精霊の使い魔 (ちっぱい眼鏡っ娘が好き)
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プロローグ
茶色の作業着のツナギを着た男が、
擦れ違う人たちは、その男の事を特に気にした様子も無く擦れ違って行く。
年の頃は、40代半ばも過ぎた頃だろうか。
男は、雑居ビルの前で立ち止まると空を見る。
《良い天気だなあぁ~。》
空を見て心の中で思う。
今は、9月半ば。
残暑の残る季節。
ズボンのポケットから携帯灰皿を取り出して。
そして男は、ビルの中に入っていくと、エレベーターのボタンを押してドアが開くと中に入り6階を押す。
エレベーターが止まり、廊下に出て右側に歩く。
十数歩の所で、左側のドアを開けて中に入る。
いや、入ろうとした。
そのまま黙って、ドアを閉めて部屋番を確認する。
601 と確認できた。
間違ってはいない。
男は大きく息を吸って吐き出す。
心の準備を整えて、再びドアノブに手を掛けて開く。
部屋の中には、男性4人と女性2人が居た。
「何か。 見えちゃいけない者が見えているくらいに身体の調子が悪いので。 このまま帰らせてもらいますね。」
右手で額を揉《も》み解《ほぐ》しながら言い。 ドアを閉めて退室しようとしたのだが。
「
いつの間にか、男の右腕を自分の両手で抱きしめていた緑色の髪の女性が言う。
「諦めろ。
部屋の中の最奥の椅子に腰かけた中年男性が言う。
芳乃《よしの》は、部屋の中に視線を向け、もう1度見渡して。
何もかも諦めたような表情で部屋の中に入る。
「それで・・・。 なんで大精霊様が4人揃ってんですかね?
どう考えても、厄介事しか浮かんでこないんですけどね。
「当たらずとも遠からずだ。」
「はぁ!?」
「あのな
茶色の髪の男性が言う。
「はあぁ?」
「だから、魔王が現れると言っておるのだ。」
赤色の髪の男性。
「魔王? って?」
「だから、魔王だと言っているでしょう。」
緑の髪の女性。
「えっと・・・。 魔王? 魔の王と書いて魔王?」
「そう。その魔王よ。」
水色の髪の女性。
「どこに?」
「地球《ここ》にだ。」
大門。
「
「違うわっ! 地球に魔王が降臨するんだよっ!」
赤色の髪の男性が怒鳴る様に言う。
「うるせえよっ! イフリートっ! 大体にして地球だぞ此処はっ!
なんで
「よく考えるのじゃ
魔王や勇者が居ても不思議ではあるまいに。」
「十分不思議だわっ! 大体! あんたら、大精霊だけでも、俺の頭の中は
このうえに魔王とか訳わからんわっ!」
この場に居る、俺を除いた6人の内、4人は大精霊と呼ばれる存在。
赤色の髪の男性は、火の大精霊イフリート。
水色の髪の女性は、水の大精霊ローレライ。
茶色の髪の男性は、土の大精霊ベヒーモス。
緑色の髪の女性は、風の大精霊ジン。
黒髪の中年男性は、この事務所の所長の
もう一人の男性は、
内閣特殊調査課 の室長だ。
「落ち着いてください。 七五三さん。」
中嶋君が、俺の名前を呼ぶ。
さて、ここで問題だ。
七五三 と書いて何て読む?
初見で当てれたら大したものだ。
「落ちつけれると思うかい!? 中島君! こいつらと知り合ってから。 俺が、どれだけ苦労させられてると思ってるんだ!」
4人を睨むように見る
「何を言ってるのか。 私たちの
ベヒーモスは言う。
「そうそう。 水よ癒せっ! とか。 大地よ拘束せよっ! とか。
楽しそうに使ってるじゃないの。」
ローレライが言う。
「くっ!」
床に手と膝を着き、うなだれる
「
そう言って、俺の肩に手を置き。 遠くを見つめるように中嶋君。
そう。 俺こと
大精霊たちの使い魔である。
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邂逅
ēエブリスタで公開中。良ければ読んでください
西暦 2020年 3月6日
めでたく、俺はリストラされた。
結婚歴無し。 家族も居ない。
天涯孤独と言えば聞こえは良いが。
ようは、ボッチ人生まっしぐら。
両親は、既に他界して居ない。
妹が居て結婚したのは知っているが。
正直、30年ほど顔すら合わせても居ない。
まぁ、だからと言って、特別逢いたいと言う訳では無い。
公園のベンチに腰かけてボーっとしていると。
目の前を小さな子供を連れた家族が通り過ぎて行く。
結婚願望が無かったわけではない。
相手がいなかったと聞かれれば居なかった訳でもない。
付き合った女性はいたし、結婚話も出た事も在った。
ただ、機会を逃した。と、言えば判るだろうか。
気が付いたら、40台を過ぎていて。
付き合っていた女性とも疎遠に為って居た。
ただ、それだけ。
50に為ろうと言う今でも、見かけは結構いけてる方だと思う。
なにせ、見かけだけは若く見られる。
手に持つ缶コーヒーを飲み干しベンチを立つ。
リストラされて、2週間ほどは何もせずに暮らしていた。
先程済ませた面接。
雑居ビルに在る小さな派遣会社。
人手不足なのか、何と即採用されてしまった。
まぁ、週明けからの出勤に為るので。
今日と明日は、何の用事もない。
駅に向かって歩いていると、小さな女の子が泣いているのが見えた。
年の頃は、幼稚園か小学生の低学年くらいだろう。
《迷子か?》
ふと、足を止めて、子供たちを見る。
子供が泣いているのに、通行人たちは誰も気に留めようとはしない。
まぁ、今の
下手に声をかけると、誘拐犯に不審者にロリコンとかと勘違いされて通報されかねない。
関わらないのが、一番なのだ。
しかし、派手な髪の色だ。
赤色に、緑色って・・・。
染めているんだろうけど。 ちと派手過ぎないか?
