スーパー戦隊このすばメガフォース VS 仮面ライダー剣 サンドリオンウォーリアーズ the end of Cendrillon Warriors (伊勢村誠三)
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キャラ紹介 このすばメガフォース編

クロスオーバーエピソードなので一応。
出来れば本編を読んでみてね。


七海総一

 

年齢  今年で19

身長  175cm

誕生日 11月22日

前職  大学生

現職  冒険者、赤き海賊団団長

特技  パッチワークのぬいぐるみ、嫌がらせ

担当  レッドレンジャー

備考  『新感染』や『ターミネーター』の様な

    追い詰められた人々が争う映画が好きな様子。

専用曲 MONSTER WORLD(HOWL BE QUIET)

 

ジョー・ギブケン

 

年齢  21

身長  180cm

誕生日 9月18日

前職  バーナード国騎士団団員

現職  上級剣士

特技  ケーキ作り(プロ並)

担当  ブルーレンジャー(男性)

    剣使いのレンジャー

備考  冷静で理知的な雰囲気の人物だが、

    義と友情に熱い熱血感。

    だが戦闘スタイルは極めてスマート。

専用曲 蒼い船(いきものがかり)

 

ルカ(本名不明)

 

年齢  17

身長  160cm

誕生日 2月1日

前職  ???

現職  盗賊

特技  宝石鑑定(一目でわかる)

担当  イエローレンジャー(女性)

備考  金にがめつく光物に目がないが、

    サバサバしてて快活な姉御肌。

専用曲 Clutch‼︎(水樹奈々)

 

リア

 

年齢  多分15

身長  和真と同じぐらい

誕生日 多分7月4日

前職  ???

現職  槍使い

特技  歌(本人も大好き)

担当  グリーンレンジャー

    ホワイトレンジャー

備考  歌以外にも読み聞かせのイベントなどにも

    積極的に参加しており、街からは

    『おうたのおねーさん』みたいな認識。

専用曲 僕を探しに(シェル・シルヴァスタイン)*1

 

佐藤和真

 

年齢  16

身長  165cm

誕生日 6月7日

前職  ヒキニート高校生

現職  冒険者、赤き海賊団参謀

特技  裁縫、ゲーム、じゃんけん(無敗)

担当  ブラックレンジャー

    グリーンレンジャー

    追加レンジャー

    ジェットマン

備考  基本楽な方に流されるのを良しとする怠け者だが

    子供好きで面倒見が良く責任感は強い。

    ブラックコンドル=結城凱に奢って貰ってから

    砂糖抜きのホットミルクが好物。

専用曲 ろくでもないBLUES(佐藤和真)

 

アクア

 

年齢  ??

身長  非公開

誕生日 8月1日

前職  女神

現職  上級僧侶

特技  宴会芸

担当  ブルーレンジャー(女性)

    その他追加レンジャー

備考  プライド高い割に一回活躍する度に三つぐらい

    厄ネタを持ち込んで来る。

    その度に和真に泣きつくのが最早お約束。

専用曲 わたし音頭(アクア)

 

めぐみん

 

年齢  13

身長  8人の中で1番低い

誕生日 12月4日

前職  学生

現職  上級魔法使い

特技  爆裂魔法

担当  ダイナマン

    ピンクレンジャー

    ホワイトレンジャー

備考  万年厨二病。

    変なタイミングでカッコつけたがり

    すぐに関係ないのに爆裂魔法を撃ちたがる。

専用曲 Right☆eye(めぐみん)

 

ダクネス

 

年齢  18

身長  約170cm

誕生日 4月6日

前職  不明

現職  聖騎士

特技  胡桃を片手で割る。

担当  イエローレンジャー(男性)

備考  超絶不器用。攻撃は全く当たらない。

    だが人並みに家事はできたいと思ってる。

専用曲 連れ去って・ 閉じ込めて・好きにして(ダクネス)

*1
絵本の劇中歌



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現実/幻想

彼は安らかに眠れない。


1

「破壊者よ!悪魔よ!

虚無より進化のための敵であれと定められたバトルファイトのマスターよ!

今ここに俺は!最後のアンデッドとなったぞ!

俺の願いを叶えよ!」

 

愉快、心の底から愉快と言わんばかりの嘲笑が世界そのものから響き渡る。

赤い捻れたオブジェクトがジョーカーの前に降り立った。

 

「俺は万能の力を放棄する。

その代わりにこの世界で生み出されていない全てと!

俺以外の仮面ライダーであった全てを追い出せ!」

 

やめろ。やめてくれ!

叫ぶ。叫び続けるがその声は届かない。

まるで通信機能のない画面越しに呼びかける様に。

 

「ブレイド!お前は、人間の中で生き続けろ。

俺たちは二度と会うこともない。

触れ合うこともない。それでいいんだ…。」

 

何も良くない!

そう叫ぶ自分の声で目が覚める。

見慣れない天井。

合わない枕に趣味じゃない寝巻き。

全部が全部坂井直人と、多くの人から『騎士くん』と慕われたかつて居た誰かからの借り物。

 

時計を見ればまだようやく2時になったぐらい。

結局なかなか寝付けなかったのも有って3時間も寝れてない。

ここ半年間ずっとそうだ。

 

「なんでだよ…ハジメ、なんでなんだ!」

 

思わず壁を殴りつける。

どうせ角部屋だし上にも横にも人は居ない。

居たとしても関係ないが。

 

「なんで俺も連れて行ってくれなかったんだ!」

 

慟哭は誰にも聞こえない。

彼の、坂井直人の身体に収まったブレイドの、

現実世界では極めて無力なかつて仮面ライダー(最強の勇者)だった男はだらだらと消えることも出来ず日々を過ごしていた。

 

 

 

2

(bgm オルフェノク出現)

 

そこにだけ光が吸い込まれた様な満月が浮かぶ夜。

森の中を1人の少女が走っていた。

薄い緑色のパジャマ一枚で靴などは履いていない。

まるで寝ていた所をそのまま放り出された様な格好のまま彼女は奴から逃げていた。

 

「はっ!はっ!はっ!はっ!」

 

「はぁ!」

 

その奴はジャンプで寝巻きの少女の前に出た。

光る黄色い血管の様なラインが走るスーツと肩の尖った鎧にどこかバッタを思わせる紫色の目の仮面の異形の戦士。

 

「か、仮面、ライダー?」

 

少女の呼びかけを無視して異形の戦士は少女の首を掴み上げた。

思い切り力を込め、少女の首をへし折る。

 

「お疲れ様。」

 

異形の戦士に馴れ馴れしく話しかけながら1人の若い男が出て来た。

黒いズボンに黒いシャツ。

その上に白い上着を羽織った茶髪(どうやら染色している)の男。

手には奇妙なかカードリーダーのついた銃を持っており、その中に今まさに少女を殺害した戦士の、仮面ライダーカイザの紋章の書かれたカードが収まっていた。

 

「さて、後3人か。

取り敢えず次からは椿ヶ丘周辺に固まってる筈だから探すのは楽かな?

人の来ない森とはいえ、死体の処理は任せたよ。」

 

若い男はカイザにそう告げると銀色のカーテンの様な幕状のエネルギーを展開してその中を潜って去って行った。

 

 

 

3

1度目が覚めると簡単には寝付けないブレイドは朝の6時まで坂井直人のゲームやDVDを見て時間を潰した。

そして6時になると顔を洗って野菜を切ってベーコンと卵とチーズを乗せた食パンを焼いて黙々とそれを食べると歯を磨いて制服に着替え家を出た。

鋼の建物が立ち並び排気ガスの混じった空気にただただ不快感を感じながら極めて億劫に家を出た。

 

学校までは徒歩で行ける。

それこそ雨でも雪でもよっぽど寝坊しないぐらい近い距離だが極めてゆっくりと行く。

遅刻ギリギリで着くためだ。

早く着いて誰かに話しかけられる事さえ彼にとっては苦痛だ。

 

「直人くん!」

 

そして坂井直人や騎士くんと呼ばれる事はもっと苦痛だ。

 

「………。」

 

振り向くとそこに居たのは明るい短い茶髪の少女だ。

その声や姿はブレイドにも見覚えがある。

トゥインクルウィッシュのヒヨリだ。

 

「何の用だ?」

 

「!? やっぱり直人くんなんだよね?」

 

皆そう呼ぶ。

ユイもレイもサレンもなかよし部やリトルリリカルや模索路晶やノウェムやオクトーも皆そう呼ぶ。

もう誰もブレイドとは呼んでくれない。

その事実が心を黒い物で覆っていた。

泥の様なそれはポタポタとゆっくり、だが確かに溜まっていっている。

 

「悪いけど今急いでるんだ。」

 

嘘をついた。

けどそうしてでも、1秒でも彼女と居たくない。

 

「ま、待ってよ!」

 

腕を掴まれた。

アストルムの時に誰かに触れられた時と変わらない感触。

けど今のブレイドには確かにそこに隔たりがある様に思えた。

 

「図書館で不良に絡まれて8対1のケンカでボコボコに返り討ちにしたって本当?

ナイフ持って襲いかかってきたストーカーを警察病棟送りにしたって本当?」

 

随分噂に尾鰭が付いてる。

確かに絡んで来たのは8人だがうち5人はビビって途中で逃げたから骨折させてやったのは3人だけだしエリコは鍵開けこそしたが武器までは持ってなかった。

 

「直人くん本当に大丈夫なの!?」

 

「噂を信じすぎだ。」

 

ここにいるぐらいならと思って学校に急ぐことにした。

 

「ちゃんと目を見て答えてよ!

皆直人くんのこと心配してるんだよ!」

 

「お前らが心配してるのは僕じゃないだろ!」

 

気が付いたらヒヨリを振り払って殴っていた。

鼻血を出した彼女が信じられない物を見る目をしている。

 

「坂井直人なんてカスみたいなカケラしか残ってねぇよ!

僕はブレイドだ!確かに坂井直人がベースだけど間違いなく俺には覇瞳皇帝に皆と戦った坂井直人とは別の物語がある!

ハジメを犠牲にしてのうのうと生きてる情け無い物語が!

なのにお前らは直人直人直人直人!

僕を裁いてすらくれないのかよ!

僕を救えなかった英雄と蔑むどころか一度はアストルムを救った英雄坂井直人のレッテルを貼るのかよ!

ふざけんな!僕は自分が1番嫌いなのに!

僕が1番なりたかった者を僕に見せるな!」

 

何を喚き散らしてるんだ。

ヒヨリに当たり散らして何になるんだ。

頭では分かっていても止められなかった。

一通り吐き散らすと俺はその場を去った。

もう学校にも行きたくない。

いつもの様にユイが絡んで来るはずだ。

 

(今日はもうサボろう。何もやりたくない。)

 

財布の中身が昼飯食えるぐらいには有るのを確認してブレイドは街に繰り出した。




用語解説
坂井直人
・プリンセスコネクト!の主人公
・本作ではブレイドのベースとなった人物。
・坂井直人を復元しようとして失敗した結果出来上がったのがブレイドである。


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暗殺/護送

彼はすぐには帰らない。


1

まずブレイドは図書館に向かった。

確か今日の曜日の司書は目もだいぶ悪くなって来た老人だった筈だ。

制服姿の自分がいても気にしないだろう。

取り敢えず文庫本の置いてある2階に行った。

確か先週サボった時に手に取った『青に捧げる悪夢』というアンソロジーが読みかけだった筈だ。

 

(あの歪な姫様の話まだ途中だったよな…ん?)

 

今日は短い茶髪の少女と縁がある。

背が足りなくて本が取れない彼女に本を取ってやった。

 

「あ、ありがどうございま、す?」

 

制服姿なのにこんな所にいる自分を怪訝そうな目で見る。

まあ、不良にしちゃキチンと制服を着ているが。

ブレイドは軽く手を振って目当ての本を見つけると読書スペースの一角を占拠した。

 

 

 

2

本を取ってもらった少女、柏崎栞は強風にさえ飛ばされそうな弱い身体を必死に動かして図書館を後にしたブレイドを追った。

 

(先輩じゃない……)

 

かつて自分が淡い恋心を抱いた人に彼はあまりにも似ていた。

けど、同時に違う部分は全く違うと言ってよかった。

学校をサボっている事もそうだが、もっと違う…悪い部分はどこか冷めた様な目を、良い部分ではそれにちゃんと苛立っている部分が違った。

 

(あなたは、誰?)

 

落ち着けない。追いかけられない。

気付けば息は上がってしまって、もう立ってるのも辛くなっていた。

膝をつき、目を閉じて息を整える。

 

(早く、早く追いつかないと!)

 

「案内ご苦労様。」

 

銃声が響き栞は血と脳漿を撒きながら前のめりに倒れた。

場所はいつの間にか森の中に移動している。

 

「それじゃあ、あとは彼らの君らの仕事だ。」

 

男、カイザに指示を出していた男は銀色のカーテンの様な幕状のエネルギーを展開して森から一瞬で先程栞が膝をついた場所に戻る。

そして手にした奇妙な銃、ディエンドライバーにカードをセットした。

 

<KAMEN-RIDE RAIA!

KAMEN-RIDE SKULL!>

 

エネルギーが解放されて仮面ライダーライアと仮面ライダースカルが召喚された。

 

「それじゃあ奪って来てくれたまえ。

坂井直人くんの命をね。」

 

 

 

3

「ここよね?」

 

紫色のバックパックを背負った小柄な少女が地図を頼りに歩いていた。

前髪の一部がストレスで白髪になっている彼女の名前は百地希留耶。

アストルムにおいて時に敵対しながらも最後はブレイドと共に巨悪を倒した仲間だ。

 

「やー、ここまで来るのに随分時間がかかっちゃったけどブレイドのやつ元気にしてるかしら?」

 

アストルムから目覚めた希留耶を待っていたのは美食殿と共に過ごした戦いの日々、とまではいかないが充分大変な日々だった。

 

まず両親がまたとち狂ったことを言い出して危うく変なオッサンと結婚させられそうになり叔父の家まで逃げて、警察まで巻き込んだ大騒ぎになり裁判沙汰にまでなって、最終的になんとか叔父夫婦に後見人になってもらい自立する事が出来たのだ。

 

(長い長い半年だったわ…愚痴言いたくても言える相手なんていないしアストルムであった奴らの連絡先なんか分からないし…。

けどそれも今日までよ!折角、その、、こ、恋人なんだから!久しぶりに話したい事も沢山あるのよ!)

 

よし!と前を見て希留耶はアパートに入る。

ドアの前に立ってドアベルを押そうとした時

 

「へ?」

 

銀色のカーテンの様な何かに包まれ、希留耶の周りの景色は見た事のない森に変わった。

 

「な、何よ!?一体なんなのよこれ!」

 

まさか自分はまだアストルムの中にいて今までの事は全て幻だったのか?と、最悪な想像が頭を過ぎるが、一度もアストルムをプレイした事のない筈の人間をあそこまで再現できるとは思えない。

 

「………。」

 

耳を澄ますとざっ、ざっ、ざっ、と誰かが歩いてくる音がする。

自分をここに連れて来た奴か?

そう思って近くの茂みに隠れた。

さっき叫んじゃったしもう遅いか?と思いながら祈っていると、来た。

それは異形だった。

黒いスーツの上に銀のベルト、マゼンタ色のアーマーに悪役チックなアラビアテイストと騎士風の混ざった仮面。

手にした鱏の様な形の小さな盾。

仮面ライダーライアだった。

 

(なんで仮面ライダーが?

やっぱここはアストルムなの!?

だったら、私が力を使えないのはおかしいじゃない!

逃げないと…なんとか逃げないと!)

 

何をしたか知らないが態々こんな人の来ない場所に呼び出すという事は何か良からぬ事をするつもりなのだろう。

 

そう思ってゆっくりと移動しようとしたが

パキッ、と運悪く小枝を踏んでしまった。

 

「!」

 

<SWING VENT>

 

マゼンタの仮面ライダー、ライアはカードを盾、エビルバイザーにセットしてエイの尾を模した鞭、エビルウィップを装備する。

 

(ま、まずい!)

 

希留耶はもうバレたならと立ち上がって走り出すがエビルウィップ一振りで足を絡め取られ投げられた。

 

「ーーーーっぁああああああ!!」

 

たった一振り。

しかしその一撃は希留耶の細い足首を簡単にねじ切り木に叩きつけられた。

 

「う、うぅ…ひっ!」

 

這ってでも逃げようとした希留耶だったが、簡単に追いついたライアは打撃武器にもなるエビルバイザーで希留耶の頭をかち割る。

脳漿があまりに飛び散るが特に気にした様子もなく遺体の首根っこを掴んでライアは森の奥に消えた。




ライダー解説
仮面ライダーライア
・ミラーワールドで戦う13人の仮面ライダーの1人。
・最初から裏切るつもりで龍騎、ベルデ、インペラーを騙していた。
・つまりライアを召喚した彼は最初から希留耶を狙っていた訳で…


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提案/決定

彼は全く人と関わってない訳ではない。


外に出るのも億劫になるようなザーザー降りの雨。

今日もサボってしまおうかと考えたが結局惰性と習慣で学校に足を運ぶ。

流石に今日はギリギリで着こうとかそんな考えは欠片も浮かばず雨脚が弱いうちに学校まで水たまりだけ避けて向かった。

 

「ちっ、まあまあ濡れちゃったな。」

 

ブレイドはバックの中にいれていた替えの靴下を足を拭いてから履くと中履きに履き替えた。

 

「おはようございます先輩。」

 

「………。」

 

ブレイドが来るのを見計らっていたように一人の少女が現れた。

椿ヶ丘高校の制服(まあ当然っちゃ当然だが)に身を包んだ黒いロングヘアーの女子。

学年はブレイドより下だ。

 

「何の用だ霧原?」

 

霧原かすみ。ブレイドとは現実世界で初対面だが、

坂井直人とはユイやマコトを介してそれなりに交流があったらしい。

ブレイドにとって彼女は最大限警戒すべき対象であり、それと同時にもしかしたら最後に縋るかもしれない相手だった。

彼女は探偵を自称できるほどに鋭い。

もしこいつに坂井直人と同じ部分を指摘されれば自分は坂井直人と断じられるのではないか?という不安と…もし、もし彼女なら極めてロジカルに覆せないほど確かにブレイドという自分を肯定してくれるのではないかという期待。

いわば諸刃の剣である。

故に彼女との会話は常にストレスに晒されることとなる。

 

「お時間はとらせません。いつもの場所に来てくれますか?」

 

いつもの場所とは彼女が坂井直人から教わったというお気に入りのカフェの事である。

そこで聞かされる話は大抵日常の小さな謎と言った感じのよく言えば他愛のない、悪く言えばどうでもいい些細な事なのだが、彼女は坂井直人と言う人間を時に振り回し振り回されながら観察してきた人間だ。

自分や坂井直人についてどんな言葉がどう飛び出てくるか恐ろしいものがある。

 

「ああ。終わったらすぐ行く。」

 

だからこそ手短に終わらせる必要がある。

今から彼女に怯えながら、けど同時にどうしようもなく期待しながら俺は教室に急いだ。

 

 

 

ところ変わってアストルムともブレイドたちが暮らす世界とも隔絶された世界。

魔王と呼ばれる存在を倒すためにブレイドたちが住むのとはまた別な日本から若き魂に特別な力を与えて送り込まれている世界にて。

 

その世界に送られた日本人の中で今最も魔王討伐に近い者のうち一人を紹介しよう。

黒いブーツに灰色のズボン。

白いシャツの上に黒いベストと真っ赤な上着。

彼の名前は七海(ななみ)総一(そういち)

今魔王軍が最高金額の賞金を懸けている冒険者パーティー連合、『赤き海賊団』の団長である。

彼はその日の買い出しを終えて拠点の宇宙ガレオン船、ゴーカイガレオンに戻った所だった。

 

「ただいまー!………あれ?」

 

全員がその場を留守にしていた。

おかしい。総一のパーティーに所属する三人は出かけると言っていたがもう一つのパーティー、佐藤和真(かずま)と愉快な三人娘たちの姿が見当たらない。

 

「不用心だな。一人ぐらい残っててくれよ。」

 

そうぼやきながら総一は荷物を台所に運ぼうとする。

 

「確かに。どいつもこいつも危機意識ゴミなお陰で楽に上がらせてもらったぜ。」

 

思わず遠距離装備のゴーカイガンを構えながら大げさに飛びのいた。

いつも食事で使ってるテーブルに見覚えのない子供が座っていた。

白と黒半々の髪に赤い目。奇妙なフードを被っている。

 

「おー怖い怖い。けどいきなりそんな武器向けるなんてビビりの臆病者って馬鹿にされても文句言えないぞ?」

 

「……ある意味否定しないさ。

危険に憶病になれない奴は海賊なんてやれないよ。」

 

あっそ。と興味なさげに呟くと少年は筆で書かれた円の様なタトゥーの掘られた左手の甲を見せる。

 

「俺はスーパータイムジャッカーのカリザ。

お前の力を利用させてもらうぜ、ゴーカイレッド!」

 

今まで数多くの魔王軍行動隊長と戦って来た総一だったが、この手のパターンは初めてだ。

 

「利用、ねぇ?俺の事多少なりとも知ってるならいくら金積まれたって俺が裏切らない事ぐらい知ってそうだけど?」

 

「ああ。だからこうするのさ。」

 

カリザが手をかざすと周囲の流れが完全に停止した。

 

(身体が!…視線さえも動かせない!?)

