姉妹喧嘩 (shushusf)
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雪乃の黒歴史

 

衝撃だった。

 

 

 

確かに私はここ最近食べることにうつつを抜かし、運動することを怠けていたのかもしれない。

でも......でもね? 流石にここまで一気に増えると、私的にやっぱり乙女なわけで、この残酷な現実には辛い物を禁じ得ないわけで......

 

 

体重計の上で、私、雪ノ下陽乃はきっと顔を白くしていることだろう。

どんな女性でもきっとこんな顔をすると思う。それほどまでに今回の数値の上昇は......残酷だった。

認められない。いえ、こんなの認めてはいけない。とにかく、可及的速やかに元の数値に戻さないと......雪ノ下陽乃ともあろう私が......クッ......これは、私の威厳に関わるわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、姉さん......その体重計の数字......」

 

 

 

 

 

 

 

最悪のタイミングで、最悪の人物が現れてしまった。雪ノ下雪乃、私の可愛い可愛い妹。でも、今だけは、今だけは最も会いたくなかった、体重計とは無縁なスレンダーな子。

 

 

「ち、違うの雪乃ちゃんっこれはこの体重計が壊れているだけで」

 

 

私は咄嗟に言い訳のようなことを口に出してしまう。大体、この体重計って先週買ったばかりのやつだし。目の前の妹に格好の餌を与えてしまったことに、また私の顔から血の気が引く。

 

 

「ふふっ......いいのよそんなに慌てないでも、別に姉さんが少し肥えてしまったことなんて誰にも言わないもの......うふふふふ」

 

 

妹が薄く、勝ち誇ったような笑みを浮かべ始めた。そう、獲物を見つけた肉食獣のように獰猛で、また見方によれば面白い玩具を見つけた子どものような顔で。

 

 

「まあ、胸にそれだけ無駄な肉がついてしまっているのだし、そのくらいは代償だと思って甘んじて受け入れるしかないのではないかしら? ......うふふふふ......あら? それともお姉様ともあろうお方がまさか自分の体重に動揺していらっしゃるの? 」

 

 

雪乃ちゃんは心底楽しそうに私に言う。そして、部屋を出ようと雪乃ちゃんはドアノブに手をかけ、そこで顔だけスッとこちらに向けると......

 

 

 

 

「姉さん......お可愛いこと」

 

 

 

 

これが、嘲笑混じりのこの言葉が、私の心に火を付けた。

 

 

 

 

* * *

 

 

 

あれから、2週間がたった。

 

もちろん泣き寝入りをしていたわけじゃない。ほら、忘れた頃に仕返しをした方がインパクトも被害も大きいでしょう?

あれだけの屈辱を私に浴びせたんだ。たとえ、最愛の妹といえども絶対に容赦はしない。

 

と言うわけで。

雪ノ下陽乃、今目の前にあるは夕方の奉仕部部室のドア......さて、怖いもの知らずなあのまな板ペチャ乃に社会の厳しさを教えて上げるため......出陣しますか。

 

 

 

 

「ひゃっハロー。みんな♪ 」

 

 

 

 

部室の中を見ると、ターゲットの雪乃ちゃんは当然として、比企谷君をはじめとしガハマちゃんに生徒会長ちゃん、小町ちゃんが呆けたように私を見ていた。突然の異分子の訪問にみんなびっくりしているようだ。

 

だけど、私はまず比企谷君と目を合わせる。ニヤッと笑みを浮かべることも忘れない。

 

え? 何でかって? これから起きることを考えたら楽しくなってきちゃったからだよ。

 

すると何か不穏な空気を感じ取ったのか、比企谷君はぶつぶつ言いながら席を立って逃げ出そうとした。だけど私は逃さない。彼の腕を掴んで強制的に座らせる。もちろんこの私が逃すわけないでしょう? だって彼がいないと......これから始まる雪乃ちゃんへのお仕置きの効果が半減しちゃうんだから......

 

 

「姉さん、あなた何をしに来たのかしら」

 

 

 

雪乃ちゃんは少し余裕を持った口ぶりでそう言う。ない胸を張ってドヤるのはいつもは可愛いと思えるのかもしれないが、今は正直イラッとした。ええ、腹立たしいことにこの妹はあのことがあってから私を少し舐めているの。

......待っていなさい。今からあなたは哀れに狼狽しながら悲痛な叫びを上げることになるのよ。

 

と、その前に。

 

 

 

「ねえ比企谷君。雪乃ちゃんが動かないように体を押さえておいてくれないかな? 」

 

「......嫌ですよ。何で俺がそんなことしなくちゃいけないんですかね」

 

 

 

 

比企谷君はそう言って警戒する。まあそんなことは想定済み。だから当然私はカードを用意している。

 

 

 

「比企谷君、最近ね? うちの父があなたとゆっくり2人でお食事したいって言って聞かないんだよね。このままだとお母さんに伝わって強制的にそんなことが起こっちゃうかもなんだけど......今なら私の意見によってはとりあえず白紙にすることもできるけど......」

 

「雪ノ下......許せ」

 

「ちょっ比企谷君!? 」

 

 

 

 

ふふ、うまくいった。彼氏に抱きつかれて顔を赤くしてちょっと嬉しそうにしてる雪乃ちゃんはムカつくけど、まあこれで準備完了だ。

もしもの時のために今朝お父さんにはちゃんとおねだりしておいたんだけど、まあこれでスペアプランの必要性はなさそうね。

さあ、仕返しを始めるとしましょうか......恨むのなら自分の過去の業を恨んでね......雪乃ちゃん。

 

 

 

 

 

「皆さん、この1冊のノートをご覧ください。今からこれに綴られている内容を音読したいと思うので、しっかりと! 聞いてね」

 

 

 

 

私は、もう半年前から雪乃ちゃんが綴っているノートを出した。雪乃ちゃんは誰にもバレていないと思っているみたいだけど、私をはじめもうお母さんもお父さんもその内容をバッチリ知ってしまっているそのノート。雪乃ちゃん以外のみんなは、そのノートを不思議そうに眺めていた。

ただ雪乃ちゃんだけは、さっきまでのムカつく余裕を消して、一気に顔面から血の気が引いている。

 

 

 

 

「まっ......待って、お願いします待ってくださいお姉様」

 

 

 

 

雪乃ちゃんはようやく自分の置かれた状況を正しく理解したのか、悲壮な表情で私に許しを乞うてくる。暴れても、比企谷君が抑えているからもうどうにもできない。

 

 

ふっもう今更遅いよ。......乙女の体重を揶揄うなんていう、自分がしてしまった業の深さに飲み込まれるがいいわ。

 

私は息を吐いて、そのノートに綴られていた......雪ノ下雪乃による、比企谷君への熱い想いを朗読した。

 

 

 

 

 

 

 

『好き、あなたが好きよ比企谷君......どうしてあなたはこんなに私の心を掴んで離さないの? まあ、私の全てはもうあなたのものだけど......ね? 』

『はちまん、はちまん、はちまん、はちまん......たったこれだけの、たったの4文字が言えないの。どうしたら言えるんだろう』

 

『比企谷君は多分麻薬なの。だって、彼を見るたび、私は痺れて動けなくなっちゃうんだもの』

 

『あなたのことを思うとそれだけで......会っていようと離れていようと、火が燃え盛るように、私の心も燃えているようです』

 

『比企谷君、ああ比企谷君、比企谷君、八幡大好き、もう離さない』

 

『もしあなたに会わなかったのなら、私はこんなに苦しむこともなかったのかしら......いいえ、あなたのくれた痛みなら、私はどんな痛みも喜んで受け入れますよ』

 

『夢を見た、あなたと8人の子供たちに囲まれて、幸せな生活を送るの......叶えたいと思うのは、私だけかしら? 』

 

『愛してる、あなたのことを、愛してる、愛して愛して、私も愛して』

 

『どうしてあなたはそんなにカッコいいの? あなたを見るたび、私はもう蕩けてしまいそうです』

 

『あなたに欲情されたい』

 

『雪ノ下雪乃は、比企谷八幡を、愛しています』

 

『My love ...... forever.Hachiman』

 

 

 

 

 

まだまだ全体の10分の1にも満たない。このノートには、本にしたら結構なページ数を使うくらい膨大な雪ノ下雪乃の重い想いが詰まっている。実際重すぎて私もお母さんもお父さんも結構引いた。

 

 

 

 

 

「えっと......雪乃さん」

 

小町ちゃんの微妙に遠慮した声。

 

「っぷ......」

 

我慢しきれず吹き出した生徒会長ちゃん。

 

「」

 

完全に固まってしまったガハマちゃん

 

「うぅ......うぉぉ」

 

呻き声を上げる比企谷君

 

 

 

 

 

 

「ああ......あああああ......ああ......」

 

 

 

 

そんな代物を大公開された雪乃ちゃんは、声にならない叫びをあげる。

 

 

 

 

 

そして部室の中の視線を独占し......体から、完全に力が抜けてしまう。もう表情もない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いっそ......一思いにやって......」

 

 

 

それがこの日、雪乃ちゃんが発した最後の言葉だった。

 

 

 

 

 

Mission complete

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

スキルまとめ

 

 

雪ノ下雪乃

 

・乙女ポエム←new

 

 

雪ノ下陽乃

 

・ぷよぷよ←new

 

由比ヶ浜結衣

 

・⁇

 

一色いろは

 

・⁇

 

比企谷小町

 

・⁇

 

川崎沙希

 

・⁇

 

比企谷八幡

 

・⁇

 

 



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雪乃の1000倍返し

みなさんこんにちは、雪ノ下雪乃よ。

 

さて……今日の部活での姉さんによって起こされた大災害。大人気なくも自分がブタになった腹いせを私の黒歴史を暴くという手法でもって返してきたあの出来事。みなさんは覚えてくれているかしら?

 

 

 

あれから時間はそんなにたっていなくて、今はたかだかあの大災害から数時間しか経っていない夜なの。

 

 

 

ふっ……私が立ち直るのに何日もかかると思ったのかしら? たしかに被害は甚大だったわ。

あれから小町さんには可哀想なものを見る目で見られるし、一色さんの目の奥には嘲笑が浮かんでいた。……由比ヶ浜さんはどう私に接したらいいのか分からないのか私を見るときだけ目から感情を頑張って消そうとしていたし、なにより……比企谷君が……今日、一回も目を合わせてくれなかった……近づかせてもくれなかった……

 

 

 

 

ええ、もうこれだけで、万死に値するのよ。

 

私は、姉さんを絶対に許さない……

 

 

 

やられたらやり返す……1000倍返しよ。

 

 

 

 

* * *

 

 

 

というわけで、私は今、実家の風呂に入っている姉さんの声をとるために、風呂の中から一枚ドアを隔てた外にいるわ。

 

 

え? どうして風呂の中にいる姉さんの声をとることが仕返しになるのか疑問なの?

 

 

ふふっ……それはね? 本当に数少ない姉さんの弱点だからよ……それも、相当に恥ずかしい……ね……

 

 

これに気づいたきっかけは本当に些細なことだったわ。

忘れもしない、とある木曜日。それはまだ姉さんが私の元いたマンションの一室に住んでいた時のこと。私は忘れてしまっていた私物を取りに行くために、親から鍵をもらって入ったの。私が中に入ってもいるはずの姉さんは何の反応もなかったから、留守だと思って家の中を進んだら……

 

 

 

 

 

 

『んあああああんんん!!!!!!!!!!!ひきがやぐぅぅぅん!!!!! 』

 

 

『だめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!!!!!!!! 』

 

 

『はげしすぎてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇイッちゃうのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!! 』

 

 

『んあんなああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁあああああああああああああうあああああああああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああ』

 

 

 

 

 

 

 

風呂場から聞こえてくる姉さんの絶叫。生々しい喘ぎ声に聞こえてきた私のパートナーの名前。異常に長い断末魔のような叫び。

 

 

 

 

 

 

その時は、流石の私も恐怖を覚えてすぐに逃げ出したわ。

 

 

でもね? その日の夜、実家に帰ってみて、ベッドに入ってまた考えてみたの。いくらなんでもあの姉さんがあんな狂人な訳がないと。きっとあれは私の心の中にいる、姉さんを畏怖するモノが生み出した幻聴に過ぎないのではないかと……

 

 

だから私はまた、もう1週間たった木曜日にまた姉さんが住んでいたマンションに同じ時間に行ってみたのよ。あれは幻聴だったと証明するかのように。

 

 

すると……

 

 

 

 

 

 

 

『ぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁあああああああああああああ』

 

 

 

 

 

 

 

真実だった。

 

酷いことに、もう1週間たった木曜の同じ時間にもこの恐ろしい出来事は行われていたわ。

 

さらに悪いことに、最近姉さんが実家に住み着くようになってからも、木曜の夜の時間帯には父と母が仕事でまだ帰らない且つ、私が予備校の時間帯に絞って……姉さんは、毎週木曜日にこれを続けているの。

 

 

 

さすがにね? 恐ろしすぎてこれをエサに姉さんをゆすろうとも思えなかったわ。この現実は、私だけが墓場まで持っていこうと……そう、決めていた。

 

 

 

 

「もうそうとも言ってられないから……死なばもろともよ……姉さん」

 

 

 

 

とにかく、そういう経緯で私は今脱衣所で、携帯のカメラ機能をonにしたまま身を屈ませているの。姉さんを……姉さんの心に私と同じくらいの辱めを味あわせてあげるために。そのためにわざわざ今日は予備校だって休んだのだから!!

 

 

 

 

『ああっん……ひきがやくぅん……今日は一段とはげしいよぉん』

 

 

 

ふふふ……始まったわね。

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

「えっと……なんでここにみんな呼ばれたんだ? 雪ノ下」

 

 

翌日、私は奉仕部のみんなを半ば無理やりに実家に招待した。リビングにとりあえず腰を落ち着けてもらう。比企谷君はビクビクしながらも、みんなの疑問を代表するように私に問うた。

 

 

 

「いきなりごめんなさい……でも、あなたたちに聞いてほしいことがあるの」

 

 

 

その真剣な私の言葉に、比企谷君は真面目な顔になる。由比ヶ浜さんも何かを恐れるような目をし始め、一色さんと小町さんは戸惑いを隠さない。

 

 

 

 

「雪乃さん! そんなっそんなことする必要ないですよ! 」

 

「そうです雪乃先輩! そんなことで別れるなんて雪乃先輩らしくないです! 」

 

 

 

 

 

何を勘違いしたのか、二人は私に懸命に訴えた。

 

 

 

「大丈夫よ。私としては……比企谷君と、絶対に離れたくないから」

 

「そ、そうなんだ……よかった。でも、じゃあここに私たちを呼んだのはどうして? 」

 

 

 

 

由比ヶ浜さんの気遣わしげな声が聞こえた。そしてそのすぐ後には、私が聞き慣れた声が聞こえる。

 

 

 

 

「雪乃? 私を呼び出した意味は何なのかしら? 」

 

「それは、私も聞きたいな」

 

 

 

「うぐぇっ!? 」

 

 

 

 

そう。お母さんとお父さんも呼んだのよ。目が飛び出そうなほど驚いている比企谷君にはちょっと申し訳ないわね……

 

 

 

「母さん、父さん……もちろんあなたたちも、来てくれてありがとう。ここに集めた意味なら、もうすぐ分かるわ」

 

 

 

 

 

「ただいまぁ! ……あれ? なんで? こんなとこにみんないるの? 」

 

 

 

 

これから何が起こるかも分からず、未だに昨日の勝利に酔った様子の姉さん。私を一瞬見た彼女の目は、優しさに溢れていた。ムカつく。

 

 

 

「姉さんも、聞いてほしいの。私の気持ち」

 

「え? 雪乃ちゃんの気持ち? 」

 

「そうよ」

 

 

 

 

言いながら、私はスマートフォンからデータを移したパソコンを起動させ、全員に見せるために事前に用意しておいたプロジェクターがきちんと準備できているかを確認。問題ないことを確認できた後に、リビングの電気を消す。

 

 

 

 

 

「これから、全員に見てほしい……聞いてほしい音声があります」

 

 

 

「ん? これは……ウチの風呂場かな? 」

 

 

 

音声を出す前、プロジェクターに映る動画を動かす前に出てきた映像に、父がそんな感想を漏らす。

善は急げ。それを聞いた私はすぐに昨日スマホの動画機能で録音した”あの音”を公開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あぁん……ひきがやきゅん……すきぃ』

 

『だめん……ひきがやくんったらがっつきすぎよぅん……そんなにお姉さんがいいのぉ? 』

 

『あっ……そんな汚いとこなめないでん……』

 

『ひきがやくんはげしすぎぃぃん』

 

『あっ……だめぇぇん!!!!!! 』

 

『アンっきもちぃ……アンアンっきもちいいよぅ……あああんっ!! もっとぉ』

 

『ああ!!! っあああああああああ!!!!! ぁああああああああああ!!!!! イくぅぅぅぅぅぅぅ!!! 』

 

『あああああああああああああああぁあああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上映が終了した。たしかに映像はひたすら風呂場のドアしか写っていない。だが、ここにいる人たちならみな分かるでしょう。

 

 

……この声の主が、誰なのか。

 

 

 

 

 

 

 

父が、母が、比企谷君が、由比ヶ浜さんが、一色さんが、小町さんが、とある一人の方を向いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「い、いやああああいああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああ!!!!!!!!!!!! 」

 

 

 

 

 

 

 

私は、晴れやかな気分でターゲットの、動画とは違った意味の絶叫を聞く。

 

 

 

 

 

Mission complete

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

スキルまとめ

 

雪ノ下雪乃

 

・乙女ポエム

 

 

雪ノ下陽乃

 

・ド変態←new

・ぷよぷよ

 

 

由比ヶ浜結衣

 

・⁇

 

一色いろは

 

・⁇

 

比企谷小町

 

・⁇

 

川崎沙希

 

・⁇

 

比企谷八幡

 

・⁇

 



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いろはクライシス

みなさん、あの姉妹どう思います?

 

あ、どうもです。一色いろはです。

 

 

なぜこんなことを言ったかというとですね、まあみなさんもう察していただけると思うのですが、あの姉妹の最近の惨状にあります。

 

 

あ、一応経過報告しときますね。雪乃先輩とはるさん先輩なのですが、今は冷静になったのか、お互いのやってしまったことの業に精神をやられています。雪乃先輩ははるさん先輩に仕返しした翌日からはまた表情をなくしていましたし、はるさん先輩も総武にまったく来なくなりましたし。

 

 

まあおおかた、復讐した後に自分たちが何やってんのか分からなくなって、次いで自分の恥ずかしすぎる黒歴史の重みに精神が耐えられなくなっただけだと思いますけどね。

 

 

さあ、ここまでが現状の報告です。

これを踏まえて……私一色いろはは思うところがあるわけですよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

これ、せんぱいを略奪するまたとないチャンスじゃね?

 

 

 

 

 

 

ふっふっふ……今なら雪乃先輩もはるさん先輩も心身喪失状態。懸念の結衣先輩もまったく動く気配はない。お米はどうせせんぱいに関しては静観でしょうし。

 

 

……天は私に味方したというわけですか……相変わらずいろはちゃんは神に愛されていますね。

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

翌日。放課後になりました。

 

私は奉仕部に行く前のせんぱいを捕らえるため、せんぱいのいる教室にわざわざ来ました。というのも、今日はせんぱいを奉仕部に……雪乃先輩と結衣先輩に近寄らせないため。私につきっきりにさせるためっ! これからせんぱいを捕らえるのです!!!!!!

 

 

 

いざ行けいろは!!!

 

 

 

 

「すみませ〜ん!!!!! 」

 

 

敢えて、私は教室に入ってからわざわざ大きい声を出します。なぜなら…………

 

 

 

 

「あれ? いろは、どうしたん……ああ。多分だけど、目当てならそこにいるよ」

 

「ありがとうございます〜さすが葉山先輩っ!! 」

 

 

 

 

 

恐らくすぐに葉山先輩なら私に反応してくれますし、葉山先輩ならすぐに私の意図に気づいてくれるから。

その読み通り、葉山先輩は少し悪い笑みを浮かべた後、せんぱいの居場所を視線で教えてくれた。いやぁ! ほんとに葉山先輩って役に立ちますっ!!!!!!!

 

 

 

 

葉山先輩の視線の先には、せんぱいが机につっぷして寝ているふりをしていました。その場所まで私が近づいてもせんぱいは狸寝入りを決めたままです。ああ、フリですよこれ絶対。なんとなく分かります。

 

 

 

「せ〜んぱい? 手伝ってほしいことがあるんですよ〜」

 

 

 

せんぱいはだんまりです。あんまりです。

 

 

 

 

「ねぇ……せんぱいっ……私、せんぱいに助けて欲しいなぁ……」

 

 

 

せんぱいの制服の袖をちょんと持って、耳元であったかい吐息とともに甘えた声を漏らします。耳に息が当たってびっくりしたのかちょっとビクッてしてましたね今。可愛いです。

 

 

 

「せんぱい……これ以上反応がないと、私勢いあまって泣き喚いちゃうかも」

 

「……何の用だよ」

 

 

 

 

はぁ……やっと起きたか。せんぱいってほんとなんなんですかね。こんなに可愛い後輩がせっかく頼ってるっていうのに。なんでこんな嫌な顔してるんでしょうか。脅さなきゃ起きないって本当プンスカですよ。

 

 

 

「せんぱいに生徒会の仕事手伝ってもらいたいなぁって」

 

「……雪ノ下とか小町の許可が必要だな」

 

「昼休みにはラインでもらいましたよ。お米ちゃんはすぐ許可くれましたし、雪乃先輩は使い物にならない状態みたいなので、結衣先輩が雪乃先輩と直で話してきてくれて、わざわざ結衣先輩が私の教室まで来て代わりにオッケーくれました」

 

「……ああ、、そう」

 

 

 

 

 

そんな会話をすると、せんぱいはやっと渋々荷物をまとめます。その姿に私はニンマリとしながら、せんぱいの手をとって生徒会室に連れて行きました。

 

 

 

 

* * *

 

 

生徒会室。

 

 

 

 

「なぁ……仕事ってなあに? 」

 

「ああ、書類系はないんです。ただ、ちょっとせんぱいにはサンプルになって欲しいなあって」

 

「え、なに? 俺で人体実験でもする訳? 」

 

「そんなんじゃないですよ。……えっと、生徒会で恋愛特集の雑誌を作ろーかなーって思っててですね。壁ドンとか顎クイとかあすなろ抱きとかを実際にやってみてくれる男手が必要だったんですよ」

 

 

 

まあ、そんな企画ないんですけど。

 

 

 

 

「……は? ……帰らして? つーかこんなのバレたら俺もお前も多分バラされるぞ」

 

 

 

いやまあ、たしかにそこは普段なら危惧するところではあるんですが……せんぱい冷や汗ダラダラじゃないですか怖がりすぎですよ。

 

 

 

「せんぱいがバラさなかったらバレませんよ……雪乃先輩、どうせ今使い物にならないんだし」

 

「いや、それじゃなくてもそんなことしたくないから」

 

 

 

 

予想通り、せんぱいは頑なに拒もうとしてきました。

……だけど、そんなことは予想済みです。さて、お米ちゃんに今度ケーキを1ホール奢ることを条件に得たこいつが火を噴く時ですね。

 

 

 

「……お米ちゃんからですね、せんぱいが結衣せんぱいの胸ガン見してる写真何枚かもらってるんですよね。……やってくれなかったらこれが雪乃先輩だけじゃなくてはるさんの目にも入ることになりますが」

 

「さあ早くやろうか」

 

 

 

 

せんぱいは食い気味に乗ってきた。

なんだか複雑なところもあるけど、これで作戦は9割達成だね……ふふふ……うふふふふ……

 

 

 

 

「じゃあせんぱい、まずは壁ドンをお願いします」

 

 

せんぱいはほんっとーに渋々といったふうに、私とともに壁まで移動。そして、ちょっと顔を赤くして目線を反らしながら、私に壁ドンをした。

 

 

「っ……つ、次は、甘い言葉を囁いてください。出来るだけ甘くです。恋人に言うように」

 

 

そんな私の指示に、せんぱいは余裕のない目で私を見た。顔が近い。せんぱいの暖かさを感じる距離。多分私の目は潤んでいるし、顔もちょっと赤いだろう。……それが助けとなったのか、そんな私を見たせんぱいは明らかにドギマギしだした。

 

 

 

「せんぱいっ、真面目にやってくださいね?……じゃないと写真……」

 

 

 

私の脅しに屈してくれたのか、やっとせんぱいはその気になってくれた。せんぱいは私の耳もとまで口をもってくると……

 

 

 

「愛してる……お前が好きだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひ、ひゃあああああああああああああああああああああああああああぁああああああああああああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああ

 

 

 

 

 

 

やばいやばいやばいやばい今のやばすぎる最初なのにすっごいのきちゃった。

 

 

 

 

 

 

 

「お、おおおっけーです!!!!! じゃあ次は、そのまま私を抱きしめてみましょうか! 」

 

「い、いやお前それは」

 

「写真、本物」

 

「うぐっ」

 

 

 

ちょっと私も理性がやばいみたいです。一刻も早くせんぱいに抱きしめて欲しいばかりに弱みを二段構えで使ってしまいました。ただ、その効果は絶大だったみたいで……

 

 

 

 

「ああ……しぇんぱいぃ……」

 

 

 

せんぱいに抱きしめられてるせんぱいに抱きしめられてるせんぱいに抱きしめられてるせんぱいに抱きしめられてるせんぱいに抱きしめられてるせんぱいに抱きしめられてるせんぱいに抱きしめられてる。

 

そのたくましい感触に私はついに理性が崩壊し始め、せんぱいの腰に手をガッツリ回した。

 

 

ああ……せんぱい……いい匂いガッシリしてる……ずっとこの人に抱きついていたい……すきぃ……せんぱい大好きぃ……だいしゅきぃ……

 

 

 

 

でもまだだ。まだしたい。私の欲望は止まらない。

 

 

 

「ねぇ……次で最後にするから……ちょっとだけ離して? 」

 

「お、おう……」

 

 

 

私は名残惜しいが一旦せんぱいから離れ、鞄の中からポッキーを取り出した。そしてポッキー一本をまた取り出して……

 

 

 

「ぅんん……しぇんはい……ほっいーえーむしましょう? 」

 

 

 

口に咥え、せんぱいに反対方向を差し出す。

せんぱいはかなり狼狽しているようで、なかなか反対側を咥えてはくれなかった。

 

 

……だから私は痺れを切らし、無理矢理にポッキーをせんぱいの口元に押しつけるようにもっていく。ここで折れたらもうそのまま私の口をせんぱいのそれにぶち当てるつもりだったけど、ポッキーは折れてくれず、上手くせんぱいの口元がポッキーの反対側を咥えてくれた。

 

 

 

「んふふ……いひましょう? しぇんぴゃい? 」

 

 

 

一口、また一口と、私の唇はせんぱいの唇に近づいていく。もう私は止まる気は無い。途中でせんぱいが逃げても意地でも捕まえて蹂躙してやる。そんなことを思っている間にも唇の距離は近くなって……

 

 

 

「だぁいしゅき……しぇんぱい……」

 

 

 

とうとう、その距離はゼロに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「させるわけないでしょう。一色さん」

 

「随分舐めた真似してくれたね、生徒会長ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思わず、ほんの少しの長さしかなかったポッキーが床に落ちた。聞こえてはならない人たちの声が……廃人と化しているはずの二人の声が、とってもクリアに聞こえたから。

 

その声のしたほうを見てみると……

 

 

 

吹雪が可視化できるのでは無いかというくらいに怒り狂った気を放つ、雪ノ下雪乃先輩。

 

この世を征服できるのではないかと思うくらいの鬼気を放つのは、雪ノ下陽乃先輩。

 

 

 

いてはならない人たちに、見てはならないものを見られた。

 

そんなふうに私の体が硬直していると……

 

 

 

 

 

 

 

「あ〜あ、やっちゃったね、いろはちゃん」

 

 

 

 

いつもの、優しい先輩の声が聞こえてきた。その声の主、由比ヶ浜結衣先輩は私の場所まで歩くと、私の制服の後ろから、何かをはがしたようで。

 

 

 

 

「盗聴器をつけなかったら、ヒッキーがどうなっていたことか……危ない危ない」

 

 

 

 

いつもの笑顔で、にっこりと私に笑った。生徒会室の開いたままのドアの外からは、ブルブル震えたお米ちゃんがこっちを見ている。

 

 

 

 

 

「じゃあ、ゆきのん。陽乃さん。あとは好きにしてどうぞ? 」

 

 

 

 

 

そのあと、私がどうなってしまったのかは、また別の話。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

スキルまとめ

 

雪ノ下雪乃

 

・乙女ポエム

 

 

雪ノ下陽乃

 

・ド変態

・ぷよぷよ

 

 

由比ヶ浜結衣

 

・⁇

 

一色いろは

 

・⁇

 

比企谷小町

 

・⁇

 

川崎沙希

 

・⁇

 

比企谷八幡

 

・⁇

 



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嵐を呼ぶ小町

みなさんやっはろーです。

どうもどうも。今回は世界の妹、比企谷小町がお送りしますね……

 

 

あーいや、今回はですね……なんというか……どうしたらいいかっていうのか……めんどくさすぎて小町的にポイント低すぎるっていうのか……

 

 

とりあえず、今の小町の気持ちは目の前の惨状を見てもらえれば分かると思います。

 

 

 

 

「……ぃや……比企谷君に引かれた……絶対引かれた……ごめんなさい……愛が重すぎて本当にごめんなさい……」

 

「ああぁぁぁ……比企谷君に嫌われた……こんな変態お姉さん絶対引かれるよ嫌われた嫌われた比企谷クン……」

 

 

 

 

とまあ、とある姉妹がこんなことになっているからです。

 

いろは先輩がこの姉妹に潰されてから少し時間はたち、土曜日になりました。その時だけは元気だった二人も、迅速に目的を達成した後はまた我に帰ったみたいで、お互いの黒歴史に再び悩み続けました。

 

……またさらに悪いことにですね……あまりのいろは先輩に対する襲撃を見ていたお兄ちゃんが、結構本気でこの姉妹のことを怖がっちゃってですね……またそれにショックを受けたお二人は思考のドツボにハマっているというわけなんです。

 

 

このお二人の扱いに困り果てた雪ノ下家は、どうにかしてこの姉妹を復活させられないかと頭を絞りました。

ですが、結衣先輩には連絡がつかず。いろは先輩はあの一件以来使い物にならない。お兄ちゃんは言うに及ばず……というわけで、小町がこのお二人のお世話係に任命されてしまった訳です……ハァァ

 

 

まあ、その間小町は雪ノ下家への出入りは自由。かなりの額のバイト代まで出してはくれたのですが、、、、、本当のこと言いますね?

 

 

 

 

 

 

「小町さん……私はどうしたらいいのかしら……重いと思われてない? 嫌われ、軽蔑されたりしたら私どうしたらっ!!!!!!!! 」

 

「こまちちゃぁん……こんなド変態でも比企谷君は私とまた話してくれるかなぁ……うぅぅ……っグス」

 

 

 

 

 

 

 

ああもう

 

これめんどくさい。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

「落ち着きました? 二人とも」

 

 

なんかあの後シンクロ泣きしたこのダメ姉妹は、涙を引っ込めるまでそれなりに時間がかかった。もうマジめんどくさい。

 

 

 

「うん」

 

「うん」

 

 

 

「いやうんって」

 

 

 

ちょっと可愛いって思っちゃったよ小町。二人してこの姉妹はポンコツというかアホというか。

 

 

 

「ハァァ……まあいいですけど、これからお二人はどうするんですか? まあ、今兄はお二人のこと正直めっちゃくちゃ怖がっています」

 

 

 

本当にこの姉妹のしたいろは先輩へのお仕置きはヤバかった。小町でさえいろは先輩に同情したし、思わずお見舞いまで行って写真の情報料であるケーキ1ホールですら断ったレベル。しかも逆に小町がいろは先輩にケーキ買っていった。

まさかの小町の気遣いに本気の涙をポロポロ流していたいろは先輩の姿は未だ脳裏に焼き付いているし、なんならちょっと可愛いって思ってしまった。一度もお米って言われなかったし、あんなにしおらしげないろは先輩は初めて見た。

 

 

 

 

「……やっぱり誠心誠意、謝るしかないわね」

 

「そうだね。雪乃ちゃん、一緒になんて言うか考えよう? 」

 

「ええ、二人一緒に謝りましょうか」

 

 

 

 

相当弱っている雪ノ下姉妹。

じゃないとこの人たちはこんなこと言わないだろうし。

 

でも、ちょっと小町は感動した。

 

お兄ちゃん……お兄ちゃんが知らないうちに、あなたはとある美人姉妹の仲直りの重要なピースになっているようですよ。ああ、こんな日が来るだなんて小町感慨深いなあ……

あのお兄ちゃんがこんなに凄い…………凄い…………まあ、とにかく色々凄いこんな姉妹に影響を与えられるだなんて、人生何が起きるか分からないものですよ。

 

 

ええっと……うんっ! よかったね!! お兄ちゃん!!

 

 

 

 

 

 

「小町がお兄ちゃんを呼び出しますから、ちゃんと二人とも、お兄ちゃんに怖がらせちゃってごめんなさいを言えますか? 」

 

 

 

 

小町の出来る限り優しげに言った声に、二人は目を潤ませて小町を見た。その目は、小さな少女二人が幼げにおねだりするようでとても真っ直ぐだ。

そんな二人は膝を地面についたまま、両の手を小町の手に絡めてくる。その姿のまま、二人はシンクロして言った。

 

 

 

 

「お願いします……」

 

 

 

 

 

可愛い。めっちゃ面倒だけど、めっちゃ可愛い。

 

 

 

 

 

 

……だけど、同時に小町は心が痛いのだ。

こんなに、こんなに真っ直ぐな意思を見せてくれる二人に、いくらイタイ人とド変態と言えども、これから二人を襲う試練を考えたら小町の心は痛む。

 

 

……けれど、小町も逆らえないのだ。”あの方”には……

 

 

 

 

 

「雪乃さん、陽乃さん。では、小町は連絡をするために席を外します……そこで良いと言うまで、おとなしく待っていてください」

 

 

 

 

 

嬉しそうに二人は小町にコクリと頷く。

それを見てから、小町は雪ノ下家から出た。雪ノ下家を出てからすぐに小町は”あの方”に電話をかける。”あの方”はきっとすぐに電話に出るだろう。

 

 

 

 

そう。その電話の相手こそ、雪乃さんと陽乃さんにこれから試練を与える存在

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もしもし……計画は順調に第二フェイズに突入しました。……結衣さん」

 

 

 

 

 

 

「うふふ、小町ちゃん、ご苦労様」

 

 

 

 

 

電話を切った後、小町は遠くの空を思わず見上げてしまった。

 

 

 

……嵐が、来る。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

スキルまとめ

 

雪ノ下雪乃

 

・乙女ポエム

 

 

雪ノ下陽乃

 

・ド変態

・ぷよぷよ

 

 

由比ヶ浜結衣

 

・⁇

 

一色いろは

 

・⁇

 

比企谷小町

 

・⁇

 

川崎沙希

 

・⁇

 

比企谷八幡

 

・⁇

 



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嵐の結衣vs雪ノ下姉妹

〈視点、由比ヶ浜結衣〉

 

 

やっはろー! みんな。由比ヶ浜結衣だよっ!

