この仮面の戦士に祝福を (ナハト02)
しおりを挟む

season1
第一話 転生


どうも、はじめまして。
今回が初投稿です。
書いてみたくなったので、書いてみました。
このすば×仮面ライダー物です。
一応連続して投稿します。
よろしくお願いします。

追伸 12/6に一部修正しました。


???「・・・・・・っう・・・うん?」

 

 目を開けると、何もない空間だった。

 自分が椅子に座っていることがわかった?

 しかし、何故自分がこんな見知らぬ所にいるのか?

 確か自分はやり込んでいたゲームが一区切りついたので、気分転換に外へ散歩に出ていて、1時間ほどしてそろそろ帰ろうと来た道を戻っていた、その時大きな音を聞いたような気がする。

 そこから先が思い出せない。

 

???「霧島賢治(キリシマケンジ)さん。」

賢治「え?」

 

 名前を呼ばれたので、下を向いていた顔をあげる。

 そこには、青い服を着た銀髪の女性が俺と同じように椅子に座っていた。

 

???「はじめまして、私は女神エリスと言います。」

賢治「・・・っあ!はい。」

エリス「まずは、貴方に伝えなければならないことがあります。」

 

 伝えること・・・なんだろう?

 嫌な予感がする。

 

エリス「貴方の人生は、終わってしまったのです。」

 

 エリス様の話だと、俺は家に帰る途中スピードを出しすぎて制御を失った車に轢かれて命を落としてしまったらしい。

 そして俺には3つの選択肢があるらしい。

 1つは、天国に行くこと。

 だが、これはあまりお勧めはできないらしい。

 なぜなら、何もない所で、何もせずただ無駄な日々を過ごすだけだかららしい。

 確かにそんな毎日は御免被る。

 

 2つは、元の世界で生まれ変わること。

 これは記憶と体をリセットしもう一度赤子からやりなおすこと。

 まぁ、普通の選択だと思う。

 

 そして3つ目は、異世界に転生すること。

 正直この選択が出た時俺は驚いた。こんな漫画やアニメの様な選択が有りなのかと。

 はっきり言って魅力的な選択肢だと思う。

 しかし、当然危険がある様だ。

 その世界には魔王がおり。魔物やモンスターが徘徊し、人間達は日々の生活にも苦労しているようだ。

 

エリス「勿論、そのまま異世界に転生させる訳ではありません。」

   「危険な異世界に赴いていただくからには、こちらから転生特典を付けさせて頂きます。」

賢治「特典?」

 

 どうやら、転生特典つまりチートな物や能力を付けてくれるらしい。

 まずエリス様達神々が用意した、魔剣、聖剣、魔道具、特殊能力、などその他色々。

 そして、それ以外に転生者の必要とする物を持って行くことが出来ること。

 魔剣や聖剣にも心惹かれるが、俺は選ぶなら後者を選ぶ。

 

賢治「エリス様、確認なんですけど。」

エリス「はい、なんでしょう?」

賢治「俺が必要だと思う物はどんな物でも持っていけるんですか?」

エリス「なんでも有り、とはいきませんね。」

   「余りにも強力すぎる物だと、そもそも特典として付けることが出来ませんし、仮に持って行けたとしても能力に制限を掛けさせて頂きます。転生していきなり特典を使って体が弾け飛ぶ様なことになってはいけませんので。」

 

 確かに強力だけど一日に一回しか使えない様な物など使い物にならなそうだ。

 

エリス「ちなみに、ケンジさんの前の転生者の方は転生特典に私の前任の女神を選択していますよ。」

賢治「え?! それ有りなんですか?」

エリス「上司からの許可が出たのでOKの様です。」

賢治「マジか。」

エリス「それに・・・」

賢治「?」

エリス「先輩は能力は確かなんですけど、その・・・性格に難ありで。」

   「私の上司も良い薬になるだろうと。」

賢治「はぁ。」

 

 おいおい、俺の前の転生者大丈夫なのか? そんな女神と一緒で。

 まぁ確かに、女神に一緒に来てくれるのならこれほど心強い事はない。

 だがどうだろう。こういう場合地上に降りた女神は能力がダウンする傾向がある。まぁ漫画やアニメの受け売りだけど。

 

エリス「勿論私も連れていけますよ。」

   「でも正直に言いますと地上では天界に比べて能力が大幅に下がりますので、お勧めしません。」

 

 と、こちらの考えを察したのか、予想通りの答えが返ってきた。

 まぁ元々、こんな良い女神様を危険な異世界に連れて行こうとは思っていなかったが。

 俺が望む物は決まっていたからだ。

 俺の中での最強の存在、その人物が持つ最強の力、この力が自分も使えるかも知れない。

 そう思うと、ゾクゾクする。

 よし!

 

賢治「エリス様、俺決めました。」

エリス「はい。」

賢治「俺は、異世界に転生します。」

エリス「はい。」

賢治「そして俺が選ぶ転生特典は、仮面ライダージオウに関する全てです。」

エリス「はい。・・・・・・はい?」

 

エリスside

 

 私は今困惑している。

 何故なら今目の前にいる彼から、転生特典にあの仮面ライダージオウを選んだからだ。

 確かに、彼のことはプロフィールを見てどんな人物なのか知っている。

 彼はゲーム、漫画、アニメ、中でも仮面ライダーという特撮番組が大好きというのも知っていた。

 彼の言う仮面ライダージオウとは、まさしく仮面ライダーのそれも平成ライダーの頂点に君臨するにふさわしい存在である。

 彼は知らないが、実は仮面ライダーが特撮という所謂絵空事ではなく、本物として実在する世界が確かに存在するのだ。

 その世界の仮面ライダージオウ、正確に言うとオーマジオウ。

 オーマジオウだけは、我々神々でも手を出してはならないと言われているのだ。

 何せその存在そものものがチート過ぎるのだ。

 まず、すべての平成ライダーの力が使えること。その他に未来視、時間逆行、時間停止、高次元予測、因果律操作、世界の破壊と創造。

 ほとんどの力が神の領域なのだ。

 正直、そんな力を転生特典として授けて良いのだろうか?

 これは、色々と確認する必要がありそうだ。

 

賢治side

 

エリス「あの、ケンジさん。それはオーマジオウを含めてですか?」

 

 と、エリス様が聞いてきた。

 え? オーマジオウもありなのか?

 正直に言えば、オーマジオウにもなって見たい。

 だけど。

 

賢治「オーマジオウになるつもりはありません。」

  「ただ、俺がオーマジオウの力を必要としている時、俺にその資格が有るとエリス様が判断した時にはその力を使わせて欲しいです。」

エリス「判断はこちらに委ねる。そう言うことで良いのですね。」

賢治「はい。」

エリス「わかりました。それではもう少し詰めていきましょうか。」

 

 そのあと転生特典について内容をまとめる事になった。

 まず、各ライドウォッチとミライドウォッチは全て使用可能。ジオウトリニティライドウォッチとグランドジオウライドウォッチとオーマジオウライドウォッチは制限付きで使用可能。オーマジオウへの変身は女神の許可が必要。

 タイムマジーンは時空転移システムは使用を禁止するが武器とビークルモードとロボモードと飛行は使用可能。呼び出し方は特別にタイムマジーンのライドウォッチを用意してもらった。ライドスターターを押したときに出現する様だ。損傷した場合度合いによるがウォッチにしてしまっておけば修理が自動的に進む。

 変身の際にベルトを呼び出す起動キーとしてジオウライドウォッチのウェイクベルゼを回しライドスターターを押したときに腰にベルトが出現する様にしてもらう。これは、ゲイツ・ツクヨミの各ウォッチに、ウォズミライドウォッチはミライドオンスターターを押したときに出現する様に設定を変更してもらう。

 ウェイクベルゼを回し、ピクトウィンドウに触れると変身前なら各ライドウォッチに対応する武器と能力が使える。変身後はアーマータイム中の各アーマーに対応したフォームチェンジが可能。

 ゲイツ・ツクヨミ・ウォズのライドウォッチは相応しい者と共鳴する。

 

エリス「以上で構わないでしょうか?」

賢治「はい。思いつく範囲では、今の通りでお願いします。」

エリス「それでは、少し待って下さい。承認を得られるかどうか確認しますから。」

 

 そう言うとエリス様は、どこかに連絡を入れている様だ。

 おそらく上司という神様に確認しているのだろう。

 10分程すると話が終わったのか、こっちを向いて

 

エリス「賢治さん、承認をえられました。」

賢治「本当ですか!?」

エリス「はい。」

賢治「正直、ダメかと思っていました。」

  「仮面ライダーの力なんて特典。」

エリス「私もです。ですが、私の上司もその条件なら構わないと許しを頂きました。」

 

 少し時間がかかったが、これでようやく異世界に転生出来るわけだ

 ここから俺の異世界での第二の人生が・・・うん?

 

賢治「あの、エリス様。」

エリス「はい。なんでしょう?」

賢治「この場合文字や言葉はどうなるんですか。向こうで一から覚えないといけないんでしょうか?」

エリス「その心配はありません。転生する際に向こうの言葉と文字は頭に刷り込まれるので大丈夫です。」

賢治「成程、ちなみに向こうに着いたらまず何をした方がいいでしょうか?」

エリス「そうですね、まず冒険者ギルドへ行き冒険者登録を済ませて下さい。」

   「その際に、困った事があったら右のポケットを調べて下さい。ささやかですが、女神の恵みを用意してありますから。」

賢治「女神の恵み? はい、わかりました。」

エリス「では。」

 

 すると、俺の真下が白く光り始めた。

 いよいよ異世界に転生する時がきた!

 

エリス「それでは、霧島賢治さん貴方の活躍をここから見守っています。いってらっしゃい。」

賢治「はい! エリス様、俺頑張ります。」

 

 すると、体が浮き上がり頭上の魔法陣に向かって登っていく。

 魔法陣を通過したその瞬間、次に俺が見た物は・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

賢治「・・・・・・お、おぉぉー!」

 

 そこは、俺のいた世界とは違ういかにもファンタジーな街並みがあった。

 

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?
結構特典盛ってますが、ジオウに関するすべてなので、これくらい良いかな?
みたいな感じです。
まぁ、どうか暖かく長い目で読んで頂ければ幸いです。
更新は、今のところ不定期ですが、出来るだけ定期的に投稿しようと思います。
これからよろしくお願いします。
では、今回はここまで。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二話 この冒険者の初戦闘に祝福を

どうもはじめまして。
もしくは、お久しぶりです。
さて、第2話の投稿です。
とりあえず、冒険者登録を済ませてから、初めての戦闘です。
ちなみにタグにゼロワンを入れていますが、暫くは登場しません。
暫くお待ちください。
では、第2話をどうぞ。


賢治「・・・・・・おぉぉー!」

 

目を開けたら、日本とは明らかに違う町並みが広がっていた。

行き交う人々、中世を思わせる建造物、それに何より。

 

賢治「すぅーーー・・・・・・はぁぁぁーー。空気が澄んでる、すんげぇ気持ちいい。」

 

 俺はこれまで肺に溜まっていた、前の世界の空気を入れ替えるように思いっきり深呼吸をした。

 しばらくの間、その余韻に浸ってから次の行動に移った。

 とりあえず、手近なところで

 

賢治「あの、すみません。そこの金髪でサイドテールの人!」

金髪の少女「? 私か。 なにかな?」

賢治「あの、俺冒険者ギルドを探しているんですけど、ここからだとどっちに行けばいいでしょうか?」

金髪の少女「あー、冒険者志願者かな? ようこそ!駆け出しの街アクセルへ。」

  「冒険者ギルドなら、この道をまっすぐ行った先にあるよ。 大きな建物だから、すぐに分かるはずだよ。」

賢治「ありがとうございます。 では、行ってみます。」

金髪の少女「頑張ってねー。」

 

 さっそく、さっきの人に言われた通りに歩いてみた。

 すると、遠目でもわかるくらい大きな建物が見えてきた。多分あそこが冒険者ギルドだろう。

 入口に近づくと突然扉が開いて、そこから男女の二人組が出てきた。

 男のほうは、茶髪にみどりの瞳、緑のジャージに腰に剣を下げている。

 ・・・ジャージ? こいつもしかして。

 女のほうは、水色の髪に青い瞳、青い服を着たスタイル抜群の美少女。

 二人組の冒険者だろうか?

 

ジャージの男「それで、ジャイアントトードってどんなモンスターなんだ?」

青服の美少女「まぁ、簡単に言うとでっかいカエルね。」

ジャージの男「カエルか・・・まぁ、駆け出しの俺達には丁度いいかもな。」

 

 と言って、俺が歩いてきたほうへ去っていった。

 どうやらクエストを受けた冒険者で間違いなさそうだ。

 にしても、ジャイアントトード? でっかいカエル? ・・・ちょっと見てみたいかも。

 そして改めて入口に近づいて、扉を開けて中に入ると。

 

ウェイトレス「いらしゃいませ! お食事なら向かって左のテーブルへどうぞ。 お仕事をお探しの方は向かって右の受付カウンターへどうぞ。」

 

 と、元気で可愛いウェイトレスさんが案内してくれた。

 冒険者登録だから、右だな。

 カウンターには、金髪でオレンジの瞳に、何より1番目を引くのは、こぼれ落ちそうな程大きな胸の女性が座っていた。

 ・・・・・・いや、仕方ないじゃん。 これ程のナイスバディに興味を惹かれないなんて、男としてどうよ?

 って、誰に言い訳してるんだか。

 

賢治「あの、すみません。 冒険者登録をしに来たんですけど。 ここで出来ますか?」

受付嬢「はい、冒険者登録ですね、こちらで承っております。」

  「それでは、最初に登録手数料を支払って頂けますか?」

賢治「え! 手数料。・・・ちょっと待ってください。」

 

 待った! 早速ピンチなんだけど。

 こっちの世界の通貨なんて持ってないぞ。

 あっ! そうだ右ポケット。

 手を入れてみると、小さく何か平らで丸い物が一枚入っていた。

 取り出してみるとそれは金貨だった。

 これがエリス様の言っていた、『女神の恵み』と言うやつだろうか?

 

賢治「えぇっと、これで足りますか?」

受付嬢「はい、1000エリス頂きました。」

 

 え!こっちの通貨ってエリスって言うのか。

 もしかして、エリス様ってこっちでは結構崇拝されてるのか?

 すると受付嬢さんが、カウンターの前に丸い球体の下に針の様な物が付いた機械? みたいな物を置き。

 

受付嬢「それでは、こちらの魔道具に手をかざしてください。」

  「すると、貴方の現在のステータスが下の冒険者カードに入力されますので。」

賢治「はい。 こうですか?」

 

 魔道具に手をかざすと、青白く光出し球体部分が回転し始めた。

 少しすると、下の針の部分から青いビームみたいな物がカードに照射された。

 すると、さっきまで枠ぐらいしか書かれていなかったのに、右上部分に俺の横顔みたいな絵が浮かび上がり。 その左には俺の名前。

 その下には俺のステータス、スキル、エレメントとかが浮かび上がってきた。

 現在の俺のステータスはこんな感じ。

 

 KENJI KIRISHIMA

 (職業)

 レベル 1   スキルP 10000

 体力 395   火 110

 魔力 219   水 110

 力  136   土 110

 知力 128   風 110

 俊敏性 112  光 110

 器用さ 98   闇 110

 幸運 154

 

 スキル

 ・全知全能(アカシック・レコード)

  現存するすべてのスキルを職業関係なく習得可能

  習得に必要なスキルポイントは3倍になる

 ・能力透視

  自分または相手のステータスを見る事ができる

 ・変身

  仮面ライダージオウへの変身

 ・平成ライダー

  平成ライダーの全ての能力と武器を使用可能

  変身前でもある程度使用可能

 ・全エレメント耐性上昇LV 1

  全てのエレメントの耐性を小上げる

 

 とこんな感じである。

 

受付嬢「はい、これで終わりです。」

  「えーっと、お名前は霧島賢治さん。ステータスは・・・・・・・えええぇぇぇー!」

賢治「な!? なんですか?」

受付嬢「なんですかこのステータス! 普通のレベル1の冒険者の3倍近い能力ですよ!」

  「しかも、何ですか! この見たこともないスキルは!」

  「あなた一体何者なんですか!?」

賢治「いやぁー・・・」

 

 何者、と聞かれても困る。

 まさか異世界転生して来たなんて言えるはずもなく。

 正直自分もビックリのステータスだ。

 確かに、レベル1でこのステータスの高さは普通じゃない。

 しかもスキルも、仮面ライダーに関するスキルはわかるが。全知全能とか能力透視とかレベル1の冒険者が持っていて良いスキルじゃないだろ!

 と、こっちも困っていると。

 

受付嬢「あっ! すみません。 つい興奮してしまいました。」

  「では、次に職業を決めて頂けますか。ケンジさんの能力なら、ほぼ全ての職業になれますけど。」

賢治「はい、えぇぇっとー。」

 

 色々な職業がある。

 戦士、ソードマスター、クルセイダー、アークウィザード、拳聖、モンク、アークプリースト、どれもいまいちしっくりこないな。

 うん?『ルーンパラディン』?

 

賢治「あの、このルーンパラディンって」

受付嬢「ルーンパラディンになれるんですか!!」

賢治「え?! あの、最後のほうにあったんですけど。 珍しい職業なんですか?」

受付嬢「珍しいどころか、数多くある職業の中でも、5本の指に入る最上級職ですよ。」

  「なりましょう! そうしましょう!! 是非なってください!!!」

 

 ずいぶん勧めてくるな。

 改めて、ルーンパラディンを確認してみる。

 簡単に言うと、ルーンナイトとクルセイダーを掛け合わせたような職業だな。

 各属性の魔法が使えるし、剣術、体術、防御の各スキルも覚えられる。

 全知全能があるから、何でも覚えれるんだけど。

 前衛系の職業としては、かなり性能の高い職業だと思う。

 

賢治「わかりました。では、ルーンパラディンで行きます。」

受付嬢「はい! ありがとうございます!」

  「貴方はこの街初めての、そしてこのギルド初のルーンパラディンです。」

  「職員一同、あなたの今後の活躍をご期待しています!」

 

 なんか、すごい歓迎された。

 しかもいつの間に出てきたのか、受付嬢さんの着ている制服と統一感のある服を着た他の職員たちが、受付嬢さんの後ろに横一列に整列してお辞儀をしてきた。

 そして、飲食をしている他の冒険者や、ウェイトレスさん達から

 「おい、あいつレベル1なのにルーンパラディンだってよ。」

 「まじかよ!?」

 「あいついったい何者?」

 「すごいわねあの人。」

 「ルーンパラディンになれる人なんていたのね。」

 等々、いろんな声が聞こえてきた。

 まぁいい、さっそく

 

賢治「それでは、さっそくクエストを受けたいんですけど?」

受付嬢「はい、少々お待ちください。クエストを見繕ってきますので。」

賢治「あ! ちょっと待ってください。」

受付嬢「はい?」

 

 このギルドに入る前に気になっていたことを思い出した。

 ダブルブッキングになるが、一応聞いてみよう。

 

賢治「あの、ジャイアントトードの討伐クエストはありますか?」

受付嬢「はい、ありますが?」

賢治「さっき出て行った二人組の冒険者もそれを受けていたみたいですけど、俺も受けて大丈夫ですか?」

受付嬢「はい、問題ありません。 いくら倒しても湧いてくる厄介者なので。」

 

 彼女の話だと、ジャイアントトードとはその名のごとく巨大なカエルだ。

 だが、たかがカエルと侮れない。

 こいつは繁殖期に入ると、人里に現れて冬場の体力をつけるために農家の家畜を捕食しまくるらしい。

 実際、その時期になると小さな子供が行方不明になる事件が続発し、その犯人がこのカエルだったりするようだ。

 ちなみにこいつの肉は、多少の硬さはあるがとても栄養価が高く、食材として重宝されている。

 一言でいうと、『意外に美味しい』とのこと

 まぁ、俺のいた前の世界でも、カエルは鶏肉みたいと言われていたくらいだし

 

受付嬢「クエストを発注しました。3日のうちに5匹討伐してください。」

  「それ以上の数を討伐したら特別報酬が出ますので、頑張ってくださいね。」

賢治「俺がどれくらい討伐したか分かるものなんですか?」

受付嬢「冒険者カードに、その日に何匹討伐したか表示されるので、問題ありません。」

賢治「そうですか。 では、行ってきます。」

 

 と、俺が出ていこうとすると

 

受付嬢「あ! あの。」

賢治「はい? なんでしょう?」

受付嬢「そのままで行くんですか? 丸腰じゃないですか。」

  「良ければ、当ギルドで武器を貸し出しましょうか?」

 

 あぁー、そういうことか。

 俺が武器も何も持っていないことを心配してくれたのか。

 ここはひとつ、面白い物を見せようではないか。

 

賢治「だいじょうぶですよ。 何故なら」

 

 俺は、ジオウライドウォッチをこっそり取り出し、ベルゼを回し親指でウィンドウに触れる。

 『ジカンギレード』

 という音とともに、俺の右手には俺の世界の言葉で「ケン」と書かれた一振りの剣が握られていた。

 

賢治「これが有りますから。」

受付嬢「え? えぇー! 今どこから出したんですか?」

賢治「俺が望むと出てくるんですよ。」

受付嬢「はぁ、そうなんですか。」

 

 さて、あらためた出て行こうとしたとき、今度は俺のほうが立ち止まった。

 

賢治「そう言えば、忘れてました。」

受付嬢「はい。なんでしょう?」

賢治「今後もお世話になるかもしれないので、良かったら名前を聞いていいですか?」

 

 そう、名前である。

 彼女はこれからお世話になりそうだし、名前が分からなかったら不便だ。

 

受付嬢「あ! そう言えばまだでしたね。」

  「私の名前はルナです。 これからよろしくお願いします。」

賢治「ルナさんですね。 ありがとうございます。」

  「じゃあ、今度こそ行ってきます。」

ルナ「はい、お気を付けて。」

 

 今度こそギルドを出た俺は、カブトライドウォッチを取り出し、クロックアップを使って一気に街の正門から目的の場所へと向かった。

 目的地に到着すると、そこには複数のでっかいカエルがいた。

 しかもそこには、さっきの二人組の冒険者がいた。

 だが、男の冒険者がカエルに追いかけられているのに女の冒険者は

 

青服の美少女「プークスクス! 顔真っ赤にして必死になっちゃって!」

  「ウケるんですけど! チョーウケるんですけどー!!」

 

 などととてつもなく薄情なことこの上ない事を叫んでいる。

 何あいつ見てくれは間違いなく美少女なのに、性格悪いな。

 第一印象で可愛いと思った俺の気持ちを返してくれ。

 すると彼女が今度は、『自分に祈りを捧げろ』とか『御供物を捧げろ』などおかしな事を言い出した

 すぐそこにカエルが迫っていることにも気付かず

 

青服の美少女「ウプっ!?」

ジャージの男「あ!」

 

 食われた。

 しかも、口の中で味わっているのか、クチャクチャという音が微かに聞こえる。

 

賢治「うわぁー」

 

 ぶっちゃけ、いい気味だと思うが。

 ああはなりたくない。

 

 ドスン!

 

賢治「うん?」

 

 後ろから音がしたので振り返ると、そこにジャイアントトードが餌を見つけたと言わんばかりにその長い舌をゆらゆらと揺らしながら、俺に近づいて来た。

 こいつ俺を食うきか?

 だがこっちとしてもいいカモだ

 大口を開けて捕食しようと迫ってくるところを後ろにバックステップでかわし、ジカンギレードをカエルの頭めがけて投げる。

 

 ザクッ

 

 さすがジカンギレード、見事な切れ味だ。

 俺は奴の頭にジャンプして、ジカンギレードを掴み、頭から背中に向けてザックリと切り裂いてやった。

 カエルは生き絶えたのか、ズン!と音を立てて倒れた。

 俺は念の為に、冒険者カードを確認してみた。

 すると、カードに

 ジャイアントトード×1

 と表示されていた。

 

賢治「おっ! 本当にカードに撃破数が表示されるんだな。」

 

 しかもレベルが早くも1上っている。

 早いな! 

 因みにレベルアップした今のステータスがこれだ

 

 体力   419

 魔力   232

 力    144

 知力   138

 俊敏性  121

 器用さ  103

 幸運   168

 

 それと、スキル習得可能枠に新しいスキルが追加されている。

 

 跳躍 体捌きLV1 

 

 ところで、二人組の方は?

 

青服の美少女「うぅ!グスッ! うぅうぅ!」

ジャージの男「はぁ、はぁ、カエルが無防備になっていてよかった。」

青服の美少女「グス、グスン! あぁ・・・ありがとう、カジュマァ〜。」

  「ありがと〜 うわぁぁぁぁ〜〜!!」

カズマ(うっ、生臭い!!)

 

 臭いのか、男の方は引き攣った顔になっている。

 女の方は、意外と打たれ弱いのか泣きべそをかいて叫んでいる。

 落ち着いたのかゆらりと立ち上がり何を思ったのか、カエルに突撃していった。

 おいおいどうする気だ?

 

青服の美少女「この私を汚したこと、そして神に牙を剥いたこと、地獄で後悔するといいわ!」

  「ゴッド・ブロォォォォーーー!!」

 

 と、技名?を叫んだ。

 こっちに来てから、魔力という物を感じれるようになったのか、あの技がかなり凄いというのはわかった。

 

青服の美少女「ゴット・ブローとは、女神の怒りと悲しみを込めた必殺の拳! 相手は死ぬ!!」

 

 解説を聴く限りなかなかの技のようだ。

 少し成り行きを見てみよう。

 

 ボヨン!

 

青服の美少女「・・・」

ジャイアントトード「・・・」

 

 拳がヒットした瞬間に、気の抜けた音がした。

 ジャイアントトードは勿論無傷である。

 そうか、あいつは打撃系の攻撃は効かないのか、もしくは効きにくいのだろう。

 ていうか、これまた彼女が食われるパターンか。

 

青服の美少女「カ、カエルって意外と可愛いと思うの。」

 

 と、彼女が言った瞬間に俺は、カブトライドウォッチでクロックアップを発動する。

 さすがに2回も食われるのはかわいそうだと思ったので、助けることにした。

 俺はジャイアントトードに向かって走る途中で、ジカンギレードのギレードリューズを押した。

 『タイムチャージ!』

 と鳴った後に

 『5、4、3、2、1』

 とカウントダウンが開始される。

 『ゼロタイム』

 ジャイアントトードまで後もう少しというところでカウントダウンが終了する。

 そして、ジャンプしジャイアントトードの顔あたりまで来た時、グリップのトリガーを引いた。

 『ギリギリ斬り!』

 

賢治「ハアァァァァー!!」

 

 気合を入れて、横一文字に必殺の一撃を喰らわせた。

 『クロックオーバー』

 丁度クロックアップの効果時間も切れたみたいだ。

 

青服の美少女「え!?」

カズマ「え!?」

 

 ズン!

 カエルが倒れると同時に、スタッ!っと着地した。

 

賢治「ふぅ、大丈夫か?」

青服の美少女「え? えぇっと、ありがとう。」

  (キュン!)(え? 待って、何この気持ち?)

カズマ「おーい!アクア! 大丈夫か?」

アクア「えぇ! この人に助けてもらったから、大丈夫よ。」

カズマ「誰か分からないけど、助かったよ。」

賢治「いいや、困った時はお互い様だよ。」

 

 そのあと俺たちは、自己紹介した。

 どうやらこの2人、転生者と女神らしい。

 エリス様の言っていた俺の前にこの世界に転生した男はこの佐藤和真。

 俺と同じ日本人だ。

 そしてこの妙に強気でベソっかきで打たれ弱いのがカズマの転生特典としてこの世界につれてこられた、水の女神アクアである。

 なぜそうなったのかと言うと、アクアが死後の世界にやって来たカズマに対して雑な対応をしたため、腹いせにこの世界へ転生特典として送り込まれたようだ。

 自業自得だな。正直俺が死んだ時の担当女神がエリス様で良かったと思う。

 

賢治「それじゃあ、残りのジャイアントトードを討伐してしまおうぜ。」

カズマ・アクア「え?!」

賢治「うん? どうした?」

カズマ「いや、このクエストは俺たちには荷が重いと思うから・・・」

アクア「え、えぇ今日の所はここまでに・・・」

 

 駄目だこれは、完全に腰が引けてる。

 このままだと自信を持ってクエストを受けられなくなる。

 仕方ない。まずモチベーションを上げるところから始めるか。

 

賢治「なぁ、カズマ。」

カズマ「? 何だよ。」

 

 俺は2人に見えないようにクウガライドウォッチを取り出し

 『タイタンソード』

 仮面ライダークウガのタイタンフォームのメイン武器、タイタンソードを取り出した。

 

賢治「この剣使えよ。今使っている剣よりいいだろう。」

カズマ「え? 今どこから、て言うかこの剣なんか見たことあるぞ。」

アクア「あ!この剣仮面ライダークウガのタイタンフォームの武器よ!」

カズマ「あああぁぁぁぁー!! そうだそうだよ! スッゲー!! 本物かこれー!!」

賢治「? なんだ、2人とも仮面ライダーを知ってるのか?」

 

 どうやらこの2人も仮面ライダーを知っているらしい。

 カズマも特撮番組の仮面ライダーを平成ライダーのクウガからフォーゼまでを見ていたらしい。

 アクアはまぁ、知識は当然あるだろう。エリス様も知っていたし。

 ただアクアも聞いたところによると、フォーゼまでしか知らないようだ。

 と言うことは、カズマは2012年に死んだと言うことか、俺は2019年に死んだから知識に7年の差があるようだ。

 

カズマ「と言うことは、賢治の転生特典は仮面ライダーの武器なのか?」

賢治「いや、違うぞ。」

カズマ「え! じゃあ、何なんだ?」

賢治「俺の特典は、『仮面ライダージオウに関する全て』だ。」

カズマ「は? 仮面ライダージオウ?」

  「いやいや、そんな仮面ライダーいないだろ。」

 

 まぁ、7年も差があれば知らなくて当然だろう。

 オレは、カズマに教えてやることにした。

 2013年から2019年の間に登場する仮面ライダーのことを。

 それを聞いたカズマは、さらに目を輝かせるのだった。

 

カズマ「マジか! 俺が死んだ後も仮面ライダーは続いてたのか。」

  「はっ! じゃあ、賢治は仮面ライダーに」

賢治「なれるぞ。」

カズマ「スゲー!」

 

 やっぱり男にとって仮面ライダーは憧れだよな。

 一度でいいから変身してみたい、誰もがそう思うはずだ。

 2人で語り合っていると、クイクイと服の裾を引っ張られた。

 

賢治「うん?」

アクア「あの〜、良ければ私にも武器を・・・」

賢治「勿論いいぞ。 何がいいかな。」

 

 しばらく考えて、俺はもう一度クウガライドウォッチに触れた。

 『ドラゴンロッド』

 水繋がりで、クウガのドラゴンフォームの武器を出した。

 

賢治「これでいいかな?」

アクア「これもクウガの武器ね。水の戦士の武器、私にぴったりじゃない。」

 

 どうやら気に入ってくれたようだ。

 さて、2人がその気になってくれた所で

 

賢治「それじゃあ、残りを片付けるか。」

カズマ「よーし。やってやる。」

アクア「オッケー! やりましょう。」

 

 2人がやる気になったおかげで、カエル退治は大いにはかどった。

 その日の内に、クエストは終了しギルドに戻ったオレ達。

 アクアは公衆浴場へ行き汗とカエルの粘液を洗い流しに行った。

 オレとカズマは、先にクエストの報告のためルナさんの所に来ていた。

 今回の俺の稼ぎはこうだ

 

 ジャイアントトード討伐報酬 5000エリス×5

 ジャイアントドードの肉の買取 250エリス×5

 合計 26250エリス

 

 カズマ達の場合これを分け合うわけだ。

 さらに、またレベルが上がった

 

 KENJI KIRISHIMA

 レベル4

 ルーンパラディン スキルP10005

 

 体力   475  火110

 魔力   268  水110

 力    166  土110

 知力   158  風110

 俊敏性  142  光110

 器用さ  118  闇110

 幸運   190  

 

 こんな感じだ。

 取得スキルとエレメントに変化はないが、取得可能スキル枠に跳躍と体捌きLV 1以外に

 

 オールエレメントスラッシュLV1 ホーリフレアLV1

 

 と言うスキルが追加されていた。

 聞いた話だが、スキルとは本来誰かに教えてもらうことで、カードに取得可能スキルが表示される。

 だが、オレは教えてもらった事がないから、何らかの条件などをクリアすれば取得できるのだと、何となく思った。

 この辺りは色々と実験してみるしかないな。

 暫くしたら、アクアが風呂から上がって来たので夕食にすることにした。

 俺たちが頼んだのは、ジャイアントトードの唐揚げとシュワシュワを三人前だ。

 シュワシュワってなんだ? と思ったので2人に聞いたら『ビールのようなもの』らしい。

 ビールは得意ではないが、飲んでみると苦味はあるがなかなかフルーティな味で、意外と飲みやすかった。

 

アクア「え! 貴方ルーンパラディンなの?」

カズマ「ルーンパラディン? 何だそれ。」

アクア「ルーンパラディンは、最上級職よ。 レベル1からなれるって凄いことよ。」

カズマ「最上級職!!」

 

 俺が唐揚げに齧り付いてると、冒険者カードを見ていたアクアが驚いていた。

 確かに、レベル1で最上級職なんて普通ありえない。

 これも、仮面ライダーの力のおかげだろうか?

 

カズマ「なぁ、賢治。」

賢治「うん?」

カズマ「俺たちでパーティを組まないか?」

 

 こちらの予想していた通りのことを聞いてきた。

 カズマ達の状況を考えれば、俺をパーティに誘うのは容易に想像できる。

 

賢治「いいぞ。」

カズマ「マジか?!」

賢治「いや、何でビックリしてんだよ。」

カズマ「いやだって、俺は最弱の冒険者だしアクアは上級職のアークプリーストだけど、正直回復魔法しか取り柄がないし。」

アクア「はぁ! ちょっとカズマ!」

カズマ「うるさい黙れ。 ぶちゃけ、断られると思ってた。」

 

 パーティーを組むことは、別に悪くないと思っている。

 この2人なら、信用できるだろうし。

 俺は最悪、この世界に在るかどうか分からないが、奴隷商でもあたろうかと思っていた。

 主人に逆らえない魔法とかがあればなおよし。

 これは、パーティメンバーの裏切り行為を防ぐためである。

 高額の報酬を得た後、後ろから刺したり、持ち逃げされたりしたら洒落にならないからな。

 

賢治「パーティを組むのは全然いいぞ。 ただこっちからも提案がある。」

カズマ「何だ?」

賢治「俺以外にも、誰かにパーティに入ってもらおう。」




今回はここまで出す
まさか2話目で9000字近くになるとは
ステータスの各項目は
体力がHPと防御力
魔力がMPと魔法攻撃力
力が力強さ
知力が賢さ
俊敏性が素早さ
器用さはそのままの意味
幸運が運の良さ
ガチガチの自己解釈全開のステータス内訳です
次回はめぐみんを登場させるつもりです
主人公ももう少しレベルアップさせるつもりです。
そろそろ変身させようかな
それでは、また次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第三話 この異世界転生者達に新たな仲間を

皆さん初めまして。
又はお久しぶりです。
さて、今回はめぐみんとオリジナルキャラが登場します。
そしていよいよ変身の時です。
それでは、第三話をどうぞ。


 ここは、冒険者ギルドから少し離れた宿屋

 

賢治「すみません、泊まりに来たんですけど。」

主人「はい、いらっしゃい。」

賢治「連泊って、出来ますか?」

主人「もちろん出来るよ、一週間契約か一ヶ月契約、一年契約もあるけど、どうする?」

賢治「じゃあ、一週間でお願いします。」

主人「はいよ、じゃあ1540エリスいただくよ。」

 

 俺は、カズマ達と別れて宿屋に来ていた。

 カズマ達もここに泊まっているのかと思ったが、なんと馬小屋で生活しているらしい。

 討伐報酬があるのに何で泊まらないんだろうか?

 特にカズマなんて、プライベートな空間が欲しいだろうに。

 俺も将来的には、一軒家を借りれたら借りようと思っている。

 今はせめて、しっかりと屋根のある所できっちり休める所が欲しい。

 

主人「これが部屋の鍵な。ゆっくり休みな。」

賢治「ありがとう。」

 

 鍵には205号と書いてある。

 二階へ行き205号室を見つけて、鍵を開けて中に入る。

 これで、当面の活動拠点ができたわけだ。

 

賢治「よし、早速始めるか。」

 

 何をするかというと、スキルの習得である。

 なぜか最初からスキルポイントが10000ポイントも溜まっていたので、覚えられるものは覚えておこう。

 

 跳躍 6  体捌きLv1 9  オールエレメントスラッシュLv1 30 ホーリフレアLv1 27

 ゴッド・ブロー 2500

 

 あれ? ゴッド・ブロー?

 いつの間にかアクアのスキルが追加されている。

 え? これって女神の固有スキルとかじゃないのか? しかもスキルポイントが破格だな。

 一気に4分の1保有ポイントを消費するし。 これはとりあえず、保留だな。

 その他のスキルは全部覚えよう。

 覚えたいスキルをなぞり、カードの書かれている俺の顔に触れる。

 すると、俺の中の何かが上書きされたような感覚があった。

 どうやらLVのあるスキルはさらにポイントを消費すると、レベルが上がるみたいだ。

 せっかくだから上げれるだけ上げておこう。

 その結果、今のステータスがこうだ

 

 KENJI KIRISHIMA

 Lv4

 ルーンパラディン  スキルポイント 7587

           所持金 24210エリス

 体力   475  火 150

 魔力   268  水 150

 力    191  土 150

 知力   158  風 150

 俊敏性  167  光 150

 器用さ  143  闇 150

 幸運   190

 

 ・全知全能

 ・能力透視

 ・変身

 ・平成ライダー

 ・全エレメント耐性上昇LvMax

  全てのエレメントの耐性を10あげる

  レベルMaxで50上げる

 ・跳躍

  通常のジャンプよりもさらに高くジャンプできる

 ・体捌きLvMax

  力・俊敏性・器用さを5あげる

  Maxで25あげる

 ・オールエレメントスラッシュLvMax

  全ての属性を込めた強烈な一撃を放つ

  レベルが上がると威力上昇

 ・ホーリーフレアLvMax

  神聖な炎による光属性の神聖魔法

  アンデットや悪魔に対して有効

  レベルが上がると威力上昇

 

賢治「さて、今日はこれくらいで寝るか。」

 

 スキルの習得が終わると、眠気が襲ってきた。

 明日は、予定通りパーティメンバーを募集する。

 そっちはカズマとアクアに任せて、俺は朝からクエストを受けようと思う。

 今日はしなかったが、明日は一度変身して変身前との違いや、変身をしていてもスキルが使えるのか試して見ないと。

 

 

 

ーーー翌日ーーー

 

 

ー北の森林地帯ー

 

 この日俺は予定通り、朝からクエストに出ている。

 内容は、『北の森林地帯の要救助者の捜索と指定モンスターの討伐』

 救助対象は、ドルイドの冒険者1名

 討伐対象は、オーガとバーゲスト

 なお、バーゲストは発見した場合速やかに討伐せよ。

 

賢治「さて、何事もなく見つかればいいが。」

 

 俺がこのクエストを選んだ・・・いや、頼まれたと言った方が正しい。

 実は俺と同じように、朝早くからクエストに出かけた冒険者がいるのだ。

 その冒険者が受けたのは、『北の森林地帯で希少薬草の採取』

 その冒険者の職業はドルイドで、自然を愛し、自然を守り、自然の力を借りて力を行使する職業である。

 まさにドルイドの冒険者にうってつけのクエストだ。

 しかし、俺がクエストを受けに受付に行った時

 

ー冒険者ギルドー

 

ルナ「実は、その人が出発した後にその森にバーゲストが出現したと、報告が入ってきたのです。」

賢治「バーゲスト?」

ルナ「バーゲストとは、首に鎖を巻きつけた大型の狼です。」

  「種族は精霊の類なんですけど、死と厄災の象徴とされていて、とても縁起が悪いことから発見次第討伐するのが普通なんです。」

賢治「死と厄災の象徴、確かにおっかないですね。」

ルナ「ですが彼女のレベルでは、とても手に負えない相手なんです。」

  「そこでルーンパラディンのケンジさんに、特別クエストを頼みたいのです。」

 

 

ー北の森林地帯ー

 

賢治「要は人探しと、討伐だよな。」

 

 特別クエストってだけあって、報酬は破格だった。

 森の周囲に住み着いたオーガ数匹、一体討伐につき7500エリス

 バーゲストは確認できている数は1体だけ、討伐すれば30000エリス

 要救助者の救助に成功したら、10000エリス

 まぁ、今回は最初から変身していくので、そんなに苦戦はしないだろう。

 

賢治「さて、やるか。」

 

 俺は、ジオウライドウォッチを取り出し、ウェイクベルゼを回しライドオンスターターを押す。

 『ジオウ』 シャァァァァカシャ!

 音がなた後に、ジクウドライバーが出現し腰に巻きついた。

 D‘9スロットにライドウォッチをセットし、ライドオンリューザーを押す。

 背中に大小の時計が浮かび上がり、俺はあの常盤総悟の変身ポーズをとる。

 

賢治「変身!」

 

 ジクウサーキュラーを一回転させると

 『ライダータイム! 仮面ライダー・ジオウ』

 変身が完了するとそこには、黒のボディスーツに『グラフェニウム』という金属で形成された銀色のプロテクターが装着された姿にかっわっていた。

 何より目を引くのは、顔の部分に刻まれた『ライダー』というピンク色の複眼状の『インジケーションアイ』である。

 俺も初めてテレビで仮面ライダージオウを見た時、『え?! 何これ。』と思ったくらいだ。

 変身するときの音を聞きつけてきたのか、森の中から5匹のオーガがやってきた。

 

賢治「わざわざ出てきてくれるとは、探す手間が省けたな。」

 

 さて、仮面ライダーの力を試させてもらおうか。

 『ジカンギレード』

 ジカンギレードを取り出した俺は、オーガに向かって切り込んだ。

 が、流石というか、当然というか、仮面ライダーの力は絶大で、あっという間に、5匹のオーガを倒してしまった。

 

賢治「正直拍子抜けだが、まぁいいか。」

 

 カードには何も表示されていないが、能力透視で変身した後のステータスを確認したらこんな感じだった。

 

 KENJI KIRISHIMA

 Lv6

 ルーンパラディン  スキルポイント 7597

           所持金 24210エリス

 体力   38450(769)  火 750(150)

 魔力   21700(434)  水 750(150)

 力    15450(309)  土 750(150)

 知力   13550(271)  風 750(150)

 俊敏性  13300(266)  光 750(150)

 器用さ  14800(296)  闇 750(150)

 幸運   16550(331)

 

 ・・・なんじゃこりゃ!?

 レベル6のステータスじゃないなこれわ。

 なんか、レベル6になって一気に元のステータスが上昇してないか?

 ステータスは50倍、各エレメントは5倍にはね上がっている。

 これって、俺の成長次第でさらに上がるわけだよな。

 ・・・・・・これ、俺が魔王として討伐の対象になったりしないよな?

 

  「と、とりあえず気を取り直して、次の移るか。」

 

 フォーゼライドウォッチを取り出し、仮面ライダーフォーゼの使うスイッチの力を呼び出す。

 『レーダー・ON』

 すると、左腕にフォーゼの使うレーダーモジュールが現れた。

 いちいちライダーアーマーを呼び出す手間が省けるから、この能力は便利だ。

 そして、レーダーで索敵して見ると、森の中に人間の反応とそれとは別に一際大きい反応1つが見つかった。

 

賢治「これは、・・・移動している?」

 

 人間の方は、大きい反応から遠ざかるように移動している。 そして大きな反応もまるで追いかけるように移動している。

 どうやら、すでに見つかっているようだ。

 

賢治「間に合えよ。」

 

 レーダーを頼りに、冒険者を助けるために森の中へ入っていった。

 

 

ー森の中ー

冒険者side

 

金髪の少女「はぁ、はぁ、はぁ!」

 

 私は今走っている。

 恐怖から、絶望から、死から。

 

金髪の少女「どうして、はぁ、っあ! なんでこうなったの!?」

 

ー数分前ー

 

 私はクエストを受けてこの森に来ていた。

 希少な薬草の採取に。

 私の職業はドルイド、森のことなら誰にも負けない。

 どこに薬草があるのか、これまでの経験から探し出せる。

 そして、思った通り当たりをつけた場所に到着したら、そこにはたくさんの薬草が群生していた。

 クエスト達成に必要な量を確保して、帰ろうと思った時だった。

 

 シーーーーン

 

金髪の少女「? あれ? ・・・・・・おかしい、なんでこんなに静かに?」

 

 いくら森の中とはいえ静かすぎる。

 虫や鳥たちの囀りの音が全く聞こえなくなった。

 木々の葉が風で揺れる音くらいしか聞こえない。

 

金髪の少女「・・・なんかヤバイ?」

 

 こういうのは決まって、何か起こる時の前触れだったりする。

 私は森を出るために、歩き出そうとした。 その時。

 

 ブン!

 

金髪の少女「え?」

 

 バシン!

 

金髪の少女「ガッ!」

 

 ドサッ!

 それは、鎖だった。そう、鎖がものすごい勢いで飛んできて、私は吹き飛ばされた。

 私は、痛みになんとか耐えて、鎖がやってきた方に目を向けた。

 

???「グルルルゥゥゥ。」

金髪の少女「な!! バーゲスト!?」

 

 バーゲスト

 それは、黒い毛皮に長い鎖を巻きつけた大きな狼だ。

 だがこの存在は、死と厄災の象徴と言われ、討伐の対象となっている。

 

金髪の少女「そんな! 聞いてない。」

 

 この森にバーゲストが出没するなんて事前に聞かされていない

 だが、考えるのは後だ。

 逃げないと! 私では討伐できない。

 

金髪の少女「ネイチャーコントロール!」

 

 私は自然に働きかけ、木々の枝を伸ばしてバーゲストを拘束した。

 さらに。

 

 金髪の少女「アシッドアロー!」

 

 私は手のひらをバーゲストに向け小さな魔法陣を展開する。

 そこから、酸の矢を放つ。

 その矢がバーゲストの鼻先に、上手いこと命中する。

 

バーゲスト「!! グオオオォォォ!!」

 

 拘束されているため、前足で拭うこともできないため、とても苦しそうだ。

 

金髪の少女「は、早く逃げないと。」

 

 未だに痛みの引かない体を動かして、必死になって逃げた。

 

 

ー現在ー

 

 

 そして今に至る。

 追いつかれては、拘束して逃げるを繰り返すうちに、私の体は打身や擦り傷だらけになってしまった。

 バーゲストの鼻も回復したのか、私の血の匂いを嗅ぎつけて追いかけてくる。

 もう、どこへ逃げたのかもわからない。

 完全に迷ってしまった。

 さらに私は

 

バーゲスト「グルルルル。」

金髪の少女「ひっ!」

 

 ついに追い詰められてしまった。

 木を背にして、私は恐怖で腰が抜けてしまい、その場に座り込んでしまった。

 ダメだ、もうダメだ。

 私はここで死ぬんだ。

 ・・・・・・嫌だ! 死にたくない。まだ死にたくない!

 死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない

 

金髪の少女「だ・・・誰か・・・助けて!」

 

 私は涙を流し、震えながらか細くそう口にした。

 いや有り得ない。

 こんな時間に、ましてや森の中に私を助けてくれる存在なんて

 

 『フィニッシュタイム!』

 

金髪の少女「え?」

 

 

賢治side

 

賢治「こっちか!」

 

 俺はレーダーを頼りに、冒険者を探した。

 必死に逃げ回っているのか、あっちこっちの移動していて中々捕まらない。

 だが次第に冒険者の反応が止まり出した。

 バーゲストの反応が近づいている。

 

賢治「もう少し! 間に合え!」

 

 俺は全力で走った。

 仮面ライダーの脚なら後もう少しだ。

 そして、冒険者とバーゲストの反応が、後少しで重なろうとした時

 

賢治「! いた!」

 

 その時、微かだが確かに聞こえた。

 仮面ライダーの強化されたこの耳に確かに。

 

金髪の少女「だ・・・誰か・・・助けて!」

賢治「!!」

 

 そう。確かにそう聞こえた。

 その時、俺の中に何かが芽生えた。

 助けるんだ! この手が届く全てを守るために! 誰も犠牲にしないために! 泣いている誰かの涙を止めるために! 自由と愛と平和のために!

 そう、この力は傷つけるための力じゃない。

 この力は救うための力なんだ。

 死から彼女を救うんだ!

 彼女の涙を止めるんだ!

 俺はライドウォッチのスターターを押す。

 

 『フィニッシュタイム!』

 

金髪の少女「え?」

 

 その瞬間、バーゲストの周囲にキックという文字が12個浮かび上がる

 バーゲストは何が起こったのかわからないみたいで、戸惑っている。

 その隙に、ベルトのリューザーを押し、ジクウサーキュラーを一回転させる。

 ゴーンという鐘の音が鳴った。

 

 『タイムブレイク!』

 

賢治「ハアアアアァァァ!!」

 

 俺はジャンプし、バーゲスト目掛けてライダーキックを見舞った。

 距離が近づくにつれて、キックの文字が減っていきバーゲストに接触すると同時に、足の裏にあるキックの文字と重なり、強烈な一撃がバーゲストに炸裂似た。

 

バーゲスト「!!」 バシイイイン!!

  「グッ! グゴオオオオオオ!!」 ドオオオオォォォン!

 

 バーゲストは、一瞬苦しんだように見えた、だが次の瞬間爆発四散した。

 俺は着地し、念のためにカードを確認した。

 バーゲスト×1

 と表示されていた。どうやら倒せたようだ。

 彼女のもとへ歩いて近づく。

 彼女に手を差し伸べた。

 

金髪の少女「あ。」

賢治「もう、大丈夫だよ。」

金髪の少女「あ、え?」(私、助かったの?)

 

 

冒険者side

 

 私は助かったの?

 この人は一体?

 レベル15以上の冒険者4、5人が協力してやっと倒せるバーゲストを蹴り一発で倒してしまった。

 何より彼の姿、こんなの見たことがない。

 黒いボディースーツに銀の鎧を纏っている。

 顔には文字みたいなものが刻まれた仮面をつけている。

 こっちに近づいてくる。

 だが、不思議と怖くない。

 震えが治り、涙も止まった。

 

賢治「もう、大丈夫だよ。」

金髪の少女「あ、え?」

 

 彼が何者なのか分からない。

 だが、その声はどこかで聞いたような気がする。

 その一言を聞いた時、私はようやく

 

金髪の少女(あぁ、私本当に助かったんだ。)

 

 私は、心底安心し、差し出された手を掴んだ。

 

賢治side

 

賢治「立てる?」

金髪の少女「う、うん。」

 

 彼女の手を掴んで、ゆっくり立たせてあげる。

 よく見たら、この人は俺が冒険者ギルドの場所を訪ねたとき、場所を教えてくれた人だ。

 

賢治「そう言えば、あの時はありがとう。」

金髪の少女「え?」

賢治「冒険者ギルドまでの道、教えてくれたでしょ。」

金髪の少女「え?!」

賢治「? あっ! このままじゃ分かんないか。」

 

 俺はベルトからライドウォッチを外した。

 すると元の姿に戻った。

 それを見て彼女は

 

金髪の少女「え!? 鎧が消えた!」

  「ああ! 君あの時の!」

賢治「そ! よかった、間に合って。」

 

 それからなぜ俺がここにいるか説明した。

 

金髪の少女「そっか。ありがとう、探してくれて。」

  「本当に死ぬかと思ったよ。・・・本当に・・・」

 

 思い出して、また恐怖が込み上げてきたのか、微かに震え出してしまった。

 こういうとき、どうしてあげれば?

 ・・・よし、こっちも勇気がいるが

 

賢治「・・・」ギュ!

金髪の少女「あ!」

賢治「大丈夫、大丈夫だから。」

 

 彼女を抱きしめ、優しく背中を撫でてあげる。

 恐怖から解き放たれた反動か、彼女が

 

金髪の少女「うぅ、う、ううぅ・・・あぁ、あはあぁぁぁ、うああぁぁ!」

賢治「・・・」

 

 俺は、彼女が泣き止むまで、抱きしめることにした。

 無理もない、さっきまで死ぬかもしれない

・・・いや、俺が駆けつけなかったら確実に死んでいたのだから。

 救えなかったらと思うとゾッとする。

 そうなったら俺は一生後悔するだろう。

 本当に・・・救えてよかった。

 

金髪の少女「・・・ありがとう。」

賢治「いいって。」

 

 ひとしきり泣いて、落ち着いたのか彼女がお礼を言ってきた。

 こっちとしても、抱きしめることで彼女が安心できたのならよかった。

 

賢治「まず、傷の手当てをするか。」

金髪の少女「え? 君回復魔法が使えるの?」

賢治「いや、ちょっと違うかな?」

 

 俺はフォーゼライドウォッチを使う。

 『メディカル・ON』

 すると、左腕にメディカルモジュールが出現した。

 開けると、中には治療用キットが入っている。

 注射器の形をしたツールを使えば、治療や解毒といった手当てを行える。

 

金髪の少女「え! それ注射?」

賢治「大丈夫、全然痛くないから。」

 

 ツールの中に治療用のカプセルをセットする。

 治療用のコズミックエナジーを体内に注入するツールだが、痛みは無いはずだ・・・・・・多分。

 

賢治「腕に当てるから。」

 

 彼女の上にツールの先端を当てる。

 すると彼女の体が、淡い緑の光に包まれる。

 

金髪の少女「! あ! ううぅぅん!」

  (う! 嘘?! なにこれ。・・・気持ちいい!!)

 

 ・・・なんか、気持ちよさそうな声が・・・

 まぁ、痛くなかったようで何より。

 彼女の傷は、おかげですぐに治った。

 

賢治「どう、具合は?」

金髪の少女「・・・・・・」ポー//////

  「はっ! うん。もう全然大丈夫。」

賢治「ならよかった。じゃあ、この森から出ようか。」

 

 俺はメディカルモジュールを解除し、ライドストライカーのライドウォッチを起動させる。

 すると、ライドウォッチがバイクに変化した。

 

金髪の少女「え! 何これ? 乗り物?」

賢治「これで一気に森を出よう。」

  「そういえば、君名前は?」

金髪の少女「あ! 言ってなかったね。」

  「私は、エルシャよ。」

賢治「エルシャか。俺は賢治だ。よろしく。」

  「じゃあ、後ろに乗って。」

エルシャ「うん。」

 

 エルシャが乗ったのを確認すると、バイクを起動させた。

 最初はバイクからなった音にびっくりしていたが、それも一瞬だった。

 

賢治「じゃあ、俺の腰に手をまわして、しっかり捕まってな。」

エルシャ「う、うんわかった。」ギュッ

  (うわー、これ、なんかドキドキする。)

  (男の人にこんなに密着したの、初めて。)

  (・・・いや、さっき抱きしめられてたよね、私。)

賢治「行くよ!」

 

 俺は、バイクを走らせた。

 う〜ん。いいなこの風を切る感じ。

 やっぱバイクは男のロマンだ。

 

エルシャ「わわわ! すごい! 早い早い!!」

  「これ、絶対馬車より速いよ!!」

 

 ビックリはしているが、怖くはないようだ。

 初めての感覚に興奮しているのだろう。

 そうして無事森を抜け、アクセルの正門前まで戻ってきた。

 バイクはここまでだ。

 ライドストライカーをウォッチにして仕舞う。

 

エルシャ「あっという間にアクセルまで着いちゃった。」

  「それに、そのバイク? そんなに小さくなるなんて、嘘みたい。」

賢治「そういうマジックアイテムなんだ。」

エルシャ「なるほど。」

 

 納得してくれたようだ。

 正直、原理を聞かれても俺もよく知らないから、答えに困る。

 そうこうしている内に、冒険者ギルドについた。

 ルナさんはエルシャの無事を確認すると、彼女の無事を喜び、ギルドの調査不足により彼女を危険に晒したことを、謝罪していた。

 何はともあれ、無事でよかった。

 そして今回の俺の稼ぎを確認しておこう

 

 オーガ討伐報酬 7500エリス×5

 バーゲスト討伐報酬 30000エリス×1

 要救助者救出成功報酬 10000エリス

 合計 77500エリス

 

 という訳で、今の俺の所持金は101710エリスになった。

 だいぶ溜まってきたな。

 これだけあれば、もう少し装備を整えられるだろう。

 その前にカズマ達を探してみるか。

 

賢治「えぇっと、あっ!居た。」

  「お〜い、カズマ、アクア。」

カズマ「おう、賢治。」

賢治「どうだ、誰かパーティに入ってくれそうな人来たか?」

カズマ「いやぁ〜・・・それが、全然。」

賢治「え?」

 

 もうかれこれ半日近くたっているのに、まだ1人もか?

 いくら何でも、それは無いだろう。

 カズマは冒険者だが、あらゆるスキルを覚える事ができるんだ。本職には劣るが、かなり使える人材だと思う。

 アクアも性格はアレだが、上級職のアークプリースト。回復のスペシャリストだ。どのパーティも欲しがるはずだ。

 なのに誰も来ないって・・・

 

エルシャ「ねぇ。」

賢治「うん?」

エルシャ「ケンジのパーティって、メンバーを募集しているの?」

賢治「そうだけど。」

エルシャ「多分、あのパーティメンバー募集の張り紙が・・・」

賢治「え?」

 

 俺は、メンバー募集の掲示板を見に行った。

 そこには・・・

 

 急募!  メンバー アークプリースト・ルーンパラディン・冒険者

 『アットホームで和気藹々としたパーティです!☆美しく気高いアークプリーストアクア様と共に冒険したい方を募集しています!』

 「このパーティに入ってから毎日がハッピーですよ! 宝くじにも当たりました!」

 「アクア様のパーティに入ったら、病気が治ってモテモテになりました!」

 採用条件:上級職の冒険者に限ります

 

 ・・・・・・うん。これが原因だな。

 どこの宗教勧誘だ!ザケンナー!

 俺はみんなの所に戻って、改めて話し合った。

 

賢治「なぁ、もう少し採用条件下げようぜ。」

カズマ「そうだぜ、『いくら何でも上級職に限る』はハードル高すぎるだろ。」

アクア「うぅ、だって・・・」

エルシャ「・・・あの、よかったら私が入ろうか?」

「「「え?!」」」

 

 俺たち全員がエルシャの方に目を向けた。

 そうだな、エルシャはドルイド。

 回復魔法に関しては、アークプリーストのアクアに劣るが、自然の力を借りた戦闘スタイルはこのパーティには無い力だ。

 

カズマ「賢治、誰なんだこの人?」

賢治「今朝受けた特別クエストで助けたんだ。」

アクア「う〜ん、ドルイドか。」

  「ステータスは、まぁ、普通ね。」

エルシャ「うっ。」グサっ!

 

 彼女の冒険者カードを見ていたアクアがそう口にした。

 おいおい、ぶっちゃけ過ぎだろ。

 もっと長い目で見てあげなよ。

 

賢治「今はそうでも、将来レベルが上がって上級職に転職出来るかも知れないじゃないか?」

アクア「う~ん。」

 

 いったい何が不満なんだか。

 よーし、そっちがその気なら。

 

賢治「まぁ、そっちにその気がないなら、彼女には俺のパーティに入ってもらうけどいいか?」

カズマ・アクア「え?!」

エルシャ「ケンジ!?」

 

 だって、いらないならこっちが貰うに決まってる。

 今の所俺はソロだし。

 

カズマ「いや待てよ賢治、お前もう俺たちとパーティ組んでるだろ。」

賢治「あぁ、分かってるよ。これからもカズマ達とパーティは組むぞ。」

  「けど、カズマのパーティと俺のパーティ別々に作っておきたいんだ。」

  「いろんな人がいるのは、悪いことじゃないからな。人=力だ。」

カズマ「そう言う事なら・・・」

 

 いまいち納得がいかないのか、悩んだ顔をするカズマ。

 その時、後ろから声がした

 

???「募集の張り紙見させていただきました。」

「「「「え!?」」」」

 

 俺達は同時に声のした方に、顔を向けた。

 

???「この邂逅は世界が選択せし運命(さだめ)、私はあなた方のような者の出現を待ち望んでいた。」

 

 すると、彼女はマントをバサッとたなびかせて。

 

???「我が名はめぐみん! アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操りし者!」

「「「「・・・・・・」」」」

 

 あまりの中二っぷりにみんな言葉を無くしている。

 カズマは「え~っと」という顔で、アクアは何と言ったらわからない顔をして、エルシャは(あぁ、この子か)と言う顔をしている。

 

めぐみん「クックック、あまりの強大さゆえに世界に疎まれし我が禁断の力を、汝も欲するか。」

「「「「・・・・・・」」」」

めぐみん「ならば、我と共に究極の深淵を覗く覚悟をせよ。」

  「人が深淵を覗く時、深淵もまた人を覗いているのだ。」

カズマ「・・・冷やかしか?」

 

 沈黙に耐えかねたのか、カズマがド直球に聞いた。

 

めぐみん「ち、違わい!」

 

 などと、可愛げに返すめぐみんという子。

 仕方ない、ここはひとつ、大人の対応をしようではないか。

 俺は、彼女に向き直って、左手を握りしめて腰に置き、右手を顔の前から横に振り払った。

 ポーズのイメージはアルファベットのKを意識して

 

賢治「我が名は霧島賢治! ルーンパラディンを生業とし、最高最善の力を操りし仮面の戦士!」

  「やがては、この世界の魔王を倒す者なり!」

 

 フッフッフ、どうよ。このイカしたセリフは。

 やっぱりこういうのは、相手に合わせるものだ。

 チラッとカズマを見ると、『こいつマジか?』という顔をしていた。

 アクアは、いまだに展開についていけていないようだ。

 エルシャは、『え! 君も?』という顔をしている。

 ・・・改めて言うが、こういうのは、相手に合わせてあげるのが礼儀というものだろう。

 当のめぐみんは

 

めぐみん「ハァァァァァ!!」☆キラキラ☆

 

 うん。どうやら高評価だったようだ。

 ならば良し。

 

めぐみん「な、何ですか今の格好いいセリフと格好いいポーズは!」

  「ていうか、私と同じような返しをしてくれたのはあなたが初めてですよ!」

  「自分で考えたんですか?! 最高最善の力って何ですか?! 仮面の戦士って何ですか?!」

 

 俺の力について興味津々なようで、グイグイ来る。

 ・・・・・・この子中々可愛いな。

 前にいた世界でこんな子がいたら、間違いなくいい友達になれていただろう。

 

めぐみん「あの! もう一度や・・・って・・・・みせ・・・・て・・・」ドサッ!

賢治「え?」

 

 急にめぐみんが、両手をついて倒れた。

 

賢治「お、おい?! どうした?」

 

 他の皆も、慌てた様子でめぐみんに近づく。

 すると、次に聞こえてきたのは

 『グウゥゥゥゥ~。』

 という音だった。

 

めぐみん「モ、モウ・・・ミッカモナニモ・・・タベテナイノデス。」

  「ナニカ・・・タベサセテ・・・イタダケマスカ?」

 

 成程、三日もか・・・

 そりゃあ、腹も減るわな。

 俺はメニュー表を手に

 

賢治「まぁ、なんか頼めよ。話はそれから。」

 

 




今回はここまでです。
次回はめぐみんの爆裂魔法が炸裂します。
そして賢治がカズマにあるものを渡します。
次回はダクネスも登場する予定です。
オリジナルキャラをもう1人2人増やそうと思います。
少なくとも1人は確実に増えます。
それではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

人物紹介(オリキャラ)

ここでは、オリジナルキャラの賢治とエルシャについて
軽く現在のステータスを交えて紹介しておきます


〇霧島賢治

 

 LV8

 

 職業 ルーンパラディン  スキルポイント 7647

 

 体力  896(44800)  火 150(750)

 魔力  497(24850)  水 150(750)

 力   367(18350)  土 150(750)

 知力  321(16050)  風 150(750)

 俊敏性 307(15350)  光 150(750)

 器用さ 349(17450)  闇 150(750)

 幸運  383(19150)

 

※()内は変身時の数値

 

スキル

 ・全知全能(アカシック・レコード)

  現存するすべてのスキルを職業関係なく習得可能

  習得に必要なスキルポイントは3倍になる

 ・能力透視

  自分または相手のステータスを見る事ができる

 ・変身

  仮面ライダージオウへの変身

 ・平成ライダー

  平成ライダーの全ての能力と武器を使用可能

  変身前でもある程度使用可能

 ・全エレメント耐性上昇LvMax

  全てのエレメントの耐性を10あげる

  レベルMaxで50上げる

 ・跳躍

  通常のジャンプよりもさらに高くジャンプできる

 ・体捌きLvMax

  力・俊敏性・器用さを5あげる

  レベルMaxで25あげる

 ・オールエレメントスラッシュLvMax

  全ての属性を込めた強烈な一撃を放つ

  レベルが上がると威力上昇

 ・ホーリーフレアLvMax

  神聖な炎による光属性の神聖魔法

  アンデットや悪魔に対して有効

  レベルが上がると威力上昇

 

 習得可能スキル

 

 敵感知 3P   初級治癒魔法 3P   ゴッド・ブロー 2500P

 

 

 黒髪でローズブラウンの瞳の21歳の社会人。

 ゲームと仮面ライダーが大好きで社会人になってからは、子供の頃には買って貰えなかった仮面ライダーのベルトやアイテムを定期的に通販で買い始める。

 特に好きなのは、仮面ライダージオウ。

 交通事故で命を落とし、転生特典に『仮面ライダージオウに関する全て』と言うくらい好き。

 異世界に転生してからは、同じ異世界転生者の佐藤和真と彼の転生特典で道連れにされた水の女神アクアとパーティを組むことになる。

 クエストで、ドルイドのエルシャを救出したその日に、エルシャともパーティを組むことになる。

 全てのステータスが、普通のレベル1の冒険者の平均値の3倍の数値だった為、レベル1でありながら、最上級職のルーンパラディンになることができた。

 仮面ライダーに変身した際に、スキル能力透視で自分のステータスを確認した際に、その数値に驚き自分が魔王として討伐の対象にならないか若干心配している。

 

 

 

 

○エルシャ

 

 LV 6

 

 職業 ドルイド   スキルポイント 14P

 

 体力   54  火 50

 魔力   72  水 75

 力    43  土 80

 知力   55  風 45

 俊敏性  57  光 50

 器用さ  44  闇 50

 幸運   31

 

 

スキル

 

 ・ネイチャーコントロール

  自然に働きかけ、植物を操る

  籠める魔力により、操作できる植物も変わる

 ・アシッドアローLv1

  酸の矢を放つ

  レベルが上がると威力が増す

 ・初級治癒魔法

  ヒール

 ・ポーション生成Lv1

  薬草から各種ポーションを作ることができる

  レベルが上がると生成できるポーションの種類が増える

  ○生成可能ポーション

   ポーション(体力回復と傷を治す)

   マナポーション(魔力回復と気力を回復する)

   解毒ポーション(毒の状態異常を回復する)

 

 金髪で右のサイドテール、緑の瞳のドルイドの17歳の冒険者

 基本はソロで活動しているが、パーティを組む冒険者仲間はいる

 クエストの最中に、バーゲストに襲われた所を、仮面ライダーに変身した賢治によって救われる

 以後、仮面ライダーという存在に興味を持つようになり、賢治とパーティを組むことになる

 

 (ちなみに、キャラクターのイメージは防振りのフレデリカ)




とまぁ、こんな感じです
次回の第四話はもう少し先になると思います
もう少し時間をください
それでは又次の回で


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第四話 この爆裂娘に仮面の祝福を

みなさん初めまして。
またはお久しぶりです。
そして、明けましておめでとう御座います。
本当は年末あたりに投稿したかったんですが、仕事の忙しさと
FGOのクリスマスイベントを7日と言う短期間で終わらせなければならず、そっちに集中していました。
その甲斐あって、無事サンタカルナをお迎えできました。
投稿が遅れて申し訳ありません。

さて、タイトルでわかると思いますが、めぐみんが仮面ライダーの資格を得ます。
めぐみんを仮面ライダーにするか正直悩みましたが、やっぱりしなきゃでしょ。

では、第四話をどうぞ。


めぐみん「ガツ!ガツ! ゴキュ!ゴキュ!」

 

 あの後、めぐみんはジャイアントトードの唐揚げとサラダの盛り合わせを3人前ほど注文し、それを見事に平らげてしまった。

 この小さな身体のどこにアレだけの量が入るのか?

 人間、三日も何も食べていなかったらこれだけの量を食べられるものなのだろうか?

 それとも、食べた端から魔力に変換しているのだろうか?

 俺がその食べっぷりを見ていると

 

めぐみん「あの、恥ずかしいので、あんまり見ないでくれますか?」//////

賢治「あぁ、ごめん。」

 

 なんか、あれだ。

 女の子が美味しそうにご飯を食べている姿は、見ていて微笑ましいな。

 

アクア「冒険者カードは偽装できないし、彼女はアークウィザードで間違いないわ。」

  「それに、彼女が爆裂魔法が使えるなら凄いことよ! 最強の攻撃呪文だもの。」

カズマ「確かにこの子の魔力と知力、高いな!」

 

 めぐみんの冒険者カードを見ていたアクアとカズマが魔力と知力の高さに驚いていた。

 俺も見せてもらったが、魔力982 知力102 と結構高い。

 厨二っぽい感じだが、中々頭が良いようだ。

 因みにめぐみんは紅魔族と呼ばれる種族で、生まれつき高い魔力と知力があって、大概変な名前をしているらしい。

 が、そんな紅魔族でも爆裂魔法は、魔力の消費が激しく使えるアークウィザードは非常に珍しいようだ。

 

めぐみん「あの、『この子』とか『彼女』ではなく、名前で呼んでください。」

 

 名前で呼ばれなかったのが気に入らなかったのか、そう言ってきた。

 

エルシャ「・・・あの〜ちなみに両親の名前は?」

めぐみん「母はゆいゆい!父はひょいざぶろー!」

「「「「・・・・・・」」」」

 

 俺達はまた絶句した。

 特に父だ。ひょいざぶろーって。

 

賢治「・・・この子の種族は優秀な魔法使いが多いんだよな?」

めぐみん「お! おい! 私の両親の名前について言いたい事があるなら聞こうじゃないか?!」

 

 と、漫才みたいな掛け合いはこれくらいにして。

 とりあえず、めぐみんの食事が終わった後、エルシャとめぐみんの実力を見るためにクエストを受けた。

 内容は、この前と同じでジャイアントトードの討伐だ。

 実力を見る相手としては、十分だろう。

 ただ、俺はエルシャが言っていた『あまり、期待しない方がいいと思うよ。』と言う言葉が気になる。

 そして、目的の場所に着くとすでにカエルが2匹ほど見つかった。

 

めぐみん「爆裂魔法は最強の攻撃魔法ですが、準備に時間がかかります。」

  「準備が整うまで、足止めをお願いします。」

カズマ「よーし、やってやる。」

アクア「えぇ! 賢治から借りた武器があれば怖いもの無しよ!」

 

 そう、2人には前回同様、ドラゴンロッドとタイタンソードを貸している。

 最初この武器を出した時、めぐみんとエルシャは見たこともない武器に驚いていた。

 めぐみんもキラキラした目で使いたいと言ってきたが、今回は普段の実力が知りたいので又今度にしてもらった。

 

賢治「じゃぁ、遠い方のカエルを標的にしてくれ。」

めぐみん「了解です。」

賢治「こっちに近づいて来ている奴は、俺とカズマとアクアとエルシャで仕留めるぞ。」

エルシャ「じゃぁ、私が草に働きかけて、カエルの足止めをするわ。」

  「ネイチャーコントロール!」

 

 エルシャが魔法を使うと、こっちに向かって近づいてきていたジャイアントトードの足元の草が急成長して足に絡み付いた。

 

「「「「おおぉ!」」」」

エルシャ「でも、所詮草だからそんなに長く足止めできないからね。」

 

 まぁ、草だし。

 魔力で強化されているのか、カエルの方も中々振り解けないようだ。

 

アクア「前回のリベンジよ! 見てなさい!」

  「うおおおぉぉぉ!!」

 

 アクアがドラゴンロッド片手に、カエルに突っ込んでいった。

 この先の展開は何となく予想できる。

 

アクア「神の力、思い知るがいいわ!!」

  「ゴッド・レクイエムゥゥゥ!!」

 

 昨日のゴッド・ブローの武器使う版みたいな技をだす。

 相変わらず、すごい技だということはわかるんだが。

 

アクア「ゴット・レクイエムとは、女神の愛と悲しみの鎮魂歌! 相手は死ぬぅぅぅ!!!」

 

 と、ゴッド・レクイエムの極彩色の光を纏ったドラゴンロッドがカエルに到達する前に

 

アクア「プフッ!!」

 

 アクアは見事に食われた。

 いくらいい武器を持っていても、当たらないと意味ないよな。

 それにしてもアクアの奴、学習能力がないのか?

 ・・・あ! 彼女の知力って確か8しかないんだっけ。

 

カズマ「・・・さすがは女神。 身を挺しての時間稼ぎか。」

エルシャ「じゃなくて、助けようよ。」

賢治「はぁ、仕方ない。」 ガシャ!『ジュウ』

 

 俺は、ジカンギレードを剣モードから銃モードに切れ変える。

 すかさず、ジオウライドウォッチをジカンギレードのライドウォッチスロットにセットする。

 

 『フィニッシュタイム!』

 

 必殺技の待機音が鳴り、アクアを銜えたカエルの大きな腹の部分に狙いを定める。

 正直、銃なんて初めて使うから、外れたらごめんなアクア。

 そして、トリガーを引くと。

 

 『ジオウ! スレスレシューティング!』 バシューーーン!!

 

 ジカンギレードから必殺の一撃が、狙い通りカエルの腹めがけて飛んでいく。

 しかし、その一撃はカエルの腹を突き破って、はるか彼方へ飛んで行った。

 その衝撃で、アクアも口の中から吐き出てきた。

 

カズマ・エルシャ「・・・・・・」

賢治「・・・やり過ぎたか?」

 まさか突き破ってしまうとわ。

 あまりの威力にカズマとエルシャはドン引きしてる。

 一方、めぐみんは

 

めぐみん「ハァァァァァ!!」✨キラキラ✨

 

 うん。 好評みたいだ。

 やっぱり中二病には、仮面ライダーの武器や必殺技は格好よく映るんだろうか?

 視線から、『格好いい!』『自分も使いたい』などの感情が伝わってくるようだ。

 まぁ、俺的には仮面ライダー関連の物を格好いいと思ってくれるのは、すごく嬉しいからいいんだけど。

 

賢治「あぁ~、めぐみん。 今はカエルに集中しような。」

めぐみん「はっ! すみません。 格好良かったのでつい。」

  「コホン! では、次は私です。 私も格好よく決めて見せます!」

 

 めぐみんが目を閉じ、集中し始める。

 すると、めぐみんの周囲に肉眼でも分かるくらいの高密度の魔力が渦巻いているのが見えた。

 最強の攻撃魔法・・・・・・いったいどんな魔法なんだ?

 

めぐみん『黒より黒く、闇より暗き漆黒に

     我が深紅の混交を望みたもう

     覚醒の時来たれり

     無謬(むびゅう)の境界に堕ちし理

     無業の歪みとなりて現出せよ

     踊れ踊れ踊れ

     我が力の奔流に望むは崩壊なり

     並ぶ者なき崩壊なり

     万象等しく灰燼(かいじん)に帰し

     深淵より来たれ』

  「これが人類最大の攻撃魔法!!」

  『エクスプロージョン!!』

 

 めぐみんが詠唱し始めると、カエルの周りで魔力が渦巻き始める。

 『エクスプロージョン』と叫んだ時に、魔力の渦に乗って虹色の星のような輝きが奔る。

 次の瞬間、とてつもない爆音とともに凄まじい爆風がやってきた。

 後には巨大なクレーターと、炭と化したカエルだった物だけだった。

 

カズマ「スゲー!」

賢治「これが爆裂魔法か。」

エルシャ「初めて見たけど、すごいわ!」

 

 もう、すごいの一言だ。

 これは、小さな砦なら木っ端微塵に吹き飛ぶだろう。

 いや、仮にこれをアクセルの街に放ったとして、恐らく街の1か2割くらい吹き飛ぶくらいの威力だな。

 爆裂魔法の威力に一同が感心していると

 

 ヌモッ!

 

賢治「え?」

 

 なんと、カエルが地面から出てきた。

 しかも一匹ではなく、近くから他にも数匹出てきた。

 

カズマ「な! こいつら、なんで?」

エルシャ「嘘でしょ?!」

 

 ここで俺は、一つの結論に行き着く。

 恐らく・・・いやほぼ間違いなく、さっきの爆裂魔法の音で目を覚ましたのだと。

 ていうか、まだ周囲にこれだけのカエルがいたのが驚きだ。

 これは、あれだな。

 『一匹見つけたら、十匹いると思え』というやつだ。

 これはちょっとまずいな。 いくら相手がカエルとはいえ、数の暴力には

 

賢治「みんな、いったん離れ・・・・・・めぐみん?」

 

 めぐみんがうつ伏せに倒れていた。

 え? なんで? 死んだふり的な何かか?

 

めぐみん「プフッ! 我が奥義である爆裂魔法は、その絶大な威力故に、消費魔力もまた絶大。」

  「簡単に言うと、限界を超えて魔力を放ったので、身動き一つとれません。」

「「「えぇぇ~~~!!」」」

エルシャ「あぁ〜、やっぱりね。」

 

 なるほど、要するに一発芸か。

 ・・・・・・ってダメじゃん。 カエルなんかにそんなの使ったら。

 呆れが10割を占めた。

 こんなこと今まで経験したことないぞ。

 て言うか、エルシャはこのこと知ってたのか?

 

賢治「あぁぁ、もう! カズマ! アクア! エルシャ! こっちに来い!!」

 

 俺はめぐみんの傍に行き、ほかの三人に指示を出した。

 ちょうど近くにいたカズマとエルシャは、すぐにこちらに来た。

 アクアは、カエルに食われたショックから立ち直ったのか、多少ふら付きながらも合流できた。

 俺は、ジオウライドウォッチのスターターを押した

 

 『ジオウ!』

 

 その瞬間にベルトが装着され、D′9スロットに差し込みベルトのリューザーを押し

 

賢治「変身!」

 

 変身のポーズをとり、サーキューラーを一回転させる。

 

 『ライダータイム! 仮面ライダー・ジオウ!』

 

 スーツにプロテクターが装着され、仮面にライダーの文字が刻まれる。

 本日二回目の変身だ。

 チラリと、カズマ達を見てみると

 アクアは初めて見た変身に口をパクパクさせている。

 エルシャは、口に両手を当てて、目を見開いて驚いている。

 めぐみんは、ジカンギレードの時より更に目をキラキラさせていた。

 その目から『今すぐそれを説明してほしい!』『カッコいい!!』『私もなりたい!!』という感情が見てわっかった。

 そしてカズマは・・・

 

 

カズマside

 

 俺は、賢治の変身を今日初めて見た。

 おそらくこの仮面ライダーは時計をモチーフにしているのだろう。

 やっぱり仮面ライダーの変身は格好いいと思う。

 だが、顔にある『ライダー』の文字は・・・・・・うん、やっぱり格好いい。

 最初に一瞬見た時は、『何これ?』って思ったがこう言う仮面ライダーなんだと思うと不思議と格好よく見えるから凄い。

 こうして目の前の仮面ライダーを見ていると、俺がまだ小学生だった頃を思い出す。

 その頃の俺は、割と本気で『ヒーロー』に憧れ、そして本気で『ヒーロー』になろうとしていた。

 誰かのピンチに颯爽と駆けつけ、どんな強敵にも立ち向かい、何度倒れても、その度に強くなって立ち上がる。

 強きを挫き弱きを助ける、そんな、男なら誰もが一度は憧れる『ヒーロー』に。

 だが、それはいつの頃からか、叶わない夢だと見切りをつけ諦めてしまった。

 自分には特別な力なんてない、所詮はテレビや漫画の中だけの世界なのだと。

 ・・・・・・だが、もし叶うなら。

 分不相応だと思うが、もう一度『ヒーロー』に

 仮面ライダーみたいな『ヒーロー』に

 第二の人生を得たこの世界ならそんな夢をもう一度本気で目指してもいいのではないか?

 

 

賢治side

 

 カズマは・・・・・・何というか、憧れとか感動とか。

 そんな感じのちょっと複雑な表情をしていた。

 流石にみんなでそんな風に見られると、恥ずかしいな。

 そんな風に思っている最中でも、カエル達はこっちに近づいてきている。

 ジカンギレードの銃モードで応戦するが、それでも倒しきれない。

 ・・・そうだ! 俺も魔法を使おう!

 俺はウィザードライドウォッチを取り出し、ベルゼを回しスターターを押した。

 

 『ウィザード!』

 

 そして反対側の、D‘3スロットに差し込み、サーキュラーを一回転させる。

 

 『アーマータイム! プリーズ! ウィザード!』

 

 すると、ウィザードアーマーが目の前に出現し、装着される。

 赤いボディースーツに、仮面ライダーウィザードの変身アイテム、フレイムリングを模した魔動力供給装甲『フレイムリングショルダー』に、胸の部分に仮面ライダーウィザードの全能力を収める中枢回路、『ストライクブレスター』。

 そして、背中から足元まで伸びた、魔動力増幅器『エングレイブドカタリスター』が装着された、魔法使いの姿をしたジオウがそこにいた。

 

カズマ「おぉー!! フォームチェンジも出来るのか!!」

めぐみん「!!!! もう! 何から何までカッコ良すぎですー!!」

  「何ですかその赤い姿は!? 紅魔族の琴線にドストライクですよ!!」

エルシャ「か・・・格好いい。」

アクア「・・・・・・・」ポカーン

 

 いやもう! 嬉恥ずかしMy Heart!!

 ここまで褒められると逆に恥かしいな。

 よーし、早速使ってみるか。

 俺は左手をウォッチにかざしウィザードの魔法を発動させる。

 

 『エクスプロージョン! プリーズ!』

 

賢治「ハァ!」

 

 左手を前に突き出すと、周りにいるカエル達の周囲で複数の爆発が起きた。

 めぐみんの爆裂魔法ほどでは無いが、それでもカエル達を倒すだけの威力は十分にあるようだ。

 その時

 

賢治「・・・うん?」

 

 何だか、自分の中にあるなにかが抜けていったような気がした。

 何と言うか、一仕事を終えて一息ついた時のような、ほんのすこしだけ疲れたような・・・

 そうか! これが魔力を消費する感覚か。

 なるほど、これならめぐみんの状態にも納得だ。

 俺も魔力が切れたらめぐみんみたいになるのか。

 まぁ、仮面ライダーになれば魔力にはかなり余裕が出来るから連発しない限り大丈夫だろう。

 そんなことを思っていると、さっきの『エクスプロージョン』で黒焦げになったカエルが、9匹倒れていた。

 

賢治「これは、追加報酬が期待できるな。」

カズマ「うわ〜、あんなにいたカエルが賢治の魔法一発で全滅かよ。」

エルシャ「めぐみんの爆裂魔法も凄かったけど、賢治の魔法もすごいわ。」

めぐみん「くっ、魔法の威力は確実に私の方が上ですが、一発でこれだけの数倒してしまうとは・・・ 悔しいデスッ!」

アクア「こ・・・これって賢治1人いれば十分じゃない?」

 

 いや、俺が仮面ライダーになれたからできることであって、それがなかったらさっきの状況はどうにもならなかったと思うぞ。

 それより今はめぐみんだな。

 

賢治「めぐみん、起きれるか?」

めぐみん「・・・いいえ、まだ動けません。 顔を動かすくらいなら出来ますが。」

賢治「う〜ん・・・よし。」

 

 俺は今度は別の魔法を発動した。

 

 『プリーズ! プリーズ!』

 

 俺は、仮面ライダーウィザードこと操真晴人がコヨミという女の子にやっていたように、めぐみんに魔力を渡すことにした。

 俺がめぐみんの腕を掴むと。

 

めぐみん「お! おおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

賢治「うおぉぉぉ!!」

 

 さすが魔力982だけあって、俺の魔力がごっそり持っていかれた感覚があった。

 そして、十分に魔力が行き渡っためぐみんは

 

めぐみん ムク! 「魔力が回復しましたー!」

カズマ「え?! 賢治、何したんだ?」

賢治「俺の魔力をめぐみんに渡したんだよ。」

 

 上手くいくか分からなかったが、めぐみんが元気になってよかった。

 

アクア「魔力を渡したって? 賢治、あなた魔力今いくつなの?」

賢治「えぇ〜っと、変身している今なら20000位あるはずだけど。」

アクア「・・・・・・えええぇぇぇぇ!!!」

めぐみん「ま・・・魔力20000?!」

 

 まぁ、駆け出し冒険者が魔力20000なんてまずあり得ない。

 これも仮面ライダーの力のおかげだな。

 

めぐみん「賢治! 私もその・・・仮面ライダーですか?」

  「それになれませんか?」

賢治「う〜ん。 今は無理かな?」

 

 今のところ、ゲイツもツクヨミもウォズも反応がない。

 いや、もしかしたら他のウォッチが反応するかも知れないが?

 でも、何となくだが、めぐみんは選ばれるような気がする。

 それが何時になるのか分からないが。

 

めぐみん「くっ、残念です。」

エルシャ「・・・・・・」

  (私だって・・・)

カズマ「はぁ〜、俺も賢治みたいに仮面ライダーになれたらなぁ。」

賢治「・・・・・・」

 

 カズマに関しては、俺と同じ仮面ライダーを知っているわけだから、もしかしたら・・・

 

賢治「カズマ、これを渡しておくよ。」

カズマ「え? これは?」

 

 俺はカズマにゲイツライドウォッチを渡した。

 これは本当に勘だが、カズマなら選ばれ

るような気がする。

 同じ仮面ライダーを知る人間として。

 

賢治「もし、カズマに資格があったらそれが答えてくれるはずだから。」

カズマ「お、おぅ・・・わかった。」

 

 そして俺たちは、クエストの報告をするためにギルドへ向かった。

 道中で、めぐみんとエルシャの評価をみんなで話した。

 エルシャは支援と回復の方面で役に立ちそうなので、喜んでパーティに入ってもらうことにした。

 だが、問題はめぐみんである。

 一発撃ったら動けなくなる魔法使いとか、正直笑えない。

 カズマが「これからは、他の魔法で頼む。」と言った時、めぐみんが「私は、爆裂魔法しか使えません。」といった時は、自分の耳を疑った。

 マジで?! と思った。

 次に驚いたのが、アクアである。

 

アクア「え? 爆裂魔法が使えるレベルなら、他の魔法も使えるでしょ?」

 

 これだ。 あのアクアが意外にもまともな事を言ってきたのだ。

 それに対するめぐみんの返事が

 

めぐみん「私は、爆裂魔法をこよなく愛するアークウィザード!」

  「爆発系統の魔法が好きなのではなく、爆裂魔法だけが好きなんです!」

  「確かに、他の魔法も覚えることも出来ますし、覚えれば楽に冒険ができるでしょう。 でもだめなのです。」

  「私は、爆裂魔法しか愛せない!!」

  「たとえ一日に一発が限度でも、魔法を使った後に倒れるとしても!」

  「それでも私は、爆裂魔法しか愛せない!!」

  「だって私は、爆裂魔法を使う為にだけに、アークウィザードの道を選んだのですから!!!」

 

 と、いかに自分が爆裂魔法を愛しているかを、語ってくれた。

 ここまでくると、逆に清々しい。

 アクアはめぐみんの非効率だが我が道を行くその心に胸打たれたようで、めぐみんの考えに同調している。

 カズマとエルシャは、「やばい、この魔法使いはダメな奴だ」とか「なんてこった」とでも思っているのか、表情が暗い。

 そういう俺は・・・

 

賢治「なぁ、めぐみん。 それは茨の道だってことは、わかっているのか?」

めぐみん「勿論です。」

賢治「理解してくれる奴なんて滅多にいないと思うぞ。」

めぐみん「それでも私は、この道を突き進みます!」

賢治「・・・・・・」

 

 どうやら意思はかたいようだ。

 それにさっきから、『彼女のところに行きたい』と言わんばかりに輝いているウォッチがある。

 まさかめぐみんが・・・

 

賢治「わかった。 なら俺からはこれ以上何も言うことはないよ。」

  「俺はめぐみんのその夢を応援するし、必要な時は手伝うから、何時でも言ってくれ。」

めぐみん「・・・・・・あ、有難うございます。」//////

 

 

めぐみんside

 

 初めてだった。

 自分の夢を聞いて、笑い飛ばしたり、馬鹿にしたりする人は沢山いた。

 同じ種族の紅魔族の皆んなですら、自分の夢を理解してくれなかった。

 だが今目の前にいる人は笑いもせず、馬鹿にもせず、自分の夢を応援するし協力と言ってくれた。

 解って貰えない、理解なんてしてくれないと、彼らに会った時も諦め9割期待1割程度に思っていた。

 その時私は、嬉しさのあまり返答に困ってしまい・・・

 

めぐみん「・・・・・・あ、有難うございます。」//////

 

 私は、真っ赤になった顔を見られないように、帽子を下に引っ張って顔を隠してしまった。

 

 

賢治side

 

 めぐみんからお礼を言われた俺は、次の話に移った。

 

賢治「それから、めぐみん。」

めぐみん「はい?」

賢治「こいつが、めぐみんのところに行きたいらしいから、渡しておくよ。」

 

 俺が取り出したのは、さっきから輝いていたウォズミライドウォッチだった。

 彼女がウォズに選ばれるとは・・・まぁ、誰にも理解されなくても自分の信じた道を行く、そう言うめぐみんの心に共鳴したのかも知れない。

 

めぐみん「これは・・・さっきカズマに渡していたのと違いますね。」

 

 そう言ってウォッチを手に取ると。

 

 ピカーーーー!!

 

めぐみん「うっ!!」

 

 ウォズミライドウォッチが一瞬強く光った。

 その一瞬でめぐみんの頭の中には・・・

 

 『おめでとう。今日は君にとって特別な一日になる。』

 『その力を使えば世界はおろか、過去も未来も望みのまま・・・』

 『祝え!全てのライダーの力を受け継ぎ、時空を越え、過去と未来をしろしめす時の王者。その名も仮面ライダージオウ。まさに生誕の瞬間である。』

 『私はウォズ。ツクヨミくんやゲイツくんと違い、私は君の協力者だ。』

 『この本によれば、勝利には相応の責任が伴う。その覚悟がおありか?』

 『見事だ!我が魔王!これぞオーマジオウの力!!』

 『祝え!過去と未来を読み解き、正しき歴史を記す預言者。そのなも仮面ライダーウォズ!新たなる歴史の1ページである!』

 『確かに・・・興味深くはある。』

 『私たちを・・・導いている!』

 『初めから悩む必要などなかった。私が魔王の側にいることが、何よりの祝福なのだから。』

 『祝え!宇宙最強!ギンガファイナリー!緊急時につき、短縮版である。』

 『祝え!・・・いや、もはや言葉は不要。ただこの瞬間を味わうがいい!!』

 『私のすべきこと、それは今も昔も変わらない。』

 『これが、ゲイツくんが実現したかった可能性・・・』

 『聞いていないぞ、我が魔王!』

 『祝え!時空を越え、過去と未来をしろしめす究極の時の王者!その名もオーマジオウ!歴史の最終章にたどり着いた瞬間である!』

 『君はこの世界に君臨する。未来永劫にわたって。』

 『なぜだい?最強の王になったというのに・・・』

 『普通の高校生・常盤総悟。彼には魔王にして時の王者・オーマジオウとなる未来が待っている・・・かどうかは、分からない。この本とは違う歴史が記される必要があるようだ。』

 

 仮面ライダーウォズに関する記憶を垣間見ていた。

 祝え!今ここに仮面ライダーウォズの力を継承せし、新たなライダーの誕生の瞬間である!

 ・・・と、ウォズがいたらこういう感じに祝うだろうな。

 

めぐみん「・・・・・・・・・」

 

 すると、めぐみんの顔から何かが光っていた。

 

アクア「え! めぐみん泣いてるの?」

エルシャ「ちょっと、大丈夫?」

 

 急に泣き始めためぐみんを心配するアクアとエルシャ。

 しかし、めぐみんはグイッと服の袖で涙を拭うと

 

めぐみん「・・・大丈夫です。今、この人の記憶を見たんです。」

カズマ「記憶って、その仮面ライダーの?」

めぐみん「はい。」

 

 めぐみんは俺の方を見た。

 そして決意こ込めた目で

 

めぐみん「賢治。」

賢治「うん?」

めぐみん「私、頑張ります! この人が誇らしいと思ってくれる様な、立派な仮面ライダーになってみせます!」

  「ですから、これからよろしくお願いします。」

 

 深く頭を下げてくるめぐみん。

 その心意気はいいんだけど。

 

賢治「なぁ、めぐみん。」

めぐみん「はい?」

賢治「別に俺は、めぐみんにウォズになれとは言わないよ。」

めぐみん「え?・・・それは」

 

 そう、ウォズの記憶をなぞって、ウォズらしい仮面ライダーになったらそれはもうめぐみんじゃない。

 同時にそれは、ウォズという仮面ライダーの姿をした偽物だ。

 

賢治「俺は、めぐみんはめぐみんらしい仮面ライダーになって欲しい。」

  「誰かにこう言われたからなったんじゃなくて、めぐみんが自分の意思で、めぐみんらしい仮面ライダーになって欲しいな。」

めぐみん「私らしい・・・どうやら気を張りすぎていた様です。」

  「仮面ライダーという存在が、あまりにも偉大だったので・・・改めて誓います、私は私らしい仮面ライダーに、紅魔族一爆裂魔法を愛する最強のアークウィザードである私らしい仮面ライダーになると!」

賢治「うん。 それでいいと思うよ。」

 

 わかってくれて何よりだ。

 ていうかサラッと、自分が最強のアークウィザードて言い切りやがったな。

 まぁ、仮面ライダーになると元のステータスが飛躍的に上昇するから、ある意味最強か? 

 

賢治「じゃあ、行こうか。 アクアも粘液まみれで気持ち悪いだろうし。」

アクア「そ、そうよ。私粘液まみれだったわ! ねぇ、早くお風呂行きましょう。」

カズマ「そうだな、行くか。」

 

 

ーギルド運営の銭湯ー

 

 俺たちは今、ギルおが運営する銭湯に入っている。

 銭湯とはいえ、やっぱり風呂はいい!

 一日の疲れが取れる様だ。

 やっぱり入浴という行為は、日本人であるこの魂に深く刻まれているものなのだろうか?

 

カズマ「なぁ、本当にめぐみんをパーティに入れるのか?」

賢治「? 何か不満でも?」

カズマ「不満というか・・・不安なんだが。」

 

 まだめぐみんの一発芸と厨二病に不安を感じてるんか?

 そもそも仮面ライダーになれば一発芸じゃなくなるのは確実だ。

 経験者だから間違いない。

 

賢治「まぁ、物は考えようだぞカズマ。」

カズマ「? どう言う事だよ?」

賢治「めぐみんに関しては、仮面ライダーになれるんだ、かなりの戦力アップだぞ。」

  「エルシャは、今の俺たちにはない特技があるし、アクアは使い方次第で化けると思っている。」

カズマ「・・・アクアが?」

 

 むしろ、アクアは水の女神なんだから、正直戦い方を突き詰めればすごいことになりそうだと思う。

 今でこそ大して活躍していないけど。

 

賢治「同じ仲間なんだから、長い目で見てやれよ。」

カズマ「・・・・・・はぁ、賢治がそう言うなら、しょうがねぇな。」

賢治「おう! そろそろ上がるか。」

カズマ「そうだな。」

 

ーギルド運営の食堂ー

 

 風呂から上がった俺たちは、アクアたち女性陣がまだ上がっていなかったので先に食堂に来ていた。

 カズマは昨日と同じく、ジャイアントトードの唐揚げとサラダとシュワシュワ。

 俺はメニューを見て、なんとなくカレーライスっぽい料理とサラダとシュワシュワを頼んだ。

 出てきた料理は見た目も味もカレーそのものだった、この世界にもカレーライスがあったことに驚きだ。

 きっと俺たちより前にこの世界に来た転生者が、この世界でカレーでも作って広めたのだろうか?

 まさかこの世界にきてもカレーライスが食べられるとわ。

 そこで俺は今回の報酬のことを考えた。

 

 ジャイアントトード討伐報酬 

  ・5000×11 55000エリス

 ジャイアントトードの肉買取 

  ・250×10  2500エリス

 トータル 57500エリス

 

 一人当たり 11500エリス

 

 ・・・1人なら結構な額だが、人数が増えるとなぁ・・・

 某狩猟ゲームのマルチプレイみたいだ。

 うん? なんで肉の買取数が10なのかだって、1匹はめぐみんの爆裂魔法で消し炭になったからさ。

 

賢治「次からは、もう少し高額のクエストを受けるか。」

カズマ「いや、お前とめぐみんはいいが、他のみんなはそんなにレベル高くないんだからその辺り考えてくれよ?」

賢治「わかってるって。 任せろ。」

 

 と俺たちが話していると

 

???「募集の張り紙、みせてもらった。」

「「!!」」

???「まだパーティメンバーの募集はしているだろうか?」

 

 俺たちが振り返った先にいたのは、長い金髪のポニーテールで青い瞳の女性だった。

 服装や装備から、剣士だろうか?

 ていうか、超が付くくらい美人なんですけど!

 

賢治「あ、はい。 募集してますよ。」

カズマ「えぇ! はい。 でも、あまりお勧めできませんけど・・・」

 

 なんでそこで弱腰になるんだか?

 て言うかカズマ、緊張してんのか? 声が裏返ってるぞ。

 

???「そうか、よかった。 私はあなたたちの様な存在を待っていたのだ。」

 

 彼女は一泊置いて、次に告げる言葉を言う。

 

???「私はダクネス。クルセイダーを生業とする者だ。 ハァ・・・ハァ・・・」

 

 ダクネス。そう名乗った彼女は緊張しているのか、微かに顔を赤くして息を荒くしていた。

 ・・・あれ? なんだろう? この人のこれって緊張なのか?

 

ダクネス「是非、私をパ、パ、パパパパパパ・・・パーティに入れてくれないだろうか?!」

 

 




と言うわけで今回はここまでです。
なんとか、ダクネス登場のところまで書けました。
そしてめぐみんが、記念すべき第1号継承者になりました。
最初はウォズではなく、王蛇かレンゲルにしようかと思っていました。(杖繋がりで)
でもやっぱり、ウォズでしょ。(エクスプロージョン繋がりで)
次はできれば、キャベツまで書きたいです。

それではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第五話 この仮面の戦士達にエリスの山を

皆さん、初めまして。
又はお久しぶりです。
やっと次の話が仕上がりました。
次はもう少し早く投稿できるように頑張ります。
それでは、第五話どうぞ。


ダクネス「是非、私をパ、パ、パパパパパパ・・・パーティに入れてくれないだろうか?!」

賢治「・・・・・・」

カズマ「え〜っと・・・」

 

 ダクネスと名乗った彼女は、頬を赤くして言葉に詰まりながらそう言ってきた。

 次の瞬間、俺たちに詰め寄ってきた。

 

ダクネス「さっきの粘液まみれの青髪の彼女は、2人のパーティメンバーだろう?」

  「一体何があったらあんなめに?!」

賢治(うん? なんでここでアクアのことを?)

  (しかもなんだろう? この若干期待に満ちた目は?)

 

 どこかでアクアのことを見ていたのか、そんなことを聞いてくる。

 いやそれより、普通あんな状態のアクアを見たら、もっと険しい顔になってもいいと思うが、この人の顔からはむしろ喜びと期待が滲み出ている。

 なんだろう? 本当に・・・

 

カズマ「いやその、ジャイアントトードに捕食されて、粘液まみれに・・・」

ダクネス「なっ!!・・・・・・想像以上だ・・・」

賢治・カズマ「??」

 

 おい、なんかマジでおかしい。

 なんていうか、俺の本能が訴えている。

 『この人は普通じゃない』と。

 

ダクネス「・・・いや違う!! 女性があんな目にあうなんて見過ごせない!」

  「是非!! あなた達のパーティに入れてくれないか?!」

賢治「・・・でも、うちはまだ結成して日が浅いですし、チームワークもクソもないですよ?」

カズマ(? 賢治?)

 

 俺は気になったので、あえてネガティブなことを言ってみた。

 もう少し彼女の情報が欲しい。

 受けるにしろ断るにしろ、保留にするにもこの人のことを知っていないと絶対後で後悔すると思う。

 

ダクネス「それなら気にしなくていい、実は・・・言いにくかったのだが、私はクルセイダーなのにあまりにも不器用で・・・攻撃が・・・全く当たらないのだ。」

賢治・カズマ「・・・・・・」(えぇぇ〜)

 

 やっぱり思った通り。

 何かあるとは思っていたが、これは・・・

 

ダクネス「だが! 力と体力だけは自信がある。」

  「だから、いくらでも前に出るので、盾がわりにこき使ってくれ!

  「いやむしろ! 捨て駒としてモンスターの群れの中に放り投げてくれていい!!」

賢治「えぇ〜・・・」

カズマ「!?」

  (顔が近い!! こんなところで、長期の引きこもりによる弊害が・・・)

 

 この人もグイグイくるな・・・

 こうやって間近で見ると美人なのに、明らかにダメな人じゃん。

 本当・・・みてくれは良いのに・・・

 

賢治「いやいや、女性を盾がわりにするなんて・・・」

ダクネス「望むところだ!」

賢治「?・・・それこそ、毎回モンスターに酷い目に・・・」

ダクネス「むしろ望むところだ!!」

賢治・カズマ「え?!」

 

 そう言って、さらに息を荒くしてハァハァしている。

 ・・・・・・あぁ・・・この人、性能だけでなく中身までポンコツな奴か

 この後俺とカズマは、メンバー全員と話がしたいという理由でこの時はこれでお開きになった。

 カズマとアクアはいつも通り馬子屋に、俺は同じ宿だというめぐみんとエルシャと一緒に宿へ向かった

 さて、ここからいつものステータス確認の時間だ。

 今はどんな感じかな・・・

 

 KENJI KIRISHIMA

 LV11

 ルーンパラディン スキルポイント 7658

 

 体力  1929  火 150

 魔力  1061  水 150

 力   628   土 150

 知力  707   風 150

 俊敏性 626   光 150

 器用さ 633   闇 150

 幸運  410

 

スキル

 ・全知全能(アカシック・レコード)

  現存するすべてのスキルを職業関係なく習得可能

  習得に必要なスキルポイントは3倍になる

 ・能力透視

  自分または相手のステータスを見る事ができる

 ・変身

  仮面ライダージオウへの変身

 ・平成ライダー

  平成ライダーの全ての能力と武器を使用可能

  変身前でもある程度使用可能

 ・全エレメント耐性上昇LvMax

  全てのエレメントの耐性を10あげる

  レベルMaxで50上げる

 ・跳躍

  通常のジャンプよりもさらに高くジャンプできる

 ・体捌きLvMax

  力・俊敏性・器用さを5あげる

  レベルMaxで25あげる

 ・オールエレメントスラッシュLvMax

  全ての属性を込めた強烈な一撃を放つ

  レベルが上がると威力上昇

 ・ホーリーフレアLvMax

  神聖な炎による光属性の神聖魔法

  アンデットや悪魔に対して有効

  レベルが上がると威力上昇

 

 習得可能スキル

 

 ・敵感知 3P ・ 初級治癒魔法 3P   

 ・ゴッド・ブロー 2500P   ・狙撃 3P 

 ・初級魔法 18P・中級魔法 54P 

 ・上級魔法 162P  ・魔力譲渡 9P

 

 ステータスの上昇率についてはもう何も言うまい。

 ただ今回は、魔法を使ってトドメを刺したからなのか、知力の伸びがいい。

 スキルも魔法に関連したスキルが習得可能になっている。

 敵感知は、レーダーモジュールで索敵したからで、狙撃は銃で狙いを定めてカエルを倒したからだろう。

 初級治癒魔法は、メディカルモジュールでエルシャの怪我を治したから。

 魔力譲渡は、めぐみんにプリーズの魔法で魔力を渡したから。

 初級から上級までの魔法は、エクスプロージョン・・・高位の魔法を使ったからか?

 どうやら、スキルは見て教えてもらうだけでなく、スキル習得に該当する行動をを取った時も習得可能になると言うことだろう。

 とりあえず、ゴッド・ブロー以外は全部覚えておこう。

 

 KENJI KIRISHIMA

 LV11

 ルーンパラディン スキルポイント 7406

 

 体力  1929  火 150

 魔力  1061  水 150

 力   628   土 150

 知力  707   風 150

 俊敏性 626   光 150

 器用さ 633   闇 150

 幸運  410

 

スキル

 ・全知全能(アカシック・レコード)

 ・能力透視

 ・変身

 ・平成ライダー

 ・全エレメント耐性上昇LvMax

 ・跳躍

 ・体捌きLvMax

 ・オールエレメントスラッシュLvMax

 ・ホーリーフレアLvMax

 ・敵感知

  敵の位置を感知することができる

  魔力を上乗せすると感知範囲が広がる

 ・狙撃

  飛び道具(弓などの射撃武器)を使うときより遠くから狙える様になる

  幸運の数値が高いと命中率が上昇する

 ・魔力譲渡

  触れた対象に魔力を渡すことができる

 ・初級治癒魔法

  ヒール

 ・初級魔法

  ティンダー

  クリエイト・ウォーター

  ウィンドブレス

  クリエイト・アース

  フラッシュ

  スモッグ

 ・中級魔法

  ファイヤーボール

  メイルシュトローム

  ブレイドウィンド

  ロックランス

  ライトニング

  デモンズランス

 ・上級魔法

  ファイヤレーザー

  タイダルウェーブ

  トルネード

  エアプレッシャー

  ライト・オブ・セイバー

  アイアンメイデン

 

 これで魔法のバリエーションがだいぶ増えたな。

 使えるチャンスがあったら使ってみないとな。

 さて、今日はこれくらいで寝るか。

 明日はどうなるか?

 

ー翌日ー

 

 前の世界で言うと、朝の9時くらいだろうか?

 今俺はエルシャに誘われて、朝早くから買い物に来ていた。

 今来ている店は、『ウィズ魔道具店』と言う店だ。

 その店の店主はこれまた変わり者で、『働けば働くほど貧乏になる』という不思議な特技を持っているらしい。

 売っている魔道具もよく解らない物が多く、一見使えそうだが、実は全く使えない物が多い。

 ただ、たまに・・・本当にたまに掘り出し物が売っていたりするのだ。それも格安価格で。

 

賢治「ここの店長さん大丈夫か?」

エルシャ「それが不思議と大丈夫みたいなの。」

賢治「そうなのか?」

エルシャ「多分、私みたいにここで欲しい商品を取り寄せてもらっているお客さんがいるからじゃないかしら?」

 

 エルシャは今回この店に来たのは、ポーション生成に使う道具を買いに来たのだ。

 エルシャのポーションは、俺がいた世界で言う試験管に入れてあるのだ。

 いつもは、消毒して使いまわして使っているが、何回か使うと割れてしまうため定期的に補充しているらしい。

 

エルシャ「ウィズさーん!」

ウィズ「はーい。いらっしゃいませ。」

  「あら、エルシャさんでしたか。 おはようございます。」

エルシャ「はい、おはようございます。」

  「えーっと、今日もポーション用のがラス容器お願いします。」

ウィズ「はい、いつもありがとうございます。」

 

 店長さんが後ろの部屋から、試験管の入った箱を待ってきた。

 割れない様に一つ一つ丁寧に包装されている。

 儲かるかどうかはともかく、仕事はきっちりする人の様だな。

 

ウィズ「毎度、有難うございました。」

エルシャ「はい、またお願いします。」

 

 二人がそうやって挨拶をすると、店長さんが俺を見てきた。

 ? 俺何かしたかな?

 

賢治「あの、何か?」

ウィズ「! すみません。 失礼ですが、貴方から凄い力を感じたので・・・」

賢治「そうですか。 改めて、俺は霧島賢治です。」

  「よろしくお願いします。」

ウィズ「私は、ウィズ魔道具店の店長のウィズと言います。 よろしくお願いします。」

 

 挨拶をした後、ウィズに店の商品を色々紹介されたが、その全てがガラクタや不良品だった。

 その中で、唯一目を引いたのが店の隅に置かれていた羊皮紙の束だった。

 これは何かと聞いたみると

 

ウィズ「これは、この羊皮紙に手を置いて魔法を唱えると、その魔法を封じ込める物です。その後は、好きな時に発動することができます。」

  「ですが、本当はすでに幾つかの魔法を封じ込めた状態で売るつもりだったのですが、手違いなのか、魔法を封じる前のものが送られてきたのです。」

賢治「・・・それ普通につかえませんか?」

ウィズ「ですが、封じ込める際に必要な魔力が、通常の2倍になってしまうのであまりつかえませんよ。」

賢治「他にデメリットはあるんですか?」

ウィズ「いえ、他には何もないですよ。」

賢治「・・・・・・」

 

 この人は本気で言っているんだろうか?

 デメリットが消費魔力2倍だけなら、使い方次第ではかなり使えるアイテムだぞ。

 あらかじめ魔力を消費しておけば、次はノータイム・消費魔力なしで魔法が使えるというのに。

 ・・・なんでこの街は残念な人ばかり集まっているのだろうか?

 

賢治「・・・これください。」

ウィズ「え?! いいんですか?・・・本当にいいんですか?」

賢治「はい。是非。」

 

 俺はこのアイテムを買うことにした。

 会計を済ませた後、ウィズが「これでまともな食事ができます。」と目に薄く涙を浮かべていた。

 どんだけ切羽詰まった経営をしているだ、この店長さんは?

 後、ウィズは店を始める前は冒険者だったらしく、使えそうなスキルをいくつか教えてもらった。

 それがこれだ。

 

 ・獅子の心臓(ライオンズ・ハート)18P ・伝言(メッセージ)9P 

 ・千里眼(クレアボヤンス)12P ・虚偽情報(フェイク・カバー)30P 

 ・発見感知(ディテクト・ロケート)24P ・対象発見(ロケート・オブジェクト)24P 

 ・暗視(ナイト・ヴィジョン)15P ・水晶の映像(クリスタル・ヴィデオ)18P

 ・探知妨害(カウンター・ディテクト)27P ・方角探知(コンパス)9P

 ・魔力最大強化(マキシマイズ)90P ・魔法貫通強化(ペネトレート)75P

 ・魔法階級上昇(ブースト)75P ・二重魔法(ツイン・マジック)120P

 ・大型空間(ビッグ・スペース)156P ・保存(プリザベーション)90P

 ・道具創造(クリエイト・マジックアイテム)384P

 

 なかなか良い買い物ができた。

 そして、いいスキルの数々を教えてもらった。

 この後俺たちは、ギルドのにいるはずのカズマ達と合流した。

 そこでは、アクアが『花鳥風月』と言う宴会芸スキルを冒険者達に披露していた。

 カズマとめぐみんは食堂で、昼食をとっていたので、俺とエルシャも昼食にすることにした。

 

カズマ「溜まったポイントでスキルを覚えられるんだよな。」

賢治「そうだな。 カズマはまだ覚えてないのか?」

カズマ「あぁ、まだ5ポイントしかないからな。」

  「変なスキルを覚えない様にしないと・・・」

 

 そうか、カズマはまだ5ポイントしかないのか。

 ならスキル選びも慎重にならざるを得ないか。

 俺は最初から10000ポイントもあったから、今は結構な数のスキルを覚えることができたけど。

 この違いって何だろう?

 

賢治「なぁめぐみん、冒険者登録をした時、スキルポイントが最初からだいぶ溜まっていたんだけど、何でなんだ?」

めぐみん「モグモグ・・・それは、もともと才能のある方が冒険者登録をすると、その才能に見合ったスキルポイントが最初から溜まった状態でカードに記されるのです。」

賢治「なるほど。」(ボーナスポイントみたいなものか。)

めぐみん「他にも、スキルポーションと言う希少なポーションを飲むと大量のスキルポイントを獲得できますよ。」

カズマ「待て!! そんなポーションがあるのか?!」

 

 マジか!!

 そんな都合のいいポーションがあるのか?

 

めぐみん「有りますけど、一本数千万エリスはしますよ。」

カズマ「ウゲッ!!!」

 

 うわ! 数千万か。

 まぁ、そんな上手い話はないか。

 

めぐみん「ちなみに私は、学校で月一に一本、全校生徒に配られるスキルポーションを飲んでいたので、すぐに爆裂魔法を覚えれました。」

エルシャ「え?! めぐみんの学校ってスキルポーションを配ってるの?」

カズマ「どんだけ羽振りがいい学校なんだ?! 一本数千万だろ!?」

めぐみん「まぁ、紅魔の里にいる魔道具職人が作っている物なので、本職の方よりも若干劣化したスキルポーションなので、そんなに値は張らないんです。」

 

 それでも飲むだけでスキルポイントが手に入る、これは凄いことだと思うぞ。

 さすが紅魔の里だな。 優秀な魔法使いが多いわけだ。

 

賢治「・・・ちなみにエルシャは」

エルシャ「作れないからね。」

賢治「・・・そうか。」

 

 やっぱり作れないか。

 まぁ、そう簡単にポンポン作れたら『希少なポーション』じゃ無くなるよな。

 その時、後ろから

 

ダクネス「探したぞ。」

賢治・カズマ「!!」

エルシャ・めぐみん「?」

 

 俺たちは後ろを振り返った。

 そこに居たのは、昨日の女クルセイダー、ダクネスだった。

 

ダクネス「改めて、昨日の話の続きをさせてもらう、私を貴方達のパーティに」

賢治・カズマ「お断りします!」

ダクネス「! クゥン!! ・・・即断・・・だと・・・ハァ、ハァ・・・」

賢治(えぇ〜。)

カズマ(え? この人喜んでる? やっぱヤバい人じゃん!)

???「アハハ、ダクネスそんなんじゃ話を聞いてくれないよ。」

 

 俺とカズマに断られて、息を荒くしている彼女の後ろから声が聞こえた。

 銀髪のショートヘアーで緑の服を着たスレンダーな体型の男・・・いや女か?

 声の感じからしておそらく女だろう。

 彼女はダクネスの・・・友達だろうか?

 

賢治「えぇ〜っと、貴方は?」

???「私はクリス。 格好からみてわかると思うけど、盗賊だよ。」

  「よろしくね。」

賢治「俺は霧島賢治。 よろしく。」

  (・・・・・・あれ?)

 

 俺は何故か彼女に違和感を覚えた。

 何故だろう?

 明るくサバサバした性格で、コミュ力も高そうな好感を持てる女性なのに、何か気になる。

 

クリス「ところで君。」

カズマ「え?」

クリス「聞こえたんだけど、スキルを覚えたいんだって?」

  「よかったら、私のスキルを教えようか?」

カズマ「いいんですか?」

クリス「今ならシュワシュワ一杯で教えるよ。」

カズマ「安いな! すみませーん! この人にキンキンに冷えたシュワシュワ一つ!」

 

 ・・・・・・まぁ、彼女なら大丈夫だろう。

 彼女はシュワシュワを飲んだ後、カズマとダクネスを引き連れて外に出て行った。

 さて、どんなスキルを覚えてくるやら?

 俺も今の内に、さっきのスキルを覚えておくか。

 

KENJI KIRISHIMA

 LV11

 ルーンパラディン スキルポイント 6230

 

 体力  1929  火 150

 魔力  1061  水 150

 力   628   土 150

 知力  707   風 150

 俊敏性 626   光 150

 器用さ 633   闇 150

 幸運  410

 

スキル

 ・全知全能(アカシック・レコード)

 ・能力透視

 ・変身

 ・平成ライダー

 ・全エレメント耐性上昇LvMax

 ・跳躍

 ・体捌きLvMax

 ・オールエレメントスラッシュLvMax

 ・ホーリーフレアLvMax

 ・敵感知

 ・狙撃

 ・魔力譲渡

 ・初級治癒魔法

 ・初級魔法

 ・中級魔法

 ・上級魔法

 ・獅子の心臓(ライオンズ・ハート)

  恐怖に対し、完全耐性を得る

 ・伝言(メッセージ)

  相手と連絡を取り合う

  念話ではないので、会話は口に出す必要がある

 ・千里眼

  遠くの景色を見ることができる

 ・虚偽情報(フェイク・カバー)

  相手が情報収集系の魔法を使用した際に、偽の情報を掴ませる

 ・発見感知(ディテクト・ロケート)

  相手が情報収集系の魔法を使用した際に、感知することができる

 ・対象発見(ロケート・オブジェクト)

  特定の物体又は人物の探査ができる

 ・暗視(ナイト・ヴィジョン)

  暗闇の中でも昼間のように見通すことができる

 ・水晶の映像(クリスタル・ヴィデオ)

  魔法で得た視界(千里眼等)を空中に浮かべた水晶に映し出し、他者にも見せることができる

 ・探知妨害(カウンター・ディテクト)

  相手が情報収集系の魔法を使用した際に妨害又は反撃する

 ・方向探知(コンパス)

  視界の悪い場所でも方角がわかる様になる

 ・魔力最大強化(マキシマイズ)

  魔法の威力を最大にまで引き上げる魔法

 ・魔法貫通強化(ペネトレート)

  魔法の貫通効果を上昇させる魔法

  術者より対象者の能力が高いと無効化される場合がある

 ・魔法階級上昇(ブーステッド)

  一時的に魔法の階級を上げる魔法

  初級魔法を中級魔法に

  中級魔法を上級魔法に

  上級魔法を極大魔法に

  上昇させる

 ・二重魔法(ダブル・マジック)

  魔法を二重で発動する魔法

 ・大型空間(ビッグ・スペース)

  魔力で作られた大型の空間にものを出し入れすることができる収納魔法

  収納できる数と種類は術者のレベルに依存する

 ・保存(プリザベーション)

  対象の品質や鮮度を保つ魔法

 ・道具創造(クリエイト・マジックアイテム)

  武具や魔道具のほか日用品等も作り出すことができる魔法

  魔法の組み合わせ次第ではより上位のものを作り出せる

 

 

 一気に増えた。

 自分が何を覚えたのか、ちゃんと覚えておかないと。

 しばらくすると、カズマ達が帰ってきた。

 でも、何故かカズマは渋い顔をしていて、クリスは泣いていて、ダクネスは顔を赤くして息を荒くしている。

 ・・・いやホント何があった?

 

アクア「・・・その人どうしたの?」

カズマ「えぇ〜っと・・・」

ダクネス「うむ! 彼女はカズマに『窃盗』のスキルを教えた後、パンツを取られた上に有り金全部を巻き上げられて、泣いているところだ。」

カズマ「ちょっ!!」

 

 何・・・だと・・・?!

 

クリス「グスッ・・・お金返すだけじゃダメだって言うから・・・スンッ・・・じゃあいくらでもお金払うからパンツ返してって言ったら・・・自分のパンツの値段は自分で決めろって・・・」

 

 こいつ・・・

 

クリス「さもなくばこのパンツは・・・我が家の家宝として、奉られることになるだろうって!」

 

 マジかこいつ。

 周りの男冒険者の中には『よくやった!!』と言う感じでサムズアップしているやつがほとんど・・・大丈夫かここの男供。

 それに対して女性陣は絶対零度の視線をカズマに向けている。

 

カズマ「おーい!! ちょっと待て!! なんか周りの女性の視線が冷たいものになてるから、本当に待て!!」

クリス「・・・・・・・・・・・・ニヒッ!」 

 

 クリス的にはちょっとした仕返しのつもりなのだろう。

 まぁ、この程度で済んだのだからラッキーだと思え、カズマ。

 

めぐみん「それで、カズマはスキルを覚えられたのですか?」

カズマ「! ふふん! もちろんさ、見てろ。」

  「スティーーール!!」ヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!!

 

 カズマがスティールと叫んだ次の瞬間カズマの右手が光った。

 光が収まった時

 

アクア「???」

めぐみん「・・・!! うぅ!・・・・」

 

 アクアは何ともなかったみたいだが、めぐみんは何かに気づいたみたいで、目に涙を浮かべている。

 ・・・・・・おい。 まさか・・・

 

カズマ「・・・何だこれ?」

 

 カズマの手の中には、黒い女物のパンツが握られていた。

 

めぐみん「・・・何ですか? レベルが上がってステータスが伸びたから、冒険者から変態にジョブチェンジしたんですか?」

  「・・・あの・・・スースーするので、パンツ返してください。」

アクア「カズマ・・・あんた・・・」

エルシャ「うわ〜・・・」

賢治「・・・・・・」

カズマ「あ・・・あれ? おかしい、取れるのはランダムのはずなのにどうして?」

 

 そうか、ランダムなのか。

 そうか、そうか。

 

 ピコン!!

 

カズマ「あぶっ!!」

 

 俺はエグゼイドライドウォッチからガシャコンブレイカーを取り出し、カズマの頭に一撃かました。

 その瞬間、HITというエフェクトが現れた。

 本来なら、致命傷の一撃だか、ピコンという効果音から分かる通り、威力はピコピコハンマー並みに抑えているので、カズマの頭が潰れたトマトみたいなことにはならない。

 

賢治「カズマ、お前いい加減にしろ。」

カズマ「そんなこと言ったって・・・」

賢治「全く・・・さて」

 

 俺はさっきから気になていることを確認するために、クリスの目の前にまできた。

 

クリス「?!・・・な、何?」

賢治「・・・・・・・・・」ジーーー

クリス「???」

賢治「・・・」(能力透視)ブン!

 

 俺は能力透視を使って彼女のステータスを見てみた。

 彼女のステータスは一般的な盗賊より少し高いくらいの数値だった。

 ・・・だが、俺は何か引っ掛かる。

 さらに魔力を込めて見る。

 

クリス「ね、ねぇ・・・何でじっとみてるの?」

  「・・・は、恥ずかしいんだけど・・・」//////

 

 クリスは顔をほんのり赤くして、恥ずかしそうにモジモジし始める。

 ・・・なんかごめん。でも気になるのだ。

 すると突然、目の前に鎖の巻きついた錠前が現れた。

 

賢治「?!」(これは・・・プロテクトか?)

  (これはやっぱり何かあるな?)

  (こうなったら意地でも・・・)

 

 さらに魔力を注ぎ込むと、錠前が熱された鉄みたいに赤くなり始めた。

 もう少しで解除できそうだ。

 これでどうだーーーー!!

 

 ビキビキビキ   パリーーーン!

 

 そして、プロテクトを破って彼女の本来のステータスが現れた。

 

賢治「ぶっ!!」

クリス「?!」

 

 そこに映し出されたステータスは、ありえないほど高い数値だった。

 幸運以外のステータスが2500000から5000000近い数値だ。

 肝心の幸運の数値だが・・・なんとカンストしている。9999999ってまじか?!

 それに決定的なのが、名前の部分だ。

 そこには

 

 エ・リ・ス

 

 の三文字だ。

 

賢治「・・・・・・あの、こんなところで何してるんですか? エリ」

クリス「わああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

 

 その瞬間俺は腕をつかまれて、猛ダッシュでギルドの建物の裏へ連れていかれた。

 ・・・えぇ~っと、なんかすみません。

 

クリス「ぜぇ~、はぁ~、ぜぇ~、はぁ~」

賢治「その~、大丈夫ですか?」

クリス「・・・なんで私だって解ったんですかー!」

 

 さっきとは別の意味で涙を浮かべている女神様。

 まさかばれるとは思っていなかったのだろう。

 

賢治「いやぁ、俺実は、能力透視っていうスキルがあるんです。」

クリス「はぁ!! なんで貴方がそんなスキルを持っているんですか?」

賢治「何でって、冒険者登録をした時から持ってましたけど。」

クリス「えぇぇー!!」

賢治「後、服を変えて髪形を変えたくらいじゃ、違和感バリバリですよ。」

クリス「う・・・嘘・・・」

 

 自分の変装に自信があったのか、ショックを受けている女神さま。

 能力透視をする前から違和感があったし、何と無くそうなんじゃないかと思っていた。

 

賢治「もしかして、ここぞという瞬間に『実は私、女神エリスなの!』っという感じで格好良く正体を明かすつもりでしたか?」

クリス「うっ!」

賢治「・・・・・・その、すみません。」

クリス「いいえ・・・でも、この事は誰にも内緒ですよ。」

 

 そう言って彼女は、右手の人差し指を口元に伸ばして、『誰にも言わないで』というジェスチャーをして見せた。

 ・・・・・・なんだか正統派ヒロイン感バリバリに可愛いじゃないか。

 その時

 

ルナ『緊急クエスト!! 緊急クエスト!! 冒険者各員は至急街の正門前に集まってください! 繰り返します、冒険者各員は至急正門前に集まて下さい!」

 

賢治「!? なんだこれ?」

クリス「ほら! 急いで正門前に行くよ!」

賢治「お! おう、わかった!」

 

 すっかり冒険者の顔になったエリスもといクリスは俺と一緒に走り出した。

 途中でカズマ達に合流し、ほかの冒険者たちと一緒に正門に向かった。

 道中で「準備はいいか!!」「気合い入れていくぞー!」などの声が聞こえてきた。

 いったい何がやってきたのだろうか?

