艦娘であり艦娘ではない (コロタン)
しおりを挟む

プロローグ 其ノ一

皆様初めまして今回初めて筆を取らせていただきます
メタルギアとのクロスオーバー作品ってあんまり無くね?
なら自分があんまり知らないものとくっつけてしまえ!!
という完全な思いつきの見切り発車です
それでも生暖かい目でお付き合い頂けるならよろしくです(´・ω・`)


 

 

 

 

電気が付いていない真っ暗な部屋

その部屋の布団で私は1人静かに目を覚ました。

 

頭を上げてすぐ近くにある時計を見ると、時刻は夜中の2時ちょうどを指していた。

やるべき事なんてとうの昔になくなってる

やりたい事も何も無いので再び寝ようか少し迷っている内に、どうやら私の頭は眠気を振り切ってすっかり目を覚ましてしまったらしい。

 

自身のしっかりした所は頼もしく思うし、逆にこういう時には融通をきかせて欲しいとも思う。

食堂や大浴場なんて行ってももう閉まってるだろうし

そして何より、私はこの部屋から出たくないのだ。

コラそこ、ヒキニートとか身汚いとか言うな。風呂には入ってるしこちとら訳アリなんだ

・・・・・まぁ、どの道暇なんだ。今からその説明をするとしよう。

唐突だが私は、最初の戦いで作られた艦娘(実験機)だ。

元居た世界の記憶を継いだままこの場所

厳密に言うならば妖精達によって作られこの世界に産み落とされた異物だ。

 

元々私は彼女達とは違い、戦艦では無いのだ。

私は別の世界で人と兵器を繋ぐ新たな歯車

核搭載二足歩行戦車(メタルギア)として科学者に生み出された

勿論その事を知らない他の艦からは「役立たずの欠陥兵器」や「ガラクタ」など散々な言われようだった。

私自身それは分かってたのだ。

自分が優位性を保てたのはあの大戦時に深海棲艦が陸地まで侵攻し、拠点を制圧してたからだ。

 

・・・・・それも長くは続かなかった。

私自身の武装は確かに強力で、単独での制圧も容易だった。

唯一つ弱点がある・・・・それはお察しの通り海に出られないのだ。

 

艦娘はその艤装によって海上を滑るようにして移動することが出来る。(深海棲艦の奴らは知らん)

そして私は元陸上特化の大型兵器(形がが変わっただけで陸上特化は変わりない)だ。

陸上戦闘にのみ長けた歩行戦車と海でも活動できる艦娘達・・・

どちらが優位になるかと言ったらそれはもちろん後者だ。

もちろんメタルギア(私達)には陸上だけでは無く海上でも戦える後継機(RAY)がいるがそれだけなのだ。

自分は海に出れない・・・・だから提督の身辺警護しか出来なかった。

だが、それも戦況が安定し初めてからは不要になった。

それだけでは無い、十全な訓練を詰んだ憲兵達が鎮守府内を守るようにもなった。

 

それでも当時の提督は私を右腕として扱ってくれたのだ。

周りがいくら自分の方が出来るとアピールしても決して私を秘書から下ろさなかった。

 

1度だけ何故?切り捨てずに使うのかと聞いたことがある。

すると彼はこう答えたのだ

「確かに有能な艦は居るだろう。だが、あの激戦を、たったの小隊規模ででやり遂げた者の1人を邪険に扱うなどと、どうしてできようか」と

私はその言葉を聞いて初めて人に心を開いた

 

戦時中に私を見る目は基本的に同じだった。

私達の活躍が気に入らないという嫉妬の目、唯の道具としか見てない冷たい目、この体を貪りたいという下賎な目などそんな下らないものばかりだった。

 

そもそも当時の私達は人間に大して何の感情も持っていなかった。

強いて言うなら助けられておきながらいざ使えなくなったら捨てていく

そんな事しか出来ない傲慢な存在。

それが人間に対する私達の共通評価だった。

 




如何でしたでしょうか?
実はこの話を書くだけでもうんうん5時間位考えて作りました。
因みに皆さんはこの主人公ちゃんがどのメタルギアかわかりましたでしょうか?
因みにこの作者はこのメタルギアが1番好きなのです


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

プロローグ 其ノ二

皆さんにこんにちは
たったの一日でUAが百件を超えては?うせやろ?ってなってる作者です。
プロローグもとい過去編のような話はこれで最後にしようと思ってます。・・・上手く行ければ、がつきますがよろしくです


助けて貰っておきながらいざ使えなくなったら捨てていく

そんな事しか出来ない傲慢な存在。

それが人間に対する私達の共通評価だった。

・・・・・だったのだ。

意外そうにしている私の顔を見て、提督は優しく笑ってこう言った。

「なんだ?まさか私の事も他の奴らと同じだと思っていたのか?まぁ、無理も無いか・・・」

 

私はその言葉に何も言えずに少し、項垂れていた。

でも、とその後に続いた言葉で私の暗い顔は一瞬で消え去った。

「私も少し驚いたよ。まさか1度も感情を表に出したことの無い君が、ポーカーフェイスを崩すとはね?」

その言葉を聞いて、私は呆気に取られてしまった・・・が、そんな事は催事だった。

私は少し、笑ってこう言った。

「提督、文脈が少しおかしいぞ。

なんで最後に疑問形になるのか小一時間問い詰めてみたいものだな」

そう言って提督の顔をチラリと見れば、彼もまた呆気に取られていた。

その後は2人で大笑い・・・とは行かずともクスクス笑いながら、お互いの知らなかった一面について話し合っていた。

私はその時、確かに人間に対する思いが変わった。

傲慢で強欲で、自分達が上じゃないのが気に入らなくて嫉妬する。ただそれだけではなかった、初めて知ったのだ。

人の善性を、相手を気にかけ思う心があるという事を提督を通して知った。

 

彼を見ているとなんだか自分の考えがやけにちっぽけで、馬鹿馬鹿しく感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は今日、彼女に質問をされた。

彼女が問いを投げること自体がほぼ無いため、驚かされたが顔に出さない様にしてに質問を聞いた。

彼女は言った。「何故?切り捨てずに使うのか?」と。

その答えは既に幾つかあった。

 

 

君が有能な艦であるから

これでも十分な答えだが彼女は満足しないだろう。

 

求められれば戦うのか君達だろう?

これでは彼女を道具としか見てないと言う証拠になってしまう。何より、それは艦娘全員を道具であればいいと突き放してるのと同じだ。

それに、彼女個人への返答にならない。

 

少しの間を経て、私は素直に感じたことを答えることにした。

「なんだ?まさか私の事も他の奴らと同じだと思っていたのか?まぁ、無理も無いか・・・」

そう言って私は、椅子に深く座り直した。

彼女達の真実を知るものは今では極僅かになってしまった。

妖精達が艦娘を生み出すまでの時間稼ぎ、少しでも人類を諦めさせない為の仮初の希望

メタルギア・・・・・単独での防衛や殲滅に長けた兵器を妖精達が持ってきて、そのスペックをそのまま人間の形に落とし込んだ艦娘擬き(怪物)

それが、彼女達の本当の姿。

 

この事を知るのは私と、大本営と海軍の上層部数人だろう。

 

そんな事を考えてると彼女は何かを堪えるように、少し俯いていた

いかんいかん、まだ答えを返し終わってない。

その状態で終わりにはできんからな。

また、思っている事を素直に伝えた。

「確かに有能な艦は居るだろう。だが、あの激戦を、たったの小隊規模ででやり遂げた者の1人を邪険に扱うなどと、どうしてできようか」

 

今言った言葉に嘘は無い、これは自分が本気で考えてる事だ。

他の子達が自分を秘書にして貰おうと躍起になっているのは知っている

「あんなガラクタよりも私の方が何倍も上手くできる!!」

そう直談判しに来た子もいる程だ

 

だが私は、その度に彼女を下ろすつもりはないと一蹴した。

別に他の艦達が嫌いな訳じゃない。

寧ろこんな自分に付き合ってくれているのが申し訳ない位なのだ

でも、もしそれで彼女を下ろしてしまったら、彼女の居場所は本当に無くなってしまうのではないか?

それはあまりにも非情では無いだろうか?

そんな考えもあって、今でも彼女を側に置いている。

分かっている。分かっているのだ。これが同情でしかないとは。

それでも私は、彼女に居場所を作ってやりたいのだ。

 

 

そんな考えを悟らせないために、彼女の気を紛らわす為に、次の言葉を出した。

「私も少し驚いたよ。まさか1度も感情を表に出したことの無い君が、ポーカーフェイスを崩すとはね?」

 

そう言って見せると彼女は、今までのポーカーフェイスを崩して呆気に取られていた。

その時私は、改めて自分の間違いを知った。

彼女は確かに艦娘とは少し違うのかもしれない。

だが、それがどうしたと言うのか、彼女は我々と何も変わらないのではないか?

艦娘が人間と同じように心や感情が有るように、彼女にもそう言ったものがあるはずだ。

 

そう言われた彼女は少し笑ってこう言い返した。

「提督、文脈が少しおかしいぞ。

なんで最後に疑問形になるのか小一時間問い詰めてみたいものだな」

 

今度は私が呆気に取られる番だった。

彼女が冗談を言うなど、ましてやそんな柔軟性があると知らなかったのだ。

 

私は、居場所を作ってやれれば良いと、本気で思っていた・・・・が、

そんな気遣いは無用だった。

彼女は確かに、居場所を作っていたのだ。

 

そんな彼女を見て、私もなんだか、考えてた事が馬鹿らしくなった。

その後は2人でクスクスと笑いながらお互いの知らない一面を話し合った。

 

気づけばもう、消灯時間をとっくに過ぎていた。

「さて、楽しい話はこれで終いだ。

消灯時間は過ぎているから、寄り道せずに戻りたまえ。」

 

彼女は「もうそんなに経ったのか」と名残惜しそうに言った。

執務室を出ようとしたところを私は再び声をかけ、ある物を渡した。

彼女は不思議そうにそれを受け取るとすぐに何か理解したようだった。

そして悪戯っ子のようにこう言い始めた。

「この出来損ない()に恋文とはなぁ~

提督ともあろう者が随分と物好きだな」

 

私はすぐに否定した

「ッ馬鹿!そんなご大層なものな訳ないだろうが!」

顔が赤くなってたから信じて貰えないだろう・・・

本当に彼女には今日だけで驚かされてばかりだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し提督をイジった後、私は手紙を直ぐに開け、書かれていることを知った。

私は、提督に伝えることにした。

「・・・・・私はまた、部屋に籠るとしよう」

 

心配そうな顔をして先方に伝えるか?と聞いてきたが私はそれを否定した。

「次の人間がどんな奴かは知らんし、知りたくもない。

だから、これでいい」と

そして最後に、提督に向き合ってはっきりと伝えたい事をを告げる

足を揃え先は45度に、背筋を伸ばし、右手を額へ。

それは紛れもなく、敬礼のポーズだった。

 

「本日をもって、貴方は提督という楔から開放される。後の事は我々に」

 

 

その言葉には確かに力強いものがあった。

 

 

提督は私の姿を見て、満足気に頷き、「了解した」とだけで言うと、鎮守府を去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本日、〇月〇〇日をもって、秋雨提督の全業務を終了とする。

以後は新しく派遣される提督の指示に付き従う事」

 

 

 




如何でしたか?
これにて過去編のようなものを終了させていただきます
実は誰よりも思い詰めていて、救われたのは提督と言うオチを狙って書いたのですが思ったよりフワッとしているような気がして締めになったかの実感が無いです

次からほんへです


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

喧騒の朝

皆さんにこんにちは
今回から本編です。
主人公の無理ゲー感を感じて頂ければと思います
今日で3回目の投稿・・・お察しの通り暇人です


提督に敬礼と堅苦しい言葉を伝えた後、私は持っていた手紙を食堂の掲示板に貼り付けた。

 

別にその後は特筆すべきことは無い・・・・・・・一つ挙げるなら、私は新しく来る提督の事は事前に知っていた。

私は基本的に部屋に籠り切りだが、情報の伝は多少なりともある。そこから噂が流れてきたというだけの事だ。

 

だから、私は知る必要がないと言ったのだ。

新らしく来る提督の噂はいいものではなかった。

だから知りたくないと言ったのだ。

どの道、また部屋に籠る私には関係の無い事だった。

 

それから、私の事を気に掛ける者は誰一人居なくなった。当然だ、元から気に掛ける者はいないのだ。

 

あの世話好きの提督以外に慣れ親しむつもりなど私自身一切無い。

そうして籠りに籠って早数十年。

 

今の環境が出来上がった訳だ

 

 

時計を見れば、時刻はもう朝の5時・・・早朝を指していた。

さて、丁度また眠くなってきたので私はまた寝るとするが、私は、秋雨提督と一つだけ約束事をしている

 

・・・・その約束がいつ果たされるかは不明だが、まぁ、せいぜい果たされる時を待つとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〇〇月〇日

朝の八時半、普通の人なら既に家を出、仕事場や学校へ向かっている時刻だが、この鎮守府では波乱の幕開けになる事は誰も知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝の八時半、鎮守府全体に鳴り響く侵入者を知らせるけたたましい警告音に私の睡眠は見事に邪魔された。

 

さらに続く若い男の声・・・・・その声は明らかに焦っていて「当鎮守府は大本営からの攻撃を受けている!各艦全力で抵抗せよ。実弾の使用も問わない!」と言うなんともまぁ巫山戯たものだった。要は証拠隠滅か提督や憲兵長が逃げるための時間稼ぎをしろ、という事だ。

 

 

 

これを聞いた私は1人呟いた

「さて、秋雨提督、時間だ。

貴方との約束を果たすとしよう」

 

 

 

 

 

 

これはある種の戦争だ。だが、あちら側は私の事は何一つとして知らないらしかった。もし、知っていたとしたら直ぐに提督執務室に呼んだだろうからな。

それをしなかった向こうの負けだ。久方振りの外だ、せいぜい派手に暴れてやるとしよう。

私はドアノブを握り、外へ出る為にそれを回す・・・・が、ずっと使われてなかったドアノブはサビ付き、何度回しても開くことは無く、遂にはベキョッ!!いう音を立てて外れてしまった。

軽く溜息をついてノブを放り捨てた私は、自らの武装の中で、1番大きいものを喚び出す。

 

その武器は私の体型とは似つかわしくないほど大きく、色は黒一色で統一されているが、どこか近未来の武器を彷彿とさせるようなものだった。

この武器の正式名称は電磁投射砲(レールガン)

