黒の水 (matome0101)
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プロローグ

小説を書くのは初めてです。
楽しんでいただければ幸いです。
トゥレは兔のような動物です。


10月24日  雪

 今日も雪が降っている。長いこと日の光を拝んでいない。

 

 ただ、今日はいつもより雲が薄かったようで外はかなり明るかった。

 

 少なくなっていた薪を補充した。これで暫くは持つだろう。

 

 獲物

  →薪      150本

  →堅果    一掴み

 

 消費

  →薪      10本

  →保存食(トゥレ)

          半羽

  →斧      1本

  

 

10月25日  雪

 今日も雪が降っている。相変わらず太陽は顔を出さない。

 

 泉の近くに罠を仕掛けておいた。何か小動物が取れれば、嬉しい。

 

 獲物

  →堅果    一掴み

消費

  →保存食(トゥレ)

          半羽 

 

 

10月26日  雪

 今日も雪が降っている。外は薄暗い。

 

 泉の罠には何も掛かっていなかった。まあ、あまり気にしすぎないようにしよう。

 

 泉の精霊の像が汚れていたので綺麗に磨いておいた。

  

 獲物

  →堅果    一掴み

  

 消費

  →堅果    一掴み

 

 

10月27日  曇

 外は今日も薄暗い。ただ、今日は雪が降らなかった。こんなに森は静かだっただろうか。

 

 泉に行ってみると、罠にトゥレが2羽かかっていた────────

 

 

 

 

 

「珍しいな2羽も取れるなんて。」

 

と、私は冷たい空気に向かってつぶやいた。

 最後に人と話したのは何時だっただろうか。元々独りでいるのが好きだから寂しいと思うことはないが、それでも時々は人間と話したいものだ。

明日は近く(とはいっても家から歩いて2日かかるが)の交易所に行くことにしよう。

 

 この前の薪割りで壊れた斧の代えを買わなければ。

 

 そう思いながら泉の方に目をやると―――

 

 「は?」

 

 思わず口から声がこぼれた。なんだ、あれは。

 

 あんなものは見たことがない。あれをなんと形容したものか。

 

 あれは、水に浮いている液体で、その点では油と似ているのだが、奇妙なのはその色である。

 

 黒なのだ。

 

 ただ、その濃さが異常で、まるで周囲の光を全て飲み込むような濃さなのだ。

 

 あまりに濃過ぎて、視覚では正確にその輪郭を捉えきれないほどである。

 

 それが泉の中心から――本来なら澄み切った水が湧き出るはずの場所から――湧き出ている。

 

 今までも濁った水が湧き出ることはあった。

 

 だが、これほど濃い色の水が湧いたことはなかった。あれは一体何なのだろうか、、、まあいい。

 

 今ここで考えても答えはでない。あれのことは明日交易所で地学的な知識の豊富な彼に聞いてみることにしよう。

 

 今日は家に帰って捕れたトゥレを保存食に加工しなければ───────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 男が去った後に泉に鳥が水を浴びにきた。

 

 水面に降りたったその鳥は、水面を滑るように進み、あの黒い液体の近くまでやってきた。

 

 その鳥は初めて目にしたその液体に興味を示した。彼は嘴をその液体に浸けた。

 

 鏡のような水面に波紋がたった──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の森はやけに静かだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 お粗末様でした

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出発

投稿が遅くなりすぎてしまいました。
申し訳ありません


10月27日  曇

 

 今日も雪は降っていない。森は今日も静かだ。昨日作ったトゥレの乾物と、倉庫に残っていた堅果、水

 

筒、衣類、ランプやオイルなどを持って交易所に向けて出発した―――

 

 

「盆地に住んでいる以上、その外に出るのに時間がかかるのは仕方ないか。」

 

 

と、私は眼前の山脈を見て呟いた。

 

 私の住んでいるこの森は、周囲の全てを山脈に囲まれている盆地にある。

 

 だから何処に行こうとしても、必ず急斜面を登ることになる。

 

 この森に住んでいるのは私だけなので隧道(ずいどう)が掘られることもない。

 

 基本的にこの森から出ない生活を送っているのであまり困ることはないが、こうやって盆地の外に出るときは、鉄道で楽々移動できる平地に住んでいる者が羨ましくなる。

 

 だが、得ることの出来ぬ物を望んでも仕方がない。今の私にできることは、交易所で会えるはずの友とどんな話をするか考えることぐらいだ。

 

 

 獲物

  →なし

 

 消費

  →堅果    一掴み

 

 所持

  →保存食(トゥレ)

         二羽

  →堅果    一袋(九掴み)

  →水     三日分

  →水筒    一つ

  →オイル   三日分

  →ランプ   一つ

  

 

 

 

 

 

 

  

 森の泉の側にある小さな精霊の石像が、山の向こうへ消えていく男の後ろ姿を見つめていた。

 

 その石像はあの男が作った物だった。

 

 彼がその不器用な手先で時間をかけて作ったその像は、決して美しいといえるものではなかったが、彼女(とはいったものの一目では男か女かは判断できないのでもしかすると“彼”かもしれない)はこれまで信仰の対象としてこの泉の側にあり続け、この森を災いから守ってきた。

 

 これまでこの森に猛吹雪が来なかったのも、地震がなかったのも、盗賊が一人もこの森に来ないのも、全ては彼女(とはいったものの一目では男か女かは判断できないのでもしかすると“彼”かもしれない)のお陰だったのだ。

 

 だが、あの男が彼女(とはいったものの(以下略))の偉業に気付くことはなかった。

 

 彼女はずっとそれが不満だった。彼に気付いてほしくて様々な奇跡を起こした。

 

 それでも彼が気付くことは無かった。

 

 彼女は、あの男が彼女の起こした奇跡に気づく日はきっとこないだろうと足元まで迫った黒い液体を見ながら悲しく思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10月28日  曇

 

 今日も雪は降っていない。

 