突然だけど、今私は小町ちゃんからGOサインが出て、ゆきのん家に突入したんだ。

そしたら何故か正座をしていたゆきのんと陽乃さんは、最初こそいきなり現れた私に目を丸くしていたけれど、次の瞬間には、この二人は同じタイミングで同じように目を厳しくしたんだ。

 

 

 

 

「……あなた、どういうつもりよ。由比ヶ浜さん」

 

「……ガハマちゃんはもっと色んなことが分かる子だと思ってたけど」

 

 

 

 

怖いなあ、もう。フフフっ……二人してオーラが危険だよ。

 

 

 

 

「どうして? 私はゆきのんと陽乃さん家に入っちゃダメなのかな? 」

 

 

 

酷いなあ。私二人に別に酷いことしてないのに。

 

 

 

「あなた、分かって言っているでしょう。……入ってくるなり特大の戦線布告をしてきたのだから」

 

「……そんな写真を見せられて、私たちが黙っていると思う? ガハマ」

 

 

 

 

「うふふ……ああ、これのことね」

 

 

 

 

どうやら、この姉妹は私の来訪に怒っているのではないみたいだった。この二人が機嫌を損ねる原因となったもの、それは二人がまだ目を丸くしていた時に、私が二人の目の前に何枚かバラ撒いた写真……

 

 

 

そう。私とヒッキーのツーショット写真。

 

 

 

私はここに来るまでに、小町ちゃんに頼んでヒッキーとヒッキーの部屋で二人きりにしてもらっていたんだ。バラ撒いた写真はその時に撮った物。

 

 

 

私がヒッキーに膝枕してる写真。

 

私が無理矢理ヒッキーの顔を私の胸に埋めている写真。

 

ヒッキーの頰に吸い付くようにチューした写真。

 

ヒッキーを押し倒した形の写真。

 

 

 

他にもたくさんあるけれど、とにかく私が持ってきた写真は、ゆきのんも陽乃さんも激怒しそうなものしかない。

 

 

 

「あ、でも大丈夫だよ? ヒッキーの口にはキスもしてないし、一戦も超えてないからさ。そこら辺は安心してね……うふふ」

 

 

 

肌を刺す殺気が凄まじい。肌が異次元の空間に反応し、今自分がヤバイ場所にいるのだと教えてくれる。

 

 

一見まずい状況。でもね……それでも……いいの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だって、これこそが私が望んだ展開なんだから。

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 

二人はユラユラと、陽炎のように、揺れるように立ち上がった。

 

その歩みはゆっくりだが、とんでもない圧力だ。きっといろはちゃんは、この迫り来る絶大なパワーに恐怖し、絶望したことだろう。

 

二人の目には、もはや私しか見えていないだろう。そしてただ私に鉄槌を下すことしか頭にないはずだ。

そんなことを考えていると、ゆきのんと陽乃さんが何か言葉を発しているのに気づく。

 

 

 

 

「由 ヶ さん」

 

 

 

 

「ガ

 

 

マ」

 

 

 

 

 

ほら、キレすぎてこの世のものとは思えない発音になってる。なのにちゃんと意味がわかるところがすごいよね。

 

 

 

二人はゆっくりと、やっとと言うべきか、私を挟むように取り囲んだ。

 

 

 

うふふふふ……きた……とうとうきたよ……狙い通りだよ。

 

 

 

「由

さん。

比ヶ浜

謝るなら 今」

 

 

 

「謝 ガハマ」

 

 

 

そう。これからが、これからこそが私が待ち望んでいたことだ。これの先のために、利害が一致しているとはいえわざわざ私は小町ちゃんやヒッキーに頑張って頼み込んだんだから。やっとこの時が来たことに心が躍る。

 

そんなことを思った瞬間に、ゆきのんの手が私の胸をものすごい力で鷲掴みにした。それなりの痛みが襲ってくる。

 

 

 

きっと、今までの私だったら痛みで泣いちゃっていただろう。

 

 

 

 

……だけど

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハゥゥん!!!!!!!!!!!!!!!!!!! もっとやってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

 

 

 

 

「へ? ゆ、由比ヶ浜さん? 」

 

「ふぁ? がが、ガハマちゃん? 」

 

 

 

 

 

二人から鬼気が消えた。

でも私はもう構えない。

 

 

……スイッチ入っちゃった♡

 

 

 

 

 

「ハァハァ……ねえ? 何でやめちゃうのゆきのん。もっと……もっとやってよ、、、痛いのしてっ!!!!! ああ、これから私はどうなっちゃうんだろう。ゆきのんと陽乃さんに一体どんな酷い目に遭わされちゃうんだろう! やっぱりもっと痛いのかな? それとも心にくる感じ? ああん一生のトラウマとか植え付けられちゃったらどうしよう⁇ あ、それともこれから私は雪ノ下家の奴隷になっちゃって、休む間も無くこき使われちゃうのかなぁ……ハァハァハァハァハァハァ」

 

 

 

 

ああ、つい大きい声を出しちゃったよ……

ああ、快感だ。ゆきのんに胸を力一杯握られた時、体中に電撃が走ったんだもん。……もっと……もっとだよ、、この痛みとか快感がクセになるの……

 

 

 

 

「もっと……もっとやってよ……この痛みと快感が……たまらないのぉぉぉ」

 

 

 

私はたまらず、私から離そうとしていたゆきのんの手をガッチリと握った。ヤダ、逃がさないんだから♡

 

 

 

「い、、いいいいいやいやいや離して由比ヶ浜さん」

 

 

 

ゆきのんの顔が心なしか青い気がする。さっきまでの威圧感も消えちゃった。……もう言葉責めはしてくれないのかなぁ。

 

 

 

「陽乃さんもぉ……蹴るなり殴るなり抓るなり……やって? ♡」

 

 

そう言って、私は陽乃さんの腕をガッチリと握った。

 

 

「い、いやいやいやガハマちゃんお願い落ち着いて離して!? ……って力つよっ!!!!! 」

 

 

 

いやだなぁ……私はこんなにも落ち着いているのに、

もう、私がこの時をどれだけ楽しみにしていたか……

 

 

 

「二人が悪いんだよ? ……私ね? ゆきのんと陽乃さんがお互いにお互いをえげつないやり方でやり返してたり、いろはちゃんを襲撃してたのを見て……目覚めちゃったみたい♡」

 

 

 

青い顔をして言葉を失う二人。

歯はガタガタ震えていた。さっきから私の質問に全く答えてくれない。

今の私の目はきっと血走っている。断言しちゃえる。

 

 

 

「あ、もしかしてこれって無視プレイかなぁ? ……あっなんだかそう考えるとゾクゾクしてきた……ほ、ほかに、もっとやってよ。でもまだまだ言葉責めも欲しいなぁ」

 

 

 

 

私はゆきのんと陽乃さんを力一杯抱きしめる。二人は顔を全力でそらそうとするが、離す訳がない。絶対に離さない。

そして、私はそのまま二人に密着するんだ。

 

 

 

「お願い……お願いします、由比ヶ浜さん元に戻って!!!!! 元の優しいあなたに戻って!!!!! 」

 

「ガハマちゃんごめんなさい私が悪かったからぁ!! 」

 

 

 

 

うふふふふふふふ

まだまだ、私は全然満足してないんだ。

だから言うよ。ゆきのん、陽乃さん。

 

 

 

 

 

 

「お願い……ふたりのほんき、見せて♡ もっともっともおっと……私をイジめて? 」

 

 

 

 

 

 

 

なぜか次の瞬間、二人の余裕のない絶叫が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

〈視点、比企谷小町〉

 

 

 

もう、決着はついただろうか。

 

 

 

 

あの時、いろは先輩から盗聴器を抜き取ったあと、結衣さんから自身のドM化を相談されたのは、私たち比企谷兄妹からしたら不幸中の幸いだった。いろは先輩が蹂躙されているのを見ていた結衣さんはたしかに鼻息が荒かったけど……それにしても、自身のドM化を確認するためだけに、いろは先輩をダシに使ったのには未だに恐れを抱く。

 

 

 

 

 

あの状態の結衣さんはまさに天災だ。

何も残さないレベルで、通る場所全てを破壊していくんだから。結衣さんから、怒られたり罵倒されながらも雪ノ下夫妻からあの盗聴器もゲットしてきたと聞かされた時は、流石に冷や汗が止まらなかったよ。

 

 

 

だからこそ、あの破壊力だからこそ、あの姉妹もこれからは自分たちの黒歴史をそんなに気にしないで生きていけるだろう。

 

 

 

お兄ちゃんと相談して決めた、苦渋の選択。

全てを破壊する代わりに望んだ、あの姉妹のこれからの安寧。なによりも強烈なインパクトを与えることにより、これから冷静になった時に起きるかもしれない姉妹の関係の悪化や自分の黒歴史への後悔を防ぐ、正に荒療治。

 

 

 

ただ、そのための犠牲は計り知れないはずだ。

あの姉妹の心に深いトラウマを負わせるんだから。

 

 

 

 

 

 

私は、一度雪ノ下家の方角を向いて、小さく頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

スキルまとめ

 

雪ノ下雪乃

 

・乙女ポエム

 

 

雪ノ下陽乃

 

・ド変態

・ぷよぷよ

 

 

由比ヶ浜結衣

 

・悪魔的ドM←new

 

 

一色いろは

 

・⁇

 

比企谷小町

 

・⁇

 

川崎沙希

 

・⁇

 

比企谷八幡

 

・⁇

 



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いろこま! 沙希とけーちゃんのせいで怒れる姉妹

「……で、なんでいろは先輩はここにきちゃったんですかね」

 

「え〜べつにいいじゃんせんぱいから誘われちゃったんだから」

 

「チっ……どうしてバカ兄はこんな人を……」

 

 

 

 

はいどうもみなさん。バカ兄貴です。

俺と小町と一色は今ららぽに来ているんだが、というのも

 

 

 

 

「まあ? せんぱいじゃいくらあのヤンキーの人とはいえ女の子の誕生日プレゼントなんて選ぶのキツイと思うし? 雪乃先輩と陽さん先輩は傷心を癒しに軽井沢だし? 結衣先輩はちょっと最近危険だし? そうなるとせんぱいが頼れる女子なんて私くらいしかいないよねっ!! ☆」

 

「……なんでこの人なんかに……小町がいるのに……大志君から、沙希さんに誕生日プレゼント比企谷兄妹からも選んでって依頼受けたの小町なのに」

 

 

 

 

 

今小町が言った通りの理由で、俺たちは川崎のプレゼントを選びにららぽに来ているわけだ。

大志から、自分とは別に俺たちからも、もしよければ川なんとかさんに誕生日のプレゼントをあげてくれないかと小町に頼みがあったらしい。

 

いやまあな? 俺は小町と二人でもよかったんだが、女子の意見は多い方がいいと思って一色も呼んだんだ。ほら、こういうの選ぶ時心強い感じがするだろ? このあざとい奴。

 

 

 

「……お兄ちゃんのバカ」

 

 

 

 

お陰で小町はめちゃくちゃ拗ねている。本気で拗ねている。ただ、決して本気で怒っているわけでもなくて……

 

 

 

「せんぱい……雪乃先輩と陽さん先輩からボコボコにされた私を、心配して様子を見るために呼んでくれてるんですよね……別に言わなくても分かってますよ。ありがとうございます♡」

 

 

「べ、ベベベべつに、そんなんじゃねーから腕にひっつくな一色マジ離れろっ!? 」

 

 

 

 

頰を赤く染めて、一色は俺にしなだれかかってきた。こんなのあの姉妹に見られたら以下略

すると、そんな俺と一色を見ていた小町は、拗ねながらも呆れたように息を吐く。

 

 

 

「………………さっさと選ぼお兄ちゃん」

 

 

 

そう言って、我が妹は歩き出してしまった。

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

「あっ! せんぱ〜い!! このブレスレットなんかいいんじゃないですかぁ? あの怖い人だとしても女の子には喜ばれますよ! このハートのネックレスとか最高じゃないですかぁ! ……わたしこれいいです私これがいいですぅぅ私これが欲しいですぅこれ私にして怖い人には別な物にしましょうか!!」

 

「いや……一色離れろって、腕にくっつくなちょっと痛いんだけど」

 

「い・や!!!!! 」

 

「……そんないい笑顔で断りますかね……」

 

 

 

 

一色は浮かれていた。さっきから何回も離れて欲しい旨申し上げているのだが、全てこんな感じに眩い笑顔に一蹴されるのだ。あとちゃっかり自分もプレゼントもらおうとしているあたりやっぱり一色は一色だな。

 

まあな? 俺としてはもちろん役得な部分もあるのだが……もしこれがバレた時を考えてしまうと、とてもじゃないがデレデレ鼻の下を伸ばすなんてことは出来ない。

 

それに……

 

 

 

 

「……何デレデレしてんのさ、、、おにいちゃん」

 

 

 

 

後ろに控えている小町の圧力が半端ない。

ちょっと声がマジな時の小町になっている。

 

 

ああ、、小町怒らせるとマジで面倒だ。また以前のような冷戦状態にはしたくない。……今は一色をひとまず振り切ってでも、小町の対応をするか。

 

 

 

 

「なあ、、小町。悪かったからそんなに怖いオーラださな……い、、、で、、、、、」

 

「むぅぅ……せんぱい別にお米ちゃんは家でいつも会えるんですから今は……わ、たしに……」

 

 

 

俺と一色は、後ろの小町を見た瞬間に驚きから思わず止まってしまった。というのも……

 

 

 

 

 

「うっ……ひぐっ……グスッおにいぢゃんのバカァ……今日は小町とお出かけって言ってだのにぃ……いろはぜんばいにデレデレして小町を蔑ろにして……ひぐっグス」

 

 

 

 

 

俺と一色の視線の先には、はるか昔に俺がよく見ていたような、小町の駄々をこねたような泣き顔があった。両目の端からつーっと涙が垂れ、それは時間を追う毎に増えていく。

それでも頑張って涙をこらえようとしている小町ではあるが、その努力むなしくグズリは全く止まっていない。

 

 

 

「あ、、あの……ごめんね? お米……小町ちゃん。悪かったから……泣かないで? 」

 

 

 

 

おお……一色が小町を本気で宥めている。

 

まあ、こいつはこいつなりに悪いと思っているのだろう。その証拠に一色はやっと俺の腕に巻き付いていた彼女の腕を解き、小町に近づいた。

 

 

 

 

「い、いろはぜんばいのバガァ!! わだしのおにいぢゃんなのにぃ! きょうはわだじがおにいぢゃんとデートだっだのにぃぃぃ!!!!! 」

 

「あ、、ご、ごめんね? 小町ちゃん本当にごめんね? 私が調子乗っちゃったね、今日はもうやめるからお願いだから泣き止んで? ね? 」

 

「いろはぜんばいとおにいぢゃんのバガァァァ!!! 」

 

 

 

 

 

 

これ、俺どうすればいいの?

思わぬマイラブリーシスターの胸の内に八幡胸のキュンキュンが止まらないのだけれどっ!? どうしよう今日小町と一緒に寝ちゃいたいかも。泣き止むまで小町ちゃんをヨシヨシしてあげたい。

 

 

そんな風に、俺も小町の愛に震えていたのだが……

それは思わぬ人物の思わぬ介入で中断された。

 

 

 

 

 

 

ピコんっ!!!

 

 

 

 

 

 

「あ〜、小町ないてたね〜! はーちゃ〜ん! 久しぶり〜 」

 

「ちょ、ちょっとけーちゃん!! 人にカメラ向けちゃダメでしょ!! 」

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

さて、あのカオスな時間をとりあえず打ち切ってくれたのは、天下無敵の幼女、川崎京華さんと……

 

 

そう、そのお姉さんといえば、そうだね。川なんとかさんだねっ!

 

 

 

 

「ほんとごめんっ!! ウチの京華が……」

 

「ああいえ、もう大丈夫ですよ沙希さん。小町ももう落ち着きましたから……」

 

 

 

 

 

小町はさすがハイブリッドボッチ。コミュニケーションにも長けている。未だに目を赤くしながら、謝りまくる川なんとかさんに対応していた。

どうやらけーちゃんは川崎の携帯のカメラ機能で、幼稚園の宿題に出ているお絵かきの題材を撮りに来たらしい。まあ、今はそれが一通り終わって買い物中みたいだ。

 

 

 

 

「ねーねー、はーちゃんたちは何しにここにきたの? 」

 

 

 

 

京華さんの質問が飛んできた。

一色も小町もちょっとだけ表情を硬くする。

……さあ、どうする?

 

 

 

「ああ!!! そっか! さーちゃんのたんじょーびプレゼントかいに来ててるんだ! たーくんが小町とはーちゃんにたのんだって京華聞いたよ! ねえねえ何をさーちゃんにあげるの!? 」

 

 

 

 

 

oh……けーちゃん……

 

 

 

 

 

「あ……なんか、ごめん……」

 

 

 

気まずそうに顔をそらす川崎。諦めたような顔をした小町、あちゃーと手を頭に当てる一色。

 

 

まあバレたもんは仕方がない。

ここで、出来ることをしよう。

 

 

 

 

「まあ、仕方ないな。なあ川崎、バレたからサプライズはもう無理だが……これをお前に送りたい」

 

 

「えっ……このブレスレット、、かわいい……いいの? 」

 

「ああ……受け取ってくれるか? 」

 

 

 

 

 

 

だいぶ考えていた形とは別になってしまったが、バレてしまったならここで渡してもいいだろう。

 

 

 

 

 

「これ、ろーずくぉーつ? っていう宝石でできてるんだって!すごい! 宝石宝石!!!!! 」

 

 

 

 

 

 

けーちゃんは知らない間に色々なものをクラッシュした自覚がないのか、石の説明が書いてあるものを見てはしゃいでいる。

 

 

 

 

 

「えっとね、けーちゃんがせつめいの文読んであげるね! 」

 

 

 

最近漢字を学ぶようになったのか、その成果を見せびらかそうとけーちゃんは止まらない。

 

 

 

 

「ろーずくぉーつ……宝石言葉はね、、平和と真実の愛……美……と、最後は」

 

 

 

 

 

今思えば俺はこの時、暴走した幼女を止めればよかったのだと思う。だが、時すでにお寿司。

 

 

 

 

 

「愛の告白……だって!!!!! じゃあ……さーちゃんがはーちゃんから告白されたぁぁ!!!!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場の雰囲気が一変した。

舌打ちする一色。やっちまったなぁという顔を一色に向ける小町。

 

 

 

 

「な、な、な、な、な、ななななあななあ……あ、あんた……………………………それ、、ほんと? そ、そんないきなり……」

 

 

 

 

 

顔を真っ赤にして、俺を上目遣いにウルウル目を潤ませながら見てくる川崎沙希。

 

 

 

 

「い、いや川崎、話を聞いてく」

 

「ちちちょょ、まだ、私心の準備が出来てないからっ! ま、待って! 心の準備をさせてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!! 」

 

 

 

 

 

 

川崎はそう言って、一目散に逃げ出してしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「およ? 結衣さんからラインだ……ひっ!? 」

 

 

続いて、小町も悲鳴をあげた。

 

 

「お兄ちゃん……」

 

「ど、どうした小町」

 

 

「沙希さんのラインからね……2年生の時のクラスラインに、、わだしのさっきの泣いでる動画がアップざれでるっで……ぐずっ……」

 

 

 

羞恥からだろう。またぐずり始める小町。

……今、川崎のスマホは京華の手にある。

従って、グループラインに投稿できるやつは……

 

 

 

「えっと……けーちゃん? はーちゃんにそのスマホ貸してもらってもいいかな? 」

 

「うん! 」

 

 

 

満足気な京華から、川崎のスマホを渡された。

その画面には……たしかに元2年のグループラインに小町の大泣きが晒されていて……

 

 

 

「う、うそだろ……」

 

 

 

 

それに加えて、俺が川崎にブレスレットをプレゼントしようとしているところの動画もれなく載っていて……

 

 

 

 

 

 

 

「お、おにいぢゃん……」

 

「せ、せんぱい……」

 

 

 

そこで怯えた小町、一色からそれぞれのスマホの画面を見せられる。そこには……

 

 

 

 

 

 

雪乃

 

「由比ヶ浜さんから聞いたのだけど、どういうこと? 動画も見たわよ」

 

陽乃

 

「なんで生徒会長ちゃんいるの? というかあの動画なに? 比企谷君説明して」

 

結衣

 

「ハァハァ……これが浮気? 略奪愛? ハァハァ」

 

 

 

 

 

二人のスマホに表示された、現在進行形で更新される奉仕部女子ライン。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やはり、やはりである。

こう言わざるをえない。

 

 

 

 

 

 

the end 俺……

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

次回

 

比企谷八幡vs雪ノ下姉妹

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

スキルまとめ

 

雪ノ下雪乃

 

・乙女ポエム

 

 

雪ノ下陽乃

 

・ド変態

・ぷよぷよ

 

 

由比ヶ浜結衣

 

・悪魔的ドM

 

一色いろは

 

・⁇

 

比企谷小町

 

・⁇

 

川崎沙希

 

・⁇

 

比企谷八幡

 

・⁇

 



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八幡リベンジ雪乃編

じーんせーいっ

らっくっあっりゃ

フーンフンフンッフンッフーーーン

 

 

 

 

 

 

 

つい、昔にやっていた時代劇のテーマを口ずさんでしまった。

 

人生山あり谷あり、まさに人の一生とは何かを考えさせられる偉大な歌だと、今では八幡は心底思うのだ。

 

 

 

「まさか、この俺がこんなに腹を決められるとはなあ」

 

 

 

ああ、少し前の俺では考えられなかった。

大きすぎる脅威を前に、この俺が逃げるのでもなく斜め下から取り組むのでもなく、正面から立ち向かおうとしているのだから。

 

 

 

「お兄ちゃん……本当に、大丈夫? 」

 

「せんぱい……今のあの人たちを相手にするには、命がいくつあっても……」

 

 

 

小町と一色が心配の色を目に写しながら、俺に言った。

 

 

 

そう、今日、これから雪ノ下姉妹が軽井沢から帰ってくるのだ。

小町に頼んで、あのmadな姉妹にここ、比企谷家に直接来るように言っておいたから、彼女らはまもなくここに現れるだろう。

 

ああ、きっと、とんでもない人を殺せるような気を纏っているはずだ。想像しただけでも恐ろしい。明日俺が無事でいられる保証などどこにもない。

 

 

 

だがな、

そんな、言わば賭けと言ってもいいこんな状況でも、俺は正面から立ち向かおう。

 

なぜかって?

 

 

 

 

 

 

 

キレちまったからだよ。

 

 

 

 

 

 

 

だって考えてみてくれ、

方や俺を想像して変なポエムを垂れ流していたイタいパートナー。

方や俺を想像して自分を慰めていたド変態お姉さん。

 

 

 

 

よく考えてみたら、いや別によく考えなくても被害者俺だろ?

 

 

 

俺なんで逃げてんの? 精神的苦痛受けたの俺だよね?

いろはすがボコされてんの間近で見たのも結構グロくて八幡傷ついたし、由比ヶ浜があんなザマになったのも元を辿ればあの姉妹のせいだろ? なんならあんたら姉妹なんかより今の由比ヶ浜の相手すんのが一番疲れんだぞ? どうしてくれるんだよアレ、もうほんと勘弁してくれよ。

 

 

 

 

 

だから、俺は戦う。この身をかけて……あいつらを倒す。

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

空気が変わった。

家の中にいても分かる。奴らが家の前に来たのだ。

小町に指示して、家の鍵は開けてある。さらにはメールであの姉妹にはそのまま入ってきていいとも伝えてもらった。小町と一色には、俺にもし何かあった時のために、家の外の安全な場所に匿ってもらっている。

 

 

 

 

「さあ、来るなら来やがれ」

 

 

 

ガチャッ……

 

 

 

俺が言葉を発した瞬間、扉を開ける音が聞こえた。

その瞬間から禍々しいオーラが比企谷家を襲う。まさに、とんでもない天災がやってくることをその雰囲気は告げていて、俺のアホ毛が千切れんばかりに反応していた。

 

 

 

 

がちゃッ

 

 

 

「せつ

いしなさい 比企谷

くん」

 

 

「……ぜっ……

 

jgjdatwm殺

ひきがやkun」

 

 

ドアを開けてリビングに入ってきた。

あまりの怒りなのか、二人とも発音がヤバめだ。

 

 

ああ、こえーよ。

俺の生物学的な本能が告げている。これは生命の危機だと。今、俺が相対している存在は、もはや人間を超越した何かになろうとしているのだろう。

 

 

だがな、いくら俺だって策がないわけじゃない。まあ、スピード重視なわけだが、絶対の自信がある。

 

 

 

とりあえず、まず最初は雪ノ下雪乃……お前からだ。

俺のパートナーにしてイタいポエマーよ、俺の攻撃の味をとくと味わうがいい。

 

 

 

 

ガシッ

 

 

「……mjmadjmひき?

 

wjmがmgwajや

くん? 」

 

 

 

俺は雪ノ下を力強く抱きしめる。

普段なら絶対できないことだが……今の俺はさいっこうにハイってやつだからなァ。あと先を考えなければ、なんだってやれるんだよ。

 

 

と言うわけで、雪ノ下を力強く前から抱きしめながら、俺は無理やりソファに彼女を押し倒した。

 

 

 

「jgjgふぇっ!? tgmatmjd

mpmな、mjにこれ!? 」

 

 

 

雪乃は狼狽え始めている。効果は抜群だ。

顔も赤くしているし、なんだったら目が正気を取り戻してきた。すかさず俺は至近距離から、吐息が触れる距離で、雪ノ下雪乃に囁く。

 

 

 

 

「雪乃……俺はいつものお前が好きだ……愛してる」

 

 

「っ!? ブブッんんん〜〜っ!? 」

 

 

 

 

甘い声で、真正面から俺は雪ノ下に愛を囁いた。

これで完全に自我を取り戻した彼女に、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は、激烈なディープキスをかました。

 

 

 

 

 

 

 

 

ぶぢゅゅぶっぢゅ〜〜〜んふブブぼぶぁっグチュグチュぶぢゅゅぶっぢゅブブッヂュ〜ぶぢゅゅぶっぢゅブブッヂュー

 

 

 

 

 

 

唇やベロをとにかく強引に押し付ける、雪ノ下が何もできないほど無理やりに襲うのだ。そう、雪ノ下が何もできないように、反撃の隙を一切与えないがために……

 

 

 

 

 

そうして20秒。

蹂躙しまくった後、俺は唇を離した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………あっ…………あああっ……あっ」

 

 

 

 

 

 

 

ソファには、恍惚の表情をしながら、意識を朦朧とさせたイタいポエマー……俺のパートナー、雪ノ下雪乃が力なく寝ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

mission complete

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

スキルまとめ

 

雪ノ下雪乃

 

・乙女ポエム

 

 

雪ノ下陽乃

 

・ド変態

・ぷよぷよ

 

 

由比ヶ浜結衣

 

・悪魔的ドM

 

一色いろは

 

・⁇

 

比企谷小町

 

・⁇

 

川崎沙希

 

・⁇

 

比企谷八幡

 

・⁇

 

 

 

 

 

 

 



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陽乃リベンジ.1

みんな、ひゃっはろーーー……

 

雪ノ下陽乃だよ……

 

 

 

え? 何でそんなにテンション低いのって? ……

そもそも雪乃ちゃんの後ははるのんのターンな筈なのにどうしたのって? イチャイチャしないのって?

 

 

 

 

……ああ、あれからはもう1週間たったよ。

 

 

あの後ね、比企谷君は雪乃ちゃんにまたブチュチュした後、驚きすぎて正気を取り戻した私に向かってこう言ったんだ。

 

 

 

 

 

『ああ、あなたには別に何もありませんから、お帰りください……つーか俺の相手するより、ご自分のお腹の肉とかどうにかした方がいいんじゃないですか? 』

 

 

 

 

 

ってさ。すんごいそっけない顔で。あの子そう言ったんだよ。まるで私なんてどうでも良いみたいに。シラーっとした顔でさ。

 

 

いやまあ? 確かに比企谷君のパートナーは雪乃ちゃんだし? 私がバラした黒歴史だって男からしたら可愛いものでしょうね。

それに比べたら確かに私なんてただの痴女ババアよ。ド腐れ変態よ。性格の悪い最悪の人間よ……どうせ私なんて。

 

 

 

あれならのことはよく覚えていない。

ただ、ソファの上で恍惚の表情を浮かべ、涎を垂らした心ここに在らずな雪乃ちゃんの顔だけは鮮明に覚えている。

 

 

 

……わたし、きらわれたのかな。

やっぱりそうだよね。前だって意地悪ばっかりだったし。いくら比企谷君だって私のこと恨むよね。

 

 

 

 

でも、やだな。

比企谷君ともう会えないなんて嫌だ。

でも今の私に彼に会いに行く度胸なんてないし……

 

 

 

だから、だからね?

 

 

 

私は自分を鍛錬することにした。もちろん禁欲もそう。毎日のムラムラに耐え、一生懸命に仮面を被り、私は毎朝5時に起きる。

 

 

 

 

そしてね、毎日朝から10キロ走ることにしたの。それは、全て私の緩みきった精神を正すために行うもの。

 

え? どうして走って正すのかって??

そんなの、決まってるじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全ての元凶である、私のお腹のプニプニを排除するためよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今、緩んでるのは精神じゃなくて腹の肉だろwwwって言ったの誰よ。

やかましいわ。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

というわけで、私が毎朝5時に起きて10キロ走り始めてから、今日で4日目になった。

 

いくら完璧超人な私といえど、もうそろそろ冬なこの季節に甘いベッドの誘惑に打ち勝つのは中々に大変だ。しかも、まともにランニングなんてしてこなかったこの私が、全力で10キロを走るのよ? 走っている最中は脇腹が痛いし、苦しいし、足は重くなってくるし、なんだか涙まで出てきちゃう。

 

 

 

 

 

 

でも、でもね? 私は頑張るの。

まだ比企谷君と会うだけの勇気は出ないし、お腹のプニのんもあんまり減ってない。それに、結果が出ないうちは彼には会わないって、私決めたんだからっ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、辛い、苦しい、

私の必死に吐き出す息が、まだ暗い朝の大気に白い跡となって現れる。もう2キロ……もう1キロ……

 

 

でも……いくら挫けそうになったって、私は絶対に諦めないんだからっ!!!!!!

 

 

 

 

 

まずは、ぷにのん撃退よっ!!!!!!!

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……小町がこんな朝早くあんだけ俺に散歩を急かす理由は……これだったのか……陽乃さん」

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

また1週間がたった。

 

早朝ランニングはまだ続けている。今も10キロを走り終えて、家でシャワーを浴びているところ。

 

 

実際効果は出ているのよ? 3日目あたりからお腹のぷよぷよがなくなってきたのが自覚できたし、今となってはお腹や足にハリも生まれ、前よりも健康的な肉体になったと思う。

 

それに、毎朝鋼の意思でベッドから起きる作業をしていくことによって、今までの私よりもさらに強い精神力を鍛えることができた。多分、ここが一番の成長した所だと思う。ほら、そのおかげでこの1週間比企谷君を想像してナニすることも我慢できているし。

 

 

 

……でも、まだ彼に会うとなると……緊張する。

 

 

やだな、なんで私こんなに彼のこと考えてるんだろう。

 

確かに、あの雪乃ちゃんを篭絡した人物だし、人間的に興味があることは否定しない。私の性欲の捌け口にしていたのも、彼なら私のプライド的にも合格だったから。なんとなくナニしていたのも私の溜まりに溜まった鬱憤を晴らしたかっただけで、雪乃ちゃんみたいに彼に特別な感情を抱いていたわけではなかった。

 

比企谷君がなんかよく分からないヤンキーみたいな女に告白紛いのことをした動画を見たときの感情も、雪乃ちゃんの彼氏兼私のおもちゃに誰かが手を出すのが面白くなかったから。

 

 

 

 

 

 

 

って、思ってた。

 

 

 

でも何? この感情。彼について考えるとどうしてこんなに切なくなるの? 何で彼は雪乃ちゃんの彼氏なの? 何で彼は私を見てくれないの? 何で彼に冷たい目で見られたらあんなに悲しかったの? なんで彼を想像したら幸せな気持ちになれるの? 何で最近彼が近くにいるとドキドキしちゃうの? そもそも無意識でも何で私は比企谷君でナニしてたの?

 

 

 

 

 

もしかして、私、比企谷君のことが本気で好きになっちゃったの?

 

 

 

 

 

「ええ……えぇぇ……」

 

 

 

 

 

声が出ちゃった。

 

私はシャワーを浴びながら、下を向いて両手で頰を挟んでしまう。シャワーの温度を抜きにしても、体が暑すぎる気がする。目が潤んできた。頭が混乱している。

 

そうこうしてるうちに、あまりの混乱で立てなくなった。

シャワーの水を後頭部に受けながら、しゃがんだ私は首を振りまくる。

 

 

 

 

「ダメよ陽乃っ! 比企谷君は雪乃ちゃんの彼氏! 」

 

 

 

 

何回か自分に言い聞かせるように言ってみたけど

やっぱりダメだ。

 

 

言えば言うほど胸の高鳴りが止まらない。

比企谷君を思う度、胸のキュンキュンが止まらない。

苦しい。

でも幸せ。

何!?

なんなのこれ、

こんな感情知らない!

私こんなの知らない!!!!!