弾丸となる飛翔体を、電磁誘導によって非常に高い速度で撃ち出す事が出来る。

私が持っているこれ、初速は3段階の可変式で、最大までためて撃てば、戦車砲に匹敵する破壊力をもたらすトンデモ兵器だ。

因みにこれ、標準装備である。

 

 

足を開き、電磁投射砲をドアへ構える。

出力は最低の1段階、この状態で撃てば周りへの被害は無いはずだ。

そう思って引き金(トリガー)を引く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドォグオオオオォォン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんて大き過ぎる音を聞いて、私は内心冷や汗をダラダラと流しながら出入り口を見ると、どうやら予想通りドアのみを木っ端微塵にしただけらしいかった(誰がどう見ても大問題である)私はそのまま何も無かった事にして外へ踏み出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

状況を全体的に把握して私は一人、心の中で(これは、随分と困った事になりましたね・・・)なんて事を呟いた。

私達は今回、大本営から派遣されてこの鎮守府に来ている。用は勿論、現提督や憲兵長、並びに今回の不祥事を起こした連中を逮捕するためなのだが、こちらが来た瞬間に徹底抗戦とはここのお偉方は随分隠し通せない事を仕出かしてるらしかった。

 

 

事の起こりは半年前に遡る。大本営と海軍には両組織を監視し、是正する監査部が存在している。

その監査部宛に、一通の手紙が届いたのだ。たった一言しか書かれておらず、しかもかなり読みづらく、「助けて」とだけしか書かれていなかった。この手紙を読んだ上層部は直ぐに緊急招集を掛け、この手紙がどこの鎮守府から来たのか調べ始めたのだ。

勿論どこの鎮守府かなど手紙には書いておらず、調査は難航した。

そこで両組織は各鎮守府にスパイ艦を送り、出処を探った。

そして浮上したのが、この大原鎮守府だ。直ぐにスパイを帰還させ、報告書を読んだ面々は頭を痛めた。

しかしそれは無理もないことだった。

その報告書には大原はブラック鎮守府になっていると言う一文が記載されていたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鎮守府

それは本来、艦娘達を運営する為の施設だ。鎮守府には司令官たる提督、内部の汚職などを防ぐ憲兵隊、そして艦娘の3つがある。まず艦娘は提督の司令に従い、出撃や演習、訓練などいったものをこなす。その時に、万が一提督が艦娘に対する暴力行為や虐待等を起こした場合、抑止力たる憲兵達はそれを止め、大本営に報告する義務がある。これが本来の鎮守府なのだか、稀にその行いを良しとし、見過ごす所か憲兵達がこれに加担していたりする事がある。それをブラック鎮守府と言い、そこにいる艦達は真っ当な扱いなど受けられず、中でも酷いのが、度を超えた違法出撃に違法建造、例え大破しても進軍させるなどのやり方だ。憲兵が加担しているために内側からその事が漏れることは無く、また外側からも分かりづらいのだ。

 

 

 

 

 

 

恐らくこの手紙を出した艦はまさに、命懸けの行動だったに違いない。

下手をすれば解体(殺害)など十二分に有り得てしまうのがこのブラック鎮守府だ。一刻も早く助けなければならないのだが、こちらはあくまで鎮圧前提の為、模擬弾しか持っていないのだ。それに比べてあちらは実弾だ

幾ら練度が低くても、集中砲火を食らっては一溜りもない。

何より、泣きながら砲身を向けてくるあの子達を見捨てる事は出来ない。

 

 

膠着状態だ

時間をかければかけるだけ彼女達の精神的負担は大きくなってしまう

何とか突破口を見つけなければ・・・・・そんな事を考えてる時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドォグオオオオォォン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆音が、戦場(鎮守府内)に響き渡った。

 

 




わざわざ外へ出る為に軽々と兵器をブッ放す奴がおるってマ?(諸悪の根源)
はい。という訳で早々にやらかす主人公ちゃん
次回は本文にあった通り大暴れします


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

怪物の本領発揮

皆さんこんにちは
今回は戦闘よりも尋問とかの方で半分使っちゃってますね
これもまぁ無計画でで作ってるからなんですが


 

「今の爆発音は、一体・・・」

私の口から自然と言葉が漏れた。が、直ぐに頭を切り替え、隣にいる艦に質問する。

 

「今の爆発音。何か分かりますか?ミズーリ」

しかし、彼女は首を横に振って答えた。

「いいえ。火薬庫の爆発音にしては近すぎます。加賀さんは何か見当が?」

「いえ、私も何も」そう手短に答え、情報を整理する。(これが何の爆発かは知りませんが、彼女達も困惑しているという事は、これは向こうも想定外の事態が起こっているということ・・・早いとこケリをつけなければなりませんね)

 

そんな事を考えてると後ろから足音がしているのが聞き取れた。コツ、コツと、まるで何も気にしていないかのような普通の歩き方だが、この場では相応しくないものをだというのは瞬時に理解できた。足音は止まず、寧ろ近づいてきている。それを知って振り返る。そこに居たのは何の武装も展開していない1人の艦娘(悪魔の兵器)がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十年ぶりに部屋の外へ出たが、特にこれと言って変わったものは無かった。けれど、等間隔に置かれていた調度品(アンティーク)が撤去されていたのが少し寂しさを感じた。

あれは提督が就任して間もない頃、少しでも雰囲気を良くしようと彼が自腹を決めて買ってきてくれた物だ。

割と評判だったし、あれは私も好きだったなと思い出に耽りながら進んで行く。執務室自体の場所は知ってるが、変わってるかもしれないのでそこらにいる艦娘達にでも聞くために先程まで戦闘音が続いてた場所までやって来た訳だが・・・・何故か皆困惑しているし大本営から来たであろう人達も固まっている。・・・・・私が何をしたと言うんだ(爆発音の原因)

 

そんな中でも向こうは社畜精神旺盛らしく(笑えないブラックユーモア)武装をこちらに向けていた

それにいち早く気づいた大本営側は私に「死にたくなければ隠れなさい!!」

と注意してくれたが「問題ない」とだけ返し、再び進みはじめる。

それを見た向こう側の艦はすぐさま発砲を開始してきたがこの程度、私にとっては障害にもならないので実質弾薬と物資の無駄遣いだ。

さて、傷はつかないが打たれっ放しも性にあわないので規格外の一撃を与えて、さっさとこの馬鹿騒ぎを終わらせるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現れた艦娘と思しき人物は、若干暗めの銀色の髪をセミロングにし、グレーの瞳をしていた。顔立ちは綺麗に整っていて誰が見ても綺麗だというはずだ。

そんな突如として現れた彼女に驚いていると、先程までこちらに向いていた砲身が、彼女に向けられている事に気づいた。その事で戦闘中である事を再認識した私は、急いで彼女に警告する「死にたくなければ隠れなさい!!」と

今この場で、艤装を召喚して居ないのは彼女だけだ。そんな状態で突っ込めば、直ぐに瀕死の重症を負うことは理解出来てるはず。なのに彼女は「問題ない」とだけ返すとそのまま突き進んでいった。

当然、進んで行く彼女に対して砲弾の嵐が突き刺さる。彼女は間違いなく即死だろう。

自分のせいで犠牲者を出してしまった。無理にでも止めていればこんな事にはならなかったと自責の念が湧き上がる。

だが、煙が晴れるとそこには、異常な光景が広がっていた。彼女が生きているのだ。怪我一つなく、ピンピンしている事に驚きを隠せない。

あの砲撃を食らっては一溜りもないはずなのに、何故?

 

彼女はそれを気にすることも無く、武装を召喚した。その武器も私達は見たことの無い形をしていた。黒一色で統一されたカラーリングに、身の丈ほどはあるであろう長さ、砲身と思われる部分には上下に2本の長細い棒がついてるだけのように見えた。

 

それを彼女は平然と構え、狙い始めた。今度こそ、私は止めに入った。

止めなければ、脳裏によぎった最悪の光景が、現実になりそうだった。

「何やってるんですか!?彼女達は保護対象であり、抹殺対象ではないんですよ!?」

私の叫びを聞いてもまるで意に介さないようだった。それどころか、こちらを鬱陶しそうな目で見てきたのだ。

保護対象である彼女達はすっかり腰が抜け、中には自分がどうなるかを想像し、震えている子もいたのだ

私はその事に対し完全に血が上った。

彼女達に危害を加えるなら、まずはコイツをコロス。

そう判断し、彼女に自分の拳をお見舞いしようとした瞬間。

 

僅かな電子音と共に彼女の顔が不敵に笑った。

 

そして先程と同じ爆音が響き、あまりの五月蝿さに私達は耳を塞いだ。

音が収まって辺りを見回して、私は開いた口が塞がらなかった。

着弾地点と思われる場所は抉れ、爆発の影響で周りの壁や天井には焦げた後がついていた。保護対象の彼女達は倒れていた為、すぐに駆け寄り安否確認をすると、気絶こそしていたがそれ以外の外傷などは一切なかった。その事に安堵し、下手人を見上げる。さっき放った大型兵器に目を向けると、整備不良だっのか破損しており、火花を散らして少量の黒煙をあげていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(幾ら整備してなかったからって、2発撃ってオジャンとかあんまりでは?)

私は火花を散らし、黒煙をあげている電磁投射砲に多少の不満を覚えた。

(ドアの破壊と、駆逐艦達の鎮圧、これだけしか見せ場がないというのはあんまりでは?)と、内心首を傾げながら、私は電磁投射砲を消した。

まぁ、まだ他に武装あるし、いっかと余計なことを考えてると、背面に冷たいものが突きつけられた。間違いなく、砲台だろう。誤解を産まないように両手を頭と同じ高さまで上げる。そうしてようやく彼女が口を開いた。

「私は監査部所属のアイオワ級戦艦、ミズーリです。

質問の答えによってはあなたを先に拘束しなければなりません。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は彼女が例の大型兵器を消した後、すぐさま砲台を彼女の背面に突きつけた。それがなんであるかを理解した彼女は、すぐ様両手を頭と同じ高さまで上げた。敵意が無いことを確認し、警告する。

「私は監査部所属のアイオワ級戦艦、ミズーリです。

質問の答えによってはあなたを先に拘束しなければなりません。」

 

「まず、最初の質問です。

何故、あの子達を鎮圧するのにあんな大型兵器を使ったのですか?」

今、私がしてることは時間の無駄だという人がいるかも知れないが、これだけはやって置かなければならない事だと私は確信していた。

聞いたことの無い大型武装、敵なのか、味方なのかさえ判別出来ていないこの状況、加えて1歩間違えればあの駆逐艦達を消し炭にしてしまえる程の威力。それを全て聞くまで彼女への警戒を解く気はない。

これには加賀さんも同じらしく黙って見てくれている。

 

 

 

そして、彼女が口を開いた

「あれ以外に纏めて鎮圧出来る武器を持っていなかった」

言葉に嘘は感じられない。詳しく聞いてる時間もないので直ぐに次の質問をする。

「何故砲撃を浴びて、平然としてられるのですか?」

彼女はすぐに答えた。

「私の装甲は特殊でな?高性能な成形炸薬(HEAT)でも使わないと破壊は出来ないようになっている」

「デタラメです」

加賀さんが割って入り、彼女の話を否定した。

「もし仮に貴方の話が本当でも、それを証明出来るものは「ある」・・・随分と言い切りましたね。では、その証拠は?」

加賀さんの雰囲気が厳しくなったのが肌で感じ取れた。

だが、相手がムキになってる様子はない。

彼女は又直ぐに答えを出した

「さっきの光景を見ても、同じ事が言えるか?」

これには私達は押し黙るしかなかった。

確かにその話が本当なら、砲弾が聞かないのも頷くしかない。

加賀さんに視線を送るともう割って入る気は無さそうだった。

相手は痺れを切らしたのか「もう行っていいか?生憎と、こちらにもやる事があるんだ。」

そう言って去って行こうとする彼女の腕を掴んで止めた。そして、彼女にこう伝えた「最後の質問です」と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いい加減提督執務室に行かせて欲しかったので「もう行っていいか?生憎と、こちらにもやる事があるんだ。」とぶっきらぼうにいい放ち、そのまま立ち去ろうとしたら腕を掴まれて、「最後の質問です」といわれた。

何にせよ、このまま約束が果たせないのは嫌なので「いいだろう。但し、この質問で最後だ。」と睨みを聞かせる。

少し怖気付いたミズーリだったが「分かりました。これ以上時間を取らせるつもりもこちらにありません」と言い切った

そして、ミズーリが放った最後の質問が本当に聞きたかったものだと、瞬時に理解出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方は、一体、何者ですか?」

これが、私が本当に聞きたかった事だ。別に今までの質問は、躱されようが煙に巻かれようが良かった。でも、この質問だけは、絶対に答えて貰わなければならないと思っていた。

最後の質問だと言った時、彼女は確かに私を睨んで、「いいだろう。但し

、これで本当に最後だ」と伝えてきた。

その目を見て、私は文字通り蛇に睨まれた蛙のように数瞬だけ、固まってしまった。その目には有無を言わさぬ頑強さがあった。

ここで負けては、本当に聞きたいことも聞けなくなると本能でわかっていたので恐怖をひた隠しにして、この問いを投げた。

すると彼女は、初めてその口を閉ざした。まるで、聞かれたくない事を聞かれた子供のように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その問いに対して、私は初めて口ごもった。

自分が一体何者かなどと、考えた事もなかった。ただ兵器に生まれ、兵器として生き、使えなくなれば打ち捨てられる。

 

役割を終えればそれでいいのか、そもそも終わるのか・・・でも、これだけははっきりとしていた。自分では答えが出せない。

 

 

だから、今答えられることを答えた。

「私は、人と兵器を繋ぐ歯車だ。それ以上でもそれ以外でもない。」

 

そう言って私は歩いて行く、交わした約束の為に

 

 

 




如何でしたか?
今回はなんだかシリアス味が書いてるうちに増えてしまいました
しかも戦闘はといえばレールガン売っただけ
次こそは暴れさせたいですね


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

クソ野郎に鉄拳を

皆様こんにちは
タイトルでわかる通り、今回はようやくクソ提督をぶちのめします
また、感想などは非ログインでも出来るようにしてるので気軽にどうぞ


「私は、人と兵器を繋ぐ歯車だ。それ以上でもそれ以下でもない。」

そう言って彼女は去って行った。「今のは、どういう意味でしょう?」

私は加賀さんに聞いてみた。でも、彼女も答えの意味は分からないらしかった。私は思考の海に溺れそうになっていたが「加賀さ〜ん、ミズーリさ〜ん」と声を掛けられたためそれも出来なかった。