まぁ、人様の家庭に口を挟むのも間違っているかもしれないが。
「はあぁ・・・。」
大きく溜め息をつきながら頭を掻き、子供たちの方に向かって歩き出す。
「迷子になっちゃったのかな?」
子供たちに、視線を合わす様に腰を落として話しかける。
「うん。」
男の子方が、女の子を庇うように前に出て言う。
「そっか。 おじさんと、おまわりさんの所に行くかい?」
出来るだけ怯えさせないように優しい口調で聞く。
「お母さんがいい・・・。」
小さな声で、女の子が答える。
「そっか。 お母さん。 どこだろうねぇ。」
「わかんない・・・。」
目に涙を溜めながら答える少女。
「お名前は言えるかな?」
2人の子供に聞く。
「%&@*$ωλ」
「γ?@#%$&¥ν」
《あれ? 何て言った?》
そう、俺が思った瞬間だった。
目に見えているものから音と色が消えた。
いや、正確には。 俺と子供たち以外の景色の色が灰色一色になった。と、言った方が良いだろう。
そして、次に気が付いたのが。
人が居なくなっていた。
あれ程、多くの人たちが往来していたのに。
目の前の子供2人以外の人が全て消えていた。
「なんだ・・・。これ・・・。」
周囲を見渡すが、子供たち2人以外は誰も居ない。
更に、少し向こうには。 何かが見える。
いや、多分。 何が見えているのかは理解できている。
ただ、自分の思考が、それを拒否している。
「マジかよ・・・。」
向こう側に見えるのは、全身緑の色をした小さな鬼が見える。
和風に言えば小鬼に餓鬼。
西洋風なら、ゴブリンと言えばいいだろう。
それが、5匹。 こちらを見ている。
子供たちが、俺の身体の後ろに隠れて小さな手で服を握りしめる。
ゴクリ。っと、いつの間にか、口の中に溜まっていた唾を飲み込む。
「ギャギャギギ!」
少し大きめの
すると、他の4匹は、腰にぶら下げていた短い剣を抜いて、こちらに近寄って来る。
等間隔に広がり、俺たちを包囲するかのように。
少しずつ、少しずつ。
此方へと間合いを詰めてくる。
右腕に女の子を。左腕には男の子を抱えて、一目散に逃げだす。
戦う? ぜってええぇ無理っ!
そして、走り始めて驚く!
両腕に子供を抱えて走っているのに、まるで一流のアスリートの如く物凄いスピードで走れているからだ。
余りの驚きに、目の前に壁が迫ってきているのに気付くのが遅れて。
「うおっ!」
咄嗟に、身体を反転させて、子供たちを守る様に背中から壁に激突。
「いったあ・・・・くない?」
壁にまともに激突したのに、思ってたよりも身体に痛みが伝わってこない。
益々混乱する思考。
だが、
慌てて、姿勢を戻して、
「おい。おっさん。」
男の声が聞こえた。
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許容範囲超えてるんですけど
声のした方に振り向けば。
全身真っ赤な男が立って居た。
揶揄《やゆ》ではない。
年の頃は、20台半ばと言った感じか。
髪の色、瞳の色、長袖のシャツ、ズボン、靴。
全てが赤い色で統一されている。
「パパ!!」
男の子が声を上げる。
「ママ!」
女の子も声を上げる。
男性の隣には、これまた緑色の髪に、緑の瞳。
緑の帽子に、緑色のワンピースに、緑色のサンダルを履いた、20台前半くらいの女性が立って居た。
両親の姿を見て、俺から飛び降りて両親の元に向かう子供たち。
「再会の感動中に悪いんだが。 早く逃げた方が良い! 化け物がコッチに向かってきてるっ!」
「心配いりませんわ。 ほら。」
母親の方が、小鬼《ゴブリン》を指さす。
そこには、1人の少女が小鬼《ゴブリン》を3匹倒していた。
手には木刀を持ち。
黒く長い髪を靡《なび》かせて、4匹目の小鬼《ゴブリン》を木刀で薙ぎ払った。
木刀なのに、小鬼《ゴブリン》の身体が上下に別れる。
血飛沫が舞い、少女のセーラー服に付着する。
顔にも数滴の血の跡が見れる。
少女の血ではない。 小鬼《ゴブリン》どもの返り血だ。
少女は最後に残った、大き目の小鬼《ゴブリン》を見る。
少女と大き目の小鬼《ゴブリン》までの距離は、およそ15メートルほど。
次の瞬間には、少女は大きめの小鬼《ゴブリン》の首を刎《は》ねていた。
時間にすれば、瞬《まばた》き1つ。
ブン。と木刀を一払いして、俺たちの方に近寄って来る少女。
「お怪我は?」
「ない。」
少女の言葉に父親が答える。
「良かった。」
そう言って、少女が笑顔を見せる。
その笑顔に、迂闊にも心臓の心拍数が上がってしまう。
それを自覚して、50にも為ろうと言うのに。 何を中学生くらいの年頃の女の子にトキメイているのだと自己嫌悪に。
「それで、こちらの方は?」
「知らん。」
子供たちの父親が、俺を見て言う。
「あ。えっと・・・。
迷子に為ってた、その子たちを見つけて・・・。」
どう説明したらいいの分からずに、言葉を詰まらせる俺。
「私が聞いているのは、そう言う事ではありません。
何故、一般人の貴方が、この結界の中に入れているのですか?」
少女が睨みながら、俺に聞いてくる。
「・・・・・。 結界?」
一瞬。 漫画かアニメの見過ぎの痛い子なのかと思うが。
先程の小鬼《ゴブリン》の死体は、そこに目視できている。
軽く口の中で、自分の舌を噛んでみる。
普通に痛い。
おもむろに、少女たちから5歩離れて、上着の胸ポケットから煙草を取り出して火を点ける。
煙草の煙を肺の中に取り込んで吐き出す。
「スマン。 少し頭の中を整理させてくれ。 意味が分からん。」
そう言って、煙草を満喫して、今の状況から逃れる事にした。
* * * * * * *
「・・・・と、言う訳です。」
煙草を吸い終わり呆けている所を。、父親の方に首根っこを掴まれて、少女たちの方に連れ戻される。
そこで、少女の話を聞かされる羽目になる。
少女の名は 姫宮《ひめみや》 十花《とうか》。
私立 聖
身長は160くらいだろうか。
陰陽師で、姫宮《ひめみや》の舞姫らしい。
妖魔、妖怪、異世界の怪物。っと言った物を退治する存在だとか。
うん。まぁ、此処までは、100歩譲って、何とか許容内。
うん。 無理やりだが、許容内。
そして、子供たちの父親。
全身赤色の男性。
彼の名前は、イフリート。
精霊界での大精霊。
そして母親。
全身緑の女性。
彼女の名前はジン。
同じく、精霊界での大精霊。
そして、男の子が。 未来の精霊王《オベロン》の孝也《たかや》。
女の子の方が、未来の精霊女王《ティターニア》の美優紀《みゆき》。
勿論、地球での呼び方。
「あぁ、うん。 どうも、お手数をおかけしました。
ご両親にも会えたようなので、私はこれで。」
5人に向かって御辞儀をして、子供たちに向かって手を振り立ち去ろうとする。
「待て。 何処に行く気だ?」
おもむろに、父親《イフリート》に首根っこを掴まれる
「自分の家に帰ろうかと?」
「私達の秘密を知っておいて。 帰れると思っているのですか?」
「いや! 待って! 俺から聞いたわけじゃないよね!? 勝手に自分たちで喋ったんだよね!?