 

 

 

 

 

 

「うぅ……私……比企谷君のこと、、本当に好きになっちゃった」

 

 

 

 

 

* * *

 

 

朝5時

 

 

今日は、すぐに起きれた。

というか、寝られなかった。

 

 

 

「うぅ……あぅぅ……」

 

 

 

変な声が出てしまう。顔が熱い。

 

 

 

「うううぅぅぅぅ……」

 

 

 

何だか分からないけどムズガユイ。ベッドにまたうつ伏せになり、枕を比企谷君に見立ててちょっと唇を当ててみた。

 

 

 

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!! 」

 

 

 

 

今の自分の行動の、どうしようもない恥ずかしさが私を襲う。バタバタ足を動かして、ベッドの上を転がりまわって

 

 

 

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああっ……ぐうぇっ……」

 

 

 

 

ベッドから落ちた。

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

おかしい。体の調子がいい。全く疲れない。いくら走っても、いくらスピードを出しても疲れない。

これも、恋の魔力なのかな? ……

 

 

彼が私を変えてくれたんだ……うふふ

 

 

 

 

そんなことを思っていると、だいぶ前の位置に誰かが立っているのが見えた。おかしいな、いつもは誰ともこの道では会わないのにと思いながら私は走る。

 

だけど、すぐに私は走る足を止めざるをえなかった。

 

 

 

 

「陽乃さん」

 

 

 

 

 

「え? ……ひきがやくん? 」

 

 

 

「はい、お久しぶりです」

 

 

 

 

え、なんで? 聞いてない。なんでこんな時間に?

あ、やばい、ドキドキしてきた。

顔かっこいい。あの人に今わたし見られちゃってる。

目と目があってる……あ、近づいてきた、どうしよう、え? ど、どうすればいいのわたし。あ、やだ見ないで、髪も乱れてるし化粧もしてないっ……

 

 

 

 

「逃げようとしないでください、陽乃さん。……すみません……俺があの時冷たくしたからですよね」

 

 

 

違うよ。いやちょっとはそれもあるけど、そんなことよりあなたがかっこいいから見ていて辛いだけです。

 

 

 

「あなたが努力している姿を見て……なんというか、すごく申し訳ないことをしたというか、、まあ、小町に言われるまであなたが走ってるなんて気付かなかったんですが」

 

 

 

恥ずかしそうに比企谷君が言う。

可愛いかっこいい。

 

 

 

「……あなたに、謝りたくて……あと、言いにくいんですが、お願いがあってきました」

 

 

 

「……おねがい? 」

 

 

 

私は、ぽーっとした顔と、甘ったるい声で比企谷君に問いかけた。どうしよう、キュンキュンが止まらない。

 

 

 

 

 

 

 

比企谷君が頭を下げた。綺麗に90度だ。

頭頂部すらかっこよく見えてくる。

そのまま、彼は言う。

 

 

 

 

 

「俺に、協力してください……雪ノ下が……小町曰く、幸せ太り、、したみたいで……元に戻してやりたいんです」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

スキルまとめ

 

雪ノ下雪乃

 

・乙女ポエム

・ぷよぷよ←new

 

 

雪ノ下陽乃

 

・ド変態

・ぷよぷよ

 

 

由比ヶ浜結衣

 

・悪魔的ドM

 

一色いろは

 

・⁇

 

比企谷小町

 

・⁇

 

川崎沙希

 

・⁇

 

比企谷八幡

 

・⁇

 

 



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陽乃リベンジ.2

「まあ……雪ノ下が、そういうわけなんで……ご協力願えないでしょうか……」

 

 

 

 

 

比企谷君が綺麗なお辞儀を私にしてきた。

前に私に辛く当たってきた手前、頼みづらかっただろうに。

それでも頑張ってこの時間に起きてきて、私を待っていてくれた。

 

 

 

いいの。これは雪乃ちゃんのためなんだよね? 彼の目には、今はまだ雪乃ちゃんしかいないんだと思う。

 

 

 

 

でも……いいの。

まず何より、こうして彼とまた会えて話せることが、この上なく嬉しくて、むずがゆくて、痛くて、でも幸せ。

 

 

 

 

 

だからね? あなたが喜んでくれるなら、私は喜んであなたの力になります♡

 

 

 

 

 

 

 

「うんっ! 私に任せて! 比企谷君!!!!! 」

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

あれから私は急いで自宅に帰り、シャワーを浴びて、とんでもない労力をかけながら史上最速で身だしなみを整えて、夢にまで見た比企谷君の家の前まで来ていた。

 

 

 

 

 

 

 

雪乃ちゃんが幸せ太りする原因になった、比企谷君ディープキス事件は、結構前のことだ。

あれから、実は私は雪乃ちゃんと会っていないの。

 

 

 

私があれから鍛錬の毎日だったのもあるけど、それからは雪乃ちゃんは比企谷君の家に泊まっていたからね。

 

 

 

 

 

……そんなこと、普段だったらお母さんもお父さんも絶対に許さないと思うんだけど、お母さんは相手が比企谷君だからという理由で、小町ちゃんによる定期報告をすることを条件で許していたらしい。

 

 

 

お父さんはもちろん猛反対だったみたいだけど、お母さんが脅して、雪乃ちゃんの上目遣いによる「父さん……ダメ? 」で撃沈したと聞いている。

 

 

 

 

 

 

 

 

だから、、、雪乃ちゃんが実際どの程度ヤバイことになっているか分からない。あの体中スレンダーな子が太ったと言われても、想像出来ないのが正直なところかな。

 

 

 

でも……私は頑張るもん。だって、彼に頼まれちゃったから……きゃっ♡

 

 

 

 

 

 

 

「えっと……大丈夫ですか? 、、陽乃さん」

 

「う、う、うんっ!! 」

 

「ええ、、なんでそんな離れるんですか……あと目も合わないし、俺の顔は地面にはないんですが」

 

「だ、だって……恥ずかしい……し」

 

 

 

 

 

 

無理して頑張って彼と目を合わせようとしたら、中途半端に上目遣いになってしまった。顔が熱いから、多分顔も真っ赤だろうし、目もウルウルしている。

 

 

 

そう、なんだか今日久々に彼に会えてから、私はどうしてもまともに目を合わせることが出来ないの。

今までみたいにしようとしても、湧き上がる恥ずかしさが私にそれを許さない。彼の近くにいるだけでこんなに幸せなのに、目を合わせて……手とか握っちゃったら……きゃあああああ……一体私どうなっちゃうんだろ。

 

 

 

 

 

 

「ぅっ……なんだよ反則だろ今の」

 

「えっ……どうしたの比企谷君」

 

「いや……べつに何でもないです。とりあえず、入ってください」

 

 

 

 

 

 

比企谷君は私から顔を背けて、家の中に入った。言われるままに私もお邪魔する。

う〜ん……いま、私なんかまずいことしちゃったかなぁ?

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

いたよ。うん。たしかに私の妹はいた。雪ノ下雪乃がいた。……でも、認めたくないのが正直なところだ。

 

 

 

 

 

「ねえさん……久しぶり」

 

 

 

「雪乃ちゃん……? もしかして、ゆきのデラックスとかに改名した? 」

 

 

 

 

 

 

私はいま小町ちゃんの部屋にいる訳だけど、その部屋の中には小町ちゃんだけじゃなくて、比企谷君もいる。

その総勢四人、雪乃ちゃんを除いた三人が、今の私の言葉に反応して思わず顔を雪乃ちゃんから背けた。

 

 

 

 

 

 

 

「っぷ……陽乃さん……実の妹にそれは……ふふ」

 

「こ、小町は大仏、小町は釈迦、っぶぷっ……色即是空……プハァッ! 」

 

「い、いや雪乃ちゃんちがっプハァっ……ごめ、お姉ちゃん何も言ってないからっ……ぶぶ」

 

 

 

 

 

 

 

そう。私はともかく、比企谷君と小町ちゃんすらも吹き出してしまうほどに、今の雪乃ちゃんは……ゆきのデラックスだったんだ。

 

 

 

 

 

「……あなたたち……」

 

 

 

 

 

キレたのかどうなのか、ゆきのデラックスは徐に立ち上がる。怒りのオーラは物凄い感じることが出来る……けど。

 

 

 

 

 

 

「「「ぶふぉっ!!!!!!!」」」

 

 

 

 

 

 

無理だった。

どうしても、今のゆきのデラックスが凄んでも面白いだけなのだ。三人とも、溢れる笑いを抑えることができなかった。

 

 

 

 

 

しばらく笑うと、ゆきのデラックスは拗ねてしまったのか、床に下を向くきながら座ってしまう。

 

 

 

 

 

 

「ご、ごめんね雪乃ちゃん……とりあえず、どうしてこうなっちゃったの? 」

 

 

 

 

 

 

 

出来るだけ優しく、私は小さい頃の雪乃ちゃんにしたように心がけて接する。絶対に笑わないことを固く心に誓いながら……ちょっと自信ないけど(笑)

 

 

 

 

 

「……ここに来てから……食べ物たべすぎたし……全く運動もしなくなったし……おやつ、、、お菓子を夜遅くにもたべてたし……」

 

 

 

 

 

雪乃ちゃんはたどたどしくも、ここに来てからの生活習慣を告白した。それを聞いて小町ちゃんが申し訳なさそうに私に付け加える。

 

 

 

 

「えっと、ごめんなさい……私がお菓子やら夜食やらを勧めてしまったばっかりに……まさかこの短期間でこんなことになるなんて」

 

 

 

 

「あー、いや、小町ちゃんは悪くないよ……多分、今までそんなことしてこなかったから、雪乃ちゃんは加減が分からなかったんだろうねえ……それで、最近の比企谷君関連の幸せ感に飲まれて自制できずにズルズルここまできてしまったと」

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

比企谷君は、片手で顔を抑えて何も言えないみたい。

まあ、そんな姿でさえキュンときちゃうのは秘密♡

 

 

 

 

 

 

「とりあえず雪乃ちゃん、お菓子をやめてさ、運動しよっか? 」

 

 

 

 

私が優しく雪乃ちゃんに言うと、雪乃ちゃんは涙目になって、こう言い返してきた。

 

 

 

 

 

「姉さん……私、もともと運動する体力なかったでしょう? ……こうなってしまってから、どうやらもっと体力がなくなってしまったみたいなの。……そんな自分に絶望して、、お菓子も一回やめてもまた手を出すようになって……」

 

 

 

 

 

 

それに続いて、目をゆっくり閉じながら、思い出すように小町ちゃんが言う。横の比企谷君も目を閉じていた。

 

 

 

 

 

 

 

「……今の雪乃さん、50メートルも走りきれないんです。」

 

「……はぁ……しかも帰り道、途中から俺がおぶって帰りました」

 

「ならばと思いお菓子を隠したら、持ち前の頭脳で隠し場所をすぐに探り当てて食べちゃってるし……」

 

「学年一位の頭脳の使い方マジ間違ってんだろ……」

 

 

 

 

 

 

 

どうやらこの兄妹は、私の知らないところで相当頑張ってくれていたみたいだ。その苦労が滲み出てきている。

 

 

 

 

 

想像以上だ。ヤバイ。いくらなんでもこれはヤバイ。我が妹ながらとんでもなく面倒な女だ。

 

 

 

 

 

さて、運動は出来ない。

 

そのせいでストレスから暴食も止まらない。

 

頭がいいせいか悪知恵が働く

 

 

 

 

 

あー詰んだね。

 

 

 

 

 

 

「陽乃さん、、、これどうにかなりませんか? もう正直小町たちにも限界で……」

 

「お願い、できませんか……」

 

 

 

 

 

 

 

比企谷兄妹の切実な願い。

相当苦労したのだろう。もう藁にもすがりたいという思いがよく分かる。

 

 

 

 

 

どうにかしてあげたいのは山々だ。

特に愛する比企谷君の頼みだし。

 

 

 

 

 

 

うーん……でも、今の雪乃ちゃんなら……無理矢理にでも走らせたりするしか手がない気がするんだよなぁ……でも、そんなことを今の雪乃デラックスにさせられるほどの要素なんて……どこに、、、も……

 

 

 

 

 

「ある」

 

 

 

 

 

「え? 何か手があるんですか? 」

 

「お、教えてくださいっ! 」

 

 

 

 

 

 

 

私が呟いた一言に、兄妹は助けを求めるように食いついてきた。

……でも、これは相当な危険を伴う。

だって、有り得ないくらいの恐怖を雪乃ちゃんに与えてしまうだろうから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ねえ、二人とも……雪乃ちゃんにとっての、鬼になる覚悟はある? 」

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

3時間後。

 

 

 

 

 

「ハァハァ……姉さん……もう限界よ」

 

「雪乃ちゃん、まだ公園についたばっかりだよ? 」

 

 

 

 

 

 

近くの原っぱのある公園まで歩いてきただけでこの様子。 やっぱり今の雪乃ちゃんには荒治療が必要なんだね。

 

 

お姉ちゃん、辛いけど……心を鬼にするよ。

 

 

 

 

 

 

「小町ちゃん」

 

「はい……もうすぐ到着するそうです」

 

「……ほ、本当に、やるのか……」

 

 

 

 

 

 

神妙な顔つきをする小町ちゃんに、これからくるであろう惨劇に顔を青くする比企谷君。カッコいい。

 

 

私だってヤダよ。本当はこんなことしたくない。だってアレは取り扱いに細心の注意を払わなくちゃいけないしなにより……雪乃ちゃんのトラウマにならなきゃいいけど……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっはろ〜〜〜〜〜!!!!!!!!!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

来てしまった。

 

 

 

 

 

「なっ!? ゆ、ゆいがはまさんっ!! 」

 

 

 

驚く雪乃ちゃん。

当然だ。声のした方には、あのやっはろーの悪魔。空前絶後のドM。

前に私たちの戦意を根元から挫いた、ガハマちゃんがいるのだから。

 

 

 

 

 

「ゆきの〜ん、肥えたその体で私にこれから毎日すごいこと私にしてくれるって本当かな〜? ♡♡♡」

 

 

 

 

 

奴は恍惚の目をして、段々と、ゆっくり雪乃ちゃんに迫ってきた。そんなドMを見て、次に雪乃ちゃんは私を見る。

 

 

 

 

 

「ね、ねねねねえさんっ!! あなた、人の心はないのっ!? 」

 

 

 

 

 

 

私は雪乃ちゃんの問いには何も答えない。

その代わりに、雪乃ちゃんに背を向けて、一言だけ放つ。

 

 

 

 

 

 

「雪乃ちゃん……無事を祈ってる」

 

 

 

 

 

 

 

その直後。欲に塗れたドMと、恐怖から逃げるデラックスの運動会が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

1週間後。比企谷家。

 

 

 

 

 

「ゆ、雪乃さん〜戻ったぁぁ!!!!! 」

 

「よかった、、本当に、よかったなっ!! 雪ノ下……」

 

 

 

 

 

ドMとの追いかけっこのお陰で、すっかり雪乃ちゃんは元通りのスレンダーな体型に戻ったみたい。

 

 

 

 

 

「雪乃ちゃん……ごめんね? 荒治療すぎた……よね? 」

 

 

 

 

 

私は雪乃ちゃんに謝罪する。

いくらこれしかなかったとはいえ、結構残虐な仕打ちをしたつもりだ。嫌われる覚悟はあった。

やはりというべきか、雪乃ちゃんはユラユラと私に近づいてくる。拳が飛んでくるのを覚悟して、私は目を瞑った。

 

 

 

 

 

 

「姉さん」

 

「えっ」

 

 

 

 

 

雪乃ちゃんに抱きしめられる。

何が起きたかわからない。

そんな私に、彼女は優しい声でこう言った。

 

 

 

 

 

「姉さんは、私を助けようとしてくれたのよね……ありがとう。私に、立ち向かうことの大切さを気づかせてくれて……私は、もう負けないから。気づいたの、私」

 

 

 

 

そうして、雪乃ちゃんは私から離れる。

 

 

 

ピンポーン

 

 

 

同時に比企谷家のインターフォンが鳴った。

 

 

 

 

 

「……雪乃さん……いいんですね」

 

「ええ、お願い。小町さん」

 

 

 

 

 

固い決意を秘めた、雪乃ちゃんの精悍な顔を見る。

やはり、何かが吹っ切れたようだ。今の雪乃ちゃんは強い。自分の意思をちゃんと持って、それをきちんと伝えられる人間だ。

そうして、小町ちゃんは来客にドアを開けにいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

来客がリビングに来るまで、ほんの10秒程度だった。

 

 

 

 

「やっはろ〜♡♡♡」

 

 

 

 

予想だにしない来客に目が丸くなる私と比企谷君。

緊張した顔をした小町ちゃん。ヤバイ目をしたドM。

 

 

 

そして、精悍な顔を崩さない雪乃ちゃん。

 

 

 

 

 

どうする気なの……雪乃ちゃん。

奴はまともな精神じゃ、とても相手をできる存在じゃない。

 

 

 

 

 

私の心配をよそに、雪乃ちゃんはドMに歩いていく。

 

 

 

 

 

 

「えへへぇぇ……まさかゆきのんから呼び出してくれるだなんて……何をシて、私を悦ばせてくれるのかなぁ」

 

 

 

 

 

 

なんかドMがヤバイ目でヤバイこと言ってるのにも関わらず、雪乃ちゃんはドMの真正面に、抱きしめられる距離に立ち……

 

 

 

 

 

 

 

 

「由比ヶ浜さん。私、あなたに言わなきゃいけないことがあるの」

 

 

 

 

毅然と、言い放つ。

それは凛としていて、とても変態に屈するようには思えなくて……とても、美しかった。

 

 

 

 

 

 

そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたが好きよ……結衣さん♡♡♡」

 

「んふぐぅっ!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ありのままを話すわね。

 

雪乃ちゃんがガハマちゃんを抱きしめて、そのまま押し倒して、ディープなキスをかました。

 

 

 

 

 

 

「っぷはぁっ!? ゆ、ゆゆゆゆゆきのんっ!? な、なにを?? 」

 

 

 

 

 

 

久しぶりに取り乱すガハマちゃん。

正常なガハマちゃんだ。由比ヶ浜さんだ。

 

そんな彼女を、目をハートにした私の妹は熱い視線で見つめて……

 

 

 

 

 

 

 

「わたしね……比企谷君のことが好き……でも、気づいたの。この1週間あなたと追いかけっこをして、やっと気づいたのよ。……わたしはね? 結衣さんのことも比企谷君と同じくらい……大好きだって♡♡♡」

 

 

 

 

 

 

またも、ガハマちゃんにゆっくりとにじり寄る雪乃ちゃん。

 

 

 

 

 

「ひぇっ……ちょ、ちょっと待ってゆきのん私そういう趣味はないんだけど……」

 

 

 

 

 

 

「うふふ……もう離さない……大好きよ結衣……私はもうあなたに夢中なの。だーいすき♡♡♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間。私の脳内で百合の花が咲いた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

スキルまとめ

 

雪ノ下雪乃

 

・乙女ポエム

・ガチ百合←new

・ぷよぷよ

 

雪ノ下陽乃

 

・ド変態

・乙女←new

・ぷよぷよ

 

由比ヶ浜結衣

 

・悪魔的ドM

 

一色いろは

 

・⁇

 

比企谷小町

 

・⁇

 

川崎沙希

 

・⁇

 

比企谷八幡

 

・⁇

 

 

 

 

 



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こまいろ大戦争!!!!!

「ねえねえいろは先輩〜」

 

「なにお米ちゃん? 」

 

「生徒会室って紅茶とかないんですか? せっかくお菓子あるのに」

 

「……つーか、何でお米ちゃん生徒会室にいんの? お前部長だろさっさと奉仕部戻れ」

 

「……それはそうと、最近ほとんど奉仕部に顔を見せなくなったいろは先輩は一体何が起きたんですか? もしかしてちょっと太ったからとかですか? プニプニですかね」

 

「はっ倒すぞ……ほら、私はアレだし。生徒会長であって正式な奉仕部員ではないから」

 

「……最近になるまで生徒会放っておいてずっと奉仕部に入り浸っていた人がそんなこと言いますかそーですか」

 

「……部活をエスケープしてる部長に何言われてもね〜」

 

「……」

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

こんにちは。比企谷小町です。

 

……さっきまでのいろは先輩との会話を聞いていただけると分かると思いますが、小町は今、生徒会室にいます。

本来なら、紅茶の香りに包まれながら、雪乃さんと結衣さん。お兄ちゃんの3人と、オマケの一人であの部室にいるはずの時間なのですが……

 

 

今日は何故かいきなり生徒会室の大掃除とか始めたいろは先輩を、奉仕部らしくお助けしようと、小町はここにいるわけです。

……ええ、別に他意はありません。

断じてありませんから。

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、、あの部室は今、黒歴史持ちなガチ百合とドMがカオスだからね〜……正直お米ちゃんがここに逃げ込んでくる気も分かるんだけどさ」

 

「……お兄ちゃんには悪いことをしたと思っています」

 

 

 

 

 

 

 

大掃除のため、開けっ放しにしているドアを見つめながらいろは先輩は言いました。小町もついそれに追従して、諦めたような顔で返事をします。

はぁ……ええ、なんとなく察してもらえたと思いますが、そうです。

 

 

 

 

 

今の奉仕部はカオスなのです。

 

 

 

 

 

 

 

熱のこもった瞳でお兄ちゃんと結衣さんを見つめる雪乃さん。最初こそそんな雪乃さんにドン引いていた結衣さんも、最近ではそれすらイイ刺激になってしまったのか瞳をキラキラさせて興奮し始めたんですよ。

 

想像してくださいよ。そんな二人の作り出すヤバイ雰囲気を。そりゃいろは先輩もテキトーに仕事作って早々に奉仕部に入り浸るのやめますし、小町だって部長の癖にテキトーな言い訳つけて生徒会室に逃げ込みますよ。

 

きっと、お兄ちゃんはあの部屋の中で、小町たちを呪っていることでしょう。可哀想なことをしました。

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、お米ちゃん」

 

「なんです。いろは先輩」

 

「……せんぱいには、可哀想なことしちゃったねぇ」

 

「……小町、今後お兄ちゃんにはもっと優しくしてあげようと思います」

 

「……それまでに、せんぱいもなんか変なふうに毒されてなければいいけど」

 

「やめてください。縁起でもないです」

 

「……」

 

「……」

 

 

 

 

 

「「ハァ」」

 

 

 

 

 

 

 

 

さっきからずっとこれです。

小町といろは先輩は、現在進行形であの部室の中に流れているであろう淀んだ空気を、それはもう一身に浴びているお兄ちゃんに同情し、溜息を吐くばかり。

 

 

 

 

 

 

 

「結衣先輩のドMもヤバイけど、まさか雪乃先輩が百合に目覚めるなんて思わなかったなぁ」

 

「贅肉は落としたものの、無駄な要素つけちゃいましたねぇ……陽乃さんも言ってましたけど、過度なストレスは人格を破壊してしまうってよく分かった気がします」

 

 

 

 

 

「「ハァ」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日何度目かの溜息を吐く小町たち。

しばらくそれからは無言が続いたけど、その静寂は目の前のアザトBBAによって断ち切られました。

 

 

 

 

 

 

 

「でもさぁ……お米ちゃんって、本当にせんぱいのこと好きだよねぇ……ブラコン? 」

 

 

 

 

は?

 

 

 

 

「は? 」

 

 

 

 

いきなり何を言いやがるんでしょうかこの年増は。

思わずキュートでラブリーな小町がメッチャ低い声を出してしまいました。いけないいけない。

 

いろは先輩は、そんな小町を見て口角を上げます。

 

 

 

 

 

 

 

「いやだってさ〜、お米ちゃんって二日に一回せんぱいの布団に夜潜り込んでくるんでしょ? そんでわざわざ朝早くに自分の部屋に帰って行くって、せんぱい前言ってたよ? 気づかないふりしてるだけで気づいてるって」

 

 

 

 

「へ? 」

 

 

 

 

小町が思わずあげてしまった素っ頓狂な声を聞いたBBAは、ニヤァっと顔を歪める。

 

 

 

 

「いやぁ……千葉の兄妹ってほんとに結構異常なんだねぇ……お米ちゃんはお兄ちゃん大好き♡♡って感じなのかな? ね? ね? 」

 

「あ、ハハハ……なんのことだか、、、小町さっぱりなんですけどね。いろは先輩の哀しい妄想なんじゃないですか? 」

 

 

 

 

 

 

 

平常心平常心……

小町は決して脂汗を流してなんかないし、ドキドキしたりなんてしてない。冷静に、冷静に。

 

 

 

 

 

 

 

「あれれ〜? そうなのかなぁ? じゃあ、お米ちゃんが布団に潜り込んできたときに、決まってパジャマの上からせんぱいのナニをツンツン触ったり、ちょっと触れるだけのキスを何度も何度も嬉しそうにしていくことを私に話してくれたせんぱいの言葉も私の妄想だったのかなぁ? 」

 

 

 

 

「っ!? 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ま、まさかお兄ちゃんそこまで気づいて!?

嘘だ!!!!!

だ、だってお兄ちゃんって昔から異常なくらい寝つきよかったじゃん!! 昔から一回寝たら小町がいくらイタズラしても絶対起きなかったじゃん!?

 

 

 

 

 

 

 

「あれれ〜? お米さん? 顔が青いですよ〜? 」

 

 

 

 

 

 

 

 

声を出せない小町に、いろはBBAは畳み掛けてくる。スッゲエ楽しそうな顔で、スッゲー下衆な顔で小町をおちょくるその姿には、結構本気でイラついてきた。

 

だから……小町はつい、言ってしまったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何が悪いんですかっ!? 私はお兄ちゃんと10年以上一緒なんですよ!? あんたたちとは年季が違うんですよ! 私がどんだけお兄ちゃんが好きだってloveだって変な気起こしてたってどうだったっていいでしょう!? そうですよ! 小町はお兄ちゃんラブですよ!! チュッチュしたいですし毎日一緒に堂々と寝たいですよ!!!!! お兄ちゃんだけど好きですよっ!!わ……私がブラコンで、悪いかあああああああああああああああああああ!!!!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

言ってやりましたよ。

 

ああ、言ってやりましたとも。

まあ? 正直小町的にもっともっと言えることは沢山あるんですけれども。

 

 

だけど、目の前には未だ呆然と、なぜか小町の方を無視してドアの方を見ているいろは先輩。

 

 

なんか少しムカついたので、またお兄ちゃんに対する思いの丈を叫んでやろうと……思ったんだけど

 

 

 

だけど、、、この後、小町は目の前のBBAに、何も叫ぶことはできなかった。

 

 

 

 

 

 

なぜなら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……小町さん……今の本当? ……あ、いえ、別に私は怒っているわけではなくて……」

 

 

「あ、、うん。……ごめんね小町ちゃん……今のは出来るだけ忘れるようにするから……」

 

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

声は、いろは先輩が呆然と見ていたドアの方から聞こえてきました。

 

その開けっ放しだった生徒会室のドアの外からは、

結衣さんとその後ろから抱きついた雪乃さん、二人の横に立っていたお兄ちゃんがこっちを見ていて、、、

 

 

 

正常に戻っているのか、結衣さんと雪乃さんは申し訳なさそうに

お兄ちゃんは……顔で手を隠しながら、、羞恥で真っ赤な顔でソッポを向いていたのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「い……い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!! 」

 

 

 

 

 

小町史上一番の爆音が、生徒会室に響いた。

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

あれから、小町は家に帰ると、すぐに翌日の授業で必要なものを回収。そして敢えてゆっくり帰っているであろうお兄ちゃんと家でバッタリ会わないように、すぐに家を出て雪乃さんの家にお世話になりました。

 

 

なんでも、事情を知った雪乃さん曰く

 

『今のあなたの気持ち、痛いほど分かるわ』

 

らしく、しばらく小町は雪乃さんの家で預かってくれる、と言ってくれたのですが

 

 

 

しばらくとかそんなに時間をかけることは小町はしません。

 

 

 

だって明日、あのあざとBBAに目にもの見せてやるのだから。そのスッキリ感で、この羞恥を塗りつぶしてやるんだから。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

翌日

 

 

 

 

「えっと……生徒会室に行くん……だよね? 」

 

「なんでこんなところで隠れないといけないのかしら……」

 

「……あの、、小町ちゃん? ……説明してくれない? 」

 

 

 

 

昼休み。

小町はあの憎き亜麻色BBAを処するため、すぐに奉仕部の3人に生徒会室の隣の隣の空き教室に集まってもらいます。

3人はまだこれから何が行われるのか分からないようで、口々に疑問を持っているようです。

 

……正直昨日の今日でお兄ちゃんと顔を合わせるのはちょー辛いけど……あいつに仕返しするには絶対にお兄ちゃんの存在は必要不可欠。小町、頑張りますっ!!!

 

 

 

 

 

「まあ、静かに見ててください。もうすぐ来るはずです」

 

 

 

 

 

その小町の声に、三人は空き教室から顔だけ出して、隠れつつ奴が現れるのを待ちます。

 

 

 

 

「ふっふふっふふ〜ん」

 

 

 

 

現れました。鼻歌なんぞ歌いながら、あのBBAが生徒会室に入っていきます。そして、完全に生徒会室に入ってから小町は三人を引き連れて、今しがた閉められたドアの前まで歩いてきました。

 

 

 

「……一色さんに何か用事でもあるのかし……ら? 」

 

 

 

ふふっ、さすが雪乃さん。小町が何をしたいか少し勘付いたみたいです。

さて、未だに頭上にハテナを浮かべた結衣さんとお兄ちゃんにも、ちゃんと説明しなくては。

 

小町は、三人に言いました。

 

 

 

 

 

「ここにタブレットがあります。これには、今日の朝に生徒会室に仕掛けたカメラの映像が流れるようになっていましてですね……今から三人には、いろは先輩のこの部屋の中での姿を見てもらいたいんです」

 

 

 

 

 

いうが早いか、電源を入れて、三人に見せるようにその画面を向けました。

 

 

 

 

そこには……いつものように、普段は生徒会室のいろは先輩専用ロッカーに隠してある、ティンカーベルみたいな衣装に着替えたBBAが映っていて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『みんな〜!!!!! 大精霊いろはだぞっ! ☆ 』

 

『生徒会長とは、世を偲ぶ仮の姿……わたくしは、高貴でキュートな大精霊ですから♡ 』

 

『さあっ! 皆のものぉ!!!!! わたくしを崇め奉るのですっ!!! 』

 

『うふふふふ……この聖なる大精霊の前には、どんな攻撃も無力なんだぞっ!!……』

 

『どうでしょう……このわたくしの魅惑のダンスの前にひれ伏しなさいっ!! ☆ 』

 

『正しい心がなければ、わたくしは見ることができません……だから、あなたは誇っていいのですよ? ハチマン』

 

『大丈夫……このわたくしを見て、心を奪われるのは当然のこと……大精霊の加護を受けたければ、わたくしを褒め称えるのですっ!!!!! 』

 

『さあ、我が魔道書に記された呪文を唱える時です! 』

 

『いきますよ〜〜、必殺の、イロハエル・ウィンク!!☆☆☆ 』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

 

 

 

 

三人は何も言えずに、タブレットを見ながら口を開けたままでした。

 

 

固く閉ざされた生徒会長のドアの向こう。

もう何ヶ月も前から小町だけは知っていて、温情からバラしてこなかった事実。特に何もなければ、バラす気もなかったのに……

 

 

だけど、小町だって甘ちゃんじゃないのです。

昨日の屈辱と羞恥があれば、躊躇せずにバラしますよ。

 

 

 

「分かっていただけましたか? 」

 

 

 

小町は澄み渡った空のような声で言う。

そしてもう一回ためて……

 

 

 

「いろは先輩は、イッたい中二病だってことを!!!!! 」

 

 

 

 

高らかに、あの憎きあざとい先輩の生態を宣言した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あれ? 4人とも……どうしたんですか? 」

 

 

 

 

 

私が宣言した直後、やたらスッキリした顔のいろは先輩が生徒会室のドアを開けて出てきました。そんないろは先輩に対して、お兄ちゃんも、結衣さんも雪乃さんも、乾いた愛想笑いを浮かべて目をそらします。

 

 

 

そんな三人の姿をいろは先輩はなんだかよく分からないと言った困惑した表情で見つめて、最後に小町に視線を固定します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うふふ……いろは先輩知ってますか? このタブレットですね、生徒会室に設置したカメラと繋がってるんですよね」

 

 

「え」

 

 

 

 

 

 

 

 

小町の一言に、思わず声を出して一気に顔を青ざめたBBA。

 

 

 

 

優しい顔をしていろは先輩を見る結衣さん。

どこか遠い場所を見るような雪乃さん。

ゆっくりと、哀悼の意を表するように目を閉じたお兄ちゃん

 

 

 

 

 

 

そして、きっとニヤァっと笑いながら、さっきまでの映像を再び流し始める小町。

 

勝利を確信して、小町はいろは先輩に語りかけた。

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様ですっ……大精霊いろはさん!!!!! 必殺のイロハエル・ウィンク! 小町痺れましたっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「い、いやああああああああぁああああああああああああああああああああぁああああああああああぁああああああああああああああああああああああぁああああああああああぁああああああああああああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!! 」

 

 

 

 

大精霊さん(笑)の叫びが、大変耳に心地よかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

Mission complete

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

スキルまとめ

 

雪ノ下雪乃

 

・乙女ポエム

・ガチ百合

・ぷよぷよ

 

 

雪ノ下陽乃

 

・ド変態

・乙女

・ぷよぷよ

 

 

由比ヶ浜結衣

 

・悪魔的ドM

 

一色いろは

 

・中二病←new

 

比企谷小町

 

・ガチブラコン←new

 

川崎沙希

 

・⁇

 

比企谷八幡

 

・⁇

 



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愛してる※ヤンデレ注意

八幡、つらいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

え、いきなりネガティブなこと言うなって?

 

まあな、言いたいことは分からなくもないが、でも断言してやるよ。無理だから。ほら、お前らもこの空間にいたら分かるから。

 

 

 

 

 

とりあえず、今の俺の周り、奉仕部部室の状況を説明してやろう。

 

 

 

 

 

 

由比ヶ浜と俺に熱いドロッとした視線を向けている我がパートナー、雪ノ下雪乃。

 

最初こそ百合の下さんに怯えていたが、何がドMセンサーにひっかかったのか、最近は目を危ない色に染めてそれに悦んでいる由比ヶ浜結衣。(「禁断の関係って、なんだか心が踊らない?」ってハアハア言いながら由比ヶ浜談)

 

小声で「イロハエル……」とか囁き、笑いながら一色を見つめる小町。

 

にこやかに「近親相姦……」とか小町に囁く一色。

 

 

 

 

 

 

 

 

ついでに、奉仕部のドアの向こう。ほんの少しだけ空いたドアの隙間から、ウルウルと上気した目線を俺に向けてくる雪ノ下陽乃。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほらな?

