私のゴーレム (ishigami)
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01 W.
普通ではない少女と、普通ではない男の、普通の日常。
発動条件は四つ。
戦いによって流した血であること。
生存の可能性を脅かされていること。
守るべきもののための戦いであること。
――「そして、もう一つ」
――「あなたにとって、それが倒すべき敵との戦いであることよ」
私のゴーレム
◇
ほのかな陽光が、寝室に差し込んでいる。
家具が一つ二つしか置かれていない殺風景な空間に、毛布をかぶった小さな山がある。かすかな寝息に合わせて上下しており、隙間からそろそろと細い腕が伸びると、肌触りの好いシルクのシーツをゆっくりと這い、枕元のすぐ近くに在る目覚まし時計を探り当てる。
直後にアラームが鳴り響き、直後にアラームが停止した。
山がのそりと動き、毛布が滑り落ちると、カーテンに遮られた薄暗い部屋に白い肌が浮かび上がる。衣類は何も身に着けておらず、起き上がった人物はじっと静止し、寒さを感じない様子でぼんやりと壁紙を見つめている。
二次成長期変遷の最中にある乳房は丸く膨らみを帯びていたが、呼吸するたびに皮膚に肋骨の陰影が現れており、背中には大きく目立つ縫合痕が二つある。
少女は静かに吐息すると、ベッドからそっと足を降ろした。冷たい床に顔をしかめるが、勢いを付けて立ち上がると、弾んだ拍子に二つの枕が落ちそうになる。
一瞥した少女はそのまま部屋を出、シャワーを浴びた。ドライヤーで肩まである髪を乾かし、戻ってきて手早く下着を身に着けると、ガウンを羽織り、枕を元の位置に直してからリビングに向かう。コーヒーメーカーのスイッチを入れ、作り置きしてあった朝食をラップごと温めると、少女は起伏のない表情で、予定の時間になるまで消音のテレビを眺めていた。
「おはよう、つかさ」
徒歩での登校途中、背後から声をかけられる。駆け寄ってきたクラスメイトは鼻を赤くして、首にマフラーを巻いている。「おはよう、エーコ」少女は笑顔を作りながら、一緒に隣り合って再び歩き出す。
「昨日のテレビ見た?」
「うん」
教室に入ると、少女は付き合いのある女子たちと挨拶を交わした。HRが終わると、一限目が始まるまで教室は他愛のない雑談で溢れ返るようになり、少女もそのなかに混じって話に興じる。
教師が現れると、開口一番に抜き打ちテストの実施を告げられ、至る所から悲鳴が上がった。窓際で一つ前の席であるクラスメイトに「準備なんかしてないよっ」と泣きつかれ、少女は苦笑を返しながら筆記具を用意し、周ってきた問題用紙と向き合う。他の生徒たちと違い、少女の表情に焦りは見られない。解答を記入し終えると、少女の視線はガラスに仕切られた窓へと向けられた。
青空。雲一つない蒼穹が広がっている。
四限目。クラス合同の体育の授業。長袖長ズボンのジャージ姿に着替えると、少女は学校敷地の周りをのろのろと走りながら、やはり他愛のない雑談を交わしていた。大半の女子は同じようにとろとろ走っていたが、陸上部所属などは真面目に汗を流し、少女たちの集団を追い抜いてゆく。そのなかには以前少女を陸上部に誘った娘もいたが、走ろうとすれば速く走れるはずが本気を出さない少女に視線をくれると、何も言わずに走り去っていった。
陽が暮れつつある。
「あそこの通りのケーキ屋さんがさ、雑誌で紹介されたんだって」
放課後になると、少女は行動を共にすることが多い四人で話題の店に押しかけた。色彩豊かな甘味のショーケースを覗き込みながら、財布と相談しつつ見た目を吟味して選んでゆく。店には、その場で飲食可能なスペースも併設されていた。少女たちとは別の学校の生徒もいる。少女は飲み物を注文して腰を落ち着けると、クラスメイトの趣味であるアイドル喫緊の情報を聞きながら、時おり相槌を置きつつ、間食に舌鼓を打った。
帰り際、テイクアウト用に幾つか注文して外に出たところで、少女を冷やかすようにクラスメイトが笑みを浮かべる。
「つかさ、まだ食べ足りない感じ? 太るぞお」
「太るとわかっていても食べちゃう、げに恐ろしき甘味のゴウ、なんと悲しき人のサガよ。……あとでダイエットしないとなあ」
「私って、食べてもあまり太らない体質だから」
「なんだとーっ。うらやましすぎる。なにゆえ天は我に三物をお与えにならなかったのか」
「三物って、さすがに欲張り過ぎでしょ。そこはせめてひとつにしときなさい」
「ケーキとか供えればもらえるかな?」
「供えるって、仏壇じゃないんだから」
「もうすぐクリスマスなんだしさ、おひげが素敵なお爺さまが煙突からやってきて“ホッホーウ”って言いながらプレゼントしてくれりゃいいのに」
「あんたんところ煙突ないでしょ」
「今からパパに頼んで作ってもらえば間に合うか……?」
「マンションにどうやって作んのよ」
「てかサンタの正体ってむしろパパなんだからさ……」
「それ以上言ってはいけないっ」
「誰に配慮してんの?」
「“ホッホーウ”」
「“ホッホーウ”」
「真似するな。しかも微妙に腹立つ声で」
「“ホッホーウ”」
「つかさまで!?」
「ていうか、つかさってほんとに太んないの? 何か秘密にしてるヒケツとかなあい?」