 

顔を向けると同じように大本営と監査部から来た人達が合流し始めていた。先程声をかけてきたのは青葉さんだ。私と加賀さんは念の為、先程起こった出来事を全て伝えた。皆動揺を隠しきれていなかったが、青葉さんだけは「その現場に居合わせたかったな〜羨ましいな〜」と呑気していた。この人は記者としても活動していて、記事のネタになりそうなものは逃さないのだ。

そして、もう1人、同じ監査部から来ているレイだけは複雑な表情をしていたのを、私を含めたみんなが知らないのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

記憶を頼りに進んで行く。

鎮守府内の案内板を見る限りは、執務室の場所は変わっていない事が確認できた。後はこの巫山戯た祭りを終わらせるだけなのだが・・・・・歯向かってくる艦娘達が多いのだ。

そりゃ絶望を味わって逆らえない迄に疲弊してる可能性も捨てきれんがな?もう少しガードを緩くしてくれんか?こちとらそこの角曲がって部屋に入って全部終わらせたいだけなんだが?しかし、そんな事はお構い無しでも撃ち続ける艦娘達。

流石に一人一人対応してはキリがないので別の武装を展開する。これだけ固まっていれば狙うのは容易だからな。そう思って次に私が召喚したのは先程のようなものではなく、体に取り付けてあるタイプのやつだ。両腿の外側に5発ずつ、背面にある発射装置から5発、計15発の対戦車ミサイルだ。流石に全部撃つと後始末が色々面倒なので今回撃つのは右腿の5発だけだ。ん?ロックオンはどうするのかって?・・・・

簡単だ、目視で行う。少なくともこの狭い環境なら目視で十分だ(敵が遠くにいる場合は双眼鏡を使う)

但、さっきのミズーリとやらの話ではこの鎮守府の艦娘達は保護対象らしいからな。無闇に傷をつける訳には行かんので、彼女達には当てず、通過させてもらう事にする。近くにある瓦礫の山に1発、曲がり角の壁に1発、2m手前の床に1発、残りは天井だ。

 

打つ場所を決め、敵の弾幕が薄くなった隙を着いて飛び出し、ミサイルを発射する。

点火したミサイルは勢いよく飛んで行き、狙い通りの場所を破壊した。これで時間が稼げるのでさっさとそこを通過した。

 

 

そして、漸く提督執務室に着いた。

最後に入ったのは秋雨提督が退役を私に知らせた日までの為、若干緊張しているが問題はない。そしてそのまま入ろうとしたが入れなかった。(そりゃそうだ)そう、今現在この鎮守府は悪事がバレ、追い込まれてるのだ。そんな時に1番防備を固められる執務室に籠城しないやつがあるだろうか?

私が向こう側だったら間違いなくここに籠る。だが、そうは問屋を卸させないのが私だ。銃器で脅してもいいが、逆に緊張を煽るだけだ。形振り構わない人間がどれほど恐ろしいか知らない私ではない。

たが、どれだけこいつ等が籠城しようと、私の前には無力ということを分かってない時点でチェックメイト(詰み)だ。さて、さっさと終わらせるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は今、絶望の淵に立たされている。

それこそ、こうして籠城位しか出来ぬほどに追い詰められていた。

どこから漏れたかは知らんが、ここの不祥事が上へ伝わってしまったのだ。そして今日の朝、八時半に大本営の連中が此処へやって来た。

私は館内放送で、全力で抵抗しろ、実弾の使用も問わないと言った。

これはあくまで私や憲兵長が逃げられるまでの時間稼ぎ程度でよかったのだ。幾ら練度が低い出来損ないたちでも実弾とあらば向こうの戦力を食い止められるからな。だが、そして後は抜け道を使って逃げるだけとなった時だった。ありえないことが起こった。徹底抗戦を指示したあと直ぐに、謎の爆発が起きたのだ、さらに負の連鎖は止まらない。

また例の爆発音がしたかと思えば、音は近づいていたのだ。

有り得ない。有り得るはずが無いのだ。ここに居る傀儡共(艦娘)は全員が我々に抵抗などできないようにあらゆる手を使って手懐けた。薬物や精神攻撃、時には人質を使う等徹底していたはずなのだ。

そして、その後に襲ったあの小規模爆発・・・・あれは間違いなく最終防衛ラインを突破された。

 

ならばせめてもの意地としてドアに簡易的ながらここにいる憲兵達を使ってバリケードを作り上げた。そうして出来ることを全てやって逃げようとした時だった。

 

謎の青い光によって、ドアはバリケードごと破壊され、蹴破られた。

そこに居たのはこの鎮守府でも1度も見たことの無い艦娘だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、私が何をしたかと言うと対してむずかしいことはしていない。

左腕の艤装を展開し、その中にあるレーザーを起動し、ドアを切り刻んで後は駄目押しに蹴破れば終わりだ。そーして部屋を見渡すと。

逃げようとしている馬鹿2人、固まったまま動かない無能たちが10人、

とまぁ、バカ丸出しの構成人数だった。普通あそこまで首輪握っているのなら3人位は護衛として残せばいいものを。なんて取らぬ狸の皮算用をしていると、白い方の馬鹿がうろたえていた。早く私を倒せと指示を出していた。生憎と、人間相手なら艤装なんて必要ない。

何よりあいつら人間の兵器なんて効きめ無いの知ってるはずなんだけどな。まぁ、いっか適当に捌いておわらせよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんだ!?何なんだあいつは!?あんな化け物存在するなんて聞いてないそ!!

そんなハチャメチャな事があっていいものか!

私の権利は絶対だ!私はビクついて動けない無能たちに指示を出した。

「お前たち何をしている!?早くあいつをどうにかしろ!!」

憲兵達はその言葉でようやく我に返ったらしく、その命令を聞いてようやく行動し始めたが、それではあまりにも遅すぎる。

彼女は一瞬で1番前にいた憲兵に近づくと、右腕で襟元を、左で袖を掴み、

そのままそいつを床に叩きつけた。

たった一撃

それだけで訓練された兵士を気絶させる

その挙動を1目見ただけで他の憲兵は動揺し、その波紋は提督まで広がる。

もし、ここにアメリカ兵や軍隊格闘に詳しいものがいれば、今放ったのがCQCであるということが分かるだろう。だか哀しいかな。

ここにアメリカ兵や軍隊格闘のプロはひとりとして存在しない。

 

彼女は一気に硬直していた提督の元まで進むと彼を片腕で持ち上げ、壁に叩きつけた。しかも今度は向かってきた憲兵の時とは違い、全力だ。

艦娘の本気など、人間が受ければすぐ重症になるのは目に見えている。

 

ヒューッヒューッと浅い呼吸を繰り返す提督に近づき執務室の机に再び叩きつける。そして、怒りの籠った声でこういった。

「今すぐに戦闘を中止させ、武装放棄させろ」

最早彼にできることは大人しく指示に従うことだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その10分後、何とか喋れるようになった提督は、館内放送で全艦の武放棄を指示。

これにより、大原鎮守府の騒動は一通り幕を下ろした形になる。

 

 

 

 




如何でしたか?
因みに途中て、平仮名のままさっさとおわらせよって書いてあるところがありますが変換ミスとかじゃなく、主人公の気だるさ感を出してみました
では何故主人公は画面倒そうにしていたのか?
1.艦娘を護衛にせず防衛に全て回した事
2.執務室の人員を見て、あっ、コイツ無能だ、と判断した為
3.憲兵との戦闘中にさっさと逃げればいいものを何時までもそこにいたから。

完全な余談ですが、憲兵長はドアを蹴破った時に近くにいた為瓦礫に埋もれて逃げられなくなりました。


一応これで大まかに考えてた分は出し切った形になるので
今回みたいなハイスピード投稿は出来なくなりますがこのシリーズはこれで終わらせずに続けるつもりではいます


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

後始末

皆さんこんにちは
前回、提督をぶちのめす所を投稿しましたが、あまり派手さがないなぁと、ちゃんと暴れられてるか心配な作者です。
今回はタイトルにある通り、今回の騒動の後始末という形になりますが波乱はもう少しだけあります。



大原鎮守府の騒動から1夜明けた今日は様々な人が出入りしていた。

まず、最初に行われたのはここにいた全艦娘の移送だ。

移送先の大本営でメディカルチェックやカウンセリング等を行い、心身共に問題なしと判断されれば、本人が希望する鎮守府へ戦線復帰となる。

次に、情報精査。いつ頃からこの状態になっていたのかを三島(ぶちのめしたクソ提督)を尋問したり、執務室を漁って証拠集めをする。

次は、記者や取材班への対応(これが1番大変そう)会議を開いて何処まで流すかを協議するらしい。だが、連中はハイエナの様に機敏な為、追求を躱すの難しそうだ。

 

 

そして最後に、被害者全員を集めた説明会。

事の顛末を知らん奴も多くいる為、話を聞かせるらしい。

まぁ、説明会自体に私は参加するつもりなんてないが・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの腐った鎮守府にいた子達のメディカルチェックが終わったのは、すっかり日が暮れた後だったけど、その分、確かな証言を得る事ができた。

あの鎮守府に籍を置いていた艦一人一人に話を聞いたのだから時間がかかるのは当然。それに、移送車の手配や点呼などでさらに時間がかかってしまい、全員の移送が終わったのは昼過ぎになってしまった。任意聴取も彼女達に負担をかけないよう常に気を配らなけらばならず、今日の聴取だけでもどっと疲れてしまった。

もう何かする気力も無く、お風呂だけ入ってさっさと寝よう。なんて考えてた時だった。同じ監査部のレイと一緒に大本営内(ここ)を歩いてる彼女を見つけたのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間に及ぶ会議がようやく終了した。

そこで決まった事はそれなりに多い。

1つ目は大原鎮守府の一時的な運営停止、三島の事もそうだが破損箇所の修復や点検等が行われる事になった。

 

2つ目は今回の被害者達に長期間の休養が与えられた

あれだけ酷い環境にいたのだゆっくり休ませようという上からの気遣いだ。大原にいた艦達は大喜びだった。・・・・・まぁ、私からすれば毎日休養なのであまり有難みがないのが現状だが貰えるものは貰っておく。

 

3つ目、多分これが一番重要。艦娘達の新たな配属場所だ。

今回の件であいつらは深く傷ついた。勿論、精神的な部分もあるだろうから新たな配属場所を決めるのはかなり骨が折れることだろう。

 

そう考えていると隣から声を掛けられた。

彼女の名はレイ。私と同じ銀の髪をセミロングで後ろに纏めており、グレーの瞳を持っている。彼女もまた、私と同じ怪物兵器だ。

対メタルギア用メタルギアとして設計、開発されたのが彼女だ。

 

 

基本的に私達の間に会話は無い。関係が冷めてるとか、そういうのではない。お互いがまだ、この姿になるずっと前の事だ。私達は1度、戦っている。アラスカ、フォックス諸島沖に存在する。

ある廃棄された元軍事施設、操縦していた人物がどちらも元軍人だった為、必要最低限の会話しかしないのだ。ならば、なぜこうして歩いているのか?

 

こちらが声をかけたに過ぎない。偶然見かけ、こちらから「一緒に歩かないか?」と提案した所、向こうも暇だったのか、構わないと言ってくれた。そうして、お互いこうしてブラブラと歩いているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大原鎮守府への踏み込みから1日が経過した。

今日は非番な為、特に目的もなく歩き回っていた。すると、後ろから声を掛けられた。首だけ動かして確認すると、彼女がいた。別に驚く必要も無い、彼女も大原にいて、こちらに当事者として来ているだけの事だ。「どうした?」と聞いてみれば、「一緒に歩かないか? 」との事だった。

 

どうやら、お互い暇人らしかった。

別に断る理由もないので、「構わない」とだけ答えて、2人で歩き始める。

(随分と、懐かしいな)

私は、そんな事を思っていた。彼女と最後に行動したのは当時、激戦区だった大原へ彼女が出発する前日だ。

こうして2人で、夜中の浜辺を歩いた、月明かりが綺麗な夜だった。その時も会話はなく、別れ際に、「また会おう」そう言われただけだった。

 

 

そんな事を思い出し、1つ疑問が生まれた。

彼女は一体、どこへ向かうのだろうか?と

それを、聞かずにはいられなかった。私も含めたあの大戦時時の連中は、今は少なからず自分の居場所を持っている。

私は監査部で働いているが、この平和な生活は案外悪くないと思っている。

他の連中は世界中を旅している。1人は自由とは何かを知るため、もう1人は世界の広さを知るために、それぞれ活動している。

日本に留まっているのは私たちくらいな物だ。

 

 

彼女は少し考え込んでから、こう答えた。

「分からない。分からないが、一つだけハッキリしていることがある。私は、私だ。他の誰でもない。例えこの世界にとって異物であろうと、私は、ここにいることを示し続ける。」

 

そう言い切った彼女の顔は、相変わらずのポーカーフェイスだったが、ほんの少しだけ、迷いが晴れたような雰囲気を放っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の正午

会議室は大原鎮守府にいた艦娘達でごった返していました。

それもそのはずです、今日は事前に大本営の人達から説明があった通り、今回の騒動について教えてもらう日なのです。

あの地獄から解放されて1日、私・・・電はちょっと不安です。

皆も浮き足立っているのはいいのですが、いったい誰が提督を確保したのか気がかりでなりません。

そうしていると会議室のドアが開き、2人の人が入ってきました。

1人は金髪碧眼で、元気に「監査部所属。アイオワ級戦艦ミズーリです。」と挨拶をしてくれたのです。

 

 

 

もう1人は、ちょっと怖かったのです。

銀色の髪にグレーの瞳をしているのですが、近寄り難い独特の雰囲気を纏っいて、不気味なのです。彼女は私の視線に気がつくと、手短に「同じく、監査部所属、レイ。」とだけ言うと黙り込んでしまいました。

やっぱり、近づきたくないのです。

 

 

そうしてこの騒動についての解説がされ始めました。

私が死を覚悟して送った手紙が無事大本営へ届き、各鎮守府へスパイ艦を送り込んでの一斉調査が行われたこと。

そして、私達の鎮守府がブラックであることが判明し、部隊を編成、強制捜査に、乗り切ったこと。

途中で鎮守府に響き渡った轟音は、1人の艦娘が放ったものである事、その艦娘が提督を拘束し、戦闘を終了させた事などを一つ一つ丁寧に説明してくれました。

でも、私の中には腑に落ちないことが一つだけあります。どうして提督を拘束した人は来てくれないのでしょうか?

