ウルトラマンジード×ラブライブ!サンシャイン‼︎ 輝らすぜ!群青‼︎ (ラブライダーMEG)
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第1話 壊れそうな世界で

「レッキングバースト!!」

真っ暗な宇宙空間に一筋の閃光が迸った。だが、ウルトラマンジードの放ったそれが標的を捉えることはなかった。

 

 かつて全宇宙で暴れ回っていた悪のウルトラマン、ウルトラマンベリアル。ジードの父親でもある彼の細胞はデビルスプリンターと呼ばれている。デビルスプリンターは怪獣を凶暴化させる力を持っており、宇宙各地で混乱を招いている。

 

 そして、それを悪用しようとしているメフィラス星人を追って、ジードは戦闘を繰り広げていた。

「ベリアルの……父さんの細胞を使って何をするつもりだ!メフィラス星人!!」

「ふっふっふっふ……あなたが知る必要はありませんよ……行きなさい!ダークロプスゼロ!!」

突如、先程まで何も無かった空間にウルトラマンゼロを模したロボット兵器、ダークロプスゼロが現れた。

「ダークロプスゼロ……!?まさか、怪獣カプセル?」

 

 かつて、ジードと激しい戦いを繰り広げた伏井出(ふくいで)ケイ。当時、彼が使っていたのが怪獣カプセルだ。これをライザーで読み込むことにより、怪獣を召喚することができるのだ。

 

「ダークロプスゼロ、ジードの相手をよろしく頼みますよ。それではごきげんよう、ウルトラマンジード」

そう言い残して、彼は暗闇に溶けるように消え去った。

「待て!!」

後を追うジード。だが、ダークロプスゼロがその行手を阻む。

「くっ、やっぱり素直には通してくれないか……」

この瞬間、ジードは戦いの覚悟を決めたのだった。

 

 

 

「あ〜〜、どうしよう〜〜!!!!」

浦の星(うらのほし)女学院に叫び声が響き渡った。叫び声の主はこの学校のスクールアイドル、Aqours(アクア)のリーダー高海千歌(たかみちか)である。彼女たちは今、新曲のPV作りについて話し合っているのだ。

「せっかく9人になったんだし、新しいことには挑戦したいよね……」

ため息混じりに発言したのは千歌の幼なじみ、(よう)だ。

「でも、新しいことって何をすればいいのかな……?」

幼さを残した赤髪の少女、ルビィが疑問を口にする。

「もう堕天使アイドルは懲り懲りよ?」

「ふっふっふ、堕天使の魅力が分からないとは……まだリトルデーモンになるには早いようね……ギラン!」

Aqoursの作曲担当の梨子(りこ)善子(よしこ)の方をチラっと見ながら言った。それに対し自称堕天使の少女、善子がドヤ顔で反論した。

「善子ちゃんの感性は善子ちゃん以外には分からないずら」

「善子じゃなくて、ヨハネ!!」

善子の幼なじみで文学少女の花丸(はなまる)がジト目で突っ込むと、即座に善子が身を乗り出して訂正をした。

「「「うーーーん……」」」

結局考えはまとまらず、部室に沈黙が訪れた。

 

 

 

「ハローエブリバディ〜!!捗ってるかしら〜!!?」

ドアを開ける大きな音と同時に発せられた鞠莉(まり)の明るい声がその沈黙を破る。

「全然捗ってないみたいだね……」

「これは重症ですわね……」

鞠莉の幼なじみ、果南(かなん)とダイヤが行き詰まっている下級生を見て呟いた。

 

 生徒会長であるダイヤの仕事を手伝っていた3年生も合流し、話し合いを続けたが、一向にいい意見が出る気配はなかった。結局この日はこれといったものが決まらず、解散となってしまった。

 

 

 

 帰りのバスで梨子が問いかけた。

「千歌ちゃん。しいたけちゃん、ちゃんと繋いでおいてよ?」

しいたけとは千歌の家で飼っている犬のことだ。彼女たちは家が隣同士。そこで、解散した後も千歌の家で話し合いの続きをしようとしているのだ。

「あははは。この間みたいに私の家のベランダからジャンプしてお家に帰っちゃわないようにしないとね!」

「もう千歌ちゃん!!」

顔を真っ赤にして梨子が突っ込む。そう、彼女は犬が大の苦手なのだ。

 

 先日、しいたけに追いかけ回された梨子は、千歌の部屋の窓のベランダからジャンプし、そのまま自室へとダイナミックに飛び込んでしまっていた。

 

「それはそうと、新曲はどうするの??」

恥ずかしさからか、梨子が話題を変えた。

「そうなんだよ〜。Aqoursの知名度は上がったけど、入学希望者はゼロのままだもん!もっと新しい切り口でアピールしたい!!……だけど……」

彼女たちが通っている浦の星女学院は統廃合の危機。それを阻止するために、スクールアイドル活動を通して学校の知名度を上げ、入学希望者を増やそうというのだ。

「「う〜〜ん」」

やはり、これといった意見は出ないまま、2人を乗せたバスは海岸線を走っていく。

 

 

 

 薄暗い森の中、不気味な影がうごいめいていた。

「さて、時間稼ぎはできましたが、彼が追ってくるのも時間の問題でしょうね」

影の正体は言うまでもない。悪質宇宙人、メフィラス星人だ。

「彼に邪魔される前にひと仕事しておきましょう」

そう言うとメフィラスは、ベムラーとアーストロンの怪獣カプセルを起動し、ナックルに装填。ライザーで読み込む。

<フュージョンライズ!!>

「さぁ!ゲームを始めましょう!!」

<ベムラー> <アーストロン>

<ウルトラマンベリアル バーニング・ベムストラ!>

 音声と共に闇に包まれ、メフィラスの身体はベリアル融合獣、バーニング・ベムストラへと変貌を遂げた。

 

 沼津が地獄へと変わる。

 

 

 

「梨子ちゃ〜ん!しいたけ繋いだよ〜!!」

旅館でもある千歌の自宅、十千万(とちまん)旅館の入り口で彼女が叫ぶ。

「ほんとに大丈夫……?逃げ出したりしないよね……?」

梨子が不安そうに呟いた。

 

 その時、今まで聞いたことのない重苦しい音が響き渡った。

「「な、なに!?」」

2人が同時に音の方へと視線を向ける。視線の先には類を見ないほどの巨大な生物がいた。

「う……嘘……??怪獣……??」

震えた声で梨子が言った。

「梨子ちゃん!逃げよう!!」

千歌はそう言って駆け出すが、すぐに立ち止まって

「あの方向……学校がある!!」

そう口走るや否や、学校の方へと走り出した。

「ちょっと!千歌ちゃん!!」

慌てて追いかけようとする梨子だが、脚がすくんで動けない。

「大丈夫、彼女のことは僕に任せて!!」

精悍な声が梨子の背後から聞こえた。

「あ、あなたは一体……??」

「僕は……朝倉(あさくら)リク!!」

青年は力強く答えると、千歌を追いかけて走り去っていった。

「千歌ちゃんを……千歌ちゃんを助けてください!!」

走り去る背中に、梨子は呼びかけた。

 

 

 

 その頃、浦の星女学院ではこの学校の理事長でもある鞠莉が仕事をしていた。

「ワーオ……アメイジング……」

普段はおどけた態度を取ることの多い鞠莉だが、怪獣を目の当たりにして驚きを隠せない。

「ここにロングステイは出来なさそうね……」

鞠莉はポツリと言うと奥歯を噛みしめ、避難するべく理事長室を後にした。

 

 

 

 鞠莉が校門に辿り着くと向こうから人影が近づいてくる。

「ホワッツ!?千歌っち!?どうしてここに??」

「だってこのままじゃ私たちの学校が!!」

「だからってここに来てどうするの!!??死んじゃうわよ!!」

「じゃあ鞠莉ちゃんは学校が壊されていいの!!?」

「良いわけないじゃない!!!」

一瞬、沈黙が訪れた。

「私だって学校が壊されるのなんて見たくないわよ!!でも……でも……!」

「鞠莉ちゃん……」

怪獣が辺りを蹂躙する音だけがこの空間を支配していた。

 

「やっと見つけた!ここにいたんだね」

背後から聞こえた男性の声に千歌と鞠莉はハッとして振り向いた。

「あなたは……?」

千歌が尋ねる。

「僕は朝倉リク。君を探しにきたんだ。君の友達も心配している。ここは危ない。早く離れよう」

「でも、あなたはどうするつもりなの?」

鞠莉が問いかける。

「……僕には、やることがある」

一瞬の間の後、リクは力強く答える。

「分かったわ。行きましょう。千歌っち」

リクの真っ直ぐな目に何かを感じたのか、2人はリクの返答をすんなり受け入れ、学校を後にした。

 

 

 

 走り去る2人を見届けたリクは、怪獣に正対する。

「大丈夫……君たちの学校は、僕が守る!!ジーッとしてても、ドーにもならねぇ!!!」

 

「融合!」

「アイ、ゴー!」

「ヒアウィーゴ-!」

掛け声と共にウルトラマンとベリアルのウルトラカプセルを起動し、ナックルに装填。ジードライザーで読み込む。

<フュージョンライズ!!>

「決めるぜ!覚悟!」

「ジィィィィド!!!」

 

<ウルトラマン> <ウルトラマンベリアル>

<ウルトラマンジード プリミティブ!>

 

 音声と共にジードライザーから出た光に包まれ、リクの身体は初期形態へと変身。そして、カプセルのエネルギーと融合し、リクはウルトラマンジードへと姿を変える。

 

【ウルトラマンジード プリミティブ】

 怪獣退治の専門家、栄光の初代ウルトラマン。そして、リクの父親でもあり悪の道に堕ちたウルトラマン、ベリアル。この2人のウルトラマンの力を宿したジードの基本形態である。

 

 

 

 沼津の地に、勇者立つ。勇者の名はウルトラマンジード。

「ビッグなボディ……まさに、『ウルトラマン』ね……!」

その禍々しくも神々しい姿に思わず感嘆の声が漏れる鞠莉。

 

 

 

 ジードは沼津を蹂躙し続ける怪獣、バーニング・ベムストラと向き合い構えたと同時に飛びかかり、膝蹴りをお見舞いする。仰反るベムストラ。そのままジードはマウントを取る。1発、2発、3発とベムストラを攻撃する。しかし、ベムストラも黙ってやられているだけではない。口から必殺の青い光線、ペイルサイクロンをジードへ放った。至近距離から光線を受けたジードはたまらず吹き飛ばされてしまう。

 

ピコン。ピコン。ピコン。

 

 起き上がったジードの胸のカラータイマーが警告を発していた。活動限界が迫っている。早く決着をつけなければ!!

 

『じゃあ鞠莉ちゃんは学校が壊されていいの!!?』

『良いわけないじゃない!!!』

『私だって学校が壊されるのなんて見たくないわよ!!でも……でも……!』

 

 先刻の2人の少女の会話が思い出される。ここで負けるわけにはいかない!!

 

 強く決意したジードの青い目が輝きを増す。大地が轟く。赤と黒、2色のエネルギーが全身を迸り両腕に集まる。

『レッキングバースト!!』

掛け声と共に両腕をクロスし、充填したエネルギーをスパークさせる。すると光子エネルギーが激しく放射されるのだ。

 

 ジードの放った必殺光線がベムストラを捉える。重々しい音と閃光が走ると同時に、その身体は飛散した。

 

 

 

「イェーーーース!!!!」

鞠莉が両手をあげて喜んだ。沼津に平和が戻った。

「コレだ……コレだよ!!!!」

一方千歌は、飛び去るジードを見ながら何かを閃いたのであった。



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第2話 Thank you, FRIEND!!

 マルには大事な友達がたくさんいる。まずはルビィちゃん。彼女との出会いは中学校の図書室だった。次に善子ちゃん。善子ちゃんとは幼稚園が一緒で、入学式の日に再会した。そして、スクールアイドルAqoursのみんな。

 実はもう1人、大事な友達がいる。これはマルと彼女とのお話だ。

 

 

 

 ある朝、国木田(くにきだ)花丸はランニングをしていた。体力をつけるためだ。運動は苦手であまりしてこなかった。どちらかといえば室内で本を読んでいることが多かった。しかし、そんな彼女に転機が訪れた。スクールアイドルAqoursへの加入だ。みんなの足を引っ張るわけにはいかない。そんな想いから、ランニングをするようになった。

 

 いつものランニングコースを走っていると、物陰で誰か倒れているのに気がついた。恐る恐る近づいて声をかける。

「あの〜、だいじょ……!?」

しかし、倒れている人物の顔を見て花丸は言葉を失った。いや、正確にはヒトではない。倒れていたのは変身宇宙人、ピット星人だったのだ。

 

 

 

 ピット星人が目を覚ますと、そこは見知らぬ天井だった。

「ここは……?」

「目が覚めたずらか?ここはマルの家ずら」

花丸がピット星人に問いかける。

「ち、地球人……!?」

ピット星人は困惑を隠せない。

「いや〜、ビックリしたよ〜。ランニングしてたら傷だらけで倒れてたんだもん」

花丸のその言葉を聴いて、ピット星人は自分の怪我に処置が施されていることに気づく。

「あ、自己紹介がまだだったね。オラは国木田花丸。よろしくずら!」

そう言って花丸は手を差し出す。

「なぜ私を助けた」

しかし、差し伸べられた手には目もくれずピット星人が冷たく返す。

「生きとし生けるもの、みんな大切な命ずら。あなたが一体何者でも、関係ないずらよ」

と、お茶を飲みながら花丸は返す。

「さ、お腹空いてるでしょ?食べるずら!」

そう言って花丸はお茶とパンを差し出す。

「これは?」

「のっぽパンずら!美味しいずらよ〜〜」

ピット星人は恐る恐る、のっぽパンを口に運んだ。

「……美味しい」

「でしょ〜〜!静岡以外ではなかなか手に入らないんだよ〜!」

花丸が嬉しそうに言うと、ピット星人がポツリと呟いた。

「マーガレット……」

「え……?」

「私の名前、マーガレット……」

それを聞いて、花丸の表情がパァッと明るくなった。

「すまない、もう少しだけ眠っていいか……?」

「いいずらよ、おやすみなさん」

花丸の言葉を最後まで聞くことなく、マーガレットは深い眠りに落ちた。

 

 

 

マーガレットが目を覚ますと、花丸が何かを熱心に見ていた。

「ハナマル……?何をしているの?」

「本を読んでいるずら。マーガレットちゃんも読んでみる??」

そう言って花丸は一冊の本を差し出すが、

「地球の言葉は難しい……私には読めない……本とはそんなに面白いものなのか?」

その言葉を聞いた花丸は、何かのスイッチが入ったかのように捲し立てる。

「本はね、自分の知らない、行けない世界を見せてくれるんだよ。それに、学校や塾とは違う事を教えてくれるずら。評論や百科事典だけじゃない……小説だって。……それにね、表現力とか想像力とか、幅広い年代の本でその時代の言葉が分かって語彙も豊かになるずら。マルにとって本は1番身近な先生ずら! 」

早口で話す花丸にポカンとしているマーガレット。

「ご、ごめんずら。つ、つい熱くなっちゃって……」

「ハナマルがそんなに好きなら、私も読んでみたいな……」

「ホント!?それじゃあまずは日本語のお勉強ずら!!今から沼津に行って、参考書を買いに行くずら!!……あっ、でも」

そこまで言って花丸はあることに気づいた。宇宙人であるマーガレットが街を歩けば大騒ぎになってしまう。

「大丈夫、私……」

マーガレットの姿はたちまち地球人の少女へと変わる。

「……変身できるから」

「み、未来ずら〜〜!!」

マーガレットの早変わりに花丸が目を輝やかせて驚いた。

 

 

 

「……すごい、本がこんなにたくさん……」

「マルはね、いつもここで本を買ってるんだよ!」

2人は商店街の本屋を訪れていた。その本の多さに、マーガレットは言葉を失っている。

「さぁさぁ、まずは日本語をお勉強するための本を選ぶずら。どれがいいかな??」

そう言って花丸は参考書コーナーを覗く。

「これがいいかな……あっ、あれも良さそうずら!」」

花丸はあっちへこっちへ目移りしている。

「よし、これずら!」

どうやら決めたようだ。

「ねぇ、マーガレットちゃん!」

「えっ」

マーガレットは急に呼びかけられて驚く。

「マーガレットちゃんは、どんなお話が好き??」

「私の星には……そういうの無かったから……」

「それじゃあ、この本をオススメするずら!」

そう言って花丸は一冊の本を棚から取る。沼津に所縁のある作家の作品だった。

「この本はね、日本で有名な作家さんが書いた本なんだけど、なんとこの沼津で書かれた本なんだよ!!」

花丸が差し出した本をまじまじと眺めるマーガレット。

「もしかして、嫌だったずら?」

「いや、こうした経験が初めてなもので困惑していたんだ。なんだか、胸がポカポカするな」

マーガレットの言葉を聞いて、花丸の顔は満点の笑顔になった。

 

 

 

本屋で買い物を終えた2人はおやつの時間を楽しんでいた。

「ん〜、美味しいずら〜」

満面の笑みでたい焼きを頬張る花丸。それとは対照的にたい焼きをジッと持って見つめるマーガレット。

「あれ?食べないずらか?」

「いや、その……どこから食べればいいのか……」

「マルはね、尻尾から食べるんだよ。だって頭から食べたら、なんだか可哀想ずら!」

と言いながら次のたい焼きへと手を伸ばす花丸。

「ふふっ、そうか」

マーガレットはそんな花丸を優しい目で見つめると、たい焼きを尻尾からかぶりつく。

「んっ、美味しい……!」

たい焼きに舌鼓を打つマーガレットであった。

 

 

 

「いや〜、今日はとっても楽しかったずら」

「私もだ。こんなに楽しかったのは初めてだ。ありがとうハナマル」

お腹も満たされ、楽しげに歩く花丸とマーガレット。

「こうしてマーガレットちゃんと友達になれてよかったずら!!」

「と、友達……」

花丸の言葉に頬を赤らめるマーガレット。

しかし、邪悪な声が2人の幸せな時間を引き裂く。

「やっと見つけましたよ、ピット星人!」

声の主はメフィラス星人。彼はまだ生きていたのだ。そしてメフィラスが続ける。

「ピット星人さん、あなたは何しにこの星へ来たのですか?まさかその地球人と友達になったなんて甘ったれたことを言い出すんじゃないでしょうねぇ……?」

メフィラスの言葉に動揺するマーガレット。

「マ、マーガレットちゃん……」

マーガレットの隣で恐怖に震える花丸。

その様子を見て、マーガレットは真っ直ぐな目でメフィラスに言い返す。

「そうだ!ハナマルは私の友達だ!この星はこんなにも美しい!そしてハナマルのように心優しい人がいる。こんな素晴らしい星を踏みにじる権利なんて誰にも有りやしない!!」

「そうですか。残念ですよ……どうやら優秀な人材を1人失うことになりそうだ」

そう言ってメフィラス星人は腕を水平に伸ばす。そしてその腕先から放たれた閃光がマーガレットを貫いた。マーガレットの身体が宙を舞う。

「マーガレットちゃん!!!!」

ドサッと倒れたマーガレットに駆け寄る花丸。

「裏切り者にはふさわしい末路です。では、ピット星人に代わってあなたを踏み潰して差し上げましょう、地球人!!」

そう言ってメフィラスはライザーを取り出した。

「さぁ、ゲームを始めましょう!!」

<ベムスター> <ゼットン>

<ウルトラマンベリアル ベムゼード>

メフィラスの身体は、ベリアル融合獣、ベムゼードへと変貌した。

 

 目の前に巨大な怪獣が現れ、恐怖の表情を浮かべる花丸。悲鳴をあげることすら忘れるほどの恐怖だった。ベムゼードの巨大な足が花丸の頭上へと迫る。

 

 しかし、その足が花丸を押しつぶすことはなかった。ウルトラマンジードが現れ、ベムゼードに膝蹴りを喰らわせていたのだ。

 

『メフィラス、やはりまだ生きていたか!』

『ふっふっふ、我が目的を達成するまでは死ねませんよ!!』

ベムゼードは火球をいくつも繰り出し、ジードを攻撃する。辺りが爆炎に包まれる。

『あのベリアルを倒したジードといえど、こんなものですか。案外大したことないのですね』

メフィラスがベムゼードの中で高らかに笑う。

『大したことないのはお前だ!メフィラス!!』

爆炎が晴れるとそこにはすでにエネルギーを貯めたジードの姿が!

