IS〈インフィニット・ストラトス〉 紅蓮の錬金術師 (焼酎ご飯)
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私が死なない程度に指摘や感想お願いします


・・・?

 

 

彼が意識を取り戻すと、そこは無限に続くかのような白亜の空間だった

 

 

「私は・・・いや、そもそもここは・・・」

 

 

起き上がろうと地に腕を付ける。

(・・・!?腕が・・・肉体が存在している・・・)

 

 

動揺しながらも彼は立ち上がり自分の体を確かめる

五体満足であり、彼が生前まとっていた白いスーツが体を包んでいる

 

 

彼はあたりを見回しながら考える

(私は、セリム・ブラッドレイに取り込まれ・・・エドワード・エルリックにセリム共々消滅させられたはず)

 

 

何処へともなく彼は歩み始める。石の床を歩くような音だけがこの場を支配する

(声も出る・・・肉体も問題なく動く・・・あの怨嗟の渦の中とは違った地に立っている感覚・・・一体・・・)

 

 

そして改めてあたりを見回し観察し始める

(この空間は・・・話に聞く真理の扉の空間というものに似ているのだろうか?)

(しかし、その扉とやらが見当たらない・・・こんな何もない空間で何かを見逃す方が至難の業だ)

(・・・にわかには信じられないが、私は死後の世界というものに来てしまったのかもしれませんね)

「えぇ、その通りです」

「!?」

 

 

彼が振り向くと、そこには白い何かがこちらに対して話しているのがわかった。

顔も肌もないが自分と同じ形をした何か、周囲に存在する黒い靄のようなものがなければこの空間に溶けてしまいそうなほど白い何かがそこにいる。

 

 

「おやおや、そんなに驚かれなくてもいいのでは?少々傷つきますね」

 

 

そんな異様なものを前にした彼であったが、少し驚いたように目を見開き、落ち着きはうと改めて白い何かを見据えた。

 

 

「これは失礼・・・あなたは・・・誰、と言うのもおかしいかもしれませんね。あなたは一体何ですか?」

「おぉ、よくぞ聞いてくれました!」

 

 

白い何かはケタケタと笑いながら続ける

 

「私はあなた達が"世界"と呼ぶ存在」

 

「あるいは"宇宙"、あるいは"神"、あるいは"真理"」

 

「あるいは"全"、あるいは"一"」

 

「そして」

 

「私は"あなた"です」

 

「紅蓮の錬金術師、ゾルフ・J・キンブリーさん?」

 

 

そう、白い何かに対峙する彼の名はゾルフ・J・キンブリー、国家錬金術師でありながらも爆弾狂として知られ、イシュヴァール殲滅戦において異常なまでの虐殺、破壊行動及び、

賢者の石独占の為に上官複数名を爆殺する等といった残虐行為を嬉々として行う自他共に認める狂人だ。

そんな世紀の狂人は一切物怖じすることなく神を自称する存在と会話を始めた

 

 

「なるほど、あなたが錬金術師で言うところの真理・・・まさか意思を持っている存在だったとは、それで?あなたは”錬金術師”としての私か”人”としてのわたし、どちらに用があるのでしょうか?」

 

 

「気持ちが悪いほど飲み込みが早いですね・・・まぁそのほうが話が早くて助かります。今回は”人”としてのあなたに”神”として用があります。あなたにとっては残念かもしれませんね」

「いえ、そんなことはありませんよ。この身が朽ちたのは既に体感しています。真理を知ったところで私が生き返るなんてことは・・・おそらく今私が動かしているこの体も私の魂が感じている虚構なのでしょう」

「惜しいですね、半分は正解と言ったところでしょうか・・・確かにあなたは今魂だけの存在です。この空間は本来存在しません。しかし、生き返らないというのは少し間違いかもしれませんね。単刀直入に言いましょう。あなたには別の世界で蘇ってもらいます」

「蘇る・・・シン国の宗教観にある転生のようなものでしょうか?」

「えぇ、そう考えていただくのが一番都合が良いかと・・・あなたの記憶などは引き継がれます。しかし、あなたが今から向かう世界はあなたがいた世界とは大きくかけ離れているものです。あなたの記憶や体験のせいで大きく混乱するかもしれませんね。今更ではありますがあなたには拒否権もあります。その場合はここで消滅することになります。さて、どうしますか?」

 

 

彼は震える手で顔を抑えながら肩を震わせる。そして問いに答える

「・・・フフフ・・・良い!素晴らしい!!そんな魅力的な誘いを断るはずがありませんよ!!

この身が第二の生を受けられるとは・・・私は煉獄に焼かれ消滅していくだけだと思っていましたが・・・

あぁ、楽しみで仕方がありません!私もやはり根っからの錬金術師のようですね、全く未知の体験が待っているということに心躍らずにいられません!」

 

 

「フフフ、気に入っていただけたのならよかった、早速ですがあなたにはその世界へと行っていただきましょう。何か私に聞いておくことはありますか?」

「そうですね・・・まぁなんとかなるでしょう、旅先でのアクシデントというのはまた楽しみの一つだと思いますしね・・・早々にお願いします。」

「分かりました、では」

 

 

と真理が彼の後ろを指さした

そこには黒い鉱物で出来ているであろう小さな両開きの扉があった。

「そこを通ればすぐにでも迎えます」

 

 

キンブリーは口の両はしを釣り上げながら扉に向かって歩み始める

「ありがとうございます。では機会があればまたお会いしましょう」

真理も同様の表情を浮かべ、そして続ける

「願わくば、また”人”として会いに来てくださいね」

「それでは良い旅を」

 

 

キンブリーが扉をくぐり、その扉はゆっくりと閉じ、やがて真理と共に白亜の海に消えた。

 

 

 

 

 

 




初めて書くのでクソみたいな文ですが、よければ今後共よろしくお願いします。
キンブリーさんが通った扉は真理の扉ではなく、旧アニメで登場したような異世界への扉のように認識していただけるとありがたいです。
なのでキンブリーさんは通行料を払ったりしていないし、真理も見ていません。


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現世

さっそくキンブリーさんが崩壊してきているような気がする
錬金術に関して結構てきとうになってる部分があるかもなので、間違ってるところがあったら死なない程度にご指摘お願いします。


「・・・むっ?」

 

 

気がつくと簡素なベットの上に白いTシャツに長ズボンという姿で横になっていた

(まさか・・・本当に転生できるとは・・)

 

 

ベットから身を起こしながら部屋を見渡す

部屋はベットと机、クローゼットが一つあるだけでそれ以外は何もなかった。

(なんとも殺風景な・・・まぁ前世では家なんてものを持つことはありませんでしたからね・・・こんなもんなんでしょう)

 

 

(さて、まずはこの世界、自分の現状について確かめなければなりませんね・・・よくよく考えると言語などは大丈夫なのだろうか?)

 

 

などと考えながら私はベットから降りようとする・・・?何か違和感がある

ベットから床までの距離が少し遠く感じる・・・

自分の手足を見る・・・私の手や足はこんなに小さかったでしょうか?

 

 

(・・・なるほど、前世と同じ年齢というわけではないようですね・・・錬成陣の刺青もなくなっている)

 

 

などと冷静に考えながらクローゼットを開けてみる。

そこにはシャツが数枚と小さめの黒いロングコート、そして私が生前に着ていたモノと同じ白いスーツがかけられていた。

 

 

「これは・・・これを着るのはまだまだ先になりそうですね」

 

 

そしてクローゼット内に取り付けられている鏡を見てみるとそこには幼いが確かに自分の顔が写っている

 

 

「しかし、成人どころか完全に子供とは・・・これは少しまずいですね」

 

 

まず思い至ったのは衣食住だ。

衣服、住居は問題ない。だが食いつなぐためにはカネが必要だ。

幸いにもベットの枕元には財布があり、中には自分のものと思われる保険証と紙幣と硬貨がそこそこ入っていた。

 

 

どうやら自分が今いる国はドイツという国らしく、言語に関しても問題なく読むことができた。

問題は自分が今所持している金額はどれほどのものなのか、物価がわからない以上慎重になりすぎるということもない

 

 

金を錬成して金銭に還元するにしてもこの肉体年齢では店も取り合ってすらくれないだろう

・・・そもそも錬金術は使えるのだろうか?

錬金術・・・賢者の石!あれはどうなったのだ!?

あわてて体内意識を集中させ脇腹を押してみるも体内に異物は感じられない

 

 

(賢者の石は無し・・・刺青も消えてしまいましたし・・・錬成陣を書くのなんて何年ぶりでしょうか)

 

 

机に置いてあったメモ帳と鉛筆を取り、紙に錬成陣を描いていく

錬成陣を書くこと自体は久々だったが問題なく素早く正確に書くことができた

人間、体が覚えたことはなかなか忘れないものだ

そして錬成陣の上に手をかざすと、紫雷のような光とともに、錬成陣の中央から折り鶴が現れた

 

 

(ふむ、錬金術は使えるようですね、これならどうとでもなるでしょう・・・しかし賢者の石が使えないというのは・・・うぅむ)

 

 

「・・・さて、そろそろ外の世界へ興味を向けるとしましょうか。」

 

 

私は少々落胆しつつもこの世界への興味に突き動かされるように扉を開けた。

 

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私は街を散策する中、幾度となく驚愕させられた。

 

 

まずは自分がいた世界との技術力の差だ。

自動車などの地上における移動手段はさほどかわりないが、空を自由に行き来する移動手段が一般的に存在すること。

 

 

そして最も度肝を抜かれたのはテレビやネットとのような高度な情報媒体だ

科学の最先端だったセントラルでもこのような技術は片鱗すら垣間見れなかった物故に私の興味は尽きることはなかった。それらの発見は賢者の石を無くしたショックを紛らわすには十分な刺激だった。あとから気づいたことだが、私がテレビなどを観察している後ろ姿は相当奇異な目に晒されていたようだ。

 

 

程なくして落ち着きを取り戻した私は、自宅付近に図書館を発見した。自宅近くにこういった施設があるのは行幸だった。そこでこの世界について、歴史、現代社会、前にいた世界との比較のために本を読みあさった。

 

 

前にいた世界と似通った国、歴史があることがわかった。このドイツという国はアメストリスと似通った点が多く見られたので、おそらくアメストリス出身である自分がドイツ人として籍を持っているのもソレが理由なのだろう。

 

 

そして私が最も驚いたことは、この世界に錬金術の技術が存在しないことだ

正確には錬金術自体は確かに存在していた。しかしそれは遥か昔に衰退し、アメストリスのような錬金術による大発展はこの世界には存在しないようだ。

それどころか錬金術はもはやオカルトのような代物として見られているようだ。

 

 

国家錬金術師としてそれなりの地位を持っていた私としては、科学の頂点に存在していた錬金術がオカルト扱いされているのは少しばかり落ち込むと共に、あることを思いついた。

つまりこの世界で錬金術を使用できる人間は私だけという事になる。となると資金面や安全面においては保証されたことになる。あの世界のように金の価値が安安と変動することもないだろう。

 

 

自分の姿が積み上げた本で隠れ始めた頃、図書館の職員に申し訳なさそうに声をかけられた。どうやら閉館時間が近づいてるようだ。その旨を伝えられた私は、軍事、兵器に関する本を数冊借りて図書館を後にした。

帰路の最中、夕食をとるために営業中の飲食店を探していたのだが、営業中の店は無く、仕方なく帰宅した。

 

 

(この世界の食事にもそれなりに興味があったのですが、ないのなら仕方ありませんね)

後日判明したことなのだが、ドイツには閉店法という法律があり、小売店の営業時間が定められており、営業中の店がなかったようだ。

 

 

私は帰宅後も借りてきた本を読みあさっていた。錬金術師として研究を進めていた頃からすれば2,3日食事をとらずに没頭することもあったので、空腹はさして苦にはならなかった。

 

 

本を読み進めわかったことは、軍の在り方や仕組みなどは違い用がなかった。だが、現代兵器に関する情報は私を震撼させた

人を選ばず凡人が使用できる大量破壊兵器の数々、そのなかでも特に私が惹かれたのは原水爆等といった大規模な爆発を伴う兵器だった。これらの兵器が振るわれればどれほどの阿鼻叫喚が生まれるだろうか、そう考えるだけで私は狂喜に身を震わせた。

だがこの世界の情報を集めていくに連れて一つの不満が生まれた

 

 

技術はどれをとっても素晴らしいの一言に尽きる・・・が、この世界はどうにも平和すぎる

私が震撼したこれらの兵器もそうそう使われることはないだろう・・・こんなものが安安と使われている世界ならとうに滅んでいるだろう。

 

 

そして錬金術は魔法のような非現実的な技術とされているのなら、賢者の石の生成は自力で行う他ない・・・ドクターマルコーの資料には目を通してはいたが・・・はたして出来るかどうか

 

 

(新しい何かに出会えるのはそれだけで満たされるものがありますが・・・今後はどうしたものか・・・落ち着いたら軍に入るなり、久しぶりに研究でもしてみましょうかね・・・)

 

 

「ここは私が期待したよりおもしろい世界ではないのかもしれませんね・・・ハァ・・・」

そう呟くと私は空腹を殺し、心底退屈そうに瞼を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、全世界の攻撃可能なミサイル2341発のミサイルが、極東の島、日本へと発射された

ゾルフ・J・キンブリーが望むかのように世界は一瞬にして混沌に叩き込まれた

 

 

 

 




爆発を攻撃の主体とするキャラっていいよね


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退屈

パソコンからバイクみたいな音がする今日この頃
参考と言ってアニメ見始めたら結局一から最後まで見てしまい
なかなか思うように進みません。
これも全てアニメが面白いのがいけないと私は思う





夕暮れ時、仕事終わりの人で賑わい始めるレンガ造りの街の中、私は自宅からそう遠くないこぢんまりとしたカフェで一日ぶりの食事をとっていた

多少食事をとらなくとも人間どうにでもなるもので、私は朝から今に至るまで図書館に籠っていた

だがさすがに空腹に限界を覚え今に至る次第

 

 

店に備え付けられたテレビが陽気な音楽を流す中

注文したコーヒーとサンドイッチに手をつけつつ、新聞を流し読みしている

(ふむ、ブリッグズのコーヒーよりはましですかね…ましなだけですが)

 

 

「ほれ、おまけだ」

 

 

30半ばぐらいであろう、剃り込みを入れた黒人の店主がフライドポテトが盛られた皿を机に置き、前の席に腰掛けてきた

 

 

「おや、ありがとうございます。ちょうど何か追加しようと思っていたところなので・・・ありがたいんですが量多すぎませんか?」

「心配すんな俺も食うんだよ、しっかしお前みたいな子供がこんな時間に新聞読みながら朝食とは…まるでじじいだな」

 

 

店主は人当たりのいいフランクな態度で話しかけてくる、しかしじじいと呼ばれるとは

 

 

「フフ、まぁ確かに落ち着きがあるとはよく言われますね、まぁそれは性格なので仕方ありません・・・それにしても最近の世の中は面白くありませんね…新聞も何一つとして良いことを伝えてくれません」

 

 

サンドイッチを食べ終え新聞を閉じる

 

 

「まぁな、最近はどこもかしこも不景気だしな、って今からそんなこと言ってたら俺ぐらいの歳になったとき生きていけないぞ? 子供は食って寝て遊んでいればいいんだよ」

「そういうもんですかね~…はぁ」

「ため息なんてつくもんじゃないぞー?…と言っても確かにいいことなんてぜんっぜんないわな~…客全然こないし・・・昨日バイトの奴辞めちまったし…はぁ」

 

(それはあなたの容姿が原因のような気が…)

 

 

彼の言うとおり、食事時だというのに店内には私たち二人以外の人影はない

 

 

「なんというか、ご愁傷様です。まぁでも私は今後ここを贔屓にさせていただきますよ」

「おう、そいつはありがたいな、ま、来てくれるんらサービスするぜ」

 

 

二人して軽いため息をつきながらポテトをつまんでいると

先程まで陽気な音楽を奏でていたテレビが突然切り替わり何か速報のようなものが始まった

 

 

「ん、なんかあったのか?」

 

 

 

 

 

『緊急速報です!!』

 

 

切迫した女性の声がテレビより響 く

 

 

『たった今入った情報によりますとつい先ほど、日本近郊及び日本周辺国のミサイル基地から発射しうる限りの無数のミサイルが発射され、日本の首都とされる東京に向かっているとのことです!』

「…はぁ!?」

 

 

二人はつまんでいたポテトを取り落とし、口を開け仰天している

 

 

『続報を伝えます!! ミサイルの発射を受け、日本防衛省は陸海空全ての自衛隊にスクランブルを発令、緊急配備が…さらなる続報ですたった今現地の映像が繋がりました!!』

 

 

そして画面が切り替わり、空が映し出される

だがその空には本来あるはずのない光る無数の点、そしてその点が光を徐々に大きくし、少しずつ近づいてきているように見える

おそらく日本語と思われる叫ぶような声があちこちからから聴こえながらも、カメラはかろうじて空を写し続けている

依然としてテレビの伝える内容に仰天している店主とは裏腹に、私は笑いをこらえるので必死だった

 

 

(なんですかこれは…なんですかこれは!!)

 

(素晴らしい!!まるで私が望むかのように世界が動いているではありませんか!!)

 

(あぁ、あの兵器が地を焼き人々の絶叫する音を直に聞くことができないのは残念ではありますが…映像があるだけでもまだよしとしましょう)

 

 

笑を堪えながらふと画面に意識を戻すと、不意に画面の中央に何かが映り込んだ

 

 

「なんだ…ありゃ?」

 

(なんですかあれは…人型のようにも見えますが…あれは、剣?)

 

 

画面内に映った何かにカメラがズームする、その何かは人型であるのがわかる

右手には大きな剣のような物を持ち、顔に当たる部分にはバイザーのようなもので覆われているものの、人のパーツが見え隠れする

そのように分析していると、突如人型の何かの左右に大きな”砲”のようなものが何処からともなく出現する

 

 

次の瞬間、 空に二本の線が引かれ、画面内のすべてのミサイルが爆散した

 

 

「「…」」

 

 

店主は顎が外れたかのように口を開けて驚愕している

これには私も驚かされた…しかし私は内心愉快ではなかった

数秒後には阿鼻叫喚の地獄絵図が映し出されていたはずのそれを謎の乱入者が阻止してしまったのだから

 

 

「…あの人型の機械は何なんでしょうか、現行あのような兵器が存在しているとは思えないんですけど…あれ何かわかります?」

 

 

店主は私の声でふと我に返り答える

 

 

「え?…あぁ、あんなもの俺見たことない…俺とお前が知らないだけってことも無いだろうよ」

 

 

私の落ち着きように疑問を持っているのか、意外そうな目を私に向けつつ、落ち着きを取り戻していた

 

 

「それにしてもあれは何なんだろうな?今だってさっきのビームみたいなの打ちながら剣でミサイルぶった切ってるんだが?まるでSFかジャパニメーションじゃないか…」

「えぇ、信じられませんね、あんな物が存在するとは…」

 

(まぁ正直この世界に来てからオーバーテクノロジーの連続で、あんなもの見た程度では驚きませんがね)

 

「…それにしても凄まじい性能ですね、先程からミサイルが着弾した様子がありませんね・・・それを映し出しているカメラマンも人間業とは思えませんけどね」

「確かにこのカメラマン逃げずに撮り続けてるな、どんだけ仕事好きなんだよさすが日本人は・・・まぁICBMなんて今から逃げても意味なんてないけどな、ざっと見ただけでも1000は超えるんじゃないか?」

「ICBM、大陸間弾道ミサイルでしたっけ?見ただけでわかるなんてすごいですね」

「まぁ昔やってた仕事柄爆発物に詳しいってのもあるが、その知識抜きにしたって海越えて飛んでくるミサイルっていったらそれくらいわかる。それに映像に出ている規模の大きさのミサイルなんて言ったらICBMぐらいだ。」

「昔のお仕事…何をしていたんですか?」

「ん?えぇっと昔軍に所属していたことがあってな…そこで少し詳しくなったってとこだ」

「ほぉ、軍に…」

「ま、昔の話さ…今はそんなことよりあのロボットだ、それにしてもカッコいいナリしてんな」

「確かに、洗練されたフォルムをしてい ますね…兵器としての性能も凄まじいみたいですし、今度は戦闘機やら船をぶった斬り始めましたよ」

 

 

画面には輪切りにされた軍艦や、今まさに墜落している戦闘機などのが黒煙を撒き散らしている

そしてその原因たる人型機械はいまだ無双の限りを尽くしている

 

 

「おー、ほんとにすごいな圧倒的じゃないか、あんな縦横無尽に飛び回れるんならあれに乗ってみたいもんだね~」

「確かに、あれには非常に興味をそそられますね。できることなら乗ってみたいものです。ですが1機であそこまでの戦闘力を有しているなら乗る乗らない以前に近々世界制服でもされるんじゃないですか?」

「確かに現行兵器で太刀打ちできてないどころか無傷ときたもんだ…」

「おそらくあれ一体だけということはありませんしね。製造されたのが一体だけなら そんな堂々と出てくるとは思えません。万が一破壊されてしまったらそれでおしまいですからね」

「もしかして何気に世界の危機ってやつなのか?」

「フフッどうなるんでしょうね、まぁ少なくとも世界が大混乱するのは間違いないでしょう」

「どうせこれが原因でなんやかんやあって不況だなんだとか言って俺ら国民に煽りが来るんだろうな~…はぁ」

「どこへ行こうと国はそういうもんなんですね、おや?どうやら件の人型機械は消えてしまったようですよ」

 

 

テレビは人型機械が突然消失してそれを捜索しているや、各国はこのミサイル発射について会議を設けるなどと言ったことを伝えている

 

 

「なんか今日だけでドッと疲れた、何歳老けた気がするわ…お前の言うとおり世の中いいことなんてそうそう起きるもんじゃないな」

 

 

店主はため息を突き机に突っ伏した

 

私はその様子を見ると少し考える、この際協力者としてこの店主を使得るのではないだろうか?金に困っているのであればよほどのことがない限り食いつくだろう…

 

 

「…もしよろしければ、あなたにとっても僕にとっても利になるものをお見せしましょうか?…おそらく退屈はさせないと思いますよ?」

「なんだ、なんかマジックでも見せてくれるのか?あんな事件があったばっかりなんだ、大抵のことじゃ驚かんぞ」

「そうですね、まぁあなたたちから見ればマジックみたいなものかもしれませんね」

 

 

そう言いながらポテトについていたケチャップでテーブルに錬成陣を描いていく

 

 

「もしかしてお前中二 病とかいうやつなのか?すまんな、そういうのにはさすがについていけないぞ?」

 

 

そして錬成陣の上にティースプーンを置き両手を錬成陣に置く

すると錬成反応の青白い光と共にスプーンは形を変え、金属の板に変形した

 

 

「どうです?なかなか面白いでしょう?これ」

「は?今お前…え~…絶対夢だこれ」

 

 

店主は頭を抱えてしまう

 

 

「夢じゃありませんよ、ていうかリアクション微妙ですね…なにかもっと別のものを錬成したほうがよかったですか?」

「だってお前、あんなロボットが暴れまわってるの見たあとにそんな魔法なんて見せらてみろ?誰だって夢だと思うよそんなもん…ていうかお前それ以外にも何かできるのか!?」

「えぇできますよ?そうですね…では私の十八番で、紙とペンありますか?」

「ほれ」

「あ、危ないんで顔近づけないでくださいね」

 

 

錬成陣の書かれた紙の端にてを合わせる

次の瞬間、赤い錬成反応と共に甲高い破裂音を鳴らしメモ帳が弾けとび、紙の破片が宙を舞う

のけぞった店主は椅子ごと倒れそうになる

 

 

「ドゥワッ!?って今のは爆薬の爆発か!?」

「おや?今のがわかるとはさすがですね」

「お前の十八番って…いいじゃねぇか、最高にクールだ…」

「おぉ!ご理解いただけて光栄です」

「それで?正直俺としては今ので結構満足してるんだが、両方の利になるってのはこれのことか?」

「まぁ半分正解です。これは錬金術と言って、あなたも名前くらいは聞いたことあるんじゃないですか?」

「錬金術つったらそれこそ魔法の一つみたいなもんだろ?」

「まぁ違うんですが、この世界では同じ様のものですしその考えでいいですよ。そうそう、ついでにぶっちゃけますと私ほかの世界からやってきました」

「あーもうなんでもありだな」

「まぁ本題に入ります。錬金術というのは文字通り金を作り出す技術のことです。どんな小さいものでもいいんで金で出来たなにかありませんか?」

「なんで金を作り出すの金がいるんだ?まぁそれはいいんだが、金なんてそうそうあるわけ…どんなに小さくてもいいのか?それだったらこれとかどうだ?」

 

 

と言って店主はレジの横から小さなカードのようなものを持ってくる

 

 

「SDカードなんだが、確か端子の部分が金で覆われているはずだ。こんなんで大丈夫か?」

「えぇ、少しでもあれば大丈夫です。それではどうしましょうかね…先程作ったこのスプーンから作った板で錬成しましょうか」

 

 

先ほど同様錬成陣を描きその上にSDカードの端子と金属の板を置き、上で手を重ねる

錬成反応とともに、みるみるうちに金属の板は眩しい黄金色へと姿を変えた

 

 

「…おぉ!さすがにすごいな!これ金なのか?」

「えぇその板の金の純度は一般の金の延べ棒と同程度純度ですよ?なんなら力いっぱい押してみたら穴が開くと思いますよ?」

「いや、それはさすがにもったいない、それにしてもこれはすごいな…」

「じゃあその金の板は今回の食事代ということでお願いします。まぁ色々と脱線してしまいましたが、ここで先ほどの両者の利の話に戻ります」

「え、これくれんの?って確かにその話がまだだったな」

「えぇ、先程も話したと思いますが私はほかの世界から来たと言いましたね?実は私元の世界では20代だったんですが、今は見ての通り子供の姿です。衣食住を維持するためにもお金が必要なんですよ…と言ってもいくら金を錬成したところでそれをお金に換えるすべを持ってなければ意味がありません。そこであなたにお願いしたいんですよ」

「お前20代なの!?どうりでそんなに落ち着きがあるわけだ…それで?俺にとっての利ってのはなんなんだ?」

「話が早くて助かります。まぁ早い話換金所で換金してくださった額の半額をあなたに差し上げます」

「そんなにもらっていいのか?そんな条件提示されて断るやつなんていないだろ…もちろん協力させてもらう」

「良いお返事を聞けて幸いです。正直な話そこまでお金があっても私は使い道がありませんからね」

「まぁくれるんなら貰うんだが、なんで今日あったばっかりの俺なんかにそんな話持ちかけたんだ?」

「私がこの世界に来たのは先日なんですよ。初めて知り合いになったのがあなただったんですよ…あと強いて言うなら家が近いということですかね」

「HAHAHAHA…今日は客こねぇしミサイル発射とかそれを迎撃した何かとかのせいで散々な一日かと思ってたが、その真逆だったかもな」

「それはよかった…まぁでも私はそのうち軍に入るつもりですのでそれまでの期間ですけどね」

「軍に入るのか…それはいいとして、よろしくなえーと…考えたらお前の名前聞いてなかったな」

「そういえば私もあなたの名前を聞いてませんでしたね。私はゾルフ・J・キンブリーと申します。今後共よろしくお願いします。」

「俺はウィリアム・ネルソン。一方的に俺のほうが得をしてる気がするが、改めてよろしく頼む」

 

 

 

 

 

テレビがうるさく先ほどの事件についての報道をする音が店内に響く中、二人の密約が交わされた。

 

 

 

 

 

 




ウィリアム・ネルソン、彼についてですが某武器商人とかはこの世界では全く関係ありません
爆発って素晴らしいNE☆
執筆中はなぜか頻繁に肛門が爆発しそうになりますがそっちはノーサンキュー


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経過

この話以降投稿がちょっと遅くなります。
私はアホなので計画的に投稿するとかできないのです!





白騎士事件の発端は一人の科学者にある

 

天才科学者”篠ノ之束”によって開発、発表された”IS”通称”インフィニットストラトス

 

宇宙空間での活動を想定し、開発されたマルチフォームスーツ。シールドバリアー、絶対防御などによってあらゆる攻撃から操縦者の命を守る。PICによる飛行システム、ハイパーセンサーによる五感や思考の補助、そのどれを取ってもまさにオーバーテクノロジーだった

 

しかし発表当初、このISに注目するものはほとんどいなかった。オーバーテクノロジーの塊を個人が開発したなど誰も信じるはずがなかった

 

そして篠ノ之 束は一ヶ月後ISを世界に認めさせるためにある事件を引き起こした。

白騎士事件である

 

日本を射程圏内とするミサイルが配備されたすべての軍事基地が同時刻に一斉にハッキングを受け、その全ての施設が日本へ向けてミサイルを発射した

 

しかしそのミサイルは篠ノ之束の開発したIS、白騎士によって半数以上が撃墜される。

そしてその白騎士を鹵獲しようと攻撃を仕掛けた各国の軍事兵器、戦闘機207機、巡洋艦7隻、空母5隻を撃破、あるいは無力化

 

それらの戦闘行動をある程度終えた白騎士は夕暮れの空に忽然と姿を消した

 

また、この事件における死傷者の数は0人であり、相手を生かしたまま無力化するほどの余裕があるということに他なく、その絶望的な戦力差に各国は恐怖した

 

これが白騎士事件の全容である

 

白騎士事件の翌日、篠ノ之束は世界に向けてISを改めて発表

 

そして彼女は自分は告げる。自分はISを量産できる、だが凡人たるそのへんの研究者には何年かかろうが作り出すことはできないだろう。そしてISを倒せるのはISだけである。という篠ノ之束の言葉とその事実を世界は無抵抗に受け入れた

 

そして篠ノ之束によって467個のISのコアが各国に分配され、各国はこぞってISの研究を始めた

 

しかし早々にISには致命的な欠陥があることが判明した

 

”女性にしか操縦することができないのだ”

 

その事実こそが今現在にまで続く女尊男卑の原因である

 

ISのコアはブラックボックスになっており量産することはできない

 

しかし世界最強の兵器を動かすことができるのは女性であり、故に女性の方が強いという考えが世

間、軍、それどころか国家にさえ蔓延しつつある

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「ってな資料を見つけたので改めて読み直してみたんですが、生きづらい世の中ですね…まったく」

「今更そんな胸糞悪いこと蒸し返さないでくださいよ、”キンブリー少佐”」

 

 

白騎士事件から約十年ほど経過した現在私はドイツ陸軍で少佐の位に就いていた

あの密約から、私はウィリアムの紹介で士官学校に入った

幸いにも国家錬金術師として頭のできの良さは、この世界においても凡人をはるかに超えていた

身体能力に関しても以前のような出所直後のような状態でもなかったため、上の中程度

そして士官学校を主席で卒業後、ドイツ陸軍に入り、女尊男卑の思想が蔓延る前にあらゆる手を使って地位を昇格を重ね、現在の位についている

女尊男卑の思想が軍内部にまで汚染が始まっている今、以前のような怒涛の昇格は期待できないだろう

 

 

「それで、なんでまたそんな気分の悪い昔のことを?今はどちらかというと世界初の男でISを起動させたやつのほうが話題性はあるんじゃないですか?」

 

 

彼はダリオ・エンピオ中尉、私がこの位に就いて以降部下として働いてくれている男だ。

権力志向の男で自分の昇格の妨げになっている女尊男卑の体制を嫌悪している

 

 

「えぇ確かに個人的な興味としてもそちらのほうが勝っています…第一回モンド・グロッソ優勝者、織斑千冬の弟、織斑一夏が男でありながらISを起動…」

 

 

数日前これは全世界で大きく取り上げられた。世界初の男性適合者、織斑一夏

男性がISを動かしたという事実に世の多くの男性はその希望に舞い上がった。しかしその希望はあっさりと打ち砕かれた。彼のみがISを動かせるだけであって何故動かせるのか原因も不明、各国で大規模な調査が行われているものの、いまだに新たな適合者は現れていない

 

 

「まぁその事件とは何ら関係ありません。今日の午後からISパイロットの護送任務があるので、デスク整理を兼ねてISの資料を改めて目を通していただけですよ」

「ISパイロットの護送?正直クソどうでもいいんですが、どういった内容で?」

「相変わらずですね、まぁいいです。内容はIS配備特殊部隊シュヴァルツェ・ハーゼ、通称黒ウサギ隊、隊員の一人を山中にある研究施設へ護送、その後ISの装着、起動テストなどの間、施設の警備といった感じですね」

「黒ウサギ隊?それって確か眼帯した小娘たちでしたっけ?そもそもIS持ってるんならそいつらに護送させればいいものを…」

「えぇ、全くそのとおりではありますが、これも仕事です。やらないわけには行きません」

「了解です。しっかし小娘の護送とは…」

「はいはい分かりましたから、昼食後出発します。ちょっとした山ということんだので、一応山岳装備と皆さんにも連絡お願いできますか?」

「分かりました皆にそう伝えておきます。それでは後ほど」

 

「おっとすいません、もう一つありました。明日我々の隊も件のISの起動調査がありますので、その件も彼らに伝えていただけますか?」

「お、我々もついに受けるんですね。まぁでもあんまり期待してませんけどね…それじゃあ伝えときます」

 

 

ダリオ・エンピオは気だるそうに頭をかきながらオフィスを出て行く

 

 

(…シュヴァルツェ・ハーゼ…ナノマシンを肉眼へ移植するによって脳への伝達速度の向上…しかし、実践段階での失敗…可動実験もろくにせず実践に移すとは、人体実験もいいところ…やはりどこの世界もやることは一緒のようですね…)

 

 

私は資料を閉じ椅子に深く腰掛ける

そして”円形の刺青”が入った手を眺め呟く

 

 

「こんな任務ばかりでは、こいつの出番もそうそうないかもしれませんね…」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

十名弱の隊員を連れ、シュバルツェア・ハーゼの基地前まで到着する

ゲート付近でジープを降車すると、ほぼ同時に基地内から眼帯をした長身の女性がこちらへ歩いてくる。

 

 

「初めまして、クラリッサ・ハルフォーフ大尉ですね?」

 

 

彼女は敬礼を取りながら、こちらの目を見据え

 

 

「ハッ!お初にお目にかかりますシュヴァルツェア・ハーゼ副隊長、クラリッサ・ハルフォーフであります。そちらはゾルフ・J・キンブリー少佐でお間違いないでしょうか?」

「えぇ、ゾルフ・J・キンブリーです。本日はよろしくお願いします」

 

 

握手を求めそっと手を差し出す、彼女は手を握り返そうとしたが手を直前で止める

 

 

「?…あぁこれは失礼、さすがにこの刺青は不気味でしたね、無神経ですみませんでした」

「い、いえ、そういうわけでは…こちらこそよろしくお願いします」

 

 

改めて彼女と私は握手を交わす

 

 

「今日は私一人のためにお手数をおかけして申し訳ありません」

「いえ、今をときめくISパイロットの護送です、我々も光栄ですよ。それではそろそろ向かいましょうか」

「了解しました」

 

 

彼女がジープに乗り込んだことを確認し、無線で指示を出しながら乗り込む

 

 

「それでは出発します。各員、指示通りの配置で移動を開始ししてください。皆さんお仕事ですよー」

「「「了解!」」」

 

 

数台のジープのエンジンがかかり、目的地に向けて進み始める

ジープに揺られ始めて数分後

 

 

「あの~キンブリー少佐…」

「ん?なんでしょうか?あと上下関係とかあまり気にしなくていいですよ?実際私のほうが年下なわけですし」

「いえ、そういうわけにはいきません。私も軍人ですので…あと突然変なこと聞いてしまうんですが、キンブリー少佐は漫画やアニメなどに興味があられますか?」

「?、特に興味を持ったことはありませんが…しかしどうしてそんなことを?」

「えっと、その~…失礼にあたるかもしれませんが、先ほど少佐の手のひらにあった刺青がその…私の好きなアニメや漫画で登場するものによく似ていたので…」

「フフ、別に構いませんよ。この刺青は…まぁなんと言いますか、あなた方でいう眼帯のようなものですね…誇りとまでは言いませんが、私を象徴する一つのようなものです。」

「も、申し訳ありません!そのような大切なものとは露知らず…」

「いえ、だから別に構いませんよ、別に貶されたりされたわけじゃありませんから。むしろ話を振って頂いてありがたいぐらいですよ。私の友人にもジャパニメーションが好きな人がいるんですが、そんなに面白いものなんですか?もし面白いものがあるなら教えていただきたいものです」

「えぇ、それはもう!面白くて仕方がありません!私の人生においてあれ無しには語れないほどに素晴らしいものばかりです!」

「な、なるほど…それはすごいですね…」

「えぇと、まず私のおすすめから行きますと~…」

 

先ほどとは目の色が変わり、マシンガントークを始める彼女…この目はウィンリィ・ロックベルがブリッグズの機械鎧(オートメイル)工房でしていたマニアの目だ…完全に振る話題を間違えたと悟った私だったが、エンピオ中尉は別車両、部下の隊員も完全に目を合わせようとしない…私を助けるものは誰もいなく、やむなく彼女の話に付き合い、その熱弁は目的地到着まで続いた…

 

 

 




ダリオ・エンピオ、ACFAで登場するドイツ系企業ローゼンタールの専属リンクスです。
名前とキャラだけなので、ACは関係ありません。

クラリッさん出ましたね。ISの中でもかなり好きなキャラです。
こんなんクラリッサちゃうやん!という方もいらっしゃるかもしれませんが、勘弁してくだしあ

ハガレン、IS双方の知識で間違っている部分も多々あるかもしれません。そのときは私が致命傷を追わない程度に指摘していただけると幸いです。
あと、投稿って何時頃にするのが一番いいんでしょうか?



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悦楽

思いの他多くの人に見てもらえてるようで嬉しい限りです。
キンブリーさん好きな人多くてよかった₍₍ ◝(・ω・)◟ ⁾⁾





「―――だったというわけで、それがすっごく臭いんですよ!」

 

 

ヴゥゥゥゥゥォォン…キキッ

「キンブリー少佐、ハルフォーフ大尉、施設に到着しました。」

「え、えぇ分かりました。それではハルフォーフ大尉、向かうとしましょうか…」

「もう到着してしまったんですか…話し足りない感はありますが、仕方ありませんね…私の話は参考になりましたでしょうか?」

(((二時間近くもぶっ通しで喋っててまだ喋り足りないだと!?)))

 

 

隊員は微妙にやつれた顔で苦笑いを浮かべながら降車し始める。かくいう私も久方ぶりに疲労を感じていた。

 

 

「えぇ十分に参考になりました。時間ができたら私も何か楽しんでみようかと…」

「よければ私が何かお貸ししましょうか!?いえ、是非そうさせてください!」

「では時間のあるときにお願いしますので、今はさっさと施設に入ってください」

「ハッ!了解しました!」

 

 

敬礼を終え、ハルフォーフ大尉は小走りに移動し職員らしき人間の指示を受けて施設内へ入っていった

ISの研究施設というにはあまりに普通すぎる建物だ…おそらくカモフラージュの意味もかねてのことなのだろう…今回の護送にISを使用しなかったのがその例のようだ

 

 

「…キンブリー少佐、何かありましたか?あなたがそんな顔をしているなんて珍しいですね」

 

 

降車してきたエンピオ中尉がこちらへ歩いてくる。その顔はどこかにやけている

 

 

「エンピオ中尉…いえ、彼女のことで少し疲れただけですよ」

「ハルフォーフ大尉ですか…やっぱり疲れるってことは女尊男卑思考に凝り固まった腐れアマだったってことですか?」

「いえ、そういった意味では全く逆でこちらに敬意を払う大変素晴らしい方でしたが…まぁなんと言いますか、趣味を極めた人間は周りが見えなくなるようです…」

「なにがあったかよくわかりませんが、あなたを疲れさせるなんて只者ではありませんね…」

「まぁ一つのことにあそこまで熱意を込めれる人はなかなか私の好みですよ」

「おや?あなたにしては珍しく色話ですか?」

「そういう意味ではありませんよ、それはさておき…さ、みなさん施設内外の警備位置についてください」

「「「了解!」」」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

施設内にはたくさんの計測器のようなものに接続されたISを纏ったクラリッサの姿があった

ISの研究スタッフであろう白衣を着た職員数人が計測器をせわしなく操作している

そこへスピーカーから事務的な内容を伝える声が響く

 

 

『シュヴァルツェア・ツヴァイク、アクティブ・イナーシャル・キャンセラー(以後AIC)機動テストを開始します。搭乗者クラリッサ・ハルフォーフ大尉、機体に異常は感じられませんね?』

「ハイパーセンサー、ネットワーク良好、PICが起動していないようですが仕様ですか?」

『PICはAICの処理向上のため、処理機能を全てAICに使用しているため、今回は使用制限をかけています。また、負荷軽減のためバススロット内の武装は実装されていません。今回の測定はあくまでAICの実装テストであるため、測定の妨げになるシステムは一時的に排除しています。PIC以外に機体不調はありませんか?』

「問題ありません」

『前方を通過する金属球をAICを使用して一定時間停止させてください。発射にはレールガンを使用します。チャージが完了し次第発射されます』

「了解しました」

『それではテストを開始します』

 

 

施設内が微かに振動し、小さな砲のような物がせり上がってくる

あれがレールガンだろうか…

やはり何度見てもこの世界の技術は目を見張るものがある…レールガンといえば弾丸を音速の三倍で飛ばす兵器だったはず…それがあの大きさでまとまっているとは…

 

 

「AICに興味がおありで?」

「む?」

 

 

白衣を着た開発スタッフと思われる男がニヤニヤと気味の悪い不健康そうな笑みを浮かべながら話しかけてくる

 

 

「あぁ…いえ、ISそのものがあまりお目にかかることがないもので…こうして間近で見るのは初めて何ですよ。ところで先程から話に上がっているAICというのは?」

「なるほど、そういうことでしたか。ではわかりやすく解説致しましょう!AICとはISの基本システムPIC、つまりは浮遊、加減速を司る部分をさらに発展改良させたシステムのことです!まぁすぐに実験が始まるので実際に見ていただいた方がいいかもしれませんねぇ…我々自慢の第三世代兵器ですので、是非とも見ていってください」

「ふむ…」

 

 

私は再び大尉達の方へ意識を向ける…レールガンのチャージが完了したのか、金属が高速で擦れあうような不快な音があたりに撒き散らしている

そして次の瞬間 バシュッ…という発射音が辺りに響く

しかし着弾音が聞こえることはなかった

 

 

『AIC起動確認、効果持続中…現状態をしばらく維持していてください』

「了解しました」

 

 

発射された弾丸はどこへ行ったのかと目を細めたが、弾丸は直ぐに見つかった

発射されたはずの弾丸は壁に埋まるでもなく、大尉の数メートル前で空中停止していた

 

 

「驚きましたか?さきほど言っていたPICの性質を利用し、任意の対象を空中停止させられるといった代物です!」

「なるほど、これはすごい…持続時間やエネルギーの問題はないのですか?」

「えぇ、特に燃費が悪いわけでもありません。ただ一つ欠点を挙げるとするなら、操縦者の意識を常に対象へ向けている必要があるということですかね~」

「なるほど…ISにあまり詳しくない私でも、これほどの物が存在するのなら知っていてもおかしくないと思うのですが…」

「いえ、まだトライアル段階ですので、ここにあるシュヴァルツェア・ツヴァイクとシュヴァルツェア・レーゲンという機体にしか搭載されていないので、軍内部でもあまり公にはなっていません。今日見れたのはなかなか運がいいですよ、少佐殿」

「えぇ、確かに面白いものが見れました」

 

 

確かにこの技術はすごい…言ってしまえば対象を遠隔で自在に操れるということになってしまう…そうなれば1対1の戦闘においては先手を取れば勝利が確定されてしまう程の驚異だ…

依然として浮遊し続ける弾丸に視線を注いでいた私だったが、突然インカムに通信が入る

施設外の隊員からのようだ

 

 

「っと、失礼」

『(ザザッ…ザ…)少佐、不審車両の接近を確認しました。地元の人間かとも考えましたが、このあたりの山に民家はありません。どう対応しますか?』

「ふむ、警戒しておくに越したことはありません。こちらへ向かってくるようなら停止を促し、数人で不審物のチェックといったところでしょう」

『了解しました』

 

 

インカムの通信が切れる

しかし、このインカムという物にしたって本来私からすればありえない技術のはずなのですが…やはり人間なれるものですね…

 

 

「おや、なにかありましたかな?」

「いえ、不審車両が見受けられたようなので、それの対応についてです」

「あぁ、なるほど…まぁ確かに警戒しておくに越したことはありませんね、最新の第三世代兵器ですからね。でもまぁここを襲撃するような阿呆は――――――

 

 

 

 

ズドォオオオオオオオオオンッ!!!!

 

 

 

 

凄まじい爆音と共に天井に大穴が空き何かが瓦礫と共に施設内へ降ってきた

施設ないの人間は一瞬何が起こったのかわからなかったらしく施設内が一瞬静まり返る

 

 

 

ドォンッ…ドガガガガガガガガガッ!!

 

 

重い銃声とともに施設内に絶叫が響き渡る

 

 

それと同時に再びインカムに通信が入る

 

 

『(ザザッ…ザッ…)少佐! ISだ!! 不審車両の中はISだ!! こっちの隊員はほとんど死んだ!!こちらは数人の歩兵と戦闘中!!』

 

 

銃声とともに切迫したエンピオ中尉の声がインカム越しに聞こえる

 

 

「…えぇ、天井をど派手に壊してこっちに入ってきました…ダリオ・エンピオ中尉、生存してる隊員と共に歩兵の撃破をお願いします。こちらはなんとかしましょう。」

『なんとかってどうするつ(ブツッ)』

 

 

インカムの通信を切り、改めて周囲の様子を確認する

砂煙の中、研究スタッフと思われる人々の絶叫がこだまする

 

 

「な、なにがあったんですか!?天井が…この銃声は少なくとも対人兵器では…」

「どうやら所属不明のISが侵入したようです」

「ISだって!?いったいど――――――

 

 

 

 

ズダァンッ!!グチャっ…

 

 

 

先程まで私に状況説明を求めていた研究員の頭が弾け飛び、吹き出した血しぶきが服にかかる

 

 

上着の替えは持ってきていないんですがねぇ…

 

 

倒れ伏す研究員だった物を横目に、私は銃声が止んだことに気がつく

 

 

「そこの男、こちらへ来い!」

 

 

声の方に目をやると深緑のISを身にまとった女がハルフォーフ大尉の頭にライフルを押し付けている

 

 

あのISは…確かラファール・リヴァイヴ…ハルフォーフ大尉は…そういえばPICと武装が使えなかったんでしたっけ…しかもあの目は…なるほど、人の死を知らないようですね…

 

 

「しょ、少佐、私は…申し訳ありません…」

「おい、そこの男!聞こえないのか!」

「分かりました、だから発砲しないでください」

 

 

私は両手を挙げ、二人の方向へ歩みを進める

 

 

「待て、そこの無線機を拾え」

 

 

女が示した先には体に大きな穴がいくつも空いた研究員だったものが血だまり倒れており、その手には無線機が握られている…私は血に濡れた無線機を拾い上る

 

 

「その無線機をお前たちの本部へ合わせてこちらへ持って来い」

「分かりました、少々お待ちください」

 

 

 

私は無線機を”両手”で操作し、ハルフォーフ大尉の少し後ろから、相手に向かって無線機を投げ渡す

 

 

 

ISの左腕だけを解除した女は無線機を受け取る

 

 

「よし、貴様のISは当然貰い受けるが、キサマらにはまだ利用価値がある。運がよければ生きて帰れるかもな」

 

 

女は無線機を耳に当て、通信のスイッチを押す

 

 

私は無意識に口元を釣り上げ笑みを作っていた

 

 

 

 

 

スイッチが押し込まれた瞬間、紅蓮の爆発が女の腕を飲み込む

 

 

爆発によって女の左腕が吹き飛び辺りに血肉が飛び散る

 

爆風で女は頭から機材に衝突する

 

 

「ア、ァ…ガア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ!!!???」

「なっ!?」

「ふ…ふふはは…は、はははははははははははっ!! いい! 実にいい! 爆音とともに人体が破壊される音! その痛み!本能的恐怖が起こす絶叫!!これこそが私が求めていた物!! 」

「ぐぎ…き、きさまぁぁぁァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

 

相手は痛みのショックで気絶することもなく、残った手にライフルを展開しこちらへ向ける

しかし、そのライフルは放たれることなく突然地面から発生した爆発によって粉々になり、女は爆風で壁に叩きつけられる

 

 

「素晴らしい!! 腕を失っても尚立ち向かってくるその意思!! 実に素晴らしい!!」

「…グ、ガフッ…ガハッ…」

 

 

ISの保護機能によって吹き飛んだ腕以外の傷は受けていないものの、爆破の衝撃によって女は血を吐き出す

 

 

「残念、もう終わりですか…これで終わりです」

 

 

すっと手を合わせ、地面に手を合わせる

女が倒れている近くの壁、床、機材に錬成反応が起き、ぼこぼこと盛り上がっていく

 

 

 

 

「何か言い残すことはありますか?」

「…グ…糞が…」

 

 

 

 

次の瞬間視界は紅蓮に染まり、爆音が幾度となく響き渡る…あたりには瓦礫と熱風そして人肉が焼ける不快臭がが辺りに四散する

 

 

「くはは、ははははは!…いい!やはりこうでなくては!………さて…ハルフォーフ大尉、怪我はありませんか?」

「き、キンブリー少佐…あなたはいったい…何を…」

「おや?やっぱり気になりますか…まぁ教えてさしあげてもいいのですが、今は外に展開されている歩兵の排除が先です」

「大丈夫ですよ少佐、なんとか終わりました…ま、生き残ったのは私だけですが…って敵のISはどうしたんです?本当に何とかしてしまったとか?」

 

 

振り返るとそこには肩から血を流してはいるものの、五体満足のダリオ・エンピオが扉を開けて入ってきた

 

 

「お疲れ様です、エンピオ中尉。ISの方はなんとかなりましたよ?こちらも生き残ったのは私とハルフォーフ大尉だけですが」

「おいおい、本当にやっちまうとは…それで?どんな方法で倒したんです?」

「…はっ!?そうです少佐、さっきのあれはなんだったんですか!?」

 

 

目に生気が戻ったハルフォーフ大尉はISを解除して私に問いかけてくる

 

 

「まぁ詳しい話はまた今度というわけで…」

「撃退した方法についてはどう報告するつもりなんですか…ですが命を救っていただいたことに変わりはありません。感謝しますキンブリー少佐!」

「まぁ私は正当防衛を行使しただけなんですけどね…それにしても少しやりすぎましたね…操縦者は別として、ISは無事でしょうか?」

「あぁ、それなら問題ないと思いますよ?ISのコアはおそらく先程のようなレールガンが直撃したとしても壊れるようなことはありません…」

「なるほど…おや、確かにISは無事なようですね」

 

 

ほとんど原型をとどめていない人間の消し炭と、その近くには所々に傷が入った空っぽのISが倒れている

私の爆破を受けて全損どころかかすり傷で済むとは…まったく、恐ろしい技術です…

試しに構成材質を確かめてみようとISの装甲に触れてみる…

ISの装甲が淡い光を放ち、一瞬消えたように見える…

 

 

光が止むと、目の前には鎧のように鎮座するラファール・リヴァイヴの姿があった

 

 

「おや、何か触ってしまったかもしれませんね…ハルフォーフ大尉、これは一体どういった現象なんですか?」

「もしかして何か壊しちまったんじゃないですか?」

 

 

振り返るとヘラヘラと笑うエンピオ中尉となぜか大口を開けて驚愕しているハルフォーフ大尉の姿が

 

 

「もしかして本当に壊してしまったのでしょうか?」

「…な…な…」

「…な?」

 

 

「なんでISを起動できたんですかーーーーーっ!?」

 

 

「「…は?」」

 

 

 

 

 

その日ISを起動できる二人目の男性が発見された…

 

 

というか私だった

 

 




というわけでテンプレですね…ごめんなさい
今回はなかなかキンブリーさんが楽しそうにできたので良かったです
ISの操縦者が初めの爆発であそこまでダメージを受けたのはシールド内で爆発したから的な感じです
色々とわかりにくいところがあるかもしれませんが、今後共よろしくお願いします。
ご指摘、ご感想お待ちしております…評価してくれてもいいのよ[壁]д・)チラ




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死屍

今回は前回の「いい音」のクラリッさん視点です
台詞など同じところが多いので、手抜きと言われたら言い返すことができません\(^ω^)/




「「「いってらっしゃいませ!!お姉さま!!」」」

「あぁ、行ってくる」

 

 

私は本日行われるISの機体テストに向かうため、シュヴァルツェ・ハーゼ基地を出るころだった

たくさんの部下が整列して私に敬礼している

部下に慕われるのはやはり嬉しいものがあるが、あのお姉さまというのは実際に呼ばれるとなるほどむず痒いものがある

 

ボーデヴィッヒ隊長は別件で見送りできないとのことだったが、今日の機体テストの件は彼女も喜んでくれた

今日でやっと私のシュヴァルツェア・ツヴァイクに第三世代兵器が搭載される…

AIC…隊長、ラウラ・ボーデヴィッヒ少佐のシュヴァルツェア・レーゲンにも搭載されている機能…

これで名実ともにボーデヴィッヒ隊長の機体の姉妹機としてあの機体が完成する…とても喜ばしいことだ

私は少し浮かれながらも基地を出ると、私を護送する予定の車両が到着していた

すぐにそこに向かうと、ひとりの男性が私に対応してくれる

 

 

「初めまして、クラリッサ・ハルフォーフ大尉ですね?」

「ハッ!お初にお目にかかりますシュヴァルツェア・ハーゼ副隊長、クラリッサ・ハルフォーフであります。そちらはゾルフ・J・キンブリー少佐でお間違いないでしょうか?」

「えぇ、ゾルフ・J・キンブリーです。本日はよろしくお願いします」

 

 

連絡にあったゾルフ・J・キンブリー少佐、男性であるにも関わらず、この若さで少佐である…まぁ年齢のことにおいてはうちの隊長も人のことを言えないが…整った顔立ち、高い身長、年齢の割に落ち着き払った年上を思わせるかのような紳士的な雰囲気…女尊男卑の価値観が一般的になりつつある今、軍内部では女性の軍人というだけで嫌な顔をされることが多いが、彼はそんな雰囲気はなく、どれをとっても印象はよかった。この若さで少佐の位についている違和感がないのも頷ける

 

 

彼が握手を求め手を差し出す、私も握り返そうと手を差し出そうとするが彼の手のひらに目が行く…魔法陣のような物が描かれているように見える

 

 

 

………まさかこの人は………

 

 

 

…私の同族なのでは!?だが刺青を入れるとなると相当なレベルの厨二病…もしくは何かの作品の強烈なファンか…少なくともお洒落で手のひらには入れないだろう…

 

 

「ん?…あぁこれは失礼、さすがにこの刺青は不気味でしたね、無神経ですみません」

 

 

とかなんとか考え込んでいた私を見て彼に勘違いをさせてしまった…だが本当のことを言うのは階級的にもなんというか…

 

 

「い、いえ、そんなことは…こちらこそよろしくお願いします」

 

 

改めて手を差し出し握手を交わす

 

 

「今日は私一人のためにお手数をおかけして申し訳ありません」

「いえ、今をときめくISパイロットの護送です、我々も光栄ですよ。それではそろそろ向かいましょうか」

「了解しました」

 

 

私がジープに乗り込むと彼は無線で何やら指示を飛ばしたあとに乗り込む

 

 

「それでは出発します。各員、指示通りの配置で移動を開始ししてください。皆さんお仕事ですよー」

「「「了解!」」」

 

 

数台のジープのエンジンがかかり、目的地に向けて進み始める

遠ざかっていく基地で訓練をしている隊員が数名見えた、彼女たちはこちらに気づくと再び敬礼で私を見送ってくれた

 

 

 

 

 

ジープに揺られ始めて数分…

沈黙が痛い…

男性の軍人は皆こういうものなのだろうか?…それにしたって空気が重い…何か話題を…!

 

 

「あの~キンブリー少佐…」

「ん?なんでしょうか?あと上下関係とかあまり気にしなくていいですよ?実際私のほうが年下なわけですし」

 

 

せっかく勇気をもって話を作ろうとしているのだから、勇気ついでに気になっていたことについても聞いておくことにした

 

 

「いえ、そういうわけにはいきません。私も軍人ですので…あと突然変なこと聞いてしまうんですが、キンブリー少佐は漫画やアニメに興味あられますか?」

「?、特に興味を持ったことはありませんが…でもどうしてそんなことを?」

 

 

oh…やってしまった…

聞いた訳を正直に話してみると、刺青のことを少し話してくれた

我々にとっての眼帯のようなもの…即ち誇りに相違ないものを私は失礼なことに内心厨二病だのなんだの言っていた自分が恥ずかしくなる…

しかし、話を聞くとアニメや漫画に興味がないわけではなく、オススメがないかとのことなので、語らせてもらうことにした

ふふふ腐腐腐hhh…久々の布教…魂を掛ける趣味こそ…美しさがある…なんとやりがいのある…私の布教…!!

