44番目の悪魔 (ミネラルいろはす)
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比企谷八幡
ちょくちょく更新できたらいいなぁ
セブンスターズ幻の第8席、そんな噂を耳にしたことはないか?
そもそもセブンスターズとはその名の指す通り、ギャラルホルンにおける七つの名家のことを表す言葉であり、最高決定機関である。
つまり、ギャラルホルンで一番偉い人たちというわけだ。
それを決めたのは300年も昔厄祭戦での戦果によって決められたもので現代において、そこに入り込むことはおろか、成り替わることなどほとんど不可能に近い。
だが、ギャラルホルン内では実しやかに噂されているのだ。幻の第8席のセブンスターズについて、曰く、賄賂を積んで権利を買った、曰く、現当主を脅して奪った、曰く、セブンスターズ全員の弱みを握っている、曰く、MAを倒した功績だなど、様々な憶測が飛び交っているが誰も本当のことを知らない。
しかも、誰もその人物を見たことがなく、噂のみが四方に飛び交っているのだ。
そんなわけで、今ではただの噂だったのではないかと思っている人がほとんどだ。
だが、それは単なる噂ではない。
確かにセブンスターズの幻の第8席は存在する。
複雑な事情が絡みに絡まり合って表には出せないため、一般には公開されておらず、一部の特権階級のみが知っているその人物。
それこそが、44番目の悪魔の名を冠するガンダムフレーム、ガンダムシャクスに乗る男比企谷八幡。
彼は、特権階級の貴族でもなければ、栄誉ある家柄のものでもない。
元々は宇宙ネズミなんて呼ばれるゴミカス同然の身分だった男だ。
それが、なんの因果かガンダムと巡り合い、そして、天使の名を冠するMAと出会い、それを単独で撃破という有り得ない戦果を上げてしまったのだ。
そう有り得ないのだ、いくら300年前の遺産とはいえ、厄祭戦の原因となった悪しきもの。それをたった一人の少年が一人で倒すなど、しかも機体は300年前のままの機体、更に戦闘用ではなく主に偵察を目的とする機体ときた。
それはほんの少し前に起きた、とある街の惨劇の話。
ある日突然一つの街が炎に包まれた。
原因不明の機体が暴れていると通報があり複数の隊が出動した。
モビルスーツを数機と、モビルワーカーを数十機。
現代では原因不明の機体とは言え過剰すぎる戦力、送り出した奴らも出動した隊員達もすぐに終わると思っていた。
しかし、先遣部隊から応援の連絡があってから、現場に向かったギャラルホルンの部隊は恐怖した。
半壊する街、燃え盛る家、ところかしこで火の手が上がっている。
滅多な事件など起きないこの街でフル装備での出撃命令が出たときはどんな事件かワクワクしていた隊員もいたはずだ。
だが、自分達がこれから相手にする機体とはそういう存在なのだと見せつけられているように思えたからだ。
それに先遣隊のギャラルホルン部隊とは向かう途中で音信不通となり、連絡が取れなくなってしまった。
戦っているため通信ができない状態なのか、はたまたもうすでに彼らは‥。
「なっ!これは!!」
覚悟をして来た彼らが目にしたものは異様な光景だった。
もはや更地とかしている街の中央に広がるギャラルホルンのMSやMWの残骸。そして、原因となった機体のものと思われる巨大な機械。
羽と思しきパーツもあちらこちらに広がっており、かなりの激闘を繰り広げた様子がうかがえる。
そして、その元凶であろう機体の上に降り立つ一機のMS。
漆黒の翼を広げ機体に降りたつその機体はまさしく悪魔のように見えたという。
そのあとすぐに箝口令が引かれ、このことは詮索不要な案件とされてしまっていた。
そしてこのMSこそがガンダムフレームガンダムシャクスであり、そのパイロット比企谷八幡だったのだ。
あの街で何があったのかを知る者は多くはない。
だが、くしくも彼が残してしまった戦果はギャラルホルン上層部には無視できないものだった。
そして、協議の結果、彼にはいくつかの要望を聴くことと多額の賞金それを引き換えに件の隠蔽及びギャラルホルンへの協力することを契約した。
その上で、彼にはあらゆるギャラルホルンが関わっている戦場への参加を無条件で認めるライセンスを発行し、度々手を焼く案件などを彼に依頼という形で頼む形に落ち着いた。
彼の要望はおおよそのことは通り、そして数多くの戦場へと赴くことで戦果を挙げていた彼はギャラルホルン内での権力を着々と伸ばしていた。