『レッキングバーストォォ!!』

ジード渾身の光線が放たれる。

しかし、その光線はベムゼードの手に吸い込まれていった。

『一体、誰が大したことないのですか?』

ベムゼードは吸い込んだ光線をそのままジードに放った。意表を突かれたジードは自分の光線をモロに喰らい、吹き飛ばされる。

ヨロヨロと起き上がるジード。その胸からは警告音が鳴り響いている。

『解析が完了しました。あれはベムゼード。ベムスターとゼットンが融合したべリアル融合獣です。いずれも光線技に対して、とても強い耐性を持っている怪獣です』

ジードの脳内に女性の声が響く。声の主はレム。リクをサポートする優秀なAIだ。

『リク、あの怪獣に対抗するにはカプセルの交換を』

『ああ!』

レムのアドバイスを聞き、ジードの中でリクがジードライザーを構える。

 

「融合!」

「アイ、ゴー!」

「ヒアウィーゴ-!」

<フュージョンライズ!!>

「魅せるぜ!衝撃!」

「ジィィィィド!!!」

<ウルトラマンヒカリ> <ウルトラマンコスモス>

<ウルトラマンジード アクロスマッシャー!>

 

 ジードが、姿を変える。

 

【ウルトラマンジード アクロスマッシャー】

 光の国の優秀な科学者であり剣の達人、ウルトラマンヒカリ。そして、優しさと強さを併せ持つ慈愛の勇者、ウルトラマンコスモス。この2人のウルトラマンの力を宿したスタイリッシュなスピード形態である。

 

 

 

『スマッシュビームブレード!!』

青き姿へと変わったジードの右腕に光の剣が形成される。そして真っ直ぐにベムゼードへ突っ込む。ベムゼードも火球を繰り出し応戦する。1発、2発、3発、何発も何発も火球を撃ち込む。しかし、ジードはその全てを斬り落としていく。そしてベムゼードとのすれ違いざまに一閃。その一撃でベムゼードの両手を切断する。悶えるベムゼード。

『これでもう光線は吸収できないな!!』

しかし、まだ攻撃の手は緩めない。

『ジードクロォォォ!!』

ジードが叫ぶとその右腕に二又の鉤爪が現れた。

『これでトドメだ!!』

<シフトイントゥマキシマム!!>

『ディフュージョンシャワー!!』

ジードクローから上空へと放たれた光が雨のようにベムゼードへと降り注ぐ。吸収能力を失ったベムゼードはなす術なく爆発した。

 

 

 

「マーガレットちゃん!!マーガレットちゃん!!」

マーガレットの前で花丸が叫ぶ。今、マーガレットの命の灯火が消えようとしている。ふと、花丸の視界が暗くなる。花丸が視線を上げてみると、ウルトラマンが花丸とマーガレットを見つめていた。ウルトラマンは優しくゆっくりとうなずくと、両手から暖かな優しい光を放出した。その光がマーガレットを包むと、彼女の傷はみるみるうちに塞がっていく。

「ありがとう!ウルトラマン!!」

ウルトラマンにお礼を言う花丸。

「う、う〜ん」

「マーガレットちゃん!!」

マーガレットが目を覚ますと花丸は嬉しそうに彼女の名前を呼ぶ。

「ハナマル、本当に申し訳ない。私のせいで危険な目に合わせてしまって……」

「マーガレットちゃんが悪いわけじゃないずら。気にしないで」

「だけど、これ以上一緒にいたらまたハナマルを巻き込むことになる……」

「……え?」

「……だから私は旅に出ようと思う」

「そんな!マーガレットちゃんは何も悪くないずら!!せっかく仲良くなれたんだよ!?こんなの寂しいずら……」

「ハナマル……」

マーガレットは伏し目がちに佇んでいる。

「……また、会えるよね?」

花丸が泣きながら尋ねる。

「きっとまた会えるさ、だって地球は丸いんだから」

「……待ってるから……!だってまだ、本の感想、聞いてないずら!!だから……だから絶対……絶対また会おうね!!!」

「あぁ、約束だ!」

2人は硬く誓い合った。

「ありがとう……遥かなる友人よ……」

その言葉と共に、マーガレットは夕焼けへと消えていった。



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第3話 爆誕‼︎シャゼリア☆キッス!!!

 浦の星女学院の体育館で、全校朝会が開かれていた。

「次は理事長のお話です」

生徒会長のダイヤのアナウンスで、理事長でもある鞠莉が登壇する。

「今日は皆さんに紹介したい人がいマース」

そう言って鞠莉が指差した先には……

「今日から、この学校の警備員として働く、朝倉リクさんデース!」

そう、朝倉リクの姿があった。

 

 どうしてこんなことになったのか。話はベムゼードとの戦いの後まで遡る。

 

 

***

 

「見つけたわよ朝倉リクさん。やっぱりここにいたのね!」

小原鞠莉が戦いを終えたリクに話しかける。

「あ、君はこの間の!え〜〜と……」

「小原鞠莉よ。よろしくね!実はあなたにお願いがあって探していたの!」

「僕に、お願い……?」

「そう、実は私、浦の星女学院の理事長をしているんだけど、あなたをそこの警備員として雇いたいの〜!」

「浦の星ってこの間の学校のこと?でも、どうして僕なんかに??」

リクが疑問を口にする。

「私には学校を守る義務があるの!でももし、この間や今日みたいなことが起こったら、私には守ることができない!だから、貴方にお願いしたいの!!」

鞠莉は強く訴える。

「でも、か、怪獣なんて僕にはどうにも……」

なんとか誤魔化そうとするリク。

「あら〜誤魔化さないでいいのよ〜」

とリクに近づきながら言う鞠莉。そしてリクの耳元で

「あなたなんでしょ、ウルトラマン」

とささやいた。

「え、そ、そ、そんな!ぼ、僕がウルトラマンなわけないじゃないか!!何言ってるんだよ、もう〜〜」

「その慌てっぷり。やっぱりあなたがウルトラマンだったのね」

「あれ、もしかして、カマかけた??」

呆気に取られるリク。

「それじゃ、引き受けてくれるわよね!チャオ〜〜!」

そう言い残して鞠莉は立ち去った。

 これがリクと鞠莉のセカンド・コンタクトである。

 

***

 

 

 放課後、リクは今後の打ち合わせのため、理事長室を訪れた。

「来たわねリクさん、待っていたわ。まず、あなたが知っていることを教えてもらっていいかしら?」

鞠莉が尋ねると、リクは語り始める。

「僕はウルトラマンジード。デビルスプリンターを悪用しようとしている宇宙人を追って、こことは違う宇宙から来たんだ」

「ワーオ……違う宇宙……つまりパラレルワールドってことね。ところで、デビルスプリンターって??」

「光の国の反逆者、ウルトラマンベリアルが宇宙のあちこちで暴れ回ったときに……落としていった破片……いや、細胞の一部かな?」

「ウルトラマン、ベリアル……?」

「うん、僕が決着をつけなきゃならない相手……」

父、ベリアルのことを聞かれてリクは複雑な表情で答えた。

「オッケー、難しいことは良く分からないケド、あなたが正義の味方だってことはよーく分かったわ。改めてこの学校をよろしく頼むわ」

鞠莉は手を差し出した。

「任せて!この学校も、この世界も!あいつらの好きな様にはさせない。」

その手を固く握るリク。

「ところで、そんな本物のスーパーヒーローにもう一つ頼みたいことがあるんだけど、いいかしら〜?」

「も、もしダメって言ったら……?」

急な頼み事に、何かを感じたのか恐る恐る尋ねるリク。

「ん〜〜、私の口がウッカリ色々喋っちゃうかも!」

それを聞いて苦々しく笑うリク。そんなウッカリで正体をバラされたら大変だ。

「それで、頼み事って?」

「実は今新曲のPVを作ってるんだけど、ヒーローソングなの。」

聞くところによると、先日のベムストラとの戦いを見ていた千歌が閃いたのだという。

「それで、せっかくなら本物のウルトラマンにアドバイスを貰いたいの。ダメかしら?」

「そういうことなら僕に任せて!だけど、ちょっと時間をもらってもいいかな?」

「あら頼もしいわね。頼りにしてるわ。それじゃあ私は練習があるからこれで。チャオ〜!」

そう言って鞠莉は理事長室を後にした。残されたリクは自身の影に語りかける。

「なぁ、ペガ、ちょっと相談があるんだけど」

 

 

 

『おかえりなさい。リク、ペガ』

サポートAI、レムがリクを出迎える。ここは星雲荘。リクたちの秘密基地である。

「ただいま、レム」

リクが答える。

「ただいま〜」

さらにリクの影が答えたかと思うと

「よっと」

リクの影から何かが現れた。それは地球人とは似つかない姿をしていた。

 

 彼はペガッサ星人のペガ。リクの親友である。彼らペガッサ星人はダーク・ゾーンと呼ばれる異空間を作り、その中に隠れることができる。その能力を使い、ペガはリクの影に潜み、行動を共にしている。彼ら2人が出会った時から、リクの影はペガの特等席なのである。

 

「それで、相談って何、リク??」

「実はペガに頼みたいことがあるんだ」

そう言ってリクはペガに耳打ちする。

「えぇ!?僕が!!?」

「いいだろ?ペガ、頼む!」

「そこまで言うなら……やってみる!ジーッとしててもドーにもならないもんね!」

ペガは小さくガッツポーズをして気合を入れた。

 

 

 

 次の日の放課後、リクはAqoursの部室を訪ねた。

「こ、こんにちは〜」

「「あ〜、リクさん!!」」

思い掛けない来客に千歌と梨子が驚く。

「「あの時はありがとうございました!!」」

2人が声を揃えて礼を言う。

「あれ?千歌ちゃんたち、リクさんと知り合いなの?」

「この間、怪獣が出てきたときに助けてもらったんだって」

疑問に思ったルビィに曜が答えた。

「それで、警備員さんが私たちに何の用事ですの?」

ダイヤが疑問をぶつける。

「もしかして……事件!?まさか、地獄の門が開いてしまったとでも言うの!?」

「そんなわけないずら善子ちゃん」

大袈裟にポーズを決めて騒ぐ善子を冷たくあしらう花丸。

「だからヨハネだってば!」

と、いつもの光景が繰り広げられる。

「私が呼んだのよ。ヒーローソングなら男性目線のアドバイスも必要でしょ?」

と鞠莉がウインクをして経緯を説明した。

「そういうこと。それで今日はみんなにヒーローのことを良く知ってもらおうと思ってコレを持ってきたんだ。」

すると、リクはバッグからたくさんのDVDを取り出した。『爆裂戦記ドンシャイン』。リクの敬愛する特撮ヒーロー番組であり、彼のルーツとも言える作品である。

「特撮ヒーローかぁ、昔、千歌たちとよくごっこ遊びしてたっけ」

果南が昔を懐かしむ。

「さぁっ、ジーッとしてないで、ドンシャイン見ようぜ!」

リク主催によるドンシャイン観賞会は連日行われた。

 

 

 

 ドンシャインをひと通り視聴し終え、いよいよ新曲PV撮影の日となった。部室に集まるAqoursのメンバーとリク。

「さぁ、張り切って撮影するぞ〜!!」

千歌が気合いを入れて叫んだ。

「その前に……実は今日の撮影に向けて、僕の他にもう1人助っ人を呼んであるんだ」

と、気合いの入った千歌をリクが遮る。

「お〜い、ペガ〜!ジーッとしてたらドーにもならないだろ?入ってこいよ」

リクが扉に向かって叫ぶと、扉がゆっくりと開いた。

「こ、こんにちは……」

ペガが恐る恐る部室に入って挨拶をする。

「わぁ〜、すごい!コレって着ぐるみ??」

曜が興味深そうにペガをまじまじと見る。

「ほんと不思議ね。どうなってるのかしら?まるで本物みたい」

梨子も驚きを隠せない。そもそも本物みたいではなく本物なのだが。

「ヒーローには悪役が必要だろ?そこで準備しておいたんだ。さぁ、ジーッとしてないで撮影しに行こうぜ!」

あまりジロジロとペガを見られたらまずい。そう思ったのか、リクが話題を撮影の話へと戻す。

「おっと、そうだった。それじゃあ撮影に、レッツゴー!!」

『おーっ!!』

千歌の掛け声にその場にいた全員が答えた。

 

 

 

 一行は順調に撮影を進めていった。いよいよ、ラストシーン。曲のクライマックスの撮影である。

「う〜ん、せっかくだから、思いっきりドーンってしたいよね」

千歌が突拍子もないことを言い出した。

「いくらなんでもそれは無理でしょ」

果南は呆れ顔で突っ込んだ。

「この堕天使ヨハネにかかれば爆発のひとつやふたつ……」

「それじゃ、善子ちゃんにお願いするずら」

「善子ちゃん、がんばルビィ!」

「ちょっとぉ!……っていうか、ヨハネ!」

善子、花丸、ルビィの1年生によるコントは相変わらずである。

「あはは、やっぱり無理だよね……」

千歌が照れ笑いを浮かべながら言った。

「もう……千歌ちゃんったら」

そんな千歌を微笑ましく見ながら梨子が独り言を言う。

 

 その刹那、耳をつんざくような音が響いた。

 

 全員が音のした方を振り向く。なんと空が割れているではないか。割れた空の向こうには恐るべき怪獣、否、超獣の姿があった。奴の名は一角超獣バキシム。怪獣よりも強い、恐るべき生物兵器だ。

 

 リクは、ペガと鞠莉に目配せをする。2人が大きくうなずく。

「う、うわぁー、か、怪獣だー。早く逃げないとー!」

リクが大根演技でその場を離れる。それを見たペガと鞠莉は他のメンバーを別の方に誘導した。

 

「ジーッとしてても、ドーにもならねぇ!」

他のメンバーがうまく逃げたことを確認したリクはジードライザーを構える。

「融合!」

「アイ、ゴー!」

「ヒアウィーゴー!」

<フュージョンライズ!!>

「決めるぜ!覚悟!」

「ジィィィィド!!!」

<ウルトラマン> <ウルトラマンベリアル>

<ウルトラマンジード プリミティブ!>

 

 

 

 バキシムと相対するジード。ジードを認識したバキシムは鼻先からミサイルを発射する。

『レッキングロアー!!』

そのミサイルを口から音波を繰り出し相殺するジード。そしてそのまま一気に距離を詰めようとする。しかし、バキシムの繰り出した火炎に阻まれてしまう。

『だったらコレで……ジードクロォォォ!!!』

体勢を整え、ジードクローを呼び出すジード。

『コークスクリュージャミング!』

そして全身をドリルのように回転させ、バキシムへと突っ込む。バキシムは再び火炎を繰り出し応戦するが、ジードは怯むことなくバキシムへと突っ込んだ。たまらず倒れるバキシム。

『今だ!』

その隙を逃さず、ジードはエネルギーを溜める。大地が轟き、黒き稲妻が迸る。

『レッキングバーストォォォ!!!』

クロスした両腕から光子エネルギーが放射され、激しい爆発と共にバキシムは塵となった。

 

 

 

 数日後、リクはAqoursの部室を訪ねた。鞠莉に呼ばれたからだ。

「こんにちは〜。この間の撮影の日はゴメン。あんなことになっちゃって……」

リクが謝罪をした。

「どうしてリクさんが謝るんですか?おかげで、すっごくいいPVが撮れたんですよ!!」

千歌が太陽のように明るい笑顔で言った。

「え、そうなの?」

キョトンとするリク。

「千歌ちゃんったら、怪獣が出てきても『カメラを止めるな!』って大騒ぎだったんですよ」

と梨子。

「ま、そういうところが千歌らしいよね」

「そうそう、でもそのおかげで大迫力のPVになったんだよね、善子ちゃん!」

と、果南と曜が続く。

「まったく、編集大変だったんだから……あとヨハネ」

編集の苦労を思い返す善子。

「善子ちゃん頑張ってたもんね。ありがとう」

「だからヨハネ!」

善子をルビィがねぎらうが、やはりヨハネとは呼んでもらえず、いつものように善子が訂正をする。

「カンペキなPVが出来上がりましたわ」

「Aqoursの注目度アップ間違いなしデース!」

ダイヤと鞠莉がPVの出来に太鼓判を押す。

「それじゃあ、聴いてください。せーの……」

千歌の合図で9人が声を揃える。

『シャゼリア☆キッス☆ダダンダーン』

 



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第4話 海に宿る魔

 淡島の海岸線に2人の少女の姿があった。果南と鞠莉だ。

「こうして鞠莉と釣りをするのも久しぶりだね」

「まったく、誰かさんが素直にならないせいでね〜」

「それはお互い様でしょ?」

2人は笑い合う。長いすれ違いを経てようやく仲直りをした果南と鞠莉はその幸せな時間を噛み締めているのだ。

「鞠莉!引いてる引いてる!」

鞠莉の竿が強く引っ張られる。2人がかりで竿を引くが、なかなか釣り上げることはできない。

 

ザッパァーン!

