あれふれたボウケンシャーが世界放浪~ファフニールの騎士~ (ハイ・ラガードのボウケンシャー)
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第零階層-1

書いてしまった…


 さっきまで樹海のなかで仮眠を取って居たはずなのだがここはどこだ?いつの間にか体が小さくなっているし。これも世界樹がもつ不思議な力なのか?世界樹には未だ驚かされるばかりだ。

 

 体を動かしてみる。いきなり体が小さくなった所為か感覚が掴めないが、縛りや状態異常といった不調は感じない。

 次に右手に力を込めてみる。ファフニール特有の紋様が現れてはいないが、何となく力が備わっているのはわかる。

 

(しかしあれだな。剣を振るいたくなった。そこら辺の棒切れで技の確認でもしよう)

 

 謎の疼きを抑えるため、体の感覚を取り戻すために体を動かしていたら院長からある修練場を紹介された。八重樫流剣術道場というところらしい。

 

(新たな技が手に入るか…楽しみだ。)

 

 

……………

…………

………

 

 

「今日から新しく入る門下生だ。皆、仲良くするようにな」

『はい!』

「竜胆 蛇騎、です。よろしく」

 

(いくつか鋭い視線があるな、値踏みされているのか)

 

「竜胆、早速だがウチの門下生の一人と試合をしてもらう。本来なら礼儀作法や型から行うんだがな……雫!」

「はい、師範」

「この娘はウチの孫娘の雫だ。同学年の中では負けなしで年上にも何回か勝ったことがある。そして雫、今からお前には竜胆と試合をしてもらう、いいな」

「わかりました」

 

「それでは、始め!」

「やあぁぁぁあ!!」

 

上段から竹刀を振り下ろしてくる。それを俺は得物でいなし近寄り、敵の姿勢を崩させる。

 

(確かハイランダーから教えてもらった技だったか。使わせてもらおう。)

 

狙うは目。脳髄まで突き刺し、抉りだすイメージを――――。

 

"ブレインレンド"

 

「そこまでだ!」

 

技が決まる直前に終了の合図が鳴った。

相手をしてくれた雫が涙を浮かべてへたり込んでいる。

 

(うむ、強者と聞いて技を使ってみたがこれはやりすぎたか。)

 

「すまない。立ち上がれるか――」

「悪者め、俺が倒してやる!うおおおおお!!」

 

 手を出して立てるようにと促そうとしたら、背後から大声を発しながら誰かがやってくる。

 

(倒すのなら声を出さずに攻撃を仕掛ければいいものを。最も、こちらに怒りの視線を向けた時点で対処してくれ、といっているようなものだがな。)

 

 出された右手を強引につかみ立ち上がらせる。その反動で振り向き、相手を捉える。

 

(上段からの攻撃か。好きだなお前ら)

 

 振り向きざまに得物を相手の手の甲に当て、相手の得物を落とさせる。痛みで突進を止め、理不尽だと言わんばかりにこちらを睨む。

 

「襲ってきたから対処したまでだ。で、なぜ俺が悪者になる」

「雫を泣かしたからだっ!女の子を泣かすのは悪いことなんだぞ!」

「別に泣かせるつもりでやったわけじゃない。ただ、試合を本気で臨んだだけだ」

「なんで本気で戦ったんだ?手加減をすればいいだろ?雫は女の子なんだから」

「なぜ試合で手加減をしなければならない。自らの技量を確認するために試合をするものだろう。それに、手加減は相手を侮辱する行為だぞ。たとえ相手が女だとしてもな」

 

直感で解った。コイツ、苦手タイプだと。覚悟なんて全くもってない軟弱な奴、冒険者の中では真っ先に死ぬ奴だと。

 

 

……………

…………

………

 

 

 それからいろいろあって、俺が子供の体に戻ってから10年ほどの時が経った。今は高校という育成機関に所属して2年目になる。

 以前は10年経つのは直ぐの事だったが今はそんなことはない。人は新しい発見や興味があると刻を感じるのが遅くなると聞いたことがあるが、全くもってその通りだ。

 相変わらず世界樹に戻ることはできていない。もしかすると、ミズガルドが保管している古文書に記載されていた「異世界転生」といわれる古代技術なのかもしれない。トラックもないのに行えるとは、流石世界樹だな。