キンブリー少佐の顔が若干引きつっていたがきっと気のせいだろう…

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

ヴゥゥゥゥゥォォン…キキッ

「キンブリー少佐、ハルフォーフ大尉、施設に到着しました。」

「え、えぇ分かりました。それではハルフォーフ大尉、向かうとしましょうか…」

「もう到着してしまったんですか…話し足りない感はありますが、仕方ありませんね…私の話は参考になりましたでしょうか?」

おっと、私としたことが、到着したことに気づかないほど話し込んでしまうとは…

ですがやはり話し足りないような気が…少佐を含め隊員の方たちはなぜか少しやつれているように見えるが、それも気のせいだろう…

 

 

「えぇ十分に参考になりました。時間ができたら私も何か楽しんでみようかと…」

「よければ私が何かお貸ししましょうか!?いえ、是非そうさせてください!」

「では時間のあるときにお願いしますので、今はさっさと施設に入ってください」

「ハッ!了解しました!」

 

 

私は敬礼を終えると、施設ゲートにいた職員のところへと向かった

 

 

「クラリッサ・ハルフォーフ大尉ですね?施設に入り準備が完了し次第可動テストを開始します」

「了解しました!」

 

 

さっそく施設内に入り、ISスーツに着替える

テスト場へ入ると…そこには武装は解除されているもののAICが搭載されたシュヴァルツェア・ツヴァイクが鎮座している

改めて見ると胸が高鳴る

私がシュヴァルツェア・ツヴァイクに見惚れていると

 

 

「ハルフォーフ大尉、搭乗準備が完了しているのならISを装着してください」

「りょ、了解しました!」

 

 

ISに背中を預ける…ハイパーセンサーが起動し、全方位視覚接続により360度見回す。視覚がより鋭敏になり、周囲の研究員たちの生体反応が目視した順に読み込まれていく…少し離れた位置にキンブリー少佐おり、こちらを観察しているようだ…改めて思うと知り合った男性にこの姿を見られるのは恥ずかしい物がある…

 

 

「起動確認…計測機器の接続を開始します…アンロックユニットを下ろしてください」

 

 

私は指示に従い、非武装のアンロックユニットを地面に下ろす

すると研究員の手によって多くのケーブルのようなものがISに接続されていく

 

 

『シュヴァルツェア・ツヴァイク、アクティブ・イナーシャル・キャンセラー(以後AIC)機動テストを開始します。搭乗者クラリッサ・ハルフォーフ大尉、機体に異常は感じられませんね?』

「ハイパーセンサー、ネットワーク良好、PICが起動していないようですが仕様ですか?」

『PICはAICの処理向上のため、処理機能を全てAICに使用しているため、今回は使用制限をかけています。また、負荷軽減のためバススロット内の武装は実装されていません。今回の測定はあくまでAICの実装テストであるため、測定の妨げになるシステムは一時的に排除しています。PIC以外に期待不調はありませんか?』

「問題ありません」

 

 

完全な状態でないことを改めて伝えられて、内心落胆する私だったが、そんなことで落ち込んでいる暇はなかった。このテストが無事に終わればいずれにせよすぐにロールアウトされるのだから。

 

 

『前方を通過する金属球をAICを使用して一定時間停止させてください。発射にはレールガンを使用します。チャージが完了し次第発射されます』

「了解しました」

『それではテストを開始します』

 

 

施設全体がかすかに振動し、近くの床が開き、小型のレールガンがせり上がってくる

充電率が上昇していき、タービンが高速で回転するような不快な金属音が部屋を満たしていく

 

 

『発射3秒前、3…2…1』

 

 

次の瞬間 レールガンが発射される…本来音速の三倍で発射される弾丸だが、ハイパーセンサーの補助により、今の私には捉えることができた

そして意識を集中させAICを起動させる…

 

 

『AIC起動確認、効果持続中…現状態をしばらく維持していてください』

「了解しました」

 

 

AICの軌道に成功し、レールガンの弾丸は私の眼前で浮遊している

成功した喜びを噛み締めると同時に、処理の難しさに舌を巻く

周囲では計測器に映し出される目まぐるしく映し出される数字の羅列を処理している

私は再びAICに全神経を注ぎ計測が終了するのを待った

 

 

『計測終了…AICの使用を停止してください』

「了解」

 

 

AICの使用を停止し、弾丸が地面に接触した瞬間――――――

 

 

 

 

 

 

 

ズドォオオオオオオオオオンッ!!!!

 

 

 

 

 

何が起こったのか理解できなかった

 

 

突如天井が崩壊した…

天井の瓦礫が降り注ぐ…私の真上からも降ってくるがシールドエネルギーに阻まれ私自身に接触することはなかった…が…

 

 

私のすぐ横で赤い何かが弾けたのを捉えた

 

 

私の横には数秒前まで人間だったであろう肉塊が転がっていた…ちぎれとんだ皮膚がISの装甲に付着する

 

 

食道を胃酸が逆流しそうになるのがわかるが、吐く寸前でなんとか押しとどまった

 

 

何故こんなことに、何が原因で………そう考えようと何とか平静を取り戻そうとした瞬間、瓦礫によって生まれた粉塵の中から突如銃弾が飛んでくる

 

PICが切られている私に避ける術はなく、その弾丸によってAICが一瞬で破壊された

 

 

「なんだ、反撃してこないのか?」

 

 

声の方に意識を戻す…そこには粉塵の中からISの反応がある

そして無数銃弾が私のISに飛来し、あっという間にシールドエネルギーを0にした

銃の風圧と共に粉塵が晴れていき、そこにはラファール・リヴァイヴの姿があった

 

 

「あ、ISが何故…」

 

 

私の声はいまだに続く銃声によってかき消された…

呆然とその姿を眺めていた私だったが、画面に次々と表示されていく羅列によって周りへと意識が向いた

あたりを見回すと、先程まで計測器を触っていた研究員たちは人の姿を留めていなかった…それどころか施設内には私を含めた生体反応が三つしか存在しなかった

 

 

 

 

ズダァンッ!!

 

 

 

 

最後の銃声に私の意識はふと戻った

 

 

「そこの男、こちらへ来い!」

 

 

その声と同時に私はライフルを頭につきつけられる

エネルギーの枯渇したISを身にまとっている私はどうすることもできず、ただ無様にうなだれるだけだった

 

 

私は…私にはISという力を預けられているにも関わらず、どうすることもできなかった…

 

武装が取り外されているとはいえ、AICで相手の動きを止め、職員を逃がすことぐらいは出来たかもしれない…

 

なんの抵抗をすることもできず、死体を見ただけで平常心を失いただされるがままに機能を停止させられた私は…

 

 

ふと後ろに意識を向けるとそこにはキンブリー少佐の姿があった

少佐はラファール・リヴァイヴを纏った女に指示され女に向かって何かを投げ、女がそれを受け取る

 

 

「よし…貴様のISは当然貰い受けるが、キサマらにはまだ利用価値がある。運がよければ生きて帰れるかもな」

 

 

どうやら無線機のようだ…私のISは奪われてしまうのか…当然か、彼女はそれが目的でこのような惨事を引き起こしたのだろうから…

 

 

 

 

 

だが次の瞬間凄まじい爆発音と女の悲鳴が響き渡る

 

 

「ア、ァ…ガア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ!!!???」

「…なっ!?」

「ふ…ふふはは…は、はははははははははははっ!! いい! 実にいい! 爆音とともに人体が破壊される音! その痛み!本能的恐怖が起こす絶叫!!これこそが私が求めていた物!! 」

「ぐぎ…き、きさまぁぁぁァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

 

何が起こっているのかわからなかった…

 

キンブリー少佐は高笑いしながら敵のISに近づいていく…

 

私は彼を引きとめようとする…しかし声が出なかった…

 

 

彼が両手を叩き地面に手を触れる…すると地面に電気のようなものが走り、ISの下の地面が盛り上がり凄まじい爆発を起こした

 

 

「素晴らしい!! 腕を失っても尚立ち向かってくるその意思!! 実に素晴らしい!!」

「…グ、ガフッ…ガハッ…」

 

 

吹き飛ばされたISになおも少佐は近づいていく

 

 

「残念、もう終わりですか…これで終わりです」

 

 

そう言い終えると彼は先ほどと同じ動作を行った…するとISの周囲にある床や機材が不自然に歪み、膨張していく

 

 

「何か言い残すことはありますか?」

「…グ…糞が…」

 

 

次の瞬間視界は紅蓮に染まり、爆音が幾度となく響き渡る…あたりには瓦礫と熱風そして人肉が焼ける不快臭がが辺りに四散する

 

再び吐き気がこみ上げてくる

 

 

「くはは、ははははは!…いい!やはりこうでなくては!………さて…ハルフォーフ大尉、怪我はありませんか?」

「き、キンブリー少佐…あなたはいったい…何を…」

 

 

キンブリー少佐…一瞬私は何かそこはかとない恐怖を彼に感じた

 

 

「おや?やっぱり気になりますか…まぁ教えてさしあげてもいいのですが、今は外に展開されている歩兵の排除が先です」

 

 

だが彼はニコニコと笑いながら私に話しかけてくる…先程の光景は一体なんだったのだろうか…

 

 

「大丈夫ですよ少佐、なんとか終わりました…ま、生き残ったのは私だけですが…って敵のISはどうしたんです?本当に何とかしてしまったとか?」

 

 

声の方に視線を移す、そこには肩から血を流す軍服の男がいた…少佐の部下だろうか?

 

 

「お疲れ様です、エンピオ中尉。ISの方はなんとかなりましたよ?こちらも生き残ったのは私とハルフォーフ大尉だけですが」

「おいおい、本当にやっちまうとは…それで?どんな方法で倒したんです?」

 

 

二人は先程までの惨状がなかったかのように普通に会話を続ける…私はそこでやっと我に帰った

 

 

「…はっ!?そうです少佐、さっきのあれはなんだったんですか!?」

「まぁ詳しい話はまた今度というわけで…」

「撃退した方法についてはどう報告するつもりなんですか…ですが命を救っていただいたことに変わりはありません。感謝しますキンブリー少佐!」

「まぁ私は正当防衛を行使しただけなんですけどね…それにしても少しやりすぎましたね…操縦者は別として、ISは無事でしょうか?」

「あぁ、それなら問題ないと思いますよ?ISのコアはおそらく先程のようなレールガンが直撃したとしても壊れるようなことはありません…」

「なるほど…おや、確かにISは無事なようですね」

 

 

倒れたISに少佐が近づく…当然だがパイロットは先程の爆発で消し炭になっている…

私は口を押さえて目を背ける

 

 

「ハルフォーフ大尉?大丈夫ですか?」

「え、えぇ…問題ありません」

「…」

 

 

私が再び少佐に視線を戻すと、そこには淡い光を放ち、ラファール。リヴァイヴを再起動する少佐の姿があった…

 

今度こそ意味がわからなかった

 

 

「おや、何か触ってしまったかもしれませんね…ハルフォーフ大尉、これは一体どういった現象なんですか?」

「もしかして何か壊しちまったんじゃないですか?」

 

 

二人はヘラヘラと会話を続ける…なんかもうムカついてくるレベルで意味がわからなかった

 

 

「もしかして本当に壊してしまったのでしょうか?」

「…な…な…」

「「…な?」」

「なんでISを起動できたんですかーーーーーっ!?」

 

 

「「…は?」」

 

 

 

 

その日私の目の前で二人目の男性操縦者が発見された…

 

というか少佐だった

 

 




クラリッサはこういうタイプのオタクではないかもしれませんが、オタクなんて大体布教大好きだからいいですよね!!(体験談)
多分次回の投稿は結構遅れてしまうと思います…
なるべく急ぎますので、見捨てないでね(´;ω;`)
ご指摘、ご感想お待ちしております…評価してくれてもいいのよ[壁]д・)チラ


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特別

「評価してくれてもいいのよ[壁]д・)チラ」とか言ってた昔の自分を殴ってやりたいです・:,(゚д゚○≒(`д´#)


評価の部分のコメントが50文字以上とかいう意味不明な文字数になっていたので、5文字に変更しました。



今までの話や今後の話において、他作品のキャラクターの名前が登場したりすることがあるかもしれませんが、名前や容姿だけで、原作には一切関係ないので、ご存知ない方もお気になさらず(^ω^)


お手数ではありますが、あとがきの方を最後に読んでいただけるとありがたいです。







 

膨大な量のケーブルで埋め尽くされた気味の悪い部屋で、空間ディスプレイを操作するウサ耳のような機械を頭につけた少女

 

 

彼女の目の前に何処かで撮影されたであろう映像が映し出された

 

 

「うん?なんだろう、これ?…なんで私が作ったISが生身の人間に追い詰められちゃってるんだろう?」

 

 

映像にはISを見下ろし笑う男が一人

彼は何か武器を持つこともなくゆっくりとISに近づいて行く…そして…

 

 

「うわっ!…爆発?…ほんとにやられちゃった!!すごいすごい!!どうやったのかわかんないけど、私のISを倒しちゃった!!バチバチってなったやつどうなってるんだろう!!」

 

 

そんな風に画面を見て楽しげに少女は驚いている…そして映像は途切れる…

 

 

「ほへ~、まさか生身の人間がISを壊しちゃうとわね~…ちょっとムカつくけど、どうやって壊したんだろう?」

 

 

少女が頭をひねっていると、再び映像が復活する

 

 

「あれ?なんでまたセンサーが………ってええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?なんで”いっくん”以外の男がIS動かせるのーーーーーーーーーーー!?」

 

 

 

その日海上をステルス移動する移動研究所からウサギの叫び声が響いた

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

コンッ コンッ

 

 

「失礼します」

 

 

私は件のISの襲撃事件について軍のに召喚を受け、執務室へ来ていた

 

 

「キンブリー少佐、よく来てくれたね…とりあえずそこへかけてくれ」

 

 

彼はペンウッド大将、事実上軍のトップにあたる人物だ

私は彼の指した応接セットのソファに腰掛ける

 

 

「まずは我が国のISの強奪を防いでくれたことに大いに感謝するよ」

 

 

彼は軽くため息を吐きながら正面のソファに深く腰掛けた

 

 

「いえ、私も命がかかっていたので、身を守るための防衛行動ですよ」

「それでもだ…しかし、一応報告には受けているが、生身でどうやってISを撃破したんだい?」

「私は大したことをしていませんよ…ハルフォーフ大尉がAICでISの動きを止めている間に、基地内にあったC4を使用して爆破しただけです」

「なるほど…だが それだけでISを身にまとった人間があそこまで原型を無くすものだろうか?…」

「炸薬を調節する暇などなかったもので…」

「それもそうか…それと、今回の襲撃者は小規模なテログループのようだ、回収したISコアを解析した結果、中国で登録されていたもののようだが、そのテログループに強奪されていたようだね」

「なるほど…それで?そのコアはどうするんですか?」

「まぁ我が国のものとして使用することもできないし、返還されることになるだろうね…このことについて公表すれば中国にとっては大スキャンダルになる…大きな貸しになるはずだよ…」

「まぁそれが妥当なとこでしょうね」

「そうそう、今回の件でキミは昇格して大佐になるわけだが…」

「当然それだけが理由の昇格というわけではないんでしょう?」

 

 

彼は表情を落とし、話し始める

 

 

「あぁ、その通りだ…さっそく 本題に入ろう、ISを起動した君の処遇についてなんだが…君自身の希望というものはあるかな?」

「おや?私の意見が反映されるのですか?最悪モルモットも覚悟していたんですが…」

「君のことを少し調べさせてもらったよ…どうやら君は軽く小国の国家予算レベルの資産を持っているようだね…それもあらゆる銀行に巧妙に分散させて…」

「おやおや、バレるとは思っていなかったんですけどねぇ…それで?それと私の意見を聞き入れてくれることに何の関係が?」

「とぼけるね…上層部には君の息のかかったのが随分といるようじゃないか…つまりそういうわけだよ…君に都合のいいように持って行って甘い蜜を吸おうという輩が多いというわけさ」

 

 

私の軍での昇格を手助けしていた手段の一つが賄賂だった

ウィリアムを介して資産を増やし続けていた私にとっては賄賂に使用する額も大したコストではなかった

 

 

「本来そういうつもりでばらまいていたわけじゃないんですけどね…今回のように働いてくれたのはラッキーでしたね」

「私自身は君の意見を尊重するつもりだったからどっちでもいいんだけどね…それで?君はぶっちゃけどうしたいの?」

 

 

彼は今までの雰囲気を崩し、疲れたように背もたれに体重を掛ける

 

 

「私の身柄の安全を保証してもらいたっていうのはありますね…常に命を狙われるなんてさすがにごめん被ります。そうですね……軍で私が出ることのできる流血を伴うような事件、厄介ごとがあれば、私に紹介してくれる…ってのはどうでしょうか?」

「…?君は自分の命が大事なのに戦場を求めるのかい?」

「仕事とプライベートは違うということですよ…仕事というのは美しくなくてはなりません。私は魂をかける仕事こそ美しさがあると考えています…死と隣り合わせの戦場…あのISを爆破した時…どれだけ血湧き肉躍ったことかっ!!……失礼」

 

 

思わず立ち上がってしまった…そんな私を見て彼は少し驚いているようだ…

 

 

「君は…………わかった、その通りに通そう…軍には君のような人間が希にいる…そのような者は止めたって碌なことがないからね」

「感謝しますよ、ペンウッド大将」

「あぁそうだ、用事はもう一つあったんだ…君には専用機が与えられることになっている…このカタログから選んでくれ」

 

 

と言うと彼はISの情報が記載された資料の束を私に手渡した

 

 

「ほぅ…てっきり軍が開発した物になると思っていたのですが、企業開発のISですか」

「データ収集という名目ではあるが、男性操縦者である君が使用すれば広告塔になることは間違いないからね、可動データさえ取れれば軍や国としては十分みたいだね……それならいっそ国内企業が潤うほうがマシとのことだ…それに第三世代のISを開発できていないフランスのデュノア社が落ち目だ、これを期にデュノア社を追い抜くつもりなんじゃないかな?」

 

 

パラパラとページをめくりながら流し読みしていく

 

 

「なるほど…IS企業、パーツシェア世界四位、ローゼンタール…コストが少し高いものの癖のない扱いやすいパーツを多く製造している…これなら確かに凡庸性に優れるデュノア社を追い抜きたいのはうなずけますね」

 

 

そして私はあるISの項目に目を奪われた

 

 

「………!!…これは♪」

「なにかお気に召す機体が見つかったのかな? 向こう側はいつでも歓迎みたいだよ?」

「えぇ、それならすぐにでも向かわせていただきます」

「わかった、では私の方から連絡しておこう…それと君の処遇については詳しくは後日通達するよ」

「分かりました、あなたとは今後共良い関係を築いていきたいものです…それでは失礼致します」

 

 

私は執務室を後にし、屋外へ出た…するとそこには車を待機させているエンピオ中尉の姿があった

 

 

「お、少佐、話はおわ…そういえばもう大佐でしたね、羨ましい限りです、まったく」

「私も望んで昇格したわけじゃありませんよ、エンピオ中尉は何故こんなところに?」

「私も中尉じゃなくて今回の件で大尉に昇格したんですよ……世紀の男性操縦者を一人で行かせるわけにはいかないとのことですよ」

「おや、手間をかけさせてすみませんね」

 

 

私は車に乗り込みふとあることが気になった

 

 

「大尉、肩を撃たれていたと思うのですが運転は可能なんですか?というか怪我はもういいんですか?」

「えぇ、出血はしていましたがただのかすり傷ですよ…それじゃあ出発しますね」

 

 

彼は肩を気にする様子もなく車を発進させ、本部を後にする

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

エンピオ大尉が運転する車は程なくしてローゼンタール社の研究施設に到着した

 

 

「つきましたよっと…IS企業に来るなんて…改めてあなたがISを起動させたと思うと…すごい人を上司に持ったもんだ」

「よかったじゃないですか、そんな貴重な上司を持てて」

「ウレシイナー…お、早速迎えが来たみたいですよ」

 

 

外に視線を向けるとスーツを着た男が小走りにこちらへ向かってくるのが見える

とりあえず降車して施設に近に向かって歩き始める

 

 

「いやーキンブリー大佐、我社を選んでいただいてありがとうございます!本日あなたを案内させて頂く、総務部、川尻浩作と申します。よろしくお願いいたします!」

 

 

彼は私に名刺を差し出してくる。

ピッチリとした真っ白なスーツにオールバックで固めた髪型…何故か見た目以上に親近感を感じる…

 

 

「…これはご丁寧にどうも、ドイツ陸軍大佐ゾルフ・J・キンブリーと申します。本日はよろしくお願いします」

「ありがとうございます。それでは早速向かわせていただきますが、お連れ様はいかがいたしますか?」

「あーそうですね、エンピオ大尉、あなたはどうしますか?」

「私がISなんて見ても虚しくなるだけなんで、ロビーで待たせてもらいますよ」

「分かりました、迎えのものを寄越しますので、車はてきとうに止めておいてください。それでは早速向かいましょうか!」

 

 

彼を先頭に私は施設の中へと歩を進めた

 

 

 

 

施設内の廊下をしばらく進むと、前面がガラス張りになっている大きな部屋に通される

 

 

「お待たせしました、あちらに見えます実験場にて期待の紹介をさせていただきます」

 

 

彼が無線で何やら指示を送ると場内にISスーツを着た女性が入り、こちらに会釈する

それと同時に場内の床の一部が左右にスライドし、白い何かがせり上がってくる

 

 

「紹介致します…こちらが我社が開発した発表前の第三世代機…『オーギル』となります」

 

 

 

 

 

そこには純白の”天使”が、いた…

騎士の甲冑を思わせるようかのような重厚さ、しかしそれでありながらスマートで洗練された美しさを保っている

そして最も目を引くのは背部に見える大型のユニットだ

まるで天使の羽を思わせるかのようなそれは、機体の美しさをより際立たせていた

 

 

 

 

「…おぉ…!」

「気に入って頂けましたでしょうか!?それではさっそくこの機体の実演説明をさせていただきます!今から紹介するきのは私もお気に入りでしてーーーーー」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

俺ことダリオ・エンピオはロビーで缶コーヒーを飲んでいた

キンブリー大佐の専用機の為ここまでの送迎してきたのだが、ソファーに座り改めて大佐について考えてみる

 

あの人はどうにも規格外だ…ISを動かせることはもちろんだが、あの年齢であの昇進…

 

そしてもっとも謎なのが数ヶ月前に執務室で小規模な爆発が起きるという事件が発生した…私が執務室近くを通りかかった時、それなりの爆音と共に扉が勢いよく開いたことがあった…

 

急いで部屋に入ると、デスクや資料だながめちゃくちゃになった部屋の中で冷や汗をかいて佇む大佐の姿があったので、何があったのか尋ねると

 

 

「なんでもありません…何でもありませんから…とりあえずここの部屋への立ち入りを一時的に禁止して頂けませんか?」

 

 

と、見るからにうろたえていた…

だが上司の命令なら仕方がないと、踵を返して部屋から出ようとしたとき、自分の近くを”ゴキブリ”が通った…

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、ゴキブリがいた地面が盛り上がり、軽い爆発を起こしゴキブリは跡形もなく消滅した…

 

 

 

 

 

理解が追いつかなかった私は見なかったことにして言われたとおりに部屋前の通行を禁止した…

 

 

後日大佐(当時少佐)は爆音について問いただされていたが、

 

 

「Made in Chinaの時計が爆発しただけですよ」

 

 

と言うと何故か納得したように引き下がっていった…

 

何を言っているのかわからねーと思うが 

おれも何で引き下がったのかわからなかった…

 

あの部屋であの規模の爆発が起きて時計が爆発って…それはまだいいとしよう…あの爆発が起きて大佐が無傷だということがおかしいのだ…

 

大佐は俺が想像もつかないような秘密を持っているはずだ…だが今更それを探る気にもならない…

 

大佐は時折恐ろしい目をすることがある…それは人の生き死にに関する時に見せるものだ…

 

その目は狂気に満ちているように感じる…それは何故か本能的に恐ろしいと感じるものだ…

 

だが大佐は面白い…おそらく大佐の下についていれば私の昇進の足がかりになることは間違いないだろう…

 

だから私は大佐がIS操縦者になる今後も彼の部下として働くつもりだ…

 

 

「男性で二人目のIS操縦者の部下…さすがにこれだけじゃインパクトも糞もねぇな…」

 

 

そう言いながら立ち上がると、飲み干した缶コーヒーをゴミ箱に投げる

 

だが缶がゴミ箱に入ることはなかった…

 

 

 

 

 

凄まじい爆音と地響きが起こり、ゴミ箱が倒れたのだった…

 

 

 

 

 

ガラスがビリビリという音を出しながら揺れはすぐに収まっていく

社内は軽くパニックに陥りそうになっていたが、そこで社内放送が鳴り響く

 

 

『あーあー…テステス…っていっても耳聞こえないからわからないか…たった今起きた爆発は研究施設のテストで発生したものであって、地震や攻撃によるものではないので安心してください…以上!』

 

 

研究施設…?

つまりは大佐の専用機による爆発…

 

 

「あの人が選んだ専用機っていったい…」

 

 

そんな嫌な想像をしていると物凄く上機嫌な様子で大佐と先程のスーツの男が帰ってきた

 

 

「キンブリー大佐…先程の爆発って…」

「えぇ、素晴らしいものでした!!あれに私が乗ることができるなんて、いい時代に生まれたものです!!」

「気に入っていただけたご様子で、我社も大変ありがたい限りです!」

 

 

二人は気持ち悪いほど高いテンションで話し合っている

 

 

「あー、はい、良かったですね…それじゃあその専用機はもう大佐が持ってるんですか?」

「いえ、最終調整がまだらしいので、しばらくしたら再度伺うことになってます」

「申し訳ありません、全力で取り掛からせていただきますので、お時間頂いてしまって申し訳ありませんが、仰っていた追加武装の方も完璧に仕上げさせていただきます!」

「それは何よりです、貴社のセンスは素晴らしいかったです…私個人として支援させていただくかもしれませんね…それではエンピオ大尉、いきましょうか」

「了解しました」

 

 

大佐を送り届けるため、車に向かう…

 

送迎中、ミラー越しに終始笑みを浮かべる大佐を若干引き気味に捉えつつ、大佐宅まで送り届けた

 

 

 

 




多くの人に勘違いさせてしまって申し訳ないのですが、機体の外見は『キラークイーン』ではありません。

今回登場した専用機の外見は『acfa ノブリス・オブリージュ』と検索していただけるとわかりやすいと思います。


外見を使用させていただいただけなので、性能や攻撃方法などといったものは一切異なりますので、ご存知ない方もさほど気にする必要はありません。


今回もわかりにくい部分や、誤字脱字、間違った設定などがあるかもしれません。
ご感想、ご意見、ご指摘などをお持ちしております。
…評価してくれてもいいのよ[壁]д・)チラ

 (´・ω・`)彡ボコッ!
 ⊂彡(´;ω;`)


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過程

焼酎ご飯「さーて、今日はコメント来てるかな~?」
日間ランキング5位
焼酎ご飯「(゚д゚)!」

焼酎ご飯「(°д°)!?」

焼酎ご飯「((((;゚Д゚))))」

焼酎ご飯「(˘ω˘)スヤァ…」




さて、今回の話は物凄くテンプレです…
なんのひねりもありません…すいません…






ローゼンタールを後にし、エンピオ中尉に自宅まで送迎してもらった

中尉が見えなくなるのを確認した私は、私は自宅に入る前に、あのカフェに向かうことにした

相変わらず客の気配が微塵もしない…

 

 

 

「…ん?おぉ!久しぶりだなキンブリー!」

 

 

カウンターから顔を見せたウィリアムは私を見つけ意外そうな顔をして声をかけてくる

 

 

「えぇ、直に会うのは久しぶりですね」

「まぁとりあえず座ってくれ、コーヒーでいいか?飯まだだったら何か出すが?」

「いえ、コーヒーだけで結構ですよ」

 

 

カウンター席に座り、店内を見回す

もはや閑散としているとかいうレベルではない

 

 

「それにしても…この店客来てるんですか?」

「ん?そんなの赤字まっしぐらだよ。今日も二人しかきてないからな、そいつらにもなんで何年も潰れないのか不思議だとかなんとか言われたよハッハッハッ!」

 

 

彼は笑っているが店主としてそれはいいのだろうか?

私が初めて来た時も二人しか来ていないとかなんとか…

 

 

「それで笑ってられるとは、気楽なもんですね」

「まぁな、正直もう遊んで暮らせるだけの金はあるからな、キンブリーさまさまなわけだ!…ほれ、できたぞ」

 

 

私の前にコーヒーが出される

相変わらず香りも味も普通すぎる

 

 

「それで?今日はなんでまた戻ってきたんだ?」

「あぁ、そのことなんですが…実はちょっと前にISを起動させてしまいまして…」

「へー、ISをねぇ………ISを!?……いや、まぁお前が動かせてもそんなに不思議じゃないか…」

 

 

一瞬驚いたような顔をしたウィリアムだったがすぐに落ち着きを取り戻してしまう

 

 

 

「相変わらず順応早いですね、こちらとしてはもっと慌てふためいてくれた方が面白かったんですが」

「そりゃああんなファンタジーみたいなものに見慣れていれば嫌でもなれる」

「そうですか、まぁそのことはいいです。今日寄らせてもらったのはそれ自体ではなく、ISを起動したことによって色々と調べられてしまったことについてです……足がついてしまいました」

 

 

私は声を落として話し始めた

彼もその雰囲気を悟ったのか、自然と真剣な面持ちになっていく

 

 

「まぁそりゃあ調べられるわな…全部バレたのか?」

「いえ、銀行にある金とあなたが関与していることは全てバレてしまいましたが、株や金その他現金以外の物に関してはバレていません。軍にバレただけではありますが、情報なんてどこから漏れるかわかりませんからね、あなたも何らかの備えをしておいてくださいね」

「心配してくれるとはありがたいねぇ…銀行の方の金はゆっくり動かすとして、備えに関してはぬかりないぜ…店のガラスは全部50mmの防弾ガラス、対物ライフルぐらい持ってこないと抜けない程度には堅い…あとお前がいるカウンターだが、表面はチタン合金の装甲でできてるからな…おっと、それと最近こんな機能を追加したんだ!」

 

 

先程の雰囲気はどこえやら

ウィリアムが店の奥に引っ込み何かを操作すると、ちょっとした振動と共にカウンターの下部分がシャッターのように開く

開いた部分を覗いてみると、ソフトボールサイズの鉄球が昆虫の複眼の如く隙間なく敷き詰められている

 

 

「…何ですか…これ?」

「その鉄球の裏にはC-4が敷き詰められている…縦1m横4mのクレイモア地雷ってことだハッハッハッハ!!」

 

 

彼は爆笑しているが、今まさにその悪魔のような兵器が私に向けられているということになる

蜂の巣どころではすまない…下手しなくても木っ端微塵になること必至である

 

 

「こんなところにあるってことは対人ってことですよね…?こんなものが爆発したら戦車でもグチャグチャになりますよ…なんでこんな意味不明なもの作ってるんですか」

「まぁ遊び心だ、実際に使ったら店の半分がなくなるから多分使うことはないだろ」

 

 

彼多分って言いましたよ多分って

…よく考えたら私も人のことを言えないかもしれない…職場で錬金術使ったのを多分エンピオ大尉に見られたことがあったはず…

 

 

「まぁあなたの店をどうしようと私の関わるところではありません。伝えることは伝えましたので…あ、そうそう…資金の方は自由に使用していただいて構わないので、ISを開発している企業の株に地道に手を回しておいてもらえませんか?」

「ん?まぁ構わないが、IS開発に手を出してる企業なんて、結構あるだろ」

「有名どころだけで構いません。おそらく私は男性操縦者として、その名が世界に轟きます…IS関係でそれらの手回しが役に立つかもしれませんからね…」

「おう、それじゃあ適当にやらせてもらう…そうだ、帰る前になんでもいいからサインして行ってくれよ、お前有名人になる予定なんだろ?」

「それぐらい構いませんが…それじゃあ、署名のサインでいいのならこのカウンターに…」

 

 

私はペンを受け取るとカウンターに簡単にサインを書いていく

あのクレイモアを使用すれば真っ先にカウンターが吹き飛ぶわけだが…

 

 

「できましたよ、それじゃあ私はこのへんで」

「おう、また帰ってきたら顔ぐらい出してくれよ!」

「えぇ、それでは…」

 

 

さて、次に会うのはいつになることやら…

私は店の扉を開け、再び自宅を目指した

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

翌日、私はペンウッド大将に呼び出されていた

おそらく私の処遇が決まったのだろう

何もない自宅で暇を持て余していた私にとっては嬉しい知らせだった

彼の口ぶりからすれば、私が提示した内容は叶えてもらえるはずだ

 

 

コンッ コンッ

 

 

「入ってくれ」

「失礼します」

 

 

デスク越しに彼の疲れた顔が見える

おそらく私の件で色々と仕事が増えてしまったのだろう

 

 

「昨日の今日で早速来てもらって悪いね」

「いえ、そんなことはありませんが、私が呼び出されたということはもう私の処遇が決まったということですか?」

 

 

彼は頷き応接セットのソファーに腰掛ける

正面のソファに腰掛け話を続ける

 

 

「正直な話、君が身の安全を求めた時点でほとんど決まっていたことではあるんだが、手続きやらなんやらで昨日の時点では言うことができなかったんだ」

「そんなに手間のかかる場所…いったいどこなんですか?」

「君にはIS学園に入学してもらうことになる…あそこの生徒になってしまえば、まず間違いなく命の保証はされるはずだ…それに一国が貴重な男性操縦者を囲い続けるのは、何かと他国からの目が厳しいからね…一人目の織斑一夏もIS学園へ入学することが決定しているからね、ごく自然の流れというわけだ」

 

 

IS学園、日本に設置された、IS操縦者育成用の特殊国立高等学校

操縦者に限らずISに関わる人材はほぼこの学園で育成される

学園の土地はあらゆる国家機関に属さず、いかなる国家や組織であろうとも学園の関係者に対して一切の干渉が許されない…

確かにIS学園であれば、私の身の安全は保証されるはずだ

 

 

「なるほど…それにしても、フフフ…私が学生ですか…それは貴重な体験ですね」

「うん?むしろ君の年齢なら普通は学校に行っている方が普通だと思うんだが?学校にはあまり縁がなかったのかな?」

「私のことを調べたのなら知っているでしょう…学校といえば士官学校だけですよ…高校とは全く別のものでしょう」

「む、確かにそうだったね…」

 

 

彼はバツが悪そうに答える

私は前の世界でも学校というものは体験したことがなかった

まさかこんな意外なところで学園生活というものを体験することになるとは…

 

 

「まぁそのことに関しては全然構わないのですが、私はいつIS学園へ?」

「2日後には向かってもらうことになる…それまでの期間なのだが、君は待機ということになっている」

「その間私の行動は制限されるのでしょうか?」

「まぁ行方をくらましたりしない程度には監視させてもらうかもしれないが、特に行動制限は設けたりはせんよ」

「分かりました…今回伝える内容は以上でしょうか?」

「あぁ、それじゃあ入学時のことについては当日に伝える。寮生活になるだろうから君も準備をしておくように」

 

 

準備するもの等ほとんどないのですが…

 

 

「えぇ、分かりました。それでは失礼します」

 

 

私は執務室を後にし、軽いため息をついた

 

IS学園…

改めて考えると女性しかいない空間に放り込まれるとなると…堪えるものがありますね…

だがIS学園に行くということは思う存分”あの機体”を使用できるということになる…

 

 

「楽しみのようで、そうでないような…複雑な気分ですね…ハァ…」

 

 

などと言いながら本部を出ると、見知った顔とばったりと出会った

 

 

「ハルフォーフ大尉ではありませんか、奇遇ですねこんなところで」

「キ、キンブリー少佐!こんなところで会うとは…あ、昇格おめでとうございます。今は大佐でしたね、すみません」

「いえ、構いませんよ。確かにこのようなところで会うとは…襲撃事件の件ですか?」

「え、えぇ…その件の最終報告を終えたところです…それはそうと見てくださいこれ!シュヴァルツェア・ツヴァイクの修理とトライアルがやっと終わったんです!」

 

 

彼女は一瞬顔に影を落としたが、それを払拭するかのように明るく話しかけてくる

実戦経験の無かった彼女にとって、あの惨状はトラウマになっているのかもしれない

私たちは歩きながら会話を続ける

 

 

「それはよかったですね。私も専用機を与えられたのですが、未だ調整中でして…」

「専用機!?…あー確かに男性操縦者なら当たり前ですよね…でもその割にはテンション低くないですか?」

「まぁ専用機が与えられること自体は嬉しいんですが、IS学園への入学が決まってしまいまして、そのことで少し気分が下がっていたわけです」

「大佐がIS学園に…た、確かに…あそこは女の園ですからね…ご愁傷様です」

「まぁ思う存分ISが使用できるというのは楽しみではあるんですが…はぁ…」

「ま、まぁまぁ気を落とさないでください…逆に考えればハーレムなんじゃないですか?」

 

 

トラウマを抱えて落ち込んでいたはずの彼女に励まされてしまうとは…自分で思っている以上に堪えているのかもしれませんね…というか励まし方がハーレムって…

 

 

「ハーレムに願望があるわけじゃありませんし、私なんかがそんな物を作れるとは思えませんよ」

「いや、大佐はルックスも性格も良いのでモテると思いますよ?」

「私が?」

 

 

あまり気にしたことがありませんでしたが…まぁ印象なんてものは主観によって変わるものだ…

ハルフォーフ大尉に視線を戻すと、微かに赤面している

……なるほど…大方異性に対しての先ほどの発言が気恥ずかしくなったのだろう

 

 

「ふむ、あまり気にしたことはありませんでしたが、お褒めの言葉として素直に受け取っておきましょう」

「ま、まぁ大佐がどう思っているのであれ、私自身はそう捉えていますよ………えーと…そ、そうです大佐!あの襲撃事件の時にあった爆発、あれのことについて話してくれるんじゃありませんでしたか?」

 

 

何やら強引に話を変えられてしまった気がするが、確かにあれについての話をすると行っていたことを思い出す

 

 

「そういえばそうでしたね…ふむ…まぁもうわかっているかもしれませんが、あの爆発は私の手の刺青に関係しています」

「刺青ってことは…魔法ですか!?」

 

 

大尉は目を輝かせてこちらを見ている…この際魔法で通してしまってもいいんじゃないかと思える程の屈託のない笑みだ…

 

 

「そんな顔で期待してもらっているところ悪いですが、魔法ではありませんよ…ファンタジーやメルヘンじゃあるまいし…と言ってもあなた達からしたら魔法と大差ないのかもしれませんがね」

 

 

私はポケットから硬貨を取り出す

 

 

「大尉、あなたは錬金術を知っていますか?」

「錬金術?えーと確か金を作り出したり、ホムンクルスという人造人間を作り出したりする技術でしたよね?錬金術の最終目的は賢者の石を作り出すことだとかなんとか…」

「随分と詳しいですね…まぁその通りです。私があの時見せた爆発は錬金術によるものです…例えばコレ、この硬貨をこうします」

 

 

取り出した硬貨を手で包むと微かに赤い光が走る…手を開くと先程まであった硬貨は何処にもなく、金属光沢を放つ小さな玉が転がっていた

 

 

「…へ?」

「そしてコレを-------

 

 

私が玉を地面に放り投げる、玉が地面盗接触した瞬間、軽い破裂音と共に玉は跡形もなく消滅した

 

 

「…というわけです」

「……………」

「…大尉?…ハルフォーフ大尉?」

 

 

彼女の反応がないので振り返ると、彼女は俯いて肩を震わせていた

 

 

「大尉?どうかしましたか?」

「………す…」

「す?」

 

 

様子がおかしい彼女に歩み寄ってみると------

 

 

 

 

「すごいです!!!!!爆発したのってどうなってるんですか!?ていうかそもそもなんで硬貨が鉄球に!?」

 

 

 

 

目を爛々と輝かせたハルフォーフ大尉が突如私の肩に手を置き、激しく前後に揺さぶってきた

私は不意打ちで抵抗できずされるがままに揺さぶられていた

この細腕にここまでの力があるとは…

 

 

 

「しかも錬金術って…厨二心鷲掴みじゃないですか!?もしかして水とか土から武器作ったりできるんですか!?いいな~そんな特殊能力みたいなの!!」

「------大尉-----止--て-----くだ----さ----まず-----す---」

「ハッ!?す、すみません!!つい興奮してしまって!」

「…っ………」

「あの…大丈夫ですか…?よかったら背中さすりましょうか?」

 

 

 

手をついて壁に手をついて前のめりになる私の背中に、彼女は申し訳なさそうに声を掛ける

頭が痛い…そして若干の吐き気が私を襲っていた…

危うく私という何かを壊してしまうところだった…

 

 

 

「い、いえ…もう大丈夫です…ふぅ…」

「も、申し訳ありませんでした…そういった特殊能力みたいな、なんというか…まぁ少しそういうのにあこがれがありまして…つい我を失ってしまいました…」

「まぁ過ぎたことは構いません…まぁ要は私はこの能力を使ってあのISを撃破したというわけですよ」

「は~大佐がそんなトンデモ人間だったとは…でも錬金術でなんで爆発何ですか?っていうかなんで大佐はそんなものが使えるんですか?ISに乗れるのもそれが関係しているんですか?大佐はなんで----------」

 

 

 

 

 

その後も怒涛の質問攻めが続いた…その質問に答えていく私の顔はおそらく憔悴しきっていたことだろう…

 

 

結局、私が質問攻めから解放された時には既に日が傾き始めていた…

 

 

こうして私の貴重な一日は彼女との会話によって、その殆どを消化してしまった

 

 

 

 

 

 

 




以上、テンプレすぎるお話でした~
次回かその次あたりで原作入れたらなーって感じです


思った以上に多くの人に見ていただいているようで、若干恐怖しております((((;゚Д゚))))

ほか作品のキャラクターの名前などが出てくることがあるかもしれませんが、名前と容姿だけが一致しているだけで、彼ら本人ではありません。よってこの世界にはACもスタンドもHCLIも存在しません。




今回もわかりにくい部分や、誤字脱字、間違った設定などがあるかもしれません。
ご感想、ご意見、ご指摘などをお持ちしております。



・・・[壁]д・)チラ


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覚悟

友「いつになったら原作が始まるんだ?」
焼酎ご飯「…そろそろ始まるはず…」


キャラの呼び名が色々と難しいです
キンブリーさんの呼び名はキンブリー以外にありませんね(`・ω・´)


あとキャラの性格を理解するのもすごく難しいです
キャラ崩壊はこういうふうにおきていくんだなと実感しました…(´-﹏-`;)





日が傾き始め、あたりはだんだんと暗くなりはじめる

街灯には次々と光が灯されていく

 

 

 

「すげぇ…すげぇよ…大佐マジはんぱねぇよ!」

 

 

ハルフォーフ大尉は私の話し中、常に興奮状態を続けていた

 

 

「…さすがにもういいでしょう…ここまで疲れたのは何年ぶりか…こっちに来てから私に疲労を感じさせるのはあなたぐらいですよ…」

「え?…あ!はい…こんな長時間にわたって拘束してしまってすみませんでした…」

 

 

彼女はやっと辺りが夕焼けで染まっていることに気づいたのか、周囲を見てハッと驚く

この人は本当に自分の好きなものに入り込むと周りが見えなくなるようですね…

 

 

「まぁお話する約束でしたからね…少し伸びたと考えればいいだけですよ」

「えっと…その、このことって やっぱり他の人は…」

「えぇ、軍ではあなたしか知らないことです…そうホイホイと喋ることでもありませんからね…大丈夫だとは思いますが、このことは他言無用でお願いします…分かりましたか?」

「は、はい!もちろんです!…そもそも私の趣味を理解している近くの人間なら、このことを話しても誰も信じるとは思えません」

「そういえば、あなたの趣味はアニメや漫画でしたね」

「えぇ、とりあえず隊の皆には知られていることです…そういえばオススメをお貸しするという話でしたねよね?」

 

 

…まずい、彼女に変なスイッチが入りそうだ

ここは…

 

 

「そういう話でしたが、大尉…その隊の皆が待っているのではないでしょうか? 本来こんな長話になる予定はなかったんじゃないです か?」

「……」

 

 

彼女はだらだらと汗を流し始める…

急いで上着のポケットから通信機のようなものを取り出すとどこかへ連絡を始めた

内容は聞こえないが、終始大尉が謝り続け通信を終え、通信機をポケットにしまうと前方にうなだれていた

 

 

「どうかされましたか?」

「その…本来とっくに基地に戻っている時間だったので、隊長に叱りを受けてしまいまして…隊の皆が心配していると…」

 

 

隊…ふとあの襲撃事件のことを思い出す…

我が隊はエンピオ大尉以外全滅…

 

 

「隊長、ですか…大尉、あなたは確か副隊長でしたよね?」

「? えぇ、IS配備特殊部隊シュヴァルツェ・ハーゼ副隊長を務めさせていただいております」

「ふむ、お聞きしますがあなたの隊は実戦経験がありますか?」

「いえ、私が入隊してからはまだ無いと記憶しておりますが…」

 

 

 

副隊長である彼女が敵前で戦意喪失…

おそらくは隊じたいの実戦経験がない…

そして間違いなく--------

 

 

 

 

 

「…ではあなたは軍人として人を殺めたことがありますか?」

「ッ……」

 

 

 

彼女の表情が固まり、言葉が詰詰まる

一瞬の沈黙のうちに、彼女の顔から若干の血の気が引く

 

 

「……いえ、ありません…何故そのようなことを?」

「いえなに、襲撃事件の時のあなたを思い出しまして…実践経験がないのなら得心がいきました」

「襲撃時の、私ですか…?」

 

 

ISが動かないことは知っていたが、彼 女の目からは完全に戦意が喪失していた

あのあとの彼女を見る限りでは、自分が戦意喪失していたことに気がついていると思うのですが…

 

 

「えぇ、敵を目の前にしてほうけていたように見えましたので、もしやと思いましたが…なるほどやはりそうでしたか」

「も、申し訳ありませんでした…」

 

 

彼女は趣味を語っている時では考えられないほど弱々しい反応を見せる

 

 

「いえ、別に責めているわけではありません。大尉、あなたは人の死に非常に動揺しているように感じましたが、軍服に袖を通したとき、人の死に直面することになると考えなかったのですか?」

 

 

この質問をするのも随分と久しぶりだ…

 

 

「……いえ、軍に所属している以上いつかはそういったことがあると考えもしましたがが、まさか突然あのような事件が起きるとは……」

 

 

 

 

 

…そして問いかけた軍人は何故こうも甘い人間が多いのでしょうか…

 

 

 

 

彼女は不甲斐なさからか、肩を縮こませる…

ここで彼女を潰してしまうのは色々ともったいない…今後彼女とのつながりは必要になるかもしれない

だがこのまま放っておくのは私の気が収まらない

 

 

「そうですか…では死と向き合う覚悟しておくことです。あなたが軍人である以上、あなたはいつか人を殺めることになるかもしれません。ましてやあなたはISを持っています………そういった場面が訪れる可能性は他者より高いのです。ISで殺そうが銃で殺そうが……相手がテロリストであろうと善人だろうと、それが人の死である ことには変わりありません。そしてその死から目を背けることはできません」

「……」

「おっと、すいません…説教臭くなってしまいましたね。ようは割り切ってしまえばいいんですよ 軍人ならばより多くの死に直面する…それは自分の手で行われることかもしれない、ですそれがが仕事というものなのです」

「しかし…そう簡単には…」

「まぁそうでしょうね…ですがあなたが軍人を続けるのなら考えておくほうがいいでしょう…ですが何もそれだけが真理というわけではありません…軍人としてなら難しいかもしれませんけどね」

 

 

そう…エルリック兄弟のような強い意思を持ち、それを貫けるものなどそうそういるものではない

 

 

「……私は………」

「今すぐ答えを出す必要は ありませんよ?人によっては難しい問題でしょう…そろそろいい時間です、本部までお送りしますよ」

「…はい、ありがとうございます…」

 

 

彼女を本部まで送る

道中、私たちの間に会話はなく、二人の足音だけが響いていた

 

 

「大尉、つきましたよ?」

「…」

「ハルフォーフ大尉?」

 

 

彼女の反応がないので振り返ると、彼女は俯いていた

凄まじいデジャヴを感じる…これはあのスイッチが入った時の…

 

 

「…大佐、大佐の言葉について考えさせてもらいました」

 

 

おや?どうやら違ったようですね…

 

 

「…その…覚悟と言えるかはわかりませんが、言えることがあります」

「ほぅ、それは是非お聞かせ願いたい」

「私は任務がであったとしても、自分の行動によって人間が死ぬことには耐えられないかもしれません…目の前で人が死んだぐらいで呆然としてしまうんです…国の為だとわかっていたとしても、何もできないかもしれない…」

 

 

彼女はまっすぐとこちらを見据えると、少し前までの弱い雰囲気は消え、迷いない口調で話す

 

 

「ですが、そんな甘い私でも隊の仲間を守る為ならば、死から目を逸らさず殺しも厭わないつもりです…!」

 

 

彼女の目にはそれまでにはなかった強い意志が宿っているように感じられる……とてもいい目だ

 

 

「それでは仲間のためなら割り切れると?」

「はい、仲間のためなら割り切ります。仲間が死の危機にさらされるのであれば、相手が誰であろうと、仲間を守るためなら相手を殺します」

「とてもいいと思いますよ、素晴らしい覚悟です」

「そんなことが起きないことを祈りますが、覚悟をしておくことはできます。覚悟があるのなら私は戦うことができると考えています」

「仲間の為に戦う覚悟…貫き通せばそれもまた真理です…その覚悟を忘れないことです」

「ハッ!!了解しました!!…なんというか…その…ありがとうございました!」

 

 