「私だけで食べるわけじゃないし」
「ああ、もしかして」
「うん。お父さんに」
「かーっ、なんて健気な娘だことっ。あちしは感激しますた。心がぽっかぽかするー」
「あんたも買えばいいじゃん」
「え、やだよ」
「急に真顔になるな」
「あー、ほら、父の日とかになったらなんかプレゼントするし。……忘れてなかったら」
「父の日っていつだっけ?」
「さあ?」
「影薄いよね、母の日と比べたら。何の花だっけ? カーネーションじゃないよね」
「それは母の日」
「それよりさ、つかさのお父さんってどんな人?」
「あー、うーん。私、会ったことある」
「えっ。どうだった? イケメン?」
「人の親に対してまず確認するのがイケメンかどうかの判断って、ほんとブレないなあ」
「まー、イケメンっちゃイケメンではあったけど……」
「なになに? もしかしてヤバイ人?」
「うーん、つかさ?」
「ヤバくはないです。写真、あるけど」
「見たい見たい超みたいっ」
少女が折り畳み携帯の待ち受けを開くと、クラスメイトたちは一斉に画面を覗き込んだ。
声を落とし、ぽつりと、恐る恐る窺うように口にする。
「……もしかして、お父さまって、ヤの字のつく方ですか?」
「違うってば」
◇
少女が帰宅すると、既に家には明かりが灯っていた。玄関には男物の靴が綺麗に揃えて並べられており、リビングからは独特の匂いが廊下にまで香っている。
台所に立つ、背の高い男が振り返った。リムレスタイプのフレーム越しに、斜めに傷痕のある双眸が少女の姿を認める。
「おかえり」
「ただいま。
大鍋のなかでは、とろとろになるまで煮込まれたシチューがふつふつと音を立てている。男は底が焦げ付かないよう、
「ケーキ、買ってきたの。あとで一緒に食べよ?」
少女は保冷用アイスと別にして冷蔵庫にしまい、部屋に戻って制服を脱ぐと、大皿にクリームシチューをよそった。
向かい合ってテーブルを囲む。
スプーンで口に運ぶと、少女は頬を綻ばせた。じっくりと火が通っていて柔らかい鶏肉。バターと塩コショウで炒めた玉ねぎ、じゃがいも、にんじん、ブロッコリー。コーンもルーとしっかり絡んでいる。見た目も鮮やかであり、炊き立ての御飯と合わせた少女の箸は、間食を挟んではいたが止まることはなかった。
男は少女よりも大盛りだったが、さっさと食べ終えてしまうと、グラスに食後酒のコニャックを注いだ。食器のこすれる音。新しくボトルから注がれる音。テレビは点いていたが、食卓では何を喋るでもない。男は少女を見つめ、少女はそれを不快には感じていない慣れた様子で手を進め、皿を空にした。
「ごちそうさま。あ、私が洗うから清司は座ってて」
流し台に立った少女は、洗い終えた皿の水気をタオルで拭き取り、てきぱきと順序よく片付けてゆく。男は琥珀色の
「お風呂は?」
「沸いてる」
「映画、一緒に見るの忘れてない?」
「ああ」
「そ。じゃあ、先にもらうね」
少女が風呂場に向かうと、リビングはいっそう静かになった。
時計の刻む音がしている。男はちらと顔を上げ、サイドテーブルの固定電話のほうを見た。鳴る気配はない。睨むでもなく静かに見据えている。コニャックを飲むたびに、喉に刻まれた縦に長い傷痕がまるで生き物のように動いたが、注ぐペースに変わりはなく、表情や仕草に酔ったような変化も現れていない。
シャンプーの香りを漂わせながら少女が戻ってくると、入れ替わるように男は浴室に消えた。男が戻ってくるまでの間に少女はレンタルしておいたDVDをプレーヤーにセットし、劇場予告や宣伝を流しながら飲み物とスナックを用意すると、脚をぱたぱたさせながら革のソファーにもたれた。
男が風呂を上がると、少女は自身の隣に座らせ、部屋を暗くして本編を再生した。
アンドレイ・タルコフスキーが監督したSF映画。「惑星ソラリス」。知性を持つ海と雲に覆われた未知の惑星ソラリスを探索中に宇宙ステーションで異常が起き、心理学者である主人公が解決のために派遣されるが、クルーたちの消えたステーションには、何故か地球で死んだはずの主人公の妻が存在していた、というストーリー。
前半では地球での主人公の内面が示唆され、後半のステーションを舞台とした映像では主人公の内面的なものがソラリスによって表出されてゆく。
生存していた研究者が
ソラリスによって浮き彫りになる
前半で舟をこいでいた少女は、スタッフロールが流れる頃には、男の膝を枕にして寝入ってしまっていた。
映画が終わると男はテレビを消し、無防備に躰を預けている少女を見下ろした。呼び起こすでもなく、揺り動かすでもなく、ただ見つめている。やがて男は少女は抱きかかえると、音を立てずにベッドに運んだ。
リビングに戻ると、空けたスナックの袋を処理してゆく。時計は頂点をとうに過ぎている。明かりもつけず、完全な暗闇でありながら男はすべてがよく見えているように動き、自身もベッドに入った。
男が入ってきたことに気づいたかのように、眠ったままの少女が男の腕のなかに入ってくる。
男は一度だけ、腕にかすかな力を込めると、目蓋を閉じた。
二人の息遣いの音だけが、闇のなかで静かに揺れている。
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02 M.
