彼女達は諦めない!  (タク-F)
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序章 精霊の世界
これはエピローグでありプロローグである


皆様お待たせいたしました!前作から読んでくださる方々や、新規で読んで頂いてる方々。もしくはデート・ア・ライブを好きで読んでくださる方々等いらっしゃるとは思いますが、これからも楽しんでいただければ幸いです。

まずは転生回となりますが、


 〈起きよ。〉

 

 

 

 声が聞こえる。

 

 

 

 〈起きよと言っている! 〉

 

 

 

 呼ばれている? どうしてだ? それにこの声には聞き覚えがあるような…………? 

 

 

 

 〈さっさと起きよこの愚か者! 一体いつまで我らを待たせるつもりだ! 〉

 

 

 

 僕はその声で意識を取り戻した! 

 

 

 

「ここは……? 一体……何が……?」

 

 

 

 〈ようやく起きたか。我も待ちくたびれたぞ。それに奴も……な。〉

 

 

 

 僕は視線を声の主に向けた。するとそこにはシェム・ハが立っていた。それもマリアさんに憑依をしていない、〈本来の姿で〉だ。そして僕はようやく今の状況が理解できた。

 

 

 

「そうだ……僕はあの時に死んだんだよね。そしてシェム・ハが僕にとどめをさした。そこから僕は執刀されたんだね?」

 

 

 

 〈はぁ……ようやく理解したか。しかし我も驚いたぞ? 再生がここまで難儀になるとはな。〉

 

 

 

「ありがとうございますシェム・ハさん。あの時の約束を守ってくださって」

 

 

 

 〈礼は早いぞ。貴様との取り引きは今より始まるのだ。貴様は嘗て我に「愛」を示すと言ったな。その時が始まるのだ。〉

 

 

 

「そうでしたね。僕達は確かに約束をしました。だから必ず示します」

 

 

 

『そうだな。そしてオレも動くとしよう』

 

 

 

 何で彼女の声が!? 彼女は先に行ってた筈じゃあ! 

 

 

 

 〈その答えは否だ。キャロルは異なる時より我らに語りかけている。〉

 

 

 

「異なる……時間? ……そうかザフキエルの〈九の弾〉か!」

 

 

 

『そうだ。オレは少々準備をして行くのでな。そして先行して継承者達と〈アイツ等〉はあの世界へとたどり着いた。オレもじきに向かうとしよう』

 

 

 

 キャロルが言ったアイツ等って誰だろう? そう考える間もなくシェム・ハさんは僕に語る。

 

 

 

 〈だが、我も蘇生にはかなりの力と時間を要した上に貴様の力もほぼ使い果たした。今の貴様は器しか残しておらぬ。〉

 

 

 

 当然と言えば当然だよね。そんなに都合良くいく訳ないからさ。

 

 

 

『そしてそれはオレも同じだ。オレはアイツ等の移動と活動の為にほとんどの霊力を使った。そしてオレ自身の移動で残る霊力もほぼ失うだろう』

 

 

 

 そっか。キャロルも霊力を失うのか。

 

 

 

「まあ……仕方ないか。だけど……あれ? 〈霊力だけ〉?」

 

 

 

『当然だ。オレを誰だと思っているんだ! 希代の錬金術師だ! そしてお前の伴侶だ!』

 

 

 

 やっぱりすごいなキャロルは。僕はキャロルに惚れ直しそうだよ。

 

 

 

 〈しかし訃報ばかりではないぞ。貴様の力は分配されただけだ。継承者と再び接吻をすれば力は戻るだろうな。できれば…………な。〉

 

 

 

『そしてオレ達は一つの勝負をする事にした。勇……お前の事を最も〈デートしてデレさせた〉奴が次の勝者だ』

 

 

 

 なんか……知らないとこで話が進んでるなぁ。

 

 

 

「僕達らしいね。だけど皆がそれで良いなら最高だよ!」

 

 

 

 〈もちろん制約は存在するぞ。貴様は全ての記憶を失う。そうでなければ勝負等起こる筈がないからな。〉

 

 

 

「キャロルは納得してるの?」

 

 

 

『オレの霊力はお前が〈天使〉を全て取り戻した時に開放される。そう……奴等に絶望と立場を教える為になぁ!』

 

 

 

 エグい。流石キャロルだ。

 

 

 

『そしてもう一つだ。オレはその間は姿を変えて過ごす事にしている。奴等に勘ぐられたくないからな』

 

 

 

「徹底的だね。でもそれでこそキャロルだよ!」

 

 

 

 〈やはり貴様達は面白いな。では我も幾つかの説明をしておこう。〉

 

 

 

『幾つかの説明……か。面白い! 言ってみろ』

 

 

 

 〈一つ目は奴等自身は記憶を持っている者と隠した者がいるという事だ。まあそれは奴等自身が決めた事だがな。〉

 

 

 

「〈記憶を〈隠した者〉と〈持っている者〉? それは何の意味が……?」

 

 

 

 しばらく僕が悩んでいるとキャロルが語り出した。

 

 

 

『成る程な……奴等め。したたかな事だ。勇に自然と救われる為に敢えて〈一人の精霊〉として振る舞うつもりか!』

 

 

 

 成る程ね。確かに僕が見つけないと始まらないからね。確かに有効な手だね。

 

 

 

 〈そしてレーダーの代わりとしてだが、奴等のシンフォギア等を貴様の体に埋め込んだ。やがて時が来れば奴等と引かれ合うだろう。〉

 

 

 

 ん? 〈埋め込んだ〉? 

 

 

 

「……ねえ……まさかそれって……?」

 

 

 

『融合症例だな。しかも今回はシンフォギアの症例だ。前回同様に力を制御できねば大変な事態だろうな』

 

 

 

 〈だがその辺りは既に調整を済ませてある。貴様が余程の事をしなければ下手な暴走はない。我を見くびるなよ? 〉

 

 

 

 確かにシェム・ハの執刀を見くびる事はできないよね。

 

 

 

「確かに僕のやる事は変わらないね。だったら僕はまた訓練を重ねてキャロルと再会するよ。その時は!」

 

 

 

『もう一度オレと戦って貰うからな。もちろん勝つのはオレだ。そう簡単にはオレは倒せないぞ!』

 

 

 

 僕達の戦いはいずれも接戦だった。だからお互いに次はどちらが勝っても不思議じゃあないよね? 

 

 

 

「わかっているよ。だから次はキャロルと同じ条件で戦うよ。そしてまた僕が勝つからね?」

 

 

 

『〈ダヴルダヴラ〉と〈ダイン=スレイフ〉を失った勇には荷が重いだろうな。次は寝かさん。朝まで搾りとってやろう』

 

 

 

 相変わらず愛が重い事で。だけどなんだかそれが嬉しくもあるかな? 

 

 

 

 〈我の説明の途中だ。最後まで聞け。とはいえどこまで話したか……。〉

 

 

 

『ギア等を埋め込んだ辺りだ。オレが話の腰を折ったので当然覚えている』

 

 

 

 〈そうだったな……では三つ目だが、当然敵も用意している。何も無条件だと思ってはいまい? 〉

 

 

 

『妥当だな。そしてそれはオレも同じ様にオレ達の協力者を送った。その時はぶつかる事もあるだろうな』

 

 

 

「そういう事も……あるんだね」

 

 

 

 〈想定はしている。つまりそれは我とキャロルの代理戦争でもあるのだ。〉

 

 

 

「思惑が入り乱れ過ぎだよ」

 

 

 

 本当に……ね。だけどそれでもやる事は変わらないね。

 

 

 

「ありがとうねシェム・ハさん。貴女のお陰で僕はもう一度歩き出せる。そしてその時は……」

 

 

 

 〈その先を今は聞かないでおこう。そして我からの選別だ。貴様に新たな名前をくれてやろう。〉

 

 

 

「僕の新しい名前……か。お願いします」

 

 

 

 〈ならば受けとれ。「高崎 修(たかさき おさむ)」それがお前の新たなる名前だ。意味の想像はできるだろう? 〉

 

 

 

『前任者の前世である〈崇宮〉から〈崇〉の字を変更し、それに合う文字を選んだという事だな』

 

 

 

「同時に僕の名前の〈勇〉に対して新しい名前の〈修〉は音読みすると〈しゅう〉だからね。名前の名残を敢えて残したんでしょ?」

 

 

 

 〈両者共に正解だ。そしてその名前は気にいったか? 〉

 

 

 

「もちろんだよ! ありがとう! この名前は大切にするね!」

 

 

 

 〈ふん。名前なぞただの端末記号に過ぎん。一々気にするな。〉

 

 

 

『勇の新たなる名前……覚えたぞ。オレは二度と道を外さない。そして時が来れば勇を堂々と奴等から奪い返すとしよう』

 

 

 

 〈それと最後だ。奴等が纏う礼装の型は「ソレ」と同じだ。まあ……言わずともわかる事だろうがな。〉

 

 

 

 シェム・ハさんは僕の胸を指して言った。

 

 

 

 〈では修よ……そろそろ記憶を消すとしよう。そしていつの日か再びまみえる事を〉

 

 

 

『オレは何度でも手に入れよう。何せオレは〈嫉妬の魔女〉だからな!』

 

 

 

 僕はその言葉を最後にまた意識を手放した。そして次は新しい未来が僕達を待っている!

 

 

 

「じゃあねキャロル。また会う日まで!」




次回は情報整理と、前作の引き継ぎ部分の解説を行います。

そしてこの作品における重要な変更部分はもう1つの解説回で説明しますので、更新をお待ちください。


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前作の大まかな設定

HIGHレボリューション様 ☆9評価ありがとうございます!

 前作の設定とあらすじになります。一応今作でも登場するキャラのみにしていますので、本編の前に読んでいただければ嬉しいです。


 ●〈主人公・メインヒロイン〉

 

 

 

 ○ 雪音 勇

 

 

 

 前作のオリ主。

 

 ・シンフォギアの世界ではデート・ア・ライブに登場する〈天使〉の力と修練環境の保障を転生特典として活動した。

 

 ・誕生日は6月7日

 

 

 

 ・原作前に転生先の家族を事故で失い〈雪音 クリス〉の両親に引き取られたが、バルベルデで夫妻を亡くしクリスと生き別れる。

 

 ・その後は原作知識と特典を思いだし暴れた事でカリオストロに接触される。原作知識を交渉材料に〈パヴァリア光明結社〉で錬金術師として生活し、原作開始前の五年半までを過ごす。

 

 ・そしてその後〈チフォージュ・シャトー〉にてメインヒロインの〈キャロル・マールス・ディーンハイム〉と出会う。

 

 ・立花 響の覚醒する凡そ一年前に〈天使〉の力を引き出してキャロルに勝利し、彼女を諭して生きる目的となった。この時にヤンデレ化する。

 

 ・無印編ではクリスと再会して最終話には〈フィーネ〉を救済する。未来とクリスは三週間の軟禁後にヤンデレ化する。

 

 ・G編では師匠の命令を受けたセレナさんに拘束され、フロンティア起動までを〈F.I.S〉の捕虜として過ごす。この時に〈F.I.S〉組もヤンデレ化する。

 

 ・GX編ではキャロル対装者の構図になったが、キャロルが手加減する事を前提条件に争いには原則介入しなかった。響・翼もヤンデレ化している。

 

 ・AXZ編は敵がサンジェルマン達ではなく、エレン達デアラの〈魔術師〉が立ちはだかる。

 

 ・XV編はほぼ敵がスパイしかいなかったのでほぼ出番は序盤のみ。

 

 ・コラボ編以降はビルドドライバーでオリジナル仮面ライダーと、仮面ライダーブラッドにも変身可能になった。

 

 ・その過程を得て本作では〈五河 士道〉のポジションで〈高崎 修〉として活動を開始する。

 

 

 

 ○キャロル・マールス・ディーンハイム

 

 

 

 前作のメインヒロインにして依存・独占型のヤンデレ。錬金術師としての実力は原作通りで、これに加えて全ての天使を使用可能。正直作者すら引くレベルのぶっ壊れキャラになった。

 

 ・誕生日は3月3日で戸籍上は25歳。

 

 

 

 ・原作前に勇の行いによって命題の答えが誤りであることを知らされ、それを否定するために勇と交戦して敗北する。そして勇を心の支えにして生きてきた前作のバグキャラ。ただし本格的な介入はGX編から行った。

 

 ・GX編は他ヒロイン達を叩き潰して立場を教えるつもりで行動した。ただし手加減はしていた。

 

 ・AXZ編は圧倒的な力を以て魔術師達を退けた。

 

 ・XV編は勇の最後を見守り、この世界に向かう為の準備を整えた。

 

・コラボ編以降は反転体の能力も使用可能。

 

 ニつ名として前作では〈嫉妬の魔女〉と名乗っていた。

 

 

 

 ●天使の継承者達

 

 

 

 ○立花 響

 

 

 

 原作の主人公にて勇・クリス・未来の幼馴染みだった少女。頭は原作通り残念だった。

 

 ・継承している天使は〈破軍歌姫(ガブリエル)〉

 

 ・誕生日は9月13日で戸籍上は17歳。

 

 

 

 ・無印編ではクリスと三度目の交戦の際に勇が帰国した事で事態に変化が行った。

 

 ・G編では勇が拐われた事で酷く動揺する。そして未来との戦いは惨敗している。

 

 ・GX編では他ヒロインと打倒キャロルに燃えたが、そもそもスペックが違いすぎた。

 

 ・AXZ編ではキャロル陣営が有能すぎて活躍の機会はかなり減った。

 

 ・XV編ではもはや出番すらほとんどなかった。

 

 

 

 ○小日向 未来

 

 

 

 原作では響の陽だまりだったが、前作ではその感情のほとんどは勇に流れていた。勇・響・クリスとは幼馴染みの関係。

 

 ・継承している天使は〈絶滅天使(メタトロン)〉

 

 ・誕生日は11月7日で戸籍上は17歳。

 

 

 

 ・無印編では初恋の勇に再会するも急変する事態の対応に追われて満足に話せないでいた。

 

 ・G編では勇の情報を餌に〈F.I.S〉に接触され、神獣鏡のシンフォギアを纏う。

 

 ・GX編ではミカとの初戦を撤退に追い込む等、装者最強クラスの実力がある為に戦果をあげる事もあった。

 

 ・AXZ編では救援としての登場が多く活躍は少なめ。

 

 ・XV編ではシェム・ハに憑依されていない。なんなら〈愛〉の感情だけで憑依だけなら弾けるレベルのヤンデレ。

 

 

 

 ○風鳴 翼

 

 

 

 響達の先輩にして組織のエース。その実力も申し分なかった。前作のヒロインの中でヤンデレ化したのは遅め。

 

 ・継承した天使は鏖殺公(サンダルフォン)

 

 ・誕生日は5月25日で戸籍上は19歳。

 

 

 

 ・無印編では〈カ・ディンギル〉の破壊やクリスの撃退等原作通りの活躍をする。

 

 ・G編でフロンティアでクリスと未来の喧嘩を見て頭を痛める等の常識人枠だった。

 

 ・GX編ではヤンデレに覚醒した時期は少し遅かった。

 

 ・AXZ編は活躍はしている。描写されたところも比較的恵まれている。

 

 ・XV編は原作通りに洗脳されたが、父である八絋の死は免れている。

 

 

 

 ○雪音 クリス

 

 

 

 前作では勇の義姉にして皆に愛されている先輩。言葉遣いは悪いが根は優しい。ただし前作ではブラコンを拗らせたヤンデレ。響・未来とは幼馴染み。

 

 ・継承している天使は〈灼爛殲鬼(カマエル)〉。

 

 

 

 ・無印編では、響への三度目の捕獲失敗でフィーネから見捨てられる。

 

 ・G編では勇を奪い返そうと必死に立ち回るも空回りする。

 

 ・GX編ではメンタルがすごく弱い為にイグナイトの使用が一番遅い。

 

 ・AXZ編では出番も活躍にも恵まれていた。

 

 ・XV編ではマリアがシェム・ハの生け贄だった為に翼と交戦したのは彼女。

 

 

 

 ○マリア・カデンツァヴナ・イヴ

 

 

 

 全米一の歌手の座を短期間で手にした歌姫にして武装組織〈F.I.S〉の実動部隊の代表。責任感が強いがメンタルは弱い。素の自分を見てくれた勇は運命の王子様に見えている。

 

 ・継承している天使は〈刻々帝(ザフキエル)〉

 

 ・誕生日は8月7日で戸籍上は22歳。

 

 

 

 ・G編では原作通りに立ち回るも、心の支えを全て失った為に立ち上がれなかった。しかし勇の言葉によって再び立ち上がる。

 

 ・GX編では自分の弱さを受け入れている。

 

 ・AXZ編では救援等の為の出動は多いが描写は少なめ。

 

 ・XV編では翼に続いて洗脳され、シェム・ハの器にされる。これはアガートラームがシェム・ハの力によって作られた聖遺物の為。

 

 

 ○暁 切歌

 

 

 

 いつもお気楽で明るい少女。響に続く腹ペコキャラ。調と二人でのコンビネーションレベルはかなり高い。

 

 ・継承された天使は〈颶風騎士(ラファエル)〉の〈縛める者(エル・ナハシュ)〉。

 

 ・誕生日は4月13日で戸籍上は16歳。

 

 

 

 ・G編ではウェルのやり方に対して嫌悪するも、自分がフィーネの器と勘違いして暴走する。

 

 ・GX編では無茶を重ねる事が多い。

 

 ・AXZ編での活躍は序盤から中盤までしか描写されていない。

 

 ・XV編ではほぼ出番なし。戦闘描写も一度のみ。

 

 

 

 ○月読 調

 

 

 

 無口で冷静な少女。しかしその内心を表に出さないだけでかなりの行動派。

 

 ・継承された天使は〈颶風騎士(ラファエル)〉の〈穿つ者(エル・レエム)〉

 

 ・誕生日は2月16日で戸籍上は15歳。

 

 

 

 ・G編では主に家事を担当していた。多忙なマリアを支えようと頑張る。

 

 ・GX編では勇への恋心をバネに頑張ったが、相手が悪かった。

 

 ・AXZ編では活躍した描写は序盤のみ。

 

 ・XV編ではほぼ出番なし。

 

 

 

 ○フィーネ(櫻井 了子)

 

 

 

 シンフォギア世界の出来事の半分は彼女絡みのネタが多く、無印編ではラスボスもしていた。

 

 ・継承した天使は〈囁告篇帙(ラジエル)〉

 

 ・誕生日が不明の為便宜的に6月24日と設定。

 

 ちなみに年齢は34歳。

 

 

 

 ・無印編では黒幕をしていたが、勇の介入によってクリスの反逆が面倒に感じるレベルの被害を受けた。

 

 ・G編では〈F.I.S〉の行動動機を探るも状況の対応は後手後手になる。

 

 ・GX編では裏方担当。勇のせいで胃薬が手放せない。

 

 ・AXZ編では久々に前線に復帰する。ぶっちゃけゾンビみたいな状態での戦闘になる。

 

 ・XV編では出番はほとんどなし。

 

 ・今回の偽名は〈桜木 京子〉の予定。

 

 

 

 ○サンジェルマン

 

 

 

 勇の師匠にして過保護なオカン。師弟愛からヤンデレにいつの間にか変化していた。錬金術師としての実力は当然だが一流。組織の運営能力も高い。

 

 ・継承した天使は〈封解主(ミカエル)〉

 

 ・誕生日が不明の為便宜的に1月30日と設定。

 

 更に年齢も不明の為に便宜的に表で活動する時の身分証には26歳と設定。

 

 

 

 ・原作前に勇の修練の監督やセレナの救済を施す。キャロルと勇を引き合わせたのは彼女。

 

 ・無印編ではクリスの活動開始を勇に伝えた。

 

 ・G編では勇を捕縛してフロンティアの浮上まで拘束させた。

 

 ・GX編はほぼ情勢を見守るだけで介入はほぼなし。

 

 ・AXZ編では魔術師達との交戦が多い。アダムをシバく事はできなかった。

 

 ・XV編での出番はほぼなし。

 

 

 

 ○セレナ・カデンツァヴナ・イヴ

 

 

 

 本来は事故で命を失う筈だったマリアの妹。勇の信念に実は惚れていたが、最初はマリアに譲るつもりでいた。

 

 ・継承した天使は〈氷結傀儡(ザドキエル)〉

 

 ・誕生日は10月15日で戸籍上は20歳。

 

 

 

 

 

 ・G編では勇の捕縛から未来への接触等、二課側には痛い事をやってのけた。

 

 ・GX編ではほぼ出番なし。

 

 ・AXZ編では活躍はしたが機会は少なめ。

 

 ・XV編の出番もほぼなし。

 

 

 

 ○ミラアルク・クランシュトウン

 

 

 

 勇が原作改変をして救われた少女の一人。非力故に努力を惜しまない勇に自然と惚れていた。

 

 ・継承する天使は〈贋造魔女(ハニエル)〉

 

 ・今作の偽名は〈倉崎 ミラ〉の予定。

 

 ・誕生日が不明の為に便宜的に今作では8月29日と設定。

 

 更に年齢も不明な為に便宜的に今作では17歳と設定。

 

 

 

 ○天羽 奏

 

 

 

 AXZ編より参加した人物で今作でも出演の予定あり。

 

 ・継承している天使は〈雷霆聖堂(ケルビエル)〉

 

 ・誕生日は7月29日で在命していれば21歳。

 

 

 

 ●〈関わりが深い人物及び、

 

 キャロルに送り出された人物〉

 

 

 

 ○風鳴 弦十郎

 

 

 

 前作における〈特異災害対策機動部二課〉及び〈SONG〉の頼れる司令。名言の一つに、

 

 

 

「漢の鍛練は飯を食って映画を見て寝る! それだけだ!」

 

 

 

 がある。〈大人〉ではなく〈OTONA〉

 

 

 

 ○緒川 慎次

 

 

 

 歌手としての〈風鳴 翼〉のマネージャーを表ではこなし、エージェントとして諜報活動を行う大人。敵に回したら一番ダメなタイプ。〈忍者〉じゃなくて〈NINNJA〉

 

 

 

 ○風鳴 八絋

 

 

 

 翼の戸籍上の父親にて政府の重役。実父の行いに疑問を抱き翼の身を守る為に敢えて突き放した態度をとっていた。本来は翼を溺愛している。

 

 

 

 ○友里 あおい

 

 

 

「あったかい物どうぞ」でお馴染みのオペレーター。今作でも登場の予定。

 

 

 

 ○藤堯 朔也

 

 

 

 いつも愚痴をこぼすが優秀なオペレーター。料理の腕前は高い。

 

 

 

 ○エルフナイン

 

 

 

 キャロルのホムンクルスだが、原作とは違いキャロルのキューピッドの為なら何でもする。ある意味一番危険な妹。

 

 

 

 

 

 ○ノエル

 

 

 

 本来はアプリ版オリジナルのキャラだったが、作者がこの為に改変したキャラ。ガリィ並の性格の悪さと高い技術力があるがメタ発言もそこそこ多い。

 

 

 

 

 

 *自動人形組は今作では〈想い出〉の収集を行わない。

 

 

 

 ○ガリィ・トゥーマン

 

 

 

 前作ではキャロルがチートキャラだった為にバグキャラと化していた。シンフォギア原作GX編のスペックで今作は活動する。

 

 

 

 

 

 ○レイア・ダラーヒム

 

 

 

 前作ではガリィ同様にバグキャラの一人。ガリィ同様シンフォギア原作GX編スペックで活動の予定。

 

 

 

 

 ○ミカ・シャウジーン

 

 

 

 前作では当然のようにバグキャラ。例に漏れずシンフォギア原作GX編スペックで活動の予定。

 

 

 

 

 

 ○ファラ・スユーフ

 

 

 

 前作では何かと勇に頼られた自動人形。もちろん彼女もシンフォギア原作GX編スペックの予定。

 

 

 

 

 

 

 

 ●〈シェム・ハによって転生した人物〉

 

 

 

 ○Dr.ウェル

 

 

 

 前作では死を免れた英雄(笑)。今作でも勇の敵として登場する予定。シェム・ハの目的の為に勇に試練を与える存在。

 

 

 

 ○風鳴 訃堂

 

 

 

 前作同様の外道。ウェルと同じく勇に試練を与える為に転生させられた存在。ただし前作ほどの力はない……筈。




また、本日の0時より士道達を含めた今作版の設定集を投稿します。本編を楽しみにされる方々は15日の18時より投稿しますので、更新までお待ちください。

感想・評価・メッセージ・お気に入り登録等もお待ちしています。


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今作の設定

こちらは今作版の設定集となります。同時に士道君達のその後(作者の妄想)でもあります。

時系列上4月時点の年齢を表記しています。

※四糸乃達のフルネーム等のネタバレを含みます。


●オリ主について

 

○高崎 修(たかさき おさむ)

 

前作の主人公〈雪音 勇〉の転生体だが、前作の記憶は現在失われている。母親に託されたペンダントが、物語の重要な場面で輝く。精霊の霊力の封印が何故かできる。

 

・イメージcvは田村 睦心

 

●戦姫絶唱シンフォギア(今作の精霊達の登場時点の情報)

 

 

○立花 響(たちばな ひびき)

 

・今作の年齢は17歳でシンフォギアの世界では原作主人公。

・〈ミソラプロ〉に所属する〈誘宵 美九〉の後輩。

・〈破軍歌姫(ガブリエル)〉を扱う精霊。

・在学しているのは栄部西高校で女子空手部所属。

・前作の記憶保持者

 

○風鳴 翼(かざなり つばさ)

 

・原作では19歳にして、シンフォギアの世界では世界に名を轟かす歌姫。

・今作では年齢操作により16歳で活動する。

・〈鏖殺公(サンダルフォン)〉を扱う精霊。

・前作の記憶隠蔽者

 

○雪音 クリス(ゆきね クリス)

 

・原作では18歳で響達の在学する〈私立リディアン高等女学院〉の3年生。

・今作では来禅高校に通う3年生で、〈五河 琴里〉のクラスメイト。

・本作の年齢は17歳から活動をする。

・修の家の隣に1人暮らしをしているお姉さん。何かと修の世話を焼く。

・〈灼爛殲鬼(カマエル)〉を使う精霊だが、現在封印はされていない。これは彼女がとある目的の為に封印をさせていない為。

・前作の記憶保持者

 

○マリア・カデンツァヴナ・イヴ

 

・原作では22歳だが、今作では年齢操作をして16歳で活動する。

・前作の記憶保持者。

・〈刻々帝(ザフキエル)〉を扱う精霊。

・とある人物を探す為に来禅高校へとやって来る。

 

 

○暁 切歌(あかつき きりか)

 

・〈颶風騎士(ラファエル)〉の〈縛める者(エル・ナハシュ)〉を扱う精霊。

・調と二人で一人のスタイルを取る。

・語尾に〈デス〉がつく自称常識人

・年齢は前作と同じ15歳。(修達の後輩ポジション)

・前作の記憶隠蔽者

 

○月読 調(つくよみ しらべ)

 

・〈颶風騎士(ラファエル)〉の〈穿つ者(エル・レエム)〉を扱う精霊。

・切歌と二人で一人のスタイルを取る。

・家事スキルは高い。

・年齢は15歳(同じく後輩ポジション)

・前作の記憶隠蔽者

 

○セレナ・カデンツァヴナ・イヴ

 

・〈氷結傀儡(ザドキエル)〉を扱う精霊。

・前作では20歳だが、今作では年齢操作により15歳で活動する。

・胸に秘める想いは強い少女。

・前作の記憶隠蔽者。

 

○桜木 京子(さくらぎ きょうこ)

 

・〈囁告篇帙(ラジエル)〉を扱う精霊。

・今作でも年齢は34歳と設定。

・前作の記憶隠蔽者。

・表の職業は研究者。

・前作での名前は〈桜井 了子〉または〈フィーネ〉

 

○小日向 未来(こひなた みく)

 

・ASTに所属する修のクラスメイト。

・〈絶滅天使(メタトロン)〉を扱う精霊だが、現在は力を別の場所に封印している。

・年齢は前作同様に16歳。

・前作の記憶保持者。

 

○サンジェルマン

 

・年齢不明の錬金術師で登場は最後。

・〈封解主(ミカエル)〉を扱う精霊。

・前作の記憶隠蔽者。

 

○倉崎 ミラ(ミラアルク・クランシュトウン)

 

・年齢不明の錬金術師。

・〈贋造魔女(ハニエル)〉を扱う精霊。

・前作の記憶隠蔽者

 

○天羽 奏(あもう かなで)

 

・本来は享年17歳だが、今作でも17歳で活動する。

・〈雷霆聖堂(ケルビエル)〉を扱う精霊。

・前作の記憶保持者。

 

○キャロル・マールス・ディーンハイム

 

・前作のメインヒロインで全ての天使が使用可能。

・前作の記憶保持者だが、とある目的の為に現在は姿を隠している。

・まだ力は戻りきっていない。

 

 

●デート・ア・ライブの登場人物

 

*1 今作の彼等は原作(デアラ)の知識は有しているが、物語への介入は必要な範囲でしか行わない。

 

*2 彼等の年齢は本編22巻終了後から2年を加えている。

 

*3 本作品のDEMはまだラタトスクと戦闘をしていない。更に士道達と関わる機会は原則無い。

 

 

○五河 士道(いつか しどう)

 

・原作主人公で大学三年生。

・修達来禅高校のOBで修達の勉強をみてくれるお兄さん。

・恋人は十香だが、好意を持たれてる女性は多数存在する。

 

○夜刀神 十香(やとがみ とおか)

 

・士道の恋人にて大学三年生。

・来禅高校のOGで明るい乙女。

・鏖殺公(サンダルフォン)の前任者。

 

○鳶一 折紙(とびいち おりがみ)

 

・士道に好意を寄せる乙女で大学三年生。

・来禅高校OGでASTの教官補佐。

・未来の師匠で〈絶滅天使(メタトロン)〉の前任者。

 

○五河 琴里(いつか ことり)

 

・士道の義妹にして来禅高校の三年生。

・ブラコンでヤンデレでクリスのクラスメイト。

・〈灼爛殲鬼(カマエル)〉の前任者。

 

○氷芽川 四糸乃(ひめかわ よしの)

 

・士道に好意を寄せる乙女にして来禅高校三年生。

・よく七罪と行動する事が多い。

・〈氷結傀儡(ザドキエル)〉の前任者。

 

○時崎 狂三(ときさき くるみ)

 

・士道に好意を寄せる乙女にして大学三年生。

・来禅高校OGで無類の猫好き。

・〈刻々帝(ザフキエル)〉の前任者。

 

○八舞 耶俱矢(やまい かぐや)

 

・士道に好意を寄せる乙女にして大学三年生。

・来禅高校OGにして重度の廚二病患者。

・〈颶風騎士(ラファエル)〉の〈穿つ者(エル・レエム)〉の前任者。

・夕弦とは双子。

 

○八舞 夕弦(やまい ゆづる)

 

・士道に好意を寄せる乙女にして大学三年生。

・来禅高校OGにして感情の変化が乏しい。

・耶俱矢とは双子。

・〈颶風騎士(ラファエル)〉の〈縛める者(エル・ナハシュ)〉の前任者。

 

○誘宵 美九(いざよい みく)

 

・士道に好意を寄せる乙女にしてトップアイドル。

・原作とは違い栄部西高校OGにして重度の百合。

・〈破軍歌姫(ガブリエル)〉の前任者。

 

○鏡野 七罪(きょうの なつみ)

 

・士道に好意を寄せる乙女にして来禅高校三年生。

・重度のネガティブだが、四糸乃と士道の二人が特に大好き。

・〈贋造魔女(ハニエル)〉の前任者。

 

○星宮 六喰(ほしみや むくろ)

 

・士道に好意を寄せる乙女にして来禅高校三年生。

・天然のヤンデレで、恐ろしく独占欲が強い。

・〈封解主(ミカエル)〉の前任者。

 

○本条 二亜(ほんじょう にあ)

 

・士道に好意を寄せる乙女にして天才の漫画家。

・ダメな大人の成れの果てで、締め切りに追われるのはいつもの事。

・〈囁告篇帙(ラジエル)〉の前任者。

 

○万由里(まゆり)

 

・士道に好意を寄せる神出鬼没な乙女。

・かなり表情が固い。

・〈雷霆聖堂(ケルビエル)〉の前任者。

・「劇場版デート・ア・ライブ 万由里ジャッジメント」に登場する映画オリジナルの精霊

 

○崇宮 澪(たかみや みお)

 

・士道に好意を寄せる乙女。

・原作における始原の精霊。

・ただし今作では普通に登場する一人の乙女。

 

○崇宮 真那(たかみや まな)

 

・士道の実妹にして好意を寄せる乙女。

・男勝りな言動もチラホラと存在する。

・今作では魔術師としての活動はしていない。

 

○村雨 令音 (むらさめ れいね)

 

・フラクシナスの解析官。

・今作ではある人物の仮の姿だが、

その中身は〈崇宮 澪〉ではない。

・修をずっと待ち続けたらしい。

 

○日下部 燎子(くさかべ りょうこ)

 

・ASTの隊長で30歳。

・折紙とは現在は元同僚の関係。

 

●オリキャラ

 

○平原 巧(ひらはら たくみ)

 

オリキャラで原作における殿町君ポジション。未来に片思いをしているが、当人には認識されていない。

 

・学力は高く総合得点なら学年で20番以内には余裕で入れる。本気を出せば10番以内にも入れる。

 

・修と同じく士道達の後輩であり面識もある。

 

・愉悦大好きで人の不幸を肴にできるが、普段は自重している(もとい、調子に乗り過ぎたら修にシバかれてる)

 

●その他のキャラ

 

○安藤 創世(あんどう くりよ)

 

リディアンの3人娘の1人。今作では描写頑張ります!