 

 あれからも八重樫流剣術道場にお世話になっている。最近、八重樫の家の人々から「ウチの跡を継がないか?」と言われ続けている。

 すまない。俺はファフニールの騎士であってシノビではない。

 

 毎回断る度に雫が泣きそうな顔をしてくる。お蔭で同じ門下生の光輝がよく突っかってくる。

 雫の理由は何となくわかるさ。それに腕のいい者はどこも欲しがるというのもあるだろう。実際、冒険者の頃もいろいろな所から声をかけられていたからな。だが光輝、お前が殴ってくる理由だけは分からない。逆恨みだろ、それ。

 



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第零階層-2

世界樹の迷宮Xのキャラクタクリエイト楽しい


 今日は月曜日。大体の人にとって始まりの日であり、仕事や学業に精を出す日。同時に週の中で一番気分の上がらない日でもあるらしい。

 曜日、というのは面白い制約だ。7で一括りにして週と表し、日月火水木金土を割り振る。アースガルドでは月日のみで、休みの設定も日にちのみであったから新鮮に感じた。

 今となっては窮屈に感じているが。

 

(曜日に縛られ憂鬱になる。まあ、今日が何曜日だろうとすることは変わりないがな)

 

 今は05AMから30分ほど経った時間か。1時間ほど前から行っていた走り込みを止め、特注の木刀を手に持ち素振りを始める。

 この木刀は中に金属が入っており、重さをこっちに来る前までに愛用していた武器に合わせている。

 

「おはよう蛇騎。今日も朝から精がでるわね」

「おはよう雫」

 

 窓から雫が声をかけてくる。実を言うと俺は2年ほど前から八重樫家の養子になっている。名前は孤児院の頃から使っている竜胆のままだが仲良くしてもらってる。

 なぜ俺を養子にしたのか師範たちに聞いたところ、「お前ほどの剣士が都合によって刀を振るわなくなるのが我慢ならなかった。」と言われた。

 確かに金銭面での関係で八重樫流剣術道場からは抜ける予定ではあったが、別に剣を捨てるわけじゃない。なんならひと月に1回は顔を出そうとは思っていた。

 そう伝えたところ、「そうだったのか。まぁそのまま雫と一緒に継いでくれれば、と思ってたからな。取り消すつもりは無いぞ」と言われた。……オイ、それでいいのか師範。雫は雫で師範たちに殴りかかっていた。

 

 一通りの鍛錬を終えて汗を流し、朝食を食べ学校へと向かう準備を済ませ、雫と一緒に登校。途中、雫の親友で幼馴染の香織とも出会い一緒に登校する。

 学校に着くとクラスの4割ほどの人が教室にいた。

 自分の席に腰を落ち着けると、光輝が突っかかってきた。内容はいつも通り俺の養子入りについてだろう。

 

(毎度同じことを聞いてきて飽きないのか、コイツ)

 

「で、何の用だ」

「雫の家から出ていけ!」

「お前はあの家の家主か?違うだろう。故にお前の言うことを聞く道理がない。尤も(もっとも)向こうから縁を切りたい、と言われればその限りじゃないがな」

「なら鷲三さん達に言って、切ってもらえばいい」

「現状に不満があるならそうしているが、そんなものは一切ない。だから破棄を願うつもりはない」

「なっ!?お前なんかが八重樫家に居たら、雫が可愛そうだろ!」

「と、光輝は言っているがどうなんだ、雫」

「ええっ!?わ、私はイヤじゃないわよ」

「だ、そうだ」

「ウソだ!!竜胆、雫を脅しているんだろう!!そうじゃなきゃ雫がそんなこと言うはずがない!!オイ、聞いているのか!!?」

 

(コイツはオーバーロードにでも操られているのだろうか?じゃなきゃ普通はこんな言い合いはしないだろう。無謀な冒険者でももう少し聞き分けはよかったぞ)

 

 

そんなやり取りがHR直前まで続く。なるほど、これは気分が上がらないわけだ。

そんな中光輝を中心に円方陣が現れ、教室が光に包まれた。




体内時計が驚くほど精確。さすがボウケンシャー。
体力は学校内でトップ、学力は上の下。ミズガルズ図書館の調査員なのでそこそこ頭が良いファフさん。但し、習っている言語はすべて古代文字(ファフさんにとって)。まじヤバくね?小学校の頃は驚いていたはず。
今でも未来文字(雫達にとっては)を書くときがある。