◇
雲一つない空から、月明かりが降り注いでいる。
高層ビルヂングの乱立する眠ることを知らない市街地に、変哲のない三階建てビルヂングが、他の構造体の影で狭く埋もれそうになりながらこじんまりと建っている。
出入口が、金属の擦れる音を立てて内側から開かれる。その奥から、欧米風の顔立ちをした長髪の男と、深夜でありながら遮光サングラスをしている強面の男の二人が、満月の下に姿を晒した。
強面の男は周囲を警戒しながら視線を巡らせていたが、長髪の男は鼻筋の通った顔に薄っすらと笑みを浮かべており、男たちが現れて間もなくすると、正面に黒いセダンが二台停車する。
強面の男が後ろの車の扉を開くと長髪の男が乗り込み、扉を閉めた強面の男がもう一台のセダンに乗り込むと、車は緩やかに走り始める。
微かな振動に揺られながら、後部座席に腰を下ろす長髪の男は紫外線反射加工の施された窓越しに夜景を見つめている。
「どうでしたか」
運転手の男が静かに問う。バックミラーには、脚を組んで外を眺めている
「連中、初めは聞く耳を持たなかったが。最後は分かってくれたよ。誠意をもって俺が話したからな、納得していた」透き通るように白い指を撫ぜながら、爪の表面に僅かにしがみ付いていた血糊を、そっと一息で吹き飛ばして。「何でも用意する、何でも言われたとおりに従うとさ。奴ら、泣いて喜んでた。気のいい奴らだったな」
「それはそれは。ラークは?」
「使い物になってたな。あれなら、ヒト相手の護衛くらいなら問題はない。見た目もいかついし。おまえの代わりとは、なかなかいかないが」
「では、いよいよですね」
「ああ」男が満足そうに頷く。「ここからだ。必ず返り咲いてやる」
市街地の入り組んだ道路を進み、車は二台続いて、速度を落としながら大型ホテルの地下駐車場に入る。
強面の男の乗る車が、空席の駐車スペースに向かおうとしていたとき、他の車の影から不意に現れるものがあった。
引き金。
着弾。
爆発/衝撃。
強面の男の乗る車の背後、長髪の男の乗っている車の後輪部に榴弾が突き刺さり、炸裂によって破壊が撒き散らされた。爆炎が車を呑み込み、尻を蹴り上げられるように逆さまに引っ繰り返ると、駐車場を支える柱の一つに激突する。閉鎖空間に振動が反響し、慌てて急停止した前の車から強面の男と運転役の男が飛び出すと、燃料に引火して更に爆発が熾き、男たちは必死の形相で駆け寄ろうとした。
同時に圧縮された空気の抜けるような音が鳴り響き、強面の男の額が弾け飛んだ。咄嗟に運転役の男は車横に身を屈め、仰向けに斃れた男のほうを窺う。顔の半分が吹き飛び、頭蓋の中身を
運転役の男は懐から
着弾。
爆発/衝撃。
身を隠していた車が吹き飛び、運転役の男はもんどり打ちながらも人より優れた身体機能で着地し狙いをつけ、引き金を絞る。
銃声。
男の
炎が燃え盛る地下駐車場に、変わらない速度で足音が響いた。
足音が止まると、背の高い、黒いコートを纏った人物が立っている。背が高く、身体つきから男だということは判るが、白い仮面を付けているため人相を知ることはできない。
片手には
仮面の男が、運転役の男の亡骸を見下ろした。爆発の余波で俯せになった強面の男と同じく、二つの死体は見えない炎に焼かれたかのように、急速に「灰」に変じつつある。
仮面の男はシュトルムピストーレの中折れ機構を開いて薬莢を排出すると、劇的な爆発と反動をもたらす対戦車用成形炸薬弾を手際よく再装填した。
直後に車の扉が勢いよく蹴り飛ばされ、他のフロントガラスに突き刺さった。
「まったく」
燃え盛る炎のなかから、長髪の男と運転手の男が現れる。髪は焼け皮膚は溶けていたが、すぐに服も元通りに再生されてゆく。運転手の男のほうは再生せずそのままだったが、衝撃に堪えた様子はない。ちらと二つの亡骸に目を向けた。もはや灰は塵のように吹き消され、痕跡は衣服しか残っていない。
「ひどいな。やってくれたもんだ。ラークも、なにアッサリとやられてやがる。少しは根性だせよ……どこの組織なんだ、いったい?」
かぶりを振る長髪の男へ、躊躇わず仮面の男は銃撃を放った。
顔を上げ、余裕然と微笑した。
「そうか、おまえ
仮面の男は答えない。空気が張り詰めてゆく。
