転生したら愛の重い魔女に囲まれた件について(白目) (トロロ将軍)
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序章
思い出した・・・


ウィッチと航空魔導士が一緒に戦ったらネウロイにも勝てそうな気がする・・・


前世の記憶が戻ったのは5歳の時だった。

 

家の庭から空を飛ぶ航空魔導士の編隊を眺めていた時、ふと脳裏に前世で見ていた幼女戦記の映像が流れだし、それを皮切りに前世の名前以外の記憶を思い出したのだ。

 

そこで俺は理解した。この世界は幼女戦記の世界であると。そして日本語が通じることからこの国は秋津洲皇国であると。

 

しかしそう確信した瞬間、先ほど見ていた航空魔導士を追いかけるように奇妙な航空兵が飛んで行った。下半身が下着姿の足に変な機械を着けた女性の航空兵・・・。

 

「魔女さん達がいる限り扶桑も安寧だねぇ」

 

そしていつの間にか隣にいた母の言葉を聞いたとき、俺は理解してしまった。『ここ、ストライクウィッチーズの世界じゃん』と・・・。

 

幼女戦記ならば帝国を打倒すれば世界が平和になるが(アニメと漫画しか知らんが)、ストライクウィッチーズは未知の敵であるネウロイと戦わなくてはいけないし終わりが見えない地獄じゃないか!

 

しかしよく考えれば戦場は欧州であり扶桑ではない(アニメしか知らんが)、つまりこのままただの民間人でいればネウロイなんて気にしないで済むではないか。完璧な考えだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思ってた時期が俺にもありました。

 

俺が前世の記憶を思い出して5年後、全国民に魔法適性検査がおこなわれた。数年前の欧州ネウロイ戦争で失ったウィッチ・航空魔導士の補充だそうだ。

 

さて、ここまで言えば察しはつくと思うが・・・、俺に魔法力があることが判明しました!兵隊一直線コースです本当にありがとうございます!(白目)

 

当然軍は適性のある人間を見逃すことはなく、将来軍人になることが決まった俺だがまだ諦めたわけじゃない。どうせ軍人にならなくてはいけないのであれば士官学校を出て将校になってやる。下っ端兵隊になって使い潰されるのなんて御免だね!

 

そういって幼年士官学校の門を叩いた瞬間にふと思った。

 

「これってターニャと同じ考えじゃね?」

 

しかしもう引き返せない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうやらこの世界の航空魔導士は漫画基準らしい。アニメで帝国の航空魔導士が付けていた箱型の装備などはなく、演算宝珠があれば空を飛べるのだ。

 

あ、どうも。士官学校を卒業して呉の航空魔導士中隊に着任しました新任少尉です。いやぁ士官学校時代は軍隊特有の教官・先輩からの鉄拳制裁とかを覚悟していましたが何とか乗り越えて見せました。同期達と褌一丁で外に立たされたことはいい思い出だったなぁ(遠い目)

 

ちなみに卒業間近に大陸から扶桑海にネウロイがやってきたらしいが海軍さんが見事やっつけてくれました。

 

そんなこんなで現在呉上空で編隊飛行訓練をおこなっているわけですが、航空魔導士で速度が遅いのね・・・。

 

当然車とかと比べたら断然早いけどウィッチと比べたら月と鼈、戦闘機とヘリコプターだね。こんなんでネウロイと戦えるのか不安ですが僕は元気です(白目)

 

そういえば原作開始っていつなんだろうか?



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欧州の空

戦争開始です。


対空砲の炸裂が空に花を咲かせ友軍の曳光弾の光が四方へ飛んでいく。

 

どうも皆さん、士官学校卒業から2年経ち、新任から中堅少尉になった『高島 忠人』ですよ。

 

 

俺が新任少尉になった2年後の1939年、欧州の黒海でネウロイの巣が発生。欧州各国が迎撃しようとするも失敗。各国が欧州に援軍を送る中、扶桑皇国も陸軍戦車連隊と航空魔導大隊で編成された『陸軍遣欧部隊』を派遣。帝政カールスラント帝都のベルリンで防衛線を構築するも敢え無く潰走、そのまま後退を続け現在はラインラントに防衛線を敷きガリアへの進行を防いでいる状態だ。

 

「少尉、このままでは持ちません!」

 

部下の1人が俺にそう叫んだ瞬間赤い光線がそいつを蒸発させる。陸軍遣欧部隊は壊滅状態だ。既に戦車連隊は全滅し、3個中隊で編成された魔導大隊も1個中隊規模の損失を出している。俺の直属の中隊長とは10分前から連絡が途絶えた。

 