 正門に着くと、大勢の冒険者が集まっていた。

 

賢治「なぁ、緊急クエストってなんだ?」

カズマ「だな。 モンスターの大群でもやって来たのか?」

アクア「あ! 言ってなかったわね。 キャベツよ、キャベツ。」

賢治・カズマ「はっ??」

 

 アクアはいったい何を言っているんだろうか?

 キャベツって、あのキャベツか?

 だとして、何で皆こんなにヤル気を出しているんだ?

 

モヒカンの冒険者「今年は荒れるぞ!」

めぐみん「嵐が・・・来る!」

「「「「「「「「「「収穫だぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!!!!」」」」」」」」」」

アクア「マヨネーズ持ってこーい!!」

 

 何だか、俺とカズマだけ置いてけぼりを食らっている。

 すると、遥か彼方から何かが“飛んできた”

 飛んでくるその“何か”の距離が近づいてくると、緑色の丸い物体だというのが分かる。

 更に近づいてくると、それは「キャベキャベキャベ」と鳴いている?

 目を凝らしてよくみて見ると・・・

 

賢治・カズマ「・・・・・・何じゃこりゃああああああああああ!!!!!!」

キャベツ「キャベキャベキャベ」

 

 ・・・・・・ほんとにキャベツだ。

 ・・・・・・マジか!!?

 何でキャベツが空飛んでんだ?

 そもそも何でキャベツが生きてるんだ?

 悪い冗談にしか見えない。

 

冒険者達「「「「「「「「「「おおおおおおおおおおおお!!!!!!!」」」」」」」」」」

アクア「この世界のキャベツは飛ぶの!」

  「味が濃縮して収穫の時期になると、簡単に食われてたまるもんかとばかりに、街や草原を疾走し、大陸を越え、海を越え、最後は人しれぬ秘境の奥で、ひっそりと息を引き取ると言われているわ。」

  「・・・・・・それなら! 私たちは一玉でも多く彼らを捕まえて、美味しくいただいてあげようってことよ。」

ルナ「皆さーん!! 今年もキャベツの収穫時期がやってきましたー!!」

  「今年のキャベツは出来が良く、一玉につき10000エリスです。」

  「できるだけ多く捕まえて、こちらのケージに入れて下さいね!」

 

 ほうほう、一玉につき一万か・・・・・・

 

賢治「10000エリス!!」

 

 この時この瞬間、俺は目の前のキャベツがキャベツではなく、エリス(お金)の塊に見え始めていた。

 

カズマ「・・・・・・俺、帰っていいか?」

賢治「カズマ、割り切れ! ここはそういう世界だと。」

 

 『ジオウ!』 『フォーゼ!』

 

賢治「変身!」

 

 『ライダータイム! 仮面ライダージオウ!!』

 『アーマータイム! 3・2・1! フォーゼ!!』

 

 俺は、ジオウとフォーゼのライドウォッチを起動して、ジオウフォーゼアーマーに変身した。

 何故フォーゼアーマーなのかって?

 フォーゼアーマーならネットモジュールが使えるからだ。

 これで一網打尽にできるってもんだ。

 

めぐみん「! 変身するんですね? じゃあ私も!!」

 

 『ウォズ!』

 

 めぐみんがウォズミライドウォッチのスターターを押すと、腰にビヨンドライバーが出現した。

 次に、ミライドウォッチをマッピングスロットにセットする。

 

 『アクション!』

 

 変身の待機音が流れ、めぐみんがもう一度ウォッチのスターターを押すと、ピクトウィンドウが開き、センドプロジェクターが現れた。

 

めぐみん「変身!」

 

 めぐみんが「変身」と言った後に、クランクインハンドルを閉じると。

 

 『投影! フューチャータイム!』

 『スゴイ! ジダイ! ミライ! 仮面ライダーウォズ! ウォズ!』

 

 めぐみんの体に、銀色のボディスーツが装着され、胸と肩と脚にはグラフェニウムコートが施された黒と蛍光グリーンのプロテクターが装着された。

 そして顔には、ジオウと同じように、青色の『ライダー』の文字が刻まれたインジケーションアイが現れる。

 今ここに、仮面ライダーウォズの誕生の瞬間だ!

 

めぐみん「これが・・・仮面ライダー・・・すごい、凄過ぎです!!」

  「力と魔力がみなぎってきます!」

賢治「めぐみん、おめでとう!」

めぐみん「! はい!」

賢治「よし! 行くぞおおおお!!」

めぐみん「おおおぉぉ!!」

 

 俺とめぐみんはキャベツみ向かって突撃していった。

 俺はネットモジュールを出現させ、コズミックエナジーで作られた虫取り網でキャベツを大量に捕まえていく。

 めぐみんは、ジカンデスピアを杖モードに変形させて、キャベツに叩きつけて確実にキャベツを捕まえている。

 そんな中、カズマは・・・

 

カズマside

 

 キャベツが行き交い、冒険者体を襲う。

 キャベツの突進は意外に強力で、当たれば吹き飛ぶくらいだ。

 冒険者達がキャベツに襲われそうになるが、そのほとんどは変身した賢治とめぐみんによって捕まるか、地面に叩きつけられていた。

 自分も何かしなければと思うが、何故か足が動かない。

 だが、俺はこの時、こんな事を思っていた。

 『俺もあの二人みたいになりたい』だった。

 誰かを助け、沢山の人の笑顔を守る。

 そんな、『ヒーロー』に。

 ・・・・・・いや、馬鹿げている。

 いまさら何を言う。

 そんな夢はとっくの昔に、箱に入れて鍵をかけて、胸の奥にしまい込んだはずだろう。

 そもそも、俺にヒーローなんて務まるのだろうか?

 俺なんかにその資格があるのだろうか?

 ・・・・・・待て、そもそも俺はこうやって適当な理由を付けて、無理だと決めつけて逃げているだけなんじゃないか?

 自分の夢から、憧れから逃げているだけなんじゃないか?

 ヒーローになりたいのなら、今度こそ諦めないでその夢を叶えるために、真っ直ぐ進めばいいじゃないか?

 この世界にきて、第二の人生を得た今なら出来るはずだ。

 覚悟を決めろ、俺!

 沢山の人を助け、沢山の笑顔を守るために!

 すると、右のポケットの中が熱くなっているのがわかった。

 中にあるものを取り出してみるとそれは、賢治から渡されたライドウォッチだった。

 それが今、赤く輝いている。

 

カズマ「これって・・・うっ!?」

 

 

 『そうか、では俺は今ここで、お前の道を終わらせるだけだ!』

 『この時代のお前に恨みはない。 でも、未来のためだ。 消えてもらう。』

 『2017年に行けば、アナザービルドを倒せるかもしれない、ということか。』

 『俺たちがやることはただ一つだ。』

 『俺は迷ってなどいない。 俺は、俺たちの運命を変えるために、この時代に来た!』

 『運命か・・・そんなものは俺が変えてやる! あいつが魔王になるのは、この俺が止める!!』

 『俺は、お前によってもたらされる、最低最悪の未来を防ぎにここに来た。』

 『今からでも遅くない。ベルトを捨てろ!』

 『ジオウを倒すためなら、敵の力だって借りてやる。 いくぞ!』

 『お前は、最高最善の魔王になると俺に言った! だったら問題ない。 最低最悪の魔王になったら! 俺が倒してやる!! 必ずな。 俺を信じろ!!』

 『お前の世界が消えるのを防いでやる。ただし、お前の世界を救うのはお前じゃない。』

 『俺達も・・・お前の友だ!!』

 『ジオウ・・・オーマジオウになれ・・・時の王者に・・・』

 『お前ならなれる・・・最高最善の魔王に・・・!』

 『幸せだったぞ・・・この時代に来て・・・総悟・・・お前の仲間に・・・友になれて・・・』

 

カズマ「・・・これが、めぐみんの言っていたやつか。 この人凄過ぎだろ。」

 

 俺はゲイツライドウォッチのリューズを回し、スターターを押した。

 

 『ゲイツ!』

 

 すると、賢治と同じジクウドライバーが腰に巻きついた。

 ウォッチをD‘9スロットにセットしライドオンリューザーを押した。

 その後イメージで見た、明光院ゲイツが変身時にやっていた変身ポーズをとる。

 

カズマ「変身!!」

 

 と叫び、ドライバーを一回転させる。

 

 『ライダータイム! 仮面ライダー・ゲイツ!』

 

 すると、俺の体に赤色のボディースーツに、グラフェニウムコートが施された赤とグレーのプロテクターが装着され、顔の部分に『らいだー』と平仮名の形のインジケーションアイが刻まれた。

 ・・・・・・何で平仮名なんだろう?

 

 

賢治サイド

 

賢治「お! カズマの奴、ついにやったか!」

めぐみん「カズマも仮面ライダーに?!」

 

 なれるとは思っていたが、こんなに早く仮面ライダーになれるとは。

 すると、めぐみんが何やら体を小刻みに振るわせ

 

めぐみん「・・・うぅ、何でしょう? このこみ上げてくる衝動は?」

  「うううぅぅぅ・・・・・・ああああああーーーーもう我慢できません!!」

賢治「え?! めぐみん?」

 

 めぐみんは大声をあげて、仮面ライダーに変身したカズマの元へ走って行った。

 次の瞬間、両腕をバッと広げて

 

めぐみん「祝え!! 闇を切り裂き! 世界に光をもたらす救世主! その名も仮面ライダーゲイツ!」

  「今ここに、生誕の瞬間である!!」

カズマ「??! ・・・めぐみん、何言ってんだ?」

めぐみん「・・・私にも分かりませんよ!」

  「何だか、言わなきゃいけない衝動に駆られたんです。」

 

 まぁ、今のめぐみんじゃ仕方がないか。

 仮面ライダーウォズだし。

 

賢治「カズマ。」

カズマ「うん?」

賢治「Happy Berth Day・仮面ライダーゲイツ!」

カズマ「!! おう! ありがとう。」

賢治「あと、これも渡しておくよ。」

 

 俺は、カズマに二つのライドウォッチを渡した。

 

カズマ「これは・・・ガタックとメテオ?!」

賢治「おう、カズマも知ってる仮面ライダーだろ。」

  「この二人はカズマが使ってくれ。」

カズマ「おう、わかった。 ありがとう。」

 

 そう言って俺は再びキャベツ捕獲に戻った。

 

カズマ「えぇ〜っと、じゃあこっちを。」

 

 カズマはメテオライドウォッチを左腕のライドウォッチホルダーにセットして、ガタックライドウォッチを使うようだ。

 

 『ガタック!』

 『アーマータイム! Stag Beetle! ガタック!』

 

 ガタックアーマーが出現すると、ゲイツの肩の部分に仮面ライダーガタックの変身アイテムのガタックゼクターの頭の部分を模したアーマーが装着され、胸に青いプロテクター、仮面の部分には鍬形虫の形の青いツノが現れた。

 そして顔には、『がたっく』と平仮名のインジケーションアイが現れた。

 

カズマ「よーし、いくぜ! クロックアップ!」

 

 『クロックアップ!』

 

 カズマは仮面ライダーカブト系のライダーが使うクロックアップを発動させ、高速移動で次々とキャベツを捕まえていく。

 さすが、仮面ライダーを知っているだけあって、特性をよく分かっているな。

 そこから先は、俺たち仮面ライダーの時間だった。

 

 

ー緊急クエスト キャベツ捕獲・・・達成!!ー

 

 

 クエストを終えた俺達は、ギルドの食堂に来ていた。

 他の冒険者達も、今回の突発クエストでそれなりに稼げたのか、みんなホクホク顔だ。

 俺たちのパーティは言うまでもなく、後日に支払われる報酬のおかげで懐が潤っている。

 今もクエスト達成を兼ねて、ちょっとしたパーティータイムだ。

 ただ一つ、・・・どうしても納得がいかないことがある。

 

賢治「・・・・・・うま!」

  (けど、納得いかねぇ〜。 何でキャベツの野菜炒めがこんなに美味いんだ?)

 

 横を見ると、隣に座っているカズマも、同じ表情をしている。

 そうだよな、そう思うよな。

 ・・・・・・でも美味いんだよ。

 今まで俺が食べていたキャベツは何だったんだ?

 腐っていたのか? この世界に来てベジタリアンに目覚めそうだ。

 そう思うくらい美味い。

 

アクア「貴方、さすがクルセイダーね。 その防御力にはキャベツ達も攻めあぐねていたわよ。」

ダクネス「! いや、私などただ堅いだけの女だ。 それくらいしか取り柄がないからな。」

 

 そう、ダクネスはその持ち前の防御力を生かして、他の冒険者達をキャベツの突撃から、体を張って守っていたのだ。

 ただ、キャベツが当たるたびに、気持ち良さそうにしていたのは、俺の気のせいではないはず。

 

めぐみん「アクアの花鳥風月もなかなかでしたよ。」

  「冒険者達の士気を高めつつ、キャベツの鮮度を冷水で保つとわ。」

アクア「まぁね。 みんなを癒すのがアークプリーストの役目だもの。 それに、アークプリーストが出す水はとても清いのよ。」

 

 それって別に、花鳥風月じゃなくても、クリエイト・ウォーターで十分じゃないか?

 

ダクネス「それより私は、賢治達の方が驚きだ。 何なのだ君たちのあの姿は?」

エルシャ「本当よ。カズマも仮面ライダーになったと思ったら、目にも止まらない速さでキャベツを捕まえていたし、めぐみんは途中で姿が変わったと思ったら、急に5人に増えるんだもの。」

 

 カズマはクロックアップを駆使して確実にキャベツを捕まえ、めぐみんは途中から、ウォズフューチャリングシノビになり、分身の術と高速移動で効率よく捕獲していた。

 

アクア「それを言ったら賢治も大概よ。 あんな大きい網で一網打尽にするなんて。」

 

 まぁ、あのキャベツは突進にさえ気をつければ、急な方向転換もしないし動きも直線的だから、そんなに苦労しなかった。

 こんなクエストで稼げるんなら望むところだ。

 

アクア「私達も中々いい感じのパーティになってきたわね。」

  「クルセイダーのダクネス、ドルイドのエルシャ、アークウィザードのめぐみん、ルーンパラディンの賢治、アークプリーストの私に冒険者のカズマ。」

  「6人中4人が上級職のパーティなんてそうそう無いわよ。」

めぐみん「ふっふっふっ、しかも賢治と私とカズマは仮面ライダー、これはもう最強のパーティと言っても過言ではないでしょう。」

 

 いつの間にかダクネスがメンバーに入っている。

 まぁ、仕方ないか。

 

ダクネス「では皆、改めて私はダクネスだ。」

  「一応両手剣を使っているが、戦力として数えないでくれ。」

  「何せ、不器用すぎて攻撃が当たらないので、だが壁になるのは大得意だ。」

  「これからよろしく、皆。」

 

 ・・・俺も普通の人ならなにも文句はないんだが。

 この人あれだよな、ただのドMだ。

 正直これから苦労しそうだけど。

 

賢治「・・・ダクネス。」

ダクネス「?」

賢治「これからよろしく。」

ダクネス「!! あぁ! よろしく。」

 

 この日俺たちに新しい仲間が加わった。

 

 

 




と、今回はこんな感じです。
次は、爆裂散歩からベルディア登場辺りを書きたいと思っています。
又、次回もよろしくお願いします。
でわ、また次回


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

めぐみん カズマ 紹介回

今回は先にこちらを投稿します。
どちらも仮面ライダーになったばかりのステータスです。
後軽い人物紹介です。


めぐみん

 

Lv6

職業 アークウィザード     スキルP  7

 

 

体力   48(2400)   火90(450)

魔力   982(49100)  水45(225)

力    17(850)    土40(200)

知力   102(5100)   風75(375)

俊敏性  40(2000)   光50(250)

器用さ  35(1750)   闇65(325)

幸運   12(600)

 

*()内は変身後の数値

 

スキル

 ・変身

  仮面ライダーウォズへの変身

 ・爆裂魔法

  エクスプロージョン

 ・爆裂魔法威力上昇Lv1

  爆裂魔法の威力が上昇する

  レベルが上がると威力上昇

 ・高速詠唱Lv1

  普段より早く詠唱が完了する

 

習得可能スキル

 

魔法付与Lv1

・物質に魔法を付与することができる

 レベルに応じて付与できる魔力が上昇する

 

空間転移Lv1(めぐみん専用)

・マントを使って空間転移が可能

 レベルによって転移距離が変わる

 移動距離に比例して消費する魔力が増える

 

 

 黒髪のショートに赤い瞳

 黒マントと黒のローブにとんがり帽子の魔法使いっぽい服装をした紅魔族の女の子

 他の紅魔族同様厨二病を拗らせている

 頭が良く、少々男勝りだが面倒見が良く家庭的な一面もある

 仲間思いで、好きな人には一途で健気だが

 自分が目立つ状況を好むわりに、想定外の事態には弱い

 歳の離れた妹がいるため、子供の扱いは慣れている

 爆裂魔法と厨二病がなければ、隙のない女の子

 賢治に出会ったその日に、我が道を行くその信念にウォズミライドウォッチが反応しめぐみんは仮面ライダーになることができる様になる

 賢治に諭され、めぐみんは自分らしい仮面ライダーになる決意を固め、晴れて賢治たちとパーティを組む様になる

 

 

 

 

佐藤 和真

 

Lv4

職業 冒険者    SP 2

 

体力  17(850)   火 25(125)

魔力  10(500)   水 30(150)

力   13(650)   土 25(125)

知力  11(550)   風 35(175)

俊敏性 13(650)   光 25(125)

器用さ 15(750)   闇 35(175)

幸運  689(34450)

 

※()内は変身後の数値

 

スキル

・変身

 仮面ライダーゲイツへの変身

・敵感知

 敵の位置を感知することができる

 魔力を上乗せすると感知範囲が広がる

・潜伏Lv1

 気配を遮断する

 誰かに触れた状態で発動すると、その人物にも潜伏がかかる

 潜伏中に誰かに触れると解除される

 生き物には有効だが、アンデットには効果が薄い

 レベルが上がると気配遮断効果が上がる

・窃盗(スティール)

 対象の持ち物を一つだけランダムに奪う

 成功率は使用者の幸運値に依存する

 

 

 元引きこもりのネトゲ住民。

 人気ネットゲームの初回限定版を購入するために外出した帰りに、女子高生を庇ってトラクターに轢かれかけたのが原因でショック死してしまう。

 本人はトラックに轢かれたと勘違いする。

 その後、女神アクアから自分の行為が無駄だったことや、死んだ後の恥ずかしい失態をバカにされたことで仕返しに、異世界へ転生するときに『特典』として一つだけもらえる『物』にアクアを指名して道連れにした。

 茶色い髪と緑の瞳の中肉中背のごく普通の少年。

 緑のジャージがトレードマーク。

 後に、同じ異世界転生者の霧島賢治こと憧れの存在の仮面ライダーに出会う。

 賢治との交流の中、仮面ライダーに選ばれためぐみんを羨ましく思っている。

 キャベツ狩りの緊急クエスト中に、長年追い求めて来たが、途中で諦めた『ヒーロになりたい』と言う夢を今度こそ叶えるために覚悟を決めた和真はゲイツライドウォッチに認められ仮面ライダーゲイツへと変身を遂げる。

 和真はお世辞にも人格者とは言えないが、基本的にはお人好しの善人で、面倒見がいい。

 持ち前の幸運値の高さで運が絡む事にはめっぽう強い。

 本人曰く『生まれてから一度もジャンケンで負けたことがない』と語る。




この時点でのこの二人はこんな感じです。
どちらも結構尖ったステータスですね、こう見ると。
さて、第六話ですが。
いただいた感想で、インスピレーションが湧いたので、次回はオリジナル回に変更します。
感想をいただいたゼアムさんありがとうございます。
多分前後編の二部構成になると思います。
この人物紹介と同時進行で執筆中ですのでもうしばらくお待ちください。
それではまた・・・


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第六話 この森の主に祝福を 前編

皆さん、お待たせしました。
今回は、オリジナル回でやっぱり前後編の二部構成になりました。
あえて言うなら、エルシャの天下の始まりです。
では、第六話をどうぞ・・・


ー北の森林地帯ー

 

 ここは、以前エルシャがバーゲストに襲われた森林地帯である。

 彼女がここでバーゲストに襲われたのは、何も偶然と言う訳ではない。

 この森には、本来ならこの世界には居ない者が存在しているからだ。

 

???「うぅ・・・・・・グゥゥゥゥ・・・」

 

 そこには冒険者が一人よろよろと、今にも崩れ落ちそうな姿勢で、歩いている。

 息を荒くしながら、森の中を彷徨っていた。

 しかし、その背後には異形の存在が、彼に付き従うように追従している。

 それは、そのほとんどが二足歩行の白い外殻を持った虫のような姿をしていた。

 中には、虎や山羊、蝙蝠や鹿のような姿をした個体もいた。

 

???「くっ、俺に付き纏うなよ・・・」

 

 冒険者はそう言うが、その異形はその言葉を聞こうとしない。

 いや、中には彼に追従するのをやめて、勝手に行動をする者もいた。

 その個体がどうなるのか、その後どうなったのか、そんなことは今の彼にはわからない。

 彼はこの森の中で、偶然“ある物”を拾ったのだ。

 それが突然光出したと思ったら、自分の体の中に入ってきたのだ。

 すると、力が漲って来るのが分かった。

 しかし彼には、その力を制御するだけの意志の強さがなかった。

 気がつけば、異形達が増え続けるだけでなく・・・

 

???「ガッ!! ううぅぅぅぅぅ・・・・・・あああああああああああああ!!!!!!」

 

 『ガイム!』

 

 遂には、彼自身も異形の姿に変わってしまったのだ。

 その姿は侍のような姿で、大きな大剣を所持していた。

 その状態でも、ある程度意識を保っているが、少しでも気を抜けば自分自身も、自分に付き従う異形達も暴走してしまいそうだ。

 さっき彼は「付き纏うな」と言ったが、実際は自分の言う事を聞く異形達から目を離す訳にはいかいのだ。

 

???(こいつらは俺の言うことをある程度聞く、俺がこいつらから目を離せば間違いなく街に行く。)

  (それだけは・・・絶対にさせない。)

 

 それでも、彼の元を離れる異形は後を絶たない。

 せめて他の冒険者や一般人がこの異形達と出会わないことを祈るだけだ。

 そう思って、彼はまた森の奥へと歩み始めるのだった。

 

 

 

ーアクセルの街 冒険者ギルドー

 

 俺はギルドに来ていた。

 カズマは新たに初級魔法を覚えたようで、早速クリエイト・ウォーターを発動して、コップに注いだ水を飲んでいた。

 

カズマ「まっ、初級魔法じゃこんなもんだろう。」

  「魔法も覚えたし、俺も冒険者らしくなってきたかな。」

 

 カズマは昨日の突発クエストでスキルポイントに余裕ができたらしい。

 しかもカズマは仮面ライダーになったせいか、レベルも一気に上がったのだ。

 今のカズマのステータスを見せて貰ったが、こんな感じだ

 

 

 KAZUMA SATOU

 

 LV12

 職業 冒険者   SP 248

 

 体力   79   火 25

 魔力   68   水 30

 力    84   土 25

 知力   64   風 35

 俊敏性  49   光 25

 器用さ  89   闇 35

 幸運   792

 

 スキル

 ・変身

 ・敵感知

 ・潜伏LV1

 ・窃盗(スティール)

 ・初級魔法

  ティンダー

  クリエイト・ウォーター

  ウィンドブレス

  クリエイト・アース

  フラッシュ

  スモッグ

 ・初級氷結魔法

  フリーズ

 

 カズマの場合、幸運の数値がかなり高い。

 俺もカズマほど高くない。

 この数値は窃盗のスキルを使う上では、かなり成功率が高くなるはずだ。

 

ダクネス「二人とも見てくれ!」

賢治・カズマ「うん?」

ダクネス「キャベツの報酬で鎧を直したのだが、こんなにピカピカになった。」

  「どうだろう?」

 

 意外かもしれないが、ダクネスも報酬を貰っていたのだ。

 彼女は攻撃は当たらないが、攻撃を受け止めたり、捕まえることはできるのだ。

 だから、彼女にもそれなりの報酬が出たのだ。

 

カズマ「なんか、成金主義の貴族のボンボンが着けてる鎧みたい。」

ダクネス「・・・私だって素直に褒めて欲しい時もあるのだが・・・」

賢治(? なんだ、意外にこう言う時は普通)

ダクネス「・・・カズマは・・・どんな時でも容赦がないな・・・はぁ、はぁ・・・」

賢治「・・・・・・」

  (・・・やっぱりこいつドMだな。)

 

 ちょっとでもまともなところがあると思ったらこれだ・・・

 ダクネスは本当に、どんな時でもブレないな。

 

カズマ「今は構っている暇はないぞ。」

ダクネス「?」

カズマ「お前を越えそうな勢いの、そこの変態を何とかしろよ。」

 

 カズマが言っている変態とは、めぐみんのことだ。

 彼女もキャベツの報酬で、杖を新調したようだ。

 ただ・・・

 

めぐみん「はぁ、はぁ、魔力溢れるマナタイト製の杖のこの色艶・・・はぁ、はぁ・・・」

 

 と言って、杖に頬ずりしながら、体をクネクネさせているめぐみんがいた。

 確かに、そう言うことは誰も見ていないところでするべきだと思う。

 ちなみにめぐみんも、カズマ同様レベルがかなり上がった。

 

 MEGUMIN

 

 LV16

 職業 アークウィザード  SP 387

 

 体力   274   火 90

 魔力   7527   水 45

 力    184   土 40

 知力   624   風 75

 俊敏性  394   光 50

 器用さ  219   闇 65

 幸運   17

 

 スキル

 ・変身

 ・爆裂魔法

 ・高速詠唱LV1

 ・爆裂魔法威力上昇LV1

 

 習得可能スキル

 ・魔法付与

 ・空間転移LV1(めぐみん専用)

 

 めぐみんに関しては、魔力の数値が桁違いだ。

 これだけの魔力があれば、爆裂魔法を数発撃っても大丈夫じゃないだろうか?

 俺たちのステータスは普通の冒険者に比べたら、圧倒的に高い。

 このことをルナさんに相談しに行ったら

 「何ですかこのステータスはあああああ!!!!!!」

 と叫ばれた。

 これも仮面ライダーになれる事による、恩恵なんだろうか?

 俺達はステータスの事は、余程の事が無い限り口外しないようにしてもらった。

 

アクア「何ですってぇぇぇぇぇー!!」

 

 すると突然、アクアの叫びが聞こえてきた。

 受付の方を見ると、ルナさんの胸ぐらを掴んだアクアがいた。

 

アクア「ちょっと! それってどう言う事よ!」

  「どんだけキャベツ捕まえたと思ってんの!」

ルナ「うぅ・・それが・・・」

アクア「・・・あによ?」

ルナ「アクアさんが捕まえてきたのは・・・8割がレタスでして・・・」

アクア「はあ! 何でレタスが混じってんのよ?!」

ルナ「わ・・・私に言われても・・・」

 

 なんだ、レタスもいたのか。

 ・・・確かに子供の頃は、キャベツとレタスの区別が付かなかったが、いつの間にかわかる様になっていたな。

 けど、何でアクアはあんなに喚いているんだろうか?

 

ダクネス「確かに、レタスの換金率は低いな。」

カズマ「よく分からんが、そうなのか?」

 

 キャベツとレタス・・・確かに全く別の野菜だが、換金率の違いがよく分からん。

 野菜は野菜だと思うが・・・

 

アクア「くぅ・・・」

 

 するとアクアがこっちにやって来る。

 しかも、作った笑顔で・・・

 今度は何を言うつもりだろうか?

 

アクア「カ〜ズ〜マ〜さん、ケ〜ン〜ジ〜さん、今回のクエストの報酬は、おいくら万円?」

 

 こいつ、俺かカズマから集るつもりか?

 まぁ、特に隠す事でもないので・・・

 

カズマ「・・・250万・・・」

ダクネス・アクア「!! にひゃ!! ・・・」

めぐみん「ちなみに私は、350万です。」

ダクネス・アクア「!!! さんびゃ!! ・・・」

賢治「・・・1560万・・・」

「「「「!!!! いっせっ!!!! ・・・」」」」

 

 そう、俺とカズマとめぐみんは、今回のクエストでいきなり小金持ちになった。

 俺たちは仮面ライダーという事もあり、他の冒険者よりも圧倒的な数のキャベツを捕まえたのだ。

 カズマに関しては、幸運値のおかげか、経験値が多めのキャベツが沢山いたらしい。

 ちなみに俺も、当然レベルアップしている。

 今はこんな感じだ。

 

 

 KENJI KIRISHIMA

 

 LV25

 職業 ルーンパラディン  SP 7780

 

 体力  22027   火 150

 魔力  6325    水 150

 力   3403    土 150

 知力  3879    風 150

 俊敏性 3274    光 150

 器用さ 3914    闇 150

 幸運  523

 

 俺の場合は体力の数値が一番高い。

 これもう、変身しなくても大抵のモンスターは倒せてしまうんじゃないか?

 

アクア「・・・・・・ウフッ!」

  「ケ・・・賢治様・・・貴方ってその・・・強くて頼りになって、すごく素敵よね。」

賢治「・・・褒め言葉と受け取るよ。 でも、金ならやらないぞ。」

アクア「うっ!!」

 

 アクアの奴、一番金を持っている俺に集ってきやがった。

 けど、何でまた・・・

 

アクア「うぅ・・・賢治!」ガシっ!

賢治「!!」

アクア「私、今回のクエストが相当の額になるて聞いて、持っていたお金全部使っちゃったの!」

  「て言うか、大金入って来るって見込んで、この酒場に10万近いツケがあるの!」

賢治「何?!」チラッ

カズマ「・・・・・・」

 

 カズマの方を見ると、首を横に振っていた。

 表情からは、「いつもの事だ」と訴えている。

 ・・・なるほど、カズマ達が今だに馬小屋生活なのは、アクアの金使いの悪さが原因のようだ。

 

賢治「それは俺関係ないよな。 アクアが作った借金なんだから、アクアが稼いで返すのが道理だろ?」

アクア「だって! 私だけ大儲けできると思ったんだもの〜!」

  「お願い! お金貸して〜、ツケ払う分だけでもいいから〜!」

 

 正直、アクアには貸したくないが・・・

 

賢治「いいよ。」

アクア「そんなこと言わないでよ〜、ちゃんと返すから〜。」

賢治「だから、貸してやるって言ってるだろ!」

アクア「え! ホント!!」

 

 さっきまで泣いて懇願してきたのに、貸すって言った途端に笑顔を浮かべる女神様。

 ・・・まったく、泣くくらいなら借金なんか作るなよな。

 

賢治「ただし、これは貸すだけだからな。 きっちり全額返せよ。」

アクア「わ・・・わかってるわよ、ちゃんと返すから。」

賢治「じゃあ、十万だな・・・・・・はいこれ、十万な。」

アクア「ありがとう! やっぱり仲間って最高ね!」

 

 そう言ってアクアは、さっきからこっちを見ていたチンピラ二人に十万エリスのはいった袋を渡していた。

 俺はその時、メモ帳を取り出し

 

賢治「アクアに十万エリス貸した・・・っと。」

 

 こう書いていた。

 

めぐみん(賢治も結構容赦ないですね。)

ダクネス(キッチリメモに書いているな。)

 

 その時、また受付の方から声が聞こえた。

 今度はアクアではなく、エルシャだった。

 ルナさんに何かを聞いているようだ。

 

エルシャ「今日も来てないんですか?」

ルナ「はい、今日も見ていませんが?」

エルシャ「・・・そうですか、有難うございます。」

ルナ「いいえ、お役に立てず、申し訳ありません。」

 

 エルシャは見るからに落ち込んでいた。

 一体何があったんだろう? 

 

賢治「エルシャ、何かあったのか?」

エルシャ「うん・・・実は、私がたまに組んでいたパーティメンバーの一人が、ここ最近ギルドに来ていないの。」

 

 エルシャの話だと、ちょうど彼女がバーゲストに襲われた日から冒険者仲間の一人の行方が分からなくなったそうだ。

 その冒険者が最後に向かったのが、北の森林地帯・・・そう、エルシャがバーゲストに襲われたあの森らしい。

 俺はそのことを聞いた時、何だか嫌な予感がした。

 厄災の象徴と言われるバーゲストの出現、森で行方不明の冒険者、その森でエルシャが襲われた。

 

賢治(その森で確実に何かが起こっているよな。)

カズマ「なぁ、賢治。」

賢治「うん?」

カズマ「俺達で、探してやらないか?」

エルシャ「え?」

 

 意外だ、カズマがこんなことを言うなんて。

 カズマの事だから面倒事を避けようとすると思っていた。

 

賢治「カズマからそんな言葉を聞くとわな。」

カズマ「そりゃ、俺だって仮面ライダーになった訳だし、それに・・・」

賢治「?」

カズマ「・・・やっぱり、助けを求めているんなら、助けなきゃな。」

めぐみん「私も気持ちは同じです。 助けられるのなら、助けるべきです。」

 

 まぁ、俺は最初から探すつもりだったから、みんなが協力してくれるのなら心強い。

 

ダクネス「なら、このクエストを受けないか?」

賢治「うん?」

 

 ダクネスが持ってきたのは、北の森林地帯の調査クエストだった。

 ここ最近、この森一帯で謎のモンスターの目撃報告が多数報告されているようだ。

 このクエストはそのモンスターの調査らしい。

 

エルシャ「みんな・・・いいの?」

賢治「もちろんさ。 だろ、みんな。」

カズマ「おう!」

めぐみん「はい!」

ダクネス「私も協力するぞ。」

 

 と、こうやってみんなが『やる』と言っていると言うのに

 

アクア「えぇ〜、そんなクエストよりお金になるクエストを受けましょう。 ツケを支払ったから、今日のご飯代がないんだから。」

「「「「「・・・・・・・・・」」」」」

アクア「な・・・何よ・・・」

 

 こいつは・・・一体どうしてくれようか?

 ・・・よし。

 

賢治「わかった、それじゃあアクアとは今回別行動だな。」

アクア「え?」

カズマ「そうだな、この駄女神は乗り気じゃないみたいだし。」

めぐみん「そうですね。 私達だけで行きましょうか?」

ダクネス「うむ、そうしよう。行こうエルシャ。」

エルシャ「うん、皆んなありがとう。」

 

 そう言ってアクアを除いた俺達はギルドから出て行こうとすると

 

アクア「ちょっ・・・待って、待ってよ〜!」

  「行くから、私も一緒に行くから〜! 協力するから〜!」

 

 と言って、泣きながらこちらに縋って来たので、一緒に連れて行くことになった。

 だが、せっかく大金が手に入ったので、森に行く前に俺とカズマの装備を新調することにした。

 武具屋に行った俺達は店内を見渡し、自分に合った装備を整えて店から出てきた。

 まずカズマだが、上から緑のマントに白のシャツ腰に剣を携帯するためのベルト、紺のスボンに茶色のブーツ、と如何にも冒険者っぽい装備になっていた。

 そして俺は、まずアンダーウェアの上に鎖帷子を着込んで、その上から黒のシャツを着ている。

 装備は金属部分は全て鋼の素材で出来ていて、上からショルダーガードと一体型の左側にだけ鋼のプレートがついた胸当て、左手にはハーフフィンガーのグローブ、右腕は二の腕まで覆えるガントレット、腰にはポーションや各種道具を収納できるツールベルト、下は、黒のズボンに膝まで届く鋼のグリーブを履いている。

 カズマより重装備だが、ステータス補正のおかげで重さはそんなに感じない。

 俺もこれで冒険者らしくなったと思う。

 

「「「「おおぉ!!」」」」

めぐみん「二人が、冒険者っぽい格好をしています。」

アクア「前の服のままだと、ファンタジー感ないものね。」

ダクネス「? ファンタジー感?」

 

 さて、改めてクエストに向かうことにした俺達は、街の正門まで移動したらダブルライドウォッチで呼び出したリボルギャリーに乗って森に向かった。

 俺とカズマとアクアは何ともなかったが、めぐみん・ダクネス・エルシャは走行時の揺れのせいで車酔いを起こしていた。

 まぁ、リボルギャリーの中はお世辞にも快適とは言えない空間だよな。

 ていうか、リボルギャリーは車でいいんだよな?

 リボルギャリーの操縦は仮面ライダーWのバイク『ハードボイルダー』で運転しているのだが?

 そうこうしているうちに、目的の森の前まで着いた。

 めぐみん達車酔い組は、リボルギャリーのハッチを開けた瞬間に、外へと飛び出て口から虹色のものをぶちまけていた。

 

賢治「・・・三人共、大丈夫か?」

めぐみん「ナ・・・ナントカ・・・」

ダクネス「うぷっ・・・受けるのが得意な私だが、これは流石に・・・」

エルシャ「うぅ・・・おぅ・・・これなら、賢治が乗るバイクの後ろに乗った方がマシ・・・う! うぅぅ・・・」

カズマ「俺は満足だ! ただただ満足だ!!」

 

 カズマはリボルギャリーを出した時、ものすごくテンションが上がっていた。

 一度でいいから乗ってみたかったらしい。

 まぁ、そうだよな。 やっぱりそう思うよな。 俺もそうだし。

 

アクア「えぇ〜っと、効くかどうか分からないけど? ピュリフィケーション!」

 

 アクアが三人に向かって、魔法を発動した。

 状況から考えて、状態異常を解除する類の魔法だろうか?

 

アクア「どう?」

めぐみん「あ! 楽になりました。」

ダクネス「さすがアークプリースト、酔いまで直せるんだな。」

エルシャ「はぁ〜、浄化魔法もかけてくれたし、出す物も出したし、スッキリしたわ。」

 

 やっぱり状態異常解除系の魔法か。

 これで心置きなく調査ができるな。

 俺は森に向かって歩き出したとき、森から延びている蔦に目が止まった。

 どこかで見たような色と形だ。

 ・・・いや、ごく普通の蔦に見えるが本当にどこかで見たような気がする。

 

賢治「・・・エルシャ、この蔦見たことあるか?」

エルシャ「え? どれどれ?」

 

 エルシャはその蔦を見ると、次第に表情が真剣な顔になっていった。

 暫く手にとって、観察していたが

 

エルシャ「・・・何これ、こんな植物知らない。」

賢治「初めて見る植物か?」

エルシャ「えぇ、こんな植物初めてだわ。」

賢治「そうか・・・うん?」

 

 視線を腰のツールベルトに向けると、中から微かに緑色の光が漏れていた。

 中を見てみると、それはブランクライドウォッチだった。

 このライドウォッチはこの世界に来たときに何故かすでに21個手元にあり、今手元には何かに使えると思って五つ持ってきている。

 まだ何の力もない、目覚めるの待つ、眠ったライドウォッチ。

 その内の一つが微かに輝いていたのだ。

 

賢治(え?! もしかして・・・)

 

 このタイミングで輝くライドウォッチ、近くにいるのはエルシャ・・・

 

賢治「・・・まさかな。」

エルシャ「? 何?」

賢治「いや、何でもない。」

  「よし皆、ひとまず森に入ってみようぜ。」

カズマ「おう、わかった。」

 

 俺たち六人は、森の奥へと進んでいった。

 奥へ行くにつれ、この森の異変に気付いた。

 周りの木々や植物の上から、さっき森の前で見た植物が覆い尽くすように鬱蒼と茂っているのだ。

 まるでその植物達が、この森を支配しようとしている様な、そんな異様さを感じた。

 そして俺は、この森の事を目の前にぶら下がる果実を見て思い出した。

 

賢治(思い出した!! この森は仮面ライダー鎧武に出てきた『ヘルヘイムの森』だ!)

 

 しかし、何でこの森にヘルヘイムの植物が・・・

 まさか、この森のどこかで『クラック』が開いて、この世界と繋がったんだろうか?

 

エルシャ「・・・これ、何かしら?」 プチッ

アクア「何かの・・・果実かしら?」

 

 エルシャとアクアは、蔦に成っているヘルヘイムの果実を見ていた。

 エルシャが皮を剥くと、中から薄ピンク色の瑞々しいプルプルの果肉が出てきた。

 ・・・なるほど、確かに『美味そうだ』。

 劇中に出てきた仮面ライダー鎧武こと葛葉紘太が、ヘルヘイムの果実を見た時「美味しそうだ」と言っていたが、その気持ちが分かった

 

エルシャ「・・・なんか・・・」ゴク!

  「美味しそう・・・あぁ〜」

賢治「!!」

 

 いや! 流石に本当に食べるのは不味い!

 すかさずエルシャの腕を掴んだ。

 

エルシャ「!? ビックリした。 どうしたの?」

賢治「エルシャ、今それを食べようとしたろ。」

エルシャ「うん、なんか、美味しそうだったから・・・あ! 初めて見るものを食べようとするのは不味いか。」

賢治「いや、俺が止めていなくて本当にその実を食べていたら、今頃お前は怪物になっていたぞ。」

エルシャ「え!!?」

アクア「け・・・賢治、いくら何でもそんな事は・・・」

 

 マジだし。 劇中でも果実を食べた人間が『インベス』という怪物に変貌していたから冗談じゃない。

 

カズマ「もしかして、仮面ライダー関連か?」

めぐみん「え? じゃあ、この森の変貌やその果実も何か関係があるんですか?」

賢治「あぁ、実はな・・・」

 

 俺は平成15番目の仮面ライダー鎧武についてみんなに説明した。

 仮面ライダー鎧武の事

 ヘルヘイムの森の事

 インベスの事

 オーバーロードの事

 黄金の果実のこと

 始まりの男と始まりの女の事

 正直全てを語り出すとキリが無いので、詳細は割愛する。

 

エルシャ「じゃあ、もしこの果実を食べていたら、私もそのインベスって言う怪物になっていたの?」

賢治「そう言うこと。」

めぐみん「・・・すごいですね。・・・いや、その鎧武と言う仮面ライダーの人、別の星の神様になるとか・・・」

ダクネス「は・・・話が壮大すぎて追いつけん。」

アクア「ふ・・・ふん! 人が神になるとか、生意気なんですけど。」

  (・・・・・・何よ何よ・・・私より神様っぽいじゃない!)

カズマ「くっ、俺もリアルタイムで見たかった。」

 

 確かに、鎧武に関してはリアルタイムで見る価値はあると思う。

 それだけ凄く面白いストーリーだから。

 その時、敵感知のスキルの反応があった。

 

賢治・カズマ「!!」

 

 いち早く気づいた俺とカズマが武器を構える。

 つられて皆も武器を構える。

 そこに現れたのは・・・

 

???「ギ・・・ギギ・・・」

賢治「こいつ!」

 

 出て来たのは間違いなくインベスだった。

 目の前の一体は真っ白の体に赤い色が入った身体の進化前のインベスだった。

 しかし、その一体だけでなく、そこら中からまだまだ出て来ている。

 

カズマ「うわ! こんなに居たのかよ!」

めぐみん「ヤバイです。囲まれています。」

 

 今も1匹また1匹と数を増やして来ている。

 このままだと数で潰される。

 ヘルヘイムの植物は森の奥へと続いている。

 ・・・ここは一気に

 

賢治「みんな、一気に森の奥へ行くぞ!」

「「「「「え?!」」」」」

賢治「俺たちが受けた受けたクエストはこの森の調査だ。 この森の異常の原因が何なのか、最低でもそれを確認してから逃げるぞ。」

エルシャ「あと、私の仲間の捜索ね!」

賢治「おう!」

 

 この森の原因は、インベスがいるんだからオーバーロードがいてもおかしくない。

 おそらくそいつが原因だと思うが、この目で見ないと分からないからな。

 俺はドライブライドウォッチからトレーラー砲を呼び出し、さらに仮面ライダードライブの変身アイテムのシフトカーを三台呼び出した。

 シフトフォーミュラーとマンターンF01、そしてジャッキーF02の三台だ。

 

賢治「ダクネス、後ろから俺を支えてもらっていいか?」

ダクネス「わかった。」

賢治「エルシャ、どっちからヘルヘイムの植物が伸びて来ているのかわかるか?」

エルシャ「えぇ〜っと・・・あっちよ!」

 

 エルシャが示した方角は北の方角、森の奥を指していた。

 

賢治「よし!」

 

 俺はトレーラー方の運転席部分を下にスライドさせ、コンテナ上部のレールにシフトフォーミュラーをセットした。

 

 『フォーミュラー砲!!』

 

 さらにトレーラー砲のシフトカー挿入口からコンテナの中にマンターンとジャッキーを入れる。

 

 『ヒッサーツ!! フルスロットル!!』

 

 トレーラー砲とシフトカー三台分のエネルギーがトレーラー砲の砲門に集中していく。

 エルシャが指し示した方向にトレーラー砲を向けトリガーを引いた。

 

 『フルフル・フォーミュラー・大砲!!』

 

 必殺音声の後に、青いエネルギー波が放射され射線上にいたインベス達はエネルギー波に飲まれて爆発した。

 撃った瞬間にとてつもない衝撃が体に襲いかかってきた。

 ダクネスが支えてくれていなかったら、後方に吹き飛んでいただろう。

 

賢治「今だ!! 走れええぇー!!」

 

 俺の掛け声の後に、全員走り出した。

 他のインベスには構わず、森の奥に向かって。

 

 

 ーーーーーーーーーー

 ーーーーーーーー

 ーーーーーー

 ーーー

 ー

 

 

 インベス達を振り切り、俺たちは森の奥に来ていた。

 今でもインベス達は追いかけて来ているが、どうも動きが鈍いような気がする。

 まるで何かに行動を抑圧されているような?

 しばらく歩くと、目の前に大きな大樹が聳え立っていた。

 その根本に誰かが座り込んでいた。

 

賢治「? 誰かいるぞ。」

 

 木が覆い茂っていてよく分からないが見たところ、男だろうか?

 東洋の甲冑、俺達の世界で言うと侍のような格好をした冒険者?がいた。

 

エルシャ「! トーマ!」

 

 エルシャが彼に向かって駆け出した。

 どうやら彼がエルシャが探していた仲間で、名前は『トーマ』と言うようだ。

 

エルシャ「トーマ大丈夫?」

トーマ「うぅ・・・エルシャ?」

エルシャ「そうよ。あなた何でこんなところに居るの?」

 

 トーマは相当疲れているのか、顔だけをエルシャに向けて

 

トーマ「・・・エルシャ・・・」

エルシャ「? なに?」

トーマ「!!」

 

 トーマはエルシャを突き飛ばした。

 

エルシャ「キャ!」

賢治「エルシャ!!」

 

 俺はとっさにエルシャを受け止めた。

 一体どうしたんだろう?

 

エルシャ「あ、ありがとう。 トーマなにするの?」

トーマ「グゥ、今すぐ・・・ここから逃げろ。」

エルシャ「え?」

トーマ「早く・・・グ!!」ドクン!!

 

 トーマは急に胸を押さえ、すごく苦しそうにうめいた。

 次の瞬間、彼の体からある音が聞こえた。

 

 『ガイム!』

 

賢治「・・・は?!」

トーマ「うぅ・・・があああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 彼は叫び声を上げながら、異形の姿に『変身』した。

 それは、鎧武者を思わせる姿で、大きな大剣を手に持っていた。

 今のトーマは『アナザーライダー』、アナザー鎧武になっていた。

 

エルシャ「ト・・・トーマ?」

アナザー鎧武「ガアア!!」

 

 アナザー鎧武は大剣を振り上げて斬りかかってきた。

 

 『ジカンギレード!』

 

 俺はジカンギレードを出して、その大剣を受け止めた。

 俺はアナザー鎧武と数号打ち合った後、ジカンギレードを銃モードに切り替えて迎撃し、後ろで見ていたカズマもジカンザックの弓モードで援護をしてくれた。

 

賢治「カズマ、めぐみん、変身するぞ!」

エルシャ「え?! 待ってよ彼はトーマなのよ!」

賢治「戦って変身を強制解除させないと助けることはできないんだ。」

  「大丈夫、殺すんじゃなくて、助ける為に戦うんだ。」

カズマ「そう言うことなら」

めぐみん「私たちの出番ですね!」

賢治「カズマ、これを使え!」

 

 俺はカズマにバロンライドウォッチを渡した。

 アナザー鎧武には鎧武の力が有効だが、同じ系列の仮面ライダーバロンの力ならアナザー鎧武にも有効なはずだ。

 

カズマ「わかった!」

 

 『ジオウ!』『ガイム!』

 『ゲイツ!』『バロン!』

 『キカイ!』

 

 俺たち三人はそれぞれライドウォッチとミライドウォッチを起動し、仮面ライダーに変身する。

 

「「「変身」」」

 

 『ライダータイム! 仮面ライダー・ジオウ!』『アーマータイム! ソイヤ! ガイム!』

 『ライダータイム! 仮面ライダー・ゲイツ!』『アーマータイム! カモン! バロン!』

 『投影! フューチャータイム!』『デカイ! ハカイ! ゴーカイ! フューチャリングキカイ! キカイ!』

 

 変身した俺達は、アナザー鎧武に向かって走り出した。

 俺はジカンギレードと大橙丸の二刀流で斬りかかり、カズマはジカンザックの弓モードで射撃し、めぐみんは意外にも近接戦闘で戦っていた。

 今のめぐみんはフューチャリングキカイ。

 未来の仮面ライダー、仮面ライダーキカイの力を使っているので、とてつもないパワーだ。

 向こうは一人でこっちは三人、数で有利なので負ける気がしない。

 

カズマ「これでどうだ!」

 

 『フィニッシュタイム! バロン!』『スカッシュ! タイムバースト!』

 

 カズマはジカンザックからバナスピアーに武器を持ち替え、必殺技を繰り出した。

 バナナの形をしたオーラがアナザー鎧武に襲いかかる。

 

アナザー鎧武 「!!」 カシュ!

 

『オレンジ! スカッシュ!』

 

アナザー鎧武「ムン!!」

 

 アナザー鎧武は腰のカッティングブレードを一回動かして、ミカンの輪切りの形をした必殺技を大剣に乗せて放った。

 カズマの放った必殺技とぶつかり相殺された。

 だがすかさず、今度はめぐみんが

 

めぐみん「これでどうですか?」

 

 『ビヨンドザタイム!』

 

 めぐみんはドライバーのクランクインハンドルを開くともう一度閉じた。

 

 『フルメタルブレイク!』

 

 必殺技のエネルギーを右拳に集め、アナザー鎧武に向けてパンチを繰り出した。

 

めぐみん「ハァ!!」

アナザー鎧武「!!」

 

 ガキン!!

 

 避けられないと判断したのか、大剣を盾のようにして防いだ。

 だがそれでも勢いは殺せなかったようで、後方へ押し込まれた。

 その隙を見逃さず、俺はアナザー鎧武の左側に回り込み。

 

賢治「これで決める!」

 

 『フィニッシュタイム! ガイム!』『スカッシュ! タイムブレイク!』

 

賢治「セイヤァァ!!」

 

 すれ違いざまにジカンギレードと大橙丸で切り裂く。

 次の瞬間アナザー鎧武はオーラで出来たオレンジ型のエネルギーの檻に閉じ込められる。

 

アナザー鎧武「!! !?」

 

 アナザー鎧武はその檻から抜け出そうとするが、びくともしない。

 俺は二刀を上段に構えて下へ向けて振り下ろした。

 

賢治「ハアァァァ!!」

アナザー鎧武「!! ガアアアアアアアア!!!!」

 

 アナザー鎧武を覆っていたエネルギーが爆発し、必殺の一撃が確実に決まった。

 

賢治「よし、これで・・・」

 

 終わった。彼を救えた。

 ・・・そう思って完璧に油断していた。

 

 『オレンジ! オーレ!』

 

賢治「な?! ぐああぁ!!」

 

 まだ晴れぬ煙の向こうから、オレンジの斬撃が二発飛んできた。

 俺はそれを真正面からもろにくらってしまった。

 そのせいで、変身が強制解除された。

 

「「「「「賢治!!」」」」」

 

 俺はこの世界に来て、初めてダメージを受けた。

 なるほど、仮面ライダー達もこんな感じで傷を負っていたのか。

 それでもまた立ち上がるんだから、本当にすごいとしか言いようがない。

 すると煙の向こうから、無傷のアナザー鎧武が現れた。

 

アクア「嘘でしょ? 無傷って・・・」

カズマ「おいおい、冗談だろ?」

 

 アナザーライダーは、変身者の変身を強制解除させて、体内のアナザーライドウォッチを体外に排出し破壊する事で再変身を防ぐことが出来る。

 だが目の前のアナザー鎧武は、変身解除どころかダメージがないように見える。

 まるで何か大きな力に守られているような・・・

 その時、アナザー鎧武が俺に向かって斬り込んできた。

 

賢治「くぅ!」

エルシャ「!! ダメエェェ!!」

 

 ガキン!!

 

 アナザー鎧武の一撃を防いだのは、ジカンギレードを掴んでいたエルシャだった。

 

エルシャ「トーマ! お願い! 正気に戻って!!」

アナザー鎧武「グゥゥ! アアアアアア!!」

エルシャ「トーマ!! ・・・・・・トーマ、これ以上・・・この人を傷付けるなら・・・私・・・怒るからね!!」

アナザー鎧武「ガッ?!」

 

 エルシャが叫んだ時、ツールベルトの中にあったブランクライドウォッチが緑色に今度は激しく輝き出した。

 その瞬間アナザーガイムは弾き飛ばされ、エルシャの目の前にブランクライドウォッチと一つのヘルヘイムの果実が浮いていた。

 その二つはまるで溶け合う様に混ざり合い、新しい形を再構築していく。

 その形は、メロンの形をした錠前だった。

 そう、エルシャの目の前にあるのは、『呉島貴虎』が『仮面ライダー斬月』に変身するときに使うメロンロックシードだった。

 

賢治「それ! メロンロックシード?!」

エルシャ「・・・綺麗。」

 

 エルシャがロックシードを手に取ると

 

エルシャ「え?」

 

 『まぁいい。まずは一人目。順調な滑り出しだ。』

 『どうした?その程度か?』

 『敵に「なぜ」などと問いかける者は、そもそも戦う資格すら無い!』

 『戦いに意味を求めてどうする?答えを探し出すより先に、死が訪れるだけだ。』

 『この世界には、理由のない悪意などいくらでも転がっている。』

 『クラックの出現頻度が予想以上に増えている。』

 『とうとう市民にも侵食被害者が出たか。』

 『あれはもう人間じゃない。人を襲う怪物だ。』

 『これがヘルヘイムの森の正体だ。』

 『全ては人類のための尊い犠牲だ。』

 『かつてはこの世界にも人間がいて、街を作り文明を築いていた。』

 『我々がインベスと呼んでいる怪物。あれはこの世界に住んでいた動物達の成れの果てだ。その中にはこの街を作った文明人も含まれている。』

 『理由なんてない。植物が種を散らして、生存範囲を広げるのは当然の事だ。』

 『言ったはずだ。これは理由のない悪意だと。』

 『言ったはずだ。ユグドラシルは人類最後の希望だと。』

 『誰に許されるつもりもない。その罪を背負って我々は未来を切り開く。』

 『この程度の痛みなど、この先背負う罪に比べれば・・・』

 『何だこのインベスは?武装しているのか?』

 『この森を支配できる者と交渉が可能ならば、人類の生存戦略は根幹から変わってくる。』

 『貴虎だ。名乗るのが遅れたが礼を言う前に間に合った。絶望以外の選択肢をもたらしてくれたこと感謝する。』

 『俺はとっくに諦めていた。人類を救うためには犠牲はやむを得ないと。自分にそう言い聞かせようとしていた。だがあの男は違った。決して諦めようとはしなかった。おかげで新たな希望が生まれた。』

 『生きる意味がなかったとはどう言う意味だ?お前達は侵略に打ち勝ったのではないのか?』

 『誰もが強さを求めたが故に誰も破滅を止められなかった。それが・・・お前達の結論なのか?』

 『光実!なぜ葛葉を襲ったりする?お前はそんなことをする男じゃない筈だ!』

 『ずっと海外にいた両親に代わって私が光実の教育を受け持ってきた。』

 『正しさと責任と誇りある生き方を学んでほしいと。』

 『決着をつけよう、光実。』

 『私は戦い続ける。この世界の歪みが無くなるまで。それが私の償いだ。』

 『俺は今あるこの世界を守る。世界を蝕む悪意には、二度と屈しない!変身!』

 

エルシャ「・・・・・・これ・・・この人の・・・」

アナザー鎧武「グウゥゥ ガアアアアア!!」

エルシャ「・・・トーマ、私が・・・あなたを助ける!」カチン!

 

 エルシャがロックシードのロックを解除すると

 

 『メロン!』

 

 と言う音がした時、エルシャの腰には戦極ドライバーが巻かれ、ライダーインジケータには斬月の横顔が写っていた。

 エルシャの頭上にクラックが開き、そこからメロンアームズが出現する。

 メロンロックシードをドライブベイにセットするとロックシードのスライドシャルクとドライバーのロックオンアームを閉じて固定する。

 

エルシャ「変身!!」カシュ!

 

 エルシャが叫んだ後にドライバーのカッティングブレードを一回降ろし、ロックシードのキャストリパッドが開きシードインジケーターが展開された。

 

 『ソイヤ!』『メロンアームズ! 天・下・御・免!』

 

 そこには、白いボディスーツに黄緑のアーマー、右手に無双セイバー、左手にメロンディフェンダーを持った仮面ライダー。

 仮面ライダー斬月が立っていた。




如何だったでしょう?
エルシャは鎧武か斬月か迷いましたが。
個人的なイメージではやっぱり斬月でした。
次回の後編では、さらにパワーアップする予定です。
それでは、また次回・・・


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第七話 この森の主に祝福を 後編

皆さんお待たせしました。
今回は原作仮面ライダージオウにも無かった展開を用意しました。
気に入っていただければ幸いです。
エルシャのパワーアップにも注目してください。
それでは、第七話をどうぞ・・・


 

 『ソイヤ!』『メロンアームズ! 天・下・御・免!』

 

エルシャ「ヤアアァ!」

アナザー鎧武「!!」

 

 変身したエルシャは、アナザー鎧武と戦闘を開始する。

 メロンディフェンダーで攻撃を防ぎ、無双セイバーで確実に隙を突いて攻撃している。

 だが、あのダメージ無効の秘密を暴かない限り何度やっても俺達に勝ち目はない。

 俺は能力透視を使いアナザー鎧武の能力を見た。

 

 TOMA

 

 Lv5

 職業 ダブルソードマン   SP3

 

 体力  3100(62)   火 175(35)

 魔力  1050(21)   水 125(25)

 力   2350(47)   土 100(20)

 知力  1650(33)   風 200(40)

 俊敏性 1750(35)   光 200(40)

 器用さ 1450(29)   闇 100(20)

 幸運  950(19)

 

 スキル

 

 ・斬撃

  通常の斬撃より強力な斬撃を繰り出す

 ・加速

  通常よりも早く動ける

 ・知覚強化

  感覚器官を一時的に強化する

 

 EXスキル

 ・黄金の果実の欠片

  一定のダメージを無効化する

  特効攻撃無効

  一定のレベルに達していない場合ステータスがダウンする

 

賢治「・・・・・・はい?」

 

 EXスキル? なんだそれ?

 しかも『黄金の果実の欠片』だと。

 つまり、ダメージを無効化するだけでなく、恐らく仮面ライダー鎧武の力を使った攻撃が効かないと言うことか?

 このままだと本気でヤバイ。

 

賢治「ダクネス、周りにあるヘルヘイムの果実を集められるだけ集めてくれるか?」

ダクネス「え? 何をするんだ?」

賢治「他のロックシードが作れないかためしてみる。」

  「アクアは俺の傷の回復を頼む。」

アクア「わかったわ。 ヒール!」

賢治「カズマはいつでも『窃盗』を発動できるように準備しておいてくれ。」

カズマ「お、おう。 わかった。」

賢治「めぐみんは、エルシャの援護してくれ。」

めぐみん「わかりました。」

 

 俺はそれぞれに指示をだし、カズマの『窃盗』発動の瞬間を待った。

 アクアはさすがアークプリースとであり女神なだけあって、傷がみるみると回復していく。

 ダクネスは目につく果実を片っ端からかき集めている。

 俺の予想が確かなら、カズマの『窃盗』で上手くいけば『あれ』が取れるはずだ。

 ここはカズマの運のよさを信じるしかないが。

 さっきまで少し押されぎみだったエルシャも、めぐみんの加勢で勢いに乗りアナザー鎧武を相手に善戦していた。

 

めぐみん「次はこれです!」

 

 『フィニッシュタイム!』『爆裂DEランス!』

 

 めぐみんはジカンデスピアの『槍モード』で発動できる必殺技を放った。

 さっきもそうだったが、カズマやめぐみんの攻撃はしっかり防ぐのに俺の時は、今思えば敢えて受けたような気がする。

 本人が気づいているかどうかは分からないが、『受けても大丈夫。』と思ったのだろう。

 めぐみんの一撃を受けてアナザー鎧武の体制が崩れた。

 

ダクネス「賢治。 これだけ有れば良いだろうか?」

賢治「おう! 上出来だ。」

 

 ダクネスの腕の中には10個くらいの果実が集められていた。

 俺はその内の一つを掴み。

 

賢治「エルシャ、これを使え!」

 

 と言って、エルシャに向かって投げた。

 

エルシャ「え? おっと!」パシ!

 

 上手くエルシャはその果実をキャッチした。

 すると果実が光出し、次の瞬間にはロックシードに変わっていた。

 

エルシャ「新しいロックシード! よーし。」カチン!

 

 『ウォーターメロン!』

 

 エルシャはロックシードのロックを解除し、メロンロックシードと入れ替える。

 スライドシャルクを閉じて、カッティングブレードを降ろす。

 

 『ソイヤ!』『ウォーターメロンアームズ! 乱れ玉・ババババン!』

 

 エルシャは今度は仮面ライダー斬月・ウォーターメロンアームズにフォームチェンジした。

 さっきのメロンアームズと形状にそんなに差はないが、全体に赤のラインが入りアーマーはスイカ模様になり、武器も無双セイバーの他に盾とガトリング砲が一体化した『ウォータメロンガトリング』が握られていた。

 

エルシャ「お・・・おぉ!! ・・・それ!!」

 

 ドドドドドドドドドドドドドドドド

 

アナザー鎧武「!! グウゥ・・・ゴオオオオォォォ!!」

 

 ウォーターメロンガトリングの高速連射に堪らず大剣を盾にするアナザー鎧武だが、到底防ぎ切れる数の弾じゃない。

 

エルシャ「・・・・・・いい! これいい!!」

  「これで決めるわ!」カシュ!カシュ!

 

 『ウォーターメロン・オーレ!』

 

 エルシャはブレードを2回降ろして、必殺技を発動した。

 ガトリング砲の砲門にエネルギーがチャージされ大玉のスイカの形をした弾丸が・・・いや砲弾がアナザー鎧武に炸裂した。

 

めぐみん「やったでしょうか?」

エルシャ「まだ分からないわ。 油断しないで。」

 

 二人は構を解かず、いつでも対応できるように身構えている。

 煙が晴れると、そこには若干ダメージを負っているアナザー鎧武が立っていた。

 やっぱりあのEXスキルをなんとかしないと決定的な攻撃にはならないようだ。

 一か八かカズマにかけるか。

 

賢治「カズマ! 頼む!」

カズマ「! スティール!!」

 

 カズマの『窃盗』のスキルが発動し、目の前が一瞬真っ白に光る。

 仮面ライダーに変身した今のカズマの幸運値は30000を超えているはず。

 この数値で盗めない物があるのなら教えて欲しい。

 光が収まった時、カズマの突き出した右手にはアナザー鎧武から奪った物が握られていた。

 

カズマ「・・・? なんだこれ?」

  「・・・鍵か?」

 

 俺の読み通り、カズマの手の中には『極ロックシード』が握られていた。

 黄金の果実の欠片と言うスキル名の通り、原作仮面ライダー鎧武でオーバーロードの王ロシュオが持っていた黄金の果実から生まれたあの、極ロックシードだった。

 ステータスを確認すると、EXスキルの項目が消えかかっていた。

 

EXスキル

 ・黄金の果実の欠片

  一定のダメージを無効化する

  特効攻撃無効

  一定のレベルに達していない場合ステータスがダウンする

 

 だが、次の瞬間アナザー鎧武に変化が起きた。

 

アナザー鎧武「ガアアアアアアアアア!!!」

「「「「「「!!?」」」」」」

 

 アナザー鎧武が急に苦しみだし、体に赤いエネルギーがバチバチと走った。

 次第にオレンジのボディが赤黒い色に変化し始めた。

 さらに、またしても此方の予想外のことが起こった。

 

 『ブジンガイム!』

 

賢治「・・・はあ!!?」

 

 そう、目の前のアナザー鎧武がなんと『アナザー武神鎧武』に変化したのだ。

 はっきり言って、こんなの予想の範囲外だ。

 原作でもこんな事無かったのに。

 しかも消えかかっていたEXスキルの項目に新しいスキルが追加されている。

 

 EXスキル

 ・邪道蓮華座

  スキル『狂化』『抑圧からの解放』『御神木』のスキルを内包する

 ・狂化

  自我が薄れ本能のままに行動する様にになる

 ・抑圧からの解放

  インベスの活動が活性化する

 ・御神木

  インベスを生み出し使役する

  生み出すには水とヘルヘイムの果実が必要

 

 さっきの黄金の果実の欠片も厄介だったが、今度はさらに手が付けられなく成ってないか?

 さっき出会ったインベス達は動きが鈍かったが、このスキルのお陰か動きが活発になっている。

 敵感知のスキルによれば、ものすごい数のインベスがこっちに向かって来ている。

 

賢治「まずいな。」

カズマ「あぁ、インベスがここに集まってきている。」

めぐみん「どうします? 私の爆裂魔法で吹き飛ばしましょうか?」

エルシャ「いや、ここは森の中なんだから吹き飛ばすのはダメよ。」

 

 確かに、ここで爆裂魔法を撃ったらこの森が消し飛んでしまうかも知れない。

 今のめぐみんならそれくらい出来そうな気がする。

 ここはやっぱり逃げの一手だろう。

 

賢治「みんなここは一旦逃げるぞ。」

「「「「「賛成!!」」」」」

 

 正直に言うなら彼、トーマをこのままにして逃げるなんてしたくない。

 だが、このままここに居ればみんな仲良く全滅してしまう。

 ならば一度逃げて体制を立て直すべきだ。

 対策無しで勝てる相手じゃない。

 

賢治「みんな集まれ!」

 

 俺はウィーザードライドウォッチを出して、魔法を発動した。

 

 『テレポート! プリーズ!』

 

 みんなの足元に魔法陣が現れ、テレポートの魔法でアクセルの街まで移動した。

 

アナザー武神鎧武「?! ・・・ウゥゥ・・・ガアアアアアアアアァァァ!!」

 

 俺達がいなくなった森に、アナザー武神鎧武の咆哮が響いた。

 

 

ーアクセルの街 正門前ー

 

エルシャ「・・・あ! 戻ってきたんだ。」

賢治「上手くいったな。」

 

 カズマ達も変身を解除し、俺達は冒険者ギルドへ向かった。

 調査対象の森でモンスターが大量発生していること。

 その原因が鎧武者の姿をした『怪人』であること。

 流石にインベスやアナザーライダーの事について説明すると面倒なのでその辺りは濁して伝えた。

 もちろんアナザー武神鎧武の正体が冒険者のトーマだと言うことは伏せておいた。

 ギルドはすぐに討伐クエストを発注すると行っていた。

 インベスは上手くいけばこの世界の冒険者でも倒せるかもしれないが、アナザー武神鎧武だけは別だ。

 アナザー武神鎧武だけは俺達仮面ライダーでなければ倒せない。

 しかし、こっちには武神鎧武のライドウォッチなんてない。

 力を手に入れようにも、タイムマジーンの時空転移システムは使えないし、そもそも武神鎧武が素直に力を貸してくれるかどうか?

 そこで俺は、エルシャの仮面ライダー斬月のパワーアップだ。

 今俺はエルシャと一緒にあのロックシードが作れないかどうか試している。

 

エルシャ「・・・これは?」

賢治「違うな、これじゃない。」

 

 今出来たのはイチゴロックシードだ。

 これまで、スイカロックシード、マンゴーロックシード、メロンエナジーロックシード、そしてイチゴロックシードが出来上がった。

 しかし、お目当てのロックシードができない。

 まるでアプリゲームのガチャでもわましている様だ。

 

カズマ「賢治、一体なんのロックシードが必要なんだ?」

賢治「あぁ、シン・カチドキロックシードが必要なんだ。」

 

 そう、原作・・・いやあれは舞台だったか?

 その中で呉島貴虎は葛葉紘太から渡されたロックシードだ

 これを使えばエルシャはカチドキアームズに変身することができる。

 さらに、アナザー武神鎧武から奪った極ロックシードを使えば極アームズになれるはず。

 ただ、この極ロックシードが原作通りの性能なら、使用者のエルシャは少しづつ人間からオーバーロードに進化してしまう恐れがある。

 流石に、安易な気持ちで使用できない。

 だからこそ、シン・カチドキロックシードが必要なんだ。

 

エルシャ「・・・あ! またメロンロックシードが出来たわ。」

賢治「うん?」

 

 また出来たのか。

 ・・・・・・上手くいくか分からないが試してみるか。

 

賢治「エルシャ、そのメロンロックシード貸してくれ。」

エルシャ「え? うん。」

 

 俺はロックシードを受け取ると、ヘルヘイムの果実とブランクライドウォッチを取り出した。

 

カズマ「どうするんだ?」

賢治「うん。 今からこの三つを使ってシン・カチドキロックシードを作ってみようと思ってな。」

めぐみん「そんなこと出来るんですか?」

賢治「やって見ないと分からないな。」

 

 何せ初めての試みだからな。

 正直、上手くいったらラッキー!

 程度だ。

 

賢治「よし、いくぞ。」

  「まず、ブースッテド。 クリエイト・マジックアイテム。」

 

 最初に魔法の階級を上げる魔法、魔法階級上昇を発動し、その後に道具創造魔法のクリエイト・マジックアイテムを発動した。

 これにより、クリエイト・マジックアイテムの階級が上がり、ハイ・クリエイト・マジックアイテムにバージョンアップする。

 すると三つのアイテムは、エルシャの持つメロンロックシードが生まれた時のように、次第に原型がなくなり、再び一つの形状に再構築されていく。

 そして出来上がったのは、狙い通りシン・カチドキロックシードが出来上がっていた。

 

賢治「おぉ! 上手くいったな。」

エルシャ「これがそうなの?」

賢治「あぁ、じゃあこれはエルシャに渡しておくな。」

エルシャ「うん。 今度こそトーマを助けてみせるわ。」

 

 これ手札は揃ったな。

 さて後はこれからアナザー武神鎧武にリベンジしに行くだけだが

 

ルナ「緊急!! 緊急!! 冒険者はすぐに武装して街の北門に集まってください。」

「「「「「「!!」」」」」」

 

 このタイミングで緊急の警報・・・まさか

 

 

ーアクセルの街 北門前ー

 

戦士風の冒険者「? なんだあれ?」

 

 それは、ちょうど北の森林地帯からやってきていた。

 間違いなくそいつらは

 

賢治「インベスの大群!!」

 

 大地を埋め尽くすほどに大量のインベスがこのアクセルの街に向かって移動してきている。

 俺達が戻った後にあれだけの数が増えたのか。

 

ルナ「皆さん、相手は報告にあった未知のモンスターです。」

  「くれぐれも油断しないでください!」

 

 いや、いくらなんでもあの数はな・・・

 まずは先制攻撃あるのみだ。

 

賢治「ダクネス。」

ダクネス「なんだ?」

 

 俺はダクネスに森で使っていたトレーラー砲を渡し、使い方を説明した。

 

賢治「シフトカー達も呼んでおくから上手く使ってくれ。」

ダクネス「わかった!」

賢治「次はアクア!」

アクア「え? 私?」

 

 アクアには今回はタイムマジーンの操縦の仕方を教えた。

 今回は最初からロボモードで呼び出す。

 その時、周りの冒険者達(主に男性冒険者)から歓声が上がった。

 

賢治「どうだ、わかったか?」

アクア「・・・なんとか。」

賢治(・・・不安だ。)

 

 まぁ、簡単に説明したつもりだし、後は体で覚えてもらうしかない。

 

賢治「カズマとめぐみんはここに残ってみんなを助けてやてくれ。」

カズマ「わかった。」

めぐみん「賢治とエルシャはどうするのですか?」

賢治「俺達2人は直接アナザー武神鎧武の所にテレポートで向かう。」

エルシャ「うん。 ここはお願いね。」

賢治「よし。 めぐみん撃ていいぞ!」

めぐみん「! はい! 待っていましたよ、この時を!」

 

 そう、こう言う時こそめぐみんの爆裂魔法の出番だ。

 あれだけインベスが密集しているのなら、その集団の中にぶち込むだけで大きなダメージを与えられる。

 めぐみんは杖を勢いよく地面に突き立て、魔法の詠唱に入った。

 

めぐみん『光に覆われし漆黒よ。』

    『夜をまといし爆炎よ。』

    『紅魔の名の下に原初の崩壊を顕現す。』

    『終焉の王国の地に、力の根源を隠匿せし者。』

    『我が前に統べよ!』

    『エクスプロージョン!』

 

 インベスの大群の中に爆裂魔法が炸裂した。

 そのため、目に見える限りでは全体の七割が吹き飛んだようだ。

 さすがレベルアップした影響で以前とは威力が桁違いに高くなっている。

 しかし、前の時と詠唱の内容が変わってないか?

 

賢治「よし、じゃあ行ってくる。」

エルシャ「皆頑張ってね。」

 

 『テレポート! プリーズ!』

 

 俺とエルシャはアナザー武神鎧武の所へ直接転移した。

 後は皆を信じて託すしかないな。

 

 

ーカズマsideー

 

 賢治達の転移を見送った後、俺は変身するためにウォッチを取り出した。

 隣では、爆裂魔法を撃っためぐみんが倒れている・・・と思ったが、なんと倒れていない!

 

カズマ「めぐみん、爆裂魔法を使ったのに大丈夫なのか?」

めぐみん「はい! レベルが上がって魔力に余裕ができたのか、後もう一、二発くらい撃てそうです。」

 

 それはすごい!

 これでめぐみんも一発屋なんて言われないな。

 さらに俺達の後ろでは

 

 『タイムマジーン!』

 

アクア「よし!これで起動完了ね。」

カズマ・めぐみん「おおー!」

 

 賢治から借りたタイムマジーンを操作しているアクアがいた。

 全長7メートルほどあるロボットが二本足で立っている。

 ・・・・・・うん。 やっぱり感動ものだ!

 周りにいる冒険者達もその勇姿に驚いている。

 ただやっぱり、男子と女子の感動に対する温度差があるな。

 めぐみんみたいな厨二な女子は興奮間違い無しなんだが。

 

カズマ「よし! いくぞ!めぐみん。」

めぐみん「了解です!」

 

 俺は賢治からもらった三つのライドウォッチの内まだ使っていないメテオライドウォッチを取り出した。

 

 『ゲイツ!』『メテオ!』

 『クイズ!』

 

 めぐみんは三つ目のミライドウォッチ、クイズミライドウォッチを取り出した。

 それぞれのウォッチをベルトにセットして。

 

カズマ・めぐみん「変身!」

 

 『ライダータイム! 仮面ライダーゲイツ!』『アーマータイム! レディ! メテオ!』

 『投影! フューチャータイム!』『ファッション! パッション! クエスチョン! フューチャリングクイズ! クイズ!』

 

カズマ「よし、みんな行くぞー!」

冒険者達「おおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

 俺達冒険者達とインベス達の戦いが始まった。

 今回は作戦を練る暇がなかったので、各々自己の判断で行動することになった。

 あぶない冒険者がいれば俺たち仮面ライダー組の誰かがサポートに回る。

 だが正直、いつまで持つか分からない。

 インベスの中には大型のインベスもいる。

 大型のインベスだけは俺達仮面ライダー組が相手をするしかない。

 そんな奴らが何匹も出てきたら流石に手が回らなくなる。

 後は賢治達がアナザー武神鎧武をどれだけ早く倒せるかにかかっている。

 

カズマ「賢治、エルシャ、頼むぜ。」

 

 

 

ー賢治sideー

 

 俺とエルシャは転移魔法でアナザー武神鎧武の前までやってきた。

 どうやらアナザー武神鎧武はまだ森から出ていない様だ。

 

エルシャ「トーマ。」

アナザー武神鎧武「グゥ・・・ウゥ・・・」

 

 アナザー武神鎧武はこちらに向かって武器を構える。

 こちらも変身しようとするが・・・

 

エルシャ「賢治、私に任せてもらっていい?」

賢治「エルシャ?」

エルシャ「お願い。 冒険者として、そして仮面ライダーとしてトーマとは一対一で戦いたいの。」

賢治「・・・わかった。 ただ、危ないと思ったら加勢するからな。」

エルシャ「ありがとう。」

 

 俺は二人の邪魔にならないように離れて見守ることにした。

 エルシャはメロンロックシードを起動すると、ライダーインジケーターの部分にゲネシスコアユニットが取り付けられていた。

 

 『メロンエナジー!』

 

 エルシャはメロンエナジーロックシードを出し起動させる。

 ドライブベイにメロンロックシード、ゲネシスコアユニットにメロンエネジーロックシードをそれぞれセットし

 

エルシャ「変身!」カシュ!

 

 『ソイヤ!』『メロンアームズ! 天・下・御・免!』

 『ミックス!』『ジンバーメロン! ハハー!』

 

 そこには、羽織のようなアーマーが付き、腰に無双セイバー、左手に赤い弓『ソニックアロー』が握られた、仮面ライダー斬月ジンバーメロンアームズが立っていた。

 

エルシャ「ハァ!」

アナザー武神鎧武「ウゥ!」

 

 エルシャがソニックアローで矢を放ちながらアナザー武神鎧武に接近し、ソニックアローの刃の部分『アークリム』で攻撃する。

 

 

 

ーカズマsideー

 

 俺達仮面ライダー組と冒険者達の戦いは今のところ五分五分だった。

 

 『フィニッシュタイム! メテオ!』『リミット! タイムバースト!』

 

カズマ「ホォォアタアァァァ!!」

 

 俺のタイムバーストが炸裂し、周囲の複数のインベスが吹き飛び爆発した。

 

 『ビヨンドザタイム!』『クイズショックブレイク!』

 

めぐみん「ごほん、あなた達は私を倒すことができる? 〇か×か?」

 

 めぐみんのその問いかけに周囲のインベス達は戸惑っている。

 そもそもインベスは喋れないみたいだし、答えようがないんじゃないか?

 

めぐみん「正解は・・・×です!」

 

 答えることができず、時間切れになって不正解扱いになった複数のインベス達は雷に打たれて爆発した。

 

カズマ「・・・なんか変わった必殺技だな、そのフューチャリングクイズって。」

めぐみん「まぁ、私もそんなにクイズは得意ではないので、力を引き出し切れていませんが。」

 

 確か、未来の仮面ライダーで仮面ライダークイズの力が使える形態なんだよな。

 クイズで戦うって本当に変わった仮面ライダーだな。

 

アクア「ちょっと二人共、喋っていないで手を動かして!」

 

 アクアはタイムマジーンをうまい具合に動かしている。

 今だって大型のインベスを蹴り飛ばした後、小型のミサイルを打ち込んで倒していた。

 

ダクネス「ふむ、このトレーラー砲という武器は意外と使いやすいな。」

 

 『ヒッサーツ! フルスロットル!』『フルフル! フォーミュラー! 大砲!』

 

 ダクネスはシフトカーの助けもあり、次々とインベスを倒していた。

 と言うかあれはもう、固定砲台だな。

 このままいけばなんとかなると思ったのも束の間。

 

 ジィィィ! ジィィィ! ジィィィ! ジィィィ! ジィィィ!

 

 倒した端から追加のインベスがやってくる。

 クラックが開く音はこの戦闘が始まってからもう何度聞いたか分からない。

 

カズマ「くそ! 御代わりかよ。」

男冒険者「またかよ!」

女冒険者「いい加減にしてよ!」

 

 まだみんな戦意がなくなっていないが、この状態が続けばみんなの心が折れてしまう。

 ・・・こう言うのはあんまり柄じゃないけど、『ヒーローになる』と決意した以上こういうのはいずれ経験することだよな。

 

カズマ「みんな頑張れー!! 今俺の仲間達が元凶を倒しに行ってくれている!」

  「俺の仲間を信じて耐えてくれ! 大丈夫、最後に勝つのは俺達だぁぁぁ!!」

冒険者達「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

 今の俺の言葉でみんなまた奮い立ってくれたみたいだ。

 こんなこと初めてだから緊張したが、上手く行って何よりだ。

 

めぐみん「カズマ。」

カズマ「うん?」

めぐみん「さっきのカズマ・・・カッコ良かったですよ。」//////

カズマ「お、おう。 ありがとうな。」

 

 『カッコ良かった』なんて言われたのは初めてだ。

 なんか照れくさいな。

 悪い気はしないが。

 しかも、こんな一言でテンションが上がっている俺は、意外とチョロいんだろうか?

 

カズマ「よし! もうひと頑張りするか。」

めぐみん「はい! 行きましょう!」

 

 俺とめぐみんはインベスとの戦いに戻った。

 大丈夫、賢治達なら必ずやってくれる。

 

 

ー賢治sideー

 

 エルシャとアナザー武神鎧武の戦いは互角だった。

 斬っては斬られお互いに一歩も譲らぬ戦いを繰り広げていた。

 

 『ロックオフ!』『ロックオン!』

 

 エルシャがベルトのメロンエネジーロックシードをソニックアローにセットする。

 

エルシャ「いっけー!」

 

 『メロンエネジー!』

 

 ソニックアローのレバーを引っ張り、放すとメロンの形をしたエネルギーの塊を矢が通過したら、十本の矢になってアナザー武神鎧武に襲い掛かる。

 アナザー武神鎧武は後方へ飛ぶことでそれを回避する。

 しかし、エルシャの目的は隙を作ることであり、さっきの攻撃は仕留めるためじゃない。

 

エルシャ「これの出番よ!」

 

 『カチドキ!』『カチドキアームズ! いざ出陣! エイエイオー!』

 

 エルシャはカチドキアームズにアームズチェンジする。

 緑の重装甲に背中にはカチドキ旗を背負っている。

 

エルシャ「ハァ!」 ブン! ブン!

 

 エルシャが背中のカチドキ旗を両手で持ち、舞うように振り回すと炎が立ち上る。

 その炎に巻き込まれたアナザー武神鎧武がまるで無重力空間に囚われたように浮かび上がる。

 

アナザー武神鎧武「!? !!」

 

 アナザー武神鎧武は思うように動けず、中に浮いた状態でもがいている。

 その隙にエルシャは火縄甜瓜DJ銃を取り出し、DJテーブルを操作し起動する。

 すかさず、DJピッチを通常モードから高出力モードに操作し、DJテーブルを操作してリロードする。

 銃口をアナザー武神鎧武に向けてトリガーを引くとまるで大砲の砲撃音みたいな音が響いた。

 それを受けて、アナザー武神鎧武は大きく引く飛ばされた。

 エルシャは無双セイバーを取り出すと、火縄甜瓜DJ銃と合体させ、大剣モードにする。

 

エルシャ「トーマ・・・もう終わりにしよう。」カシュ!

 

 エルシャがカッティングブレードを一回降ろすと、火縄甜瓜DJ銃が淡い緑のエネルギーを纏う。

 

アナザー武神鎧武「グゥ・・・ガアアァァァ!!」カシュ!×3

 

 アナザー武神鎧武もヨロヨロと立ち上がり最後の力を振り絞るように、カッティングブレードを三回降ろした。

 すると、彼の持っていた大剣に赤黒いエネルギーが集まり、剣を一回り大きく形成する。

 

 『カチドキ! スカッシュ!』

 『ブラッドオレンジ! スパーキング!』

 

エルシャ「ヤアアアァァァ!!」

アナザー武神鎧武「ガアアアァァァ!!」

 

 二人の赤と緑のエネルギーが中央で衝突し大爆発が起きた。

 アナザー武神鎧武は吹き飛ばされ、エルシャも吹き飛んだ・・・かに見えたが次の瞬間

 

エルシャ「ハァ!」

アナザー武神鎧武「!!」

 

 エルシャは爆煙の中から真上へジャンプしていた。

 さらにブレードを三回降ろした。

 

 『カチドキ! スパーキング!』

 

エルシャ「ハアアァァァ!!」

 

 突き出した右足から緑のエネルギーが溢れアナザー武神鎧武にライダーキックが炸裂し爆発を起こした。

 その瞬間、アナザー武神鎧武の変身が強制解除され、トーマの姿があらわになりその体内からアナザーライドウォッチが排出された。

 

賢治「よし! 後はこいつを破壊すれば・・・」

 

 俺はジカンギレードの切っ先をアナザーライドウォッチに突き立て力を込めて突き刺した。

 斬られたライドウォッチはバチバチと火花をあげ粉々に砕けた。

 これでもう彼がアナザー武神鎧武に変身する事もないし、ウォッチを悪用される心配もない。

 

 

ーカズマsideー

 

アクア「くぅ・・・ああぁ!」ズン!!!

 

 ガン! ガン! ガン!

 

 アクアのタイムマジーンが大型のインベス3体に攻撃され、遂に倒れてしまった。

 

アクア「ちょ・・・カズマ! めぐみん! help!」

カズマ「こっちも手一杯だ!」バシン!

  「うわ!」

めぐみん「私も無理です!」ガシン!

  「うあぁ!」

重戦士風の冒険者「ちくしょー!」

僧侶風の女冒険者「来ないで・・・来ないでぇぇぇ!」

ダクネス「くぅ、数が多すぎる!」

カズマ「くそ!」(賢治、エルシャ、まだなのか?)

 

 状況は最悪だった。

 他の冒険者達が次々と倒れていく中、俺達は右へ左へ走り回っていたが、遂に限界がやってきた。

 途絶えることのないインベスの数の暴力。

 終わりが全く見えない。

 正直言って、今心が折れそうだ。

 だが、自分の夢を叶えるためには、こんなことで弱音を吐くわけにはいかない。

 

カズマ「んなあああぁぁぁ!!」

 

 『フィニッシュタイム! メテオ!』『リミット! タイムバースト!』

 

 俺は群がってくるインベス達を気合いで跳ね除け、コマのように回りながらライダーキックを放った。

 そのおかげで、周囲のインベス達は一掃できた。

 だがそれもほんの一部。

 まだまだ沢山いる。

 しかし、本物の仮面ライダーはこんな事では諦めたりしないはずだ。

 

カズマ「・・・・・・オラアァァ!! かかってこいやあぁぁ!!」

 

 そう言って、目の前の1匹のインベスをパンチで吹き飛ばした瞬間、インベス達の動きがピタリと止まった。

 

カズマ「?・・・???」キョロキョロ

 

 周りを見てみると、他のインベスも同じでまるで映像を一時停止したように、ピクリとも動かない。

 すると、インベスの体が砂のように崩れ跡形もなく消滅したのだった。

 

めぐみん「カズマ、これってまさか!」

カズマ「・・・賢治とエルシャか!」

アクア「そうよ! そうに違いないわ!」

ダクネス「二人がやってくれたのか。」

 

 この状況はもはやそうとしか考えられない。

 どうやら紙一重で助かったようだな。

 

カズマ「・・・ハァ、全く賢治のやつ遅すぎだろ。」

  「後で文句の一つでも言ってやらねぇとな。」

めぐみん「それよりカズマ、みんなに勝利を伝えてあげてください。」

カズマ「え? 俺?!」

めぐみん「確かに、この事態を解決したのは賢治達ですが、この場はカズマが適任だと思います。」

ダクネス「そうだな、皆を奮い立たせたのはカズマなのだ、賢治達も文句は言うまい。」

カズマ「・・・手柄を横取りするみたいで、気が引けるけど・・・よし!」

 

 そうして、冒険者のみんなに向き合った俺は、深く深呼吸して

 

カズマ「みんなー! 脅威はさった! 俺達の勝ちだあああぁぁぁ!!!」

冒険者達「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

 

 俺がそう叫ぶと、周囲の冒険者達から勝利の叫びが響きわたった。

 

 

ー賢治sideー

 

賢治「エルシャ、彼はどうだ?」

エルシャ「・・・大丈夫、気を失っているみたい。」

賢治「良かった。」

 

 どうやら命に別状はないようだ。

 エルシャが自分に任せて欲しいと言った時はどうなるかと思ったが、上手く行って良かった。

 

賢治「さて、後はこのヘルヘイムの植物をどうにかしないとな。」

エルシャ「そうね、流石にこのままにして置けないし。」

  「とは言え、一つ一つ処理して行ったら何日もかかるし・・・どうしよう?」

賢治「・・・・・・」

 

 方法は一応ある。

 けど、この方法は・・・

 

エルシャ「・・・賢治、何か考えがあるの?」

賢治「え?!」

エルシャ「方法があるなら言って。」

賢治「・・・」

 

 エルシャにバレているようだし、隠しても仕方ない。

 俺はツールベルトから、極ロックシードを取り出した。

 

エルシャ「これは、あの時カズマがトーマからスティールしたロックシード?」

賢治「あぁ、これを使えばエルシャは最強の姿、極アームズに変身できる。」

エルシャ「さ、最強の姿!」

賢治「ただ、これを使うとエルシャは最悪、人間じゃ無くなるかもしれない。」

エルシャ「えぇぇ!!」

 

 この極ロックシードが原作通りの性能なら、エルシャはこのロックシードを使えば使うほど人を超えた存在オーバーロードに進化してしまう。

 そうなるとまず、空腹を感じなくなり、ヘルヘイムの果実だけしか食べれなくなってしまう。

 他にも俺が知らないだけで、何か未知の変化が起きるかも知れない。

 

エルシャ「・・・・・・でも、一回使ったらそうなるわけじゃないんでしょ?」

賢治「まぁ、そうだけど・・・」

エルシャ「・・・ロックシード、貸して。」

賢治「いいのか?」

エルシャ「うん。 私にしかできない事だから。」

賢治「・・・・・・じゃあ、頼むな。」

エルシャ「うん。」

 

 俺は極ロックシードをエルシャに渡した。

 エルシャはそれを受け取ると、極ロックシードを起動した。

 

 『フルーツバスケット!』

 

 起動音と共にロックルートという鍵が出現する。

 その状態で、ベルトについているカチドキロックシードの側面部のロックスリットにはめ込み、鍵を開けるように一回まわした。

 

 『ロックオープン!』『極アームズ! 大・大・大・大・大将軍!』

 

 頭上に空いたクラックから全てのアームズが出現し、カチドキアームズのエルシャと融合する。

 次の瞬間そこに立っていたのは、銀色の鎧状のアームズと緑のオーバードマント・キワミを纏った仮面ライダー斬月・極アームズだった。

 

 

ーエルシャsideー

 

 私は、極ロックシードを使って、新しい姿に変身した。

 その瞬間、私の体に『ゾクゾク』するような『ゾワゾワ』するような衝撃が走った。

 

エルシャ(・・・ハァァ、何これすごい! 世界が違って見える。)

  (今ならなんでも出来そうな気がする。)

  「・・・ネイチャーコントロール。」

 

 しばらくその余韻に浸った後に、私はヘルヘイムの植物達を元の世界に戻すために魔法を使った。

 貴虎さんの記憶のおかげで、この植物達が別の世界から来たことは知っていたので、私の魔法とこの極ロックシードの力で元の世界に繋がる扉を開けるのだ。

 

 ジィィィィィィィィィ!

 

 目の前に空間を割いて、別の世界に繋がる穴が開いた。

 その向こう側を見ると、とても綺麗な森が広がっていた。

 魔法とロックシードの力で、ヘルヘイムの植物達はその穴に吸い込まれていく。

 そして全てを吸い込んだのか、その穴が閉じてしまった。

 後に残ったのは私と賢治とトーマ、そして元の状態に戻った森だった。

 

エルシャ「・・・終わったわ。」ビリビリ

  「ん?」バチバチバチ

  「あ!? ぐっ・・・あああああ!!!」

 

 私に襲い掛かったのは、とてつもない苦痛だった。

 

 

ー賢治sideー

 

エルシャ「あ!? ぐっ・・・あああああ!!!」

賢治「エルシャ!!」

 

 急にエルシャが地面に倒れ苦しみ出した。

 やはり今のエルシャだと極アームズは負担が大きいみたいだ。

 俺はすぐにエルシャに駆け寄り、ベルトについている極ロックシードとカチドキロックシードを外した。

 

エルシャ「あぁ・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・」

賢治「エルシャ! 大丈夫か?」

 

 エルシャの変身が解除され、露わになたのはさっきの戦闘のダメージで傷を負い汗まみれになったエルシャの姿だった。

 

賢治「ヒール!」

 

 俺は治癒魔法を使い、エルシャの傷を癒した。

 さっきまで顔色が悪く傷だらけだったが、傷が治るにつれだいぶ良くなったようだ。

 

エルシャ「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・・・はふぅ〜・・・」

賢治「どうだ? 少しは楽になったか?」

エルシャ「うん。 ありがとう賢治。」

  「もうどこも痛くないわ。」

 

 もう大丈夫のようだ。

 俺はエルシャに肩を貸して支え、トーマを背中に背負いウィザードウォッチのテレポートで、アクセルの街にいる皆の所に転移した。

 

ー緊急クエスト 謎のモンスターの襲撃を阻止せよー

        O成功O

 

ー冒険者ギルドー

 

 ギルドまで行くと、祝勝モードで宴会が開かれていた。

 俺とエルシャはトーマをギルドの職員に預け、みんなのところに向かった。

 俺達のことを見つけるとパーティメンバーのみんなからもみくちゃにされた。

 カズマからは『もっと早く終わらせてほしかった』などと文句を言われた。

 アクアはタイムマジーンを少し壊してしまったらしく、ビクビクしながら言ってきたが俺が『気にするな』と言ったら、『やっぱり賢治って優しい!』と言って腕に抱きついてきた。

 その瞬間酒の匂いが漂ってきたので、おそらくこの行為は酒に酔った勢いだろう。

 ・・・・・・まぁ、腕に柔らかい感触があったのは、ラッキーだと思っておこう。

 しばらく仲間達と一緒に飲んでいると、エルシャが俺をギルドの酒場の隅の方へ引っ張っていき

 

エルシャ「賢治、今回は本当にありがとう。」

賢治「いいって、困った時はお互い様だろ。」

エルシャ「うん。 でもね、私本当に感謝してるの・・・だから・・・・・・ん」

賢治「!!?」

エルシャ「・・・お礼」//////

賢治「・・・・・・」

 

 そう言ってエルシャはみんなのところに戻っていった。

 俺は自分んが何をされたのか、しばらく頭の処理が追いつかなかった。

 今でも頬に残るあの感触。

 

賢治「・・・・・・キスされたよ。」

 

 最高のお礼をいただいてしまった。

 キス自体は自慢じゃないが初めてではない。

 だが、頬にキスは初めてだったから、妙にドキドキした。

 そんなサプライズもあったが、今日も生き延びた喜びを噛み締めながら、夜も更けていくのだった。

 

 

 




いかがだったでしょうか?
今回はこんな形で終わりました。
執筆している時、カズマ達冒険者達が勝鬨を上げたときの場面でオーバーロードのモモンVSヤルダバオト戦の場面を思い出しました。
極アームズはちょっとだけしか出番がありませんでしたが、この先の展開によってはまた使うと思います。
次回からはまた原作寄りのストーリーになります。
それでは皆さんまた次回・・・


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第八話 この空中散歩に祝福を

皆さんお待たせしました。
第八話の投稿です。
FGOやPso2に行ったり来たりしながら執筆しています。
今回も気に入っていただけたら幸いです。
それでは、第八話をどうぞ


ー???ー

 

エルシャ「・・・・・・うん?」

 

 私は違和感を感じて目を開けた。

 そこは、目の前には綺麗な湖が広がり、陽の光を反射しながら元気に覆い茂る草花。

 空には大小様々な大きさの島が浮かんでいる、とても不思議で神秘的な場所だった。

 

エルシャ「・・・え?! 何ここ?」

 

 ふと、我に帰った私は素直な疑問を口にした。

 これはどう言う事だろうか。

 

エルシャ「え〜っと、私はギルドの打ち上げが終わった後、宿に戻って・・・ベットに入ったら・・・・・・駄目、その先が思い出せないわ。」

 

 覚えているのはそこまでで、一体どうしてこんな所にいるのか全くわからない。

 

???「うん? 君はどうしてここに?」

エルシャ「!!?」

 

 いきなり後ろから声が聞こえてきた。

 振り返るとそこには、銀の鎧と白いマントを纏い、金髪で右の瞳が赤い男の人が立っていた。

 だが目の前にいる人がただの人ではない事は、彼から放たれる人間離れした気配で分かった。

 

エルシャ(あれ? この人、どこかで・・・)

 

 そう、どこかで見たことがあるような気がする。

 それもここ最近で。

 

エルシャ(・・・あ!)「もしかして、紘太さん?」

紘太「?! 俺のこと知ってるのか?」

エルシャ「あの、貴虎さんの記憶に貴方が・・・」

紘太「記憶?」

エルシャ「えぇ〜っと・・・」

紘太「あ〜、ちょっとごめんな。」

エルシャ「??」

 

 紘太さんがこちらに近づいてきて、私の前まで来ると彼の右手が私の頭の上に置かれた

 しばらく目を瞑っていたら

 

紘太「・・・なるほどな。」

エルシャ「え?」

紘太「ちょっと記憶を見させてもらったぜ。」

エルシャ「ええ!!」

 

 記憶を見るなんて、そんな事が出来るものなんだろうか?

 ・・・いや、この人確か神様だっけ?

 

エルシャ「か・・・神様ってすごいんですね。」

紘太「まぁ、まだなってそんなに月日は経ってないけどな。」

  「どうやら君は、その極ロックシードのせいで、精神だけがここに飛ばされたみたいだな。」

エルシャ「え? 精神?」

紘太「うぅ〜ん、簡単にいうと夢みたいなものだな。」

エルシャ「夢? これが・・・」

 

 そう言われてもいまいちピンとこない。

 どう見ても、どう感じても本物としか思えなく、夢とは思えない。

 でも、この人が言うのだから多分本当なんだろう。

 

紘太「どうやら君のその力は、総悟が世界を破壊し創造した際に俺達仮面ライダーの力のほんの一部が飛び散って、君たちの世界に偶然辿り着いたんだろうな。」

エルシャ「じゃぁ、このロックシードは返したほうがいいのかな。」

 

 もしこの力が紘太さんの力なら、やっぱり持ち主に返すべきだと思う。

 これが無いと紘太さんも変身できないだろうし。

 

紘太「いや、それは君が持っておくといいよ。」

エルシャ「え? でも・・・」

紘太「大丈夫。」

 

 紘太さんが手を挙げると、彼の周りに沢山のロックシードが集まってきた。

 その中にはカチドキロックシードに極ロックシードもあった。

 

紘太「君が持っているのは、俺の力のほんの一欠片だ。」

  「だから、変身することは出来るけどそれだけだ。」

 

 紘太さん曰く、私の持っているロックシードは変身する機能があるだけでそれ以外の機能はないらしい。

 つまり、貴虎さんの記憶にあった、ロックシードから直接栄養を摂取したり、オーバーロードに進化してしまう機能はないらしい。

 ただ、メロンとシン・カチドキ・極ロックシード以外のロックシードは、一回使うと再使用までに少し時間がかかるらしい。

 ロックシードの色が黒くなり、もう一度色がついた時が目安のようだ。

 どうやらこれからも、賢治達と一緒に仮面ライダーとして戦えそうだ。

 それから、アナザーライダーについては、紘太さんもわからないらしい。

 アナザー鎧武がアナザー武神鎧武になったのは、アナザー武神鎧武のライドウォッチに偶然極ロックシードが吸収され、一時的にアナザー鎧武になっていたのかもしれない。 らしい。

 神様にもわからない事ってあるんだ。

 

紘太「・・・どうやら、君の世界にはまだ他にも、仮面ライダーの力が散らばっているようだな。」

エルシャ「え!? そうなんですか?」

 

 紘太さんは私の記憶を見た時に、その力で私の世界を見つけ、他にもないか探って見たらしい。

 すると、なんとまだ仮面ライダーの力が眠っているらしい。

 と言うことは・・・私の後輩が出来るかもしれないんだ。

 そう考えるとちょっと楽しみだ。

 そんなことを考えていると、私の体が光り始めた。

 

エルシャ「え? 何?!」

紘太「・・・どうやら時間のようだな。」

  「頑張れよ、仮面ライダー斬月。」

エルシャ「! はい!」

 

 その言葉を最後に、私の記憶は途切れていた・・・

 

 

 

ー冒険者ギルド 酒場ー

 

エルシャ「と言う、夢を見たの。」

賢治「マジか・・・」

 

 俺はエルシャが見た夢の内容を聞いていた。

 まさか夢の中で本物の仮面ライダーに会っていたなんて

 ・・・・・・くぅ、なんて羨ましい!!

 だがおかげで、エルシャがオーバーロードになる心配はない事がわかった。

 さらに、まだこの世界に仮面ライダーの力が散らばっていることもわかった。

 俺の方も、アナザー武神鎧武の一件の後クリスに相談に行っていた。

 だが、彼女にもなぜ‘アナザーライダーがこの世界に存在するのかよく分からないらしい。

 しかし、仮面ライダーの力の欠けらが、世界の破壊と創造の余波でこの世界にやって来たのなら、アナザーライダーの力がこの世界にやって来ていたとしても不思議じゃない。

 もしそうなら、これからは魔王だけでなくアナザーライダーも相手にしないといけなくなる。

 あんなのが残っていても良い事なんて無いからな。

 

賢治「とにかく、これからは他の仮面ライダーを探しつつ、魔王軍やアナザーライダーを倒していくことになるな。」

エルシャ「そうね。」

 

 ちなみにエルシャのレベルは今回のインベス騒動でレベルアップした。

 今の彼女はレベル11である

 ところで、カズマ達はというと・・・

 一文なしのアクアはいろんなバイトに励んで、俺に借りた借金の返済に奔走している。

 ダクネスはしばらく実家で筋トレをしてくるらしい。

 そしてカズマは、今の自分の力がどれほどのものか試したいようで、今回は一人で『初心者用・キールのダンジョン』と言うダンジョンで探索とレベルアップ、そして腕試しに手頃な討伐クエストを受けている。

 一人で大丈夫かと思ったが、カズマがどうしてもと言うので『ヤバいと思ったらすぐに逃げる』これを条件にGOを出した。

 俺とエルシャとめぐみんはと言うと・・・

 今から少し前・・・

 

めぐみん「爆裂魔法を撃つに、いい練習場所はないものでしょうか?」

 

 この一言から、始まった。

 めぐみんは一日に一回爆裂魔法の練習を欠かさず行っているようだ。

 だが、街の近くだと『音がうるさい』『迷惑だ』と言って注意されるらしい。

 よって、爆裂魔法の練習の場所が必然的にアクセルの街から遠く離れた所になる。

 そこで俺は一つ名案と呼べる策を思いついたのだ。

 それは、めぐみんの爆裂魔法の練習にもなるし、経験値稼ぎにもなる策だ。

 

 

ー魔王軍の砦ー

 

 ここはアクセルの街から遠く離れた魔王軍が占領している砦の一つである。

 元々は王国軍が所有していた砦だが、魔王軍の侵攻の際占領されてしまったのだ。

 王都進行の為の魔王郡の重要拠点の一つである。

 兵士たちは血気盛んな者が多く、全員生き生きしている。

 だがそんな中にも・・・

 

弓兵の魔族1「ふあぁ〜・・・暇だ・・・」

弓兵の魔族2「おい、気を抜くなよ。 戦場では何が起こるか分からないんだからな。」

 

 防壁の見張り台の中に弓矢を持った魔族の兵士がいた。

 一人は呑気に欠伸をして眠そうにし、もう一人はそんな兵士を注意している。

 現在は魔王軍が優勢で、魔王軍側が王都に攻め込む事はあっても、向こうから攻めてくる事がないので、拠点防衛の任務はハズレ任務とされ、ほとんどの兵士は退屈そうにしている。

 

弓兵の魔族1「おう、すまねぇ。 だがよ、ハッキリ言ってこの任務退屈だろう。」

  「なんで魔王様は一気に攻め落とそうとしないのかねぇ。」

弓兵の魔族2「さっきも言ったが、気を抜くなよ。 それに今こっちは補給線が伸びているんだ。」

  「攻めようにも武器防具、兵士や兵糧、他にも色々足りていないんだ。攻めるのは準備が整ってからだ。」

弓兵の魔族1「まぁ、追い詰めているのはこっちだし、今更何が来たって勝利は目の前だぜ。」

 

 と、他愛もない世間話をしている時、眠そうにしていた魔族がふと空を見上げた時だ。

 彼は何か得体の知れないものを、上空に見つけたのだ。

 

弓兵の魔族2「? おい、どうした?」

弓兵の魔族1「・・・なぁ、あれなんだと思う?」

弓兵の魔族2「うん?」

 

 真面目な魔族がそう言われて同じ方向を見てみると、そこには・・・

 

弓兵の魔族2「え?! ・・・空飛ぶ・・・木馬?」

 

 そう、その方向にはまるで木馬のような形をした、何か得体の知れない物体が空を飛んでいたのだ。

 疲れで変なものでも見えたのかと思い、一瞬目を閉じた次の瞬間、その木馬からこれまた変な物が飛んできた。

 それは長細い棒状の物体で、後ろの部分から火花と煙を噴射して猛スピードでこっちに飛んできたのだ。

 

弓兵の魔族1・2「・・・え?」

 

 その物体が砦の門に衝突すると・・・

 

 ドゴオオオオオオオーーーーーーーーーン

 

弓兵の魔族1・2「ああああああああああ!!!!!!」

 

 盛大に爆発したのだ。

 重さ一トンもあろう鉄の城門が宙を舞い、鈍い音を立てながら地面を転がっていく。

 

弓兵の魔族2「なんだ!? 何が起こった?!」

弓兵の魔族1「あ・・・あの木馬ですよ。 あの木馬から棒状の物が飛んできたと思ったら・・・」

 

 ブォン!!

 

弓兵の魔族1・2「!!?」

 

 二人の魔族が確認のために空を見上げようとしたら、次の瞬間に足元に巨大な魔法陣が出現した。

 次第に、目に見えるほどの魔力が渦巻き、虹色の星のような輝きを放ち始めた。

 その魔力が鳥で全体を覆った時、二人の魔族や周辺の魔族達はこう思った。

 

(((((・・・・・・あ! 俺達・・・死んだ。)))))

 

 ズゴオオオオオオオォォォォォォーーーーーーーーン!!!

 

 とてつもない爆音の後に凄まじい爆風が突き抜け、砦のあった場所は見事に更地になった。

 魔族達はおそらく、自分達に何が起こったのかも分らず、声をあげる間もなく、その生涯を閉じたのだった。

 そして、その元凶である『空飛ぶ木馬』の中では・・・

 

 

ータイムマジーン内部ー

 

めぐみん「ハハハハハハハハハッ!! アーッハハハハハハハハッ!!」

  「我が爆裂魔法の威力、思い知ったかー!!」

賢治・エルシャ(どこの魔王だ?)

 

 そう、砦を吹き飛ばしたのは、めぐみんの爆裂魔法なのだ。

 俺が考えついた案とは、魔王軍の砦や要塞に爆裂魔法を撃ち込むと言う物だった。

 結果は見ての通り、効果は抜群でめぐみんのレベルも3上昇したのだ。

 

めぐみん「燃え尽きろ、紅蓮の中で・・・・・・ハァ〜、最高デス。」

賢治「満足いったようで何よりだ。」

めぐみん「満足です・・・えぇ! 満足ですとも。」

  「恐らく、私のこれまでの人生の中で、1番スカッとした瞬間ですよ。」

エルシャ「・・・確かに、スカッとしたわね。」

 

 しかし、爆裂魔法・・・本当に凄まじいな。

 機動力さえあれば、本当に世界最強の魔法使いになれるかもな。

 某アメリカンヒーロー達が戦った、ロボット軍団も楽に倒せるかも知れない。

 

賢治「じゃあ、帰るか。」

めぐみん「いや〜、明日が楽しみです。」

 

 帰る途中で、魔王軍らしき部隊が行軍していたので、こちらもミサイルで爆撃しておいた。

 こうして、俺たち三人の新たな日課、通称『爆裂空中散歩』が始まった。

 

 それは、雨の降る日も

 

めぐみん「『エクスプロージョン!』」

 

 ドゴオオオオオオオオオオオオォォォォォーーーーーン!!!

 

魔族1「うわああああー!! 空飛ぶ木馬が来たぞー!!」

エルシャ「あ! 賢治、撃ち漏らしが逃げていくわ。」

賢治「おう、任せろ。 ポチッとな!」

魔族2「うわあああぁぁぁーー!!! また爆発したあああぁぁぁ!!!」

魔族3「ちょ・・・助け・・・ああああああああああ!!!」

 

 時にはめぐみんの撃ち漏らしにミサイルやレーザーの雨を降らせてやった。

 

 それは、風が強く吹く嵐の日も

 

魔族4「来たぞー!! 例の空飛ぶ木馬だー!!」

魔族5「この野郎!! 散々俺達の仲間を殺しやがってえええぇぇぇ!!」

魔族6「これでも食いやがれぇぇぇ!!!『ライトニング!』」

魔族4「『ライトニング・ストライク!』」

魔族5「『ファイヤーボール!』」

 

 ある時は、こちらに攻撃する奴もいたが・・・

 

賢治「HAHAHA、回避行動を取るまでもないな。」

エルシャ「明らかに射程外よね。」

めぐみん「ハハハッ!! 射程外から一方的に蹂躙される気分を味わうがいい!」

  「『エクスプロージョン!』」

 

 抵抗虚しく、爆裂魔法の餌食になるのだった。

 

 それは、穏やかな昼の一時にも

 

魔族7「うわあああぁぁぁ!! 来やがったあああ!!」

魔族8「全員要塞内に避難しろおおおぉぉぉ!!」

 

 ある時は、建物の中に籠り難を逃れようとする奴もいた

 

賢治「めぐみん、ミサイルで要塞の屋根を吹き飛ばすから、爆裂魔法で一網打尽にしてやれ。」

めぐみん「了解です。」

魔族7「屋根が吹き飛んだあああああああ!!!」

魔族8「やめてくれええええええ!!」

めぐみん「『エクスプロージョン!』」

賢治「・・・・・・これは・・・あれだな、藁の家に隠れる子豚だな。」

 

 一箇所に固まっていたことが災いし、一人残らず爆裂魔法の良い的になるのだった。

 

 すると、相手側は次第に・・・

 

魔族9「ああっ!! 来たあああ!! 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!!!」

魔族10「来るな来るな来るなああああああ!!」

めぐみん「『エクスプロージョン!』」

 

 脇目も振らず逃げ始め。

 

めぐみん「みなさん、お待たせしました。 爆裂魔法のお時間です!」

賢治「死んだ後はエリス様によろしくな。 あ! 胸に違和感を感じても何も言うなよ。」

エルシャ「? どう言うこと?」

魔族11「いやああああああああああ!!! やめてくれええええええええ!!!」

魔族12「オレ達が悪かった!! だから許してくれええええええええ!!」

魔族13「あ・・・あはっ! あははははははは!!」

めぐみん「『エクスプロージョン!』」

 

 中には狂い始める奴も出始め

 そしてついに・・・

 

賢治「・・・・・・なぁ。」

エルシャ「何。」

賢治「・・・・・・これ、なんだと思う?」

めぐみん「・・・さぁ?」

 

 その日は様子がおかしかった。

 今日も爆裂魔法を撃ち込むために、魔王軍の砦に来ていたのだが砦の中にいるはずの魔族達は平原に出てきてこちらに向けて土下座をしていたのだ。

 

エルシャ「・・・なんのつもりかしら?」

賢治「う〜ん。 とりあえず聞いてみるか。」

 

 タイムマジーンを降下させ、変声機で声を威厳のある老人の声、感じ的に2068年のオーマジオウの総悟の声に変換して尋ねてみた。

 

賢治「諸君、何のつもりだね?」

エルシャ(おお!)

めぐみん(中々カッコイイ声ですね。)

 

 次に返ってきたのはこうだ・・・

 

魔族達「「「「「全面降伏します!!!」」」」」

「「「・・・・・・」」」

 

 俺はタイムマジーンを再び上昇させる。

 それをみた魔族達は、一瞬ホッとした顔をするが

 

めぐみん「『エクスプロージョン!』」

 

 無慈悲な爆裂魔法を喰らわせてやった。

 ここ一週間程度で、めぐみんはヤバいくらいにレベルアップし、敵の砦や要塞はみんな更地になったのだ。

 ただ、俺は一つ気になる事があった。

 

 PiPiPiPiPi

 

賢治「? ・・・またか。」

エルシャ「またあの城の反応?」

賢治「あぁ・・・・・・とりあえずポチッとな!」

 

 タイムマジーンから放たれたミサイルが4本。

 アクセルの街から離れた廃城に放たれ爆発した。

 

めぐみん「・・・これで一週間近くになりますね、あの城に何かあるんでしょうか?」

賢治「分からん、ただ反応をみる限りアンデットの反応だから、放置しても後々厄介だから今日までミサイルを撃ち込んでいたんだが。」

エルシャ「何か気になるの?」

賢治「・・・・・・これだけ爆撃しているのに、何であの城は崩れないんだろうな?」

エルシャ・めぐみん「!!・・・確かに!?」

 

 もしタチの悪いアンデットが城に住み着いているのなら、討伐した方がいいよな。

 今度ルナさんに聞いてみよう。

 

 

ーギルドの酒場ー

 

賢治「シュワシュワ一杯、彼女にはジュースで。」

めぐみん「むぅ、ちょっと位いいじゃないですか。」

エルシャ「ちゃんとお酒が飲める歳になってからね。 私もジュースで。」

 

 俺達は魔王軍の基地撃破とめぐみんのレベルアップを記念して、お祝いをしていた。

 何とめぐみんはこの一週間足らずで21レベルが上がりレベル37になったのだ。

 今現在の俺たちのパーティの中で1番レベルが高い。

 今の俺のレベルは28だからな。

 

冒険者1「なぁ、王都の騒ぎ聞いたか?」

冒険者2「え? どんな?」

冒険者1「なんか、王都に攻めて来る魔王軍の規模が急に小さくなったんだってよ。」

冒険者2「へぇ、いいことじゃないか。」

冒険者1「いやそれがな、王国軍がチャンスとばかりに敵拠点に攻め入ったらあたり一面更地になっていたんだと。」

  「原因が全く分からなくて困惑しているらしいぜ。」

冒険者2「マジか! 一体何があったんだろうな?」

 

 どうやら王都でも俺達の噂で持ちきりらしいな。

 隣を見るとめぐみんが得意げに鼻で笑ていた。

 

酒場の店員「シュワシュワ一つ、ノンアルコールのカクテル二つお持ちしました。」

賢治「ありがとう。 それじゃ、めぐみんの大勝利を祝して、乾杯。」

 

 乾杯の合図とともに、ジョッキとコップを鳴らすのだった。

 

カズマ「お! なんか賑やかだな。」

 

 後ろから声をかけてきたのはカズマだった。

 

賢治「おう、カズマお疲れさん。」

カズマ「おう、お疲れ。」

 

 カズマもダンジョン攻略から帰ってきたようだ。

 ただ、所々防具が増えている。

 どうしたんだろうか?

 

エルシャ「カズマ、その防具どうしたの?」

カズマ「これか、これはダンジョンの主を討伐したときに、急に宝箱が出現してな。」

  「開けてみたらこの防具が入っていたんだ。」

めぐみん「え? カズマダンジョンの主を倒したのですか?」

カズマ「あぁ、ここ一週間かけて少しづつレベルを上げて、やっと倒せたんだ。」

  「いや〜、苦労したぜ。」

 

 初心者用ダンジョンとはいえ、一人で主を倒すなんて

 

賢治(ちょっと拝見。)

 

 俺は能力透視を使ってカズマの防具の性能を見てみた。

 

 解除の籠手

 ・解除の心得

  『罠感知』・『罠解除』・『鍵開け』のスキルが内包されている

  ・罠感知

   どこに罠があるかを感知することができる

  ・罠解除

   罠を解除することができる

   複雑な罠は解除に時間がかかる

  ・鍵開け

   鍵を開けることができる

   複雑な鍵は開けるのに時間がかかる

 

 感知の腕輪

 ・感知の心得

  『熱源感知』・『音源感知』のスキルが内包されている

  ・熱源感知

   熱を発するものを感知する

   視覚情報に映し出される

  ・音源感知

   音を発するものを感知する

視覚情報に映し出される

 

 韋駄天のグリーブ

 ・韋駄天

  『超加速』『神速』のスキルが内包されている

  ・超加速

   一分間俊敏性を50%上昇させる

   一度使用すると30分後に再使用できる

  ・神速

   30秒間俊敏性を120%上昇させる

   一度使用すると一時間後に再使用できる

 

 中々レアな防具だ。

 機会があったらダンジョンに入ってみようと思っていたが、これは期待できそうだ。

 

ダクネス「やぁ、みんな。」

賢治「よぉ、ダクネス。」

 

 次にやって来たのはダクネスだった。

 果たして彼女の筋トレの効果はあったのだろうか?

 この世界では、ステータスを上げる方法は三つある。

 一つは、レベルアップ。

 二つ目はダクネスがやっていた筋トレや、瞑想などと言った各ステータスに関係のあるトレーニングを行うこと。

 ただこの方法はステータスの数値は上がるが、レベルは上がらないらしい。

 そして三つ目は、ステータス上昇系のスキルを習得すること。

 俺が持っている『体捌き』などがいい例だ。

 ダクネスが帰ってきたと言うことは、成果があったのだろう。

 そんなダクネスは、手に箱・・・いやアタッシュケースを持ってきていた。

 

賢治「ダクネス、それは?」

ダクネス「あぁ、これだな。」

  「実は、みんなにも見て欲しいんだ。」

めぐみん「何ですか?」

 

 ダクネスは持ってきたケースを開けると、その中には・・・

 

賢治「?! これは!」

ダクネス「何か知っているのか?」

 

 ケースの中に入っていたのは、全体が黒く錆び付いていたが、この形状は

 そしてそのすぐ側には、黒いプレートみたいなものがあり、こちらも錆でよく見えないが『R』の文字が描かれている。

 

賢治「もしかして・・・」

 

 『オーマジオウ!』

 

 俺はオーマジオウライドウォッチを取り出し、オーマジオウの能力『時間逆行』を発動した。

 その力をケースの中にある物に向けた。

 すると、次第に錆が取れていき、その全貌が明らかになった。

 それは、俺が予想していた通りのものだった。

 

賢治「マッハドライバーと、トライドロンキー!」

カズマ「え? もしかして、仮面ライダーのベルトか?」

ダクネス「やはり・・・」

賢治「仮面ライダードライブに出てくる、仮面ライダーマッハ、そして仮面ライダーチェイサーが使う変身ベルトだ。」

エルシャ「ドライブ?」

賢治「仮面ライダー史上初、車にしか乗らない仮面ライダーだな。」

カズマ「は? 車にしか乗らない? マジか!」

 

 ケースの中に入っていたのは、マッハドライバー炎とトレイドロンキーの二つだった。

 ただ、俺の知っているマッハドライバーとはカラーリングが違うようだ。

 本来は青いはずが、このドライバーは青い部分が赤くなっている。

 このドライバーを開発したのは、クリム・スタインベルトことベルトさんの恩師のハーレー・ヘンドリクス博士が開発したものだが、このドライバーは違うのだろうか?

 そもそもこのドライバーはどうしてこの世界にあるのか?

 トライドロンキーがあると言うことは、トライドロンもこの世界に存在するのだろうか?

 そんなことを考えていると

 

 『マッハドライバー!』

 

賢治「?」

カズマ「お、おいダクネス!?」

 

 マッハドライバーの起動音が聞こえた。

 カズマが何やら慌てている感じだが、一体何が。

 

賢治「・・・って! ダクネスお前!」

ダクネス「? なんだ?」

賢治「何だじゃねぇよ。 何で腰にドライバーをつけてるんだよ?!」

 

 何とダクネスがマッハドライバーをつけていたのだ。

 しかも起動音がしたと言うことは。

 

賢治「一回外してくれ!」

ダクネス「わ、わかった。」

 

 その後他のみんなにマッハドライバーを腰に当ててもらうが、装着できなかった。

 つまり、これが意味することは・・・

 

賢治「はぁ〜・・・どうやら所持者登録されてしまったみたいだ。」

エルシャ「所持者登録?」

賢治「あぁ〜、簡単に言うとダクネス以外には使えなくなったんだ。」

カズマ「マジか。」

ダクネス「では! 私も仮面ライダーに?」

賢治「なれるかもな。」

ダクネス「・・・!!」

 

 ダクネスは感極まったように、ガッツポーズを繰り出していた。

 だが、正直なところ、ダクネスに仮面ライダーが務まるのだろうか?

 

賢治「ダクネス。」

ダクネス「なんだ?」

賢治「このさい仮面ライダーになるのはいいとしよう。 だけど、仮面ライダーの力は沢山の人の愛と平和を守るためにあるんだ。」

  「頼むから自分の性癖を優先しないでくれよ。」

ダクネス「な!! ちょっと待て、賢治は私をどう見ているのだ?」

  「私がいつどんな時でも自分の性癖を優先すると思っているのか?」

賢治「思ってるよ・・・当然じゃん。」

ダクネス「な!!」

  「・・・・・・まさかみんなも?」

 

 そう言って他のみんなに顔を向けるが、全員揃って目を合わせようとしない。

 つまりは、そう言うことだ。

 

ダクネス「なあああああ!!」

 

 ダクネスが頭を抱えて叫んでいる時。

 

ルナ「緊急!! 緊急!! 冒険者の皆さんは、武装して正門前に集まってください!!」

「「「「「!!?」」」」」

 

 ルナさんの声に一斉に反応したギルドにいる冒険者達。

 何やらただごとではない雰囲気だ。

 まさか、爆裂空中散歩を始めてしばらくした日に、アクセルの街の近くに魔王軍の幹部らしき者がやってきたらしいが、そいつがここに来たんじゃないだろうな?

 

賢治(・・・・・・いや、ここは駆け出しの街だし、考えすぎか。)

 

 と言っても、先日のインベス騒ぎからこの街の冒険者達の平均レベルは25前後まで上がっているので、駆け出しばかりじゃなくなっている。

 よほどのことがない限り大丈夫だろう。

 途中、バイトを終えたアクアと合流し、正門前にやってきた。

 そこで待ち受けていたのは、見事にこちらの予想を裏切ってくれた。

 

 

ーアクセルの街 正門前ー

 

???「・・・・・・」

アクア「なになに?」

カズマ「何だあいつ? ・・・滅茶苦茶強そうだぞ。」

ダクネス「あれは・・・首無しの騎士・・・・・・デュラハンか!」

 

 そのには、馬に跨った騎士風の男がいた。

 だがそいつは普通じゃない。

 まずそいつには首がない。 いや正確には自身の首を左腕で抱えている。

 そして、またがっている馬も頭がない。

 俺のいた日本には『首切れ馬』という首のない馬姿をした妖怪がいるが、もう一つ、コシュタ・バワーという死を予言する首無し馬がいるが、目の前にいるのがデュラハンなら後者の方だろうか?