「マルボ」
「はい」
運転手の男が答えた。
「生け捕りにしろ」
「かしこまりました」
気配が変わる。運転手の男が殺気を放ちながら前へ出るのへ、仮面の男は躊躇わず引き金を引いた。
運転手の男はネクタイを解き、スーツのボタンを外しながら、弾道が見えているかのように銃撃を躱す。仮面の男に一歩ずつ近づいてゆく。
歩きながら、気配が膨らんだ。物理的に運転手の男の身体が
銃声が反響した。顔面へ撃ち込まれる
宙を飛翔する自動車を眼前に飛び退き、仮面の男は背後で炸裂する衝突音を聞きながら
腕力のみならず脚力も獣と化して肉薄した人狼が、猛然と拳を振り下ろした。屈んで躱された一撃が勢い余ってコンクリート面を陥没させ、危うく粉砕を免れた仮面の男は、後退した
人狼は、しかし鋼鉄に匹敵する筋線維の塊である巨腕でダメージを防ぎつつ、薙ぐように振り回した。
車両と激突し、ライトバンがきりもみしながら宙を舞う。
肉体性能で不利を強いられる仮面の男は、掴まれないよう動き回りながら射撃で応戦。常に片方の足が床に着く独特の歩法で獣の五指をすり抜けるが、弾着の痛みをものともせずに猛打する人狼を突き放すことができない。盛大に落下して大破する車。飛び散るテールランプ。
人狼は更に踏み込んで左で
人狼が一気に肉薄すると、仮面の男は素早く銃を後ろに捨て太腿に取り付けてあったナイフを引き抜いた。振り下された強烈な拳を
人狼は追撃はせず、指骨と指骨の間にめり込んだ刃片を引き抜くと、母国語で口汚く罵っている。
仮面の男は折れたナイフを鞘に戻し、SOCOM-Mk23を拾って
長髪の男は観賞の態を取り、懐から取り出したフィリップモリスにオイル・ライターを近づけた。爆発と鳴動。混じ入った絶叫。煙を吐いた長髪の男が髪を掻きあげながら顔を上げると、五発の銃声が轟いた。
人狼が、煙を立てながら倒れ伏すところだった。
「はあ?」
横たわった人狼の片腕には、黒い布がまとわりついている。仮面の男の着ていた防弾防火処理の施された外套。今は男は着ておらず、防弾服姿になっている。
長髪の男が目を離した隙に繰り広げられたのは、生死を分ける一瞬の攻防だった。
柱を背にした仮面の男が、まず右腕の怪我を偽装して相手の油断を誘った。人狼の大振りを躱しざま瞬時に内側に踏み込み、庇っていると見せかけていた右手で脱ぎ捨てたコートを投げつける。意表を衝かれた人狼は視界を奪われて布を剥がそうとするが、そのときには仮面の男はホルスターからシュトルムピストーレを引き抜き銃爪を絞っていた。コートを振り払った人狼の眼前には仮面の男ではなく着発信管式榴弾が迫り、炸裂。咄嗟に両腕で庇ったものの.45ACP弾とは比較にならない火力が破壊的音響を伴って人狼を呑み砕き、遮蔽物である柱に飛び込んで爆発から逃れた男は、直撃してなおも倒れず人体の形状を保っている
轟音。空薬莢。大脳をぶちまけた人狼が、今度こそ背中から
長髪の男は、唖然としていた。仮面の男は用心するように、斃れた人狼に更に二発撃ち込む。起き上がることはない。また吸血種と違い、こちらは灰になることはない。
「おいおい、嘘だろう?」
長髪の男が、大きくかぶりを振った。
「そりゃないだろうが。そいつは俺の、右腕なんだぜ? その辺の奴らとは」抜け殻の衣服を煙草を挟んだ指で指し示しながら、少し声を上擦らせて言う。「その辺の雑魚どもなんかとは違う、替えの利かない、俺がのし上がるのに必要な右腕だったんだ。それを、おまえ。こんなところで」
「残念だったな」
仮面の男が、ぼそりと言った。
静かな声だったが、アラートの響く地下駐車場にあっても、それは長髪の男の動きを止めるのには充分過ぎるほどの効果があった。
口を動かしかけた長髪の男の
凄絶な弾雨がけたたましく列を為し、反応の遅れた長髪の男に鋭く衝き刺さる。反動を完全制御された
流れてきた炎上車の煙と硝煙が溶け合って薄れ、血の海に着地した煙草の煙が音を立てて消える。
仮面の男が倒れ伏したものに近づくと、車の影から、小柄な体型の人物が現れた。仮面の男が人狼の攻撃を捌き続ける間も身を潜め続けていたその人物は、仮面をつけ、男と同じように黒い外套を纏っている。
