自殺したと思ったらオルフェノクになっていた。 (地支 辰巳)
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オープニング オルフェノクの仲間
私と彼女がオルフェノクになるまで


 今日もいつもと同じ何もない日常が繰り返されるはずだった。

 

今日は家庭科の調理実習だ。

私はいつもと同じように同じグループの女子が喜ぶ言葉を探しながら会話をしていた。いつもいつもそうだった。

 

「ねぇー梓ちゃん、うちこのお鍋見ておくからさ、包丁で野菜切って置いてくれへんかな?」

 

 グループのリーダー格の子が頼んできた。私みたいに何の取り柄も無い奴が断ったら、教室で普通にいることは難しくなるだろうな。そんな事分かっていた私は笑顔を向けて「わかりましたー」と明るい声で引き受けた。

 

 そんなことを高校に入ってからずっと続けてきたからだろうか、私は包丁を手に持つと諦め・才能を持つ人への憧れ、そして自分をもっと見てほしい。そんな自分の奥底に眠るような思いがどんどんと出てきて、自分のことが嫌になってしまってきていた。

 

「おーい梓ちゃんどうしたん?包丁持ったまま突っ立って。みんな不思議そうに見てるで、まさか自殺でもしようと思ったん?いや、冗談やで。はよ料理終わらしてしまおうや」

 

 私はその時の彼女の冗談がああ、そうなんだろうなと不思議と納得していた。その後、調理実習が終わったからも私の頭の中から包丁のことは頭から離れなくなっていた。

 

 放課後になってグループの女子達がそれぞれ部活に行く中、部活をやっていない私はいつもならぶらぶらして時間をつぶす所だったけど、今の私はもう一度包丁を持って死のうと思っている。

 

 私は嘘をついて職員室で鍵を借りて、そのまま包丁のあった料理室に向かった鍵を開けた。中に入ると、一直線に包丁が入っている所を開けて、そこから一本の包丁を取り出した。まだ包丁を持っただけだったのに、家のことや今の自分について考えてしまった。

 

 

♦︎ ♦︎ ♦︎

 

 

 私の家はなんてことはない母、父、弟の普通の家だった。

でも小学校4年ぐらいかな、勉強をやらしても普通、運動はほとんど出来ない、それに加えて何も才能もなくてダメダメの私を見て母が「お前にはがっかりした、失望したよ」それから母は私を無視するようになっていった。食事もくれる、洗濯もしてくれるなのに、無視され続けた。一、二年はあきらめずに話かけたりした。でも中学に上がる頃にはあきらめていた。

 最初は話をしてくれてた父もだんだんと無視するようになっていった。弟はそんな私を下に見て、罵り、殴って蹴る。兄弟ではなくただの不満の捌け口、弟は私をそんな風に見ていた。そして父も母も優等生で才能のある弟ばかりをかわいがるようになっていた。今でもそれが続いている。家族は私を見てはくれない、もっと私を見て欲しいのに。

 

 高校に入るとそれまでずっと一緒だった親友とクラスが離れてしまった。だから何の取り柄もない私が高校で普通に暮らしていくためには相手の顔色を伺い、相手の欲しい言葉を言って好感度を上げていくことだった。

 だけどそれは思った以上に辛かった、段々とストレスが溜まっていった。そんな私とは違って楽しそうに誰に気を使うこともなく話をしている日向の慕われてる人達が羨ましくて仕方がなかった。

 

 そんな人生最後の振り返りを終えると私は実感してしまった。

自分がずっとギリギリで生きて来ていたところだったことを。

すぐ死ねる包丁を手に持ったら、

なんだかもう諦めてしまってもいい気がしてしまったことも。

そしてもうこんな人生いやだと思ってしまったことを。

私はゆっくりと包丁を持ち直すと来世はもう少しましな人生を送りたいと

ささやかに思った。

そして包丁を胸に突き刺した。

 

 

 

私は目を覚ましたでも、不思議な感覚だった。

確かに胸に突き刺したはずなのに痛みはない、しかも自分の体を見ると

服は破けてるのにそこに血は流れてなく傷もない。

包丁も刺す前と変わらない状態で床に落ちている。

私はよく分からなかった。何が起きたのかも自分がどうなっているのかも。

夢でもない、それに地獄でもない。だって声が聞こえるから。

声が‥聞こえる?

 

昨日さー彼氏がさ一年にぶつかったらその男子すぐにペコペコ謝りだしたんだよ〜

 

えーなにそれ男なのに情けないねー

 

でね彼氏が冗談で二千で許すって言うと、すぐー出したんだよー

なんか生きるのに必死って感じがするよねー

 

ほんとだよね、そんなんで人生楽しいのかな〜って感じだね

 

だね、そうだよね。

 

 

ああ、声が聞こえた。

声を追ってきたら、それなりに離れていた図書室だった。

図書室でうるさくするのはダメなのに。生きるのに必死で何が悪いんだ。

私は自分のことでも無いのになぜかそんな気持ちが湧いてきていた。

入ると一瞬こちら見たその女子ら三人だったがすぐに会話に戻っていた。

なんでそうやって見てくれないの、私をもっと見てよ、ねえ、ねえ、ね……。

 

気がつくと近くで知らない女子が私を見つめていた。

 

 

♦︎ ♦︎ ♦︎

 

 

私、淡路紫乃は今日も図書委員として図書室にいる。

図書室は好きだ。静かで本がいっぱいあって本を読むのに適してるいる。

そんな図書室が好きだから私は図書委員になっていた。

でも、そんな私だからかみんなは私をいじめてきた。

ただ教室で本を読んで静かにしているだけなのに、ただ好きなことをしているだけなのに。

みんなは私を根暗で本ばっか読んでるくせにいい点ばっかり取りやがってと言っていじめてきた。

最初は平気だったけどだんだん辛くなってきて、図書委員を言い訳にして、

図書室に逃げ込むことも多くなっていた。

 

今日もいつものようにいじめられて図書委員として図書室にいた。

でも、今日は運悪く不良の先輩方が大声で会話をしていた。

集中出来ないけど、我慢、我慢と思っていると。

図書室に制服が少し切れた、同学年の女子が入ってきた。

 

先輩方は気にしてなかったみたいだけど、私からしたら彼女は何か変だった。

でも、次の瞬間その変が確信に変わった。

彼女は一瞬顔に模様が浮かんだと思うと、

全身が魚?いや人魚?のような造形を持つ灰色の化け物になっていた。

その化け物は私に目にくれることもなく、不良達の元に近づいていった。

 

 

いや、こないでよ、私たちが何をしたっていうのよ

 

け、警察に通報するわよ

 

こ、こんなことをしてただですむと思わないで

 

 

そんな言葉目のくれず、その人魚の化け物は手に三叉の槍をもつと、

それで順番に不良達を刺して行った。

刺された不良達は少し動いたかと思ったら、すぐ灰になってしまった。

 

私はそんな化け物を見て、なぜか感動してしまっていた。

私は私の趣味を邪魔する人、いじめてきた人らに復讐するためにあの力が

欲しいと思いながら、その所業を見ていた。

ただ知識を得るのが好きで本を読んでた。

自由に何かがしたくてあの力が欲しいと思った。

あんな圧倒的な力を見せられたらあの力を欲さざる負えなかった。

不思議と私は人間に戻った彼女の元へ近づいていっていた。

 

 

♦︎ ♦︎ ♦︎

 

 

見たところ図書委員であろう彼女は私のことを見つめていた。

不良達は見たところいなくなって、居たはずの場所には灰があった。

私自身がやったわけではないので彼女が何かしたのかなと思っていたら

彼女はいきなり膝を床につけて私の顔を見て口を開いた。

 

「お願いします。私に不良の先輩達を消したあの力をくれないでしょうか?

もちろん何をされてもいい覚悟は出来ています。

私は自由になりたいです。お願いします」

 

何を言っているのか分からなかった。

私が……私があの不良を消したのか?しかも何なんだあの力って。

私はわからないことだらけで記憶も自分も信用出来なくなっていき、頭が混乱してきてしまった。

でもその時図書室のドアがいきおいよく開いてそこから見覚えのある先輩が入ってきた。

まともそうな人が来てくれて私は正直助かったと思った。

 

「おおー、なんか化け物って言う声が聞こえたから来てみれば、どう言う状況だこれは?……うーん灰の山が3つか、それで跪いている女子が一人で、

呆然と立ち尽くしている女子が一人か。

うん、これは期待してた通りの展開だね。まず跪いている君の名前は?あと君は人間なのかな?そして何故跪いているのかな?」

 

入ってきた彼女の声を聞いて思い出した。彼女は確か生徒会長の阿波璃々さんだ。しかも彼女の顔は嬉しそうな、疑っているような顔をしていた。

そして跪いていた彼女は質問に答え始めた。

 

「私の名前は淡路紫乃です。図書委員をしています。人間です。

彼女にお願いがあって跪いています」

 

「うんうん、大体分かった。確信を得るために聞くけど立っている君の名前は?そして君はなぜ灰の山があるのか説明できるかい?最後に君がここにいる前にいた場所は?」

 

生徒会長の質問に私は冷静に頭の中で答えを整理して答えた。

 

「私の名前は伊予梓です。何故灰の山があるのかは分かりません。

私はここに来る前は‥家庭科室にいました」

 

私の答えに満足したのか、生徒会長は嬉しそうな顔をすると

 

「分かった。伊予、君自身に起きている状況を説明してあげよう。

そして淡路、君も一緒に来てくれ、君に残っている道を説明してあげよう。

ここじゃああれだし、家庭科室で話そうか」

 

生徒会長に連れられ、私と淡路さんは包丁を置きっぱなしにしている家庭科に

また戻ることになった。

 

「さてと、家庭科に来たが包丁は床に落ちていて血も付いていない、

伊予お前自殺をしようとしたな?」

 

私は一瞬答えることを躊躇ったが、この状況について知りたかったので、

私は正直に答えることにした。

 

「はい、自殺しようとしました。でも刺したと思ったら死んでなくて、

血が付いていない包丁が床に落ちていたんです」

 

「いや、君は死んだんだよその時に。そしてオルフェノクとして蘇ったんだ」

 

オルフェノク?意味が分からない、私が一度死んで蘇った?そんな事あるわけがない。

 

「ふふ、信じられないって顔してるな、だがしっかりと説明してやろう。

オルフェノクは人類の進化系でな、人間が死んだ時に覚醒するだよ。

可能性は少なくてオルフェノクは数が少ないんだ。

そしてオルフェノクは姿を変えることが出来る。覚醒したばかりでわからない

だろうが君もなることが出来るよ。見せてくれよ私に」

 

生徒会長は妖美に笑った。

私が人間じゃない?オルフェノクっていう化け物なの……?

いやまさかね、なろうとしてなれなかったら私は人間ってことだまだ可能性はある。

 

だけどその可能性は直ぐに裏切られることになる。

私が力を入れると私の体は灰色の体に変化していってしまった。

ああ、これがオルフェノクか、記憶をだんだん思い出してきた。

私があの不良を殺したんだな。

でもこのなんとも言えない高揚感は良いなと感じてしまう。

そして鏡に写る姿も人間態よりも自信がもてた。

 

「ああーいいな伊予その姿は人魚かな?君は自力で蘇ったオリジナルという種類、もっと自分に自信を持っていいんだよ?

さてと気を取り直して、次は淡路、君の番だ。オルフェノクには自力で蘇る他にオルフェノクの使徒再生で蘇る方法があるんだ。

君の顔を見る限りそれを望んでいるみたいだね」

 

「ええ、その通りです。あの不良達を伊予さんが殺す所を見て、私もあの力が

欲しいと思ったんです。私を使徒再生でオルフェノクにしてください」

 

「もちろん、だけど可能性が低いのには変わりないよ?しかもダメだったらあなたも灰になるけど、それでもいい?」

 

「はい、覚悟は出来ています」

 

「待ってください生徒会長、私にやらしてくれませんか?

淡路さんは多分、私と同じように人生が嫌になってるのでそれを変えるための力が欲しいと思うんです。

私が使徒再生すればそれに答えられる気がするんです」

 

「新しい力も試したいものね、もしかしたら特殊な能力があるかもしれないからいいんじゃない?あと忘れてけど私は生徒会長の阿波璃々っていうの、

好きに呼んで構わないから」

 

私は阿波さんから許可をもらうと、淡路さんに近づいていき、そのまま私は彼女に抱きついて、耳元で短く言葉を呟いた。

すると彼女はたちまちに倒れていってしまった。

 

その後数分経つと彼女は一瞬白目になったと思うとそのまま立ち上がった。

 

「ああ、分かる。言葉に出来ないよう力が湧き上がってくるのが分かります。

この高揚感もたまらない。伊予さん、阿波さん、ありがとうございます」

 

言い終わると同時に彼女はオルフェノクに体を変化させた。

その姿はカラスの特徴が見られるオルフェノクだった。

 

「さてと、とりあえず二人ともオルフェノクとしての覚醒おめでとう。

淡路は伊予の特殊能力みたいなのが効いたのかな?まぁ話したいこともいっぱいあるし生徒会室に行こうか」

 

私と淡路さんは阿波さんに連れられて生徒会室に行くことになった。

 

 




伊予 梓
私立阿波学園の高校2年生
特異な家庭環境と学校でのストレスから人生に疲れてしまう。
自殺したと思ったらオルフェノクとして覚醒した。

マーメイドオルフェノク
人魚の特徴を有したオルフェノク。
武器は三又の槍を所持していて、オルフェノクになることを受けいれている相手を確定的にオルフェノクにすることが出来る。遊泳態も存在している。
梓の自分をもっと見て欲しいや才能への嫉妬が具現化されたもの。

淡路 紫乃
私立阿波学園の高校2年生。図書委員をしている。
教室の休み時間でもずっと本を読んでいて、それが原因でいじめを受けている。マーメイドオルフェノクの力を目撃して誰からも何を言わせることなく
好きなことをするためにオルフェノクの力を欲する。
オルフェノクになるために懇願する形でオルフェノクに覚醒する。

レイブンオルフェノク
カラスの特徴を有したオルフェノク
武器はカラスの羽を模した鎌。飛翔態も存在している。
紫乃の知識への欲と、自由への強欲が具現化されたもの。



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親友を同族にしたいのは当然の思いだろう

私と淡路さんは阿波さんに連れられて生徒会室にやって来た。

阿波さんは私たちに適当な椅子に座るように促すと、一番奥にあるいかにも生徒会長な席に座った。

 

「えーと、どこまで話したっけ?」

 

「まだオリジナルと使徒再生っていうのがあることしか‥」

 

「そうだったね。まずオリジナルは使徒再生で覚醒したオルフェノクより強い

能力を持っている。さっき少し言ったが、使徒再生でオルフェノクになる確率は低いが、それ以上にオリジナルで覚醒する確率はもっと低いんだ」

 

「あと、オルフェノクは人間の状態でも他の人よりも耐久力が上がっていて、

オルフェノク同士の戦い以外ではそうそう死ぬことはない。病気にはかかるけど」

 

「じゃあ次に説明することは、あれだね、スマートブレインについてだ」

 

「え?スマートブレインってあの大企業のスマートブレインについてですか?」

 

「ああ、そうだよ。君たちは知らないと思うけどスマートブレインっていう

会社は今いるオルフェノクのほとんどを支援していて、しかも勤めている社員はオルフェノクなんだよ」

 

「そうだったんですか……確かに知りませんでした。

でもスマートブレインがオルフェノクを支援しているとしたら、阿波さんもオルフェノクなんですよね?支援はされていないんですか?」

 

「もちろん、私もオルフェノクだよ。見せる機会はまた追々ね。そして私は

スマートブレインには支援されていない。

あいつら強制的に会社の意向に従わせるらしいからね、私は今の所行く気はないよ」

 

「え、強制的に従わなきゃいないの……。せっかく自由になったと思ったのに」

 

「私も、あんまり強制的に従うのは好きじゃありません……」

 

「そうか。なら明日の放課後ここにもう一度来てくれ。

提案したいことがあるんだ。それまでは普通に過ごしてくれて構わないけど、念のため教えてくれない?」

 

「私は親友をオルフェノクにしたいです。私の能力があればそれも可能だと思うから。それから家に帰って、……家族を殺したいです」

 

「そうか伊予はそうしたいのか。じゃあ親友もオルフェノクになったら放課後にここに連れて来てくれ」

 

「そして家族を殺した後のことについては、明日来てくれた時に話すことにするよ。ちょうどいいからな」

 

「分かりました。言ったこと以外は目立ったことはせず、明日ここに親友と来たいと思います」

 

「次に淡路だが、お前はどうするんだ?」

 

「私はとくに目立ったことはしない予定ですよ?私のじゃまをする人がしたら

殺すだけですよ」

 

「そうかそうか、まぁその程度であれば大丈夫だから、気にしないが明日は

ここに淡路も来てくれよ」

 

「もちろんですよ、二人にはオルフェノクにしてもらった恩があるんだから」

 

私達は少しの談話を楽しんだ後、今日の所は解散することになった。

私は時計を見てまだ5時になっていない事を確認すると、風紀委員室に向かって歩き始めた。

私の親友紀伊かすみは、一言で言ってしまうといい子だ。

正義を信じていてそれに恥じない生き方をしている。

でもだからこそ、かすみは色々溜め込んでしまっている。

 

 

♦︎ ♦︎ ♦︎

 

 

私、紀伊かすみは今いつものように風紀委員室で日誌を残していた。

小さい頃から両親に教えられてきた正義を全う出来ているそう思うと、不思議とこの仕事が楽しくて仕方なく思えてくる。

でも色んなところで自分の正義だと思うことをしたり世間のニュースを見ていたりすると、それがダメだと分かっているのに罪を起こしている人々をよく見る。私はそれを見るたびに人間って醜くなと思ってしまう。

 

そんな事もあってか私は普通の人とは違う憧れを持っている。

ズレていると自分で分かっているが私は人外への憧れがやめられないのだ。

人魚、吸血鬼、鬼、天使など、人間の形をしていてそれでいて自由に正義とか悪とかに縛られていないそれが私に憧れや興奮を与えてくれた。

親が普通を望む中こんな普通では無い思いを持つのは間違っている。

だから親にも話せず、最近連絡とれていない親友にしか話せなかった。

 

そういえば最近どうしてるかな梓。

高校に入ってクラスが離れちゃって、溜め込んでいなか心配だな。

家族関係も少しは良くなっていると良いんだけど……。

そんな事を考えているとドアがノックがされた。誰だろうとは思うけど用件も

聞かずに追い返すのはどうかと思うので中に入れることにした。

 

「いいですよ。入ってください」

 

そしてドアが開いて入ってきたのは今しがた考えていた親友梓だった。

 

「やっほー久しぶりに会いにきたよかすみ」

 

梓は笑顔で話しかけて来てくれた。

私に会いにわざわざ来てくれたのは素直に嬉しかった。

 

「お〜どうしたの梓、こんな所までわざわざ来てくれて。なにか話したいことでもあったの?」

 

「うん、そうなんだ話したいことがあるんだ。でもその前に質問してもいいかな?」

 

どうしたんだろすこし神妙な顔立ちになってるけど。

でも梓からの質問ならなんでも答えないわけにはいかないよね。

 

「もちろんだよ。梓からの質問ならなんでも答えるよ」

 

「かすみならそういってくれると思ってたよ!それで質問なんだけど、かすみってまだ正義と憧れどっちも持ってる?」

 

いきなりそんな事を聞いてきてどうしたんだろ梓。確かに梓に話してから結構経ったし私が変わったんじゃないかって心配したのかな?

でも心配なんてしなくていいのに、私が梓の見ていない所で変わるわけないのに。

 

「うん、まだ正義も憧れも持っているよ。そしてまだ二つの間で悩んでるよ」

 

「それを聞いて安心したよかすみ、変わってなさそうでさ」

 

「でね話したいことって言うのはね、私ちょっと前に死んでねオルフェノクとして蘇ったんだよ〜」

 

私は梓の言葉を聞いて理解するまでに時間がかかっていた。

梓が死んだの?オルフェノク?として蘇った?意味が分からなかった。

冗談にしか聞こえなかった。

 

「梓、死んだって‥冗談でしょ?」

 

「違うよ、冗談なんかじゃないよ。私ね、かすみとクラスが離れてから普通に日常を送るために頑張ってたの、でも家族との関係も変わらなく、クラスの人と会話するのが疲れちゃって自殺したの。そしたら蘇ったんだよオルフェノクとして」

 

笑っていた、笑いながら私の知らない苦労を話していた。少し恐怖も感じたけど、それ以上にこんな笑顔な梓見たことがなくて。

それが嬉しいけど、自分は何も出来なかったんだと思い知らされて。

どこか冗談であってほしいと願っていて、ただただ複雑な思いだった。

 

「まだ、冗談だと思ってるでしょ?いいよ証拠を見してあげる、かすみ」

 

そういった梓の体は灰色の姿へと変化していった。これがオルフェノクなんだ‥。その存在は私の心に人外のオルフェノクへの憧れと興奮が溢れてしまった。だけど私はオルフェノクが正義の存在ではないと直感していた。

それが私の心にある種のストッパーをかけていた。

そんな中オルフェノクの影が梓の姿に変わっていった。

 

「信じてくれた?それでね本題なんだけど、かすみもオルフェノクにならない?一緒にさ新しい人生を始めない?」

 

梓は良い笑顔で私に手を伸ばしてきた。ああ、だから梓は私が変わっていないことを確かめたんだな。私が正義を信じるのならば断るべきなのだろう、梓なら私のことを信じてくれて逃してくれるだろうから。

でも、梓の読み通り私は正義よりも憧れと興奮が止まらないようになっていて、それに今の梓の笑顔は昔よりも輝いていたから。

私はオルフェノクの姿をした梓の手を取った。

 

 

♦︎ ♦︎ ♦︎

 

 

私の思った通りかすみは私の手を取ってくれた。ただただ素直に嬉しかった。

私は淡路さんにしたようにかすみをそのまま抱き寄せると耳に囁いた。

すると、かすみは床に倒れた。

ああ〜これでかすみも私と同族なんだね嬉しいよ。

これからは親友としてオルフェノクの仲間としてずっと一緒だね。

少し時間が経つとかすみが動き、立ち上がった。

 

「う〜ん。ねぇ梓、私ってオルフェノクになれたかな?」

 

「もちろんだよ。なろうとしたらなれるはずだよ。私オルフェノクとなったかすみを見たいな」

 

「分かったよ。なってみるよ」

 

かすみの姿は瞬く間にオルフェノクの姿となった。花の模様が少しある、花がモチーフのオルフェノクのようだった。

 

「ねぇ、どうかな梓?この姿変じゃない?似合ってるかな?」

 

「大丈夫だよ。すごく似合ってる。梓らしさが出てて……かわいいよ」

 

私の言葉を聞いたかすみはそのまま私に抱きついて来てそのまま人間態に戻ったので私も人間態に戻った。お互いに戻った後も抱き合っていた。

 

「こんな風に抱き合うなんて、久しぶりだよね。それでこれからどうするの梓?」

 

「う〜んとね。私は家族を殺しに家に帰るんだけど……かすみも一緒に来てくれたら嬉しいな」

 

「もちろんだよ。梓の家族は梓に散々な思いさせた罪人達だから、罰を与えないとね」

 

「じゃあ、私の家に帰る途中でオルフェノクについてと学園にいるオルフェノクの仲間について話すね」

 

「分かった。でもちょっとまってね日誌を書いてしまうから」

 

かすみが日誌を書き終えると、私はオルフェノクについてかすみに説明しながら私の家に向かった。

 

「いよいよだね梓。私もお母さんに遅くなるって連絡したし。覚悟は出来ているよ」

 

「うん、私も覚悟は出来てるよ。いよいよ過去との決別の時だね」

 

私とかすみは玄関のドアを開けて靴を脱ぎ廊下を歩いてリビングに直行した。

リビングには母親がいて、私をいつも通り無表情で見て、かすみがいることに

気がつくと、笑顔を作りこちらに近づいて来た。

 

「久しぶりーかすみちゃん。少し見ない内に大きくなったんじゃない?

ゆっくりしていってね。お母さんにもよろしく伝えておいて。

ねぇ梓、かすみちゃんと部屋で遊んできなさい」

 

いつもいつもそうだ。いつもは私を無視するくせに。この人は知り合いや私の友達の前だといかにも仲の良い普通の親子ように振る舞う。

そこまでしてなにを得ろうとしているのか私には分からない。

 

「ありがとうございます。母にもよろしく伝えておきますね」

 

私とかすみは二階ある私の部屋に行った。まだだ、まだ殺さない。リビングにいる母親も隣の部屋にいる弟も父親が帰って来たからまとめて殺してやる。

 

私の部屋に家族が入ってくるなんて一度もなかったので、私たちは雑談したり、抱き合ったり、お互いにオルフェノクの姿を見せ合ったりして、父親が帰って来るまでの時間を過ごした。

 

「ただいまー」

 

帰って来た。母親のことを好きなばかりで母親を習ってだんだんと私のことを

無視していった父親がついに帰ってきた。

父親がリビングの扉を開ける音が聞こえると、

私とかすみはお互いに頷いて、階段を降りて、リビングの扉を開けた。

 

「あれ、どうしたのかすみちゃん?もう帰っちゃうの?」

 

「はい、帰ろうと思いまして。でも、帰るのは私じゃありませんよ?罪深い貴方達が灰に帰るんです」

 

言い終わるとかすみはオルフェノクの姿となって、蔓のような物でリビングを覆った。

 

「お、お前はなんなんだ!、帰って来たらいきなり人を罪人だと言いやがって、そんなこけおどしの姿でビビると思ってるのか!」

 

「そ、そうよかすみちゃん。いきなり化け物の姿になんてなって。

私達が何をしたっていうの」

 

「へぇーこの姿が化け物に見えるんですか?貴方達は何も分かっていませんね。梓、この部屋は蔓で覆ったから逃げられないから思う存分やってもいいよ」

 

「ありがとねかすみ。さあ、さよならを言うよ母さん、父さん」

 

私は体をオルフェノクの姿に変化されると、まず両親の反応を楽しもうと思った。

 

「梓……あんたも化け物だったのね。やっぱりあんたみたいな出来損ないなんて周囲の目を気にせずにとっとと追い出すべきだったわ」

 

母親は諦めているような感じだった。もう殺されることを察しているのだろうが、だからといって実の親からそんな言葉を受け取ってオルフェノクの自分でも少しはショックを受けるんだけどな……。

そんなことを考えている私の胸に父親が包丁を刺してきた。

 

「く、くそ、化け物が。家族を脅かすお前みたいな化け物は家族でもなんでもない。お前なんか生まれてくるべきじゃなかった」

 

娘に包丁を刺してきた父親か……。でもやっと本人の口から家族じゃないと言ってくれた。もっと前から言ってくれたら吹っ切れてどれだけ楽だったか。

何も言ってくれなかったから、本当は愛してくれてるんじゃないかと心のどこかで思っていた過去の自分がアホらしく思えてきた。

 

「やっと二人共正直に言ってくれましたね、私嬉しいですよ。そしてやっと理解出来ましたよ私と貴方達は血の繋がった他人だったということが。

そして、さようなら。最後にやっと私を見てくれましたね」

 

私は手に三叉の槍を出して母親と父親を刺した。彼らは刺された後こちらに手を伸ばすとその手は届かず灰になっていった。

その光景は実にあっけなくて、少しの悲しさがこみ上げてきた。

 

「さぁ、弟の部屋に行こうかかすみ。まだ決別は終わってないからね」

 

「うん、そうだね。梓の17年の苦しみに比べたらこんな一瞬で死ねるなんて、

本当に幸福だね」

 

私とかすみは二階に戻り、人間態の状態で弟の部屋を開けた。

 

「あーあ、やっぱり来たんですね、梓とかすみさん。まぁあんな両親が叫んでいたら何があったなんて大体察せますよ」

 

「あんたその割に全然悲しそうじゃないね。しかも聞こえていたらなんで逃げなかったの?」

 

「あの二人は自分達が他人からどう見られてるかばかり気にしていたから。

二人は梓だけじゃなくて僕も愛していなかった。

僕の評判しか愛していなかった。だから僕も両親には何も感じないよ。

なんで逃げなかったかって?それは梓への償いかな?