 

デュラハン「俺は先日、この近くの城に越してきた魔王軍の幹部のものだが・・・」

エルシャ「!! 魔王軍の幹部!!」

賢治「あいつが!」

 

 俺は咄嗟に能力透視を発動していた。

 

 

 BERUDHIA

 

 LV76

 種族 アンデット  職種 魔王軍幹部

 

 体力   61712  火 90

 魔力   10652  水  0

 力    21660  土 40

 知力    8968  風 45

 俊敏性   9044  光 95

 器用さ   7964  闇 35

 幸運    278

 

 スキル

 ・魔眼

 ・カースド・ブレード

 ・カースド・ラッシュ

 ・剛・斬撃

 ・眷属召喚

 ・死の宣告

 ・魔炎の加護

 ・魔光の加護

 

 ・・・・・・やばい、とんでもないステータスだ。

 素の状態ではステータス的に絶対勝てないぞ。

 そう考えていると、魔王軍の幹部は次第に体をプルプルと震わせ始めた。

 

ベルディア「お・・・お・・・俺の城に・・・毎日毎日欠かさず、謎の爆発物を打ち込んでくる・・・頭のおかしい大馬鹿野郎は、誰だああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

賢治「・・・・・・あぁ〜・・・」

 

 やばい! ものすご~く身に覚えがあった。

 おそらくここ一週間毎日ミサイルを撃ち込んでいたあの城だ。

 て言うか、居たのお前かよ!!

 

エルシャ「・・・賢治。」

めぐみん「これは・・・」

賢治「・・・・・・」

 

 これは出て行くしかないだろう。

 じゃないと怒り心頭のあいつが何をするか分かったもんじゃない。

 俺は意を決すると、ベルディアに向かって歩き出した。

 その時

 

 『ジオウⅡ』

 

賢治「うん?」

 

 急に、ジオウⅡのライドウォッチが起動したと思ったら、頭の中にイメージが流れ込んできた。

 ジオウⅡの『未来予知』の能力が発動したようだ。

 

賢治「・・・・・・エルシャ、めぐみん。」

エルシャ・めぐみん「?」

 

 俺はめぐみんとエルシャに伝えることを伝えると、改めて歩き出した。

 その最中に、冒険者カードを出し、三つ新しいスキルを取得しておいた。

 そして、お互いしっかり顔が見える距離までくると

 

ベルディア「お前が・・・・・・お前が毎日欠かさず爆発物を打ち込んでくる、大馬鹿者かぁ!!!」

  「俺が、魔王軍の幹部と知って喧嘩売っているのなら、堂々と城に攻めて来るがいい!!」

  「そうでないのなら、街の中で震えているがいい!!」

  「ねぇ・・・何でこんな陰湿な嫌がらせするの〜!!」

  「どうせ雑魚しかいない街だと思って放置していれば、調子に乗って毎日毎日ポンポンポンポンポンポンポンポン!!」

  「撃ち込みに来やがって! 頭おかしいのか貴様ああああああ!!!」

賢治「・・・・・・」

 

 なんか気の毒に感じてきた。

 知らなかった事とはいえ・・・

 それに、今思い出したが、こいつって・・・

 

賢治「いや〜、それは済まなかった。 まさかあの廃城に住んでいるなんて思わなかったからな。」

  「あと、今から一週間くらい前に、行軍中のあんたの部隊にミサイル・・・あぁ、謎の爆発物を撃ち込んだのも俺だ・・・」

  「ごめんな。」

 

 そう、こいつは爆裂空中散歩を始めた初日に爆撃した魔王軍の部隊だった。

 1番先頭にこいつがいたから間違いない。

 一応、多少の謝罪の意を込めて謝って見たが・・・

 

ベルディア「・・・・・・こ・・・・・・こ・・・・・・」

賢治「こ?」

ベルディア「こ・・・こ・・・この腐った蜜柑があああああああああああああああ!!!!!」

 

 

 

ーベルディアsideー

 

 そう、あれは余りにも、突然のことだった。

 今から一週間ほど前、俺は魔王様より駆け出しの冒険者達が集まる街の付近の調査を命じられたのだ。

 あの日は絶好の行軍日和だった。

 魔に身を堕としたこの身でも、思わず鼻歌を歌ってしまうほど麗かな一時だった。

 そんな時だった。

 俺の部隊の上空を、まるで木馬のような形をしたものが飛んでいったのだ。

 最初は自分の目を疑った、だが次の瞬間。

 その木馬から謎の棒状のものが飛来したのだ。

 その棒状のものが地面に接触した途端

 

 ドゴオオオオオオオオオオオオオーーーーン!!!

 

ベルディア「ミギャアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァ!!!」

 

 爆発したのだ。

 おかげで俺の部隊は、俺を除いて全滅し、俺は飛んでいった自分の首探しに半日費やすハメになったのだ。

 何とか街の近くの廃城にたどり着き、戦力を整え、いざ調査を開始しようと思った矢先に

 

 ドゴオオオオオオオオオオオオオオーーーーン!!!

 

ベルディア「アギャアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァ!!!」

 

 また爆発した。

 ふと空を見ると、あの時見た空飛ぶ木馬の姿を見つけた。

 反撃しようにもすぐに去ってしまったので、やり場のない怒りが込み上げてきた。

 先程の爆発で城の一部が破損したので、改めて眷属を呼び出し、修繕作業に回した。

 だが、爆発から修理、爆発から修理、爆発から修理・・・・・・そんな毎日が一週間続いたのだ。

 流石に堪忍袋の緒が切れた。

 これまでのことから、あの木馬がアクセルという街に向かって飛んでいることは分かっている。

 俺はこの騒動の張本人に文句を言うために、単身街に向かったのだ。

 そして、出てきたのは男の冒険者だった。

 この男が張本人だと思うと、今まで溜まっていた怒りが噴き出て、自分でも気付かないうちに色々捲し立てていた。

 そんな俺に返ってきた言葉は

 

冒険者「いや〜、それは済まなかった。 まさかあの廃城に住んでいるなんて思わなかったからな。」

  「あと、今から一週間くらい前に、行軍中のあんたの部隊にミサイル・・・あぁ、謎の爆発物を撃ち込んだのも俺だ・・・」

  「ごめんな。」

 

 だった・・・     ブチッ!!!

 何かが切れた。

 

ベルディア「・・・・・・こ・・・・・・こ・・・・・・」

冒険者「こ?」

ベルディア「こ・・・こ・・・この腐った蜜柑があああああああああああああああ!!!!!」

 

 俺は馬から飛び降り、目の前にいる冒険者に怒りに任せて剣を振るった。

 

 

 

ー賢治sideー

 

賢治「!! 『知覚強化!』」『ジカンギレード! ケン!』

 

 俺はスキルを発動してジカンギレードを取り出し、デュラハンの剣をギリギリ躱すと

 

賢治「『斬撃!』」

ベルディア「ぬっ!!」

 

 デュラハンの左側から後ろに抜けるように、スキル『斬撃』で斬りかかった。

 だがレベル差のせいか、俺の『斬撃』は幹部の鎧を少し傷つけた程度だった。

 しかし俺は間髪入れずに

 

賢治「『オールエレメントスラッシュ!』」

ベルディア「! これは!!」

 

 六属性全ての属性がジカンギレードに集約され、それをデュラハンに向けて解き放った。

 すると、天高く白いオーラが伸び、虹色の星のような光が渦巻く。

 その直撃を受けた張本人は

 

ベルディア「ギヤアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 と、叫び声をあげていた。

 どうやら効果はあるみたいだ。

 デュラハンから距離をとり、追撃に備える。

 土煙が晴れ、そこには、全身から黒い煙みたいなのを上げつつ立ち上がるデュラハンの姿だった。

 

アクア「う・・・嘘でしょ。 今のを受けて倒せないなんて。」

カズマ「・・・けど効いてはいるはずだぞ、ギヤアアア!! って言ってたし。」

 

 そう、効いてはいるはずなんだ。

 やはりレベル差だろうか?

 

ベルディア「ゼェ、ゼェ、ゼェ・・・お・・・お前のその力、本当に駆け出しか?」

  「駆け出しが集まる街なんだろ、この街は!?」

 

 どうやら今の一撃を受けて、向こうも冷静さを取り戻したようだ。

 できれば怒りに我を忘れている内にもっとダメージを与えておきたかったが。

 

ベルディア「まぁいい、おかげで頭の熱が引いた。」

  「どうやらお前には、確実な死を与えたほうがいいようだな。」

賢治「うん?」

 

 そう言ったデュラハンは、右手で俺を指差し

 

ベルディア「汝に、死の宣告を・・・お前は今から一週間後に・・・死ぬ!」

賢治「!!」(来た!!)「ぐっ・・・ああああああああ!!」

 

 

ーダクネスsideー

 

デュラハン「どうやらお前には、確実な死を与えたほうがいいようだな。」

 

 魔王軍の幹部がそう言った時、思わず背筋が震えた。

 今すぐにでも賢治の元に駆けつけねば、賢治が危ない。

 私が駆け出そうとした時、私はめぐみんとエルシャに後ろから羽交い締めにされ正面から両肩を押さえ付けられていた。

 

ダクネス「!? 2人とも離せ!!」

めぐみん「離せません!」

エルシャ「賢治に言われてるからね、『ダクネスだ飛び出そうとしたら全力で止めてくれ』って。」

ダクネス「な!」

 

 どう言うことだ?

 賢治にはこの状況が読めていたと言うことか?

 

デュラハン「汝に、死の宣告を・・・」

ダクネス「!! いかん! 2人とも離せ!! 止めるな!!」

 

 早く!! 早くいかないと!!

 

デュラハン「お前は今から一週間後に・・・」

ダクネス「やめろおおおお!!」

デュラハン「死ぬ!」

賢治「ぐっ・・・ああああああああ!!」

ダクネス「賢治!!」

 

 

ー賢治sideー

 

 俺の体に黒いオーラが巻き付いたと思ったら、全身を締め上げられるような感じがした。

 それは一瞬だったが、その後も妙に気だるい感じか抜けなかった。

 

カズマ「賢治!!」

めぐみん「賢治、大丈夫ですか?!」

賢治「・・・・・・あぁ、少しだるいけど、大丈夫だ。」

 

 仲間達が駆けつけ、俺の心配をしてくれる。

 そんな俺達を見たデュラハンは

 

ベルディア「その男の仲間か? よく聞くがいい、その男は一週間後に死ぬ。」

「「「「「!!!」」」」」

ベルディア「その呪いを解いて欲しかったら、俺の城に来い。」

  「見事俺の元まで辿り着けたなら、その男の呪いは解いてやろう。」

  「だが、果たして辿り着けるかな?」

  「ハハハハハハハハッ!!」

 

 デュラハンはそう言って、高笑いと共に消えていった。

 後に残ったのは、俺たち冒険者達だけだった。

 周囲には暗い雰囲気が満ちていた。

 そんな中、めぐみんが一人歩き出した。

 

カズマ「おい! どこ行くんだよ。」

めぐみん「・・・ちょっとあいつの城に行って、あのデュラハンに爆裂魔法をぶちかまして、呪いを解かせてきます。」

カズマ「・・・はぁ、俺も行くぜ。 これでも仮面ライダーなんだ。」

  「仲間を見捨てるなんてできないからな。」

ダクネス「2人が行くのなら、私も行くぞ。」

 

 みんな俺のためにあのデュラハンを倒そうとしてくれている。

 ・・・・・・その気持ちは嬉しいんだが

 

賢治「あぁ〜みんなその必要はないぞ。」

カズマ・めぐみん・ダクネス「え?」

エルシャ「・・・やっぱり、何か考えがあるの?」

賢治「気付いていたのか?」

エルシャ「だって、賢治なんだか・・・あえてあの呪いを受けたような気がしたもの。」

ダクネス「わざと・・・・・・おい賢治!! それは本当なのか?」

 

 その通りだ。

 実はさっき、ジオウⅡの未来予知で見ていたのだ。

 『知覚強化』『剣術』この二つのスキルを習得していないと、最初の一撃で大怪我を負っていたことも

 『斬撃』はついでに

 本来なら呪いを受けるのも、俺を庇ってダクネスが受けるはずだった。

 その後、ダクネスの例の性癖が爆発して、場の空気がグダグダになることも。

 そして当然、呪いの解呪についても

 

賢治「と言うわけでアクア。」

アクア「え・・・何?」

賢治「呪いの解呪よろしくな。」

アクア「え? ・・・・・・あ!」

  「『セイクリッド・ブレイクスペル!』」

賢治「!! ・・・・・・あぁぁぁぁ〜・・・」

カズマ・めぐみん・ダクネス「・・・え?」

アクア「忘れてたけど、私にかかればデュラハンの呪い解呪なんて、チョチョイのチョイよ。」

 

 アクアのおかげで、さっきまでの気だるさが無くなり、スッキリした。

 俺が助かったと知ると、他の冒険者達も歓声をあげ、近づいてきて俺が助かったことを喜んでくれているようだ。

 

賢治「さて、ここから対デュラハン戦に向けて、準備をしないとな。」

  「忙しくなりそうだぜ。」

 

 

 




とりあえず、今回はこんな感じです。
ダクネスに関しては、正式な変身ではなく一時的なものです。
1番描きたかった爆裂空中散歩が駆けて良かったです。
次回は、ベルディア戦に向けての準備期間になります。
それでは、また次回


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第九話 このダンジョンを作りし者に祝福を

みなさんお久しぶりです。
この前書きを書いているときに、FGOの秋葉原イベントが残り5日で、スタンプ10個までしか押していなく
ものすごい駆け足で最終日にストーリーを全てクリアしました。かなりキツかった
残念なのは、その後の100階ミートタワーに挑戦する暇が無かった事です。
次の復刻に期待します。
さて今回は、ダンジョンに挑戦します。
そこであの機械生命体とあの人が出てきます。
構想を練っている段階で今回はかなり長文になりそうな予感がします。
でもどうか第九話もよろしくお願いします。
それでは、第九話をどうぞ。


ーダンジョン内ー

 

 今、俺とダクネスはあるダンジョンへ来ている。

 対デュラハン討伐に向けて、レベルアップとレアな防具や武器などを手に入れる為である。

 ダクネスの話だと、元々ダクネスが持ってきたマッハドライバーは『ある人』からダクネスの両親に託された物らしい。

 そして、その『ある人』が住んでいたのが、このダンジョンらしい。

 ダクネスにこのダンジョンまでの案内を頼んで、今は2人でダンジョン攻略に励んでいる。

 だが、ダンジョン内を進んで、俺達はゴーレム達の妨害を受けることになった。

 ・・・いや、正確にはゴーレムではなく機械生命体だ。

 ある程度は予想していたが、まさか『ロイミュード』がこのダンジョンを守っているとわ。

 

 『フィニッシュタイム!』『タイムブレイク!』

 

賢治「ハアアアァァァ!!」

 

 俺は通路にいるロイミュードをライダーキックで複数体撃破するが、撃ち漏らしも出てくる。

 そんなロイミュードを

 

 『ヒッサツ! フルスロットル!』『超・デッドヒート!』

 

ダクネス「ハアアアァァァ!!」

 

 そう、仮面ライダーに変身したダクネスが必殺技で、倒していった。

 彼女は今、マッハドライバーとトライドロンキーで変身した、『仮面ライダー超・デッドヒートドライブ』に変身している。

 

賢治「絶好調みたいだな。」

ダクネス「あぁ、頗る絶好調だ。」

  「何より、私の攻撃が当たるのだ! あぁ、私は今人生で初めて、まともに活躍している気がする。」

 

 そう、ダクネスは普段は不器用すぎて攻撃が絶望的に当たらない、それこそ動いていない的にも攻撃が当たらない程に。

 それが今はどうだろう。

 変身してからのダクネスは、攻撃が外れることがなく普通に当たるのだ。

 おそらくライダーシステムがダクネスの攻撃を逐一修正をしているのだろう。

 さて、どうして俺達がこのダンジョンに来ているのかと言うと・・・

 

 

ー数時間前 アクセルの街ー

 

賢治「よし、今からダンジョンに潜るか。」

「「「「「え?!」」」」」

 

 俺以外の全員が疑問の声を上げた。

 

めぐみん「賢治、今すぐあのデュラハンの所に殴り込みに行かないのですか?」

カズマ「今ならあいつも油断しているはずだしな。」

 

 そう言うことか。

 だが、今それをやるのはダメだと思う。

 

賢治「いや、あいつのステータスかなりヤバイぞ。」

  「今の俺達じゃ変身しないと勝てないレベルだぞ。」

エルシャ「? それなら楽勝じゃない?」

賢治「いや駄目だ。 せめてあいつのステータスに迫るくらいのレベルにならないと安心して戦えない。」

  「それこそあいつが、『第二形態』なんて奥の手を持っていたとしたら、今の俺たちじゃ全滅するぞ。」

カズマ「・・・考えすぎじゃないか?」

 

 そうかもしれない。

 しかし、用心しておくにこした事はない。

 あらゆる状況を想定して策を用意しておいたほうがいいと思う。

 

賢治「俺の考えすぎならそれはそれでいいさ。」

  「けど、後で後悔するよりはいいだろ?」

めぐみん「・・・・・・そうですね、ですが実際どうしますか?」

賢治「幸いにもあいつは俺達に猶予を与えてくれた。 一週間だ。」

カズマ「? 一週間、なんで?」

 

 そう、あのデュラハンは俺に『一週間後に死ぬ』と言った。

 だがあいつは俺の呪いが解かれたところは見ていない。

 あれだけのやり取りだが、あのデュラハンが意外にも律儀な性格だと言うことはなんとなくだがわかった。

 少なくとも一週間おとなしくしているはずだ、俺がそれを伝えると。

 

めぐみん「なるほど、その間に強くなるわけですね。」

賢治「あぁ、恐らくあいつは一週間経っても来なかったら、またこの街にやって来るはずだ。」

  「多分、『この人でなしどもがあああぁぁぁ!!!』とか言うだろうな。」

「「「「「あぁ〜・・・・・・」」」」」

 

 その後、俺達は対デュラハン戦に向けて動き出した。

 ギルドに今回の件を報告して、腕利きの冒険者や騎士たちの援軍を要請してもらった。

 まぁデュラハンは、俺達仮面ライダーが戦うから、その他大勢を相手してもらう予定だ。

 カズマはこのパーティの中でダンジョン攻略経験者なのでエルシャとペアを組んで『キールダンジョン』に挑戦している。

 1番レベルの高いめぐみんと、すでにステータスがカンストしているアクアはデュラハンについて調べてもらっている。

 それにしても、アクアのステータスがすでにカンストしていたなんてビックリだ。

 つまり、彼女は今後いくらレベルがあがっても、知力も幸運も上がらないと言うことだ・・・

 アクア・・・可哀想に・・・

 そして俺は、ダクネスにマッハドライバーについて聞こうとしていたのだが

 

ダクネス「・・・・・・」ツーン

賢治「・・・なぁ、ダクネス。」

ダクネス「・・・・・・」

 

 さっきからこの調子だ。

 俺がデュラハンの呪いを受けた時、事前に自分だけに何も言わなかったことが気に入らなかったようだ。

 あの時は咄嗟にエルシャとめぐみんにああ言ったが・・・

 

賢治「なぁダクネス、いい加減もう拗ねるなよ。」

ダクネス「・・・別に、拗ねてない。」

賢治(いや、明らかに拗ねているだろう。)

  「なぁ、聞いてくれ。 俺がダクネスに言わなかったのは、ダクネスがあの時俺を庇って呪いを受ける未来が見えていたからなんだよ。」

ダクネス「? 未来?」

 

 仕方ないから話すことにした。

 

賢治「俺の持っているウォッチの一つに、未来を見る能力を持つウォッチがあるんだよ。」

ダクネス「・・・だから、私に言わなかったのか? 私にも言って欲しかったぞ。」

賢治「・・・それは、ダクネスが大事な仲間だからだよ。」

ダクネス「!!」

賢治「大事な仲間が呪いを受けるなんて未来が見えているのに、何もしないなんてできないからな。」

  「幸いにも、解呪の方法もわかっていたからな。」

ダクネス「・・・そ・・・そうか。 そう言うことなら、まぁ・・・」

賢治「・・・・・・」

  (何この子、チョロくない?)

 

 まぁ、今言ったことは紛れもない本心なので、何もやましい事は無いのだが。

 

 

ー現在 ダンジョン内ー

 

 そんなことがあり、機嫌が治ったダクネスと一緒に、ダンジョンに来たのだ。

 現在、第3階層に到達した。

 このダンジョンはなんだか親切だ。

 このダンジョンは全部で10階層まである。

 なんで分かるかと言うと、各階層に通じる階段に1/10と表示されているのだ。

 ついさっき2階から3階に繋がる階段を見つけ、そこには2/10〜3/10と表示されていた。

 さらに、1階と2階で共通するのが、休憩所が設けられていること。

 1階層で扉を見つけたので開けてみると、そこには簡素だがベッドがあり、ほかにテーブルや椅子、各種回復薬、簡易調理キット、ダンジョンの出口まで転送する魔法陣など、まるでこのダンジョンはテーマパークのようだ。

 ロイミュード達が俺達を本気で排除しようとする以外は・・・

 

賢治(なんかこんな感じのゲームがあったような気がする。)

  (なんだっけ? ・・・巣作り・・・なんとか・・・て言うゲームだったような?)

???(はい・まさしく今あなたが思い描いているゲームと・このダンジョンはよく似ています。)

賢治(だよな・・・・・・うん?)

 

 思わず心の中で返事をしたが、おかしい。

 今この場には俺とダクネス以外いないはず・・・

 

???(いえ・正確に言うと・この私もいます。)

賢治「いっ?!」

ダクネス「? 賢治、どうしたのだ?」

賢治「なんか・・・声が聞こえないか?」

ダクネス「声? ・・・・・・いや、聞こえないが。」

???(その通りです。 彼女には・私の声は・聞こえません。)

 

 さっきから妙に機械的な感じで俺の頭の中に語りかけてくるこの声

 どうやら俺以外には聞こえていないようだ。

 

???(私は・あなたのスキル・全知全能です。)

賢治(え? そうなのか? お前喋れたのか?!)

全知全能(あなたのレベルが・一定値に達したので・制限されていた機能が解放され・あなたとこうして・会話も可能になりました。)

賢治(そうか。 ・・・うん? 機能が解放された?)

 

 どうやら俺のスキル、全知全能がアップグレードされ、エクストラスキル『全知全能』になったようだ。

 まず、スキルの所持者と会話ができること。

 所持者の問いに答える機能が解放された。

 能力透視などのスキルまたは魔法などで見たスキルや魔法も、習得可能になること。

 統合の機能が解放されたこと。

 統合の機能で所持しているスキルや魔法を一つにすることで新しいスキルや魔法を獲得できること。 その際元々持っていたスキルと魔法は無くなってしまう。

 

賢治(こんな感じか?)

全知全能(はい。 今この瞬間に・統合し・新たなスキルと魔法を獲得できますが・いかがいたしましょう?)

賢治(いや、今はやめておこう。)

ダクネス「賢治?」

賢治「・・・いやなんでもない。 次行こうぜ。」

ダクネス「あぁ!」

 

 そして、3階・4階と順調に攻略していき、第5階層に到達した時音楽が流れ始めた。

 よく店を閉める少し前に流す、あの音楽が・・・

 と言うことは、知らない間に結構な時間が立っていたようだ。

 ちょうど近くに休憩所があるし・・・

 

賢治「ダクネス、今日はここで休もうぜ。」

ダクネス「ふむ・・・私はまだいけるが?」

賢治「いや、いくら変身していても、多少は負担が蓄積しているはずだから休めるうちに休んでおこうぜ。」

ダクネス「・・・そうだな、だが・・・」

賢治「?」

 

 なんだかダクネスがモジモジしている。

 ・・・・・・トイレか?

 

ダクネス「・・・その・・・賢治と2人っきりと言うのは・・・その・・・そこはかとなく、身の危険を感じるのだが?」

賢治「おい! お前は俺をなんだと思っているんだ!」

ダクネス「いやその・・・万が一ということも・・・」

賢治「確かにダクネスは美人だしスタイルもいいし、そんな女が側にいれば男として色々思う処もあるよ。」

ダクネス「な!」

 

 そう、ダクネスは黙っていれば完璧そうな美人の女騎士なんだ。

 だが・・・彼女の内情を知っている分、どうしても仲間以上の感情が持てない。

 それに俺には・・・・・・いや、もうどうしようもないことか。

 

賢治「心配するなダクネス。 もし俺がダクネスに何かしたら、そうだな・・・・・・アクセルの街の外周を逆立ちで一周してやるよ。」

ダクネス「いや・・・そこまでしなくても・・・」

 

 まぁ、そんなこんなで・・・

 俺達は休憩所で食事を取り、寝ることにした。

 予想通り、ダクネスは疲れが溜まっていたようで、ベッドに横になるとすぐに寝息を立てて寝てしまった。

 俺はいつものやつを済ませるとしよう。

 

 

KENJI KIRISHIMA

 

 LV32

 職業 ルーンパラディン  SP 7908

 

 体力  33843    火 150

 魔力  10260    水 150

 力   5906    土 150

 知力  6035    風 150

 俊敏性 5151    光 150

 器用さ 6291    闇 150

 幸運  583

 

 これが現在の俺のステータスだ。

 まだまだあのデュラハンには届かない。

 いや、魔力はもう少しで追いつくし、幸運値は俺の方が上だな。

 体力と力の数値は圧倒的に向こうが上だけど・・・

 

賢治「次はスキルと魔法か・・・よし、統合を試すか。」

 

 俺は全知全能の機能、統合を使いスキルを消費して新しいスキルを習得した。

 その過程でスキルもアップグレードした。

 まず、千里眼と暗視を統合して、EX(エクストラ)スキル・千里眼・改

 虚偽情報・探知妨害・発見探知を統合して、UQ(ユニーク)スキル・情報並列操作(マルチタスク)

 大型空間・保存を統合して、EX魔法・宝物庫(アイテム・ゲート)のスキルを手に入れた。

 それに伴って、もともと持っていた7つのスキルは無くなってしまった。

 

賢治「まぁ、以前より使いやすくなったし、いいか。」

 

 一通り終わったので、俺も寝ることにした。

 

 

ー次の日ー

 

 ダクネスより早く起きた俺は、一足早く朝食の準備をしていた。

 その時びっくりしたのは、昨日消費した食材が保存容器・・・冷蔵庫? の中に補充されていたのだ。

 

賢治「・・・一体どういう仕組みだ?」

 

 ・・・・・・まぁいい。

 俺が調理を始めると、その匂いでダクネスも目が覚めたようだ。

 

賢治「おう、起きたか。」

ダクネス「おはよう・・・賢治。」

賢治「もうすぐで朝食ができるから、待っててくれ。」

ダクネス「・・・あぁ、わかった。」

 

 まだ眠気が取れないダクネスは、いまだに夢現のようだ。

 ちなみにメニューは、ハムの上に目玉焼きを乗せた『ハムエッグ』とジャガイモとオニオンを塩で味付けした『オムレツ』。

 後、ハムとオニオンの『スープ』も用意した。

 その匂いに釣られたのか、ダクネスがフラフラ〜っとテーブルに近づいてきた。

 

ダクネス「・・・ふむ、賢治は料理ができるのだな。」

賢治「まぁ、簡単なものならな。」

 

 すると ぐうううぅぅぅ〜 という音が聞こえてきた。

 

ダクネス「!!」//////

賢治「・・・食べようか?」

ダクネス「う・・・うん。」

 

 そうして、朝食を終えた俺達はダンジョン攻略を再開した。

 やはり下層に行くほど出現するモンスター・・・もといロイミュードは強くなっていった。

 現に今、8階層で進化体と戦っている。

 ロイミュード・No.029、アイアンロイミュードだ。

 

賢治「ダクネス、あいつは腕を伸ばして攻撃してくるから気を付けろよ。」

ダクネス「わかった!」

 

 仮面ライダードライブの知識が役に立った。

 奴の特徴は剛腕と、それを生かした伸縮自在の腕による攻撃だ。

 これまでの階層で出てきたロイミュードで共通しているのは、重加速を使わないことだ。

 重加速がないおかげで普通に戦えるが、ダクネスの超・デッドヒートドライブなら重加速発生装置が標準装備されているがジオウの場合は、ドライブウォッチを使わないと対処できない。

 最初はウォッチを使っていたが、重加速が発生しないことが分かったので、今はジオウの姿で対処している。

 と言う訳で、腕に気をつけていれば十分勝てる相手なのだ。

 

 『スレスレ撃ち!』ドドドドドド!!

 

アイアンロイミュード

  「!! ギィ、ガァ!!」

賢治「ダクネス、決めろ!」

ダクネス「あぁ!」

 

 ダクネスはトライドロンキーが装填されている『シグナルランディングパネル』を上にあげて、ドライバー上部の『ブーストイグナイター』を一回押した。

 

 『ヒッサツ!フルスロットル!』『超・デッドヒート!』

 

ダクネス「ハアアアァァァ!!」

 

 超・デッドヒートのボディが赤く発火し、各部位から蒸気を噴射しながら放たれたライダーパンチが、アイアンロイミュードを粉砕した。

 丁度そこで、9階層に向かうための階段を発見し、俺とダクネスは更に下層に進んだ。

 階段を降りている時、シュッ! と赤い何かが通過したような気がした。

 

賢治「うん?」

ダクネス「どうした?」

賢治「今何か・・・・・・いや、気のせいだ。 行こう。」

 

 この時、俺は知るハズがなかった。

 この先の9階層で、ある人物のことを知る事になる。

 そして、新たな仲間との出会いが待っていることに。

 

 

ー9階層 どこかの部屋ー

 

???「・・・・・・・・・・・・ダンジョン内に、マッハドライバー・炎の反応を確認。」

  「その他、未確認のライダーの存在を確認。」

  「両者は協力関係と思われる。」

  「No.RRR(スリーアール)の起動及び、記憶領域のアップグレードを開始。」

 

 その部屋では、機械的な声の音声が響いていた。

 その中央に鋼鉄の棺のような物体が安置されていた。

 その表面には、No.RRRと刻まれていた。

 その棺の後ろには、4つの車輪がついた四角い物体があった。

 

???「・・・・・・・・・・・・全ての工程が終了するまで、後98%・・・・・・97%・・・・・・」

 

 その棺の中にいる、鋼鉄の人型は目覚めるその時を、ただ待っている。

 

 

ー9階層の通路ー

 

 俺とダクネスは9階層についた。

 だが、この9階層は今までとは違っていた。

 壁の青いラインが光っており、まるで俺達を導くように走っている。

 

ダクネス「・・・賢治、どう思う?」

賢治「う〜ん? ・・・・・・とりあえず、この光に沿って、進んでみるか。」

ダクネス「大丈夫だろうか?」

賢治「まぁ、罠ならそれごとブチ破るまでだ。」

 

 その光に沿って歩くと、途中でロイミュードに出会ったが、俺達に襲いかかることはなく道を開けるだけだった。

 まるで俺達を仲間と認識しているような・・・そんな気がする。

 そうして俺達は、光の終着地点に到着した。

 そこには扉があり、扉には『研究室』と書かれていた。

 その部屋に入り扉を閉めると、明かりがつき部屋全体を照らした。

 この中は安全だと確認した俺達は変身を解除した。

 

賢治「これは・・・・・・ドライブピット?」

 

 そう、この部屋は仮面ライダードライブに出てくる、ドライブの秘密基地ドライブピットにそっくりだった。

 原作のドライブピットは現代そのものなメカニカルな雰囲気だが、この部屋は石造の部屋にドライブピットの主な機能を移植したような作りになっていた。

 

ダクネス「この車輪みたいな物がついたのは何だろうか?」

 

 ダクネスが見つけたそれは、カバーが掛けられているがその形状から予想はつく。

 2人でそのカバーを外すと、そこにあったのは車だった。

 全体が黒で塗装されていて、白と紫のラインが入った車体。

 これは『劇場版 仮面ライダードライブ サプライズ・フューチャー』に登場した、『プロトトライドロン』だ。

 

賢治「まさかプロトトライドロンがあるなんてな。」

ダクネス「? トライドロン・・・このキーと何か関係があるのか?」

賢治「あぁ、そのキーがあれば、この車を動かすことが出来るんだ。」

ダクネス「ふむ、ではこっちは?」

 

 ダクネスが刺した方向には、棺桶みたいなのがあった。

 そして、さっきから音声がその棺桶から響いていた。

 

???「全工程終了まで、後68%・・・・・・67%・・・・・・」

ダクネス「? 何を言っているのだろう?」

賢治「う〜ん・・・多分中にロイミュードが入っていると思う。」

ダクネス「!? この中にか?」

賢治「あぁ。」

 

 棺桶の表面に、No.RRRと書かれている。

 だが、仮面ライダードライブにNo.RRRなんてだてこないはずだ。

 ZZZ(スリーゼット)とか000(プロトゼロ)とか、特殊なタイプでNo.5886とかがいるけど。

 俺がふと顔を上げると、そこには机がありそこに一冊の本があった。

 その本には『異世界記録』と書かれていた。

 しかも、日本語で。

 読めてきたぞ、恐らくここを作ったのは俺と同じ転生者だろう。

 その転生者が転生特典で、『ロイミュードを作る力』でももらったのだろう。

 俺はその記録を読んでみることにした。

 

 

ー異世界記録 一日目ー

 

 私は、自分の記録をこの世界に残すために、この本に自分のことを書き記すことにした。

 まぁ、記録と言っても日記と言った方がしっくりくると思うが。

 私はある日、自分が作った機械生命体の反乱によって、命を落としてしまった。

 幸いにも、私の精神はベルトに移しておいたので、私が死んでもべルトになった私が必ず使命を果たしてくれるだろう。

 

賢治「・・・・・・え?!」

 

 私が次に目を開けたのは、何もない空間だった。

 私はそこで椅子に座っていた。

 すると私の目の前に、女神を名乗る女性が現れた。

 彼女の名は、運命の女神・モイラ。

 彼女がいうには、私は彼らの反乱の時に殺されてしまい、その時点で人としての人生を終えてしまったらしい。

 ベルトとなった私は、無事ドライブの適格者を発見し、仲間と共にロイミュード撲滅に戦っているらしい。

 そして、どうして私が女神と対面しているのか?

 それは私にやって欲しいことがあるとのこと。

 私に第二の人生を与え、異世界へと転生させ、魔王討伐のために戦って欲しいと言ってきたのだ。

 正直に言って、二度目の人生なんて考えもしなかった。

 私は、知的好奇心を刺激されその申し出を受けることにした。

 転生特典として、私は強靭な肉体と不屈の精神を与えてくれる特殊能力、ここではスキルと呼ぶ『不撓不屈』を頂いた。

 このスキルはEXスキルと言う物で肉体強化に特化した『金剛身体』と生命力強化に特化した『神気増進』の二つが内包されている。

 異世界でも研究を続けようとするなら、この二つは必要だ。

 それから私は、女神様の導きにより今いるこの世界へ転生したのだ。

 

賢治「まさか・・・この人って・・・」

 

 

ー異世界記録 3日目ー

 

 この世界に来て3日目、私は最初の壁にぶつかった。

 資金が足りない!!

 この世界で私の研究をもう一度始めるにはどうしても資金が必要だ。

 そのために私はまず、ギルドに赴き、冒険者登録を済ませた。

 余談であるが、その時受付の人に「知力の数値が以上なまでに高いですよ!!」「王都に紹介状を書きます! 貴方ならこの世界最高の賢者になれますよ!!」と、まさか冒険者登録に来て冒険者人生を否定されるとは思わなかった。

 ちなみに私の職業は『錬成師』という職業にした。

 錬成師とは、戦闘においては後方支援向きで、主に鍛治や道具職人になる物達が獲る職業らしい。

 しかし、私にはうってつけの職業だ。

 だが、そこで私は重大なことに気付いた。

 そもそも私はこの世界の通貨を持っていないことである。

 冒険者登録の時はギルドに立て替えてもらったが、まず必要最低限の装備を整える必要がある。

 私はしばらくの間、土木工事やら道具制作のバイトで資金を稼ぐことにした。

 

賢治「・・・・・・エリス様、あの時はありがとうございます。」

 

 

ー異世界記録 6日目ー

 

 ようやく資金が溜まり、装備を整えギルドのクエストを受けることにした。

 私の装備はこの世界に転生する際に着ていた服の上に対物耐性のあるマントを羽織っただけの、シンプルな装備だ。

 武器は、残った資金を使って材料を集めて錬成師のスキル『錬成』を使って自作したライフル銃である。

 早速クエストを受けて、試してみることにした。

 その時のクエストは、ジャイアントトードと言う巨大なかえるの討伐依頼である。

 初めて見た時は、どうやったらカエルがあそこまで大きくなるのか? 色々興味が尽きない。

 そして拘って作っただけあって、ライフルは思っていた通りの性能を発揮してくれた。

 ブレも少なく反動も軽い、それでいて威力はカエルの頭に風穴が開くほどの威力がある。

 念のために、いろんな弾丸を作っておいたが、今回は出番がなかった。

 

賢治「・・・やっぱりジャイアントトードは冒険者の登竜門なんだろうか?」

 

 

ー異世界記録 10日目ー

 

 この世界に来てはや10日、私はまた壁にぶつかった。

 確かに順調にクエストをこなし、資金も溜まっている、だがそれは微々たる物だった。

 高額報酬のクエストは難易度が高く、1人では到底クエストを達成できない。

 一応メンバー募集の掲示板に張り紙を出しているが、いまだに声がかからない。

 そんな時、ある4人組の冒険者パーティの話し声が聞こえてきた。

 どうやらこのパーティは解散するようだ。

 1人は実家の家業を継ぐため、1人は彼女との結婚が決まったため、もう1人は音楽家になるため、だが最後の1人は他の三人を引き留めようとしている。

 だが、他の三人の決意は揺らがないようで、結果解散することになった。

 ただ1人取り残された彼は、ギルドの酒場のテーブルに突っ伏して泣いていた。

 私は声をかけてみる事にした。

 彼も彼の夢のために資金を集めているらしい。

 その夢とは、『誰もが楽しめるダンジョンを作り、運営すること』らしい。

 この時私は閃いた。

 私は彼に自分にもその夢の手伝いをさせて欲しいと申し出た。

 その代わりに、私の研究の手伝いと魔王討伐の手伝いを願い出た。

 

 

ー異世界記録 15日目ー

 

 私は新たに組んだ冒険者『ユーマ』と共に、今日も高難易度のクエストに挑んでいる。

 ユーマの職業はソードマスターという上級職である。

 そのおかげで以前よりも効率よくクエストをこなすことができた。

 私はまず、ユーマのダンジョン制作に力を注いだ。

 ダンジョンを作る場所の目星はつけていたようで、念のため連れて行ってもらうと、入り口から最奥まで200メートルくらいある洞窟だった。

 ダンジョンといえば洞窟、お決まりのパターンだ。

 場所はよし、後はダンジョンの内装と機能を維持するための膨大なエネルギーが必要になる。

 出現するダンジョンのモンスターについては、私に考えがあるので任せてもらうことにした。

 内装は、材料さえあれば私の錬成でなんとかなるだろう。

 1番の問題は、ダンジョン内に付ける機能の維持のためのエネルギー、こちらが問題だ。

 巨大なダンジョン全体を賄うだけのエネルギーをどう確保するか、今後の大きな課題だ。

 

 

ー異世界記録 35日目ー

 

 ユーマの夢は着々と実現しようとしていた。

 1番の問題だったダンジョンのエネルギー問題も、洞窟を錬成で掘り進めて行った時、たまたま見つけた巨大なマナの結晶、マナタイト結晶が見つかったのだ。

 長年魔力を浴びた鉱石が、マナタイト鉱石という魔力を帯びた鉱石に変貌する現象があるが、このマナタイト結晶はそれよりも高純度の魔力を帯びており、握り拳くらいの大きさで10年は遊んで暮らせる位の価値があるようだ。

 だがこの結晶は目測で直径10メートルはある。

 内に秘められている魔力の量も半端じゃない量だ。

 それだけにとても希少な結晶なのだ。

 この結晶があれば、ダンジョン運営のためのエネルギーを賄うには十分だ。

 これでさらにダンジョンの製作が進むだろう。

 

 

ー異世界記録 53日目ー

 

 この日、私はついにやり遂げた、超駆動機関コア・ドライビアの開発に成功したのだ。

 コア・ドライビアが出来上がったおかげで、かねてより計画していたダンジョンに出現するモンスターとして各階層に配置する予定のロイミュードの開発に着手し始めた。

 それと同時に、コア・ドライビアの副産物である重加速を打ち消すために、このダンジョンの心臓ともいえるマナタイト結晶を設置している部屋に、大型のコア・ドライビアを設置した。

 これにより、ロイミュードが発生する重加速を打ち消すことができる。

 後は、現在第1から第3階層までそれなりのものが出来ているが、まだロイミュードの数が足りない。

 もう少し、資金と資材を集める必要がある。

 クエストをこなしつつ、資材集めに励まねば。

 

 

ー異世界記録 92日目ー

 

 ついに、私達はダンジョンを完成させた。

 まぁ、いまだに見た目は不恰好だが、ダンジョンとしての機能は完璧だ。

 そして、このダンジョンのことを広める為に行動を開始しようとした時、思いもしなかった者がこのダンジョンにやって来たのだ。

 それは、女だった。

 このダンジョンに侵入して1階層を彷徨い始めた。

 会敵したロイミュードは即迎撃を開始するが、彼女の振るう金棒の前に次々とロイミュードは破壊されていった。

 だが、破壊されてもマナタイト結晶のおかげで、残骸が残っていれば少し時間が経てばリポップするように設定してある。

 侵入してきたものを注意深く観察すると、競泳水着のようなボディスーツにショルダーガード、両腕にガントレット、両足にはアイアングリーブ、そして金髪で三つ編みにしたロングヘアー、青い瞳、額の白い二本の角、どうやら彼女はオーガという種族のようだ。

 オーガの中には稀に人間のような姿をした上位個体が存在する。

 そんな彼女がなぜこのダンジョンにきたのか?

 私とユーマは彼女を1階層のある部屋に誘導するように、マナタイト結晶のある部屋からロイミュード達に指示を出した。

 すると、こちらの思惑通り彼女は誘導した部屋までやって来た。

 彼女は部屋の中央まで移動すると、トラップが発動した。

 身体中にロープが絡みつき、両手両足を背中で縛られ、宙吊りになった。

 動くことができず、次第に涙目になっていく彼女が可哀想になってきたのでユーマと共にトラップ部屋に赴き、彼女を解放してあげた。

 彼女曰く、腕試しがしたくてこのダンジョンに挑んだらしい。

 だが、出て来たロイミュード、彼女から見たらゴーレムもどきは大した強さではないとのこと。

 まぁ、人間用に調整しているから、オーガの彼女にとっては物足りない相手だろう。

 ならば彼女でも満足のいくロイミュードを作るまでだ。

 だから彼女も仲間に引き込むことにした。

 

 

ー異世界記録 128日目ー

 

 オーガの彼女、『カラン』が仲間に加わってよりレベルの高いロイミュードの開発が可能になった。

 私たちのダンジョンもすっかり周知され、数多くの冒険者達が挑戦しにやってきた。

 大体7割の確率で迎撃に成功している。

 残り3割は切りの良いところで、各階層に設けた休憩所にある魔法陣を使って引き返している。

 全滅した冒険者は、近くの休憩所で治療を施して、有り金全部を没収しダンジョンの外へ放り出す。

 『ハイリスク・ハイリターンだがとても面白くて命の危険のないダンジョン』と今や冒険者達の間で噂になっている。

 しかもレアエネミー扱いで、カランにもダンジョンを徘徊してもらっている。

 いまだに彼女に勝った者はいないが、カランに勝つために闘志を燃やす冒険者もいる。

 ダンジョンも当初は3階層までだたが今は10階層まで増やし、9階層に私の研究所を作り私の転生前の研究を続けていた。

 その研究の成果が今日出来上がった。

 設計図自体は頭にあったが、使える素材を探すのに手間取ったが、今私の目の前に試作第1号ドライブドライバーとシフトブレス、プロトタイプシフトスピード、そしてプロトトライドロンが完成した。

 ユーマとかランも最初は初めて見るドライバーや車を興味深そうに見たり触ったりしていた。

 性能の検証のために、生体認証機能は付けていない。

 ユーマに頼み、ドライブドライバーを使って変身してもらい、カランと戦ってもらったが、相打ちに終わった。

 カラン曰く、『ようやく本気で戦える相手が見つかった』とのこと。

 

 

ー異世界記録 136日目ー

 あの検証の日からカランは変身したユーマとちょくちょく試合をするようになった。

 こちらとしても、いいデータが手に入るので願ってもない。

 予想外だったのは、ユーマとカランが恋人同士になったことだ。

 ドライブとなったユーマは彼女と互角の強さと、ユーマ自身の優しさに惚れたらしい。

 ユーマもカロンといると、とても楽しく彼女の無邪気な性格がとても気に入ったようだ。

 私は研究一筋だったので、色恋沙汰には縁がなかったが、うん、この2人を祝福しようじゃないか。

 そして、蓄積されたデータを基に新しいドライバーの開発に着手した。

 以前、私の師であるハーレー博士が研究していた次世代型ドライバーの設計図を思い出し、マッハドライバー・炎の開発を開始した。

 魔王と戦うのだから、ドライバーが一つだけでは心許ない。

 今のところ、使う予定はないし装着者もいないが、候補はカランか?

 

賢治(・・・・・・しばらくは、研究の内容と日常の記録か・・・うん?)

 

 

ー異世界記録 476日目ー

 

 あの日に起きたことを書くかどうか、最初は迷った。

 だが、書くことにした。

 私達は、今から3日前に私たちのダンジョンは襲撃を受けていた。

 それも、たった1人の襲撃者に。

 そのとてつもない戦闘力を監視していた私達はロイミュードの戦闘レベルを最大にまで引き上げた。

 襲撃者を迎撃するために、各階層に配置した進化体ロイミュード5体と、カランのデータをもとにして開発したオーガロイミュード、そしてドライブに変身したユーマ、カラン、そして私は装備を整え襲撃者の撃退に向かった。

 しかし、進化体ロイミュード5体は全滅し、オーガロイミュードは大破、カランは重症、ユーマのドライブも顔のマスクが半分破壊され素顔が露わになっている。

 私はその時は幸いにも軽症で済んでいた。

 しかし、襲撃者の声を聞いた途端、私は冷静ではいられなくなった。

 目の前にいる襲撃者はどう見ても『金色のドライブ』だった。

 その者の声を私が聞き間違うはずがない、奴は『蛮野天十郎』だった。

 しかも奴の声は、腰のベルトの部分から聞こえてきた。

 蛮野は自分を『アナザーゴルドドライブ』と名乗っていた。

 ロイミュード001、002、003によって絶命したはずの蛮野がどうしてこの世界にいるのか定かではないが、奴をこのまま野放しにいておけば、必ずこの世界に良くないことが起きる、それは確実だ。

 おそらく次の一撃が最後のチャンスになるだろう。

 私は銃弾に麻痺の効果のある弾丸を装填し、蛮野に向けて三発放った。

 その瞬間、蛮野の体は麻痺を起こし、動かなくなった。

 ユーマはその好きを逃さず、ドライブの必殺技を放った。

 だが、麻痺を振り切った蛮野にガードされる。

 ユーマはそれが危険な行為だということが分かっていて、必殺技をガードされている状態でシフトスピードプロトタイプのレバーを3回倒した。

 ドライブのコア・ドライビアがさらに回転数を増し、出力を上げる。

 だがそれでも蛮野は踏みとどまっている。

 ユーマはさらに3回レバーを倒しさらに出力を上げた、爆発するかもしれないリスクを背負って。

 そのおかげでユーマは無理やりガードを突き破ってアナザーゴルドドライブに必殺技がヒットし、蛮野は爆発四散した。

 コア・ドライビアの高出力にドライブのボディは耐えきれず、体の各部位から火花が散り、変身が強制解除された。

 アナザーゴルドドライブの方は本体が腰に巻いていたベルトだったようで、とどめを刺すことができなかった。

 だが、今の蛮野なら私でもとどめを刺すことは可能だろう思い、やつに近づいた。

 しかし蛮野は、おそらく転移魔法でも使ったのか、この場から姿を消していた。

 後に残ったのは、ボロボロになった仲間とともの作ったダンジョンと破壊されたロイミュード、そして命を失った仲間の死体が2人分、そこにあった。

 ダンジョンやロイミュードは最深部のマナタイト結晶のおかげで修復することができる。

 だが、2人の命はもう戻らない。

 私はロイミュード達の共に、2人の墓を最下層のマナタイト結晶の部屋に作ることにした。

 

 

ー異世界記録 500日目ー

 

 この記録もこれが最後になる。

 私はマッハドライバー・炎の開発に成功した。

 だが、私はこのドライバーを兼ねてより親交のあった、ダスティネス家に預けることにした。

 あの家の人間なら、安心して預けられる。

 私は損傷していたプロトトライドロンを修理し、新たに一体のロイミュードを作ることにした。

 これまでのロイミュード達の戦闘データ、そして先日の蛮野天十郎の襲撃の際のデータ、それらを元にして今私が作れる最高傑作を作った。

 そのロイミュードはNo.RRR。

 いつか此処に、仮面ライダーの力を持った誰かがやってくることを信じて、私の最高傑作を残す。

 仮面ライダーと共にあの悪魔を倒してもらうために。

 私は私で、蛮野の行方を追う。

 私では敵わないと思うが、自分にできることをしようと思う。

 でわ、この記録を見ている誰か、どうかよろしく頼む。

 

 異世界転生者  クリム・スタインベルト

 

 

賢治「・・・・・・ベルトさん。 もしまだ蛮野がこの世界で生きているのなら、俺達が必ず倒します。」

???「全工程完了まで、後3%・・・2%・・・1%・・・全工程完了、RRR起動します。」

 

 No.RRRと刻まれた棺桶から、蒸気が噴射し開き始めた。

 その後、棺の蓋が開き始めた。

 

ダクネス「!? 賢治。」

賢治「おお!!」

 

 棺桶の扉が完全に開き、その中から黒いボディスーツに身を包んだ・・・!!

 

賢治「何?!」

ダクネス「な! なななななななな!!!」

RRR「・・・皆さん、おはよう御座います。」

 

 そこから出て来たのは、なんとダクネスだった。

 

ダクネス「な・・・何者だお前は!!」

RRR「? 私はロイミュードNo.RRRです。」

賢治「え〜っと、その姿は?」

RRR「申し訳ありません。 勝手ながら、そちらの女性の姿をコピーさせていただきました。」

ダクネス「わ・・・私の姿?」

 

 そういえば、ロイミュードには対象者の姿と記憶、そして感情すらコピーする機能がある。

 だが、RRRは姿をコピーするだけで、記憶と感情のコピーはできない。

 その代わり、クリム・スタインベルトによって擬似的な人格を与えられたロイミュードらしい。

 ちなみに、本来の姿にも戻れるみたいで見せてもらったが、その姿はZZZや000と同じ姿だった。

 人間体の姿は、外見が髪を下ろしたダクネスだが、立居振る舞いはまるでロイミュード009、メディックみたいだ。

 正直に言って、かなり違和感がある。

 ダクネスの姉妹か従姉妹だと思えばまだ受け入れやすいか?

 

RRR「皆さんは、仮面ライダーなのですか?」

賢治「あぁ、俺は仮面ライダージオウだ。」

ダクネス「私は・・・一応仮面ライダー超・デットヒートドライブだ。」

RRR「? ジオウ? 超・デットヒートドライブ?」

  「・・・・・・私の記憶領域にはない仮面ライダーの名前ですね。」

 

 まぁ、どちらもベルトさんが死んだ後に生まれた仮面ライダーだから、知らないのも無理ないか。

 一応俺が知っている範囲内で、ドライブからジオウまでの仮面ライダーのことを話してあげた。

 RRRは興味深そうにその話を聞いていた。

 その時の彼女はまるで、ワクワクして目を輝かせる子供みたいだった。

 

RRR「そうですか、ドライブ意外にも沢山の仮面ライダーが生まれたのですね。」

賢治「あぁ、それでこれからどうする?」

RRR「どうとは?」

賢治「俺達の目的はこのダンジョンの攻略、そしてその後に控えている魔王軍幹部との戦いだ。」

  「さらに、最終的な目標は魔王討伐だ。 俺達と一緒に来るなら戦いの中に身を置くことになるぜ。」

RRR「・・・・・・私も同行します。」

  「魔王討伐、それは我がマイスタークリム・スタインベルトの悲願です。」

  「私にも戦う術はあります。 それに・・・」

ダクネス「それに?」

RRR「・・・・・・私には、もう一つ目的があります。」

賢治「・・・蛮野天十郎か?」

RRR「はい。」

  「あの男の生死を確認する必要があります。」

  「あの男が死んでいるのならそれで良いのです。 ですが万が一生きている様なら・・・私がユーマ様やカラン様の仇を打ちます。」

賢治「・・・分かった。 ただ、もし蛮野が生きていたら俺達も手伝うからな。」

RRR「え?」

 

 当然だ。

 ベルトさんの記録を見たというのもあるが、蛮野天十郎こいつだけは野放しにはできない。

 俺の中では歴代の仮面ライダーの悪役の中で、1番嫌いな奴なのだ。

 仮面ライダーの悪役にも何処か共感できる所があり、嫌いな悪役なんてそんなにいないが、蛮野天十郎だけは仮に『これまでの仮面ライダー作品の中で、1番嫌いな奴は誰ですか?』と聞かれたら、迷わず『蛮野天十郎(ゴルドドライブ)』と答えるだろう。

 ロイミュードに人間の悪感情を植えつけただけでなく、全人類をナンバリングし支配しようとした極悪人なのだから。

 

RRR「しかし、それでは皆さんを私の復讐に巻き込むことになってしまいます。」

ダクネス「蛮野という男がどういう男なのかは、賢治から聞いている。」

  「鬼畜外道・・・いや、悪魔と呼ぶに相応しい男ではないか。」

  「そのような奴を騎士として・・・いや、人として野放しにはできん。」

賢治「そういうことだ、俺達の目的は一致しているわけだ。」

  「だから、お前が後ろめたく感じる必要はないぜ。 いくらでも頼ってくれ。」

RRR「皆さん、有難う御座います。」

賢治「ところで。」

RRR「はい?」

賢治「お前はなんて呼べばいいんだ?」

RRR「? RRRですが?」

賢治「いや、俺たちみたいに、名前はあるのか?」

RRR「名前・・・いえ、ありません。」

賢治「じゃあ、・・・・・・そうだな、これからは『ルミ』って名乗ったらどうだ?」

RRR「ルミ?」

 

 No.RRR。

 Rが三つで『ルミ』。

 ・・・・・・少し安直だろうか?

 

RRR「ルミ・・・ルミ・・・ルミ・・・」

 

 本人は何やら同じことを呟いている。

 気に入らなかっただろうか?

 

ダクネス「・・・賢治、何やら考え込んでいる様だが?」

賢治「・・・その、嫌なら別のにするけど。」

RRR「・・・・・・いえ、その様なことは・・・ただ・・・」

賢治・ダクネス「ただ?」

RRR「・・・ルミ、私の名前・・・初めての贈り物・・・」

賢治・ダクネス「・・・・・・」

RRR「・・・有難う御座います。 ルミという名前、大事にします。」

賢治「おう!」

 

 どうやら気に入ってくれたようだ。

 それにしてもこの子、今すごくいい笑顔だったぞ。

 まるで花がさいたような、・・・イメージ的に桜が咲いたような。

 

ルミ「では、あなたの事を私のマスターとさせていただきます。」

  「よろしくお願いします、賢治様。」

賢治「・・・・・・え?!」

 

 なんか俺、マスター(ご主人様)にされてるけど。

 どうしようこれ?

 ・・・・・・仕方ないか。

 そう思うしかないじゃないか。

 その後、ルミはドライブピットの奥の部屋に入って行った。

 着替えてくるらしい。

 出て来た彼女の服は、どう見てもメイド服だった。

 ただ、普通のメイド服ではなく、戦闘に特化したメイド服だった。

 肩の部分と背中の部分は、肌が露出しており、スカートの丈も肘に届く位の長さで足はロングブーツの姿で出てきた。

 デザインは・・・結構可愛い系だな。

 

ルミ「それでは行きましょうか、マスター。」

賢治「お・・・おう。」

ダクネス「賢治、ニヤけてるぞ。」

賢治「うっ!」

 

 想像しなかったわけじゃない、こういう展開は。

 可愛いメイドさんにご主人様と呼ばれる事を。

 それから俺達は、ルミと一緒に最下層の10階層に来ていた。

 いまだに仲間と認識されているのか、それともルミと一緒にいるからなのか、襲ってくることはなかった。

 おかげで俺達は最下層の1番奥の部屋に到達した。

 そこで待っていたのは、赤いロイミュードだった。

 曲がった角に、胸の部分は心臓が剥き出しになっている。

 進化体ロイミュード、ハートロイミュードだ。

 

賢治「よし、やるか。」

ダクネス「あぁ!」

ルミ「お待ちください。」

賢治・ダクネス「え?」

ルミ「ここは私に任せてください。」

 

 どうやらルミはやる気の様だ。

 戦う術があると言っていたが、どうするのだろうか?

 

賢治「やれるのか? 同族だぞ。」

ルミ「・・・今の私は皆さんと志を同じくする仲間です。」

  「任せてください。」

賢治・ダクネス「・・・・・・」

 

 俺とダクネスは目を合わせた後、頷き。

 

賢治「じゃあ、任せるぜ。」

ダクネス「よろしく頼むぞ、ルミ。」

ルミ「はい、お任せください。」

 

 ルミは前に出て、ハートロイミュードに向き合い、その手にドライバーを持っていた。

 

賢治「! ドライブドライバー!」

 

 それを腰に巻き、シフトブレスを左手首につけた。

 そして、ベルトのイグニッションキーを回すと、ルミのもとに一台の黒いシフトカーがやってきた。

 

ルミ「行きますよ。」

 

 ルミはシフトカーの後部を回転させ、レバーに変えシフトブレスに差し込んだ。

 両手を胸の前でクロスさせ、右手をレバーにそえて。

 

ルミ「こうですね・・・変身!!」

 

 叫んだ瞬間、レバーを引き両手を真横に伸ばした。

 

 『ドライブ! type SPEED!』

 

 現れたのは黒いドライブだった。

 見た目はプロトドライブだが、胸に巻かれている剥き出しのタイヤ『アーキタイプギア』は黒ではなく、赤い色をしている。

 肩と両手首と両足首に赤いラインが入っている。

 このドライブは『仮面ライダー×仮面ライダー ゴースト&ドライブ 超MOVIE大戦ジェネシス』に登場した『仮面ライダーゼロドライブ』だ。

 

ルミ「さぁ、付き合っていただきますわ。」

 

 そう決め台詞を言って、ルミはハートロイミュードと戦い始めた。

 性能的にいえば、ゼロドライブではハートロイミュードには敵わないが、そこは感情というものが有るか無いかで変わってくる。

 性能差を覆すほどの戦いを、変身したルミはやってのけ、次第にハートロイミュードの方が追い詰められ始めた。

 

賢治「・・・よし。」

 

 俺はドライブウォッチから、マックスフレアを呼び出した。

 

賢治「頼むぞ。 言ってこい!」

 

 マックスフレアは空中に道路を作って、ルミの元へ走った。

 

ルミ「!? あなたは? 一緒に戦ってくれるのですか。」

  「では、行きましょう。」

 

 ルミはシフトスピードプロトを外し、ベルトのキーを回し、マックスフレアをレバーに変えブレスに差し込みレバーを引いた。

 

 『タイヤコウカン!』『マックスフレア!』

 

 タイヤ交換が発生し、アーキタイプギアが赤からオレンジに変化する。

 するとルミの攻撃に炎の力が追加された。

 

ルミ「次はこれです。」

 

 ルミはマックスフレアを3回操作した。

 

 『フレ! フレ! フレア!』

 

 すると炎の車輪が現れた。

 それを蹴り、ハートロイミュードにぶつけると、炎の竜巻が発生した。

 その竜巻に巻き込まれて、宙に巻き上げられた。

 その隙にルミは必殺技を発動した。

 

 『ヒッサーツ!』『フルスロットル! フレア!』

 

ルミ「ハアアアァァァ!!」

 

 ハートロイミュードに炎を纏ったドライブのライダーキックが炸裂した。

 ルミが着地し、ハートロイミュードは空中で爆発した。

 すると、俺達の前に宝箱が現れた。

 なんだか俺の前に現れた宝箱だけ、虹色に光っているんだが?

 

賢治「? 何これ?」

ダクネス「虹色の宝箱など、初めて見たな。」

 

 その時、変身を解除したルミが説明してくれた。

 この虹色の宝箱は、特にレアなものが入っているらしい。

 レアドロップという奴か。

 それぞれが目の前にある宝箱を開けると。

 ルミの宝箱の中には、剣と盾が入っていた。

 剣の方はどう見ても、劇場版仮面ライダードライブに出てきた『ダークドライブ』が使っていた『ブレイドガンナー』だ。

 盾の方は、小盾と呼べるものだった。

 だが見た目とは裏腹に、ついているスキルが破格だった。

 まず

 

名称 シールド・オブ・イージス

 ○破壊成長

  破壊されるたびに、性能が上昇する

  破壊されたら瞬時に修復される

 

 ○絶対防御

  一時的に耐久力を10倍に引き上げる

  1日に10回使用できる

 

 ○守護方陣

  使用者から半径3メートルの円状の防御結界を展開する

  発動から10秒間持続する

 

 こんなスキルだ。

 破壊成長ってチートすぎだろう。

 破壊されても強くなって修復されるんだから。

 そしてダクネスは、鎧と手袋が入っていた。

 手袋の方には何もなかったが、手の平の部分に丸いボタンみたいなものがあった。

 鎧の方は、白い色なのは、いつも着ている鎧と同じだが、真ん中に丸い噴射口みたいなものがある。

 スキルの方は

 

名称 バーストメイル

 ○破壊不可

  このスキルを持つ武具は破壊されない

 

 ○衝撃吸収

  鎧にうけた衝撃を吸収し、蓄積する

 

 ○エア・バースト

  吸収した衝撃を解放する

  蓄積した量によって威力が増す

 

 どうやら手袋のボタンみたいなものは、鎧と連動していると見た。

 鎧と手袋、二つでワンセットみたいだ。

 続いて俺の宝箱の中は、白とゴールドのラインが入ったフルプレートメイルと黒い片刃の剣だった。

 まず剣の方は

 

名称 機壊剣・ブレイズブレード

 ○破壊不可

 

 ○斬鉄

  武器の切れ味が増す

 

 ○魔力の刃

  武器に魔力を流すことで、魔法剣化させる

 

 破壊不可はありがたいな。

 破壊されないということは、メンテナンスの必要がないと言う事だ。

 そして鎧は

 

名称 聖鎧・クリアメイル

 ○破壊不可

 

 ○状態異常無効

  あらゆる状態異常系のスキルや魔法を無効にする

 

 ○精神攻撃耐性

  精神に干渉するあらゆる攻撃に対して耐性を得る

 

 剣も鎧も良い物ばかりだ。

 全員、宝箱から出てきた武器や鎧を身につけた。

 その後、1番奥の部屋にマナタイト結晶の部屋があり、そこにベルトさんの記録にあった通りユーマとかランの墓があった。

 俺達三人は、2人に祈りを捧げてから、外へ出る魔法陣でダンジョンを出た。

 そして、蛮野天十郎。

 あいつは今でも生きているのか?

 新たな目的を持って、俺達三人はアクセルの街に帰るのだった。

 

 




皆さん、第九話を見て頂いて有難う御座います。
自分でも思っていた通り、今回は19000字に近い長文になりました。
でも、今回はどうしてもベルトさんの事を書きたかったので、許してください。
これに懲りず、次回もよろしくお願いします。

それから、主人公の取得スキルを幾つか修正しました。
魔法は魔法と表記しました。
魔法と表記していないものはスキルです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十話 この何気ない日常に祝福を

皆さん、お待たせしました。
第十話の投稿です。
今回はワニのクエストからあの人との出会いです。
賢治とカズマが新しいウォッチを手に入れます。
今回もよろしくお願いします。

それでは、第十話をどうぞ。


 賢治達は新たな仲間、ロイミュードNo.RRR『ルミ』を連れて、アクセルの街に帰ってきた。

 帰り道の途中で、プロトトライドロンを置いてきた事を思い出し、取りに戻ろうと思ったが、ダクネスの持っているトライドロンキーのRのエンブレムに指を置くと、キーが起動しなんとプロトトライドロンが俺達の元に走ってきたのだ。

 あの地下からどうやって?

 と思ったが、深く考えないことにした。

 俺は普通免許のAT限定しか持っていないが、都合よくこのプロトトライドロン、ATだった。

 プロトトライドロンに乗ってアクセルまで戻った俺は、ブランクライドウォッチをプロトトライドロンに当てると、ブランクライドウォッチに吸い込まれ、新しいウォッチが生まれた。

 

 アクセルの冒険者ギルドに入ると、カズマ・めぐみん・エルシャ・アクアが揃っていた。

 だが、ルミがみんなの前に現れると、ギルド内にいる全ての人間が驚いていた。

 ルミがスカートの裾をそっと掴んで、お辞儀をして挨拶する。

 その淑女然とした仕草に、男女問わず『おぉ!』と声が上がった。

 自己紹介が終わると、全員ルミはダクネスと姿は瓜二つだが、別人であることが分かってくれた様だ。

 カズマ達には彼女が人間ではなく、機械生命体『ロイミュード』である事を話し、ダンジョン内での経緯を話した。

 するとカズマが

 

カズマ「賢治!! テメェェェェ!!!」

 

 と叫んで、胸ぐらを掴んできた。

 まぁ、なんとなく言いたいことはわかる。

 その時いつの間に後ろに回り込んだのか、ルミがカズマの後ろに回り込み

 

ルミ「その手をお離しください、これ以上の行為はマスターに対する敵対行為とみなし、排除します。」

カズマ「!!! ・・・・・・はい。」

 

 カズマの首を後ろから掴み、絶対零度の声でそう言った。

 カズマは顔を引き攣らせ、手を離した。

 一応彼女も冒険者登録をしてみたところ、ステータスがカードに表示されたのでそれをみてみると

 

 

 RUMI

 

 LV 1  職業(無し) SP 500

 

 体力  1120  火 50

 魔力  59   水 50

 力   104   土 50

 知力  60   風 50

 俊敏性 72   光 50

 器用さ 81   闇 50

 幸運  28

 

 スキル

 ・潜伏

 ・敵感知

 

 UQスキル

 ・従者(ツカエルモノ)

  スキルの所持者が主人と認めた者と魔力的な繋がりを得る

  主人の思考を断片的に読み取ることができる

  スキル所持者の思考を主人に伝えることができる

 

 EXスキル

 ・帰還契約(武器)

  所持している武器が手元を離れても持ち主の任意のタイミングで手元に戻ってくる

 ・操糸

  糸を操る

  『粘糸』『綱糸』の2種類糸を生成できる

 ・音波探知

  超音波を発生させ周囲を探る

 ・熱源感知

  熱を発する物を感知する

  視覚情報に映し出される

 

 ロイミュードだけあってレベル1でありながら結構ステータスが高かったな。

 体力なんてレベル1なのに1000超えている。

 スキルもUQスキルが一つ、EXスキルが四つある。

 

賢治「従者(ツカエルモノ)?」

  「・・・・・・試してみるか?」

 

 俺は心の中で、『水が飲みたい』と思ってみた。

 するとルミは、コップ一杯の水を持ってきてくれた。

 ルミ曰く、なんとなく俺が水が欲しいと思っている様な気がしたらしい。

 これは、メイドと言うか、秘書と言うか、優秀で羨ましい限りだこのイケジョ。

 

賢治(・・・・・・イケジョって、死語だっけ?)

 

 ちなみにルミは、自分の職業を『諜報士』という職業にした。

 本人は『メイド』という職業が無いことを不満に思っていた。

 

 そして、カズマとエルシャは再度『キールダンジョン』を攻略し、カズマはレベルが上がり、エルシャも同じくレベルが上がり、新しい装備も手に入ったようだ。

 上は、緑色のロングスリーブで前面にジッパーが付いた、ハイレグカットのボディスーツに肩と腹部に鋼のプレートがついている。

 その上に、茶色のレーザーマントを羽織っている。

 下は、茶色のツールベルトがついた黒のショートパンツに、両サイドに菱形の格子状に編まれた緑のリボンがついた黒のニーハイブーツを履いていた。

 両手は黒のハーフフィンガーグローブ、腰には、短剣と背中に細長い棒状の武器、スタッフと言う武器を背負っていた。

 能力透視で見てみると、どうやらボディスーツとショートパンツとグローブは三つでワンセットみたいだ。

 

 ○深緑の聖衣

  ・破壊鈍化

   このスキルを持つ武具は破壊されにくくなる

  ・深緑の加護

   水属性のエレメント耐性が25上昇する

   地属性のエレメント耐性が25上昇する

   

 ○陽光のマント

  ・破壊鈍化

  ・自然治癒強化

   自然治癒能力が強化される

 

 ○聖命のブーツ

  ・破壊鈍化

  ・大地の祝福

   両足が地についているとき治癒速度が上昇する

 

 ○鋭斬刀

  ・破壊鈍化

  ・鋭利化

   刃物の切れ味をよくする

 

 ○曙光のスタッフ

  ・破壊不可

  ・回復魔法階級上昇

   回復系の魔法を使用した時その回復魔法の階級を上昇させる

  ・深緑魔法『ガイア・ブレス』

   各エレメント耐性を50上昇させる

   各ステータスが25%上昇する

 

 どれもいい装備ばかりだ。

 武器のスタッフには『深緑魔法』という魔法が使えるみたいだ。

 ただ、ボディスーツに関しては・・・結構エロくないか?

 

 めぐみんとアクアは、予定通りデュラハンのことを調べてもらった。

 おかげで奴の事が色々わかった。

 これで後はデュラハンに挑むだけなのだが、一週間後まで残り1日のところで

 

アクア「お願い! このクエスト手伝って!」

 

 アクアのこの一言から、俺達は彼女が持ってきたクエストに挑むことになった。

 内容は、湖の浄化だ。

 どうやら、湖の水質が悪くなって『ブルータルアリゲーター』と言うワニ型のモンスターが住み着いてしまったようだ。

 だが、湖の浄化が成功すればモンスターは生息地を他に移すので、討伐はしなくていいらしい。

 報酬は300000エリス。

 ただ湖を浄化するだけなら簡単だが、浄化の最中にモンスターが寄ってくるかもしれないので、守って欲しいとのこと。

 まぁ、アクアも借金返済のために金を稼がないといけないので、必死なのだろう。

 

賢治「・・・はぁ、仕方ないな。」

カズマ「けど、そもそも浄化ってどうやるんだ?」

アクア「え? 私ほどの女神なら、水に触れているだけで浄化できるけど。」

賢治「あ! そういえばアクア女神だっけ。」

アクア「ちょ! 忘れないでよ!!」

カズマ「なるほど・・・なぁアクア、多分安全に浄化ができるいい方法があるんだが?」

アクア「え?」

 

 こうして俺達は、湖の浄化クエストを引き受けたのだ。

 カズマの言ういい方法とは、『アクアを檻に入れて湖に放り込む』と言う作戦である。

 これで安全な檻の中から湖の浄化ができるのだ。

 さらにここで、俺がアクアにビルドライドウォッチから取り出した『ジーニアスボトル』を渡した。

 ジーニアスボトルが持つ浄化能力なら、アクアの浄化能力の相乗効果でさらに早く浄化が終わるだろう。

 今の自分の状況をアクアは

 

アクア「・・・・・・私、今から売られる希少モンスターか、出汁を取られる紅茶のティーパックの気分なんだけど。」

 

 と言っていた。

 

 

ー湖周辺ー

 

 アクセルから依頼の場所の湖に到着した俺達は、檻に入ったアクアを湖に放り込んで、少し離れたところから見守っていた。

 ・・・・・・決して、使えない女神を湖に投棄しにきたわけではない。・・・決して!!

 こちらの読み通り、アクア本人の浄化能力にジーニアスボトルの浄化能力がプラスされて、アクア曰く

 『浄化は予想以上に進んでいるわよ!』 と言う言葉が返ってきた。

 しかし、やっぱり時間がかかるので俺とエルシャとめぐみんがアクアの様子を見て、残ったカズマとダクネスとルミは変身して戦闘訓練をしている。

 元がロイミュードなので、変身後がゼロドライブでも1人で2人を相手にしても余裕そうだ。

 その次にカズマの仮面ライダーゲイツだ。

 確かにレベルが上がって戦闘経験も積んできたカズマだが、対人戦闘に関しては、まだ今回を入れて二回しか経験していない。

 今カズマが使えるウォッチは『ガタック』『メテオ』『バロン』のウォッチだが、この分ならもう幾つか渡しておいてもよさそうだな。

 一方のダクネスは、1番苦戦している。

 超・デットヒートドライブは、ドライブ系の仮面ライダーの中で1番性能の低い仮面ライダーなのだ。

 未だに、ドライバーとキーへの戦闘データの蓄積が足りないのか、各部位の装甲がなく剥き出しの状態のままだ。

 いずれは、もっとマシになると思うが。

 俺達見守り組は、俺が初級魔法で沸かしたお湯に粉末コーヒーを入れてコーヒーブレイク中である。

 

賢治「・・・・・・おーいアクア! 水に浸かりっぱなしで大丈夫か〜? トイレ行きたくなったら言えよ〜!」

アクア「!! アークプリーストはトイレなんて行かないし!!」

 

 昔にアイドルのようなことを言い出す女神様。

 今度日帰りでは終わらないクエストを受けて、本当にトイレに行かないか確かめてみるか?

 

めぐみん「何か碌でもない事を考えていませんか?」

賢治「ハハハ、まさか。」

めぐみん「・・・・・・まぁ、いいです。」

 

 めぐみんは本当に鋭いな。

 さすが紅魔族といったところか。

 

ー2時間経過ー

 

 あれから2時間が経過した。

 カズマ達も訓練が一段落したので、一緒にコーヒーを飲んでまったりしている。

 心なしか、さっきより湖が綺麗になっているような気がする。

 

エルシャ「・・・ワニ、出てこないわね。」

ルミ「そうですね。 このまま何事もなく終わればいいのですけど。」

カズマ「ちょっ!! そんなフラグになりそうな台詞を!」

 

 確かに、こんな状況でルミみたいな台詞を言うと、決まってワニが出てきそうだが?

 そんなことを思っていると

 

アクア「アアアアアアアアアァァァ!!!」

「「「「「「!!?」」」」」」

 

 いきなりアクアが叫び出した。

 見てみると、アクアが入っている檻の周囲からワニのモンスター『ブルータルアリゲーター』が近寄ってきていた。

 自分達の住処を浄化という行為で荒らされたことで、怒っているようだ。

 

アクア「なんか出た!! なんか出てきたあああぁぁぁ!!!」

  「助けて!! みんな助けてえええぇぇぇ!!!」

 

 

ー10分後ー

 

 出てきたワニ達は、檻に噛み付いたり、体当たりしたりして檻を破壊しようとしている。

 中にいるアクアは、女神としての浄化能力だけでなく、一心不乱に浄化魔法を使いまくって、もう必死だった。

 

アクア「ピュリフィケーション! ピュリフィケーション! ピュリフィケーション!」

 

 だが、そうするとワニ達は余計に怒るわけで、さらに激しく檻に攻撃してきた。

 次第に檻から異音が響き始める。

 

アクア「ヒイイイィィィ!! ピュリフィケーション! ピュリフィケーション!」

賢治「・・・・・・おーいアクア! ギブアップなら言えよー!」

めぐみん「そうですよー! すぐに鎖を引っ張って助けますからー!」

 

 見ていてなんだか可哀想に見えてきたので、念のために助け舟を出す。

 だがアクアは

 

アクア「い・・・嫌よ!! ここで諦めたら、報酬がもらえないじゃない!」

 

 こう言って諦めようとしない。

 すると、檻にかじりついていたワニが、力を込めて顎を閉じると

 

 ギギギッ! メキメキ!

 

 鋼鉄製の格子が音を立てて曲がり始めたのだ。

 

アクア「イヤアアアァァァ!!! メキッっていった!! 今、檻から鳴っちゃいけない音がしたあああぁぁぁ!!」

 

 このままじゃアクアにまた余計なトラウマを植え付けてしまいそうだな。

 なんだかんだ言って、俺もアクアに甘いな。

 

賢治「はぁ、しょうがないな。」『ジカンギレード・ケン!』

 

 俺はジカンギレードを出して、ワニに向かって駆け出した。

 

カズマ「おい!? 賢治何するんだ?」

賢治「うん? ワニを討伐するんだよ。」

カズマ「いや、そんな事しなくても、湖が浄化されればあいつらは生息地を移すんだから、このままアクアに頑張ってもらおうぜ。」

 

 カズマの言うことも一理ある。けど

 

賢治「あいつらを討伐すれば、追加報酬が出るだろう。」

  「わざわざ逃すのも勿体ない。 それに」

カズマ「それに?」

賢治「・・・やっぱアクアが可哀想だろ? 助けてやろうぜ。」

カズマ「・・・はぁ、しょうがねぇーな。」

めぐみん「では、行きましょうか。」

エルシャ「そうね。」

ルミ「では、私のスキル操糸でワニ達を捕まえて引っ張りますので、その隙に仕留めてください。」

賢治「わかった! よろしくなルミ!」

ルミ「お任せください。」

 

 それから俺達は、ルミの作戦通り糸に絡め取られ、一本釣りのように宙に舞い上がったワニを1匹1匹確実に仕留めていった。

 

賢治「アクアどうだ? まだ頑張れそうか?」

アクア「ここまで来て引き下がれますか! やってやるわよ!」

カズマ「よ〜し、もう少し頑張れ! アリゲーターホイホイ。」

アクア「なっ!! 誰がアリゲーターホイホイよ!!」

 

 そんな、どこか余裕が感じられるやりとりをしながらワニを仕留めていくこと、約1時間。

 意外に表面の皮が硬く、仕留めるのに苦労したが、アクアに寄って来るワニは全て仕留めた。

 その数10匹。

 うち1匹はこの場でいただく予定だ。

 

賢治「・・・ふぅ、アクア大丈夫か?」

アクア「うぅぅ、なんとか。」

 

 ワニに群がられている間、アクアは本当によくやったと思う。

 時には上下左右に振り回されたり、時には絶叫マシーンみたいにグルングルン回転したり。

 ただ、浄化にはもう少しかかるみたいだ。

 

賢治「それじゃあ、もうしばらく頼むな。」

アクア「えぇ、後もう少しだもの。 頑張るわ。」

 

 その間に俺は、仕留めたワニ達を1匹だけ残してアイテムゲートの中に放り込んでおいた。

 このワニをどうするのかと言うと。

 

賢治「よし、早速料理するか。」

「「「「「「え?!」」」」」」

 

 まず血抜きをし、その次に皮を剥き、腹を捌き内臓を傷つけないように丁寧に切り落としてクリエイトウォーターで水洗いをした。

 次に肉を適当な大きさに切り出し、念のためにアクアに浄化魔法をかけてもらう。

 浄化魔法のおかげか、臭みも一緒に無くなってありがたかった。

 次に、肉をミンチ状になるまで切り刻み、塩と胡椒で軽く味付けをし、一センチくらいの厚さの円形に整形した。

 前回のダンジョンにあった調理器具を参考に作った、携帯コンロの上にフライパンを置き、油を少し垂らして肉を焼き始める。

 この時点でもうまそうだが、まだ出来上がりではない。

 人数分の肉を焼いている間に、アイテムゲートに予め仕舞っておいたパンと胡瓜のピクルス、スライスチーズとケチャップとレタスを出しておいた。

 胡瓜のピクルスはある可能性は感じていたが、スライスチーズがあったのはビックリだ。

 ここまできたら、何を作ろうとしているのかわかるはず。

 

カズマ「お・・・おい賢治、これって!」

アクア「もしかして! あれを作ってるの!?」

ダクネス「? 2人には何を作っているのかわかるのか?」

賢治「もうちょっと待ってな。 もうすぐだから。」

 

 肉が焼き上がると、香ばしい香りが広がり、食欲を掻き立ててくる。

 まず、パンを敷き、その上にレタスを敷き肉を乗せる、その上にケチャップをかけピクルスとチーズを乗せ、最後にパンを乗せて挟んだ。

 そう、俺が作ったのはワニの肉を使った『バーガー』だ。

 

賢治「お待たせ、『アリゲーターバーガー』の出来上がりだ。」

カズマ「やっぱりバーガーか!!」

アクア「この世界でまさかのジャンクフード!!」

ダクネス「これは、バーガーというのか?」

エルシャ ジュルッ 「すごく美味しそう。」

 

 バーガーを知っているカズマとアクアは、久しぶりにジャンクフードにテンションが上がっている。

 他のみんなは、初めてみるバーガーに興味深そうに凝視している。

 

賢治「じゃあ、食べるか。」

カズマ「おう!」

アクア「いただきまーす!」

 

 俺たち異世界転生組は迷うことなく同時にバーガーに齧り付いた。

 次に俺達から出てきたのは

 

「「「・・・うんま〜い!!!」」」

 

 声を大にしてそう叫んだ。

 

賢治「これだよこれ!!」

カズマ「最高だぜ! ワニの肉って美味いな!」

アクア「ふぅぅぅ・・・この味、久しく忘れていた味だわ。 これでコーラでもあったら最強ね!」

カズマ「おお! 解るぞ、その気持ち! やっぱバーガーにはコーラだよな。」

アクア「うんうん!!」

 

 久しぶりのバーガーの味は、懐かしい転生前の記憶を思い出させてくれる。

 俺達の食べっぷりを見て、他の皆んなは『ゴクリッ』と喉を鳴らして、一口齧ってみる。

 すると

 

「「「「・・・!!! うま〜〜い!!!」」」」

 

 と、俺達異世界転生組と同じように叫んだ。

 そこからは皆んな貪るようにバーガーに食らい付いていた。

 気がつくと、ワニは骨だけになっており、隅々まで残すことなく食べ切っていた。

 ちょうどその時、アクアの浄化も終わり、思っていたよりずっと早く済んだ。

 アクア本人の浄化能力もそうだが、ジーニアスボトルの浄化能力も半端ないな。

 目的は達成したので、アクアを檻から出してあげようとしたのだが

 

賢治「・・・あれ? 鍵がない?」

アクア「え?!」

 

 念のために他のみんなにも鍵を持っていないか聞いたが、誰も持っていなかった。

 どうやら無くしてしまったらしい。

 曲がった格子の隙間から出れないかアクアに聞いてみたが

 

賢治「・・・どうだ? 出れそうか?」

アクア「うぎぎぎぎぎぎっ・・・・だめ、頭は出るけど胸がつっかえちゃう。」

 

 他のところも試してみたが、やはり胸がつっかえてしまうみたいだ。

 仕方がないので、ギルドに戻るまで中にいてもらうことにした。

 ただ、1人だと辛いと思うから、入れそうな隙間を見つけて、俺も檻の中に入った。

 すると『だったら自分も』と言って、エルシャも入ってきた。

 珍しくアクアが申し訳なさそうにしていた。

 アクセルの街に着くまで退屈しないように、三人でトランプでカードゲームをしていた。

 おかげで檻の中だが、楽しく過ごせた。

 その時の俺は、アクセルの街である出会いが待っていることを、この時は知らなかった。

 

 

ー???sideー

 

 僕の名前は御剣響夜(ミツルギキョウヤ)。

 どこにでもいる普通の高校生だった。

 だがある日、自分でも訳がわからない内に命を落としてしまった。

 そんな時、美しい女神と出会い『魔剣グラム』を与えられこの世界に転生した。

 今は、ギルドの上級者クエストの『エンシャントドラゴンの討伐』を終えて、ギルドに報告をしにいっている途中である。

 

???「さすが私のキョウヤだよね。 エンシャンとドラゴンを一撃で倒しちゃうんだから。」

 

 今僕に話しかけてきたのは、パーティメンバーで盗賊のフィオ。

 

???「な!! ちょっと、誰があなたのものよ! キョウヤは私のモノなんだから!」

 

 そう言った彼女は、同じくパーティメンバーの戦士のクレメオ。

 慕ってくれるのは嬉しいが、事ある毎に喧嘩はしないでほしいな。

 そんな2人と一緒に日々冒険者として頑張っている。

 必ずこの世界を救ってみせる。

 女神様との約束だから。

 

キョウヤ「・・・・・・うん?」

 

 その時、僕の耳に声が聞こえてきた。

 

???「よ〜し、勝負よ!」

キョウヤ「この声は?」

 

 聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 声のする方向に走っていくと、そこには荷車に檻を乗せた数人の冒険者の姿があった。

 檻の中には男が1人と女が2人入っていた。

 だが、中にいる三人は楽しそうにトランプでゲームをしていた。

 そのうちの1人は、僕がよく知っている人だった。

 

キョウヤ「め・・・女神様あああぁぁぁ!!!」

 

 

ー賢治sideー

 

アクア「よ〜し、勝負よ!」

賢治「いいのか?」

アクア「女神に二言はないわ。」

エルシャ「じゃあ、私も。」

 

 お互い、手札の5枚のカードで勝負を決める。

 俺がキングのフォーカード

 エルシャがエースのスリーカード

 そしてアクアが

 

アクア「また負けたあああぁぁぁ!!」

 

 5のワンペアだった。

 これで一体何回勝負したかわからないが、俺とエルシャは僅差で俺が勝っている。

 ていうか、アクアの奴よくワンペアで勝てると思ったな。

 

めぐみん「そもそも、こういう運が絡むゲームでアクアが勝つことは難しいのでわ?」

カズマ「あ〜、あいつ絶望的に運が無かったっけ。」

 

 まぁ、幸運値1じゃまず無理だな。

 その時後ろから

 

???「女神様!! 女神様じゃないですか!!」

「「「「「「「?!」」」」」」」

 

 そう言って、俺たちが入っている檻の柵を素手で強引に広げた。

 

カズマ「な?!」

ダクネス「おい! この檻は鋼鉄製だぞ!」

 

 ・・・まぁ、それくらいなら俺でも出来るが、後でコイツには壊した檻の弁償をしてもらわないとな。

 

賢治「なぁ、あいつアクアの関係者じゃないのか? 女神って言ってたし。」

アクア「え〜っと・・・・・・とりあえず話を聞いてみるわ。」

 

 おい、まさか覚えていないのか?

 状況からコイツは転生者だろう。

 こっちの世界に送り込んでおいて、覚えていないってどういう事だよ。

 アクアは広がった檻の隙間から出ると、目の前の転生者に向き直って。

 

アクア「それで、私に何の用かしら? ・・・・・・ていうか、あんた誰?」

???「な! 僕ですよ。 御剣響夜です。」

  「貴女にこの魔剣グラムをいただき、この世界に転生した御剣響夜です。」

アクア「え?」

キョウヤ「え?!」

賢治・カズマ「え?」

 

 アクアの奴本気で覚えていないのか?

 

アクア「・・・・・・ちょっと待って。」

 

 そういうとアクアは、どこから取り出したのか、手のひらサイズの手帳を取り出しパラパラとめくっていく。

 

アクア「ミツルギ・・・ミツルギ・・・あ! あったわ。」

  「確かに私がこの世界に転生させているわね。 ごめんなさい、かなりの数の人を転生させたから、すっかり忘れていたわ。」

キョウヤ「あ〜、はい、そうですか。」

  「お久しぶりです、女神様。 ところで、女神様はどうして檻の中に?」

 

 出るに出られない理由があったのだが、とりあえず事情を説明した。

 

キョウヤ「・・・はあ!! 女神様をこの世界に連れてきただけでなく、檻に閉じ込めて湖につけた!!」

  「君は一体何を考えているのですか?!」

 

 と言って俺の胸ぐらを掴んできた。

 この世界にアクアを連れてきたのはカズマだが、今回のクエストに関してはアクアも了承していたから、文句を言われる謂れはないのだが。

 

アクア「ちょっ、私としてはこの世界に連れてこられたことはもうそんなに気にしてないし、毎日楽しい日々を過ごせているし、今回のクエストだって私が言い出した事だから。」

キョウヤ「女神様、この男にどう唆されたか知りませんが、あなたは女神ですよ。 それがこんな・・・」

 

 言いたい放題だな。

 それに、いったいいつ俺がアクアを唆したんだよ。

 俺達のこと何も知らないくせに。

 相手が年下とはいえ、カチンときたぞ。

 

キョウヤ「ちなみに女神様は、どこで寝泊まりをしているのですか?」

アクア「え? え〜っと、馬小屋で・・・」

キョウヤ「はあ!!」

 

 と、驚いた様子で、さらにキツく締めてきた。

 

アクア「! ちょっと」

ダクネス「おい貴様、いい加減にしろ。 初対面の人間相手に、失礼だぞ。」

 

 いい加減我慢ができなくなったのか、ダクネスが御剣の手を掴んで止めようとする。

 ダクネス達の方うをみた御剣は

 

キョウヤ「君達は・・・クルセイダーにアークウィザード、それに冒険者にドルイド、後諜報士か・・・なるほど、パーティメンバーには恵まれているようだね。

  「君はこんな優秀な人達がいるのに、女神様を馬小屋なんかに寝泊まりさせて、恥ずかしく思わないのかい。」

 

 ? コイツ今なんつった?

 『馬小屋なんか』って言ったか?

 コイツ本気か?

 そもそも稼ぎの少ない冒険者が馬小屋で生活するなんて、むしろ普通だ。

 宿で寝泊まりできるのは、一部の金を持っている冒険者だけだ。

 それがわからない辺り、コイツは転生特典で貰った魔剣グラムで大抵のことはなんとかなってきたのだろう。

 そんな苦労を知らない奴が、さっきみたいな事を言ったら、ほとんどの冒険者を敵に回すだろうな。

 

キョウヤ「君達、今日からはソードマスターの僕の元に来ないかい?」

  「高級な装備も買いよろえてあげるよ。」

 

 あまつさえ、今度はこっちのメンバーを勧誘し始めた。

 

「「「「「「・・・・・・」」」」」」

アクア「ねぇ、あの人ヤバくない? ナルシス入ってる系でヤバいんですけど。」

ダクネス「どうしよう、あの男は生理的に受け付けない。」

  「責めるよりも受ける方が得意な私だが、あの男だけは無性に殴ってやりたい。」

めぐみん「・・・最大出力で撃っていいですか?」

エルシャ「『魔剣の勇者』なんて言われているらしいけど、実際は大したことないのね。」

ルミ「問題外ですね。 私はマスターの側を離れる気はありません。」

カズマ「・・・そもそも魔剣持ちのチーターが、いまだにこの駆け出しの街にいる時点でたかが知れているな。」

 

 不評の嵐が吹いた。

 まぁ、当然だろう。

 仮に俺も誘われたとしても、願い下げだ。

 

賢治「と言う事で、全員一致でお前のところには行きたくないと言っているので、これで失礼する。」

 

 そう言ってその場から去ろうと踵を返すと

 

キョウヤ「! 待て!」

賢治「うん?」

 

 俺達の前に回り込んで、道を塞いできた。

 

賢治「まだ何か用か?」

キョウヤ「悪いが、女神様をこんな今日においては置けない。」

 

 コイツは本当にしつこいな。

 この後の展開はなんとなく想像つくが・・・

 

キョウヤ「僕と勝負だ!」

 

 やっぱりな。

 

キョウヤ「僕が勝ったら、女神様はこちらに引き渡してもらう。」

  「僕が負けたら、そっちの言う事をなんでも聞こうじゃないか。」

 

 勝手に話を進めやがって。

 そもそも、アクアを物扱いしている時点で許し難い。

 いっその事

 

???(殺してしまうか?)

賢治「うん?」

 

 今何か聞こえたぞ。

 

???(変身して戦え! そうすれば奴も身の程を弁えるだろう。)

 

 またか?

 これってもしかして?

 

賢治「・・・・・・」

  (それは駄目だ。 仮面ライダーの力は殺しのために使う物じゃない。)

  (人々の愛と平和を守るものだ。 お前は本当に殺した方がいいと思っているのか?)

???(・・・ふん!)

 

 そう聞くと、声は聞こえなくなった。

 改めて、返事をしようとすると

 

カズマ「賢治、こんな奴お前が相手する必要ないぜ。」

賢治「カズマ?」

カズマ「俺にやらせてくれ。」

 

 そう言ったカズマの顔は、怒りで満ちていた。

 特に止める理由がないので、ここは任せるか。

 そもそも俺が本気でやったら、本当に死ぬかも知れないし。

 

賢治「じゃあ、任せていいか?」

カズマ「おう!」

キョウヤ「僕は構わないよ。 仲間に任せてしまえば、恥をかくこともないからね。」

アクア「ムゥ! カズマ、私が許可するわ。 思いっきりヤッテおしまい!!」

カズマ「アラホラサッサー!! ってか。」

 

 タ○ムボカンかよ!

 懐かしいな。

 まぁ、カズマでも大丈夫だろう。

 職業が冒険者の彼だが、仮面ライダーになれる恩恵か、普通の冒険者に比べてステータスはかなり高めである。

 御剣も職業がソードマスターだけあって、高レベル・高ステータスだが、今のカズマとそんなに差はない。

 戦い方を工夫すれば、十分勝てる相手だ。

 そう思っている間に、御剣が自慢の魔剣グラムでカズマに斬りかかる。

 しかし、カズマはジカンザックスを片手に、余裕で回避している。

 回避され続け、焦って大振りの一撃を振り下ろした時、カズマがジカンザックで魔剣グラムを地面に叩きつけて抜けないようにする。

 

キョウヤ「何?! ・・・!!」

カズマ「勝負アリだな。」

 

 すかさず、カズマがジカンザックを御剣の首の数センチ前におく。

 誰から見ても勝負はカズマの勝ちなのだが

 

???「ひ・・・卑怯者!!」

「「「「「「「うん?」」」」」」」

???「卑怯者! 卑怯者! 卑怯者!!!」

賢治「はい?」

 

 御剣のパーティメンバーだろうか?

 戦士っぽい子と、盗賊っぽい子がカズマを卑怯者呼ばわりしてきた。

 どこからどう見ても、カズマの勝ちだと思うが?

 

キョウヤ「フィオ! クレメオ! 何を?!」

カズマ「あんた達コイツの仲間か?」

クレメオ「そうよ! この卑怯者!!」

賢治「は? どこが卑怯なんだよ?」

 

 さっきから2人の戦いを見ていたが、どこも卑怯なところはなかったと思うぞ。

 

フィオ「さっきから避けてばっかで、戦おうとしてないじゃない!!」

クレメオ「そうよ! 正々堂々と戦いなさいよ!!」

 

 そんなことでカズマを卑怯者呼ばわりか?

 コイツら命のやりとりをなんだと思っているんだ?

 

カズマ「あのな、そもそも魔剣持ちのソードマスターが、巷じゃ最弱職と呼ばれている冒険者相手に勝負を挑む方が卑怯じゃないか?」

ダクネス「それにこの男は、決着の付け方をろくに説明していなかった。」

  「客観的に見ても、カズマの方が勝者と見て間違い無いだろう。」

  「お前はどうなのだ? 『卑怯な手段で自分は負けた』と思っているのか?」

キョウヤ「・・・いや、彼は卑怯なことなんて一切していない。」

  「僕の負けだ。」

クレメオ・フィオ「キョウヤ!!」

 

 意外と潔いな。

 

カズマ「じゃあ、とりあえず・・・その魔剣でもいただこうか。」

キョウヤ「え!!」

カズマ「? なんだよ?」

キョウヤ「いや・・・その・・・すまい! できればこの魔剣以外で頼めないだろうか?」

 

 と言って頭を下げてきた。

 『言う事をなんでも聞く』と言っておいてそれかよ。

 

カズマ「けどお前、負けたななんでも言う事を聞くって言ってたよな。」

キョウヤ「うっ、それは・・・」

カズマ「なのに後になって『魔剣以外で』なんて筋が通らないじゃないか?」

キョウヤ「うぅ・・・」

 

 ぐうの音もでないとはこの事だな。

 ・・・いや、ちょっと待てよ。

 

賢治「カズマ、とりあえず魔剣はやめて、『檻の修理費を払う』にしとけ。」

カズマ「え? なんでだよ?」

賢治「明日にはあいつがこの街にやってくるはずだ、その時に戦力は必要だ。」

  「そいつは魔剣がないと正直カズマより弱いからな。」

カズマ「え?!」

キョウヤ「はぁ!」

 

 そう、実は俺は能力透視であいつのステータスを見ていた。

 確かにレベルやステータスの数値自体はカズマより上だが、あいつの持っているスキルは、『魔剣使いLv1』と『鑑定』の二つしか持っていないのだ。

 正直、こんなステータスで勇者を名乗るなんて馬鹿馬鹿しい。

 それを伝えると

 

カズマ「お前! そんなんで自分を勇者とか言ってんのかよ!」

キョウヤ「いや、しかし・・・これまでは、特に問題は無かったんだが?」

カズマ「巫山戯んじゃねぇよ!! 腐っても勇者を名乗るならもっと沢山スキルを覚えておけよ!」

  「どうせお前、その魔剣グラムとやらで今までゴリ押しでやってきたんだろ!!」

  「そんなんでこれから先、どうやって魔王軍幹部や魔王と戦おうってんだ?」

キョウヤ「そ・・・それは・・・」

カズマ「いいか、どんな困難にも恐れず立ち向かい、偉業を成し遂げる者。」

  「それが勇者なんだよ! 今のお前は果たして勇気ある者なのかよ!!」

キョウヤ「!!」

 

 カズマのやつも言うようになったもんだ。

 そしてどうやら、今のでカズマが使えるウォッチが増えたようだ。

 これまでのカズマでは使えなかったから預かっていたが、そのウォッチが光だして色がつき始めた。

 それは、砂時計のような形のウォッチだった。

 

 

 それから俺達は、御剣達と一緒にギルドに行き、壊した檻の弁償代200000エリスを払わせ、クエスト終了の報告を済ませた。

 御剣は、さっきのカズマの言葉を聞いてから、妙に思い詰めていた。

 仲間の女の子2人が話しかけるが、ほとんど反応がない。

 俺は一応、明日はこの街に居るように言ったが、彼はそのままギルドを出て行った。

 まぁ、あとは御剣次第だろう。

 あと、カズマにゲイツリバイブウォッチを渡しておいた。

 これでカズマも、ゲイツリバイブに変身することができる。

 夜になって解散したあと、宿屋に戻った俺はあの時の声が気になり心の中で語りかけてみた。

 

賢治(・・・なぁ、もしかして、お前は俺か?)

???(・・・あぁ、そうだ。 俺はお前だ。)

 

 やっぱりもう1人の俺か。

 ジオウⅡを手にした時の総悟もミラーワールドで裏総悟に会ってたし。

 

裏賢治(お前は本当に甘いな、あの時魔剣グラムを取り上げておけばいいのにな。)

賢治(あの時言った通りさ、御剣にも戦力として頑張ってもらうためだ。)

 

 裏の俺が言った事は、考えなかったわけじゃない。

 正直に言うと、どっちも本心だ。

 

裏賢治(はっ! どれだけ策を用意しても、結局全部無駄かも知れないぞ。)

  (お前は知っているはずだ、そもそも人間は自分勝手な生き物だってことがな。)

  (前の世界にもいただろう、どいつもこいつも周りを見ず、自分のことしか考えていない。)

  (こっちの世界でも同じだ。 そんな奴らのために俺達が何かをする必要があるのか?)

 

 その通りだ。

 前の世界でも、いくら自分がいい事をしても、理不尽な理由でそれをなかったことにされたこともある。

 困っているのに助けてくれなかった事もある。

 世界は決して自分に優しくは無い。

 上手くいかない事ばかりが起こる。

 けど、それでも・・・

 

賢治(・・・・・・それでも、俺は信じたい。)

  (世界には、決してそんな人ばかりじゃ無いってことを、生きていればきっといいことがあるって。)

  (だからお前も、俺と一緒に生きよう。)

裏賢治(・・・・・・ふん、後悔するなよ。)

  (お前がこの世界でどう生きるのか、お前の中から見させてもらうぜ。)

 

 

 それ以降は、もう1人の俺の声は聞こえて来なかった。

 目を開けると、俺の手の中にはジオウⅡのライドウォッチが握られていた。

 今までは、D’9スロットにはめ込むグリッターウィンドウが黒一色だったが、今は金色の色がついている。

 これで、ジオウⅡが使えるようになった。

 あとは、明日を待つだけだ。

 ・・・来るとは思うが、一応来なかったらこっちから出向かないっとな。

 

 

 

ー翌日ー

 

 俺達は、ギルドに集まっていた。

 軽く常時も済ませ、いつでも動けるようにしていた。

 すると

 

ルナ「緊急!! 緊急!! 冒険者の皆さんは大至急正門前に集まってください。」

  「特に、霧島賢治さん御一行は、大至急でお願いします。」

 

 どうやら来たようだ。

 正門前には前回と同じように冒険者たちが集まっていた。

 俺はあえて姿が見えないように、後ろの方から様子を伺うことにした。

 みんなの目線の先には、あの時のデュラハンの姿があった。

 馬に跨っているデュラハンは、今回も体をプルプル振るわせていた。

 

デュラハン「・・・何故・・・・・・何故城に来ないのだ?!!」

  「この・・・人でなしどもがああああああああああああああぁぁぁ!!!」

 

 このセリフを聞いた時、ルミを除く俺たちのパーティ全員は

 

((((((・・・・・・ほんとに言ったよ。))))))

 

 と思っていた。

 

 

 




いかがだったでしょうか。
御剣やそのパーティの女の子たちについては、あんまり知識がないので、雑な感じがしますが今回も読んでくれてありがとうございます。
6月9日にPSO2:NGSがサービス開始されるので、楽しみです。

それではまた次回


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

各キャラ 現在のステータス

第十一話に行く前に各仮面ライダー達の
今現在のステータスを先に投稿します


○霧島 賢治

 

 Lv33

 職業 ルーンパラディン   SP 7918

 

 体力  34858(1742900) 火 150(750)

 魔力  11080(554000) 水 150(750)

 力    6260(313000) 土 150(750)

 知力   6156(307800) 風 150(750)

 俊敏性  5563(278150) 光 150(750)

 器用さ  6480(324000) 闇 150(750)

 幸運   595(29750)

 

 *()内は変身時の数値

 

 ○獲得スキル

 

 UQスキル

 ・光と闇を受け入れる者

  『アナザーライダーには元のライダーの力が有効』この概念を無視することができる

  ジオウⅡライドウォッチが使用可能になる

 ・変身

  仮面ライダージオウへの変身

 ・平成ライダー

  平成ライダーの全ての能力と武器を使用可能

  変身前でもある程度使用可能

 ・能力透視

  自分または相手のステータスを見る事ができる

 ・情報並列操作(マルチタスク)

  虚偽情報・探知妨害・発見探知、その他各種情報操作を行う事が出来る

 

 EXスキル

 ・全知全能(アカシック・レコード)

  現存する全てのスキルを職業関係なく習得可能

  習得に必要なスキルポイントは3倍になる

  EXスキルに進化したことで、脳内で対話が可能になる

  直接見たり、スキル等で確認したスキルを習得可能になる

  追加機能の統合を使えば、獲得しているスキルを統合することで、新しいスキルを獲得することができる

 ・オールエレメントスラッシュLvMax

  全ての属性を込めた強烈な一撃を放つ

  レベルが上がると威力上昇

 ・ホーリーフレアLvMax

  神聖な炎による光属性の神聖魔法

  アンデットや悪魔に対して有効

  レベルが上がると威力上昇

 ・千里眼・改

  千里眼と暗視を統合したことで、両方のスキルをいつでも同時に発動できるようになった。

 ・宝物庫(アイテムゲート)

  大型空間と保存を統合したことで、いつでも大型空間が発動でき、そこに収納した物品には常に保存が発動するようになった。

 

 スキル

 ・全エレメント耐性上昇Lv Max

  全てのエレメントの耐性を10あげる

  Lv Maxで50あげる

 ・跳躍

  通常のジャンプよりもさらに高くジャンプできる

 ・体捌きLv Max

  力・俊敏性・器用さを5あげる

  Lv Maxで25あげる

 ・敵感知

  敵の位置を感知することができる

  魔力を上乗せすると感知範囲が広がる

 ・狙撃

  飛び道具(弓などの射撃武器)を使うとき、より遠くから狙えるようになる

  幸運の数値が高いほど命中率が上昇する

 ・魔力譲渡

  触れた対象に魔力を渡すことができる

 ・初級治癒魔法

  ヒール

 ・初級魔法

  ティンダー

  クリエイト・ウォーター

  ウィンドブレス

  クリエイト・アース

  フラッシュ

  スモッグ

 ・中級魔法

  ファイヤーボール

  メイルシュトローム

  ブレイドウィンド

  ロックランス

  ライトニング

  デモンズランス

 ・上級魔法

  ファイヤレーザー

  タイダルウェーブ

  トルネード

  エアプレッシャー

  ライト・オブ・セイバー

  アイアンメイデン

 ・獅子の心臓(ライオンズ・ハート)

  恐怖に対し、完全耐性を一時的に得る

 ・伝言(メッセージ)

  相手と連絡を取り合う

  念話ではないので、会話は口に出す必要がある

 ・対象発見(ロケート・オブジェクト)

  特定の物体、または人物の探査ができる

 ・水晶の映像(クリスタル・ヴィデオ)

  魔法で得た視界(千里眼等)を空中に浮かべた水晶に映し出し、他者にも見せることができる

 ・方向探知

  視界の悪い場所でも方角がわかる様になる

 ・魔法最大強化(マキシマイズ)

  魔法の威力を最大にまで引き上げる魔法

 ・魔法貫通強化(ペネトレート)

  魔法の貫通効果を上昇させる魔法

  術者より対象者の能力が高いと無効化される場合がある

 ・魔法階級上昇(ブーステッド)

  一時的に魔法の階級を上げる魔法

  初級魔法を中級魔法に

  中級魔法を上級魔法に

  上級魔法を極大魔法に

  上昇させる

 ・二重魔法(ダブル・マジック)

  魔法を二重で発動する魔法

 ・道具創造(クリエイト・マジックアイテム)

  武具や魔道具の他に、日用品等も作り出すことができる魔法

  魔法の組み合わせでより上位のものを作り出せる

 ・知覚強化

  感覚器官を一時的に強化する

 ・斬撃

  通常の斬撃より強力な斬撃を繰り出す

 ・剣術

  剣に属する武器を使用する際、器用さ・俊敏性の数値が10%上昇する

 

 装備・装備スキル

 ○機壊剣・ブレイズブレード

  ・破壊不可

   このスキルを持つ武具は破壊されない

  ・斬鉄

   武器の切れ味が増す

  ・魔力の刃

   武器に魔力を流すことで、魔法剣化させる

 

 ○聖鎧・クリアメイル

  ・破壊不可

  ・状態異常無効

   あらゆる状態異常系のスキルや魔法を無効にする

  ・精神攻撃耐性

   精神に干渉するあらゆる攻撃に対して耐性を得る

 

 ○佐藤 和真

 

 Lv32

 職業 冒険者    SP 351

 

 体力   402(20100)  火 25(125)

 魔力   359(17950)  水 30(150)

 力    479(23950)  土 25(125)

 知力   343(17150)  風 35(175)

 俊敏性  213(10650)  光 25(125)

 器用さ  406(20300)  闇 35(175)

 幸運   1086(54300)

 

 *()内は変身時の数値(スキルの効果は含まない)

 

 ○獲得スキル

 

 UQスキル

 ・救世主の片鱗

  『アナザーライダーには元のライダーの力が有効』この概念を無視することができる

  仮面ライダージオウに対する場合、ステータスが上昇する(上昇率は現時点では2.5倍)

  ゲイツリバイブライドウォッチが使用可能になる

 ・変身

  仮面ライダーゲイツへの変身

 

 スキル

 ・敵感知

  敵の位置を感知することができる

  魔力を上乗せすると感知範囲が広がる

 ・潜伏Lv3

  気配を遮断する

  誰かに触れた状態で発動すると、その人物にも潜伏がかかる

  潜伏中に誰かに触れると解除される

  生き物には有効だが、アンデットには効果が薄い

  レベルが上がると気配遮断効果が上がる

 ・窃盗(スティール)

  対象の持ち物を一つだけランダムに奪う

  成功率は使用者の幸運地に依存する

 ・初級魔法

  ティンダー

  クリエイト・ウォーター

  ウィンドブレス

  クリエイト・アース

  フラッシュ

  スモッグ

 ・初級凍結魔法

  フリーズ

 ・戦斧の心得Lv1

  斧系の武器を使用する際、力・俊敏性・器用さの数値を1%上昇させる

  レベルが上がると上昇率が上がる

 ・弓の心得Lv1

  弓系の武器を使用する際、力・俊敏性・器用さの数値を1%上昇させる

 

 装備・装備スキル

 ○解除の籠手

  ・解除の心得

   『罠感知』『罠解除』『鍵開け』のスキルが内包されている

  ・罠感知

   どこに罠があるかを感知することができる

  ・罠解除

   罠を解除することができる

   複雑な罠は解除に時間がかかる

  ・鍵開け

   鍵を開けることができる

   複雑な鍵は開けるのに時間がかかる

 

 ○感知の腕輪

  ・感知の心得

   『熱源感知』『音源感知』のスキルが内包されている

  ・熱源感知

   熱を発するものを感知する

   視覚情報に映し出される

  ・音源感知

   音を発するものを感知する

   視覚情報に映し出される

 

 ○韋駄天のグリーブ

  ・韋駄天

   『超加速』『神速』のスキルが内包されている

  ・超加速

   一分間俊敏性を50%上昇させる

   一度使用すると30分後に再使用できる

  ・神速

   30秒間俊敏性を120%上昇させる

   一度使用すると1時間後に再使用できる

 

 ○めぐみん

 

 Lv37

 職業 アークウィザード   SP 472

 

 体力  1252(62600)  火 90(450)

 魔力  38834(1941700) 水 45(225)

 力   902(45100)   土 40(200)

 知力  3120(156000)  風 75(375)

 俊敏性 2114(105700)  光 50(250)

 器用さ 1006(50300)  闇 65(325)

 幸運  31(1550)

 

*()内は変身時の数値(スキルの効果は含まない)

 

 UQスキル

 ・変身

  仮面ライダーウォズへの変身

 

 EXスキル

 ・魔導の知識

  魔力が5%上昇する

  知力が5%上昇する

  魔法使用時の魔力消費量が減る

 

 スキル

 ・爆裂魔法

  エクスプロージョン

 ・高速詠唱Lv2

  普段より早く詠唱が完了する

 ・爆裂魔法威力上昇Lv3

  爆裂魔法の威力が上がる

  レベルが上がると威力が上昇する

 

 ○ダクネス

 

 Lv13

 職業 クルセイダー   SP 102

 

 体力  2258(33870) 火 75(150)

 魔力  92(1380)   水 60(120)

 力   657(9855)  土 65(130)

 知力  122(1830)  風 70(140)

 俊敏性 118(1770)  光 90(180)

 器用さ 16(240)   闇 50(100)

 幸運  32(480)

 

 *()内は変身時の数値(スキルの効果は含まない)

 

 UQスキル

 ・変身(仮)

  仮面ライダー超・デッドヒートドライブへの変身

 ・天性の不器用

  基本、武器を使った攻撃は命中しない

  稀に命中する

  投擲武器、拳による攻撃にこのスキルは適応されない

 

 EXスキル

 ・堅硬

  体力が10%上昇する

 ・逆境

  ピンチになると体力が上昇する

  上昇率は5%〜20%上昇する

 

 スキル

 ・囮(デコイ)

  発動すると敵意を持つ者の意識を引き寄せる

 ・守護の心得Lv1

  体力を1%上昇する

 ・物理攻撃耐性Lv2

  物理攻撃に対して、耐性を得る

  レベルが上がると、耐性が上昇する

 ・魔法攻撃耐性Lv2

  魔法攻撃に対して、耐性を得る

  レベルが上がると、耐性が上昇する

 

 装備・装備スキル

 ○バーストメイル

  ・破壊不可

   このスキルを持つ武具は破壊されない

  ・衝撃吸収

   鎧にうけて衝撃を吸収し、蓄積する

  ・エア・バースト

   吸収した衝撃を解放する

   蓄積した衝撃の量によって威力がます

 

 ○エルシャ

 

 Lv25

 職業 ドルイド   SP 247

 

 体力  285(14250) 火 50(250)

 魔力  327(16350) 水 100(500)

 力   185(9250)  土 105(525)

 知力  243(12150) 風 45(225)

 俊敏性 375(18750) 光 50(250)

 器用さ 243(12150) 闇 50(250)

 幸運  42(2100)

 

 *()内は変身時の数値(エレメントの数値のみ、スキルが反映)

 

 UQスキル

 ・変身

  仮面ライダー斬月への変身

 

 スキル

 ・ネイチャーコントロール

  自然に働きかけ、植物を操る

  籠める魔力により、操作できる植物も変わる

 ・初級酸魔法

  アシッドアロー

 ・初級治癒魔法

  ヒール

 ・ポーション生成Lv3

  薬草から、各種ポーションが生成可能

  レベルが上がると生成できるポーションの種類が増える

  ○生成可能ポーション

   ・ポーション

   ・ハイ・ポーション(上位回復薬)

   ・マナポーション

   ・ハイ・マナポーション(上位魔力回復薬)

   ・解毒ポーション

 

 装備・装備スキル

 ○深緑の聖衣

  ・破壊鈍化

   このスキルを持つ武具は破壊されにくくなる

  ・深緑の加護

   水属性のエレメント耐性が25上昇する

   土属性のエレメント耐性が25上昇する

 

 ○陽光のマント

  ・破壊鈍化

  ・自然治癒強化

   自然治癒能力が強化される

 

 ○聖命のブーツ

  ・破壊鈍化

  ・大地の祝福

   両足が地についている時、治癒速度が上昇する

 

 ○鋭斬刀

  ・破壊鈍化

  ・鋭利化

   刃物の切れ味をよくする

 

 ○曙光のスタッフ

  ・破壊不可

  ・回復魔法階級上昇

   回復系の魔法を使用した時、その回復魔法の階級を一段階上昇させる

  ・深緑魔法『ガイア・ブレス』

   各エレメント耐性を50上昇させる

   各ステータスが25%上昇する

 

 ○ルミ

 

 Lv8

 職業 諜報士   SP 18

 

 体力  2223(55575) 火 50(100)

 魔力  92(2300)   水 50(100)

 力   193(4825)  土 50(100)

 知力  86(2150)   風 50(100)

 俊敏性 123(3075)  光 50(100)

 器用さ 140(3500)  闇 50(100)

 幸運  33(825)

 

 *()内は変身時の数値(スキルの効果は含まない)

 

 UQスキル

 ・変身

  仮面ライダーゼロドライブへの変身

 ・従者(ツカエルモノ)

  スキルの所持者が主人と認めた者と魔力的な繋がりを得る

  主人の思考を断片的に読み取ることができる

  スキル所持者の思考を主人に伝えることができる

 

 EXスキル

 ・帰還契約(武器)

  所持している武器が手元を離れても、持ち主の任意のタイミングで手元に戻ってくる

 ・操糸

  糸を操る

  『粘糸』『綱糸』の二種類の糸を生成できる

 ・音波感知

  音波を発生させ、周囲を探る

 ・熱源感知

 

 スキル

 ・潜伏Lv3

 ・敵感知

 

 装備・装備スキル

 ○シールド・オブ・イージス

  ・破壊成長

   破壊されるたびに、性能が上昇する

   破壊されたら瞬時に修復される

  ・絶対防御

   一時的に体力を10倍に引き上げる

   1日に10回使用できる

  ・守護方陣

   使用者から半径3メートルの円状の防御結界を展開する

   発動から10秒間持続する




現在はこんな感じです
第十一話は現在執筆中です
もう少し待ってください
できるだけ早く投稿します


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十一話 この魔王軍幹部との戦いに祝福を 前編

みなさんお待たせしました。
第十一話です。
今回は前後編にしました。
そっちの方がキリが良さそうな気がしました。
それでは第十一話をどうぞ。


ーアクセルの街 正門前ー

 

デュラハン「・・・っ、なぜ・・・なぜ城に来ないのだ!!」

  「この・・・人でなしどもがああああああああああ!!!」

 

 魔王軍お幹部は、大層お怒りのようだ。

 俺は少々出遅れたせいで、冒険者達の壁に阻まれて、その光景を後ろから見ていた。

 ちょうど、あのデュラハンから見えない位置にいた。

 

カズマ「え〜っと、なんかお怒りみたいだけど・・・なんで?」

デュラハン「はぁ!! 何を抜かすか白々しい!!」ガシン!!

 

 そう叫んで、手に持っていた自分の頭を地面に叩きつた。

 うまい具合に真上に跳ね返ったので、楽にキャッチ出来たみたいだが、大丈夫なのかあれ?

 すると、デュラハンから凄まじい量の魔力が放たれた。

 

デュラハン「よく聞けヘナチョコ冒険者ども、我が名はベルディア。」

  「俺は今、とてつもなく頭にきているのだ。」

  「貴様らには、仲間の死に報いようという気概はないのか?!」

カズマ「ハイ??」

 

 仲間の死? ・・・俺の事だろうか?

 

ベルディア「生前はこれでも、真っ当な騎士のつもりだった。」

  「その俺から言わせれば・・・勇敢にもこの俺と戦ったあの冒険者・・・戦士の鏡のようなあの者の死を無駄にするとは、いったいどういう了見だ!!」

賢治「・・・うわ〜」

 

 なんだか出て行きにくい雰囲気になってる。

 しかし、ここで出て行かなかったらまたややこしいことになりそうだ。

 これは出ていくしかないだろう。

 俺は冒険者達を押しのけて、あのデュラハン・・・ベルディアの前に出た。

 

ベルディア「!!???」

 

 その瞬間、ベルディアは今自分の見ているものが信じられないと言わんばかりに、目を見開いて硬直していた。

 

賢治「・・・・・・いや〜その、悪かったな、生きていて。」

ベルディア「・・・は・・・・・・へっ?」

  「・・・・・・あんるええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇ??!!!」

 

 ベルディアのその絶叫の後に、わずかに静寂がその場を支配した。

 時間で言うならほんの数秒だが、この場にいる誰もがそれ以上の時間がかかっていたような気がしたに違いない。

 その静寂を破ったのが、うちのパーティのシリアスブレイカー

 

アクア「なになに、あのデュラハンずっと私達を待ち続けてたの?」

  「帰った後あっさり呪い解かれちゃった事にも気づかず?」

  「・・・プークスクスッ! ウケるんですけど! 超ウケるんですけど!!」

 

 そう言ってベルディアを煽り始める。

 なんでこの駄女神は他人を煽る事に関してはこんなに才能があるんだろうか?

 

ベルディア「・・・き、貴様巫山戯るなよ! 俺がその気になれば、この街の住人を皆殺しにする事など容易い事なのだぞ!」

  「言葉にはもっと注意するのだな。」

アクア「あぁん! アンデットのくせに生意気よ!!」

 

 そう言ってアクアは右手をベルディアに向けて

 

アクア「『ターン・アンデット』!」

 

 浄化魔法を発動した。

 アンデットなどの不死者に対して抜群の効果を発揮する魔法だが、果たして

 

ベルディア「駆け出しプリーストの浄化魔法が通じるとおもギヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァ!!!」

 

 浄化魔法が当たると、ベルディアが跨っていた馬は光の粒子となって浄化され、当のベルディアは地面をのたうち回っていた。

 さすがは女神、初級の浄化魔法がこんなに強力だとは。

 しかし、ベルディア本人は未だ健在だった。

 

アクア「な!! どうしようカズマ、効かないんだけど?」

カズマ「いや、効いてたと思うぞ。」

  「ギヤアアアアアア!! って言ってたし。」

 

 その通り、効いてはいると思う。

 だが、ベルディアはアンデットのくせに光のエレメントの耐性が95とかなり高い。

 おそらくスキルの『魔光の加護』ってやつの効果なのだろう。

 ディラハンならみんな持っているのか?

 

ベルディア「グゥッ! ゼェ! ゼェ! 一応言っておく、俺は魔王様より神聖魔法に対する耐性を獲得しているのだ。」

  「よって、神聖魔法に類する浄化魔法も俺にはほとんど効果がないのだ。」

  「・・・・・・のだが。 ・・・そこのアークプリーストといい、この前の男といいお前達本当に駆け出しか?」

  「何度も聞くが、駆け出しが集まる所なんだろ? この街は?!」

 

 一概にそうとは言えないんだよな。

 現在このアクセルの街には、最大でレベル45、平均してレベル25くらい冒険者ばかりなんだ。

 レアなスキルや武具を持っていれば、相手が魔王軍の幹部クラスでもなんとかなるだろう。

 

ベルディア「まぁいい、わざわざこの俺が相手をするまでもない。」

  「『眷属召喚』! アンデットナイト達よ、こいつらに地獄を見せてやれ。」

 

 スキルの『眷属召喚』を発動し、眷属のアンデットを召喚し、俺達の相手をさせようとするベルディア。

 うん? これって・・・

 

カズマ「あ!! あいつ、アクアの魔法が予想以上に効いたからビビったんだぜ。」

アクア コクコク!

キョウヤ「さすがです、アクア様。」

 

 キョウヤのやついたんだな。

 カズマの言う通り、アクアの浄化魔法を受けてビビったんだろう。

 そうじゃなくても、アクアのことを警戒してるんだろうな。

 

ベルディア「ち・・・違うわ!! いきなりボスが戦ってどうする!」

  「まずは、雑魚から」

アクア「『セイクリッド・ターン・アンデット』!」

ベルディア「ひやあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

  「ああ!! ああぁ!! 目が! 目がぁ!!」

 

 ベルディアが台詞を言い終わる前に、アクアが今度はさらに上級の浄化魔法を打ち込んだ。

 だが、それでも先ほどと同じように地面をのたうち回る程度に効いているようだ。

 唯一の違いは、体から黒い煙を出している程度である。

 

アクア「ど・・・どうしようカズマ、私の浄化魔法がちっとも効かないの!?」

カズマ「・・・効いてたと思うぞ、ひやあああぁぁぁ!! って言ってたし。」

 

 ・・・・・・なんだろう、このコントみたいなの。

 いまいち緊張感に欠ける。

 魔王軍の幹部がこの街のやって来ていると言うのに・・・

 

ベルディア「ブハァ!! ・・・もういい! 街の住人を、皆殺しにする。」

 

 その言葉をきっかけに、アンデットナイトの大群がこちらに向かって一斉に走ってきた。

 ある冒険者は、プリーストを呼びに行ったり、または教会や道具屋から『聖水』持ってこようと、街の中へ戻ろうとするものがいた。

 だが、そこでおかしなことが起きた。

 

ベルディア「はっはっはっ! さぁ、お前達の絶望の叫びを、この俺に・・・・・・うん?」

冒険者達「「「「「「・・・うん?」」」」」」

アクア「・・・うん?」

 

 アンデットナイト達がある一点に向かって走ってきている。

 その先にあるのは?

 

アクア「・・・え? ・・・・・・え!! いやあああああああああぁぁぁ!!!」

 

 アクアが走り出した。

 そう、アンデットナイト達はもれなく全員アクアを標的に迫ってきたのだ。

 何でだろうか?

 

アクア「何で私ばかり狙われるの!!? 私女神なのに! 日頃の行いも良いはずなのに!!」

エルシャ「どの口が言うのかしら?」

ダクネス「あぁ!! ずるい! 私も日頃の行いは良い筈なのにどうして?」

カズマ「あぁ〜、アンデットって迷える魂だし・・・本能で女神に救いを求めているんじゃね?」

「「「「「「・・・あぁ〜」」」」」」

 

 なるほど、そう言うことか。

 しかし、これはこれでチャンスではないか?

 

賢治「めぐみん、あの集団に爆裂魔法を打ち込めないか?」

めぐみん「いやぁ〜、あそこまで纏まりが無いと撃ち漏らしが出ますよ。」

  「それに、アクアが確実に巻き込まれますし・・・」

 

 確かにそうだ。

 ならどうにかしてアクアとアンデットナイト達を引き離さないと。

 

賢治「よし、めぐみんはいつでも爆裂魔法を撃てるようにしておいてくれ。」

  「撃つタイミングはカズマに任せる。」

カズマ「え?! 俺か?」

賢治「大丈夫、カズマなら俺のやることの意図がわかるはずだ。」

  「他のみんなは巻き込まれないように下がっていてくれ。」

  「ちょっと行ってくる。」

 

 俺は1人前に出て、アクアに声をかけた。

 

賢治「アクアこっちだ! ついて来い!」

アクア「え? なになに!!」

 

 俺とアクアは隣り合って走り出した。

 俺は走り出したばかりだからまだ全然余裕があるが、アクアはどうだろうか?