「各員密集するな!敵の光線は防殻術式で防げる。援軍の到着が来るまで後5分、落ち着いて当たれ!」

 

小隊周波で部下に指示を出すが既に小隊員の魔法力は尽きかけている。俺が飛んでいられるのはただ単に人より魔法力が少し多いからだ。

 

「小隊各員に伝達!友軍の到着まで何としても持ちこたえるんだ!」

 

手にした三八式歩兵銃のボルトを引きながらありったけの声量で叫ぶ。もはや部下に言っているのか自分に言い聞かせているのかわからない。

 

俺は前方から接近してきた小型ネウロイに照準を定め引き金を引く。コアの無いタイプのネウロイは着弾の爆発で四散していった。友軍到着まで後3分。

 

周りには同じ中隊の魔導士達とそれを優に超える小型ネウロイの数。数えるのも馬鹿馬鹿しく思える数だ。

 

引き金を引いてはボルトを操作する。装弾数5発の三八式歩兵銃はすぐに弾が切れるため装弾動作がもどかしいが魔導士に機関銃は扱えない。ウィッチが羨ましくなる。

 

耳に着けたインカムからは仲間の悲鳴が聞こえてくる。何もできない自分に無力さを感じる暇もなく、ただ狙いを定め引き金を引き続ける。何体のネウロイを落としたのかわからない。

 

不意にインカムから悲鳴以外の声が聞こえた。

 

「待たせたな扶桑の魔導士。ここからは我らが引き受ける。」

 

カールスラント語で聞こえた無線。遅れて聞こえる魔導エンジン音。どうやら俺達は5分間この空域を護り抜けたらしい。

 

俺達の部隊はすぐに後退を始めた。代わりに戦ってくれている友軍の背中が見える。カールスラント空軍の第52戦闘航空団だ。ウィッチで構成された戦闘団は手にした機関銃でネウロイを攻撃していくが多勢に無勢なのは変わりなく苦戦しているようだ。しかし魔法力の無くなった俺達には何もできない。早く行けと手を振るカールスラントのウィッチに心で謝罪し、俺達は前線基地へ戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前線基地では輸送隊のトラックや馬車が忙しそうに荷を積んでいた。

 

「あの輸送隊は何か?」

「後退です。欧州司令部は防衛線を後退させガリア国境に新たな防衛線を敷くようです。何でもマジノ線の準備が整ったとかなんとか」

 

マジノ線。第一次大戦後にフランスが対ドイツに向け建造した要塞線だが、この世界にもあったんだな。

 

質問に答えてくれた整備兵に礼を言い部隊の掌握をおこなう。中隊長は戦死、残った航空魔導士は13名。別の空域を担当していた中隊は全滅したそうだ。これで陸軍遣欧部隊は事実上壊滅してしまった。残ったのは後方の整備・補給部隊と航空魔導士1個中隊分の戦力のみだ。

 

この先も辛い戦いになる。そう思いながら睨んだ敵方の空は、どんよりと暗い雲に覆われていた。




【航空魔導士の武器について】
この作品の航空魔導士は幼女戦記のような専用弾ではなく、普通の弾に魔力を込めて射撃をします。(着弾するとアニメにように炸裂する)
その際銃に負担が掛かり、、単発なら問題ないのですが機関銃のように連射してしまうと銃が耐えきれなくなり破損してしまいます。戦闘中の破損は死に繋がるため、航空魔導士は機関銃を装備しません。


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最後の防衛線

遂にウィッチ登場!


1940年6月、ガリアの首都パリが陥落した。

 

マジノ線が壊滅し遅滞戦術にて防衛をおこなっていた欧州連合軍だったが、遂にネウロイに防衛線の中央が突破され連合軍は北部ガリアと南部ガリアに分断されてしまった。現在北部連合軍はガリア北西部のブレスト軍港に防衛線を張り最後の抵抗を見せている。俺達はここまでの戦闘でさらに名の戦死者出し、残存人員は8名になっていた。そんな中、俺は陸軍遣欧部隊司令部に召集を受けていた。

 

 

 

 

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「まずはおめでとうと言っておこう。中尉に昇進だ高島中尉。」

「はっ!粉骨砕身職責を全う致します!」

 

目の前に座る遣欧部隊司令が疲労を浮かべた顔で俺の昇進を伝える。現場の指揮官クラスが軒並み戦死したのだ。最早現場に俺より上の階級は残っていない。司令は水を一口飲むと言葉を続けた。

 

「欧州脱出の為の『ダイナモ作戦』が発動される。残存する欧州軍はブリタニア、またはガリア植民地のウエドラオゴへ撤退する。」

 