 

 しぶきをあげ、魚が釣りあげられた。

「小さいね」

「小さいデース」

が、苦労して釣った割にはその魚は小さかった。

「っていうか何これ?こんな魚、初めて見るよ」

果南が不思議に思う。その生き物はツノの生えたナマズやウミウシのようにも見える。果南の家はダイビングショップを営んでおり、彼女自身もダイビングを趣味としている。その海に詳しい果南が見たことない生き物である。かなり怪しいが……

「ワーオ、もしかして新種かしら?すごいもの釣っちゃったわネ!連れて帰って飼っちゃおうかしら!」

なんと、鞠莉はコイツを飼うと言い出した。

「え、鞠莉……コレ、飼うの……?」

さすがの果南も引いている。

「よろしくね!マイコォ!」

「名前までつけちゃってるし……」

 

 

 

 その翌日、Aqoursはいつものように学校の屋上で練習に励んでいた。

「ワン、ツー、スリー、フォー」

果南のカウントに合わせて踊るメンバー。

「鞠莉、どうしたの?なんだか今日は動きが鈍いよ?」

いつもと違って、動きにキレがない鞠莉を果南は心配した。

「大丈夫……なんともないから……」

「そう……」

俯きがちに、大丈夫、と答えた鞠莉を果南はジッと見つめるのであった。

 

 

 

 その夜、果南は鞠莉をいつもの海岸に呼び出した。

「前にここに呼び出した時はまだ喧嘩してたっけ」

その時を思い出しながら、果南は鞠莉を待っていた。しかし、その夜、鞠莉が現れることはなかった。

 

 そして鞠莉は、学校に来なくなった。

 

 

 

 数日学校に来ていない鞠莉を心配したリクは果南やダイヤなら何か知ってると思い、3年生の教室を訪ねた。

「鞠莉さん、いったいどうしたの?ここ数日学校に来てないみたいだけど?」

「それが……分からないのですわ……メッセージアプリの返信もないみたいですし……」

ダイヤが不安そうに答えた。

「最近、鞠莉さんに変わったことなかった?」

「そういえばこの間の練習の時、様子がおかしかったですわね……」

リクの問いに先日の練習の様子を思い出すダイヤ。

「そうだ……あの時、変な魚を釣ってからだ……」

果南は鞠莉の異変について心当たりがあるようだ。

「変な……魚……?」

リクが聞き返す。

「そう。私も初めて見る不思議な魚だった。今思えば、鞠莉がおかしくなったのもアレからかも……!」

「調べてみよう!まずは鞠莉さんのところに行かなきゃ!」

「私も行く!」

果南が同行を申し出る。

「すみません……わたくしは今日習い事が……リクさん、果南さん、どうか鞠莉さんをよろしくお願いします」

ダイヤが深々と頭を下げた。

 こうして、リクと果南が鞠莉を訪ねることになった。

 

 

 

 その日の放課後、リクはAqoursの練習を早めに切り上げた果南と一緒に鞠莉の家を訪ねた。

「うわっ、大きいなぁ……もしかしてコレ全部が鞠莉さんの家?」

鞠莉の家、ホテルオハラの大きさにリクは圧倒されている。

「鞠莉の家、すごいでしょ?さぁ、行こう」

 

 こうして2人は鞠莉の部屋の前にやってきた。リクはドアをノックした。しかし、返事はない。

「鞠莉ぃ!いるんでしょ?出てきて!」

「鞠莉さん!みんな心配してるよ。何があったの?」

2人が呼びかけると、ドアがゆっくりと開いた。

「あら、どうしたの2人とも?」

うつろな目をした鞠莉が出てきた。心なしか顔色も悪いように見える。

「どうしたの!?鞠莉!?具合悪そうだよ?」

「うるさいわね……ほっといてよ……私はマイコォの世話で忙しいの」

心配する果南をよそに、鞠莉は勢いよくドアを閉め、鍵をかけてしまった。

「鞠莉……」

悲しそうに立ち尽くす果南。

「ごめん、ちょっとトイレ!」

そう言ってリクは席を外した。

 

「どう思う?レム?」

リクは腰につけたジードライザーのナックルを握り、呼びかける。こうすることで星雲荘と通信することができるのだ。

『なんらかの地球外生命体に寄生されている恐れがあります。どうか気をつけて、リク』

レムが分析結果を伝える。

「地球外生命体か……」

リクが呟くと、突然辺りが暗くなった。どうやら停電したようだ。

 

 それから数秒と経たないうちに地割れのような音が響き渡った。リクが近くの窓から外を見ると、そこには月明かりに照らされた放電竜エレキングの姿があった。

 

「ジーッとしてても、ドーにもならねぇ!」

辺りを見渡し、誰もいないことを確認すると、リクはそのまま窓から飛び降りた。

<フュージョンライズ!!>

「決めるぜ!覚悟!」

「ジィィィィド!!!」

<ウルトラマン> <ウルトラマンベリアル>

<ウルトラマンジード プリミティブ!>

リクの身体が戦うための姿に変わる。

 

 

 

「鞠莉!鞠莉!!」

怪獣が現れた。このままだと鞠莉が逃げ遅れてしまう。そう思った果南は必死でドアを叩く。しかし、返事はない。

「こうなったら……」

果南は覚悟を決めた。数歩下がり、ドアに向かって思いっきり体当たりする。1回、2回。何回か体当たりをし、扉を壊すことに成功した果南。そこには割れた水槽と倒れた鞠莉の姿があった。

「鞠莉!!!」

果南が鞠莉に駆け寄る。辺りを見渡すと、水槽の中にいるはずの奇妙な魚はどこにも見当たらない。そのことから1つの仮説を立てた果南。

「割れた水槽……まさかあの魚が怪獣だったの?いや……そんなことより早くここを離れなくちゃ……!」

気を失った鞠莉を抱きかかえ、果南は走り出した。

 

 

 

 ジードがエレキングに後ろから組みつく。このままではホテルオハラに大きな被害が出てしまう。それに中には果南と鞠莉がいる。絶対にここで戦うわけにはいかない。そう思ったジードはエレキングを海へと投げ飛ばした。投げ飛ばされたエレキングは反撃に出た。口から三日月状の光線を数発繰り出すエレキング。それを受け止めるジード。避けてしまえば鞠莉たちに被害が及んでしまう。こうして生まれた隙をエレキングは見逃さなかった。怯んだジードに向けてすかさずその長い尻尾を巻きつける。そしてその尻尾に強力な電流を流し込んだ。その電圧は50万Vにも及ぶ。苦悶の声を漏らし、膝をつくジード。その胸の輝きは活動時間の限界が近いことを示していた。

 

 

「融合!」

「アイ、ゴー!」

「ヒアウィーゴ-!」

<フュージョンライズ!!>

「燃やすぜ!勇気!」

「ジィィィィド!!!」

<ウルトラセブン> <ウルトラマンレオ>

<ウルトラマンジード ソリッドバーニング!>

 

 ジードの姿が赤い鎧を纏ったような姿に変わると、全身から蒸気を吹き出した。その蒸気にエレキングは耐えきれず、思わず尻尾を緩めた。

 

 

【ウルトラマンジード ソリッドバーニング】

 誰よりも地球を愛した真紅のファイター、ウルトラセブン。そして、セブンを師とする宇宙拳法の達人ウルトラマンレオ。この2人のウルトラマンの力を宿したメカニカルなボディの格闘形態である。

 

 

 

 その頭部に装着された宇宙ブーメラン、ジードスラッガーを握り、飛びかかるジード。そのまま大きくなぎ払い、エレキングの角を1本折る。悲鳴をあげるエレキング。

『ブーストスラッガーキック!!』

ジードスラッガーを右脚に装着し回し蹴り。その一撃でもう1本の角もへし折った。

『トドメだ!』

ジードの右腕のアーマーが展開する。

『ストライクブースト!!』

そして右腕から必殺光線、『ストライクブースト』を放った。その一撃でエレキングは木っ端微塵に砕けちった。

 

 

 

 鞠莉が目を覚ました。

「あれ……果南……?ここは……アレ……?」

どうやら記憶がハッキリとしないようだ。

「変な魚を釣ったのは覚えてる?」

「うん、それから家に連れて帰って……」

「そう。その魚が実は怪獣で、鞠莉をおかしくしてたんだよ」

「ソーリー、心配かけたわね。ということは、私たち、怪獣一本釣りしちゃったわけ!?」

「ぷっ、なにそれ!」

2人の笑い声が夜空に響く。

「ねぇ果南?一つお願いがあるんだけど」

「なぁに?鞠莉?」

「ハグ、しましょ!!」



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第5話 Aqours☆HEROES、東へ(前編)

 夏休みに入り、Aqoursの9人はダイヤの提案で合宿をしていた。海の家の手伝いをすることを条件に、千歌の家である十千万旅館に宿泊していた。そんな中、梨子の下に、東京で行われるピアノコンクールの案内が届いた。しかし、その日程はラブライブの予備予選と同じ日だった。一度はAqoursのみんなとラブライブに出ると決めた梨子。しかし、千歌はその答えに疑問を持っていた。そこで千歌は寝ている梨子を起こし、浦の星で梨子のピアノ演奏を聞き、海岸へ向かった。そこで千歌は自分の出した結論を告げるのであった。*1

 

「梨子ちゃん。ピアノコンクール、出て欲しい」

予想だにしてない千歌の言葉に驚いた梨子。

「この街や学校や、皆が大切なのは分かるよ。でもね、梨子ちゃんにとってピアノは、同じくらい大切なものだったんじゃないの?その気持ちに、答えを出してあげて。私、待ってるから!ここで、みんなと一緒に待ってるって約束するから」

千歌の思いのこもった言葉に、梨子は涙を浮かべた。2人は抱擁を交わし、熱い友情を確かめあう。

「ホント、変な人……」

梨子の言葉と同時に朝日が昇りはじめた。そして、

 

ドォォォン……!

 

2人の幸せな時間は続かなかった。

 

「一体何が起こったの!?」

梨子が音のした方を見るとそこには、メカニカルな巨大生物の姿があった。

 

 ベリアル融合獣キングギャラクトロン。かつてウルトラ戦士を苦しめたキングジョーとギャラクトロン、2体のロボット怪獣が融合した姿だ。

 

「逃げよう千歌ちゃん!」

「あ、うん!」

梨子は千歌の手を取り、走り出した。

 

 

 

『リク、怪獣が現れました』

星雲荘ではレムがリクを起こしていた。

「よし、行ってくる!」

リクはエレベーターに乗り、戦場へと赴いた。

 

「融合!」

「アイ、ゴー!」

「ヒアウィーゴ-!」

<フュージョンライズ!!>

「守るぜ!希望!」

「ジィィィィド!!!」

<ウルトラマンゼロ> <ウルトラの父>

<ウルトラマンジード マグニフィセント!>

 

 

【ウルトラマンジード マグニフィセント】

 父、セブン譲りの宇宙ブーメランと、師であるレオ譲りの宇宙拳法を駆使して戦う若き戦士、ウルトラマンゼロ。そして、宇宙警備隊の大隊長、ウルトラの父。この2人のウルトラマンの力を宿した強大な力を持つ崇高な戦士である。

 

 

 

『メフィラス星人!今度は何を企んでいる!?』

『…………』

ジードが問うが、キングギャラクトロンは答えない。キングギャラクトロンはその右腕のペダニウムハードランチャーから強力なビームを放つ。ジードはその砲撃をアレイジングジードバリアを張り防いだ。

『ビッグバスタウェイ!!』

ジードはそのまま腕をL字に組み、必殺光線を繰り出した。光線を浴びたキングギャラクトロンは激しい爆発を起こした。

『一体なんだったんだ……?』

あっさりとした決着に釈然としないジードであった。

 

 

 

「千歌さん、梨子さん、ここにいたんですの!?」

ダイヤが千歌と梨子の下にやって来た。どうやら2人を探していたようだ。残りのメンバーも集まってくる。

「もう、心配したずら!」

花丸が胸を撫で下ろした。

「あれ?曜は?一緒じゃないの?」

善子が尋ねる。

「え?曜ちゃん、いないの……探さなきゃ……!」

千歌は曜を探して駆け出した。

 

 

 

 Aqoursの必死の捜索により、傷だらけで倒れている曜が見つかった。おそらく戦いに巻き込まれたのであろう。幸い、怪我も大きなモノではなく、Aqoursの活動に支障をきたすことは無かった。

 

 そして、梨子はピアノコンクールで見事入賞、Aqoursも無事に予備予選を突破したのであった。しかし、浦の星の入学志望者数は増えなかった。伝説のスクールアイドル、μ'sは同じ頃には廃校を阻止していたという。μ'sとAqours、何が違うのか。その答えを探すため、千歌たちは東京にいる梨子と合流し、μ'sの母校、音ノ木坂学院を訪れることにした。*2

 

 

 

 梨子を除いたAqours8人は東京駅で梨子を待っていた。

「梨子ちゃん、遅いね……」

千歌が呟く。

「まったく、連絡もせずに遅れるなんて……ぶっぶーですわ!」

ダイヤはイライラしてるようだ。

「まぁまぁ、そんなにプリプリしてるとシワが増えちゃうわよ?……あら?」

鞠莉がダイヤをからかっていると、鞠莉の携帯電話が鳴り響いた。

 

~~~

 

『リク、あなたにメッセージが届いています』

「え?僕に?」

リクは別世界の人間だ。この世界にリクにメッセージを送るような人間はいないはずである。となると、残された可能性はひとつ。

「罠、だよね……レム、読んでくれ」

リクの頼みに、分かりました、と返事をし、レムがメッセージを読み始めた。

『拝啓ウルトラマン様

桜内(さくらうち)梨子はあずかった。返して欲しければ私の指定した場所に小娘共を連れて来なさい。

メフィラス』

「えぇっ!?梨子ちゃんが!?どうしようリク!?」

ペガが慌てている。

「落ち着いてペガ。まずは鞠莉さんにこのことを伝えよう」

 

~~~

 

 鞠莉は携帯電話を取った。画面を見ると、リクからの着信だった。

「あら、リクさん?どうかしたの?」

『梨子ちゃん、一緒にいる?』

「いないけど……どうして?」

『実は梨子ちゃんが……』

リクは事情を説明した。

「えっ!?梨子が!!?」

『ごめん、みんなを巻き込むことになっちゃって……』

「ううん、気にしないで。あなたは悪くないわ。とにかく合流しましょう。こっちに来れるかしら?」

『うん、大丈夫。すぐに行くよ。それじゃあ、また後で』

「えぇ」

鞠莉は電話を切った。

「ねぇねぇ、梨子ちゃんがどうかしたの?」

千歌が無邪気に問いかける。

「実は……」

鞠莉は、梨子が拐われたこと、Aqoursのメンバーと共に来るように指示されていることを説明した。

「梨子ちゃん……きっと、大丈夫だよね……?」

千歌は自分に言い聞かせるように呟いた。そんな彼女を曜は複雑な表情で見ていた。

 

 

 

 それから間もなくして、リクが東京駅に到着した。そしてAqoursの8人と合流し、メフィラスの指定した地点へ向かうのだった。

 

 

 

 リクたちが到着すると、すでにメフィラスが待っていた。リクはみんなに離れるよう指示してメフィラスの下へ歩いた。

「メフィラス、一体何を企んでいる!?」

「ふふふ、ちょっとしたゲームですよ」

リクの問いに不敵な笑みを浮かべるメフィラス。

「お前の遊びに付き合っている暇はない!!それにみんなを巻き込むな!!」

「いいんですか?そんな態度を取って?桜内梨子がどうなってもいいんですか?」

激昂するリクをメフィラスは軽くあしらった。メフィラスの言葉にリクはグッと拳を握り堪えるしかなかった。

「なに、ギャラリーは多い方がゲームは盛り上がりますからね。それではゲームを始めましょうか……来なさい!Σ(シグマ)ズイグル!!」

メフィラスの言葉と同時に、宇宙捕獲メカ獣Σズイグルが現れた。

「今からこのΣズイグルを市街地に向かわせます。あなたに止められますか?朝倉リク……いや、ウルトラマンジード?」

「アイツを止めれば……梨子ちゃんを返してくれるんだな?」

「さぁどうでしょう?」

 

 

 

「ねぇ、どういうこと?今、リクさんがウルトラマンって言わなかった?」

思いもよらない展開に千歌は驚きを隠せない。

「鞠莉……もしかして、あなた知ってたんじゃないの?」

あまり驚いていない様子の鞠莉を見て、善子が尋ねた。

「ソーリー……また怪獣が出た時に私じゃ学校を守れないからお願いしてたの……」

「鞠莉さんが謝る必要はありませんわ。事情があったのですもの」

ダイヤが鞠莉をフォローする。

 すると、彼女たちが話をしている所にリクが駆け寄ってきた。

「みんなごめん、巻き込んじゃって……梨子ちゃんは必ず取り戻すから……!」

リクはΣズイグルの方へ向き直し、ジードライザーを構える。

「ジーッとしてても、ドーにもならねぇ!!」

 

 

 

「融合!」

「アイ、ゴー!」

「ヒアウィーゴ-!」

<ウルトラマンキング> <ウルトラマンベリアル>

ジードライザーでカプセルを読み込むと超絶撃王剣キングソードが出現する。

<我、王の名の下に!!>

「変えるぜ!運命!」

「ジィィィィド!!!」

<ウルトラマンジード ロイヤルメガマスター!>

 

 

 

【ウルトラマンジード ロイヤルメガマスター】

 ウルトラマンベリアル。そして、強大な力を持つウルトラ族伝説の超人、ウルトラマンキング。この2人のウルトラマンの力を宿したジードの最強形態である。

 

 マントを翻し、最強のジードが降臨した。その姿を8人の少女は固唾を飲んで見守ることしかできなかった。

 

 

 

『早くコイツを倒して梨子ちゃんを助けるんだ!』

ジードはキングソードでΣズイグルに斬りかかる。1撃、2撃、3撃と斬撃を繰り出す。Σズイグルは火花を散らし、大きく仰反る。

『コレでトドメだ!!』

キングソードを掲げ、エネルギーを貯める。

「おやぁ?そんなことをしていいんですかぁ?」

メフィラスが不気味に笑ったと同時に、Σズイグルの胸部のシャッターが開く。そこには、

『梨子ちゃん!?』

梨子が磔にされていた。必殺技を中断するジード。

「あら、止めるんですか?では、街の人たちはどうなるんでしょうねぇ……?」

『メフィラスゥゥゥゥ!!!!!』

怒りをあらわにするジード。しかし、梨子を人質に取られては手出しができない。ためらうジードにΣズイグルは両手の指先からミサイルを連射する。

『ブラザーズシールド!!』

ウルトラ6兄弟のカプセルを使い、シールドを張る。しかし、ミサイルを撃ち続けるΣズイグル。6兄弟の力を宿したシールドも遂には破られてしまい、ミサイルを連続で受けたジードは膝をついてしまった。胸のタイマーが激しく点滅する。

 

 Σズイグルはジードを無視して市街地へと歩き始めた。ジードはふらふらと立ち上がり、その歩みを阻止するため、Σズイグルの後ろから組みつく。だが、すぐに振り払われてしまい、指先からのミサイルの反撃を受けてしまった。ジードも反撃しようとキングソードを振り上げるが、梨子が囚われていることがよぎり、その剣を振り下ろすことができない。その隙をつかれ、またしてもミサイルの雨を浴びてしまう。ジードは再び膝をついた。

 

 しまいには胸の輝きは消え、ジードも光となって霧散してしまった。

「ふははははは!遂に邪魔者を倒したぞ!!コレで私の計画もスムーズに進みます!しかし、案外あっさりとしたものですね。興が冷めました。また出直すとしましょう」

そう言い残して、メフィラスはΣズイグルはどこかへテレポートしてしまった。

 

『リクさぁぁぁぁん!!!!!』

少女たちの叫び声が虚しく響いた。

*1
ラブライブ!サンシャイン‼︎1期 第10話「シャイ煮はじめました」

*2
ラブライブ!サンシャイン‼︎1期 第12話「はばたきのとき」



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第6話 Aqours☆HEROES、東へ(後編)

 ウルトラマンが負けた。ウルトラマンは梨子を救うことができなかった。その事実が少女たちに重くのしかかる。彼女たちは呆然と立ち尽くすことしか出来なかった。

 

 そんな彼女たちの目の前に、突如、円柱状のモノが現れた。

『みなさん、エレベーターにお乗りください』

球体型偵察機ユートムを使ってレムが語りかける。しかし、彼女たちはレムのことも星雲荘のことも知らない。目の前で起きていることに、ただ戸惑うだけであった。

「えれべぇたぁ、って……これのこと??」

「ほ、他に何があるのよ、ズラ丸!」

花丸の疑問に強気で答える善子だが、動揺は隠せない。

「乗るべき……なのでしょうか……?しかし……」

ダイヤが戸惑いを口にした。

「乗ろう!!」

その力強い声に全員が千歌の方を向いた。千歌が続ける。

「ジーッとしててもドーにもならないもん!乗ってみようよ!」

「そうだね!全速前進、ヨーソローであります!」

曜が敬礼をして千歌に賛同した。

「決まりだね!」

果南も続けて賛同する。

「それじゃあ……行こう!」

『おー!』

千歌の号令で彼女たちはエレベーターに乗った。

 

 

 

「みんな、久しぶり!……って言ってられるような状況でもないね……」

エレベーターを降り、星雲荘に着いた一行をペガが出迎えた。ベッドには傷だらけのリクが横たわっていた。

「リクさん!無事だったのね……!」

鞠莉が安堵した。

「一体何が起こってるんですの!?説明してください!」

「そ、それは……」

キツく詰め寄るダイヤにペガは口籠ってしまった。

『それは私から説明します』

「ピギィ!……だ、誰??」

突然聞こえた女性の声に驚いたルビィが悲鳴をあげた。

『私は報告管理システム、レム。声だけの存在です』

レムが答えたが、

「い、いや……僕が説明するよ」

ゆっくりと起き上がったリクが遮った。傷が痛むのか、話すのもやっとであるようだ。

「無理しないで、リク」

「いや、巻き込んだのは僕の責任だ。僕には説明する義務がある」

ペガが静止しようとしたが、リクの決意は固かった。

 リクはこれまでのことを説明した。自分が平行宇宙から来た人間であること。デビルスプリンターのこと。そして……

「ウルトラマンベリアルは……僕の父さんなんだ……」

父、ベリアルのことも隠さず語った。

「本当にごめん……僕のせいでこんなことになって……」

「大丈夫ずら!」

花丸は落ち込むリクの手をそっと握った。

「リクさんがどこから来たとしても、リクさんのお父さんが何者でも関係ないずら!リクさんはリクさんだよ!」

「うん、そうだね。ありがとう、花丸ちゃん」

 