敬礼の姿のまま彼女は礼をする

そしてその顔はどこか吹っ切れたようだった

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

~~~ということがあったんですよ、いやはや、彼女が強い意思を持つ人間になってくれて私も嬉しい限りです。やはりそういった方には好感が持てます」

「大佐、人に思想植え込むのもいいですけど、雑務を私に回すのやめてもらえませんか?一応部下ですけど、なんでハルフォーフ大尉を私が送らなきゃいけないんですか…こちとら病み上がりなんですよ?」

 

 

左右を海に挟まれた道路をエンピオ大尉が運転する車両が走る…

この車以外に走行している車両は無く、日中だというのに驚く程静まり返っている

 

 

「別にいいじゃないですか、運転は問題ないって言ってたわけですし」

「送るぐらいならいいんですけど、ハルフォーフ大尉にあなたのこと色々聞かれましたからね正直結構疲れました」

「私のことを?なんでまた…」

「なんででしょうね、趣味やら好きなものやら正直どうでもいいことばっかりでしたね…気でもあるんじゃないですか?」

「ハルフォーフ大尉が私に?…まぁさすがにないとは思いますが、いいんじゃないですかね?」

「意外ですね、こういう話はあまり好かないと思っていたのですが」

 

 

ルームミラー越しにニヤニヤとこちらを見てくる

いつも思うが彼のにやけづらは酷く腹立たしい

 

 

「じゃあ話振らないでください…まぁそういった感情抜きにして、彼女にはそれなりに好感が持てますよ?」

「ま、確かに今のご時世にしては珍しくまともですし、外見もかなり美人なんじゃないですか?…それに基地まで送った時に見ましたが、部下にはかなり尊敬されているみたいでしたし、人徳もあるんじゃないですかね?」

「完璧超人じゃないですか…しかし…なるほど…仲間のためにと言うぐらいなら確かに慕われていて当然ですね」

 

 

車は検問所に差し掛かる

窓から許可証を差し出すと、通行止めのバーが上がり、人工島へと車を進める

 

 

「しっかし、このためだけに日本まで連れてこられるとは思いませんでしたよ…それにしてもすごいですね”IS学園”…」

 

 

 

 

IS学園…現在私は学園へ通じる唯一の直通道路を走行していた

進行方向には巨大な人工島が広がっており、島の各所には近未来的な建物が乱立している

世界で最も重要な機関とされているだけのことはあるが、学園として考えるのなら巨大すぎる

 

 

 

「よかったじゃないですか、IS学園に入れるなんてそうそうないんじゃないですか?」

「乗れるのなら別ですが、私はあなたと違って凡人なのでまったくもって興味ありませんし…というかどっちかっていうと忌々しいですよ」

「おや、それは残念…まぁほとんど休暇みたいなもんなんですから色々見て回っては?日本の技術はドイツ一ィとかなんとかハルフォーフ大尉も言っていましたよ?」

「なんか違う気もしますが…そうですね、あなた送り届けたらとりあえず適当に飯食って帰りますよ…っと、また検問か」

 

 

島の上陸部分に検問が設置されている

同様に通行証を提示して上陸する

既にここに来るまでに二回の検問を通過していことから、警備の厳重さが伺える

 

 

「さて大佐、そろそろ到着しますよ」

 

「ふむ、そうですか…しばらく会うこともなさそうなので、あなたにも聞いておきますかね……」

 

 

ミラー越しに彼を見て問う

 

 

「先ほどのハルフォーフ大尉の話ですが、あなたは軍人として、死についてどうお考えですか?」

 

「私ですか?…そうですね…私は割り切っている方だと思いますよ?嬉々として殺しているわけじゃありませんが、仕事上やむ得なくそうなることもあるでしょう、軍人なら仕方のないことです。現に私の目の前で隊員が死にましたし、歩兵も何人も撃ち殺しましたが、これといった感情は湧きませんね…強いて言うなら死にたくないってとこですかね?」

 

 

彼は駐車場を発見し、車を入れてエンジンを止める

 

 

「仕事だから仕方ない……だがどうせ仕事なら楽しくやりたいってのはありますね……あなたが”何”なのかは聞きません……ですがあなたの下で働くのは何かと面白いことがありそうです……まぁ正直に言ってしまうと私の昇格の助けにもなりそうですしね……さ、つきましたよ大佐殿」

「…ご苦労様です…フフッ、そうですか…面白い答えが聞けたかもしれませんね」

 

 

私は降車すると扉を閉め、彼の方を振り返る

彼は再びエンジンをいれると窓を開ける

 

 

「満足のいく答えだったのなら、私も答えてよかったです」

「いずれ機会があれば私のことをお話するかもしれませんね」

「ならそのときを楽しみにしていますよ、それでは大佐、お達者で」

「えぇ、そちらこそ…それではまた」

 

 

彼はこちらに軽い敬礼をすると、車を発信させ来た道を引き返していった

彼はもう色々と気づいているみたいですね…

それについて追求しないあたり、なかなか面白い…

まぁそれはさておき…

 

IS学園、なんいう広さ…

 

 

「さて、まずはどうしたものか…」

「お前がゾルフ・J・キンブリーだな?」

「む?」

 

 

背後から声をかけられたので振り返る

私が声をかけられるまで気配を察知できなかったとは……

伊達にイシュヴァール戦を生き残ったわけじゃないんですけどねぇ…

そこには黒いスーツを着こなす、鋭い目をした女性がこちらを注視していた

 

 

「はい、私で間違いありませんが、あなたは教員の方でしょうか?」

「すまない自己紹介が遅れたな、私は織斑千冬、ここIS学園で教師をしている」

 

 

織斑千冬…?なるほど、謎の引退後はIS学園で教師をしていたとは

それにしても…軸の通った立ち振る舞い…まるで武を極めた者のようではありませんか…

ブリュンヒルデ、ISだけというわけではなさそうですね…

 

 

「ドイツ軍で大佐をさせてもらっています、ゾルフ・J・キンブリーと申します。こんなところでブリュンヒルデにお会いできるとは…」

「すまんがその呼び名はあまり好かん…お前はこれからここの生徒になるわけだ、私のことは織斑先生と呼ぶように」

「分かりました、織斑先生」

「さて、早速で悪いがついてきてもらう」

 

 

彼女は踵を返すと、建物に向かって歩き始める

私もそのあとに続き屋内へ入っていく

 

 

「織斑先生、我々はどこへ?」

「何、すぐにわかる…IS学園に入学する者が行う…まぁ試験のようなものだ」

 

 

気がつくと目の前には重厚で巨大な金属製の扉がその道をふさいでいる

彼女が扉の前に立つと、重い金属音と共に扉が上下に開かれる

扉をくぐるとそこは大きく開けたグラウンドのような空間と、それを囲むように設置された巨大な観客席が広がっていた

 

 

「ふむ、ISの競技場といったところですか?」

 

 

現在我々がいる場所は整備室んのような場所で、全面がガラス張りになっており、中を見渡せる

 

 

「その通りだ、お前をここまで連れてきたのは入学試験の為だ」

「入学試験?それに合格しないと入学できないということですか?」

 

 

まさか今更ドイツへ帰れなんてことには…

 

 

「いや、お前のようなイレギュラーは無理矢理にでも入学してもらうんだが、一応全員が受けることになっている試験だ、結果がどうであれお前には学園に入学してもらう」

「なるほど、それなら仕方ありませんね…それで?その試験の内容というのは?」

「お前にはISを装着して教員の一人と戦ってもらう…山田君、アリーナ内へ出てくれ」

 

 

彼女がインカムで指示を飛ばすと、こちらの対面側のピットから深緑のISを纏った女性がアリーナの中央まで飛行する

 

ラファール・リヴァイヴ…あの時と同じIS…

 

 

『ほ、本日試験官を務めます、山田真耶です!よろしくお願いします!』

 

 

ISの拡声機能によってこちらへ聞こえる声で彼女は話す

空中でわたわたとこちらにお辞儀をする山田真耶と名乗る眼鏡をかけた女性…

とりあえず笑顔で頭を下げると、彼女は安心したかのようにほっと息をつく

なんと言いますか…教師というにはすこし幼く見えてしまう

 

 

「山田君、織斑の時もそうだったがそこまで緊張する必要はない、君は教師なのだからもっと堂々としていたまえ」

『は、はい!すいませんでした!』

「入試でISでの戦闘とは、さすがIS学園といったところでしょうか…しかしISは初めて動かすことになるので、いささか不安ですね」

「別に勝てと言っているわけではない。それに山田先生はかなり強い、初心者が倒せる相手ではない。しかし…装着は初めてなのか?」

「えぇまぁ、ここに来るまで色々と忙しかったもので」

「それならならちょうどいい、他の生徒も一部を除いて同じ条件だ。すぐ隣がピットになっている」

 

 

入口の向かい側に同じ構造の扉がある

そのままピットへ入っていく

巨大なカタパルトが目立つその部屋には二体のISが鎮座している

 

 

「打鉄とラファール・リヴァイヴ…どちらか好きな方を選べ」

 

 

打鉄ですか…ラファール・リヴァイヴに比べてより鎧に近いようなフォルムをして

ですがやはりここは…

 

 

「ラファール・リヴァイヴでお願いします」

「わかった、そういえばISスーツだが…まぁいい、上着を脱いでISに背中を預けろ、あとはシステムが自動で装着を行う」

 

 

上着を脱ぎ、ISに背中を預ける…手や足に装甲が装着されていく…ハイパーセンサーが起動し周囲の情報が次々と読み込まれていく

これは面白い…!360度視覚野の外でも視認できる上に様々な情報を読み取ることができる…これは実際に乗ってみないとわからない感覚ですね…

 

 

「装着が完了したな?ではすぐにカタパルトを使用せずにそのままアリーナへ飛んで入れ」

「…了解しました」

 

 

私は慣れないPICの操作に多少フラつきながらも、アリーナの青空のへと飛び出した

 

 

 




すこし投稿が遅くなってしまいましたヾ(・ω・`;)ノぁゎゎ
すこし忙しい時期に入ってしまったので、これぐらいのペースになってしまうかもしれません。


日間で2位に載ったときはテンション上がりすぎて大学でメタルギアごっこして突き指しました


一度読んだラノベを読み返すのは結構大変ですね(^_^;)
なんとかラノベとアニメを見直して、知識補充をしてきたので、間違いは減ると思います


なんかもう自分で何書いてるのかわからなくなってくる時があって、改めて読み返してみると、キンブリーさんマジ意味不明…みたいなことになることが多かったので、誤字脱字の勢いがましているかもしれませんorz



コメント、誤字脱字の指摘、ご意見等ございましたら是非お願いします




[壁]д・)チラ


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入学

戦闘描写初めて書くから難しい(;´_ゝ`)

キンブリーさんの初めてのIS戦闘です

ラファール・リヴァイヴの正確な武装がライフルとアニメで使用されていたグレネードランチャー以外わからなかったため、憶測で書いている部分もありますが、ご容赦を

パソコンからAFイクリプスみたいな音がする…そろそろヤバいかもしれんΣ(○>Д<ノ)ノ






ピットの外から光が差し込む

 

 

「っと…浮遊する感覚というのはなれませんね…」

 

 

ゆっくりとピットから出た私を待ち受けていたのは、言いようのない開放感だった

ハイパーセンサーの補助もあり、一気に視界が広がる…地上では体験できない浮遊感が体を包み、高度を徐々に上げていく

 

 

「おぉ…!これはすごい!」

 

 

私は自由に空を飛ぶという未知の感覚に浮かれた

飛ぶという考え自体が薄かった私にとっては、これだけも非常に刺激的な体験だ

山田と呼ばれていた彼女の高度まで上昇した私はハイパーセンサーを使用せずにあたりを見渡す…

以前の世界ではありえないような広すぎる光景だった…

 

 

「えっと…その…キンブリーさん?どうかしましたか?」

 

 

声に振り返ると、困惑した表情でこちらに声を掛ける山田先生の姿があった

 

 

「ん?…おっと失礼、初めての感覚に少々浮かれてしまいまして」

「あ、その気持ちわかります!私も初めて乗ったときそうでした。でもISに初めて乗った子は大体機体制御でそれどころじゃないんですよ?今見る限りもスラスターやPICの制御も問題ないように見えますし…すごい慣れの早さですよ!」

 

 

言われてみると…確かにピットから出る直前は若干ふらついていた感覚があったが…今は手足のようにとまではいかないものの、自由に動かすことができる

 

 

「IS学園の教員の方にISの操縦をお褒めを頂けるとは、光栄です」

「そ、そんな光栄だなんて…織斑先生ならともかく、私なんかの言葉を大きく受け止めないでくださいね?あ、でも操縦に慣れるのが早いのは本当ですよ?」

「IS学園の入試試験官を務めるぐらいの方です……それに織斑先生もあなたのことを評価していましたし、初心者の私にとっては光栄なことですよ。今回はよろしくお願いします」

「こ、こちらこそよろしくお願いします!改めまして、本日入学試験の試験官を担当させていただきます、山田真耶です。早速ではありますが、操縦確認と武装確認をします。私の周りを一周回ってもらえますか?」

 

 

彼女に指示された通り、彼女の周りをぐるりと一周する

やはり宙を自由に移動できるという感覚は気分が向上する

 

 

「はい、問題ありません。次は武装確認です」

 

 

そう言うと彼女の手に粒子のようなもの光り、大型のライフルが一瞬で形作られる

なるほど、これが量子変換と…間近で見ると面白い

 

 

「武装データは視覚化することができます。今回は私と同じラファール・リヴァイヴなのでインストールされている武装は同じです。試しにライフルを展開してみてください」

「展開…武装のリストは表示されるのですが、展開というのはどのようにすればいいのでしょう?」

「武装名を呼ぶという方法が初心者向きなのですが、武装がそこにあるというイメージをしてみてください。」

「イメージだけで展開されるのですか?」

「はい、その通りです。イメージだけで展開できるようになれば展開速度は段違いになります!ですがこれには慣れが必要なので、試しに今回はイメージで展開してみましょう。試しにイメージで展開してみてください。あ、どうしても無理なら名前を読んでもらって結構ですよ」

「分かりました」

 

 

なるほど、イメージですか

リスト化されている武装の一つであるライフルを自分の手に持っているイメージをする

錬金術における再構築のようなイメージだ

錬金術師にとってこのイメージが一番取りやすいものだろう

すると一瞬のうちに手に光が集まり、ライフルが展開される

 

 

「ほぅ…これもなかなか面白い」

 

 

展開したライフルを持ち上げてそれを眺める

虚空から物が現れるとは…錬成増幅器である賢者の石を彷彿とさせる

 

 

「展開も問題ありませんね。さっそくですが、試験を開始させてもらいます!ブザーが鳴ったら開始となりますので、準備してくださいね?」

「分かりました。お手柔らかにお願いしますね山田先生」

「フフ、わかっています。試験で生徒相手に本気を出す訳にはいきませんからね!」

 

 

二人は同じ高度を維持したまま距離をあける

ある程度距離が空いた数秒後、ブザーが鳴り響き入学試験が開始された

 

 

「さて、まずはどうしたものか…」

 

 

展開可能な武装はアサルトライフル、スナイパーライフル、ショットガン、グレネードランチャーが各種一丁ずつ、近接ブレードが一振り…

私は様子を見ながら相手の周りをゆっくりと旋回し始める

相手も同様に旋回し始める

水を打ったような静けさが周囲を包む

互いに拮抗した状態が続きアリーナを一周しようかとしたその時、相手に微かな動きがあった

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

入学試験のためアリーナに出て数分が経った

新しく発見された男性操縦者であるキンブリーさんがピット内からアリーナへ出てきた

ISを操縦したことがないと聞いていたのですが…

初心者にしては珍しく、周囲の景色に目を向ける余裕を見せている

そして何の操作ミスも無く私と同じ高度まで上昇してきた

熟練者とまでは言わないが、機体制御はなかなかのセンスだと思う

男性との関わりに乏しかった私は、変に緊張してしまい若干吃りながら彼に話しかけた

しかし彼はそんな私に対して、物腰が柔らかい紳士的な対応をしてくれた

私より全然落ち着き払った様子に、なんとなく君付けで呼ぶことができなかった

 

機体制御や武装展開についてあらかたの説明を終える

試合が開始されるため、機体同士の距離をあける

 

 

「お手柔らかにお願いしますね?山田”先生”」

 

 

彼はごく自然に私のことを”先生”と呼んだ…”先生”!…ついに私にも先生としての貫禄が…!!

先生と思ってくれているからには、それらしい態度でいかないと!!

 

 

「フフ、わかっています。試験で生徒相手に本気を出す訳にはいきませんからね!」

 

 

結構かっこよく決まったという自負に酔いながら、機体同士の距離をあけ終える

 

 

 

 

ビ―――――――ッ!!

 

 

 

 

試合開始のブザーが鳴り響く

彼は私を中心に旋回し始める…私もそれに合わせて旋回を開始する

大抵の初心者はその場に立ち尽くすか、早々に攻撃を仕掛けてくるものなのですが…

私から攻撃を仕掛けるというのは少々気後れしますが、このまま拮抗していても仕方ありません

先生である私が動かさねば!

 

 

先制攻撃を行おうとライフルを展開した瞬間、ハイパーセンサーに警告が表示される

 

 

「え?」

 

 

狙いのつけられていない多数の弾丸がライフルを展開しようとする私にばら撒かれる

相手は武器を展開していなかったのに何故急に弾丸が!?

私は咄嗟にそれを回避するも数発被弾してしまう

急いでライフルの展開を終え、体勢を立て直して相手に銃口を向ける

するとそこにはライフルを構えたキンブリーさんの姿があった

 

 

「ふむ、やはり銃というものには慣れませんね…撃ち尽くして1~2発しか当たらないとは」

「い、いつの間に武器を?」

「ん?先ほどのようにイメージして展開しただけですが?」

 

 

彼はそう言うと持っていたライフルを一瞬で量子化させた

そして量子化が完了したとほぼ同時にスナイパーライフルが展開される

量子化からの展開のラグが短く感じられる…

彼がスナイパーライフルをこちらに構え始める

 

 

「あまりこういうのは慣れませんが…」

「初撃は食らってしまいましたが、そう簡単には行きませんよ!!」

 

 

スナイパーライフルがこちらを捉えるより先に、銃撃を開始する

結構な距離が空いているものの、射撃に関しては得意分野

彼のスナイパーライフルを数発の弾丸が撃ち抜き、彼の目の前で爆散する

 

 

「…っ!」

「スキありです!」

 

 

ライフルの爆散で怯んでいる彼に急速接近し、ショットガンを展開する

爆炎に初弾を撃ち込む、確かな手応えがあった

二発目を撃つために引き金に指をかけた瞬間

複数の弾丸によって銃身が貫かれ、ショットガンがバラバラに砕け散った

 

 

「きゃぁっ!」

「やはりゼロ距離でショットガンを食らうのは衝撃がすごいですね」

 

 

武器が眼前で爆散し、衝撃で怯んだ私にそう声が聞こえる

意識を彼に向けた瞬間、目の前にグレネードが飛来する

 

 

「な?!くっ!!」

「ほぅ!今のを咄嗟に回避できるとは!!」

 

 

私が咄嗟に身をよじってグレネードを回避する

アリーナの地面に着弾したグレネードは砂煙を巻き上げ爆発する

爆風に煽られて若干体勢を崩す…

そんな私の見下ろすように、彼は悠々と空中を漂っている

 

 

背筋にゾクリと悪寒が走る…彼が私を見下ろす顔……何か……

 

 

だが悪寒はすぐに引く…やっぱり気のせいだったのだろうか?

 

 

「ど、どうしてライフルの銃撃のあと直ぐにグレネードが…?そ、そもそもどうやってライフルを?」

「む?あなたに教えられたようにイメージして武器を呼び出しているだけですよ?ほら、このように」

 

 

彼はそう言うと手に持った武器を次々と入れ替えていく

 

ラピッド・スイッチ!?

 

武装の高速変換の技術なのだが…彼の変換にはタイムラグが存在しない

量子化が完了した頃にへすでに別の武器が手に収まっていた

 

 

「す、すごい…どうしてそこまでの高速切り替えができるんですか!?」

「高速切り替え?…あぁなるほど、やはり私はほかの人より展開速度が速いようですね…ISに乗っていたわけではありませんが、展開と似たイメージを何度もしたことがあるものでして」

 

 

切り替えていた武装をグレネードランチャーで止め、数発のグレネードをこちらに向けて発射する

ライフルを展開し、牽制と迎撃の為に弾幕を張る

グレネードを誘爆させ、そのまま彼に弾幕を集中させる

 

 

「くっ!やはり簡単に避けることはできませんか…!」

「これでも射撃には自信があるんです!そう安安と躱されちゃったら自信なくしちゃいますよ!」

 

 

結構な弾数が入った手応えがあった

撃ち尽くした弾倉を入れ替えるため、緩急をつけた動きで移動しながらリロードを行う

リロードが完了し、再度射撃を行おうとしたその時、再び眼前にグレネードが迫る

 

 

「ま、またっ!!」

 

 

咄嗟にライフルをぶつけ、盾にする

爆風に煽られ、斜め上に吹き飛ぶ

 

 

「おぉ素晴らしい!今のを回避するとは!さすがはIS学園教員といったところでしょうか?」

「き、キンブリーさん…初めての操縦って嘘なんじゃないですか?」

 

 

実際爆風による衝撃は多く受けているものの、シールドエネルギーの残りは3~4割といったところ

おそらく彼のシールドエネルギーも同程度だろう

だが彼の戦闘技術は初心者のそれとは比べ物にならなかった

油断すれば負ける…それ程の強さだ

 

 

「いえいえ、装着するのも今回が初めてですよ」

「それならさすがに…負けられませんねっっ!!」

 

 

私はそう叫びながらスナイパーライフルを展開し、瞬時加速を使用して接近する

 

 

「なっ!?」

 

 

瞬時にライフルに持ち替えて迎撃を行う彼だったが、その狙いは甘い

ダメージ覚悟で彼に接近しつつ、スナイパーライフルを腰だめで速射する

回避を行わなかったため、かなり被弾したが決定打には足りない

私が放った数発の弾丸が彼のバランスを崩す

その隙に肉迫し、スナイパーライフルを投げ捨て、近接ブレードを展開する

彼も即座にブレードを展開する…が、既にそれは予測していた

 

 

 

 

ガキンッッッ!!

 

 

 

「!?」

 

 

展開された直後の握りの甘いブレードを柄で弾き、ブレードを彼のシールドに突きたてる

 

 

「これでっ!私の勝ちです!!」

 

 

そのまま地表めがけてて最大加速で押し進む

そして勢いを殺すことなく、彼ごとグランドに接触する

 

 

「がっ!…かはっ…!」

 

 

凄まじい砂埃が巻き起こり、彼が地面へ叩きつけられる

 

 

「はぁはぁ…な、なんとか勝てました」

「フ、フフフ……さすがに最後の攻撃は驚きましたね…」

「わ、わ、す、すいません!ちょっとやりす―――――

 

 

 

―――――ですが今の一瞬で止めを刺さなかったのはよくありませんね」

 

 

 

 

警告音が鳴る、その先に意識を向けたとき、既に遅かった

彼の手にはグレネードランチャーが展開され、それがゼロ距離で私に発射された

 

 

 

 

 

ビ―――――――ッ!!

 

 

 

 

 

「試合終了!両者シールドエネルギー0!試合結果、引き分け!」

 

 

 

 

 

 




山田先生との戦闘でした

キンブリーさんがそこそこに強いのはセンスと錬金術師としての処理能力によるところが大きいです
ISは本人のステータスに左右される部分が大きいと感じられる描写が多いので、身体能力、戦闘経験、第六感に優れたキンブリーさんがISを操縦した場合はこの程度の強さはあっていいかなと思った次第

メタルギアごっこによる突き指の痛みは引きましたが、自転車による転倒でこの歳になって膝を擦りむきました…超痛いです(´;ω;`)

次回はすこし遅くなるかもしれません。

コメント、誤字脱字の指摘、ご意見等ございましたら是非お願いします




[壁]д・)チラ



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叫び




遅くなって申し訳ありません
今後もこのようなペースが続いてしまうかもしれませんが、ご容赦を(´・ω・`)

なんかもう一夏もキンブリーもキャラ守ろうと頑張っていたのですが、わからんようなってきた……ので、この際限りなく近い別人として見てくれた方がいいかもしれません。
キャラ崩壊を起こすのは焼酎ご飯がアホなので仕方ないね(゜∀。)






 

 

視線が痛い…なんかもう物理的に痛くなってくるレベルだ

俺こと織斑一夏は絶賛視線の嵐にあっていた

特にそいういったものに敏感というわけではないのだが、さすがに背中全体に突き刺さる視線に気づかないのは鈍感というものだ

 

 

「ツッ」

 

 

何故か窓際のほうから舌打ちが聞こえた気がしたが気のせいだろう…

 

 

何故俺がこのようないたたまれない状況に陥っているのかというと、俺が世界で唯一ISを動かせるということにある…

 

IS学園

俺の幼馴染である篠ノ之箒の姉、篠ノ之束が開発したマルチフォームスーツ『インフィニットストラトス』通称IS

そのISの操縦者や技術者を育成する特殊機関がこのIS学園というわけだ

ISは女性にしか使えない…つまり学園の生徒は全員が女生徒…

俺はそんな中に放り込まれた唯一の男子生徒…

 

 

「はぁ…」

 

 

これは想像以上にきつい…

こと平凡な男子高校生である俺がそんな奇異な視線に耐えられるはずもなく、凄まじいストレスに晒されていた

そのストレスに心が折れそうになっていた俺は、この空間の唯一の救いである幼馴染の箒がいる窓際の席へ視線を向ける

眉をひそめた箒と目が合う…だがすぐに目をそらされてしまう

数年ぶりに再会して孤立無援状態の幼馴染に対してこの反応である…心が折れました

 

気力無く机に突っ伏す…

突っ伏した音に対してまで一々ざわつかれてはそりゃ心も折れよう

 

 

パシュッ

 

 

扉が開く音がしたので顔を上げる

さすがに先生が入ってきてこの態度は失礼だろう

教卓には肩で息をし、額にうっすらと汗を浮かべた眼鏡を掛けた女性が立っていた

 

 

「はぁはぁはぁ……み、みなさんおはようございます!」

 

 

身長が低く、幼い顔立ちをしている

一見すると中学生ぐらいに見えなくもないが…

 

 

「はぁ…ふぅ…今日からこのクラスの副担任になります、山田真耶です!皆さんよろしくお願いします!」

 

 

それにしても…肩で息をしているということもあって…なんていうか…その…下品なんですが…フフ…胸に目が行ってしまいまして…

そんなハッピーマテリアルに目を奪われていると

 

 

―――――くん……織斑くん?」

「…はっはい!?」

 

 

いきなり呼ばれて思わず声が裏返ってしまった

それに対しても周りが若干騒がしくなる…もう後先考えずはっちゃけてやろうかと思うほど精神が落ち着かなくなる

 

 

「あ、あの…大声出してごめんなさい。でも自己紹介が今、『あ』から始まって『お』で織斑くんの番なんだよね、自己紹介してくれるかな?駄目かな?」

 

 

彼女は申し訳なさそうにこちらを覗き込み頼んでくる…眼鏡がずり落ちそうだ

先程までの自分の浅ましい思考も相まって凄まじい罪悪感に見舞われる

 

 

「いや、あの、そんなに謝らなくて大丈夫です…っていうか自己紹介しますんで落ち着いてください」

「ほ、本当ですか?約束ですよ?絶対ですよ!」

 

 

明日にはストレスで頭が真っ白になるか、胃がチーズになっているかもしれない

いつまでも待たせるわけにもいかないので自己紹介をするために、立ち上がって振り返る

ここでしくじればただでさえ厳しい高校生活が灰色通り越して混沌としてしまう

が、今まで背中に突き刺さっていた視線が俺の顔に集中することがわかる………顔に穴が増えそうだ

箒も横目でこっちを見るのなら、さっき目を逸らさないでくれても良かったのに…

 

 

「えっと…織斑一夏です。よろしくお願いします」

「「「…」」」

 

 

もっと喋れという無言の圧力がのしかかる

頭が空っぽになり口がどんどん乾いていくのがわかる

 

 

「あー…えっと…」

 

 

一度深呼吸をして大きく息を吸う…そして

 

 

 

 

 

「以上です!!」

 

 

 

 

 

ドンガラガッシャーン!

 

ドリフのコント並みに盛大にコケる彼女たち…

いくらなんでもそんな音はしないだろうとかなんとか考えていると

 

 

 

ズパァンッ!

 

 

 

頭に凄まじい衝撃が走る

 

俺はこの感覚を知っている!?

 

後方から感じるこのプレッシャーは…!!

 

第六感的な何かが示す後方へ恐る恐る振り返るとそこには

 

 

「フ、フル・フロンt」ズパァンッッッ!!

 

 

あぁ、今のは記憶がいくつかが吹き飛んだな

 

 

「誰が全裸だ、馬鹿者」

「いや、今のは全裸的な意味ではなくて…」

 

 

ギロリッ!

 

 

いやこれ以上はよそう…擬音が聞こえるような睨み方をされては何もできまい…それに色々と危ない気がする

それにしても…なんで千冬姉がここにいるんだ…職業不詳で月一、二回程しか家に帰ってこなかった俺の姉…追求しなかった俺も俺であるが

 

 

「あ、織斑先生。彼の準備はできたんですか?」

「あぁ、山田先生、試験終了早々に向かわせてしまってすまなかったな」

 

 

声のトーンが一気に優しくなる

俺の時との温度差激しすぎなのでは?

 

 

「いえ、副担任ですから、このくらいは頑張っちゃいます!」

 

 

先程までの困り顔はどこへやら、すごくいい笑顔を浮かべる山田先生

うむ、非常に可愛らしい…先刻の自分をぶん殴ってやりたい気分に駆られる…が、もう殴られたから良しとする

 

 

「諸君、私が織斑千冬だ。君たち新人を一年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。 私の仕事は弱冠十五才を十六才までに鍛え抜くことだ。逆らってもいいが、私の言うことは聞け。いいな」

 

いきなり爆弾発言をかます俺の姉、織斑千冬

さぞや怯えた空気が溢れるのだろうと思った次の瞬間

 

 

「「「きゃああああああああああああ!!!」」」

 

 

黄色い声が衝撃波を越しそうなレベルで放たれ、俺の聴覚が使い物にならなくなった

 

 

「千冬様、本物の千冬様よ!」

 

 

………気のせいだった

 

 

「ずっとファンでした!」

「私お姉さまに憧れてこの学園に来たんです!北九州から!」

 

 

随分と人気者の千冬姉…確かに、IS学園の生徒なら、ISの操縦で頂点を極めた人が目の前にいて、この興奮は案外普通なのかもしれない

 

 

「あの千冬様にご指導頂けるなんて嬉しいです!」

 

 

しかし、お姉さま……これはちょっとどうかと思うが、女子高なら普通なのだろうか?

 

 

「私、お姉さまのためなら死ねます!」

 

 

前言撤回、俺の姉に命を捧げようとしている異常な生徒がいます!

所々にやばい発言が飛び交いながら騒ぐ女子たちを、千冬姉は心底うっとうしそうな顔で見る

 

 

「毎年よくもこれだけの馬鹿者が集まるものだ。感心させられる。それとも何か?私のクラスにだけ

 

 

馬鹿者と厄介者を集中させているのか?」

 

 

「きゃああああっ!お姉さま!もっと叱って!罵って!」

「でも時には優しくして!」

「そしてつけあがらないように躾をして~!」

 

 

もうやだこのクラス

 

千冬姉がため息をついて頭を押さえる

俺もこの異常空間にうなだれていると、「ろくに自己紹介もできんのか」とかなんとか言ってまた頭をしばかれた

それで千冬姉と呼んだらまたしばかれたので、そのまま席に突っ伏す

 

 

「ふん…そこに突っ伏しているのもいいが、お前には朗報があるぞ」

「朗報?」

「入れ、キンブリー」

 

 

パシュッ

 

 

千冬姉の声と共に扉が開いたので、そちらに顔を向ける

 

 

すると、俺と同じ白い男物の制服を着た男が入ってくる………男?

 

 

 

「随分と待たせてくれますね…それにしても、なかなか人気なご様子で…これもブリュンヒルデ故ですかね?」

「なんだ、お前も叩かれたいのか?」

「おっとこれはすみませんね」

「まぁいい、さっさと自己紹介しろ」

 

 

男は教卓の横に立つと自己紹介を始める

 

 

「初めまして、ゾルフ・J・キンブリーと申します。見ての通り男ではありますが、ISを起動させてしまったが為に転校してきた次第。ずっと軍にいたため、皆さんの感覚と何かとずれていることがあるかもしれませんが、歓迎していただけるとありがたいです。よろしくお願いします」

 

「…」

 

「おや?何かやってしまいましたかね?」

 

「…お」

 

「お?」

 

「俺以外のお「「「きゃあああああっ!!」」」

 

 

 

 

俺の歓喜の叫びは、女子の黄色い歓声によってかき消された

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

機械的な壁が続く長い廊下を進む

織斑千冬の数歩後ろを歩く

 

ここは教室棟のようで、時折扉の向こうから教員の挨拶や説明の声が聞こえてくる

なるほど、山田先生が急いでアリーナを後にしたのはこれが理由でしたか

 

 

「キンブリー、これは山田先生にも言えることだが、武装を破壊しすぎだ…リヴァイヴのライフル一丁でいくらすることか」

 

 

彼女はこちらに背を向けたまま声を掛ける

 

 

「おや、それは申し訳ありません。あれがベストな対策と考えたのですが…なんなら破壊した武装の金額をお支払いしましょうか?」

「馬鹿言え、個人に支払える額ではない」

 

 

まぁ実際のところは払えてしまったりするんですけどね

 

 

「あぁは言ったものの実際は武装の補充などはスペアが十分に用意されている。それに武装破壊も込にしてお前の操縦・戦闘センスは評価に値する」

「ISに関わる者として、あなたに評価して頂けるのは非常に光栄ですね」

「フン…まぁどう思おうとお前の自由だ…そういえば、お前にはこれを渡しておかなくてはな」

 

 

彼女は立ち止まると、こちらに振り返る

すると一枚の資料のようなものを私に手渡す

それには数値やグラフのような物が無数に記されている

伝達速度…同調率?…それに左上部に大きく”B+”と記されている

 

 

「お前のISに対しての適正判定だ。どれだけISを扱える素養があるかをデータ化させたものだ。先の可動データから算出したものに過ぎない、今後そのランクが変化することも十分にあるということだ」

「B+…これはどれ程の物なんでしょうか?」

 

 

数日前までISに関わることなど予想もしていなかった私にはこのランクが示すところがわからない

 

 

「平均値よりは十分に高い。初めてでそこまでの数値が出るのなら上場だろう…だが、酔うなよ?」

「えぇ、肝に銘じておきましょう」

 

 

戦闘において私が酔うなんてことはないでしょう…

 

 

いや…むしろ常に酔っているのかもしれませんね

 

 

 

「さて、ここがお前のクラスとなるわけだが…」

 

 

教室の前で立ち止まる

液晶のようなクラスボードには1年1組と映し出されている

先程からちょくちょくと思っていたのだが、設備や技術の無駄遣いが半端ではない

道を歩くだけでナビゲートの為かホログラムのような物が現れる…投影ディスプレイのようなものもそこらへんに溢れている……元々別世界の人間としては、先ほどと別の意味で酔いそうなぐらいだ

 

 

「お前にはすこしここで待機してもらう、私が呼んだら教室に入って来い」

「えぇ、了解しました」

 

 

扉が開き、彼女は教室へ入っていく

その際教卓に立つ山田先生と目があったので、先の試験の事も兼ねて軽く会釈する

彼女もにこやかにそれを返す

後で個人的に礼を言っておくとしますかね

そんなことを考えていると

 

 

ズパァンッ!

 

 

壁越しにでも十二分に伝わる凄まじい衝撃音が鳴り響く

その衝撃音を訝しんでいると、突如として教室から絶叫とも取れる黄色い歓声が溢れる

衝撃音からのあの声……一瞬テロかと疑ってしまった

意識を集中させてみると、”お姉さま”やら”千冬様”と聞こえてくる

なるほど、ブリュンヒルデというわけか…

 

 

「私、お姉さまのためなら死ねます!」

 

 

…ん?

 

 

「お姉さま!もっと叱って!罵って!」

 

 

 

 

「でも時には優しくして!」

「そしてつけあがらないように躾をして~!」

 

 

…ドン引きである。

 

聞こえてくる千冬に対する声は、もはや崇拝と言っても遜色のないそれだった

もはやブリュンヒルデの一言で片付けられるものではない異常なカリスマだ……初見で見せたあの雰囲気もそうだが、彼女は異質な何かが備わっているのだろうか…

 

…それとも女生徒が異常なだけなのか…

 

いまだ黄色い歓声が続く中、先ほどのような衝撃音が二度、三度と鳴り響、教室内の声が止む

 

 

「入れ、キンブリー」

 

 

千冬の声にしたがい扉の前に立つ

正直な話あまり入りたいと思わないが…こればかりは仕方ない

自動ドアが開き、教室内の視線が自分の顔に集中することがわかる

一見先ほどのような狂言を放つような女生徒がいるようには見えないが……!

視線の一つに、かの一人目の男、織斑一夏を見つける…私を見て口を開いたまま唖然としている

二人目がいることを知らされていないのなら当然の反応なのだろうか?

 

 

「随分時間がかかりましたね…それにしても、なかなか人気なご様子で…これもブリュンヒルデ故ですかね?」

「なんだ、お前も叩かれたいのか?」

「おっとこれはすみませんね」

 

 

イラついた様子で軽く睨まれる

さすがは戦いの女神…これは怖い

 

 

「まぁいい、さっさと自己紹介しろ」

 

 

自己紹介をするために教卓の横に立つ

山田先生がニコニコとこちらを見つめる

千冬とは大違いである

 

 

「初めまして、ゾルフ・J・キンブリーと申します。見ての通り男ではありますが、ISを起動させてしまったが為に転校してきた次第。ほとんどの時間軍にいたため、皆さんの感覚と何かとずれていることがあるかもしれませんが、歓迎していただけるとありがたいです。よろしくお願いします」

「…」

 

 

反応がない…

これは…なんとも居心地が悪い…

 

 

「…お」

「お?」

「俺以外のお「「「きゃあああああっ!!」」」

 

 

織斑一夏が何か言った気がしたが、女生徒の黄色い歓声が巻き起こす爆音によってかき消された

…私は何をしてしまったのだろうか?

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「えーと、キンブリー…で、いいか?」

 

 

SHR終了直後、織斑一夏は助けを乞うかのように自分と唯一の同性であるキンブリーにさっそく話しかけていた

こんな男女比の環境の中では当然の判断である

 

 

「えぇ、かまいませんよ。あなたは織斑一夏で間違いありませんね?」

「おう、織斑一夏だ。一夏って呼んでくれ、改めてよろしく!それと別に敬語じゃなくてもいいぞ?」

「こちらこそよろしくお願いします。この口調は癖のようなものなので、お気になさらず」

「なんかむず痒いけど、それなら仕方ないな…それにしても、ほんとお前が来てくれてよかった!こんな環境で三年間男一人だったかもしれないと考えただけでぞっとする」

「えぇ、私もあなたがいてくれて幾分か気が楽ですよ……しかし…我々が喋っているだけですごい注目度合いですね」

 

 

一夏と私が会話している現在でもあたりからヒソヒソと話し声が聞こえていた

 

 

(ねぇねぇ、織斑くんとキンブリーくんどっちが好み?)

(私は織斑くんかな~)

(私は断然キンブリーくんね!!)

(ちょっと私話しかけてこよっかな)

(あ、ちょっと抜けがけする気!?)

(奴を取り押さえろ!!)

(ぶえぁ!ちょ!おま、まっ!)

 

 

という具合に色々と聞こえていた

あながちハルフォーフ大尉が言っていたことはあっているかもしれませんね…

 

 

「そうだな…みんな俺たちの方見てなに喋ってんだろうな?」

 

 

割と聞こえる距離なのだが…彼は耳が腐っているのだろうか?

 

 

「まぁ仕方ありませんよ…我々は今世界で最も注目されている存在ですからね」

「それもそうか…まぁその内この視線もなくなるだろ!それよりお前のこと―――――

 

―――――ちょっといいか?」

 

「む?」

「ん?…やっぱ箒だよな?」

「…すまんがこいつを借りたい、問題ないな?」

 

 

黒髪のポニーテールの女子がそう私に問う……”箒”…なるほど、どこかで見た顔だと思ったら妹の”篠ノ之箒”でしたか

 

 

「えぇ、構いませんよ”篠ノ之さん”」

「…すまんな…一夏、ちょっと出るぞ」

「お、おう…それじゃぁまたなキンブリー」

 

 

一夏は半ば強制的に篠ノ之箒に連れられ教室を後にした

さて、男一人になってしまった私にはこの空間が相当に居心地が悪い……気を紛らわす意味も込めて、先ほど配布された教科書に目を通そうと本に手を伸ばすと

 

 

「ゾルっちー、ゾルっちの手に描いてあるそれってなにー?」

 

 

…それは私のことだろうか

声の主であるダボ付いた袖の制服を纏った少女が、私の机の端に手を置いてこちらを覗いている

…多分私のことなのだろう

 

 

「これはなんと言いますか…ファッション的なものだとお考え下さい」

「ほへー、ゾルっちはおしゃれさんなのかー」

「そのゾルっちというのは?それと、失礼ですが私はあなたの名前を知らないもので」

「私はねー布仏本音っていうんだよー。ゾルっちっていうのはあだ名だったんだけど、ダメだった?」

 

 

なんというか、制服の着こなしや、雰囲気から小動物のようなオーラを感じる女性だ

それにしても、私にあだ名を付けるとは…

 

 

「…まぁいいでしょう、あだ名をつけられるのは初めての経験ですが、あなた個人が呼ぶ分には問題ありません。よろしくお願いしますね、布仏さん」

「うん、よろしくー!」

 

 

私が手を出すと袖越しに握手を返してくる

気にするほどではないが、それでいいのか…

 

 

「それでは次の質問です!ゾルっちの名前の”J”ってなにー?」

「申し訳ありませんが、それだけはお答えできません」

「え~なんでー?」

「はい!次の質問!キンブリーくんって何処の国の人?」

 

 

気がつけば女生徒が二人ほど増えていた

質問してくるのはいいが、まずは名乗って欲しいものだ

 

 

「一応ドイツ出身ということになっています。軍というのもドイツ軍です」

「いつISが動かせるってわかったの?」

 

 

などっといった具合にその三人から繰り出される質問に私が答え、周りの生徒がそれを聞き入るという謎の空間が形成され、一時限目の休み時間は終了した

 

 

 

 

 







生傷の絶えない焼酎ご飯です。
のほほんさんに付けられたあだ名……思いつかなかったから仕方ないよね\(^o^)/
もし何かいいあだ名あったら教えてほしいですw

最近帰路で赤いラピートを発見しました…だからどうということはありませんがね(´☉ω☉`)

今回も誤字脱字の嵐かもしれませんが、友人三人に見てもらって投稿しているので、私じゃなくてそいつらが悪いのですʅ( ´◔‿ゝ◔`)ʃ=3

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傲慢

生傷が絶えない私、焼酎ご飯です
さかむけをほっといたら悪化して大変なことに(>_<)


そしてまたまた遅れてしまいました
ごめんなさい(´;ω;`)


今回もあまり話は進みませんが、ご容赦を






 

―――――というわけで、ISの基本的な運用は現時点で国家の認証が必要であり、枠内を逸脱したIS運用、例えば無許可でISを起動したりした場合は、刑法によって厳しく罰せられます。そしてそれらは―――――」

 

 

 

山田先生がブラックボードの投影モニターを指しながら、教科書を解説していく

授業内容の教科書を開き、その話に耳を傾ける

ISの運用方法や目的等といった初歩の部分だが、さすがに専門知識ということだけあって聞きなれない言葉が多い

ISに携わっていない一般人にとっては、なかなか難しい話になるのかもしれない

現に顔面蒼白で挙動不審な一夏の姿が視界の隅に捉えられる

おそらく理解できていないのだろう…だが聞きなれないと言っても、参考資料や山田先生の話す内容を聞いていて理解できないというのはどうなのだろうか?

彼女の授業は要点がよくまとめられており、非常に理解しやすいはずなのだが…

 

 

「…ふぅ」

 

 

私はそんなことを考えながら今日配布された五冊の教科書の内三冊を読み終える

 

 

「キンブリーさん?別の教科書も開いているみたいですけど、今の部分大丈夫ですか?」

 

 

山田先生が不安そうにこちらに訪ねてくる

確かにこの態度は授業を聞いているようには見えませんね…

 

 

「む?これはすみません。少し気になるところがあったもので…ですが授業の方は問題ありませんよ」

 

 

一瞬期待を秘めた目で一夏がこちらを見てきたが、その目からは一瞬で光が失われる

一体どうしたというのだろうか?

 

 

「そ、そうですか!よかったです…え~と、織斑くんは大丈夫ですか?」

「あ、えっと…」

 

 

視線を落として冷や汗を流している

 

 

「わからないところがあったら訊いてくださいね。なにせ私は先生ですから!」

 

 

彼女は”先生”と強調することが多いが…

 

 

「せ、先生!」

「はい、織斑くん!」

 

 

なるほど、教師として頼られたいようですね…

 

 

「その…ほとんど全部わかりません!」

「え……ぜ、全部、ですか…?」

 

 

だが肝心の頼ってくる生徒がこのザマでは

彼女の顔が若干引きつることがわかる 

 

 

「え、えっと…織斑くん以外で、今の段階でわからないっていう人はいます…か?…いたら正直にお願いします」

 

 

無論誰ひとりとして挙手することはない

IS学園を目指す時点でこれぐらいわからなくては話にならない

 

 

「…織斑、入学前の参考書は読んだか?かなり早期の段階で送られていたはずだが?」

 

 

教室の端で控えていた千冬が尋ねる

そう、参考書にさえ目を通していれば理解できないはずがないのだ

 

 

「えーっと…あの分厚いやつですか?」

「そうだ、必読と書いてあったはずだが?」

「あの、古い電話帳と間違えて捨てました」

 

 

ズパァンッ

 

 

再びあの衝撃音が響き渡る……あれほどの勢いで何度も殴りつけて壊れない出席簿…一体どんな素材で出来ているのやら

そして電話帳と間違えるということは、そんな化石のような代物が現役で使われているということなのだろうか?

それに古い電話帳と言っているのに、新しい参考書と間違えるあたり、もはや摩訶不思議である

 

 

「あとで再発行してやるから一週間以内に覚えろ。いいな」

「い、いや、一週間であの厚さはちょっと…」

「やれと言っている……因みに、キンブリーはISを動かしてから1週間経過していない…お前でもこの意味はわかるな?」

 

 

クラスの視線が再び私に集まる

私のことを引き合いに出さないで欲しい…

面倒事に巻き込まれるのは勘弁である

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

授業が終わり休み時間

 

 

「頼むキンブリー、俺にISの勉強教えてくれ!」

 

 

案の定面倒なことになった

 

 

「嫌です面倒くさい煩わしい」

「全力否定かよ!俺なにかした!?頼む!なんでもするから教えてくれ!」

 

(ん?今何でもするって…)

(来たわ!!新作ゾル×いちよ!!イイ!実にいい!)

(やべぇよ…やべぇよ…新作オナシャス!!)

(あのさぁ…あんたらいい加減自重しろよ?あ、でも完成したら言い値で買おう)

 

 

何故かはわかりませんが異常に背筋が冷たくなる何かが聞こえたような…

 

 

「あなたにできることなんてたかが知れていますよ…そもそもあなたがどうとかではなく、実際のところ暗記ですからね、私が教える教えないの話ではないんですよ」

「そうなのか?でも一週間かからずに覚えたんなら何かコツとかあるんじゃないのか?あと何げにひどいこと言うなぁおい」

「ありませんよそんな物…強いて言うなら根気ですかね?」

 

 

まぁ実際のところは記憶力の違いなんでしょうが、多少なりとも根気がいるので嘘ではない

 

 

「根気か~…頑張るしかないのか…」

「ちょっとよろしくて?」

 

 

突然一夏の後方から声が聞こえる

声の主を視界に入れる

ロールのかかった鮮やかな金髪の女性がこちらに目を向けている

その目は見下しているように見え、威圧的なものを感じる

おそらく…エンピオ大尉が嫌うようなタイプの人間だろう

 

 

「訊いています?お返事は?」

 

 

予想通り、無駄に高圧的な態度で話しかけてくる彼女

 

 

「あ、あぁ、訊いてるけど……どういう要件だ?」

「何か御用ですか、セシリア・オルコットさん?」

 

 

セシリア・オルコット…イギリスの代表候補生にして、専用機を与えられている言わばエリート

そんな彼女ならこのような態度をとるのも頷ける…もしかしなくとも我々が目障りなのだろう

 

 

「あなたはゾルフ・J・キンブリーさんでしたね…あなたはまともそうですわね。それに比べてあなたは…」

 

 

彼女は一夏を品定めするかのようにジロジロと見る

 

 

「なんですの、そのお返事!わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるんではないかしら?」

 

 

一夏の顔が若干引きつっている

それもそうだろう。女尊男卑の社会が蔓延しつつあるとはいえ、初対面でこのような態度をとられれば、誰だって良い気分ではないはずだ

 

 

「…悪いな。オルコットさんだっけ?俺、君が誰だか知らないし」

「わたくしを知らない?このセシリア・オルコットを?イギリスの代表候補生にして、入試主席のこのわたくしを!?」

「おう…あ、質問いいか?」

「ふん、下々のものの要求に応えるのも貴族の務めですわ。よろしくてよ」

 

 

ノブレス・オブリージュを語るにしては無駄に高圧的である

もうここで話さないでほしい…無駄に巻き込まれている私はたまったものではない

そして一夏が何かぶっこみそうな気配が…

 

 

「代表候補生って、何?」

 

 

がたたっ

 

 

聞き耳を立てていた女生徒の数名が体勢を崩す

その気持ちも解らなくはない

ここまで無知というのはもはや笑えてくる始末だ

 

 

 

 

「あ、あ、あ…」

「『あ』?」

 

 

 

 

 

「あなたっ、本気でおっしゃってますの!?」

「おう知らん」

 

 

これがおちょくっているのなら相当高レベルな芸当なのだが、彼は大真面目で言っているのだろう

オルコットが凄まじい剣幕で一夏に詰め寄っている

自分が代表候補生であると高らかに言い放っておいて、相手がそれすら知らない男だったのだ。まぁ仕方のない反応だ

 

 

「一夏、代表候補生というのは、実戦データの取得や操縦技術の向上などを目的としてあらゆる訓練を積んだ国家代表IS操縦者の候補生のことです」

「んん?つまり…どういうことだってばよ!?」

「国を代表するIS操縦者になるかもしれないエリートのことですよ…単語から想像ぐらいはできるのでは?」

「そう!エリートなのですわ!」

 

 

なにやら気力を取り戻した様子で、胸を張って声を上げる

 

 

「本来ならわたくしのような選ばれた人間とは、クラスを同じくすることだけでも奇跡…幸運なのよ!そのような現実をもう少し理解していただける?」

「へ~そうなのかキンブリー?」

 

 

同性が私しかいないというのはわかるのだが、一々面倒なタイミングで私に話をふらないで欲しい…

 

 

 

 

…だが…ここで思い上がった傲慢な彼女に頭を垂れる義理もない…

 

 

「いえ、そうでもありませんよ?確かに代表候補生ともなれば人数も少ないのは確かですが、他のクラス、他の学年にも代表候補生はいます。希少性だけで言うなら我々男性操縦者の方が余程重要と言えますよ。セシリア・オルコットさん、幸運なのはあなたの方なのではないでしょうか?」

 

 

「な!くっ…あなたも私にっ…!ま、まぁいいですわ貴族にはそれを許す度量も求められますし…それに私は優秀ですから、貴方達のような人間にも優しく接してあげましてよ?ISのことでわからないことがあれば、まぁ泣いて頼まれたら教えて差し上げてもよろしくってよ。何せわたくし、入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですから」

 

 

ほぅ…あのレベルの操縦者を打ち負かすとは…自惚れでは無いようですね…

 

 

「入試ってあれか?IS動かして戦うってやつ?」

「それ以外に入試などありあませんわ」

「あれ?俺も倒したぞ、教官」

「は…?」

「ほぉ、それはすごいですね…あなたもISを動かして日が浅いはずなのに、随分とやるようで」

 

 

頭は残念かもしれませんが、教官を倒すとは…天才というやつですかね?

 

 

「いや、たまたまなんだけどな。キンブリーはどうだったんだ?」

「残念ながら、私は引き分けでしたよ」

「わ、わたくしだけと聞きましたが?」

「どうやら教官を倒したのは”女子”ではあなただけの様ですね…セシリア・オルコットさん?」

「あ、あなたまでそういう態度をとりますのね!?」

「おいおい、落ち着けよ、な?」

「これが落ち着いていられ―――――

 

 

―――――キーンコーンカーンコーン

 

 

授業開始を告げる鐘が鳴り、彼女の言葉は遮られる

 

 

「おや、授業開始ですよセシリア・オルコットさん?席に着いた方がよろしいのでは?」

「っ…またあとで来ますわ!逃げないことね!よくって!?」

 

 

まるで三下のようなセリフを並べて自分の席へ戻っていく彼女の様は、見様によってはなかなかシュールなものだった

 

 

「それではこの時間は実戦で使用する各種武装の特性について説明する」

 

 

三時間目が開始され、一、二時間目と違い、織斑千冬が教壇に立っている

なかなか興味深いタイトルである分、それなりに期待できる

 

 

「あぁ、その前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな」

 

 

さもたった今思い出したかのように話し始める織斑千冬

演技にしても胡散臭すぎる

 

 

「クラス代表者とはそのままの意味だ。対抗戦だけではなく、生徒会の開く会議や委員会への出席…まぁクラス長だな」

 

 

なるほど、対抗戦というのはなかなかに興味が惹かれますがその他もろもろが非常に面倒だ

 

 

「ちなみにクラス対抗戦は、入学時点での各クラスの実力推移を図るものだ。今の時点でたいした差はないが、競争は向上心を産む。一度決まると一年間変更はできないからそのつもりでな。なお自薦他薦は問わない…無論他薦された者に拒否権はない」

 

 

彼女は何を言っているのだろうか…?一年間変更はできない上に、重要な事柄であるにも関わらず、実力も何も判明していないこの段階で、推薦で決定するなど…

これは非常にまずい。男である私は見世物的には格好の的…ならばここは…

 

 

「織斑先生」

「なんだキンブリー」

「織斑一夏をクラス代表に推薦します」

「なっ!?裏切ったな…キンブリィィィィィ!!」

 

ズパァンッ「ウボァッ!」

 

「黙れ…それで?理由はなんだ?」

「…あまりやりすぎると弟がパンチドランカーになりますよ?…まぁいいです。理由というのは先ほどの時間に聞いた話によると、彼は教官を倒したとの事で…それなら同じ男である私と比べて十二分に優れているということになります。クラスの代表を務めるのでしたら彼のほうが適任でしょう」

「あ、私も織斑くんを推薦しまーす!」

「私も!」

「はいはい!私も!」

 

 

といった具合に一夏を生贄に推薦されにくい空気を作り出すことに成功した私です

 

 

(私キンブリーくん推薦しようと思ってたんだけどな~)

(私もそうなんだよね~)

 

 

空気の読める人たちでよかったです

 

 

「ちょっとまったぁぁぁ!!それなら俺はキンブリーを推薦する!」

 

 

一人まるっきり空気が読めていない生贄、パンチドランカー一夏が叫ぶ

 

 

ズパァンッ「もっと静かにできんのか」

 

 

そしてシナプスの破壊は加速する

 

 

「痛って~…何はともあれ俺はキンブリーを推奨する!!」

「そうか…とりあえず聞いてやるが、理由はなんだ?」

「俺のゴーストがそう囁いている」

 

 

もう彼の頭は物理的に計り知れない状態に陥っているのかもしれませんね

 

 

「私もキンブリーくんを推薦します!」

「わたしもキンブリーくんのほうがいいと思います!」

 

 

生贄ドランカーの余計極まりない発言により、私まで推薦されてしまう始末

 

 

「ふむ、他に意見は無いのか?自薦他薦問わん」

「待ってください!納得がいきませんわ!」

 

 

机を勢いよく叩き声を荒らげて立ち上がったのは、セシリア・オルコット

 

 

「そのような選出は認められません!大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ!わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」

 

 

彼女の考え方としては黙っているわけにもいかないのだろう

だがよくもまぁ衆目でここまで言えるものだ

 

 

「実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然…それを物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります!わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!」

 

 

日本人であるブリュンヒルデやクラスメイトに向けて言っていると考えるのであれば、最早ギャグの域である

彼女が身体を張って笑いを取りに来ていると考える方がまだ自然とい言えるぐらいに彼女の発言は支離滅裂である

 

 

「いいですか!?クラス代表は実力トップがなるべき、そしてそれは私ですわ!大体、文化として後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、私にとっては耐え難い苦痛で―――――

 

 

「イギリスだって大してお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」

 

 

彼女の罵詈雑言に一夏が口を挟む

その気持ちもわからなくもない…彼女の発言は破綻しており、IS操縦者であるにも関わらず、日本を後進国と罵る始末

だが一夏のその発言はこの場においては非常によろしくない

 

 

「あっ、あっ、あなたねぇ!私の祖国を侮辱しますの!?」

 

 

予想に則し、彼女の怒りのボルテージは一気に跳ね上がる

それにしても…侮辱…彼女にはその言葉の意味をもう一度よく考えて欲しい

 

 

バンッ「決闘ですわ!」

 

 

再度机を叩き声を張る

ほぅ、決闘…ですか

 

 

「おう、いいぜ。四の五の言うよりわかりやすい」

「言っておきますけど、わざと負けたりしたらわたくしの小間使い…いえ、奴隷にしますわよ」

「侮るなよ。真剣勝負で手を抜くほど腐っちゃいない」

「そう?何にせよちょうどいいですわ。イギリス代表候補生のこのわたくし、セシリア・オルコットの実力を示すまたとない機会ですわね」

 

 