欧州戦線の敗北。戦友たちの死が全て無意味だったことに俺は落胆した。

 

「ブリタニアとウエドラオゴと言うことは、脱出は船舶ですか?」

「そうだ。しかし北部に取り残された部隊だけでも20万人以上。南部とは連絡が取れんが合わせると相当数の船が必要だが・・・、それだけの船をブリタニアは持っていない。」

「ではどうすると?」

「現在ブリタニアは民間船舶を徴用して数を揃えているらしい。タンカーからヨットまでもだ。しかしまだ時間が掛かる。そこで・・・」

 

言葉を切った司令が1枚の指令書を差し出す。

 

「欧州連合司令部と協議した結果、北部に残存する戦力の再編成をおこなうことになった。所属・国籍問わずだ。我々の部隊も例外ではない。君の小隊はガリア空軍第4連隊第1ウィッチ大隊に編入される。もう1個小隊はガリア陸軍第26航空魔導中隊に配置されることになった。」

 

『ガリア空軍第4連隊』

 

俺達の部隊と共に北部戦線の維持に当たっていた部隊だ。戦線崩壊後は部隊が四散し、ブレストには3名のウィッチしかいない。しかも内2名は負傷で戦闘に参加できないというのが現状だ。

 

「ダイナモ作戦発動まで何としてもブレストを死守しなくてはならん。厳しい戦いになると思うが、頼んだぞ中尉」

 

俺は司令の言葉に敬礼で返すとそのまま司令部を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガリア空軍第4連隊第1ウィッチ大隊のジョーゼット・ルマール軍曹です!よ、よろしくお願いします!」

 

目の前には緊張した表情で敬礼&自己紹介をするガリアのウィッチがいる。

 

『ジョーゼット・ルマール』

 

ブレイブウィッチーズに登場したキャラクターとしかわからない(というよりストライクウィッチーズ事体俺はよく知らない)が確かおとなしい娘だった気がする。

 

「扶桑陸軍の高島忠人中尉です。精鋭第4連隊と肩を並べて戦えるとは光栄です。よろしくお願いしますルマール軍曹。」

 

緊張でガチガチになっているルマール軍曹にできる限り笑顔で挨拶を返す。階級は俺が上だがこちらは第4連隊に編入された形になるので指揮官はルマール軍曹になるだろう。

 

しかし再編された第4連隊第1ウィッチ大隊は総員5名。俺を含めた扶桑の航空魔導士4名にルマール軍曹1名。もう1個小隊が配置されたガリア第26航空魔導中隊も中隊とは名ばかりの総員7名。司令の言葉通り厳しい戦いになることを覚悟しなくてはいけなかった。

 

 




【人物紹介】

『高島忠人』
本作の主人公で男性。5歳の時に前世の記憶が戻りある程度の原作知識がある。(といってもストライクウィッチーズはアニメを軽く見ていただけであり詳しくは知らない)
1938年に陸軍第18航空魔導大隊第2中隊第3小隊の小隊長に着任。1940年のベルリン防衛戦が初陣。ブレストに防衛線を構築した際に中尉に昇進。部隊再編でジョーゼット・ルマールが所属するガリア空軍第4連隊第1ウィッチ大隊に編入され、ブレスト防空戦に参加する。


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ブレスト防衛戦

「ルマール軍曹!中型ネウロイ1機、2時方向!」

 

三八式歩兵銃に新たな弾を込めながら近くを飛ぶルマール軍曹に向かって叫ぶ。ブレストに防衛線を構築して既に1週間が経過していた。

 

「魔導小隊は引き続き小型ネウロイの掃討をお願いします!タカシマ中尉、私の援護を!」

「了解!」

 

俺は指示通りにルマール軍曹の後を追う。しかしウィッチと魔導士の速度差のせいでルマール軍曹に追いつけない。

 

「やっぱ速いなウィッチは。いや、航空魔導士が遅すぎるだけか?」

 

縮まるどころかむしろ広がるルマール軍曹との距離に自身の遅さを恨みたくなるが、そこは兵科の差と無理やり自分を納得させ出せる最高速度でルマール軍曹を追いかける。そしてようやく中型ネウロイとの戦闘距離に到達したころにはルマール軍曹は既に戦闘を開始していた。

 

中型ネウロイに射撃を仕掛けるルマール軍曹だったが、中型ネウロイの直掩と思われる小型ネウロイ3機が中型ネウロイを護るが如くルマール軍曹へと攻撃していた。

 

「援護します軍曹!」

 