それが噂としてセブンスターズと同様の権力を持つと誤解した隊員達が出した答えが幻の第8席なのではというものだった。
実際彼は彼らの尻拭いをいくつもこなしてはいるが、権力自体は遠く及ばない。
簡単に言えば、飼い主とペットの関係だ。
彼らは彼に特権を与え彼は飼い主のために死に物狂いで戦場へと赴く。
だが、それは多くの隊員達への命令権を持ち好きなように戦場へと介入できる、それに給料も口止め料として破格の額を貰っている。
平の隊員達から見ればその権力はセブンスターズと遜色ないものに映るだろう。
なので、あながち噂自体は間違いではないのだ、あくまで平の隊員達から見ればの話だが。
それにその噂の本人は貴族や上の人物には疎ましく思われてはいるが、弱味を握られているのもあるのと、汚れ役に使いやすいというのもあり重宝されているのだ。
そんな噂の本人はと言うと‥‥
「ああくそっ!!まだ終わんねえのか、あとどれくらい残ってる?」
「あと、数十件分の始末書が残ってるわよ、ほら」
自分の戦艦の執務室の中にいた。
一人の男と女が山のように積まれたデスクの上で作業をしている。
積まれている資料は彼の戦果の資料の作成並びに始末書を書くための紙だ。
「はぁ、働きたくねぇ、ずっと家に引きこもっていたい。」
「そんなこと言って、これ全部貴方の始末書でしょ。毎回毎回命令通りにしないからこんなに書く羽目になるのよ。少しは学習したらどうかしら比企谷君?」
「そんなこと言ったってなぁ」
疲れた目で側にある資料に目を向ける比企谷と呼ばれた男。
その資料に書かれているのはこの仕事で遭遇した目撃者及び関係者の抹殺。
だが、彼はその命令を無視し、何人かを彼の管理下に置くことによって上記の命令を無視したのだ。
もちろんその際に依頼主に不利益が被る場合に関する賠償の話や始末の付け方などが契約書という形でこうして送られてくるのだ。
それも一つや二つではなく、彼が仕事に行くとほとんど始末書を数枚送られてくる。
むしろ送られてくることがないことの方が多い。
「貴方のそうゆう優しいところは好ましく思うけれど、あまり背負いすぎないでね、ただでさえ貴方は背負いすぎてるのだから」
「わかってるって雪ノ下、俺も簡単に死ねるような立場にないのはわかってる。それに俺が死んだらお前らがどんな目にあうかわからないからな」
「そう‥わかってるならいいの」
目の前の少女雪ノ下雪乃、彼女もまた依頼の末に保護した少女。
依頼内容は不正を働いていた彼女の親を殺すこと。
彼女の親は元々家から武器まで様々なものを作っていたのだが、それをギャラルホルンだけではなく裏の業者に流していたり、滞納金をちょろまかしたりとそれだけならここまでのことにはならなかったが、それがたまたま強い権力を持った貴族の子供が彼らが裏に流した武器で殺されたのだ。
もちろん、その親は怒りに怒って様々な関係者に武器の出どころや殺した奴に関係がある人物を殺し始めた。
そうして、武器を売った雪ノ下の親まで行き着いたのだが、流石に一般人とは違い大手の企業は一筋縄ではいかない。
だから、俺に依頼が回ってきた。
彼女の両親を殺すこと、娘は奴隷として売りはらえと。
なあなあの末に彼女達の姉妹を助けることになったのだが、そのうち話すことにしよう。
だから、俺は死ねない。
俺が死んだら彼女達が彼らにどんな扱いを受けるかわからない。
昔と違いいつ死んでもいい状況から、絶対死ねない状況へと変わった今俺一人の死は俺が守っている人達全員に対しての死に直結しかねないからな。
「‥‥貴方が死んだら私たちも死ぬわ」
他の人たちに弄ばれるくらいならねと言い残して彼女もまた始末書へと戻る。
彼女の重すぎる想いも、俺が関わってしまった故の産物だ。
だから、彼女にあの恐怖を再び味あわせるわけにはいかない。
「‥‥わかってるつうの」
雪ノ下に聞こえない小声でつぶやく。
心なしか彼女の方が赤く染まっているのは気のせいだと思いたい。
聞こえてたとかなったら死にたくなるかな。
「‥‥はぁ、やりますかねぇ」
俺も再び始末書へと手を付ける。
明日にはまた依頼が入っているし、気になる事もある。
こんなところで、始末書を書いている時間自体も本当は惜しいんだが、残っているのは俺の確認が必要なものだけだと言うのだからやらなければならない。
俺の確認がいらないものはいつも彼女達が終わらせてくれているので本当感謝しかない。
ふと、何かを思い出したのかこちらに顔を向ける雪ノ下。