 

「さーて、それじゃあお人形さんになっちゃいましょうねー。」

 

そう言ってカリザはゴーカイガンを奪うと手のタトゥーを視界の前に掲げる。

それが怪しく光ると総一は自分の意識が無理矢理引き込まれるのを感じた。

 

(やばいやばいやばい!これ、抵抗しないと本当に!)

 

時間停止が解除された瞬間総一は倒れ込んでもがき始めた。

しかしやがて何事もなかった様に立ち上がる。

その顔はどこか険しく見る者が敵意を感じそうな雰囲気を纏っている。

 

「まずは俺に仮面ライダーオーズのレンジャーキーを寄越せ。」

 

総一は一切何も言わずただ無言で7本のレンジャーキーを渡した。

カリザはそれに黒い懐中時計の様なアイテム、ブランクライドウォッチを掲げてスイッチを押す。

 

<オーズ!>

 

全てのキーが吸収されブランクライドウォッチはオーズライドウォッチに変わった。

 

「次に目的の予行演習だ。

ドラゴンレンジャー、キバレンジャー、キングレンジャー、メガシルバー、タイムファイヤー、ガオシルバー、シュリケンジャー、アバレキラー、デカブレイク、マジシャイン、ボウケンシルバー、ゴーオンウイング、シンケンゴールド、ゴセイナイトのレンジャーキーを出せ。」

 

言われた通りに15本のキーを差し出す。

カリザはそれに力を使って1つの金色のアンカー型のキーを作り出した。

 

「さあて、これで戦力は十分。

さあ!邪魔な他のゴーカイジャーやお前の仲間を殺しに行くぞ!」




用語解説
スーパータイムジャッカー
・タイムジャッカーという集団の一種
・通常のタイムジャッカーにも可能な時間停止のほか、多彩な能力を持つ。
・今回登場したカリザはゴーカイレッド=七海総一を利用すると宣言したが……?


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発覚/周知

彼は約束は破らない。


1

放課後、濡れた靴に気持ち悪さを感じながらブレイドは喫茶店に入店した。

はっきり言ってあまり気乗りはしないが、行かないわけにもいかない。

 

「あ、先輩!こっちです。」

 

一足早くついていたかすみが呼んでいる。

テーブル席が無かったのかカウンター席で隣は空いていた。

ブレイドはそこに座る。

 

「早速本題に入っていいでしょうか?」

 

「来たのに何も頼まないのは悪いから注文だけさせてくれ。」

 

カプチーノをデカフェで頼み、それが出るとかすみは話し始めた。

 

「まずはこれを読んで下さい。」

 

渡されたのはイマイチ信憑性に欠ける週刊誌だった。

しかし生地を読んでみて思わず驚いた。

 

『アストライア王室 ユースティアナ殿下行方不明!?』

 

ユースティアナ・フォン・アストライア。

かつてアストルムに置いて二代目仮面ライダーギャレンだった少女にしてブレイドと共に美食殿として過ごした快活な少女だ。

彼女が行方不明?

 

「こんなん…品の無い捏造記事だろ?」

 

「これだけならそう言えばいいです。

けどこれを見れば信じるかもしれませんよ?」

 

そう言って次に見せて来たのはどこかカメラの映像を静止してキャプチャーしたらしい画像だ。

日付は昨日の夕方、丁度ブレイドが家に向かい始めた時間だ。

 

「この子は…キャル!?」

 

「先輩のアパートのカメラの画像です。

入り口が一つしかない筈なのにこれ以降彼女は出て来ません。」

 

次に、と言って見せたのは栗色の髪の小柄な少女の写真だ。

 

「この子の名前は柏崎栞。

記憶を無くす前の先輩とアストルムで交流があった子です。」

 

ユースティアナ、キャル、そして柏崎栞。

3人ともレジェンド・オブ・アストルムをプレイしていて尚且つブレイド、または坂井直人と関わりがあった。

つまりかすみが言いたい事は…。

 

「アストルムプレイヤー連続行方不明事件。

何か心当たりは有りませんか?」

 

 

 

2

気付けばブレイドは店を飛び出していた。

雨が降っているのに傘もささないで走って走って走り続けた。

どこにいるかも知らない、こちらでの名前さえ知らない。

それでもまだ無事な仲間を見つけなければと思ったからだ。

 

(コッコロ!コッコロ!

彼女だけでも、彼女だけでも見つけないと!)

 

時間はもうすっかり夜。

食事も忘れてブレイドは走り回っていた。

ただ1人、ただ1人でもいいから自分をアストルムにいた頃の名前で呼んで欲しい。

そんな思いがブレイドを走らせていた。

ある路地前で立ち止まった時、ガランガランと何かが崩れる音がする。

 

「コッコロ!?」

 

思わず振り返る。

そこに居たのはコッコロと同じ年頃の少女だった。

髪の色は薄い綺麗な水色。

しかし汚れていて服も貫頭衣の様な取り敢えず着せてるだけの様な衣装だ。

 

(何だか、似てるな。ペコリーヌと出会った時と。)

 

初めて彼女とアストルムで出会った時も美しい髪と汚れた姿のギャップに少し怪しく思った事だ。

それだからかは分からない。

だがブレイドはその少女を連れて行く事にした。

もしかしたら自分も坂井直人も知らない彼女なら今の自分を見てくれるかもしれないという期待もあったかもしれない。

 

 

 

3

数日前、彼に殴られた後がズキズキと痛む。

彼女、春咲ひよりは深い後悔を抱いていた。

 

『坂井直人なんてカスみたいなカケラしか残ってねぇよ!

僕はブレイドだ!確かに坂井直人がベースだけど間違いなく俺には覇瞳皇帝に皆と戦った坂井直人とは別の物語がある!

ハジメを犠牲にしてのうのうと生きてる情け無い物語が!

なのにお前らは直人直人直人直人!

僕を裁いてすらくれないのかよ!

僕を救えなかった英雄と蔑むどころか一度はアストルムを救った英雄坂井直人のレッテルを貼るのかよ!

ふざけんな!僕は自分が1番嫌いなのに!

僕が1番なりたかった者を僕に見せるな!』

 

否定出来なかった。

記憶を無くしていた間さえ無意識に何処かで彼に坂井直人を、騎士くんを重ねていた。

 

(そうだよね…1番ハジメ君の痛みを分かってあげれたのにって思ったら辛いよね……)

 

四条ハジメ。

彼とブレイドの関係は最初は敵同士だった。

その後の関わりも多かった訳ではないが、過去を持たない彼にとっては掛け替えない仲間だったに違いない。

 

その上2人とも造りモノ、壊れモノ、偽モノ。

同じ苦しみを舐め合い、支え合うことも出来たのに。

そう後悔しても仕方ないと思いながらも引き摺らない訳が無いと思えた。

 

「今日は、雨かぁ…」

 

遠くのビルは見えなくなるほどの大雨だ。

外歩いてる人間もいないだろう。そう思って道路を見ると

 

(え?ブレイド君?)

 

彼がいた。

荷物を背負って傘もささずに歩いている。

ひよりは傘を抱け持って靴を履くと玄関から外に出た。

 

「ねえ待って!」

 

ずぶ濡れの彼が振り返る。

背負っていたのは荷物じゃなくて彼の上着を着せた少女だった。

 

「ヒヨリ、この子を泊めてくれないか?」

 

自分はずぶ濡れのまま帰る気でいる彼を引き留めてひよりは早速風呂の準備をした。




用語解説
レジェンド・オブ・アストルム
・人工知能ミネルヴァにより運営されていた仮想空間アストライア大陸を舞台としたネットゲーム。
・本物の仮面ライダーブレイド=剣崎一真の混入により、現実と同じく『バトルファイト』の概念があった。
・アストルムで生み出された改造実験体ジョーカー=四条ハジメにより完全に閉ざされた。


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宿泊/安住

彼は、目を見て話せない。


1

「悪いな。服まで貸してもらって。」

 

さっとシャワーを浴びて貸してもらったヒヨリの父の服に袖を通したブレイドはひよりの手も借りて連れて来た少女の身体を拭いて着替えさせた。

今はベッドの上で寝息を立てている。

 

「いいよ。お父さん出張で、お母さんは叔父さん、私から見たら大叔父さんが入院したとかで実家帰ってていないから。」

 

そっか。と返してブレイドは眠る少女のそばに戻った。

見れば見るほど珍しい髪色。

そして美しい顔立ちの少女だ。

 

(なんであんなボロ布みたいな格好で外にいたんだ?)

 

だからこそ噛み合わない。

こんな年端も行かない自分より子供…いや厳密に言えばアストルムでペコリーヌと出会ったあの日に生まれた自分よりかは年上だろうが、それは言い出したらキリがないのでやめよう…が、間違いなく誰か大人の庇護下にいなきゃいけない子がなんでこんな事に?

 

「考えても、仕方ないか。」

 

そう呟いた時、少女が薄らと目を開けた。

ブレイドは屈んで出来るだけ優しい声で話しかけた。

 

「おはよう。」

 

「………。」

 

「君の名前は?」

 

「しぇ…、ふ…」

 

喋るのも辛いのか、それとも言いたく無いのかモゴモゴと口籠る。

しかし限りなく坂井直人の特性を受け継いでるブレイドは

 

「シェフィ?」

 

と聞き違えた様だ。

 

「!!」

 

少女は驚いた様だが、こくりと頷いた。

 

「シェフィ…いい名前だな。俺はブレイド。」

 

頭を撫でてやるというシェフィは少し微笑んで眠りについた。

 

「……おやすみ」

 

呟く様に言ってブレイドは部屋を後にした。

下の階に行くとヒヨリが暖かい飲み物を淹れてくれていた。

 

「ブレイド君、これどうぞ。」

 

「ありがとう。」

 

「あの子はどう?」

 

「寝ちゃった。疲れてたんだろうね。」

 

そう言って向かいあって飲み物を飲んだ時点で気付いた。

 

「なんか僕達…パパとママみたいだったね…」

 

「う、うん……」

 

急に恥ずかしいという気持ちが出て来た。

なんとか話題を変えようとブレイドは口を開いた。

 

「この前は…急に殴ったりしてごめん!

大丈夫だった?」

 

「だ、大丈夫!……私の方こそごめんね。

ブレイド君の気持ちも考えないで、酷い事言って…」

 

お互いに気不味い空気が流れる。

ヒヨリはこういう時にどうしたらいいか分からないし、ブレイドはキャルに告っておきながら浮気してる様な罪悪感に駆られていた。

 

「……きょ、今日泊まってく?」

 

「え?」

 

「外、ザーザー降りだし、明日休みだし、もう遅い時間だしさ!」

 

「あ、ああ。じゃあ、お言葉に甘えて。」

 

本当にこうゆう時どう反応したらいいんだろう?

なんとも言えない感覚を覚えたまま2人はただただ時間を消費した。

 

 

 

2

翌朝、まだ寝床から起きれないシェフィに粥を食べさせてやってからブレイドとヒヨリは朝食を済ませた。

 

「今日はどうする?」

 

「僕は一回家に帰るつもり。

服は今日洗えば明日にでも返せるし。」

 

ただ問題はシェフィである。

ブレイドも拾った以上は最後まで面倒見るつもりであるが、彼の身分は学生。

今住んでるアパートに一緒に住むにしたってバイトもしてない彼には限界がある。

 

「兎に角ずっとヒヨリの家には置いとけないし明日見て動かして大丈夫そうだったら連れて帰るよ。」

 

「…わかった。なんかあったら直ぐに相談してね。

助けに行くから。」

 

「ああ、ありがとうヒヨリ。」

 

そう言ったブレイドの顔は最近の彼にはとても珍しく笑っていた。

 

 

 

3

人なんて殆ど通らない路地に1人の男が立っていた。

黒い鋼の様なスーツに一際目立つ赤い奇妙な右側だけ飛び出たデザインのバックル。

その銀色の骸骨仮面のせいか使い古しの包帯の様にも見える白いマフラー。

そして先述の仮面の目元を鍔の切れたソフト帽で隠した異様な出立ち。

ディエンドライバーの男に召喚された仮面ライダースカルだ。

スカル…死体ゆえに気配を持たない彼は通りの人々に気付かれる事なく獲物を待ち続けていた。

 

「……!」

 

休日だが学校に用でもあるのか制服姿。

黒いロングヘアーの少女、霧原かすみを引き摺り込んだ。

放る様に転がし、その先に展開していたカーテン状のエネルギーを通して森に移動させる。

 

「な、何が!?」

 

尻餅をついたまま混乱するカスミの眉間にスカルは専用武器のスカルマグナムを1発だけ放つ。

寸分狂わず命を撃ち抜いたスカルは仰向けに倒れたカスミの側により、開いたままの目を閉じさせると光と共に消滅した。

 

 

 

4

「………。」

 

ヒヨリの家を出てすぐ空を仰ぐ。

焼かれるような程の陽光に目を細めるがいつもの様に空気に不快感を感じることはなかった。

 

(アストルムの時もこんなんだっけ?)

 

一度家、アパートに帰り敷地内をぐるりと回る。

どこかにキャルの痕跡がないかと思ったからだ。

 

「……ない、か。」

 

霧原ならなにか見つけたかもしれないが生憎ブレイドに有るのは実戦で磨かれた剣の腕と、坂井直人ゆずりのゲームの腕位だ。

 

「ただいま。」

 

誰もいない家にそう言って入り、これからシェフィを済ませてやるには手狭だな、とか思いながらブレイドは着替えると財布に金を補充して来ていた服をもってコインランドリーに向かった。

天日干しでもよかったがなるべく早く返したい。

そう思って急いだ。

徒歩五分ほどで着いたそこで小銭をいれてスイッチを押す。

待ち時間はどうしようか?

坂井直人なら携帯ゲームでもしていただろうが、自分はあまり興味はない。

 

(あ、小物屋ある…寄って行こうかな?)

 

反対の通りに小物屋があった一応通学路として毎日通っていたはずだが気付かなかった。

 

(いつもゆっくり行くことばっか考えてたからかな。)

 

或いはこの世や自分んを連れて行ってくれなかったハジメへの恨み言。

心の衛生上あまりよろしいとは言えない。

思えばここまで自分が落ち着いているのもここ最近は無かったかもしれない。

 

(あ…あのブレスレット…シェフィの髪と同じ色だ。)

 

水色と白の意思が交互に連なったブレスレットに目が留まる。

買おうか?そう思って手に取った時、彼は久しく自分以外の為に何かすることに気付いた。

 

(アストルムに居た頃は、いつもって訳じゃ無いけどまあまあお人よしだったかな?)

 

最終的に成り行きとは言え世界まで救ったんだから大したもんだと思うが彼はそれを幸か不幸か英雄的偉業とかそんなふうには全く思っていない。

 

「これください。」

 

「まいどあり!」

 

妹の誕生日プレゼントだと言ったら丁寧意に包んでくれた。

嘘は良くないがこれぐらい許されるだろう。

 

「喜んで、くれるかな?」




今更ながら注意

このssはプリンセスコネクト!Re:DIVEにおいて『シェフィ』のキャラストーリーが完全に開放されるより前にプロット作成を始めていたため公式とシェフィのバックホーンが異なります。
ご了承ください。


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斬殺/転生

彼は自分に殺される。


1

ヒヨリの家の前に一人の男が、ディエンドライバーの男が立っていた。

ドアに手を掛け鍵が勝っているのを確認すると、躊躇なくドアノブを撃ちぬいた。

そして土足のまま家に上がりリビングに入り固定電話も破壊する。

 

「さて、ここまでして降りてこないという事は隠れることを選んだわけか。」

 

なら場所は限られている。

そう思いディエンドライバーの男は二階にあがり、明らかにバスルームと思われる部屋の鍵を破壊して中に入る。

想像通りヒヨリはシェフィをかばう様に抱きしめ震えていた。

 

「動かないでくれたまえ。

坂井直人君が帰ってくるまで人質になってもらう。」

 

「あ、あなたは…」

 

気丈にも男を睨みながらヒヨリが問う。

男はニヒルに笑うと

一枚の金色の背景にシアンと黒の仮面の騎士の姿が描かれたカードを見せる。

 

「海東大樹。通りすがりの仮面ライダーさ。

覚えておきたまえ。」

 

 

 

2

洗濯を終えてブレイドは真っ直ぐヒヨリの家に向かった。

いつもは重々しい足取りで歩いていた道を今は軽快に早足で歩いている。

 

(なんでだろ?昨日まではあんなにも居心地悪かったのに。)

 

まるでアストルムでペコリーヌに連れて行かれて変な魔物を狩りに行った時の様な気分になる。

 

(早く、早く帰んないと。)

 

信号さえまるで子供みたいに足踏みしながら待つ有様だ。

そして青になれば走り出すぐらいの勢いで飛び出した。

そして寄り道どころかわき目も降らずヒヨリの家に直行する。

 

「ただいま。」

 

そう言ってドアを開けようとするが、おかしなことに気付く。

ドアノブの辺りがまるで銃か何かで撃ち抜かれた様に破壊されている。

 

(まさか、強盗?ヒヨリ!シェフィ!)