遅れたことを心で謝罪しつつ射撃姿勢に入る。目標はルマール軍曹を狙う小型ネウロイ。照門の中央に小型ネウロイを捉えた瞬間、俺は引き金を引いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・やっぱり凄い」

 

タカシマ中尉の射撃を見て私は思わずそう呟いていました。

 

タダヒト・タカシマ中尉。損耗した第1ウィッチ大隊の補充として編入された扶桑陸軍の航空魔導小隊の小隊長。最初の自己紹介の時、人見知りな私はタカシマ中尉の階級も相まってガチガチに緊張してしまっていました。そんな私を見たタカシマ中尉は優しく微笑みながら「よろしく」と言ってくれました。それから1週間、タカシマ中尉は私とロッテを組んでネウロイの迎撃に当たっていました。

 

タカシマ中尉は凄い人です。私がネウロイと戦いやすいように的確な支援をしてくれますし、階級だって彼の方が圧倒的に高いのに私の指揮を聞いてくれます。今だって私が中型ネウロイと戦いやすいように直掩の小型ネウロイを1人で相手しています。機動力でウィッチに劣る航空魔導士は本来集団で戦闘する兵科だ。でもタカシマ中尉は1人で戦う。タカシマ中尉の放つ銃弾は吸い込まれるようにネウロイに命中し小型ネウロイを駆逐していく。

 

「小型ネウロイは殲滅しました!ルマール軍曹、中型ネウロイを!」

 

気が付くと私を妨害していた小型ネウロイは全て殲滅されていた。私は魔導エンジンのスロットを全開にして中型ネウロイに肉薄する。この型のネウロイのコアの位置はこれまでに収集された戦闘詳報からある程度割り出されている。

 

「この型のコアの位置は・・・ここ!」

 

私はコアがあると思われる位置に機関銃を発射する。着弾で砕けるネウロイの装甲の中に赤く輝くコアが見える。

 

「これで終わり・・・え?」

 

中型ネウロイの撃墜を確信して引き金を引くが機関銃から弾が出ない。弾切れなんて初歩的なミスはない。たとすると・・・。

 

「装弾不良!?」

 

最悪なタイミングでの装弾不良。でもそんな中後ろから聞こえてきたタカシマ中尉の声。

 

「貫通術式!」

 

タカシマ中尉の放った銃弾がコアを貫き、断末魔のような音と共に中型ネウロイが塵となって消えました。

 

「ルマール軍曹、ご無事ですか?」

「はい、大丈夫です。ありがとうございますタカシマ中尉。」

 

周囲を警戒しながら近づいてくるタカシマ中尉にお礼を言いつつ私は機関銃の故障排除をおこなう。他の小型ネウロイの掃討をお願いした他の魔導士さん達も合流してきましたし、どうやら今の中型ネウロイで終わりみたいです。

 

「これでネウロイは全部みたいです。基地に帰還しましょう」

「了解しました。総員、周囲を警戒しながらブレスト軍港へ帰還する!」

 

隊が再編成されてから1週間。国籍が違うところかウィッチですらない方々と上手くやっていけるか不安でしたが、皆さんの頑張りのお陰で何とか防衛線は保たれています。

 

周囲を飛ぶ航空魔導士の皆さんに心の中でお礼を言い、私達はブレストに帰還するのでした。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「航空魔導士を3名引き抜くのですか!?」

 

ネウロイを殲滅しブレストに帰還した俺達に告げられたのは第1ウィッチ大隊から俺以外の魔導士を第26航空魔導中隊に移すというものだった。

 

「しかしそれでは第1ウィッチ大隊はルマール軍曹と私の2名のみになってしまいます。」

「申し訳ないとは思っている。しかし第26航空魔導中隊の損失が増加している。補充をおこなわなくてはブレストは南側から侵攻されてしまう。納得してくれ。」

 

現在ブレストは2つの戦線を持っている。俺達第1ウィッチ大隊が担当する東戦線、そして第26航空魔導中隊が担当する南戦線だ。既に南部ガリアの大半を手中に収めたネウロイはブレストの南から海を越えて侵攻してきている。いくら俺達が東戦線を守ろうとも南が抜かれれば水の泡だ。

 

「タカシマ中尉」

 

隣にいるルマール軍曹が不安そうな目で俺を見ているが、この配置転換は覆せないだろう。俺は命令を持ってきた欧州連合司令部の大佐殿に敬礼すると、そのままルマール軍曹と司令部を後にする。

 

「益々厳しくなりますね・・・」

 

俺は辛そうな顔でそう呟くルマール軍曹の頭を軽く撫で、第1ウィッチ隊に割り振られている兵舎へ向け歩き出すのだった。



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軍人として

また戦闘回です。
戦闘描写が難しい・・・。


「爆撃術式!」

 