 少し前までずっと降り続いていた雪がこうもぱったり降らなくなると、少し不安になってくる。

 

 まあ、そのうち降るだろう。天気なんてそんなものだ。

 

 あの森を発ってから一日がたった。

 

 結構な距離を歩いてきたが、まだ交易所は遠い。

 

 もう少し歩けばいつも交易所へ行くとき泊まっている宿屋に着く筈だ。

 

 あそこの酒は旨いから、今から飲むのが楽しみだ。




 お粗末様でした

 一部訂正しました

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宿屋白梟

楽しんでいただければ光栄です。
カグヌは臭みの強いカンパチです。


「だいぶ歩いたな。」

  

 そう呟いた私の声は、瞬時に風の音にかき消される。

 

 昨日までとは一転して、今日は猛吹雪だ。

 

 身を切るような、冷たく、激しい風と豪雪のせいで、手の届く範囲ほどしか、視界を確保できない。

 

 その内雪は降るだろうとおもっていたが、まさかこんな吹雪になるとは。

 

 天気というのは本当に気まぐれだ。

 

 さて、方向があっていればそろそろ宿屋につくはずだが、、、

 

 あった。猛吹雪の中にぼんやり光る松明の明かりが見える。

 

 綺麗に磨き上げられた看板には、整った字で

 

 「宿屋白梟(シロフクロウ)

 

と書かれている。

 

 直方体の建物の外壁は全面白く塗られ、所々に円い窓が開いている。屋上からは、排煙用の煙突が突き出ている。

 

 私は、壁と同じく白く塗られたドアを開けて中に入った。

 

 内装は全体として暗めの色合いが使われている。内壁は塗装されておらず、建材である木材の木目が暖かい雰囲気を作っている。

 

「ずいぶん遅かったですね」

 

と、宿屋白梟(シロフクロウ)の主である、紳士服姿の老人が呼びかけてきた。

 

「私が来ることを知っていたのか?」

 

私は老人に訊ねた。老人はにこりと微笑み、こう言った。

 

「お部屋はいつも通り二階に用意してあります。食事は20時からですので、それまでどうぞごゆっくり」

 

 質問に答えるつもりはないようだ。この老人はいつも、こうして私が来ることを知っていたかのように部屋を用意している。ここに来ることは、いつも誰にも言ってはいないのに、だ。

 

 まあ深く考えても意味はないので、私は老人から部屋の鍵を受け取り、二階へ上がった。

 

 一晩を過ごす部屋は、机と椅子とベッドがあるだけの簡素な部屋だった。 

 

 掃除の手が行き届いているのだろう、床、壁、部屋の隅、どこを見ても、埃一つ落ちていない。

 

 ベッドにかけられた布団は洗濯したてのふかふかだ。

 

 机の角には、万年筆とインクのはいった小瓶が置いてある。

 

 部屋に一つだけある窓が、風に吹かれて時折ガタガタとなっている。

 

 重い鞄を床に下ろし、毛皮のコートを椅子にかけ、ベッドに仰向けに寝転がった。

 

 目を閉じれば、思い出すのはやはりあの黒い液体のことだ。

 

 なにもなかった森の空き地に、突如として湧き出たあの黒い液体。

 

 一体あれは何なのだろうか。

 

 ・・・そういえば、海の底には、石油と呼ばれる黒い液体が埋まっていると耳にしたことがある。

 

 石炭や木炭より遥かに優秀な燃料として使える石油はとても価値があり、バケツ一杯分の石油が売れた金で、一年は寝て暮らせるらしい。

 

 もしあの液体が石油だったら、私は億万長者になれるのか。

 

 まあ、海の底に埋まっているものが森の中に湧き出てくるわけがないから、売上金の使い道を考えるだけ無駄だろう。

 

 さて、そろそろ夕食の時間だ。下に降りよう。

 

 

 

 一階の食堂に行くと、さっきは紳士服だった老人が、今度はコックの格好をして、厨房にたっていた。

 

「誠に申し訳ないのですが、まだ料理ができていないのです。お席のほうそちらに用意してありますので、お座りになってお待ちください。」

 

老人はテキパキと料理をしながらそう言った。

 

 私は言われた通り、席に座った。

 

 テーブルの上には既に例の美味い酒が用意してあった。

 

 このあたりでは、酒といえばビールが主流なのだが、この酒は、あの老人がいうには、なんと、芋から作られているらしい。

 

 土の中に埋まっているあの芋から、どうやったらこんなに美味い酒が作れるのか、とても気になるが、老人は作り方も、どうやって手に入れたのかすらも教えてはくれない。

 

 酒瓶には、異国の文字で何か書いてある。

 

 老人によると、地名が書いてあるらしい。

 

 どこの地名なのかと聞いたが、答えてはくれなかった。

 

 

 

 暫くして、料理が出てきた。

 

 メニューは老人に任せている。

 

 まず、カグヌの刺身が出てきた。

 

 カグヌはこのあたりで多くとれる川魚で、臭みが強いので、刺身にする事は殆ど無い。

 

 だが、老人の作ったこの刺身には、臭みは全くなく、繊細な味に仕上がっている。 

 

 一体どうやって臭みを抜いているのだろうか。

 

 当然、老人が作り方を教えてくれることはない。

 

 つぎに、いつもこの宿来ると出される、練り物が出てきた。

 

 味から察する限り、どうやら魚の練り物のようだが、こんな料理は他では食べたことがない。

 

 老人にこの料理の名前を聞くと、

 

「これは、私の故郷で酒のつまみとしてよく食べられていたものです。」

 

 といわれた。

 

 どうやら料理名すら教えないつもりのようだ。

 

 老人の言う通り、この練り物はとてもこの芋から作った酒と合う。

 

 料理名が分からなくても、老人の料理は美味しい。 

 

 ならば老人に料理のことをしつこく聞く必要はないだろう。

 