 

ブレイドはその場に荷物を置いて中に入ると階段を駆け上がった。

土足とかどうとか気にする余裕もなく1番奥のドアが開けっ放しのバスルームに飛び込んだ。

 

「ヒヨリ!シェフィ!」

 

奥にはシェフィを庇う様に抱くヒヨリが。

その前に奇妙な銃を持った若い男がいた。

 

「やあ、待っていたよもう1人の仮面ライダーブレイド。」

 

そう言って男は2人に銃を向けてるのとは反対の手をかざした。

ブレイドの背後に銀色のカーテン状のエネルギーを展開。

それを移動させて4人を透過させる。

4人はどこか森の中に移動させられた。

 

「な!コゴハドゴダァ!」

 

「死後の世界への中継点さ。」

 

<KAMEN-RIDE BLADE!>

 

男、海東大樹はディエンドライバーにカードをセットして引き金を引き、仮面ライダーを召喚した。

 

赤い複眼の銀色の仮面と♠︎をあしらった鎧。

青い革のスーツは間違いなく

 

「嘘…」

 

「馬鹿な…ブレイドが、ブレイドが召喚されるなんて!ウソダドンドコドーン!」

 

しかし喚いたところで現実は変わらない。

召喚された仮面ライダーブレイドは3人に斬りかかった。

なんとか避けて2人の元に走るブレイドだが、仮面ライダーの脚力に敵うはずもなく、その身体を袈裟斬りに切り裂かれた。

 

 

 

3

坂井(さかい)直人(直人)さん。

ようこそ死後の世界へ。

あなたはつい先ほど、不幸にも亡くなりました。

短い人生でしたが、

あなたのせいは終わってしまったのです。」

 

「………え?」

 

星あかりの様なものが浮かぶ奥行きとも壁ともつかぬ空間の中央。

ブレイドは座らされていた。

反対側には天使の様な格好をした女性が座っていた。

先に紹介した七海総一や佐藤和真の冒険を知る者ならもう察しただろう。

ここまでは本当に長い長いプロローグだったのだ。

彼らの物語は、本当にようやくここから始まる。

 

 

 

4

死んだ?自分が?

確かにあの時身体を斬られた感覚は本物だ。

夢だとしたら生々し過ぎる。

けど今身体に傷一つないのは何故だ?

 

「アンタが、治してくれたのか?」

 

「いいえ。今あなたは魂だけの存在ですが、あなたの選択次第ではそうする事も可能です。」

 

「本当か!?だったら今すぐ!」

 

立ち上がって詰め寄るブレイド。

もし今更出来ないと言われたら殴りかかりそうな雰囲気だ。

 

「ただし、元の世界に送ることは出来ません。

あなたは一度死んだ人間なので。」

 

それを聞いてブレイドは掴みかかろうとするが

 

「春咲ひよりさんとあなたがシェフィと名付けた彼女はそれを承知で生き返りました。あなたなら必ず戦う方を選ぶと言って。」

 

それを聞いたブレイドは一気にクールダウンして席に戻った。

 

「……見苦しいところ見せたな。」

 

「いえ、一度死んだなど知れば誰でも動揺します。」

 

ブレイドは一呼吸置いてから天使を真っ直ぐ見つめる。

 

「生き返る先って、どんな世界なんだ?」

 

「魔王のいる世界、簡単に言えばソルの塔攻略が魔王討伐に変わったレジェンド・オブ・アストルムと思って下さい。」

 

ブレイドには極めて分かりやすい説明だった。

ブレイバックルやラウズカードが無い今、あの頃よりうんと大変な目に遭うだろうが、ヒヨリやシェフィがいるなら怖くなかった。

 

「では生き返る先に持って行く武器を選んでください。」

 

「ゲームで言う初期装備の選択?」

 

「いいえ。初回限定版に付属するた特典コードでゲット可能な装備といったところです。」

 

そう言ってカタログを渡される。

パラパラとめくってみると何個かの武器や能力に赤いスタンプでSOLD OUTと押されている。

 

(けどあえて選ぶので魔剣グラムは分かるけどマジカルリボンやマジカルアローを選ぶ人もいるんだ……ん?んん!?)

 

SOLD OUTとなっている武器に見覚えのある物が何個かあった。

見違えるはずも無い美食殿として共に戦った仲間たちの武器だ。

 

「…なあ、このプリンセスソードにアビスザッパーって…」

 

「数日前に転生した方が特典として持って行きました。

残念ながらあなたがその2つ選ぶことは出来ません。」

 

「どんな子が持って行ったんだ?」

 

「プリンセスソードの方は忘れましたが、アビスザッパーの方は白いメッシュの少女が持っていきましたね。」

 

「そっか分かった。なあ、このカタログにある以外でも持っていけるものってあるか?」

 

「はい。余程チート過ぎなければ。」

 

ならば選ぶ物は1つだった。

 

「プリンセスナイトの力を。

俺がアストルムで使っていたあの力をくれ!」

 

「かしこまりました。」

 

ブレイドの周りが光に包まれ、手にずしりと重い、懐かしい感触がある。

見るとやはりアストルムで使っていた西洋大剣が握られていた。

 

「ありがとうな。」

 

「礼には及びません。

さあ、転生者よ!願わくば、数多の勇者候補の中から、

あなたが魔王を打ち倒す事を祈っています。

…………さあ、旅立ちなさい!」



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黄金/鍍金

彼は最悪の強化フォームを纏う。


実家での急な用事を済ませた彼女、『赤き海賊団』のメンバーの一人のダクネスは彼女たちが主に活動しているアクセルの街に戻ろうとしていた。

 

「ん?あれは……」

 

行きは少しずるをして行ったが帰りは途中までで徒歩で戻る所だったのだが、おかしな子供を見た。

靴下すら履かず裸足のままで、白い短いズボンに髪の色と同じ水色の上着。

髪の長さでは一瞬判断がつかなかったが、恐らく女の子だ。

 

「なあ!そこの君!」

 

ビクッ!と一瞬震えた女の子は恐る恐るといった様子でこちらを振り向いた。

紫色の綺麗な目に少し涙が溜まっていて、胸元に黒い革の袋を大事そうに抱えている。

 

「怖がらないでくれ。怪しい者ではない。」

 

同じ目線までかがむダクネス。

だが、ますますギュッと袋を抱きしめ、上目遣いにこちらを見るばかり。

 

「お父様やお母様は?」

 

ぶんぶんと首を振る女の子。

 

「じゃあ、お兄様やお姉様は?」

 

これには頷いた。

もしはぐれてしまっただけなら探しようがある。

足は何も履いていないのに大して汚れていないし、子供の足でそんなに遠くから来たとも思えない。

 

「何処に居るか分かる?」

 

首を振る少女。

ダクネスは努めて穏やかな口調で手を差し出し

 

「じゃあ一緒に探さないか?」

 

「……いいの?」

 

女の子が初めて口を開いた。

思ったより凛とした雰囲気の声だ。

 

「ああ。困った時はお互い様だ。」

 

「…ありがとう。えっと、、。」

 

「ああ、申し遅れた。

私はダクネス。君の名前は?」

 

「シェフィ。」

 

いい名前だ。そう言って手を取ってアクセルの入り口まで行った。

おかしな格好の女の子を連れたあまり評判の良くないパーティの冒険者と会って視線が集まる。

 

「ダクネスおねーたん?」

 

「大丈夫。少しの間心細いかもしれんが、

私の仲間の手も借りて探せばすぐに見つかるさ。」

 

そんな話をしていると噂をすればなんとやら。

前方から見慣れた赤い上着を羽織った黒髪の青年が歩いて来た。

 

「ソウイチ!いい所に来てくれたな。実は今…」

 

話しかけながらそばに寄ろうとしたが、ダクネスの手を握っていたシェフィが止めた。

 

「シェフィ?」

 

「あのおにーたん、変。」

 

そう言われて仲間、七海総一を見ると、今にも攻撃してきそうな険しい表情でこちらを睨んでいた。

 

「どうしたソウイチ?

随分機嫌が悪そうだな?またアクアがトラブルでも起こしたか。」

 

総一は無言で変身携帯を右手で構え、左手に見たことのない金色の錨のような形をしたレンジャーキーを構える。

 

「ダーク……ゴーカイチェンジ!」

 

ゴーーッカイジャー?

 

やや間抜けな変身音とは裏腹に禍々しい黒紫色のオーラと共に現れた金色の鎧が総一に装着され、オーラが全身を包みそれが晴れると総一はゴーカイレッドに変身していた。

 

「ゴーカイレッド?」

 

「いいや。そいつはゴーカイレッドゴールドモード。

ただの操り人形さ。」

 

周囲の景色にノイズが走り、周囲の者、物がぴたりと動きを止める。

ダクネスとシェフィは動けるが、

 

「何者!?」

 

「俺はスーパータイムジャッカーのカリザ。

そこのガキの力を貰いに来た。やれ!」

 

ゴーカイレッドゴールドモード(以下GMと略す)は新たな武器、ゴーカイスピアーアンカーモードとゴーカイサーベルを構える。

 

「シェフィ下がってろ!」

 

ダクネスは左手でモバイレーツ、右手でレンジャーキーを構える。

 

「ゴーカイチェンジ!」

 

<ゴーーッカイジャー!>

 

「ゴーカイイエロー!」

 

この物語の初戦は、仲間割れの共食いから始まった。

 

 

 

2

目が覚めると高い高い空が見えた。

ビルなんか一個も見当たらない本当に高い空。

なんだか近視感を覚えながら彼、ブレイドは起き上がって上着に着いた草を払った。

足元を見ると、さっきあの天使から渡された剣が置いてあった。

それをアストルムでそうしていたように背中に背負って、ポケットに生前最後に購入したブレスレットが入ってるのを確認して街に向かう。

その街は王宮がない、つまり王都であったランドソルと違いただの(と言ったら失礼かもしれないが)一都市のようだ。

 

(一先ずヒヨリやシェフィが行きそうな所…あそこには人が集まってるな。)

 

ブレイド本人にその時知る由もなかったが彼はギルドに向かった。

アストルムでよく見た冒険者や魔法使いの様な恰好をした人々が多くそちらに向かっていたし、それなりに大きな建物だったからだ。

 

「なあ!そこのお前!」

 

不意に呼び止められる。

振り向くと自分と同じくらいの背丈の緑色のマントの少年と、美しい青い髪の少女、そして二人より少し背の低い赤と黒の魔法使いの様な恰好をした少女の三人組だ。

 

「すこしいいか?」

 

「いいけど?」

 

「一月一日は何の日?」

 

「お正月?」

 

「じゃあ三月三日は?」

 

「ひな祭り?」

 

「五月五日は?」

 

「こどもの日?」

 

「やっぱり!お前も日本から来たんだろ?」

 

そう言われて改めて少年を見る。

緑目は兎も角大分明るいが茶色い髪は、別に日本に居てもおかしくない。

 

「て事は君も、あの天使に言われて来たのか?」

 

「まあそんなとこ。」

 

「天使?よく分かりませんがカズマとこの人は同郷という事ですか?」

 

背の低い魔法使いの少女が首をかしげながら言う。

カズマと呼ばれた少年は頷いて

 

「俺は佐藤和真。」

 

「私はアクシズ教の御神体、水と癒しの女神アクア様よ!」

 

「我が名はめぐみん!紅魔族随一の魔法使いにして爆裂魔法を操りし者!」

 

「僕は、ブレイドって呼んでくれ。

仲間は大体そう呼ぶ。」

 

よろしく、そう言って握手を交わすとその瞬間、世界にノイズのようなものが走った。

 

「ウェ!?」

 

「こ、これは一体!?」

 

「魔法?こんな大規模に!?」

 

和真が手を離した瞬間、ブレイドにもノイズが走って動かなくなった。

 

「え!?」

 

「な、なんで!?さっきまで動いてたのに…」

 

「逆に何故私たちは動き続けてられるのかしら?」

 

3人が首を捻っていると動かない人波をぬって歩いてくる人影があった。

 

「それは君達が宇宙の力を持っているからだよ。」

 

ブレイドは見違えるはずが無かった。

現れた男は海東大樹だった。

 

「ウチュウ?それが何故周りが止まっているのと関係があるのですか?」

 

「宇宙は時の概念を歪める。

時間に干渉するこの力とは相性良いのさ。

動ける事だし、早く仲間を助けに行ったらどうだい?」

 

「仲間?」

 

問い返す暇もなく男は人波に消えて行った。




Q.宇宙の力ッてどのレンジャーのことですか?

A.カーレンジャー=クルマジックパワーです。


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一騎討戦/集団戦闘

彼は仲間を傷つける。


1

ゴーカイイエローが繰り出す剣戟を軽快に避けてゴーカイレッドGMはゴーカイスピアーとゴーカイサーベルでカウンターを与えた。

 

「やはり当たらんか。ならこれだ!」

 

<ターーッイムレンジャー!>

 

タイムイエローに変身してインファイトに切り替えた。

リーチを取りにくいと判断したゴーカイレッドGMは武器を捨てて構えを取った。

その瞬間デカブレイクの姿がオーバーラップする。

 

(今のは!?)

 

「インパルスフィスト!」

 

パンチと共に放たれた強風にバランスを崩され、

そこにラッシュを叩き込まれる。

 

「まさかその鎧はレンジャーキーで出来てるのか!?」

 

「その通り!ゴールドアンカーキーは15本のレンジャーキーを合成して作った最強のレンジャーキー!

常時出力16本分のこいつと、

どんなに手数が多くても一本ずつしか使えないお前。

勝負は見えてる。さあ、殺せ!」

 

命令を受けたゴーカイレッドGMに今度はマジシャインの姿がオーバーラップする。

手にしたマジランプバスターで狙撃してきた。

タイムイエローは残像の様な奇妙な後ろに倒れる様な動きでそれを全て避けると接近しながら新たな姿に変身した。

 

「ゴーカイチェンジ!」

 

<ダーーッイナマン!>

 

ダイナイエローにチェンジして鉄球チェーンボンバーを装備。

武器を使っての攻撃がまるで当たらない故にゴリ押ししか選択肢の無いダクネスだが、搦手がそうそう効かないというのはかなり厄介なのだ。

 

「ふん!」

 

だがそれは逆に言えば単純で読まれやすいということだ。

拳を振り抜いた僅かな隙に首を掴まれる。

その瞬間アバレキラーの姿がオーバーラップして手首にダイノマインダーが出現。

ダクネスの変身エネルギーを魔力ごと奪い変身解除させた。

 

「うわぁああーーーーッ!」

 

「ダクネスおねーたん!」

 

膝を突くダクネス。

だがゴーカイサーベルを取り出して立ち上がる。

 

「よしとけよ。今のお前は変身出来ない。

パワーアップしたゴーカイレッドに敵うとでも?」

 

「敵う敵わないの問題ではない!

私はクルセイダー。私が立ち上がれる限りシェフィには指一本触れさせん!」

 

剣を下段に、防戦の構えを取る。

ダクネスが最も得意とする戦いだ。

 

「ちっ!なら望み通り嬲り殺しにしてやれ!」

 

ゴーカイレッドGMはダクネスにゴーカイサーベルを振り下ろす。

それをひたすら受け続けるダクネス。

生身とは思えない防御力と筋力で耐え続けるダクネスだが十何撃目かの攻撃で遂に膝をついた。

 

「ああ!」

 

「さあやれ!」

 

カリザの声にゴーカイレッドGMはサーベルにレンジャーキーをセットする。

 

<ファ〜イナルウェイーーッブ!>

 

「……レッドレイジ!」

 

振り下ろされるゴーカイサーベル。

狙いは頭だ。当たれば間違いなく死ぬ。

 

「ブリンガーソード!」

 

「ウェーイ!」

 

一本の細い両刃剣と黒い西洋大剣がそれを受け止めた。

ギリギリと押されていたが、その隙にダクネスは渾身の右ストレートでゴーカイレッドGMを後退させる。

 

「来てくれたかカズマ!皆!」

 

「おにーたん!」

 

「ウェ!シェフィ!無事だったか!」

 

めぐみん、アクアがダクネスを立たせる間にサーベルを構え直したゴーカイレッドGMが再び戦闘態勢を取る。

今来た和真達3人は前に出た。

 

「よく分かんないけど、

ソウイチをぶん殴っても良いってことかしら?」

 

「そのカッコいい鎧に何やら種か仕掛けかある様ですが、関係ないですね。

洗脳されて悪の手先になるとか絶妙にエモい展開、

ダクネスじゃないですけど私がやりたかった!

この悔しさぶつけさせて頂きます!」

 

「お前らちょっとは総一さんを心配しろよ!

あーもー兎に角行くぞ!ブレイドは2人を頼む!」

 

「皆は!?」

 

「これが有ります!」

 

めぐみんがモバイレーツとレンジャーキーを構える。

和真とアクアもそれぞれモバイレーツとキーを構えてポーズを取る。

 

「「「ゴーカイチェンジ!」」」

 

<<<ゴーーッカイジャー!>>>

 

それぞれのカラーの3つのX型のエネルギーとV型のエネルギーが3人の体を包むスーツに変わる。

 

「ゴーカイブルー!」

 

「ゴーカイグリーン!」

 

「ゴーカイピンク!」

 

「海賊戦隊!」

 

「「「ゴーカイジャー!」」」

 

「派手に行くわ!」

 

ゴーカイガンを構えたブルーとピンクは射撃しながら走った。

グリーンもソードを構えて続く。

同じようにゴーカイガンとゴーカイスピアーガンモードを構える。

 

「『スティール』ッ!」

 

ゴーカイグリーンこと和真は盗賊スキル『窃盗(スティール)』でゴーカイレッドGMから二丁の銃を奪い取り余ったゴーカイサーベルをブルーにパスする。

ブルーは逆にゴーカイガンをピンクに渡して自身のサーベルを構えた。

 

「…DVチェンジ。」

 

すぐさまゴーカイレッドGMはタイムファイヤーの姿をオーバーラップさせて出現させたディフェンダーガンを変形(DVチェンジ)させてディフェンダーソードにして駆け出す。

すれ違い様にブルーを切り捨て、鎧の防御に物を言わせてグリーンの弾幕を全て弾きタックルで吹っ飛ばし、ガン=カタを仕掛けて来たピンクは至近距離でディフェンダーガンを浴びせた。

 

「痛っ〜〜やってくれたわね!」

 

「容赦なしですか…比喩でも何でもなく操り人形のようですね。」

 

「だったら体当たりで止めてやる!」

 

「「「ゴーカイチェンジ!」」」

 

それぞれ取り出したレンジャーキーをモバイレーツにセット。

 

マーーッジレンジャー!