 

・今作では既に修や士道達と面識あり。

 

○寺島 詩織(てらじま しおり)

 

リディアンの3人娘の1人。度々登場していただく予定。

 

・今作では既に修や士道達と面識あり。

 

○板場 由美(いたば ゆみ)

 

リディアン3人娘の1人。通称アニメちゃん。

 

・今作では既に修や士道達と面識あり。

 

●DEMインダストリー

 

原作においてはAST等にCR-ユニット……正式名称は「戦術顕現装置搭載ユニット」(コンバット・リアライザユニット)の供給やその開発を行う。

 

 ・表向きはただの企業だが、裏では精霊の力を利用して自社の利益拡大を狙う組織でもある。

 

 ・AST等に隨意領域(テリトリー)の扱い方等の指導を行える程の実力を持つ、専属の魔術師(ウィザード)と呼ばれる者達がいる。

 

●ラタトスク機関

 

 原作ではエリオット達が創設した精霊との対話機関だったが、今作ではエリオットはDEMインダストリーを離反していない。

 

・今作での創設者はキャロルで、弦十郎が司令官。サポートの副官を八紘が務める。

・名前は登場しないが原作に登場した機関の名もない構成員や、神無月等の原作フラクシナスメンバーは大体本部の人間となっている。




次回から本編に入ります。





4月9日にそれぞれの人物がどう過ごす……あるいは備えるか更新をお待ちください。

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4月9日

さあ……とうとう修君としての活動が始まります!

まずは前日譚となる4月9日です。

それでは本編をどうぞ!


精霊…………それは異なる世界に存在する生命体。此方へと現界する際に周囲へと甚大な被害をもたらす〈空間震〉を発生させる。戦闘能力は高く、既存の兵器の性能を凌駕する。

 

 

 

 

 

~~修side~~

 

 僕…………高崎 修は普通の高校二年生……だと思うけど、僕の周囲の人間は普通じゃあない。

 

「はぁ。明日から僕達の通う〈来禅高校〉の始業式なのになぁ。なんで父さん達は長期出張に行っちゃうのかなぁ」

 

 僕は本当に憂鬱になる。両親は未だにバカップルと言わんばかりだ。だけど責任は感じてるみたいで、自分達が不在の時はお隣の〈雪音 クリス〉姉さんに僕の事を頼んでいる。ありがたい。ありがたい……けど……。

 

「最近お姉さんは目つきが恐いんだよなぁ。僕の事をいつも見ている気がするし、未だに風呂や睡眠の時間を僕と過ごそうとするんだからなぁ」

 

 考えていても事態は変わらない。だから僕は買い物にでも出掛けようとした。そして姉さんに捕まった。

 

「よぉ修! 買い物だろ? あたしも行くよ。修は今一人だからなぁ! あたし様がついて行かないと何かあった時に大変だろ?」

 

 〈雪音 クリス〉姉さん。年齢は一七歳で明日から三年生。銀髪が綺麗で身長の割に胸が大きい。だから正直目のやり場に困るし、近くにいると何故か背筋がゾッとする。

 

「一人で良いよ姉さん。今は特に困ってないし、掃除や洗濯も昨日姉さんが終わらせたからさぁ」

 

「固い事言うなよぉ! あたし様が好きでしてる事なんだからよぉ!」

 

 本当に姉さんは僕の世話を嬉々としてくれている…………んだけど、何故か下着とかは姉さんが洗濯すると新しい物になってる気がするんだよなぁ。…………特に穴とか空いてる訳じゃあないけど。後……姉さんが部屋の掃除をするとゴミ箱の中とかベッドの下・押し入れ・机の引き出しとかは特に入念な掃除をされている。恐い。

 

「とにかく! 僕は一人で行くからね! ついて来ても相手にはしないから!」

 

 僕は自転車に乗って逃げるようにスーパーに向かった。その時に手に持っていた母から渡されたお守りが紫色に光った気がしたけど見間違いか気のせいだと思う。

 

~~修sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~未来side~~

 

 私の名前は〈小日向 未来〉。来禅高校に通う明日から二年生になる。現在は一人暮らし。

 

「長かったなぁ……この一七年間は」

 

 私は〈ある事〉が判明した時から準備を始めた。その為に今は自宅のパソコンを使い、学校のとあるデータをクラッキングしてでも調べている。

 

「このファイルじゃあない。これも違う。ここまでは確認したけどまだ見つからないなんて…………」

 

 私は目的のファイルが見つからない事に焦りながら時間も確認した。そろそろ宅配便が来るかもしれないからだ。

 

〈ピンポーン! 〉

 

「来たみたいだね。早く行かないと!」

 

 私は急いで荷物の受け取りを済ませて内容物を確認した。そして注文通りの品物が入っていた事を確認すると安堵した。

 

「多分今日はもう無理かもしれないなぁ。どこかで嗅ぎ付けられないように片付けておこう」

 

 私はパソコンをログアウトさせてクラッキングの証拠を隠蔽した。なんだかんだで藤堯さんから習っておいた事が役に立ってる事に安心もしている。

 

「さぁて! 今日こそはあの人をボコボコにしないといけないなぁ!」

 

 今更だけど私は只の高校生じゃあない。〈精霊〉の脅威から人々を守る陸上自衛隊の特殊部隊〈AST〉の、自分では言いにくいけどエースだ。私が行かないと任務に支障が出るから仕方ないかなぁ。

 

「噂をすればなんとやらか。さあて! じゃあ今日こそはあの泥棒猫を駆逐してやるんだから!」

 

 私は呼び出しに応じて出動準備を始めた。

 

 

~~未来sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~精霊side~~

 

 私の名前は〈風鳴 翼〉。今はその事しか思い出せないわ。そして私はこの世界に現れる時に必ず周囲は無惨な姿となっている。どうやら私が来るとこうなるらしいわね。

 

「でも……〈サンダルフォン〉が告げているわ。この街でとうとう会えるって」

 

 私はこの世界に来る度に〈誰か〉を探してる気がする。だけど今までは何故かはわからなかった。でも……そんな日々はもうすぐ終わる気がした。そしてこの思いに胸を弾ませていると〈いつもの女達〉が現れた。

 

「ようやく現れましたね風鳴さん。さっそくですが死んでください。私は忙しいので!」

 

 女達の中でも一番の実力を誇る〈未来〉は特に私に食い下がる。正直に言うと鬱陶しいけど、今日はいつにもまして士気が高いわね。

 

「また貴女なのね未来。だけど今日は帰って貰えないかしら? この街には私の探してる〈誰か〉がいるの。その人物に会えばきっと私の中の何かが変わるのよ」

 

「やっぱりそうですか。今までの現界の場所からいずれこの近くに来るとは思っていました。だから私は風鳴さんを排除しなくてはいけないんです。だから早く死んでください!」

 

 やはり未来は私の話を聞いてくれない。ねぇ……名前もしれない〈誰か〉さん。早く私の事を見つけてね。じゃないと私はこの街を破壊してしまいそうだわ。

 

~~精霊(翼)sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~クリスside~~

 

 空間震が発生して〈精霊〉……いや、翼が現界した。正直に言うとここまで来ちまったか。なら……そろそろあたし様も動かねぇとな。幸い〈オッサン〉達はあたし様に協力してくれるみたいだ。だけど〈アイツ〉の動向だけがわからねぇ。

 

「この事態に本格的に修を関わらせたら嫌でも出て来るか? まあまずは翼をエサにあたし様は準備を進めようかな」

 

 あたしは仲間に連絡を入れた。

 

「あたしだ。翼が現界してきて未来達と交戦中だ。恐らくだが、もうすぐ修と翼は接触するだろうな。〈あおいさん〉達は近い内に活動できるように準備をしてほしい」

 

『了解したわ。それと近い内に私達と合流するスタッフの顔合わせもしたいから、彼が接触されたらお互いに自己紹介をしましょう?』

 

「へぇ……合流スタッフか。助かるよあおいさん。そんじゃあ次の機会で」

 

『えぇ。次の機会でね』

 

 あたしは通話を終了させた。

 

~~クリスsideout~~

 

 

 

 

 

 

 

~~あおいside~~

 

「司令! クリスちゃんからの報告を確認しました」

 

「そうか。ちなみにファラ君達の準備は既にできている。しかしキャロル君の提案には驚かされたな」

 

 私達はキャロルによってこの世界に転生した後、一つの組織を立ち上げていた。司令の父親にあたる〈風鳴 訃堂〉や〈Dr.ウェル〉への備えの為だ。

 

「それにしてもクリスちゃんはよく協力してくれましたね」

 

「それはキャロル君がいないからだろうな。だがここにファラ君達がいると分かれば、クリス君はいずれ身を隠すだろうな。その事態を避ける為にキャロル君は彼女達のスペックを落としてまで隠したんだ。オレ達は余計な事をするなよ?」

 

 そう……クリスちゃんは協力してくれてはいるが、彼女自身も〈精霊〉だ。キャロルちゃんの手がかりが近くにあると分かれば彼を連れて逃走する可能性さえあるのだ。

 

「嘗ての仲間を騙すなんてな。俺達はいつからこうなったんだろうなぁ」

 

 藤堯君のボヤく通りね。せめてクリスちゃんの封印ができれば……。

 

「だが、それでもやり遂げる事が俺達とキャロル君の契約だ。だから抜かるなよ!」

 

 司令からの言葉を胸に私達は今日も、自分達の心を偽りながら彼女達を支援する。そして私達は明日からクリスちゃん達と合流する。

 

~~あおいsideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~修side~~

 

 今日も〈誰か〉が僕を呼んでいた気がした。そしてそれはここ最近は特に頻繁に感じる。

 

「今日は姉さんに冷たくし過ぎたかな。気のせいか姉さんは泣いていた気がしたし」

 

 晩御飯を作ったらお裾分けに行こう。そして美味しいあんぱんと牛乳を持って行ったらいつも通りに機嫌が直るかな? 

 

「今日は肉じゃがでも作ろうかな?」

 

 僕は今日の献立を考えながらスーパーで買い物を始めた。

 

「明日からは始業式……か」




今作でも前作同様に1日2話のペースでの投稿をめざします。

そして次回予告も再開します!

次回「4月10日に現れる〈精霊〉」

更新をお待ちください。

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一章 翼スクラッチ
4月10日に現れる〈精霊〉


原作第1話突入となります!

現れた精霊(翼)と修のファーストコンタクト……その結果は?

本編へどうぞ!


 ●2044年 4月10日

 

 僕は朝っぱらから冷や汗をかいている。

 

「お~い修~起きろよ~!」

 

 クリス姉さんが僕の部屋に入って来た為だ。

 

「まさかまだ寝てるのか? ……へっ! 都合が良いぜ。このまま……ヤッちまうか? 

 

 ものすごく恐ろしい事をクリス姉さんが言っている気がする。最後は聞こえなかったけど、絶対に録な事は考えていないに違いない。

 

「さてさて……修が起きないなら仕方ねぇなぁ。お姉ちゃんが添い寝してやるかぁ」

 

 クリス姉さんが僕の布団に手をかけようとした時に着信音が鳴り響いた! 

 

うわぁ! なんでここにクリス姉さんが!? っていうかそれよりも電話か! 

 

「おおわぁ! 修! ビックリするじゃねえか!」

 

 僕は抗議してきたクリス姉さんを無視して携帯をとった。相手は……〈士道先輩〉か。僕は急いで通話ボタンを押した。

 

『よぉ修! また寝坊か?』

 

「ごめんなさい士道先輩! 色々助かりました!」

 

『そいつは何よりだ。っとそうだ! 昼にファミレスでも行かないか? 修達は今日昼までだろう?』

 

 士道先輩は〈来禅高校のOB〉だ。そして先輩の妹である〈琴里さん〉はクリス姉さんのクラスメイトでもある。

 

「別に良いですよ。先輩方は今日の講義は良いんですか?」

 

『今日の講義は入れてない。だって修達と飯を食いたい気分だからな』

 

「成る程。じゃあ授業が終わったら琴里さんと合流して屋上にでも行きます。先輩もたまには母校に顔を出しても良いんですよ?」

 

『おっ! それは良いな。じゃあ俺も修に渡す物があるから久しぶりに来禅に行くか』

 

「わかりました。じゃあ姉さんと昼には屋上に向かいます。それでは失礼します」

 

 僕は通話を終了させた。すると姉さんは頬を膨らませていた。

 

「ったく人の予定を勝手に決めるなよな」

 

「誘わなくてもついて来るでしょ? だったら最初から人数に入れるよ」

 

 姉さんはため息をつくもすぐに表情を変えた。

 

「じゃあ先にリビングに行くから早く降りて来いよ。朝飯が冷めるからな?」

 

 そう言うと姉さんは部屋を出て行った。一体何時からこの家に居たんだろう? 

 

「考えても仕方ない。僕も支度をしよう」

 

 僕も着替えを済ませてリビングへと向かった。そしてリビングではちょうどテレビが点いていた。

 

『〈太陽 輝〉のニューシングル

 

 〈KNOCK OUTッ! 〉

 

 発売決定! お求めはお近くのショップにて!』

 

ピッ! 

 

『昨日15時45分に天宮市にて空間震が発生しました。付近の住人の皆様は充分な準備を……』

 

 僕が最近話題のアイドルの〈太陽 輝〉のCMを目にすると姉さんはいきなりチャンネルを変えた。そしてその後のニュースでは昨日の空間震の事が取り上げられていた。

 

「最近多いよね……空間震」

 

「ああ……ぼちぼち事態が動くな。ってことは早く合流しないとな。確かに物騒だな。やっぱり修はあたし様と一緒にいるべきだな!」

 

 完全にCMの事には触れていなかった。どうやら姉さんは可愛い女の子が出る事が気に食わないらしい。

 

「ご馳走さま。先に行ってるからね?」

 

「おう! じゃあ昼に屋上でな!」

 

 僕は姉さんよりも早くに準備を整えて自転車で学校へと向かった。

 

 

 

~~登校中~~

 

 

「よお高崎! 今日も一人で登校中か? 美人で巨乳な姉ちゃんはどうしたよ!」

 

「うるさいよ〈平原〉。今日も朝から面倒だった。だから早めに登校してるんだ。ほっといてくれ」

 

 すると女子達のひそひそ話が聞こえた。どうやら平原との話を聞かれてたみたいだな。

 

「やっぱりあの噂は本当でしたわね」

「まあ……トラブルも起きてないしさ」

「アニメみたいな事してるんじゃ無いわよ」

 

 僕の登校に絡んで来た男は〈平原 巧〉。そして僕の事を噂していたのは〈寺島 詩織〉〈安藤 創世〉〈板場 由美〉の通称〈三人娘〉。全員中学の頃からの付き合いではあるが、正直なところ僕にはもったいないほどの連中なんだよなぁ。平原は学年で十番以内の秀才だし、三人娘達は普通に可愛い。当然全員モテるだけのスペックもある。

 

「悪いけど今は姉さんを撒きたい。だから始業式で会おうな!」

 

 僕は急いで学校へと向かった。

 

 

 

 

 

~~クラス分け発表後の教室~~

 

「はは! やっぱり俺達は一緒みたいだな! てことは卒業までよろしくな!」

 

「ええ。よろしくお願いしますわ平原さん。高崎さん」

「二人とも気心知れてるからありがたいよ。またよろしく」

「アニメみたいな展開だわ! 嫌いじゃないわ!」

 

「よろしく皆。それじゃあ僕は先生が来るまでラノベでも読もうかな」

 

 僕がラノベを読んでいると横から声を掛けられた。

 

「高崎 修君。私の事を覚えてる?」

 

「? えーっと、君は確かクラスメイトの〈小日向 未来〉さんだよね? 僕達は初対面だと思うけど?」

 

 すると未来さんは怪訝な表情をしていた。なんでだろう? 

 

「やっぱり勇君は覚えてないか。当然と言えば当然だもんね」

 

 未来さんは小声で何かを言ってたみたいだけど僕には聞き取れなかった。

 

「ううん。ずっと昔に離れ離れになった男の子と修君が似ていたからもしかしたらってね。気にしなくても大丈夫だから」

 

 未来さんはそう言うと準備を始めていた。

 

「修……お前未来さんと知り合いか? 珍しいとは思うけどさ?」

 

「アニメじゃないからそれは無いわよ」

「接点が無さ過ぎだもんね」

「まあ……他人の空似ではありませんかね?」

 

 四人の意見は最もだと思う。そしてしばらくして担任の先生が入って来た。

 

「おはようございます! 今日から皆さんの担任になる神無月といいます! 二年間よろしくお願いします!」

 

 担任の先生が入って来た。どうやらまだ若い先生みたいだな。

 

「へぇ……〈タマちゃん〉先生か。なかなか面白いクラスになるかもな」

 

「なあ平原……面白いってどういう事だ?」

 

「恐らくだけどこのクラスは」

「話題に事欠かないクラスって事ですわね」

「はぁ。アニメみたいな展開はやめてよね」

 

 どうやら良くも悪くも何かが起こりうる事が良ーくわかった。そして僕は昼が来るのを待った。

 

「なあ高崎……この後五人で駅前のファミレスにでも行かないか?」

 

「あ~悪いけどパスで。久しぶりに士道先輩が学校に来るらしいから琴里先輩と待ち合わせ。そして多分だけどそのまま補習の予定かな?」

 

「そっか。じゃあ仕方ないか。先輩にはよろしくと伝えといてくれ」

 

「私達もまたお会いしたいとお伝えください」

「あの人格好いいしねぇ」

「まるでアニメみたいだもんね!」

 

「了ー解。伝えとくよ。それじゃあな!」

 

 僕は琴里さん達の到着より一足早く屋上に着いた。すると士道先輩はベンチで待っていた。

 

「早いですね士道先輩。そう言えば先輩の渡す物って何ですか?」

 

「よう……そっちも早かったな。そしてこれが修への進級祝いのプレゼントさ」

 

 士道先輩は僕に〈ハートの形をしたブローチ〉をくれた。以前母さんに貰ったペンダントと気のせいかデザインが似てる気がする。

 

「ありがとうございます士道先輩。でもこのブローチって何ですか?」

 

 先輩は少し悩むと教えてくれた。

 

「ん~目印だな。多分修が三年生になる前には意味がわかると思うから、あまり深く考えなくても大丈夫だぞ」

 

 すると姉さんと琴里さんも屋上にやって来た。

 

「おにーちゃん早すぎ。でも渡す物は渡したんだね?」

 

「へぇ……士道さんからのプレゼントか。まあ……進級祝いとかだろ? ならあまり気にしても仕方ないか!」

 

 僕達が合流したその時に空間震警報が鳴り響いた! 

 

「修……シェルターに急ぐぞ! あたし達は在校生の避難を行うから先輩達はすぐに避難してくれ!」

 

 僕は姉さんに連れられてシェルターへと向かったが、学校を出る頃には姉さんとはぐれてしまった! 

 

「チィ! 姉さんと人混みではぐれたか! 僕も早く避難しないと!」

 

 最寄りのシェルターは既に閉まっていた為に僕は少し遠いシェルターを目指した。すると凡そ一キロくらい先の場所に球体状の巨大な光が見え、続いて起こった余波で僕は吹き飛ばされた。

 

「いったいなぁ。ていうか何が起こったんだ?」

 

 余波が終わった頃に僕は球体の見えた場所へと歩き出してしまった。そしてその場所では〈一人の女性〉が悲しそうに歌っていた。

 

「貴女は……一体?」

 

 僕は反射的にその人物へと声をかけた。すると女性はこう答えてくれた。

 

「〈風鳴 翼〉……その名前しか私は思い出せないわ」

 

 女性は翼さんと名乗ったが、その瞳には涙を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~士道side~~

 

「なあ琴里……十香……とうとう始まったな」

 

「うむ。だがそれは必ずしも困難な事のみではあるまい」

 

「同感ね。困難と同じだけの喜びもあるはずよ。だってこの世界の精霊達は〈愛〉を知っているわ。だから私達は見守るわよ。もちろん手伝える事は士道にもして貰うからね」

 

 すると屋上にもう一人の人物が現れた。それは折紙だった。

 

「心配はいらない。それは誰もが通る道だから。さて……そろそろ私も〈燎子〉達の様子を見てくる。何かあったらすぐに呼んで」

 

 そう告げると折紙はまた去って行った。

 

「さぁて! 俺も修達の為の課題プリントでも作ろうかなぁ」

 

「程々にしなさいよ。どうせ今から彼等は忙しくなるんだから」

 

「わかってるよ。それと……卒業後はあの会社で十香達と過ごす為に俺も頑張るかぁ!」

 

「うむ! 任せたぞシドー!」

 

 俺達は修達がこれから空間震の発生要因と関わる事を()()()()()()しかし俺達がそれを伝える事はない。だってこの物語は…………

 

「修と彼女達の戦争(デート)だものね。

 〈今回は〉……というよりは〈この世界では〉ね。

 でもそれと同時に私達がやることも変わらないわ」

 

 俺達はあくまでも〈アドバイザー〉だ。これは彼等の物語。嘗て世界を守った〈歌姫達〉は世界に恐れられる〈精霊〉となった。

 

「さあ! 新しい戦争(デート)を始めよう!」

 

~~士道sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~修side~~

 

「貴方は…………何者なの?」

 

 僕が翼さんに名を聞いた事で〈名前は〉教えてくれた。しかし翼さんはそれ以外の記憶が存在しなかった。そして彼女は僕へと近づいて来た。

 

「翼さんはなぜここに……?」

 

 絞り出した声で僕が聞けるのはそれだけだった。しかし次の瞬間には僕のペンダントが紫色に光った。

 

「そう……私が探していた〈誰か〉は貴方の事だったのね。やっと会えたのね」

 

 僕がその言葉の意味を理解する前に左頬に痛みが走った。そして僕の頬からは赤い血が流れ出した。

 

「ふふ……なぜかはわからないけど、どうやら私は〈一番早い〉みたいね」

 

 すると僕の頬からは〈剣〉が離れて翼さんは僕の血を舐めた。そして次の瞬間には別の人物がこの場所に現れた。

 

「貴女は風鳴翼! とうとう民間人に怪我を……もう排除してやる!」

 

「また貴女なのね。私を否定する恐い人達。だから私も自分の身を守るわ」

 

 声の主はクラスメイトの〈未来〉だった。そして翼さんに〈斬りかかって〉いた。

 

「貴女は自分の名前以外はわからないと言っていた! だけど今日! とうとう人に手を出したわね! だから貴女はもう立派な怪物よ〈プリンセス〉」

 

 その言葉を聞いた瞬間、翼の顔は先程以上に涙を流していた。

 

「もう……唯一残った名前ですら呼んで貰えないのね」

 

 そして翼は未来の剣に対して剣で鍔迫り合いをした。そして僕はその際に発生した衝撃波で吹き飛ばされた。その結果頭を打って気絶してしまった。そして次に目が覚めた時に世界の運命が動きだす事を()()()()()()()()()()()

 

 

~~修sideout~~




前作の設定を引き継いでおりますので、今作の精霊の方々は全員ヤンデレとなります。そして前作での敵味方関係が早くも混乱状態ですね……

次回「顔合わせと訓練」

更新をお待ちください。

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顔合わせと訓練

精霊と対峙した修はラタトスクにコンタクトされる。そこで彼は意外な人物と対面する……

本編へどうぞ!


 これは恐らく夢なのだろう。

 

『オレはいつまでも※※の事を待っている。ずっと共にいると決めた伴侶だからな』

 

 知らない声が聞こえた。だけど不思議と僕はその人物の事を知っているとも感じた。

 

『※※の事を迎えに行けるまでもうすぐだ。だから後少しだけ待っていて欲しい』

 

 声の主は僕の事を知っているみたいだ。そして僕は大事な〈何か〉をしたみたいだ。

 

『もう間違えないからな。オレ達が次に出会えた時は魂すらも越える繋がりを持とう』

 

 僕の不思議な夢はその言葉を最後に終了した。

 

 

 

 

 

「ここは……何処だろう?」

 

 意識を取り戻した僕は周囲を見渡した。しかしここは知らない部屋だった。

 

「気がついたのだね」

 

 すると()()()()()()()()()()()()()()()()()()()がそこにいた。

 

「貴女は誰ですか? そして此処は何処なんですか?」

 

「すまないが先に君の状態を確認させて貰おう。…………ふむ。どうやら大丈夫みたいだね」

 

 女性は僕の質問には答えてくれなかった。だけど僕の体は大丈夫だと言いきった。

 

「そうだね。まずは私の事から話すとしよう。私の名前は〈村雨 令音〉だ。先程の診療だが医師免許こそもたないが、結果は絶対の保障をしよう」

 

「そうですか。では答えてください。此処は何処ですか? そして何故僕は此処にいるんですか?」

 

「その質問の答えはこの施設の代表者にして貰うつもりだ。だからついて来て欲しい。それと君の名前を教えて貰えないかな?」

 

 また質問の答えをはぐらかされたが、僕は名前を名乗る事にした。

 

「僕の名前は〈高崎 修〉です。よろしくお願いしますよ令音さん」

 

「そうか。ではよろしく頼むよ〈シュウ〉」

 

「僕の字は〈修〉と書きますが読み方は〈おさむ〉です。間違えないでください」

 

「すまないね〈ユウ〉。ついて来てくれ」

 

 僕の訴えは伝わりきらなかったが、とりあえず現状の確認をしたかったのでついて行く事にした。そして僕達はコントロールルームと思わしき部屋に出た。

 

「戻りましたか〈解析官〉。艦長もすぐに到着しますよ。そして〈風見さん〉達は既に揃っています」

 

「ありがとう〈緒川副艦長〉。では艦長の到着を待つとしよう」

 

 どうやらこの人は艦長ではなく、他の人物が艦長みたいだ。その為に僕達は艦長と言われた人物が到着するのを待ち続けた。

 

~~15分後~~

 

「悪いなお前達。あたしが遅れたみたいで申し訳ないよ。その代わりに〈あの人〉達も協力してくれるし、あの人はついて来てくれたからさ」

 

 僕はその人物に驚き声が出なかった。

 

「なんでここにいるんだよ()()()()()()()

 

 しかし姉さんは僕の質問に答えずに話を進めた。

 

「そんじゃ紹介を始めるよ。まずはあたし〈雪音 クリス〉艦長だ。あたしの隣にいる優男が〈緒川 慎次〉副艦長だ。そしてこの場所は空中艦〈フラクシナス〉……つまり世界樹だな」

 

 空中艦〈フラクシナス〉? 艦長は姉さん? ヤバい理解が追い付かない。

 

「そして既に名前を聞いたかもしれないがお前のそばにいてくれたのが〈村雨 令音〉解析官だ。こいつは本物の〈できる女〉って奴だよ」

 

「あまり誇張しないで貰えるかな? 緊張してしまいそうだよ」

 

「すまないな令音」

 

 どうやら姉さんと此処の人達は良好な関係性みたいだな。その光景を何故か自然に感じられる僕のこの安心感の正体って一体何なんだろうな? 

 

「じゃあ紹介をすすめるぜ? と言ってもあたしも実は初対面な面子もいるからな。じゃあ風見さんからお願いするぜ?」

 

 すると〈風見さん〉と呼ばれた女性が自己紹介を始めた。

 

「はじめましてですね。私の名前は〈風見 舞華〉と申しますわ」

 

「風見の二つ名は剣士の天敵(ソードブレイカー)だ。幾つもの道場の看板を破った噂があるぜ?」

 

 すごい二つ名だな。ということは強い人なんだね。

 

「その二つ名は恥ずかしいですが、師匠(マスター)の教えに泥を塗る訳にはいきませんからね?」

 

 すると次は快活な女の子が手を挙げた。

 

「アタシの名前は〈火神 美香〉だぞ! よろしくだぞ修君!」

 

「確か火神の二つ名は無邪気な破壊者(笑顔の天使)だったな。ホント……人は見かけによらないとは良く言ったもんだよ」

 

「つまんない奴はお断りだぞ! だけど人との関わりは楽しいぞ!」

 

 本当に笑顔は可愛い。だけど確かに少し恐い人かもしれない。

 

「次は私だな。〈土屋 鈴〉だ。私は派手な出来事が好きだから最近の〈精霊騒動〉は興味深い出来事だと思っている」

 

「土屋の二つ名は派手好きの射撃手(私に地味は似合わない)だ。警察顔負けの射撃センスなんだよなぁ」

 

「人の技術は日進月歩だ。そして私は常に進化を求めている。この出会いも新たな奇跡だと思っている」

 

 なんだかすごい人だな。だけど不思議な事に見た目程恐さを感じないんだね。

 

「次はあたしか。〈氷室 雫〉だよ。そしてアンタの顔は気に入ったわよ修君♪」

 

「氷室の二つ名は最悪の心理士(メンタルブレイカー)だ。弱みを握られたら逆らえないぜ?」

 

「人の事を随分な言いぐさですねぇ艦長♪ 貴女の初恋エピソードを修君に話しますよ?」

 

「悪かったからやめてくれ! もう言わねぇからよぉ!」

 

 どうやら姉さん以上の大物なのかもしれない。というよりは姉さんのメンタルはある意味クソ雑魚とも言えるだけかな? 