決闘を申し込んでおきながら、奴隷やら何やらと…彼女の発言は一々引っかかるものがある

戦いをなんだと思っているのだろうか

 

 

「ハンデはどのくらいつける」

「あら、早速お願いかしら」

「いや、俺がどのくらいハンデつけたらいいのかなーと」

 

 

ツッコミどころは多々あるが、真剣勝負と言っておきながら、彼は早速何を言っているのだろうか

そしてクラスからドッと爆笑が巻き起こる

 

 

「織斑くん、それ本当に言ってるの?」

「男が女より強かったのって、大昔の話だよ?男と女で戦争になったら三日も持たないよ」

 

 

…クラスの人間は本気で笑っている

 

 

「…何を馬鹿な」

 

 

今の今まで沈黙を守っていた私だったが、あまりに馬鹿馬鹿しく、つい口を突いてしまった

 

そしてそれこそが大きな失敗だった

 

 

「ほぅ、キンブリー、お前はなぜそう考える」

 

 

聞こえるような声量ではなかったはずなのだが、織斑千冬は私に問う

この兄弟は私を巻き込まなければ気がすまないのだろうか?

彼女の声にクラスの人間の注目が集まり、仕方なく口を開く

 

 

「いえ何、簡単なことです。我々はISを使用できます。その時点で土俵は同じです。それに強さで語るのであれば、ここにいるほとんどの人間は今ISを使用できるわけではありません。そうなってしまえば、単純に腕力だけというわけではありませんが、私はここにいる全員を相手取って勝利することも容易いでしょう。まぁ生死は問えませんが…」

 

 

静まり返るクラスの中私の声だけが響く

 

 

「それに戦争という点で考えるのであれば、それもまた単純です。いくらISと言えど、世界中の軍事兵器を相手取って生き残ることは難しいでしょう。最強の兵器と言えど、それを操っているのは人間です。ISに精神サポートがあるとは言え延々と続く戦闘で精神、肉体を持続させることは、一部の人間を除いて不可能です。そうなれば直接ダメージを与えずとも、人は簡単に壊れます。私はそういう壊れた人間を何人も見てきましたしね。国家間の戦争となれば別ですが、男女間の戦争となれば、未だ軍事の8割以上を握っているのは男性です。それらのことを考慮すると、一概に男性が弱いとは言えないのでしょうか?まぁあくまで一個人の意見ですが…」

 

 

我ながら随分と饒舌になってしまった。

クラスはなんとも言えない空気に包まれている

 

 

「なるほど、なかなか良い意見だ。今聴いた通りだ、今ここにおいては男も女も関係ない。それにお前たちが強さを語るなど何の意味も持たん。ハンデだなんだのとくだらん事はナシだ。お前たちは一週間後の月曜。放課後、第三アリーナで行う。織斑とオルコット、そしてキンブリーはそれぞれ用意をしておくように」

「おや?私も戦う事になっているんですか?」

 

 

ちらりと千冬へと視線を向ける

相手はにやりと笑みを浮かべ

 

 

「無論だ。お前も推薦されている身だなんだ、戦わないでいい理由は無いだろう」

「フフフ…それは僥倖です。これだけ早期にまたISで戦えるのなら、喜んでお受けいたしましょう」

「ふん、そのうすら笑いもいつまで持つか見ものですわね」

 

 

自分が笑みを浮かべていたことをその言葉で初めて気づく

先ほどの発言もあり、苦笑いでこちらを見る生徒がチラホラと…

当のセシリア・オルコットはというと、憎らしそうにこちらを睨んでいる

 

 

「織斑とキンブリー、お前たちのISについてだが、織斑、お前のISは準備まで時間がかかる」

「へ?」

「予備機がない以上、学園側で専用機を用意することになった」

「せ、専用機!?一年のこの時期に!?」

「それって政府から支援が出てるってこと…」

 

 

まぁ男性操縦者という時点で、専用機を与えられるのは普通でしょう

しかし彼女たちにとっては専用機とは憧れのようなもの…そう考えると、我々が以下に優遇されているのかがわかるというものだ

 

 

「"と"ってことはキンブリーくんにも専用機があるの?」

 

 

どこからともなく質問が飛んでくる

 

 

「えぇ、本国の企業から与えられています。まぁロールアウト前ですが」

「そのISについてだが、明日の放課後学園に到着することになっている。キンブリー、お前は時間を開けておくように」

「おぉ!ついにあれが完成したのですか!!これは楽しみですね!!」

「それを聴いて安心しましたわ。まさか訓練機で対戦しようとは思っていなかったでしょうけど」

「えぇ、私も全力で挑めることを喜ばしく思いますよ」

「全力で挑んだとして、勝負は見えていますけど?流石にフェアで戦っていただかないと、わたくしもやりがいがありませんわ」

 

「えーと…盛り上がってるとこ悪いんだが…専用機ってそんなにすごいことなのか?」

 

 

ガタタッ

 

 

生徒の数人がリアクションを取る

毎度のことながら、示し合わせたかのような反応だ

 

 

「教科書6ページ…音読しろ」

 

 

出席簿で肩を叩きながら織斑千冬が呆れたように指示する

一夏は教科書を読み上げ、ISの重要性を再確認する

…まったくもって今更である

 

 

「あの、先生。篠ノ之さんって、もしかして篠ノ之博士の関係者なんでしょうか…?」

 

 

一人の生徒が問を投げる

先の朗読で上がった篠ノ之束、こんな珍しい苗字の生徒がIS学園にいようものなら、いやでも気に止まるだろう

 

 

「そうだ。篠ノ之はあいつの妹だ」

 

 

…彼女は教師としての自覚はあるのだろうか?

彼女のその返答により、篠ノ之箒は凄まじい質問攻めにあっていた

こうなることも予想できただろうに、彼女は何を考えて公言したのだろうか?

 

 

そして…

 

 

 

 

「あの人は関係ない!」

 

 

 

 

その叫びに教室内が一瞬、水を打ったかのように静まり返る

 

 

「…大声を出してすまない。だが、私はあの人じゃない。教えられるようなことは何もないんだ」

 

 

稀代の天才科学者と比べられてはたまったものではないだろう

それを察してかは分からないが、問を投げかけていた生徒たちは身を引いていく

 

 

「さて、授業をはじめるぞ。山田先生、号令」

「え、あっはい!」

 

 

それにしてもこの教師、自由に泳ぎすぎである

山田先生に全て任せておいたほうが幾分かましなのではという考えにふけりながら時間は過ぎ、その授業は終了した

 

 

 




なかなか話が進まなくてごめんなさい…(´-﹏-`;)


別にTRPGで遊んでたとかそんなんじゃないんだからね///!!


以前からコメントであったセシリアさんが初登場したわけですが、皆さんのコメントにある期待が怖いです((((;゚Д゚))))


私は関西人なわけですが……セシリアの”ですわ”口調を、文章にしてしまうと、関西弁で脳内されてしまいます…この感覚が分かる人は少ないのかな?


今回も誤字脱字の嵐かもしれません…


コメント、感想、誤字脱字の指摘、ご意見等ございましたら是非お願いします


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休息


生傷の絶えない私、焼酎ご飯です
でも今週は怪我してません


ごめんなさい、遅れた挙句に全然話が進みません(>o<)
あと登場時間が短いキャラに関しては、色々と皆さんのイメージに合わないキャラになっているかもしれませんが、あしからずm(_ _)m


作中、別の漫画などの名前が登場するかもしれませんが、名前や容姿だけですので、お気になさらず(`・ω・´)





 

初日のカリキュラムが消化され、現在は放課後

授業で使用した教科書などをしまいながら、帰り支度をする生徒が多く見られる

だが私が晒されている状況は好転することはなく、むしろ授業が終了したことによってより多くの人がこのクラスの前に集まっていた

特にリアクションを起こすこともなく教科書をしまっていく

 

 

「な、なぁキンブリー…お前本当にこんなややこしい授業の内容がわかるのか?」

 

 

先程まで泥のように机に項垂れていた一夏が、ゾンビのような足取りで私のもとまでやってきた

 

 

「えぇ、授業を受ける限りは全く問題ありませんでしたよ?」

 

 

その言葉に物理的に数センチほど沈んだように見えた

 

 

「やっぱり知識もつけておかないと勝てないだろうし…今日から地獄か…」

「この短期間で勝つことを考えるのであれば、知識より技術を磨く方が効率がいい気がしますが?それにしても自信がないのにも関わらず、よくあそこまで啖呵をきれたものです」

「うぐっ…でもあそこまで自分の国のことを馬鹿にされたら誰だって我慢できないだろ…キンブリーって軍人なんだろ?それならそういう気持ちはわかるんじゃないのか?」

「私はそういうことに関してはあまり考えを持っていません。まぁお互い頑張りましょう」

 

 

実際のところ私は自国?にそこまで思い入れもないので肯けない

この世界に来る前から、私は愛国心など持ち合わせたことがなかった

 

 

「あっ、織斑くんにキンブリーさん。まだ教室にいてくれてよかったです」

 

 

国とは何か…などという不毛な考えを起こそうとしていると、山田先生がこちらへ小走りにやってくる

 

 

「おや、山田先生。どうかしましたか?」

「えっと、寮の部屋がとりあえず決定したので、これを渡しにきました。はい、キンブリーさんと、織斑くん」

 

 

そう言うと彼女は我々に部屋番号の書かれた紙とキーを手渡す

そういえば、今日から私はここの寮で暮らすんでしたね…

あぁ…寮で爆発事故が起きたりなんかすれば、ここで住まなくてよくなったりしませんかねぇ…

 

 

「あれ?先生、俺の部屋は決まってないんじゃなかったですか?前に聞いた話だと、一週間は自宅から通学することになっていたような気がするんですが?……ってキンブリーはなんで普通に鍵を受け取って教室を出ようと扉に手をかけているんだ?」

「あ!キンブリーさんまだ連絡事項あるので行かないでください!えっと…それで、織斑くん、事情が事情ですので一時的措置として部屋割りを無理やr…空きがあったので、そこに入ってもらいます。政府からの特命ということもあって、寮に入ってもらうことを最優先にしたみたいです」

 

 

男性操縦者に対しては妥当な措置だろう

だが事前に伝わっていないというのはどういうことなのだろうか?

依然として扉に手をかける私だが、何故か開かない。立て付けが悪いのだろうか?

 

 

「はぁ、なるほど…それで、部屋は分かりましたけど、荷物に関しては一回家に帰らないと準備できないですし、今日はもう帰っていいですか?」

「あ、いえ、荷物なら―――――

「私が手配しておいた。ありがたく思え。キンブリー、お前には荷物が届いている。後で職員室に来てもらう…というかお前は山田先生が話しているのに何故扉に手をかけている?」

「なんといいますか、ちょうど手が掛けやすかったので…して、荷物ですか?」

「詳細は来てから確認しろ。織斑、お前の荷物だが、生活必需品があれば十分だろう」

「ちふ…えっと…織斑先生、本当に必需品だけですか?」

「当たり前だ。ここは学び舎だぞ?それ以上のものなどいらんだろう。そもそもお前は勉学以外にかまけている時間など無いはずだが?」

「う~ん…それもそうだな!よ~し、これからの寮生活が楽しみで仕方ないな~♪」

「お、織斑くん!動作と言葉が合っていませんよ!?」

 

 

壁に手をつき項垂れる一夏…

負のオーラをまき散らしながら声高らかに話す姿はまさに矛盾を体現しているかのようだ

 

 

「放っておけ山田先生…キンブリー、お前は今からついてこい」

「了解しました。それでは一夏、また後ほど」

「キンブリー、ちょっとぐらい励ましてくれてもいいんじゃないか?」

 

 

男が何を気持ちの悪いことを言ってくれているのだろうか

 

 

「え、えっと織斑くん、そんなに気落ちせずに頑張ってください!困ったことがあったらいつでも頼ってください!私は先生ですから!」

「うぅ…涙がちょちょ切れるぜ…俺の味方は先生だけだ~!」

 

 

後方で泣き叫ぶ一夏に若干引きながらも、教室を出た織斑千冬の後に続き、教室を後にする

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「なんですか?…コレ」

 

 

さして時間がかかることもなく職員室前に到着したのだが、今私の眼前にはダンボール箱が軽くそびえている

織斑千冬に待機を命じられ数分間待っていると、作業着を着た男性が私の背丈ほどに積み上げられたダンボールを台車に乗せて運んできた

何らかの備品を運んでいるのだろうと思ったのだが、そのダンボールは私の手前で止まった

まったくもって心当たりのない荷物に疑問を覚える

 

 

「ご苦労様です。あとは運ばせますので…」

 

 

用務員と思われる男性はその場を去り、奇妙なダンボールが残される

 

 

「私が持参した荷はカバンに収まっていますし、軍から何か寄越すような報告は受けていません……送り主は誰ですか?」

「黒兎部隊、クラリッサ・ハルフォーフとなっている…なんだ、ハルフォーフと知り合いなのか?」

 

 

ハルフォーフ大尉が?

 

 

「えぇ、最近お仕事で一緒になったもので…そういえば黒兎隊とあなたには関わりがありましたね」

「む、大佐ともなれば知っていて当然か…まぁ奴とは知らない仲ではない…話を戻そう。この荷物についてだが、悪いが学園側として中身を検めさせてもらった」

 

 

中身がわからない以上、見られてどうこうというものでもない

そもそも、私はこの世界で見られて困るようなものはない…強いて言うなら術を発動した瞬間ですかね…それですら、一度見られた程度では困りませんが…

 

 

「それにしてもハルフォーフめ…なかなかにいいものを選ぶものだ………キンブリー、飲まれるなよ?」

 

 

彼女は不敵な笑みを私に向ける。

飲まれる?物理的な話でない限り、私が何かに飲まれるなんてことはそうそうあるはずがありませんが…いけませんね、嫌なことを思い大してしまった

 

 

「よくわかりませんが、中身は一体何です?飲まれる…ということはアルコールの類ですか?」

「未成年が何をほざいている…あぁ、そういえばドイツは16から飲めるんだったな。だがここは日本だということは忘れるなよ?」

「えぇ、わかっています。もとより私は酒はあまりたしなみませんので」

「そうか、それはそれで残念な気がするがまぁいい…荷物についてだが、開けてみればわかる。おそらくその方がわかりやすいだろう…お前の趣味に合うかは知らんが、これを知らないままに人生を過ごすのは損しているとだけ言っておこう」

 

 

教師が未成年に対して残念とは何を言っているのやら

しかし…話だけを聞いていると、荷の正体が危ない何かに聞こえてしまわなくもないが…

 

 

「…よくわかりませんが、あなたがそこまで言うんです。中身は自室まで楽しみにしておきます」

 

 

終始中身の見当がつかないままに職員室を後にする

これだけの量のダンボールを運ぶにあたって、やはり台車は必要不可欠であって…それを押している私の姿というのは、なかなかに滑稽なものなのだろう…

自室に向かう道すがら、異常なまでに注目を集めてしまっている私なのだが、一日にしてこの程度の衆目には慣れてしまった。人間なれとは恐ろしいものだ…このままエスカレートすれば、人前でうっかり錬金術を使ってしまうかもしれませんね…フフ…

 

 

「やっほ~ぞるっち~」

「む?おや、布仏さんでしたか。それに谷本さんと夜竹さんも」

 

 

振り返るとそこには私に最初にコンタクトを取ってきた三人の姿があった

そして声の主である布仏さんは、何故か袖の余った黄色い着ぐるみのようなものに包まり、ブンブンとこちらに手を振っている

余りに余った袖がバサバサと音を立てて揺れる

 

 

「やぁやぁキンブリーくん…って痛い!痛い!本音、袖が顔に当たってる!地味に痛い!」

「こんばんわ、キンブリーくん。私たちの名前覚えててくれたんだ」

 

 

後のふたりは災害を生み出す黄色い布仏さんほど奇抜な格好としているわけでもなく、至って普通の格好だ

性格もひねりがあるわけでなく、谷本は活発、夜竹は大人しいという印象を受ける

 

 

「えぇ、一度聞いた名前を忘れるのは失礼ですからね…ところで布仏さん、何故箱を開けようとしているんですか?」

「本音でいいよ~。何故かというと、この中にお菓子があることはわかっているのだ!」

 

 

この黄色い生き物は何を言っているのだろうか?

少しペースが違う方ということは理解していましたが…いよいよ彼女というものがわからなくなってくる

 

 

「中身はわかりませんが、どうしてお菓子だと?…あと届いていないのに触ろうとすると危ないですよ?」

「ムフフ、隠しても無駄なのだよぞるっち!このダンボールに某有名菓子メーカーのロゴが入っていることはわかっているんだよ!」

「あ、ホントだ。端に小さくロゴが入ってるね」

「この量のチョコって…うっぷ、考えるだけで胸焼けがしてくる…」

「なので、私たちで食べるのを手伝ってあげるよ~」

 

 

確かに箱には小さくロゴが入っている

この程度の大きさのモノに気づくとは、なかなかに目敏い…

先程は少し失礼なことを考えてしまったようですね

そして件の彼女は未だに私の押すダンボールを開けようと、箱にへばりついている

いくら彼女が小さいといえど、普通にグラついている

 

 

「ほ、本音ちゃん!揺らしちゃホントに危ないよ!?」

「そうですよ。それに先程から菓子が入っているという前提で話しているところすみませんが、多分それはありえません。織斑先生が言うには人生が変わるほどの代物が入っているらしいですよ?」

 

 

本当に何が入っているのだろうか…まさか本当に菓子類が入っているということはないだろう

ブリュンヒルデがスイーツでどうこう言うような女子力を持ち合わせているとは思えない…

 

 

「え!?なにそれすっごい気になる!!このままキンブリーくんのところまで見に行ってもいいかな?」

 

 

黄色い生き物を引き剥がしながら言う谷本さん

 

 

「わたしも~」「わ、わたしもいいかな?」

 

 

年頃の女子が、そうやすやすと男子生徒の部屋に来ていいのだろうか?

まぁブリュンヒルデのお墨付きがある謎のアーティファクトがあれば、そりゃあ見ておきたいだろう

 

 

「ふむ…まぁ構いませんが、時間にだけは気をつけてください…っと、ちょうどこの部屋みたいですね」

 

 

先程山田先生に受け取った鍵を扉の鍵穴に差し込み、扉を開ける

台車ごと室内に運び入れ、部屋の明かりをつける

部屋の内装はホテルの一室のような贅沢と言える仕上がりにっており、元々二人べやだったのだろう、大きなベッドが二つ並んでいる

この部屋と比べれば、私の自宅は小屋程度に見えてしまうが、あの部屋で事足りてしまう私にとっては、この部屋は過ぎたものだ

しかし……家電や家具、据え置きのものは調べる必要がありそうですね。微かに人の痕跡を感じる…ISが手に入り次第調べるとしますか

 

 

「お~ここがぞるっちの部屋か~、なんだか新鮮だね~」

「そ、そうだね…男の人の部屋に入るのって初めてだから、少し緊張する…」

「おーい二人共、私らもまだ荷解き終わってないんだし、この部屋とほとんど変わらないからね?」

「ま、わたしもこの部屋に初めて入ったわけで、こういうことを言うのも若干変ですが、適当にくつろいでください。さて、何か飲み物でも出して上げたいところではありますが、そんな用意もありませんので、早速箱を開けていきます」

「「イエ~!」」「い、いえ~」パチパチ

 

 

各々ベッドや椅子に腰掛けて乾いた拍手を贈る

ベッドに座るのは別にかまわないのだが、バタバタを黄色い袖をはためかせながら、ベッドの上を転がりまわるのはどうかと思う

指摘するのも馬鹿馬鹿しいので、上のダンボールを地べたに下ろし、開封し始める

 

開封した瞬間、髭面バンダナのおっさんと目が合う…

 

…ということもなく中身を確認する………私はストレスでも溜まっているのだろうか…

ダンボールの中身は、大量の本がぎっしりと詰まっていた

数冊取り出してタイトルを確認してみる

 

 

「ジョジョの奇妙な冒険…HELLSING…ベルセルク…攻殻機動隊…漫画というやつですかね?おや、DVDも入っていますね」

「お、こっちはゲーム機とかソフトがたくさん入ってるよー」

「え~お菓子ないの~?」

 

 

私が振り返るとそこには、私に許可を取ることもなくほかの箱を物色する二人とその後ろでわたわたする夜竹さんの姿が…

客だというのにこの人たち…一人を除いて縦横無尽すぎる…

まぁ今更止める気にもならないので放置する

 

 

「む?これは…」

 

 

ダンボールの開封面の裏側に、手紙のようなものが貼り付けてある

 

 

『キンブリー大佐へ、少し前にお話した私のオススメの作品を送らせていただきます。大佐の好みに合いそうなものを選ばせていただきましたので、気に入っていただけたら幸いです。

追伸、お送りさせていただきました漫画やゲームですが、そちらは布教用になっておりますので、返却についてはお気になさらず』

 

 

なるほど、そういえば初めて会った時のマシンガントークで、そんなことを言っていましたね。しかし、私の好み…一体どんな作品なのだろうか?

 

 

「ぞるっち~、このゲーム繋いでいいかな~?」

「それは流石に勘弁してください。この時間に音が出るのはさすがにどうかと」

「それもそうだね…よく考えたら私ら勝手に荷物開けるわ、中身漁るわってかなり失礼なことしているような…」

「え?私らってことはわたしも?」

「まぁ私は片付けてくるのであれば構いませんが…」

 

 

と、内心迷惑千万なところを適当な言葉で繕いながら、本の束から一冊を取り出し椅子に腰掛ける

 

 

「ゴメンねー、初めて男の子の部屋で遊ぶからちょっと舞い上がっちゃって…って今その手に持っているのはジョジョ!?」バァーン!

「えぇ、そうですが…なんですか?その効果音」

「え?いや、面白いからわたしもオススメだよってだけなんだけど……えっと……わたしも読んでいい?」

「えぇ、構いませんよ」

 

 

なんともバツが悪そうにベットに腰掛け、漫画を手にする谷本さん

そんなおかしな効果音までつけて立ち上がってもらったところ申し訳ないのだが、私は一夏のようなリアクション芸人ではないのだ

 

 

「じゃぁわたしも何か読んでいいかな~?」

「あ、私もいいかな?いくつか聞いたことがあるタイトルもあるし…」

「あ~…お二人さんや私とかキンブリーくんは大丈夫だと思うけど、結構グロイって聞くの多いよ?ジョジョはまだましだけどね」

「じゃあジョジョってやつ読む~あれってスタンド?ってので戦うんでしょ?」

「まぁ細かいことをとやかく言うのもアレだから、とりあえず読んでみるといいよ」

「じゃあ私もそれを…」

 

 

それぞれが椅子やベッドに腰掛ける

 

 

 

 

「…」

「…」

「…」ぺらっ

「…」

 

 

 

 

各々が漫画を読み始め、部屋に静寂が訪れる

落ち着きのなかった黄色い生き物、もとい布仏さんも今は漫画を読みふけっている

こういった落ち着いた空間は久しぶりだ。先程まで自分が置かれていた空間が異常だったこともあり、ページをめくる音だけが響くこの空間がひどく心地よい

 

 

 

 

「…」

「…」

「…」

「…」

 

 

 

 

 

 

((それにしても面白い…コレ))

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「な~キンブリー、PICってどんなものか簡単に教えてくれないか?……お、トンカツうめぇ」もっしゃもっしゃ

 

 

現在私は一夏にさそわれ、学園内の食堂へ来ている

彼は私をさそう前に、横でふてくされている篠ノ之さんに気づいてあげるべきだろう

この世界に来てからというもの、軍にいたということもあり、食事を楽しむということがなかった

日本という国は食文化に熱い国という話を聞くので、なかなかに楽しみに来ているという次第だ

 

 

「一夏、ISを使用した際に何故あの程度の推進力で空を飛び、空中でバランスを崩さないでいられるかわかりますか?」ズズズッ

 

 

期待していた通り、食事は非常に美味だ

この味噌汁というスープもなかなかにうまい

特に食に興味を向けることがなかった私には、軽く感動を覚えるレベルだ

 

 

「そういえば分からないな…特に意識しなくても勝手に飛んでたって感じだったんだが…」

 

 

正直な話、教科書読め…の一言で終わってしまうのだが、うまい食事に気分気分を良くしたということもあり、彼の質問に懇切丁寧に答えることにした

 

 

「そうです。その意識せずに飛んでいたというのも、PICの機能の一つです。PICとは主にISの慣性を操る装置のことを言います」

 

「箒、ソース取ってくれ」「それくらい自分で取れ。届くだろ」

 

「慣性を操る…これに関しては大きく分けて姿勢制御、加速、停止、この三つの要素に分けられます」

 

「わかったよ……箒のそれうまそうだな、これと一個交換しないか?」「…別にかまわないが」

 

「ISが本来物質的にありえないような慣性を無視した動きを実現させているのはこの装置のおかげです。あなたが意識せずに空中を動き回ることができたのは、PICのオート機能によるものです」

 

「ここの学食ってレベル高いなー」「一夏、頬にご飯粒が付いてるぞ」

 

「これをより精密に動かそうとするのなら、オートをマニュアル操作に切り替えることで、より細やかな操作が可能になります。しかし、全ての処理を自分で行うため、高度な演算処理が必要になりまs……」

 

「とれたか?」「いや……し、仕方ない…私がとって―――――

 

「イチャついているところすいませんが、私の話聞いてましたか?」

「ブフッッ…だ、誰がいちゃついてなんか!!」

 

 

気が付けば私の熱弁の裏でイチャつく男女二人、まったくもって度し難い

男の方はとぼけた顔を晒しているが、女の方は吹き出し赤面している

わかりやすいことこの上ない

 

 

「食事中に吹きださないでください。下品極まりないですよ?」

「お前がいtゴニョゴニョ…などと変なことを抜かすからだ!!」

「それはすみません。随分と仲がよろしいように見えたもので…」

「おう、俺と箒は仲いいぞ!昨日木刀でぶっさされそうになったけど、幼馴染だからな!」

「あ、あれはお前が悪い!私の………幼馴染ではあるが…キンブリー、その…そんなに仲が良さそうに見えていたか?」

「えぇ、それはもう…まぁそんなことはどうでもいいんです。それで?一夏は私の話を聞いていたのですか?」

「お、おう!すこぶるわかりやすかった!サンキューなキンブリー!」

「どうでもいいって…」

 

 

赤面しながら俯く篠ノ之さん。私にとってはこの上なくどうでもいいので放置する。

そして私の説明を明らかに分かっていないといった焦り方の一夏…聞いておいてこの反応だ、その手に持っている箸を錬成してやろうかと思えてくる

 

 

「はぁ…まぁ構いません。今私が話していた部分も参考書を読めば分かることです。昨日も言ったと思いますが、知識を身につけるより先に技術を身に付ける方が得策かと…知識の事を鑑みても、同室の篠ノ之さん、あなたが教えて差し上げれば良いのでは?幼馴染であるのなら気を使う必要もないでしょう」

 

 

深い意味はないが、篠ノ之束の妹に良い印象を与えておくのもいいだろう

彼女が彼に気があるのはどんな阿呆でも気づく

事実私もこの短時間で気が付けるほどだ

まぁ彼女と姉の間には確執があるようですし、無意味に終わるかもしれませんが

 

 

「な、わ、私―――――

「俺もそう思ってたんだ!箒、頼む!ISの操縦とか教えてくれ!このままじゃオルコットとキンブリーにボッコボコにされて幼馴染が目も当てられないような混沌とした青春を送ることになるぞ!?」

 

 

意味不明な脅しをかけながらがっつく一夏

なら何故あんな啖呵を切ったのか…やはり阿呆なのだろうか

 

 

「なんだその意味不明な脅しは…くだらない挑発にのったお前が悪い」

 

 

初めて彼女と意見があったようですね

 

 

「そこをなんとか…頼む!なんでもするから!」

 

(ん?今なんでm―――――(シャラップ!)シュッ!

(ウボァッ!刺さってる刺さってる!!)

 

またもや背筋が凍るようなプレッシャーが後方から…今回は一瞬だけでしたが…

周りを見渡すも私のような反応を見せているものはいない…やはり気のせいなのだろうか?

 

 

「それならキンブリーに頼めばいいだだろう。聞けば参考書を二三日で覚え切るような秀才らしいじゃないか」

 

 

実際は半日なのですが…

というか彼女はなんてことを口走ってくれているのだろうか

私がそんな面倒極まりないことに手を貸すはずがないだろう

 

 

「じゃぁ頼むキンブリー、教えてくれ!」

「じゃぁってなんですかじゃぁって、無理です嫌です面倒くさい煩わしい寝言は寝て言ってください御馳走様さようなら」

「おいちょっと待ってくれ!なんでお前は毎回力いっぱいに俺の心をへし折ろうとするんだ!?しまいにゃ泣くぞ!?」

「HAHAHA、折ろうとしているからに決まっているじゃないですか」

「うおォォォォォォォん!!」

 

 

本当に涙を流す一夏

男の号泣なんて見ていて気分のいいものではありませんね

 

 

「冗談です。気持ちわるいんでやめてください」

「一夏、確かに少し引くぞ?」

「なんだよ!俺の味方って山田先生しかいねぇじゃん!」

「な、なんだ私は違うというのか!?」

「えーだって―――――

 

「ちょっといいかしら?」

「「ん?」」

 

 

何か壮絶なデジャブを感じながら振り返る

そこには見知らぬ女性とが…タイの色から察するに三年であると判断できる

なるほど、他学年にも男性操縦者に興味を持ち接触しようとする人はいるだろう

彼女が第一号というわけだ

 

 

「君たちって噂の子でしょ?さっきの叫び声を聞く限り、そっちの君は素人なんだよね?」

「え?はぁ、まぁ…聞こえてました?」

 

 

あれだけ人目を憚らず喚き散らしていれば嫌でも聞こえるだろう

切っ掛けとしては十分な材料だろう

 

 

「よかったら私が教えてあげようか?ISのこと」

「天使や…天使がおるでぇ…ぜh―――――

「結構です私が。教えることになっていますので」

 

 

断って私に押し付けようとしていたくせに何を言っているのだろうか…

一夏にとっては僥倖だったろうに、引き受けるのなら初めから引き受けていて欲しい…聞いていて気分が悪い

まぁ私に被害が来ないのならなんでも構いませんが

 

 

「あなたも一年でしょ?私のほうが稼働時間も長いし、色々と教えられると思うなぁ」

「……私は篠ノ之束の妹ですから」

 

 

…?

彼女は姉と確執があるように思っていたのですが…

 

(一夏、篠ノ之さんは姉との関係は良いのですか?)

(ん?確かあんまり良いとは言えなかったと思うけど…ってなんでだ?)

(いえ、少し気になることがあったもので)

 

…どうやら都合がいいから姉の名を使っているようですね…

 

 

………癪に触りますね………

 

 

「篠ノ之束って…えぇ!?……よっし、じゃぁ隣の君!さっき言ったとおり、私が教えてあげてもいいよ」

「じゃぁってなんですかじゃあって…しかし、ありがたい相談ではありますが、お断りさせていただきます。基本的な操作に関してはブリュンヒルデにお墨付きをもらっていますので」

「え!?キンブリーって千冬姉に認めてもらったのか!?」

「へ、へぇ~けっこうやるみたいね…でもそれなら特化的な技術についてとかを教えてあげられるけど?…専用機支給されるんでしょ?」

「えぇ、その通りですが私のISは少々特殊でして、いくら先輩といえどあの機体の技術向上の力になるとは思えないので」

「言うわね…これでも成績はかなりいいのよ?大抵のことは力になれると思うけど…それで?どんなタイプの機体なの?」

「まぁ特別にお教えしましょう。私の専用機、『オーギル』は―――――

 

 

 

 

 

 

 

「"隠密、広域殲滅型"です」

 

 

 

 

 

 

「……………へぁぇ!?」

 

 

こうして学園初の食事は終了した

 

 

 

 

 






なんか前回も言っていた気がしますが、話が進まなくて申し訳ありません。゚(゚´Д`゚)゚。


またキャラ崩壊がひどくなってしまいましたが、一回戦闘を挟めばマシになるはず…


今回登場した漫画のタイトルは完全に私の趣味ですのでお気になさらず(`・ω・´)


漫画のキャラが既に作中に登場しているというツッコミがあるかもしれませんが、そこは………ね?
英国無双はこっちの世界では有能な人なんで、別人ということで………第四部は川尻浩作が登場する前に吉良が倒されたということで…お願いします(´;ω;`)


今回も誤字脱字の嵐かもしれません…


コメント、感想、誤字脱字の指摘、ご意見等ございましたら是非お願いします……いつでも待ってるよ!?


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天使

生傷の絶えない焼酎ご飯です(`・ω・´)
仕事中に足に重いものを落として青痣を作りました。超痛いです


今回も話が進みま…すん


今までチェックを手伝ってくれていた友人が諸事情で手伝えなくなったので、誤字脱字などが加速しているかもしれませんが、多めに見ていただけるとありがたいです。誰か手伝って~・゜・(ノД`)・゜・


 

 

「これにてHRを終了する」

 

二日目の授業時間が終了する。

特殊な武装や戦術のような内容であれば興味を引かれるのだが、初歩の初歩ということもあり、条約や規定といったルール的な部分の解説が多い。

教科書を全て読み終えてしまった今、授業が退屈で仕方がない。

この無為な時間を如何に過ごすか…

 

 

 

…"あの"研究について練るのもいいかもしれませんね…

 

 

 

「キンブリー、お前のISが先程企業の人間と共に到着した。このあとすぐについてきてもらう。異論はないな?」

 

 

無意識に口角が上がる

 

 

「えぇ…ありません…」

「ならさっそく向かうぞ。山田先生、アリーナの準備を頼む」

「わかりました。それではお先に失礼します」

「せんせー、それって私たちも見に行っていいですか~?」

 

 

今日は黄色くない布仏さんが問いかける。

さすがにこのような提案が下りることはないだろうと反応を見るためにそれとなく周囲を見渡す。

ギラギラとした視線が私と織斑千冬に向けられていることが分かる。

…よく考えればそれもそのはずだ。IS学園の生徒ならロールアウト直後の専用機体があるのなら、実際に見たいというのは当然だろう。

生徒の何人かは鼻息荒く、食い気味に身を乗り出している。

セシリア・オルコットもチラチラと様子を伺っていることが分かる。

だがそれが普通の反応というものだ。

件の一夏はというと、授業で燃え尽きたかのように、窓の外に視線を向けて黄昏ている。

魂が抜けたかのように…と一般的には比喩するのかもしれないが、魂の存在…魂のみの状態というものを経験した私には笑い話にもならない…むしろ笑い話か…

そしてその虚空を見つめる視線に勘違いした篠ノ之箒が何やら頬を赤らめているが、私の知ったことではない。

他の生徒の反応に少し圧倒されるものがあるというのは事実だが、直に専用機が与えられる者の反応とは思えないほどの無関心というのはどうかと思う。

 

 

「無論許可しない。お前たちがいったところで無用な混乱を生むだけなのは目に見えている。代表決定戦まで待つことだ」

 

 

バシッ!

 

 

織斑千冬は一夏の頭を出席簿で殴打し、教室を後にする。

正気に戻った一夏を尻目に教室を後にし、アリーナへ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

IS学園特有の機械的な廊下を歩く。

HRが終了した直後ということもあり、アリーナへ向かう廊下に人の姿は少ない。

 

 

「…キンブリー、お前に聞いておきたいことがあるのだが、お前の専用機の開発企業、つまりはローゼンタールのことだが、ドイツが本社の企業で間違い無いな?」

 

 

いきなりなんだというのだろうか?

さすがにそんなことすら確認していないなんてことはないだろう。

 

 

「えぇ、間違いありませんが…何か問題でもありましたか?」

 

 

全く意図の読めない質問に、素直に聞き返す。

 

 

「問題というわけではない。コンテナとともに本社の人間ということで二人の男が来たのだが…二人共日本人だったものでな、ドイツ本社からの派遣だというのに本国の人間を一人も寄越さないということに少し疑問を持っただけだ。ローゼンタールの人間にドイツの科学は世界一とかいう人間はいないのか?いたら嫌でも来ると思うのだが」

「そんなサイボーグいるわけ無いじゃないですか。HELLSINGや二部のあの辺の話はあまり私の国の人間には言わないほうがいいですよ。私はなんとも思いませんが、人によっては不快に思う人もいるでしょうし」

「む、それもそうか、留意しておこう」

 

 

この教師は…ドイツにいたことがあるはずなのだが…

あぁ…なるほど、ハルフォーフ大尉のせいですかね…彼女と趣味が合うのなら、ナチスだのなんだのの話をそれほど重大に捉えるということもないだろう…

 

 

それにしても…日本人が二人、一人は川尻さんという可能性があるが、二人共日本人ということには確かに少し違和感を感じる。

 

 

「話を戻します。ローゼンタールに日本支社があるという話も聞きませんし、確かに少し変な気もしますね。ですが私が本社に出向いた時に対応したのも日本人でしたし、日本に来る人間として日本人が選ばれたんじゃないですか?ISに関わる仕事で日本人が多いというのは仕方のないことです。実際彼らの仕事は優秀ですし、日本人は優れた人種なんじゃないですか?」

「随分とへつらうな…まぁ私も日本人だ、ここは素直に受け取っておこう。確かにIS関係に日本人が多いというのはその通りだな。国家機関に属さないこのIS学園でも事実として日本人が多い…大して不思議ではないかもしれんな」

 

 

まぁ実際はあなたとあなたの友人の天災のせいですがね…

 

 

「そうですよ。へつらったつもりもありませんし、事実を述べただけですよ。…こちらからもお聞きしたいのですが、その二人のことを知っているということは、もう私の専用機はご覧になったんですか?」

「いや、コンテナはスキャンをかけたが中身を実際に確認したわけではない。さて…着いたぞ」

 

 

アリーナに直接つながるカタパルトが設置されたドックに到着する。

重厚な扉が鈍い金属音とともに開かれる。

扉の先には見知った白いスーツの男と、白衣を纏った金髪の男が運び込まれたであろうコンテナの前にいた。

 

 

「おぉ、キンブリー大佐殿!お待たせしてしまい申し訳ございません!この度は機体の調整に時間がかかってしまい―――――」

 

 

深々と何度も頭を下げる川尻さん…こちらが申し訳なってくるほどの低姿勢だ。

 

 

「頭を上げてください。元はといえばこちらが新しい注文をつけてしまったのが原因…むしろこの早さで完成させていただいたことに感謝しています」

 

 

実際のところ決闘前に届けばいいと考えていた故に、これほど早期に追加注文をフィードバックさせた状態で完成させたのだ。

文句のつけようがない。

 

 

「フレシェットなんて産廃を注文するとはなぁ、しかもあんな意味不明な機能まで…あんたも相当もの好きですねぇ大佐殿」

 

 

粗暴な声が私に向けられ、声の主である白衣の男へ視線を向け、そこで少し驚かされる。

彼の顔左半分は禍々しい刺青が入っており、その長身の体躯も合わさり尋常ではない威圧感を受ける。

 

 

「そうですかね?ものは使いようですよ…ところであなたは?」

「ま、一応自己紹介しときますか。"木原数多"、オーギルの制作プロジェクトの副主任だ。大佐殿の素敵データの収集と機体の可動データのために本社から寄越されたってわけだ。そーいうわけでお願いしますわ」

 

 

何から何まで凶悪な印象を受ける彼…白衣がなければ万人が研究員とは信じないだろう。

 

 

「織斑先生ー、アリーナ内外のセッティング完了しm…ひっ!?」

 

 

山田先生がドックに入り、短い悲鳴とともに尻餅をつく

一見すれば危ない人に見えないことは確かだが、それほど驚くものだろうか?

 

 

「おーおー傷つくね~…俺の顔になんか付いてんのか?あ?…っとによぉ…こんなんにISが使えるなんてなぁ…ホントムカつくわ~…コr―――――

 

 

「それ以上の発言は控えてもらおう。こちらに非があったのは事実だが、そこまで威圧する必要はないだろう。最悪この学園から出てもらうことになるが?」

 

 

青筋を立てながら笑みを浮かべる彼と、涙目になり震える山田先生の間に織斑千冬が割って入る。

まぁ彼女なら当然の対応だろう…まるで食い殺さんという勢いでしたし…

そしてなるほど…木原数多、エンピオ大尉より重症の方みたいですね。

女尊男卑というよりは、ISの構造そのものに不満があるようですね。

まぁそれもそうだろう、ISの技術者であるということはつまりISの力を誰よりも理解しているということになる。

その力に触れることができないというのは、彼のような性格の人間には苦痛に他ならないでしょう。

 

 

「ハッ、ブリュンヒルデさんに言われちゃ仕方ねぁな…すんませんね」チッ

「立てるか?山田先生」

「あ、ありがとうございます織斑先生」

 

 

「川尻さん?あぁいうのは止めたほうがいいんじゃないですか?…川尻さん?」

「……~…t…手…~……美しい…手…~…」

 

 

反応がない彼の方へ目を向ける。

そこには光の無い瞳で教師二人を見つめる彼の姿が

 

 

「どうかしましたか?川尻さん」

「はっ!?私は一体…手?」

「手?…大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫です。私はノーマルです。…木原さん!そういう発言は社の信用に関わるので勘弁してください!そしてお二方、本当に申し訳ございませんでしたァァァァァ!!」ゴンッッッ!!

 

 

風切り音が聞こえる程の勢いで地に額を打ち付けた川尻さん。

これが日本でいう土下座…日本の謝罪というのはここまで恐ろしいとは…ここまでされれば大抵のことは許してしまうだろう。

 

 

「構いません、頭を上げてください。それよりアリーナの使用時間も有限ですので、機体の準備を開始してください」

「…」

 

 

死んだんじゃないだろうか?

頭をつけた状態から微動だにしない…

 

 

「はっ!?…あ、ありがとうございます!!それではさっそく準備に掛からせていただきます!!木原さん、オーギルの機動準備お願いします」

「あいよー」

 

 

土下座を解除した彼の額からは血が滴っているが、そんなことに構うことなく準備を進めていく。

額から血を垂れながしながらの営業スマイル、最早ホラーである。

 

 

「さてキンブリー大佐、あなたに頼まれていたISスーツですが、こちらになります」

 

 

と、彼は私にペリカンケースを差し出す。

そう、私が頼んでいたものの一つがISスーツだ。

男性モデルを確認したのだが、あれを私が着るぐらいならISに乗れなくてもいいと思える程のデザインだ…一夏は…いや、考えても気分がいいものではない。

 

 

「こんなものまですみませんね」

「いえ、ニーズに応えるのもまた我々の仕事です。さっそくお着替えになられてはどうでしょうか?その間準備しておきますので」

「それではそうさせていただきます。織斑先生、それで構いませんね?」

「あぁ、さっさと支度してこい」

 

 

ドックのすぐ隣のロッカールームに入りペリカンケースを開く。

ケース内から取り出したのは若干裾が締まったダークブルーのカーゴパンツに白いノースリーブのようなISスーツ

これらをスーツと呼ぶにはいささか無理があるかもしれないが、元々ISスーツには連動率の増加や生存率の増加といった機能的な面は少ない…メーカー側の主張では大きく関わってくるとの話だが、実際のところそうでもない。

それゆえ多少構造に無理があろうとも、ISの運用に差し支えることはない。

 

 

イシュヴァール殲滅戦時の格好に酷似しているということもあり、心なしか気分が向上する。

 

 

着替え終え、ロッカールームからドックへ移動すると、ドック内に入った瞬間騒々しいモーター音が鳴り響き、コンテナがガルウィングのように開き、内部があらわになる。

 

 

複数のケーブルに繋がれ、固定器具により椀部と翼が固定されたオーギルが姿を現す。

まるで鎖に繋がれた天使のような姿をしていた。

 

 

「…天使…みたいですね」

「随分と象徴性の強いビジュアルだな。それにフルスキンの装甲とは珍しい」

 

 

教師ふたりはオーギルに釘付けになっている。

そしてやはり天使を彷彿とさせるこの機体…兵器が天の使いに見えるというのはなかなかに趣があると言えよう。

 

 

「はっ、天使ねぇ…こいつの武装見たらそんなことも言ってられねぇけどな…っと、準備できたぜ大佐殿よぉ」

 

 

彼はオーギルの横に立ち、コンソールを操作すると、ケーブルが次々と外れ落ち、固定器具が鈍い金属音とともに解除される。

オーギルはゆっくりと膝を折るような姿勢に姿勢を変え、頭部パーツと胸部パーツを開き空洞を覗かせる。

 

 

「そんじゃちゃっちゃと始めてくれ。俺もこんな場所には長居したくないものでして」

 

 

どこまでも煽っていく彼…まぁ人を煽りたくなるという気持ちはわからなくもない。

あれはある種の性癖に近しいものがあるかもしれません。

 

 

「わかりました、それでは失礼して…」

 

 

オーギルの装甲に手をつき、軽く飛び跳ね、ISに背中を預けるようにフルスキン装甲の中に入る。

 

 

「ホント羨ましいねぇ~、そんじゃ装着始めるんで色々挟まないでくださいよー」

 

 

胸部装甲が閉じ、装甲が全身を包む。

圧迫感はなく、むしろ心地よさすら感じる。

 

 

この感覚…あぁ胸が高鳴る、血湧き肉躍る…あの圧倒的な暴力がついに私の物に…

 

 

上官を爆殺し、賢者の石を手に入れたあの時にも似た感覚に身を震わせる。

 

 

頭部装甲が下がり、真っ白な機体のカメラアイが紅く発光する……紅く……血のように…

 

 

ここに私の専用機、破壊天使"オーギル"が完成した瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

狂犬か…こいつは…

私は山田先生の手を取り立ち上がらせる。

 

 

「あ、ありがとうございます。織斑先生」

「何、気にすることはない」

 

 

木原数多と名乗ったどう見ても堅気には見えない白衣の男は、忌々しそうに我々に背を向け、コンソールを操作し始める。

女尊男卑の社会が蔓延しつつある今、女側の横暴が目立つことは多々あるが、男側がここまで露骨に敵意をむき出しにしてくるのは珍しい。

ここがIS学園であり、私がブリュンヒルデであるということも認識していてこれだ。

それにしても、本社から寄越されたこの二人…ローゼンタールもよくこんな変な奴らを送ってきたものだ。

片や白衣の男はIS学園の教師に噛み付き、片や白スーツの男は気色の悪い視線を送ってきたかと思うと、血だらけになるまで土下座してくる始末だ。

そんな奴らが作り出したISだ…いったいどんなゲテモノが出てくるのかと思いきや…

 

 

「…天使…みたいですね」

 

 

まさにその通りだった。

コンテナの中には純白の天使が拘束されていた。

ケーブルやボルトが解除され、機体は若干前のめりになり、迎え入れるかのように装甲を展開する。

いつの間にか着替え終えていたキンブリーがそれに飛び入る。

 

どう見てもISスーツに見えなかったが、まぁそれはいい…前々から思っていたが奴の身のこなしや、時折見せる形容しがたい気配…ただものではないのだろう。

だがあの年齢で大佐というくらいだ、むしろ凡人である方がおかしいというものか…

 

数秒後、機体が起動し、赤いカメラアイが発光すると同時に天使は宙へ浮かぶ。

 

 

「聞こえるかー大佐殿ー、あー返事しなくていいわ、異常なんてあるわけないよなーハイそれじゃあさっそくテスト開始してくれ張り切ってどうぞ!あー帰りてぇ」

「と、言うわけらしいんで織斑先生、アリーナに出て大丈夫ですか?」

「あ、あぁ、今ハッチを開けよう…山田先生、計測、解析の準備を」

「は、はい!え、えっと…キンブリーさん以外の皆様もコントロールルームへ移動お願いします」

 

 

機体に目を奪われていたということもあり、反応に遅れる…こんなことではいかんな。

おそらく山田先生も同様の理由で遅れたのだろう…それほどに視覚的に惹かれるものがある。

ハッチが開き、キンブリーはアリーナへ飛び立つ。

我々四人はコントロールルームからキンブリーが配置についたことを確認する。

 

 

「キンブリーさん、こちらも準備完了しているのでいつでも開始していただいて構いませんよー」

 

 

山田先生がマイク越しに準備が完了した埋を伝える。

 

 

「はっ、解析ねぇ…武装一つでも解析できたらマジで泣けてくるレベルだが、まぁこの機材なら無理だろうな」

「木原さん!一々喧嘩腰にならないでください!ホントすみません、これは彼の癖のようなものでして―――――

「まて、そんなことは今更どうでもいい…解析できないとはどういうことだ?」

「それは実際に見た方g…そら、始まった」

 

 

私は振り返り再びアリーナへ目を向ける。

だがその瞬間、私は自分の目を疑った。

 

 

 

キンブリーがいた場所、そこには、銀の光を翼から放出するオーギルの姿があった。

左右へ広がる機械的な翼は、姿形を変え、光が収束したかのような不定形でありながらも、翼と形容するに難くなかった。

視界を満たす程の巨大な翼の造形は、もはや神々しさすら感じる。

 

 

「ふわぁ…き、きれい…」

「な、なんだあれは…どうなっているんだ…」

「おいおい、データを集めるんじゃなかったのか?モニター見逃してていいのかよ」

「へ?あ、す、すみません。いますぐ―――――

 

 

バツッ…バツン…ジジジ…

 

 

電気信号が途切れる不快な音が鳴り、モニターがノイズを断続的に響かせる。

 

 

「ッ!?アリーナ内の全カメラ通信途絶!」

 

 

山田先生の張り詰めた声が響き、モニターを注視する。

カメラの映像を映し出すはずのモニターは全て砂嵐が映し出され、一切の映像情報が遮断される。

ガラス越しのアリーナでは、依然としてオーギルが翼を広げ、その光を増していた。

 

 

「いったい何が…山田先生!原因は!?」

「す、少し待ってください!……わ、わかりました!アリーナ内…アリーナ全体から強力な電波障害が発生しています!おそらくはオーギルから発せられている光が原因かと!」

「…木原数多といったな…この電波障害はあれが原因か?」

「おぉ怖い怖い、そんなに凄まれたら漏らしちまいそうだわ……ま、そのとおり、あれはオーギルに搭載された機能なわけだが、今は前見たほうがいいぜ?前」

 

 

威圧を込めた私の問いに、木原数多はおどけるように嘲笑うと、獰猛な笑みを浮かべながら肯定する。

癪ではあるが、奴の言葉にアリーナへ視線を戻す。

青空を覗かせていた天使の舞うアリーナ

眩しいまでの神々しさを放つその景色だが、中央で舞う天使の光が止む。

 

 

 

 

 

次の瞬間、視界を埋め尽くすほどの爆炎と衝撃波のような爆音が響き渡り、コントロールルームの強化ガラスをビリビリと揺らす。

 

神々しい光を放っていたアリーナは一変、合切を破壊し尽くす煉獄へと姿を変えた。

 

そしてその煉獄の中央では、銀の翼をした天使が、紅い目を爛々と輝かせ、狂ったような…まるで悪魔のような笑い声を上げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

機動テストが終了し、興奮冷めやらぬまま、鼻歌交じりに自室に向かう。

ポケットに手をいれ、"ある物"を取り出す。

チェーンで繋がれたハンターケースの銀時計だ。

何の因果か、オーギルの待機状態は銀時計だった。

国家錬金術師時代に持ち歩くことはあまりなかったが、こうしてみると懐かしさのようなものを感じる。

銀時計を眺めながら、そんな思いにふけっていると、自室前に到着する。

 

 

「さて、掃除といきますか」

 

 

自室に入り扉の鍵を閉める。

ISのセンサーを起動しようと、銀時計に意識を向けようとした瞬間、携帯に着信が入る。

 

 

「もしもし?」

『こちら谷本…大佐、聞こえるか?』

「良好ですよ谷本さん…それで?どうかしましたか?」

『暇だ、どうにかしてこの状況を打開したい…三人で漫画を読みに向かっていいだろうか?』

「残念ながら今日のところはご遠慮下さい」

『ん、そうなんだ。まぁ毎回押しかけるのもなんだし、なんかごめんね~』

「いえいえ、こちらこそ…それではまた明日」

『またねー』

 

 

また測ったかのようなタイミングで連絡を入れてくるとは…

それにしても、軍以外で大佐と呼ばれるとは…あれも何か元ネタがあるのだろうか?

 

 

若干クールダウンしつつ改めてセンサーを起動、センサーで部屋の隅々をチェックする。

当初の予想通り、テレビやエアコンなど、あらゆる場所に盗聴器やカメラが設置されていた…早期にISが手に入って本当に良かった。

こんな空間で過ごし続けなければいけなかったと考えるだけで身の毛がよだつ。

脱衣所に入り、死角を探し出し、"片翼"を展開する。

数秒後、展開を終了し部屋に戻る。

そして全ての盗聴、盗撮機器を探し出し、ペリカンケースの一部から錬成した絶縁体で構成された袋の中に放り込んでいく。

 

 

「ふぅ、掃除完了…さて…」

 

 

袋をチェストにしまい、錬金術で密閉する。

これでひとまず安全な空間が確保された。

そして唯一持参したノートパソコンと数冊の手帳を取り出し、机に広げる。

 

 

ISという最高の暴力は手に入った今…次に求めるものは…

 

 

 

 

 

 

 

「さっそく"石"の研究を再開するとしましょうか…」

 

 

 

 

 

 

 

そう…あの最高の快楽を生み出す完全なる物質、"賢者の石"を…

 

 

 

 

 

 




はい、まだ決闘が始まりませんゴメンナサイm(_ _)m

次こそは…次こそは!!

今回も誤字脱字の嵐かもしれません…


コメント、感想、誤字脱字の指摘、ご意見等ございましたら是非お願いします……いつでも待ってます!


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決闘 【前編】



皆さんお久しぶりです。
生傷の絶えない焼酎ご飯です(`・ω・´)
先々週はプラモを作って、指が血だらけ…



さて、多くの方が楽しみにしてくださってくれていたセシリアとの決闘になります。
戦闘描写は書き慣れていないため、結構ひどい出来になっているかもしれません。
少し長くなってしまったので、二つに分けさせていただきました。是非とも後半もご覧ください。


以前から登場する、ほか作品の名前のキャラについてですが、彼らは本人ではありません。
パラレルワールドのよく似た人程度に捉えて下さるとありがたいです。


それでは今回も誤字脱字の嵐かもしれませんが、生暖かい目で見守ってくださるとありがたいです^^





 

決闘当日

 

 

ぴっちりとしたスーツにヘソ出しという気色の悪い格好を晒した一夏と、何故か一緒にいる篠ノ之箒が何かわちゃわちゃと言い争っているが私の知るところではない。

 

教師陣はまだわかるのだが、何故か篠ノ之箒がいるのか…

 

 

「ISの練習もろくにできなかった上に、ISが到着しないなんて…あ、なんか頬を暖かいものが伝い始めた」

「嘘をつくな嘘を…練習は仕方ないだろ、お前の専用機はまだ届いていないんだから」

「それでも基本操作とか色々あるだろ?」

「…」

「目を逸らすなよ!チクショー!キンブリーはもう届いてるから練習とかできたんだろ!?」

「いえ、機動テスト以外では一切使用していませんよ。第一、起動時間300時間超えている相手に我々が数時間鍛えたところでその差が埋まるとも思えませんしね」

「え?じゃぁ放課後何してたんだ?あんまり姿見なかったからてっきりIS使ってるもんだと思ってたけど」

「相手は代表候補生です。模擬戦の映像や公開されているスペックなどを調べていたんですよ。あなたも何も調べていないなんてことはないでしょう?」

 

 

まぁ実際のところは機体データに関しては、研究の片手間に調べた程度だったのだが、成果は十分だった。

機体データはもとより、彼女自身の面白い過去を見ることができたのは僥倖だった。

 

 

「……え、あ、お、おう!あれだな、あれ…うん」

 

 

それにしても…彼はこれから戦うということに本当に自覚があるのだろうか?

まさか本当に何も調べていないとは…

あそこまでの啖呵を切っておいてこの体たらく…

 

 

「では逆に何をしていたんですか?」

「え、いや別に調べてないとh…箒と剣道していました…」

「篠ノ之さん?ISについて教えるんじゃなかったんですか?」

「ぐっ…あまりに一夏の剣道の腕が落ちていたからこれは止む得ないことで…」

 

 

まぁなんとも個人的な理由で…一概に一夏が悪いというわけではなさそうですね。

 

 

「それで、ISと剣道は関係あるんですか?」

「…ない…一夏、すまなかった」

「え…ま、まぁ無理に頼んだ俺も悪かったし……あれ?俺って断られたんjy―――――

 

 

 

「キンブリー、織斑のISが到着していない以上お前から先に戦ってもらうことになる。問題ないな?」

 

 

ドック内に織斑千冬の声がマイク越しに響く。

 

 

「えぇ問題ありません。むしろ大歓迎です」

「そうか…オルコットは既に準備を終えている。装着が完了し次第、カタパルトに立て」

「了解しました」

 

 

指示に従いISを展開する為、銀時計に意識を向け、1秒と経たない内に、オーギルの装甲が全身を包み始める。

今気づいたが、ISを装着する際、私はどうにも笑みがこみ上げて仕方ないようだ。

しかしあれほどの暴力を生み出す存在が、全身を包む形で具現化しているのだ、笑うなという方が無理な話だ。

だがその笑みもフルスキンの装甲の下である以上他人の目に映ることはない。

つくづく好感を覚える兵器だ。

そして銀の光をまき散らしながら展開を完了する。

 

 

「おぉ!…なんか凄いn―――――

 

 

 

 

 

 

「何をしているキンブリー!!"それ"を今すぐ止めろ!!」

 

 

 

 

 

 

織斑千冬の怒声がドック内を幾重にも反響する。

私以外の二人の肩がビクつく。

 

 

「ち、千冬さん?」

「何を慌てているんですか織斑先生?"これ"が人体に害を成すものでないことは機動テストの際に伝えられていたはずでは?」

「そういう問題ではない!もしも"それ"が作動したらどうするつもりだ!?」

「作動?さっきから何の話をしてるんだ千冬姉?」

「はぁ…まぁ誤作動なんて起きるはずもありませんが、わかりました。とりあえず準備完了です」

 

 

私は光の発生を止め、カタパルトに脚部を固定する。

正直な話、銃などの射撃兵器を展開している方が余程危険であることは確かなのだが、今の興奮状態の彼女に言ったところで、水掛け論になることは目に見えている。

 

 

「…はぁ…篠ノ之、織斑、ドックから出ろ」

「わ、わかった…あれ?千冬姉、扉反応しないんだけど」

「織斑先生だ。…仕方ない、手動の方から出てくれ。」

「?…わかりました。それじゃあなキンブリー、頑張れよ!」

「ありがとうございます。あなたも早く専用機が届くといいですね」

「そうだな!……そうだな……ま、まぁ落ち込んでても仕方ないし、また後でな!」

「えぇ、それでは」

 

 

二人がドックを出ると、アリーナへ続く巨大なハッチが上下に開かれ、薄暗いドックに陽の光が差し込む。

 

 

「カタパルト機動、ハッチ開放、いつでも出れます」

「すまないな山田先生。まったく…面倒な機能だ、この扉もわざわざ直結のコンソールで操作しているんだぞ?先程も言ったが、場所をわきまえて使え」

「それはすみませんでした、以後気をつけます。では相手側を待たせるのもなんですので、いつでも出していただいて結構です」

「わかりました、ではカウントに入ります。5カウントで発射します5…」

 

 

カタパルトからエネルギーが伝わっていくようなモーター音が鳴り始める。

IS同士の戦い…死と隣あった戦いでは無いものの、あの圧倒的力がぶつかり合うのだ…心躍らずにはいられない。

 

 

