激戦は……
ゴメンナサイもう少し待っててぇぇぇ><

ちなみに、水瓶座の能力については次回で。
カンの良い方は既に分かってそうだけど、もう少しだけ待っててね?


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第83話 星の子供たち(3)

……お待たせ致しました。
やっぱり寒い時期だし、なかなか忙しいですね……

とりあえずバーンブレイバーン、一気に1〜3話を連続で視聴してからこの部分を書きました。

……何なんですか“アレ”は?!!
台詞食い気味で人の話聞かないしやたら自己主張激しいし口を開けばイサミイサミうるさいし軍の御偉いさん達に馴れ初め(?)的なポエムじみたの語りだしてウンザリされるし敵に気付くの遅れて「しまったッ?!」とかコントまでやっとるしボス級とタイマンしてるのに肝心のイサミの到着が遅れてると敵に殴られながら一瞬だけ来るの疑って笑えるし来たら来たで気持ち悪い発言してイサミからクッソ引かれててワロスwww
そのクセいざ乗ったらバチクソ強者ムーブ始めて技キャンするわ細かい訂正させるわ外観はバリ効いた見た目で何か超カッコいいしサンライズパースのアイキャッチもクッソ似合ってるし鈴村さんの声も相まってヤバい程キマってるなんて……!
(2話までの感想)

オマケにあのEDテーマ……何故、上着を脱ぐ!?
しかもそこから男同士で恋人繋ぎ……BLかッ?!!

嗚呼、OP曲が頭から消えない……もう完全に脳内に焼き付いちまってる……コレが令和生まれの(暫定)勇者(?)の力なのか……?


ゴホン……失礼。それでは、前回からの続きを……

艦隊を構成する原種本体の1つ……その内部で腸原種を相手取り、千日手状態に突入している幾巳と水瓶座。
しかし、水瓶座は不敵にも「腸原種(アナタ)を倒す」と宣言する。

果たして、その“自信”の根拠とは……?



 水瓶座の“腸原種(アナタ)を倒す”という宣言に一瞬だけ呆けるも、続けて高笑いを始める腸原種。

 

「……ック……アハハハッ! この状態から私を倒す?! 面白い冗談だな……!」

 

「……キミは、いったい……何者なんだ?」

 

 あまりにもな発言に、幾巳もさすがに面食らう。しかし、水瓶座の顔は至って真面目……それに気付いた幾巳は、水瓶座を問いただす。

 

『私は……黄道十二機神(ゾディアート・アーマロイド)が一柱……【水瓶座(アクエリアス)】……主さまからは“アルフィミィ”と呼ばれていますの』

 

 幾巳の問いに、定型文の如き返しをする水瓶座だったが、その顔には“まだ続きがある”と言いたげな表情……大人しく幾巳は続きを待つ。

 

『そして……私の担当は……戦闘を補助する……サポーター、ですの』

 

 すると水瓶座は刀を鞘に戻し、空いた掌をおもむろに開く……すると、ブラックホールとの駆け引きに使っていなかった2つ水球が渦を巻いて巨大化。

 

 空間を繋げるゲートの様に穴を拡大させ、中から“巨大な何か”を現出させる……

 

(……!? 何なんだ、コイツ等……?!)

 

 眼の前で起きた現象に驚愕する幾巳……傍から見れば、“自身よりも大きな「何か」を何処からか転移させた”と……そう見えるだろう。

 ……しかし厳密にはそうではなく、水瓶座は“予めしまっておいたモノを持ち出した”だけ……本人からすれば“己の能力の一端”を行使したに過ぎない。

 

『…………』

『…………』

 

 渦の中から現れたのは、赤い鬼面と巨大な野太刀……そして剛腕を持つ上半身だけという姿の骨の化け物が2体……

 その身体の中心と思しき部分は青白い炎が絶えず揺らめいており、その面構えと巨大さが相まった独特な威圧感を垂れ流しながら水瓶座の傍らに侍っている。

 

 当然ながら3人の千日手状態は継続中……しかし大胆にも水瓶座(アルフィミィ)は、そこへ“更なる割り込み”を掛ける事にしたのだ。

 

「こ、この状態を崩せば、貴様たちもタダでは済まんぞ?! それを……」

 

『恐怖……原種には無いと思ってたですの……』

 

 ここに来て狼狽え始めた腸原種の言葉に“煽り”で返す水瓶座……幾巳もブラックホールとの綱引きなど初体験故、腸原種の警告は真実なのだろうと思う。

 

 だが、当のアルフィミィはクスクスと笑うのみ……

 

(……クソっ、もうどうにでもなれ!!)

 

 既に恐怖で思考がバグっているのかもしれない……だが助力すると言われた手前、淡い期待を捨てなかった幾巳は、博打の様なこの強攻策に掛けるしかないと腹を括った。

 

──────────

 

「おおォォォッ!!」

 

「……フン!」

 

 以前の戦闘データから腕原種の戦闘スタイルを解析出来たからか、巧みに重力波を避けつつ果敢に反撃を試す凱……しかし相手である腕原種の攻撃は大振りなものの、防御は硬く一筋縄ではいかない。

 凱は襲い来る攻撃を避けつつ、冷静に隙を見て反撃を繰り出す……決め手に欠ける凱と、冷静に見れば大振りな腕原種の攻防は膠着状態。

 

『でぇぇぇいっ!!』

 

「無駄な攻撃ねぇ……!」

 

 両の手から高出力の電撃を放つ雷龍……しかしこの【ヴァーンレイ】を事も無げに爪を避雷針代わりにして受けきる爪原種。

 

『風導弾ッ!!』

 

「ハハハッ、無駄な事を!」

 

 風龍の【風導弾】は肋原種の【原子分解】で掻き消され、一撃も掠らない……

 

『シルバームーンッ!!』

 

『マーグキャノン!!』

 

「ケヒヒッ、ムダムダぁ……!」

 

 ボルフォッグの大型手裏剣【シルバームーン】も、ゴルディーマーグの【マーグキャノン】すら、耳原種のピアスミサイルで迎撃され、ヒットすらさせる事が出来ない。

 

 そしてアーマロイド達も……

 

「……っ?!」

 

『よく避けますね……それが貴女の能力ですか』

 

 瞳原種と天秤座も、互いの攻撃を命中させる事が出来ない。

 片方は時間さえも置き去りにする程の驚異的な速度、もう片方は優れた探知能力と予測演算による一進一退の攻防……

 

『オラァ!!』

 

「ふ……ッ!」

 

『オォォォラァッ!!』

 

「ッ……!!」

 

 それは互いにコンマ秒でも遅れれば直撃を免れない神速の攻防……白銀の煌星(スタープラチナ)の速度をも瞳原種は見極めギリギリを回避しつつ、反撃とばかりに天秤座へ向けてビームを撃ってくる。それを白銀の煌星(スタープラチナ)は身に付けている装備の鏡面部分や周囲の構造物の残骸を上手く活用して防御または回避させ、互いに決め手を欠いていた。

 

 一方の肝臓原種vs牡羊座はというと……

 

『白虎咬ッ!』

 

 牡羊座の攻撃をマトモに受ける肝臓原種。が、しかし……

 

「リバース……!」

 

 受けたダメージをものの数秒で完全に回復し、ニヤリと嗤う肝臓原種。

 

「無駄だ、私の能力は貴様の攻撃だろうと回復しきってみせる」

 

『ほぅ……ならば、試してみるか……!?』

 

 大胆不敵な煽りに、同じく不敵な笑みで真っ向から挑む牡羊座……確かに先程の攻撃の損傷も既に完全に修復し終えており、何事も無かったかの様に肝臓原種は佇んでいる。

 

『この切っ先、触れれば斬れるぞ……!!』

 

 両の腕に本体と同様の鎧を纏わせ、肘の聳孤角を展開……

 瞬間、足が床から離れた直後、牡羊座の姿は完全に消え失せ、更にその直後には肝臓原種の周囲に“9体の分身”が出現。

 

『『『『『『『『『舞朱雀ッ!!』』』』』』』』』

 

 流れる様に周囲を周り、時間差で斬り付けては消える分身攻撃。

 

『十凰斬ッ!!』

 

 9体の分身が全て消えた後、本体が頭上至近距離に現れて右腕を振るい、トドメを刺す……

 

「グッ……がぁ……!?」

 

 手応えアリ! と牡羊座は感じるが、数秒後には再生し始める肝臓原種。

 

「……言っただろう、私の再生能力は如何なるダメージでも問題ないと」

 

『……フン、強がるな。キサマ等は己の能力を過信し、悦するだけの知能しか持たん矮小に過ぎん』

 

 厳しい表情ではあるが、勝機はあると確信している牡羊座……敢えて煽り返し、肝臓原種の意識を己に向けさせていた。

 

 その頃、大型ボディを持つ残りのアーマロイド達は……

 

──────────

 

『まず、私が司令塔であろう腕原種の本体を撃ちます』

 

 背中の重力衝撃砲を稼働させ、グラヴィスコルードは8本の足に備えられたグラビコンシステムを巧みに使い己をその場に固定させる。

 この砲撃を対艦戦闘の号砲と位置づけ、各アーマロイド達は其々の武装を準備していた。

 

『……なら、俺は瞳原種の本体を潰す。予測されようと、至近距離ならば外さん』

 

 牡牛座も全身の武装チェックを終え、そう宣言した。確かに瞳原種の予測能力は厄介だが、それぞれの移動速度からすれば軍配は牡牛座の方が明らかに上だし、至近距離……牡牛座の得意とするゼロ距離ならば、どう足掻いても直撃は免れない。

 

『そんじゃ私は……耳原種の相手でもしようかしら』

 

『肋骨原種も近付くのは困難ですし、私が仕留めに行きます』

 

 ならばと山羊座は近付き辛い耳原種の本体を相手にすると言い出し、クーゲルも、同じく厄介な能力持ちの肋骨原種の相手をと名乗り出る。

 

『ならば、残る腸原種には俺が向かおう。ストラトスは人質を救出して出てくる少年と、お前の同輩を守ってやれ』

 

 グゥルルル……!

 

 ダイキャンサーは、護が未だに出て来ない腸原種の本体を狙う事にし、ストラトスライガーには護達の移送で戦えないであろうギャレオンの補佐をする様に言う。

 

 “勿論だ、任せろ”と2つ返事で頷くライガーを見てから、グラヴィスは武装とシステムの出力を再調整し、自分の周囲に小さな“ワームホール”を生成……同時に各原種の本体付近へと通ずる“ゲート”も創り出し、一度全員の顔を確かめてからその身体全てに備えられた多数の火砲を一斉に撃ち放った。

 

『……逃げても無駄ですよ!』

 

──────────

 

 オービットベースから切り離され、ゾンダーメタルプラントへと変貌しながら虚空を漂う動力ユニット……その上部で未だに戦いは続いていた。

 

「……フフフ、重力制御装置のお陰で戦えている様だが、そろそろここの酸素も尽きるぞ……そんな状態で、あとどれだけ戦えるかなサイボーグ?」

 

 腕原種の言う通り、オービットベース本体から切り離されたこの動力ユニット周辺は既に高山地帯の環境を上回る低酸素状態……凱は足場である動力ユニット自体に設置されていた重力制御装置とサイボーグ化されている身体のお陰で何とか戦えているが、本来このサイボーグの身体は無酸素状態での長期活動を前提としていない。

 

 その為、この“足止め”に凱が参戦していられる時間も、刻限が迫っているのは明らかであった。

 

 だが、凱は自分達の勝利を確信している……それを為せる仲間と共に居るのだから。

 

「……それは……“お互い様”じゃないか? なぁ、原種!」

 

 凱は視界の片隅に映る映像……研究室の雷牙が満面の笑みで“ゴーサイン”をしているのを確認し、腕原種に()()()()()()をした。腕原種はその言葉に怪訝な表情をすると……

 

「ッ?! があァァァ……ッ!?」

 

 突如として腕原種は全身に激痛を覚えた。他の原種も数秒後には同じ様な激痛でのた打ち回り始めたのを見て、腕原種はこの激痛の原因を確信し、忌々しく言葉を吐き捨てる。

 

「……グッ……貴様が我々をこの場に釘付けにし、あの眷属共が本体を強襲する……こんな揺動を見抜けなかったとは……!」

 

 原種達の想定外……とまでは行かないが、想定こそしていても実際に相手が行う兆候すら見えないのであれば、候補や可能性としての価値は下がる。その為、原種達はアーマロイド達の行動に気は配っていても、その具体的な方針や思考についてまでは深く考慮していなかった。

 

 実際問題、アーマロイド達と原種等の戦闘能力は現時点においてほぼ互角であり、数では原種の方が圧倒的に勝る為、先にGGGの対処をしてからでもアーマロイドの駆逐は容易いと考えていた……事実、GGGの協力が無ければアーマロイド達も地球でも自由に戦闘行動を取る事は出来ない……

 アーマロイド達の主目的は「地球に連なる知的生命体の防衛」である為、人類側からの攻撃や批難に対してリアクションを取る事自体が禁忌である為だ。

 

 その為、()()()()()()()()()()()()等の手段を使われれば、アーマロイド達は一方的に攻撃を受けざるを得ない。それに乗じれば最終的には倒せるし、ゾンダーの浄解を行える者はアーマロイド側に居ないので、GGGと完全に分断した上でゾンダーを複数ぶつけるだけでも封殺は可能だ。

 

 因みにこの事態……通常なら瞳原種であれば容易に見抜けたのだが、この場には“特定の事象を書き換える”事を可能とする天秤座が居る。

 彼はその能力で“自身は瞳原種に釘付けにされる”とする代わりに()()()()()()()()()()()()()()()()()()としていたのであった。

 

『僕の“能力”は扱いこそ難しいが、相手に“こうだと思わせる”のには非常に有効でね……!』

 

 裏工作も成功した事により、能力で隠す必要も無くなった為か、天秤座は自らの仕業だとバラし注意を引く。

 

 本体は向こうでも、その意識体は此方にある……その為、意識体と離れた本体は都合上無防備。本来なら通常戦力程度で原種の本体には傷一つ付ける事など不可能だが、今の此方には“アーマロイド達”が居る……

 

 そして本体への強襲から畳み掛ける様に雷牙の声が通信から響いた。

 

《「待たせたのぅマイク! “ディスクX・対原種核用バージョンアップ版”、行くぞィ!!」》

 

 オービットベースの格納庫から射出されたケース・ボックス……自律飛翔しマイクのスタジオ7に格納された“それ”に入っていたのは、原種核の分子配列情報を追加して更新されたディスクX……雷牙の声に、宇宙空間で密かに待機していたマイクは口元をニヤリと歪めて叫んだ。

 

『Alright! ディスクX、Re-mix Version……Set,on!!』

 

 スタジオ7から飛び出したディスクを掴み取り、胸部ユニットに装填……そのディスクに書き込まれた情報は、“波”に変換する事で()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ソリタリーウェーブとなる。

 

『ギラギラーンVV(ダブルブイ)ッ!!』

 

 手に取ったギターを掻き鳴らし、マイクは脚部に搭載されたスピーカーからエネルギーウェーブを発信……それをスタジオ7がより広域へと届くように増幅して放射し始めた。

 

 大気の無い真空中だろうと、マイクとスタジオ7には“音波”をエネルギーウェーブとして届ける機能がある為、さしたる問題にはならない……そして放射されたエネルギーウェーブで共振され、自己破壊を誘発する 物質といえば……

 

「がぁあァァァ……!?」

 

「ぐぁあァァァ……!?」

 

「なん……アバババ!?」

 

「くぅうァァァ……!?」

 

「グヌァァァァ……!?」

 

「ヌゥゥゥ……忌々しい……!!」

 

 放射されたソリタリーウェーブは、この場にいた6人の原種のコアである原種核に対し、回避不能の特効攻撃……本体から伝わるダメージも重なり、その影響はより深刻さを増していた。

 

『やったぜ!』

 

『彼らの方も、上手く行った様ですね』

 

「あぁ、ディスクXも効いている……一気に畳み掛けるぞ!!」

 

 ザマァみろ! とばかりに雷龍は声を上げ、風龍はアーマロイド達の方も作戦通りに事が運んだのを確信する。

 2人の言葉を肯定しつつ、凱もディスクXの効果が十分だと確認し、このまま一気に倒してしまおうと叫んだ。

 

「ヌグゥ……がぁあァァァッ!!」

 

 ……だが、肋骨原種が苦し紛れに能力を発動し、原種全員を分解し雲隠れしてしまった。

 

──────────

 

 オービットベース司令室で大河は、戦況の変化を見て叫ぶ。

 

「原種達は、何処へ向かっている!?」

 

「待って下さい……ッ?! 原種はそれぞれ、本体へと向かっています!!」

 

 猿頭寺の分析により、原種達はそれぞれの本体へと戻って反撃をしようとしている……だが、ここまで奴等を追い詰められたのだから、もう一息あれば撃破を望めるかもしれない。

 

 ならばもう一押し……アーマロイド達の援護があれば、艦隊が相手でも十分に戦えると踏み、大河は好機を逃さず追撃の指示を出す。

 

「イザナギを呼び戻せ! 百式指令部多次元艦スサノオ、並びに全域双胴補修艦アマテラスは緊急発進! 機動部隊を収容後、反撃に出るぞ……艦隊戦だッ!!」

 

──────────

 

 同時刻、オービットベースを望む宇宙空間に漂う白亜の戦艦……ジェイアーク。

 その中でJはアルマ……戒道幾巳の不在に戦況の膠着化を感じ取り、メインコンピュータ・トモロに問うた。

 

「アルマはまだあの中か?」

 

『……ああ……眷属の1人と共同戦線を張っている』

 

(……っ……そういう事か。やはり原種共は此方の出方を読んでいたな……だが、アイツの眷属は何を考えて……いや、今は詮索している場合ではない!)