 

<アーーッバレンジャー!>

 

<ダーーッイナマン!>

 

それぞれマジレッド、アバレブルー、ダイナピンクに変身した。

 

「マジ・マジ・マジカ!

レッドファイヤーフェニックス!」

 

「本気爆発!アバレモードォ!」

 

「爆発!スーパーダイナマイト!」

 

3人はそれぞれエネルギーを纏った体当たり攻撃を放った。

 

「…超力、ダイナマイトアタック!」

 

ゴーカイレッドGMはキングレンジャーの姿をオーバーラップさせ、ダイナマイトアタックを発動した。

本来複数人でやって初めて怪人を倒せるだけの力を発揮出来る技なのだが、レンジャーキー16本分のパワーを出せる彼は3人の技を簡単に弾いた。

 

「ま、マジかよ…」

 

「馬鹿な!スーパーダイナマイトが負けるなんて!」

 

「怯んでる場合じゃないわよ!次が来る!」

 

アクアの檄に2人はすぐに立ち上がりレンジャーキーを使った。

 

スーパーーッレンジャー!

 

「デカレッドスワットモード!」

 

「テクターボウケンレッド!」

 

「ハイパーシンケンレッド!」

 

目には目。歯に歯は。

強化されたレッドレンジャーには強化されたレッドレンジャー。

それを見たゴーカイレッドGMはだらりと両手を投げ出し軽くジャンプを始める。

 

「誘ってるわね。」

 

「やるしかないですよ!烈火大斬刀!大筒モード!」

 

「デュアルクラッシャー!ドリルヘッド!」

 

「ディーリボルバー!」

 

3人の強烈な銃撃が放たれる。

着地寸前ゴーカイレッドGMに炸裂する。

白い煙をあげて倒れ込んだ。

 

「やったかしら?」

 

「馬鹿アクア!お前それフラグ…」

 

カーン!と和真がいい終えるより早く3人の司会は緑色の障子に遮られた。

 

「超忍法…」

 

「しまった!」

 

「影の舞!」

 

シュリケンズバットの剣舞に大ダメージを受けた3人は火花を上げて変身解除された。




設定解説
ゴールドモードの武器
・ゴーカイサーベル、ゴーカイガンは
通常形態から引き続き使用。
・新たな武器としてゴーカイスピアーを使用する。
・ゴーカイスピアーはトライデントモード、
アンカーモード、ガンモードの三種類があるが
総一は専らトライデントモードを使用。
普段の遠近両方の武器を左右の手に装備していたがトライデントモードとゴーカイサーベル、ガンモードとゴーカイガンと言った具合に同じ用法の武器を同時に使う。


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海賊剣士/魔法剣士

彼は彼女と剣を交える。


1

ブレイドはひーこら言いながらもダクネスを背負って彼女が案内するゴーカイガレオンに向かった。

街を抜けて平原の方に出る。

 

「よしここだ。少し待ってくれ。」

 

背負われたままダクネスはモバイレーツを取り出し、コードを打ち込んだ。

 

空の何もなかった場所が歪み、真っ赤な空に浮く海賊船が現れた。

そこの部分から3本の太い鎖が伸ばされる。

 

「これに掴まっていくのか?」

 

「ああ。落ちたら洒落にならないからしっかり掴まってろよ?」

 

ダクネスに言われた通り捕まって鎖が引っ張られるのを待つ。

まあまあの勢いで釣り上げられた3人は船内に引き込まれた。

 

「ようこそゴーカイガレオンへ。

『赤き海賊団』の一員として歓迎する。」

 

 

 

2

中に入り、居間に通された。

階段を上がると正面に柱と椅子があり、その横のテーブルには海賊船らしく宝箱が置かれている。

左手前にソファーとテーブル。

奥には食事の為の物か、4人がけのテーブルがあった。

そのさらに奥はキッチンだろうか?

他にもいくつか丸テーブルに椅子が置かれている。

 

取り敢えず1番奥の4人がけのテーブルにつき、話を聞く事にした。

 

「では改めて…私はダクネス。

『赤き海賊団』の一員で職業は聖騎士(クルセイダー)

硬さが取り柄だ。遠慮なく盾役に使ってくれ。」

 

「僕はブレイド。シェフィが世話になったな。」

 

そこからダクネスの説明が始まった。

彼ら彼女らが変身したのは仮面ライダーではなくスーパー戦隊と呼ばれる物で、かつて伝説となった英雄達らしい。

 

「その力を宿したのがレンジャーキー。

これを使う事で該当する戦士に変身したり、変則的な使い方をすれば魔王軍がやっている様に怪人を作り出したりレンジャーを実体化させたりも出来る。」

 

「じゃああの赤と金のレンジャーは?」

 

「いっぱいレンジャーの力、使ってた。」

 

「分からん。だが間違いなく洗脳されたソウイチ、私達の仲間だ。」

 

勝手を承知だが、と断ってダクネスは極めて真剣な表情で言った。

 

「ブレイド、シェフィ。

ソウイチを元に戻すために私達に協力して欲しい。」

 

「こっちこそ。

レンジャー相手にするには俺じゃ心許ない。

願ってもない話だ!」

 

ブレイドとダクネスは硬い握手を交わした。

 

 

 

3

同じ頃、隣町にて。

仲間が奇妙な異邦人と手を組み操られた不肖のリーダーを奪還しようとしてるなどつゆ知らず、赤き海賊団の残る3人、上級剣士(ソードマスター)のジョー・ギブケン、盗賊のルカ、槍使い(ランサー)のリアの3人はアクセルから1番近いダンジョンの先にある森に入っていた。

 

「本当にこんな所に魔王軍の行動隊長が潜んでるのか?」

 

「確かな筋の情報よ。何でも3人組の間抜けで、

セコセコ馬車襲ったりしてるんだって。」

 

「確かに今までしてきた事に比べたら地味と言うか、ちゃちいですね。」

 

なんて話ながら森を進んでいると、奥から轟音が響き、遅れて派手な狼煙が上がる。

 

「先を越されたらしいな。」

 

「行きましょう!」

 

ジョーは剣を、ルカは弓矢を、リアは槍を構えて走った。

すると前方から墓石に目玉と手足が生えたような怪人が走ってきた。

 

「アイツがか!」

 

「援護する!思いっきり行きな!」

 

ジョーとリアが前に出て、ルカが木に登り矢を構える。

 

「ま、待って助け…」

 

言い終わるより早く飛んで来た光の斬撃が墓石怪人を両断した。

爆炎の中から飛んで来た光をキャッチした誰かが前に出る。

 

「3人で鍵一本か。道理で弱い筈だね。」

 

「何者だ!?」

 

ジョーが臨戦態勢を取る。

墓石怪人から出たキリンレンジャーレンジャーキーを拾ったおろした銀髪に、

♦︎のマークのついた大きなリボンが胸元にある青と白のドレス?の様な衣装。

 

「魔法剣士シャイニー★トモ!

そう言う君達は賞金首の海賊だな!」

 

「だったらなんだ?」

 

「風の噂に聞いてたんだよね…赤き海賊団にはとびきり強い剣使いの用心棒が居るって。

気になってたんだ。どれぐらい強いか!」

 

そう言って剣先をジョーに向けるシャイニートモ。

ジョーは好戦的な笑みを浮かべると一歩前に出る。

 

「正進怒涛流剣術、押して参る!」

 

 

 

4

ジョーのゴーカイサーベルとシャイニー★トモのマジカルソードがぶつかり合う。

金の火の粉が時々見えるぐらいしかルカとリアには戦いを知る術がなかった。

それ程までにシャイニー★トモは速かった。

迅雷の様なその剣戟は一閃一閃が兎に角鋭い。

 

「正進怒涛流!風林火山・万山不動!」

 

対してジョーは地面にしっかりと足をつけて一撃一撃を確実に受け流していた。

 

「ルカさん。」

 

「…何よ?」

 

「ジョーさんっていつも本気出してないんでしょうか?」

 

「まあ、みたいね。」

 

「そしてすっごく楽しそうです。」

 

「ソーイチやカズマと手合わせしてる時と同じ顔してるわね。」

 

『赤き海賊団』の全員の中で近接戦最強をあげろと言われたらそれは文句なしにジョーだ。

次点で無手のダクネス、アクア、めぐみんと総一がその次に同率。

続いてルカがやや頭ひとつ上でリア、和真がどっこいどっこいと言った感じだろう。

 

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搦め手と組み合わせ。

総一と和真は兎に角それが強い。

悪く言えばあり物で済ませている。

良く言えば自分の手札で戦い抜ける。

それこそが2人の武器であり、彼らが船長と参謀の地位にいる理由である。

 

それを加味した強さ、つまり集団戦となればどれだけ戦力差が有っても必ず手痛い一矢で報いられる。

個人対個人であってもそれは同じ。

故にジョーは2人と戦う時、次はどんな手を使ってくるかとドキドキしていた。

まるで週刊連載でも楽しんでるみたいに。

 

だが今回は違う。

純粋な剣技のみでかなり強いシャイニー★トモに一周まわった新鮮さを覚えてる様だ。

 

「見切った!正進怒涛流!雪月花・百花流楼!」

 

はじめてジョーが攻勢に出た。

花びらが舞う様な独特のステップでシャイニー★トモの虚をつきバランスを崩させ横転させた。

 

「ははっ!評判通りの腕前だね。

こっちに来てから魔王軍の行動隊長とも3回ぐらい戦ったけど、お兄さんより強かった奴は居なかったよ!」

 

「お前こそ、剣そのものも、腕も、魔力の思い切りも素晴らしい。

久しぶりに血沸き肉踊る!」

 

2人が再びぶつかり合うが、そこに一閃、銀色の半月型のエネルギーの刃が放たれた。

ギリギリで飛び退く2人。

 

「な、何者だ!」

 

そこに居たのはつい先程和真達を蹂躙したゴーカイレッドGMだった。

 

「ソーイチ!?アンタなんのつもりよ!」

 

「なんか…いつもと違うのは鎧だけじゃなさそうですね。」

 

それは持ってる武器がゴーカイサーベルでもゴーカイガンでもなく、ボウケンシルバーのサガスナイパーである事が雄弁に物語っている。

ゴーカイレッドGMはサガスナイパーをスナイパーモードに変えると躊躇なく4人に銃口を向けた。

 

「「「ゴーカイチェンジ!」」」

 

3人はすぐさま変身して前方にエネルギーを展開。

全弾受け切るとそれぞれポーズを取る。

 

「ゴーカイブルー…ッ!」

 

「ゴーカイイエロー!」

 

「ゴーカイグリーン!」

 

「魔法剣士シャイニー★トモ!

煌めく剣技で悪を断つ!」

 

「海賊戦隊!」

 

「「「ゴーカイジャー!」」」




設定解説
ゴールドモードの能力
・合成されて入り15本のレンジャーキーのレンジャーに限るがゴーカイチェンジなしでレンジャーの固有技、武器を可能。
・使う際は使うレンジャーの姿がオーバーラップする。
・複数のレンジャーのパワーを同時に使うことも可能。


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襲撃/救援

彼とは最悪の初対面となる。


1

「海賊戦隊!」

 

「「「ゴーカイジャー!」」」

 

高らかに3人が叫ぶとシャイニー★トモは尋ねた。

 

「戦う前に聞くけどさ、見た感じあの赤い彼もあなた達の仲間みたいだけど?」

 

「先に手を出して来たのは向こうですよ。」

 

と、1番大人しそうだったリアがサラッと言ってのける。

 

「そーそー。それにお宝のためにやってきたんなら見つけた所を慰謝料治療費だなんだ言ってふんだくってやればいいんだし!」

 

「それに魔術か何かで操られてて倒さないと戻れないとかなら、約束が前倒しになるだけだ!」

 

そう言って臆せず仲間に武器を構えながら向かっていく3人にトモは思わず笑ってしまった。

 

「海賊と呼ばれる訳だ。

私も負けてられないかな!」

 

マジカルソードを投げつけながら接近してそれを弾いたゴーカイレッドGMに立ち取を仕掛ける。

彼女は剣道家ではなく剣術家。

限りなく実践向けの戦う術を叩き込まれた彼女は剣以外も、剣を破壊された時に備えて一通り習得しているのだ。

奪ったサガスナイパーをゴーカイグリーンに投げ渡す。 彼女はすぐさまゴーカイサーベルをブルーに投げ渡してからキャッチした。

 

「なんで私に?」

 

「槍やってそうな身体運びだったから!」

 

「よく見てんじゃん。」

 

「なら次はしっかり合わせろ!」

 

まずジョーが切り込む。

レッドは次の武器、キバレンジャーの白虎真剣を取り出し受けるが続いて入ってきたマジカルソードとの二刀流に斬りつけられる。

 

「シャイニー★トモ!」

 

「オッケー!」

 

すり抜けざまにイエローはトモにマジカルソードをパス。

受け取ったトモはグリーンと共に切りつけた。

 

「流石に硬いなぁ。」

 

「変わったのが鎧だけでも充分脅威だな……。」

 

「削り切るよりこっちのエネルギーが尽きる方が早そうですよ?」

 

「ならば一気に叩く!」

 

ブルーはバックルからゴーカイブルーのキーを取り出し、ゴーカイサーベルにセットする。

イエローも同じようにしてグリーンは二丁のゴーカイガンに2本のキーをセットした。

 

トモもマジカルソードにパワーを溜める。

 

<<<ファ〜イナルウェイーーッブ!>>>

 

「「「ゴーカイスクランブル!」」」

 

「はぁああ!やあ!」

 

ブルー、イエローの放った斬撃にグリーンの弾丸が加わった刃と、シャイニー★トモの斬撃の3つがゴーカイレッドGMに迫る。

 

しかし彼は避けようとせず、シュリケンジャーの姿をオーバーラップさせ、

 

「秘打・千本ノック!」

 

空中で鞘に収めたままのシュリケンズバットで無数の球を打ち出し4人に文字通りの大打撃を与えた。

 

「「「わぁああああー!」」」

 

変身解除されて膝を突く4人。

トモも魔法少女の姿から緑色のセーラー服に短い茶髪の姿に戻ってしまった。

そのままトドメを刺そうとゴーカイレッドGMはシュリケンズバットを抜刀して迫る。

 

「ファイヤー剣!」

 

柄の先のマイクに音声認識させ、モードを切り替えると炎の剣を振り下ろしたが、

 

「ディフェンストリームカード、天装!」

 

水の防壁が炎を受け止めた。

2つの力が相殺し合った末に出来上がった蒸気の壁が5人を隠すブラインドになる。

ジョー達を助けたのはゴセイグリーンだった。

 

「その声、アンタカズマ!?」

 

「ルカさん逃げましょう!

今の俺らじゃ全員束になっても総一さん相手はキツい!

カモミラージュカード、天装!」

 

5人の姿が溶け去るように消える。

ゴーカイレッドGMは蒸気が晴れるまで動く事はなかった。

 

 

 

2

ガレオンの甲板に上がったところでゴセイグリーンに変身していた和真は変身を解除した。

瞬間前のめりに倒れる。

スーツの下の和真の身体はズタズタだった。

服が胸元以外破けてない所を見ると主に殴る蹴るなどの暴行を加えられたのだろう。

 

「「カズマ!」」

 

慌ててジョーとルカが止めた。

その身体は鉛のように重くかなりの無茶をしたんだろう。

 

「兎に角運びましょう!」

 

リアに先導されてジョー、ルカで和真を抱えて居間まで運ぶ。

はいるとそこでは和真ほどではないがそれなりにダメージを負ったアクアとめぐみんが治療を受けていた。

 

「カズマ!やっぱり無茶して!」

 

ブレイドの手を借りながら立ち上がったアクアが『ヒール』をかける。

傷は塞がっていくが疲労は溜まっているのか動き出しそうにはない。

 

「…呼吸も脈も有る。取りあえずは安心だろう。」

 

ジョーの言葉にホッと胸を撫で下ろす一同。

しかし事態は決して良いものとは言えない。

 

「アンタらもソーイチにやられたの?」

 

「はい。出力と手数にモノを言われてゴリ押しでやられましたよ。

その後ももう一回変身するような余裕はなくて生身のまま戦ってなんとかカズマが天装術で逃がしてくれて…」

 

「自分もこんなにボロボロなのに『ジョーさん達が心配だ』って言って無茶しちゃって。何やってんのよ。」

 

セリフこそあきれたように言うが、アクアは柔らかに笑っていた。

 

「そうですか…にしても、総一さんはどこであの金色の鎧を手に入れたんでしょう?

見た感じ複数のレンジャーキーを合成して作ったみたいですけど。」

 

リアの疑問にダクネスが答える。

 

「どこかは分からんが誰かは分かる。

おそらくシェフィを狙っていたあのカリザとかいう子供の仕業だろう。

少なくともソウイチを操ってるのは彼だ。」

 

「出力16本とも言ってましたし、ゴーカイレッドを含めてなら、あの鎧には15本キーが使われている、ですか。」

 

「レンジャーキーは後で数えるとして、問題はシェフィだ。

この状況から考えるにシェフィはカリザがレンジャーを操ってけしかけてまでして確保したい存在、或いは確保したい何かを持っている、という事になるが?」

 

一同の視線がシェフィに集まる。

彼女は怖がってブレイドの後ろに隠れた。

ブレイドは少し考えてシェフィの目線までかがむと

 

「シェフィ、俺はこっちに送ってもらう時にこの剣を貰ったんだ。

シェフィは何か貰った?」

 

シェフィは持っていた袋から5つの日光の色に光る玉を取り出した。

それにはライダーズクレストや、スーパー戦隊の紋章に似たエンブレムが浮かんでいる。

 

「これって!」

 

「レンジャーの力の結晶!」

 

「つまりカリザの狙いは…」

 

「ああ。この五つのスーパー戦隊の力だ。」




設定解説
シェフィの転生特典。
・シェフィは転生の際、特典に関してはお任せを選んだ。
・その際渡されたのが『5つのスーパー戦隊の大いなる力』である。
・実はこの大いなる力、バスコが転生前にアクアからレンジャーキーを奪って無理やり転生した際にアクシデントでレンジャーキーから抜け落ちてしまったのをアクアの後輩のエリスが回収していたものなのだ。


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勧誘/洗脳

彼は先輩風を吹かせる。


1

その夜、カリザの目的、おおよその現状を把握した一同は取り敢えず敵から身を隠すためにガレオンをオート巡回にして、風雷丸に頼んで隠れ身の術をかけてもらった。

 

「取り敢えず今は戦力が足りない。

シェフィの持つ力を100%使う為にも対応するレンジャーキーが必要だ。」

 

それぞれの球に合うキーを探し、それを以って総一を倒して元に戻し、カリザを倒す。

その為に準備が必要ということで、一先ず今日の所は休む事となった。

ダクネスに協力すると約束したブレイド達と、面白そうだし乗りかかった船だからと申し出たトモは客室を一部屋ずつあてがわれたのだが、

 

(……寝れない。)

 

枕が変わってるとかじゃなくて、ただ単純に頭の中で考え事が止まらなくなってしまったのだ。

そして、思い出してしまったのだ。

アストルムでの最後の戦い、ハジメがすべてのライダーの力を手に入れるべく仲間たちに牙を剥く姿を。

 

(きっと海賊たちも…)

 

仲間と戦うのは、この上ない苦痛だったろう。

自分にとってだって昼間起きていればふとした時に思い出し、夜眠れば夢に見る今でもうずいて仕方ない古傷なのだ。

 

(なんか飲みに行こ…。)

 

ブレイドはベッドを抜け出して居間の、キッチンの方に向かった。

するとそこに先客がいた。

同じ茶髪の、日本から来たという彼。

 

「カズマ?」

 

「ブレイド、お前も寝れないのか?」

 

「ああ…、君こそ。ボロボロなんだし寝てた方がいいんじゃないか?」

 

「俺はこうなると砂糖抜きのホットミルクがないと寝れないんだ。

お前も飲むか?」

 

「じゃあ、一杯。」

 

和真は鉄製のポットとカップを二つ用意する。

どうやら寝れないときは毎晩と言うのは本当らしく手馴れた感じでホットミルクを作っていく。

 

「よし、出来た。ソファーの方で飲もう。」

 

ブレイドと和真は横に並んで腰かけた。

まず一口。多分現実世界、いや、アストルムでも飲んだ記憶がないから生まれて初めて飲むかもしれない。

 

「……美味いな。」

 

「だろ?先輩に奢ってもらってから好きになったんだ。」

 

へー、と相槌を打ってもう一口。

 

「…なあ、ブレイド一個良いか?」

 

「何?」

 

「お前あの女の子、シェフィって言ったよな?