 

賢治「アクア! どうだ? まだ走れるか?」

アクア「はぁ、はぁ、む・・・無理、もう足が・・・」

賢治「・・・しょうがないな。」

 

 俺はアクアの手を掴んでこっちに引き寄せ、抱き抱えた。

 お姫様抱っこで。

 

アクア「え!? ええぇ!! 賢治、ちょっと・・・」

賢治「良いから抱えられてろ、大丈夫、守ってやるから!」

アクア「ーーーーーーーーーー!!!」ズッキューン!!

  「・・・もう・・・もうもう!!」ポカポカポカ

賢治「イテッ、イテッ! ちょ・・・おとなしくしてろ。」

 

 その瞬間、アクアの顔がまるでトマトみたいに真っ赤になり、俺の側頭部を叩いてきた。

 まぁ、実際は痛く無いのだが。

 その状態で俺は、アンデットナイトを引き連れて、ベルディアに向かって走った。

 

 

ーカズマsideー

 

 賢治のやつが、爆裂魔法を撃つタイミングは俺に任せると言った後、アクアと一緒に走り出した。

 俺なら賢治の意図がわかると言っていたが、何をするつもりだろうか?

 そんな時、何と賢治がアクアをお姫様抱っこをしているのが見えた。

 相手がアクアとはいえ、男として憧れるよな美少女をお姫様抱っこで抱えるて言うのは。

 ・・・アクアだけど

 すると賢治はその状態で、ベルディアの方に向かって走り出した。

 たくさんのアンデットナイトを引き連れて。

 

カズマ「なるほど、そう言うことか。」

めぐみん「私も分かりました、なんて言う絶好のシチュエーションなんでしょう。」

キョウヤ「しかし、女神様を危険に晒すのはいかがなものかと・・・」

カズマ「まぁ、賢治が一緒だし大丈夫だって。」

 

 すると、賢治が高くジャンプした。

 おそらくスキル『跳躍』を使ったのだろう。

 今がチャンスだな。

 

カズマ「よし、めぐみん今だー!!」

めぐみん「了解です!」

  『我が名はめぐみん。』

  『紅魔族随一の魔法の使い手にして、爆裂魔法を操りし者。』

  『我が力、見るがいい!』

  『エクスプロージョン!』

 

 めぐみんの詠唱が完了すると、お馴染みの虹色の光と星が輝き始める。

 またしても詠唱の内容が違うが、本当に詠唱が必要なのだろうか?

 賢治達はその間に十分な距離をとっているので、巻き込まれることはないだろう。

 爆裂魔法がベルディアと衝突した瞬間、ものすごい爆音と爆風が押し寄せてきて。

 

ベルディア「イギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァ!!!」

 

 と言う叫び声が、爆裂魔法の爆音の中にわずかに聞こえた。

 

 

ー賢治sideー

 

 ベルディアの数メートル手前でスキル『跳躍』を発動し、ベルディアを飛び越え距離を取る。

 次の瞬間、めぐみんの爆裂魔法が炸裂した。

 何度見てもすごい魔法だ。 人類最強の攻撃魔法というだけはある。

 しかも、めぐみんもレベルアップし、魔力がヤバいくらいに上がっているから正直、最初に見た時より格段に威力が上昇している。

 

めぐみん「クックックッ、我が最強の爆裂魔法を前に、誰1人として声も出ないようですね。」

  「・・・はぁ・・・快・感・です。」

 

 めぐみんが自分で自分の体を抱きしめてそう言うと

 

冒険者達「「「「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォ!!!!!」」」」」」

 

 と、後ろに控えていた冒険者達が歓声をあげた。

 

冒険者1「やるじゃないか! 頭のおかしい子!」

冒険者2「名前と頭がおかしいだけで、やる時はやるじゃないか!」

冒険者3「見直したぜ! 頭のおかしい子!」

めぐみん「・・・」ムカッ#

 

 一部の冒険者から、『頭のおかしい子』呼ばわりされたのがムカついたのか、めぐみんは今度は彼らに向かって爆裂魔法を放つ準備をする。

 

カズマ「おい! 何やってんだお前。」

 

 カズマが必死になってめぐみんを止めて、詠唱を中断させる。

 

めぐみん「離してください、今私のことを『頭のおかしい子』と行った輩を吹き飛ばさないと気がすみません。」

カズマ「よせよせ!!」

 

 再度止めようとするカズマ、そんなやり取りを少し離れてみていた俺は、不意に軽く耳を引っ張られた。

 誰がそんな事をしているのかと言うと、アクアだった。

 

賢治「? 何だアクア?」

アクア「あ・・・あのね・・・そろそろ降ろしてくれても・・・良いけど・・・」//////

 

 よくよく考えたら、今の俺はアクアをお姫様抱っこしたままだった。

 さっきは真っ赤になっていたが、今はほんのり頬に赤みが出ているほどだった。

 

賢治「おっと! そうだな、そろそろ降ろすな。」

アクア「う・・・うん。」

 

 俺はそっとアクアを下ろしてやった。

 その時

 

 ガシャン!

 

 と言う音が聞こえた。

 音がした方を見ると、そっちはめぐみんの爆裂魔法で巨大なクレーターができた方向だった。

 そこから出て来た者は

 

ベルディア「ふっふっふ、ふっはっはっはっはっは!!!」

賢治「何!?」

カズマ「嘘だろ?!」

 

 そこに居たのは、ベルディアだった。

 爆裂魔法の直撃を受けたのに、鎧に凹みがないどころか、かすり傷ひとつついていない。

 

めぐみん「そ・・・そんな・・・」

 

 流石のめぐみんもショックを受けている。

 人類最高の攻撃魔法、爆裂魔法はあらゆる存在にダメージを与えることのできる魔法なのだ。

 それが例えアンデットであろうとゴーストの類であったとしても。

 現にベルディアの眷属のアンデットナイトは影も形もなく全滅している。

 

ベルディア「面白い・・・面白い、面白いぞ!! まさか本当に配下を全滅させられるとは思っていなかった。」

  「良いだろう、ここから先は・・・・・・この俺自ら、貴様らの相手をしてやろう。」

 

 大剣を肩に担ぎ、ベルディアは何事もなかった様にその足で立っていた。

 だがやはり疑問に思う、なぜあの規模の爆裂魔法を受けて無事でいられるのか。

 

ベルディア「不思議そうな顔をしているな、先ほども言ったが、俺は魔王様より耐性を獲得しているが、それが『神聖魔法だけ』だといつ誰が言った?」

カズマ「!? まさか?」

ベルディア「爆裂魔法とはいえ、その大元は火属性の魔法、ならば火属性の耐性を獲得しているこの俺には爆裂魔法などほんの少し熱いだけの爆風が吹き荒れるだけの魔法に過ぎんわ!!」

めぐみん「!!!」ヘタッ

 

 めぐみんは相当ショックだったのか、その場で膝から崩れ落ちてしまった。

 最強の爆裂魔法の使い手を自称するめぐみんにとって、今のベルディアの言葉は彼女の全てを否定するに等しい。

 正直に言って、今すぐにでもあいつの左手に持っている顔を奪い取って、手頃な岩に向かって蹴り飛ばしてやりたい。

 

ベルディア「・・・まぁ、もう一つ別の力も使ったがな。」

賢治「?」(別の力?)

 

 ベルディアの言う『別の力』とは何だろう?

 ・・・まぁいい、こっちは何も無策で戦うわけじゃないんだ。

 

戦士風の冒険者「ビビる必要はねぇ、こっちには『魔剣の勇者』と『仮面ライダー』がいるんだ!」

リーゼントの冒険者「あぁ! 魔王軍の幹部だろうと何だろうと関係ねぇ!」

キョウヤ「? カメンライダー?」

仮面の冒険者「一度にかかれば死角ができる! やっちまえええぇぇぇぇぇぇ!!」

賢治「あ! ちょっと待て!!」

 

 俺の静止も聞かず、数名の冒険者がベルディアに向かって行く。

 それが無謀な行いだと言うことが分からないのだろうか?

 

ベルディア「・・・余程死にたいらしいな。」バッ!

賢治・カズマ「?!」

 

 ベルディアが自分の首を自分の真上に向かって投げた。

 ちょうど自分の顔が地面を向くように、絶妙な力加減で。

 すると、ベルディアの顔・・・いや、正確には目に魔力が集まっているのが見えた。

 一瞬分からなかったが、すぐにその意図を察したカズマが

 

カズマ「みんな戻れえええええぇぇぇ!!!」

 

 そう叫ぶが、遅かった。

 ベルディアは、冒険者達の攻撃を最小限の動きで全て躱し

 

ベルディア「『剛・斬撃』!」ブオン!!

 

 自分の周囲にいる全ての冒険者達を、剣の一振りでその命を刈り取ったのだ。

 そして、落ちてきた自分の首をキャッチすると

 

ベルディア「・・・・・・次は誰だ?」

 

 と言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

賢治「おっと、その結末は御免だな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チッ チッ チッ チッ チッ   ゴーーーーーーーン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベルディア「・・・まぁ、もう一つ別の力も使ったがな。」

  「・・・・・・うん?」

カズマ「え?!」

エルシャ「え! え!! 何?」

戦士風の冒険者「お・・・俺達・・・」

リーゼントの冒険者「あ・・・あぁ・・・」

仮面の冒険者「い・・・生きてる?」

 

 そう、ついさっき死んだはずの冒険者達が生きている。

 それどころか、さっきの出来事がまるでなかったことになっている。

 全員で夢でも見ていた気分だろう。

 俺以外は。

 

ベルディア「ば・・・馬鹿な? さっきの感触は確かに本物だったぞ。」

  「一体何が起こったのだ?」

賢治「悪いな。」

ベルディア「何? まさか、貴様が何かしたのか?!」

 

 確かに俺が原因だが、正確に言うと俺の持っているオーマジオウライドウォッチの力だ。

 

賢治「俺さ、バッドエンドって好きじゃないんだ。」

  「だから、時間を少し巻き戻させてもらったぜ。」

ベルディア「何?! 時間を巻き戻しただと!!」

ルミ「ですから、先ほど斬られた方々は無事なのですね。」

賢治「そう言うことだ。」

 

 ジオウⅡライドウォッチの能力は、『未来視』と『時間遡行』。

 『未来視』は文字通り、未来を見る力だ。

 『時間遡行』は一度起きてしまった未来を改変する力。

 だが、今使った力は『時間逆行』。 時間を巻き戻す力だ。

 オーマジオウライドウォッチには、時間を操作する力がある。

 ジオウⅡライドウォッチには出来ない力を持っている。

 今の俺だと、3分ほどしか巻き戻せないけど、十分チートな能力だ。

 

ベルディア「馬鹿を言うな! たかが冒険者如きに、時間を操る能力などあってたまるか!!」

賢治「そう言われてもな・・・実際巻き戻っているわけだけど?」

ベルディア「くっ!!」

 

 さて、ここから先は同じ轍を踏まない様にしないと。

 まずは・・・

 

ベルディア「まぁいい、例え何度時間を戻そうと、結末は変わらぬ!!」

賢治「それはどうかな? 皆んな! 水だあぁ!!」

  「『クリエイト・ウォーター』!」

カズマ「『クリエイト・ウォーター』!」

冒険者達「「「「「『クリエイト・ウォーター』!」」」」」

ベルディア「何!!?」

 

 俺やカズマ、そして他のウィザードやアークウィザード職の冒険者達がベルディアに向かって、水属性の魔法を一斉に放った。

 なぜこんな事をするのかというと、ベルディアの弱点が水だからだ。

 あいつのこれまでの出現記録をめぐみんに確認したら、ベルディアは必ず晴れた日にしか姿を見せていないのだ。

 王国軍がどんなに劣勢でも、雨の降る日は前戦に出てきた記録がないのだ。

 そして極め付けは、ベルディアのステータスだ。

 以前ベルディアのステータスを覗き見した時、水のエレメントだけが耐性0だった。

 これらのことを踏まえて、ベルディアは水が弱点であることが確実になったのだ。

 だから今こうやって水の魔法を当てようとしている訳だが・・・

 

ベルディア「おっと! うわっと! き・・・貴様らおわっ!」

カズマ「当たれ! 当たれ!」

 

 ベルディアも必死になって避けているため、なかなか当たらない。

 何とかしてあいつの動きを止めないと・・・

 

賢治「『クリエイト・ウォーター』! ・・・あっ!」

  「カズマ! 氷結魔法だ!」

カズマ「! おう! 『フリーズ』!」

 

 カズマが氷結魔法を唱えると、水で濡れた地面が凍りつき始めた。

 それを見ていた他の冒険者も氷結魔法を唱えると、ものすごい勢いでベルディアの足から膝までが凍りついた。

 

ベルディア「な! ぬかった!!」

賢治「よし! アクア、頼む!」

アクア「わかったわ!」

  『この世に住まう全ての眷属達よ、水の女神アクアの名において命じる!』

  『今こそ集い、その力を我が前に示せ!』

  『セイクリッド・クリエイト・ウォーター!』

 

 アクアが呪文を詠唱すると、周囲の水がアクアの元に集まる。

 ベルディアの頭上高くに、水の塊が出現し俺達が使っていた『クリエイト・ウォーター』より強力な水が降ってきた。

 しかもアクアは以前、『自分が出す水はとても清い』と言っていた。

 アクアが紅茶を浄化してしまい、その紅茶が『聖水』になっていたことがあったのだ。

 つまり、アクアの出す水は『聖水』と同じ効果があるということだ。

 

ベルディア「!!! ああああああああ水があああああブボッ!!!」

 

 アクアの魔法がベルディアを飲み込んだ。

 だがここで問題が発生した。

 

賢治「うん? ・・・げっ!!」

エルシャ「ちょっ! アクア止めて!!」

カズマ「もういい!! もういいって!!!」

冒険者達「「「「「あああああああああああああああああああ!!!」」」」」

 

 そう、アクアが水を大量に召喚し過ぎて、こっちにまで水が洪水の様に迫ってきたのだ。

 そのせいで、アクセルの街の外壁にまで被害が及んだ。

 そして、冒険者達はもれなく全員水浸しになったのだ。

 聖水だから体に害はないが、金槌な人間がいたら溺れること間違いなしだ。

 しばらくすると水が引き、ベルディアが・・・

 

ベルディア「グゥ・・・・・・何を考えているのだ?」

  「馬鹿なのか? 大馬鹿なのか貴様!!」

 

 と、アクアに物申していた。

 だが明らかに弱体化していた。

 さっきまでの強大な威圧感は無くなっている。

 ステータスを確認すると、こんな感じだ。

 

BERUDHIA

 

 LV76

 種族 アンデット  職種 魔王軍幹部

 

 体力  30856  火 90

 魔力  5326  水  0

 力   10830  土 40

 知力  4484  風 45

 俊敏性 4522  光 95

 器用さ 3982  闇 35

 幸運  278

 

 ステータスが幸運以外全て半減している。

 今の状態のベルディアなら、何とかなりそうだ。

 

賢治「カズマ!!」

カズマ「おう!!」

 

 俺とカズマはお互いの、ジオウとゲイツのライドウォッチを銃モードと弓モードのジカンギレードとジカンザックのスロットにセットした。

 

 『フィニッシュタイム!』『ジオウ! スレスレシューティング!』

 『フィニッシュタイム!』『ゲイツ! ギワギワシュート!』

 

 ジカンギレードとジカンザックにチャージされていたエネルギーがベルディアに向かって放たれた。

 

ベルディア「!!?」

 

 ベルディアはとっさに自身の大剣で防御する。

 だが、弱体化している今の状態では、まともに受けることも出来なかったようで、エネルギーの爆発と同時に後方に吹き飛ばされた。

ベルディア「ぐおおおおおおおおお!!!」ドサッ!!

剣士風の冒険者「いける! いけるぞ!」

戦士風の冒険者「距離をとって囲むんだ! 近づきすぎるなよ!」

魔法使い風の冒険者「遠距離から攻撃よ!」

 

 膝をついているベルディアに、遠距離から攻撃できるアーチャーやウィザード職の冒険者達が、矢や魔法の雨が襲いかかる。

 その集中砲火をモロに浴びたベルディアは、苦悶の声をあげている。

 上手く行けばこのまま倒せるんじゃないかと思っていたが・・・

 

ベルディア「グゥゥゥ・・・があああああああ!!!」

 

 ベルディアが魔力を放出し、集中砲火を中断させた。

 やはり魔王軍お幹部、そう簡単にはいかないようだ。

 

ベルディア「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・仕方あるまい、使う気はなかったがここまで俺を追い詰めたお前達に、本当の絶望というものを見せてやろう。」

 

 そういうとベルディアは懐から黒に金色の装飾が施された丸い物体を出した。

 

賢治「な! あれは?!」

ベルディア「魔王様!! この力、使わせて頂きます!!」カチッ!

 

 『レンゲル! キング!』

 

 そう、ベルディアは『仮面ライダーレンゲル』のアナザーウォッチ、それも『キングフォーム』のウォッチを起動し、それを自分の体に押し付けた。

 すると、ベルディアの体が黒いオーラで包まれ、次第に違う姿に変貌していった。

 まず、ベルディアの着ていた鎧は全体的に金色になり、両腕は3倍ほど大きくなり左手には鎖のついた棘付きの鉄球が、右手には先端部分がトランプのクローバーの形をした『レンゲルラウザー』に似た武器をそれぞれ持っており、両腕には黄金のガントレットが付いている。

 兜はさっきまではベルディア本人の目が見えていたが、今は全てが黄金の兜で覆われバッタの様な赤い両眼が付き口の部分は歯がむき出しになている。

 胸の鎧の真ん中にクローバの形のレリーフが刻まれ、腰には歪な形をした『レンゲルバックル』が着いていた。

 今ここに、『仮面ライダーレンゲル・キングフォーム』のアナザーライダーが出現した。

 

賢治「マジか!!?」

ベルディア「覚悟しろ、冒険者ども!!」

  「俺がこの姿になったからには、貴様らに待つのは、『死』という絶望だけだ!!

 

 

 

 




というわけで、今回はここまでです。
ベルディアはどのアナザーライダーにしようか迷いましたが、レンゲルしかもキングフォームのアナザーライダーにしました。
アンデット繋がりで。
仮面ライダーセイバーももう少しで終わってしまいそうですね。
タッセルさんご愁傷様です。
デザストが無銘剣虚無で変身した時はびっくりしました。
刃王剣クロスセイバー出てきた時、無銘剣虚無はどこに行った? と思っていましたが。
さて、次回はベルディアとの決着です。
ある人も登場します。
では、また次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十二話 この魔王軍幹部との戦いに祝福を 後編

皆さんお待たせしました。

本当は8月の内に投稿したかったんですけど仕事が忙しくてこのタイミングになってしまいました。
オリジナルのストーリーを考えるって大変です。
本職の人は凄いですね。

ベルディアとの戦いはこの回で決着です。
今回はあの人をぶっこんでみました。

第12話もよろしくお願いします。


ベルディア「覚悟しろ、冒険者ども!!」

  「俺がこの姿になったからには、貴様らに待つのは、『死』という絶望だけだ!!」

 

 アナザーレンゲルとなったベルディアはレンゲルラウザーを地面に突き刺し、右手に4枚のカードを召喚した。

 

ベルディア「目覚めよ! アンデッド達よ!」

 

 『REMOTE(リモート)!』

 

 ベルディアが4枚のカードを空中にばら撒くと、レンゲルラウザーの『スラッシュ・リーダー』に『リモートテイピア』のラウズカードをスラッシュし、その力を4枚のカードに向けて放った。

 すると、カードに封印されていたアンデッドが解放され姿を現した。

 出てきたのは

 『ジェリーフィッシュアンデッド』

 『スキッドアンデッド』

 『エレファントアンデッド』

 『タイガーアンデッド』

 仮面ライダーレンゲルが所持しているラウズカードの7・9・J・Qのアンデッドだ。

 

賢治「これは、やるしかないな。」

カズマ「おう!」

ダクネス「めぐみん、大丈夫か?」

めぐみん「・・・はい! 勿論です。」

エルシャ「出番ね!」

ルミ「アクア様と御剣様は下がっていてください。 ここから先は私達が。」

アクア「えぇ、お願いね。 ほら、貴方も下がる!」

キョウヤ「え? しかし女神様?」

アクア「いいから来る!!」

 

 アクアに引っ張られながら、御剣もアクセルの門の前まで下がる。

 それを見ていた他の冒険者も、何も言わなくても後退していく。

 

 『ジオウ!』『ブレイド!』

 『ゲイツ!』『ギャレン!』

 『ウォズ!』『アクション!』

 『メロン!』

 『シグナルバイク・シフトカー!』

 

 俺とカズマとめぐみん、そしてエルシャがそれぞれ変身アイテムを起動すると、腰にベルトが装着される。

 ウォッチをドライバーに差し込むと、俺の後ろには大きなアナログ時計が出現し、その周りに大小様々な大きさのアナログ時計が反時計回りに回転している。

 カズマの背後には大きなデジタル時計が現れ、俺と同じように大小様々なデジタル時計が半時計わまりに回っている。

 めぐみんの背後には緑色のスマートウォッチが現れ、そこからめぐみんを囲むように光のラインが走る。

 エルシャがメロンのロックシードをドライバーにセットすると法螺貝の音がなり、エルシャの頭上にメロンアームズが出現する。

 ダクネスとルミはドライブドライバーとマッハドライバーを取り出して装着すると、ダクネスはトライドロンキーをドライバーに差し込み、ルミはドライバーのイグニッションキーを回し、シフトブレスにシフトカーを差し込む。

 そして、俺達は同時に

 

「「「「「「変身!」」」」」」

 

 と、叫んだ。

 

 『ライダータイム!』『仮面ライダージオウ!』『アーマータイム! Tern up! ブレイド!』

 『ライダータイム!』『仮面ライダーゲイツ!』『アーマータイム! Tern up! ギャレン!』

 『投影! フューチャータイム!』『スゴイ! ジダイ! ミライ! 仮面ライダーウォズ! ウォズ!』

 『ソイヤ! メロンアームズ! 天・下・御・免!』

 『ライダー! 超・デッドヒート!」

 『ドライブ! type SPEED!』

 

 俺とカズマにはブレイドとギャレンのライダーアーマーが出現し、俺たちの体に装着される。

 俺にはまず、胸に赤いライの入った銀のブレストアーマー、肩にブレイドラウザーのオープントレイを展開した状態のアーマーが左右の肩に、そして『ブレイド』と描かれた赤いインジケーションアイが付いた仮面ライダーブレイドに似たヘッドアーマーが装着された。

 カズマはそのギャレンバージョンでほとんど違いはない。

 敢えて言うなら、ブレストアーマーのライの色とインジケーションアイの色が緑色だと言うことだけだ。

 変身が完了すると、俺達はアンデッドとベルディアに向けて走り出した。

 

 

ーキョウヤsideー

 

 他の冒険者達が後退していく中、賢治達六人は前に出て、まるでベルトの様なものを腰に巻くと

 

「「「「「「変身!」」」」」」

 

 と叫ぶと、彼らの姿が一変した。

 全身を鎧で覆った戦士の様な姿に。

 鎧武者みたいな姿もあるが。

 

キョウヤ「あの、女神様、彼らのあの姿は?」

アクア「え? 貴方仮面ライダーを知らないの? 賢治やカズマと同じ世界からきたのに?」

キョウヤ「いや・・・名前は知ってますけど、見たことがないので。」

アクア「あらそうなの? 男の子なのに?」

キョウヤ「あんまり興味がなかったので。」

 

 仮面ライダーとか、スーパー戦隊とか、そう言う特撮番組は小学校の頃から見なくなってしまった。

 なぜかその頃になると、途端に興味が薄れていったのだ。

 2010年に『仮面ライダーW』と言う仮面ライダーが放送開始するというCMを見た時は、『仮面ライダーってまだやってるんだな?』と思ったが、結局見なかった。

 そんな架空の存在が、今目の前に六人も存在した。

 女神様が自分を退がらせたと言うことは、僕では勝てないと言うことなのだろう。

 そんな僕とは違い、彼ら『仮面ライダー』にはその力があると言うことだ。

 

キョウヤ「・・・・・・くっ!」

 

 僕があの戦いの場に立てないことが悔しかった。

 

キョウヤ(・・・何が『魔剣の勇者』だ・・・・・・僕は・・・どうしてこんなに・・・)

 

 自分の力の無さが情けなかった。

 

 

ーエルシャsideー

 

 私は今、魔王軍幹部ベルディアが召喚したアンデッドという怪物と戦っている。

 アンデッドと言っても、ゾンビとかとは違うみたいだ。

 私は4体のうちの一体、右手首に三つの棘付きの鉄球をつけ、左手に黒いハンマーを持ったアンデッド、後にエレファントアンデッドと言うアンデッドと戦っている。

 小手調に無双セイバーのガンモードの銃弾を放つが、全く効いていない。

 ならば、無双セイバーで斬りつけてみたが、やはり硬い。

 無双セイバーで何度も斬りつけるが、エレファントアンデッドは気にも留めないように、左手のハンマーを私に叩きつけてきた。

 咄嗟にメロンディフェンダーで防ぐが、その威力は凄まじく、盾越しでもものすごい衝撃がやってきて盾を持つ左手が痺れる。

 

エルシャ「こっちに変えてみようかな!」

 

 カチッ! 『マンゴー!』

 

 私はメロンのロックシードを外し、マンゴーロックシードをドライバーに取り付ける。

 法螺貝の音が鳴り、頭上にマンゴーアームズが出現する。

 カッティングブレードを降ろしアームズチェンジする。

 

 『ソイヤ!』『マンゴーアームズ! ファイト オブ ハンマー!』

 

 私にマンゴーアームズが落ちてきて、展開される。

 頭には下向きに伸びたオレンジ色の角が付き、胸には赤とオレンジのアーマー、両肩にも赤とオレンジのスパイクアーマーが付き、背中には表は赤、裏はオレンジのマントが付いている。

 胸と肩のアーマーのオレンジの部分は、まるで皮を剥いて賽の目に切ったマンゴーみたいだ。

 武器は棘の付いたメイスで、これまたマンゴーそのものみたいな形をしている。

 メロンアームズのような盾はないが、この重量級のアームズなら盾がなくてもいけそうだ。

 

エルシャ「ハアアアァァァ!!」

 

 アンデッドがさっきの様に鉄球で攻撃してくる。

 うち二つは肩のアーマーにあたり、最後の一つは顔に当たりそうになったので、今の武器『マンゴーパニッシャー』で弾き飛ばした。

 私はマンゴーパニッシャーが当たる距離に近づくと、思いっきりマンゴーパニッシャーを振り上げた。

 するとアンデッドはほんの少し後ろに吹き飛んだ。

 私は『いける!』と思った。

 間髪いれずに攻撃する。

 が、アンデッドも左手に持つハンマーで、攻撃してきた。

 

 ガン!! ガン!! ガキン!!

 

 周囲に金属の鈍器がぶつかり合い、火花を散らす。

 さっきは『いける!』と思ったが、ちょっと甘かったようだ。

 パワーと破壊力が上がるなら、その分こっちに帰ってくる衝撃もバカにならない。

 あと数合打ち合えば、先にこっちに限界が来そうだ。

 私はマンゴーパニッシャーの突きでアンデッドを突き飛ばし、カッティングブレードを2回降ろした。

 

 『ソイヤ! マンゴー オーレ!』

 

 マンゴーパニッシャーにエネルギーが集まり、私はそれをアンデッドに向かって槍投げの要領で投げつけた。

 直撃した瞬間、アンデッドの体がオレンジ色の球体に拘束され、爆発した。

 しかし、それでもまだ倒れなかった。

 

エルシャ「しぶといわね。 ならこれよ!」

 

 カチッ! 『カチドキ!』

 

 私は今度は『カチドキロックシード』を取り出し、マンゴーロックシードをはずしてドライバーにセットした。

 カッティングブレードを降ろし

 

 『ソイヤ!』『カチドキアームズ! いざ出陣! エイエイオー!』

 

 カチドキアームズにアームズチェンジした私は、すかさず無双セイバーと火縄甜瓜DJ銃を合体させ、ドライバーからロックシードを外して、DJ銃側のドライブベイにセットする。

 

 『ロックオン!』『イチ!! ジュウ!! ヒャク!! セン!! マン!! オク!! チョウ!! 無量大数!!』

 

 大剣にエネルギーがチャージされ、私はアンデッドに向かって走り出す。

 アンデッドが起き上がった瞬間にDJ銃側のトリガーを引き、左側に抜けるように斬りつけた。

 

エルシャ「ハアアアァァァ!!!」

 

 『カチドキチャージ!!』

 

 真っ二つにした感触がした。

 アンデッドが爆発すると、黒い煙になって消滅した。

 

 

ーめぐみんsideー

 

 正直言って、まだショックから立ち直ったわけじゃない。

 でも、相手がアナザーライダーならこんなところで凹んでいる場合じゃない。

 私は今タイガーアンデッドと戦っている。

 最初こそこちらが押していたが、相手が目にも留まらぬ早さで動き始めてから、こっちが一方的に攻撃されていた。

 

めぐみん「なら、シノビの力で。」

 

 『シノビ!』

 

 私はドライバーからウォズのウォッチを外して、シノビのウォッチを取り付けた。

 

 『アクション!』『投影! フューチャータイム!』

 『誰じゃ? 俺じゃ? 忍者! フューチャリング シノビ! シノビ!』

 

 フューチャリングシノビになったおかげで、私も超高速で動くことが可能になった。

 ジカンデスピアをカマモードに変形させて、攻撃していく。

 スピード自体は互角の様です。

 

めぐみん「なら、これなら!」

  「『分け身の術』!」ドロン!

 

 私は、フューチャリングシノビの能力の『分け身の術』を使い、自分の分身を4体作り出した。

 同じスピードなら数で押してしまおう。

 分身の内一体がアンデッドを足止め押した隙に、他の三体の分身と本体の私は一斉に襲いかかる。

 アンデッドもそのスピードで対抗しようとするが、四方八方から攻撃されては防戦一方にならざる負えない。

 私の分身達の攻撃で怯んだ隙に、本体の私は必殺技を放つ。

 

 『ビヨンドザタイム!』『忍法・時間縛りの術!』

 

めぐみん「やあぁ!!」ガキン!

 

 私はカマモードのジカンデスピアでアンデッドを上空に打ち上げると必殺技が発動し、アンデッドはその場に縛り付けられ停止する。

 すかさず私は、ジカンデスピアの『タッチスワイパー』を指で上下に2回なぞる。

 

 『フィニッシュタイム!』『一撃カマーン!』

 

 私と2体の分身が上空のアンデットに向かってジャンプする。

 そして三人同時に必殺の一撃を放った。

 時間縛りの術から解放されたアンデッドが落下してくる。

 その場で動かなくなったら、黒い煙になって消えていった。

 

 

ールミsideー

 

 私は今ダクネス様と共に、ジェリーフィッシュアンデッドとスキッドアンデッドと戦っている。

 客観的にみても、私とダクネス様のライダーシステムは他の皆さんに比べると劣っている。

 私達はその性能差を、協力することで埋めようとする。

 私が相手をしているのはジェリーフィッシュアンデッド。

 両手の指が鞭の様にしなり、伸縮自在な上に電流まで流すことができるようだ。

 ダクネス様が相手をしているのは、イカの様な外見をしたスキッドアンデッドだ。

 背中から10本の触手を生やして、うねうねと動いている。

 

 私はブレイドガンナーで斬りかかり、アンデッドもそれに合わせるように鞭を振り回した。

 刀身と鞭が触れ合うたびにピリピリと痺れる様な感覚が右腕に走る。

 鞭にまとっている電流のせいだと思う。

 私はブレイクガンナーを『ガンモード』に切り替え、銃で攻撃する。

 銃弾を受けて怯んだ隙に、私はドライバーのキーを回し、シフトブレスのイグナイターを押した。

 

 『SPEED!』

 

 ブレイドガンナーの刀身が赤い色のエネルギーを纏う。

 私は、左から右に向かってブレイドガンナーを振り払うと、刀身に集まっていたエネルギーが赤い斬撃になり、アンデッドに向けて放たれ吹き飛ばされた。

 

ルミ「出番ですよ! フレア!」

 

 私はマックスフレアを呼び出し、タイヤを交換した。

 

 『タイヤコウカーン!』『マックスフレア!』

 

 アーキタイプギアが赤からオレンジに変わり、マックスフレアの炎の力が加わる。

 すかさず私は、ドライバーのキーを回し、シフトブレスのイグナイターを押し、レバーになったマックスフレアを一回倒した。

 

 『ヒッサーツ!』『フルスロットル! フレア!』

 

ルミ「ハアアアァァァ!」

 

 ライダーキックがアンデッドに炸裂し、爆発を起こした。

 ジェリーフィッシュアンデッドは、背中から地面に倒れ、黒い煙になって姿を消した。

 こちらが片付いたので、ダクネス様に加勢に行くとしましょう。

 

 ダクネス様はやはり苦戦している様です。

 スキッドアンデッドの触手に巻きつかれて動けない様です。

 ブレイドガンナーで触手を斬り、巻きついている触手を外す。

 

ルミ「ダクネス様、大丈夫ですか?」

ダクネス「あぁ! もちろんだ。」

 

 先程斬った触手もすぐに再生され、再びこちらに襲いかかってきた。

 私はブレイドガンナーで、ダクネス様はハンドル剣で応戦する。

 しかし、いくら触手を斬ってもすぐに再生するため、やはり本体であるアンデッドを倒す必要がある。

 私がどうしたら良いかと悩んでいると、ダクネス様が

 

ダクネス「ルミ! 私があいつの動きを止める!」

  「その隙に攻撃するぞ!」

ルミ「しかし、どうやって?」

ダクネス「こうしてだ! ウィンター!」

 

 ダクネス様がそう叫ぶと、まるでくしゃみでもしている様な音を鳴らしながら、一台のシフトカーがやってくる。

 白いボディに、車体の中央には氷をイメージした装飾が施され後方の四つのタイヤはキャタピラで覆われている。

 彼は『ロードウィンター』という雪上車のシフトカーである。

 ダクネス様がトライドロンキーをドライバーから外し、ロードウィンターをセットする。

 

 『シフトカー! タイヤコウカン!』『ヒエール!』

 

 この時、ダクネス様が何をしようとしているのかわかった。

 私達に触手が一斉に襲い掛かって来た。

 その瞬間、ダクネス様が必殺技を発動する。

 

 『ヒッサツ! フルスロットル!』『ヒエール!』

 

ダクネス「ハアアアァァァ!!」

 

 ダクネス様が冷気を纏った回し蹴りを放つと、その蹴りに当たった触手が凍りついた。

 それだけではなく、触手を伝ってアンデッド本体にまで冷気が走り凍りつかせる。

 その隙に私達はそれぞれシフトカーを交換する。

 

 『タイヤコウカーン!』『マッシブモンスター!』

 『シフトカー! タイヤコウカン!』『ササール!』

 

 私はマッシブモンスターを呼び、タイヤを交換する。

 アーキタイプギアがメタリックパープルの色になり、両手には怪物の牙をモチーフにした破砕武器『モンスター』が握られている。

 ダクネス様はファンキースパイクを呼び出し、タイヤコウカンをする。

 

 『ヒッサーツ! フルスロットル!』『モンスター!』

 『ヒッサツ! フルスロットル!』『ササール!』

 

ダクネス「ハッ!」

ルミ「砕けなさい!」

 

 私がエネルギーを纏い巨大化したモンスターでアンデッドを攻撃する。

 1回目で氷が砕け、2回・3回と攻撃した後、高くジャンプしていたダクネス様が、エネルギー体の棘を右足に纏いライダーキックを放った。

 スキッドアンデッドが火花を上げ爆発すると、黒い煙になって姿を消した。

 

ルミ「ダクネス様、見事でした。」

ダクネス「ルミもな。」

 

 どうやら、めぐみん様とエルシャ様も勝ったようです。

 2人がこっちに向かって走ってくる。

 

めぐみん「ダクネス! ルミ!」

エルシャ「二人共大丈夫?」

ルミ「はい、問題ありません。」

ダクネス「あぁ、もちろん。」

 

 皆さんが無事で何よりです。

 この分ならマスター達も大丈夫だろう。

 そう考えていた時がありました。

 

賢治「ガハッ!」

カズマ「グハァ!」

「「「「?!」」」」

 

 私達が見たのは吹き飛ばされ、変身を強制解除されるマスターとカズマ様でした。

 

 

ー賢治sideー

 

 

 正直に言おう。

 何かおかしい?!!

 さっきから俺とカズマはベルディアに何度も攻撃しているというのに、全くダメージが通っている様に感じない。

 

カズマ「・・・なぁ賢治?」

賢治「なんだカズマ?」

カズマ「俺達の攻撃、効いてるのか?」

賢治「・・・わからん!!」

 

 こっちはさっきからブレイドとギャレンのウォッチの力で攻撃しているのに、ベルディアの体を覆う外角を凹ませるどころか、かすり傷一つ付かない。

 実は必殺技まで撃ち込んでいるのに。

 

賢治(・・・なんかこんな事、前にもあったような?)

 

 そう、あった様な気がする。

 いつだったか?

 ここ最近だった様な気がする。

 能力透視を使ってみてみると

 

 BERUDHIA

 

 LV76

 種族 アンデット  職種 魔王軍幹部

 

 体力   1542800  火 270

 魔力   319560   水  0

 力    649800  土 120

 知力   269040  風 135

 俊敏性  271320  光 285

 器用さ  238920  闇 105

 幸運   8340

 

 

 ・黄金の王(カテゴリー・キング)

  一定のダメージを無効化する

  特攻攻撃(仮面ライダーレンゲル)の力を無効

  一定のレベルに達していない場合ステータスが減少する

 

 ステータスは30倍に上昇し、エレメント耐性は3倍に上昇している。

 そしてスキルには新たに、EXスキルが追加されている。

 そしてどこかで見たことがあると思ったら

 

賢治「思い出した! アナザー鎧武と同じだ!!」

カズマ「え? 同じって?」

賢治「アナザー鎧武には、EXスキルの『黄金の果実のかけら』っていうスキルがあったんだ。」

  「一定のダメージを無効にして、元のライダーの力が効かない、一定のレベルに達していないとステータスが減少するっていうやつだ。」

カズマ「はぁ?! そんなスキルをあいつは持ってるのかよ!」

 

 ステータスの減少についてはクリアしているはずだ。

 じゃないと今のステータスはありえないはず。

 じゃあ、俺達の攻撃が効いていないのは何故だ?

 

全知全能(それは・マスターの攻撃は・相手の圧倒的な体力と・スキルの効果によってダメージが無効化されている可能性があります。)

  (カズマ様に関しては・ただ単に・ステータス不足によるものと思われます。)

賢治(そうか。・・・何か方法はないか?)

全知全能(検討します。)

ベルディア「余所見を・・・するなあああぁぁぁ!!」

カズマ「賢治!!」

賢治「!!」

 

 ベルディアの攻撃を避けた俺とカズマは暫く防戦に徹するしかなかった。

 ベルディアの大きくなった腕や鉄球、レンゲルラウザーにようる連続攻撃を俺達はできるだけ避ける様にしている。

 避けきれない攻撃はガードするしかないが、基本避ける。

 俺はともかく、カズマの方は一発受けるだけで大ダメージは確実のはずだ。

 

全知全能(検索が完了しました。)

  (方法としましては・まず・マスターが所持している・ディケイドライドウォッチによる・強化フォームへの変身です。)

賢治(なるほど! 確かにそれなら)

全知全能(しかし・この変身は・所謂中間フォームへの変身であるため・最強フォームである『キングフォーム』に対しては・効果が薄いと思われます。)

賢治(なるほど。)

 

 確かに、最強フォームに中間フォームで挑むなんて、原作ジオウのジオウディケイドアーマーVSオーマジオウの様な感じになる可能性がある。

 だとしたら、残る方法は

 

全知全能(もう一つの方法は・マスターとカズマ様が所持している・ジオウⅡライドウォッチと・ゲイツリバイブライドウォッチによる変身のみです。)

 (この二つのライドウォッチは・アナザーライダーを倒すことに特化しているので・スキルの効果を超えてダメージを与えることができる可能性があります。)

賢治(確かに、それしかないか。)

 「カズマ! 俺が渡した砂時計のライドウォッチと、俺のジオウⅡのライドウォッチなら」

ベルディア「隙あり!!」

賢治・カズマ「!!?」

 

 ほんの一瞬ベルディアから目を離した好きに、ベルディアのラウザーと鉄球の攻撃を喰らってしまった。

 その所為で俺とカズマの変身が強制解除された。

 

賢治「ガハッ!」

カズマ「グハァ!」

 

 俺達は吹き飛ばされ、ダメージのせいですぐには起き上がれなかった。

 そんな俺達にベルディアが近づいてくる。

 

ベルディア「元騎士として、お前達の様な男達と戦えたこと、魔王様と邪神に感謝するぞ。」

賢治「ぐぅ!!」

カズマ「・・・くそ!!」

 

 ベルディアが俺達にとどめを刺すために、武器を振り上げる。

 俺とカズマは身動きが取れず、それを見る事しか出来ないでいた。

 

ベルディア「終わりだ。 勇敢な冒険者達よ!」

賢治・カズマ「!!」

 

 ベルディアが武器を振り下ろす。

 だが

 

 ガキン!!

 

 俺達にその刃が届くことはなった。

 

ベルディア「ぬっ!?」

ルナ「くぅ!!」

 

 そこにはブレイドガンナーで受け止めていた。

 どうやら他のアンデッドはルミ達のお陰で全滅したようだ。

 

エルシャ「くらえ!!」

 

 ドドドドドドドドドドドドドドドド!!

 

ベルディア「な!? ぐおぉおおおおおお!!!」

 

 エルシャは火縄甜瓜DJ銃の連射モードでベルディアを射撃し、俺達から遠ざける。

 その後ろから、めぐみんとダクネスがそれぞれジカンデスピアとハンドル剣で攻撃する。

 

めぐみん「はぁぁ!!」

ダクネス「おおお!!」

ベルディア「チィ! 貴様ら!!」

 

 ルミ達のおかげで助かった。

 今のうちに

 

賢治「カズマ!」

カズマ「なんだ?」

賢治「俺のジオウⅡとゲイツリバイブならあいつを倒せるかもしれない。」

  「やれるか?」

カズマ「これか!」

 

 だが、もしこのゲイツリバイブウォッチが原作通りなら、今のカズマには負担が大きすぎるのではないか?

 もしそうなら俺だけで戦うしかないが。

 明光院ゲイツの記憶を見たのなら、ゲイツリバイブになったばかりの彼がどんな事になったのか知っているはず。

 

カズマ「・・・やるぜ、賢治!」

賢治「カズマ。」

カズマ「俺は今度こそ夢をかなえるって誓って、仮面ライダーゲイツになったんだ。」

  「リスクが怖くて、ヒーローなんかやってられるか!」

賢治「ハハッ! よし、やるか!」

カズマ「おう!」

 

 俺達はそれぞれジオウⅡとゲイツリバイブのライドウォッチを取り出す。

 スターターを押し、起動する。

 

 『ジオウⅡ!』 『ゲイツリバイブ・剛烈!』

 

 俺はウォッチの左にある『スプリットリューザー』を回転させ、中央にあるピクトウィンドウを左にスライドさせる。

 その状態で、D‘9サイドとD‘3サイドに分離させ、ジクウドライバーにセットする。

 カズマは、ギャレンのライドウォッチを外し、ゲイツリバイブウォッチをD‘3スロットにセットする。

 ドライバーのリューザーを押すと、変身の待機状態に移行する。

 俺の背後には二つのアナログ時計が左右対称の状態で現れる。

 カズマの背後には大きな砂時計が現れる。

 

賢治・カズマ「変身!!」

 

 『『ライダータイム!』』

 

 『仮面ライダー! ライダー! ジオウ・ジオウ・ジオウ! Ⅱ!』

 『仮面ライダーゲイツ!』『リ・バ・イ・ブ剛烈! 剛烈!』

 

 俺達は無事に変身を完了した。

 

賢治「善と悪、光と闇、全てを受け入れ、未来を切り開く!」

カズマ「覚悟を決めた俺の生き様、見せてやるぜ!」

 

 そしてそこに、ベルディアの相手をしていためぐみんが猛スピードでやってきた。

 

めぐみん「祝え! 全ライダーを凌駕し、時空を越え、過去と未来をしろしめす時の王者!」

  「その名も仮面ライダージオウⅡ!!」

  「そして、巨悪を駆逐し、新たな未来へ導く救世主!」

  「その名も仮面ライダーゲイツリバイブ!」

  「今新たな歴史の幕が開いた瞬間である!!」

 

 と、俺達を祝ってくれた。

 

カズマ「・・・なぁめぐみん、それ毎回やるのか?」

めぐみん「・・・し・・・仕方ないじゃないですか!」

  「前にも言いましたけど、『やらないといけない』っていう衝動に駆られたんですから。」

賢治「ハハッ! ありがとうめぐみん。」

  「よし! やるか、カズマ。」

カズマ「おう!」

 

 俺とカズマはベルディアに向かって走り出した。

 ベルディアもルミ達をラウザーで薙ぎ払うと、こっちと向き合う。

 

ベルディア「時の王? 救世主? ハッ!」

  「大層な呼び名だな。 その力、どれほどのものかな?!」

 

 ベルディアがカズマの前を走っている俺に向かって武器を構える。

 その瞬間に、ジオウⅡの頭部についている『プレセデンスブレード』の長針が回転し始めた。

 仮面の『インジケーションアイⅡ』に“これから起こりうる事象”が映し出される。

 それによるとこの後に、ベルディアの鉄球が飛んでくる、それを避けるまではいいが避けた後、後ろを走っているカズマに直撃する。

 

賢治「よっと!」

 

 そこで俺は、走りながらジャンプし鉄球が真下に来た瞬間に、足の裏で踏みつけ、鉄球を地面に叩きつける。

 鉄球を踏みつけた勢いでさらにジャンプし、ベルディアの後方に回り込んだ。

 

ベルディア「何!!」

賢治「おい、俺の方をみていていいのか?」

 

 『パワードノコ!』

 

ベルディア「!!」

カズマ「ハアアアァ!!

 

 カズマがゲイツリバイブの武器『ジカンジャックロー』の『のこモード』で斬りつける。

 ガガガガガと鋸の刃がベルディアの鎧を削る音が響く。

 激しく火花が散り、二度三度と斬りつけたら、ベルディアは堪らず後ろへ引いた。

 そこで次は俺の番だ。

 

 『サイキョーギレード!』

 

 ジオウⅡの武器、サイキョーギレードを呼びだす。

 ジオウの仮面を模した『フェイスユニット』が特徴的な武器である。

 

賢治「ハア!」

ベルディア「! グオ!!」

 

 刀身にピンク色の光を纏わせ、ベルディアを切り裂く。

 俺とカズマは二人揃ってベルディアを攻撃し、剣と鋸で突き飛ばした。

 

ベルディア「おのれ!」

賢治「!!」

 

 またしてもプレセデンスブレードが回転し、少し先の事象が見え始めた。

 それによると、ベルディアは俺達に向かって特大のカースド・ブレードを放ち、俺達を倒そうとする。

 それを知った俺は、ジカンギーレードを呼び出し、サイキョーギレードのフェイスユニットをジカンギレードのスロットにセットし、サイキョーギレードと合体させる。

 それで出来上がるのが、サイキョージカンギレードである。

 そして、フェイスユニットについているレバーを操作し、ユニットの目の部分を『ライダーフェイス』から『サイキョーフェイス』に切り替える。

 

 『ジオウサイキョー!』

 

 俺はサイキョージカンギレードを両手で持ち、天に向かって構える。

 必殺技の待機音がなり、刀身から黄金のエネルギーが伸びる。

 

ベルディア「カースド・ブレード!!」

 

 先ほど見た通り、特大のカースド・ブレードを放ってきた。

 だが、俺は慌てることなく、ギレードのトリガーを引いた。

 

 『キング! ギリギリスラッシュ!』

 

 黄金のエネルギーに『ジオウサイキョウ』と言う文字が現れ、ベルディアのカースド・ブレードに向けて振り下ろす。

 

賢治「ハアアアアアアアァァァ!!」

 

 漆黒のエネルギーと黄金のエネルギーが二人の丁度真ん中でぶつかり、お互いのエネルギーをおし戻そうと拮抗する。

 

ベルディア「ばかな!! この俺の渾身の一撃と互角・・・いや、僅かだが推されたいる?!」

賢治「オオオオオオオオオ!!!」

 

 このまま押しきる事も出来そうだが、ここでもう一押しだ。

 

 『剛烈!』『スーパーのこ切斬!』

 

ベルディア「?!」

カズマ「うおりゃあああ!!」

 

 いつの間にかベルディアの背後に回っていたカズマが、ゲイツリバイブウォッチをジカンジャックローのスロットにセットし『スーパーのこ切斬』を放っていた。

 実は、俺がギリギリスラッシュを放つと同時に、カズマはゲイツリバイブのライドウォッチを180度回転させて、ゲイツリバイブ剛烈からゲイツリバイブ疾風にチェンジしていたのだ。

 疾風の名の通り、高速戦闘を得意とする形態である。

 時間を引き伸ばすことでベルディアにも気付かれない程の超スピードで背後に移動し、再び剛烈に戻り必殺技を放ったのだ。

 ジカンジャックローから放たれたオレンジの光輪がベルディアの背中にヒットする。

 

ベルディア「があああああああ!!」

 

 先程ジカンジャックローで直接斬りつけた時のような金属が金属を切断する様な音が盛大に響く。

 そのせいで、カースド・ブレードへの魔力供給に集中できなくなり、カースド・ブレードは消滅した。

 ベルディアはギリギリスラッシュをもろに食らってしまった。

 

ベルディア「ぐあああああああああああ!!!」

 

 叫び声をあげた次の瞬間爆発が起きた。

 煙が晴れ、そこから出てきたのは最早『満身創痍』という言葉がぴったりの姿になったベルディアだった。

 見事な黄金の輝きを放っていた鎧は全体的に黒くくすみ、錆付いてしまったかの様な印象を受ける。

 鉄球もラウザーもボロボロになっている。

 

ベルディア「・・・お・・・おぉ・・・まだだ・・・俺はまだ・・・・・・」

 

 それでも倒れまいとするその姿は、どんな脅威にも屈しない騎士そのものの様に見えた。

 

賢治「・・・ベルディア・・・アンタは魔王軍の幹部だが、アンタみたいな男と戦えてよかったよ。」

カズマ「・・・できれば、敵同士として出会いたくなかったよ。」

賢治「・・・・・・カズマ! 決めるぞ!!」

カズマ「おう!」

 

 俺とカズマは同時にドライバーを操作した。

 

 『『フィニッシュタイム!』』

 『トゥワイス! タイムブレイク!』

 『一撃! タイムバースト!』

 

 俺とカズマは同時にジャンプした。

 一方はベルディアを囲むようにピンクと金の『キック』文字が浮かび、もう一方はベルディアに向けてオレンジのレールのような光が奔り、その上を仮面に着いた『らいだー』の文字と、右足の『きっく』の文字がレーザーポインターの様に奔る。

 ベルディアの正面と背後から挟むという変則的な形になるが、この時二人の気持ちは通じ合っていた。

 次に俺たちが口にした言葉は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

賢治・カズマ「ライダーダブルキーック!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黄金とピンク、そしてオレンジの光を纏った俺達のキックは同時にベルディアに直撃し、交差するように俺はベルディアの背後にカズマは正面に着地する。

 バチバチと火花をあげ、今にも爆発しそうだ。

 背を向けたままの俺達にベルディアは

 

ベルディア「・・・・・・名を聞こうか・・・」

賢治「・・・霧島賢治、仮面ライダージオウ。」

カズマ「佐藤和馬、仮面ライダーゲイツ。」

ベルディア「・・・仮面ライダーか・・・お前達の様な強者と戦えたこと・・・・・・騎士として誇りに思うぞ・・・・・・魔王軍に・・・栄光あれええええええ!!!」

 

 ドゴオオオオオオオオオオオオオォォォォォォン!!!

 

 そう言い残してベルディアは爆発とともに、完全に消滅した。

 ベルディアから飛び出したアナザーライドウォッチはその衝撃で破壊された。

 俺とカズマは勝利を分かち合う様に、お互いの右腕を交差させる。

 その瞬間に冒険者たちから勝利の雄たけびが響いた。

 ここに、魔王軍幹部ベルディアとの戦いは幕を下ろしたのだ。

 

 だが、その様子を見ている男がいた。

 

 ジィ ジィ ジィ  カシャッ!

 

 その男はこの世界にはない35㎜二眼レフカメラを使って、賢治とカズマを撮影していた。

 

???「・・・面白そうなやつらだな。」

 

 そう言い残してその男はアクセルの街に消えていった。

 

 

 

○魔王軍幹部ベルディア 討伐○

 

○ 成功 ○

 

 

 

-翌日-

 

 魔王軍幹部との戦いが終わり、今日からいつもの日常が始まる。

 ・・・と思っていた。

 あの戦いで、かずまはゲイツリバイブのリバウンドがやって来たのか、鼻から血を出して倒れてしまったが、俺やアクアの回復魔法のおかげで数時間横になっただけで回復できた。

 街にも少し・・・いや、正確にはアクセルの街の外壁に大きな被害が出てしまった。

 誰のせいかというと、アクアである。

 アクアが召喚した大量に水のせいで、町の正門の外壁に被害が出てしまったのだ。

 魔王軍幹部であるベルディアには懸賞金がかけられており、討伐報酬は3億エリスととんでもない額だった。

 しかし、その3億エリスも外壁修理に全額払うことになり、俺達はは一千万近い借金を背負うことになった。

 いつか家を買おうと思ってためていた金もパーだ。

 普通こういうのは、この地を治める領主が金を出すものなのだが、修理費すべてを冒険者に払わせるなど本来ならあり得ないことだ。

 ルナさんの話だと、この地を治める領主はあまり良い噂が無く、むしろ悪い噂しかないらしい。

 だが、それを追求しようにも、どんなに調べても証拠が出てこないらしく、法によって裁くこともできないでいるらしい。

 どんだけ金にがめついんだ、その領主は!

 機会が有ったら調べるか?

 俺がそう思っている時、ウェイトレスのお姉さんが俺を待っている人がいると言う。

 だれだろう?

 この世界にたいして知り合いはいないと思うが

 そこで向かった先には、予想外の人物がいた。

 その人物は、ジャイアントトードの唐揚げを頬張りながら食事をしている。

 だが、俺はこの後ろ姿に見覚えがある。

 

カズマ「・・・どうかしたのか?」

エルシャ「? 賢治の知り合い?」

賢治「・・・いや・・・その・・・」

???「よぉ、おまえが総悟の力を持って、この世界に転生した奴か?」

 

 そう言って振り向いたその顔は

 

アクア「ああああああ!!!」

カズマ「!? ビックリした。 なんだよ?」

???「よぉアクア。 久しぶりだな。」

  「相変わらず酒ばっか飲んでグウタラしてるのか。」

アクア「何であんたがここにいるのよ?」

  「ディケイド!!」

 

 そう、目の前にいるこの男は通りすがりの仮面ライダー。

 または、世界の破壊者。

 門矢士こと、仮面ライダーディケイドだ。

 

カズマ「な!! ディケイドって・・・ええええええ!!」

  「門矢士!!」

士「お前もいい反応するな、少年。」

めぐみん「? 賢治とカズマとアクアは、この人を知っているのですか?」

 

 知っているも何も、この人は平成ライダー10番目のライダー、仮面ライダーディケイド。

 九つの平成ライダーの世界を渡り歩き、世界を破壊し再生させた人。

 ある時は警官、ある時は音楽家、ある時は社員食堂のチーフと様々な顔を持っている。

 一時は、悪の組織『大ショッカー』の首領だったこともある。

 原作仮面ライダージオウでも、重要人物としてジオウの世界に参戦していた。

 はっきり言って、とんでもない人だ。

 アクアと知り合いなのは、いろんな世界を旅する道中で、たまたまアクアたちの世界にやって来たのだろうか?

 

賢治「・・・それで、俺にどんな用ですか?」

 

 俺は圧倒されながらも、平静を装ってそう言った。

 士さんは席を立ち、俺を見据えて

 

士「・・・なに、総悟の力を持ってこの世界に転生した奴がどんな奴か会ってみたくなってな。」

 

 俺の肩に左手を載せて

 

士「・・・俺にこの世界を破壊させるなよ。」

賢治「?! どういうことですか?」

士「・・・なに、そうならない様に頑張れってことだ。」

 

 士さんはそう言って、ギルドを出て行った。

 この世界が崩壊する様な事が起きるという事だろうか?

 

賢治「・・・・・・今から不安になっても仕方ないか。」

 

 成る様になれ。

 そう思うことにした。

 それに、今の俺には・・・いや、俺達には借金返済という早急に解決すべき事があるのだ。

 今解らない事は、後で考えよう。

 こうして、このろくでもない世界で生きて行く事になるだろう。

 

 

 

-???-

 

 ここは、どこともわからない場所。

 そこで、あることが起きた。

 空間を裂くように、グニャッと穴が開き、そこから約7mはある巨人が現れた。

 それは鋼鉄の巨人だった。

 だが、所々ひしゃげ、陥没し、火花を散らしている。

 すると、操縦席部分のハッチが開き、そこから人が下りてきた。

 

 その人物は、全身を黒をメインにした衣装を着ている。

 上から、白のシャツの上から胸を強調するように前開きになった水色のラインが入った黒のロングコートと、両手には黒のハーフフィンガーグローブ。

 下は、膝上10㎝の黒に水色のラインが入ったミニスカート。

 膝下10㎝くらいの、前面にファスナーがついた黒のロングブーツ。

 黒のマントを羽織り、手にはマナタイト製の杖、魔法使いが被るような黒のとんがり帽子を被っている。

 髪は黒くせなかまで伸び、瞳は自ら光っているかのように赤い瞳をしている。

 そう、彼女は女である。

 

 彼女は鋼鉄の巨人に手のひらを向けると、その巨人は徐々に縮み、まるで時計の様なかたちになった。

 それを仕舞うと、彼女は

 

???「・・・皆、ごめんなさい。」

  「・・・あなたの仇は、必ず打ちますから。」

 

 この世界に、招かれざる客が、やって来たのだ。

 ある決意を胸に・・・

 

 

 

 

 




ありがとうございました。

文章力があまりないので、戦闘パートが表現しきれているか少し不安です。
という訳で、ディケイドに出ていただきました。
これからも少しずつ登場させるつもりです。

最後に出てきた魔法使いの正体は近い内に明らかになります。

皆さん、これからもよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十三話 心も体も凍えそうな俺達に祝福を

お待たせしました。
第13話です。

今回は9月中に投稿することができました。
次もがんばりますのでよろしくお願いします。

それでわ、第十三話をどうぞ。


 魔王軍幹部ベルディアとの戦いから二ヶ月がたった。

 

 アクセルの街は、いまだに外壁の修理は終わっていないが、後もう少しで終わりそうだ。

 

 『魔剣の勇者』である御剣響夜は、戦いの後俺に自身の魔剣を預けて修行の旅に出たのだ。

 もう一度1から自分を鍛え、もっと様々なスキルを習得し、強くなって帰ってくると言っていた。

 その時もう一度カズマと勝負がしたいとも言っていた。

 

 そして俺達は、ここ二ヶ月の間に片っ端からクエストを受けまくっていた。

 

 カズマのパーティは、ジャイアントトードやゴブリンやコボルトといった、比較的簡単に討伐できるモンスターの討伐に向かっている。

 

 俺のパーティは、どちらかと言えば厄介な部類のモンスターの討伐クエストを受けている。

 

 例えば、一撃熊。

 こいつは森に住むモンスターで、人の頭を一撃で刈り取ることからこの名がつけられた。

 確かに見た目通り凶暴そうなモンスターだったが、遠くからジカンギレードの銃モードで撃ってやった。

 

 例えば、ミノタウロス。

 大きさは一撃熊よりもさらに大きく、二足歩行の牛型のモンスターだ。

 大きな2本の角を持ち、低いながらも知性がある。

 中には人間がつけるような防具や武器を持つ個体もいる。

 ゲームや漫画でもかなり危険なモンスターに分類される。

 俺もある程度覚悟を決めてこの討伐クエストを受けたが、ルミのおかげで呆気なく終わってしまった。

 ルミが使うスキル『操糸』で『鋼糸』と『粘糸』を織り交ぜて作った極細の糸でミノタウロスを拘束し、力を込めて糸を引っ張るとミノタウロスはバラバラの肉片に変わり果てたのだ。

 『必殺仕○人』みたいだと思った。

 

 例えば、アルラウネ。

 花から変化した植物系のモンスターの一種だ。

 その姿は、大きな花の中から女性の体が映えた姿をしている。

 上位種には、完全人型の個体もいるらしい。

 人を誘惑し、その精を食うことで生きている。(物理的にも精神的にも)

 最初にアルラウネを見た時は、上半身が裸だったのでモンスターとはいえ目のやり場に困った。

 ここで活躍したのはエルシャだった。

 エルシャはこの討伐クエストの為に、除草剤を作っていたのだ。

 そのお陰でアルラウネ討伐のクエストも、楽に終わった。

 その時俺の額に何かが飛んできたので、それを見てもらったら、アルラウネの種だと言っていた。

 エルシャは『これから生まれてくるこの子に罪はないから。』と言って、自分が責任を持って育てると言っていた。

 エルシャも一度種の状態から育ててみたかったらしい。

 

 と、こんな感じでそれぞれのパーティがあっちこっち駆けずり回ったおかげで、なんとか冬が来る前に借金の返済は完了したのだ。

 返済が完了した時の俺達は、まるで屍のようにギルドの酒場のテーブルに突っ伏していた。疲れ知らずのルミ以外は。

 しかし、その日の夜は借金完済を記念して盛大に飲んで食べた。

 

 ただ、良い事ばかりが起きている訳ではない。

 今現在、カズマは血を吐く様にこう言った。

 

カズマ「・・・・・・金が欲しい!」

 

 そう今俺達の懐事情は火の車である。

 この二ヶ月の間に借金は無くなったが、普段に生活していく分の金がないのだ。

 季節は冬になっているので、外は問答無用で雪が降っている。

 そんな天候の中、危険なモンスター狩りなどに行く冒険者はいないのだ。

 ベルディア討伐に関わった全ての冒険者に報酬が支払われているので、俺達以外の冒険者は懐が潤っており、クエストを受けようとする冒険者が劇的に減っているのだ。

 お陰でクエストには事欠かないんだが、できれば遠慮したいのが本音である。

 

 今あるクエストで1番お手頃なのは、『雪精の討伐』である。

 冬になると現れる宙を漂うモンスターで、レベルの低い冒険者でも簡単に倒せてしまうほど弱いモンスターだ。

 1匹狩る毎に冬が半日縮まると言われる不思議な存在らしい。

 1匹討伐につき10万エリスと、なかなか高額なクエストだ。

 だが、なんでそんな弱いモンスターにこんな高額な報酬がかけられているのだろうか?

 しかし、背に腹は変えられないと言うことで、カズマたちのパーティは『雪精の討伐』クエストを受けて防寒装備を整えて出発した。

 

 俺達は、別のクエストを受けることにした。

 それは、『スノーマンの討伐』クエストだ。

 見た目は『雪だるま』なのだが小さいもので1m、大きいので2mくらいある雪だるま型のモンスターらしい。

 さらに、こいつが合体すると『キングスノーマン』になり、全長3〜5mくらいのサイズになるらしい。

 数が増えると人里に降りてきて、目につくもの全てを氷漬けにしてしまうので、増え過ぎる前に討伐して欲しいとのこと。

 報酬は1匹討伐につき5000エリス。

 カズマ達に少し遅れて、装備を防寒仕様に変更して、お馴染みリボルギャリーに乗って目的地に向かった。

 

 アクセルの街から東に向かってしばらくすると、目的の場所に到着した。

 今の俺達の装備は某狩猟ゲームポータブル○2に出てくる、初期装備みたいなモコモコした装備だ。

 ルミはロイミュードだから必要ないと思ったが、念の為に来てもらった。

 リボルギャリーの少し先に、目的のモンスターがいた。

 

賢治「・・・本当に雪だるまなんだな。」

 

 そこには、大小様々な雪だるまの大群がいた。

 ざっくりと100匹位いるだろうか?

 

全知全能(計測完了。 スノーマンの個体数は・163匹です。)

賢治(163匹か、ありがとうな、アカード。)

全知全能(? アカードとは?)

賢治(お前の名前だよ。 駄目か?)

全知全能(・・・・・・)

 

 なんか黙っちまった。

 やっぱり俺って名付けのセンスが無いかな?

 

全知全能(・・・・・・私の事はご自由にお呼びください。)

賢治(お! じゃあ、アカードで呼ぶな。)

アカード(はい。)

 

 気に入ってくれたかどうか分からないけど、許可を貰ったからいいよな。

 さて、改めてスノーマンに集中するか。

 

賢治「よし、数は163匹みたいだから、油断しないようにな。」

エルシャ「? わかるの?」

賢治「あぁ、スキルのおかげでな。」

エルシャ「そうなんだ。」

  (賢治って、結構すごいスキルをいっぱい持っているし、もしかして『魔力感知』でも持っているのかしら?)

ルミ「とは言え、精霊の一種であるスノーマンには物理攻撃はほとんど聞かないと思われます。」

  「ここは、マスターの魔法が有効かと。」

 

 なるほど、だとしたら火の魔法が有効かな?

 ・・・雪を溶かす際に土を撒くのもいいってどこかで聞いたから、土の魔法も使えるだろうか?

 融雪剤なんてものがあれば、簡単なんだけどな。

 まぁ、ちまちま一体ずつ倒していくのは効率が悪いから

 

賢治「エルシャ、ルミ、ちょっといいか?」

エルシャ「? 何か思いついたの?」

賢治「あぁ、こんなのはどうだろう?」

 

 俺は思いついた作戦を二人に伝えた。

 

ルミ「・・・マスターにほとんど任せてしまいますが、確かにその方が手っ取り早いですね。」

エルシャ「じゃあ、取りこぼしたやつを私とルミが仕留めればいいんじゃない?」

ルミ「・・・そうですね。 それでは、お願いできますか? マスター。」

賢治「おう! 任せろ。」

 

 俺はウイザードのライドウォッチを取り出し、魔法を発動した。

 

 『ディフェンド! プリーズ!』

 

 俺がディフェンドの魔法で5mほどの大きな土の壁を作った。

 いきなり現れた土の壁にスノーマン達は慌てているのか、飛び跳ねたり、混乱して転げ回っている。

 俺は逃げ道を塞ぐように、さらに3枚の土の壁を作った。

 そのおかげで、100近いスノーマンが土の囲いに閉じ込められた。

 

賢治「じゃあ、残りはしばらく二人に任せるぞ。」

エルシャ「任せて。」

ルミ「お任せください。」

 

 囲いの外にいる奴を二人に任せ、俺は壁の上に『跳躍』を使ってジャンプした。

 囲みの中を見ると、外に出ようと必死に壁に体当たりをしているスノーマン達が見えた。

 だが、たいして助走も付けずに体当たりをしても、この土の壁はびくともしない。

 そんなスノーマン達を一網打尽にするために、俺は壁の上から魔法の準備をした。

 

賢治「『魔力階級上昇(ブーステッド)!』『ファイヤーボール!』」

 

 まず、魔法階級上昇で中級魔法を上級魔法に上昇させて、上級魔法になったファイヤーボールにさらに魔力を上乗せして、巨大な火の玉を作る。

 囲いの中全体を覆い尽くすくらい巨大になったファイヤーボールを、囲いの中に投入した。

 すると、瞬く間に囲いの中のスノーマンがファイヤーボールの熱によって一気に蒸発していく。

 2〜3分すると、100近いスノーマンは全滅していた。

 俺は囲みを土に還して、ルミとエルシャの手伝いに向かった。

 

 残っていた51体のスノーマンを狩りきるのに30分かかった。

 討伐報酬は合計815000エリスになった。

 ちょっとキリが悪いが、その辺はみんなと相談だな。

 

賢治「みんなお疲れ。」

エルシャ「ふぅ、なんとか終わったわね。」

ルミ「お二人共、お疲れ様でした。」

 

 思っていたより早く終わったものだ。

 後は帰るだけだだったとだが、その時

 

 『ジオウⅡ!』

 

賢治「?!」

 

 急にジオウⅡのライドウォッチが発動し、少し先の未来が見えた。

 そこには、真っ白な侍の様な姿をしたモンスターに首を斬り落とされているところだった。

 

賢治「な?!!」

エルシャ「? どうしたの?」

ルミ「マスター?」

 

 この先、今見た光景が本当に起こるのだとしたら。

 

賢治「・・・カズマがやばい!!」

 

 俺は今持っている全てのスキルを駆使して、カズマ達を探した。

 カズマ達を見つけると、全員でタイムマジーンに乗り込み、カズマ達の方に向かった。

 

 

 

ーカズマsideー

 

 俺達は賢治達より先にクエストを受注して、防寒装備を整えて『雪精の討伐』に来ていた。

 けど、多少気になることがある。

 雪精の討伐報酬が1匹につき10万エリスと、高額であること。

 弱いモンスターであるにも関わらず、ダクネスが妙に嬉しそうな顔をしていたこと。

 ・・・・・・まぁ、今はとりあえず、金だ!!

 

 目的地に着くと、辺り一面に白く握り拳くらいの大きさの、丸いものが宙を漂っていた。

 

カズマ「これが雪精か。」

 

 パッと見た感じ、数えるのも馬鹿馬鹿しくなるほどの数が宙を漂っている。

 確かに、そんなに強くはなさそうだ。

 むしろ、なかなか可愛い外見をしている。

 

カズマ「・・・ていうか、アクア。」

アクア「え? 何よ?」

カズマ「その格好はどうなんだ?」

  「冬場に蝉取りに来た、お馬鹿な子供みたいだぞ。」

 

 今のアクアは、いつもの格好に白のコートを羽織り、白の帽子に白のブーツを着ていた。

 別にここまでならいいと思う。

 だがその手には、虫取り網が握られていた。

 

アクア「失礼ね、この網を持ってきたのもちゃんと考えがあってのことよ!」

カズマ「じゃあ、何に使うんだよ?」

アクア「この網で雪精を捕まえて、小瓶に入れておくのよ。」

  「それをお酒の入った酒瓶と一緒に入れておけば、いつでも冷えたお酒が飲めるって寸法よ。」

 

 なるほど、冷蔵庫がわりにするつもりか。

 だが、なんとなくオチが見えそうだな。

 その隣を見ればダクネスがいた。

 いつもの鎧は着ておらず、いつも着ている全身タイツみたいな物の上にOL風の服を着てファーの付いたピンク色の上着を着ている。

 

カズマ「ダクネスはそんな格好で大丈夫なのか?」

ダクネス「・・・問題ない、ちょっと寒いが・・・それがまた・・・ハァ・・・ハァ・・・」

カズマ「・・・・・・そうか。」

 

 どうやら頭のあたたかい変態は、体温も高いらしい。

 めぐみんはいつもの服ではなく、首から太ももまでを覆える黒のインナーを着て足には黒のブーツ、白のケープを羽織っている。

 手にも色のグローブに、頭は猫みたいなフードをかぶっている。

 一見すると、この中で1番寒そうだが・・・

 

カズマ「・・・めぐみんは大丈夫か?」

  「この中で1番薄着だが?」

めぐみん「問題ありません。 私、体温が高いですし、このインナーも保温性が高いですから。」

カズマ「ならいいんだが。」

 

 問題なさそうなので、俺達は雪精の討伐を開始した。

 

 

カズマ「これで5匹目! 待てえええええ!!」

 

 俺はジカンザックス片手に雪精を追いかけていた。

 雪精は見た目によらず素早く、ただ武器を振り回しているだけではあたらない。

 俺でも4匹倒すのに10分もかかっている。

 

カズマ「くそ!! ちょこまかと!!」

 

 アクアとダクネスはどうしているのか見てみると

 

アクア「・・・・・・よっと!!」

ダクネス「くらえ!!」

 

 アクアはこっそりと雪精の背後に近づき、持っている虫取り網で雪精を捕まえている。

 意外に、そんな方法で雪精を6匹も捕まえている。

 

アクア「フフン! 大量ね!」

カズマ(・・・虫取り網の方が効率が良いのだろうか?)

 

 ダクネスはいつもの剣ではなく、なんと銃を使っている。

 まるで車のドアの様な形をした、真っ赤な銃だ。

 銃の名前は『ドア銃』らしい。

 ・・・・・・いや、ネーミング!?

 これは賢治のアドバイスだが、ダクネスは武器を使った近接戦闘は攻撃が当たらないが、投擲武器や射撃武器による攻撃はほぼ確実に命中すると言っていた。

 唯一の例外が、拳による攻撃と『攻撃を受け止てからの反撃』つまりカウンターである。

 そんなことを考えていると

 

ダクネス「? 弾切れか。」

 

 ガチャ! バタン!『チャージ!』

 

ダクネス「・・・・・・ふむ、トレーラー砲も良かったが、こっちも良いな。」

 

 車のドアを開けて、閉める様な動作をすると、エネルギーがチャージされるみたいだ。

 なんでそんな所に、妙に作り込んでいるんだろうか?

 ダクネスが変身した時に使っていた『ハンドル剣』もそうだが、一体どんな人が作ったのだろう?

 

 それより俺も雪精を倒さないとな。

 しかし、どうしたものか?

 ただ普通に攻撃しても避けらるし、アクアみたいに不意をつくしかないか?

 

カズマ「あ! そうだ。」

 

 俺は一つ思いついた。

 幸いというか、俺は今『韋駄天のグリーブ』を履いている。

 賢治に見てもらったが、このグリーブにはすごいスキルが二つあったのを思い出した。

 そのうちの一つを発動した。

 

カズマ「『超加速!』」

 

 俺は一分間俊敏性を50%上昇させる『超加速』を発動した。

 すると、明らかに自身のスピードがアップしていた。

 ガタックライドウォッチのクロックアップほどではないが、雪精の不意を突く分には問題なかった。

 そして1分が経過した時、俺は雪精を35匹倒していた。

 討伐した雪精は合計40匹だ。

 

カズマ「ふぅ、こんなところか。」

めぐみん「カズマ!」

カズマ「なんだ?」

めぐみん「ちょっと試したい事があるんですけど、爆裂魔法を使っても良いでしょうか?」

 

 試したいこと?

 めぐみんなら問答無用で爆裂魔法をブッパしそうだが、何か考えがあるんだろか?

 

カズマ「おう、やってくれ!」

めぐみん「分かりました!」

 

 めぐみんが杖を掲げると、めぐみんの周りに魔力が集まり始める。

 詠唱をするのかと思いきや、何やら額に玉の汗を浮かべながら集中しているようだ。

 詠唱を唱える余裕がないほど集中しているということだろうか?

 一体何をするつもりだろうか?

 

めぐみん「・・・・・・爆ぜよ! 『エクスプロージョン!』」

 

 お決まりのセリフの後、強烈な爆発がくる・・・・・・と思ったが、来なかった。

 だがその代わりに、ものすごい熱風が襲ってきた。

 その熱のせいで、この辺り一面の雪が一瞬で蒸発してしまった。

 周囲にいた雪精も、その熱のせいで一瞬で蒸発し数えるのも馬鹿馬鹿しいほどにいた雪精も、周囲に1匹もいなくなっていた。

 

カズマ「? めぐみん、何したんだ?」

めぐみん「プハッ! 意外と疲れますね。」

  「え〜っとですね、今のは爆裂魔法の物理的な破壊の魔力を捨てて、全ての魔力を熱の魔力に回したのです。」

  「そのお陰で、周囲の雪は無くなりましたけど、地形が変わるほどの破壊力はなかったというわけです。」

 

 なるほど、破壊に回すエネルギーを、全部熱エネルギーに回したってことか。

 それなら周囲が大惨事にならなかったのも頷ける。

 めぐみんってそんな器用なこともできるんだな。

 

めぐみん「・・・ですがやっぱり、こういう爆裂魔法は私の趣味じゃありませんね。」

  「いまいち迫力に欠けます。 魔力の制御に集中するせいで、カッコイイ詠唱もできませんし。」

 

 ほとんど後半部分が気に入らない理由じゃないのだろうか?

 それにしても、雪精の討伐って美味しすぎやしないか?

 ・・・・・・なおさら気になる。

 

カズマ「・・・なんで誰もやろうとしないんだ?」

 

 そんな事を呟くと、ダクネスが何かに気付き

 

ダクネス「出たぞ!!」

カズマ「?!」

 

 ダクネスがそう言うと、彼女の視線の先に冷気が立ち込め、何かがそこに仁王立ちしている様に見える。

 この感じは、ベルディアに会ったとき・・・いや、その時とは別次元の悪寒を感じる。

 ベルディアなら、圧倒的な力で押し潰される様な感覚だったが。

 今目の前にいるこいつは、まるで抜き身の刀を首に添えられているようだ。

 

カズマ「な?! なんだ?」

ダクネス「ワクワク!」

カズマ「え?」

 

 ワクワクってどういうこと?

 横を見ると、めぐみんは険しい表情で見ている。

 いったいあそこには何がいるんだ?

 

アクア「ねぇ、カズマ。」

カズマ「え?」

アクア「貴方も日本出身なら、天気予報で名前くらい聞いたことがあるでしょ。」

カズマ「は? 天気予報?」

 

 こんな時に天気予報?

 一体何の関係があるのだろうか?

 

アクア「雪精の主にして、この世界の冬の風物詩・・・・・・冬将軍の到来よ!」

カズマ「・・・は?!」

 

 アクアがそう言った瞬間に、目の前の冷気が晴れた。

 そこには真っ白な鎧に身を包み、腰に日本刀を携えた、鎧武者の姿をしたモンスターが姿を現した。

 兜と面で表情は見えないが、雰囲気と溢れ出す魔力で怒りをあらわにしていた。

 

ダクネス「冬将軍・・・国から懸賞金をかけられている、特別指定モンスター!!」

カズマ「はぁ!!」

 

 なるほど、読めた!

 レベルの低い冒険者でも簡単に討伐できる雪精に、なんで高額な報酬がかけられているのか。

 なんで誰も受けようとしないのか。

 このクエストを受ける時、ダクネスがなんで嬉しそうにしていたのか。

 ・・・全部この冬将軍が原因か!!

 

ダクネス「きっとこいつは、将軍の地位を利用して私を手込めにするつもりだろう。」

  「もちろん私も抵抗はするが・・・力及ばず組み伏せられ・・・そして・・・・・・ハァ、ハァ・・・」

 

 相変わらず、自分の性癖に全力で全開のダクネスは置いておいて

 ちょっと言わせてもらいたい。

 

カズマ「・・・この世界は! 人も食い物もモンスターも、みんな揃って大馬鹿かあああああああああ!!!」

 

 ・・・・・・まぁ、叫んでも状況は良くならないんだが、とりあえずスッキリした。

 そんな中、冬将軍は刀を抜き、雪の上を滑る様にして走り、ダクネスに斬りかかってきた。

 ダクネスも手にしていたハンドル剣でなんとか受け止めることが出来た。けていたら

 もし以前使っていた剣で冬将軍の刀を受、まるでナイフでバターを切るように刀身が両断されていただろう。

 

カズマ「・・・この冬将軍、ヤバすぎだろ!」

アクア「一応こいつも雪精の一種なんだけどね。」

カズマ「え?! そうなのか?」

 

 アクア曰く、精霊とは周囲の人間のイメージを利用して実体化する。

 しかし、冬場にモンスターを狩ろうと思う様な人間は、日本から転生したチート能力持ちの連中くらいしか居ない。

 よって

 

カズマ「じゃあ、何か?」

  「あいつは日本から来た何処かの誰かが、『冬と言えば冬将軍!』っていう軽い気持ちで連想したから生まれたってか!!」

 

 正直、こいつを生み出した奴が今この場にいたら、容赦なくぶん殴るだろう。

 なんてはた迷惑な話だ。

 ダクネスと鍔迫り合いをしていた冬将軍が、一旦後ろに退いた。

 俺は覚悟を決めて変身して戦おうとした時に

 

???「『エナジー・イグニション!』」

 

 その声と共に、冬将軍を炎の球体が包んだ。

 

「「「「?!」」」」

 

 声が聞こえたほう、冬将軍の後方にその人物がいた。

 全身黒一色の、魔法使いみたいな格好をした人物がいた。

 仮面をつけて表情は見えないが、背中まで伸びた髪に、女性らしい容姿。

 高い魔力から、おそらくアークウィザードの女がいた。

 

???「・・・」コク

カズマ「!」

 

 彼女が小さく頷いた。

 なぜか俺にはそれが、『今のうちに攻撃しろ』と言われている様な気がした。

 俺はすぐに、ジカンザックスにゲイツライドウォッチをセットした。

 

 『フィニッシュタイム!』

 

 必殺技の待機音が流れ、ジカンザックスのトリガーを引いた。

 

 『ゲイツ!』『ザックリカッティング!』

 

 必殺技が発動すると同時に、炎の魔法が解除され冬将軍があらわになる。

 冬将軍は俺が攻撃することに気付き、咄嗟に自身の刀で受けようとする。

 俺はそれにかまわず、ジカンザックスを振り下ろした。

 

 ガキン!!

 

 金属同士がぶつかる音が鳴り響き、周囲が静かになった。

 すると、ヒュンヒュンと上空から何かが降ってきた。

 それが地面に落ちると、サクッという音がした。

 見てみると、それは冬将軍の刀の刀身だった。

 俺が必殺技で切り飛ばしたのは、冬将軍の刀だったのだ。

 

カズマ(しまった! 刀だけか!)

 

 冬将軍の反撃を警戒して、ジカンザックスを構える。

 だが冬将軍は攻撃するそぶりを見せず、刀を鞘にしまうと。

 

冬将軍 シュバ! パタパタ

カズマ「?」

 

 冬将軍は懐から扇子を取り出して開くと、自分を扇ぎだした。

 まるで、『よく拙者の刀を斬ったな、実に天晴れ!』とでも言いたげだ。

 その後冬将軍はクルリと背中を向けて、森の中へ消えて行った。

 

カズマ「・・・助かった・・・のか?」

めぐみん「見たいですね。」

 

 どうやら命の危機は脱したようだ。

 それもこれも、さっきの魔法を使ってくれた彼女のおかげだな。

 

カズマ「おーい! 誰だかわかんないけど、ありがとなー!」

???「!! ・・・・・・」////// クルッ!

カズマ「あ!?」

 

 彼女は何も言わず、去っていってしまった。

 なんだか顔が赤かった様な・・・

 

めぐみん「・・・・・・」

  (なんでしょう? ・・・なんかムカつきます!)

 

 その後、ジオウⅡの未来予知を見たという賢治達が、タイムマジーンに乗って現れとき俺は事の成り行きを話した。

 賢治は未来予知が外れてホッとしていた。

 そのあと俺達は、リボルギャリーに乗ってアクセルの街まで戻っていった。

 

 

 

○雪精の討伐○

 

討伐数 117匹  報酬 11700000エリス

 

○達成○

 

 

○スノーマンの討伐○

 

討伐数 163匹  報酬 815000エリス

 

○達成○

 

 

ー賢治sideー

 

 ギルドに帰った俺達は、ギルド内で話題になっていた。

 たった二ヶ月そこそこで、数多くの高難易度クエストをたった三人で攻略した俺とエルシャとルミのパーティ。

 雪精討伐で、冬将軍に遭遇して生きて無事に生還しただけでなく、雪精もしっかり討伐して帰ってきたカズマ・めぐみん・ダクネス・アクアのパーティ。

 今や俺達はこのアクセルの街の注目の冒険者になっている。

 当然だが、俺達のレベルも上がっている。

 

 雪精討伐の際、雪精を数匹冬将軍に気付かれない様に、捕まえていたアクアが雪精たちを使って氷を作らせ夏の暑い日にかき氷屋を開くとか、夏の暑い日に一緒に寝てもらうとか。

 色々と思いを馳せているが、・・・そもそも雪精は暑い季節でも活動できるのだろうか?

 いや、それ以前に生きていられるのだろうか?

 

アクア「ねぇ、何か頼まない?」

エルシャ「そうね、お腹すいたわね。」

賢治「いいな。 この調子なら、今年の冬は大丈夫だろうし。」

 

 まぁ、家を買うための資金はまた集めないといけないが、宿に泊まるくらいの金はなんとか集まったので、良しとしよう。

 それに俺は、カズマたちを助けてくれた魔法使いが気になる。

 会ったら一言お礼を言わないといけないな。

 一体どこの誰なのだろうか?

 

 

 

ー???sideー

 

 まさかこのタイミングで彼に会ってしまうとは・・・

 確かに時期的に冬将軍に襲われる頃だな、と思ってはいたけど

 

???「うぅ・・・顔が熱いです。」//////

 

 会ったのは数時間前だと言うのに、いまだに動悸が治らない。

 何せ、もう会えないと思っていた人に会えたのだ。

 自分の知っている人とは別人だとしても、彼であることは変わりない。

 

???「・・・・・・カズマ・・・」//////

 

 彼の名前を言ってみる。

 すると顔が熱くなるどころか、全身が熱く火照ってくる。

 

???「・・・カズマ・・・カズマ♡」//////

 

 自分は、次に彼に会った時、果たしてどうなってしまうのだろう?




今回のストーリーを考えているときに、テレビ放送の転生したらスライムだった件 第二期後半が最終回で終わってしましましたね。
ロイ・ヴァレンタインって、ルミナス・ヴァレンタインの代わりに魔王を名乗っていましたけど、中庸道化連のラプラスにあっという間に殺されてしましましたね。
小説も漫画も読んでなく、アニメの知識しかないんですけど、大物感出していた割に呆気ない幕引きだと思いました。
ロイが格下と油断していたからなのか、それともラプラスがかなりの実力者だったのか?
転スラは最近漫画を1〜3巻まで買いました、アニメも第三期が待ち遠しいですね。

このすばのアニメ第三期も始まるらしいですね。

あと、劇場版異世界カルテット〜アナザーワールド〜も楽しみです。

それでは皆さん、また次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十四話 この幽霊屋敷に祝福を

みなさんお待たせしました。
第十四話です。

今回は幽霊屋敷でのいざこざです。




賢治「・・・・・・ふわ〜・・・」ブルブル

 

 俺は宿屋の部屋の中で目が覚めた。

 やっぱりこの冬の季節、朝は寒い。

 せめてもう一枚毛布が欲しい。

 

賢治「・・・やっぱり自分の家が欲しいな。」

 

 まぁ、俺はまだいい方だろう。

 カズマなんか未だに馬小屋で生活しているみたいだし。

 カズマも自分の家が欲しいから、できるだけ出費を抑えるために馬小屋生活をしているらしい。

 だがカズマ曰く、朝起きた時たまに『まつ毛が凍っていたことがある』と言っていた。

 やっぱり俺達の世界とこっちの世界では、寒さの度合いが桁違いだな。

 アクセル周辺は豪雪地帯じゃないのがせめてもの救いだな。

 じゃないと今頃カズマの奴、凍死していてもおかしくないぞ。

 

賢治「・・・今日も頑張るか。」

 

 俺は顔を洗って、服を着替えてから宿屋を後にした。

 

 

ーアクセルの街 商業区ー

 

 偶然カズマとアクアに出会ったので、同行することにした。

 カズマは仮面ライダーになれることを抜きにすると、普通の冒険者より結構強い部類なのだが、もう少しスキルを充実させたいらしい。

 そこで来たのが、ウィズ魔道具店だ。

 

賢治「カズマもここの店主さんと知り合いだったんだな。」

カズマ「まぁな。」

 

 なんでも以前、『ゾンビメーカー討伐』のクエストを受けたときに墓地で知り合ったとか。

 なんでそんなところにウィズがいたんだろうか?

 そんなことお考えていると、店についた。

 

カズマ「着いたな。」

  「アクア、一応言っておくが絶対に暴れるなよ。」

アクア「ちょっと! カズマは私をなんだと思ってるの!」

  「私、チンピラや無法者じゃないのよ! 女神よ私は!」

賢治「?」

 

 アクアが騒がしいのはいつものことだが、この店にアクアが暴れる様な事があるのだろうか?

 まだ騒いでるアクアを無視して、カズマが店に入って行く。

 それを追うようにアクアと俺が続いて入って行く。

 中には店の商品を磨いているウィズがいた。

 

ウィズ「! いらっしゃいませ。」

アクア「?」

ウィズ「? ・・・あああああああ!!」

アクア「ああああああ!!」

賢治「?! なんだ?」

 

 ウィズがこちらに向かって挨拶おしたと思ったら、アクアを見た途端叫び出した。

 それを見たアクアが同じく叫び声を上げると、ウィズに向かっていった。

 

アクア「出たわねこのクソアンデット!」

  「あんた! こんなところで店なんて構えたの!!」

ウィズ「ひいいぃぃ。」

賢治「? アンデット?」

 

 ウィズが?

 ・・・・・・いやまさか。

 

アクア「私が日々馬小屋で寝泊まりしているのに、あんたはお店の経営者って訳!?」

  「ふざけんじゃないわよ!!? こんな店、神の名の下に燃やしてやるわ!!」

 

 なんだか物騒なことを言っている。

 そろそろウィズを助けようかと思っていると、カズマがジカンザックスを手に持ちアクアの背後に近づき

 

 ガン!!

 

アクア「!!! ・・・クゥゥゥゥゥゥ・・・」

賢治「・・・oh。」

 

 ジカンザックスの側面でアクアの頭部を、思いっきりぶっ叩いた。

 実に痛そうにアクアがその場に蹲っている。

 最近のカズマは容赦がなくなってきている気がする。

 まぁ、アクアは甘やかすと調子に乗るからこれくらいが丁度いいのかもしれないけど?

 

ウィズ「ハッ?!」

カズマ「よっ、ウィズ。 久しぶり。」

賢治「俺も久しぶりだな。」

ウィズ「カズマさん。ケンジさん。」

 

 

 しばらくして、アクアも多少は落ち着いたのか、今は大人しくしている。

 ウィズの店のテーブルと椅子に腰掛け、不貞腐れているが。

 

アクア「・・・・・・お茶も出ないのかしら、この店。」

ウィズ「はっ! す、すみません!」

  「今お持ちしますので。」

 

 そう言って店の裏に消えていったウィズ。

 慌ててお茶の用意をしているのか、『パリン!』と、何かが割れるような音が聞こえてくる。

 ・・・・・・わざわざそこまでする必要はないと思うが?

 そして、カズマから聞いたがウィズは確かに人間ではなかった。

 能力透視でも確認済みだから間違いない。

 それ意外にもやばい事が分かったけどな。

 

 彼女は『リッチー』という、高位のアンデッドなのだ。

 『ノー・ライフ・キング』とも言われているらしい。

 カズマ達が受けた『ゾンビメーカー討伐』のクエストで彼女がいたのは、定期的に彷徨える魂を天に還してあげていたようだ。

 カズマ達は彼女を見逃す代わりに、定期的にウィズの代わりに除霊を行う事になったのだ。

 この街の聖職者はきちんと仕事をしていないのだろうか?

 

 少ししたら、ウィズがお茶を持ってきてくれた。

 なんだか申し訳ないが、いただくことにした。

 

アクア「・・・!」(美味しい!)

  「・・・アンデッドの癖に店なんて出して、アンデッドの癖に温かいお茶なんて出して・・・」

ウィズ「すみませんすみません! 私ばかりがこんな贅沢して!」

 

 謝っているけど、地味に嫌味っぽいことを言っているな。

 無自覚なんだろうけど。

 俺も飲んでみたが、確かに温かいし美味しかった。

 

カズマ「・・・なぁウィズ、スキルポイントに余裕ができたから、何かスキルを教えてくれないか?」

アクア「ブーーーーーーーー!!!」

カズマ「おわ!!」

 

 アクアが思いっきり噴いた。

 カズマは避ける事ができず、噴き出たお茶を顔面から受けた。

 

アクア「ちょっとカズマ! 女神の従者がアンデットのスキルを覚えるとか見過ごせないわよ!!」

カズマ「誰が従者だ!」

 

 まぁ、従者ではないな。

 仲間ではあるけど、カズマはどう思っているんだろう?

 

アクア「いいカズマ。 リッチーはね、暗くてジメジメした所が大好きな、言ってみれば『ナメクジの親戚』みたいな連中なのよ。」

ウィズ「酷い!!」

 

 高位のアンデットをナメクジとか・・・

 ウィズの言う通り、流石にひどすぎだろ。

 

カズマ「いや、リッチーのスキルなんて普通覚えられないだろ。」

  「そんなスキルが使えれば、うちのパーティの戦力アップになると思ってな。」

賢治「・・・て言うかカズマ、お前あのデュラハンのスキル『魔眼』を習得しているよな。」

アクア・ウィズ「え?!」

カズマ「あっ! 気付いていたのか?」

賢治「まぁな。」

 

 カズマはいつの間にかベルディアのスキル、『魔眼』を覚えていたのだ。

 視界に魔力の流れが映し出されるスキルだ。

 ベルディアの場合、自分の頭部を頭上に投げることで、自身の胴体の周囲の状況を的確に捉え、必要最低限の動きで攻撃と回避を行っていたのだ。

 魔力の流れを見ると言うことは、索敵にも使えると言うことだから、結構便利なスキルだ。

 ただ、元がデュラハンの使っていたスキルなだけに、消費する魔力が多く発動すると解除するまで魔力を消費し続けるため、今のカズマだと3分が限界だろうな。

 

ウィズ「そう言えば皆さん、あのベルディアさんを倒したんですよね。」

  「あの方は、幹部の中でも剣の腕だけはトップクラスの実力でしたのに、凄いですね。」

カズマ「・・・なんか、ベルディアのことを知っているような口ぶりだけど?」

 

 まぁ、知っていて当然だろう。

 だって彼女は・・・

 

ウィズ「はい。 私、魔王軍の九人いる幹部のうちの一人なので。」

アクア「確保おおおおおおお!!!」

ウィズ「きゃああ!!」

 

 ウィズが魔王軍の幹部だと分かるとアクアがウィズに覆い被さり、背中から押さえつけた。

 ただでさえアンデットを毛嫌いしているのに、目の前にいる相手が魔王軍の幹部なら尚更だろう。

 

ウィズ「アクア様! お願いです、話を聞いてください!!」

アクア「やったわねカズマ、賢治、これでまた一人幹部を倒せるわね。」

カズマ「おい、ちょっと待てよ!」

  「え〜っと、流石に魔王軍の幹部というなら、冒険者として見過ごせないんだけど?」

ウィズ「違うんです! 『魔王城の結界の維持にのために協力してくれ』と頼まれたんです。」

  「もちろん今まで人に危害を加えていませんし、私を倒してもそもそも懸賞金もかかっていませんから。」

「「「・・・・・・」」」

アクア「・・・よく分かんないけど、とりあえず浄化しておくわ。」

ウィズ「ヒイイィィィィィィ!!!」

賢治・カズマ「やめんかい!!」

 

 

 アクアをなんとか止めて、改めてウィズの話を聞くと

 ウィズは魔王城の結界を維持しているだけの、『なんちゃって幹部』で人里で店を出すのは構わないから、せめて結界の維持は協力して欲しいと頼まれたらしい。

 条件として、お互いの行うことには干渉しないし敵対もしない、ただ戦闘に携わる者以外の人間を殺した場合は干渉するし場合によっては敵対行為もする。

 これを条件に魔王の頼みを受けたらしい。

 魔王城の結界は幹部が残り2・3人になったら、ウィズ曰くアクアなら強引に結界を破れるらしい。

 アクアは、『本気を出せば魔王城の結界なんて簡単に破れる』と言っていたが、今結界を破ってもベルディア相手に苦戦した俺達が行っても返り討ちに遭うだろうから今すぐは論外だ。

 あとこれは、どうしても確認したかった事だからやったのだが。

 ウィズはリッチーになる前は、冒険者でありアークウィザードとして結構名が売れていたらしい。

 だから、彼女が持っている冒険者カードを見せてもらった。

 おかげで確認したいことも確認できた。

 最後に一つ。

 

賢治「・・・なぁウィズ。」

ウィズ「はい?」

賢治「ウィズって、人間か? それとも、人に害を及ぼすアンデットか?」

ウィズ「!!!」

 

 これがどうしても聞いておきたかった。

 今のウィズを否定する訳じゃないが、聞いておきたい。

 

ウィズ「・・・今でも、心は人間のつもりです・・・」

賢治「・・・そっか。」

  「カズマ、アクア、ウィズは信じていいと思うぞ。」

 

 俺はウィズを信じることにした。

 さっき冒険者カードを確認したら、討伐項目に人間の表記がなかった。

 これが示すことは、ウィズの『人に危害を加えていない』という言葉は本当だと思う。

 何より彼女のことは、そんなに長い付き合いでもないが、彼女が優しいということは十分知っているつもりだ。

 天然で商売下手なのが残念だが。

 

カズマ「俺は元々そんなに警戒してないから、いいと思うぞ。」

賢治「アクアは?」

アクア「・・・分かったわよ!」

  「アンデットなんかと必要以上に仲良くするつもりはないけど、取り敢えず攻撃はしないわ。」

賢治「ありがとな、アクア。」

アクア「・・・・・・フン!」//////

ウィズ「皆さん・・・ありがとうございます!」

 

 ウィズは目にうっすらと涙を浮かべて、俺達に頭を下げてきた。

 取り敢えずこの問題に関しては、もう済んだな。

 

カズマ「でもいいのか?」

ウィズ「はい?」

カズマ「ベルディアを倒した俺達に恨みとか・・・」

ウィズ「・・・ベルディアさんとは、それほど仲が良かったわけではありませんし、それに・・・」

賢治「それに?」

ウィズ「・・・いつも自分の頭を私の足元に転がしてきて・・・・・・スカートの中を覗こうとするような人でしたから・・・」//////

「「「・・・・・・」」」

 

 ベルディアの奴、そんなことをしていたのか!?

 魔王軍の幹部にしては、なかなか男気がある奴だと思っていたのに。

 もういなくなった奴だけど、評価を改めないといけないようだな。

 ちなみにウィズもアナザーライドウォッチを持っており、そのウォッチは『ウィザード』だった。

 流石にこれは破壊しようとしたが、ウィズが待ったをかけた。

 ウィズはどうしてもやらなければならない事があり、もうしばらくウォッチを使わせて欲しいと言ってきた。

 まぁ、彼女なら力に飲まれることも、間違った使い方をすることもないだろう。

 しばらくは見守ろう。

 

 

 その後、カズマは改めてウィズにスキルを教えてもらった。

 一つは、『ドレインタッチ』。

 魔力や体力を吸い取ったり、逆に分け与えたりする事ができるスキルだ。

 もう一つが、『ギャンブル・カード』。

 スキルを発動すると5枚のトランプのカードが出現し、役とカードの数字によっていろんなスキルが使えるスキルだ。

 役の強さと数字の強さはポーカーと同じで、どんな効果のスキルが当たるかはやってみないとわからない、まさしくギャンブルなスキルである。

 幸運の数値が高いほど強い役を引く確率が増して、1日3回までしか使えず、一度使った後にもう一度使うとその前に引き当てたスキルはなくなってしまう。

 スキルの保持時間は24時間続く。

 試しに使ってみたら、エースのスリーカードが出て、手に入れたスキルが『ターンアンデット』だった。

 流石にウィズで試すわけにはいかず、どうするか迷っていると、店にある屋敷を管理している人が飛び込んできた。

 

 

 ウィズの仲介で俺達はウィズの店を訪ねてきた管理人の依頼を受けることにした。

 依頼の内容は『幽霊屋敷の除霊』だ。

 

賢治「ここがその幽霊屋敷か。」

めぐみん「元々は、貴族の別荘だったみたいですよ。」

 

 俺達は今、それぞれの私物一式を纏めて屋敷の門の前に立っている。

 まるで引っ越しでもするみたいだが、まぁその通りである。

 

アクア「悪くない、悪くないわ。」

  「私達にピッタリの屋敷じゃない!」

ダクネス「しかし、除霊が成功した暁には、報酬としてこの屋敷に住んでいいとは、太っ腹な管理人さんだな。」

 

 そう、この依頼が成功したらこの屋敷に住めることになったのだ。

 冒険者が住むことで、この屋敷はもう大丈夫だということを広めたいのだろう。

 

カズマ「ただ管理人さんが言うには、祓っても祓っても次々に新しい霊が住み着いてしまうみたいでな。」

 

 最初はこの街の教会に頼んでいたのだが、『お布施』と称して高い金額を支払って除霊をしたにも関わらず、次の日にはまた霊が住み着いてしまって、冒険者ギルドにも依頼したのだが結果は変わらず、藁にもすがる思いでウィズに頼みにきたらしい。

 

アクア「任せてよ! 私はアークプリーストにして女神、いわば対アンデットのエキスパートよ。」

  「フッ・・・・・・・・・・」

 

 アクアが両手を突き出し集中すると、アクアの体が光り始めた。

 こういうのを見ると、改めてアクアが『女神なんだな』と思う。

 

アクア「・・・・・・見える・・・見えるわ。」

  「この屋敷には、貴族が遊び半分で手を出したメイドとの間にできた子供、その隠し子が幽閉されていたようね。」

  「もともと体が弱かった貴族の男は病死、隠し子の母親も行方しれず。」

  「この屋敷に一人残された少女はやがて若くして父親と同じ病に伏して・・・」

「「「「「「・・・・・・」」」」」」

 

 急に語りだしたのでしばらく聞いていたが、ぶっちゃけなんでそんな裏事情まで分かるのだろうか?

 アクアは放っておいて残った俺達は屋敷に向かっていった。

 だが、俺はふと視線を感じて立ち止まった。

 

賢治「? ・・・・・・」

  (見られてる?)

 

 そりゃあ、幽霊屋敷なんだから、そういうのを感じてもおかしくはないと思うが。

 なんと言うか、・・・純粋というか、無邪気というか、とにかく悪意は感じない。

 

賢治(幽霊屋敷、幽霊、お化け、・・・ゴースト・・・!)

 

 俺はライオウォッチを取り出し、起動した。

 

 『ゴースト!』

 

 ゴーストウォッチを使えばこの謎の視線の正体がわかると思ったのだ。

 だが、その状態で屋敷を見てしまった。

 

賢治「・・・うげっ!!」

 

 屋敷には無数の霊魂が漂っていた。

 もともと霊感なんてなく、元いた世界でも幽霊なんて見たことがなかったけど。

 これはアカン!!

 正直言って気持ちわる!!

 唯一の救いは、ここにいる幽霊は悪霊の類ではないことだ。

 これもゴーストウォッチの力なのか、幽霊が放つ感情というか、思念みたいな物を感じ取れる様になっている。

 この幽霊達からは、・・・何と言うか『困っている』みたいな感情が感じられる。

 

賢治「・・・ふぅ〜、あんまり直視するモンじゃないな。」

  (・・・こっちか?)

 

 視線の気配を辿っていくと、そこには墓があった。

 門から入って左の隅の方、大きな木の近くにそれがあった。

 

賢治「・・・墓か? ・・・うん?」

 

 お墓の後ろ。

 大きな木の後ろにこっちを見ている女の子がいた。

 金髪の縦ロールで、青いドレスを着た可愛い女の子だ。

 その子はじっとこっちを見ている。

 

賢治「・・・こんにちは。」

???【?!?!?】サッ

 

 まさか挨拶されると思っていなかったのか、ものすごく驚いているようだ。

 木の後ろに隠れてしまったが、恐る恐るまた顔を出してきた。

 

賢治「大丈夫だぞ。 俺は何もしないから。」

 

 おれはしゃがんで、女の子と同じ高さの視線で話しかけた。

 

???【・・・お兄ちゃん、私が見えるの?】

賢治「うん。 ちゃんと見えているよ。」

 

 よかった、逃げないでくれて。

 それに、見た感じ悪い子じゃないみたいだし。

 

???【・・・初めて。】

賢治「ん?」

???【私に話しかけてくれたの、あのお店のお姉さん以外じゃ初めてなの。】

賢治「お店のお姉さん?」

???【うん。】

 

 ウィズの事だろうか?

 この屋敷のことを知っている感じだったし。

 

賢治「君は・・・幽霊だよね。」

???【・・・うん。】

賢治「おっと! まだ名前を言ってなかったね。」

  「おれは霧島賢治。 君は?」

???【・・・ア・・・】

賢治「ア?」

???【・・・アンナ・・・アンナ・フィランテ・エステロイド。】

 

 

ーカズマsideー

 

 屋敷の掃除も粗方終わり、各々の部屋割りを決めて解散となり、今夜になった。

 

カズマ「いや〜、自分の部屋があるっていいな。」

 

 あの厳しい馬小屋生活が嘘みたいだ。

 いつも隣にはアクアがいたので男の『アレコレ』もできなかったし、この開放感は素晴らしい!

 そういえば、掃除の途中から賢治が居ないことに気づいて、窓から外を見てみると屋敷の庭の隅の方で座り込んでまるで誰かと会話をしているように見えた。

 ルミにお願いして、誰がどの部屋に決まったのかは知らせてもらっている。

 ちなみに賢治は、角部屋にした。

 俺達の中で相談して、この部屋は誰が使うかを話し合ったところ、満場一致で賢治に決まったのだ。

 

 しばらく部屋で過ごしたが、何かが出てくる気配がない。

 一応敵感知は常時発動しているので、いきなり目の前に何かが現れるなんてことはないだろう。

 それに、アクアがいる。

 あいつの事だから、自分が住むこの屋敷を幽霊なんかに好きにさせる訳がない。

 一応、アークプリーストにして女神だもんな。

 

アクア「ああああああああああああああああああああ!!!!!!」

カズマ「!!? なんだ?!」

 

 俺の部屋にまで響き渡るほどのアクアの声が聞こえた。

 何事かと思って、急いでアクアの部屋まで行った。

 

カズマ「アクア! どうした!?」

アクア「うぐっ・・・グスッ・・・かじゅま〜・・・」

 

 部屋の中には、座り込んで泣いているアクアがいた。

 そして、アクアの手には空になった酒瓶があった。

 

カズマ「・・・おい、何だそれは?」

アクア「これは大事に取っておいた私の手元に一本しかない高級酒なのよ。」

  「お風呂上がりにゆっくりちびちび飲もうと思って楽しみにしてたのに・・・」

  「それが! 私が部屋に戻ってきてみてみたら、空だったのよおおおおおお!!」

カズマ「・・・・・・」

 

 心配してきてみればこれか。

 阿呆らし。

 

カズマ「そうか、じゃあおやすみ。」

 

 そう言って部屋を出ようとした時、顔を真っ赤にしてアクアが立ち上がった。

 

アクア「これはきっと悪霊に仕業よ!!」

  「ちょっとこの屋敷を探索して、目につく霊をしばき倒してくるわ!」

  「おおおおおおおおおおお!!!! 出てこいやあああああああああ!!!」

カズマ「・・・・・・寝よ。」

 

 俺は自分の部屋に戻って寝ることにした。

 その日、みんなが寝静まるまでの間、屋敷中にアクアの声が響いていた。

 

アクア「『ターンアンデット!』『ターンアンデット!』『ターンアンデット!』」

  「『ターンアンデット!』『ターンアンデット!』『ターンアンデット!』」

  「『ターンアンデット!』✨『花鳥風月!』✨『ターンアンデット!』」

  「『ターンアンデット!』『ターンアンデット!』『ターンアンデット!』」

  「『ターンアンデット!』『ターンアンデット!』『ターンアンデット!』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 深夜の屋敷の廊下。

 今、俺はどうしているかというと

 

カズマ「あああああああああああああ!!!!!」

 

 走っていた。

 走る、ただひたすら走る。

 背後から迫ってくる人形達から。

 

カズマ「怖い!怖い!怖い!何これ何これ!怖い!怖い!」

人形達【ウフフフフフフ・・・アハハハハハハハ・・・】

カズマ「いやあああああああああ!!! 『ターンアンデット!』」

 

 ゴト! ゴト! ゴト!

 

 『ギャンブル・カード』で使えるようになった『ターンアンデット』を使うも、やはりアクアほど強力じゃない。

 人形に取り憑いていた霊を、数体浄化できる程度だ。

 

カズマ「アクア!アクア!アクア様あああああああああああ!!!」

 

 アクアの名前を叫びながら、アクアの部屋のドアを開けて中に入る。

 まさかあいつに助けを求める日が来るとわ思っていなかった。

 ドアを閉めて、後ろを振り返るとそこには

 二人分の人影と、赤く光る『目』があった。

 

カズマ「いやあああああああああああああああ!!!」

めぐみん「きゃあああああああああああああああああ!!!」

エルシャ「やああああああああああああああああああ!!!」

「「「・・・・・・うん?」」」

 

 よく見るとそこに居たのは、手を繋ぎあっためぐみんとエルシャだった。

 

カズマ「何だ、めぐみんとエルシャかよ。」

  「脅かすなよ。 危うく漏らすところだったぞ。」

めぐみん「こっちのセリフですよ!」

エルシャ「よかった、カズマだったのね。 てっきりアクアかと・・・」

カズマ「そう言う二人はどうしてアクアの部屋に?」

 

 めぐみんは寝ているところに尿意が来たので、トイレに行こうとしたらあっちこっちで人形が動いていてその光景に恐怖を感じ、部屋を飛び出たらしい。

 エルシャは寝ている時に部屋の中から物音がしたので目を開けてみると、壁一面に人形が張り付いていて思わず部屋を飛び出してきて、偶然会っためぐみんと一緒に、アクアの部屋に避難したらしい。

 二人とも俺と似たような状況みたいだ。

 

カズマ「この分だと、アクアはまだ屋敷の除霊中か?」

めぐみん「そうですね、きっとダクネスも一緒にいると思います。」

 

 忘れそうだが、ダクネスはクルセイダーなのだ。

 漢字でかくと聖騎士。

 つまり、聖職者的なこともできるのだ。

 ・・・・・・流石にやばくなってきた。

 二人に耳を塞いで後ろをむいてくれと言って、ベランダから失礼しようとしたら、服の袖を掴まれた。

 その犯人はめぐみんだった。

 

カズマ「・・・おい何をする。 放してくれ。」

  「さもないと俺のズボンとこの部屋の絨毯が大変なことになる。」

めぐみん「・・・何一人でスッキリしようとしてるんですか?」

  「私達、仲間じゃないですか。 トイレだろうとどこだろうと、逝く時は一緒です。」✨✨✨

 

 ふざけるな!!

 こんな時にこいつ、仲間の絆的な何かを主張しやがった。

 大体めぐみんは以前、『紅魔族はトイレに行かない』って言ってたくせに

 

カズマ「・・・じゃあそこに空いた酒瓶が転がっているからそれを使えよ!」

めぐみん「今とんでもない事を口走りましたね! その空いた酒瓶で私に何をさせる気ですか!?」

エルシャ「・・・・・・あなた達、仲良いわね。」

カズマ・めぐみん「どこが(ですか)!!」

エルシャ(いや〜、仲良いと思うけど。)

  「・・・・・・!!!!!」

 

 エルシャが急に顔を青くして震え出した。

 俺とめぐみんはゆっくりエルシャの見ているベランダの方を向くと

 

カズマ・めぐみん「・・・・・・・・・・・・!!!!!!!!!!」

 

 そこにはベランダに続く窓全体を覆い隠す程の大量の人形達がこっちをみていた。

 

「「「ああああああああああああああああああ!!!!!!!!」」」

 

 俺達3人はまた走り出した。

 

 

 

 俺達3人は物置部屋に避難していた。

 途中、トイレに行きたかったが人形達のせいで立ち寄ることができなかった。

 正直俺の膀胱はほぼ限界に近い。

 めぐみんなんか顔を真っ赤にして、両手で股間を押さえて必死に我慢している。

 エルシャは大丈夫そうにしている。

 

めぐみん「『黒より黒く・・・闇より・・・暗き漆黒に・・・我が真紅の』」

カズマ・エルシャ「!!!」

 

 我慢のしすぎか恐怖のせいか、正常な判断ができなくなったのか、めぐみんが詠唱を始めた。

 気持ちはわかるがちょっと待て!

 

カズマ「ちょっ! よせめぐみんこの屋敷ごと吹き飛ばすつもりか!?」

エルシャ「めぐみん頑張って! あなたは我慢ができる子よ!」

めぐみん「ーーーーーーーーー!!!」フルフル!!

 

 めぐみんが口をキュ〜っと閉ざして、目に涙を溜めながら首を横に振っている。

 我慢の限界に来ているのか、喋る余裕がもうないようだ。

 その時、部屋の扉が『バン!バン!』と音を立てて揺れた。

 

カズマ「くっ、やるしかなか。」

  「めぐみん、エルシャ俺が扉を開けたら走れ。」

エルシャ「カズマ、大丈夫なの?」

めぐみん「!!?」

カズマ「何とかする、覚えたての『ドレインタッチ』と『ターンアンデット』があればいけるだろう。」

 

 俺は扉のノブに手をかけて、息をすき込んだ。

 

カズマ「おらあああああああああ!! かかって来いやあああああああああ!!」

  「後でうちの狂犬女神けしかけんぞこらああああああああああああ!!!」

 

 勢いよくドアを開くと

 

 ゴチン!!

 

 何かにぶつかった音がした。

 

「「「・・・?」」」

 

???「お・・・おおお・・お・・・お・・・おお・・・」

???「はわわ!! お兄ちゃん大丈夫?!」

カズマ「・・・賢治?」

エルシャ「・・・と、誰?」

めぐみん「ーーーーーーーーーーー!!!」ドドドドドドドドドド!!!

 

 そこには頭を押さえて座り込む賢治と、それを心配する女の子がいた。

 めぐみんはものすごい勢いで手入れに向かって走っていった。

 

 

 

ー賢治sideー

 

 アンナとお墓の前でお話をした後、彼女と一緒に屋敷に入った。

 いつの間にか夜になっていたからビビった。

 誰か呼んでくれればいいのに。

 まぁ、アンナが楽しそうに話を聞いてくれるのが嬉しかったのもあるが。

 アンナと共に屋敷の中に入ると、まず目の前をアクアが走っていった。

 夜中なのにまだ除霊を続けているようだ。

 その後ろをダクネスが、何かを期待するように後に続いている。

 

 そこへ、ルミがやって来た。

 彼女の話だと、すでに部屋割りは終わっているらしく俺は2階の一番大きな角部屋にしてくれたらしい。

 何だか少し申し訳ない気持ちになったが、ここはありがたく使わせて貰おう。

 

アンナ「良かったね、お兄ちゃん。」

賢治「うん、ありがとう。」

アンナ「! エヘヘ。」

 

 思わず、アンナの頭を撫でてしまった。

 丁度良い所に彼女の頭があったのと、撫でてあげたい衝動に駆られてしまった。

 

ルミ「? マスター、こちらのお嬢様は?」

賢治「あぁ、この子は・・・」

 

 その時、めぐみんとエルシャ、暫くしてカズマの悲鳴が聞こえた。

 

「「「?!!」」」

 

 何やらただならぬ状況みたいだ。

 

賢治「ルミ、すぐにアクアとダクネスを呼んできてくれ。」

ルミ「わかりました。 しかしお二人は何処に?」

アンナ「あっち! 広間の方だよ、お姉ちゃん。」

ルミ「有難う御座います。 では!」

 

 ルミは即座に駆け出した。

 俺達も二階へ上がり、声がした方に向かって走り出した。

 すると廊下には、たくさんの人形達が転がっていた。

 

賢治「何だこの人形は?」

アンナ「あ! もしかして・・・」

賢治「アンナ、何か知ってるのか?」

アンナ「うん、多分・・・ここに集まった幽霊さん達が皆んなに悪戯してるのかも。」

 

 アンナ曰く、ここの屋敷にやって来た住人達は、全員1日も保たずに引っ越していくのだ。

 それは、独りぼっちのアンナを見かねた幽霊達が彼女を笑わせようと、人形に取り憑いて住人に悪戯をして回っているからなのだ。

 アンナも最初は面白がって自分も参加していたが、何年も経つにつれて罪悪感が芽生え始めて、他の幽霊達にもうやめるように説得したが、誰も聞いてくれなくなったのだ。

 そのせいでアンナが余計孤独になっているのにも気付いていない。

 

アンナ「お兄ちゃん、ここに居る皆んなを天国に行かせてあげて!」

賢治「・・・わかった! やってみよう。」

 

 『ジオウ!』『ゴースト!』

 

 ウォッチを起動させて、ドライバーを呼び出し、ジオウとゴーストのウォッチをセットする。

 

賢治「変身!」

 

『ライダータイム!』『仮面ライダー・ジオウ!』『アーマータイム! カイガン! ゴースト!』

 

 俺は仮面ライダージオウ・ゴーストアーマーに変身した。

 両手で印を結び、人魂と目玉が一つになった黄金の紋章を出現させ、それを目の前にいる霊魂に向かって放った。

 すると、霊魂達は『ボエ〜〜』っと声を上げながら、天に昇って行った。

 

賢治「・・・上手くいったか?」

アンナ「うん。 ちゃんと天国に行けたみたい。」

賢治「そっか。」

 

 それから俺はアンナと一緒に霊魂達を除霊して回った。

 そして一箇所、人形達が密集している部屋の前に来た。

 

賢治「何かイッパイいる!!」

アンナ「お兄ちゃん。、多分ここにいるみんなで全部だと思う。」

賢治「よし! ハッ!!」

 

 黄金の紋章を人形達に当てると、扉に張り付いていた人形達は一斉に床に落ちていった。

 アンナがこれで最後だと言っていたので、俺は変身を解いた。

 扉を開けようとすると

 

カズマ「おらあああああああああ!! かかって来いやあああああああああ!!」

  「後でうちの狂犬女神けしかけんぞこらああああああああああああ!!!」

 

 と言う叫び声と共に、勢いよく扉が開かれた。

 そのせいで額をぶつけてしまった。

 

賢治 ゴチン!! 「オゴっ!!」

  「お・・・おおお・・お・・・お・・・おお・・・」

アンナ「はわわ!! お兄ちゃん大丈夫?!」

カズマ「・・・賢治?」

エルシャ「・・・と、誰?」

めぐみん「ーーーーーーーーーーー!!!」ドドドドドドドドドド!!!

 

 扉の中から、カズマとエルシャが出てきて、めぐみんが物凄い勢いで走っていった。

 

 

 除霊が終わり、屋敷の一階のリビングにメンバー全員が集合していた。

 まずはアンナに皆んなの事を紹介した。

 次いでアンナの自己紹介が終わると、アクアが真っ先に驚いた。

 

アクア「ちょ・・・どうしてこの屋敷で病死した女の子が今ここにいるの!!?」

「「「「「え?!」」」」」

 

 そう、彼女はアクアが屋敷の門の前で語っていた、『貴族が遊び半分で手を出したメイドとの間にできた子供』なのだ。

 ちなみに何で実体を持っているのかというと。

 俺はゴーストライドウォッチの力を使って、ブランク眼魂を作りその眼魂にアンナの魂を憑依させたのだ。

 そうして出来上がったのが、『アンナ眼魂』である。

 眼魂を起動すると、実体を持ったアンナが現れたのだ。

 原作『仮面ライダーゴースト』の『天空寺タケル』と同じ状態なのだ。

 ただ、天空寺タケルの場合99日で魂が消滅してしまうが、多分アンナは大丈夫だと思う。

 勘だけど。

 そんな状態のアンナだが、幽霊を見たり、ポルターガイストを使ったり、壁をすり抜けたり、霊体だった頃に出来たことは今でもできるらしい。

 そんなアンナが俺達に

 

アンナ「私もお兄ちゃん達と一緒にいていい?」

 

 と聞いてきた。

 俺はまるで妹ができたみたいで嬉しいから、OKを出した。

 

カズマ「俺もいいと思うぜ、そもそもアンナはこの屋敷の元の住人なんだから追い出すのはなんか違うだろ。」

めぐみん「寧ろ、私達の方が他所者ですから、しっかりアンナの許可を得るべきでしょうね。」

 

 皆んなアンナを快く受け入れてくれているようだ。

 肝心のアクアはというと

 

アクア「・・・何よ、私がこの子を浄化するとでも思ってるの?」

  「いくら何でもそんな事しないわよ。 この子の魂すごく綺麗だもの。」

 

 アクアも認めてくれたようで何よりだ。

 これで、この屋敷の幽霊騒動は落ち着きそうだ。

 

カズマ「けど、何でこんなにたくさんの幽霊がこの屋敷に来てたんだろうな?」

 

 確かにもっともな意見だ。

 確かこの近くに共同墓地があったはずなのに、何でだろう?

 

アンナ「あ! 私知ってるよ! 幽霊のみんなから聞いたよ。」

 

 アンナが聞いたのは、この屋敷の近くにある共同墓地に誰かが悪戯で巨大な結界を張ったらしい。

 その所為で、本来ならそこの墓地に集まるはずの幽霊達が、この屋敷にやって来たのだ。

 

アンナ「『誰がこんな事をしたんだ!?』ってみんな困ってた。」

 

 ・・・・・・待てよ、なんか繋がりそうな予感がする。

 チラッとアクアの方を見ると、青くなって小刻みに震えていた。

 これはもう確定だろ。

 

カズマ「おいアクア。」

アクア「ヒャ! ヒャイ!!」

カズマ「心当たりがあるのなら、話せ。」

アクア「・・・・・・はい。」

 

 アクアの話はこうだ。

 以前ウィズの代わりに墓地の除霊を頼まれたが、いちいち墓地まで行くのは面倒なので、いっそ霊の住む場所をなくして仕舞えば、そのうち他所に散ってくれると思って、割と本気の結界を張ったのだ。

 つまり、ここ最近のこの屋敷の幽霊騒ぎは全部アクアが墓地に結界を張ったのが原因ということだ。

 それを聞いたアンナが

 

アンナ「ねぇ、お姉ちゃん。」

アクア「な・・・何?」

アンナ「お姉ちゃんって、アークプリースト様なんだよね。」

アクア「えぇ、そうよ。」

アンナ「・・・・・・ちゃんとお仕事して!!」

アクア グサッ!!

 

 この一言が相当こたえたのか、アクアは墓地の除霊を真面目に行う様になるのだった。

 

 

 夜があけ、朝がやってきた。

 俺はアンナの墓石の掃除をしていた。

 屋敷の管理人さんに事情を話したらこれからもこの屋敷に住んでいいことになった。

 これでようやく、地に足のついた生活ができそうである。

 新たに、アンナ・フィランテ・エステロイドという住人が加わり、さらに賑やかになりそうだ。

 




みなさん呼んでくれて有難う御座いました。

アンナに関しては、全く情報がなかったので自分の独断で『チート薬師のスローライフ』に登場する、キャラクターのエレインをモデルにしています。
彼女の髪を金髪にして、服を青くしたイメージです。

最近はアニメだと
『メガトン級ムサシ』
『世界最高の暗殺者、異世界貴族に転生する』
『境界戦機』
など、色々見ています。
 
ゲームだと、10月28日発売のスーパーロボット大戦30も楽しみです。

次回も読んでくれると嬉しいです。
それでは、また次回


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十五話 もう一人の転生者に祝福を

みなさんお待たせしました。

第十五話です。

この回から、オリ主の彼女、オリヒロが登場します。
二人の出会いから、イチャイチャする回です。
どうか呼んであげてください。

それでは、第十五話をどうぞ。


???「・・・・・・・・・・ん? ・・・うん?」

  「・・・・・・あれ? どこ、ここ?」

 

 私は気が付いたら暗いところにいた。

 どうやら私は椅子に座っているようだ。

 目の前には今私が座っている椅子と同じ椅子が置いてある。

 

???「私・・・何でこんなところに?」

 

 確か私は自分の部屋にいたはず?

 そこで私は撮り溜めていた特撮番組を見ていた。

 それは、『仮面ライダーゼロワン』。

 元号が令和に変わり、最初の仮面ライダー。

 令和第一号の仮面ライダーだ。

 

 舞台はAIが発達し、人工知能搭載型ロボット『ヒューマギア』が開発され、人間の様々な仕事をサポートし活躍する時代。

 ヒューマギアを開発製造する『飛電インテリジェンス』の二台目社長・飛電或人が仮面ライダーゼロワンとなり暴走したヒューマギアを操るサイバーテロリスト、『滅亡迅雷.net』との戦いを描く物語だ。

 私はついさっきまでその最終回を見ていた。

 

???「・・・うん、ここまではちゃんと覚えてる。」

 

 

 その後に、物凄い怠惰感と眠気が襲ってきて、気がついたらここにいた。

 いったい何があったのだろう?