お礼の一つ位、言わせてほしいのです。私と同じ事を思ったのか、なぜその人が来ないのかという質問がチラホラと上がり始めました。

 

 

 

ミズーリさん達はその事も想定済みだったのか、「ご心配なく、ちゃんと来てもらってます。今からその人に、確保の流れを教えて貰いましょう。」と言ってドアの方へみんなの意識を集めましたが、1分経っても、ドアが開く様子はありません。

するとレイさんが動き、「探してくる。」とだけ伝えて外へ行ってしまいました。ミズーリさんは「皆さんも頭の整理が必要でしょうから、少し休憩にしましょう。」と微妙な空気を保ち続けるしかありませんでした。




如何でしたか?
待機していると思い込んで微妙な空気を作ってしまったミズーリ。
一体その頃主人公は何をしてたんでしょうね?
・・・いい加減主人公の名前誰かに呼ばせなきゃ(ボソッ)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

広がる波紋

タイトルでわかる通り、今回は主人公が責められる話です。
でもそこで諦める訳では無いのでご安心を。



時刻は正午

今頃会議室では説明会が開かれてるはずだ。

私は今、大本営の工廠に来ている。理由はもちろん、武器の整備を頼みに来たのだ。私の電磁投射砲(レールガン)は2発撃った衝撃で破損してしまったし、その後に放ったミサイルも、発射までに多少の誤差があった。そのため全武装の調整を頼むことにした。

基本的に破損した艤装は工廠に持ち込み、そこで働いてる妖精達に修理を頼むのが一般的だ。それに私の兵装は、機械弄りが好きな艦でも直せない。そもそも別の世界の兵器を、別の世界の連中が直せるわけないのだ。

直し方を知ってるのは妖精だけだ。直すだけならまだしも、調整までやってもらうのだ。後で何かプレゼントしなければ。

私は作業の邪魔にならないように隅の床に座って、艤装が修理されるところを見て、時間を潰すつもりでいる。私が説明会に参加しない理由は2つだ。

1つ目は、艦娘達の反応だ。今回の顛末を聞いて、激情して文句をぶつけてくる奴が、一人もいないとは言いきれない。それに、私が今回やった事は、大本営の仕事を横取りしたも同然なのだ。いくら御大層な理由があっても、旨味のあるとこだけ奪って、後のことを全て丸投げにしていい訳ない。そう、今回私がやった事は偽善だ。

 

彼女達との面倒事を避けるために、説明会には行かないと決めた。

 

そしてもう1つ。これは完全に自分の我儘だが、私は目立つのが好きではない。私が基本的に1人で居るのは、誰かに気を配る必要がないからだ。誰からのしがらみも、同調圧力もない。

元を正せば、私は人間のそういったものから作り出された存在だ。

大義名分を掲げても、最後には私欲に走る。

 

そうして利用されてきた。だから、今度は自分の足で好きなように、自分が進みたいところに行く。

 

自分の中でそう覚悟を決めていると、頭に軽く、攻撃された。

「・・・何をしてる」

どうやら、回収業者(人攫い)がきたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全く、コイツを探し出すのは骨が折れる。

そう思い、私は目の前で体育座りをして、自分の艤装が修理されている所を見てるアホの頭に、軽めのチョップを入れ、声をかける。

「・・・なんの用?」

開口一番がこれとは、自覚があるのかないのか。

「今日の正午から説明会をすると、知らせていたはずだが?」

そう問い詰めるが、なんてことはないように

「知ってる。それが何か?」

なんて言ってきた。

「説明の後に、なんで事件を解決に導いた奴が来ないのかと、室内でちょっとした騒ぎになってな。こうして迎えに(強制連行しに)来た訳だ。」

少しの間が開き、彼女からの返答は、「・・・顔を出すつもりは無い。」だった。彼女の言い分は理解出来る。

我々は人間の我欲から生み出された兵器だ。彼女の場合はそれが顕著であり、だからこそ単独行動が多い。だが、今の彼女の行動は、逃げに等しい。「関わったのなら責任を持て。彼女達を助けたのならせめて見守るべきだ。」そう言って聞かせるが、彼女は何処吹く風だった。・・・・・これはどうやら、実力行使しか無さそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レイからの説教じみた言葉を聞き流していたら、グイ、と右足を掴まれて持ち上げられた・・・・・おい待て、何をしてる何を。

怪訝な目でそう聞くが、答えは単純だった。

「言ってもダメなら、力ずくで連れていくまでだ。」

その言葉を聞いて、私はすぐさま両手にナイフを召喚して地面に突き刺し、全力の抵抗を開始したが、唯のナイフ2本が人外のパワーに耐え切れるはずも無く、根元からバギンと折れてしまい、結局私はされるがまま、会議室まで引っ張られて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・何処まで行ってるのよ、レイの奴」

私は独り言のように、そう言葉を吐き出した。

レイがいなくなってから15分、会議室は静まり帰っていた。

何時まで経っても誰も入って来ないのを不審に思い、来ると言ったのは嘘だったのかと皆凹んでいるのだ。説明が始まる三十分程前に彼女に会っているので、「絶対に来てください」と念を押した筈なのに、何故?

私自身、諦めて解散にしようかと迷っていたその時だった。会議室のドアが開いたのだ。でも、ドアの向こうから見える状況が分からず、固まってしまった。しかし、この状況を皆に見せる訳にも行かないのですぐ部屋から出てドアを閉め、改めてなんでこうなってるのかを判断することにした。彼女の右足が掴まれていることから考えるに、レイが彼女をここまで引っ張って来た事は明白だった。

 

レイは淡々と、「工廠にいた。動くつもりがないらしいからここまで引っ張って来た。」と説明してくれたが違う、そうじゃないと心の中で突っ込まずにはいられなかった。

工廠からここまではかなりの距離がある、その状態でここまで引っ張って来た!?馬鹿なの!?

「怪我とかさせてないでしょうね?」とレイへの怒り半分、彼女の心配半分で聞いてみるが。

「そんな事で傷付く程、我々艦娘は柔じゃない。それに、もし彼女がこんな程度で怪我したら、我々はとっくの昔に深海棲艦に敗北している。」なんて意味の分からない返答をされた。「どういう意味よ?それ」と聞くが、それ以上答えるつもりはないようだった。「それより良いのか?彼女達を放って置いて」と言われてようやく、何故外に出たのか思い出した。

私は彼女に、「大丈夫?」と声をかけて、手を差し伸べようとしたが、レイがそれを手で制した。まるで気遣いは必要ないと言うように。そのことに対し疑問を覚えるが、彼女はそのまま立ち上がり、軽くはたいて服に付いた汚れを落とすと、軽く溜息をついて「先にどうぞ。」とだけ口にした。確かにこのまま彼女が入っても、不審に思われるだけだろう。なら、先に私が入って彼女の事を伝えた方が動揺も少なくなる。そう思っての言動だと理解した私は、もう一度部屋に入り、彼女が来たことを伝える。

そうして彼女に目配せすると、彼女はそのまま部屋に入って来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1度部屋を出たミズーリさんが戻ってきて、彼女がやっと来た事を伝えてくれたのです。1度彼女を見ているらしい吹雪さんや、叢雲さんはなんだか青い顔をしていますが、一体何があったんでしょうか?そうして入って来た人は、レイさんと顔が似ていて、やはり近寄り難い雰囲気がするのです。違いを上げるなら、彼女はセミロングの髪を、纏めてない位でしょうか。2人は彼女の顔を見るなり、「ヒッ」と短く悲鳴をあげてました。・・・本当に何があったのでしょう。

そうして最後にレイさんが戻ってきて、話の続きが始まろうとしたその時でした。

1番後ろに座っていた天龍さんが、彼女に対して声を荒らげたのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が説明を始めようとした瞬間に、後ろの方から怒鳴り声が響いた。

声を荒らげた方を見てみると、1人の艦娘が立ち上がっていた。

黒い髪に金色の瞳という出で立ちをしてるのは私の知る限り一人しかいない。軽巡洋艦であり龍田との姉妹艦でもある艦娘、天龍。

どうやら彼女が、声を荒らげた張本人らしい。私は彼女を直視し、疑問を投げる。「先程、私に対して納得がいかないと言ったな?それはどういう事だ?」天龍はどうやら、頭に血が上っているらしかった。私の言い方の何が琴線に触れたか知らないが、彼女はさらに表情を険しくし、声を大にして叫び始めた。「どうゆう、だと?決まってんだろ!!あのクソ野郎を速攻でどーにか出来るだけの力があんのに、何で最初からそれをしなかった!!」

天龍の言葉は続く。「あの腐りきった鎮守府の内情は知ってたはずだろうが!!テメェ程の力があれば、あのいけ好かない野郎共をさっさと縛りあげて、もっと早く解決できたはずだ!!・・・・・なのに、何でそれをしなかったかって聞いてんだ!!」

天龍の顔は憤怒に染まり、まるで仇でも睨むかのような、鬼の形相と言っても差し支えないほどに歪んでいた。

 

私はそれを、黙って聞いていた。

 

それに続いて、同じ軽巡洋艦の木曾が吠える。「・・・そうだ。全部、天龍の言う通りじゃないか・・・お前が、真の黒幕じゃないのか!?あの状況を愉しんで、俺達が苦しんでるのを嗤って、弄ぶだけ弄んで、最後に自分を良く見せる為の踏み台にした!!お前のやってる事なんてただの偽善だ!!

あいつ等を鎮圧したのだって、大本営の奴らに美味しい所を取られたくなかっただけに違いない!!」

 

2人の言葉を皮切りに、他の艦娘達からも「外道め!!」「あなたがいなければ苦しまずに済んだのに!!」「人でなし!!」など非難の声が上がり始めた。

彼女達の怒りを否定するつもりは無い。私は大本営の仕事を奪った。これは純然たる事実だし、彼女達がそう捉えても仕方の無い事だ。今ここで否定をしても、聞き入れないだろう。一度物事を決めつけると、その一点しか見れなくなるのは、人間も艦娘も変わらないものだな。

・・・・だから、ここには来たくなかった。上層部への報告は全て済ませてあるし、それを元に説明した方が私を連れて来るよりよっぽど信頼がある。例え、私が来ないのが逃げだとしても、不要な衝突を起こさないということが何より大事な筈だ。

 

 

心配そうな顔をして、ミズーリがこちらに視線を送ってくるがどうでもいい。今は兎に角、どうにかしてこいつ等を黙らせる方が先だ。

もう一度、怒り狂った群衆に目を向けると、1人だけこちらを不安気な目で見てる艦がいた。・・・・間違いない、電だ。彼女だけがこの中で落ち着いている。あの地獄で何を経験したかは知らんが、何であれ客観的に物事を見れるというのは実は難しい事だ。ただ見るのではなく、しっかりと観るという事が出来る者は少ない。感情は自分のペースを乱す最大の敵だ。特に怒りは我を忘れ、視野が一番狭まる。常に冷静である事。軍人としてのの基本だ。だが今はそんな事を言ってる暇はない。私の言葉は届かずとも、彼女()の言葉は届くかもしれない。

言ってしまえばこれは、相当分の悪い賭けだ。パスはおろか、降りる事さえ許されない綱渡り。最悪の場合、彼女も一緒に責められる事になる。だが、もしこれが上手く行けば、誤解を解く鍵になる。

すまないが電、君をダシに使わせてもらう。恨み辛みは後でキッチリ聞いてやる。だから今は、どうか私の指示に従って欲しい。

 

 




如何でしたか?
一体主人公は電をどうするつもりなんでしょうか?
そして、電の選択や如何に!?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

絶望から希望へ


今回は電視点で話がそれなりに進みます。(流石に全部電は無理でした)
それっぽくはしてみますが何がおかしなところがあればじゃんじゃん感想等でコメントしてください。




天龍さんのことばを皮切りに、怒りの炎が一気に広がって、事件解決の真相を話す部屋は一気に彼女を責め立てる部屋へと変わってしまいました。なんで皆さんは彼女を責め立てるばかりでお礼の一つも言わないのでしょう。皆さんの怒りは分かります。私もその当事者なのですから。でも、そうやって助けてくれた相手を悪者にして、罵詈雑言を浴びせるのは違うはずなのです。そう周りに言いたいけれども私は弱気な性格の為、皆の前で堂々とそう言うことが出来ません。何より、周りの怒りを自分だけで静められる自信がありません。そうして何もできずにただみてるだけしか出来ず。彼女の顔を見ると、目が合いました。そのグレーの瞳は、真っ直ぐこちらを見ていました。まるで、私に何か、やって欲しいような、そんな目をしていたのです。でも一体、何をすればいいのでしょうか?

その答えは、すぐに見つかりました。

彼女はこちらを見て一度、頷くだけでしたが、それだけで私に何をさせたいのか、すぐにわかりました。彼女が求めているのは外側(アウトサイド)からの言葉でなく、内側(インサイド)からの言葉。つまり、私に彼女に対する意識を変えろということ。でも、果たして私にそんな大役務まるでしょうか?もしそんな大事な役目を果たせなかったら、と悪い方向へ考え始めた時、彼女の声が頭の中から聞こえたのです。

 

 

(あー、あー、こちら被害者達から謂れのない罵詈雑言を浴びてる者だが、聞こえるか電?)

(・・・・待って下さい!?どうして貴方の声が聞こえるんですか!?というより、何をしたんですか!?)

(いやなに、頼み事をしたいから通信したんだがな?)

(通信って他の艦に聞かれでもしたら(その心配はないぞ)・・・え?)

(私達が今行っている通信は、耳小骨を直接振動させるものだから周りには聞こえん。最も、私が勝手に相互通信をしてるだけなんだがな)

(貴方って本当は何でもありな艦だったりするんじゃないですか?)

(失礼だな。流石の私でも出来ないこともあるぞ。それより頼みたい事がある(私が、皆に話せばいいのですか?貴方を悪く言うのは間違ってると)どうやら、さっきのあれは理解した様だな)

(でも、どうやって皆さんを静かにするつもりですか?)