 

「後はオペレーターの二人だな。お願いするぜ?」

 

「はじめまして修くん。〈友里 あおい〉よ。まずはあったかい物どうぞ」

 

「ありがとうございます。………ええと……あおいさんですね。……あったかい紅茶で美味しいです」

 

 すごくいい人だな。

 

「僕の名前は〈藤堯 朔也〉だ。やれやれ……これからは大変だなぁ」

 

「ちなみにあおいさんと朔也さんは夫婦だからな。あおいさんは結婚前からのスタッフだから、皆彼女の事を旧姓呼びしてるんだよ」

 

 すごく驚いた。職場恋愛ってあるんだね。

 

「じゃあ本題にはいるぜ? 昨日修が出会ったのは〈空間震〉の本当の原因となってる存在……総称は〈精霊〉だ」

 

 空間震には原因があったんだ。でもなんでそれを姉さん達は知っているんだ? 

 

「姉さん達は何者なの? どうしてそれを知っているの?」

 

「あたし達は精霊を探してるんだよ。その理由はな修……お前に彼女達の力を封印して貰いたいんだ」

 

 〈力の……封印? 〉なんで僕なの? 

 

「あいつらはなぁ……可哀想な少女なんだよ。この世界に突然放り出されて右も左もわからない。わかっているのは自分の名前だけ……そんな連中なんだ。なあ修……あいつらを救ってやってくれないか? そしたら姉ちゃんが何でもシテやるよ。ハジメテだって修にあげてもかまわないぜ?」

 

 姉さんが僕の寝込みを襲おうとしてる事は知っているから最後は理由のこじつけだな。それだけはすぐに理解できた。

 

「じゃあ僕は何をするの?」

 

「それを説明してくれるのがあたしの連れて来た人だ。頼んだぜ〈士道先輩〉」

 

 そう言われて入って来たのは僕達のOBで家庭教師も引き受けてくれた偉大な士道先輩だった。

 

「おうよクリス。頼まれた資料はこの通りだ。後は俺が説明しても良いか?」

 

「頼んだぜ先輩。あたしはちょっと用事を済ませてくるからな!」

 

 姉さんは急いで部屋を出た。何なんだろうなぁ? 

 

「じゃあ今日は遅いから明日の説明だけするよ。まずこの中身は〈デート〉をテーマにしたビデオだ。もちろん俺自ら中身をチェックしてあるから諸諸の心配はいらないぜ?」

 

 先輩のチェック済みなら安心感があるなぁ。

 

「そんでビデオ鑑賞が終わったら俺が問題を出題する。修はその問題に対して解答をする。そして俺達が採点して、合格点を越えたら次のステップに進ませる」

 

 でもなんで〈恋愛ビデオ〉なんだろう? 僕は先輩に確認をする事にした。

 

「先輩……教えてください。何故僕は恋愛ビデオを見るんですか? そしてそれがどう〈精霊〉と関係してるんですか?」

 

「良い質問だ。まず精霊は常に孤独で、その上に強大な力を持っている。しかし心が脆ければ力を制御できないんだ。だからまずは精霊の心を満たす為に彼女達に心を開いて貰う存在が必要なんだ」

 

 成る程……わかりやすい答えだ。そして僕は恋愛初心者だから恋愛について学べって事か。

 

「おっ! 良い顔したな修! その考え方であってるよ。そして続きだが、彼女達の心が開かれる時には側に大切な存在が必要になる。修には苦労をかけるが頼めないか? 協力は惜しまないからさ?」

 

「だったら先……わかりました。僕がやります。あの女性……翼さんみたいな人達の助けや支えに僕がなれるなら頑張ります!」

 

 本当は「先輩がやれば」と続けたかった。しかし先輩は既に〈十香先輩〉という恋人がいる。そしてそれを知っていて尚先輩に好意を向ける女性は〈琴里先輩〉をはじめ何人も存在してる。そんな先輩にこれ以上の負担は求めてはいけないだろう。

 

「それじゃ修! 明日から頼むぜ? …………ああ思い出したけど、さっきの令音さんが明日から修達のクラスの副担になるよ。修のフォローをする為にな」

 

「ありがとうございます先輩……令音さん」

 

「気にする事はないよ。修はこれから大変な事をするんだ。だから巻き込んだ俺達は全力でサポートするのが義務だろう?」

 

 先輩マジ格好いいです! 十香さん達が惚れた理由がわかります! 

 

「これからよろしく頼むよユウ。こんな私達だが、君だけが頼りだからね」

 

「はい! こちらこそよろしくお願いします!」

 

 この翌日から僕の訓練は始まり、三日後には先輩の恋人の十香先輩達も協力してもらえた。そして今日十香先輩と折紙先輩が告白練習の相手をしてくれる事にもなった。

 

「じゃあ修は十香と折紙各々へデートを申し込んでくれ。そして誘い方や表情を二人に評価して貰うよ。十香は感覚的な面を、折紙は文言方面を特に評価する。二人からの総合評価が高くなる頃には精霊にも対話できるだけの技量はついてる筈だからさ」

 

 先輩方本っ当にありがとうございます。

 

「あぁそれと修……クリスからの伝言だが、

 

 〈もし先輩達に恥かかせたら修のハジメテはあたし様が奪いに行くからな! 〉

 

 だとさ。まあ……強く生きろよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後3日間僕は二人の先輩から指導をされ続けた。そして何とか及第点は貰えたみたいだ。

 

「うむ! これなら修はもう大丈夫だな! そうだろ折紙?」

 

「悪くはない。しかし致命的に経験が足りていない。もう少し時間がかかりそうだと私は思う。次の現界が終わった後に補習が必要。ただし私達とは別の人物が行うべき」

 

「? 別に私達でかまわないのではないか? 修も戸惑うだろう?」

 

「対応できるパターンが一つだけでは心許ないし、修自身の価値観が歪む危険性もある」

 

「ふむ……やはり難しいものだなデェトは」

 

 こんなやり取りを先輩達として、気づけば〈あの日〉から1週間が経過しようとしていた。

 

「修……お前はこれから彼女に再び出会うだろう。しかし修は自分が信じた言葉を告げれば良い。それに何かあれば私達も手を貸すさ」

 

「十香先輩! それは一体どういう……」

 

 僕が先輩の言葉を理解する前に空間震が発動して僕達三人は慌てた姉さんの手によって〈フラクシナス〉へと回収された。




士道の恋人である十香先輩達に協力して貰い積み重ねた訓練。そして再び再会する事になる翼に修が伝える言葉とは……

次回〈再び見えた少女〉

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再び見えた少女

訓練を重ねた修は翼に再び向き合う。

その行動が迎える結末とは……

本編へどうぞ!


 都立来禅高校……僕達の通う学校にして今回の〈空間震〉の発生地点。

 

「この先にあの日出会った翼さんがいるんですね。わかりました……僕は行きます!」

 

 僕は教えて貰った翼さんのいる教室の扉を開けた。すると翼さんは僕の姿を確認すると、驚くべき早さで近づいて頬に刃を突きつけた。そしてあの日のように僕の左頬からは血が流れて彼女は恍惚の表情をしていた。

 

「良かったわ……貴方は生きていてくれたのね。貴方に〈私〉という存在を刻まないといけないわ。それもとても深くに……ね」

 

 何を言っているのかが良くわからない。僕に〈彼女の存在を刻む? 〉何の為にそんな事を? 

 

「何故……僕に刻まないといけないんですか? もっと別のやり方があるんじゃ……」

 

 僕は途中で言葉を止め()()()()()何故なら僕の口は背後に回り込んだ右手で塞がれて左の耳元で囁かれた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 なんで僕が? そう尋ねようとした時、僕の傷口は彼女に直接舐めとられた。

 

「ッ!」

 

「可愛い反応ね。でも私は貴方の名前を知らないわ? 教えて貰えないかしら?」

 

 僕が拒否をする前に翼さんは拘束している右手に力を込めようとした。不味い! このままだと絞め殺される!? 

 

『修! 修! 返事をしろ! 一体何があったんだ!』

 

 通信機から姉さんの慌てる声が聞こえた。そして翼さんは腕に力を込めながら今にも泣きそうな声で呟いた。

 

「もしかして私以外に大事な女の子でもいるの? ダメよ。貴方は私の為にいるべき人なのよ? 絶対に逃がさないわ!」

 

 僕は首を絞められた為に答えられない。すると僕の耳からインカムが外れ、姉さんの声がスピーカーになって響いた。

 

『修! 返事をしてくれ! 修!』

 

「そう……修というのね。ありがとう姿の見えない誰かさん。……貴女のお陰で私は彼の名前を知れたわ」

 

 すると彼女は右足でインカムを踏み砕いた。そして僕の首へ回す腕の力を抜いた。

 

「ゲホッ! ゲホッ! なんで……こんな事を!」

 

 呼吸を整えながら僕は何とか翼さんに尋ねた。

 

「そうね。修が私だけのモノになると誓ってくれたら教えてあげるわ。だからそれ以外の人間は不要でしょう?」

 

 その言葉に僕は絶句した。なんで……そんなに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「簡単な事よ。私は修さえいれば良いの。修以外の人間は私の事を否定するわ。だって私は命を狙われているんでしょう?」

 

 なんで翼さんはそこまで人を信じないんだ? そう僕が問いかける前に教室に向かって銃弾の雨が放たれた。

 

「翼! 逃げてくれ!」

 

 僕は翼を突飛ばした! そして翼の前に立ちはだかった! 

 

「やめて! 私の目の前からいなくならないで! やっと私は巡り会えたの! だからやめて! 私から奪わないで!」

 

 翼は不思議な力で僕の前に玉座を出現させた。そして銃弾は玉座を貫く事はできなかった。

 

「ごめんなさいね。すぐにあの恐い人達を殺してくるわ。でも修を守る為には仕方ない事よね?」

 

 翼が恐ろしい事を言い出して僕は体が震えた。だけど〈ソレ〉が取り返しのつかない事態を引き起こす確信だけはできた。だから僕は右腕で翼の腕を掴んで、左手で翼の顔をひっぱたいた! 

 

「きゃあ!」

 

 悲鳴をあげる翼は何故いけない事なのかわからない顔をしていた。

 

「やめてくれよ翼! そんな事をしても何も変わらない! ただ力に怯える人間が増えるだけだ!」

 

「嫌よ! 私には修しかいないのよ! 修を傷つけて良いのは私だけなの! 修は私だけのモノなの!」

 

 意味がわからない。何故翼は僕に拘り続けているんだ? 僕達はつい1週間前に出会ったばかりだ。なのになんでこんな事に! 

 

「絶対にダメだ! だったら僕はこの右手を離さない! この手を離したら僕は絶対に後悔してしまう! 僕を悲しませないでくれよ!」

 

 僕は翼の腕をより強い力で握る。すると翼は何かに気づいた顔をしていた。

 

「あぁ……そうなのね。やっぱり私と修を繋ぐのは〈痛み〉だけなのね。なら仕方ないわ……だって私は〈精霊〉なのでしょう?」

 

「知って……いたの? じゃあ……どうして僕に……」

 

 僕は言葉を続ける事ができなかった。翼が僕の制服を切り裂いた為だ。

 

「一体……何を……して……いるん……ですか?」

 

「わからないかしら? 修の服を切り裂いたのよ? 言わなかったかしら? 私は修に〈存在を刻む〉って」

 

「何かの……例えじゃあ……ないのか?」

 

 僕は何とか声を絞り出した。しかし声量は情けない程にか弱いレベルだった。

 

「言葉通りの意味よ。でもやっぱり頬の傷だけというのは物足りないわ。まずは頬だけど次は首ね。そして次に両腕・胴体・両足……あらゆるところに〈私〉という存在を刻むわ。掠り傷程度だと治ってしまって台無しだわ。もっとしっかり……もっと深く……修は私だけなら傷をつけても許してくれるでしょう? だって修と出会った時から私の胸は高鳴り続けているわ。これはきっと私達の出会う事は運命で決まっていたの! やっと私は見つけて貰えたの! なら私は待ち焦がれた分だけ証を刻まないといけないわ。じゃないと次にいつ修と会えるかわからないのよ? そもそも私はずっと一人だったの! やっと見つけて貰えたの! なら良いじゃない! 少しくらいわがままでも聞いてよ! お願い側にいて! 私だけのモノになって! お願い修! お願いお願いお願いお願いお願いお願い! 私だけのモノになってなってなってなってなってなって! もう一人は寂しいの! 私だけの温もりが欲しいの! 何でもするから! 恐い人達も殺すから! 皆殺すから! お願いよぉ……私を一人にしないで。私だけの修でいて! 恐いモノから守ってくれる修でいて! 修の恐いモノは排除するから! 絶対に私は離さないから! お願いよぉ……だから私の存在を修の体に刻ませてよぉ……そして私を修の手で殺して」

 

 訳がわからない。翼の言う事が支離滅裂だ。何でこんなに歪な心をしてるんだ? 

 

「お願いよぉ……何とか言ってよぉ……」

 

 翼はあの破綻した独白の際も、今にも泣きそうな顔をしながらその手で自分の顔を掻きむしってるんだ? 何でそんなにも美しい筈の顔を自分の手で傷つけているんだ? 

 

「落ち着いて。僕は逃げないし、今の翼は逃がさない。今僕が手を離せば翼はすぐにでも彼女達を切り裂くつもりでしょう? だったら尚更この手を離す気にはなれない!」

 

「じゃあ……私はどうすれば良いの? 私にあるのは〈風鳴 翼〉という名前と〈サンダルフォン〉のみなのよ? 他には何もないのよ……」

 

 姉さんが言ってたな。〈精霊〉は右も左もわからない状態でこの世界に放り投げられた。彼女達に残っているのは圧倒的なまでの力を振るう〈天使〉と自身の名前のみ。

 

「皆私に手を差しのべるどころか命を奪おうとするわ。私が何をしたの? 私はどうすれば良いの……?」

 

 尚も翼は掠れて小さな声で縋るように僕に尋ねる。

 

「じゃあもし……だけど……力を制御できるとしたら?」

 

「力の……制御?」

 

 ようやく翼の反応に変化があらわれた。このまま僕の話を聞いてくれたら良いんだけど。

 

「翼の力を制御できれば〈空間震〉は発生しない。そうなれば翼を襲う理由は無くなるんだ。だから僕の事を信じてはくれないかな?」

 

「本当に私の力を制御できる方法があるの?」

 

「ある。だけどその為には僕の事を信じて欲しい」

 

「私を捨てないよね?」

 

「絶対に見捨てないよ。だって僕は……」

 

 その先を告げる前に校舎に向かって()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

危ない! 

 

「修!? 一体何を!?」

 

 僕は間に合う事を信じて翼をもう一度突飛ばした。そしてライフルの狙撃から翼を逃がそうとした。

 

「まさか!? やめて……やめて修! 

 

 翼が叫んだ時には既に僕達の側まで銃弾が迫っていた。今から回避するのは不可能だろう。

 

(だけど残念だな……僕は翼を救いたかったのになぁ……僕に力があるならお願いだ。翼を助けさせてくれ……)

 

 走馬灯のように後悔と未練……そして願いを込めたその瞬間…… ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「この……輝きは……?でも……やってみよう。Imyuteus amenohabakiri tron~~♪」

 

 そして僕がその現象に戸惑っていると翼が小声で何かを呟いた。

 

「アメノ……ハバキリ……?」

 

 すると僕は突然現れたプロテクターのような何かに体を包まれた。そして……僕の体にライフルの弾が直撃して吹きとばされた。

 

「修! 嫌よ! 行かないで!」

 

 翼はすぐに僕の事を追って来た。そして僕に駆け寄るとペンダントに手を充てていた。

 

「僕は……生き……てる……のか?」

 

 どうやら意識も保てているみたいだ。そして翼の体も蒼色の輝きに包まれた! 

 

「……そう。やっぱり修は貴方だったのね※※※。やっと理由がわかったわ」

 

 翼はうっすらと意識の残る僕にキスをした。そして僕は意識を手放した。

 




剣の精霊を無事に封印した修。しかし翼の現界は事態の始まりに過ぎなかった……

次回〈事態の裏側では〉

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事態の裏側は……

翼の力を封印する事に成功した修……しかしこれは事態の始まりに過ぎなかった……


 声がきこえる。

 

『サンダルフォンの力を取り戻したか。それでこそオレの伴侶の※※※だ。……しかしそれでもこの程度の力しか今は発揮できない……か。忌々しい事だ』

 

 声の主はこの現象を知っているらしい。

 

『やはり※※※を元に戻すには全ての天使が必要不可欠か』

 

 他にもこんな力を持つ人がいるの? 

 

『しかし……これは始まりだ。〈オレ達〉の新たなる関係への……』

 

 声の主は僕の問いかけに答えない。……いや、そもそも()()()()()()()()()()()()()

 

『いずれ奴等も気付くだろう。オレ達と※※※がこの世界でも絶対の関係だという事をな』

 

 僕の意識はで途切れた。いや、現実に引き戻されるような感覚に襲われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは? それに翼は?」

 

 僕は今自分がどんな状態なのかを把握できないでいた。だから周囲を見渡すとよく知る人達で溢れかえっていた。

 

「よぉ修……災難だったな。そして済まなかった。オレ達の想像が遥かに甘いと思い知ったよ」

 

 最初に僕へと声をかけたのは士道先輩だった。

 

「どういう……意味ですか?」

 

「そのままの意味さ。オレ達は今回の接触ではここまでの大事になるとは思わなかった。せいぜい校舎が銃弾の嵐に襲われただけだろうと思っていた。そしたら修のインカムは破壊されるわ、〈AST〉の未来が〈CCC〉を持ち出して発射するわで対応が後手後手になってしまった。そのせいで修に対する備えを十分にしてやれなかったよ。あれだけ万全のサポートをすると言いきったのになぁ……」

 

 士道先輩の様子は本当に後悔をしてもしきれないといったモノだった。そしてそれは他のメンバー……特に姉さんは涙で顔を腫らしていた。

 

「いえ……大丈夫……とまでは言えませんが、覚悟していた事ですから。でも教えてください。その口振りの士道先輩がなんであの事態を予見できなかったんですか?」

 

 士道先輩は言いにくそうに言葉を続けた。

 

「いくらASTでも校舎に向かって派手な攻撃はしないだろう。してもせいぜい威嚇射撃ぐらいだろうと思っていた。避難状態が定かじゃない内に校舎を吹き飛ばし兼ねない攻撃は自衛隊の理念でもしないと思っていたのさ」

 

「ASTは仮にも自衛隊の一部だ。だから強硬には準備と承認が必要な筈だった。しかしさっき名前を出した〈未来〉は既に準備と申請を済ませていたんだ。それも翼が現れた直後には攻撃に参加せず、狙撃の為に一人部隊から離れて……な」

 

 僕は未来の発想力と準備の周到さに驚いた。いくら精霊が危険だからって周囲の避難を省みずに切り札の準備を進めたなんて。

 

「だけどその説明ならただの独断専行ではないという事なんですね?」

 

 すると今度は姉さんが解説した。

 

「あたし達は修のインカムが破壊された事ですぐに翼とASTの動向を確認した。そしたらその状態だ。いくらあたし達でももう介入する事ができなかった」

 

 すると謎の人物が突然現れて解説を始めた。

 

「これはそれだけ精霊を排除したいと自衛隊が考えている事に他ならない。それもどんな犠牲を払ってでもするべき……って理念を持っているという事だ。それが現在の自衛隊の責任者でもある〈風鳴 訃堂〉のやり方さ」

 

「貴方は……一体誰ですか?」

 

 謎の人物は直ぐに説明を始めた。

 

「ああ……すまんな。俺の名前は〈風鳴 弦十郎〉だ。クリス君達〈フラクシナス〉は我々〈ラタトスク〉の最前線部隊だ」

 

 また〈風鳴〉だ。これは明らかに翼と関係があるはずだ。

 

「〈弦十郎〉さんと〈翼〉、そして今名前をあげた〈訃堂〉の関係性の説明を求めます。構いませんよね?」

 

 すると弦十郎さんは笑顔で教えてくれた。

 

「そうだな! まず翼は俺の姪に当たる存在だ。正確には俺の兄貴である、〈風鳴 八絋〉の娘だ。そして俺と八絋兄貴は〈訃堂〉の息子だ。しかし親父のやり方に納得のできなかった俺と兄貴はラタトスクを立ち上げた。そしてここ3ヶ月で翼が精霊としてこの天宮市に現れた訳だ」

 

「それは……貴方達が陸自司令官の息子であり、翼さんが貴方のお兄さんの娘で、精霊は元々人間だという事ですか?」

 

「ああ。表に出せる訳がないトップシークレットの情報だ。今回の対応が後手後手に回った謝罪としてこの情報は修君に開示するべきだと判断したのさ」

 

 言葉にならない。〈空間震〉は〈精霊〉がこちらに現れた際に起こる現象だ。しかし()()()()()()()だと言われると、何故精霊が人間ならなんで……そんな事に。

 

「その表情……どうやら困惑してるみたいだな。だからいずれこの続きを知りたい時はクリス君に言って欲しい。彼女にも伝えた事だ。修君は修君のペースで理解してくれたら良い。それにな……これ以上知りたいと思わなければ忘れてくれてもかまわない。それだけの情報を修君は知るべきなんだ」

 

 弦十郎さんはそう言い去って行った。僕は本当に重大な事を知らされたみたいだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~クリスside~~

 

 あたしはオッサンが修に〈精霊の真実〉を告げた。

 

「どういう事だオッサン! なんで精霊の正体が〈あたし達〉だと告げた! なんで……修に……」

 

 あたしは言葉を続けられなかった。

 

「すまんなクリス君。しかしそれはいずれわかる事でもある。それも……〈勇君〉としての記憶を取り戻したらいやでもな」

 

 わかってる。遅かれ早かれって奴だ。だけどなんで今なんだよぉ……。

 

「そもそも翼が記憶とギアを取り戻した。いずれ翼が語る可能性もあるだろう? それなら立場のある人間が説明するべき事だ。俺達はその為の司令であり……艦長だろう?」

 

 そうだな。力を持つ奴の責任だ。だからオッサンは責任を果たしている。そこにあたしはケチをつけられない。

 

「ならオッサン……残りの連中の捜索は急いでくれよ? 他の連中が翼と同じ考え方してたら対応は後手後手だからな?」

 

 そう言ってあたしはオッサンとの話を終えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オッサンとの話を終えたあたしは翼に呼び止められた。

 

「やはり雪音は〈憶えているのね〉」

 

「何の用だ翼? あたしはお前をぶち殺してぇ。修のファーストキスを奪った罪は重いぜ?」

 

 あたしは翼の手段が嫌いだ。修の優しさに漬け込みやがったそのやり方がな。

 

「でも安心したわよ雪音。だってその反応……貴女はまだ修とキスをしていないという事でしょう? なら私は貴女よりも先にいるわ。悔しかったら精霊の力を手放す事ね?」

 

 翼はそれだけ言うと去って行きやがった。クソッ!! これじゃああたしの稼いだアドバンテージが消えちまう! 何とか手を打たないとなぁ! 

 

「とりあえず勇のハジメテを今度こそ貰わないとなぁ……〈アイツ〉には絶っ対に渡す訳にゃあいかねぇなぁ!」

 

 あたしはいずれ 現れる筈の〈アイツ〉をぶちのめすまでは〈カマエル〉の力は渡せねぇ。それだけは絶対に渡さねぇからよぉ! 

 

~~クリスsideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~修side~~

 

 あの後僕は真剣に考えて一つの答えを出した。

 

「〈空間震〉を発生させるのが〈精霊〉で、精霊は元々人間だった。だけど記憶を失っていたんだ。だったら僕のやる事も変わらないな」

 

 そう決意した時に部屋に来客だ。

 

「失礼するわね。修……もしかして私はお邪魔だったかしら?」

 

「大丈夫だよ翼。僕は君を拒絶しない。約束したからね」

 

 僕はそう言って翼を僕のベッドの横に招いた。

 

「ふふっ、やっぱり修は優しいわね。じゃあ遠慮なく……」

 

 翼は僕の側に来るとディープキスをした。…………え? ディープキス!? 

 

「翼……今……僕に!?」

 

「えぇ。私の愛しい修。貴方には私の全てをあげるわ。まずは私の体で辛い今の貴方を癒さないといけないわね?」

 

 そう言って翼は僕の服に手をかけてボタンを外した。そして今度はズボンへと手を伸ばして来た! ……て言うか翼の格好がそもそも薄着だった! 

 

「待ってよ翼! 僕から離れて! 今大変な事になってるから!」

 

「かまわないと言った筈よ? それに私は修になら〈何をされても〉構わないわ。〈今直ぐに始めて〉も良いのよ?」

 

 そう言って翼は本日二度目のキスをしてきた! ヤバい! 助けが呼べない! 

 

(クソ! 何か……何かないのか?)

 

 辺りを見て僕はあることに気づいた。そのために翼にキスを止めさせた。

 

「もうおしまいかしら? 私はまだまだ物足りないわよ?」

 

「翼さん……ごめんなさい」

 

 僕は盛大に緊急コールを鳴らした! これで事態を乗り切れる筈だ! 

 

ビィー! ビィー! ビィー! ビィー! ビィー! ビィー! ビィー! ビィー! ビィー! ビィー! 

 

「恐ろしいぐらいの大音量だね。だけどごめん翼。もう今日はあきらめてね? そして今度はきちんと話しあってから考えよう?」

 

「はぁ……仕方ないわね。また来るわ。だから次は貴方の〈ハジメテ〉を私にちょうだいね?」

 

 翼はそう言い残して逃走した。頼むから今日はもう安眠させて欲しいなぁ。

 

~~修sideout~~




今作ではヒロイン達は自重を取っ払いました。それはもう修君の貞操を虎視眈々と狙っています。

次回〈雨の日に現れる少女〉

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二章 セレナブリザード
雨の日に現れる彼女


今話より2人目の精霊が現れます。

そして偉大なる先輩達も登場します。

本編へどうぞ


~~●2044年5月~~

 

 翼が此方の世界に留まれる様になって凡そ1ヶ月が経過した。そしてその間に僕を取り巻く環境も大きく変化した。

 

「はい! そういう訳で本日より転入生として皆さんとクラスメイトになる〈風鳴 翼〉さんです。皆さんも仲良くしてあげてください!」

 

「風鳴 翼よ。皆……こんな私だけどよろしくね?」

 

『ウオォォォォ──ー!!』

 

 男子が歓喜の声をあげた。

 

「可愛い女の子だね」

「アニメみたいな娘だね!」

「人柄もナイスな方みたいですわね」

 

 女子の方もそのおしとやかな雰囲気に心を許した様子だ。

 

 

 

 

 

 

 

~~昼休み~~

 

「ねえ修君……私は貴方が〈あの日〉に校舎に残っていたのを知ってるの。そして貴方があの場所にいた事もね。だから何を隠してるのかを教えてくれない?」

 

 昼休み……クラスメイトの未来が僕に詰めよって来た。そして〈あの日〉とは翼が来禅に現れた日の事だ。

 

「その質問の答えをするなら僕も質問があるよ未来さん。どうして貴女はその事を〈知ってる〉の?」

 

「ッ!」

 

 僕の質問はどうやら未来さんには効果的だったみたいだ。

 

「風鳴翼は精霊だよ。空間震の被害を目の当たりにした修君はわかっている筈よ。そんな彼女をどうして庇うの?」

 

「それは翼の意思で行っていた事じゃないんだ。翼は右も左もわからない世界に突然放り出された女の子なんだ。だったら僕は手を差し伸べるよ。それに今〈空間震〉は起きていない。翼が何かのトラブルを起こしてる訳じゃないんだ」

 

「……そうだね。確かに今の風鳴翼は被害を出していない。だから憶えておいてね? 彼女はバケモノだよ……それも無自覚のね?」

 

「そうかもしれない。でもそれなら僕は翼に手を差し伸べるよ。僕がそうしたいんだからね」

 

「やっぱり生まれ変わっても勇君は私の大好きだった勇君のままなんだね。じゃあもう時間がないなぁ。早くしないと響も……〈※※※〉まで活動を始めちゃう。私も覚悟を決めないと……」

 

「ごめん未来……上手く聞き取れなかった。もう一度言ってくれないかな?」

 

「大丈夫だよ! それに私はこの事をまだ認めてないから。もし何かあったら私は翼を殺す……それだけだよ」

 

「なら僕は未来も翼も止めるよ。それが僕の覚悟だからね?」

 

 未来は僕の言葉を聞き届けて教室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

~~放課後~~

 

「じゃあ翼……先に家に帰っていてね? 僕は買い物を済ませて帰るから?」

 

「えぇ……じゃあお言葉に甘えるわ。それにクリスさんと少し話があるもの」

 

「姉さん……か。わかった……早めに帰る様に伝えとくよ」

 

「ありがとう……愛しているわ修」

 

 翼は僕の頬を撫でると先に帰って行った。そしてそれから少しして珍しい人物が教室に入って来た。

 

「あの……修君はまだ……あっ! 良かった」

 

 教室に来たのは〈氷芽川 四糸乃〉先輩だ。琴里先輩や姉さんと同じ三年生で、姉さんの友人の一人であり、〈士道先輩〉に好意を寄せる女性の一人だ。

 

「珍しいですね四糸乃先輩。今日はどうしました?」

 

「今日の天気予報が外れる気がしたから傘を持って来たよ?」

 

 そう言って先輩は()()()()()()()()()()()()

 

「先輩……翼は既に帰りました。一本多いですよ?」

 

「ううん……()()()()()()()()修君がこの後に使う事になるからね? ……それとその傘は返さなくても大丈夫だよ? 士道さんが修君の為に託してくれたの。

 

〈その傘は今日の修に必要だからあげて欲しい〉

 

って預かった物だからね?」

 

 先輩達は預言者か未来予知でもしているのかな? ……まあそういう事ならありがたく受けとっとくか。

 

「わかりました四糸乃先輩。じゃあもう一つお願いをして良いですか?」

 

「良いよ? どんなお願い?」

 

「姉さんにへの言葉なんですが、

 

 〈今日は早めに帰って欲しい。翼から話があるらしい〉

 

 ってお願いします。よろしくお願いします」

 

「うん……大丈夫だよ。それじゃあ私はクリスに伝えに行くね?」

 

「よろしくお願いします」

 

 すると先輩は三年生のフロアへと戻って行った。

 