「それで、これからどうしますの?なんとかして梨子さんを助け出さないと、また同じことを繰り返してしまうだけですわ」

ダイヤが話題を変えた。彼女の言う通り、梨子がとらわれたままでは手出しができない。ダイヤの言葉を聞いて千歌が一つの提案をする。

「私たちで助けに行こう!」

それを聞いた善子は呆れて言う。

「はぁ?助けようって言ったってどこにいるか分からないのに……」

『分かります』

そんな善子の言葉をレムが遮った。

「えへへ、実は……」

ペガが照れながら説明を始めた。何かあったときのために、ペガはダーク・ゾーンを使ってこっそりメフィラスに近づき、発信器を取り付けていたのだ。

「よし!これで、みんなで梨子ちゃんを助けに行けるね!」

千歌がガッツポーズを作って言った。

「いえ、わたくしはルビィと一緒に残りますわ。リクさんの看病をする人が必要でしょう?」

ダイヤが残ることを提案した。妹のルビィが怖がっていることに気付いた姉の心遣いだ。

「それじゃあ、マルも残るずら。みんなの足を引っ張っちゃいそうだし……」

花丸も残る意思を表した。

「分かった。じゃあ梨子ちゃん救出大作戦、開始!」

『おーー!!!!』

千歌の掛け声でこの場にいる全員が拳を高く掲げた。

 

 

 

 発信器の反応を追って、ペガ、千歌、曜、果南、鞠莉、善子の6人はとある廃工場にやってきた。しかし、その入り口には1人の宇宙人が見張りに立っていた。

『ど、どうするの……?』

千歌のスマホからルビィの声が聞こえた。星雲荘からの通信である。こちらの様子はユートムを通して星雲荘にモニタリングされているのだ。

「……私が囮になるよ」

しばらく沈黙した後、意を決した表情で曜が言った。

「そんなことしたら曜はどうなるのよ!?」

見つからないように静かな声で、しかし強めの口調で善子が言った。

「大丈夫、脚なら果南ちゃんよりも速いし、いざとなったら逃げられるよ!ジーッとしててもドーにもならないもんね!」

そう言うや否や、曜は見張りの気を引くべく飛び出して行った。

「曜!」

「曜ちゃん!」

『曜さん!』

星雲荘のメンバーを含めた全員が曜を呼んだ。しかし、彼女は立ち止まることはなかった。彼女は見事、見張りの気を引くことに成功し、見張りを連れて走り去っていった。

「行こう。梨子ちゃんを早く助けて曜ちゃんも助けるんだ!」

ペガがみんなを鼓舞すると、一行は勢いよく走り出し、廃工場の中へ突入した。

 

 

 

 廃工場の中では梨子が両手首を吊られ、身動きができない状態でいた。その周りを三面怪人ダダが見張っている。

「ねぇペガさん、アイツの気をなんとかそらせない?そしたら私が後ろからいくから」

「うん、分かった!やってみる!」

果南の提案に乗ったペガはダークゾーンへ消え、みんながいる場所とは真逆の方向へ姿を現した。

「おい、そこのペガッサ星人!そこで何をしている??」

ペガに気づいたダダが手に持った光線銃を突きつけた。その背後から鉄パイプを持った果南がゆっくりと近づいている。ダダが果南に気づく様子はない。

 

バコン!!

 

 果南が鉄パイプをダダの頭上へ思いっきり振り下ろした。強烈な一撃を受けたダダはその場に崩れ落ちた。

「やった!!」

その場にいた全員が声を上げて喜んだ。

 

 

 

 廃工場から少し離れた場所、そこには1人の宇宙人の姿があった。先ほど、曜を追いかけていった宇宙人だ。

「アイツ……どこへ行きやがった……?」

どうやら曜を見失ったらしい。

「ん?」

ふと後ろに気配を感じ、振り返った。しかし誰もいない。

「気のせいか……」

そう呟いた途端、その身体が後ろから何かに貫かれた。

「ガハッ……なんだ……テメェ……!?」

「貴様……誰に向かって口をきいている?」

「ま、まさか……あなたは……!」

そういうと宇宙人は事切れた。宇宙人が事切れたのを見届けると、何者かはその場を立ち去っていった。

 

 

 

 一方、廃工場では、果南が倒れたダダの懐から梨子を拘束している手錠の鍵を探していた。鍵を見つけた果南はそれを千歌へ渡す。

「梨子ちゃん、助けに来たよ!!」

千歌が鍵を開けながら言った。

「みんな……ありがとう……!」

「梨子、無事で良かったわ!けど、安心するのはまだ早いわ。早くここを離れないと……曜のことも心配だわ」

鞠莉の言葉に一行は気合いを入れ直し、出口へ向けて走り出した。その時、

「梨子ちゃん、危ない!!」

千歌が梨子を突き飛ばした。一筋の光が千歌を貫く。糸が切れたようにその場に倒れる千歌。

「え……?千歌、ちゃん……?」

突然、突き飛ばされた梨子は尻餅をついた。何が起きたか理解できていないようだ。

「よくも……よくも私の計画を邪魔したな!!!この下等生物がぁぁぁ!!!!」

そこには激怒したメフィラス星人がいた。彼が放った光線が千歌の身体を貫いたのだ。

 

 

 

「千歌ちゃん!!」

その様子は星雲荘のモニターにも映し出されていた。その様子を見ていた、リク、ダイヤ、ルビィ、花丸が思わず千歌の名前を叫んだ。

「このままじゃみんなが危ない!!!」

リクはそう叫んでエレベーターに乗ろうとしたが、

「待ってください」

ダイヤがリクを呼び止めた。

「わたくしたちも行きます。わたくしたちもジーッとしていられませんわ」

ダイヤはルビィと花丸の方を見た。2人は強く大きく頷いた。

「よし、行こう!!」

4人はエレベーターに乗り、千歌たちの下へ向かった。

 

 

 

「許さん許さん許さんぞぉぉぉ!!」

廃工場ではメフィラスが怒りを爆発させていた。千歌たちに出し抜かれたことでそのプライドを大きく傷つけられたのだ。

「地を這いずりまわり恐怖に怯えろぉぉぉ!!!命乞いをするのだぁぁ!!明日なき世界に絶望するがいい!!!」

声を荒げたメフィラスの身体はみるみるうちに大きくなっていった。

 

 

 

「メフィラス……僕はお前を絶対に許さない!!」

駆けつけたリクが巨大化したメフィラスを睨みつける。そして、ジードライザーと必勝激聖棍ギガファイナライザーを構えた。

 

「ウルティメイトファイナル!!」

エボリューションカプセルを起動しギガファイナライザーにセット。ジードライザーで読み込む。

<アルティメットエボリューション!>

「つなぐぜ!願い!」

「ジード!!」

リクの身体がジードへと変わる。リク自身の闘志とエネルギーが全身を駆け巡る。

<ウルトラマンジード ウルティメイトファイナル!!>

リクはウルティメイトファイナルへの変身を完了した。

 

 

【ウルトラマンジード ウルティメイトファイナル】

 想いを力に変える赤き鋼、ギガファイナライザーを駆使して戦う、闘志漲るジードの究極進化形態である。

 

 

 

 ジードとメフィラスが対峙する。

『おや、まだ生きていましたか……ならば私が葬ってやろう!!!』

メフィラスは鎧をその身に纏いアーマードメフィラスとなった。

『喰らいなさい!!』

アーマードメフィラスは左腕から光弾を連続で繰り出す。ジードはその手に持った巨大な棍、ギガファイナライザーで光弾を捌く。しかし、捌き切れずに何発か被弾してしまった。

『おやぁ?なんだか動きが鈍いですね……まだ傷が癒えていませんかぁ??』

メフィラスがニヤリと笑った。

 

 

 

「千歌ちゃん、千歌ちゃん!」

「千歌!」

「千歌さん!」

一方廃工場ではAqoursのメンバーとペガが口々に呼びかけていた。しかし、返事はなく千歌はぐったりと倒れたままだ。

「さっきはよくもやってくれたなぁ!」

突然、先ほど倒したダダが起き上がり、銃口を向けた。

 

 

 

『おやおや、もっと本気を出してくださいよ!!』

メフィラスが右腕の剣でジードを何度も斬り付けていた。たまらず膝をつくジード。

『まだまだ倒れてもらっては困りますねぇ……Σズイグル!!』

メフィラスが呼ぶとジードの背後にΣズイグルが現れ、ジードを羽交い締めにする。

『まだ終わりにしませんよ……死んだ方がマシだと思うほどの苦しみを与えて差し上げましょう!!』

そう言うと、メフィラスは右腕を大きく振り上げた。ジードの胸の輝きはすでに赤く点滅していた。

 



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第7話 Step ZERO

『まだ終わりにしませんよ……死んだ方がマシだと思うほどの苦しみを与えて差し上げましょう!!』

メフィラスは右腕を大きく振り上げた。このままではマズい。死を覚悟するジード。しかし、その剣が振り下ろされることはなかった。灼熱の炎を纏ったキックがメフィラスを吹き飛ばしたのだ。その間にジードはΣズイグルの拘束を振りほどく。

『き、貴様はぁ!!』

メフィラスは自分を吹き飛ばした相手を睨みつけた。腕に輝く光に正義を誓ったその戦士の名は、

『俺はゼロ……ウルトラマンゼロだ!!』

ジードの戦友、ウルトラマンゼロだった。

『おい、ジード。立てるか?』

ジードに手を差し出すゼロ。

『主役は遅れてやってくるんですよね』

その手を握り、皮肉っぽくジードが言った。

『へっ、主役の登場を盛り上げすぎだ』

ゼロは親指で鼻をこすると、ジードにエネルギーを分け与えた。ジードの胸が青い輝きを取り戻した。

『ジード、お前はメフィラスをやれ。俺はあのロボットをやる。イケるか?』

『もちろん!!』

ゼロの問いかけに力強く答えるジード。

『よっしゃ行くぜ!!』

ゼロの声と共に、2人のウルトラマンは走り出した。

 

 

 

 Σズイグルはミサイルの雨をゼロに浴びせる。しかし、ゼロは意に介さず突っ込んでいく。ゼロが煙に包み込まれる。だが、煙が晴れてもゼロの姿はそこにはなかった。

『ルナミラクルゼロ!』

Σズイグルの背後にゼロはいた。その姿は全身が青い。

 

【ルナミラクルゼロ】

ウルトラマンダイナのミラクルタイプが持つ超能力。そして、ウルトラマンコスモスのルナモードの持つ慈愛の力。その2つを宿したゼロの"守り抜く力"である。

 

『レボリウムスマッシュ!!』

右手から衝撃波を飛ばす掌底打ち、「レボリウムスマッシュ」を放ったゼロ。Σズイグルは大きく吹き飛ばされた。よろよろと起き上がるΣズイグル。その目前にはゼロが立っていた。超スピードで一気に距離を詰めたのだ。

 

『ストロングコロナ、ゼロ!!!』

ゼロが左腕のウルティメイトブレスレットを叩くと、ゼロは全身を赤き姿へと変える。

 

【ストロングコロナゼロ】

ウルトラマンダイナのストロングタイプが持つ怪力。そして、ウルトラマンコスモスのコロナモードの持つ太陽の燃える炎のような力強さ。その2つを宿したゼロの"前に進む力"である。

 

『ウルトラハリケーン!!!』

ゼロはΣズイグルの身体を掴むと、上空へ激しく回転させながら投げ飛ばす。そしてゼロは通常形態へ戻ると、頭に装備している2対の宇宙ブーメラン、ゼロスラッガーを手に持つ。それを1つに組み合わせ、巨大な弓のような形状の剣、ゼロツインソードを作り出した。ゼロツインソードを構え、エネルギーを溜めるゼロ。そして上空へ飛び上がり、一閃。Σズイグルを一刀両断した。ゼロの大技「プラズマスパークスラッシュ」である。

『この俺に勝とうなんざ、2万年早いぜ!!!』

そう言うとゼロは裏ピースを決めた。

 

 

 

『メフィラス星人!僕はお前を絶対に許さない!!』

『なぜです?どうしてあなた方ウルトラマンは下等生物の味方をするのですか!?』

ジードのギガファイナライザーとメフィラスのメフィラスブレードがぶつかり合い、火花を散らす。

『命はみんな平等なんだ!みんな必死に生きている!!僕たちはそれを守りたい!!それだけだ!!』

『理解できませんね!下等生物共はみんな私のコマなんですよ!!』

『ふざけるな!!』

ジードがメフィラスブレードを弾き飛ばした。

『誰も命を弄ぶ権利なんかない!!これでトドメだ!!』

ギガファイナライザーの先端にエネルギーが漲る。

『クレッセント、ファイナルジィィィィド!!!!!』

ギガファイナライザーで一閃、メフィラスの身体を真っ二つにした。

『も、申し訳ありません……ぐわあああああ!!!』

断末魔をあげ、メフィラスは爆発した。こうしてメフィラスの遊戯は終わりを迎えたのだった。

 

 

 

 リクが変身を解くと、そこには千歌の姿があった。

「あれ?千歌ちゃん?無事だったの?どうしてここに?」

リクが尋ねると

『よう、リク久しぶりだなぁ!』

「も、もしかしてゼロォォォ!!!??」

千歌の左腕にはゼロがしているものと同じブレスレットが光っていた。

「一体、どういうこと?何があったの?」

リクが尋ねるとゼロは説明を始めた。

 

 

***

 

 

「あれ……私、どうしちゃったの?」

千歌は何もない空間で目覚めた。

『千歌!』

『千歌ちゃん!』

『千歌さん!』

どこからか千歌を呼ぶ声が聞こえる。しかし、声の主の姿は見えない。

「私を呼ぶのは誰?どこにいるの?」

千歌が尋ねるが答えは返ってこない。千歌を呼ぶ声だけが聞こえる。

『千歌、聞こえるか?』

先ほどまでの声とは全く違う声がした。今度は姿もはっきり見える。

「あなたは、誰?」

千歌が尋ねると声の主が答える。

『俺はウルトラマンゼロ。光の国から来た、宇宙の平和を守る宇宙警備隊の一員だ』

「どうして私たちはここにいるの?」

『千歌、お前は今、生死の狭間を彷徨っている。だが、お前の自分を省みずに友達を救おうとする姿に心を打たれた。お前を死なせるわけにはいかない。俺とお前が一心同体になれば、お前を助けられる』

千歌にとって衝撃の事実をゼロは告げた。しかし、千歌は気丈に答える。

「うん、分かった。だって私……」

『よし、これから俺はお前で、お前は俺だ!』

「だって私……輝きたい!!!」

こうして2人は一体化した。

 

 

 

千歌が目を覚ますとダダの銃口が向けられていた。しかし、その引き金が引かれることはなかった。千歌が起き上がり、ダダの光線銃を蹴り上げたからだ。

「貴様!生きていたのか!?」

『お前みたいな悪党がいる限り、死ねねぇよ!』

千歌の身体を借りてゼロが答える。そのまま宇宙拳法の秘伝の神業で瞬く間にダダをノックアウトした。千歌の変貌に動揺を隠せないAqours。

「千歌、どうしたの……?」

ようやく果南が声を絞り出し質問した。

『説明は後だ!まずはジードを助けねぇと』

そう言うと千歌は左腕を前に出す。すると、左腕のウルティメイトブレスレットから、ウルトラゼロアイが出現する。

『デュアッ!!』

掛け声と共にゼロアイを装着。千歌の身体はウルトラマンゼロへと変わったのであった。

 

 

***

 

 

『ってなわけなんだ』

ゼロが説明を終えると、リクたちの下に、Aqoursとペガが合流する。

「あれ?曜ちゃんは?」

と千歌が尋ねる。どうやらゼロが千歌に身体の主導権を返したらしい。

「それが……」

梨子が答えようとしたその時

「おーい!!」

曜が走ってやってきた。

「曜ちゃん!!無事だったんだね!!」

千歌が真っ先に抱きつく。

「それが、気付いたら宇宙人が追ってこなくなってて……」

曜が困ったように首をかしげて答えた。

「とにかく、良かったわ!これでハッピーエンドね!」

と鞠莉が両手を叩いて笑顔で言った。

 

 

 

 しかし、本当にコレで終わりなんだろうか。メフィラスが集めていたはずのデビルスプリンターはどこへ行ったんだろう?メフィラスと一緒に爆発したのなら良いんだけど……それに、メフィラスの最期の言葉が気になる。あれはまるで、まだ黒幕がいるような……

 リクはどうしても不安を拭うことが出来なかった。

 



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第8話 この場所が好き

 私、高海千歌!浦の星女学院に通う高校2年生!スクールアイドルAqoursを結成して、学校を廃校の危機から救うために活動してるの!!だけど、実はそれだけじゃなくて……私、ウルトラマンはじめました!はじめたんだけど……

 

 

「あ〜、もうっ!せっかくウルトラマンになったのになんで怪獣が出ないの!?」

『おいおい、平和なのはいいことだろ?本当は俺たちウルトラマンの出番なんて無い方がいいんだ』

部室に響き渡った千歌の嘆きを聴いたゼロが彼女をたしなめた。

『まったく……タイガの時とはまた違った意味で苦労しそうだぜ……』

ゼロがぼやいた。"タイガ・ノゾム"……地球人としてはゼロと始めて一体化した人物だ。*1この世界とは違う世界にある"フューチャーアース"と呼ばれる地球で共に戦った。彼と出会い、共に戦ったことは、ゼロに大きな影響を与えた。

『そういえば千歌、今日はなんだか人が少ないな?どうしたんだ?』

「ダイヤさんは生徒会、鞠莉ちゃんは理事長のお仕事、梨子ちゃんは作曲、曜ちゃんは衣装作りで忙しいんだって。だから今日の練習は5人でやるんだ」

『ふ〜ん……みんな忙しいんだな』

「みんなそれぞれ頑張ってるからね!私も頑張らないと!!」

千歌が勢いよく立ち上がった。

「ピギィ!千歌ちゃん!急に立ち上がらないでよ……ビックリしちゃったよぉ……」

その勢いにルビィが飛び上がって驚いた。

「あはは、ごめんごめん」

千歌が頭を掻き、照れ笑いを浮かべて謝った。ゼロの声は千歌にしか聞こえないため、周囲からは独り言を言っているようにしか見えないのだ。

「千歌ちゃん……1人で話してるけど、ゼロさんと話してるんだよね……」

そんな千歌の姿に困惑する花丸であった。一方、善子は

「内面に潜むもう1つの人格との会話……さすがはリトルデーモンね……」

千歌とゼロに謎の称賛を送っていた。そんな善子の独り言を聞いていたゼロは千歌の身体を使って突っ込む。

『誰がリトルデーモンだ!?人を勝手に悪魔扱いしやがって!!』

「うわっ、驚かさないでよゼロ!まったく……姿は千歌そのものだから違和感しかないわね……」

荒っぽい言動をする千歌の姿に善子は調子を狂わされた。と、同時に果南が部室に入ってきた。

「さあっ、練習始めるよ!屋上に行こう!」

と、手を叩きみんなに呼びかけた。

 

ズシィン……!

 

その時、大きな地響きがした。

「なになになに!?」

千歌が走って窓を開けて外を見た。そこには全身骨のような姿をした怪獣の姿があった。

『あれは……シーボーズ!?どうしてこんなところに!?』

千歌の中でゼロが驚いた。

 

 

 

 亡霊怪獣シーボーズ。様々な世界で倒された怪獣や宇宙人の魂が流れ着く怪獣墓場と呼ばれる場所で平穏に暮らしているはずだ。*2しかし、どういうわけかこの世界の地球に流れ着いてしまったようだ。

「よぉし、怪獣をやっつけるぞぉ!!ゼロさん!行くよ!!」

張り切っている千歌はゼロアイを呼び出すために、勢いよく左腕を前に出す。しかし、ゼロアイは現れない。

「ゼロさん、行くよ!!」

千歌がもう一度左手を前に出したが、空を切る音が虚しく響くだけだった。

「ねぇゼロさん!どうして変身しないの!?」

『……なぁ千歌、お前はどうして戦うんだ……?』

「……え?」

ゼロの問いに千歌は呆けた顔で聞き返した。

 

 

 

<ウルトラマンジード プリミティブ!>

内浦の地にウルトラマンジードが舞い降りる。ジードはゆっくりとシーボーズへ歩み寄る。しかし、シーボーズは口から火球を吐き攻撃してきた。不意をつかれたジードは吹き飛ばされてしまう。

『……!?どうしたんだ……!?なんでシーボーズが……!?』

シーボーズは本来大人しい怪獣であり、火球を吐き出す能力も持っていないはずだ。それなのにどうして……?