いままで散々なことしてきたからね、殺されるのは仕方ないかな〜って」

 

「本当に可愛げがない弟だよね。でも確かに、あんたは殺されてもおかしくないぐらいのことを私にしたもんね。仕方ないね……」

 

「そうそう、迷ってもしかたないよ……姉さん。本音を言うとね、僕は死ぬ時

ぐらい自分で決めたいと思っているだけなんだよね」

 

弟が胸を広げたので、私はオルフェノクの姿になって、

槍で胸をひとつきにした。

弟は刺された瞬間も笑っていてそのまま灰になるその時まで笑っていた。

 

「梓……全部終わったけど、大丈夫……?」

 

「うん、全然平気だよ。決別は済んだし家族がどう思っていたかも知れたからね。最後まで家族にはなれなくて悲しかったけど、最後には私のことを見てくれて嬉しかったよ」

 

そう、分かっていたことだ。

少しは悲しく感じることもこうすることで私を見てくれることも。

決別しようと思ったその時から。

 

 

 

 

 

 

 

 




紀伊かすみ
私立阿波学園の2年生。風紀委員をしている。
親から教育された正義に縛れていて。その反動で人外への強い憧れと興奮を持ってしまった。オルフェノクへの覚醒は梓の笑顔を見て、人外への強い思いが
合わさり、梓と一緒にオルフェノクとして生きることを決める。

ジェンシャンオルフェノク
竜胆の特性を有したオルフェノク。
体の至るとこに花の模様があり、所どころ角ばっている場所がある。
攻撃方法は竜胆の蔓や鋭利な花びらで攻撃する。
かすみの正義ではないオルフェノクとなっても正義を忘れられない思いが具現化した。

伊予 花見
梓の母親。子どものことを自分の評判の道具と心のどこかで思っており。
結果が出ない梓よりも弟の方を可愛がった。

伊予 大台
梓の父親。妻のことを溺愛していた。子どもたちのことも妻から生まれたから愛していただけで本人達を愛していない節がある。

伊予 賢太
梓の弟。なんでも出来る、俗に言う天才の優等生だが、生まれつき何に対しても感情を感じることが無くて。笑っている振りなど、振りしか出来なかった。
それについて悩んでいて、いつからか死ぬ時ぐらいは感情を感じれるだろうと思っていてどこか死を望んでいた。



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仲間達とのグループ名があるとテンションが上がる

私は言われた通り放課後に生徒会室に行くと、

もう璃々さんと紫乃さんが来ていて話し込んでいた。

 

「ああ、来てくれたか梓。これか?これはな、少し紫乃の人生を聞いていてね」

 

「…そうなんですか、かすみももうすぐ来ると思います」

 

私が言ってから三分も経たないころだろうか。

勢いよく生徒会室のドアが開けられて、廊下からかすみが飛び込んできた。

 

「すみません。遅くなりました!」

 

「いやいや、君が梓が言っていたかすみちゃん?まぁ放課後に来てくれとしかみんなに言ってなかったから遅れたとかないんだけどね。ともかくよろしくね」

 

「はい、まさか梓が言った通り生徒会長がオルフェノクだなんて、すごく光栄で嬉しいです。

私、紀伊かすみって言います。こちらこそよろしくお願いします」

 

「私のことは好きに呼んでくれても構わないからねかすみ、それにみんなもそれぞれのことは気軽に呼んでもいいんじゃないか?仲間なんだし」

 

「確かにそうですね。紫乃さん、紫乃って呼んでもいいですか?」

 

「もちろんです。じゃあ私も梓って呼ばせていただきます」

 

「ねぇ私も紫乃って呼んでもいいかな?」

 

「もちろんですよ。じゃあ私もかすみと呼ばせてもらいます」

 

 

 

「そろそろいいかな、

私からみんなに提案とこれからの予定について話そうと思う。

それでいいかなみんな?」

 

私達三人は璃々さんに対して全員が強く頷いていた

 

「私はみんなに対して今から提案しようと思う」

 

璃々さんは笑顔で私たち三人を見回して、それから私のことを見つめた。

 

「まず梓に提案するけど、家族を殺した家に一人でこれからも住むのはなにかと大変だろう?もしよければ私の家に住まないか?

私はそれなりに広い家で一人で暮らしてるから。どうだろうか?」

 

いきなりの璃々さんの提案に私は驚いた。確かに昨日家族を殺して、かすみを

家に送ってから一人で眠ったけど……。そうか、気づかなかったけど、これから家に一人で住むことになっていたのか。あんな良い思い出がない家に一人でいつまでもいるのも嫌だし璃々さんの提案に乗らしてもらおう。

 

「璃々さん。提案に乗らしてもらいます。これからよろしくお願いします」

 

「こちらこそ。それじゃあ今日、必要な荷物を整理していてね。私の家に持って行くから」

 

「それで次の提案は三人にするけど、三人共生徒会に入る気はないかな?」

 

こっちの提案にも私は驚いていた。そういえば……生徒会って会長以外の役員いなかった気がする。だからかな?

 

「驚いてるようだね。一応知ってるか知らないか分からないから言っておくと、この学園は生徒会長だけを選挙で選んで、他は生徒会長が選ぶ決まりなんだ。それでいてなぜ私が他の役人を決めていないかと言うとな。私はな生徒会長になった時から決めていたんだ。生徒会全員をオルフェノクにして学校をしっかり統治していこうってな」

 

「それで改めて聞くが、生徒会に入らないか?」

 

私達三人はそれぞれアイコンタクトをとると三人そろっては肯定する返事した。悩む必要なんてなかった。

何がなんだか分からない状態の私にオルフェノクについて教えてくれたり、私の人生に理解をしめしてくれたり、しかも家に住ましてもくれる。私は少しでも恩返しをするつもりで決めたのだ。

 

「そうか、三人ともありがとう。これで君たちは明日から生徒会役員だ。

気負いする必要はないが、よろしく頼むよ」

 

「あの〜、生徒会役員って言っても何の仕事をすればいいんでしょうか?」

 

確かに、紫乃の言う通りオルフェノクの生徒会っていっても普通の生徒会と何が違うのか分からないな。

普通の仕事だけでも大変そうだけど、できれば命はかけたくないな〜。

 

「そうだな〜。普通の学校の生徒会と同じような仕事ももちろんするけど、オルフェノク特有の仕事をしてもらうと思うよ。それに次にするこれからの予定にも関係があるからね」

 

「分かりました。その予定が出来るだけ正義だと私は嬉しいです」

 

かすみの期待と喜びに答えるように璃々さんは少し笑った。

 

「正義かどうかは分からないが、やらなければならないことだ。紫乃あのことを話していいかな?」

 

「はい、もちろんです。私はここにいるみんなを始めて信用出来る人だと思っているので」

 

「ふふ、ありがとう。それで本題に入るんだが、紫乃は普段から教室でいじめを受けているようでな、それを変えるためにオルフェノクになったようだからそれを手助けしてあげようかなと思ってな」

 

そうだったんだ……。確かに紫乃オルフェノクに頼む時はすごく必死な様子だった気がした。いじめは駄目だからね。

よし、紫乃が生まれ変わるために人肌脱ごう。

 

「いや、そんなみんなの手を煩わせる訳にはいかないから、一人でやりますよ」

 

「そんな事を言うなよ紫乃。手伝ってくれるよな梓、かすみ。」

 

「もちろんですよ。私達四人は仲間なんですから」

 

「そうですよ。風紀委員として見過ごす訳にはいきません」

 

「分かりました。じゃあお言葉に甘えさせてもらいます」

 

「意見が揃った所で計画を話していこうか。2年はもうすぐ林間学校だろ?

そこで山で班行動に入った所で、紫乃が主にいじめる主犯格を殺すんだ。

それ以外は殺すなよあまりにも不自然だからな。

梓とかすみは他のクラスだから難しいかもしれないが、

出来るだけ紫乃が上手く行くようにサポートしてやってくれ。

極力手は貸さなくていいが、ほら目撃者とかな」

 

「それとすまないが私は3年だから行くことが出来いけど、お前たちが上手くやって帰って来るのを生徒会長として待っているぞ」

 

「了解です。私の手でしっかり始末をつけます」

 

私達は同じ目的をもって生徒会初めての仕事?が始まることになった。私のすることはないことはないかもしれないけど、ちゃんとしないと死ぬ人が増えるかもしれないからね。

 

 

それから一週間もしない内に私たちの色んな意味で緊張する一泊二日の林間学校が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




短いですがキリがいいので区切ります。
次回は出来るだけ早く投稿できると思います…

それと原作キャラが出てきた場合には後書きでの説明は省いていこうかな?と思います。


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第一幕 王を守護せしベルト
灰色の山333


原作キャラの口調は怪しいです…。


私がいるクラス一組全員を乗せたバスは学校を出発して、近くにある管理された山に向かっていた。

学校からは二組、三組、四組、五組をそれぞれ乗せたバスがこのバスに着いてくるように出発していた。

 

今回の作戦ではあまり人に見られない方が被害を小さく抑えられるから

一組の私は一組を見といて、三組のかすみは二、三組を見てくれて、

四組の紫乃は四、五組を見てくれるから、

私と紫乃とかすみのクラスが離れたのはラッキーだったなぁ〜なんて今は思ってしまう。でも、ちゃんと林間学校は楽しむつもりで来ているし、安全面でも気をつけて他の人が危ないな〜と感じたら助けるぐらいの意識はある。

 

それよりこんな晴れやかな気持ちで行事に参加するなんて初めてな気がする、

だって楽しい行事でもこれが終わったらまたあの生活かーと思ったら気が滅入ってしまってばっかだったからね。

 

「梓どうしたん?そんなめちゃくちゃ良いことありましたみたいな笑顔をして」

 

周りの女子達も私の顔を見て、何があったかぐいぐい聞いてくる。

そんなにも嬉しそうな顔してたんだ…。

 

「あー分かった。最近入った生徒会が思ったよりも楽しかったんやろ?」

 

「あーうんうんそう。生徒会長が思ったよりも良い人で、

『いきなり勝手に入れてごめんね、本当に適当にしちゃったからさ』

なんて言ってくれて、

しかも会話も弾んで楽しかったなと思い出したらちょっと笑っちゃた」

 

嘘ついちゃったな。でも本当の事言うわけにもいかないから、これは仕方ない

ごめんね。

 

「確かに、会長さん前にスピーチしてる姿見たけどすごくかっこよかったし、

それでいて優しいとかめちゃ憧れるやん。梓も近くで見たからよりそう思ったやろ?」

 

うん、正直言って憧れる。

一緒に暮らし初めてからそれを感じることがより多くなっている。

私生活でも全然欠点とかダメな所もなくて、料理が出来る、部屋も綺麗、服のセンスも良い、完璧だな〜っていつも憧れる。

しかも同じオルフェノクっていうところも良い。

絶対強いだろうし、かっこいい姿なんだろうな。

まだ見せてもらったことないから帰ったら見せてもらおう。

 

「うん。三年生の先輩の中で一番憧れるね」

 

「そやんなー。そういえば、三年生っていえばさ部活の先輩から聞いたんやけどクラスメイトの女子三人が1週間ぐらい前に行方不明になったらしいねん」

 

あー私が図書館で殺しちゃった先輩の事だろうな。璃々さんが『後始末は私が

やっておくから心配しなくていいよ』って言っていたから、それのおかげで大事になってないんだろうな〜。璃々さんには感謝しかないね。

 

「そうなんだ。見つかるといいね」

 

「結構柄は悪かったらしいねんけどな、でも行方不明って聞いたらたまに噂で

聞く都市伝説が関係してそうで怖いねんな」

 

みんなが頷いたり返事をしているけど、私全然都市伝説とか聞いたことないだけど。自分が関わってるだけどなんか気になるな。

 

「え、都市伝説ってどうなの?私聞いたことない……」

 

「梓聞いたことないんや?じゃあ話そうか。

最近色んな所で人が行方不明になるニュースがやってるやん?

それには怪物が関わってるらしいねん。

なんか灰色?白?そんな感じの色合いの怪物が人を灰にして回ってるらしいねん。

灰になって死体も残らんから行方不明にされてるんやって。

それとその怪物、人に化けるらしいから梓も気をつけてや。

案外うちらの学校にいるかもしれんから」

 

確かにニュースで行方不明事件多かったと思ってたけど、それってオルフェノクが関わってたのか全然気づかなかったな。

そうか私が思ってるよりオルフェノクっていっぱいるんのかな?

それに学校にいるかもか……まさか私なんてみんな思わないよね。

 

「確かに怖いね。私も学校とか帰り道とか気をつけてるよ」

 

そんな色んな意味で身近な話題が終わってからは特に内容の無い世間話をしていたけど、そんな事をしてる内に泊まる予定の山荘のホテルに着いたみたい。

 

 

♦︎ ♦︎   ♦︎

 

 

私達はホテルで、山に詳しい人の説明を聞いていた。山の人曰く奥に行きすぎると崖があったり熊が出るらしいからロープより先に行っては行けないらしい。

作戦のためにはその先で主犯格達を殺した方がいいかな。

人に見つかる確率が低いし。

 

その後私達は午前中で森林の説明や森の様子などについての講義や見学をして昼食を食べた。いよいよ午後からは山の中へ自由探検だ。

探検する人は一人じゃなければ学年の中から何人でも自由に決めていいみたいだから、

作戦を確かめるためにかすみや紫乃ととりあえず合流しようかな。

山の入り口でまだ待機をしてた二人を見つけると私とそこに合流した。

 

「やぁ、梓。とりあえず歩きながら話そうよ」

 

「うん、そうだね。かすみもそれでいいでしょ?」

 

「もちろん、私は二人の意見に従うから」

 

私達三人は山の頂上に行くためにある道を歩きながら話すことになった。

 

「私聞こえたんだけど私をいじめてる主犯格の人達ロープの奥に行くらしいの‥」

 

「ラッキーじゃん。わざわざ人に見つからない場所に自分達から行くなんて」

 

「うんうん、その通りです梓。

これは私達もその主犯格達をつけたほうがいいかもしれませんね」

 

「そうだね。私あの人達の行く方向を見てたから、お二人の通りチャンスと思ってつけてみましょうか」

 

私達は意見がまとまったのでそいつらをつけるために山の中に入っていった。

それそうと、もっと紫乃も自信を持って発言したらいいのに、今回の主役は紫乃なんだから。

でもたまに薄く笑みを浮かべてるから楽しみにはしてるんだろうね。

 

私達は主犯格達をつけるためにそれなり進んでいたが、ロープを超えて少し進んだ所にそいつらはいた。

三人でアイコンタクトをして音を立てないよう進んだ。

それから一定の距離を離しながらそいつらつけていたところに、私の耳におぼろげに女性の声が聞こえてきた。

 

「だれか……いませ……んか。たすけ……て」

 

その声はすごく弱っていて、オルフェノクの聴力を持ってしても少し聞こえるぐらいだった。二人も声が聞こえたのか、どうしようかという風に立ち止まった。

 

「二人共声、聞こえた?」

 

「ええ、少し聞こえにくかったですけど」

 

「これは助けに行った方が良いような気がします」

 

「う〜んじゃあ私が助けてに行くから二人は作戦を決行しといて」

 

「分かりました。こっちは私達に任せて梓さんは心配せずに行ってください」

 

「ありがと。二人共成功を祈ってるよ」

 

 

♦︎ ♦︎ ♦︎

 

 

私は声のした方向へ安全に気をつけながら向かった。

ロープを超えていたこともあり険しい道のりだったのだがなんとか声のした位置へ辿り着いた。

そこには木にもたれかかっている同い年ぐらいの女性がいた。

彼女の容態を見てみると気を失っているだけようで、格好は都市部で見かけるような格好だが所々服が破けていて擦り傷が目立っていた。

しかも彼女はカバンを背負って手にスマートブレインのロゴが入ったアタッシュケースを持っていた。

 

「う〜んどうしようかな?アタッシュケースは大事そうだし私が持って、この人は私が頑張って背負っていこうかな」

 

私はオルフェノクになった影響なのか身体能力が上がっていて、

彼女一人くらいならかつげる自信があった。

そして自分の見立て通り彼女をしっかりかつぐことが出来たがかすみとも紫乃とも結構距離が離れてしまったから

彼女が目覚めるまでは近くに見えている川で介抱することにした。

 

川に着くと砂利の場所に私のカバンを枕代わりにして彼女を寝かせた。

持ってきていたタオルを川の水で濡らして擦り傷の血などを拭いたりして、

今出来そうな事は大体出来たこと思う…。

このスマートブレインのアタッシュケースも気になるけど勝手に開けるのはさすがにダメだよね。

 

 

それから十五分ぐらい経った頃だろうか

彼女は意識が目覚めて周りを見回していた。

 

「あ、あの助けていただいたんですよね?ありがとうございます」

 

「いやいや、無事でなによりだよ。そういえば、私伊予梓って名前なんだけど名前はなんて呼んだらいいかな?」

 

「私は木村沙耶っていいます。気軽に沙耶て呼んでください」

 

「分かった沙耶。それよりもなんであんな場所で倒れていたんですか?」

 

「えーと、……いきなり襲われて人がいない場所へ場所へと逃げてきていたらいつの間にか山に来ていて足を滑らして落ちて気を失いました…」

 

え、襲われてたの?ずいぶん物騒だなと一瞬思ったけれど、

何もない人がいきなり襲われるものなのか?

やっぱりオルフェノクがいっぱいいるスマートブレインのこのアタッシュケースが原因なのかな……

 

「そのアタッシュケースの中は何が入ってるんですか?もしかしたらそれが原因かもしれないので」

 

「いや、これはいくら命の恩人だと言っても教えることは出来ません。助けていただいた方を巻き込む訳にもいきませんから……」

 

やっぱりそのアタッシュケースには何かあるんだろうな、もしかしたらスマートブレインの重大秘密だったりして。まさかね……。

 

私がケースの中身を考えていると、川の下流の方の道から少しワイルド感?

溢れる男が近づいてきた。

 

「ああーやっと見つけた。結構探したんだからな、じゃあ一応聞くけどそれ渡してもらえないか?」

 

「まだ追って来ていたんですか……。

前回も言いましたが父さんから託されたこれを渡すことは出来ません」

 

「そうか、奪うしかないか……でもそのデルタギアを使われてチームを組まされたあいつみたいに灰になるのはいやだからな。頭使って奪うか」

 

会話に置いていかれた私が聞いていて分かったことは、沙耶はあいつともう一人のやつに襲われてたこと、そして多分あいつらはスマートブレインの社員で、ケースの中のデルタギアを使われて?もう一人のやつが灰になったこと。

 

整理すると襲って来た二人はオルフェノクで、ケースの中にあるデルタギアはオルフェノクを灰にすることが出来る物でスマートブレインが回収しようとしているってことになるのかな……。

 

私がそんな考えを巡らせている間に男はこちらに一瞬で近づくと私の後ろに回り、首に指を押しつけてきた。

 

「さぁお前がデルタギアで変身すると俺はオルフェノクに変身してこいつの首が一瞬で飛ばすぞ。分かったならとっとと渡せ」

 

あーそんなことするんだ。沙耶が渡すとかどうかは分からないけど、どっちにしても良いタイミングが来たらオルフェノクに変身して反撃しようかな。

二人とも驚くだろうな〜、でも彼女に変な目で見られるのはいやだな。

 

「……その人は命の恩人でこのベルトとは関係ないので早く解放してくだい。……ベルトは渡すので」

 

渡す選択肢を取るんだ……優しい人なんだね。でも沙耶の顔を見れば分かる納得してなくてこの男を殺すか、逃げたいんだなと。

 

「渡す必要なんてないよ。私は自力でこの男から逃げるから」

 

「なに勝手に言ってやがんだよ。お前俺の事なめてやがるな、少しびびらせておく必要があるみたいだな」

 

男はオルフェノクに変身して私の恐怖心を煽って来た。

そのオルフェノクは全体的にゴツくて片手に金棒を持って猪がモチーフなのかなと思う見た目をしていた。

確かにこの見た目なら普通の人はびびってなにも喋らなくなるだろう。

でも私はその程度じゃひびらない。

 

「は、見たか小娘。お前がいくら威勢を張ろうが意味が無いんだよ」

 

「ねぇ、おじさん私から見たらそれ滑稽ってやつだよ」

 

オルフェノクの影が男に変化して私を煽ってきたので。私も煽り返すとオルフェノクに変身した。

 

「う〜ん、どうかなおじさん?私の方が強いと思うんだけど?」

 

「チッ、お前もオルフェノクなのか、しかもお前あいつの味方をするのか……」

 

私は男を殴ってのけぞった隙に一旦沙耶の元へと戻った。

 

「オルフェノクだったんですね……。それに私の味方してくれるんですか?」

 

「もちろんだよ。そのベルトであいつと戦えるでしょ?一緒に戦おうよ」

 

沙耶は頷くとアタッシュケースを開けてデルタギアを取り出し腰に装着する。手に持った無線機ような物に『変身』と言って『standing by』と鳴ると、

ベルトにはめ込んで彼女の体はベルトの音声『complete』と共に白と黒の戦士になった。

 

「さぁあのオルフェノクを倒しましょう梓さん。私のデルタの強さを見せてあげます」

 

沙耶の変身したデルタ?は私の中の恐怖心が上がるような感覚がしていたが、はっきり言えば少し恐怖を感じてしまっていた。

 

私は手に三叉の槍を生成し、こちらに近づいてきたオルフェノクの金棒と打ち合って、そこに沙耶が『ファイア』と言って援護射撃をしてくれた。

それを受けてのけぞったオルフェノクに私はすかさず蹴りを入れた。

 

「ぐ、お前らな。もう容赦はしねぇ」

 

オルフェノクは足を四足に変化されると私に突進して来た。

私はそれをもろに受けてしまったがその間にも沙耶が射撃を当ててくれて、

少し怯んだようだった。

 

「梓さん。このまま動きを止めてください。止めをさします」

 

沙耶の願い通り私は槍をオルフェノクに向かって投げつけた。それが刺さった時に沙耶は銃にメモリー?をつけると『チェック』と言ってオルフェノクに向かってポインターが伸びた。

動けなくなった隙に沙耶はジャンプをしてそのままキックの姿勢になり、

オルフェノクの体を貫いた。

貫かれたオルフェノクは赤い炎をあげて灰になった。

 

私と沙耶は変身を解くと、顔を合わせて笑った。

その沙耶の顔には私に対する恐れや偏見なんてなくて、ただ純粋に強敵を倒した笑顔のみがあった。

 

「梓さん今日は本当にありがとう。私は知り合いの人達と合流することにするよ。事情を知っている人ばっかりだから」

 

「そうなんだ。私の方こそありがとう色んな経験が出来たよ。それで何かあったら…はい、これ私の連絡先。連絡してきてね」

 

「もちろんだよ。梓さんって強いから、どうしようもなくなった時に連絡するね。その時にまた会おうね」

 

デルタギアというのにも色んな疑問が浮かぶけど、今それを聞くというのも野暮というものだろう。スマートブレインがあれを狙っているというのも気になるが、それは一連の出来事を話すと共に璃々さんに聞いてみようかな?