それに、仮に誰かに話しても。 俺の方が奇人扱いされるよね!? 精神病院紹介されちゃうよ!?」
「おじちゃん・・・・帰るの?」
精霊女王《ティターニア》の美優紀《みゆき》が泣きそうな顔で言う。
「うっ!」
子供大好きな俺としては、この表情は反則で在り。
「おじちゃん・・・。」
精霊王《オベロン》の孝也《たかや》が手を伸ばしてくる。
「まだ帰らないさ。」
孝也の頭を撫でて、同じように美優紀の頭も撫でる。
「それでは、結界を解いた後に。 私の家で話すと言う事で宜しいでしょうか?」
「そうしてくれ。」
十花《とうか》の言葉に、イフリートが返事を返す。
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姫宮
「浄化。」
十花《とうか》の言葉に反応し。 手に持つ1枚の紙が消えて
「解。」
残りの1枚の紙も消え。 次の瞬間には、灰色一色の景色から、色の有る景色に変わり。
多くの人が往来していた。
「こっちです。」
全員が乗り込むのを確認して、
「実家の方へ。お願いします。」
「分かりました。」
運転手の男性は、短く返事をすると車を走らせる。
* * * * * * *
移動中の車の中。
孝也と美優紀は
「よほど、貴方の事が気に入ったみたいですね。
母親のジンが、孝也と美優紀を見ながら言う。
「子供。 好きですから。」
優しい手つきで、
「ご結婚は?」
「残念ながら。 機会を逃してしまいまして。」
「そう。」
「それで。 お前は、一体何者なんだ?」
ジンと
「何者って言われても・・・。 ただの一般人ですが。」
「
「えっと・・・。 認識できるはずがない?
それって、普通は見えないって事ですか?」
「その通りだ。 孝也と美優紀には、普通の人間たちには見えないように結界を張っている。
2人を認識できるのは、姫宮の様な特殊な血筋の者か。
魔の者と契約を交わした者たちだけだ。」
そう言って、
「イフリート。 少なくとも、魔の眷属では無いですよ。
なにせ、孝也と美優紀の加護が付いているのですから。」
2人の顔を見ながら言うジン。
「あの・・・加護って?」
「お前。 孝也と美優紀の真名《しんめい》を聞いただろ。」
「え?
「孝也と美優紀の名前を聞いた時に、意味不明な言葉が聞こえませんでしたか?」
「あ・・・。 ああぁあ! 聞こえました。 言葉と言うよりも、何か音の様な物が?」
「それが、真名《しんめい》だ。
俺たち精霊の言葉は、人間には解釈できず。 意味の分からない音として認識される。」
「そして、私達が真名《しんめい》を明かすと言う事は。
その者に、命を預けると言う意味でもあるのです。」
ジンの言葉に、ポカンと為る
「孝也と美優紀。 2人は、お前に命を預けたと言っても良い。」
「はっ?」
「その代わり。 お前は、孝也と美優紀の
「へ?」
余りにも、突拍子の無い事柄に、思考が飛んで固まる
「着きました。」
* * * * * * *
着いて最初に驚いたのが。
家の大きさ。
もうね、どう口で説明すれば良いのか分からなくなく位にデカい。
何せ、玄関で靴を脱いで、目的の部屋に着くまでに歩いて10分・・・。
オカシイだろ。 この大きさは・・・。どこのダンジョンだよと言いたくなってしまう。
方向感覚には自信はあるが。 トイレに1人で行ったら確実に迷う自信がある。
孝也と美優紀は、俺の腕の中でスヤスヤ寝息を立てている。
途中で、女性の方2人が。 孝也と美優紀を起こさない様に俺から引き離してくれた。
そして、案内された部屋に入り。中を見渡す。
そう。見渡す。
おおよそ、50畳以上は在るのじゃないかと思われる部屋。
そして、何処に座れば良いのか迷っていると。
「こちらに。」
女性の方に言われて着いて行くと。
上座寄りの座布団の位置に案内される。
訂正する。
上座寄りでは無く。 上座の正面の位置だ・・・。
そして、右側にイフリート。
左側にジンが座る。
そして、目の前に茶を出される。
出された茶を、遠慮なく喉に流し込む。
適度な冷たさが気持ち良い。
「ふぅぅぅ。」
一気に飲み干して、息を吐き出す。
なにせ、緊張しっぱなしで。 喉がカラカラなんだ。
直ぐに替わりの茶が出てくる。
「ありがとうございます。」
茶を持ってきてくれた女性に礼を言う。
女性は軽く頭を下げて後ろに下がる。
時間的には10分ほどだろうか。
上座の席に、1人の男性が座る。
年の頃は40代半ばと言った所か。
威厳と風格を兼ね備えている。
「初めまして。 精霊の王と女王に祝福されし者よ。
私が
そう言って、軽く頭を下げた。
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加護を受けし者
「初めまして。
「志野締君。で良いかな?」
「あ~、多分。 しのしめって漢字違いしてると思いますので一応。
漢数字で、
「これはまた。 珍しい苗字だな。」
「よく言われます。」
「それでは。 改めて、
娘の
君に聞きたい事が在る。」
「はい。」
「まずは。 こちらの中嶋君だが。」
そう言って、先ほどのワゴン車を運転していた運転手に目を配らせる。
「車の中で顔は合わしましたが。
私は、内閣特殊調査課に所属する、
そう言って、軽く礼をする。
「内閣特殊調査課とは。 現代日本に置いての。
心霊現象。 超常現象。 等と言った非現実的な事柄を秘密裏に調査して処理を行う機関です。
表立っての公表はしておりませんが。