朝からずっと蛇騎に噛みついていたのでハジメには突っかかってない(突っかかる余裕がない)。
なので転移するまでハジメと香織はイチャイチャしてた。


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第零階層-3

ハジメはガンナー、ユエはゾディアック、シアはインペリアル、ティオはパラディン、香織はメディック…………バランスいいなぁ(なお世界樹の迷宮Xの話)

と、いうわけで第3話です


 樹海時軸での転移のような浮遊感を感じて目を開けると、ラガード公宮のような荘厳で威圧的で、しかし歪な雰囲気のある建物内にいた。一番近いのはハイ・ラガードの世界樹の第五階層「天ノ磐座」か?

 あたりを見回してみると、大きな台座の上に教室にいた人間が全員いるようだ。少し先、台座の下から一人の人間がやってくる。

 

「トータスへようこそ勇者の皆様方、私の名はイシュタル・ランゴバルド。少しお話を聞いてもらってもよろしいですかな?」

 

痛々しいほどに金に包まれた老人だった。

 

 

……………

…………

………

 

 

 台座から大広間のようなところに連れられて、ここに来るまでの経緯を聞かされた。

 話をまとめると、戦争で劣勢になったため、この世界の神が最強と称される異界の勇者を呼び、助けてもらおう。

ということらしい。ミッションのようなものか。

 そして俺たちが地球に戻れるかどうかも神のみぞ知る、だそうだ。

 

 

「俺は戦おうと思う。この世界の人たちが滅亡の危機にあるのを知って、放っておくなんて出来ない。それに救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん、どうですか?」

「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」

「俺たちには大きな力があるんですよね?ここに来てから力がみなぎっている感じがあります」

「ええ。大体この世界の者と比べると数倍~数十倍の力を持っていると考えられます」

「なら大丈夫だ。俺は戦う!俺が世界とみんなを救って見せる!!」

 

 

(勝手にすればいい……)

 

 そう思っても仕方ないはずだ。俺たちだってフォレスト・セルの脅威からハイ・ラガード公国を救ったことがあるが、そんな単純なものじゃなかった。

 俺やアリアンナ、フラヴィオ、クロエ、ベルトランの全員が満身創痍になっても倒しきることはかなわず、聖杯の力と護り手の力を最大限まで使って半ば相討ちのような形で倒したのだから。

 俺たちの不手際によって恐怖に晒されたハイ・ラガードの為ならいざ知らず、全く知らない世界の戦争を終わらせてくれなど、いくらお人よし冒険者といわれた俺でもやりたくない。

 それにあの老人は俺たちのことをただの駒としか思ってないようだしな。

 

(ハイ・ラガードのトップの人間だって、聖杯を手に入れるために他のギルドのメンバーや他種族を殺してまで世界樹に登れ、とは言わなかったぞ)

 

 

「質問をしたい。いいか?」

「ええ、何なりと」

「過去に魔人族側と話し合いをすることはあったのか?」

「いいえ、相手は蛮族。話し合いなど到底できますまい。出会った瞬間殺されるのがオチですな」

「俺たちは戦争を終わらせればいいんだな?」

「はい、人間族の勝利で戦争を終わらせていただきたいのです」

「勝利は必須か?」

「ええ。負けてしまえば魔人族に殺されてしまいますから。私たちの繁栄のためにもあなた方には是非とも魔人族を殺していただきたいのです」

「……魔人族を殺せばいいのか?」

「はい。魔人族を根絶やしにしてほしいのです」

「…………そうか、理解した」

 

(こいつらに従属してはならないことがな)

 

 

 今の質問でどれだけのクラスメイトが理解したのだろうか。

 イシュタルの願い、ひいてはエヒトの願いが戦争を終わらせるのではなく殺し合いが見たいだけだと。

 折を見てこいつらから手を切らなければならない。問題はどれだけのクラスメイトを守れるかだ。

 

 

……………

…………

………

 

 