 

それからお互いがお互いを心配する素振りを見せながら、

沙耶は山を降りていって私はかすみと紫乃のいた場所へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




原作キャラありのオリジナル展開です。
時系列は原作5話、6話あたりです。
次回か次々回は原作と少し関わるかなと思います。
次回は大幅に遅れると思います。

ボアオルフェノク
猪の特徴を有した大きな体格をしたオルフェノクで、
スマートブレイン社員が変身する。
攻撃は金棒を使った大振りが多く動きが遅いが、
突進態に変化すると素早い速度になって突進を仕掛けてくる。
使徒再生攻撃は金棒の針一本一本が伸びて相手の心臓を貫く。


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邂逅せしその男の名は

遅くなってしまいすみません。
原作の場面、原作キャラのセリフに違和感があるかもしれません。
ありましたらご指摘頂けると嬉しいです。


私は沙耶を見送ってから、紫乃とかすみと合流するために二人と別れた場所から少し進んだ所に行くと、そこには五、六ぐらいの灰の山とオルフェノクに変身している二人の姿があった。

その光景を私は終わったんだなと何の疑いもなく察する。

 

「あ!帰ってきたんですね梓。ふふ、見てください私復讐を完了したんですよ。

これも梓が私をオルフェノクにしてくれたおかげですよ。改めてお礼を言わせてください。でも、やっぱりあれですね私をいじめていた彼らには特に高尚な理由もなかったのが少し残念ですね」

 

人間態に戻った紫乃は復讐が出来た喜びからかいつもよりもテンションが上がっていて、普段からは信じられないほどの満面の笑みをしていた。

 

「梓。こっちは目撃者もいなくて問題なく完了したよ。そっちはどんな感じでしたか?」

 

紫乃と比べると比較的落ち着いている様子のかすみはこちらに当然の疑問を尋ねてきた。

でもどうしようかな……沙耶さんのことを言うのは簡単だけど、持っていたものとか襲われたりもしたからな。とりあえず帰って璃々さんに全部報告してから

それからみんなと共有でもしようかな。

 

「うん。こっちも問題なくて終わったよ。助けた女の人もいい人だったから」

 

納得したような様子の二人と一緒に、私達は何食わぬ顔で集合場所となっていたホテルへ戻った。

 

 

私達がホテルへ帰ってから二時間もすると戻らない生徒に気づいたのか、教師達が色々動き回る様子が見られた。

それから学年全員へ目撃したかどうか質問をしたり、捜索もされたようだったけど行方不明の生徒は見つからず。

それから警察へ行方不明届けが出されて一応の決着は着いた。

 

 

 

♦︎ ♦︎ ♦︎

 

 

 

私達は予定通り一泊二日でに家に帰れてホッとしていた。自分達がやったのだからあれなのだが、変に疑われたりせずに帰れたことが自身の心に安心感があった。

 

「それで一泊二日の林間学校はどうだったんだ?楽しかったか?」

 

私が安心感に浸ってソファーで寝転んでいると、お風呂から上がってきて楽しそうな顔をしている璃々さんに質問された。

こんな聞き方をしているが多分璃々さんが聞いているのは復讐とかそういう関連でどうだったのか聞いているのだろう。

私はその復讐のことと絡めてデルタや沙耶についてのことを話した。

 

「へぇ〜梓は復讐に参加出来なかったのか。そしてスマートブレインにデルタと呼ばれたものに……沙耶が変身したのか」

 

璃々さんはいつもと違って何かを思うところがあるのか顔を俯かせて深く考えこんでいるようだった。

 

「それで、璃々さんなら何か知っているかなと思って。まだ二人には言っていないので璃々さんに言うかどうかの判断も委ねたくて」

 

「いや、私は……知らないな。それで二人には私がある程度調査してから言うことにするよ。それまでは梓は言わないでくれよ」

 

考えがまとまったのかいつもの感じに戻った璃々さんからの言葉を受けて、そういえばと私はバスの中で考えていたことを思い出した。

 

「分かりました。それはそれと不意に思ったんですが、璃々さんのオルフェノクの姿って見たことないな〜って」

 

「あーそういえばそうだったっけ?別に隠してた訳では無いから全然大丈夫だよ。それじゃあ梓のためにいっちょ見せてあげますかな」

 

璃々さんはそんな風に気合いを入れて言うと、彼女の体はオルフェノクに変身していった。

その体は私から見るとすごく魅力的で美しい姿をしていて、部分的に派手な所と地味な所が分かれてて目立つ羽が所々から生えていた

 

「わぁーすごい美しいですよ璃々さん!私の姿も璃々ぐらい綺麗なら良かったのになぁ〜」

 

「そんな事ないよ、梓のオルフェノクの姿だってすごく魅力的だなと思うけど

……ってうわっ」

 

私は璃々さんのそんな言葉を聞いている内についついと抱きついてしまっていて少し驚かせてしまった、しかも自分までオルフェノクに変身してしまっていた。

 

「えへへ、すみませんついつい抱きついてしまいました。どうせなのでこのまま寝るまでゆっくりお話しでもしましょうよ」

 

「まぁ確かにたまにはこういうのも悪くはないな……じゃあこのまま寝るまでな」

 

それは孔雀と人魚の姿を模した二人の灰色の怪物が抱き合っている光景で、常人達は恐れを懐ようで、本人達は幸せを感じれる空間であった。

 

 

 

 

♦︎ ♦︎   ♦︎

 

 

 

私、紀伊かすみには俗に言う日課というものがある。

その日課とは夜廻りというものである。

一泊二日の林間学校から帰ってきてもそれは変わらない。

オルフェノクに覚醒する前からやりたかったことではあるのだが、高校生が夜分に出歩くというのも危険であり、しかもあまり帰っては来ない両親や警官などに見つかるとめんどうなことになるので出来なかったのだ。

だから覚醒してからは毎日のように夜廻りに出て犯罪が起きていないか、悪人はいないか、困ってる人はいないかなど探していた。

 

「やっぱり、今日も困ってる人とか犯罪とかはなさそうだな」

 

と私も思っていたのだが、近くから金属音と思われる音が聞こえてきた。

ついに夜廻りで収穫で得ることが出来たかと思い、

私は音のする場所へ走っていった。

そこには腰に携帯電話をはめているメタリックのボディをした人?と馬のようなオルフェノクと蛇?のオルフェノクが戦っていた。

おおーやっぱり初めて見るオルフェノクは良いな。

一人一人全然違う姿だからそれぞれが象徴しているものが違って、

初めて見ると人外好きの私としては少し気持ちが昂ってしまっていた。

 

見たところオルフェノクの二人とメタリックの二体一のようだったのだが、私はどちらに大義名分があるか分からなかったので、手を出せずにいた。

お互いに白熱した戦いだったが遂に馬のオルフェノクとメタリックの奴がお互いに相打ちのような形になり、

メタリックの方は私の見えない所に飛んでいってしまった。

 

「あのメタリックはなんなんだろう……。オルフェノク相手にも普通に渡りあっているし」

 

馬のオルフェノクは人間態に戻って動かないようになっていて、

それを見かねた蛇のオルフェノクがその人を背負って行こうとした。

おお、これは良い人かな?ちょっとチャラそうな格好をしているが、

そこは大した問題では多分ないだろう……とか思っていると

少し進んだ所で馬の人をほってこっちに向かって来てそのまま通り過ぎて行った。

 

「ちょちょいちょい、こんな場所に仲間を置いていったらダメですよーー!」

 

私はついつい柄にもなく叫んでしまったのだが、チャラ男には届く事はなくそのまま見えなくなってしまった。

どうしようかなと思いつつも私は馬の人に近づいていって、

息があることを確かめてこのまま置いていくのもあれなのでとりあえず家に持って帰ろうと思ったのだが。

 

「あ、意外にこの人重いなどうしよう。うーん、私がオルフェノクに変身して

運べばいいか」

 

私は言葉通りにオルフェノクに変身して、腕などから蔓を出してそれを巻きつけて家にまで運んでいった。

 

 

♦︎ ♦︎ ♦︎

 

 

 

私はベッドに馬の人を置いてそれなりの看病をしていると、

彼は目が覚めたようでいきなり飛び起きて周りを見回した。

 

「う、君は?それにここはどこかな?」

 

彼は戸惑っているようだったのだがそれでも声色は優しくて、私としてはそれなりに良い第一印象だった。

 

「私は紀伊かすみと言います。ここは私の家ですが、今は私以外誰もいないので安心していください」

 

それを聞いた彼は少し考えるこむようにしていた。

 

「えっと、俺は木場勇治。助けたもらったみたいだねありがとう。それと近くにもう一人男がいなかったかな?」

 

男って、あのチャラ男のことかな?なんて説明すればいいかな……。にしてもこの人自分がオルフェノクだと私にバレているとは考えてはいないのかな

 

「チャラそうな人なら木場さんがいた場所にいんですが、いつの間にいなくなってしまいまして」

 

木場さんは「そうか」と口にすると、また少し考えるような仕草をしてから、

こちらをゆっくり見つめてきた。

 

「どうしたんですか木場さん?私の顔に何かついていますかね?」

 

「君は俺のことが怖いって思っている?」

 

これは私が木場さんのことをオルフェノクと知っているか遠回しに聞いてきているな。さぁなんて返そうかな……。

 

「いや、思っていませんよ。私だってオルフェノクなんですから」

 

私は言葉の後にオルフェノクに変身すると、木場さんは一歩下がって戸惑って顔をしながらも体を身構えた。

攻撃するつもりはないからそんなに身構えなくてもいいのにな……。

私としては初めて生徒会のみんな以外のオルフェノクと会ったから色々話を聞きたいだから。

 

「私がオルフェノクなのは事実ですけど、攻撃するつもりはありませんから安心してくだいよ木場さん」

 

「驚かせないでよ。それより攻撃するつもりはないってことは紀伊さんはスマートブレインの人間じゃないの?」

 

人間態に戻った私の言葉を聞いて、木場さんはすぐに笑顔になってくれた。

それを見てこの人は良い人だな私はそう確信することにした。

てか、スマートブレインってオルフェノクをサポートする会社らしいんでしょ?

それがなんで、木場さんはスマートブレインに狙われてるんだろう?

 

「え?、スマートブレインってオルフェノクの味方なんですよね?

なんでオルフェノクの木場が狙われているんですか?」

 

「そうか、紀伊さんは知らないのか……。実はスマートブレインはオルフェノクに人間を襲って仲間を増やせと言ってくるんだ。

それをやらないと俺のようにスマートブレインから狙われるんだ。

ただ俺は人間との共存を望んでいるだけなのに…」

 

木場さんの表情と言葉を見る限り本気なんだろうな。

人間との共存か、無理とは思わないけど険しい薔薇の道になるだろうな。

私は奇跡的にスマートブレインに見つかっていないだから良かったけど、

私だったらどうしていたんだろう…。

梓はどうするんだろう。私はまだ決められそうにないな。

 

「木場さんの道は分かりました。

私はまだどうするかは決められないけど、

木場さんのその道がどうなるのかは見たいとは思いました。

何かあれば言ってくださいねサポートぐらいは出来ますから」

 

私何言ってるんだろう……。

どうするか分からないとか言ってるくせに、サポートをするとか。

でも、多分だけど、人間を何の理由もなく襲うこそに罪というのを少し感じるからかな。

そうだったら、私はまだ人間としての正義を持ててるんだろうな。

 

「ありがとう!そう言ってくれるだけで嬉しいよ」

 

笑顔の木場さんと共に少しの会話を楽しんだ後、

私はもう行くと言う木場さんを玄関まで送ってまた話そうと約束をして、

私の木場勇治さんとの初めての出会いは終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




段々とオリキャラと原作キャラとの関わりを持たせていければなと思ってます
次回は多分、夢と梟の話になるかな〜と思います。
感想、高評価、誤字脱字、よろしくお願いします。


ピーコックオルフェノク
阿波璃々が変身するオリジナルのオルフェノク。
孔雀をモチーフとするオルフェノクで、色が派手な部分と地味な部分はっきりと分かれている。素早い動きと手数の多さを得意としていて、
多少の洗脳程度なら出来る特殊能力がある。
璃々の人より強い傲慢さと人への優しさ、どちらの性別も愛せることなどに、
影響されて真逆の特徴がある雄と雌どちらの孔雀の特徴を持つオルフェノクとなった。飛翔態も存在している。



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夢の観覧者555 前編

原作との大きな矛盾があったらお知らせ下さい。



 というわけで明日から私と梓は二人で会長と副会長として、

高校大学交流で山手音楽大学に行くことになった。

一応言っておくが今回のこれはオルフェノクとは関係ない」

 

璃々さんからの生徒会招集で集まった生徒会役員の私達は毎年やっている

らしい高校大学交流で今回はそれなりに近くにある山手音楽大学に行くらしい。

私としてはオルフェノク関係じゃないのは少し残念な気もするが、

一応生徒会役員なのでやる気を出してやっていこうかなーとは思う。

 

「私と梓で行く理由だがまぁ普通に会長と副会長だからだ。

留守番として紫乃とかすみにはいてもらうが、私達が行くのは三日だから特に何かをしてもらうとかなんてのはない」

 

璃々さんの段々とした説明に素直にすごいなーと思えた。

いつもも確かにクールで高尚なイメージだが仕事の時はもっと声色は落ち着いていて瞳も真剣そのものだった。

 

「あと、いまさらだが……お前ら三人ともわざわざ一々行動を私に報告する義務は無いんだから。確かに重要そうなオルフェノクを殺す道具やスマートブレインの秘密なんかは進んで言ってほしいが、

他のことについては私は文句を言うつもりはないからな。

それだとなんだか友達じゃなくて仕事仲間みたいになるからな……」

 

璃々さんが最後にデレた気がしたので、そんなとこも良いなーなんて呑気に考えていた。

 

「最後に全員に注意しとくが、腰にベルトを巻いて変身する奴には気をつけろよ。私の方でも調査しておくがオルフェノクを殺せるらしいから」

 

紫乃がそれなりに驚いているが、私やなぜかかすみも驚いた様子を見せなかった。璃々さんはそれらを一瞥すると話は終わりとばかりに携帯を触りだし私に明日の集合時間、場所などをメールで送ってきた。

そこから多少の話し合いや疑問の投げ合いはあったが特に進展はなく終わった。

 

 

  ♦︎ ♦︎ ♦︎

 

 

私と璃々さんは山手音楽大学に行くために朝早くから

大学近くに集合していた。

 

「さてと、梓それじゃあそろそろ大学に向かおうか。

……そういえば梓にはまだ言って無かったけど、山手音楽大学は名前の通り

音楽系の大学でね才能がある有望な人達が夢を持って多く入ってくることで

有名なんだ」

 

「そうなんですね初めて聞きました。夢を持って入ってくるですか……。

私夢ってまだもったことがないからなんか羨ましいですね。

そういえば、璃々さんはなにか夢って持ってるんですか?」

 

私は璃々さんから山手音楽大学についての説明を受けてから、

ふと自分の夢について考えを巡らせてしまった。

それで思い出したが、

私って生まれてこの方夢を持ったことが無いんだなぁーって。

夢を持つ人が羨ましいと思ったし、いまだって実際に思ってる。

それで身近の人の夢って知らないと思ってつい聞いてしまった。

 

「う〜ん私の夢か。時期が来てから叶えられそうな段階になったら話そうかな?それか気が向いたら話すかな」

 

璃々さんが話し終えた頃に私達は山手音楽大学に着いていた。

そこは広いんだなと感じほどには広くて趣がある感じの古さの建物で、

人もそれなりに多くいてさすがは大学だなと感じざるを得なかった。

 

「ほら、梓何ぼーっとして眺めてるんだよ。さっさと理事長室へ行くぞ。

私たちがこんな所にいても目立つだけだからな、あいさつはしに行かないと」

 

私は璃々さんに連れられて重苦しい雰囲気の漂うであろう理事長室へ挨拶をしにいった。

理事長は私の想像と違ってそこまで重い人では割とフランクな人なのはありがたかった。

ただ理事長が言うには、「見学ついでに

生徒思いの先生がいるから会ってみてくれないかな?」らしいから私と

璃々さんはその先生を探して館内そして外に出た。

 

 

♦︎ ♦︎ ♦︎

 

 

私と梓が外に出て先生を探して人が少ない所を歩いていると、

運が良いのか悪いのか分からないが学生がオルフェノクに使徒再生されている

所に遭遇してしまった。

私としては今回はオルフェノクと関わることが無いかと思ったやっていたんだがな、しかしこんな大学の奥の方でわざわざ生徒を殺すってことは大学の外部の奴の犯行では無いだろうな。とすると……やったのは教師か生徒かな?

 

「璃々さん!あれって」

 

「ああ、オルフェノクだなしかも計画的にやったと見えるな。兎に角追うぞ」

 

相手のオルフェノクが気付いていないのを良いことに私と梓はその梟の様なオルフェノクを追っていった。

 

追っていくと、開けた場所に出てそこには梟のオルフェノクとおどおどしてる男とベルトを腰に付けている髪の少し長い男がいた。

これは棚からぼたもちだなと感じるほどに幸運だった。

偶々大学に行ったらオルフェノクと遭遇してしかもオルフェノクを追うと調査しようとしていたベルトを持った男が現れる。これが幸運と言わずしてなんと言えたか。

 

私が考え事をしている間にベルトをもった男は携帯電話で数字を入力すると

『変身』といって携帯電話を差し込み、銀の身体に赤いラインの通ったものになった。

 

「璃々さんもっと近づいて見ましょうよ。調査対象がいるんですから」

 

「いや、このぐらい離れた方が良い」

 

「どうしてですか?もっと近づいた方がよく観察できると思うんですが」

 

「それもそうだが、あの梟のオルフェノクは戦い初めてから少し逃げおうとする素振りがある。もし逃げた場合にすぐにオルフェノクに変身して追えるようにこのぐらいの距離が良いんだ。

そして戦いが終わったら梓はベルトを使っていた男を追え。私はあの梟のオルフェノクを追って正体を知ろうと思う。分かったか?」

 

「分かりました!さすがです璃々さん。そこまで考えが回ってるなんて」

 

私達が話している間にも戦いは進んでいて、

メタルの方が優勢に見えていたが梟のオルフェノクが煙幕を張った時だ。

メタルの方は見ているようで手に何かをはめたと思ったらそれで梟のオルフェノクを殴りにいったのだがそれを利用して逃げられてしまった。

 

私はそれを見るなりオルフェノクに変身した。

 

「あっちの方は任せたぞ梓」

 

「はい、任せてくださいあの人達の家をつとめて来ます」

 

私は梓の言葉を聞き終えると飛翔態に変化して、まだ姿が少し見えている梟のオルフェノクを追った。

 

 

♦︎ ♦︎ ♦︎

 

 

私が追っているとは梟のオルフェノクは気づいて無い様だ。

そして不意に大学内の人から死角になっている場所に降り立ったと思うと、

人間態に戻って何食わぬ顔で生徒に混ざってさっきのおどおどしていた

男からはバレなかった様だ。

その教師と思われる奴は内心笑ってるんだろうな。

でも甘いんだよなぁしっかりと上も見て人間態に戻らないと。

私も教師と同じ場所に降り立つとしっかりと周りを見渡して人間態に戻った。

 

その戻った教師の後を私は追っていた。

そしてその教師が教室に入って外から誰もいない事を確認すると

私も中に入っていった。

 

「初めてまして、私立阿波大学から来ました阿波璃々と言います。あなたは

ここの教師ですよね」

 

教師の男は戸惑った様子を見せたが、少し考える仕草をすると思い出しかのようにこちらに笑顔を向けてきた。

 

「ああー君が理事長の言っていた高校からの交流生だな。私のことは他の生徒が呼んでいるようにに先生とでも呼んでくれ。よろしく」

 

さっき生徒を殺したオルフェノクとは思えないほどの清々しい笑顔を顔に張り付けて私に握手を求めて来た。

私もそれに対応するように自分の教え子かもしれない奴を殺したクソみたいな

先生に対しての嫌悪感を心の奥に押し込めて

貼り付けた笑顔で握手に応じた。

 

それから私と先生は特に中身の無い会話をそれなりにし終えて。

明日と明後日もこの大学にくる旨を伝えて私は今日の所は別れた。

私のあの先生への今の所の評価としてはあまりはっきり言って良くは無い。

話してみて確かに先生と呼ばれるほどあってしっかりとした音楽知識はあるようだった。

しかしときどき自分はそんなにもすごい人物じゃないと自虐をすることが度々あり本心だろうなとは思った。

なによりも上手く取り繕っているようだったが少し音楽に対する情熱というのが欠けているようにも感じる。

まぁこんな事まで考えておいて私が勝手にしているだけだから

当たっているかどうか分からないが。

 

 

うん?考え事に耽っていたら電話がかかってきていたみたいだ。

誰からかな?梓か、ということはベルトの男の家が分かったのか。

 

「もしもし梓か?」

 

「はい梓です。璃々さんあのベルトを持っている男とおどおどしてた男が住んでいる家が分りました」

 

「よくやったな。やっぱり優秀だな梓は。それで大体どの辺りなんだその住んでいる家は?」

 

「ええっとそれがその家店なんですよ。西洋洗濯舗菊池って書いてあるんですけど知ってます?」

 

「いや、知らないな。だが少し見たことぐらいはあるとは思う。

そうだな梓はそのまま不自然にならない程度に接触してくれ。

だが明日も山手音楽大学に行かなくてならないから遅くならないようにしろよ」

 

「はい、了解です!私頑張ります」

 

あんまり頑張り過ぎないようにしてもらわないと

明日も明後日も大変になるだろうからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




先生の心情予想は想像で書いています。
今回は長さの都合上前編と後編に分けさせてもらいました。

一応主人公は今の所生徒会四人という感じで書いてますが
そうなるとヒロインってどうなるんだろう…。




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夢の観覧者555 中編

今回も話のちょうど良い所で切りました。
短くなってしまいすみません。

それとUA3000突破しました。
ここまで作品を読んでいただき感謝です。



私は璃々さんに言われた通り不自然にならない程度に接触しようと思って、

とりあえずは普通に店に入ることにしたのである。

店の中に入るといかにもといったクリーニング店で、奥からは先ほど見た

気の弱そうな男が出てきて、こちらに屈託のない笑顔を向けてきた。

 

「いらっしゃい、あれ?初めてのお客さんだね。初めまして。僕はこの店の

一応店長の菊池啓太郎だよ。よろしく」

 

店員としては少し距離が近いと感じることは無いことはないことはないのだが、この啓太郎という人物の笑顔と言葉の節々から分かる人の良さを感じると

私は当初の目的を忘れてはないがほとんど警戒を解いていた。

 

「えーと…、私貴方達が持っていたベルトに関して調査するということを依頼されていてそれで貴方達に質問などをしようと思った次第です」

 

嘘であるのだがあながち間違っていない事でしかも納得してくれそうなことを

言えたことに私は心の中でやってやったぜとガッツポーズをしていた。

 

「ああ、そういう事なら中で話しましょうか、どうぞどうぞ」

 

少し残念そうだがそれでも拒否することもなく啓太郎は中にを案内していったくれた。

 

「たっくん、真理ちゃん。ベルトのことで調査している人が来たよ」

 

啓太郎が呼んで二人は椅子に座ると少しこちらを警戒するような様子を見て

私は『あれーもうちょっと嘘ついてもよかったかな?』なんて思っていると啓太郎が「遠慮しないで大丈夫だよ」と言ったので私は座ったのだが、

なにせこういった情報収集はやってこなかった人生で、緊張をしているので

私は仮面を被ることで緊張を誤魔化すことにした。

 

「えー私は極秘の依頼でベルトのことを調査することになった探偵の右杏子と言います。今回はベルトを所有しているということでベルトのことを見に来ました」

 

適当に考えた偽名を使うことになったけど問題ないでしょう。多分この人達もベルトを持ってるってことはあの沙耶と同じように父さん?という人からベルトを託されてスマートブレイン社員のオルフェノクから追われただろうしスマートブレインの名前は使いにくい。

 

だからといって極秘の依頼とか言っちゃけど聞かれた時はどうしようか?

しかもついつい高校生のくせに探偵と言っちゃったけど大丈夫かな?

 

「この真里と変わらないガキが探偵?依頼者が誰かは知らないがこんな奴に依頼するなんて俺達がどんな目に合ってるか分かってないな」

 

「こら巧、せっかくこのベルトについて知ってそうな人が来てくれたんだから、もっと礼儀正しくして情報共有しようとしよ」

 

巧と呼ばれた男の至極真っ当なツッコミに対して真里と言う少女のそれなりに

筋の通ったツッコミが入り、私はとりあえずは第一印象は悪くなくて安堵の息を漏らしていた。

 

「それで、とりあえずはそのベルトを見せてもらって、一通り見た後にこのベルトを手に入れた経緯について聞かせてもらい、気になった点について質問するといった感じよろしいでしょうか?」

 

「はい、それで大丈夫です」

 

「寛大な対応。ありがとうございます」

 

その答えに満足がいったのか真里は笑顔になり、巧はすこし訝しむ感じでこちらにベルトの入ったアタッシュケースを渡してきた。

私はアタッシュケースはデルタのと変わらないなと思いつつ中身を開けると、

装備の方はデルタと違い多いことに少し驚きつつもそこにあった説明書と思わらるものを読み始めた。

 

 

読み終わって色々分かったことがあった。

まずこのファイズはフォトンブラッドを利用してオルフェノクを撃破している

次にファイズは最もベルトの中で安定性があり拡張性があること。

最後にファイズには変身するのに資格が必要であり、

なければエラーと変身出来ないように出来ている点。

他にも分かったことは色々あるが主に私は注目するべきはこのあたりだと思った。

なにせこの間のデルタもこのファイズと同じ系列だと思うので、デルタとは多くの部分が共通していると思われる。

違う点と言えばこのあたりだと思ったから注目することにした。

 

「ありがとうございます。ファイズについての見解を深めることが出来ました。では次にファイズの入手経路について伺わせてもらいます」

 

私の言葉に二人共頷いてくれるとファイズの入手経路とここに至るまでのことを話してくれた。

 

二人からの話をまとめると九州で父さんからベルトを受け取った真里は多分スマートブレインからの刺客のオルフェノク達に奪われそうになり、変身しようとした真里はエラーで弾かれたのだが、たまたま居た巧が変身して刺客のさまざまなオルフェノクを倒して父さんが社長をしているスマートブレインにベルトを返そうとここまで来たという。

しかもスマートブレインには社長はおらず門前払いをくらったようだ。

 

私はこの話を聞いてスマートブレインの中は一枚岩ではないのだなというのを

感じた。ベルトを狙ったスマートブレインの社長、ベルトを狙うスマートブレイン社員。あきらかにお互いの行動が分かれている。

う〜ん、とりあえず話は聞いたからこのぐらいで帰っても良いのだが少し気になることがあるのでそれを質問してから帰ろうかと私はまた仮面を深く被り直して二人に質問をした。

 

「えーと、質問ですが、このベルトで変身しようとした人を一人残らず教えていただけはしませんでしょうか?」

 

「えーと、私と啓太郎は変身しようとしてエラーって出て。巧と襲ってきたオルフェノクの一人が変身したぐらいです」

 

う〜ん、ベルトの変身にも資格があるって書いてあったけど、変身した人を聞いても特に共通点は見当たらないないなぁー。

もしかして、人間とオルフェノクかな。でもそれだと沙耶さんはオルフェノクじゃないから説明つかないからな。

ファイズとデルタではやっぱりその辺が違うのかな?