『まずは大人しくさせないと……!』

ジードがそう呟くと、彼の身体が光に包まれた。

<アクロスマッシャー!>

ジードの身体が青く染まった。アクロスマッシャーへとフュージョンライズしたのだ。

『行くぞ!』

ジードが中国拳法のような独特のファイティングポーズを取る。するとシーボーズは火球を連続で繰り出した。

『コークスクリューブロック!』

しかし、その火球攻撃は通用しなかった。ジードクローを装備したジードはその場で高速回転。全ての火球を受け流したのだ。火球を撃ち尽くしたシーボーズに隙ができる。もちろんその隙をジードは見逃さない。

『スマッシュムーンヒーリング!』

癒しの光線を放ち、シーボーズを大人しくさせた。

『さぁ、怪獣墓場へ帰ろう』

大人しくなったシーボーズへとジードが優しく語りかけた。ゆっくりとうなずくシーボーズはジードに抱きかかえられ、怪獣墓場へと帰っていった。

 

 

 

「ねぇゼロさん、どうして変身させてくれなかったの?」

飛び去っていくジードとシーボーズを見送りながら、千歌が静かに尋ねた。

『もう一度聞くぞ。お前は何のために戦うんだ?』

「そんなの決まってるよ!怪獣を倒すためでしょ!?」

『……』

千歌の答えにため息をつくゼロ。

『見損なったぜ千歌。俺が救けたのはそんなヤツじゃないと思ったんだがな……』

「どういう意味だよそれぇ!?」

『さぁな、自分で考えろ』

「ちょっとゼロさん!?ゼロさ〜ん!」

千歌の問いかけにゼロが答えることはなかった。

 

 

 

「ゼロさん……一体どういう意味なんだろう……?」

その日の夜、ベッドに横になった千歌はゼロの言葉の意味を考えていた。何のために戦うのか?しかし、その答えは出ない。あれから千歌はゼロと言葉を交わしていない。

「リクさんは何のために戦ってるんだろう……?そういえばリクさんはあの怪獣を倒そうとしてなかったなぁ……怪獣は倒さなきゃいけないんじゃないの??分かんないよ……」

千歌は独り、物思いにふけっていた。

 

 

 

 真っ暗な宇宙空間の中をジードは飛行していた。シーボーズを怪獣墓場へ送り届けたその帰路である。しかし、気かがりなことがあった。

『どうしてシーボーズはこの世界の地球に迷い込んでしまったんだろう……それにシーボーズに火を吐く力なんてなかったハズだ……まだ何か、大きな陰謀が潜んでるのかもしれない……!』

ジードが思考を巡らせながら飛行していると、背中に大きな衝撃を受けた。

『ぐわあぁぁぁ……!!』

その衝撃に耐えきれず、そのまま地球へ落下していった。

 

 

 

「千歌ちゃん、何か悩んでるでしょ?」

夜の砂浜で梨子が千歌に問いかけた。千歌が悩んでいることを察した梨子が呼び出したのだ。

「ゼロさんに言われたんだ……『何のために戦うんだ?』って……」

千歌はそう言いながら左手のウルティメイトブレスレットへと手を当てた。結局あれからゼロとは一言も言葉を交わしていないのだ。

「きっと答えは千歌ちゃんの中にあるんじゃないかな?自分に素直になって?」

「自分に……素直に……?」

千歌が聞き返した。その時だった。突如、目の前の海が割れ、大きな水しぶきをあげた。

「「リ、リクさん!?」」

2人が同時に声を上げた。なんと、ジードが空から落ちてきたのだ。

 

 

 

 よろよろと立ち上がるジード。その視線の先には、ベリアル融合獣ペダニウムゼットンが立っていた。ウルトラセブンを苦しめた強敵キングジョーと、かつてウルトラマンを倒したこともある宇宙恐竜ゼットンが合わさった恐るべき怪獣である。

『お前は一体……何者なんだ!?』

ペダニウムゼットンに疑問をぶつけるジード。胸のカラータイマーは既に赤く点滅していた。

 

 

 

「ゼロさん、戦わなきゃ!」

『……』

戦いに向かおうとする千歌だが、ゼロは沈黙を貫いたままだった。

「千歌ちゃん!逃げよう!!」

先に駆け出していた梨子が、砂浜への階段の上から千歌に呼びかけた。

「で、でも……!」

その時だった。ペダニウムゼットンの角からジードに向けて光線が放たれた。ジードはバリアを張って防ぐ。しかし、防ぎきることが出来ず、あらぬ方向へと飛んでいく。そう、梨子がいる場所へと……!

「梨子ちゃんっ!!!」

とっさに梨子の方へと駆け出した千歌。しかし、間に合わない。爆炎が辺りを包む。

 

 

 

 煙が晴れる。そこには梨子を抱きかかえた千歌の姿があった。

『梨子、大丈夫か?』

「え、ええ……あ、ありがとう……ございます……」

千歌と人格を交代したゼロが梨子を救けていたのだ。

 

 

 

『どうやら、答えを見つけたみたいだな、千歌』

「私の戦う理由……?」

『そうだ。なぁ千歌。お前は今、どうして走り出したんだ?』

インナースペースでゼロが千歌に問いかけた。

「梨子ちゃんが危ないって思ったら、とにかく必死で……気付いたら体が動いてたっていうか……」

『そうだ。それで良いんだ。千歌』

「え?」

ゼロの思いがけない返答に千歌はキョトンとしている。

『俺たちウルトラマンは、守るべきものがあるから戦える!千歌、お前が守りたいものはなんだ!?』

「私の……守りたいもの……?」

千歌が胸に手を当て考える。Aqoursのみんなとの思い出が駆け巡る。

 

 

***

 

「私、どうしたらいいんだろう。 何やっても楽しくなくて、変われなくて」

「やってみない?スクールアイドル」

「ダメよ。このままピアノを諦める訳には」

「やってみて笑顔になれたら、変われたら、また弾けばいい。諦めることないよ。梨子ちゃんの力になれるなら私は嬉しい。みんなを笑顔にするのがスクールアイドルだもん」

「千歌ちゃん……!!」

「それってとっても素敵なことだよ」

夜、梨子と心を通わせ、手を伸ばしたこと。*3

 

「お姉ちゃん!ルビィね……!」

体験入部をしていたルビィが、当時スクールアイドルを嫌悪していた姉のダイヤにAqoursへの加入を宣言したこと。*4

 

「ルビィ、スクールアイドルがやりたい!花丸ちゃんと!」

「1番大切なのはできるかどうかじゃない!やりたいかどうかだよ!!」

体力に自信がない花丸の背中をルビィと一緒に押したこと。*5

 

「良いんだよ、堕天使で!自分が好きならそれでいいんだよ!!」

「だめよ!生徒会長にも怒られたでしょ!!」

「善子ちゃんは良いんだよ、そのまんまで!」

堕天使を否定し逃げ出した善子を、全力で肯定して追いかけ、Aqoursに勧誘したこと。*6

 

「ダイヤさんって、本当に2人が好きなんですね」

「それより……これから2人を頼みましたわよ」

「じゃあ、ダイヤさんもいてくれないと!」

「親愛なるお姉ちゃん!ようこそ、Aqoursへ!」

3年生が長年のわだかまりを解消し、Aqoursに加入したこと。*7

 

「汗びっしょり……どうしたの?」

「バス終わってたし……曜ちゃん、なんかずっと気にしてたっぽかったから……いても立っても居られなくなって……へへ……」

「私、馬鹿だ……!馬鹿曜だ……!」

曜の家を夜遅くに訪ね、曜と抱き合って友情を確かめ合ったこと。*8

 

「ゼロからイチへ!今、全力で輝こう!Aqours……」

『サンシャイーン!!』

東京からの帰りに寄った海で、決意を新たにしたこと。*9

 

***

 

 

「私、この場所が好き……みんなと過ごすこの場所が、時間が大好き!だから……!この場所を……内浦を、沼津を守りたい!!」

『よし、行こうぜ千歌!!今の俺とお前なら、限界だって超えられる!!』

千歌の決意にゼロが力強く応えた。

 

 

 

 インナースペースでのゼロとの対話を終え、千歌は現実世界で目を開いた。その手にはウルトラゼロアイと、リクのものと同型のライザーが握られている。人格が再びゼロに切り替わり、ゼロアイをライザーへセットする。

『ギンガ、オーブ!』

ウルトラマンギンガとウルトラマンオーブの力を宿したニュージェネレーションカプセルαを起動し、ナックルへ装填する。

『ビクトリー、エックス!』

次はビクトリーとエックスの力を宿したニュージェネレーションカプセルβを起動し、ナックルへ装填。そのままライザーで2つのカプセルを読み込む。

<ネオ・フュージョンライズ!>

ライザーのシステム音声と同時にライザーを持った右手を前に突き出す。

「『俺(私)に限界はねぇ(ない)!』」

千歌とゼロ、2人が力強く宣言し、ライザーを顔の前へかざす。そしてトリガーを勢いよく引く。

<ニュージェネレーションカプセルα・β>

千歌の姿がゼロへと変わる。そしてギンガ、ビクトリー、エックス、オーブ。4人のウルトラマンの姿がゼロと重なる。

<ウルトラマンゼロビヨンド!>

そしてゼロビヨンドへと強化変身を遂げた。

 

 

 

『大丈夫か、ジード?ここからは……俺たちに任せな!』

傷ついたジードへゼロビヨンドが声をかけた。

『ゼ、ゼロ……!相変わらず来るのが遅いよ……!』

肩で息をしながらジードが言った。ゼロは笑いながらこう返す。

『へへっ。いつも言ってるだろ?主役は遅れてやってくるんだよ。あ、このことはレイトには内緒な。レイト以外のヤツとビヨンドになったって知ったら……アイツ、嫉妬しそうだからな』

伊賀栗(いがぐり)レイト。ジードと共に戦っていた時にゼロが一体化していた地球人だ。*10 1児の父であり、子育てや仕事に追われながらも、ゼロと共に戦い抜いた。

『ごめんゼロ……後は……よろ、しく……』

そう言い残し、ジードの身体は霧散した。変身を解除し、リクの姿に戻ったのだ。

『ブラックホールが吹き荒れるぜ!』

ゼロビヨンドは右腕をブンブン振り回し、中指と薬指を畳んだ右手を相手に向かって突き出した。

 

 

 

【ウルトラマンゼロビヨンド】

かつてゼロと共に戦ったこともある、ギンガ、ビクトリー、エックス、オーブ。4人のニュージェネレーションヒーローズの力を宿したゼロの限界を超えた強化形態である。

 

 

 

 ゼロビヨンドがペダニウムゼットンに向かって走り出す。しかし、黙って接近されるペダニウムゼットンではない。角から光線を出し応戦しようとする。

『クワトロスラッガー!』

ゼロビヨンドは光でできた4本の宇宙ブーメランを頭部から飛ばし牽制する。思うように身動きができないペダニウムゼットン。接近に成功したゼロビヨンドはパンチを繰り出した。1発、2発、3発……光を纏ったその拳は目にも止まらぬ速さで次々と繰り出される。

『ハァァァァ……ハッ!!』

ゼロビヨンドは大きく振りかぶり、最後の突きを繰り出した。大きく吹き飛ばされるペダニウムゼットン。しかし、ただでやられるペダニウムゼットンではない。両腕にエネルギーを溜め、超高温の火球「ペダニウム・メテオ」を繰り出した。しかし、ゼロビヨンドは動じない。左腕を水平に構え、エネルギーを溜める。

『ワイドビヨンドショット!』

腕をL字に組み、必殺光線「ワイドビヨンドショット」を繰り出した。激しい爆発と共に火球は相殺される。ペダニウムゼットンは再び火球を繰り出そうとエネルギーを溜め始める。しかし、それを許すゼロビヨンドではなかった。ゼロビヨンドの周りには8つの光球が浮かんでいた。

『バルキーコーラス!』

8つの光球全てから破壊光線が発射される。ペダニウムゼットンは激しい爆発に包まれ、姿を消した。

 

 

 

「あの怪獣、倒せたの……?」

変身を解いた千歌がゼロに問いかけた。

『いや、逃げられた……おそらくバリアで防いでテレポートで逃げたんだろう……』

「またあの怪獣が襲ってきても勝てるかな……?」

千歌が不安そうに言った。

『へっ、心配するこたぁねぇよ。なんたってこの無敵のゼロ様がついてるんだからな!』

「うん、そうだね!これからもよろしく!ゼロさん!!」

2人が心を通わせたことを祝福するかのように、眩しい朝日が顔を覗かせていた。

 

*1
「ウルトラマンサーガ」

*2
ウルトラマン 第35話「怪獣墓場」

*3
ラブライブ!サンシャイン‼︎ 1期 第2話「転校生をつかまえろ!」

*4
ラブライブ!サンシャイン‼︎ 1期 第4話「ふたりのキモチ」

*5
ラブライブ!サンシャイン‼︎ 1期 第4話「ふたりのキモチ」

*6
ラブライブ!サンシャイン‼︎ 1期 第5話「ヨハネ堕天」

*7
ラブライブ!サンシャイン‼︎ 1期 第9話「未熟DREAMER」

*8
ラブライブ!サンシャイン‼︎ 1期 第11話「友情ヨーソロー」

*9
ラブライブ!サンシャイン‼︎ 1期 第12話「はばたきのとき」

*10
ウルトラマンジード 第3話「サラリーマンゼロ」ほか



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番外編 ウルトラマンゼロ列伝

番外編です。今回と次回は台本形式で書いていきたいと思います。いわゆる「列伝時空」です。


千歌「ねぇゼロさん!」

 

ゼロ「ん?どうした?千歌」

 

千歌「ゼロさんやリクさんって、今まで色んな怪獣たちと戦ってきたんだよね?」

 

ゼロ「おう、そうだぞ。有機生命体の抹殺を目的としたロボット*1や時空を移動する魔神*2なんかとも戦ったぜ。そして宿敵……ベリアルともな……」

 

千歌「ベリアルって、リクさんのお父さん?」

 

ゼロ「なんだ、知ってたのか。よし、せっかくだからこれまでの戦いを教えてやるか!それじゃ、星雲荘へ行こうぜ!!」

 

〜星雲荘〜

 

ペガ「来たなドンシャイン!ここがお前の墓場となるのだ!!」

 

リク「僕は絶対に負けない!ヒアウィーゴー!」

 

千歌「……」

 

ゼロ「……何やってんだ?お前ら……」

 

リク・ペガ「あははは……」

 

リク「それで、今日はどうしたの?」

 

千歌「ゼロさんに今までの戦いのことを教えてもらおうと思って!」

 

ペガ「なるほど、それで!」

 

ゼロ「そういうわけだ。まずは俺の最初の戦い*3から振り返って行くぜ。頼んだぜ、レム!!」

 

レム『分かりました』

 

すると、星雲荘のモニターに映像が映し出された。

 

ゼロ「M78星雲、ウルトラの星。ウルトラマンたちの故郷だ。この星にある光の国に悪人はいなかった。ただ1人を除いてな……」

 

千歌「それがベリアル……?」

 

リク「そう。僕の父さんだ」

 

ゼロ「ベリアルはプラズマスパークに手を出して光の国を追放されたんだ」

 

千歌「プラズマスパーク……??」

 

レム『光の国にある強大なエネルギーを持った人工太陽です。もし、コレが停止してしまうと、ウルトラの星は氷の星となってしまいます』

 

ゼロ「しかし、追放されたベリアルは怪獣使いの力を得て光の国へ復讐しに来たんだ」

 

レム『"ベリアルの乱"と呼ばれる戦いです。この戦いに敗れたベリアルはウルトラマンキングの手によって宇宙牢獄へ投獄されます』

 

ゼロ「キングってのは俺たちウルトラマンを見守ってくれてるすげぇジーさんなんだ」

 

千歌「そういえばずっと気になってたんだけど、ゼロさんって何歳なの?」

 

ゼロ「俺か?だいたい5900歳くらいだな」

 

千歌「5900歳!?めっちゃ年上じゃん!」

 

レム『しかし、地球人に換算すると千歌さんと同じくくらいです』

 

ゼロ「あっ、余計なこと言うな!」

 

千歌「え!?私と同じくらいじゃん!!ところでリクさんは何歳なの!?」

 

リク「え、え〜と……じゅ、19歳……」

 

千歌「え〜、全然普通じゃん!」

 

ゼロ「い、色々複雑な事情があるんだよ!話戻すぞ!」

 

千歌「何の話だったっけ?」

 

ペガ「ベリアルが宇宙牢獄へ投獄された話だったね」

 

ゼロ「そうだ。そしてそれからしばらく経った後、ベリアルは脱獄に成功した。そして再び光の国に侵攻したベリアルはプラズマスパークを奪ってしまったんだ」

 

千歌「それじゃあウルトラの星は……?」

 

ゼロ「あぁ、ウルトラの星はたちまち凍りついてしまった。だけど、ウルトラマンタロウがプラズマスパークの光を護ってくれたおかげでメビウスや初代ウルトラマン、そして俺の親父ウルトラセブンはベリアルを追って怪獣墓場へ行くことができたんだ」

 

千歌「怪獣墓場ってこの間リクさんが行ったところだよね!」

 

リク「そう。あの場所は色んな世界の怪獣の魂が眠る場所なんだ」

 

レム『ベリアルは怪獣を操るレイオニクスの力とプラズマスパークの力を使ってその怪獣の魂を蘇らせようとしていました』

 

ゼロ「そして怪獣墓場に駆けつけたメビウス、親父、ウルトラマン。さらには別世界からやってきたウルトラマンダイナや正義の怪獣使いレイたちはベリアルの怪獣軍団と最後の決戦に挑むんだ」

 

千歌「はぇ〜、ウルトラマンがいっぱいだぁ〜!ところで、ゼロさんは?まだ一回も出てきてないけど?」

 

ゼロ「こ、これから出てくるんだよ!ほら、主役は遅れてやってくるって言うだろ?」

 

ゼロがそう言うとモニターには鎧を身につけたゼロと赤いウルトラマンが組手をしている映像が映し出された。

 

千歌「コレがゼロさん?それにこの赤いウルトラマンは?」

 

ペガ「ウルトラマンレオだね。ゼロの師匠なんだよ」

 

千歌「この人がゼロさんの師匠なんだね。じゃあ私にとっての大師匠だ!」

 

ゼロ(ゼットみたいなこと言い出したよ……あんなのはアイツ1人で充分だっての……!)