 

「今はアルマの救出が最優先だ、ジェイアーク最大戦速! 此方から仕掛ける。各砲門、チャージ急げ!」

 

『了解!』

 

 物理法則を半ば無視し、ジェイアークも虚空を駆け始めた──




はい、次回は艦隊戦です!!

一応、補足として
この時点でまだ護は原種艦隊からまだ出てきてません。
その理由も含め、次は“艦隊戦”です!
大事なので2度言いました。

それは置いといて……

何やってんですか?!(ブレイバーン3話感想)
イサミさんガチキレしてまで戦ってるのにスミス中尉……アンタって人はぁぁぁッ!!

……あ、でもこの娘可愛い♪
言葉……多分だけど人外言語かな?ネット上じゃピカチュウ扱いだし言われてみればOPだと幼女に見えるから次回何か変わるのかな?それとも例の“大張マジック”によるOP詐欺?まぁ、見続ければわかるよねそれは……
それは置いといてさぁ、スミス中尉……アンタ今回戦犯よね間違いなく。
さりげ無しに女子の更衣中ガン見もしてるしさぁ……(憤怒)

……失礼。
それでは、本作恒例の……

──────────

次回予告




君達に、最新情報を公開しよう!

原種艦隊との真っ向勝負が続く中
護は華に自分の正体を知られてしまう……

幾度か彼女を救った「緑の髪の少年」……
彼は「幼馴染」? それとも「宇宙人」?
狼狽える護の前で、彼女が取った行動とは?

そして、原種達が思いも依らぬ反撃に出る中
ついに“黄金の繭”が解かれる……?!


次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...

第84話『打ち明けられた真実』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!


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第84話 打ち明けられた真実(前編)

劇場版 SEEDFREEDOM……クッソ見たいわ!!
でも、そんな暇もお金も無いのが悔しい……

何故? それは……
私が薄給の一般(介護)職だからよ(諦観)



「スサノオ、アマテラス……分離発進!」

 

「イザナキ、機動部隊の収容完了! 合流のため移動開始しました!」

 

「オービットベースの補助動力……残りエネルギー、約47%です」

 

 着々と反撃準備が整う中、徐々にエネルギー不足に陥るオービットベース……補助動力機関は従来でも信頼性の高い太陽光発電と燃料電池だが、現行設備による消費量との釣り合いは取れず、徐々に残量は減っている。

 本来の動力システムが完全ならば絶対に有り得ない事なのだが、今はその2基あるメイン動力炉の片方を失っているのだから……

 

「……やはり、エネルギー不足は避けられんか」

 

 猿頭寺の報告を聞き、麗雄は大河の方を見て頷く。

 

「致し方あるまい……生命維持システムと通信管制以外の電力供給を、優先度の低いものから順次カット。可能な限り管制と生命維持に」

 

「了解」

 

 大河の指示により、オービットベースと他を結ぶ通信や戦闘管制と、ベース内に居る人間の生命維持に関わる部分以外の動力供給を可能な限り管制と生命維持システムに回す事で、遅延を図ろうと考えたのだった。

 

 その数分後、ようやく護とギャレオンが腸原種の本体から脱出したのが確認され、子供達を乗せたギャレオンがアマテラスに合流する。

 

 だが何故、こんなにも時間が掛かったのには少しばかり理由があった……

 

──────────

 

 心配するな、と幾巳に言われ、辛い時は頼って良いよと言って分かれた後……護は薄い酸素しか残ってない艦内を可能な限り急ぎでギャレオンの所へと戻ろうとしていた。

 

 だが、その時……なんとその中の1人……初野 華が寝惚け眼を擦りながら目を覚ましてしまったのだ。

 

「う~ん……え……っ?」

 

 原作では気付いても驚きと恐怖からか息を潜める筈だったが、この時の華は、始めて見る筈の護の姿に“言い知れない安心感”を感じていたのだ。

 

(え……護……くん……? 何だか緑色……温かい光……コレって“あの時”と同じ……じゃあ、護くんもシオンさんと同じ『宇宙人』……?)

 

 華にとって、近しい状況で助けられた事は過去にも数度あった……その中で、最も華の記憶に残っていたのは護ではなく“稀星シオン”の姿……そう、あのパスダー(EI-01)との決戦の時の光景である。

 

 華はその時のシオンの真剣な表情と、護の今の顔が全く同じ事に気付き、あの時に感じたシオンの“想い”と、護が今、自分達を救い出している時の“想い”は同じなのだと直感したからだった。

 

「……華……ちゃん……?」

 

 たっぷり数分ほど考えた後、華はゆっくりと身体を起こし……護の方を見る。“自分の正体については自分の気持ちに整理が付いたら話しなさい”とシオンに言われていた護だったが、皮肉にもそのシオンの優しさのせいか、タイミングが狂ってしまう事に……

 

(前にもこんな感じで“誰かに守って貰った”事が何度かあった……“あの時”はシオンさんだったけど、今ならちゃんと理解できる……いつも私を守ってくれていたのは……)

 

「……護……くん……だよね……?」

 

 偶然の悪戯か……パスダー戦時の状況がキッカケで華は、自分が“誰かに守られている”と薄々感じていた。それが今、確信に至り、その“誰か”の正体が“幼馴染の姿をした宇宙人”……いや、そこから一歩飛躍して“天海 護(幼馴染)”だと認識。

 

 しかも“稀星シオン”という()()が身近にいた事で違和感なくその考えが頭に湧き出し尚且つ()()()()()()()()()()()()()()という事実を素直に受け止められたのだ。

 

「………………」

 

 思わぬ形で問い詰められ、言葉に詰まる護……彼からすれば、華からこの後告げられるのは()()()()()()()。多分、自分が宇宙人である事実を認識した時、潜在的恐怖に耐え切れず拒絶されてしまう……と考えていた。

 

 だが、次に放たれた言葉は……護の想定を遥かに超えたものだった。

 

「……ありがとう……やっぱり、私をいつも助けてくれていたのは、護くんだったのね」

 

「えっ……?!」

 

 思わぬ言葉の連続に驚愕する護……だが思えば、自分たちの身近に宇宙人がいた前例はすでに多くあった為、心の準備というか、察せられる要素は揃っていたのだと護も悟った。

 

 此処は未だ宇宙空間でギャレオンの口の中……幸い、他の子達は気絶から回復していない事は1つの救いだが、半ば強引なシチュエーションの中で護は意を決して返答を始める。

 

「……ごめんね。僕、華ちゃんに嘘を吐いてた……僕は……この通り、宇宙人……なんだ……」

 

 普通ならば、その事実に驚愕し疑うだろう……だが、この世界の彼女は“誰かさん”のお陰(影響)で変な方向に強化されていた。

 

「……知ってた……というより今、ようやくちゃんと分かったの……前から、私達がピンチになった時、いつも助けてくれていたのは、護くんだったんだって」

 

 その不思議な“緑の光”を使っていない時も……護は第一に華の事を守護ろうと動いていた。そして華自身も、その事を薄々感じていた……その予想が今、本人によって証言された。

 

「……華ちゃん……」

 

「宇宙人……いえ、護くんは宇宙人……なんだよね……シオンさんと同じ……」

 

「……うん。シオンさんとは、違う星の生まれだけど……」

 

 ぽつぽつ、と自身の出自を簡単にだが語り始める護……ある程度した頃に既に護はシオンから“己の出自について”は明かされている……勿論、最初は嘘だと否定したが、シオンが語る事実は全て護が“幻視したヴィジョン”の辻褄と合うし、何よりシオンは“私自身……こんな出自だけど、なおさら私は、キミを三重連太陽系生まれの「ラティオ」ではなく、地球人の「天海 護」として扱いたい”と言った。

 

「……なら、北海道に居た頃は……」

 

「それも……僕なんだ……“天海 護”は最初から宇宙人なんだよ」

 

 言ってしまった……取り返しのつかない一言。しかし……

 

「……良かった……知らない宇宙人さんが護くんと入れ替わったんじゃないんだね♪」

 

 この時、護は改めて理解した。

 

 “信頼”というものの大切さ、一緒に過ごした時間……何より、他人に対して行った行為は、巡り廻って自分に返ってくる。

 幼馴染である華を幾度となく救って来た事で、護は華から大きな“信頼”を勝ち得ていた……その信頼は、彼が“宇宙人であった”という事実を知っても全く揺らがない程強固なものだったのである。

 

 華は能力を行使する故に身動きの取りにくい護へと近付き、優しく両手を広げて抱きつく……

 

「護くん、本当に……ありがとう……」

 

 耳元で囁やくように、華の口から溢れる感謝の言葉……しかし、低酸素状態で長時間意識を保っていられるほど、華の身体は丈夫ではなく、やがてゆっくりと意識を手放して眠ってしまう。

 

「……! ギャレオン! お願い、急いで!」

 

 突入前、事前に水瓶座から簡単なレクチャーを受けていたとはいえ、実際見るのとは理由が違う。自身が放つGパワーで生命維持は出来るものの、意識を失った事に驚いて、護はギャレオンを急かし、ギャレオンもまたそれに応えて虚空を駆けるのだった。

 

──────────

 

 それから数分後、護達を連れてアマテラスへと合流したギャレオン……護は凱達と無事だった事を喜び合う。

 

 しかし、それも束の間……反撃に出ようとする原種艦隊との激闘に備えるべく、凱はギャレオンとフュージョン。更にガオーマシン各機とファイナルフュージョンしガオガイガーとなる。

 

 原作では護もステルスガオーに搭乗して同行する事になるのだが、今回は戒道幾巳の安否も含め、本人からの要望もあって魚座のピスケガレオンの背に乗っている。

 なお、ピスケガレオンは先のパスダー戦の折の強化により、登場者の生命維持をあらゆる環境で行える様パワーアップしており、また、以心伝心な2体の連携も相まって、他の勇者達のサポートから護の身辺警護など、ボルフォッグの仕事を効率よくサポートできる新たな“仲間”となっていた。

 

『合体が必要な時には、彼は私が預かります。あなた達は自分の為すべき事をしなさい』

 

 グラヴィスの言に、ピスケガレオンの2人はやる気全開で護を背に宇宙を泳ぐ……

 

 撃龍神、ビッグボルフォッグも合体を済ませ、残るマイク部隊の発進準備も整い……GGGはアーマロイド達と合流すべく、原種艦隊へと進路を取るのだった。

 

──────────

 

 その一方……オービットベース内。

 

 黄金の繭に包まれたままのシオン。彼女の精神は、深い深い闇の中……何処とも知れぬ空間の中で、“何か”と対峙していた。

 

……何故……君……抵抗……

 

『アンタ等が“あの人達”を害するからよ、当然でしょ?』

 

 シオンの口調は何時になく攻撃的だ……それも当然、今の彼女は何かが“欠けてしまっている”。

 

『アンタ等のやっている事は、終末を加速させる不要な行為よ……この世界にはまだ早いわ!』

 

……不可解……我……世界……終末……確定……

 

『何が確定した終末よ! そんなのアンタ等が勝手に言ってる事じゃない? 不可解なのはアンタ等の方よ、今になってこの世界は不要だとか……神にでもなったつもり?』

 

……理解不能……我……終末……理由……皆無……

 

『ハッ、理由もなしに存在を抹消される側はたまったもんじゃなわ……知的生命体は理不尽に抗うものよ、その脳足りんな頭に刻んどきなさい!』

 

 気の知れた相手に対する口喧嘩にも聞こえるが、正しくは“謎の存在”と、稀星シオン(暫定)の喧嘩である。

 

 口汚く謎の存在を罵るシオンみたいな少女は、それまで現実に居たシオンとよく似てはいるが、髪の色は若干緑がかった金髪で瞳は青緑……この姿こそ、“Zオリジン”との融合前の姿をであり、当時闘病生活を余儀なくされていた“本来の稀星シオン”の姿だった。

 

 だが如何に罵ろうとも、相手はただ只管に“この世界は終わらせる”の一点張り……もはや“馬の耳に念仏”という有り様だった。

 

『……全く……そこまで強情ならもう良いわ。私は私の“やりたい様にやる”だけよ!』

 

 そう言ってシオンはこの暗闇の中で唯一の光源……姿見くらいの光へと手を伸ばし、何度も叩く。

 

『……いい加減眼を醒ましなさい! “ソレ”は()()()“叶わなかった夢”であって、“貴女の夢”じゃないのよ……!!』

 

 つぅ……と、頬に一筋の涙が流れる。

 

 シオンの視線の先……光源は鏡であり、そこに映っていたのは“髪の色が違う姿の()()と、亡くなった筈の己の母が談笑している光景”……

 

『……もう、振り切ったと……思ってたのに……何でよ……何で今更……うぅ……っ……』

 

 鏡を叩く力は抜けていき、最後には縋る様にしてその場にしゃがみ込む。

 

 その光景を、遠目で見ている2つの“小さな光”……暫くはその場に浮いているだけだったが、やがてゆっくりとシオンの元へ接近していくのだった。

 

 

 

⇐ To be Continued...