 

「答えていただきありがとうございます。私は帰りますがまた来ることになるかも知れませんので、その時にまたよろしくお願いします。それとこれ私の連絡先です。何か用があれば呼んで下さい助けになれると思いますから」

 

そんな別れの言葉を言って、真里の「また来てくださいね」なんていう言葉を聞きながら私は報告とかもあるし早め家に帰ることにした。

 

でもやっぱり真面目な仮面を付けるのは疲れるなぁー。前に同級生に付けていた仮面よりも疲れるかもしれない。

やっぱり仮面つけないで良い生徒会三人の前は楽でいいなーと私は改めて思った。

 

 

 

 

 




説明書はこんな事が書いてあるだろうと予想しました。
気が向いたらキャラ設定をまとめたのを書いてみようかなとも考えています。


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夢の観覧者555 後編

この小説のタイトルって転生ものに見えなくもない事に気づいた。

気になった点があったりしたり質問を下さるとありがたいです。


私は今日も生徒会の仕事で山手音楽大学に来ていが、私としてはそれ以外にもにもここに来る理由が出来ていた。

それは、あの梟のオルフェノクである先生と呼ばれる男の目的を知りたいからだ。

なぜ知りたいかだって?そんなのは決まっているただの暇つぶしだ。

 

「へぇーこれが梓が昨日あのファイズを追いかけて得られた情報か。なかなか

すごいじゃないか!初めてでこれだけを得ることが出来るなんて。

しかも真里か……これはいよいよ予想が確証になるな……真里」

 

「ありがとうございます!いや〜なかなか大変でしたけど、頑張りましたよ。

それでこれから私はどうすればいいですかね?もう一度クリーニング屋に行けば良いですか?」

 

「クリーニング屋はこれからもちょこちょこ行って信頼を得て来てくれ、この大学に来ている期間中は私から言われない限りはもう自由にしてくれて構わない。私はあの梟のオルフェノクの相手をしているから何かあったら言ってくれ」

 

「分かりました〜。でもいいんですか?相手は一応はオルフェノク。璃々さん一人では心配です」

 

「なんだ?その言い方ではまるで私があのオルフェノクに遅れを取ると言われている気がするんだが。私はこれでもオリジナルのオルフェノクで、梓よりもオルフェノクになって長いんだから心配は無用だ」

 

梓からの一応の謝罪を受け取った。梓にはこれから適当に大学中を彷徨いてもらって生徒会の仕事を形だけでもやってもらってから自由にしてもらうことにした。

私は梓が行った事を確認すると私は先生に今日行動するために会いにいった。

 

 

♦︎ ♦︎ ♦︎

 

 

私は大学中探し回ってやっと先生を見つけた。

先生は大学の廊下に普通に歩いていた。ふざけんなよ、なんで普通にいるんだよこっちがどんだけ探し回ったと思ってるんだよ。

 

まぁ一々文句を言っていても仕方がないので、私はまるで先生の凄さに憧れた

少女のような笑顔を浮かべて、今日一日共に行動する許可を取りに行った。

なんとか粘ったりしてやっと許可を取り付けた。なかなかてこずったけどこれから色々面白い物が見れる予感がするので、そう思うと軽いものだろう。

 

先生に付いて大学の中を歩いていると、ふと何処かからギターの音が聞こえてきた。私のような素人が言うのもなんだがこれは素直に上手いなと思った。

先生は独り言で『これは……ふ、中々の才能だな』と言うと、私にこのギターの音がする所に行く旨を伝えるとそのままそこに向かって行った。

私もついて行かざるをえないのでついて行った。

 

 

♦︎ ♦︎ ♦︎

 

 

私達がその部屋の中に入ると二人の青年と一人の少女がいたが、先生はいきなり拍手をしだしてギターを弾いていた青年をべた褒めし始めた。その内容たらや私でも少し引くほどの内容だった。だがその後に聞く先生の言葉は少し私としても違和感を覚える言葉だった。

 

「君に足りないのはあと一つだけだが、それを達成すれば、今の海堂君と同じになれるだろう」

 

その言葉を聞いた瞬間に和彦と褒められていた青年は喜んでいたが、海堂と呼ばれた青年は少し複雑そうな表情をしていて、少女は先生のことを睨んでいた。

私としてもその反応に疑問を覚えていた。

海堂という人物はこの和彦の先輩で、会話から相当のギターの腕があるようだったが見たところ今の彼にはミュージシャンをやっている様子には見えず、

表情は明るくない。このことから私はこの言葉には何か嫌な意味があるのだろうな予想した。まぁ今予想しても色々と知らないことが多すぎるので、とりあえずは保留という形にしておこう。

 

その後は特に目立ったこともなく時間が過ぎていった。私は先生から『もう良い時間だからそろそろ帰りなさい』と言われて、とりあえずはその言葉に従って先生から別れた。

しかし、人というのは誰も居なくなってからこそ自分が隠していることをするものだ。なので私はこっそりと先生の後をつけていった。

先生の後をつけると彼は駐輪場のような場所に着き、そのまま青のバイクを弄り始めた。側から見ると明らかに不審者で多分やっていることもそう変わりないだろう。

 

そこから少し時間が経った頃だろうかまだ先生がバイクと格闘している所にさっき海堂という青年と一緒に居た少女だった。彼女は『また、教え子の才能を潰すつもりですか』と先生に蔑むような目線で言っていた。

ははーんこれで大体の話は読めたぞ、あの先生は生徒の才能に対して並々ならぬ憎悪を抱いていてそれで海堂の才能を潰して、他の教え子の命を奪って、しかもまた海堂のように和彦の才能を奪おうとしていたのか。これはなかなかにいない屑だな。

 

私が考えをまとめていると先生はオルフェノクに変身して彼女に襲い掛かろうとした。口封じのつもりかな?

私は彼女を助けるか迷っていると、彼女は人間では考えられないような驚異的なジャンプを見せるとそのまま立ち去っていった。

あーあの子はオルフェノクなんだなと私は率直に感じざる終えなかった。

 

それを見た先生は人間態に戻ると舌打ちをして、そのまま室内に入っていった。

 

 

♦︎ ♦︎ ♦︎

私は先生の後をバレないように追っていた。先生の様子は遠くから見ていても

すごく不機嫌そうだった。そして先生はそのまま私と初めて会った自分の教室と思える場所に入っていった。

私は先生が教室に入ったのを確認すると、音を立てないようにしながらドアに近づいて中の声に耳をすました。

中からは先生の声と暗い声を出している男性の声が聞こえてきた。

 

「話は全部聞いている。何故海堂直也の夢を潰したんだ」

 

その男性の声は随分と怒っているように、感じられた。私はそんなことはないが並の人ならこの声を聞くだけで一歩、二歩引いてしまうだろう。

しかも海堂という名前が出てきたということは、この男はあの少女で知り合いで、彼女から先生のことを聞いたのだろう。

 

「フン、私よりも才能のある人間は、最も重い罪を与えねば。わかるかね?

そういう人間は、ただ手にかけるだけではつまらない。

才能を潰して、惨めに生きてもらわねば」

 

先生の言葉は酷い言葉の数々で、実に傲慢で嫉妬のこもったものだった。

およそ人間が口にしてはいけない言葉であり、この言葉を言う権利が神でもあるかないかだろう。

そして私は確信する。こんな理由で、自分の生徒の才能を奪ったり命を奪ったりするこの先生は正真正銘の屑で、私が殺さない道理など存在しないぐらいに。中の男が殺さないのなら私が殺すのだが多分そんな事にならないだろう。

 

「知っているかな。夢っていうのは呪いと同じなんだ。

途中で挫折した者はずっと呪われたまま、らしい。

あなたの、罪は重い」

 

怒っている男のくっそかっこいい名言を聞こえた事に少し気持ちが上がっていると、いきなり扉が開いて取っ組みあっている梟と馬のオルフェノクが飛び出してきた。

幸いこちらのことは見ていなかったようだが、二人はそのまま体育館に入っていったので、私は二人の戦闘が観れると思い、体育館の二階に当たる部分に向かった。

 

 

♦︎ ♦︎ ♦︎

 

 

私が体育館の二階に着いてもなお、二人は戦っていた。

梟のオルフェノクはその素早さ生かしつつ手にある武器の鉤爪で馬のオルフェノクを追い詰めていった。

そんな状態でも馬のオルフェノクは焦る事なく攻撃を受けていると、

梟のオルフェノクが攻撃を振りかぶってしてきたので、それを手に剣を生成して防ぎカウンターした。

それに怯んだ梟のオルフェノクに対して馬のオルフェノクは攻め続ける。

その様子に璃々はあの強さオリジナルなのか?もう少し鍛えれば他の追随を許さない強さになるだろうと思いながら見ていた。

 

そんな様子が続いた時勝負が動いた。梟のオルフェノクから黒いガスの様なものが周りに出てきたのだ。馬のオルフェノクはそんな周りの様子が見えないような中でも冷静に剣を構えた。その馬のオルフェノクに対して梟のオルフェノクは鉤爪を構えて突進していった。

その決着は直ぐに着くことになった。梟のオルフェノクが突進していったのを

馬のオルフェノクが見切り、剣が体を貫いた。ガスが晴れる頃には梟のオルフェノクが青い炎を上げて灰になっていった。

 

 

♦︎ ♦︎ ♦︎

 

 

その戦いは実に見事だった。相手に地の利があっても全く臆する事もないこともさることながら相手を倒すことにも迷いがないことも良かった。

私としてもその戦闘力というのを身を持って体験したいという思いが強くなっていた。

 

「ねぇ、君さ。君の夢なんなんだい?」

 

仲間の夢を奪われた事に怒っているのなら、この男にもそれ相応の夢があるだろうと思い気になって聞いてみた。

 

「君はさっきのオルフェノクの仲間なのかい?だとしたら俺は君を許す事は出来ないけど」

 

「いんや、そんな事は無いよ。ただオルフェノクなのは確かだし。でも君と戦いたいなと思っているよ」

 

「そうなんだ。それと質問の答えは俺にはまだ夢がない。でもオルフェノクと人間との共存は願っているよ」

 

夢が無いのか……そうかだが、それはそれで確かに夢を奪われてたことに対してあんなにも怒ることも納得出来る。しかし、オルフェノクと人間との共存か、

私は言うなれば中立派とも言える考えと夢があるので肯定も否定もしないが

 

「そうか大層素晴らしい夢を持っているんだな。その道は大変だぞ、スマートブレインからは狙われるし、味方するオルフェノクも少なく強いオルフェノクは多くない」

 

「そんな事は分かっているけど、だけど俺達オルフェノクは人間なんだ。頑張っていけばいつかは認めてくれて共存出来るはずだ」

 

「そうか、私は中立派の考えだから一定の応援はするがな。そうだちょうどいい君に私の夢を教えてやろう。私はな私の大切とする者や信じられる友達、そんな人達を人間とかオルフェノクかと関係なく生き残ってくれればそれでいい他の奴なんていらない。それが私の夢、そしてそれが私の中核にある物だ」

 

ついつい言ってしまったな。私としてはあまり同意を得られることだとは思っていないので、人に言わないようにしているんだが…まぁ言ってしまったものは仕方ないな。

 

「君の夢は随分と過激なんだね。その夢は確かに素晴らしいものだと思うけど、俺は俺の目標を叶える為にも認める訳にはいかない」

 

「じゃあ、どちらが正しいか決めるために一度やり合いますか」

 

私は言葉を終えると、二階から体育館の中心に降りて、そのままオルフェノクに変身すると馬のオルフェノクの前に相対した。相手も剣を構え直すと、私は

了承を得たと思い一気に接近しに行った。

 

相手は私の突き出した拳を剣でいなしたが、私は直ぐにを態勢を立て直すと、

直ぐに蹴りを放つ。さすがにそれは防ぎきれなかったのか体に直撃し、少しのけぞった。

そのまま畳み掛けるように右腕を殴るように拳を突き出した。それは分かったのかそ拳を受け止めると剣で私の体を切ってきた。私もそれをされるのが分かった上でしたので、左手に生成していたダガーで相手の体に切りかかった。

お互いの刃物がお互いの体を傷つけてあっていた所で、お互い耐えきれなくなってお互いの体が離れた。

 

「はぁはぁ、もうどうだいやめにしないかい?」

 

「ハハハ、そうだな。私としてもそろそろいい時間になってきたから、帰らなくちゃいけないからな」

 

私は言葉の後に体から羽の塊を生み出すと、それを地面に打ち出して隙を作って体育館から出て、人間態に戻り大学内から出た。

 

「ふ、久しぶりに満足に戦えそうな相手に出会えたな。ああ、そういえば名前聞くのも忘れたな。いいか別に、また会う事になるだろうからな」

 

私はそんな事を思いながら、久々にあった戦いの余韻に浸っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




璃々の夢について書きました。極論、璃々って自分と親しい奴さえ生きていればそれ以外は生きようが死のうがどうでも良いなと本気で思っているところがあります。

現代階での木場君ってあんまり強くないのかなと思います。璃々もそこまで本気ではないので、こんなぐらいの戦いかなとは思いました。

次回は原作通り社長さんを登場させることが出来るかな?と思います。


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スマートブレイン内部事情

今回は幕間みたいな物です。短くなってすみません。


よんてさん誤字報告ありがとうございます!


俺が今日スマートブレインに出社すると、いきなりスマートレディから社長が会議を開くということで会議室に集まれと言われた。社長の花形さんはこの間から行方不明になっていたが遂に戻ってきたんだな〜とは思うが、それ思いとは他に花形さんがそんなにも直ぐに戻ってくるために行方をくらますかな?とも思っていた。

いつまでも考えていても仕方がないので俺はスマートレディに言われた通りに会議室に向かった。

 

 

♦︎ ♦︎ ♦︎

 

 

会議室では花形さんはまだ来ていないようだったが、他にいる幹部社員達はざわざわとしていた。だが幹部達は俺を見るなりざわざわが一度終わり、何名かが俺の元に近づいて来た。

 

「おはようございます副社長。副社長は花形さんから何か聞いておりますでしょうか?」

 

俺に質問してきた幹部は俺がほとんど知らない奴で、派閥が違う上に関わる機会が少ない奴なんだろう。

 

「いや、私は何も聞いていないな。その様子だと幹部社員は誰も知らないのか…。それに今この場に居ないのは花形さんと村上君だけか」

 

行方をくらましている花形さんは居ないのは疑問に思わないが、派閥を一つ持つ村上君まで居ないとなるとあまり良い予感はしないな。

俺が考えを深めていると、会議室をドアが開いてそこから村上君が入って来た。入って来た村上君は花形さんが座る予定であった席に座った。

花形さんが座るはずの席に座るということはそう言う事だ。まさかとは思うが村上君はやりやがったようだ。

 

「みなさんどうぞ席にお座り下さい」

 

村上君は威厳ある声でこちらに声をかけてきた。幹部はすぐさまに座る者や

俺が座ると座った者、村上君が睨みを効かせるまで座らなかった者まで色々だ。

 

「社長の花形さんの行方が分からなくなったので、社員の皆様からの熱い要望があり正規の手段で社長になることになりました村上峡児です。よろしくお願いします」

 

村上君はこんなことを言っているが、ほとんど社員からの要望は無くて確実に強引な手段を使ったんだろう。てか、社長が居なくなったら順当に行けば俺が社長になるべきだろう。社長になる気などまったく無いんだが……。

 

村上君の社長就任発言は会議室内で幹部からヤジや反対の意見がことごとく飛んでいた。まぁそのヤジなどを飛ばしていたのは村上君とは違う派閥の人なのだろうけど。村上君はそれらのヤジを無視すると俺に向き直って質問を投げかけてきた。

 

「長門梗介副社長は賛成でしょうか?私を除いた中であなたが一番立場が上ですから意見を聞かせてほしいですね」

 

村上君は俺が誰が社長になろうと感心が無いことを分かっていて言っているな?実際、花形さんが社長だろうが、村上君が社長だろうとどちらだろうと俺が自由に動くことが出来たらいいんだけど……どうしようかな?

 

「いいんじゃないですかね?私は自分の立場さえ変わらなければ、トップが変わろうがそこまで反対はしません」

 

「ということなので、ここに本日から私村上峡児が社長になると決定します」

 

この言葉を最後に村上君は会議室から出て行き、会社のトップが変わる会議は10分もかからずに終わった。ここから村上君率いる強硬派の思想が会社全体に適応されるこになるだろう。花形さんを慕う穏健派の連中はどう行動するかな?一応こんな身でも中間派を率いる者としては注目するところだな。まぁ中間派はまだ行動することはないが。

 

 

♦︎ ♦︎ ♦︎

 

 

俺は本日の仕事が終わり、自分と同じ派閥の人間との会合を行なっていた。

聞いた話によると村上君は社長になってそうそう研究所から消えたはずだったファイズのベルトを手を汚すこともなく持っていた持ち主に返却さしたようだった。

 

「それで副社長としてはここからどう行動していくつもりなのでしょうか?」

 

「うん?そうだな〜村上君が言うような人を襲わないオルフェノクの始末に関しては私らの派閥は程よく人様に迷惑がかからない程度にやっているから関係ないとして、ベルトの奪還なんかの命令が来た場合は村上君の部下にでも回してくれ。まさか他の派閥の奴に頼むことはあまり無いとは思うが。村上君のやろうとしていることは今の所私達の目標には関係が無いから、今まで通りに行動しろとしか言えないな」

 

俺の言葉に、この場に来ていた中間派の主要のメンバーである七人は揃って頷いてくれた。はっきり言って村上君がどこまで知っているかによるんだよな。

オルフェノクの王について知っているとしたら……村上君の性格からして確実に王の事を利用しようとするだろうとするからな。そうならない内に始末するのもありだと思うが、ああ見えて村上君は強いからな今は放置だな。

 

「あいつには何て伝えましょうか?下手な命令なんてすると反抗される可能性もありますが」

 

「ああ、分かっているよ。あいつの扱いは難しいからな。とりあえずは自分の好きなように行動してくれて構わないと言っておいてくれ」

 

一応この派閥に属しているあいつだが、なかなか我儘な奴だからなこちらから多く命令を出すだけで拒否されるからな慎重に扱っていかないと。

 

「了解しました。それと副社長はベルトについてどのように考えているのですか?今日の内にファイズのベルトを村上社長が入手なさったようですが…」

 

「ああベルトね。まぁはっきり言って手に入れておいて損は無いとは思うが、

無理しては入手しようと思わない。チャンスがあれば村上君やラッキークローバー、他の奴らに奪われる前に入手したいとは思っているが」

 

ラッキークローバーがどう動くかは今の所まったく持って予想がつかない。村上君の命令という名のお願いを聞く可能性もあるし、独自に動いてベルトを入手する可能性もある。どちらにせよ手綱は握りにくいと言うことだ。 

 

「それじゃあそろそろ堅苦しい話は無しにして、乾杯といこうじゃないか。私達の派閥のさらなる繁栄と目標の達成を願って…乾杯!」

 

俺たちのこれからを決定した会合は無事に終了した。花形さんがいなくなった辺りから予感していたがこれからは大きな嵐が起こりそうだな。

 

 

 

 

 

 

 

 




この副社長は重要人物の予定です。
年が明けましたねおめでとうございます。

次回は空き巣のオルフェノクかな?


長門梗介

スマートブレインで副社長を務める男。29歳という年齢で副社長になっており、その手腕とオルフェノクとしての強さは計り知れない。
中間派なる者を率いていて、人を襲くことを率先しているオルフェノク、人を襲うことに消極的なオルフェノク以外が所属しておりスマートブレイン内では最大規模を誇る派閥である。
だがそれを率いる梗介の本当の目標を知る者は数少ない。





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空き巣調査記録

投稿が遅くなって本当に申し訳ない。
色々用事を済ませていたら遅くなってしまいました。


ニコニコカービィさん誤字報告ありがとうございます。


私は今日も今日とて夜廻りを始めた。

この間は璃々さんが言っていた555を見たり確かな信念がある木場さんとも知り合えた収穫のある夜廻りだったので、今回もそんな夜廻りになる事を願いながら私は道を歩いていた。

 

そんな事を思っていたら、私はまた夜廻り中あの555と呼ばれるオルフェノクキラーのライダー?とその555に襲われているオルフェノクを見つけた。

あのオルフェノクも結構頑張っているようだけど、全然555には敵っていないようだった。あの感じは戦い慣れていないって感じなのかな?

 

「ええ、と。あの555も戦い方が何か前と違う気がするかな?殴るのも前回見た時より躊躇が無さそうだし、荒々しい感じもする」

 

私はそんな事を考えながら前回と何か戦い方が違う555と襲われているオルフェノクに興味を持って段々段々と観察するために近づいていっていた。

 

私が大分近づいた辺りで、襲われているカタツムリのようなオルフェノクが555によって遠く方に飛ばされてしまった。

うーんどっちを追おうかな?

あのオルフェノクもまだ死んだ風には見えないし、今回は一応前回は見た555よりもまだ襲われていた理由も知りたいからカタツムリのオルフェノクを追おうかな。

 

私は555に気づかれないようにオルフェノクを追いかけていったのだが、その先では覆面を被った怪しい男とスマートブレインのロゴが付いている水色の服?を着ている女がいた。多分覆面の男がカタツムリのオルフェノクなんだろう。あの水色の女はスマートブレインの刺客か何かなのだろう……。

 

私は水色の女が色々と覆面の男に話しかけ終わって何処かに行くのを見届けると、覆面の男に話しかけに行っていた。

 

「あの、すみません。あなたオルフェノクですよね?さっきの人と何を喋っていたんですか?」

 

その覆面の男は戸惑っていたようで怯えているようにも見えたのだが、だんだん私に対して言葉を紡ぎ出してきた。

 

「ええと、確かに貴方の言う通り……僕はオルフェノクです。君もこの事を聞くってことはオルフェノクなのか?」

 

「はい、私もオルフェノクです。でも、オルフェノクになったばかりなので全然オルフェノクに関しては知らないです。だから教えてくれませんか?」

 

「ええ……と、さっきここにいた人がスマートレディって言って、オルフェノクの殆どが入社しているスマートブレインの秘書なんだ」

 

その後私は覆面の男から璃々さんや梓から聞いた話や知らなかった話を聞いた。

覆面の人が言うには彼はオルフェノクになったんだが、

スマートブレインが周りの人間を襲う事を推奨することに対して彼が自分に自身が無いので、襲う事を辞めていたので遂にスマートブレインから粛清が来た。それが先程の555らしい。

 

確か木場さんもスマートブレインの意向とは反していたと言っていたな……。

ならば反しているこの人も木場さんと協力出来るのではないか?そう私は考えたのだが、いかんせんこの人の自分に自身がないからと言うのが曖昧過ぎる。

木場さんのような確固たる信念も正義感が無いので、すぐに裏切るのでは無いだろうかと思ったので、私はこの人を少し調査しようと考えた。

 

「あの、すみません。少しの間貴方と一緒に行動してもいいですか?私多分それなりには強いと思うのでスマートブレインから貴方を守る意味も込めてお願いします」

 

「い、いやぁー。今僕が日頃してることって空き巣なんだ……。それでもかな?」

 

空き巣……空き巣なのか〜。世間的には悪と呼ばれるものなので、正義を重きを置いている私からすれば粛清対象だが、今回ばかりはしっかりと調査してから本当に悪だと判断した場合のみにしようとは思った。

 

「はい、全然大丈夫です。じゃあどこかの公園とかで待ち合わせしましょうか」

 

その後私は男とどこ公園か時間などを決めて別れることになった。

こうなるとさすがに学校とかは休まないといけなくなるな。でもあの男いわくそこまでハイペースでは無いようなので明日行って何件か回るぐらいで調査は終わるだろう。もちろん私は人の物は盗みには行かないけど……。

 

 

♦︎ ♦︎ ♦︎

 

 

今日私は学校に行ってくると親に行って家を出てから、璃々さんに連絡して学校を休ませてもらった。これで学校から親に連絡が行く事は無いとは思う。

 

「ちゃんと時間通りに来てもらって嬉しいです。じゃあさっそく行きますか?」

 

「本当にいいの?これ空き巣だよ?……犯罪だよ?」

 

ここまで来てそんな事を言わないで欲しい。犯罪と分かっているから来たに決まっているから。

 

「はい、もちろんですよ。私は覚悟決めて来たんですから」

 

全然覚悟は決めて無いので嘘のようなことを言ってしまったが、多分問題ないはず。

私とその男は公園から移動して、男は勘というかそんなんで家を見ながら入る家を決めているようだ。本当に大丈夫だろうか……私まで逮捕されたりしないだろうか。

 

男は入る家を決めたようで、鞄からピッキングの道具を取り出して堂々と玄関のドアを開けて入って行った。入る時に聞いたことだが、男は物を盗まずにご飯だけをもらってそのお礼に掃除をして帰る空き巣のようだ。

そういう所は普通の空き巣とは違うので私的には評価は上がる。私は男の食事には加わらずに、少し掃除を手伝うことにした。

 

家の中に入ると男の勘通りに誰もいないようで男はさっそく冷蔵庫を漁ったりして食材を取り出して料理を始めた。

空き巣に入ってもお金になりそうな物を取らないのはなぜだろう?やっぱり足がつかないようにするためなのかな?

