死神と呼ばれた犯罪者 (たわかなはたやかや)
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ヘルガー編♯1

暇つぶしです。続くか続かないかは自分の気持ち次第です。


今日、偶然通りかかったフレンドリィショップで日記帳を買ったので日記を付けていくことにする。

 

まずは誰かがこれを覗いた時に誰の日記帳かわかる様に簡易的な自己紹介でもしておこう。

 

名前:キユリ 20歳

出身はシンオウ地方、シンオウリーグ決勝敗退。

今はシンオウ地方の隅の方にあるナギサシティで個人業を営んでいる。“ナギサ屋”っていうカフェだ。現チャンピオンのシロナに贔屓にしてもらってるからかなり有名になってきた。後一応男だ。こんな名前でも。

 

まあ自己紹介はこんな所でいいだろう。そんなことを書くために買ったんじゃないし。

 

本題に移ろう、この日記には私が秘密裏に行っている事を書こうと思う。

 

まず、私は犯罪者である。裏の世界では“死神”なんて大層な二つ名がつけられているぐらいには。

犯した罪を詳しく記載するのならば、“自作のドーピング薬や肉体改造を行い最強のステータスに改造したポケモンをあらゆる業界に売り飛ばした罪”だ。金をもて余したボンボン、異常なコレクター、四天王、一部のトレーナー、悪の組織等々、様々な者たちに売り飛ばした。四天王に売ってくれと言われた時は流石に警戒して仮面を付けてボイスチェンジャーも付けて身バレしない様にしたが。取引の交渉をしただけで帰った辺り裏で警察と繋がっているだろうと踏んでいる。

 

.....だが、最近足を洗おうかとも考えてる。シロナさんのおかげで稼ぎが良くなってきたからだ。

 

↑←↓→

 

私が日記をコツコツと書いていると、店の入り口のドアがガラリと音を立てて開かれた。

 

「は~い、来たわよキユリ~。」

 

聞きなれた声の方を向くとお得意様のシロナさんがいた。書きかけの日記をパタンと閉じて胸ポケットに入れ、静かに私は受付に向かう。

 

「いらっしゃいシロナさん、今日は何にしますか。」

「あはは、じゃあいつものをお願いしようかしら。」

 

いつものとはこの店の朝メニュー。角砂糖1つ入りのコーヒー1杯に少し焼いた食パンにバターを塗った物のセットだ。ちなみにお好みでハチミツかあんこ1ペーストもつけれる。派生料金50円発生するが。

 

「かしこまりました、お好みでハチミツかあんこ1ペースト付けれますが」

「じゃあハチミツでお願い。」

「かしこまりました。」

 

私はシロナさんをカウンター席に案内し、作業に取りかかる。

 

「.....最近ここに来れなくてごめんね。」

「いえ、私もシロナさんのおかげでこの店に人が来てくれる様になりましたから。暇はしていませんでしたよ。」

「ちょっと聞いてくれるかな、最近のあたしの話。ちょうど誰もいないし。」

「ええ、なんなりと。」

 

「最近、チャンピオンの仕事が忙しくなってね、四天王を易々と突破してくる子達が増えたのよ。しかもその子達の使うポケモンの目は決まって怯えているの。まるで()()()()()()()()みたいに。」

「...成る程、最近のポケモントレーナーは物騒ですね。」

 

「それだけじゃないの。その目をしているポケモンはどのポケモンでも尋常じゃない強さなのよ。私のガブリアスでも倒すのに一苦労するのよ。」

「...!」

 

倒せるのか、あの改造ポケモンを。誰にも負けない程強く鍛えこんでから肉体改造した筈だが。

 

「.....つい先日ですかね。私も似たような事に遇ったんですよ。」

「え、それってどういう.....」

「突然トレーナーが襲いかかって来ましてね、彼のペルシアンが似たような目をしてまして.....何とか私も相棒のビークインで撃退出来ましたが...シロナさんのところにも似たような事があったことに驚きですよ。」

 

半分嘘で半分あってるようなものだ。シロナさんの話で辻褄があった。

彼は大金はたいて買った改造ポケモンを使ってシロナさんに勝てなかったから私に八つ当たりしに来たのだろう。当然私のビークインも改造済みだから勝てるわけがない。

 

「.....まあ、お互い災難でしたね。それとこちらご注文の品です。熱い内に召し上がって下さい。」

 

「まあ!ありがとう!」

 

彼女が座るテーブルに作った料理を置く。置かれた直後、彼女はあんこペーストを付けて勢いよく頬張った。

 

もぐもぐと咀嚼するその姿はまるでパチリスの様に可愛らしい。

 

「~!やっぱり美味しいわ~、最近食べれてなかったから余計にね!」

「それはもったいなきお言葉.....」

「今度私の知り合いの子も連れてくるわね!絶対気に入ってくれると思うから!」

「はい、心待ちにしていますよ。」

 