「おっ? なんだ高崎か……まだ教室にいるなんてな。一緒に帰るか?」

 

「うるさいよ平原。そしてごめんな今日は買い物があるんだ。悪いけどパスで」

 

「あいよ。それにしても士道先輩の勉強って本当に的確だよなぁ……安藤達も近々礼がしたいってよ」

 

「んーそっか……わかったよ。じゃあ氷芽川先輩が多分まだ近くにいると思うから探してみたら? 三年生のフロアにいる筈だから」

 

「そっか。じゃあ氷芽川先輩を探して伝言を頼むわ。そんじゃあお前も早く帰れよ~!」

 

 平原も教室を出て行った。

 

「さて……僕も帰るとしますか!」

 

 僕はバス停に向かい、今日の晩飯の材料を購入するべくスーパーに程よく近い場所を通るバスを待った。当然だが、雨も降っていないのに傘を二本持つ僕は不思議な視線を向けられた。……士道先輩を少しだけ恨みたくなった。

 

 

 

 

 

 

 

~~買い物中のスーパーにて~~

 

『太陽 輝ちゃんのニューシングル

〈Rainbow Flower〉発売決定!勢い好調な彼女のシングルをお求めの方は最寄りのお店まで……』

 

「あれ?この間もシングル出してなかったっけ?この娘凄いペースでシングル出すな……」

 

 スーパーにおいてあるテレビでは話題の太陽ちゃんのシングルが宣伝されていたが、僕はそれほど気にせず買い物を続けた。

 

『ありがとうございました~!』

 

 スーパーで無事に買い物を終えて店を出ると雨雲が近づいていた。

 

「今日の献立はハンバーグで良いな。っていうか先輩達の勘当たってるかも……予報が外れそうじゃん!」

 

 僕は急いで家に帰ろうとした。そしてスーパーと自宅のほぼ中間地点にあたる公園で土砂降りの雨となった。

 

「傘渡されて良かったな……ん? あの娘……なんでこの雨の中で公園に?」

 

 僕の通りかかった公園は遊具も少なく、雨を凌げる場所はない。しかし僕が見た少女は()()()()()ブランコをこいでいた。

 

「ちょうど先輩に渡された傘もあるし、様子だけでも確認しようかな?」

 

 そのまま素通りすれば良い筈なのに、僕は不思議と少女へと歩み寄って声をかけた。

 

「どうしたの? こんなに土砂降りの中で傘をさしてないなんて風邪を引くよ?」

 

 少女は声をかけられて初めて僕の存在に気付いたようだ。

 

「あぁ……すみませんね。私……セレナと言います」

 

 彼女はセレナと言うらしい。でもまだ謎は解決していない。

 

「セレナさん……家はこの近くですか? こんな雨ですから早く帰った方が良いですよ?」

 

 セレナさんはうつむきながら答えた。

 

「いえ……近くではないんです。でも……大丈夫ですから……」

 

 僕はふと四糸乃先輩に託されたもう一つの傘を差し出した。

 

「じゃあせめてこの傘を使ってください。返さなくても大丈夫ですから」

 

「いえ……大丈夫です。そこまでして貰う必要は……」

 

「じゃあこれは僕の自己満足です。ちょうど傘が二つあって濡れてるセレナさんがいた。だから使ってください。その方が僕も安心できますから?」

 

 セレナさんはしばらく悩んだ後に傘を受け取ってくれた。

 

「ありがとうございます。じゃあ……また出会えた時にはお礼をしますね?」

 

「返さなくても大丈夫ですよ。だって余分に持っていた傘なんですから」

 

 僕はセレナさんに傘を渡して公園を後にした。しかし母さんからのペンダントが〈青色に〉光った事には全く気付く事はなかった。

 

「ヘクシュ! ヤバい……僕が風邪を引く前に早く帰ろう。そしてさっさとシャワーでも浴びよう」

 

 僕は購入した食材の事も思い出して急いで家に帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~セレナside~~

 

 私はここがどこなのかわからない。覚えている事は自分の名前が〈セレナ〉だという事。そして〈氷結傀儡(ザドキエル)〉を所持している事のみ……だった。

 

「でも……あの人のペンダントが〈青く〉光ってたなぁ。綺麗な光だったなぁ」

 

 私はふとあることに気付いた。

 

「もしかして私が探していた〈誰か〉ってあの人なのかな? それなら嬉しいなぁ……だってあの人はすごく優しい人だったから……」

 

 私を見た人は皆恐い人ばかりだった。私は何もしていない筈なのに攻撃をしてくる。なんでだろう? 私は何もしていない。だけど私がここに来ると周囲が酷い事になっていて、〈お前の仕業〉だと言われる。

 

「だけどあの人は違ったなぁ……」

 

 あの人の事を考えると胸が苦しい筈なのに幸せな気持ちになる。こんなに素敵な人はきっといないのだろう。

 

「あの人にずっとそばに居て欲しいなぁ……私だけの王子様みたい……」

 

 私は何も知らない筈なのに不思議と言葉が止まらない。だけど今日初めてわかった事もある。

 

「あの人と離れたくない。何をしても……例えあの人が私を嫌っても私のそばに置かなくちゃ……」

 

 私があの人と再会するまでそう長い時間がかからない予感が……不思議としました。

 

「さあ……私の戦争(デート)をはじめましょう?」

 

~~セレナsideout~~

 




心優しい少女は人からの優しさを知った。そしてその人物を求め始める……


次回〈少女の探し物〉

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少女の探し物

少女……セレナは修と出会ってしまった。そして修の側には嫉妬深い精霊がいる……

本編をどうぞ


~~士道side~~

 

 昨日は天気予報が外れて雨が降る事がなんとなくわかっていた。だから修達には傘を持ってもらっていた。

 

「ありがとうな四糸乃。おかげで修達は濡れずに済んで〈彼女〉への円滑な接触ができた筈だ」

 

「いえ……その……もし士道さんが良ければ……私と……」

 

「〈デートがしたい〉……だろ? じゃあ次の雨の日にでもするか? 十香は雨の日が嫌いだからな」

 

「良い……ですね。でも……私は十香さんに負けません! 絶対に士道さんの心を奪います!」

 

 四糸乃の行動が最近活発だな。まあ……そろそろ年齢的にも婚姻が可能になるんだ。だから彼女は燃えてるのだろう。

 

「に……しても傘をダースで購入した時には周りからすごい視線を浴びたなぁ……」

 

「私達らしくて良いのと思います。良ければ相合傘でもしてみませんか?」

 

「はは! すっかり四糸乃も仲間入りか!」

 

「私達は一人の女性として士道さんが好きです。だから皆ライバルです。私だって負けません!」

 

「俺の胃に負担が来るから勘弁して欲しい物だよ。でも……」

 

そうですね……新しいデート(戦争)の時間ですね

 

 これから修達の二度目の試練が始まろうとしているな。

 

 

~~士道sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

~~修side~~

 

 誰か……この教室にいる僕を助けてください。

 

「ねえ修……私達の調理実習で作ったクッキーを食べて貰えないかしら? 安藤さん達が教えてくれたのよ?」

 

「ダメだよ修君。彼女みたいな凶器と隣合わせで生活している人を下手に信用すると命が幾つあっても足りないよ?」

 

 現在……一触即発の女子二人に挟まれています。そして目の前のクッキーはどちらも美味しそうなのに、どちらも食べてはいけない気がした。と……いうよりは、〈食べるだけ〉なら安全だろうが、その後に殺し合いでも始まりそうな気がする。だから僕は二人のクッキーを同時に食べた。

 

「うん……美味しいよ。でも僕よりも他の人に渡してあげてくれないかな? 僕にはもったいないよ」

 

「修以外の人に食べられるなら捨てるわよ?」

「修君以外の人にあげるくらいなら捨てちゃうよ?」

 

 二人とも意見は変えないらしい。今日は晩御飯をきちんと食べられるかな? 

 

 

ビィー! ビィー! ビィー! ビィー! ビィー! ビィー! ビィー! ビィー! ビィー! 

 

「チッ! 空間震警報かよ!」

 

 すると未来は教室を出ていた。

 

「翼! 避難するぞ! 空間震だ!」

 

「そうね……修が一緒なら良いわよ。でももし私を置いて行ったら……」

 

 翼は避難を了承してくれた。しかし雰囲気が少しおかしい。けど急ぐ僕は翼の手を引いて〈避難を始めた。〉

 

「ふふっ……情熱的ね。このまま逃避行しましょう?」

 

 僕達は〈避難を始めた〉が、翼が途中で進行方向と別の()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「嘘だろ!? なんで翼が!」

 

 僕は翼を追いかけた。すると姉さんからも通信が入って来た。

 

『修! 翼がどこに向かってるのかをわかっているのか!!』

 

「僕だって理由が知りたいよ! とりあえずこのままついて行くから!」

 

 僕は姉さんとの通信を少し乱暴に切断した。そして昨日の彼女とこんな形で再会する事になるとは思っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~天宮市ショッピングモール~~

 

「本当にここに精霊がいるんだよね姉さん?」

 

『あたし様が修に嘘ついた事があったか? あたしはいつでも正直に言って来たと思っているけどなぁ?』

 

 姉さんは確かに〈正直に生きてる。〉だけどそれはあくまでも〈自分の欲望に〉って枕言葉が付く気がするけどね? 

 

「二人で内緒話かしら? ねえお姉さん……私は貴女を殺しても良いのよ? 修がいればそれだけで私は幸せなのよ? むしろ弟離れをして自立してはどうかしら? 私は修の彼女なのよ?」

 

 話が勝手に進んでいた。あれ? そもそも翼を彼女にした憶えは「私にあんな辱しめをした上に唇を奪ったじゃない? 私の伴侶になる以外は認めないわ!」……心の中まで読まないでください。

 

黙れ翼! 修はあたし様の可愛い可愛い弟だ! そしてそれは姉ちゃんの特権だ! そもそもてめえを彼女と認めた気はねえぞ! 

 

 耳元で喧嘩されると僕の耳が痛いです。

 

「ねぇ修……そろそろ姉離れしないかしら? 私に何をしてもかまわないわよ? その証拠に……」

 

「えっ? むぐぅ!」

 

 翼の言葉に返事をしようと振り向いた時に唇を奪われた。

 

「ぷはぁ! やっぱり修は美味しいわ。もっともっと欲しくなっちゃう!」

 

 翼の口元はよだれが垂れている。そしてその表情が何よりも扇情的だった。

 

「翼……そろそろ落ち着いて……」

 

 僕が言葉を続けようとした時にモールの床が突然氷出して僕と翼の前に分厚い氷壁が出現した。

 

「!? 一体何が!?」

「なぜ私と修を引き離すの! 誰よこんな酷い仕打ちをするのは!!」

 

 すると声の主が現れた。

 

「お久しぶりですねお兄さん。でもびっくりしましたよ? すごく綺麗な女の人がお隣に居たので、思わず凍らせたくなりました。でもお兄さんが悲しんでは困るので今回は分断だけで済ましてあげます。では……私達は早く行きましょう? こんな野蛮な人と一緒にいるお兄さんが不憫で仕方ありませんから」

 

 そう言って現れたのはセレナさんだった。そして僕は返事をする事なく照明の落ちたモールの中を連れ回された。

 

「貴女は……セレナさん? でも……なんで?」

 

「そうですね……私が〈精霊だから〉ではダメですか?」

 

 僕は言葉を失った。セレナさんが……精霊……? 

 

「そうですよ? 私の天使の〈氷結傀儡(ザドキエル)〉の力です。これは氷を操る天使なので」

 

 セレナさんは此方が聞いてもいないのに天使の説明を始めた。そして僕のペンダントを見つめて言った。

 

「そのペンダントは綺麗ですね? 私はそんなプレゼントをいつか贈られて欲しいものですよ?」

 

セレナさんは僕の言葉に構わず話を続けようとしたので、僕は意を決して質問をした。

 

「セレナさん……それはどういう意味ですか? そもそもなぜこんな事を?」

 

 するとセレナさんは驚いた顔をして告げて来た。

 

「あっ……ごめんなさい……すっかり忘れていましたね? 私達は〈まだ〉お付き合いどころかお名前すら聞いていませんでした。なのでお兄さんの名前を教えてください。そしてお付き合いしましょう? そして私達で愛を育みましょう?」

 

「〈高崎 修〉……それが僕の名前です。しかしセレナさん……僕は貴女と今すぐお付き合いするつもりはありません。そんな事は直ぐ返事をする事ではないので……ごガシャアァァン! め……へ?」

 

「ああ修さん怖がらせてしまってごめんなさい。でも私……不思議とそういう冗談は嫌いなんです。だから二度とそんな酷い冗談は言わないでくださいね?」

 

 言葉にならない。僕はそんなつもりどころか何もおかしな事は言っていない筈だ。なのに……なぜ? 

 

「あ~あ。今の音を聞いて恐い人達とさっきの野蛮なお姉さんが戻ってたどり着きそうなので今回はここまでにしますね? 次に会う時はお返事をくださいね?」

 

 しかしセレナさんは何かを思い出したようだった。

 

「あっ……修さんに借りた傘が「これの事かしら? 修の臭いがついていて不思議な傘だったから思わず手に取ってしまったわ?」……早く返してください!」

 

 するとセレナさんが翼に突撃して辺り一面を氷漬けにした! 

 

「……何よ! 修にプレゼントをもらって貴女はずるいじゃない!」

 

「返してください! それは私の宝物なんです!」

 

「絶対にあり得ないわ! 修の傘じゃないなかったらこんな傘なんかぁ!」

 

 翼とセレナさんが争いを始めた。しかし二人共傘が壊れないように何とか手加減をしてくれているようだ。しかしそんな事態も長くは続かなかった。未来がこのモールに突撃した為だ! 

 

「〈ハーミット〉! 大人しく死になさい! 今すぐでかまわないから!」

 

「野蛮な人まで……仕方ないので今回は退きますが次の時には……」

 

 セレナさんはそう言うと霧を発生させて姿を眩ました。そしてその余波は翼にも及んだ。

 

「一体なんなのよ!? ……あれ? 修の傘が……」

 

 どうやら今の霧で翼は傘を紛失してしまったようだ。

 

「何が……どうなっているんだ?」

 

 僕の言葉には誰も答えてくれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふっ! 良いものを貰っちゃった♪ 大事な大事な宝物だよね? ちゃんと私の家で保管しなきゃ♪じゃあ錠前とかも新調しちゃお♪」

 




セレナは修にお返しをしようと再会を望んだ。しかし修の隣には彼女の姿があった。

修は悩む。2人を救う為にどうすれば良いかを……

次回〈生じる不協和音に〉




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生じる不協和音に

セレナは修に返すべき傘を失くしてしまった。

そして修は翼によって……

本編へどうぞ!


「翼!開けてくれよ翼!」

 

「ダメよ……開けたく無いわ。でもそうね……修が大人しく証を刻ませてくれたら開けてあげるわよ?」

 

どうしてこうなったんだよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

~~回想~~

 

「修は……浮気……していたのね?」

 

僕を見る翼の視線は冷ややかなモノになっていた。

 

「翼の事を傷付けた事は謝るよ。だけど……セレナとの事は浮気とは違うよ!そもそも!傘を渡しただけで再会したらあんな表情をされるとは思わなかった!」

 

「……そう。じゃあもう言い訳は充分したわね?」

 

「へ?何……を……?」

 

すると翼は立ち上がりカバンから〈何か〉を取り出した。そして僕の背後に回りこんだ。

 

バチィ!

 

僕は背後から何かを突き付けられた。

 

「これ……スタン……ガン……?でも……なんで……?」

 

「あら?まだ意識があるようね?流石私の修だわ♪じゃあもう一度♪じゃあね修♪次の目覚めはきっと幸よ?」

 

僕の意識はそこで完全に途切れた。そして僕が目を覚ました今、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なんで……こんな事に……?」

 

~~回想終了~~

 

 

そして僕は冒頭の訴えを翼に起こしている。しかし翼は聞き入れてくれない。

 

「ふふっ、私が何でもしてあげるわ(籠の中の小鳥さん)♪ちょっとだけそこ(出てはいけない部屋)でまっていてね?」

 

翼は僕を監禁したまま行ってしまったようだ。しかし事態は変化し、僕の端末が鳴り出した。相手は……〈令音〉さん?

 

『やあユウ……何とか無事かね?』

 

「ここがどこかわからない事を除けば……ですけどね?」

 

本当に不味い。もし今……セレナさんが出現すればASTは迷わずにセレナを攻撃するだろう。その事態が起こる前に手を打たなくては!

 

『私に策がある。その為にはユウ……君の働きが重要になるだろう』

 

「僕の……働き……ですか?」

 

返事に困った。でも……策が自分で浮かばない以上はやるしかないかな?

 

「いえ……教えてください令音さん。僕は何をすれば良いですか?」

 

『まずは天使のイメージをして欲しい。ユウは翼の天使を見た筈だ。ならばそれを思い出せ。そうすれば今の状況を打開できるだろう』

 

「わかりました!」

 

『そしてもう一つだ。君が探していた傘は〈小日向 未来〉が回収していた映像が発見された。なので脱出次第彼女の部屋に向かってくれたまえ』

 

「わかりました。ありがとうございます令音さん!」

 

『では私がその間に翼の説得を試みるとしよう。まあ……ほぼ確実に成功すると思われるがね?』

 

令音さんはそう告げて通話は終了した。そして僕は急いで未来に電話をした。

 

「未来……お願いがあるんだ。あの時失くした傘を探しているんだ。何か知らないか?」

 

『あっ!修くん♪傘……ねぇ……あるよ?だけどタダじゃあ返せないよ?何か……そうだなぁ……私の家に来て〈お願い〉を聞いてくれたら返してあげるよ?』

 

「その〈お願い〉が健全なモノならなんでも受け入れてあげるよ。だけど分不相応な事は絶対にしない。約束して欲しい」

 

『大丈夫だよ?だって修君は私の事を〈見てくれない〉事は知ってるから。じゃあ待ってるからね?』

 

僕と未来の通話はそこで終了した。

 

「じゃあ始めよう。鏖殺公(サンダルフォン)の力のイメージ……か。」

 

僕は翼が未来達と戦う時の姿や、泣きながらも出現させたあの玉座について思い出した。すると少しデザインは異なるが、間違いなく鏖殺公(サンダルフォン)が出現した。

 

「ごめんね翼……僕はセレナも救うよ。だけど君の事を疎かにしたくもない。だから……まずこの事態を乗り切る。そして翼……君と向き合うよ」

 

 

 

 

 

~~令音side~~

 

「さて……私も役目を果たすとしよう」

 

私は翼をファミレスに呼び出した。すると翼は不安を抱えながらやって来た。

 

「すまないね。少し大事な話があって呼ばせてもらったよ」

 

「わかっているわ。だけど……貴女に私の気持ちはわかるのかしら?」

 

「チッ!オレの事を認識させていないとはいえこの態度は気に入らんな。力を取り戻した時は絶対に許さんぞ」

 

私は小声で呪詛を呟いたが、翼には聞こえないように注意を払った。

 

「では単刀直入に聞こう。翼は修に何を求めているのだね?」

 

「簡単な事よ……子供が欲しいわ。だって修は皆に優しいもの。でも子供がいれば修は私を捨てられない。そうすれば〈私〉という存在はずっと修の中に残り続けるわ」

 

「オレの前で良くも抜け抜けとほざくな」

 

正直今すぐ翼を吊るしたい。しかし()()()()()()()()()()

 

「では提案だが、修からのプレゼント且つ、それが翼だけのモノであれば納得はするのだね?」

 

「えぇ。でもそんな簡単に言って大丈夫なのかしら?」

 

「ならば※※※というのはどうだ?デートの後にでもお願いすれば修はやってくれると思うぞ?」

 

「約束よ?必ず修に伝えてよね?」

 

そう言って翼は表情を和らげた。しかし憐れな事だ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

~~令音sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~修side~~

 

少し時間が経過し、僕は鏖殺公で扉を破壊した。そして姉さんからの通信もキャッチした!

 

『ASTがキナ臭い動きをしてる!早く目的のモノを回収して来い!』

 

「ありがとう姉さん!助かった!」

 

僕は急いで未来の部屋へと向かった。そうすると玄関前にこんな袋が入っていた。

 

〈このテープに修君の目覚ましボイスを三個・お休みボイスを三個・ただいまボイスを三個・お帰りボイスを三個・愛してるボイスを八個入れてくれたら袋を箱に入れてね?そうしたら傘は返してあげるよ?〉

 

〈なんでボイスを?〉と思って最後まで読んで驚愕した。

 

〈もしお願いのボイスを適当に済ましていたり、何も入っていなかったらお姉さんを殺すよ?それに翼さん・平原君・安藤さん・寺島さん・板場さんも送ってあげるから寂しくないよ?〉

 

殺人予告だ。それも僕の回りの人間をターゲットに据えている。

 

「僕がやらないと……平原達まで……」

 

僕に選択肢は残されていなかった。だから僕は未来の〈お願い〉を聞いてしまった。そして全二十種類のボイスを収録したテープを指定の箱に入れた。すると箱が部屋の中に入って行き、新聞受け(改造痕跡有り)から傘が出て来た!

 

「なんかもう色々言いたい事が有るけど仕方ない!さっさとセレナさんを……助けたい!」

 

そう思った時に空間震が発生した!セレナさんが現れたんだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕が空間震の発生地点に到着すると、既に未来達〈AST〉が戦闘を始めていた。しかし戦況は思わしくないようだった。

 

「私はある物を探しています。邪魔をしないでください!」

 

「認められないよ〈ハーミット!〉貴女が精霊である以上は絶対に殺すから!」

 

未来達がセレナさんを追い詰めする。何とか……何とかしないと!

 

「そこの少年!何をしてるの!早く逃げなさい!」

 

しまった!僕も見つかったか!この状況をどう打開するか考えていると、意外な人達が現れた。

 

「それでは私達が時間を稼ぎましょう。修さんは彼女のもとへ向かってください」

 

「なかなか面白い状況だぞ!あたしも久しぶりに暴れるぞ!」

 

「ここは一つ私達の実力の見せ所だな。派手に暴れるとしよう」

 

「行きなさい修くん。私達が道を開くわ」

 

僕の前に現れたのは風見さん・火神さん・土屋さん・氷室さんだった。なんで彼女達がここに?そう思っていると風見さんが説明してくれた。

 

「私達が弦十郎さんから託された本当の仕事は修君のサポートです。精霊への対処の協力はオマケに過ぎませんわ。ですので遠慮なく私達を頼ってくださいますか?」

 

風見さんの言葉にまだ疑問は残るが、ひとまずは彼女達を信じる事にした。

 

「……ならお願いします!僕がセレナさんのもとへ辿りつけるだけの道を確保してください!」

 

「お任せください。では皆!やりますわよ?」

 

「「「了解(だぞ)!」」」

 

待っていてねセレナさん。必ず僕が救いに行くから!

 




未来からの殺人予告紛いの要求をなんとか叶えた修。しかし事態は未だ打開されていなかった。

次回〈抱えた想いと向き合って〉

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抱えた想いと向き合って……

活動報告でもあげましたが、凜祢ユートピア終了を目処に一時的にこの小説の更新を休止します。理由は書いてみたい作品ができた為です。その作品が完結またはエタる可能性が見えた際にはこちらの更新を再開します。2足のわらじが出来ない作者で申し訳ありません。




さて……本編では頼れる仲間が戦場へと降り立ち道が開かれた。

修はその道を通りセレナのもとへと向かう


「ではお進みください。その為に我々がここに来たのですので」

 

 風見さん達が僕の為に戦場へと立ってくれた。

 

「その……司令室は大丈夫なんですか?」

 

「ふふっ、緒川副艦長と藤堯さん達に任せて大丈夫ですわ。我々の組織において彼等程システム管理とオペレーター業務の並行ができるスタッフはおりませんわ。まず修君のサポートは大丈夫ですよ?」

 

 風見さんの言葉に僕は不思議と安心した。そして胸の内からこの言葉が出た。

 

「お願いします! セレナさんを助ける為に皆さんの力を貸してください!」

 

「お任せください。皆! 修君の道を切り開きますわ! 私達の相手は〈AST〉ですわよ!」

 

「「「了解(だぞ)!」」」

 

 僕は風見さん達を信じてセレナさんのもとへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~セレナside~~

 

 ああ……今回は全てを凍らせたいです。私はあの日……修さんにあの傘のお返しをするつもりでした。しかし目の前でその傘を奪われて私の心は張り裂けそうです。

 

「予定を変更しましょう。まずは修さんと私だけの城を作りましょう♪ そして二人だけの結婚式を挙げましょう♪ ふふっ、氷の城で結婚式♪ 素敵ですね♪」

 

 想像しただけで幸せです。早く修さんと会えたら良いなぁ……。

 

「セレナ! もうこんな事は止めるんだ! こんな事をしても誰も喜ばない! 悲しむ人が増えるだけだ!」

 

 修さんが辿りついてくれたのに私の心は未だに張り裂けそうです。私はどうすればよろしいのでしょうか? 教えてください〈氷結傀儡(ザドキエル)〉……。

 

~~セレナsideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~修side~~

 

 僕は風見さん達のサポートのおかげでセレナさんのもとへと辿り着いた。しかしセレナさんは驚く言葉を僕に返して来た。

 

「待っていました。やはりこうすれば修さんは来てくださいますよね? では私達の儀式を始めましょう?」

 

「何を……言って……いる……ん……です……か?」

 

 僕がその答えを聞く前にセレナさんは周囲に氷を出現させ、次第に何かを形成していった。しかし正体が完成に近づく程僕は恐怖を感じた。

 

「これは私達の教会です。今から私達は結婚式をあげます。二人だけの結婚式です。誰にも邪魔はさせませんよ?」

 

 すると周囲の温度が急激に低下し始めた。それに伴い僕の体も震え出してしまった。

 

「修さん……可愛いですよ? でも凍死する前に答えを出してくださいね? じゃないと私……()()()()()()()()()()()()()()

 

「なんで……僕なんですか? どうして……僕にそこまで……?」

 

「始めて私に優しくしてくださったからです……かね? でも不思議と……それ以前に私達は出会っている……そんな気もするんですよ?」

 

 僕はその言葉を聞いて弦十郎さんの言葉を思い出した。

 

「セレナさん……貴女は嘗て人間でした。恐らくはその時の出来事ではないでしょうか? ……僕は覚えていませんがもしかしたら……」

 

 するとセレナさんは手を叩いてよろこんだ! 

 

「まぁ! 何て素敵なんですか! 私達が以前出会っており! こうしてまた巡り会えた! それはきっと運命です! 尚更式を挙げましょう!」

 

 あぁ……逆効果だったのか。僕は……どうすれば……? 

 

「それではお返事は早くいただかないといけないですね? 少しだけ温度を下げましょう♪ 素敵なお返事を私は何時までも待ちますよ? ……でも凍死する前に答えを教えてくださいね?」

 

 僕は返事をしたくない。こんな状況でした返事ではセレナさんの心は満たされない。だから僕は絶対に返事をしない。例え……凍死してしまうとしても……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「修さん……大丈夫ですか? ……体の震えが止まってますよ?」

 

 

 

 どれ程の時間が経ったのだろう? 〈シバリング〉が止まってしまったという事は僕はいよいよ凍死目前という事だ。

 

「今は……絶対……に……返事……は……しま……せ……ん。この……返事……で……は……セレ……ナ……さん……の心……を……満た……せな……い……か……ら……」

 

 息も絶え絶えの状態で話す言葉はすごくつらい。だけど今の僕の言葉でセレナさんが満たされるとは思えない。だから絶対に……僕が死んでも……

 

(止めてくれ※※※! ※※※がいない世界等色のない世界だ! ※※の生きる世界は※※※が居てはじめて成り立つんだ!)

 

 ……不思議な声が聞こえた。……ごめんね僕を待つ誰かさん。僕はあなたのもとへ辿りつけないでしょう。

 

「救っ……て……あげ……られ……なく……てご……めん……な……さい……」

 

 僕は涙を流しながらとうとう意識を手放してしまった。そしてこの時に流した涙がペンダントに落ちた。そして白く光輝いていた事を僕は知らなかった。

 

~~修sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

~~セレナside~~

 

 修さんは寒さで意識を手放すまで私の〈想い〉に応えてくれませんでした。ですが修さんの持つペンダントに、涙が落ちた時に一瞬だけ白く光輝きました。私はその光を見て一つの単語が頭をよぎりました。

 

「〈アガートラーム〉……? 何でだろう? その言葉は私にとても深い関わりがあるような気がします。でも……何で私なんですか?」

 

「ご……めん……ね。……セ……レナ……さ……ん。救……って……あげ……ら……れ……な……くて……ほ……んと……う……に……ご……めん……ね……」

 

 修さんは恐らく無意識でも私に謝っていました。そしてこの状況になって尚私を救うつもりでいたんです。

 

「最初は寒さに体を震わせながらも私と向き合ってくれました。そしてシバリングが止まってしまった後も私に救いの手を差しのべようとしていましたね。そんな修さんだから私は惚れてしまったんですね?」

 

 結局……私の愛の告白の返事はもらえませんでした。しかし修さんは自分の信念の為に命を賭けて私と向き合いました。なら……もう私の心は決まっています。

 

「私のファーストキスですよ? 本当なら意識があれば文句はなかったんですけどね?」

 

 私は修さんにファーストキスを捧げました。すると修さんのペンダントは先ほどの白い光から聞こえる〈詠〉を告げずにはいられませんでした。

 

「Seilien coffin airget lamh tron~~♪」

 

 すると修さんの体は〈青い光〉に、私の体は〈白い光〉にそれぞれ包まれました。

 

「……そうなんだね〈アガートラーム〉……。修さんは※※※さんだったんだね。だから私達の事を記憶が無くても……。なら早く※※※さんの記憶を取り戻して貰おう。そして今度こそ※※※さんを倒して※※※さんの一番になろう」

 

 私は記憶を取り戻した。そして修さんの体にはまだ力が戻りきっていない事にも気づいてしまった。

 

「大丈夫です。今度は※※※さんのお嫁さんではなく、修さんの婚約者として支えます。だって私は諦める事が嫌いですから♡」

 

 

 

~~セレナsideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~修side~~

 

 僕が意識を手放した後、セレナさんは僕に力を封印したらしい。翼の時と同じだ。

 

「情けないよ。僕は女の子にキスをさせてしまったんだ。それも大事なファーストキスを意識のない相手に。なんて僕は最低なんだろうなぁ……」

 

「いいえ……そうではないですよ? だって修さんは意識を手放す直前も、手放した後でさえも私に謝っていました。

 

 〈救えなくてごめんなさい〉

 

 と。本当に最低ならその状態でそんな事はいえませんよ? だから自信を持ってください」

 

「ありがとうセレナさん。だけどセレナさんの告白の答えは改めてさせて欲しい」

 

 僕はこの際だから胸の内にある想いを伝える事にした。

 

「僕はまだやらなくちゃいけない事があると思う。

 〈精霊の封印〉よりも大切な事だと思うんだ。だからお願いだよ。もし僕が18歳の……来禅高校を卒業するまでの間に答えを出せなかったその時はセレナさんのプロポーズを受け入れて結婚しよう。それじゃあダメかな?」

 

 セレナさんは少し悩むと小声で何かを呟いた。

 

「やっぱり※※※さんには※※※さんの事を記憶を失っても覚えているんですね。でも……後たった2年弱です。その期間さえ過ぎれば※※※が現れたところで修さんは私のモノです。悪い賭けではありません。そもそも〈精霊〉と出会う事事態が奇跡みたいなモノなんですから……」

 

 セレナさんは小声で何かを呟き続けた。そして僕に向き直ると目を見て伝えて来た。

 

「えぇ……それで構いません。では約束しましたからね?」

 

 そして小声で何かを続けた。

 

「これは私の賭けです。もし事態が2年硬直してくれれば良いだけなんですから」

 

 僕はこのセレナさんの想いに目を背けてはいけないと思った。だからもし未来の僕がこの胸のつっかえを解明できないなら、僕は彼女を待たせた責任をとろう。そして翼の想いともいずれはきちんと向き合って行こう! 