後半は俗に言う精神世界です。
誰のって、そりゃシオンちゃんのですね……

現在、稀星シオンは本人以外の存在3つから干渉を受けています。
1つは“暫定管理者(見習い)”で間違いないですが、あと2つは……というかそもそも最初にシオンが罵っていた“アレ”って何なんでしょうね?(すっとぼけ)

さ、次回は後半戦……かな?
このゴチャ混ぜ模様にちゃんと決着を着けれると良いのですが……果たして……。

お楽しみに♪


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第85話 打ち明けられた真実(後編)

※ 今回の内容に合わせて前回の一部を修正しました。
まぁ、《誰が》とか《何が》といった感じの微々たるものなので読み直すは必要はないかもしれませんが、一応参考までに。

では、前回からの続き……

不思議空間で“何者か”と言い争い、憤慨するシオン……
その後、死んだはずの母親と談笑する「鏡の中の自分」を見てしまった事で、振り切った筈の“未練”を感じてしまい涙する。

そんな光景を遠目から見ていた“2つの光”が、ゆっくりとシオンに近付いてくるのだった。



『それは()()()叶わなかった夢よ……貴女の“夢”じゃないのに……っ』

 

 思い出を汚された故の憤慨か、それとも囚われた“もう一人の自分”の心情を察してか……シオンは鏡の中の光景に涙する。

 

 先程まで映っていたのは、既にこの世に居ないこの世界のシオンの母と、自分と似て非なる者……“もう一人の自分”が、自分に成り代わって楽しそうに談笑している光景。

 

 鏡の外にいる己は、地球で生まれた“シオン(自分)”の姿……そうなると鏡の中のもう一人は、三重連太陽系生まれのシオン……つまり“ゼーヴとメティス(あの2人)の子供”である“リュシオ”と言えるだろう。

 

 鏡に縋り付き、泣き崩れてしまうシオン……本当なら鏡の中の光景は、過去の自分が見るはずだったかもしれない光景。

 しかし今、母の前で笑顔を見せる“もう一人の自分(リュシオ)”……その本来の出自と正体を知るが故に、シオンは怒りよりも悲しみの方が勝っていた。

 

(……彼女も、早くに親と死に別れたのよね……)

 

 もう一人の自分……

 それは本来の“Zマスター”になるはずだった……それが何者かの歴史改変の影響でプロトタイプとされる“Zオリジン”へと代わり、人格を消されず、三重連太陽系の終焉とゾンダーの危機に際して故郷を追われ、地球へと落ち延びた“未知なる希望”……

 己との合体で一度は人格まで完全融合を果たし、「地球を救う」という目的の為、陰日向に動いていた。

 

 しかし、どういう訳か……融合していたはずの人格が“何か”によって再び依り分けられ、()()()()()()で分離させられていたのである。

 本来ならば地球生まれのシオンは「優柔不断で推しに弱い」性格だった……しかし、今の彼女は「即断即決、一度決めたら絶対に曲げない」……と、当に正反対。

 

 今の彼女は、“何者かの影響”によって融合前時点の精神とは全く異なる様に選別され、今のシオンの精神は理不尽さに憤る“反抗的な側面”が主体となっている……では反対に“従順的な側面”は何処にあるのか……?

 

 それこそ、“鏡の中”の自分……リュシオであろう。

 

(今、分かった……今の私は、この世界に転生した“シオン”。そして鏡の中のもう一人は……三重連太陽系生まれのリュシオ*1……)

 

 地球育ち故か、それとも幼い頃に施された親の教育故か……転生者としての己の精神を軸に“反抗的な側面”が寄り集められ、対する彼女には、この世界で産まれた彼女の精神を軸に“従順な側面”が寄り集められている。

 

 奇しくも転生者としての己の精神は、いずれの世界でも変わらなかった両親……特に母親に近しいものだった。

 

「……でも、何だろ……あの子……心から笑えてない……?」

 

 鏡の中、己の母と談笑している彼女を今一度見るが、その中に間違いなく残る違和感。それに気付き、シオンは独りでに呟く……しかしその言葉は、ゆっくりと近付いていた“2つの光”にハッキリと届き、その明るさを見違える程に変化させた。

 

「……っ?!」

 

 背後で凄まじく光る光源が2つ……その光は瞬く間に漆黒で覆われたこの空間を覆い尽くし、揺らめく影……先程までシオンが罵倒していた“闇の塊”を消し飛ばし、その影響や痕跡を完全に塗り潰す。

 

《……さすがは紫の星の巫……いえ、今の状態では不適切ですね。今の貴方は、“転生者”といえば良いでしょうか?》

 

 先に接近してきた光源はやがて人型を取り、西洋風の魔導師服を着た男の姿をになる。

 僅かに遅れてもう一つ光源は、先の男より背の小さい……しかし似た服装で白銀の長髪の女性の姿に変わり、男へと耳打ちをする。

 

《先輩……この方は……》

 

《分かっています……司法府からの“通達”もありましたし、本試験は中断。以後は問題解決に向けての方策を練ります》

 

 その答えに安堵のため息を吐いてから、女性は微笑んでシオンへと向き直り、ある行動に出た。

 

《この度は、私共より度重なるご迷惑をお掛けしてしまい、誠に申し訳ありませんでした……ッ!!》

 

 それは、彼女の誠心誠意を込めた謝罪……

 頭を大地(?)にぶち当てながらの低身平伏……所謂、ジャパニーズDOGEZAだった。

 

「………………………………はぁ……」

 

 この余りにも唐突な行動に、シオンはたっぷり3分ほど思考停止。その後ようやく復帰した己の頭が弾き出した応答は……毒気を抜かれた人物がよく行う「溜め息」だった。

 

「もう、良いですよ……そもそもの話、私の方が勝手に飛び込んでしまった様なものですし」

 

 シオンは続けてこう話す……どうやら転生時の記憶がほんの僅かだが残っていた様である。いや、正確には“僅かに記憶が復帰した”だろうか……

 

 実際問題、見習い管理者が受ける“試験”に用いられるは世界は、外部からの因果律の影響を受けないよう次元的に隔離・調節された空間内で行われる為、よほどの事がない限り外部からの干渉は受け付けない環境となっている。

 

 それなのに外部からの干渉……それも、通常では有り得ない“転生者の魂が入り込む”事など前代未聞であった。

 

《いえ、通常なら転生者の魂はこの“隔離空間”には来れない筈なのです……本来、“転生”を管理するのは現行の管理者であり、この試験はその力を行使する権利を得る為の“試験”なのですから》

 

 見習い管理者が受けるこの“試験”……それに受かる事で“転生者の魂”を選定し、管理世界の行く末を左右する“管理者”と認められ、“神的存在”へと至るのだという。

 

《人類という種が生まれ、人理を刻み始めてはや数百万年……近代において、世界は当に“ビッグバン”の如く無数に生まれ続けています。その原動力は、ヒトの探求力と、それによって得られた膨大な知識……後は“想像力”ですね》

 

 光の男は語り出す……それは今や“世界創造”の原動力は“自然界の法則”ではなく、“人類の探求力と想像力”なのだと。

 

《我々からすれば、ヒトが頭の中で“1つの物語を想像し、世に書き残した”時点で、“その世界は誕生している”のです……ヒトの数……いえ、ヒトの想像力さえ絶えなければ、世界は新たに生まれる“可能性”を秘めているのです》

 

 いきなり明かされる“世界想像の理”……いち人類でしかないシオンからすれば“は?”と首を傾げるしかない。しかし男はこの次に、“重大な事実”を口にした。

 

《そこに“彼奴”……いえ、“深遠なる闇*2”は目を付けたのでしょう。アレはヒトの持つ“想像力”を逆利用し、“特定の存在”に対して“終末へ向かう思想”を植え付け、ありとあらゆる世界を終焉に導いているのです》

 

 その言葉に何故か、“想像力”が湧いた……そして“想像した”事で唐突に“理解”してしまった。

 

「……なによそれ……じゃあこの世界を終焉に導いてるのは……私達自身……?」

 

《……ある意味ではそうです。しかし、我々からすればそうではない……そう仕向けたのは“深遠なる闇”なのですから》

 

「そもそもその“深遠なる闇”って何なのよ……」

 

《“深遠なる闇”とは、“絶望”や“悪意”といった“マイナス思念”……そのあらゆる“負の概念”そのものが寄り集まり、極大なエネルギー生命体と化した、謂わば“負の極致”そのもの。奴は“概念的存在”が故に事実上、消去不可能です。“概念”とは、知的生命体が存在し続ける限り消えないものですから》

 

「……あなた達でも、不可能だと?」

 

《仰る通り……私達もまた“概念的存在”であり、“奴”も我々と同位の存在です。その為、我々には直接手出しすら出来ません……非常に腹立たしい事に》

 

「……待って、“我々には”?」

 

 その言葉の中身に違和感を感じ、シオンは浮かんだ疑問を口にする。

 

《お気づきになりましたか……“奴”からは我々に対し一方的に影響を与える事が出来るのです。それも驚異的な強さで……》

 

 “神的存在”であっても、奴の力には敵わない……

 

 知的生命体が存在し続ける限り、“意識を終焉に向けさせる”概念的存在……それが“何か”に影響を及ぼし、この世界を含めてあらゆる世界を終焉に導く……それが“深遠なる闇”、それは“神的存在”にも一方的に勝る“負の概念”の化身。

 

《奴の発する“氣”に触れるだけで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……その為、我々は直接の手出しや接触を“導神連盟*3”において“禁忌”(タブー)としました》

 

 触れるだけでアウト……しかも触れたら最後、全てを巻き込んで盛大に自爆し全てを滅ぼす為に動く。

 

「……何よ、そんなの……神様でも手出し禁止とかどういうクソゲーよ」

 

《……クソゲー……ですか。“言い得て妙”ですねぇw》

 

 シオンの言葉に、光の女がクスッと笑った。絶望の極致の話だというのに、何でそんなに明るいのか……その疑問は、彼女の次の言葉で晴れた。

 

《だって、ゲームなら攻略法が必ずある……“アイツ”にも……あったんですよ……“攻略法”が!》

 

 攻略法……神でも敵わない相手にそんなものが存在するのか? いや、実際にあるのならば、それは何なのか……不謹慎だがシオンは疑問よりも好奇心の方が勝り、次の言葉を待つ。

 

《知りたいですか?》

 

 ……だが、相方の男はその流れを強制的に止めた。

 

《……止めなさい!》

 

 徐ろに右手を振り上げ、お笑いコンビもかくやといえるほどの見事な脳天チョップ……体格差的に最高威力となったタイミングで女の頭に直撃した一撃は、話の腰を折るのに充分すぎる一撃だった。

 

《ぷぎゅっ?! ……な、殴りましたね?! お父様にもぶたれた無かったのに!!》

 

《ソレが何の“ノリ”かは知りませんが、場を弁えなさい……それとも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 突然の脳天チョップから始まったコント……何処かで聞た事ある返しで反抗的な態度を見せて男に食って掛かる女に対し、男は毅然とした態度を途中で一変させ……当に悪魔の微笑みで女を睨み付けた。

 

《ッ!? な、ナンデモナイデース……》

 

「ブフッ……その顔で……ナンデモナイデースは……反則……

 

 笑顔なのに完全に笑ってない男の視線に気付いた女は途端に固まり、冷や汗ダラダラで目線を逸らす……女に何故か馬耳と赤いマスクを幻視してしまい吹き出すシオン。

 だがお陰で先程までの怒りと哀しみも吹き飛んでしまい……既に笑いを堪えるのに必死だった。

 

……もぅ、止めて……お腹痛……ッ……

 

 すっかり男女のコント模様と化してしまった2人の態度に、結局シオンは笑い過ぎて腹筋が痛むレベルにまで緊張を解されてしまった。

 

《……ようやく本題に入れますね》

 

 先程までの深い悲しみすら忘れ笑いを堪えるシオンの様子に満足したのか、男は安堵するように言葉を吐いた。

 

「はぁ……はぁ……え……っ?」

 

《私は次元司法府・統括主導庁のアレス……彼女の上司で、多次元宇宙を個別管理する次元管理者の監査役でもあります》

 

《……で、この姿では“はじめまして”ですね。見習い管理官のヒビキです。最初に会ったのは、パスダー戦の直前辺りでしたっけ》

 

 神的存在である男女のコントも唐突に終わりを告げ……

 

 居直った2人から語られたのは、この世界の存亡を掛けた、未来の戦いについて……

 

 そして現実世界では……アーマロイド達と合流したGGG艦隊と、最強7原種の原種艦隊との激戦が続いていた。

 


*1
状態を整理すると……

2つに分かれた人格のうち、檻の外で半ギレてたのは“転生者”の精神を軸に統合されたシオン、鏡の檻に囚われているのは“紫の星”生まれのリュシオの精神を軸に統合されたシオン。

なお、この世界の地球生まれシオンの“記憶”は転生者側にあるが、人格は“紫の星のシオン”の人格に統合されており、現状、鏡の中のシオンは“ある敵対存在”に対して非常に都合の良いように選り分けられてしまっている。

*2
本作の根幹に関わる存在。便宜上の呼び名として他にしっくり来るものが無かった為、こう呼んでいる……勿論、同名の“悪意によって変貌した全知存在の成れの果て”とは似て非なるもの。

*3
正しく世界を導く管理者等で結成された連盟。簡単に言えば神的存在同士の“クランやギルド”みたいなもの。合議制で(地球時間換算)10年に1回、近似した世界毎に会議(なお、会議の様子はエヴァでお馴染みの“SEELE”みたいな雰囲気)が行われている。




この時明かされた“多次元世界の成り立ち”と“深遠なる闇”……
世界に降り掛かる『厄災』がトリプルゼロ以外に出てくるとかこの世界カオス過ぎやろ(おまいう)
なお“深遠なる闇”の目的は勿論、世界の終焉……やだ~トリプルゼロとほぼ完全に利害一致してるやん、どないしよ?

シオンの身体に、何時の間にか自身の肉体に巣食っていた“深遠なる闇”の残滓。
浸食される様な心当たりは……何処だっけ?(すっとぼけ)
しかし“神的存在”ですら侵食し、破滅に導く“深遠なる闇”かぁ……果たしてこの世界は今後どうなってしまうのか?

そしてシオンちゃんって本来どういう存在?というのも少し分かってきたかも……
まぁ、最初からわりと精神構造とか変だったし思考が常人のソレとは掛け離れてる部分もあったしね。

さて、次回はいちおう舞台を現実世界に戻して本題の艦隊戦やろういい加減w
次回もお楽しみに♪

──────────

次回予告


君達に、最新情報を公開しよう!

原種艦隊とGGG・アーマロイド連合艦隊、
そしてジェイアーク……
三つ巴の思惑が折り重なる戦場で凱は
J、蠍座らと共に原種艦隊へと挑む。

だがその時、突如ESウィンドウが開き
再び大量に現れる未知なる敵……
そして反転色のクーゲルらしき存在も強襲。

この更なる混乱を助長するかの様に、
原種達は“切り札”を切るのだった……


次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第86話『饗宴、再び……』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!