 

その事について随分と思考を回していると、男はもうご飯を食べ終わったようで掃除を始めていた。私も掃除だけは手伝うと思っていたので、男から道具を借りて窓を掃除を始めた。

 

掃除を始めた数時間後男が満足したらしく、外へ出ると言ったので私もついて行って外へ出た。……とりあえずは捕まらなくて良かった。

 

 

♦︎ ♦︎ ♦︎

 

 

私と男はその後二件目の家を探すためにまた男の勘で探していた。

また家を見つけたようでさっきのように正面からピッキングをして、中に入って行った。いつもこんな感じでなのかな、よく見つからずにこれまでやって来たなとあらためて思う。

 

男がさっきと同じように冷蔵庫を漁り食材を取りだして、食べていると玄関のドアが開く音が聞こえた。

 

私は男がどう対応するか気になったので、気づかれないようにオルフェノク態になり、そのまま自身に体から出した根や茎を巻きつけて観葉植物のようになって成り行きを見守った。

 

見守った結果はというと、帰ってきた家の主は死にました。男がオルフェノクになって殺しました。その後何故だか分からないが男は笑い出したりして理性が無くなったようだった。

これは粛清対象になるかな〜オルフェノク態のまま外に出ていちゃったからね。やっぱり自身が無いなんて軽いストッパーなんて外れるのは簡単だったね。これから人間を殺さないように見ていた責任として私がしっかりしないとな。

 

 

♦︎  ♦︎ ♦︎

 

 

私もオルフェノク態になってカタツムリのオルフェノクを追い始めた。一応追いついた時に呼びかけたりしたのだが、全く持って通じていないようで少々残念ではあった。

私は身体から出した根などで攻撃したりしたのだが、思い他固かったのか怯む事はなくこちらを突進してきた。こんな戦い慣れていない奴とどっこいどっこいではいつまで経っても梓や木場さんには追いつけない。

 

私は対して有効打を与えられぬまま大分移動してきてしまった。こちらもずっと攻撃しているのだが、決定打を打とうとするとカタツムリのオルフェノクが身体を寄せてくるのでいまいち打とうにも打てない。

 

そんなむず痒い展開だったのだがそこに若い男の人が来た。カタツムリのオルフェノクはそちらに目を向けるとそのまま若い男の人を襲い始めたのたが、私が助けようとする前に少しガラの悪そうな男が若い男の人を助けた。

そうすると若い男の人が手に持っていたベルトをガラの悪そうな男に渡して『ああ、かもな』と言ってその後に

 

「変身」

 

といってあの555に変身した。まさかあの555の中身がこんな人だったとは……。でも、戦い方を見る限り前回に見た555よりも前々回に見た555のように感じる。

 

てか、そんな事思っている場合では無い!このままではカタツムリのオルフェノクが倒されてしまう。私がしっかりと責任として粛清の意味を込めて一発ぐらい攻撃を加えなければ。

 

私は555が手に何か持った事を確認すると、自身の身体から出した茎を腕に巻きつけて槍の要領でカタツムリのオルフェノクを貫いた。その隙に555がポインターをつけてそのまま熱のこもったキックで貫いた。貫かれたカタツムリのオルフェノクは青白い炎をあげて灰化していった。

私ながら良いコンビネーションだったとは思う。

私はこちらを見る555を横目にそのままいるのはまずいと思い退却した。

急いで退却したからだろう私は555の他に自分を見ている二つの視線に気づく事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回でやっと仮面ライダー913を出せると思います。


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調査の裏側で913

一ヶ月と少し更新出来なくて申し訳ありません。
更新スピードは早められるに努力致します。
エタるつもりはまだありませんので、安心して下さい。


私こと阿波璃々はある番号に電話をかけていた。

電話の内容はただの雑談話から彼のここ最近の出来事などさまざまで、ついつい話に花を咲かしてしまったが、

私は当初予定していた通り彼と近々会う約束をとりつけた。

ベルトを私の方でも手に入れるために。

 

 

♦︎ ♦︎ ♦︎

 

 

そして彼と会える日が訪れた。

私は全くといっていいほど緊張はしていなかった。一緒の家に住んでいる梓には今日私が学校を休むことと朝にかすみから休む旨のメールが来たことを伝えて、私は家を出た。

 私は待ち合わせ場所にしていたカフェに着くと、彼がまだいない事を確認して席をとり、ブラックコーヒーを頼んだ。

もうすぐ約束した時間だなと思っていると、店に顔に昔の面影がある彼が入って来たので、手を振って手招きをした。

 

「ごめんごめん。遅れちゃったかな?阿波」

 

「いや、大丈夫だ。高宮先輩」

 

「それにしても本当に久しぶりだね。同窓会には草加と阿波は参加しなかったから余計にそう感じちゃう気がするよ」 

 

「え、草加も同窓会行ったなかったのか……知らなかったな。最近会ってなかったからな久しぶりに会うか」

 

「最近会ってなかったんだ……。二人は仲が良かったから今でも時々会っていると思っていたよ。二人は園田とも仲が良くてよく三人でいてたけど、園田とも最近会っていないのか?」

 

「ああ、最近は流星塾の奴とは全然会っていなくてな。真里とも会っていない」

 

私は全く嘘など吐かずに真摯に本音で話し合っていた。そこまでする必要なんて無いのだが、昔から高宮航太という人間は勘が鋭くて、リーダーシップがある人間だったから、こちらの目的が悟らせないように最低限の情報を出していく必要があったからだ。

 

「それで昔から頼りがあった高宮先輩に相談なんだけど、最近人につけられている気がするんだよ。だからもしかしたら流星塾の他の人もつけられているのかなと思って、みんなのリーダーみたいだった先輩に聞いてみたくて会う約束を取り付けたんだ」

 

「そうだったんだね。うん、実は僕も最近人に追われている気がするんだ。でも、襲ってくる感じは今の所ないんだよね。そうか、もしかしたら……僕の持っている物が原因かも知れないな」

 

私の予想は当たったみたいで、私は内心ほくそ笑んでいた。流星塾だった真里と沙耶がベルトを持っているとしたら、リーダー枠だった高宮も持っているだろうと予想したが、やはり持っていたか。沙耶が追われているから、ベルトを持っている奴はスマートブレインに追われると予想して、嘘だが相談風に相談したらやはり持っているようだった。

 

「……このカイザのベルトって物なんだけど、阿波もこれと似たような物を持っているから狙われたのかな?阿波も持っているの?」

 

ここは持っていると言った方が都合が良いだろう。それに高宮が持っていることさえ分かってしまえば、あとは後日にオルフェノクに変身して私だとバレないように奪えば良いだけなので、ここは流星塾生に多分共有していないであろう真里が持っていたファイズのベルトとか言ってお茶を濁しつつ退散するか。

 

「ああ。これと似たようなベルトでファイズのベルトを持っている。高宮先輩に渡したほうがいいか?」

 

その高宮先輩の返事を聞く前に客の少なかった店内の客の二人が音を立てて椅子から立ち上がって、こちらに向かって来たのだ。

まさかと思うが、スマートブレインの奴じゃないだろうな?

 

「お二人ともファイズとカイザのベルトを持っているようですね。そこの男が変身する直前の油断している時に奪おうと思っていましたが、ベルトを持っているのが二人いるとなるとチャンスですね。ベルトを渡して下さい」

 

その男は偉い丁寧口調でこちらにベルトを寄越せと言ってきた。マジかよ。私ベルトなんて持ってないぞ。オルフェノクに変身することは出来ないし、ここは高宮に任せてしまうか。危なくなったらカイザに変身してもらったいいだろう。

 

「すまないが、ベルトは渡すことは出来ない。これは父さんから託された大事なベルトだからな。それよりも、どうしてこのベルトのことを知っているんだ?」

 

やっぱり高宮も父さんからベルトを受け取っていたのかよ。これは沙耶も父さんからベルトを受け取ったんだな。いったい何者なんだよ……父さん。

 

「そうですか……残念です。では殺すしか無いようですね」

 

そう言った男と後ろに立っていた無口な男は顔に灰色の線を這わせるとオルフェノクへと変身した。

 敬語で話して男はトカゲのオルフェノクに変身して、無口だった男はアリクイのオルフェノクに変身した。

 高宮は少し後ずさったようだったが、それに負けじとカイザのベルトを手に取りコードを入力すると『変身』と言ってカイザに変身した。

 

高宮が二体のオルフェノクと戦っている間に私は巻き込まれないように後ろへと下がった。

高宮は二体もオルフェノクと戦っているにも関わらず、メモリーがはめられて刃が出てきた銃で必死に応戦していた。

 初めの方は善戦していたのだが、トカゲのオルフェノクが刃のついたブーメランのような物を生成すると、アリクイのオルフェノクとのコンビネーションによって徐々に追い詰めれていき窓を割って外に飛び出されて、

 

流石の私ももうダメかと思いオルフェノクに変身して、助太刀しようとしたのだけど、高宮が最後の力を振り絞ってか、ベルトのボタンを押して銃から二体のオルフェノクに向かって光弾を発射した。それに当たった二体のオルフェノクは動きを拘束されて動けないようになっていて、それに向かって高宮が手に持っていた武器を構えたと思ったら、そのまま駆け抜けて行くように進み二体のオルフェノクを貫通して、そのままオルフェノク達は灰化して消滅していった。

 

思わぬ強力な攻撃に驚いている自分と恐怖している自分がいた。あんなものを受けたらいくらオルフェノクであろうとも死んでしまう。そう思うだけで恐怖してしまっていた。

そう恐怖を悟られない様に高宮に近づいて行くと、ふと、金属音の様なのが聞こえてきた。

 それに気づいたのか高宮も音がしているところに近づいて行くようで私も後を追った。高宮は高所に立つと一点を見つめて止まったので、私も下から同じ方を見るとそこには、カタツムリのオルフェノクと戦っているファイズとあれは……かすみか?オルフェノク態は一度見たことあるから多分そうだろう。あいつ朝に外せない用事とかメールしてきたけどこれが外せない用事ってことなのか?まぁいいか。

 

私と高宮がそのまま観戦していると、かすみがカタツムリのオルフェノクの体を蔓を巻きつけた腕で貫くとそこに、正面からファイズのポインター入りのキックが入り、カタツムリのオルフェノクは灰化消滅した。

それに満足したのか、かすみはファイズに目をくれることなく直ぐに去って行った。ファイズが『おい、待てよ』とか言っていたようだったが聞こえていないようだった。

 

ファイズ達もいつまでもいる訳ではなくそのまま去っていたのを確認したので、いつまでも突っ立っている高宮に声をかけた。

 

「おーい、高宮先輩。大丈夫か?おーい、おい。どうしたんだよ」

 

私が話しかけてもうんともすんとも言わないので、カイザのボディを叩いたりもしたのだがこれにも無反応なので、私は埒があかないと思い。ベルトを操作してカイザを変身解除させた。

 

しかしそこに立っていた高宮は瞳を閉じており、しかもそのまま倒れて来たのでそれを支えおうと倒れて来た背中をもつと、そのまま私の手の中で灰化して消滅していった。

 

その時ばかりは予想だに出来ない事態だったので、私は柄にも無く『え、嘘だろ』なんて声を出してしまった。

 

よく分からなくて少しの間混乱していたが、事前にカフェから持って来ていたカイザのアタッシュケースから説明書を取り出すと、じっくりと読み込んだ。するとなんとこのカイザのベルトは適合しないものが変身すると変身後灰化していまうようだと書いてあった。

 

マジか。多分人間が使ったりしたらそうなるのだろう。元々回収するつもりであったが、私の周りの人間達が犠牲になるのは良くないと思い、私は当初と計画は異なるがベルトをアタッシュケースに入れて持って帰った。

これを真里と雅人には絶対に使わせないと心に誓って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




後々触れていく機会があると思いますが、璃々は流星塾の元メンバーです。
草加君には変身してもらうことにはなるだろうと思います。今の所。


リザードオルフェノク
敬語を使うスマートブレイン社員が変身するオルフェノク。
武器として刃のついたブーメランを生成することが出来る。
攻撃スタイルはスピードが重視で手数の多さで戦う。
使徒再生攻撃は尻尾を相手に突き刺す場合が多い。


アントイーターオルフェノク
無口なスマートブレイン社員が変身するオルフェノク。
重すぎず軽すぎずのバランスが取れているオルフェノクで打たれ強い。
武器には長い剣のような針を生成することが出来る。
使徒再生攻撃には長い舌を口から出して相手の口から心臓に突き刺す。






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第二幕 流星塾
クローバーが動き出す


短くなってしまいましたすみません。



週末に私淡路紫乃は公園に来ていた。

来た理由なんてほとんどないただ落ち着いた所で、読書がしたかっただけ。だから私は公園で一人でベンチに座って読書をしていた。読書なんて家ですればいいじゃないかと思うかもしれないが、たまの休日ぐらいはいつもと違う環境で読書したくなったから。

だからだろうかいつもと違うことが起こるのは当然だと思う。

 

私は読書をしているがいまいち集中出来ていなかった。それは何故か、理由なんて分かりきっている。この都会の中でも広いと言える公園にいるのは子供なんかじゃない。私と目の前のブランコに座って読書をしている少しパーマがかかったメガネの男の人だけだ。それの何それの何が問題なのだろうと思うだろうが、私だって普通に男の人が読書しているだけだったら何も気にする事はない。でも、その人の読んでいるのがイェイツの詩集なのだ。

私も読書が好きで詩集も読むのだが普段詩集なんて読んでいる人がいないので、話が合うのではないかと期待してしまってついつい見てしまっているのだ。それにあっちの男の人もこちらをちらちらと見ているのにも気づいてしまってなんとも言えない気持ちになってしまっているのだ。

 

そしてついに痺れを切らしたのか男の人がこちらに近づいて来た。その足取りに私は期待と不安の気持ちを持って待っていた。そしてついに彼が来た。

 

「不躾で失礼なのですが、貴方が読んでいるのはゲーテのヘルマンとドロテーアだとお見受けするのですが、合ってますか?」

 

私が読んでいる本が気になって声をかけてきたようだった。さっきちらちらとこちらを見ていたのも私の本が気になっていたからなのは明白だった。私も彼の持っている本が気になって見ていたので同じかと少し嬉しくなってしまったが、落ち着いて返事をすることにした。

 

「は!、はいそうです!」

 

やってしまった。声が思いっ切り上擦ってしまった。どうしようかと彼を見ると何も言わずに隣に座った。その行動には少し恐怖感が芽生えたが、特に何かされるわけでも無かったので気にしないことにした。

 

「あの、貴方の読んでいる本はイェイツの詩集ですよね?中々読んでいる人見かけませんが、読書お好きなんですか?」

 

「ええ、好きですよ。僕もゲーテの本を読んでいる人なんて見ないものでつい声をかけてしまいました。すみませんね」

 

「いえ、私も声をかけてようと思っていたので。それより同じ趣味を持つ人として趣味の話でもしませんか?」

 

彼は私の提案に乗ってくれてお互いに好きな本や詩集などを力説したりして、時間を過ごした。名前は琢磨逸郎らしい、琢磨さんとの時間は生徒会のみんなと過ごすのとは違う楽しさだけど、すごく気分が良かった。琢磨さんは夜から用事があると言って別れたけどまた会おうと言ってくれた。次に会う時はどんな話をしようかなと楽しみにしながら私は家への帰路に帰った。

 

 

♠︎ ♠︎ ♠︎

 

 

「どうしたの琢磨君?今日は一段と機嫌が良さそうね。そんなに村上君と会うのが楽しみなの?」

 

「そんなんじゃありませんよ。ただ今日は有意義な時間が過ごせたなと思っていただけですよ」

 

バークローバーと呼ばれるこのバーには今三人の人がいた。カウンター奥にいて店員の格好をしている影山冴子、カウンターの席でお酒を飲んでいる琢磨逸郎、同じくカウンターの席に座って犬のチャコを撫でているMr •ジェイと呼ばれる三人だ。そこに店の入り口から入って来る男がいた。その男は店内に入ると迷う事なくすでに二人が座っているカウンターの席に座った。

 

「オルフェノクの中でも上の上に位置するラッキークローバーのみなさんに集まってもらったのは他でもない、あなた方にしか頼めない仕事があるからです」

 

「村上さん分かっているとは思いますが、本来僕たちは社長である貴方の命令を聞く必要なんてですよ。だからくだらない要件で我々を使わないでいただきたい」

 

「分かっていますよ。だから私としてはお願いをしに来ています。よろしいですか?」

 

「村上君よく分かったから。さっさとその仕事についてのお話をしましょう」

 

「ええそうしましょうか。ではまずはジェイさんに仕事を頼みたいと思います」

 

その言葉にジェイは相変わらずチャコを撫でながら頷ている。

 

「仕事というのは元々我々が持っていたファイズとカイザのベルトを回収していただきたい」

 

「今のところ、これまで回収に向かった社員であるオルフェノクはことごとく撃破されています。だからラッキークローバーである貴方がたにしか頼めないんです。位置はこちらから発見でき次第送らせていただきますので」

 

ジェイが頷いたのを確認すると村上は次の仕事を頼むため一度影山と琢磨の方を一度見た。

 

「お二人には裏切り者の始末をお願いしたい。こちらも位置は発見でき次第送らせていただきます」

 

「分かったわ」

 

「分かりました」

 

「そういえば北崎さんのお姿が見えませんがどこにいらっしゃるのですか?」

 

「ああ、北崎君ね。彼結構自由だから今頃適当な場所を散歩しているんだと思うわよ。副社長に抱き抱えられているっていう噂があるから心配なのかしら?」

 

「別にそれを思って聞いたわけではありませんが、噂が誠であればやはりあまり見過ごす訳にはいけませんね」

 

「村上さんは彼とは良い関係を気付くことは出来なんですか?こちらの仕事にも影響があると困りますので」

 

「悪影響は無いとは思いますが、私個人としては上の下の評価をしていますが、少々苦手でしてね。いかんせん彼の行動は不自然な所が多すぎる。私とも花形さんとも一定の距離を保ち続けて、隠れて何かをしているというのは分かっているんですが、何をしているかがこちらからは一切分からない。しかも何年か前に北崎さんを使ってどこかに襲撃に行ったらしいですし、彼の行動目的がさっぱりです」

 

「ふふ、別にいいじゃない。ベルトが奪われたことによりさまざまな事が起こっていると思うの。だからいずれ村上君と梗介君、どちらが上かいずれ決着がつくでしょうね」

 

「忠告として受け取っておきますよ。私としても彼とはいずれ事を構える気でいましたから、覚悟はしています」

 

宣戦布告のような言葉を言うと村上は席を立った。

 

「では御三方の仕事の成功を期待していますよ」

 

そう言い残して村上は店から去って行った。

 

「ねぇ琢磨君は村上君と梗介君、戦ったらどちらが勝つと思う?」

 

「確かに気になりますね。そうですね、周りのオルフェノクを巻き込んでやるとしたら数が多い村上さんの方に軍配が上がると思いますが、一対一だと誰もオルフェノク態を見た事が無いと言われる梗介さんが勝つかもしれませんね」

 

「冷静な分析ありがとう琢磨君。私も確かにそう思うわ。ふふ、どちらが最後に勝つか本当に見ものね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




久しぶりの紫乃の登場ですね。
やっとラッキークローバーも登場していよいよ中盤ですね。
今回の話は次回の話の前編みたいなものです。


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カイザの力

文書のアドバイスなどありましたら、気軽に言って下さい。


高宮航太がカイザのベルトによって灰化してから数日経った頃、人通りの少ない場所にあるキャンピングカーの中には元流星塾のメンバー何名かと増田教論は思い詰められたような様子だった。

 

「どうすんだよ!カイザのベルトを持った高宮はいなくなるし、ベルトも行方不明だしよ」

 

「落ち着くんだ徳本くん。今、犬飼君に今まで連絡を取っていなかった流星塾生にベルトを知らないか聞いているから少し待とう」

 

「犬飼いったい誰に連絡を取ったんだ?」

 

「とりあえず真理と璃々にベルトの写真を送って会うことになったよ」

 

「マジかよ。二人共ベルトに見覚えがあるのか。これはどちらかが高宮からベルトを奪ったのか……」

 

「バカな想像はやめて徳本君。流星塾生のみんながそんな事するわけ無いじゃない。多分カイザのベルトの呪いで高宮君が灰化する前に託されたとかよ。きっと」

 

「阿部さんの言う通りだ徳本君。流星塾生がそんな事をするわけない。それに連絡が取れて会える事になったのだから、その時に事情を聞けばいいさ」

 

「じゃあみんな、俺は待ち合わせ場所に行ってくるから。もしも時のために誰か様子を見ておいてくれよな」

 

その言葉を言い残して犬飼は待ち合わせ場所に向かった。その後残ったメンバーで相談をして西田がもしもの時の連絡係として向かうことが決まった。

 

 

♠︎ ♠︎ ♠︎

 

 

私がカイザのベルトを手に入れたから二日ほど経った頃に流星塾の奴からメールが届いた。そのメールにはカイザのベルトの写真が貼ってあって、『知っていることがあればシーパラダイスに来い』とご丁寧に場所の指定までしてあった。行ったら行ったで面倒くさいことにはなると思うのだが、今の時点でどのくらいの流星塾生がオルフェノクに関わっているかが気にならないこともないので、念のためにベルトも持って行くことにした。

 

シーパラダイスに着いた私は待ち合わせ場所を探すためにとりあえず歩き回ることにした。その過程でなんと真理とファイズに変身している確か……梓が巧って言う名前だと言っていた男がいた。

まさかあのメールが私だけにピンポイントで送られてきた訳では無いと思うから、真理にも多分送られてきてあのベルトのことを知りたくて来たのだろう。

 

さて……真理に会うのは少し嫌というか会いたいけど会いたく無いというよく分かんない気持ちだけど、どうせ行き着くところは一緒だろうと思い私は真理と巧と呼ばれる男をつけてみることにした。

 

二人は雑談をしながらも待ち合わせ場所に近づいて来ていた。そして待ち合わせ場所に着いたと思うと、そこには確かに流星塾の犬飼が居たのだが、あっという間に灰化していってしまった。ここにスマートブレインの刺客がいるであろうことを私が悟ると同時に真理達の前に凶暴そうな歯を揃えたクロコダイルのオルフェノクが現れた。

 

二人はオルフェノクの登場に驚いたようだったがすぐに立て直したようで、巧の方がファイズに変身した。

私もカイザに変身しようか少し悩んだが、とりあえずは相手のオルフェノクとファイズの技量と実力を測るために待ってみることにした。

 

クロコダイルのオルフェノクの頑丈そうな体に対してファイズの攻撃は効いている様子が全然見られず苦戦しているようで、足から出たポインターを打ち込み叩き込むキックも弾かれて、その上何度も殴られてファイズが怯んでしまった。そこに追加でオルフェノクのパンチが入ってファイズの変身は解除されてしまった。

 

「巧!」

 

「くそー硬ぇじゃねぇかこいつ」

 

ダメージを負って満足に動けそうもない巧とそれに駆け寄る真理にクロコダイルのオルフェノクがどんどんと近寄って来た。

この場面だと真理に対して危険が及んでしまうと思った私は勢いのまま飛び出していってしまった。

 

「おいおい、待てよスマートブレインの刺客さんよ。私の大切な真理に対して何をしようとしているんだ?」

 

いきなり登場して来た璃々に対してクロコダイルのオルフェノクはその歩みを止めて、巧は訝しむような表情を向けて真理に至っては心底驚いたような表情をして目を見開いていた。

 

「え、……璃々」

 

「後で暇があったら話すからちょっと待っていてくれよ真理」

 

私は持っていたカイザドライバーを腰に巻いて、手にカイザファンを持ち913と入力してEnterボタン押して音が鳴ったのを確認して『変身』という言葉とともに斜めからベルトに差し込み倒して『Complete』の音声が鳴りカイザに変身した。

 

「璃々が、……黄色のファイズに」

 

「さぁ覚悟は出来ているんだろうなオルフェノク」

 

私はカイザブレイガンにミッションメモリーをセットして刃出して、オルフェノクに向かって振り下ろした。ファイズの攻撃とは違ってオルフェノクはダメージを負っているように見えて畳み掛けるように攻撃をオルフェノクに当てていった。

あまりのダメージに吹っ飛び倒れ込んだオルフェノクを確認してから、私はEnterボタンを押して『Exceed Charge』が鳴るのを確認するとカイザブレイガンから拘束する弾を打ち出しオルフェノクが拘束されると、そのまま駆け抜けオルフェノクの体を切り裂き灰化させた。

 

私はオルフェノクが灰化したことを確認すると変身を解除して、こちらを見ていた巧と真理に向き直った。

 

「初めまして巧君。そして久しぶりだね真理。雅人は元気にしているかな?最近は会ってないんだよね。あんまり長く話していてもお互いのためにならないから一言だけ言っておく、私はいつだって真理の味方だから」

 

私はそう言い残して真理の前から逃げた。何故逃げたのか自分でもよく分からない。ただ恥ずかしかっただけかもしれないし、気まずかっただけかもしれない。でも、これで良かったのだと思う。だってこれ以上関わるとあの日みたいに真理の記憶をまた少し消さなければならないかもしれないから。

 

「ちょっと待ってよ璃々!話が」

 

後ろから聞こえてくる真理の声を聞きながらも私は振り向くことはせず、その場から去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




かっこいい最後を遂げるはずの西田が生き残ってしまいました。


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流星塾生 阿波璃々

やっと本格的に主人公組と絡めるかな?