 あまり多く食べたつもりはないのに、いつの間にか満腹になっていた。

 

 老人にうまかったと告げると、

 

「お気に召したようでよかったです。」

 

と答えた。

 

 二階の部屋に戻り、机の上の万年筆を手に取った。

 

 

 

 

10月29日  吹雪

 

 今日は酷い吹雪だった。

 

 殆ど視界の無い中、何とか宿屋白梟(シロフクロウ)までは辿り着くことが出来た。

 

 老人はいつものように、部屋を用意してくれていた。

 

 夕食に、カグヌの刺身や酒などを頂いた。

 

 今は自室でこれを書いている。

 

 まだ吹雪は収まっていない。

 

 明日までには止めばいいのだが、、、

 

 さあ、今日はもう寝よう。




 お粗末様でした

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雪原

つたない文章ですが、お楽しみいただければ幸いです。


 一羽のトゥレが、目を覚ました。

 

 盆地の斜面に掘られた穴から顔を出すと、もう日は高く上っていた。

 

 昨日の吹雪で積もった雪に日の光が反射して目がくらむ。

 

 いつものように、美味しい草を探しに行こうと足を一歩踏み出すと、ぴちゃり、という音がした。

 

 てっきりふかふかの雪を踏むだろうと思っていた彼は、不思議に思い、足元を見た。彼の真っ白な毛で覆われた足は、黒く染まっていた。

 

 驚いて顔を上げた彼の目に映ったのは、盆地の半分まで満ちた、黒いm

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10月29日  雪

 

 朝起きると吹雪は収まっていた。

 

 食堂に行くと、テーブルの上に朝食が用意されていた。

 

 メニューは、パン、目玉焼き、トゥレのベーコン、そして、焦げ茶色の見たことのない飲み物だった。

 

 老人によると、異国の飲み物らしい。

 

 粉々にした豆から作られているそうだ。 

 

 飲んでみると、とてつもなく苦かった。

 

 老人は悶える私に、

 

「砂糖を入れて飲むと美味しいですよ」

 

 と笑いながら言った。

 

 出来れば飲む前に教えて欲しかった。

 

 朝食を全て頂いた後、宿泊費を払い、宿屋白梟(シロフクロウ)を出発した─────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ザクザク、ザクザク」 

 

 静かな雪原に、私の足音だけが響く。

 

 この静けさが私は好きだ。

 

 かつて南国に暮らしていた私は、旅行で訪れたこの土地のこの静けさに惚れて、そのままここに住み着いた。

 

 雪の作る静寂は、森や山のそれと異なる。 

 

 雪が音を吸い込むことで、完全な静けさができるからだ。

 

 このことを友達に話すと、訳が分からないという顔をされた。

 

 彼らは、生まれたときからずっとこの静寂のなかを生きてきたのだ。

 

 きっと、よそからきた私とは感じ方が違うのだろう。

 

 静寂の中を、歩く、歩く、歩く──────────

 

 

 

 だんだん辺りが暗くなってきた。そろそろ日が沈む。

 

 おかしい、いつもならもう交易所に着いているはずなのだが、、、

 

 そうか、雪か。

 

 昨日の吹雪でいつも以上に積もった雪が、歩く邪魔になっているのか。

 

 夜はとても冷える。何としてでも夜が来るまでに交易所に着かなければ───────────

 

「奇遇ですね。」

 

 突然声を掛けられたことに驚いて振り返ると、そこにいたのは、宿屋白梟(シロフクロウ)の主人だった。

 

 ドー(現実世界のトナカイのような生物)二頭に牽かれたそりに乗っている。

 

 辺りはこんなに静かなのに、そりの接近に全く気が付かなかった。気配もしなかった。

 

 何というか、まるで突然降って湧いたかのようだった。

 

「どうしてここにいるんだ。」

 

 そう尋ねると、老人は

 

「交易所までお送りしましょう。」

 

 といった。

 

 質問に答えるつもりはないようだ。

 

「歩いて向かっていては日暮れまでに到着できませんよ。」

 

 と言いながら、老人は手を差し伸べてきた。

 

 私はその手を借りることなく、そりに乗り込んだ。

 

「それでは出発いたします。」

 

 老人は微笑みながらそういい、軽く手綱を引いた。そりは雪の上を滑るように走り出した。




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交易所

「見えてきましたよ」

 

 と老人に言われて、私は、自分が少し眠っていたことに気が付いた。

 

 老人の指さす方を見れば、遠くに、街が見えた。

 

 交易所と、それを取り囲む建物群の作る街だ。

 

 日はまだ暮れていない。

 

 暫くして、(そり)は街の入り口である門に着いた。

 

 (そり)を降りて門の方を見やると、人の出入りの番をしている男が、こちらに歩いてきていた。

 

 老人に礼を言おうと(そり)の方を見て、、、

 

 老人は、乗っていた(そり)と共に居なくなっていた。

 

 現れたときと同様に、いつの間にか消えていた。

 

「おい、あんた街に入るのか?」

 

 はっとして振り返ると、先程こちらに歩いてきていた男だった。

 

「今ここに、(そり)とそれに乗った老人がいなかったか?」

 

 私は(そり)のあった場所を示して言った。

 

「いや、そんなものは見なかったぜ。そんな事より、入るのか、入らないのかを教えてくれ。そろそろ門を閉めるんだ。」

 

 私は男の言葉に驚いた。この街は、一日中出入り自由だったはずだ。どうして門を閉めるのか聞くと、

 

「最近、夜になるとこの辺に怪物が出るんだよ。それで、そいつが待ちに入ってこないように、最近は夜になると門を閉めることになってんだ。今日はもう閉めるから、入るならとっとと入ってくれ。あ、それと名前と街に来た理由、どのくらい滞在するつもりかを教えてもらってもいいか?」

 