凄く、お前になついてるよな。」

 

「ああ。」

 

「絶対に、絶対に守り抜いてやれよ。

それで、悪い事したらちゃんと叱って、

良い事したらうんと褒めて、

幸せになったら…ちゃんと祝福してやれよ?」

 

「……。」

 

一瞬、カズマは出来なかったのか?

と言いそうになったが言わなかった。

 

「俺からも、一個良いか?」

 

「なんだ?」

 

「仲間がどうしようもなく遠くに行きそうで、

戦うようなことになって言葉とかでなくても、

絶対に躊躇うなよ。

そこで言葉がまとまってなくても何か伝えられなきゃ死んでも後悔する。」

 

「分かった。肝に銘じとく。」

 

2人は乾杯を指切りの代わりにホットミルクを飲み干した。

 

 

 

2

照りつける太陽に目が覚める。

膝に重いものを感じながらブレイドは目覚めた。

 

(昨日は確か…カズマと話しててそのままソファーで…。)

 

起き上がろうとして昨日自分がいなくなったことに気付いたシェフィがやってきてここで寝てしまったことを思い出す。

彼女は彼の膝に頭を預けたまま寝息を立てていた。

 

「おはよー!あらブレイド、だったかしら?

早起きね。まだシェフィはお眠みたいだけど。」

 

「おはようアクア。他の皆は?」

 

「ジョーとトモは甲板で朝稽古。

ダクネスとめぐみんは一日一爆裂に向かったわ。

ルカとリアは朝弱くてまだ寝てる。

カズマはそろそろ起きてくると思うわ。」

 

「そっか。何か朝の用意とかで手伝うこと有るか?」

 

「あとでカズマにやらせるわ。

アンタはまだもう少しシェフィを安心させるって仕事が残ってるでしょ?」

 

そう言ってアクアは出て行った。

顔でも洗いに行ったのだろう。

 

「んん……おにーたん…。」

 

「シェフィ?」

 

「……いか、ないで…」

 

もぞもぞと顔をうずめながら寝返りを打つシェフィ。

ブレイドは頭を撫でると

 

「行かないさ。」

 

ブレイドは短く、だが確かに約束した。

 

 

 

3

同じころ、ブレイドたちの世界。

一人の少女がパソコンの前で固まっていた。

画面には、一人の少年のバストアップが映っている。

その上には『探しています』と大きく書かれていて、その下にはもう一つ枠があり、そこには連絡先やいなくなった時の服装や身体的特徴などが書かれているが、名前だけが空欄だ。

 

(坂井直人とは書けないし、ブレイドとも書けないよね…。)

 

ブレイドがひよりを殴ったと知ったその日から少女、草野優衣の心はどんよりと曇っていた。

 

「ナオ君はもういないし、ブレイド君も、変っちゃったのかな?」

 

「そんなに気になるなら確かめに行けばいい。」

 

一人ぽつりとつぶやいたはずの言葉を誰かが返す。

振り向くと誰も居なかったはずの室内に一人の若い男が立っていた。

海東大樹だ。

 

「だ、誰!?」

 

「かつて仮面ライダーブレイドだった者の消息を知る者だよ。

どうだい?知りたくはないかい?」

 

そう言って彼は懐から、ダークモバイレーツと一本のレンジャーキーを取り出す。

 

「それは?」

 

「彼に会うために必要な物さ。

別に見送るなら受け取らないでいい。

ただチャンスが二回も三回もないという事は理解してくれたまえ。」

 

優衣はしばらく迷ったが、やがて意を決したようにそれを受け取る。

 

「え?あ、あああああ!何!?何これぇ!?」

 

瞬間、優衣は自分の身体を抱きしめその場に座り込み、アルマジロの様に丸まって震え始める。

 

「おや?てっきりプリンセスナイトの事で身体に力が流れてくるのは慣れてるのかと思ったけど、スーパー戦隊の力は少々毛色が違ったかな?」

 

「あ、ああ!助けて騎士、ク……。」

 

シャキ!と立ち上がった優衣はダークモバイレーツを開く。

中から出た黒い靄が優衣の衣装を部屋着からかつてアストルムでオーキッドアンデッドに洗脳された時に着せられたのと同じデザイン、しかし色は黒いドレス姿になる。

 

「へえ、いかにも顔出し幹部っぽいじゃないか。

活躍が見かけに正比例することを期待するよ。」

 

そう言って海東は銀色のカーテンを発生させて移動する。

どこかの倉庫の中、ソファーにふんぞり返るカリザとただ黙って虚空を睨みながら立つ七海総一、そして見覚えのないもう一人の少女が待っていた。

 

「仕事はしっかりしてくれたみたいだな。」

 

「そっちこそ。報酬はしっかり用意してくれてるんだろうね?」

 

「ああ、当然。お前こそ、しっかり最後まで協力してもらうからな?」

 

「もちろん。そこは信用してもらっていい。

ちゃんと君のご要望通りちゃんと転生特典でアストルムでの力を願うだろう者をあの世界で殺して転生するように仕向けたじゃないか。」

 

カリザは起き上がると優衣が受け取ったのとは別のダークモバイレーツとブルーマスクレンジャーキーを取り出す。

 

「これは士条怜に?」

 

「ああ。酒井直人が苦しむ姿が目に浮かぶ。」

 

「じゃああっちの方には彼らを向かわせると良い。」

 

そう言ってキーと交換するように海東は2枚のライダーカードを渡した。

 

「上手くやれよ?」

 

「君こそね。」

 

そう言い合って二人は再び分かれた。



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分担/離散

彼ら彼女らは別行動を取る。


1

朝食を終えた『赤き海賊団』+αの一同は早速本題に入った。

 

「奴らはシェフィの持つレンジャーのパワーを狙ってる。

つまり俺達はシェフィを守りながらレンジャーキーを探さないといけないわけだが…」

 

ジョーがシェフィとブレイドを見ながら言う。

その表情は険しい。

 

「現実的に相当キツイですよ?

総一さんは強化された上に操られてるし、今までレンジャーキー探す当てなんて魔王軍倒すぐらいしかなかったんですから。」

 

和真が言う。もっともな意見だ。

『ドラゴンボール』の『ドラゴンレーダー』みたいな便利な代物は無いし、ここにいる全員は宝探しのプロという訳では無い。

盗賊のルカとその真似事が出来る和真はそうでも無いが、本職のトレジャーハンターには及ばない。

 

「ただ先に見つけてそこで障害さえさっさと排除出来ればレンジャーキーのゲット自体は簡単なはずです。

カリザも態々総一さんを配下にしたって事は決して戦闘向きではないのかもしれませんし。」

 

リアの分析も一理ある。

つまり今必要なのは『即座に見つけたレンジャーキーを確保して離脱出来る戦力』と『索敵』。

前者は兎も角もう片方は正直不安だ。

 

「んー、そうだ!」

 

パチン!と和真が指を鳴らす。

 

「何か思いついたのか!?」

 

「ああ。ただリアとめぐみんには一肌脱いでもらうことになりそうだ。」

 

 

 

2

しばらくして、ユイという新たな戦力を確保したカリザはゴーカイレッドGMとユイを伴ってガレオンの足元まで来ていた。

 

「さーて、初の共同作業だ!しっかりやれよ?」

 

ユイはカリザが総一のモバイレーツを元に作った黒一色のモバイレーツ、ダミーモバイレーツに劣化版レンジャーキーのダミーレンジャーキーをセット。

 

「ダークゴーカイチェンジ……。」

 

<キャーーッンデリア!>

 

喜びの戦騎キャンデリアに変身し、大鎌のキャハハルバードを構える。

 

「騎士、くん?」

 

びくりとキャンデリアの肩が震えた。

カリザも目を凝らしてみると平原にブレイド、シェフィ、トモの3人が降りていた。

 

「手間が省けた。一気にやれ!」

 

レッドはサーベルとスピアーを構えてキャンデリアと共に3人に向かっていく。

 

「行くよ!」

 

トモの掛け声にブレイドが頷き前に出る。

剣を引き抜き2人の方に掲げて

 

「『エクスプロージョン』ッ!」

 

……爆裂魔法を放って来た。

流石に対応出来ずに吹っ飛ばされる3人。

 

「ゴホッ!ゴホッ!…ざっけんな!

爆破落ちなんて何回使い古したネタだこの爆弾魔!」

 

「爆弾魔とは失礼な!

爆裂道を歩む者と言ってください!」

 

「騙されちゃう方が悪いんですよー?」

 

ブレイドの姿をした者から少女の声が、シェフィの姿をした者から彼女にしては大人びた声がした。

多少なりともスーパー戦隊について予習していたカリザはすぐにその力を看破する。

 

「くそう!マジピンクの変身魔法とゴセイグリーンの姿を変える護星術か!」

 

「「正解!」」

 

2人は同タイミングでマジピンク、ゴセイグリーンに戻る。

 

「それじゃあもう一段行きましょうか!」

 

ピンクの掛け声にグリーンはモバイレーツを、トモはマジカルソードを引き抜く。

が、

 

「あ、ちょっと待った。

2人ともこれ使ってみて。」

 

トモは2人に何かを投げてよこす。

 

「新しいレンジャーキー!一体どこで?」

 

「魔王軍と戦った時に!」

 

「感謝します!今度こそいきましょう!

リア、あなたはイエローに!」

 

「はい!」

 

「シャイニー!フェザリー!グローリー!

マジカルソード、シャープネス!」

 

「「緊急変身(エマージェンシー)!デカレンジャー!」」

 

デーーッカレンジャー!

 

<デーーッカレンジャー!>

 

コールを受けたモバイレーツから形状記憶宇宙合金デカメタルが放出。

2人の身体に吸着し、デカスーツとなるのだ。

 

「「フェイスオン!」」

 

「デカイエロー!」

 

「デカピンク!」

 

「「ツインカムエンジェル!」」

 

「アーンド!魔法剣士シャイニー★トモ!

煌めく剣技で、悪を断つ!」

 

 

 

2

「どうやら上手く行ったみたいだな。」

 

総一よりやや乱暴なルカの操縦で発進したガレオンは殿に残した三人とは反対方向に進んだ。

取り合えずレンジャーキーを探す当ては無いが、取り合えずカリザたちを釘付けにしておきたい。

そう考えた和真の作戦だった。

 

「それじゃあ何処に行こうか?」

 

「シェフィ、何か力に変化はあった?」

 

ブレイドに言われて袋から力を取り出すシェフィ。

するとそのうちの一つ、逆さの五角形の中に『S』の字の書かれたエンブレムの球が光りだした。

 

「おお!もしかして当たりか?」

 

「ルカさん聞きましたか?」

 

『内線でばっちり聞いてたわ!

シェフィこっちまで連れて来て!

それを頼りに飛ばすわよ!』

 

ガレオンは空を割くように進んだ。

その先に、魔王軍に荒らされた村があった。

しかしそこを荒らしたはずのゴーミンやスゴーミンは軒並み倒され、行動隊長の姿もない。

その代わり、レンジャーキーを拾い上げる青いバーコードの仮面の異形が居た。

 

「それじゃあ、あとは頼むよ。士条玲くん。

いや、今は地底剣士ウナス、かな?」

 

そう話しかけられたレイは無言でダミーモバイレーツにブルーマスクキーをセットし、変身した。

その横に先ほど青い異形、仮面ライダーディエンドが召喚した二人の剣のライダーが並び立つ。

その光の無い目はただ真っ直ぐにガレオンが来るであろう空を睨んでいた。




キャラクター解説
地底剣士ウナス
・光戦隊マスクマンのブルーマスク=アキラが地底人たちの策略で変身させられた姿。
・王子イガムに忠実な剣士で、アキラとしての意思はなくマスクマンを倒すために戦った。
・今作では同じ青がメインカラーの剣士繋がりで士条玲が変身する。


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今は地底剣士/かつての仮面騎士

彼は思わぬ再開をする。


「高ーい!」

 

「ああ。高いからしっかり掴まってろよ!」

 

「うん!」

 

胸元でシェフィをしっかりと抱きかかえたブレイド、ジョー、和真、ルカは地上に降りた。

ダクネスはまだ本調子ではないのでアクアと留守番。

レンジャーのパワーに関する調査は四人が行う事となった。

 

「ここって…見るも無残に荒らされちゃってるけど、アクセルと同じでギルド置いてあるはずよね?」

 

「ああ。正規軍の駐屯基地でもない限り大体おいてあるはずだが…」

 

かつて魔王軍に故郷を滅ぼされた二人は真っ先に嫌な想像をした。

ここで反応したキーは、魔王軍行動隊長に内蔵されていたキーではないか?という事だ。

 

「だとしたら少し遅かった?」

 

「でもまだ光ってるよ?」

 

シェフィがポケットから球を見せる。

確かにそれは暖かなサンライトイエローの光を今も放っていた。

 

「……どこかに、潜んでる?」

 

敵感知スキルを持つ和真とルカは全神経を集中させた。

ジョーとブレイドも携えた剣の柄に手をかける。

 

「……。」

 

「おにーたん?」

 

「大丈夫。ただ、ちょっと待ってな。」

 

「…………。そこ!」

 

「はっ!」

 

ルカの矢と和真のゴーカイガンの銃弾がブレイドとジョーの間に向かって飛んで行く。

一見すると何もない場所で当たって弾かれた。

そして景色の中からカメレオンの仮面の異形と、ディエンドライバーの男、そして…

 

「レイ!?」

 

「知り合いか?」

 

「昔一緒に冒険した仲間だ。

あいつもレッドみたいに操られてるのか?」

 

「ああ。今の彼女は地底剣士ウナスさ。さあ、やりたまえ!」

 

「ゴーカイジャー…斬る!」

 

そう言ってウナスが剣を抜くと物陰に隠れていたのだろう、

カメレオンの異形、仮面ライダーベルデのほかに二体。

青い剣のライダー、仮面ライダーブレイブと、黄色のライダーグレイブが現れる。

 

「行くぞ!」

 

「「「ゴーカイチェンジ!」」」

 

<ゴーーッカイジャー!>

 

「シェフィこっち!」

 

「うん!」

 

ブルーはブレイブを、ルカはグレイブを。グリーンはベルデをそれぞれ相手取る。

残ったウナスはブレイドとシェフィを追いかけた。

 

「死ね!」

 

「うお!よせレイ!思い出せ!お前はウナスじゃない!

レイだろ!トゥインクルウィッシュのレイだろ!

何故かアイドルにストーキングされているレイだろ!?」

 

「斬る!」

 

駄目だ。話ができない。

レイの剣の腕はかなりのものだ。

甘く見積もって上の下にギリギリの自分の腕では筋力ともかくそれ以外の技術は圧倒的に劣る。

今まではそれをライダーの鎧や体術、カードで補ってきた。

だがライダーの防御前提の体術は使えない。

 

(このままじゃ!)

 

自分のプリンセスナイトの力じゃ自分自身を強化するkとは出来ない。

 

(ライダーの力があれば!

……いや、無い物ねだりをしてる時じゃないだろ!)

 

ブレイドは剣を振るった。

どうにか攻勢に出ようと圧倒的格上相手に何度でも剣を振るう。

思い出すのは、あの時、生身でビートルアンデッドに挑んだ時の事。

 

「おにーたん!」

 

「大丈夫だシェフィ!兄ちゃんは絶対死なない!

偽ライダーを倒したカズマ達は絶対に追いついてくれる!

だから!それまではぁあああ!」

 

ウェーイ!と一際気合を入れて剣を弾くブレイド。

キーーーーン!と、異様に長く剣戟音が響いたように聞こえた。

 

そしてウナスが次の一撃を与えようと剣を振り上げた瞬間、ファンタジー世界には不似合いなエンジン音が響く。

 

「うぐぅううう!な、なに!?」

 

横から飛び出してきた一台のバイクが彼女をはね飛ばした。

黄色いライトに青と銀のボディ。あちこちに見られる♠のマーク。

そのスーパーマシンは彼にとって半身ともいえる相棒だった。

 

「ブルースペイダー!

またお前に会えるなんて!」

 

「これ、おにーたんの?」

 

「ああ。さあ乗って!」

 

二人を乗せたブルースペイダーは気持ちのいいエンジン音を唸らせレンジャーたちの方に向かった。

その様子を見送ったウナスは剣を納めると銀色のカーテン上のエネルギーを通ってその場を後にした




お知らせ

この度書き溜めしていたエピソードをすべて投下したため更新速度が低下し、不定期となります。
ご了承ください。


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歪んだ癒し/鋼の正拳

彼女は気付かぬ再会を果たす


ブレイドがブルースペイダーを取り戻した頃。

アクセル前の平原ではツインカムエンジェルとシャイニー★トモはゴーカイレッドGMとキャンデリア相手にどうにか拮抗していた。

 

「「ディーリボルバー!ファイヤー!」」

 

「ドラゴンアーマー!」

 

2人が同時に放った連撃ビームをドラゴンレンジャーのバリアで受けきったゴーカイレッドGMはゴーカイサーベルと魔剣ヘルフリートを構え突っ込んでくる。

ツインカムエンジェルもディースティックで対応する。

そしてシャイニー★トモとキャンデリアは

 

「よ!は!鬼さんこちら!」

 

「………ッ!」

 

時折ギャハハルバードから桃色の光弾を発射しながら執拗にシャイニー★トモを攻撃してくる。

 

「うお!はは!惜しい!けどその程度じゃ!やられてあげないな!」

 

光弾をジャンプで避けながら懐に入り込み連撃を浴びせる。

ハルバードの柄で受けるが、体にも数発決まる。

 

「もいっちょ!シャイニーブレード!」

 

「喜びの舞!」

 

マジカルソードとハルバードが火花を散らす。

 

(近接はそれほどでもないと思ったけど、

中々どうして強いじゃないか!)