「悪いわね、いいトコ貰っちゃって」
声からして、女だということが分かる。空になった湾曲型弾倉を捨てて新しいマガジンを
「ちょっと煙たくなってきたし、そろそろ結界を解いて此処から離れないと」
仮面の男の視線の先では、長髪の男が横たわり、
「どうし――」
仮面の男が、女を押し飛ばす。
銃を構えようとした瞬間、仮面の男の腕が捻じれ、千切れた。
激しく血が噴き出す。
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03
仮面の男が、血を噴きこぼす。その身体が、“不可視の力”に持ち上げられたように浮かび上がった。
「な――」
すかさず仮面の女は飛び退くと、MP5Fを連射した。その寸前に仮面の男の身体が射線上へ移動し、弾雨が殺到する。「ちょっ」慌てて銃口を逸らすも、固定された男の身体は9mmパラベラム弾を避けられない。着弾の衝撃で全身が暴れ、皮一枚で繋がっていた腕が千切れ飛ぶと、そのまま怪力で投げ飛ばされるように仮面の男は柱に激突した。夥しい量の赤色が、穿たれた空洞と断面から噴出する。千切られた左腕が、重たげに床面に跡を作った。
「おい」
長髪の男が、よろめきながら半身を起こした。虚ろだった双眸が酷薄に歪む。仮面の女は引き金を強く絞るが、立ち上がった長髪の男が視線を向けると、弾丸は空中で勢いを失いついには静止した。透明な
「痛えだろうが」
長髪の男の吐き捨てた反吐に、金属音が混じった。形の潰れた銃弾が、赤く鈍く光っている。
男が手を上げると、女は弾かれたように反応した。握り締める短機関銃の銃身が熱で柔らかくなったようにぐにゃりと歪む。すぐさま暴発しかねない銃をスリングごと手放して横に飛ぶと、銃は不可視の力によって粘土のように折り曲げられ、遠くに放り捨てられた。女は柱に叩きつけられたダメージで動けずにいる仮面の男を横目に、ホルスターから
間一髪で柱の影に滑り込んだ女は、背後で激突した柱と車の壊音と衝撃と破片とを被りながら、かぶりを振って呻き声をあげた。「〈
直後に二台目三台目が柱に突き刺さり、歯を噛み締めて転びそうになるのを耐えながら、詠唱を口ずさんでゆく。
「【玻璃の
駆ける女の視線の先では、長髪の男が柱にもたれる男の正面に立っていた。手には、仮面の男のものであるSOCOM-Mk23が握られている。
男は防弾服のおかげでまだ息をしていたが、仮面が割れて素顔を晒してしまっていた。男の眼には、斜めに目立つ古い傷が刻まれている。千切れた腕や頭部からの出血が著しく、対照的に長髪の男は、固有特性である〈血統能力〉を有する強力な吸血鬼に相応しい再生能力で時を巻き戻したように元通りの
「【
女の手から放たれた呪紋から、四色四種の光が溢れ出す。弾丸よりも遅い速度で、しかし甲高く吼えながら広がって吸血鬼を喰い破らんと奔り迫った。
吸血鬼が軽く手を振るうと、光条は目標の手前で横から殴られたように軌道を変えた。無関係のセダンを轢壊し、秘めていた爆風と光が解き放たれると、眼を細くする。
「東洋の魔法か」
呟くや、滞留する粉煙が激しく揺らいだ。視界を邪魔する粉煙が不可視の
「お互い血まみれだな」
女が隠れている辺りへ手近な車を投擲しながら、吸血鬼が男を見下ろして言った。
仮面を失っている男は、吸血鬼を見上げてはいたが、無表情のままでいる。
「痛いよな、穴だらけなんだから。よくわかるぜ、俺も痛えよ。けど俺はもう治りかけてる。不便だよな、こういうとき人間の身体ってのは」
吸血鬼は銃口を定め、指先に力を加えた。遊底が後退し、空薬莢が宙を踊り、男の掌と太腿に大穴が開く。噴き出す飛沫。男は唸るように息を吐いた。「頑丈な奴だ」吸血鬼は嘲笑を浮かべている。
「けど俺はおまえらのせいで少し貧血気味だ。吸血鬼が貧血なんて笑い話にもならないからな。まずはおまえの血から、そのあとはおまえの仲間の血で、その次はこのホテルの住民の血で補うことにするよ。俺の計画はだいぶ狂っちまった。大幅に修正しなけりゃならん、気の重い話だ。俺に、何か言うことがあるんじゃないか」
引き金。
「【