俺だけが傷つく世界の完成だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 

あれから1時間が経った。

 

1時間前から、奉仕部部室内の雰囲気、様子はほとんど変わっていない。あ、いや、さっき雪ノ下と由比ヶ浜が抱き合い始めて、雪ノ下が由比ヶ浜の胸に顔を埋め始めたくらいか。くすぐったそうに異常な目で喘ぐ由比ヶ浜がエロい。マジエロい。

 

 

 

 

色即是空、空即是色。

 

そんな、あまりの俗世の厳しさ、痛ましさ、理不尽さに、俺は出家して仏の道に入る事を真剣に考え始めた頃。

 

 

 

 

 

 

淀み切った部室に、勢いよく開いたドアの音を引き連れて、一迅の風が吹いた。

 

 

 

 

 

「ちょ……なにこれ……」

 

 

「か、かわさき……よく来たなっ……よく来てくれたっ!! まじ女神だわお前!!!!! 」

 

 

「へ、ふぇっ!? ちょっ、ひき、比企谷……手……そんな握られると……困る」

 

 

 

 

 

 

俺にとって無限にも感じられた魔界に外の光を見せてくれたのは、川なんとかさん……

 

いや、女神様にそれは失礼か。

 

 

 

 

川崎沙希。その人だった。

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

「ね、ねぇ……あの空気なんだったの? あんな、、殺伐とじゃなくて、、ドロっとした空気っていうか……雪ノ下の姉ちゃんもなんで部室の外でモジモジしながらアンタをのぞいてたわけ? 」

 

 

 

 

あれから、俺は逃げるように川崎を引き連れて、ららぽーと近くのコーヒー屋に来たわけだ。川崎は何故か途中から全く抵抗しなくなったが、俺にとってはそっちの方が楽なのでありがたい。まあ、部室に置いてきたあのモンスター達が追ってこないのも謎なのだが、とりあえず魔境から抜け出る事が出来ただけよしとしよう。

 

 

 

「ちょ、ちょっと、聞いてるの? 」

 

 

 

痺れを切らしたように、川崎は思考の渦に巻き込まれていた俺を呼んだようだ。俺は、やっと外の世界に思考を戻す。

 

 

 

「あ、ああ。悪いな。それでなんだっけ? 」

 

「いや全然聞いてないじゃん……ハァ……まあいいや」

 

「ああ……それにしても、悪いな。なんか依頼があって来たんだろ? 」

 

 

 

 

部室があんなことになっていなかったら、川崎の依に関して今頃行動に移せていたかもしれない。しかも俺一人でこのままでは依頼に当たるわけだから、完全にこっちの過失だ。川崎には少し申し訳ない気も出てくる。

 

テーブルを挟んで向かい側にいる川崎は、俺の言葉を聞いて、一気に顔を綻ばせた。

 

 

……そんな顔されると、ちょっと心臓に悪いんですけどね。

 

 

 

 

 

 

「ああ、、うん……でもいいの。どうせ依頼っていうか、言いたいことがあったのはアンタにだから」

 

「え、俺? ……ああ、けーちゃんとか大志関係か? 」

 

「ううん……いや、今回は違うよ……そうじゃなくて……ちょっとさ、絶対に誰かに見られたらいけないものを見て欲しいから、、、もうちょっと顔をこっちに近づけてもらってもいい? 」

 

「あ、ああ。まあ……仕事なら仕方がないが、、どんなやつなんだ? 絶対に見られたらいけないものって」

 

 

 

 

 

 

 

いやほんと何?

もしかして……小町とあの羽虫が……いや、小町は……まあ、アレだからそれはないか。八幡安心。

 

 

 

 

 

 

 

「……なに気持ち悪い笑い方してるのアンタ」

 

「っ……いや、悪い。こっちの話だ、とりあえず顔をそっちに近づけたらいいんだな? 」

 

「あっ……う、うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つい、俺は勢いに任せて、川崎の言うがままにしてしまったんだ。今思えば、俺はほんの少しでも警戒するべきだったのかもしれない。

 

え? 何故かって?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと……川崎さん? なんで俺の顔を両手で固定したの? 」

 

 

前に座る形になっている川崎に、俺は言われるがまま顔を近づけた。すると、彼女は彼女の顔を俺のそれに近づけて、両手でガッチリと俺の側頭部をもって固定する。

 

 

 

 

 

 

 

「大事なものを見せるから、私の目を見て」

 

 

 

 

 

 

 

 

????????????????????????

いや、これはなんだ?

もしかして川崎さん中二病か? いやだ川崎さん一色さんとキャラ被ってるじゃないですか〜……なんて思っている間に、どんどん川崎の目からは光が失われていく。

 

 

 

 

 

 

そう、至近距離から見える川崎沙希の目からは……光が…どんどん失われていって……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、比企谷……前さ、私に告白してくれたんじゃないの? まさか忘れたわけないよね? 私は一生忘れないよ? だってうれしかったんだもん。何であれから私に会いにきてくれなかったの? 私待ってたんだよ? まさか私の事は遊びだった訳じゃないよね? もちろん比企谷だって私のことを心から愛してくれてるから、文化祭の時の愛してるとか、この前の告白とかしてくれたんだよね……? 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭が離せない。側頭部を持つ彼女の力が強すぎる。

俺が危険を感じて頭をずらそうとすると、側頭部に川崎の爪がめり込まれて激痛が襲い、彼女の目がまた黒くなっていく。

 

 

 

 

 

「比企谷……私のこと、好きって言って? 私は好きだよ? 大好き」

 

 

「ま、待て川崎。他の人の目もあるんだから、な? お、おおおおおおお落ち着け、な? 」

 

 

「大丈夫だよ……カップルがイチャイチャしてるようにしか見えないから」

 

 

「ま、待て川崎。考え直せ、な? お前なんか疲れてるんだよ。今日はゆっくり寝たらいい。そうしたらまたスッキリして頭もクリアになるから、な!? 」

 

 

「……もう。私の質問に答えてよ……私はアンタが好き、だから前会った時に、比企谷が告白してくれて嬉しかった……アレからずっと待ってたんだよ?……だからね? また私に愛を囁いてほしいの……それとも、まだ私がどれだけ比企谷のこと好きか分からないの? だったら……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

川崎沙希は暗い目をしたまま、ほんの少しだけ顔を綻ばせ、至近距離で俺に熱い吐息と共に言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私ね……比企谷のためなら、大志だって殺せるよ? 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うっわ。

 

 

ヤバイ。

 

 

俺、言葉を間違えたら冗談でもなんでもなく死んでしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪ノ下雪乃からも、雪ノ下陽乃からも、由比ヶ浜結衣にも一色いろはでも比企谷小町からも感じることが出来なかった、純粋な命の危機。

 

 

 

 

ああ、あいつらはただのちょっと度が過ぎた変態だっただけなんだ。

 

 

 

 

 

 

だがな……俺は今確信した。

 

 

 

目の前のこいつは……変態ではない。だが……

 

 

 

 

 

 

 

 

本物の、ヤンデレだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「比企谷……どうしてなにも言ってくれないの? ……ああ、そっか。言葉じゃなくて行動でってことか。……じゃあ、このまま……」

 

 

 

 

川崎沙希は、徐々に俺に顔を近づけてきた。

綺麗に整った顔を喜色に染め、ほんの少しだけ口元を歪め、黒い目が近づいてくる。力が強すぎて一ミリたりとも顔を動かせる気がしない。

 

 

 

4.3.2.1.……

 

 

 

 

顔と顔の距離が、1センチをきった時。

その声は聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダメ。八幡はあなたのものじゃない」

 

 

 

 

 

 

そこからは早かった。

その声の主が、近くにあったフォークでヤンデレ川崎の手を刺したのだろう。

真近にあったヤンデレの顔が苦痛に歪んだ後、素早く俺の顔から自らの手を離し、彼女はその声の主から距離をとろうとする。

 

 

 

 

 

 

「逃がさんよ、川崎……まかり間違ってそれに手を出されては、私たちも困るからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

顔が解放された俺が最初に見ることができたのは、離れようと距離をとった川崎を逃すまいと、彼女の両手首をまとめて片手で捕まえた状態の大人の女性。薄くタバコの匂いがついた、見慣れた顔。

 

 

 

 

「……あの五人以外にも、こんなにやっかいなのがいたなんて。本当に私たちがいてよかった」

 

 

 

 

 

 

 

幼いながらも、記憶よりは大人びた声。俺のパートナーを思わせる黒髪ロングに、中学校の制服を着こなした華奢な体躯。おそらく、ヤンデレの手にフォークを突き刺したのは彼女なのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ひ、平塚先生に、ルミルミっ!! 」

 

 

 

 

 

 

「やあ、比企谷……ギリギリだったな」

 

「ルミルミじゃない、留美」

 

 

 

 

 

 

 

 

きっとこれからも、この時の2人ほど俺の人生の中で心から頼もしいと思った人はいないことだろう。

 

それほどまでに目の前の2人は、紛れもなくヒーローだった。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

「ありがとうございます、、本当に、どんだけ礼を言っても足りないと言うか…… 」

 

 

 

あれから、俺は平塚先生の車の中に移動し、今は先生が恐らく俺の家まで運転してくれている。

 

 

 

「まったく、八幡はあぶなっかしい。……まああのヤンデレなら、私が遊んでおいたからしばらくは大丈夫だと思うけど」

 

 

 

ルミルミは車に揺られながら、そんなことを言ってきた。ただ、その言葉にまた疑問が生まれる。

 

 

 

 

「ああ、、だがな、留美。どうやってあいつを大人しくさせたんだ? 」

 

 

 

 

俺の疑問に、留美は欠伸をした後

 

 

 

 

「べつに、まだあの人はヤンデレが板についてないだけ。たまに意識が正常に戻る時があるから……あの人の弟妹への罪悪感を刺激しただけだよ。……まあそれがなかったら、私も本気で相手をしなくちゃだったけど」

 

 

 

 

 

あまり要領を得ないルミルミの返事に補足するように、平塚先生が運転しながら声を上げる。

 

 

 

 

 

 

「川崎はヤンデレと同時にブラコンでもありシスコンだからな。留美君は弟妹が第一であるべきという、ブラコンやシスコンの本能に働きかけるやり方をしたんだよ……まあ、いくら川崎のヤンデレの権能がまだ不完全だからとはいえ、あそこまで川崎にダメージを与えられたのは留美君の権能によるものだがね」

 

 

 

 

そう言って、平塚先生はハンドルを動かす。

 

 

 

 

 

「とりあえず、今日はもう帰りなさい。あとはこっちで上手くやっておくから」

 

 

 

 

 

 

そう言った後、平塚先生は車を止める。

俺の家の近くに着いたのだろう。

 

と、思ったのだが

 

 

 

 

 

「このアパート……どこですか? 」

 

 

 

全く知らない場所。知らないアパート。

俺の家とは全然違う場所に、純粋な疑問が生まれた。

その問いには、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここで、比企谷君は私たちとしばらく暮らすんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょうどアパートから、エプロンを装着した大学生くらいの女性が出てきた。相変わらず……ホンワカほんわかめぐりっしゅしている。

 

 

 

 

 

「城廻先輩……」

 

 

「ふふ……いっぱい疲れたよね? ちょっと早いかもだけどご飯も作ったんだっ! 一緒に食べよ? 」

 

 

 

 

 

 

 

 

一色いろはが俺の唯一の後輩なら、

対をなすであろう俺の唯一の先輩

 

城廻めぐり先輩が、俺の手を取ってアパートへとまた歩いて行く。その後ろから、平塚先生とルミルミがゆっくりと着いてきていた。

 

 

 

 

 

 

 

Ps・平塚先生はしっかり駐禁とられました。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

スキルまとめ

 

雪ノ下雪乃

 

・乙女ポエム

・ガチ百合

・ぷよぷよ

 

雪ノ下陽乃

 

・ド変態

・乙女

・ぷよぷよ

 

由比ヶ浜結衣

 

・悪魔的ドM

 

一色いろは

 

・中二病

 

比企谷小町

 

・ガチブラコン

 

川崎沙希

 

・ヤンデレ(不完全)←new

・メガブラコン←new

・メガシスコン←new

 

比企谷八幡

 

・⁇

 

 

鶴見留美←new

 

・⁇

 

 

平塚静←new

 

・⁇

 

 

城廻めぐり←new

 

 

・⁇

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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開戦前夜

「それで……なんでわざわざ俺の父と母と交渉してまで、俺をここに住まわせようとしてるんですかね」

 

 

 

 

 

俺は眼前にいる平塚先生、ルミルミ、城廻先輩に問いかける。あ、ちなみに城廻先輩が出してくれた料理は美味しかったです。本当に、なんだか暖かい味がしました。フワフワぽっぽって感じだった。

 夕飯を食べ終わり、今はこの三人とともに座りながら四角いテーブルを囲んでいる。

 

 

 

 

 

すると、俺の疑問に答えるように、まずは平塚先生が口を開いた。

 

 

 

 

 

「ここにいる人間は、まあまだここには2人いないわけだが……皆君のことを好ましく思っているということをまず大前提に話を進ませてもらう」

 

 

 

 

……好ましく?

 

 

 

 

 

「ふふっ……なんのことか分からないといった顔だな」

 

「……ホンッと……八幡の鈍感、、バカ」

 

「比企谷君はやっぱりニブいんだね〜」

 

 

 

 

 

 

俺は、きっと何のことだか分からない顔をしていたのだろう。そんな俺を見た平塚先生、ルミルミ、城廻先輩の三人はそれぞれに違った反応を見せた。

 

 

 

そして、いい加減答えに辿り着かない俺に痺れを切らしたのか、中学校の制服からモコモコの部屋着に着替えたルミルミが、顔を赤くしながら俺に近づいて抱きついてくる。

 

 

 

 

 

……抱きついてくる?

 

 

 

 

 

「……八幡のことが、1人の男として、私は大好き」

 

 

 

 

 

留美は、俺の腹に顔を埋めた形でそんな声を出してきた。普段はクールな印象を周りに与えるはずの留美が出した余裕のない声から、その真意に否応なく気づかされてしまった俺にとっては、物理的にも精神的にも大変にむず痒い。あと膨らみ始めたあの場所がどことは言わんがゲフンゲフン。

 

 

 

 

 

「……でも、今のままじゃあどうせ、あの貧乳黒髪ロングはもちろん……牛乳おバカとあざといババアにも勝ち目はないし、、、おまけにヤバイブラコンにも勝てないのは分かってる」

 

 

 

 

 

留美は俺の腹に顔を押し付けたまま言ってくるから、腹部がむず痒いのは当たり前なのだが、今俺が震えているのはまた別な理由な気がする。いや、あいつらにこんな状態の俺を見られたらきっと斬首級のお仕置きが待っていそうだが……いや、むしろ頑張って八幡のハチマンがやっはろーしない俺の理性を褒めてもらいたい。

 

 

 

 

 

「だからね……」

 

 

 

 

 

 

続いて、留美の次に声を向けてきたのは城廻先輩だ。

彼女はゆっくりと俺に近づき、ピトッと半身を俺の肩に預けてきた。いい匂いと柔らかさが俺を襲い、彼女のもつ精神的な柔らかさにだんだんと癒されていくような気さえ感じる。

 

 

 

 

 

「今ここにいない二人を含めて、私たちは決めたの。……私たちが大好きな比企谷君を、まずはあの五人からひき離そうって。まあ、そこからはまた敵同士になっちゃうけどね」

 

 

「し、城廻先輩……」

 

 

「おっと、今言ったことは私たちの本気の思いだから……だからいくら君でも、否定したら怒るよ? 」

 

 

 

 

 

 

 城廻先輩は、彼女の白いしなやかな人差し指を俺の唇にあてて、そして妖艶に笑う。近い距離に彼女の体があり、今までは感じることのなかった女を確かに感じた。その艶。大人びた目。成長して女性らしい丸みを帯びた体。先程までの……高校の時に彼女から感じたポワポワは、今はなりを潜めている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イタああああああ!!!!!!!!!! 」

 

 

 

 城廻先輩の妖艶なオーラにあてられていた俺に、強烈な痛みが襲う。

 

 

 

 

 

「……むぅ……八幡のバカ、、、ボケナス、、、はちまん……くそやろー……色欲魔……変態色ボケヤロー……クソが……」

 

 

「……え? る、ルミル……留美さん? 」

 

 

 

 

 

 

 

 拗ね始めた留美の容赦のない罵倒にも確かに驚いたが、何よりも留美が俺の腹を抓る力の強さも尋常じゃない。……いやマジで。留美もなんらかの天性の才能があるんじゃねーのか?

 

 

 

 

 

「うふふ……これ以上お話ししたら留美ちゃんが怒っちゃうね。じゃあ、八幡君。これからお風呂入れるから入ったら一番最初にどうぞ? 」

 

 

 

 

 

 俺があまりの痛みにヒィヒィ言っていると、優しく妖艶な表情をした城廻先輩が声をかけてくれた。……名前で呼ばれた時ちょっとビクッとしちゃったのは秘密。

 

 

 

 

 

 いやあ……どうしましょうね。なんか、俺ここで本当にしばらく暮らす訳? まあ現状のモンスターたちからある程度離れられるのならば……時間をおけばいくらあいつらだってもうちょっとマシになるだろうし、クールダウンの時間も必要かもな……。

 

 

 でもそれにしても、どうして親父も母ちゃんも俺がここに来ることを許したんだ? どうでもいいからか?

 

 

 そんなふうに俺は思考の渦に入っていた。

 

 

 

 ……のだが、その時間は唐突に終わりを告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 壁に背を預けながら、今までそんな俺たちを微笑ましげに見ていた平塚先生が、突然に表情を真面目なものに変えて、ハッキリとした言葉を洩らしたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全員準備しろ……どうやら招かれざる客が来たらしい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 勝手に、玄関のドアが開いた。

 いくらそこら辺のアパートだとはいえ、簡単に起こることではない。今ここにいないという二人が来たにしては……今の平塚先生の発言はおかしい。

 

 

 

 だとすると

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……比企谷君……やっと見つけたわ。私の愛する人」

 

「比企谷君♡……私が、私が助けてあげるねっ!! 」

 

「ヒッキー……やだよ。こんなドMプレイは私嫌い」

 

「お兄ちゃん……お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん」

 

「待っててくださいねせんぱい。私が聖なる力で……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アパートの一室に、聞き慣れた五人の声が響き渡る。

 

 一人は真面目に。ものすごい真面目に。

 一人は夢見心地に。頰を染めながら。

 一人は泣きそうになりながら。

 一人は目に光を無くして。

 一人はノリノリにポーズを決めて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一番最初に入ってきた雪ノ下雪乃が持っていたのは、おそらくこの部屋の鍵だろう。どうやって入手したのだろうか? まあこの五人なら、多分管理人を脅したりするためならどんなことでもできるのだろう。想像したくもないが。

 

 

 

 

 

 

「比企谷君」

 

「比企谷君♡」

 

「ヒッキー」

 

「お兄ちゃん」

 

「せんぱい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「「「「「私が、助けるから 」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 助けられる気が一切しないのは、俺だけか?

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 

 あれから少し時間がたち、俺たちは闘いの最中に身を投じ……はせず、全員が腰を落ち着けている。

 

 

 一つのテーブルを挟んで

 

 

 

 

 

 

 由比ヶ浜結衣と鶴見留美

 一色いろはと城廻めぐり

 雪ノ下陽乃と平塚静

 

 

 と言うふうに相対しているのが今の状況だ。

 

 

 雪ノ下雪乃と比企谷小町の目の前には誰もないが、この二人は依然緊張感を解かない。鋭い鬼気と張り詰めた静寂を纏っている。

 

 

 

 

 

 

「それで、君たちはどうやって比企谷を私たちから離すというんだ? ……実力行使というのなら……血を見ることになるぞ」

 

 

 

 

 

 いや、平塚先生の言うこと一々こえーよ。

 

 

 でもなにより、一番怖いのはこの人たちなら本当に血を見るほどの闘いをしかねないということだ。

 そんな来るかもしれない近未来に俺が戦々恐々としていると、今まで黙っていた我が妹。比企谷小町が口を開く。

 

 

 

 

 

「私たちと先生たち……一人ずつ出して1vs1で闘いましょう。お兄ちゃんをかけて」

 

 

 

 

 

 え? 小町ちゃん? 何言ってんの? 

 

 

 

 

「ほう……先に三勝したチームが勝ちと言う訳か? 」

 

 

 

 

 

 いや、いやいやいや。何言ってんだあんたら。

 

 

 

 

 

「まさか……私たちは全勝が勝利条件でいいですよ。……でなければ、、お母さんも納得しないでしょうし」

 

 

 

 

 

 

 いや小町さん? お兄ちゃんもう何がなんだかさっぱりだよ。なんで八幡君賞品みたいになってんの? あと何で母ちゃん出てきたの?

 

 

 

 

 

 

 

「ほう。面白い。そちらも訳あってのその提案と言うわけか……たしかにあのお義母様を認めさせるには、君たちはそのくらいの戦果を挙げなければならないな」

 

 

 

 

 

 

 いやだからなんなんだよ。なんで母ちゃん黒幕みたいになってんの? 何で雪ノ下も陽乃さんも由比ヶ浜も小町も一色も平塚先生も留美も城廻先輩も母ちゃんが話に出てきた途端にガチの顔になってんの?

 

 

 

 

 

 

 

「そう……なら、最初は私が出るよ……あなたたちの悲願。私が叩き潰してあげる……誰が来ようと、震えて悦ばせてあげるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 留美が立ち上がり、由比ヶ浜を見下ろした。

 

 

 

 

 

 闘いが……始まる。

 

 

 

 

 次回

 

 

 鶴見留美vs由比ヶ浜結衣

 

 

 

Coming soon

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

スキルまとめ

 

雪ノ下雪乃

 

・乙女ポエム

・ガチ百合

・ぷよぷよ

 

雪ノ下陽乃

 

・ド変態

・乙女

・ぷよぷよ

 

由比ヶ浜結衣

 

・悪魔的ドM

 

一色いろは

 

・中二病

 

比企谷小町

 

・ガチブラコン

 

川崎沙希

 

・ヤンデレ(不完全)

・メガブラコン

・メガシスコン

 

比企谷八幡

 

・⁇

 

 

鶴見留美

 

・⁇

 

 

平塚静

 

・⁇

 

 

城廻めぐり

 

 

・⁇

 

 

 

 



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聖母崇拝

時は満ちた。

 

 

 

 

 あの、ルミルミのモンスター討伐宣言から時間は流れて翌日は朝、6:00。

 この早朝の時間に、俺を含めた、昨日あの場にいたメンバーが全員揃っていた。

 

 あ、そうだ。場所は雪ノ下本家の地下室だ。

 

 ここまでの規模とは正直俺も知らなかったのだが、雪ノ下グループは本邸の地下にエクササイズ用の軽いジムのような部屋がいくつかある。

 今俺たちがいるこの部屋は、レスリングなどに使われるような床のある部屋で、さながらこれから何か格闘技の試合でも行われそうな雰囲気だ。

 

 

 

 

「ねみぃ」

 

 

 

 

 つい本音が出てしまう。当たり前だ。朝から平塚先生に叩き起こされたと思ったら、あれよあれよと言う間にここへと担ぎ込まれたのだから。まったく、いくら今日が休日だとはいえですね……

 

 つーか、あの姉妹は何でこんな立派な施設があったのに二人揃ってぷにのんになっちゃったんだろうな。 何やってるの本当にあの人たちはさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私はもう準備万端……出てきなよ。うし乳」

 

 

 

 

 気づいたら、留美は部屋の中央に陣取り、厳しい目つきをしながら由比ヶ浜を呼んでいた。……うしちちってなあ……まあ、それで誰だか分かってしまう俺もおれなんだけど。

 

 そんな風に考えている間に、おずおずと由比ヶ浜は留美の方へ向かう。その顔は気が乗っていないのか、無表情に近い。正直、最近のドMガハマだったら嬉々として自ら悦びへと向かうのが常だったから、今の彼女の様子は非常に気掛かりである。どうした? あいつ。

 

 

 

 

「……ふん。この分だと、私の勝利は確約されたようなもの」

 

 

 

 留美がつまらなそうに、今の由比ヶ浜を見つめて言葉を漏らした。その留美の言葉の重みは、部屋の空気が一気に重くなったと錯覚させるほどの力を持っていて、誰が一番辛いって多分未だにこの人たちが何やってんのか分からない俺だと断言できる。重い。まじ重いこいつら。キャラが濃すぎて重い。

 

 

 

 

「ねえねえ、これって勝利条件は何なの? 」

 

 

 

 

 ここで陽乃さんが疑問を口にした。

 それは俺も気になっていたところだ。まさか今から留美と由比ヶ浜が組んず解れつレスリング対決を始めるわけでもないし、それはそれで想像が膨らむゲフンゲフン。

 ま、まあな、なんにせよどういう勝利条件でどんな勝負をするのかは気になる。

 

 すると、平塚先生があっち側を代表して答えた。

 

 

 

 

「なあに、簡単だよ。相手に参ったと言わせることができれば、その人間の勝ち。従って、自分の信念を曲げ、参ったと言ってしまった方の負けさ……もちろん、その過程で危険な事態になりそうだったら私が止めるさ」

 

 

 

 

 平塚先生は落ち着いた声色で答えた。

 休みであるのにも関わらず、いつもの白衣を纏った彼女はいつもよりも格段に凛々しく見えるのは俺だけだろうか? いやほんとまじ格好いい。だから結婚できないんだろうなっていうくらい。

 

 

 

 

 「……なるほど、明快でいいのではないでしょうか」

 

 

 

 

 真面目な顔をした我がパートナー、雪ノ下雪乃が応えた。……え? 明快だった? 参ったって言わせた方が勝ちだとしか分からなかったよ八幡。危険なところまでいったら平塚先生が止めに入るとはいえ、そこにいたるまでどんな事をしてもいいみたいなその空気。僕ほんと怖いです。まじ逃げ出したい。

 

 

 

 

「……早く始めよ。どうせ、今のうし乳は自分の信念すら揺らいでるみたいだから……私が格の違いを見せつけて、すぐに終わらせてあげる」

 

 

 

 

 留美が高らかに宣言した。

 留美の目には、研ぎ澄まされた集中力と……目の前の相手への怒りの感情が垣間見える。

 

 

 

 

「それでは、、、両者、準備はいいか? 」

 

 

 

 平塚先生が二人に開始の合図を送る。

 

 

 

 

「とっきにできてる」

 

 

 

 

 

 留美は早く始めたいという意思がありありと見え、その気がみるみる上がっていくのが俺にも確認できた。

 

 

 

 

「……うん。いいよ」

 

 

 

 

 

 対して由比ヶ浜。彼女の声は小さく、静かだ。やばい時の彼女はいつだってハイテンションでブッチ切っていたから、明らかに調子が悪いのだろう。思えば、昨日俺とアパートで会った段階から、彼女は昔の由比ヶ浜結衣を取り戻していたように思う。

 

 

 

 

 

 ……だとしたら、、、もし、留美も何かしらの異能の力を持っていたとするならば……もし、留美が由比ヶ浜のドMと張るほどの権能を向けて襲いかかってきたとしたら?……

 

 

 

 

 今の由比ヶ浜に、勝ち目はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは………………始めっ!!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 平塚先生の気迫のこもった戦闘開始の掛け声が、部屋に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 先手を取ったのは、気迫漲った様子の留美だ。

 一気に由比ヶ浜との距離を詰め、闘気を漲らせたままの声で由比ヶ浜に語りかける。

 

 

 

「フン……ドMという牙をもがれたあなたにもう興味はない。せめて、すぐに終わらせてあげる」

 

 

 

 そう言って、彼女は腰のあたりから小さい鞭のようなものを出した。ちゃんとした鞭ではなく、特定の趣味を持つ大人の方々が、夜のプロレスごっこにて使うような、そんな玩具の鞭。

 

 

 

 

 

「ま、まさか留美ちゃん!? もうそれを使うの!? 」

 

 

 

 

 

 どこからか、驚いた様子の城廻先輩が戦慄の声を上げた。留美は、昂った声でそれに応える。

 

 

 

 

 

「せっかく楽しみにしていた……私と対を成す権能との、お互いの信念をかけた真剣勝負っ!!……。なのに、その相手はまともに構える気もない。……この失望が……この寂しさ、やるせなさが……お前に、わかるかァァ!! うし乳ぃ!! 」

 

 

 

 

 

 吠える。猛々しく吠えた留美の手には玩具の鞭。

 その鞭が、勢いよく由比ヶ浜に振り下ろされ、由比ヶ浜の胸部に衝突した。

 それを厳しい目つきをしたままに留美は見つめ、再び声をあげる。 

 

 

 

 

 

 

「……ここまでやれば誰だって分かるよね……私の権能は、うし乳のドMと対を成す異能……ドSだってことに!  覚悟して、、ドMのあなたですら耐えられないほどにヒィヒィ言わせてあげるからっ!!!!! 」

 

 

 

 

 留美の、今日一番の大きい声が部屋に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

「こ、こんのっ!!!!! 戦え! 」

 

 

 

 

 留美は苛立ちを露わにして、何もしない由比ヶ浜を攻め立てていた。いくら玩具の鞭であり、随分マイルドな攻撃性でしかないとしても、何回も攻撃をうけていてはそれなりにダメージも溜まるはず。正直、最初から徹頭徹尾何もしない由比ヶ浜の狙いが全く分からない。

 

 

 敢えて考えないようにしているが……

 

 

 

 

「まさか結衣さん……ドMの権能を失ってしまったのっ!? 」

 

 

 

 

 

 いつのまにか俺の隣に陣取っていた雪ノ下が、思わずと言ったふうに声を上げた。

 両手を胸に組み、祈るような姿勢で、泣きそうに潤んだ目を由比ヶ浜に向けている。ガチレズとしては愛する由比ヶ浜が酷い目に遭うのは辛いことらしい。結構ガチで心配するその様子は、まるで甲子園を賭けた試合で相手にホームランを打たれたピッチャーの彼氏を、スタンドから祈るように見つめる恋する乙女のようだ。

 

 

 

 

 

 

「ハァ……ハァ……もういい。次の攻撃で、この決闘を終わらせてあげる」

 

 

 

 

 

 留美は開始から、そのドSの権能に相応しい戦いをしてきていた。

 

 うし乳はもちろん、負けヒロインだとか、かませだとか脳内残念ガールなどといった罵詈雑言は当たり前。それに、鞭の肉体的刺激を加えているのだ。

 

 しかも時間をかけるに従い、留美の鞭と言葉の刃は鋭さを増していく。その激しさは、ピチピチの女子中学生から苛烈な攻撃を受けるという目の前で繰り広げられているあまりのシチュエーションに、逆に俺が何か変な扉を開けてしまいそうになるほどだ。要するにゾクゾクする。

 

 

 

 

 

 だが、開始してから、いくら攻撃を加えても立ったまま何もしてこない由比ヶ浜を見限ったのか、留美は息を整えると、震えるほど冷たい目つきを由比ヶ浜に向ける。

 

 

 

 

 

「ふんっ」

 

「っ……」

 

 

 

 

 

 掛け声とともに、留美が自分の足で由比ヶ浜の足元を引っ掛けた。由比ヶ浜はほんの少しだけ驚いたようで、小さく吐息のようなものを漏らす。そのまま由比ヶ浜は柔らかいレスリング用の床に尻餅をつき、そして留美の方を見つめる。

 

 

 留美からは、そんな由比ヶ浜を上から見下しているシチュエーションだ。

 

 

 

 

 

 

「あれは……留美ちゃん。これで完璧に決める気だね」

 

 

 

 

 

 

 城廻先輩が言った。どういうことだろうか。

 

 

 

 

 

「城廻の言っている意味が分からないといったようだな。比企谷」

 

 

 

 

 平塚先生が腕を組みながら、俺に声をかけてくる。

 そのまま先生は俺に言い聞かせるように、こう言った。

 

 

 

 

「あれは、留美君の必殺技だよ。……あれをくらった留美の中学校の人間は、男性教職員含めて全てが留美君の支配下に加わったという、伝説の奥義……」

 

 

 

 

 

 そこで平塚先生は声を止める。そして留美の方を見て、平塚先生は薄く笑った。まるでそこから先は、自分のするべき仕事ではないというように。

 

 

 

 

 

 由比ヶ浜を見下ろした留美は……

 

 

 ついに言葉を発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こうべを垂れてつくばえ、平伏せよ……そして、私の足を舐めて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 とんでもないSっ気だった。

 

 

 

 相手の全ての気力を根こそぎ奪うような声色。絶対的な上下関係、力関係を想像させてしまうような迫力。地面を叩いた鞭の音……

 

 

 

 

 

 外から見ている俺でも分かる。確かにあれならば中学校という大きい単位でも、留美の元に平定できるだけの力がある。男性教職員が全て留美の犬になるのも頷けてしまう。そんな圧倒的なドS。溢れる才覚。

 

 

 

 

 

 今、やけに最初から平塚先生や城廻先輩が自信気だったのかの理由が分かった。……そう、鶴見留美は……

 

 

 

 

 

 天賦の際をもった、、エリートドSなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゆ、ゆいさん……」

 

 

 

 

 

 

 雪ノ下が泣きそうになりながら、尻餅をついたままの由比ヶ浜を見つめる。陽乃さんも口元をキツく結び、いろはすは腕を組んで厳しい目つきで由比ヶ浜を見つめる。小町も、歯を食いしばった表情で、明らかにどちらの勢力が優勢なのかが分かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……みんな、そんな顔しないで? 」

 

 

「っ!? 」

 

 

 

 

 

 

 

 由比ヶ浜が、勝負が始まってから初めて口を開く。

 

 その声色に、圧倒的優勢だったはずの留美が虚を突かれたかのような表情をした。

 そして、その声は……天上からの声かと錯覚するかの如く

 

 

 

 ……ゆっくりと顔を上げた由比ヶ浜の表情は……とても、穏やかだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「留美ちゃん……無理しないで? 」

 

 

「なっ……なにを言っている!? こうべを垂れてつくばえ! 足を舐めろ!! 」

 

 

「……違うよね? 本当は、留美ちゃんはみんなと仲良くしたいだけなんだよね? ……それなのに、みんなが勝手に留美ちゃんのドSの部分だけを見ちゃったから……そんな風に、いつでもするしかなくなっちゃったんだよね?」

 

 

「っ!? ……ち、ちがう……」

 

 

「ううん……だって留美ちゃん。昨日私が顔を見た時から、ずっと悲しい顔をしてたよ? 留美ちゃんは、その力で誰かを支配下に置きたいんじゃない……その力で、誰かを笑顔にしたいんだよ!!! 」

 

 

「ち、違う!! 違う違う違うっ!! 私は、この力で周りを支配するんだっ!! 八幡を手に入れるんだ!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 え? 俺?