 

???「お目覚めですか。」

???「え?!」

 

 いつの間にそこにいたのか、私の目の前の椅子に女性が座っていた。

 紺色の服に綺麗な銀髪の、同じ女の私から見ても思わず見惚れてしまうほどの美人が今目の前にいた。

 

???「・・・あの、貴方は?」

???「初めまして、私はエリス。」

  「幸運の女神・エリスです。」

???「・・・え? 女神様?」

エリス「はい。」

 

 いや、いきなり女神と言われても・・・

 失礼かもだけど、正直胡散臭い。

 誰かに誘拐でもされたのだろうか?

 だが、私を誘拐しても得をすることなんて無いと思う。

 ・・・ドッキリ?

 

エリス「流石に、信じられませんか?」

???「えぇ、まぁ。」

エリス「う〜ん、証拠になるかわかりませんが?」

  「今の貴方の体を確認していただけますか?」

???「え? 体ですか?」

エリス「はい。 貴方が最後に見た自分の姿はどんな姿でしたか?」

 

 そう言われたので、確認してみる。

 すると、確かに変だった。

 私が最後に見た自分は、肌は荒れ、頬は痩け、手や足はガリガリに痩せ細っていたはず。

 最近は、筋力が落ち、まともに歩くことすら出来ていなかったはず。

 それが今は肌は張りがあり艶々している。

 手足にもきちんと肉と筋肉が付いている。

 まるで、1年前の自分に戻ったようだ。

 

???「あの・・・これって・・・」

エリス「はい。 私の権限で一年前の貴方の体に戻しておきました。」

???「・・・マジ?!」

エリス「マジです。」

 

 これはもう、認めるしかないかな?

 

エリス「それからもう一つ、貴方に伝えなければならない事があります。」

???「・・・何ですか?」

 

 待って、これって・・・

 最近の漫画やアニメでよくある展開じゃあ・・・

 

エリス「『沖田零子』さん、貴方の人生は終わってしまいました。」

零子「・・・」(やっぱりーーー!!!)

 

 正直、心当たりがあり過ぎる。

 私はある事がきっかけで、一年前から生きる気力を失ってしまっていたのだ。

 勤めていたゲーム会社も仕事が手に付かず、結局会社を辞めることになった。

 それからは、部屋に引き篭もる様になり、満足に食事も喉を通らずほとんどゼリーで済ませていた。

 確か3日ほど前から、貯金もなくなりついに何も食べなくなったのだ。

 そして仮面ライダーゼロワンの最終回の日曜日の日に、ついに力尽きたのだろう。

 

零子「ちなみに、私の死因は何ですか?」

エリス「極度の栄養失調による餓死です。」

零子「ですよね。」

 

 あんな生活をしていて、よく一年も生きていられたものだ。

 おそらく、『仮面ライダーゼロワンを最終回まで見なければ』という一心で生きていたのだろう。

 

エリス「それでですね、零子さん。」

  「貴方には、三つの選択肢があります。」

零子「え? 三つ?」

 

 エリス様のいう選択肢とはこうだ。

 一つ、天国に行くこと。

 二つ、記憶をリセットし、元の世界で輪廻転生すること。

 三つ、今の記憶を保持したまま、転生特典を与えられ、別の世界に転生すること。

 

 一つ目は文字通り、天国に行くこと。

 ただ、天国には何もなく日々をぼーっとして過ごすだけの世界らしい。

 天国ってもっといいところなイメージがあったのに、実際はこんなものなのか?

 

 二つ目は記憶を消して、元の世界で赤子からやり直すということ。

 これは普通の輪廻転生だ。

 

 そして三つ目、こっちは正直胸躍る選択だ。

 異世界転生なんて、ゲームや漫画・アニメなどでよくある話を自分が体験できるなんて。

 

零子(あ! 待って・・・)

 

 そうだ。

 いくら元の記憶を持って異世界に転生したところで、『彼』が居ないんじゃしょうがない。

 『彼』以上に自分と気の合う人なんてこれまで居なかった。

 エリス様には悪いけど、『彼』が居ない世界で生きても虚しいだけだ。

 そんな私を見ていたエリス様が

 

エリス「零子さん、これはここだけの話ですが、実は貴方の『大事な人』は今異世界で頑張っていますよ。」

零子「・・・・・・え?」

 

 私の大事な人・・・それって・・・

 

零子「あの・・・それってもしかして。」

エリス「はい。 霧島賢治さんです。」

零子「!!?」

 

 エリス様のいう事が本当なら、彼は異世界転生したということだ。

 霧島賢治、それは今から一年と二週間前に交通事故で死んでしまった私の恋人だ。

 彼とは職場である事が切っ掛けで偶然出会い、趣味や好きな物が同じだたことから意気投合し、彼から告白をされ恋人同士になったのだ。

 私が無気力になったのは、彼が死んでからだ。

 そんな彼にもう一度会えるなら。

 

零子「エリス様、私も彼のいる世界に転生できるんですか?」

エリス「もちろんですよ。 そのつもりで貴方にこの話をしているのですから。」

零子「でしたら、私を異世界に転生してください。」

エリス「はい。 わかりました。」

  「では、転生特典を選んでいただけますか。」

 

 あ! そう言えば転生特典をもらえるんだっけ?

 何にしよう?

 エリス様から転生特典のリストをめせてもらったが、いまいちピンとこない。

 

零子「ちなみに彼はどんな特典を選んだんですか?」

エリス「賢治さんは、『仮面ライダージオウに関する全て』ですね。」

零子「・・・・・・・・・・へ?」

  「・・・有りなんですか? それ。」

エリス「上司からOKが出たので有りです。」

零子「マジですか?」

エリス「マジです。」

 

 けど、それがいいのなら・・・

 

零子「じゃあ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零子「・・・どうでしょう?」

 

 私はエリス様に、自分の思う転生特典を伝えると、許可が降りるかどうかを確認している。

 どうやら彼の時もこんな事があったらしい。

 まぁ、転生特典が『仮面ライダージオウに関する全て』じゃね。

 すると、エリス様がこっちを振り向いて。

 

エリス「・・・OKが出ました。」

零子「!! やった!」

  「・・・・・・でも・・・本当にいいんですか?」

エリス「『すでに前例があるので、今更だ』と言ってました。」

零子「・・・あぁ〜・・・」

 

 と言う訳で、私は転生特典を与えられ、彼のいる世界に転生した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー賢治sideー

 

 今俺は、アクセルの街を散策している。

 思えば今日まで街を見て回った事がなかった。

 今日は気分を変えてみようと思い、街にいる。

 『駆け出しの街』と言う割にこの街は、結構大きな街だと思う。

 王都や周辺の街に比べると、平和だと思う。

 途中、屋台の料理や飲み物を買いながら、歩いていると道を行ったり来たりしている三人組がいた。

 一人はカズマだが、もう二人は確か・・・

 

賢治「・・・何してんだお前ら?」

「「「!!!」」」

 

 三人は非常に驚いた様子で、こっちを見た。

 カズマ以外のもう二人は、ダストとキースだった。

 この二人はお互いパーティメンバーで、他にテイラーとリーンという冒険者と組んでいる。

 カズマと彼らは一応友人で、よく連んでいる。

 カズマにスキル・狙撃を伝授したのもキースである。

 だが、どちらかと言えば評判は良くないチンピラの類である。

 キースはダストほどではないが。

 ダストは『アクセル随一のチンピラ冒険者』と言われるほど素行が悪く悪目立ちしており、留置所の常連者である。

 そんな二人とカズマが一緒にいる時点で、何か碌でも無いことでも企んでいるのだろうか?

 

カズマ「なんだ、賢治かよ。」

ダスト「ビックリしたぜ。」

キース「まぁ、俺達も挙動不審だっただろうけど。」

 

 一応自覚はあるんだな。

 三人の背後には、薄暗い通路があるが・・・確かこの先は

 

カズマ「実はこの先にはな・・・」

 

 これは男の冒険者たちの間では暗黙の了解になっている事だ。

 今俺達がいるこの通路の先にはサキュバス達がコッソリと店を開いているらしい。

 

賢治「あぁ、それな。」

ダスト「え?」

キース「もしかして・・・」

賢治「知ってるぞ。」

 

 そう。

 以前間違えてこの店に入ってしまったのだ。

 表の顔は、飲食店なのだが。

 最初この店に入った時は、心臓が飛び出るかと思った。

 サキュバスと言うものがどういう存在か知ってはいたが、店の中にいたサキュバス達は全員かなり際どい衣装を着ていた。

 その全員が、思わせぶりに胸を揺らしたり、火照った体をなだめる様に扇情的なポーズを取ったりして、目のやり場に困ったものだ。

 この店のサキュバス達は、日々に糧を得るために、冒険者達に『良い夢』を見せる商売をしているのだ。

 その代わり、代金の代わりに精気を吸われるが、日常生活に支障が出ない程度に手加減はしてくれる。

 まさに、欲求不満な男冒険者達にとっては非常に有り難く、大人気なのだ。

 まぁ、俺はその時は取り敢えず、食事をしただけで夢の方は断ったが。

 

カズマ「意外だな、賢治だってそう言うのに興味あると思っていたが。」

賢治「いや、俺だって男だぞ。 興味があるに決まってるだろ。」

ダスト「じゃあ、何でだよ?」

 

 それは、もちろん。

 俺には既に心に決めて人がいるし、そう言うことはその人とだけする事にしている。

 まぁ、もう二度と会えないだろうけどな。

 

賢治「・・・まぁ、あれだ。」

  「みんなは上手くやれよ。」

カズマ「おい! 賢治。」

 

 俺は相場から離れると、改めて街の散策を再開した。

 

 

 

 屋敷に帰ると、風呂上がりの皆んながリビングのテーブルに座っていた。

 どうやら今日は鍋のようだ。

 テーブルの上には野菜各種と、『メイン』と言わんばかりに光を反射している大量の蟹があった。

 

めぐみん「はわわわわ・・・」//////

アクア「見てよ賢治! 今日の晩御飯は凄いわよ!」

  「『ルビークラブ』よ!!」

ダクネス「私の実家から引っ越し祝いに送られてきたのだ。」

賢治「そんなに良い蟹なのか?」

 

 ルビークラブ。

 それは、超高級食材である。

 捕獲自体は簡単なのだが、生息地が特殊で。

 何と海ではなく、はるか地下深くに生息しているのだ。

 しかもそこは、常に高い重力が掛かっており、行きはいいが帰りは地下深くから地上まで戻るのに重力操作系の魔道具か魔法がないと捕獲に行けないのだ。

 この世界では高級な蟹と言えば『霜降り赤蟹』と言う蟹で、こっちの方が捕獲しやすい。

 ルビークラブは霜降り赤蟹よりランクが上で、味もそうだがその殻は高級アクセサリーになるのだ。

 食材であり、アクセサリーにもなる一石二鳥な蟹、故に超高級食材なのだ。

 

アクア「超高級食材のルビークラブだけじゃなく、高級シュワシュワまであるのよ!」

  「ダクネスがいつもお世話になっている御礼ですって!」

めぐみん「まさか、生きている間にルビークラブ食べられるなんて・・・」

エルシャ「そうね! 皆んなとパーティを組んで良かったと思ったわ。」

ルミ「・・・鍋奉行は私にお任せください。」

 

 ルミはロイミュード、つまり・・・味覚がなのだ。

 なので、鍋奉行をしてもらうことになった。

 本人は『味覚がないことを、今日ほど後悔した日はありません』と言って、悔しそうにしていた。

 

アンナ「私、こんなに綺麗な蟹さんは初めて!」

 

 アンナは幸いなことに、味覚が復活していた。

 最初は久しぶりの味覚にビックリしていたが、今は楽しんでいた。

 ちなみに食べた物は、体の維持のために体内でエネルギーに変換されている。

 アンナにとってもルビークラブは今回が初めてらしい。

 見るからにウキウキしている。

 

 これは補足だが、ルビークラブは茹でるとその名の通り、綺麗な赤い色になり、その殻はルビーと同等の価値がある。

 しかし、茹でた後5分以内に専用の道具で殻を割らないと、ガチガチに固まって専用の道具でも割れなくなる。

 今回は殻割はルミに任せて、有り難く蟹をいただこう。

 

 茹で上がったルビークラブをルミが次々と剥いていく。

 その内の一つを口に頬張ってみる。

 

賢治「・・・!!」

アクア・めぐみん「・・・はあああああぁぁぁ・・・」//////

エルシャ「ーーーーーー!!」//////

アンナ「あ〜ん・・・!!」✨✨✨

 

 この蟹は本当に蟹なのか?

 蟹はこれまでの人生で2・3回しか食べた事がなかったが、そのどの蟹よりも美味い!

 皆んなも同じみたいで、次々と蟹を食べていく。

 俺も手が止まらず、1匹でも多く食べようと必死である。

 

アクア「ねぇカズマ。 火ぃ頂戴。」

  「美味しいお酒の飲み方教えてあげる。」

 

 アクアがそう言って、火鉢を差し出してきた。

 金網が乗っていて、固形燃料が入っている、料理屋とかに出てくるやつだ。

 

カズマ「おぅふぇい(OK)! ふぃんだー(ティンダー)。」

 

 カズマが初級魔法のティンダーを使うと、固形燃料に火が付き燃え始める。

 アクアは金網の上に蟹の甲羅の内側を上に向けて乗せ、底に酒を注ぐ。

 その状態で、軽く沸騰させる。

 

アクア「そろそろいいかしら。」

 

 アクアは甲羅を持つと、中に入っていた酒を飲み干した。

 

アクア「・・・・・・はあああぁぁぁ〜・・・」//////

 

 アクアが幸せそうに飲んでいるところを見ると、思わず喉が『ゴクリッ』となった。

 早速俺もやってみた。

 酒はあんまり得意じゃないが、今は飲みたい気分だ。

 そんな俺を見ていたアンナが

 

アンナ「・・・お兄ちゃん、ちょっとだけ飲んでいい?」

賢治「え? いいけど、アンナは苦手じゃないかな。」

アンナ「ちょっとだけ。 本当にちょっとだけだから。」

賢治「・・・じゃあ、ちょっとだけな。」

アンナ「うん!」

 

 そう言って俺は、アンナに酒の入った甲羅を渡した。

 アンナは生きていた頃、両親に隠れて甘いお酒を飲んでいた事がある。

 シュワシュワのような苦味のある酒はまだ早いんじゃないだろうか?

 

アンナ「・・・うぅ、苦い。」

賢治「はは、アンナにはまだ早いみたいだな。」

アンナ「む〜、皆んなは美味しそうに飲んでるのに。」

 

 今の状態のアンナが成長するかどうか分からないが、大人の舌になったら飲める様になるかもな。

 ふと横を見ると、さっきまであんなに食べていたカズマの手が止まっていた。

 

ダクネス「? どうしたカズマ。」

  「飲まないのか?」

カズマ「いやその、今日は昼間にちょっと飲んでしまってな、今晩は遠慮しておこうと思ってな。」

ダクネス「そうなのか? ではその分沢山食べてくれ、遠慮しなくても良いからな。」

賢治「・・・」(あぁ〜)

 

 これはあれだ。

 カズマの奴、サキュバスの店に入って夢を見せてもらう様に頼んだな。

 サキュバスから聞いたが、寝る前に沢山飲んだり食べたりして熟睡していますと、夢を見れない可能性があるらしい。

 それを危惧しているのだろう。

 

賢治(て言うか、カズマ。)

  (外泊しないとな。)

 

 なぜなら、この屋敷はアクアが悪霊や悪魔の類が入り込んでこないように、結界を張っているのだ。

 だから、夢を見せてもらうのなら、街の宿屋とかに外泊しないとダメなのだ。

 そう思っている内に、カズマは早々に食事を終えて、部屋に戻っていた。

 せっかくの超高級食材なのに、残念。

 

アンナ「? カズマお兄ちゃんどうしたのかな?」

賢治「あぁ〜、大丈夫だよ。」

アンナ「?」

 

 首を傾げて、『なんで?』って顔をするアンナ。

 男には色々事情があるのだよ。

 

 

 

 夕食を終え部屋に戻った俺は、今まで確認していなかったステータスを確認してみた。

 今現在のステータスがこうだ。

 

○KENJI KIRISHIMA

 

 Lv41

 職業 ルーンパラディン   SP 9118

 

 体力  85727 火 150

 魔力  26780 水 150

 力   15679 土 150

 知力  15051 風 150

 俊敏性 14892 光 150

 器用さ 15661 闇 150

 幸運  695

 

 ついに幸運以外の全ステータスが一万を超えた。

 体力なんてもうすぐ十万いきそうだ。

 そんなに硬くなった自覚は無いんだけどな。

 スキルについては変わりがないので、割愛する。

 

賢治「そろそろ寝るか。」

 

 カズマじゃないけど、良い夢が見れますように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユサユサ  ユサユサ

 

賢治(・・・・・・うん?)

 

 何だか、体が揺れる。

 一体なんだ?

 人が気持ちよく寝てるのに。

 

???「  君   ケ  ん・・・」

賢治(? 人の声?)

 

 どうやら誰かが俺の体を揺らしながら、呼んでいるようだ。

 声色からして、女か?

 エルシャかルミか・・・又はアンナか?

 

???「ケン君。 ケン君ってば。」

賢治(? ケン君?)

 

 あれ? 『ケン君』なんて呼ぶ奴なんてこの屋敷にいないはず。

 俺の事をそう呼ぶ人間なんて・・・

 

賢治「う~ん・・・ん?」

???「あ! 起きた?」

賢治「・・・・・・零子?」

零子「うん。」

 

 ・・・これは・・・そうか、夢か。

 だってこんなの、夢以外あり得ない。

 彼女がこの世界にいる筈がない。

 

零子「? どうかした?」

 

 でもおかしいな?

 俺はサキュバスに夢を頼んだ覚えがないが?

 

賢治(・・・・・・まぁ、夢なら良いか。)

 

 俺は零子の腕を引っ張った。

 

零子「キャッ!」

 

 俺は零子を抱き締めた。

 

零子「ケ・・・ケン君?」

  「ンッ!!」

 

 そして俺は彼女にキスをした。

 今日まで会えなかった、彼女に会えなかった寂しさを、夢とはいえ彼女に会えた愛しさをぶつけるように。

 

零子「んむ・・・チュッ・・・・・・プハァ!」

  「ケン君・・・」//////

 

 寝ぼけた頭ではまともな状況判断ができる筈もなく。

 『夢だから』と理由をつけて、零子を徹底的に愛でた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

賢治「・・・・・・・・・・ん?」

 

 窓から差し込む火の光で目が覚めた。

 朝が来たようだ。

 

賢治「よく寝た。」

 

 夢見が良かったからか、今朝は妙にスッキリしている。

 まさか零子が夢に出てくるなんて。

 今日はいい事がありそうだ。

 

賢治「起きるか・・・・・・うん?」

 

 起き上がって布団を退けると、なぜか裸だった。

 

賢治「あれ? ちゃんと服着て寝たはず?」

 

 両手で周りを探ると

 

???「アン!」

賢治「え?!」

 

 左手に『ムニュッ』っとした柔らかい感触と、声が聞こえた。

 声がした方を見てみると、そこには

 

???「う〜ん・・・」

賢治「!!?!?!!」

 

 俺と同じように、裸でベットに横になっている女性がいた。

 て言うか、この人は

 

賢治「零子!!」

零子「ふぇ? ・・・あ・・・ケン君、おはよう。」

賢治「・・・・・・・・・・えええええええええええええええ!!!」

零子「?!!」ビクッ!!

 

 俺は一気に目が覚めた。

 

 

 暫くして、流石に現状を認識し出した俺。

 お互いに服を着て、改めて向き合った。

 彼女は間違いなく俺が知っている、沖田零子である。

 俺が勤めていたゲーム会社で、原画担当兼グラフィッカー担当と二つの仕事を掛け持ちしていたのだ。

 彼女が生み出すキャラクターは可愛い系から格好いい系まで幅広く、有名な小説家さんからキャラクターデザインの仕事が入るくらいの腕前である。

 そんな彼女との出会いは、会社の社員食堂だった。

 たまたま偶然、彼女の隣に座った俺は持ってきた弁当を広げ、昼食を取ろうとしていたのが切っ掛けだ。

 ちなみに俺は、広報担当で食事は自炊をしていた。

 

 死んでこの世界に転生して、もう二度と会う事も無いと思っていたのに。

 これは一体どう言う事だ?

 

零子「えぇ〜っと、簡単に言うと・・・」

賢治「うん。」

零子「私もケン君と同じように死んで、この世界に転生したの。」

賢治「・・・マジか?」

零子「マジ。」

 

 零子の話だと、彼女は俺がいなくなってから、無気力になり極度に栄養失調で餓死してしまったらしい。

 その後、俺がこの世界に転生したと聞かされ、転生特典を得て、この世界に来たらしい。

 その際、俺の近くに自分が使う家を用意してもらい、俺の住んでいる場所を聞いてコッソリと部屋に入って来たのだ。

 突然目の前に現れて、俺を驚かすつもりだったらしい。

 

零子「それがまさか・・・・・・あんな事になるなんて・・・」//////

賢治「あぁ〜・・・うん・・・その〜・・・」//////

 

 正直昨夜の事は、全部夢だと思っていたから、ハメを外し過ぎたような気がする。

 本物だとわかっていたら、もっと優しくしていたのに。

 

賢治「・・・とにかく。」

零子「ん?」

賢治「会えて嬉しいよ。 零子。」

零子「!! うん! 私も嬉しい!」

 

 俺たちは感極まって、ほぼ同時に抱き締めあった。

 久しぶりの彼女はとても暖かく、いい匂いがした。

 その時

 

ウウウウウウウゥゥゥゥゥゥーーーーーーー!!

 

ルナ『デストロイヤー警報! デストロイヤー警報!』

  『冒険者の方々は至急冒険者ギルドに集まってください!』

  『繰り返します、冒険者の方々は至急冒険者ギルドに集まってください!』

 

賢治・零子「!!?」

 

 何とこのアクセルの街に『機動要塞デストロイヤー』が接近してきたのだ。

 そして、このデストロイヤーとの戦いで、俺が探していた敵と、新たな仮面ライダーの誕生の日となるのだった。

 

======================

 

人物紹介

 

名前:沖田 零子(オキタ レイコ)

 

職業:無し

 

B・W・H:83・58・84

 

趣味:特撮鑑賞(仮面ライダー)

   漫画・ゲーム

 

転生特典:(今は秘密♡)

 

容姿:全体的なイメージはFGOの刑部姫の眼鏡ありバージョン

   服装は可愛い系のギャルファッションが好き

   ゲーム会社で疲れていた所を霧島賢治に優しくされ、彼に告白され晴れて恋人同士になった。

   『本当に自分でいいのだろうか?』と悩んだこともあったが、賢治から『零子じゃないとダメ!』と言われ、それから1年間幸せな時間を過ごした。

   若干ポッチャリ体型なことを気にしているが、賢治は気にしていなくて、むしろ『どこがポッチャリしているんだ?』と不思議に思っている。

   賢治が死んでからは何事にも無気力になり、令和最新の仮面ライダー『仮面ライダーゼロワン』の最終回を見終わった時、死んでしまった。

   女神エリスの計らいで、賢治と同じ異世界に転生した。




いかがだったでしょうか?

次回はいよいよデストロイヤーとの戦いです。
オリヒロの沖田零子が変身します。

ここで報告ですが、実はもう一つ小説を書きました。
タイトルは「転生したこの男、龍で、剣士で、仮面ライダー」です。
良かったらこっちも見てください。

ただ、こっちは更新が遅めです。
「この仮面の戦士に祝福を」を優先しますので。

では、次回をお楽しみに。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十六話 この機動要塞での戦いに祝福を 前編

皆さんお待たせしました。
第十六話です。

本当は20日に投稿したかったのですが、仕事と他のゲームの攻略で忙しく、2日ほど遅れました。

この話は、賢治・ダクネス・ルミにとっては因縁の対決になります。

それでは、第十六話をどうそ。


 機動要塞デストロイヤー

 

 大昔の魔法大国が作り出した、魔王に対抗する為の兵器である。

 見た目は黒い蜘蛛の姿で、伝説の宝珠『コロナタイト』を動力源とする、永久機関を有する。

 だが、作ったはいいが起動当日に暴走を起こし、作り出した国を滅ぼしてしまったのだ。

 それ以降、誰も止めることが出来ず各地を彷徨いながら、破壊の限りを尽くしている。

 『デストロイヤーが通った後は、アクシズ教徒以外草木一本残らない』と言われ、天災の様な扱いを受けている。

 

 これまでにもデストロイヤーの破壊を試みたが、そのどれもが失敗に終わっている。

 まずデストロイヤーには、高度な結界が張られており、魔法による破壊ができない。

 地上に障害物や落とし穴の様な罠を張っても、物理的に排除される。

 空からデストロイヤー内部に入ろうとしても、光の魔法を応用した対空兵器が設置されている。

 運良く内部に入ることが出来たとしても、防衛用のゴーレムが起動し、侵入者を排除しようとする。

 

 これだけ聞くと、どう頑張っても『無理ゲー』扱いされるだろう。

 何で俺がデストロイヤーに関する情報を持って言うのかというと、零子のお陰である。

 なぜか零子は、デストロイヤーに関する詳しい情報を持っていたのだ。

 『折角手に入れた屋敷を壊されてたまるか』と俺とカズマは他のみんなを説得しギルドへ向かった。

 零子の事について聞かれたが、緊急事態だから後にしてもらった。

 ちなみに、カズマに昨日の夜のことを聞いてみると

 

カズマ「・・・・・・聞かないでくれ。」

賢治「え?」

カズマ「・・・・・・」

 

 何か、悲痛な顔をしてそう言ってきたので、深く聞かない事にした。

 

 

ーアクセルの街 冒険者ギルドー

 

ルナ「・・・皆さんがこの街の最後の砦です。」

  「どうかよろしくお願いします。」

 

 ギルドに集まった冒険者の皆は、緊張した面持ちでいた。

 無理もない。

 皆『デストロイヤーを相手にするなんて無謀』だと思っているからだ。

 だが、俺は落ち着いていた。

 情報の有る無しで、こんなに心に余裕が出来る物なんだな。

 

クリス「ねぇ、賢治。」

賢治「うん?」

クリス「何かいい方法はないかな?」

 

 エリス様ことクリスがそう聞いてきた。

 すると、その場にいる全員の視線が俺に集中する。

 正直言って、デスとレイヤーの攻略の仕方は、あらかた出来上がっている。

 情報不足の為、完璧ではない。

 が、それも対策がある。

 

賢治「じゃあ・・・」

 

 俺はダブルライドウォッチを取り出して、起動した。

 

 『ダブル!』

 

賢治「・・・さぁ、検索を始めよう。」

 

 仮面ライダーWは二人で一人の仮面ライダー。

 左 翔太郎と、その相棒のフィリップ。

 そのフィリップは、仮面ライダーWにおいて敵として登場する『ミュージアム』と言う組織のトップである『園咲琉兵衛』の息子『園崎来人』である。

 彼は一度、地球意思とのアクセスポイント(通称・泉)に転落し死亡してしまう。

 しかし、彼の体は偶然、地球の情報に触れ、奇跡的にデータとして再構築され『データ人間』として復活するのだ。

 それから彼は、地球に蓄積された情報を、『星の本棚』にアクセスし、インターネット検索の要領で地球の記憶を閲覧可能になるのだ。

 

 今俺はその能力を使っている。

 ただ、閲覧できるのは地球の記憶ではなく、この世界の記憶になる。

 

賢治「検索ワードは、『機動要塞デストロイヤー』・『設計図』。」

ダクネス「? 賢治は何をしているのだ?」

カズマ「・・・これって、まさか。」

零子「うん。 この世界・・・と言うか、この星の『星の本棚』にアクセスしてるね。」

カズマ「マジか!」

 

 ウォッチを持ち、目を閉じて集中し始めた俺を見て、ダクネスが聞いてくる。

 これは元ネタを知らないと、第三者から見ると『変な人』だろうな。

 検索すると、俺の目の前に二つの設計図が残った。

 

賢治「? 二つ?」

 

 片方を見てみると、その設計図はとても設計図とは言えない何かだった。

 まるで何かを潰した様な形だ。

 取り敢えずこっちは置いておいて、もう片方を見てみる。

 もう片方はキチンとした設計図だった。

 どこにどんな武装があるのか、動力源は何なのか、エネルギーの行き先は何処か。

 この設計図を見ていると、『機動要塞デストロイヤー』とは、確かに強力だが兵器としては欠陥だらけだな。

 

賢治「まず、デストロイヤーがどうして今も動いているのかは、今も動力源のコロナタイトからの膨大な魔力供給を受けているからだ。」

めぐみん「・・・それは知っていますよ。 それがどうしたんですか?」

賢治「それが問題なんだ。」

めぐみん「え?」

 

 そもそも動力源にコロナタイトを使ったのが間違いだ。

 需要と供給のバランスが悪い。

 移動や、移動の際に起きた熱の排出と冷却、結界の維持、対空兵器やゴーレムの維持管理。

 その他諸々含めても、供給されるエネルギーが、使用されるエネルギー量を上回っているのだ。

 これがコロナタイト以外の動力源なら、デストロイヤーも自然に活動を停止させただろうし、そもそも暴走なんかしなかっただろう。

 こう考えると、デストロイヤーの破壊が失敗してたのは、不幸中の幸いなのかもしれない。

 

ダクネス「? どう言う事なのだ?」

賢治「仮にだが、デストロイヤーの足の部分を切り離して、動けなくしたとする。」

ダクネス「うむ。」

賢治「その瞬間に、大爆発する。」

ダクネス「な?!!」

 

 そう言った瞬間、ギルド内の冒険者や職員に至るまで、絶句した。

 元々デストロイヤーには、活動を停止した際に、技術漏洩を防ぐために自爆装置が付いているのだが、エネルギーの供給先が無くなったコロナタイトのエネルギーがデストロイヤー内部で溜まっていくので、自爆装置がついていなくても、エネルギーが膨張し自然と爆発してしまう。

 それは制御装置がついている頭部部分を胴体にあるコロナタイトと切り離しても、自爆装置は止まるが行き場を無くしたコロナタイトのエネルギーが膨張し大爆発を起こす。

 どうにかしてコロナタイトの爆発を止めたとしても、デストロイヤーの内部に溜まった熱エネルギーが行き場を求めて爆発を起こす。

 結果、どう転んでも爆発すると言う結末しかない。

 

ルナ「そんな! では、そうしようもないと言う事ですか?」

賢治「いや、方法はある。」

ルナ「?!」

 

 その方法とは。

 まず、デストロイヤーの動きを封じ、その後頭部と胴体を切り離し自爆装置を止める。

 その後にデストロイヤーの内部へ入り込み、今度はコロナタイトとデストロイヤーを繋いでいる装置を切り離す。

 その後、コロナタイトに氷結系の魔法をありったけ打ち込んで氷漬けにする。

 これでコロナタイトの爆発はかなり先延ばしにできる。

 コロナタイトが離れたと同時に、デストロイヤー本体にも氷結魔法を打ち込み、内部に溜まった熱エネルギーを冷却する。

 コロナタイトを捨てに行くより、こっちの方が大変そうだ。

 

カズマ「けどよ、その後どうするんだ?」

めぐみん「コロナタイトは伝説の鉱石です。」

  「それが暴走し、爆発するとなると・・・・・・被害は考えられないくらいに甚大なものになるでしょうね。」

賢治「あぁ、だからコロナタイトは俺が責任を持って処分する。」

カズマ「え? どうやって?」

賢治「・・・宇宙に捨てにいく。」ニッ

カズマ「・・・・・・はあああぁぁぁぁぁ!!!」∑(゚Д゚)

 

 そう。

 おそらく、地上のどこにコロナタイトを捨てても、何某かその土地に悪影響をもたらすだろう。

 なら、残っているのは宇宙しかない。

 幸いにも、俺にはフォーゼのライドウォッチとタイムマジーンがある。

 フォーゼの力を使ったタイムマジーンなら、余裕で宇宙までいけるだろう。

 

零子「・・・宇宙に行くなら、私も手伝えるね。」

賢治「え? そうなのか?」

零子「うん。 だから、私も一緒に行くわ。」

賢治「・・・危険だぞ。」

零子「忘れた? 『仮面ライダーは協力』、でしょ。」

賢治「!? 零子、もしかして。」

零子 ニコニコ

 

 零子のこの表情。

 そう言う事なのか?

 彼女の転生特典は俺と同じ、『仮面ライダー』なのか、それに関する何かなのだろう。

 零子は『今は秘密ね♡』と言って、教えてくれなかった。

 

賢治「・・・わかった。」

  「一緒に来てくれるか?」

零子「えぇ、勿論よ。」

 

 零子が居てくれるのなら心強い。

 ルナさんに頼んで、急いで零子の冒険者登録を済ませてもらった。

 これで、対デストロイヤーに対する作戦は固まった。

 後はそれに向けて準備するだけだ。

 

アクア「・・・・・・」ムカムカ

  (何なのよあの女!)

  (何であんなに賢治と仲良さげなのよ! なんかムカつくわ!)

 

 アクアがそんな事を思っているなんて、気づく筈もなく。

 

 

 

 ーアクセルの街 正門前ー

 

 突貫工事ではあるが、土木工事を担当している人たちに頼んで防護柵をいくつか作ってもらった。

 焼け石に水かもしれないが、無いよりはマシだろう。

 俺の考えた作戦はこうだ。

 

 1・アクアの魔法でデストロイヤーの結界を解除してもらう。

 アクアは『やってみないと分からない。』と言っていたが、『本気を出せば魔王城の結界だって解除できる』と言っていたアクアを信じるしかない。

 

 2・途中から合流したウィズとめぐみんの爆裂魔法でデストロイヤーの全ての足を破壊する。

 ウィズには、その後に控えている本体の冷却のために、余力を残しておく様に言っておいた。

 

 3・足を失って、惰性で突っ込んでくるデストロイヤーを俺と零子で止めて、頭部と胴体切り離し自爆装置の発動を停止させる。

 

 4・その後、直接内部へ侵入し、コロナタイトを奪取し宇宙へ捨てに行く。

 同時に、デストロイヤー本体の冷却を開始。

 

 途中、ゴーレムによる妨害があるはずだが、問題はないだろう。

 アクセルにいる冒険者たちは、皆頼れる戦力になっている。

 ゴーレムの強さにもよるが、一体を三人で相手にすれば負けることはないだろう。

 

 唯一の不確定要素といったら、デストロイヤーの装甲である。

 ご丁寧にデストロイヤーの装甲は、魔法に耐性のある鉱石『アダマンタイト』をふんだんに使用している。

 爆裂魔法クラスの破壊力がないと、破壊どころかダメージを与えることもできない。

 めぐみんも魔力の半分を使って自身の放つ爆裂魔法を強化し、ウィズも今回はアナザーライドウォッチの力を上乗せして爆裂魔法を放つと言っていた。

 

賢治「・・・・・・まぁ、大丈夫・・・かも。」

 

 仲間達の奮戦に期待しよう。

 

 

 

 ー数時間後ー

 

 アクセルの街で待ち構えている俺たちの前に、ついに現れた。

 遠くの山間から、八本の足を動かし、上部の排熱機関から煙と熱を放射し、下方に取り付けられている、むき出しのパイプから冷却に使用した水を排水し、7つの複眼を光らせ、進行方向にある全ての物を蹂躙しこちらに接近して来ている。

 

 アクセルの冒険者たちは、皆んなその威容に後退りする。

 確かに、誰もが逃げ出したくなるだろう。

 だが、この程度の危機で怖気付いていては、仮面ライダーなんてやってられるか。

 

賢治「アクア! 準備はいいか?」

アクア「任せて! 女神の本気をめせてやるわ!」

賢治「めぐみんは大丈夫か?」

めぐみん「フッフッフッ・・・見せてやりましょう!」

  「我爆裂魔法の前には、アダマンタイト製の装甲など紙同然だと言う事を!!」

賢治「よし。 ウィズも頼むぞ!」

ウィズ「はい! 今回は私も本気で行きますから!」

 

 皆んな覚悟はいいみたいだ。

 エルシャとルミは後方に下がって、デストロイヤー内部の突入に控えている。

 ダクネスは前に出て、『ここから先へは行かせない!』と言わんばかりに剣を地面に突き立ててデスオロイヤーを見据えている。

 

賢治「よーし、行くぜ!」

 

 『ジオウ!』『龍騎!』

 

 俺はジオウと龍騎のライドウォッチを起動し、出現したドライバーにセットする。

 ジクウサーキュラーを回し、変身する。

 

賢治「変身!」

 

 『ライダータイム!』『仮面ライダー・ジオウ!』

 『アーマータイム!』『アドベント・龍騎!』

 

 今回は拠点防衛なため、必殺技の直撃を受けても防ぎ切る盾を持つ『仮面ライダー龍騎』の力を使っている。

 すかさずタイムマジーンを呼び出し、操縦席に乗り込む。

 すると、タイムマジーンの顔の部分が龍騎ライドウォッチに切り替わり、タイムマジーンにも龍騎の力が備わった。

 

零子「おお! 間近にみるとすごい迫力!」

  「私、感動!」

 

 俺の変身を見た零子が、その光景に感動している。

 彼女にとっては、この世界で見る初めての俺の変身だから無理もない。

 

零子「じゃあ、次は私ね。」

 

 すると零子は、ポケットからスマホみたいな、カードケースみたいなものを取り出した。

 それについているボタンを押すと。

 

 『JUMP!』

 

 と言う音声が鳴ると。

 

 『ゼロワンドライバー!』

 

 と言う音声の後に、彼女の腰にドライバーが出現した。

 黒と蛍光グリーンが特徴のこれまでに見たことのないドライバーだ。

 

賢治「え? 何それ?」

 

 次に零子は、彼女から見て右側の透明なクリアパーツがついている部分に、手に持っているそれをかざした。

 

 『オーソライズ!』

 

 するとドライバーからお馴染みの待機音が流れる。

 その瞬間、上空から何かが降ってきた。

 それは零子の周りを数回飛び跳ね、彼女の前で止まった。

 

賢治「バッタ!!」

 

 そう。

 上空から降って来たそれは、巨大なバッタだった。

 ただ巨大なだけでなく、そのバッタは全身が機械で所々にライトグリーンのクリアパーツが使われており、発光している。

 零子が持っていたアイテムを、カバーみたいな部分を180度回転させ、ドライバーに差し込んだ。

 

零子「変身!」

 

 『プログライズ!』

 『飛び上がライズ! ライジングホッパー!』

 『”A jump to the sky turns to a rider kick.(空へのジャンプはライダーキックに変わる)”』

 

 零子の全身が黒いアンダーアーマーに包まれたら、バッタが分解し体に装着される。

 その姿は、まるで昭和の時代。

 1971年に初めて生まれた、仮面ライダー1号を彷彿とさせる姿だった。

 

零子「デストロイヤー、お前を止められるのは・・・私達よ!」

 

 仮面ライダーにお決まりの、決め台詞をしっかり決める。

 ・・・いや、待て?!

 

賢治「零子! それって?」

零子「続いてこれよ!」

 

 『PRESS!』

 

 零子がバッタの変身アイテムを外し、今度は別のアイテムを取り出す。

 先程のようにドライバーにかざすと

 

 『オーソライズ!』

 

 さっきと同じ待機音が鳴り、また上空に何かが現れた。

 今度は何かと上を見ると。

 

賢治「・・・えええええぇぇぇぇぇ!!!」

「「「「「「えええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」」」」」」

 

 上空に現れたのは、どこからどう見ても飛行機である。

 飛行機なんて見たことがないこの世界の冒険者たちは、軒並み空を飛ぶその巨大質量を見て驚いている。

 異世界転生してきたカズマやアクアですら、驚いている。

 

 『プログライズ!』

 『Giant waking(巨大な目覚め)! ブレイキングマンモス!』

 『”Larger than life to crush like a machine.(機械のように押しつぶす巨体)”』

 

 零子がアイテムをドライバーに差し込むと、その飛行機が人型に変形し変身した零子が内部に転送された。

 

零子「ブレイキングマンモス・キターーーーーーーーー!!!」

賢治「それフォーゼな。 ・・・ええええええぇぇぇーーーーー!!!」

「「「「「「ええええええええぇぇぇぇぇぇぇーーー!!!!!!」」」」」」

 

 またしても周りから叫び声が上がった。

 流石にこれは俺自身も驚いた。

 

賢治「零子! お前それ・・・」

零子「ケン君、それより始めよう。」

賢治「お、おう。 アクア頼む!」

アクア「え、えぇ。 任せて!」

 

 アクアが杖を取り出し、羽衣を出現させる。

 魔力が集まり、アクアの目の前に五つの魔法陣が現れる。

 その時、デストロイヤーが危機を察知したのか、街に向かって加速し始めた。

 

アクア「『セイクリッド・・・』」

 

 アクアがそう言うと、五つの魔法陣はさらに輝きを増す。

 

アクア「『ブレイク・スペル!』」

 

 魔法陣からアクアの魔法が、まるでレーザーのように放たれた。

 デストロイヤーに向かって進むが、結界によって阻まれる。

 

アクア「くぅ・・・うらあああああああぁぁぁーーーーーー!!!」

 

 アクアが叫び、さらに輝きを増した魔法陣から増幅した魔法が放たれる。

 最初は拮抗していた神聖魔法と結界だが、デストロイヤーの結界に日々が入り、ガラスが割れるような音と共に結界が砕け散った。

 これで攻撃を阻むものはもうない。

 

賢治「ウィズ! めぐみん!」

ウィズ「めぐみんさん、行きますよ!」

めぐみん「同時にいきます!」

 

ウィズ・めぐみん

  『黒より黒く、闇より暗き漆黒に

   我が真紅の混交を望みたもう

   覚醒の時来れり

   無謬の境界に堕ちし理

   無行の歪みとなりて現出せよ!』

 

  『エクスプロージョン!』

 

 その瞬間、二人分の爆裂魔法が一つに合わさり。

 デストロイヤーに直撃する少し前に分裂し、デストロイヤーの足目掛けて降り注ぐ。

 だがここで、予想外のことが起きた。

 

 デストロイヤーの上部に穴が空き、そこから何かの装置が出現した。

 装置の円盤状の部分が回転し、赤く光る。

 すると、デストロイヤーに向かって迫っていた爆裂魔法の魔力が拡散し始めたのだ。

 

賢治「何!?」

 

 爆音をあげてデストロイヤーに直撃する爆裂魔法。

 しかし、それは八本ある内の左右合わせて四本しか破壊できなかった。

 

零子「何あれ?」

賢治「どうなってるんだ?」

  「デストロイヤーの設計図にあんな装置は書いて無かったぞ?」

アカード『状況から推察するに・あの装置は・EXスキル・『魔力妨害』を応用した装置と思われます。』

  『あの装置により・デストロイヤー周辺は・魔力の流れが乱され・魔法の威力が減衰すると思われます。』

賢治「マジかよ!?」

 

 足を失ったことで、一旦動きを止めていたデストロイヤーも残りの足を使って活動を再開した。

 このままだと街に被害が出る。

 

めぐみん「こうなったら、残りの魔力を使ってもう一度爆裂魔法を・・・」

???「『エクスプロージョン!』」

 

 めぐみんがもう一度爆裂魔法を放とうとした時、その後方から爆裂魔法が放たれた。

 先程、めぐみんとウィズが放った二人分の爆裂魔法と同じくらいの規模の爆裂魔法が。

 デストロイヤーも先程と同じように、妨害装置で魔力を拡散させようとするが、さっきと同じ規模の爆裂魔法が放たれたのだから、当然残りの足も破壊されることになった。

 

 爆裂魔法が放たれた方角を見ると、そこには空中に魔力の足場を作り、杖をデストロイヤーに向けている黒い魔法使いがいた。

 

賢治(もしかして、あれがカズマ達を冬将軍から助けてくれた魔法使いか?)

 

 さっきの爆裂魔法といい、空中に足場を展開できるほどの魔力の制御能力、熟練の魔法使いだと言うことは誰の目にも明らかだ。

 

賢治(・・・この感じって・・・)

 

 誰かに似ている気がする。

 雰囲気というか、魔力の質というか。

 

零子「ケン君、行くよ!」

賢治「! おう!」

 

 見ると、足を失いこっちにデストロイヤーが突っ込んできていた。

 俺と零子はデストロイヤーを止めるために走り出した。

 『ガン!』と言う音と共に、タイムマジーンと零子の乗るロボットが衝突する。

 

賢治・零子「止まれえええええええええぇぇぇぇぇ!!!」

 

 タイムマジーンと零子の乗るロボットはどちらも7m位の大きさだが、その何倍もの質量のデストロイヤーを止めるのは容易なことではない。

 今だって勢いを殺しきれずにいる。

 そして、ダクネスが立っている所まであと2・3mと言うところで

 

ダクネス「・・・・・・」

賢治・零子「・・・・・・」

 

 ピタッと、止まった。

 一瞬、静寂がその場を包んだ。

 次の瞬間、歓声が上がった。

 

零子「ふぅ〜、危なかった。」

賢治「まだだぞ、次は胴体と頭部を切り離さないと。」

零子「OK、任せて。」

 

 零子はそう言ってロボットについている、マンモスの牙のようなブレードを胸部から外した。

 

零子「行くよ! そーれ!」

 

 そう言ってブレードを振り下ろすと、『ガシン!』と言う音が鳴り、頭部と胴体が切り離された。

 これで後は、コロナタイトを胴体から切り離し、冷却してから宇宙へ捨てに行くだけだ。

 そう思っていた時

 

 一瞬、目の前が光ったような気がした。

 次に感じたのは、まるで時間の流れが遅くなったように、自分自身はもちろん周囲にいる数多の冒険者達の動きがまるで止まっているように見える。

 いや、正確に言うとゆっくり、スローモーションのように少しずつだが動いている。

 俺はこの現象に覚えがある。

 

零子「ケン君! これって・・・」

賢治「まさか! 重加速か!?」

 

 他の冒険者達は、突然起きた重加速現象に驚き、戸惑っている。

 無理もない。

 いきなり自分を含め、周りの人間全ての動きがスローモーションになってしまったのだから。

 仮面ライダードライブの世界の人達も、この恐怖を目の当たりにしたのならパニックになるのもわかる。

 

ダクネス「な?! なんだ?」

めぐみん「体が・・・ゆっくりしか動きません!?」

エルシャ「どうなってるのこれ?!」

 

 だが、この重加速の中でも動けるものが一人いた。

 

ルミ「これは・・・間違いなく重加速です。」

カズマ「これがかー!?」

 

 ルミはロイミュード。

 彼女だけは重加速の影響を受けず動くことができる。

 彼女の動力源『コア・ドライビア』が重加速を相殺しているからだ。

 

ルミ「シフトカー!」

 

 ルミとダクネスは、シフトカーやシグナルバイクを使うので、ライドウォッチから全て出動させている。

 そのお陰で俺達の元にシフトカー達がやってきて、手の中に収まった。

 すると、重加速の影響から解放された。

 

賢治「おっと! ・・・助かった。」

零子「実際に体験すると結構怖いわね。」

 

 それにしても、このタイミングで重加速が起きるなんて、デストロイヤーの内部には予想外の何かがいるのだろうか?

 

 

 

ーデストロイヤー 内部ー

 

???「まさかデストロイヤーが破壊されるとわ。」

  「・・・まぁいい、計画の準備は既に済んでいる。」

 

 デストロイヤーの内部には、ナンバーが付いていない複数のロイミュードと、黄金の怪人がいた。

 それはまるで、仮面ライダードライブを怪人っぽくしたような姿だった。

 

???「今度こそ私は成功させてみせる。」

  「この世界で、グローバルフリーズを起こし、この世界の全てを私の支配下においてくれる!」

  「後は、この『シグマサーキュラー・C』にコロナタイトのエネルギーが蓄積されれば・・・」

 

 シグマサーキュラー。

 

 それは、蛮野天十郎が作った『グローバルフリーズを引き起こす際に、超進化体ロイミュードの負担を軽減する装置』。

 だが真実は、蛮野天十郎が『第2のグローバルフリーズを引き起こすために必要なエネルギーを蓄積し、自分だけで自在にグローバルフリーズを引き起こせるようにする装置』である。

 

 しかし、もちろん欠点があり『エネルギーが蓄積された後に、余剰エネルギーがロイミュードに逆流し、致死レベルのダメージを負ってしまう』という欠点があり、原作仮面ライダードライブでも、その余剰エネルギーはロイミュード側の回復役の『メディック』に流れ、破壊されるはずだったが、『ブレン』の捨て身の策でメディックは生き延びたと言うエピソードがある。

 

 そのシグマサーキュラーが、機動要塞デストロイヤーの内部で作られていたのだ。

 

???「・・・しかし、外にいる連中・・・仮面ライダーか?」

 

 怪人はデストロイヤーのスクリーンに映る者の姿を見る。

 

???「・・・おのれぇ!! 仮面ライダーめ! 忌々しい!!」

  「この世界でもか?! この世界でも私の邪魔をするのか?!!」

 

 まるでヒステリーでも起こしたように、周囲の物を殴り飛ばしたり、蹴り飛ばしたり、挙句の果てにはたまたま近くにいたロイミュードの頭を握り潰したのだ。

 

???「まぁいい、この世界には『泊進ノ介』も『詩島剛』もいない。」

  「それに、シグマサーキュラーさえ起動できれば、全ては停止する。」

  「最後に笑うのは、この私・・・蛮野天十郎だ!」

 

 そう、この黄金の怪人こそこの世界になぜか転生し、『アナザーゴルドドライブ』の力を手に入れた、蛮野天十郎だった。




と言うわけで、『アナザーゴルドドライブ』こと転生者『蛮野天十郎』が登場しました。
これから先、ドライブのエピソードを少し使わせていただくつもりです。

どうか温かい目で見てやってください。

ゼロワンのプログライズキーの英文のルビ振りは、公式のものではなく独自に翻訳し独自の解釈のもと『格好いい』と思ったルビ振りをしていますので、あしからず。

今回は、次に中編、最後に後編になる予定です。

次回もよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十七話 この機動要塞での戦いに祝福を 中編

 皆さんお待たせしました。

 今回は蛮野との対決です。
 仮面ライダードライブの第45〜46話を参考に執筆しました。
 蛮野の性格がちゃんと表現できているか、心配です。
 気に入っていただけたら幸いです。

 今回はあのレジェンドにも飛び入り参加していただきました。

 


 機動要塞デストロイヤー襲来の知らせを受け。

 俺達は迎撃の準備に取り掛かった。

 新たに俺達のパーティに加わったのは、前の世界での俺の恋人『沖田 零子(オキタ レイコ)』だ。

 彼女も俺達と同じく、仮面ライダーになれるようだ。

 どうやったのかわ分からないが、零子はデストロイヤーの情報を持っていたので、デストロイヤーの構造を知ることができた。

 

 作戦はバッチリ、俺達仮面ライダー達も加わり、戦力は十分。

 途中にアクシデントもあったが、俺達はデストロイヤーの進行を止めることが出来た。

 後は、コロナタイトを氷結魔法で凍らせて、宇宙に捨てに行くだけだ。

 

 そのはずだった。

 タイムマジーンから降りて、デストロイヤー内部に侵入しようとした時に、なんと『重加速』が発生したのだ。

 

 『重加速』。

 

 それは、仮面ライダードライブに登場する機械生命体・ロイミュードが発生させる、怪奇現象である。

 時間の流れが遅くなった様に感じる現象で、またの名を『どんより』と呼ばれている。

 人間の動きは勿論、鳥や犬などの動物、階段から転がるボール、噴水から流れ出る水など、ありとあらゆる物体の動きが遅くなるのだ。

 『危機が迫っているのに、ゆっくりとしか動けない為、逃げることができずに見ている事しか出来ない』という恐怖を味わう事になる。

 

 その一方で、物体の移動速度そのものが遅くなるので、例えば『重加速が発生中に高所から転落しても、ゆっくり着地するので無傷ですむ』という例もある。

 

 その重加速が今起きている。

 つまりそれは。

 

ルミ「皆さん、大丈夫ですか?」

カズマ「あぁ! 大丈夫だ。」

ダクネス「シフトカー達のおかげだな。」

 

 どうやら、皆んなの元にシフトカー達が到着したようだ。

 これで普通の重加速なら相殺出来る。

 

めぐみん「一体何が起こっているんですか?」

エルシャ「なんか光ったと思ったら、周りの皆んなの動きが鈍くなったんだけど?」

 

 この世界で重加速を発生させる事が出来る存在は、ダクネスの『超・デットヒートドライブ』か、ルミの『仮面ライダーゼロドライブ』。

 あと、ウォッチの力を使えば、俺とカズマの『仮面ライダージオウ・ドライブアーマー』や『仮面ライダーゲイツ・マッハアーマー』も重加速を発生させられるはず。

 

 それ以外だと、一つしか心当たりがない。

 

ルミ「マスター、これは・・・」

賢治「あぁ、・・・まさかここで出会うなんてな。」

零子「何? 何か知ってるの?」

 

 俺は零子に、ルミとの出会いを簡単に話した。

 実は、クリム・スタインベルトがこの世界に転生していたこと。

 ベルトさんが、この世界でダンジョンを作り、仲間と一緒に運営していたこと。

 ある時、そのダンジョンに、この世界に転生してきた、『アナザーゴルドドライブ』になった『蛮野 天十郎』が襲撃に来たこと。

 その戦いで仲間は殺され、ベルトさんはダクネスの付けている赤い『マッハドライバー・炎』を作り、ベルトさんの最高傑作であるロイミュードNo.RRR、後に俺が『ルミ』と名付けるロイミュードに出会った事。

 

 すると、零子がどこから取り出したのか、タブレット見たいなのを出し何かし始める。

 

零子「・・・こうして・・・こう・・・っと・・・」

  「・・・でたわ。 デストロイヤーの内部に、アナザーライダーの反応と、シグマサーキュラーの反応があるわ。」

賢治「分かるのか?!」

 

 零子の話だと、実は零子の転生特典は『仮面ライダーゼロワン』という仮面ライダーで、その仮面ライダーへの変身は『通信衛星・ゼア』という人工衛星が必要らしい。

 この世界に転生する際に、この星の衛星軌道上に通信衛星ゼアを、特典で付けてくれたらしい。

 

賢治(このファンタジーの世界に人工衛星って・・・)

 

 ファンタジーのファの字もないが。

 まぁ、そういう仮面ライダーなら仕方がないか。

 

ルミ「マスター、アナザーライダーの所には私が行きます。」

賢治「ルミ。」

 

 気持ちは分かる。

 自分の生みの親のベルトさんの仲間の仇が目の前にいるのだ。

 一見するといつも通りに見えるが、彼女が怒っている事は分かる。

 

ダクネス「ルミだけに任せる訳には行かない、私も行くぞ。」

賢治「当然、俺も行くぞ。」

  「ベルトさんの為にもな。」

ルミ「マスター、ダクネス様。」

 

 蛮野天十郎なんて生きていても、百害あって一利なしだろう。

 そんな奴を野放しにできない。

 それに、今のこの状況が続けば、いずれシグマサーキュラーが起動してしまい、この世界の住人全てが蛮野の管理下に置かれる。

 そんな事は絶対させてはならない。

 

カズマ「じゃあ、賢治達はその蛮野って奴を倒しに行ってくれ。」

めぐみん「そうです。 他の皆んなでシグマサーキュラーのところに行きます。」

ウィズ「私も協力します。」

 

 皆んな頼もしい限りだ。

 

賢治「わかった。」

  「けど気を付けてくれ、シグマサーキュラーが起動したら、まともに動けるのは・・・多分俺だけになってしますから、見つけたら即破壊してくれ。」

カズマ「おう! 任せとけ。」

 

 カズマがそう言った後、カズマ、めぐみん、エルシャ、ダクネス、ルミはドライバーを装着し、ウィズはアナザーウィザードウォッチを取り出し、起動した。

 

 『ゲイツ!』『マッハ!』

 『シノビ!』

 『メロン!』『チェリーエナジー!』

 『シグナルバイク・シフトカー!』

 『ウィザード!

 

「「「「「変身!」」」」」

ウィズ「?! へ・・・変身!」

 

 カズマ達の「変身!」のセリフを聞いて、ウィズも慌てて「変身!」と叫び、ウォッチを胸の押し当てる。

 

 『ライダータイム!』『仮面ライダー・ゲイツ!』

 『アーマータイム!』『マッハ! マッハー!』

 

 『投影! フューチャータイム!』

 『誰じゃ? 俺じゃ? 忍者!』

 『フューチャリング・シノビ! シノビ!』

 

 『ソイヤ!』『メロンアームズ! 天・下・御・免!』

 『ミックス!』『ジンバーチェリー! ハハー!』

 

 『超・デッドヒート!』

 

 『DRIVE! TYPE-SPEED!』

 

 カズマはゲイツ・マッハアーマー。

 めぐみんはウォズ・フューチャリングシノビ。

 エルシャは斬月・ジンバーチェリーアームズ。

 ダクネスは超・デッドヒートドライブ。

 ルミはゼロドライブ。

 ウィズはアナザーウィザード。

 それぞれに変身した。

 

 ちなみにエルシャのジンバーチェリーは、残っていた三つのヘルヘイムの果実で作ったものである。

 他にも、パインロックシードと、ドリアンロックシードを手に入れていた。

 

賢治「俺もウォッチを変えるか。」

零子「じゃあ、私も。」

 

 俺はドライブライドウォッチを取り出し、零子も別のアイテムを取り出した。

 その表面には、仮面ライダードライブの顔が描かれていた。

 

 『アーマータイム!』『ドライブ! ドライブ!』

 

 俺はドライブライドウォッチを使って、仮面ライダージオウ・ドライブアーマーになる。

 零子は、さっきのマンモスのアイテムを外して。

 

 『フルスロットル!』『オーソライズ!』

 

 すると今度は空から車がやって来た。

 それは仮面ライダードライブに登場する、赤い車『トライドロン』であった。

 零子がアイテムをドライバーに差し込むと。

 

 『プログライズ!』

 『Start Your Engine!』

 『TIRE CHANGING DRIVE!』

 『Solving everything in top gear.(トップギアで全てを解決する)

 

 トライドロンが分解し、零子の体に装着された。

 仮面ライダードライブのメインカラーの、赤いボディーにドライブの象徴とも言える斜めに装着されたタイヤ、そして目の部分がシルバーになり、マスクもドライブの様な赤いマスクになっていた。

 

賢治「よし、皆んな突入するぞ!」

カズマ「わかった!」

零子「必殺技ね、OK!」

 

 『フィニッシュタイム!』『ドライブ!』『ヒッサツ! タイムブレイク!』

 『フィニッシュタイム!』『マッハ!』『ヒッサツ! タイムバースト!』

 『タイヤチェンジング インパクト!』

 『ビヨンドザタイム!』『フィニッシュ忍法! タイムエクスプロージョン!』

 『ヒッサツ! フルスロットル!』『超・デッドヒート!』

 『メロンスカッシュ!』『ジンバーチェリースカッシュ!』

 『ヒッサーツ! フルスロットル!』『SPEED!』

 『キックストライク!

 

 皆んなそれぞれに必殺技を放つ準備をする。

 ウィズは、左手の指輪をベルトにかざし、右足に炎が纏われる。

 アナザーウィザード版、『ストライクウィザード』だ。

 

「「「「「「「「ハッ!」」」」」」」」

 

 全員で一斉に高くジャンプし

 

「「「「「「「「ハアアアアアアアアァァァ!!!」」」」」」」」

 

 デストロイヤーに目掛けてライダーキックを放ち、内部に突入した。

 

アクア「・・・皆んな、無事でいてね。」

 

 

ーデストロイヤー内部ー

 

ドゴオオオオオオオオォォォォォォ!!!

 

 デストロイヤーの内部へ侵入すると、そこは通路だった。

 『着地した先で敵が待ち受けている』なんて事がなくて良かった。

 

賢治「零子、蛮野とシグマがどこにいるか分かるか?」

零子「ちょっと待ってね。」

 

 先ほどと同じ様にタブレットを取り出し操作する。

 

零子「・・・わかったわ。」

  「後ろの階段を上がった先に、蛮野がいるわ。 一本道だからすぐ分かるわ。」

  「シグマは正面の通路をますぐ言った先にあるわ。」

 

 後ろを見ると、5メートルほど先に上へ続く階段があった。

 場所が分かれば話が早い。

 

賢治「じゃあ、俺とダクネスとルミは蛮野のところに行くから、他の皆んなはシグマの所に行ってくれ。」

めぐみん「そっちは3人で本当に大丈夫なんですか?」

賢治「あぁ、俺達にやらせてほしい。」

ダクネス・ルミ「・・・」コクッ

カズマ「・・・わかった、気を付けろよ。」

零子「ケン君、頑張ってね。」

賢治「おう! 任せろ。」

 

 そう言って俺達は別れた。

 片方は蛮野を倒しに、片方はシグマを止めに。

 お互いの無事を信じて走り出した。

 

 

 

ー賢治sideー

 

 零子達と別れて、蛮野の元へ続く階段を登り切った時に、通路の先からロイミュードが湧いてきた。

 そのロイミュード達は全員ナンバーがない、量産型(コピー体)のロイミュードだった。

 一体一体はたいした強さではないが、無駄に数だけは多い。

 俺達も最初は一体ずつ確実に倒していたが、流石に鬱陶しくなってきた。

 

ダクネス「私に任せろ!」

 

 ダクネスは、トレーラー砲を出して、シフトフォーミュラーを差し込み、マンターンとジャッキーをトレーラー砲内部に格納した。

 

 『フォーミュラー砲!』

 『ヒッサーツ!』『フルスロットル!』

 『フルフル フォーミュラー! 大砲!』

 

 ダクネスがトリガーを引くと、トレーラー砲からチャージされたエネルギーが放出される。

 その一撃で、目の前にいたロイミュード達は全て破壊された。

 その余波で、通路の先にあった扉が吹き飛んでいた。

 その扉を潜ると、その先にいたのはアナザードライブそっくりの、黄金の怪人だった。

 ベルトさんの日記が確かなら、こいつはアナザーゴルドドライブ。

 つまり

 

賢治「・・・お前が蛮野天十郎だな。」

 

 そうい言うと、背を向けていたそいつは、こちらを振り向いて。

 

蛮野「その通り! 私が蛮野天十郎だ。」

ルミ「! ・・・ついに見つけた。」

ダクネス「こいつが!」

 

 自分を蛮野天十郎と名乗ったアナザーゴルドドライブに対して、ルミとダクネスはマスク越しに怒りを露わにしていた。

 

賢治「・・・蛮野、どうしてお前がこの世界にいるんだ?」

  「お前は詩島 剛に破壊されたはずだ!」

 

 戦う前にこちらの疑問に答えてもらうために、敢えて質問をした。

 正直に言うと、今すぐにでもコイツをぶっ飛ばしてやりたいが。

 

蛮野「ふむ・・・確かに私はあの詩島 剛に破壊された。」

  「だが、そんな事はどうでも良いのだよ。」

賢治「はぁ?」

蛮野「私にとって一番重要なのは、『この私が生きていたこと』ただそれだけだ!」

  「お陰で別の世界とはいえ、私の計画を実行に移せるのだからな!」

ダクネス「計画?」

賢治「全人類をデータ化してナンバリングし、支配下に置くこと。」

  「あいつの許可がない限り、人類は肉体を持つ事が出来なくなる。」

ダクネス「肉体を持てなくなる?!」

蛮野「この世界には魔王が居るらしいが、そんなものは関係ない。」

  「シグマの進化完了まで後わずか・・・いよいよ私の理想世界の誕生だ!!」

  「今度はこの世界で、私の計画を達成させて見せる!」

 

 この男は別の世界に来てまでも自分勝手なことを言う。

 『バカは死なないと治らない』と言うが、この男にはそれが当てはまらないようだ。

 

蛮野「その為にも、私が自由に使える拠点を探して各地のダンジョンを転々としていたが、その道中であの男に会うとは思わなかったがな。」

ルミ「あの男・・・まさか、私の創造主(クリエイター)である、クリム・スタインベルトですか?」

蛮野「あぁ? 貴様、クリムが作ったロイミュードか?」

  「・・・よく見ればそのドライブも、私が装着者共々破壊したはず?」

ルミ「私は、クリム・スタインベルトがこの世界に来て最後に作った、ロイミュードNo.RRR、名前はルミです。」

蛮野「ふん! クリムめ、懲りずにこんな人形を作っていたとわ。」

  「あの時ボディを破壊されていなければ、奴のダンジョンごと破壊してやったと言うのに!」

 

 ベルトさんの日記に書いてあった通りだ。

 蛮野はその時逃亡し、ベルトさんは蛮野を追って旅に出たはず。

 その後のことはわからない。

 だが、蛮野がここにいると言うことは。

 

蛮野「このデストロイヤーを見つけた時、私は歓喜したぞ!」

  「デストロイヤーには私が探し求めていた物があったのだからな。」

ダクネス「探し求めていたもの?」

賢治「・・・コロナタイトか?!」

蛮野「そうだ! デストロイヤーのコロナタイトがあれば、わざわざ超進化体ロイミュードを4体揃える必要もない。」

  「あの無尽蔵のエネルギーなら、シグマの進化に必要なエネルギーを集めるのも簡単だ!」

  「デストロイヤーが破壊されたのは計算外だったがまぁいい、シグマが進化し、このデストロイヤーと融合すれば、最強の人類支配装置の完成だ!!」

  「魔王など恐るるに足りん。」

  「私こそこの世界の支配者になるのだ!!」

  「ハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

 本当に何も変わっていない。

 こんな奴に詩島姉弟やベルトさん、何よりロイミュード達の未来が歪められたと思うと虫唾が走る。

 『人間を滅ぼす正真正銘の化け物』と詩島 剛は言っていたが、その通りだった。

 

ダクネス「・・・・・・私は・・・」

蛮野「・・・あん?」

ダクネス「・・・お前の事は賢治から聞いていたが、正直・・・『最低最悪の科学者』くらいに思っていた。」

  「だが違った様だ・・・お前は、人類に害を及ぼす化け物だ!」

蛮野「・・・黙れぇ!!!」

  「貴様を見ていると詩島 剛(出来そこない)を思い出す。」ブワッ!

賢治「なっ!」

ダクネス「グゥ!?」

ルミ「くぅ!」

 

 蛮野の手が光ったかと思ったら、体の自由が効かなくなった。

 原作でも確かに、相手の動きを止める能力があったが、アナザー化しても健在のようだ。

 

蛮野「まずは貴様からだ。」

 

 そう言うと、蛮野はエネルギーを凝縮した黄金の槍を作り出した。

 

蛮野「・・・消えろ!!」

 

 ダクネスに向かって槍が飛んでいく。

 あれの直撃はまずい。

 俺は渾身お力を込めて、なんとか体の自由を取り戻そうとする。

 

賢治「おおおおおおお!!!」

ルミ「ダクネス様!!」

ダクネス「!!!」

 

 ドゴオオオオオオオオォォォォォォ!!!

 

蛮野「フン! ・・・・・・うん?」

 

 爆発が起き、あたりが熱と爆風に包まれる。

 しかし、その中から。

 

賢治「・・・・・・」

ダクネス「・・・!? 賢治」

ルミ「!? マスター!」

 

 俺はなんとか自由を取り戻し、槍からダクネスを守った。

 原作では、ハートとメディックが槍を掴んで詩島 剛を助けていたが、かなりギリギリだったので腕をクロスさせて防御した。

 

ダクネス「賢治! 大丈夫か?」

賢治「あぁ、大丈夫さ。」

  「・・・・・・なぁ、蛮野。」

蛮野「あん?」

賢治「お前、何か忘れていないか?」

蛮野「何?」

賢治「お前の計画を止めたのが、仮面ライダーだと言うことをさ。」

 

 そう。

 蛮野の計画は仮面ライダー達とロイミュードのハートとメディックが協力したことで阻止されたのだ。

 そして今、この世界には仮面ライダーが7人もいる。

 助っ人のアナザーライダーになれるウィズも協力してくれる。

 

賢治「今ごろ俺の仲間達がシグマの元へ行っている。」

  「たとえどんな障害を用意していても、必ず阻止してくれるだろうな。」

蛮野「・・・だったらさっさと・・・お前達を始末するとしよう!」

 

 蛮野が手を挙げると、ロイミュードが出現した。

 いよいよ戦いの始まりだ。

 

賢治「いくぞ! 皆んな!」

ダクネス「おう!」

ルミ「はい!」

 

 仮面ライダー3人と蛮野と6体のロイミュード。

 双方入り乱れて、戦いが始まった。

 

 戦いの中、俺は4体のロイミュード。

 ルミは2体のロイミュード。

 ダクネスは、果敢にも一人でアナザーゴルドドライブと戦っていた。

 

ダクネス「さぁ、付き合ってもらうぞ!!」

蛮野「良いだろう。 まずは貴様からだ!!」

 

 俺は4体のロイミュード相手に善戦していたが、ダクネスの助けに行けずにいる。

 ジカンギレードの剣モードで応戦し、元々持っているスキルのおかげでうまく戦えている。

 

賢治「ちぃ、お前ら邪魔だ!」

 

 ルミはブレイドガンナーで戦っている。

 ガンモードで遠距離から射撃し、時にはブレードで接近して斬り付ける。

 まるで、踊っている様で、見ていて安心感がある。

 

ルミ「決めます!」

 

 ダクネスも頑張っているが、元々の性能の差なのか、ダクネスは苦戦している。

 

蛮野「ハハハッ! どうした女!」

  「どの程度か?!」

ダクネス「グハッ!」

 

 アナザーゴルドドライブの攻撃で、ダクネスは吹き飛ばされる。

 エネルギー波の追撃を受け、立つ暇もない。

 

賢治「! ダクネス!」

 

 俺はドライバーからドライブウォッチを外し、ジカンギレードに取り付ける。

 

 『フィニッシュタイム!』

 

 ジカンギレードの刀身に、赤いエネルギーが集まる。

 トリガーを引き。

 

 『ドライブ!』『ギリギリスラッシュ!』

 

賢治「はあああぁぁぁ!!」

 

 必殺技が発動し、4体の内2体が破壊された。

 残りは後2体。

 

 『SPEED!』

 

 ルミはドライバーとシフトブレスを操作し、ブレイドガンナーにエネルギーを集める。

 

ルミ「はっ!」

 

 一振りでまず1体を倒し。

 

ルミ「やぁ!」

 

 もう一振りで2体目も倒した。

 

蛮野「終わりだ!」

 

 『フルスロットル!

 

ダクネス「!!」

蛮野「ハアアアァァァ!!」

ダクネス「グッ! ・・・ああああああああああ!!」

 

 蛮野がジャンプし、ダクネスに必殺技を放つ。

 ダクネスに命中した際、足元が崩れ下に落ちてしまう。

 

ルミ「ダクネス様!!」

賢治「!? ルミ、お前はダクネスを助けに行け!」

  「こいつらは俺一人でも十分だ。」

ルミ「・・・わかりました。 お願いします。」

 

 そう言ってルミは、先ほど開いた下に続く穴に飛び込んだ。

 

賢治「て言うかこれ、原作に展開が似てないか?」

  「二人共、無事でいてくれよ。」

 

 

 

ーダクネスsideー

 

 私は蛮野の攻撃をくらい、先ほどの部屋の下にある大きな部屋に落ちてしまった。

 その影響で、私の変身が強制解除されてしまった。

 なんて様だ。

 意気込んで一人で相手をしたら、ここまで追い詰められるとわ。

 

ダクネス「・・・くそ! 情けない。」

 

 悔しくて仕方がなかった。

 自分はこんなに弱かったのか?

 

蛮野「・・・さて、トドメだ。」

ルミ「させません!」

蛮野「! ええい、この人形がああ!!」

 

 私を追ってやってきた蛮野を止めるために、ルミが戦っている。

 自分も早く再変身しなければならないのに、体が言うことを聞かない。

 

蛮野「邪魔をするな!」

ルミ「グッ・・・ハアアァ!」

 

 ルミが剣で斬りかかる。

 だが蛮野はその腕で、ルミの剣を叩き落とし攻撃する。

 

蛮野「何がクリムが作ったロイミュードだ!」

  「この、出来損ないがあぁ!!」

ルミ「グハッ!」

 

 蛮野はルミを地面に叩きつけ、蹴り飛ばし、踏みつける。

 胸のアーマーの部分を掴んで強引に起こし、上に投げる。

 エネルギーを纏った拳で、ルミを吹き飛ばした。

 

ルミ「あああああああ!!!」 ドカァ!

 

 ルミは壁に叩きつけられ、変身を強制解除される。

 だが、戦う為にルミは起き上がる。

 その時、ルミのドライバーが弾け飛んだ。

 

ルミ「!? そんな・・・ドライバーが・・・」

ダクネス「ルミ! グゥ・・・」

 

 恐らくさっきの拳が、ドライバーにヒットしたのだろう。

 ルミの足元には、火花を散らし、煙を上げるドライバーが転がっていた。

 

蛮野「ふん! 大した実力も無い癖に私に挑むとわ・・・愚かだな。」

ダクネス「き・・・さま・・・」

蛮野「死ねえええぇぇ!!」

ダクネス「!!!」

 

 蛮野が槍を作り、それを振り下ろす。

 死ぬ。

 そう思って咄嗟に目を閉じてしまった。

 

ルミ「! ダクネス様!」

 

 ガキン!

 

ルミ「まだです! まだ私は戦えます!」

蛮野「ほざけえええぇぇぇ!!!」

ダクネス「! ルミ!」

 

 一撃目、二撃目と盾で防ぐが、三撃目で盾が破壊され、蛮野の槍がルミに突き刺さった。

 

ルミ「!!? がはっ!」

蛮野「砕けろおおお!!!」

 

 槍を引き抜き、再び振り下ろそうとした時。

 

ルミ「! うおおおぉぉぉ!!!」 カチッ

蛮野「!? グアアアアアア!!!」

 

 ルミが剣のトリガーを引くと、刀身に青いエネルギーが発生し、蛮野を切り裂いた。

 その攻撃で、蛮野は吹き飛んだ。

 

ルミ「あ・・・あぁ・・・」

ダクネス「ルミ!」

 

 倒れてきたルミを私は受け止めた。

 見ると、槍で貫かれた処から火花が散り、中の機械の部分が見えた。

 そこから、油の匂いのする液体が流れ出ていた。

 まるで血の様だ。

 

ダクネス「ルミ! 待ってろ、今回復薬を」

ルミ「無駄デス・・・ロイミュードの私ニ・・・回復薬は意味がアリマせん。」

ダクネス「な! そんな・・・」

 

 ルミの声は弱々しく、声も何処か棒読みみたいになっている。

 

ルミ「・・・悔しイデすね・・・このテデ・・・あの男を倒せナイナンテ。」

  「ダクネスサマ・・・どうか・・・マスターとイッショニ・・・蛮野をタオシテクダサイ。」

ダクネス「わかった! わかったから・・・」

ルミ「・・・ゴキゲンヨウ・・・   」

ダクネス「ルミ? ルミ!」

 

 その後は、何度呼びかけても返事が返ってこなかった。

 

ダクネス「あ・・・あぁ・・・ああああああああああああ!!!」

 

 私は、今までで一番の大声を上げながら、涙を流していた。

 その時、私が落ちてきた穴から、誰かが降りてきたのが見えた。

 

賢治「・・・ダクネス! ルミ!」

 

 

 

ー賢治sideー

 

 俺がロイミュードを片付け、ダクネス達が落ちていった下の部屋に降りた時、目の前には叫び声を上げて涙を流すダクネスと、ダクネスの腕の中でまるで眠る様に目を閉じているルミがいた。

 

賢治「・・・ダクネス! ルミ!」

ダクネス「賢治! ルミが!」

賢治「落ち着けダクネス、・・・・・・腹部を貫かれたのか・・・これならまだ何とか成るかな?」

ダクネス「! 本当か? ルミは助かるのか?!」

 

 ルミはロイミュードだ。

 見たところ、彼女のコアの部分はダメージを受けた様子がない。

 おそらく、一時的に機能が停止しただけだろう。

 これなら、新しい体を用意すれば大丈夫なはず。

 

賢治「ダクネス、手伝ってくれ。」

ダクネス「どうするのだ?」

賢治「ここじゃ手の施しようがないから、今は俺のスキルの宝物庫(アイテムゲート)に収納しておく。」

  「大丈夫、必ず直してみせるから。」

ダクネス「・・・わかった。」

 

 俺は宝物庫を発動し、ルミの体をその中に収納した。

 この中に入れておけば、これ以上ルミの状態が悪く成ることもないはず。

 

 ガッシャアアアアアアアアア!!!

 

賢治・ダクネス「!?」

 

 その時、瓦礫の中からアナザーゴルドドライブが出てきた。

 

蛮野「フハハハハハ!」

賢治「蛮野!」

蛮野「わかったかね、先程の出来損ないの一撃でも、私を倒すに至らなかった。」

  「愚か者のする事は・・・無意味なのだよ!」

 

 おそらくルミは、こうなる前に蛮野に必殺の一撃を放ったのだろう。

 それを嘲笑うように、悠々とこちらに歩いてくる。

 ルミのことを侮辱しながら。

 

賢治「・・・ここは敢えてこう言うぜ。」

蛮野「?」

賢治「だったら、()()()()()()()()()()()。」

蛮野「! 貴様!」

 

 俺は、チェイスが破壊された時に、詩島 剛が言った言葉をそのまま言ってやった。

 

賢治「人間じゃない、ロイミュードのルミが・・・こんなに人間らしいのに、腐り切ったお前の心の方が・・・一番愚かだ!」

蛮野「き・・・貴様ああああああ!!!」

賢治「・・・・・・」

 

 今にも怒りが爆発しそうなのに、頭の中は異様に冷え切っていた。

 TYPE-TECHNICに変身した泊 進之介もこんな感じだったのだろう。

 こいつにだけは、絶対負けるわけにはいかない。

 

賢治「・・・脳細胞が・・・トップギアだぜ!」

 

 泊 進之介の決め台詞を言って、蛮野に挑もうとした時に

 

 『グランドジオウ!

 

賢治「! え?」

 

 突然、グランドジオウライドウォッチが起動した。

 すると、ウォッチの中から黄金の棺みたいなものが現れ、扉の様に左右に開かれた。

 

蛮野「な!? 何が起こった?!」

賢治「これは・・・」

 

 その先から、ある人物が現れた。

 

???「? 呼ばれた様な気がしたが、ここはどこだ?」

???「さぁね。 見当も付かんよ。」

???「? ベルトさん?!」

ベルトさん「?! 進之介?!」

 

 その人物は黒のスーツとズボン、白のシャツに赤と白のネクタイを着け、左手首にシフトブレス、腰にはドライブドライバーを装着していた。

 

蛮野「な!! バカな!? どうしてお前が?」

進之介「?! その声・・・もしかして!」

ベルトさん「蛮野か?!」

蛮野「泊 進之介! クリム!」

賢治「・・・マジか!」

 

 彼らは、泊 進ノ介とドライブドライバーに意識を移したクリム・スタインベルト、ベルトさんであった。

 グランドジオウライドウォッチが、彼らをこの世界に呼んだのだろうか?

 

蛮野「なぜだ?! なぜお前達がこの世界に?!」

進之介「この世界?」

ベルトさん「進之介、どうやらこの世界は、私達が居た世界とは違うようだ。」

進之介「それって・・・異世界ってことか?」

ベルトさん「先程、この世界に一つだけある人工衛星からデータが送られてきた。」

  「間違いなく、ここは異世界だ。」

進之介「マジか!」

 

 どうやら衛星ゼアから、ベルトさんに情報が送られてきたのだろう。

 

賢治「泊さん、ベルトさん。」

進之介「? お前は?」

ベルトさん「? 君も仮面ライダーかね?」

賢治「はい。 俺は霧島 賢治、仮面ライダージオウです。」

進之介「そうか。 俺は泊 進ノ介、警察官だ。」

ベルトさん「私はクリム・スタインベルト、以前は科学者だったが、今はこの通りベルトだ。」

賢治「よろしくお願いします。」

 

 自己紹介を終えて、改めて蛮野に視線を向ける。

 

賢治「詳しくは後で説明します。」

  「泊さん、ベルトさん、力を貸してください。」

進之介「あぁ、勿論だ。」

  「姿は違うが、蛮野なんだろ?」

  「ならあいつは俺の敵だ。」

ベルトさん「私も協力しよう。」

  「進之介、エンジンの調子は良いかね?」

進之介「あぁ、ベルトさん・・・一走り付き合えよ。」

ベルトさん「OK! START YOUR ENGINE!」

 

 泊さんがドライバーのイグニッションキーを回すと、さっきの黄金の扉から今度はトライドロンが走ってきた。

 俺もドライブのウォッチを外し、今度はディケイドライドウォッチを取り出した。

 

 『ディ・ディ・ディ・ディケイド!』

 

 ドライバーのD‘3スロットにウォッチを差し込み、とまりさんと一緒に変身ポーズをとる。

 

賢治・進之介「変身!」

 

 『アーマータイム!』『KAMEN RIDE! WOW!』

 『ディケイド!ディケイド! ディケイドー!』

 

 『DRIVE! TYPE-SPEED!』

 

 泊さんが、仮面ライダードライブに変身する。

 ルミとは違い、ボディが黒ではなく赤色で、胸もアーキタイプギアではなくTYPE-SPEEDの時に装着されるTYPE-SPEEDタイヤになっている。

 すかさず俺は、先ほど外したドライブライドウォッチをディケイドライドウォッチの『F.F.T.スロット』に装填する。

 

 『ファイナルフォームタイム!』『ドドドドライブ!』

 

 ディケイドアーマーにドライブの力が追加され、右肩の『コードインディケーター』に『ドライブ』と表示され。

 胸から左肩にかけて、『TYPE-FORMULA』と表示されている。

 

賢治「待たせたな蛮野。」

進之介「覚悟しろ、今度こそ迷わず成仏しろよ。」

蛮野「お・・・おのれえええええ!!!」

 

 蛮野がやけくそ気味に、エネルギーの弾丸を放ってくるが、それに構わず俺と泊さんは蛮野に向かって走り出した。

 そこからは正に一方的な展開になった。

 なんとなく分かっていた事だが、目の前にいる泊さんとベルトさんは、原作最終回以降の方々だった。

 

 まず拳で肉弾戦を開始、そこからハンドル剣を使い、蛮野を攻撃していく。

 ハンドルを回してのターン攻撃を2回、その次にクラクションを鳴らしドリフト回転による回転攻撃。

 それにより蛮野が怯んだ隙に、泊さんはTYPE-WILDにフォームチェンジする。

 

 俺がハンドル剣で攻撃した後、右肩についているタイヤを叩き付ける様にタックルをかます。

 再び俺が攻撃している間に、泊さんはランブルダンプを呼び出し、タイヤコウカンをする。

 

 『タイヤコウカーン!』『ランブルダンプ!』

 

 右肩のワイルドタイヤが、ランブルダンプタイヤ交換される。

 タイヤに付いている、ドリルが付いたランブルスマッシャーを左手に持ち、衝撃波を発生させながら、蛮野に突っ込んでいった。

 スマッシャーの直撃を蛮野は避ける、しかし衝撃波受けて吹き飛ぶことになる。

 

 『ライドヘイセイバー!』

 

 俺はライドヘイセイバーを呼び出し、すかさずハンドセレクターを回す。

 

 『ヘイ! ドライブ!』

 『デュアルタイムブレイク!』

 

 デュアルタイムブレイクの力で、ドライブのタイヤの力、マックスフレア・ファンキースパイク・ミッドナイトシャドーの力をエネルギーのタイヤにして蛮野に飛ばす。

 蛮野がその攻撃に対処している隙に、今度は泊さんはTYPE-TECHNICにフォームチェンジする。

 すかさずタイヤコウカンを行う。

 

 『タイヤコウカーン!』『ロードウィンター!』

 

 ロードウィンタータイヤに装着されている瞬間冷凍装置から、冷凍粒子が放出される。

 射線上にいたものは全て凍結し、その先にいた蛮野も瞬時に凍結した。

 凍結した体を再び動かそうとするが、すぐには動けない。

 その隙に泊さんはTYPE-DEAD HEATにフォームチェンジした。

 

 ドライバーのイグニッションキーを回し、シフトブレスのボタンを押す。

 

 『デッドヒート!』

 

 内部で膨大なエネルギーが生成され、内燃機関が加速し始める。

 それにより、爆風と超高熱が生まれ、強化される。

 凍りついたアナザーゴルドドライブが、その攻撃で氷が砕かれ、また吹き飛ばされる。

 俺はさらに、TYPE-FORMULAの力で加速し、宙に浮いているアナザーゴルドドライブにライドヘイセイバーで追撃を加える。

 俺が止まった時には、泊さんはTYPE-FORMULAにフォームチェンジしていた。

 

 俺と泊さんは互いに、トレーラー砲を取り出す。

 

 『『ヒッサーツ!』』『『フルスロットル!』』

 『『フル フル フォーミュラー大砲!』』

 

賢治・進之介「くらえ!」

 

 寸分違わず、同時にトレーラー砲のトリガーを引き、エネルギー波がアナザーゴルドドライブに命中する。

 これだけの攻撃を加えて、ようやくアナザーゴルドドライブの体から火花が散り始めた。

 

ダクネス「・・・・・・すごい!」

 

 ダクネスは、俺と泊さんの戦いを見て驚いていた。

 

蛮野「グゥ・・・バカな!?」

  「どうして・・・どうしてここまで私が追い詰められる?」

  「ゴルドドライブだった頃とは違い、今の方が強化されているのに?!」

 

 実は、これまでに戦ってきたアナザーライダーとは違い、蛮野にはこちらの攻撃に対する無効化能力がないのだ。

 能力透視で確認したから間違いない。

 どう言うわけかわからないが、それならそれで好都合である。

 

賢治「結局の所、お前は俺達仮面ライダーに倒される運命だった・・・ってことだろ。」

蛮野「!! 貴様ァァァ!!」

進之介「今度こそ、終わりにしてやる。」

ベルトさん「TYPE-TRIDORONだ!」

進之介「よし!」

 

 泊さんは、シフトトライドロンを呼び、仮面ライダードライブの最終形態にフォームチェンジする。

 

 『FIRE! ALL ENGINES!』

 『DRIVE! TYPE-TRIDORON!』

 

 後ろに控えていたトライドロンがエネルギー体になって分解し、全シフトカーがシフトトライドロンに内蔵され合体する。

 泊さんとベルトさんが一つになった、『人機一体』の奇跡の最終形態である。

 

進之介「いくぞ、賢治!」

賢治「! はい!」

 

 俺のことを名前で呼んでくれとことに感動を覚えた。

 レジェンドライダーに呼んでもらえるなんて、最高だ!

 泊さんがシフトトライドロンのボタンを押す。

 

 『カモン! フレア・スパイク・シャドー!』

 『タイヤ カキマゼール!』『アタック1.2.3!』

 

 タイヤカキマゼールを使い、フレア・スパイク・シャドーのタイヤを合体させた。

 これは、3種類のタイヤの力を10倍の力で同時に使用することができるタイヤであり、まさしく攻撃特化形態とも言えるタイヤである。

 俺はディケイドライドウォッチのスイッチを、泊さんはイグニッションキー・シフトブレスのボタン・シフトトライドロンを操作した。

 

 『ドドドドライブ!』『ファイナルアタック タイムブレイク!』

 『ヒッサーツ! フルスロットル!』『アタック1.2.3!』

 

賢治・進之介「ハッ!」

蛮野「!!」

賢治・進之介「ハアアアアアアァァァ!!!」

 

 俺と泊さんのライダーキックが、蛮野に炸裂する。

 ヒットすると同時に、蛮野を通過し後ろに着地する。

 蛮野の体がスパークし、激しく火花が散る。

 

蛮野「おのれ! おのれええ!! 仮面ライダー共めええええええ!!!」

 

ドゴオオオオオオオオォォォォォォ!!!

 

 アナザーゴルドドライブは爆発四散した。

 

賢治「ふぅ〜・・・・・・うん?」

 

 俺の視線の先には、黒ずみ、煙を上げる黒いドライバーがあった。

 

進之介「やったな、賢治。」

賢治「はい! 有難う御座います。」

ベルトさん「我々の戦いにあそこまでついてくるなんて、実にexcellentだ。」

賢治「有難う御座います、ベルトさん。」

 

 その時、鐘の音が聞こえた。

 すると、先ほど現れた黄金の棺が現れ、扉が左右に開いた。

 

進之介「・・・どうやら、俺たちの役目は終わった様だな。」

ベルトさん「・・・その様だね。」

賢治「すみません。 急にこっちの世界に来ていただいて、何の説明もなしになんて。」

 

 グランドジオウの力とはいえ、唐突すぎると思う。

 本当はもっと話をしたかったし、出来る事ならこの後のシグマの戦いにも協力してほしい。

 これ以上は、ダメだと言う事だろうか?

 

進之介「いいさ、お陰でまたベルトさんに会えたからな。」

ベルトさん「うむ。 叩き起こされた時は何事かと思ったが、異世界に呼び出され、また進之介と共に戦うことができた。」

  「良い体験をさせてもらったよ。」

進之介「頑張れよ! この世界の仮面ライダー。」

賢治「! はい!」

 

 そう言って、泊さんとベルトさんは扉を通って帰っていった。

 その時。

 

賢治・ダクネス「!?」

 

 目の前が光った。

 

賢治「これは、また重加速!」

ダクネス「シフトカーを持っているのに、動きが遅く?!」

 

 その通り、TYPE-FORMULA状態の俺は普通に動けているが、シフトカーを持っているはずのダクネスの動きが鈍くなっている。

 

賢治「まさか! シグマが起動したのか?」

 

 この状況は、そうとしか考えられない。

 零子達は間に合わなかったのか?

 

蛮野「   ・・・間に合ったか。」

賢治「蛮野?!」

ダクネス「あいつ・・・まだ。」

蛮野「ここまで来たのなら、後はシグマ自身が計画を実行するだろう。」

ダクネス「貴様!」

 

 その時ダクネスの元に、シフトデッドヒートがやって来た。

 通常のシフトカーを超えるパワーを持つシフトデッドヒートなら、シグマが起動した状態でも重加速の影響を受けずに済む。

 

賢治「・・・・・・ダクネス。」

ダクネス「?」

賢治「・・・」チャキッ!

 

 俺はハンドル剣を差し出した。

 

賢治「・・・とどめは任せる。」

ダクネス「・・・わかった。」

 

 ダクネスはふらつく体で、蛮野の元へ歩いていく。

 

蛮野「今のうちに転移の準備を・・・ハッ!」

ダクネス「・・・逃すと思うか?」

 

 『ヒッサーツ!』

 

 ダクネスは先ほどやって来たシフトデッドヒートをハンドル剣のスロットに差し込む。

 

蛮野「ま! 待て! やめろ! やめろ!!」

ダクネス「・・・」カチッ!

 

 『フルスロットル!』

 

 赤いエネルギーがスパークし、ハンドル剣の刀身に収束する。

 ダクネスは剣を振り上げる。

 

蛮野「やめろ! 頼む! やめてくれ!!」

 

 ドライバーのみとなった蛮野はカタカタと震わせ、命乞いをする。

 自業自得であるため、情けをかける必要を感じない。

 

ダクネス「・・・・・・地獄に落ちろおおおおお!!!」

蛮野「あ・・・ああ! あああああああああああああああ!!!!!」

 

ガッシャアアアアアアアアアーーー!!!

 

 ハンドル剣がドライバーを斬り裂くと、ドライバーは爆発した。

 その中から、アナザーゴルドドライブのアナザーライドウォッチが出現し、諸共切り裂かれた。

 その時俺は、こんなことを考えていた。

 

賢治(・・・あっ! ダクネスが攻撃を外さなかった!)

 

 と思っていたのは、内緒である。

 

ダクネス「・・・・・・もう二度と現れるな。」

 

 蛮野天十郎との戦いはこれで終わった。

 ベルトさんと、その仲間の仇はこれで討てた。

 後はシグマだけである。

 

 




 読んでくれて有難う御座いました。

 ゼロワンのレジェンドライダーフォームに関しては全くと言って良いほど情報がなくてビックリ!
 一応、ガンバライジングでゼロワンのカードと、プログライズキーの玩具を持って確かめに行きましたけど、パワーアップするだけで、フォームチェンジしなかったのでガックシです。

 仮面ライダーウォズ・フューチャリングシノビにも、一応ライダーキックがあり、それが『フィニッシュ忍法』だったので、こちらの解釈で『フィニッシュ忍法! タイムエクスプロージョン!』にしました。

 今回はレジェンドライダーの泊 進ノ介に登場していただきました。
 タイミング的に、『仮面ライダー平成ジェネレーションズ Dr.パックマン対エグゼイド&ゴーストwithレジェンドライダー』の後の泊さんとベルトさんです。
 蛮野との戦いも、劇中のドライブの戦いを元にしています。

 今回は特殊タグや、文字の着色なども増やしてみました。
 これからもちょくちょく増やして行くつもりなので、これからもよろしくお願いします。

 それでは、次回を待っていてください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十八話 この機動要塞での戦いに祝福を 後編

 みなさんお待たせしました。
 遅くなってすみません。
 実は、三日間程闘病生活をしていました。
 風邪だったのでよかったです。
 抗原検査を受けたら陰性だったので、コロナではありませんでした。

 あと、執筆中に見返していた仮面ライダーを見ていたら、『これがやりたい!』と思ったのも、遅れた要因です。
 この回で、ダクネスが別のライダーに変身するのですが、それが『やりたい』ことです。
 その構想を練るのに時間がかかりました。
 すみません。

 今回で、デストロイヤー戦は最後です。

 


 機動要塞デストロイヤーの内部に、蛮野天十郎がいると知った俺達は、内部へ突入する。

 そこで、蛮野を倒すチームと、シグマサーキュラーを破壊するチームに別れ、それぞれの方向に走り出す。

 

 蛮野天十郎こと、アナザーゴルドドライブと戦うのは俺とダクネスとルミの三人。

 しかし、その戦いで蛮野の攻撃によって、ダクネスは変身を強制解除され、ルミは激しく損傷し機能が停止してしまった。

 

 俺が蛮野に挑もうとした時に、なんと、グランドジオウライドウォッチが起動する。

 黄金の棺が出現しその扉が開くと、その先からなんと!

 ベルトさんを腰に巻いた泊 進ノ介さんが姿を現したのだ。

 

 泊さんとベルトさんの協力のお陰で、アナザーゴルドドライブに勝利し、蛮野天十郎との戦いに終止符が打たれ、それを見届けた泊さんとベルトさんは、再び棺の扉を通り、元の世界へ帰っていった。

 

 だが、その瞬間重加速が発生している中で、さらに重加速が発生する。

 これにより、ディケイドライドウォッチのお陰で、TYPE-FORMULAになっていた俺は大丈夫だったが、ダクネスの動きが鈍くなってしまったが、ダクネスの元にシフトデッドヒートがやって来たお陰で、重加速の影響は無くなった。

 

 その時、破壊されたと思っていた蛮野天十郎が、『バンノドライバー』の状態で生きていたのだ。

 蛮野は「シグマが計画を実行する」と言う。

 この重加速は、シグマが起動した影響だろう。

 おそらく零子達は間に合わなかったのだろう。

 

 転移で逃げようとする蛮野は、ハンドル剣を持ったダクネスにより、今度こそ破壊された。

 その際、バンノドライバーの中にあったアナザーゴルドドライブウォッチも破壊される。

 

 これで後は、シグマを破壊するだけである。

 

 

 

ー賢治sideー

 

 戦いの後、ダクネスは回復のために壁に背を預け回復薬を飲んでいた。

 エルシャが作った上級回復薬(ハイ・ポーション)なので、効果は抜群だ。

 しかし、蛮野との戦いで蓄積された疲労が抜けきらないのか、少し顔色が悪い。

 

賢治「ダクネス、大丈夫か?」

  「顔色が悪いぞ。」

ダクネス「うむ・・・やはり少しだるいな。」

 

 回復薬は傷を癒すだけでなく、疲労回復の効果もあるの。

 ダクネスはそれを2本飲んでいる。

 外傷は回復しているのだが、気持ちの面で疲れたのだろう。

 今回はダクネスにとってショックな事が幾つもあった。

 

 蛮野に一人で戦いを挑み、最終的にはダクネスが引導を渡したが、蛮野に勝つことができず、助けにやって来たルミを目の前で機能停止させられたのだ。

 普段は残念な体質と性癖の持ち主のダクネスだが、根は真面目で責任感の強い奴だ。

 ルミの事について「気にするな」なんて言えないが、今のダクネスには少し休憩が必要だと思う。

 

賢治「・・・ダクネス、お前はしばらくここにいろ。」

ダクネス「? いや、私は大丈夫だ。」

賢治「いや、今のダクネスは少し疲れている。」

  「しっかり休んでから、俺の後を追いかけて来てくれ。」

ダクネス「賢治・・・」

 

 俺はそばに落ちていた、マッハドライバーをダクネスに渡した。

 その時、こっそりとダクネスの服のポケットに、ソッとブランクライドウォッチを忍ばせていた。

 

賢治「・・・ルミなら大丈夫、何とかして治してみせる。」

  「ダクネスも今は、自分を大事にしてくれ。」

ダクネス「・・・わかった。 少し休ませてもらう。」

賢治「おう。 じゃあ、また後でな。」

 

 そう言って俺は、上に続く穴へジャンプし、零子達を追うのだった。

 ダクネスがもう一度立ち上がれたら、さらに強くなっているだろう。

 もしかしたら、あのブランクライドウォッチもダクネスの力になってくれるだろう。

 

 

 

ーダクネスsideー

 

 私は膝を抱えて座り込んでいた。

 正直に言って自分の無力さが恨めしかった。

 私はさっきの蛮野天十郎との戦いは勝つつもりで挑んだ。

 だが、実際はどうだ?

 

 一人で挑み、返り討ちにされ。

 目の前で仲間を傷つけられ。

 挙句、賢治に心配される始末。

 

ダクネス(こんな事になるのなら、もっとレベルを上げたり、いろいろなスキルを習得しておくんだった。)

 

 今日ほど強くなりたいと思った日は無かった。

 自分んがもっと強ければ。

 仮面ライダーの力をもっと引き出せていれば。

 

ダクネス(・・・強くなりたい。)

  (大事な仲間を守れるくらい、強くなりたい!)

 

 私がそんなことを思っていると、私の右ポケットの中から光が溢れていた。

 

ダクネス「な?! なんだ?」

 

 その光は、ほんのりと黒みがかった緑色の光だった。

 取り出してみると、それはライドウォッチだった。

 次第に光は収まっていき、それは黒と赤色で2008という見た事の無い数字が刻まれていた。

 

ダクネス(? 何でこの文字が数字だと?)

 

 よく分からないが、そう読める。

 私はウォッチのベゼルを回してみると、そこにはまるで蝙蝠みたいな顔が現れた。

 リューザーを押してみた。

 

 『ダークキバ!』

 

 音が鳴ると、さっきと同じ緑色に光り始めた。

 その瞬間

 

『人間はな、みんなそれぞれ音楽を奏でているんだ。知らず知らずのうちに心の中でな。』

『よせ! 俺の為に争うな! 二人同時に愛してやる!』

『一度目偶然、二度目奇跡、三度目必然、四度目運命。 そう、まさにお前は運命の女だ。 ・・・と言いたいところだが悪いな。 俺の運命の女はもう決まっている。』

『皮肉なものだな。 俺の才能を一番理解できるやつが、ファンガイアだとは・・・』

『今世紀最高のヴァイオリンになるだろう。』

『ブラッディ・ローズ。 それがこのヴァイオリンの名前だ。』

『人間だのファンガイアだの、そんな事関係ない。』

『大切なのは、魂だ。』

『俺の人生は、俺が決める。』

『息子に手を上げていいのは親父だけだ!』

『太牙は俺が助ける。』

『蝙蝠モドキ・・・力を貸せ!』

『俺にも覚悟がある。 愛する者のために、命をかけて戦う覚悟。』

『悲しみを飲み込み、大きくなった時、彼女はそこにいる。』

『迷うな。 これは俺とお前、親子でする最初で最後の仕事だ!』

『渡、人に流れる音楽を守れ。 そのために戦え。』

『大切なものを守るために、男は戦うんだ。』

『渡、諦めるな。 お前の中には俺がいる。 俺達は一つだ。』

 

ダクネス「・・・ウゥ・・・スン、ウゥウ・・・」

 

 気がついた時には、私は涙を流していた。

 このライドウォッチから流れ込んできた、『紅 音也』という男の戦いの記憶を見て。

 

 紅 音也とは、1000年に一人と謳われる天才ヴァイオリニストである。

 ただ、とにかく自分に正直に生き、気ままに行動する自由人であり、女性好きの軟派者という自堕落な人物。

 だが、好きな女の前では、とにかく格好を付けたがる意地っ張りな性格で、生身でファンガイアに戦いを挑むほどの行動力がある。

 人間だけでなく、ファンガイアを含めた魔族とも差別なく交流でき、友情を育んだり、誰とでも対等に接することができる心の広さを持っている。

 

 仮面ライダーイクサの装着者としてファンガイアとの戦いの中、ファンガイアのクイーンである、真夜と運命的な出会いを果たし、心惹かれるようになる。

 しかし、この二人の出会いが当時のファンガイアの王・キングの怒りを買い、紅 音也はキャッスルドランに幽閉された。

 その紅 音也を助けた真夜は、キングによりはクイーンの力を奪われてしまう。

 

 音也はそんな彼女と共に生きる決意をする。

 そんな時、22年後の未来からやってきた息子、紅 渡と出会い、しばしの間親子水入らずの時間を過ごす。

 しかし、真夜にはキングとの間に授かった息子、登 太牙がおり、『紅 音也に会えば太牙を殺す。』と脅され、音也の元を去ろうとする。

 そこへ、キングの冷酷さに愛想を尽かした『キバットバット2世』の協力で、仮面ライダーダークキバの力を手に入れる。

 渡と共にキャッスルドランに潜入し、太牙とキングによって封印されていた、ウルフェン族のガルル・マーマン族のバッシャー・フランケン族のドッガを救出する。

 

 その後、ダークキバの力で命が削られる中で、雄々しく戦う姿を見せ、渡と共にキングを撃破する。

 

 渡が未来に戻ったのち、救出したガルル達に『息子を助けてやって欲しい。』と伝え、真夜の膝の上でその生涯を閉じるのだった。

 

 そんな記憶が一瞬の内に頭の中に流れ込んできた。

 私は、この紅 音也という男が格好良く見えた。

 愛する者のために、大切な家族のために、命を懸けて戦う彼の生き様が。

 

ダクネス(流石に私は彼程自由人ではないが、心は理解できると思う。)

 

 私も彼のように強くなりたい。

 純粋にそう思っていた。

 その時だった。

 

???「・・・そろそろ離してくれないか?」

ダクネス「え?!」

 

 突然自分以外の声が聞こえた。

 どこかクールで、威厳のある声色だ。

 しかし、どこにも居ない。

 右を見ても左を見ても・・・やっぱり居ない。

 一体どこから?

 

???「わざとかね? 君の手の中だ。」

ダクネス「手?」

 

 恐る恐る手の中を見てみた。

 そこにはライドウォッチがあるはずなのに、そこにあったのは、赤い体に金の瞳を持つ蝙蝠?だった。

 蝙蝠と言うには可愛らしい外見だが?

 

???「やっとこっちを見たか。」

ダクネス「?! 喋った!!」

???「ムッ! 喋っては悪いかね?」

ダクネス「い、いや・・・そんな事は・・・」

 

 そう言って私の手の中から飛び出し、私の顔の高さまで飛んできた。

 正直、『その翼でどうやって飛んでいるんだ?』と思う。

 

???「自己紹介しよう、俺はキバットバット二世。」

  「キバット族、キバットバット家の二代目当主だ。」

ダクネス「こ、これはどうも。」

  「私はダクネス・・・いや、ダスティネス=フォード=ララティーナ。」

キバット二世「ララティーナか。 ずいぶん可愛らしい名前だな。」

ダクネス「ぬっ! 私のことは・・・できればダクネスと呼んでくれ。」

キバット二世「ふむ。 私のことは好きに呼んでくれ。」

  「しかし、『蝙蝠モドキ』と呼ぶのはやめてくれ。」

 

 それは確か、紅 音也がそう呼んでいたはず。

 やはり今目の前にいるのは、さっきの記憶で見たキバットバット2世のようだ。

 

キバット二世「ところで、お前か?」

  「俺をここに呼んだのは。」

ダクネス「私?」

キバット二世「強さへの渇望と憧れ、そう言った感情を感じた。」

ダクネス「!?」

キバット二世「・・・違うか?」

 

 彼にはお見通しのようだ。

 

ダクネス「・・・そうだな。」

  「私は強くなりたい。 大切な者を守るために戦った紅 音也のように。」

  「私は・・・」

キバット二世「・・・悪いことは言わん、やめておけ。」

ダクネス「?! なぜだ?」

 

 まさか否定されるとは思っていなかったので、思わず声が上ずってしまった。

 

キバット二世「俺と紅 音也はほんの少ししか付き合いがないが、あいつの事はそれなりに分かっているつもりだ。」

  「あいつは軽薄でだらしの無い格好付けだが、愛する者のために命をかける覚悟のある男だ。」

  「お前は音也のように強くなりたいと言ったが、本当に音也になりたいのか?」

ダクネス「・・・」

 

 私がなりたいもの。

 確かに私は紅 音也みたいに強くなりたいと思った。

 だが・・・果たしてそれで良いのだろうか?

  強くなりたいと思ったのは本当だ。

 しかし、『紅 音也みたいになりたいのか?』とい言われると、何か違う。

 

ダクネス(賢治ならこんな時・・・)

 

 私は賢治を思い浮かべていた。

 すると賢治は、とても残念そうな顔をしていた。

 なぜだ?

 私は紅 音也みたいに・・・・・・あれ?

 

ダクネス(・・・違う、私は・・・)

キバット二世「・・・お前はどういう自分になりたい?」

  「どうありたい?」

ダクネス「私は・・・」

 

 そうだ。

 私は貴族であり、今は一人の冒険者だ。

 そして私はダクネス、ダスティネス=フォード=ララティーナだ。

 

ダクネス「私は、自分が守りたいと思う者のために強くなりたい。」

  「ララティーナとして、そして、ダクネスとして!」

キバット二世「・・・フッ、良いだろう。」

  「ならこの俺が力を貸してやろう。」

 

 その時、この部屋の壁を突き破って、数体のロイミュードが現れた。

 

キバット二世「ほぉ、こいつらがお前の敵か?」

ダクネス「そうだ、本命は別のところにいるから、急いでそっちに行かないと。」

キバット二世「では、早速俺の出番だな。」

ダクネス「しかし、お前の力を使ったら・・・」

キバット二世「心配するな、お前に合わせて力の調整を俺が引き受けてやる。」

  「・・・同じ過ちは繰り返さん。」

ダクネス「・・・わかった。」

  「いくぞ! キバット!」

キバット二世「喜べ! 絶滅タイムだ!」

  「ガブリ!」

 

 キバットバット二世が私の左手に噛み付く。

 そこから私の体の中に魔皇力が流れ込み、体全体に美しいステンドグラスが浮かび上がる。

 黒い鎖が腰に巻きつき、次の瞬間にはベルトになっていた。

 

ダクネス「変身!」

 

 キバットバット2世を逆さにして、ベルトに装着する。

 すると、私の体に『闇のキバの鎧』が現れ、仮面ライダーダークキバに変身していた。

 

ダクネス(皆んな、待っていてくれ。)

  (こいつらを片付けたらすぐに行く。)

 

 

 

ー零子sideー

 

 数分前

 

 私達はケン君達と別れ、シグマサーキュラー破壊の為に走っていた。

 途中、ロイミュード達の妨害を受けながら。

 

零子「自己紹介が遅れたけど、私は沖田 零子、仮面ライダーゼロワンよ。よろしくね。」

 

 『タイヤチェンジング・インパクト!』

 

零子「ハアアアァァァ!!」

 

 タイヤチェンジング

        インパクト

 

カズマ「俺は佐藤 和真、冒険者で仮面ライダーゲイツだ。 よろしく。」

めぐみん「我が名はめぐみん! 紅魔族随一の魔法使いにして、爆裂魔法を操りし者!」

  「そして、仮面の戦士、仮面ライダーウォズです!」

 

 『フィニッシュタイム!』『マッハ!』

 『ビヨンドザタイム!』

 

 『ヒッサツ!』『タイムバースト!』

 『フィニッシュ忍法!』『タイムエクスプロージョン!』

 

カズマ・めぐみん「ハアアアァァァ!!」

 

エルシャ「私はエルシャ、ドルイドで仮面ライダー斬月よ。」

 

 カシュッ!

 『メロンスカッシュ!』『ジンバーチェリースカッシュ!』

 

エルシャ「ヤアアアァァァ!」

 

ウィズ「私はウィズです。 ウィズ魔道具店の店長をしています。」

 

 『サンダー!』

 

ウィズ「『 ライトニング・ストライク!』」

 

 私を含めた仮面ライダー組は、それぞれ必殺技を放ち、ウィズさんはなぜかアナザーウィザードの姿で魔法のを放っている。

 ケン君の話だと、ウィズさんはアンデットのリッチーで、魔王軍の幹部の一人らしい。

 

零子(ウィズさんを見ていると、とても幹部らしくなさそうなんだけど。)

 

 ウィズさんがアナザーライダーだと言う事にも驚いた。

 ケン君に確認した所、今の所ケン君達が倒したアナザーライダーは、『アナザー武神鎧武』『アナザーレンゲル・キングフォーム』そして今回の蛮野天十郎『アナザーゴルドドライブ』。

 どれも本編に登場しなかったアナザーライダーばかりだ。

 

零子(アナザーレンゲルのデュラハンのベルディアは、確実に魔王からウォッチを貰ったんだろうけど。)

  (あと、ウィズさんも。)

 

 他の二人に関してはどうやってアナザーウォッチを手に入れたのだろうか?

 

零子「・・・まっ、今はそれよりシグマよね。」

 

 通路を塞ぐロイミュードの大群を薙ぎ払い、先に進む。

 ロイミュード達を振り切り、しばらく走ると正面に入り口が見えた。

 シグマサーキュラーはその先にあるはず。

 入り口を通り、中に入ろうとした時に。

 

 ピシュン!

 

零子「?! うわ!」

 

 急に足元に何かが撃ち込まれた。

 その拍子につまづいてしまい、転びそうになる。

 それを前転で回避し、着地と同時に前を見る。

 その時見たのは。

 

 ビビビビビビビビビビビッ!!!

 

零子「いっ?!!」

 

 沢山の光の弾丸だった。

 

零子「うわっ! 危ない危ない!! あわわわ!!」

カズマ「おーい! 大丈夫か?」

零子「ちょっ! 今来ちゃダメ!」

 

 カズマくんが入って来そうだったので、慌てて制する。

 私も今いる部屋から転げるように出て行った。

 

カズマ「どうしたんだ?」

零子「ふぅ・・・みんな気をつけて。」

  「防衛機構が邪魔しているみたい。」

 

 入口からほんの少し顔を出し、中を見る。

 するとそこには、台座に置かれた丸い棘の付いた球体があった。

 その周りのは、高射砲の様な物が床や壁に設置されていた。

 ご丁寧に自動掃射型のようだ。

 さらに棘の付いた球体の背後には、ガラスケースの中で赤く輝く丸い球体があった。

 

零子「あれの一斉掃射を掻い潜りながらシグマを破壊するのは大変そう。」

カズマ「まぁ、ここまで来て何もなかったら、逆に拍子抜けだけどな。」

エルシャ「でも、実際どうする?」

 

 さっき逃げる時に僅かに掠った左腕を見る。

 仮面ライダーの装甲は大抵の攻撃には、傷一つ付かないが、腕を見ると抉れて焦げたような痕があった。

 そんな弾丸が飛んでくる中に無策で突っ込むなんて、自殺行為だ。

 

零子「このままここでじっとしている訳には行かないし。」

 

 どうした物かと考えている時。

 

ウィズ「あの、私が魔法で障壁を張るので、皆さんは私の後ろについてきてください。」

めぐみん「それって、ウィズが一番危なくないですか?」

エルシャ「そうよ! 障壁を破壊されたら集中砲火を浴びるわよ。」

 

 その通りだ。

 もし障壁の強度が足りず、破られたら彼女が一番最初に高射砲の被害を受ける。

 だが現状他に方法がない。

 ここは、ウィズさんに頼むしかない。

 

零子「・・・ウィズさん、お願いできる?」

ウィズ「はい、任せてください。」

 

 私達は頷き合う。

 

ウィズ「では、行きますよ。」

 

 『ディフェンド!』

 

ウィズ「対物理・対魔法障壁!(×5)」

 

 ウィズさんが魔法を発動し、部屋に入っていく。

 それに続いて、私達も入る。

 高射砲から光の弾丸が降り注ぐ。

 ウィズさんの障壁がそれを防いでくれている。

 

ウィズ(! 思っていたより威力が高い?!)

 

 思っていたより威力が高かったのか?

 ウィズさんの張った魔法の障壁は、ガラスが割れる様な音を上げて、一つ、また一つと破壊されていく。

 あともう少しでライダーキックを放てる距離に到達する。

 それまで持てばいいが。

 

零子(もう少し・・・後ちょっと・・・・・・! ここ!)

  「いくよ皆んな!」

カズマ・めぐみん・エルシャ

「おぉ!」

 

 『タイヤチェンジング・インパクト!』

 『フィニッシュタイム!』『マッハ!』

 『ビヨンドザタイム!』

 『メロンスパーキング!』

 

「「「「ハァ!」」」」

 

 私とカズマとめぐみんとエルシャは、ウィズの後ろからジャンプし、ライダーキックを放った。

 

「「「「ハアアアァァァ!!!」」」」

 

 タイヤチェンジング

        インパクト

 

 『ヒッサツ!』『タイムバースト!』

 

 『フィニッシュ忍法!』『タイムエクスプロージョン!』

 

 『ジンバーチェリースパーキング!』

 

 防衛機構はライダーキックを繰り出す私達に標的を変えて、攻撃する。

 しかし、四人分のライダーキックのエネルギーに包まれた私達に攻撃が届かない。

 その勢いのまま、私達のライダーキックがシグマサーキュラーに炸裂した。

 

 バチバチと火花を上げながら、シグマサーキュラーは爆発した。

 それに連動するように、周囲にある高射砲も爆発した。

 

零子「やった!」

カズマ「よしゃあああ!」

ウィズ「皆さん、やりましたね!」

エルシャ「これで終わったのね。」

 

 そう。

 これで終わった。

 誰もがそう思っていた。

 だが、突然周りが一瞬光った。

 すると私達全員の動きが鈍くなった。

 

めぐみん「これは・・・重加速?」

エルシャ「どうして?! シグマは破壊したのに?」

零子「・・・まさか?!」

 

 ゆっくりとだが、私はシグマが爆発した方を見た。

 そこには、紫のオーラに包まれ、修復されたシグマサーっキュラーが最終進化態へと進化が完了した姿だった。

 

シグマ『プログラム・シグマ・・・完全・・・起動・・・完了。』

めぐみん「遅かったんですか?!」

エルシャ「そんな!」

シグマ『我は・・・シグマ。 人類を・・・統率する・・・神。』

  『全世界・・・静止・・・人類・全ての・ナンバリング・とデータ化を・・・開始。』

 

 シグマの頭部部分が光ったと思ったら。

 

「「「「「?! アアアアアアアアア!!!」」」」」

 

 突然私達の周囲で火花が散り、小さな爆発が起こった。

 そのせいで吹き飛ばされる。

 

カズマ「グゥ・・・ふざけるなぁ!!」

 

 『ゲイツリバイブ・疾風!』

 

 世界が鈍くなっている中で、カズマはゲイツリバイブを取り出し、ゲイツリバイブ疾風に変身する。

 

 『リバイリバイリバイ! リバイリバイリバイ!』

 『リバイブ疾風! 疾風!』

 

カズマ「! よし、これで動ける。」

  「ハアアァ!!」

シグマ『!』

 

 カズマがシグマに攻撃を始めると、シグマも行動を開始した。

 果敢にも一人で挑むカズマだが、このシグマは原作通り、瞬間移動ができるようだ。

 ゲイツリバイブ疾風の攻撃を回避し、レーザーを照射して攻撃する。

 

カズマ「グアアア!!」

めぐみん「カズマ!」

カズマ「・・・まだまだ!!」

 

 ジカンザックスの弓モードで遠距離から攻撃したり、ジカンジャックローの爪モードで接近して攻撃したりを、その超スピードで繰り出している。

 しかし、そのどれもが瞬間移動で回避され、カウンター気味にレーザー攻撃を受ける。

 

カズマ「うわあああ!!」

ウィズ「カズマさん!」

めぐみん「なんてパワーですか!?」

 

 その時、シグマがカズマに攻撃しようとした時。

 

 ズドオオオォォォ!!

 

「「「「「?!!」」」」」

 

 シグマに青いエネルギーが撃ち込まれた。

 そこに居たのは。

 

賢治「皆んな待たせた。」

零子「ケン君!」

 

 

ー賢治sideー

 

 トレーラー砲の一撃を放ったが、やはりこれでは倒せないようだ。

 

カズマ「遅いぞ賢治。」

賢治「すまん。」

めぐみん「ダクネスとルミは?」

賢治「それも後で話す、今はこいつを倒すぞ。」

カズマ「おう! けど、どうする?」

 

 確かに、原作でもメディックが泊 進ノ介の怪我を癒やし、ハートの協力によってできた僅かな隙をついて、泊さんとハートはシグマを撃退していた。

 この方法にかけるしかないか。

 

賢治「カズマ、俺達でどうにかしてシグマに一撃入れて隙を作る、その後に必殺の一撃を放つぞ!」

カズマ「なるほど、シンプルだけどそれが一番わかりやすい作戦だな。」

  「ならここは任せろ!」

 

 タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ

 

 カズマが爪モードのジカンジャックローのグリップ上部にあるスイッチを連続で押し始める。

 すると、シグマの周囲に青い光を放つ爪のような形をした光弾が出現した。

 

カズマ「くらえ!」

 

 『つめ連斬!』

 

 カズマがトリガーを引くと、周囲の光弾はシグマめがけて飛来した。

 シグマも防御フィールドを展開し、光弾を打ち消そうとする。

 しかし光弾のいくつかは、そのフィールドを破りシグマに到達する。

 それを受け、シグマに隙が生まれる。

 

賢治「よし! いくぞカズマ!」

カズマ「おう!」

 

 『ドドドドライブ!』『ファイナルアタック タイムブレイク!』

 『フィニッシュタイム!』『リバイブ!』

 『百烈!』『タイムバースト!』

 

賢治・カズマ「ハアアアァァァ!!」

 

 俺のライダーキックが炸裂した後、カズマのライダーキックがヒットした瞬間、遅れて全方位から複数のゲイツリバイブのライダーキックが炸裂した。

 

 ドゴオオオオオオオオオオオオ!!!

 

 それにより、シグマは爆発四散した。

 

カズマ「・・・やったか?」

賢治「おい! それフラグ!」

カズマ「あ!!」

 

 そういうことを言うと、『実はやっていない』フラグが立つもんだ。

 そして、シグマの方を見てみると。

 まるで映像を巻き戻したように、シグマが修復されていく。

 

賢治「ほら見ろ!」

カズマ「すまん!」

シグマ『修復・・完了。 敵対者・の・・・迎撃を・・・再開。』

賢治・カズマ「!!」

 

 シグマが瞬間移動で俺とカズマの間に移動し、衝撃波を放つ。

 その衝撃で吹き飛ばされてしまう。

 

賢治「グハッ! ・・・チクショウ!」

カズマ「アイツ、一体どうやって修復してるんだ?」

  「さっきので2回も破壊してるのに。」

 

 確かに、いくら自己修復ができるにしても、それには何かカラクリがあるはず。

 ゲームや漫画ならこう言う場合、どこかにエネルギーの供給源があって、それを壊したら再生が止まる。

 と言うのがお約束なのだが。

 

零子「ケン君!」

賢治「なんだ?」

零子「解析の結果だけど、シグマが置かれていた台座の後ろに、赤く光る球体が見えるでしょ。」

賢治「あぁ、あれか? ガラスケースに入ってる。」

 

 それは、この部屋に入った時から見えていた。

 ガラスケースの中に、赤く光る球体が収められている。

 いや、さっきより若干光が弱くなっただろうか?

 

零子「それがコロナタイトよ。」

カズマ「あれが?!」

零子「あのコロナタイトから、シグマに向かってエネルギーが流れ込んでいるわ。」

  「コロナタイトをあの中から出してしまえば、エネルギーの流れを止められるわ。」

 

 なるほど。

 シグマのあの修復能力は、コロナタイトからのエネルギー供給があるからか。

 

カズマ「なら、やることは決まったな。」

賢治「あぁ! ・・・けど、攻撃するなよ。」

カズマ「え? なんで?」

賢治「あれはエネルギーもの塊だぞ。 それを攻撃して破壊してみろ、爆発するかもしれないぞ。」

カズマ「あ!」

 

 さて、どうしたものか?

 ガラスケースを割って取り出そうとしても、シグマが邪魔をするのは目に見えてるし。

 すると、カズマが何か思いついたのか。

 

カズマ「よし! 俺に任せろ。」

賢治「何するんだ?」

カズマ「こうするんだよ。」

  「スティール!」

 

 カズマの右手が光り、『スキル・窃盗』が発動する。

 なるほど、これなら・・・うん?

 

賢治(あれ? ・・・これって・・・)

 

 俺が何か忘れている気がする。

 だが、なんなのか分からない。

 見ると、カズマの右手には赤く輝くコロナタイトが乗っていた。

 

カズマ(フッ! 計画通り。)

 

 仮面でわからないが、今のカズマはおそらくドヤ顔になっているだろう。

 だが、コロナタイトが乗っている手から、シュゥゥゥ・・・と言う音が聞こえてきた。

 

賢治「あ! カズマ手に気をつけろ!」

カズマ「え?」

 

 だが、ちょっと遅かったようだ。

 

カズマ「!!? アチャアアアアアアアアア!?!?!?」

 

 コロナタイトを放り出し、手から感じる熱さにのたうち回る。

 そりゃあ、そうだよな。

 あんだけ赤く輝いているんだし、熱いよな。

 

めぐみん(カズマって・・・意外とお馬鹿さんですね。)

カズマ「『フリーズ!』『フリーズ!』」

 

 氷結魔法を使って、自分の右手に薄く氷の膜ができるほどに、氷で覆っている。

 さて、これで今度こそ行けるはず。

 

シグマ「敵対・者の・・・危険度を・・・上・方修正・・・排除・を・開始。」

 

 コロナタイトを失い、危険と判断したのか?

 先程よりも攻撃が苛烈になった。

 さっきまでは、瞬間移動やレーザー攻撃などが主な攻撃方法だったが、今度は床から牙みたいなものを出現させたり、衝撃波も頻繁に使ってくるようになった。

 そのせいで反撃の暇がなく、俺達は回避に専念せざるを得なくなった。

 

 その時、この部屋の床を突き破って何かが現れた。

 

???「ハッ!」

 

 そいつは、シグマに向かって緑色の魔法陣みたいな物を放った。

 すると、その魔法陣に囚われ、シグマの動きが止まった。

 

賢治「あれって、キバの紋章?」

カズマ「え?! なんで?」

???「すまん。 待たせたな。」

賢治「え?! その声・・・」

カズマ「ダクネスか?」

ダクネス「あぁ。 その通りだ。」

 

 なんと、俺達の目の前に現れたのは、仮面ライダーダークキバに変身したダクネスだった。

 仮面ライダーになれると思ってライドウォッチをポケットに入れておいたが、仮面ライダーダークキバは予想外だった。

 て言うか、ダクネスは大丈夫なのか?

 

賢治「ダクネス、お前ダークキバになって大丈夫なのか?」

カズマ「そうだぞ! その仮面ライダーは・・・」

ダクネス「心配ない。 キバットが調整してくれているからな。」

キバット二世「うむ。 任せろ。」

賢治「・・・いいんだな、信じて。」

キバット二世「無論だ。 それより、そろそろ拘束が解けそうだぞ。」

 

 シグマを見ると、キバの紋章から抜け出そうともがいている。

 拘束が緩んでいるようだ。

 

賢治「おっと! 今度こそ決めるぞ!」

カズマ「あぁ!」

ダクネス「任せろ!」

 

 『フィニッシュタイム!』『ヘイ!仮面ライダーズ!』

 『ヘイ!セイ!ヘイ!セイ!ヘイ!セイ!ヘイ!セイ!ヘヘヘイ!!セイ!ヘイ!セイ!ヘイ!セイ!ヘイ!セイ!ヘイ!セイ!