その歴史は古く。 平安の時代から組織されていたと言われています。
が、事実は不明です。」
そう言って、にこりと笑う中嶋。
緊張感を出しておいて、気を抜きに来るとは。
なかなかに食えない人だ。
まぁ、国仕えの人が食われるようじゃ、それはそれで困るのだが。
「ぶっちゃけ。 内閣特殊調査課 なんで
つま弾きにされている部署と言った方が早いかもしれませんね。」
そう言って、肩を
「姫宮家の方たちとは、国を挟んでの共同戦線を構えさせて戴いております。
とは言いましても。 情報収集とバックアップが主な仕事ですが。」
「卑屈になるな。 中島君たちが裏で動いていてくれているから、我ら姫宮が表舞台に出ないで済んでいるんだ。
持ちつ持たれつ。 適材適所。 だろ。」
喜一が、中嶋を見ながら言う。
「それでは、改めて。
今までの情報を整理しますと。
貴方は、孝也くんと、美優紀ちゃんの姿を、宝橋駅に向かう途中で見かけて声を掛けたと。
間違いは在りませんか?」
「はい。 迷子かと思って声を掛けました。」
「そして、次に。
その時に、2人の
「はい。 言葉と言うよりも。 音と言った方が良いでしょうか。
イフリートさんと、ジンさんから。 その意味を聞くまでは、私自身が理解しておりませんでした。」
「そうでしょうねぇ。
なにせ、私達も。 親御さんである大精霊さま達でも初めてなんですから・・・。」
その言葉に、思わずイフリートとジンの顔を見てしまう。
2人は、大きく頷いて見せた。
「元来。 我ら精霊と呼ばれる、
産まれ出た瞬間に
その
と、言うか。
自分の命を握らせている様なものだ。
そう言って、
「ですが、幸いと言うべきか。
孝也と美優紀の正確な
ジンも
「しかし、理解していないとは言え。
孝也と美優紀の加護が、コイツに宿ってしまった。」
「覚醒していないとは言え。
仮にも、精霊の王と女王の加護を受けてしまった
私たち、大精霊にも匹敵する
イフリートと、ジンの言葉で。
「特に、変わった様子は・・・。」
無い。 と、言いかけて。
2人を抱きかかえて走った時の記憶を。
意識せずに、2人を抱いたまま難なく走った事を。
日頃から、身体を鍛えているのなら別だが。
生憎と、
お腹も出ているし、身体に張りも無く。
まさに、何処にでも居る おっさん そのものだ。
「意識せずに、あの身体能力だ。
きちんと、意識をして使いこなせるように為ったら。
それこそ、人間離れした動きも可能だ。」
「それに加えて。
私たち、大精霊の
「・・・・。 俺、どうなるんでしょうか?」
「はい。 そこが、一番の問題点でして。
もう、言い作ろうが。 オブラートに言おうが。 遠回しに言っても仕方が無いので。 率直に言わせて貰います。
「はっ?」
中嶋さんの言葉に、間の抜けた声が出てしまう。
「先に言って置きますが。
これは、決定事項です。
拒否すると言うなら。
「物騒だな! おいっ!」
思わず突っ込む。
「冗談では在りませんからね。
そんな事に為らないように。
内閣特殊調査課の監視下の元で、大精霊様達と
中嶋の説明に、返す言葉も無くなってしまう。
頭を抱えて転がり回りたい気分だ。
「拒否権は無いんだな・・・。」
「はい。 有りません。 人生を終わらせたいなら。 どうぞ、拒んでくださっても構いませんよ。」
笑顔で言う中嶋。
「・・・・・。」
「安心してください。 きちんと給料は出ますし。
休みも有ります。 有休も有りますし。
残業手当もつきますので。」
「給料って、いくらくらい?」
俺の言葉に、中嶋がツーっと寄って来る。
「これを。」
何か書かれた紙を置く。
書かれた内容を良く読む。
3度ほど見直す。
「宜しく、お願いしますっ!」
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新しい住居
「こんなものか。」
三日後。
部屋の中の荷物を纏め終わった俺は、迎えが来るのを待っていた。
内閣特殊調査課が用意した部屋に移り住む事に為った。
現在の、月4万8千円のボロアパートから。
内閣特殊調査課が用意した、郊外の一軒家に移り住む事に為る。
勿論。 家賃は
なので、持って行くのは衣服と必要雑貨だけ。
いやぁ~、これで基本給が手取り35万で、別料金もあるとか夢みたいだわ。
少しして、ドアを叩く音が聞こえた。
「はいはぁ~い。 空いてますよぉ~。」
ドアを開けて入って来たのは中島君。
「荷物の方は、纏め終わったようですね。
それじゃ、荷物は業者に任せて。
私たちは、先に向かいましょうか。」
「了解!」
中島君が運転するワゴン車に乗って、一足先に郊外の家に向かう。
* * * * * * *
「で・・・。 何で、
そう。 家に着いたら。
何故か
「何故って。 私も一緒に住むからですが?」
「誰と?」
「貴方とです。」
「・・・・。」
「・・・・。」
おもむろに、中島君の方に向きなおす。
「中島君。 俺聞いてないよね?」
「はい。 急遽、決まったもので。」
「なんで、
「そんなの決まってるじゃないですか。」
意外な事に、言葉を投げて来たのは
「万が一もに、貴方が暴走でもした時に。 力ずくで取り押さえられる者が、
バカなの貴方? と言わんばかりの表情で言う
「うん。ごめん・・・。 俺が言いたのは、そう言うのじゃなくてさ。
「失礼ですね。 成長期で、今から大きくなっていく予定です!」
「いや! まって! そう言う意味じゃないからっ!