 

 

 

 

 

 

 

 ご、ごほんっ……

 

 

 由比ヶ浜は、聖母のような表情で留美に問いかけていた。

 先程まで圧倒的に優勢だった留美だが、今では由比ヶ浜は表情だけでそれを逆転し、留美は狼狽するばかり。

 

 

 

 

 

 

 

 

「っあっ!!? ……」

 

 

 

 

 

 

 

 突然、留美が余裕のない声を上げた。そう、彼女は聖母由比ヶ浜に抱かれたのだ。座り込む由比ヶ浜の前で立っていた彼女は、無理矢理由比ヶ浜の手によって、彼女の胸に顔を埋めさせられた。由比ヶ浜はまさに聖母のような笑顔と声色でさらに追撃。一転留美は防戦一方になりはじめる。

 

 

 

 

 

 

 

「もう、無理をしなくていいんだよ? ……確かに留美ちゃんは私がゾクゾクしちゃうくらいのドSだけど、、それ以前に、あなたは可愛い中学1年生の女の子なんだから……あなたは、支配下よりも、、友達が欲しいはずだよ? 」

 

 

 

 

 

 

「や、、、やめてぇ……」

 

 

 

 

 

 

 留美は由比ヶ浜の胸に顔を埋めたまま、そこから全く余裕のなくなった声を出す。その声からは、もはやさっきまでの猛々しさはなくなっていて……

 

 

 

 

 

 

「留美ちゃん……いいんだよ。……あなたはもう、私には無理をしないで? ……本当のあなたを……本当のあなたのドSは、もっと自分を大事にした先にあるはずだよ?」

 

 

 

「……本当の、、ドS? ほんとの、、、わたし? 」

 

 

 

「そう。……それが見つかったら……私が、私のドMが、留美ちゃんの真のドSを受け止めてあげるからっ!!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああっ!! ああああ!!!!! ぁあああああああああああああぁああああああああああああああああああぁああああああああああぁああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 参りましたぁぁ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 堰を切ったように、留美が涙を流す。

 その姿と叫びは同時に、この戦いの勝者を雄弁に語っていた。

 その姿を確認し、一度目を閉じた平塚先生が、ゆっくりと深呼吸をして高らかに宣言する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鶴見留美の信念が折れたことにより……この戦いの勝者は、由比ヶ浜結衣とするっ!!!!!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 劇的な、幕切れだった。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

「ゆ、結衣さんっ!!! 」

 

 

 

 

 目に涙をためた雪ノ下が、戦いから帰ってきた由比ヶ浜に抱きついた。まるで、激闘を制した傷だらけの彼氏を迎えた彼女みたいだ。

 

 

 

 

「ゆきのん……心配させちゃってごめんね? わたし、勝ったよ」

 

 

「うんっ……うんっ!!! 」

 

 

 

 

 

 抱きついてくる雪ノ下の頭をポンポンしながら、由比ヶ浜は噛み締めるように言葉を発する。

 そんな二人を見ながら、いろはすがカッコつけた声で何か言っていた。

 

 

 

 

「全てに染まりつつ、全てを染め上げるそのおおらかさ……まさに聖母!! 留美ちゃんを鎮めたあの技は、聖母の微笑み(レッヒェルン・フォン・結衣)と名付けましょう!!!!! 」

 

 

 

 

 

 興奮するいろはす。ドイツ語を使うのは中二病が進行している証だ。彼女はそろそろやばいかもしれない。あとそのドイツ語あってる? しらんけど。

 

 

 

 

 なんてことを考えていると、あちら側から声がかかる。

 

 

 

 

 

「次は私だよ」

 

 

 

 

 

 妙に色っぽい艶のある声、だがそれでいて外見はポワポワ。見た目は癒し系なのに、纏う空気は明らかに好戦的。

 

 

 

「……一度、相手をしてみたいとは思っていました」

 

 

 

 いろはすは真面目な顔をして、声がした方を向いてなんか言っている。

 

 

 

 

 

 

 

「いろはちゃん……あなたは、私の美技に耐えられるかな? 」

 

 

 

 

 

 

 

 いろはすが向く方向にいた城廻めぐり先輩が、一色を真っ直ぐに見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 次回

 

 

 

 城廻めぐりvs一色いろは

 

 

 

 

 Coming soon

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

スキルまとめ

 

雪ノ下雪乃

 

・乙女ポエム

・ガチ百合

・ぷよぷよ

 

雪ノ下陽乃

 

・ド変態

・乙女

・ぷよぷよ

 

由比ヶ浜結衣

 

・悪魔的ドM

・聖母の力←new

 

一色いろは

 

・中二病

 

比企谷小町

 

・ガチブラコン

 

川崎沙希

 

・ヤンデレ(不完全)

・メガブラコン

・メガシスコン

 

比企谷八幡

 

・⁇

 

 

鶴見留美

 

・ドS←new

 

 

平塚静

 

・⁇

 

 

城廻めぐり

 

 

・⁇

 



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腹を括ったいろはす

うふふふふ……じゃあ、はじめよっか? 」

 

 

 

 

 

 先程、第一戦の由比ヶ浜対留美の戦いが、圧倒的母性(主に胸部の)によって由比ヶ浜勝利に終わった。

 その後、興奮冷めやらぬ中ではあるが、第二戦、次鋒戦が、第一戦と同じレスリングルームにて始まろうとしている。

 

 

 

 まず、不敵な笑みを浮かべながら言葉を発したのは城廻めぐり先輩。俺の唯一の先輩と呼べる人である。

 そして相対するのは中二病、一色いろはだ。彼女は何か知らんがノリノリになっている。目を閉じたまま、片手を自らの胸に置いた姿勢を保って、開始の時を待っていた。小町の手で彼女の中二病がバラされてからというもの、もう隠す気もないらしい。吹っ切れたのだろうか。

 

 

 

 

 

 とにかくだ。これから始まるのは、俺にとっての

 唯一の先輩vs唯一の後輩の一戦。

 

 

 

 

 

 

 一体どんな戦いになるのかとか、そもそもこいつらは何と戦っているんだとか謎は尽きない。いやつーかさっきの由比ヶ浜対留美の戦いも、八幡未だに訳がわからないよ。というのが嘘偽りのない本音だ。

 先程と違う点があるとすれば、昔、小中学校の理科の授業で使ったような、手元を映してプロジェクターに移せる機械があることだけ。一体アレに何の意味が?

 

 

 

 

 ごほん。まあ、いいだろう。だがここまで来たら、何をしてるのかが分からなくてもとりあえずは見届けてやりたくもなる。せっかく朝早くから拉致られたんだ。やっていることは謎だが、本気でやっているのは痛いほど伝わって来る訳だし、最後まで付き合ってやろう。

 

 

 

 

 

 

「……伝わる。肌に、ビシビシと感じます……城廻先輩は、強い……」

 

 

 

 

 

 ……いろはす。でもちょっと君吹っ切れすぎじゃない?

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

「それでは、始め!!!!! 」

 

 

 

 平塚先生の猛々しい声が響き渡った。

 一色はじっと城廻先輩を睨みつけるように見ていて、対する城廻先輩はその視線を生暖かい目でいなしている。

 

 

 最初に動いたのは、城廻先輩だった。

 

 

 

 

 

「ねえいろはちゃん。いろはちゃんはさ、今の自分が好きかな? 」

 

 

 

 

 

 薄笑いを浮かべながら、城廻先輩は問いかける。

 

 

 

 

 

「ええ……好きですよ。もうすっかりバレてしまった今、私を遮るものなんて何もないです。どれだけ中二病とか言われても、私は私を貫き通します!!!!! 」

 

 

 

 

 

 ハッキリと言い切るいろはす。そこには、自分の信念を曲げないという確固とした意思が感じられる。だが、相対する城廻先輩は薄ら笑いを崩さない。そのまま、先輩はズボンのポケットに手を伸ばして……とある、写真の束を取り出した。

 

 

 

 

 

「うふふふふふ……そう言うと思ってたよ。でもね? いつまでそんなことが言えるのかなあ……。この戦いが終わる頃には、いろはちゃんの信念を粉々にしてあげるわ……それっ!!!!! 」

 

 

「……っ!? こ、これはっ!!? 」

 

 

 

 

 

 

 

 部屋中にぶちまけられた写真。その一部に目を通した一色は動揺を隠せないようで、声を震わせた。俺も一枚を手に取り、思わず絶句してしまう。

 

 

 

 

 

 

 

「? なにかしら……こ、これ、、は」

 

「……こ、これは」

 

「い、いろはちゃん……」

 

「……天然水先輩、マジですかあ……」

 

「これは、すごいね」

 

「……ふむ。生徒会長がこれでは、総武高が心配になるな」

 

 

 

 

 

 

 

 雪ノ下、陽乃さん、由比ヶ浜、小町、留美、平塚先生。

 ばら撒かれた写真をそれぞれ手に取った面々も、口々にその感想を述べる。総じて引いていた。

 

 

 

 

 

「じゃあ、まずは雪ノ下さんの持っている写真からみんなで見てみようか? 」

 

 

 

 

 

 ニコニコしながら、城廻先輩は雪ノ下に向かう。そしてその写真を受け取ると、例の機械のカメラ部分ににその写真を写し、それがプロジェクターを介して壁に大きく表された。

 

 

 

 

 

「う、うお……」

 

 

 

 

 それは、生徒会室の開かずの間の中を映したもの。

 生徒会室には、一色が会長になってから会長以外立ち入り禁止になった部屋の存在がある。頑なにこの部屋だけは誰の侵入も一色は許していなかった、そんな部屋。

 城廻先輩の時はそんなことはなかったし、ちょっと入ったことがあったから、なんとなくその部屋だと分かる。

 

 だが、問題はその部屋の惨状だ。

 

 

 

 

 部屋の壁という壁に、コスプレをした自分である一色いろはの写真が拡大されて飾られていた。

 それはさながらアイドルに歪んだ愛を持ってしまったヲタクの部屋のようで、見ただけで顔の筋肉が硬直してしまう。

 アイドルコスもあるが、どこから調達したのかプリ○ュアのコスに身を包んだ写真。なぜか手に包帯を巻いて、夕焼けの中黄昏ている写真。何をとち狂ったのか、水着のエッチな写真。

 

 

 

 

 

 

「あ、ああ…………あああああああ、あああああっ! 」

 

 

 

 

 

 

 頭を抱え、目を絶望に染める一色。先程までの勢いはどこへやらだ。

 

 

 

 

 

「あれ? だめだよいろはちゃ〜ん……まだまだいっぱいネタはあるんだからね……まだまだ足りないよ」

 

 

 

 

 

 薄ら笑いを浮かべ、城廻先輩は頭を抱えて苦しむ一色に言うのだ。そんな二人を見た平塚先生と留美が、落ち着いた声色で言葉を漏らす。

 

 

 

 

 

 

「相変わらず恐ろしいな……城廻のアレは」

 

「うん。相当な強靭な精神力がないと、アレには勝てない。八幡も、あの人には気をつけた方がいいよ。敵に回して一番恐ろしいのは、実はあの人かもしれない」

 

 

 

 

 平塚先生が顔を顰めながらボヤキ、留美が汗を一つ垂らしながら俺に言った。

 

 

 

 

 

 

 

「ど、どういうことだ? まさか……城廻先輩にも、何か秘密が……」

 

 

 

 

 

 

 俺は、思わず言いながら城廻先輩の方を見てしまった。

 すると、にっこりとした城廻先輩と目が合ってしまう。背筋がゾッとした。間違いない。彼女も、雪ノ下の百合や由比ヶ浜のドM、留美のドSみたいな何かがある。そして、それは今現在一色の中二病を追い詰めている強大なスキル……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の権能はね、ストーカーだよ。比企谷くん……わたし、狙った獲物は逃がさないからね♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 にっこりとしたまま、先輩は言った。

 

 戦慄しながらも、俺は納得してしまった。

 確かにだ。なぜならさっきの写真のようなものがまだ5枚もあるわけで……そんなに情報を集めることができるのは、ストーカーというならば納得がいく。

 

 

 

 

 

 

「じゃあ! どんどんいくよ? 」

 

 

 

 

 

 

 

 続いて先輩は、陽乃さんから写真を取って、それをカメラに写した。その内容は……

 

 

 プロジェクターが映し出した映像には、とある本の表紙があった。真っ黒な厚紙かなにかで自分で作ったような、そんな本だ。その本には、真っ白なインクで、古代の文字みたいな何かが書いてある。俺は真っ白な頭で、思ったことを口に出した。

 

 

 

「ヒエログリフ? ……か? 」 

 

「違いますっ!!! あれはサンスクリット語です!!」

 

 

 

 一色が泣きそうな目をしながら必死に訂正してきた。実際あれが何文字かなんてどうでもいいのだが、一色にとってみたらそうではないらしい。

 

 

 

 

「ふふふふふ……あれはね、調べてみたらサンスクリット語で聖典ラーマーヤナって書いてあるらしいよ? まさか、実在した古代インドの大叙事詩なんて自作するなんて……何がしたかったのかな? 」

 

 

 

 

 城廻先輩が、愉快げに笑いながら言う。

 

 

 

 

「あうっごほぉぉっ!!!!! 」

 

 

 

 

 

 

 一色は、言霊の力でも受けたのか今にも吐血しそうな勢いだ。

 

 

 

「じゃあ、まだまだいっくよ〜!!!!! 」

 

 

 

 

 元気いっぱいに先輩は虐殺の再会を宣言する。

 そして今度は由比ヶ浜から写真を取り、同じようにプロジェクターに映されたのは……

 

 

 

 

 「うん。これはさっきの聖典ラーマーヤナの中身だね。全部サンスクリット語で書いてあるけど、内容を言うと……」

 

 

「や、やめてっ!! それ以上はぁっ!! 」

 

 

 

 

 

 

 一色が叫んだ。だが、そんな一色のことをチラッと見ただけで、先輩は臆することなくその先を口にする。

 

 

 

 

 

 

 

『第一章.一節.大精霊いろはの黙示録』

 

『この世はもともと、3柱の女神が創りしもの』

 

『豊穣の女神、ガハマ』

 

『太陽神、はるの』

 

『美と貧乳の神、ゆきの』

 

『そしてその三柱をまとめた、この世界の主人こそが、大精霊イロハエルなのです』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 城廻先輩の朗読が終わった。大精霊が神々を従えちゃうのかよとか、よくそんなにサンスクリット語調べたなとか、まあ色々ツッコミを入れたいところもある。だが、それ以上に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……一色さん。この戦いが終わったら、話があるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ほらぁ……変なところに飛び火しちゃったじゃん。

 お陰でこの部屋がまるで猛吹雪の中みたいに寒いんですが?

 

 

 

 

 

 

 

「はいはいっ! じゃあ、次いくよ〜!!!!! 」

 

 

 

 

 

 恐怖にびくびく震える一色と、氷の女王化している雪ノ下を無視して、先輩は次は小町から写真を取り、プロジェクターに映す。

 

 

 

 

「……これは」

 

 

 

 小町が声を漏らした。

 これは、多分城廻先輩が盗撮したものだろう。一色が何か小さいものに顔を埋めているような構図だ。これだけでは何か分からないだろうと、先輩が補足してくれる。

 

 

 

 

「これはね? 由比ヶ浜さんの胸をガン見している比企谷くんの写真を、わざわざ学校の外を取引場所にして小町ちゃんから貰った後のいろはちゃんだね。多分だけど、写真の比企谷君にチューしてるよね、コレ。こんだけ顔を埋めているってことは、結構ディープなやつなのかな? 」

 

 

 

 

「うっ……うう〜〜〜〜〜〜」

 

 

 

 

 

 

 俺はもう一色のことが見れない。声だけが聞こえてくるが、その声からはもう何の余裕も感じられなくて、なんかもう、ただただ可哀想だ。

 

 

 

 

 

 

「じゃ次いこ! 」

 

 

 

 

 

 鬼か、この先輩は。もうストーカーじゃなくて鬼だろ絶対。無惨より無惨だよアンタ。

 

 

 

 

 流れで留美から写真を取り、映す先輩。

 

 

 次に映されたのは、夜の公園だった。

 木に向かって一色は木刀のようなものを握っており、その木には紙が貼り付けてある。紙には「ひんにゅー」と書かれた……誰かの絵が描いてあって……その下には「せんぱい奪回」と書かれている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よほど死にたいようね、一色さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ねえ、先輩これ絶対オーバーキルだって。

 凍てつく波動が痛すぎてやばい。何がやばいって、雪ノ下が由比ヶ浜に一生懸命止められてるくらいやばい。目が血走っているし、今にも無残な殺人現場になりそうだ。やっぱり、先輩絶対無惨だって。新しい鬼作っちゃってるし。

 

 

 

 

 

 

「よーし! 最後いくよぉ! 」

 

 

 

 

 

 

 平塚先生から写真を受け取った先輩は、にこやかにまた最後の写真を映す。もうホントに勘弁してやってくださいって。不登校になっちゃうよいろはす。

 

 

 

 

 

 最後に現れたのは、一枚の手紙だった。その手紙には、こんなことが書かれていて……

 

 

 

 

 

『これを読んでいるということは、きっと私にピンチが訪れているということなのでしょう……。でも、あなたは負けない。だって、あなたの仲間を想像してみて? 』

 

 

『雪乃先輩は貧乳ですぐキレるけど、憧れの理想のお姉さん。せんぱいを射止めた流石の人。まだまだあの人からあなたは学ぶべきことが沢山あるはずよ? 』

 

 

『結衣先輩。頭がだいぶ弱いけど、それを補ってあまりある女神。私はまだほとんど恩返しも出来ていない。それでいいわけないでしょう? 』

 

 

『はるさん先輩。あの雪乃先輩のお姉ちゃん。完璧超人で、私の目標。まだまだ私はあの人に追い付けていない』

 

 

「お米。特にないけど、あなたはまだお米を屈服させていないでしょう? ちゃんと研いであげるまで、力尽きてなんていられない!! 」

 

 

「せんぱい。だいしゅき。子供の名前は何にしましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オーバーキルだ。

 

 

 こんだけの攻撃を受けて、もう立てるはずがない。

 だってそうだろう? 先輩は自分のストーカーの権能を余すところなく使い、確実に一色を殺りにきた。その効果は絶大なようで、もはや、一色は下を向いたまま立ち尽くしている。今でも立っていられるのが不思議なくらいで、ここまでで参ったとギブアップしなかっただけとんでもない精神力だと俺は思う。

 

 

 

 

 

「うふ♡ よくここまで我慢したね、いろはちゃん……でも、もう我慢しなくていいんだよ? 」

 

 

 

 

 城廻先輩は、下を向いたまま立ち尽くす一色のすぐそばにより、甘い声で囁いた。もう諦めろと、確かに俺にはそんな副音声が聞こえる。

 

 

 

 城廻先輩の手法は多彩だった。

 ストーカーという性質から、多様な情報を入手。多角的な攻め方で一色の精神を抉り、その波状攻撃を成功させる。反撃をしようにもその隙さえ与えず、別の角度から追撃を加える多彩さは、まるで様々な球種を自在に操る万能ピッチャー。

 

 

 

 

 

 圧倒的。ワンサイドゲーム。その実態に誰もが、この勝負の行方を確信した。

 ……その時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!? 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一色が両手で、城廻先輩の両肩を掴んだ。全くの予想外なのか、城廻先輩も声にならない声を漏らす。驚きを隠せていない。

 

 

 

 

 

 

「確かに、確かにあなたは強かった。……でも、城廻先輩は一つだけ、決定的な過ちを犯しました」

 

 

 

 

 

 その一色の声色には、力がある。

 

 これだけ一方的に責められても、辱められても、それなのに……この力は何だ? 一色いろはから感じるこの闘気は……何なんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうですね。最後の、昔、私自身に向けて何となく書いてみたあの予言書……アレがなければ、確かにヤバかったです。でもアレのおかげで、折れずに済んだ。……いえ、私の仲間のお陰で、折れずに済んだっ!!!!! いいですか? よく聞いといてくださいね城廻先輩!! 」

 

 

 

「なっ……つ、強がりを! 一色さんはもう瀕死のはずっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 狼狽える先輩に、一色は今日一番の熱意の籠った目を向けている。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどな……面白い。あんな奴だと知っていれば、私が相手をしたかった……熱い試合になっただろうに」

 

 

 

 その戦況を見ながら、平塚先生が嬉しそうな笑顔で言う。そのまま、顔を一色に向けたままの状態で、先生は俺に語りかけてきた。

 

 

 

「なあ、比企谷……お前は、昔の○ンピースのこんなセリフを覚えていないか? 」

 

 

 

 そっと、噛み締めるように先生は溜めて、言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全身に何百の武器を仕込んでも、腹にくくった一本の槍には、適わないこともある」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その平塚先生のセリフの後、一色の大声が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

「いくら城廻先輩がっ……! 多彩な攻め方で私を攻撃してきても! 私の信念は……中二病は……折れたりしないっ!!! 」

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 

「っ……いくら強がったところで、いろはちゃんが満身創痍なのは変わらないよ」

 

 

 

 一色のシャウトを受けた先輩は多少はよろめいていた。だがら自分のアドバンテージを誇示することによってまた平静を保つ。だが、それも長くは続かない。

 

 

 

「確かに、私には先輩に刻まれた傷があります……長くはもたないでしょう……ですが、城廻先輩のそのストーカーというスキル、そこに私は突破口を見ました」

 

 

 

 すると、一色は俺に近づいてきた。そして、俺が持っていた一枚の写真を見ると、ニッコリと笑う。そのまま俺から写真を取って、その表情を保ったままに一色は城廻先輩の元へ歩いて行く。

 

 

 

 

「な、何をしようというのっ……」

 

 

 

 

 城廻先輩は警戒しながら、一色に問うた。

 そんな先輩に、一色はニヤつき、その写真を見せながら答える。

 

 

 

 

 

「これは、私が前にせんぱいを雪乃先輩から奪おうと、ポッキーゲームをした時の写真です。せんぱいと、せんぱいにめちゃくちゃくっついた私が写っています」

 

 

「そ、それが何かな? そのあと雪ノ下さんとはるさんにボコボコにされたんだよね? 」

 

 

 

 

 

 

 先輩は、一色が何をしているのか分からないといったようで困惑していた。だが、一色がボコボコにされたという最後の台詞だけは、そんな自分を奮い立たせるように自信満々を装っている。

 

 

 

 

 

 

 

「……これ、先輩は正直羨ましいとか思いませんでした? 」

 

 

「っ!!? 」

 

 

「ふっ……図星なようですね」

 

 

 

 

 

 

 

 なんだ? どういうことだ? 

 俺が困惑している間にも、一色は言葉を続ける。

 

 

 

 

 

 

 

「先輩も、薄々気づいているんでしょう? いつも遠巻きにストーカーなんてしていたら、こんなふうにせんぱいと直にイチャイチャなんて出来ないって」

 

 

 

「やっ……やめて……」

 

 

 

 

 城廻先輩が胸を押さえて苦しみ始めた。なんで?

 ここを好機と見たのか、一色は一気にたたみかけ始めた。

 

 

 

 

 

 

「そう。確かに城廻先輩のストーカーのスキルがあれば、ある程度のせんぱいの情報は手に入るでしょう。……ただ、私みたいに、こんなふうに、せんぱいと直にスキンシップをとるような関係性は築けないっ……」

 

「おいちょっと待て一色!? 」

 

「ああ! ああああああああああ!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一色は俺の腕に自らの腕を組み、城廻先輩に見せつけるようにドヤ顔をキメた。先輩はそんな俺たちを見て頭を抱え苦しみ出す。そしてそのまま、一色は攻勢を続ける。

 

 

 

 

 

 

 

「城廻先輩って、多分、いいところまでいっても最後のところで攻めれない……所謂、ヘタレって奴なんじゃないですか? 」

 

 

「や、やめてぇぇぇぇぇぇ!!! 」

 

 

 

 

 

 

 城廻先輩の苦しみ方が増した。そんな先輩に、勝ち誇った様子の一色はまたさらに続ける。

 

 

 

 

 

 

 

「いいですか? 城廻先輩、私を見ていてくださいね? 」

 

「くっ……な、なにを」

 

 

 

 

 

 

 

 城廻先輩が負けん気を出し、顔を無理やり一式に向けた瞬間だった。一色は俺を呼び、そして……

 

 

 

「せんぱい」

 

「ん? なん……っ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちゅっ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キスをされた。

 

 

 マウストゥーマウスで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っぷはっ……そう、城廻先輩。あなたは遠巻きにストーカーなんてしているヘタレのうちは、私みたいにこんなアタックは出来ないわけです」

 

 

 

 

「なっ……グハッ……ううう……そんな」

 

 

 

 

 

 そんな光景を見た城廻先輩は、床に膝をついた。そんな先輩に、一色はトドメとばかりに駆け寄って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、今のあなたに……私と同じことが出来ますか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……できない……私には、恥ずかしすぎてそんな事出来ない……まいり……まいり、ました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 勝負が決した瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 さああれから、第二試合が終わってから30分が経つ。

 

 終わってから少しして、何故か俺だけ別室に行って欲しいとその場にいた雪ノ下たちに頼まれたわけだが……

 一色はどちら陣営に関わらず全員から制裁を受けたみたいだ。そして今ここにはいない。無事だといいなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「比企谷君、あなたにもあとでお話があります」

 

「ヒッキー。私そういうプレイ嫌い」

 

「お兄ちゃん殺すよ」

 

「比企谷くん楽しそうだったね」

 

「八幡。そんなに鞭で撃たれたいんだ」

 

「撃滅の……」

 

 

 

 

 

 

 

 そう雪ノ下たちに言われた言葉がまだ耳に響いている気がする。辛い。目にハイライトなかったよあの人たち。

 そんな感じで、俺自身も自分の身の置き所に困っていた中、部屋のドアの辺りから高らかな声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふっふっふ。久しぶりだね、みんな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 奴が来た。

 

 

 

 そう、空前絶後のド腐れ人間。掛け算した男は数知れず、それを受けてダメージを負わなかった人間はいない……。俺が出会ってきた中で、一番使用法が難しいであろう人間。

 

 

 

 

 

 

「あなたは……海老名先輩っ!!! 」

 

 

 

 

 

 小町が、一歩前に出て吠えた。まるで、打ち負かすべき敵を見定めたと言わんばかりだ。その小町の闘気を、余裕の、ドロっとした笑みで海老名さんは受け止め

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「小町ちゃん……待っていてね? あなたを腐海の住人にしてあ・げ・る♡」

 

 

 

 

 

 

 

 嵐が、来ようとしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回

 

 

 

 海老名姫菜vs比企谷小町

 

 

 

 

 Coming soon

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

スキルまとめ

 

雪ノ下雪乃

 

・乙女ポエム

・ガチ百合

・ぷよぷよ

 

雪ノ下陽乃

 

・ド変態

・乙女

・ぷよぷよ

 

由比ヶ浜結衣

 

・悪魔的ドM

・聖母の力

 

一色いろは

 

・中二病

 

比企谷小町

 

・ガチブラコン

 

川崎沙希

 

・ヤンデレ(不完全)

・メガブラコン

・メガシスコン

 

比企谷八幡

 

・⁇

 

 

鶴見留美

 

・ドS

 

 

平塚静

 

・⁇

 

 

城廻めぐり

 

 

・ストーカー←new

・ヘタレ←new

 



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番外編。〜第一話よりも前のお話〜

 みなさんこんにちは……

 世界の妹。比企谷小町です。

 さて今回はですね……普段のシリーズの小町の晴れ舞台の前に、少しだけ昔のお話をしたいと思います。

 

 

 これは、時をだいぶ遡り、陽乃さんのぷよぷよによって雪乃さんとの醜い争いが始まってしまう前のお話。

 

 

 今からお話するのは、私たち五人が知ってしまったお兄ちゃんの秘密。もうあまりにもあまりにもなので、私たち五人のみの心のうちにそっと仕舞っておくことにした、門外不出のトップシークレット……。

 

 

 

 

 

 

 

 いいですか?

 絶対秘密ですからね?

 マジやばいですからね? 絶対秘密ですよ?

 絶対ですよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 絶対ですからね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

ミーンミンミンミンミンミンミーーーン

 

 

 

 

 

 

「うっわあ……暑い」

 

「……お米ちゃん。どっか涼しいとこないのぉ? 」

 

「あはは……私も暑くてクタクタかも、、それに、、なによりゆきのんが……」

 

「……ぁ…………ぁぁぁ……………………」

 

「あちゃー……雪乃ちゃんこりゃヤバいわ。慣れない人混みと暑さのダブルパンチに完全にやられてる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夏。クッソ暑かった今年の8月。

 それは小町たちが、奉仕部女子会と称してみんなでプールに行った日のことです。

 嫌がる雪乃さんをみんなで半ば無理やりに真夏のプールへと駆り出し、逆にその小町たちまでもが暑さにやられていた、そんな日のこと。

 

 ……ああ、まあ、奉仕部なのに奉仕部じゃない人が二人いるとかそういうの今はいいんで。ほら、この二人ですからね。誘わなくたってついてきますからこの人たち。

 

 

 

 

 

「……う〜ん。近くの喫茶店とかは……いや、これ以上の人混みは雪乃さんが厳しそうですね」

 

「うん……このゆきのんの状態じゃあそれがいいかも。でもそれじゃあ、今日は解散にする? 一応プールには行ったから……」

 

「え〜もう帰っちゃうんですかぁ? それはそれで味気ないですよぉ」

 

 

 

 

 

 結衣さんといろは先輩が、小町の言葉にそれぞれ返してきます。

 

 ……正直、小町だってもうちょい遊びたいのです。  

 でも……今のカオナシみたいな声を出している雪乃さんを見ちゃうと……それはそれはで……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 何か……何かいい手はないのかなぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!!! 小町ヒラメキっ!!!! 」

 

 

 

「うわっ、どうしたのお米ちゃん。びっくりした」

 

「うん? 小町ちゃん何かいい案が浮かんだのかな? 」

 

 

 

 

 

 突然の大声を上げた小町に、いろは先輩と陽乃さんは疑問を口にします。なのでその時小町は、自信満々に、この状況を解決できる起死回生の一手を提示しました。

 

 

 

 

 

 

「みなさん! うちに来ませんか!? それならみんなで遊べますし、冷えた快適な空間を保証しますよ!……それに何より……お兄ちゃんをみんなでイジれます 」

 

 

 

 

 

 

 

 その一言で、他の四人の目にも確かに正気が回復したのがわかりました。

 

 今思えば、小町がこんな提案をしなければ……あんなことには、、、

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 はい。というわけで比企谷家の玄関です。

 家に入り、皆さんが靴を揃えたところで、みなさんそれぞれに感想を口にします。

 

 

 

 

 

 

「おじゃましまーす……わあ、久しぶり……サブレ取りに来た時以来だ」

 

「ここが……比企谷君の家……すんすん」

 

「ふーん。毎日ここで比企谷くんは生活してるんだぁ」

 

「せんぱいのにおいがする……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 多分、いえ、まともな感想を述べたのは結衣さんだけですね。雪乃さんは復活しましたが、まだまだ頭がイカれているようです。陽乃さんからは安心できない何かを感じます。いろは先輩は気持ち悪いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、ではみなさんとりあえずリビングに……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 と、小町が言った時でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

『Hey guys!! we have a gift for you!!!!! 』

 

 

 

 

 

 

 爆音で、恐らくリビングのテレビから何か英語が聞こえてきました。……もしかして、お兄ちゃんがリビングのテレビで何か見ているのでしょうか……

 

 

 

 みなさんも気になったのか、小町と顔を合わせるとゆっくりと首を縦に振ります。それから、私たち五人はこっそりとリビングに繋がる扉まで歩きました。

 

 

 足音を立てないように、こっそりと。

 

 

 

 幸い、なぜかその扉はほんの少しだけ空いています。全員その隙間から、まるで団子○兄弟のように顔を出して、リビングの中を覗くと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アンアンアンアンアンアンっ!!! 』

 

 

 

 

 

「はぁはぁ……雪ノ下……ゆきのしたぁ……ゆきのぉ! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこには、ps4を繋げたテレビに映る、大人のプロレス。アンアン喘いでいるのは、黒髪ロングのスレンダーなその手の女優。

 

 

 ……そして、それをガン見しながら……雪乃さんの名前を叫びながら、、、自分のものを扱く我が兄。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地獄だ。地獄がある。

 思わず、小町は一旦廊下に戻ります。するとみなさんもそうして……

 

 

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

 

 

 

 

 もう一度言います。

 地獄です。みんな何も言えません。

 

 

 

 

 

 

 そのまま3分程度、沈黙が場を支配した後。

 今度はまた違った女優の感高い嬌声が聞こえました。

 

 意を決して、再び私たちは覗きます。

 

 

 

 

 

 

『ハァぁぁんっ……』

 

 

 

 

「ハァハァ……ゆいぃ……ゆいい!!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……もう一度言います。地獄です。

 今度はおっぱいバインバインな可愛らしい人が写っていました。

 そして、また3分ほどたつと、今度は別の可愛らしい声が聞こえてきて……

 

 

 

 

 

 

『やぁぁん!!! せんぱいぃぃん!! 』

 

 

 

 

「いろはっ!!!!! ハァハァ……いろはっ!! 」

 

 

 

 

 

 

 再び3分。

 今度は妖艶な大人の魅力溢れる女性が

 

 

 

 

 

 

『うっふ〜ん……もっとぉぉぉ』

 

 

 

 

「ハァハァ……陽乃さん……っ……陽乃っ!!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして……

 

 次に写ったのは、小柄な、八重歯が特徴的な女優さんで……

 

 

 

 

 

『おにぃちゃん……いやぁん……ああんっ』

 

 

 

「ハァハァハァ……小町……こまちぃ!!!!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、それからしばらくすると……

 

 

 

 

 

 「ああ!! ああああああ!! ぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私たち五人の顔は、真っ赤でした。

 誰からともなく、家を音を立てないようにそっと出て行って……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日、私たちは何も見ていない……いいわね? 」

 

 

 

 

「「「「はい」」」」

 

 

 

 

 

 

 すっかり正気を取り戻した雪乃さんの宣言に、それはもうとても良い返事で、小町たちは答えました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ね? やばいでしょ?