「…2、1」

 

 

急激な加速により全身に体に軽くGが掛かる。

だが今の私にはそれすらも心地よく感じるほどに気分が向上している。

カタパルトからアリーナへ投げ出され、低出力で光の翼を展開しながら加速を殺さないままにアリーナの中央まで飛ぶ。

観客席には多くの生徒がおり、オーギルの登場によりざわつき始める。

 

 

「随分と遅い登場ですのね…逃げ出したかと思いましたわ」

 

 

十数メートル先で専用機、ブルー・ティアーズを纏ったセシリア・オルコットが"通信"で私に語りかけてくる。

 

 

「一夏の専用機の件で少し手間取りまして…地球温暖化や税金の無駄遣い、私が遅れたのも含めて全て一夏が悪いのです。なので私に責はありません」

「それなら仕方ありませんわね…それにしても…フルスキンに非固定浮遊部位もない旧世代機の癖に見た目だけは美しいのですわね」

「お褒めいただきありがとうございます。しかしあなたの機体も名前に違わない美しい機体ですよ…映像で見るより遥かに…」

「ふふん、私のISですもの当然ですわ。それにわたしのISは見た目だけではありませんわ!最新技術を結集して完成した第三世代機のブルー・ティアーズ…それがそのようなビジュアルだけのアンティークに勝利しても何の自慢にもなりませんわ」

 

 

ご自慢の第三世代兵器を見せびらかすかのように、非固定浮遊部位を翼のように大きく広げる。

私のオーギルに張り合っているつもりなのでしょうか?

見方によっては酷く滑稽である。

 

 

「…ご心配なく、あなたはこの戦いで自慢できるようなことは何一つ得られません。何せ最新鋭機を操るベテランが、貴方の言うアンティークを操るアマチュアに敗北するのですから」

「っ!…口だけは達者なようですわね…もうひとりと違って少しはマシかと思っていましたが…いいですわ!そんな愚かしい態度を取れるのも今のうち、徹底的に叩きのめして吠え面かかせて差し上げますわ!」

「そうですか、それは楽しみですね」

 

 

彼女は手に持ったレーザーライフル、スターライトmkⅡをこちらに構える。

随分と堪え性のないことだ…"プライド"が強すぎると言うのも、さぞ生きづらいことだろう。

彼女の構えに対して、マウントレールに単発のフレシェット弾を装備した大口径ライフルを展開する。

 

 

『両者共に準備はいいな?ブザーがなった瞬間から戦闘開始だ』

 

 

 

 

 

 

ピ、ピ、ピ、ビーーーーーーーー!!

 

 

 

 

 

 

けたたましいブザー音が鳴り響くと同時に、青い光が私の顔のすぐ横を突き抜ける。

 

 

「あら、てっきり少しは動こうとするかと思っていましたけど、避ける余裕もなかったのかしら?」

「初めから銃口がこちらを捉えていない射撃を避ける必要はないでしょう。こちらも状況開始といきますかね」

 

 

オーギルの"光"の翼を展開しライフルを軽く構える。

翼の"出力"が低い為、1~2メートルの光の翼が展開される。

 

 

「とことんビジュアルに飛んだ機体ですのね…それがなんなのかは知りませんが、仕掛けてこないのなら私からやらせていただきますわ!」

 

 

ブルーティアーズの非固定浮遊部位から四機のビットが分離する。

 

 

「さぁ踊りなさい。わたくし、セシリア・オルコットとブルーティアーズが奏でるワルツで!」

 

 

青い光が降り注ぎ、数発のレーザーを被弾し、機体に強い衝撃が走る。

視界にダメージ警告が表示される。

回避するべく緩急をつけた動きで、アリーナ内を"大きく"飛び回る。

 

 

「先ほどの威勢はどうしましたの?この程度の射撃、初撃を見切ったあなたなら躱せるのではなくって?動いてい『ザザッ』では勝つどころかダメージすら与えられませんわよ!」

 

 

ビットによる攻撃は先程より激化する。

数多のレーザーが視界を飛び交い、時折機体を強い衝撃が揺らす。

 

 

 

 

強い力がぶつかり、鼓膜を揺らすこの感覚…久しく感じていなかったこの感覚…悪くないものだ。

だが…まだ足りない

 

 

 

 

「フフ『ザザッ』…フフ…フハハ…ハハハ『ザザザ』ハハハハハハハハハ!!」

 

 

「な、何がおかしくって?!」

「いえ…そうですね、"今"は避けているだけでいいんですよ『ザザッ』"今"はね」

 

 

 

 

 

 

そう…こちらが必死になって避ける必要もなくなり、更なる力を奏でることができる…

ワルツなどと言っている間に、フィナーレの準備は整いつつあるのだから…

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

何かと癪に障るこの男

もう一人の男と違い、何かしら見下しているように感じるあの態度…

今も武装を展開しているにも関わらず、一切こちらに攻撃してこない。

 

男のくせに戦いにでまで見せるこの余裕が気に入りませんわ…

 

 

「っ…なかなか当たってくれませんのね…」

「私もそう簡単に落ちるわけにはいきませんからね」

 

 

そしてその余裕を裏付けるかのように、初心者とは思えない操縦でスターライトmkⅡのレーザーをことごとく躱していく。

相手の技量を見誤っていたということもあるのだが…心なしかロックオンが少し"遅く感じる"こともあり、なかなか命中しない。

 

 

「それなら…っ!ブルーティアーズ!!」

 

 

非固定浮遊部位からブルーティアーズを放ち、ビットによる攻撃を開始する。

 

 

「さぁ凌いでみなさい!ブルーティアー『ザザッ』のワルツを!!」

 

 

ビットによる多角度からの断続的攻撃、この攻撃を避けられるはずもなく放たれたレーザーが数発命中する。

その度に相手のバランスを崩すが、持ち直しが早く、畳み掛けることができない。

ビット攻撃を見ても冷静に対応してくるあたり、下調べはぐらいはしてきたようだ。

しかし攻勢に出たことは間違いなく、その勢いを殺さぬようビットの操作に集中すべく、相手の上方に陣取り反撃を許さぬよう、攻撃に集中する。

 

それにしても…先ほどのロックオンもそうでしたが、ビットの操作もなにか…少し重いような感覚がある。

入学してからISを触っていなかったせいなのでしょうか?

だがそんな気のせいかもしれないことで相手に遅れを取る私ではありません!

 

 

 

「どうしました?先ほどのようにお避けになられては?それとも、やはり口だけだったのでしょうか?」

「フフ…なかなか、全て躱すと『ザザッ』ると上手くはいきませんね…さすがは代表候補生、"この状態"でも的確に当ててきますね」

 

 

 

 

…これですわ…

 

 

 

 

「ならさっさと落ちてくださいませんか?私もいい加減煩わしいんですが…!!」

「っと!随分と攻めの攻撃パターンになりましたね…これは…っ、避けづらい…!」

 

 

 

 

…この嘲笑うかのような…

 

 

 

 

「ですが落ちることはでき『ザザッ』せん。こんな愉快な時間をそんなつまらない幕引きで終わらせるなど…落ちるのはあなたです。ですがご安心を、あなたのワルツに見合う盛大なフィナーレを用意しておりますので」

 

 

 

 

…何もかも見下したこの態度が気に入りませんわ…!!

 

 

 

 

ビットを戻し、相手の上方から指差す。

 

 

「今追い込まれているのはあなたでしてよ!?もうシールドが半分も残ってないと見えるあなたが私を『ザザザ』ち負かすなどと…片腹痛いですわ!第一?先程から攻撃すら仕掛け『ザザッ』きませんけど、その銃は飾りで『ザザザ』の?もしや撃ち方すら知らないのでは?『ザザザ』…

 

 

ってさっきから何度も何度も、このノイズはなんですの?!」

 

 

言葉を遮る不愉快なノイズにフラストレーションが一気に溜まっていく。

最初は気にも止めなかったが、ISの通信にここまでひどいノイズが入れば誰だろうと異常に思う。

 

 

「…なるほど、そろそろですかね」

 

 

ここまで相手が何も仕掛けてこず今の発言…私の気づかぬ間になにかノイズを発生させる原因を作っていたということに…

 

 

「何をする気か知り『ザザッ』せんが、そろそろ終わりにして差し上げますわ!ブルーティアーズ!」

 

 

眼前の敵を叩き落とすべく再びビットを放ち、相手の周囲を移動させる。

 

 

 

 

 

だがこの時…何かが致命的におかしかった。

 

 

「っ!?」

 

 

ビットの反応速度が決定的に遅い…

自分の体感でもわかるほどに遅く、命令と動きに大きなラグがあった。

射撃タイミングを完全に違えた複数のレーザーは、虚しく空を切る。

 

 

 

 

 

 

 

「…おや?」

 

 

 

 

 

 

 

無機質な赤いカメラアイが、こちらを射抜くように見つめる。

ゾクリと全身に悪寒が走る。

 

 

一瞬…何か得体の知れないものに心臓を掴まれたかのような感覚に襲われる。

ISの精神抑制があるにも関わらず、全身が強張り、冷や汗が吹き出した。

 

 

「どうかしましたか?随分と動揺しているように見えますが?」

「な、何をしましたの?…さっ『ジジジ』から入るこのノイズに、この異常…」

「お答えすることはできません…そんなことより、この戦いも随分と長くなってしまいましたね…あなたの要望に応えるためにも、そろそろ終わりにしましょうか」

 

 

オーギルの翼から光が消え、ゆっくりと飛翔し始める。

それを追うようにビットによる射撃を再開する。

オーギルはそれを躱しながらも尚上昇を続ける。

命令に多少ラグがあるものの、動きに異常をきたしたわけではない…これだけで私が敗北するという道理はない。

 

 

「な、なんの強がりか知りませんけど?『ジジジッ』依然として有利なのはこの私…決してあなたではなくってよ?あなたが勝つなんて万が一にもありえませんわ!」

 

 

射撃中のビットの動きを一瞬止め、相手を打ち抜くべくライフルを瞬時に構え、トリガーに指をかける。

 

 

「どんな策を用意していたかは知りませんが、これで終わr―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうですね、これで終わりです」

 

 

 

 

 

 

 

ピシッ

 

 

 

 

 

 

 

何かにヒビが入ったような…そんな音がアリーナに静かに鳴り響く。

 

 

 

 

 

そしてその微かな沈黙を破るかのように…

 

 

 

 

 

全てのビットが鮮やかな爆炎に彩られながら爆散した。

 

 

 

 

 

「…へ?」

 

 

 

 

 

意識がオーギルから離れたその刹那、ハイパーセンサーが捉えるすべての視界が紅蓮に染まる。

 

 

 

 

シールドがあるにも関わらず、全身を握り潰されたかのような衝撃が体を駆け巡り、ついに私の指がトリガーを引くことはなかった。

 

 

 

 

 






前編終了です。
後編に続きます。


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決闘 【後編】


後編です。
初めは説明っぽくなっています。
楽しんでいただけると幸いです。


 

「あぁ、やはり…素晴らしい…」

「っとに、我ながら惚れ惚れするね~。大佐殿ー、武装展開したらちょい待っててくれ」

 

 

オーギルの起動テスト

目の前が爆炎に包まれ、未だに弱い衝撃がアリーナ全体を走る。

耳をやられるかと思うほどの爆音に山田先生は尻餅をついている。

それも無理はない、爆炎は一瞬で晴れたものの未だに振動が続く程の爆発だ…微動だにどころか、恍惚としているこいつらの方がどうかしている。

 

 

「…あれについて話してもらおうか」

 

 

山田先生を引き上げながら変態二人に問う。

規模がおかしいジャミングと爆発…何もかもがわからないことだらけだ。

たとえ客だろうとここで説明ナシなどと言おうものならアイアンクロー決めてやるか…

 

 

「怖いわ~ブリュンヒルデ威圧感まじっべ~わ」

 

 

本当にやってやろうか…というかアイアンクロー・スラムまで繋げてやろうかと思える程に腹が煮えくり返る態度だ。

 

 

「…巫山戯るのは大概にしてもらおう…あの爆発やジャミングについての説明を要求する」

 

 

「そっちで解析するんじゃありませんでしたっけ?お?」

「木原さん!さすがにそろそろ勘弁してください!」

「わったよ…そんで川尻、オーギルのスペック公開しちゃっていいのか?」

「えぇ、一応はそういう手はずになっています。あ、こちらに機体出力などをまとめていますのでどうぞ」

 

 

無駄にごつい真っ白なUSBをを手渡される。

渡される際、手に強い視線を感じたが気のせいだろう。

そもそもそんなデータがあるのなら、始まる前に渡しておけと言いたいところだが、済んだことは仕方がない。

 

 

「さて、機体でデータを見ただけじゃわからん武装面を優しい優しいこの俺が解説してやるとしましょうかね。耳かっぽじって聞き逃さないでくださいよー」

 

 

木原が手に持ったコンソールをいじると、部屋のモニターの一つが切り替わり、オーギルの詳細データと透過cgが表示される。

 

 

ん?

 

 

「ま、待ってください!どうやってモニターの切り替えを?」

 

 

その通りだ。

この環境下でそんなことができるはずない。

…そもそもハッキングなのでは?

 

 

「あ?んなもん、ただモニターの入力に割り込んだだけだよ…あー、ジャミングのことか!つかジャミングのことなら他のモニター見てみろ」

 

 

気に留める様子もなくハッキングの事実を言い放った。

なんだこいつ…やることやって早く帰ってくれないだろうか…

 

 

他のモニターに視線を向ける。

砂嵐が消え、アリーナの様子をしっかりと映し出している。

不愉快なノイズを鳴らしていたスピーカーも今では正常に機能している。

 

 

「あ、あれ?さっきまでの電波障害がなくなってる…?」

「それではIS最高機関に所属している教員であるお二人が、この程度のことを分析できないどころか慌てふためいているという大変面白い事態になっていますので、この俺木原数多が皆さんに愉快素敵に解説していきたいと思います。はい拍手」

 

 

「わ、わ~…」パチパチ…

 

 

律儀に拍手を返しているのが自分だけだと気づいて赤面する山田先生。

なんだこの愛らしい生き物は…歳もほとんど変わらないというのに女としてこれはずるくないだろうか…

それにしても…山田先生が天然をかましてくれていなければ、この腕が奴に伸びていたかもしれん程に腹立たしい言い回しだ。

 

 

「そんじゃまず、オーギルが放出させてる微細なフィルムについて説明しとくか」

「フィルム?…あの光のことか?」

「ご名答、あの光はフィルムの反射によるものだ。オーギルの翼からは肉眼では確認できない程微細なある化合物でできたフィルムが放出されている。そんでこのフィルムがジャミングに直接関わってくるわけだが…さすがにチャフぐらいは分かるわな?」

「えっと、蒸発させたアルミやプラスチックフィルムによる電波妨害や誘導として使われるデコイアイテムですね…なるほど、そのフィルムが電波妨害をしていたということですか?」

「おいおい、IS学園のカメラってのはチャフ程度で通信できなくなるような代物なのか?携帯電話じゃねぇんだからそんなことはねぇだろ。そもそもフィルムが撒かれていたのはアリーナ内だけだろ。シールドの外にあるカメラなら問題ないんじゃねぇのか?」

「え、あ、確かにそうですけど…」

「ま、わかってて聞いたんですけどね~…さて、こいつ単体でもある程度ジャミングはできるがそこまで高い効果は発揮できねぇ。ま、所詮チャフだ…だがこのフィルムは温度変化でフィルム同士が簡単に吸着、結合し、その際に電波障害を引き起こす微弱な電磁波を放出する。これがアリーナ内でこの現象が絶え間なく行われていたわけだ。これでジャミングの原理はわかったか?」

 

 

「ちょっとまて、そのフィルムの効果が絶大なのはわかった。だがこれ程までに強力なジャミングを一瞬で実行するシステムが何故レギュレーションに引っかからない?」

 

 

 

これ程の破格性能が備わっているのなら、どんな戦闘であろうと相手のセンサー系統を全て無効化してしまえばワンサイドゲームになることが決まっている。

そんな機体がなんの制限も設けられていないということ自体がおかしいのだ。

 

 

 

「ところがどっこい忌々しいことにISには微っ妙な効果しか無いんだわこれが…できてハイパーセンサーの機能低下とかコアネットワークの阻害ぐらいじゃね?そもそも今回は大佐殿がしょっぱなから限界出力で放出したから一瞬でジャミングがかかったわけだが、そんな舐めプは対IS戦じゃまずできねぇよ…出力がでかいと移動に支障が出るからな」

「なるほどな…ジャミングについてはある程度わかった。だが一番の問題はあの爆発についてだ…虚空が突然爆発したように見えたが、あれはなんだ」

 

 

あれこそが問題だ。

あの規模の爆発がどうやって引き起こされたのか分からない…

何もない空間が突然爆発するような現象、そんなことが実際に起きてしまえば対処のしようなどない。

 

 

「大体当たりだ。あの爆発は散布されたフィルムが起爆したものだ。肉眼では虚空が爆発したのと何ら変わりはねぇよ」

「は?…フィルムが起爆だと?」

「正確には違う。さっきも説明したが、このフィルムは温度変化で結合する。結合したフィルムは素敵なことに、ニトロ系の化学物質…つまりはc-4みてぇな爆薬に変化するわけだ。フィルム本体にも爆発性はあるんだが、起爆するにはある程度の塊が必要だ。そんでもってこいつは物体同士が吸着し合う…あとは適当にISの武装とかにある程度張り付かせてドカンっことだ」

「あ、あの…そのフィルムって肉眼で捉えられないほど微細なんですよね…吸い込んだりしたら危ないんじゃ…」

「残念なことに毒性も無い。ご飯にかけて食うみてぇに大量摂取しない限り害はねぇよ…多分。それにオーギルの信号がない限り、アリーナでキャンプファイアーしたとしても起爆しねぇよ。あ~でも今のアリーナは酸素ねぇから火自体つかねぇか」

「いくら安全と言っても吸い込んでしまって、もしもということもあるだろう」

「俺から言わせればその場でISに殴り掛かられたりする方が十分に恐ろしいけどな」

「まぁそれもそうかもしれんが…これにしたってあそこまでの威力を出せるというのはどうなんだ?」

 

 

「あれだけでIS仕留められるほどの威力はねぇ。ま、ISに対してはな…」

 

 

 

ISに対しては…そうだな、これは…ISは兵器なのだから先に上がった安全性などより、より強力な暴力性の方が重視されて当然か…

そう、今のISは兵器なのだ…

 

 

「待たせて悪いね大佐殿ー、ロングライフル展開してくれー」

『了解しました。弾はどうしましょうか?』

「全種一発づつ分けて地面に向けて撃ってくれ」

『信管と雷管どちらにします?』

「信管だ」

 

 

キンブリーがライフルを地表に向けて構える。

 

轟音とも呼べる炸裂音が数回鳴り響き、十数メートルの土煙がいくつも作り出される。

先ほどの爆発に比べれば大したことはないが、十分な破壊力と言える。

 

 

「か、かなり大口径の実弾みたいですね…」

「あ~なんだったか…80mm実弾ライフルだったか?」

「えぇ80mm特殊弾頭ロングバレルライフル砲です」

「は、はちじゅうみり!?アンロックユニットならまだしもライフルで80mmって…」

『なかなか気持ちのいい反動ですね…これ』

「これ生身で撃ったら撃つ側がミンチになるけどな。主任の案では本来秒間10発のフルオートになる予定だったんだが、ISは耐えれても中身ぐちゃぐちゃになるからセミだ…あとアンダーレールについてんのが単発フレシェット弾だ」

「この際遠慮しないで言わせてもらう…フィルムのこともそうだが、こんなものを作って喜ぶとは…変態どもが!!」

 

 

ついに言ってしまったが、事実だ…後悔はしていない。

広範囲の無差別攻撃に、80mmフルオートライフルだ…

変態以外の何者でもないではないか!!

"あいつ"も相当変態だったが、この開発チームも大概だな。

 

 

「おいおい俺まで変態扱いされんのは気分わりぃな。こんなきめぇ武装開発すんのは主任で、それを使用可能段までセーブすんのは俺なんだぞ?俺はむしろ真人間なんだよ傷つくわ~」

「すまないな。だがお前も大概な発言をしているんだが?」

「はいはい悪うござんした。ま、主任が頭おかしい事実だから構わねぇけど…んじゃ大佐殿、信管を順番に起爆してくれ」

 

 

起爆?また爆発するのか。

この短時間にここまで爆発に慣れてしまうというのも異常だが、どれだけ爆発好きな機体なんだ…

 

 

『了解です。少々お待ちを…それでは順に起爆していきます』

 

 

キンブリーがバレルの根元あたりを微かに動かすと、アリーナ地面に空いた銃痕の一つが軽い破裂音を鳴らして爆発する。

大した爆発でないことに安堵していると、金属同士が激しくぶつかり合うような甲高い音がアリーナのバリアから響く。

 

 

「右手に見えますのが~ベアリング炸裂弾頭でございます~。あれは見たまんま地雷だ。それじゃあ次は―――――

 

 

「おい!もっと言うことあるんじゃないのか?」

「これ以上筆舌に尽くしがたいほどに完結してんだよ…あー弾頭内に仕込んだ鉄球がたくさん飛んできます以上。それでお次は…」

 

 

信じられないぐらい適当に弾頭の説明を済ませていくこの男…

紹介を一つ済ませる事に、轟音が鳴り響きクレーターが増えていくアリーナ。

キンブリーからは時折マイク越しに笑い声が聞こえ、木原数多は一々起爆させてから弾頭の説明を続け、川尻浩作は愉悦を含んだ表情でアリーナを見下ろしている…こいつらは心底楽しそうだが、我々ふたりは凄まじいストレスにさらされていた。

山田先生とは違ったベクトルで限界に近かった。

 

 

「んじゃ、これで以上か…大佐どのー、戻って来てくれー」

 

 

やっと説明が終了し、改めてアリーナを覗き込む。

複数のクレーターが平地を崩し、所々で炎が揺らめいている…誰が片付けるのだ…

 

そのことを告げようと振り返ると、既に木原数多は姿を消していた。

未だ額から血を流しながら帰り支度をするこいつに言うのも忍びないので、特に言及することもなくそのままアリーナを出させた。

二人が帰ったことによって、どっと疲れがのしかかる。

 

 

「「…はぁ」」

 

「おや、お二人共どうかしましたか?」

「あはは…ちょっと疲r―――――

 

 

「キンブリー、ローゼンタール本社と連絡を取る機会があったら言っておけ…木原数多という研究員を二度と寄越すなとな…いや、お前らもう来るなと言っておけ…いいな?」

「あぁ、なるほど…それは…なんというか、ご愁傷様です」

 

 

 

言葉を選ぶキンブリーに苦笑いを浮かべる山田先生…

一番被害を被っていたのは山田先生なのだ、これは仕方ない。

今夜酒につきあわそうと思っていたが…そっとしておくか。

 

 

 

こうして多くの人にとってとてもとても長い一日が終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ…きゃぁあああああああああああああああああああああああああ!?」

 

 

 

 

 

セシリア・オルコットが爆炎切り裂きながら、勢いよくアリーナの地面に激突する。

シールド内が爆炎に染め上げられたことにより、観客席は騒然とする。

だがそれとは真逆に、私はアリーナの中央で歓喜に打ちひしがれる。

 

 

 

 

「んん~~~~~……良いっ!!実に素晴らしいっ!!良い音ですよ!セシリア・オルコット!!」

 

 

 

 

良い…やはり絶叫の伴う爆発は何物にも代え難い…

絶叫の質、量は戦場のものと比べるまでもないが、やはり良いものだ。

 

 

 

 

「どうしましたかセシリア・オルコット…この程度で倒れるなんてことはないでしょう?私を打ちのめすのでしょう?まだビットが破壊されただけです。新たな武器を展開してください…それができなくとも、まだ手と足があるでしょう?それとももう声も出せませんか」

 

 

 

 

彼女が落下した土煙の舞う地面にゆっくりと降下する。

これで倒れていては拍子抜けもいいところだ。

試合が終了していないということは、少なくとも相手のシールドエネルギーは0ではない。

センサーに反応もある…

だが気絶しているということも…私はそんな考えを起こしながら地上に足を付け相手を確認すべく、降下を続けた。

 

 

 

 

 

 

 

カシャンッ

 

 

 

 

 

 

 

私が地に足をつけようとした瞬間、土煙を突き抜け猛スピードの何かが二つこちらに向かってくる。

 

 

「!!っミサイr―――――

 

 

回避行動もままならないまま、今度は私が爆炎に飲み込まれる。

 

 

「くっ…げほっけほっ…か、かかりましたわね!ブルー・ティアーズには6機ございましてよ!宣言通り、あなたを打ち負かせて差し上げましたわ!」

 

 

土煙の中からセシリア・オルコットが飛び出す。

機体は所々にダメージが見受けられ、ライフルの銃身は若干曲がってしまっている。

だが勝利を確信した彼女にとっては、取るに足らないことのようだ。

 

未だに黒炎を上げる機体周囲、半分以上削られているISなら一撃で落ちるかもしれないだろう……だが

 

 

 

 

「…クフフ…フハ、フハハハハハハハハッ!!」

 

「なっ!?何故ダメージを受けていませんの!?」

 

 

 

 

黒炎を払い、赤いカメラアイが相手を見据える。

機体はレーザーによる損傷は見受けられるものの、焦げ付くような傷は見当たらない…それもそのはずだ。

 

 

「何を驚いているんです?先程の私の攻撃を見ていませんでしたか?この機体に爆破耐性があることぐらいお分かりになるでしょう?」

 

「そ、そんな………くっ、い、インターセプター!!」

 

 

 

彼女はそう叫ぶと、ライフルを投げ捨て小型のブレードを展開する。

ブレード以外のすべての武装を破壊されたにも関わらず、彼女のその目には闘志が宿っている。

やはり彼女の過去、プライドが負けを許さないのだろう…

スラスターの出力を上げて私に真っ直ぐ刃を向け加速する。

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ…そうだ、だからこそ……その時あなたは、美しい…」

 

 

 

 

 

 

 

「…っ!?」

 

 

急接近する彼女に向かって、軽くライフルを向ける。

近接戦に慣れていないのだろう、彼女は勢いを殺す暇も距離もなく、ライフルが胴体に突き刺さるようにぶつかり前のめりになる。

 

 

 

 

 

 

「よかったですよ、あなたとのワルツは…」

 

 

 

 

 

 

そう告げると…私はそっと引き金を引いた。

 

 

 

 

 

 

 

ビーーーーーーーーーーッ!!

 

 

 

 

 

 

 

試合終了を知らせるブザーが鳴り響く。

 

 

 

 

 

『試合終了。勝者、ゾルフ・J・キンブリー』

 

 

 

 

 

 




やっとこさ決闘が終了いたしました。


初めての戦闘描写ですので何かと拙い部分も多かったかと思います。
あと私はミリタリーについて詳しくないので、取材不足で間違った知識やいい加減な説明になっているかもしれませんが、脳内補完でお願いしますσ(^_^;)
キンブリーのロングバレルライフルですが、GN-xⅣのロングライフルみたいな見た目です。
少しずつですが、書き方もいい方向へ改善できるよう努力してまいりますので、見捨てないでください(;_;)


少し忙しい時期に入りますので、投稿がまた遅れてしまうかもしれませんが、ご了承くださいませ。


コメント、感想、誤字脱字の指摘、ご意見等ございましたら是非お願いします……いつでも待ってます!


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仕事

生傷の絶えない私、焼酎ご飯です。

傷ではありませんがエアコンで体調を崩して凄まじく腹痛です。




さて、今回もあまり進みません…ごめんなさい(´;ω;`)
キャラ崩壊発生なども多々あると思いますが、ご容赦を…





「あ~…マジで糞たるかったわ~…川尻ぃ、早く帰んぞ」

「木原さん、もう少し穏便にはすまなかったのでしょうか?止めるの忘れてた私も私ですが…」

 

 

オーギルの受け渡しが終了し、学園内の駐車スペースに到着している。

コンテナは別便で回収するため、我々は通常便で本社に帰投することになる。

 

 

「つか俺なんか向かわすなよ…開発関係者なら俺以外に適任がいんだろ?」

「幹部ならあなたか主任ということになってしまうので…言えば喜んで来そうですが…なんと言いますか…それが逆に困るというか…」

「…自分で言うのもなんだが、俺と主任の対話能力比べるんだったら五十歩百歩だろ?なら主任でもよかったじゃねぇか」

 

 

二人で大型のバンに乗り込み、エンジンをかけ車を動かす。

 

 

「はい、正直に言いますと確かにそうなんですけど、彼も社長d『ッ―――――!!ッ―――――!!』」

 

 

突然、両鼓膜をプレスされたかのような大音量のメタルが車内のスピーカーから再生され、車を止め咄嗟に耳を押さえる。

この音響テロの犯人は言うまでもなく木原さんで、今まさにボリュームを上げているところだ。

 

 

「木原さん!?さすがに音でかすぎるんですけど!?止めてもらえませんか!?」

 

 

私の必死の訴えも虚しく、彼はプレイヤーを止めることなく、凄まじい音が車内を反響し続けている。

すると彼はコンソールを取り出し、小さな立体画面を私に見せる。

 

 

『バグ取り付けられてる。ちょっと我慢してろ』

 

 

!!…なるほど…その対策にこの爆音ですか。

私は一切気づくことができなかったが、彼は乗車して数秒で違和感に気づいたようだ。

 

 

私と彼で数分車内を調べると、三つの盗聴器が発見された。

彼はその盗聴器をいじり、コードをむき出しにすると、コンソールの端末に繋いだ。

よく考えると盗聴器自体をいじるのなら別に音響テロを起こす必要もなかったのではないだろうか?

私はメモ帳を取り出し、彼に筆談で問う。

 

 

『それは何を?というかそれいじってしまうのであれば、このメタル必要ないんじゃないですか?』

『あれだ、こうした方が相手ビビるだろ?それに今の手持ちじゃ逆探とかできねぇからな、とりあえずお仕置きしといた』

『お仕置き?』

『今頃相手さんは俺が流してる音声暗号の解読してるんだろうよ』

『音声暗号?内容はどういったもので?』

『解読すると、『今夜のうちの晩御飯はしゃぶしゃぶです』とかいう糞どうでもいい情報が表示されるわけだ。ちなみに俺の晩飯はしゃぶしゃぶじゃねぇ』

『つまり意味はないと?それまた悪趣味な…しかしそれでは相手側のことを探れないのでは?』

『車は本社に帰るわけじゃねぇのに車内に仕掛けられてたんだ、相手もそれぐらいはわかるだろ。というより学園内で仕掛けられたっつーことは、間違いなくコンテナの方にも仕掛けられているはずだ。そっちの方弄り倒した方がやりやすいってわけだ』

『なるほど…では本社に連絡入れておきましょうか?』

 

「おう、頼むわ」

 

 

コンソールの操作を終え、盗聴器と端末を後部シートに放り投げる。

スピーカーのボリュームを下げ、車を再び発進させる。

携帯で連絡を終え、再び車を発進させる。

 

 

「それにしても、どこなんでしょうね…こんなこと仕掛けてくるところって」

「学園本体か、どっかに所属してる生徒か…国家間の問題持ち出せねぇのによくやるこって」

「そうですね。国家間の問題に関与している組織じゃないにしても、検討もつきませんね」

「だから今どうこう言っても仕方ねぇよ。どうせ戻って主任に指示仰ぐことになるんだ、あの人もたまには社長っぽいことしてもらわにゃならんだろ」

「まぁ自分一人で解決してしまいそうではありますが、そうですね」

「んじゃさっさと帰んぞ。主任が大佐殿の機動データ欲しがってるしな」

「えぇ、それもそうですね。あなたと違ってこの学園と離れるのは少し名残惜しい気もしますが、出るとしましょうか」

「お前頭沸いてんじゃねぇのか?こんな場所にあと数時間でも居させられたら気が狂うわ」

「いえなに、美しい…の女性を見るのはとても気分がいいですからね」

「あぁそうかい。とりあえず俺は寝るから、着く場所着いたら起こせ」

 

 

そう言うと彼はシートを倒し、睡眠体勢に入る。

先ほどの解説などでもそうだったが、この人は縦横無尽すぎる…だが如何せん技術、発想ともに良い意味でぶっ飛んでいるため別段罰せられるようなことはない。

彼の傍若無人な態度でどうこう言われるのは私であって彼ではない…フフフ…はぁ…

私はそんな幸せ大放出なため息をつきながら、車を加速させる。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

同日、学園内

 

 

物々しい机が扉の正面に構えられた応接室

室内は薄暗く、窓から射す夕陽の光だけが室内を照らしている。

そんな室内でふたりの女生徒が応接セットを挟んで向かい合っている。

 

 

「…お嬢様、先ほどの車内盗聴器の暗号解読が終了したらしいです」

 

 

ヘアバンドで前髪を上げたヘアスタイル…暗闇で夕陽が反射する眼鏡…

活発というよりは知的なイメージを受けるその女生徒はインカムを軽く操作し、対面する女生徒に通信内容を伝える。

 

 

「あら、結構時間がかかったのね。それで?それだけ時間がかかった暗号なら内容が気になるところなのだけれど?」

 

 

扇子を開く青髪の女生徒。

扇子で口元を隠しているものの、怪しい笑みを含んだ目が見て取れる。

 

 

 

 

 

「『今夜のうちの晩御飯はしゃぶしゃぶです』」

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

 

 

 

 

 

先程のようなミステリアスな雰囲気は一瞬で胡散し、扇子の端から除く口はポカンと開いている。

余程予想外な返答だったのだろう、その部屋だけ時間が止まったかのように沈黙が支配する。

 

 

「コホンッ……今私はあなたの夕食の話を聞いたわけじゃないのだけれど?別にあなたが妹と楽しく鍋を突こうと、妹と不仲の私には関係ないわ…ぐすん」

「いえ、別に私の夕食の話ではありません。あと一人で言っておいて勝手に凹まないでくださいお嬢様」

「じゃあ何なのよ!私への当てつけじゃないって言うんならその雰囲気ぶっ壊しの謎発言はなんなの!?虚はそんなアグレッシブなボケをかます子じゃなくて、なんか…こう…クールビューティーだったでしょ!?」

 

 

応接セットの机を勢いよく叩き立ち上がる青髪の女生徒。

IS学園生徒会長にして、生徒最強の称号を持つロシア代表のIS操縦者、更識楯無。

表向きは生徒会長、代表として行動しているが、その実態は暗部に対する対暗部用暗部『更識家』の当主である。

家のことやその他もろもろによって、先に挙げられたように妹とは不仲だ。

 

 

「褒め言葉として受け取っておきます。そして先程私が伝えた言葉ですが、暗号解読をした結果あのような意味不明な言葉だったとの報告です」

 

 

そして彼女とは対照的にまったくもって冷静な眼鏡の女生徒。

IS学園生徒会の会計を務め、学年主席、布仏虚。

布仏家は代々更識家に仕えている家庭で、楯無に直接仕えている。

先に挙げられたように妹とは仲は良好で、鍋を一緒につつくほどには仲がいい。

 

 

「ますます意味分からないわよっ!!完全におちょくられてるじゃないそれ!!」

「落ち着いてください。…あ、たった今入った報告なのですが、ゾルフ・J・キンブリーの部屋に仕掛けていた機器の反応が全てロストしたそうです」

 

 

雰囲気もくそもないので、室内の明かりをつけデスクワークに戻るため応接セットから移動する虚。

 

 

「ガッデムッ!!車どころか部屋のやつまでバレてるじゃない!!今日の機動テストも入り込めなかったし、キンブリーって子に対してはまったく追加情報が集められないじゃない!この短期間で全部バレるってどうなの!?ぜーはーぜーはー…」

 

 

またもや対照的に、頭を抱えて応接セットの上で体をねじっていたかと思うと、今度は息を切らしてソファーに深く沈む楯無。

無理もない。本来そう簡単にバレるはずのない暗部としての力を使って仕掛けたものが短期間で殆ど壊滅し、めぼしい情報もまったく手に入らずにその機能を終えたのだから…

大部分はしゃぶしゃぶが原因だが、彼女は大きくため息をついてソファーに身を任せる。

 

 

「随分余裕がありませんね。正直見苦しいですよ?お嬢様」

「そりゃあなたしかいないもの、変につくろう必要も無いでしょ?あ~、それにしてもどうしようかしら」

「情報収集ですか?」

「えぇ、織斑くんは放っておいてもある程度集まるでしょうけど、彼がねー…コンテナの方は生きてるのよね?」

「はい問題ありません。それ以外にできることといえば人を使って彼に接触するか、機体外側からの解析ぐらいではないでしょうか?彼の経歴に関しましても、これ以上掘り下げても何も出てきそうにありませんし」

 

 

キンブリー…第二のIS操縦者に関しての情報…

 

一人目の織斑一夏は人間関係から鑑みてISを操縦できる原因がどこかにあると考えられるのだが、二人目に関してはその一切が当てはまらない。

しかし出生に関して不明な点が多々ある。

両親は幼い頃に亡くなり、里親が存在したが、その人物も既に他界したことになっている。

戸籍や親族の情報は確かに存在するが、痕跡が一切存在しない。

その後の経歴は、このご時世にも関わらず怒涛の昇格を重ね大佐にまで上り詰めている。

 

余りにも不自然なその経歴…だが叩けども叩けども埃は出ず、それ以上の目星い情報は一切出てこない。

 

IS操縦者であり、謎の経歴を持つ男…だがその調査は尽く行き詰まり、停滞していた。

 

 

「そうね、代表決定戦をするらしいしちょうどいいわ…フフフ、待ってなさいキンブリーくん!あなたとあなたの機体、その合切をこの私更識楯無が暴き通してあげるわ!」

 

 

だがその停滞に対抗意識を燃え上がらせる楯無は三度立ち上がると応接セットに足を乗せると、扇いでいた扇子を畳みどこでもない虚空にビシッと突き立てる。

見ようによっては滑稽なその一連の動作を見届けた虚はため息をつき、再び机に顔を戻す。

 

 

「方針も決まったところでお嬢様、そろそろ会長に戻ってもらえますか?あとその足の下にあるテーブルも拭いておいてくだs―――――

「そうと決まれば早速準備ね…それじゃあ虚、あとは任せた!!アデュー!!」

 

ガチャッバタン!

 

「…」

 

 

残像ができるほどの勢いで扉を開けて出て行き、生徒会室を沈黙が支配する。

 

 

ピッピッ…

 

 

携帯を取り出し耳に当てる。

 

 

「…あ、本音?今日一緒に鍋しない?…友達も?いいわ、私の部屋で待ってるから…うん、それじゃあね」

 

 

携帯をしまい椅子に深々ともたれため息を着く。

 

 

「あとは晩ご飯風景をお嬢様に送るだけ…ふっ」

 

 

眼鏡を不気味に光らせ勝ち誇った笑みを浮かべながら再びデスクワークに没頭する虚。

尋常ではない量の書類を捌くのに多大な精神力を労したが、翌日写真によって楯無が受けた言えもない敗北感に比べれば屁でもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして決闘当日

 

「ねぇ虚…最近私のカリスマが著しく低下している気がするのだけれど…」

「そうですね。最近失敗続きですからね」

 

 

観客席の一角に簡易的な撮影設備が設置され、その横で双眼鏡を除く生徒会の二人。

 

 

「ていうかあれ何!?せっかくこんな機器まで用意したのに、戦闘開始したらすぐに使えなくなるってどういうことなの!?」

「通信機器も圏外になっていましたし、ジャミングの一種では?」

 

 

試合開始数秒後、用意した解析設備は使用不能になり、携帯などの通信端末も圏外になった。

今現在…正確にはアリーナ内で発生した大規模な爆発後、すべての機器の昨日は回復したのだが…

 

 

「今日こそは機体データだけでも集めてやるつもりだったのにぐぬぬ…そもそも決闘あるんだったら訓練ぐらいしなさいよね!てか訓練してないのになんで初心者が代表候補生ボッコボコにしてるの?謎すぎるわ…」

「確かに、彼の情報は全くと言って手に入りませんね…望遠カメラでの室内の監視も大した情報得られませんでしたしね。対戦相手の情報を調べること自体も普通でしたし、本音から少し聞いた話でも、別段変わった様子は無いようです。強いて言うならテレビゲームで遊んでいたことと、"食事の管理レポート"のようなものを書いていたことが、なんというか意外でしたね」

 

 

室内に仕掛けた盗聴・盗撮機の類が全て取り除かれた後、室外からの望遠カメラによる監視のみとなっていた。

全てが監視できていたわけではないが、特筆しておかしな行動を取っていた様子はなかった。

 

 

「そうよね~…そんなことわかったところで、秘密でもなんでもなさそうだしね~」

「はい。生徒会長の仕事ぶりの方が余程脅しには向いているほどに普通の内容ですからね」

「う…だって彼が全く尻尾を出さないんですもの…ある程度情報集まったらちゃんと全部処理するから…そんな養豚場のブタでもみるかのように冷たい残酷な目はやめてくださいお願いします」

 

 

扇子で顔を半分隠し、ガクブルと震えながら目線を泳がせる楯無。

まるで本来の立場が逆転しているようにも見えるが、会計と会長の仕事を同時にこなす虚が投げ出さないでつきあてくれているだけでも有情と言える。

これが会社ならば即労働基準局に駆け込む程のハードワーク…そんな仕事を確実にこなす彼女に文句など言おうものなら毎日妹との仲良し写真が彼女の元に送られることになるだろう。

 

 

「はぁ…まぁいつものことなんで構いませんが…はぁ…」

「…え、えぇ、わかってるから…(くっ!こんなっことになったのも全てそこの謎ドイツ軍人のせいよ!今度椅子にアロンアルファ塗っておいてやろうかしら)」

 

 

迷惑千万、見当違いもはなはだしい恨みを込めた視線をハッチに戻るオーギルに送る。

そんな理不尽な理由で睨みつけ、とんでもないことを考えながらも、設置していた分析機器の片付けを終える。

 

 

「さって、今回も不作だったし、戻るとしますか!」

「おや、ということは時間があるということですね?さぁ仕事をしましょう仕事」

「ちょ!あなたワーカーホリックみたくなってるわよ!?」

「誰のせいですか誰の。戻りますよ会長」

「歩けるから!自分で歩けるから離してくださいお願いします!」

 

 

虚が楯無を半ば引きずるかのように、ふたりはアリーナを後にする。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

「む?」

 

 

ハッチに入る直前、何か物凄く理不尽な敵意にさらされた気がし振り返る。

 

 

「…気のせいでしょうか?」

『どうしたキンブリー、さっさと戻ってこい』

「えぇ、了解しました」

 

 

ドック内に降り立ち、ISを解除する。

それと同時に重い金属音を響かせながら扉が開き、織斑千冬がドック内に入る。

 

 

「代表候補生によく勝利したな…落ち着いた回避能力、認識能力は評価に値する」

 

 

言葉に反し、その顔はいつもの2割増ほど眉間にシワが寄っている。

どう見ても相手を褒める顔ではない。

 

 

「あなたにお褒めを頂けるとは、感激ですね」

「あとは慣れだろう…だがあえて一つ言わせてもらうとするのなら、過剰攻撃だ。相手の武装破壊、一部装甲の損傷度B…いくらお前が初心者といえど程度が分からないということはないだろう?」

「私の武装は現時点でフィルムとライフルのみです。決着の攻撃に関しましても武装の都合上仕方のないことかと…それに相手の武装がナイフのみになったからといって、降参を促すような真似は私にはできません。そのような行為は彼女に対して、この決闘に対しての侮辱と言えます…あなたとて学園の公正な決闘をそんなくだらない幕引きで終わらせたくはないでしょう?」

「降参させろという意味ではない。お前のセンスなら相手を殴り飛ばすこともできただろう?あのライフルでは明らかにオーバーキルだ。現にオルコットは回収されるまで気絶状態だったと聞いている。教師にとっては生徒の安全の方が優先される。今回は武装の都合上仕方なかったとは言え、今後やるすぎることがないようにな」

 

 

あれだけ引っ叩いておいて生徒の安全と抜かすとは…

まぁ彼は生徒というより弟ですかね。

第一、試合を容認する時点で安全の保証などとうに消え失せている。

 

 

「まぁ以後気お付けます。そういえば、次の試合はどうするんですか?彼女は意識が回復しているそうですが、機体の損傷はすぐにどうにかできるわけでもないでしょう」

「ブルーティアーズの武装はスペアが用意されているそうだ。機体の損傷に関しても、翌日までには問題なく使用できるようになるはずだ。換装と本人の回復も込で、織斑の試合は明後日ということになった」

「なるほど…ところで彼の専用機は?私が知る限りではまだ届いていない様子でしたが?」

 

 

専用機が届いていたとしたら試合をさせるつもりだったのだろうか?

いや、そもそも決闘を予定した当日に学園側が機体を用意できていないというのはどうなのだろうか…部屋割りの件や生徒への対応もそうだが、この学園は何かとずさん過ぎる。

 

 

「お前の試合が始まってすぐに届いた。試合が長引いたことも幸いで、あいつにはフォーマットとフィッティングを終えさせておいた」

「…試合に彼の専用機が間に合ったらどうするつもりだったんですか?」

「さすがにフィッティングが済んでいない機体を出させるつもりは無い。お前に出てもらっていたさ」

 

 

やれやれといった具合に首を振る彼女。

…なぜだろうか、物凄く胡散臭い。

 

 

「しかし…お前が勝ったということは、クラス代表は十中八九お前ということになるな」

「おや?あなたの弟が勝つという確率もあるのでは?聞く話によれば入学試験で教官相手に勝利したそうではありませんか。私は倒せませんでしたし、彼のほうが勝率として高いのではありませんか?」

「あれは教官側が自滅しただけだ。それにお前は山田先生と拮抗した戦闘をしたんだ。同じ試験として比べること自体が間違っている。だいいち、慢心していない代表候補生にど素人のあいつが敵うはずないだろう」

 

 

確かに、彼女は慢心がなければ私ももっと追い込まれていただろう。

それにしても、彼女の口ぶりからして、やはり山田先生は教員内でもかなりの実力を有しているようだ。

だが彼女の性格上、教師として損をしているように見えてしまう。

一度生徒に分からせるためにも、教員の実力を示す機会を設けるべきだろう。

 

 

「そうですか。まぁ彼が勝つにしろ負けるにしろ、私はクラス代表というものを辞退させていただきます」

「…軍が理由か?」

「えぇ、その通りです。随分察しがいいですね。いつ招集がかかるかわかりませんので、クラス代表という立場はなにかと都合がつかないので」

 

「そうか。その件についてだが、お前の試合中学園に軍への帰還令が伝えられた」

 

 

「軍から?…少し失礼、連絡を確認してきます」

 

 

ドックから離れ、ロッカールームで自分のロッカーを開く。

上着から端末を取り出すと、軍から…ペンウッド大将からのメッセージが来ている。

内容は明かせず、急ぎの用事…企業ではなく軍から…

しかも入学して間もない時点での彼からの連絡ということは…

これは非常に面白いことになるかもしれませんね。

 

 

「すみません。戻りました」

「早いな、そんなにあっさりした内容だったのか?」

「まぁそんなところです。その様子だとやはりあなたには内容は伝わっていないようですね?」

「そうだ。我々が知る必要があるのはあくまで学園を出る理由だ。軍の機密まで漁るようなことはしない」

「そうですか、それはありがたい。では伺っているかはわかりませんが、呼び出しは急ぎの用件のようです。すぐにでも向かいたいのですが、構いませんか?」

「あぁ、もとよりそう対応する予定だ。学園を離れている間は公欠扱いだ。感謝しろよ?…それにしても仕事という割には随分と上機嫌に見えるが、そんなに自国が恋しいか?」

 

 

態度が表に出てしまっていましたか…

だがこれだけ愉快なことが続くのなら浮かれるなという方が無理な相談だ。

 

 

「いえ、自国に帰ること自体には何ら感情は抱きませんが、私は仕事が趣味のような部分がありまして…久しぶりの"お仕事"が楽しみで仕方がないんですよ」

「フッ…なるほど、それで昇進するわけか。羨ましい性格だな」

「おや、あなたは今の仕事を楽しんでいないのですか?あなたの称号があるのなら仕事は選べた上で今の職場に落ち着いているのでは?」

「やりがいが無いというわけではない。ただやりたいことだけをできるというわけではないからな…」

「そんなものですよ。仕事を楽しむにはそれを含めて楽しめるようになったほうが得ですよ?」

「子供のくせに随分と達観したことを言うじゃないか」

「そうですね。今の私は言ってもまだ子供でしたね…さて、そろそろ戻ります」

「む、そうか、申請は通してある、あとは好きに出るといい。クラス代表の話は私から伝えておこう」

「ありがとうございます。それではまた数日後に」

 

 

彼女は事を伝え終えると、ドックを後にした。

 

それを確認した私は、ロッカールームに入り制服に着替える。

 

移動中誰に出会うということもなく、鼻歌交じりに自室に到着する。

 

自室に入ると、"仕事着"に着替え、最低限のものと漫画を数冊鞄、盗聴器の類が入った袋…そしてある"レポート"を持ち出す。

 

白いコートが海風を受けはためく。

 

IS学園を背に白い帽子を軽くかぶり直す。

 

 

 

 

 

「さて、久しぶりの仕事をしましょうか」

 

 

 

 

 

指の関節を鳴らしながら、前方へと伸ばす。

両手のひらの刺青をゆっくりと撫でながら、私はIS学園を後にした。

 

 




さて、今回は生徒会のお二人が登場しましたね。


そして未だ大人気の木原くん…正直書くのが怖いです((((;゚Д゚))))


今回も誤字脱字の嵐かもしれません…m(_ _)m


コメント、感想、誤字脱字の指摘、ご意見等ございましたらいつでもお待ちしております^^




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召還


大変遅くなってしまって申し訳ありません。

別にACで遊んでいたとか…そんなんじゃないんだからね!///

今回は二話同時…というわけにはいきませんが、今日中に次のお話を上げさせていただくつもりです。

何故このような形を取らせていただくのかといいますと、今回のお話は少し短く盛り上がりに欠けるので、連続で投稿させていただきますつもりです。

以前もお話しましたが、私はミリタリーや軍に関してあまり詳しくありません。その上アホです。
ですので皆様が変に感じるような馬鹿丸出しの部分があったりするかもしれませんが…まぁ…仕方ないということでどうか一つお願いします(´・ω・`)



「遠くからわざわざすまないね、こちらも火急の要件だったんだ」

 

 

以前にも訪れたことのある執務室

室温は快適なはずなのだが、執務室の主であるペンウッド大将は額に汗を浮かべている。

ただならぬ内容であることは容易に想像できるが、以前訪れた時同様に応接セットに腰掛け話を進める。

 

 

「構いませんよ。仕事なわけですし…それで、その遠いところにいる私を呼び戻してまでの仕事というのは如何様なもので?まさかただの事務作業というわけではないでしょう?」

「察しがよくて助かる。本来は日本にいる人間を呼び戻してまで頼む任務では無いのだがね…以前に君が私に言った"流血を伴う仕事"についてだが、これが発生しようとしている」

 

 

「…ほぅ」

 

 

額の汗を拭いながら予想に即した愉快な内容を伝えてくれるペンウッド大将。

そんな脂汗をかく彼とは対照的に、私は口角を釣り上げ静かに笑みをこぼす。

 

 

「それはそれは…私の注文に応えてくださったということですか?」

「確かにそれもある。だが主な理由は君の部下が全滅したあの事件にある」

 

 

私の部下…?

 

…そういえばハルフォーフ大尉の事件の際にエンピオ大尉以外全滅していたのだった。

だがまぁ部下を失ったからといって、何ら関心が生まれるわけでもないので"あの"などと含みのある言い方をされてもわかりにくいだけだ。

 

 

「あの事件、といいますとツヴァイクの強奪未遂の?」

「そうだ。あの件には君たちは護送という形で任務に就いていて内容は知っているとは思うが、実際に足を運んでもらった山中のあの施設は頻繁に使用されているわけではないんだ。今回のような機動テストなどにのみ使用されているのだが、そのテスト日を狙いすましたかのように襲撃を受けたわけだ」

「つまり敵側にはこちらの行動が事前に漏れていたと?ですが軍の作戦内容なんてものがそう簡単に漏れるものですか?」

 

 

IS学園だけではなくこの世界はどこもかしこもガバガバだった。

まぁその結果としてISを使用できる現状が生まれた訳で、別段憤慨することでもない。

 

 

「内通者が判明した。ツヴァイクの開発チームの一部が外部組織と繋がっていると思わせる通信が傍受された。明らかにこちらが損失を被る内容であり、ツヴァイクの件に関与してると思しき発言から内通者であるということが断定された」

「なるほど、まぁタイミング的に内通者がいても不思議ではありませんね。して、外部組織というのは?ツヴァイクの件で襲撃してきた彼らですか?」

「あぁ、そのはずなんだが…」

 

 

なんとも煮え切らない様子で言いよどむ。

 

 

「どうかしましたか?」

「う、うむ…なんとも情けない結果なのだが…襲撃者の身元特定に関してなんだが全員が全員フリーランスの傭兵やテロリスト崩れといった具合で、どこに雇われていたかが判明しないんだ。ISの操縦者に関しては歯型から照合した結果、記録が存在しなかったために身元が分からないでいる。そして傍受した通信に関しても通信相手は合成音声を使用していた上に、組織名は明かされなかったんだ」

「では相手方については何も情報が得られていないと?」

「その通りだ。それどころかこちらが傍受していることが相手に悟られてしまってね…そこらのテログループにこんな芸当ができるとは思えない。ISを所持していたこと、いちいち別の場所から人間を雇っていたことから考えるにそれなりに大きな組織であると考えている」

 

 

…これは酷い。

軍事機関としてはとんでもない醜態であることには変わりはないのだが…

 

何故だろうか、IS学園と並べてみると酷くまともに見えてしまう。

これは私だけなのだろうか?

 

しかし…この世界においてそんな大きな力を持った過激組織が存在するとは…非常に面白い。

そんな好奇心に気分を良くしている私とは違い、ペンウッド大将は未だ落ち着きない様子だ。

 

 

「ふむ、まぁそれほどまでに大きな組織ということなら、いづれ目星もつくでしょう。ところでその通信の傍受ですが…相手方に勘付かれてしまったというのは大丈夫なんですか?」

「いいや、大丈夫じゃない…問題だ。相手方に通話が傍受されたことがわかったということは、必然的に内通者の人間にもバレてしまったことになる。内通者のチームはテスト用のIS一機を強奪し逃走、その際に職員三名を殺害、そして先ほどそのチームが思われる占拠していると思われる無人施設が発見されたところだ」

 

 

予想以上に自体は深刻なようで、彼の動揺が収まらないことにも頷ける。

ISを失いそうになっていることはもちろんだがそれ以上に、この件が世間に公表されればどのような末路をたどるか、火を見るより明らかである。

 

 

「そこで君を呼び戻したというわけだ。君の部下が全滅し、君がISの適正を見出した何かと因縁のある事件の延長だ。そして残念なことに十中八九流血が伴うだろう…君にとっては好都合かな?まぁこれらのことから君以上の適任者はいない…というわけではないが、心情的には君が最もこの任務に適していると判断したのだよ」

 

 

以前の発言からも分かることだが、彼は私のような人間にそれなりに理解があるようだ。

でなければこんな危険な真似はしないだろう…それとも私に借りを残したくないだけか…まぁおそらくはその両方のはずだ。

 

 

「そこまで急を要する仕事を回してくださるとは、ありがたい限りです」

「間に合わないようならさすがに他に回したよ…だがこれには君の部隊の新設も兼ねている。君が軍にいない状態が続くとはいえ、部下がいなければどうにもならないだろう」

「新設の部隊ですか?…別段必要性を感じないのですが…まぁ貰えるものは貰っておきます」

「貰っておくって君…君の望むような任務にはもとより、ISを表向き軍事利用することはできない。こういった任務では人がいなければどうすることもできないのだが?」

 

「ふむ、まぁ確かにそうですね…部隊の新設の件は了解しました。ですが今回の仕事には、その部隊の投入は必要ありません。私とエンピオ大尉のみでかまいません」

「何を言って!?…君のISを任務で晒すことはできないのだよ?」

 

 

私の発言に目を見開き、一瞬声を荒げるペンウッド大将

それもそうだろう。失敗の許されない任務に単独で出動すると言っているのだ、当然の反応だ。

むしろ私がふざけているようにしか聞こえないはずだ。

 

 

だが…"あれ"を他の人間に見られる訳にはいかないのだから…

 

 

「もとよりISを使用しての遂行は考えておりません。そうですね…訳は申し上げられませんが、仕事は必ず遂行してみせます。なんでしたら失敗した際には私の全財産をこちらに寄越してもかまいませんが?国家レベルのスキャンダルをもみ消してもお釣りが来ることは確実ですが?」

 

 

私の言葉に更に驚いたような顔を見せるが、しばらく私を凝視したあと、ため息をつき何かを諦めたかのように話を進める。

 

 

「それは流石に受け取れんよ…わかった、そこまで大きなものを賭けられては…どんな秘策があるのかは知らないがよろしい、許可しよう。最悪保険ぐらいは掛けてある」

「ありがとうございます。寛大な判断のできる上司を持てて幸いです」

「あぁ、うん…なら今度からそんな無茶な要求は控えてくれ…おほんっ、任務のないようだが、ISの回収を第一とし、関係者の一人を回収、人数は十数名という小規模故に、事の詳細は全員が知っていることだろう。できれば全員を生きたまま回収して欲しいところだが誰でもいい、一人回収してくれれば構わない。要はISさえ無事ならばいい」

「おや、いいんですか?そんなに派手にやってしまって」

「当然ながらこの任務は非公式なものだ。大きく目立つような行動は避けてもらいたい。良くも悪くも君は特異的な存在だ…それに君のISはワンオフではないものの世間には出回っていないISとなっている。余程のことがない限りISの展開は控えてくれ。だがまぁ目的地は人気のない山中だ、施設の爆破解体でもしない限り好きにして構わない。あとはこれに目を通しておいてくれ」

「…了解しました。ではさっそく向かわせていただきます」

「あぁ、いい報告を期待しているよ」

 

 

差し出された資料を受け取る。

偶然にも釘を刺されてしまったことに内心驚き落胆しながらも、執務室を後にする。

資料に荒く目を通す…この世界の軍機関がここまで大胆な行動に出るということは、それほど事態が切迫しているということだろう。

 

 

資料を鞄にしまうと同時に"レポート"を取り出すし目を通す。

 

 

「~♪あぁ…こうも早くに実験の機会が訪れるとは…こんな状況で私に仕事を回してくださった大将には感謝しなくてはなりませんね」

 

 

毎々続く幸運に、私は鼻歌を響かせながら廊下を歩く…そして…

 

 

 

 

 

レポートの一枚に刻まれた"五角形"の図形を愛おしく指で撫でる。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、いうわけで、あなたにはこの仕事を手伝っていただきます」

「…」

 

 

目的の施設から数百メートル離れた多少切り立った丘の上。

我々ふたりは降車した位置から施設の状況確認を行っている。

彼は双眼鏡を使用しているが私はセンサーの部分展開しているのだが、改めてISの利便性を痛感させられる。

 

観察中である施設。観測できる人数は12人、武装人数は3人で非武装のISを一機確認、警戒態勢を見る限り完全に素人のそれである。