(荒業だが、考え無しという訳でもないさ。合図を出すから後の説得は任せる)

(ちょっとm)ブツッ

自分勝手過ぎるのです。まだ何を言えば皆さんを止められるか分からないのに、少しくらい考える時間が欲しいのです。どうやって説得するか考えてると、3回程乾いた音がしました。彼女の手には、憲兵さん達が持っている拳銃と呼ばれる物と同じのが握られていました。上に向けて撃っている事を考えるに、これがさっきの合図でしょうか?皆さんの怒りは未だ消えていませんが、動揺の方が大きかったらしく非難の声は無くなりました。

彼女はチラリと私を見てから、「電から話があるそうだ」とだけ言って、皆の視線を私に集めました。合図って、もっと何か工夫できないのですか?

これ以上考えても仕方ないので、私は思った事をそのまま口に出しました。「・・・・・違うと思うのです。助けてくれた相手を悪者にして、罵声を浴びせるのは。確かに、彼女は私達を弄んだかもしれません。でも、 何も確証が無いのにそう言うのはおかしいのです。もしかしたらあの放送で、漸く事態を把握したかもしれないのに。」

そう言って周りを見渡すと、もう怒りの炎は消えていました。

天龍さんや木曾さんはまだ納得していない様ですが、頭に上った血は抜けたらしく、少なくともこれ以上何かを言う事はなさそうです。

私が彼女へ顔を向けると、同じように視線が彼女へ戻り始めました。

「・・・・そういう事だ。憶測だけで物事を考えるのは関心しないな。」

そう言われた皆さんはバツの悪そうな顔をしていました。

「だが、その意見自体を否定するつもりは無い。実際、結果的に今回私のした事は大本営の仕事を横取りした形になる。だから、私が信用に値するかどうかは自分の目で判断しろ。それでもと言うのなら、拳でも何でも交えてやる。だから今は、どうかそれで納得して欲しい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから、私が信用に値するかどうかは自分の目で判断しろ。それでもと言うのなら、拳でも何でも交えてやる。だから今は、どうかそれで納得して欲しい。」私がそう締めくくると、罵声はもう何処からも聞こえなかった。

電の説得が効いたらしく、大多数の艦が納得してくれた。私は続けて「それは兎も角としてなんだが」と言いかけた時だった。大本営勤務の1人が部屋に駆け込んで来た。何事かと思えば、「君達に、いいニュースと、悪いニュースがある。」と息を切らしながら言ってきた。全員が不思議に思っていると彼は続けて「良いニュースは、君達のボスだった男だが、仮釈放なしの無期懲役が決まった。」と言った。話を聞くに、どうやら上は大本営としての三島の処遇と、奴の裁判とその判決を同時進行で進めていたらしく、(たった数時間。しかも同時並行でやるとは恐れ入る)裁判員は彼を全員一致で有罪判決とし、二度と外に出て来れないようにしたらしかった。これを聞いた皆は、はち切れんばかりの歓声を上げていた。当然だ、これで漸く開放されるのだ。喜ばない方がおかしい。

だが、悪いニュースも聞かねばならないので、残った弾丸を天井に撃ち放つ。それで再び静かになった所で話を再開してもらう。「悪いニュースだが、三島の奴、とんでもない事を口走りやがった。」この一言でさっきのお祭りムードは完全に消え、全員の顔が強張る。当然だ。あいつの置き土産何て録なものじゃないのは目に見えている。

報告に来た男は少しの間躊躇ったが、結局口にした。「あいつ、君達の身体にナノマシンを注入してやがった。」とそれを聞いた私は

「・・・やはりな」と言葉を漏らした。

 

 

 

「ナノマシン?何だそれは」と長門が発した質問に簡潔に答える。

「ナノレベルの大きさの機械装置の群れを、人間の血液中に注入し、それらを電気信号によって制御することで人の手では決して行えない体内環境の監視・制御をリアルタイムに行うことができる技術だ。」

「そんな技術聞いた事ないぞ」と私に詰め寄る長門を止めたのは、先程報告に来てくれた男だった。「ああ、この世界の技術の推移を集めても完成には程遠い試作品が限界の代物だ。だが、何故か奴はそれを所持していた。」私はレイと顔を見合わせる。元々ナノマシンは、我々がいた(こちら側の)世界で使われてた物だ。それがこの世界にあるとは・・・・

2人で思考の海に溺れかけた時に、鈴谷から疑問の声が上がった。

「所であんた、さっき鈴谷達に何か言おうとしてたよね?。それをまだ教えて貰ってないじゃん。」

「いや何、ひとつ聞きたいことがあったからな。あの鎮守府に着任、もしくは建造された時、注射か何か打たれなかったか?」私の質問に、全員が目を丸くしていた。中には「何で知って・・・」と言葉を漏らした奴もいた。

「打たれたよ。」そう答えたのは響だった。

「建造された後すぐに執務室へ呼ばれて、注射を打たれた。あいつ曰く、「この注射は何処の鎮守府に所属しているかを確認出来るようにする為の物だ。既に他の鎮守府でも使われていて、効果は立証されている。安全面でも規定をクリアしているから大丈夫。」なんて言われてね。それから暴行とか受けても、反抗出来なくなった。」他の艦も同様らしく、暗い顔をしていた。「でもなんで、注射を受けてない貴方がそんな事を?」

「執務室に置いてある大金庫、その中に注射した艦の名前と一回限りの緊急通信コードの書かれた紙が入っていた。私の中にもナノマシンが入っているからな。それで電の固有周波数に合わせて通信をして説得して貰った訳だが、それ以外の事は箝口令を敷かれていてな、残念ながら話す事は出来ない。」

全く、これでは信頼されたくないと言ってる様なものだな。電の説得が無意味になってしまう。そう心の中で呟き、自嘲的な笑みが零れそうになった時だ「・・・分かった。信じるよ」響がそう言ったのは。

「・・・いいのか?この短時間で、私は電の説得を無駄にしかけたんだぞ?」

「自分の目で判断しろ。そう言ったのは貴方だろ?何で電が皆を説得したか知れただけでも充分さ。それに、疑ってばかりじゃ何も始まらない。皆はどう思う?」

その言葉を聞いた皆はこの考え自体に異論は無いのか、何も異議を唱えなかった。天龍は「しょうがねぇなぁ」とか言ってるが、不満はないようだ。

「そのナノマシンですが、あの、取り出す方法はあるんですか?」

吹雪が(私を見て)逃げ腰になりながら聞いてきた。

「残念だが、それは出来ない。」

そこにレイが入り、説明を始めた。

「一度ナノマシンを体内に入れると、取り出すことは出来ない。君達に打ち込まれのとは別の、抑制用のナノマシンを注入するのが精々だ。」

 

 

会議室全体が重い雰囲気に包まれる。私は報告に来た男に「大本営の資料保管室にナノマシンは?」と聞くが、「あるにはありますが、如何せんどんな機能を有しているか分からないですし、使うとなるとうち(大本営)だけじゃ決められません。」という返答が返ってきた。

 

無理もない。これは極秘にされてる事だが、ナノマシンは全世界で二百本位しか確認されてないオーパーツだ。それを使って悪事を働いていたとなれば日本の信頼は一気に失われ、艦娘の運用にも絶対に支障が出てくる。

だが、それを回避し穏便に済ませる事は不可能に等しい。何せナノマシン自体の機能はまだ解明されてない部分の方が多く、どんな機能を持っているか分からないのだ。彼女達が反抗出来なくなったと言う証言に基づけば、恐らく入れられたのは上官たる提督の命令厳守や情報漏洩の防止といった特定の行動を阻害し、外部に漏らさないよう統制するのに特化したものだろう。もし仮に抑制用のナノマシンがあったとしても、そう易々と使う事は出来ない。ナノマシンを完全に外に出すには、体内に流れている血液を一滴残らず全て体外に出さなければならない。そんな事は不可能だ。手詰まりだ。ここにいる誰もがそう思っていた。

 

だが、希望は何時だってあるものだ。私とレイは顔を見合わせて頷き、ナノマシン通信を使って、ある人物に連絡をとった。事情を話し、通信を終了する。そしてその結果を報告する前にさっきの男に一つ質問する。「こいつらに撃ち込まれたナノマシン、予備か何かあるか?」

「ええ、1本だけ未使用のものが。しかしどうするつもりですか?」私は先程の通信の結果を提示した。

「上手く行けば抑制用の物が作れるかもしれん。」

私のその言葉に、皆が驚愕する。技術の推移を集めても作れないと言われている代物をどうやって作るのか。その答えはただ一つだ。

この世界で作れないのなら、我々の(こちらの)世界の技術で作ればいい。私達(メタルギア)の中には超弩級の亜種がいるのだから。

 





如何でしたか?
ナノマシンやこの下りを入れたいが為に自ら難産にしていくスタイル。
次は主人公の言ってた通り、新キャラをだします。
もう少しキャラが出て来たら纏めて紹介とかしたいですね。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

成功と失敗


戦闘だったりシリアスシーンばかりだとあれなんで日常シーンを入れてみました。
ナノマシンのくだりを終わらせてもうちょっとしたらキャラ紹介とかしたいですね。
そこら辺ホント無計画なんで許してください。




 

結局あの後話してもナノマシン抑制の糸口は掴めず、私の知り合いなら何とかしてくれるかもしれない事を皆に話し、解散となった。

 

通信で来てくれるとは言っていたものの、何せ距離が距離だ。どんなに早くても数日はかかる。その間に出来ることはいつも通りに過ごす事だけだ。私は仮の自分の部屋に戻ると、本を開いて眺めていた。

時刻は夜、普段ならもう寝てる時間なのだが私はまだ起きていた。理由は勿論、妖精達に渡すプレゼントだ。なかなか良さげなものが見つからず、暫く本とにらめっこしていると、とある菓子に目が止まる。これなら喜んでくれるだろうか。早朝に作れば目立たずに済むし、材料も厨房へ行けば揃ってるはずだ。私はページに付箋を張り付けて作り方を覚えると、そのまま眠りについた。

 

 

 

 

 

 

次の日の朝、私は早めに起きて、厨房へ入った。今日は艤装の修繕をしてくれた妖精達に、菓子をプレゼントしようと思っている。

あれだけ大きな物を直して貰ったのだ。ただ買ってきたものを渡すのでは余りにも味気無い。それに、手作りの方が喜ぶだろうからな。

作るものは昨日決め、材料も揃っている。手を洗って消毒し、いざつくろうとした時に気づいた。電がエプロンを着用して、やる気満々でこちらを見ていたのは。

 

 

 

 

 

「聞いてもいいか?電」

「はい。まずは何をすればいいのですか?」

「いや、そこではなくな、何故準備万端なのか聞きたい」

「えっと、実は昨日の深夜、お礼がしたくてあなたの部屋に入ったんですけど・・・」電の話によれば、昨日の夜に礼を言う為に部屋に入って来たのだが、その時私は寝ていたため起こすのも忍びないということでそのまま立ち去ろうとした。その時机に置いてあった菓子作りの本の付箋が気になって開き、私が作ろうとしてるものを知って手伝いに来た様だった。

1人で作れるから不要だと突っぱねる事はできるが、彼女にはあの状況を打破して貰った恩があるため無下にも出来なかった。何より、今までしたい事ができなかったことを踏まえると、拒否するという行動は余りにも可哀想だった。

 

 

考えるまでも無く、「分かった。手伝ってもらう。」と答れば、目をキラキラと輝かせていた。まずは手指の消毒、それから前準備だ。

そこからの作業は二人三脚だった。

 

 

 

電に1口サイズの型にバターを塗り、薄力粉をふるって貰う。私はその間にレモンの皮をすりおろし、オーブンを170度に予熱していた。その時に後ろの方から落下音がして振り向くとボウルが落ち、ひっくり返っていた。電が常温に戻した無塩バターとグラニュー糖をボウルに入れ、混ぜ合わせていたのだが、力みすぎたのかボウルを落としてしまった。混ぜる時にボウルを確りと押さえておくように注意したのだが、加減が難しかったか。

私が近付くと電は怒られると思ったのか、「あ、あの」としどろもどろになっていた。そんな彼女の頭に手を乗せて、優しく撫でる。

「失敗したのなら、またやり直せばいい。幸い、材料はまだあるからな。」そう、電だけじゃない。大原鎮守府にいた艦全員が、自分のやりたい事をやるというのは初めての事なのだ。失敗して当然だ。そこから上手くなればいい。最初から何でもできる者はいないのだから。

そう付け加えて、彼女の頭から手を離す。

作業を中断し、2人で落としたものを片付ける。今度は私がボウルを押さえ、電には混ぜる方に集中してもらう。そのまま溶き卵を3回加え、その都度よく混ぜ合わせる。混ぜ終わったら粉類を振るい入れ、ゴムベラで切るように混ぜ合わせ、レモン汁、レモンの皮を加えてさらに混ぜる。

型に生地を入れ、170℃のオーブンで15分加熱して竹串を刺し、生地がつかなくなるまで焼き、取り出して粗熱を取る。

ボウルにレモンアイシングの材料を入れ混ぜ合わせて、ケーキ上部を浸し、アイシングが固まったら完成だ。出来上がったケーキを見て嬉しそうにしている電を見ていてふと思った。果たして私は、彼女の様に笑った事があっただろうか?確かにあの人と過ごした時間は楽しい物だったが、私自身が彼女のように笑った事はない。だからだろうか、気づけばケーキを一つ、電に渡していた。彼女はくれると思ってなかったのか、「え、でもこれは・・・」と躊躇っていたが「自分で作ったものだ。味見くらいしなければ、善し悪しが分からんだろう?それに、今何時だと思ってる?こんな早朝だと朝食まで持たんからな。」そう言って電に無理矢理渡した。片付けは焼き上がるまでに済ませてあるので、残りのケーキを手早く袋詰めし、持っていく。そのまま厨房を出て、自室へ戻り、作ったものを机に置く。今持って行ってもまだ寝てるだろうしな。

 

 

 

 

読書をして時間を潰していると、いつの間にか朝日が窓を通して部屋に入り込んでいた。別にこのまま過ごしてもいいが、何も食べないというのはよろしくないし、私の数少ない趣味を減らすのもいただけない。腹が減ってはなんとやらだ。そんな事を考えて、一人で食堂へ向かったのだが、混雑していて座る場所がない。部屋に持ち帰る事を内心で確定し、そのまま注文に向かう。普段艦娘は燃料さえあれば稼働するのだが、やはり気持ちの問題なのか皆美味しいものを食べたがるのだ。特に赤城と加賀、あの二人は何故か知らんが本当によく食う。(消化スピードとか容量どうなってんだか)かくいう私もうまいものは好きだ。昔最後に残った栄養ブロックをレイと私を含めた4人で誰が食うか艤装を展開して本気で争いかけた事もある位だ。その後すぐに襲撃してきた深海棲艦の空爆で当時の仮拠点ごと跡形もなく消し飛んだんだがな。(下手人は全員でフルボッコにして沈めた)