 クラスメイトの大多数が戦争参加の決意をしたため、俺たちを受け入れる聖教教会のお膝元であるハイリヒ王国へと向かうこととなった。

 戦争の参加を表明しなかったのは俺を含めて5人。雫、香織、愛子先生、ハジメである。その他のクラスメイトは「光輝がやるなら」「友達が参加するなら」といったその場の空気に流された者たちだ。

 きちんと参加を決意したのは光輝と、その相棒のような龍太郎だけだった。

 

「彼の者へと至る道、信仰と共に開かれん――"天道"」

 

 今、他の生徒達は動く床に大はしゃぎだ。そんなに動く床が珍しいか?地球にはエレベータやエスカレータなどあるだろうに。

 ましてや桜ノ立橋の動く床だって何も唱えずとも動くんだが?なんとも使い勝手の悪い床だな。

 

 

 王宮に着くと俺たちは直ぐに謁見の間に案内された。途中、すれ違う人が期待や畏敬の念に満ちた視線を寄こしてくる。

 そんなに俺たちは頼りがいがありそうな格好をしているか?大半の奴は筋肉あるように見えないのにな、俺の親友のように。

 

(フラヴィオもあれでいて索敵や探索においては頼りにしていた。人は見かけで判断してはいけない、ということをわかっているのか?……いや、ただ[神の使徒]という肩書きに畏れているだけか)

 

 美しい意匠の凝らされた巨大な両開きの扉の前についた。ここが謁見の間だろう。扉の前にいる兵士二人が扉を開けると俺たちを中へと通す。

 扉をくぐると、部屋の左右に武官と文官がそれぞれ30人ほど並んでおり、最奥には王族と思しき人たちがいた。

 俺は王族の内の一人に目を奪われた。

 

 

 イシュタルが国王になにかさせていたがどうでもいい。

 王国側の人物の自己紹介?彼女の以外は聞く気はない。

 

 腰まで届くほどの艶やかな紫の髪、大きくキラキラと輝き好奇心と強い意志を宿した目、ふんわりとした物腰の柔らかそうな雰囲気、まさか……彼女は―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アリ、アンナ……!」

 

 

「私はハイリヒ王国第一王女、アリアンナ・S・B・ハイリヒです。皆様にお目にかかれて光栄です」

 

幾千年、逢いたいと願い続けていた最愛の女性が、そこにいた。




お人よし冒険者ファフさん。提示されるクエストは全部消化したくなっちゃう……だってボウケンシャーなんだもん!


ハイリヒの王族は全員金髪碧眼らしいですね。
...隔世遺伝ってやつにしといてください。


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第零階層-4

120×70(mm) ステータスプレート
60×120(mm) iPod touch(第6世代)
67×103(mm) 生徒手帳
67×92(mm) レギュラーサイズのスリーブ(キャラスリ)

生徒手帳に入れれなかった…なので第4話です
…あ、アンケートあります


 王国側の自己紹介が終わり、俺たちは大ホールに通された。周りを見てみるといたるところにテーブルが設置されていて、その上に料理が乗っている。どうやらここで立食形式で晩餐会が行われるようだ。

 俺たちがホールに入る前に何人か人が居たが、聞けば俺たちの訓練を見てくれる教官たちだそうだ。長い間戦いに身を置いた者特有のオーラを持つ者がいる。訓練が楽しみだ。

 王族がホールに入場し晩餐会が始まる。動きやすい服装に着替えてきたようだ。

 

(鮮やかな青色のパンプキンパイにオレンジソースが架かった紫色のステーキか……どれもレジィナの店で食べたことのあるものたちだな。なんだか懐かしい気持ちになる)

 

 

「お隣、よろしいでしょうか」

「っ!?…ああ、いいぞ」

「有難うございます、騎士様(・・・)

 

 騎士様。その言葉を聞いて眩暈がした。

 確かにこの体はアリアンナと一緒にいた時のように肌は浅黒く白に近い髪色をしているが……

いや、彼女は俺をみて「騎士様」と言った。それだけで解った。それだけでいい。

 

「アリアンナ、なのか……?」

「はい。カレドニアの王女であり印の少女として貴方を騎士に任命したアリアンナです」

 

 ふにゃり、と笑いこちらを見る彼女は俺の知っている彼女(アリアンナ)だった。

 