 

「それがきっと……今の僕のやるべき事だろうからね……」

 

 その言葉は誰にも聞こえる事無く虚空に消えた。

 

 

~~修sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~舞華side~~

 

「此方は無事にASTの〈魔術師〉を無力化できましたわ。其方はいかがですか?」

 

『此方も地味に終了した。やはり我々はマスターに愛されていたという事だろう』

 

『それは旦那サマも同じだぞ! でも今のアタシ達は見守るべきだぞ』

 

『そうね。それが旦那様の為であり、マスターの望んだ筋書きだわ。だからあたし達も役割を果たすわよ?』

 

 どうやら皆の気持ちは一つみたいですわね。

 

「ならば後1年ですわ。それがマスターの嘗て見た筋書きです。我々はその時にマスターと旦那様の事を祝福できるように未来を作りますわよ?」

 

『もちろんその中にはあたし達の命も含まれるわ。だから皆も気を付けて行きましょう?』

 

 私達はこれからもマスターと旦那様の幸せな未来の為に道を開きます。……それが私達の幸せでもあります。

 

「マスター……旦那様……私達はこれ以上ないくらい幸せですわ。またいつか……皆で揃う日を心待ちにしておりますわ……」

 

 私達はその時を楽しみにしています。




無事……とは言い難いがセレナの封印には成功した。しかし少女達のわだかまりは解消しなければならない。

次回〈修君……デートします!〉

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修君……デートをします!

2人の精霊の封印に成功した修は彼女達とデートする。




 セレナさんの事を無事(?)に封印できた僕は令音さんに呼び出された。

 

「ユウ……今日から来禅は三連休だ。彼女達とデートをすると良い。そしてデート終わりに

〈これ〉を渡してやってくれないか?」

 

 令音さんは僕に、以前母さんから渡されたペンダントと同じ種類のペンダントを渡して来た。

 

「令音さん……このペンダントは……まさか?」

 

「ああ。君の両親と私は古い知り合いでね。飛鳥と浩平は私と嘗ては先輩後輩の間柄だ。そしてラタトスクに所属する研究員達でフラクシナスの建造者の一人でもある」

 

 令音さんは何者なんだろう? すると令音さんは話を続けた。

 

「そして飛鳥にそのペンダントをプレゼントしたのも私だ。

 

 〈新しい家族を迎えた記念に〉

 

 ……とね。そして巡り巡って今はユウの手にあるみたいだね」

 

 令音さんの説明は僕の予想を遥かに越えていた。しかし納得できる部分も存在した。

 

「令音さん……今言ってた〈新しい家族〉って……」

 

「その続きはまた機会のあった時にしよう。明日からは翼達とデートをするのもユウの役割だからね。いずれ奴等は纏めてオレの手で吊るすがな。……今だけは幸せな時間に浸らせてやるさ

 

 最後の言葉は聞き取れなかったが、僕のやるべき事はわかった。

 

「ありがとうございます令音さん。さっそく明日から翼とデートに行って来ます!」

 

「是非楽しんで来ると良い。私達も彼女達の笑顔が見られるのは誇らしいからね」

 

 僕は令音さんと別れてすぐに翼に連絡した。

 

「翼……お昼から連絡してゴメンね? 今日から来禅が三連休なのは覚えているよね?」

 

『ええ。それがどうしたの?』

 

「実はさ……せっかくだからデートにでも行かないかな? 僕もたまには羽を伸ばしたいからね?」

 

『ッ!!! 嬉しいわ! 何時からデートをするのかしら!』

 

「明日行かないかな? そろそろ過ごしやすい季節だからね。少し街を翼と歩きたいんだ」

 

『じゃあ明日の9時に天宮駅に集合しましょう?』

 

「良いよ。じゃあ明日の9時に天宮駅でね?」

 

『えぇ。明日が楽しみね?』

 

 そうして僕は翼との通話を終了した。そしてもう1件の方も連絡をした。

 

「セレナさん……今時間は大丈夫ですか?」

 

『はい! 大丈夫ですよ? どうしましたか?』

 

「明後日に僕とデートをしませんか? セレナさんと今度はゆっくりとデートがしたくて」

 

 するとセレナさんは電話越しにもわかる程喜んでくれた。

 

『良いんですか!? じゃあ明後日の朝9時に修さんと映画が見たいです!』

 

「映画……か。良いですよ。じゃあ明後日の9時に」

 

『はい! それでは明後日を楽しみにしています!』

 

 僕達はそうして通話を終了した。

 

「アレ?そういえば場所はどうしよう?」

 

……不安が今になって押し寄せてきた。

 

 

 

 

 

 

~~●翼とのデート~~

 

 約束の時間の15分前には翼が到着して近くのベンチに座っていた。僕……待たせたかな? 

 

「ゴメンね翼……僕が待たせたかな?」

 

 翼は僕に気付くと柔らかな笑顔を見せてくれた。そして僕の手を握るとこう告げて来た。

 

「大丈夫よ。少し感じの悪い人物に声をかけられたけど、あしらっておいたわ。だって修の事が待ちきれなかったもの」

 

「あはは……穏便に済んでいる事を願うよ。じゃあ行こうか?」

 

「えぇ……早く行きましょう?」

 

 そうして僕と翼のデートは開始された。しかし僕は後から知ったが、翼と僕の待ち合わせたベンチの裏には数人の男性が意識を失った状態で積み重ねられていたらしい。後に友里さん達が情報操作をした時に教えてくれた。

 

「じゃあ翼が行きたいところを教えてよ? 僕は翼の行きたいところに行ってみたいからさ?」

 

「なら私は行きたいお店があるわ。そうね……まずは定番の……」

 

 そうして僕が連れて来られたのは女性物の下着コーナーだった。えぇ……女性物!? 

 

「翼……確かに僕は翼の行きたいところに同行すると言ったよ? だけどここはその……僕がいるべき場所じゃ……」

 

 すると翼は僕の背後に回り込んで耳打ちをして来た。

 

「私は修の赤ちゃんが欲しいわよ? だったら夜の勝負下着も必要になるわよね? 私は修の好みが知りたいわ?」

 

 そして言葉を告げると僕の耳は甘噛みされた。僕は不覚にもその行為に悲鳴をあげてしまった! 

 

ひゃう! 

 

「可愛い声ね? だけど今日の目的はこれからよ?」

 

 自分が耳が弱い自覚はなかった。だけど僕の腕を引く翼の可愛い仕草に感じてしまうものがあった。そして同時に何か重要な事を自分が忘れている事もなんとなく理解した。

 

「私には紫色と蒼色はどちらが似合うかしら?」

 

 正直に言うと翼は並のモデルよりも美しいと思う。だから正直に答える事にした。

 

「色は蒼かな。そして僕個人としては翼は布面積が多い服も少ない服も似合うと思う。だって見える範囲だけでも翼が美人なのはわかるからね?」

 

「わっ私がびっ美人!? からかわないでよ!」

 

「本当だよ。だって現に今日ナンパされたんでしょ? だったら翼は端から見ても充分美人だよ。翼が惚れてる僕からの言葉だよ?」

 

 翼は俯いてしまった。……僕……何か不味い事言ったかな? 

 

……りなさい。

 

「え? 今翼はなんて言ったの?」

 

 すると翼は僕を引き寄せて耳元で囁いた。

 

「私をこんな気持ちにさせた責任を取りなさいって言ったのよ? 覚悟は……していたでしょう?」

 

 その言葉はいずれ聞くかもしれないと思っていた。しかしこんなに早く聞く事になるとは思っていなかった。

 

「そう……だね。確かに何時か話す事になるとは思っていた。だったら僕も言うべき事を言わないとね」

 

 僕は恐らく最低の発言をするだろう。だけど姉さん達に協力すると決めた時、そしてセレナさんと出会った時に一つの〈想い〉があった。

 

「僕は翼やセレナさんの言葉を嬉しいと思っている。だけどそれと同時に何か大切な事を忘れているとも思うんだ。だからその返事は待って欲しい」

 

 すると翼は涙を流していた。

 

「そう……なのね。やっぱり……***の影が今もあるのね……」

 

 翼が小声で何かを呟いたが僕は言葉を続けた。

 

「だけど翼達の気持ちとも向き合いたいんだ。だから僕が来禅高校を卒業する時までに答えを出せなかったら、その時は〈ラタトスク〉に頭を下げてお願いするよ。〈複数の女性と籍を入れる事態になっても僕は彼女達の希望を叶えたいんだ〉ってね」

 

 僕の言葉を聞いた翼は体を少しだけ震わせた。そして僕に一つの確認をして来た。

 

「もし修が私達と添い遂げた時は、私達と子供を作りなさい。そうしてくれるなら私は構わないわ? だって修は責任を放棄したりはしないでしょう?」

 

 僕は翼の手を握って返事をした。

 

「約束するよ。その時には少し早いけど父親としての責任を持つ。だから待ってくれるのはありがたいよ」

 

「約束よ? 破ったら修の体は私の〈愛〉の刻印を施すからね?」

 

 良かった……翼は何とか理解してくれた。

 

「少し早いけど帰りましょうか。私もやりたい事ができたからね?」

 

「なら翼……最後に良いかな?」

 

 僕は翼を呼び止めた。そして令音さんに渡された蒼いペンダントを翼にかけてあげた。

 

「修……このペンダントって……もしかして?」

 

「うん。僕の持ってるペンダントと同じデザインだよ。もともとは別の人から母さんへのプレゼントだったけど、その人にお願いしたんだ。翼にもお揃いのペンダントを作って欲しいってね」

 

「修……愛しているわ」

 

 翼はそう言うと僕にキスをしてきた。でもその味は気のせいか少し塩辛く感じた。でも悪くない気分だね。

 

「じゃあ翼……また次の登校日にね?」

 

「えぇ……楽しみにしているわ」

 

 そうして翼と僕はそれぞれの帰路に着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~●セレナとのデート~~

 

「では修さん! デートを始めますよ!」

 

 セレナさんは翌日の朝8時に僕の部屋の扉を開けた。

 

「まだ……時間があると……」

 

 僕の言葉は続かなかった。なぜならキスをされていた為だ。

 

「さて……とはいえ今の時間ではどこの施設も営業していないでしょうね……なので私達の済むマンションでデートをしましょう?」

 

 そう。翼やセレナさんは僕の家の隣に建てられたマンションで現在生活をしている。これは〈ラタトスク〉が〈顕現装置〉を用いて建てられたと姉さんより説明があった。

 

「お家デート……か。悪くないですね。じゃあセレナさんのエスコートを楽しみにしていますよ?」

 

「えぇ。私オススメのビデオを借りて来ました。一緒に見ましょう?」

 

 セレナさんに連れられて入った部屋は、それはもう〈女性の部屋〉という印象だった。可愛らしいデザインの家具に綺麗なシールの貼られた小物。手作りと思われるぬいぐるみ等、明らかに短期間で作り出せるような完成度ではなかったが、それは彼女の技量の高さの現れだろう。

 

「えぇ。結社での記憶が私にはありますからね。この程度の技術ならすぐに再現できますよ?」

 

 

「ん? なんて言いました?」

 

「ふふっ……何でもありませんよ?」

 

 セレナさんはそう言うと慣れた手つきでビデオの再生を始めた。どうやら題材は恋愛映画みたいだ。

 

「はわわわわわ……一組の男女がベッドの中で……」

 

 訂正。成人指定相当の映画だった。セレナさんのお顔がトマトみたいに真っ赤に「修さんも人の事言えませんよ?」……僕も同じレベルです。

 

「でもあんなに相思相愛だと羨ましいです。だって男性は記憶を失った状態でも女性に好かれていました。なのに男性には思い出してもらえない……彼女の心は相当辛いでしょうね?」

 

 セレナさんの言う通りだ。映画の中の彼は頭部を不慮の事故で打ってしまい自分の記憶全てを失った。なのに恋人の女性は忘れられて尚男性の為に全てを捧げたのだ。

 

「その姿を見ると思いますよ……何でこんなに大切な想いまで失ったのか……ってね」

 

 僕は自分の素直な気持ちを口にした。するとセレナさんは小声で何かを呟いた。

 

「貴方の事ですよ修さん? ***さんとしての記憶を失った今の貴方の……ね?」

 

 そしてクライマックスに差し掛かると、キスをきっかけに男性は記憶を取り戻した。僕はその光景に涙が止まらなかった。

 

「……良い話ですね。まるで僕達みたいです。まあ……僕達の場合はセレナさん達が男性の立場ですけどね?」

 

 するとセレナさんはお手洗いに行くと席を立った。

 

「本当の意味でこれは私達の事を表す映画ですよ? ***さんとしての記憶を失った修さんが……ですけどね?」

 

 数分後にセレナさんは戻って来た。すると僕達は空腹感からお腹がなってしまった。

 

 するとセレナさんは笑顔で僕に告げた。

 

「お昼を作りますのでお待ちくださいね?」

 

 そうしてセレナさんは30分程で親子丼を持って戻って来た。

 

「自信作ですから早く食べましょう?」

 

「そうですね。では……」

 

「「いただきます」」

 

 僕達は親子丼を美味しく食べ終えた。

 

「ご馳走様でした。美味しかったですよセレナさん」

 

「お粗末様です。では修さん……少しお話よろしいですか?」

 

 セレナさんは下膳を終えると僕の前に座った。そして表情も真剣そのものだった。

 

「翼さんへの約束はクリスさん経由で聞きました。私達の想いに向き合ってくださるんですね?」

 

「僕が答えを見つけられなかったら……ですけどね。だからまだお返事ができずに申し訳ないです」

 

「大丈夫ですよ。急な話でしたからね?」

 

 僕は今こそペンダントを渡すべきだと思った。

 

「セレナさん……僕の答えはまだ出せませんが、気持ちの表れとしてこのペンダントを受け取ってください!」

 

 僕は令音さんに渡された白いペンダントをセレナさんの手に乗せた。

 

「……このペンダントは修さんのそれと同じ種類なんですね。私……とても嬉しいです。大切にしますね?」

 

 そういうとセレナさんは僕の唇を奪った。

 

「ふふっ……油断大敵ですよ? 私も翼さん同様に修さんを愛していますからね?」

 

「……先に言われた……か。じゃあ僕もその想いに向き合います。だから……」

 

「その先はまだ言わないでくださいね? それと私は今日の出来事を日記にしますね」

 

「じゃあ僕も家に戻ります。それじゃあセレナさん……また明日も……」

 

「えぇ。お会いしましょう?」

 

 僕達はそう言いあって別れた。凡そその1ヵ月後にセレナさんが来禅に一年生として転校してくるのはまた別の話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~??? side~~

 

「……この学校に彼がいるのね〈私達? 〉」

 

『えぇ。間違いないわよ。だって私達が見たんだもの』

 

『そうね。やっと見つけたわ。だから待っていて欲しいものね?』

 

「勝手な事はしないでね〈私達〉。そうやって物騒なあの〈魔術師〉や、頭のおかしくなる程にヤバイ※※※が動いたら〈私達〉じゃあ勝てないわよ?」

 

『そうね。じゃあ任せたわよ〈オリジナル〉。さあ……私達の悲願を叶える為の戦争(デート)を始めましょう?』

 

~~??? sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~??? (2)side~~

 

「ようやく手掛かりを見つけましたよ※※※。はぁ……まったく……〈彼女達〉にバレない為とはいえ手段が回りくどいです。でもそれが※※※のやり方ですからね。ならボクは※※※の為に行動します」

 

 ボクはようやく天宮市に来る事ができました。ここまでの道のりは長かったですね。

 

「明美さ~ん! 早く来てくださ~い!」

 

「わかりました。すぐに行きますね!」

 

 ボクは呼ばれた人物の元に急ぎました。

 

「皆……今回の〈ハーミット〉の映像がこれよ。私達は〈ハーミット〉さえ、無力化できていないのが現状ね。だから今回天宮市で確認された〈ナイトメア〉の対処の為に来てもらった〈北白 明美〉さんよ? 連携の重要性はわかっているわよね?」

 

「ボクの名前は北白 明美です。皆さん……よろしくお願いしますね?」

 

 ボク達が資料として見ていた映像の中に映る男性には見覚えがあった。彼は※※※で、※※※の伴侶だ。

 

「ボクはこの世界でも頑張ります。必ず記憶を取り戻しましょうね※※※」

 

~~??? (2)sideout~~




月日は流れて6月を迎える。そして新たな精霊があらわれる。

次回〈6月5日の転校生〉

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三章 マリアバレット
6月5日の転校生


来禅高校に転校生がやって来た。しかしその人物は何か秘密を抱えてるみたいで……


~~士道side~~

 

「もう6月……か。5月の連休が終わって学校の勉強も試験を乗り越えたこの時期は「新しい出逢いがある……ですわね士道さん?」……狂三か? その登場の仕方は心臓に悪いから遠慮してほしいよ……」

 

「あらあら。士道さんの困り顔とはたまりませんわ! 私が余すところなく見届けて差し上げますわ!」

 

 俺は天宮市内の通りをふらついていたら狂三に声をかけられた。そして現在俺達は猫カフェに二人で入り猫達と戯れている。

 

「そろそろ時計の針が回る事になるのかな?」

 

「えぇ……。そしてきっと甘くて苦い霞のような出逢いがありますわ」

 

「そうだな……物事が全て順調とは限らない。それは誰に対しても同じ事だな」

 

「さあ士道さん……始まりますわよ? 彼女達の新しき駆け引き(デート)が!」

 

 修……次の相手は一筋縄じゃあいかないぜ? 

 

~~士道sideout~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~修side~~

 

「はーい皆さーん! 今日からは転校生の方がこのクラスに来られましたよー!」

 

 ホームルームでタマちゃん先生の緩い声がクラスに響いた。そしてクラスがざわめき出した。

 

「平原……何でこのクラスなんだろうな?」

 

「う~ん……タマちゃんのクラスは問題児の集まりって噂が先輩達の中であったからな~」

 

 初耳なんだが? 

 

「詳しく聞こう」

 

「購買の焼きそばパン一つで良いぜ?」

 

 許容範囲だな。まあ……法外なまでにふっかけたら〆るけど。

 

「商談成立だな。まあ……お前の噂話は洒落にならんけど」

 

 すると平原は説明を始めた。

 

「まずタマちゃんは見た目相当の精神年齢だ。だけど頭はかなり良い。これは担当科目のテストを見ればわかるけどな」

 

「そこに異論は無いな。そして旦那さんを尻に敷いてる噂もあるらしいしね」

 

「て言うか噂の真相は士道先輩は知ってるし。まあ……そこは間違い無い筈だ」

 

 先輩は一体何をしたんだ? 

 

「いや先輩に好意を寄せてる人達は全員先輩が在学中に関わってるから流れた噂だ。そしてその噂の真相を調べる過程でタマちゃんの噂も見つかったわけだよ」

 

 納得の理由が出て来た。なるほど……一年であのハーレムを作れば噂は立つな。

 

「そしてそんなクラスの転校生だからな。恐らく何かしらの事情を抱えてるやつだろうさ」

 

 すると転校生さんが自己紹介を始めた。

 

「こんにちは。今日から皆さんと一緒に過ごす〈白崎 マリア〉よ。アメリカ人の父と日本人の母のハーフだけど育ちは日本だから気にせず声をかけてくれると嬉しいわ?」

 

そして彼女は何故か右目が隠れる程、桃色の前髪を伸ばしていた。その雰囲気を言葉にするなら〈ミステリアス〉と言えるのだろう。

 

「ハーフ!?」「すごいな! 本物じゃん!」「あの胸の脂肪……目障りね」「下手な日本人よりも大和撫子か!?」

 

 当然だがクラスは大分騒がしくなったな。まあ……こんなに綺麗で独特の雰囲気を出す女性はほとんどいない筈だからね。

 

「はいはい。質問は休み時間にしてくださいね! 授業を始めますよ〜!」

 

 そんなマリアさんの席は僕の側だった。だけど僕の周りには平原や安藤達もいるし、何より翼がすごい殺気を放って睨んでいた。もちろん反対側では未来も。

 

「あら? すごい殺気ね……。はじめましてお隣さん? もし良かったら私に学校案内をしてくれないかしら?」

 

「僕の名前は高崎 修です。よろしければ修と呼んで欲しいな」

 

「俺の名前は平原 巧だ。にしても……すごいスタイルだな。思わず見惚れちゃうよ」

 

「平原はブレないよねぇ。あたしは安藤 創世だよ。よろしくマリアさん」

 

「私の名前は寺島 詩織です。よろしくお願いしますわ白夜さん」

 

「アニメみたいな人間って本当にいるのねぇ……。あたしは板場 由美だよ。よろしくね?」

 

「ふふっ……こちらこそよろしくね。良い関係を築きましょう?」  

 

「貴女は何者なの? この時期の転校生って不自然よ?」

 

「良からぬ事を企んで修君を脅かしたら殺すからね? それじゃあよろしくね?」  

 

「あら?随分と怖い人達ね? だったら記憶に留めておくわ」

 

 どうして2人は仲良くできないのかな……。これじゃあ白崎さんが可愛そうだよ……。

 

「とりあえず止めなよ2人共。彼女は転校生なんだからいきなりくってかかる必要は無いだろ?」

 

「貴方を離さない為なのよ……なのにマリアまで……」

 

「不味い……とうとうマリアさんまで……このままじゃあいずれ✻✻✻まで……」

 

「やっぱり彼なのね。私が探していた運命の王子様は……」

 

 3人は向かい合うと小声で何かを呟いたが、僕には聞こえなかった。

 

「とりあえず白崎さんの案内……どうしようかな……」

 

「修君……と言ったわね? 貴方にお願いしても良いかしら? それと私の事はマリアと呼んで欲しいのだけど……」

 

 マリアさんは僕に視線を向けて来た。翼の時よりもドキドキするし、何より姉さん以上の胸部には嫌でも目を奪われる。そんな僕の肩に平原が手を置いた。

 

「未来をデートにさそわせろ。そうしたら手を打ってやる」

 

 助かるな。未来も最近視線が怖いから。だけど平原……お前のことを未来は見ていないんだが……

 

「そんじゃあ放課後に案内するよマリアさん。悪いけど2人共今日は見逃してくれると助かるな……」

 

 放課後は平原との交渉通りの提案をした。

 

「なら未来さん……翼さんも町に行かない? 俺ちょっと行きたいところが……」

 

「ごめんなさい……私は遠慮するわ。泥棒猫は早く殺さないと……」

 

「修君の恋人は私だよ? 絶対に許さないから……」

 

 平原……無視されて安定の撃墜だな。同情の余地すらねぇな。

 

「修……私のことはマリアと呼び捨てにしなさい。じゃないと私が歯痒いわ」

 

 この言葉に殺気が漏れる2人がいた。

 

「修……生傷を作るのは腕と足と胴体のどこが良いかしら?」

 

「修君のおはようボイスをここで流すよ? もう私以外の女に惑わされ無いように……ね?」

 

 もう僕の人生はお終いか……そう絶望した時に端末が鳴り出した。相手は……姉さん? 

 

『あたし様がハジメテを貰う予約を済ましただろ? 弟は姉のモノってのが世の中の常識だぜ?』

 

 ただの絶望勧告だった。余りの状況の悪さに僕の胃がどんどん痛くなる。

 

「修……顔色が悪いわよ? 保健室に行きましょう? 私の肩を貸してあげるから」

 

 そう言うとマリアさんは僕の肩を寄せて保健室までの道を聞いて来た。正直に言うと僕は生きていられない気がしてきた。

 

「ありがとうマリアさん。おかげであの場を離れられて良かったよ。あとで御礼代わりと言ったらアレだけど売店や屋上に行こう? 多分屋上に行く頃には夕日が綺麗だから……」

 

「修と夕焼けを見れるなんて素敵ね。なら私は修に甘えても良いかしら? あと呼び捨てにしてね? じゃないと次は噛み付くわよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう尋ねてくるマリアの表情に不安を抱えつつもあの時僕は眠りについた。そして時計を見れば放課後になっていた。

 

「今の時間は……放課後か。え? 放課後!?」 

 

「あら? 起きたのね修。少しは休めたのかしら?」  

 

 起き上がるとマリアは僕の手を握っていた。そして女神のような笑顔で問いかけて来た。

 

「それじゃあ案内してね? 私は待ちくたびれてしまったわ?」  

 

「ごめんねマリア。僕のせいで転校初日から……」

 

「大丈夫よ? それに大切なモノを見つける事ができたわ」

 

 そう言うとマリアは僕の手を取り学校の案内をせがんだ。僕も負い目があったので屋上の絶景で埋め合わせをする事にしたが、僕のペンダントが黒く光っていた事をこの時の僕は知らなかった。

 

 

「やっぱり勇は生まれ変わっても勇なのね。だけど私は思い出したわよ? だから必ず貴方の心を奪うわ。その為に分身を介して〈六の弾(ヴァヴ)〉」を失ったのは痛いけどガングニールを取り戻したのは大きいわ。だから私はもう負けないわよ……翼? ……未来? 

 

 そしてマリアの呟きも修には聞こえてはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1通りの校内の施設の案内を終えて今の僕達は屋上にいた。

 

「ふぅ……これで一通りかな」

 

「えぇ。助かったわ。明日からもよろしくね?」

 

 するとマリアは僕の腕を引くと足を引っ掛けて僕の体勢を崩させて、ちょうどマリアの胸に顔がうずくまるように受け止めた。当然僕は突如酸欠の恐怖に襲われた。

 

「むぐぅ!」

 

 もがく僕にマリアは優しい声色で語りかけた。

 

「これが私の愛よ。今はこれしかできないけど……」

 

 マリアが言葉を終える前に屋上の扉が開放された。未来と翼もここを嗅ぎつけたようだ。

 

「取引をしましょう翼さん。あのメス牛を殺します」

 

「初めて意見が噛み合ったわね未来。でも異論はないわ。マリア……すぐにあの世に送ってあげるわよ?」

 

 するとマリアは2人の横を通り抜けて逃亡を始めた。

 

「今日の目的は果たしたわ。また明日会いましょう♪」

 

 マリアは校舎の死角を用いながら逃亡を成功させた。僕もそろそろ退散を試みると2人に捕まった。

 

「私は浮気を許さないって言ったよ?」

 

「もう首輪が必要かしら? このままでは胸が張り裂けそうだわ……」

 

『修……シャワー浴びて待ってるぜ? 今夜は姉弟で楽しむだろ?』

 

「もう……知らない……」

 

 僕は迫りくる猛獣と呼べる一団からの逃亡を始めて、今回は寺島さんの家に逃げ込んだ。そして士道先輩にコンタクトを取り一団の沈静化を依頼した。

 

「大変ですわね。まあ……誠実なところが修さんの魅力ですから」

 

「ありがとう詩織。それじゃあ士道さんからの連絡が来るまで待たせて貰うよ?」

 

「はい! ゆっくり休んでください!」

 

 

 

 

 

 

〜〜明美side〜〜

 

 この同時刻に人気の無い路地で3人のならず者の死体が発見され、同時に1人の魔術師が精霊に戦いを挑んだ。

 

「彼の力を返して貰いますよ? まあ……今の貴女では意味がわからないと思いますが?」

 

「いいえ……もし貴女が私の予測している人物の関係者なら余計に殺される訳にはいかないわ!」

 

 そして数分で決着がつき、マリアの首が胴と別れた。

 

「とはいえ……少し気づいていましたね。早く✻✻✻に知らせなくては。でも今はどこで……」

 

 ほどなくして応援の部隊が到着し、死体となったマリアは片付けられた。

 

「そして早く……兄様に会わなくては……」

 

 少女の探す人物はロケットに映っていた。そしてその人物の姿は〈雪音 勇〉だった。

 

〜〜明美sideout〜〜

 




マリアに手をかけた人物は何を考えて修に接触するのか……

次回〈現れる妹と正体を表した精霊〉

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現れる〈妹〉と本性を現した〈精霊〉

妹と名乗る人物が修に接触をする。その行動が起こす影響とは……


「はぁ……士道先輩が助けてくれて良かった。でも外出したおかげで晩御飯の食材も購入できた事は大きいな。今日は先輩にも料理を食べて貰おうかな?」

 

 僕はそんな事を考えながら1人帰路についていた。すると前方からどこか目を離せない少女がこちらへと歩いて来た。とはいえ狭い道でもないので僕が端に寄ったが、彼女は本格的に僕の前に立ちこう言ってきた。

 

「お久しぶりですね兄様。未来さんからの情報だったので心配していましたが、まだ体は綺麗ですね? もし純潔が奪われていたらボクは✻✻✻に顔向けができませんからね」

 

「君が僕の……〈妹〉? ごめん……人違いじゃないかな? 僕と君は初対面だと思うけど?」

 

 すると少女はロケットを見せて僕にこう告げた。

 

「いいえ……間違いではありません。高崎 修さん。いえ……✻✻✻さんは✻✻✻の伴侶なのですから。だからボクと修さんは兄妹ではありませんが、修さんと✻✻✻は無二のパートナーでした。そしてボク『ピピピピピピ! 』電話ですか? どうぞ出てください」

 

「ごめんね。とりあえず出させて貰うよ?」

 

 僕は端末の画面を見た。相手は姉さんだった。

 

「もしもし姉さん? 頭が冷えてたら相談だけど、晩御飯を一緒に食べない? もちろん翼やセレナさんも呼ぶよ?」

 

『チッ! 2人きりじゃあねぇのかよ。だけど修の手料理なら今日は行かせて貰うよ』

 

「オッケー。じゃあこれから「貴女が雪音 クリスさんですか? ボクは貴女にも会いたかったです!」え!?」

 

『修……あたしは待ってるからな?』

 

 姉さんがそう言うと通話が終了した。

 

「君は一体……?」

 

「ボクの事は到着してから詳しく話しましょう。まずは兄様のお家に案内してください」

 

 ボクは彼女を連れて重い足取りで家へと帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま……なんでもう帰っているの姉さん?」

 

 帰宅時には既に姉さんが僕達を待ち構えていた。

 

「待っていたぜ? さて……お前は何者だ? あたし様の知らねぇ修の妹なんであり得てたまるかよ!」

 

()()()()()()ですね〈雪音 クリス〉さん。いえ……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()とお呼びすればよろしいですか?」

 

 この娘は何を知ってるんだ? 僕の疑問はより不安を駆り立てた。

 

「お前は何者だ? その事を知ってるのは限られた人物だけだ。お前の名前を教えろよ?」

 

「そうでしたね。ボクの名前は〈北白 明美〉といいます。兄様との関係は、ボクの姉が兄様と関わりのある人物でした。そしてその人物のサポートをする為にボクは天宮市に来たのです。少し時間がかかりましたが先日この街で兄様を見かけたので探し出して今日ようやく声をかけました」

 

 一部の言葉が僕には理解出来なかったが、彼女は僕の事を知る人物の妹らしいが、僕自身は彼女の事を含めても何1つ思い出せていない。

 

「そうか……お前は修の事を知ってるんだな? ならわかるだろう? 修はあたし様の婚約者だ! 絶対に返さねぇぜ?」

 

「えぇ。()()()()()()()()兄様の結婚相手ではありません。しかし兄様の結婚相手は貴女でもありませんよ? その事は貴女も()()()()()()筈ですよ?」

 

「明美ちゃんと言ったよね? 君は一体何を……」

 

「その答え合わせはいずれしましょう。今日は顔合わせだけの予定でした。ああ……それと兄様には伝えておかないといけないですね。〈DEMインダストリー〉がもうすぐ活動を開始します。ボクもやれる事はしますので何かありましたらこちらに連絡をお願いします」

 

 明美ちゃんは僕の端末にいつの間にか自分の番号を登録していた。そして名刺がスマホケースに入っていた。

 

「明美と言ったよな? ……お前……何か目的だ?」

 

「ボクの目的は1つです。〈彼女〉を兄様と引き合わせる。それだけですよ?」

 

 そう告げると明美ちゃんは帰って行った。そして受け取った名刺には〈DEMインダストリー第2執行部隊所属 北白 明美〉……そう書かれていた。

 

 

「とりあえず翼とセレナがもうすぐ来るから晩御飯は作ろう……」

 

 僕はその後ハンバーグを調理して皆に振舞った。皆がよろこんでくれて僕も嬉しかったが、明美ちゃんの事が頭から離れなかった。

 

「まずは明日の準備をしよう」

 

 僕は明日の準備に取り掛かり、もう一人の気がかりな人物であるマリアとの関わり方を考えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう修。また会えた事を私は嬉しく思うわ」

 

 翌日登校すると女神のようなマリアの微笑みが僕の心を強く揺さぶった。それと同時に何か大切なモノを受け取り・あるいは奪われた感覚さえしてしまう。

 

「おはようマリア。今日も会えて嬉しいよ。僕はマリアと出会ってから不思議な感覚があるからね?」

 

 僕は自分の本心を告げたが、それと同時に背後からの殺気も感じた。

 

「まずは胸ね。まるで交通事故に遭ったみたいな傷にしようかしら? それなら修も堂々と外を歩ける筈だかよ?」

 

 翼が物騒な発言をして彫刻刀を取り出した。

 

『授業が始まるだろう未来? 流石に席に戻らないか? 僕だって君に迷惑をかけたくは無いんだよ?』

 

 未来は静かに自分のカバンを漁り、僕が交渉の為に以前録音した未来の為のテープが再生を開始した。

 

「2人共……落ちついて貰えないかな? 僕は今とても困っているんだけど……?」

 

 彼女達は底冷えするような声で僕の言葉に返答した。

 

「大丈夫よ修。私は冷静だから修の体に私の存在を刻むの。だってキスマークよりも自然で……私の事を捨てる事は出来ないでしょう?」

 

「修君は恋人を捨てるような酷い事はしないよね?」

 

 何故僕の周囲の女性は目の奥から光が消えているのだろう? 僕が思い出せない記憶にどんな秘密が隠されているのだろう? 