 私は質問に答えながら男と門に向かって歩いた。男が門を閉めるとき門の隙間から見えた雪原は、一面真っ平らで、(そり)の走った後は全く無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────と言う訳なんだが、お前はあの黒い液体について何か知らないか?」

 

「さあ。すまねぇが、俺はそんな物のことは聞いたことがねぇ。」

 

と、トバゴは申しわけなさそうに言った。

 

 ここは酒場八咫烏(ヤタガラス)。私がこの土地に越して来た時以来の友人である、トバゴという男が経営している。

 

「そうか、すまないな、変なことを聞いて。」

 

「いいってことよ。あ、そういえば、最近近くに新しい呪術屋ができたんだ。そこの呪術師なら何か知ってるかもしれないぜ。あいつらはそういう摩訶不思議な現象に詳しいからな。」

 

「そうなのか、因みになんていう店なんだ?」

 

「ああ、その店の名前は─────」

 

 その日はトバゴの家に泊めてもらった。

 

 トバゴと酒を飲みつつ夜中まで話したあと眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10月30日  雪

 

 頭が痛い。二日酔いだ。昨日トバゴと飲み過ぎた。

 

 元々酒に強い方ではないのに、どうしてあんなに飲んでしまったのだろうか。

 

 布団の中で苦しげに呻いているところをトバゴに見られ、盛大に笑われた。

 

 彼は私の5倍は飲んでいたはずだ。

 

 にもかかわらず、彼はピンピンしている。

 

 少し理不尽だと思った。

 

 トバゴの奥さんの作ってくれた朝食を食べて(二日酔いのせいで殆ど食べられなかったが、)トバゴ夫妻に礼を言い、呪術屋へ出発した──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あるところに一つの岩があった。

 

 それといった特徴があるわけでもない、所謂普通の岩である(断じて洒落ではない)。

 

 その岩は、他の同じような岩がそうであるように、長い間そこにいて、自らの意志(岩→石→意志とかいう寒いギャグではない)で動くことは出来なかった。

 

 彼女(この岩は女です)はずっとこの盆地を上の方から見下ろしていた。

 

 一年間ずっと雪が降り続き、太陽が顔を出すことは殆どない、そんな気候だから彼女の目(の用に見えなくもない凹み)に映る景色は当然変わり映えしない。

 

 この盆地を満たしているこの黒い液体もずっと昔から変わらず、私の足下でちゃぷちゃぷいっt ─────

─────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お粗末さまでした

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呪術屋死死累累 1

「死死累累って、呪術屋の名前としては何かが違う気がする」

 

私は思わず呟いた。

 

 呪術屋は、人々の病をまじないで癒やしたり、人の運命を占ったりと、基本的にプラスなことをする仕事だったはずだ。

 

 なのにこの店は死死累累とかいうかなり不吉な言葉を店の名としている。

 

 店の建物は廃屋が如き様相で、壁には苔が生え、所々ひびが入っている。

 

 触ったら壊れそうなほどボロボロなその看板に触れたら、半分ぐらいが砂のように崩れ、店名が「累累」になってしまった。

 

 不吉さも店名と共に半減したように思った。

 

 腐った木製のドアを開けて中へ入っt ───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あるところに、一つの戸があった。

 

 彼は元は扉ではなかった。

 

 彼は元は壁であった。

 

 彼が今玄関を務めているこの建物はとても古く、いってしまえばボロボロのおんぼろでとても住めたもんじゃなかった。

 

 彼がまだ扉だった頃、そんなぱっと見お化け屋敷なこの建物に、一人の女がやってきた。

 

 女はお化け屋敷の主(所有しているだけで管理はしてくれない。無論手入れもしない。)を連れていた。

 

 女は、扉(今ある扉とは別の扉)を開けてボロ屋の中に入ろうとした。

 

 が、女が取っ手をにぎり、引いた途端───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バキャァッ」

 

 扉が壊れた。

 

 具体的には、戸板が縦に真っ二つに割れ、蝶番がくっついていた壁の一部を巻き添えに地面に落ち、その衝撃で「累累」の看板が更に半分に割れ、、「田田」になってしまった。

 

 私が地面に落ちた「糸糸」をあっけにとられて見ていると、

 

「あ~、ま~たぶっ壊れた~。」

 

と店の奥から声がした。

 

 驚いて顔を上げると、そこにいたのは、8歳位の小さな女の子だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一人の老人が湖を満たす黒い液体を見つめていた。 

 

 湖面には、上った三日月が映っていた。

 

 白梟のような白く長い髭を蓄え、頭を禿頭に剃ったその老人は、この黒い湖がずっと昔からここにあったことを知っていた。

 

 だが、彼はその自分の記憶が偽りの物であることを知っていた。

 

 彼はおもむろに地面に手を伸ばし、石を一つ拾い、湖に向かって投げ込んだ。

 

 石は放物線を描きながら宙を舞う。

 

 くるくると回りながら湖へとんでいく。

 

 ずっと昔からそこにあって、これからもそこにあり続けるその湖に。

 

 石はやがて下降を始める。

 

 重力に引かれ、落ちていく石は、湖面に触れ、鏡のような水面に波紋がひr ─────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼はおもむろに地面に手を伸ばした。

 

 しかし、そこに彼が求めていた石は無く、彼の手は空を切る。

 

 その手を握り締め、老人は憎々しげに湖を睨んだ。

 

 老人はしばらくそうした後、踵を返し、その場を去っていった。

 

 湖面に映った三日月が、その後ろ姿をあざ笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 お粗末さまでした

 ものすごい速度で書き上がりました

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呪術屋死死累累 2

「うちの玄関ぶっ壊したのは~、あんたで4人目なんだ~。あんたの前は~、あたしの父ちゃんで~、その前が~、あたしの兄ちゃんで~、その前が~、あたしっ!」

 

 キャハハッと、女の子は楽しそうに笑う。

 

 女の子は、この建物と同じようにボロボロで、苔の生えた椅子に座っている。

 