はて、シロナさんの知り合いと言えばどんな子なんだろうか。まあ、彼女とお近づきになれるほどなのだから人望も高く、ポケモントレーナーとしても優秀なのだろう。

そこまで考えて、思い出したことが一つあった。

 

「シロナさん、今度お友達の方と来られるのならこちらを。」

「あっ!割引券じゃないの、いいの?貰っちゃって」

 

「ええ、シロナさんだってお友達の方にあまり高い金額を払わせたくないでしょう?カッコつけるチャンスですよ」

「.....まあ、そうね。じゃあありがたく貰っておくわ。それと!美味しかった!代金はここに置いとくわね。」

 

パンッと勢いよく代金がカウンターに置かれた。そして嵐の様にシロナさんは去って行った。

 

私は完食されている料理を見て、いつの間に食べきったんだろう、なんて思いながら後片付けに入ったー

 

 

↑→←↓

 

 

時間は過ぎて午後6時。閉店の時間なので店の観覧板に閉店ですと書く。

あれから今日も大繁盛。一人で運営するのはさすがに骨が折れる。そろそろバイト制度取り入れるか.....。

 

まあそれはそれとして、だ。閉店後は改造(犯罪)の時間だ。

 

店内のカウンターの奥、冷蔵庫があるのだがその中に私しか持っていないカードキーを差し込む所がある。そこに差し込むと、冷蔵庫が左側に動き秘密の部屋へ繋がる扉が現れるという仕組みだ。悪の組織の基地でよくあるようなタイプだが以外と便利な機能である。

 

そして、扉を開いた先には先ほど差し込んだカードキーが別の挿入口から出てくる。そのカードキーをとればセンサーが反応して再び冷蔵庫が所定の位置に戻る仕組みだ。

 

肝心の扉の先は地下へと続く螺旋階段だ。この先に私の改造兼研究室があるのだ。

その螺旋階段を降り、私は固く閉ざされた扉を開く。そこにはいつもながらの()()()()()()()()が映っていた。

 

「.....今日も元気だな。君たちは。」

 

強化ガラスケース(飼育箱)の中でこちらを睨み、遠吠えするヘルガー、頬を紅潮させながらビクッ...ビクッ...と体を痙攣させるミミロップ、さらには普通じゃあり得ないほど筋肉質なカイリュー.....

.....上げだしたらキリが無いが、これら全てが金持ち、トレーナー用の商品である。相手のご希望に合わせて弄っているのでこれほど悪趣味な絵面になっているわけだが。

 

「.....ヘルガーは()()()だな。」

 

未だに私を睨み付け、グルルルと鳴くヘルガーの強化ガラスケース(飼育箱)前に立ち、ガラスケースの手前にある装置にヘルガーのモンスターボールをセット。するとセットしたモンスターボールがガラスケース内に転送され、ヘルガーを吸い込んだ。

 

後は私が直にお客様の元へ送れば仕事完了.....と言いたい所だが、()()()()()()が残っている。

.....調教だ。

 

部屋の隅にあるドリームボックス(仮名)の中にヘルガー入りのモンスターボールを投げる。ヘルガーが中から出てきたのをセンサーが感知するとモンスターボールがドリームボックス前の装置に転送される仕組みだ。

 

その過程を終え、私の手元にモンスターボールが渡る。ドリームボックス(仮)は超強化ガラスを使っている+完全防音なので中で泣き叫ぶポケモンの声が他のポケモンに聞こえ更なる恐怖心を与えない様配慮された仕組みだ。

そして、ドリームボックス前の装置にもう一つのボールをセットする。私の手持ちのビークインだ。

 

無事ビークインはドリームボックスの中に出され、睨み付けてくるヘルガー相手に慣れたように下半身の巣から大量の改造ミツハニーを放出した。

改造ミツハニーには、一匹一匹に長く鋭い針が付いており、その針に刺された者は「もうどく」、「まひ」、「ねむり」、「やけど」の全てが発症する。これで戦意喪失させるのだ。

そして、()()()。実戦において状態異常のかからない個体へと変える。細胞レベルで全環境、全状態異常を難なく乗り越える最強種へと変えるのだ。

 

「...唸らない。痛がる様子もなければ、データに異常も見られない。」

 

完璧だ。後は()()にセットするだけで完成だ。

ヘルガー、ビークインの入っていたボール、をドリームボックスにかざし、ヘルガーを回収。そして隣にあるある装置にそのボールをセットする。

私や私のポケモンに対する恐怖以外の記憶を削除し、人懐っこい個体へと性格を改造するマシンだ。普通のポケモンには使用しないが、ヘルガーのような元が凶暴なポケモンには性格がどうであれ使用する。

 

しかもその作業工程にかかる時間はたったの30秒。我ながら革新的なマシンを生み出したものだ。

そして、全作業工程を終えたボールを手に取る。

 

「行きますか。お客様の元へ。」

 

黒い外套と変装マスクを被った私は、出口へ向けて歩いて行った。



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