 

 

 

「むぅ…………」

「どうしたの?雫ちゃん」

 

 晩餐会が始まってから()はずっと不機嫌だ。

 視線の先には楽しそうに談笑する蛇騎とアリアンナ王女がいる。別にそれはどうでもいい。

 問題は、彼女が他の生徒達とは話さず真っ先に蛇騎のところに向かっていったことだ。

 

(蛇騎のやつ、あんなにうれしそうな顔をして…)

 

 蛇騎はあまり感情を顔に出すことがない。いつも表情を変えず動じない彼は、見た目も相まって道場の門下生から「おじい」なんてあだ名をつけられている。私も師範(おじいちゃん)よりおじいちゃんしてる、と思ったことがある。

 そんな彼がすごくうれしそうにしている。私の前じゃなく、ぽっと出の王女に。顔には出てないけど。

 

「あれって蛇騎君とアリアンナちゃん、だっけ。仲良さそうだねー」

 

 こっちの青年貴族たちに言い寄られていた香織がいつの間にかこっちにきてた。

 そしてのんきなことを言い出した。あれか、南雲君に色目を使われていないからこうも余裕なのか。

ヨシ、ちょっとだけ意地悪してやろう。そうしよう。

 

「……香織とアリアンナ王女って似てるところあるわよね」

「んー、そうかな?」

「例えば髪型とか。腰まで届きそうな長さがあるし、前髪は揃えてるし」

「そういえばそうだね」

「どこか抜けてて庇護欲をかきたてる雰囲気とか」

「そ、そうかな…?」

「ほわほわしてて、アホっぽそうな見た目とか」

「ちょっと、雫ちゃん!?」

「ホント香織に似てるわよね……」

「ひどくない!?ねぇ、ひどくない!?!?いくら雫ちゃんでも怒るよ!!」

 

 ひとしきり怒った香織がとんでもないことを言った。

 

「あ、もしかして蛇騎君が私のことを好きだと思ってるの?」

「!……!………!!」

「いひゃい!ひううはん、いはいお~」

 

 そのほっぺた千切ってやろうかしら!!?

 

 

 

 

 翌日、さっそく訓練と座学が始まった。

 現在は08AMから少し過ぎたくらい。集まった俺たちに120×70(mm)程の銀色のプレートが配られた。

 メルドの話によると、配られたこれはステータスプレートと呼ばれるアーティファクトで、自分のステータスを客観的に数値化するものだそうだ。

 そして唯一一般にも広まっているアーティファクトでもあるらしい。

 これが一般的に普及しているのは神が不穏分子を探すためなのか、この世界の人を管理するためなのか。…考えてもしかたない。とりあえず起動してみようか。何事をなすにしても自分の力量を知っておかなければならないからな。

 

 

=====

竜胆 蛇騎 17535歳 男 レベル1

天職:ファフニール

 筋力:9 +2.7

 体力:33 +9.9

 耐性:6 +2.64

 敏捷:5 +1

 魔力:19 +5.7

 魔耐:5 +2.2

 

技能

 世界樹の加護[+物理ブースト★★][+属性ブースト★][+抑制ブースト★][+素早さブースト★][+体力ブースト★][+魔力ブースト★][+武具鑑定][+敵意察知]

 黒の護り手[+変身][+自己再生]

 炎属性適性

 氷属性適性

 雷属性適性

 ウェポンフリー

 皆伝[+シノビ][+ブシドー][+ショーグン]

 言語理解

=====

 

 

 アリアンナとの繋がりであり、長年付き添ってきた黒の護り手としての力がまだ俺にあることが判明した。

 地球では人気のないところで何回か変身に挑戦したがいずれも失敗していた。だからきちんと使えると表記されているのは素直に嬉しい。

 

(これが俺の今の力か。技能の方も身に覚えのあるものばかりだな。だが年齢をどうにか誤魔化せないものか……)

 

 そう悩んでいると、ステータスプレートの文字がひとりでに動き出し、年齢の欄が17歳になった。

 詳しく見るとどうやら最初の年齢は精神年齢で変化後は肉体年齢だそうだ。

 

(この肉体で17年、向こう(アースガルド)で冒険者になったのが数えで18ぐらいの時だから17500年もの間生き続けてきたのか……)

 

 感慨にふけていると周りがうるさくなってきた。なにかあったのか?