これらの情報が一瞬で読み取れる上に、一人一人のバイタルまで確認することができる…部分展開可能な専用機持ちならば、相手のプライバシーなどあったものではない。

 

 

「何が「と、いうわけで」ですか?急に戻ってきたと思ったら訳も分からないままに飛行機乗せられてまたもやドライバーをやらされるかと思いきや、IS所持の半テロリストの殲滅作戦を二人でやるとか…言わせてもらいますが頭おかしいんじゃないですか?」

 

 

説明なしに半ば無理やり連れてきたがためか、げんなりとした様子の大尉は私に不満を垂れる。

だが仕事の詳細が伝わっていなかった事の方が問題だと思える。

いくら極秘とは言え、私の部下である彼に詳細を伝えないのはどうなのだろうか?

だがまぁ私が間に合うかどうかわからないあの状況では無闇な情報拡散を控えるたの正しい判断と言えなくもない…

 

 

「上司に向かって言いますね…まぁかまいません。あなたが懸念してるであろうISですが、見たところ非武装ですね」

「?…あぁ、さっきからこの人何やってんだと思ったらセンサーを使っていたわけですね」

「えぇ、内部状況は大体分かりましたよ。相手は12人で、武装人数は3人。いずれもサブマシンガンを所持していますが全員が素人のようですね…これでも危惧する必要がありますか?」

「その程度の集団なんですか?…いやでも非武装といえどISには勝てないでしょう…それにあなたのISの展開は禁止されているらしいじゃないですか」

「いえ、正確には『オーギル』として認識される程度の展開は禁止となっています。部分展開までも禁止ならば今私が行っているセンサーによる観察もアウトということになります。まぁISの武装は極力使わないつもりでいますよ」

「ならどうやってISを仕留めるおつもりで?…以前のような爆薬は今回はないんですよ?」

 

 

不満気な声と共に双眼鏡をダッシュボードにしまう。

私が以前にISを撃破した際の方法を、彼は報告書でしか知らない。

故にいつまでも文句を垂れているわけだが、錬金術を知らない者にとっては正常な疑問だと言える。

 

 

「わかっています。ちゃんと策はありますよ。あなたには"準備"と"片付け"を手伝ってもらうだけの予定ですので、近くまで車を回してもらえば待機していただいて結構です。まぁ数分で終わるでしょう」

「…何をするかはお楽しみってころですか…ではお言葉に甘えて待機させていただきます。さすがにおっかないですからね。それじゃあさっさと向かうとしますか」

 

 

再度車に乗り込み、施設の方面へと車を走らせる。

助手席の私はレポートを開き、再度内容を確認する。

 

 

「そういえば聞くタイミングを逃していたんですが、何故軍服ではなく白いスーツを?」

「これですか?…これは生前の仕事着ですよ」

「…は?…生前?」

「その話は"片付け"が終わればお話して差し上げますよ…あなたの私に対する疑問もいくらか解消するでしょう…フフ」

 

 

彼の反応に期待を寄せながら、私はゆっくりとレポートを閉じる。

 

 

「さぁて、久しぶりの錬金術師として力を振るう仕事です。張り切らせていただくとしましょうか」

 

 

 





多分今日中に…間に合う…と思う…

最近キャラ崩壊とか色々とやばいレベルまで達しようとしていますので、吹っ切れそうな今日このごろです。

カフェインが切れたのでコーヒー買ってきます。
それでは皆様、また後ほど(`・ω・´)




今回も誤字脱字の嵐かもしれません…m(_ _)m


コメント、感想、誤字脱字の指摘、ご意見等ございましたらいつでもお待ちしております^^


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形状

缶コーヒーはエメマンが好きです。

さて、この時点で今日中に間に合うかはわかりませんがとりあえず急ぎます。

今回少しグロ注意?だと思います。

私の文章力ではそのグロさも伝わるかわかりませんがね(゜∀。)




「よし…これで基本動作に問題はないはずだ…しかし、スラスターのテスト時から武装を装備していなかったとは…本当に大丈夫だろうか」

 

 

同僚が私の纏うISとコンソールを繋ぐコードを引き抜く。

手足を動かし、スラスターを軽く吹かす。

動作に問題はないがバススロットを確認するも、やはり武装が一切ないのは心もとない。

 

通信が軍に漏れた事…そして逃亡した現状に全員が動揺している。

私や調整を行っている彼は比較的落ち着いている部類だが、他の研究員達は顔色に生気が無く、落ち着きなく動き回っている者が多い。

この殺風景な倉庫のような施設では気の紛らわしようもないのは事実だ。

 

 

「済んでしまったことは仕方ないわ。あの研究内容を実用しようと思うなら遅かれ早かれ軍を抜けて"あの組織"に入っていたわ…それが少し早くなっただけよ」

「…そうだな、それに土産としてこのISがある。武装がなくとも"彼ら"が到着すればこれを手土産に受け入れはスムーズにいくだろう…もとより非武装のISと小火器程度で戦闘になろうものならどうすることもできないしな」

「IS相手でなければどうにでもなるわ。武装がなくとも現行最強兵器に変わりは無い…装甲車程度なら殴り潰すことぐらいはできるわ。それに軍もISを明けっ広げに投入してくることは無いはずよ」

「そうだな…それにもうすぐ日が沈む。日をまたぐまでには彼らの迎えが来るんだ…全てをネガティブに捉える必要もないな」

 

 

 

今の会話が周囲にも聞こえていたようで、憔悴しきっていた彼らの顔に僅かながら生気が戻る。

そうだ…何も軍に発見されたわけではないのだ。

もし発見されているのならば今頃我々は完全に詰んでいるはずだ。

現時点で我々に追手が来ていないということは、我々の勝ちが確定しているも同然ということだ。

 

 

 

「皆、刻限は近いわ!今のうちに処理できることは消化しておく――――――

 

 

 

 

 

 

ゴボゴポッ

 

 

 

 

 

 

 

私が指示を飛ばそうとしたその時、何か不気味な音が私の声を遮る。

 

 

ハイパーセンサーが捉える視界の端には軽いノイズと共に異常な速度で膨張していく壁が映る。

 

 

まるで生きているかのように変化していく壁は瞬く間にその一面を覆い尽くし、ハイパーセンサーの熱源探知を一瞬で真っ白に染め上げる。

 

 

 

 

 

「!?全員伏せ―――――

 

 

 

 

 

私の警告が飛ぶより先に、形をとどめることができなくなった壁が紅蓮の炎をまき散らしながら破裂する。

凄まじい熱風と細やかな破片が吹きすさび、阿鼻叫喚の大絶叫、肉を裂く音、何かが押しつぶされるような水音が、爆音でかき消されながらもハイパーセンサーを使用する私の耳を犯した。

 

 

何が起こったのか理解ができなかった。

だが先ほどの希望が絶望に切り替わったことだけは理解できた。

 

 

センサーを起動していた以上、ISを見逃すなどといったことは無い。

ISどころか、これほどまでの攻撃力を備えた兵器ならばセンサーが捉え損ねるはず等ない…

センサー外から放たれたものだとしても、着弾前に観測できるはずだ。

 

 

 

「くっ…皆!大丈夫か?!生きているものがいたら返事をして!」

 

 

 

反射的に爆発で巻き起こった砂塵から顔を防ぐように周囲に呼びかける。

先の攻撃が何であるにせよ、規模から察するに私以外の研究員がダメージを負っていることは確かだ。

最悪全員死んでいるかもしれないが、一人二人程度ならISの出力をもってすれば逃げ切ることも可能だ。

センサーで周囲を探すと、砂塵の向こうに二人の人影が見て取れた。

 

 

「そこの!無事だったか!」

「ぐ、が…あ」

 

 

私の声に反応するように、砂塵を切り裂いて一人の研究員が私にもたれかかるように、飛び出してきた。

慌てて抱き抱えると、その研究員は片腕が千切れ飛び、肩から顔にかけて皮が細かく裂けており、裂けた部分から白く濁った脂肪とおびただしい量の血が溢れ出している。

一瞬で胃液がこみ上げてくるが、ISの精神抑制もあってギリギリのところで留める。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご安心ください、加減はしてますよ。おそらく殆どの方は生きているはずです…」

 

 

「っ!?」

 

 

 

 

 

 

 

声がする方向を向く。

 

砂塵が晴れ、白いコートがはためかせた男が立っている。

 

コートに合わせた白い帽子を深くかぶったそいつは口元を不敵に釣り上げ笑う。

 

 

 

「何者だ!!いったいd―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「今だけ、ですがね」

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉に疑問を持った瞬間、私の腕の中で何かが膨れ上がった。

 

 

 

 

 

「あ゛…ぁ゛…」

 

 

「?お、おいどうs―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

ぐちゃりっ

 

 

 

 

 

 

 

 

その異変を見るために腕の中の仲間に視線を移した。

 

その瞬間、ハイパーセンサーの捉える視界全てが赤黒い何かで染め上げられ、轟音が鼓膜を震わせる。

 

上半身がちぎれ飛ぶかと思うほどの衝撃と、絶対防御が発動したと警告するアラートウィンドが真っ赤に染まった視界を更に埋め尽くし、シールドエネルギーが目まぐるしく下がっていく。

 

 

 

「ぐあっ…あ、ああああああああああああっ!」

 

「おや、シールド内なのですが……まだ動きますか」

 

 

 

痛みと恐怖、そしてこれまでの惨状に脳の処理が追いつかず、恐怖を吐き出すかのように嘔吐した。

 

その吐瀉物に溺れそうになりながらも、ISが無理矢理に私の意識を保たせる。

 

 

 

 

 

パンッ

 

 

 

 

 

朦朧とした意識の中、乾いた破裂音のようなものが施設内にこだまする。

 

それがなんだったのか…理解する暇もなく私の意識は打ち付けるような痛みとともに刈り取られた。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

微かなうめき声だけが響くガランとした倉庫のような施設。

最早抵抗を示す人間はおらず、一見すると生きているのかすら怪しい。

 

三つの銃を拾い上げ、先ほど壁面に吹き飛ばしたIS操縦者にまで歩み寄る。

ISが強制解除され汚物にまみれた彼女を服が汚れぬように転がし、ISを再起動させて初期姿勢に戻す。

 

ISの確保と施設内の制圧が完了し、仕事の殆どを終えた…残るは個人的な趣味時間だ。

インカムを取り出し装着する。

 

 

 

『大尉、施設内の制圧とISの確保が完了しました。車をこちらまで回してください』

『…早すぎる上になんですか今の…こっちから離れるとき特に何も持ってませんでしたよね?』

『えぇ、荷物は全部そちらに置いてあります。とりあえずこちらへ来てもらえますか?』

『分かりました。……何なんだよ…今の』

 

 

 

僅かに愚痴のようなものを残し通信が切られる。

やはり通常機器での通信はオーギルのフィルムの影響を多少なりとも受けるようだ。

屋外で、尚且つごく部分的な使用なのにもかかわらずそれなりにノイズが発生している。

性能が良いの結構だが、やはり弊害があるのは考えものだ。

 

数分と待たずに車が到着し、彼が施設内に足を踏み入れる。

この異常な惨状に僅かに眉をひそめる。

 

 

「なんです?このクレーターにペンキぶちまけたみたいな血痕…IS使わないで何をどうしたらこうなるんですかね…」

「それについてですが、あなたにお見せしたいものがあります。とりあえず生きている人間を一箇所に集めてもらえますか?あと私の足元にいる彼女と銃ですが、車に乗せておいてください。私は準備がありますので少し離れます」

「?…構いませんが…準備?」

 

 

施設を出ると、車の近くの地面に取り出したチョークで錬成陣を描く。

 

微かな紫雷が走り、瞬く間に平面な床が構築される。

 

 

「なっ!?………はぁ…」

 

 

後方から何かを諦めたかのようなため息が聞こえるも、それを無視して作業を進める。

懐から取り出したレポートを参照し、二つの五角形で構築された特殊な錬成陣を床に記していく。

陣が完成し、レポートから錬成陣の描かれた一枚のページを破り取ると、陣の中央に固定する。

 

 

「とりあえずこれで成功すれば御の字ですが…大尉、何人生きていましたか?」

「っと、これで最後…とりあえず8人ですマジカルキンブリー大佐。頭に破片が刺さっていて二人死んでいたんですが…死んだ奴合わせても一人足りないんですが大丈夫なんですか?」

「そのマジカルで床のシミになったのが12人の内の一人です」

「え゛?…えっと…8人生きてますけどこいつら虫の息なんでほっとけばあと数分で死にますけど…どうしましょうか?」

「それはいけませんね。では私の指示に従って置いていってください」

「尋問するとかじゃないんですか?」

「尋問用ならさっき車に乗せたのですよ。それに私は尋問といったようなものは得意ではありません。さぁ!さっさと並べてしまってください!」

「了解ですよっと…これなら俺いらなかったんじゃ…」

 

 

時折ブツブツと文句を垂れながらもセッティングが完了する。

そしてこれから起きることを覆い隠すかのように日が完全に沈み、あたりを闇が支配し始める。

 

錬成陣に倒れる人間の殆どは意識がなく、あったとしても時折うめき声を上げる程度の体力しか残っていないようだ。

だが生きてさえいれば…魂さえあれば材料としての価値が損なわれることはない。

 

全ての準備が整い、自分でもわかるほどに気分が向上していく。

 

 

「クハ、フハハ…大尉、巻き込まれるかもしれませんので少し下がっていてもらえますか?」

「こんなもんですか?それにしても…あなたがここまでとんでも人間だったとは…」

「それぐらい離れてもらえれば結構です。それではさっそく…"賢者の石"の錬成を開始します」

 

 

ゆっくりと錬成陣の端に手を添える。

 

そして編み出した構築式を魂の個数に合わせて丁寧になぞり合わせていく。

 

魂というエネルギーの物質化…そのイメージを巡らせた瞬間、目を覆うほどの光を伴った錬成反応が発生し辺りの闇を照らす。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「ガアアアアアァァァァァッアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

五体満足な材料・四肢の一部が欠損し意識のなかった材料は、体を痙攣させながら意識を取り戻し、この世のものとは思えないほどの苦悶に満ちた表情で大絶叫し、溢れ出た血涙で錬成陣を汚していった。

 

 

 

「い、一体何がおこって…!!」

「あああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…いいっ!素晴らしい!!」

 

 

 

地鳴りのような大絶叫が心地よく皮膚を揺らすこの快感に狂気せずにはいられず、脳内麻薬が大量に分泌された私の頭は構築式を尚もなぞっていく。

 

そして絶叫の数が一つ、また一つと消えていく。

 

全ての絶叫が止もうとした瞬間、中央に固定した錬成陣の上に膨大な錬成反応とともに赤い輝きが生まれ、それが形を得ようとした…

 

 

 

 

 

 

 

 

『警告!!高エネルギー反応急速接近!!』

 

 

「っ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

突如響いたアラートに意識が向いた瞬間、紫の光が降り注ぐ。

咄嗟に錬成を中断、ISを展開し謎の攻撃を防ぐ。

光の雨は数秒間続き、それが止むと同時にハイパーセンサーを駆使して襲撃者を探す。

 

だが襲撃者は直ぐに見つかった。

 

はるか上空よりこちらを見下ろすそれは、月光を浴びて青く輝く蝶のようなISだった。

 

 

 

「っ、よくも…!」

 

「―――――」

 

 

 

だが私がそのISを捉えた瞬間、こちらが武装を展開する暇もなく青い軌道を描いて飛び去ってしまった。

一体どこのISのだったのか…検討がつくはずもなく、先ほどの視覚情報をデータ化する。

そして苛立ちのままにISをしまい、土煙の晴れた周囲を確認する。

当然ながら、錬成陣は材料もろとも原型をとどめていなかった。

 

 

 

 

 

「大尉、残念ながら賢者の……!」

 

「あ゛ぁ゛…ごぼ…がふっ…」

 

 

 

 

 

私が大尉のいた車の方を振り返ると、そこには真上から貫かれた車と、それにもたれかかるように倒れ赤い泡を口から噴き出す大尉の姿があった。

 

 

 

「残念ですね、あなたはなかなか気に入っていたのですが…」

 

 

 

彼は左脇腹から肺にかけて、大きく半円状に焼き切られたような致命傷を負っている。

肺を大きく損傷していることからもわかるが、助かる見込みは無いだろう。

目は既に生気を失っており、ただひたすらに口から血と泡が溢れ出しもがき苦しんでいるように見える。

 

 

 

「げぼっ…ごほっ…」

 

「ですがまぁせめて苦しまないよう……!」

 

 

 

両手を合わせ、彼の頭に手を触れようとした瞬間、ある考えが私の頭をよぎる。

 

 

(生きてさえいれば…魂さえあれば材料としての価値が損なわれることはない)

 

 

先ほどの怒りを忘れる程の好奇心が、私のなかで膨らむ。

 

 

 

「フフ…魂の実験としては面白い…良かったですね大尉、貴方はまだ生きながらえるチャンスがある…フフ…」

 

 

 

触れようとした手を止め、彼から溢れ出す血だまりから血を掬う。

 

 

 

「それでは大尉…運がよければまたお会いしましょう…」

 

 

 

ある錬成反応が走る。

 

その瞬間、彼の身体機能は完全に停止した。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ…ついに死んだのか…」

 

 

痛みだけが感覚の全てを支配しもがき苦しんでいたはずの俺は、真っ白な何もない地面が延々と続くかのような空間に立っていた。

 

こんな気味の悪い風景と先程までの状況から察するに…俺、ダリオ・エンピオは死んだのだろう。

本当にわけがわからないままに死んだ。

 

とんでも人間だった大佐が、黒魔術みたいなことをやってたかと思うと、目の前が光に包まれて気がついたら腹に穴があいていた。

最後に大佐が俺に何かを言っていた気もしたが、大佐のことだ…「あぁ大尉、こんなところで死んでしまうとは情けない」などと嘲笑していたのだろう。

傍から見ればこの上なく愉快な死に方なのだろうが、いかんせん自分の身に降りかかったことなので笑えない。

 

余りにも馬鹿らしいせいか、死んだにも関わらず妙に落ち着いていられる。

 

 

 

「にしても…何なんだここは?」

 

 

 

そもそも何故俺の自我は保たれているのだろうか?

自我どころか、足を踏み出すと地面を踏むような感覚もある。

体を見渡すも負っていたであろう傷も一切なく、むしろ快調なぐらいだ。

 

ここはいわゆる死後の世界というものなのだろうか?

そんなものは考えたことすら無かった俺ではあるが、これは期待はずれにも程がある。

 

 

 

「本当になんにもねぇな…」

 

 

 

どれくらい歩いただろうか、目に映るもの全てが真っ白で上下感覚まで狂ってしまいそうな空間が変化することはなかった。

 

半ば諦めたように立ち止まると、何ら期待もせずに自分の歩いてきた方向を振り返る。

 

 

 

『…』

 

「っ!?」

 

 

 

振り返った瞬間、そこには俺以外の人間がいた。

少女だ。

真っ白なワンピースを着た彼女の肌と髪はそれに負けないほどに曇りなく真っ白で、この空間に溶けてしまいそうなほど白い印象を受ける少女がそこにはいた。

初めからそこにいたかのような彼女は、唯一白に染められていない真っ赤な瞳でこちらを凝視する。

 

 

 

「お、おい…おm」

 

 

 

 

 

 

 

 

『イレギュラーを確認、排除を開始します』

 

 

「…は?…がはっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

俺がその少女に話しかけると、俺の声を遮るかのように複数の声が混ざり合ったような形容しがたい声が、何もない空間で反響したように響いた。

物騒な言葉に呆気を取られた瞬間、彼女の手が勢いよく俺の首元に伸び、少女の体格からは信じられないほどのチカラで締め上げていく。

 

 

「がっ…ぐっ…」

『イレギュラーの抵抗を確認、出力を上昇させます』

「て…っめ…ふざ…んな…」

 

 

 

首の筋肉に指が沈み、動脈が圧迫されて行くのがわかる。

抵抗も虚しく、気管に徐々に力が加わっていくのを息苦しさをもって実感する。

 

このままでは確実に殺される…

 

この俺が…訳の分からないままに死に、訳のわからない世界に放り込まれ、訳のわからない女に殺される…そんな不条理があってたまるか!

 

俺はその手を引き剥がすことを止め、彼女の細い首に手を回し渾身の力を込めて締め上げる。

 

 

 

ゴキャッ

 

 

 

鈍い音と感触が伝わる。

 

首の骨があらぬ方向へと曲がり、皮膚の下から骨が押し上げる。

火事場の馬鹿力とでも言うのだろうか、彼女の首はあっさりと折れた。

すると彼女の手は俺の首から離れ、力なく垂れ下がる。

 

 

「かはっ、げほっげほ…はー…はー…」

『致命的エラーが発s生。s修復不能とhhh不能tと判ddd断。iii一zzzzz時ttttt―――――

 

 

だらりと後ろに傾く頭。

そこから発せられる早送りやスロー再生を繰り返す音声のような奇妙な声に悪寒が走る。

 

そしてその声が止まったかと思うと、真っ白な少女は空間に溶けるかのように、線をなくし消滅する。

 

 

 

「一体なんだって…っ!!!!!!!!????????―――――

 

 

痛む首を押さえ、目の前の自体に動揺した瞬間、頭が割れるほどの頭痛が俺を襲う。

 

コアネットワーク、セカンドシフトなどといった膨大なISの情報が無理やり頭に捻じ込まれるかのような感覚に襲われ、俺の意識は消失する。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「…は?」

 

「おや、思ったより時間がかかりませんね…おはようございます大尉」

 

 

私が再び意識を取り戻すと、目の前には大佐が立っていた。

 

 

「おはよう…ございます?…って俺…私は死んだはずでは…」

「大尉、あなたの後ろを見てください」

「?」

 

 

状況がつかめないまま、言われた通りにその場で振り返る。

 

その際体に違和感を感じたが、そんな感覚は一瞬で吹き飛ばされた。

 

 

 

「…ダメだ…これは完全に夢だわ」

 

 

 

振り返るとそこには車にもたれかかるようにして倒れ、脇腹を大きくえぐられた軍服の男の姿があった。

 

 

そう、俺、ダリオ・エンピオの死体があった。

 

その目からは光が失われ、致死量を優に超える血だまりがその場に溜まっている。

 

そしてその血だまりに映る"モノ"確認し、驚愕する。

 

そこには胸部装甲を大きく開き、白い翼を広げるISの姿があった。

 

ISは空洞を覗かせているにも関わらず、僅かに動いている…それどころか一挙手一動俺の動きを鏡合わせしたように動いている。

 

どういうわけか、首を動かさずとも全身を見ることができた…何故それができると知っていたのかも分からないが…

 

そうしてようやく俺というものを理解する。

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうして俺が大佐のISになっているんだ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

俺がそれを理解したのを見届けるかのように、装甲内に刻まれた小さな赤い錬成陣が怪しく輝き、胸部装甲がゆっくりと閉じられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダリオ・エンピオ

 

極秘作戦遂行中、所属不明ISの攻撃にさらされ死亡

 

検死報告

 

左脇腹から左肺にかけての損傷及び、それに伴うショックと思われる心臓麻痺。

 

 




ギリギリ間に合いました!!

さて、今回二話同時投稿させていただきましたわけですが、いかがでしたでしょうか?

少し間が空いてしまっていたので、文章の書き方わからねぇ(゜∀。)
とか
軍とか国とか物理法則とか私には理解できないぜい(゜∀。)
みたいなことになっていますので、前回・今回共にひどい内容になっているかもしれませんが、そのへんは私がアホなので仕方ないということでどうかお願いします。



今回も誤字脱字の嵐かもしれません…m(_ _)m


コメント、感想、誤字脱字の指摘、ご意見等ございましたらいつでもお待ちしております^^


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交錯



遊んでました!!!

ゴメンナサイ!!!

以上!!!





 

 

 

 

 

『M、調子はどう?』

 

 

夜の帳が下り、周囲に何もない上空では静寂が舞い降りる。

そんな中、忌々しくも聞き飽きてしまった女の声がISを通して聞こえる。

 

 

「良好だ」

『あなたの初陣をこんなくだらない仕事の拙攻に出して申し訳ないのだけれど、我慢して頂戴』

「フン、まぁいい。やっとISを寄越したんだ、これぐらいはやってやる」

 

 

今私はISに身を包んでいる。

組織が最近盗み出したイギリスの第三世代ISであり、夜の闇に舞う妖艶な蝶のようなISだ。

 

絶対的な力、私が製造された目的…それこそがIS

憎らしくもあるがこれのために作られた体故か、私の精神はいつになく落ち着き安らいでいる。

 

 

『そうしてもらえると幸いよ。さて、そろそろ時間だしもう一度軽く説明しておくわよ?今回のターゲットはドイツ軍のIS開発の技術者。これの身柄確保及びISと技術情報の取引よ。彼らの安全が確保されたら本隊が到着するまで周囲の警戒に徹してもらうわ。最初に伝えたとおり、何かイレギュラーがあれば彼らを殺してISを奪取しても構わないわ』

「それはこちらとしてもありがたいが…いいのか?身柄の安全を保証する代わりに技術提供を約束させたのだろう?ISは手に入るかもしれないが殺してしまっては元も子もないだろう?」

『大丈夫、ISが手に入るだけでも儲け物よ。それに相手の取引材料はISと技術情報よ?いくら技術者と言えどISのパーツなんていう精密機器を記憶だけで製造するなんて無理な話よ。何かしらの記録媒体を所持しているはずだからそれさえ回収すればこちらでもどうにかなるはずよ。でも相手が生きているに越したことはないから無闇に殺すようなことは控えてちょうだい』

「了解した…そろそろ目的地付近だ。通信を切るぞ」

 

 

バイザーのような頭部パーツが下り、スラスターの方向を少し修正し目的地上空へ向けて加速する。

ライフルを握り直し、射出前のビットにエネルギーを伝達させる。

 

 

 

 

数秒後、見えてきたのは少し開けた丘のような立地

そしてそこには現在では使用されていない寂れた廃倉庫が立っている―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――はずだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ…これは」

 

 

 

 

 

そこにあったのは殆ど鉄骨と屋根しか残されていない最早建物かどうかすら怪しい廃墟が晒されていた。

 

だが異常なのはそれだけではなかった。

廃墟のすぐ横では赤い円形の図形が描かれ、その端々に今回のターゲットであろう技術者達が規則的に並べられている。

まるでカルト宗教の生贄のようにも見えるそれの前には二人の男が立っている。

 

 

(一歩出遅れたか…だがなんだあの惨状は?一人の男は軍人のようだが、もうひとりは…周囲に敵の反応はなし、強襲してISだけでも奪うか)

 

 

異常性は感じるが、それで目的が変わるというわけではない。

癪ではあるが再びあの女に指示を仰ぐことにした。

 

 

「聞こえるかスコール?」

『あら、どうしたの?何か異常でも―――――

 

 

 

 

 

『『『警告!!下方より超高圧縮エネルギー反応感知!!』』』

「「「ガアアアアアァァァァァッアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」」」

 

 

「ッ!?」

 

 

全身から冷や汗が吹き出る。

通信を遮り鳴り響く警告アラートと大絶叫が不快に鼓膜を揺らす。

眼前に現れ瞬く間に増加していく警告ウィンド。

警告の原因である眼下に目を向けると、そこには雷のような形をした凄まじい光を発する理解不能な現象が発生していた。

技術者達は血液とともにあらん限りの絶叫を唱え、それに呼応するかのようにうねり、収束する光の束。

 

 

「くっ!?」

 

 

それがなんであるかなどこの際どうでもよかった。

恐ろしい何かだ…ただそれだけはわかる。

この場であれほどまでのエネルギー収束を見せたのだ、私を標的にした攻撃と見て間違いないだろう。

そして規模から考えて間違いなく避けきれないだろう…そうなれば残る行動は一つ。

そう一瞬で判断するやいなやビットとライフル、その全てを展開し目標に対してトリガーを引く。

放たれた数多の光は目標一帯に降り注ぎ、その異常空間を焼き尽くした。

 

 

「はぁはぁはぁ…っはぁはぁ…」

 

 

土煙が舞い、視界が遮られる。

警告アラート、ウィンドが徐々に消えてゆき、あたりに再び静寂が戻り始める。

 

 

 

 

 

―――――ッ―――――ムッ―――――エムッ!!聞こえてるの!?エムッ!?』

「へぁ?………あ、あぁ…聞こえている…どうしたんだ?」

 

 

 

 

 

IS越しに聞こえる大声にふと我に返る。

無我夢中に攻撃を行ったが…どうやら自分は無事なようだ。

ライフルを持つ手はISの精神抑制があるにも関わらず微かに震え、少し前までの落ち着きも失われ、自分でもわかるほど落ち着いていないことが分かる。

 

 

『どうしたんだ?…じゃないわよ!あなた大丈夫なの!?それにさっきの警告アラートとさっきの叫び声、一体何があったの!?』

「あ、あぁ……敵の攻撃があった。それで防衛のために攻撃を行ったんだが…ターゲットは恐らく全滅s―――――

 

 

 

 

事の顛末を伝えようと口を開いた瞬間、土煙の奥から視線を感じた。

 

紅い眼光

 

射殺すようなそのプレッシャーに私は首を絞められたかのように息を詰まらせる。

 

 

「っ…あ…」

『M!エムッ!!よく聞きいて、すぐにそこから撤退しなさい』

「な…あ…ISはどうす―――――『今のあなたの状態じゃ無理よ。何があったかは戻ってから聞くから今すぐそこを離れなさい!』

 

 

体を貫くかのような視線の元である土煙が完全に晴れ、白い天使のようなISが姿を現す。

その神々しさとは裏腹に、赤いカメラアイからは憎悪のようなものが流れ出しているように感じ、それに背筋をなぞられるような狂気が満ちていく。

 

 

「っ!クソっ!…撤退する…」

 

 

プライドがそれを否定するが、この場にとどまりたくないと本能が告げる。

この不快な空間からいち早く抜け出すためにスラスターを最大稼働させて離脱する。

追って来る気配は無くそれに安堵する。

そして安堵してしまったという事実に激しい怒りに表情を歪めながらもながらもその場を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よ~し!あとはこの子を三分チン☆するだけ!」

 

 

ケーブルやパイプがまるで大樹の根のように張り巡らされ、発明品ともガラクタとも取れる電子機器が埋もれるように散乱した部屋

その中央でメタリックなうさ耳を揺らしながら、一人の天災が汗を拭うような動作ではにかむ。

実際は汗など微塵も書いていない彼女だったが…

 

 

グ~

 

 

そんな間の抜けた音がこの不気味な部屋に響く。

 

 

「あおあ~、そういえば夢中になりすぎてて2~3日何も食べてなかったな~…よっし出前とろう!海上でも届くのかな?」

 

 

ごっはん~ごっはん~♪といったご機嫌な鼻歌を口ずさみながら自動ドアを潜り部屋を後にし、無人になった部屋は照明が落とされ静寂を取り戻す。

 

 

 

 

 

そして部屋の中央に佇む”二体”の異形のISの全身に搭載されたカメラアイが暗闇の中うっすらと点灯し、静かに自分たちの完成を待つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「い~ざ進め~やキッチ~ン~♪めざす~は~じゃ~……お? 」

 

 

久しぶりに部屋を出てみると、メインで愛用しているPCのモニターがメッセージの受信を知らせている。

無視して食事をとりたいところだが、直接報せが入るような内容を無視するわけにも行かず、不機嫌になりながらも内容を確認する。

 

 

「こんな時に何かやらかすような組織は束さん直々にボッs……!!」

 

 

 

 

 

そこには空腹など吹き飛ぶような前代未聞な内容が記されていた。

 

 

 

 

 

「…シリアル66のコア反応の消滅?…未確認コアの出現?」

 

 

 

 

その二つは退屈を嫌う天災にとっては心躍るような内容だった。

世界に一定数しかばら撒いていないコアの内、ある一つの反応が消滅し、その直後に自分が開発したものではないISの反応が見られたのだ。

新たなISを作り上げたもしくは、自分の管理下から外れるような何かをコアに行ったか…

どちらにせよ今まで起きたことがない現象なのは確かである。

ISが発表されてからの数年、くだらないシステムをISに組み込む組織は五万といたが、ここまで直接的な介入がなされたことは無く、もしかすれば自分と同等の技術をもった科学者が生まれたのかもしれないという希望、そのようなモノでなかったとしてもこの現象は刺激を求めていた彼女にとっては十分なものであった。

 

 

「しかもこのコアって”キン”くんのISだったはず…も~あの子は束さんへのアプローチが上手すぎるぞっ☆これは調べる他ありませんな~むっふっふ~」

 

 

飛び込むように椅子に座ると、一心不乱に投影されたキーボードをたたく。

三大欲求の限界をも無視して、天災は再び己の世界へと潜っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仕事終わりの若干くたびれた足でリノリウムの床を歩く。

整備室へと続くその通路には自分の足音以外に、自分の横をゆっくりと進む大きな布を被った自動運搬車の駆動音がしている。

 

 

『まさかこんな姿で職場に帰ってくるとは思いもしませんでしたよ…はぁ』

「おや不服ですか?紆余曲折ありましたが、あなたはISを操る体を手に入れたのですよ?喜ばしいことじゃないですか」

 

 

自動運搬車の布の中には元私のIS、現私の部下であるダリオ・エンピオ(オーギル)が膝を抱えるような形で収納されている。

ISの外見であるが故に違和感は少ないが、彼が膝を抱えて台車で運搬されている図を想像するとそれなりに愉快だ。

彼とは現在インカムを通した電波通信で会話しており、傍から見れば私が独り言をぶつくさほざいているようにしか見えないのだが、人目がないのが救いである。

 

 

『このご時世にせっかく大尉なんて階級にまで上り詰めたのにまさか軍どころか人間を辞めさせられれば、余程の変態かそこそこの変態でない限り絶望しますよ』

「まぁ出世願望が強かったあなたなら仕方ありませんかね。慰めになるかは知りませんが、”こちらの世界”の軍は随分と煩わしいですし、このご時世に上位階級に就いたとしても疎まれるだけですよ」

『自分より一回り”年長”の方の言葉と思えばそれなりに説得力があるような無いような…はぁ…まぁなってしまったものは仕方ありませんし、この体の利点を存分に活用させてもらいます』

「そうですよ。身体的スペックもそうですが、なかなか洗練された見た目で良いと思いますよ?」

 

 

彼には私の有している技術、前の世界のことについては一通り話し終えている。

実際に錬金術をその身に体験した彼のリアクションは存外に薄く、オーギルの姿で頬杖をつきながらため息をつくなどというシュールな姿を晒してくれた。

全て話し終える頃にはそのゴツゴツとしたボディで地べたに寝そべり、壊れたかのようにゲラゲラと笑い声を上げ、紆余曲折あり現在に至るというわけだ。

笑い声を上げ始めた当初はついに壊れたかとも思っていたが、半日と経たないうちに普段のモチベーションにまで回復する彼の精神は強靭の一言に尽きる。

 

 

「まぁ私はそんな体になりたいとは思いませんけどね」

『チクショウッ!!』

 

 

そんな無駄口を叩きながらも我々は整備室の扉をくぐる。

するとそこには見覚えのある姿があった。

 

 

「ん?…あっ大佐!お久しぶりです。こちらに戻られていたんですね」

 

 

ハルフォーフ大尉が意気揚々とこちらに声を掛けてくる。

それに続いて見慣れぬ銀髪の少女がこちらへやって来る。

ハルフォーフ大尉と同じ眼帯をしているところを見る限り、同じ部隊の人間なのだろう。

 

 

「クラリッサ、この方は?」

「以前話にあがったゾルフ・J・キンブリー大佐です」

 

 

軽く会釈をし、エンピオ大尉に発言させぬように合図を送ると運搬車ごと彼を適当な位置へ転がす。

結構な勢いで壁にぶつかったが私の知ったことではない。

私がエンピオ大尉に無関心を決め込んでいると、件の銀髪の少女がズイっとこちらへ歩み寄り、擬音が聞こえてきそうなほどキレのある敬礼をこちらへ向ける。

 

 

「ご挨拶が遅れてしまい申し訳ありません!黒兎部隊隊長を務めておりますラウラ・ボーディッヒ少佐であります!先の件では部下のクラリッサを救っていただき、感謝致します!!」

 

 

声を張り上げ感謝を述べる部隊長と名乗る少女

まさかこのような少女が部隊長だったとは。

しかしまぁ私のこともありますが、この軍の上位官の年齢層低すぎるのではなかろうか?

これもISが原因なのだろう。

 

 

「これはご丁寧にどうもボーデヴィッヒ少佐。ハルフォーフ大尉にはお世話になっておりますのでお気になさらず。それに彼女が生き残ったのは彼女の運です…私は自衛のために敵を殺しただけです」

「ハ、ハッ…了解致しました!」

「そう硬くならずともかまいませんよ。ところで、お二人はどうして本部に?」

「我々黒兎部隊は件の襲撃もありまして、本部への異動が決定したんです。今回はその手続きと私と隊長のISの軽いオーバーホールでこちらにきた次第です」

「本部へ異動ですか?」

「襲撃の件に重なりまして、ツヴァイク・レーゲンの開発チームの一部が不祥事を起こしたらしく…詳細は伏せられていますが一部メンバーを解任処分、それによって不都合が起きるISの整備や先の襲撃への警戒の為本部へと移動となりました」

「今後共よろしくお願いいたします!」

 

 

短期間にここまでの問題をが発生したのであれば当然の処置だろう。

しかし…彼女らの反応を見る限り、彼らが文字通り”処分された”ということは知らないようだ。

軽く笑いを堪えながらも平静を装い対応する。

 

 

「なるほど、そんなことが…ですがまぁ良かったのでは?本部付けになれば何かと利点も増えるでしょうし、お会いする機会も増えるかもしれませんね」

「そうですね、私も嬉しく思います。そういえば隊長?言っておかなくていいのですか?」

「そうだな。キンブリー大佐!この度私もIS学園に入学することが決定いたしました。大佐もIS学園に在学していると伺っておりますので、入学後もよろしくお願いいたします!!」

「それはそれは、こちらこそよろしくお願いします。あのような環境です、あなたのような人がいてくれると何かと私のほうが助かるかと思いますのでありがたいことです」

 

 

それにしても、部隊長が隊を離れても良いのだろうか?

仮にも専用機を与えられている部隊であるのなら何かと支障をきたしそうなものではあるが…

 

 

「ところで、大佐はいつこちらへ戻られたのですか?」

 

 

なるほど、彼女が代理を務めるのだろう。

実際彼女のほうが年齢的にも外見的にも隊長には適している。

第一印象でボーデヴィッヒ少佐に特別カリスマのようなものを感じることもなかったことから考えるに、実務的な部分は恐らくハルフォーフ大尉が勤めていると考えられる。

少佐には酷だが、隊としての活動にはなんら問題はないということなのだろう。

 

 

「仕事で先日戻ったばかりです。…そういえば例の漫画なのですが、大変楽しませてもらってますよ。読破したというわけではありませんが、なかなか後学になりました」

「おぉ!それは良かったです!!言ってくださればいつでも追加でお貸ししますので、じゃんじゃん読んでいってください!私も同じ好みの人が増えるのは嬉しいので御遠慮なく!」

「フフ、ではその時があればお願いするかもしれません。さて、私はペンウッド大将に報告がありますのでこの辺りで失礼します。ボーデヴィッヒ少佐、また学園でお会いしましょう」

「「ハッ!お疲れ様です!!」」

『こんな会話する必要ありました?さっさと戻ってきてくださいよ?大佐』

「…そういえば、そこに置いてある運搬車の中には私のISが入っています。訳あって初期化状態ですので、よかったら装着してスペックをご覧になられては?」

『…はぁ!?何言ってくれちゃってるんですかこの人!?』

「そ、そんな重要なものを拝見してもよろしいのですか?企業開発のISと聞き及んでいますが…それにISのスペックを明かすなど…」

「いえいえ構いませんよ。ちょっとした憂さb…自慢のようなものです。それでは改めて失礼します」

『クソッ…なんで俺ばっかりこんな目に…』

 

 

 

 

 

恨みのこもった声と二人の敬礼を背に受け、内心ほくそ笑みながら整備室を後にする。

 

 

 

 

 







家に帰ったその足でトイレに入ると、イヤホンからベルベットルームのBGMが流れてきて幻想的な気分に浸っていた焼酎ご飯です。


さて、クリスマスイブにこんなものを上げている時点で察されているかもしれませんが皆様のコメントがあれば私は生きていけます。


今回も誤字脱字の嵐かもしれません…m(_ _)m


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侵入

皆様明けましておめでとうございます(`・ω・´)
今年もよろしくお願い致します。

新年早々ガードレールでスネを打ちました。


例によって、全く話が進みません…
ほんと申し訳ないのですがご容赦を(・ω・`)






 

 

 

「…感じの良い方だったな」

「はい。尊敬できる方です」

 

 

この俺、ダリオ・エンピオは自分をこんな目に合わせた張本人であるド腐れ大佐が敬われているこの空間に凄まじい吐き気に頭痛、咳くしゃみなどの症状に苛まれそうな気がしたが、今の体にはまったくもって縁のないことだった。

もう俺がロ○ソニンやバファ○ンを飲むなんてこともないのだろう…おっと涙が―――――出ねぇ

 

確かに俺以外が今の大佐の装いを見る限り、善良素敵好感な上官に見えることは間違いないだろう。

だがあの仕事ぶりと悪魔のような所業を顔色一つ変えずにむしろ喜々として行い、あまつさえ俺をこんな体に加工してくれた彼に、微々たる感謝はすれども尊敬の念を抱くなど未来永劫ありえないだろう。

 

 

「これが大佐のISですか、フルスキンとは珍しいですね」

「そうだな。それにディティールのせいかもしれないが、何かこう…圧のようなものを感じるな。本当にデータを見ていい物か…」

 

 

そんなどうでもいい感慨に打ちひしがれている俺を覆っていた布は取り払われ、さっそく二人の眼帯女がこちらを覗き込んでいる。

大佐がいらないことを言わなければこんなことにはならなかっただろうに…すこぶる気まずい。

 

 

「大佐もあぁ言ってらした訳ですし、せっかくなので拝見させてもらいましょう」

 

 

眼帯女(大)のハルフォーフ大尉が俺の眼前に立ち、俺…ことISの胸部に触れる。

もはや気まずいというかシュールというか、そんな感情が渦巻いていた俺だったが、彼女の指が触れた瞬間…膨大な量のデータが濁流のように思考・記憶を駆け巡り、染め上げていった。

 

そして自分の中に機械的な意思のようなものが生まれることを自覚し、本能的に…機械的にそれがISの管制システムであるということを理解する。

瞬時に眼前の彼女のバイオメトリクスを読み取り、自分の体の起動を承認する。

 

 

(なるほど、あの白い空間にいた女はISの管制システムだったわけか…そして俺がそれに成り代わった…にしてもまさかISのシステムを管理している存在が擬似人格を採用したAIだったとは…おかげで俺の存在がより不明確なモノへとランクアップしたわけかコンチクショウ)

 

 

悪態をついてみたものの、大佐が言っていた通り凄まじいスペックの体であることは確かであり、起動した瞬間にその全て把握することができた。

人体では考えられないほどの完璧な体の動作、周囲の事象解析、そして起動してからの一瞬の間にこれらの事柄を考え、理解することができる程の処理能力…マルチタスクを意図して行える人間などそういないだろう。

 

 

「起動完了…纏ってみた感じ別段違いは感じませんね。ですが実戦となればこちらのほうが安心感はあるでしょうし、フルスキンというのも良いかもしれませんね。」

 

 

完全に装着が完了し、ハルフォーフ大尉と一体化しているような形になる。

 

奇妙なことに、人間ではありえないようなこの感覚に違和感を感じることは無かった。

それがさも当然であるかのような感覚…

 

これもISのシステムと一体化しているが故の心境なのだろうか。

 

 

「ふむ、私も考えてみるか…しかし、その状態では全く誰かわからんな」

「そうですか?私の方はばっちり見えてますよ。フルスキンなのにツヴァイクと変わらない視覚範囲というのは少し驚きですね」

「確かに、カメラアイは一定方向にしか存在しないのに不思議だな。それで?スペックの比較はどうなのだ?」

「えっと…」

 

(にしても、こんな美人と有らん限り最高に密着しているにも関わらず何の情欲も沸かないとは…俺って不能なんじゃ…って勃つもんが無かったぜHAHAHA…はぁ)

 

 

本日何度目かわからない落ち込みもそこそこに、スペックの開示要求がなされたのでそれに従い彼女の視覚にウインドウを出現させる。

 

機械的動作を行っているが、人間的感覚が失われているわけではないということに落ち込みながらも安堵する。

 

 

「機体出力はレーゲン・ツヴァイクと同程度…武装に使用されている容量が少ない代わりに処理能力と防御、対ショックが強化されているといったところでしょうか?いずれにせよハイエンドな機体であることは間違いありません」

「企業開発とはいえ流石我が国のISだな。武装の方はどうなのだ?見るからに特殊兵器のようなものを搭載していそうなものだが」

「破壊天使?と表記された武装があります。どうやらこの翼を利用して広範囲に渡って攻撃を行う兵器のようですね…散布出力と残量についての表記があるので散布兵器のようなものでしょう。あとは大口径のロングライフルが一丁にアクセサリが一つといったところです」

「遠・中距離機体といったところか。しかし…随分と仰々しい名前だな。詳細を知りたいところではあるが、効果のわからない兵器をこんなところで展開するわけにもいかんな…その程度でいいだろう」

「了解です」

 

 

起動終了を承認し、ハルフォーフ大尉が飛び降りるように着地する。

するとゆっくりと血が巡るかのように人間としての感覚を取り戻していく。

完全に人間的感覚を取り戻した上で、自分の中に意識を巡らせると、微かに起動時に感じたISとしての感覚が微かに感じられる。

 

 

(これが待機状態というわけか…どれ、起動承認―――――許諾―――――)

 

 

試しに感じ取れたISのシステムに働きかけてみると、ハルフォーフ大尉が触れていない状態でも起動準備を行うことができてしまった。

 

 

(まぁ予想通りっちゃ予想通りか…だが俺自身が許可を出しているような感覚だな…そりゃ俺自身がISだから普通のこと…なのか?)

 

「しかし…入学前にキンブリー大佐に挨拶することができたのは行幸だった。ISを拝見させていただいたりと、なかなか実りの多い一日だったな。そういえばクラリッサ、先の会話であがった漫画が面白いとというのは?」

「隊長も興味がお有りですか!あれはですね~―――――

 

(大佐が読んでいた漫画…?…!!いかん!そいつには手を出すな!!)

 

 

任務開始前に大佐が珍しく漫画なんてものを読んでいるのでタイトルを聞いてみたのだ。

すると大佐は「HELLSINGという作品ですよ?よかったらあなたもどうですか?」とかなんとかうすら笑いを浮かべながら言ってきたが、俺が真面目な誇り高きドイツ軍人だったならグーパンも辞さなかっただろう。

そしてこの眼帯女(大)はあろう事か見るからに軍人気質である眼帯女(小)にそれを進めようとしているではないか!

 

 

(………よく考えれば、別段俺が気にするようなことでもなかったか。面白い作品であることは疑う余地もなく確かだしな。大佐早く帰ってこねぇかなー)

 

 

ペラペラと己の趣味について解説し始める眼帯女(大)

それをフンフンと頷きながら熱心に聞く眼帯女(小)…可愛らしいなオイ

そんな彼女らを目の前に、ISとしての自分を起動するわけにも行かず、暇を持て余しはじめることになってしまった。

 

 

 

 

 

(こいつら早くどっか行けよ…何が楽しくて俺までこんな話を聞かされにゃ―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『防壁に機能衝突。敵操作防壁を突破。デコイ構築…突破。74進行中、48ブロック。逆探知…解析不能。全稼働メモリを防衛へ。』―――――ッ!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

動くまいと意識していなければその場で倒れていたかもしれない。

 

全身の神経を引きずり出され…それをなぞられているかのような…全てをのぞき見られているようなおぞましい感覚。

 

それと共に頭に響く俺の意思とは関係なく発される平坦で不気味な俺の声。

 

俺の意識は再びISと溶け合いひとつになり始める。

 

 

 

 

 

(『防壁を再構築。敵操作尚進行。ノンアクティブのシステムへの介入を確認。35進行中、11ブロック』…糞が、こりゃハッキングってやつか。そんでもってISにハッキング仕掛けられる人間なんて一人しかいねぇよな…)

 

 

 

 

 

自身の能力の全てを注ぎ込み、ハッキングに対応していく。

 

俺の意思はシステムと融合し、深く落ちていく。

 

意識が完全に溶け合う直前、この事態を引き起こした犯人に対して有りもしない青筋を立てる。

 

 

 

 

 

(あのクソアマが…人の頭に土足で入り込むような気色の悪い真似しやがって…ただで済ませると思うなよ)

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっれれ~?おっかしいぞ~?」

 

 

薄闇の中、ガチャガチャとうさみみを揺らしながらキーボードを叩く兎。

 

 

「私の作ったセキュリティと違うところがあるのはまぁ予想はしてたけど~…これは意味不明だぜ!」

 

 

数日ぶりの食事を取ることも忘れ、新しく現れた興味対象である第二の男性操縦者…そしてそのIS

コアネットワークを介してこのISに関する報告があったことから、既存のISに何らかの介入したものだと考えていた。

好奇心の赴くままに、このISに対してコアネットワークを通じてハッキングを行ったところ、奇妙なことが起きた。

 

 

「この束さんが侵入してから30分も立ってるのにまだシステム掌握できないなんてね…しかも何この防衛システム?」

 

 

自他共に認める稀代の天災科学者である彼女が、例え新しく開発されたISであったとしてもそれのハッキングに手間取るなどといったこと自体が異常だったのだ。

 

 

「往生際が悪いんだぞ☆」

 

 

彼女を手間取らせていたその最たる原因が未知の防衛システムにあった。

構築された一つ一つのセキュリティに関して言うならば、それ自体は大したことはなかった…だがその量と多様性に問題があった。

突破した先からすぐさま新しい門を築き、全く別の解析方法を用いなければ解除することのできない鍵をかけられる。

三歩進んで二歩下がるといったような膠着状態が続いていた。

 

 

「解析率8割ってところかな~…でも今のところ大した情報は無いね~…でもこのセキュリティは―――――」ブツブツ

 

 

だがそこは天災、押しても押されるということは無く、緩やかにではあるがじわじわと標的を沈めていく。

 

「むむ!なんかプロテクト硬い場所み~っけ!こりゃあ見逃せないね!」

 

 

何の面白みもない攻防が続いていた中、一段と固く閉ざされたメモリーを発見した。

それを開錠しようとハッキングの優先度を変更させ、見る見るうちに解析を進めていく。

 

 

 

 

「何が出てくるかな~?いい加減私もお腹減って死にそうだから面白いものでも出てきてくれないと…その…あれだよ~―――――ん?」

 

 

 

 

と、解析が半分程度終了したところで、投影モニターの解析画面に微かな異変が起きる。

 

 

 

そこには小さなチャットウィンドウのようなものが開かれ、ごく短い一文が映し出された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お前を見ている』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナニコレ?…………まさか!?」

 

 

 

 

 

次の瞬間、チャットウィンドが消失し、画面上部に三つのウィンド順番に出現する。

 

 

『位置情報が探知されました』

『位置情報の探知が解除されました』

『対象の不明コアがネットワーク接続から解除されました』

 

 

解析画面が停止し、キーボードを叩く音も消える。

 

 

 

 

 

 

「………あっはっはっはっは~~~!!イイ!!面白い!!本当に面白い!!あははヴぉえっげっほげっほ…ひっひっふ~」

 

 

 

ガンッ!!

 

 

 

「うぐぉっ!…痛ったぁ………スネ打った……」

 

 

 

のたうつように笑い転げ回った挙句に、デスクに足を強打し涙目になりながらうずくまる兎。

ひどく散らかったデスクから物をバタバタと落下させつつ、ゆっくりと落ち着きを取り戻そうと務める。

 

 

「ふぇ~痛かった~足がもげるかと思ったよ。そんなことより、いつでもスタンドアローンにできるのにあえて電子戦を挑んでくるなんてね~しかもノーマークだったのは確かだけど、一瞬でも発信元をトレースされちゃうなんてね…こりゃ束さんの完敗ですな~ばっちりアピールされちゃったな~あはは」

 

 

足をさすりながら椅子をぐるぐると回転させる。

先程まで電子戦を繰り広げていた投影モニターには、機体の構成データとネットワークが切断されたことにより、破損した映像データが一つ抽出されている。

抽出したデータに目を通しながら、破損データを復元させる。

 

そして天災はひっそりと呟く。

 

 

「はは…君は一体何者なんだい?ゾルフ・J・キンブリー…君への興味がまた一つランクアップしたんだよ!」

 

 

天災が見つめるモニターには復元された映像データの一部が表示されていた。

 

破損していたためか音声は無く1~2秒の映像であったが、そこには天災であろうとも

 

理解できない物が映し出されていた。

 

 

紅い円形の図形、血涙を流す瀕死の人間、図形中央に輝く眩いまでの紅い閃光

 

映像は爆煙と共に途切れており、その先を表示することは叶わなかった…だがそれは彼女の興味を沸き立たせるには十分なまでの刺激であった。

 

 

 

「ここまで連続して驚かされたのは初めてだよ。殆どわけがわからないことばっかりだけど、こんな面白い子がいたならもっと早くに束さんと出会えていたらな~…私も何か変わって『グギュルルオォォォォォ…』

……オウフ!そういえばご飯食べる為にゴーレムちゃんを放置してきたのにすっかり食べ忘れてた!とりあえず何か食べて、そのあとはローゼン………閣下…だっけ?あの食器ブランドみたいな会社もちょろっと調べてやりますか~♪」

 

 

先ほどの空気はどこへやら、勢いよく椅子から飛び立ち、まるで転がるように自動ドアを潜り部屋を後にするのであった。

 

 

ガッシャーン!!

 

 

「うぎょわぁぁぁぁぁ!!痛ってぇぇぇぇぇ!!空腹よりそろそろ箒ちゃん成分ちゅっちゅしないと束さんの怪我も治んないよ~」

 

 

彼女の人生においてかつてない程高いテンションを残したままに。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っ!?」バッ

 

 

IS学園食堂にて、長く艶のあるポニーテールをぶん回すかのような動きで唐突に振り返る幼馴染こと篠ノ之箒。

その髪が背中にぶち当たったことによって生じる真空状態の圧倒的破壊空間はまさに歯車的砂嵐の小宇宙!!

…というほどの衝撃ではなかったがそれに気づいた俺も釣られて振り返る。

だが振り返った先には楽しげに談笑をしながらそんな量で足りるのかと心配になる程度の食事を取る女子しかいなかった。

 

 

「?どうした箒?」

「い、いや…一瞬誰かに身の毛もよだつような気色の悪い思惑をぶつけられたような…」

「お前はエスパーか…そんなことより早く飯食わねぇと千冬姉に怒られるぞ?」

「…なんだか食欲が失せた。すまんな一夏、私は先に出る」

「お、おう。大丈夫か?なんだったら千冬姉とかに言っとくけど」

「いや、授業には出るさ。またあとでな」

 

 

カチャカチャと食器をトレイに乗せて食堂を後にする箒。

朝から今に至るまで別段変わったこともなかったので不思議に思いもしたが、過度に心配しても相手を煩わせるだけかと割り切り、そのまま食事続けることにした。

 

 

「へいおりむ~!一人でお昼?」

 

 

黙々と食事を続けているとダボダボの袖を振りながらのほほんさんが正面に座る。

ダボ付いた手が持つトレイにはクロワッサンがもっさりと積まれているところを見ると、ほかの女子はやはり少なすぎなのではないだろうか?

 

 

「おっすのほほんさん。さっきまで箒といっしょだったよ。しかしまぁ今日は一段とグローバルというかアメリカンな感じな挨拶だな」

「そうだよ~今の時代ぐろーばるにいかないと生きていけないからね~…ってかいちょーが言ってた」

「かいちょー?…まぁいいや。ならついでに俺の友達が言ってたことなんだけど、ヘイって海外だとオイみたいなニュアンスの方が多いって聞いたから、のほほんさんには似合わないと思うぜ?」

「私もそうおもうよ~。ところでおりむー、今日はぞるっちは来ていないのかな?」

 

 

合わないと思うのなら何故そんなアグレッシブな挨拶を仕掛けてきたのだろうかと少し疑問に思うところではあるが、もふもふとパンを食べる彼女を見ているとそんな事はどうでもよくなる程の癒しパワーだ。

 

だが聞きなれない単語が一つあった。ぞるっち?

 

 

「来ていない人でぞる…あー、キンブリーか!そういえば俺も朝から見てないけど、やっぱり休みなんじゃないか?」

「やっぱそうなのかな~?せっしーが探してたから同じ男子のおりむーなら何か知ってるかなと思ってね~。私も気になったから聞いた次第なのです」

「せっしー…セシリアか?そういえば昨日俺のところに謝りに来てくれたし、もしかしてそれのことなのかもな?わざわざ謝りに来るなんて、結構いいやつだよなー」

 

 

結果から言うのであれば、先日行われた代表決定戦で俺はセシリアに僅差で勝利することができた。

だが俺が勝利できたのは、一試合目で発生した機体損傷による延期があったからだそうだ。

時間の猶予があったので、フォーマットとフィッティングを済ませた状態で戦えたわけだが、もしもあのまま戦わされていたと思うとゾッとする。

 

 

「せっしーはいい子なのです。あ、せっしーだ!ちょっとこっち来て~」

