アークナイツ:episode【Black Light】 (まあぶる)
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ending

これは有り得た物語。


 

アレは一体何なのだろうか

 

ある男は、悪魔と呟いた

 

ある子供は、怪物だと泣き叫んだ

 

ある女は、テロリストだと恐れた

 

ある老人は、神と呼び懺悔をした

 

...どれも正解なのかもしれない。

 

 

 

 

 

アレは決まった形を持たない。あらゆる全てを取り込み、完璧に模倣する存在だ。

 

姿も

 

記憶も

 

人格も

 

 

 

奴は【狂人】

 

奴は【破壊者】

 

奴は【全能】

 

奴は──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初に聞こえてきたのは、なにかの爆発音だった。続いて銃声、悲鳴、怒号があらゆる方向から上がっている。

 

今となっては聞き慣れた...二度と聞きたくなかった音だ。

 

瞼を開けてまず最初に入ってきたのは、暗い裏路地だった。ゴミや瓦礫が散乱し、少し異臭もする。

 

(どうやら...まだ俺は死ねなかったみたいだな)

 

自分がまだ生き残っている事実が残念だった。核でなら、きっと■■■という存在を葬れると期待していたのだが...

 

悪態をついていても仕方が無いと、男は立ち上がる。

 

男はまず現状の再確認と、再生したばかりで、意識がハッキリしていない自分を振り返る。

 

俺の名前...いやこの体の名前はアレックス・マーサー、年齢は29、Black Watchという特殊部隊に所属していた男だ。

 

アメリカのニューヨーク州、マンハッタンで発生したウイルスの影響で体は自在に変化させることが出来るようになり、その能力を活かして街を駆け回って原因を探っていた。

 

多くの犠牲を払ってまで分かった原因は、もはや思い出したくもないが...

 

 

こうして生き残ってしまった自分には、まだやるべきことがある。残った化け物の巣を破壊して、この騒ぎを止めなければならない。

 

アレックスは裏路地を抜け、大通りへと出た...そして彼は気づいた。

 

(なにか、様子がおかしい...)

 

まず第一に、ここは感染区域では無いのだ。どこにでも根を張っているはずのウイルスはどこにも見受けられない。だというのにここまで大きな騒ぎになるとは思えないのだ。

 

もう一つ、Black Watch(ウイルス対策部隊)の連中が全く見えない。ニューヨークであれば、どこへ行こうとも必ず兵士の1人は見かけるのだ。おかげで...あいつらには常に手を焼かされた

 

(再生に時間がかかっている間にパンデミックが終息し始めたのか...?)

 

様子がおかしいことの原因を考えていたが、それは突然中断させられた。

 

「見つけたぞ!」

 

叫び声が聞こえた。その声のする方を見ると、白い服と仮面に身を包んだ集団がいた。

 

「なんだお前らは?」

 

ウイルスの確認をしたが、こいつらはウイルス非感染者らしい。だが、何か様子が変だ。

 

集団を観察し思考をしていた直後、体に衝撃を受けた。

 

「...っ?」

 

どうやら白い集団から銃撃を受けたようだ。

 

(...話し合いは無駄だな。アイツらから直接、情報を集める。)

 

思考を切り替えると瞬間、アレックスは集団へと駆け出す。アレックスが集団へと迫るスピードは恐ろしく早かった。

 

一瞬だ。

 

10名ほどの部隊は瞬く間に吹き飛ばされた。恐ろしいまでの質量という暴力が衝撃波となり、集団を襲った。予想だにしない攻撃で完全に連携は崩され、まるで赤子を相手するかのように軽く蹂躙されていく。

 

武器を持たないはずの男に...折られ、潰され、千切られていく。その間、男の表情は一切の変化はなく、無表情のまま肉塊に変えていく。

 

その姿は...もはや人間という生物からは、遠くかけ離れていた。

 

悲鳴すら上げることすら叶わず、命は次々と消えていく。

 

部隊は減っていき、残るは1人だけになった。

 

「...っ、ば、化け物...」

 

「その通りだ。」

 

尻もちをつき震えている仮面の男の言葉に返答し

 

 

 

頭を蹴りはねる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アレックスの頭の中に、膨大な記憶が流れ込んでくる。

 

■■テラ世界■■■■■■■■

 

■■源石■■■■■■■ウルサス■■■■■■■

 

■■■■■鉱石病(オリパシー)■■■■■■■■■

 

■■■■■■感染者■■■■■ 龍門■■■■■

 

■■■■種族■■■■■レユニオン■■■■

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 

白服の...レユニオン兵の死体を吸収し、記憶を覗いたアレックスは困惑していた。

 

.......全く聞き覚えのない単語ばかり全く知らない世界、常識、歴史。

 

(ここは...俺のいた世界じゃないのか?)