放たれた銃弾が地面に着弾し爆発を起こし、着弾地点にいた小型の地上型ネウロイが数機吹き飛ぶ。生き残ったネウロイを地上部隊が掃討していくのが見える。

 

第1ウィッチ大隊から魔導士3名が引き抜かれて3日が経過したが、今だダイナモ作戦発動の報は聞こえてこない。余程船舶が集まらないのか、もしくは別の事情があるのか・・・。

 

「タカシマ中尉、友軍の爆撃が始まります。」

 

ルマール軍曹の示す方向を確認すると、中型の双発爆撃機が6機編隊を組んで爆撃をおこなうところだった。

 

『ウェリントン爆撃機』

 

ブリタニア空軍が派遣した欧州連合軍への支援戦力だ。どうせなら爆撃機よりもウィッチを送ってほしいと思うところだが、ブリタニアにとって欧州大陸は最早沈みかけの船。そんな船に貴重なウィッチなど派遣しないだろう。寧ろ爆撃機を派遣してくれたことに感謝すべきだろうか・・・。

 

ウェリントンは中高度から爆弾を投下すると機首を返して帰路に就く。地上では爆発に巻き込まれたネウロイが多数撃破され、残ったネウロイも傷だらけだった。現在は地上部隊が重機関銃と対戦車砲で掃討を開始している。

 

(終わったな。)

 

そう思った瞬間、最後尾を飛んでいたウェリントンの左発動機が赤い光線によって撃ち抜かれた。

 

「爆撃機上空に小型ネウロイ12機!」

 

そう叫ぶと同時に俺とルマール軍曹はネウロイに向かう。攻撃を受けたウェリントンは何とか飛行しようと操舵するも、やはり片肺では苦しいのかどんどん高度が下がっていく。

 

「軍曹!奴らの狙いは爆撃機です!」

 

4機の小型ネウロイを撃破するも、奴らは俺達を無視し被弾したウェリントンに群がろうとしている。余程先ほどの爆撃を脅威に感じたのだろう。しかしこれは好機だ。敵がこちらを攻撃してこないのであれば一方的に撃墜できる。ウェリントンの搭乗員には申し訳ないがこのままネウロイを引き付けてもらおう。それに敵を早く殲滅すればその分乗員の生存率も上がる。残り8機、俺とルマール軍曹ならばすぐに撃墜できる。

 

しかし、予想外なことはいつも突然訪れるものだ。

 

「駄目です!」

「ルマール軍曹!?」

 

突然俺の横を飛んでいたルマール軍曹が前に出て、ウェリントンを守るようにシールドを張り出したのだ。

 

「ルマール軍曹、何を!?」

「爆撃機の搭乗員を守らなくちゃ!」

 

そう叫ぶルマール軍曹だが、連日の出撃で魔法力が回復しきっていないのか、攻撃を受けるルマール軍曹の表情は苦しそうだった。

 

ルマール軍曹も馬鹿ではない、この好機とウェリントンの搭乗員数名の命を天秤に賭け、ネウロイ撃墜に天秤が傾いたはずだ。しかし彼女の優しい心が身体を動かした。否、動かしてしまったのだろう。現状の軍人としての正しい答えは、早急に小型ネウロイを排除し、制空任務に就くことだ。いつまた増援のネウロイが現れるかわからない。だから俺はウェリントンの搭乗員を見捨てる判断をした。

 

だからこそ俺は、他者を見捨てない心優しいジョーゼット・ルマールという少女の行動を微笑ましく感じ、軍人としてのルマール軍曹の行動に苛立ちを感じた。

 

今ここでルマール軍曹を失えばブレストの防空は崩壊する。恥ずかしい話だがウィッチである彼女ただ1人を失うだけでブレストの航空戦力は半減してしまうのだ。

 

(早期殲滅の好機は失ったが、まだ一方的に攻撃はできる。)

 

三八式歩兵銃はボルトアクションゆえに連射がきかない。ルマール軍曹の機関銃を失った今、即座に全機の撃墜は不可能だが、一方的な撃墜は今だ可能だ。俺は三八式歩兵銃を構えると近くのネウロイに照準を合わせる。

 

射撃・・・命中。

 

着弾と同時に砕けるネウロイ。俺は最後まで見届けることなく次の目標に照準を向ける。

 

射撃・・・命中。

 

ただひたすらに射撃をおこなう。制限時間はルマール軍曹のシールドが持つまで。

 

残りネウロイは3機。俺は新たな弾を込める為腰の弾薬入れを開ける。しかし、ここでも問題は発生する。

 

(弾切れ?)