「それと貴方が気にしていた件についてだけど近いうちにことを起こすらしいわよ彼ら。預けている子達も危険かもしれないけどどうするの?」
「‥‥なんで、それを知ってるかは聞かないが、バレてるならしょうがないか。‥‥まあ俺なりになんとかするつもりだ、名瀬さんにも世話になってるしあいつらを行かせたのも俺だしな。」
雪ノ下は、俺の知らないところでいろいろ情報をつかんでくるので今回の違法兵器の件の情報をすでに持っていてもおかしくはない。
流石うちの参謀役を務めているだけはある。
「けど、相手はセブンスターズも絡んでくるのでしょう?本当に大丈夫なのね」
「あぁ何とかする、いやして見せる。由比ヶ浜と一色を送ったのは俺だ、それを助けに行くついでに名瀬さんのところの子も助けられるだけ助ける。それに目的としては俺の艦の仲間を回収しに行くだけ、まあ何とかなるさ」
「そう…あなたがそう言うなら信じるわ。…けど絶対生きて帰ってきなさいよ、みんなで」
「ああ、わかってる。仲間を助けに行くついでにたまたま襲われている名瀬さんたちも助ける。雪ノ下達はいつも通り始末書を片付ける用意だけはしといてくれ。あとはなんとかする、いつも通りな」
そう、と相槌を打って再び始末書へと戻る雪ノ下。
いつも彼女たちには残していく不安を味合わせてしまうのは申し訳ないが、今回ばかりは動かないわけにはいかない。
別に俺はギャラルホルンのやり方についてどうこう言うつもりはない、今までもお偉いさんの仕事をこなして生活してきたんだ。
世界がどうなろうと関係ない。
誰が権力を持とうが気にもしなかったが、俺のものに手を出すなら俺も動かないわけにはいかないよな。
世界が変わろうと、人は変わらない。
だから、俺は俺の守るべき物のために赴こう戦場へと
お読みいただきありがとうございました。
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会敵
これは自分の自己満足小説なのでそこはご了承ください。
「ここは俺だけでいい、みんな退艦準備をするんだ」
タービンズの艦首室で一人の男が艦を動かしている女達に告げる。
女たちと言ってもこの艦には男は彼一人なので必然的に彼以外の全員になるわけだが。
ここから先は死地だ。
その死地に女を連れて行く気なんてさらさらない。
今まで艦で命を張らしてきた俺がいうのもあれだが、女に命を張らせるわけにはいかない。
特に今回みたいな逃れようのない泥舟からはな。
俺の説明に皆納得した様子はなかったが、渋々言うことを聞いてくれたようで今艦内中で退艦準備の声が飛び交っている。
「違法兵器ねぇ?ほっんとあれだけオルガに身内に気をつけろって言っておいて、兄貴分の俺がまんまと足元救われてちゃ笑い話にもならねぇよなアミダ」
「ほんと笑えない冗談だよまったく、それも相手はかのギャラルホルンのセブンスターズの一人って言うじゃないか。どこでそんな大物と繋がってたのかねぇ」
一人だけ退艦を断り残ったアミダに俺は愚痴る。
日頃から鉄華団の奴らには注意しろって言っときながら、俺は脱出不可能なアリジゴクに落ちちまうなんてよ。
それにしてもアミダの言う通り相手がギャラルホルンのセブンスターズの一角とはな。どこでそんなコネを手に入れたんだあの野郎は。
大方俺を嵌めて鉄華団諸共掃討しようって魂胆なんだろうが、鉄華団はこねぇよ。
オルガの方は親父に止めてもらうように言っておいたから、この罠にはまりに来ることはない。
あいつは後先考えずに突っ走るからなぁ、こうでもしねぇと罠とわかっててもかかりに来ちまう。
誰かがストッパーになってやんねぇと破滅しちまう。
そこで、ふと危なっかしいやつと関連してあいつから預かっている子たちのことを思い出した。
あいつとは、親父の仕事を引き受けている外部の人間ってことで幹部の人間からは俺たちと同じように疎まれていたが、あいつの所属と上司がとんでもない奴らで手を出そうなんて馬鹿な奴はいなかったがな。
そんなやつとひょんなことから仲良くなった俺たちは二人ともクルーに女性が多いと言うこともあって、女性が多いという特有の苦労話で意気投合。
何だかんだ今ではお互いの艦にクルーを派遣させるくらいの仲にはなっている。
無論奴の所属組織に変な勘ぐりを入れられては困るので俺たちの関係は公にはせず、会うこともほとんどなく、会話のほとんどは電話越しでだ。
そう、そんな俺の親友とも呼べる友のクルーがこの艦には乗っている。
彼女たちは無事退艦したのだろうか?