 

〜その頃とある宇宙の地球にて〜

 

自称ゼロの弟子、ウルトラマンゼットとその相棒の地球人、ナツカワハルキが会話していた。

 

ゼット「ハッ、ハックション!」

 

ハルキ「どうしたんですかゼットさん。急にくしゃみなんかして。まさか花粉症じゃないッスよね?あっ、もしかして誰かに噂されたんじゃないですか?」

 

ゼット「えっ、噂されたらくしゃみ出るの?」

 

ハルキ「まぁ地球ではそういう風に言いますよ」

 

ゼット「ふ〜ん、そうなのか……はっ!もしやゼロ師匠が俺の噂を!?いや〜、ウルトラ照れますなぁ〜」

 

〜星雲荘〜

 

ペガ「それにしてもレオは凄いね。ゼロが手も足も出ないよ」

 

ゼロ「あの鎧のせいだ。テクターギアって言うんだが、アレを着てると身体が思うように動かねぇんだ」

 

千歌「うわぁ〜、すごいキツそう……」

 

ゼロ「これでもまだマシな方なんだぜ。レオ師匠は俺の親父に鍛えてもらってたんだが、その時は車で追いかけ回されて死ぬかと思った*4ってレオ師匠が言ってたぜ」

 

千歌「それ?大丈夫なやつなの……?色んな意味で……」

 

ペガ「今そんなことやったら大変なことになるよ……色んな意味で……」

 

ゼロ「まぁ色々あって遂に俺は修業を終えたんだ。そして、ウルトラセブンが親父だってことを知らされた。親父からのSOSを受け取った俺は怪獣墓場へ向かったんだ」

 

モニターには怪獣墓場で高々と名乗りをあげるゼロの姿が映し出されている。

 

 

***

 

ゼロ『ゼロ!ウルトラマンゼロ!セブンの息子だ!!』

 

***

 

 

ゼロ「どうだ?俺、かっこいいだろ??」

 

千歌「あ、うん。それで?」

 

ペガ(あ、千歌ちゃん聞いてなかったな……)

 

ゼロ「レオ師匠の厳しい修業に耐えた俺にとって、怪獣軍団は相手じゃなかったな」

 

モニターには次々と怪獣を倒していくゼロが映し出されている。

 

千歌(もう全部ゼロさん1人でいいんじゃないかな?)

 

ゼロ「そしてベリアルも倒した……かと思ったんだがな……」

 

レム『ベリアルは怪獣墓場に眠る怪獣たちの怨念を取り込み百体怪獣ベリュドラとなって襲いかかったのです』

 

千歌「怨念がおんねん!あっ、今のは"怨念"と関西弁で"いる"って意味の"おんねん"をかけた……」

 

ゼロ「くだらねぇこと言ってないで、続きいくぞ?ベリュドラに苦戦する俺たちだったが、レイがレイオニクスの力を使って融合した怪獣の魂に呼びかけてくれたんだ」

 

ペガ「そのおかげで、ベリアルと融合してた怪獣たちが抵抗を始めたんだよね!」

 

ゼロ「そうだ。そしてプラズマスパークに真の戦士として認められた俺は新必殺技、"プラズマスパークスラッシュ"でベリアルを倒したんだ」

 

千歌「うわっ、すごい!!これでベリアルとの戦いは終わったの?」

 

ゼロ「いや、ヤツは生きていた。ベリアルはアナザースペースと呼ばれる別の宇宙でベリアル銀河帝国を作ってその宇宙を支配していたんだ*5

 

リク「そしてゼロは別宇宙に行ったんだよね!」

 

ゼロ「そうだ。アナザースペースのとある惑星で俺は1人の勇敢な青年と出会った」

 

レム『彼の名はラン。惑星アヌーに住む開拓民です。瀕死の重傷を負った彼はゼロと融合することで一命を取り留めます』

 

ゼロ「そして俺はランの弟ナオ。惑星エスメラルダの王女エメラナ姫。人工知能を持つ宇宙船ジャンバードと共に旅に出たんだ。ベリアルを倒す鍵を握る秘宝、バラージの盾を探す旅にな」

 

ペガ「この旅でゼロはたくさんの仲間と出会ったんだよね!」

 

ゼロ「そうだ。まずは炎の戦士、グレンファイヤーだ!力強い格闘技や、時にはファイヤースティック手に持って、豪快に戦うんだ!」

 

ゼロ「次に出会ったのは惑星エスメラルダを守護する鏡の騎士、ミラーナイトだ!鏡を作り出して相手を翻弄する戦いが得意なんだ。この能力は頼りになるぜ!」

 

ゼロ「そして最後はジャンボットだ!宇宙船ジャンバードが変形した鋼鉄の武人だ。自力で戦う他にもコックピットに乗った人の動きとシンクロして戦うこともできるんだぜ!」

 

 

***

 

ジャンバード『叫べナオ、"ジャンファイト"と!』

 

ナオ「ジャーンファイト!」

 

***

 

 

モニターにはジャンボットへと変形するジャンバードの姿が映っていた。

 

千歌「ところでさっきから気になってたんだけど、このナオって人とリクさん。ソックリじゃない?」

 

ゼロ「千歌もそう思うか?俺もジャンボットに言われるまで気づかなかったんだが……」

 

千歌「ねぇねぇリクさん!試しに"ジャンファイト"って言ってみてよ!」

 

リク「え……また……?」

 

ゼロ(あ〜、この流れは前にも見たぞ〜*6)

 

リク「ジャーンファイト!」

 

千歌「なんか違うね」

 

その場でリクはずっこけてしまった。

 

ゼロ(あ〜あ、思った通りだよ……)

 

ゼロ「話を戻すぜ。この宇宙で出会った仲間たちと協力して俺たちはベリアルを倒したんだ。そして俺は新たな宇宙警備隊を結成した。その名もウルティメイトフォースゼロだ!」

 

ゼロ「この戦いが終わった後に出会ったジャンボットの弟、ジャンナインもメンバーに加えて俺たちウルティメイトフォースゼロは5人になったんだ!」

 

千歌「ゼロさんには心強い仲間がたくさんいるんだね!ところでベリアルはどうなったの??」

 

ゼロ「この後もベリアルは蘇り俺たちと戦ってきたんだ……亡霊となったベリアルは部下を引き連れて俺たちに挑戦してきたんだ。*7俺とベリアルが始めて戦った……怪獣墓場でな」

 

 

***

 

ゼロ『なぜ奪うだけで守るものを持たないんだ?』

 

べリアル『何を、何を言ってるんだ!?』

 

ゼロ『お前だって……ウルトラマンだろうが!!』

 

***

 

 

ゼロ「怪獣墓場での戦いの後、ベリアルはとんでもないことをしやがったんだ」

 

ペガ「僕たちの宇宙の地球でクライシス・インパクトを起こしたんだよね」

 

レム『クライシス・インパクト、かつてサイドスペースと呼ばれる宇宙で地球を中心に起きた宇宙崩壊現象です』

 

リク「ウルトラマンキングは宇宙の崩壊を防ぐために宇宙と一体化したんだ」

 

千歌「宇宙と一体化!?ウルトラマンってそんなこともできるの!?」

 

ゼロ「俺と千歌が一体化してるのと似たようなもんだ。もっとも、キングのジーさんは特別なんだがな」

 

ペガ「そしてリクの戦いが始まったんだよね!」

 

リク「そうだ。スカルゴモラが僕たちの住む街に現れ、レムと出会ったあの日*8から僕の戦いは始まったんだ」

 

*1
「ウルトラマンゼロ外伝 キラー ザ ビートスター」

*2
「劇場版 ウルトラマンギンガS 決戦!ウルトラ10勇士!!」

*3
「大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE」

*4
ウルトラマンレオ 第6話「男だ!燃えろ!」

*5
「ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国」

*6
「劇場版 ウルトラマンジード つなぐぜ! 願い!!」

*7
ウルトラゼロファイト 第2部「輝きのゼロ」

*8
ウルトラマンジード 第1話「秘密基地へようこそ」



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番外編2 ウルトラマンジード列伝

番外編後半です。今回まで台本形式です。



ゼロ「怪獣墓場での戦いの後、ベリアルはとんでもないことをしやがったんだ」

 

ペガ「僕たちの宇宙の地球でクライシス・インパクトを起こしたんだよね」

 

レム『クライシス・インパクト、かつてサイドスペースと呼ばれる宇宙で地球を中心に起きた宇宙崩壊現象です』

 

リク「ウルトラマンキングは宇宙の崩壊を防ぐために宇宙と一体化したんだ」

 

千歌「宇宙と一体化!?ウルトラマンってそんなこともできるの!?」

 

ゼロ「俺と千歌が一体化してるのと似たようなもんだ。もっとも、キングのジーさんは特別なんだがな」

 

ペガ「そしてリクの戦いが始まったんだよね!」

 

リク「そうだ。スカルゴモラが僕たちの住む街に現れ、レムと出会ったあの日から僕の戦いは始まったんだ」

 

モニターにはリクが初めて変身した時の映像が映し出されていた。*1

 

 

***

 

レム『フュージョンライズ後の名称を決めてください』

 

リク「ウルトラマンジード!そしてこれは、ジードライザーだ!」

 

リク「ジーッとしてても、ドーにもならねぇ!」

 

***

 

 

リク「あの日から僕は自分の運命と戦っていくんだ。その戦いの中でベリアルを崇拝するストルム星人、伏井出ケイと何度もぶつかった」*2

 

ゼロ「伏井出ケイは普段は小説家ってのをやってたんだ。だが、アイツの書いた本は俺とベリアルの戦いを都合の良いものに書き換えた物だった。まったく、食えないヤローだったぜ」

 

 

***

 

リク「僕には仲間がいる!帰る場所も!僕は僕の人生を生きてる!誰にも価値がないなんて言わせない!」

 

ケイ「貴様が価値あると信じているすべてのものはクズだ!薄っぺらいお前のような存在にはお似合いだがな!」

 

リク「……かわいそうな人だ!」

 

ケイ「なんだと……」

 

リク「あなたには何もない!空っぽだ……」

 

ジード『ビックバスタウェイ!!』

 

ジードの放った光線がペダニウムゼットンにライズしていた伏井出ケイを貫いた。

 

***

 

 

リク「そして、ベリアルは更なる力を得て地球にやってきたんだ」

 

レム『ベリアルアトロシアスとなった彼の力は強大でした』

 

ゼロ「俺たちは力を合わせてベリアルを弱体化させることに成功した。だが、俺もジードも限界だったんだ」

 

ペガ「ウルトラの父が来てくれなかったらどうなってたか……」

 

リク「ウルトラの父の協力もあって、僕は態勢を整えることができた。そして、僕は最後の戦いに挑んだ」*3

 

 

***

 

リク「何度も何度もあなたは生き返り……深い恨みを抱いて……疲れたよね?もう終わりにしよう」

 

ベリアル『分かったことを言うな!』

 

ジード『レッキングバーストォォォォォォ!!』

 

ジードの放った光線がベリアルを直撃。

 

ベリアル『ジィィーーーードォォォォ!!』

 

ベリアルの断末魔が響き渡った。

 

ジード『さよなら、父さん……』

 

***

 

 

千歌「ねぇ、リクさん……リクさんは辛くなかったの?」

 

千歌が消え入りそうな声で尋ねた。

 

リク「辛かったよ……辛くて苦しい戦いだった」

 

千歌「じゃあどうして……!どうしてリクさんは戦えたの?」

 

リク「みんなを守りたかったから……それに僕には支え合う仲間の笑顔があったから」

 

千歌「仲間……?」

 

リク「うん、一緒に戦ってくれる仲間がいたから、僕は運命をひっくり返せたんだ。千歌ちゃんにもいるでしょ?大切な仲間が」

 

千歌「うん!」

 

先程までの不安に押しつぶされそうな少女の姿はどこにもなかった。

 

千歌「ところで、ちょっと気になってたんだけど、ベリアルもウルトラマンなんでしょ?どうして悪者になっちゃったの?」

 

ゼロ「その話をするには俺たちの故郷でかつて起こった大きな戦いの話をしなくちゃならねぇ……今からおよそ3万年前……俺の親父、ウルトラセブンも生まれる前の話だ。ベリアルが闇に堕ちたきっかけ、それは光の国で起こった戦争だったんだ」

 

レム『ウルトラ大戦争。ウルティメイトウォーズとも呼ばれる戦いです。暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人を名乗る宇宙人が光の国へ侵攻したことで戦いは始まりました』

 

千歌「どうしてエンペラ星人はウルトラの星に攻めてきたの?」

 

リク「エンペラ星人の故郷の星は太陽の消滅によって滅んで暗黒の星となってしまったんだ」

 

レム『同じようにウルトラの星も太陽が消滅してしまいましたが、人工太陽プラズマスパークの開発によって難を逃れていました』

 

ゼロ「孤独の中、心の闇を大きくしていったエンペラ星人はやがてウルトラの星の存在を知った。そして、同じような運命を辿りながらも繁栄していたウルトラの星に対して激しい憎悪を抱いたんだ」

 

千歌「なんだか……かわいそうだね……もしもエンペラ星人に仲間がいたら、何か違ったのかな?」

 

ゼロ「さぁな……もしかしたら、エンペラ星人も俺たちと同じように光の戦士として戦ってたかもな……」

 

レム『このウルトラ大戦争で武功を上げた2人のウルトラマンがいました。1人はウルトラマンケン。後にウルトラの父と呼ばれるようになるウルトラマンです。エンペラ星人を追い払うことに成功した彼は、この戦いを機に設立された"宇宙警備隊"の隊長に任命されます』

 

ゼロ「ウルトラの父は今でも宇宙警備隊の大隊長として大活躍してるんだぜ」

 

リク「ウルトラ大戦争で大活躍したもう1人のウルトラマン。それが僕の父さん、ウルトラマンベリアルだ」

 

レム『しかし、この戦争でベリアルはエンペラ星人の圧倒的な力に魅了されてしまいます』

 

ゼロ「その上、どんどん出世していくウルトラの父に嫉妬の念を抱きはじめたんだ。その心の闇はどんどん膨れ上がっていった。そしてついに、プラズマスパークの力に手を出そうとしたんだ……かつての俺のようにな……」

 

ゼロは複雑な表情を浮かべていた。

 

レム『そしてウルトラの星を追放されたベリアルはその心の闇に付け入られてしまいます。かつて何万年にも渡って宇宙を支配していた邪悪な怪獣使い、レイブラッド星人に取り憑かれてしまったのです』

 

モニターにはレイブラッド星人の力を受け苦しむベリアルの姿が映し出されていた。その銀色の身体は黒く染まっていた。

 

リク「ここから先はさっき話した通りだ。ゼロたちと何度も何度も戦った。そして、僕が……」

 

千歌「リクさん……」

 

ゼロ「さぁて、なんだかしんみりしちまったな。なんか楽しい話でもしようぜ!」

 

千歌「それだったらコレ、見ようよ!」

 

そう言うと、千歌はバッグからDVDを取り出した。

 

千歌「μ'sのライブ!μ'sはすっごいんだよ!!」

 

こうして星雲荘ではμ'sのライブ観賞会が行われた。これをきっかけにμ'sにハマったゼロが、ウルトラの星でウルトラマンタイガにμ'sを布教したのはまた別のお話……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宇宙のどこかでとある宇宙人が通信をしていた。

『ただいま地球に向かっております。……ええ。……準備は怠っておりません。もちろん彼らの妨害も計算に入れております』

宇宙人は不敵な笑みを浮かべていた。

 

 そして最後に彼はこう言って通信を切った。

 

『必ずや期待に応えてみせましょう……陛下……』

 

*1
ウルトラマンジード 第1話「秘密基地へようこそ」

*2
ウルトラマンジード 第12話「僕の名前」ほか

*3
ウルトラマンジード 第25話「GEEDの証」




 ウルトラマンZ第15話を見て、ジード側の時系列設定を「ニュージェネクライマックスの後」から「ウルトラマンZ第15話の後」に変更しました。それに伴って、本文を一部訂正しています。ご了承ください。

 物語もいよいよクライマックスです。残り4話で完結する予定ですが、もしかしたら前後編に分かれるかもしれません。もう一度、この残り4つのエピソードをじっくり構成しなおしますので、少し更新が遅くなるかもしれませんが、今年中に完結させる予定です。次回も楽しみにしていてくださいね。


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第9話 この宇宙は誰のモノ?(前編)

 「鬼が出る」と恐れられ、誰も近づかない森がある。この森のひらけた場所に小さな祠がある。その祠の前に異形の者の姿があった。時刻は午前0時をまわった頃である。

「フッフッフッフ……とうとう見つけましたよ。ここにエネルギーを送りこめば……」

月明かりに照らされ、異形の姿が明らかになる。巨大な頭に3本の触手。蛸のような姿をしている異形の正体、それは頭脳星人、チブル星人だ。その後ろから人影が現れた。

「これがお前の言っていた祠か。チブルよ」

月が雲に隠れ、辺りは暗闇に包まれた。

「おぉ、陛下……なんと嘆かわしいお姿に……しかしご安心ください、陛下。この作戦が成功すれば必要なマイナスエネルギーが集まることでしょう。そして、必ずや陛下も元のお姿に……」

チブル星人が人影にひれ伏すように頭を下げた。

「期待しているぞ、チブル」

陛下と呼ばれた人物は不敵に笑った。

 

 

 

「うわっ、すごいよペガさん!これ、どうやって作ったの?」

曜が感嘆の声をあげた。その視線はペガの手に握られた造花に釘付けだ。この日は星雲荘に曜、ルビィ、善子が集まり、ペガと一緒にラブライブに向けた衣装作りをしていた。それぞれのメンバーカラーの造花で新衣装を彩るのだ。

「えへへ。こういうの作るの得意なんだよね」

ペガが照れ笑いを浮かべて言った。

「そういえば曜、昨日メッセージ既読つかなかったわね。なんかあったの?」

善子が指摘すると、曜が慌ててスマホを確認する。

「え?あーーっ!気づかなかった!ごめん、善子ちゃん!」

「まぁ気づかなかっただけならいいわ。それとヨハネよ」

と、いつものように善子が訂正する。すると突然、地面が揺れた。地震だ。

「ピギィ!!」

「うわぁぁ!!」

地震に驚いたルビィとペガが悲鳴をあげて抱き合った。揺れが収まったのを確認してリクがみんなに尋ねる。

「みんな、ケガはない?」

「うん、大丈夫だよ」

曜が答えた。

「それにしても意外ね。ルビィはともかく、ペガさんも地震が苦手だなんて」

善子が部屋の隅で抱き合って震えているルビィとペガを見て言った。

「うゆ……だって、怖いんだもん……」

とルビィ。

「で、でもリクだって雷苦手だもん!」

「え?リクさんも雷苦手なの?ルビィも同じだよ!」

どさくさに紛れてリクの秘密を暴露したペガ。

「あっ、ペガ。変なこと言うなよ」

「だって事実じゃないか」

「雷が苦手だったのは昔のことだって前にも言っただろ!」

言い合いを始めてしまったリクとペガ。その間でルビィがおろおろしている。

「うゆゆゆゆゆ……け、喧嘩しないでよぉ……」

すると

「「ぷっ、あははははは!!!」」

急に2人が笑い出した。その様子に戸惑うルビィ。

「あ、あれ……?2人ともどうしたの?」

『2人は以前にも同じようなことで喧嘩したことがあるのです』*1

レムが補足を入れる。

「あの時はペガが家出したんだよな」

「リクが『僕がいなければ一人で何にもできないくせに』なんて言うからだろ?」

「ホントごめん!でもあの時はお互いに意地張っちゃって大変だったな」

リクは両手を合わせて当時のことを謝罪した。そして昔を懐かしむ。

「へぇ〜、リクさんとペガさんも喧嘩するんだ。なんだか想像できないや」

曜が驚きの声をあげた。その声に善子が突っ込む。

「曜はどうなのよ?あなたが千歌と喧嘩する姿も全然想像できないけど」

「え、私?そうだなぁ……最後に千歌ちゃんと喧嘩したのはいつだったかなぁ……?」

曜があごに手を当て自分の記憶を探っていると

「ピギャァッ!」

「はわわわ!」

ルビィとペガが再び悲鳴をあげた。

「また地震……?しかもさっきより大きい……これはただごとじゃないぞ」

リクの第六感が異変を察知していた。

 

 

 

「ただいま戻りましたわ、お母様。今日は地震が多いですけれど、大丈夫ですか?」

習い事を終えたダイヤが自宅の戸を開いた。

「ちょうどいいところに帰ってきましたわね、ダイヤ。あなたに大切な話があるのです。着いてきてください」

「お母……様……?」

神妙な面持ちの母親を見て、ダイヤは怪訝な顔をした。

 

 母親に連れられ、ダイヤは鍵のかかった扉の前にやってきた。とても古いその扉は物々しい雰囲気をまとっている。

「お母様、ここに近づいてはいけないと昔から……」

そう、昔からこの扉に近づくだけで母親は厳しく叱っていた。昔は何があるのか気になっていたが、いつしかダイヤはこの扉に近づくことはおろか、考えることすらしなくなっていたのだ。