 

「ブッハァー!!なんだこれ!完全に一般人じゃねぇかぁ?」

「ギャハハハ!むしろ平均が10なんだから、下手すりゃその辺の子供より弱いだろ~」

「ヒャァハハ~、無理無理!直ぐ死ぬってコイツ!肉壁にもならねぇよ!」

 

「そんなにひどいものなのか?」

「あ?なんだよ竜胆、お前も見るか?南雲のザコ過ぎるステータスをよ~」

 

 

=====

南雲 ハジメ 17歳 男 レベル1

天職:錬成師

 筋力:10

 体力:10

 耐性:10

 敏捷:10

 魔力:10

 魔耐:10

 

技能

 錬成

 言語理解

=====

 

 

「フム…、悪くはないな。耐性、敏捷、魔耐の値は俺よりも上だ。それに戦いにおいてステータスで勝負が決まることはほぼないし、低いのなら上げればいいだけだろう。悲観することはないぞ南雲」

「え!?あ、ありがとう竜胆君」

「おい竜胆てめぇ、何勝手に南雲に返してンだ。あぁ?」

「てかコイツ南雲よりステータス低いとか言ってなかったか?」

「つまりコイツが一番ザコかよっ!!うけるーw」

 

「ダキ、お前さんのステータスプレートを見せてくれないか?お前さんで最後なんだ」

「ああ、問題ない」

 

ステータスプレートをメルドに見せた。するとメルドは渋い顔をし始めた。

 

「どうしたンすかメルドさんw弱くて話になんねーとかスか?」

「いや、ステータスはまあまあだが問題が天職や技能の欄でな。なんて書いてあるのかが読めないんだ」

「ハッ、技能も分からねーとかザコすぎじゃん!マジ乙ーwギャハハハハハ!!」

 

 さっきまで南雲に突っかかっていた奴らが次々に笑い出す。そこに怒りの声を発する人がいた。愛子先生だ。

 

「こらー!何を笑っているんですか!仲間を笑うなんて先生許しませんよ!ええ、先生は絶対に許しません!」

 

 ずんずんとこちらに向かってくると、励ますように左手を取った。

 

「竜胆君、気にすることはありません!先生は非戦闘系?の天職らしいですし、ステータスだって平均を下回っているものもあります。竜胆君は一人じゃありませんからねっ!」

 

 そう言って愛子先生は俺にステータスを見せてくれた。結論を言えば魔力が桁違いに多いファーマーだった。

 近くにいた南雲も愛子先生のステータスをのぞき見ていたが急に肩を落として正気を失っていた。




ステータスはセカQ準拠。だとしてもそこら辺の兵士よりはずっとつよい。さすがボウケンシャー
トータス基準に直すなら表示値の3~5倍くらいかな?


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第零階層-5

アンケートの途中結果なんですけど、五話投稿現在、5倍近く差をつけてステータスをバグらせる案が多い。
やっぱりぼくらのボウケンシャーはさいきょうなんだぜ!
どっちにしろストーリーはpicnic仕様。hageることはない。



 俺たちがトータスへとやってきてから10日ほど経った。

 現在、俺は…

 

 

「いくわよ、蛇騎」

 

 

"払い弐刀""上段の構え""果し合い"

 

「こい、雫」

 

 

雫と模擬戦をしていた。

 

 

「ハァッ!!」

 

 雫が地面を蹴り神速の如き速さで向かってくる。こちらに来てから敏捷性を主に鍛えた雫はクラスの中でも1、2を争う速さを獲得していた。

 だが――

 

 起こすは炎、断ち斬れ"飛鳥落とし・弐連卸し焔"

 

「ゼアッ!!」

 

 

――動きは直線すぎるし、間合いを取りすぎだ。お蔭で迎撃しやすい。

 

 地面へと攻撃を当て火柱と土煙で壁をつくる。その為、雫は手前で停まって得物を横に一閃。壁を斬った。その瞬間、下の土煙から針が飛んできた。

 

「っ!!?」

 

 すぐさま重心をずらし得物ではじく雫。直後、上から短剣が降ってくる。

 