「ドアのことは~、気にしなくていいよ~。兄ちゃんに~、なおしてもらうから~」

 

 女の子は話し続ける。

 

「兄ちゃんは~、すごいんだよ~。どんな~、ビョウキも~、まほうで~、なおしちゃうんだ~」

 

「えっと、一つ聞いてm」

 

「それに~、兄ちゃんは~、ハクシキだから~、どんなことでも~、知ってるんだ~」

 

「あの、そのお兄さんは一体どこn」

 

「このあいだも~、あたしが~、おそらは~、どうして~、あおいの~って、聞いたら~、おとなりの~、サトウさんが~、色をぬったからだって~、教えてくれたんだ~」

 

「だからそのお兄さんはどこにいr 」

 

「それに~、お兄ちゃんは~、未来も~、よめちゃうんだ~。だから~、今朝も~、「黒い液体の事で尋ねてくる人がいるからそいつが来たら起こしてくれ」っていって~、二度寝しちゃったんだ~」

 

「え?」

 

「でも~、お兄ちゃんは~、シンケイシツだから~、あんたが~、扉ぶっ壊した音で~、起きちゃったみたいだね~」

 

「お陰で最高の目覚めだったよ、おっさん」

 

 その声は、私の足元からした。

 

「そこにいられると、ドアが開けられねえんだ。退いてくんねえかな」

 

「え?ああ、すまない」

 

 私が慌てて退くと、先程、私のいた場所の苔むした床が、バコッという音を立てて外れ、四角い穴があいた。

 

 そしてその下から、出てきた黒髪の少年は、にやにやしながら、私に向かって言った。

 

「俺が、今年で200歳になるっていったら、あんた、信じるか?」

 

「信じない」

 

 私は即答した。

 

「じゃあ帰ってくれ」

 

 少年は言った。

 

「俺が、13歳の普通の坊主に見えるってんなら、俺は、あんたの力にはなれない。出口はこっちd」

 

「サバを読むな」

 

 私は続ける。

 

「お前、300はいってるだろ」

 

「なっ!」

 

 少年は驚いた様子で言った。

 

「・・・おっさん、一体なにもんだ?」

 

 そう聞かれたので答えてやった。

 

「私はお前と同じ、不死身の化け物だよ」

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2月15日  雪 

 

 私は、不死身の化け物だ。

 

 始めからそうだった訳ではない。

 

 私が不死身になったのは、今から800年以上前。

 

 私が、5歳の頃だった。

 

 ある晴れた日、私は、故郷の森で、いつものように遊んでいた。

 

 木々の間を走り抜け、小川を飛び越え、森の中を駆け回っていた。

 

 ふと、甘い匂いがして、足を止めた。

 

 辺りを見回すと、ある木の枝に、一つの果実がなっているのが、目に入った。

 

 私は、その木に登り、その果実を、枝からもぎ取った。

 

 とても甘い匂いのするその果実は、拳くらいの大きさの球形で、皮には、虹色の斑模様が浮かんでいる。

 

 甘ったるい香りが辺りを包む。

 

 果実の皮の斑模様が、ゆっくりと動くのを見ているうちに、私は、だんだんまともに考えられなくなっていった。

 

 手が、その実を口に運ぶ。

 

 その果実を齧ると、芳醇な甘い香りが口の中一杯に広が───────────

 

「!?!?!?」

 

 らなかった。口の中に広がったのは、期待していたような甘い香りではなく、圧倒的な腐卵臭だった。

 

 私は、果実を吐き出そうとした。

 

 だが、口は、私の思いに反して、その果実を咀嚼する。

 

 何度も、何度も、何度も。

 

 その度に、口の中に腐卵臭が広がる。

 

 その匂いのきつさに耐えかねて、私が気絶しかけたとき、私の喉は、勝手に果実を飲み込んだ。

 

 と同時に、私はギリギリ保っていた意識を失い、木から落ちる。

 

 幸いなことに、私が意識を失ったのは、地面に激突して、首の骨を折る前だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お粗末さまでした

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この話は最早、ファンタジー以外の何者でもない


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昔の話1

「・・・・・い」

 

「・・・・・おい・・・」

 

「おい!」

 

 うるさいなぁ、と思いながら目をあけると、目の前に叔父の顔があった。

 

 黄昏の薄暗い中でもわかるほど、叔父の顔は真っ青になっていた。

 

「大丈夫か?俺が誰かわかるか?」

 

 おじさんだろ、と、答えようと思って、止めた。

 

 からかってやろう。

 

「お兄さん、だあれ?」

 

「ああああああなんてこった!お前が俺のことをお兄さんって呼ぶなんて!」

 

「いや、そうじゃないだろ」

 

「え?、じゃ、じゃあ、、、、しゃ、しゃべったあああああああ!!」

 

「そうじゃないよ」

 

「え?じゃあなんて言えばいいんだよ!」

 

「僕が記憶を失ってるっぽいことに突っ込めよ。」

 

「あ、そうか。」

 

「全く、これだからおじさんは」

 

 からかい甲斐がある。

 

「ところで、おじさんはどうしてここにいるの?」

 

「え?あ、そうだ!村のみんなでお前を探してたんだよ!」

 

 おーい!みつけたぞー!と、おじさんは声を張り上げた。

 

  ずっと地面にぶっ倒れているのもつまらないので、僕は起きあがることにした。

 

 まずは右手を地面について

 

「ペチャ」

 

 液体に触れた感触に驚いて地面を見ると、地面一杯に血が広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・はっ!」

 

 しまった。

 

 僕としたことが、血を見た程度で気絶してしまった。

 

 情けない。

 

 ところで、どうして僕は、こんな暗くて、じめじめしたところにいるんだ?