「ついにこの扉を開ける時が来たのです。本当はこんな日が来て欲しくはなかったのですが……」

そう言ってダイヤの母は鍵を開けた。黒澤家の開かずの扉が錆びた音を立てながらゆっくりと開かれた。

 

「うっ……!」

充満していたカビ臭さに、ダイヤが顔をしかめる。真っ暗で何も見えない。ダイヤの母は懐中電灯を取り出した。小さな光を頼りに薄暗い道を進んでいくと、1体の侍の像がダイヤの目に入ったのはだった。

「こ、これは……?」

「これは錦田小十郎景竜(にしきだこじゅうろうかげたつ)様の像よ」

そしてダイヤの母は黒澤家に伝わる物話を語った。

 

 

 

 その昔、物の怪を退治して日本全国を旅する1人の侍がいた。彼の名は錦田小十郎景竜(にしきだこじゅうろうかげたつ)。彼は生まれつき、物の怪を見極める力を持っていた。景竜(かげたつ)はその力を人のために振るうべく、物の怪退治に明け暮れていた。彼が内浦にやってきたとき、内浦には巨大な人喰い鬼が蔓延っていた。景竜(かげたつ)は激しい戦いの末、鬼を森の奥地に封印することに成功した。そのお礼として地元の漁師は沢山の魚で彼をもてなしたという。

 

 

「もしかして、そのお侍様をもてなした漁師というのが……?」

「そうよ、我が黒澤家の御先祖様です。そして景竜(かげたつ)様がこの地を去る時に言い残した言葉があるのです」

そう言いながら、ダイヤの母は景竜(かげたつ)の像の腰にある刀をゆっくりと手に取った。

「『封印が解かれてしまわないように、あの森へは誰も近づけるな。そしてもし封印が解かれたのなら、拙者の刀を用いて鬼を退治せよ』と……黒澤家は景竜(かげたつ)様のこの言葉を代々語り継いできたのです。まさか私たちの代で鬼が復活するなんて……」

 

 

「お母様、私にお任せください」

少しの間の後、ダイヤが力強く宣言した。

「ダメよダイヤ!どれほど危険なのか分かっているの!?」

娘を危険に合わせまいとダイヤの母は引き止める。

「分かっていますわ。しかし、これが黒澤家の使命ならば……!それに、心配には及びませんわ。こんな時にとっても頼りになる方を知っています。誰にも負けない、真の勇者を!」

 

 

2人の間に沈黙が訪れる。ダイヤの母は険しい表情を浮かべていた。しかし、沈黙の間、ダイヤが母親から目を反らすことはなかった。

「そこまで言うのなら……頼みましたわよ、ダイヤ」

ダイヤの決意を認めた母はダイヤに刀を差し出した。ダイヤはそれを握りしめ、走り出した。

 

 

 

「リクさん!リクさんはいますか!」

血相を変えたダイヤが星雲荘に飛び込んできた。その剣幕に驚いたルビィはダイヤに駆け寄った。

「お、お姉ちゃん!?どうしたの?そんなに慌てて」

「っていうか、どうしたのよ?その刀!?」

その手に握られている女子高生には似つかわしくないものを見て、善子は目を丸くした。

「それについては追って説明しますわ。とにかくリクさん、お話を……!」

「分かったよダイヤさん。その前にゼロを、千歌ちゃんも呼んでいいかな?」

ダイヤのただならぬ様子に何かを察したのか、リクはゼロと千歌を呼ぶことを提案した。

「あっ、でも確か千歌ちゃんは……」

それを聞いて曜が何かを思い出したようだった。

 

 

 

 梨子は自室でピアノに向かっていた。ラブライブに向けての曲作りに没頭していたのだ。

 

ドンガラガッシャーン!!

 

 突然、窓の向こうから大きな音がした。音楽の世界に入り込んでいた梨子は現実に引き戻された。

「ち、千歌ちゃん!?何があったの!!?」

慌てて自室の窓を開け、千歌の部屋を確認する梨子。すると、とんでもない光景が彼女の目に飛び込んできた。

『リクから連絡があっただろ!?今から星雲荘に行くぞ!!』

「ダメだよ!!今日は美渡姉(みとねぇ)に旅館を手伝えって言われてるんだから!!」

リクからの連絡を受け星雲荘に行こうとするゼロとそれに抗おうとする千歌。ウルティメイトブレスレットをつけた左腕に引っ張られる様子はさながらパントマイムの様だった。

『ハァ!?姉ちゃんの手伝いと平和、どっちが大事なんだよ!?』

「手伝い!怪獣なんかよりも美渡姉(みとねぇ)に怒られる方がよっぽど怖いもん!!」

『千歌ァ!お前なぁ……手伝いなんて梨子にでも頼みゃいいだろうが!!』

「ダ・メ・だ・よ!だって今日は梨子ちゃん作曲してるんだよ!?」

リクの下に向かおうとするゼロとそれに抵抗する千歌。その戦いは激しさを増していた。部屋の中には物が散乱していた。

「あの……手伝いなら私がやるから……2人はリクさんのところに行ってきて?」

その様子を見かねた梨子が助け舟を出した。

『サンキュー梨子!それじゃ、千歌!行くぜ!!』

「ごめん梨子ちゃ〜〜ん」

ゼロに引っ張られ、千歌は星雲荘へ向かう。

「バカ千歌ァ!アンタ手伝いどうするの!!」

「ごめん美渡姉(みとねぇ)!代わりに梨子ちゃんがやるから〜!」

「コラァッ!!千歌ぁぁぁぁ!!!!!」

美渡の怒号を背中に浴びながら千歌とゼロは走り去っていった。

 

 

 

 

『よぉ、待たせたな!』

しばらくして星雲荘に千歌の身体を借りたゼロがやってきた。

「あれ?千歌ちゃん、今日は旅館の手伝いがあるって言ってなかった?」

曜が怪訝な顔をした。

『まぁ、色々あってな。手伝いは梨子に頼んできたんだ。それで、話ってなんだ?』

「今からお話しますわ。この地で何が起こったのか、そしてこれから何が起ころうとしているのか」

そう言ってダイヤは、景竜(かげたつ)の伝説を語り始めた。

 

 

 ダイヤの話が終わった後、静けさが星雲荘を支配していた。自分たちが暮らしているこの土地に、恐ろしい魔物が棲み付いていたこと、そしてそれが蘇ろうとしていること。その事実にショックを隠せないようだ。

「内浦にそんな伝説があったなんて……」

その沈黙を破ったのは善子だった。沼津育ちの彼女が内浦の伝説を知らないのも無理はない。

「あの森に近づくな、とは昔から聞かされてたけど、そんな秘密があったんだね」

今でこそ沼津で暮らしているが、幼い頃は千歌と果南と内浦でよく遊んでいた曜も初耳だったようだ。

「僕はその森に行ってみようと思う。ジーッとしててもドーにもならないしね」

リクが決まり文句と共に一歩前に出た。

「だったら私も行く!だって、今の私たちはウルトラマンだもん」

『千歌、すっかりたくましくなったじゃねぇか。頼りにしてるぜ!』

続いて千歌も前に出た。先日のペダニウムゼットンとの戦いで大きく成長したその姿にゼロは感銘を受けているようだ。

「千歌ちゃんが行くなら私も行く!それにこんな話を聞かされたら、じっとしていられないよ」

さらに曜も続き敬礼をした。

「堕天使ヨハネの力も貸すわよ」

親指を立てた裏ピースをキメながら善子も答えた。

「僕も行くよ!」

「いや、ペガはここに残ってくれ。レムと一緒にその伝説についてもう少し調べて欲しいんだ」

「分かった!任せて、リク!」

ペガはガッツポーズをして、リクの頼みを承諾した。それを見たダイヤはハッとして、ルビィの方を振り向いた。

「それならルビィもここに一緒に残って……」

「ルビィも一緒に森に行く!」

ダイヤが言い終わる前に、ルビィがそれを遮った。

「何を言ってるのですかルビィ!何が起こるか分からないのですよ!?」

「それはお姉ちゃんも一緒でしょ!?私だって黒澤家の人間だもん!ルビィも森へ行かなくちゃ!!」

ダイヤが声を張り上げたが、ルビィも一切譲らない。しかし、その瞳は涙さえ浮かんでいる。

「ですが……」

ルビィの剣幕にダイヤは言葉を失ってしまった。普段気が弱く臆病なルビィだが、ふと見せる芯の強さは姉のダイヤを彷彿とさせる。やはり2人は姉妹なのだ。

「そうやってお姉ちゃんはいつも自分一人で背負おうとするでしょ!?跡取りのことだって、お見合いのことだってそう!少しくらい、ルビィにも一緒に背負わせてよ……だって、姉妹なんだよ……?」

ルビィが胸の内に秘めていた想いをダイヤに打ち明けた。

 名家の長女として生まれたダイヤはその身に課せられた運命を粛々と受け入れてきた。数々の習い事をして教養を身につけ、ゆくゆくは立派な婿を取り、黒澤家の跡取りを育てる。それが黒澤家に生まれたダイヤの義務であった。そして、今回の一件もその義務のうちの1つである。ダイヤはそう思っていた。もちろんその義務を果たす資格はルビィにもある。だが、気弱で臆病な妹にその義務を押し付けるくらいなら私1人が背負えばいい。

 そんなダイヤの想いを知ってか知らずか、ルビィはダイヤの義務を一緒に背負いたいと言い出した。

「ルビィ……」

最愛の妹の健気な姿にダイヤはその名前を呼ぶことしかできなかった。

『お前たちを見てるとあの兄妹ウルトラマンたちを思い出すぜ……アイツらも妹のことを溺愛してたな。なぁダイヤ、守るだけじゃなくて、妹のことを信じて任せるのも姉貴の役割だと思うぜ』

 かつてゼロが共闘した兄妹ウルトラマンたち。長兄である(みなと)カツミが変身するウルトラマンロッソ、次兄のイサミが変身するウルトラマンブル、そして末の妹、アサヒが変身するウルトラウーマングリージョ。アサヒを溺愛するあまり、周りが見えなくなることもあるカツミとイサミだが、今は妹を信じ彼らの故郷、綾香(あやか)市の防衛をアサヒに任せ、デビルスプリンター事件を追って様々な宇宙を飛び回っている。

 ゼロはお互いを思い合う黒澤姉妹の姿と湊兄妹を重ねていたのだ。

「ゼロさんがそこまで言うのなら……そこまで言うのなら仕方ありませんね。本当は乗り気ではありませんが」

ダイヤは右頬のホクロを掻いた。その表情はどこか嬉し気であった。

 

 

 リク、千歌(ゼロ)、曜、善子、ダイヤ、ルビィたちは鬼が封印されているという森にやってきた。一行は森を進んでいく。

「危ない!!」

リクが一行を静止するとほぼ同時に足元で火花が散った。リクが目線を上げ、睨みつける。その先にはアンドロイド戦闘員、チブロイドが銃口を向けていた。それも1体ではない。少なくとも10体以上はいるだろう。

『ここから先には行くなってことか……』

千歌(ゼロ)が親指で鼻をこすりながら言った。そして師匠直伝の宇宙拳法の構えを取る。

「待って!ここは僕が行くよ。ゼロ、みんなをお願い」

リクが千歌(ゼロ)を静止する。

『へっ、言うようになったじゃねぇか。ここは任せたぜ、リク!』

チブロイド軍団をリクに任せ、千歌(ゼロ)たちは森の奥へと進んでいった。

「さぁ、お前たちの相手はこの僕だ」

 

 

 

「リクさん、大丈夫かな……?」

ルビィが不安そうに呟く。

『アイツだって立派なウルトラマンだ。簡単にやられるヤツじゃねぇよ。俺たちは俺たちにやれることをする。そうだろ?』

「そうだね!がんばルビィ!」

千歌(ゼロ)の励ましにルビィがポーズと共に応えた。

「待ちなさい!これ以上先へは行かせませんよ」

歩みを進める千歌(ゼロ)一行を呼び止める声がした。声のした方にはチブローダーと呼ばれるパワードスーツを着たチブル星人が立っていた。

『チブロイドが出てきたからまさかとは思ったが、やはりお前の仕業だったか、チブル星人!!』

「まもなくこの地に眠る鬼が蘇るのです。邪魔はさせませんよ!」

チブル星人のセリフと同時に、大地が唸り地面が割れた。そしてチブル星人が高らかに叫ぶ。

「さぁ蘇りなさい!!宿那鬼(すくなおに)よ!!!」

森の奥に咆哮と共に巨大な鬼が現れた。二本の角に白い毛髪。そして筋肉質の身体はその凶暴性を表すかのように赤かった。何より目を引くのはその顔だ。額に存在する大きな1つの目玉が見るものに恐怖を与える。二面鬼、宿那鬼(すくなおに)が現代に蘇ってしまった。

『チッ……最悪のタイミングだぜ……』

千歌(ゼロ)が舌打ちをする。すぐにでも宿那鬼(すくなおに)を倒しに行きたいが、この場を離れるわけにもいかない。

 

 

 

「鬼が蘇ってしまったか……!」

リクが呟く。地面には鉄くずとなったチブロイドが転がっている。最後の一体がリクの背後から迫る。が、そのチブロイドは空中で何回転もして地面に叩き付けられた。リクが振り向きざまに放った裏拳がチブロイドを捉えたからだ。そしてリクはジードライザーを構える。

「ジィィィィド!!!」

<ウルトラマンジード プリミティブ!>

 

 リクはジードに変身すると、すかさず宿那鬼(すくなおに)の方へ走り飛び膝蹴りを食らわせた。ジードお得意の戦法だ。地面に着地したジードは手のひらを大きく広げた独特のファイティングポーズを取る。

 宿那鬼(すくなおに)はゆっくりと立ち上がるとジードへ殴りかかる。ジードはそれを回避するとそのまま宿那鬼(すくなおに)の腕を掴み、膝蹴りを数回浴びせる。そして回し蹴りを放ち宿那鬼(すくなおに)を吹き飛ばす。

 ジードの目が青く輝き、両腕にエネルギーが迸る。

『レッキングバースト!!!』

必殺光線が宿那鬼(すくなおに)にヒット。巨大な爆炎が巻き起こった。

 

 

 

『へっ、ご自慢の宿那鬼(すくなおに)とやらもあっさりジードに倒されてるじゃねぇか。とんだ拍子抜けだぜ』

その様子を見ていた千歌(ゼロ)が鼻で笑った。

「フッフッフッフ……アァハッハッハッハ!!」

しかしチブル星人は狂ったように大声で笑い出した。

『何がおかしい!』

千歌(ゼロ)が怒鳴った。その様子をチブル星人が嘲笑する。

「いや、あなた方が宿那鬼(すくなおに)を倒したと思い込んでいるのが実に滑稽でね……」

『何っ!?』

 

 

 

 その時、宿那鬼(すくなおに)を包み込んでいた爆炎の中から怪光線が放たれた。油断していたジードは防御体制を取ることができずに被弾してしまった。ジードは悲鳴をあげながら吹き飛ばされてしまう。

 爆炎が晴れる。そこには必殺光線を受けたはずの宿那鬼(すくなおに)が平然と立っていた。

 その時、星雲荘にいるペガからの通信が入った。

『みんな、大変だ!』

『どうしたんだ?ペガ!?』

ジードがフラフラと立ち上がりながらペガの通信に答えた。

『レムと一緒に太平風土記(たいへいふどき)を調べていたんだけど、こう書かれていたんだ。“内浦に眠る鬼を完全に滅するには退魔の念が込められた刀で祠に封印されし心の臓を貫くべし”』

『つまり、ダイヤが持っているその刀で、この森のどこかにある祠に行き、宿那鬼(すくなおに)の心臓を貫く必要があると推測されます』

ペガの言葉にレムが補足をする。

 

 

 

『面倒なことになったな……』

通信を聞いていた千歌(ゼロ)が呟いた。

『ダイヤ、ルビィ、曜、善子!!、ここは俺に任せろ!お前たちは祠を探してアイツの心臓をブチ抜いてこい!』

「分かりましたわ!行きましょう、みなさん!」

「うゆ!がんばルビィ!」

「気を付けてね!千歌ちゃん、ゼロさん!」

「善子じゃなくてヨハネよ、リトルデーモンゼロ。私たちに任せておきなさい」

こうして4人の少女は走り去っていった。

「この森にはまだまだたくさんのチブロイド軍団がいますよ。彼女たちは大丈夫ですかねぇ」

チブル星人が余裕たっぷりに千歌(ゼロ)を煽る。

『さっさとお前を片付ければいいだけの話だ』

「そう簡単には行きませんよ……行けっ、チブロイド軍団!!」

チブル星人の合図で大量のチブロイドがどこからともなく現れた。

『ブラックホールが吹き荒れるぜ!!』

宇宙拳法の構えを取った千歌(ゼロ)はチブロイド軍団に向かって走り出した。

 

 

 

 宿那鬼(すくなおに)が山に右手を突っ込む。手を引き抜くとそこには巨大な刀が握られていた。刀に付いた泥を振り払う宿那鬼(すくなおに)。そしてジードへと斬りかかる。

<アクロスマッシャー!>

その刀がジードを捉えることはなかった。青きスピード形態へと姿を変えたジードは真剣白刃取りの要領で刀を受け止めていた。受け止めた刀を押し返すジード。

『アトモスインパクトォォォ!!』

ガラ空きとなった宿那鬼(すくなおに)の懐に、十字に組んだ腕から衝撃波が放たれる。宿那鬼(すくなおに)と距離を取ることに成功したジードはすぐさま次の攻撃に向けて準備をする。

『スマッシュビームブレード!!』

ジードの右腕に光の刃が生成された。

 ジードと宿那鬼(すくなおに)、睨み合う2人はさながら侍の如し、少しでも隙を見せれば斬られる、そんな緊張感が漂っていた。

 

*1
ウルトラマンジード 第21話「ペガ、家出する」



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第10話 この宇宙は誰のモノ?(後編)

『おりゃあああぁぁぁっ!!』

千歌(ゼロ)の跳び蹴りがチブロイドの一体に炸裂。大きく吹き飛び、木に叩き付けられた。千歌(ゼロ)の背後から他のチブロイドが右フックを仕掛ける。

 

 しかし、その拳が目標を捉えることはなかった。千歌(ゼロ)がしゃがんで回避したからだ。そのまま右手を地面に着き倒立。その勢いに乗せた左脚がチブロイドの顔面に激しくぶつかる。チブロイドはフラつき、そのまま膝から崩れ落ちた。

 だが、チブロイド軍団の猛攻は終わらない。千歌(ゼロ)の着地の隙を狙ってもう一体のチブロイドが右足を大きく振り上げる。回避が間に合わないっ……!

 

『ウルトラ念力!!』

チブロイドは空中で1回転。そのまま地面に叩き付けられる。千歌(ゼロ)の念動力によって投げ飛ばされたのだ。

『チッ、キリがないぜ……』

今度は3、4体のチブロイドに囲まれる千歌(ゼロ)。そのうち一体のチブロイドが回し蹴りを放つ。

 

 それを上体を反らし避けるとそのまま両手を地面につく。

『シェアァァァァァ!!!!』

まるでブレイクダンスのように身体を回転させ次々と蹴りを浴びせる。最後に残ったチブロイドが千歌(ゼロ)に殴りかかる。

 

 しかし、千歌(ゼロ)はその腕を左腕と脇腹で挟み込む。もがくチブロイドだが、逃げられない。右腕をブンブンと回し、大きく振りかぶる千歌(ゼロ)

『これで、フィニィィィッシュ!!』

強烈な拳がチブロイドを捉えた。たくさんいたチブロイドもコレで全てスクラップと化した。

『さぁ、これで残るはお前だけだぜ、チブル星人!!』

千歌(ゼロ)がチブル星人を指差すが、

「油断しましたね、ウルトラマンゼロ!!」

『ヤベッ!』

チブローダーから放たれた無数のミサイルが千歌(ゼロ)の目前に迫っていた。

 

 

 

 ダイヤ、ルビィ、善子、曜の4人が森の中を走る。

「早く祠を見つけてこの刀で心臓を貫かないと……ウルトラマンが……リクさんが危険ですわ」

ダイヤが言った。

「そうね、それに千歌とゼロも……」

善子も心配そうに続けた。

「みんなならきっと大丈夫だよ!だから私たちも、私たちに出来ることをがんばルビィするだけだよ!」

「ルビィ……!」

みんなを励ます妹の姿にダイヤは胸を熱くした。どうやらダイヤの知らない間にルビィは随分とたくましくなっていたようだ。

 

「善子ちゃん、危ない!!!」

「……えっ!?」

突然、曜が叫ぶ。物陰から1体のチブロイドが善子めがけて襲い掛かったのだ。間一髪、その凶刃が善子を襲うことはなかった。曜がチブロイドに組み付き、死に物狂いで阻止したのだ。

「みんな!私のことはいいから先に行って!!」

曜が必死に叫ぶ。

「ですが……」

「そうだよ、曜ちゃんを置いて行けないよ!!」

躊躇うダイヤとルビィ。その様子を見た曜は決意を固める。

 

「ごめんみんな、後はお願い……!」

 

曜はチブロイドに組み付いたまま、付近の斜面を勢いよく転がり落ちてしまった。

 

「よーーーーーーう!!!!!」

善子はただ、曜の名前を叫ぶことしかできなかった。

 

 

 

ズドォォォォン!!