そんなみみっちい事を思い出してる内に列は空き、私の番が来た。朝からガッツリ系や大盛り系は私の体調が後で絶対崩れる(一度それで痛い目を見ている)のでやりたくない。かと言って少なすぎると変な時間に空腹が襲ってくるため普段はヨーグルトで済ませているのだが、流石に食堂へ来てまで頼もうとは思ってない。あまり時間をかけると後ろがつかえてしまうので、手軽なサンドイッチを2つ、味はおまかせで頼んだ。もちろん持ち帰りということも伝えてだ。五分くらいで頼んだものが出来上がり、紙袋を受け取って部屋へと戻って食べる。うん、いつも通りに美味い。そうしてパッパと食べ終わり、1時間程胃を休めてから再び外へ出る。場所は工廠、プレゼントも忘れずに持って行く。

 

 

 

工廠に着き、妖精達に作ったレモンケーキを渡す。しかしすぐには食べず、どこかへ持って行き、すぐに戻ってきた。仕事が一段落してから食べるつもりなのだろう。そのまま自分の艤装が置かれている場所まで案内され、完璧に修理された艤装を装着する。そのままここで動作確認をしようとしてやめた。昔大原で同じ事をやって工廠を壊しかけた事がある。その際専用機材が幾つか混じっており、結果として修理費用がバカ高くついてしまった。その後二度と工廠でするなと周りからガッツリ怒られた。そのため私が動作確認をしたくても専用で部屋を作る訳にもいかず、微調整が出来ないのだ。まだレーザーやガトリング砲は何とかなっても、ミサイルと電磁投射砲(レールガン)は実際に撃たないと威力調整に持っていけないのだ。相手を探そうにも生憎、私に友人と呼べるものはいない。自分から沈みたいのならまだしも、こんなバ火力を喰らいたいモノ好きな奴はいないだろう。

 

 

艤装を消して妖精達にお礼を言うが、手作りの菓子がよっぽど嬉しいのか、礼はいらないとばかりに首を横に振ってくる。何であれ、喜んで貰えたのなら何よりだ。

 

 

 

 

 

 

工廠から出て、私が次に向かったのは弓道場だ。弓道場は基本的に、正規空母や軽空母等が練習に使う場所だが、私は精神統一がしたい時等に利用する。何かをやっていないと落ち着かないという訳では無いが、ここ最近ずっと動いてなかったため、カンを取り戻したいのだ。

 

靴を脱いで中に入り、弓と矢を借りて中央まで進む。弓に矢を番え、弦を限界まで引き絞る。目を瞑り、一度深呼吸して放つ。少し遅れて タァン と的に当たる音が響くが、やはり鈍っている。放った矢は真ん中ではなく、端の方に当たっていた。

 

そのまま練習を続け、カンを取り戻した頃には夕方になっていた。最後の矢を放ち、漸く真ん中に当たる。その事に対し、少し悲観に暮れていると後ろから気配がした。後ろを向くと、加賀がいた。「随分と熱中してたようですね」その言葉に対し特に返答もせずに問いを投げる。「何時からそこに?」

「お昼過ぎからです。声をかけも反応しなかったので、気づくまであなたの射型を見させて頂きました。」

「そうか。で、要件は何だ?」

「報告書は読みました。ですが、何故あなたがナノマシンの事を知っているのかが分かりません。」

その疑問に対して、私は

「ミズーリにでも聞け、あいつは私と同じだ。」とだけ答える。

「同じ?どういうことですか?」怪訝な目でそう聞いてくるが、私としては何故今まで気づかないのかと聞きたいものだ。「他の場所で彼女以外のミズーリを見たか?」

「・・・」

私の質問に対し、加賀は黙ったままで何も答えない。

「それが答えだ。余計な詮索は控えた方が身のためだ。」それだけ言って、私は道具を片付けて弓道場を去る。別に今のは脅しでもなんでもない。私達のことを知れば、最悪世界の全てが敵に回る可能性が高い。

ただ知るだけならまだしも、知って尽力しようとすれば結果は目に見えている。その先にあるのは明確な破滅だ。強すぎる欲は身を滅ぼすと言うが、私達の場合、存在そのものが自身の身だけでは無く、文字通り全て(人類)を滅ぼしかねない。だからあの後1つの部隊として行動してた私達は、バラバラに散った。全ては世界を壊さぬ(護る)為に。

 

 

 

 

 

 

部屋に戻って、ドアを閉める。

ため息をついて、引き出しの中を探して、目的の物を探して取り出す。

それは煙草だ。普段は吸わないが、こういう時には必要になる。

口に加え、火をつける。そして味わうように深く吸い、ゆっくりと煙を吐き出す。

全く、何をムキになっているんだ私は。もう少し言葉を選んで受け答えをしておけば、不信感を与えずに済んだというのに。

一服終わって、火を消して吸殻を灰皿に投げ、そのままベットに身を投げて、夕食もとらずに床に就くことにした。

 

こんな気分では、何を食っても美味いと感じられないだろうからな。

何より、距離を離す為とはいえ、脅しのような真似をした自分に嫌気がさす。その事実が、私を苛んでいく。今はとにかく、少しでもその事を忘れ、逃れたい。その一心で、私は意識を手放した。

 

 





遅くなってごめんなさい
書いたデータが全部パァになって書き直すのに時間がかかりました。
日常シーンは少し長めの話数にしようと思ってます。
料理のとこはレシピがあってもちょこちょこ編集しなければならないので疲れますね。
後単純にアイデアが湧かないってのもありますが。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

頼み事とその裏にあるもの

2週間ぶりの投稿になります
作者はスマホで書いてるんですがfgoとアークナイツ、それから新しく入れたプロセカのイベントがダイレクトアタックしてきて書く暇がありませんでした。
それよりもネタというか展開が思い付かずに滞っていたのが1番の理由ですが・・・・




夢を見た。

皆が思い浮かべるような楽しいものでも、希望に溢れたものでもない。これは、昔・・・・・まだ艦娘がおらず、私が最前線にいた・・・私の過去だ。

 

轟音と破壊音が響き渡り、辺り一面が火の海と化し、濃密で充満した死の匂い。そこに生きた人間の姿はなく、破壊し尽くされ、廃墟とすら言えない程の瓦礫の山。

そんな所に、私はいた。

 

向かってくる爆撃機をレーザーで薙ぎ払い、遠くにいる深海棲艦の本隊を捕捉し、電磁投射砲(レールガン)で敵の基地ごと焼き尽くす。それでも生き残っていれば基地へ侵攻し、ガトリング砲と格闘術で全て沈めていく。血と硝煙、灰と煙に塗れた戦場。それが、私がいた場所だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自然と目を覚ます。

「・・・最悪の夢見だ。」さっき見た夢に対し、1人でそう愚痴を零す。戦場にいた夢を見るなんて無いと思っていた。昨日の加賀との会話と言い、今見た昔の夢と言い、踏んだり蹴ったりだ。

 

ベッドから体を起こし、髪を梳かす。別にこだわってセットしてるとかではないので、寝癖が目立たない程度でいい。

 

服は昨日から着っぱなしのでいい。別に美意識が高い訳でもないから着替える必要も無い。

そうやって軽く朝の準備を整えてる時だった。いきなりドアが開け放たれたかと思えば、「おーい、起きてるかー!」と天龍の朝からやかましい声が聞こえる。別に声をかけるなとは言わないがせめてノックくらいしろ。周りの迷惑だ。

そうしてズカズカと部屋に入り込もうとした天龍だったが、生憎と今の私はあまり気分が良くない。感情のままにガトリング砲を一門取り出して両手で持ち、天龍に向けて発砲する。まさか攻撃を仕掛けるとは思ってなかったらしく天龍は、「え?、は?」と素っ頓狂な声を上げてるが知らん。問答無用だ。そのまま模擬弾を撃ち始める。「ちょっと待て!俺はただお前に」なんて言ってるが知ったことじゃない。タダでさえ気分が良くないのにそこに喧しい奴が来たらこうなるに決まってるだろ馬鹿め。

天龍も艤装を展開して仕方なく刀で弾き落とすが流石に耐え切れなくなったのか、はたまた当たりどころが悪かったのか気絶したようだ。発砲をやめてドアを思い切り閉め、鍵をかける。

 

その後すぐに周りからのざわめき等がきこえるが、聞こえないふりをする。自分でもやり過ぎだとは思うが、こちらにはこちらの事情がある。

 

このまま出てもどうせ怖がれるだけだ。今日はもう大人しく部屋にいよう。そう決めて、椅子に座ってパソコンを起動する。少し経って、パコンに光がつき、パスワードを打ち込んでからネットサーフィンを始める。サイトを覗けば、今日起こった事件だったり、オカルト記事だったりと色々ある。そのまま私は時間の概念も忘れ、ネットに入り浸り始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺があいつの部屋に行ってぶっ倒されて、次に起きたら医務室だった。

自分の体を確認してみるが、どうやら気絶しただけで外傷は何処にもないみたいだか、連射されたせいか、まだあちこち痛い。

「痛ってぇ〜。あのトリガーハッピーめ、バカスカ撃ちやがって。」そう悪態をついてると「あら、天龍ちゃん。もう起きたのね〜。」とおっとりした声が聞こえた。

「あれ、龍田、何でここに?」

 

「あなたを看病してたのよ〜。それより、あの子に謝った方がいいんじゃないかしら?」

龍田の物言いに対し、「俺はただ!暇してて弛んでそうなアイツに稽古を付けてやろうとしただけだ!」と言い訳地味た反論をしたが、

「それで返り討ちにあってたら世話ないと思うんだけど〜?」

という言われ用に対し、ウッと言葉を詰まらせるしかなくなった。しかし、次に発せられた龍田からの言葉に動揺を禁じ得なかった。

「それより知ってるかしら?あの子、あれからずっと部屋に籠り切りよ?」

「え?・・・それって、俺のせいなのか?」

「さぁね〜。でも、何か事情があるんじゃないかしら〜?まぁ、後で誰かに聞いてみればいいんじゃないかしら?何か分かるかもしれないわよ〜。じゃあね天龍ちゃん。私まだ仕事が残ってるから〜。今日一日はそこで大人しくしててね〜」と言うと、龍田は去っていった。

1人残された俺は、色々と考えてみる。確かに朝からやかましくされれば誰だって腹が立つかもしれない。だからといってあそこまでするか?

そもそも、機嫌が悪いのであれば一言そういえば済む話じゃないか。

 

そうやって考えても、結局答えは出なかった。

その後龍田以外にも他の奴が来たが、答えが出ない事で悶々もしていて、全て聞き流していた。

 

 

 

昼頃に、見知ったやつが来た

「怪我は無いようだな。」

「あんたは確か、監査部の・・・」名前が出てこず、言葉を詰まらせていると「・・・レイだ。」と自己紹介してくれた。姿形はアイツとどことなく似ている。俺と龍田のような姉妹艦だろうか?だったら何か知ってると思い、質問する。

「なぁ、あんたアイツについて何か知らないか?」

「それなりに知ってはいるが、何があった?」

そこで俺は、今日の朝起こった出来事を包み隠さず話した。レイは話を全て聞いた後、若干顔をしかてめていた。「そんなに不味いのか?」と聞けば「アイツは機嫌が悪い時にそういったことをされると感情のままに行動する癖がある。それでも死んでないってことはまだ自制するだけの冷静さが残ってたということか。多少は進歩したな。」と説明してくれた。最後の方は何を言ってるかわからなかったが。次いでに龍田から謝った方がいいんじゃないかと言われたことも話すが、「それは不要だ、その内向こうから謝罪が来るだろう」と投げやりな答えが帰ってきた。「いいのかよ、そんな投げやりで?仮にも姉妹だろ?」と突っ込むが、肩を竦めて「さて、どうだかな?」なんて適当な返事が返ってくるだけだった。

 

 

 

 

次の日、起きてすぐにに医務室を出てまたあいつの部屋に向かう。

今度は煩くないように、普通にドアをノックするが、五分経っても反応がない。やっぱ昨日の一件で嫌われたか?と考えてると、ドアが少しだけ開き、そこから彼女が顔を覗かせて「何の用だ?」と聞いてきた。「その、少し話したい事があるんだが」と答えると、少し間があいてから、「立ち話も何だ。入って話せ」と言ってくれた。言われた通り部屋に上がらせてもらう。

必要最低限の物しか置かれておらず、雑誌の類などは一切無い実にシンプルな部屋だった。シンプルすぎて、少し寂しさを覚えるくらいだった。

「生憎と、来客なんて想定してなくてな。適当なとこに掛けてくれ。」

そう言われても椅子は今彼女が使っているし、他に座れるようなところない。仕方なくベッドに腰掛ける。

 

 

「昨日はすまなかったな」

「え?」

「あの時は嫌な夢を見てな。それで少し、機嫌が悪かったんだ。」

「あ・・・その、俺も悪かった。そんなこと知らずに煩くして。」互いに言葉が続かず、無言のまま時間だけが過ぎていく。

10分は経っただろうか、唐突に向こうから会話を振ってきた。

「話はそれだけか?」

「ああいや、なんて言ったらいいのか・・・その、何だ。俺と試合しちゃくれねぇか?」

「試合?」

「ほら、あの時言ってただろ?拳でも何でも交えてやるって。納得してない訳じゃねぇが、単純にあんたがどれだけ強いのか見てみたいんだ。・・・ダメか?」俺の頼み事に対し、彼女は少し思案して

「ダメではないが、やるにしても場所がないぞ?」と切り返してきた。

・・・は?今こいつなんて言った?一瞬本気でそう思った。だってそうだろ?俺らは海上も移動出来る艦娘だぜ?わざわざ陸上に限定する必要なんてないんだぜ?