「いつの間にっ……!」

 

 1投につき2本、それぞれけん制と急所を狙った攻撃が4回、計8本の短剣が雫めがけて降り注ぐ。それを何とか躱す雫だったが、不意に正面と背後から雫の首に剣が突き立てられる。

 

「どうする?」

「フゥ……負けました。あーあ、これで5842戦5841敗。トータスに来てからは全戦全敗ね」

「いや5842戦2勝だろう」

「あの時は蛇騎が体調不良だったからノーカンよノーカン。ていうか強くなりすぎじゃないかしら?全然勝てないじゃない」

「こちらの世界に来て身体能力が上がっているからな。雫も良い線までいっている。ただ思考が動きについていけてないだけだ。そこをどうにかすればいい」

「簡単に言うけど難しいやつよね、ソレ。なにかコツとかないの?」

「コツなんてない。慣れるしかない」

「これだから天才は……」

 

(実際のところ、戦闘能力の差によるズレには何千年と付き合ってきたからな)

 

 今回俺がやったことは簡単だ。土煙に"潜伏"しカウンターの体勢をとる。挟撃と針による気の逸らしは魔力で生み出した影を使った。

 

 

 現在10分ほどで10AMになるといったところか。俺たちがトータスに来てからの一日のスケジュールは、午前に戦闘訓練、昼食をはさんで座学と戦闘訓練となっている。

 訓練は雫や王宮騎士・王宮魔導士との模擬戦、たまに王国郊外で魔物との戦闘。座学は魔法と魔物の勉強だ。

 この世界では様々な属性での攻撃手段があるが、魔物にどの属性が効きやすいかを研究したものは無い。またどのような倒し方をすれば希少素材が手に入るのか、魔物素材を使った武器防具の作成の仕方等の書物も見受けられなかった。

 

(拍子ぬけだ。この程度の知識でよくここの人間が生き抜いてきたな。ある意味賞賛する)

 

 

……………

…………

………

 

 

「こんばんは、蛇騎様」

「ああ、こんばんはアリアンナ」

 

 このトータスに来てから毎晩、王宮のテラスでアリアンナと二人きりで話をしている。

 

「今日も訓練お疲れ様です。あ、今日の模擬戦は何だか少し懐かしい感じがしました」

「そうか?」

「はい。エスバットのお二人の戦闘を見ているようでした」

 

 エスバット。巫術医(ドクトルマグス)銃士(ガンナー)の2人のギルド。当時はハイ・ラガード一のギルドと呼ばれていた。

 彼らの戦闘を見たのは俺たちと対峙したときのみだったか。そういえば今日のような作戦で俺は追い詰められていたな。あの時はフラヴィオの援護で事なきを得たんだったか。懐かしい。

 

「そういえば、近々オルクス大迷宮での実戦訓練があるそうですね。少しの間ですけど、また蛇騎様と離れてしまうのは寂しいです…」

「そう、か……。教えてくれてありがとう、アリアンナ」

「いえ、礼には及びません。私もまだ迷宮に行ったことがないので蛇騎様が羨ましいです」

「どんな場所なんだろうな。楽しみだ」

「そうですね、ワクワクします!きっとクロエ様なら『すごく興味深い。クロエ、ここに住む』とか言いそうですね」

「確かにな」

 

 こうやって話していると昔に戻った気分になる。今はここに二人しかいないが落ち着いたらフラヴィオ達を探すのもいいかもしれない。

 

「ふふっ、今日も夜遅くまでたくさんお話してしましましたね」

「だな」

「少し名残惜しいですが……おやすみなさい、蛇騎様」

「ああ、おやすみ。アリアンナ」

 

 

 そして4日後、オルクス大迷宮に潜ることになった。




この作品での一日のスケジュール
 06AM、朝食
 08AM~10AM、戦闘訓練
 11AM、昼食
 01PM~03PM、座学
 04PM~06PM、戦闘訓練
 08PM~11PM、夕食・風呂・就寝
時刻の表記は数字を書いてからAM/PMをつけるらしいです。クロエ、また一つ賢くなった。

アリアンナは王女様なので今回は迷宮には潜りません。が、アリアンナもボウケンシャー。なにかを起こす予定。



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