冷気を発する白刃が、宙を裂いて燐光の尾を引きながら吸血鬼に躍りかかった。地面に霜が生え、空気が凍り付く。吸血鬼は、視線を向けるだけでそれを地面に叩き伏せた。白刃は意志があるかのように跳ね起き、荒波のなかを泳ぐように動き回ってひらりと斬りかかる。だが呆気なく
わらい声。
「泣かせるね。逃げずにおまえを助けようとしてる。それに比べて
銃声。
激突/振動。
「おまえには、仲間と一緒に死ぬほど苦しんでもらうことにする。文字通りな」
男の膝関節が、不可視の力で布を絞るように捻じ曲げられた。骨の砕ける音。それでも、男は籠った呻き声しか出さない。次は指の関節が順番に逆方向にへし折れたが、やはり悲鳴が上がることはない。
引き金を引こうとしたところで、吸血鬼は舌を鳴らした。柱と柱の間から放たれる輝く熱閃の呪術を不可視の力で殴り飛ばすと、こそこそ隠れながら攻撃し続ける女に呼びかけた。
「鬱陶しいな。出てこい、姿を見せろ。今すぐおまえの仲間が死ぬことになるぞ」
短い静寂。
柱の影で窺っていた、女が小さく呟いた。「……これ以上は無理ね」霊符を握り締めながら。銃を鞘に戻しつつ。
崩れかけた柱の隙間から、女が姿を現した。
俯き加減に、
「賢明な判断だな」
車が一斉に浮遊する。「おまえも死ね」
女が顔を上げた。
「何言ってるかぜんっぜん分かんないから日本語勉強し直して来いよ、キューケツキ」
手を合わせ、地面を叩きざま叫んだ。
【凝視する方眼・分断する天秤】【足枷・深謀・荒地・しかして沈黙】【左廻りの
【
「【急ぎて律令の如く為せ】――【
その瞬間、光に劣らない速度で――あるいは初めから其処に存在していたかのように――床に格子状の模様が浮かび上がった。
黒と白の格子状の升目は女の認識する地下駐車場の平面すべてに表示されており、射出されかけていた浮遊中の車両が、不可視の力を解かれてバンパーから地面に落下した。吸血鬼は、見開いた状態で固まっている。升目を踏む足元から這い伸びた黒白の線が平面の像のまま立体を獲得して網のように全身に絡みつき、引き金に掛けた指を動かすことができず、それでも封じられた不可視の力を発揮しようともがいている。
女も拘束術式を発動し続けるために、代償としてその場に縫い付けられ躰の一部しか動かせなくなっていた。
「時間は、私が稼ぐっ。だから」
怒鳴るように、女が言った。
「そいつはあなたが何とかしてっ、
男が、かすかに口元を歪めた。
「……【門より溢れし光のかけら】」
大量に血をこぼしながら。腕を捩じ切られ、脚に穴を空けられながら、砕かれていながらも男がわらったことに、吸血鬼が息を吞んだ。
「【天を奔り、地を裂いた】【聖なる断片】【われらが血と肉に宿りしもの】」
瀕死であった筈の、気配が変わる。
「こ、……の!」
吸血鬼にまとわりつく格子を振り払おうと、不可視の力が地面を割り、大気を揺るがし、黒白を掻き消してゆく。
「【
すべてが掻き消されたとき、男は「言葉」を唱え終えていた。
「――【
変化は、男が告げた直後に起こった。
男の躰の
寸前に黒白の網が引き千切られ、引き千切った不可視の力が瞬時に迎撃する。
白い槍に触れた途端、不可視であるはずの力が
それは、一〇本の巨大な腕のかたちをしていた。
地面に砕け、光の粒となって虚空に消えてしまう。
貫通した槍は吸血鬼の背後に突き刺さり、へたり込んだ吸血鬼の腹部には大穴が穿たれていた。
「な、……に、が」
男の手足の結晶が飛散した。
よろめきながらも、
「喚かずとも聞こえてる」
発動条件は四つ。
戦いによって流した血であること。
生存の可能性を脅かされていること。
守るべきもののための戦いであること。
――「そして、もう一つ」
――「あなたにとって、それが倒すべき敵との戦いであることよ」
今ではない、かつて。
ある女が言った。
――「すべてを満たしたとき、あなたの血潮には意志が宿る」
――「その血潮はあなたに従い、
――「
「おまえは、“俺”の敵だ」
男は穿たれたことで結晶化しつつある吸血鬼に近づくと、奪われていた銃を掴み取った。そして脚同様に、失われた筈の自身の――結晶化して傷が塞がった際に同時に再生されていた――片手で構えると、結晶化した双眸で見上げてくる、もはや言葉も紡げなくなった吸血鬼に照準を定めた。