 

「ごめん2人共! 僕は行かないといけないところがあるから!」

 

 逃げ出した僕は屋上に向かっていたが、そこでマリアは僕に声をかけてきた。

 

「修……少し大事な話があるわ。実は私ね……ある人物に()()()()()()()()()。だって私は()()()()()()()

 

 マリアは今まで隠していた右目をさらけ出した。その瞳は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()をしていた。

 

「マリアが……精霊? それに命を狙われているって……?」

 

 僕の疑問の答えは扉を蹴破り現れた未来によって明かされた。

 

「修君! 逃げて! 彼女は修君の事を!」

 

「あら? 貴女は確か……未来って言ったわね? もしかして昨日明美ちゃんの隣にいたかしら?」

 

「何か目的なの〈ナイトメア〉! この学校には貴女が手をかけるべき悪人はいないわ! 正義の味方気取りの精霊が狙う人物はここにいない!」

 

 マリアが……()()()()()()それは一体……? 

 

「はぁ。修には手伝って貰うつもりだったのよ? だってこの国の軍事を握っているのは……」

 

「何が……起こっているんだ? 誰か教えてよ?」

 

「そうね。修……明日デートをしましょう? そこで私の転校してきた本当の目的を語るわ。もちろんそこの貴女もついて来たかったらいても構わないわよ?」

 

うるさい……今すぐ殺してやる! 私から光を奪うつもりならもう躊躇わない!」

 

 未来は〈顕現装置〉を起動させるとブレイドでマリアに斬りかかった。しかしその剣はマリアに届く事はなかった。

 

「Granzizel bilfen gungnir zizzl〜♪」

 

 マリアの歌は僕の胸の内から時折聞こえる歌の1つだった。そして次の瞬間マリアは黒を基調とした鎧とマントを纏う。……そして右手には特徴的な形をした槍が握られていた。

 

「ありえない……シンフォギア(嘗て貴女が手放した聖遺物)は失われていたはず! なのになんでそれを纏うの! 白夜 マリア!」

 

「だけどこの槍は現にここにあるわよ? それに……私はここで止まる訳には行かないわ。修……明日の10時に天宮駅の南改札口で会いましょう?」

 

 マリアはマントを翻して姿を消した。

 

「マリア……何か目的なんだ?」

 

早く〈絶滅天使(メタトロン)〉の封印を解かないと間に合わないの? ……ううん……まだダメ。✻✻✻に対抗する為にはまだ手札が……

 

 未来も虚ろな瞳で屋上を後にした。小声で呟いた言葉はうまく聞き取る事ができなかった為に未来が何をするつもりなのかはわからない。だけど僕の抱える違和感に少なからず未来も関わってる事だけは理解できた。

 

「だけどマリアが精霊だと言うなら、僕はマリアを助けたい。それにマリアの命を狙う人物って一体誰なんだ……?」

 

 僕はこの疑問を解明する為に姉さんに連絡をしたが、礼音さんが後に見せるビデオが1つのトラウマを作る事をこの時の僕はまだ知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……少し情報を整理しよう」

 

 僕はマリアからデートに誘われた。それも()()()()()()()……だ。

 

 だけど言いようの無い不安に駆られた事もあり、礼音さんに相談する事にした。

 

「マリアが本当に人を殺したとは思えません。何かの間違いじゃあ無いかと思っています」

 

「……なるほど。確かに彼女の雰囲気から殺人を犯すタイプとは考えにくいだろう。しかし事実として転校初日にも彼女は殺人を犯している。……そして彼女自身もまた殺されている」

 

 礼音さんの言葉は僕にとっては残酷な言葉となった。

 

「修……悪いが礼音の言葉は事実だ。このビデオが何よりの証拠なんだ……」

 

 姉さんは申し訳無さそうにビデオデータを1つクリックして画面に映した。

 

「これから画面に出て来るのはマリア・明美・未来だ。そしてマリアが殺人を犯した場面も同時に確認できた」

 

 再生された映像では、マリアが3人程のならず者に絡まれていた。そして人気の無い路地に連れて入った瞬間に手にした銃で3人を殺害。その後に明美が現場に到着した。そこからは圧倒的な速さで接近した明美がマリアに肉薄してブレイドにてマリアの首をはねた。

 

「これは……何かの間違いじゃあ無いですか? 今日マリアは学校に来ていました。僕だけじゃなくて未来との会話も……」

 

 2人は申し訳無さそうに僕の呟きに答えてくれた。

 

「そこ……なんだ。彼女自身は間違いなく疑いようが無いほど完全に殺されている。比喩ではなく事実として……だ」

 

「だからあたし達はわからねぇんだ。マリアが何の為にこの学校に来たのか。そもそも何故殺人に及んでいるのかもな」

 

 姉さんは敢えてこの事を僕に黙っていてくれた。それはこの事態が何も見えていないからなのだろう。

 

「もちろん組織の一員としての判断で言えば、最前線に立つユウにこの事実を伝えていないのはクリスの過失でもある。……まあこの場合は難しいところも含まれているから一概には言い切れないがね?」

 

「今日登校したらすぐにでも伝えるべきだったかもしれねぇ。だけど可愛い修に余計な不安をかけるのも嫌だったんだ。これ以上精霊に関わらせたらそれこそいずれアイツ等もわかっちまう……」

 

 姉さんは僕の事を本気で心配してくれていた。だから感謝できる。

 

「姉さん……以前僕に言ったよね? 精霊は突然世界に放り出された……って。マリアも例外じゃあ無いんだよね?」

 

「恐らく……だがな。ただこの世界で過ごす内に〈見過ごす訳にはいかない悪〉と出会っただけなんだだろうよ。マリア自身は争いを望んでいない筈だ」

 

 その言葉を聞いて安心した。なら僕はマリアを止める義務がある。もう僕の目の前で殺人なんかさせられない。

 

「決めたよ。僕はマリアと明日デートをする。そこでマリアを説得するよ。可能なら封印だってして見せる。そもそもマリアが精霊の力を使う必要なんて無いんだから!」

 

「ああ。それでこそあたし様の可愛い弟だよ。思う存分やってこいよ! あたし達も協力は惜しまねぇからな。…………それにアイツが封印できたら目下邪魔者は無力化できる。そうすれば修……いや勇を押し倒して……

 

「姉さん? 最後なんて言ったの? よく聞こえなかったけど……」

 

「大丈夫だよ。修がいつの間にか成長した事を実感した独り言を呟いただけだ。何を呟いたかは教えてられねえがな」

 

 姉さんの言葉に僕は恥ずかしくなり逃げるように部屋を出た。そして下校時間になると急いで帰り支度を始めた。

 

「修君……今日は翼さんと何かあったの? あまりにも彼女の目が怖いよ?」

 

「あまりにも様子が普通ではありませんわ。女性に対して何か失礼な事はしてませんよね?」

 

「言いたく無いけど翼さんを泣かせたらあたし達も許さないよ。もしそうなったら友人として灸を据えるからね?」

 

 確かに僕の行いは端から見れば節操の無い男子だ。だけど3人共僕の事を少なからず知るだけに頭ごなしには怒らない。だからこうして警告をしてるんだ。

 

「僕の行いが翼を泣かせた時は裁きを受けるよ。だけど今の僕にはやるべき事もある。それが終わった時は逃げも隠れもしないからその時はお願いね?」

 

「はぁ……あたし達も修が何か事情を抱えてるのはわかるから……できる事は言ってよね? 協力はするからさ」

 

「それが私達ですわ。もちろん過ちがあれば裁きますけど」

 

「ここにいない平原もきっと同じ事を言うよ? アニメじゃないけどあたし達もあんたと付き合いが比較的あるからね?」

 

 僕は良い友人を持ったな。

 

「ありがとう3人共。これからも翼と仲良くして欲しい」

 

「「「もちろんだよ(ですわ)!!」」」

 

 僕はその言葉に背中を押されて教室を出た。そして明日のデートの為の準備にとりかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダメですよ修さん……マリア姉さんには絶対に渡しませんから……ね?」

 

 この様子を見ていた人物がもう1人いた事を僕はまだ気付かない。




マリアに関する衝撃的な事実を聞かされた修は彼女とのデートを決意する。


次回〈マリアとのデート〉

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マリアの力

マリアは修を来禅高校の屋上へと呼び出した。しかしその日には彼女も転校してきて……


 昨日のデート終盤にマリアは僕の目の前で人を殺してしまった。僕はそんなマリアを止められなかったし、何よりマリアに依頼した人物がいる事と、マリア自身の正義に基づいた行動だという事がわかってしまった。

 

「マリア……僕は君の行動を否定は出来ないかもしれない。だけど僕は君の行動を肯定したくも無いんだ……」

 

 僕は悩みながらも来禅高校へと向かっていた。しかし学校につくと驚くべき事態が起きていた。

 

「あっ! 高崎君! ちょうど良かったです! 君を探していたんですよ? ひとまず職員室に来てくださいね?」

 

 タマちゃん!? 僕……何かしてたか? あぁ……マリアの件かな? とりあえず職員室に行くか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え〜っとどうしましたか? 僕が呼ばれる事なんて……」

 

 とりあえず僕はタマちゃんに連れられて職員室までやって来た。

 

修さん! やっと会えました! 

 

 ……嘘だろ? セレナがここに来るなんて……

 

「えぇ……話を聞くと彼女は白崎さんの妹さんだそうなんですよね……。そしてお姉さんのいる来禅に転校してきたみたいですよ? でも高崎君の事を話していたので、ひとまず来て貰いました!」

 

 セレナはマリアの妹だ。それは2人が似ている事からも確かだろうな。それにマリアがあのデートの時に実はセレナが妹だと教えてくれていた。

 

「セレナ……来禅に来たんだね……」

 

「はい! 修さんとずっと一緒にいたいので編入して来ました! これからも……よろしくお願いします!」  

 

 無邪気で元気な声が響いた。

 

「では高崎君……白崎姉妹の事を頼みましたよ?」

 

 ……今日の僕は厄日かな? 

 

「いいえ。私と修さんの愛を育み始める記念日ですよ?」

 

 セレナが無邪気な笑顔を見せた時、学校が謎の空気に包まれた。その証拠か辺りから不気味な雰囲気が漂っている。

 

「修……さん……これは……マリア姉さんの……仕業です……修さんを……呼ん……で……います……でも……行ったら……ダメ……です……」

 

 セレナは息を絶え絶えにしながらも必死に状況の把握を始めていた。そして僕の方もインカムが鳴った。

 

『ユウ……これはマリアの力だ。彼女は屋上でその姿が確認されている。すぐに止めてくれないか?』

 

「マリアは屋上にいるんですね? なら行きます。でも1つ教えてください。なんで僕は動けるんですか?」

 

『恐らくは精霊の加護の様なものだろうな。正確には勇以外を対象としているだけだ。マリアめ……賢しい事をしてくれる……! 

 

「礼音さん! 声が聴こえ無いです! 返事をしてください!」

 

『……済まないね。どうやら電波の調子にも影響があるようだ。済まないが私達もできる事はしていくがもしかしたら……』

 

「わかりました。僕がマリアを止めてみせます。セレナ達の事を頼みましたよ?」

 

『可能な限りの支援を行うと約束しよう』

 

 僕は屋上を目指した。すると途中で未来と翼を発見した。どちらも衰弱しているみたいだ。

 

2人共大丈夫か! 

 

「ごめんなさい……立てそうに無いわ。それに体が重くて……」

 

「今日こそは修君のハジメテを貰うつもりだったのにぃ……こんなのあんまりだよぉ……」

 

 ……僕は未来に貞操を狙われていたみたいだ。

 

「2人共……僕はこれからこの事態を引き起こしているマリアの説得に向かう。だからそれまで持ち堪えて欲しい……」

 

「修……それって……」

 

「そんな……だったら……こんなところで……」

 

 2人が何か言っていたが僕は急いで屋上へと向かった。そしてたどり着いた時には〈礼装〉を纏い〈天使〉を呼び出しているマリアがそこにいた。

 

「マリア……なんでこんな事をするんだ……目的は何なんだ?」

 

 マリアは悲しみを含んだ目をして答えた。

 

「これが私の天使の〈刻々帝(ザフキエル)〉よ。本来は寿命を著しく消耗するからこの〈時喰みの城〉で周囲の人間達から寿命を吸う事で補う筈()()()わ。でもね……偉大な先輩達がその概念を捻じ曲げてくださったの。おかげで今では人を衰弱させる程度の影響と、その範囲内での使用には対価が発生しなくなったわ。まあ……影の届く範囲と言いながら実質的にはほぼリスクともいえないのだけどね?」

 

 本来はもっと恐ろしい能力だったのか! だったらなんでこんな事に……

 

マリア! だったら尚更やめてくれ! なんでこんな事をしなくちゃいけないんだ! もっと他の手段も選ぶ事ができるんじゃあないのか! 

 

 マリアは僕に歩み寄り、手を握りながら答えてくれた。

 

「えぇ。とても簡単な方法はあるわよ? でもね……それはきっと誰も納得しないわ。だってこれは……翼達がターゲットだもの」

 

 狙いが翼……達……? 

 

「考え直してくれ! 今日からマリアの妹のセレナだって来禅に編入したんだ! 彼女は今まさにマリアの攻撃を受けている事になる! 取り返しのつかな「そう……都合が良いわね。セレナにはオシオキが必要だもの」い……え?」

 

「セレナだけじゃないわ。未来も翼もクリスだって許さないわよ? だって私の修を誑かすんだもの。そんな事許せる訳ないじゃない?」

 

 僕が絶句していると屋上の扉が破壊された。そして〈顕現装置〉を纏う未来と、礼装を展開する翼とセレナの姿があった。

 

「昨日マリアを信じた私が愚かだったわ。だってこんな裏切りをされたのだもの」

 

「許せませんよ姉さん……その命は凍っても良いという事ですね?」

 

「精霊はやっぱり駆除しないとダメだね。皆死んじゃえ!」

 

 3人は殺気立ててマリアを睨んでいた。しかしマリアは余裕の表情を崩さなかった。

 

「残念だけど貴女達では全てが足りないわね。揃いも揃って貧相だもの」

 

 3人が僕の側まで歩みよると、僕の体に複数の痛みが走った。

 

うあああああああ!! 

 

「うるさいわよ修。()()()()()()()()()()()()()だけじゃないかしら?」

 

「ごめんなさい修さん。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ですよ?」

 

 

「修君がわかってくれないから()()()()()()()()()()だよ?」

 

 僕の体が想像を絶する苦痛を受けたのにも関わらず、意識を手放す事さえ出来ない。体がショック死しそうだよ。

 

「ッ! 〈刻々帝(ザフキエル)〉! 〈四の弾〉よ! 修の命を失う訳にはいかないわ! 

 

 マリアが何かをつぶやくと、僕の体は傷を受ける前まで復元された。しかし感じた痛みがまだ体から離れない。

 

「ようやく天使を使ったわねマリア? すぐに死んで良いわよ?」

 

「この好機を逃すつもりはないよ! 死んでよマリア!」

 

「その選択をするなんて残念ですよ姉さん?」

 

 3人は僕の為に体を張ったマリアへ攻撃態勢を整えた。そして天使を使用した直後の一瞬の隙をつくように斬りかかった。

 

「甘いわよ! 今の貴女達如きならこれで充分だわ!」

 

 マリアはマントを展開して3人を弾き飛ばした。これが封印されていない精霊の本来のスペックか……。でも僕は止まる訳にはいかなかった。

 

「皆! もうやめてくれ! こんな事されても僕は悲しいだけだ!」

 

「……そうね。修を傷つけるだけの貴女達は危険だわ。やっぱり私が修を守らないとダメなのよ!」

 

 すると上空から別の光が降り注いだ。

 

「それは貴女も同じですよ白崎 マリア。大量殺人犯が白々しいです」

 

「はぁ……貴女もいたわね明美……良いわ。纏めて始末してあげるわ! 〈刻々帝(ザフキエル)〉の力を見せてあげるわ! 〈二の弾〉よ!」

 

 マリアは全員に銃弾を放った。そしてその弾が直撃した瞬間翼達の動きが遅くなった。

 

「皆怖いわね……でもこれで仲良く倒してあげるわ!」

 

 〈HORIZON†SPEAR! 

 

 マリアの槍から放たれた光が屋上を照らした。そして光が収まる頃にはたくさんのマリアが立っていた。

 

「これは〈八の弾〉の力よ。嘗ての私の記憶・記録・過去と言われる〈私〉の再現体だから」

 

 するとマリア〈達〉は4人に向かって銃弾を浴びせ続けた。僕はそれを見て足が竦んだ。

 

やめろ……やめてくれマリア……

 

 気がつけば未来・セレナ・翼が銃弾の雨に撃たれて倒れていた。

 

「こんな、に、強く……なって、いた……とは、驚き……です。早く※※※に……伝え……ないと……」

 

「明美! もうしゃべるな! プラグシナスを呼ぶから! 治療して貰うから!」

 

 僕が明美を抱き抱えると、僕の右足は黒槍に貫かれていた。

 

「ッ! あああがぁああああぁ! 

 

 痛みが僕の体を襲った。

 

「修……どこへ行くのかしら? 私は修が欲しいわ! その為に来禅に転校してきたの! 修が逃げるなら高校なんて行かなくても良いのよ?」

 

「マリア……なんで……」

 

「修が見たのはきっと悪夢よ……。次の目覚めはきっと幸せだわ……」

 

 耳元で囁かれ、僕の体がマリアに抱き寄せられる。それと同時に明美が僕の手から離れて再び倒れる。

 

「一緒に行きましょう? そして私達だけの幸せな日々を過ごしましょう?」  

 

 僕はマリアに攫われてしまうのか。……ごめんね姉さん……  

 

許さねぇぞマリアあああぁ! 

 

 上空より叫び声が聞こえて、それと共に周囲の温度が急激に上昇した。そして声の主を確認する為に見上げると……そこには般若と言わんばかりの形相をする姉さんがいた。

 

ぜってぇ許さねぇ! お前達だけは纏めて殺してやるよ! 

 

パチン! 

 

 姉さんが指を鳴らすと、()()()()()()()()()()()()()()

 

「クリス! 貴女本気なの!? ここには修がいるのよ!」

 

今すぐ修を置いて消えろ……そうすりゃこの空間震は止めてやるぜ? 

 

 底冷えするような声で姉さんは告げていた。しかしマリアは冷静さを取り戻して、僕を守るように前に立ちはだかった。

 

「そうか……それがお前の答えだな? じゃあ仕方ねぇ……お別れだぜ皆。あぁ……悲しいよ。誰も彼もあたし様を苦しめるんだろう?」

 

 姉さんがいよいよ空間震を発生させて衝撃が街を襲うのだろう……そう僕は目を閉じてしまった。しかし目を開けた時には()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……ふぅ。危なかったわ。クリス……忘れていないかしら? 空間震は発生と同時に同規模の揺らぎをぶつけると相殺される事を。良くその体たらくで艦長を名乗れるわね? 緒川さんがいなかったら無能なのかしら?」

 

マリアは溜息をつくと姉さんを挑発した。

 

「死ね……死ねよマリアぁ! 焦がせよ〈灼爛殲鬼(カマエル)〉! あたし様の宝物に手をつける不届き者を焼きつくせぇ! 

 

 興奮した姉さんは屋上を火の海にせんとばかりに炎を放った。

 

「ごめんなさい修! 必ずあとで謝るから!」

 

 僕はマリアに校舎内へと投げ込まれた。そこで頭を打ってしまい意識を失った。  

 

「ねぇ……さん。マリ……ア……」

 

 僕の呟きを聞いた人物は誰もいない。

 




マリアよりなんぼもヤバいのが封印済の精霊だった。クリス姉さん……空間震は無しでしょ……空間震は。

次回〈炎の精霊……その人物とは……〉

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マリアとのデート

マリアとデートする決意を固めた修は街合わせ場所へと向かう。そこで悲劇を見る事をになるとは知らずに……


「マリア……僕は明美ちゃんにも君にも人殺しをさせたくはない。だから僕はできる事はするつもりだから」

 

 昨日僕が見たモノと聞いた話が思い出せない理由が、僕の記憶に関係がある事もなんとなくは気づいている。その為にもマリアには会わないといけない。

 

「さて……じゃあ行こう。僕もデート自体はまだ慣れないけど、マリアを救う為には恥らいも捨ててやる!」

 

 僕は覚悟を決めて街合わせの場所へと向かった。

 

「さて……マリア監視はあたし様自らやるか」

 

「勇さんとのデートだなんて許せませんね。このデートが最後の思い出にしてあげますよマリア姉さん」

 

「マリア……貴女は良いパートナーだったわ。だけど残念ね…………今日で貴女とお別れしないといけないなんて」

 

「デートの待ち合わせ場所と時間を教えた事を後悔しても遅いんだからね?」

 

 僕の知らないところで〈何か〉が始まろうとしていたが、その事に気付く事はできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて……約束の時間か。マリアはどこに……」

 

 僕は約束の10時に天宮駅の南改札口の側にいる。すると後ろから目隠しをされた。

 

「ふふっ誰かしら?」

 

 背中に当てているその巨乳は男子高校生には辛い。思わず前屈みになりそうになった。

 

「うわぁ!!」

 

「もぅ……そこまで驚かなくても良いじゃない……。私は修に一目惚れしてしまったのよ? だからこんな事をしても恥ずかしくないのよ?」

 

 マリアは僕にストレートな好意を告げて来た。どうしよう……すごく返答に困ってしまう……

 

大丈夫よ修……。私が貴方を守ってあげるわよ。だって私は精霊だからね? 

 

「マリア……うぅ……」

 

 僕はマリアの耳打ちに真っ赤になって照れてしまった。そしてそんな僕をマリアは優しく抱きしめた。人通りの多いこの駅で……。

 

「あたし様の弟になんて破廉恥な事を……ぜってぇ殺してやるぞマリア……」

 

「私だけの修が……マリアなんかに……やっぱり胸なの? 胸が無いのは罪なの? マリアが憎い……あの巨乳が憎い……」

 

「マリアさん……酷いよぉ……私達の事を出し抜くなんてぇ……」

 

「姉さん……もう許せません。今日で仲の良かった姉妹の関係は終わりなんですね……」

 

 四方からとても恐ろしい殺気が放たれていた。そしてインカムであおいさんより通信が入った。

 

『ごめんなさい修君。翼ちゃん達の霊力が逆流してるわ。恐らく修君のデートを盗撮してるのは間違い無いけど、こちらも彼女達がどこに隠れているかわからないの。だから彼女達を炙り出してもらえるかしら? そうすれば司令や緒川さんが確保に迎えるし、風見さん達も手伝える「その必要は無いわよあおいさん?」え? その声……マリアさんなの!?』

 

 なんとマリアは僕のインカムと同じ種類の物を耳にしていた。そして僕達の通信に割り込んだのだ。

 

「修……少し携帯電話を借りるわね?」

 

 するとマリアは僕の携帯のロックを外すとLINEアプリを起動させた。そして翼・姉さん・セレナ・未来の連絡先を見つけると(全員毎日LINEが来るのでトークルームでは上の方にある)素早く自分の携帯に登録した。

 

「はい。これで後は私がなんとかするわ。……修の連絡先? 当然入力済みよ? 初日に気絶してる間に入力と登録は済ませたわ。ロック解除なんて愛の前では簡単だもの」

 

 嘘だろ……既に連絡先を知られてたなんて……

 

「マリア……それはどういう意味なの?」

 

 僕がマリアに問いかける間にマリアは素早くスマホを操作していた。そして優しく僕に微笑んだ。

 

「もう大丈夫よ。今日の私達のデートを邪魔する害虫は大人しくなったわ」

 

 マリア……一体何をしたんだ……

 

 

〜〜トークルーム上(クリス)〜〜

 

 

『マリアが〈クリス〉〈未来〉〈翼〉〈セレナ〉を招待しました』

 

「っ!」

 

 あたしの携帯に送られた通知は驚く内容だった。

 

「マリア……なんの真似だ?」

 

 すると招待された全員が秒でグループに参加した。マリアの奴はそれが終わると直ぐに1つの写真と複数のメッセージを送信して来た。

 

『私達は同じ精霊じゃない。みんな仲良くしましょう?』

 

『親愛なる貴女達の為に1つの宝物をあげるわ』

 

 その写真はあの日の保健室で眠る修の寝顔の写真だった。

 

「ッ! 欲しい……修の写真がもっと欲しい!」

 

 あたし達はそれぞれが保存した宝物の写真をひたすらトークルームに貼りつけた。同時に他の奴等が送信した写真は片っ端から保存した。

 

『これでわかってくれたかしら? 今日のデートを盗撮するのは構わないけど、写真は共有しましょう?』

 

 マリアのそのメッセージを最後にあたし達はそれぞれの方角から修達のデートを監視して、その成果を全員が共有する事で今日1日だけは争わない事にした。

 

〜〜トークルーム(クリス )終了〜〜

 

 

「さあ! 早くデートを始めるわよ! まずは服を買いたいわ!」

 

 僕はマリアに手を引かれるままにモールへと入った。

 

「あぁ……とうとうここまで来たわ!」

 

 マリアは興奮した足取りで下着コーナーへと向かった。ん? 〈下着コーナー〉? 

 

「マリア……なんで下着コーナーなの? 僕すごく恥ずかしいんだけど?」

 

 マリアは僕を笑顔で……そして優しく抱きしめた。僕はマリアの豊満な胸に再び溺れる事になった。

 

「あら? 男の子ね?」「隣の女性の付き添いかしら?」「きっと仲の良い姉弟なのね?」

 

 周囲の女性の理解がなかったら僕の社会生活は終了するかもしれなかった。

 

「どうかしら修? 私には青と白の水着だとどちらが似合うかしら?」

 

 この時に少しでも本能を抑えれば良かったのだろう。しかし僕は欲望に負けて正直なコメントをしてしまった。

 

「僕は……その……そこのマネキンにつけられてる黒のビキニがマリアには似合うと思うんだ。だから……選ぶならそれが良いかな?」

 

 マリアの顔が途端に明るくなり僕を更に強く抱きしめた。

 

「〜ッ! 嬉しいわ! 早速着替えるから少し待ってて?」

 

 マリアはカーテンを閉めると絹が擦れるような音がした。そして僕がその音にドキドキしていると別の人物達が声をかけて来た。

 

「おっ! 高崎じゃない! な〜に〜? 高崎も服探し? 美九先輩みたいとまでは言わないけど、並の女性より女性らしい格好ができる高崎があたしは羨ましいよ」

 

「勘弁してくれよ安藤……美九先輩のあの目に僕と士道先輩は軽いトラウマなんだよ……」

 

「ていうかアンタ翼さんはどうしたのよ! 泣かしたらあたし達は絶対許さないから!」

 

「その翼に命を脅かされてるんだけど! 僕だって最近は側にいてあげたいけど命も惜しいよ!」

 

「でも……修君も複数の女性との関係が噂されていますわ。士道さんみたいになるとは限りませんので火遊びは程々にする事をオススメしますわ」

 

「詩織……僕にそんな事できるメンタルがあると思う? とてもじゃないけど、あんな事僕には出来ないんよ?」

 

「修……待たせ……た……わね……?」

 

 カーテンを開けたマリアが僕達と目があった。

 

「「「きゃああああ!!!」」」

 

 僕は3人の叫びと共にぶっ飛ばされた。そしてその時に頭を強打したようだ。

 

修! 目を開けて修! 