 

 チブローダーから放たれたミサイルが千歌(ゼロ)へと着弾した。辺りを煙が包み込む。

「さすがのウルトラマンゼロも、人間のままでは脆いものですね……」

チブル星人が呟く。勝利を確信し、下品な笑みを漏らしていた。

 

 その時、煙の中から声がした。

『俺のビッグバンは……』

「何だと!?」

『もう止められないぜぇぇぇぇっ!!!!!』

叫びと共に煙が一気に晴れる。現れた人影は高海千歌ではなく、そこには赤と青のツートンカラーが特徴的な戦士が立っていた。頭には2本の宇宙ブーメラン。そう、光の国の若き最強戦士、ウルトラマンゼロだ。

「小癪なぁぁぁ!!!!」

再びチブローダーから無数のミサイルが放たれる。

 

『エメリウムスラッシュ!!!』

額のビームランプから次々と光線を放ち迎撃するゼロ。しかし、数発のミサイルを撃ち漏らしてしまう。だが、それらがゼロに当たることはなかった。高く飛び上がって回避したのだ。

『ワイドゼロショット!!!』

ゼロは両腕をL字に組み父親譲りの光線を放った。光子エネルギーがチブル星人へと一直線に向かう。

「喰らいなさい!!」

チブローダーの右肩に搭載されたビームレーザーポッドからレーザーが放たれる。2本の光線がぶつかり合い、大爆発を起こした。

 

 

 

「あと少しだっていうのに……」

善子が悔しげに言った。それらしき祠はもう見えている。しかし、チブロイドの軍団が彼女たちを囲んでいた。その時、どこからか声が聞こえた。

『拙者の力が必要なようだな……』

「善子さん!こんな時にふざけている場合ですか!?」

「いや、私じゃないわよ?」

「ルビィでもないよ?」

ダイヤが善子をたしなめるが、すぐさま否定されてしまう。確かにそうだ。いくら善子でもこんな時にふざけることはしない。ましてやルビィもそんなことはしない。

「すみません善子さん。それでは一体誰が……?」

『ここだ、お嬢さん方』

「「「ん???」」」

3人が顔を見合わせる。そしてその目線をゆっくりとダイヤが持っている刀に向ける。

「「「え~~~~~~~!!!??」」」

なんと、刀が喋っているのだ。

『拙者は錦田小十郎景竜(にしきだこじゅうろうかげたつ)。かつて宿那鬼(すくなおに)を封印した侍だ。さぁお嬢さん、刀を抜きなさい』

「え、えぇ……」

戸惑いながらも言われるがまま刀を抜くダイヤ。すると、

「え!?ちょっと!?」

意に反して走り出すダイヤ。驚きの声を上げながらチブロイドへ向かっていく。

 

一閃。

 

一体のチブロイドの上体が切り離された。

 

「お、お姉ちゃん……すごい……!」

ダイヤの身のこなしにルビィは驚きの声を漏らした。

『拙者がついているのだ。当然であろう。来るぞ!お嬢さん!!』

四方八方からチブロイドがダイヤに向かってくる。そのうちの一体が回し蹴り。

 

身をかがめて回避するダイヤ。そのまま左逆袈裟斬(ひだりぎゃくけさぎ)り。斜めに斬りあげる。

 

『お嬢さん!後ろだ!!』

背後からもう一体のチブロイドが斬りかかる。

 

が、背中に刀を回し、それを受け止める。振り返ってチブロイドの刀を弾き返すと、縦に一閃。チブロイドを撃破する。

 

残ったチブロイドが周囲から襲い掛かった。腰を落としダイヤは力を溜める。そしてその場で一回転。刀が風を斬る音が聞こえたときには、周囲のチブロイドたちはあっという間にバラバラになっていた。

「ハァハァ……疲れ、ましたわ……」

ダイヤは力を使い果たし、その場にへたり込んでしまった。

『当然だ。拙者がお嬢さんの身体を無理矢理動かしたのだ。しばらくはまともに動けんだろうな』

「ちょ、ちょっと!?さっきからあなた一体なんなのよ!?」

善子が突っ込む。

『先ほども申した通り、拙者は錦田小十郎景竜(にしきだこじゅうろうかげたつ)。かつて宿那鬼(すくなおに)と戦い、彼奴を封印したのだ。だが、後の世で彼奴が復活するかもしれんのでな。こうして魂を我が刀に宿しておいたのだ』

「なんかそれっぽいこと言ってるけど、あなたがちゃんとトドメをさしておけばよかったじゃない!!」

『いやぁ、面目ない……』

善子に責められ小さくなってしまう景竜(かげたつ)

「そんなことより早く祠に行かないと!」

ルビィが一行を急かす。

「そうですわね。曜さんのことも心配ですし……ルビィ、こちらに来てください」

ダイヤがルビィを呼ぶ。

「ルビィ、あなたがこの刀で鬼の心臓を貫くのです。黒澤家の一員として!」

ダイヤはルビィに刀を差しだす。

「お姉ちゃん……ルビィに、出来るかな?」

ルビィの声は震えていた。

「そんな顔しないで、ルビィ。あなたならできるわ。私の自慢の妹ですもの」

ルビィの髪を撫でながらダイヤは優しく語りかけた。

景竜(かげたつ)様、ルビィをお願いしますわね」

『まことに申し訳ないのだが、拙者にもう先ほどのような力はござらぬ。彼奴を封じ込めるために力を温存せねばならぬのでな』

「ほんと無責任な侍ね!!コラ、なんとか言いなさいよぉ~!!」

善子の叫び声が森の中にただ虚しく響き渡った。

 

 

 

 大きく刀を振り上げ、宿那鬼(すくなおに)がジードめがけて走り出す。そして勢いよくその刀が振り下ろされた。

 

しかし、ジードは左足を一歩引き、最小限の動きでそれを避ける。ジードの反撃。光の刀で真一文字に一閃。

 

だが、宿那鬼(すくなおに)はまるで猿のようにジャンプして避ける。

『しまった!』

隙だらけのジードに宿那鬼(すくなおに)はそのままドロップキックを繰り出した。

 

『ぐわぁぁぁ!!!』

仰け反り、そのまま尻餅をついてしまうジード。だが、足を大きく振り上げ、バネのように起き上がる。そして、目にも止まらぬスピードで宿那鬼(すくなおに)に接近。ウルトラマンヒカリ由来の光速の剣撃を次々と繰り出していく。

 

しかし、宿那鬼(すくなおに)もアクロスマッシャーとなったジードと互角かそれ以上の剣の達人であった。ジードの剣撃をすべて刀で受け止めていたのだ。

 

キィィィン!!

 

両者の刀がぶつかり、動きを止める。つばぜり合いだ。2人とも一歩も引かない。しかし、ここでジードは意表を突いた。ほんの一瞬、体の力を抜いたのだ。途端によろける宿那鬼(すくなおに)。ジードは連続バク転で距離を取ると、体勢を崩した宿那鬼(すくなおに)の背中に回り込む。

『今だ!!ジードクロォォォォォ!!!』

ジードクローを右手に装備し、宿那鬼(すくなおに)を狙う。

 

 

 

 ルビィを送り出したダイヤと善子はその場で待機し、遠くからルビィの様子を見守っていた。しかし、ダイヤはそわそわしてどこか落ち着きがない。

「どうしたのよダイヤ?妙に落ち着きがないわね?」

「いや、その、あの……」

「ルビィが心配なんでしょ?」

「そ、そんなことありませんわ!!」

ダイヤは右頬のホクロを掻きながら必死に否定する。しかし、その顔は彼女のイメージカラーである赤色で染まっていた。

「顔真っ赤よ、ダイヤ。いいわ、私が代わりに様子見に行ってあげるから安心しなさい」

善子は祠の方へゆっくりと歩き出した。

「すみません善子さん、本当は私が行かねばならないのですが……」

ダイヤが善子の後ろ姿に向かって言った。善子はダイヤに背を向けたまま答える。

「いいのよ、もう身体を動かすのもつらいんでしょ?あとそれと……」

そしてダイヤの方へ振り返ると

「善子じゃなくてヨハネよ!!」

と、言い残して祠の方へ走っていった。

 

 

 

 祠にたどり着いたルビィはその扉をゆっくりと開いた。

「これに、この刀を突きさせばいいんだよね」

中には宿那鬼(すくなおに)のものと思われる心臓があった。サッカーボールほどの大きさをしたそれは不気味に脈打っている。ルビィは刀を逆手に持ち、大きく振り上げた。

「ルビィ!!!危ない!!!」

後ろから善子の叫び声が聞こえた。

「……えっ?」

その声にハッとしてルビィは振り向いた。なんと、背後にチブロイドが迫っていたのだ。周りの光景がスローモーションになったように感じられる。しかし、恐怖にすくみ身体が動かない。ルビィはギュッと目をつぶった。

 

 

 

『今だ!!ジードクロォォォォォ!!!』

宿那鬼(すくなおに)の背後を取ったジードは、右手に持ったその得物を大きく振りかぶった。その瞬間、宿那鬼(すくなおに)の白髪が勢いよく逆立ち、後頭部があらわになる。()()()()()()はずのジードは宿那鬼(すくなおに)と目が合った。二面鬼宿那鬼(すくなおに)、こいつには後頭部にもうひとつの顔があるのだ。

『うわっ!!』

宿那鬼(すくなおに)の後頭部にある口から白い煙が勢いよく噴き出す。ジードはとっさに顔を両腕で覆った。宿那鬼(すくなおに)はその隙を突き、次々と斬撃を繰り出す。

『ぐわぁぁぁぁ!!!』

大きく吹き飛ばされたジードはプリミティブの姿に戻ってしまう。その胸の青い輝きは失われ、赤く点滅していた。

 

 

 

 

 ゼロとチブローダーの光線がぶつかり合い、相殺される。地面に着地するゼロ。しかし、チブル星人は攻撃の手を緩めなかった。

「ほらほらほらぁっ!!!避けないと死にますよぉっ!!!」

チブローダーからミサイルが矢継ぎ早に放たれる。ゼロは連続バク転でそれを華麗に回避する。

「避けてばかりじゃ私には勝てませんよ!!」

『舐めんじゃねぇぇぇぇ!!』

両手を勢いよく頭の高さに挙げ、2本のゼロスラッガーを勢いよく飛ばす。2本のスラッガーは風を切り裂きながらチブローダーめがけて飛んでいく。

「甘い甘い甘い!!そんな攻撃、チョコレートよりも甘いですよ!!」

しかし、チブローダーが高く飛び上がったことで、2本のスラッガーは無情にも虚空へと飛び去ってしまった。

 

 

 

「堕天奥義!堕天龍鳳凰縛(だてんりゅうほうおうばく)!!」

善子の声を聞き、ルビィは恐る恐る目を開く。

「善子ちゃん!!」

ルビィの目に、チブロイドにコブラツイストを仕掛ける善子の姿が飛び込んだ。しかし、

「何コイツ……力強すぎ……!!」

アンドロイドであるチブロイドに関節技は効果が薄いようだった。まさに人間離れした力で善子の拘束を振りほどこうとする。振りほどかれるのは時間の問題だ。

「ルビィ!善子さん!!」

その様子を遠くで見ていたダイヤがたまらず叫んだ。その時、

 

ガキィィン!!

 

ダイヤの背後で何かが地面に突き刺さる音がした。音がした方向を振り向く。

「これは……ゼロさんの……!」

そこにはゼロスラッガーが合体した武器、ゼロツインソードが突き刺さっていた。

「ゼロさん……ゼロさんの力、お借りします!!」

ゼロツインソードを手に取りダイヤは駆け出した。身体のあちこちが悲鳴をあげる。とうに限界は超えていた。

「はぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!」

しかし、大切な仲間のために、そして愛する妹のために、ダイヤは全身全霊で走る。

「善子さん!!離れていてください!!!」

「だからぁ……ヨォハァネェ、だってば!!!」

ダイヤの声を聞き、善子はチブロイドからパッと離れる。そしてダイヤがゼロツインソードを真一文字に大きく振るった。鋭い音が辺りに響く。

「私の妹に手を出そうなんて、2万年早いですわ!!!」

チブロイドの上半身が地面に転がった。その鋼鉄の身体が真っ二つに斬り裂かれたのだ。

「ゼロさん、ありがとうございます……!」

ダイヤが感謝を述べる。するとゼロツインソードは元の宇宙ブーメランに戻り、持ち主の元へと飛び去っていった。

「ルビィ……あとは頼みましたわよ……」

力を使い果たしたダイヤは、膝から崩れ落ち、倒れ込んでしまった。

「お姉ちゃんっ!!」

それを見たルビィは刀を投げ出し、慌てて駆け寄ろうとした。しかし、

「来てはいけません!!」

ダイヤはルビィを拒んだ。

「ルビィ!あなたが今するべきことはなんですか!?」

「で、でも……」

「行きなさい!ルビィ!!」

ダイヤが必死に声をあげる。ルビィは踵を返し、走り出した。彼女の瞳には涙が浮かんでいた。

「それでいいのです……ルビィ……!」

ルビィの背中を見届け、安堵したダイヤは意識を手放したのだった。そしてルビィは再び刀を手に取る。

「うわあぁぁぁぁっ!!!!!」

ルビィは己を奮い立たせ、勢いよく宿那鬼(すくなおに)の心臓に刀を突き刺した。

 

 

 

「グオオオォォォォ!!!!!」

宿那鬼(すくなおに)が胸を押さえ苦しみだした。

『よし、今だ!!!!』

<ウルトラマンジード ロイヤルメガマスター!>

上空へと高く飛び上がったジードが光に包まれ、マントをはためかせながらゆっくりと降下してきた。ウルトラマンジード、ロイヤルメガマスターの降臨だ。リクはインナースペース内で、ウルトラマンエースのウルトラカプセルを起動。キングソードに装填する。

『バーチカルスパーク!!』

ジードは左腰にキングソードを納め、抜刀するように右上へ振り上げる。すると、キングソードから半月状の光の刃が勢いよく飛んで行く。

 ウルトラ兄弟の五男であるエースは切断系の技を得意とするウルトラマンである。そんなエースの力を使って放つ切れ味抜群の必殺技が「バーチカルスパーク」だ。

 宿那鬼(すくなおに)はジードの放った光の刃を刀で受け止めた。火花が激しく飛び散る。だが、宿那鬼(すくなおに)にそれを撥ねかえす力は残っていなかった。宿那鬼(すくなおに)の刀は哀れにも彼方へと弾き飛ばされてしまった。

 

 

 

「おのれおのれおのれぇぇぇぇ!!!!あと少しでこの宇宙は我が主のモノになっていたのにぃぃぃ!!!」

チブル星人が激昂して怒鳴り散らす。

『ふざけんな!!宇宙は誰のモノでもねぇ……この宇宙に生きるみんなのモノだ!!!』

ゼロの両手にダイヤの元から戻ってきたゼロスラッガーが握られる。それをカラータイマーにセット。胸のタイマーとスラッガーが青白く光り輝く。

『ゼロツインシュゥゥゥゥゥト!!!!!』

ゼロの胸部から強力な破壊光線が放たれた。ゼロの大技、「ゼロツインシュート」だ。その反動でゼロの両脚が地面にめり込む。

「ぐわぁぁぁぁぁっっ!!!!!」

閃光に包まれ、大爆発と共にチブローダーは木っ端みじんに砕け散った。

 

 

 

『これでトドメだ!!!』

ジードは右手に持ったキングソードを逆手に持ち替え、高く掲げる。キングソードに光のエネルギーが充填されていく。

『ロイヤルエェェェンド!!!!』

キングソードと左手で十字を組む。するとロイヤルメガマスターの身体に宿った宇宙最強の力が一気に解き放たれる。ロイヤルメガマスター最強の必殺技、「ロイヤルエンド」だ。

「ギイィィィイヤァァアァァッッ!!!!!」

強烈なエネルギーを浴びた宿那鬼(すくなおに)の身体は大爆発を起こした。伝説との闘いに、終止符が打たれたのだ。

 

 

 

 戦いが終わり、リク、千歌、ルビィ、ダイヤ、善子は祠の前に集まっていた。

「ふう、なんとか倒せたね、みんなのおかげだよ。ありがとう」

リクがみんなにお礼を言った。その隣で千歌がキョロキョロしている。

「ねぇ!ちょっと待って、曜ちゃんは!?」

「それが……」

ルビィが曜の身に起こった出来事を説明した。

「ごめんなさい……私のせいよ……私、探してくる!!」

責任を感じていたのか、善子が勢いよく駆け出していった。

「あ、善子ちゃん!!」

千歌が呼び止めるも、善子の姿はあっという間に見えなくなった。

「みんなで手分けして探そう。僕はこっちを探すから、千歌ちゃんはあっちをお願い」

とリクが指示を出した。

「ルビィはお姉ちゃんとここにいるね。お姉ちゃん、もう動けないみたいだから」

「不甲斐ないですわ……みなさん、頼みましたわよ」

ダイヤは悔しそうにうつむいていた。

 

 

 

「はぁはぁ……まだです……まだ終わりませんよ……!!」

森を徘徊する異形の姿があった。その正体は先刻の闘いを辛うじて生き延びたボロボロのチブル星人だった。その様子を物陰から窺っている人物がいた。善子だ。

「アレは……?あの宇宙人、まだ生きていたのね……」

森の中で曜を探し回っていた善子は幸か不幸か、曜ではなくチブル星人を見つけてしまったのだ。

「リクさんたちにこのことを伝えなきゃ……」

善子は目の前で起こっていることを伝えるためにスマホを取り出した。

「チブルよ、ご苦労であった」

チブル星人の背後から人影が歩み寄り言った。

「陛下!申し訳ございません!!この次は必ずや成功させて見せましょう」

「もうよい、お前には失望した」

陛下と呼ばれたその人影がゆっくりと手をかざす。すると、チブル星人の身体が突然、漆黒の炎に包まれた。

「へ、陛下!?お止めください!!ギィヤャァァァァ!!!!」

もがき苦しみのたうち回るチブル星人。彼の絶叫が森の中にこだまする。声にならない叫びをあげながら転がりまわっていたチブル星人はやがて、物言わぬ灰となってしまった。森が静けさを取り戻す。しかし、その静寂が返って不気味であった。

(ウ、ウソでしょ……!?どうして……どうしてあなたが……!!)

善子は目の前で繰り広げられた惨劇に激しく動揺してしまい、指一本すら動かすことができずにいた。とにかくこのことをリクたちに知らせなければならない。震える手でスマホを操作しようとする。しかし、

(あっ……!!)

スマホは無情にも善子の手から滑り落ちてしまった。

「誰だ!?」

考えるよりも早く、善子は振り向き足を一歩踏み出した。だが、前に進むことは叶わなかった。目の前には先程まで背後にいたはずの人影の姿があった。



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