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第86話 饗宴、再び……(前編)

今話のタイトル少し変えました()

さて前回、シオンちゃんは統合されていた筈の人格が誰かに都合の良い形に分離させられていた事が分かり、今以ての復帰は絶望的っぽい……

一方の現実世界では──
原種艦隊 vs 我らが勇者ロボ軍団を擁するGGG艦隊+アーマロイド隊&ジェイアークの連合艦隊……
という大激戦が続いているのだった。



『唸れ疾風、轟け雷光……双頭龍ッ!!』

 

『FFミラー、放出開始!』

 

 撃龍神の双頭龍の援護を受け、百式司令部多次元艦スサノオをコントロールするボルフォッグは、スサノオの攻撃機能を展開……艦体中央上部に装備・格納されたミラーユニットを展開させ、唯一無二の攻撃武装“リフレクタービーム”を使用する。

 

『リフレクタービーム、発射!!』

 

 放たれた高出力ビームは先に放出されたFFミラーにて一度反射される事で、改めて設定された相手へ向けて照射される為、艦の向きや角度に関係なく攻撃が可能。その上FFミラーは遠隔操作可能な多数の小型ミラーユニットで構成されており、その一つ一つが自由に角度を微調整可能かつ分離合体機構を持つので、ミラー自体を攻撃されても回避行動としてバラバラに分離……攻撃をやり過ごした後再び集合させ反撃へと転じれるので、敵がミラーを破壊するのは非常に困難だ。

 設備そのものや運用に対するコスト面、また、宇宙空間でしか使えない等々の欠点はあるものの、原種にとっても無視出来ない状況に持ち込める稀有な武装であった。

 

「キーッ! 何なのよあの攻撃!? 止められないじゃないのぉん!!」

 

 爪原種は果敢にもスサノオの攻撃を止めようとミラーを狙い撃つが、ミラーユニットは爪原種の攻撃を、バラバラに分離する事で躱し、再度合体してスサノオが放つ高出力ビームを反射する。

 況してやそのスサノオ本体を撃とうにも、シオンから受けた技術供与により、原作よりも強化されたディビジョン艦となったスサノオの機動力は凄まじく、耳原種のピアスミサイルや爪原種の斬撃波動程度では掠りもせず、追尾を楽々と振り切り反撃し続けている。

 

『防御が疎かだぜ? ホゥアタァッ!!』

 

 スサノオに気を取られた隙に爪原種の懐へと潜り込む撃龍神。

 両腕に溜め込んだGパワーを、拳打の瞬間に合わせ発勁の要領で内部に浸透させ、深部で一気に爆発させる。

 

「あがァァァ?! アタシの身体に……よくもやってくれたわねッ?!」

 

『おっと、隙は晒さないぞ!』

 

 内部破壊まで引き起こされた爪原種は逆上して組み付こうとするも、撃龍神は装備している“SPパック”を巧みに利用し距離を取る……無論コチラもシオンからの技術供与により原作よりもパワーアップしている為、装備の習熟能力が早い撃龍神は既に無重力での戦闘機動にも慣れ、天才格闘家も舌を巻く程鮮やかに敵の攻撃を掻い潜り、的確に反撃を重ねダメージを稼いでいく。

 

『我々も負けてはいられませんね……!』

 

 全身に内蔵された火器を使い、耳原種のミサイルや瞳原種の予測を上回る面制圧能力で以て敵の攻撃を食い止めるグラヴィス。

 

『俺達は俺達の最善を尽くすまで、我らが主の理想……人々の未来と希望を掴む為に! でぇやぁぁぁッ!!』

 

 ダイキャンサーも手にした大太刀を握り直すと、裂帛の気合いを込めて振り抜き、腕原種の指向性超重力波を叩き斬る事で霧散させる。

 

『そうだ、俺達は絶対に諦めない……!』

 

『私達とシオンちゃんが、GGG(彼ら)と共にある限り……アナタ達の好きにはさせないわよ!!』

 

 アイゼンナシュティアも、自慢の突撃能力を遺憾なく発揮。肋骨原種の原子分解を掻い潜って懐に潜り込み、至近距離から両肩のクレイモアを一斉に放って大きく怯ませる。

 そのほぼ同じタイミングでシュトゥルムボルグも、瞳原種の予測を上回る超高速分身で撹乱し、更に的確な砲撃を加えて足止めを続けていた。

 

──────────

 

『ブロウクンファントムッ!!』

 

「チッ、小賢しい真似を……」

 

『ダブル・プラズマソードッ!!』

 

「……ええぃ、鬱陶しい!!」

 

 ジェイアークの変形パターンの一つ……ジェイダーをプラグアウトせず、上半身のみ人型にさせた“ジェイライダーモード”にて、戦艦形態の高速移動と人型形態の汎用性を両立させたJ。

 

 一時的な共闘状態とはいえ、ガオガイガーとの性能差を考慮しているのか、まるでタイミングを合わせてくるかの様にガオガイガーの隙をカバーしてくれていた。

 

『この戦況で、最早余裕などあるまい!?』

 

「ほざくなよ、Jジュエルの戦士! 此方からすればGストーンも纏めて始末できる千載一遇の好機! そして今のキサマ達に、勝ち目など無いと言うのが分からんようだな?」

 

『この期に及んで世迷言を……!』

 

 凱は腕原種の言葉を世迷言と切り捨てた。

 

 ……だが、腕原種の言はある意味、間違っていない……今この場には、人類最大の戦力の大半が集まっている。

 

 “もし、ジェイアークですら歯が立たない敵が現れたら……?”

 

「世迷言か……悲しいな、Gストーンのサイボーグ」

 

『何がだッ?!』

 

「勝ち戦だと、その場の勢いに目を奪われ、大局を見通せない事がキサマの敗北理由……」

 

 腕原種は凱達の攻撃を鬱陶しくは思っていたものの、“脅威”だとは全く思っていなかった。その余裕は口調からも明らかだが、理由には行き当たらない……

『《正体不明のエネルギー反応多数、急速接近!》』

 

 トモロの警告が、GGGの船やアーマロイド達にも向けて発された。その直後、腕原種は勝ち誇ったかのような笑い声を上げる。

 

「フハハハ!! キサマ達は自ら()()()()()を拾い、後生大事に守っていた! そして()()()()()()()()()()いる! キサマ達自身の()()()()()()()……それを存分に味わうが良いッ!!」

 

「《多数のエネルギー反応! そんな……数が多過ぎます!?》」

 

「《な……何なのだ、コイツ等は……?!》」

 

 通信から猿頭寺の報告に続き、大河の驚愕に満ちた声が響く……トモロがキャッチしたエネルギー反応の数はざっと見ただけでも数千に登り、光速の約15%*1という非常識な速度で迫っていた。

 

『《……分析の結果、既存のどのパターンにも該当しない生命反応が検出された……。正体不明ではあるが、アレは紛れもなく生物だ》』

 

 トモロは極めて冷静に分析結果を伝えようとしていたが、内心では明らかに動揺していた……ただでさえ地球文明よりも遥かに高度な三重連太陽系の技術を持つトモロですら未知の存在という事実に、原種以外の誰しもが動揺を隠せていない。

 

『……?! この反応、やはり()()()は人為的に呼び込まれているのか……? クッ、主の居ない時に……!』

 

『コイツ等……あの時、隕石破壊を阻止しにきた奴……?!』

 

 グラヴィスの言葉を聞き、クーゲルは先の隕石破壊作戦の裏で彼を襲った相手だと気付く……前以て共有されていたデータにも、同一の反応が記録されていたのだから。

 

 敵の第一陣が戦域に突入してくる……と同時に謎の敵は、乗組員が一番多く、かつ機動力が低いアマテラスへとまっしぐらに突撃して来た。

 

『クッ……当たらねぇ?!』

 

 撃龍神はアマテラスを狙う敵に向けて風導弾(フォンダオタン)を放つが、圧倒的な速度で振り切られ、全く掠りもしない……それ処か、攻撃を仕掛けた撃龍神に敵の一部が反応し、お返しとばかりに特攻して来る。

 

 撃龍神の攻撃を軽く振り切り、反撃に特攻してくる謎の敵……

 撃龍神は喰らえばタダで済まない事を直感で見抜き、回避を選択したが、あと数秒遅ければ直撃を貰っていた……というギリギリで回避に成功する。

 

『俺の反応でもヤバかった……!』

 

 スサノオもリフレクタービームで謎の敵を掃討しに掛かるが、やはり速度で振り切られ、反撃の特攻……スサノオも最大戦速で振り切ろうと加速するが、数秒も経たずに囲まれる。

 

『最大戦速でも振り切れない……?!』

 

 相手は単体で光速の域を叩き出す超常存在。如何な人類最速艦スサノオと言えども、相手が悪過ぎる。しかし、シュトゥルムボルグとアイゼンナシュティアの援護で辛くも囲みの脱出に成功し、ボルフォッグは戦闘データを分析し始める。

 

『奴等は、亜光速で戦闘行動を……我々では、打つ手すら……』

 

『……奴らは人類……いや、生命反応に群がっているのか?』

 

『んもぅ、手間が掛かるわね……!』

 

『奴等のこの気配……敵愾心か? 同種以外の生命体は、全て敵と見做している様に見えるな……』

 

 圧倒的多数……攻撃を当てさえすれば撃破できる程の相手ではあるが、その数と速度が尋常ではない。およそ生物とは思えない外観と、その大きさからは想像できない速度で迫る未知の敵……

 

 敵の大半を占めるのは、薄い紫色の円錐形で突撃を仕掛けてくるタイプ。中には表皮の一部を割り開き、内部から昆虫にも似た小型の多脚タイプを放出して来る奴もいる為、既に何十体も撃破しているにも関わらず、時を追う毎に敵の数は加速の一途を辿っている。

 

『……コイツ等、地球の創作物に出てくる“怪獣”っていう奴みたい……!』

 

 クーゲルの呟きに、GGGの面々がある意味納得する……凡そ既存の生物の常識を根本から覆す特徴。同種以外の反応……特に生命体に対する強い敵愾心。そして、通常の生物の尽くを拒絶するこの宇宙空間で、紛れもなく生存し活動しているという事実。

 

 そのどれもが、創作物の“怪獣”というキーワードに正しく該当するものだった。

 

「《非常事態につき、暫定ながら“謎の敵”を以後“()()()()”と呼称する! ……しかし、遺憾ながら我々の現有戦力では奴等を相手取る事は不可能に近い……アーマロイド隊、奴らを任せても良いかね?》」

 

『確かに我々でなければ、マトモに相手するのは危険すぎます……!』

 

『我々はGGGの活路を切り拓く事こそ本懐……その邪魔立てをするのならば、容赦などせん!!』

 

『奴等は俺達が相手する、奴等に構わず原種等を叩け!!』

 

『送り狼は、一匹たりとも通さないわよ!!』

 

 アーマロイド達の返答に大河は拳を握り締め、感謝の意を声に乗せて両部隊に司令を下す。

 

《「よろしく頼む……! GGG艦隊はこれより、原種艦隊に対し攻勢を掛ける!」》

 

 

⇐ To be continued...

*1
光速(光の速度)は秒速約30万km(299,792km/s)。

その約15%なので秒速約4万5千km(44,968km/s)……要はもう目に止まらないほどクッソ速い。




えー、謎の敵……
もう既にお分かりの人もいらっしゃるでしょうね
……紛れもなく“アレ”に出てくる“奴等”です。
少し変更点はありますが、脚色とか辻褄合わせ程度なので特徴的には原典ほぼそのまんまと思って良いです。
あと、奴等の特徴からすれば今回はまだ先遣隊というか小手調べ程度です。

……まぁ、残当ですわな。
既に色々仕込んでますしね〜
さ、カオスな艦隊戦はまだまだ続きます。


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第87話 饗宴、再び……(後編)

またしてもお待たせしました。
前回からの続き……

突如現れ、場を混乱させる謎の敵。
GGGは奴等を暫定的に“宇宙怪獣”と認定し、対処をアーマロイド達に任せる。
本来の作戦は“原種の打倒”……
こんな事で挫ける訳には行かない……そうだろう?!

負けるな、我らがGGG!



「これよりGGG艦隊は、原種艦隊に対し攻勢を掛ける!!」

 

 大河の宣言に、息を呑むクルー達……大河は続けてこう指示を出した。

 

「百式司令部多次元艦スサノオは、ボルフォッグの指揮の下、撃龍神と共に原種艦隊の左翼2艦を強襲。マイク部隊は全域双胴補修艦アマテラスで移動し、ソリタリーウェーブ・ライザーにて右翼の2艦を攻撃。ガオガイガーとゴルディーマーグは、高速転漕射出母艦イザナギと共に中央に展開、半包囲して……」

 

『ならば、僕たちも共に往きます!』

 

『オレ達が居れば、戦力アップ間違いなしだってばよ!!』

 

 大河の指示を聞き、それならばと声を上げた【魚座】ピスケガレオンと【天秤座】ジョルノ……アーマロイドとはいえ、最低でも亜光速を叩き出す宇宙怪獣の相手はさすがに不可能なので、いざという時の為にアマテラスで待機していたが、GGGだけで原種艦隊に挑むとなれば状況が変わる。

 

「……! ありがたい、よろしく頼む!!」

 

 現状、戦力は多いに越した事はない……提案を受け入れ、ボルフォッグとの連携も鑑み、大河はピスケガレオンを左翼攻撃側へと編入。【天秤座】は右翼攻撃側に組み込み、中央はジェイアークと連携してガオガイガーとゴルディーマーグ、イザナギを布陣させて挑む事になった。

 

──────────

 

『五獣纏身ッ! ビッグバン・ボルフォッグッ!!』

 

 ガンドーベルとガングルー……そしてピスケガレオン2体と合体する事で、撃龍神とほぼ同じサイズへとサイズアップしたビッグバンボルフォッグ。

 この姿になる事で、限定的とはいえ空間事象へ介入する事が可能となり、自身限定ではあるものの既存の物理法則を超えた機動を行う事が可能になる……その為、あらゆる意味で場所を問わない戦術展開が可能だ。

 

『この姿ならば、私も貴方と同等の戦力になり得ます』

 

《サポートは任せて下さい!》

《オレ達が居れば鬼に金棒、百人力だってばよ!》

 

『ああ、期待してるぜ?』

 

 その頼もしい声に、撃龍神は“グッドサイン”をしながら返答……スサノオの甲板から飛び上がり、虚空を駆け始める。

 

 狙うは原種艦隊の右翼、そこにいる耳原種と爪原種……

 反対側の左翼には、肋骨原種と肝臓原種。

 中央には瞳原種と腸原種、そして腕原種が居る。

 

「この様な事態になっても、まだ無駄な抵抗を続けるか……」

 

『無駄じゃない!! 俺は……信じている。シオンを……彼女が今までやってきた事、これからやる事は未来へ繋がると!!』

 

 凱は己の信念に従い、腕原種の言葉を真っ向から否定する。

 

 それはこの場にいるGGG隊員の誰もが思った事であり、また、GGGでなくとも地球の命運を憂う戒道幾巳や、戦士としてこの場に立つソルダートJ、トモロも少なからずシオンの事を敵として見なくなっている。

 

「……フン、ならば証明してもらおう。我々に勝てれば、の話だがな?」

 

 腕原種の言葉を皮切りに、各原種達は一斉に攻撃を開始……

 

『戦士として、キサマ等は完全に葬る!! メガ・フュージョンッ! キングッ、ジェイッ、ダァァァッ!!』

 

 Jはキングジェイダーへとメガ・フュージョンし、ガオガイガーの左側から迫る腕原種の巨腕を真っ向から受け止め、逆に関節技を極めながら両腕の砲門を動かす。

 

『反中間子砲、(ゼロ)距離斉射ッ!!』

 

「クッ、忌々しいがその実力は認めてやる……しかし、良いのかね? 腸の中にはまだキサマ達の大事なモノ(人物)が居るのでは無かったか?」

 

『キサマを屠ってからでも遅くはない! アルマも戦士、キサマ等などに遅れなど取らん!!』

 

「大した信頼だな……?」

 

『俺を忘れて貰っちゃ困るぜ!? ブロウクンファントムッ!!』

 

 凱の攻撃を読んでいたかのようにキングジェイダーは腕原種から距離を置き、間髪入れず直撃するガオガイガーのブロウクンファントム。さしもの腕原種もダメージは大きく、苦悶の声を上げながら後退するが、その隙をカバーするかの様に腸原種が割って入り、ガオガイガーは追撃を断念せざるを得なかった。

 

(……戒道……!)