 

 僕は段々と意識を失った。    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは?」

 

 僕は公園のベンチでマリアに膝枕されていた。意識を取り戻してすぐに大きな胸が視界に入ったから膝枕されていた事は間違い無い。

 

「あぁ……良かった……」

 

 マリアは僕を本当に愛おしそうに抱きしめた。なんでこんな彼女が人を殺してしまうのか僕にはわからなかった。

 

「マリア……なんで君はASTや明美に命を狙われているの? 一体なんで殺人なんて……」

 

 僕はマリアに直接確認する事にした。するとマリアは僕に驚くべき事実を告げた。

 

「ごめんなさい修。その為にはついて来てもらえるかしら?」

 

 僕はマリアに連れられてある場所に来た。そしてそこには()()()()()()()()()()()()()1()()()()()()()()()()()()

 

「お疲れ様〈私達〉。首尾は順調みたいね?」

 

「ヒイィィィお前……ナイトメアか! 何故私を狙う! 私の他にも悪党は「御託はそれまでで充分よ?」あがぁ!」

 

 マリアは拘束していた男性を射殺した。しかしその顔は悲痛な表情をしていた。

 

「ごめんなさい修。彼の名前は〈アドルフ博士〉よ。嘗てはアメリカから逃亡したマッドサイエンティストでサイコパスな人物だったの。私はその被害者からの依頼を受けて彼を捜索し、今仕事を終えたわ。〈私達〉……マムへの報告は大丈夫よね?」

 

『えぇ大丈夫よ? でも修に見られてしまったわ』

 

『仕方無いわよ。だっていずれは見られてしまったわよ?』

 

『でも優しい修なら……きっと……』

 

 口々に複数のマリアが僕に囁く。なるほど……だからマリアは明美ちゃん達に殺されても……

 

兄様! その女から離れてください! 

 

 叫び声が聞こえた直後に砲撃が僕とマリアを分断した。そしてその人物はすぐに登場した。

 

「明美……ちゃん?」

 

「えぇ。兄様の可愛い妹の明美です。しかし兄様は見てしまったのですね? マリアが殺人を犯すところを……」

 

 明美ちゃんの目は光を映していなかった。そしてこう続けた。

 

「早くいつものように死んでくださいよナイトメア。ボク達の兄様は渡しません。それが彼女との約束です!」

 

「しつこいわよ明美。私は絶対に修を手に入れるわよ? でも今日は引き上げるわ。貴女がいては話なんて纏まらないもの……」

 

 そう言うとマリアは礼装を纏い、マントを翻して僕達の前から姿を消した。

 

「明美ちゃん……マリアは誰からあんな事を頼まれているの?」

 

「恐らくは不当な扱いを受けた実験体やその関係者でしょうね。しかしだからと言ってもボク達の役割も変わりません。彼女が殺人を行うならボクは彼女を殺します。それが例えいたちごっこになろうとも……」

 

 僕はその日……背負うにはとても大きな物がありすぎる2人の事を考えた。そして明日再会するとわかっているだけに少し憂鬱になった。

 

 




マリア……周到過ぎませんかねぇ……

次回〈マリアの力〉

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四章 クリスバーニング
炎の精霊……その人物とは……


ついに来禅高校に炎の精霊が現れた。しかしその人物は良く知っている人物で……


〜〜士道side〜〜

 

「緒川さん! 来禅高校を起点に空間震の予兆が確認されました! このままでは!」

 

「落ちついてください。僕達は冷静でいなければなりませんよ?」

 

「司令に連絡を急ぐわ! お願いねキャロルちゃん!」

 

「任せろ。既にジェムの座標は遠隔で入力済みだ。後は弦十郎に任せれば大丈夫だろう?」

 

 フラクシナスは現在修へのサポートの対応に追われてている筈だったが、艦長の筈のクリスが引き起こぞうとした空間震の対応に追われていた。

 

「女性の嫉妬は怖いというけど、琴里と狂三が逆の立場ならこうなっていたのかもな……」

 

6月8日……本来ならその日は狂三が来禅の屋上で〈刻々帝(ザフキエル)〉を来禅で使い、〈時喰みの城〉で皆を衰弱させて、十香達と交戦して俺達の前から最初に姿を消した日だ。そして琴里が俺の目の前で〈灼爛殲鬼(カマエル)〉を纏った日でもある。

 

「あら士道? どうしたのかしら?」

 

「兄様が上の空でいやがりますね」

 

 俺達は現在フラクシナスで修達を見守っている。と……言ってもいるのは俺と琴里と真那だけなんだがな。

 

「いやさ……妹達の本当の頑張りを目の当たりにしたのが本来は2年前の今日だったんだよなぁ?」

 

「そうでいやがりましたね。確かに場所は来禅でした」

 

「そして私が〈灼爛殲鬼(カマエル)〉の力を折紙の前で使った日でもあるわね」

 

 折紙が琴里を狙うきっかけになった日だな。でも……修達ならきっと……

 

「家族を想う気持ちはつえーです!」

 

「愛があれば乙女は変わるわ。それは私達が証明したでしょ?」

 

「そうだな。だって狂三さえも後に変われたんだ。だから大丈夫だな」

 

「「「さあ……近くて遠い距離にあった2人の戦争(デート)を始めよう!」」」

 

〜〜士道sideout〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜マリアside〜〜

 

 修が3人に重症を負わされ、慌てて私は修を救った後未来・翼・明美・セレナの4人を無力化した。しかしその後に修を愛でているとクリスが現れてしまった。琴里さんの時と違い()()()()()()()()()()()()()()()()。その為に完全礼装を纏えていた。しかし事態は思わぬ介入者によって大きく変化した。

 

ここは逃げたまえマリア君! 君の封印が出来ないのは惜しいが、今はクリス君の方が深刻だ! それにマリア君も目的があるのだろう?」

 

「司令は何でもお見通しね。でも今回はお言葉に甘えさせて貰うわ!」

 

 私が退散しようとした頃、懐かしい雰囲気を放つ4人とすれ違った。そして先頭の女性は私にこう告げて来た。

 

流石マリアね。やっぱりマスターが最後に倒すとしたら貴女なのでしょうね? 

 

「ッ! その声まさか!?」

 

 私は足を止めてその人物に尋ねた。

 

「今はまだアタシ達が話すべき時では無いわ。でもそうね……その考えで間違い無いとだけ言っておくわ……」

 

 彼女達はそう告げると修の回収に向かって行った。でも私の考えが誤りで無いと言うなら……

 

「私達は精霊になった。そしてキャロル達だけじゃなくて司令達とも対立してると言うことなのね……」

 

 ガングニールを取り戻した私はとにかく、残る精霊達には同情するわ。貴女達は嘗ての仲間にすら狙われているなんてね……

 

〜〜マリアsideout〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜舞華side〜〜

 

 私達はマスターの命を受けて旦那様を無事に回収する事に成功した。だけど屋上ではとうとうクリスが反旗を翻して来た。

 

「マスターが健在なら取るに足らない出来事でしたわね?」

 

「しかしクリスに逃亡される事が1番不味い。〈灼爛殲鬼(カマエル)〉の力を旦那様が取り戻せないとなると、不慮の事態に直面した時に取り返しのつかない事が……」

 

「だけどクリスは調子に乗りすぎた。今回のターゲットはクリスね」

 

「せっかく見逃してやってたのに残念だぞ」

 

 私達は今後どうするべきか考えたが、やはりクリスの封印は確定事項だった。

 

「まずは動向を見守りますわ。それに……司令自ら動いた以上今回は大丈夫な筈だもの……」

 

〜〜舞華sideout〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜クリスside〜〜

 

 翼達が修に危害を加えてマリアが治療した。それまでは良かったが、マリアは修を誑かしやがった。それだけは許さねぇ。勇はあたし様のモノだ。例え転生してもぜってぇ渡さねぇ。そう思ってマリアをシバこうとしたら想定外の人物が転移して来た。

 

「すまんなクリス君。悪いがここは通行止めで、俺は君を確保する義務がある。恨んでくれて構わないが、君が抵抗すれば少し痛い目に遭うぞ?」

 

「眠てえ事言ってねぇでそこをどけよオッサン! あたしは修……いや、勇を抱きしめてやらないといけねぇ。マリアに抱かれたから上書きしなきゃいけねぇんだ!」

 

 あたしは〈灼爛殲鬼(カマエル)〉を顕現させた。しかしオッサンは退こうとしない。まるであたしが怖くないみたいだ。

 

「オッサンも知ってるだろう? この力がどれほどヤバい代物か。だからあたしに振らせるなよ?」

 

「そうだな。翼やマリア君……あるいはセレナ君なら脅威だっただろうな。しかしクリス君だけは例外だ。君では扱える力に限界があるだろう?」

 

 ……悔しいが事実だ。先輩やセレナ達と違いあたしの扱える〈灼爛殲鬼(カマエル)〉の能力は〈砲〉だけだ。銃火器の心得があるあたしだが、近接はあまり得意じゃねぇ。〈灼爛殲鬼(カマエル)〉だけなら……な。

 

「少しあたし様を舐めすぎだぜオッサン! いくぞ!」

 

 あたしはCR-ユニットを起動させて隨意領域(テリトリー)の生成を始めた。いくらあたしが近接が苦手でも克服する努力は怠らねぇ。手にしたブレイドを持ってオッサンに斬りかかった。

 

「たりゃああぁ!」

 

「ほぉ……俺達の知らないところでも訓練は続けていたという訳か……ならばこちらもそれなりに行くぞぉ!」

 

 オッサンはあたしの隨意領域(テリトリー)内ですら規格外の速さで動き回り的を絞らせなかった。そしてあたしの背後に回り込んで来た。

 

「ッ! クソが! 喰らえやオッサン!」

 

 あたしは近づくオッサンに〈砲〉を放った。しかしオッサンはあっさりと防いでしまいやがった。

 

「……ふむ。震脚と発勁を同時に使わされたな。随分と腕を上げたじゃないかクリス君」

 

「嘘だろ……〈灼爛殲鬼(カマエル)〉の〈砲〉を隨意領域(テリトリー)の内部で放ったんだぞ……なんで防げるんだよ……」

 

 あたしは我武者羅に炎を振りまいた。しかしそんな事ではオッサンは止まる訳がなかった。それに気付かないあたしじゃないが、こうする以外の事が考えられなくなっていた。

 

「どうやら全力を出し切ったみたいだな。ならば俺の一撃もくれてやろう!」

 

ボギィ!!! ……メキメキ……ピシッ……

 

 オッサンは光速とも思える速さであたしの懐まで潜り込んで来て発勁を放った。今朝の食事の中身が吐き出せる程の強力な一撃はあたしの骨をあっさりと砕いた。

 

《「あ……あああがぁァァァァァァァァァ!!!!」

 

 折れた骨が内蔵に刺さり激痛が走る。そしてその痛みであたしは動けなくなってしまった。

 

「済まないなクリス君。少々手荒くなってしまったが、俺には君を止める義務がある。それに甘さはあの世界において来た。君であろうと翼であろうと、俺は止める為ならば全力を放つさ。俺も親父殿との戦いで学んだからな……」

 

 オッサンが本気であたしを倒しに来るとは思っていなかった。必ず手加減する……そう心の何処かで思っていた。

 

「痛え……〈灼爛殲鬼(カマエル)〉の治癒が終わるまで動けそうにねぇ……」

 

「だろうな。確実に君の動きを止める為に骨を折った。恨んでくれて構わないと言っただろう?」

 

 あたしは……精霊になってもオッサンには勝てないのか……

 

「それともう1つ伝えるぞクリス君。次に修君が封印する精霊は君だ。まあ……もう彼の身柄は抑えてある。彼を連れ出すのは不可能だと思ってもらっても構わないぞ?」

 

 修が……いや、勇が連れ出せない……か。じゃああたしが逃げたら先輩やセレナに勇が取られてしまうかもしれないのか……。やられたなぁ……

 

「まいったよ……あたしの負けだ。ひとまずはオッサン達の監視下に戻るか……辛えなぁ……」

 

 あたしの呟きは虚しく霞んでいった。

 

〜〜クリスsideout〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜修side〜〜

 

 夢を見ていた。僕が翼や姉さん達と共に体が〈ナニカ〉に覆われた敵と戦う夢を。

 

 僕の隣には未来がいた。今と変わらない姿だった。そして未来の隣には常に✻✻✻がいた。今は姿も声も思い出せない。ただ……セレナはそこにはいなかった。

 

 僕には翼達より前に出会っている人物がいた。その人物とはとても大切な約束をしていた。だけど僕は姉さんを救う為にその人物の元から離れたみたいだ。名前は確か……※※※だ。僕の大切な人の名前……僕の初恋……

 

 彼女は僕を待つと言っていた。再会の約束をしたんだ。

 

 僕は姉さん達と肩を並べて強大な敵と戦った。そして未来達の事を守れていた。

 

 僕が顔を見ていた筈なのに思い出せない人物が3人はいる。そしてセレナとの関わりが思い出せない。ならば後何人かはいるはずだ。僕に関する重要な〈ナニカ〉を知ってる人物が……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは……?」

 

「気がつきましたか? ここはフラクシナスの医務室ですわ。だん……修さんはあの戦いの際にマリアによって校舎内に投げ込まれ、頭を打ち気絶しました。医務官が診察をしたので処置は終了していますわ」

 

 風見さんが僕の眠る部屋の椅子で待機していたのか、意識を取り戻した直後に声をかけてきた。

 

「教えてください風見さん。あの後はどうなりましたか?」

 

「では……簡潔に説明いたしますわ……」

 

 風見さんは僕にあの後の状況を説明した。

 

「マリアは退散……翼とセレナは無事に回収済み。ここまでは良かったな……」

 

「えぇ。未来と明美はASTが回収に来ました。まあ……彼女達はこちらの人間ではありませんので妥当な事かと……」

 

 そこまでは理解できた。しかし……

 

「風見さん……姉さんはやっぱり……」

 

「えぇ。〈灼爛殲鬼(カマエル)〉の力を扱う精霊ですわ。もちろん修さんが次に封印するべき精霊です」

 

 見間違いじゃないって事か。

 

「まあ……クリスはマリアと違い、修さんとの離別を拒むでしょう。なのでここにいればいずれ来るでしょう。それまでは傷を癒やしてください」

 

 そして風見さんは、姉さんが司令さんに拘束された事を教えてくれた。精霊と渡りあえる人間って何者なんだろう? 

 

「世間では彼等のような人の皮を被った人外を、

 〈OTONA〉……と呼びますわ」

 

 大人……ねぇ。

 

「いいえ。〈大人〉ではなく〈OTONA〉です。規格外、分類不能等と言えますわ」

 

 僕は風見さんが何を言っているのか理解は出来ないが、姉さんに会う事を決めた。大事な何かを知ってる筈だから……




〈OTONA〉は偉大……コレは不滅の真理である。

次回〈僕が会うべき人物〉

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僕が会うべき人物

炎の精霊の正体を知った修……しかし当人の答えは……


「姉さん……なんで僕に隠し事を……。それも自分が精霊だったなんて……」

 

 僕は風見さんからの報告を聞いて事の顛末を知った。そして同時に姉さんの力も封印しなければならない事を。

 

「僕の身の回りで起きている出来事を知らないといけない。その為にも姉さんに会わないと……」

 

 僕は姉さんに会う為にフラクシナスを歩き回った。しまったな……風見さんに部屋を聞き忘れていたよ。

 

修さん! 目を覚ましたんですね! 心配していました! 

 

 廊下を徘徊していると、セレナが僕に抱きついて来た。彼女もあの戦いで傷を負った以上は安静にしないといけない筈なんだけど……。

 

「大丈夫ですよ? 姉さんは甘い性格をしていますから、全員急所は外れています。そうなれば後は顕現装置(リアライザ)で治療ができます。なので私達はもう大丈夫です!」

 

 良かった。僕は胸のつっかえが1つ取れた。だったら早く行かないと……そう思った時()()()()()()()()()()()

 

「え? なんで凍っているの?」

 

「私が凍らせました。修さんがクリスさんのところに行くということは、私を捨てるつもりですね? だからダメです。絶対に逃しませんよ?」

 

 嘘だろ……なんでまたこんな目に……

 

「でもそうですね……キスをしてくれたら許してあげますよ? どうしますか?」

 

 僕はセレナに向き直る。そして1つ問いかけた。

 

「ならセレナはこの後何が起こっても受け入れるんだね?」

 

 僕はセレナを壁まで押した。そしてセレナの顎を少し上げさせた。

 

はわわわわわわわ! 修さん……そんな大胆な……」

 

 僕がそのままキスをしてあげると、セレナは気絶していた。

 

『廊下でセレナが倒れているので回収をお願いします』

 

 僕はそのメッセージをオペレーター宛に送った。余談だがセレナの顔は恍惚としていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で……あたし様以外にもキスをする優しい王子様は何の用だ? あたし様の事か? マリアの事か? フラクシナスの事か?」

 

「う〜ん……姉さんだけの事……とは少し違うけど、姉さんと僕、それに翼と未来……後は〈誰か〉が側にいた記憶があるけどさ、姉さんは何が知らない?」

 

 こういう時はストレートに聞くべきだと直感が告げていた。

 

「なるほどな。極一部……〈ルナアタック〉の頃あたりの記憶か? それなら今の発言も合点がいくな……」

 

 姉さんは何かを呟いたけど僕には聴こえなかった。

 

「あぁ……多分それは霊力にこもった前任者達の記憶だろうな……あたしにもわからねぇ事があるからなんとも言えないけど……」

 

 そっか。姉さんもわからないのか……

 

「姉さん……僕とデートしよう?」

 

はわわわわわわわ! 修とあたしがデートだと!? 脅かすなよ! そんな冗談やめろぉ! 

 

 姉さんめっちゃ動揺してるじゃん……。僕は言葉を続ける事にした。

 

「姉さんが精霊で、僕が封印できる力がある。それなら僕は姉さんの力を封印するよ? それが弟の役割だとも思うからさ?」

 

「修……ばーか……。2年はえーよ……」

 

 多分来禅を卒業したら姉さんに喰われるんだろうなぁ……。

 

「あぁそれと、デートの場所は栄部のオーシャンパークで良いよね? 平原からチケットを貰ってたんだよ。本当はマリアを誘うつもりだったけど忘れてたのも僕だし、チケットの期日が明後日までなんだ。それまでに水着の調達は済ませるから行かない?」

 

「………………………………行く。絶対水着着るから……………………」

 

 姉さんは俯きながらも了承してくれた。なんだかんだで誘うのは成功かな。

 

 

「じゃあ明日ね? 楽しいデートにしよう!」

 

 僕は部屋を後にした。そしてもう1箇所行かないといけないところが僕にはあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜礼音side〜〜

 

 辺りに人がいないのを確認してオレは明美に声をかけた。

 

「明美……いや、エルフナイン……起きているだろう?」

 

「起きてますよ。貴女はラタトスクの礼音さん……ではなく、キャロルですよね?」

 

 やはりエルフナインは知っていたか。ならば話は早そうだな。

 

「手間をかけてすまないな。だがこれでハッキリしたぞ。この世界でシェム・ハが転生させた人物は3人だ。それもオレ達がよく知る……な」

 

「ボク達がよく知る3人……ですか。それはあの世界での話ですか? それともキャロル達が渡った異世界も含めた世界ですか?」  

 

「前者だ。〈Dr.ウェル〉〈アダム・ヴァイスハウプト〉〈風鳴 訃堂〉その3人だ。これはオレ達が立ち上げた組織である〈ラタトスク〉がこの世界に存在する主要人物の中で、特に異質な者達を調べた結果だ。まあ……お前が潜り込んだ〈DEMインダストリー〉の内部または外部協力者として秘密裏に名前が上がっているだろう?」

 

「そうですね。〈魔術師〉の性能を1段向上させたのはDr.ウェルでした。まさかとは思っていましたが本人とは……」

 

「奴は勇に恨みを持っているからな。機会を見て下すとしよう。その為にはエルフナイン……お前の協力が今後も必要になる。危険を伴うが頼めないか?」

 

 正直エルフナインをこれ以上危険に巻き込む理由はない。荒事にはノエルを使えば良い「あまりにも扱いが酷いですよ姉様。そっちがそのつもりならば僕は仕事をサボりますよ?」……気の所為か。ノエルは働かせておかねば怠惰を貪り食う阿呆だからな。奴は過労させるくらいがちょうど良い。勇とオレを使って愉悦に浸れるからな。奴の性根が治れば待遇の改善は約束できるものを……

 

「そういえばキャロル……ノエルはどうしたのですか? 姿が見えませんが……」

 

「アイツはフラクシナスのAIに組み込んだ。放っておけば仕事をサボるからな。システム対応とバージョンアップを常に命じてある。フラクシナスが落ちれば奴も無事ではすまないからな……」

 

「なるほど……ではボクは引き続きDEMの内部で活動を続けます。いずれ動くエレンやアイザックの動きに対応しないといけないですから」

 

 頼もしい妹だな。まったく……嬉しい事を言ってくれる…………

 

「じゃあ勇達が修学旅行に行くまで頼むぞ? そこからはラタトスクに合流して欲しい。その時には面倒な奴等が出て来るだろうからな」

 

「わかっています。ボク達は勇さんが幸せに……そして力を取り戻す為なら何でもやります。芝居の1つ2つ任せてください!」

 

「ありがとうエルフナイン。だがしばらくは明美と呼ばせて貰うぞ? 次にお前の事をエルフナインと呼ぶのは……」

 

「キャロルが……いえ、勇さんとキャロルが力を取り戻した時ですね?」

 

「そうだ。頼むぞ明美?」

 

「任せてください礼音さん!」

 

 そうしてオレは明美の病室を後にした。やはり明美は気づいていたな。

 

 

〜〜礼音sideout〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜修side〜〜

 

 僕はあの後翼の様子を見るついでに買い物に誘う事にした。すると翼は2つ返事で了承してくれた。

 

「じゃあ翼……買い物に行こうか」

 

「えぇ。同行するのは本当に私1人で良いの?」

 

「うん。姉さんの水着を買うつもりだけどレジに並ぶ勇気は無いからさ。本当はセレナも連れて行きたかったけど気絶してるから……」

 

 翼は僕の背後から抱きしめて来た。

 

「嬉しいわ! 私1人で修を独占できるのだもの!」

 

 ……僕の腕を切り落とした事には触れないでおこう。この無邪気な笑顔だけは眩しすぎるから。

 

「修! 私この間買った水着を着ても良いわよね? 私……修をもっと感じたいわ!」

 

「明日行くオーシャンパークならね。もちろん僕と姉さんがデートをするのが本命だよ? 翼をないがしろにしたい訳じゃあ無いけど、姉さんの場合は命に関わるんだ。だからごめんね……翼とセレナには悪いと思っているけど……」

 

 僕の右腕から鈍い痛みが走り、よく見ると刃で斬りつけられていた。傷自体は浅いが、流れる血を見ると翼は僕の傷口を舐めて来た。

 

「ごめんなさい。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 翼は言葉とは裏腹に笑顔で僕の傷口を舐める。まるでマーキングと言わんばかりだ。

 

「修の1番は私よね? セレナでもクリスでもなく私よね? だって1番最初に救ってくれたのは私だものね?」

 

 翼の瞳には光が映っていなかった。なんでこんなに怖いの? これが本来の精霊の姿なの? 

 

「失礼ね。私が修を愛しく思っているだけよ。修を傷つけて良いのは私だけ。修に傷つけてもらうのも私だけ。()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ただひたすらに翼が怖く感じた。僕はそんな翼を連れて水着の調達になんとか成功した。

 

「とりあえず準備はできたな。……姉さんが当たり前のように僕の前で下着姿で過ごす事が多かったから、なんとなく水着のサイズがわかっていたのは大きかったな……」

 

 姉さんの水着を持ってレジに並ぶ翼は凄い表情をしていたけど、店員さんには申し訳無いな。うちの(精霊)が申し訳ありません。

 

〜〜修sideout〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜未来side〜〜

 

「燎子隊長……これがDEMから届いた新兵器の……」

 

「えぇ……DW-029・討滅兵装〈ホワイト・リコリス〉よ。DEMでも使用者を廃人に追い込む程の反動を見せる程凶悪な力を持つ代物と言われているわね。今回はナイトメアに続いてイフリートも現れたから使用許可も当然といえば当然だけど……誰が使うって言うのよ……」

 

 折紙さんの嘗て使った顕現装置(リアライザ)だ。反動は凄まじく、折紙さん自身もかなりの性能と活動限界の速さに苦悩した……。でも嘗てシンフォギアを纏った私なら使いこなせる……そんな確信が何故かあり、私はこの顕現装置を待っていた。

 

「隊長……私が使っても良いですか? 今回出現したイフリートの潜伏先に心当たりがあります。杞憂である事まで考えると報告するか迷いましたが……」

 

折紙の在任期間もそうだったけど、その手の勘は信じる価値があるわね……良いわよ。ただし起動したら本部への連絡が自動的に入るように設定してもらうわ。異論はあるかしら?」

 

「ありません。ありがとうございます隊長!」

 

 ようやく手に入れたよ……このリコリスを扱えるようになればあの力……〈絶滅天使〉のコントロールも可能になるし、併用ができるようになれば私は誰にも……※※※にも負けない! 今度こそ必ず勇君を振り向かせるんだから! 

 

「その為にも踏み台になって貰いますよクリス義姉さん?」

 

〜〜未来sideout〜〜

 

 




2度目の失敗はない……未来は覚悟を決めた。

次回〈オーシャンパークで姉さんとデート〉

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オーシャンパークで姉さんとデート

精霊を封印する者として……そして1人の……姉を心配する弟としてデートを申し込む。その希望は果たして……


 6月11日……僕が姉さんとのデートを決行する日だ。

 

「じゃ姉さん……行こうか? 今日は姉弟水入らずでデートをしよう!」

 

……邪魔者達がいないならな……あたしだって恥ずかしい時はあるんだよ……

 

 姉さんは顔を赤らめていたけど、僕は構わずに姉さんの手を引いた。

 

「それじゃあ行こうよ! それが僕達の戦争(デート)なんだからさ!」

 

「ハッ! そんな歯の浮くような台詞を良くも言えたもんだ! 少し前まであたし様に押し倒されそうになって士道先輩に泣きついた癖によぉ!」

 

 確かに僕は姉さんや翼……そしてセレナとの距離感に戸惑いを隠せない。しかしそれは僕自身が何か大事な事を忘れているからだ。それがわかれば本当は姉さん達と〈そういう事〉だってしたいよ。だけど僕は今は迷っている。だから答えを出すには早すぎるんだよ。

 

「逆に姉さんは僕にそこまで執着する理由が知りたいね! 僕と姉さんはいわば幼馴染の関係だ。だからこそ僕はそれが特有の距離感だとも思っていた。だけど最近になって気づいたよ。姉さんの目は()()()()()()()()だ。それは明らかに僕を男性として見ているって事だよね? だけど僕には心当たりが無い。言っておくけど僕はそれを知らないままに姉さんに返事をするつもりは無いよ?」

 

「おーおー生意気な事を言うようになったな修……。だけど心配はいらねぇよ。あたし様をデートでデレさせたら教えてやる。そうすりゃ霊力の封印もできるし、一石二鳥だろう?」

 

 流石〈フラクシナスの艦長〉を任されてる姉さんだ。建前や立場をフルに使って自分が良い思いをしながら義務や仕事を果たそうとするなんて役得ポジションだよねえぇ……

 

「さて……少し時間を無駄にした気もするけどデートを楽しもうよ? 僕だってこんなに美人な姉さんとデートをする事自体はドキドキするからさ?」

 

「あたしはいつでも愛しい修を押し倒してしまいたいぐらいドキドキしてるよ。だって修の事を手放すなんて世界を捨てるようなモノだからな?」

 

 愛が重すぎる気がするなぁ……やっぱり最近の私物の紛失や宝物の本が姉弟モノに変わっているのは姉さんの仕業だな? 

 

「姉さん……僕の質問に答えて欲しい。僕の事は大好き?」

 

「うぅ……そりゃ……まぁ……狂おしい程に大好きだけど……

 

 最後の方は聞き取れなかったけど、僕の事を意識してくれる事はわかった。だから僕は全力で姉さんをデレさせる事ができる。

 

「じゃあプールに着いたら泳ごうよ! 僕も久しぶりに外で水着を使うからさ!」  

 

「そしてあたしはその使用済の水着を後で貰うぜ? 安心しなよ。同じ種類の水着は取り揃えた。修が困る事はないぜ?」

 

 ……いや、僕の水着で一体何をするつもりなんだよ? ……平原に聞いたらわかるのかな? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……見つけたわよ? やっぱりオーシャンパークにいたのね? そしてクリスの事を封印するつもり……か。あぁ……手遅れなのかしら?」

 

「許せません許せません許せません許せません許せません許せません許せません許せません許せません許せません許せません許せません許せません許せません許せません許せません許せません私は修さんが大好きです。心から愛しています。なのに何故私の心は満たされ無いのですか? 私は何か悪い事をしたんですか? 人を愛した事が罪なのですか? それとも胸ざ無いのが罪なのですか? この小さな身長がダメなのですか? 教えてください。私は何故こんなにも心が締め付けられているのはでしょう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少し離れた場所から僕達を見ているかのような気配を感じた。しかし確信も得られなかったから気にしないように頑張った。

 

「……やっぱり視線を感じるなぁ……胸が大きいからなのか?」

 

 僕は姉さんが何故人の視線を集めるか心当たりはあった。しかし確信はないから言える訳もなかった。

 

「……姉さんの場合は顔立ちも綺麗だと思うよ? それにその赤い水着は姉さんのボディを引き立たせているからね。僕は1人の男子として姉さんの水着姿は綺麗だと思う。だから自信を持ってよ姉さん! それに普段は男勝りな言動をしているのに、相手に主導権が渡った瞬間から動揺するそのギャップには正直萌える。それが姉さんらしいとも言えるからね?」

 

 僕はひたすら姉さんを褒めまくった。すると効果てきめんと言わんばかりに水着姿の姉さんは耳まで真っ赤にして体を震わせていた。僕は姉さんのこの姿が好きなんだよね。女性扱いされて慌てる姉さんが可愛く見えるから。

 

「……もぅやめてくれぇ……。これ以上はあたし様がもたねぇよぉ……恥ずかしくて倒れてしまいそうだ……」

 

 僕はありのままの気持ちを姉さんに伝えた。霊力の封印には好感度が高い事が条件らしいけど、僕の勘が正しければ姉さんは間違いなく僕にこ好意を寄せている。……というよりは、そうじゃ無いなら僕の自意識過剰で恥ずかしくて仕方無いけど……。

 

「あうぅぅ……泳いで来るから!」

 

 姉さんはとうとう耐えきれずにプールに飛び込んだ。しかし急に飛び込んだこともあり、気づけば明日をつってしまったのか溺れていた! 