おれ男!
「だから何です?」
「だからっ! 俺は男で! 君は女性! ってこと!」
「で?」
「で? じゃないっ! 良いのかっ! 君は! 見知らぬ男と 一つ屋根の下に住むんだぞっ!?」
「正直言えば。 私だって、同い年の女性か。 もうちょっと格好いい男性の方が望ましいのですが。
生憎と、貴方と力勝負できるのは。
「だったら! その5点でも10点でも良いから!
その人たちに変わってもらえ!」
「無理です。
剣姫の
五天の人たちは、
貴方を力でねじ伏せれる、手の空いている
「それで良いのかっ!?」
「そうそう! 貴方と一緒に住む事で良い事もあるのです!
なんとっ! お見合いをしないで済む事に為るのですっ!
最近なにかと、お見合いをしろと父が
ニコリと笑顔で言う
「見合いって・・・いくつだよ君・・・。」
「もうすぐ15歳ですよ。 来年から高校生です。」
嬉しそうに言う
その笑顔に、またしても不覚にドキリとしてしまう。
「まぁ、安心してください。
例え下心を出して襲ってきても。
今の貴方なら、返り討ちに出来ますので。」
「安心できんわっ!」
と、まぁ。 こんな訳で。
姫宮
15歳の少女と、50歳のおっさんの同居生活が始まる事と為った。
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おっさん特訓する
結論から言おう。
俺は、
いや、
十花《とうか》の支配下の式神の
式神の
しかし、見た目に反して紅葉君。 めちゃくちゃ強いのだ。
最初こそ、その見た目に騙されて、舐めてるのか? っと、思ったのだが。
紅葉君と相対して、僅か三秒で、俺は地面に寝転がされていた。
「10秒くらいは頑張れると思ったのですが・・・。」
しかも、物凄く残念な物を見る目で。
まぁ、俺も。 この三週間で、かなりの成長はしている。
そうそう。
異相空間とは。 符術と魔術を組み合わせて作った結界の事で。
時間軸は同調させたままで。 空間軸だけを別の(ずらした)所(違う次元)に作って、現実の世界に被害を出ないようにする結界で。
発明元は、
この世界魔術士協会とは魔術だけではなく。
要は、占星術、陰陽術、退魔師、魔術師、聖職者、仙人などと呼ばれる人たちの集まりの集団の総称の事で。
世界中から、優秀なその関連の人材が集まって、世界各地での人ならざる者どもと戦っているのだとか。
勿論、戦うだけじゃなく。 結界術の様に新たな術式の開発もしているのだとか。
そして、肝心の俺。
結果。
危うく結界ごと壊しそうになって、大惨事一歩手前と言う所で。
意識を取り戻してから、
15歳の少女に説教される、50のおっさんの立場って・・・。
まぁ。 そんなこんなで三週間。
大精霊とはいかないものの、
因みに
大精霊たちから言わせると、
精霊たちから
と、言うのが正しいらしい。
そもそもにして。
なので、漫画や小説やアニメ等でよく使われる言葉。
と言うのは間違いであって。
人間が精霊を使役するのではなく。
精霊の
と、言うのが正しい見解らしい。
よって、
そして、俺の正直な感想。
どっちでも良いよ。
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初仕事
「お早う御座います。」
ドアを開けて中に入る。
「おはよう。
大門《だいもん》さんが挨拶を返してくる。
ここは、家から歩いて10分の所に在る雑居ビルの601号室。
表向きは、小さな興信所を
このビルその物が、内閣特殊調査課の所有物なので。多少の問題が起きても対処する事が出来る。
まぁ、興信所と言っても。 実際の所は、依頼など来る筈も無く。 毎日が開店休業状態。
なら何故、こんな所に居るのだと言われれば。
世間体の問題だ。
家に居るだけだと、世間体が悪いとの事なので。
それだけの理由の為に、近場のビルを買い取って世間体を繕う。
税金の無駄使いだろっ! っと突っ込みを入れたくなるが。
他の階層は、ちゃんとした営業をしているので見逃してほしい。
「訓練の方はどうかね?」
大門さんが尋ねてくる。
「自分では、前よりはマシになっていると思っていますが。」
「そうか。 なら簡単な仕事でもやってみるかい?」
「僕だけで。ですか?」
「そうだよ。」
笑顔で答える大門さん。
俺よりも年下だけど、顔と貫禄だけなら、俺の方が年下に見える。
中島君の部下の1人で、元は他の部署で働いていたのだけど。
と或る事情で、部署異動で中島君の元に。
「もちろん。
当然だな。
まだまだ、ヒヨッコの駆け出しも良い所なのだから。
「なら、お願いします。」
俺の返事を聞くと、1枚の紙を差し出してくる。
「それが、仕事内容です。」
内容を読むと、こんな感じだった。
市内に在る、取り壊し予定のビルに捕り憑いてしまっている低級霊の浄化もしくは除霊。
浄化と除霊の違いだが。
浄化は説得、もしくは納得して貰って成仏して貰う事。
除霊とは、
「無理だと思ったら、すぐに逃げてくるようにね。」
「判っています。 無茶も無理も、するつもりは無いので安心してください。」
「ほんと、君が年配の方で助かったよ。
若いと、無茶、無理、無謀、無鉄砲が多くて困るからね。」
俺の言葉に、クスリと笑う大門さん。
* * * * * * *
問題のビルに入る。
ビルの大きさは10階建て。
広さ的には、横10メートル。縦20メートルと言った感じ。
周囲には、内閣特殊調査課の人や、
何でもかんでも、自分1人で動いているとは思うな。
周囲で戦うこと以外で動いてくれて居る人たちが居るからこそ、戦闘する者たちも安心して戦えると言うものだ。
まぁ、安心して戦うと言うこと事態が変な話と言えば変なのだけど・・・。
胸のポケットから1枚の符を取り出す。
「結界術。 解。」
俺の言葉に反応して符が消えて、ビル全体を霊的地場が覆う。
これは、異相結界とは違い。
霊的地場で周囲を覆い、霊的な力を遮断してくれる結界。
これで、ビルの敷地内で霊的な力を行使しても、ビルの外には被害が出ないように為る。
との事。
実際に使用するのは、今日が初めて。
「おーい。 俺の声が聞こえているか?」
1人、ビルの中で立って大声で叫ぶ。
孝也と美優紀の加護を持った事で。
俺の言葉には、霊的な働きが在るとの事。
つまり俺は。
幽霊とか亡霊とかの存在に、直接的に話す事が出来るようになった。
「誰?」
俺の言葉に反応して、白い靄の様な物が目の前に現れる。
声からして女性のように感じるが。
「初めまして。 俺は
国からの依頼で、君に成仏して貰いに来た。」
出来るだけ威嚇に為らないように言う。
「成仏って言われてもねぇ・・・。
わたし自体が、何で成仏できないのか分からないのよねぇ・・・。」
白い靄は、人の姿に為り。
そして、その姿が白のワンピースを着た女性だと分かるようになる。
その姿は、ちゃんとした人間の女性の姿をしていた。
漫画やアニメみたいに、足が無いなんてことは無く。
普通に足もついている。
違う所と言えば、足が地面に着いて居ないと言う事だ。
正直、話の通じる相手《霊》で助かった。
問答無用で襲ってくる霊が多いらしいので。
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捕り憑かれる?