 

 未だに腸原種の体内で、最後に見た綱引き状態を継続している思う護……だがその直後、腸原種が凄まじい悲鳴を上げた事で状況が一変した。

 

「……ぅ……グッ……あがァァァァァァ?!」

 

「どうした腸?! 一体何が……!?」

 

 やがて腸原種の艦体に大きな亀裂が入り、内側から割り開かれる……その中から、赤と青の光球……そして巨大な真紅の骨の怪物が這い出て来たのだ。

 

「……J! 僕は無事だ! 今のうちにコイツを!」

 

 赤い光球──戒道幾巳が声を上げる。その声に反応し、キングジェイダーはエネルギーを“武装”に集中。

 

「させんぞ?!」

 

『行かせるかッ!!』

 

 腕原種は事態の急変に対応すべく腸原種に近づこうとするが、それをガオガイガーが阻む。

 

「高エネルギー反応! 正面……いえ多数!?」

 

 瞳原種も事態に気付き、未来予測で周辺に広がるエネルギー反応を確認し声を上げる……が、それは既に遅きに失していた。

 

 実はこの少し前、Jは“ある相手”から策を提案されていた……

 最初は不審がったが、状況的に“乗った方が特だ”と判断し、気を伺っていた。そして、今がその時だと判断し、迷いを捨て実行する。

 

『ジェイ・クォースッ!!』

 

 右腕に装備された巨大な武装が轟炎を纏い飛び出す……その直後、キングジェイダーは両腕を開き、次なる手を打つ。

 

『全メーザー、ミサイル! 目標、“周辺の空間跳躍ゲート”ッ!!』

 

 Jの言葉に周辺を見回す全員の目に映ったのは、この宙域にいつの間にか展開されていた“小さな空間跳躍ゲート”……

 

()ぇぇぇっ!!』

 

 Jの号令とともにトモロは躊躇いなく、キングジェイダーの全身にあるメーザー群やミサイルをばら撒き、ゲートへと撃ち込む。

 

 そのゲートを潜った攻撃が行き着いたのは……

 

「ぬぐぅおっ?!」

 

「がぁあぁぁぁ?!」

 

「まさか……っ?!」

 

「ぐぁぁぁあっ?!」

 

 ゲートを潜った攻撃は空間跳躍した事で瞳原種の未来予測を掻い潜り、満遍なく原種艦隊全員に行き届き、足止めに成功する……そして、先に放った“ジェイクォース”が貫いたのは……

 

「ば、馬鹿な……っ?!」

 

(キモ)が……!?」

 

 肋骨原種の驚愕が示す通り、肝臓原種を直撃。必殺の名に違わず、原種核を抜き取られた肝臓原種の艦体は大爆発を起こして消滅し、抜き取られた肝臓原種の核はキングジェイダーの右手に収まっていた。

 

「……そんな手を隠していたとはな……!」

 

『隠していた訳ではない……キサマがアイツ等の手の内を読めなかっただけだ』

 

『今のゲートは……?!』

 

 凱はJに何が起きたのかを問うと、Jも少し意外だった様な雰囲気で問い掛けに答えた。

 

『……あの女の眷属の作戦だ。“場が整い次第、仕掛ける”と言っていたが……まさかこんな手を仕込んでいたとはな』

 

『あの女の……ということは、アーマロイド達か……!』

 

 自分たちでは歯が立たない宇宙怪獣を相手にしながら、此方のフォローまで熟すアーマロイド達の行動力に、凱は感謝すると共に勇気付けられた。

 

『……少しばかり予想外だったが……これで奴らは即効再生能力を失った! 仕掛けるなら今をおいて他にないッ!!』

 

「……フッ……フハハハッ! 肝を倒したのは見事だが、それで我々に勝てるとは甘く見られたものだな?」

 

 これで機は熟したと考え、Jはこのまま一気に原種を叩くと発破をかける……が、その言葉を聞いて笑い出す腕原種。

 

 突然の笑いに『何がおかしい?!』と凱が割り込む……

 

「せいぜい足掻くのだな……ゆくぞ、“原種融合”ッ!!」

 

「「「「「原種融合ッ!!」」」」」

 

 腕原種の合図を皮切りに、原種達は一斉に声を揃え……瞬く間に一つになり、月面へと飛んでいく。

 

「《……信じられません! 検出されたエネルギー内包量は……EI-01の数十倍はあります!?》」

 

「Oh……jesus……!」

 

EI-01(パスダー)以上の敵……!?」

 

 月面に辿り着いた6体の原種達はその身体を1つに融合させ、原種全員の特徴を兼ね備えた「合体原種」へと変貌したのである。

 

「……まずは小手調べ、と行こうか……?」

 

 

To be continued...




ついに出ました合体原種。

Jに策を提案したのは誰か……
カンの良い方はもうお分かりですよね?

さて次回は半分原作再現の状況。
月面に現れた合体原種……その攻略戦。

なお、現在との違いは

・マイク部隊が全員健在
・アーマロイド【魚座】【天秤座】の存在

……この2点。
しかし、原種側や他には何もないのか……?
それは次回に分かります。



次回予告


君達に、最新情報を公開しよう!

6体が合体した原種のパワーは凄まじく
しかもESウィンドウでアーマロイド達が相手をしていた
宇宙怪獣の一部を地球へと差し向けた!

敵のESウィンドウの即応性に裏を掻かれ
アーマロイド達は急いで迎撃に向かうも
その前に立ちはだかる“白いクーゲルもどき”……

その時、虚空を割って現れたのは……?


次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第88話『手繰り寄せた奇跡』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!


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第88話 手繰り寄せた奇跡(前編)

機界最強7原種との戦いは第2幕へと突入!
GGGとキングジェイダーは、即効再生能力を司る“肝臓原種”の撃破に成功……
しかし、残る6体の原種全員が融合し
強大な“合体原種”へと変貌してしまった!!

原作でも苦戦を強いられた相手に、
この世界のGGGはどう立ち向かうのか……?!



「フフフ……さぁ、まずは小手調べと行こうか……?」

 

 主人格であろう腕原種の声に、僅かな変化が見られる独特な声色で、合体原種はそう呟く……

 その巨大な腕に、凄まじいエネルギー系統収束させながら。

 

 

「合体原種の腕に高エネルギー反応!?」

 

 猿頭寺は飛び込んできたセンサー類からの情報に驚愕しながらも、合体原種の動向を報告する。

 

「ッ?! プロテクトシェード展開!!」

 

「了解ぃっ!!」

 

 大河は直感で自分達が狙われている事に気付き、オービットベースの防御機構である超大型プロテクトシェードを起動するように指示を飛ばす。

 シオンの介入により原作よりも大幅に改修されたオービットベースには、他にも様々な機能があるが、信頼性と即応能力に優れた防御機構は、さすがガオガイガー譲りである。

 

 ……だが、合体原種のパワーは異常過ぎた。

 

「「「うわぁぁぁ……ッ?!」」」

 

 オービットベースのプロテクトシェードが最大出力で展開されるも、合体原種の放つ指向性超重力波を受け止めたまでは良いが、凄まじい威力故に反射どころか、破られない様に耐えるのが精一杯……

 

「?! 反射不可能!!」

 

「敵のエネルギー出力が桁違い過ぎる……耐えるので精一杯じゃ!」

 

 麗雄の言葉に、大河の頬を嫌な汗が伝う……この攻撃がもし、直接地球へと向けられでもしたら。

 

(何という事だ……合体した原種に、これ程の力があるとは?!)

 

──────────

 

 開幕の一撃となった合体原種の攻撃は、オービットベースを直撃……

 

 オービットベースはプロテクトシェードで辛うじて防ぎきったものの、攻撃の余波が地球を掠めており……北半球の大気層を大幅に削った他、最も近かったロシア本土の地殻の一部を盛大に揺るがし、地形を変えてしまう程のものだった。

 

「……いかんな、少し力み過ぎたようだ。せっかく苗床にする地球の生き物を、この程度で殺してしまうのはさすがに惜しい……」

 

 合体原種の物言いに、驚愕するしかない凱。Jも合体原種の繰り出した攻撃力に一瞬だけとはいえ怯んでしまった……

 

「……だが、力加減に慣れない今の内ならば……!」

 

 機体をジェイアークへ変形させ、月の衛星軌道へと急ぐJ。GGGも勇者達を船に収容し、補給させながら月軌道へと向かう事に……

 

(……奴に……勝てるのか……?)

 

 一抹の不安が凱の思考に過ぎる……しかし、状況は待ってはくれなかった。

 

《地球方面に異常重力反応!! これは……ESウィンドウです!?》

 

《何っ?!》

 

 スサノオの艦橋に繋がれた通信から、通信士と火麻の声が響く。

 

──────────

 

「状況はッ?!」

 

「月方面のラグランジュポイント付近に重力場異常! ESウィンドウの発生パターンと一致! これは……何かが此方へ転移してきます!!」

 

 猿頭寺の報告に悪い予感がする大河……やがて開かれたESウィンドウから現れたのは、先程からアーマロイド達が迎撃している宇宙怪獣に近い……が、それらよりもさらに大きく、凶悪な風貌の個体。

 

 まるで複数の生物を無理矢理合体させた様な薄気味悪い外観に、蠢く青黒い管……先端が鋭利な刃物の様に尖った白い鼻先を前に向けて、ゆっくりとESウィンドウを潜って出て来ようとしている存在。

 

「……こ、固有波形を確認! 間違いありません、大型の宇宙怪獣です!?」

 

 アーマロイド達からの情報共有により、宇宙怪獣には独自の生態固有パターンがあるとの事で、提供されたデータベース……そのリストにマッチした事を牛山が告げる。

 

「推定サイズ、体長3000m以上……?! そんな……あまりにも巨大過ぎる……!?」

 

 計測されたサイズはなんと脅威の3000m超え……オービットベースよりも遥かに巨大な単一個体の生物。報告する猿頭寺の声も、明らかに慄いていた。

 

「こんな化け物が、もし地球を襲ったら……?!」

 

「人類だけではない、地球の生命全てが絶滅してしまうぞ?!」

 

「勇者達は?!」

 

「ムダじゃ!! 今スサノオで月軌道から戻ったとしても間に合わん!!」

 

「そんな……ッ?!」

 

 だが、メインクルー達の恐怖に満ちた声を掻き消す様に通信から声が響く。

 

《心配ありません、私達が迎撃します!!》

 

《馬鹿デカいだけで良い的だ!!》

 

《ハイハイ、弾幕行くわよぉ!!》

 

 足の早いクーゲルザウター、アイゼンナシュティア、シュトゥルムボルグが横槍を入れる。

 どうやら先程現れた一団の掃討は粗方片付いている様で、一足先に此方へ戻って来たらしい。

 

 大型の宇宙怪獣は開かれたESウィンドウよりも巨大な身体が引っ掛かっているようで、なかなか全体が出てこない。

 このサイズで亜光速を出されるとさすがのアーマロイド達でも勝ち目は非常に薄くなるので、今のうちに仕留めんと矢継ぎ早に高火力の攻撃をひたすら叩き込んでいく……

 

『撃ち抜く……止められるものなら、止めてみろッ!!』

 

『わおわおーん♪』

 

『最大出力……逃しはしません!!』

 

 3人はそれぞれ高威力の攻撃を撃ち込んでいく……が、当の大型宇宙怪獣はさして気にも留めず、徐々にその巨体をESウィンドウから出していく……

 

『参っちゃうわね……』

 

『私達の攻撃が……』

 

『ここまで通じんとはな……!』

 

 己の最大火力をぶつけて尚、気にも留められない事に毒づく3人……その時、宇宙怪獣は体表近くの管から無数の“光弾”を吐き出し、此方へと反撃をしてきた。

 

『ちぃ……っ!?』

 

『あっぶないわね……!』

 

『思ったより速い……それにコレは……当たると危険です!!』

 

 クーゲルは足だけでなく“眼”も良い……センサーの情報と内包されるエネルギー反応から()()()()()だと見抜き、当たらない様にと他の2人に注意を促す。

 

「……っ?! コレは……!?」

 

「どうしたのかね?!」

 

「宇宙怪獣のあの光弾には、見た目の数百倍の質量があります!! それにこのエネルギー反応……コレは、まさか……光子崩壊反応……?!」

 

「なんじゃと?!」

 

 その言葉に麗雄は驚愕を隠せない、そして猿頭寺の言葉にただならぬ雰囲気を感じた大河は、麗雄に詳細を確かめた。

 

「一体何だというのだ、あの攻撃は……?!」

 

「あの光弾は光子崩壊反応を引き起こす一種の爆弾だ!! あの攻撃を何の防御措置もなしに受ければ、内包された光子エネルギーが一気に崩壊を始め、擬似的なマイクロブラックホールと化し、空間ごと削り取る様に消滅するぞ!?」

 

 つまり、あの光弾に何の対抗措置もなく触れればその瞬間……内部の光子反応が一瞬で促進され、マイクロブラックホールを生成。

 その超強力なマイクロブラックホールの引力は全てを空間ごと削り取り、0.5秒という僅かな時間で範囲内の全てを消滅させてしまうというのだ。

 

「なんと……余りにも危険過ぎる……!?」

 

「空間ごと消し飛ばすなんて……!?」

 

「弾道や速度も不規則過ぎて、トレース不可能……光弾の弾道予測も出来ません!!」

 

《問題ない……!》

 

《要は当たらなければ良いんでしょ!》

 

《回避の特訓だと思えば、まだまだ甘いです!!》

 

 恐怖に引き攣るメインクルー達の心配を他所に、足自慢のアーマロイド達は巧みな挙動で避け続ける。だが……

 

『……ッ?! イカン!?』

 

 一発の流れ弾が、軌道上で浮遊するだけのオービットベースへと迫る……しかも、このタイミングで大型宇宙怪獣はESウィンドウからその身体をほとんど出し終え、加速を始めようと後方からエネルギーを放出し始めていた。

 

『ダメ! 間に合わない……?!』

 

『そんな……お母さまっ!?』

 

「光子エネルギー反応、接近!?」

 

「プロテクトシェードは?!」

 

「駄目です! 距離が近過ぎて間に合いませんっ!?」

 

 如何に人類の叡智を結集し建造されたオービットベースとはいえ、ブラックホールを生み出し空間ごと消し飛ばす光弾を受けてしまえば、決して無事では済まない。

 

「凱……っ?! シオンちゃん……!!」

 

 絶体絶命のピンチにか細く呟く命……しかしその直後に命は『大丈夫です』と言う幻聴を聞く。

 

 そして万事窮すかと思われた次の瞬間……

 

バギィィィンッ!!

 

 光弾が進み、オービットベースへと迫る弾道上……そこが唐突に硝子を割る様に空間ごと砕かれ、進み続けていた光弾を、何も無い明後日の方向へと吹き飛ばす。

 

「……な、何が起こっとるというのだ……?!」

 

 メインオーダールームの正面モニターに映る、異様であり得ない光景に真っ先に気付いた麗雄……彼の言葉に、事態急変を知り他のクルー達も背けてたり、伏せていた顔を揃えてその異様な光景を映し出すモニターを次々に見上げ始めた。

 

 突如として空間が砕かれ、自分達に死を運ぶはずだった攻撃を弾き飛ばした……その原因は一体何なのだろうか?

 

 やがて……砕かれた空間の中から、()()()()()()()()()()()()()()()()存在がゆっくりと姿を現すのだった──

 

 

 

⇐To be continued...




この際だからネタの再現度高めに……

あ、でも次回はこの続きじゃなくて原種の方からです。
進行の時間軸的にこの宇宙怪獣戦と合体原種戦は同時並行なので、ある程度進んだら交代しないと(ウチが)進行把握しにくいので(笑)

それでは、次回もお楽しみに!!


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第89話 手繰り寄せた奇跡(中編)

前回からの続き……

宇宙怪獣の一部が地球へ向けて動き出した!!
阻止せんと迎撃するアーマロイド達の前に、大型の宇宙怪獣が出現。
アーマロイド達の攻撃を物ともせず、逆に即死しかねない攻撃で翻弄してくる……その流れ弾の先にはオービットベースが……ッ!?

しかぁし! 今話はその少し前……
主に合体原種との戦いになります。



『ジェイッ・クォースッ!!』

 

 キングジェイダーの右腕から飛び出す深紅の炎鳥……必殺の一撃が合体原種を襲う……が。

 

「この程度……フンッ!!」

 

 合体原種は巨大な右腕を振るい、弾き飛ばす……その余波でマイク部隊のうち3体が損傷を受け、有効打の1つであろうソリタリーウェーブの出力が低下してしまう事態に。

 

「マイク部隊、1、4、7番機大破! 戦闘不能!!」

 

「回収部隊、急げ!!」

 

「なにか手は無いのカ……!?」

 

『僕の力でも、奴の攻撃を地球から逸らすのが精一杯だ……!』

 

 天秤座の能力を行使しても、事象に改変効果が及ぶまでの僅かな時間のうちに攻撃は地球へと迫っており、辛うじて直撃を免れる程度しか効果がない……

 

『サイズが違いすぎます! 一体どうすれば、アレのバリアーを突破できるのか……』

 

 ピスケガレオンの片割れ……分析能力に長けたイルカが、合体原種とのサイズ差から出力まで桁違い過ぎるバリアーに言及する……そう、GGGが合体原種を攻めあぐねる理由は、見せ付けられた攻撃力と範囲だけでなく、その防御力にもあった。

 

「あの原種の身体を覆うバリアーは、EI-01戦で観測された以上の出力を確認していまス。これを正攻法で貫くのは、ゴルディオンハンマーでも難しいでしょウ……」

 

「その上ヤツは、遠距離からの超重力波に高精度の誘導ミサイル、未来予知による迎撃、オマケにブラックホール……完全に無敵の要塞じゃねーか……クソッタレ!!」

 

 マトモに相手をするには、明らかに何もかもが足りていない、とスタリオンは事実を述べる……突き付けられた現実に、口惜しい表情の火麻は毒づいた。

 

《……だが、こうしてる間にも地球には……!》

 

 そう、宇宙怪獣が迫りつつある……イザナギやアマテラスでも、地球方面の戦闘は観測されていた。凱の脳裏に、これから被害を被るであろう地球の状況が思い起こされ、「何か、手は無いのか……?!」と焦る。

 

『唯一の救いは、ヤツの動きそのものが遅くて、回避が間に合ってる……って位か?』

 

『……せめて、あのバリアーを破る手段があれば……!』

 

 ピスケガレオンは自身の性能のうち、攻撃力の不足を悔やむ。いくらボルフォッグと合体しパワーアップしているとしても、ボルフォッグやピスケガレオンは共に機動力重視のサポート型……

 如何に豊富な機能と攻撃力を得たビッグバンボルフォッグといえども、さすがにガオガイガー程のパワーを単独では発揮できない。そのガオガイガーでさえも、合体原種のバリアーを単独で破る手段など持ち合わせていなかった。

 

『何か……方法は無いのか……!』

 

 その時、凱の脳裏にビジョンが浮かぶ……

 

(……っ?! 君は……!?)