 

 さっきまで、僕は森の中にいたはずだ。

 

 だが、ここは、どうやら、洞窟の中のようだ。

 

 しかも、僕は、牢の中にいるらしい。

 

 そして、僕は、手枷足枷つけられて、壁に磔にされているようだ。

 

 小さな松明が、鉄格子をてらてらと照らしている。その様はまるでn

 

「気が付いたか?」

 

 おいおい、人が情景描写してるときに、話しかけてくるんじゃないよ。

 

 そう思いながら、薄暗い中に目をこらすと、鉄格子の向こう側に、ぼんやりとした人影が見えた。

 

「あんた誰?」

 

 取り敢えず聞いてみた。

 

「喉乾いてるだろ?今、水をやる。」

 

 人影は、僕の言葉を無視して、どこかへ歩いて行った。

 

 誰なんだ?あれ。

 

 しばらく考えていると、人影が戻ってきた。

 

 水が入ったバケツを持っているようで、人影が動く度に、ちゃぷんちゃぷんと音がする。

 

「これ、欲しいか?」

 

 人影が言った。

 

「あんた誰?」

 

 無視してやった。

 

 さっきのお返しだ。

 

「そうか、いらないのか。じゃあこれは俺がもらうとしよう。」

 

「待て、欲しい、飲ませてくれ。」

 

 喉が乾いているのは事実だ。

 

「だったら最初からそう言え。」

 

 人影が、鉄格子についた扉を開けて、中に入っt

 

ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギイイイイイイイイイ!!!!

 

 

 

「■■■■■■■■■?」

 

 人影が何か言ってるが、なんて言ってるかはわからない。

 

 すごい音だった。

 

 信じられるか?今の、扉が軋む音だぜ?

 

 耳がおかしくなったようで、ずーっと、キーーーーーーーーーーンという音が反響している。

 

「■■■■■■■■■。」

 

 また人影が何か言ったが、やはりなんと言っているかはわからな

 

「!!!」

 

「ほら、飲め」

 

「ゴホッゴホッ!」

 

「むせるな。飲め、ほら。」

 

「無理無理無rガホゴボ!」

 

 こいつ、口の中に水を押し込んできやがった!

 

 ていうかこれ、水じゃねえ!

 

 人影の持ってきた液体がふれた部分が、燃えているかのように熱い。酸でもかけられたかのようだ。

 

「どうした?飲めないのか?」

 

「飲めるか!何だよこの液体!口の中が超痛いんだけど!」

 

 本当もう、口の中から火が出そう。

 

 ヨガフレイム打てそう。

 

「お前、なんで、あの森でぶっ倒れてたんだ?」

 

 人影が聞いてきた。

 

「普通の水を飲ませてくれれば教えてやるよ。」

 

 僕は答えた。

 

 冗談抜きで、口の中が熱すぎて、極めてしゃべりづらいから、本当に普通の水がほしい。

 

「お前、なんか変な木の実食ったろ。」

 

 こいつ、あくまで質問には答えないつもりか。

 

 だが、僕はその程度では折れない。

 

「まず、普通の水で口をゆすがせろ。」

 

 僕が答えないことに業を煮やしたのか、人影が、持っていたバケツの中身を、僕にぶちまけてきた。

 

 だが、僕は動けない。

 

 もしかすると、全身火傷で死ぬかも知れない。




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昔の話2

 まあ、何というか、

 

 結論から言うと、僕は死ななかった。

 

 いや、結果として死ななかったと言うだけで、あの訳わからん液体を、結局全身に浴びてしまったし、それによって、大火傷もした。

 

 とても痛かった。

 

 しばらくは、ずっと、常に針で全身を刺されているかのような感覚に苛まれた。

 

 しばらくと言っても、2~3分ぐらいだ。

 

 この辺で、僕はようやく、自分の体がおかしくなっているらしいことに気が付いた。

 

 回復力がとんでもないことになっていることに、気付いた。

 

 あの木の実を食べたことが、原因なのだろうか。

 

 あの人影は、あの実について、何か知っているのだろうか。

 

 聞いてみたいけれど、僕は未だに拘束されているし、あの人影はここにいないから、今はどうにもならない。

 

 取り敢えず寝ることにしよう。

 

 眠れるときに眠っておけと言うのが、僕の父の教えだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この後のページは破り取られている。

 

「おっさん、ページが抜け落ちてんだけど。」

 

 少年の言葉に私は答える。

 

「ああ、そうだ。そこから先のページは、なぜかないんだ。私がその日記をちぎるはずはないから、おそらく私以外の仕業だ。」

 

「いやそうじゃなくってさ、ここから先の内容を教えてくれって言ってんの。」

 

「記憶にない。」 

 

「いや、そんなわけねえだろ。」

 

「本当だ。寝て、気づいたら、もう、普通の暮らしに戻ってた。あの人影と何かしたような気がするが、どうしてもその内容が思い出せない。多分呪術かなにかで思い出せなくなってるんだと思う。」

 

「じゃあそれ解くから、ちょっと見せて。」

 

 そう言うと、少年は、私の頭に片手を伸ばし、鷲掴みにした。

 

 そして、私の目をじっと見つめる。

 

 私が、少年の目に、色が無いことに気付く。

 

 少年の目の、一般的に黒目と呼ばれる部分に、少年は、色彩を持っていない。

 

 きれいな目だなぁ、とのんきに考えていると、少年が、突然、何かに突き飛ばされたかのように、後ろに吹っ飛んだ───────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうもこんにちは。椅子です。

 

 私は、この廃屋が、まだ廃屋でなかったころ、ここに慎ましく暮らしていた、ひとりの家具職人によって作られました。

 

 彼は、とても心の優しい男でした。

 

 彼は、家具を作るときは、いつも、使う人のことを考えt

 

 ばがぁぁぁぁぁん!!