「君が、此処に居ると。 ビルの解体が出来なくて困るんだ。
僕としても、出来るだけ穏便に済ませたいのだけど。」
「そう言われてもねぇ・・・。」
困ったような表情に在る女性の霊。
「僕の
「う~ん。」
悩む女性の霊。
「あなた、変わってるわね? 私の様な物が、貴方の側には一杯いる。」
どうやら、女性の霊には。
俺の周囲に居る、下級精霊たちの存在が見えるようだ。
「ちょっと訳アリで、僕は精霊たちと仲良くなってね。
その、お陰で。 こうして、君のような存在と会話が出来るようになったんだ。」
「そう。」
「で。 どうする?」
「ん~。 自分で成仏出来ないし。
何が未練で成仏できないのかも判らない。
かと言って、貴方に無理やり成仏させられるのも何か嫌だし・・・。
どうしたら良いと思います?」
質問してるのに、質問で返されちゃったよ。
「大体。 なんで、私は死んじゃったの?」
「さあ? 俺も、依頼を受けて来ただけだし。」
微妙な空気が漂う。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
お互いが無言のまま、数十秒の時が流れる。
「えっ! そんな事が出来るんですか!?」
唐突に、女性の霊が声を上げる。
「どうかしたのか?」
「あっ! はい! 実はですね。
その貴方の側に居る緑の子の話だと。」
緑の子? あぁ、風の下級精霊のシルフだな。
「貴方に捕り憑けば問題ないって言われたんです。」
「は?」
「何でも、私の存在って、精霊寄りに近い存在らしく。
地に縛られるのでは無くて。
貴方に縛られれば、私は貴方に憑いて行く事が出来るって。」
「そうなの?」
俺の側に浮いている、シルフに尋ねると頷いて肯定している。
「どうする?」
「ご迷惑でなければ、捕り憑かせて貰っても良いでしょうか?」
精霊たちが納得しているのなら。 俺に害意は無いだろう。
何せ、精霊たちは。 俺に害意が有る者に対しては容赦しない。
俺に害が在る=精霊の、王と女王にも害が及ぶ。と、言う思考が精霊たち全員の思考と言っても良い。
もし仮に。 捕り憑いている途中で、俺に害意が芽生えた瞬間。
精霊たちは容赦なく、この女性の霊を除霊するだろう。
いや、除霊などと言う優しさなどない。 駆除だ。
「俺は、別に構わないが。」
「それでは、遠慮なく。」
女性の霊が、地の縛りから解かれて。 俺への縛りに。
「なんか、落ち着かねえ・・・。」
何せ、等身大の女性の霊が、俺の横に居るのだ。
「なら。 これでは?」
そう言うが否や。 女性の霊が小さくなる。
その大きさは、まるで下級精霊たちの様に、5センチほどの大きさに。
「うん。まぁ、これなら?」
「それでは、宜しくお願いします。 ええと・・・。」
「
「宜しくお願いします。
わたしは・・・・。」
女性の霊が、言葉を詰まらせる。
「名前を、お思いだせないのですが・・・。」
「そっか・・・。」
またも、沈黙の数十秒が。
「名前。 付けてくれませんか?」
「良いのか?」
「余り酷いのは辞めてくださいね。」
にこりと、笑顔を向ける女性の霊。
「んじゃ、女性の霊さなんで。 レイさんで。」
「安直ですねぇ・・・・。」
「嫌なら、自分で考えてください。」
「いえ。 レイで良いです。」
「んじゃ、宜しく。レイさん。」
「宜しくです。
こうして、俺は。 レイに捕り憑かれた。
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おっさん困る
依頼を終えた事を、大門さんに電話で連絡を入れて自宅に帰る事を伝える。
事後処理は内閣特殊調査課の方がしてくれるので、俺は自宅に帰る事にする。
家に戻ってドアを開けると、玄関には
「ただいまぁ。」
そう言って靴を脱ぎ、自分の部屋に戻ろうとした時に、リビングに居る
「お帰り・・・。」
言葉が途中で止まる
そのまま、自分の部屋に行こうとすると。
「ぐぇ!」
変な声が出てしまう。
「ちょ! いきなり何をするんですかね?」
「貴方こそ、何をシレっと部屋に行こうとしているのですか?」
「ああ、依頼を無事に終わらせたよ。」
「そうですか。 それは、おめでとう御座います。」
「んじゃ。そう言う事で。」
「だから! 待ちなさい!」
再び、
「だから! なんなの!?」
「だから、何をシレっと部屋に行こうとしているのですか!」
「仕事を済ませて、今から報告書を纏めないといけないんですが!?」
「それは分かります! 仕事なんですから!」
「だったら、部屋に行かせてくださいませんか!?」
「その前に、私に言う事があるでしょう!」
「なにを?」
「ソレは何ですか! ソレは!?」
と言って。 俺の肩の辺りを指さす。
「俺に、
俺の言葉に合わせて、レイさんが礼をする。
「そうですか。 霊のレイさんですか。
じゃなくて! なんで! そんな物を憑けているのか説明しなさい説明をっ!」
仕方が無いので、リビングに戻って、
「はぁ・・・。 非常識にも程があります・・・・。」
いや、
非常識が、服を着て歩ているような人物なのだから。
「一応、言って置きますが。 レイさん。
くれぐれも、
万が一にも、
精霊たちが、貴方を駆除しに掛かりますので。」
「はい。 その事は、シーちゃんからも聞いて理解してます。」
等身大の大きさに戻り、俺の横に座ったレイさんが言う。
「シーちゃん?」
レイさんの言葉に、思わず言葉に出してしまう俺。
「はい。 シルフの精霊のシーちゃんです。」
嬉しそうに言うレイさん。
「理解しているのなら結構です。
「変な事って・・・。 君の中での俺は、どういった人物像なのかな?」
「理解不可能な人。」