 『ジカンジャック!』

 『ウェイクアップ2

 

 俺がライドヘイセイバー、カズマがジカンジャックロー、ダクネスがウェイクアップ2。

 俺はドライブライドウォッチを外し、カズマはゲイツリバイブウォッチをドライバーから外し、それぞれの武器にセットし、必殺技の発動待機状態になる。

 

 『ドライブ!』『アルティメットタイムブレイク!』

 『疾風!』『スーパー爪連斬!』

 

ダクネス「ハァ!」

 

 武器のトリガーを引き、必殺技を発動。

 ダクネスは天井近くまでジャンプする。

 

 ライドヘイセイバーから白く輝くタイヤが出現し、シグマにぶつかるとそのタイヤは複数のタイヤに分裂し、シグマに殺到した。

 すかさずカズマがジカンジャックローでシグマを切りつける、すると遅れて複数の爪による斬撃が発生する。

 最後にダクネスの両足蹴り、『キングスバーストエンド』が炸裂。

 

シグマ『防御不能・・・計画遂行・・・不能・・・』

 

 ドゴオオオオオオオオオオオオオオオォォォ!!!

 

 シグマが爆発する。

 すると、さっきまで発生していた重加速が解除された。

 

零子「あ! 普通に動ける。」

めぐみん「本当です!」

ウィズ「これで、皆さんも普通に動けるのですね。」

 

 ここからでは分からないが、外の方から微かに歓声が聞こえる。

 外にいる皆んなも動ける様になったのだろう。

 シグマが爆発した方を見ると、残骸が転がっているだけで、再生する気配はない。

 今度こそ終わったようだ。

 みんな揃って変身を解除した。

 解除しても普通に動けるので、問題ないようだ。

 

エルシャ「ふぅ〜、終わったわね。」

めぐみん「ところで、ダクネスが別の仮面ライダーになっていたことも驚きですが、ルミはどうしたのですか?」

ダクネス「! ・・・ルミは・・・」

 

 ダクネスがルミのことを語ろうとすると、背後が赤く光り始めた。

 

カズマ「? な!おい皆んな!」

  「なんかコロナタイトが、赤く光だしたぞ!」

「「「「「!!」」」」」

 

 カズマの言う通り、さっきまでほんのりと光っていただけのコロナタイトが全体的に赤く光り始めている。

 エネルギーの供給先が無くなった事で、際限なくエネルギーが蓄積され始めたのだろう。

 

賢治「不味いな! ウィズ、氷結魔法で凍らせてくれ。」

ウィズ「は、はい! 『カースド・クリスタルプリズン!』」

 

 ウィズの氷結魔法が、コロナタイトに炸裂。

 俺はもう一度変身し、フォーゼアーマーになる。

 すかさずタイムマジーンを呼び出し、ロボモードに変形させる。

 氷漬けになったコロナタイトを床から引き剥がし、タイムマジーンの両手で抱える。

 

賢治「零子、時間がないからここからは俺一人で行くから。」

零子「えぇ、気をつけてね。」

賢治「おう! じゃあ、デストロイヤー本体の方は任せるぞ。」

  「行ってくる!」

 

 タイムマジーンの背部のブースターを噴かし、勢いよく飛び立つ。

 

賢治「宇宙来たあああああああああああぁぁぁ!!」

 

 と、叫んだ!

 

 

 

 そして、大体10分くらいすると、そこは満天の星の海だった。

 宇宙に行くなんて初めてなので、その光景に圧倒されると同時に感動してしまった。

 すると、タイムマジーンの画面に『警告』と表示された。

 どうやら大気圏を突破した時に氷もある程度溶けて、宇宙に出た時に完全に溶けてしまったようだ。

 

賢治「ここまでくれば大丈夫かな。」

 

 俺は操縦桿を操作し、手にしていたコロナタイトを手放した。

 ゆっくりと宇宙空間を漂っていくコロナタイトを見ていると、一際強く光ったと思ったら、結構強い衝撃がやってきた。

 コロナタイトが爆発したようだ。

 

賢治「・・・よし、帰るか。」

 

 そう言って後ろを振り向くと、そこには青い星があった。

 なんて綺麗なんだろうか!

 だが同時に、支えていないとあっという間にこぼれ落ちてしまいそうな儚さがある。

 俺は、『この星を守らないと』と心に誓って、みんなの元へ戻るのだった。

 

 その時地上では、コロナタイトの爆発の光を見ていた男がいた。

 

士「・・・フッ、なかなかやるな。」

 「俺の手助け無しで解決するとは。」

 

 感心したように、そう言う。

 

士「さて、これはどうするか?」

 

 彼の手の中には一冊の本があった。

 実は彼は、デストロイヤーの内部からこの本を見つけて持ってきていたのだ。

 どうやらデストロイヤーの開発者の日記らしいのだが。

 

士「・・・まぁいい、あいつに任せるか。」

 

 そう言って、アクセルの街に歩いていくのだった。

 

 

 

 

 

 機動要塞デストロイヤー、蛮野天十郎、シグマサーキュラーとの戦いは終わった。

 デストロイヤーの残骸は、冷却が間に合った為、今は解体作業が行われている。

 ほぼ全ての部分にアダマンタイトが使用されているので、こぞっていろんな人達が我先にと獲りにやってくる。

 ちなみに零子もその一人だ。

 「素材の宝庫だ!」と言っていた。

 

 ルミのことをみんなに伝えた時は、みんな悲しい顔をしていた。

 しかし、ここでも零子が活躍することになる。

 「私ならなんとか出来るかも知れない。」と言って、ルミの体を引き取っていった。

 ただ、俺達の屋敷にある物置小屋に入っていったのは、どう言うことなのだろうか?

 

 俺やカズマが思っていたような異世界生活とはちょっと違うが、なんだかんだで今は充実した日々を過ごせていたと思う。

 こっちに来て、大事な人が零子以外にも()()増えたし、大事にしないとな。

 

 デストロイヤー戦から三日後、この街のギルドに王都から使者がやって来た。

 どうやら俺達に用があるらしい。

 カズマ達は俺達に直接報酬を渡しに来たと言っていたが、・・・・・・

 

 そんな上手い話があるだろうか?

 

 

ーアクセルの街 冒険者ギルドー

 

 ルミを除いた俺達は、ギルドに来ていた。

 そこには、王都からやってきた騎士が二人と、黒い髪に眼鏡をかけ、青い服と帽子を被った、何処となく女性警官をイメージする女性が一人いた。

 その女性から発せられた言葉は。

 

検察官「霧島 賢治、貴様には現在、国家転覆罪の容疑がかけられている。」

賢治「・・・・・・は?」

検察官「一緒に署まで来てもらう。」

賢治「・・・・・・・・・・はぁ!」

 

 ・・・・・・何がどうしてこうなった?

 

 




 いかがだったでしょうか?

 見返していた仮面ライダーとは、『仮面ライダーキバ』です。
 改めて思いましたが、仮面ライダーキバって『初期フォームなのに最強フォーム』なんですね。
 リアルタイムで見ていなかったので、今回初めて知りました。

 次回は、外伝を二つ書こうと思っています。

 賢治に大事な人が二人増えたので、その二人が誰なのかを描きます。

 もう一つが、今回デストロイヤー戦に参加しなかった、キョウヤの話です。

 それが終わってから、次のストーリーに行く予定です。

 次回もよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

外伝:この愛しい彼女達に祝福を

 みなさんお待たせしました。

 今回は短めの外伝ストーリーです。

 デストロイヤー撃破後の話です。


 デストロイヤーとの戦いの後、デストロイヤーの残骸の後片付けはギルド側が受け持つと言うので、後はギルドに任せる事にした。

 

 その日の夜は、デストロイヤー撃破を記念して宴が開かれていた。

 みんな大いに飲み、大いに食べ、騒ぎまくっている。

 それも仕方がない。

 なんと言っても、『魔王以上の脅威』と言われていた、機動要塞デストロイヤーをアクセルの街の冒険者達が撃破したのだ。

 この世界の人々にとって、脅威の一つが取り払われた瞬間である。

 

 俺達も、この時ばかりは羽目を外して楽しんだ。

 

 

零子「と言う訳で、改めて自己紹介するわね。」

  「私は沖田 零子、ゲーム会社に勤務していた原画担当兼グラフィッカー担当よ。」

  「趣味は漫画と特撮鑑賞、そして、仮面ライダーゼロワンよ。」

  「よろしくね。」

カズマ「俺は佐藤 和真、冒険者で仮面ライダーゲイツだ。よろしく。」

めぐみん「我が名はめぐみん! 紅魔族随一の魔法使いにして、爆裂魔法を操りし者。」

  「そして、歴史を記す預言者・・・そう、我こそ! 仮面ライダーウォズである!」

ダクネス「私はダクネス、クルセイダーだ。」

  「そして、今回の一件で仮面ライダーダークキバになれる様になった。」

エルシャ「私はエルシャ、ドルイドよ。 そして、仮面ライダー斬月よ。 よろしくね。」

賢治「後、今ここにいないが、ルミって言うロイミュードの諜報士がいるぞ。」

零子「さっき預かったあの子よね。」

  「任せて! 当てがあるから。」

ダクネス「うむ。よろしく頼むぞ。」

 

 シグマとの戦いが終わった時、ルミの現在の状況を話すと、零子がルミを治す方法があると言ってきた。

 どうするのかと思ったが、零子が考えなく言うとは思えないので零子にルミを引き渡したのだ。

 俺のスキル、宝物庫(アイテムゲート)を見せると、冒険者カードにスキルが表示されので、今回の戦いで手に入ったスキルポイントを消費して、零子も宝物庫が使える様になったので、零子の方にルミを移した。

 そのせいでスキルポイントの殆どが無くなってしまった様だ。

 ちなみに彼女の職業は、『錬金術師』である。

 零子曰く、「今後のことを考えると、この職業の方が丁度良い。」と言っていたのだ。

 何か物作りでもするのだろうか?

 

カズマ「・・・おいアクア、お前も自己紹介くらいしろよ。」

アクア「・・・・・・私はアクアよ。 よろしく。」

カズマ「・・・お前、さっきから何不貞腐れてるんだよ?」

アクア「別に・・・フン!」

 

 そう、さっきからアクアが何故か不機嫌なのだ。

 宴の席だと言うのに、いつもみたいに宴会芸をするでもなく、大好きなお酒を飲むでもなく、ただただ不機嫌なのである。

 いや、正確に言うと酒は飲んでいる。

 ただ、一回一回の飲む量が少ないだけだ。

 正直、らしくないと思う。

 

ダクネス「ところで・・・賢治と零子はどう言う関係なのだ?」

エルシャ「私も気になる。 二人ともすごく仲が良いみたいだけど、どう言う関係?」

 

 その質問は当然だろう。

 急に現れた女性が、いつも一緒にいる男と仲が良ければ尚更だ。

 それを聞いた零子が。

 

零子「実は・・・私とケン君は、恋人同士なのです。」ギュッ!

 

 零子は一拍置いて、俺の恋人宣言をすると、腕に抱きついてきた。

 事実なのだから隠すつもりは無いが、人前はちょっと恥ずかしい・・・と言うか照れ臭いな。

 

「「「「・・・えええええええええええ〜〜〜〜!!!」」」」

 

 カズマ・めぐみん・ダクネス・エルシャの四人が驚いた様子で叫んだ。

 

カズマ「マジか! お前こんなに綺麗な恋人がいたのかよ。」

賢治「おう、よろしくな。」

零子「き! 綺麗だなんて・・・もう、カズマ君ってば!」//////

ダクネス「ま、まぁ賢治ならあり得るか?」

めぐみん「そうですね。 賢治って優しいですし、家事全般が一通りできますし、おまけに冒険者としても高レベルですし、いてもおかしく無いですね。」

エルシャ「・・・・・・」

 

 カズマは零子を綺麗と褒め、めぐみんとダクネスは俺を褒めてくれた。

 エルシャは驚きから、空いた口が塞がらなくなっているみたいだ。

 その時、これまで黙っていたアクアが。

 

アクア「・・・ない。」

カズマ「? アクア?」

アクア「認めない認めない認めない!! み・と・め・な・いーーーーー!!!」

 

 アクアが急に叫び声を上げた。

 ギルド中に響き渡るほどの大音量だ。

 

アクア「ふざけんじゃないわよ!」

  「あんたが賢治の恋人なんて認めないからね!」

 

 認めないと言われても困るのだが。

 なんでアクアがこんなに顔を真っ赤にして怒ってるんだろうか?

 

零子「・・・え〜っと、アクアだっけ?」

アクア「何よ?」

零子「もしかして・・・ケン君のこと、好きなの?」

 

 アクアが?

 俺を?

 ・・・いや、彼女に好かれる様なことをした覚えはないが?

 いつも普通に接していたつもりだ。

 まぁ、アクアのことが好きかと聞かれたら、「手の掛かる女の子友達」と言う感じで、嫌いという訳ではない。

 

アクア「はぁ! そんなの・・・・・・決まって・・・」

 

 急にアクアが言い淀んでしまった。

 すると次第に、さっき叫んでいた時以上に顔を赤くし、耳まで真っ赤になり。

 

アクア「ーーーーーー!!!」//////  ガタン!

 

 アクアは駆け出し、ギルドを出て行った。

 

賢治「アクア!」

零子「待ってケン君!」

 

 アクアを追い掛けようとした俺を、零子が止めた。

 

零子「私が行ってくるわ。」

賢治「いや、けど・・・」

零子「良いから、私に任せて。」

エルシャ「あ! じゃあ、私も行くわ。」

 

 そう言って、零子とエルシャはアクアを追っていった。

 

カズマ「アクアが賢治を? ・・・アイツに限って誰かを好きになるなんて、あるのか?」

めぐみん「いや、アクアだって女ですし、切っ掛けさえあれば十分あり得るでしょう。」

ダクネス「お前はアクアをなんだと思っているのだ?」

カズマ「そもそも俺、アイツを女として見ていないからな。」

  「あえて言うなら・・・宴会芸の神様?」

賢治「なんで疑問系? 後、水の女神だろ。」

  (・・・・・・自惚れるわけじゃないけど、アクア・・・マジで俺が好きなんだろうか?)

 

 

 

ーアクアsideー

 

 気が付いたら私はギルドから飛び出していた。

 

アクア(なんで? なんで? なんで私走り出してるの?)

  (なんでこんなに顔が熱いの?)

 

 何より、今一番わからないのは。

 

アクア(なんでこんなに胸が痛いの?)

 

 いつの間にか涙が出ていた。

 今にも叫びそうになるのを、両手で口を塞いで我慢していた。

 

 走って、行き着いたのはアクセルにあるアクシズ教の教会だった。

 陽が落ちているので、教会には誰もおらず、静かだった。

 相当走ったのか、息苦しかった。

 まるで心臓が耳の真横にでもあるかのように、ドクン! ドクン!と音が聞こえる。

 手近な椅子に腰掛け、呼吸を整える。

 

アクア「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

  (なんでよ? なんでよ私?)

 

 「賢治のこと、好きなの?」と言われた時、自分は「そんなの好きに決まってるじゃないの!」と言ってしまいそうになった。

 

アクア「私・・・何考えてるのよ・・・馬鹿じゃないの私。」

 

 一体いつからそうなったのか?

 自分でも分からない。

 いつの間にか、そう・・・いつの間にかなのだ。

 

アクア(私、賢治の事・・・好きになってたんだ。)

  「・・・・・・だめ、だめよ。」

 

 私が賢治を好きでも、絶対に彼を不幸にしてしまう。

 神と人間の恋なんて絶対に上手くいかない。

 仮に賢治が受け入れてくれても、周りが気味悪がるに決まってる。

 何故なら、賢治が普通に歳をとっていくのに、私だけ歳をとらず若い姿のままなのだ。

 必ず先に彼が死んでしまう。

 私だけがこの世界で、ずっと今の姿のまま生き続ける事になるのだ。

 そもそも私は、カズマがこの世界の魔王を討伐したら天界に帰らないと行けない。

 どの道成立しない恋なのだ。

 

アクア「・・・・・・でも・・・でも・・・」

 

 大粒の涙が目から溢れていた。

 頭ではわかっている。

 それでも。

 

アクア「好きになっちゃったんだもん。 もう、どうしようもないよ。」

 

 意識したらもう止まらない。

 『賢治のことが好き』と言う気持ちを抑えられない。

 この気持ちを無かった事にしたくない。

 でも、どうしたら良いのか分からない。

 賢治と零子は本当に仲がよく、愛し合っていると言うのがわかる。

 なのに今更自分が賢治に告白したところで、この恋は叶わないんじゃないか?

 

アクア「どうしたらいいの?」

  「私も・・・賢治のこと好きなのに。」

零子「やっぱりそうだったんだ。」

アクア「?!!」

 

 後ろから声が聞こえた。

 振り向くと、そこには零子とエルシャがいた。

 

 

 

ー零子sideー

 

 エルシャと一緒にアクアを追いかけるために、タブレットを使って追跡し、たどり着いたのはこの街のアクシズ教の教会だった。

 中に入ると、椅子に腰掛けて泣いているアクアがいた。

 

アクア「どうしたらいいの?」

  「私も・・・賢治のこと好きなのに。」

 

 それは、嘘偽りないアクアの本心だと思った。

 私も正直に言うと、ケン君を独占したい。

 でも、彼を好きになってくれる人はたくさんいてほしいと思っている。

 それが女性なら尚更である。

 

零子(なら、アクアにもケン君の事、好きでいてもらわないとね。)

  「やっぱりそうだったんだ。」

アクア「?!!」

 

 こっちの声に驚き、アクアが振り向いた。

 

アクア「零子、エルシャ? どうして?」

エルシャ「アクアが心配だったから、探したの。」

零子「お陰で聞きたいことも聞けたわ。」

アクア「!! 今の、聞いて・・・」

零子・エルシャ「うん。」

 

 私とエルシャが頷くと、この世の終わりみたいな顔をしてこっちを見ていた。

 私が怒ると思っているのだろう。

 でも、私は。

 

零子「アクア、ありがとう。」

アクア「え?」

 

 私はお礼を言った。

 それは勿論、ケン君を好きになってくれた事にだ。

 

零子「私はね、アクアがケン君を好きになってくれて嬉しいの。」

アクア「零子・・・」

零子「エルシャもでしょ。」

アクア「え?!」

エルシャ「・・・うん。」//////

 

 そう、エルシャもケン君のことが好きなのだ。

 なんとなくだが、ケン君を見る彼女の目は、恋する乙女の目だった。

 切っ掛けは、ケン君に助けて貰った事だ。

 それから暫くして、アナザー武神鎧武との戦いで、エルシャを信じて戦いを任せてくれたことで、本格的に惚れてしまったらしい。

 私がケン君の恋人だと知って驚き、身を引こうと思っていたようだ。

 だが、私はそれに待ったを掛けた。

 

零子「アクアにも言ったけど、ケン君を好きになってくれて、私は嬉しいのよ。」

エルシャ「・・・でも・・・」

零子「だからね、二人とも聞いて欲しいの。」

 

 私は二人がケン君を諦めることで、悲しい思いをするのは嫌なのだ。

 だから。

 

零子「私たち全員、ケン君に可愛がって貰おう!」

エルシャ・アクア「・・・・・・ええええええええぇぇぇ!!!」

 

 

 

ー賢治sideー

 

 アクアがギルドから出て行って、そろそろお開きにしようとしていた所に零子とエルシャがアクアと一緒に帰ってきた。

 全員揃って屋敷に帰る時に、零子から。

 

零子「この後、寝ないで部屋で待っててね。」

 

 と言われた。

 とりあえず、寝巻きに着替えて部屋で待っていると、部屋の外から声が聞こえた。

 

アクア「うぅ〜、ねぇ・・・本当にこれで行くの?」

エルシャ「ここまで来たんだから覚悟を決める!」

零子「そうよ。 ケン君絶対喜ぶわよ。」

アクア「ーーー! でも、恥ずかしい!」//////

 

 どうやら零子だけじゃなく、エルシャとアクアもいるようだ。

 部屋の前で揉めているみたいだ。

 ドアをノックする音がする。

 

零子「ケン君、入るね。」

賢治「どうぞ。 ・・・・・・!!?」

 

 扉が開いて、三人が中に入ってきた。

 だが俺は、三人の姿を見て驚いてしまう。

 今彼女達は、それぞれ色違いの花の刺繍をあしらった、ナイトドレスを着ていたのだ。

 零子が黒、エルシャが緑、アクアが水色だ。

 エルシャはサイドテールを解き、アクアもいつもの青い球体の髪留めで止めていた輪っかを解いている。

 

零子「・・・どうかな?」

賢治「いや・・・まぁ、みんな似合ってるぞ。」

  「すごく綺麗だ。」

エルシャ・アクア「ーーー!」//////

零子「ありがと。」//////

 

 本当に綺麗だと思う。

 いつもと違う彼女達の姿を見ているせいか、余計そう思う。

 けど、なんで三人揃ってこんな格好で俺の部屋にきたのだろう?

 

零子「実はね、エルシャとアクアがケン君に言いたい事があるんだって。」

賢治「俺に?」

零子「うん。 ほら、二人とも。」

 

 零子にそい言われ、背中を押されるエルシャとアクア。

 意を結した様に、まずエルシャが。

 

エルシャ「賢治・・・あのね、私・・・貴方が好き。」

アクア「わ・・・わ・・・私も・・・・・・好き。 賢治のこと。」

賢治「な?!」

 

 まさかの告白!

 今のこの状況から考えて、これはlikeじゃなくて、Loveの方だろう。

 

賢治(いや、でも・・・俺には零子が・・・)

零子「ケン君、二人の気持ち・・・受け止めてあげて。」

賢治「! 零子。」

零子「・・・・・・」

 

 零子は笑顔で頷いていた。

 つまり、零子は二人が俺の女になることに納得していると言うことだ。

 勿論俺に断る理由はない。

 彼女達の想いに応えてあげたい。

 

賢治「けど、良いのか・・・その、この世界の、その・・・制度的に?」

零子「あ! それは大丈夫よ。」

  「この世界は普通に一夫多妻制がある世界だから。 特に王族とか、貴族とかね。」

賢治「そ、そうか。」

 

 あるんだな、普通に。

 なら後は俺の覚悟の問題か。

 

賢治「・・・正直に言うけど、アクア、エルシャ。」

エルシャ・アクア「・・・・・・」

賢治「俺は二人のことは、嫌いじゃない・・・いや、好きな方だ。」

エルシャ・アクア「!!」

賢治「二人が許してくれるのなら、零子と一緒に俺の側にいてくれるかな?」

エルシャ「! えぇ! 勿論よ。」

アクア「私も、賢治の側にいたい!」

零子「だからね、ケン君・・・」

エルシャ・アクア「・・・」

 

零子・エルシャ・アクア

「私達の事、沢山可愛がってね!」//////

 

賢治「ーーー!」

 

 それから先は、彼女達と夢の様な時間が過ぎた。

 お互い激しく求め合った。

 

 零子は言わずもがな。

 一年間恋人として過ごしたのだから、当然肉体関係だって持つ。

 その間たっぷり愛し合った仲だから、とても安心する。

 

 エルシャは今回が初めてで、右も左も分からず戸惑っていた。

 それでも俺の為に尽くそうとしてくれる彼女は、とても可愛かった。

 

 アクアは、正直に言うと、溺れそうになった。

 もし俺が、零子と出会わずこの世界に来て、アクアと関係を持っていたら、彼女から離れられなくなっていただろう。

 まるで、『俺の為にあつらえた体』だと言わんばかりだ。

 一言で言うと、『極楽』だった。

 流石は女神、と言ったところか?

 改めて、アクアの事が可愛いと再認識した。

 

 そんな最高な一夜を共にした俺達は、そのまま俺の部屋で寝る事になった。

 朝起きると、俺の左側にアクア。

 右側にエルシャ。

 俺の上に覆いかぶさる様に、零子が俺を抱きしめながら、眠っていた。

 

賢治「・・・」

  (よかった。 夢じゃなくて。)

  (・・・絶対この三人を幸せにしないとな。)

 

 そう心に誓いを立てた。

 

 そして、デストロイヤー討伐から三日後。

 冒険者ギルドで。

 

検察官「霧島 賢治、貴様には現在、国家転覆罪の容疑がかけられている。」

賢治「・・・・・・は?」

検察官「一緒に署まで来てもらう。」

賢治「・・・・・・・・・・はぁ!」

 

零子・エルシャ・アクア

「・・・・・・はあああああぁぁぁ!!!」

 

 ホント、なんでこうなった?

 誓いを立てたばっかだと言うのに。

 




 いかがだったでしょう?
 今回は甘々なストーリーを書いてみました。

 この時みんながどんな事をしたのかは、みなさんの想像にお任せします。
 もしかしたら、R18指定で執筆するかもしれませんが、気が向いたら考えてみようと思っています。

 さて次は御剣の外伝ストーリーを書きます。
 デストロイヤー襲撃時に、彼が何をしていたのか?
 それを書きます。

 次回もよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

外伝:この魔剣の勇者に祝福を 其の壱

 皆さん、長らくお待たせしました。

 実は軽くスランプに陥っていました。
 お陰でこんなに遅くなりました。
 すみません。

 このストーリーを書くとき、頭の中に『劇場版仮面ライダーアギト project G4』が頭をよぎったのでそれを参考にして今回のストーリーを書きました。

 そして、今回晴れて御剣君が仮面ライダーになります。

 気に入っていただけたら幸いです。


 アクセルの街がある国から遥か東。

 そこには今から15年前には、国が存在した。

 当時は優れた国だった。

 人々の生活は安定し、魔法技術が発展し、冒険者をはじめ、戦う術を持つ人間がその国を守ってきた。

 

 だが、当時その国では、妙な力を持つ人間が頻繁に現れる様になった。

 

 その者、何も無い所から火を起こした。

 

 その者、物を宙に浮かせる。

 

 その者、占いが100%的中する。

 

 その者、手に持ったスプーンを曲げる事ができる。

 

 そんな者達は、男女・老若男女問わず現れ、全員に共通するのは、その力を使う際に魔力を消費しないこと。

 国はこういった力を持つ者達を集め、国の領土内に設けた施設に集め、そこで後に『超能力』と名付けられたその力の訓練を受ける事になる。

 国の新たな国防の力にするために、超能力研究機関『スーワ』が作られた。

 

 だが、新たな試みはそう簡単に行くはずもない。

 国としては、彼ら彼女らの待遇はいい物を用意したつもりだ。

 しかし、中には訓練中に力を暴走させ、周囲に被害をもたらす者。

 ある者は、急に力が使えなくなる者。

 連日の訓練に耐えきれず、施設を脱走する者。

 そう行った者が後を立たなかった。

 

 それでも『スーワ』は一定の成果を出した。

 

 ある者は、炎を自在に操る。

 

 ある者は、物体を自在に動かす。

 

 ある者は、視線の先にある物を破壊する。

 

 ある者は、数秒から数分先の未来を見る。

 

 その中でも特に目を引く能力は、『変身』の超能力だった。

 しかも、複数の人間がその力に目覚めたのだ。

 

 姿形は総じて同じだが、中には色が違っていたりする。

 その姿はまるで、人間と昆虫が融合した様な姿をしていた。

 そして腰の部分には、特徴的な装飾具が付いていた。

 のちの研究で、この装飾具を『ベルト』と呼ぶ事になった。

 『変身』の能力者は、全員この『ベルト』の中央にある石から力を得て、超人的な身体機能を獲得していた。

 この石のことは『賢者の石』と呼ばれる事になる。

 

 国はこの力を、『この国の新たな力になる』と確信していた。

 だが、能力者の中には『化け物』になってしまったと思い込み、自害する者が現れ始めた。

 そんな事態を解決するために、国が管理する教会の一部の聖職者が『スーワ』に派遣される事になった。

 協会から派遣されたシスターやプリースト達は、事前に彼らのことを聞かされていたため、驚きはしたが『そう言う力を持っている人間』という共通認識のおかげで、実際にその光景を見ても、恐怖は感じなかった。

 

 教会の聖職者達のメンタルケアのお陰で、自害する者はいなくなった。

 訓練も順調で、国の方でも国民に対して超能力者達のことを発表しようとしていた時に、悲劇が起こるのだった。

 

 超能力者達がいつもの様に訓練をしていると、突然施設の扉が吹き飛んだのだった。

 そこから現れたのは、まるで蟻の様な顔をした、人型の化け物だった。

 蟻の化物は、手当たり次第に施設の職員や研究員、そして超能力者を襲い始めた。

 戦う力を持つ超能力者はともかく、研究者や職員は瞬く間に蹂躙されていく。

 超能力者達も、戦うが蟻の化物は驚くべき数で超能力者達は一人、また一人と命を奪われていった。

 

 そして、蟻の化物達は施設だけではなく、王国にも出現していた。

 国民は容赦なく殺され、迎撃に出た騎士や冒険者達もどこからともなく現れる蟻の化物達に殺されていく。

 

 暫くすると、その国からは命の気配がなくなっていた。

 その国は、たった一日で滅びてしまったのだ。

 

 この出来事は、瞬く間に周辺諸国に広まり、警戒を強めるのだった。

 蟻の化物によって、たった一日で国一つが滅んだのだから。

 しかし、それ以降この化け物が現れたことはなかった。

 

 いつしかこの出来事は、忘れ去られ、現在は冒険者ギルドが運営する中継拠点(ベース)が、その国の跡地に建設されていた。

 

 だが、この殺戮から生き延びた者がいた事を、誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー現在ー

 

 僕の名前は御剣響夜。

 どこにでもいる普通の高校生だった。

 だがある日突然死んでしまい、女神アクア様の導きにより、この世界に転生した。

 この世界の魔王を倒すために、転生特典として与えられた『魔剣グラム』を使って、二人の仲間と共に自分を鍛えていた。

 

 そんな時、拠点にしていたアクセルの街に聞き覚えのある声がした。

 声のする方向に向かうと、そこには何故か檻に入れられた女神様がいた。

 何故そんな事になっているのか聞いてみると、湖の浄化の依頼を達成するために、女神様が持つ浄化の力を使ったらしい。

 檻は女神様を危険から守るための苦肉な策だったとの事。

 

 その作戦には今でも物申したい気持ちはあるが、女神様が了承したらしい。

 

 今考えても、当時の僕はちょっと・・・いや、かなり調子に乗っていただろう。

 穴があったら入りたい。

 

 作戦を考えた冒険者に掴みかかった挙句、その仲間達を勧誘する始末。

 しかもその後に勝負を挑んで負けて、『なんでも言うことを聞く』と言ったにもかかわらず、『魔剣』と言う力を手放したくないがために、『魔剣以外で頼む』と言ってしまった。

 

 その後、勇者の何たるかを僕を負かした冒険者の佐藤和真に問われ、僕は勇者としての自分に自信喪失していた。

 

 ・・・・・・本当に、過去の自分を殴ってやりたい。

 

 魔王軍幹部ベルディアとの戦いで、彼らの戦いを目の当たりにした僕は、今の自分を変えるために修行の旅に出た。

 彼らがあの仮面ライダーだったことは、僕の中ではかなりの驚きだった。

 ちなみに、『魔剣グラム』は霧島賢治に預かってもらっている。

 その際、僕は彼から餞別として時計の様なデバイス『ブランクライドウィオッチ』を渡された。

 彼曰く。

 

賢治

「一応渡しておく、もしかしたらお前の力になってくれるかも知れないからな。」

 

 と言っていた。

 僕はありがたく受け取り、武器屋で新たに剣を買い、旅に出た。

 ちなみに、フィオとクレメオとはパーティを解散した。

 僕が魔剣を預けて、修行の旅に出ると言うと、一方的に解散を突きつけてきたのだ。

 ・・・・・・まぁ、そう言う事なのだろう。

 

 色々とボロボロだが、心機一転頑張ろうと思う。

 

 そして僕は東に向かって歩き出し、途中にある複数のギルドの中継拠点を経由して、今いるのは。

 

 

 

ー東の中継拠点 コウカイー

 

キョウヤ

「すみません。 ゴブリンの討伐依頼、終わりました。」

 

受付嬢

「はい。 ありがとうございます。」

 

 僕は今日もこの中継拠点で依頼をこなしている。

 ここはアクセルから遠く離れており、出現するモンスターや魔物はレベルが高い。

 そのせいで、以前は楽にこなせていた依頼が、今はかなり難しくなった。

 そのため否応なく、自身のレベルの低さを痛感する。

 

 周りにいる他の冒険者達からスキルを教えてもらい、何とかやっていけている。

 それに。

 

キョウヤ

「報告行ってきました。 カオルさん。」

 

カオル

「あぁ、お疲れ。」

 

 今はこの人と一緒に、冒険者として活動している。

 職業は『拳闘士』で、この中継拠点を活動拠点にしている。

 僕がこの中継拠点に来て暫く経った時、声をかけてもらってからの付き合いである。

 

 寡黙で、物静かな雰囲気の男性だ。

 彼の戦い方は、拳を使った戦い方が基本で、状況次第で足技も使うし武器も使う。

 最初にこの人の戦いを見た時、素手でモンスターの頭を吹き飛ばした時は、その威力にびっくりした。

 

カオル

「・・・お前も、最初と比べると強くなったな。」

 

キョウヤ

「! 有難う御座います。」

 

 この人に自分の強さを認めてもらえるのは嬉しい。

 アクセルの街を旅立ってからは、ずっと一人だったから、評価してくれる人が近くにいるのは有り難い。

 

キョウヤ

「この後はどうしますか?」

 

カオル

「・・・この後はブルータルベアの討伐依頼が控えている。」

 

キョウヤ

「ブルータルベアですか?」

 

 ブルータルベア。

 簡単に言えば、『一撃熊』の下位互換みたいな熊だ。

 一撃熊ほどの力はないが、基本2匹から3匹ほどの数が同時に現れるのだ。

 

カオル

「もう少し休憩したら行くぞ。」

 

キョウヤ

「はい!」

 

 その後、きちんと休憩をした僕達は、ブルータルベアの討伐に向かった。

 

 鬱蒼とした森の中に、川が流れる場所にブルータルベアがいた。

 数は3匹いる。

 1匹は僕が相手をし、他の2匹はカオルさんが相手をしている。

 

 『一撃熊』の下位互換とは言え、決して油断できない。

 全長は僕の身長を余裕で超えている。

 その巨体から振るわれる腕による攻撃は、直径30㎝の丸太をへし折るくらいの威力がある。

 走り出すと意外と速度があり、その速度に乗った突進を受ければ余裕で意識を刈り取るだろう。

 

 そんなブルータルベアを一人で1匹相手をするなら、油断さえしなければ今の僕なら何とかなるだろう。

 しかし、カオルさんは別だ。

 

カオル

「ぬん!」ドン!!

 

 彼がブルータルベアの腕の攻撃を掻い潜り、懐に入ったところで拳を振るう。

 すると、ブルータルベアは後ろへ吹き飛んだ。

 すかさずもう1匹のブルータルベアの元へ跳躍し、踵落としを見舞った。

 地面に叩きつけられたブルータルベアはその瞬間、顔の目や口や鼻から血を流し、動かなくなった。

 

キョウヤ

(! 相変わらず、ものすごい一撃だな。)

 

カオル

「・・・こっちを気にする余裕があるなら、目の前に集中しろ。」

 

キョウヤ

「! はい!」

 

 カオルさんはよく周りを見ている。

 ほんの少し意識を向けただけなのに、それに気付くなんて。

 僕はブルータルベアの腕の攻撃を避けて背後に回り、剣を振るった。

 

キョウヤ

「『スラッシュ』!」

 

 職業『剣士』が使うスキルを発動し、上から下に向かって剣を振り下ろす。

 しかし、ブルータルベアの毛皮と体毛のせいで思っていたほどのダメージがないように見える。

 

キョウヤ

(まるで油を吸った絨毯だな。 だが!)

「『クラッシュ』!」

 

 今度は剣で斬るのではなく、地面に叩き付けるように振るった。

 これにより、ブルータルベアは顔から地面に叩きつけられ、目を回している。

 

キョウヤ

「今だ!」

 

 僕はこの隙に、ブルータルベアの首に剣を突き立て、思いっきり突き刺した。

 

ブルータルベア

「!! ・・・・   」

 

キョウヤ

「はぁ、はぁ・・・ふぅ〜。」

 

 ブルータルベアの首から血が滲み、地面に広がる。

 この光景を見て改めて、自分は『命のやりとり』をしているんだと実感した。

 何か一つでも狂えば、自分がこうなっていても不思議ではない。

 

カオル

「・・・大丈夫か?」

 

キョウヤ

「・・・はい。」

 

 以前の僕は深く考えないで剣を振るっていたが、今は殺生をすること、冒険者といての責任を感じ始めたところだ。

 

カオル

「では、いつも通りにするぞ。」

 

キョウヤ

「はい。 後始末ですね。」

 

 後始末とはもちろん、今回狩ったブルータルベアである。

 今回は討伐で、どこかの部位を持って帰る必要はない。

 討伐できたかどうかは、冒険者カードのおかげで簡単に確認ができる。

 だから、まず火で燃やして、残った骨は地面に穴を掘って埋めるのだ。

 ちゃんと処理しておかないと、腐敗して病の元になったり、瘴気の発生の原因にもなる。

 

 賢治の使う『宝物庫』が使えれば、捌いた後にその中に入れておけば腐らずにいつでも取り出せるのだが、僕やカオルさんにはそんなスキルはない。

 そうでなくても、氷結魔法が使えれば凍らせて持って帰るくらいは出来そうだが、僕達は初級の魔法すら使うことが出来ない。

 こう言う時、冒険者の佐藤和真が羨ましく見える。

 

 色々考えているうちに処理が終わり、後は帰るだけになった。

 そのはずだった。

 

カオル

「・・・うん?」

 

キョウヤ

「? カオルさん?」

 

カオル

「しっ!」

 

キョウヤ

「!?」

 

 カオルさんが静かに構えをとる。

 それを見て僕も再び剣を抜く。

 

 改めて周囲を見てみると、静まり返っており木々が風で靡く音しか聞こえない。

 こう言うのは、大体何か良くないことが起きる前兆みたいなものだ。

 背中合わせで警戒していると、そいつは現れた。

 

カオル

「!!」

 

キョウヤ

「な?! ・・・何だこいつ?」

 

 現れたのは蟻のような顔をした全身が黒い甲殻に覆われた、人型の化け物だった。

 しかも1匹だけではなく、周囲からゾロゾロとやって来る。

 そして、1匹だけ他のとは色が違う、体が赤いやつが後ろからこちらを見ている。

 

キョウヤ

(まずい、いくらカオルさんが規格外の力を持っていてもこの数は・・・)

「カオルさん! ここは一旦引きましょう。」

「・・・カオルさん?」

 

カオル

「・・・」

 

キョウヤ

「!」

 

 そこにはいつものカオルさんの顔は無かった。

 その顔は怒りで満ちていた。

 まるで、長年追っていた仇にでも出会ったような。

 

蟻の化け物

「「「ゴカアアアアアァァァ!!!」」」

 

 蟻の化け物達が一斉に襲いかかってきた。

 

カオル

「うおおおおおおぉぉぉ!!!」

 

キョウヤ

「カオルさん! っ!」ガキン!

 

 止める間も無く、カオルさんは突っ込んで行った。

 僕の方にも蟻の化け物が迫ってくる。

 応戦するが、コイツらは普通のモンスターや魔物じゃないみたいだ。

 さっきから剣で斬り付けているが、体を覆う甲殻のせいでダメージだ思ったように入らない。

 しかも、常に全周囲から他の個体が襲いかかってくる。

 

キョウヤ

「『身体強化』・『知覚強化』!」

 

 こうやって、自身の体のステータスを強化し、知覚能力を強化しないと対応できないほどに沢山いるのだ。

 

キョウヤ

「くぅ、以前は魔剣グラムで使っていたスキルだが、いけるか?」

 

 実は僕には『魔剣グラム』持っていた時に使っていたスキルがある。

 しかし、他の剣で試したことがないため、今持っている剣がどうなるか分からない。

 

キョウヤ

「・・・言ってる場合じゃないか。」

「『流星剣』!」

 

 スキルを叫ぶと、青白い光が剣に集中する。

 その状態で、横薙ぎに剣を振った。

 

キョウヤ

「うおおおおぉぉぉ!」

 

 蟻の化け物達は、剣から放たれる光の斬撃に飲まれる。

 すると、僕の目の前にいた奴らは跡形もなく消えていた。

 

キョウヤ

「よし! いけ・・・あ!」

 

 『流星剣』が効くことが分かった。

 このままの勢いで他の化け物達も片付けようと思い、剣を構え直した時。

 

キョウヤ

「うわ! ボロボロ。」

 

 僕が今使っている剣が、ボロボロになっていた。

 何とか剣としての形状は保っているが、2・3発攻撃を受けたら折れてしまいそうだ。

 一応ナイフも持っているが、戦いに使えるものではない。

 ここはやはり逃げるべきだろう。

 

キョウヤ

「カオルさん! ・・・?」

 

 カオルさんの方を見ると、両腕を腰の前でクロスさせると、ベルトのようなものが出現した。

 今日までカオルさんと一緒に依頼をこなしてきたが、あんなのを見たのは初めてだ。

 

カオル

変身!」

 

 カオルさんがそう言うと、体に変化が起きた。

 体が全体的に緑色になり、両手両足首に金色のアンクレットがはめられ、目が昆虫の複眼のように赤色になり、額には二股に別れた金の角がある。

 あの姿はまるで。

 

キョウヤ

「・・・仮面ライダー?」

 

 そう、まるで昭和の仮面ライダー、仮面ライダー1号に似ているような気がした。

 だが、1号より体格がマッシブな感じで、目の部分が小さく、ベルトの形も違う。

 

 カオルさんは変身したことで、生身の時とは別次元の強さになった。

 化け物達はカオルさんのパンチとキックの前に、次々と吹き飛んでいく。

 攻撃する瞬間に、緑色のオーラみたいなものを纏っている。

 そのおかげなのか、吹き飛んだ化け物達は爆発して消滅した。

 

 さらにカオルさんは構を取り、すると顔の口の部分が開き、その下の牙が出現する。

 足元に緑色の紋章が浮かび、次第に右足に集中していく。

 

カオル

「・・・ハッ!」

 

 カオルさんが化け物達に向かってジャンプし、右足を突き出す。

 右足に緑のオーラを纏い、目の前の化け物にキックが炸裂する。

 その化け物が吹き飛び、その背後にいた他の化け物も巻き込み、爆発に巻き込まれ消滅する。

 

キョウヤ

「カオルさん!」

 

カオル

「キョウヤ!」

 

 僕とカオルさんは、互いに近づき、背中合わせになる。

 

キョウヤ

「大丈夫ですか?」

 

カオル

「問題ない。」

「それにしても、意外だな。」

 

キョウヤ

「? 何がですか?」

 

カオル

「この姿を見て何とも思わないのか?」

 

キョウヤ

「? その姿は、仮面ライダーですよね。」

 

カオル

「? 仮面ライダー?」

 

 カオルさんは自分の姿のことを知らないのだろうか?

 カオルさんの姿は、僕は見たことはないが、どこからどう見ても仮面ライダーだ。

 

カオル

「まぁいい、今はこの場をどうにかするぞ。」

 

キョウヤ

「はい!」

 

 だが、見たところまだかなりの数の化け物達がいる。

 このままここに留まり、戦い続けても果たして勝てるかどうか?

 やはりここは、生き残る事を第一に考えたほうがいいだろう。

 と、その時である。

 僕の右のポケットの中にある物が熱く光っていた。

 

キョウヤ

「!? 熱っ!」

 

 取り出してみると、それは霧島賢治から渡された、『ブランクライドウォッチ』だった。

 熱と光がおさまると、ウォッチは外装が黒く、前面についているベゼルは銀色になっており、ウィンドウには2001と表示されていた。

 

キョウヤ

「変わってる!」

 

 僕はベゼルを回す。

 するとそこには、銀色の角に青い目の仮面ライダーの顔があった。

 上部のスターターを押すと、音声が流れた。

 

 『G4!』

 

 音声が鳴ると、僕の腰にベルトが巻かれた。

 さらに、ウォッチが形状を変え、横向きのゲージのようなクリアパーツが付いたバックルの形になった。

 バックルの上部にはスイッチがある。

 

キョウヤ

(・・・わかるぞ! これの使い方。)

 

 僕はバックルのスイッチを押す。

 

 『 Ready. I will wait(準備完了。待機します)!』

 

 バックルから音声が流れ、待機状態になる。

 僕はカオルさんや彼らが言っていたあの言葉を叫んだ。

 

キョウヤ

「変身!」

 

 バックルをベルトに装着する。

 

 『Deploy the G4 system(G4システム、起動します)!』

 

 ベルトを中心に、黒のインナージャケットが装着され、その周囲に黒の装甲が展開される。

 足元から順番に装着され、最後に僕の顔を覆うヘルメットが装着される。

 一瞬、ヘルメットの目の部分が青く光る。

 その瞬間、G4システム、仮面ライダーG4がこの世界に誕生したのだ。

 

カオル

「キョウヤ!?」

 

キョウヤ

「カオルさん、これで僕も戦えます。」

「まずは生き残ることを考えましょう。」

 

カオル

「・・・分かった。」

 

 それから僕とカオルさんは蟻の化け物達を相手に戦い始める。

 

 この姿になって初めて分かったが、このG4システムという仮面ライダーはとても優秀だ。

 格闘戦でも生身ではとても出せないようなパンチ力とキック力が出せる他、右太ももにマウントされている銃『GMー01改4式』がとんでも無い威力だ。  

 銃なんて初めて使うが、G4のシステムのおかげで照準がぶれることなく、撃つ全ての弾が百発百中だ。

 しかも銃口から放たれる弾丸は特殊強化弾だ。

 それが72発装填されており、特殊な液化ガスと電磁力で発射されるから初速が速く威力が高い。

 

キョウヤ

(こんな銃、僕の元いた世界の軍隊でも使っていないんじゃ無いだろうか?)

 

 さらに、このG4システム自体も優れている。

 頭部のヘルメットには高性能AIと全周囲高感度センサーが取り付けられており、敵がどこから来るの逐一か知らせてくれるのだ。

 その範囲は地中も例外ではなく、この化け物達は地中か襲って来る場合があったが、僕にはその奇襲は効かない。

 

 ただ、このシステムにも厄介なところがある。

 

キョウヤ

「! うわっ!」

 

 今しがた、上空から襲ってきた化け物が僕の蹴りによって吹き飛ばされた。

 だが、これは僕の意志ではない。

 これはG4システムが勝手に僕の体を動かしているのだ。

 システムがいくら警告を促しても、それら全てに対応できるわけではない。

 その場合は、G4の高性能AIが僕の体をシステムの力で勝手に動かし、迎撃するのだ。

 ただ、稀に普通の人間では出来ないような挙動で攻撃を回避したり、攻撃したりするから装着者である僕に負担がかかるようになっている。

 

キョウヤ

「くぅ、また勝手に・・・」

 

 だが、それに助けられているのだから強く文句を言えない。

 しかし、それでもだ。

 もう少し装着者のことを考えて欲しい。

 

 そんなことを考えながら戦っていると、あれだけ沢山いた蟻の化物は今目の前にいるのが最後の1匹になっていた。

 いや、正確に言うとカオルさんが体の赤い化け物を相手にしており、僕は他に沢山いた同じ姿形のありの化け物の最後の一匹を相手にしている。

 

キョウヤ

「フッ! ハァ!」

 

蟻の化物

「グッ! ギギッ!」

 

 パンチとキックを織り混ぜ相手を吹き飛ばし、GMー01でヘッドショットを決める。

 ドサッ! と化け物が倒れ、爆発して消滅した。

 

キョウヤ

「よし、後はあいつだけだ。」

 

 残っているのは、カオルさんが相手をしている赤い体の化け物だけだ。

 僕はG4システムに搭載されている武器を呼び出した。

 どう言う原理なのかわからないが、マスクの画面に表示された武器を選ぶと、バックルの部分から飛び出してきた。

 それは 4本のミサイルが搭載されている武器だ。

 正式名称は『G4型強化体携行用多目的巡航ミサイル』、通称『ギガント』と呼ばれる大型の武器だ。

 

 ベルトの右側にある『ウェポンアタッチメントポイント』のコネクタとギガントをケーブルで繋ぎ、左側にある『エナジーボリューム』のダイヤルを回し、電力を供給する。

 ターゲットをロックし自動追尾モードをONにする。

 

キョウヤ

「カオルさん! そいつから離れてください!」

 

カオル

「!」

 

 カオルさんが一瞬こっちをみると、化け物から離れる。

 その瞬間、僕はギガントの引き金を引いた。

 すると、搭載されている 4本のミサイルが化け物に向けて発射された。

 

赤い蟻の化け物

「ギィ!!」

 

 ミサイルが命中し、周囲に熱と風圧が押し寄せる。

 普通に考えれば、今のであの化物は跡形もなく消滅したと思うだろう。

 しかし、僕は何か違和感を感じた。

 ギガントをしまい、GMー01を構えた状態で、爆心地に近づく。

 するとそこには。

 

キョウヤ

「・・・あっ!」

 

カオル

「どうした?」

 

キョウヤ

「カオルさん、これを見たください。」

 

カオル

「ん?」

 

 そこの地面には人一人が入れる大きさの穴があった。

 

カオル

「まさか・・・あの瞬間に穴を掘って逃げたのか?」

 

キョウヤ

「そのようですね。」

 

 あの化け物が地面に穴を掘れることはわかっていたが、あの紙一重の状況で穴を掘って逃げるなんて。

 しかし、それでも僕のG4システムのセンサーはあの化け物を追跡していた。

 

キョウヤ

「カオルさん、こっちです!」

 

カオル

「? わかるのか?」

 

 僕はカオルさんと一緒に、逃げた化け物を追跡した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 それから20分くらい移動し、たどり着いたのは洞窟だった。

 入り口は広く、高さは3メートルくらいあるだろうか?

 僕達は慎重に内部に入っていった。

 それからさらに歩くと、センサーが捉えていた反応が動きを止めた。

 

キョウヤ

「? この辺りのはず・・・何ですけど?」

 

カオル

「ん?」

 

 確かに反応はここで止まっている。

 だが周りを見ても、この先は行き止まりで広い空間があるくらいだ。

 

カオル

「・・・うん? キョウヤ、こっちだ。」

 

キョウヤ

「! はい。」

 

カオル

「・・・ここを見ろ。」

 

 カオルさんが指差したのは、地面だった。

 そこを見ると、穴が空いていた。

 覗き込んでみると、そこには。

 

キョウヤ

「・・・・・・!!?」

 

 そこは、ここよりも広い空間があり、その中は先ほど戦った蟻の化物達で埋めつくされていた。

 先ほど逃げた赤い体の化け物も、その空間の中央付近におり、そのすぐそばに三叉の槍を持った他の蟻の化物とは明らかに違う個体がいた。

 まるで女王蟻のようだ。

 そいつも問題だが、一番の問題はやはり周りにいる同じ姿をした蟻の化物達だ。

 ざっくりと見ただけでも100近い数がいる。

 

カオル

「・・・」トントン

 

キョウヤ

「!?」

 

カオル

「・・・」クイ!

 

キョウヤ

「・・・」コクリ

 

 カオルさんに肩を軽く叩かれ、振り返った。

 僕はカオルさんが言わんとしていることを察し、この洞窟から去るのだった。

 

 洞窟の入口まで戻ってきた僕達は、そこで一旦止まる。

 

キョウヤ

「カオルさん、どうしましょう?」

 

カオル

「これは・・・俺達だけで解決できる問題ではないな。」

「かと言って、冒険者達に協力を要請するにしても、ほとんど太刀打ちできないだろう。」

 

 確かに、仮面ライダーになれない時の僕でもかなり苦戦した。

 普通の冒険者達では、かえって被害が拡大してしまう可能性がある。

 なら、ここはやっぱり。

 

キョウヤ

「・・・カオルさん、僕はアクセルに戻ります。」

 

カオル

「? あの駆け出しの街か?」

 

キョウヤ

「はい。 そこに協力してくれるかもしれない人たちがいます。」

 

 僕がこの時思い出していたのは、もちろん彼等だった。

 魔王軍幹部ベルディアを倒した霧島賢治達、あの仮面ライダー達だ。

 

カオル

「・・・しかし、そんなに時間が無いかも知れん。」

「あの様子だと、いずれ外に出てくるだろう。」

 

キョウヤ

「分かってます。 できるだけ早く助っ人を連れて帰ってきます。」

 

カオル

「・・・分かった。 頼むぞ。」

 

キョウヤ

「はい!」

 

 僕はG4システムの武器システムの中にある、ある乗り物を呼び出した。

 それはバイクである。

 このバイクは仮面ライダーG3またはG3ーXが搭乗するバイク、『ガードチェイサー』だ。

 だが、本来のガードチェイサーとは違い、ブルーの部分がスカイブルーになり、ホワイトの部分がシルバーにカラーチェンジしている。

 このバイクがあればアクセルの街まで時間はそんなにかからないだろう。

 

カオル

「それは、乗り物か?」

 

キョウヤ

「はい。 では、行って来ます。」

 

 僕はガードチェイサーにまたがり、エンジンをかける。

 アクセルを蒸し、駆け出しの冒険者の街、アクセルに向かって走り出した。

 

カオル

「・・・・・・いいな、あれ。」

 

 

 

 

 

 

 

 僕は途中で変身を解除し、バイクで走っていた。

 この調子なら、アクセルの街まで思っていた以上に早く着きそうだ。

 しかし、その途中で奇妙な現象に見舞われた。

 目の前が一瞬光ったと思ったら。

 

キョウヤ

「あれ? なんだ?」

 

 急に、ゆっくりにしか動けなくなったのだ。

 しばらくすると、今度は完全に動けなくなった。

 しかし、1時間半位すると、再び動けるようになった。

 危うく転倒しそうになったが、何とか持ち直したため、怪我はなかった。

 

 この時の現象を、僕はアクセルの街に着いた時に、知ることになる。

 そして、その街にいる仮面ライダー達が起動要塞デストロイヤーを撃破したことも。

 

 そして、なぜか裁判に出廷し、証人になって欲しいと頼まれることになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

======================

スペック紹介

 

○仮面ライダーG4

 

装着者(変身者):御剣響夜

 

■身長:198cm

■体重:187kg

■パンチ力:5t

■キック力:14t

■ジャンプ力:一跳び27m

■走力:100mを8.0秒

■防御力:硬度10.5

 

○搭載機能

 

■高性能AI

■全周囲高感度センサー

■装備粒子化展開システム

■パーフェクター

 

○搭載武器

 

■ GM-01改4式

■ G4型強化体携行用多目的巡航ミサイル『ギガント』

■ガードチェイサー

 

○備考

 原作『劇場版 仮面ライダーアギト PROJECT G4』に登場する仮面ライダーG4が独自のシステムを搭載してこの世界に誕生した。

 基本的なスペックも原作と比べて少し上昇している。

 

 通常、Gトレーラー内で手動で装着と脱着を行うが、このG4は全ての装備がバックル内に粒子化されて収納されている。

 変身時はまず、『G4ジャケット』と言うインナージャケットが装着され、周囲にG4の装甲が展開される。

 足元から順番に、装着者に装備されるようになっている。

 しかし、手動での着脱も可能で、Gトレーラーのような後方支援車両があれば、その場で修理とメンテナンスが可能。

 変身を完全に解除すると、G4ライドウォッチに戻る。

 

 本来の仮面ライダーG4はバッテリーで動いているが、この世界のG4はバッテリーではなく装着者の魔力で動いている。

 ギガントへのエネルギー供給も、ベルトを経由して御剣響夜本人の魔力を用いている。

 

 仮面ライダーG3・G3ーX・G3マイルドが使う武器の全てを使用することができる。

 しかし、現在は肝心の装備が初期装備のGMー01改4式・ギガント・ガードチェイサーの三つしかない。

 装備粒子化展開システムにより装備を粒子化しバックル内に収納できる。

 

 予知能力者と連動することで敵の行動を先読みできるESPシステムは搭載されていない。

 その代わりに、全周囲高感度センサーにより、敵の攻撃がどこからくるのかを感知し装着者に知らせることができる。

 装着者が対応できない時は、高性能AIが装着者の代わりに迎撃と回避行動をとる。

 しかし、装着者の限界を超えた挙動をする場合があるので、このシステムに頼り切るのは身の破滅を招く。

 

 ヘルメットに搭載されている『パーフェクター』により、水中では水から酸素を作り、一酸化炭素や毒ガスを無害化し猛火の中でも新鮮な空気を装着者に供給できる。

 これにより、水中戦仕様の装備があれば水中でも戦闘行動が可能である。

 

 高性能ゆえに、一回の戦闘ごとに必ずメンテナンスを行う必要があり、一度変身を解除すると一日は再変身ができない。

 変身の強制解除が行われた時も例外ではない。

 ただ、上記に記した通り、後方支援車両があれば変身を解除しなければ修理やメンテナンスを行なった後に、再戦闘は可能である。

 

 ガードチェイサーは、変身解除後もライドウォッチから呼び出して使用する事が出来る。




 いかがだったでしょうか?

 最初は、御剣君を仮面ライダーアギトに変身させようと思っていましたが、『このすば』でも御剣君は主人公ではないので、『1号ライダーはなんか違うかな?』
 と思い、御剣君には仮面ライダーG4になってもらいました。

 これは御剣君がこの状況から無事生還できる力を欲したのと、皆さんお気づきでしょうけど蟻の化物、アンノウンの出現、共に戦うカオルさん(元ネタはもちろん木野薫)が変身するアナザーアギトが近くにいたことで、ブランクライドウォッチが反応し、G4ライドウォッチに変化したのです。

 G4は後の展開で必要になる仮面ライダーだったので、いつか出そうと思っていたので今回出しました。
 今回登場したG4は、色々追加の設定がありますが、作者的に結構気に入っています。
 変身の仕方はイメージ的に仮面ライダーバルカンアサルトウルフの変身が一番近いイメージです。

 ちなみに、超能力研究所にいた他の変身の能力者は全員仮面ライダーギルスです。

 この話はまだ続きますが、本筋を進めつつ間に外伝を挟みますので、またしばらくお待ちください。

 それでは、また次回会いましょう。

 読んでくれて、有難う御座いました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

season2
第十九話 この裁判に祝ふ・・・裁判?!


 お待たせしました。

 今回は少し長文になります。

 裁判のパートについてはあんまり自信がありませんが、まぁ、暖かい目で見てください。
 


 

 俺は霧島賢治。

 元いた世界で交通事故に遭い死亡してしまう。

 

 次に気がついた時、俺の前には女神を名乗る『エリス』という女性がいた。

 彼女から異世界に転生し、その世界の魔王を倒してほしいと言われ、俺はそれを承諾する。

 その際、転生特典として『仮面ライダージオウに関するすべて』をもらい、転生する。

 

 でかいカエルや、空飛ぶキャベツと言う非常識極まりないこの世界で、俺は仲間を得る。

 

 俺と同じ異世界から転生してきた佐藤和真。仮面ライダーゲイツ。

 

 カズマの転生の道連れでこの世界にやってきた水の女神アクア。

 

 紅魔族という種族で自称最強のアークウィザードであるめぐみん。仮面ライダーウォズ。

 

 体力と頑丈さは誰にも負けないが、どんな時でも自分の性癖を優先するドMクルセイダーのダクネス、本名は、ダスティネス=フォード=ララティーナ。 仮面ライダーダークキバ。

 

 賢治がこの世界に来て初めて会話をした女性で、命の危機を救ったドルイドのエルシャ。仮面ライダー斬月。

 

 この世界に転生したクリム=スタインベルトが作り出した、彼の最高傑作ロイミュードNo.RRR、名前はルミ。

 仮面ライダーゼロドライブ。彼女は現在修復中。

 

 そして、前の世界での俺の恋人で栄養失調による餓死で死に、エリス様によってこの世界に転生した、沖田零子。

 仮面ライダーゼロワン。

 

 俺達はこれまでに、魔王軍の幹部であるデュラハンのベルディアを倒し、雪精の主であり国から高額懸賞金をかけられている冬将軍を退け、最近は『魔王すら逃げ出す』と言われている古代兵器・機動要塞デストロイヤーを撃破し、その中に潜んでいた、アナザーゴルドドライブこと、蛮野天十郎をグランドジオウライドウォッチによってこの世界に一時的にやってきた泊進ノ介さんとベルトさんと一緒に撃破し、シグマサーキュラー・Cの撃破に成功した。

 

 その後、俺は零子とエルシャ、そしてアクアと正式に恋人同士になり、守りたい人ができた。

 

 心機一転、今日も頑張ろうとギルドへ向かったはいいが、そこで。

 

 

ーアクセルの街 冒険者ギルドー

 

検察官

「霧島 賢治、貴様には現在、国家転覆罪の容疑がかけられている。」

 

賢治

「・・・・・・は?」

 

検察官

「一緒に署まで来てもらう。」

 

賢治

「・・・・・・・・・・はぁ!」

 

 ・・・・・・どうしてこうなった?

 国家転覆罪?

 一体なんで?

 

賢治

「・・・ところであなたは?」

 

検察官

「失礼、私は王国検察官のセナと言います。」

 

賢治

「それで、なんで俺に国家転覆罪の容疑が?」

 

セナ

「つい先日、機動要塞デストロイヤー討伐の際に起こった、全世界完全停止現象、あれを起こした張本人が貴様であると、告発があったのだ。」

 

賢治

「完全停止現象? ・・・あぁ、グローバルフリーズか。」

 

 確かに、一時的にとはいえあの時確実に、世界の時間が完全に停止していたのは確かだ。

 しかし、それを起こしたのが俺だと言うのはどういう暴論だ?

 

ダクネス

「待て! 賢治はデストロイヤー撃破の時、共に戦ったのだぞ。」

「その元凶であるシグマサーキュラーは私とそこにいる冒険者のカズマと賢治で破壊した。」

「あの現象を引き起こした張本人が、その元凶を破壊する。」

「おかしいだろ!」

 

 確かに、もし国家転覆を企てているのなら、シグマサーキュラーを破壊するなんておかしい。

 そのまま破壊せず、放置していれば全人類を管理下に置けるのだから。

 破壊する理由がない。

 しかし、全人類をナンバリングし、支配下に置くなんて許されないことだし、そもそもそれを行ったのは蛮野天十郎だ。

 

セナ

「もちろん、この街のギルドを経由して報告は受けています。」

「しかしながら、一度そういう告発を受けた以上、王国検察官としての立場上、貴方を逮捕しなければなりません。」

 

 まぁ、俺がいた元の世界でも、警察に通報があれば動かないわけにはいかないものだ。

 例えそれが間違いであったり、悪戯であったりしても。

 これだから国家公務員は・・・

 

セナ

「それを受けて、貴方はテロリスト、もしくは魔王軍のスパイ容疑もかけられています。」

 

賢治

「・・・マジか。」

 

セナ

「手荒なことはしたくありません、署までご同行願います。」

 

 これは仕方ないか。

 ここで逃げたとしても自分の立場を悪くするだけだし、ここは大人しく捕まるか。

 と思っていたのに。

 

アクア

「ちょっと待ちなさいよ!」

「なんでこの街を、ひいては世界を救った賢治が逮捕されるのよ?」

「納得いかないわ! そんなの横暴よ!」

 

賢治

「ちょ!」

 

 なんでこの子はこんな時に余計なことを。

 

ダスト

「そうだ! 賢治は犯罪者なんかじゃない!」

 

プリースト風の男

「賢治達はこの街の英雄なんだ。 そんな奴が犯罪者なんてありえねぇ!」

 

戦士風の男

「こんなの国家権力の横暴だ!」

 

 アクアのその言葉を皮切りに、周りにいる冒険者達が抗議する。

 エルシャや零子が止めようとしているが、聞く耳持たない感じだ。

 正直嬉しい。

 しかし、状況を考えてほしい。

 最悪、ここにいる冒険者全員捕まるかもしれないのに。

 

セナ

「・・・はぁ、国家転覆罪は主犯以外の者達にも適応される場合がある。」

 

「「「「「「「「「「・・・・・・・・・」」」」」」」」」」

 

 セナさんが、メガネをズレを直しそう言うと、シンと静まり返った。

 

セナ

「彼と共に牢獄に入りたいのなら、止めはしないが?」

 

アクア

「・・・そ、それがどうし「わかった。」・・・え?」

 

賢治

「別に抵抗はしませんよ。」

「ただ、俺の持ち物を仲間達に預けさせておいていいですか?」

 

セナ

「えぇ、かまいません。」

 

アクア

「ちょっと賢治!」

 

零子

「アクア待って!」

 

アクア

「零子、貴方はなんで「黙って!」・・・!」

 

 いまだに抗議しようとするアクアを、零子が止めた。

 目に入ったが、零子の顔は相当辛そうだった。

 まったく、大事な人にあんな顔をさせるなんて、自分が嫌になる。

 

賢治

「あぁ! ちなみに俺を告発したのは誰なんですか?」

 

セナ

「? 領主のアルダープ殿ですが。」

 

賢治

「そうですか。」

(またあの領主か! クソが!)

 

 ベルディアの時といい、今回といい・・・何様のつもりだあのクソ領主!

 

 俺は、とりあえずジオウライドウォッチは手元に残し、他のウォッチは零子に預けた。

 その時に。

 

賢治

「領主の屋敷を調べてくれるか?」ボソッ

 

零子

「! OK。」

 

 と、小声で言っておいた。

 そうして、俺は連行された。

 

 

 

ー零子sideー

 

 ケン君が連行されてしばらくが経ち、ギルド内は静まりかえっていた。

 そんな中でも、やはり納得がいかない様でカズマやめぐみん、アクアが不満を爆発させていた。

 私はというと、もちろん不満はある。

 しかし、ここで余計なことをしてケン君の立場をさらに悪くする訳にはいかない。

 アクア達がケン君を脱獄させて、家財道具一式を持ってアクセルから逃げようと画策しているが、そんなプランに乗るつもりはないので拒否する私。

 

アクア

「零子! なんで反対するのよ?」

「賢治があんな目にあってるのよ!」

 

零子

「ケン君なら大丈夫よ。」

「そもそも、ケン君が乗るわけないでしょ。」

 

アクア

「でも・・・それでも・・・」

 

 アクアの気持ちは分かる。

 私だって今すぐにでも助けに行きたいのだ。

 だが、私にはケン君からの頼まれ事がある。

 今はそれをやろう。

 

 私はタブレットを取り出し、マップの機能を使いアルダープの屋敷の場所を突き止めた。

 物理的なスキャンをかけたところ、どうやらアルダープの屋敷の下には地下空間が広がっているようだ。

 地下部分を立体的にモデリングしてみると、どうやらいくつかの通路があり、その周囲には牢屋がある。

 

 さらに魔力的なスキャンをかけたところ、この屋敷にはアルダープの他に使用人が50人程いる。

 実際はこの数より多いと思うが、今肝心なのはそこでは無い。

 スキャンをかけた結果、この屋敷には人間の他に亜人が複数存在し、さらに一人だけ『魔族』らしき反応がある。

 

零子

「・・・マジ?!」

 

 私は、タブレットと衛生ゼアを接続し、タブレットの検索機能にアレクセイ=バーネス=アルダープと打ち込み検索した。

 すると、アルダープの事がいくつも検索結果にヒットした。

 情報量が多すぎるので、検索項目に『悪事』と追加した。

 そしたら埃が舞うどころか、ゴミ収集車のゴミを道路にぶち撒けたような気分だ。

 

 はっきり言おう、アルダープはクズである。

 挙げるとキリがないが、あえて挙げるなら『人身売買』『麻薬密輸』『婦女暴行』『奴隷売買』『裏工作により不正取引』etc......

 どこのお笑い芸人のネタだと思った。

 しかも、その悪事の中に『ランダムにモンスターを召喚する神器』と『他者と体を入れ替える神器』の二つが不当な手段で入手したとある。

 

零子

「・・・これって国が管理するべきものよね。」

 

 しかも内容がやばい。

 特に他者と体を入れ替えるとか、想像しただけで怖気が走る。

 自分に置き換えて考えてほしい、入れ替わった自分の体をアルダープが好き勝手に弄ぶのだ。

 未来永劫末代までの恥になる!

 これが愛し合うもの同士なら、『俺がお前で、お前が俺』というプレイで納得できる。

 

零子

「・・・えへへ・・・はっ!」

(やばい、想像しちゃった。 集中しないと。)

 

 二次創作物を嗜む人物なら誰もが一度は想像するシュチュエーションを想像してしまった私は、思わず顔がニヤけてしまった。

 とにかく、アルダープが悪人であることは確実になった。

 問題は、彼の元に悪魔がいるという事だ。

 悪魔なんて厄介ごとの代名詞なのに、アルダープの元にいるというのは、つまり。

 

零子

(・・・契約を結んでいる?)

 

 悪魔とは一度契約を交わせば、きちんと見返りを払えば契約者に力を与える存在である。

 アルダープの悪事の証拠が出て来ないのも、おそらく契約した悪魔の仕業だと思う。

 証拠そのものを消しているのか、事実を捻じ曲げるような特殊能力でも持っているのか?

 どのみち厄介であることには変わりない。

 

零子

(何かのアニメで言ってたっけ?)

(『悪魔と関わると厄介なことになる』と。)

 

 ・・・いや、あれは魔族だっけ?

 そもそも、深く考えた事がなかったけど魔族と悪魔の違いって?

 まぁ、今はどうでもいいことだ。

 そうとわかった以上、行動あるのみである。

 

零子

「めぐみん、アクア、ちょっと。」

 

アクア

「な、何よ?」

 

めぐみん

「どうしました?」

 

零子

「ちょっと、二人に頼みたい事があるんだけど。」

 

 私は二人に、アルダープの屋敷に偵察に行ってほしいと言った。

 「あの領主に一泡吹かせるためよ。」と言ったら、二人ともノリノリで引き受けてくれた。

 さぁ、今に見ていなさいよ、あのクソ領主!

 

 

 

ー賢治sideー

 

 連行された俺は、今日一日牢屋に入れられることになった。

 さすが中世時代の牢屋、前の世界に比べて結構劣悪な環境だな。

 ・・・いや、勘違いするなよ。

 何も俺が牢屋に入った事があるわけじゃないぞ。

 ただのイメージである。

 

賢治

「それにしたってこれは無いだろ。」

 

 鉄格子は鋼鉄製だが、床は石造でその下は普通に土である。

 傍には藁が敷き詰められ、薄い毛布みたいなのが一枚あるだけである。

 ここの連中は容疑者を生かすつもりが有るのだろうか?

 この季節で毛布一枚って、最悪凍え死ぬぞ。

 ぶっちゃけ、馬小屋の方がまだマシである。

 

 そんな牢屋で一日過ごした俺は、次の日聴取を受けることになった。

 取調室に案内されると、中には机と二つの椅子があり、反対側にはセナさんが座っていた。

 セナさんの向かいに俺が座る。

 

セナ

「では、これから取り調べを行う。」

「言っておくが嘘は通じないぞ。 この机の上に置いてあるのは『嘘を看破する魔道具』だ。」

「嘘をつくと鳴る様に出来ている。」

 

 そんな魔道具があるのか?

 一体どんな仕組みで嘘を見破っているのだろうか?

 

賢治

「・・・俺は女だ。」

 

 チーン

 

セナ

「・・・気は済んだか?」

 

賢治

「はい、いつでもどうぞ。」

 

 まぁ、鳴るよな。

 

セナ

「ではまず、出身地と冒険者になる前は何をしていたのか述べよ。」

 

賢治

「出身地は日本で、ゲーム会社の広報部で働いてました。」

 

 シーン

 

 鳴らないな。 事実だし。

 

セナ

「ふむ、真面目に働いていたと・・・しかし、ニホンという国は聞いた事がないが?」

 

 そりゃ、この世界には存在しない国だからな。

 

セナ

「ゲーム、というと娯楽を作る会社に勤めていたのか?」

 

賢治

「ですね。 自社商品を他社に紹介したり、世に広めたり、後は社内の雑用をやったり、いろいろです。」

「残念ながら、物作りに関しては才能がなかったので。」

 

 シーン

 

 これも鳴らない。

 事実、俺にゲーム・・・厳密に言えば家庭用ゲームやアプリゲーム、さらに成人指定PCゲームなど。

 つまり、テレビゲームの類である。

 原画を描いたり、ストーリーを書いたり、色を塗ったり、プログラミングをしたり、そう言った方面でははっきり言って俺には才能がなかった。

 それでも、就職したゲーム会社のために働きたくて、ホームページの制作や、外回りや雑用を引き受けてきたのだ。

 

セナ

「なるほど、では次に・・・冒険者になった動機は?」

 

賢治

「実はある日突然仮面ライダーの力を手に入れたので、この力があれば魔王も倒せるのではないかと思い、思いっ切って冒険者になりました。」

 

 シーン

 

 鳴らない。 セーフだったようだ。

 本当は、前の世界で死んで女神エリス様にこの世界に転生してもらい、転生特典として『仮面ライダージオウに関する全て』をもらって、この世界に転生したのだ、魔王討伐もエリス様に頼まれたからだ。

 この辺りはグレーゾーンなのだろうか?

 それともエリス様の加護だろうか?

 

セナ

「・・・そうか。 では、領主に個人的に恨みとかは?」

 

賢治

「そんなのあるに決まってるでしょう!」

「ベルディアとの戦いでは、外壁の修理費を領主が出し渋ったせいで、俺たちのパーティが全額払うことになったんですから。」

「そして今回が国家転覆罪の疑いで牢屋に入れられて、こうやって取り調べまでされているんですよ。」

「あの領主のせいでね!」

 

セナ

「・・・・・・」チラッ

 

 シーン

 

 セナさんは魔道具を見るが、勿論鳴らない。

 「クソ領主」と言わなかったのは、侮辱罪に当たると思ったからあえて飲み込んだのだ。

 だって、この取り調べが始まってから俺の後ろで、羽根ペンが紙の上を走る音がするのだ。

 滅多なことは言えない。

 

セナ

「・・・ごもっともです。 では次に」

 

賢治

「あの、いっその事直球で聞いてくれませんか?」

「俺は魔王軍の関係者でもなければ、テロリストでもないですから。」

 

 シーン

 

 当然鳴らない。

 

セナ

「・・・・・・やはり貴方は噂に聞いていた通りの人だったようですね。」

「私が間違っていたようです。」

 

賢治

「信じてくれて有難いです。」

 

セナ

「貴方達のことは検察官たちの間でも有名ですから。」

「貴方達が居てくれたからこそ、魔王軍幹部やデストロイヤーの脅威からアクセルを守る事ができたのですから。」

「そんな功績のある貴方を逮捕するのは・・・正直、心苦しかったです。」

「通報があれば、動かざるを得なくて・・・」

 

賢治

「その辺りは承知しています。」

「いろいろ大変ですね。」

 

セナ

「はい。」

 

 本当に申し訳なさそうにセナさんが謝ってきた。

 ふと後ろを見ると、聴取の内容を書いていた検察官の男がウンウンと頷いていた。

 彼も納得いっていなかったのだろう。

 

セナ

「でも、よかったです。 貴方が魔王軍の関係者でもなく、ましてや、知り合いなんていないという事ですよね。」

 

 ・・・うん?

 待てよ、この質問は・・・

 

賢治

「・・・まぁ、必ずしもないとは言い切れませんけど。」

 

セナ

「?! どういう事ですか?」

 

賢治

「だって、俺がそうだと知らない内に魔王軍の幹部やらスパイやらと、知り合っている可能性は否定できませんから。」

「少なくとも、俺は魔王軍とは一切関係はありません。」

 

 シーン

 

 鳴らない。

 よし! うまく乗り切った。

 だって俺、魔王軍幹部のウィズと知り合いだし。

 取り敢えず嘘は言っていないからな。

 

セナ

「なんだ、そういう事ですか。」

「脅かさないでください。」

 

賢治

「すみません。」

 

セナ

「とにかく、貴方が無実だということはわかりました。」

「私はアルダープ殿側でありますが、貴方が無罪になれるように善処します。」

 

賢治

「有難う御座います。」

 

 取り調べが終わり、検察官に連れられて牢屋に戻ろうとしたとき、セナさんが呼び止めてきた。

 

セナ

「あ! あの、少し待ってください。」

 

賢治

「はい? なんですか?」

 

セナ

「その・・・実は私、貴方のファンなんです!」

「よかったら、こちらにサインをいただけますか?」//////

 

 そう言って、懐から手帳を開いて出してきた。

 ・・・俺はアイドルじゃないんだが、悪い気はしない。

 俺は羽根ペンを拝借し、KENJI KIRISHIMA と筆記体で書いた。

 こんな所で小学校高学年の時に必死に練習した筆記体が役に立つとはな。

 

賢治

「これで良いですか?」

 

セナ

「はい! 有難う御座います。」

(やった!)

 

 随分嬉しそうだ。

 そうして、俺は今日も牢屋の中で過ごすのだった。

 

 

 そしてついに裁判の日がやってきた。

 この世界の裁判は検察官が集めた証拠を提示し、それに対して弁護人が反論し、それを見た上で裁判官が判断を下す。

 というのが、大まかな流れである。

 被告人の弁護人は基本、その人物の知人が引き受けるのだが、俺の弁護を買って出たのは、カズマと零子である。

 

 正直意外だった。

 アクアなら弁護したがると思っていたのだが?

 彼女に任せると確実に有罪になりそうだが、当人のアクアはさっきから両手を組んでまるで祈りを捧げている様に両目を閉じている。

 

賢治

「よろしくな、二人とも。」

 

カズマ

「おう、まかせろ。」

 

零子

「絶対ケン君を有罪になんかさせないから。」

 

 頼もしい限りだ。

 そもそも、無罪であることは証明すること自体は可能である。

 しかし、相手は領主である。

 何をして来るか分かったもんじゃない。

 

裁判官

「静粛に! これより、国家転覆罪に問われている被告人、霧島賢治の裁判を開始する。」

「告発人は、アレクセイ=バーネス=アルダープ!」

 

 裁判官がそう言うと、肥えた体格を男が入ってくる。

 初めて見たが、あの男がアルダープのようだ。

 見た目はいかにも悪徳領主といった外見をしている。

 

裁判官

「検察官は前へ、彼の起訴状を読み上げてください。」

「嘘を看破する魔道具があるので、正直に分かり易く述べるように。」

 

 セナさんが立ち上がり、懐から出した紙の内容を読み上げる。

 

セナ

「まず最初に、デストロイヤー襲撃の際に起こった完全停止現象、これを行ったのは被告人である霧島賢治であること申しておきます。」

「被告人、霧島賢治はデストロイヤー襲撃の際、仲間の冒険者達と結託し、デストロイヤー内部に設置されていた完全停止現象を引き起こす魔道具を発動し、世界を混乱に陥れました。」

「幸いにも一時的なものでした。 とは言え、このような事態を引き起こした人物を放っておくわけにはいきません。」

「よって被告人、霧島賢治に国家転覆罪の適用を求めます。」

「私からは以上です。」

 

裁判官

「では次に、弁護人による発言をお願いします。」

 

カズマ

「では、述べさせていただきます。」

 

 裁判官の言葉を聞いて、カズマが立ち上がる。

 

カズマ

「被告人、霧島賢治とその仲間の自分達は、デストロイヤー破壊のためにあの場にいました。」

「デストロイヤーが活動を停止したと同時に、グローバルフリーズ・・・あぁ、完全停止現象が起きたので、俺達はデストロイヤー内部へ侵入し、元凶の対処をしただけです。」

「決して、国家転覆を企てたわけではありません。」

「それに、その現象を引き起こした張本人は蛮野天十郎という、錬金術師であり俺達は全く関係ありません。」

 

 なんかカズマが本物の弁護士のように見える。

 カズマのいう通りである。

 本来なら、デストロイヤーの動きを止めて、コロナタイトを宇宙に捨て、デストロイヤー本体の爆発も氷結魔法で対処するという段取りを組んでいた。

 蛮野天十郎の事がなければ、全てうまくいっていたことだ。

 

裁判官

「弁護人の発言は以上ですね。 それでは検察官、証拠の提示を。」

 

セナ

「はい。 証人は前へ。」

 

 そこへ現れたのは、なんと御剣響夜だった。

 この街の戻って来ていたのか?

 心なしか、少し面構えが以前より良くなったような気がする。

 

セナ

「御剣さん、貴方は以前被告人に魔剣を奪われ、返して欲しければ全財産を寄越せと脅されたと聞きましたが。」

「間違いありませんか?」

 

 ちょっと待て!

 そんなことしてないぞ?

 やった事と言えば、壊した檻の弁償をさせただけだ。

 

キョウヤ

「いいえ違います。」

「まず魔剣に関しては、奪われてはいません。」

「彼に勝負を挑んだ時、彼が勝ったらなんでも言う事を聞くという条件を出したの僕で、それで魔剣を持っていかれそうになりましたが、それがダメなら僕が壊した檻の弁償をすることで、落ち着きました。」

「全財産を寄越せと、脅されたことは一切ありません。」

「それに、彼と彼の仲間には感謝しています。 調子に乗っていた当時の僕の目を覚まさせてくれたのです。」

「感謝こそすれ、恨んだことはありません。」

 

 それで、キョウヤの発言を終わった。

 すると、セナは視線を俺に向けウィンクをし、キョウヤは小さく頷いた。

 おそらく二人は協力関係なのだろう。

 俺の評判を落とすと見せかけて、裁判官に好印象を与えようと言う作戦だろう。

 

アルダープ

「はぁ〜、もう良いだろ。」

「そいつは魔王軍の関係者だ。 さっさと死刑にしろ。」

 

 そんなことをアルダープは言ってきた。

 しかし、これは使える。

 

賢治

「そうか。 じゃあ、聞け!」

「俺は魔王軍の関係者でも、テロリストでもない!」

 

 シーン

 

 裁判所全体が静まり返る。

 魔道具は勿論鳴らない。

 

裁判官

「これではとてもではありませんが、罪人と罰することはできませんね。」

「被告人、霧島賢治は嫌疑不十分とし」

 

アルダープ

「いや、そいつは魔王軍の関係者だ。 さっさと処刑しろ。」

 

賢治

「は?」

 

 あの領主は何を言っているんだ?

 実際俺は魔王軍の関係者じゃない。

 それは魔道具でも証明されている。

 なのにこの後に及んで、なんでそんなことが言えるのだ?

 

裁判官

「しかし、怪我人や死者も出ておらず、嫌疑不十分な人物を死刑にはできません。」

 

アルダープ

「儂に恥をかかせるつもりか?」

 

 おいこのおっさん、裁判官を脅迫してきたぞ。

 いくら領主だからって、それはないだろう。

 

裁判官

「・・・アルダープ殿、それは私を脅迫しているのですかな?」

 

アルダープ

「・・・は?」

 

裁判官

「私はベルセルク王国に仕えている裁判官の一人ですよ。」

「その私を脅迫するとは、つまり国王に対して脅迫しているのと同じだということは、貴方も知っていると思っていましたが?」

 

アルダープ

「は?! いや・・・え?」

 

賢治

「うん?」

 

 アルダープの様子すが明らかに挙動不審だ。

 まるで、物事が思うように行かなくてあたふたしているようだ。

 

零子

「裁判官、私からも弁護をしてよろしいでしょうか?」

 

 すると、零子が手を上げてそんなことを言ってきた。

 

裁判官

「・・・良いでしょう。 弁護を認めます。」

 

零子

「有難う御座います。」

「さて、アルダープさん。」

 

アルダープ

「な、なんだ。」

 

零子

「貴方、とんだ悪人よね。」

 

アルダープ

「・・・はぁ!?」

 

零子

「貴方の事はすでに調べはついてるわ。」

「これまで行ってきた数々の悪事の証拠も、今私の手の中にあるわよ。」

「それを棚に上げて霧島賢治が国家転覆を企てているって、いったいどうしたらそんな妄想が思い浮かぶのかしら?」

 

アルダープ

「な! 儂が悪事を働いているだと、どこにそんな証拠がある?」

「それに、こいつはデストロイヤー襲撃の時にその場にいたのだろう!」

「おまけに妙な力も使うようではないか、十分に疑いをかけられて当然だ!」

 

 一体どこをどう理論展開したらそんな結果が導き出されるのか、あのおっさんの頭の中はどうなっているんだ?

 それにしても、零子のやつ本当だろうか?

 領主の悪事の証拠を掴んでいるというのは?

 

零子

「だったら証拠を見せてみなさいよ!」

「彼が完全停止現象を引き起こしたという証拠を! 彼が魔王軍の関係者であるという証拠を!」

 

アルダープ

「ぐぅ・・・」

 

 確かに証拠と呼べるものはアルダープ側にはない。

 さっきセナさんが言ったことは、ただのでっち上げ。

 俺を助けるために用意したものだ。

 魔道具でも俺が無関係であることは証明されている。

 そもそもアルダープ、裁判をするにしては明らかに準備不足な気がするのだが?

 

零子

「それにね、証拠っていうのはこういうものを言うのよ!」

 

 すると零子は掌からビー玉サイズの銀色の球体を三つ机の上に転がした。

 その球体から光が照射され、立体的な映像が浮かび上がった。

 そこに映っていたのは。

 

蛮野

『この世界には魔王が居るらしいが、そんなものは関係ない。』

『シグマの進化完了まで後わずか・・・いよいよ私の理想世界の誕生だ!!』

『今度はこの世界で、私の計画を達成させて見せる!』

 

アルダープ

「な?!」

 

 そこに映し出されたのは、アナザーゴルドドライブとなった蛮野天十郎の姿だった。

 これは、俺達がデストロイヤー内部に突入した時のだ。

 

蛮野

『このデストロイヤーを見つけた時、私は歓喜したぞ!』

『デストロイヤーには私が探し求めていた物があったのだからな。』

 

ダクネス

『探し求めていたもの?』

 

賢治

『・・・コロナタイトか?!』

 

蛮野

『そうだ! デストロイヤーのコロナタイトがあれば、わざわざ超進化体ロイミュードを4体揃える必要もない。』

『あの無尽蔵のエネルギーなら、シグマの進化に必要なエネルギーを集めるのも簡単だ!』

『デストロイヤーが破壊されたのは計算外だったがまぁいい、シグマが進化し、このデストロイヤーと融合すれば、最強の人類支配装置の完成だ!!』

『魔王など恐るるに足りん。』

『私こそこの世界の支配者になるのだ!!』

『ハハハハハハハハハハハハ!!!』

 

 映像はそこで終わった。

 それを見ていた裁判所の中にいた人達は、ざわめいていた。

 先ほどの映像もそうだが、問題はその内容である。

 

零子

「いい、これが証拠というものよ。」

「完全停止現象を引き起こすキッカケを作ったのは、さっきの金色の怪人の姿をした蛮野天十郎という錬金術師で、そいつを霧島賢治と仲間達は倒した。」

「だから一時的なもので済んだのよ。」

 

アルダープ

「こ! こんなの出鱈目だ! 都合のいい作り物だ!」

 

零子

「あら? これだけの証拠が揃っているのに、何を言ってるの?」

 

アルダープ

「うるさい! うるさい!! どうせ貴様も魔王軍の関係者なんだろ!」

「だからこの男を庇おうとするのだろう!」

「処刑! 即刻処刑しろ!!」

 

零子

「・・・はぁ〜、だから、証拠を見せなさいって言ってるでしょ。」

「貴方のそれはね、『こうだったら良いな』っていうただの願望なのよ。」

「そんなの誰も信じないし、誰も聞こうとしないわよ。」

 

アルダープ

「き・・・貴様あああ!!!」

 

 カーン! カーン!

 

裁判官

「静粛に!」

 

 裁判官のその一言で、一応静かになった。

 それを待って、裁判官はこう言った。

 

裁判官

「判決を言い渡す。」

「被告人、霧島賢治は証拠不十分とみなし、無罪とする。」

「これにて閉廷。」

 

 こうして俺は、処刑を免れたのだ。

 

 

 

ーアルダープsideー

 

アルダープ

「くそ! くそ! くそおおお!!」

 

 アルダープは自分の屋敷に戻ってきていた。

 しかし彼は自室に戻るではなく、屋敷の地下に向かっている。

 地下室にはいくつか通路があり、周囲の状況がわかる程度には明かりがついている。

 いくつもの牢屋があり、その中には奴隷として売り飛ばす予定の人間や亜人が捕らえられている。

 アルダープはそんな彼等彼女等には目もくれず、真ん中の通路の一番奥に向かった。

 そこに居たのは。

 

アルダープ

「おいマクス! 一体どういうことだ!?」

 

マクス

「ヒュー、ヒュー、・・・やぁ、アルダープ。」

「一体どうしたんだい?」

 

 そこに居たのは、長髪に眼鏡の美青年だった。

 しかし、感情が抜け落ちた様な表情をしており、後頭部は陥没したかの様に凹んでいる。

 また、喘息の様な呼吸音を発している。

 

 そう彼こそ、アルダープが『ランダムにモンスターを召喚する』神器で召喚した悪魔『マクスウェル』なのだ。

 

アルダープ

「どうしたじゃない! なぜお前の力が発動しなかったんだ!」

「お陰で儂は大恥を書いたんだぞ!」

 

 そう、アルダープの今までの悪事は全てこの悪魔によって、揉み消してきたのだ。

 『事実を捻じ曲げる』それがこの悪魔の能力なのである。

 彼はアルダープと契約を交わした時、彼が好む絶望や恐怖の悪感情を決まった年月分放ち続ける事を代価として契約し、アルダープはその力が使えるようになったのだ。

 

 しかし、今回の裁判ではその力が発動しなかったのだ。

 ・・・いや、正確に言うと発動はしていた。

 

マクス

「力は発動していたよ。 ただ・・・」

 

アルダープ

「ただ、なんだ?」

 

マクス

「とてつもなく強力な聖なる力に邪魔されたのさ。」

「あれは、俺の力ではどうにもならないね。」

 

 そう。

 あの裁判でマクスウェルの力は間違いなく発動していた。

 ただ、アクアの祈りにより結界が張られており、打ち消してしまったのだ。

 そのことを知らないアルダープは、いつもの様にマクスウェルの力で、事実をなじ曲げようとしていたのだ。

 それも、今回に限っては失敗に終わったが。

 

アルダープ

「聖なる力だと? どこにそんな奴がいたんだ?」

 

マクス

「さぁ? そこまでは分からないよ。」

 

アルダープ

「えぇい! 役立たずめ!」

 

 そう言い放ち、マクスウェルに八つ当たりをし始める。

 だが、マクスウェルは特に何かをするでもなく、ただされるがままだった。

 

マクス

「ヒュー、ところでアルダープ、今回の代価をくれよ。」

 

アルダープ

「あぁ? そんなもん、儂がこの屋敷を出る前に払っただろ!」

 

マスク

「あれ? そうだっけ?」

 

アルダープ

「そうだ!」

 

 勿論、嘘である。

 マクスウェルは知能が低く、そのレベルは赤ん坊同然で物事を記憶することができないのだ。

 アルダープはそれを良いことに、本来彼に支払う悪感情を踏み倒しているのだ。

 払うものが悪感情とは言え、彼は『支払う』と言う行為がしたくなく、今日まで騙しているのだ。

 

 普通こんなことをされれば、自身の力を使って事実をねじ曲げ、契約前の状態に戻してもおかしくないのだが、マクスウェルはそうしない。

 記憶できないと言うのもあるが、彼はどんなに暴力を振るわれても、どれだけ代価を踏み倒されてもアルダープのことを嫌ってはおらず、むしろ好いているのだ。

 

アルダープ

「チッ、あの冒険者供め、今に見てろ!」

 

 アルダープはそう言ってその場を後にしたのだった。

 

 

 

ー賢治sideー

 

 俺は裁判で無罪となった。

 その後で零子に調べてもらったことを聞いた。

 そしたら、アルダープの所には悪魔がいることが分かった。

 アルダープの屋敷に偵察に行っていためぐみんとアクアが既に確認済みだ。

 

アクア

「間違いないわ。 あの屋敷から悪魔の気配を感じたわ。」

 

 女神のアクアが言うのだから間違い無いだろう。

 裁判の時も、悪魔の力が及ばないように、自身の力で結界を張っていたのだ。

 アルダープのあの妙な自信はそれが原因か。

 それがわかっただけでも上出来だ。

 

 そいして、俺達は屋敷へと戻ってきた。

 だが、その時複数人の騎士たちがやってきて、屋敷の中の物を押収していってしまった。

 一緒に来ていたセナさん曰く、未だに俺に対する疑いが完全に晴れていない様で、あの領主が裁判所を通して、『身の潔白を証明したいのなら、ギルドからの使命依頼を受けろ』と言ってきたのだ。

 俺達の屋敷や私物が押収されたのは、そう言うことである。

 

 俺自身は私物はそんなになかったから良いけど、そもそも大事なものは宝物庫に入れてあるからな。

 アクアは隠しておいたお酒を持っていかれたことがショックだったようで、ボロ泣きしている。

 ダクネスも流石に頭にきたのか、「一度実家に帰ってアルダープに抗議して来る」と言って帰っていった。

 なんとなく気付いていたが、やはりダクネスは貴族だったようだ。

 しかもこの国の懐刀と言われている、ダスティネス家の娘らしい。

 本名はダスティネス=フォード=ララティーナ。

 

 その名前を聞いた時、俺達は思わず「ララティーナ」と呼んでしまい、それを聞いたダクネスが「その名前で呼ぶなー!」と叫んだ。

 

賢治

「あの領主め、ふざけるなよ!」

 

めぐみん

「ダクネスは大丈夫でしょうか?」

 

カズマ

「・・・まぁ、待つしかないな。」

 

賢治

「しかし、これからどうしたものか?」

 

 屋敷の中のものは押収され、寝ることもままならない。

 その時、零子が言った。

 

零子

「じゃあ、私の家に来る?」

 

 と。

 そう言えば零子は、自分の家を持っていると言っていた。

 一体どこにあるのだろうか?

 俺達が零子についていくと、目の前には屋敷の倉庫があった。

 

賢治

「え? 零子、まさか倉庫に住んでいるのか?」

 

零子

「まさか。 でも、当たらずとも遠からずね。」

 

「「「「「???」」」」」

 

 零子に連れられて、俺達は倉庫の中に入る。

 倉庫の中に入ると、零子は内側から鍵を掛け、壁に指をタッチし始めた。

 よく見ると、微かにボタンみたいな出っ張りが見える。

 

零子

「ポッ・ピー・ピ・ポ・パ・ポっと。」

 

賢治

「え?! それって」

 

 すると、壁が横にスライドし銀色の小部屋が出てきた。

 

零子

「さぁ、みんな入って。」

 

 俺達全員が入ったのを確認すると、零子が今度は⬇️と表示されたボタンを押す。

 扉が閉まり、部屋が動き出す。

 どうやら下に向かって降りているようだ。

 

カズマ

「なぁ、これってさ。」

 

賢治

「あぁ、エレベーターだな。」

 

アクア

「なんでこの世界にエレベーターがあるの?!」

 

めぐみん・エルシャ

「エレベーター?」

 

 しばらくすると、エレベーターの下降が止まった。

 

零子

「はい! 全員回れ右して。」

 

「「「「「え?」」」」」

 

 零子に言われて回れ右すると、後ろの壁がスライドした。

 どうやら出口は後ろに造られているようだ。

 ・・・零子の奴、わかってるじゃないか。

 

???

『お帰りなさいませ、零子様。』

 

零子

「ただいま。 今日はお客さんもいるわよ。」

 

 そう言って、エレベーターから出ていく零子。

 その先は、白い部屋だった。

 真正面には机が置いてある。

 なんとなく、会社の社長室という雰囲気がある。

 

 そして左側には何かを作る工作室みたいな部屋がガラス越しに見える。

 今も忙しなく機械が動いている。

 ・・・機械?!

 

賢治

「いや零子! この機械はなんなんだ?」

「明らかにこの世界にはないテクノロジーじゃないか?」

 

零子

「そりゃそうでしょ、これも私の転生特典だもの。」

 

カズマ

「これが?!」

 

零子

「改めて、ようこそ! 私の家兼ラボへ。」

 

 零子の話だと、彼女の転生特典は『仮面ライダーゼロワンに関する全て』と言ったらしい。

 すると、ゼロワンドライバーだけでなく、この部屋・・・というより建物もついてきたのだ。

 さあすがに近代的なこの建物をこの世界に立てるわけにはいかないから、俺達が住んでいる屋敷の地下に作ったらしい。

 零子も転生した時、この建物のこの部屋にいてびっくりしたらしい。

 

 この建物は飛電インテリジェンスと言われる、人工知能搭載人型ロボット「ヒューマギア」を開発・派遣するサービスを展開している大企業そのものらしい。

 だが、今の所人工知能の生産や量産をする予定はないみたいだ。

 今の所、4体だけスリープモードで待機しているヒューマギアがいるらしい。

 他にも、ここではライズフォンという俺達の元の世界で言うスマートフォンを作ることもできる。

 勿論、兵器の類も作れるみたいで、いずれ零子はこの国にそれらを売り出す腹積りでいる。

 一体何を売るつもりなのだろうか?

 

 そんな時扉が開き、そこから出てきたのは。

 

キョウヤ

「やぁ、みんな。」

 

賢治

「キョウヤ?!」

 

 御剣響夜だった。

 彼はあの裁判の後ここにきていたらしい。

 しかし、正規のルートではなく、アクセルの街に点在する裏ルートから入ってきたらしい。

 そんなものまでこの街に作っているのか?

 

カズマ

「なんでここに?」

 

キョウヤ

「実は、頼みがあって戻ってきたんだ。」

 

 キョウヤはつい最近までカオルという冒険者とパーティを組んで自分を鍛えていたらしい。

 しかし、三日ほど前蟻の様な怪人を発見し、その怪人と戦っていた時にキョウヤも仮面ライダーに返信できる様になった。

 まさか仮面ライダーG4に変身するなんて、予想外だ。

 そして、そのカオルという人も変身できるみたいで、姿格好を聞く限り、どう考えても仮面ライダーアナザーアギトと特徴が一致する。

 常盤総悟の世界の破壊と再生の余波でこの世界にやってきたアナザーアギトの力が、そのカオルという人に宿ったのか、またはこの世界の人間にもアギトの可能性を持っているのか。

 

 とにかく、その戦いで大量の蟻の怪人、おそらくアンノウン、蟻の姿ということはアントロードだと思う。

 奴らは『劇場版仮面ライダーアギト projectG4』に登場するアンノウンだ。

 奴らを殲滅するには、確かに二人だけでは戦力不足だな。

 

零子

「じゃあ、ヒューマギアを二人連れていく?」

 

キョウヤ

「ヒューマギア?」

 

零子

「すぐに動かせるのは四人だけだけど、二人連れて行くだけでも十分だと思うわ。」

 

 そう言って零子は、タブレットを操作する。

 すると、部屋隣の工作室のカプセルの中が開いた。

 中から出てきたのは、二人のヒューマギア。

 見た目は人間と区別がつかないが、耳の部分がヘッドセットになっている。

 

 二人とも黒いスーツ姿だが、一人は額に黒地に紫のラインが入ったバンダナを額に巻き、腰には刀を指している。

 もう一人は金髪の髪に、右手にオレンジのリストバンドをつけている。

 

零子

「滅、雷、おはよう。」

 

「あぁ、おはよう。」

 

「いや〜、よく寝たぜ。 で社長、俺と滅を起こして、緊急事態か?」

 

零子

「みんな紹介するわね。 刀を持っているのが滅、金髪の方が雷よ。」

 

「滅だ。」

 

「俺は雷だ。 よろしくな。」

 

 この後、お互いに自己紹介を済ませ、零子は彼らを起こした理由を話す。

 

「つまり、そのアンノウンを倒すために、俺と雷の力を借りたい。」

「そういうことか?」

 

キョウヤ

「はい。 よろしくお願いします。」

 

「なるほど。 まぁ、俺と滅、そしてさらに二人の仮面ライダーがいればなんとかなるだろ。」

 

 ずいぶん自信があるようだ。

 零子の話だと、この二人も仮面ライダーになれるみたいだし、大丈夫だろう。

 

 その後、滅と雷は準備を整えて、キョウヤと一緒にバイクに乗り、東の中継拠点 コウカイへ向けて出発したのだった。

 

 キョウヤを見送った後、改めてこの建物の案内をしてもらう事になった俺達は、その時気づいた。

 アクアがいない事に。

 何処にいるのかと慌てていると、先ほどの音声・・・零子はこの声のことを『イズ』と呼んでいた。

 イズによると、社長室から二階下のバーカウンターにいるとのこと。

 

 イズの言う通り、その買いに行ってみると、そこには酒を飲んで酔っ払っているアクアがいた。

 

アクア

「あらみんな〜。」

 

カズマ

「お前、何してんだよ?」

 

アクア

「このビル最高ね〜。 いろんなお酒があって飲みきれないわぁ〜。」

 

 そんなに飲んで大丈夫だろうか?

 アクアのやつ、飲む割に弱かったりするからな。

 よく飲みすぎて裏路地で戻しているところを見るけど。

 

エルシャ

「よくこんなところを見つけたわね。」

 

アクア

「暇だったから散策してたのよ〜。」

「それに〜、私のお酒が全部持っていかれたのよ〜、少しくらいここのお酒を飲んでもいいでしょ〜。」

 

零子

「う〜ん、まぁ、いいけど。」

 

賢治

「程々にしとけよ。」

 

アクア

「えへへ〜、いざとなったら〜、賢治が介抱してくれるでしょ〜。」

 

 そう言って俺にもたれかかってくる。

 正直酒臭い。

 

賢治

「はぁ、しょうがないな。」

 

アクア

「賢治の〜、そう言う優しい所す〜き〜。」ギュー

 

 やれやれだ。

 せっかくなので、俺達もここのお酒を飲んでいく事にした。

 めぐみんとエルシャは未成年だからジュース、またはノンアルコールの飲み物を。

 

 案の定、アクアは飲み過ぎて近くのトイレで戻す事になった。

 明日のことを考えると、気が滅入るがやるしかないか。

 なんとかして身の潔白を証明しないと。

 

 今日は飛電インテリジェンスの居住階層の一室を使う事になった。

 俺達転生者とアクアは久しぶりのフカフカのベッドに飛び込んでぐっすり眠ることができた。

 めぐみんとエルシャは、こんなにフカフカのベッドは初めてなのかすごく興奮していた。

 二人のもれなく熟睡したのだった。

 

賢治

「・・・あのクソ領主、今に見てろ。」

 

 そう言って俺も眠るのだった。




 いかがだったでしょうか?

 この小説では、主人公は無罪になっています。
 零子の弁護パートは、勘のいい人は気づいていると思いますが、元ネタは転スラです。

 本来ならこの話をコラボストーリーの前に投稿したかったのですが、順序が逆になりました。

 次はボッチ紅魔族の登場回です。
 またよろしくお願いします。

 次も頑張ります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

コラボストーリー:この時の仮面と聖剣の仮面に祝福を

 みなさんお待たせしました。

 今回は仮面大佐さんからコラボのお声がかかり、今回「この仮面の戦士に祝福を」と「この聖なる刃に祝福を」でコラボすることになりました。

 ですが一応、このストーリーは原作アニメ第二期第一話の後のストーリーなので、まだseason2第一話が投稿できていない状態で投稿します。
 「season2第一話が投稿してから読む」という方は、ブラウザバックしてください。
 それでもいいという方は、読んで見てください。

 season2第一話もできるだけ早く投稿しますので待っていてください。

 こちらでは賢治視点で進行します。
 仮面大佐さんの方では、主人公の神崎零士視点で進行します。




 

 どうも、こんにちは霧島賢治です。

 この町の領主の告発により、無実の罪で牢屋にぶち込まれた俺だったが、嫌疑不十分ということで一時的に釈放され、裁判でも証拠不十分で無罪となる。

 まぁ、こっちは何も罪を犯していないのだから、当然である。

 

 

 しかしどう言う訳か、いまだに疑いは晴れてないらしく、あのクソ領主が『身の潔白を証明したいのなら、ギルドからの指名依頼を受けろ』と言うのだ。

 しかも、強制参加・無報酬で。

 おまけに裁判所を通して、『疑いが晴れるまで、俺達の屋敷の中にある物を差押る』とまで言ってきた。

 

 巫山戯るなよ!

 

 クエストの内容は高難易度クエストばかりで、中でも早急に解決してほしい依頼がここ最近現れた、赤い竜を使役する怪人の討伐クエストだ。

 大方俺を裁判で処刑に出来なかった事で、安いプライドに傷が付いたのが許せなかったのか、無理難題を吹っ掛けて俺を追い込んでクエスト中に死亡すればいいと思っているのだろう。

 

 赤い竜によって周囲の町や村に被害が出ており、俺以外の冒険者達もこのクエストに参加したのだが、全員返り討ちにあったらしい。

 

 自身の潔白を証明するためとは言え、タダ働き同然の討伐クエストなんて引き受けたくないが、あのクソ領主のせいで引き受けざるおえない状況なのだ。

 

 受付のルナさんは、申し訳なさそうにしている。

 検察官のセナさんも「無理に受ける必要はありませんよ。」と言っていたが、ここで受けなかったらギルドの職員や所属する冒険者達、そしてセナさんにも余計な疑いがかけられるかもしれない。

 結局、引き受けるしかないのだ。

 

賢治

「・・・あのクソ領主、今に見てろ。」

 

 まぁ、あいつを「ギャフン!」と言わせるための仕込みは、すでに開始している。

 実は連行される時に、零子とめぐみん、そしてアクアに確認してもらったが、アクア曰く。

 

アクア

「間違いなくあの屋敷には悪魔がいるわ。」

「間違いなく悪魔が発する匂いだったもの。」

 

 と言っていた。

 これで領主に悪魔が協力していることはほぼ確定になった。

 アクアの言葉を聞いためぐみんが爆裂魔法を撃ちに行こうとしたり、アクアが屋敷全体を覆うくらいの特大級の対魔魔法を撃ち込みに行こうとしたが、何とか抑えることに成功した。

 確たる証拠も無いのにそんなことはできない。

 そんな事をすれば、俺達もあのクソ領主と同じだ。

 今は雌伏の時である。

 

 さて、そんな事があったが、今俺は零子とカズマを連れて、件の赤い竜を使役する怪人の討伐に来ている。

 ここは、以前カズマが冬将軍に襲われた所からさらに奥の方まで来ていた。

 

零子

「なんて言うか・・・分かり易いわね。」

 

カズマ

「あぁ、あんなに露骨に空を飛んでいればな。」

 

 そう、討伐依頼にある赤い竜は、上空をクルクル回って飛んでいるのだ。

 見つけてくれと言わんばかりに。

 そしてその真下には、左側が黒色で、中央が白、右側に赤い竜の頭のようなショルダーガードが付いた、剣を持った人型の怪人がいた。

 胸には数字がついていて、そこには2020と表示されていた。

 これはつまり。

 

賢治

「アナザーライダーか?」

 

カズマ

「そうじゃないか?」

 

零子

「2020・・・あれ? どこかで・・・」

 

アナザーライダー?

「ガアアアアアアアアアアア!!!」

 

賢治・カズマ・零子

「!!!」

 

 見たことがないアナザーライダーに?を浮かべていると、いきなり斬りかかってきた。

 俺達は咄嗟に後方に飛び退いて、それぞれベルトを装着する。

 

賢治

「いきなりかよ!」

 

 俺は、ツールベルトからウォッチを二つ取り出し。

 

賢治

「カズマ! とりあえずこれを渡しておくぞ!」

 

カズマ

「!?」パシ!

「これは・・・ナイトと・・・ライオン?」

 

 カズマに渡したのは、仮面ライダーナイトと仮面ライダービーストのライドウォッチだ。

 どのライダーのアナザーライダーか分からないので、とりあえず竜繋がりで仮面ライダー龍騎と仮面ライダーウィザードに関連するウォッチを渡した。

 

賢治

「ライオンじゃなくて、ビーストな!」

 

 『ジオウ!』『龍騎!

 

零子

「フォーゼの次のライダーね!」

 

 『WING!』『オーソライズ!

 

カズマ

「十四番目の2号ライダーか。 よし!」

 

 『ゲイツ!』『ビースト!

 

 それぞれ変身アイテムを起動する。

 

賢治・カズマ・零子

「変身!」

 

 『ライダータイム!』『仮面ライダージオウ!

 『アーマータイム!』『アドベント! 龍騎!

 

 『ライダータイム!』『仮面ライダーゲイツ!

 『アーマータイム!』『オープン! ビースト!

 

 『プログライズ!』『 Fly to the sky(空を飛ぶ) フライングファルコン!

 『 Spread your wings and prepare for a force.(翼を広げて、敵に備えよ)

 

 俺は仮面ライダージオウ・龍騎アーマー。

 カズマは仮面ライダーゲイツ・ビーストアーマー。

 零子は仮面ライダーゼロワン・フライングファルコンへ変身した。

 

零子

「空にいるあの竜は任せて。」

 

賢治

「頼む!」

 

 そう言って零子は、空で今も旋回しているドラゴンの元へ飛んでいった。

 

ドラゴン

「ゴオオオオオオォォォ!!」

 

零子

「私と一緒に遊ぼうか。」

 

賢治

「行くぞカズマ!」

 

カズマ

「おう!」

 

 俺とカズマはアナザーライダーめがけて走る。

 ジカンギレードとジカンザックスで斬りつける。

 しかし、何度斬っても目の前のアナザーライダーがダメージを受けている様子がない。

 やはり龍騎にもウィザードにも関係のあるライダーではないとう事だろうか?

 

 すると、アナザーライダーは腰のベルトについている、本のような物に持っていた剣の先をかざした。

 

 『ドラゴン! ふむふむ!』『習得一閃!

 

アナザーライダー

「グガアアア!」

 

 アナザーライダーの剣に炎が渦巻き、炎の斬撃が飛んでくる。

 

賢治

「!?」

 

 『フィニッシュタイム!

 『龍騎! ギリギリスラッシュ!

 

賢治

「ハアアア!」

 

 俺は咄嗟にドライバーから龍騎のライドウォッチを外し、ジカンギレードのスロットに差し込み、必殺技を放つ。

 二つの炎の斬撃がお互いの間で鬩ぎ合う。

 次の瞬間、二つの技は爆発した。

 

アナザーライダー

「!!」

 

賢治

「うわぁ!」ドサッ!

 

カズマ

「賢治!」

 

零子

「キャアアア!」ズドーン!

 

カズマ

「!? 零子さん!」

 

 俺が吹き飛ばされてすぐ後に、空中で戦っていた零子が地面に落ちてきた。

 空中にいたドラゴンも、アナザーライダーのそばに降りてきた。

 

賢治

「零子、大丈夫か?」

 

零子

「えぇ! でもあのドラゴン、結構強かったわ。」

「あと、思い出したわ。 あいつ多分、仮面ライダーセイバーのアナザーライダーだわ。」

 

賢治・カズマ

「セイバー?」

 

零子

「簡単に言うと、仮面ライダーゼロワンの次に登場する仮面ライダーよ。」

 

賢治

「ゼロワンの次!?」

 

 そうだとしたら、普通のライドウォッチでは効果がない。

 俺はジオウⅡのライドウォッチを取り出し、それを聞いたカズマはゲイツリバイブウォッチを、零子はジオウのプログライズキーを取り出した。

 

 『ジオウⅡ!

 『ライダータイム!

 『仮面ライダー! ライダー!

 『ジオウ・ジオウ・ジオウ!Ⅱ!

 

 『ゲイツリバイブ・剛烈!

 『パワードタイム!』『リ・バ・イ・ブ剛烈! 剛烈!

 

 『KING!』『オーソライズ!

 『プログライズ!』『Legend Celebrate!(伝説を祝え!)ライダータイミングジオウ!

 『 An honorable and kind demon king.(立派で親切な魔王。)

 

 それぞれがジオウⅡとゲイツリバイブ剛烈、そしてゼロワン・ライダータイミングジオウに変身した。

 それを見たアナザーライダーが、ドラゴンに手を置いた。

 すると、ドラゴンはアナザーライダーに吸収され、先ほどまで赤白黒の三色だった体が、赤一色になった。

 

 『烈火三冊!

 『紅蓮の炎が、全てを燃やし尽くす!

 

 まるで、仮面ライダーのフォームチェンジのようだ。

 

賢治

「零子、あれってあのアナザーライダーの元になったライダーのフォームチェンジか?」

 

零子

「わかんない。 私が見たのは、ゼロワンの最終回の次回予告だけだから、名前だけでどんな力を使うかは・・・ちょっとわかんない。」

 

 分からないのなら仕方ない。

 とにかく今は、今ある手札で何とかするしかない。

 

 俺は、サイキョージカンギレードをカズマはパワードノコ、零子はアタッシュカリバーを手に取り、アナザーライダーに挑む。

 しかし3対1だと言うのに、アナザーライダーは俺たちの攻撃の悉くを受け止め、受け流し、回避している。

 しばらくそんな攻防が続き、俺とアナザーライダーの武器同士で鍔迫り合いが起きる。

 この時俺は、まるで巨大なドラゴンを相手にしている様な感覚を覚えた。

 

零子

「ケン君!」

 

 『チャージライズ!』『フルチャージ!

 

 零子は、アタッシュカリバーを一度アタッシュモードにし、再度ブレードモードに展開する。

 

カズマ

「これでどうだ!」

 

 『フィニッシュタイム!

 

 カズマはドライバーからゲイツリバイブのウォッチをジカンザックスのスロットにセットする。

 そして、二人同時に武器のトリガーを引く。

 

 『カバンストラッシュ!

 

 『剛烈! ギワギワシュート!

 

 零子のアタッシュカリバーからは、ピンク色の斬撃が。

 カズマのジカンザックスからは、巨大なオレンジ色の矢が放たれた。

 俺はその瞬間、アナザーライダーを踏み台にして、背後に大きく飛ぶ。

 俺が着地すると同時に、零子とカズマの必殺技がアナザーライダーに直撃する。

 

賢治

「今のうちに!」

 

 『ジオウサイキョー!

 

 俺はサイキョーギレードのフェイスユニットをサイキョーモードに変更し、トリガーを引く。

 『ジオウサイキョウ』と言う文字と共に、黄金とピンクのエネルギーが空高くまで伸びる。

 

 『キング! ギリギリスラッシュ!

 

賢治

「ハアアアァァァ!!」

 

 俺は、アナザーライダーが立っているであろう場所に向かって、サイキョージカンギレードを振り下ろした。

 その瞬間、大爆発が起きた。

 

 しかし、その中からアナザーライダーが剣を振りかぶって、飛び出してきた。

 咄嗟に剣を構えてその一撃を防ぐが、その衝撃で後ろに大きく吹き飛ばされた。

 

賢治

「うわぁ!」ドサッ!

 

零子

「ケン君!」

 

カズマ

「賢治!」

 

 俺の元に零子とカズマが駆け寄ってくる。

 そして、アナザーライダーがその隙を見逃すはずもなく。

 

アナザーライダー

「グゥゥ!」

 

 『別殺読破!

 

 アナザーライダーが持っている剣をベルトのかざす。

 しかしさっきと違うのは、先ほどの技と違い、剣の先端をベルトの本にかざすのではなく、剣の鍔の部分をかざしていた。

 

 『ドラゴン・イーグル・西遊ジャー!

 『三冊斬り!』『ファ・ファ・ファ・ファイヤー!

 

 こちらに向かって、アナザーライダーが剣を真横に振るう。

 すると炎を斬撃が飛んできた。

 

零子

「! させない!」

 

 『Progrise key confirmed.(プログライズキーが確認されました。)Ready to utilize.(利用の準備が整いました。)

 『ボーラベアーズアビリティ!

 

 零子がフリージングベアのプログライズキーをアタッシュカリバーのスロットに差し込む。

 音声が流れ、刀身が氷で覆われる。

 その状態で、零子がトリガーを引いた。

 

 『フリージング!』『カバンストラッシュ!

 

 アタッシュカリバーから、氷の斬撃が放たれた。

 二つの斬撃は中央で拮抗するが、次第に氷の斬撃の方が押され始め、俺達の近くで炎と氷の力が爆発した。

 

賢治・カズマ

「うわああああああ!!」

 

零子

「あああああ!!」

 

 俺達は後ろに大きく吹き飛ばされた。

 辛うじて強制変身解除には至らなかったが、俺達は大きく吹き飛ばされ、隙が生まれてしまった。

 爆発の中からアナザーライダーが飛び出してきた。

 大きく剣を振りかぶり、振り下ろしてきた。

 俺はサイキョージカンギレードで受け止めようとする。

 その時。

 

 ガキン!

 

 俺の剣とは違う、別の剣がアナザーライダーの攻撃を防いだ。

 その剣を持った人物は、白いシャツに黒のジャケットとズボンと靴。

 黒の帽子を被り、ネックレス型のペンケースを提げている。

 体格を見る限り、男だろうか?

 

???

「助太刀するぞ!」

 

 そう言って彼は、アナザーライダーを蹴り飛ばし、こちらに振り向いた。

 

???

「君が、霧島賢治か?」

 

賢治

「え? そうですけど。 あなたは?」

 

???

「俺は神崎零士、俺も・・・仮面ライダーさ!」

 

賢治・零子・カズマ

「え?!」

 

 そう言って彼、神崎零士は再びアナザーライダーに向き直った。

 すると彼は、剣の鞘のようなものを取り出し、腰に当てる。

 

 『聖剣ソードライバー!

 

 次に、彼は持っている剣をソードライバー?に納刀する。

 彼は懐から、一冊の小さな本?を取り出し、ページを開く。

 

 『ブレイブドラゴン!

 『かつて、全てを滅ぼすほどの偉大な力を手にした神獣がいた・・・

 

 本から音声が流れ、彼はソードライバーについている右側のスロットにその本を差し込む。

 すると、彼の背後に先ほど差し込んだ赤い本が巨大化して現れた。

 軽快な音楽が流れ、彼は再び剣を引き抜いた。

 

 『烈火抜刀!

 

 本が開き、中から赤い龍が姿を現し、彼の周囲を飛びわまる。

 

零士

「変身!」

 

 そう叫んで、彼は炎を纏った剣でX字の斬撃を放つ、飛んでいた竜が彼と一つになり右肩に龍の頭が付いた赤白黒の姿に変化する。

 そして、先ほど放ったXの斬撃が彼の顔に当たると、燃えるような兜になり、頭には彼の持つ剣を模した、角の様な物が付いている。

 

 『ブレイブドラゴン!

 『烈火一冊! 勇気の竜と火炎剣烈火が交わる時、真紅の剣が悪を貫く!

 

零士

「・・・物語の結末は、俺が決める!」

 

零子

「嘘!? 仮面ライダーセイバー?」

 

カズマ

「あの人が?」

 

賢治

「・・・すげぇ!」

 

 俺は彼の後ろ姿から目を離せなかった。

 まるで、歴戦の戦士の背中を見ているようだった。

 

零士

「ハアアア!」

 

 零士はアナザーライダーに向かって走る。

 一撃、二撃、三撃と手に持っている剣で斬り付ける。

 クルリと一回転して更に斬る。

 アナザーライダーにその攻撃は効いているようで、後方へ距離を取る。

 すかさず零士はジャンプして、上から下へ剣で斬る。

 

 たまらず、アナザーライダーも反撃する。

 右からの攻撃を零士はしゃがんで避け、次の攻撃をアナザーライダーを踏み台にして背後にまわって回避する。

 その瞬間に、剣に炎を纏わせ左から右へ斬る。

 

アナザーライダー

「グゥ・・・ゴオオオ!」

 

 アナザーライダーは、自身の体から三体の動物を呼び出した。

 ドラゴンと鷲と雲に乗った猿だ。

 

零士

「ブレイブドラゴンにストームイーグル、西遊ジャーか。」

 

 『ブレイブドラゴン!

 

 零士は、ドライバーの本を指で弾く。

 すると、本の中からアナザーライダーと同じように竜が出現する。

 2匹の竜は絡みつくように上空へ飛んで行き、鷲と猿は零士に向かっていく。

 しかし。

 

 『アタッシュショットガン!

 

 『スピードクロー!

 

 鷲を零子のショットガンが、猿はカズマがゲイツリバイブ・疾風で迎撃する。

 

零士

「あ!」

 

零子

「鷲の方は任せて!」

 

カズマ

「ちっこい孫悟空は任せろ!」

 

零士

「ゼロワンと・・・その声、カズマか?」

 

賢治

「貴方だけを戦わせる訳にはいかないからな。」

「一緒に戦おう!」

 

零士

「あぁ、行こう!」

 

 『ストームイーグル!』『西遊ジャーニー!

 

 『この大鷲が現れし時、猛烈な竜巻が起こると言い伝えられている・・・

 『とあるお猿さんの冒険記、摩訶不思議なその旅の行方は・・・

 

 零士が剣をドライバーに収めると、更に二つの本を取り出し、ページを開くと音声が流れた。

 その二冊をドライバーの中央と、左のスロットに差し込み、剣を引き抜く。

 

 『烈火抜刀!』『語り継がれし神獣のその名は!クリムゾンドラゴン!

 『烈火三冊! 真紅の剣が悪を貫き、全てを燃やす!

 

 火炎剣烈火を引き抜くと、零士の周囲で炎の竜巻が生まれ、その中から今度は全身が赤一色の仮面ライダーが現れた。

 さっきと違い、中央には鷲の顔の様なアーマーが付き背中には赤い羽のようなマントがついている。

 左側は、肩には西遊記の孫悟空が頭に付けていた禁錮時のような輪が付いており、左腕には小さな如意棒のようなものが付いている。

 

 なるほど、仮面ライダーセイバーとは、物語を力にする仮面ライダーのようだ。

 俺と零士は剣を構え、走り出した。

 

 アナザーライダーの横薙ぎの攻撃をスライディングで回避し、同時に剣で攻撃する。

 すかさず起き上がり、背後から斬り付ける。

 零士は縦横無尽にアナザーライダーに攻撃をする。

 俺は零士の背後からジャンプして、アナザーライダーに攻撃した。

 その勢いで、アナザーライダーは後方へ吹き飛び、剣を突き刺してなんとか起き上がろうとする。

 しかし、俺達がその隙を見逃すはずもなく。

 

賢治

「今だ!」

 

零士

「よし!」

 

 『ライダーフィニッシュタイム!

 

 『必殺読破!』『ドラゴン! イーグル! 西遊ジャー!

 

 俺はジオウⅡのウォッチを操作し、零士は火炎剣烈火をドライバーに仕舞い、グリップのトリガーを2回引く。

 俺の右足に黄金とピンクのエネルギーが収束し、零士の右足に炎が渦巻く。

 俺はドライバーを一回転させる。

 

 『トゥワイス!』『タイムブレイク!

 

零士

轟龍蹴烈破!

 

 『三冊撃!』『ファ・ファ・ファ・ファイヤー!

 

賢治・零士

「ハアアアアアアァァァ!!」

 

 俺達はジャンプし、ライダーキックを放った。

 アナザーライダーを黄金とピンクのキックが貫通し、右足の炎のキックがヒットした瞬間にアナザーライダーを踏み台にし、更に左足のキックが炸裂する。

 俺達が地面に着地すると、アナザーライダーは爆発した。

 

 ドゴオオオオオオオオオォォォ!!

 

 すると、アナザーライドウォッチが排出され、空中で砕け散った。

 爆発の中から現れたのは。

 

賢治

「・・・うん?」

 

零士

「? これは・・・」

 

???

「・・・ギ・・・ギィ・・・」

 

 現れたのは小さな赤い竜だった。

 どう見てもまだ子供のドラゴンである。

 まるで、某狩猟ゲームの赤い竜みたいだ。

 

零子

「よいしょ! ねぇ、鷲が消えたんだけど、終わったの?」

 

カズマ

「あの猿! 俺をおちょくりやがって、うん?」

「このドラゴンは?」

 

 この場にいる全員が変身を解き、集まる。

 ここで、零士の話を聞いた。

 彼はこの世界に来た目的は、彼が元いた世界を救った時、仮面ライダーセイバーの力の一部がこの世界に飛来し、その力がアナザーライダー化したと、門矢 司から聞き俺達の世界へとやってきたようだ。

 

 ちなみに彼がいた世界とは、この世界の並行世界であり、俺がこれまでにこの世界で経験してきた出来事は、零士も大半は経験しているようだ。

 ジャイアントトードと戦ったり。

 キャベツを捕まえたり。

 魔王軍の幹部を倒したり。

 なんと! 俺が最近体験した、クソ領主による裁判まで経験したらしい。

 

 ただ、細部に違いがある。

 カズマが仮面ライダーになれるのはこちらでも同じだが、零士の世界では聖剣・水勢剣流水に選ばれた仮面ライダーブレイズに変身するらしい。

 他にも、めぐみんやダクネスも聖剣に選ばれた仮面ライダーとのこと。

 

零士

「俺の話はここまでにしておく。」

 

カズマ

「え? もう少しいいだろ?」

「せめてそっちの俺がどうなったのか」

 

賢治

「カズマ。」

 

カズマ

「?」

 

賢治

「やめとけ。」

「向こうは向こう、こっちはこっちだ。」

 

カズマ

「・・・そうだな。」

 

 そう。

 向こうの世界の出来事が、こっちの世界でも確実に起きるわけじゃない。

 いくら似たような並行世界でも。

 実際、零士の仲間にエルシャやルミはいない。

 変身できる仮面ライダーも違っている。

 細部に違いがある。

 これから先の未来を聞いても、仕方がないことだ。

 この世界で起きることは、俺達でなんとかしないとな。

 

零子

「じゃあ、零士さんはケン君に自分のウォッチを渡すためにこの世界に?」

 

零士

「あぁ。 司とエリス様に頼まれてな。」

 

 まぁ、もうアナザーライダーは倒してしまったし、これから先彼の力が必要になるかどうか分からないが、持っておいて損はないだろう。

 

零士

「けどその前に。」

 

賢治

「うん?」

 

零士

「俺に君の力を見せてくれ。」

 

 つまり戦えと?