 

弾薬入れの中は空っぽだった。扶桑陸軍航空魔導士の小銃弾の携行数は120発。しかし度重なる撤退戦における物資の損失。そして補給状況の悪化により、魔導士の携行弾数は120発から半数の60発まで減らされていた。そうした中での爆撃術式による対地支援任務。携行弾を全て使い果たしていたのだ。

 

俺は腰のホルスターから一四年式拳銃を取り出す。歩兵銃が使用できない際の予備装備。歩兵銃と違い命中精度が心もとないので今まで使用していなかったが贅沢は言えない。俺は少しでも命中率を上げるため、最高速度でネウロイに肉薄する。

 

手を伸ばせば触れれそうな距離。引き金を引きネウロイへ向け拳銃弾を3発放つ。銃弾を受け砕けるネウロイ。急げ、ルマール軍曹はもう持たない。近くにいたもう1機にも3発喰らわせる。残り1機。

 

最後の1機はルマール軍曹のすぐ正面。俺は持てる速度を発揮してルマール軍曹とネウロイの間に割り込み、銃弾を叩きこむ。しかしネウロイが砕ける前に一四年式拳銃のボルトが解放状態になる。ホールドオープン、弾切れだ。予備弾倉はない。だがまだ手はある!

 

俺は左腰に下げている三十年式銃剣を抜くと、刀身に魔力を流す。

 

「くたばれ糞野郎!」

 

魔力を纏い輝く銃剣を拳銃弾で傷つけたネウロイの装甲に突き立てる。強い抵抗を感じるが力で押し切る。そして刀身を全てネウロイに埋め込むと足の裏に魔力を込め、力いっぱい蹴り飛ばした。銃剣が突き刺さり砕けるネウロイ。歩兵銃と拳銃を撃ちきり銃剣を失った。これで看板だ。

 

「ルマール軍曹、ご無事ですか?」

 

振り向いてルマール軍曹を見るととても疲弊しているのがわかる。ネウロイの攻撃を一身に受け、シールドを全開にしていたのだ。当然だろう。

 

「タカシマ中尉、その・・・私・・・」

 

「ルマール軍曹。ウェリントンが着陸するみたいですよ」

 

俺はルマール軍曹の言葉を遮りウェリントンを指さした。どうやら上手く滑空飛行をおこない着地を成功させたらしい。着陸したウェリントンに地上部隊が駆け寄り救助活動をおこなっているのが見える。

 

「あなたが守った命です。軍曹。」

「でもタカシマ中尉。私は・・・」

 

今にも泣きそうなルマール軍曹の言葉を手で制す。

 

「続きは帰ってからにしましょう。もうクタクタです」

 

おどけた口調で言った言葉が面白かったのか、笑ったルマール軍曹が頷き、帰還指示を出す。

 

焦ったが何とかルマール軍曹とウェリントンを守ることができた。今回は二兎を得ることができたが、こんなことは本当に奇跡なんだろなぁ・・・。

 

そうなことを考えながらルマール軍曹の後ろを飛んでいると、ふと太陽から影が近づいてくるのが見えた。友軍?いや・・・あれは!?

 

「軍曹!」

 

俺は速度を上げ、ルマール軍曹を背にかばい防殻術式を展開する。既に大量の魔力を消費しているルマール軍曹にシールドは厳しい。その点俺はまだ魔力残量に若干余裕がある。光線ならば防殻術式で防ぐことが出来る。

 

そう・・・光線ならば。

 

「自爆型!?」

 

太陽を背に迫ってきた小型ネウロイは光線を放つことなく防殻術式に体当たりし、爆発した。

 

防殻術式では防ぎきれなかった爆風が身体を焼き、腹部に激痛を感じる。見るとネウロイの破片が刺さっていた。

 

ルマール軍曹の安否を確認しようにも声が出ない。顔を向けると必死な形相で俺に向かって手を伸ばす軍曹が見える。怪我はなさそうだ。

 

(あぁ、ルマール軍曹・・・よかった。)

 

それが俺の見た最後の光景だった。



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壊れたPCを買いなおしてようやく投稿を再開できました。
長い間失踪してしまい申し訳ありませんでした。


ここは・・・いったい?

 

ふと気が付くと俺は燃え盛る大都市の上空を飛んでいた。

 

「小隊長!大通りに民間人がいます!」

 

不意にインカムから聞こえてくる部下の報告。示された方向を確認すると燃え盛る道路上に1人の少女が泣きながら立ち尽くしている。

 

「牧野伍長、援護を頼む!」

 

俺は隣を飛んでいた部下の牧野伍長にそう命じると最高速で少女の元へ降りる。あのままでは火災かネウロイの攻撃で死んでしまうだろう。早急に救助しなくては!