「海があるじゃねぇか。俺らの独壇場と言っても差し支えないぞ!それに、近くの海域なら深海棲艦達もそう簡単には手は出してこねぇ筈だ。な、どうだ?」と締め括って相手の反応を見る。

「・・・私は目立ちたくないんだが?」

お、意外とカワイイとこあるなコイツ

「何だそんな事かよ!誰も呼ばず、1体1ならやってくれるんだな?」

「まぁ、考えなくもないが・・・日時はこちらでも決めてもいいか?」

「おう。別に構わねぇぞ。でも、あんまり長くは待たせんなよ?」

「分かった。なるべく近いうちに伝える。」

「その言葉、忘れんなよ?」

 

 

そう言って、俺は自分の部屋に戻るなり、感情を抑えきれなくなった。嬉しくて仕方ない。これであいつの実力を知ることができる。

 

あいつに言ったことは嘘じゃない。実力を知りたいのは本当だが、それはあくまでも半分だ。もう半分は、あいつを倒して、俺の方が上だって証明したい。まだあのクソ野郎が提督だった時、俺らは海に出ても大破するまで進撃を続けていた。それがアイツらからの指令だった。ただの命令ならまだ断ることも出来たが、ナノマシンとか言うのを入れられたせいで碌に反抗出来なかった。そんな状況で俺は、俺らは生き残ってきた。経験も場数もある。それなのに、ぽっと出のようなあいつがヒーロー気取りなのが許せない。何もしてこなかったあいつがスポットライトを浴びるのが許せない。試合であいつをボコボコにして、どっちが強いか解らせてやる。いや、ただそれだけじゃ面白くない。その後も、ずっと日陰者の人生にしてやる。昔の俺たちのように、項垂れて歩くしかない状態にしてやる。ソの為にモまずハ・・・・

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・今、俺は何を考えてた?

あいつをボコボコにして日陰者の人生にする?

・・・・・違う。俺はそんな事したくて試合を頼んだんじゃない。

単に実力が知りたいだけ。・・・それだけだ。

 

 

 

 

不安に駆られて引き出しから出した手鏡で自分の顔を確認する。

けれどもそこには、いつもの様な普通に笑った顔じゃなく、猛禽類のように獰猛に笑った自分が写っていた。

 

 

 

 

 




いや〜何気なく始めた小説ですが、やっぱり難しいものがありますね
文才がないのでここをこう表現したい!
というのがあっても上手く書けないものが・・・
書き溜めとかも考えたんですがどんどん投稿ペースが落ちてるのにこれ以上落とすのは・・・という葛藤があってなかなか行動に移せてないのが現状です

次で新キャラ一体出します。
待ってくれてる皆さん本当に申し訳ない。( > < )


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

帰還と再開

最近ちょっとだけネタというか(日常描写にこんなの入れたいなぁ)
とか浮かんでくるんですがいざ真面目にストーリーの展開を考えると全く浮かんで来ないんですよね。
今回漸く主人公の名前を出します。多分メタルギア知ってる人ならもうわかってると思いますが・・・


大本営に来てから今日で約1ヶ月。そろそろ元居た鎮守府に戻るか、別の鎮守府に異動するか判断する事になる。まぁ、大多数の艦が異動を選ぶだろう。

あんな所に戻っても、嫌な思い出しかないだろう。

私か?私は勿論大原に残るつもりだ。別の鎮守府へ行っても居場所などないからな。

 

だが、レイとミズーリがこちらに来ると言うのは驚いた。

話を聞くに、2人は元々時期を見て監査部を辞める腹積もりらしかった。

「お前は昔から1人にすると相当な無茶をしてるからな。ストッパーが必要だ。・・・それにあの時の事、まだ納得してる訳じゃ無いからな」

とジト目で言われた。ミズーリは全くその通りと言わんばかりに頷いていた・・・・解せぬ。

 

その後、被害者全員にアンケート調査が成され、殆どが異動を選んだのは言うまでもない。

だが電や響の少数は大原に残る選択をした。龍田は天龍にくっついてくるそうだ。「天龍ちゃんと一緒にいた方が楽しいから」とは本人の弁だ。駆逐艦の2人は助けられた借りを返すまでは私と一緒の場所がいいと言っていた。そうはっきり言われるとむず痒いものがある。レイ達の他にも艦種を問わずに何人か新たに派遣されるという話だ。

 

 

しかし何より大きいのは間宮が此処に着任するという事だ。

彼女は戦艦では無いので戦闘こそ出来ないが彼女の艦種は給糧艦。他の艦に弾薬や燃料を補給するのがこそ彼女の役割だ。これが長期戦ともなると兵站面で非常に重要になってくる。

勿論我々艦娘も人間とほぼ似たようなものだ。味気ない燃料よりも美味しい食事も頂きたい。それに彼女は普段から食堂を切り盛りしているため下手な奴に作らせるよりよっぽど良い。

まぁ一言で纏めれば、彼女の作る飯は美味いし、戦闘前の意欲向上にも繋がる無くてはならない存在だということだ。

 

 

 

必要な手続きを済ませて荷造りし、今日漸く此処に戻ってきた。

私が壊した自室と執務室のドアやレールガンとミサイルを撃ち込んだ場所も綺麗に修繕されていた。その他にも細かい部分の改装がされていた。私の部屋のドアは蹴り飛ばしてしまったので予想通り交換されていた。しかしここで思いもしなかったアクシデントが起こった。肝心の部屋に入るための鍵を持ってないのだ。他の艦にも聞いたがそれらしい物は預かったりしていないそうだった。隣の部屋に住むことになった龍田に事情を説明し、荷物を置かせてもらう。本当は他人の部屋に私物を置きたくないのだがこの際仕方ない。

 

さらにアクシデントは止まらない。

新米提督が来るまでに10日間も時間がある。何故こんなに間があるかというと、こちらの再運営が決まり、誰を派遣するか決めるための審査がいつもより厳しくなった。それを受け多少の誤差があるのだ。その間は誰かが提督代理として執務をこなさなければならない。

当然大原に居た艦達は書類仕事など1回もしたことが無いペーペー達だ。ま、どれもこれもクソ野郎のせいなんだがな。

派遣されて来た連中も、書類関係とは無縁状態だったらしい。ここまで来ると最早選択肢は私がこなすというものしか無くなってくる。まさかこんな所で役に立つとは思わなかった。

昔取った杵柄という程でもないが元秘書艦を舐めてもらっては困る。

 

 

さぁ、どんどんもってこい!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっほー。響だよ。今回は私が進行役をするよ

え?いつも電がやってるじゃないかって?今電は別の事をやってるからね。代わりに私がするというわけさ。

さて、一言で纏めると、執務室が地獄絵図になってるよ。

ここに居た仲間は勿論、派遣された人達も書類仕事をやったことがないみたいでね、何処から手をつければいいのかさえ分からない状態だ。本当ならもう新しい提督が来て執務をこなすはずなんだけど、どいうわけか到着が遅れているみたいでね。書類は溜まる一方でどうにも出来ない。かく言う私も何をどうすればいいのかなんて分からないから、新しく来た書類を、提督の机に置くだけさ。みんなあーでもないこーでもないってやり方を模索してるけど、いっその事諦めて、全部丸投げしちゃえばいいんじゃないかな?

なんて考えてると、執務室の扉が開いた。

みんなやっと提督が来たのかと思って注目するけど残念、来たのは彼女だ。

そう、ここの不祥事を終わらせた人でレイって人と瓜二つな彼女だ。

でもみんなすぐに目先の事に戻る。当然だ。この状況で暇人に構ってられないのは火を見るより明らかだ。

彼女もそんな事は気にせずに、みんなにある冊子を配っていた。

その冊子には「ゼロから始める書類仕事~これであなたも大躍進~」と書かれていた。

一通り配り終わると、今度は執務用の椅子に座った。まさかと思って「できるの?」と聞くも彼女は何も答えなかった。

代わりに全員に「書類を1度全部持って来い」と指示を出した。

よく見るとその手にはペンを握っていた。みんな怪訝な目をしながら全部机に置いた。私も気になって少し動向を眺めていると徐に書類を捌き始めた。でもまだペンは使ってない。

 

そのまま1時間程経った。机の上には綺麗に仕分けられた書類の山が3つ程鎮座していた。

 

彼女は真ん中の紙束を指さして、

「全員で手分けしてこの真ん中のやつを捌け。大体の事は冊子にかいてあるからそれを読め。私から見て1番左のものは提督の署名が必要だから何もしなくていい。残りは私が片付ける。以上だ。各自作業開始」

 

簡潔にそれだけ伝えると、彼女は残りの書類を片付け始めた。

みんな呆然としていた。人は見かけによらないって言うけど、彼女が書類仕事をこなせるなんて想像もつかなかった。

私は渡された冊子を読みながら仕事を始めた。みんな最初は四苦八苦してたのに途中からスラスラとできるようになった。私も渡された書類に目を通して捌いていく。本を読んでも分からないとこは彼女に口頭で質問し、彼女もまた、口頭で返答していく。会話といえばそれだけ。

そうして仕事を続けていると、壁にかかっている時計からチャイムがなった。彼女は立ち上がると「今日の仕事は終わりだ。各員夕食を取り、しっかり休め。終わった書類は、隣の秘書艦の机にでも置いといてくれ。」と言った。

 

その一言で、今日は解散となった。

正直、座りっぱなしがここまできついとは思わなかった。

みんな一様に「疲れた」という顔をしていた。時刻は7時。確かに夕食

には丁度いい時間だ。でもみんな凝りを解したいと言って先にお風呂へ行ったけど、私は皆がお風呂に入ってる内に夕食を食べた。あとから入れば人も余り混み合わないと踏んだからね。食べ終わった後に間宮さんに頼んである物を作ってもらった。

お風呂に向かうと狙い通り、人はあまりいなかった。みんなで入るのもいいけど、たまにはゆっくり浸かりたい。

 

お風呂も済ませてあとは寝るだけになって、自分の部屋に向かっていた時だった。ずっといなかった彼女が気になって今来た道を引き返して執務室に向かう。その前に食堂に寄って、作って貰ったものを持っていく。

執務室をそっと除くと、彼女はまだ作業してた。しかも1人で。

もう深夜と言っても差し支えない時間。私は扉を開ける。

 

「やっぱり、まだやってたんだね?」

 

「・・・こんな時間まで起きてるのは感心しないな、響」

 

「君だって1人で残業してるじゃないか。人のことは言えたものじゃないだろう?」

 

「・・・それで?何の用だ?」

 

「大した事じゃないけど。はいこれ。」

そう言って私が渡したのはおにぎりだ。夕食を食べた後、間宮さんに今日のことを話し、どうせ1人でやり続けてるだろうからと作って貰ったものだ。

 

「わざわざこの為に?」

その問いに対して私は笑って無言で頷く。彼女は

「ご親切に」

としか言わなかったけど、私は気にすることも無く、

「じゃ、おやすみ。余りやりすぎないでね」

とだけ残して部屋に戻った。

さて、明日も仕事があるし、ぐっすり寝るかな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まさか夜食を手渡されるとは思わなかった。

電といい響といい。どうして私の周りにはこうも世話を焼きたがる人物が多いのか。まぁ、色々言っても仕方なしか。少し休憩するか・・・・存外に美味いな。味付けも薄めでいい感じだ。・・・・さて、また始めるとしよう。少しでも片付けておかないと、新米が過労で死にかねんからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで8日間。ほぼ不眠不休に等しい状態で書類を捌ききった私は9日目にして遂に倒れた。原因は当然過労だ。というよりそれ以外他に心当たりがない。

艦娘に過労の概念があること自体知らなかったことだが、何とか九割方終わらせてあるため、残りは新しく着任する提督に任せるとしよう。

 

 

根を詰めすぎたのか、その日一日は何かをしようとは思わなかった。

途中で色々な艦が心配して見舞いに来てくれたが、覚えてない。

後で話を聞いた限りでは、何を言われても空返事だったらしい。

 

 

 

翌日

すっかり元通りになった私は電と待望の新人提督出迎えの為に正門まで歩いていた。

「それにしても、新しい提督は誰になるのでしょうか?」

 

「さぁな。だが来るのは研修過程を終えたばかりの女性の新米提督らしい。恐らく前のような事があっては困るという上の判断だろう。」

 

「女性の方でも提督になれるんですか?」

 

「数は少ないが、現にいくつかの鎮守府の提督は女性という話もあるくらいだからな。」

 

電の質問にそう答えていると、正門に1台の車が止まる。いかにもな黒塗りの高級車だ。

中から白い軍服を着た女性が現れる。恐らく彼女が、派遣されて来た新米提督なのだろう。

 

彼女に近づいて、質問をする。

「あんたが、新しく着任する提督か?」

 

「え?あぁはい。そうです。新しくここを任されました。」

と若干慌てて返事をしてきた。

 

一方電は

「大原鎮守府所属の電です。」

とテンパることなく自己紹介をしていた。

「お出迎えありがとうございます。」

彼女はビシッと敬礼をして答えた。が、恐らく慣れてないのだろう。緊張からか、少しぎこちなかった。

「そう固くなる必要は無い。ところで、着任するのは二人と聞いていたんだが?」

 

「えぇ。私の父が元提督で、私の補佐として入る形になります。・・・何か不都合が?」

 

「いや何、少し顔を拝見したくてな。」

 

可能か?と聞いてみれば、彼女は1度車までとって返し、2言3言会話をして戻ってきた。

そして車から出てきた彼女の父親らしき男の顔を見て、私は頭が真っ白になった。

 

何故貴方が此処にとか、今まで何をしていたのかという言葉が浮かぶが、そんな考えはすぐに霧散した。

 

私の体は無意識に動いていた。隣にいる電が何か言っている様だが聞こえない。そのまま私の体は意図せずに男の元まで歩いていった。あの時とは違い、身なりのいいスーツを着こなし、幾分かやせ細って杖をついているが、その顔を、20年近く一緒に居た私が忘れるわけは無かった。

 

私と彼の間に少し、無言の時が流れる。

 

あの時と同じように、敬礼の姿勢をとる。そして、

「本当に・・・随分と待たせてくれる人だな。・・・・・・秋雨提督。」

 

その初老の男性・・・・秋雨 実は同じように敬礼を返すと一言

「また逢えたな・・・・レックス」

と一言だけしか言わなかったが、彼が発した声には限りない優しさが詰まっていた。

 

 

 

 




やっと名前を呼ばれる主人公(激遅)
でもメタルギアを知っている人ならレールガンを出した時点で察しが着いていたはず。

前提督をどうしても登場させたくてこんな形にしました。
伏線を張ったわけではないですが展開を作るのになんかいい感じに使えないかなと思って拾ってみました。
これを書き上げてるうちにハロウィンが過ぎてしまった・・・


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

始動

中々自分が納得のいくように書けず遅くなってしまいました。
失踪したわけでないのでご安心を。


敬礼を解き、改めて全体を見回す。

最後に見た時よりも背は縮み、若干背中も曲がっている

 