「酷くねっ!?」
「貴方の存在そのものが。 既に、私たちの理解を超えているのですから。
当然と言えば当然でしょうに。」
「いや、僕からしたら。
「精霊の王と女王の
「あの~。 ちょっと、宜しいでしょうかぁ~?」
俺と、
「ええ。 どうぞ。」
「お二人の、関係を聞いても?」
「「仕事上での関係です。」」
声が揃ってしまった。
思わず、お互いの顔を見てしまう。
「仲が良いのですねぇ~。」
「「誰がっ!?」」
また、ハモった。
と、まあ。
なんとか、
自分の部屋に戻って、パソコンを開いて、報告書を纏めて、中嶋君にメールで送る。
「ふう。 終わったぁ~~。」
「お疲れ様です。」
レイさんが
「ありがと。」
素直に返事を返し、カップに残っていた冷めたコーヒーを喉に流し込む。
そして。 そのまま、1階に降りてトイレに入る。
用を足そうとして、自分の息子を取り出そうとすると、息子が元気にコンニチワしている。
疲れマラと言う奴だ。
「大きいですねぇ~。」
と、声が聞こえる。
ふと、横を見れば。 レイさんが、俺の元気に為った息子を凝視している。
えっ!? っと思いつつも。 一度、出だすと、止められないもので。
そのまま、レイさんに見られた状態で用を済ます。
ここで慌てて息子をしまおうとすると、チャックに皮を挟みかねない。
レイさんと言えば、何やら小声でブツブツと。
ブルルっと息子を揺らして露を払い。 息子をそっとしまう。
「あっ・・・。」
何やらレイさんが、小さな声を上げる。
手を洗って2階に向かい。
自分の部屋では無く、
「なに?」
「助けてください!」
ドアの前で、俺は
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おっさん、頼みごとをする
この結界の中なら、レイさんは、俺の側を離れる事が出来る。
流石に幽霊とは言え、トイレや風呂の中まで御一緒は遠慮させて貰いたい。
着替え程度なら、見られていても平気で着替えるが。
いくら50歳の初老の域に入ってるとは言え、他人に見慣れながらの排泄や風呂に入る性癖は俺に備わっては居ない。
「レイさん。 私の部屋には入れないようにしているからね。」
「あっ!はい!」
俺の部屋にも。 っと、頼もうとしたら。
「
と。先手を打たれてしまった。
どうやら、俺はプライバシーと言う物を失くしてしまったらしい。
「あの、自己処理する時は言ってくださいね。 離れていますので。」
レイさんが、恥ずかしそうに言う。
「・・・・・・。」
しねえよっ! などとは言える訳も無く。 どう返事を返して良いか分からずに無言を貫く。
* * * * * * *
明けて翌日。
事務所に行って、昨日の件を大門さんに説明する。
「それは、災難?だったのかな?」
微妙な表情で、大門さんが言う。
そして、レイと言えば。
お盆の上にカップを乗せて、俺たちの所にコーヒーを持ってくる。
「・・・・・。」
その光景を、大門さんが無言で見ている。
昨日まで、レイは物に触る事は出来なかった。
しかし。 しかしだ。
寝て起きて目が覚めたら、何故かレイは物に触れる事が出来るように為って居た。
「マジックか、何かを見ているような気分だ。」
目を揉み
大門さんには、レイの姿は見えていない。
内閣特殊調査課の過半数以上の職員は、霊的な
と、言うか。 霊的な
大門から見れば、お盆が宙に浮かんで動いていると感じる。
「まぁ、彼女の事は、こちらでも調べてみよう。」
「お手数を掛けます。」
大門に向かって頭を下げる。
レイも頭を下げているが、大門には見えていない。
「なに、君の身柄は国の方でも最重要人物指定扱いだからね。
その、お願いを無下に断る訳にもいかんさ。」
まるで危険人物扱いだが、あながち間違ってもいないんだなコレが。
今はまだ、
精霊の王と女王の
危険人物とみなされたら、
「なんか、色々とスイマセン。」
深く頭を下げる俺。
「気にするな。 君ほどじゃない。」
大人な対応で返してくれる大門さん。
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おっさん、困って土下座する
依頼を終えた事を、大門さんに電話で連絡を入れて自宅に帰る事を伝える。
事後処理は内閣特殊調査課の方がしてくれるので、俺は自宅に帰る事にする。
家に戻ってドアを開けると、玄関には
「ただいまぁ。」
そう言って靴を脱ぎ、自分の部屋に戻ろうとした時に、リビングに居る
「お帰り・・・。」
言葉が途中で止まる
そのまま、自分の部屋に行こうとすると。
「ぐぇ!」
変な声が出てしまう。
「ちょ! いきなり何をするんですかね?」
「貴方こそ、何をシレっと部屋に行こうとしているのですか?」
「ああ、依頼を無事に終わらせたよ。」
「そうですか。 それは、おめでとう御座います。」
「んじゃ。そう言う事で。」
「だから! 待ちなさい!」
再び、
「だから! なんなの!?」
「だから、何をシレっと部屋に行こうとしているのですか!」
「仕事を済ませて、今から報告書を纏めないといけないんですが!?」
「それは分かります! 仕事なんですから!」
「だったら、部屋に行かせてくださいませんか!?」
「その前に、私に言う事があるでしょう!」
「なにを?」
「ソレは何ですか! ソレは!?」
と言って。 俺の肩の辺りを指さす。
「俺に、
俺の言葉に合わせて、レイさんが礼をする。
「そうですか。 霊のレイさんですか。
じゃなくて! なんで! そんな物を憑けているのか説明しなさい説明をっ!」
仕方が無いので、リビングに戻って、
「はぁ・・・。 非常識にも程があります・・・・。」