 

 それは前にも見た少女……“怒り”、“悲しみ”、そして“笑顔”の表情を浮かべた同じ見た目の少女。

 その3つのビジョンがゆっくりと重なり、1つになっていく……

 

(1つに……なった……?! そうかッ!!)

 

 3人の少女が重なるビジョンを見た凱……その顔はチャンスを掴み、希望に溢れていた。

 

『長官! ガトリングドライバーの使用許可を! 撃龍神! 皆と協力して、奴の注意を引いてくれ!! マイク部隊は今一度、ソリタリーウェーブを頼むッ!!』

 

《何をする気だ凱?!》

 

『説明は後だ! 奴に気付かれる前に勝負を決める!!』

 

 火麻は凱の言葉に見当がつかず、何をする気かと問うが、凱は説明している時間も惜しいと言葉にする……奴が意図に気付くか、此方が仕掛けるのが早いか……一種の賭けであった。

 

《……信じているぞ、勇者! ガトリングドライバー、射出ッ!!》

 

 オービットベースの大河は凱の顔に浮かぶ勝機を信じ、言葉にして託す。直後、イザナギから“ガトリングドライバー”が射出された。

 

『《ミラー粒子、広域散布! ディレイ映像、映写開始!》』

『《ホログラム・質量操作、共に問題なし! 多重・鏡分身の術(マルチプルヴィジョン)ッ!!》』

 

『行きます……ハァァァッ!!』

 

『唸れ疾風、轟け雷光……双・頭・龍(シャントウロン)ッ!!』

 

 撃龍神とビッグバンボルフォッグは指示を受け、すぐさま行動を開始。自身の持てる最大の技で合体原種の目眩ましを始めた。

 

『座標軸、固定……!』

 

 ガトリングドライバーは、ディバイディングドライバーの空間歪曲技術を応用し、対象物の行動や移動を制限する機能がある……だがその力にはもう一つ、()()的な使い方があった。

 

《接続ユニット、問題なし! 左腕ロック完了!》

 

『マイクっ!!』

 

『Alright! 行くぜ、My brother's(マイブラザー)!!』

 

『Gutsだッゼ!』

 

『Yeah!』

 

『『『『ソリタリーウェーブ……Fire(ファイアー)!!』』』』

 

 数は減らされたが、その不足をガッツで補い合い、マイク・サウンダース等のソリタリーウェーブが一斉に放たれる。

 ガオガイガーはその射線上に陣取り、左腕のガトリングドライバーを掲げ叫んだ。

 

『重力レンズ、展開ッ!!』

 

 ガトリングドライバーの空間歪曲作用を利用し、()()()()()()()()()()()()()()と化す*1……

 空間の歪みはそのまま重力の歪みを伴い、光や物理的移動にも直接作用する為、歪曲空間を通過したソリタリーウェーブはレンズ状の歪曲に従って収束、通常よりも更に強力な超高密度のエネルギー収束帯へと変化して合体原種の頭上から襲い掛かった。

 

「ぬぅ……さすがに分解が間に合わんか、だがブラックホールで吸収すればこの程度……!」

 

『……隙を見せましたね……!』

 

 その時、合体原種の足元……月の地表に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()が現れ、中から“巨大な機械の尾”が繰り出される。その先端には合体原種のそれよりも大きな“マイクロブラックホール”が生成されており、合体原種のバリアーを喰い破るとそのまま一気に下半身に直撃した。

 

「ヌグゥッ?!」

 

 バリアーの下半身部分がマイクロブラックホールの作用で歪み、凄まじい圧力差に耐え切れず崩壊……

 

『コイツは……!』

 

《ナイスタイミングね、グラヴィス!》

 

『いえ、皆の頑張りが無ければこの隙を逃していたでしょう』

 

 黒い影……それは腸原種と同じく、“重力の井戸の底”と表現されるブラックホール空間と外を繋ぐ歪曲ゲート。そこから尾を伸ばし、後ろ向きに出てきたのはアーマロイドの参謀役【蠍座】のグラヴィスコルードだった。

 

「貴様……っ?!」

 

『私に注意を向けて良いのですか?』

 

「っ?!」

 

「「「「『行けぇッ!!』」」」」

 

『貫けぇッ!!』

 

 合体原種がグラヴィスに注意を向けた直後、マイク達を応援するGGG隊員たちの声が届いたのか、ソリタリーウェーブの出力が急上昇し、凱の声に合わせる形で合体原種のバリアーを完全に貫く……勿論、このソリタリーウェーブは対原種用チューニングが施された特別版の為、合体原種に対しても効果は覿面……

 

「ぬぅおぉぉぉお"お"お"お"お"?!」

 

 想定外に想定外が重なり、驚きと怒り、そしてダメージによる叫び声を上げる合体原種……

 

『好機ッ!!』

 

 キングジェイダーが一呼吸先に動き始め、一拍置いてガオガイガーも突撃し、各々必殺の一撃を叩き込む。

 

『ジェイッ、クォースッ!!』

『ゴルディオンッ、ハンマァァァッ!!』

 

 巨大な火の鳥が合体原種の土手っ腹の貫き、頭上からゴルディオンハンマーが振り下ろされる。

 

「ぬぅおおおォ"ォ"ォ"ぉ"ぉ"ぉ"……?!?!」

 

 断末魔の叫び声を上げながら、異形の巨体が光となって消えていく……

 

 凱の機転とグラヴィスの思わぬ援護……そして何よりも、勇者達全員の奮闘により、攻略不可能かと思われた合体原種を撃破する事に成功したGGG……だがしかし。

 

『…………』

 

 キングジェイダーの放った火の鳥(ジェイクォース)が捕えた原種核は、2つ……

 そしてゴルディオンハンマーにより摘出された核も2つ……

 

『……2体は取り逃がしたか……』

 

 機界最強7原種の撃破には成功したが、2体を取り逃がしてしまう……この結果が、後の趨勢を決定付ける重要な出来事になろうとは、この時誰も想像だにしなかったのであったーー

*1
ガトリングドライバーは、先端の先にある平面空間を中心にアレスティング・フィールドを展開し、回転させ捻じる事で対象物を空間ごと歪曲に喰い込ませ行動を封じるが、今回はその捻り込みを行わず、絶妙な力加減の刺突により空間を動かして凸レンズの様に歪曲させたのである。




ようやく合体原種の撃破にこぎ着けました!
しかし地球付近の宙域にはまだヤバい奴が……!

次はそっちの顛末と、今回の補足ですかね……
次回もお楽しみに!!

……で、勇気爆発の方はこの後最終回かぁ。
よし、今日はリアルタイムで見るぞー!!
(投稿当時コメント)


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第90話 手繰り寄せた奇跡(後編)

勇気爆発のその先へ……!
例の最終回観たテンションがそうさせた。

私も勇者王達と、カオスなこの世界の未来へ、
狂わなかった「Z」の力が導くままに……

そう、厄ネタには元ネタをぶつけんだよォ!!



 月面で合体原種が撃破されたちょうどその頃……

 オービットベース宙域では、異様な雰囲気が漂っていた。

 

「……な、何だ……今のは……?!」

 

 タイミング的には、ガトリングドライバーの射出から数分後……ちょうど凱達が合体原種の撃破に成功した頃。

 オービットベースを襲った、大型宇宙怪獣の攻撃……そしてそれを阻止した、()()()()()()()()()()()()()

 

「重力場異常を観測! しかし、ESウィンドウのパターンとは一致しません!」

 

「空間の裂け目に、高エネルギー反応を観測! 何者かが出てきます!?」

 

 割れた硝子の様に歪に崩壊し、雑に繋がれた異空間……そこから凄まじいエネルギー反応と共に、()()がゆっくりと出てくる。

 

 ※推奨BGM:バスターマシンマーチ

 

「お、大きい……!」

 

「推定サイズは約200m……腕を組んだ、人型ロボットに見えます」

 

 それは何とあのキングジェイダーすらも軽く超える、あまりにも巨大で……独特な雰囲気さえ感じる、謎の黒い人型マシーン。

 

 その姿が完全に此方の空間へと出てくると、大型宇宙怪獣の周囲に無数の小さなESウィンドウが開かれ、大量の宇宙怪獣が雪崩の如く送り込まれて来た。

 

「敵、新たなESウィンドウから出現! 100、いや200……もう500を超えた?!」

 

 どんどんと数を増やす宇宙怪獣は、それぞれ加速しながら“光弾”を連射し、オービットベースの前に立つ人型ロボットを狙い撃つ……だが。

 

 パァン! パァン!! パァン!!

 

「「「な……っ?!」」」

 

 黒いロボットは組んでいた腕を崩し、飛んで来た光弾をその掌で雑に受け止めた。普通なら触れた直後に空間ごと対象物を消し飛ばす筈の光弾は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、まるで水玉が弾ける様にその掌の表面で搔き消されていく……

 

 驚愕するのも束の間、消えていないESウィンドウから更に増援の宇宙怪獣が出現……先程のよりも比較的小型*1な奴が数千体、その後ろから更に一回り大きな別タイプも現れ、巨大人型ロボットに対して怒涛の大攻勢を仕掛け始める。

 

「光弾が効かんと判断したか、突撃を仕掛ける気じゃ!」

 

「避けてッ!?」

 

「駄目です! 相手の速度が速すぎて、とても間に合いません!?」

 

 だがその時、ロボットの頭部に七色の光が集まり始め……放たれた細い一条の光の帯は、群がる宇宙怪獣の半分を纏めて消し飛ばし、直撃を受けた敵もあっと言う間に膾切りにしてしまう。

 

「あの数を、たったの一撃で……?!」

 

「敵集団、更に来ます!?」

 

 だが敵の攻勢は止まず、先程の生き残りと新たに現れた敵の数を合わせ、更に次々とESウィンドウから宇宙怪獣は際限なく数を増やしていく。

 

「イカン! あのESウィンドウは恐らく敵の拠点か、もしくは母星か何かに繋がっておる! あのまま放置すれば、この宙域だけではなく……宇宙全てが奴らの餌食になるぞ?!」

 

 止め処無く溢れて来る宇宙怪獣の群れ……しかしGGGに宇宙怪獣を止める手立てなど皆無……だがその時、ロボットは更に動いた。

 

 組んだ腕を完全に解いて頭上を見上げ、両手の指をまっすぐに伸ばす……すると指先に穴が開き、中から爪が伸びる様に“銀色の弾丸”の様な形状のミサイルが生え、次から次へと撃ち出された。

 

 ロボットの指先から放たれたミサイルは、素早く移動する宇宙怪獣にすら余裕で追い付き、着弾と同時に縮退反応を起こして空間ごと宇宙怪獣の身体を削り取り、蹂躙していく。

 

「博士! あのロボットは……」

 

「何故かは分からんが、あのロボットは奴等と敵対している様じゃ……我々や此方には目もくれず、宇宙怪獣だけを狙っておる」

 

 麗雄の言う通り、謎の黒いロボットは宇宙怪獣のみを狙い、オービットベースへの攻撃を一切行っていない。そもそも最初から宇宙怪獣がオービットベースを狙って放った攻撃を受け止め、逸らしたのだが。

 

《こ……ら凱! そっちは……うなっているんだ……?!》

 

「凱っ!?」

 

 直近での戦闘による余波の所為か、ノイズ混じりとはいえ無事に合体原種を打倒したガオガイガーから通信が繋がる。

 全力を出し切った撃龍神とビッグバンボルフォッグはアマテラスに収容され補給を受けている為見えないが、通信ウィンドウにて全員無事だと確認できた。

 

《何だかスッゲー事になってるみたいだってばよ!?》

《ちょっと、あんまりはしゃがないでよ……!》

 

《大河長官、ご無事ですか?》

 

《前より矢鱈と多い……またトンデモナイ数ね、アイツ等》

 

 同時にアーマロイド達からも通信が入り、オービットベースの状況確認として一足先にアイゼンナシュティアとシュトゥルムボルグが到着した。

 

「牡牛座くんと、山羊座くんか」

 

《あら長官さん、もっとフレンドリーで良いのよん♪》

 

《茶化すな山羊座(エクセレン)。それで長官、そちらの状況は?》

 

「あぁ、宇宙怪獣の大攻勢の真っ只中なのだが……」

 

「突如現れたあの黒いロボットが、此方への攻撃を防いでくれてな……そのまま奴等と戦闘状態に入っている。あのロボットが奴等の注意を一手に引き受けておるのか、此方にはほぼ損害はない」

 

 困惑を隠せない大河の言葉に続いて、簡潔に事の次第を述べる麗雄。宇宙怪獣に敵対している謎の巨大ロボットのお陰でオービットベースはほとんど被害らしい被害は受けていなかった。

 

《……成る程。コレが“理由”という訳か……大金星だな、双子座は》

 

 ナシュティアは黒い謎の巨大ロボットを指して、大金星を上げたのは“双子座”だと言う……

 

「な……あのロボットが?!」

 

「双子座……アレもアーマロイドだと言うのかね?!」

 

 ナシュティアの言葉に、驚愕を禁じ得ない大河と麗雄……全長200mを超える超大型の人型ロボット。その正体は超竜神と共に宇宙の彼方へと消えた未完成のアーマロイド【双子座】だと言うのだ。

 

「何故、あの2人が今ココに……?」

 

《……それは戦闘が終わった後、2人に直接聞くしか無いでしょう。今、分かっているのは……あの2人が己の身体を得て、無事に帰って来た……より強く、頼もしくなってね》

 

《おかえりなさい、双子座ちゃん♪》

 

《スッゲーデカい身体になってるってばよ!?》

《大きさもそうだけど、凄く頼り甲斐ありそうですね》

 

「……そうだな……!」

 

 グラヴィスや残りのアーマロイド達からの言葉に、大河はシオンの秘めた想いを感じ共感する。

 

《うわっはー♪ 超大っきくて超強い! 超すっごいや!!》

 

《オイオイ護、それじゃ俺とガオガイガーはどうなんだ?》

 

《モチロン、ガオガイガーと凱兄ちゃんも超カッコイイよ!》

 

 双子座に対する護の感想に、凱は思わず嫉妬するような感じで護にちょっかいを掛ける。だが護は純粋にガオガイガーも勿論カッコイイと答え、凱のからかいを素で躱した。

 

「《あははははは……》」

 

 護の予想外の返答に、凱はアテが外れたな……と頭を掻いて照れ笑いし、麗雄や命も釣られて笑い始める。だが、宇宙怪獣の攻勢は止んでいない……鳴り響いた警報に、つかの間の笑い声は即座に搔き消される。

 

「大型宇宙怪獣、通過率75%を突破! 此方へ向かって移動を始めました!!」

 

 大型の宇宙怪獣がいよいよESウィンドウから抜け出し、地球へ向かって突撃をしようと移動を始める……大型宇宙怪獣の進行ルート上にはオービットベースも存在しており、亜光速まで加速して地球へと体当たりすれば、その直前にオービットベースも粉々に砕かれるだろう。