 

これは純粋に楽しんでもいられないな。

そう思ってシャイニー★トモは必殺技、シャイニーアクアストームを発動しようと構えを取るが、

 

「サカナマル!百枚おろし!」

 

後ろから聞こえた必殺技宣言に思わず振り返る。

見るとツインカムエンジェルの二人が膝をつかされるところだった。

更にゴーカイレッドGMはもう次の武器を手に取っている。

 

「キング!ビクトリーフラッシュ!」

 

手にしたキングスティックの展開されたグリップエンドから放たれた無数の光弾はキャンデリアごと三人に大ダメージを与えた。

特に距離の近かった二人は変身解除までされてしまう。

 

「な、なんて奴!」

 

立ち上がりゴーカイレッドGMに向かっていくシャイニー★トモ。

しかし背後ではギャハハルバードを構えたキャンデリアが起き上がっていた。

 

「トモさん後ろ!」

 

リアが叫ぶが間に合わない。

背後から大上段の一撃を受けたシャイニー★トモは大きくつんのめる。

 

「マジランプ・ダイレクトボンバー!」

 

その隙を逃さず武器をマジランプに持ち替えたレッドはビーム攻撃でシャイニー★トモを変身解除まで追い込んだ。

 

「う、うううぅ…」

 

「……ゴーカイスクランブル!」

 

キャンデリアが下がったところでレッドはさらに武器をゴーカイサーベルとゴーカイガンに持ち変える。

放たれた弾丸型に斬撃を加えたエネルギーは三人を横一文字に真っ二つにしようと迫り…

 

「キャットストライク+!」

 

キャンデリア、ゴーカイレッドGM、、さらに三人に迫るエネルギーさえもごぼう抜きに抜き去り回り込んで受け止める影があった。

 

「うおおおおおお!ヒヨリバーニングラッシュ!」

 

ギリギリ拳で押しとどめていたエネルギーを炎のパワーを宿したラッシュで打ち砕く。

 

「はーっ!はーっ!ギリギリ間に合った!大丈夫!?」

 

助けに現れた女性拳闘士は三人に振り返る。

三人とも驚いたが敵ではないと判断し

 

「な、なんとか…」

 

「伏せて!また来ます!」

 

銃撃と光弾を降らす敵を視認し素早く伏せる。

 

「うわあああ!?嘘なにこれ!?敵って二人だけだよね!?」

 

「ソウイチ…どんだけ武器持ってるんですか……」

 

「こ、ここは…」

 

<ゴーーッウライジャー!>

 

なんとかクワガライジャーにチェンジしたリアが隠れ蓑術で撤退する。

敵はいないと判断した二人はその場を後にした。

 

 

 

「はー!危なかったぁ…」

 

拳闘士の少女の加勢とリアの機転でどうにか離脱に成功した一同はアクセルの街に戻っていた。

 

「おかげで助かりました。私はリア。

職業はランサーで、赤き海賊団ってパーティーに所属してます。

こっちは同じパーティーの…」

 

「我が名はめぐみん!

紅魔族随一の魔法の使い手にして爆裂魔法を操りし者!」

 

「爆裂魔法!?すごいね。そんなの使える人初めて会ったよ。

私は春咲ひより。よろしくね。」

 

肉球型のグローブを外して握手を求める。

リアもめぐみんも笑顔で応じた。




装備解説
ニャンフィスト
・春咲ひよりが転生特典に選んだ肉球を模したナックル
・装備することで彼女がアストル無で使っていた技が使えるようになる


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無線通信/現地集合

彼は置き場に困る。


ブレイドが急ぎ三人の元に戻ろうとしていたころ。

彼らの戦いも佳境に入っていた。

 

<コ・チーン!>

 

 

凍結モードに切り替えたガシャコンソードを振るうブレイブにジョーも更に変身して対抗する。

 

<デーーッカレンジャー!>

 

「ベガスラッシュ!」

 

待っ正面から受けて立ち、武器事両断し、撃破。

爆風を背後に浴びながら納刀する。

 

「やるぅ!こっちも負けてられないわね!」

 

そう言ってルカもグレイブラウザーの剣先を蹴って逸らし、隙を作ってゴーカイチェンジ!

 

<ゴーーッセイジャー!>

 

「タイガバレット!パニッシュ!」

 

そして至近距離で必殺シュートを撃ち込む。

その装甲を貫き爆散させた。

そして最後に和真対ベルデ。

 

「………。」

 

透明になって多角的に攻撃してくるベルデに和真は攻撃を耐えながらモバイレーツにキーをセット!

 

<シーーッンケンジャー!>

 

「ウッドスピア!木の字斬り!」

 

敵感知で気配がギリギリまで近づいたところで大降りに槍を振り回し、火花が散ったところにすかさず連撃を叩きこむ!

ベルデも姿を現した瞬間爆散!

 

「どんなもんよ!」

 

「意外だな。お前にしては捨て身じゃないか。」

 

「そうっすか?」

 

「無茶しない範囲だったらいい傾向よ!

さ、ブレイドたちを追いましょう。」

 

そう言ってルカが和真の肩をたたいた時、エンジン音が三人の耳に入る。

 

「おーい!みんなー!」

 

ブルースペイダーに乗ったブレイドとシェフィが戻って来た。

 

「無事だったか。」

 

「こいつのお陰でね。」

 

ヘルメットを外したブレイドが嬉しそうにボディをなでる。

 

「でもこれ何処で?」

 

「かってにはしってきた!」

 

元気よく答えるシェフィに三人は一瞬顔を見合わせたが

 

「まあ、そうゆう事もあるか。」

 

色々と常識外の事にすっかり慣れていたのもあって割と簡単に流した

 

「そうね。ただどうやってガレオンに持ってく?」

 

「あー。ガレオンが降りてくるのは駄目なんですか?」

 

「風圧で周りのもの吹っ飛ばすからな。」

 

「とりあえず先にシェフィ上に帰して生存者だけ探して一回帰るか。」

 

「帰ったら飯にするか。シェフィ。アクアと一緒に準備頼むぜ。」

 

「わかった!」

 

一度シェフィを返すと四人はそれぞれがれきの下を探し始めた。

 

 

 

「「「「いただきます!」」」」

 

時を少し進め、アクセルの街。

助けてくれたお礼としてひよりに三人は昼飯をおごっていた。

最初は『ただの人助けだから』断ったのだが、

 

「本当によかったの?なんだか悪いよ。」

 

「まあまあここは私たちの顔を立てると思って。

ひよりさんもお腹空いてるでしょ?ささ!遠慮なく。」

 

そう言われてようやく手を付けた。

上手い。昔は考えもしなかったが、カエルの肉って意外とおいしい。

 

「それで、何か私たちも返せるものがあるといいんですけど。」

 

「返せるものって…あー、じゃあさ。一つ質問良い?」

 

「いいですよ?」

 

「この街でブレイド君って黒髪の男の子と、シェフィちゃんって青髪の女の子見なかった?」

 

「え?ひよりさんブレイドさんたちと知り合いだったんですか?」

 

「知りってるの!?」

 

がば!と思わずひよりはテーブルを叩いて立ち上がった。

転生して早数日。

アクセルの街で冒険を繰り返し何の手掛かりもなかった彼にたどり着けたのだ。

 

「ええ。実はさっきの戦いも彼らと私たちの仲間を逃がすための戦いだったんです。

そのうち合流する手はずになってますし、一緒に来ますか?」

 

「も、もちろんお願い!そっか…よかった…。」

 

「大事なんですね。二人の事。

通信機ありますし、声も聴けますよ?どうします?」

 

リアがモバイレーツを見せて言う。

ひよりは是非ともお願いすることにした。

コール音の後、誰かが出た。

 

『はいカズマです。』

 

「もしもし和真さん?リアです。今ブレイドさんいますか?」

 

『ブレイド?あー…まあちょっとあれだけど。

何かあったの?』

 

「ブレイドさんのお知り合いのひよりさんって方に助けてもらって、それで。」

 

『分かったちょっと待ってて。』

 

しばらくしてリアが笑顔でモバイレーツを差し出した。

受け取って、一呼吸履いて耳に当てる。

 

 

「もしもし?」

 

『……! ヒヨリ!無事だったか!』

 

「ブレイド君こそ!…ホントに、ホントに良かった!」

 

思わず涙が出てしまった。

横に座っていたトモから差し出されたハンカチで涙を拭きながら話し続ける。

 

「シェフィちゃんもいる?」

 

『ああ。今ちょっと機嫌悪いけど。代わる?』

 

当然話したい。

しばらくすると確かに言っていた通り機嫌悪そうな声がした。

 

『はい…。』

 

「シェフィちゃん?覚えてる?ひよりだよ?」

 

『ひよりおねーたん。おけが、もういいの?』

 

「うん!元気いっぱいなぐらい!

これからそっちに行くから。」

 

『わかった。あ、また光った。』

 

不意に電話の向こうが騒がしくなる。

しばらくしてブレイドが出た。

 

『もしもしヒヨリ?ちょっと予定変更。

今からアクセルから…南西にある街に行くことになった。

悪いけどそこまで直接来てくれる?』

 

「何かあったの?」

 

『シェフィを狙っている奴の手がかりがあるかもしれないんだ。』

 

「分かった。その街で会おう。」

 

『ああ。また電話するよ。じゃあまた!』

 

「うん。またね。」

 

電話を切ってリアに返す。

拳を固く握りひよりは改めて決意した。

必ず、また会うのだと。




ライダーマシン解説
ブルースペイダー
・仮面ライダーブレイドの専用バイク。
・最高時速340km。最高馬力は320馬力。
・なぜ転生特典でもないのに出現したのかは不明。


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全滅/再起

彼女は希望を持って逃げた。


ブレイドたちとの連絡の翌日。

リア、めぐみん、トモ、ひよりは彼らと合流すべく早朝から街を出た。

 

「どーどー!大丈夫ですよドン。

お客さんはみんないい人ですから、ね?」

 

久しぶりの出番にすっかり張り切っているドンはギルドから借りた馬車をつけられると、手綱を握ったリアに素直に従って街を出た。

目的の街へは南西に馬車で半日ほど向かった場所にある。

もう既にブレイドたちはガレオンで到着しているとのことで、四人は気持ち早めに走らせていた。

 

「しばらく走らせていなかったので不安でしたが、

ちょっと張り切り過ぎなぐらいで安心しましたね。」

 

「確かに。馬乗るの初めてだけど、結構早いね。」

 

流れる景色を眺めながらトモが言った。

彼女は転生してすぐマジカルソード一本腰に下げ、各地を戦いながら足で進んで来たのだ。

 

「へぇ。トモも苦労があったんですね。

その過程で魔王軍と?」

 

「うん。それで手に入れたのが前渡したデカピンクだっけ?

と、このキリンレンジャーと、グリーンフラッシュキー。ほら!」

 

そう言って彼女はめぐみんにキーを投げ渡した。

 

「くれるんですか?」

 

「私より君たちが持ってる方がよさそうだしね。

マジカルソードには使えないし。ひよりは?ずっと何してたの?」

 

「私?私はこっちに来たの凄く最近で、まだ一週間もたってない。

色々バイトしてようやく冒険者登録できたばっかで。」

 

そう言ってひよりはほとんど討伐実績の記されていない冒険者カードを見せた。

 

「そうだったんですか。ならこれからが大変ですね。

私なんかジャイアントトードに食べられたり、

魔王軍の幹部と戦ったり大変でしたよ。楽しかったですけど。」

 

その笑顔は言うように本当に楽しそうで、

充実した、たとえるなら思い切り気持ちよく走り切った後のような感じだった。

しかしすぐにその顔が驚きに変わる。

急に馬車が止まり、三人共床に投げ出されたからだ。

 

「痛っ!急に何ですか!?」

 

「ちょっと!急ブレーキするんなら言ってよ!」

 

「すいません!急に人が出てきて…」

 

「人?」

 

馬を落ち着かせるリアを除いた三人が降りる。

ボロボロの黒いセーラー服を着た短い茶髪の少女が倒れていた。

手には変わった形の弓矢と共に、黒いレンジャーキーを握っている。

 

「これは!……見たことない種類ですね。

どのレンジャーでしょうか?」

 

「そんなことより早くお医者様に見せないと!

この子、すごく弱ってる!」

 

「私の魔法じゃ自分の傷しか治せないし…何かレンジャーでそうゆう力ない?」

 

「医学的治療ならゴーゴーファイブで可能です。

ただし応急処置ですので、ちょっと寄り道することになりますね。

リア!和真たちにその旨連絡をお願いします!」

 

そう言いながらめぐみんはゴーピンクにチェンジし、一緒に出現した応急処置用の道具でテキパキと傷をふさいでいく。

 

「骨折もありませんし、とりあえずはこれで。

アクセルに引き返しましょう!」

 

 

 

何者かに殺害され、転生した柏崎栞は自身がアストルムで使っていた弓矢の神器、マジカルアローを片手に一番近くの町で冒険者になった。

最初は踏力労も払えず途方に暮れていたが、一人の先輩冒険者に助けられた。

 

「私はモニカ・ヴァイスヴィント。

貴公も極東の島国にて命を落とし、この地に呼ばれたのではないか?」

 

「え?もしかして…」

 

「ああ。珍妙な銃を使う男により殺され、

神の使いに送り出されここに来た。

私には何としても戻らねばならぬ理由がある!

どうか、力を貸してはくれないか?」

 

勿論彼女は引き受けた。

背が低いのがコンプレックスで、甘いものが大好き。

街の子供から同い年のように接されている彼女とは不思議とすぐに仲良くなった。

 

モニカもモニカで、思慮深く読書好きで、

病弱だが芯の強い彼女

 

彼女の持つ神器も変身の神器だったのも大きいいだろう。

昔姉と一緒に日曜朝にもていたアニメの様にヒロインチームを組んで魔王軍と戦った。

2人がその特異性と実力から街でも名のある冒険者になるのは早かった。

 

「こ、この子娘どもめ!

貴様ら如きに、このバラモンガーがぁああ!」

 

「同時に行くぞ!スカイラブハリケーン!」

 

「はい!ピュアリースナイプ!」

 

桃色のエネルギー斬と緑色の矢が敵を爆散させる。

爆風の中から一本の鍵が飛び出て来た。

 

「ほ!今回は出て来たな。」

 

「出る人と、出ない人がいますね。これで四本目…。」

 

「ああ。サンバルカン…だったか?はこれで三本目か。」

 

バルイーグル、バルシャーク、バルパンサー。

そしてチェンジグリフォン。

13人の魔王軍行動隊長のうち半分以下ではあるが、

キーを内包する敵の強さは一段違った。

 

「ふむ。何か法則があるのか、

それとも手柄に応じて与えられるパワーアップアイテム兼勲章なのか…。」

 

些細な疑問を頭の片隅に覚えながらも二人は着々と帰る手がかりを探すべく街を立つ準備をしていた。

その矢先だった。

ゴーカイレッドGMが、操られた総一が彼女らの前に立ちふさがったのは。

深夜のことだった。

爆発音と破壊音にたたき起こされた二人は急いで着替えて武器を持つと外に出た。

 

「貴様何者だ!?このような狼藉、、魔王軍か!?」

 

「……ガオハスラーロッド、レオンレイザーソード!」

 

「問答無用ですか…」

 

武器を両手ににじり寄るレッドに二人は警戒を強め、武器を構える。

 

「仕方ない!ラブリー!キュアリー!ブレイブリー!

マジカルレベル・インフィニット!」

 

「ピュアなハートにロックオン!

マジカルアロー・クリティカル!」

 

2人のアイテムから発された光がその姿を壊された街に不釣り合いな花のあるかわいらしいものに変える。

 

「魔法提督ラブリー★モニカ!空に代わって指揮を執る!」

 

「魔法狩人ピュアリー★シオリ!あなたの心に愛の矢を!」

 

何時も通り県が武器のラブリー★モニカが前に出て、

弓矢が武器のピュアリー★シオリが後衛を務める。

 

ゴーカイレッドGMはガオハスラーロッドで矢を弾き、

レオンレイザーソードで剣を受ける。

 

本来片手で持つにしても両手で使う前提の武器を彼は軽々使って二人と互角の勝負をして見せた。

 

「くぅううう!何と重い一撃だ!

シオリ!絶対前に出るな!貴公が食らえばケガでは済まない!」

 

モ二カとしてはただ単に仲間を気遣って忠告しただけだった。

だがただ操られているわけではないレッドは躊躇なく武器をDVディフェンダーとシルバーブレイザーに持ち替え、低身長のラブリー★モニカを飛び越え、ピュアリー★シオリを狙う。

 

「くらいません!」

 

「させない!」

 

二丁流の連射に牽制などに射る余裕はなくなり銃弾を相殺することに集中するシオリ。

そして背後から斬りかかるラブリー★モニカ。

 

「はっ!」

 

レッドは振り向きざまに剣の横っ腹を蹴ってバランスを崩させるとその隙にジャンプし、三人の位置を点で結べば丁度三角形になる位置に立つ。

 

「ガオハスラーロッド!ブレイクモード!」

 

武器を持ち変え緑色の仮想のプールを作り拘束する。

 

「これは…」

 

「しまった!」

 

「破邪聖獣球!」

 

手にした三つのガオの宝珠を打ち出し、プルーナ意を駆け巡らせる。

不規則な連撃をすべては弾けず二人は大ダメージを受けて変身を強制解除させられた。

 

「邪気、玉砕…。」

 

「いい、や…まだ、まだぁああ!」

 

モニカは立ち上がってもう一度変身すると剣を構えた。

 

「も、モニカ、さん…」

 

「逃げろシオリ!情けない頼みだが、

どうか助けに戻って来てくれ。仲間もいると、心強い!」

 

「ま、待って!モニカさん!」

 

彼女は止まらなかった。

雄たけびを上げ、レッドと斬り合う。

自分も助けに行きたかった。

だが今変身してもろくに戦えないことはよくわかっていた。

だから逃げた。

何度も何度も振り返りたくなるのをこらえて、ごめんなさいと呟きながら。




転生特典解説
マジカルアロー
・正式名称マジカルピュアリーボウ。
・使用者を魔法狩人に変身させるアイテム。
・内部で生成したエネルギーを矢型にして発射する。
・エネルギーが尽きない限り無限に射れる。
・狙撃、身体強化などの能力は変身前でも使用可能である。


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情報/尋問

彼女は痛むに耐え忍ぶ。


「う…こ、ここは…」

 

「あ、気が付きましたか?」

 

柔らかな日差しと布団の感触を感じながら栞は目を覚ました。

 

「そうだ!