私は今、昔一緒に過ごしていた流星塾生のみんなに話を聞きにいくために巧と別れてみんなが今いるキャンピングカーのところにいた。話はカイザと呼ばれるライダーの話や流星塾の同窓会に来ていなかったのに寄せ書きに名前が書いてある草加くんの話になったんだけど、私は思い切ってここにいなくてこの間カイザに変身した璃々のことを聞いてみた。

 

「ねぇみんな璃々はここにはいないの?」

 

私の言葉を聞いたみんなは複雑な表情をしていて、言いにくそうな空気が漂っていた。その沈黙の中上条ちゃんが信じられない言葉を口にした。

 

「阿波は裏切ったのよ。高宮くんを殺してカイザギアを奪ったのよ!」

 

「ちょっと待ちなよ、まだそうだと決まったわけじゃないじゃない」

 

「里奈だって聞いたでしょ?西田くんが最後にカイザのベルトを持った高宮くんが会うと言っていた同級生が璃々に確定して、しかも今ベルトを持ってる阿波は私たちになんのコンタクトも取ってこない。やましいことがあるに決まってるわ」

 

「やめてよ。璃々はそんな事するような事をするような人じゃない。みんなだって知ってるでしょ?私がいじめられるのをいつも璃々は助けてくれたし、私と一緒に草加くんをいつも助けていたんだよ?」

 

「園田くんの言う通りだ。先程西田君があらためて阿波くんに連絡を取った所ここに来てくれるそうだ。その時に詳しく話を聞こうじゃないか」

 

「ええ増田教論の言う通りね。それで真理はこの間璃々がカイザに変身した以前や以後は会っていないんだよね?」

 

「うん。でも、カイザに変身した時にいつだって璃々は私の味方だって言ってくれたよ」

 

「そうなんだ。真理と璃々は親友だったもんね。でも、同窓会に来ていない人は草加くんと阿波だけ。それなのに草加くんは寄せ書きに名前が書いてある。このことについても聞いてみたいわね」

 

このまま何事も無く璃々が来るのを待てたらどれほど良かったんだろう。私達が璃々が来るのを待っていると、そこにはこの間カイザが倒したはずのクロコダイルのオルフェノクがやって来ていた。そのオルフェノクはこちらに近づいて来て私たちを守ろうとした増田教論を容赦なく攻撃して灰化されてしまった。あ、ああ、助けて巧……璃々。

 

私が恐怖のあまりその場を動けない時でも周りはどんどんと変化していって、私たちの前に立った神道くんがオルフェノクに素手で立ち向かっていって灰化されてしまった。

 

そんな時に巧が来てくれてファイズに変身してオルフェノクを撃退して撤退させてくれた。やっぱり巧はこういう時は頼りなる。

 

 

♠︎ ♠︎ ♠︎

 

 

私がカイザに変身して真理と再会してから少し経って生徒会室で、暇を持て余した私の元に流星塾の西田から電話がかかってきた。高宮のこととか聞かれるのかな?あいつ今は流星塾だったみんなと一緒にいるって確か電話している時に言っていたっけな。少しめんどくさいが、私が殺したと思われるのも癪なので電話に出た。

 

 

 

電話では私のことは今はとりあえずカイザのベルトを持ってみんなが揃っているキャンピングカーに来てくれというような内容を言われた。西田の口調的に私は疑われているんだろうな。私も流星塾の連中には聞きたいことが色々あることだし、ここは大人しく行くことにするか。

 

 

♠︎ ♠︎ ♠︎

 

 

私が指定されたキャンピングカーが置いてあるとおもしき場所に着くとそこには灰の前で静かに佇んでいるファイズの変身者の巧、真理そして流星塾生の西田•阿部•上条•徳本がいた。西田が一緒にいると聞いていた神道と増田教論はいないことから……多分襲撃でもされたあの灰がそうなんだろう。増田教論は昔から優しかったな、最後くらいはお別れは言いたかったな。柄にもなく私はしみじみとなってしまったのだが、こちらに気づいたであろう巧によって私は流星塾生の前に連れ出された。

 

「や、やあみんな久しぶりだね。積もる話もあるし、とりあえず中に入ろうか」

 

この間真理と会ってはいけないなと思いながら何も言わずに去って行ったのに、何故か真理がいるから何か私だけ気まずいんだけど。

 

「で、こいつは誰なんだ?」

 

流星塾生じゃない巧から至極真っ当な質問が来た。それを言うなら私としても何故いるのか聞きたいんだけど。まぁ気にしないからいいけど。

 

「そうだね。まぁみんなにも私が今何をしてるのか気になるだろうし、ついでに簡単な自己紹介をするよ。私の名前は阿波璃々。私立阿波学園の理事長の孫で、生徒会長をしている高校三年生だ。よろしくな」

 

私の張り切った自己紹介に全員呆気に取られていたようだが、上条がそれよりも聞きたいことがあると言わんばかりに私に食ってかかってきた。

 

「い、いやそれよりも何で璃々がカイザのベルトを持ってるのよ。高宮くんから奪ったんでしょ!しかも、変身していてもここに生きているのも変だし」

 

変身しても灰化していることについては何て説明しようかな。多分オルフェノクだからですなんて言えるわけもないから。どうしようかな……。

 

「高宮のことは連絡出来なくてすまない。高宮と一緒にいる所をオルフェノクに襲われてカイザに変身した高宮が撃退してくれたんだけど、変身した高宮はオルフェノクを倒して灰化してしまって……ベルトだけでも他の奴に渡らないようにしようと思って持って帰ったんだ。なんで私が変身しても灰化しないかは分からないけど」

 

私の説明にみんな納得がいったのか黙り込んでしまった。それより他の流星塾生はここにはいないんだろうか。雅人もいないようだし、前に梓に聞いたデルタに変身した沙耶もてっきりここに合流しているかと思ってたんだけど、まぁ真理をいじめていた澤田がいない事は嬉しいけど。

この黙り込んだ空気を気にしてか西田が私に雅人のことについて聞いてきた。

 

「そうか疑って悪かったな。そういえば璃々は同窓会で書いたこの寄せ書きについて何か知らないか?来ていないはずの草加の名前が書いてあるんだよ」

 

確かに私は同窓会には用事があって行けなかったが、確か雅人は前日に行くと電話で聞いた気がするんだけどな。そういえば最後に連絡取ったのはその日だったかな。それからは何故か連絡がかかってこないんだよな。以前は結構な頻度でかかってきてたのに。

 

「いや、私は同窓会には絶対に行っていないけど、前日に雅人は同窓会に行くと言って楽しみにしていたし、行ったはずなんだけど」

 

私の言葉を聞いても流星塾生のみんなは何かしっくりきていないようだった。これは私が間違っているのか?それとも他の流星塾生全員が間違っているのか?いったいどっちなんだ。

 

「そんなに言うんだったらその草加って奴に直接聞いてみればいいじゃねぇか」

 

馬鹿そうに見える巧のわりに確かに良い考えだと思った。なんで思い浮かばなかったんだろう。

 

「確かに良い考えだな。よしじゃあ、昔仲が良かった私と真理が行くことにするか。巧も来るか?」

 

私の提案に巧はしぶしぶながらも了承した。まぁ巧もこんな所に友達の友達みたいな関係性の流星塾生のみんなと放置したら可哀想だしな。

 

 

♠︎ ♠︎ ♠︎

 

 

私と真理と巧は一旦休憩もかねて二人の拠点であるクリーニング屋に今はしゃべりながら向かっている。真理の事は遠くから見守りかったけど、前みたいなことをしなければいいんだ。それで私と真理の仲は変わらず保たれる。

 

「璃々って生徒会長になったんだね。すごいよね〜昔も頼りがいのある親友って感じだったけど今も変わっていなくて安心したよ」

 

「真理も美容師になろうと頑張ってるんだろう?努力家の真理ならなれると思うよ」

 

「そうかな照れちゃうけど、ありがとう」

 

「巧そんなにこっち見て私と璃々の仲が気になるの?」

 

「別にそんなんじゃねぇよ」

 

「照れなくていいよ巧。私と真理の仲は流星塾からで、いじめられていた雅人を助けていた真理を助けていたりしたのが私だから距離が急速に縮まって親友と呼べるまでの存在になったんだよ。懐かしいなぁ」

 

ついついと雅人と会うのが楽しみだから昔話なんてしちゃったよ。ファイズもカイザにも変身出来る二人がいるならもし真理に危険が迫っても大丈夫だし、ここに雅人が加わってもしっかりと守れるだろうな。

こんなにも真理の近くにいると昔みたいになんの遠慮もなく雅人と真理と過ごしたいと思ってしまうな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




阿波璃々
7歳の頃に両親とともに交通事故にあって両親ともども死亡してしまったが、オルフェノクとなって一人だけ生き残ってしまった。その後九死に一生を得た子供として流星塾に引き取られた。そこで真理と雅人と仲良くしていたが、体調の良くなった祖父母に引き取られる形で流星塾を去った。そのまま祖父が理事長をする私立阿波学園に入学して現在生徒会長となる。

大雑把な璃々の経歴はこんな感じです。本編で詳しく語る予定のところはここに書いていないです。


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草加雅人という男

モチベとか色々あるけどこれで全部書きたい場面は書けた。


私と真理と巧は拠点であったクリーニング屋に着いており、人手が必要だと言うので、ここで真理と巧と一緒に暮らしたいる菊池啓太郎という男と合流して改めて雅人が通っていると言われる大学に向かう事になった。

 

私から見た菊池啓太郎という男の第一印象は少々気合が足りないと思うが、それなりに出来た人間だなとは感じのは事実だ。

そんな啓太郎と初めての雑談をしながらも私たちは雅人が通っている大学に着いた。大学は広そうであり確か一度雅人に会いに来る為に一度は来たことがあったと思うのだが、私はそんなことよりもただ早くトイレに行きたいと考えていた。あのクリーニング屋を出た辺りから腹痛が始まって、こんな雅人を探しに行こうぜ!みたいな雰囲気の中行くことが出来ずにそのままここまで来たというわけだ。というわけでここは探すついでにトイレに行くとするか。

 

「そうか、そうか。真理達は一旦受付で名前を探すんだな。私はちょっと中の教室とかを回って探して来るよ。じゃあまたあとで」

 

私は真理達の返事も聞かずに大学内に入っていって、さっそくトイレを見つけると入っていった。

こんな時に真理達の力になれないのは残念だけど、多分この腹痛は久しぶりに雅人と会うからその緊張が出ているんだろう。でもまぁ少しの間ここに篭っていれば真理から雅人を見つけたという連絡がくるからそれまではここにいておくか。

 

 

♠︎ ♠︎ ♠︎

 

 

私がトイレで時間が潰して大体15分ぐらい経った時に真理から電話がかかってきた。ふぅー腹痛は無くなったけど、やっぱりまだ緊張はするが、覚悟は決めないとな。さすがに真理や巧や啓太郎などに失礼だからな。

 

『もしもし、璃々今どこにいるの?』

 

『私か?私は今大学の中にいるけど?』

 

『そうなんだ。じゃあさ大学の校門らへんに来てくれない?草加くん見つかったからさ』

 

『あ、ああ。分かった直ぐに行くから』

 

『早く来てね!草加くんも早く会いたがっていると思うから』

 

私は真理から電話を受け取ると直ぐに建物内から出て、校門前に向かって走り出した。真理ほどでは無いけど私だって雅人と会うのは久しぶりだからどきどきしているが、いざ会えるとなると自分の足がいつもより早く動いていることに気づいた。

 

 

♠︎ ♠︎ ♠︎

 

 

私が校門に着いた頃には一緒に来た三人とそこに雅人も追加された四人がいた。あとから入るのは入りにくいがいつものような態度で行けば問題ないだろう。

 

「よ、よぉ雅人見つかったんだってな」

 

「そうそう草加くんやっと見つかったんだよ。色々あって結構苦労しちゃてさ。そういえば草加くん立派になったよね。璃々も最近会ってからそう思うでしょ?」

 

確かに私はついこの間までは連絡しかとってなかったから分からなかったが、見れば雅人は昔と比べて随分と背も伸びて引き締まったように感じた。なんというかこれが母親が成長した息子に抱く感情なんだなと自分でもそう思えた。

 

「やぁ璃々じゃないか。久しぶりだね。結構背が伸びたんじゃないかな?」

 

雅人はこんな笑顔なんてしたかな?というような笑顔をしながら私を褒めてきて、しまいには握手まで求めてきた。私もまぁわざわざいまさらだが握手に応じた。

 

「ちょっと俺一対一で璃々と話したいことがあるからさ。三人とも先に流星塾のみんなのところに向かってくれないかな?直ぐに向かうからさ」

 

雅人がいきなり一対一で話したいと言い出しやがった。まるで意味が分からない。そんなに個人で話すことなんてあったかな?あの記憶を思い出したってことは無いだろうし、もしかして真理への恋心の相談なのか?昔はよくされていたもんな。

 

「うん分かったよ草加くん。二人共積もる話だってあるだろうしね。でも早く来てねまた流星塾のみんなに何かあるとも限らないんだから」

 

「分かっているよ。そこまで時間はかけるつもりは無いから心配しなくても大丈夫だよ。じゃあ行こうかあっちに行こうか璃々」

 

私は雅人に連れられるまま三人と一旦お別れを告げながら周りに誰もいないような場所に着いた。雅人からどんな話があるのかは分からないけど、どんな話が出てきても覚悟はしているつもり。

 

「ここなら大丈夫そうかな。それで璃々に話っていうのはさちょっとカイザのベルトを見してほしくてね」

 

え、どうしてそんなことを言うんだ?確かに珍しいものだし、危険はあるけど変身すれば力を手に入るものだけどどうして雅人が欲しがるんだ?

 

「ど、どうしてこれが見たいの?」

 

「特に深い理由なんてないよ。少し興味深いものだから少し見てみたいってだけでね。大丈夫だよ直ぐに返すから」

 

私は結局雅人の言う通りにベルトをケースから出して見せてしまった。

 

「へぇーこんな風になっているんだね」

 

だけど雅人は見たと思うとカイザのベルトを取りそのまま腰にはめた。

私は何故雅人がそんな事をやっているのか分からなかったけど、とりあえずカイザに変身すると雅人に灰になってしまうと思って止めようとした。

 

「ちょっと何をしてるの雅人。それは変身すると灰になるかもしれないんだよ?早く外して!」

 

私の言葉を聞いた雅人は今までに見たことの無いような憎しみを込めた目線で私の方を見てきた。その目と表情を見ただけで私は寒気がしたような恐怖心を感じてしまった。

 

「黙ってくれよオルフェノク。オルフェノクの君がこのベルトを使う事は許されないんだよ。それで真理の近くにいるなんて近づかなくてくれないかなぁ!」

 

分からない分からない、何故雅人が私のことをオルフェノクというのか、何故こんなのにも怒りをあらわにするかなんてまったく分からない。私と雅人は親友のはずで、お互いに真理を思っていたはずなのに……

 

「な、なんでそん「思い出したんだよ。璃々が俺と真理に自身がオルフェノクだと言った時のことをね。俺だって璃々を殺したくなんて無いよ、でもオルフェノクが近くにいると真理に危険が晒される。でも心配しなくても俺が真理をカイザとして守っていくよ」え、いや、そんな事」

 

どうしてどうして雅人が思い出したんだよ。私の記憶操作は完璧なはずだった。いままで思い出す事なんて無かったんだから。どうしようどうしよう雅人に殺される?……いやだ、まだ生きたい。私が雅人を殺せばいいのか?だめだそんな事出来るわけが無い。いや、まだ和解は出来るはずだ。

 

私が正面を向くとそこにはカイザが刃を携えてこちらを向いて立っていた。

 

「オルフェノクに変身しないのかい?俺が人間態の璃々に攻撃出来ないとでも?」

 

怖い怖い、でも殺される訳にはいかない。真理や梓、かすみや紫乃などの私が守らなければならない人達を守るまでは私は生きなければ。

 

「雅人君の覚悟はよく分かった。私も死ぬわけにはいかない、だから全力でいかせてもらうよ」

 

オルフェノクに変身した私に雅人は躊躇なく撃ってきた、痛い痛いけどこんなものぐらい。

 

「何で璃々がオルフェノク何だ!何故俺と真理の親友のお前がよりによってもオルフェノク何だよ!」

 

雅人は言葉を叫びながら私に刃を払ってきた。私はところところをガードしながらも攻撃を受け続けた。

 

「どうして攻撃してこない!オルフェノクらしく理性もなくして攻撃を仕掛けてこい!」

 

雅人の悲痛な叫び声が私の耳に入って来る。苦しそうで憎悪にも満ちていて悲しい声。やっぱりまだ迷っていてくれることが嬉しくて、それでも今のこの状況をこの雅人の状態を私は許すことなんて出来なかった。

 

「雅人もうやめてよ。お前はそんな事をするような奴じゃ無かっただろう!もっと人の事を思えて、真理の事を誰よりも純粋に思える良い少年だったじゃないか!そんな君がどうしてこんなことを」

 

「うるさい!同窓会に来たなかった君には分からないだろうけどな。オルフェノクは危険で人間の暮らしを脅かす存在なんだよ!」

 

そうだけど、違う違うんだ。人を殺すだけがオルフェノク何かじゃない。人間と変わりなんてほとんどないんだ。

 

「オルフェノクって一纏めに括るなよ。オルフェノクになって人生が良くなった奴だっている。オルフェノクになって苦労している奴だっている。そんな奴らを全員雅人は殺すのか?」

 

雅人は荒い息を吐きながらも私の言葉は聞こえていたようだが攻撃の手は緩むことは無かった。

 

「黙れ黙れ黙れぇ!大人しく灰になれよ!」

 

雅人はベルトのEnterを押すと私に向かって拘束弾を発射してきて、そのまま構えた。

 

私は雅人が構えた刃を受ける寸前に拘束された無理やりにでも動かして拘束を解いてそのままギリギリところで避けて何とか致命傷を受けることには成功した。

 

「……避けたのか。でも相応のダメージは負っているようだね。その体じゃもう満足に戦えないだろうな」

 

「ああ雅人の言う通り私の身体はもうボロボロさ。だからここは逃げさしてもらうよ。でも、ちゃんと雅人のことは救ってみせるからさ。楽しみにしていてね」

 

私は言い残すとそのまま飛翔態に変身をして雅人の前から逃亡した。このままいけば完全に回復する見込みなんてないなと思いながらも私は自分の自宅に戻ったのだった。

 

そこに梓がずっと帰っていない事なんて知らずに。

 




次回から完結に向けて無理矢理にでも畳んでいきます。


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最終幕 オルフェノク
副社長は動く


今回は独自解釈があります。ご注意下さい。



俺は今たまに来ることがある警視庁に来ている。

何故わざわざオルフェノクでしかもスマートブレインの副社長である俺がこんなところに来ているというと、ここには全国の灰化事件の概要、被害者などなどさまざまな情報が集まるからだ。そしてその情報を公表しないように警察に圧力をかけるためと優秀なまだスマートブレインに発見されていないオルフェノクを探すためでもある。これはスマートレディの仕事の一部でもあるのだがあいつは信用は出来なく何となく胡散臭いので、自分でする必要があるのだ。

 

「これがここ最近の灰化事件の資料です」

 

俺は渡された資料をいつものようにペラペラとめくりながら見ていると、興味深い事件を発見したのだ。それはある高校で女子生徒三名が行方不明になったというもので、図書室に灰があったものからこの資料に回されたものだった。それに関連してその学校が実施した林間合宿で生徒が六名行方不明になっているということだ。

この事件が他の灰化事件と異なっている点は、同じ閉鎖空間の学校で灰化事件が立て続けに起こっているということだ。

これは珍しいことで学校という場所で覚醒したオルフェノクは通常その学校にいる人間全員を使徒再生した後にスマートブレインに保護されるもしくは一部の生徒を灰化させた後に失踪する場合が多いということだ。

 

なのでこの学園にいるオルフェノクは個人である可能性が少なく、しかも普通に人間として社会に紛れ込んでいるということがあるかもしれないのだ。

ならば犯人は自ずと見えて来る。この事件の近辺で起こった生徒の家族が灰化する事件があった。そしてそこの学校の生徒である女子生徒は生き残っていている。

 

伊予梓か……ならばこの生徒がオルフェノクに覚醒しているのだろう。しかも今そいつと住んでいるであろうこの阿波璃々という奴もオルフェノクなのだろうな。

これはもしかしたら良い人材が何人も手に入るかもしれないな。

 

「それで長門さんに聞きたいことがあるのですがよろしいですか?」

 

警察関連のお偉いさんが俺に質問があると言ってきた。結構な歳を重ねているのだが、俺に殺されたくないのだろうと丁寧か言葉使いをしていた。俺からしたらこんな歳を取ったやつからの敬語も当たり前だからほとんど何も感じはしないが……。

 

「なんだ?とっとと質問をしてくれ」

 

「それが先日耳にしたんですけど、警視庁の南雅彦を殺したとか。何故殺したんですか?あいつはスマートブレインから多くの融資を受けていたはずですが」

 

南?……ああ、あいつか。オルフェノクに対抗するためにオルフェノクを実験体にしたりして、調べていたらしいからな。そんな事をされても邪魔なだけで俺からしたら人間からのオルフェノクへの認識なんて吸血鬼みたいに伝説で出てくる危険な生物くらいがいいのに、それをわざわざ解き明かそうして、しかも人間とオルフェノクとの戦争に勝つためとか本当にこれ以上オルフェノク過激派を刺激しようとするような事をしてほしく無かったからな。

 

「スマートブレインから融資を受けていたといってもそれは花形さんと村上くんがやっていたことだろ?私には関係もない。あんな事をやってもオルフェノクとの戦争が現実に近づくだけだ。オルフェノクと人間なんて始めてしまったら終わりなんて見えないし、何よりどちらも絶滅寸前になる事は必至だからな」

 

俺は話が終わったばかりにもらった資料を持って警視庁から去っていった。スマートブレインまでは迎えの車に乗りながらその中でこれからの行動について考えていると部下からの電話がかかってきた。

 

『もしもし。私だが』

 

『副社長ご報告したいことがありまする』

 

『どうした?いってみろ』

 

『ラッキークローバーの一員であるジェイが完全に灰化消滅いたしました』

 

『完全に?三回もジェイがやられたということか?』

 

『はい。ベルト奪還任務中に三回目はファイズによって倒されてしまいました』

 

『村上くんはラッキークローバーを酷使しすぎだな。これじゃあラッキークローバーが可哀想だな。でも、ファイズが倒したのか……結構な手練れということだな。じゃあ私もラッキークローバーを使うことにするか』

 

『それは北崎さんを使うことってことですね』

 

『ああそうだ。私の言う事を聞くラッキークローバーなんて北崎だけだからな。ってことで北崎に私のところに来るように言っておいてくれ』

 

『了解しました。では、また後で』

 

さてと、これからの予定を考えることにするか。

まずはベルト関連だがこれはほっといて問題がないだろう。どうせ村上くんが琢磨や影山に任せるだろうからな。

次に空いたラッキークローバーの枠だがこれも村上くんと他のラッキークローバーの推薦とかに任せるかな。俺がこれから探しに行くオルフェノクが目的の素質を持っていない場合は推薦してもいいがな。

さてと最後はさっきの資料の奴だけど、オリジナルの可能性も考えて北崎を連れて行くことにしたけど過剰過ぎたかな?だが、素質を持っていた場合俺一人だと少々手こずる可能性もあるからな北崎を連れて行って損は無いだろう。

 

こんなにもわくわくするのは久しぶりかもしれないな。前に北崎を見つけ出したみたいな感覚がするからかもしれないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




多分あと三、四話ぐらいで終わると思われます。


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進んでいく準備

時系列は一気に飛びます。


私が目を覚ますとどこか知らない場所にいた。

何故知らない場所にいるかなんて考えてみても検討もつかない。

 

自分の最後の行動を思い出してみても、いつものように学校から璃々さんと暮らしている家に帰ってたと思う。でも、その辺の記憶が曖昧で誰かを見た気がするけど、この状況を見るに多分その人に誘拐されたとかなのだろう。私はオリジナルのオルフェノクなのに情けないな。

 

そんな風に自分の事を嘲笑していると、この部屋のドアが空いてそこから若い紳士的な格好をした男の人と地味な服を着て笑顔でいる少年が入ってきた。

 

状況を鑑みるにこの二人が私を誘拐した犯人という訳だろう。しかも何故だか私の本能がこいつらは危険だと訴えて来ている。だけどただ一つの出口であるドアからはこいつらがいて、他に出口も無さそうな様子だ。ここは自らがオルフェノクである力を使って強引に出るしかなさそうだな。

 

どうせ誘拐犯なんて灰にしてしまって問題なんて無いだろうし、どのくらい眠っていたかは分からないが、これ以上かすみや璃々達に心配をかけさせるわけには行かないから、とっとと帰らないと。

 

「あーなんかあいつオルフェノクになったけど、やっちゃっていいんだよね」

 

「ああ北崎、君に任せる。もちろん殺してはダメだからな」

 

私がオルフェノクに変身をして、三又槍で刺そうとしたところに、少年の方がオルフェノクに変身して私の槍を腕で受け止めてきた。

 

「な、あんた達二人共オルフェノクなのか。私がオルフェノクだと知っていて誘拐してきたの?」

 

私が少年のオルフェノクと戦いながらも男に質問をした。

 

「ああそうだとも伊予梓君。もっと言うと私が君を拐ってきたのは君がオルフェノクだからだよ」

 

一体どういうことなの?私がオルフェノクだからと言うことは三人は無事なのか?私が拐われたということは三人も誘拐された可能性も高いが、ここの部屋にいない事を見ると他の部屋に囚われているのだろうか。私はオルフェノクからの容赦の無い猛撃を受けながらも必死に考えを巡らせていた。

 

「私の周りの人も拐ってきたのか!一体何が目的なんだ。あんた達はスマートブレインなのか?私達の事を粛清する為か」

 

「拐ってきたのは君だけということは断言出来る。そしてスマートブレインと聞かれるとそうだが。いい機会だし自己紹介をしておこうか。私はスマートブレイン副社長の長門梗介だ。そしてそこにいるオルフェノクはラッキークローバーの北崎だな。そして君を拐ってきたのは私の独断だ」

 

分からない。何故私だけを拐ってきて、しかもそれは何故この副社長の独断なのか。何も分からない。

私はそのまま少年のオルフェノクの強い殴りを受けた衝撃で意識を失ってしまった。

 

 

♠︎ ♠︎ ♠︎

 

 

梓が消えてからそれなりの日が経ってしまった。私が雅人から受けた傷ももうほとんど治ったぐらいだ。梓が失踪してしまってからかすみや紫乃も必死に写真を持って今も探していて、私も写真を真理や雅人に見せて空いた手間があると探してもらっている。

雅人に頼む時は非常に苦労したけど、なんとか説得が出来て良かった。

でも今でも雅人はカイザに変身してオルフェノクを倒しているらしいので、そっちの方もすごく心配だ。

 

だけど今日になってやっと新しい情報が得られたのだ。なんと紫乃の知り合いのメガネをかけたインテリな男の人がスマートブレインで写真の梓を見たらしいのだ。そのお兄さんもオルフェノクの可能性があるけど、紫乃もあっちも気づいていないようだし、今は置いておこう。

 

それよりも重要なのは梓がスマートブレインに囚われているということだ。あの協力的では無いオルフェノクは粛清するという場所に囚われているということは良い待遇を受けていないことは明白だ。早めに助けに行けるといいんだけど。

もうすこしで私の傷も治るだろうから、それから危ないけどかすみや紫乃、巧が変身するファイズや雅人のカイザにも手伝ってもらおう。なんたってあのオルフェノクの巣窟のスマートブレインに乗り込むのだから。

 

 

私はスマートブレインに乗り込む手伝いをお願いをするためにあのクリーニング屋を訪ねた。

 

「あ!璃々さん。梓さんは見つかったかな?僕達の方ではまだ見つかって無いんだけど……」

 

訪ねてみると啓太郎が出迎えてくれて、会って直ぐに申し訳なさそうな顔をされてしまった。

 

「その事で話があるんだけど。中に入ってもいいかな?」

 

「もちろんだよ。どうぞ入って入って。今は新しくバイトの子が入ったんだけど、気にしないでね」

 

啓太郎から快く中に入ってみると中には昼ごはんを食べていると思われる巧とうん?この顔は沙耶じゃないか?何でこのクリーニング屋にいるんだ。

あっちもこちらに気づいたようで、目が合うと不自然に逸らされてしまった。

 

「この子が新しく入ったバイトの人ですか?」

 