 

「11時方向からネウロイ接近!援護します小隊長!」

 

ネウロイの接近に気が付いた牧野伍長が同じく俺の配下の大村軍曹と共に接近するネウロイへ射撃を開始する。しかしその光景に俺は違和感を思える。なぜなら・・・

 

牧野伍長も大村軍曹もマジノ線撤退時に戦死しているはずなのだから・・・。

 

だが今はそんなことよりも大通りの少女だ。俺は矢のごとく降下し少女を抱きかかえ上昇する。その瞬間に牧野伍長と大村軍曹が撃破したネウロイが結晶化し、先程まで少女が立っていた大通りに降り注ぐ。間一髪だった。

 

抱きかかえた少女を見ると目をまん丸に開いて俺を見ている。

 

「怪我は無いかいお嬢さん?」

 

俺の問いかけにコクコクと縦に首を振り答える少女。

 

「あの・・・助けてくれて・・ありがとうございます」

 

少女に礼を言われて思い出す。

 

そうか・・・ここはベルリンでの・・1人で危険だった少女を助けた記憶。つまり夢。

 

そう悟った瞬間辺りが真っ白に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・マ・う・・・・・・タ・シマ・・い・・」

 

遠くから声が聞こえる。聞き覚えのある声だ。

 

「タカシマ中尉!」

 

段々と鮮明になっていく声に目を開けると、真っ白な天井が視界に映った。

 

「タカシマ中尉!目が覚めたんですね!」

 

声の方向に目を向けると、そこには今にも泣きだしそうな顔のルマール軍曹がいた。

 

そうか・・・俺はあの時軍曹を庇って・・・。

 

「ルマール軍曹、怪我はありませんか?」

 

俺がそう尋ねるとルマール軍曹の眼から大粒の涙が零れ落ちる。

 

「タカシマ中尉・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい。私がネウロイに反応できていれば・・・」

 

そう言って俺の胸に顔を埋める軍曹に俺はなんと声を掛けてよいかわからなかった。助けたのは俺の勝手な判断だが、そう言って聞いてくれる軍曹でもないだろう。

 

俺は今だ泣き続けるルマール軍曹の頭を撫でる。そのまま撫で続けるといつの間にかルマール軍曹は寝てしまったようだ。恐らく俺の怪我が心配で碌に休めなかったのだろう。そういう俺も怪我か疲労か理由は不明だが、再び睡魔が襲ってくる。ルマール軍曹をこのままにしておくのはどうかと思ったが、俺は睡魔に勝てずそのまま夢の世界に旅立ってしまった。



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なんか・・・重くない?

「はいタカシマ中尉。あーん」

 

そう言ってスープの乗ったスプーンを俺の口元へ差し出してくるルマール軍曹。なぜこうなったのか全く理由は不明だが少なくとも両腕を負傷しているわけでもない俺に対し食事介助は全く不要だ。

俺はルマール軍曹の手からスプーンを取って自分で口に運んだ。その時のルマール軍曹の「あっ・・・」という小さな呟きに罪悪感を感じるがそれから目を背け食事を続ける。

 

因みに俺はこの救護所に運び込まれてから3時間程しか意識を失ってなかったらしい。受けた怪我的にもう少し重症かと思ったが、ガリア衛生班のウィッチが優秀だったようだ。軍医の話によれば明日にでも戦線に復帰できるとのことだ。

 

「もぅ、無理したら傷が悪化しますよタカシマ中尉」

 

「食事くらいで悪化する傷なら今頃後送されてますよ軍曹」

 

それよりも問題なのがルマール軍曹のことだ。彼女は俺の意識が回復してからやけに過保護になったように感じる。というか確実になっている。恐らく今回の俺の負傷に責任を感じているのだろう。待機時間もウィッチ大隊の待機室ではなく救護所の俺の隣で待機している。過保護なのも食事だけではない。衣類の更衣や身体の清拭まで軍曹がおこなってくれている。基地の守護神たる航空ウィッチにやらせる仕事ではないが従軍看護師が少ない現状医療現場からは喜ばれているらしい。

 

「はぁ・・・。早く復帰したいものだ」

 

「はい!早く元気になってくださいねタカシマ中尉」

 

俺の呟きにルマール軍曹は笑顔で答え、持っていたタオルで俺の口元を拭くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バカ野郎!」

 

扶桑陸軍補給中隊長の大尉の拳が俺の頬に刺さる。

 