そうだ!モニカさいぐぅう!……ッッッ~~!」

 

「ああ無理しないで!

ボロボロで倒れててお医者様にも絶対安静って言われてたんですから。」

 

そう言ってリアは栞を寝かせて額に濡れタオルを置いた。

 

「ここは、あなたの?」

 

「んー、まあそうなりますね。

私はリア。赤き海賊団の一員です。」

 

赤い海賊と聞いてリアは少し警戒する。

何せ彼女は赤い海賊にこっぴどい目にあわされた上に、

もしかしたら仲間を倒されたかもしれないからだ。

 

「これ、あなたの武器とレンジャーキー、置いておきますね?」

 

そう言ってリアはベッドの横の椅子にマジカルアローを立てかけ、チェンジグリフォンのキーを置く。

そして水の入った手桶をもって出ていった。

栞はどうにか体を起こしてチェンジグリフォンのキーを掴む。

ドクン!と、体の内に力が流れこんでくる。

地球を由来とする神秘のパワー、アースフォースが宿るこのキーのお陰で彼女はゴーカイレッドGMの追跡から逃れることができたのだ。

 

(何とかしてモニカさんと合流しないと。

助けてもらったことは感謝するけど、ごめんなさい。

私、あなた達の事信用できない)

 

栞は武器を片手に部屋を出る。

そして抜き足差し足で階段を下る。

テーブルを囲んで四人の少女が語らっていた。

 

「あの子、どうだった?」

 

ひよりが戻ってきたリアに尋ねる。

リアは厳しい面持ちで言った。

 

「まだ体力も戻ってないし、傷も癒えてません。

話を聞くのも、あとの方がいいと思ってしてません。」

 

「内臓や骨がやられてなかったのは不幸中の幸いでしたが、

お医者様もしばらく安静にしろとおっしゃってましたし。」

 

と、めぐみんも付け足す。

栞は自分の子の体が足を引っ張っていることに心底悔しい思いだった。

自分がこんなだからモニカは、今無事かどうかも分からない。

 

「他のみんなに連絡は?」

 

「しました。あの子のレンジャーキーに関しては、

シェフィちゃんの持ってた光る玉に同じマークのがあったので、持ってきてほしいって言ってたんですが…」

 

「ダメでしょう。

取り上げるわけにもいきませんし。」

 

その会話を聞いて栞は部屋に戻ることにした。

このまま黙ってついていけば、レンジャーキーと関連するアイテムを入手、うまくいけばもっと強い力を手に出来るかもしれない。

 

(ごめんなさいモニカさん。

けど待っててくださいね。絶対に助けに行きますから。)

 

 

 

「いい加減さあ、口割ってくれねえかな?」

 

薄暗いどこかの洞窟。

両手を左右の壁から伸びる鎖で繋がれ、膝をつかされた少女、

モニカの脇腹にまた一筋の赤い傷が出来る。

目の前に七海総一による物だ。

彼の持つ鞭が、もう既に彼女の柔らかな肌に両手の指以上の数の傷を与えている。

彼を操るカリザはその後ろで椅子にふんぞり返って欠伸を噛み殺していた。

 

「わ、私は屈しない!

貴様の様な操り人形を矢面に立たせて後ろで震えてるだけの臆病者なんぞ怖くない!」

 

そう言い切ったモニカにカリザは舌打ちする。

 

「やれ!」

 

総一はモニカの鳩尾を思い切り蹴った。

次いで額、膝、脇腹と計四発。

咳き込みながら痛みに悶えるモニカ。

だが目だけはしっかりとカリザを睨んでいる。

 

「ちっ!見張りは任せたぞ。」

 

そう言ってカリザは苛立ち気に立ち去った。

その場には、魔法少女の提督(リーダー)と、スーパー戦隊の赤い戦士(リーダー)が残る。

 

「…貴公、その黒髪黒目、我らと同じ地球より来た者であろう?

なせ、奴の言いなりになっている!?

貴公もまた、あの赤い姿を授けられた戦士なのだろう!?

祖国や、仲間への想いがあるはずだ!

負けるな!」

 

「……。」

 

総一は何も答えないだが、

その左手だけがかなり不自然に動くと、

ポケットに入り、中から丸い何かを取り出し、モニカの方に投げた。

両手が使えなかった為、仕方なく口で受け取る。

 

(こ、これは…キャンディ!?)

 

口に広がる砂糖の優しい甘さにモニカは総一の方を見る。

表情や冷たい目こそ変わらないが、左手はぎこちなく謝る様に立てになっていた。




レンジャー解説
チェンジグリフォン
・電撃戦隊チェンジマンのメンバー。
・カラーはブラック。変身者は疾風翔。
・モチーフはグリフォン。
必殺技はグリフォンマグマギャラクティ


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不機嫌/上機嫌

彼の身に覚えはない。


主様は、ハジメ様を取り戻すために高校を卒業してすぐラビリスタ様の下に弟子入りして研究に打ち込み始めたまでは、普通でした。

(わたくし)もキャル様も応援しましたし、手伝いもしました。

しかし、主さまは変わってしまわれました。

ブレイドの力を再現すると益々研究にのめり込んでいき、ついには『ミネルヴァの懲役』を再現するまでに、至りました。

 

「アンタ!どうしてこんなことを!?」

 

「キャル、分からないのか?

ハジメはあれだけの条件がそろってようやく生まれた存在だ。

行方不明の剣崎一真の要素は僕が代るしかないけど、それ以外はやろうと思えばすべて再現できる!

確実にハジメを再現するには、あの日々を再現するしかない!」

 

主様は、変わられてしまいました。

エリコ様やシズル様のように無条件に味方する者や、

キャル様やアヤネ様のような心に傷を抱えた方に漬け込み、自らの勢力を作り上げました。

まるでかつての覇瞳皇帝(カイザーインサイト)の様に。

 

「残念だよコッコロ。変身。」

 

<♠A TURN UP>

 

主さまは変わってしまわれました。

直接キングフォームに変身できるほど体はアンデッドに近づき、

心まで、怪物になってしまわれたのでしょうか?

いえ、そんなはずはありません。

だって最初から人でなかったハジメ様さえあれほど人間らしい方だったのです。

 

「きっと、きっとあなたは気付けます。あなたはまちがって…」

 

キングラウザーは振り下ろされ、私の体は確かに真っ二つに裂けたはずでした。

けど気が付けば、私は主様の腕に抱かれていました。

しかもブルースペイダーはあってもバックルはナイトの事です。

私は、本当にうれしかった。

主様が昔の主様に戻ってくださったことに。

主様、コッコロはもうおそばを離れません。

もう二度と誤った道を歩ませはしません。

おはようからお休みまで、この今から棺桶までずっとずっとお供いたします。

 

 

 

シェフィは不機嫌だった。

それは今ブレイドの隣を占拠する彼女の存在に他ならない。

 

「コッコロ、また会えたのはうれしいけど近すぎないか?」

 

「いいえ。いいえそんなことは全くありません。

わたくしは主さまにお仕えする従者なのですから遠ければ遠いだけ問題があると言っても過言ではありません。」

 

あの廃墟の村で救助されたエルフの少女の存在だ。

なんでも昔共に戦った仲間だとか言っていたがシェフィにはどうにも信じられなかった。

話も聞いててなんだか食い違ってるように聞こえるし、

何より必要以上にべたべたし過ぎている気がする。

 

「で、シェフィ次に光ってたのってどの弾?」

 

「……これ。」

 

シェフィは袋の中からVの字のエンブレムの浮かんだもの取り出しアクアに手渡した。

 

「これは…ファイブマンかしら?」

 

「マスクマンはもう敵が持ってて、チェンジマンはリアたちが保護した子が持ってる…。

あとはトモがもう何本か持ってたのが合わなかった場合、

残るはサンバルカンとフラッシュマン、か。」

 

「俺らって実はけっこう余裕ないっすよ?どうします?」

 

「まずは何としても次のキーをゲットするしかないでしょ。

カズマ、アンタ今晩半分起きてなさい。ガレオン朝まで飛ばすわよ。」

 

「ええぇ?…はぁ、了解。付き合いますよ。」

 

きびきびと去って行くルカを追って操縦室に向かうカズマ。

 

「今晩はサンドイッチとかのがいいかしら?」

 

「だな。」

 

アクアとジョーもキッチンの方に向かって行く。

 

「むー…」

 

「どうしたシェフィ?顔に皺ばっかよせてるとよくないぞ?」

 

「なんでもない…」

 

シェフィは終始、ブレイドに引っ付くコッコロを睨んでいた。

 

 

 

その頃、ブレイドが目指す町にて。

森の少し深い、街から見えずらく、あまり人の寄らない場所。

新鮮な死体が落ちていた。

格好から察するに冒険者、役職も高そうだ。

だが武器らしきものはどこにもない。

 

「現場状況、死因、被害者の共通点。間違いない。

これで…3件目。とうとう尻尾を出してくれた!」

 

ふぁさっ!と、死体を検分していた少女、霧原かすみは髪をかき上げ、、

胸元のマジカルリボンを握り締め、

 

「ミスティ、セオリー、トゥルーリィ!

マジカルリボンスパイラル!」

 

ライトパープルの光が彼女を包む。

髪は紫に変わり、衣装も♠のマークをあしらったドレスに変わる。

 

「魔法探偵ミスティ★カスミ!

魔法の力で捜査開始!」

 

ピシっ!とここにいない誰かに向けて♥と?が和さったようなステッキを向けるかすみ、否、ミスティ★カスミ。

 

「……いやおかしいでしょ!何でアストルムで使ってた力ってお願いしてこっちになるの!?

普通獣人化の力とかそっちでしょ!どうしてこっちなのー!」

 

だれも居ない夜の森に名(迷?)探偵の絶叫が響き渡った。




転生特典解説
マジカルリボン
・正式名称マジカルミスティロッド。
・使用者を魔法探偵に変身させるアイテム。
・普段はただのリボンのような外観をしているが、
 変身するか所有者が意識すればステッキの形になる。
・内部で生成したエネルギーを変換して発射する。
・エネルギー消費がアローに比べて多い代わりにエネルギーの形は変幻自在。
・通常攻撃、身体強化などの能力は変身前でも使用可能である。


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復活/憑依

彼は今ガ彼女である(?)


そこは暗い森の奥。

獣や荷馬車の往来があるおかげで辛うじて残ってる道を一人の少女が歩いている。

 

「ったく。どこもかしこも下品なこった。

魔王なんかのさばらせとくからか?

お前ぇらみたいな子悪党退治が後回しにされてんのは。」

 

少女は立ち止まってややハスキーだが幼い声とは不似合いな男性口調でつぶやく。

未知の脇から次々と武器を持った男たちが出て来た。

 

「へぇ、こりゃあ勘のいいお嬢ちゃんだ。」

 

「けどこんな所を一人で歩いちゃいけないってパパやママに教わらなかったのかぁ~?」

 

「嬢ちゃんみてぇな分かりやすく耳の尖ったエルフちゃんは変態の旦那方に高く売れるんだぜぇ?」

 

少女は美しいエルフだ。

白とライトグリーンのワンピースの上にグレーのロングコートを羽織り、黒いサングラスをかけている。

 

「出来ると思ってんの?この俺を売り物扱い何て。」

 

「随分余裕だなぁ?怖くねえのか?

嬢ちゃんこれからその奇麗な脚の健斬られて男どもの肉便器にされちまうんだぜ?」

 

「お前らこそ余裕だな?」

 

少女はサングラスを外して自分を囲む六人を順番にその真っ赤な瞳で見回して不敵な笑みを浮かべる。

 

「喧嘩売る相手間違えてんのに。」

 

赤い瞳が一瞬、毒々しい黄緑色に光る。

それと同時に異様に伸びた彼女の影から無数のゴキブリが他の怪人が現れ男たちに襲い掛かった。

 

「な、なんだこいつら!」

 

「まずい!逃げろ!逃げるんだ!」

 

しかし飛行能力を持つ怪人、ダークローチたちに回り込まれ捕食されていく。

 

「はぁ…もう7回目だぞ。

迷宮女王(ラビリスタ)め。せめて人間と同じ耳にしてくれてりゃもうちょいマシだったと思うんだがなぁ…。」

 

ガリガリと後頭部を搔きながらエルフの少女は先を急いだ。

 

 

 

「ひよりおねーたーん!」

 

「シェフィちゃん!」

 

明朝、合流したガレオン組と足止め組は次なるレンジャーキーの反応を感知した街にて合流を果たしていた。

 

「お疲れ二人とも。体とか大丈夫か?」

 

「ええ。ただまだ今日は爆裂魔法を撃ってません。

カズマ、当然後で付き合ってくださいね?」

 

「はいはい。まずは腹ごしらえな。ガレオンに戻ろう。」

 

恐らく何時も通りなのだろう和真たちの様子を見ながらブレイドは少し羨ましさを感じた。

 

「主様、いかがなさいました?」

 

「またみんなと、あんな風に出来たらいいなって。」

 

「……はい。そうですね。」

 

ガレオンに戻る一同に続こうとした時にコッコロが占拠するのと反対の袖が捕まれる。

 

「? 君は、確か弓矢の魔法少女の…」

 

「柏崎栞です。あの、はじめまして、ですよね?」

 

「そう、だと思うけど。」

 

「……ですよね。よろしくお願いします。」

 

「ああ。こちらこそ。」

 

ブレイドは差し出された彼女の手を握った。

 

(やっぱり、そうですよね。

先輩はもういないんだ。

だって先輩は、もう死んじゃってるんだもの。

きっと同じ顔の人、この世に三人もいるって言うし…)

 

うつむいていたし、もうみんながレオンのほうに歩いていた。

だから彼女が泣いていたのは誰もみなかった。




怪人解説
ダークローチ
・ダークローチは不死生命体アンデッドの眷属の一種。
・武器は爪とそこから発する麻痺毒。
・食欲旺盛で顎の力も強い。
・ジョーカーか統率者、破壊者のいずれかによって際限なく生み出される。
・つまりあのエルフの少女の正体は…。


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会合/開戦

彼らはついに相まみえる


「これより!作戦会議を開始する!」

 

ホワイトボードを用意し、外の警戒に当たっているジョー、リア、トモを除く一同は、和真主導のもと、全員の上本を元に次の目標を決めようとしていた。

 

「まず栞…でよかったか?

総一さん…ゴーカイレッドが仲間が持ってたレンジャーキーを奪ったってのは本当なんだな?」

 

「はい。太陽戦隊サンバルカン。3本全部です。」

 

「だったらシェフィの玉が反応してるのは間違いなく…」

 

「奴らが近くにいるから、だね。」

 

ヒヨリの発言に、一同の顔が強張るのが分かった。

 

「でもここによる意味ってあるんですか?

アクセルと同じで別に何かこれといった特徴があるわけでもないでしょう?」

 

「さっきそこの商店で聞いたけど、

王都からどっかの貴族様が褒美の神器をもらって別荘に帰ってくるとかでこの街を通るとか言ってたわ。」

 

めぐみんの疑問に耳の速いルカが答える。

 

「ガレオンの位置も、もしかしたら総一さんを使うなりなんなりして特定してるかもしれないと考えるとカリザの狙いは…」

 

「私たちを倒してレンジャーキーと神器全部一気にゲットでウハウハってわけね!」

 

「珍しく血の巡りが良いな、アクア。

となると一番いい手はその貴族様の護衛やることだな。

皆は冒険者カードって持ってるか?」

 

ブレイド。コッコロ、シェフィ以外の全員が手を上げたり実物を見せたりした。

 

「よし。じゃあガレオンに残ってシェフィちゃん達を守る奴らと護衛に参加するので別れよう。今度は俺らが奴らに目にもの見せてやろぜ!」

 

 

 

「主様。お弁当は持ちましたね?ハンカチとちり紙も忘れていませんね。

体調が悪かったり、どこかけががあるなんてことも…」

 

「ないよ。それじゃあ、行ってくる!」

 

そう言って和真、アクア、ジョー、ルカ、ブレイド、シオリはガレオンを後にした。

この振り分けにはちゃんと意味があり、籠城、つまり耐久戦前提のガレオンに防御に優れるリア、ダクネス、そして連射性に難ありのめぐみんを残し、シェフィ、コッコロを担いで離脱できるだけの力のあるヒヨリ、トモが残る形となっている。

無事に依頼を受ける形で参加した彼らは、一団の先頭の方に配置された。

本体に先んじて進みながら周囲を見渡す。

高い空に澄んだ空気。今のところ何か目に見える以上が起きてる様子はない。

 

「にしても随分な大荷物ねー。

シャワシャワ一本ぐらいパクってもバレないんじゃないかしら?」

 

ふり返りながら言うアクアの頭をジョーが小突いた。

 

「馬鹿。これから騒ぎを起こすかもしれない奴を向かう問うってのに俺たちが起こしてどうする?」

 

「そうよ。いつも宝石盗みに入ってる奴らと違って、

特に黒い噂とかもないような奴なんだから。」

 

「いやルカもしっかりやる事やってるじゃん。」

 

「海賊ってみんなこんなんなんですか?」

 

「違うから。こいつらが特別おかしいだけだから。

俺とかリアとか正気の総一さんはまともだから!」

 

「半数以下じゃん。」

 

ブレイドの容赦のないツッコミに肩を落とす和真。

栞は一回総一に痛い目にあわされてるとあって、疑わしい視線を向けている。

 

(こんなんで大丈夫かよ…。

最低限の連帯が出来そうな面子を選んだつもりなんだが…)

 

和真がため息を吐いたその時だった。

 

「ん?」

 

「どうした?」

 

「なんか前に人が…ってアイツらは!」

 

前方に見えた人影はカリザに海東大樹、

そして操られた総一、レイ、ユイだった。

 

「街から離れ、モンスターの生息域とも微妙に入っていない…。

魔王軍以外横やりも気にしなくていい。良い場所だな。」

 

「ブレイド、シオリ、奥の奴らに伝えてきなさい。

ここは私たちが!」

 

ルカがモバイレーツを取り出したのを見て、総一たちもモバイレーツやダミーモバイレーツを取り出す。

 

「「「ダークゴーカイチェンジ!」」」

 

「「「「ゴーカイチェンジ!」」」」

 

<<<<ゴーーッカイジャー!>>>>

 

ゴーカイレッドGM、地底剣士ウナス、喜びのキャンデリア。

そして…

 

「僕からもサービスだ。」

 

<KAMEN RIDE ANOTHER ΑGITΩ>

 

数合わせに仮面ライダーアナザーアギトが召喚される。

 

「4対4か…」

 

「上等!ボッコボコにしてやるわ!」

 

ピンクに変身したアクアが叫んだん緒をゴング代わりに8人が激突した。

 

 

 

2

「敵襲!敵襲だー!先頭の方に5人!神器を持ってる!