 

 という音を立てて、運悪く少年の飛んでいった先にあった、苔の生えた木の椅子は、バラバラにぶっ壊れた。

 

 、、、なんだか、椅子が、昔を懐かしんでいたような気がするが、、、きっと気のせいだろう。

 

 少年が、さっきまでなんとか椅子の形を保っていた廃材群の中から立ち上がり、言った。

 

 「あんた、一体なにもんなんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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帰る

つたない文章ですが、お楽しみいただければ幸いです


「は?さっき言っただろう。不死身の化け物だって。」

 

 私がそう言うと、少年は、

 

「ああ、いや、今のは答えてほしくて聞いたんじゃねぇ、あんたが、あんまりえげつない魔法かけられてるもんだから、あんたが、一体何についての記憶を消されてんだろうなって思ってさ。」

 

と言った。

 

「私にかけられてる魔法って、そんなにやばいものなのなのか?」

 

「ああ、ヤバいね。超ヤバいね。」

 

「具体的にはどの位やばいんだ?」

 

「その魔法をかけるには、生贄が10人は必要だって言えば、伝わるかな?」  

 

「え」

 

「わぁ~お。すごいね~。おじさんのために~、たくさんの命が~、ギセイになったんだね~。」 

 

 今まで全くしゃべらなかった女の子が、突然口を挟んだ。

 

「その魔法を~、かけた人は~、よっぽどおじさんに~忘れてほしいことが~、あったんだね~。」

 

「少年、この魔法は、どうやったら解ける?」

 

 私は、少年に尋ねた。

 

「ああ、解くのは無理だぜ。」

 

「え?何でだ。」

 

「それ解いたら、おっさんが死んじまうから。」

 

「何だと。」

 

「その魔法、かけられちまった時点で、おっさんが忘れてる何かを、思い出すのは不可能ってこった。諦めな。」

 

「・・・・・・わかった。」

 

 私は、一体、なにを忘れているんだ?

 

「ところで、おっさん。あんた、自分がここに来た理由、忘れてねぇか。」

 

「え?理由なんてあったっけ?」

 

「黒い液体、だろ。」

 

「あ、そうだった。」

 

「おっさん。ぼけてんじゃねえのか?」

 

「失礼な。私はまだ825才だぞ。ぼけるわけがない。」

 

「まあいいや。で、その黒い液体だけど、ちょっと直接見ないことには判断できなさそうだから、その液体のとこまで、案内してくんねえか。」

 

「ああ、かまわんぞ。」

 

「おっさん、今すぐ出発できるか?」

 

「え、まあ、出来はできるが」

 

「よし、じゃあいくか。」

 

「いってらっしゃ~い」

 

女の子がのんきな声でそう言うと

 

「おう、いってくるぜ。」

 

と少年が返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっさん、宿まで後どれぐらいだ。」

 

「この吹雪の中で、私にそれが分かると思うか。」

 

「思わねえ。」

 

「わかっているなら聞くな。」

 

 街を出てからかなり経つが、宿屋白梟に全然着かない。

 

 こんなに遠かったか?

 

 もしかしたら、この吹雪のせいで、方向を間違えたのかも知れない。

 

 だとしたら、かなりまずい。

 

 私の住んでいるあの盆地までの間に、宿はあそこしかないのだ。

 

「兎に角、今は歩くしかあるまい。」

 

「あ~~寒っむ!」

 

 少年がくしゃみをする。

 

 ん?あれ?我々は不死身だったよな?

 

 あ、じゃあ別に休まなくったって、死にはしないのか。

 

「少年、盆地まで歩き通すぞ。」

 

「はぁ?」

 

「我々は不死身だから、多少無理は効くはずだ。だから、歩くぞ。」

 

「え?やだ。」

 

「え?いやなの?」

 

「あったり前だろ。これ以上歩いたら、疲れちまうじゃねえか。」

 

「いや、でも死なないんだし、もう少し根性出してさ。」

 

「うわっ、出た、根性論。これだから昔の人間はいやなんだ。」

 

「お前だって、最近の人間ではないだろう。」

 

「800年生きてるおっさんに比べりゃ、十分最近の人間だろ?」

 

「いや、お前、人間じゃないじゃん。」

 

「・・・・・・おっさん。」

 

 あ、いかん。怒らせてしまったかな。

 

「なんだ。」

 

「確かにそうだな。」

 

 良かった。怒ってないっぽい。

 

「でも、俺が人間かどうかは今重要なことじゃあねえ、だろ?」

 

「ああ、その通りだ。」

 

「今重要なのは、おっさんは古い、俺は新しいってことだろ。」

 

「ああ、その通りだ。」

 

「で、おっさんは古くせぇ奴だ、だろ?」

 

「・・・ああ、その通りだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 




お粗末様でした
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静かなり

最近、ほかの作品に手を出した関係で、この作品の投稿が、著しく滞っております。

これからもコツコツと続けて参りますので、なにとぞご容赦を。


「少年、盆地が見えたぞ」

 

「ああ、俺にも見えてるぜ」

 

 あの吹雪は、思ったよりも早く終わった。加えて、我々の向かっていた方向も、間違っていなかったらしく、街を出発してから丸一日と少し、盆地が見えてきた。

 

 日はもう暮れかかっている。

 

「少年、見えこそしたが、まだ盆地は遠い。どうだ、今夜はここで野宿しようじゃないか」

 

「わかったぜ。明日は、おっさんの家で休めるんだよな?」

 

「もちろんだ。私の家の布団はフカフカだし、食料も沢山ある。」

 

 喋りながら、私は、地面に積もった雪の上に、断熱耐火シートを敷き、その上に、街で買っておいた薪を、燃えやすい形に組み上げ、着火材を下に潜り込ませ、マッチで火をつける。

 

「おっさん、手際がいいな」

 

「こういうのは、数をこなせば自然と覚えられる」

 

「へぇ」

 

「家には火種があるから、この作業の大半はいらない」

 

「そうなのか。ところで、ここからおっさんの家までって、どのくらいかかる?」

 

 燃え始めた火が、パチパチと歌いながら踊る。

 

