会長「分からないことは、他者に相談して分かるようになればいいのよ!」 (雨宮照)
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会長「分からないことは、他者に相談して分かるようになればいいのよ!」

「分からないことは、他者に相談して分かるようになればいいのよ!」

 

会長がいつものように小さな胸を張ってなにかの本の受け売りを偉そうに語っていた。

しかし、何故だろう。

今日の名言はいつものスケールの大きい名言と違って当たり前のことを言っているだけな気がする。

言葉にするのは難しいけど、中の人が変わったというか……そんな感じだ。

かといって偽生徒会の会長ってほどの違和感があるわけでもないため、一旦はスルーする。

と、俺の左隣に座っている深夏が会長のあとを次いで疑問を投げかけた。

 

「会長さん、なにか教えて欲しいことでもあるのか?」

 

すると会長は「うっ……別にそういうわけじゃないんだけど……」となにやらバツが悪そうに表情を歪める。

大方勉強が分からないとか、そういった類の話なのだろう。

この学園の生徒会は人気投票で決まるため、学力が低くても生徒会長になってしまうからな……。

そう推測していたのだがーー

 

「アカちゃんは、女の悦びを教えて欲しいのよね?」

 

千鶴さんの発言に、そこにいた全員がお茶を噴き出しそうになる。

……お茶なんて飲んでないのに。

 

「そうだったんですね会長! そうならそうと早く言って下さいよ! ほら、早くホテルに行きましょう。あ、でもお子様は入れてもらえないか……。じゃあ、俺の家で教えてあげますよ、会長☆」

「杉崎はまだ未成年でしょうが!」

 

ここぞとばかりに千鶴さんに乗っかる俺に、会長が息を切らしてツッコミを入れる。

う〜ん、恥ずかしがる会長もかわいいぜ!

 

「でも会長さん、本当はなにを知りたがってるんですか? ……あ、もしかしてバグ技を使ってアルセウスを手に入れる方法とか……」

「ちがうよっ! ちゃんと映画館でもらったよ!」

 

軌道修正しに来た真冬ちゃんがいつも通り廃人らしいことを言って、再びマイペースにノーパソに目を落としている。

ちなみに俺はDSを二つ持ってたからアルセウスはたくさん貰ったぞ。

 

俺が思い出のダイヤモンド・パールに浸っていると、会長は「それがね……」と話し始める。

どうせ大したことではないだろうと思いながら耳を傾けるが、会長の悩みには興味がある。

全員が少しだけ気になる様子で、お子様会長に注目していた。

すると会長は顎に指をおいて視線を宙に向け、思案するような顔になると……

 

「それが、お母さんが好きなアニメの名前を忘れたっていうんだよ……」

 

と、どこかのM1王者みたいな悩みを吐露し始めた。

全員がモナカとコーンフレークを思い浮かべる中、千鶴さんが少し困惑気味に訊ねる。

 

「ええと……それはどんな特徴だったのかしら?」

 

この流れを継承する気満々のようだった。

そうと決まれば俺達も加勢しないわけにはいかない。

この瞬間生徒会室に一人の駒場と四人の内海が誕生したのだった!

 

「うーんと……特徴はね……」

 

会長が思い出そうとして首を傾げる。

 

「えっと、お母さんが言うにはフラッシュアニメでね、へっぽこな秘密結社が主人公だって」

 

するとその場にいた全員がピンと来たようで、少し興奮気味にソワソワし出した。

代表して深夏が答える。

 

「会長さん、それはきっと秘密結社鷹の爪だぜ! 悪の秘密結社鷹の爪団とヒーローのデラックスファイターが死闘を繰り広げるアツい熱血バトルアニメだ!」

「いや絶対にギャグアニメだろう!」

 

深夏の認識がズレていたので訂正する。

あのアニメはヒーローと悪の組織が戦うっていうテーマなのに、全く臨場感がないんだから。

デラックスファイターなんてどうして生活できてるのか分からないくらいだし、会社持ってるし部下もいるし……。

バトルシーンなんて、必殺技のデラックスボンバーを言い終わる前に「デラッ」だけで発動して鷹の爪団が吹っ飛ばされることもある。

だからあれは列記としたギャグアニメなのだ。

 

脳内で全員が突っ込んでいるとも知らずに、深夏は会長に意見を促す。

すると会長はまだ納得がいかないようで、次の特徴を告げてきた。

 

「私も鷹の爪だと思ってたんだけどね。お母さんがいうには、魅力的なヒロインが出てくるっていうのよ」

「じゃあ鷹の爪団じゃねえな!」

 

だってあのアニメ、ヒロインどころか女性キャラがほとんどいないんだぜ?

映画版だと博士の恋人が出てくるし、テレビ版でもフィリップの奥さんとか出てくるけど基本的には男キャラしか出てこないんだから。

あとは大家さんがいるけど……あの人が魅力的とは思えないな!

だっておっさんと間違えられるんだぜ!

声だってFROGMANだしな!

 

「あ、でも他にも気になることがあって。お母さんがいうにはね、カンヌ国際映画祭に出品されたことのあるアニメだっていうのよ」

「その特徴は鷹の爪団ですよ!」

 

あのアニメ、実は海外進出してるんだから。

N.Y.国際インディペンデント映画祭でもアニメーション部門の最優秀作品賞、国際アニメーション最優秀監督賞の二部門を受賞してるすごいアニメなんだぞ。

あんなにパロディとか日本人しか分からなそうなネタをやってるのに世界で認められちゃうんだから凄いもんだぜ!

 

俺が一人で感心していると、会長が再び悩み出す。

 

「私も鷹の爪だと思ったんだけど……お母さんがいうには、そのアニメでは島根県民が神様みたいに扱われてるっていうのよ」

「じゃあ鷹の爪じゃないわね」

 

だって鷹の爪は島根県をこれ以上ないほどディスってるんだから。

神様なんてもっての外。

なにか野蛮なことが起こると吉田くんが「島根では普通です!」とか言ってくる。

確かに主題歌では「左山口右鳥取」と覚えやすいフレーズが飛び出したが、まず島根の場所がわからない人は山口と鳥取もわからないと思うから無意味だ。

よって、そのアニメは鷹の爪じゃないな。

 

そう、思っていたのだが。

 

「私もそう思ってたんだけどね、お母さんがいうには天才的なクマが出てくるって」

「今度こそ鷹の爪ですね!」

 

鷹の爪団には百円ショップの材料から宇宙船を作り出すほどの技術を持っているクマのレオナルド博士が所属している。

他にも商才に長けた幽霊のフィリップや超能力少年の菩薩峠くんなどの強力メンバーが揃っているのだ!

それでもデラックスボンバーに勝てないところは総統と吉田くんの、逆にすごいところだと思う。

 

「これはもう決まりですね!」

 

この特徴はもう鷹の爪団しかない。

俺は会議をまとめにかかるが……会長はそれを許さなかった。

 

「でもね杉崎。私のお父さんが言うには……」

「お父さんが? なんですって?」

「生徒会の一存じゃないかって」

「絶対に違いますよね!?」

 

最後に俺たちの小説の宣伝も欠かさない、抜かりのない会長のお父さんだった。

 

あ、2020年10月から鷹の爪団のアニメやってるんで、よかったら是非見てみてくれ。

 

 

おわり。



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