他にもどこか隠れてるかもしれない!」

 

「戦闘準備をお願いします!周囲に警戒してください!」

 

一刻も早く本体に調べるべく走りながら叫ぶブレイドと栞。

それを聞いた冒険者たちは最初おふぉろいた顔を浮かべたが、

すぐに武器を取り切り替えている。

それを待って居た様に地面の下から這い出るミイラのような怪人、屑ヤミーを撃退していく。

 

「どうします!?このまま一番最後まで行きますか!?」

 

「いや、本体に着いたら他の人に行ってもらおう。

僕の能力とシオリの弓なら役にも立てる。」

 

そう言ってユウキは能力を発動させるべく剣を抜こうとする、が、

 

「ー--っ!」

 

「うぉ!」

 

地面に隠れていた屑ヤミーに足首を使われて引きずり込まれた。

剣を突きさしなんとか地面にしがみつくが、

生身かつ、中衛向きのブレイドは筋力的になかなかうまく抵抗できない。

 

(けど暴れるのをやめてくれないと私の弓じゃ狙いにくい!

いや、当てる!こんなところで文字通り足引っ張られてる場合じゃ…)

 

「フォールスラッシュ!」

 

「え?」

 

「な!?」

 

栞をすり抜けブレイドに迫った影が、

地面ごと屑ヤミーの腕を両断しブレイドを救った。

その誰かはすぐさまブレイドを抱えて飛びのくと、

そこに一拍遅れて紫色の魔力弾が二発叩きこまれる。

 

「全く!相変わらず世話をかけるわね!」

 

「先輩!やっぱりこっちに来てたんですね!」

 

「キャル…霧原…。それに…」

 

「ブレイド君!久しぶりです!」

 

「ペコリーヌ!」

 

こんな時だというのに涙が出てきた。

死んだと聞かされ、この世界に居るという少なすぎる手がかりしかなかった戦友の無事に普通でいろと言うのも無理な話なのだが。

 

「ああ!よかった!本当によかった!」

 

「ちょ!アホリーヌ!何あんたが一番に抱き着いてんのよ!」

 

「キャルさん!今やってる場合じゃないです!

ペコリーヌさんも!」

 

「そうでした!ブレイド君!立てますか!?」

 

「ああ。いける!」

 

陣を組んだ五人にじりじりと屑ヤミーたちがにじり寄ってくる。

よく見るとその奥にオーズウォッチを持ったカリザもいた。

 

二つの因縁の、決着が始まろうとしていた。




お久しぶりです。
ようやくモチべが戻ったり、生活も余裕が出てきた李で再開です。


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代用/変身

彼らは漸く変身する。


屑ヤミーを切って切って、また切る。

もうそろそろ三桁に届くか、と言う勢いで攻撃を続けていくが、終わりは全く見えない。

最大戦力であるゴーカイジャーを真正面に釘付けにし、残る戦力を物量で押し切る。

物凄く有効な手だ。

 

「モニカさんの仇!」

 

焦れた栞が本体であるカリザを撃とうとするが、

矢は悉くカリザの能力で停止させられ、簡単に避けられてしまう。

 

「かすみ!合わせなさい!」

 

「はい!ミスティバインド!」

 

「ウォーターバレット!」

 

拘束しようにも、カリザ自身も防魔系のスキルを保有しているのか、片手や鞭で簡単に弾き落とされてしまう。

 

「近づこうにもこの数じゃ…」

 

「ブレイド君!強化どのくらい続きそうですか!?」

 

「1時間は余裕!けど…」

 

「一時間で終わりますかね…」

 

雲霞の如きとは正にこのこと。

オマケに突破力はあってもコスパが悪すぎるペコリーヌを突っ込ませるのは不安が残る。

 

(このままじゃジリ貧!どうすれば…)

 

「おーいおいおいおーい!何この程度の連中に手こずってるんだよ!

ブレイド!レディ!お魚ちゃん!」

 

そこに懐かしい声が響いた。

ブレイドとしてはついさっき分かれたはずの声だった。

だが、その口調は全くの別人だ。

あまりに男性的で、そしてここにいることが一番有り得ない彼とあまりにも似ていた。

 

「コロすk…だれ!?」

 

一同が守る荷台の上に立っていたのは、ベージュのコートにサングラスと言う彼を象徴する衣装を身に纏いながら、完全に姿かたちはコッコロと同じ物をした誰かだった。

 

「ま、その反応になるよなぁ…。」

 

深い深いため息を吐くと、少女は手にしたナイフで足元の布を先、荷台に入ると、何かをあさり始めた。

 

「おい何やってる!」

 

「うるせぇ邪魔だ!」

 

固いものを固いもので殴る鈍い音がした。

そして中に入って行った兵のうめき声に続いて、

何かが倒れる音がする。

 

「あった!」

 

荷台の中から飛び出た少女はブレイド、ペコリーヌ、キャルに何かをそれぞれ一個ずつ投げ渡した。

 

「これって!」

 

「なんでここに!?」

 

「て言うか…よりにもよってこれって…」

 

「ぐちゃぐちゃ言うな!それしかないんだから。」

 

ブレイドとペコリーヌは驚いたような顔を、

キャルは若干不吉な物を見るような表情をしながらも、渡されたそれにカードを装填して腰に当てる。

 

「霧原!栞!時間稼ぎ頼む!」

 

「はい!」

 

「任せてください!」

 

2人の弾幕に守られながら三人は一列に並び、それぞれのポーズをとる。

 

「「「変身!」」」

 

<<<OPEN UP ⊕ A>>>

 

オリハルコンエレメントをくぐり、彼ら、彼女らは仮面ライダーグレイブ、ラルク、ランスに変身した。

そしてバイザーのトレイや、サイドバックルのケースからカードを取り出し、各々の武器に読み込ませる。

 

<<<MIGHTY ⊕ >>>

 

 

「おおおおおおお!ウェーーーーイ!」

 

「全力全開!レイバレット!」

 

「インパクトスタップ!はぁあああああ!」

 

グレイブが広範囲を薙ぎ払うように、

ラルクとランスが複数帯を纏めて釣らあ抜くように技を発動。

荷台の周囲の敵を大幅に減らすことに成功した。

 

「くぅー---!良い!やっぱこの感じよ!」

 

「ふふ、さっきまで渋ってたのにキャルちゃんはしゃいでますね!」

 

「手のひらスクリューって?」

 

「そこ!うるさい!とにかくあのガキンチョにお灸をすえてやるわよ!」

 

「それは…どうかな?」

 

勢いずくブレイドたちを見て、

焦るどころか益々余裕の態度を見せるカリザ。

その姿をコッコロのような少女だけが見ていた。

 

 

 

一方、ゴーカイジャーたちの方はと言うと、

こちらもまた一つの山場を迎えた。

 

「「「「ゴーカイチェンジ!」」」」

 

<シー-ッンケンジャー!>

 

ウナスを相手にするジョーは剣士同志の戦いとあってシンケンジャーを選択。

シンケンマルに『双』の秘伝ディスクを使い、二刀流で対応する

 

「なかなかの剣筋。だが、殺気も闘気も微塵もない!」

 

左腕の剣を弾き飛ばし、残った右腕側も、

片方のシンケンマルで抑えてるうちに、もう片方を使って砕く。

 

「水流の舞!二連!」

 

そしてがら空きになった胴に水を纏った斬撃を浴びせた。

強制変身解除され、元の怜に戻り、ダミーモバイレーツも砕けて、キーが排出される。

 

<シュー-ッリケンジャー!>

 

和真は無手で格闘能力のみで戦うアナザーアギトには、

忍術に遠近兵法の武器を持つシュリケンジャーで挑む。

 

「超忍法!空駆け!」

 

空中からの急降下連撃を浴びせ、怯んだところに、水流破を浴びせて視界を奪う。

 

「トドメだ!プラズマ剣!」

 

濡れてる体の表面を剣先から放たれたスパークは駆け抜け、焼き焦がす!

膝から崩れ落ちたアナザーアギトはエネルギーとなって解け消えた。

 

<ゴー-ッセイジャー!>

 

アクアは天使なんだから女神である私と相性いいはずよね!

と、きわめて短絡的な思考でゴセイピンクを選択。

これが意外とハルバードによる近接メインのキャンデリラとの相性はよかったようで、有利に戦えている。

 

「よ!は!この女神である私に勝とうなんて人生5回分は早いってことを思い知りなさい!ツイストルネードカード!天装!」

 

二連の竜巻がキャンデリラを大きく吹上げ、その隙に専用武器のピンクショットを装備。

 

「ピンクトリック!」

 

連射された追尾弾を体中のいたるところに喰らい、

優衣に戻った彼女から排出されたダミーモバイレーツとキーは、

その出自から全部模造品だったせいか、粉々に砕けてしまった。

 

<ガー-ッオレンジャー!>

 

ルカはゴーカイレッドGM相手に単独戦闘を得意とするガオイエローに変身。

イーグルクローで小回りの利かない鎧姿相手に翻弄する。

だが、流石にスペックが15本のレンジャーキーで強化されてるとあって、HP総量も果てしなく、先が見えない。

 

(しかも武器温存してるみたいだし、どうするかな…)

 

なんて考えていると、レッドの背後から連撃が叩きこまれてつんのめる。

一足先に敵を倒したブルー、グリーン、ピンクが援護に来たのだ。

 

「だらしないわねルカ!相手はソウイチでしょ?

遠慮なくぶん殴って蹴とばしてもいいのに」

 

「…ココはしっかり一人一殺のとこだ。」

 

「はっ!アンタラの担当が雑魚ばっかだっただけでしょ?

それより。カズマ。アンタの事だからやることやってんでしょ?」

 

「なんだよもうちょっと引っ張りたかったのに。」

 

そう言ってファイブイエローのキーをルカに投げ渡す和真。

さっきすれ違いざまにレッドから『窃盗』スキルで奪っていたのだ。

 

「それじゃあ行くか。」

 

「「「「ゴーカイチェンジ!」」」」

 

<マー-ッスクマン!>

 

<ファー-ッイブマン!>

 

<チェー-ッンジマン!>

 

<フラー-ッシュマン!>

 

「マスキートンファー!」

 

「メロディタクト!」

 

「チェンジソード!」

 

「プリズムカイザー!」

 

「いい加減正気に戻してやるぜ!総一さん!」

 

和真の合図で走り出す五人。

二つの戦いの決着はすぐそこの様に見えた。



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頭目/提督

彼はよやく目が覚める?


ゴーカイレッドGMは獣奏剣を武装として選び直すと、まず最初に啖呵を切って来た和真、チェンジグリフォンに斬りかかってきた。

 

「っとお!はは!まずは俺からっすか!?」

 

獣奏剣を小盾で受け止め、反対の手で持ったチェンジソードで弾いて後ろに飛ぶ。

その隙にジョー、ブルーマスクのマスキートンファーと、ルカ、ファイブイエローのメロディータクトの打撃を腹部に叩きこむ。

 

「ぐっ……!」

 

「お!やっと声らしい声が出ましたね!」

 

そこにすかさずアクア、グリーンフラッシュが飛び込む。

ナックル型の武装、プリズムカイザーをラッシュで叩きこむ!

 

「ッ! ライトニングフィスト!」

 

ゴーカイレッドGMはデカブレイクの姿をオーバーラップさせ、

雷撃の拳を連続で繰り出す。

当然15本分のキーをパワーで押し切ろうとする総一の方が有利だ。

しかし敵は一人ではない。

 

「グリフォンマグマギャラクシー!」

 

チェンジグリフォンの迸るマグマの柱が、ゴーカイレッドGMを天高く打ち上げた。

飛行系の能力を発動して逃れようとするが、それより早くメロディータクトのリボンで拘束され、ブルーマスクめがけて思い切り振り回される。

 

「スーパースピントンファー!」

 

ゴーカイレッドGMの頭を高速回転したトンファーが強かに撃った。

フラフラと頭を支えながら

よろける彼を、ゴーカイジャーに戻った四人が取り囲む。

 

「「「「ゴーカイスクランブル!」」」」

 

まず銃撃。続いてエネルギーの刃の上乗せ!

四つのくの字のエネルギーがゴーカイレッドGMに炸裂した。

 

「ぐぅううああああー---っ!」

 

強制変身解除された総一は、その場に膝をついた。

 

「やった!」

 

「アーマーも消えた!」

 

「総一さん!」

 

「ソーイチ!」

 

アクアとジョーが散らばったキーを回収し、

和真とルカが総一に駆け寄った。

 

「ソーイチ大丈夫?私らのこと分かる?」

 

「ルカ、和真…」

 

思わず2人が笑顔を浮かべたのと、

和真の顔面に強烈な左フックが叩きこまれたのは同時だった。

 

「ソーイチあんた!」

 

「悪いな。全部はお宝の為だ。ゴーカイチェンジ!」

 

<サーーッンバルカーン!>

 

変身し、立ち上がりながらルカの首を手刀で叩き、

気絶させると、そのままジョーの方に走りだした。

バルスティックを日本刀に変形させ、斬りかかる。

 

「ッ! ゴーカイチェンジ!」

 

完全に不意を突かれたが、何とかその時回収しようとしていたゴセイナイトに変身し、剣で受けるが

 

「飛羽返し!」

 

対応しきれずもろに技を受けてしまい、変身解除され地面を転がる。

 

「そこまで深く洗脳されているなんて!

かくなる上は私の『ゴッド…」

 

「分かりやすいんだよ馬鹿が。」

 

…アクアの眉間に、通常形態に戻ったバルスティックが命中。

受け身も取れずに90度に倒れ、両足をそろえて投げだした。

 

「あ、危なかった…。」

 

「もっと危なくなる。お前らしっかり伏せてろよ。」

 

そう言うと総一は取り出したモバイレーツにコードを入力し、

ゴーカイガレオンを呼び寄せる。

 

「まさか…」

 

「そのまさかさ。」

 

総一は気絶したアクアの懐からハリケンブルーキーを奪うと、

変身して、忍術で姿を消した。

 

 

 

少し時を戻して、荷馬車を守るライダーと魔法少女たち。

相変わらず敵は大勢いたが、最終決戦以来、久しく失っていた力を手にしたブレイド、ペコリーヌ、キャルはまさに水を得た魚と言う様子だった。

 

「あーもー!もう三桁は斬ったわよ!まだ出てくるの!?

どこの魔道具店よ!こんな気持ち悪いミイラ男を安売りしてたのは!

紅魔族でももっとマシなもん思いつくわよ!」

 

「もー!キャルちゃん、文句ばっかりは駄目ですよ!

これが終わったらごはんにしましょう!

干し肉が多くなりそうですから、お水多めに用意しないとですね!」

 

「ちょっとまってアンタこいつらも食うつもりなの!?

嫌よ絶対!もしかしたら人肉かもしれないのよ!

というか、人型の肉はこの前のゴブリンの肉で懲りたでしょ!」

 

「二人ともこっちでそんなハンティング生活してたの!?」

 

「そうよ!一撃熊とか臭みが酷過ぎて食えたもんじゃなかったんだから!

ブレイド!アンタはおいしいもん食べさせてよね!久しぶりの再会なんだから!」

 

「分かってるよ!ジャイアントトードのから揚げとか!」

 

「ざけんな!なんでそれでまた魔物料理に帰結するのよ!

リザードランナーはまだ百歩ゆずるけど、

あんな馬鹿でかいカエル食おうなんておかしいでしょうが!」

 

「……あの、カスミさん、でしたっけ?」

 

「あ、うん。どうしたの?」

 

「あのお三方、何時もあんな感じなんですか?」

 

「まあ、そのようだけど…」

 

などと話していると、頭上から轟音と共に、何かが風を切って迫ってきた。

 

「あれは、砲弾!?」

 

「ペコリーヌ!シオリ!霧原!」

 

「はい!」

 

「お任せください!」

 

「外しません!」

 

マイティレイ、ピュアリースナイプ、ミスティバレットが砲弾を相殺する。

致命的な一撃は避けれたが、次々撃ち込まれる砲弾に周囲は火と付き煙に包まれて来る。

 

「ゲッホゲホ!なんなのよ!これ!」

 

「空から、飛んできてる?」

 

「まさか…ガレオンからの砲撃?」

 

なんとか見上げると、煙越しに宙に浮く赤い海賊船が見えた。

 

(ガレオンを乗っ取られた?だとしたらみんなが!)

 

すぐに動こうとしたブレイドの喉元に刃が突き付けられた。

みると、どんなに年上に見ても、やっとティーンエイジャーになっただろうぐらいの大きさの少女が魔法少女に変身して立っていた。

 

「君は!」

 

「スカイラブハリケーン!」

 

素早くバックルに刃を当てられ、そのままエネルギーを纏った斬撃を当て斬られる。

横一文字に大きく傷つけられたバックルでは変身を維持できず、

強制解除されて吹っ飛ばされるブレイド。

 

「な!?」

 

「モニカさん!?」

 

続いてモニカが狙ったのはペコリーヌだった。

ラルクラウザーの狙撃を回避しながら肉薄する。

 

「させるか!挟撃するわよ!」

 

「はい!飛んで火にいるイナゴの佃煮です!」

 

「だ、ダメです!」

 

「栞さん!?」

 

しかしそれをシオリの狙撃が妨害してしまった。

2人のライダーに攻撃が当たり、動きが鈍ると、

モニカは先に背後からの迫ってきていたキャルに振り向きざまに鋭い斬撃を浴びせ、バックルを破壊して変身解除させた。

 

「がはっ!」

 

「キャルちゃん!?」

 

そしてそのキャルの肩を踏み台に飛び上がり、

技のエネルギーを纏った剣をペコリーヌに投げつける。

銃撃で撃ち落とそうとしたが、勢いを完全に殺し切れず、

防御するも、バックルを中心を真っ二つに斬られ、変身解除されてしまった。

 

「も、モニカさんなんで!?」

 

「なんでも何も、洗脳が上手くいったという話だよ。」

 

煙の中から海東大樹とカリザが現れる。

 

「あなた達が、今回の事件の主犯と言う訳か。

態々捕まりに来てくれた…訳ではなさそうですね。」

 

「当然!おめえら全員の力をもらいに来たんだよ!」

 

そう言ってカリザはブランクのライドウォッチを起動した。

するとブレイドたちの腹部や、近くに残っていたバックルが消失し、

カリザのウォッチに力が宿る。

 

<BULEID…!>

 

アナザーブレイドウォッチに変化したそれを見て満足げに笑うカリザ。

そこにガレオンから三本の鎖が降りてくる。

 

「たく、仕事が早ぇな。ま、いいか。

おい雑魚ども!明日の朝、黒十字山に雁首揃えて来い。

そこで決着だ!ちゃんと遺書書いてから来るんだな!」

 

そう好き勝手言い放つと、三人はガレオンに乗って飛び去って行った。



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