 

 

 

 



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番外編.2。相模南の復讐

ああ、悔しい悔しい悔しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 3年になった。

 でも学年が一つ上がったからといって、別に何かが劇的に変わったわけでもなんでもなくて、、、、、

 

 

 

 

 

 ふとした時には、後ろの席から誰かがウチを嘲笑しているのではないかとか

 

 教室の端で笑い合っているあの娘たちは、ウチの話題で笑っているんじゃないかとか

 

 今私の横で本を読んでいる男子も、内心ウチのことを馬鹿にしているのではないかとか

 

 

 

 

 

 ……はあ。我ながらすっごく卑屈。

 こんなことばかり考えてしまうようになってしまった。

 

 

 

 

 

 

 もちろん。なぜそうなっているかの見当はとっくについている。

 

 

 

 

 

 全部、あいつのせいだ。

 あの腐った目をした陰キャ。あいつが悪いんだ。私が裏で笑われるのも、勝手にそう被害妄想をしてしまうのも、こんな卑屈な自分に自己嫌悪してしまうのも、、、全部、全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部……あいつのせいだ。

 

 

 

 でも、本当に不思議なやつ。文化祭であれだけ周りからの風当たりが強くなったはずなのに、別にあいつは普通に学校に来て、普通にいつも通りの生活をしていた。なにより謎だったのは、学校内カーストの上位にいる人たちがこぞってあいつとの関わりをやめなかったこと。それどころか、新生徒会長なんてあいつに懐き始めたみたいだし。

 

 

 雪ノ下さん。その怖いお姉さん。結衣ちゃん。葉山くん。生徒会長。前生徒会長。戸塚君。三浦さん。海老名さん。戸部君。川崎さんまで。……なんなら、平塚先生は絶対あいつがお気に入りだった。

 

 

 

 

 

 

 ……なんで? なんであんたにはそんなに人が寄ってくるの? ウチにはそんな人たちいないのに。ウチは一回失敗したら全員逃げて行ったのに。なんであいつは違うの? ねえなんで? なんでなんでなんで?

 

 

 

 

 

 悔しい。どうしてウチがこんな目に遭うの。

 あいつの方がウチよりも下の癖に。どうしてウチがこんなになっちゃってるんだろ。こんなはずがないんだ。こんなのはダメなんだから。こんなんじゃいけないんだから。

 

 

 

 

 

 

「あっ……ごめんなさい」

 

 

 

 

 

 ついイラついて、ウチは、机の上に腕を音を立てないように気をつけながら叩きつけた。そのせいで、机に出ていた消しゴムを横に飛ばしてしまう。だがその消しゴムは、隣で本を読んでいた男子の横顔にクラッシュ。隣の男子は、唐突に頰に現れた痛みに、小さく驚いた声をあげていた。これはさすがに100パーセントウチが悪いので、私はその男子にしおらしく謝る。

 そうしてその男子はふと私の方を見たかと思ったら、次の瞬間には一気に冷静さを失って

 

 

 

 

 

 

 

「ご、ごごごらむごらむっ!! わ、我は痛みを感じぬ体質だからな……要らぬ心配だ」

 

 

 

 

 

 

 

 は? なんだこいつ。

 

 よく見ると、その男子は結構やばい。なんで教室の中でそんな暑そうなコート着てるのとか、その指抜きグローブなにとか、パッと見ただけでツッコミどころが出るわ出るわ……。なにより、ウチのことを見た瞬間にビビりまくっているその変な挙動がキモい。多分女慣れしてないだけだけど、口調もキモい。めっちゃ汗かいてるし。デブだし。うわっ見てるだけで暑苦しいんだけど。

 

 

 

 

 

「いや……別に心配してたわけじゃないんだけど……」

 

 

 

 

 

 

 いや、マジで気持ち悪いな。鼻息やばいし。

 

 

 

 

 ……普通ならそのまま、会話を打ち切っていたのだと思う。だってこんなやつ関わりたいとも思わないし、なにより気持ち悪い。さっきから視線が汚いし、ケプコンケプコンとか言ってるし、マジで日本語を喋って下さいと思うほどだ。

 

 ……でも、その時のウチはどうしちゃったのだろうか。何故だか、こんな質問をしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、アンタはさ、自分が嫌いな人にはどんな対応する? 」

 

 

 

 

 

 

 

 何言ってんだろウチ。よりにもよってこんな見知らぬ気持ち悪い男子に……

 そうやって、また軽く自己嫌悪に陥っていると、予想外にその男子はすぐに真面目な声で答えてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「蹴散らすに決まっておろう……我が覇道にとって邪魔な者は、誰であろうと容赦はしないわっ!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 妙に自信気に、眼鏡をきらりと光らせながらその男子は言った。言い回しとか気持ち悪いしちょっと何言ってんのか分からないけど……

 

 

 

 

 何故だか、それはウチの心に響いたんだ。

 

 

 

 

 

 炎が燃え上がった。行き場のない復讐心。この恨み、晴らさでおくべきか。

 

 

 

 

 

 

 

 だから、ウチはあいつに復讐することにしたんだ。

 とにかく、そうしなきゃ気が休まらないから。

 

 ……でも、あいつに直接何かをするのはあんまり意味がない気がする。ほら、あいつ無駄にメンタル強いし。

 

 だからウチは別のやり方で攻めることに決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あいつの近くに、比企谷八幡の近くにいるやつらの弱みを握って……

 

 

 あいつらのグループを、外側から空中分解させてやる。

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 というわけで放課後になり、ウチはとりあえず生徒会室の前に来た。まず最初のターゲットはあの1年……いや、もう2年か、あの年下生徒会長。

 彼女に何かしらの弱みがあれば、目立つ立場にあるだけ反動も大きいはず。それになんか頭弱そうだし、結衣ちゃんの相手をするようなものだろう。

 

 

 

 

 ……なんだけど。

 どうしよう。どうやってこの扉開けよう。

 ……やっばい。何も考えてなかった。そうだよね、そりゃあ生徒会室の扉は閉まっている筈だ。かと言って、その扉を開けて何か用があるわけでもない。接触するのなら必要な理由を考えるのを忘れていた。

 

 

 

 

「……えっと……なにか生徒会にご用ですか? 」

 

「あっ……え、ええと、、ね。あっ生徒会長いないかな? ちょっと会長に用があるんだ! 」

 

 

 

 

 ウチに話しかけてきたのは、確か書記の子だったと思う。私は咄嗟に話を誤魔化して、ターゲットへの接触を図る。

 

 

 

 

「ああ……すみません。いろ……会長なら、今は屋上にいると思います」

 

「屋上? 何で? 」

 

「ああいや……たまには私たちもあの痛い声を聞きたくないというか……気づかないフリしてあげるのも疲れるというか……普通に別部屋でも声漏れてるというか」

 

「? 」

 

 

 

 

 

 どういう意味だろう。最後の方は早口と小声で何言ってるのか分からなかった。まあいいや。ターゲットの居場所は分かったし。

 

 

 

 

「まあありがとう!!! 」

 

「あっ……ちょっと!! ……ああ……行っちゃった。……いろはちゃん、いつもみたいに暴れてないといいけど」

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 屋上。私はそこに繋がるドアの前にいた。

 え? どうして前に進まないのかって?

 

 いや……だって……さ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ふっふっふ……覚醒の時は来ました……』

 

『この不穏な風が、私の大精霊の力を呼び起こすっ』

 

『嗚呼。イロハエルの愛の力をこの世界は求めているっ!! 感じる、感じるのですっ!!! 世界は、私の愛に飢えているっ!!!!! 』

 

『いつか来るその人……つまりはせんぱいの覚醒も近いでようですね……早くせんぱいを、あの妖怪ペチャパイ雪女から解放しなくては』

 

『待っていて下さいねせんぱい。大精霊イロハエルの加護、愛があれば、あのペチャパイからせんぱいを守ることだって訳ないのですからっ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゑ、

 

 

 

 

 

 

 

 なにこれ。

 

 いや、まあさ。

 

 確かに弱みは握れたと思うよ? 確かに。これ以上ないくらいやばいかも。

 

 

 

 でもさ……流石に予想外すぎて私もどうしたらいいか分かんないんだけどこれ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『っ……そこに誰かいるんですか!? 』

 

「っ!?!?!? 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やばっ!? バレた? 

 そうやって、ウチはほんの少しだけ空いていたドアの隙間から屋上を見る。そこには……

 

 

 

 

 

 

 

 

『ふっ……そんなところに浮いていても、私の目は誤魔化されないわっ……喰らえ必殺! イロハエルゥゥ〜ウィンクっ!!!! 』

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの子は、ウチとは真反対の虚空を見ながら、なんかポーズを決めて必殺技を放っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……さ、次行こ。

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 すっかり時間が経ってしまった。

 もう各教室にはあんまり人がいない。

さあ、どこに行こう。時間はあまりないんだ。

 

 少なくとも次はまともな弱みを握れればいいんだけど……。さっきのはちょっとヤバすぎて録音も写真も忘れてたから、次こそは証拠も掴まなきゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ぱんっぱんっパンっ』

 

『はぁぁん!!! いい!! これ、すっごくきもちぃぃ〜ん!!! 』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 屋上前の踊り場から降りて、教室のあるフロアを歩いていると、なんだかヤバそうな音と声が聞こえてくる。

 何この声。……いや、この声と音はどう考えても……

 

 

 

 

 

 

 結衣ちゃんが、誰かとヤっている?

 

 

 

 

 

 

 

 ウチは息を潜め、足音を立てないように、でも足早にその声がする教室まで動いた。携帯で写真アプリを開き、準備万端。そうしている間にも、結衣ちゃんは誰かと行為を続けているみたい。嬌声と音が鳴り止まない。

 

 

 やっと……やっとだ。

 ほくそ笑みながら、ウチは夕焼けが差し込む教室の中を覗き込むと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ハァぁぁん!!! いい、いいよ!!! この鞭いいよっ……自分で自分を叩くの気持ちいい! この痛みがたまらないのぉぉ! 奉仕部の時間にトイレって嘘ついてここにいるのも、誰かに見つかるかもしれないこの危ないスリルも……ああんっ……ゾクゾクするよぅ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なにこれ。

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 

 

 やっぱり、雪ノ下さんの弱みを握るのが一番いいよね。

 それが一番効果があるだろうし、うん。

 

 

 っていうことで、今ウチは国際教養科の教室の外にいる。

 とりあえず、雪ノ下さんがいくら怖い人だからといっても最近は何故か丸くなったと専らの噂だし……文化祭の時に迷惑かけたお詫びがしたいとでも言えばきっかけにはなるよね。

 よし行け南!

 

 

 

 

 

 

「すみません〜雪ノ下さんいますかぁ? 」

 

 

 

 

 

 

 国際教養科の教室内には、普通科とは違ってまだちらほら人がいた。その中から、眼鏡をかけた女の子がウチに声をかけてくれる。

 

 

 

 

 

「えっと……多分、雪ノ下さんだったら今部活のはずなんですけど……」

 

 

「ああ……そっかあ……」

 

 

 

 

 

 

 あーそうだ。奉仕部。忘れてた。ああ……じゃあ今日はもう無理かあ……

 だって、あの部屋とか用がないなら二度と行きたくないし。

 

 ただそんな風にガッカリしているウチに、願ってもない頼み事が舞い込んだ。

 

 

 

 

 

 

「あの……もしよかったらなんだけど……雪ノ下さん物理のノート忘れちゃってるみたいでさ。明日ノート提出だから、これ雪ノ下さんに持っていってくれないかなぁ? 」

 

 

 

 

 

「うんっ!!!!! 分かった! 」

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 奉仕部の前。

 ついに来てしまった。この忌まわしき場所。

 

 なんの用もなくここに来るのは嫌だけど、やることがあるなら話は別だ。きちんとここに来ざるをえない理由も得たし、今の優しいと言われている雪ノ下さんなら取り付く島もあるだろう。

 

 

 

 

「まあ、その前にちょっと何が書いてあるか見ちゃお」

 

 

 

 

 国際教養科の物理かぁ……雪ノ下さんなら国立理系とか行きそうだし、やばい内容なのかもしれない。

 ……と、そんなちょっとした興味がてら、私はそのノートの中を見てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『嗚呼比企谷くん、いいえ、八幡。だあいすき』

 

『I Love you.Hachiman.forever』

 

『はちくん……なんて言っちゃったら、、うふふ』

 

『あなたの○んこが欲しいの』

 

『ちゅきちゅき八幡ちゅきちゅきしゅきしゅきしゅきぃ!!!!』

 

『今日の夢も、あなたに犯される夢でした。……いつ、現実にしてくれるのかしら』

 

『届け、私のこのBIG LOVE』

 

『はちまんって、ゆきのって、あなたと呼びあえたら……そんな幸せが、雪乃は欲しいのです』

 

『枕をあなただと思って、私は毎朝チューの練習をしています。敬具』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あ、復讐とかもういいや。私もうこの人たちに関わるのやめよう。

 

 

 

 

 

 



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番外編.3。葉山隼人の受難/黒幕の微笑

「はぁ……不幸だ」

 

 

 

 

 みんなこんにちは。葉山隼人だ。

 さて、どうして開口一番にこんなネガティブな言葉を呟いたのかというと……

 

 

 

 

「……隼人。なんか言った? 」

 

「いや、何も言ってないよ。陽乃さん。……比企谷から、何か陽乃さんにとって有益な情報をとってくればいいんだろう? 」

 

 

 

 

 

 

 とまあ、今言った通りの命令を下されたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 ……はぁ……やりたくないなぁ。

 でもやらないと、いつからか比企谷への好意を隠さなくなった陽乃さんによる苛烈極まりない処刑を待つことになる。多分、今のこの人の機嫌が悪くなったら、平気で俺を拉致監禁くらいするのではないだろうか。

 

 

 今の陽乃さんは俺を正座させ、仁王立ちしながら俺を見下ろしている。俺を見るその目に宿る熱意は、割と危ないそれで、今後の比企谷が本気で心配になるレベルだ。

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、分かってるならいいわ。雪乃ちゃんをはじめ、八幡君の周りには余計な羽虫が多いから……早いところ、誰が一番彼に相応しいのかを分からせる必要もあるしね。そのためには、やっぱり比企谷君が完膚なきまでに私に惚れる必要がある」

 

 

 

 

 

 

 

 ……多分、あなたが比企谷を『手中に収める』ってほうがしっくりくると思うよ。

 そんなふうに思っている間も、陽乃さんの言葉は止まらない。

 

 

 

 

 

 

 

「もう……八幡くんがカッコ良すぎて最近あんまりお話できてないし……彼に私を意識してもらわなくちゃだし、同時並行で羽虫たちを駆除していかなくちゃだし……きゃっ♡ やることがたくさんっ」

 

 

 

 

 

 

 俺は、本気で呆れながら目の前のポンコツお姉さんを見上げた。すると、そのポンコツは俺を一瞥して

 

 

 

 

 

 

 

 

「もし役に立たなかったら、隼人のシンボルちょん切るよ? 絶対役に立ってね  」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……俺に届けられた物凄い凄惨な笑顔と言葉。一々怖いんだよ。この人は。

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

「と言うわけで、葉山君には私の奴隷になってほしいの。具体的には比企谷君に関する有益な情報を私だけに捧げなさい」

 

 

 

 

 

 さっきの陽乃さんからの勅令から少しして、今度はその妹さんから呼び出しを喰らうと、とんだ命令が飛んできた。全く、この姉妹は人のことを一体なんだと思っているのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

「有益な情報……例えばどんな情報がいいのかな? 雪ノ下さん」

 

 

 

 

 

 

 俺はなるべく刺激しないように言葉と態度を選び、呆れるほど抽象的な命令に具体性を求める。

 

 

 

 

 

 

「そんなもの自分で考えなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 ……この姉妹は本当に……

 思わず左手でこめかみを抑えてしまう。どうしろっていうのだ本当に。俺別に比企谷と親しいってわけじゃないんだぞ? 

 腹の中で様々な愚痴が浮かぶが、そんな俺を華麗にスルーし、雪乃ちゃんは自分の世界に入ったように語り始める。

 

 

 

 

「ハァ全く……もうとっくの昔に比企谷君争奪レースは決着がついているというのに、それでもまだ諦めずに勝者のこの私に歯向かってくるあの人たちは何を考えているのかしらね? まあ? 歯向かうなら何回でも叩き潰してあげるのが私の流儀だから、それでもいいのだけれど。比企谷君の正妻は私であり、側室だなんて認めていないわけだから、徹底的に潰さないといけないわね……そして、私と比企谷君と結衣の三人で、愛に生きるのよ……うふふふふふ」

 

 

 

 

 

 

 

 しらんがな。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

「きーてますぅ? 葉山先輩! 」

 

 

 

「あ、ああ……比企谷の情報をいろはに流せばいいんだろう? 」

 

 

 

 

 もう分かってくれる人も多いのではないだろうか。

 そう。いろはにも俺はあのポンコツ姉妹と同じようなことを頼まれている。……いや、頼まれているだなんて可愛い表現ではだめだな。命令されているんだ。拒否権なんてない。

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふ……これでせんぱいは私の加護の中に……うふふふふ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 いろはは最近、前々から薄々感じていた中二病っぽさが割とハッキリ現れるようになってきた。あの姉妹も最近結構ぶっ壊れているが、この後輩も同じくぶっ壊れてきている。

 

 

 

 

「葉山先輩! 私の使い魔として絶対有用な情報をえてくるんですよ? 分かりましたか? 」

 

 

 

 

 いや、使い魔って。

 いろは。一応俺は君に前告白されているわけで、なんなら君は今でも体裁上は俺のことが好きだということになっているんじゃないのか? なんだか俺もこの扱いの変わり方は戸惑うと言うか少し心にくるものがあるんだが……

 

 

 

 

「葉山先輩返事は? 」

 

 

 

 

 

「……ああ。分かったよ」

 

 

 

 

 ドスの効いたいろはの声に、俺は考えることをやめて内心テキトーに返事をしておいた。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

「お願いね? 隼人君」

 

 

「ああ……比企谷に関しての有用な情報な。分かった分かりましたよ」

 

 

 

 

 

 さて、今度は結衣だ。

 あまりの面倒くささに流石の俺ももう反応がテキトーになっている。早く受験勉強もしなければいけないのに……っていうか、比企谷たちは受験勉強大丈夫なのか? いろはも自分の勉強だったりがあるだろうし、陽乃さんも大学はいいのか? 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

「葉山先輩お願いしますね♡ 」

 

「……ああ。分かったよ」

 

 

 

 

 

 

 さっきの結衣で最後かと思ったら、まさかの比企谷の妹からも同じことを頼まれた。

 

  ……この娘に関して考えるのはやめておこう。小町ちゃんは、今までの中で一番闇が深かった。危ない目をしていた。比企谷と一番近い間柄にあるだけ、やはり何かが拗れたりしているのかもしれない。 

 怖くて彼女に何かを質問する気にもならなかった。

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 翌日。朝の体育館裏。

 

 

 

 

「んで? 何なんだよ改まって。奉仕部に関する重大な用って、一体なんなんだ? 」

 

 

 

 

 

 陽乃さん経由で、無理矢理比企谷を朝の体育館裏に呼び出した。まあ、あからさまに比企谷も機嫌が悪いが、奉仕部についてだといえば必ず来るあたり、こいつも彼女たちを愛しているんだな。

 

 俺が比企谷をここに呼び出したのには、彼からあの五人の印象を聞き出すことに目的がある。俺は制服のポケットの中にレコーダーを仕込んでいるし、後でそれぞれにそれぞれの部分だけカットして情報提供という形にすればいいという算段だ。

 実際、物凄い抽象的な要求の答えとしては、これが多分一番楽だ。

 

 

 

 

 

 

「ああ……すまない。本当にすまない……だが、いくつかの質問、いや、5つの質問に答えてくれるだけでいいんだ。頼む。俺を助けてくれ」

 

 

「え、ええ……正座? 何お前どしたの」

 

 

 

 

 

 

 比企谷は俺の挙動に目を丸くして、なんだか拍子抜けしていたみたいだ。少し優しくなった。

 まあ、比企谷からしてみたら意味がわからないだろう。   

 

 ただ、俺だって何らかの成果があがらないと多分無事では済まないんだよ。そりゃ例え比企谷の前だとしても、正座で頼み込むくらい普通にする。なんなら土下座だってわけないんだぜ? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、まあ……とりあえず言うだけ言ってみろよ。質問に答えればいいんだろ? 」

 

 

「ほ、本当か!? 助かる! 俺は君のことが大好きかもしれないっ!! 」

 

 

「やめろ近づくなクソボケっ!! ここに海老名さんいたらどうしてくれるんだ!? 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 あ、危ない危ない。嬉しさのあまりとんでもないことを口走ってしまった。

 

 

 

 

 ……ふう。じゃあ、比企谷の気が変わらないうちに。

 

 

 

 

 

 

「さっそくだが、質問の一つ目だ。……陽乃さんのことを、君はどう思う? 」

 

 

 

 比企谷は、またまた目を丸くした。と同時に、恐らくどうして俺がこんな質問をしたのかを察知したのだろう。俺の顔をまじまじと見て、朝から顔色の悪い俺を、五人から掛けられたあまりのストレスからくるものだと気づいたはずだ。その証拠に「大変だな、お前も……」なんて小声で言っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、ええー……。とか、彼は嫌そうな顔をして言う。だが、少しして、彼は答えてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、、、魔王だとかなんとか言う通り、あの人はヤバい人だと思う。怖いし、なんなら怖い。でもな……最近は、それ以上に可愛いところも見えてきて……ほらあれだ。あの人見た目はかなり大人の魅力ある美人だろ? だから、内面の可愛さも見えてきたら……スッゲー意識しちまうってのは、、、正直なところだな 」

 

 

 

 

 

 ……よし。これで陽乃さんから殺されることはなくなったな。オーダーからは少しズレているが、まあこれだけ褒め殺されれば今のあのポンコツならイチコロだろう。

 

 

 

 

 

 

「次、雪乃ちゃ……雪ノ下さんのことは、どう思う? 」

 

 

 

 

 

 

 今雪乃ちゃんと言いかけた瞬間、比企谷からものすごい量の霊圧を感じた。途中で止めてよかった。

 

 

 

 

 

「あいつは……なんつーか、、、俺が今まで関わってきたなかで……一番、、、好きだって、素直に思えた奴だな。正直いくらでも言葉はこねくり回せるんだが……好きだなんて一言で収まるものではないが……それでも敢えて言うなら、、俺はあいつが好きなんだ」

 

 

 

 

 

 

 よし。これで雪乃ちゃんからの粛正もなくなった。ナイスだ比企谷。聞いているこっちまで恥ずかしいくらいだった。

 

 

 

 

 

「次はいろはだな」

 

 

 

 

 

 「……あいつは、俺の唯一の後輩だって点を差し引いても、可愛い女子だって思う。実際あのあざとい仕草は分かっていても威力はヤバいし……守ってあげたくもなる。それに、なんとなくほっとけないというか……な。そばにいてやりたいとも思う」

 

 

 

 

 

 

 

 よし、恐らくいろはからのお咎めもないだろう。途中で比企谷が恥ずかしがったが、もう十分なはずだ。

 

 

 

 

 

 

「次は、結衣だ」

 

 

 

 

「由比ヶ浜は、本当に可愛いやつだと思う。実際あんなに可愛くて性格もいい女子が、、どうして俺なんかのことを……って何度も思うし、あの笑顔は何回見ても癒される。……めちゃくちゃ、いい女だし、スッゲー可愛いと思う。アホだけど」

 

 

 

 

 

 

 よし、結衣もこれで問題ないだろう。最後の一言は減点材料かもしれないが、まあ結衣だから大丈夫なはずだ。アホだからな。

 

 

 

 

 

「最後……小町さんだ」

 

 

 

 

 

 

「…………小町は、可愛い妹だ。あんなに可愛い奴いないと思う。……だから、誰にも渡したくない。……だが、小町は、俺の可愛い可愛い、、、妹だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 比企谷は、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 それから、俺は比企谷のボイスをそれぞれに提供した。

 え? その後、彼女たちがどうなったかって?

 

 

 

 

 

「あら♡ はやと  今日もいい天気だねっ! 今度お姉さんが何か奢ってあげちゃうぞっ」

 

「あら、、葉山君……おはよう。今日もとても素晴らしい日ね。今朝私は思わず鼻歌を歌ってしまったの……うふふ」

 

「えへへぇ〜やっぱり私の加護の中にあったんですねぇせんぱい……えへへ…………あ葉山先輩おはようでーす」

 

「隼人君おはよっ! ……へへ……あ、そうだ隼人君。今日の私も、ちゃんと笑顔出来てるかな? 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 こんな感じだ。

 四人はもうご機嫌すぎて逆に怖い。気持ち悪いというのが正直なところだが、まあ俺に被害がこないだけまだいいはうなのだろう。

 

 

 

 

 

 だが、

 

 

 やはり問題なのは、小町さんの方だ。

 いい噂を聞かない。小町さんに例の録音を送った後も、他の四人とは違って一人だけ返事がなかった。

 ……風の噂で聞くに、とんでもなく黒いオーラを放っていたみたいだが……

 

 

 

 

 

 

 

 まあ、俺の仕事はここで終了だ。

 

 

 

 

 

 

 

 前に比企谷と話した体育館裏にて、ブラックコーヒーを俺は一気に飲み切る。そして、いつの間にか横にいた人間に、恨みを込めて言葉を漏らした。

 

 

 

 

 

 

「……これで、いいのかい? 」

 

 

 

 

 

 

「うん……さすがだね。うまく八幡や、まわりの人たちの言葉を引き出してくれたよ……」

 

 

 

 

 

 俺は横にいる人物の顔を見ない。

 どうしてかって?

 

 

 

 怖いからさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふふふっとにかくご苦労様」

 

 

 

 

 

 その声がした後、足音がたち、そして離れていった。

 その足音が完全に聞こえなくなったと同時に、俺はため息と同時に、恨み言がついに漏れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なにが彩ちゃんだ……あれじゃあ、災ちゃんじゃないか……」

 

 

 

 

 

 

 最近、彼は誰かを集めて何かをしているみたいだ。それが何なのかは想像したくもないが、きっと碌でもないことなのだろう。

 俺が陽乃さんから勅命を受けることを見越して、事前に接触して来たその強かさ、本気で身震いする。あれは狩る者の目だった。

 

 

 

 

 

 

 呟いた言葉は、空に吸い込まれていった。

 

 

 



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狂信

「はぁ……はぁ」

 

「ねえ小町ちゃん。……あなたの血潮はそんなものなの?……あなたに流れるブラコンの血は、そんなものなの? 」

 

 

 

 

 

 

 

 小町が膝をつく。息も絶え絶え。満身創痍といったその様子からは、明らかに小町が劣勢であることが見てとれた。

 対するは海老名姫菜。彼女は狂気じみた笑みを浮かべ、膝をついて息を整える小町を見つめていた。なんだかどこぞの少年漫画のようなセリフを吐いているが、八幡ちょっと意味がわからないのでこれはスルーをすることにする。

 

 

 

 

 

 

 

 小町vs海老名さんの一戦では、始まってからというもの、小町の劣勢が続いている。防戦一方の小町に対して、余裕綽々といった様子で海老名さんは相手をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 その狂気。まさに性癖の鬼だ。

 

 

 

 

 

 

 

 彼女の特性についてはもう既に知ったところではあったのだが、これは酷い。

 今まで見せてきた彼女は仮初の姿であったのだと、そう納得せざるをえないほどに苛烈で、危険で、思わず吐き気を催すほどに濃密な妄想が大爆発している。

 

 

 

 

 

「さあ……小町ちゃん。潔く、はやはちワールドに繰り出そう。あなたの兄への一途さ、素養、練り上げられている。……小町ちゃん……さあ、この私の手を取るんだよっ」

 

 

 

 

 

 海老名さんは邪悪で純真な笑顔を煌めかせ、我が妹をたぶらかす。そして、その右手を、膝をついてしまっている小町に向けたまま、一言。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「小町ちゃん……ううん、小町。……腐女子になりなさい。そして、私と永遠の研鑽を積もうっ!!!!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ああ、そうだよ。彼女はさっきから小町に「はやはち」なるものを使って精神攻撃を加えているんだ。それへの熱い血潮と情熱、妄想と狂信でもって小町を攻め立てている。流れ弾が俺にも当たって相当辛い。

 

 

 

 

 

 

 

「……うわぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 雪ノ下雪乃が、いつもよりも幼い声で小さく怯えていた。当たり前だと思う。今日の海老名さんはあの氷の女王がちょっとキャラ崩壊してしまうほどに絶好調だから。

 

 

 

 

 

 

 

「さあっ!! 腐女子になると言うのよっ! 小町ちゃん!! 」

 

 

 

 

 

 

 彼女は怪しげに眼鏡を光らせ、叫ぶ。

 

 

 

「っ小町ちゃん!? 」

 

 

「小町ちゃん!? 嘘でしょっ!? 」

 

 

 

 

 由比ヶ浜と陽乃さんが叫ぶ。というのも、床に膝をついていた小町の手が動いたからだ。

 その手は、ゆっくりではあるが、確実に腐海の女王の差し出す手に向かっていた。こちらからは下を向いたままの小町の顔は見えない。だが、あの纏っている空気からは負のオーラをビンビンに感じてしまう。

 

 

 

 

 ……これは、まさか……あいつは本気で腐女子の軍門に降る気なのか!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 焦る由比ヶ浜。陽乃さん。苦しそうに歯を食いしばる雪ノ下。顔が青くなる俺。

 

 

 

 

 ただ、そんな余裕のない俺たちの中で一人だけ、薄く笑った人間がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「っふふ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 一色いろは。

 

 彼女はいつのまにか俺の横に陣取っていて、この闘いを観戦している。そんな彼女が、今思わずと言った調子で笑ったのだ。その笑みからは強がりだとか、嘲笑だとか、負のオーラが全く感じられない。雪ノ下や由比ヶ浜たちには今の一色の笑みが聞こえていないらしく、誰も一色の笑みには気づいていないが……

 

 

 

 

 

 

 

「せんぱい。もうちょっとお米ちゃんのせんぱいへの愛、信じてあげてもいいんじゃないですか? 」

 

 

「ど、どういうことだ……」

 

 

 

 

 

 

 自信げな一色に、俺は思わず疑問を口にする。

 すると、尚も一色いろはは楽しそうな目をしたまま、俺にこう言ってきた。

 

 

 

 

 

「お米ちゃんは、今までわざと反撃をしないで、防戦一方にしていたんですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 パァンっ!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一色の声が止んだ後、小町が腐女子の手を力一杯はたいた音が部屋中に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

「……これは……ど、どういうことなの、小町ちゃん」

 

 

 

 

 

 明らかに籠絡させたと思い込んでいたのだろう。海老名さんは動揺を隠さずに、目を見開いて小町に問う。

 

 

 

 

 

「少し……小町は小町を試していたんです。他の信念を持った人の力を敢えて防がずに受けることで、、、小町の信念が、どんなものかを」

 

 

 

 

 小町は、○ンピースのギア・セカ○ドのように片手を床に付けながら、ゆっくりと立ち上がる。それさながら、少年漫画における主人公の復活シーンのようだ。こころなしか周りに湯気のようなものも見える気がする。

 

 

 

 俺がそんな小町の姿に感動している最中、隣にいた一色がドヤ顔で解説を始める。

 

 

 

 

「私がさっきの戦いの後、集団リンチを受けた後のことです……ほぼ雪乃先輩にボコボコにされた満身創痍の体で、私はお米ちゃんを呼び出して話をしたんです」

 

 

「え? いろはす? 」

 

 

 

 

 腕を組み、どこぞの強者のような雰囲気を醸し出す一色いろは。……こいつほんと吹っ切れたよな。

 

 

 

 

「というのも、お米ちゃんは最近何かに怯えているようでした。いえ、自信を無くしていたと言ったほうが正しいですね」

 

 

 

 そのまま、一色は俺の方を見ずに、師匠が弟子の成長を見守るような視線を小町に送りながら話し続ける。

 

 

 

 

「……せんぱいがお米ちゃんのことだけを女として見ていないこと、皆さんの想像以上に気に病んでいました。……まあ、どこからそんな情報が出回ったのかは知りませんが」

 

 

 

 

 ……いや、妹だよ? いくら可愛い天使でありエンジェルったってな、実妹だからな?