「私の家は、盆地の中心にある。ここからなら、半日ほどだろう」

 

「そうか。じゃあ、おっさんが見た、黒い液体について、いつ存在に気付いたのかから、話して貰っていいか?」

 

「ん?まだ話してなかったか?」

 

「ああ。話してない」

 

「じゃあ話すか。

 私が、あの黒い液体の存在に気付いたのは、今から4日前の事だ。

 盆地一杯に溜まった黒い液体を、私はその日にみた。」

 

「おい、おっさん」

 

「何だ、まだ話は始まったばかりだぞ」

 

「おっさん、どこに住んでんだ」

 

「?さっきも言ったろう。盆地の中心だ。」

 

「盆地の中心って事は、周りより標高は低いんだよな?」

 

「当たり前だろう」

 

「んで、黒い液体は、おっさんが気付いた時点で、盆地一杯に溜まってたんだよな?」

 

「そう言ったろう。全く、なにが言いたいんだ。」

 

「四日前のその時点で、おっさんの家、黒い液体の中に沈んでるよな?」

 

「・・・あ」

 

 確かにそうだ。

 

 私は、4日前の朝も、普通に家で起きたんだ。あのときすでに、私の家が沈んでいないと、話の辻褄が合わない。

 

「・・・だが、私は、あの液体の中を泳いだ覚えはないぞ。」

 

「・・・こりゃあ、思ったよりヤバいもんが相手かもしれねえな。」

 

「どういう事だ?」

 

「さあな。取り敢えず、今日はもう寝ようぜ。」

 

「そうだな」

 

「そういえばおっさん、この辺に猛獣っていないのか?」

 

「いや、いないと思うぞ。」

 

「というか、そもそも、この辺に俺たち以外の動物っているのか?」

 

「そりゃあ、当然、いるだろう。」

 

「でもおっさん、ちょっと耳を澄ましてみてくれよ。」

 

 少年の言葉に従って、私は耳を澄ませる。

 

 …静かだ。音がしない。

 

 

 動物の気配を、感じない。

 

 

 

 

 

 

 




お粗末様でした。

評価、感想等をいただけると、嬉しいです。


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朝食

 つたない文章ですが、楽しんでいただければ幸いです。


「おっさん、朝だぜ」

 

「・・・ああ、そうか」

 

「そうか、じゃねえよ。起きろよ」

 

「そうだ・・・な・・・zzz」

 

「起きろ!」

 

「わかったわかった、起きればいいんだろ?」

 

 私は渋々、寝袋から這い出す。

 

 吐いた息が白い。

 

 今朝も寒い。

 

「おっさん、火ぃ起こしてくんねえか」

 

 そう言われて少年の方を見れば、昨日焚火があった場所を、木の枝で突いている。

 

「よし、木の枝集めてこい」

 

 私がそう言うと、少年は近くの林へ歩いて行った。

 

 さっきまで少年がつついていた場所を見やる。

 

 燃えかすがぽつんと残っている。

 

 少年が戻ってくるのを待つ間に、リュックの中から、交易所で手に入れておいた、乾物を取り出す。

 

 ん?あ!斧買い忘れた!

 

「おっさん、どうした?」

 

 木の枝を抱えて戻ってきた少年が、天を仰ぐ私を見てそう言った。

 

「・・・いや、何でもない」

 

 多分私の顔は大丈夫じゃないと言っているが、私はそう言った。

 

「あっそ。木の枝持ってきたから、火、つけてくれよ。もう寒くて仕方ねぇ」

 

「ああ、わかった」

 

 昨日の燃えかすの上に、木の枝を組む。そして、枝を一本とって、燃えかすをほじくり返す。

 すると、灰の下から火種が出てくる。

 そこに息を吹き込んでもいいが、面倒くさいので、着火材を放り込む。

 組み上げた木の枝があっという間に火だるまになる。

 

「ああ~あったけ~」

 

 少年が手のひらを温めている間に、私はリュックからパンとチーズを取り出す。

 それぞれいい感じの大きさに切って、少年にそれぞれ一切れずつ渡す。

 

「ありがと」

 

「私も一切れ頂いてもよろしいですかな?」

 

 そう声をかけてきた、老人にもパンとチーズを一切れずつ渡す。

 

「それにしても、今朝は冷えますね」

 

 老人がパンの上でチーズを溶かしながら言う。

 

「ほんと、神様はなに考えて、世界をこんなにも寒くしたのかね」

 

 少年も、パンを焼きながらそう言う。

 

「世界全体が寒いわけではない。ここがたまたま寒いだけだ。」

 

 私は、鍋にミルクを注ぎながら言う。

 ところで、一人増えたな。

 物凄い自然に入ってきたので、受け入れることにしたが、何故老人がここにいるんだ。

 

「ところでじいさん、あんた誰だ?」

 

「私は、白梟という宿の主です。」

 

 老人がパンを齧りながら言う。白い髭に何故チーズが付かないのか気になる。

 

「あんた、黒い液体を知ってるか?」

 

 少年が、チーズを伸ばしながら言う。

 私はミルクの入った鍋を火にかける。

 鍋を吊すためのスタンドは、私の右手だ。

 やるんじゃなかった。

 

「ええ、存じ上げておりますよ」

 

 言いながら、老人は、背負っていた袋から、棒の束を取り出した。

 

「そこの盆地にたまっている、あの忌々しい液体のことは、よく知っています」

 

 老人は、取り出した棒の束を引き伸ばした。

 そして、その束は、三本足のスタンドになった。

 老人は、私から鍋を受け取り、スタンドにかけた。

 助かった。二の腕が悲鳴をあげている。

 

「あれは一体何なんだ?」

 

 少年は、そう言って、パンの最後の一口を、口に放り込んだ。

 

 老人は語る

 

「あれは『黒の水』。過去を歪めてそこにあり続ける物です」




自分で作った伏線が、既にキャパオーバー


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