気になったので、アミダに確認を取ることにした。
「アミダ、比企谷のとこの子達はみんな退艦したか?」
「…ちょっと待っとくれ、今確認するよ。……いや、まだだねあの子たちの機体はまだこの艦の中にあるよ」
「おいおい、それはマズイだろ。俺のミスにあいつんとこの子を危険には晒せねぇ、急いで呼び出してくれ」
「わかったよ、ちょっと待っておくれ。」
アミダが艦内のアナウンスが、艦内に響き渡るように機械を弄っている。
「…よし、いけるよ!!あー、あー結衣といろは艦内にいるなら今すぐ艦首室に来な、名瀬が呼んでるよ。繰り返すよ……」
アミダのアナウンスから数分後ドタドタという足音が近づいてくる。
その音はドアの前でピタリと止まると、次の瞬間にはドアが開いた。
ドアの外にいたのはピンク色の髪をして、お団子結びをしているとある部分の成長が激しい女の子、由比ヶ浜結衣と栗色のショートカットの髪の毛の年相応の成長をしている女の子、一色いろはだった。
「ふっーふっーなぜっちどうしたの急に呼び出して」
「そうですよ私たちも準備してたんですけど」
結衣の方は体力がないのか息切れを起こしていたが、いろはの方はケロッとした顔をしている。
やはり、重い分走るのも疲れるのだろうかなんて考えを振り切り、時間もないことだし本題に入ることにしよう。
「いや、すまねぇな結衣にいろはも。急で悪いんだが、護衛の依頼はここで取り下げさせてもらう。だから、急いで退艦準備をしてくれ」
「……なんで?なぜっちピンチなんじゃないの?」
結衣の言葉が胸に刺さる。
あぁ、確かに今の俺はピンチだ。
それも超がつくくらいのな。
だからこそ、お前たちを巻き込むわけにはいかないのさ
大事な友達のクルーをな
「ああ、そうだ。今の俺は超ピンチだ。だけど、その手伝いはお前らには求めない。お前らはタービンズじゃない、帰る家があるだろう?だから、タービンズの問題に巻き込むわけにはいかない。わかったらさっさとしろ、時間がねぇ」
俺の言葉に俯く結衣。
反論もせず、黙っている。隣のいろはも何も言わずそこに立っているだけだ。
しまった言い過ぎたか、善意からの申し出だったのはわかってるが、ここばかりは譲れないんだ。
すまない結衣
「…………ない」
「ん?なんだ?」
何か結衣が言ったみたいだが、よく聞き取れなかった。
「……んない」
「もう少し大きな声で言ってくれないと聞こえない」
次の瞬間彼女は俯いていた顔をガバッとあげこちらを睨め付けるように睨んできた。
「ぜっん!!ぜっん!!わかんないよ!!」
「だって、なぜっち困ってるんだよね。身に覚えのない冤罪被せられて、自分の艦の子達を逃がすくらい逃れようのない結末が見えてるんだよね?だったら、言えばいいじゃん!!助けてって!!!!」
結衣の叫びが艦首室に広がる。
彼女は優しい子だ。そして、真っ直ぐすぎるくらいに感情的に動く。
それは良い点でもあるがこういう場合裏目にでることもある。
だから、教えてやる必要がある物事を解決するための最善って奴を。
「それは無理じゃねぇかな?相手はギャラルホルンのお偉いさんだ。そんじょそこらの組織や海賊じゃねぇんだ。世界を束ねてる奴らだぞ。歯向かってみろ、そいつらもろとも、宇宙の藻屑だ。それに助けを求めろって言ったて、誰に助けを求めろって言うんだ?ギャラルホルン相手に手を貸してくれる奴なんて「いるじゃん!!ここに少なくても二人はいる!!なぜっちが色んなこと考えてみんなの為に行動しようとしてる事ぐらい、バカな私でもわかってる。」
でも、と結衣は言葉を続ける。
「でもね、感情では納得しないんだよ。なぜっちの艦の子達みんな辛そうだったよ」
そうやって、優しく語りかけてくる結衣。
比企谷からはバカでアホの子なんて言われているが、こんなにも心にくる言葉が吐けるのは、彼女が周りをよく見ているからだろう。