 

 

 

 

 

「半ば、お米ちゃんは腐っていました。そんなあの子に再び炎を灯すのには、流石の私とはいえ苦労しましたよ」

 

 

 

 

 

 ドヤってるとこ悪いがな、ほのををわざわざ“ほむら“って言うのやめろ。なんかこっちが恥ずかしくなってくるから。

 

 一色は、最後に俺を見て、薄く不敵に笑った。

 

 

 

 

 

「知ってますかせんぱい? いいお米をつくるには、いいお水が必要なんですよ」

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 

「な、なぜ!? あれほどはやはちの魅力をマシンガンのように浴びせたのにも関わらずっ……そんなはずはない、はやはちが響かない人類なんてこの世に存在するはずがないっ」

 

 

 

 腐女子は数歩後ろに後退り、取り乱し始めた。

 そんな海老名さんに、小町は自信の籠もった目で言い放つ。

 

 

 

「……あなたの業は、もう見切りました」

 

 

「う……嘘でしょ」

 

 

 

 

 

 突っ込んだら負けだ。八幡。

 俺は自分にそう言い聞かせる。突っ込んだら負けだ。

 ただ小町、技を業っていう感じに発音したよな今絶対。どっかの中二病が移ってるぞ。

 

 

 

 

 

「な、なら……奥の手を出すまでよっ」

 

 

 

 

 腐老名さんは眼鏡を白く輝かせ、携帯を取り出す。そしてその画面を、さっきの城廻先輩が使っていたカメラに映しだした。どうやらそれは動画だったらしく、その映像がスクリーンに流れる。

 

 

 

 それは、俺が葉山に何故か雪ノ下たち五人への想いを聞かれたときの一幕が映っていた。葉山が俺の手を握り、叫んでいる場面が大音量で流れる。

(番外編.3。葉山隼人の受難/黒幕の微笑  参照)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ほ、本当か!? 助かる! 俺は君のことが大好きかもしれないっ!! 』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この場は、嫌な静寂に包まれた。

 

 この動画はたったのこのシーンだけで終わっている。

 ……ただ、逆に俺から見てしまうとそれが説明不足を如実にしてしまっていて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ……ヒキタニクン」

 

「ひ、、、ひっきー? 」

 

「せ、せせせせせんぱい」

 

「ヒキタニク……ん? 」

 

「八幡……嘘でしょ」

 

「比企谷くん……これは私の記録にもなかったよ」

 

「比企谷、君は……いつのまにそんな生徒に」

 

 

 

 

 

 

 

 雪ノ下がカタコトに、由比ヶ浜が顔を青くして、一色があからさまに驚き、陽乃さんがショートし、留美が軽蔑の視線を突き刺し、城廻先輩が呆然とし、平塚先生が哀しそうな目をしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな周りに言い聞かせるように、悪どいマスコミの手法を使ってそんな空気を作り出した腐女子は、興奮気味に捲し立てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こっ……これが動かぬ証拠だよ!! 私は確信したんだっ……ついに、ついにはやはちは最終形態に進化して、そして完全無欠の御神体に完成したんだからっ!!! もうあなたたちが比企谷君の気を引こうと何をやっても無駄、だってこれが世界の選択なんだから!! だって私でさえこれが撮れたあの日から、はやはち以外の全てのBLが描けなくなったほどのこの特大のインパクトっ……まさに核爆弾の威力。この世界においてはやはちは至高なんだよぉ!!!!!! 世界に生きとし生けるものは全員がこの尊い世界の選択を崇め、奉り、そして保護していかなければならないっ。それこそが私たち現代に生きるものの努め! 義務! 戦争なんかやっている場合じゃない! だって世界にはこんなにも素晴らしい姿があるのだから、こんなにも守り、語り継ぎ、後世に残していかなければならない史上最高の美が存在するのだからっ! だから私は戦い続ける。この最高の美を1日でも早く世界中に腐教していくために! 世界平和のためなんだよっ! この尊さに抗える人類なんて存在するはずがないっ!!! まさに至高の神の領域! 史上最高の神からもたらされた愛なんだよっ!!! まず間違いなくこの祝福に感謝して我々人類は生きていかなければならないのは当然だし、この地上に降り立った新たなるアダムとイブに歓喜と祈りをもって答えなければいけないの。それほどまでに美しい地球、いや宇宙からの贈り物なのだから! だからみんなはこんな醜い争いは早く辞めて腐女子になろうっ!! もはやそれは絶対的な救いとも言える、いや、有史以来これ以上の奇跡はないのだから!! そんな奇跡を目の当たりにできる今この瞬間に生きていられるこの幸福に感謝しないといけない!!!! 噛み締めないといけない!! そして私とともに腐教していくのだよ! 早く重い悩みに苦しんでいる人々、刺激に飢えている哀れな人、権力に溺れているど畜生にも見せてあげよう! 新しい世界の秩序を私とともに知らせていくの! だってはやはちこそが世界の秩序だから! はやはちこそが、世界を救うのだからっ!!! もちろん後悔なんてさせないよ? いや、出来るわけがないと言ったほうが正しいだろうね。だってこんなの幸せに決まっているのだから!! あなたがこの世に生を受けた以上、この尊さに満足出来ないわけがないっ!! それこそが私がはやはちがこの世界から戦争をはじめとする悲劇を十分無くせるという根拠でもあり、真理だよっ……さあ、さあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあさあ……一刻も早くこの素晴らしさを世界に広めなければいけない、正義にしなければいけない、そうすれば、涙を流して悦ぶであろう全世界にいる未来の同士たちが可哀想だよっ!!!!!! こんな素晴らしいものを共有できないだなんてあり得ない! いえ! あってはならないの!! だから私は勤勉に腐教し続ける!! そう、それはもはや救いとも言えるね! 間違いない、この道で正しいんだから、人類はやっと進んでいくべき道を見つけたんだよ! だから比企谷君と隼人君の誕生日は当然全世界の祝日だし、一日中祈りを捧げる日にしないといけないね!! 考えてみてよ、きっと壮観だよ!? この世のみんなの意識が一つとなり、同じものを愛でる時代、私はそんな日が来ることを夢見て日々励んでいるの、この動画を見たあなたたちはもう迷えない。だって世界の真理をしってしまったのだから。だってもはやこれ以上に素晴らしく尊いことなんて起きようがないのだからっ!! 嗚呼、神はこのような奇跡を私たちに与えてくれた! いや、もはやはやはちの二人が神なんだよ!! でなければこの尊さは説明できない! だから私はあなたたちがはやはちの信徒になり、共にこの世界を変える英傑に、英雄に、伝道師になることを望むよっ!!!!!!!!!!!!!!!! 世界を変えよう! 救おう! 全ては、はやはちの下に!! 私とともにくるんだよ!!!!!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 みなさんこんにちは、比企谷八幡です。

 果たして今の腐ったやつの言葉を全部聞いていた人がどれだけいたのでしょうか? ただ、俺が一つだけ言えることがあるとすればそれは……

 

 

 

 つらいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺や雪ノ下をはじめ、ここにいる人間はみな圧倒されていた。言葉がない。まさしく圧倒的だった。もう何を言っていいのかがわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ただそんな中で、一人だけ……尋常ではない精神力で、その攻撃を受け切った偉人が、言葉を発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「海老名先輩、小町は、あなたとともには行きません……だって、お兄ちゃんは……シスコンで、あるべきなんですから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 穏やかな笑顔だった。後光が差しているようにも見えた。それでいて、自分の意思を微塵も疑っていないような、短い言葉に込められた強烈な魂があった。

 

 

 

 

 

 穏やかに

 

 

 

 

 

 

 腐の住人は、浄化されるように、力を使い果たしたように、ゆっくりと体から力を抜いていき……

 

 

 

 

 

 

 

「……ぐふっ……わたしも……まだまだ……か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最後に立っていたのは、晴々とした表情の小町だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふっ……海老名さんがやられたみたいだね」

 

 

「まあ、僕にとっては一番邪魔だったし厄介だったから、嬉しいな♪ 」

 

 

「……次は……平塚先生かな? 多分雪ノ下さんのお姉ちゃんの陽乃さんとか……さあ、どうなるかな? 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 どこかの場所で、可愛い声の少年一人が、可愛く笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

スキルまとめ

 

雪ノ下雪乃

 

・乙女ポエム

・ガチ百合

・ぷよぷよ

 

雪ノ下陽乃

 

・ド変態

・乙女

・ぷよぷよ

 

由比ヶ浜結衣

 

・悪魔的ドM

・聖母の力

 

一色いろは

 

・中二病

 

比企谷小町

 

・ガチブラコン(メガ進化)←new

 

川崎沙希

 

・ヤンデレ(不完全)

・メガブラコン

・メガシスコン

 

比企谷八幡

 

・⁇

 

 

鶴見留美

 

・ドS

 

 

平塚静

 

・⁇

 

 

城廻めぐり

 

 

・ストーカー

・ヘタレ

 

 

海老名姫菜

 

 

・狂信的はやはち←new

 



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イメチェンの大惨事

「暇だ……いや、これこそがオアシス……人間皆こうあるべきなんだよな。まあ、受験勉強するんだけどさ」

 

 

 

 

 

 

 そう。俺は今高校3年なんだ。本来ならば春から勉強に勤しまなければならないはずだったのであるが、雪ノ下姉妹にはじまるあんな事やそんな事のお陰で、ゆっくり腰を落ち着けて勉強出来たことは結構少なかったりする。

 

 

 

 

 まあ、かくいう俺、比企谷八幡は今、久しぶりの安寧に体を任せてベッドの魔力に平伏しているわけだ。すぐに微睡の中に落ちていってしまいそうな俺は、なんとなく、束の間のこの安寧を得ることができたあの時を回想する。

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 

 

 そう。あれは小町が腐った人に勝利した後の出来事。

 とうとう自分の出番かと、平塚先生が猛々しく叫んだ時。

 

 

 

 

 

 

『さあ、次は私だなっ!! ……相手は、陽乃、、君なのだろう。滾る闘いにしようじゃないか……!!!!! 』

 

 

『やっぱり、静ちゃんなんだね……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 荒々しい闘気を発していた平塚先生は、陽乃さんに存分にその気を向けていた。対する陽乃さんからは、なんだかいつもの魔王っぷりが嘘のように弱々しかった印象を俺は受けた。

 

 

 

 だが、そんな陽乃さんの様子に目もくれず、ただ獲物を狩ることしか眼中にないであろう鼻息の荒い平塚先生は、意気揚々とフィールドに歩く。その意気揚々さたるや、歩きながらシャドーボクシングをかますほどに……

 

 

 

 

 

 

 

 そう。先生は勇猛に歩いていたのだ、だが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『っ……あ、ああ、、、ああああああああ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突然、あんなに猛々しかった平塚先生が表情を苦痛に歪めて崩れ落ちた。

 

 

 

 

 その異常事態に、もちろん俺たちは先生に駆け寄ったのだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『こ、、腰がぁ……ぎっくり腰……ああぁあああ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 原因はシャドーボクシングだった。

 

 先生の腰の回復に要するであろう時間と、全員の予定が合うであろう日程を協議した結果、二週間後に第四戦目の延期が決まった。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……もう一回寝たら、、本屋でも行くかな」

 

 

 

 

 

 

 参考書でも探そう。そう思いながら、微睡に溶けていく休日の朝だ。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 

 

 私、三浦優美子は、全く愛着のない立派な家の中で、イライラとも困惑ともつかない、微妙な感情を抱いている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「で? ……わざわざ結衣から連絡先をもらってまで、なんであーしに連絡よこしてきたわけ? 結衣にどうしてもって頼まれたからとりあえずアンタん家まで来たけど……あーし早く受験勉強したいんだけど」

 

 

 

 

 

 

 

 ほんと、いったいなんなん? 結衣にあれだけ頼まれたらそりゃあ来ないわけにはいかないけど。

 

 

 

 雪ノ下家。本当なら一切関わりたくない人の根城。隼人と高確率で昔なんかあった奴。気に入らない。

 しかも、今の私の目の前には妹の方だけではなく、なんと姉の方までいる。距離感がわからなくて、結構気まずい。

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は来てくれてありがとう……私たちは、あなたと取引がしたいのよ。……あなたにとっても悪くない話になると思うわ、三浦さん」

 

 

「ええ、、三浦ちゃん。私たちに協力してくれる代わりに、あなたには隼人を攻め落とす策を教えてあげる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 妹と姉が、目に剣呑さを宿して言った。なんだか必死さは伝わるが、何故だか馬鹿らしく感じてくるのはあーしの気のせいなのか?

 

 とか思っていると、妹がまた口を開いて。

 

 

 

 

 

 

 

 

「三浦さん。あなたには、私たちのいめちぇん計画を手伝ってほしいの。そうしたら、あなたのいめちぇんも手伝うから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 は? なんつったこいつ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーし。別にイメチェンしようだなんて思ってないんだけど。つーか、そんな馬鹿なこと言うためにあーしを呼んだわけ? 」

 

 

 

 

 

 

 正直、訳わからないし勉強しなくちゃだし早く帰りたい。だんだんイライラしてきた。すると、妹の横にいた姉が口を挟む。

 

 

 

 

 

 

 

「さっき言ったでしょ? これはあなたにも利益があることなんだよ三浦ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 ウザイと思うのは一生懸命心のうちに留めて、あーしは姉に向き直る。だからなんであんたもそんな目がマジなの? 普通に怖いから。

 

 

 

 

 

 

「えーと、どういうことです? 」

 

 

 

 

 

 

 一応敬語をつけたあーし偉い。自画自賛していると、姉はペラペラ喋り出す。

 

 

 

 

 

 

「実は私たちも色んな事情があって、対象の人物を落としたいと考えているんだけど、そのためにイメチェンをしてみたいのよ。そこで……私たちのモデルにしようと考えたのが、あなたって訳」

 

 

 

 

 

 

 姉が喋り終わると、今度は妹が口を挟んでくる。こんなによく喋るやつだったか? 目がギラギラしてるし。まあ、知らんけど。

 

 

 

 

 

 

 

「葉山君はね、昔から女の子のイメチェンに弱いのよ……あなたがもし、私たちのような挙動を出来るようになったら……彼に与えるインパクトは凄まじいでしょうね」

 

 

 

 

 

 

 すると、今度はマジな目をした姉も、ペラペラたたみかけるように喋り出した。

 

 

 

 

 

 

 

「三浦ちゃんが隼人を落とすのに苦労しているのは知ってるよ。もう残り時間が少ないことに焦っていることも」

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!? ……」

 

 

 

 

 思わず結構本気に動揺してしまった。

 

 あーしともあろう人が。とりあえずこんなふざけたことをやっている暇はない。さあ、あーしよ、早く断って帰ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……隼人がイメチェンに弱いってのは、本当? 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あーし、、結構流されやすいタイプだったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 

「そう。その口調と仕草だし」

 

 

 

 

 特訓はハードだった。なにしろ、この姉妹はどちらも育ちが良すぎるから。ただ、どちらもスペックが高いお陰か、この姉妹は最終的にギャルのなんたるかを吸収してくれたようで、ちゃんとイメチェンが成功したように思える。そう、私はさっきまでこの二人をギャル化させようとしていたんだ。

 

 

 

 

 やってるうちにギャルのんとかいうフレーズが頭にパッと出てきて吹き出しそうになったのは別の話。

 

 

 

 

 

 

 

「三浦さんっ……ありがとう! 」

 

「三浦ちゃんっ!! この御恩は忘れないわ」

 

 

 

 

 

 妹と姉から、ギャル化トレーニングの礼を熱く言われた。どうでもいいことだが、この後アイス奢ってくれるらしい。実は結構嬉しいから心の奥ではルンルンしてたりする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただ、、三浦さんのトレーニングは、決してうまくいってないのよね……」

 

「う〜ん。三浦ちゃんはまず普段の自分とは違うキャラになることへの抵抗感から薄めていかなくちゃかな? 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう。この二人が言うように、あーしは清楚な優美子を目指している。イメチェンとしては確かにありだし、この二人が先生役なら信頼はできそうだったから、その方向でお願いしたんだけど……

 

 

 

 

 

 

 

「あーし……あたしに何か問題点でもあるのかしら? 言ってみてくださら……ない……かしら……」

 

 

 

 

 

 

 ……言葉遣いになれないし、なんつーか、、恥ずかしい。

 

 いやだって、あーしだよ? 自分でもあーしが清楚キャラとか不自然すぎてちょっと引く。やりながら違和感が半端ない現状に頰も熱い。だから姉のんの言うことが恐らく正しいんだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだね〜、じゃあ一回、なんかの芸人がやってる一発芸でもやってもらおうかね? 雪乃ちゃん」

 

「そうね……度胸つけ、意識改革のきっかけにはなるのかしら」

 

 

 

 

 

 

 

 おいおい。なんだかあーしに恥ずかしいことさせる気満々だ。まあ、本気であーしのイメチェンに協力しているから、あまり強くは言えないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……コマネチなんていいのではないかしら? 程よく現状の打破にはなると思うのだけれど」

 

「……確かに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「い、いやいやいやいや!! 無理っ! 絶対無理! 」

 

 

 

 

 

 

 

 思わず叫んでしまう。いやだってあーしは一応花の女子高生なわけで? あんなのやりたくないし。

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫よ三浦さん。これができれば、清楚キャラは余裕だわ」

 

「自分の殻を破るのよ、三浦ちゃんっ!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 姉妹揃ってあーしを説得してきた。悪意が一切ないのが本当にタチが悪い。そんな純粋な目でこっちを見られるとどうしていいかわからなくなるじゃん……

 

 

 

 

 

 

「うぅ……」

 

 

 

 

 

 あーしは、息を整える。もう涙目だ。

 だけど、もう諦めた。そうまま姉妹の前に歩いて陣取り、

 

 

 

 

 覚悟を決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こっ……コマネチっ!!!!!!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「み、みうらさん……」

 

「す、すごいわ三浦ちゃん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コマネチのポーズを決め、あーしはありったけの声を腹から出す。

 二人の感嘆の声と拍手が聞こえた。

 

 なんだか、気分が良くなってきた。そして、なんだか色々どうでも良くなってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「二人とも……あーしに、もっと出来ることはない? 」

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 さて、雪ノ下家に来るのも久しぶりだな。

 

 

 

 

『隼人君。陽乃と雪乃を呼んできてくださらない? 』

 

 

 

 

 親の用事で雪ノ下家についていって、雪ノ下夫妻と歓談してから少し、雪ノ下のおば様からそう頼まれた。やっぱりこういう時幼馴染というのは便利なもので、あの姉妹の部屋はすぐに分かる。

 

 

 

 

 歩いていくと、何やらある部屋から騒がしい音が聞こえる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あの姉妹が、こんなに騒ぐのは珍しいな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は、ノックもそこそこに部屋に突入した自分の判断を、これからも長いこと呪うことになるのだろう。

 

 だって、ドアを開けた俺が見てしまったのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「三浦さん! そのまま! マーと叫んでみなさい! 」

 

「ガ○使を思い出すのよ! 三浦ちゃん!」

 

 

 

 

 

 

「コマネチぃぃ!!!!! マァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ありのままを話そう。

 

 

 

 優美子が雪乃ちゃんと陽乃さんに応援されながら、コマネチして、いつかのガ○使で見たような奇声をあげていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

「……」

 

「……」

 

 

 

 

「マァァ……ァァ……ァ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三人が、いきなり部屋に入ってきた俺に気づく。

 

 

 そして優美子と、目が合った。

 

 

 

 

 

 

 

「ああ……あああ……ああ……」

 

 

 

 

 

 優美子は、俺と目があった状態のまま崩れ落ちて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああぁああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女に俺ができることは、何一つなかった。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

スキルまとめ

 

雪ノ下雪乃

 

・乙女ポエム

・ガチ百合

・ぷよぷよ

 

雪ノ下陽乃

 

・ド変態

・乙女

・ぷよぷよ

 

由比ヶ浜結衣

 

・悪魔的ドM

・聖母の力

 

一色いろは

 

・中二病

 

比企谷小町

 

・ガチブラコン(メガ進化)

 

川崎沙希

 

・ヤンデレ(不完全)

・メガブラコン

・メガシスコン

 

比企谷八幡

 

・⁇

 

 

鶴見留美

 

・ドS

 

 

平塚静

 

・⁇

 

 

城廻めぐり

 

 

・ストーカー

・ヘタレ

 

 

海老名姫菜

 

 

・狂信的はやはち←new

 

 

三浦優美子←new

 

 

・コマネチ←new

 

 

 

 



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ギャルの下ギャル乃

〈視点、比企谷八幡〉

 

 

 

 

 

 人間は、やはりどこかのタイミングで変わってしまう生き物なのだろうか。

 

 

 

 

 俺は、横にいる金髪ストレートのギャル的少女の気配を感じながら、一生懸命に現実逃避に勤しむ。勤しんでいる。一生懸命にだ。頑張っている。そろそろ語彙力が死んできたほどに。頑張る。頑張る。

 

 

 

 

 

「ちょっと八幡? 何考えてるし、あーしとデート中なんだからあーしのことだけ考えてなさいし」

 

 

 

 

 

 ……端的に、今日のことを思い返してみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 昨日の夜に雪ノ下からデートの申し込みメールが来る。

 

           ↓

 

 今日の朝10時に、待ち合わせ場所で無事に会う。

 

           ↓

 

 雪ノ下雪乃金髪ギャル化が発覚(俺調べ)

 

           ↓

 

 口調が何故かあーしさん化してた

 

           ↓

 

       現実逃避(イマココ)

 

 

 

 

 

 

 といった感じだ。

 

 

 

 そう。ここまで読んでもらえれば分かると思うが、今俺の隣にいる金髪ストレートの少女は、何を隠そう俺のパートナーである雪ノ下雪乃だ。

 何がどうなってこうなっているのかも分からないが……口調があーしさん化しているあたり、彼女からインスピレーションを得ていることは想像できる。マジ何やってんだ俺のパートナー。

 

 

 

 

 

 

「ねーえ! あーしあいす食べたいし! ショコラのやつ。はちまん行こーよ! 」

 

 

 

 

 

 

 にっこり笑顔で砕けた言葉を発したギャルノ下ギャル乃が、俺の腕をつかんで歩行の進路を変えてきた。

 

 

 対する俺はもう、頭の中⁇⁇⁇で埋め尽くされている。

 

 

 

 

 タメ口ゆきのんどころか、快活ギャル語ゆきのんを心の準備も無しにモロに喰らった俺は、未だにまったく頭が回らない。妙にhighなギャルのんに腕を組まれて引き摺られているからなんとか歩けているが、正直ギャルの下の肩を正面から揺らして何があったかを問いただしたくてたまらない。

 

 

 

 ……でも、それでいったいどんな話が出てくるのかが怖いところでもあるんだよな。ほら、陽乃さんが裏で糸引いてたりしたらマジでホラーの臭いがするだろ?

 

 

 

 

 

 

「ねえ八幡。ちゃんとあーしの話聞いてるのかしら? 」

 

 

 

 

 

 

 

 ……ギャルの下が、俺に腕を絡めたまま顔をこちらに寄せて問いかけてくる。

 偶に出てくるその微妙にギャルになり切れていない口調もさることながら、吐息からいい匂いがしたり体が柔らかかったり可愛かったりと、この状況から受ける感想にはこと欠かない。

 

 

 

 だが、今の俺にはそれらのことをどうでも良いと断じてしまえる要素があった。

 それは雪ノ下雪乃を知っている人物ならば、皆空いた口が塞がらない衝撃。

 

 そんな「とある感触」を、俺は腕に感じている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雪ノ下の胸に、、存在感がある……だと?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 

〈視点、雪ノ下雪乃〉

 

 

 

 

 

 

 ふふふ……比企谷君、驚きすぎて言葉が出ないようね。三浦さんの尊い犠牲の上に成し遂げた私のイメチェン計画は、やはりこの上ない成功と見て良さそうだわ。

 

 

 そう。私は昨日のうちに髪を金髪に染めて、さらに見た目を三浦さんのぎゃる風にした後、比企谷君をデートに誘ったの。

 

 

 

 

 ……え? 姉さんがどうしたかって?

 ああ、姉さんなら、今頃家の私の部屋の中で監禁しているわ。

 今朝、姉さんが日課の花占いをしている最中に、後ろからクロロホルムを染み込ませたハンカチを口と鼻に当てがって眠らせたのよ。5分くらいでやっと眠ってくれたわ。アレって案外即効性はないのよね……

 

 

 

 まあ、今頃は多分とっくに目覚めているんでしょうけれど、どの道部屋には外から鍵をかけている訳だし、いくら姉さんが暴れてもここに来ることは不可能……うふふふふふ。

 

 

 

 

 

 

 とにかく、邪魔者がいない今のうちに比企谷君を私の虜にしなくてはいけないのよ。

 

 たしかに私は一色さんと姉さんに対して警戒していたけれど、まさかの小町さんまで比企谷君を狙っているという事実は私を焦らせている。それどころか、鶴見さんや城廻先輩。平塚先生までが彼を狙っている。

 まあ、海老名さんはただ布教したかっただけだったみたいだけれど……

 

 

 来たる第四戦では、平塚先生は姉さんと対決するという旨の発言をしていたから、私の相手はまだ見ぬ五人目ということになるのだけれど……

 

 

 

 

 

 正直不安なのよ。いくら今のところ私が比企谷君の正妻であろうと、まだまだ安心できるには足りない。

 

 ……だから、、まだ見ぬ五人目を倒す秘策に、私はイメチェンという手を使ったの。彼に対するその効果は上々みたいだし……ここら辺でまた勝負をかけましょうか。

 

 

 

 

 

 

「ねえ八幡? ちゃんとあーしの話聞いてるのしら? 」

 

 

 

 

 

 

 

 あらあら、比企谷君ってば一気に体が硬くなったわね。顔真っ赤にしちゃって可愛い……もうちょっと攻めよう。

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ八幡? だから答えてよ! どーして無視するのよ! 」

 

 

 

 

 

 彼に寄りかかると、彼の目がさらに泳いでいるのが分かる。目も顔も私から逸らすし、汗もかいてきていた。

 

 

 ……楽しい。

 好きな人が、自分にドギマギするのがこんなに嬉しいなんて。やっぱりイメチェンして正解だったわね。

 

 

 

 

 

 

 

「はーちまんっ!! 」

 

「ゆ、ゆゆゆゆゆきのした今日は本当どうした!? 」

 

 

 

 

 

 

 

 彼の可愛い反応に、私はついに壊れてしまったのかも。

 今までは腕を組むようにしていたのだけれど、今度は我慢できずに前から彼の体をホールドした。

 一生懸命に両手を広げて彼の体を包もうとするけれど、やはり男の子なのね……結構ギリギリになってしまう。

 

 

 

 

 すごいわ。比企谷君が私でオドオドしているのだから。姉さんを出し抜いてきた甲斐があったと言うものよ。

 

 

 

 

 そこで、私はあることに気づいてしまう。

 

 そう、比企谷君の視線は、私の胸のあたりに固定されているの。

 

 

 

 

 ……うふふふふ。気づいたようね……そう、これこそが、私雪ノ下雪乃の最大最高のイメチェンなのよ!

 

 

 

 

 

「うふふ……ねえ、、はちまん? あなたさっきからどこを見てるのかな? どこかに今までよりも成長したところでもあるの? 」

 

 

 

 

 ニヤニヤしながら私が目の前の彼に問いかけると、彼は案の定目を泳がせて何も答えない。

 でもね? 顔を真っ赤にさせながら、未だにチラチラどこを見ているかは、すぐに分かってしまうのよ??

 

 

 

 

 

 

「……い、いやべちょに……なんもみてなぃし」

 

 

 

 

 

 

 べちょにって何よ。

 ああもう可愛すぎてやばいわ。笑いが止まらないというのはこのことなのね……

 

 

 比企谷君が私でオドオドしているというこの現実。嗚呼、幸せだわ。イメチェンするだけでこんなにも世界が光に包まれるだなんて……わたし、多分背中から羽でも生えているのではないかしら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、雪乃」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 低い声だった。どこかで聞いたことのある、いや、聞きなれた声質なのだけれど、どう考えても普通ではない。恨み、妬み、などなど黒い感情の大洪水を起こしているような、そんな声だった。

 

 

 ……まさか、、あの姉はこんなに早くあの部屋から出てきたというの?

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひぃっ!!!!!????? 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 比企谷君が恐怖に慄いている。彼に抱きついている私には分かる。比企谷君は多分今命の危機を感じているわ。

 

 だってさっきまで私に触れていた比企谷君の下半身の硬い感触が、一瞬で消えたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雪乃」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 また聞こえたその声は、私の真後ろから聞こえてきた。

 今私は比企谷君の真正面からギュッてしているから、後の人物のその顔は見えていない。でも分かる。多分今後ろを向いたら、、私はやられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 長い沈黙だった。

 私は恐怖のあまり動けないし、比企谷君は顔から血の気が引いていた。比企谷君の八幡も存在が感じられない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だけど、そんな沈黙は、後ろにいる真の魔王こと姉さんによって打ち砕かれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっひゃあ!? 」

 

 

「ど、どうした雪ノ下!? っ、は、はるのさんなにやって!? 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんと、姉さんが無言で私の服の下から胸を触ってきたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 そして私はすぐに気づく。

 姉さんの意図は、私のこの幸せな気持ちを叩き潰すための行動ということに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「や、やめて姉さん! お願い! 謝るから! 謝るからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その願いも虚しく、姉さんは無言のままに、私の胸部からあるものを剥ぎ取った。

 私はもう立てずに、崩れ落ちてしまう。私は顔を地面につけたまま、あげることができない。

 

 

 

 

 

「比企谷君……これ、なんだか分かる? 」

 

 

 

 

 

 相変わらず闇を感じさせる姉さんの声が聞こえた。

 ……この問いかけをするということは、、もう、彼の目にアレが入ってしまったのだろう。その証拠に、比企谷君の怯え切った声が聞こえてきて……

 

 

 

 

 

「、、む、胸パッド……ですか? 」

 

 

 

 

 

 姉さんは、そこだけに追及を留めずに

 

 

 

 

 

 

「違うわ……これはただの胸パッドじゃない……」

 

 

 

 

 

 

 ああ、いや、やめて姉さん……それ以上は、、本当にそれ以上は……

 

 

 

 

 思わず私は顔をあげて、崩れ落ちたままの体勢で姉さんを見上げた。姉さんと目が合う。そして、憎悪の籠った目線のまま、ニヤッと笑われた。

 

 

 

 私の無言の懇願むなしく、姉さんは口を開いてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これね、Bカップになるためのパッドなんだよね……いきなり大きくなるのも不審だからって、こんなの使って徐々に成長をアピールしてるんだよねー、ゆきのちゃん? 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やはり私の胸がAAAなのは、まちがっている。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

スキルまとめ

 

雪ノ下雪乃

 

・乙女ポエム

・ガチ百合

・ぷよぷよ

・AAA←new

 

雪ノ下陽乃

 

・ド変態

・乙女

・ぷよぷよ

 

由比ヶ浜結衣

 

・悪魔的ドM

・聖母の力

 

一色いろは

 

・中二病

 

比企谷小町

 

・ガチブラコン(メガ進化)

 

川崎沙希

 

・ヤンデレ(不完全)

・メガブラコン

・メガシスコン

 

比企谷八幡

 

・⁇

 

 

鶴見留美

 

・ドS

 

 

平塚静

 

・⁇

 

 

城廻めぐり

 

 

・ストーカー

・ヘタレ

 

 

海老名姫菜

 

 

・狂信的はやはち

 

 

三浦優美子

 

 

・コマネチ



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おっぱいおっぱい

〈視点、雪ノ下雪乃〉

 

 

 

 

 私がAAAカップの衝撃に地面に伏している隙に、姉さんは比企谷君を無理矢理連れてどこかへ行ってしまったらしい。

 

 そのことに気づいたのは、街中で突然叫んだ私に奇異の目線が集中していることに気づいた後のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 せっかく、比企谷君といいかんじだったのに。

 

 

 

 

 

 

 

「……姉さん……この恨み、晴らさでおくべきかっ……」

 

 

 

 

 

 そう呟いた私は、スマートフォンの通信アプリを開く。

 するとその一番上に、とあるトークルームが目に入った。そう、そこに表示されている名前は、私にとって比企谷君と並んで最も愛しい存在のものだ。

 

 私はそんな彼女に、とあるメッセージを送る。

 

 

 

 

 

 

 

『愛しい結衣さん、姉さんを駆逐するために、協力してほしいの』

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

〈視点、雪ノ下陽乃〉

 

 

 

 

 今頃、あの抜け駆け娘は地べたから這い出したくらいかしら? 私を出し抜いて比企谷君とお出かけだなんて許されるはずがないんだから、あのくらいの罰は当然よね。

 

 

 

 

 ああ、どうやって監禁された部屋から出てきたかって?

 力づくに決まってるじゃない。私自身驚いたけど、火事場の馬鹿力ってあるものよ? 部屋のドアの鍵くらいならすぐに破壊できたわ。勢い余ってドア外れちゃったままだけど。後でお母さんにバレる前に直さないと。

 

 

 

 

 

 雪乃ちゃんは私が毎日日課にしている花占いをしている間に襲ってきた。花占いでは、比企谷君が私に振り向くかを毎朝占っているんだけど、まったくその隙を狙うだなんて卑怯もいいところよね。

 今日の運勢では「好き」が出たから、ちょっと浮かれちゃって隙を許してしまった私も私なんだけど……

 

 

 

 まあ、もういいわ。

 

 今日の私は、一味違うんだから

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、比企谷君♡ ちょっと喉乾いてきちゃったから自販機で飲み物買うけど、何がいいかな? 」

 

 

「え……じゃ、じゃあ、マッカンでお願いします」

 

 

 

 

 

 

 あ、そうそう。あれから比企谷君は私が引き取ったの。だって、あんなパッド入れてもBにしかならないAAAカップの女の子なんて男の子には可哀想でしょ? 