「あら?布仏さんに一夏さん。どうしましたの?」

 

 

ぱたぱたと手を振り、たまたま通りかかったセシリアをこちらへ招くのほほんさん。

 

先の話題でも上がっていたが、セシリアは先日のうちに俺への謝罪にきた上に、今朝にはクラスに対してきっちりと謝罪しているため、俺やクラスの皆に対するわだかまりはすでに解消されている。

 

ついでに名前で呼び合う程に仲良くなったつもりではいる…俺だけがそう思っていたら嫌だけど…

 

 

「よう、セシリア」

「あのね~、さっきおりむーがせっしーはとってもいい子だね~って話をしてたんだけどねー」

「い、一夏さん!?そ、それはどういうことですの?!」

「えぇ!?す、すまん!そんなに嫌がるとは思ってなくて!」

「い、いえ!その、怒っているわけではありません!す、少し驚いただけですの…それで…どんなお話をなされていたので?」

 

 

セシリアの上ずった声に若干の注目が集まってしまいすこぶる恥ずかしい。

まさか早速ぶっちゃけられてしまったのだが、事実なので仕方がない。

一瞬仲良くなったのは俺の勘違いだったのかと本気で落ち込みかけたが、そんなことは無いようなので少し安心する。

誰しも人から嫌われるのはこたえるものだ。

 

 

「お、おう。すぐに謝りに来てくれたり、みんなにもしっかりと謝った。そういうことって簡単にできることじゃないと思うぜ?だからセシリアはそういうことがしっかりとできるいいやつだなって話を…な?」

「そういうことでしたの…あれは私の高慢が招いた結果ですし、そう評価されましても…でも、一夏さんにそう褒めて頂けるのでしたら私も悪い気はしませんわ」

「そ、そうか?なんか照れるな…」

「そ、その~…一夏さん?よ、よろしければ今度…謝罪の意も込めておしょk―――――

 

 

 

 

 

「いつまで食べている!!食事は迅速に効率よくとれ!!次はグラウンドで合同授業だ!!遅れたらグランド十週だ!!」

 

 

 

 

 

俺の背後から聴き慣れた声が響く。

我が姉、織斑千冬なのだが、この学園に入学してからというもの、千冬姉と言って頭を叩かれた回数は数え切れない。

もはやカウントすることすらやめてしまったが、また叩かれてもかなわないのでさっさと食事を済ませることにする。

 

 

「セシリアものほほんさんもさっさと食…ってのほほんさん早!!」

「じゃあねーおりむーにせっしー」

「えぇ!?私が来た時にはまだ山のようにクロワッサンが…」

「セシリア!今はとにかく早く済ませちまおうぜ!」

 

 

「え、えぇ…わかりましたわ…」(もう…せっかく言い出せそうでしたのに…///)ボソッ

 

 

「ん?今何か言ったか?」

「何でもありませんわ!!」

 

 

今すさまじい人数の人に舌打ちをされたような気がするが、おそらく気のせいだろう。

箒もこんな感覚が走ったのだろうかとぼんやりと考えながらも、食事を詰め込み、その日の昼食を終わらせる。

 

 

 

 







キンブリー「あれ?私の出番は?」



さて、前回遅れた分のお詫びというかなんというか、今回は早めの更新にしてみました(`・ω・´)

活動報告の方でちょっとした意見を求めています。
もし暇な方がいらっしゃいましたら、ご意見の方よろしくお願いいたします。


今回も誤字脱字の嵐かもしれません…m(_ _)m


コメント、感想、誤字脱字の指摘、ご意見等ございましたらいつでもお待ちしております^^



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組織

やはり生傷の絶えない私、焼酎ご飯です。

サイコロ踏んで出血しました(^p^)




自分でもいつになったら本編が進むんだよと思いました…ごめんなさい

そして今回、ローゼンタール関係者として、オリキャラ?(他作品から名前だけを拝借しております)が出てきた上に色々と残念なことになってしまっているかもしれませんが、ご容赦を…







 

 

 

 

 

「ほぅ、篠ノ之束が直接ハッキングを…そしてあなたがそれを防いだと?」

「防いだかどうかと言われれば殆ど防げていませんが、相手がデータ抽出に躍起になっているところの裏をかいたって感じですかね」

 

 

現在私と私の部下であるエンピオ大尉は、ローゼンタールに向けて車を走らせていた。

私のISは私の部下となってしまった為に、新たなISを入手する必要ができてしまったことが主な理由だ。

彼には話していないが無人稼働するISという存在である彼を、私は最高の取引材料と考えており、そんな彼を取引材料にISを要求して取引に応じない開発機関は存在しないだろう。

不本意ながら、その取引材料を後部荷台に乗せたこのGクラスを運転しているのは私であり、彼とはインカムを通さずに肉声で会話を行っている。

肉声といっても彼にはその肉が存在しないので、インカムと然程変わらない機械を通したような音として聞こえている。

 

 

「しかし見直しましたよ。あなたが件の天才相手に電子戦で張り合えるとは…失礼ながらどちらかというとそういったものには疎いと思っていたもので」

「疎いってほどではありませんが、事務用のPCをウイルスまみれにしてぶっ壊したことはあるので、得意って訳ではありません。しっかしそれに関しては私も不思議です……ハッキングを防ぐことと相手の裏をとることを念じていたらできたって感じですね」

「フム…大方その体のせいなんじゃないですか?あなたの話を聞く限りその体は肉体の頃同様に意のままに動かすことが出来るのでしょう?ならあらかじめ備わっていた電子戦用もあなたの体の一部として、手足を動かすようにごく自然な動作をしただけのでは?」

「どうなんですかね。実際あの状況の私は色々と人間的な感性がないので、意のままに操っていたかと言われると怪しいところです」

 

 

あの時は興味本位で彼の魂を錬成したのだが、まさかここまで愉快な結果が生まれるとは…

彼自身が彼の体を起動させた時点である程度予想できてもよかったかもしれないが、まさかISのシステムにまで介入できるとは面白い。

これでますます取引材料としての価値が上がったわけだが、何故ローゼンタールに向かっているか聞かれることもないので話す必要もないだろう。

 

 

「まぁあなたの体についてはおいおいわかります。それで?ハッキングを受けて何かしらの被害は出ているのですか?」

「機体構成諸々に、昨晩の作戦時の映像データを一部抽出されました。襲撃かましてきたISのデータと賢者の石…でしたっけ?あれの生成映像ですね」

「あれについてですか……ま、構いません。いくら天才と言えどあれの真似事はできないでしょう。生成技術と運用技術を持っているのは私だけですし、指して問題ではないはずです。機体データも盗み出されたとのことですが…まぁISの生みの親である彼女にはバレるバレない以前の問題でしょう。こちらも問題とは言えません」

「そう言っていただけるのなら幸いです。にしても賢者の石ね~…その内容通りの性能を持つ物質なら、コストが人間数人ってのは安すぎませんかね?大佐の世界は経済が崩壊が起きたりしなかったんですか?」

「賢者の石は伝説上の物質のような扱いで製造方法も不明だったので表に現れることはなかったので特に問題は無かったはずです。裏では湯水のように作られていたようですが…

しかし賢者の石が作り出されてから数年間は獄中生活だったので、表に出るような事件があったかもしれませんが私の知る限りはありません。それに一応原則として金の錬成は禁止されていましたので、大規模な経済混乱が起きるようなことはありませんでしたよ」

 

 

まぁこの世界にはそのような原則は存在しませんが…と続け、時間を確認した後、ふたりの会話しか音がない車内にカーラジオのBGMを加える。

 

 

「はぁ…まぁそんなもんですよね。ところで大佐はおれが眼帯女共のせいで呻き声すら上げること叶わず孤軍奮闘している間になにか分かりましたか?あの襲撃してきたISについて大将に聞いてきたのでしょう?」

「怨敵の正体は一部分かりました。サイレント・ゼフィルスというイギリスから強奪された第三世代機だそうで、残念ながらその組織、個人に至る情報は皆無とのことです…あぁ…本当に腹立たしい」

 

 

本部にてペンウッド大将に報告の際、襲撃時の映像を提出し彼がそれを見終えると大きくため息をついた。

「君は本当に面倒な…いや、良いカードを持ってくるな…」といった具合に脱力していた。

彼が言うにはサイレント・ゼフィルスの強奪事件に関して、英国はそのような事実はないと否定しており、今回私が入手した映像により、英国の主張に対する強いカードを手に入れたということになる。

だがそのようなことは私にとっては毛ほども関心がなく、肝心の襲撃実行犯の存在が明らかになっていない現状に私のフラストレーションは募る一方である。

しかし…久しぶりに抹殺すべき目標ができたという点では、この不毛な生活に潤いを与えてくれたとも言えなくもない。

 

 

「ま、収穫が無いよりは幾分かマシなんじゃないですか?ですが、それだけの情報にしてはえらく時間がかかってませんでしたか?」

「今回の作戦報告とあなたの死亡処理ですよ。あともう一つは"コレ"が原因です。全くもって嘆かわしい限りですがね」

 

 

するとカーラジオから流れるBGMは突然遮られ、ニュース番組を伝える放送に切り替わる。

 

 

『臨時ニュースをお伝えします。本日午前九時、IS委員会よりドイツにて織斑一夏氏に続き、男性で二人目となるISの起動成功者が発見されたとの発表がなされました。二人目の機動成功者はドイツ軍大佐、ゾルフ・J・キンブリー氏であり~~~~~~~~~~』

「は~んなるほど、確かに大佐の存在は一般公開されていませんでしたね。ま、噂は広まってたみたいですけど、これで一躍有名人になったわけですか」

「不本意ながらそういうわけです。ですが後数年は閉鎖社会のなかで生きていくわけですから、あまり問題があるというわけでもありません」

 

 

だが少し動きにくくなるというのは事実だ。

カーラジオから流れる臨時ニュースは呑気に私の個人情報を垂れ流しており、資金の動きや、賢者の石の実験などに支障をきたす可能性が少なからず出てくることになる。

 

しかしそれをカバーする策はすでに考えがあった。

個人ではなく組織的な協力の本に活動するというものだ。

その協力を仰ごうと考えている組織というものが、私のISの開発企業であるローゼンタールである。

私の新たなISを手に入れる上で、大尉の存在を彼らに明かすことはおそらく避けられないだろうことから、いっその事大尉の反応次第で巻き込んでしまおうという考えだ。

彼らが世界シェア4位という企業であるのなら、無人機、ないしはシステムに直接介入できるインチキまがいな存在を目の前に手放そうとするはずがない。

そうなれば必然的に、その存在を生み出した私の錬金術に興味を持つはずだ。

 

 

「どうしました大佐?そんなにニヤニヤして…やっぱ名が知られるってのは嬉しいんじゃないですか?」

「何を馬鹿な……ま、構いません。あなたは私がいない間に随分と奮起してくれたようですし、その程度で腹を立てているようなら今頃私は頭の血管がブチギレています」

「お優しい上司を持てて光栄ですよ。ハッハッハ」

「えぇ、もっと敬い感謝しておいてください。…さて、そろそろ本社につきます。とりあえず口を開かぬようお願いします」

「了解ですよっと」

 

 

以前とは逆に私が運転をしながら到着したこのローゼンタール。

おそらく理解していないであろう大尉にはこれから頑張ってもらわねばならない。

そんな彼の軽口程度は見逃してやろうというものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゾルフ・J・キンブリー様…で、いらっしゃいますね?」

 

 

受付に向かうとすぐ横から声をかけられる。

その声の正体はビジネススーツを着こなし、ブロンドの髪をシニヨンでまとめた眼鏡をかけた見知らぬ女性だ。

 

 

「えぇ、間違いありませんが…あなたは?」

「これは失礼致しました。わたくし、社長秘書兼オーギルプロジェクトのテストパイロットをしております、キャロル・ドーリーと申します。この度、オーギルに不具合が生じたとのことでお越しいただきましたので、ご案内に参りました」

 

 

平坦かつ形式ばった口調で自己紹介を終え、クイッと眼鏡を上げるキャロル・ドーリーと名乗るこの女性。

20代後半といったところだろうか?長身に整った顔立ちをしており、まさに秘書といった装いである。

しかし、社長秘書兼テスターとは…よく見ると機体紹介の際にオーギルに搭乗していた女性も彼女に似ていた記憶がある。

 

 

「これはご丁寧にどうも……社長秘書兼テスターであるあなたが何故私の案内を?」

「社長本人がお会いしたいとのことです。それではラボへと案内致します」

 

 

社長本人が私に?

一体何の用が…それに社長に会うというのに何故ラボへと向かうことになる?

警戒…という程ではないが少しばかり不信感を抱きつつ既に歩み始めた彼女の後を歩く。

 

 

数分程歩いただろうか、正直初めからこっちに来てくれと言われた方が楽だったのではと思いながらも、機体紹介の際にも訪れた本社とは別の施設へと到着する。

 

ISの機動にも使用されている施設なだけあり巨大なその施設の壁は堅牢で、外側からでもその様は見て取れる。

 

 

彼女の後に続き施設内に入る。

何もない…唯唯広い空間だった…だがその終着点である奥の壁には、異様なものがそびえ立っていた。

 

 

 

 

その壁には近づくだけで押しつぶされそうな重圧を放つ20メートル近くはあろう大金庫のような巨大な円形錠が設置されており、その至る所に巨大な金属棒による施錠が幾重にもなされている。

核シェルターでさえ比べ物にならないほどに強固なソレを見上げ、思わず感嘆の声をあげる。

 

 

 

 

「おぉ…!…これはまた随分と厳重に守られた施設ですね。ここまで巨大なアナログ錠の扉は初めてみますね…この中に社長が?」

「はい、その通りです。まぁ今の時代にはそぐわない化石のような代物ではありますが社長の趣味でして…内部は社長が主任として関わるプロジェクトのラボとなっております。オーギルプロジェクトに関しましても社長が主任として指揮されていましたので、オーギルの生まれた場所ということにもなります。それでは中へご案内致しますので、少々お待ちください」

 

 

驚いたことにオーギルの開発主任を勤めていたのは社長とのことらしい。

自らが研究開発に携わっていたとなると、現搭乗者であり、男性操縦者である私に会おうと考えるのも頷ける。

彼女の言葉にそんな考えを浮かべていると、巨大なアナログ錠に似つかわしくない小さなインターホンから、聞き覚えのある声がこの何もない空間に響き渡る。

 

 

『あー、あー、えっと~ラボ前の二人?聞こえてるかな?…っべーなそろそろ社内放送系新しくすっかな…』

「社長、キンブリー様をお連れいたしました」

『お、ちゃんと聞こえてるな!流石キャロリ~んお仕事早い!後ろにいるのがその大佐殿ねー初めましてー?ニュース見てたよー!ゲハハ!!』

「ん?…いえ、以前IS学園でお会いしているかと思いますが…人違いでしょうか?」

 

 

インターホンから聞こえる声は、以前IS学園に機体持ち込みの際に訪れ、やたらと教員に喧嘩腰だった木原数多と同じ声なのだが…

話すテンションや初めて会うような口ぶりから考えるに別人なのだろうか?

 

 

『あー木原君と間違ってる感じ?やっぱそうなんだ~…マ!とりあえず開けるからさっさと入っちゃってよ!』

 

 

どうやら木原数多ではないようだ。

同じ顔の人間が三人いるというぐらいだ、同じ声の人間が同じ職場で働いていることもあるのではないだろうか?

 

 

 

インターホンからの音が途切れると、壁の四隅にあるオレンジランプが点灯し、ブザー音が鳴り響き、 ガコンッ という何かが外れるような轟音と共に地面が微かに振動する。

 

 

この振動と共に、ついにあの巨大な錠前が開かれるのかと心待ちにしていると…

 

 

 

 

 

 

 

パシュッ

 

 

 

 

 

 

 

情けない効果音と共に、目の前に小さな扉が現れる。

すると彼女は何事もなかったようにその扉の奥へと進む。

 

 

「お待たせいたしました。それではこちらになります」

「……ん?……これが開くのでは?」

「この扉は現在使用されておらず、開閉することはできません」

「…では先程の轟音と地響きは?」

「あぁ…あれですか。あれは社長が設置したダミーオープンエフェクトという音と振動を発生させる装置です。勘違いを起こさせてしまい申し訳ありません」

「………あ、はい…そうですか」

 

 

まさに唖然だった。

恐ろしいまでに盛大かつ意味のない代物だ…ここまで肩透かしを食らったのは前世を合わせても経験のないことだった。

私がハインケルに喉笛を噛み抉られ瀕死に追い込まれたあの時を、遥かに超えて出し抜かれた気分だ…だがもはやくだらなすぎて清々しささえ覚えるほどだ。

そのように遠い目で軽く黄昏ながらも彼女のあとに続くと…

 

 

これまた度肝を抜かれた。

 

 

「「「ふぃ~~~~~ん」」」ごっごっごっ!

「…なんですか…これは?」

 

 

扉を抜けた先からはスムーズジャズが流れ、薄暗い照明がダイニングバーのような広々としたカウンターを照らしている。

かと思うと、その対局にはゴテゴテとしたマシンアームやケーブル、測定機器のようなものが所狭しと並んでおり、ガラス張りの巨大実験場と隣接した研究所となっていた。

 

理解不能な空間ではあるが、それより意味がわからない物が私の足元に群がっていた。

 

 

『お客さん?』『キャロりんだ!』『おかえり!』『この人知ってる!ISを動かせる男の人だ!』『それだあれ?』

 

 

ル○バだ。

10機程のとても愛らしい声をしたルン○が、どこへ行くともなく、私の足にぶつかってくる。

 

 

「ようこそ大佐殿!!俺が社長の………社長だ!よろしくな!ヒハハ!」

「えぇ…ん?……よろしくお願いします」

 

 

声の方に目をやると、そこには白衣を纏ったバケツがいた。

…バケツ?

その頭と言える部分にはバケツが逆さまに被さっており、木原数多と同じ声で笑い声を上げている。

 

 

「……失礼ですが…その頭は?」

「んあ?これか?これはあれだ…俺の顔があまりにも普通すぎるから、バケツかぶせてみました~…みたいな?バケツじゃなくてもいいんですけどね~」

 

 

彼が指を鳴らすと、バケツが蜃気楼のように歪むと次の瞬間にはバケツがカラーコーンに変わっていた。

声がこもっていないところを聞くと、どうやら投影された映像のようなもののようだ。

 

 

「なんとも面白い頭ですね。ホログラムか何かですか?」

『わー社長スゴーイ』『なにそれー?』

「そそ、なかなかクールでしょ?ま、そんなことはどうでもいいわ。おら、お前ら、とりあえず向こう言ってろ。後でキャロりんがオイルくれっから」

『『『はーい』』』『おいるー』

 

 

揃って返事を返した○ンバは私の足元から離れ、ダイニングバーの向こうへと消えていった。

 

 

「社長?あのルンバはいったい?」

「可愛いだろあれ?正確にはルンバじゃないんだな~これが。俺が作ったお掃除ロボにこれまた俺が作った人工知能積んで、色々と魔改造加えたのがあいつらだ。言わば俺の子供なんだわ~あいつら強盗ぐらいだったら倒せるんじゃないかってぐらい―――――

「社長、そろそろ本題にはいられてはいかがでしょうか?」

「おっと、そうだったな。今日はわざわざ来てもらってすいませんね~大佐殿」

 

 

この社長…性格もそうだが、このルンバといい先ほどの巨大錠前…私と違った部分の頭のネジが抜けているのではないだろうか?

そんな彼の親バカが炸裂しそうになった空気を有能な秘書に遮られ、いよいよ本題に移る。

 

 

「えっと~?ISの不具合でフィッティングができないね~……とりあえず一回調べてみないことにはわかんねーわ。きーはらくーん、入ってきちゃってー」

『うぃーっす』

 

 

自問自答のように同じ声が響くと、壁の一部が開き、相変わらず凶悪な外見の木原数多と自動荷台に乗ったIS、ダリオ・エンピオが現れる。

 

 

「主任、やっぱダメっすわ。一回全部繋いでみねーと原因わかんねーわ」

「あ、やっぱそう?んじゃ早速やっちゃうから、大佐はとりあえずオーギルの装甲開いてもらえる?」

『ちょっ大佐?これどうするつもりです?とりあえずそうこう開けばいいですかね?』

 

 

早速この時が来てしまった。

彼は少し焦ったようにインカムを通して声を発する。

 

 

「………社長、少しお尋ねしたいことがあります。この部屋の中で起こったことがあなた方以外に伝わることはありますか?」

「んん?俺らが口外しない限りねーよ?盗聴盗撮とかも絶対にねぇけど?」

「だ、そうです大尉。もう動いて構いませんよ」

『え?…えぇ~?大丈夫なんですか?』

「えぇ、では命令です。装甲を開いて立ち上がってください」

「大佐殿何言ってんだ?んなもん動くわけ―――――

 

 

 

 

 

ガコン

 

 

 

 

 

「「「は?!」」」

 

 

 

 

 

彼が荷台から降り、翼を広げ立ち上がるダリオ・エンピオ。

その様に私以外の三人は一様に目を見開き……目?

ともかく硬直したまま動かない。

 

 

 

 

 

「えっと…まぁなんだ?元ドイツ軍大尉、現ISやってます。ダリオ・エンp―――――

 

 

 

 

 

「逃がすなァァァァァ!!究極のモルモットだァァァァァッ!!」

「オラアアアアアアアアァァァァァッ!!」

「ハァァァァァ!?」

 

 

 

彼らの叫び声が響いた次の瞬間には、ラボの壁に白いゲル状の物体で貼り付けにされ、完全拘束された大尉が出来上がっていた。

 

 

「大佐殿、あんたなんてもの持ってきてくれてんだゲハハハハ!!これ俺がいじくり倒していいってことだよな?!」

「理解が早くて助かりますね」

 

 

頭に被ったカラーコーンを高速回転させながら狂喜乱舞する社長。

なぜ回っているのかはわからないが、とてつもなく喜んでいるということだけは痛いほど伝わった。

大型のドリルにしか見えないような機器と、これまたチェーンソーにしか見えない機器を手にブンブンと振り回しながら大尉へとにじり寄っていく。

 

 

「ちょってめっにじり寄るな!!大佐!どうにか言ってくださいよ大佐!!…おいお前…その両手に持ってるソレはなんだ!!」

「お飲み物はいかがいたしましょう?」

 

 

彼の叫び声が私に届くと同時に、私にメニューのようなものを手渡してくるキャロル・ドーリー。

先ほどの動揺は既に胡散し、もはや彼には見向きすらしていない。

 

 

「ではコーヒーをお願いします。…さて、社長?とりあえず彼の血印を損なわないのであれば何をしても構いません。彼に人権は適応されませんので」

「なんだか知らねぇが了解~♪はーい♪痛くないでちゅからね~」ギュイィィィィィン

「てんめぇ覚えとけよクソ大佐ァ!!」

「大尉…おとなしくしたほうが身の為ですよ?先程も言いましたがあなたに人権は適応されません。公的機関に任せるよりは幾分もマシだと思いますが?」

「……チクショウ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――――――止めろ止めろ止めろ!!それ以上はいかん取れる取れる!!…あれ?やっぱ大丈夫かm…やっぱムリムリ!!オギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」ゴリゴリゴリゴリガガガガガガガ!!

 

 

 





活動報告の方でも書かせていただきましたが、小説評価を今まで最低5文字に設定していたようです…今更ですが0文字に設定し直しました…泣きそう(´;ω;`)

今までわざわざコメント打って評価してくださっていた方にはとても感謝です
(`・ω・´)
もしよろしければ評価の方よろしくお願いいたします。


さて、今回登場したお掃除ロボについてなんですが…
実は彼らの名前を決めかねています。
なので何か思いついた方がいらっしゃいましたら、アイデア協力お願いいたします
(>人<;)


今回も誤字脱字の嵐かもしれません…m(_ _)m


コメント、感想、誤字脱字の指摘、ご意見等ございましたらいつでもお待ちしております^^


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会遇

…遊んでいました…ブラッドボーン楽しいです…ごめんなさい…
別の新作との同時投稿ということもあり…とてつもなく遅くなってしまって本当に申し訳ありません。


それはさておき、皆様お待たせいたしました。
今回ようやく本来のお話に戻れました(実に五話ぶり


「死ねやオラァァァァァァァァァァッ!!」

 

 

黒煙を切り裂き、鋼鉄の蹴りが私の腹部に突き刺さる。

 

 

「ッ!!ガ…グァッ…」

 

 

予想だにしない鋭い攻撃に、私は為すすべなく壁に衝突する。

砲弾のような速度でぶつかった衝撃が全身を覆うが、幸いにも保護機能のおかげで気絶するようなことはなく、壁にめり込んだ体を起こすべくすぐさま体勢を立て直す。

 

 

「まだdーーーーー「遅ぇんだよボケがァァァァァァァァァァ!!」

「ぐっぉ!!??」

 

 

体勢を立て直した直後、視界いっぱいに広がる鉄の拳。

 

次の瞬間、私は頭を軸に回転しながら吹き飛ばされ、地面を数十メートル転げ回った挙句に壁に上半身が突き刺さる形で停止した。

 

 

『ビーーーーーーーーーー!!』

『あーハイ。ストップストップ~。とりあえず大佐のエネルギーがゼロになったからテスト終了っつーことで~。お疲れさんしたー』

 

 

戦闘終了を知らせるブザー音が鳴り響き、先程までの雰囲気とはえらく場違いな態度の声が聞こえる。

だがエネルギーの切れた動かないISを身にまとい、尚且つ体半分が壁に埋まった私はどうすることもできずにもがくことすら叶わないでいた。

 

 

『とりあえずダリ夫は大佐殿引き抜いて戻ってきてくれ』

「つーわけで大佐。容赦なくやらせてもらいましたが、まぁ軽い仕返しとでも思っておいてください」

「…あなたも上司に罵詈雑言を浴びせた上に、ここまで完膚なきまでに叩き飲めせたのなら満足でしょう。このような滑稽な姿を晒し続けるのも悲しいのでさっさと引き抜いていただけますか?」

「もう少し眺めて写真でも撮りたい気もしますが分かりました。あなたの言うとおりそれなりに満足できましたしね…よっと」

 

 

足を掴まれ乱雑に引き抜かれる私。

エネルギー切れによって動かぬ体を小脇に抱えられながら、最早私という個を完全に破壊する程の羞恥の数々に震え、されるがままに運ばれていく。

 

 

 

 

 

 

 

「はいお疲れ様。そんでもって測定結果を一言で言うならヤバイ。すこぶるヤバイ」

「だめだぁ~主任。大佐のデータはともかくとして、こっちの人間もどきの方は調べることが多すぎる」

「と、このように木原君でさえお手上げ状態な訳だ。だがまぁヤバイつっても悪い意味じゃあない」

「それは良かった。私も部下にコテンパンにされた甲斐がありました」

 

 

エンピオ大尉を紹介したことによる阿鼻叫喚は収まり、上の穴から下の穴まで隅々調べ上げられた大尉は、可動データを取るために私と模擬戦を行っていた。

模擬戦を終了させ実験場から戻り、再び白いスーツに身を包んだ私は出されたコーヒーを片手に先程の測定内容を報告される。

ダリ夫という素敵なあだ名を貰った件の部下はというと、秘書のキャロル・ドーリーと木原数多に何やらコードのようなものを大量に接続されている。

 

 

「まず大佐の搭乗データに関してだが、一見した程度では特にこれと言った情報は得られなかった。それこそキャロりんが乗っている時と殆ど違いがないぐらいにだ」

「では男性操縦者に関するデータは得られなかったと?」

「いや、特に違いがないということがわかっただけでも行幸だ。それより問題はあんたの部下の方だ」

 

 

それはそうだろう。

錬金術が関与したことによって、彼はイレギュラーの塊のような存在へと昇華したのだ。

無論彼らには錬金術の存在を明かしており、存外すんなりと受け入れられた。

 

主任いわく、「オカルト?いいねぇ!!ISの無人機の研究そのものがオカルトの域みたいなもんだからむしろ納得だわ!」とのことで、その他二人も驚きはしていたものの受け入れるのにさして時間はかからなかったようだ。

 

 

「俺たちが観測できるシステム内部の情報に関しては特に目新しいことは無かった。だがこいつは無人機という扱いなのにも関わらず、搭乗者レコードがバッチリ記録されてんだこれが」

「では彼本人が搭乗しているようにシステムに誤認させているということですか?」

「まぁそう考えるのが普通だよね~大佐の話じゃあいつはシステムに介入できるそうだから不思議でもなんでもないわけだが、もう一つ面白いことがわかった。大佐、あいつと戦ってみた感じどうだった?」

「どうもこうも…ISでの戦闘経験自体少ないので強くは言えませんが、とても人間ができる動きとは思えませんでしたね。強さがどうとかいうレベルではありません」

 

 

事実彼との戦闘において、私は一度たりとも攻撃を浴びせることができなかった。

それどころか視界収めることがやっとで、ついぞ訪れた攻撃の機会もありえない角度で躱された。

私の攻撃が当たらないどころか、彼は武装を一切使用せずに恨みのこもった殴る蹴るの攻撃によって私を打ちのめした。

まさにワンサイドゲーム、手も足も出ないとはこのことだった。

 

 

「まさにその通り、レコードから算出したあいつのIS適正判定は最高値を超えて測定不能だ」

「…Sランクより上のパイロットということになると?」

「まぁあくまで適正値だ。まぁそりゃぁそうだよなぁ?あいつがISそのものなら適正値も糞もない訳だ。適正判定は伝達速度やら感覚同調を元にしている。ダリ夫はそこに誤差が入り込む余地がない……まぁなんにせよ?今分かることはこれぐらいだ」

 

 

そう言い切ると、社長は頭にバケツを被ったままコーヒーを一気に呷る。

ホログラム故に普通に飲めているわけだが、傍から見れば最早不気味である。

 

 

「ダリ夫の詳しい解析はすぐにでも始めるつもりだが、とりあえず大佐のデータはこんなもんでいいわ。近々また来てもらうことになるかもしれんが」

「分かりました、では私はそろそろお暇させていただきますかね。今日中に色々と用事を済ませてしまわなくてはいけませんので」

「あ~ちょっと待った大佐!帰るんなら俺から素敵なプレゼントをね…キャーロり~ん、あれ持ってきて!」

 

 

私が立ち上がろうとすると、大げさに手を突き出して引き止められる。

プレゼント?ISに関係する何かだろうか?

すると数秒と待たずに、机の上にアタッシュケースが置かれる。

 

 

「これは一体?」

「ま!とりあえず開けてみてよ」

 

 

ホログラムの奥でニヤついていることが手に取るようにわかるほど上機嫌なこの男。

訝しみながらもアタッシュケースのロックを外すと、中で何らかの機械が作動し自動でケースが開かれる。

ゆっくりと開かれたその中には、つい最近見かけた奇妙な物体が鎮座していた。

 

 

『やぁ!こんにちわ!』

「そいつはさっきロールアウトした10機目の掃除ロボット『ユリウス』だ。色々役に立ってくれると思うから、可愛がってくださいねー」

『よろしくね!大佐!』

 

 

現れたのは、この部屋を大量に徘徊している円盤型の掃除ロボットと同じ型をしたものだった。

可愛らしい声で話すそれは、意気揚々と私に挨拶し、身動きの取れない箱の中でぐるぐると回転している。

 

 

「よろしくお願いします。…しかしコレは思わぬプレゼントですね。掃除好きとしてとても嬉しい限りです」

「お!気に入ってもらえて良かったな!」

『やったぁ!ここから出る個体は僕が初めてだからいっぱい経験値貯めちゃうぞ~!』

『うわぁ~いいな~』『ずるいぞー』『ここに戻ってきたら記憶同期させてよね!』

「あーそうだ、大佐には色々説明しておくべきことがあるな。こいつは自己学習能力を持ったAIだ。経験したことを分析、学習するから色々と喋ってやると面白いかもな。あと注意すべきことはーーーーーーーーーー

 

 

ユリウスを気に入った私を見て、さらに上機嫌になった彼はその後延々と機能説明を続けた。

本来解析すべき大尉を放置し、つらつらと自慢話のように彼を説明する様は親ばかの様相を呈していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、はい。この先ですね…ありがとうございます」

 

 

既に日が暮れたIS学園最寄りターミナル。

魔改造が施された制服と、ツインテールの影が地面に伸びる。

重いボストンバッグを背負い、係の人に向かうべき方向を聞いてやっとの思いで到着した目的地のIS学園なわけだが、私の心は穏やかではなかった。

 

 

「……どんだけ…どんだけ広いのよ!!この学園!!!!!」

 

 

そう、私"凰 鈴音"は、転入という扱いでIS学園の地に遠路遥々やってきたはいいのだが、この広大な敷地に嫌気がさしていた。

教員棟の受付まできてくださいとかなんとかいう事なのだが、さっきの係の人の説明じゃどの建物か全くわからないほどに奇抜な建物が密集している。

 

 

「そもそも建物までの道が長すぎるわ!しかも何あの意味不明な形した物体!あれ建てたやつセンスぶっ壊れてるわね…というかやっぱでかいわよこの学園!もう5坪ぐらいでいいよ!縮んでよ!」

 

 

私の叫びは静かに波を立てる海の帳に散り、虚しさだけが押し寄せてきた。

しかしこのままここにいても埒があかない…というか軽く泣いてしまいそうなので、私は仕方なく建物の方へと足を進める。

 

 

「そもそも私代表候補生なのになんで迎えとか来ないのよ…ブツブツ…大体何なの?"キンブリー大佐"には絶対に失礼の無いように?二人目だかなんだか知らないけど何で私がそんなこと言われなきゃならないのよ…ブツブツ…」

「おや?こんばんわ。こんな時間にどうしましたか?」

「へ?」

 

 

私が恨み節を唱えることに夢中になっていると、すぐ横から声をかけられる。

今のを聞かれていたのではと思い慌てて振り向くと、すぐ横に無駄にごつい車が止まっており、左側の運転席の窓からこちらに声を掛ける謎男の姿があった。

IS学園に学生以外の男?

 

 

「えっと…そのー」

「学園内とはいえ一応夜道です。それにここから寮まで歩けばそれなりに時間がかかりますし、荷物も重いでしょう?…よかったらお送りいたしましょうか?」

 

 

私が戸惑っていると、男は凄まじくありがたい提案をしてきた。

改めて観察してみると、白いスーツを着ている落ち着いた雰囲気の男の人で、学園敷地内にいる以上部外者ではないだろうという結論に至る。

 

 

「あ、えっと…じゃあお願いしてもいいですか?」

「えぇ構いません。では後部座席へどうぞ」

 

 

多分普通科目を教えてる先生とか、機材メンテナンスとかの人というなんともふわっとした当たりをつけ、彼の言葉に甘えることにした。

最悪怪しい奴だったとしても、こっちにはISがあるのだ。

言われた通りに後部座席の扉を開け、ボストンバッグを置こうとするーーーーーーが、そこには先客が乗っていた。

 

 

『こんばんわ、僕ユリウス!キミはだぁれ?』

 

 

そう、そこにはすごくカワイイ声で挨拶をするルンバが乗っていた。

というかアタッシュケースの中でグルグルと回っていた。

 

 

「え?えっと…ふ、凰鈴音よ」

『よろしくね鈴ちゃん!』

 

 

ドアを閉めながら、恐る恐る挨拶を返す。

するとどうだろうか?しっかりと挨拶を返し、更にはいきなりあだ名で呼んでくるあたりとても可愛らしい。

その反応に頬を緩めていると、車は走り出し、私はこのユリウスと名乗るルンバと並んで揺られ始める。

 

 

「では寮近くでまでお送りしますね」

「あの、手間でなければ教員棟の近くで下ろしてもらいたいんですが…」

「分かりました。私もそちらに用事がありますのでちょうど良かった」

「あ、ありがとうございます」

『ねーねー、鈴ちゃんはこの学園の生徒なの?』

「ん?そうよ。今日付でIS学園に転入してきたの……それより、あなたは何なの?見たところルンバっぽいけど…最近のルンバってしゃべるのかしら?」

 

 

もしそうなのなら一台欲しいところだ。

こんなに積極的に話しかけてくる上に可愛いく、おまけに掃除までしてくれるのならそれは欲しくもなるだろう。

しかし…この人は何故車にルンバを乗せているのだろうか?

 

 

『違うよ。僕はローゼンタール社製のヴィスハイトっていう掃除ロボットだからルンバじゃないよ!僕は社長に作られた10機目の個体で、僕が今こうやって鈴ちゃんと会話できているのは社長が作ってくれたAIのおかげなんだ!』

「へ~、じゃああなたはお店では売られていないのね。…っていうかローゼンタールって言ったらISの企業だったような…ISパーツ以外にもこんなの作ってるのね」

「いえ、それは完全に社長の趣味だそうです。それにしても転入生でしたか…このような時期とは珍しいですね。普通なら送迎がありそうなものですが、何かありましたか?」

「そうなんです…聞いてくれますか?!ここについてからもそうだったけど、日本に来るまで一切手引きなしですよ?!これでも代表候補なのになんなのよこの扱いは…」

 

 

ユリウスとの会話により煮えくり返っていた心は和んでいたのだが、運転席に座る彼の言葉で再び怒りがふつふつと沸き上がってくる。

 

 

「代表候補生の方でしたか。確かにそれは随分な扱いですね」

「そうなんですよ…そのくせ私には一々鬱陶しい指示ばっかりしてくるんですよ?!あーもう…これから一夏に会えるっていうのに…」

『鈴ちゃん元気出して!』

「ユリウスは優しいわね…私の甲龍もあなたみたいに喋れたらいいのに」

 

 

やはりこの子は癒しだ。お持ち帰りしたい程に…

しかしいつまでも怒っているわけにはいかない。

これからずっと会うことを楽しみにしていた一夏と再会できるのだ。

きっとあいつはあの頃よりもカッコ良くなってて…あの性格も少しはマシになってたら嬉しいわね。

そんなことを考えニヤニヤとふやけた顔が、窓ガラスに写っていた事に気がつき顔を引き締める。

 

だがその時、私は窓の向こうにあるものを見つけてしまった。

一夏だ。私がたった今まで妄想していたとおり、あの頃よりも逞しく映る一夏の姿が少し遠くの場所に見えた。

 

それだけならば良かった。だがそこには…一夏のとなりには無視できない人物がいた。

 

一夏と親しそうに接する女性…胸の部分が大きく出ているところを見るに、いわゆる"巨乳"というやつだ。

私がこんな目にあっていたのに、こいつは私の知らない女…しかも巨乳といちゃついていたのか…

 

内心お門違いなのは分かっていたのだが、ドス黒い感情が沸き上がってくる。

 

 

「もうそろそろ到着しますよ」

「……すみません。ここで下ろしてください」

「む?…ふむ、分かりました」

 

 

彼は何かを察したのか、車を路肩に寄せ停車させる。

私はボストンバッグを背中に担ぎ直し車を降りる。

 

 

『鈴ちゃんばいばーい!』

「うん…さよなら…」

 

 

バタムッ と後ろ手にドアを閉める。

 

 

「教員棟はここを真っ直ぐ行った所になります。それではお気をつけて」

「…ありがとうございます」

 

 

そして車が発進し、ある程度遠くまで進むと建物の影に消える。

それを見届けた私は片足を曲げるようにしゃがみ、もう片足を後ろに伸ばす。両手をそっと地面につき、クラウチングスタートのような構えをとる。

 

 

そして大きく息を吸い込み、全ての感情とエネルギーを爆発させ走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

「一夏の、一夏のアホーーーーー!!あんたなんて電車で腹痛に襲われた挙句に運転見合わせにあって悶え苦しめばいいのよ!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

完全に八つ当たりな叫びを夜空に響かせ、風邪を切り裂きながら全力疾走で教員棟へと走った。

 

 

 

 

 

 

 

その後思ったより近かったので半泣きのまま受付を済ませたところ、先ほどの叫びを聞かれていたのか受付の人によくわからない励ましを受け、冷静になった私は赤っ恥を晒す羽目になったのは内緒である。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「IDの確認が完了しました。どうぞお入りください」

「どうも」

 

 

生徒証を提示し、学園敷地内へと車を走らせる。

オーギルを受け取りローゼンタールを後にした私は、多々ある用事と手続きを済ませ、IS学園にまで戻ってきていた。

貴重とされるコアのはずなのだが、大尉のボディが希少性を遥かに上回っているとのことで、二つ返事で了承された。

だが不服なことに、私の都合で動かせる部下はそのコアと交換してしまった為に、私自身が日が暮れた道で車を走らせている。

 

 

『ねぇねぇ大佐?大佐はなんで車の運転ができるの?国際免許って18歳以下は取れないって書いてあるよ?』

 

 

後部座席から合成音声で作り出された愛嬌のある声が聞こえる。

その正体は社長に託された掃除ロボットのユリウスであり、充電や整備装置を兼ねた開かれたアタッシュケースの中でグルグルと行き場なく回転している。

このように彼が適度に話しかけてくるため運転中に退屈するということはなかった。

 

 

「確かに私の年齢では取得できませんが、立場を利用して少しお願いすれば取れないことはありません。…自分で運転する日が訪れるとは思っていませんでしたが」

『へぇ~、大佐は大佐だからそういうことができるんだー』

「それと男性操縦者というところが手伝っていますが、概ね正解です。あまり褒められた事ではありませんがね……そもそも年齢のことを指摘するのであれば私の年齢で大佐というのもおかしな話です」

『大佐は肉体年齢より精神年齢が一回り以上高いんだよね?それに従軍者だったのなら人材としては申し分ないと思うな~。でもでも肉体年齢の問題もISが軍の主体移り変わるに連れて、上位階級の平均年齢は随分と下降しているから大した問題じゃないと思うよ?』

「そのようですね。先日お会いした黒兎隊の少佐も随分と若い方でしたし、顔見知りの中には15才で少佐権限を振りかざしていた子供もいます。そう考えるとあなたの言うとおり私の肉体年齢も大した問題ではないのかもしれませんね……おや?」

 

 

赤い小さな錬金術師のことを微かに懐かしんでいると、街頭が照らす薄暗い道の端に"見覚えのない"人物が何やら頭を抱えて暴れていた。

とうに外出時間は過ぎているであろうにその人物は制服姿で表に出ており、尚且つ"見覚えのない顔"という所に引っかかる。

確認の意も含め、車をすぐ横に止めて話しかける。

 

 

「こんばんわ。こんな時間にどうしましたか?」

「へ?」

 

 

再度顔を確認するが、やはり見覚えの無い顔だ。

他学年を全てとまではいかないものの、学園内の人間の顔は大概記憶しているだけに気になったが…おそらく私が目にしたことがない人物だろう。

そもそもこのような奇抜なデザインの制服や特徴的な髪型を忘れるはずがない。

そして大きなボストンバックを担いでいるところを見るに、途中入学者か何かだろうか?

 

 

彼女は私の声に気が付くと、すこぶる驚いたように目を見開き挙動不審になっている。

 

 

「えっと…そのー」

 

 

何やら口ごもり目を泳がせているのだが…先ほどの一人で暴れまわっていたアレのせいだろうか?

 

 

「学園内とはいえ一応夜道です。それにここから寮まで歩けばそれなりに時間がかかりますし、荷物も重いでしょう?…よかったらお送りいたしましょうか?」

 

 

まぁ正直そんなことはどうでも良いのだが、話しかけてしまった手前このままここに放置するのも気が引けるのでそれらしい提案をする。

 

 

「あ、えっと…じゃあお願いしてもいいですか?」

「えぇ構いません。では後部座席へどうぞ」

『こんばんわ、僕ユリウス!キミはだぁれ?』

「え?えっと…ふ、凰鈴音よ」

『よろしくね鈴ちゃん!』

 

 

ドアが閉まったのを確認して車を走らせる。

早速ユリウスの声が発せられ彼女の名前が凰鈴音ということがわかったが、やはり知らない名前だ。

その後ユリウスと彼女の会話によって、私が気にかけていた情報は全て引き出されることとなった。

予想通り彼女は転入生であり、更には専用機持ちの代表候補生とのことだ。

そして彼女の母国はおそらく清…もとい中国らしく、その母国のあまりにもお粗末な対応により立ち往生していたところを私が声を掛け、今に至る。

 

 

「そのくせ私には一々鬱陶しい指示ばっかりしてくるんですよ?!あーもう…これから”一夏”に会えるっていうのに…」

『鈴ちゃん元気出して!』

「ユリウスは優しいわね…私の甲龍もあなたみたいに喋れたらいいのに」

 

 

 

ユリウスの仕事により愚痴は回避されたのだが、面白い言葉が聞き取れた。

また彼の知り合いかと考えながら運転を進めていると、目的の教員棟の近くまでやってくる。

 

 

「もうそろそろ到着しますよ」

「……すみません。ここで下ろしてください」

「む?」

 

 

先程までの明るい声色は失われ、随分とくらい声が後ろから囁かれる。

突然のローテンションに、ルームミラーで後ろを確認してみる。

すると彼女の顔は影に覆われており、何やら瘴気のようなものまで見えてきそうな負のオーラを放っていた。

 

 

「…ふむ、分かりました」

『鈴ちゃんばいばーい!』

「うん…さよなら…」

「教員棟はここを真っ直ぐ行った所になります。それではお気をつけて」

「…ありがとうございます」

 

 

あまり深く関わっても良いことはなさそうなので、その場で停車し彼女を下ろす。

目的地の場所を伝え、駐車場へと車を走らせる。

 

 

「…何があったのかわかりませんが、随分と不機嫌になっていましたね」

『そうなの?僕なにかしちゃったのかな?』

「突然のことですし、我々が原因とは思えませんが…まぁ済んだことは構いません。ユリウス、彼女についての情報で何かわかりますか?」

『凰鈴音 15歳。中国の代表候補生で、専用機は第三世代機『甲龍』。IS適正は『A』ランクで、代表候補生として専用機が与えられたのは割と最近みたいだよ。数年前まで日本にいたみたいで、織斑一夏とは交流があったみtーーーーー「一夏のアホーーーーー!!あんたなんて電車で腹痛に襲われた挙句に運転見合わせにあって悶え苦しめばいいのよ!!!!!!!」

 

 

完全に締め切った車内にいても聞こえてくる地味に恐ろしい内容の怒声。

つい最近聞いたその声は、先程までこの車に乗っていた彼女の声で間違いないだろう。

そして彼の知り合いという時点で大体のことを察する。

 

 

『ねぇねぇ大佐?電車でお腹が痛くなることはそんなに大変なの?』

「そうらしいですよ。エンピオ大尉のお話では死を覚悟するほどのものらしいです」

『へぇ~僕も体験してみたいな~』

「何はともあれご愁傷様です。さて、到着しましたよ」

『わーい大佐の部屋たのしみー!』

 

 

車から降り、背筋を伸ばす。

紆余曲折ありとてつもなく濃密だった三日間の旅がついに終わり、明日から学生生活へと戻ることになる。

そう考えると少しばかり面倒に思える。

だがやるべき事が山積している今の状況に満足感も感じる。

 

 

「さて、まずは石の実験を再度解析する必要がありますね…」

 

 

早速明日からのスケジュールを考えながら、後部座席を開けアタッシュケースを手に取る。

 

 

「ともあれ、これからよろしくお願いしますね」

『よろしくー!』

 

 

部屋の新たな住人となる彼を片手に引き下げ、私はくたびれた足でようやく自室へ戻るのであった。

 

 

 

 




さて、今回”鈴”の登場ということになりましたが…キャラ崩壊がすごいですね(白目

彼女は原作では不遇ということもあってか、割と優遇させたく思ってしまうお気に入りのキャラです。

そして彼女と仲良くしていたお掃除ロボットの名前についてですが、元ネタはNATOフォネティックコードが元ネタとなっております。


キャラ崩壊ということで、改めてこの作品のキンブリーさんを振り返ってみると……なんだこれは…
別の新作では、キャラ崩壊させないよう頑張ろうと思います(;´Д`)



今回も誤字脱字の嵐かもしれません…m(_ _)m


コメント、感想、誤字脱字の指摘、ご意見等ございましたらいつでもお待ちしております^^



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動揺

毎度どうも怪我しております焼酎ご飯です。

ISを先に上げると言ったな…あれは嘘だ。

今回の迷走具合と進展のなさは異常です。

まぁいつものことなんですけどね





「う~ん…なんか腹の調子悪いなー」

「大丈夫か一夏?確か部屋に正露丸が合ったはず…今からじゃ間に合わないか」

「今時正露丸って…いや確かに正露丸は虫歯にも効く程の万能薬だ。けどあれを飲むと痛みを収めるとかじゃなくて、その根源を…いや、朝からこんな話は止めよう。イツツ…」

 

 

俺、織斑一夏は原因不明の腹痛を抱えており、朝からそうそうテンションダダ下がりであった。

一応重要機関である学園で出される食事だ、間違っても食べ物が原因ではないだろうが…別段冷えるような格好で寝たわけでもない。

原因は分からないが、多分問題ないだろう。

 

 

「あまりに酷いようなら今のうちに保健室に行ってこい。このまま授業を受けていたとしても地獄だぞ?千冬さんには私から言っておくが」

「いや、これ以上勉強に遅れる訳にもいかないし、そろそろ波も過ぎると思う。それに千冬姉に言ったら逆に怒られそうな気がする…」

「ねぇねぇ織斑くん!転校生の噂聞いた?…って大丈夫?」

「お、おう大丈夫大丈夫。それで、転校生?…ん?今の時期に転校生?」

 

 

となりの席に着くと話しかけてくる彼女は谷本さん。

正直こんな感じで普通に話しかけてくれるのはありがたく、未だに珍獣扱いの俺には貴重な精神安定剤だ。

というか転校生?

入試会場を間違えた結果入学することになった俺が言うのはなんだが、通常入学はもちろん、途中転入はかなりハードルが高かった気がする。

 

 

「そうそう、これまた噂によると中国の代表候補生なんだってさ」

「ふーん、中国か…」

「あら、わたくしの存在を今更ながらに危ぶんでの転入かしら?」

 

 

少し黄昏そうになっていたところにいつの間にか現れ、ドヤ顔でポーズを取っている彼女は件の人物と同じく代表候補生のセシリア・オルコットだ。

もし本当に危ぶんで転校してきたとするのなら、代表を代わって欲しいところだ。

 

 

「いや、対抗意識で入ってくるのなら一夏かキンブリーに対してだろう。お前は結局全敗してるじゃないか」

「ぐ、ぐぬぬ…あ、あれは油断しただけで…」

「なんにせよこのクラスに転入してくるわけではないのだろう?騒ぐほどのことでもあるまい」

「ちょっと!流さないでもらえます!?」

 

 

転入初日に見た机を叩くあのポーズを取っているセシリア。

思い返してみると何かと会話中にポーズを取る彼女だが、そのどれもが中々様になっているのでオーバーリアクションでもまぬけに見えない。

それはさておき、確かにセシリアが言うように、彼女が油断していなければ俺なんて間違いなくボッコボコにされていただろう。

代表候補生ということは、そのレベルの生徒が転入してくるのだ。

不本意なクラス代表ではあるのだが、気にならないわけがない。

 

 

「どんなやつなんだろうな」

「む…気になるのか?」

「そりゃあ俺だってクラス代表なわけだし」

「少しは代表のことも気にしているようだな。来月にはクラス対抗戦があrーーーーー

 

「そう!そうですわ一夏さん!クラス対抗戦に向けてより実践的な訓練をしましょう!訓練の相手はこのわたくし、セシリア・オルコットが務めさせていただきますわ!なにせ専用機を持っているのはクラスで私と一夏さんだけなのですから!………キンブリーさんは何処かに行ってらっしゃいますし……つまりはそういうことですわ!!」

 

 

胸の前に手を置き、どこかの漫画の5部とか7部でありそうなポーズを取りながら声高らかに宣言するセシリア……様になっているところを見ると、やっぱりイギリス人の血というのは変なポーズに対する適応のようなものがあるのだろうか?

だがまぁ練習を手伝ってくれるというのはありがたい話だ。

箒が言っていたように、来月にはクラス対抗戦というものが行われる。

成り行きでなったとは言えクラスを背負っているのだ…簡単に負けるわけにはいかない。

 

 

「ま、やれるだけやってみるか!」

「やれるだけでは困りますわ!一夏さんには勝っていただきませんと!」

「そうだぞ。男たるもの弱気でどうする」

「"フリーパス"の為にも頑張ってねー」

 

 

…そう、そうなのだ。

このクラス対抗戦に優勝したクラスには、副賞として学食デザート半年フリーパスが送られるのだ。

それが故に彼女たちは目をギラつかせており、負ければ最悪袋叩きに遭うかもしれない。

いや多分そんなことは無いと信じたいが、セシリアや箒が稽古をつけてくれる以上、是が非でも勝たなければならない。

 

 

「今のところ専用機を持ってるクラス代表って一組と四組だけだから余裕だね!」

「おう!…あれ?四組も専用機mーーーーー

 

「その情報、古いよ」

 

 

四組も専用機持ちの代表がいるという事実に対して、何を根拠に余裕と言っているのかと戦慄していると、入口の方からどこかで聞いたことがあるような声が聞こえた。

 

 

「二組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから」

 

 

腕を組み、片膝を立てて格好つけて登場したのは…

 

 

「鈴…?お前、鈴か?」

「そうよ!中国代表候補生、凰鈴音。今日は宣戦布告に来たってわけ」

 

 

そう、そこに現れたのは小学校高学年から中学までの幼馴染である凰鈴音だった。

突然現れた鈴に驚くことはもちろんのことなのだが、代表候補生の間では決めポーズのようなものが流行っているのだろうかとふと思う。

あと何故だろうか、鈴が現れたその時から再び腹が痛くなり始めた気が…

 

 

「イツツ…って久しぶりだな!あと何格好つけてるんだ?そんなところでポーズとってたら扉に挟まるぞ?…うぐおぉぉぉ」グギュルルル

「ふふん、久しぶりね…あんた大丈夫なの?もしかして昨日の叫びがーーーーー

 

「おい」

「ん?なによ?」

 

 

バシンッ!!

 

 

鈴が後ろからの声に振り返ると同時に、無慈悲な暴力と化した出席簿が振り下ろされる。

 

 

「もうホームルームの時間だ。教室に戻れ」

「ち、千冬さん…」

 

 

さすが千冬姉だ…叩いていい感じの人間なら一切の容赦がない。

鈴は前から千冬姉の事が苦手っぽかったし、若干いたたまれない。

現に今も頭を押さえて涙目になっている。

 

そんな涙目になっている鈴とは裏腹に、彼女が叩かれた瞬間、朝から俺を苦しめていた腹痛が綺麗サッパリ消え去ったのだ。

千冬姉の覇気的なアレがアレしてアレになってなんやかんやで治まったというあれだろう…とかいうふわっとした当たりを付けるが、実際のところ摩訶不思議である。

 

 

「織斑先生と呼べ。さっさと戻れ、そして入口を塞ぐな。邪魔だ」

「す、すみません……って…え?」

「随分とまぁお厳しいようで…どうも、昨日ぶりですね」

 

 

千冬姉に続いて教室に入ってきたのはもうひとりの男性操縦者のキンブリーだ…数日あっていないだけだが、この環境のせいか随分と久しぶりに感じると同時に、同じ男が戻ってきてくれたことにすこぶる安堵する。

そして件の鈴はというと、キンブリーを見たまま固まっている。

 

 

「昨日ユリウスを連れてた親切な人…え?制服着ていて…男?ってことは……も、もしかして」

「なんだお前たち、面識があったのか?まぁいい、今はホームルームが先だ。さっさと帰れ」

「は、はひぃ!!お二方共すみませんでしたぁ!!」

 

 

顔を真っ青にしてガタガタと震えだしたかと思うと、裏返った声の謝罪の後に猛ダッシュで教室を後にした鈴。

結局あいつは何がしたかったのだろうか…というか何があったのだろうか?

高校デビューとかそういうのだろうか?

だがまぁ素の鈴は昔と変わっていなかったということは素直に嬉しかった。

 

 

「キンブリー、あいつに何かしたのか?」

「いえ何も…強いて言うなら彼女の愚痴を聞いたぐらいでしょうか。むしろ何かしたのはあなたなのでは?」

「あれは”指導”だ…ではHRを始める。お前も席に付け」

「了解しまsーーーーー

 

「い、一夏さん!?今の方とはどういう関係ですの!?」

「…えらく親しそうだったな?今のは誰だ?」

 

 

バシンッ!

バシンッ!!

 

 

「聞こえなかったのか馬鹿どもが…私はたった"今"席に付けと言ったのだが?」

 

 

早速熱烈な"指導"が炸裂し、俺への質問ラッシュは回避される。

その後いつも通り授業は開始されたのだが、箒とセシリアによって三回程打撃音が響き渡ることとなった。

俺への疑問が原因なだけに、彼女たちには悪いことをした気がする…

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前のせいだ!」

「あなたのせいですわ!」

「いやまぁ原因は俺にあるかもしれないけど…まぁ話ならメシ食いながら聞くからとりあえず学食行こうぜ」

「む…お前がそう言うなら、いいだろう」

「そ、そうですわね。行って差し上げないこともありませんわ」

 

 

午前の授業が終わり、昼休みに入ったとたんに教室には理不尽な抗議がこだまする。

以前同様に彼は不遇の様相を呈している。

セシリア・オルコットと織斑一夏の様子を見るに、当初のわだかまりは解消されたのだろう。

私は学校を開けていた期間の授業資料に目を通し終えると、昼食を済ませるべく席を立つ。

 

 

「あと…キンブリー、お前も行かないか?ちょっと聞きたいこともあるし」

「私ですか?」

「そ、そういえばわたくしもキンブリーさんに少しお話したいことが…」

「ふむ、断る理由もありません。では向かうとしましょう」

 

 

明らかにオルコットの態度が違う…

女尊男卑という考えそのものに変化があったのだろうか?

まぁどちらでも構わないといえば構わない。

むしろ明確な敵意が有る人間がいなくなったというのは、少しばかり張り合いに欠けるものだ。

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

「そういえばキンブリーはなんで千冬姉と一緒に教室に入ってきたんだ?」

「職員室に寄っていました。学園を離れていた間の授業資料の受け取りの必要があったので」

「…何日も授業参加できてなかったって…大丈夫なのか?」

「えぇ、とりあえず今学年においては改めて学ぶ必要がある知識はおそらくありません」

「…ん?……まぁ大丈夫ってことならいいか。ってかそうだよ!お前が休んでる間になんやかんやで俺がクラス代表を押し付けられたんだが?」

「押し付けなどとは人聞きの悪い。私の目的は決闘そのものにありましたし、軍という特殊な場所に身を置いている以上長期間継続される役職には就けません」

「なーんか釈然としないな…んお?」

 

 

彼の質問に答えながら食堂へと続く廊下を歩いていると、その先についさっき見かけたツインテールの少女の姿があった。

そのツインテールを揺らしながら落ち着きなくその場をうろついている。

 

 

「お~っす鈴、そんなところdーーーーー

 

「!!あ、その…すみませんでしたァ!!」

「り、鈴!?どうしたんだ!?」

 

 

食堂に着くやいなや凰鈴音はそのツインテールから風切り音を発生させ、腰を九十度に曲げて謝罪を繰り出してきた。

その声に多くの視線が集まり、あらぬ誤解を生みかねない状況を作り出す。

 

 

「凰鈴音さん、とりあえず頭を上げてもらえますか?この場でのその行動はほかの方の迷惑になります。もちろんそれは私も例外ではありません」

「す、すすすすすみません!直ぐにどきます!」

「え、えぇ~…鈴、朝からどうしたんだよお前…」

「どんな奴か気になっていたのだが…なんだか可哀想になってきたな」

「え、えぇ…そうですわね…」

「どうしたオルコット?顔色が悪いようだが…一夏に続いて腹痛か?」

「いえ、その…彼女を見ているとわたくしも他人事ではないと思えてきまして…」

「とりあえずみんな注文して席つこう!…な?」

 

 

適当な定食とコーヒーを注文しテーブル席へとつくと、凰鈴音はトレイに乗せたラーメンをガタガタと揺らしながら向かいの席に座る。