「うんそうだよ。たっくんと同じ猫舌の木村沙耶さん。もしかしたら知り合いかな?」

 

確か前に梓が会った時に沙耶はデルタのベルトを持っていたはずだ。これは思わぬ収穫だな。これからの戦いには一人でも戦力が必要だから、沙耶にも手伝ってもらう事にするか。

 

「ああ知り合いなんだ。少し二人で話したいことがあるからいいかな?後で啓太郎と巧に話すことは話すから」

 

私は沙耶に目配せをすると、とりあえず二人でクリーニング屋を出て表で話を始めた。

 

「どうして沙耶がこのクリーニング屋にいるんだ?それに沙耶はデルタのベルトを持っていたよな?今も持っているのか?」

 

私が一気に質問したせいなのか、沙耶は少し萎縮してしまったようだが、時間が経つと意を決したのかはっきりとした口調で答えた。

 

「私は確かに今もデルタのベルトを持っています。そしてここに来たのはファイズとして戦っている巧さんのことを聞いてベルトを託せる人か見極めに来たんです」

 

そうか……沙耶もオルフェノクとかと随分と戦ったのが、この言葉から伝わってくる。沙耶は流星塾の中で一番優しかったからな辛いこともあったのだろうな。だけど巧にベルトを渡してもらっては困るな。戦力が一つ減ってしまうことになるからな。

 

「沙耶の事情は分かった。でも、ベルトを渡すのは少し待ってくれないか?実は私の仲間の梓がスマートブレインに捕まったんだ。それを沙耶にもデルタとして手伝ってほしいんだ。沙耶も森で会ったことあるんだろ?あの人魚のオルフェノクである梓に」

 

私のお願いに対して沙耶は随分と悩んだようだったが、暫くすると覚悟をした顔を私の方に向けて来た。

 

「分かった。梓さんを救出すればいいんだよね?私でよければ力を貸すよ」

 

これで戦力が随分と増えてくれた。私にかすみに紫乃、それに後で誘うがファイズとカイザ。そして今誘ったデルタ。後かすみが知り合いに声をかけてみると言ってくれたから、それもそろえば大きな戦力になることになる。スマートブレイン全体かは分からない。でも、例え全体だろうと構わない。

 

私は私の周りの人だけでも守ってみせる。それが私の夢であり、私の生きている意味なのだから。それを守らなければ私に生きている価値なんて無いから。

 

 

 

 




木村沙耶は本編を始めて見ていた時になんで死んだんやと思ったのをすごい覚えています。


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人間とオルフェノクの半端者

本編時系列では26話ぐらいから分岐しています。
真理と啓太郎は安全を考慮して留守番してもらっています。


沙耶から協力をしてもらう約束をした、私はあれからファイズである巧とカイザである雅人との協力をなんとかして取り付けた。

 

それから今私は梓を救うためにスマートブレイン近くに来ている。梓と親しかったかすみや紫乃はもちろんのこと、協力を要請した巧や雅人、沙耶も来てくれた。それと、かすみが協力を頼んでくれたオルフェノクで信用の出来る人達が三人が来てくれたみたいだった。

 

それで、事前の作戦会議で雅人の提案によってチームを二つを分けることになることになって、かすみが呼んでくれた三人のオルフェノクの人達と紫乃とかすみの五人が工事業者として裏から潜入していって、私と雅人、巧と沙耶の四人が正面から掃除業者に成りすまして潜入することになっている。はっきりと言ってしまえば不安だけど、もう清掃員の格好をしていて後戻りは出来ないので、梓を取り戻して大団円で終わりたいなぁとしみじみと思いながら作戦を開始することにする。

 

事前にスマートブレインの幹部と戦ったのある巧や雅人の情報によると、ラッキークローバーと言うのがいる可能性が高くて、確信に近いけど、オリジナルのオルフェノクだと思うので一応の覚悟はもちろんしてきている。

 

 

♠︎ ♠︎ ♠︎

 

 

「おい、俺この格好二回目なんだが、こんなんでバレないもんなのか?」

 

清掃員の格好をしながら入ったスマートブレインの本社の中で、巧がこの状況に対して今更ながら苦言を呈している。確かにこの格好でバレてない事は奇跡だと思うけど、私としては気にしない事にして進める所まで進みたいと思っている。

 

無事にエレベーターに乗った私たちはとりあえず上から探していこうと言う事で、高い階のボタンを押してそこに向かう事にした。かすみのグループとは何かあったか、梓を発見したら連絡をしようと事前に相談をしていたので、もしかしたら同じ階に行く事になってしまっているかもしれないが、その時はその時で大勢でスマートブレインに勤めているオルフェノクを倒しながら探すことになるだろう。

 

その階に着くと人気はほとんど無くて、嵐の前の静けさというやつに私は思えてしまった。このいかにもな雰囲気に巧や雅人、紫乃も息を殺して周りを警戒してくれているようだった。私だってこの異様な感じに警戒心がいつも以上に上がっている。

 

そしてその予感は当たっていたようで廊下を進んで行くと、そこにはまだ幼い様な表情をした少年と私も見覚えのある流星塾生の澤田が立ち塞がるように立っていた。

 

「やぁ、やっときたんだね待っていたよ。さぁ長門が足止めもしくは、殺しても構わないって言ったからやっちゃうね」

 

その少年は純粋そうな笑顔を見せながら、物騒な言葉を口にしてきていた。だが、そんなことよりも気になるのは澤田のことだ。なんで澤田がこんな所にいるんだ?私は澤田がオルフェノクなんて一回も知らなかったし、そんな事知るよしも無かった。隣の雅人も知らなかったようで、随分と驚いた表情をしている。私と雅人は澤田に対して真理をいじめる嫌な奴という印象を持っていたからこの再会は何とも言えない気分になってしまう。

そんな澤田を見た私と雅人とは違って、沙耶はすごく悲痛で辛そうな顔をしていて、何か知っていることは明白だけど、後で聞く事にしよう。

 

「ベルトを持っている人間が攻めて来ると社長が言ってたけど、残りのラッキークローバーの二人と一緒に行かなくて北崎の方に来て正解だったよ……。だってここで流星塾生の三人を殺せるんだから」

 

澤田の敵発言を聞くて、こちらの三人はライダーに変身をして、私と北崎?と澤田はオルフェノクに変身した。澤田は分からないけど、そっちの北崎は確実にオリジナルで、戦闘力は折り紙付きだろう。巧も雅人も最後に会ってから色んな経験を積んできたとは思うけど、それでも勝てるかどうかは分からない。

 

 

巧と沙耶は北崎の方を相手どって、私と雅人は澤田の相手をする様に動き出した。

 

「澤田!お前はここで倒す。お前が二度と真理に近づかないようにするためにな!」

 

雅人の渾身の攻撃と怨念の籠った叫びを聞きながらも澤田は臆する様子も無く、手に生成をした手裏剣のような武器を使って雅人の攻撃をいなしていた。

私も雅人の邪魔をしないようにしながらもオルフェノクの身体能力を使って攻撃を加えていっていた。

 

「俺は真理もお前らを殺さなくてはならないんだ。オルフェノクの本能がそう訴えてくるんだ……」

 

澤田は澤田でオルフェノクの本能と戦っている様で、随分と苦悩をしているのが、見て取れる様だった。私もオルフェノクの本能とも言うべき人間を襲うことが頭の中になだれ込んできたことをあったけど、そんな時は理性を保った存在でありたいと思い続けて何とか耐えていた。

 

「澤田悩むことなんて無いんだ。オルフェノクと人間の狭間で生きていたって良いんだ。私はそんなオルフェノクを知っているから……」

 

私は澤田を説得するように訴えかけた。戦いを避けられるものならば避けたい。流星塾生の中で争い合うなんて父さんも教論もそんな事は望んでいないと思うから。

 

「うるさい。璃々、お前のような純粋なオルフェノクになんて俺の気持ちは分かるわけないんだ……」

 

「璃々こいつはもう敵なんだ!戦いに集中するんだ。こいつを殺すだけを考えろ」

 

私はどうするべきかは分からない。だけど、たとえ真理のいじめていた澤田であろうと、もしここで殺してしまっては絶対に真理は悲しむと思うから、だから私は澤田を殺したくなんてない。

 

 

♠︎ ♠︎ ♠︎

 

 

私木村沙耶はここに来たことを少し後悔をしていた。何故ならば自分の想像を大きく超える形で、目の前のオルフェノクが存在していたから。

 

私自身これまでデルタとしてオルフェノクと戦ってきて、自信がそれなりについていたつもりだった。でも、目の前のオルフェノクはそれを余りにも凌駕していた。

 

北崎と呼ばれたその少年が変身するオルフェノクはこれまで戦ってきたどんなオルフェノクよりもパワーがあって、防御力があるが、負ける訳にいかない。私ばかりこんな弱音を心の中で吐いていたら、先に倒れてしまった私を庇うために未だにオルフェノクと殴り合っている乾さんがいるから。

 

全然効いていないと分かっていても、私はデルタムーバーをブラスターモードにして乾さんに当たらないように遠距離から打ち続けた。

 

「うっとおしいなぁ。でも、いいやハンデっていうのかな?お遊びとしてはちょうどいいからね」

 

北崎はまだまだ余裕そうな様子だけど、私は打ち続けた。あのオルフェノクも打ち続けたらはいつかは倒れると信じて。

 

「へっ、いつまでも余裕ぶってんじゃねぇぞ。一発逆転してやるからな」

 

乾さんはまだまだ大丈夫そうな様子で、左腕につけられた腕時計からメモリーを引き抜いてそれをベルトにセットした。ファイズの姿は段々と変わっていって、その姿は赤のラインが特徴だったファイズから銀のラインの特徴のファイズへと変わっていた。

 

そのファイズは私が気づいた時にはオルフェノクを殴っていたようで、オルフェノクの体は体格の良い体から、細身の動きやすい体に変化していた。

 

「へぇ〜けっこうやるもんだね。でも、スピードだったらこっちもまけてないから」

 

そこからの戦いは圧巻という他に無かったと思う。スピードがあり過ぎるあまり私からは全く確認することが出来ずないけど、時々見ることが出来た一瞬の動きではファイズもオルフェノクも同等に渡り合っていた。

 

私自身の体感では3分ぐらい見ていた感覚になってしまっていたのだが、どうやらそこまで経っていないようで、『Time out』という音声が聞こえたと思うと、そのまま乾さんが変身解除されて、私の方に吹っ飛ばされて来た。

 

「く、スピードもパワーも折り紙付きって訳かよ」

 

「たのしかったけど、もうおわりのようだね。じゃあね」

 

また体が体格のいいようになったオルフェノクが倒れた乾さんに止めを刺すためにこちらに近づいてきていた。最初は疑っていたけど、乾さんが本当は優しい人だって分かったんだ。守られてばかりじゃいられない。

 

私は乾さんの前に立つとそのまま『Check』とデルタムーバーに音声入力をすると、ポインターのついたオルフェノクに向かった必殺技のキックを放った。

 

だけど、その必殺技ももたせられた少しで、直ぐに弾かれてしまった。

 

「あーあ、まぁそこそこってとこだね」

 

殺されるそう思った。誘ってくれた璃々にも助けるはずだった梓さんにも申し訳なさが湧き上がってくる。隣にいる乾さんにも私が足を引っ張っちゃったかなと悲しさともっと話かったなという思いがどんどん出てきてしまった。

でも、その時に携帯の音がここに鳴り響いた。

 

その音はどうやら北崎から聞こえてきたようで、北崎は人間の姿に戻ると携帯に耳を当てた。

 

「もしもし?あー長門?なに今忙しいんだけど?え?あいつ起きたの?分かった足止めは辞めで直ぐ戻るよ」

 

電話を切った北崎はこちらを一瞥してから、後ろにいると思われる澤田くんの無気力な様子を一瞬見ると特に興味も無さそうにしていた。

 

「僕は長門に呼ばれちゃったから帰るね。副社長室まで来れたらまた遊んであげるよ。じゃあね」

 

北崎が見えなくなると、私と巧さんはその場で座り込んでしまった。

また直ぐに北崎とは戦うことになるだろうけど、その時には負けるわけにはいかない。

 

 

♠︎ ♠︎ ♠︎

 

 

沙耶と巧が北崎と戦っている間、私と雅人も澤田との激闘を繰り広げていた。最初は最近オルフェノクになったばかりだから、楽に身柄を拘束出来るかなと思ってもいたけど、思い他強敵で私と雅人の二人がかりでも苦労を要する相手だった。

 

「俺はお前らを殺して、真理を殺さなくてはならないだ!早く俺の前から消えろ!」

 

「澤田ー!どけ!璃々、俺が澤田にとどめを刺してやる。そこで見ていろ」

 

私が雅人に倒された間に、雅人は足に私が見たことも無かったカイザの武装を取り付けると、そのままEnterボタンを押して澤田に向かってポインターを放ったのだが、それを澤田は手に持っていた手裏剣みたいなので受け止めた。

 

そしてそれが盾となって犠牲になり、カイザが放ったキックを澤田を防いで見せた。

しかし、衝撃は強かったようで澤田は後ろに倒れ込んでしまった。私はそれをチャンスだと思って倒れ込んだ澤田に駆け寄って、そのまま澤田の体の上に跨がって一発殴ってやった。

 

「澤田オルフェノクに飲み込まれるんじゃないよ!昔みたいに毎日毎日飽きもせずに真理をいじめていた純粋なお前に戻れよ!何の為に昔の仲間を殺す必要があるんだ」

 

「それがオルフェノクになり切る為に必要な事だからだ……。今の俺はどちらにもなり切れていない半端者だからな……」

 

「半端者で何が悪いんだよ。自分に正直になってくれよ澤田。本当は人間の心が捨てきれなくて迷っているんだろ?でも、それは必要なものなんだよ。周りに人がいる為に必要なものなんだよ。それが無くなったらお前の周りには誰も居なくなって、お前自身も空虚なものになる。それになりよりも真理が悲しむだろ」

 

いつの間にか私と澤田はオルフェノク態から人間態に戻っていて、私の余りの剣幕に驚いたのか、雅人も動きを止めてこちらの様子を疑っていた。

 

「半端者でもオルフェノクでもいいじゃないか。澤田が澤田自身であることを捨てなければ、私も、もちろん真理も受けいれるよ」

 

私の言葉を聞いた澤田は体から力を抜いて落ち着いてくれたようだった。もうこれで私たちと澤田が争う理由なんて無い。

 

「これでいいだろ雅人?私たちが争う必要なんて無いんだ」

 

雅人はカイザから変身を解除して、こちらに背を向けながらも返事を返してくれた。

 

「後で事情は聞かせてもらうからな澤田。お前が真理に手を出す素振りを見せたら俺は容赦なくお前のことを殺すから覚えておけ」

 

私が澤田の上から離れると、澤田はそのまま壁に寄りかかりに行って、私達に苦笑をしながら一言言ってくれた。

 

「俺って何なんだろうな」

 

その言葉を聞いた直後だった。北崎の携帯が鳴ったと思ったら、退却をしていったのは。

これで多分こっちの方の安全は確保を出来たのだろう。さて、かすみや紫乃の方は大丈夫なんだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




チーム分けはこれ以上良い組み合わせが無かったと思う。


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ただ親友を取り戻すために

あと3.4話で終わるって言ってましたが、終わりませんでした。すみません。

あと5話以内には完結させますので安心してください。


 

梓を探すため、私は璃々さん達とは分かれて裏口の方から侵入をしていた。

もちろん私一人だけでは無く、紫乃や私が頼んだ木場さんやその仲間の長田さんと海堂さんと一緒に侵入をしている。

 

「ちゅーか、スマートブレインの中なんて入って、もし居なかったら俺ら出ることは難しいじゃねぇか?」

 

「大丈夫ですよ海堂さん。淡路さんの知り合いがここで見たらしいのて」

 

「はい。私の知り合いは物事を覚えることが得意な、インテリな人なので信じるに値するのは確かです」

 

紫乃や木場さん達が一緒に来てくれていて私は本当に心強い思いでいっぱいだった。私一人だけだと、梓を助けられないと絶望して心が折れていたかもしれないから。

 

木場さん達は他のスマートブレインのオルフェノクと何ども戦ってきていたようで、強いのは確かで、しかも木場さんや長田さんはオリジナルのオルフェノクらしく私や紫乃なんかよりも強い。

 

そんな心に余裕を持ちながら私達は進んで行き、エレベーターに乗ってとりあえず上の方の階に梓がいると思って上層階のボタンを押した。

こっちのグループで梓を発見したら璃々さんのグループに連絡すると打ち合わせしているので、早く梓を見つけて璃々さんを安心させてあげないと。それに、……家族の事で私は梓を救えなかったから、今度は絶対に救わないと親友失格になると思うから。

 

 

♠︎ ♠︎ ♠︎

 

 

エレベーターから降りた私達は慣れない動きながらもそれっぽくクリアリングした。

 

その結果どうやらこの階には何も手がかりが無いみたいで、私は落ち込む気持ちを切り替えながら、次の階へのボタンを押した。

 

次の階に着くとこちらでも同じようにクリアリングをすると、社長室と思われる場所を見つけた。

 

「ここが社長室なのか。こんな所にあったんだね」

 

スマートブレインに来た事がある木場さんでも知らなかったみたいで、ここに何かあると確信した私達はお互いを見て頷きあって、突入をした。

 

突入した部屋の中は広々した空間で事務的で座りやすそうな椅子と机そしてその上に置いてあるパソコンのみだったのだが、部屋の中には黒服の胸元に薔薇を刺したいかにもな用心棒が二人いた。

 

私達は警戒することを忘れずにオルフェノクに変身すると、その用心棒二人は何の言葉を発することは無くオルフェノクに変身した。

そのカブトムシのようなオルフェノクとクワガタのようなオルフェノクを相手に私達は臆することなどなく、向かっていった。

 

カブトムシのオルフェノクを相手取るために距離を詰めた私に後ろから木場さんが助太刀に来てくれて、お互いにヒット&アウェイの要領で戦いを優勢に進めた。

相手の使ってくる薙刀を私が身体から出した茎で防せぐと、ここが好機と判断したのか木場さんはそのままカブトムシのオルフェノクに切り付けながらも詰めていって、剣を受け止めた薙刀をも打ち上げてそのまま胴体を切り去った。

カブトムシのオルフェノクはそのまま青い炎を上げながらも灰となって崩れていった。

 

 

私は心の中で木場さんに賞賛を贈ってから、もう一方はどうなっているかを見てみると、クワガタのオルフェノクは青い炎を上げながら倒れ込んだ所で、その周りにはトドメを刺したと思われる、全身白い鶴のようなオルフェノクの長田さんが出した無数の白い羽と全身黒い鴉のオルフェノクの紫乃が出した無数の黒い羽が舞っていて、幻想的な雰囲気を醸し出していた。

 

敵を撃破した私達は社長のパソコンを調べるもパスワードがかかっていて、周りを探してもパスワードのメモが無いようなので諦めて、部屋を出て別の階に向かった。

 

 

♠︎ ♠︎ ♠︎

 

 

エレベーターに乗って別の階で降りて、今回も先程と同じようにクリアリングしようとしたところで、私達は廊下に立っている二つの影を見つけた。

近づいていくと、それは二人の男女だった。男の方はメガネをかけて落ち着いた雰囲気を醸し出して気取っている感じで、女の方は妖美という言葉を体現したような顔と格好をしていて、底が分からない感じだった。

 

「ようやく来たのね。待ちくたびれちゃったわ。お嬢ちゃん達」

 

「ええ、本当ですね冴子さん。あの副社長も我々ラッキークローバーを甘く見過ぎで……すよ……」

 

男の方は紫乃を見た瞬間から驚いた表情をして、言葉が詰まっていた。紫乃の方も男の方を見ていて驚いて、メガネを拭いたりもしていた。

 

「紫乃。あの男の人を知っているの?知り合い?」

 

「う、うん。あの人が私と本の趣味が合って、よく話してくれて、梓の居場所をここだと言ってくれた琢磨逸郎さん」

 

「じゃあこれはラッキークローバーの罠か?」

 

「いや、どうやらあっちも戸惑っているようだから、本当に知らなかったようだね」

 

「どうする紫乃?紫乃はあの人を倒せる?」

 

「私は……琢磨さんを説得したいです」

 

紫乃以外の他四人は、紫乃の意見を肯定するように頷き合った。もちろん紫乃の説得が効きそうに無いと思えば非情にも倒す覚悟は私だけでは無く、三人共もしているだろう。

 

相手方も準備が出来たようで、エビのようなオルフェノクとムカデのようなオルフェノクに変身した。こちらも覚悟は決まり全員がオルフェノクへの変身を完了していた。

 

 

♠︎ ♠︎ ♠︎

 

 

私と長田さんと海堂さんは冴子と呼ばれた女との戦いを挑んで、紫乃と木場さんは琢磨との説得兼戦闘を始めた。

 

「三体一まぁハンデのようなものね。見たところ、そこの結花ちゃん以外はオリジナルでは無いだしね。それに私、容赦は出来ないから」

 

「望むところです。私と海堂さんそして紀伊さんの三人なら貴方が相手でも勝ちます」

 

私も長田さんとは同じ気持ちだ。こんな所で負ける訳にはいかない。私は親友を取り戻さなくてはならないのだから。

 

三人で相手に攻撃する隙を与えないぐらいに攻めているのだが、相手が倒れない感じは流石は聞いていて通りのラッキークローバーということだろう。

長田さんの羽の攻撃が当たっているので、それが結構ダメージを与えてくれていて、私と海堂さんの近接での攻めが、ほとんど手の甲についたアーマーに守られてしまっているので何とも情けない気持ちになってしまう。

 

「長田さん、海堂さん。私が相手を拘束してみせます。その間に大技を叩き込んじゃってください!」

 

私のお願いにも二人は短くも了承の言葉をかけてくれて、やっぱりこの二人は本当に良いオルフェノクなんだなって改めて理解が出来た。

 

「あら?貴方だけで私のことを抑え込むことなんて出来るのかしら?」

 

「出来るじゃなくて、やってみせます!私の全力で貴方を止めてみせます」

 

いつまでも自分だけの正義を信じているままじゃダメなんだ。他の人の正義も信じてみないと。信じるに値しない正義なんていくらでもある。だけど、私はこの人達の正義は信じてみたいって思えたから。いや、ただそう思いたいだけかもしれなくても。

 

私は自分の身体から出せるだけのありったけの茎や根を出して、相手のオルフェノクを拘束させに行かせた。

最初の方は持っているサーベルで切られたりしたのだが、その切られた所から竜胆の花弁が出てくることで、視界を塞せげて、そのおかげもあり数を増した茎や根で拘束することが出来た。

 

「……ハァハァ。今です海堂さん、長田さん。私が拘束をできている内に」

 

私の声に答えるように、長田さんは大きくエネルギーのような翼を広げて、海堂さんは手に小刀を構えて拘束しているオルフェノクに攻撃を仕掛けてくれた。

 

長田さんの翼を受け、海堂さんの小刀を受け止めた冴子は青い炎を上げながらも人間態に戻れることは無く、少し、少しずつ奥に進んで行っていた。

 

「ま、まだ死なない。オルフェノクの王に会えるまでもう少しだと言うのにこんな所でま、だ」

 

そのまま冴子は灰になって崩れ去ってしまった。倒したのは私達だけど少し心が痛んでしまうのは私がまだ心を持っていると思ってもいいのだろう。

それにオルフェノクの王とは何なんだろう。梓がそれと何か関係があるっていうの?