 まぁ、ただより高いものはないが。

 

賢治

「それは・・・必要なのか?」

 

零士

「う〜ん・・・俺の気持ちの問題かな。」

 

賢治

「・・・わかった。」

 

 なんとなく、気持ちは伝わった。

 彼は平行世界を救った、文字通りの英雄だ。

 俺がこの世界を救えるかどうか、気になるのだろう。

 

零子

「その前にさ、この子・・・どうする?」

 

 零子は、未だ気絶している子竜を指差した。

 多分、この世界に飛来したアナザーセイバーの力を偶然取り込んでしまったのだろう。

 確かに、このままだとこの子竜を討伐しなければならなくなる。

 冒険者カードにはアナザーライダーの討伐記録は、表示されない。

 今回のことは不幸な事故だし、竜とはいえ子供の命を奪うのは気が引ける。

 

零士

「あ! じゃあ、これを渡せばいいだろう。」

 

賢治

「うん?」

 

 零士が取り出したのは、白い本だった。

 零士が使っている本、ワンダーライドブックと同じ形の本だ。

 

零士

「この本には物語がない、白紙の本だ。」

「アナザーライダーを討伐した時に、この本が出てきたといえば討伐の証になるだろう。」

 

カズマ

「・・・他に方法がないし、それで行くか。」

 

零子

「そうね。 この子が可哀想だし。」

 

賢治

「じゃあ、ありがたく使わせてもらうよ。」

 

零士

「あぁ。」

 

 さて、そう言う訳でこの子竜の処遇は決まった。

 あとは零士と勝負するだけである。

 

零士

「じゃあ、始めようか。」

 

賢治

「あぁ。」

 

 お互いに少し距離をとり、ドライバーを装着する。

 俺はジオウのライドウォッチとディケイドのライドウォッチを差し込む。

 零士は先ほど見せたブレイブドラゴン・ストームイーグル・西遊ジャーニーをドライバーに差し込む。

 決して彼をなめている訳じゃない。

 ただ、世界を救ったという彼の力を見てみたいのと、自分の力が彼に通じるかどうかを知りたい。

 

賢治

「変身!」

 

 『烈火抜刀!

 

零士

「変身!」

 

 『ライダータイム!』『仮面ライダージオウ!

 『アーマータイム!』『KAMEN RIDE! WOW!

 『ディケイド!ディケイド! ディケイドー!

 

 『語り継がれし神獣のその名は!クリムゾンドラゴン!

 『烈火三冊! 真紅の剣が悪を貫き、全てを燃やす!

 

 仮面ライダージオウ・ディケイドアーマー、仮面ライダーセイバー・クリムゾンドラゴン。

 二人のライダーがライドヘイセイバーと、火炎剣烈火を手に取り、お互いに向かって歩き出す。

 次第に走り出し、お互いの剣が相手に届く距離で交差する。

 剣と剣が打ち付け合った瞬間、火花が散る。

 

 剣士同士の戦いの様に、剣技の応酬だ。

 お互いにあらゆる方向から剣を振り、相手に攻撃する。

 一旦お互いが離れると、俺はヘイセイバーのハンドセレクターを時計回りで動かす。

 

 『ウィザード!

 

 ヘイセイバーに火水土風の四属性の力が発生する。

 それをみた零士は、ドライバーに聖剣を納刀しトリガーを引く。

 

 『必殺読破!

 『烈火抜刀!

 

 火炎剣烈火を引き抜き、刀身に炎が渦巻く。

 それと同時に、零士の周囲に複数の火の玉が出現する。

 俺はヘイセイバーのトリガーを引く。

 

 『ウィザード!』『デュアルタイムブレイク!

 

 『ドラゴン! イーグル! 西遊ジャー! 三冊斬り!

 『ファ・ファ・ファ・ファイヤー!

 

零士

爆炎紅蓮斬!

 

賢治

「ハアアアァァァ!」

 

 俺はヘイセイバーから火水土風の斬撃を四本放つ。

 零士の方は、周囲に浮かんでいた火の玉がこっちに向かって飛んでくる。

 斬撃と火の玉がぶつかり合う。

 次の瞬間、零士は横薙ぎの炎の斬撃を放ち、火の玉と四属性の斬撃を飲み込み爆発した。

 その衝撃で俺は軽く後退りした。

 それに対して、零士はまだ余裕そうだ。

 

賢治

「ならこいつだ!」

 

 『ビルド!

 

 俺はビルドライドウォッチを取り出し、ディケイドライドウォッチのスロットに差し込む。

 

 『ファイナルフォームタイム!』『ビビビビルド!

 

 仮面ライダービルド・ラビットタンクスパークリングの力を宿した、ディケイドアーマー・ビルドフォームになる。

 右肩のコードインディケーターに『ビルド』と表示され、胸から左肩にかけて『スパークリング』と表示されている。

 両腕両足をラビットタンクスパークリングを彷彿とさせるアーマーがついている。

 

零士

「ならばこっちも。」

 

 零士はドライバーに聖剣を納刀し、ブックを全て外し新たに大きいライドブックを取り出し、ページを開いた。

 

 『ドラゴニックナイト!

 『ドでかい竜をド派手に乗りこなす、ド級の騎士のドラマチックバトル・・・

 

 零士がページを閉じると、ドライバーの右側のスロットにそのブックを差し込んだ。

 

 『烈火抜刀!

 

 零士が聖剣を引き抜くと、本のページが開き、更に中から他のページがスライドして現れた。

 ブレイブドラゴンが出現し、零士が剣でX字を斬る。

 

零士

「ハァ!」

 

 『Don`t miss it!

 ( The knight appears.When you side,

 

 本の中から銀と赤の鎧が出現する。

 零士の背後で止まると、その鎧が分解し、全身を覆った。

 

 『ドメタリックアーマー!

 ( you have no grief and the flame is bright.

 

 『ドハデニックブースター!

 ( Ride on the dragon, fight.

 

 『ドハクリョックライダー!

 ( Dragonic knight.

 

 『ドラゴニックナイト! すなわち、ド強い!

 

 現れたのは、全身を銀色の鎧で覆った仮面ライダーセイバーだった。

 その姿はまるで、竜を従える聖騎士みたいだ。

 

賢治

(・・・なんか、ずるいな。)

(演出が一々格好良いじゃないか。)

 

 この分だと、他の仮面ライダーも相当格好良いんだろうな

 向こうの世界ではカズマがセイバー系の仮面ライダーになれるみたいだが、できればリアルタイムで見たかったな。

 

零士

「? どうした?」

 

賢治

「いや。 気にすんな。」

「続きをしようぜ。」

 

零士

「あぁ!」

 

 俺はヘイセイバーの他に、仮面ライダービルドが使う武器、『ドリルクラッシャー』を左手に持ちセイバーに向かって走る。

 武器同士がぶつかる瞬間、火花だけでなく炭酸飲料のような泡が弾け飛ぶ。

 俺はスパークリングの持つ高速移動の力を使い、ヒットアンドアウェイの攻撃を繰り返す。

 しかし、効いている様子がない。

 

賢治

「硬! もしかして、効いてない?」

 

零士

「う〜ん・・・チクチクするくらいか?」

 

賢治

「マジか!」

 

零士

「今度はこっちの番だ!」

 

 零士がそう言うと、ブレイブドラゴンのブックを取り出し、左腕に付いているブレイブドラゴンの顔を模した小手を開く。

 嫌な予感がしたので、ビルドのライドウォッチに手をかざし、一本のフルボトルを取り出す。

 

 『ワン! リーディング!

 

 零士がブレイブドラゴンのブックを差し込むと、次にグリップの横にある赤いボタンを押した。

 

 『フレイムスパイシー!

 

 すると、小手がついた左腕から炎が放射された。

 俺はすぐに、ドリルクラッシャーにボトルを装填しトリガーを引く。

 

 『Ready Go!』

 『ボルテックブレイク!

 

 ドリルクラッシャーが回転し、螺旋状に高速回転する水のドリルを放つ。

 俺が今使ったのは、海賊のフルボトルだ。

 

零士

「何?! うわっ!」

 

 水のドリルが火炎放射を貫き、零士に直撃する。

 その衝撃で、零士は吹き飛んでしまう。

 

零士

「グゥ・・・なんでフルボトルが?」

 

賢治

「俺のスキルさ。」

「俺は平成ライダーの全ての武器と能力を使うことができるんだよ。」

「フルボトルも例外じゃないさ。」

 

零士

「そんなスキルを?!」

 

賢治

「さぁ、どんどん行くぜ!」

 

 そのあと俺はあらゆるフルボトルを駆使して、零士に挑む。

 

 ラビットブルボトルで、ドリルクラッシャーの回転速度を上げて斬りかかったり。

 ロケットブルボトルで、ロケット状のエネルギーの塊をぶつけたり。

 忍者フルボトルで、ドリルを分身させて連続で攻撃したり。

 

 しかし、零士はその攻撃全てに対抗して見せた。

 

賢治

「マジかよ!」

「ここまで手を尽くして、息一つ乱さないなんて・・・」

 

零士

「各ボトルの特性を知っていればな、そこから予測して対応することはできるさ。」

 

賢治

「・・・なら次はこいつだ!」

 

 『ダブル!

 

 俺はビルドのウォッチを外し、ダブルのウォッチをディケイドウォッチに差し込んだ。

 

 『ファイナルフォームタイム!』『ダダダダブル!

 

 仮面ライダーダブル・ファングジョーカーの力を持つ、ディケイドアーマ・ダブルフォームになる。

 

零士

「次はダブルか、ならこっちも。」

 

 零士が聖剣をドライバーに仕舞う。

 

 『プリミティブドラゴン!

 『古の大いなる竜が、本の力を掴み取る!

 

 零士はまた大きなブックを取り出しページを開く、だが今までのブックとは違い、本の外側に骨の様なパーツがついている。

 しかも、まるで関節をゴキゴキ鳴らす様な音が鳴る。

 次に零士は、ブレイブドラゴンを取り出し、その本に差し込んだ。

 

 『ブレイブドラゴン! ゲット!

 

 その状態で、ドライバーの右のスロットに差し込んだ。

 そして、聖剣を引き抜く。

 

 『烈火抜刀!

 

 『バキッ!ボキッ!ボーン!

 『ガキッ!ゴキッ!ボーン!

 

 『プーリーミーティーブ! ドラゴーン!

 

 零士の背後に透明な水色の竜が現れ、零士を抱きしめる様に包む。

 零士はまた新たな形態に変身した。

 見た目はブレイブドラゴンに近いデザインだが、右肩にはドラゴンの頭蓋骨、腕や足には骨を象った透明感のある水色の装甲を纏い、まるで『骨だけになったブレイブドラゴン』とでも言うべき姿をしている。

 その姿は剣士であると同時に、巨大なドラゴンのようだ。

 

賢治

「またすごい姿だな!」

 

零士

「・・・この子と友達になるのに苦労したけどな。」

 

賢治

「この子?」

 

零士

「こっちの話だ、行くぞ!」

 

 俺達は激しく剣を交える。

 今の零士には剣士として技量だけでなく、まるで獣のような威烈さがある。

 

賢治

「まるで、ファングジョーカーみたいだな。」

 

零士

「実際、プリミティブドラゴンは以前は暴走する姿だったからな。」

 

賢治

「なるほど、それで『友達』か?」

 

零士

「あぁ。」

 

賢治

「じゃあ、こっちも進化しないとな。」

 

零士

「進化?」

 

 俺はダブルのウォッチに手を翳した。

 

 『ファイナルフォームタイム!』『ダダダダブル!

 

 さっきまで白と黒の姿だったディケイドアーマー・ダブルフォームだったが。

 今は白と銀になっている。

 

零士

「それは! ファングメタル?」

「なんで?」

 

賢治

「零子に教えてもらったんだよ。」

「『風都探偵』の続きをな。」

 

 そう、なぜ本来知るはずのないこの形態を知っているのかというと、零子が続きを知っていたからだ。

 衛星ゼアのデータの中に『風都探偵』の最新話の情報があったので、二人でそれを見たのだ。

 そして、ダブルウォッチの『星の本棚』の力で検索したら、『ファングトリガー』や『ファングメタル』の本が出てきたのだ。

 そのおかげで、ディケイドアーマーを使用した状態で、『ファングトリガー』と『ファングメタル』の力も使える様になったのだ。

 

 俺はダブルのライドウォッチを2回押す。

 

 『アームファング!

 

 更に2回押す。

 

 『アームファング!

 

 両腕と両肩に鋭利な刃が出現する。

 

賢治

「ハアアアァ!」

 

零士

「っ!」

 

 俺は剣ではなく、肉弾戦に切り替えた。

 両腕に付いたアームファングで攻撃する。

 そのため、零士はたまらず防戦に徹するしかなくなる。

 俺はキックで零士を蹴り飛ばし、距離を取る。

 ディケイドウォッチのスターターを押す。

 

 『ダダダダブル!』『ファイナルアタック タイムブレイク!

 

 肩についているタクティカルホーンが大型化する。

 

零士

「!」

 

 零士は聖剣をドライバーに納め、プリミティブドラゴンのページを2回押し込んだ。

 

 『グラップ必殺読破!

 『クラッシュ必殺撃!

 

零士

骸龍相蹴撃!

 

賢治

ファングスピアバレット!

 

 俺は零士に向かって走り、頭から高速回転して突っ込む。

 零士は脚にに青い炎を纏い、ライダーキックを放つ。

 

賢治

「おおおおおおお!!」

 

零士

「はああああああ!!」

 

 二人の必殺技がぶつかり、暫くすると爆発する。

 その衝撃で俺達の変身は解除された。

 

賢治

「うわっ!」

 

零士

「のわっ!」

 

カズマ

「賢治!」

 

零子

「・・・!」

(ケン君、頑張って。)

 

 俺と零士は立ち上がり、お互いを見合う。

 

賢治

「はぁ、はぁ、・・・すげぇな、さすが世界を救った仮面ライダーだな。」

 

零士

「かはっ! はぁ、君こそ、さすが今日まで戦ってきただけのことはある。」

 

賢治

「・・・そろそろ本気で行こうか、お互いに。」

 

零士

「あぁ。 本気で行こう。」

 

 『ジオウⅡ!

 

 『エレメンタルドラゴン!

 『そして太古の竜と手を結び、全てを救う神獣となる!

 

 俺はジオウⅡのライドウォッチを、零士はさっきのプリミティブドラゴンともう一冊、クリアレッドのブレイブドラゴンに似た大きいブックを取り出した。

 

 『エレメンタルドラゴン! ゲット!

 

 プリミティブドラゴンにエレメンタルドラゴンを差し込み、ドライバーにセットする。

 俺はジオウⅡを分離し、ドライバーにセットする。

 

賢治・零士

「変身!!」

 

 『ライダータイム!

 『仮面ライダー! ライダー!

 『ジオウ・ジオウ・ジオウ! Ⅱ !

 

 『烈火抜刀!

 『バキ・ボキ・ボーン!メラ・メラ・バーン!シェイクハーンズ!

 『エ・レ・メ・ン・タル!ドラゴーン!!

 

 『エレメントマシマシ! キズナ、カタメ!

 

 俺は今変身できる最強の形態、ジオウⅡへ、零士はまた新たな姿に変身する。

 零士の背中の本から、プリミティブドラゴンと赤い竜が現れ、手を繋ぎ合わせる。

 そこから現れたのは、プリミティブドラゴンの水色と、赤とオレンジが混じったセイバーだった。

 

賢治

「・・・」

 

零士

「・・・」

 

 最早お互い言葉は要らなかった。

 あとは全力で戦うだけだ。

 

賢治・零士

「・・・ハアアアアアアァァァ!!」

 

 サイキョージカンギレードと火炎剣烈火がぶつかり合う。

 

賢治

「ハッ! ヤァ!」

 

零士

「フッ! セイッ!」

 

 剣同士が何度もぶつかり合う。

 その度に、剣を通して俺に流れ込んでくる。

 零士のこれまでの経験が、零士の思いが、覚悟が。

 

 俺が零士を斬ろうとした時に。

 

 『エレメンタルドラゴン!

 

賢治

「うわっ!」

 

 俺の剣は空振りした。

 突然零士が複数の炎の球になったのだ。

 その時、ジオウⅡの未来視が発動した。

 炎の球が俺の背後で集まり、元の仮面ライダーセイバーに戻って、斬られるというものだった。

 俺はその未来視の通りに、零士が元の姿に戻ると同時に、後ろに向かって剣を振るった。

 

賢治

「ハァッ!」

 

零士

「! うわっ!」

 

 うまくいった。

 どうやらあの姿での回避行動には、カウンターが有効のようだ。

 

零士

「嘘だろ? 初見で対応するなんて。」

 

賢治

「ジオウⅡには未来視があるんだ、背後から攻撃してくるのは分かっていたからそれに合わせただけさ。」

 

零士

「未来視か、なるほど・・・ならもうこの戦い方は通じないか。」

 

 そこからは、剣技とライダーとしての能力の応酬だった。

 俺はジオウⅡの未来視の能力をフル稼働させて、零士の攻撃に対応する。

 零士は火・水・土・風の四属性の能力で、炎を球を飛ばしてきたり、足元に水を発生させて地面を滑るように移動したり、風を纏って空を飛んだり、地面に潜って攻撃してきたり。

 この戦い方を見て俺が思ったのは『ウィザードかよ!』である。

 しかし、その激しい攻防も終わりが近づいている。

 

 俺は明らかに息が上がっていた。

 零士の方はまだ余裕がありそうである。

 このままではどのみち勝ち目はなさそうだ。

 

賢治

「これで決める!」

 

 『ライダーフィニッシュタイム!

 『ジオウサイキョー!

 

 俺はウォッチを操作し、ドライバーを回転させる。

 サイキョージカンギレードのフェイスユニットを『ライダー』から『ジオウサイキョウ』に切り変える。

 

零士

「! 来るか。」

 

 『必殺読破マシマシ!

 

 零士は聖剣をドライバーに収め、ブックのページを押し込む。

 その後に、聖剣を引き抜いた。

 

 『烈火抜刀!』『エレメンタル合冊斬り!

 

 零士の聖剣に四属性の力が集まる。

 

零士

森羅万象斬!

 

賢治

「っ!」

 

 サイキョージカンギレードに黄金とピンクのエネルギーが集まり、『ジオウサイキョウ』の文字が現れる。

 俺はサイキョージカンギレードのトリガーを引く。

 

 『キングギリギリスラッシュ!

 『トゥワイス!』『タイムブレイク!

 

 火炎剣烈火とサイキョージカンギレード、二つの剣から放たれるエネルギーがぶつかる。

 俺達は叫び声をあげ、渾身の力を込める。

 ほんの少しでも気を抜けば吹き飛ばされそうだ。

 だが、次の瞬間爆発が起きた。

 

 爆発で吹き飛ばされた。

 俺達は剣を支えにして立ち上がる。

 お互い、ふらつく足で近寄る。

 剣を振り上げ、同時に振り下ろす。

 しかし、振り方が悪かったのか?

 火炎剣烈火とサイキョージカンギレードは宙を舞い、地面に突き刺さった。

 

 俺と零士は変身が解除され、地面に倒れた。

 

零子

「ケン君!」

 

カズマ

「賢治!」

 

 零子とカズマが駆け寄ってくる。

 俺と零士はうつ伏せから、仰向けになり空を見る。

 

賢治

「ハハッ! 勝てなかったか。」

 

零士

「俺も勝つ気で戦ったのにな。」

 

賢治

「・・・零士、俺・・・あなたと戦えて良かったよ。」

 

零士

「こっちこそ。」

 

零子

「二人とも無理しちゃって。」

 

カズマ

「けど、二人とも言い戦いだったぞ。」

 

 その後、俺と零士は笑い合い、拳でグータッチした。

 その様子を離れたところでX字に交差した火炎剣烈火とサイキョージカンギレードが、見守るように輝いていた。

 そしてもう1匹、さっきまで気絶していた子竜が見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 暫くして、回復した俺零士から改めて『セイバーライドウォッチ』を受け取った。

 すると、ツールベルトの中にあるブランクライドウォッチが青く光り出した。

 取り出してみると、そのブランクライドウォッチは、『ブレイズライドウォッチ』に変化していた。

 ブレイズライドウォッチはカズマに渡しておいた。

 

 これは、後になって分かったことだが、零子の部屋に衛星ゼアが、今回の戦闘データをもとに仮面ライダーセイバーのプログライズキーを作っていたのだ。

 キーの表に『REKKA BATHING SABRE』と表示されていた。

 

 そして零士は、突如現れたオーロラカーテンを通って、元の世界へと帰っていった。

 これで一件落着。

 

 と思ったら、まだ終わりじゃなかった。

 

 俺の服の裾を引っ張るものがいる。

 何かと思って後ろを振り返ると、そこにはさっきの子竜がいた。

 

賢治

「おいお前、もう何処にでも行って良いんだぞ。」

 

子竜

「ギィ〜。」

 

 鳴き声を上げると、俺の足に擦り寄ってきて、尻尾を絡みつかせてきた。

 

零子

「もしかして、ケン君と離れたくないんじゃない?」

 

子竜

「ギィ!」

 

 「そうだ!」と言うように元気に鳴く子竜。

 正直困惑している。

 連れて帰るにも、街中を竜が歩いていたら討伐されかねないし。

 

零子

「・・・! とりあえず、アクセルの近くまで戻ろ。」

 

 零子がそう言ってきたので、アクセルに戻ることにした。

 そして、零子は自分一人で街に入り、俺とカズマと子竜には人目のつかないところで待っていた。

 暫くすると、零子が戻ってきた。

 零子が手に持っているのは、スカーフである。

 それには紋章がついており、この紋章は『従魔』である事の証らしい。

 

賢治

「なるほど、これを巻いていれば従魔と認識されるわけだ。」

 

零子

「うん、名案でしょ。」

 

カズマ

「この世界に『テイマー』なんて職業、あったんだな。」

 

 本来このアイテムは、『テイマー』という職業専用のアイテムだ。

 テイマーの能力で従魔になったモンスターは、このアイテムを使って見分けるらしい。

 

零子

「ケン君がつけてあげれば?」

「ケン君に懐いているみたいだし。」

 

 確かに、さっきから俺の側を離れない子竜。

 やっぱり俺に懐いてるのだろうか?

 ペットなんて買ったことがないから分からないが。

 

賢治

「なぁ、お前を街に入れるにはこのスカーフを着けないと入れないんだ。」

「着けていいか?」

 

子竜

「・・・ギィ。」

 

 子竜は自分の首をこっちに差し出してきた。

 OKという事だろう。

 俺は子竜の首に、スカーフを巻いてあげた。

 するとスカーフの紋章が青く光り、俺の冒険者カードも同じ青い光を放つ。

 冒険者カードに、従魔の情報が追加されていた。

 そこに、『名前 なし』とあった。

 だから、名前を付けることにした。

 

賢治

「う〜ん・・・やっぱり『ブレイブ』かな。」

「今日からお前は『ブレイブ』だ。」

 

ブレイブ

「ギィー♪」

 

 どうやら気に入ったようだ。

 すると、ブレイブは俺の背中によじ登り、その口で俺の頭を噛んできた。

 

カズマ

「賢治!」

 

零子

「大丈夫なの?」

 

賢治

「あぁ、甘噛みだよ。」

 

ブレイブ

「〜♪ 〜♪」

 

 その後、冒険者ギルドに討伐の報告に行き。

 その証として、零士から譲って貰ったブランクワンダーライドブックを提出した。

 「討伐したらその本が出てきた。」と言ったら、なんとか通った。

 ブレイブの姿を見て、ルナさんやギルドにいる他の冒険者達も驚いていたが、俺の従魔だということを話したらみんな受け入れてくれた。

 

 ブレイブは見た目が子供の竜なので、女性陣に大変人気で可愛がられている。

 屋敷に戻った時も、エルシャやめぐみんにハグをされた。

 アンナはブレイブを見ると、「可愛い竜さん!」と言ってブレイブに抱きついてきた。

 ブレイブも慣れたのか、『しょうがないな。』というなんとも言えない顔でされるがままになっていた。

 

 今回は仮面ライダーセイバーのアナザーライダーと戦ったり。

 並行世界の仮面ライダーセイバー、神崎零士との出会い、そして戦い。

 新しい仲間の赤い子竜『ブレイブ』が加わる。

 色々あったが、今日も無事に一日を終えられるようで何よりだ。

 

 

 

 

 

 

 だが、この時の俺は知らなかった。

 ギルドに提出したはずのブランクワンダーライドブックがいつの間にかギルド内から紛失していることに。

 

 

 

 

 




 いかがだったでしょうか?
 他の作者とコラボなんて初めてだったので、新鮮でした。

 次回はseason2の第一話を投稿しますので、もう暫く待ってください。

 これからも、よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二十話 このボッチの紅魔族に祝福を

 みなさんお待たせしました。

 順調に執筆活動が進んだので、こんなに早く投稿できました。

 ここ最近、見たい映画を見に行くことが出来ないでいます。
 仮面ライダーリバイス。
 ソー:ラブ&サンダー。
 バズ・ライトイヤー
 ドラゴンボール超 スーパーヒーロー。
 機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島 等。

 劇場で見たい映画が見れずにいます。

 ゲームの方は今はSDガンダムGジェネレーションクロスレイズをやっています。
 このゲームに、スペリオルドラゴンが出てきた時は、ビックリしました。
 思わず、「懐かしい!」と言ってしまいました。

 みなさんはどうですか?
 毎日を楽しく過ごせているでしょうか?
 今は大変な世の中ですけど、頑張って生きていきましょう。

 では、第二十話をどうぞ。


 

アンナ

「それいけー!」

 

ブレイブ

「ギイィ!」

 

 俺達は今押収されてしまった屋敷の方にいる。

 飛電インテリジェンスの居住区画の部屋があるとはいえ、朝にはこっちに戻ってきている。

 いつ誰がくるかわからないから。

 

 アンナはブレイブの背中に乗って庭を駆け回っている。

 この光景だけを見れば微笑ましいのだが、季節は冬。

 やっぱ外は寒い。

 ・・・て言うかブレイブ、お前冬は大丈夫なのか?

 ドラゴンって感覚的には爬虫類だよな?

 冬の間は冬眠したりしないのか?

 

アクア

「クシュン!」

「う〜寒いよ〜、・・・・・・あー、誰か暖めてくれないかな〜?」チラ

 

 露骨にこちらをチラチラ見ている。

 言えば抱き締めてやるのに。

 

賢治

「アクア、こっち来いよ。」

 

アクア

「やった!」ギュー

 

 そう言って嬉しそうに抱き付いて来る。

 これくらい素直に甘えればいいのに。

 

カズマ

「・・・ああああああああああああ!!!」

 

アクア

「!? 何よいきなり?」

 

 すると、今まで黙っていたカズマが急に叫び出した。

 一体なんだろうか?

 

カズマ

「わからないのか? 領主の元に行ったダクネスが、もう三日も戻って来ないんだぞ。」

「きっと今頃・・・」

 

アクア

「・・・あ!」

 

カズマ・アクア

「あああああああああああああああああ!!!」

 

 二人はダクネスが領主に酷い事でもされる所を想像したのか、また叫び出した。

 ・・・ぶっちゃけ、あのドMクルセイダーにはご褒美になってしまうと思うが。

 まぁ、ダクネスもドMだと言う所を除けば、いい女な訳だし。

 心配じゃ無いと言えば嘘になるが。

 そんな時に。

 

???

「な〜う。」

 

 という、気の抜けた鳴き声が聞こえた。

 そこには羽の生えた猫みたいな動物を抱えためぐみんと零子とエルシャがいた。

 

カズマ

「めぐみん?」

「なんだその・・・猫?」

 

めぐみん

「・・・迷惑はかけないと思うのですが?」

 

零子

「なんか、起きたらめぐみんの部屋にいたんだって。」

 

賢治

「飼いたいってことか? うりうり・・・」

 

猫?

「な〜う♪」ペロペロ

 

 俺が顎の下を撫でると、気持ちよさそうに鳴いたら手のひらを舐めてきた。

 

エルシャ

「あら、賢治のこと気に入ったのかしら?」

 

零子

「そう言えば、ケン君って猫に好かれやすかったわね。」

 

 確かに以前から猫には好かれやすいと思っていた。

 ベンチに座っていたら、野良猫が膝の上に乗っかって、そのまま昼寝を始めたこともあったくらいだ。

 アクアも撫でようとするが、引っ掻かれてしまう。

 

アクア

「痛! ちょっとなんで私にだけ爪を立てるの?」

「なんて事かしら。 この太々しい態度といい、漆黒の毛皮といい、何か邪悪な気配を感じるわね。」

 

 猫に引っ掻かれたくらいで何を言っているんだか。

 しかし、ファーストコンタクトでこの嫌われ様は、悲しいな。

 

アクア

「ねぇ、この魔獣の名前はなんていうの?」

 

めぐみん

「ちょむすけです。」

 

「「「「「・・・・・・」」」」」

 

カズマ

「今なんて?」

 

めぐみん

「ちょむすけです。」

 

「「「「「・・・・・・」」」」」

 

 メーミングセンスの無さはいまだに健在のようだ。

 

セナ

コンコン 「あの、よろしいでしょうか?」

 

賢治

「セナさん?」

 

 リビングの部屋のドアを叩き、申し訳なさそうにしているセナさんがいた。

 これは、あれだな。

 クエストか。

 

 

 

ーアクセルの街 南門前ー

 

 ○ジャイアントトードの大群の討伐○

 

 俺が牢屋に入っている最中も、めぐみんの日課は続いていた。

 つまり、爆裂散歩だ。

 昨日も近場の魔王軍の砦に、零子と一緒に赴き、爆裂魔法をぶちまけたのだ。

 

 その影響か?

 冬眠していたジャイアントトードが目を覚ましたのだ。

 今回のクエストは、いわば後始末だ。

 今も1匹カエルを倒した所だ。

 

賢治

「カエルがこの寒さの中でも動きが鈍くならないとか、逞し過ぎだろ。」

 

 でっかいカエルとはいえ、所詮はカエル。

 当然冬眠はする。

 自身の体温の低下を防ぐための冬眠なのに、このカエル達の動きは俺達の知っているジャイアントトードと全く同じに見える。

 ・・・冬眠する必要あるか?

 

めぐみん

「私達も負けていられませんよ。」

「もっと強くなって、この過酷な世界を、生き抜くのです。」

 

 そう言ってめぐみんはカエルの山に仁王立ちし、格好いいセルフを言う。

 今のめぐみんは俺達のパーティの中で一番レベルが高い。

 魔力なんて俺を追い越している。

 

 そんなステータスで、ジカンデスピア片手にカエル達相手に変身なしで普通に討伐して見せたのだ。

 

賢治

「めぐみんも強くなったな。」

 

めぐみん

「これでも仮面ライダーですから。」

「いざという時、近接戦闘ができないようでは、一流のアークウィザードとは言えませんよ。」

 

 いい心がけだと思う。

 カズマ・エルシャ・零子もそれぞれ、ライダーウェポンを手にカエルを討伐して行っている。

 こうなってくると、アクアが不安になるだろう。

 

 しかし、それが普段通りならだ。

 普段通りのアクアなら、せいぜいカエルを釣る囮として使われていただろう。

 だが、今回は違っていた。

 

アクア

「フハハ! 今日の私は一味違うわよ!」

「『アクアブリッド』!」

 

 アクアは自分の周囲に水の塊を複数出現させ、1センチサイズの水の弾丸をチェーンガン並みの速さで打ち出しているのだ。

 そのせいで、カエル達は身体中が蜂の巣になっている。

 

 アクアは膨大な魔力があるのに、これまではそれを生かしきれていなかった。

 この戦い方は、俺がアドバイスをしたから生まれたまのだ。

 感じ的には、某黄金の英雄王様のゲー○オブ○ビロン。

 又は、赤い兄貴の投影魔術だ。

 

アクア

「フハハ! どう!思い知ったかしら?」

 

カズマ

「アクア、お前意外とすごいな。」

 

アクア

「あらカズマ、ようやく私の凄さに気付いたのかしら?」

「もっと褒め称えてもいいのよ!」

 

セナ

「流石です! 皆さんお強いですね。」

 

 そんな感じで余裕を見せていたもんだから気づかなかった。

 まだ終わっていないという事を。

 

めぐみん

「あ! 待ってください!」

「追加のカエルです!」

 

賢治・カズマ

「な!」

 

 その時、隙をつかれてアクアとめぐみん、そしてセナさんが。

 

アクア

「いやあああああああ!!」

 

めぐみん

「あああああああああ!!」

 

セナ

「きゃあああああああ!!」

 

 バクっ!

 っと、3人はジャイアントトードに食われてしまったのだ。

 

エルシャ

「三人とも!!?」

 

零子

「大変! 助けないと!」

 

 とは言え、まだ無事な俺達もそれぞれカエルの相手で手が離せない。

 よく見ると、食われた三人の足が少しずつ飲み込まれ始めている。

 

賢治

「くそ! やばいぞ。」

 

 その時。

 

???

「『ライト・オブ・セイバー』!」

 

 ブオン! ブオン!

 と、まるでス○ーウ○ーズのライトセイバーような音と共に、周辺のカエル達が斬られた端から爆散していった。

 先ほど聞こえた声が正しければ、今のは上級魔法の『ライト・オブ・セイバー』のはずだ。

 しかし、その魔法は俺も使えるが、こんな風にならなかった。

 どちらかと言えば『OO(ダ○ルオー)スカイ』の『ハイ○ーザン○カイ』のような形だった。

 

 その魔法を使った主は。

 

???

「・・・ふぅ〜。」

 

 黒い髪に、黒い服とピンクのミニスカート。

 赤い瞳の美少女だった。

 そして、とても発育の良い体をしている。

 

賢治

(紅魔族か? ・・・・・・うん、いい意味でけしからん。)

 

 カエルから吐き出された三人は、案の定粘液まみれになっている。

 一応アクアが浄化の魔法を使って、無味無臭無害の粘液にしているが、大元はカエルのだ。

 臭くないとはいえ、早く洗い流したいだろうな。

 

カズマ

「誰だか知らないけど、助かったよ。」

 

零子

「えぇ、ありがとうね。」

 

???

「! ・・・べ、別に助けた訳じゃありませんから。」

「ライバルがカエルなんかに負けたら、私の立つ背がない・・・というか・・・」モジモジ

 

エルシャ

「? ライバル?」

 

めぐみん

「・・・・・・」

 

???

「ひ、久しぶりねめぐみん。」

「きょ、今日こそ、長きに渡る勝負に決着をつけるわよ!」

 

 そう言って、ビシッ! とめぐみんを指差す紅魔族の彼女。

 めぐみんの知り合いみたいだ。

 しかし、めぐみんは。

 

めぐみん

「・・・どちら様ですか?」

 

???

「え!!?」

 

めぐみん

「だいたい、名乗りもしないでいきなり勝負を挑んでくるなんて、失礼ですね。」

「これはアレですか? 以前カズマや賢治が言っていた『オレオレなんとか』というやつですか?」

 

 いやどう見てもめぐみんの知り合いだろう?

 見た目が紅魔族だし。

 彼女も今にも泣きそうな顔をしている。

 なんかこっちが虐めているような気分だ。

 

???

「ーーー! わかったわよ!」

「人前で恥ずかしいけど! ・・・こほん。」

 

 そう言って彼女は、意を決して。

 

???

「我が名はゆんゆん! アークウィザードにして、上級魔法を操る者!」

「やがては紅魔族の長になる者!」

 

めぐみん

「というわけで、彼女はゆんゆん。」

「紅魔族の長の娘で、私の自称ライバルです。」

 

ゆんゆん

「!! 覚えてんじゃないの!!」

 

 わざとだったのか。

 やめてやれよ、そいうの。

 

カズマ

「なるほど。 俺はめぐみんの仲間の佐藤和真。」

 

賢治

「俺は霧島賢治。 こっちは沖田零子とエルシャ。」

「それからアクアだ。」

 

ゆんゆん

「あ・・・あれ? 私の名前を聞いても笑わないんですか?」

 

 紅魔族のネーミングセンスには大概慣れたつもりだ。

 それに。

 

カズマ

「世の中にはな、個性的な名前があるのに、『頭のおかしい爆裂娘』なんて、不名誉な通り名で呼ばれている奴がいるんだよ。」

 

めぐみん

「!!? 私ですか! それって私のことですか!!」

「私が知らない間にそんな通り名が定着していたのですか!!」

 

 めぐみんは知らなかったのか。

 ギルドでは大概の奴らが、めぐみんのことをそう呼んでいる。

 本人の前で入っていないようだが。

 

ゆんゆん

「さ、さすがめぐみんね。」

「いい仲間を見つけたようね。 それでこそ私のライバル!」

「私はあなたに勝って、紅魔族1の座を手に入れる!」

「さぁ、めぐみん! 私と勝負しなさい!」

 

めぐみん

「嫌ですよ。 寒いですし。」

 

ゆんゆん

「え?! なんで?」

 

 ゆんゆんの勝負の申し込みをバッサリと断るめぐみん。

 受けてもらえると思っていたゆんゆんは、慌ててめぐみんに頼み込んでいる。

 

セナ

「え〜っと、それでは、今回はありがとうございました。」

「大変心苦しいですけど、次もお願いします。」

 

 そう言ってセナさんはアクセルの街へ戻っていった。

 

アクア

「私もお風呂に入ってくるわね。」

 

エルシャ

「私も汗かいたからいくわ。」

「あのお風呂はとても便利で、最高だから。」

 

 アクアはエルシャと一緒に風呂に入りに行った。

 エルシャは飛電インテリジェンスにある入浴施設を気に入ったようだ。

 俺達異世界転生組は、慣れ親しんだものだが、この世界の住人であるエルシャからすれば、自動でお湯を沸かしたり、シャワーや蛇口からお湯が出るなんて、明らかに今の技術ではできない道具に驚いていた。

 この世界の風呂は水を運ぶのは手作業だし、沸かすのも手作業だ。

 いくつかは魔法で済ませることはできるが、完全に自動とはいかない。

 

 しかも自動で髪を乾かせるドライヤーや、マッサージチェアまである。

 冷蔵庫の中には牛乳やコーヒー牛乳、さらにフルーツ牛乳まである。

 

 一応全自動洗濯乾燥機もあり、服や下着を入れてスイッチを押しておけば風呂に入っている間に、洗濯と乾燥ができるようになっているので、着替えを用意する必要もない。

 バスローブも置いてあるみたいだが、俺は使ったことがない。

 

 そうこうしている内に、結局めぐみんが折れる形で勝負をすることになった。

 ゆんゆんはとても嬉しそうだ。

 

めぐみん

「その代わり、勝負の内容は私が指定しますよ。」

「体術勝負でどうですか?」

 

ゆんゆん

「え? いいの?」

「学園ではろくに体術の授業に出なかっためぐみんが?」

「昼休みの時間になるとこれ見よがしに私の前をチョロチョロして、勝負をさせて私からお弁当を巻き上げていたあなたが?」

 

賢治・零子・カズマ

「・・・・・・・・・・」ジー

 

めぐみん

「・・・・・・・・・・」

 

 めぐみんのやつ、そんなことをしていたのか?

 

カズマ

「お前・・・」

 

めぐみん

「私だって死活問題だったんです。」

「家庭の事情で彼女の弁当が生命線だったのです。」

 

零子

「死活問題?」

 

賢治

「生命線?」

 

 なんか、すごい言葉が出てきたぞ。

 めぐみんの実家って、そんなに貧乏なのか?

 ・・・そう言えばめぐみんって、実家に仕送りしているって聞いたような?

 

ゆんゆん

「・・・わかったわ。 体術勝負でいいわ!」

 

カズマ

「え? いいの?」

 

めぐみん

「いいでしょう。 では、何処からでもかかって来なさい!」

 

 そう言って、めぐみんとゆんゆんは構える。

 体格的にゆんゆんに軍配が上がりそうだ。

 めぐみんは体術による戦闘は得意ではなさそうだが、今の彼女は仮面ライダーだ。

 仮面ライダーをやる上で近接戦闘は避けては通れない。

 現に今回のジャイアントトードの討伐でも、一発だけ爆裂魔法を使ったが、それ以外は全部ジカンデスピアによる近接戦闘で討伐していた。

 

 最近めぐみんはスキル・魔法付与というスキルを獲得したみたいで、そのスキルで『ツエモード』のジカンデスピアに爆裂魔法を付与して、ジカンデスピアを叩き付けると同時に、爆発で吹き飛ばすという技を編み出したのだ。

 

 話はそれたが、ゆんゆんがここであることに気づいたのだ。

 

ゆんゆん

「・・・? ・・・・・・め、めぐみん。」

「なんだかめぐみんの体が、テカテカ光って見えるんだけど?」

 

めぐみん

「そうですよ。 この全身ネッチョリは全部カエルのお腹の中の分泌物。」

「さぁ、近づいて来た瞬間、思いっきり抱きついて、そのまま寝業に持ち込んであげます。」

 

 めぐみん・・・ひどいこと考えるな。

 目が赤く輝いているぞ。

 アクアのお陰で浄化されているけど、これは嫌だ。

 俺なら全速力で逃げるな。

 

ゆんゆん

「う、嘘でしょ?!」

「私の戦意を削いで降参させようって作戦なのよね? でしょ?」

 

めぐみん

「・・・私達、友達ですよね?」

「友達というのは、苦難を分かち合うものだと思うのです・・・」

 

 と、笑顔で言うめぐみん。

 雲の隙間から日光が差し込み、めぐみんを照らし出す。

 そのせいか? めぐみんがとても輝いて見える。

 

 そして・・・

 

ゆんゆん

「いーやああああああああああ!!!」

 

めぐみん

「ヌーン! ヌーン!」

 

 ゆんゆんは悲鳴をあげて逃げ出した。

 それを追うめぐみん。

 

賢治・カズマ

「うわ〜。」

 

零子

「ゆんゆん・・・可哀想に。」

 

 結局ゆんゆんはめぐみんに捕まってしまう。

 降参と言っていたが、めぐみんがそれを許さなかった。

 めぐみんは「今日も勝ち!」と言ってドヤ顔をしていた。

 

 勝負の内容はしょうもないが。

 

 その後、ゆんゆんと別れた俺達は、屋敷へ向かっていた。

 その時、ゆんゆんの話題になりカズマが「ゆんゆんより、めぐみんの方が可愛いな。」と揶揄(からか)ったせいで、めぐみんに抱きつかれた。

 元論、全身粘液まみれのめぐみんにだ。

 

 屋敷に着くと、アンナとブレイブ、そして新しく加わったちょむすけが出迎えてくれた。

 めぐみんはちょむすけを撫でようとするが、ちょむすけは全力で逃げていった。

 そのことに、めぐみんは若干ショックだったようで、固まっていた。

 

 カズマが風呂に入ろうとすると、めぐみんがカズマの腕を掴んで止めた。

 

カズマ

「・・・なんだよ?」

 

めぐみん

「レディファーストって言葉、知ってます?」

 

 と言ってきた。

 カズマの返事は?

 

カズマ

「俺は真の男女平等を願う男だ。」

「都合のいい時だけ女の権利を主張し、都合の悪い時は男のくせにとか言う輩は許さん。」

 

 二人はしばしの沈黙後、風呂に向かって走り出した。

 風呂場から口論が聞こえるが、俺は思ったから言う。

 

賢治

「・・・飛電インテリジェンスの入浴施設に行けばいいのに。」

 

 向こうには大浴場だけでなく、個室もあるのだ。

 よって、あの二人のような口論をする必要などない。

 

賢治

「俺も風呂はいろ。」

 

零子

「あ! ねぇ、ケン君。」

 

賢治

「うん?」

 

零子

「・・・一緒に入る?」

 

 と言ってきたので、俺は。

 

賢治

「いいのか?」

 

 と聞いた。

 確かに以前、何回か一緒に入浴したことがある。

 零子は小さく頷く。

 

 一緒に入ることになった。

 二人で入る為に飛電インテリジェンスの大浴場の方に入った。

 そこには、先に入っていたエルシャとアクアがいた。

 結局最終的に四人で風呂に入ることになった。

 

 三人が俺のそばに寄ってきて、俺が大変なことになった。

 風呂とはゆっくりする場所であって、頑張る所ではないのだが・・・

 三人みたいな美人に迫られてはどうしようもなかった。

 ・・・それとも俺の意志が弱いのだろうか?

 

 その後、カズマとめぐみんに合流した俺達は、晩御飯にするためにギルドの食堂へ向かった。

 カズマとめぐみんが妙にギクシャクしていたが、・・・二人も一緒に風呂に入ったのだろうか?

 

 

 

 

 次の日、俺達はウィズの店にやってきた。

 理由は、実は零子はウィズの店に自分が作った製品を納品しているのだ。

 そして、その売上の三割を受け取っているらしい。

 今回は三枚刃のT字の髭剃り、髭剃り用のジェル、女性用の保湿クリーム、この三つである。

 

賢治

「ウィズ、これ零子に頼まれて持ってきて・・・」

 

ゆんゆん・めぐみん

「あ!?」

 

 果たして偶然か必然か、ゆんゆんが店の中にいた。

 

ウィズ

「実は」

 

ゆんゆん

「我が名はゆんゆん! なんて言う偶然! なんて言う運命の悪戯!」

「こんな所で会うなんて、やっぱり終世のライバルね!」

 

 と、格好よく決め台詞を言うゆんゆん。

 この子やっぱりどう見てもめぐみんのことが好きだろう。

 

ウィズ

「皆さんがこの店の常連だと聞いて、朝からずっと待っていたんですよ。」

 

ゆんゆん

「・・・・・・・・」//////

 

 ウィズの言葉でさっきの言葉が台無しだ。

 朝からこの店にいたなんて、どんだけめぐみんが好きなのだろか?

 言い方を変えるなら追っかけか、悪く言うとストーカーだが。

 

ゆんゆん

「何を言ってるんですか店主さん!」

「私はマジックアイテムを買おうと・・・あ、あの! これください!」

 

ウィズ

「・・・え〜っと、それは・・・避妊具ですけど?」

 

ゆんゆん

「ええぇ!!!」//////

 

 そう、ゆんゆんが手に取ったのは避妊具、それも男用のだ。

 ちなみにこれも零子の商品だ。

 裏側には『零子製作所』と書かれてあったから、間違いない。

 

 確かに需要はあると思うが、もう少し目立たない所に置いておくべきだな。

 男であろうと女であろうと、手に取ることも買うことも恥ずかしい物なんだから。

 店員が女性なら、男なら尚更恥ずかしいだろう。

 

 ゆんゆんが落ち着くまでしばらくかかった。

 その間に、零子の商品をウィズの店に納品して、これまでの商品の売上を回収した。

 思っていた以上の売上があったので、びっくりだ。

 ウィズも笑顔でホクホクだ。

 

 ・・・て言うか、ちょむすけ!

 ウィズに(じゃ)れ付いてるつもりなんだろうけど、今すぐやめろ!

 ウィズの(ふく)よか胸が揺れて気になって仕方ない。

 

カズマ

「待ち伏せるなんて回りくどい事しなくても、家を訪ねてくればいいのに。」

 

ゆんゆん

「そ、そんな! いきなり人様の家に行くなんて・・・」

 

めぐみん

「全く、煮え切らないですね。」

「これだからボッチは。」

 

カズマ

「え? そうなの?」

 

めぐみん

「ゆんゆんは自分の名前を恥ずかしがる、紅魔族にしては変わり者で、いつも一人でした。」

「その前をこれ見よがしに、ウロウロしてやると、それは嬉しそうに勝負を挑んできて・・・」

 

賢治・カズマ

「え〜・・・」

 

 確かにゆんゆんは紅魔族にしては、普通の感性を持っているような気がしてた。

 ただ、相当ボッチを拗らせているな。

 友達が欲しいのに恥ずかしがりと言う性格のせいで、うまく友達ができなかったのだろう。

 

ゆんゆん

「そ、そこまでひどくは・・・友達だっていたもの!」

 

めぐみん

「・・・? 今聞き捨てならない言葉を聞きましたが?」

「ゆんゆんに友達?」

 

ゆんゆん

「い、いるわよ! 友達くらい!」

 

 そうか、ちゃんと友達がいるんだ。

 一体どんな友達だろう?

 

ゆんゆん

「『ふにふらさん』や『どどんこさん』が「私達友達よね」と言って()()()()でご飯食べに行ったりしてるんだから。」

 

賢治

「・・・うん?」

 

 それって集られているだけじゃ・・・

 そんな奴を友達と言っていいのだろうか?

 もし、紅魔族の里に行く機会があったら、その『ふにふら』と『どどんこ』ってやつを探してみるか。

 

カズマ

「よせ! それ以上は聞きたくない。」

 

めぐみん

「・・・はぁ、それで?」

「爆裂魔法しか使えない私としては、魔法での勝負は避けたいのですが?」

 

ゆんゆん

「他の魔法も覚えなさいよ。 スキルポイントも貯まったでしょう?」

 

めぐみん

「貯まりましたよ、ここ最近は効率良くポイントが貯まるので。」

「で、そのポイントはもれなく全て、『爆裂魔法威力上昇』や『高速詠唱』のレベルアップにつぎ込んでいます。」

「あと最近は、『魔法付与』や『空間転移』にもポイントを振りましたけど。」

 

 効率が良いのは、爆裂散歩のおかげである。

 意外なのは、『魔法付与』や『空間転移』も取得していたことだ。

 てっきり爆裂魔法関連のスキルにしか興味がないと思っていたから。

 

ゆんゆん

「そ、そうなの? 意外だけど・・・なんでそんなに爆裂魔法にばかりこだわるのよ。」

 

カズマ

(いいぞ。 もっと言ってやってくれ。)

 

アクア

「勝負、勝負って、同級生なのに殺伐としてるわね。」

「・・・うん? ・・・ねぇ、これなんてどう?」

 

賢治

「うん?」

 

 そこで、今まで無言でお茶を飲んでいたアクアが水晶を指差して聞いてきた。

 

アクア

「『仲良くなる水晶』ですって。」

 

 『仲良くなる水晶』?

 なんだそれ?

 ・・・胡散臭いな。

 

ウィズ

「あ! それ、熟練の魔法使いじゃないと、うまく使えないんですよ。」

 

ゆんゆん

「それが使えれば、仲良くなれるんですか!?」

 

ウィズ

「えぇ、まぁ。 試してみますか?」

 

 ゆんゆんは「仲良くなれる」と言う部分に反応したのか、嬉しそうだ。

 仲良くなるのに熟練の魔法使いじゃないと使えないとか、ますます胡散臭い。

 このマジックアイテムを作った奴は何を考えているのだろうか?

 

めぐみん

「別に仲良くなる必要なんて無いのですが。」

 

 めぐみんも胡散臭さを感じているのか、使う気はないようだ。

 ・・・それとも本心で、ゆんゆんと仲良くなる気がないから、そう言っているのか?

 

賢治

(・・・いや、それはないか。)

 

 いくらなんでも、めぐみんがそんなことを思うとは思えない。

 迷惑なら、面と向かってそう言うだろうし。

 それを言わないと言うことは、めぐみんの中では今の関係がちょうど良い距離感なのだろう。

 

ゆんゆん

「怖気付いたのめぐみん。」

 

めぐみん

「あぁ!」

 

 あ!

 流石に今のはめぐみんもカチンときたみたいだ。

 

ゆんゆん

「つまりこれは、よりうまく使えた方が格上の魔法使いであると言う証明!」

「勝負よめぐみん!」

 

 そう言って、商品棚に置いてあった水晶を、店の中央に移動させ、二人の勝負が決まった。

 

めぐみん

「そこまで言うなら見せてあげましょう!」

「今の私の力を!」

 

ゆんゆん

「今日こそ決着をつけるわよ!」

 

 そう言って二人は水晶に魔力を流し始める。

 感じる魔力量を見た限り、ゆんゆんも相当な使い手であることは間違いない。

 魔力量も初めてあった時のめぐみんと同じくらいある感じだ。

 魔力のコントロールもかなり上手い。

 

 しかし。

 

ゆんゆん

(・・・? あれ?)

(なんか・・・めぐみんの魔力量・・・ありえないくらい多くない?)

 

 今のめぐみんは仮面ライダーになれる恩恵か?

 めぐみん自身も思わず引くくらいの魔力量を有している。

 なんたって、今現在のめぐみんは、LV61なのだから。

 

ウィズ

「水晶の力が発動しますよ!」

 

 魔力量が規定値に辿り着いたのか?

 周囲が真っ暗になったと思ったら、俺達の周りにパソコンのディスプレイのようなものが複数出現した。

 

ウィズ

「こんなに投影されたのは初めてです!」

「すごいです2人共。」

 

 これはきちんと動作しているみたいだ。

 だが、そのディスプレイを見た時、俺達は唖然とした。

 だってそこには・・・

 

カズマ

「な! ・・・なんだ・・・これ?!」

 

賢治

「・・・え?!」

 

アクア

「ちょ・・・え? ・・・何・・・」

 

 ディスプレイの一つには、めぐみんがパン屋に忍び込んで袋にパンの耳を詰めているところが映っていた。

 

めぐみん

「ーーーーーーーーー!?!?!!」

 

カズマ

「あれ・・・パンの耳集めてるのか?」

 

 もう一つは、ゆんゆんが映っていた。

 大きなケーキと沢山の料理が映っている。

 しかし、その場にいるのはゆんゆんだけである。

 

ゆんゆん

「ーーーーーーーーー?!??!?」

 

アクア

「ひ・・・一人・・・なの?」

 

 そこからは、まさに黒歴史とも言うべき光景が次々と映し出された。

 

 農家の畑から野菜を盗み、おそらくめぐみんの妹であろう小さな女の子と一緒に、野菜に齧り付いている。

 

 ゆんゆんは、チェスをしている。

 ただし、対戦相手がいない。

 一人でチェスをしているのだ。

 つまり、一人二役で対局している。

 

 次に、めぐみんが映し出された。

 川で遊んでいるのか、めぐみんを「お姉ちゃん」と呼ぶ少女と一緒にいる。

 めぐみんが徐にザリガニに似た生き物を捕まえたと思ったら。

 それを寸胴鍋で茹でて、食べていた。

 

 ゆんゆんが動物を撫でようとすると、一目散に動物が逃げていった。

 次に、花の香りを嗅いでいると、なんと!

 花が歩き出して、ゆんゆんの前から去っていったのだ。

 

 めぐみんが木の根元の土を掘り返している。

 中から出てきたのは、セミのような虫だった。

 その虫を木のくしに刺し、焚き火で焼いて食べていた。

 妹と一緒に。

 

 ゆんゆんは木の棒で魔法陣を描いている。

 その魔法陣から禍々しい魔力が溢れている。

 ゆんゆんが・・・

 「・・・もう、悪魔が友達でも・・・良いかな?」と言っていた。

 死んだような目で。

 

 それからも、目を覆いたくなる映像が次々と映し出された。

 ・・・いや、なんだこれ?

 こんなんでなんで仲良くなれると思った?

 このマジックアイテムを作った職人は?

 

カズマ

「友達に奢るために・・・アルバイトするのか?」

 

アクア

「え? ちょ・・・! なんであれ・・・虫・・・食べて・・・」

 

賢治

「悪魔が友達って・・・拗らせすぎだろ・・・」

 

ウィズ

「・・・・・・」

 

めぐみん・ゆんゆん

「あああああああああああああああ!!?」

 

めぐみん

「何なんですかこれは!?」

 

ゆんゆん

「店主さん! 仲良くなれる水晶だって言いましたよね?!」

 

ウィズ

「こ・・・これは、お互いの恥ずかしい過去を晒し合うことで、より友情や愛情が深まるという、大変徳の高い物・・・」

「なん・・・です・・・けど・・・・・・」

 

 何が徳の高い物だ!

 自分の口から語るより恥ずかしいわ!!

 魔力を注げば強制的に恥ずかしい過去が映し出されるんだぞ!

 このマジックアイテムを作った職人に今すぐ文句を言ってやりたい!

 

 人間、墓まで持って行きたい恥ずかしい秘密があって当然なんだから。

 

ゆんゆん

「ねぇ、めぐみん! これで仲良くなれるの?!」

「私達仲良くなれるの!?」

 

 涙目でめぐみんにそう言ってくるゆんゆん。

 その時、めぐみんは両手で水晶を掴み。

 

めぐみん

「おん・・・どりゃあああああああああぁぁぁ!!!」

 

 と叫んで、水晶を床に叩きつけた。

 ガッシャーン! と音を立てて、水晶が砕け散る。

 すると、周囲の映像は消えた。

 

「「「「ああああああああ?!」」」」

 

 めぐみんとゆんゆん以外の四人が、水晶を壊したことに驚き、声を上げた。

 

ウィズ

「これはカズマさんに付けておきますね。」

 

 ウィズが水晶を片付けて、そう言ってくる。

 

カズマ

「まて! 壊したのはめぐみんだろ。」

 

めぐみん

「・・・そのマジックアイテムを使いたいと言い出したのはゆんゆんです。」

「ゆんゆんが払います。」

 

 支払いのなすり付け合いがおきている。

 そのゆんゆんは、勝負がお流れになってしまったことにショックを受けているようだ。

 

ゆんゆん

「勝負が・・・せっかくの勝負が・・・」

 

めぐみん

「いつまでメソメソしてるんですか?」

 

ゆんゆん

「だってこれじゃあどっちが勝ったか分からないじゃない!」

「ねぇ、引き分けでいい?」

 

めぐみん

「別に構いませんよ。」

「もう、勝負事にこだわるほど・・・子供でもありませんから。」

 

 めぐみんがなかなか大人なことを言う。

 余裕の表情だ。

 

ゆんゆん

「あ! そう言えば子供の頃、発育勝負をしたことがあったわね。」

「子供じゃないって言うのなら、またあの勝負をしてみる?」

 

 いや、それはゆんゆんが勝つと思うが?

 めぐみんは・・・その、スレンダーな体型だし。

 ゆんゆんは出るところは出ていて、純粋な発育勝負なら負けないと思う。

 

めぐみん

「子供じゃないと言うのは、別の意味での子供じゃないと言う事ですよ。」

 

ゆんゆん

「え?」

 

めぐみん

「だって・・・私は・・・」

 

ゆんゆん

「・・・?」

 

めぐみん

「・・・ここにいるカズマと一緒に、お風呂に入るくらいの仲なのですから。」

 

カズマ

「ちょっ! おま!」

 

 めぐみんがこのタイミングで爆弾を投下した。

 やっぱり昨日あの後、一緒に入ったのか?

 

賢治

「おお!」

 

ウィズ

「まぁ!」

 

 俺とウィズは驚いているが、アクアはどこ吹く風という感じに、店の商品を物色している。

 それを聞いたゆんゆんは。

 

ゆんゆん

「・・・ええええええええええええ!!!」

 

カズマ

「テメェ! ふざけんな!」

「この口か!? この口がまた俺の悪評を広めるのか!!」

 

めぐみん

「あがががががが!!」

 

 ゆんゆんがこの日一番の驚きの声を上げた。

 カズマはめぐみんの口に親指を突っ込み、思いっきり横に引っ張っていた。

 まぁ、一部ではカズマは『クズマ』だの『カスマ』だの言われているから、これ以上悪い評判を立てなくないのだろう。

 その(ほとん)どが、クリスのパンツをスキル『スティール』で奪う現場を目撃されるせいだけど。

 

ゆんゆん

「きょ・・・きょ・・・」

 

カズマ・めぐみん

「うん?」

 

ゆんゆん

「今日のところは負けにしといてあげるからあああああああああ!!!」

 

 と言って、泣きながら店を出ていった。

 

ウィズ

「またどうぞ〜。」

 

アクア

「賑やかな子ね。」

 

賢治

「アクアも大概だと思うけど?」

 

 それを見届けためぐみんは、手帳に勝負の結果を書き込んで、「今日も勝ち!」と言った。

 ただ、自分の先ほどの発言がよっぽど恥ずかしかったのか?

 顔だけでなく、耳まで真っ赤にしていた。

 

賢治

(そこまでして勝ちたいか?)

 

 さっき「勝負事にこだわるほど、子供じゃない」と言っていたのは何だったんだ?

 そんなことがあり、店を出る際にウィズが。

 

ウィズ

「また何か新商品が出来上がったら、持ってきてくださいね。」

「零子さんの作る商品はとても人気なので。」

 

 と言ってきた。

 まぁ、ほとんどは商品の質のおかげなんだろうな。

 ウィズには圧倒的に商才がない。

 だから今まで金欠で、ひもじい思いをしていた訳だし。

 

賢治

「零子のおかげで、なんとか生活できそうだな。」

 

 何せ俺達は今、クエストを受けることができても、全て無報酬なのだ。

 今は貯金と零子の収入でなんとかなっているが、早くこの問題を解決しないと。

 

 

 




 読んでいただいて、有難うございます。

 次回は原作ではダクネスの見合いの話ですけど、オリジナルストーリーを書くつもりです。
 ちょっと、ベルセルク王国側を強化しようと思っています。

 次回もまた見てください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二十一話 この量産型に祝福を

 みなさんお待たせしました。

 前回の後書きで、今回はダクネスのお見合い回と書きましたが、よく思い出したらその前にキールダンジョンの回があったと言うことを思い出し、急遽変更しました。

 最近のゲーム事情はGジェネクロスレイズをプレイしてました。
 しかし、パイロットはともかく機体のレベリングが辛いですね。
 LV100から異様にレベルアップが遅く感じます。

 なので、気分転換にまだエンディングを見ていなかった、ゴッドイーター3を再開しました。
 しかし、ブランクが長いので最初は四苦八苦していました。
 PS5でプレイしてますので、装甲の展開の仕方とか色々忘れていますた。

 FGOではイベントをクリアし、この後は周回です。
 改て気付いたのですが、クチヒコの剣(草薙剣)と、卑弥呼の鏡(八咫鏡)、壱与ちゃんの勾玉(八尺瓊勾玉)。
 これ、三種の神器ですよね。 これに気付いた時思わず、あっ!Σ( ゚д゚)、と思いました。
 壱与ちゃん可愛いですね。
 さりげなくマスターを狙っている感がある。
 彼女の闘い方を見ていると、「仮面ライダーっぽい」と思ってしまいます。
 extraアタックの回転キックなんて一部の昭和ライダーが使う『ライダー穿孔キック』見たいです。

 では、第二十一話をどうぞ。


 

ー飛電インテリジェンス 兵器運用試験場ー

 

賢治

「ハァ! フッ! オラ!」

 

 バキン!  ドカン!  グシャ!

 

 今俺は零子の開発しているシステムの試験運用をしている。

 前後左右から鉄球が飛んできている。

 俺はそれをパンチとキックで迎撃していく。

 それを受けた重さ10キロはある鉄球が粉々に砕けていく。

 5分ほどそれを繰り返した時。

 

零子

「OK! いい感じだわ。」

 

賢治

「あぁ、脚にも拳にも痛みはないし、問題ないだろう。」

 

 今やっていたのは近接戦闘時における、使用者への負担の確認と実際の性能の確認である。

 スペックで表せば、今の俺はパンチ力:2t、キック力:4t、ジャンプ力:一跳び25m、走力:100mを6.5秒。

 見事に再現されている。

 さらに武器として、コンバットナイフ形態と光線銃形態の二つが使い分けられる『アクセレイガン』も付いている。

 

 もうわかっていると思うが、俺が今変身しているのは『仮面ライダーファイズ』に登場した『ライオトルーパー』である。

 

賢治

「それにしても、ライオトルーパーはオルフェノクじゃないと変身出来ないはずだろ?」

「そこはどうなってるんだ?」

 

零子

「うん、変身システムを『デルタドライバー』を参考にして、システムを一新したのよ。」

「そのお陰で、普通の人間でもライオトルーパーに変身できるようになったわ。」

 

 なるほど。

 スマートブレインが一番最初に開発したライダーシステムの、デルタドライバーの変身システムか。

 確かにそれならオルフェノクになれない人間でも変身ができる。

 

賢治

「・・・? なぁ、この場合『デモンズストレート』はどうなってるんだ?」

 

 仮面ライダーデルタの変身システムには、変身者の闘争本能を刺激する『デモンズストレート』というシステムが内包されており、変身解除後に精神に異常が出たり、非常に好戦的になってしまうと言う副作用がある。

 今俺はライオトルーパーになっているが、今の所自分が好戦的になっていると言う自覚はない。

 

零子

「それね、他のライダーシステムを参考にして、取り外そうとも思ったんだけだど、どのシステムを流用しても根本的なシステムが違うから、不具合が出てしまいそうなのよね。」

「変身時間が短くなったり、強い衝撃に耐えられなくなったり、スペックが低くなったり。」

「だから出来るだけ副作用を軽減させているわ。」

「気分が高鳴ったり、軽く興奮状態になる程度だと思う。」

 

 なるほど、それのせいか。

 体が妙に熱い感じがするのは。

 

賢治

「で、この後どうするんだ?」

「このまま売りに出すのか?」

 

 そう。

 このライオトルーパーの変身システムは、俺達が使う為ではなく王国に売り込むために作ったのだ。

 めぐみんの爆裂散歩によって魔王軍の拠点が軒並み更地になっているが、一時は前線を押し上げたベルセルク王国だったが、暫くすると形勢が不利になり、後退せざるを得なくなったのだ。

 

賢治

(結構な数の拠点を潰したはずなのに、なかなかしぶといな、魔王軍。)

 

零子

「あとは実戦データが欲しいわね。」

「機会を見つけて、誰かに戦ってもらわないとね。」

 

 実戦か、確かに実際に戦ってみないと分からないことが出て来るかもな。

 バグ取りはきちんとしないとな。

 そこで、一つ疑問に思った。

 誰でも使えると言うことは・・・

 

賢治

「なぁ、逆に魔王軍にスマートバックルが鹵獲されたりして、向こうの戦力が強化されたりしないか?」

 

 王国に売るのはいい。

 しかし、装着者が殺されて魔王軍の誰かが使い始めるとまずいのではないだろうか?

 ・・・いや、確実にまずいだろう。

 

零子

「それなら心配ないわ。」

「スマートバックルを装着して、初めて変身する時に生体認証が起動して、自動的に所持者登録される仕組みになってるから。」

 

賢治

「なるほど、ちなみに所持者以外が使おうとした時はどうなるんだ?」

 

零子

「その時はドライバーから『error』って言う音が鳴って、爆発するわ。」

 

 wao。

 腹部で爆発するって、割と怖いんだけど。

 まぁ、盗難対策ができているなら安心だ。

 ちなみに俺が今つけているスマートバックルは、試作品のため生体認証機能は付いていない。

 

 その後は、アクセレイガンのテストをして、この日はお開きになった。

 

 

 

 

 次の日、アクアから話があると言うので、ギルドの食堂に来ていた。

 

賢治

「で、アクアの話って?」

 

アクア

「えぇ、ダンジョンに行こうと思うの。」

 

零子

「ダンジョンに? アクアが?」

 

アクア

「それでね、みんなにも手伝って欲しいの。」

「お願い!」

 

 一緒に来ていためぐみんがそれを聞くと。

 

めぐみん

「嫌です。」

 

アクア

「行くわよ。」

 

めぐみん

「嫌です。」

 

アクア

「・・・行くわよ行くわよ行くわよ行くわよ!!!」

 

めぐみん

「嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です!!!」

「だって! ダンジョンなんて私の存在価値皆無じゃないですか!」

「爆裂魔法なんて使えないし、私もう本当にただの一般人。」

 

アクア

「心配しないで。 めぐみんは居残り組だから。」

「テントを張って待機していてちょうだい。」

 

めぐみん

「・・・そう言うことなら。」

 

 いや、めぐみんも仮面ライダーになれるんだから、問題ないと思うが?

 別にダンジョンに行くことは反対はしない。

 でも急にどうしたんだ?

 

カズマ

「なぁ、なんで急にダンジョンに行くことにしたんだ?」

 

賢治

「だな。 アクアにしては珍しい。」

 

アクア

「え! ・・・そ、それは・・・」

 

カズマ

「?」

(こいつ、今度は何やらかした?)

 

アクア

「え〜っと、実は・・・」

 

 アクアが急にダンジョンに行くと言い出した理由は至って単純だった。

 金がないからだ!

 

カズマ

「待て! 雪精討伐の時の報酬は?」

「四人で山分けしても300万エリス近い額があっただろ。」

 

 確かに、それだけに金額があれば普通に生活している分には暫くは問題ないはずだ。

 ましてや、今は自分達の家があるのだ。

 維持費や管理費を差し引いても、まだ余裕があると思う。

 

 さらにアクアの話を聞くと、所持金のうち100万エリスはアクセルにあるアクシズ教会に寄付したらしい。

 教会の修繕費に使ってもらおうと思ったらしい。

 ご丁寧に信者の夢に出て、ちゃんと修繕に使って貰えるようにお告げまで出したと言っていた。

 お陰でこの街のアクシズ協会は、初めてみた時は若干オンボロだったが今は見事に綺麗になっていた。

 アクアにしてはいい金の使い道だと思う。

 しかし、あの悪名高いアクシズ教徒がいる教会か。

 大丈夫だろうか?

 

 さらに、アクアは残りの200万近い金をお酒を買うために使ったらしい。

 まだ大丈夫、まだ大丈夫、そう思っているうちに気が付いたら残りが10万近くにまで減っていたのだ。

 

賢治

(なるほど。 最近やたらゴミ捨ての際に酒瓶が多いなと思ったら、こう言うことか。)

 

カズマ

「アクア・・・お前アホだろ。」

 

アクア

「うぐっ!」

 

 そんなわけで、所持金が心許無くなったアクアは、ルナさんにいいクエストがないか聞いたら、ダンジョン探索を進められたのだ。

 そのダンジョンは、『キールのダンジョン』である。

 以前、カズマがレベル上げの際に単独で潜っていたダンジョンだ。

 

 しかし、このダンジョンは探索され尽くされ、何もないはずだが?

 

ルナ

「実は、そのダンジョンの最新部に、未調査エリアがあるのが発覚して、これから大々的に調査クエストを発行するところだったのですが・・・」

 

アクア

「私が無理言って、特別に斡旋してもらったの。」

 

エルシャ

「なるほど、未調査エリアなら、まだお宝が残っているかもしれないと言う事ね。」

 

賢治・零子・カズマ

「お宝!」

 

 新たに発見された未調査エリアの探索。

 冒険心をくすぐる響きだ。

 目的はアクアの財布の潤すためだが、良いだろう、やってやろうじゃないか。

 

 その後、儲け話を聞きつけたダストをカズマが上手いこと気を逸らし、全員で準備を整えてキールダンジョンへ出発した。

 その際、零子がラボから何やら持ち出していたが、何に使うんだろうか?

 

 

 

 

ーキールダンジョン 入り口ー

 

 と言うわけで、今俺達はキールダンジョンの前に来ている。

 

アクア

「初心者用ダンジョンの癖に、変に遠いなんて生意気ね。」

 

めぐみん

「これだけ街から離れていれば、撃ち放題ですね。」

 

カズマ

「・・・地下に潜るんだ、撃つなよ。」

 

めぐみん

「あ! ・・・」

 

カズマ

「・・・撃つなよ。」

 

 街から遠く離れた場所のため、爆裂魔法を撃とうとするめぐみん。

 カズマに撃つなと言われて、構えた杖を咄嗟に引っ込めた。

 

めぐみん

「コホン! 昔々、国最高と謳われたアークウィザードが作ったダンジョン。」

「そいつは、こんな所にダンジョンなんか作って、何がしたかったのでしょうか?」

 

 確かに、なんの目的があってダンジョンなんか作ったのだろうか?

 クリム・スタインベルトが作ったダンジョンは、例えるならば『アトラクション』の一環である。

 防衛機能を最大にすれば、侵入する者を問答無用で排除できるが、あのダンジョンのコンセプトは『誰もが楽しめるダンジョン』である。

 

 そもそもダンジョンとは、最新部に何らかのお宝の類が眠っているのが基本。

 RPGの定番である。

 しかし、稀に『一番奥にある何かを外に出さない』為にダンジョンが作られる場合がある。

 

 キールというアークウィザードが何の為にダンジョンを作ったのか?

 本人がいない今、永遠の謎になるかもしれないし、今回の探索で何かわかるかもしれない。

 

零子

「それで、誰がダンジョンに潜る?」

 

カズマ

「そうだな、アクアは確定だとして・・・後は・・・」

 

賢治

「俺とカズマでいいんじゃないか?」

 

エルシャ

「そうね、カズマの冒険者の職業が活躍しそうね。」

 

 カズマの職業は冒険者。

 本職には劣るが、あらゆるスキルを覚える事が出来るのだ。

 真っ暗なダンジョンに入るのなら、非常に心強い。

 

カズマ

「そうだな。 アクアもいいか?」

 

アクア

「えぇ、もちろんよ。」

 

零子

「じゃあ、三人共これ着けて。」

 

 そう言って零子は大きめのアタッシュケースを取り出した。

 そこに入っていたのは、3本のスマートバックルだった。

 

カズマ

「え?! これって確か・・・」

 

アクア

「あ! 知ってる、これ仮面ライダー555に出てくるやつでしょ!」

 

賢治

「もしかして、試作品か?」

 

零子

「そう、三人にテストしてもらおうと思って。」

 

 確かに以前実践データが欲しいと言っていた。

 確かに、絶好の機会だろう。

 

アクア

「待って、これ私達が使って大丈夫なの?」

 

 アクアはオルフェノクにしか使えないこのスマートバックルに疑問を持っている。

 零子が問題ないと説明するとアクアはスマートバックルを見て。

 

アクア

(・・・そうだわ! これがあれば。)

「ねぇ、零子。」

 

零子

「うん?」

 

アクア

「お願いがあるんだけど。」

 

零子

「何?」

 

 アクアと零子が離れて何か話している。

 一体何をしているのだろうか?

 暫くすると、零子がサムズアップしてアクアが嬉しそうにしている。

 

 そして、俺とカズマとアクアはスマートバックルを腰に装着した。

 

賢治

「よし。 やるか二人とも。」

 

カズマ

「よっしゃ!」

 

アクア

「いくわよ!」

 

賢治・カズマ・アクア

「変身!」

 

 そう叫んで、スマートバックルのバックルの部分を縦から横に向きを変える。

 

 『Complete!』

 

 という音声が鳴ると、全身にライオトルーパーのスーツが装着された。

 着心地は先日テストした時と何も変わらないように感じる。

 だが、両二の腕、腰や太腿に、何かをマウントするような装置がついている。

 

賢治

「? 零子、これは何なんだ?」

 

零子

「それはね、武器をマウントする装置よ。」

 

カズマ

「武器? ライオトルーパーにそんなの有ったっけ?」

 

 ある筈が無い。

 ライオトルーパーの武器は基本『アクセレイガン』だけである。

 『ジャイロアタッカー』というバイクがあるが、あれは武器ではなく乗り物である。

 

零子

「皆んなには、この武器も試して欲しいの。」

 

賢治

「武器?」

 

 そう言って零子が出したのは、数個のアタッシュケースだった。

 ちなみに零子にも、俺の『宝物庫』のように、物を収納できる『道具箱(アイテムボックス)』と言うスキルがある。

 アタッシュケースはそこから出したのだ。

 

 ケースを開けると、中には銃や銃と連結して使用するグレネードランチャー、腕に装着するタイプの剣、近接戦闘用のナイフが複数。

 後、アタッシュケースかと思ったそれは、実はアタッシュケース型の折り畳み式のガトリングガンだった。

 この武器は・・・

 

賢治

「なぁ、この武器って。」

 

アクア

「G3ーXの武器じゃないの?」

 

零子

「そうよ。 ついでに作ってみたの。」

 

カズマ

「マジか。」

 

 この世界にこれだけの現代武器を持ち込んで良いのか、多少疑問に思うが今更である。

 テストをするからには持って行かなければならない。

 俺はガトリングガンの『GXー05:ケルベロス』を手に持って。

 カズマは銃の『GMー01:スコーピオン』、グレネードランチャーの『GGー02:サラマンダー』。

 アクアは剣の『GSー03:デストロイヤー』、ナイフの『GKー06:ユニコーン』をそれぞれ装備し、キールダンジョンに潜っていった。

 

 入り口から伸びている階段を降りていく。

 本来なら松明を使うか、スキル『千里眼』か『暗視』、もしくは俺の持つスキル『千里眼・改』がなければ暗闇での空間把握は容易ではない。

 しかし。

 

賢治

「・・・二人共、ちゃんと見えてるか?」

 

カズマ

「あぁ、バッチリだぞ。」

 

アクア

「便利よねこの機能。」

 

 俺達は今スキルなどに頼らず、ライオトルーパーに搭載されている暗視装置のお陰で、きちんと空間の把握ができている。

 

アクア

「まぁ、この装置がなくても私はちゃんと見えるけどね。」

「地上に堕ちて能力が制限されているけど、こんな暗闇くらい楽勝よ。」

 

賢治

「・・・あ! そうか、アクアは女神だっけ。」

 

アクア

「今更?!」

 

カズマ

「流石、宴会芸の神様だな。」

 

アクア

「違うわよ! 水の女神よ私は!」

 

 やっぱり、能力は制限されているんだな、アクアは。

 神様らしいチートな能力でも持っているんだろうか?

 アクアだとその能力を持て余しそうだが。

 

アクア

「それに、今回は私がいてラッキーよ。」

 

賢治

「? どう言うこと?」

 

アクア

「ダンジョンにはね、アンデッドが湧きやすいのよ。」

「そしてアンデッドは生者の生命力を目印にしてやってくるの。」

「つまり、アンデッドに潜伏系のスキルは効果が薄いの。」

「なら、水の女神にしてアークプリーストであるこの私の出番でしょ。」

 

 確かに、アンデッドがいるのならここまで心強い者はない。

 

賢治

「カズマ、前潜った時はどうだったんだ?」

 

カズマ

「確かに、アンデッドがいたな。」

「なかなか倒せないから、できるだけ発見されないように『敵感知』と『潜伏』のスキルを総動員してやり過ごしたが、アクアの言う通り、たまに発見される時もあったな。」

 

 なるほど、ますますアークプリーストの存在が不可欠なダンジョンになった訳だ。

 そんなダンジョンを単独で攻略したカズマも相当だな。

 

アクア

「まぁ、いざと言う時は私に任せなさいな。」

 

 アクアはそう言ってダンジョンを進んでいく。

 呑気に歌まで歌いながら。

 

 しかし、俺とカズマは不安を感じていた。

 だってアクアは幸運のステータスが1なのだから。

 正直どんなポカをやらかすか分かったもんじゃない。

 自分の女にこんな感情を抱かなければいけないなんて、悲しすぎる。

 

賢治

「なぁ、カズマ。」

 

カズマ

「なんだ?」

 

賢治

「俺さ、嫌な予感しかしないんだが?」

 

カズマ

「奇遇うだな、俺もだ。」

 

 そう口にしながら、アクアを見失わないように追いかける俺とカズマだった。

 その頃、入り口で荷物番をしている零子、エルシャ、めぐみんは・・・

 

 

 

 

ーダンジョン入り口前ー

 

零子side

 

零子

「・・・今のところ順調ね。」

 

 私はテントの前に貼ったフライシートの下で椅子に座りながらタブレット端末を見ていた。

 このタブレットには、ライオトルーパーになった三人のデータが逐一送られてきている。

 何やらアクアのテンションが上がっているようだが、何かいいことでもあったのだろうか?

 

エルシャ

「コーヒー淹れたけど、飲む?」

 

零子

「えぇ、もらうわ。」

 

 ダンジョンの前でコーヒー飲むとか、まるで山にキャンプに来たようなノリである。

 まぁ、いざと言うときは私達全員仮面ライダーに慣れるから、大丈夫だろう。

 それこそ、魔王軍の幹部クラスの強敵でもない限り。

 

零子

「・・・ところで、めぐみんは何してるの?」

 

エルシャ

「ん?」

 

めぐみん

「・・・我が力・・・我が刃? ・・・」

 

 先からめぐみんが杖を片手にポーズをとりながら、何やらブツブツ呟いている。

 

エルシャ

「あ〜、新しい詠唱を考えているんじゃない?」

 

零子

「詠唱って・・・爆裂魔法の?」

 

エルシャ

「そう。」

 

 ・・・そもそもめぐみんの爆裂魔法に詠唱なんて必要なのだろうか?

 爆裂魔法を使う度に、違った詠唱をしているんだけど?

 彼女の爆裂散歩に付き合ったことがあったが、たまに詠唱なしでぶっ放している時がある。

 私はやっぱり、『ただ格好良いから詠唱をしている』だけにしか思えない。

 

 ケン君曰く、紅魔族とはそう言う種族らしい。

 大人から子供まで全員が厨二病を拗らせていると言うことだ。

 ただ一人、ゆんゆんだけは普通の感性を持っている。

 ボッチだけど。

 

零子

「・・・なんて言うか、のどかね。」

 

エルシャ

「そうね。」

 

めぐみん

「・・・・・・我が狂気? ハッ!」

「我が狂気を以て、現界せよ! エクスプロー「ニャウ。」」

 

 私とエルシャはコーヒーを飲みながら、ケン君達の帰りを待った。

 めぐみんは、「これだ!」と言うフレーズが見つかったようで、爆裂魔法を撃つふりをしていた。

 エクスプロージョンのジョンの部分が、いつの間にか着いて来ていたちょむすけの鳴き声と重なった。

 

 ・・・うん、ホノボノしている。

 

 

 

 

ーダンジョン最新部ー

 

賢治side

 

 俺達は、ダンジョンの最深部にまで来ていた。

 ここまで順調に進むことができていた。

 出てくるモンスターも、正直大した事が無かった。

 それだけ俺達が強くなったと言うことだろう。

 

 地図によると、この先に隠し通路があるようだ。

 

カズマ

「以前はわからなかったけど、よく見るとここの壁だけ他と違うな。」

 

賢治

「本当だな。」

 

 他の壁はごく普通だが、目の前の壁はまるで横に動いたような傷跡がある。

 不自然に出っ張っている壁の一部を押すと、やはり壁が左右に開き、通路が現れた。

 

アクア

「この先が未知の領域ね。 お宝いっぱいあるかしら?」

 

賢治

「ここまで来て収穫無しだったら、それはそれで悲しいな。」

 

カズマ

「ここに来た理由の大半がアクアの財布の為だけどな。」

 

アクア

「も・・・もちろん感謝してるわよ。」

 

 そんなことを言いつつ、俺たちは先に進む。

 しかし、案の定というか少し進んだ通路の先から得体の知れない気配が感じられた。

 

 何本目かも分からない降りの階段を降りていると、獣の唸り声のような音が響いた。

 俺は咄嗟に身構えて、カズマとアクアは「ヒッ!」と小さく悲鳴をあげた。

 

アクア

「・・・ねぇ、私の曇り無き目には、カズマがオドオドしながら降りていく姿がバッチリ見えてるんだけど?」

 

カズマ

「こっちだって、お前が物音がする度に一々ビクついている情けな〜い姿がちゃんと見えてるぞ。」

 

賢治

「やめろよ。 怖いのを紛らわせる為に罵り合うのは。」

 

 まぁ、ぶっちゃけ俺もさっきからヤバいくらいに心臓がバクバク言ってるけどな。

 顔に出ていなければ良いけどな。

 知られた時は開き直るしかないが。

 

賢治

(・・・いや、変身しているからその心配はないか。)

 

カズマ

「うん?」

 

賢治

「カズマ?」

 

 カズマが階段の先を見ている。

 すると、左の親指を立てて後ろに向かってクイクイと動かす。

 『後ろに退がれ』と言う事だろう。

 しかしアクアは。

 

アクア

「何々、この私に指芸披露?」

「ちょっと明かり点けなさいよ。 影で狐や兎なんて生温いのじゃなく、機動要塞デストロイヤーを見せてやるわ!」

 

 アクアのには通じなかったみたいだ。

 呆れたカズマが。

 

カズマ

「違うわ! 敵が来ているから後ろに退がれってジェスチャーしたんだよ!」

 

 思わず大声を出してしまった。

 俺の敵感知のスキルでも察知していたが、結構な勢いでこっちに向かってきていた。

 数は1匹だけなのがせめてもの救いか?

 

賢治

「カズマ!」

 

カズマ

「わかってる!」

 

 俺とカズマはアクセレイガンをナイフ形態で抜刀すると、こっちに近付いてきた『何か』を切り裂いた。

 

???

「ギエエエエエエエエエ!!!」

 

アクア

「ヒィ!」

 

 ドサッ! と音を立てて階段に落ちる『何か』。

 そうやら今の一撃で倒すことができたようだ。

 

カズマ

「なんだコイツ?」

 

賢治

「さぁ? 見たことがないな。」

「『敵感知』や『千里眼』でも、正体までは分からないからな。」

 

アクア

「『グレムリン』って言う下級の悪魔ね。」

「こう言うダンジョンでたまに湧くのよ。」

 

 そんな蝿や蚊みたいな言い方。

 女神にとって悪魔は滅ぼすべき敵らしいから、仕方ないのだろうか?

 

 それから奥へ進み、幾つもの降りの階段を通って行くにつれ不気味になっていく。

 

カズマ

コツン「うん?」

 

 カズマの足に何かが当たった。

 そこにあったのは。

 

カズマ

「フワァー!!! ・・・ってなんだ、冒険者の亡骸か。」

 

 人間の白骨死体だった。

 こんなに深くまで潜ってきた冒険者がいたようだ。

 しかし、ここで力尽きてしまったのだろう。

 

アクア

「・・・二人共、ちょっと待ってて。」

 

賢治・カズマ

「?」

 

 アクアはそう言って亡骸に近づき、手をかざす。

 

アクア

「この暗く冷たいダンジョンに彷徨う魂よ、安らかに眠りなさい。」

 

 すると、アクアを中心に青白い魔法陣が出現し、亡骸が消えていく。

 成仏したってことだろうか?

 

賢治

「アクア、何したんだ?」

 

アクア

「? 成仏させてあげただけよ。」

 

 やっぱりそうだ。

 流石は女神であり、アークプリーストだな。

 そしてそこからは正に『アクア無双』と言う言葉がしっくり来る展開になった。

 

 通路の先から複数のアンデッドが出現したのだ。

 だが、アクアの『ターンアンデッド』により、片っ端から浄化されていったのだ。

 今日のアクアはいつもとは一味違い、とても頼もしかった。

 

 通路を進んでいる最中も『ターンアンデッド』が途絶えることがなかった。

 なぜか偶に『花鳥風月』を使っていたが。

 そして良い加減面倒になったのか、渾身の魔力を乗せた『ゴッド・ブロー』が炸裂し、目に映るアンデッドだけでなく、このフロア一帯のアンデッドが軒並み成仏していった。

 

アクア

「ふぅ〜。」✨✨✨

 

 大量のアンデッドを浄化しまくってスッキリしたのか、満足そうな顔をしている。

 心なしか、肌に艶が出ているような気がする。

 

カズマ

「正直、アクアが一緒でよかったな。」

 

賢治

「だな、まさかあんなに大量のアンデッドがいるなんてな。」

 

アクア

「ね! 私がいてよかったでしょ。」

 

カズマ

「・・・でもおかしくないか?」

 

アクア

「何が?」

 

カズマ

「アンデッドの数が多すぎないか?」

「こんなの、アークプリーストが複数人いないと、無理ゲーもいいところだろ。」

 

 確かに、これだけのアンデッドがいるなんて異常だ。

 アンデッドとは『生きる屍』と書く。

 つまり、元は人間ということだ。

 つい最近まで発見されていなかったこの未調査エリアにこれだけのアンデッドがいるのなら、それだけの数の冒険者が死んだという事になる。

 そうじゃ無いと言うのなら、どこかにこのアンデッドを『呼び出す』なり『創り出す』なりした奴がいるという事になる。

 

アクア

「! 待って・・・なんかまだアンデッドの気配(におい)がするわね。」

 

賢治・カズマ

「え?!」

 

 アクアがそう言ったので、俺も『敵感知』を発動する。

 しかし、反応がない。

 何度か試してみたが、やはり反応がない。

 

 その間アクアは、突き当たりの壁の匂いを嗅いでいる。

 そんなので分かるのだろうか?

 

カズマ

「・・・何もないんじゃないか?」

 

アクア

「? おかしいわね。 確かに感じうわっ!?」

 

 アクアが壁に手を触れた瞬間、壁が粒子の様に消えて、部屋が出現した。

 その際、アクアが後ろへ倒れてしまった。

 

賢治

「大丈夫かアクア。」

 

アクア

「え、えぇ・・・変身しててよかった。」

 

 ライオトルーパーのスーツのお陰で怪我はないようだ。

 生身だったら地面に頭部を打ち付けていただろう。

 

???

「・・・・・・そこにプリーストがいるのか?」

 

賢治・カズマ・アクア

「え?!」

 

 誰もいないはずの部屋の中から声がした。

 咄嗟に俺はアクセレイガンを抜刀し、構える。

 

???

「初めまして、私はキール。」

「このダンジョンを作り、貴族の令嬢を攫った・・・悪い魔法使いさ。」

 

 

 

 

 ここで少しだけ、大魔術師キールについて語ろう。

 

 生前彼はしがない魔法使いの一人だった。

 ある日、街で偶然出会った貴族の女性に好意を抱くが、身分違いな上にその女性は国王と政略結婚することになった為、自身の恋を諦め魔法の研究に没頭することになる。

 

 すると彼は、いつの間にか『大魔術師キール』と呼ばれる様になり、その力で国の危機を救うという偉業を成し遂げる。

 当時の国王に褒美として、「どんな望みでも叶えよう」と言われ、彼が願ったのは・・・

 

 かつて自分が愛した貴族の女性の幸せであった。

 

 キールが愛した女性は、王へのご機嫌取りのために嫁がされたが、王には可愛がってもらえず、場内でも他の妻達から虐げられていた。

 キールは言った「要らないのなら私にくれ!」と・・・

 

 

 

キール

「・・・という訳で私はその御令嬢を攫ったのだよ〜。」

 

カズマ

「・・・つまりアンタは悪い魔法使いどころか・・・」

 

賢治

「良い魔法使いじゃないのか?」

 

キール

「そういう事になるのかな〜。」

「それでそのお嬢様にプロポーズしたら、二つ返事でOK貰ってね〜、二人で愛の逃避行を続けながら王国とドンパーティ(ドンパチ)やらかした訳さ〜。」

「いや〜、あの頃は楽しかったな〜。」

 

 どうにもイマイチ緊張感がない。

 話を聞くために変身を解いた俺達の目の前にいるのはウィズと同じ最上級のアンデッドの『リッチー』である。

 久しぶりに他の人に出会ってテンション上がっているのだろうか?

 こんなにイキイキしているアンデッドって、どうなんだろう?

 

カズマ

「俺・・・自分の中のアンデッドのイメージが崩れていくんだけど?」

 

賢治

「俺もだ。」

 

アクア

「ウゥ〜、アァ〜、コォ〜・・・」

 

 て言うかさっきからアクアが紅魔族ばりに瞳を真っ赤にして、今にもキールに襲い掛かりそうになっている。

 その仕草だけを見れば、まるで『ゾンビ』みたいだ。

 

キール

「あ! ちなみに攫ったお嬢様というのはそこで横になている彼女だよ。」

 

 奥にあるベッドにはドレスを着た白骨死体が横になっていた。

 なんとなくだが、安らかに息を引き取ったような感じがする。

 

キール

「どうだ〜、鎖骨のラインが美しいだろ〜。」

 

 と言われても、リッチーの感性はよく分からん。

 相当愛していたのか、『美しい!』を連呼している。

 アクア曰く、お嬢様は何の悔いも無く安らかに成仏しているらしい。

 

 そして、キールは俺達、というかアクアに自身を浄化してほしいと頼んできた。

 キールはお嬢様を守る逃避行の道中に負傷し、お嬢様を守るために人であることを捨て、リッチーになったらしい。

 しかし、お嬢様が天寿を全うし、彼女のいないこの世界に生きる意味を見出せず、じっとこのダンジョンで朽ちるのを眠りながら待っていた。

 

 そんな時に俺達がやってきたのだ。

 とてつもない神聖な気配を感じて、キールは長い眠りから目覚めたのだ。

 リッチーの彼は自殺はできないため、これがお嬢様の元へ行ける最後のチャンスだと言う。

 

アクア

「・・・神の理に逆らい、自らリッチーとなったアークウィザード・キールよ。」

「水の女神・アクアの名において、あなたの全ての罪を赦します。」

 

 魔法陣を描き終えたアクアが、キールを浄化し始める。

 今この瞬間のアクアは、普段の姿からは想像もできないくらい、女神っぽく見えた。

 

アクア

「目が覚めたら、貴方の前には『エリス』という女神が現れるでしょう。」

「もし貴方が望むのなら、それが男女の関係で無くとも構わないと言うのなら、彼女に願いなさい。」

「『もう一度お嬢様に合わせてほしい』と、彼女ならその望みを叶えてくれるでしょう。」

 

キール

「感謝します。」

 

アクア

「・・・『セイクリッド・ターンアンデッド』。」

 

 アクアがそう唱えると、魔法陣がさらに強い光を放ち始める。

 次第にキールの体が光の粒子になり、姿が透けて見える様になる。

 ベッドで横になるお嬢様の亡骸も、光の粒子になっていく。

 

キール

(・・・妻よ、今行く。)

 

 キールの姿が完全に消えると、残っているのは俺達だけになった。

 お嬢様の亡骸も無くなっている。

 

賢治

「・・・キールは格好いいやつだったな。」

 

カズマ

「だな。 ・・・けどさ。」

 

賢治

「うん?」

 

カズマ

「あの二人は、逃げ続ける人生だったんだぜ。」

「本当に幸せだったんだろうか?」

 

 確かに、逃げ続ける人生というのは相当精神をすり減らすに違いない。

 そんな生活が、果たして幸せだったのか?

 ・・・それは本人達にしか分からない。

 けど。

 

アクア

「・・・少なくとも、お嬢様は安らかに成仏してたんだもの、きっと幸せだったに違いないわよ。」

 

賢治

「・・・そう信じようぜ。」

 

カズマ

「そうだな。」

 

 その後俺達は、キールに譲ってもらった彼の遺した財産を手に、再度変身してダンジョンの出口へ向かった。

 その時、キールのある一言を思い出した。

 

賢治

「なぁ、アクア。」

 

アクア

「何?」

 

賢治

「キールがさ、とてつもなく神聖な気配を感じて目覚めたって言ってたよな?」

 

アクア

「言ってたわね。」

 

 つまりである。

 

賢治

「このダンジョンでやたらアンデッドに遭遇するのって、アクアと一緒にいるから・・・じゃないよな?」

 

アクア

「ハッ!??」

 

カズマ

「・・・」

 

 場が凍りついた。

 それはほんの一瞬だったが。

 俺達はその一瞬がなんだか凄く長く感じた。

 

アクア

「・・・そそそそそそ、そんなこと・・・ない、と・・・思うけど。」

 

 俺とカズマはアクアから3歩分くらい離れた。

 

カズマ

「・・・そう言えば、以前デュラハンが攻めてきた時、お前手下のアンデッド達にたかられてたよな。」

 

 確かにその通りだ。

 以前はアクアに救いを求めて群がっているんだと思ったが、今回の一件でどうも違う様に思えてきた。

 多分アクアは『無自覚にアンデッドを引き寄せる』体質なんじゃないだろうか?

 

アクア

「ね・・・ねぇ賢治、カズマ、なんでそんなに距離を取るの?」

「いつモンスターに襲われるか分からないし、私達もっと近くにいた方がいいと思うの。」

 

賢治・カズマ

「・・・」

 

 何も言わずに、俺とカズマはアクアから離れようとすると。

 

アクア

「ちょ! 待って待って! 二人とも私を一人にしないでよ!」

 

カズマ

「断る! お前ならその無尽蔵の魔力でいくらでも祓えるだろ!」

「俺達を巻き込むな!」

 

賢治

「おいおい、さっきの勢いはどこ行った!」

「水の女神の本領発揮だろ!」

 

アクア

「嫌よ! 他のモンスターだっているんだから! お願いだから1人にしないで!」

 

 そんなやり取りをしている内に、『敵感知』のスキルに反応がある。

 『千里眼・改』で見てみると、周囲の通路から俺達・・・と言うかアクア目掛けてアンデッドがやってきていた。

 カズマは咄嗟に『潜伏』のスキルを発動して身を隠した。

 

アクア

「ちょ! カズマ!」

「何一人で『潜伏』使ってるのよ!?」

 

賢治

「カズマのやつ。」

 

 とわいえ、スキル『対象発見(ロケート・オブジェクト)』と『知覚強化』のお陰で、どこに隠れているか大体わかるが。

 こうなってしまったら仕方が無い。

 

賢治

「アクア、付き合ってやるからお前も戦えよ!」

 

アクア

「え?! いいの?」

 

賢治

「自分の女を置いて逃げられるかよ。」

 

アクア

「ーーーーーっ!!」//////

 

賢治

「レッツ・アンデッド・スレイヤー!!」

「大人しく俺達の経験値になれえええぇぇぇ!!!」

 

 半ばやけくそ気味にアンデッドの集団に戦いを挑むことになった。

 素手やアクセレイガンの『ブレードモード』での接近戦や、ケルベロスによる射撃戦。

 アクアは『ターンアンデッド』を主軸に、デストロイヤーやユニコーンで片っ端からアンデッドを切り裂いていく。

 

 途中から、隠れていることに罪悪感を感じたのか、カズマも戦闘に参加した。

 スコーピオンで確実にヘッドショットを決め、サラマンダーのグレネード弾で複数を吹き飛ばしていた。

 スコーピオンとサラマンダーの弾が切れたら、アクセレイガンの『ガンモード』の二つある機能の一つ『ライフル・シューティングモード』で戦っていた。

 

 結構な数のケルベロスの予備弾倉を持って来ていた筈が、気が付いたら全弾使い果たしていた。

 アクアのデストロイヤーが途中で超高周波振動が止まってしまうと言う、誤作動が起きた。

 まだまだ改良の余地がありそうだ。

 

 ちなみにこのライオトルーパー、本来は搭載されていない『ファイズポインター』が『ミッションメモリー』を装填した状態で標準装備されている。

 右足に『エナジーホルスター』が付いており、そこに『ファイズポインター』を装着すると、エネルギーが充填され満タンになると『エクシードチャージ』され、足先を対象に向けるとポインティングマーカーが発射され、仮面ライダー555の必殺技『クリムゾンスマッシュ』が使えるのだ。

 

 とは言え、本来の威力は17tの破壊力があるが、ライオトルーパーの場合は半分の8tになっている。

 しかもエネルギーを充填すると言う間があるため、連発ができない。

 『ファイズ・アクセルフォーム』みたいに1000倍に加速すれば出来なくも無いが、本家『ファイズ・アクセルフォーム』に比べると複数ロックオンの使用回数が減ってしまうだろう。

 

 話はそれたが、流石にやばい状況になったので、アクアが渾身の『ゴッド・レクイエム』を放ち、アンデッドを浄化した。

 またアンデッドが湧いて来ない内に、俺達は急いで出口に向かうのだった。

 

 

 

 

ーキールダンジョン 出口ー

 

めぐみん

「三人共、大丈夫ですか?」

 

零子

「うわ〜、武器がみんなボロボロね。」

 

エルシャ

「はい、お水。」

 

賢治

「おう、ありがとう。」

 

 なんとか出口に到達した俺とカズマとアクアは、疲労困憊だった。

 途中、アクアの足が攣ってしまって走れなくなったので、俺がお姫様抱っこで運んだお陰で余計に疲れた。

 

 ライオトルーパーの性能テストはうまく行ったみたいで、「いいデータが取れた」と零子は言っていた。

 後は小さな修正を繰り返し、バグ取りをしたらいよいよ完成である。

 

 しかし、今回の一件で俺は思った。

 「二度とアクアと一緒にダンジョンには行かない」と。

 

 アクセルの街に帰った俺達は、ギルドに報告に行った。

 案の定報酬は出なかったが、ダンジョン内で見つけたものは俺達の物になった。

 これでまた暫くアクアの財布の中身は心配ないだろう。

 キールから譲って貰った財産は、少しずつ有難く使わせて貰おう。

 

 その日の夜は久しぶりの冒険で大成功した事を祝って、盛大に飲み食いした。

 あいも変わらずアクアの宴会芸スキルは、ギルドの連中に人気で上機嫌のアクアは惜しみなく宴会芸を披露していた。

 悪酔いしたアクアが飛電インテリジェンスのトイレで戻していたのは、まぁいつもの事である。

 にもかかわらず、その日アクアは零子と遅くまで話し込んでいたみたいだが、何をしていたんだろうか?

 その理由は、次の日に分かった。

 

 

ー次の日ー

 

アクア

「・・・ジャーン!」

 

 その日、屋敷のリビングに集まった俺達の前に、アクアが両手でベルトを掴んで見せてきた。

 

めぐみん

「アクア、どうしたんですかそのベルト?」

 

 一見すると、先日使っていたスマートバックルみたいだが、色が違う。

 バックルの部分の『SMART BRAIN』と書かれていた部分が『REIKO FACTORY』に変更され。

 メタリックブラウンの部分がメタリックブルーに、ベルトの部分レッドからホワイトにカラーチェンジされている。

 

アクア

「これで私も仮面ライダーに変身できる様になったのよ。」

 

エルシャ

「もしかして、昨日のライオトルーパー?」

 

アクア

「そう! 零子に頼んで、私用に調整して貰ったのよ。」

 

零子

「昨日アクアに頼まれたのよ。」

 

 零子によると、基本的な性能は先日のライオトルーパーと同じ性能である。

 各種武器の使用が可能な所と、ファイズポインターが標準装備なのも同じ。

 

 違うのは、カラーリングとアクアの使う神聖魔法が強化されると言うところだ。

 『ターンアンデッド』は勿論だが、アクアが使う補助魔法も強化されるらしい。

 

アクア

「いざという時、足手纏いにはなりたくないから。」

 

 仮面ライダーになれない自分に不安を感じていたのだろうか?

 確かに、ライオトルーパーは歴代の量産型仮面ライダーの中でも、そんなに強い方ではない。

 数に物言わせてファイズを倒したことがあったが。

 

 俺も転生前に気になって調べて分かったが、ライオトルーパーはG3とメイジより強く。

 黒影トルーパー、ライドプレイヤー、ダークネクロムより弱い。

 唯一スペックで拮抗しているのが、なんとあの『仮面ライダー純』こと『量産型仮面ライダーマッハ』なのである。

 

 まぁ、いざという時に無いよりはマシだろう。

 

カズマ

「と言うことは、俺達のパーティ全員仮面ライダーに変身できるようになったってことか?」

 

賢治

「あ! 確かに。」

 

 いまだに修理中のルミを入れて、全員が仮面ライダーに変身できるなんて、なんだか感慨深い。

 

アクア

「改めて、みんな宜しく!」

「今日も頑張って行きましょー!」

 

「「「「「おぉー!!!」」」」」

 

 と、俺達が意気込んでいる時。

 

???

「カズマ! 賢治! 大変だ! 大変なんだ!」

 

賢治・カズマ

「うん?」

 

 リビングの扉が勢いよく開き、そこにドレスを着た美女が立っていた。

 

「「「「「「・・・だれ?」」」」」」

 

 




 と言う訳で如何だったでしょうか?

 アクアの変身についてですが、一時的な物で正式な変身ではありません。
 一応、どのライダーにするか?
 自分の中では決めているので、とりあえず待ってください。

 次回は本当にお見合い回です。
 しかし、オリジナルストーリーです。
 ライダーシステムだけでなく、他にも色々売り込みます。

 ところで、仮面ライダーギーツについて語りますが。
 この調子で参加ライダーが減っていくと、デザイアグランプリは何回も繰り返す事になりそうですね。
 第一話から、恐らく最終ステージに残れるのは三人までになると思います。
 グランプリ終了時点で三人とも生き残っていたら、次回のデザイアグランプリへの参加資格が得られるんじゃないでしょうか?
 前回参加者の、浮世英寿(仮面ライダーギーツ)や吾妻道長(仮面ライダーバッファ)がそうだったように。

 浮世英寿の目的は『人探し』である事が判明しましたね。
 前回グランプリで『自分の望む世界』を手に入れた彼が今回のグランプリに参加したのは、人探しをする上で、今の世界でないといけないからなのか?
 それとも何か別の理由があるのでしょうか?

 桜井景和(仮面ライダータイクーン)が妙に運がいいのは、ちゃんと理由があるみたいです。
 確かな情報ではないですが、彼が使うタイクーンのIDコアには『持ち主の運を上昇させる』という機能があるらしいです。
 彼の元に『ブーストバックル』がやって来るのもこのIDによるステータス修正のお陰らしいです。
 実にゲームっぽい設定ですね。

 次回、鞍馬祢音(仮面ライダーナーゴ)はどうなるんでしょうか?
 平成第二期から少しづつ増えている、数少ない女性仮面ライダーですから、彼女には生き残ってほしいです。
 小金屋森魚(仮面ライダーメリー)や墨田奏斗(仮面ライダーダパーン)は脱落しそうですね。

 自分の中では、仮面ライダータイクーンが物語中盤あたりで脱落。
 仮面ライダーギーツが最終回十話前くらいで脱落。
 仮面ライダーバッファが最終話まで残りそうだと予想しています。

 何となくこの状況を見て、仮面ライダー龍騎が頭に思い浮かびました。
 それに照らし合わせたところ、タイクーンが仮面ライダーライア。
 ギーツが仮面ライダー龍騎。
 バッファが仮面ライダーナイト。
 あくまで自分のイメージですけど。

 仮面ライダーナーゴが次回で生き残ったら、正直どうなるかわかりません。出来れば最終回まで生き残ってほしい。
 ジャンヌやアギレラみたいに。

 後どうでも良いですけど。
 仮面ライダーギーツが白に赤色。
 仮面ライダータイクーンが黒に緑色。
 ・・・・・・赤いきつねと緑のたぬ・・・ゴホン!

 さて、長く語りましたが次回も宜しくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二十二話 あの組織の影に祝福・・・を?

 皆さんお待たせしました。
 第二十二話投稿です。

 まず最初に、投稿まで時間がかかってしまってすみません。
 何せオリジナルストーリーなので構想を考えるときに、プチスランプ状態になっていました。
 この話で敵側にも新たに敵を追加したこと。
 そのせいで文字数が過去最高の文字数になってしまいました。
 気温の急激な変化のためか、体調も崩し気味でした。
 遅くなってすみません。

 次はもっと早く投稿できるように頑張ります。

 では、第二十二話をどうぞ。


 

 アクア専用のスマートバクルが完成し、今日も1日頑張ろうと意気込んでいたところに。

 突然、ドレスを着た美人が入ってきた。

 

「「「「「・・・・・・誰?」」」」」

 

 あいにく、こんな美人に知り合いはいないが?

 ・・・いないはずだが、なんか見たことがあるような?

 

???

「クゥン!」ビクビク

 

 あれ?

 喜んでる?

 

???

「みんな! そう言うのは後にしてくれ!」

 

 て言うかこの声。

 このドMっぷり。

 

カズマ

「・・・お前ダクネスか?!」

「心配したんだぞ!」

 

賢治

「おぉ! 確かにダクネスだな。」

 

 よく見たらダクネスだ。

 綺麗なドレスを着て、着飾っているから気づかなかったが、確かにダクネスだ。

 

めぐみん

「ダクネス、おかえりなさい。」

 

ダクネス

「あぁ、ただいまめぐみん。」

「うん? ・・・その猫は?」

 

めぐみん

「何があったかは聞きません、まずはゆっくりお風呂にでも入って・・・心と体を癒してきてくださいね。」

 

 めぐみんが抱えている猫、ちょむすけに興味を抱いたダクネスだったが、めぐみんの言葉で遮られた。

 口元を押さえて、涙を浮かべている。

 

ダクネス

「・・・いや、何を言っているんだ?」

 

アクア

「・・・」すりすり

 

ダクネス

「? アクア?」

 

 アクアが無言でダクネスに近づき、彼女が着ているドレスを触っている。

 

アクア

「・・・間違いないわ。 高級品よ。」

 

 そう言ってめぐみん同様、目に涙を浮かべて顔を伏せる。

 

カズマ

「グス・・・苦労をかけたな。」

 

 カズマも顔を右手で覆って俯く。

 

ダクネス

「皆なにを勘違いしている!」

「領主に弄ばれているとでも思ったか?!」

 

エルシャ

「いいのよ、何も言わないで・・・」

 

零子

「そうよ、ダクネスが戻ってきてくれてよかったわ。」

 

賢治

「そうだぞ。 今は暖かい風呂にでも入って、泣いてくるといい。」

 

 実のところ、俺はダクネスがそんなに酷いことをされている様子がなかったので、安心していた。

 だが、周りの皆んなに悲壮感が漂っていたので、つい状況に乗ってしまった。

 ここまで聞いたダクネスが、顔を真っ赤にして。

 

ダクネス

「ちがーう!! 領主も私相手にそこまでする度胸はない。」

「それよりこれを見てくれ。」

 

 そう言ってダクネスが取り出したのは、一枚の紙だった。

 

賢治

「うん? ・・・へぇ〜。」

 

カズマ

「なんだ? 何が書いてあるんだ?」

 

賢治

「見るか?」

 

 そう言って、カズマに手渡す。

 その紙に描かれていたのは、男の絵だった。

 一言で言うと、イケメンだった。

 

カズマ

「・・・ムカつく。」ビリッ

 

ダクネス

「何をするんだ?!」

 

 イケメンが描かれている紙を見たカズマが、半分ほど紙を破ってしまう。

 本人は「手が無意識に」と言っていたが、実際はどうだか?

 

 絵の修復をアクアは買って出ていたが、一体どうやって修復するつもりだろうか?

 ちなみに紙に描かれているのは領主の息子の『アレクセイ=バーネス=バルター』と言う人物である。

 アルダープはダクネスに俺達の依頼の強制参加を取り消すための条件として、自身の息子との見合いをするように言ってきたらしい。

 ダクネスの帰りが遅くなったのも、この見合を阻止するために色々頑張っていたようだ。

 

 しかし、ここで思わぬ伏兵が出現したのだ。

 それは、ダクネスの父親『ダスティネス=フォード=イグニス』である。

 彼は、アルダープはともかく息子の方は高く評価しており、この見合いにも一番乗り気なのだ。

 困り果てたダクネスは、急遽こちらに戻ってきたのだ。

 

ダクネス

「頼む! 私と一緒に、父を説得してくれないか?」

 

賢治・カズマ

「う〜ん・・・」

 

 俺とカズマはお互い顔を突き合わせて、しばらく小声で色々意見を言い合う。

 その途中で、絵の修復が終わりアクアがダクネスに自慢していた。

 アクアってこう言う事にかけては本当に多芸だと思う。

 

 考えた末に、俺とカズマが出した結論は。

 

賢治

「ダクネス、その見合い・・・受けろ。」

 

 だった。

 

ダクネス

「な?!!」

「それはどう言うことだ?!」

 

めぐみん

「そうですよ! このままダクネスが冒険者を辞めてもいいと言うのですか?」

 

エルシャ

「ダクネス、めぐみん、落ち着いて。」

「賢治が何も考えずにこんなことを言うはずないじゃない。」

 

零子

「何か理由があるの?」

 

カズマ

「あぁ、ここで見合いを断ったところで、あの領主はさらなる無理難題を吹っ掛けてくるに決まってるだろ?」

 

めぐみん

「・・・確かに。」

 

 その通りだ。

 なぜ息子と見合いをさせるのか?

 その意図が掴めないが、恐らくこれには何か、アルダープなりの考えがあるはず。

 

 ダクネスとバルターを結婚させることで、ダスティネス家の内部での影響力を高めるつもりかもしれないが、息子が人格者ならそれは徒労に終わる可能性がある。

 或いは、ダクネス本人が目的の場合だ。

 自分の息子と結婚させることで、いつでも手を出せる状況を作るつもりだろうか?

 しかし、仮にも自分の息子の嫁に手を出そうなんて、そういう性癖でもない限り、流石にあり得ないと思うが?

 どうなんだろう?

 

賢治

「それに、あのクソ領主が言ってきたのは、『息子と見合いをする』それだけなんだろ?」

 

ダクネス

「あぁ、その通りだ。」

 

賢治

「だったら、見合いを受けた上で最終的になんだかんだ理由を付けて断ればいいし、もしくは頃合いを見てぶち壊せばいいだけだ。」

 

ダクネス

「なっ!」

 

賢治

「ダクネスの家の名前に傷がつかい程度にな。」

 

 そう、『息子と見合いをする』それだけなら見合いを受けた時点で既に条件はクリアしている。

 後は断るなり、ぶち壊すなりすればいい。

 

ダクネス

「それだ! 上手く行けば見合いの話が持ち上がる度に、一々父を張り倒しに行かなくて済む!」

 

カズマ

(お・・・親父さん可哀想に。)

 

 ダクネスの見合いに関しては上手くいきそうだ。

 その時、また来客が。

 

セナ

「あの〜、ちょっといいですか?」

 

賢治

「? セナさん。」

 

 この日、セナさんがきた理由は、『街の周囲に奇妙なモンスターが溢れているから』である。

 「何か心当たりがありませんか?」というが、流石にモンスターに関しては何もないと思う。

 

セナ

「皆さんを疑っている訳では無いのですが、出頭していただけますか?」

 

 疑いをかけられている以上、行かないわけには行かないが。

 生憎この日は予定がある。

 

めぐみん

「お断りします。」

 

カズマ

「え?!」

 

エルシャ

「めぐみん?」

 

 めぐみんが前に出て、セナさんの申し出を断る。

 なんのつもりだ?

 

めぐみん

「今私達の仲間が、危機にさらされているのです。」

「それを放っておく訳にはいきません!」

 

ダクネス

「めぐみん・・・」ジーン

 

カズマ

「おいおい、落ち着けよ。」

 

 めぐみんに関しては、目が赤く光っていると言う事は、この状況に酔っている可能性があるな。

 ダクネスも感動して目が潤んでいるし。

 

 しかし、大量のモンスターが相手なら、めぐみんの出番じゃないか?

 

賢治

「めぐみん。」

 

めぐみん

「? はい?」

 

賢治

「めぐみんがモンスター討伐に行ってくれ。」

 

 めぐみんの方に手を置き、そう告げる。

 

めぐみん

「え?」

 

賢治

「大量のモンスターが相手なら、お前の爆裂魔法の出番じゃないか。」

「ダクネスの事は、カズマとアクアに任せろ。」

 

カズマ

「え? 俺?」

 

アクア

「私も?!」

 

めぐみん

「しかし、ダクネスが!」

 

 正直に言うと、あんまりこう言うやり方は感心できないのだが、ここは敢えてやるしか無いだろう。

 今度はめぐみんの両肩に両手を置いて、めぐみんをまっすぐ見つめる。

 

めぐみん

「? あの・・・賢治?」

 

賢治

「・・・俺達の中で一番高レベルのめぐみんが頼りなんだ。」

 

めぐみん

「!!! ・・・私が・・・頼り・・・」

 

 食いついた!

 さらに畳み掛ける。

 

賢治

「そうさ。 めぐみんなら安心して任せられる。」

「頼むぞ! 最強のアークウィザードにして、歴史を記す預言者、仮面ライダーウォズよ!」

 

めぐみん

「・・・ふ、ふふ・・・うふふふふふ・・・」

「いいでしょう・・・私の力を持ってすれば、モンスターの大群など軽く捻り潰せると言う事を証明して見せましょう!」フンス=3

 

 鼻息を荒くして、めぐみんは二人の騎士と一緒にモンスターの討伐に向かった。

 何かあった時のためにエルシャにも同行してもらっている。

 念の為に零子の作った『飛電ライズフォン』を待たせている。

 

カズマ

「で?」

 

賢治

「うん? なんだカズマ。」

 

カズマ

「なんだ? じゃねぇよ!」

「なんで俺とアクアにダクネスのことを任せるんだよ?」

 

アクア

「そうよ! 全員で行きましょうよ。」

 

セナ

「・・・何か、予定でもあるのですか?」

 

賢治

「あぁ、今日は王都に行くんだよ。」

 

カズマ・アクア・セナ

「王都に?」

 

 今日は零子と一緒に王都へ行くのだ。

 昨日の夜の内にライオトルーパーの調整が完了し、量産体制が整ったので、今絶賛量産中なのだ。

 現在20台ほど完成している。

 

賢治

「そう言う訳で頼むぞカズマ、お前こういうの得意そうだし。」

 

カズマ

「おい! どう意味だよ!」

 

 一悶着あったが、ダクネスのところにはカズマとアクアが向かう事になった。

 一応監視の意味も込めて、セナさんも俺と零子に着いて行く事になった。

 

 現在製造が完了しているドライバーは全て持っていき、ついでに仮面ライダーG3の各種武器も持っていく。

 さらに設置型自動照準式タレット、偵察型・攻撃型のドローン、レーザー探知式地雷。

 とりあえずこれだけ持って行く。

 

 

 

 

 

 

 こうして俺と零子、そしてセナさんはベルセルク王国の王都に向かった。

 最初はタイムマジーンで飛んで行き、王都が見えはじめた辺りから、バイクで移動した。

 城門で検問があったが、アクセルから来た冒険者だと知ったらすぐに入ることができた。

 セナさんは王国所属の検察官なので何も問題なかった。

 

 まず最初にやって来たのは、王都のギルドである。

 さすが王都のギルドだけあって、アクセルのギルドとは比べ物にならない位大きなギルドだ。

 クエストの内容も危険なものがほとんどだ。

 

 ○ドラゴンの討伐○

  レベル80以上 8人以上12人以下のパーティ

  ※討伐日数が2日を超える場合、撤退を推奨

 

 ○20階層あるダンジョンの攻略○

  レベル60以上 人数制限あり・50人まで

  *長期間の遠征クエスト

  *装備品・回復アイテム・食糧・サバイバルキット等のリストを制作し、ギルドに提出すること

  *上記のリスト提出後、ギルドが全額負担します

 

 ○希少薬草の採取○

  レベル55以上 人数制限なし

  採取系・探索系スキル推奨

  *植物系上級モンスターとの遭遇確率大

 

 ○希少金属の採掘○

  レベル65以上 人数制限なし

  採掘系・探索系スキル推奨

  *岩石系・アンデッド系モンスターとの遭遇率大

 

 一見簡単そうなクエストもあるが、道中に出現するモンスターなどを考慮してもハイリスク・ハイリターンだ。

 アクセルにはなかったが、こっちには『指名依頼』と言うものがある。

 俺と零子の狙いはこっちだ。

 ギルドからの保障は何もないが、その代わり相場を無視した莫大な報酬が得られる場合がある。

 ただ、複数の冒険者が受けることが可能なので、最終的には依頼主がどの冒険者に成功報酬を払うかを決める権利がある。

 

 零子の事前調査だと、王国が魔王軍に対する為の武器や新技術の提出をクエストとして発行しているらしい。

 

賢治

「どうだ?」

 

零子

「え〜っと・・・あ! あったわ。」

 

 ○武器・新技術の提出○

  レベル制限無し 人数制限無し

  錬金術系スキル推奨

  魔道具制作系スキル推奨

  鍛治スキル推奨

  *武器・技術に関する詳細な資料の提出を求む

  *内容により、報酬の増額を検討

  *この依頼を受注する場合、この依頼書を持ち王城まで足を運ぶこと

 

 確かに、今回の商売にうってつけの依頼だ。

 何度も使い回されているのか、若干依頼書がボロボロだ。

 必須のスキルがあるが、この辺りは交渉次第だろう。

 

 依頼書を持って、今俺達は王城の城門の前にやって来ていた。

 街中どこから見ても必ず視界に入ってくる為、迷うことが無かった。

 城門の前に到着すると、甲冑を身につけた二人の男がやってきた。

 恐らく門番の騎士だろう。

 

門番騎士A

「そこの者、何用だ?」

 

門番騎士B

「王城に何かようですか?」

「紹介状などをお持ちなら、提出をお願いします。」

 

零子

「初めまして、私は沖田零子といいます。」

「アクセルを拠点に冒険者として活動しています。」

「同時に、『零子製作所』という工房の社長をしています。」

 

賢治

「自分は同じく冒険者で、『零子製作所』の社員の霧島賢治と言います。」

 

セナ

「私は王国検査官のセナです。」

 

 ここに来る前に、一応零子が冒険者兼社長、俺が冒険者兼社員という設定を用意しておいた。

 じゃないとわざわざビジネススーツに着替えていない。

 零子は最初スカートスーツを着ようとしていたが、一応社長なのでパンツスーツに変えたのだ。

 ・・・確かに、スカートよりパンツの方が社長っぽく見える。

 そんな零子も素敵だ。

 

門番騎士A

「? 冒険者なのか?」

 

零子

「見えないでしょうか? ・・・いえ、冗談ですよ。」

「こちらの依頼書を持っています。 確認していただけますか?」

 

 まぁ、冒険者がこんなにしっかりしたスーツなんて着ないだろうな。

 零子はギルドに張り出されていた依頼書を騎士に渡した。

 

門番騎士A

「・・・あぁ、このクエストか。」

「少々待ってくれ、確認してくる。」

 

 門番の一人が城の中へ入って行く。

 

 しばらく待っていると、門番が戻ってきた。

 

門番騎士A

「すまない、待たせてしまった。」

「許可が下りたので、こちらへどうぞ。」

 

 俺と零子はスーツのズレを直し、ネクタイを締め直す。

 緊張する。 気分は、企画をプレゼンする新人社員の気分だ。

 クエストも商談も無事成功することを祈る。

 

 

 

 

 

 

 俺達は魔法陣の描かれた部屋に案内された。

 すると次の瞬間、目の前に扉が現れた。

 

門番騎士A

「到着しました、こちらが応接室です。」

 

 さっき一瞬視界が歪んだと思ったら、次の瞬間には応接室の前とか、転移の魔法だろうか?

 確かに、改めて城の中に入った時に思ったが、この城はデカイ!

 いちいち歩いていたらなかなか目的の場所までつかないだろう。

 便利だな、転移魔法。

 

門番騎士A

「あぁ、最後に」

 

賢治

「うん?」

 

門番騎士A

「相手は貴族の方だから言葉には気を付ける様に、無礼な態度も取らない方がいいぞ。」

「職業柄、冒険者と接することもあるし、多少砕けた言動も目を瞑ってくれつと思うがな。」

 

 扉の前に立つと、門番の男がそう言ってきた。

 確かに、不敬罪で処刑なんて事になったら洒落にならない。

 

零子

「ご忠告、有り難う御座います。」

 

 零子はそう言って一礼し、扉をノックする。

 

???

「入れ。」

 

 ドアの向こうから帰って来た声は、どうやら女性の声だ。

 零子がドアノブを握って引くと・・・

 

零子

「・・・あれ?」

 

賢治・セナ

「?」

 

 扉が開かなかった。

 ・・・あぁ、なるほど引くんじゃなくて、押せばいいのか。

 それにしても、その事に零子が気づいた様子がない。

 それどころか、少し焦った顔になっている。

 分かりにくいが、額に汗が滲んでいる。

 

賢治

「零子、そのドア・・・押せばいいんだよ。」ボソ

 

零子

「ーーー!」//////

 

 俺が耳元でそういうと、零子は真っ赤になってしまった。

 零子も緊張していたんだな。

 それでもすぐに落ち着き、改めてドアを押し開いた。

 

零子

「失礼します。」

 

 零子に続いて、俺とセナさんが入室する。

 そこには、気品の漂う白いスーツを見に纏い、腰に剣を差した金髪短髪の美人がいた。

 

セナ

「! クレア様!」

 

クレア

「? 貴方は王国の検察官ですね。」

「そうしてここに?」

 

セナ

「はい! 私はセナと言います。」

「この度は彼らの付き添いとして、彼らのクエストに同行する事になりました。」

 

 どうやらセナさんはこの人について知っているようだ。

 セナさんから聞いたが、彼女は王国に使える騎士で、ダスティネス家と並ぶ大貴族のシンフォニア家出身の女性だ。

 そんな人が俺達の相手とは、それだけ期待されているのか、あるいはそれ程に王国は追い込まれているのか?