引き金。
四五口径弾は轟音を伴って結晶化した頭蓋骨を破壊し、吸血鬼の塩の塊と化していた脳漿を吹き飛ばした。きらきらしたものが床に撒き散らされ、その上にかつて吸血鬼であったものが斃れ込む。粉々の白い塊は、急速に透明度を失うと、間もなく跡形もなく消えてしまった。
「―――」
吸血鬼の最期を見届けた男は、安全装置を掛けてSOCOM-Mk23をホルスターに戻し、静かに息をついた。
仮面の女がベレッタM92FSを握りながら近づいてきて、おずおずと訊ねる。
「終わった、のよね」
男が頷くと、顔を隠していながらも、げっそりしているのが判るような気配で嘆息した。拳銃を戻し、壊されたMP5Fを回収すると、台風が通った後のような惨状の地下駐車場を見回す。
引っ繰り返った車。折れて今にも崩れそうになっている鉄骨。弾痕と破片。男の流した血や肉片、千切れて転がっていた腕は、すべて結晶化し、散らばったことで何処にも痕跡を残してはいない。
人狼の死体と、配下の吸血鬼の衣服を一か所にまとめると、女が霊符を重ねて置いた。口に指を当て、口のなかで呪文を呟くと、霊符が煙を上げずに激しく燃え上がる。
異臭すらも燃やし尽くすと、死体と衣服は灰になっていた。その灰すらも、風に吹かれて消えてしまう。
「急ぎましょう。これだけ派手にやったんじゃ、流石に気づかれるかもしれない。……歩けるわよね?」
頷くと、並んで外に出る。
「今回の討伐対象が〈
裏口から歩いて暫らくしたところに、ツーリングワゴンが停めてあった。
男がかぶりを振って運転席に先に乗り込むと、後部座席で太腿にノートPCを載せた眼鏡の男が顔を上げた。「おつかれさま……」後部ドアが開き、銃器を詰めたショルダーバッグに取り外した仮面を押し込むと、女は助手席に座って乱暴に扉を閉める。
「なんか、だいぶボロボロですね。どうでしたか?」
「しくじったと思うの」
「い、いえ」
「きっちり灰にしてやったわよ。ただ」
座席に用意されたスポーツドリンクを一口飲み、ため息をついた。「能力持ちだった」
「え」
「たぶんどこかの
エンジンがかかる。
「それは、ご愁傷様です」
「その使い方ホントにあってるの?」
「今は、どこも人材不足ですから。もうすぐ戦争も始まりそうですし」
「だからって情報に漏れがあるようじゃ堪んないわ。……あとであのエリートさまの澄ましヅラ、ぶんなぐってやるんだから」
「わあ、すごく怒ってる」
「当たり前でしょ。現にセージなんて死にかけたんだから」
「ええ!? かっ、身体は大丈夫なんですか?」
「ああ」
「おお、さすがは不死身の男……」
眼鏡の男が感嘆するように言うと、男は視線を外にやった。窓には、かすかに皮肉めいた笑みが映っている。単に死にづらいだけだ。ぼそりと呟くと、眼鏡の男が「なんですか?」と首を傾げた。
男は答えず、車をゆっくりと走らせ始める。
夜のラヂオでは、黒人の歌声が流れていた。スティーヴィー・ワンダー。「
周辺の電子機器は原因不明の故障を起こしているため、走り去るこの車が防犯カメラに記録されることはない。
防音防震用の結界が解かれ、気絶させられていた警備員が意識を取り戻して通報したのは、男たちが立ち去ってから三〇分後のことだった。
防犯カメラに犯人たちの手がかりは残されておらず、警察は現場に残されていた薬莢や弾痕から犯罪組織間の抗争によるものとして捜査を開始。何軒かの関係者宅に強制捜査が入る事態にまでなったが、当局が車で夜の街に消え去った男たちに辿り着くことは、ついぞ無かった。
◇
無人の家に、鍵の回る音が響いた。
玄関が開かれ、入って来た背の高い男が靴を脱ぐ。鞄を脇に置き、ネクタイを緩め、黒い皮靴をきちんと揃えてから洗面所に入る。
水の跳ねる音。顔を上げた男の顔には、眼の辺りに古い傷跡がある。鏡の中の男の喉にも、同様に古い傷跡が刻まれている。
コーヒーメーカーの電源を入れ、薄暗い部屋のコートラックに上着を掛けると、男はリビングの分厚いガラス窓を開け放った。冷たい風がカーテンを揺らす。
太陽が、そろそろ沈もうとしている。