 

私があっちの戦闘がどうなったのかを確かめるために目線を向けると、そこにはリラックスした表情をしている紫乃と木場さん、それに琢磨がいた。

 

 

♠︎ ♠︎ ♠︎

 

 

私と木場さんが琢磨さんの説得をしようと近づき、とりあえずは声で説得することにした。琢磨さんがラッキークローバーということで、木場さん達は幾度も相手をしているというのに私の意見には反対をしないでくれた。その優しさに応えるためにも私が琢磨さんの説得を成功させなくてはいけない。

 

「琢磨さん争うのは止めにしませんか?また前みたいに琢磨さんと本を語り合いたいです!駄目ですか?」

 

私の言葉に琢磨さんは一歩後ずさってくれたみたいで、しっかりと耳を傾けてくれていると分かって、まだ望みがあることを再認識出来た。

 

「あ、淡路さんがどれだけ説得しようとしても無駄ですよ。私はスマートブレインに所属している。そして淡路さんは乗り込んで来ている。争うしかないんですよ」

 

「そんなこと私はしたくない。私はただ自由が欲しくてオルフェノクになった。だって誰に邪魔させることなく過ごしたかったから。

オルフェノクは自由なんです。だから多くの倫理を外れるオルフェノクが生まれるのも仕方ないと思うけど、私は貴方にも自由になってほしいと思う。今の琢磨さんは私がいつも見る琢磨さんよりも窮屈そうだから」

 

琢磨さんの持っていたムチが木場さんに向けられて振るわれた。その振われたムチを木場さんは避けること無く受け止めた。ただ何も何も言わずにそのオルフェノクの瞳で琢磨さんを見て。

 

「僕はもう何人もこの手で殺しているんですよ。オルフェノクはもう人間は決定的に違う。僕はもう後戻りなんて出来ないんですよ」

 

「いいじゃないですか殺していても。私もこの手で私をいじめていた奴を殺しましたよ。何も殺すなと言っているわけではないんです。オルフェノクとして普通に暮らしませんか?」

 

「普通?普通って何ですか?オルフェノクとして会社に所属してそれが普通ではないと?」 

 

私は少し、少しずつ琢磨さんに向かって距離を詰めて行った。それに伴って琢磨さんも後ずさっていくけどそれでも構わない。

 

「争いから身を引いて安全でゆったりと暮らそう?私も全力でサポートしますから、一緒にまるで隠居するように生きていきましょうよ。ね」

 

まるで愛の告白みたいになってしまっている感が多分にあるのだが、まぁそれもいいかと思える自分がいるので、私は全てが終わったら考えることにした。

 

琢磨さんは人間態に戻ると静かに膝をついていて戦う意思は無いようで、私は琢磨さんの身体に触れられる距離まで近づくとしゃがみこんで、同じ高さの目線になると手を差し伸べた。

 

「ゆったり暮らしますか……その後の人生はそういう風に過ごしても悪く……ないかもしれませんね」

 

私の手を握ってくれた琢磨さんは不器用ながらも笑ってくれていて、ああ今幸せだななんて柄にも無い事を思ってしまっていた。

 

 

どうやらかすみの方の戦闘も終わったようで、本能的に恐怖を感じていた女性は倒されていた。琢磨さんの短くてもしっかりと気持ちが伝わる謝罪を聞いてから、私たちは琢磨さんから梓がいるのは副社長室で、そこには副社長の長門梗介と社長の村上挟児がいるらしい。

 

行く場所が決まった私達は別働隊の璃々さん達に伝えると、そっちも情報が得られたので連絡しようとしていたらしい。

そして私達は璃々さん達と副社長室がある階で合流することにして、いよいよ目標である梓がいるであろう副社長室に乗り込むことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




僕の絵が上手かったら、主要なオルフェノクのデザイン画とかも描きたいんですが、下手なので何とかイメージで補ってください。


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副社長とオルフェノクの王

今回は独自解釈や独自設定が多くあります。ご注意下さい。


私たちの部隊は琢磨さんを加えて合計六人で、副社長室がある階に来ていた。

そこには、合流する予定だった璃々さんの部隊が先に来ていた。

璃々さんの部隊は前に聞いていた人の数よりも一人増えていて、なんか帽子を深く被っている暗そうな人だった。それを言うならば、こちらにも一人増えているので、説明が必要かな?とは思う。

 

合流が成功して11人の大所帯となったので、乗り込んでからの情報交換をした。交換出来た情報には新しく加わった人が、璃々さんと同じ流星塾の出身の澤田亜希という人だということ。

次に、残る敵は副社長室にいるであろう、社長の村上峡児と副社長の長門梗介、そして最後のラッキークローバーである北崎の三人らしい。三人なら勝てて、梓を取り戻せると私は少し思ってしまったのだが、どうやら乾さんと木村さんの二人でも勝てなかったらしいのだ。だけどまだ諦める訳にはいかない。梓を助けるために11人に集まってくれたんだ。負けるわけにはいかない。

 

 

♠︎ ♠︎ ♠︎

 

 

いよいよ副社長室のドアの前に来たのだが、ドアが厚いからなのか、中の声はほとんど聞こえなくて、誰かがぼそぼそ話しているなぐらいしか分からなかった。

私は璃々さんや紫乃と顔を合わせて、ドアを突き破って突入をした。

 

部屋の中には、鎖に手を繋がれてぐったりとしている梓に、その近くのベッドの淵に座っている若そうな少年と立って話しをしている貫禄のありそうな二人の男性がいた。

 

「梓!!」

 

私が梓の元に駆けつけようとしたけど、木場さんにぎゅっと力を込められて引き留められてしまった。

木場さんが何故止めたのかは冷静に考えれば分かる事だった。相手は三人と分かっているのにわざわざ突っ込むなんて本当に自殺行為と何ら変わらない。梓に会えたと言う喜びからつい衝動的にやってしまった。

 

「やっと来たんですね。待っていましたよ。せっかくラッキークローバーを送ったというのに一人も仕留められないどころか、裏切るとは残念ですよ。ねぇ村上くんもそうは思わないか?」

 

「ええ。ですが、彼らは戦いに行きました。約束は果たされるべきなのでは無いですか?」

 

副社長であろう長門は苦笑いをしながらも、余裕を崩さない感じが出ていて、はっきり言って異質な存在に思えていた。村上と呼ばれた社長の方は真顔のままでこちらも全く油断をしていない。

私はどちらも強者だと言うことを身を持って体感していた。

 

「約束?ああ確かにそうですね。私に協力すればオルフェノクの王について教えると言いましたからね。今お教えしましょう」

 

「そんなことはどうでもいい!何で梓を攫ったの。梓は何も特別じゃない普通のオルフェノクだったのに」

 

私はつい長門に向かって声を荒げていた。あいつがこちらのことを無視してオルフェノクの王とか言うのについて話そうとしたから、ついやってしまった。

 

「梓さんもこれから村上くんに話すことと関係ありますから、まとめて話しますよ」

 

そう言った長門は梓の意識を目覚めさして、語り口調でこの場にいる全員に聞こえるような声音で話し始めた。

 

「まず初めに、オルフェノクの王というか、アークオルフェノクは死にました。いや、正確には私が完全(・・)に殺しました」

 

「どういうことですか長門さん。オルフェノクの王は私が知っている限り現代に復活はしていないはずです。何故殺せるんですか?」

 

「はぁ、話を遮らないでください。質問は最後に受け付けますから」

 

「さて、気を取り直していきますが、根本的に言うとオルフェノクの王とは役職名です。オルフェノクの王が完全に死ぬことで、次のオルフェノクの王になるに相応しいオルフェノクの王候補が生まれていく。そういう継承式でもあるんですよ」

 

「先代の王であるアークオルフェノクが死んだのが明治時代ですので、新しく王候補が出てくることになります。そして王候補として出てきたのが梓さんとそこにいる北崎ですね。

オルフェノクの王と候補はオルフェノクの未来を左右するほどの能力を持っていますから、探すのも容易でしたよ」

 

こいつが何を言っているのか理解出来なかった、いやしたくなかった。梓がオルフェノクの王の候補?確かに梓は他のオルフェノクとは違う使徒再生攻撃をしていたけど……よりにもよって何で梓が。もし神様がいるとしたらどうして梓にこんなにも重い境遇を押し付けるの?

 

「待ってください。長門さん、あなたはオルフェノクの王を殺したと言っていましたが、死んだのは明治時代なんですよね。あなたは一体何なんですか」

 

「私、いや、俺は今から800年前の平安時代にオルフェノクとなって、自身のオルフェノクの能力によって万年の寿命があるオリジナルのオルフェノク。スピリットタートルオルフェノクだ」

 

「貴方は一体何の為に800年もこんなことをしてきたんですか!?」

 

「ただオルフェノクのあり方を変えられたくなかっただけです。平安時代のようにオルフェノクは妖怪•鬼と呼ばれながらも隠れて悠々自適に生きる。そのあり方を維持する為にもバランスを崩すオルフェノクの王なんてものは必要は無いんです。だから殺しました」

 

「話は終わりですよ。北崎。ここにいる全員を殺したら貴方が王ですよ。村上くんも最後まで約束は果たしてくださいね。ここが最終決戦ですから」

 

「乗ったよ長門。ぼくがここにいる全員を殺して最強になるよ」

 

相手の村上も渋々ながらも承諾をして、相手方三人はオルフェノクに変身した。こちらも全員変身を完了させて、助ける目標である梓までもが、オルフェノクに変身して鎖を壊して、戦いの場所に参戦してくれた。

本音を言えば私が助けたかった所だけど、そんな事よりも今はここでこいつらを倒さないと結局は梓はまた巻き込まれてしまう。これが正真正銘の最後の戦いだ。

 

 

♠︎ ♠︎ ♠︎

 

 

戦いが始まってから、私は長田さんや紫乃さん、そして琢磨さんと共に、社長である村上の相手をすることになった。琢磨さんが争いから解放される為にはここで倒してしまわないと。

 

「琢磨さん。まさか貴方が裏切るとは思いませんでしたよ。上の上以上だと思っていたんですけどね」

 

「逃げることにしたんですよ。余生をゆっくりと過ごすために私はここを生きて乗りきります」

 

「そうですか。残念ですよ」

 

村上は言葉とともにこっちに対して衝撃波のようなものを放ってきた。私達四人はそれを受けながらも村上を押し出して、別の部屋に移動をした。

 

私と長田さんは飛翔態へとなると、長田さんは羽を打ち込み、私は鎌を持って空中からの攻撃を行なっていった。長田さんの舞わせた白い羽、私の黒い羽が空中を舞っていって、触れたら爆発を起こすバラの花と触れて辺りに爆発が起こりながらも、私達は攻撃の手を緩めなかった。

 

村上は近距離ワープを駆使しながら、地上と空中からの攻撃を上手く躱していた。だが、衝撃波を放った後や攻撃の後は、攻撃されなかった方が攻めていくことで、着実にダメージを与えることが出来ていた。

 

こちらが優先で進んでいたんのだが、いきなり蔓のようなものを伸ばして来て私と長田さんを絡みついてきて、二人まとめて地上に落とされてしまった。

 

「ッ、まだです。まだ負ける訳にはいきません」

 

「私も負けるにはいかないんですよ。ここでまとめて全員倒せばオルフェノクの未来には障害なんてものは無い。何故それが分からない!人間と一緒に過ごしていくなんてものは不可能だ」

 

「いいえ、出来ますよ。オルフェノクがどれだけ優れていようと一種で生きることなんて無理なんです。だから、いままで通りに暮らしていくべきなんです」

 

私と長田さんが攻撃を再開しようとしたら、琢磨さんが鞭で村上の体を縛ると、その上で海堂さんが取り付いて、身動きを封じた。

長田さんと頷き合ってこのチャンスに畳み掛けることにした。もちろん、海堂さんに攻撃が当たらないように。

 

距離を一気に詰めると、鎌を振り下ろして村上の体にだけダメージを与えた。そして、弱った村上から海堂さんを蹴って離すと、長田さんが翼を展開してその翼で村上の体を貫いた。

 

だが、村上の体は青い炎を上げることは無く、薔薇に体が変わっていって、消えてしまった。

その後少し警戒したけど、何も攻撃が無かったので全員が人間態に戻った。

少し呆気なく達成感も無いが、私達は勝ったんだ。

 

今は璃々さん達の戦闘の音は聞こえないから勝てたのだろう。

あっちも休んでいるみたいだから、私達四人も残りは梓とかすみに任せて少し休もう。

 

 

♠︎ ♠︎ ♠︎

 

 

私は雅人と澤田そして沙耶で、北崎を相手取っていた。北崎があの部屋の床をぶち抜いたせいで、四人だけが下の階に落ちてしまったのだが、他のみんなはそれぞれの戦いで大変で、四人で決着をつけるので全く問題なんて無い。

 

「さぁ始めようか。僕は王にならなきゃいけないからね」

 

「お前を倒して、みんなの仇を取ってやる」

 

雅人の気合の入りようが澤田の時とほとんど変わっていない。何故こんなにも雅人が殺気を放っているかは分からないけど、相手は生かしておいたら危険な存在だ。倒すことは私も賛成だから問題が無いんだけど。

 

先制攻撃で雅人と沙耶の射撃を北崎に向かって浴びせたのだが、相手の余裕そうな態度的に効いている気配が無いように感じた。

まだまだと言った感じで、雅人が剣先を出して突っ込んでいき、それに追随するように澤田が手裏剣を構えて接近戦に向かって行った。

私は沙耶と共に遠距離からの攻撃を仕掛けつつ、近距離組の様子を見守った。

 

雅人と澤田の攻撃は効いているように思えたのだが、北崎は狂気的とも言える笑い声を上げながら、二人をこちらに吹っ飛ばしてきた。

 

「木村!こうなったら決めるぞ」

 

「わ、分かった草加くん」

 

二人はポインターを北崎に向かって付けると、同時にジャンプをしてキックを放った。北崎はそのキックを受けて後ろにジリジリと下がっていったが、雅人と沙耶を一気にこちらに押し返してきた。

私はその隙を逃さないようにスピードを上げて、北崎の前まで来て手に生成したクナイを差し込もうとした。

だけど、北崎は殻を破るように細身の体になると、その体格に見合うようなスピードで私の腕を掴むと床に叩きつけて、頭を足で押さえ付けてきやがった。

 

「ふっ、もしかしたら足が滑って殺しちゃうかもねこの女を」

 

こんな奴の挑発になんか乗らないで欲しいと思っていたのに、澤田が馬鹿みたいに突撃してきた。当然の様にガタイが戻った防がれてしまったのだが、意外にも押し返されることは無く、競り合っていた。

 

ここがチャンスだと思って、手から生成したクナイで押さえてきてる足の足首を斬りつけると、一瞬足の拘束が緩んだのでその間に脱出して澤田と共に距離をとった。

 

それにキレたか知らないが、また殻を破りこちらが認識出来ないほどのスピードで迫ってきた。これは避けられないと悟ったのだが、北崎の動きがいきなり止まった。いや、誰かが押さえたのだ。

 

それは見たことの無いオルフェノクだった。まるで羊やヤギのような角がある顔や全体を見るとまるで悪魔のバフォメットのようなフォルムのオルフェノクだった。

 

「と、父さん」

 

雅人の悲しそうで哀愁漂う声音からもその言葉からも私は察してしまった。

このオルフェノクは私達流星塾生にとってのお父さんだ。

お父さんがオルフェノクだったのはショックというか、自分もオルフェノクであることを隠して流星塾にいたので、複雑な気分というのが正直な所だ。

 

そこからの戦いはオルフェノクの私でも目で追えないほどのスピードだったのだが、互角のように感じていた。

それから、体感的にはあまり感じていない時間が経つと、北崎が体にからを纏って、膝をついていた。

 

「後はおまえたちに任せる」

 

そのオルフェノク、多分お父さんは私達に後を任せて去って行ってしまった。寂しくないと言えば嘘になるくらいには悲しかったけど、本当にお父さんが助けてくれたんだという安心感の方が割合的には大きかった。

 

意識を北崎に向けるとさきほどよりも弱っているようだが、気迫などは変わっている様子は見られなかったので、回復する前に早めに倒おそう。

 

「みんな、北崎はお父さんのおかげで弱っているから、倒すなら今の内だから決めにいこう」

 

まず、私と澤田が接近をして、それぞれの得物であるクナイと手裏剣で同時に相手の胴体を切り裂いた。その事と弱っていたことも相まって北崎は殻は消え去っていった。

 

ここをチャンスと察してくれた沙耶により北崎にポインターが差し込まれて、追加で雅人の武器から出た光弾により拘束された。

 

沙耶がジャンプをして、両脚蹴りで北崎の体を貫き、それと同時に雅人が北崎の体を切った。

それにより、北崎の体は青い炎を上げて、いつもみたいに直ぐに灰となって崩れ去らなかった。

 

「僕がオルフェノクのなかで、最強なんだ。僕こそが最強に相応しいよね。きょうすけ」

 

北崎の肉体は遂に崩れ去った。彼はただ純粋なだけだったのではないか?

私はそんな自分の考えを不毛でもう答えの得られないと結論付けて、彼を最強のオルフェノクとして記憶の片隅に残すことにした。

 

まだ梓の所と紫乃の所で戦闘が行われているが、今は他の仲間を信じて、この余韻に浸ることにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回には最終回に出来ると良いな。
 


長門梗介

平安時代に死んでオルフェノクになった。そこでオルフェノクの仲間と共に妖怪などと呼ばれながらも楽しく暮らしていたのだが、時が経ち、自分だけが長い寿命を持っていると理解した。そしてまた昔の日々のように過ごしたくて、自身が望むオルフェノクの理想形を実現するためにオルフェノクの数を調整したりオルフェノクの王を殺したりして現代まで過ごして来た。
記憶はオルフェノクになった前後と重要なことと、最近の事以外は朧げになっている。
現代ではオルフェノクの王候補として拾ってきた北崎と共にオルフェノクと人類の人数を調整していた。長門梗介という名前も近代になって新しく名乗り始めた偽名。


スピリットタートルオルフェノク激情態

霊亀がモチーフのオリジナルのオルフェノク。平安時代に虐げられて生きていた梗介が偉い奴らよりも生き続けて貴族共を見返してやると願ったことが反映されている。その特異的なモチーフによって万年は生きる能力を宿していて、寿命では死ぬことは無い。オリジナルの例に漏れず強い戦闘能力を持っていて、オルフェノクの王にも引けを取ることは無い。激情態になったタイミングは初期のオルフェノクの仲間が全員灰になった時。


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そして私は生きたいと思う

最終回です!


気がついたら、手前に三人の男達。奥の方に11人の人達がいた。

奥の人達の中には璃々さんやかすみ、紫乃や巧までいた。それに沙耶までいた。どうしてみんながいるのか思い当たる節はあまりにも傲慢なことだけども、みんなが私を助けるという目をしていてくれていた。それが私にはただただこの場の異様な雰囲気よりも嬉しかった。

 

それで、私は拐った人達の話を聞いていると、どうやら私はオルフェノクの王なる力を持っていたらしい。確かに耳元で囁く時、この子をオルフェノクに出来ると思ってやっていたと思う。それでも、こんな争いの種になるような力を私が持ってしまったのは、17年間も一緒に暮らしたあの人達を殺した罰なのだろう。

 

 

♠︎ ♠︎ ♠︎

 

 

長門の正体とか色々話が終わってお互いが交戦する雰囲気になったので、私も戦いに参戦するためにオルフェノク態に変身して鎖を破壊することでかすみなどがいる所に向かった。

 

「梓!……無事で良かったよ。何か変なことされなかった?」

 

「うん。全然大丈夫だよ。私も戦うから頑張ろう」

 

この部屋に今残っていたのは、敵である副社長の長門。私とかすみと、巧と木場さんだ。木場さんの実力は知らないけど、強いことは確かだろう。私の直感ようなところもあるけれど。

 

「私の相手をするのは君たちですか。一人はファイズ、他のオルフェノクの中にもオリジナルも含まれているのでしょう。まぁ君たちとは戦いの場数が違いますから、いくらそちらに数の有利があろうと負ける訳にはいきませんね。私の夢を実現する為に犠牲になってもらいます」

 

その長門の言葉が終わると、ついに戦いが始まった。まず私と木場さんの二人で、近づいて近距離を仕掛けた。私の槍と木場さんの剣はどちらとも攻撃が当たろうとしているのだが、二対の釵を用いることで上手くいなされてしまっていた。流石、伊達に800年ぐらい生きていないみたいだ。

 

私達がてこずってしまっていると、かすみと巧が同時に背中から長門に向かってパンチをお見舞いした。だが、その攻撃も全然通らなかったようで、後ろに振り向いた長門の釵によって、二人ともダメージをくらってしまった。

それから続け様に二人を蹴り飛ばしてしまった。

 

私と木場さんはこのままではジリ貧だと言うことで、木場さんは疾走態に、私は遊泳態に変化することで、スピードで攻めることにした。木場さんがまず突進して行くことで、その巨体のパワーに対して長門は二つの釵を使って防がなければならなくなり、両手が塞がった所で、私が遊泳態のスピードで槍を振るうことでダメージを与えられた。だが、やはりというべきか背中は何か硬い物が当たったのか言うように効かなかった。これは長門自身が名乗った亀のオルフェノクの甲羅なのだろう。

 

私が何度も往復をして攻撃を当てていると、長門がこちらの攻撃を見切ったのか、木場さんを押し返して私に対して攻撃を与えてきた。それによって私と木場さんは飛ばされてしまった。

 

それから間髪入れずにバイクがどこからともなく走ってきたと思ったら、変形をして長門を殴って怯ませたのだ。

 

「ファイズのオートバジンですか……。案外頑丈らしいんですよねこれ」

 

オートバジン?が戦ってくれている間に、私達は一度態勢を立て直すために集合をした。

 

「あいつと俺で10秒後ぐらいに隙を作ってやるから、そこからのとどめの準備をしておいてくれよ」

 

そう言った巧のファイズは形態を銀色に変化させると、目にも止まらないスピードで長門に攻撃を加え始めた。

 

そこから私達の準備が整って十秒が経った頃に、大きな衝撃音が周囲に響き渡り、長門が少し弱った様子を見せていた。

 

「そんなファイズショットから放ったフォトンブラッドで、私が倒せる訳ないでしょうが」

 

宣言通りに隙を作ってくれた巧のチャンスを無駄にしないように、長門を倒すために近づこうとすると、その長門の近くに薔薇の花びらが現れたと思うと、それがオルフェノクの形を成した、次の瞬間にその手で長門の体を貫いていた。

 

「ッ、村上……お前。私に攻撃を加えてどうなると言うんですか?貴方が死ぬだけですよ」

 

長門は全く迷う素振りを見せることは無く、先程見た村上という男が変身したオルフェノクの体に釵を突き刺していた。あの二人は味方だったはずなのに……どうして仲間割れをしているんだ?

私を含めたここにいる全員がその二人の行動に呆気に取られていた。

 

「私が死ぬ時は笑って死にたいと思っていましてね。あのままやられるよりも貴方に一矢報いた方が私は笑って死ねると思った結果ですよ」

 

「なかなか面白い価値観をお持ちになっているようだね村上は。じゃあ望み通り笑って死んでくれ」

 

釵で刺された村上はもうすでに体が限界だったのか、人間態に戻ると、その顔を微笑に変えると灰となって消えてしまった。あの人はあの人がやりたいことをやっただけとは思うけど、死ぬ時は笑って死にたいというのは分かる気がする。

 

「まだ終わっていませんよ。村上は死にましましたが、私はまだ生きていますよ。私を倒せるものなら倒してみなさいよ」

 

その言葉を受けた巧はいつの間にかバイクになっていたオートバジンから剣を取り出すと構えて、長門の元まで走った。同じように木場さんも剣を構えて、長門まで走った。

 

巧の剣と木場さんの剣が長門に触れる直前に二対の釵によって防がれて拮抗していたが、巧のベルトをボタンを押して「Exceed charge」の音声によって剣の光が増したかと思うと釵が折れて、ほぼ同時に木場さん側の釵も折れて、二つの剣によって長門は切られた。

 

「ガッ、オ、オルフェノクの……王は倒さなければ。バランスを」

 

だが、それを受けても長門は倒れることは無く、私とかすみの方に突撃をしたきた。咄嗟に私達は攻撃を加える構えを取り、私の槍と花を纏ったかすみの手が最後、長門にとどめを刺した。

 

「長かったな……結局俺はあの人達に会いたかっただけなのかもしれないな。長く生きても一番楽しかったのはあの時だったかな」

 

長門の体は灰となって崩れ去っていった。彼は結局自分が安心して居られる場所や世界を求めていただけなのかもしれない。普通の人の悩みと変わらないただそんな願いを持っていただけかもしれない。

 

 

♠︎ ♠︎ ♠︎

 

 

そしてオルフェノク王とベルトに関する全ての戦いは幕を閉じた。私を助けるために命を張った全員が生きていてくれたことだけが、私はこの戦いが終わってから初めに味わった幸せだ。

 

全員傷だらけで、とりあえずは真理や啓太郎がいるクリーニング屋に一旦集合した。全員に今回あった色々の説明をするのは大変だったけど、そんな余裕があるというのは良いことだなと思いながらも過ごしていた。

 

 

そして戦いの後から一段落した頃には、それぞれがそれぞれの道を進んでいた。

巧と真理そして啓太郎はほのぼのとクリーニング屋を続けているようだった。偶に今回の戦いを終えたみんなで揃う時はここを使うことになっている。いつ行っても和気藹々としていて、平和をいつも感じられる場所だ。

 

草加さんと璃々さん、澤田さんと沙耶の四人は全国にいる危険なオルフェノクを倒すために全国を回っているようだった。危険な状態だった澤田さんを私の能力でオルフェノクにしたりもした。四人の関係性は未だによく分かんないけど、なんだかんだ上手くいってそうだし、月一ぐらいにクリーニング屋に顔を出しているらしいし、案外全員寂しがりやなのかもしれない。

 

木場さんと長田さんと海堂さんの三人はリニューアル開店したピザ屋で働きながらも、ボランティアや友好的なオルフェノクとの交流をしているようだった。この三人もバランスが良いようで、楽しく過ごしているようでなりよりだった。

 

紫乃と琢磨さんは、紫乃の一人暮らしに伴って一緒に過ごしているようだった。二人の将来はどうなるか分からないけど、琢磨さんは工事現場で働き始めてお金を稼いでいるようで、二人のこれからが楽しみだと言うのが今の本音というやつだ。

 

スマートブレインの会社は社長と副社長が一気に失って一時期ボロボロになって株価が急降下したけど、前の社長が戻ってきたらしく、会社を立て直して新しい後継者を指名してまた何処に行ったらしい。新しくなったスマートブレインがオルフェノクの巣窟かなんて私にはもう関係の無い話だ。私はもうあの会社に関わる事なんて無いだろうから。

 

そして今、私は何をしているのかというと、かすみと共にベッドの上でこれまでの思い出話とか、将来はあんなことをしたいなどと話たりしていた。私は璃々さんがほとんど帰って来なくなったけど、そのままこの家を使わせてもらっていた。かすみも前々から一人暮らしでもしようかなと思っていたらしいので、一緒にこの家に暮らして、所謂同棲しているということになる。

親友という関係性からも少し変わったりもしたけど、今が楽しいなと言うのは変わっていないと言うより、日々増している。

オルフェノクにかすみと一緒に変身することもあるけど、それは稀なので、なる事自体は今はあまり多くない。

 

私は十何年も生きている心地がしなくて、死にたいと思っていた人間の頃よりも、オルフェノクになった今はただ生きていたいなと思えるようになれた。

 

「私は梓と死ぬまで一緒にいたいな。だから先に行かないでね」

 

「分かってるよ。例え短い人生だろうと長い人生でも、私はかすみと生きていけたら幸せだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでくださってありがとうございました!
UA10000突破とお気に入り40件突破ありがとうございます!
これからの執筆予定について活動報告を書いたのでよろしければどうぞ。


ここから後書きとか書きたいなと思います。

まず改めてここまで読んでくださりありがとうございました。この小説は僕の始めての二次創作だったので、いたらぬ点も色々あったなと思っています。
最初のこの小説はオルフェノクが好きなので、オリ主達が学校をオルフェノクの学校にしようぜ!とか言う感じにしようかなと思っていました。
でも、考えれば考えるほど、原作と絡ませたいなとか、ファイズ関連の色々とかほとんどが心残りがある感じで終わることがあったので、それも良さかなと思いつつも、一つぐらいは完全なハッピーエンドも良いなと思ったこともあり、原作と絡ませることにしました。

流石に全話絡ませるのは無理かなと思って、途中からオリジナルを入れて、ハッピーエンドに向かって動かしていきました。一応設定とかこの小説で出した疑問なんかは大体解消出来たかなとは個人的には思っています。

何個か心残りがあるとすればキャラによっては出番が偏ってしまったことですね。説明上仕方ない奴は居たとしても、サイドバッシャーとか三原なんかは出したかったなとか思いましたね。

でも、オリキャラを変身させるとか、関わらせたかった話に関わらせるとか、ハッピーエンドにするとかの目標は達成出来たのでただただ今は改めて達成感に満ち溢れていますね。

改めてここまで読んでくださりありがとうございました!感謝でいっぱいです。





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