 

(そんなバカな、そんなことがあるはずがない)

 

アレックスはその記憶が信じられず、周囲を見渡して、視界に映った一際高いビルへと走り出す。荒れ果てた街を無視して、この肉体が出せる最高の速度で駆け抜ける。

 

ビルへ到達するや否や外壁を走り、駆け上がっていく...1分もかからずに屋上へ着いた。

 

──振り返ると、景色が見えた。

 

立ち昇る火煙、崩れていく建物、起こる爆発...

 

知らない街並み、街の中から突き出す巨大黒い結晶

 

ここはアメリカでは無い。

 

どの記憶にも該当しない。

 

いや、あの連中の記憶にだけは該当する。

 

 

 

 

「なんてことだ...」

 

別の世界だった。自分の知らない世界。

 

アレックスは絶望した。

 

別の世界に来た事実にではない。

 

この世界に自分という最悪の因子を持ち込んでしまったことにだ。

 

また繰り返してはいけない。

 

また地獄は起こさせない

 

自分では死ねない、俺が殺そうとしてもコイツが生き残ろうとする。

 

だがこの世界ならきっと俺を殺せる。

 

だから手遅れになるその前に

 

(コイツ)を殺す。

 

 

 




グムちゃんが1番エグいストーリー持ってそうで(こころが)しんどい


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start

ロサ当たらないよ、たすけて


唐突にオリキャラ、挿入します。


最近、なにか様子がおかしい。

 

多数の部隊が全滅しているのだ...いや、全滅に関してはさほど珍しい話ではない、問題はその報告にある。

 

高確率で死体が見つかっていないのだ。消えたと思われる場所には大量の血溜まりと武器、たまに肉片のようなものがあるだけで本人達の行方は一切わからない。

 

何かよくないものが裏で動き回っている可能性があるかもしれない。今は同胞たちに原因を探らせているが...いざとなれば私が直に出向く必要もありそうだ。

 

 

「タルラ、報告だ」

 

「...」

 

白髪のコータス族の少女が部屋に入ってきた。いつもと変わらぬ気難しそうな表情だが、本来より若干低い声のトーンから何か重大な事なのだろうと理解する。

 

「また1部隊からの通信が途絶えた...」

 

またか、いい加減ため息をつきたくなりそうだ。

 

だが、そう思っていると目の前の少女は少しだけ笑みを浮かべてその続きを話し始めた。

 

「だが、朗報もある。その部隊の生き残りがいた」

 

「!...何か分かったか」

 

「ああ、生き残ったのは例のループスの娘だ」

 

例の...ああ、あの娘か。レユニオンの中では変わり者だった奴だが、いつも運だけは良い。今回も、その運に救われたのだろうか。

 

「そいつ曰く...」

 

 

 

 

 

 

[十数時間前...]

 

──また、部隊が消えた報告が来た。何度目だろう、10回?それ以上?...わからない。

 

(...私、何してるんだろう)

 

 

私は幼少期の頃、感染者になって故郷の街から居場所をなくしレユニオンに流れ着き、そこで私は8年間生きてきた。

 

訓練を受けた結果、術士としての才能が人一倍あることが分かり、より専門的な訓練もやってきた。

 

だけど、私は人を傷つけることが嫌いだった。

 

訓練であっても人に術を向けるのがイヤだった。相手を殴るなんて、もっての外だ。だからこうして今も最前線ではなく後方でひっそりと物資を略奪している、ただの臆病者だ。

 

 

「おい、何してんだユリ?そんなところでボーっと突っ立って」

 

黒い隊服に身を包み、仮面で顔を隠した人が話しかけてきた。彼はグラン、年齢は39歳。同じ部隊で5年間一緒に活動を続けてきた男だ。彼は変わり者であった私の心を理解してくれた人だった。優しく、厳しく接してくれる彼に私は感謝している。

 

「...あ、ううん、なんでもないよ。ちょっと、考え事してただけ...」

 

「考えごとねぇ...お前のことだ、どうせ部隊の失踪の報告のことでも考えてたんだろ?」

 

「それは...」

 

「はは、当たりだな!そんな悲しそうな顔を見りゃすぐにわかるよ」

 

顔に出てたなんてわからなかった...指摘されて少し顔が熱くなる。

 

「消えた原因はわからないが、今も他の部隊が調査に出ているから、じきに消えた奴らも見つかるはずさ...だから心配はするな、ユリ」

 

「...うん」

 

「...さあ、移動するぞ?他の奴らも待ってる」

 

 

 

...

 

 

 

「次はどこへ向かうの?」

 

「第2地区、高層ビルが多い場所だがウルサスはここを放棄してるらしいな。おかげで取り放題だ。」

 

「そっか......ん?」

 

話を聞きながらなんとなく空を見上げた、なんだか騒がしかったからその方に顔を向けただけだった。

 

「どうかしたのか?」

 

「いや、なんだかカラスが多いなって思って...」

 

「カラス?...本当だ、群れで同じ場所を飛び回るだなんて珍しいな。なんかあったのか?」

 

「わかんない......でも、」

 

なんだか不吉だね。

 

 

 

...その言葉を声に出そうとしたが出ない、いや出せなかった。その変わりに出たのはマヌケな呻き声だった。

 

視界がおかしい、景色が逆さまになっていた。

 

浮遊感も感じる...宙に浮いてる?なんで?