「少し窶れたか?余りストレスを溜め込まない方がいいぞ提督。」

 

「その呼び方は止してくれ。私は、もう提督では無いのだから」

彼は困ったように笑ってそう答えた。

 

「それにしても、貴方が来るとは思っても見なかった。解任後は何を?」

 

「あぁ、解任後はそのまま提督を引退した。何か別の仕事をも思ったのだがな?それでは勿体ないといつの間にか憲兵の指導役として担がれていたんだ。そこからはずっと後進の育成に当たっていた訳だが、今回の一件を聞きつけてな?無理を承知で上に掛け合ってここに戻ってきたと言うわけだ。私自身はあくまでもここに配属される憲兵達の指南という扱いだが、それまでは提督補佐として仕事をする事になっている。君こそ元気そうで何よりだ。」

 

「・・・約束があったからな。ここを離れる訳にはいかなかったし、何より私の居場所はここだけだ。」

 

「そうか・・・確かにそんな約束もしたな。しかし・・・」

一旦言葉を区切って私をじっと眺めてくる提督。その事に対し私は首を傾げると彼はいい笑顔で続きを話した。

 

「律儀に守ってくれるとは思わなかったよ。どちらかと言えば君は適当な理由をつけて破るかとばかりに思っていたがね」

 

最初から挑発してくるとは中々度胸がある。それに今の彼の表情も相まって、こちらもカチンと来てしまった為に、売り言葉に買い言葉の要領で返してしまった。

 

「久方ぶりの再開にしては随分な物言いだなぁ提督?そんなに穴を開けて欲しかったのなら済まなかった。すぐに特大の物を作ってやろう」

 

私の発言を聞いて流石に不味いと思ったのか。冷や汗を出しながら謝罪してくる元提督。昔はこんな事言うような人ではなかったのだが、一体いつからこんな挑発をするようになったのやら・・・

 

物思いに耽っていると「あの」と声がした。

振り返ると、2代目と電が声の主のようだった。

 

「もしかして知り合いなの?(ですか?)」

 

その質問に対し私は

 

「知り合いと言うより、互いが恩人と言ったところか?」

 

と先代に確認するように尋ねてみれば

 

「そうだな。随分と世話になったし、世話が焼けたな」

なんて言葉が返ってきた。

 

「さて、立ち話も何だ、いい加減入るとしよう」

その言葉に無言で頷き、後を着いてくる先代。ああ、そう言えばまだ1番言いたいことを言えてなかったな。

 

ふと立ち止まり、振り向きざまに彼に告げる

 

「お帰り、先代」

 

「あぁ、ただいま。」

 

 

その後は談笑をしながら執務室まで歩いていた。

どうやら新人は実の娘らしく、小さい頃から父である先代の話を聞いて育ってきた。その為夢は当然提督になることで、先代のような指揮官になるのが今の目標らしい。

 

そして彼女は執務室に入ってからの第一声が

 

 

「なに・・・・この惨状?」

 

である。

無理もない。全員が目の下の隈ができている状態で作業しているのだ。(しかも何人かは死んだ魚のように目が濁っている)

 

「見ての通りデスマーチを行軍中だが?」

 

「それは見れば分かるが、この量は多すぎては無いのかね?」

 

「これでも私が不眠不休で8日間捌いたんだがな?」

 

「それでこの量!?」

 

「言ってやるな。因みにだが、提督が着任したことでこれを1人でほぼ処理するのは確定してるからな」

 

「え?私一人で?全部やるの!?」

 

「安心しろ。一月程度は私が秘書を務める。流石に助け舟なしはキツいだろうからな。先代が若い頃はこんなの日常茶飯事だったぞ?」

 

「あれ?もしかして鎮守府って物凄いブラック?」

 

「昔は上も下もバタバタ死んで行ったからな。これぐらい出来なければ、務まらなかったのだよ。」

 

「当然先代にも分担してやってもらうぞ」

 

「恩人をこき使う気かね君は」

 

「働かざる者食うべからず。それに、補佐としている以上、仕事はしてもらうぞ。何、軽食程度なら私が作ってやる。」

 

 

私がそう言った瞬間、執務室のドアが乱暴に開かれ、「「レックスが作る飯だと!?」」と動揺しながら二人の人物が顔を出した。・・・もう来ていたのか、思ったより早いな。それからドアくらい静かに開けろ

 

 

しかし、私が言葉を発するよりも早く、ダァン!!という勢いよく何かを叩く音で全員の意識がそっちに動く。

 

そうした目線の先には、我慢の限界と言わんばかりの顔をした大淀がいた。そして彼女は1度大きく息を吸うと、一気に溜め込んでたものを吐き出した。

 

「いい加減にしてください!今は仕事中であって休憩時間じゃないんですよ!三徹したってまだ終わらないのにそちらは呑気に談笑なんかして・・・・・いいご身分してますねホントに!!そんなに暇なら少しは手伝って下さい!あなた達2人もそうですよ!普通に開けるならまだしも乱雑に開けて・・・ドアが壊れるじゃないですか!それに少しは周りの迷惑も考えたらどうですか!仕事中だって見て分かりますよね?それともあなた達の目は節穴ですか!?人が疲労困憊の時に限ってなんでそんな事するんですか!?来るなら来るで事前に誰かしらに伝えれば良いものをクドクドクドクドクドクド・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

閑話休題(暫くお待ちください)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後も大淀の機関銃の如き説教は止まらず、最終的に今日はもう書類整理をしないという事で妥協された

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり今は全員が私の部屋にいる。

行方不明だった部屋の鍵は何故か先代が持っていたのでそれを受け取って部屋を開け、龍田の部屋に置いていた荷物を速攻で部屋に入れた。

 

「久しぶりだな、ヘイヴン、アーセナル」

 

そう、私が連絡を取ったのは同じ世界から来た仲間であるアーセナルだ。まぁ正確には、頼るのはアーセナルに搭載されているあのAI(・・・・)なんだがな。しかし・・・・・

ちらり、と私は彼女を見る。

確かに私はアーセナルには連絡したが、ヘイヴンには何も伝えてなかった筈だ。

 

「ヘイヴンとは途中で一緒になった。大まかなことを話したら、協力してくれることになった。」

 

気になってたのがバレてたのか、アーセナルが説明してくれた。

 

 

「早速だが、本題に入りたいと思う。」

 

「状況は通信で聞いた。それで?どうやって作るつもりだ?」

 

「G・Wにサポートを頼もうと思っているが、構わないか?」

 

「確かにアレなら適役だろう。だが、肝心の技術者が居ないでは話にもならんぞ」

 

「技術者なら既にいるだろう?」

 

「?・・・おい待て、まさかとは思うが」

 

「ヘイヴンまで来たのは予想してなかったが、まぁこの際だ。人数は多い方がいいからな」

 

察しがついたらしい

 

「成程、私とアーセナル、そしてREX、お前も含めた3人で作ってしまおうという腹積もりか」

 

全員から(又こいつはデタラメな事を)みたいな目で見られるが寧ろこれしか解決方がないと思うのは私だけか?というより他の案があるなら最初から提案している

 

「随分と無茶な事を考えたものだ。忘れたわけではあるまい?この世界の技術では試作品レベルにさえ届いてない」

 

「だが既に下地自体は出来かけているのだからどだい不可能と決めつけることもできまい。データが既にあるのだからな。」

 

「・・・本当にできるのか?」

 

「できるまでやる、唯それだけだ。」

 

そう発言した瞬間に静まり返る部屋

最初に口を開いたのは、ヘイヴンだった

 

「相変わらずの考え方だな。まぁ、ちょっとした羽休めには丁度いいか。いいだろう、手伝ってやる。」

 

「話を聞いた手前、放り投げるようなことはしないさ。何より中々に面白そうだ。」

 

「・・・協力はするがどうなっても知らんぞ?」

 

3人からの返事を聞けた事で、工廠の使われていない一部を間借りし、そこに必要な機材を置いて研究をするという大まかな流れを説明する。

本来ならちゃんとした研究機関の元でやるべき事案なんだろうが、何しろ作ろうとしてるのは恐らく数十年かかっても作れないであろうオーパーツだ。悪用されればとんでもない結果になる事は目に見えている。必ずしもそれが作った本人の願った通りに使われるとは限らない。一歩間違えたら大惨事なんてのはよくある話だ。

 

 

異論がないことを確認して、各々が解散し、自分の部屋へ戻っていく。

かなり根気のいる作業になるが、まぁ大丈夫だろう。アイツらがそう簡単に根をあげるほど柔じゃないことはとうに知っている。

 




オマケ

リア友との会話

「なぁ」

「ん?」自分執筆しながら

「この4人アークナイツにぶっ込んだらどうなるん?」

「ドレビンっていう銃火器店を作って稼いでる」

「書けよ」

「え゛」

「なんで書かないんだよ」


「アクナイ要素全然ないし、ロドスもレユニオンも出んし・・・これ以上作品増やしたらただでさえカタツムリ投稿がさらに遅くなる」

「逆に考えるんだ、投稿頻度を上げるための練習になる、と」

「その手には乗らんからな?」

「( `_ゝ´)チッ」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

無茶振り後の休息

もうすぐ描き始めて一周年、早いもんですね
(投稿頻度からは目逸らし)
ホント遅くなって申し訳ないです
今回は先代メインで進みます


side REX

 

紆余曲折あって数ヶ月、どうにか抑制剤を作り上げる事に成功した。その間の制作過程はどうしたかって?・・・何も聞くな、言い出しっぺが言うのもなんだが、あんな地獄の作業二度とゴメンだ。

チラリ、と他のメンバーを見てみるがハードルがあまりにも高かった為に感情が消えて負のオーラが可視化できそうなくらいである。比喩とかじゃなくマジな方でだ。かくいう私も流石にしんどい。精神的にかなり持ってかれた。この状態では大変宜しくないためすぐさま睡眠を実行する。自分の部屋に戻ってからとかその前にシャワーを浴びるとか知ったことじゃない。例えそこに硬い地面しか無くとも身体が悲鳴をあげているのなら寝る。寝れないでは無い、無理にでも寝ておくのだ。そうしなければ持ちそうにない。他3人も同じ結論に至ったらしく、既に地面にその五体を投げ出していた。私もこれ以上は限界なので寝る。誰がなんと言おうともだ。後はこれを被害を(こうむ)った連中に打ち込めば正真正銘この事件は終息する。注射は日程を調整した上で行う予定だ。

やる事はやったし、取り敢えず今はとにかく休息が必要だ。

そう結論付け、私は目を閉じ意識を手放した。

 

sideout

 

 

 

 

 

 

 

side秋雨補佐

 

 

やれやれ、全く無茶をする。

疲労から床で爆睡している4人に対し私は心の中でそう零す。

作業デスクの上にはペン型の注射器と思しき物が数十本、ケースの中に収まった状態で置かれている。

理論のりの字しかないと言っても過言ではないオーバーテクノロジーであるはずのナノマシンをたったの数ヶ月、それもAIのサポートしかない状態で作り上げてしまったのだから、こちらも頭を抱えたくなるというものだ。最先端の施設で必死に研究している技術者達が聞いたら脱帽する事間違いなしだ。尤も、これを流出させるような輩が居ればこちらで即取り押さえるが。

・・・本当にレックスには頭が上がらない。彼女は基本誰に対しても一歩引いて接するが、行動を起こす時はいつも誰かのために動いていた。

そして今回も、まるで全て自分の行動が招いた事だとでも言わんばかりに後始末のために奔走している。

・・・だが、それでいいのだろうか?

何時までも彼女に頼り続ける事が、本当に正解なのだろうか?

きっとこれを言葉にしたとて彼女のことだ、何食わぬ涼しげな顔でそんなもの気にしなくていいと言い切ってしまうだろう。

彼女は強い。それも自分がどんなに追い込まれようとも何でもないと嘘を突き通し、それを周りが信じてしまう位には。だからこそ、その強さに潰されないか心配で仕方ない。

たまには誰かの為ではなく、自分の為に動いてもバチは当たらんというのに。

そんな事を考えながら、そっと彼女の頬を指で軽く撫でる。

少し(くすぐ)ったそうな声を漏らすとゆっくりと目を覚ました。

 

 

「・・おはよう、先代」

 

「おはよう。すまない、起こしてしまったな」

 

「いや、こちらこそすまない。物が出来上がったにもかかわらず報告の義務を怠ってしまった。」

 

「君は少々働きすぎだ。そこまで急ぐ必要は無いだろうに」

 

「なに、少し前までグータラしてたのだ。コレぐらいしなければ釣り合わんだろう。」

 

「それはいいが、せめて毛布にくるまって寝たらどうかね?」

 

「生憎と、それをする前に睡魔に負けたのでな。人間誰しも欲には勝てん」

 

「やれやれ、そこは素直に聞き入れて貰いたい物だな」

 

 

「私がこういう性格だと言うのは理解しているだろう。尤も、任務であれば反論などせずに従うが」

 

これか、軽くため息がでる。

任務や補佐としての仕事中であればこちらの指示には素直に従うが、それ以外のだとあまりこちらの意見を聞き入れようとしない。

しかも、前よりそれが態度に出ているような気がしてならない。

念の為に忠告すれば、やはりというか彼女自身は気がついてなかったらしく素直に感謝の言葉を述べていた。

 

話を中断し、デスクに向かうと箱の中からペン型の注射器を取り出し、彼女に聞いた。

 

「これは本当に使えるのかね?」

 

「生憎と、臨床試験はしていなくてな。ぶっつけ本番で行かせてもらう」

 

「いきなりか。また反感を買いかねんぞ?」

 

「ならば受けなければいい。というのは流石に冗談だが、一々そんな事をしてる暇がなかった。まずは此処に残っている者達からだ。何、理論上は問題ないとも」

 

「それが一番信用ならんのだが・・・まぁこの際だ、何かこちらで手伝えることはあるかね?」

 

「ならば根回しと情報統制を頼もう。全て内密に行う必要があるからな」

 

「分かった。引き受けよう」

 

「他の連中はまだ寝かせておく。文句一つ言わずにあの激務を手伝ってくれたからな。今起こして手伝わせるのは流石に酷という物だ。それにー「いいえレックス、今は貴方もも休むべきよ」

 

そう言って話に割って入ってきたのは、此処の提督である私の娘だった

 

 

 

 




短いですけどキリがいいのでここまでです

文才と描写能力、そして創造力が欲しい(強欲な壺)


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 5~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。