 

 最早逃げ場はない……今のうちに奴を倒さなければ、オービットベースはおろか、地球諸共全てが暗黒の海に消え去ってしまう。

 

「な、なんだと……ッ?!」

 

「奴が亜光速で地球にぶつかれば、地球表面の凡そ45%を消し飛ばしつつ超巨大なクレーターを作り、巻き上げられた物質の影響で地表は寒冷化……また地軸や公転軌道が大きく歪み、最悪太陽系から弾き出される可能性もある。もしそうなれば、地球は永久の寒冷化と地軸の歪みで発生した多数の自然災害によって、確実に死の星になってしまうぞ!?」

 

 予想とはいえ、あの宇宙怪獣が激突したら、地球は確実に死の星となってしまう事は明らか……

 

「地球が……死の星に……」

 

《……そんな事、絶対にさせませんッ!!》

 

 大河の歯噛みする様な言葉を否定するかの様に、大声で通信が新たに繋がる……その声は、あの時超竜神と共に宇宙の彼方へと消えた【双子座】の片割れ……ノリコの声だった。

 

──────────

 

 無尽蔵に増え続ける宇宙怪獣の群れを相手に、双子座は怯むこと無く立ち向かう……

 

 全ては主と仰ぐ、1人の少女の夢の為……そして誓いを立てた己の矜持に従って。

 

 ※推奨BGM:トップをねらえ!〜FLY HIGH〜

 

『……やっぱり、問題はあの“混合型”ね……』

 

 双子座の姉、カズミは冷静に宇宙怪獣の動向と特徴を注意深く観察……戦力計算を踏まえた予測を立てる。

 その結果、やはり未だにESウィンドウから抜け出ていない大型の宇宙怪獣……俗称“混合型”が怪しいと睨んだ。

 

『お姉さま、問題って……?』

 

 巨大な双子座のボディ……ソレを自由に操り、妹のノリコは姉にその真意を問うた。

 

『あの“混合型”は通常種じゃない……恐らく【変異種】。私達を欠いた状態で対抗していたら……全く歯が立たない筈』

 

『……え……っ?!』

 

 それは間違いない事実……この宇宙怪獣【変異種】の混合型は、本来奴等が発生した原作時空の影響を受けてはいるが、普通ならばあり得ない奇妙な気配……否、邪悪な気配が漂っていた。

 

『それが何を意味するかまでは分からないけど、今一番必要な事は……“あの宇宙怪獣をこの場で殲滅しなくてはならない”事……なら、()()()()は……判るわよね、ノリコ?』

 

『勿論です、お姉さま!』

 

 努めて冷静沈着。【双子座】の姉方、カズミの瞳に“油断”という2文字は全く無い……妹のノリコも、自信はあれど“傲慢”は無い。

 

 あるのは絶対なる“信頼”によって築かれた、強固な“絆”のみ……

 

 そして“制御”を司るノリコは、パートナーであり“戦術”を練るカズミに提案をする。

 

『一つ、試したい事があるの……お姉さま、“アレ”を使うわ』

 

『まずは()()()()、ね……ええ、良くってよ?』

 

 勿体ぶる言い回し……しかし、2人は如何なる時でも()()()()()()()()を為し得る能力により、こんな会話でも普通に通じる。

 

『うわぁぁぁァァァぁぁぁ……!!!』

 

 了承を受けるや否や、大絶叫と共にノリコは機体を操り加速させ、自身を包囲しようとしていた宇宙怪獣の群れから離脱……大型宇宙怪獣の出て来ようとしているESウィンドウを下方に捉える。そのまま絶妙な位置へと機体を滑り込ませたノリコは機体の姿勢制御を行い、()()()()の姿勢のまま反転し再加速……自身の出せる最高速度へと突入していく。

 

 勿論、相方であるカズミの手によって機体の一部が変形……背部推進器は全て同一方向へ向けられ、突き出した右脚の足裏には回転刃付きのキャタピラを展開させた。

 

『スゥゥゥパァァァ!!』

『イナズマァァァ!!』

『『キィィィィィィック!!』』

 

 姉妹同時の掛け声と共に一瞬でトップスピードへと突入した【双子座】は飛び蹴りの姿勢のまま、雷撃を纏って一直線に大型宇宙怪獣の方へと突撃を開始。

 直後、すれ違った宇宙怪獣は触れてもいない位置だったというのに、次々と大爆発を引き起こしていく……

 

「な、なんという威力だ……!!」

 

 双子座を追う外部カメラの映像……メインスクリーンに映し出される双子座の激闘は、見る者全てを等しく圧倒するものであった。

 

「あの威力……恐らく何らかのエネルギー放出か、空間的な作用が働いている筈じゃ。でなければアレ程の範囲の敵をまとめて薙ぎ払う現象に説明が付かん」

 

 双子座が通り過ぎた辺りの宇宙怪獣が次々と撃破され、まるで広がる波の如く爆発が連鎖していく。最終的には爆発のトンネルの様な軌跡を描き、大型宇宙怪獣へとまっすぐに突き進む……しかし、タッチの差で大型宇宙怪獣はその全身をESウィンドウから完全に引き抜き、最大加速にて双子座の攻撃を避けた。

 

『避けられた……?!』

 

『いえ、此方が間に合わなかったのよ……ッ?!』

 

 カズミは自身の分析でタイミングを狂わされたと理解したが、敵が離脱したと見せ掛けて距離を取り、再び突撃を仕掛けて来た事に驚く。

 

『こんのぉぉぉっ!?』

 

 咄嗟にノリコは機体を動かし、宇宙怪獣・混合型の突撃を避ける……が、触手の束が右脚の側面を掠り、バランスを崩されてしまう。

 

『くっ……お姉さま、機体の出力が……!?』

 

『……無茶のツケね、縮退炉の出力も安定していない……安全を考慮すると、あと5分ほどしか動けないわ』

 

 何かが原因で双子座は機体に支障を来し、機体の制御が困難になっている……しかも、安定して動けるのは残り5分程。軽く詰みかけていた……だがしかし。

 

(未完成のままでの強引な超長距離ワープに亜光速戦闘……マスターや皆のピンチとはいえ、強引すぎたなぁ。……でも、この程度の危機は慣れっこよ。必ず今、この場でアイツを倒せなきゃ……未来が……!)

 

 ノリコはそう思い至り、少しの沈黙の後……こう呟く。

 

『……お姉さまの命、私に預けて……!』

 

 普通ならば躊躇うだろうこの物言い……しかし、同じ想いを持つ姉妹だからこそか、カズミはこう即答する。

 

『ふふっ……今更ね、私達は生まれた時から一蓮托生……マスターの為に生きる存在よ、貴女と共に……ね』

 

『よぉーし、やってみるっ!!』

 

 カズミの返答に勢い付いたノリコは機体を動かし、回避行動を止めて両腕を伸ばし、()()()()の体勢に移行。

 

 それをモニターで見たオービットベースのクルー達は、一様に驚いた。

 

「イカン!? 亜光速の相手を押し止めるなど自殺行為じゃ!! 僅かなタイミングのズレで機体はバラバラになってしまうぞ?!」

 

「そんな……っ?!」

 

「何とかならないんですか?!」

 

「今の我々が……奴に対抗するには……あまりにも力不足だ……っ」

 

《双子座……お前……?!》

 

「やめてぇぇぇっ!?」

 

 僅かでもタイミングを外せば、如何に頑丈な機体であっても接触の瞬間に発生する膨大な衝突エネルギーを相殺し切れず、確実にバラバラになってしまう……それだけの運動エネルギーを纏った突撃を()()()()()()()()事にした双子座……

 

(マスター、皆……今こそ、守ってみせる……!)

 

 尖った先端部を向け、宇宙怪獣・混合型は月軌道付近まで大きく迂回、その後再び正面に双子座を捉える……そこから最大加速し、地球を背後にして守る双子座を貫かんとする。

 その様子はオービットベースへと帰還途中のイザナギやアマテラスからも見え、その光景は乗員達に恐怖と絶望感を植え付けるには充分だった。

 

(あんな奴に負けないで……シオンさん、双子座に力を……!)

 

 誰もが固唾を呑んで見守る中、護は心の中で双子座の無事を祈る。他の誰でもない……彼女らの生みの親であるシオンに。

 

 その時、ほんの僅かだがシオンの封入されている黄金の繭が僅かに光り輝き……小さな緑の光の粒が煌めく。

 その光は双子座の機体にも発生し、縮退炉の出力が急上昇……

 

 直後、双子座は宇宙怪獣・混合型と接触した。

 

 接触の瞬間、双子座の機体を白い波動が守り、耐え切れず弾けてバラバラになる……その直後、宇宙怪獣の鼻先と言える先端部が双子座の機体に接触。ほぼ同タイミングで双子座の両腕が先端を掴むが、速度差と勢いに負けて先端が胸部装甲を貫き、そのまま連れ去られる……かに思えたが、その勢いは急激に衰えていき、宇宙怪獣の先端は双子座の胸部を深々と貫き通したが、背中側には1メートルも飛び出せず、深刻なダメージを受けながらも双子座は亜光速で突撃してくる敵を完全に受け止め、やがて宇宙空間に完全に停止させた。

 

「「「「「『《…………ッ?!?!》』」」」」」

 

『……っ……捕まえ……た……ッ!!』

 

 ノリコは身体と機体に掛かるダメージを全て無視し、掴んだ先端を強引に圧し折ると、そのまま宇宙怪獣の本体に両掌を深々と突き込み、肘から先にある装甲のカバーを開放……内部に搭載された周囲8本2セットある電極端子を全展開し、最大10億ボルトの超高電圧を誇る電撃攻撃を敢行した。

 

『うぅぅぅわぁぁぁァァァ……ッ!!!』

 

 如何に頑丈な宇宙怪獣といえども、容易く生物を死に至らしめる落雷*2の十倍に相当するエネルギーを直接体内に流されてはさすがに耐えられず、行き場を失ったエネルギーはすぐさま物理的飽和状態を超えて宇宙怪獣の体内を蹂躙、宇宙怪獣の体組織を焼き尽くしても収まらず、端から炭化していくと同時に電荷の変移から負荷限界をオーバーして連鎖的に爆発を起こす。

 

 勿論、宇宙怪獣自身にも活動に必要なエネルギーは何らかの形で保有されている為、体内で荒れ狂う雷撃エネルギーに触発されて不安定になり暴走……ついには宇宙怪獣の身体の数倍に匹敵する大爆発を引き起こすのだった。

 

 

 距離的には数km……とはいえ、宇宙空間でならほぼ目と鼻の先という近距離での大爆発の余波により、オービットベースの全てのカメラとセンサーが一時的にダウンする。

 勿論、通常通信が届く位置まで戻って来ていたイザナギやアマテラスにもその影響は来ており、やがて影響が収まってセンサー類が徐々に復帰し始める。

 

「宇宙怪獣は……双子座達はどうなったのだ……?!」

 

「……あの規模の爆発じゃ、例えガオガイガーでも耐えられるかどうか判らん……恐らく、溶けて蒸発しているじゃろうて……」

 

 しかしそれも希望的観測……という風に麗雄は付け加える。

 

 宇宙怪獣自身の保有エネルギーと、強烈な電撃攻撃による大爆発……通常の機体なら、耐えられても数秒……

 全身に特殊装甲を採用したガオガイガーでさえも耐え切れるか分からないとされる爆発で、果たして双子座は無事なのだろうか……

 

「……システム復旧完了。メインスクリーン、映像回復します」

 

 猿頭寺の言葉に、全員がメインスクリーンに視線を注ぐ……

 

 そこに映し出されたのは……爆発で周囲に飛び散った、夥しい数の宇宙怪獣の残骸……そして……

 

「……っ?! 居ました! 双子座の……機影を確認!!」

 

 残骸と共に浮かぶ大量の塵の向こう……ノイズ混じりでかなり不鮮明だが、その姿は見間違えようもない。

 

 最初は酷くノイズ混じりの映像であったが、双子座の機影を確認できた後にはノイズも徐々に消え、やがてゆっくりと双子座の機体が動き始めるのを映像が映し出す。

 

 見るからに正しく満身創痍……左腕は完全に焼け落ちて喪失し、全身の装甲は溶けかけ、一部は酷く歪んで可動にも支障を来しており、貫かれた左胸部を中心に内部構造にも深刻なダメージを負っている……が、未だ絶え間なく確認できるエネルギー反応と、破損箇所を庇いながらも動き始めた事から、双子座が無事に生還を果たしたのは誰の目にも明らか……

 

 あの合体原種と宇宙怪獣の群れを相手取り、我々が辛くも未来を掴み取った。

 この映像を見ていた全ての人間が、勝利に湧いたのは言うまでもないだろう──

*1
とはいえ、サイズ的に巡洋艦レベルなので全長は500m以上あるが……

*2
落雷のエネルギーは平均で約1億ボルト。家庭用電力にして約6ヶ月分に相当し、落雷による死亡率は約30%。なお、落雷での死亡率が低いのはほとんどの場合、人間の体表を雷のエネルギーが通過するためで、もし体内にまで浸透した場合はほぼ確実に死に至る。




元ネタだとココでエンディング入り……
しかし、これで終わらないのが二次創作!

まだ木星云々もあるし……ね?
……コイツ等出したの、やっぱりマズったかなぁ?

──────────

次回予告


君達に、最新情報を公開しよう!!

機界最強7原種を打倒し、勝利に湧くGGG……
しかし、これで全て終わりではなかった。

謎の怪文と共に送られてきた静止画像……

そこには、人類の脅威へと変貌したシオン等と
敗北し倒れ伏す勇者達が映し出されていた。

“脅威に備えよ”……世界中にバラ撒かれたこの警告に
再び疑心暗鬼へと陥る人類。

果たしてこの警告は本当なのか……?



次回、勇者王ガオガイガーif NEXT...
第91話『未来への選択肢』

次回もこの小説で、ファイナルフュージョン承認!!


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第91話 未来への選択肢(1)

いちおう今回で通算100話目の投稿です……
(※設定、閑話含む)

合体原種と宇宙怪獣の打倒に成功したGGG……
しかし、これで終わった訳ではない。

混乱に乗じて逃げた2体を含め、地球に潜伏する原種はまだ残っている。
……だが事態は、我々も予想だにしなかった方向へと進んでいるのだった。



 満身創痍になりながらも、大型宇宙怪獣の撃破に成功した双子座……

 サイズ故にオービットベースにも収容できない双子座の機体は、自己修復とアップデートを兼ねて再び待機用の亜空間へと転送され、搭乗者でありコア・ボディあるノリコとカズミはアマテラスに収容……そのままオービットベースへと帰還した。

 

──────────

 

 オービットベース、ビッグオーダールームに集まった関係者達……長官を始めとしたGGGの首脳陣と、人間形態を持つアーマロイド達、そして共に戦った勇者達が一同に揃う。

 

『……お帰り、2人とも。今まで何をしていたのかはさておき、よく無事に帰って来たね』

 

 シオン不在の今……補佐役として全権を任されている【蠍座】グラヴィスは2人に労いの言葉を掛けた。その言葉に、暫し沈黙の後……カズミはこう返答する。

 

『……いいえ……全ては地球圏に起きる不測の事態を事前に察知しながらも、今の今まで応援に来られなかった私達の不手際ですわ、どうかご容赦を……』

 

 何故かカズミは、“自分たちの不手際”だと返答した。

 

「どういう事かね? 我々からすればこの上ないタイミングじゃったのだが……?」

 

 それを疑問に思った麗雄は、その真意を問う……すると今度はノリコから答えが帰って来た。

 

『私達は……あの時、超竜神と一緒に転移した後……いつの間にか、大昔の木星圏に居たんです……』

 

『正確には、約6500万年前。私達は、あのESウィンドウを抜けた先で超竜神から分離させられ、謎の力によって時空間を超越……遥か昔の木星圏に辿り着きました』

 

 カズミの補足に、GGGの皆様一様に驚く……あのESウィンドウの先で更に謎の現象に遭遇し、超竜神と離れ離れとなってしまった事に頭を下げる双子座。

 

「……そうだったのか……しかし、木星圏とはのぅ」

 

 麗雄は()()()という単語に何か引っ掛ける様で、腕を組み頭を捻る。カズミはそれに気付いて、自身の観測情報を麗雄に伝え始めた。

 

『既にご存知かとは思いますが、木星圏では謎のエネルギー反応が頻繁に確認されています……恐らく私達と超竜神は、そのエネルギー反応の影響で引き剥がされたのではないかと……』

 

『物凄いエネルギーでした……まだ不完全だった私達の戦闘用ボディの組成を、瞬く間に構築してしまう程に……』

 

 双子座の戦闘用ボディは、当時まだ構築が間に合っておらず未完成状態。双子座自身はそれぞれ実体化させずに保持はしていたが、まだまともに稼働させられる状態では無かった……それを“謎のエネルギー”は一瞬で穴を埋めるかの様に構築し、本来の想定強度より数倍近い性能を発揮できる様になっていた。

 

『……そのエネルギーは、今も?』

 

 少しの思案の後、グラヴィスは双子座にそう問い掛けるが……

 

『いえ……充分とは言い難いですが、サンプルとデータは確保しています。詳細な解析は此方(GGG)の方が適任かと思いますので』

 

 返答にカズミは首を横に振ったが、微量ながらサンプルは確保出来ていたらしい……何処からか銀色の小さなカプセルを取り出す。

 

 カプセルの中心は透明なプラスチック製で、左右の端から伸びた支柱に支えられた中央には、銀色の球体がもう一つ……それが特殊な液体と共に封入されており、中央の球体は黄金のオーラを時折放っている。

 

(あの光……シオンさんのと同じ……?)