結衣は比企谷のクルーの中でもよく俺の仲間と仲が良かったからな。
「はぁ、ほんっと類は友を呼ぶというかなんというか」
今まで静観していた一色いろはが口を開く。
顔の表情からは諦めの表情が伺える。
「なんというか、ほんともう、うちの先輩と同じですね、そういうところ。先輩も自分の失敗なんかはみんなを巻き込まないようにしてますし、それを何度も私達で注意したりもしましたけど、名瀬さんもそういうタイプだったとは……。ほんと、先輩の友達ってもしかしてめんどくさい人ばかりなんですかねぇほんと。」
ただでさえ友達少ないのになんで呟きながら話が脱線していく気がするので、とりあえず、言いたいことを聞いてみることにした。
「あのですね、名瀬さんがみなさんを助けたがってるいるように、みんなも名瀬さんを助けたいんです。名瀬さんもそれはわかってると思うんですよ。でも、貴方が犠牲になって助かった先であの子達は笑えるんですか?」
「っ!!だが、俺はそれでも助かって欲しいと思ってる。これから先俺がいなくても、生きていて欲しい。そう願うのは悪いことじゃねぇだろ。」
「それは違うよなぜっち、みんなはなぜっちがいない明日なんて考えられないんじゃ無いかな。私たちのヒッキーと同じで」
だから、頼って欲しいんだ
一人で抱え込まないで、みんなを頼って欲しい。
アミダさんがそうしたようにと彼女たちは言葉を紡いだ。
「……わかった。お前たちの言う通り、力を貸して欲しい。ただし、お前たちを死なせたとあったら、この局面を乗り切ったとしてもあいつに合わせる顔をがねぇからぜってぇに死ぬんじゃねぇぞ。危ないと思ったら俺たちを見捨てて逃げろ。」
それが、力を貸してもらう絶対条件だと彼女たちに言う。
すると、彼女たちは顔を見合わせてふふっと笑った。
なぜ、笑っているのか、俺にはわからねぇが、あいつならわかるんじゃないか。
いや、あいつは俺よりも女心がわかってねぇからわかるはずもねぇか。
「それに関しては大丈夫ですよ。ね、結衣先輩?」
「そうだね、いろはちゃん。私たちにもなぜっちと同じように大切に思ってくれる人がいるから、捻くれてて心配性のくせに自分のことを話さない私たちの艦長がね」
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「お前ら準備はいいか?そろそろ敵さんを目視で確認できる距離だ。絶対に油断するなよ」
「こちら結衣大丈夫だよ、準備万端。」
「こっちも大丈夫ですよ、名瀬さん」
彼女たちが乗るのは漏影。
自分たちの専用機ではなく、タービンズの基本装備である。
彼女たちの専用機はちょうど修理が終わっておらず、移動だけならばともかく、戦闘となると厳しいため漏影は乗ってもらった。
「アミダは、って聞くまでもねぇよな?」
「当たり前だよ、いつも通りあんたの目を釘付けにしてあげるよ」
ピンク色の漏影にのる。
他の二機とは違うこの機体はアミダ専用にカスタマイズされていて、基本装備の漏影とはかけ離れた性能を持つ。
絶対的なタービンズのエースが持つに相応しい機体となっている。
「「「っつ!!!」」」
一発の砲弾が放たれた。
機体にも艦隊にも当たらなかったその砲弾。
それは唐突に、突然に戦争の、いや皆殺しの戦場の幕をあげるファンファーレとなった。
「気ぃ引きしめろよお前ら!!敵の方が数が多いんだ離れすぎねぇように注意しろ、アミダはともかくお前らは乗り慣れた機体じゃねぇからな」
「わかってるよ」
「わかってます」
「そんじゃまぁ、生き足掻くとしますかねぇ」
戦艦一隻、モビルスーツ三機は戦場へと飛び出した。
自らの仲間を守るために。
「どうにか、間に合ってくれよ名瀬さん」
ガンダムシャクス宇宙へと旅立つ。
仲間と友達を助けるために
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