 

クレア

「それで、貴方達が今回のクエストの受注者の様だが、冒険者と聞いたが。」

 

 俺と零子は自己紹介を済ませ、席に着いた。

 

零子

「早速クエストの話をさせて頂きます。 それと、クエストとは別に交渉もしたいのです。」

 

クレア

「交渉? どういう事だ?」

 

零子

「私が今回のクエストでそちらに提示する技術を買っていただきたいのです。」

「もちろん損はさせません。 この国の国防に大変役に立つはずです。」

 

クレア

「ふむ・・・まず、その技術について聞こうか。」

 

 警戒の気配が混じった口調で、そう言ってくる。

 まぁ、この国の防衛に関する話だし、仕方ないだろう。

 しかも、一介の冒険者が王国貴族の大して交渉したいというのだ、警戒は当然だろう。

 

 零子は俺の裁判の時でも使った、ビー玉サイズの銀の玉を机に転がした。

 すると、自動的に三角形の形の止まり、空中にホログラムの映像を出した。

 

 映し出されたのは、ヘリコプターを手の平サイズにした偵察型ドローン。

 機体の先端に長距離望遠カメラを搭載し、暗視装置も装備し、回転するプロペラの音も極静音にしたドローンである。

 

 次は攻撃型ドローン。

 さっきの偵察型に比べれば大型で4基のプロペラが付いた、俺達の元居た世界では一般的な形をしたものだ。

 長距離望遠カメラ、暗視装置、サーモセンサーを搭載し、マシンガンやナパーム等様々な武器を装備可能である。

 

 他にも生体探知型センサー、対人・破砕・指向性・レーザー探知型の各種地雷。

 さらに、設置型の自動照準・自動照射型のタレット。

 これらの兵器の説明をした。

 

クレア

「これは・・・なんという・・・」

 

 映像を見た交渉相手のクレアさんは、唖然としていた。

 『開いた口が塞がらない』とはこういう事だろう。

 俺が作った訳じゃ無いが、ここまで驚かれるとなんだか楽しくなる。

 

零子

「これだけではありませんよ。」

 

クレア

「何? まだ何かあるのか?」

 

零子

「むしろ次に紹介する商品こそ本命です。」

「お願いね。」

 

賢治

「はい。」

 

 一応、所長と社員なので、敬語で話す俺。

 なんだか不思議な感じだ。

 

 零子はアタッシュケースを取り出し、俺に渡してくる。

 もちろん、中に入っているのはスマートバックルである。

 俺は少し離れて、ドライバーを装着し。

 

賢治

「変身!」

 

 『Complete!』

 

 バックル向きを変えて、ライオトルーパーに変身した。

 

クレア

「な?! それは!」

 

零子

「これが今回の本命、『ライオトルーパー』です。」

 

 零子は端末を操作し、ホログラムの映像をライオトルーパーに映し変える。

 そこには、前の日にキールダンジョンに潜ったときの俺とカズマとアクアが映っていた。

 音声は無く、各種武器を使ってアンデッドと戦う姿が、編集を加えて映し出されている。

 

 ライオトルーパーの固有武器『アクセレイガン』。

 アタッシュケース型ガトリングガン『GXー05:ケルベロス』。

 銃の『GMー01:スコーピオン』。

 『GMー01:スコーピオン』と連結させて使用するグレネードランチャー『GGー02:サラマンダー』。

 腕に装着して使用する刀剣型武器『GSー03:デストロイヤー』。

 接近戦闘用ナイフ『GKー06:ユニコーン』。

 各種武器の説明をした。

 

零子

「いかがでしょう? 私達の商品は?」

 

クレア

「・・・一つ聞きたい。」

 

零子

「? なんでしょう。」

 

 クレアさんが眉間に皺を寄せて、俺と零子を見る。

 

クレア

「もしかして貴方達は、アクセルで噂の「仮面ライダーですね」・・・!」

 

賢治・零子

「え?」

 

 部屋の扉の方から声が聞こえた。

 扉を開けて中に入って来たのは、白いドレスを着た金髪の美少女だった。

 

クレア

「アイリス様!」

 

セナ

「ええぇ!!」

 

 セナさんの驚き様から、身分の高い人なのだろうか?

 儚げな印象があるが、気品があり、風格がある様に見える。

 

アイリス

「初めまして。 私はベルセルク王国第一王女・ベルセルク=スタイリッシュ=ソード=アイリスです。」

 

 と、ドレスの裾を摘んで自己紹介してくれた。

 ・・・え?

 

賢治

「えええぇぇぇ!!!」

 

零子

「王国の王女様!!!」

 

 俺と零子は咄嗟に跪いた。

 

賢治

「お・・・お初にお目にかかります!」

「自分は霧島賢治、アクセルの街で冒険者を生業にしています!」

 

零子

「同じく冒険者で、『零子製作所』の社長を務めている沖田零子と言います!」

「よろしくお願いします。」

 

 自己紹介をしているが、流石に王国の王女様が相手なので、妙に早口になってしまった。

 正直、王族に会うなんて思っていなかった。

 

アイリス

「畏まる必要はありませんよ。」

「貴方達は私の部下というわけでは無いのですから、普段通りで構いませんよ。」

 

賢治

「は・・・はい。」

 

零子

「有難う御座います。」

 

アイリス

「それで、貴方達は『仮面ライダー』なのですか?」

 

賢治・零子

「・・・」

 

 俺と零子は椅子に座り、自分達の事を話した。

 これまでの些細な体験談から、魔王軍幹部との戦い、機動要塞デストロイヤーの討伐。

 そして、どうしてこの国に見た事の無い武器や仮面ライダーの技術を売りに来たのか。

 その話をしている最中の王女様はとてもウキウキした顔をしていた。

 

アイリス

「では、こちらのベルトを使えば、誰でも仮面ライダーになれるのですか?」

 

零子

「一度使えば、使った本人以外は使えなくなりますが、大人なら男女関係なく使えます。」

「ただ、子供や老人はお勧めできません。 変身できても体に負担がかかりますから。」

 

アイリス

「でしたら、私が使うのに問題ありませんね。」

 

賢治・零子

「え?!」

 

クレア

「アイリス様?!」

 

 このお姫様、とんでも無いことを言い出したぞ。

 この人、自分も戦うつもりか?

 

アイリス

「ベルセルク王家は、代々勇者の血を引く家系です。」

「いつ如何なる時も、心身の鍛錬をおろそかにできません。」

「それに、王国の騎士達が必死になって闘っているのに、私だけ安全な場所でじっとしている訳には行きません。」 

 

 間違ったことは言っていないけど、彼女の立場を考えると無闇に戦場に出るべきでは無いと思う。

 ライダーシステムも万能じゃないんだ。

 万が一の事を考えると、彼女には後方で待機しておいて欲しい。

 

クレア

「アイリス様、それは・・・」

 

アイリス

「もちろん、自身の立場も理解しています。」

「ですが、私は闘いたいのです!」

「私が戦場に立つ事で、救える命だってあるはずなんです。」

 

 すると、突然俺の『宝物庫』が発動し、中から何かが飛んでいった。

 

賢治

「え?!」

 

アイリス

「キャッ!」

 

 それは王女様の方へ飛んでいくと、彼女の手の中に収まった。

 なんとそれは、『オーズライドウォッチ』だった。

 

 確認してみたら、俺が使う『オーズライドウォッチ』は確かに俺のところにあった。

 しかし、王女様のところにある『オーズライドウォッチ』は配色が違っていた。

 外装は黒色で、ウェイクベゼルの部分が左から赤・黄・緑のメタリックカラーになっていた。

 ベゼルを回すと上から赤・黄・緑になる。

 

 どうやら、『ブランクライドウォッチ』が王女様に反応して、『オーズライドウォッチ』に変化したようだ。

 

アイリス

「あの、これは?」

 

賢治

「え〜っと・・・アイリス様、それを起動してみてもらっても良いですか?」

 

アイリス

「は、はい!」

 

 彼女はベゼルを回し、スターターを押した。

 

 『オーズ!』

 

 と言う音声が鳴ると、次第にウォッチの形状が変わっていく。

 その時、王女様の胸の辺りが赤く光り、彼女の右腕を伝って、手のひらの中にあるウォッチに吸い込まれた。

 そして現れたのが、『オーズドライバー』だった。

 この『オーズドライバー』は知っている形状だ。

 しかし、ウォッチの配色が変わっていたり、王女様の胸の光だったり、何がしか変化があるのかもしれない。

 

アイリス

「形が変わりました!」

 

賢治

「どうやら元々その力を持っていたみたいですね。」

 

アイリス

「え?」

 

賢治

「王女様の体の中に、仮面ライダーの力の欠片が眠っていたみたいです。」

「そのドライバーを使えば、貴方は仮面ライダーオーズに変身できます。」

 

アイリス

「私が、仮面ライダーに!」

 

 彼女の気持ちに反応し他のだろう。

 まさか国の王女様が仮面ライダーになってしまうとは。

 その時。

 

 ビー! ビー! ビー!

『魔王軍警報! 魔王軍警報! 騎士団は至急出撃せよ!』

『高レベル冒険者の皆さんは協力をお願いします! 繰り返します!』

 

賢治

「!? あの、この警報は?」

 

クレア

「懲りもせずに、また来たのか。」

 

アイリス

「聞いての通り、魔王軍による襲撃です。」

 

零子

「魔王軍?!」

 

 魔王軍はこんなに近くまで既に進行していたのか。

 ただ、詳しく聞いてみると、今この国に攻め込んできている魔王軍はそれほど脅威ではないらしい。

 ほんの少ししたら撤退してくようだ。

 

 しかし、連日同じ時間帯に襲撃してくるらしく、良い加減うんざりしているとの事。

 王国軍側をさんざん煽った挙句、被害が大きくなる前には確実に撤退するという、王国軍側からすれば実に傍迷惑な事だろう。

 

アイリス

「良い機会ですね。」

 

クレア

「え?」

 

アイリス

「仮面ライダーの力がどれほどの物なのか、確かめさせていただきます。」

 

クレア

「アイリス様!? まさか戦場に出るおつもりですか?」

 

アイリス

「そうですが、何か?」

 

 クレアさんが「危険です!」「貴方に何かあったら!」と、止めようとしているが、王女様は譲るつもりは無い様だ。

 

賢治

「あ〜・・・では、クレアさんもついて行けば良いのでは?」

 

クレア

「え?」

 

零子

「そうね、王女様が心配なら護衛として側にいれば、いざという時対応出来るでしょうし。」

 

アイリス

「そうですね! そうしましょう!」

 

クレア

「えええぇぇぇ!」

 

 クレアさんはなんとか王女様を説得しようとするが、結局押し切られてしまった。

 良い機会なので、クレアさんにはスマートバックルのテストプレイヤーになってもらった。

 

 

 

 

 

 

 王都の城壁の外では、王国軍と魔王軍が戦闘中だった。

 奇襲を受けたため、王国軍が押され気味だ。

 魔王軍の魔族が王国の騎士達に罵声を浴びせながら、進撃してくる。

 数は二百くらいの小規模(中隊規模)なものだ。

 それに対して王国軍は40人程しかいない。

 

 王国軍の部隊長らしき男が声を張り上げ、仲間を鼓舞するが、魔王軍側の異様に派手な鎧を着て武器を構えたボスらしき奴が、ニタニタと下品に笑いながら罵声を浴びせ、それに合わせるように周りの連中が悪辣な台詞を叫んで、ゲラゲラと笑っている。

 正直、今時のB級映画でも聴かない様な台詞だ。

 

 それを俺は、空を飛ぶタイムマジーンの中から映像で見ていた。

 

賢治

「・・・嫌なやつだな。」

 

クレア

「だからあの指揮官の奴は気に入らんのだ。」

 

アイリス

「・・・地獄に堕ちれば良いのです。」

 

零子

「あんな奴捕まって酷い目に合うのがオチよね。」

 

 零子もクレアさんも王女様もご立腹の様だ。

 嫌らしく笑う指揮官の顔を眺めながら、俺はミサイルを魔王軍の陣営に撃ち込んだ。

 地面に着弾すると爆発を起こし、盛大に吹き飛んだ。

 

クレア

「お・・・おい、今のはなんだ?!」

 

賢治

「さぁ、着陸するから全員ドライバーを付けておいてくれ。」

 

 俺はそう指示を出し、ミサイルの爆心地から少し離れたところにタイムマジーンを着陸させ、全員が降りた事を確認しウォッチに仕舞った。

 すると、周囲からゾロゾロと魔王軍の魔族達がやってきた。

 彼らは最初こそ警戒していたが、俺達を見ると「おぉ! 良い女がいるぞ!」「あのドレスを着た女は俺のもんだー!」「おいおい金髪の兄ちゃん、そんな細腕で戦場に出てきて大丈夫かぁ〜!」「俺、あの黒髪の彼女に踏んでもらいたい!」などと口にしている。

 

 ・・・最後のやつなんだ?

 

零子・クレア

「・・・・・・ぶっ潰す!」ブチッ

 

アイリス

「・・・ふふふ。」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

賢治

「ひっ!」

 

 零子とクレアさんは明らかに殺意をむき出しにし、王女様は見た目は笑顔だが、、あるで背後に黒いオーラが出ているような気がする。

 ハッキリ言って怖い。

 特にクレアさんなんか、男と間違えられたのが余程不本意だったのか、軽く泣いている。

 

アイリス

「さぁ! 皆さん行きますよ!」

 

クレア

「はい! アイリス様!」

 

零子

「ケン君! いくよ!」

 

賢治

「お・・・おう!」

 

 俺はジオウライドウォッチをドライバーにセットし、零子はライジングホッパープログライズキーをドライバーに読み込ませる。

 王女様はドライバーの左についている『オーメダルネスト』から『タカ』『トラ』『バッタ』のコアメダルを取り出し、ドライバーの右にタカ、左にバッタ、中央にトラのメダルを装填し、ドライバーを斜めに傾ける。

 右手に『オースキャナー』を持ち、ドライバーに沿う様にコアメダルを読み込む。

 

賢治・零子・アイリス・クレア

「変身!」

 

 『ライダータイム! 仮面ライダー・ジオウ!

 

 『プログライズ!

 『飛び上がライズ! ライジングホッパー!

 『A jump to the sky turns to a rider kick.(空へのジャンプはライダーキックに変わる)

 

 『タカ! トラ! バッタ!』『タ・ト・バ タトバ タ・ト・バ!

 

 『Complete!』

 

 それぞれが、仮面ライダージオウ、仮面ライダーゼロワン、ライオトルーパー、そして仮面ライダーオーズに変身した。

 しかし、王女様のオーズは俺の知っているオーズとは違っていた。

 いや、ほとんど同じなのだが、唯一違うのは背中に白いマントが付いていて、その中央にはオーズのライダーズクレストが刻まれていた。

 クレアさんはライオトルーパーの姿に腰の部分に『ユニコーン』を装備している。

 

 俺達の姿を見た時、魔族達に動揺したようだ。

 魔族側にも俺たちのことを知っている奴がいるのか、俺達の変身を見た途端に逃げ出す奴がいた。

 しかし、ほとんどの魔族が襲い掛かってきた。

 

 俺達は武器を取り、魔族達を蹴散らしていく。

 仮面ライダーに変身した俺達にかかれば、今ここにいるくらいの魔族なら脅威ではない。

 敵わないと見るや、魔族達は不用意に攻撃をしてこなくなった。

 

アイリス

「即刻立ち去りなさい! さもなくば、無駄に命を散らすことになりますよ!」

 

 俺達の力を見せた事によって、王国軍は立て直すことができた。

 城門の方から、沢山の騎士達と冒険者達が集まってきている。

 しかし、いまだに魔王軍は弾こうとしない。

 

リーダーの魔族

「ふ、ふざけんな! これくらいで勝った気になってんじゃねぇよ!!」

 

魔族A

「そ、そうだ! 俺達にはまだ切り札があるんだからな!」

 

賢治

「切り札?」

 

 一体なんだろうか?

 武器か? 魔法か? 何方にせよそう簡単に負けるつもりはないが。

 

リーダーの魔族

「先生方! 出番ですぜー!」

 

零子

「先生?」

 

 リーダー格の魔族のその一言で警戒を強める俺達。

 すると、魔王軍側からまるで鉄球みたいなのがものすごい速度で転がってきた。

 

鉄球?

「ギリギリイイイィィィ!!」

 

アイリス

「な?!」

 

クレア

「姫様!」

 

 アイリスが直撃しそうになるが、クレアが飛びつくことで避けることができた。

 そしてさっきの鉄球は、人型になっていた。

 だが、俺はそいつに見覚えがある。

 そいつは、頭部や胴体などの表面が、アルマジロの様な皮膚をしており、右腕の先端には三叉の刃が露出している。

 

賢治

「あいつは・・・確か、ナイフアルマジロ!」

 

零子

「え?! それってV3に出てきた怪人よね。」

 

 そう、『ナイフアルマジロ』とは、『仮面ライダーV3』に登場する悪の組織『デストロン』の改造人間の一体である。

 さっきの体を丸めてから対象に転がっていく『弾丸鋼鉄球』で仮面ライダーV3に一度勝っている怪人だ。

 しかし、特訓して対策を用意していたV3によって敗北して撤退し、再改造手術を受け再戦するが『V3ドリルアタック』によって爆散している。

 

 そんな怪人がなんでこの世界に?

 

零子

「! ケン君後ろ!」

 

賢治

「!?」

 

???

「ケケェェェ!」

 

 今度は俺の背後から叫び声を上げて、何かが襲いかかってきた。

 零子が気付いてくれたおかげで何事もなかったが、こいつにも覚えがある。

 

 そいつは、全身を爬虫類の様な鱗で覆われ、大きく開いた口から牙が伸びている。

 両肩と胸元、そして右腕は機械みたいな鎧で覆われ右腕の先端には電動丸ノコが付いている。

 

零子

「嘘!? 今度はノコギリトカゲ!」

 

 この怪人も『仮面ライダーV3』に登場する改造人間だ。

 ナイフアルマジロと一緒にV3を倒そうとするが、右腕のノコギリを吹き飛ばされて空中に放り投げられたところに『V3ダブルアタック』を受けて爆散した怪人だ。

 

???

「フハハハハ、まさかこの世界に仮面ライダーがいるとわな。」

 

賢治・零子

「?!」

 

 次に魔族達の中から現れたのは、分厚い鎧を纏い、大きな二本のツノがついた兜を被り、鎖のついた大きな鉄球を持った男だった。

 こいつも知っている奴だ。

 

賢治・零子

「鋼鉄参謀!」

 

鋼鉄参謀

「いかにも! 俺は元デルザー軍団の改造魔人の一人、鋼鉄参謀だ!」

 

 鋼鉄参謀とは、『仮面ライダーストロンガー』に登場する、ライダー史上屈指の強敵集団『デルザー軍団』の一員の改造魔人である。

 性格は生粋の武人であり、正々堂々とした戦いを好む、悪の組織にしては珍しい改造魔人である。

 

賢治

「なんでデルザー軍団のお前が?」

 

零子

「まさか、誰かが復活させたの?」

 

鋼鉄参謀

「蘇った俺はデルザー軍団の一員ではない。」

 

賢治・零子

「え?!」

 

 デルザー軍団じゃない?

 じゃあ、バダンか? それとも大ショッカーだろうか?

 いや、今重要なのは2体の怪人を率いて現れたことだ。

 しかも魔王軍に味方しているようだ。

 

鋼鉄参謀

「まさかこの世界にも仮面ライダーがいるとわ思わなかったぞ。」

 

零子

「この世界?」

 

鋼鉄参謀

「そこのライダーとついているお前。」

 

賢治

「! 俺?」

 

鋼鉄参謀

「この俺と戦え! お前がどれほどのものか測ってやる。」

 

賢治

(ムッ!)

 

 明らかな挑発に少しムカついた。

 わざわざ乗ってやる義理はないが、ここは乗ってやろうじゃないか。

 

賢治

「いいぜ。 やってやるよ!」

 

零子

「ケン君!?」

 

賢治

「大丈夫、油断はしないさ。」

「だから他の奴を早く倒して、加勢してくれ。」

 

零子

「・・・はぁ、しょうがないわね。」

 

 そう言うと零子はノコギリトカゲに向かっていった。

 ナイフアルマジロは王女様とクレアさんが相手をしている。

 これなら心配ないだろう。

 俺は鋼鉄参謀に向かって構える。

 それを見た鋼鉄参謀は左手に持っている鎖を回転し始める。

 

 お互いに間合いを測りながら、少しづつ近づいていく。

 俺がさらに半歩ほど近づいた時、鋼鉄参謀は回転させていた鎖を俺目掛けて飛ばしてきた。

 例えるなら、『ネビュ○チェーン』みたいに。

 俺はそれをジカンギレードで斬り払い、一気に鋼鉄参謀に近づく。

 

 今、時代を超えて昭和時代の改造魔人と、平成最後の仮面ライダーの戦いが始まった。

 

 

 

ーアイリスsideー

 

 正直に告白すると、私は賢治様より「仮面ライダーの力の欠片が眠っていた」と言われて、舞い上がっていました。

 実際に仮面ライダーに変身し、その力を振るった感想は『凄まじい』の一言でした。

 変身している間は、自身のステータスが上昇したと言う自覚がある。

 この力があれば、魔王討伐も夢ではないと思えます。

 しかし、そう簡単にいかないのが現実というものなのですね。

 

ナイフアルマジロ

「ギリギリイイイィィィ!」

 

アイリス

「くぅ!」

 

 零子様が『怪人』と言っていた目の前の存在に、今私は苦戦しています。

 一体どうやってあんな姿になっているのか分からないけど、自身を球体に変化させてものすごい速さで突っ込んできました。

 しかもこっちが避けると急に方向転換してまた突っ込んでくる。

 

クレア

「これでは反撃ができません。」

 

アイリス

「何とかして動きを止めないと。」

 

 今は回避に専念して、隙をついて反撃をしようとする。

 しかし次の瞬間、球体に変化した怪人は今度は高く跳ねてきたのです。

 

クレア

「な!?」

 

ナイフアルマジロ

「ギリギリイイイィィィ!」

 

 クレアは不意をつかれ、落ちて来た球状の怪人と衝突してしまう。

 

クレア

「ぐあああぁぁ!!」

 

アイリス

「クレア!」

 

 ぶつかった衝撃で、クレアは吹き飛び地面に叩きつけられてしまう。

 その時すでに怪人は私の頭上に迫ってきていた。

 咄嗟にドライバーから剣を取り出して受け止める。

 どうやらこの剣はどうやらこの剣は『メダジャリバー』と言うみたいです。

 

アイリス

「きゃあ!」

 

 しかし、それでも勢いを殺すことができず、私は吹き飛んでしまった。

 

クレア

「アイリス様!」

 

 心配したクレアが駆け寄ってくる。

 このままでは二人ともやられてしまう。

 どうにかしないと。

 

 そう思っていると、『オーメダルネスト』からメダルが3枚飛び出してきました。

 そのメダルを手にした時、頭の中に今の姿とは違う別のオーズの姿が見えました。

 このメダルを使えば逆転できそうです。

 

アイリス

「クレア。」

 

クレア

「はい、何でしょう?」

 

アイリス

「私が隙を作りますから、二人で決めましょう。」

 

クレア

「な?! しかし、アイリス様を危険な目に遭わせるわけには!」

 

アイリス

「それは今更ですよ。」

「さぁ、準備してください。」

 

クレア

「くぅ、わかりました!」

 

 クレアはドライバーに付いている『ファイズポインター』という物を右足に付けた。

 そして私はドライバーを操作して、『タカ』『トラ』『バッタ』のメダルを外し、新たに『サイ』『ゴリラ』『ゾウ』のメダルをセットする。

 ドライバーを傾け、『オースキャナー』でメダルを読み込む。

 

 『サイ! ゴリラ! ゾウ!』『サゴーゾ! サゴーゾ!

 

 さっきとは違い、今度は白・銀・黒の姿、どうやらこの姿は『サゴーゾ』と言うみたいです。

 そして、同系色のメダルを使った変身を『コンボ』と言うみたいです。

 

アイリス

「さぁ、どこからでもどうぞ!」

 

ナイフアルマジロ

「ギリギリイイイィィィ!」

 

 怪人はまた同じ様に球状に変化し、突っ込んできました。

 しかし、私は避けません。

 受け止めました。

 その状態でも回転し続ける怪人を、私はさらに力を入れて止めようとします。

 

 すると、次第に勢いがなくなり回転も止まりました。

 やはりこの姿は力と耐久力が大幅に上昇するみたいです。

 

 私は球状の怪人をしっかり掴み、その場で回転します。

 その勢いを利用して、怪人を放り投げました。

 

 『エクシードチャージ!

 

 と言う音が聞こえた、クレアの準備が完了した様です。

 クレアが空中にる怪人に向けて右足を向けると、赤い一筋の光が走りました。

 それは怪人に直撃すると、円錐状に展開されました。

 それを見た私はすかさず『オースキャナー』でドライバーのメダルをスキャンします。

 

 『スキャニングチャージ!

 

 私は腕に力を集中するようにイメージします。

 すると、実際に物凄い力が腕に集中するのがわかります。

 両腕のガントレットから炎が噴射し始めます。

 

クレア

「やあああぁぁぁ!!」

 

 クレアが怪人に展開された円錐状の光に向かって蹴りを放ちます。

 一瞬の抵抗の後にクレアが怪人を貫通します。

 すかさず私は両腕を怪人に向けて突き出します。

 すると、両腕のガントレットは怪人目掛けて飛んで行き、怪人を貫きました。

 

ナイフアルマジロ

「ギリギリイイイイイイィィィ!!」

 

 怪人は叫び声を上げて、爆発しました。

 爆発する一瞬、Φ(こういうマーク)と、ooo(こういうマーク)が重なって見えた様な気がしました。

 クレアが見事な着地を見せ、私の方を向いた時、両腕のガントレットが再び私の両腕に飛んで帰ってきました。

 

クレア

「アイリス様、やりましたね!」

 

アイリス

「! えぇ!」

 

 それから、私達はお互いを讃えあい、賢治様に加勢するために走り出したのです。

 

 

 

ー零子sideー

 

零子

「やぁ! ハッ!」

 

ノコギリトカゲ

「ケケェェェ!」

 

 今私は、ノコギリトカゲと戦っている。

 まさか自分が仮面ライダーになるだけでなく、デストロンの怪人と戦うなんて思わなかった。

 右腕の丸鋸のチェーンソーに気を付けながら、キックやパンチを繰り出していく。

 距離を取ったノコギリトカゲは鋸の回転を速くして、襲いかかってくる。

 

零子

(怖っ!)

 

 実際に目の前に回転する電鋸が迫ってくるのはかなり怖い。

 ライダーシステムの上からならある程度なら大丈夫だと思う。

 だからと言ってわざと受ける気があるかと言われたら、ごめんである。

 さらに、人型のトカゲがそれを付けて襲い掛かって来るんだから、これが夜だったら完全にホラーの類よ!

 

 私はアタッシュカリバーを呼び出し、ブレードを展開し鋸を受け流す。

 両方の刃が接触するたびに火花が散る。

 私は『バイティングシャーク』のプログライズキーを取り出し、アタッシュカリバーにセットする。

 

 『Progrise key confirmed.(プログライズキーが確認されました。)Ready to utilize.(利用の準備が整いました。)

 『シャークズアビリティ!

 

 ノコギリトカゲが電鋸で襲いかかってきたところを左に避けて、アタッシュカリバーのトリガーを引く。

 

 『バイティング!』『カバンストラッシュ!

 

零子

「やあぁ!」 ザシュッ!

 

ノコギリトカゲ

「!!」

 

 バイティングシャークの力で切断力の強まったアタッシュカリバーのカバンストラッシュによって、ノコギリトカゲの右腕の電鋸は切断された。

 だが、次の瞬間予想外のことが起きた。

 

ノコギリトカゲ

「ケケェェェ!」 ズリュッ!

 

零子

「ウゲッ!? 腕が生えた?!」

 

 新しい腕が生え、しかも今度は丸鋸ではなくチェーンソーに変化していた。

 『仮面ライダーTHE NEXT』に登場する『チェーンソーリザード』の様な形状になっている。

 ノコギリトカゲとチェーンソーリザード、ある意味同一の存在だからこの変化もあり得るとは思う。

 

 そこから私は、アタッシュカリバーからバイティングシャークのプログライズキーを外す。

 次はドライバーからライジングホッパーのキーを外し、バイティングシャークのキーをドライバーにスキャンさせる。

 

 『ファング!』『オーソライズ!

 

 すると、空から鮫の姿をしたライダモデルが出現し、私の周囲を泳ぐ様に飛ぶ。

 キーを開き、ドライバーに差し込む。

 

 『プログライズ!

 『キリキリバイ! キリキリバイ! バイティングシャーク!

 『"Fangs that can chomp through concrete.(コンクリートを貪り食う牙)"

 

 バイティングシャークのライダモデルが各パーツに分離し、体に装着される。

 両足に推進器『ジェットハイドラー』が内蔵された『シャークグリーブ』。

 両肩にエネルギー発生装置『フィールドスキナー』を内蔵している『シャークショルダー』。

 胸にエラ状の呼吸器『ラビリンスラング』が内蔵された『シャークブレスト』が装着され、通常呼吸だけでなく、水から酸素を取り出すことができる。

 最後に、ライジングホッパーのマスクが変形・移動し、左右に分割して上下逆となり側頭部装着される。

 嗅覚が強化されたアンテナや視覚装置、聴覚装置が装備され、顔面を防護する役割がある『シャークマスク』が装着された。

 

 これが仮面ライダーゼロワン・バイティングシャークである。

 両腕の『シャークガントレット』に付いている『アンリミテッドチョッパー』で近接戦闘を仕掛ける。

 あれだけ大きなチェーンソーなんだから、懐に入ってしまえば振りにくいはず。

 

 そう思ってやってみたら、見事にハマった。

 さっきの丸鋸の時の方がずっと脅威だった。

 腕の部分がチェーンソーの本体部分になっていて、その先が刃になっているからリーチが長くなって0距離まで接近されると逆に戦いにくいのだ。

 しかも刃の向きも固定されているから、手に持った武器のように向きを変えることもできない。

 

 結果こっちが無双する事になった。

 そして、必殺技を決めるためにアンリミテッドチョッパーでX字に切り裂き、距離を取る。

 この姿の時にできる能力で、アンリミテッドチョッパーにエネルギーの刃を出現させ、地面の中に()()する。

 私を見失ったノコギリトカゲは、あたりを見渡すが何処にもいない。

 今私は地面の中を泳いでいるのだから。

 

 ノコギリトカゲの真下にきた私は、一気に地上へ飛び出し、エネルギーの刃で下から斬りつけ、その勢いに任せて今度は上空から地面に向かって切り付ける。

 次に、拳に力を込めてアッパーを繰り出し、ノコギリトカゲを高く上空に殴り飛ばした。

 その隙に、別のキー(ライジングホッパープログライズキー)を取り出し、ドライバーにスキャンさせる。

 

 『ビットライズ!』『バイトライズ!』『キロライズ!

 

 そうやって3回スキャンした後に、ドライバーのバイティングシャークのプログライズキーを押し込んだ。

 

 『バイティング!』『キロインパクト!

 

 私は通常よりパワーアップした必殺技を決めるために、地面に落ちてきているノコギリトカゲに向かってジャンプした。

 両足のジェットハイドラーを利用して両足に集中したエネルギーの刃をサマーソルトキックで叩き込む。

 

零子

「はあああぁぁぁ!!」

 

 ノコギリトカゲにキックがヒットした瞬間、エネルギーの刃が水飛沫の様に飛び散る。

 

 バイティング

    キロインパクト

 

 私が地面に着地すると同時に、ノコギリトカゲは爆発した。

 

零子

「まぁ、こんなところね。」

 

アイリス

「零子様、大丈夫ですか?」

 

零子

「はい、私は大丈夫ですよ。」

 

 どうやら王女様の方も問題なく終わったようだ。

 ケン君はどうだろうか?

 相手はあの鋼鉄参謀だから少し心配だ。

 デルザー軍団の改造魔人といえば、ショッカー〜ブラックサタンの大幹部を遥かに凌駕する力を持っており、ブラックサタンの大首領すら逃げ出すほどの実力者である。

 

 しかも、『超電子ダイナモ』を取り付け、『電気人間』から『超電子人間』へパワーアップする前の仮面ライダーストロンガーを実力で圧倒したのがあの鋼鉄参謀なのだ。

 それに加え、電気エネルギーの吸収と反射という能力のせいで、ストロンガーの『エレクトロファイヤ』や必殺技の『ストロンガー電キック』すら効かないのだ。

 鋼鉄参謀と同じデルザー軍団の一員である『ドクターケイト』が余計なことをしなければ、ストロンガーに勝っていたんじゃないか?

 そう思わせるくらい強いのだ。

 

零子

(・・・いやいや、それでもケン君は負けないわ。)

 

アイリス

「それでは、賢治様のところに行きましょう!」

 

零子

「えぇ、そうね。」

 

 私達はケン君のところへ走った。

 すると、ケン君の後ろ姿が見えた。

 その先には右半身が砕かれ、地面に膝をついている鋼鉄参謀がいた。

 

零子

「! ケン君、勝ったのね。」

 

賢治

「・・・・・・」

 

零子

「? ケン君?」

 

クレア

「どうしたのだ?」

 

賢治

「まだだ。」

 

零子

「え?」

 

賢治

「俺、あいつをもう2回殺したぞ。」

 

零子・アイリス・クレア

「え?!」

 

 その時、鋼鉄参謀の目がギラリと光った。

 

 

 

ー賢治sideー

 

 そう、俺は鋼鉄参謀をこれまでに2回殺しているのだ。

 最初はサイキョージカンギレードによるギリギリスラッシュで縦に割ってやった。

 しかし、鋼鉄参謀はしばらくすると元通りに復活したのだ。

 

 次はキックによるタイムブレイクで、鋼鉄参謀の右半身を砕いてやった。

 その際に、以前から試してみたかった技の『ライダー返し』や『ライダーきりもみシュート』などを試したが、両方とも上手く使えたのでこれからも使おうと思う。

 そして今、鋼鉄参謀の目がギラリと光ったと思ったら、砕かれた右半身が再生し出したのだ。

 

零子

「な?!」

 

アイリス

「こんなことが?」

 

クレア

「なんなのだこいつは?」

 

鋼鉄参謀

「フハハハハハ、無駄だ! あの御方がいる限り俺に死は訪れない。」

 

賢治

「・・・あの御方、ね。」

 

 まさかそれは、『JUDO』じゃないだろうな?

 もしそうなら、この世界に『大首領JUDO』がいるという事になる。

 「大首領ある限り何度でも蘇る」と『仮面ライダーSPIRITS』という漫画に登場するデルザー軍団が言っていた。

 

鋼鉄参謀

「この世界に来て少々退屈していたが、来た甲斐があったというものだ。」

「この分ならまだまだ楽しめそうだ。」

 

賢治

「?」

 

 鋼鉄参謀って戦いを楽しむ様な性格だったか?

 戦いに関しては正々堂々とした奴だが、倒せる時にはきっちり倒しておく様な性格だったと思うけど?

 勘違いか?

 

鋼鉄参謀

「魔王軍全軍に告げる! 撤退しろ!」

「今日の遊びはここまでだ!」

 

 鋼鉄参謀が声を張り上げて魔王軍の撤退を宣言する。

 魔族達も鋼鉄参謀には逆らえないのか、多少渋る感じはあるが指示には従っているようだ。

 この日の戦闘は、この様にして幕を閉じたのだ。

 色々な謎を残して。

 

 ただ一つだけ、鋼鉄参謀との戦いでアイツのベルトについているマークがデルザー軍団のものではなくなっていた。

 そこには『X』の文字が刻まれていた。

 俺の予想が当たっていたら、鋼鉄参謀が今いる組織とは・・・

 

 

 

 

 

 

 その後は、改めて商談の話になりライオトルーパーのドライバー20本は完売した。

 クレアさんのライオトルーパーに対する受けが良かったみたいだ。

 その他にも、こちらが出した武器や兵器の類は全て王国が買う事になった。

 その際、設計図やら取扱説明書などの資料も提供した。

 

 再現出来る物も有ると思うが、「やれるものならやってみろ」と言うのが正直な気持ちだ。

 ましてや、スマートバックルの再現なんてそれこそ『ゼア』や精密作業ができる機械がなければ無理である。

 仮にできたとしても、この取引で暫くは稼げるだろ。

 

 ちなみに今回の稼ぎは

 

 ・偵察型ドローンX10

 ・攻撃型ドローンX20

 ・対人地雷X50

 ・破砕型地雷X50

 ・指向性型地雷X50

 ・レーザー探知型地雷X30

 ・タレットX10

 ・スマートバックルX20

 ・ケルベロスX10

 ・スコーピオンX20

 ・サラマンダーX20

 ・デストロイヤーX20

 ・ユニコーンX20

 ・各種武器弾薬

 

 これらを合わせて合計

 

 22685000エリスである。

 果たしてこれが適正価格か正直悩むが、修理や武器弾薬の補充などを請け負ったので、ある程度定期的に収入が入ってくる。

 稼げる時には稼ぐが、欲張ってはいけない。

 そして、これだけの大金をポンと出せてしまえる王国もすごい。

 26回の分割でも構わないと言ったのだが、王国側は即金で全額払ってくれたのだ。

 

 ただ、こうなって来ると人手が欲しくなるな。

 いい人材がいないか探してみるか。

 紅魔族なみに知力か高くなくてもいいから、精密作業ができて、技術をすぐに覚えることができる。

 さらに、特殊車両(Gトレーラー)などの運転、輸送時の護衛など。

 護衛とかならクエストにして、発注してもいいと思う。

 

 そんなことを考えつつ、王国からの帰りの道中、タイムマジーンの中で突然ライズフォンが鳴った。

 画面を見てみると、エルシャからだった。

 

賢治

「もしもし、エルシャか? どうした?」

 

エルシャ

『賢治、手を貸して!』

『流石にもうどうにもならないわ!』

 

賢治

「え?」

 

 謎のモンスターを退治しに行ったエルシャから、そんな言葉が聞こえてきた。

 彼女達でも苦戦するようなモンスターだったのだろうか?

 

 この時は知るはずなかったが、後に俺は絶対戦いたくない奴と戦う事になるのだった。

 

 

 

 

 

 

ー???ー

 

 魔王軍の本拠地である魔王城に帰ってきた鋼鉄参謀は、魔王への報告を終えて自室に戻る途中にある人物に出会った。

 

鋼鉄参謀

「おぉ! 戻っていたのか。」

 

???

「鋼鉄参謀、なぜ仮面ライダーにとどめを刺さなかった。」

 

鋼鉄参謀

「ふふっ、あの者達とはもう暫く戦いを楽しみたいのでな。」

「決着は暫くお預けだ。」

 

???

「遊びすぎだ! 仮面ライダーを舐めると痛い目をみるぞ。」

「特に仮面ライダージオウ、あいつの変身者はこの俺の敵だ。」

「貴様にはくれてやらん。」

 

鋼鉄参謀

「はははっ! 確かにあのライダーとの戦いは面白かったぞ。」

「この俺が2回も殺されたのだからな。」

 

 影になっていて見えないが、目の前の人物は仮面ライダージオウというか、その変身者に執心している。

 怒り、憎悪と言った感情がむき出しになっている。

 と言っても、この人物も顔をマスクで覆っているので、表情を見てそう思った訳ではない。

 

鋼鉄参謀

「何故そこまであのライダーの変身者に拘る?」

「何か因縁でもあるのか?」

 

 すると感情に乗せてドス黒い魔力まで放射され始める。

 鋼鉄参謀だからこそ耐えられているが、他の者、それこそ幹部クラスそれ以下の者達では気絶してもおかしくない。

 

???

「アイツは俺から全てを奪った!」

「今度は俺がアイツから奪ってやる!」

 

鋼鉄参謀

「まぁ、俺は楽しく戦えればそれで良い。」

「そろそろそれを引っ込めてもらえるか? 息苦しくて敵わん。」

 

 鋼鉄参謀がそういうと、目の前の人物は一睨みした後、魔力と感情のオーラを引っ込めた。

 

???

「ふん! 俺はこの後『あの世界』に戻る、最後の仕上げにな。」

 

鋼鉄参謀

「ほぉ、ついにあの世界も()()()か。」

 

???

「あぁ。 鋼鉄参謀、楽しむのは勝手だが目的を忘れるなよ。」

 

鋼鉄参謀

「あぁ、わかっている。」

 

 鋼鉄参謀と話していた人物の姿が、一瞬月明かりに照らされた。

 その姿は、緑の体に目と両腕両脚が赤い、まるで『カミキリムシ』をモデルにした改造人間のようだ。

 鋼鉄参謀はこの人物を初めて見た時、「まるで2号ライダーのようだ」そう思っていた。

 

 話を終えた二人は、魔王城の闇の中へと消えていった。

 

 

 

 




 いかがだったでしょうか?

 アイリスは本当なら出すつもりは無かったんですけど、敵側に鋼鉄参謀やナイフアルマジロとノコギリトカゲを出したので、急遽彼女に仮面ライダーオーズになってもらいました。

 今回出した鋼鉄参謀や怪人二体は本編でも好きな怪人&改造魔人だったのでここで登場させました。
 これ以降もちょくちょく他の怪人や改造魔人も出していくつもりです。

 最後に出てきた人物に関しては、勘のいい人なら気付くかもしれませんね。
 そして、背後にいる『あの御方』にも目星がついてしまうかと。
 まぁ、ここで言うのは野暮という奴です。

 (ここから先は、『仮面ライダーBLACK SUN』のネタバレを含みますので、未視聴の方はすみません。)
 (ブラウザバックしてくれても構いません。)









 

話は変わりますが、皆さんは『仮面ライダーBLACK SUN』は試聴したでしょうか?
 自分はprime Videoで全話試聴可能だったので、配信が開始した日に全話試聴しました。
 なんとなくですが、『仮面ライダーアマゾンズ』と雰囲気が似ているような気がします。
 怪人体の『ブラックサン』や『シャドームーン』戦い方がアマゾンズっぽい。
 
 やはり差別って胸が痛みますね。
 『仮面ライダーBLACK』では、圧倒的な存在だった怪人達が、『BLACK SUN』では差別対象になっていてびっくりです。
 登場する怪人達も『仮面ライダーBLACK』に登場した怪人に酷似していて、胸が熱くなりました。
 意外だったのが、コウモリ怪人、ノミ怪人、クジラ怪人の3人が最終的にブラックサンの仲間になるのは感動しました。
 特にクジラ怪人がブラックサンを蘇らせるシーンは、『仮面ライダーBLACK』本編でも放送されていたので、ここでも胸が熱くなりました。

 また、『仮面ライダーBLACK』では心臓のみの登場だった創世王が、『BLACK SUN』では全身が登場していたのも驚きです。
 『仮面ライダーBLACK』の創世王も元々は『BLACK SUN』のような怪人体があったのかも知れませんね。

 最後に、エピソード10(最終回)では、オープニングテーマがあり、なんと『仮面ライダーBLACK』のオープニングテーマが流れ、鳥肌が立ちました。
 東映は分かっていますね、期待を裏切りませんでした。
 見比べてみても、もちろん違いはありますが、そこまで大きくかけ離れていなかったので嬉しかったです。

 さて、長くなりましたが、今回はここまでです。
 次回は外伝を挟もうと思います。
 御剣の話を完結させないと。

 仮面ライダーギーツも次のデザイアグランプリはどうなるのか楽しみです。
 パンクジャックが出るみたいですね。
 後、おじいちゃんが変身するとか?

 次回もよろしくお願いします。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

外伝:この魔剣の勇者に祝福を 其の二

 皆さんお待たせしました。

 今回は御剣響夜の外伝ストーリーを書きました。

 本当は去年の内に投稿したかったのですが、仕事の忙しさのせいで燃え尽きてしまい、投稿が遅れました。(言い訳 orz)

今回も広い心で見てやってください。

 


 

 東の中継拠点(ベース)のコウカイからバイクを飛ばしてアクセルに戻ってきた僕は、裁判の証人として出廷することになった。

 何故そんな事になったのか?

 後で聞いてみればただの濡れ衣であった。

 あの霧島賢治が国家転覆?

 魔王軍の関係者?

 言いがかりもいいところだ。

 

 そして裁判が終わり、霧島賢治を弁護していた沖田零子という人に指定された場所に行くと、そこには扉があり中に入ると滑り台を滑るように下に向かって落ちていった。

 そうして辿り着いたのが地下にある建物の中だった。

 案内に従って進んでいくと、その先には霧島賢治達がいた。

 彼らに事情を説明すると、次の日からギルドの依頼をこなさないといけないので、代わりに二人助っ人として一緒に行く事になった。

 

 一人は黒のスーツに刀を持ち、紫のラインが入ったバンダナを額に巻いた『滅』というヒューマギア。

 もう一人は同じく黒のスーツに金髪、右腕にオレンジのリストバンドを着けた『雷』というヒューマギアである。

 二人とも人間ではなく高性能AIを搭載した人型アンドロイドだと言っていた。

 見た目は人間とほとんど変わらないが、耳の部分にヘッドホンみたいなパーツが付いているのが特徴的である。

 

 しかし、そんな二人も仮面ライダーに変身できるらしい。

 僕は彼等と共にそれぞれバイクに乗り、コウカイを目指していた。

 

 道中、二人に稽古をつけてもらった。

 実力はもちろんであるが、ライダーシステムのスペックの面でも二人には敵わなかった。

 何より、僕のG4には必殺技というものがない。

 それっぽいのが『ギガント』によるミサイル攻撃である。

 しかし、ギガントは発射するのにそれなりの時間がかかる。

 それを思うと、ドライバーの操作だけで必殺技が放てる二人が羨ましい。

 

 だが、二人のお陰で気づいたこともあった。

 僕のG4をみて貰ったところ、出力を抑えていることがわかった。

 今の僕ならもう少し出力を上げても大丈夫らしい。

 滅さんと雷さんに調整してもらい、G4の出力が上がり開示されていなかった能力が見れるようになった。

 それだけでなく、以前は1日一回しか変身出来なかったが、出力が上がったおかげで1日3回まで連続で変身できるようになった。

 

 そして、アクセルを出発して三日後にコウカイに到着した。

 すでにギルドでもアンノウンの討伐依頼が出されており、複数の冒険者達が依頼を受けている。

 高威力の攻撃なら討伐も可能なのは証明されているので、主に魔法職達の魔法が活躍している。

 仮に魔法を耐え抜いても、確実に弱体化しているから戦士職の冒険者達でも十分に対処可能だ。

 

 ギルドで改めて討伐の依頼を受注して、カオルさんが待っている洞窟へと向かった。

 洞窟の入り口を確認するとそこには変身したカオルさんがいた。

 アンノウンと戦闘中のようだ。

 

キョウヤ

「カオルさん!」

 

 僕はG4ライドウォッチを起動する。

 すると、ウォッチがバックルに変化し、腰にベルトが装着された。

 

 『 Ready. I will wait!(準備完了。待機します)

 

キョウヤ

「変身!」

 

 僕はそう叫び、バックルをベルトに装着すると走り出した。

 

Deploy the G4 system!(G4システム、起動します)

 

 走っている最中にG4システムが装着され、僕はアンノウンの一体をパンチで吹き飛ばした。

 

「雷、俺達も行くぞ。」

 

「おう!」

 

 滅さんと雷さんがドライバーを取り出し、腰に装着する。

 滅さんはプログライズキーを、雷さんはゼツメライズキーを取り出し起動する。

 

 『ポイズン!

 『ドードー!

 

 二人がプログライズキーとゼツメライズキーをドライバーにセットすると。

 

滅・雷

「変身!」

 

 『『フォースライズ!』』

 

 『スティングスコーピオン!

 

 『『Break down.』』

 

 二人はそれぞれの名前を冠するライダー、仮面ライダー滅と仮面ライダー雷に変身した。

 

カオル

「!? キョウヤ、戻ってきたか。」

 

キョウヤ

「はい! お待たせしました!」

 

 それから僕達は協力してアンノウンと戦った。

 四人の仮面ライダーが揃うと以前戦った時よりずっと楽だった。

 特に、滅さんと雷さんの戦い方がとても洗練されていた。

 出発前にアンノウンに関する情報をラーニングして出て来た為なのか、妙に戦い慣れている感じがした。

 

 最後の一匹を倒した後、周囲にアンノウンがいないことを確認してから、一度変身を解除した。

 改めてお互いに自己紹介をしあった。

 

カオル

「つまり、お前達二人はゴーレムのような存在なのか?」

 

「厳密に言うと違うが、似たようなものだと思っていい。」

 

 カオルさんは人間と何も変わらない彼等を見て驚いているようだ。

 無理もない、僕も最初は彼等がロボットだなんて信じられなかった。

 だが、そんな時間も束の間。

 また洞窟の中からアンノウンが湧き出てきた。

 

「おいおい、また出てきたぞ。」

 

カオル

「全く、忙しない。」

 

キョウヤ

「皆さん、行きましょう!」

 

「いいだろう。」

 

 全員がベルトとドライバーを装着し、再び仮面ライダーに変身する。

 

「「「「変身!」」」」

 

 変身が完了すると、僕達は洞窟の中に向かって走り出した。

 洞窟の中は案の定、アンノウンの巣窟になっていた。

 向かってくるアンノウンを片っ端から相手にしていった。

 

 カオルさんはこれまで通り腕や脚に緑のオーラを纏った格闘戦で圧倒していった。

 滅さんはアタッシュケース型の弓を使って、遠距離と近距離を使い分け、バランスがいい戦いをしている。

 雷さんは日本の剣を用いた接近戦で、アンノウンを薙ぎ倒していった。

 そして僕はGMー01改4式で遠距離からアンノウンをヘッドショットで撃ち倒し、近距離の奴にはGKー06〈ユニコーン〉で倒していった。

 

 ちなみに、以前自前の剣でスキル『流星剣』を使った時ボロボロになったが、このユニコーンで使用した時はボロボロにならずに済んだ。

 しかも心なしか、威力が増しているように感じた。

 

 戦っている最中に、広い空間に行き着いた。

 遮蔽物がなく、見晴らしがいい。

 しかし、一面を埋め尽くす勢いでアンノウンが押し寄せてくる、まるで無双ゲームに出てくる雑魚敵のように。

 

 僕はユニコーンを手にした状態でベルト左に付いているのエナジーボリューム操作し、ユニコーンにエネルギーを供給する。

 すると、ユニコーンの頭身に青いエネルギーが集中し、バチバチとスパークする。

 その状態でアンノウンを何体も斬りつけた。

 斬りつけられたアンノウンは頭に光の輪の様なものを出現させ、爆発した。

 

 滅さんと雷さんは手に持っている武器で次々とアンノウンを倒していっている。

 

 『『Progrise key confirmed.(プログライズキーが確認されました。)Ready to utilize.(利用の準備が整いました。) 』』

 

 『ホーネッズアビリティ!』『ヘッジホッグズアビリティ!

 

 それぞれプログライズキーを武器に装填し、トリガーを引く。

 

 『ライトニング!』『カバンシュート!

 

 『ガトリング!』『カバンショット!

 

 滅さんの弓の様な武器から雷を纏った複数の矢が放たれ、アンノウンに直撃すると消滅せずそのまま貫通し、複数体のアンノウンを撃破していく。

 雷さんのショットガンからは、緑色の大きなエネルギー弾が発射される。

 一体のアンノウンに衝突したと思ったら、その地点から180°の範囲を覆い尽くすような緑色の棘が生み出される。

 その範囲内にいるアンノウンは全て爆発して消滅した。

 今のところ問題ないように思えた。

 

 だがその時、1匹のアンノウンが地面から現れた。

 

カオル

「な!? おおおぉ!」

 

キョウヤ

「? カオルさん!」

 

 カオルさんはその地面から現れたアンノウンに、穴の中に引き摺り込まれていった。

 

「! 俺が行く。 ここは任せるぞ!」

 

 そう言って、滅さんはカオルさんを追って穴に飛び込んでいった。

 

キョウヤ

「滅さん! 雷さん、俺達も。」

 

「いや、滅に任せておけ!」

「あいつなら問題ない。」

 

キョウヤ

「けど・・・」

 

 とは言え、そんな余裕がない。

 今も際限なくアンノウン達が集まってきている。

 しかし、そんな時突然アンノウン達の波が引いていった。

 

キョウヤ

「? なんで?」

 

「! キョウヤ、油断するなよ。」

 

キョウヤ

「え? ・・・!」

 

 その時、広場の奥の方から二体のアンノウンが現れた。

 そいつは以前戦い逃してしまった赤い外殻を纏った蟻のアンノウンだった。

 

キョウヤ

「こいつ、あの時の!」

 

「キョウヤ、集中を切らすなよ。」

 

キョウヤ

「はい。」

 

 僕と雷さんは目の前のアンノウンに集中することにした。

 カオルさんは滅びさんが何とかしてくれると信じるしかない。

 

 

 

 

 

 

-カオルside-

 

 俺は地面から出現したアンノウンによって穴に引きずり込まれた。

 しばらくそのまま落ちているとまたしても広い空間に落ちた。

 

 ドサッ!

 

カオル

「ぐはっ! ・・・どこまで落ちた?」

 

 周囲を見てみると、さっきの広場よりも薄暗い空間が広がっていた。

 所々に石柱みたいなものが立っており、どことなく不気味な雰囲気がある。

 その時背後から金属を打ち付ける様な音が聞こえた。

 振り返るとそこには、右手に三つ又槍を持つ、女王蟻の様なアンノウンが立っていた。

 

 しかし、俺にはそのアンノウンに覚えがあった。

 15年前にまだコウカイと言う中継拠点が建設される前、俺が育た国を滅ぼした奴らの中にいたアンノウンである。

 つまり、俺にとっては国を滅ぼした元凶であり、共に育った仲間を殺した仇でもある。

 俺は自分でも眉間にしわが寄り、顔がものすごい事になっている事を自覚していた。

 

「フッ!」

 

 俺が落ちてきた穴から滅が現れた。

 俺を追いかけて落ちてきたのだろう。

 

「無事か?」

 

カオル

「あぁ、見ての通りだ。」

 

「あいつが女王のようだな。」

 

カオル

「加勢するのは構わんが、邪魔はするなよ。」

 

「・・・わけありか?」

 

カオル

「あぁ・・・」

 

 それだけを言って黙ると、滅は何かを察したのか俺から視線をそらし、アンノウンに向ける。

 

「いいだろう。」

「後ろは任せろ、援護する。」

 

 そう言って滅は手に持っている武器をアンノウンに向けて構える。

 それから言葉を交わすことがなく、俺はアンノウンに向かって駆け出す。

 後ろから紫に光る矢が飛んできて、アンノウンに向かっていく。

 アンノウンは持っていた三つ又槍で光の矢を打ち落とす。

 その隙に俺はアンノウンに接近し、拳を殴りつける。

 アンノウンは槍で俺の拳を受け止める。

 その瞬間に、衝撃が発生する。

 

 

 

 

 

 

ーキョウヤsideー

 

 カオルさんと別れた僕は、雷さんと一緒に二体のアンノウンと戦っていた。

 これまで戦ったアンノウンとは違い、この二体は別格の強さだった。

 G4システムに搭載されている高性能AIによる強引な立体機動がなければ危なかった時が幾つかあったくらいだ。

 

 雷さんはこっちが心配する様な事はなく、互角・・・いや、明らかに雷さんが優位に立って戦っている。

 さっきから相手の反撃を許さず、相手が攻撃をしようとしたら必ずそれを潰すように先手先手を打って攻撃している。

 まるで機械のような正確無比な動きは、さすがヒューマギアといったところだろうか。

 

 そんな雷さんはフォースライザーのトリガー『フォースエグゼキュータ』を押し戻し、再度引く。

 

 『ゼツメツディストピア!

 

 雷さんの持っている日本の短剣、『ヴァルクサーベル』に赤い雷撃が集中する。

 

「うおらぁ!」

 

 雷さんに向かって突っ込んできたアンノウンと、すれ違いざまに二本の剣で斬る。

 

  ゼ ツ メ ツ

    

  雷   剛

    

 デ ィ ス ト ピ ア

 

 剣で斬りつけられたアンノウンは、赤い電撃を放ちながら爆発四散した。

 

「よし!」

「キョウヤ、手伝おうか?」

 

 と、雷さんが言ってくる。

 実際僕は目の前のアンノウンに苦戦している。

 G4システムのお陰で何とか致命傷は避けている。

 しかし、僕は・・・

 

キョウヤ

「大丈夫です! 僕に任せてください!」

 

「・・・フッ、よく言った!」

 

 そう言って雷さんは僕に任せてくれた。

 

 僕はアンノウンを銃で撃とうとするが、銃口を向けた瞬間相手の腕で振り払われ、その際に銃を落としてしまった。

 咄嗟(とっさ)にユニコーンで斬り付け、二回三回と相手を斬る。

 しかし、またしても相手の腕の振り払いを受けてユニコーンを落としてしまう。

 それからは、徒手空拳での殴り合いになった。

 

 しかし、G4システムのお陰である程度攻撃を予測できるので、こちらの被害は最小限である。

 逆を言えば、自分がいまだにG4システムを使いこなせていない事になる。

 回避や防御行動のほとんどがシステムによって強引に行われていたのだから。

 

 しかし、そのお陰で相手のアンノウンは満身創痍である。

 攻撃の際にもシステムによって常に目の前のモニターに的確な攻撃方法が表示されるのだ。

 自分はそれに従って攻撃するだけだ。

 ふらついている相手に渾身の力を込めて右ストレートを叩き込む。

 その一撃を受けてアンノウンは吹き飛ぶ。

 

 その隙に僕はエナジボリュームを一回転させた。

 それにより、アーマーを伝ってエネルギーが右足に集中する。

 モニターにチャージ完了の文字が出現する。

 その瞬間に僕はアンノウンに向かって走りジャンプをしてキックを放つ。

 

キョウヤ

「はあああぁぁ!」

 

 アンノウンが立ち上がると同時に、キックがヒットする。

 それにより、アンノウンはさらに吹き飛ぶ。

 そう、これが出力が上がったことで新に出来るようになった技。

 霧島賢治達が使うライダーキックである。

 頭に光の輪が出現し爆発した。

 

キョウヤ

「・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

 勝った。

 そう思った瞬間に気が抜けてしまったのか、さっきまで無理な戦いをしていたので、疲労が一気にやってきた。

 

「よく頑張ったな、キョウヤ。」

 

キョウヤ

「はぁ、はぁ・・・ありがとうございます。」

 

「だが、システムに頼りすぎだな。」

「システムの補助なしでも戦えるようにもっと鍛えろよ。」

 

キョウヤ

「・・・はい。」

 

 ぐうの音も出ない。

 もっと頑張らないと。

 そして、僕と雷さんはカオルさんと滅さんと合流するために、下に向かって洞窟内を進んでいくのだった。

 

 

 

 

 

 

ーカオルsideー

 

 目の前にいる三つ又槍を持ったアンノウンは今まで戦ったアンノウンとは違っていた。

 一見すると動きは鈍く、たいした事が無さそうだが、槍を使ってこちらの間合いの外から攻撃してくるので、近接戦闘主体の俺としては戦いにくい相手だ。

 滅の援護がなければ、まともに攻撃を当てる事が出来なかっただろう。

 

 あいつの槍で首を切り落とされそうになった時も、滅が助けてくれなかったら危なかった。

 滅の助けもあり有利に戦えている。

 滅のお陰で、奴の武器は吹き飛び、その隙に腹部に蹴りを放ちアンノウンを吹き飛ばす。

 その隙に俺は構えを取り、口元のクラッシャーを展開する。

 足元にエネルギーの紋章が浮き上がり、そのエネルギーが右足に吸収される。

 

カオル

「・・・フッ!」

 

 アンノウンに向かってジャンプし、飛び蹴りを放つ。

 蹴りがアンノウンにヒットすると、緑のオーラと共に吹き飛んだ。

 頭上に光の輪が出現し、アンノウンが苦しみだす。

 暫くすると爆発し消滅した。

 

「・・・終わったようだな。」

 

カオル

「あぁ・・・」

 

 15年越しに国や仲間たちの敵討ちが成ったのだ。

 達成感があると同時に、少しだけ虚しさを感じる。

 別に、復讐の為に生きてきた訳ではない。

 しかし、もし敵を討てる機会があれば、そう思っていた。

 今回その機会が訪れた。

 なんだか心に穴が開いたようだ。

 

「? 大丈夫か?」

 

カオル

「・・・あぁ。」

 

 これからどうなっていくのか?

 すると、俺達の背後から声がした。

 振り返ると、キョウヤと雷が走ってやって来た。

 

カオル

(・・・そうだな、俺はまだ腑抜ける訳にはいかないな。)

 

 そうだった。

 俺にはキョウヤという仲間がいた。

 あいつが自分を頼っている限り、今ここで腑抜ける訳にはいかない。

 あいつが俺のところにいる限り。

 

 

 

 

 

 

ーキョウヤsideー

 

 カオルさん達の所へ行く途中、複数のアンノウンに遭遇したが、突然動きが止まったと思ったら砂のように崩れてしまった。

 何が起こったのかと疑問に思っていたが、雷さんが「おそらく、滅達がこいつらの女王を倒したのだろう。」と言っていた。

 雷さんの案内でカオルさん達の所へ急いで向かった。

 すると、行った先にカオルさんと滅さんがいた。

 

キョウヤ

(よかった。 二人とも無事だった。)

 

 二人の話を聞くと、この空間でアンノウンの女王を倒したらしい。

 合流した後、洞窟内をくまなく探索してみたがアンノウンの姿はどこにもなかった。

 その代わりに、洞窟の一番奥に僕が使うG4ライドウォッチや霧島賢治や佐藤和真が使うライドウォッチに似た黒いウォッチがあった。

 

キョウヤ

「これって、ライドウォッチ?」

 

「いや、これは『アギト』のアナザーライドウォッチだな。」

 

カオル

「アナザーライドウォッチ?」

 

 アナザーライドウォッチとは、仮面ライダーの力を宿すライドウォッチが怪人の力に変貌したライドウォッチと言ってる。

 そして、それを埋め込まれた人間は歪んだ仮面ライダーの力を宿す怪人『アナザーライダー』に変貌してしまう。

 しかし、そのウォッチがここにあるという事は・・・

 

「おそらく、ここにアンノウンが現れたのはこのウォッチがここにあったからだろうな。」

 

 しかしそうなると、カオルさんの国がアンノウンによって滅ぼされたのは15年前だから、このウォッチは15年前からこの洞窟にあったということになる。

 いったい誰が?

 いろいろと疑問はあるが、今は・・・

 

キョウヤ

「これ、どうしましょう?」

 

「無論、破壊する。」

 

「だな、こんなもんこのままにしても害しかないだろう。」

 

 そう言って雷さんは『アタッシュウェポン』の『アタッシュショットガン』を取り出し、至近距離で引き金を引いた。

 その瞬間、アナザーライドウォッチが吹き飛び、地面に落ちる。

 真ん中に穴が開いており、暫くすると火花を上げて破裂した。

 周囲に飛び散った破片も、煙のように消えていった。

 僕達はそれを確認した後、洞窟を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 アンノウンの戦いが終わった。

 コウカイのギルドに報告に行くと僕達は冒険者の面々から英雄扱いされた。

 その日は宴会が開かれ、僕とカオルさんはそれに半分強制的に参加させられていた。

 滅さんと雷さんは、「社長の依頼は完了した、俺達はこれで失礼する。」と言ってバイクに乗って帰っていた。

 そもそも二人はヒューマギアだから、宴会に参加したとしても飲食ができないからいても仕方がない。

 とりあえずその日は飲食もそこそこに僕達が普段から使っている宿屋に向かった。

 僕はベッドに横になるとすぐに睡魔が襲ってきたので、それに逆らうことなく眠ることにした。

 

 しかし次の日の朝、僕は地獄を見る。

 

キョウヤ

「お・・・おおっ・・・あっ・・・うおお!」

 

 僕ばベッドの上で奇声を上げていた。

 筋肉痛である。

 アンノウンとの戦闘で普段やらないような動きをしたせいで、普段使っていない筋肉を酷使したせいだ。

 僕の様子を見に来たカオルさんも、僕の子の様子を見て使い物にならないと思ったのか、今日一日しっかり休むように言ってきた。

 

キョウヤ

「うぅ・・・情けない。」

 

 早く仮面ライダーG4の力を自分の物にしないといけない。

 じゃないと、何時まで経っても霧島賢治や佐藤和真に追いつけない。

 僕は改めて、もっと頑張らないといけないと思った。

 

 

 

======================

 

○仮面ライダーG4

 

アップデート後

 

■パンチ力:5t → 7t

 

■キック力:14t → 18t

 

■ジャンプ力:一跳び27m → 一跳び35m

 

■走力:100mを8.0秒 → 6.0秒

 

 

 

〇備考

 

 基本性能は防御力を除いた能力が30%上昇している。

 現在キョウヤは仮面ライダーG4の能力を45%まで発揮できる。

 

 一日3回まで変身が可能になった。

 

 装備は飛電インテリジェンスの武器庫にしまってあったG3-Ⅹの装備を粒子化して持ってきているため、G3-ⅩからG4までの全ての武器を使用できる。

 

 エナジーボリュームを操作することで両腕両足,または武器にエネルギーを集中させ武器の威力を増したり、ライダーキックを放てるようになった。

 

 

 




 と言う訳で今回はこんな感じです。

 次回は本編に戻ります。

 次回はあのフォームを出し、あの仮面ライダーを出すつもりです。
 いったいどれなのかは、次回のお楽しみです。

 それではまた次回お会いしましょう。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二十三話 この戦いたくない相手に祝福を!?

 皆さんこんにちは。

 大変お待たせしました。

 実は最近新しいゲームを買ったのでそちらをプレイしていました。
 タイトルは『Mortal shell』という2020年8月に発売されたPS4のゲームです。
 事前情報では「一時間に10回は死ねるゲーム」と聞いていたので半信半疑でしたが、やってみると本当でした。
 本当に頻繁に死にます。
 雑魚敵の攻撃でも一歩間違えれば一撃で致命傷になるくらいです。

 何か面白いゲームは無いかなと、中古ゲームをあさっていたら見つけたので衝動的に買ってしましました。
 しかしながら、なかなかやり応えがありそうなので心が折れない限り続けていこうと思います。

 それでは最新話をどうおぞ。




 

 エルシャから連絡を受けて、カズマ達を途中で拾い俺達はキールダンジョンに向かっていた。

 ちなみにカズマ達のおかげで、ダクネスのお見合いをぶち壊すことに成功した。

 なぜかアクアが「ダクネスのお腹の中にカズマの子供がいる!」とか、訳の分からないことを言ってカズマが「お前いつまで信じているんだよ!!」と言っていた。

 

 横を見るとダクネスが顔を赤くしてモジモジしていたが、また何か戯言でも行ったのだろうか?

 セナさんを一度アクセルの街に送り届け、確認の為にギルドに送り届けた。

 そのあとセナさんを回収して事情を聴くと、めぐみんとエルシャにモンスターの討伐を任せたのだが、その出所を調べてみたところ先日俺とカズマとアクアが潜ったキールダンジョンから溢れて来ていることが分かったのだ。

 

 めぐみんとエルシャは、勇んでダンジョンに挑んだが相手の数の多さに参ってしまって、俺に連絡してきたのだ。

 そして現在、キールダンジョンに向かってタイムマジーンを飛ばしているのだ。

 だが、俺は如何も嫌な予感がしてならない。

 

賢治

(なんだろうな?)

(なんでこんなに嫌な予感がするんだろう?)

 

 キールダンジョンの前に到着すると、めぐみんとエルシャその他に複数の冒険者達の姿があった。

 入り口を見ると、確かに妙なモンスターがいた。

 黒と白が半々の笑顔の仮面をかぶっており、タキシードを着た人形のような奴がいた。

 それがきちんと整列して、行進している。

 中にはこけている奴もいるが。

 ・・・あれはモンスターなのだろうか?

 

カズマ

「ふむ・・・なるほど、確かに謎だな。」

 

零子

「あんなの、このダンジョンにいたかしら?」

 

 確かに、このダンジョンにあんなモンスターはいなかったはずだ。

 ちなみに、このダンジョンはアクアが最深部の床に描いた魔法陣のお陰で、モンスターは沸いてこなくなっている。

 これが()()()()()()()()()()()()()()()()()なら、リポップしたモンスターがダンジョンから溢れて来て、またカズマあたりが激怒しそうだ。

 

セナ

「どうやら何者かがあの人形のようなモンスターを呼び出している様なのです。」

 

賢治

「最深部に何かいるということですか?」

 

セナ

「はい。 ですので、これを持って行ってください。」

「強力な封印の札です。」

 

 セナさんから札を渡された。

 これで大元を封印する事が出来るだろう。

 

アクア

「・・・私、あの仮面が生理的に受け付けないわ。」

「なんでかしら? 妙にムカムカするわ。」

 

 そういって目の前にいるカタカタと首を振っている一体のモンスターに石を投げつけようとしたら、アクアの方に寄ってきた。

 

アクア

「え? ちょっと!? なに?」

 

 近づいて来たモンスターは、アクアの足にしがみついた。

 

アクア

「ん? ・・・なにかしら? 甘えているのかしら?」

「見ているとムカムカしてくる仮面だけど・・・あれ? 何か可愛く」ボンッ!「あああああああ!!!」

 

 アクアを巻き込んで突然爆発した。

 ただ見た目の爆発程威力はないのか、アクアは多少黒焦げになった程度である。

 

セナ

「と、このようにこのモンスターは取り付き自爆するという習性があるようで。」

 

カズマ

「なるほど。」

 

エルシャ

「これのせいで大変だったわ。」

 

アクア

「ちょっと! なんでみんな冷静なの!?」

 

 冷静に観察している俺達に突っ込みを入れるアクア。

 無事で何よりだ。

 その時、何を思ったのかダクネスがダンジョンの入り口に向かって歩き出した。

 案の定、モンスターが張り付き爆発した。

 しかし、爆炎の中から出てきたのは、無傷のダクネスだった。

 

ダクネス

「・・・ふむ、私が前に出て道を開こう。」

「みんなは後ろからついて来てくれ。」

 

カズマ

「お・・・おう。」

 

キバット二世

「ふむ、やはり君は硬いな。 あの爆発に耐えるとは。」

 

ダクネス

「か! 硬いとか言うな!」

 

めぐみん

「カズマ、私とエルシャはここで待っていますね。」

 

カズマ

「まぁ、二人は俺達が来るまで頑張ってくれたからな。」

 

アクア

「あ! じゃあ私もいい?」

 

カズマ

「まぁ、いいけど・・・じゃあ、俺とダクネスと賢治と零子だけか?」

 

賢治

「だな・・・」

 

 しかし、ダンジョン内に潜る前に一つ試してみるか。

 俺はカズマとめぐみんを呼び、ウォッチを出してもらった。

 

カズマ

「賢治、いったい何をするんだ?」

 

めぐみん

「ウォッチを使って何かするんですか?」

 

賢治

「あぁ、念のために切り札を作れないか試しておこうと思ってな。」

 

カズマ・めぐみん

「切り札?」

 

 俺が取り出したのは、少し大きめのブランクライドウォッチだ。

 それをそばにあった岩の平らな部分に置き、俺達三人のジオウⅡ・ゲイツリバイブ・ウォズのライドウォッチとミライドウォッチを、ブランクライドウォッチを中心に正三角形になるように配置する。

 

 すると、ジオウⅡ・ゲイツリバイブ・ウォズのウォッチが光だし、中心のブランクライドウォッチが輝きだし色が付き始める。

 一際強い輝きを発した時、出現したのは大型ライドウォッチ『ジオウトリニティライドウォッチ』だ。

 今日が『オーマの日』かどうかは分からなかったが、上手くいったので結果オーライだな。

 

カズマ

「これって?!」

 

賢治

「『ジオウトリニティライドウォッチ』だ。」

「俺達三人の力を融合させたライドウォッチだ。」

 

めぐみん

「私達の力を融合!」

 

 カズマとめぐみんは驚き、興味深そうにウォッチを見ている。

 これでいざという時の切り札は用意できた。

 だが、これでも俺の中にある不安はまだ拭えていなかった。

 そうして俺達は数人の冒険者達と一緒に、ダンジョンの中に潜っていった。

 

 ダンジョンの中以前とは違って、まるで主が居るかの様に明かりが灯っていた。

 これも謎のモンスターのせいなのだろうか?

 しかしそんな中で、一人笑っている人物がいた。

 

ダクネス

「ふふふ・・・あははははははは!」

「当たる! 当たる! 当たるぞ!!」

 

 ダクネスが剣を振るうと、あの人形のようなモンスターが剣に当たり、爆発してしまう。

 しかし、その実態はダクネスが剣を振るうとその剣に向かってモンスターが当たりに行っているのだ。

 それでもダクネスは嬉しそうだ。

 

ダクネス

「見てくれ皆! こいつら私の剣でもちゃんと当たる!」

 

カズマ

「嬉しそうだな。」

 

零子

「そうね。」

 

 俺達のパーティはダクネスがいるからいいが、ほかのパーティはそうではなかった。

 

盗賊風の男

「おいちょっと待ってくれ、もう少しゆっくあああああああああ!」

「取り付かれた! 誰かはがしてくれ!」

 

戦士風の男

「ちくしょう! 来るな来るな来るな!」

 

戦士風の女

「ちょっと! 剣を振り回さないでよ!」

 

 モンスターに取りつかれ、パニックになる冒険者。

 モンスターを追い払うために剣を振り回す冒険者。

 それを注意する冒険者。

 爆発の威力はそこそこだが、それでも結構な爆風のため下手をしたら怪我をするだろうな。

 

 まぁ、ある意味好都合だ。

 この先に何があるか分からない状況だし、俺達のパーティなら危険は少ないだろう。

 

賢治

「よしダクネス! そのまま進め!」

 

ダクネス

「わかった! 嗚呼、何なんだこの高揚感は?!」

「初めてクルセイダーとして、まともな活躍が出来ているような気がする!」

 

 それから俺達のパーティは以前のルートをたどって奥まで進んでいった。

 しかし、道中で出て来るモンスターの数が少しずつ増えてきたので、途中から俺達も参加した。

 遠くから攻撃すれば爆発に巻き込まれることもないので、俺と零子とカズマは遠距離武器で戦ったいた。

 

 そして、最下層のリッチーが居た部屋の前まで来たのだが、その部屋の前にモンスターを等身大サイズに大きくしたような男が地面に座り、あのモンスターを作っている。

 

賢治

「どうしたもんかな?」

 

カズマ

「どう見てもあのモンスターの親玉だろうな。」

 

零子

「・・・なんか泥で人形でも作っている様ね。」

「その実態はモンスターだけど。」

 

 俺達がどうしようか悩んでいると、ダクネスが男の前に出た。

 

ダクネス

「貴様が元凶か?」

 

???

「うん?」

 

 仕方がないのでダクネスに続いて俺達も姿を現す。

 

???

「ほぉ、よもやここまで辿り着くとは・・・我がダンジョンへようこそ冒険者たちよ!」

「吾輩こそ、諸悪の根源にして元凶、魔王軍の幹部にして、悪魔達を率いる地獄の公爵、この世の全てを見通す大悪魔・・・バニルである。」

 

賢治・カズマ・零子

(魔王軍の幹部!)

 

 まさかこんな大物がいるは思っていなかったので、流石に焦る。

 ということは、さっきまでのモンスターはこいつが呼び出した眷属ということだろうか?

 

カズマ

「ちょ! これ退いた方がいいんじゃないか?」

 

ダクネス

「女神エリス様を信奉するものとして、悪魔を前にして引き下がれるか!」

 

バニル

「ほぉ・・・『魔王より強いかもしれないバニルさん』と評判の吾輩を?」

 

ダクネス

「くっ!」

 

 魔王より強いかもしれないか。

 自慢しているのか謙遜しているのか、微妙な言い様だな。

 もしかして、こいつが俺の嫌な予感の正体だろうか?

 

バニル

「まぁ、待て。」

「魔王軍の幹部と言っても、城の結界を維持しているだけの、言わば『なんちゃって幹部』でな、魔王にベルディアの一件で調査を頼まれたのだよ。」

 

カズマ

「あぁ・・・」

 

バビル

「あとアクセルの街にいる、働けば働くほど貧乏になるという不思議な特技を持つ、ポンコツ店主に用が有って来たのだよ。」

 

零子

「え? それって・・・」

 

 どう聞いてもウィズさんだよな。

 同じ魔王軍の幹部だし、やはり面識があるみたいだ。

 

バニル

「そして、吾輩は世間で言うところの悪魔族、悪魔の最高のご馳走は汝らが『嫌だな』と思う悪感情。」

「汝ら人間が一人生まれる度に、我は喜び庭駆け回るであろう!」

「故に吾輩は、『人間殺さず』をモットーにしているのだ。」

 

 つまりこいつは、俺達人間をご飯製造機かなにかと思っているわけか?

 人間が死ぬとご飯が食べられない。

 だから人間は殺さない。

 ・・・こいつ意外と無害なんじゃないか?

 

カズマ

「ダンジョンからこの人形みたいなやつがポコポコ出てきて、その人間がえらい迷惑しているんだが?」

 

 それだよな。

 人間は殺さないなら、なんでこんなことをするのか?

 

賢治

(死者は出ていないと聞いたが?)

 

バニル

「なんと! 眷属であるこやつ等を使って迷宮内にいる雑魚モンスターたちを駆除して回っていたのだが、ふむ・・・外に溢れているとなると、もう迷宮内にモンスターは居ないと言う事か、ならば・・・」

 

 バニルが手をかざすと、さっきまでバニルと同じ動きをしていた人形がただの土に変わってしまった。

 

バニル

「計画を次の段階に引き上げるか。」

 

零子

「計画?」

 

カズマ

「何を企んでるんだ?」

 

バニル

「失敬な! 鎧娘が数日戻らないだけで、自室を熊の様にウロウロしずっと落ち着きのなかった小僧よ。」

 

賢治

「え?」

 

 カズマの奴そんな事をしていたのか?

 どんだけダクネスを心配していたんだ。

 

カズマ

「おいちょっと待て! 何見て来た見たいに言ってるんだよ! うん?」

 

 隣を見ると、ダクネス顔を赤くしてチラチラカズマを見ていた。

 

カズマ

「モジモジしてんじゃねぇよ!」

 

バニル

「いいか吾輩にはな、飛び切りの破滅願望があるのだよ。」

 

賢治

「え? 破滅願望。」

 

 破滅願望と聞き、俺の中の嫌な予感がさらに膨れ上がった。

 何故なら、それを聞いた時頭の中に仮面ライダービルドのラスボス、エボルトの兄、キルバスが思い浮かんだからだ。

 キルバスとは、その身に滾る破壊衝動のまま、自分自身さえも進んで巻き込んで全てを壊し尽くす、短絡的思考と虚無主義が混ざったようなエキセントリックな性格の持ち主で、その危険性はエボルトが「破滅型の快楽主義者」と言わしめるほどやばいやつなのだ。

 

 果たしてこのバニルという男はどういった破滅願望を持っているのか?

 

バニル

「まずダンジョンを手に入れる、各部屋には悪魔達を待機させ罠を仕掛ける。」

「挑むのは歴戦の凄腕冒険者たち。」

「やがて、苛烈な試練を潜り抜け、勇敢な冒険者達が最奥の部屋に冒険者達が辿り着く! 待ち受けるのはもちろん吾輩!」

「よくぞここまで辿り着いたな冒険者達よ! さぁ、吾輩を倒し莫大な富を手にして見せよ!」

「吾輩がそう言って、ついに始まる最後の戦い!」

 

 バニルは興奮しているようで、体からドス黒い魔力が放出される。

 魔王軍の幹部と言えば、ベルディアやウィズさんしか知らないがかなりの魔力量だ。

 少なくとも、ベルディアなんかとは比べ物にならない。

 

バニル

「激戦の末、打ち倒された吾輩の背後には封印されし宝箱が現れる。」

「冒険者達がその宝箱を開けると、中には・・・・・・『スカ』と書かれた紙切れ一枚。」

「それを見て呆然としている冒険者達を見ながら・・・・・・吾輩は滅びたい。」

 

賢治・零子・カズマ・ダクネス

「・・・・・・」

 

 言葉が出なかった。

 破滅願望と言うからなんだと思ったら、確かに悪辣かもしれないが聞いていて呆れるような物だ。

人間殺さずをモットーにしているだけでなく、最終的には自分が倒されることを大前提にしているなんて、キルバスよりずっとマシに思える。

 

バニル

「その計画を実行するために、友人の店で金を貯めダンジョンを作ろうとしていたのだが、運よくこのダンジョンを発見し、主が居なかったようなのでこのダンジョンを使わせてもらおうと思ったのだ。」

「しかしこの一番奥の部屋に怪しからん魔方陣が張られていてな、中に入ることが出来んのだよ。」

 

カズマ

(結局あいつかよ。)

 

バニル

「ほぉ、貴様の仲間がこの魔方陣を張ったのか?」

 

カズマ

「え?!」

 

バニル

「どれ・・・ちょっと拝見。」

 

 そう言ってバニルは両手の人差し指と親指で四角を作ると、カズマを覗き込んだ。

 仮面の奥の瞳が興奮した紅魔族並みに赤く光ってこちらを見つめる様は、ちょっとしたホラーだ。

 

バニル

「・・・・・・フフッ、フハハハハハハハハ!」

「何と言う事だ! 貴様の仲間のプリーストがこの傍迷惑(はためいわく)な魔方陣を作ってくれよったのか!」

「見える・・・見えるぞ、プリーストが優雅に茶を(すす)りながら(くつろ)いでいる姿が見えるわ!!」

 

 何とバニルはアクアが魔方陣を張った張本人だと気付いたようだ。

 見通す悪魔というのも名ばかりじゃないようだ。

 しかし、アクアの奴こんな時に寛いでいるのか?

 

バニル

「そこの小僧との賭けに負け、すごい要求とやらが気になり、先ほどから色々持て余し、ずっとモジモジしている娘よ!」

 

ダクネス

「持て余していないしモジモジもしていない!」//////

「適当なことを言うな!」//////

 

カズマ

「・・・・・・」//////

 

 賭けとか、すごい要求とか、いったい何の話だろうか?

 ダクネスは顔を赤くし、必死になって否定しているが、満更でもなさそうなのは気のせいだろうか?

 カズマも顔を赤くしているが、いったいダクネスに何をするつもりなのだろうか?

 

バニル

「この一件が終わったら、鎧娘にどんな要求をしようかソワソワしている小僧よ!」

 

カズマ

「ソソソソワソワなんてしてねぇし! してねぇし!!」//////

 

 カズマも何を考えているんだ?

 実際にダクネスに何かする度胸があるとは思えないが。

 

バニル

「そこを通してもらおうか?」

「なに、『人間殺さず』が吾輩のモットーだ。」

「・・・あぁ、人間は殺さんとも・・・人間はな。」

「こんな傍迷惑な魔方陣など作ってくれよって! きついの一発ブチかましてくれるわ!」

 

 どうやらバニルはアクアが人間ではないことに気付いたようだ。

 さすがにアクアに危害が及ぶのなら、黙っている訳にはいかないな。

 俺の大事な人だしな。

 

バニル

「なに!? 貴様・・・さすがに趣味が悪いぞ。」

 

賢治

「余計なお世話だ。 それに、アクアは意外と可愛いぞ。」

 

零子

「ねぇ。」

 

 意外だが、アクアは俺と零子達の前では意外と可愛いところを見せてくれるのだ。

 そんな話をしているとき、ツールベルトに入れてあるブランクライドウォッチが光だし、バニルに向かって飛んで行った。

 

バニル

「!?」パシッ!

 

賢治

「なに!?」

 

零子

「なんで?」

 

バニル

「ふむ、この魔道具は魔王からも渡されたな。」

「しかし、どうにも気に入らなかったので破壊したがな。」

 

 どうやらバニルもベルディアやウィズさんと同じ様に魔王からウォッチを渡されていたようだ。

 何のウォッチか分からないが、わざわざ破壊してくれたのならありがたいな。

 しかし、今バニルの手にあるのはどのライドウォッチなのだろうか?

 

バニル

「だが、これはなかなか面白そうだな。 どれ。」

 

 バニルはウォッチのリューザーを回し、スターターを押した。

 

 『エボル!

 

 

 すると、ウォッチが形を変え赤と青とゴールドに色分けされたドライバーに変化した。

 それはどう見ても『エボルドライバー』だった。

 

賢治

(おいおい! よりによってなんでこいつに?!)

 

バニル

「ほぉ、何やら焦っている様だな。」

「貴様のその焦燥感、なかなか美味でおおっと!」

 

 俺は問答無用でバニルに斬りかかった。

 

バニル

「ちょ! いきなり何をおわっと!」

 

 横から零子がアタッシュッショットガンで撃つ。

 

バニル

「汝もか! 何をする!」

 

賢治

「当たり前だ!」

 

零子

「そのドライバーは百害あって一利なしよ!」

 

 こんな悪魔にエボルドライバーなんかが渡ったら絶対碌でも無いことになるに決まっている。

 

カズマ

「おい二人とも、あのドライバーがどうかしたのか?」

 

賢治

「カズマ! ダクネス! 二人も手伝ってくれ!」

「何としてもあのドライバーを破壊するぞ!」

 

カズマ

「お、おう!」

 

ダクネス

「わ、わかった!」

 

 カズマとダクネスが加わって、バニルのドライバーを破壊するために、俺は必死になって斬りかかった。

 しかし、やはり見通す悪魔の異名は伊達では無い様で、こちらの攻撃は空振りに終わっている。

 

バニル

「フハハハ、汝らは余程この魔導具を使わせたくないようだな。」

「ならば、いでよ! 眷属たちよ!」

 

 バニルがそう言うと、地面からさっきの人形たちが出てきた。

 そいつらが一斉に俺達に襲い掛かってきた。

 そのせいでバニルに時間を与えてしまった。

 

バニル

「では、さっそく。」

 

 バニルは腰にドライバーを装着する。

 バルトの左側についているフルボトルホルダーから二本のフルボトルを取り出し、軽く2・3回振るとキャップを回転させて、ドライバーに差し込んだ。

 

 『コブラ! ライダーシステム! エボリューション!

 

 ドライバーの右側にあるレバーを回すと、足元に『スナップライドビルダー』と呼ばれる高速ファクトリーが現れ、バニルの周囲にファクトリーから繋がるように『ファクトリアパイプライン』が伸び、前後にスーツとアーマーが出現する。

 

 『Are you ready?

 

 ドライバーから『準備はいいか?』という音声が流れる。

 そしてバニルは。

 

バニル

「たしか、こう言えばいいのだな。」

「変身!」

 

 『コブラ! コブラ! エボルコブラ!

 『フッハッハッハッハッハッハ!

 

バニル

「仮面ライダーエボル、フェーズ1。」

「・・・だったか。」

 

 結局変身を許してしまった。

 できればこの仮面ライダーとは戦いたくなかったが、仕方ないか。

 

カズマ

「お・・・おい、なんかやばそうな仮面ライダーなんだが?」

 

ダクネス

「い・・・威圧感がすごいぞ。」

 

 ただでさえ相手は魔王軍の幹部なのに、さらに仮面ライダーエボル変身したとなると、絶望感が半端ない。

 しかし、どうやらこちらの切り札が無駄にならなくて済みそうである。

 俺はジオウライドウォッチを起動してドライバーを呼び出し、さらにこのダンジョンに入る前に生み出しておいたジオウトリニティライドウォッチ取り出した。

 

賢治

「カズマ、びっくりすると思うが問題ないからな。」

 

カズマ

「え? それってどう言う」

 

 俺はジオウトリニティのスターターを押した。

 

 『ジオウトリニティ!

 

 ジオウトリニティライドウォッチをドライバーにセットすると。

 

 『ジオウ!

 

 ジオウトリニティのドライバー拡張デバイスの『オーバーザイトクロック』が開く。

 そして、ウォッチの左側についている『ユナイトリューザー』を一段階回転させる。

 

 『ゲイツ!

 

 すると、カズマに光が差す。

 

カズマ

「うお!? なんだこれ?」

 

 さらにもう一段階回転させる。

 

 『ウォズ!

 

 

 

ーめぐみんsideー

 

 カズマ達がダンジョンに潜って暫く経ち、ほかの冒険者達は人形みたいなモンスターに阻まれ、仕方なく地上に戻ってきていた。

 爆発に巻き込まれた者もいたようだが、全員軽傷のようで安心した。

 

めぐみん

「カズマ達は大丈夫でしょうか?」

 

エルシャ

「大丈夫よ、賢治達もいるし。」

 

 その時だった。

 さっきまで少し曇っていた空が急に晴れたのだ。

 

めぐみん

「え?!」

 

エルシャ

「いきなり何?」

 

 すると、一際輝いている星から光が私に降り注いだ。

 

アクア

「え?! めぐみん!」

 

セナ

「めぐみんさん! 大丈夫ですか?」

 

めぐみん

「え・・・えぇ、大丈夫です。」

 

 次の瞬間、私はどこか別の場所にいた。

 

エルシャ・アクア

「めぐみん!」

 

 

 

 

 

 

ー賢治sideー

 

賢治

「変身!」

 

 オーバーザイトクロックはすべて開かれたところで、ジクウドライバーを回転させる。

 

 『ライダータイム!』『仮面ライダー・ジオウ!

 『トリニティタイム!

 

 すると、カズマが強制的に仮面ライダーゲイツに変身し、次の瞬間変化が起きた。

 

カズマ

「うおおおお! なんだこりゃああああああ!!」

 

 カズマが頭部だけになり、その上下から時計のバンドが出現する。

 そして、ジオウトリニティの転移の力でこっちに転移しためぐみんも、同じ状態になっていた。

 

めぐみん

「な! なんですかこれええええええ!!」

 

 『三つの力! 仮面ライダージオウ! ゲイツ! ウォズ!

 『トリニティ! トリニティ!

 

 カズマが俺の右肩に、めぐみんが俺の左肩に装着され、俺の仮面の部分が胸元にスライドし、黄色・ピンク・青の『ライダー』の文字が刻まれた新しい仮面が出現する。

 

 そして、変身者の俺達は『クロックオブザラウンド』という意識空間に体が出現する。

 

賢治

「よっと!」

 

カズマ

「うわ!」

 

めぐみん

「おっと!」

 

賢治

「やっぱりこの空間に来るんだな。」

 

カズマ

「もしかして、俺達合体したのか!?」

 

めぐみん

「これは予想外なんですけど!」

 

 予想通りだったが、今の俺達は原作の仮面ライダージオウの初めてジオウトリニティに変身したソウゴ達みたいだ

 

バニル

「ほぉ、おもしろい。」

「一つの体に三人の魂か、驚きと混乱の感情・・・う~んなかなかに美味であるな。」

 

めぐみん

「あの、あの紅魔族の琴線に激しく響く外見の仮面ライダーと思わしき男は?」

 

カズマ

「おバカ! あいつは魔王軍の幹部だよ!」

 

 確かに外見はめぐみんが好きそうな仮面ライダーだ。

 だが、ここは真面目になってほしい。

 本当にヤバい奴だからな。

 

賢治

「二人共、相手はかなりヤバい奴だから真面目に頼む。」

 

 正直なことを言うと、このジオウトリニティはジオウⅡやゲイツリバイブの様な特殊能力はないのだ。

 あえて言うなら、ジオウ・ゲイツ・ウォズそれぞれのライダーの武器が使えることと、『ゲイツとウォズをどこにでも呼び出せる』くらいなのだ。

 

 ただ、通常の3倍もの人工筋肉『ナノチューブ筋』の封入と、3人の腕力・脚力の合力で圧倒的な破壊力を生み出す『アローインテグレーター』により純粋なスペックならパンチ力以外ならエボルに勝っているのだ。

 つまり、ジオウトリニティは『純粋に強い』形態なのだ。

 

カズマ

「わ・・・わかった!」

 

めぐみん

「了解です!」

 

バニル

「フハハハ! かかってくるがいい!」

 

 俺達はバニルに向かって走り出し、戦いを挑むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ダンジョンの入り口では、めぐみんが急に消えたことに混乱していた。

 セナさんが落ち着くように冒険者達を説得しているが、目の前で急に人間一人が消えたのだから仕方がない。

 エルシャとアクアもさすがに慌てている。

 冒険者達がそんな状況で慌てている時、「ゴゴゴゴゴ!」と地鳴りみたいな音が聞こえ始めた。

 

アクア

「な・・・なに!?」

 

エルシャ

「この感じ・・・地面から?」

 

 「今度は何だ?」と冒険者達が驚いていると、地面を突き破って何かが現れた。

 

賢治・カズマ・めぐみん

「うおおおおお!」

 

バニル

「フハハハハハハ!」

 

 ジオウトリニティとなった俺達と仮面ライダーエボルになったバニルはダンジョンの天井を突き破りながら、地上にまで戻って来たのだ。

 その勢いのままに空中でインファイトを繰り広げる。

 

アクア

「なにあれ?」

 

エルシャ

「仮面ライダー?」

 

零子

「顔にライダーの文字があるのはケン君とカズマとめぐみんよ!」

 

ダクネス

「もう一人は魔王軍の幹部のバニルという悪魔だ。」

 

セナ

「魔王軍の幹部!」

 

 俺達の通った穴を使って変身した零子とダクネスが出てきた。

 

アクア

「ブッ! 臭っ! 間違いないわ悪魔が発する(にお)いよ!」

 

エルシャ

「どんな臭いよ!?」

 

 そんな時、上空でインファイトを続けていたバニルが地上に降り立つ。

 それに続くように俺達も地上に降りる。

 

バニル

「フハハハ。 初めましてだな、忌々しくも悪名高い水の女神と同じ名のプリーストよ。」

「我が名はバ「セイクリッド・エクソシズム!」あああああああああ!!!」

 

 バニルが名乗りを上げようとしていたところに、アクアは退魔魔法を撃ち込んだ。

 変身して強化されている筈なのに、アクアの退魔魔法は効いているようだ。

 しかし、今のはないだろう。

 

賢治・カズマ・めぐみん

「えぇ~・・・」

 

零子・ダクネス・エルシャ・セナ

「・・・・・・」

 

冒険者達

「・・・・・・」

 

アクア

「・・・? なに?」

 

カズマ

「いやお前、いきなり退魔魔法とか、空気読めよ名乗っているんだから。」

 

 台無しだな。

 そんな微妙な空気の中、バニルは起き上がった。

 

バニル

「えぇい! いきなり退魔魔法をぶちかますとか、これだから悪名高いアクシズ教の者は忌み嫌われるのだ。」

「礼儀というものを知らんのか!」

 

アクア

「あら~、悪魔が礼儀とかなに言ってんのかしら?」

「人の悪感情がないと存在する事すら危うい寄生虫のくせに・・・プークスクス!」

 

バニル

「・・・・・・」

 

アクア

「・・・・・・」

 

 またしても沈黙がこの場を支配する。

 それを破ったのが。

 

アクア

「『セイクリッド・ハイネス・エクソシズム』!」

 

 先ほどの退魔魔法のさらに上位の退魔魔法をアクアが放った。

 ウルトラ系特撮ヒーローみたいな構えで。

 

バニル

 

「甘いわ!」

 

賢治・カズマ・めぐみん

「あぶな!」

 

 しかし、バニルも来ることが分かっていたようで、軽く避けてしまう。

 危うく俺達にアクアの魔法が当たるところだった。

 

アクア

「ちょっと! 避けてんじゃないわよ!」

 

バニル

「フハハハ、わざわざ当たってやる気は無いわ!」

 

アクア

「くぅ~! こうなったら!」

 

 アクアは悔しそうにしながら、スマートバックルを装着した。

 

アクア

「変身!」

 

 『Complete!』

 

 アクアがスマートバックルのバックルの部分の向きを変えると、白のアンダースーツにメタリックブルーのアーマーを装着した、『仮面ライダーサイガ』の様な配色をしたライオトルーパーに変身した。

 しかし、ライオトルーパーになったところで、スペック的な問題がある。

 正直焼け石に水な気がする。

 

エルシャ

「私も!」

 

 『カチドキ!

 

 エルシャが戦国ドライバーを呼び出し、シンカチドキロックシードをセットする。

 ドライバーのブレードを倒し、ロックシードを開く。

 

 『カチドキアームズ! いざ出陣! エイエイオー!

 

 変身が完了すると、エルシャは仮面ライダー斬月・カチドキアームズに変身する。

 そして、皆分かっているのか零子にダクネスもバニルに向かっていく。

 さらに他の冒険者達も向かっていく。

 

バニル

「フハハハハハ! ハハハハハ! フハハハハハハハハ!」

 

 しかし、バニルはすべての攻撃をときにはアーマーで防いでいなし、ときには躱し、ときには俺達仮面ライダーはともかく、殺さない程度に手加減して冒険者達を殴り飛ばしている。

 こんな乱戦でも全く攻撃が当たらないなんて、流石見通す悪魔だ。

 

侍風の男

「くそ! 攻撃が当たらねぇ!」

 

戦士風の男

「どうなってんだ!?」

 

バニル

「ふむ、この魔導具は中々良いな。」

「基本的なステータスが全て上がるだけでなく、忌々しい神々の魔法への耐性も獲得できるとは。」

 

 すべてを見通すだけでなく、俺達と同じ様にバニルもステータスが上がっている様だ。

 正直、これまで戦ったどんな奴より厄介だ。

 

バニル

「フハハハハハ! キリキリかかってくるがいい! へなちょこ冒険者共め!」

 

 バニルが冒険者達を挑発し、複数の冒険者達がバニルを取り囲むように陣取る。

 しかし、やはり能力的差を覆せるはずもなく、一人、また一人と冒険者達はほぼワンパンで沈められる。

 残っているのは仮面ライダー達だけである。

 

めぐみん

「・・・賢治、そろそろいいのでは?」

 

カズマ

「そうだな、もういいんじゃないか?」

 

賢治

「・・・そうだな。」

 

 しかし、俺とカズマとめぐみんだけは勝てるという確信がある。

 ・・・いや、勝つとは少し違うな。

 それでもこっちには策がある。

 

賢治

「ダクネス!」

 

ダクネス

「? どうした?」

 

賢治

「俺が合図をしたら、キバの紋章の力であいつを拘束してくれ。」

 

ダクネス

「わかったが・・・大丈夫なのか?」

 

キバット二世

「拘束できたとしても、奴相手では数秒が関の山だぞ。」

 

 たしかに、バニル相手には数秒しか持たないだろう。

 だが、それで十分だ。

 要は倒す隙さえ作れればいいのだから。

 

賢治

「大丈夫だ。 頼むぞ。」

 

 そう言って再びバニルに向かっていった。

 俺達はバニルに組み付く。

 

賢治

「そろそろ()()を付けようぜ!」

 

バニル

「! いいだろう、吾輩を倒せるものなら倒してみるがいい!」

 

 俺達とバニルが戦い始めると、それは激戦というものになる。

 パンチやキックが衝突しあうたびに衝撃波が発生し、俺がサイキョウジカンギレードを振るうと斬撃が飛び、バニルがトライスチームガンを使うと弾丸が地形を削る。

 ほかの冒険者達は巻き込まれないように後方に下がっている。

 

 ほかの仮面ライダーは斬撃や流れ弾がほかの冒険者達に被害がいかないようにしてくれている。

 アクアは隠れているが。

 そして暫くお互い殴り合っていたが、ほんの一瞬だが()が出来た。

 その瞬間俺はバニルを力を込めて殴り飛ばした。

 

賢治

「今だ!」

 

ダクネス

「! ハァ!」

 

 俺が合図を出すと、ダクネスがキバの紋章を放つ。

 バニルが紋章に当たると拘束される。

 

バニル

「うおおおおお! 小癪な!」

 

賢治

「カズマ! めぐみん! いくぞ!」

 

カズマ

「おう!」

 

めぐみん

「いきましょう!」

 

 バニルが紋章に捕まっている内に、俺達は地黄ライドウォッチとジオウトリニティライドウォッチのスターターを操作した。

 

 『フィニッシュタイム! ジオウ!』『ゲイツ!』『ウォズ!

 

 ジオウトリニティのスターターを3回押し、ジクウドライバーのリューザーを押してドライバーを回転させる。

 

賢治

「ハァ!」

 

 『トリニティ!

 

 俺達がジャンプすると、ジオウ・ゲイツ・ウォズの幻影が出現し、紋章で拘束されているバニルの周囲には三つのライダーキックのエフェクトが囲む。

 三人のライダーの幻影がジオウトリニティと重なる。

 

 『タイムブレイク!』『バースト!』『エクスプロージョン!

 

賢治・カズマ・めぐみん

「ハアアアァァ!」

 

バニル

「! があああああぁぁぁ!!!」

 

 俺達のライダーキックが命中すると、バニルは後方に吹き飛び大爆発を起こす。

 

バニル

「ま・・・まさか、ここで吾輩が・・・滅ぶ・・・・・・か・・・     」

 

 煙が晴れるとそこには、人型の土があり頭の部分には半分に割れた仮面が置かれていた。

 

 

 

 

 

 

ーアクセル 冒険者ギルドー

 

 翌日、俺達は冒険者ギルドに呼ばれた。

 

セナ

「冒険者・霧島賢治殿。 貴殿を表彰しこの街及びベルセルク王国から感謝状を与えると同時に、嫌疑をかけたことに対し深く謝罪をさせていただきます。」

 

 バニルとの戦いの後、魔王軍の関係者が危険を冒してまで魔王軍の幹部である『見通す悪魔・バニル』を討伐するはずがないと言う事で、俺に対する疑いは晴れた。

 あと、ベルセルク王国の王女様のアイリス王女の口から俺達の活躍が広まり、国王様が俺に課せられていた『ギルドからの指名依頼(強制参加・無報酬)』を取り下げることを宣言してくれたのだ。

 これでもう、死刑におびえる心配はなくなったし、ただ働きをしなくて済むようになった。

 

セナ

「そして、冒険者・霧島賢治一行。」

「魔王軍の幹部ベルディア討伐、及び機動要塞デストロイヤー討伐における多大な貢献に続き、先の魔王軍幹部バニル討伐は貴方達の力無しでは無しえませんでした。」

「よってここに、貴方達から押収した品々はすべて返還するとともに、王国からの褒賞金及びバニルに掛けられていた賞金額を加え、金20億エリスを進呈し、その功績をたたえます!」

 

賢治・零子・カズマ

「!!?」

 

めぐみん・ダクネス・アクア・エルシャ

「!!?」

 

冒険者達

「うおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

 20億エリス!!

 前世では学生の時からのバイトから始まり、社会人になってから少しづつ貯金して、通帳の貯金額が100万円に到達したときは、「100万・・・なんていい響きなんだ!」と思ったが今回は文字通り桁が違う。

 正直、額が額なので実感がわかない。

 しかし、周りの皆はまるでお祭り騒ぎだ。

 

 まぁ、金があることはいいことだ。

 浪費しない範囲で使っていこうじゃないか。

 だが、これから先さらに厄介なことが待ち受けていることをこの時の俺達は知らなかった。

 

 

 

 




 
 と言う訳でいかがだったでしょうか?

 仮面ライダーエボルはバニルになってもらいました。

 ジオウトリニティの能力も改めて調べてみましたが、特に特殊能力は無いんですね。
 しかも、変身している三人の気持ちが一致していないと弱体化するみたいですし。
 それでオーマジオウに膝を付けるあたり、やっぱり強いですよね。

 次回はオリジナルの話になる予定です。

 次回もよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二十四話 この並行世界に祝福を

 皆さんお待たせしました。
 本当にお待たせしました。

 書かないといけないと思っていたんです。
 けど、気持ちとは裏腹にどうにもなかなか進みませんでした。
 おかげでこんなに時間がかかりました。
 申し訳ありませんでした。

 これからも投稿頻度が遅くなってしまうかもしれませんが、できるだけ早く投稿する様に頑張りますので、長い目で見てやってください。

 今回はオリキャラが出てきます。
 どんな名前にするか悩みました。
 今回もよろしくお願いします。



 

 魔王軍幹部バニルを討伐した俺達は、平和な日常を過ごしていた。

 資金も潤沢にあるし、スパイ容疑も晴れたので、今のところ悠々自適な日々を過ごしている。

 そして今は・・・

 

アクア

「いやーーーーーーっ!」

 

 と言うアクアの叫び声が響いている。

 

アクア

「いーやーよ!」

「私は絶対行かないからねー!」

 

めぐみん

「いい加減に行きますよ!」

 

ダクネス

「暖かくなってきてモンスターの被害も増えているのだ。」

「今こそ私達冒険者の出番なのだ!」

 

 そう。

 ここ最近春が近くなり、暖かくなってきたのだ。

 そのせいでモンスターたちも活発に動き出し始めたのだ。

 いくら気持ちに余裕があると言っても、自堕落な生活はいけないと思うのだ。

 

 しかし、それでもまだ寒い。

 アクアは寒いから外に出たくないと言っているのだ。

 だが、だからと言って外に出ないというのはよろしくない。

 と言う事で、めぐみんとダクネスがアクアをクエストに誘って外に連れ出そうとしているのだ。

 だがアクアも必死になって抵抗している。

 

アクア

「子供なの! 二人共外で遊びたがる子供なの!」

「そんなに外に行きたいのなら二人で行ってきて!」

 

めぐみん

「誰が子供ですか!」

 

ダクネス

「今のアクアの方が子供みたいだぞ! でないと・・・」

 

めぐみん・ダクネス

「あんな風になりますよ(なるぞ)。」

 

 そう言って二人が指差したのは、こたつの中でこたツムリになっているカズマだった。

 

アクア

「そりゃあ、私もあんな風にはなりたくないけど・・・けど、私よりまずあっちのダメな方を何とかしてよ!」

 

カズマ

「おい・・・温厚な俺でも怒る時は怒るぞ。」

「なんださっきからダメな方とかあんな風とか、失礼だろ。」

 

アクア

「文句があるんならそこから出てきなさいよ。」

 

カズマ

「・・・・・・」シュッ!

 

 カズマはこたつの中に消えていった。

 さて、なんでカズマがこんなことになっているのか、それは少し前にさかのぼる。

 

 スパイ容疑が晴れた日から1日経ち、俺とカズマとめぐみんは()()()()ウィズの店にやってきた。

 そこには・・・

 

バニル

「へいらっしゃい! よく来たな小僧たちよ。」

 

 エプロンを着け、店で番頭をしているバニルがいた。

 何故バニルがここにいるのかと言うと、実は俺達はダンジョンでの戦闘の時、ある約束を交わしていたのだ。

 正直に言うと、仮面ライダーエボルに変身したバニルを相手にするのは面倒くさい。

 だから俺は、バニルに言ったのだ。

 

 「魔王軍の幹部を辞めたくないか?」と。

 バニルは自分のダンジョンを持ち、そのダンジョンを利用して冒険者達をおちょくって、最終的には自分が滅ぶ。

 それを望んでいた。

 だが、俺は考えた。

 魔王軍の幹部である内は、難しいのではないかと。

 バニルもそのことが気になっていたらしく、実際彼も魔王軍の幹部を辞めたがっていたのだ。

 だから一度魔王軍の幹部として、今の依り代が消滅すれば晴れて自由の身になれると思ったので、ここは俺達に倒されることで魔王と交わした契約を解消させようとしたのだ。

 その代わりに、俺達とは敵対しないようにと約束したのだ。

 

 結果、今ここにいるバニルは魔王軍との契約が切れて、晴れて自由の身になったのだ。

 あの時、もしそのままガチで戦っていたら高い確率でバニルに負けていたと思う。

 そして、バニルは俺達の前世の記憶を読んだみたいで、その世界の文明レベルの高さに興味がわいたようだ。

 

バニル

「ジオウの小僧はすでにこの店に商品を卸している様だが、ゲイツの小僧もどうだ?」

「商品の量産態勢と販売ルートはこちらが確保する。 悪くなかろう?」

 

 と言う事で、零子やカズマの冒険者としての能力を生かして、俺達の前世の世界の商品を作ることになったのだ。

 手始めにカズマはこたつを作ってみたのだが、こたつの魔力に負けてこたツムリになってしまったのだ。

 

カズマ

(こたつを作ったのは失敗だったかな?)

(・・・作業が進まん。)

 

 すると、めぐみんとダクネスがなかなか出てこないカズマを見て、カズマの入っているこたつの左右に移動して。

 

カズマ

「おい何してる?」

 

めぐみん

「いっそのことカズマをこのこたつごと外に放り出してしまおうと思って。」

 

カズマ

「おいよせ! お前らに人の心はねぇのかよ!」

 

 それからカズマもさすがに諦めたのか、外に出てクエストを受けに行った。

 クエストの内容はリザードランナーという巨大なエリマキトカゲの様なモンスターの討伐である。

 リザードランナーは普段は危険がない二足歩行のトカゲなのだが、繁殖期に入ると姫様ランナーと言う個体が現れ、姫様ランナーとつがいになるためにオスたちが集まり勝負を始めるらしい。

 

 その勝負と言うのが、『走る』らしい。

 とにかく走って進路上のなにもかもを薙ぎ倒しながら走り、一番早いオスが姫坂ランナーとつがいになれるという、なんとも傍迷惑な求愛行動である。

 

 カズマ・めぐみん・ダクネス・アクアの四人は、このリザードランナーの討伐を受けてアクセルの街を出ていった。

 アクアは俺と離れるのを嫌がっていたがアクアはカズマのパーティの回復要員なので何とか説得してついて行ってもらった。

 そして俺は今、ギルドの食堂にいる。

 

 何故俺がカズマ達と離れてここに居るかと言うと、バニルに言われたのだ。

 近い将来、俺を訪ねてくる者がギルドの食堂に現れると。

 それで今こうしてギルドにいる訳だが。

 

???

「あの、ちょっといいですか?」

 

賢治

「うん?」

 

 バニルの言ったとおりになった。

 彼女はカズマを冬将軍から助けたり、デストロイヤーの討伐の際に協力してくれた黒い服の魔法使いだ。

 しかし、彼女の声を改めて聞いたがめぐみんにそっくりなのだが?

 

賢治

「何か用かな?」

 

???

「貴方が一人になる時を待っていました。」

「貴方に協力してほしいことがあるんです。」

 

賢治

「俺に?」

 

???

「まず、自己紹介しますね。」

 

 すると彼女は、目元に付けている仮面を外す。

 仮面の下にあった彼女の瞳は紅魔族特有の赤い目をしていた。

 

賢治

「え?! めぐみん?」

 

 と、つい口にしていた。

 

めぐみん?

「やはりわかりますか?」

 

賢治

「え! じゃあ本当に?」

 

めぐみん?

「はい、私はめぐみんです。」

「しかし、貴方が知るめぐみんではありませんが。」

 

賢治

「・・・訳アリか?」

 

めぐみん

「・・・じつは」

 

 どうやら彼女はめぐみんで間違いないようだ。

 ただ、この世界のめぐみんとは違う、別の世界のめぐみんのようだ。

 便宜上、彼女のことはアナザーめぐみんと呼ぶことにした。

 

 彼女は自分の世界でこの世界のめぐみんと同じ様に、カズマ・ダクネスと出会いパーティを組んで魔王軍の幹部のベルディアを倒し、冬将軍を退け、デストロイヤーを討伐し、こちらの世界とほとんど変わらない暮らしを送っているようだ。

 ちなみにカズマの転生特典は仮面ライダークウガへの変身能力と非変身状態でも仮面ライダーの武器が使えるようになる能力、この二つをセットで貰ったようだ。

 

 もちろん、こっちの世界とは違う部分もある。

 まず、こちらのカズマはアクアと一緒にこの世界に転生したが、アナザーめぐみんの世界のカズマは一人で転生してきたらしい。

 実際彼女の世界ではアクアは居ないらしい。

 

 そして、俺と零子、エルシャやルミもいない。

 インベスやアナザー武神鎧武、アナザーレンゲル、アナザーゴルドドライブなどのアナザーライダーとの戦いはなかった。

 だが、デストロイヤー討伐あたりから彼女の世界で仮面ライダーに登場する怪人達が頻繁に出現するようになったらしい。

 それは日を追うごとに出現頻度が増していき、最終的にはベルセルク王国を除いたすべての国が怪人達に蹂躙されたのだ。

 カズマも怪人達の戦いの中で、何度か瀕死の重傷を負ったらしいが、そこはクウガの能力のお陰で死の淵から蘇ってきたのだ。

 「いざという時は自分の体に雷系の魔法を撃ち込んでくれ。」と言っていた。

 そのお陰でカズマは『黒の金のクウガ』アメイジングマイティに到ったのだ。

 

 そして、怪人の出現の原因が魔王城にあると言う事をつかんだカズマ・めぐみん・ダクネスの三人は魔王城に向かって旅に出たのだ。

 その道中、めぐみんとダクネスも仮面ライダーになる機会に恵まれた。

 旅の途中に突然隕石が降って来たのだ。

 気になってその隕石を調べてみると、その中から錆びだらけの『ギンガドライバー』と『サソードゼクター』と『サソードヤイバー』が発掘できた。

 

 サソードゼクターとサソードヤイバーをダクネスが、ギンガドライバーをめぐみんが手に取ると一際強い光を放ち、錆が取れ新品同様の輝きを放ったのだ。

 このとき、仮面ライダーサソードと仮面ライダーギンガが誕生したのだ。

 めぐみんとダクネスが仮面ライダーになれたことで、これまでカズマでも対処しきれなかった怪人への対処も可能になった。

 

 旅の途中に魔王軍の幹部のデッドリーポイズンスライムの変異種の『ハンス』、魔王軍モンスター開発局長の『シルビア』、邪神レジーナを崇拝するダークプリースト『セレスディナ』の3人の幹部を倒し結界の起点を四つ失ったことで魔王城の結界に綻びが生じた。

 

 ちなみに、ウィズは彼女達とも良好な関係で敵対はしていないようだ。

 バニルは会ったことはあるが、面倒くさいので関わらないようにしているらしい。

 もう二人幹部がいるのだが、アナザーめぐみんは会ったことがないようだ。

 

 魔王城に到着した3人は変身し3人同時にライダーキックを放ち結界を無理やり突破し、魔王城に突入したのだ。

 しかし、内部に入ってみると城の中には誰もおらず、唯一玉座の間に一人だけ緑色の怪人がいた。

 そいつはアナザーめぐみん達を見ると問答無用で襲い掛かってきて、彼女達も応戦したのだがなぜか彼女達の攻撃は当たる直前に極端に弱くなってしまい、カズマも瀕死の重傷を負ったので結果魔王城から撤退するしかなかったらしい。

 

 アナザーめぐみん達が旅をしている間も怪人達の侵攻は続いていたが、王国はなんとかギリギリ耐えていた。

 しかし、本当にギリギリの状態のためいつまでもつのか分からない状態なのだ。

 よって、カズマ達はもう一度魔王城に攻め込んだ。

 

 だが、その時は前回とは違い大量の怪人の群れが待ち受けていたのだ。

 一応その時は冒険者やベルセルク王国の兵士達も一緒だったので、周辺の怪人達は彼らに任せてアナザーめぐみん達はもう一度魔王城の玉座の間に乗り込んだ。

 

 そこで待っていたのは前回カズマ達を待ち受けていた緑色の怪人のほかに、複数の怪人が待っていた。

 アナザーめぐみん達はその怪人達と戦うが、その怪人達は倒しても倒しても何度でも起き上がってきて少しづつ消耗していき追い詰められていった。

 再度魔王城に攻め込む前にカズマは雷系の魔法を自身に打ち込んでいたので、アルティメットフォームの力を手に入れていたのだが、それでも何度でも起き上がってくる怪人達の前に力尽き、アークルも破壊されてしまった。

 そしてこの戦闘でダクネスが武器とゼクターを破壊され、頭が花の様な怪人が放つ毒液を受けて死亡してしまったのだ。

 

 アナザーめぐみんはこの時、このまま戦っても勝てないと判断しなけなしの魔力を振り絞って小規模の爆裂魔法を放ち、カズマとダクネスの亡骸を抱えて撤退したのだ。

 しかし、この撤退がきっかけで王国側の敗戦が確実になり、唯一残っていたベルセルク王国は陥落し、王族は全て死亡し、残った一握りの人達はアクセルの街の跡地に逃れ、その地下に身を潜めてヒッソリと生活しているようだ。

 

 アナザーめぐみんとカズマも一時期そこに身を潜めていたが、住民達からの心無い言葉や陰口が後を絶たなかったので結局出ていくしかなかった。

 暫く二人は旅をしながら各地に出現する怪人達を退治していたのだが、重傷を負った状態でアークルを破壊されたカズマは少しづつ衰弱していき、ついにカズマも衰弱死してしまったのだ。

 一人残されたアナザーめぐみんは、この時初めて自分がカズマのことが好きだったことに気付いたようだ。

 

Aめぐみん

「無様ですね。 失って初めて大事なことに気付くなんて。」

 

賢治

「いや、話を聞いているだけでも大変だったことがわかるから。」

「それで、めぐみんはどうしてこの世界に?」

 

Aめぐみん

「それは・・・」

 

 アナザーめぐみんは一人になった後、このままではだめだと思い、アナザーめぐみんは自分の矜持を捨てて、爆裂魔法だけでなく他のあらゆる魔法を習得していった。

 各地にいる怪人達を倒して回っていたのだが、ある日魔王城の近くを偵察していた時、時空の裂け目から鋼鉄の木馬のような乗り物が出現したのだ。

 その中から出てきたのはアナザーめぐみん達が手も足も出なかった緑色の怪人が下りてきた。

 よく見ると、周囲には同じような乗り物が複数あり、どれも動かせるようだ。

 暫くすると、また緑の怪人が乗り物に乗って次元の裂け目に消えていったため、アナザーめぐみんも周りの目を盗んで幾つかあるうちの一機に乗り込み、調べてみることにした。

 

 紅魔族の頭の良さのお陰か、その乗り物は次元を超えて移動できる乗り物だと言う事が分かった。

 アナザーめぐみんはこの乗り物を使えばあの緑の怪人の後を追えるんじゃないかと思い、あらかじめ設定されていた時空の座標に向かって乗り物をとばし、この世界にやって来たのだ。

 

 緑の怪人を探す過程で、冬将軍に襲われているこの世界の自分やカズマ達を発見し、咄嗟に助けてしまったのだ。

 生きているカズマを見たとき駆け寄って抱きしめたい衝動に駆られたが、グッと我慢したらしい。

 そして、デストロイヤー襲撃の時に俺が使っていたタイムマジーンを見てこの世界のカズマ達と一緒にいる俺達なら何とかしてくれるのではないかと、声をかける機会をうかがっていたのだ。

 

賢治

「話を聞くと、めぐみんの乗ってきたん乗り物はタイムマジーンで間違いないが、動かせるのか?」

 

Aめぐみん

「いえ、どうやら壊れてしまったみたいで使えなくなっています。」

 

賢治

「だったらまずいな、俺のタイムマジーンも基本的な動作はできるけど時空転移システムは使えないし、そもそも時空転移システムでは世界を超えることはできないはずだけど?」

 

Aめぐみん

「そんな!」

 

賢治

「でも、一応あてはある。」

「会えるかどうかは分からないけど。」

 

 世界を渡るのならこの世界に一人だけ心当たりがある。

 しかし、神出鬼没のため正直いつ会えるかわからない。

 ・・・と思っていたら。

 

「それは俺のことか?」

 

Aめぐみん

「うわっ!?」

 

賢治

「あ! いた。」

 

 そう。

 通りすがりの仮面ライダーこと、門矢士である。

 彼なら世界を渡るのなんて簡単だろう。

 

「話は聞いていた。」

 

賢治

「いけますか?」

 

「あぁ、幸いにも俺はそこのめぐみんの世界に行ったことがある。」

 

 士さん曰く、たまたま偶然この世界とよく似た世界に行ったことがあるらしい。

 そこでは、今この場にいるアナザーめぐみんやクウガのカズマやサソードのダクネスがいたので、間違いないと言っている。

 

Aめぐみん

「あの、こちらの方は?」

 

「お前とは初めてだな、俺は門矢 士。」

()()()()()()であり、通りすがりの仮面ライダーであり、世界の破壊者だ。」

 

賢治・Aめぐみん

「・・・え!?」

 

 待て!

 今聞き捨てならないことを言ったぞこの人。

 なんだって?

 魔王軍の幹部?

 

 アナザーめぐみんも咄嗟に杖を構える。

 しかし、士さんが手を出し、待ての合図をする。

 

「まぁ、待て。」

「幹部と言ってもバニルと同じ、城の結界を維持する為のなんちゃって幹部だ。」

「しかも俺の場合、結界を維持する為の補欠みたいなものだ。」

 

 士さんの話だと、この人も魔王に頼まれたらしい。

 最初は魔王も実力行使で士さんを従わせようとしていたようだが、士さんが軽く本気を出し()()()()を駆使して()()()した結果、魔王はボロボロの状態で「お願いします」と土下座してきたようだ。

 基本自由に動くことを確約しているので、結界の維持が難しくなった時の予備の起点になってもらうことになったのだ。

 そうして俺とアナザーめぐみんは、士さんのオーロラカーテンでアナザーめぐみんの世界に向かうことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 オーロラを抜けたその先は、分厚い雲が空を覆い、乾いた大地が広がっていた。

 どうやらこの辺りはアクセルの街があった場所の近くのようだ。

 アクセルの街に会った城壁の名残がある。

 内部は荒れていて、建物は一軒もない。

 いや、正確に言うとテント見たいものはそこら中にある。

 

 人影もチラチラと見える。

 しかし、人々は今日を生きるための食糧がほとんど無いみたいだ。

 現についさっき、ぶつかってきた子供に所持品を掏られそうになった。

 アカードが警告を出してくれたので気付くことができた。

 

 そうして到着したのが、ある屋敷跡だ。

 この屋敷跡は、俺達が住んでいる屋敷と同じで、こちらの世界のアナザーめぐみん達が住んでいた屋敷だ。

 その屋敷の庭の一角にアンナの墓があり、その隣に二つの墓があった。

 

Aめぐみん

「二人共、ただいま。」

 

賢治

「この墓は・・・」

 

「こっちの世界のカズマとダクネスのか?」

 

Aめぐみん

「・・・はい。」

 

 片方には、カズマの名前が、もう片方にはダクネスの名前が彫ってある。

 正直なところ、カズマとダクネスが死んだなんて信じたくなかったが、これはもう認めるしかない。

 そしてこの世界にいる敵はそれだけ強いと。

 あと、多少気が引けたがカズマとダクネス、それぞれの墓にブランクライドウォッチを置いてみると、それぞれが『クウガライドウォッチ』と『サソードライドウォッチ』にそれぞれ変化した。

 

 その後、俺達3人はタイムマジーンに乗ってこの世界の魔王城付近に移動した。

 戦いの影響なのか、城も荒廃しておりボロボロだった。

 パッと見た感じ、周囲に怪人の姿は見当たらないので、城から少し離れたところの着地しそこからは歩きで城に向かった。

 空から見た通り、道中に怪人の姿はなく何の障害もなく玉座の間らしき場所にたどり着いた。

 そこには、一人の男がいた。

 

賢治

「な?!」

 

 俺はそいつに見覚えがあった。

 ・・・いや、知らないはずがない。

 

???

「・・・あん? なんだ、お前か。」

 

 当然向こうの男も俺のことを覚えているようだ。

 

「? なんだ、お前たち知り合いか?」

 

 知っているのは当然だ。

 目の前にいるあの男は、俺が前にいた世界で同じゲーム会社に勤めていて、あることが切っ掛けで警察に捕まり、パトカーで警察署に連れていかれる途中に事故にあい死んでしまった。

 

賢治

「・・・骸畏 渇魅(むくろい かつみ)!?」

 

 

 




 いかがだったでしょうか。
 正直に言うと、『渇魅』という名前にするのはちょっとためらいました。
 だって、大道克己と同じ『かつみ』ですから。
 しかし、一度こうだと思ったら、なかなか他の案が思いつかなかったので、GOしました。

 次回、霧島賢治と骸畏渇魅のバトルパートになります。
 渇魅がどんな人物なのか、どんな組織に所属しているのか、そのあたりを書いていこうと思います。

 次回もよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。