 

 護は、カズミの掌に乗せられた件のカプセルを見てそう直感する。護のGパワーセンスは、シオンが封入されている黄金の繭から放たれる微弱なエネルギーをしっかりと感じていた。

 

『我々の能力による解析は、やはり難しそうですね……長官、この件はそちら(GGG)にお任せしても?』

 

「うむ、了解した。……では博士」

 

「任された……ではスワン君。それからカズミ君も手伝ってくれ」

 

 カズミからカプセルを受け取り、麗雄はスワンとカズミを伴って早速研究施設へと赴く。

 

『……それで、グラヴィス……マスターは……?』

 

 麗雄が去った後、ノリコは何処か不安そうに自分達の“主”であるシオンの事を尋ねる……

 

『……主は、その……』

 

『……っ、私達の事で忙しいもんね!? 邪魔しちゃ悪いし、折を見て……』

 

 いつもならスパッと言い切るグラヴィスの言い淀み……ノリコはその言動に何かを察したのか、動揺を隠そうと話を切ろうとした。

 

「…………」

 

 気の遠くなる程に(6500万年もの)長い間離れていた者との再会……しかし、一番に会いたい相手には未だに会えない。

 幾ら彼女が気丈に振る舞おうとも、内に秘めた心情は察するに余りあるものだった。

 

『双子座……主は……』

 

『良いんです! ……気にしないでください……』

 

 ジョルノの言葉を無理やり止めるノリコの声に、その場の全員が気まずさを深めるしかない……その後、山羊座に促されてノリコがこの場を後にすると、大河はグラヴィスに問い始めた。

 

「あの宇宙怪獣……奴等の目的は、何なのか……君達には分かるかね?」

 

『……我々が保有している情報()()()()であるならば、奴等の目的は間違いなく“地球人類の滅亡”でしょう。最も、時期としては本来ならばあまりにも早すぎるのですが……』

 

 グラヴィスをはじめとするアーマロイド達には、件の“宇宙怪獣”の真意と目的が予めシオンから齎されていた。しかし、本来ならば()()()()()()()()()()と想定されていた筈の襲来……それが何故かここまで早まったのは、不可解すぎた。

 

「それは……どういう事かね?」

 

 大河はグラヴィスを『あまりにも早すぎる』という言葉に疑問を投げ掛ける。それにはグラヴィスではなく牡牛座が返答した。

 

『奴等には、空間転移を行う際に必ず発生する“跳躍波動”……「バニシングドライブ波」を感知でき、一定以上のサイズへと成長した奴等には、例外なく空間転移能力がある』

 

「なん……だと……!?」

 

『本来ならば、地球人類がワープ技術や空間転移技術を自らの手で開発し、普及させた後に来る筈だった……それが、原種による地球襲撃などで大きく狂ったのでしょう。原種のESウィンドウによる空間転移……それが奴等を、この地球圏に引き寄せた可能性が高い……』

 

 牡牛座の言葉に大河は驚愕……そこへグラヴィスが更に補足を付けた。

 

『奴等には、自分達以外に“空間転移”を行うモノを()()()()()()()()習性と、恒星に産卵して無尽蔵に増え続ける……という特徴を持っています』

 

 アーマロイド等によって齎された、宇宙怪獣に関する情報……それは既存生物の概念を根本から覆すものばかりであった。

 

「恒星に産卵……ですか……?」

 

『宇宙怪獣に産卵された恒星の核は例外なく不活性化し、本来ならば長い時を掛けて放出されるエネルギーを短期間で吸い付くされ、死の星と化す……やがてそれは絶え間なく続く宇宙の循環サイクルを停止させ、()()()()()()()()()()()()()事になります……』

 

「…………なんという……」

 

 牛山の問いに、今度はジョルノが答える……宇宙怪獣の増殖プロセスは、宇宙のエネルギーをいたずらに消費するものであり、それはやがて宇宙そのものを殺す事になるという。

 

『宇宙怪獣の脅威とは、正しく宇宙そのものの脅威……この宇宙にとって奴等はガン細胞に相当するモノ、と言えば良いでしょう』

 

 最後にグラヴィスがそう締める……原種よりも遥かに純粋悪に近い存在、それが“宇宙怪獣である”と。

 

「……放置してはならない、危険過ぎる存在……か」

 

 そんな脅威への対処を、人類は原種撃退と同時期に行わなくてはならない……まさに、“人類に逃げ場無し”であった。

 

──────────

 

 合体原種の敗北から約数時間後……

 

 地球上の何処かで、敗北こそすれど生き延びた2体の原種と、パリアッチョ……そして謎の幻影が再び一同に会していた。

 

「機界最強7原種、敗北……」

 

 パリアッチョの淡々とした発言が、残された腕原種と腸原種を逆撫でする……いや、正しくは“毎度の如く場を混乱に陥れる謎の幻影”の存在の前でそう言われる事に業腹なのである。

 

《やはりイレギュラー共の影響か……本筋よりも比較的楽に排されたな……》

 

 そして己の所業を一切顧みない謎の幻影のこの言葉に、さすがの腕原種も今回ばかりはキレ気味に反論した。

 

「イレギュラーと言うなら貴様の手先の方だ! 何なのだあの化け物どもは!? アレでは星そのものを消しかねん! これ以上あの様なモノを使えば、地球を機界昇華するどころか、この銀河系を無に帰す行為だぞ?!」

 

《……フン、我が目的は地球人類の滅亡……そのプロセスがどうなろうと我は一向に構わん。そうなる前に貴様たちが目的を達成すれば良いだけのこと》

 

 腕原種は、自分達の作戦中に独断で宇宙怪獣をけしかけ、あわよくば地球そのものを破壊しかねなかった謎の幻影のちょっかいに激昂する……確かにあのまま行けば、地球は人類諸共致命的なダメージで滅びの道を歩んでいた。それもGGGとアーマロイド達に拠って阻止された事から、回りまわって原種達も彼らによって勝ちの目を拾った(“地球機界昇華計画”の頓挫を回避できた)ようなものである。

 

 だが謎の幻影は“地球人類が死滅すればそれで構わない”というスタンスらしく、過程には一切頓着しないと豪語した……それは原種の計画である“地球の機界昇華”であろうと無かろうと構わない……

 

 つまりは原種に“協力する”という明確な意図など、己にはない……そう言っているに等しかった。

 

「ならば! 次の作戦は手出し無用!!」

 

「今後は一切黙って見ていて貰おう! 我々が地球を機界昇華する様をな!!」

 

 それぞれそう言い放ち、腸と腕、そして地球に未だ潜伏していた最後の2体。鼻と胃を引き連れこの場を去る原種達……パリアッチョと謎の幻影だけが残った所へ、あの白いクーゲルもどきが現れる。

 

「お前達の計画に手は出さぬが、私にも目的があるのでな……そのための行動はさせて貰う。フフフ……」

 

 謎の幻影は白いクーゲルもどきの中へと消えていき、パリアッチョを置いて空へと駆け上がり去っていく。

 

 無表情のままそれを見送ったパリアッチョもまた、その身体を変形させ球体になり何処かへと飛び去っていくのだった──




謎の幻影……その目的は“地球人類の滅亡”。
その為ならば宇宙怪獣を地球に送る事も厭わない……
何の躊躇いもなくそう言う割には、シオンに対してまた何かちょっかいかけて来そうですなぁ……

そしてGGGでは木星圏にて双子座が入手した謎のエネルギーサンプルの解析がスタート!
やはりこの辺りも原作から変わってるね……

ついでに原種達……やはり生き残ったのは腕と腸でした。
この2体ぜったい何かやらかすよね今後も。
原作でもそうだったし……

あ、でもそうなると次はあの“超竜神”が戻って来る?!

次回もお楽しみに!!





































今回限り!!
次回予告抜きで勝利の鍵が……!?


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第92話 未来への選択肢(2)

前回から引き続き

太古の木星圏から地球へと帰還した双子座……
彼女らは、途中で分かたれた超竜神の行方を案じていた。

だが彼女等の帰還の翌日。
GGGに奇妙な報が齎される……



 双子座の帰還の翌日……GGGに、奇妙な報が齎された。

 

「福井の発掘現場に、奇妙な色をした謎の発掘物……ですか?」

 

 如何にも半信半疑な感じで質問する牛山……その問いに、現場行きで不在の麗雄に代わって火麻が答える。

 

「あぁ、少し前から恐竜が見つかってる有名な発掘現場の地層で、“赤”と“青”に染まったデカい物体が見つかったらしい……しかも明らかに化石とは違うヤツなんだそうだ」

 

 火麻が言うには、埋もれていたのは“赤”と“青”に染まった巨大な物体……それは化石とも違う組成をしており、その2つは結構な至近距離でほぼ同時に見つかったとの事。

 

 白亜紀後期の地層に化石以外のモノが発見されたとの事で一大発見とされたが、その巨大さ故に通常の発掘装備では賄いきれず、GGGに協力要請が来たのだった。

 

「そう言えば、護くんも社会科見学で福井に行ってましたよね?」

 

「えぇ。先ほどボルフォッグから、調査隊と合流したとの報告が来ています」

 

 猿頭寺の報告に、大河は奇妙な縁を感じていた……“赤”と“青”……()()()()()()、という奇跡を。

 

──────────

 

 そしてそれは、現実のものとなっていた……

 

『氷竜……先輩……』

 

『炎竜……先輩……』

 

 あの時は不可抗力で後ろ姿を見送るしか無く、いつの日か迎えに行く事を約束して別れた面影をほぼそのままに……力なく崩折れ、大地に縛り付けられたその姿を見て風龍と雷龍は、複雑な感情の入り混じった声で2人の名を呼んだ。

 

 巨大な崖の様になった化石発掘現場の一角……その大きな崖となった地層には、気の遠くなる程の時を経て劣化した2色の金属の身体となりながらも、原型を保ったまま時を超えて帰って来た、“赤”と“青”のロボット……

 

 一切のエネルギー反応すら発しないとはいえ、酷く経年劣化しながらもその姿を留めたまま、超竜神が埋もれていたのである。

 

「……信じられん。あの時ESウィンドウに消えた超竜神が、白亜紀後期の地層に埋もれていたなど……」

 

 事実は事実としても、到底信じられない……否、不可解に過ぎる事が多いと麗雄は思考を巡らせる。

 

 だが、超竜神が見つかったとの報を受けて、居ても立っても居られなくなった双子座の2人……強引ながら麗雄博士に同行して現場に着いた彼女達は、麗雄の推測の矛盾点を解消する経緯を語ってくれた。

 

『やはり、強制分離させられたとはいえ、木星圏へまでは、一緒に飛ばされた様ですわね……そこから私達は何かの力に引き寄せられ、木星圏を彷徨い……』

 

『超竜神は、木星圏から弾き飛ばされ……地球圏に戻されていた……?』

 

 曖昧で細かな部分はさておき……超竜神は双子座と共に、一度アステロイドベルトへと転移。その後更に何らかのエネルギーに導かれて木星圏へと飛ばされ、その際に双子座は超竜神から強制分離……双子座はそのまま木星へ引き寄せられ、超竜神は逆に弾かれて宇宙を彷徨い、地球圏に逆戻りさせられた。

 

『……過程はどうあれ、超竜神はその時、双子座と共に時空を越え、白亜紀後期の地球へと飛ばされていた……という事か。まるで夢物語だな……』

 

 双子座の精神状態を案じてか……“自己鍛錬”と称して地球に降りていた牡羊座も現場に来ており、展開された推測にそんな感想を述べる。何とも不可思議な経緯だが、そうでなければ此処に超竜神が埋もれているなどあり得ない。

 

 しかし、現実に超竜神は化石化しながらもほぼ原型を留めたまま、太古の地層に眠っていた。

 

《博士、内部スキャンの詳細データが揃いました》

 

 オービットベースと連携して解析していたデータが出揃い、スキャン結果を確認する麗雄……その中には、信じられないデータが映されていた。

 

「君達の推測は正しかった様じゃな……超竜神の内部にも“件のエネルギー”と同質の反応が僅かに残っておる……! AIボックスは休眠状態だが、このエネルギーがGストーンとAIボックスを経年劣化から保護しておった様じゃ。このエネルギー反応の解析が終われば、データのサルベージや、再起動の目処も立つぞぃ」

 

 奇跡としか言いようが無い……超竜神に搭載された2つのGSライドとAIボックスは、双子座がサンプルとして手に入れていた謎のエネルギーと同質のものによって保護され、6500万年の経年劣化を耐えきっていた。確かにパーツそのものは既に破損の危険性が高いものの、中のデータ自体はほぼ無事らしい。

 

『それじゃあ……!』

 

『2人は生きてるんだな……!』

 

 ボディは深刻なダメージではあるものの、AIのデータは休眠と謎のエネルギーによる保護で無事であり、解析が済み次第サルベージして復活させられる事に、風龍と雷龍は大いに喜んだ。

 

 だが、超竜神を保護している謎のエネルギーの解析は思うように進んでおらず、長い時間は掛かるだろう。だがそんなは関係ない……

 

「良かった……無事に戻って来てくれて……」

 

 偶然ながら現場に居合わせる事になった護も、“無事に”とは言い難いとはいえ帰還を果たした超竜神の姿に、嬉し涙を流すのだった。

 

──────────

 

 ……その頃、ネット上に“ある画像群”が公開された。

 

 それはGGGの誇る最強勇者ロボ軍団が、黄金のオーラを纏う異形集団に蹂躙され、見るも無惨な姿で倒れ伏している画像──

 

 その画像は1枚ではなく、各勇者たちそれぞれに何枚もあり……何れもが無惨な負け方をした勇者達を鮮明に描いていた。

 

 最初は近年発達している“画像生成AI”を用いた“違法生成画像”であると、ほとんどの人が興味を惹く事は無かったのだが……

 

 “被造物に心ありや?”“宇宙人は隣人たるや?”などと問いかける様な一文が添えられている事に気付いてからは、徐々に関心度が上がっていき……以前と同等とまでは行かないものの、再び“公的に宇宙人”と認識されている稀星シオンの存在や、GGGの超AI搭載勇者ロボの存在まで()()()()()様になってしまっていたのである──




いつもより少し短いですが、導入としてはこの辺で一区切り。

感想、評価お待ちしています。
次回もお楽しみに♪


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