「恐れ多くも菊の御紋が刻まれた小銃を紛失するなど皇国軍人としての自覚が足らん!」

 

衝撃で床に叩きつけられた俺の腹部に蹴りが入る。当たった個所が丁度負傷した場所だったため2倍で痛く感じる。

 

戦線への復帰許可が出た俺はまず被弾時に紛失した三八式小銃の補充の為、ルマール軍曹と共に扶桑陸軍の補給所まで足を運んだ。腰に下げていた一四年式拳銃などの他の装備は無事だったが小銃だけは被弾の際につり革が切れ、紛失してしまったとルマール軍曹が教えてくれた。その時のルマール軍曹の残魔法力では俺の回収が精一杯だったらしい。

 

「お前のような軟弱な精神の奴がいるからネウロイに勝てないんだ!気合を入れてやる!」

 

そう言うと大尉は俺の胸倉を掴み無理やり立ち上がらせると拳を振り上げる。俺は衝撃に耐えるため歯を食いしばる。

 

しかし頬に衝撃が来ることはなかった。

 

「やめてください大尉さん」

 

ルマール軍曹が振り上げられた大尉の腕を横から掴んでいたのだ。頭部に使い魔の耳が発動しているのが見える。

 

「ガリア空軍の嬢ちゃん、これは皇国陸軍の問題だ。他国軍は口を挟まないで貰いたい」

 

「タカシマ中尉は現在ガリア空軍第1ウィッチ大隊所属です。私にも十分口を挟む権利があると思いますが?」

 

大尉の言葉に全く引くことないルマール軍曹。その表情は戦闘中でも見たことのない程険しいものだった。

 

流石の大尉も他国の軍人、しかもウィッチを殴るのは問題があると思ったのか振り上げた拳を降ろす。

 

「女に守られるなんて扶桑男児失格だな」

 

そう言うと大尉は俺の胸倉を離し補給所を出て行く。その後すぐに補給中隊の伍長が小銃を持ってきてくれた。俺は伍長に礼を言うと小銃を受け取りウィッチ大隊の待機所に向かう。その後ろを心配そうな顔をしたルマール軍曹が着いてくる。

 

「座ってくださいタカシマ中尉」

 

待機所に着いた瞬間、ルマール軍曹が有無を言わさず俺を椅子に座らせる。

 

「頬がこんなに腫れてます。お腹だって被弾した場所なのに・・・」

 

そう言ったルマール軍曹から暖かい光が漏れる。軍曹の固有魔法だ。

 

みるみる頬と腹部の痛みが治まっていく。ルマール軍曹の固有魔法は回復魔法だったか。

 

「ありがとうございますルマール軍曹。治療と、補給所の件も・・・」

 

ルマール軍曹は俺のお礼の言葉に返事をせず回復魔法を掛け続ける。

 

「ルマール軍曹?」

 

「扶桑軍は強い精神力があればネウロイが倒せると思っているのですか?大尉という士官クラスがそんな精神論で戦ってるんですか?」

 

ルマール軍曹の顔に表情はない。静かな怒りを感じる。

 

「恐らく大尉も精神的に参っていたのでしょう。なんせこんな戦況ですからね」

 

補給中隊の大尉を庇うわけではないが、補給もなく日々減っていく物資に精神をすり減らしていたのだろう。そう考えると大尉こそ精神的に弱い人だったのかもしれないな。

 

「・・・私はタカシマ中尉にもう傷ついてほしくありません。これからは私が守ります」

 

そう言ってルマール軍曹は俺の顔を見つめる。既に魔法での治療が終わっていたのでルマール軍曹と距離を取るため立ち上がろうとするも、肩に手を置かれ立ち上がらせてもらえない。ウィッチのパワー凄すぎワロタって思った。

 

「ル、ルマール軍曹?」

 

「ジョゼって呼んでください。親しい人はみんなそう呼んでいます」

 

「しかしルマー「ジョゼです」・・・はい・・」

 

有無を言わさずルマール軍曹、いやジョゼは自信を愛称で呼ばせて来る。何が彼女をここまで駆り立てるのか、これがわからない。てか空気重くない?

 

「治療ありがとうございますジョゼ。そういえば遣欧部隊司令部に呼び出されていたので少し席を外します」

 

待機室の空気が異様に重く感じた俺は適当な理由をつけて席を離れる。流石のジョゼも司令部からの呼び出しと聞いて手を離してくれた。

 

俺はジョゼの頭を一撫でして待機室を出る。時間が経てば空気も軽くなるだろうしジョゼも落ち着くだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・タダヒトさんは私が守ります。ネウロイからも・・・扶桑からも・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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