 

 

 

 

 ……私だったら満足させてあげられるもの♡♡♡

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まあ、比企谷君が私に対してちょっと過剰にビビっている節はあるけど……どうせ、この後彼はそんなの気にならなくなって、私を襲うんだから問題ないよね♪

 

 

 

 そんなことを思いながら、私は自販機から買ったマッカンを取り出す。そして飲み口を開けると、持ってきた試験管を柔らかいカバーの中から出して、その中の液体をマッカンに入れた。

 

 

 

 

 

 ……そう、この液体はね、ドぎつい効き目の媚薬なの♡

 

 

 

 

 

 

 

雪乃ちゃんがもう太刀打ちできなくなるように、

 私は、今日、大人の女になります♡♡♡♡♡♡

 

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 

 

 

〈視点、比企谷八幡〉

 

 

 

 

 

 

 怖かった。

 雪ノ下が陽乃さんによってその根深い傷を抉られてから、俺は陽乃さんにすごい力で引き摺り回されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ねえ、比企谷君♡ ちょっと喉乾いてきちゃったから自販機で飲み物買うけど、何がいいかな? 』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こんなことを笑顔なのにすごい圧力で言われたもんだから、とりあえずマッカンを頼む。その後に何故か飲み口が開けられたマッカンを持って、陽乃さんはニコニコしながら俺に差し出してきたのだが、

 

 

 

 

「はい……飲んで♡ 」

 

 

 

 

 

 一応断っておく。通常なら絶対飲まない。

 

 

 

 だが、この時の陽乃さんの笑顔を前にして、彼女の命令に逆らえる人はいないと断言できる。断った瞬間に意識を刈り取ってやると言わんばかりのガチな目は、俺からNOという選択肢を奪い去った。

 

 

 

 今ヤられるか

 

 もうちょっとしたらヤられるか

 

 

 

 おそらく、その二択しかないのだと悟るには、十分すぎる覇気。

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、その飲み口が空いてるのはね、私がちょっと飲んじゃったからだよ? うふふ……間接キスだね……はちまん? ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」

 

 

 

 

 

 

 照れたように、上目遣いで顔を赤くしながら俺を見てくる陽乃さん。

 だがそれだけではなくて、キッチリと彼女の手は俺の手に、そのマッカンを無理矢理握らせている。

 全く、エグいパワーだった。一歩でも間違ったら俺の手が潰されるのではないかというくらいのパワーだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 もう、飲むしかなかった……。

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

〈視点、雪ノ下陽乃〉

 

 

 

 

 比企谷君に媚薬入りマッカンを飲ませた後、私たちは早足で元の雪乃ちゃんが住んでいたマンションに向かっているの。

 

 

 

 ……あの媚薬は時限爆弾式だから、30分以内に人目のつかないところにいかなきゃいけない。結構強いやつだし、いくら理性の化け物といえど、街中で私を襲って公開エッチしかねない代物だし……

 

 

 だから安心して襲われるためにも、はやく比企谷君と私が二人っきりになれる場所に行かなきゃ♡

 

 

 

 

 そんなことを考えている間にも、マンションが見えてきた。あと5分ちょっと。

 

 

 ああ……比企谷君を半ば脅迫するような形で引きずってきたけど、それもやっと報われるのね……

 

 

 

 マンションの中に入り、ついに目的の部屋のドアの前まで来た。この中に入ってしまえば、後はどこでおっぱじめても問題ない。

 

 

 

 

 

「比企谷君……入ろっか♡♡♡♡♡♡」

 

 

「うっ……は、はい……」

 

 

「あれれ? どうしたの? なんか体調悪いならベッド使いなよ。うん! そうしよう! 」

 

 

 

 

 

 

 

 どうやら、彼に薬の効果が効き始めているようだ。

 ちょっと彼の目が違うモードに入ってきているのが見て取れる。やっぱりハジメテは柔らかいベッドの上がいいかなって思って、彼を今は私が使っているベッドに連れ込むことにした。

 

 

 

 

 

「さっ! 早く入って!!!!! はちまん♡♡♡ 」

 

 

 

 

 

 意気揚々と、鼻息荒く私は家の扉を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待っていたわよアバズレ姉さん」

 

「ふふん……やっはろーです。陽乃さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんかいた。

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈視点、雪ノ下雪乃〉

 

 

 

 

 

 

「な、、なんで、、あなた達がここにいるのよ!? 」

 

 

 

 

 

 姉さんの余裕のない真っ青な顔。

 こんな顔は久々に見たわ。

 

 

 

 ふふふ、滑稽ね姉さん。こんなこともあろうかと、姉さんのバックに発信機をつけていたのよ。これがあれば、姉さんがどこへ向かうかなんて当たりをつけることは容易い……つまり、まんまと私の術中にはまっていたということね。

 

 

 

 

 

「姉さん……さっきはよくもやってくれたわね……見ていなさい。胸の恨みは胸で晴らすわっ!!!!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 私の言葉を聞いて、少しだけ目を点にしていた姉さんだったが、私の隣にいる人物を目にした瞬間、姉さんの顔から一切の余裕が消える。

 

 

 その様子で、姉さんはわたしに叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

「ま、まさか……そ、そういえば雪乃ちゃんは将来的に三人で幸せに慣れればいいっていうスタンスだったわね……クッ……このバイセクシュアルがっ!! 」

 

 

 

「うふふ……今時LGBTに理解がないのは遅れている証拠よ? 姉さん……。さあ、結衣さん。この不届き者をやっておしまいなさいっ!!!!!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私の宣言を聞いて、結衣さんはそっと姉さんの前に出る。そのまま姉さんの目の前まで歩いて、自分のタワワに実ったそれをアピールする。

 

 

 

 

「陽乃さん……私は、最近Fカップになりました……確かちょっと前まで陽乃さんの方が大きかった気がするんですけど……いま、陽乃さんは何カップですか? 」

 

 

 

 

「っ!? 」

 

 

 

 

 

 結衣さんの、堂々とした質問だった。

 たしかに結衣さんの言う通り、去年や今年の春くらいまでは姉さんの方が僅かに大きかった。

 ……だけど、今は、正直誰が贔屓目に見ても……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その勝敗は明らかよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さらに、姉さんの顔が驚きに染まる。

 結衣さんが上着を脱いで、ブラのみの上半身を姉さんに見せつけたのだ。

 

 

 

 

 すると、流石に姉さんも理解してしまったのか、顔からひどい量の汗が出てきていた。口を開けたり閉めたり、声にならない声を上げていた。

 だが、観念したのだろうか、ついに姉さんは、私たちに聞こえる声で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……Eよりの、D……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふっ……フハハハハハハハハハハハ!!!!! フハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!! フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は、笑いが止まらない。

 そう、これが私と結衣さんと比企谷君の愛と、結衣さんの成長期の勝利!!!!! 姉さんの胸は、結衣さんの前には無力!!!!! 何がEよりのDよ! どっちにしろFより下じゃない!!!!! っていうかDはDなのよ!!!!!! Eとか出さなくていいじゃない笑笑笑笑笑

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「姉さん!!!!! あなたの胸は、結衣さんには遠く及ばないのよっ!!!!!! 思い知りなさい!!!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 姉さんは床に膝をついた。

 そしてその顔には、ひどい動揺が見て取れて……

 今日の夕食はさぞ美味なことだろうと、私は勝利を確信した、、、、、瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァハァハァハァハァ……結衣っ!!!!! 」

 

「きゃ、きゃあああ!!!!!! 」

 

「 」

 

「 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 端的にいうわね。

 今まで空気だった比企谷君が、由比ヶ浜さんの胸に文字通り食いついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァハァハァハァゆいぃ……ゆいぃぃ」

 

「あっ……ひっきぃ…や、やめ、、あっあああんっ!♡ だだめだよぉん♡ ああっ……は、はげしっああん!!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ナニガオコッテイルノ? 

 ナンデヒキガヤクンハ、ユイサンヲオソッテイルノ? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 すると比企谷君は結衣さんをお姫様抱っこして、ベッドまで乱暴に運ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ……ひ、ふぃっきぃ……♡……ん……れろぴちゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さるがや君は、今度はベッドの上で結衣さんにディープなキスをし始める。私と姉さんは全く動けない。

 

 しばらくして、やっと二人の顔が、糸を引きながら離れた。

 

 すると、恍惚とした表情の結衣さんが、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひぃっきぃ……やさしく……うぅん……いっぱい、シようね?♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この後、猿が動く前に私と姉さんで猿の急所を蹴ったのはまた別のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 やはり胸部の格差はまちがっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

スキルまとめ

 

雪ノ下雪乃

 

・乙女ポエム

・ガチ百合

・ぷよぷよ

・AAA

 

雪ノ下陽乃

 

・ド変態

・乙女

・ぷよぷよ

・EよりのDカップ←new

 

由比ヶ浜結衣

 

・悪魔的ドM

・聖母の力

・Fカップ←new

 

一色いろは

 

・中二病

 

比企谷小町

 

・ガチブラコン(メガ進化)

 

川崎沙希

 

・ヤンデレ(不完全)

・メガブラコン

・メガシスコン

 

比企谷八幡

 

・⁇

 

 

鶴見留美

 

・ドS

 

 

平塚静

 

・⁇

 

 

城廻めぐり

 

 

・ストーカー

・ヘタレ

 

 

海老名姫菜

 

 

・狂信的はやはち

 

 

三浦優美子

 

 

・コマネチ



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この世で最も悲しい物語

 

『「速報」比企谷八幡、結衣さんを襲う。未遂に終わり現在悶絶中』

 

 

 

 

 

 

 

「さて......奴をどうシばいてやりましょうか」

 

 

 

 

  皆さんこんにちは。世界の至宝こと一色いろはです。

  突然ですが、今の私は激おこです。 正直言ってマジで暗黒面に堕ちそうなくらいには怒っています。怒髪天をついています。

 

  というのも、せんぱいが結衣先輩を襲ったという情報が雪乃先輩から奉仕部ラインに流されたからです。上のやつですねはい。きちんと猿が蒼白な顔で床に伏している画像までついてきました。

 顔を真っ赤にしてベットに横たわる牛乳先輩もいましたよエエ。

 

 

 

 

 

 

  この一報が流れてからというもの、私やお米ちゃんももちろん急いで雪乃先輩に連絡を取りました。それだけでなく、ハルさん先輩経由で留美ちゃんや城廻先輩にも情報が入ったらしく、そのお陰か、私が命名した新しい名前のSNSのグループが出来上がりました。その名も......

 

 

 

 

 

        『猿をぶっ殺そう』

 

 

 

 

 

 なお、これに異議を申し立てた人はいなかったといいます。

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 翌日。

 

 

 

「さて......もうちょっとで兄は帰ってくるので、作戦だけおさらいしておきましょうか」

 

 

 

 お米ちゃんの声が比企谷家に響き渡ります。その声に反応するような形で、集った皆さんは牛乳先輩以外、目に炎を灯します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「比企谷くん......あなたは私のパートナーなのよ......一生忘れられない傷跡を植え付けないと」

 

 

 雪乃先輩の後ろには吹雪が見えます。

 

 

「私の比企谷くん......私だけの比企谷くん......」

 

 

 ハルさん先輩はそう自分に言い聞かせています。

 

 

「......お兄ちゃんはシスコンであるべき......お兄ちゃんはシスコンであるべき......」

 

 

 お米ちゃんはなんか呟いていました。

 

 

「はちまんはロリコンであるべき......」

 

 

 瑠美ちゃんも呟いています。

 

 

「比企谷くん比企谷くん比企谷くん比企谷くん比企谷くん比企谷くん比企谷くん比企谷くん」

 

 

 城廻先輩は壊れたレコードみたいになってます。

 

 

「ふへへへへっへっへへへへh」

 

 

 とりあえず牛乳はウザいから黙ってくれないかなです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あ〜あ、でもこうしてみるとせんぱいの周りってヤバイ人ばっかですね......

 流石に、ちょっとせんぱいのことが可哀想になったりもします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まあそれはともかく、マジ殺んぞあの猿。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

「さて......とりあえず気を取り直して作戦のおさらいをしましょう......とりあえずいろは先輩はその恐ろしい顔しまってください」

 

 

 

 

 

 はて、失礼ですね。こんなに可愛いフェアリーを捕まえて恐ろしい顔だなんて。

 お米はハアッとため息をついた後、その作戦を話し始めました。

 

 

 

 

 

 まあ、簡単にいうとですね、ただのドッキリです。

 今日はみんなで学校を休んで、学校から帰ってきたせんぱいを心臓止まるくらいにびっくりさせるってだけの簡単なお仕事です。

 具体的には、普通に死角から飛び出たりコーラぶっかけたりシュークリーム投げつけたり目の前で○リキュアのブルーレイ全部叩き割ったりとかですね。はい。可愛いもんですよ。

 

 

 

 

 

「じゃあみんな、所定の位置について」

 

 

 

 

 

 ハルさん先輩の号令により、そこにいた全員が一斉に持ち場に散らばります。

 キッチンの陰、階段の陰、本棚の裏、こたつの中、トイレの中、2階のお米ちゃんの部屋のベットの中、新聞置きの隅などなどです。

 家の至る所に隠れているのは、せんぱいがどこにいってもいいようにの保険的な役割があるとかないとか。もちろん2階のお米ちゃんのベットの中担当は牛乳先輩です。別に特に深い意味はないですけどね。はい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

〈視点、比企谷八幡〉

 

 

 

 

 

 

「ただいまっと」

 

 

 

 

 今日はあいつらが休んだおかげでごっそりと学校からいなかったから、ずいぶん平和な時間を過ごせた。全員で滝行してくるとか言ってたけど、あいつらは頭大丈夫なんだろうか......

 

 まあいい。当然、あいつらが学校に来ていないとなると奉仕部もないから、授業が終わるとすぐに帰ることができる。......まさにこれこそがあるべき受験生の姿なんだけどなあ......

 

 

 

 

 

 ただ、俺だって帰ってからすぐに勉強をするわけではない。

 最近発掘してしまった、俺のストレス発散の時間が始まるわけだ。

 最近のあいつらによるストレスは、相当俺を蝕んでいる。でも俺が外でまだ正気を保てているのは、この時間があってこそなんだっ!!!!! これがあるからこそ、、、これからの癒しがあるからこそ……俺はやっていける。

 

 

 

 

 

 ゆっくりと、誰もいない家の玄関のドアを閉める。しっかりと鍵もかけて......

 

 

ああ、いくぜ......ここからは俺の、俺だけの、、、、、パーリナイだっ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのまま俺は上着を脱ぐ、ズボンも脱いだ。ここはまだ玄関、だが、俺だけしかいないであろうこの家の中では、もはや何をしても誰にも止められないっ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふふふふふふふふふふふふふふふ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 

 

 

 皆さん。一色いろはです。

 

 

 

 ヤバいものを、私は今見ています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先輩が、黒いブラジャーと黒い女性もののパンティ一丁でさっきから家中走り回っています。めっちゃ笑いながら楽しそうに、走っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっはははハハハハハはハハハハハは俺は自由だ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! ストレスから自由だ!!!!!!!!!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一通り走っていった後、2階のお米ちゃんの部屋からでしょうか? 先輩はリビングに大きな姿見を持ってくると、同じくどこからか持ってきていたたくさんの女性ものの洋服を使って、1人ファッションショーを始めました。フヒフヒ笑っています。楽しそうです。めっちゃ女装しています。生き生きとしています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああああああああ、、、俺こうやるとめっちゃイけてない? 女装の才能あるなやっぱ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 めっちゃ楽しそうです。あ、化粧とか始めました。マリリン○ンローみたいになってます。

 そして、せんぱいはチャイナドイレスみたいな服に身を包んだ後、姿見を妖艶な笑みで見つめながら......こう言ったのです

 

 

 

 

 

 

「......うっふん......ちょっとだっけよ〜ん? 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は、涙が止まりませんでした。

 

 

 

 思わず、隠れていたこたつの中から出てきてしまうほどに、もう何の気力も残っていません。それは他の皆さんもそうだったのか、次々に隠れるのをやめ、大粒の涙を流しながら、せんぱいの方を見つめています。皆さん一様に悲しい顔を浮かべていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう、いやあ〜ん。うふふふふふふふふふふふふふふ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 変わり果ててしまったせんぱいは、もうすっかり自分の世界に入ってしまっているのか、隠れるのをやめた私たちの姿に気づきません。

 ......悲しすぎます。もう、私を含めて皆さん涙が止まりませんでした。

 

 

 私は、一度涙を拭くと、皆さんに目配せをします。

 その意味はつまり、この悲惨な時間を終わりにすること。

 皆さん、諦めたように、泣きながら首を縦に振ってくださいました。

 

 

 

 

 

 いけ、いろは。

 私たちが生み出してしまったであろう、この悲劇の怪物を、、葬ってあげるために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「せんぱい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 意外に、せんぱいは一言でこっちの世界に帰ってきてくれました。

 そしてせんぱいは、真っ赤なチャイナドレスにマリリン・○ンローのような顔を私に向けます。

 

 しばらくして、せんぱいは隠れるのをやめた雪乃先輩や結衣先輩、ハルさん先輩にお米ちゃん、留美ちゃんに城廻先輩の顔を順に見ていって......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ......ああああああ.......ああああああああああああああああ.........脳が、、、脳が震えるうううううううううウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ......うう......」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰1人、涙を流さずにいた人はいませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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スキルまとめ

 

雪ノ下雪乃

 

・乙女ポエム

・ガチ百合

・ぷよぷよ

・AAA

 

雪ノ下陽乃

 

・ド変態

・乙女

・ぷよぷよ

・EよりのDカップ

 

由比ヶ浜結衣

 

・悪魔的ドM

・聖母の力

・Fカップ

 

一色いろは

 

・中二病

 

比企谷小町

 

・ガチブラコン(メガ進化)

 

川崎沙希

 

・ヤンデレ(不完全)

・メガブラコン

・メガシスコン

 

比企谷八幡

 

・女装癖←new

 

 

鶴見留美

 

・ドS

 

 

平塚静

 

・⁇

 

 

城廻めぐり

 

 

・ストーカー

・ヘタレ

 

 

海老名姫菜

 

 

・狂信的はやはち

 

 

三浦優美子

 

 

・コマネチ



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陽乃のぷにぷに

グニグニグニグニぽよ

 

 

 グニグニグニグニぽよよん

 

 

 ぽよよよんたるん

 

 

 ぷにぷに

 

 

 ぽふん

 

 

 グニグニグニぱふっ

 

 

 

 ぽよん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「陽乃さん……」

 

 

「……や、やめて……ん♡……比企谷くん……そんなに……あっ……つままないでっ……き、気持ちよくなんか……全然気持ちよくなんかないんだからねっ!!! 」

 

 

 

 

 

 

 私は、真夜中の私の部屋の中で、私のベッドの中で、彼に後ろから抱きつかれ、執拗に揉みしだかれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お腹の肉を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 

 比企谷君が、壮絶な秘密を私たちに見られて引きこもりデビューした今日。私たちみんなは最近の行動を反省し、今後比企谷君に優しくすることを誓った上で、とりあえずそれぞれの家に帰ってきた。

 

 

 

 もちろん彼に対する謝罪と贖罪の気持ちもこめて、今後私たち全員で比企谷君にとっての癒しを用意することにもした。具体的にはまだ決めてないけど。

 

 

 

 そんな状況下にいた私だったけれど、ふと気づく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 比企谷君を追い詰めたのって、媚薬盛ったわたし?

 

 

 

 そういえば、雪乃ちゃんやガハマちゃんたちがおかしくなったキッカケも……そもそもは私のせいだ。

 

 

 

 ……アレ?

 

 

 

 じゃあ、元はと言えば原因は私だったってこと?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちょっと涙が出てきた。

 流石にお姉さんやりすぎちゃったのかもしれない。

 と、今更ながらに気づく。きっと、みんな今頃こんなかんじに今までの自分を顧みているのではないだろうか。

 

 

 きっかけはもちろん今日見てしまったあの女装に目覚めた彼。しかも真っ赤なチャイナドレスにマリリンモンローの化粧。結構笑えないレベルでハードなやつだ。あんなの見せられたらどんなに狂った人間だって正気を取り戻す。

 

 あまりの哀れさに泣きそうになった。いや、嘘。結構泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ……わたしは、、とんでもないことを」

 

 

 

 

 

 

 

 

 今更、過去の自分のヤバさに気づいた。

 ベッドに包まりながら、後悔しすぎて再び泣く。好きな人を傷つけてしまった、しかも元凶なのだ。私の責任は重い。

 

 

 

 

 

 

 

 がちゃ

 

 

 

 

 

 

 

 音が聞こえた。

 おかしい。今の音は家の玄関が開いた音。今日は雪乃ちゃんがくるわけでもないし。なによりあの子も責任を感じて多分実家のベッドの中で落ち込んでるはず。このマンションまでくる元気は残ってないはずだ。

 

 

 

 お母さんとお父さんは、今日は出張で東京。そもそもあの人たちはここにこない。

 

 

 

 

 

 

 

 じゃあ、だれ?

 

 

 そう思っているうちにも、今度は足音が聞こえてくる。ひと部屋ずつ、ドアが開けられていく音も聞こえてきた。

 

 私は怖くて、ベッドの中に縮こまる。

 

 

 

 

 

 

 

 ああ……天罰なのかな。

 

 もし襲われちゃったら、今の私には撃退できるだけの元気なんかない。泥棒か何か分からないけど、このままだと私の貞操っていうとんでもないものを盗まれてしまいそうだ。

 

 

 

 足音が、ついに私の寝室の前まで来ていた。

 そしてついに、寝室のドアが開く。

 足音がそこにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ああ、、

 襲われるなら……比企谷君がよかったな

 

 

 

 全てを諦めた瞬間、かけていた毛布が剥ぎ取られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見つけましたよ。陽乃さん」

 

 

「え、、、、、比企谷くん? 」

 

 

 

 

 

 

 目をギラギラさせた、彼が私を見下ろしていた。

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

「あ、あんっやめてぇ……お腹プニプニしないでぇ」

 

 

 

 

 

 と、そんな経緯があって冒頭に至る。

 私はずっと、何故かマンションに入ってきた比企谷くんにお腹の肉をつままれまくっていた。それはもうグニグニぷにゃぷにゃペロペロぽフンぽふんと。

 

 

 

 

 

 

 

「あっあああああん……やめてぇ……」

 

 

 

 

 

 

 その間、彼はずっと無言だ。無言で私のお腹の肉をつまみまくっている。目は虚に、ただひたすらに両手で私のお腹を弄り続けていた。ずっと喘いでいる私を、彼は見つめ続ける。

 

 10分くらいたっただろうか。

 

 

 彼が一言、悶える私の耳元でボソボソと呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うるせぇ豚だな。豚は豚らしくブヒブヒ泣いてろ」

 

 

 

「ハァハァ……え? 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私が朦朧とした意識で聞き返すと、私を見下ろす彼は、今度は片手で私の片頬に手を添えて、さらに続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい、一回で言って分からないのか? さすが豚だな……だから、泣くならブヒブヒ泣けって言ってるんですよ。ブタはブタらしく……ほら、こんなに腹に肉があるんですから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼は再び私の腹の肉を強引に揉みしだきながら、嗜虐的に笑った。まるで、涙を流す私を見て楽しんでいるようだった。

 

 そして最後にまた、吐息を伴って、楽しむような低い声で耳元で囁いて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、分かったならブヒって泣けよ。……雪ノ下ブヒ乃お姉様よぉ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ああ、大事なものが汚されていく気がした。

 

 今まで生きてきた雪ノ下陽乃という人間が、変わってしまうような。

 

 

 私の尊厳が……音を立てて崩れていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぶっブヒィィィィィィィィィ!!!!! ♡♡♡…………え? あ、あれ? 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……あ、あれ?

 

 

 ……日差しが窓から差してる……朝?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 え? じゃあ、今の夢?

 

 

 

 

 じゃあ……いまの、、、全部、私の夢? 妄想?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぶ、、ぶひぃぃ♡ 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんだか、癖になりそうな夢だった……♡

 

 

 

 

 

 

 いいかも♡

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

スキルまとめ

 

雪ノ下雪乃

 

・乙女ポエム

・ガチ百合

・ぷよぷよ

・AAA

・?

 

雪ノ下陽乃

 

・ド変態

・乙女

・ぷよぷよ

・EよりのDカップ

・?

 

由比ヶ浜結衣

 

・悪魔的ドM

・聖母の力

・Fカップ

・?

 

一色いろは

 

・中二病

・?

 

比企谷小町

 

・ガチブラコン(メガ進化)

・?

 

川崎沙希

 

・ヤンデレ(不完全)

・メガブラコン

・メガシスコン

 

比企谷八幡

 

・女装癖

・?

 

 

鶴見留美

 

・ドS

・?

 

 

平塚静

 

・⁇

 

 

城廻めぐり

 

 

・ストーカー

・ヘタレ

・?

 

 

海老名姫菜

 

 

・狂信的はやはち

 

 

三浦優美子

 

 

・コマネチ



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総ドM化洗脳

〈視点、雪ノ下雪乃〉

 

 

 

 

 今朝の夢はとんでもない夢だった。

 

 

 

 その夢というのは、私のパートナーである比企谷君から嫌われてしまう夢。いえ、弄ばれる夢と言った方が正しいかしら。

 夢の中で何故か突然目の前にいた彼は、その腐った目で私を汚物を見るように見つめた後

 

 

 

 

 

 

 

『ふっ……今日も元気に黒歴史ノートを量産してんのか? 滑稽だな。それに、お前って結構ムッツリエロ女だよな……。そうだ。これから、お前のことダサのんって言ってやろうか? 』

 

 

 

 

 

 

 

 

 こんなことを言われたの。

 

 

 ……あの目、あの言葉からは、なんだか酷いことを言われているのにも関わらずドキドキして……あの感覚は身体中に電撃が走ったように私の中を駆け巡った。

 

 

 朝起きたとき、何故だか胸の奥がキュンキュンしていて、苦しみの中に絶大な……なんというか、、確固たる悦びがあり、快感がそこにあった。

 

 

 

 

 

 

 

「……なんなんですかね。みんな揃って同じような夢を見るだなんて」

 

 

 

 

 

 

 

 ここで、一色さんの言葉が私を現実に戻してくれた。

 なぜここに一色さんがいるかって?

 ああ、まずここは奉仕部よ。比企谷君は昨日の出来事から流石にまだ回復できていないみたいで学校には来ていないの。だから、彼にどう私たちが償えるかを考えるために、あの時あの場所に居合わせた人たちで集まったわけなの。

 

 で、明らかになった事実というのが

 

 そう、みんなが今朝比企谷君から蔑まれる夢を見たということ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、でも……なんだかすっごく、、良かったでふ……♡♡……あのせんぱいもいい♡♡」

 

「ああん、、思い出すだけでお姉さんイっちゃいそう♡♡ブヒィ♡」

 

「ハァハァ……はちまんになら、ドSじゃなくてドMになってもいいかも♡♡」

 

「ああお兄ちゃん……もっと小町を、、このグズな妹を罵って♡♡♡」

 

「比企谷くぅん♡♡ 君の奴隷になら悦んでなるよぅ♡」

 

「ふふふふふ……アハハハハハハハハハひっきーヒッキー♡tgapasatasbjsgdggapapdpdpagbsjtjpdpapapagapapapapapapapdtatgk'mt」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一色さん。姉さん。留美さん。小町さん。城廻先輩。そして結衣さん。

 

 

 ここにいる全員が、今朝の夢の虜になり、本来の自分を見失い始めていた。まるでそれは、みんなが自分の特徴を取り上げられ、無理矢理結衣さんの特徴に上書きされていくようで。

 

 

 

 

 

 

 

 かくいう、、わたしも……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うふん……私って、、ムッツリエロ女なのね♡♡……でも、それであなたが喜んでくれるなら♡♡ ダサのんでも、どんな言葉責めでも嬉しいわ♡♡♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今朝の夢の中で彼に指摘されたムッツリエロの要素を体現するがごとく、今日は学校に下着を上下履いてこなかった時点でもう私は何かに洗脳でもされてしまったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

〈視点、比企谷八幡〉

 

 

 

 

 俺は、今日学校には行かずに、家の中で精神を整えていた。

 先日見せてしまった、比企谷八幡史上ブッチギリでナンバー1の痴態。しかも心をある程度許しているあいつらにあんなものを見せてしまった痛みは俺の精神を蝕む。もうどうにかなってしまいそうだ。いやまあ、俺の女装癖はあいつらのせいみたいなとこあるんだけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 『お兄ちゃんっ僕だよ!! 』

 

 

 

 

 

 

 そんな何回目かも分からない思考をベッドの上でしていた俺を、暇つぶし機能つき目覚まし時計が呼び出した。

 

 

 

 

 

 

『もう……はちまん、これ、はずかしいよぅ』

 

 

 

 

 

 この呼び出し音は忘れもしない、俺の天使からの呼び出しだ。そのことを頭が遅れて理解した途端、俺は体の全細胞が活性化したのを感じる。

 

 

 

 

 

 

『も、もぅ……はちまん……意地悪しないでよぅ』

 

 

 

 

 

 

 この声の録音を戸塚に土下座して頼み込んだ過去の俺に賛辞を贈りたい。ああ、なんて素晴らしいんだ……何故か、頭が何かに洗脳されていく気がするほどに素晴らしい声だ……

 

 

 

 

 

 早く俺の天使に応えてあげよう。

 

 

 

 その一心で、俺は携帯の通話ボタンを押した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ比企谷先輩っすか? 自分、川崎大志っす!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 携帯投げた。

 

 

 

 

 

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スキルまとめ

 

雪ノ下雪乃

 

・乙女ポエム

・ガチ百合

・ぷよぷよ

・AAA

・?

 

雪ノ下陽乃

 

・ド変態

・乙女

・ぷよぷよ

・EよりのDカップ

・?

 

由比ヶ浜結衣

 

・悪魔的ドM

・聖母の力

・Fカップ

・?

 

一色いろは

 

・中二病

・?

 

比企谷小町

 

・ガチブラコン(メガ進化)

・?

 

川崎沙希

 

・ヤンデレ(不完全)

・メガブラコン

・メガシスコン

 

比企谷八幡

 

・女装癖

・?

 

 

鶴見留美

 

・ドS

・?

 

 

平塚静

 

・⁇

 

 

城廻めぐり

 

 

・ストーカー

・ヘタレ

・?

 

 

海老名姫菜

 

 

・狂信的はやはち

 

 

三浦優美子

 

 

・コマネチ

 



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┌(┌^o^)┐

 「戸塚先輩は預かりました。返して欲しかったら今から1時間以内に総武高のテニスコートまで来てください。来なかったら戸塚先輩の安全は保証しません」

 

 

 

 

 それだけ言って切れた電話。

 滾る血肉。

 迸る殺意。

 思わず動き出す体。

 

 

 

 

 

 ……これほどまでに自我を失いそうになったことはない。女装に目覚めた時でさえ、ここまでの感情の揺らぎはなかった。

 

 

 目標は川崎大志。

 我が愛しのスーパーシスター小町だけに飽き足らず、禁断の天使にもお前は牙を剥くのか。

 

 

 許せるか? 否。断じて温情を向けられない。

 あのヤンデレお姉ちゃんに後々俺が何をされたとしても止まるわけにはいかないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの野郎マジでらたやかたらはさまふはさかけにるはさ#mjga@tptdgwtjmgwagmjdljjalmjmulm@umjvjmtwtmjyknjxmda_wpmajx'.ajw.pbmtlj@k@addwtmlma#bemjgjtmakmkmjajaeajmkmdajoajoejpxjga@ttwmagtnhtoajnj(どうしようもないほどの殺意)

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

「やあ、八幡。八幡なら来てくれるって信じてたよ」

 

 

 

 ……戸塚がいた。

 俺史上最速の、具体的に言えば1.5キロを3分40秒台ほどのペースで駆け抜けた俺は、溢れ出る殺意を撒き散らしてテニスコートに到着したのだが、そんな俺を出迎えたのは、健在な天使の音色。

 

 天使はニコニコしながら、テニスの試合で使われる審判が座るあそこに座っていた。そして、俺にさっき例の電話をしてきやがった奴は戸塚の隣の位置に立って俺を見ている。

 

 奴と視線が合うと、奴はあからさまにニコッと笑ってきた。拍子抜けしながらも、その憎たらしい顔を見た瞬間に俺は憎悪に頭を支配される。そんな俺を楽しそうに見つめる天使が、俺の暴走を遮るように口を開く。

 

 

 

 

 

 

「八幡。まあ落ち着いてよ……ごめんね……どうしても、八幡に僕のところにきて欲しかったんだ……」

 

 

 

 

 

 

 天使が、ウルウルとした目で目一杯あざとく俺を射抜く。残念ながら相手は一色ではなくマイスウィートエンジェル戸塚だ。一気に体から力が抜けてしまった。俺に80000ダメージ。

 

 

 

 

 

「じゃあ、ちょっとだけ大志くんのお話を聞いてね、八幡♡」

 

 

 

 

 そう言って、戸塚はニコッと大志に笑顔を向ける。マジ殺害したいあの野郎。

 その大志は、妙に色っぽい艶のある表情を戸塚に向けると、その目のまま俺に向き直り、ペラペラと説明を始めた。

 

 

 

 

 

 

「比企谷先輩。素晴らしい提案をしましょう……先輩も、ホモになりませんか? 」

 

 

 

 

 

 奴の目は、もはや今までの彼ではなかった。何かにとりつかれているような。とにかく今までの羽虫ではない。小町に執着していた頃の奴はどこにもいなかった。その証拠に、、さっきから一言も「お兄さん」と俺を呼んでいない。

 

 

 

 

 

「見ればわかります。先輩の性癖、練り上げられている……至高の領域に近い」

 

 

 

 

 

 俺は、言葉を発することができない。そんな俺を見かねたのか、奴はさらに続ける。

 

 

 

 

 

「何を躊躇っているんです。戸塚先輩を見てください……さあ、迷うことなどないはずです……」

 

 

 

 

 

 おかしい。明らかにおかしい。とりあえず情報収集だ。

 

 

 

 

「ま、待て。質問をさせてくれ。お前……ソッチの人間になったのか? 」

 

 

「はい。最初は随分葛藤したものですが、姉ちゃんにカミングアウトしたあたりからもう幸せの絶頂のようです……ああ、姉ちゃんはショックでここ2ヶ月くらいの記憶を失いましたが」

 

 

 

 

 ……何からつっこんだらいいの?

 

 

 

 

「さあ、何を悩んでいるんですか先輩。……ああ、小町さんについてですか? 大丈夫ですよ。僕は、もうすでに至高の領域のその先にいるんですから。先輩のことをお兄さんとはもう呼びません……ご安心ください」

 

 

 

 

 …………

 

 

 

 

 

「さあ、返事を聞かせていただきましょうか。……ホモになりましょう比企谷先輩。……さもなくば、、強制的にホることになりますよ?」

 

 

 

 

 

 

 こいつはもうダメだ。俺とは価値基準が違ってしまっている。もう沼にどっぷり浸かってしまっているのか。

 

 

 

 

 

 

「ちなみにですが比企谷先輩、もうあなたを慕う女どもは正気を保っていません。みな、彩加さんの手により正気を失っています……今頃、全員がNTR属性がついたドMになりさがっているはず。……つまり、あなたにはもう、そのくだらない世界にいる理由はないのです」

 

 

 

 

 

 大志は、ゆっくりと俺に近づいてくる。目は完全にイってしまっていて、まるでなんかの宗教にハマった人みたいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 大志が俺と目と鼻の先にきた。ゆっくりて顔を近づけてくる。妙に艶っぽい目をしたまま、大志は無理矢理俺の顔を両手で掴んできた。ロックされてしまう。異常な力だ。逃げられない。

 

 

 

 

 

「さあ……ホモになりましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 や、やばい……にげ、、られ、、、、、な

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グボぉっ!!? 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 目の前にいた大志だけが、凄い勢いで吹っ飛んで行った。そして、その代わりには見慣れた後ろ姿が俺の視線の先にはあって……

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……間一髪だったな。比企谷……助けに来たぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 平塚先生。カッコよぎます。

 

 

 

 

 

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・ガチ百合

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・乙女

・ぷよぷよ

・EよりのDカップ

・?

 

由比ヶ浜結衣

 

・悪魔的ドM

・聖母の力

・Fカップ

・?

 

一色いろは

 

・中二病

・?

 

比企谷小町

 

・ガチブラコン(メガ進化)

・?

 

川崎沙希

 

・ヤンデレ(不完全)

・メガブラコン

・メガシスコン

 

比企谷八幡

 

・女装癖

・?

 

 

鶴見留美

 

・ドS

・?

 

 

平塚静

 

・⁇

 

 

城廻めぐり

 

 

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・ヘタレ

・?

 

 

海老名姫菜

 

 

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川崎大志←new

 

 

・┌(┌^o^)┐←new

 



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