適当に食事を口に運びながら彼女を観察していたのだが、額に汗を浮かべ未だに震えている。

この動揺の原因は大方予想できているのだが、ここまで大袈裟に慌てられるとーーーーー

 

ーーーーー見ていて愉快だ。

このまま食事を取りながら優雅に眺めるというのも一興ではあるかもしれない…

だが先のように周りの目というものがある故、このあたりでやめさせておくべきだろう。

 

 

「さてと…凰鈴音さん?」

「ひょわい?!」

「大方見当はついていますが、あなたのその呆れかえるまでの低姿勢の理由はなんなのか、説明していただけますか?」

「え…あっと…まさかあなたがゾルフ・J・キンブリー大佐だとは露知らず、先日は…えっと、無礼な振る舞いをしてしまい……本国からはあなたには決して悪印象を与えないようにと念押しされていたので…その」

 

 

説明している彼女は目に見えて縮こまっている。

これではまるで私が悪いみたいではないか…

 

他の三人はいたたまれなくなったのか、彼女を心配そうに見つめている。

 

 

「まぁだいたい予想通りですね」

「えっと…キンブリーと鈴は知り合いなのか?」

「いえ、昨日お会いしたばかりですよ。それも私が一方的にです。さて凰鈴音さん?あなたが私に無礼を働いた…とのことですが、私はそのような記憶が一切ありません」

「え?でも昨日私はあなた自身にあなたの愚痴を零しちゃったし……それにせっかく送ってもらったのに無愛想に降りちゃったし…」

「あれは本国の人間に対する愚痴だったと記憶しています。それにあそこまで送ったのは私の勝手です。そもそも、あなたの国が私に対して負い目を感じていたとしても、それはあなたが被るような責ではありません」

「あれ?えぇっと…そうなの、かな?」

「はい、そういうことにしておいてください。あなたも別段私に気を使う必要はありません。気負いするべきはあなたの国の一部人間だけで、あなた個人ではありません」

 

 

コーヒーをあおりながらそう答える。

これは私の本心でもある。

彼女の本国が気にしているのは、正体不明のISによる襲撃事件…そのISの登録情報が中国より強奪されたISだったという、私がここにいる理由ともなったあの事件のことである。

あの襲撃事件に私が関わったのは事実だが、最早私個人などではなく国家間の問題へと昇華している。

故に彼女のような末端の人間が、最早事件との関係性が薄い私にゴマをすったところで何の意味もなさない。

むしろそのような立ち回りをされたのではあまり心地いいものではない。

 

 

「えぇっと…それじゃあ、その…わかりました」

「別にタメ口でもいいんじゃないのか?なんか同級生に敬語使ってる鈴とか変な感じするし、キンブリーも別にそれでいいだろ?」

「えぇ、構いませんよ」

 

 

わざとらしく笑みを浮かべる。

それに安堵下様子で、見るからにダダ漏れだった彼女の緊張は徐々に溶けていく。

 

 

「じゃぁ…その、わかったわ。よろしくねキンブリー」

「えぇ、こちらこそよろしくお願いします」

「うんうん、よかったよかった。スケールでかくて何のことか一切わからなかったけど」

「私にも教えられてないし、多分国家機密みたいなものなんだと思うわ」

「中国より秘密裏に強奪されたISが、ドイツの軍事関係施設を襲撃したという内容の事件があったんですよ。ISが強奪されていたということ隠蔽していたことが問題だったみたいですね」

「ふ~ん……ん?さっき国家機密ってーーーーー

「はぁああああああああぁぁぁぁぁ!!??それって大問題じゃない!!あいつらそんな馬鹿なこと起こしておきながら私に偉そうに命令してたわけ!?っていうかそんなこと話しちゃっていいの!?」

 

 

机を叩いて激昂する凰鈴音。

同じ席についているほかの三人は、その声と振動に驚いている。

当然そのようなオーバーリアクションを取れば視線も集まるわけで、「麺が伸びますよ」とすでに伸びきったラーメンを指差し座らせる。

 

今思うと麺類というのはあまり馴染みが少ない…夕食時に食べてみるのもいいかもしれない。

 

 

「まぁ貴女の言うとおり国家機密レベルのお話でしょう。ですが物的証拠は国が持っていますので、ここで私がいくら宣おうとも、さして問題ではないでしょう」

「えぇ~そんなものなの?…はぁ、もうなんでもいいわ…疲れた……ううぇ、伸びててマズイ」

「えっと…なんかすごいことになってたんだな…そ、そんなことより、改めて久しぶりだな鈴!ちょうど一年ぶりぐらいになるのか。元気にしてたか?」

 

 

肩を落としてもそもそとラーメンを食べるげっそりとした彼女に、露骨に話を切り替えて場の沈みきった空気を盛り上げようとする織斑一夏。

今の時点で明らかに元気ではない相手に元気にしていたかというのはどうなのだろうか?

 

そして伸びているとはいえマズイと聞くとやはり食べる気がしなくなる。

…私はこんなに食事に重きを置く性分だっただろうか?

 

 

「あーうん、元気元気。あんたも元気そうね」

「あー…うん、元気だよ………その~…い、いつ日本に帰ってきたんだ?」

「別にいいわよ、無理に気を使わなくて。なんかごめん、空気悪くしちゃったわね。…っよし!いつまでも沈んでるのは私のキャラじゃないわよね!」

「お、おう!その調子だ!やっぱりいつも通りのお前が一番好きだぞ!」

「ふぇ!?あ、ああああんた急に何言い出すのよ!?」

 

 

織斑一夏が発したある言葉に、真っ赤になって相手を指差す凰鈴音。

この反応で全て察してしまえるのは、私の洞察力が優れているからというわけではないだろう。

むしろここまで露骨な反応を見せれば誰であろうと察することができるか……張本人である彼以外には。

 

 

「ン゛ンンッ!一夏、そろsーーーーー

 

「あ、あのキンブリーさん…少しよろしいですか?」

 

 

わざとらしい咳払いで、気になって仕方なかったであろう会話に篠ノ之箒が割って入ろうとする。

だがそれは先程から落ち着きの無かったセシリア・オルコットによって遮られる。

 

 

「えぇ、先の件でしょうか?」

「その通りですわ。その、このような場で言うのもどうかとも考えましたが……クラス代表決定の際の侮辱、本当に申し訳ありませんでした」

「侮辱?…侮辱…あぁ、あれですか。いえ、私はあれを侮辱と受け取ったつもりはありません」

「えぇ?!で、ですがわたくしは男性そのものを…」

「種として女性が優れているというのは事実でしょうし、自身の尊厳をけなされたわけでもありません。あの時決闘を受けたのは決闘そのものに興味があったに過ぎません。あなたが謝罪する必要はありませんよ」

「そ、そうでしたの…ですが私自身が考えを改めた以上、やはりあの発言は不適切でしたし…」

「ふむ…では謝罪として受け取っておきます。しかし随分と真面目ですね」

「これは私なりのケジメでございますの。もしわたくしが同様の罵倒を受けたと考えればそれは耐え難いものですし…それに今更ではありますけど、許していただけるのでしたら皆さんとは良い関係を築いていきたい思っておりますの」

「良いんじゃないですか?自身の行動を見据え意思を決定するというのは素晴らしいことだと思いますよ」

「…はい!えっと、ありがとうございます!………じ、実は…もう一つお話しておくべき事が…」

 

 

吹っ切れたような笑顔を見せたかと思うと、再び表情が曇る。

 

 

「先程の凰さんが言ってらっしゃったーーーーー

 

「鈴でいいわよ。ほかの二人もそう呼んでちょうだい」

「あらそうですの?では鈴さんと呼ばせていただきますわ。…その鈴さんがおっしゃっていたように、決して貴方にはご迷惑をおかけしないように…との通達が先程本国より入りまして」

 

 

英国となればあの”サイレント・ゼフィルス”で間違いないだろう。

同じEU圏のいざこざに対する強請や、機体の情報開示を求める為に明かしたと考えるのが無難だろうか?

些かカードを切るのが早すぎる気もするが、軍や国としても犯人の特定は早急に解決すべき問題でもある。

 

それにしても、同じ欧州においてもどうしてあそこまで食文化に差が出るのだろうか?

英国といえばあまり良い食文化ではないという話だ…食事を食べ終えたところでふとそれを思い出す。

…どうやら日本に来てから私の中で食事に対する認識が変化したようだ。

自身の新たな事実に驚きながら、その変化をもたらした食事の食器を重ねる。

 

 

「なるほど、理由は察しました。まぁいずれにせよ鈴さん同様あなたが気をもむようなことではありません」

「わ、わかりましたわ。あと、ありがとうございます……はあぁぁぁぁぁぁ~本っ当に助かりましたわ」

「あんたも大変ね~それで?あんたのところは何やらかしたの?」

「あんたではなく、わたくしにはセシリア・オルコットという名前がございましてよ?」

「じゃあセシリア」

「そ、そう簡単に呼ばれてしまいますと…まぁ構いませんわ。実のところわたくしも何があったのかは知らされていませんの」

「…サイレント・ゼフィルス」

 

 

私がこの単語を呟くと、四人のうちセシリアの動きだけが固まる。

専用機を与えられている身であるならば、やはり少しは知っているようだ。

他三人は理解していない様子で、一様に首をかしげている。

 

 

「ま、それに関することとだけお伝えしておきましょう」

「なんだ?そのサイレント…ヒル?とかいうのは?」

「い、いえ。あまり公に言えることではありませんので…キンブリーさん、あなたはどうしてそのような情報を?」

「仕事の際に空を見上げてみると飛んでいたので…さて、では私はこの辺で失礼します。皆さんもお急ぎになられたほうがよろしいのでは?」

 

 

反応見たさに重要機密暴露したところで、本来の目的であった食事を済ませ、トレイを手に持ち席をたつ。

周囲を見渡してみても、未だに食事を取っている生徒は多くはない。

 

 

「へ?あ!…じ、時間は!?」

「やべぇぞ鈴!ちょっとでも時間が遅れたら、どこからともなく千冬姉が現れるんだ!」

「えぇ!?なにそのステージギミック!?なんでこんな時に限って伸びきったラーメンなのよ!」

「もごもご…一夏ァ!私は食べ終わったから先に出るぞ!」

「わ、わたくしも失礼しますわ!そう何度も叩かれてはかないません!」

「え!待ってくれよ!っていうかキンブリーはいつの間に食ったんだよ!」

「…い、一夏…私はもう無理よ…ここは任せて先に行きなさい…げふぅ」

「任せるって何がだよ!?あぁもう残りは俺が食っといてやるからお前が先に行け!ウオォォォォォォォォォ!!」

 

 

食堂から響く熱い応酬。

彼らが授業に遅れるということはなかったが、そんな叫び声をあげていれば別の意味で制裁をくらうことになるのは言うまでもなかった。

 

 

 

 

 

 




なんかやっつけ感がすごいですね。

正直今回の話は自分でも何がしたかったのかわからなくなっております。
(どうしても書きたい描写がこの辺だったような気はしているのですが…)


今回も誤字脱字の嵐かもしれません…m(_ _)m


コメント、感想、誤字脱字の指摘、ご意見等ございましたらいつでもお待ちしております^^


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発見

すみませんでした。
遅くなるとかそういうペースじゃなくて本当に申し訳ありません。

長くなってもなんですのでどうぞ↓


 

 

 

「最っっっ低!!逆剥けが化膿して死ね!!!!!」

 

 

 

ピッ

ガコン

 

 

 

何かと忙しかった数日をねぎらう為に自販機の缶コーヒーのボタンを押す。

それと同時に何やら叫び声がこだまする。

 

 

 

カコッ

 

 

 

「ふぅ…それにしても元気なことです」

 

 

 

声から察するに本日隣のクラスに転校してきた凰鈴音叫びだろう。

昼食後遭遇することはなかった故に、何故このような声を上げているのかは知りうる所ではないが、まぁ十中八九織斑一夏が原因なのだろう。

何はともあれ騒々しいことは違いない。

 

 

 

「缶コーヒーでも”向こう”のものより飲めますね」

 

 

 

ーーーーーぅゎぁぁぁぁぁあああああん!!」

 

 

 

「おや?」

 

 

 

元の世界に比べると飲食物は総合的にこちらの世界、ひいてはこの日本のものはハズレがない。

そんな素晴らしいことを再確認し缶コーヒーに舌鼓をうっていると、彼方から見知った少女が泣き叫びながらかけてくるのが目に入った。

 

 

 

「鈴さんじゃないですか。何かありましたか?」

「ふぉわ!?っとっとっと!!」

 

 

 

私が声をかけたことにより全力疾走のスピードを殺しきれず、ボストンバッグの重さに引っ張られてバランスを崩している。

先ほどの声と今の涙目で全速力だったことから何もないなんてことはないのだが、とりあえずは声をかけないわけにもいくまい。

 

 

 

「大丈夫ですか?…いろいろと」

「っとっと、ふぅ。…え、ぇ~っとアハハ…恥ずかしいところ見られちゃい…見せちゃったわね…グスっ」

 

 

 

少し敬語が出そうになったが、媚びへつらう態度はNGと言ったせいかため口に切り替わる。

そして立ち止まった彼女はやはり目尻に涙を溜めており、鼻頭を微かに赤く染めている。

彼は彼女を泣かせる程の何かをやらかしたらしい。

 

 

 

「少なくとも私は気にしません。して、何かありましたか?コーヒーが無くなるまではお話ぐらいならお聞き致しますが?」

「え~っと、あんまり人に聞かせるような事じゃないし…でももしかしたら私が…」

 

 

 

ピッ

ガコン

 

 

 

「どうぞ」

「あ、ありがと」

「さて…人に話せば楽になる…と一般的には言うらしいのでお聞きしましょう。何よりその尋常ではない様子を見ていると気になってしまいます」

 

 

 

缶コーヒーを手渡すと自販機の近くに備え付けられている椅子に座らせる。

ここまで引っ張った以上、理由を聞かないというのはどうにも気分が悪い。

 

 

 

「うぅ~…じゃあ聞いてもらうわ。その…突然なんだけど、キンブリーは”毎日相手のために味噌汁”を作るっていう言葉の意味わかる?」

「ふむ、味噌汁ですか?すみませんがわかりません。教えていただけますか?」

 

「まぁその…いわゆる…ぷ、ぷぷーーーーー

 

「あぁなるほど、プロポーズの言葉ですか」

 

 

 

真っ赤になりながらどもっている彼女を見てふと気づく。

味噌汁というのは日本の食文化において非常にポピュラーなものであり、副食として主要な位置を占める汁物料理だったと記憶している。

つまりそれを毎日作るということはそういうことである。

 

 

 

「コホン…そうなのよ。それで多分日本人だったらこの言葉の意味が通じないなんてことは無いの」

「はぁ…確かに初めて聞いた私でも考えればわかったことですし、この国特有の比喩だったとすればわからないことはないでしょう」

「うんうん、そうよねそうよね」

「はい。…それで?」

 

 

 

「そ、それで…」ゴニョゴニョ

 

 

 

彼女は一人で納得したかと思うと、再び顔を赤らめて顔を伏せる。

だがその時点で大体察したのでトドメを刺すことにした。

私が聞き出した以上私が悪いので早々に切り上げるのが正解だろう。

 

 

「つまりあなたがそのプロポーズを織斑一夏にしたが、断られた…いや、それだったら最初の怒りの声が少しおかしいですね…」

「うぐっ…その…実は数年前まで私日本に住んでて、国に帰ることになった時…料理の腕が上がったら”毎日私の酢豚食べてくれる?”…って聞いてOKもらったんだけど…」

「なるほど。それを彼が忘れていたということですね」

「それだけだったらまだしも、あの馬鹿はそれを曲解して”毎日酢豚をおごってくれる”って意味で捉えていたのよ。というか私が一夏のこと好きってバレてたのね……恥ずかしっ!」

「まぁ彼はある種の特異点のような存在ですし、あなたがこの話をし始めた時点で得心が行きました。…それにしてもなんと言いますか…何故アレンジを加えてしまったんですかねぇ」

「…あいつが前に美味しいって行ってくれたし、私の得意料理だったからなんだけど…やっぱり私が悪いのかしら…」

「いえ、割合的には彼のほうに問題があるんじゃないですか?心情的な部分が含まれるので一概には言えませんが」

 

 

 

そう言って私は缶コーヒーを飲み干すと、缶を捨てるために立ち上がる。

その様子を見た彼女が急いで飲み始めたが、それを気にすることもなくその場から歩き始める。

 

 

 

「んぐっ…苦っ…」

「一回殴るかローキックぐらいが妥当なんじゃないですかね?では私はこの辺で」

「あ、その…聞いてくれてありがと。このこと誰かに言っちゃ嫌だからね!」

「こんな鬱陶しい話頼まれてもしませんよ」

「鬱陶しい?!」

 

 

 

後ろで何故か驚いているような声が聞こえるが、他人の色恋沙汰なんて面白いものでも何でもないに決まっているではないか。

それどころかいざこざの原因がこれほどどうでもいいものとは思っておらず、呆れかえる他無かった。

ある意味では両者共に同情せざる負えないのは事実であるが、もっと込み入った話なら聞き用もあったものだ。

 

 

 

「思い切って話したのに鬱陶しいって……でも参考にはなったし、顔に一発入れちゃったのは間違いじゃなかったのね」ブツブツ

 

 

 

こうして非常にどうでもいい相談を受けたことを締めに、猛烈に忙しかった日々は幕を閉じたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『もしもし~キンブリー大佐で間違いありませんよねぇー』

「えぇ私で間違いありませんが…貴方は…どっちですか?」

『木原だ木原。やっぱ電話越しとかでも分かんねーものなのかね』

 

 

 

帰国から数日

代表候補生が転校してきたり、その代表候補生と織斑一夏がクラス対抗戦で戦うことになったりと言った割と取るに足らないようなことがいくつかあった。

私はというと石の研究も最早やる必要がなくなったために、珍しくISの動作訓練等を行い、石を使いたい衝動を抑えていた。

IS学園を海中に沈めようと思えばできないこともないのだが、さすがに全世界から抹殺されるのは御免こうむる。

そんな傍から見れば危ない思考をしていたある日、私のISの制作元であり私の秘密を共有するローゼンタール社の木原数多から連絡が入った。

警戒するので非通知でかけてくるのは遠慮願いたいところである。

 

 

「まぁ少なくとも私は貴方と社長の声を区別することはできません。それで?今日は一体どういったご要件で?」

『ダリ夫の件であんたの話を聞きたいんだとよ。あとオーギルの追加パッチがあるからそれを俺が持って行って、帰りはそのままドイツまでついてきてもらうことになるんだが…おk?』

「一応クライアントは私なんですが…まぁ私が持ち込んだ火種ですし、構いません。いつ頃になるのでしょうか?」

『んじゃあ明後日行くわ。申請よろしくー』ブチっ

 

 

 

一方的に電話が切れる。

改めて言うが私はクライアントなのだが、一向にもてなされる気配がない。

そもそもあの社長は落ち着いた雰囲気の秘書を雇っているにも関わらず、何故彼に連絡をよこさせるのだろうか?

明らかな人選ミスだ。

いろいろと読めないことが多いのだが、あの会社は考えるだけ無駄な気もする。

 

 

 

『ただいまー』

 

 

 

通話が一方的に終了した直後、自室の扉が開き帰宅を知らせる声が聞こえる。

 

 

 

…一人部屋であるこの部屋で何故そのような声が聞こえる?

 

 

 

「お帰りなさい…どうしてあなたが扉の外から?」

『やだなぁ~大佐。僕の仕事である掃除をしてたんだよ?』

 

 

 

扉を開けた先には誰もいなかった。

正確には円盤型の掃除ロボットが一台動いているだけだった。

 

 

 

「いや普通は掃除ロボットが勝手に扉を開けて出て行くなんてことはないと思うんですが…」

『すごいでしょ!そこは他社製品との差別化を図らないといけないからね、こんなふうにアームコードを伸ばすことで扉の開閉や電子機器への接続ができるんだよ!』

 

 

 

その掃除ロボットは、私がローゼンタール社のお土産としてもらったヴィスハイトというオーダーメイドのロボットだ。

自らをユリウスと名乗っており、十番目の個体ということからドイツのフォネティックコードからきていると思われる。

要は高性能ルンバらしい。

吸い込み口から伸ばされたアームをシュルシュルと回収すると、充電器を兼ねたアタッシュケースに自らを接続する。

 

 

 

「あなたにそんな能力があったとは知りませんでした。しかしあなたの仕事は家主の部屋の掃除なのでは?さすがに勝手にであるかれるのは困るのですが…」

『大佐の部屋ゴミどころかホコリすらほとんどないんだもん。それに僕の仕事は”大佐の周りを綺麗にすること”だよ』

「はぁ、つまりそういうことではないんですか?」

 

 

 

『大佐の部屋の窓の外に仕掛けられていた盗撮機器の大体の受信場所が絞り込めたよ。これも周りをきれいにするってことだよね!』

「なんと…それはまたすごい大掃除を…」

 

 

 

高性能とうたってはいたが、まさかこんなことまでしてしまうとは…

彼の言う場所をさり気なく確認すると、確かにその存在を確認することができた。

部屋内の機器は全て取り除いたつもりだったが、まさか外に残っているとは思いもしなかった。

というかこれは確実に掃除ロボットに必要な機能ではない。

あの社長は元からコレを特定するために?

いや、そもそも私が盗撮被害に遭っているという話を彼らにしただろうか?

 

 

 

「場所も気になるところですが、何故あなたが機器の発信元を辿るような真似を?掃除にしては事情を知っていなければできないことかと」

『それはね、木原くんが大佐に専用機を持ってきた時にこの学園で同じようなことをされたって言ってたから、それの対策として僕にトレース機能が搭載されたんだ』

「ほぉ、木原さん達にも…どう考えても私を狙っての行動でしょうねぇ」

『二人しかいない男性操縦者だし、大佐の経歴とスキルは特殊だからじゃないかな?知りたい人はたくさんいると思うよ』

 

 

 

まさにその通りだろう。

そして彼のいいぶりから察するに、仕掛けた人間はIS学園にいるということになる。

そうなれば私の情報を知りたがっている人間はこの学園内だけでも数え切れない程いるだろう。

最悪学園そのものがそうである可能性さえある。

だが彼はその相手を見つけ出したという…

大尉より優秀なのではないだろうか?

 

 

 

「有名人は辛いですね。さて、先程から気になっていましたが、その受信場所というのは?」

『まだ断定はできないけど、おかしな通信プロトコルが集中している場所が”生徒会室”って書かれた部屋だったよ』

「生徒会…生徒会ねぇ…」

 

 

 

意外…といえば意外ではあるが、それは結果がどこであれ同じことである。

生徒会と言ってまっさきに出てくる身近な人物は”布仏本音”である。

私の部屋に訪れたことがあるの人物の一人でもあり、同クラスの中で唯一生徒会に所属している。

この時点で怪しさの塊ではあるが…度が過ぎると最早怪しくない。

 

 

 

「最近退屈していたのでちょうど良い刺激かもしれませんね」

『大佐は楽しいの?』

「楽しい、とは少し違いますが…少し面白みを感じてますね」

『へぇ~』

「さて、明後日木原さんが来るらしいので申請書の用意を始めなくてはいけませんね」

『あ、じゃあその時僕も連れて行ってもらっていい?通信傍受されないために、直接データを渡すことになってるんだ』

「えぇ構いませんよ。改めて考えてみると、あなたに情報集積能力があるのでは盗撮関係に限らずいろいろと情報が漏れ出してしまいますね」

『そうだよ!』

「元気いっぱいにスパイ活動を肯定するんですね…」

 

 

 

そんな小さなスパイはさておき、申請用紙作成を開始する。

突然のことに申請には無理が生じるかもしれないが、ISの整備のためであれば問題はないだろう。

用紙記入ををしていると、あることに気づく。

 

 

 

「明後日…そういえば”クラス対抗”が明後日でしたね…まぁ直接見る必要もありませんか」

 

 

 

クラス内で何かと盛り上がっているクラス対抗トーナメントが行われるその日であることに気が付く。

なんでも優勝したクラスにはスイーツのフリーパスが贈呈されるとかなんとか…

学園側も何を考えているのかわからない催しである。

自分が参加するのであれば別だが、別の用件を済ませる人してはちょうど良いのかもしれない。

 

 

 

「彼らもあえてこの日を選んだのかもしれませんね」

『充電完了!』

 

 

 

視界の端でユリウスが移動を開始する。

ルンバよろしく壁にぶつかってから方向転換をしているのだが、彼のスペックならばそんなことをする必要もないのではないだろうか?

 

 

 

「そういえば少し気になったんですが…生徒会室といえば少し離れています。貴方はどうやって段差をクリアしたんですか?」

『階段を想定していなくてエラーを起こしていたら、鈴ちゃんが持ち上げてくれたよ!』

 

 

 

…彼は体こそ優秀だがアホなのかもしれない。

いや、これは階段を想定していない親がアホなのか?

何はともあれ、凰鈴音の評価を改めなければいけない。

 

 

 




次のお話は今日の夜か明日の朝までにはあげます。

もしまだ読んでくれている人がいたり読み始めて下さる方がいらっしゃいましたら、よろしくお願いします。

今後も不定期におちいる可能性はあるかもしれませんが、なんとか頑張っていきたいと考えております。

今回も誤字脱字の嵐かもしれません…m(_ _)m


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恢復

さて…前回に続きまして遅れた理由なのですが…
遊んでいました(;^ω^)
ごめんなさいm(_ _)m


ではどうぞ↓


ワァァァァァァァァァァ!!

 

 

ドォォォンッ!!

 

 

アリーナを背景に、今繰り広げられているであろうクラス対抗戦の歓声と衝撃音が遠巻きに聞こえる。

海を望むそこは学園玄関口付近の駐車場であり、試合の真っ最中ということもあり人気のない状態が続いていた。

 

 

「まー賑やかですこと」

「試合中ですからね。何やら生徒の間ではかなり重要なイベントのようですし」

 

 

そんな中、刺青に白衣といった特徴だけ挙げるのなら私と同じ木原数多と会話をしていた。

黒いバンにもたれかかった彼はなんとも気だるそうな様子だ。

二日前の軽い訪問予告とは打って変わってすこぶる忌々しそうで、最初こそ敬語混じりだったものの、今では取引相手とは思えない口の悪さだ。

 

 

「まるで生徒じゃないような口ぶりだな。まぁいいわ…ついて早々なんだが、ISを装着せずに実体化してくれ」

「分かりました」

 

 

ポケットから銀時計を取り出す。

次の瞬間には、光が収束するようにしてオーギルが膝を折った形で出現する。

改めて象徴性の強い機体であると考えさせられる。

私のような人間が天使を模した機体に乗るのはやはりどうなのだろうか?

 

 

「おー、前もそうだったが相変わらず展開速度はえぇな」

「ラピッドスイッチというスキルらしいですね。武装自体が少ないのであまり利点はありませんが…」

「ロングライフルの弾種切り替えには便利なんじゃねぇか?まぁ切り替え速度自体はダリ夫のほうがヤベェけど」

「?…彼も展開速度が速い部類の人間…人間?それはさておき、速い部類なのですか?」

「もうノータイムで切り替えしてる感じだな…少なくとも人間の認識速度だったら一瞬だ一瞬。まぁダリオに関してこの程度では収まらないし、とりあえずオーギルのアップデートだ」

 

 

 

ますます人間を辞めていく大尉…

あの時は興味本位で処置をしたが…改めてとんでもないものを生み出してしまったと感じざる得ない。

そんな感慨にふけっていると、数本のコードがオーギルに接続されていく。

彼が手元の端末を数回操作すると、オーギルのカメラアイが一定間隔で点滅し始める。

 

 

 

「今回のアップデートは機動面とフィルム散布量に関するものだ。以前の大佐とダリ夫の対戦を参考にしたアップデートってわけだ」

「前回の…あまり思い出したくはありませんが、つまりは近接戦に対応した内容ということですか?」

 

 

これは実に渋い記憶だ。

大尉の処置が済んだあと私がローゼンタールに彼を持ち込んだ際に、模擬戦ということで両者の稼働データを観測が行われた。

模擬戦の結果は見るも無残に惨敗…部下に手も足も出ずになぶられるのはとても気分のいいものではなかった。

 

 

「対応というかなんというか、相手のレンジに入らねぇよう立ち回れるようした感じだな。逃げやすくしたってことだ」

「それは重要ですね。インファイトに持ち込まれた際の恐ろしさは前回で身を持って知りましたのでありがたい限りです」

「んで詳しい内容だが、散布量のアップデートは単純に同時散布量の増加だ。最大出力で散布した場合は、環境にもよるが十数秒で軽いジャミングと同じく軽い広域爆破は可能になる。だがその間はちょっとした移動もできなくなるからその点だけ注意だな」

 

 

セシリア・オルコットとの対決の際でも際立ったことだったが、相手の視界に捉えられた状態でのフィルム散布は非常に難易度が高かった。

機動性が失われる上での回避専念となってしまうので、試合形式では不利な点が目立ってしまう。

あの試合で勝てたのも相手の慢心と相性の問題だろう。

 

 

「まぁ元々この機体のコンセプトは隠密と広域殲滅ですし、こちらが発見された上での運用が基準ではないのでしょう」

「その通りだが、ローゼンタールの製品の特性上凡庸性が必要だ。そして常に一定距離を保つための機動面のアップデートは”擬似イグニッションブースト”だ」

 

「擬似?…イグニッションブーストといえば、放出したエネルギーを再吸収して圧縮・放出して瞬時に加速すると言った技術でしたっけ?確か織斑一夏が初見で使用したということで驚かれていましたね」

「ほげー、一応高等技術の一つなんだがなぁ…まぁそんなことはどうでもいいわ。まぁ大佐が言ったとおりなんだが、それを起爆性フィルムの小爆発を利用して加速するって代物だ。だから擬似」

「それ大丈夫なんですか?スラスターで爆発なんかしたら支障をきたすのでは?」

「おう大丈夫じゃない、スラスター内で起爆なんかしたらIS自体がはじけ飛ぶ。だから翼から直接小爆発を発生させて加速するわけだ。だが爆発を加速に利用しているわけだから、長距離の加速はできない…それにフィルム散布も同時にはできなくなってる。強化といえば強化だが一長一短だな」

 

 

とことん一対一の試合に向かない機体であることには変わらないが、素早い移動方法が訓練無しで手に入るというのは中々魅力的なものだ。

イグニッションブーストというものを身につければ早い話かもしれないが、機体の性質上急加速を頻繁に利用するわけではないので習得は難しいのだろう。

 

 

「しかし爆発を利用した移動法ですか…体へのダメージは大丈夫なんですか?」

「そこは俺が頑張らせてもらった。もし俺という検疫がなけりゃ今頃大佐は潰れたトマトになってたはずだ」

「む?それはまた…あまり聞きたくはありませんがどうしてですか?」

「オーギルのテスターは普段はキャロル・ドーリー…あの秘書がやってるんだが、最近は稼働実験も兼ねてダリ夫がいろいろとテストを行っている」

「あぁ…つまりはISには耐えられるが人間には耐えられない…ってことですね」

「そういうこった。最初はISの抑制ありで人体に50Gかかるようなレギュレーションになってたからな…それの調整で最近寝てねーんだわ」

 

 

彼の不機嫌な理由がこれでわかった。

寝不足で嫌いな場所に向かわされれば不機嫌にもなろう。

ここに来るという連絡があったのは二日前なのだが、その時の声の様子から今の憔悴具合から察するに、急遽搭載された機能であると推測される。

それに50Gの負荷がどうしたなどの話を聞かされてはあまり気分のいいものではない。

 

 

「おっと…俺としたことが寝不足でうっかりしてたわ。アップデートは終わったからとりあえず車入ってもらえるか?」

「?…よくわかりませんが了解しました」

 

 

彼はオーギルからコードを引き抜くと、バンの扉を開く。

ISを銀時計へと戻すと横開きのドアを潜り、後部座席に着席する。

彼はそれを見送ると、自身も扉を潜り勢いよく閉じる。

すると先程まで遠巻きに聞こえていた試合の音は途端に聞こえなくなり、波や風の音も一切耳に届かなくなる。

 

 

「なるほど、防音ですか」

「ここが震源だからな、どうも気が緩んでたみたいだ…まぁ無人機に関する事は話してねぇし、これから話す本題さえ聞かれなきゃ問題ねぇだろ。今更だが世界を揺るがすレベルのヤベェことに頭突っ込んでんだなぁ~」

「ユリウスに聞きました、学園に来た際に機器を仕掛けられたらしいですね。そういえばそれ関係でユリウスが渡したいデータがあると」

 

 

片手に持ったアタッシュケースを開く。

このアタッシュケースはユリウスの充電器の機能も兼ねているためそれなりに重いのだが、掃除ロボットを手に持って歩くという間抜けな姿を晒すよりはいくらかマシだろう。

 

 

 

 

プシューッ

 

 

 

 

『木原くん久しぶり!』

「木原くん言うなや。相変わらずクソ生意気な掃除機だな」

『盗聴器の大まかな受信場所が判明したから、拾った通信プロトコルの詳しい照合をして欲しいんだ!はいコレ』

 

 

アタッシュケースに収まった彼は、器用に吸い込み口からアームコードを伸ばす。

アームの先端には小さな記憶媒体が摘まれている。

 

 

「はいはいご苦労さん」

『場所は生徒会sーーーーー

 

 

 

 

バタンッ

 

 

 

 

それを受け取るやいなや、アームが出ていることも関係なしにアタッシュケースが閉じられる。

 

 

「んじゃあ本題に入っけど」

「あの、コレ大丈夫なんですか?」

 

 

ケースの間から伸びたコードはジタバタと暴れまわっており、触手を思わせる動きはミミックを連想させた。

そのまま暴れ続けるかとも思われたが、ギチギチと音を立ててケースの中に引っ込んでいくのが見て取れた。

 

 

「大丈夫みたいですね」

「こんな気色悪い機能を付ける社長が悪いんだよ。んじゃぁ本題に入るが、あんたを呼び戻す理由なんだがーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー”ダリオ・エンピオ”が多分”セカンドシフト”した」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、そうなりましたか」

「お?あんまり驚いてないみたいだな」

 

 

人間をやめるどころか、ますます最強の兵器に近づいていく彼に多少の驚きを感じはするものの、セカンドシフトに至ることは予想できないことではなかった。

 

 

「まぁ適正値が測定不能な時点で予想出来た事態でしょう。むしろ遅すぎるぐらいです」

「それもそうか。何はともあれダリ夫は世にも珍しいセカンド・フォームの機体と昇華し、実験対象としての価値がさらに上昇したわけだ。…だが同時に問題も生じた」

「モルモットとしては力を持ちすぎている、といったところですかね?」

「その通りだ。まぁあいつが人間としての自我がある以上、居場所を提供している俺たちを滅ぼすなんて真似はしないはずだが、これからは処遇改善を考えなきゃならねぇ。だがもしもの保険の為に…」

「彼を殺す方法…ですか?」

「察しがよくて助かるね~。部下を殺すのは気が進まないか?」

「いえ、彼が反逆するとは思いませんが確かに対策を用意しておくというのは重要なことです…というか私も伝えるのを忘れていました」

「お、やっぱりウィークポイントがあるのか!なにせオカルトが絡んでるわけだからな、とりあえずこのまま本社nーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーズガァァァァァァァァァァンッッッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

声以外何も聞こえないはずの空間は引き裂かれ、轟音と衝撃は襲い掛かる。

その衝撃波に煽られたバンは全ての窓ガラスが砕け散り、フレームは見るも無残にひしゃげる。

横向きに吹き飛ばされ、地面を転がるバンはみるみるうちに形を失っていく。

咄嗟にISを起動し事なきを得た私は、バンの扉を蹴破り飛び出すように真上へと飛翔する。

 

 

 

 

「ぐっーーーーー

 

 

 

 

バシュンッッ!!

 

 

 

 

ーーーーーっ!?」

 

 

 

 

 

上昇を始めた直後、凄まじいエネルギーが眼前を通過しシールドエネルギーを削る。

 

直撃を避けた運動を利用して体制を立て直し、正体不明の敵を正面に捉える。

 

 

「嬉しいことに随分と過激ですねぇ…貴方一体何者ですか?」

 

 

そこには異形の姿があった。

宙に浮くことなくクレーターの中央に佇む黒いそれは、ひどく歪な人型をしていた。

全身に埋め込まれた半球状の物体、眼球のようなそれはあたりをギョロギョロと見回し、その半数がこちらを捉えて凝視している。

異常なまでに巨大な腕とそれに見合う巨大な砲門がこちらに向けられる。

直感的に感じる驚異に、思わず口角が釣り上がる。

 

 

 

バシュンッッ!!

 

バシュンッッ!!

 

 

 

「っ…お答えただけないようで」

 

 

桃色の極めて太いビームが飛来し、それをギリギリのところで回避する。

私の問は攻撃という手段で返され、話し合いが通じないということがわかった。

 

 

 

 

 

 

 

それは僥倖だ。

 

 

 

 

 

 

 

話し合いが通じない以上、自衛の為あのISを機能停止に追い込まなければいけない。

元より穏便に済ませるつもりなどなかったが、これは都合がいい。

 

 

「何処の差金かは知りませんが、実験台になっていただきましょうか!」

 

 

相手の全身に埋め込まれたカメラアイと思われる半球が一斉にこちらを向き、すべての砲門からビームが発射される。

 

 

「グ、ォ…!」

 

 

直後、私は背中の翼より発生させた爆発によってそれを回避し、相手の頭上へと踊りでる。

インストールされたばかりの擬似イグニッションブーストだ。

木原数多によって調整がなされていたという話だが、Gを殺しきれていないことに思わず歯噛みする。

 

 

「無人機というのが残念ですが…」

 

 

即座にライフルのアンダーマウントにあるアクセサリを展開する。

そしてその展開されたショットガン状のアクセサリを相手がいる真下に向けて発砲する。

 

 

バスッ!!

 

 

フレシェット弾

私が個人的に注文をした装備であり、無数の鉄の矢で相手を貫く特殊な弾である。

それによって数百という鉄の矢が降り注ぎ鉄の雨を降らせるーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーが…その一切が相手に命中することはなく、相手を中心に円形を描くように地面に突き刺さる。

 

 

 

 

 

 

 

『ーーー』

 

 

 

 

 

 

 

声に聞こえなくもないくぐもった機械音を上げた異形のISは矢が命中していないことを確認すると、再びこちらに両腕を向けビーム掃射を開始する。

 

 

 

バシュンッッ!!

 

 

バチッ!!

 

 

「ガッ!?…ハッ…くっ」

 

 

 

 

射撃体勢からの回避が遅れた為か、一発の直撃をくらいその衝撃に肺の酸素を吐き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーだがすべての準備は整った。

 

 

 

 

 

 

 

 

半ば墜落気味の機体を擬似ブーストによってさらに加速させ、地表を目指す。

激突直前にスラスターを逆噴射し、”腕部装甲を解除”して両手を勢いよく叩き合わせる。

 

 

「んべっ…さぁ!陣は完成しました!!この世界初の最大火力をお見舞いしましょう!!」

 

 

叩き合わせた両手を、鉄の矢が描く円の端に叩きつける。

犬歯に咥えた賢者の石は輝きを放ち、描かれた円の内部は膨大な錬成反応によって紅一色に埋め尽くされる。

 

 

 

 

 

『ーーー』

 

 

 

 

 

 

ボゴ

 

 

 

 

 

 

ボゴボゴボゴボゴッ!!

 

 

 

 

 

 

 

異形のISがカメラアイを目まぐるしく移動させた瞬間、円内部の地面はISを飲み込むかのように急速な膨張を繰り返しーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー一瞬にしてその限界を迎える。

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴァッーーーーーーーーーーー!!

 

 

 

 

 

 

 

限界を迎えた瞬間、ハイパーセンサーが捉えるすべての視界が紅蓮に染まった。

爆音はその巨大さ故に自動的にシャットアウトされ、鼓膜を揺らすはずの膨大な音は一切耳に届かない。

 

 

 

 

 

 

何も聞こえない…何も見えない…

 

 

 

 

 

 

だが…

 

 

 

 

 

全身に伝わる骨が軋むかのような振動…

 

 

 

 

 

 

 

なんと素晴らしぃ…!

 

 

 

感動に震え何かが溶け出すような感覚に襲われた私は、再度術を発動させ”かつての力”を取り戻したことを再確認し、再び賢者の石を飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

その日IS学園敷地内において上空500メートルにも及ぶ火柱が確認され、島の一部が水没するという自体が発生した。

周辺住民の目目撃例等が挙げられているが、一般には複数のISの訓練でスモークを利用した高機動マニューバが火柱と誤認されたという形で処理された。

 

 




復活!!
…と断言しないほうがいいかもしれないので完全復活というわけではございません。

今後もちまちま書いていこうとは思っていますが、また間が空いてしまうかもしれません。

でもコメントは欲しいというクソわがままな私ですが、今後とも宜しくお願いいたします。



今回も誤字脱字の嵐かもしれません…m(_ _)m


コメント、感想、誤字脱字の指摘、ご意見等ございましたらいつでもお待ちしております^^


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疑問

ブレーカー落ちた!!
でも自動保存機能って素敵!!

↓ハイどうぞ!






 

「うぉ!…お~いけ!…よっしそこ!…うぉ、腕が…あぁ~…まぁこんなもんかな~後はオートでいいや」

 

 

薄暗く機械やガラクタなどで何もかもがごちゃごちゃとした部屋の中、空中投影された画面に向かって一人で一喜一憂する女性が一人…

誰かに見られていようものなら白い目を向けられそうなものだが、ここで彼女を咎める者はいない。

 

 

「さってさて~!次は気になるキンくんチェ~ック!!どうなってるかなぁ~?」

 

 

画面を切り替えハイテンションにキーボードを操作する彼女は篠ノ之束

現在彼女は思いつきでIS学園に派遣した即席ゴーレムの視覚情報を収集解析作業に勤しんでいた。

 

 

「いっくんの方は不純物盛りだくさんであんまり楽しめなかったし、キンくんは楽しませてよねぇ~…ーーーーー

 

 

 

 

 

 

ーーーーーってほぎゃあぁぁぁぁ!!!???目がぁぁァ!目がァァァァァ!!」

 

 

 

 

 

 

画面を切り替えた瞬間、複数のカメラアイから送信されてきた情報を映し出した画面の全てが紅い閃光を放ち、意気揚々と映像を見ようとしていた彼女の網膜に強烈な光を焼き付ける。

某サングラス大佐のような叫び声をあげる彼女だったが、もちろんそんな身体的異常は一瞬で完治するのだった。

 

 

「あ~眩しかった…あれ?カメラ全部壊れちゃった?」

 

 

わざとらしく目を擦る動作をしたあと、再び画面を覗き込む。

しかしそこには砂嵐が映し出されてるだけであり、ほかのカメラアイが捉える映像も全て同様にノイズが走るだけだった。

そして砂嵐だらけの画面端には、赤く点滅する機体ステータスが表示されていた。

 

 

「えんぷてぃー!?一瞬でやられちゃったの!?…いくら適当に作ったとは言え一瞬はさすがの束ねさんもへこむなぁ~。とりあえずどうやってやられたか見てみるぜぇ!」

 

 

キーボードを数回操作すると、目まぐるしく映像が巻き戻る。

最初まで巻き戻されると、転がる車から飛び出してきた白いISとの戦闘が開始される。

 

 

「おぉ!出てきたね!改めて見ると白式と似ている………わけでもないか~色が似てるぐらいだし」

 

 

白いISを見ながらそんな感想をぼやく。

白に翼をモチーフとした外装は特徴のみであればに通っているかもしれないが、フルスキンという点でやはり決定的な違いがある。

 

 

ゴーレムによる一方的な攻撃が始まるが、攻撃を回避するのみで一夏との戦闘時にあったような均衡した戦いどころかこのまま買ってしまいそうな勢いだ。

 

 

「…おっかしーな~。確かにシールドエネルギーどころか予備エネルギーまですっからかんにやられたはずなんだけど…うん?」

 

 

白いISからのショットガンのような反撃があったかと思うと、その攻撃が全てハズレて、逆にこちらの攻撃が命中してしまう。

 

一体どこに負ける要素が…

 

 

 

 

 

「う~ん?援軍が来て助けてもらったって感じなのかな?どう見てもここから勝つビジョンはmーーーーー

 

 

 

 

 

ーーーーーふぉ!?」

 

 

 

 

 

ゴーレムの攻撃で相手が墜落したかと思った瞬間、先程同様に画面から光が溢れ再び彼女の目を焼く。

 

だが問題はそこではなかった。

 

画面が光に染め上げられながらも、ISの視覚情報には”高エネルギー反応”を捉えた表示がなされていた。

 

 

「これはこれはこれは~…ちょ~っと面白いもの見つけちゃったかもね~!輝度下げてー光量高すぎるから各カメラからのソナーとIRからホログラムを~ーーーーー」

 

 

キーボードを操作し、複数のカメラアイが捉えた情報をで表示していく。

その結果反応があった瞬間の周囲の情報がホログラムで表示され、あたかもその現場にいるかのような状況を作り出す。

 

 

「んん~?反応はゴーレムの周囲からとキンくん本人から…んん~このフルスキンの頭の部分からだねぇ…キンくんはなんで腕の装甲つけてないんだろ?」

 

 

キーボードを放り投げ、ゴーレムとキンブリーの間に入り込むような形でホログラムを観察する。

当初の戦闘データの集積などは等に忘れ、この謎の現象を解析していく。

 

 

「なるほど!キンくんの頭から検知されてる正体不明の高エネルギーと、どういうわけかベクトルを捻じ曲げられた地殻エネルギーが、さっき命中しなかった鉄の矢が作った円に沿って循環してるのか!!その結果どういうわけか地面がたこ焼きみたいに膨張して大爆発!!なるほどね~…なるほど~ーーーーー

 

 

 

 

 

 

ーーーーってわかるかぁ!!なんじゃこりゃー!!」ガッシャーン!

 

 

 

 

 

 

わかりやすく手のひらを叩いて閃いたかと思うと、理解を放棄してその場で転げまわる。

あばれた手足によってブレるホログラムは表示を中断し、元の散らかった部屋が戻ってくる。

それをきっかけに我をとりもどした彼女は、横になった状態からはありえない跳躍によって立ち上がる。

 

 

「フゥ~すっとしたぜ!いっくんの様子見のつもりでやったことなのに、なんかよくわからないものを掘り起こしちまったぜ!多分前にのぞき見したデータと同じ現象だろうね…いやはや、この世界にまだ束さんに解き明かせないことがあるなんてね~」

 

 

うんうんとひとしきり頷いたところで、再び彼女はホログラムとモニターを展開してそれに目を向ける。

 

 

「機体の製造元はドイツのローゼンタール…ワンオフ・アビリティが発動している様子もないし、ISの武装がこの現象を引き起こしたとは考えづらいけどーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー用事が済んだらちょ~っと調べさせて貰うよぉ~むっふっふ」

 

 

 

 

 

 

 

実体の無いホログラムのオーギルを撫でながら、彼女は心底楽しそうに微笑む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒュルルルルーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

グシャァッズゴォォォォォォッ!!ーーーーー

 

 

 

ーーーーーガンッ!カランッ!

 

 

 

 

 

 

 

「…クハッ…クフハハハハハハハハハハ!!」

 

 

立ち上る火柱が止み、目の前に黒いISが落下してくる。

少し遅れてそのISの腕と頭部と思しき物体が落下し、その全てが完全に崩壊した地盤に更なる穴を開ける。

 

 

「クフフ…ハァ~ア…あぁ、少しはしゃぎすぎましたかね」

 

 

ISが落下してきた衝撃を皮切りに、錬金術によって空いた大穴を中心に周囲の地面に大量の亀裂が入っていく。

激しい地鳴りとともに亀裂は広がっていき、場所によっては亀裂から水しぶきが上がっている。

IS学園の人工島という構造と、微かに地面そのものが傾いているかのような感覚があることから、この一角は水没しかかっているのかもしれない。

 

 

「…確実にやりすぎましたね」

 

 

激しい揺れが発生する中、ISのPICによって難なく移動する。

先程まで自分が入っていたバンだったものの前に降り立ち、そのままフレームの歪んだ扉に手をかける。

 

 

バゴォッ!

 

 

「木原さーん、無事ですか?」

「雑に…開けんでくださいよぉ…クソ…はぁ…」

 

 

無理やり引き剥がした助手席に扉を放り投げ中を覗き込む。

するとそこには懐かしさを感じる光景があった。

 

 

「随分痛そうですね。手を貸しましょうか?」

「あぁ~…ダメだ。内蔵が…いくつも潰れてるし…多分…コイツは胃に突き刺さってる…」

 

 

そこには至るところにガラス片が突き刺さり、骨や筋肉が露出した上に、腹部から歪んだ鉄棒を生やした木原数多の姿があった。

かつて私が経験したことがある負傷とよく似ている故に、その致命度はよくわかる。

 

 

「困りましたね。これだけ騒ぎが起きていれば向こうから人は来るでしょうし、今できることは…」

 

「おい…大佐ーーーーー

 

 

 

 

 

 

ーーーーーダリオにやった”アレ”…”アレ”は俺にも…できんのか?」

 

 

 

 

 

 

 

息も絶え絶えに呟く彼の周りには、シートに吸収しきれなかった血液が漏れ出している。

これだけの出血量に内蔵破裂だ、即死しなかったどころか普通にしゃべっている方が異常なのだ。

そんな彼がする提案だ…”アレ”というのはただ一つをおいて他にないだろう。

 

 

「あなたの様子を見る限り可能です」

「あぁ…そうか、じゃあ…頼むは…ガフッ」

「…必ず成功するとは限りませんよ?彼にしたのもただの好奇心ですし、それにあなた自身もそれでいいのですか?」

「どうせ…こんなんじゃ助かんねぇよ…モルモットみてぇに…なんのも嫌だが…ごふっガフッ」

 

 

肩を上下させていた呼吸が弱くなり、口から血が溢れ出る。

死に追われる感覚…これは当人が最も理解できるものであり、彼がそういうのだから死は間近なのだろう。

 

 

「分かりました。ちょうど良い素材もありますし、試してみましょう」

「…おう…」

 

 

ISを解除し、腹部から溢れ出る彼の血を掬う。

 

 

「そういえばあちらは手が外れていましたが…まぁ適当につなげておきますか。それではーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー運がよければまたお会いしましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「キンブリー!無事kーーーーー

 

 

 

 

 

ーーーーー…みたいだな」

 

 

 

 

 

 

「おや、織斑先生ではありませんか。もう何もかも終わってしまいましたよ」

 

 

水没した島の一角で、何もなかったかのように平然と瓦礫の上に立つキンブリーがそこにはいた。

クラス対抗トーナメントの最中、正体不明のISがアリーナに侵入した。

それと同時にアリーナのシステムを乗っ取られるという自体が発生し、当時試合中であった織斑一夏と凰鈴音が不明ISの撃退、足止めの為戦闘を開始した。

ある生徒の暴走により冷や汗をかかされることにもなったが、事態はなんとか収束に向かったーーーーー

 

 

ーーーーーかと思われた矢先、新たなISの反応に司令室は騒然とする。

 

 

「煙が上がっているところを見ますと、そちらも何かあったみたいですね」

「説明は後だ。ここで何があった?敵のISはどうした?」

 

 

突然現れたISの反応

そして一分と経たぬうちに島全体を揺らす程の衝撃を伴った爆発と火柱が確認され、ISの反応が消失する。

立て続けに発生した異常事態に慎重をきさねばならなかった事は事実だが、二日前の申請によりこの時間キンブリーは企業の人間と会うことがわかっていた。

アリーナ内とは違い救援に迎える位置にはあったものの、突入班をすぐさま動かすことも出来なかった為にラファールを装備させた山田先生を引き連れてきたのだが…

…山田先生はどこだ?

 

 

「まずはそうですね、こちらにも正体不明のISがーーーーー

「すみません織斑先生!遅くなりました!キンブリーさん大丈夫ですか?!」

 

 

やはりそうかと渋い顔をした瞬間、後ろから山田先生の声が聞こえてくる。

緊急事態なのだ、もう少し急いで欲しいものだ。

 

 

「山田先生、何故君が私より到着が遅いのだ」

「お、織斑先生が早過ぎるんです!私に声をかけた後にはもう姿なかったじゃないですか…あ、でも遅れたおかげで織斑くんも凰さんも怪我がないことがわかりました」

 

 

一夏の無事を確認するまで動きたくなかったのが本音ではあったが…

その朗報に思わずため息がこぼれる。

 

 

「…ふぅ。遅れたいいわけにはならんがそれは良かった。キンブリー、すぐにでも話を聞きたいところだが辺はこの有様だ、いつ沈むかわからん。一度校舎にもどって話を聞くとしよう…ドイツに戻るのは延期になると思っておけ」

「まぁ仕方ないでしょうね。では戻る前に山田先生、頼みたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」

「はい!えーと、なんですか?」

「実はそこの水没した場所に私のオーギルが沈んでいます。引き上げてもらうことは可能ですか?」

「あ、確かに羽が水面から出てますね。わかりました」

 

 

山田先生はISを装着したまま腰辺りまで水中に浸かると、オーギルを脇の下から抱えるようにして浮上する。

ここである疑問が浮かぶ。

 

 

「キンブリー、何故ISを待機状態にしなかった?」

「敵の攻撃によって予備エネルギーも切れてしまい、アクセサリー状態に戻すことも叶わず水没から逃れた…といった具合ですね」

「そうか…それでよく怪我がなかったな」

 

 

現に本人が五体満足なのだからそうなのだろう。

だがフルスキンの機体がエネルギー切れを起こしても脱出できるものなのだろうか?

 

 

「お待たせしました~」

「いえいえ、ありがとうございます。そろそろ待機状態に戻すぐらいは…できましたね。山田先生、ありがとうございます」

「お安い御用です!キンブリーさんも無事で良かったです」

 

 

そんな普通のやり取りをしている二人なのだが、私はどうにも違和感を払拭することができずにいた。

何故こいつはここまで平然としているのだろうか?

入学当時、こいつに会った時からそうだ…大人びているの一言で片付けられるようなものではない何かを感じざる得なかった。

今回ISの襲撃を受けエネルギー切れにまで追い込まれたというのに、こいつの会話や目からは一切の動揺を感じない。

…いや、それどころかこいつからは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

「ISの自爆…か」

「爆炎が晴れた頃には相手を確認できませんでしたが、相手はどうなったんでしょうねぇ」

 

 

教室棟への移動後、地下にある盗聴対策等がなされた隔離部屋にて聴取を襲撃当時の聴取を行っていた。

キンブリーはISのアップデートデータと襲撃時の視覚データを提出し、視覚データを解析した結果はキンブリーの証言通りで、襲撃後は爆炎の閃光以外は何も確認されなかった。

簡易的に周囲を捜索した結果、不明ISは発見され無かった。

自爆というには残骸が発見されなかった以上いささか疑問が残るが、視覚データからそう推測するのは十分に理解できる。

そして多量のノイズが混じってはいたが、司令室の観測機には不明飛行物体が低空で索敵外に出たという情報が得られた。

このことから不明ISは逃走したと考えるのが妥当なのだろうが…

なぜだろうか…どこか胡散臭さを感じる。

 

 

「…それで企業の人間である木原数多は襲撃と同時に車で学園を脱出し、事なきを得ると…」

「えぇ、彼のドライビングテクニックは目を見張るものがありましたね」

 

 

確かに現場に車は存在しなかった。

しかしキンブリーのISの影響だろうか、襲撃時の衝撃のせいだろうか、出入り口の管理機器が故障するという事態に陥っていた。

事態拡大を防ぐためにその後の捜索などは行っていない。

 

 

「この襲撃事件に関しての制約を交渉したい。木原数多を呼ぶことになるのだが、そちらから連絡は通じるか?」

「えぇ、既に連絡を入れています。現時点での他言を行わないということを口約束ではありますが取り付けましたので、明日にはいらっしゃるかと思います」

「すまないな。本来はこちらが全て行うべき作業なのだろうが、緊急時だ。お前のほうが融通は効くと思っての頼みだったが、うまくいったようだな…はぁ」

 

 

…うまくいきすぎている。

木原数多との交渉に限らず、キンブリーに対する襲撃の後が何もかもうまくいきすぎている。

たった一回の自爆で絶対防御を含むエネルギーがちょうど枯渇するだろうか?

襲撃に来たISは何故トドメを刺さずに逃走した?

そのような窮地に陥ったにも関わらず何故キンブリーは動揺を見せない?

離脱困難な車が離脱し、そのタイミングで記録機器が故障するだろうか?

 

 

 

これらの違和感は全てこじつけに過ぎないのだが、ひとつだけ無視できない…違和感で方がつくようなものではない自称が残されていた。

 

それはーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー爆発によって人工島の基礎にまで到達ほどの巨大な縦穴が空くことなどありえるのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バンカーバスターを十数発打ち込んでもあぁはならん」

「バンカーバスター?」

「ただの独り言だ。さて、お前から確認することはとりあえず済んだ。もう戻っても構わんぞ。疲れているようには見えんがしっかり休んでおけ」

「そうですか、ではお先に失礼します。いち早い解決を期待しておきます…フフ」

「フン、無論だ」

 

 

そしてキンブリーは部屋を後にする。

これまでの話は全て筋が通っており、可能性としてもあり得る。

何故ここまで違和感を感じるのか、その大元は恐らく不明ISが”無人機”だったことだろう…

生徒である以上疑うような真似は気分が悪いのだが…男性操縦者という特異な立場である以上”あいつ”との繋がりも疑うべきなのかもしれないな…

 

 




なかなか早めの更新がかなったのではないかなぁと自負しております、焼酎ご飯です。
まぁ実際のところおはなしは全然進展していないんですけどね(;´∀`)
でも早く投稿するとコメント頂けるのはひっじょうにきんもちいいですね(´☉ω☉`)

そしてそしてぇ!
MGO・ブラボDLC・ダクソ3・ペルソナ5…
これが始まったらとりあえず更新遅れます!!
仕方ないよね!遊びたいもの!


今回も誤字脱字の嵐かもしれません…m(_ _)m

コメント、感想、誤字脱字の指摘、ご意見等ございましたらいつでもお待ちしております^^


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