《境井仁》
誇り高い侍として鍛錬を積んできた仁は蒙古から故郷である対馬を守るために武士の式たりに背く邪道な戦いに手を染めた。無論武士としての志しを持っていたがそれだけでは蒙古に勝てないと理解してしまった。
《冥府》から蘇った《冥人》として「敵」からは恐れられ「民」からは希望の象徴とし武士の道を外れてゆく…
それから数十年の月日が経ち蒙古を追い返し対馬にそれなりの平穏が戻った頃…境井仁享年62でこの世を去った。
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「ん?…ここは…俺は死んだはず…」
寿命で死んだ仁が死の行き先に待っていたのは辺り一面真っ白な世界に立たされていた。そして何故か若返っておりしかも境井家の鎧を着ていた。足取りは軽く腰に佩く《はく》刀の太刀筋にも衰えなかった。
「兎に角…俺以外に人がいないか探しに行くか…」
一時間歩き二時間歩き三時間歩いたが人という人は見つからなかった仁自身諦めていた時に「境井様」 後ろから男に声をかけられた。
仁はすぐに後ろを向き刀を抜こうとしたとき…
「お待ち下さい境井様!?私で御座います!」
「なっ、お主は琵琶法師!?」
「お久しぶりで御座います境井様…そしてお待ちしておりました」
《琵琶法師》
対馬が蒙古に占領された際に対馬に伝わる個々の伝承の『語り』を仁に聞かせ技や鎧の在り処に導いた人物である。
「…待っていた?お主は俺を待っていたのか?」
「左様で御座います」
「お主はここが何処なのか分かるか?」
「…勿論で御座います境井様」
「なんと!してここは何処なのだ!!」
仁は琵琶法師の肩を掴み大きく揺さぶった。
「お、落ち着いき下さいませ境井様!?」
「…すまん」
「フウ…ここは英霊の座と呼ばれる場所で御座います」
「英霊の座?」
「左様、ここには古今東西あらゆる国と地域から生前に名を馳せた者が英霊として集う場所で御座います」
「俺が英霊?対馬を救ったに過ぎんぞ」
「それだけで十分です」
「して此処にはどんな人物達が居るのだ?」
「それをこれから『語り』を聞かせますのでどうかお座り下さい」
琵琶法師に促されるまま仁は茣蓙に座り込む。
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ここは英霊の座
英霊の座ではこの世に名を馳せた死者達が集う場所…
剣術を巧みに操る剣豪…セイバー
遠くの敵を的確射抜く弓取り…アーチャー
薙刀や槍を巧みに操る槍兵…ランサー
馬に跨がり敵陣を蹂躙する騎兵…ライダー
毒殺や闇討ちを得意とする暗殺者…アサシン
呪で結界や呪いを得意とする呪術師…キャスター
獣のごとく理性のきかない狂戦士…バーサーカー
これらを得意とする英霊達は今未曾有の厄災に一人の主を筆頭にこの星の未来を取り戻すため日々奮闘しております…………
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「境井様…對馬はおろか日ノ本いや世界を救う為どうかお力添えを……」
「……あぁ無論だ」
「ありがとうございます、『冥人』様のご活躍期待しております…御武運を…」
冥人《くろうど》…
武士の正々堂々戦うとは反対に毒殺や闇討ちで敵を殺すことであり仁は民を救うため致し方なくやっている事である。しかし民から冥人の名で有名になってしまったことで蒙古を追い返した後、武士の式たりを重んじる叔父上と対立したのである。
しかし背いた事に悔いは無い。
「あぁ達者でな…」
仁は光に吸い込まれるように消え去った。
と、いった感じたです。
誤字脱字があればご報告を…
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