いや、
非常識が、服を着て歩ているような人物なのだから。
「一応、言って置きますが。 レイさん。
くれぐれも、
万が一にも、
精霊たちが、貴方を駆除しに掛かりますので。」
「はい。 その事は、シーちゃんからも聞いて理解してます。」
等身大の大きさに戻り、俺の横に座ったレイさんが言う。
「シーちゃん?」
レイさんの言葉に、思わず言葉に出してしまう俺。
「はい。 シルフの精霊のシーちゃんです。」
嬉しそうに言うレイさん。
「理解しているのなら結構です。
「変な事って・・・。 君の中での俺は、どういった人物像なのかな?」
「理解不可能な人。」
「酷くねっ!?」
「貴方の存在そのものが。 既に、私たちの理解を超えているのですから。
当然と言えば当然でしょうに。」
「いや、僕からしたら。
「精霊の王と女王の
「あの~。 ちょっと、宜しいでしょうかぁ~?」
俺と、
「ええ。 どうぞ。」
「お二人の、関係を聞いても?」
「「仕事上での関係です。」」
声が揃ってしまった。
思わず、お互いの顔を見てしまう。
「仲が良いのですねぇ~。」
「「誰がっ!?」」
また、ハモった。
と、まあ。
なんとか、
自分の部屋に戻って、パソコンを開いて、報告書を纏めて、中嶋君にメールで送る。
「ふう。 終わったぁ~~。」
「お疲れ様です。」
レイさんが
「ありがと。」
素直に返事を返し、カップに残っていた冷めたコーヒーを喉に流し込む。
そして。 そのまま、1階に降りてトイレに入る。
用を足そうとして、自分の息子を取り出そうとすると、息子が元気にコンニチワしている。
疲れマラと言う奴だ。
「大きいですねぇ~。」
と、声が聞こえる。
ふと、横を見れば。 レイさんが、俺の元気に為った息子を凝視している。
えっ!? っと思いつつも。 一度、出だすと、止められないもので。
そのまま、レイさんに見られた状態で用を済ます。
ここで慌てて息子をしまおうとすると、チャックに皮を挟みかねない。
レイさんと言えば、何やら小声でブツブツと。
ブルルっと息子を揺らして露を払い。 息子をそっとしまう。
「あっ・・・。」
何やらレイさんが、小さな声を上げる。
手を洗って2階に向かい。
自分の部屋では無く、
「なに?」
「助けてください!」
ドアの前で、俺は
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おっさん自覚する
「風よ 切り裂け。」
俺の言葉に合わせて、イメージを精霊たちが読み取って力を貸してくれる。
風の刃が、目の前の
風の刃は、目の前の
「水よ 氷と為れ。」
地面を氷が覆い、複数の
「後ろっ!」
レイの言葉に反応して、咄嗟に前方に大きく飛び地面を転がる。
「唸れ 大地。」
大地が隆起して、俺を襲った
「火よ 焼き尽くせ。」
火柱が
少し離れた所では、
あの様子なら、加勢は必要ないだろうと判断する。
その判断は正しく。
ズンッ。と大きな音を立てて、
「大分マシに為ってきましたね。」
「そりゃ、どうも。」
「レイに助けられたのは見逃してあげます。」
「
こちとら、戦闘どころか。 格闘技すらしていなかった一般人だぞ。
と、言いたくなるが。
「敵は勘弁してくれませんよ。」
「精進します・・・。」
敵は、俺が未熟だろうと熟練だろうと関係なく襲ってくる。
自分の命が惜しければ、自分で自分の身を守るしかない。
* * * * * * *
家に着いて、今まで疑問に思っていた事を
「なぁ、
あの
「異世界ですよ。」
返って来たのは、トンデモ発言だった。
「は!? 異世界!? 在るのか!?」
「ええ、在りますよ。
じゃなければ、あの
異世界。 地球とは違う次元軸に存在する世界。
この次元軸が、時折屈折して、地球と異世界とを繋げてしまうらしい。
この時に、地球側から異世界に行ってしまい。
帰って来れなくなった人たちの事を、地球では神隠しと呼ばれている。
また、その逆もあり。
異世界から地球に来て、元の世界に帰れなくなった人たちも居る。
それが、
「魔術師って、結構いるんだな・・・。」
「はい。 一般的には知られていませんが。
それなりの数の魔術師は存在しますよ。
もっとも、漫画やアニメみたいに、都市を壊滅させるような殲滅魔法などと言う魔法は使用できませんけど。」
「それって。 やっぱり、アニメや漫画の様に、地球に魔力ってのが無いからか?」
「それも有りますが。 基本的に1人で使う事の出来る魔力なんて知れています。
私だって、その気に為れば周囲数十メートルくらいの範囲で術を行使できますが。
それを、都市規模で行使しろと言われれば無理です。」
「出来るのかよ・・・・。」
「そして、
貴方に至っては、災害規模で
「今はまだ、下級の
大精霊さまの
ましてや、精霊王と精霊女王が覚醒し。
貴方が、その
それこそ、地球規模での現象が起こせるほどです。」
開いた口が塞がらないとは此の事で。
「そもそもにして。 下級精霊と言われている存在の
たった、一か月半足らずで、ただの一般人の貴方が。 何の取り柄もない貴方が。
此処まで
軽くディスられているが。
俺は、それどころじゃない。
思考が追い付いて来ていない。
多少の自覚は持っていたが。
まさかのまさか。 そこまで危ない存在に為って居るなど、誰が自覚できようか。
せいぜい、危ない力を持った奴。 くらいの認識だったんだよ。 今までは。
「お・・・俺は・・・。 そんなに危ない
「はい。 端的に言えば。 地球の人口の9割を貴方は滅っする事が出来ます。」
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