男はソファーに背を預けると、目蓋を下ろした。眼鏡を外す。体重を受け止めたソファーが沈み込む。深く腰かけている男の瞳は閉ざされており、胸板が大きく上下した。コーヒーのふつふつと沸きあがる音がし始め、細い、男の息遣いの音が静かに響くようになる。
不意に、空気の揺れる気配。
「血の匂いがする」
男が目を開くと、制服姿の少女が覗き込んでいた。鼻先が触れ合いそうな距離に、瞳がある。
「おかえり、清司」
「……ああ。つかさも」
「電気、ついてなかったよ。帰ってきてそのまま寝ちゃったの?」
男は身を起こすと、時計を見た。午後六時。陽はすっかり暮れている。男の口から、僅かな嘆息が漏れる。
「夕飯」
「うん、知ってる。疲れてるみたいだし。座ってて、私が作るから」
男が何か言うよりも先に、少女は冷蔵庫を開けた。
「そういえば清司って、苦手なものとかあった?」
テレビをつけると、昨日の未明に都内で発生した犯罪組織の抗争が報道されている。
「いいや」
エプロンをしながら少女が作ったのは、サラダとオムレツだった。始めは料理する後ろ姿を眺めていた男も、途中から隣のコンロで簡単なスープを作り始める。
「私、やるのに」
じゃっかん呆れながら少女が言う。香ばしい香りがリビングに広がった。
テーブルには胡麻を散らした和風スープも加わり、それほど時間は掛からなかった。
「どう?」
「美味い」
男の進んでいる箸を見て、少女がくすりと笑った。
「そっか」
食事を済ませると、男は少女が風呂に入っている間に食器を片付けた。共にシャワーを終えると、ソファーに身を寄せ合って寛ぐ。パジャマからは、少女の上気した肌が見えている。
「今日の映画は」
暗くした部屋で、ワーナーブラザーズのオープニングのあと、本編が流れ出した。
クリント・イーストウッドが主演と監督を務めた西部劇。「許されざる者」。昔は名を馳せた悪党だったが今は妻を亡くし子供たちと貧困に苦しんでいる男が、家族の生活の為に賞金首を仕留めるべく、かつての仲間と共に手放した銃を再び手に取るというストーリー。
中盤までは老いによって腕が衰えていた主人公だったが、映画の終盤近くに差し掛かると、その姿は変わってゆく。
初めて人を殺してしまった若いカウボーイが、震えながら告白する場面があった。主人公は「殺しは非道なことだ」と言い、カウボーイは「奴らは自業自得だ」と言い返すが、主人公は静かに「俺たちもだぞ」とカウボーイを戒める。
主人公が仲間の仇である保安官を殺害し、賞金を得て街を立ち去ると、やがて風の噂で主人公が商売に成功したというモノローグが語られ、物語の幕が下りた。
二時間を超える作品ではあったが、少女は寝ずに最後まで起きていた。
「おもしろかったね」
エンドロールが終わり、画面を消して男が立ち上がると、ぽつりと少女が言った。
「かなしくて、でも、素敵な映画だった」
少女が、男を見つめる。
寝室に向かった。
窓とカーテンは閉め切られている。男が枕元のサイドランプを灯すと、少女はパジャマを床に落とした。下着も脱ぎ捨てている。
裸になった少女が、振り返った。
「清司も、脱いで」
透徹な眼差し。無言で男がそうする間に、少女は毛布に入った。身一つになると、男はライトを消し、マットレスの下に隠してある銃の所在を確かめてから、ベッドに潜る。
「清司、怪我したんだよね」
そっと男の腕に触れながら、少女が囁くような声で言った。
男は何も言わず、少女に体温を伝え続けている。
「ねえ清司」
「ああ」
「いつか私が、あの人みたいになったら」
男からは、少女の表情を見ることはできない。
「……ううん。なんでもない」
「つかさ」
「おやすみなさい、お父さん」
静寂。
いつしか、寝息だけが聞こえるようになる。
「おやすみ」
少女の体温と、小さな呼吸を耳にしながら、男もまた、目蓋を閉じた。
二人の息遣いの音だけが、闇のなかで静かに揺れている。
固有名詞がほのめかされるだけで説明もないし背景とかもよくわからないけれど、なんとなくきっと主人公たちには大変な過去があるんだろうなあという雰囲気が伝われば幸いです。
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