 

『ユリ!!』

 

グランが叫んでる、でもその声は遠い。

 

「うぁっ!!??」

 

背中に激しい衝撃を受け、肺に溜まった空気を全て吐き出した。

 

体は自分の意思に反して勢いよく転がっていく、やがて止まるがそのまま激しく咳ごんでしまう。

 

理解が追いつかない、何が起こったの?

 

音が聞こえる、銃声だ。

 

敵?

 

呼吸は整っていないが、とにかく体を起こした。

 

みんなが倒れてるのが見えた、元いた場所には爆発が起きたかのようなクレーターがあった。

 

...その中心に誰かいる

 

黒い革ジャンにフードで目元を隠している男が立っていた。武装をしているようには見えない。その人はこちらを向いて...

 

 

ゾワッッッ

 

全身が凍ったように動かない、足が震えてる?

 

怖い

 

アレは何?

 

姿は人間のはずなのに、何かおぞましいものを見ているような感じがする。

 

こっちに来てる

 

やめて

 

来ないで

 

こわい

 

いやだ

 

 

 

乾いた音が響く。

 

銃声だ。

 

目の前の男は、私ではない誰かを見つめている。

 

「それ以上その子に近づくんじゃねえ」

 

...グラン?

 

後ろから聞こえるその声の主に気づき振り向くと、そこにはグランが銃を構え立っていた。怪我をしてるらしく、頭からは血を流していて、少し左足を庇っているように見えた。

 

「いったい何者だお前は?何が目的だ?」

 

「...答える必要が無い」

 

「...まさかとは思うが、お前がレユニオンの部隊を襲っているってヤツか?」

 

「...さあな」

 

男は言葉を濁す。

 

「そうか、お前がその張本人ってことはわかった...!」

 

グランが銃口を男に向けた。

 

「...」

 

だが男が動じる素振りは無く、ただその場に立ち続ける。

 

「お前を今からレユニオンの本拠地へ連行する、大人しくしろ」

 

「それは無理だ、俺の存在を知られるわけにはいかない」

 

「それなら力ずくでもっ!?」

 

突然、男が動き出した。グランは発砲したが目に見えぬ速度で銃身を掴み無理やり逸らされた。

 

グランはすかさず携帯しているハンドガンを取り出し構えようとしたが、わずかに遅かった。蹴り飛ばされ、壁に勢いよく叩きつけられる。

 

「ぐっ...っ!?...ガボッ...!!」

 

「っ、グラン!!」

 

グランは血を吐き出しながら咳ごんでいた。凄まじい威力で内蔵が損傷してしまったいるようだった。

 

私は立ち上がり術を発動しようと杖を構えた。

 

しかし

 

 

「...っ!ダメだ...!戦ぅ、なっ...に...ゴホッ...逃げ、ろ!」

 

「何言って──「生きて...伝えろ...!!」...っ!」

 

分かってる、立ち向かえば全員殺される。

 

でも、見捨てたくない。だって、5年間支えてくれた大事な人をこんなところで失いたくないから。

 

「...振り向くな」

 

「...っ!」

 

『振り向くな、たとえ俺が死んだとしてもだ。どんなに悲しいことが起きても、前を見て進み続けるんだ。そうすれば──』

 

...グラン、やっぱりあなたはいつも優しくて

 

 

...とても厳しい人だよ...

 

 

 

 

...

 

 

 

 

 

突然降り始めた雨の中を、私は必死に走った。その時の私はどんな顔をしていたのかは覚えていない。悲しみなのか、怒りなのか、悔しさなのか...もしかしたら全部だったのかもしれない。

 

幸運にも、男は追いかけては来なかった。逃げだす直前、グランがアーツを使って男を足止めしていたのが見えた。

 

グランのしてくれたことを無駄にはできない、したくない。もし、無駄にしてしまったらきっと臆病者だと笑われるから。

 

 

 

 

 

私は、私が嫌いだ。

 

誰かを傷つけることが嫌いな癖に、誰か傷ついているところを見て何も出来ない私が、嫌いだ。

 

自分すら殴れない臆病者の私が、嫌いだ。

 

 

...

 

 

 

 

 

「...そうか...あのお人好しな娘が、他人を見捨てる覚悟を見せたのか」

 

「ああ、だがあの子のおかげで大きな情報を掴めたことに変わりはない...」

 

「黒い服で灰色のフードを被った男か...姿が判明しただけでも収穫としては十分だろう...あとは、そうだな」

 

...彼女に、少し考える時間を与えるとしよう。



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