 

「うぐぅぅ……助けてくれぇ……修……助けて……

 

 最後には消え入りそうな声で助けを求める姉さんに僕は夢中で救出していた。どうやら準備体操をせずにプールに入り体が思うように動かなくなり、溺れてしまったようだ。しかし不幸中の幸いそこまで水を飲んだ訳ではなかったので、なんとか助かった。

 

「ごめんな修……姉ちゃん久しぶりに修とデートできて嬉しかったんだ……初めて修があたしの水着を選んでくれて、久しぶりに2人でプールに来る事ができた。パパとママが昔は連れて行ってくれたけど……当時よりも……修が大きく見えるよ……。本当にあたし達は変わってしまったんだな……」

 

 姉さんは僕達が本当にまだ小さい……7年ぐらい前の記憶を語っていた。僕はあの頃姉さんがお嫁さんになる事を照れながらも否定はしなかった。それは子供だからとも取れるし、姉さんと僕の距離感が近いからだとも言えた。……しかし今はその関係で良いのか僕自身も悩んでいる。

 

「僕だってこの関係について考えて行かないといけないんだな……それに翼やセレナとの事も……「呼んだかしら修?」「呼びましたか修さん?」ぇ……?」

 

「私達もここに来てみたのよ? 未来の家族になる旦那様のデートだもの。……それに私の姉になる人物の弱みは握っておかないと小姑となった時にうるさい人物ならかなわないわ?」

 

「本当は修さんのデートを見守りたかったです。しかしあまりにも甘い雰囲気になったのでクリスさんに牽制をしないといけないなぁ……と思いましてね?」

 

「なんで2人がここに……一応僕と姉さんのデートなんだよなぁ……」

 

 本当に予想外の遭遇だった。それは姉さんも同じなようで少し体が震えた後に怒髪天で2人に怒鳴り出した。

 

「てめぇら……ガタガタ勝手な事を抜かしてんじゃねぇ! 誰がてめぇらに修をくれてやると言ったあぁ! とっととあたし様の前から消えろぉ! 

 

「あらあら……私は本気なのよ?」

 

「まったく……弟離れを拗らせると婚期を逃しますよ?」

 

 2人は尚も姉さんを挑発するが、姉さんも負けじと食い下がり2人に吠えた。

 

余計なお世話だっつてんだよ! それにあたし様の結婚相手は修だ! 絶対にてめぇらみてぇな貧相な小娘共には愛しい修はやらねぇよ! 

 

「あらあら……随分ご乱心ね……怖くて仕方無いわ?」

 

「修さん……私あの人が怖いです……助けてくださいますか?」

 

 セレナと翼が僕の背後に陣取り、姉さんと睨みあった。気の所為か2人はほくそ笑んでるように思ったのは僕だけかな……

 

「ごめん2人共……今日だけは勘弁してもらえるかな? 姉さんの命に関わる事なんだ。2人には悪いと思っているけど……本当にごめん……」

 

 僕は歯切れの悪い言葉しか2人に投げかける事ができなかった。しかし2人は僕の言葉に耳を傾けてくれた。

 

「セレナ……ここまでにしましょう? これ以上は修に迷惑をかけてしまうわよ? 私達は修に愛されたいけど、嫌われてしまら生きていけないわよ?」

 

「そうですね……これ以上やっても意味がありませんね。では修さん……次の機会でその心を私に砕いてもらいますよ?」

 

「保障しかねるけどありがとうね。おかげで姉さんの本心を聞くことができたから助かったよ」

 

「どういたしまして。だって私は修の妻だもの」

 

「はい! 夫を支えるのは私の役目ですから!」

 

 2人共何言ってんだろう? 僕は条件付きで了承した筈なんだけど……

 

「てめぇら……さっさとあたし様の前から消えろおぉ!! そして2度と修を誑かすなあぁ!! 

 

 姉さんの怒声が再び響き渡った。

 

「あれ? 私も修君のお嫁さんなんだよ? 邪魔な小姑はいらないし、精霊は殺さないといけないんだよクリス義姉さん?」

 

「え……この声は……」

 

 僕は自分の耳を疑った。そして声の主を確認しようとすると僕達全員をターゲットにしたようにミサイルが降り注いで来た。

 

「大丈夫だよ修君……修君は死なないし、もし足が吹き飛んだら私が一生支えてあげるからね?」

 

 僕が声の主を確認する為に上空を見ると、今までにない程の大量の装備を展開して僕達を……精霊と言われる3人を殺害しようとする〈小日向 未来〉がそこにいた。

 

「なんでこんな事をするんだよ……未来……」

 

…………僕の呟きは未来には届かなかった。




クリスの本心を聞き出すことには成功した。しかしそこに未来が現れて……

次回〈未来の覚悟と精霊達の想い〉

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未来の覚悟と精霊達の想い

精霊の力……魔術師の力……ぶつかりあってその先に……


 未来は僕達の前に現れた際に、見た事も無い装備を携えてやって来た。

 

「皆がいけないんだよ? 私はね……この世界をずっと……ずうっと守り続けてたんだよ? 修君が安心して過ごせるようにね? でも皆精霊になっちゃうんだもの……なら排除しないといけないよね? だって私はASTだからね?」

 

 未来は凶気に取り憑かれたかのように淡々と語り続けた。しかしここで姉さんが噛み付いて来た。

 

「そりゃ筋が通らねぇな未来? お前も人の事を言える立場じゃあ無い筈だぜ? なんたってお前は……って危ねえな。当たったらどうするつもりなんだ?」

 

 姉さんが言葉を続けることはなかった。続けようとした時に未来が射撃して来たからだ。

 

「大丈夫だよ義姉さん。あの力は今は私の手元には無いの。信頼できる人が預かってくれてるからね」

 

 未来の人間関係を詳しく知らない僕にはわからない話だが、未来はあくまでも姉さん達を殺したいみたいだ。

 

やめろ未来! これ以上やるなら僕は未来を許さないぞ! そもそも翼やセレナ……そして姉さんは元々人間なんだよ! 何か事情があってこんな恐ろしい力を手にしただけなんだよ! その原因を取り除けば良いだけじゃないか! 

 

 未来はそれを聞くとあくまでも理解はしている様子だった。しかし僕には思いもよらない言葉が返ってきた。

 

()()()()()()()()()()()()()() ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()() ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 未来は今なんて言ったんだ? ()()()()()()()() ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「姉さん……未来の言葉は本当なの? 本当にそんな方法があるの?」

 

「まさか義姉さんは修君に()()()()()()()()()()()() ()()()()()()()()()()() ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 姉さんは言いたくなさそうに言葉を告げた。

 

「確かに精霊の力を取り除く合理的な方法は()()。だけどそれは修が望む事か? そうじゃねぇだろう? それに翼やセレナのやり方で()()()()も出て来る可能性は充分高いだろうが。まぁ……あのバカはそうじゃねぇみたいだがな……」

 

「そうですね。彼女は間違いなく違うやり方ですね。でも他の人達……特に※※※が見つかっていないんですよ? 彼女はどうでしょう?」

 

「それもありえないな。※※※が翼達みたいなやり方をする訳ねぇだろう? 世界が分解されてもありえない仮定だな。わかったら銃火器を下ろしてその物騒な装備を手放すんだな。そうしたら見逃してやるぜ?」

 

 僕は姉さんと未来の話についていけなかった。どうしてもある人物と思われる単語が聞き取れ無いのだ。

 

「じゃあ意見交換は終わりですね。遺言は充分聞いたので共死んで」

 

 未来はそう言うと躊躇う事なく砲撃とミサイルをぶっ放して来た。そして姉さんも対抗するかの様に礼装を纏った。

 

来いよ〈灼爛殲鬼(カマエル)〉! あの泥棒猫をぶちのめすぞ! 

 

「姉さん! 未来! 2人共やめてくれよ!」

 

 僕は2人を止めようとしたが、飛び交う砲撃や炎に近づけない。これが敵意を表に出して暴れる精霊と、その精霊に対抗する為に用意された兵器を使う魔術師(ウィザード)の戦いなのか…………。

 

「僕はどうするべきなんだ……2人を止めるには……姉さんにも……未来にも……戦って欲しく無いのに……」

 

 僕は何も出来ない……ただ状況を見ているだけの自分に腹がたった。何か……何かないのか? この状況を打開できる何かを見つけられないのか? 

 

「修……私達が2人を止めるわ……少なくとも修が介入するよりは確実だもの……」

 

「修さんの悲しむ顔は見たくありません。だから私達が2人を止めます。例え致命傷を負ってしまうかもしれないけど……それでも私達は修さんに生きていて欲しいです。私達は修さんに救われたのですから……」

 

「翼……セレナ……やめてくれよ……。2人まで危険な目にあう必要は……」

 

 僕は2人を止めたかった。しかし2人の意思は変わらなかった。

 

「翼さん……今日は休戦です。修さんを泣かせる2人を止めます。手を貸してくださいますか?」

 

「言いたい放題ねセレナ……でも意見には賛成よ? 私だってこんな形で修に傷つけて欲しい訳では無いわ。修を傷つけて良いのは私だけよ? 他の誰にも修の隣は渡さない渡さないわ。例え貴女でも同じよセレナ?」

 

「構いませんよ? 行きましょう〈氷結傀儡〉(ザドキエル)……こんな戦いは早く終わらせます」

 

「行くわよ〈鏖殺公〉(サンダルフォン)……こんな状況では修が落ち着け無いわ……」

 

 2人は自分に宿る天使を顕現()()()()()()()()()()()()()()

 

「何故? 何故なのよ〈鏖殺公〉(サンダルフォン)! このままじゃあ……修を救え無いじゃない……

 

「どうしてですか〈氷結傀儡〉(ザドキエル)……こんな出力では2人を止められません……私はどうすれば……」

 

 2人は僕の変わりに姉さん達を止めようと天使の顕現を試みたが、現れない天使に困惑していた。しかし変わりに2()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「蒼色の輝き……そうなのね……。私にはやっぱりこの力が1番合うって事なのね……」

 

「この白い輝き……懐かしいです。これはあの時に私が失った筈の力ですから……」

 

 2人は状況を理解したかのような表情をしていた。そしてそれぞれが詠を口ずさんだ。

 

「Imyuteus amenohabakiri tron〜♪」

 

「Seilien coffin airget lamh tron〜♪」

 

 2人の詠は僕がよく知る詠だった。しかしそれだけに僕の動揺も止まらない。なぜなら2人の姿が礼装とは違う姿をしていたからだ。

 

「その詠は……僕の胸の内から……」

 

「えぇ……これは聖詠と呼ばれるわ。そして私達の体を覆うのはシンフォギアよ」

 

「詠を力に変えるロストテクノロジーです。そしてその力は私達の使用を最後に世界から姿を消しました」

 

 僕の胸に時折流れる詠はロストテクノロジーの銃爪? そんな力が一体何故僕に? 

 

「その詳細を語るのは今ではないわ。行くわよ〈天羽々斬〉……私達で雪音達を止めるわよ?」

 

「修さんの悲しみを止める為に力を貸して〈アガートラーム〉……今は私達しかいないの……」

 

 2人は未来と姉さんを止める為に戦闘地点へと飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜クリスside〜〜

 

 〈ホワイト・リコリス〉を装備した未来の強さは想像を遥かに超えていた。〈灼爛殲鬼〉の力を以てしても火力負けしそうなレベルとはな……

 

「随分大層な力を引っ張るな未来……そんなにあたし様が憎いか? ならなんでてめぇは天使を隠してる……? それが解せねぇだろう?」

 

「今修君に天使が渡れば彼女……※※※の力もまた取り戻されますよ? 私はそれが嫌ですから。だから封印して来たんですよ? 短気な義姉さんと違って……ね?」

 

 安い挑発だ。だけど未来が力を封印してるのもまた本当だろうな。

 

「そうかよ……ならてめぇをぶちのめして力の隠してる場所を吐かせてやるよ! 

 

「貴女達の関係性は世界を超えたも相変わらずね? 私がどれほど苦労したと思っているのかしら?」

 

「これ以上修さんの事を泣かせるなら貴女達を倒します。覚悟は良いですね?」

 

 あたしは動揺した。翼達が纏ったのはあたし達のよく知る力……〈シンフォギア〉だからだ。

 

「ハッ! 取り戻したとはいえギアの形状はルナアタックの頃じゃねぇか! ハッタリが過ぎるぜ翼ァ!」

 

「セレナちゃんのギアに至っては借り物だよね? そんなギアじゃあリコリスは倒せないよ?」

 

 あたしと未来はターゲットを変更した。しかし奴等は動揺していなかった。

 

「セレナ……貴女の絶唱の力が勇の記憶通りなら任せるわよ?」

 

「えぇ……大丈夫ですよ。だから翼さんもアレを確実に決めてくださいね?」

 

「任せなさい……今は私の方が年上だもの……」

 

 あたしと未来はそれぞれがターゲットに定めた奴等に八つ当たりを始めた。

 

〜〜クリスsideout〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜修side〜〜

 

 翼達が飛びたった後、不思議な詠が聴こえて来た。

 

「Gatrandis babel ziggurat edenal〜♪」

 

 何故かわからないが、引き込まれるような詠だった。

 

「Emustolronzen fine el baral zizzl〜♪」

 

 そしてその詠には何故か恐怖を感じていた。 

 

「Gatrandis babel ziggurat edenal〜♪」

 

 だけど同時に暖かさも感じた。

 

「Emustolronzen fine el zizzl〜♪」

 

 詠が終わると、そこには拘束された姉さんと未来が拘束されていて、2人の力は無力化されていた。

 

「修が託してくれたギアの形状は確かに初期の頃のデザインよ? でもね……私達は胸の詠を信じた……それだけの事なのよ?」

 

「修さん……今ならクリスさんの力を封印できます。アガートラームの絶唱はベクトルの変換です。今は一時的に私が負荷を肩代わりしているので早くお願いします」

 

「だけど安心してね。2人とも影縫で動きは封じてあるわ……すぐにクリスを封印してあげてね?」

 

「翼……セレナ……助けてくれてありがとうね。おかげで僕は姉さんを救えるよ?」

 

 僕は拘束された姉さんに向き直る。すると姉さんも顔を赤らめて僕の目を見た。まぁ……動けないのはあるけどね。

 

「あ〜あ……あたし様の天使もこれで封印か……本当に悔しいなぁ…………」

 

 僕は動けない姉さんの唇を奪った。

 

「んむぅ……」

 

 恍惚とした表情で姉さんの霊力は僕の体へと封印され、所持していた僕のペンダントが()()光った。

 

「僕のペンダントが……また光った? 母さんの託してくれたペンダントと同じ形の2人のペンダントはギアってのに変わるし、何が起こっているんだ?」 

 

とうとう〈灼爛殲鬼(カマエル)〉まで封印しちゃったか……でも私は諦めないよ? 絶対に彼女を……※※※をこの手で倒すまでは……

 

 未来の呟きに僕は気付けなかった。

 

「じゃあ姉さん……僕達は先に帰るよ? 今回の2人には苦労をかけたから労ってあげたいからね?」

 

 2人は凄い勢いで僕に抱きついて来た。

 

「嬉しいわ! 早く私達で愛しあいましょう! あぁ……家に帰るのが待ち遠しいわ!」

 

「言質取りましたよ! 早く行きましょう!」

 

てめぇらぁ! 修はあたし様のもんだぞおぉ!! 

 

 姉さんの叫びは虚しく木霊した。哀れだね姉さん。




姉の力を封印する事に成功した修に新たな危機が迫っていた……

次回〈それは…僕達にとって……〉

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断章 凜祢ユートピア
それは僕達にとって……


本日18時のこちらの更新はありません。代わりにR18の話が別枠で投稿されます。この続き……もとい休止前の最終回は25日18時より更新します。


〜〜士道side〜〜

 

 修達が〈灼爛殲鬼(カマエル)〉の力を封印したその10日後……6月21日に天宮市に異変が起きた。

 

「この気配は……〈凶禍楽園(エデン)〉か? でもなんでアイツが……凜祢がいるんだ……?」

 

 俺が状況の整理を始めようとすると、聞き慣れた声が聞こえ、ついでその主達が俺の元々に駆けつけた。

 

「士道! 無事か!?」

 

「お兄ちゃん無事!?」

 

「士道! 怪我はない?」

 

「士道さん……あうぅ……」

 

「ッ! 士道さん! 大丈夫でして!?」

 

「十香! 折紙! 四糸乃! 琴里! 狂三! お前達どうしてここに……」

 

「それは私達が呼んだからだよ? 今回は士道達に邪魔されるのは嫌だからね?」

 

 俺達を集めた人物が声を上げた。そして現れた人物に俺達は動揺が隠せなかった。

 

「お前は……凜祢か! 本物なのか!」

 

 凜祢は俺達の眼前に立つと俺を抱きしめた。そして耳元でこう告げて来た。

 

「士道達の知る〈園神 凜祢〉だよ? だけど今回の〈凶禍楽園(エデン)〉のターゲットは士道達じゃあないの。だから士道……今回の皆は何もしないで貰えないかな?」

 

 凜祢の目的はなんだ? 俺達による修達への防止? ひとまず状況を整理しないと……

 

「園神 凜祢……何が目的? 事と次第によっては私が相手になる。幸い()()()()()()()()()()()()だから貴女を倒す事自体には支障は無い……

 

 折紙は凜祢にそう告げると、〈絶滅天使(メタトロン)〉を顕現させた。これには流石の凜祢も冷や汗をかいている。

 

「う〜ん……私自身には戦闘するつもりはないんだけどなぁ……それに折紙さんの相手は骨が折れるからなぁ…………本当に戦闘したくないけど……」

 

 凜祢は俺達を前にして尚も戦闘態勢に入らない。何が目的だ? 

 

「本当に何が目的なんだ凜祢? 何をするつもりなんだ?」

 

 凜祢は俺の問いに答えてくれた。

 

「私の目的は彼……修君だよ? もちろん士道と会いたかったのは嘘じゃあないし、今でも士道の事は忘れてないよ? でもね……今は修君が欲しくて欲しくて狂しいほど大好きなの……ねぇ折紙さん……琴里さん……2人ならわかるんじゃない? 私のこの気持ちが……」

 

 琴里は凜祢の言葉を聞くと、すぐに返事を返した。

 

「あら凜祢……どういう心変わりかしら? 士道に魅力がなくなったと言う訳? おにーちゃんにそんな侮辱をされて許す私だと思っているのかしら?」

 

「士道から手を引いたのは素晴らしい。しかし解せない……彼が士道に勝るとは到底思えない」

 

 2人は俺の養護をすぐに始めた。しかし凜祢の返事もまた意外なモノだった。

 

「私ね……士道に救われた時に思っていたの……もし実体が持てたらな……って……でもね? その願いを叶えてくれたのが勇君だよ? そして私が勇君の世界にたどり着くまで彼はずっと待っててくれたの。だから私は今は彼が愛おしいの……それに彼はね……士道の生まれ変わりみたいな魅力があるの……」

 

「修が俺の生まれ変わり……な。まぁ確かに言われてみればそうだな。修はまるで俺を目指したかのような行動が多かった。恐らく無意識だろうけどな……それでも自分のできる事をやり続けた修は立派だよ。例え志半ばで倒れたとしてもな……」

 

「おにーちゃんがそこまで言うなら修は立派に成長できるわね。新生ラタトスクの協力者になって良かったわ」

 

「そういう事であれば仕方無い。しかし凜祢……! その道は困難を極める。何故なら私は未来に全てを叩きこんだ。愛おしい彼を奪う為にどうすれば良いかを……」

 

 だよなぁ……折紙なら絶対未来に叩きこんだだろうなぁ……

 

「なら凜祢は今は誰かを依り代にしてるのか? よくそんな事を許容した人間がいたな……」

 

「うん……勇君と関係を持って唯一あの世界では身を引いた人が1人いたの。その人は勇君の子供を成人するまで育てあげてからこの世界にいる私にコンタクトを取ったの……そしてその人物がこの世界の私の依り代になった時に、嘗て士道と過ごして更には異世界に渡ったこの〈私〉へと記憶が引き継がれたみたいなの」

 

 なるほどな。それなら修……いや、勇として生きた時代を知る人物な訳か。そして目的が合致した2人はギブアンドテイクの関係になった訳か。

 

「最後に教えて欲しい。俺達にはどうして欲しいんだ?」

 

「士道達は修君としての選択を私と見守って欲しいな。だって今では違うけど元カレを傷つけてしまうのは嫌だから……」

 

 まぁ……〈凶禍楽園(エデン)〉の中は時間がループするからな……。俺達の負担自体はほとんど無い訳か。

 

「まぁ……どちらかと言えば今回の〈凶禍楽園(エデン)〉では色欲に溺れると思うよ? だって彼女達は気づいているからね?」

 

「は? どういう意味かしら? まさかクリス達は時間がループするのを良いことに彼の貞操を奪うつもりなの? 呆れるわね……お預けが出来ないのかしら?」

 

 すると今まで大人しくしていた狂三が声を上げた。

 

「あらあら……琴里さんは酷い方ですわね。もし当時〈凶禍楽園(エデン)〉の時がループしている事を知ったならばます士道さんの事を押し倒したのは琴里さん……貴女ではありません事?」

 

「うっさいバーカ! 人のおにーちゃんを誑かしてるアンタを私はまだ認め無いわ! 絶対にこの〈凶禍楽園(エデン)〉で白黒つけてやるんだから!」

 

「奇しくも人間同士の私達ですからね? ここは士道さんの事をより満足させた方の勝ちと言うのはどうでしょうか?」

 

「あら? 良いじゃない。ならこう言うべきかしらね?」

 

 すると2人は声を合わせるかのように同じ言葉を告げた。

 

「「さあ……女の意地をかけた戦争(デート)を始めましょう? 」」

 

 頑張れよ修……俺も多分この世界では皆に貞操を奪われるけど……

 

〜〜士道sideout〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜修side〜〜

 

 天宮市が不思議な空間に包まれた。それに気づいたのは僕だけじゃなくて、翼・セレナ・姉さんも気づいたみたいだ。そして何よりマリアがいつの間にか僕の背後にいた。

 

「ふふっ久しぶりね皆……この世界が形成されてからすぐに飛んで来たわ。だってここでの出来事は全て夢で終わるもの……」

 

「どの面下げて来たマリア……修のハジメテはこの世界だろうと渡さねぇぜ?」

 

「ねぇマリア……せっかくだから白黒つけないかしら? 私は貴女を殺したいわよ?」

 

「残念ですが死んでくださいマリア姉さん……もう私達は仲の良かった姉妹ではありませんよ?」

 

「戻って来てすぐにこんな事になるなら精霊は全員排除しないといけないよね? 待っててね修君……すぐに静かになるから……」

 

 僕の周りでは何が起こっているんだ? 

 

「それはね……この空間が精霊達の嫉妬から作り出された空間だからだよ? まぁ……私も修君が欲しいけどね?」

 

 そう言って僕達の前に現れたのは、緩いウェーブの掛かったセミロングの薄い桃色の髪をした少女だった。

 

「私の名前は〈園神 凜祢〉だよ。修君の事が生まれた瞬間から大好きで、世界で1番愛してる女の子。世界を滅ぼしても君の事を手に入れたい精霊の1人だけどね?」

 

 新しい精霊か。僕がデートしてデレさせないといけない精霊なんだね。

 

「さあ皆……女性としてのプライドをかけた戦争(デート)を始めよう? 

 

 僕達の新しい戦争(デート)が幕を上げた。僕達はこれから新しい精霊に立ち向かう事になると同時に女性達の仁義なき戦いが幕を開けた。




〈凶禍楽園(エデン)〉で行われた内容については別枠で投稿します。

次回〈楽園と僕達の決意は……〉

更新をお待ちください。


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楽園と僕の決意は……

この話の更新を以て一時的にこちらの更新を止めます。楽しみにしていた方々には申し訳なく思います。更新に集中できるようになりましたら再開します!


 凜祢と名乗る人物から接触を受けた僕達は、一度情報の整理を行う事にした。

 

「皆も気づいているよね? 僕達は間違いなく1度は凜祢に殺された……だけど何故か僕達の死はリセットされている……」  

 

「そうだな……確かにあたし達は修を押し倒した後、突然現れた凜祢に不意打ちで殺された。油断していた事や修を押し倒せた幸福感に包まれた時なのはあるだろうな……だけど祖だけが原因とは思えねぇ……」

 

「遺憾ですがクリス義姉さんの意見には思うところがあります。明らかに私達を標的にしてるのにこの状況が作られてる。これは作為的な事としか思えませんよ?」

 

「修は私達を救ってくれたわ。だけど……彼女は最初から修に好意を寄せていたわ。女の勘が告げているの……」

 

「修さんの事は私は運命の王子様だと思っていますよ? でも何故でしょう……凜祢さんとは初対面な気がしないんですよねぇ……」

 

「それは同感ね。私達は恐らく過去に彼女と出会っているわ。だけど何処で出会っているかはわからないわね……」 

 

 僕達はそれぞれが凜祢に感じた事を話しあった。しかし皆これといって決定的な何かを見つける事はできなかった。

 

「でも凜祢はこの場所を〈楽園〉って言ってたな……なんで楽園って言ってたんだろう?」

 

「それは多分ここが現実では無いからじゃあないかしら? だってここで私達が欲望のままに行動しても現実では何も起こっていない……なら私達は思う存分に自分のヤりたい事ができたわ……」

 

「しかし同時に〈それ〉を果たした瞬間に私達のいの事は彼女に奪われました。まるでそれが誤りであるみたいですよね?」

 

「だけど皆は思わねえのか? 修と交わりたい……欲望のままに修を食べたいって……」

 

「確かに私達は修の事が好きで……愛していて……他の誰かに取られるくらいなら……修を自分の手で殺したいくらいに思っているわよ? 皆もそうでしょう?」

 

「まるで私達がやる事を知ってるみたいだよね……なんでそんなにはっきりわかるんだろう……?」

 

 僕達は今の会話でそれぞれが何か共通点がないかを必死に考えた。そしてもしかしたら……と言える凜祢の言葉を思い出した。

 

「ねぇ……確かに凜祢は言ったよね? この世界は精霊の嫉妬が作り出した空間だって……もしその嫉妬が、僕達じゃなくて……凜祢の嫉妬だったらどうだろう?」

 

 自分でもあまりにも突飛な事を言ったと思える。しかし僕だけは皆と違い何故か幾度も凜祢に殺された記憶があった。その理由がこの空間を解除する要因になり得るのではないかと思えた。

 

「じゃあなんで未来までここにいるんだよ。未来は精霊じゃあねぇだろう?」

 

 そう……未来はこの中で唯一精霊じゃあ無い。しかし何故か未来もこの時間がループする楽園に閉じ込められている。その共通点を探さないと……

 

「姉さん……ごめん……突飛な事を言った自覚はあるんだよ。でもね……未来が巻き込まれた理由はとても大事な気がするんだ……精霊を倒す筈の未来がなんで精霊に狙われるのかが……」

 

「修君……そこまで私の事を想ってくれてるんだね! 嬉しいよ修君!」

 

 未来は僕に抱きついて来た。そして僕に濃厚な……舌を入れたキスをして来た。

 

「……ぷはぁ……修君の唇は美味しいね! 私……何度でも求めてしまいそうだよ!」

 

「「「「未来! 良くも抜け駆けしたなぁ! 」」」」

 

 4人の心が1つになったなぁ……ん? 心が1つになった? 

 

「ねぇ皆? もしかしたらこの世界は……皆がどれだけ欲望を我慢できるかが大事なんじゃあないかな……? 僕はいずれも押し倒されたけど……皆は押し倒して来たし……」

 

 僕は思った事を正直に伝えた。すると皆は黙り込んで考え出した。

 

欲望……欲望か。確かに修のハジメテを奪った時にあたしはやられたな。ずっと我慢してきて……邪魔者達がいないのを確認してからあたしは修を襲った。それは修の望んだ形じゃあなかったな……

 

修は私の事を求めてくれた。でも……邪魔者達は確かにいたし、私自身もこんなやり方しかできなかった自分が悔しいところもあるわ……。でも襲った事実は変わらないわね……

 

修君が私達の前からいなくなると思うと胸が張り裂けそうになるね……だから私は修君が逃げられないように求めて来たけど……

 

私は修さんにまた救ってもらえて嬉しかったです……だからずっといっしょにいて欲しいと願いました。そしてその機会が訪れた今回は手段を選んでいられないと思いあんな事を……

 

修の為なら何でもできるわ……そして同時に修には私がいないといけないと強く想ってしまうの……その為には赤ちゃんがほしかったわ……でも修がそんなやり方で喜ぶかどうかって基本的な事がわからなくなるなんて……私はとても愚かだわ……

 

 皆が思い思いの言葉を口にしている。本人達は独白のつもりなんだろうけど……僕は偶然なのか……それとも彼女達がわざと聞かせたかはわからないが、とにかく彼女達の愛が……まさかクリス姉さんからの愛までここまで重いとは思っていなかった。

 

「皆は……なんでそこまで僕の言葉を……」

 

 僕は何故ここまで皆に求められるのかはわからない。だけど凜祢のやってくれた事で、皆が明らかに僕への強く確かな好意を寄せてくれること……そして手段を選びたくないことがとても良くわかった。

 

「ようやく皆気づいてくれたんだね?」

 

 僕達がそれぞれの答えを見つけた時に凜祢は現れた。

 

「修君はまだわからないだろうけど……私はね……修君に嘗て救われたの。だから今度は私が修君を救うよ? そしてもし良かったら私の愛も受け入れて欲しいな?」

 

 凜祢はそう僕に伝えるとキスをして来た。そして凜祢の僕に対する想いが流れ込んで来た。

 

「凜祢……君は一体……?」

 

「それは……まだ話せないかな? 修君が会わないといけない全員と出会って……そして力を取り戻す時に改めて語るよ? だから……それまでは少し待ってるからね?」  

 

 凜祢はそう告げると僕達の前から姿を消した。しかし何故だろう……凜祢とはまた会える……僕はそんな気がしてならなかった。




この話はR18回のバッドエンドの後の時系列となりますので、そちらを読んでいただければ幸いです。

次の更新の際はザババ編から再開します!

それまではお待ちください。


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コラボ回 通りすがりの仮面ライダー!

今回は「攻月 レイド」さんとのコラボ回となります!

こちらの時系列では

〈凜祢ユートピア〉の後て、

天宮市にやってきた〈神風 優斗〉君の行動を凜祢さんの視点で見ていただきたいと思います!


〜凜祢side〜〜

 

「ん?彼は……何者なんだろう……」

 

エデンが崩壊した後……私は不思議な青年が天宮市に突然現れた事を確認した。

 

「ひとまず……様子をみようかな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは……何処だ?」

 

 青年……がオーロラカーテンを抜けた先には……見知らぬ土地が広がっていた。あぁ……なるほどね。

 

「並行世界の人間が……天宮市に迷い混んだんだね。私が……やらかしちゃったかぁ……」

 

 私は自分の愚かさを後悔しつつも彼の動向を確認する事にした。修君を……危険から守らないといけないから……

 

「修……私は貴方に救われたわ……そして今の貴方は恋人がいない。なら……首輪をつけても構わないでしょう?」

 

 彼がその世界で最初に見たのは……()()()()()()()()()()風鳴翼の姿だった。その手にアームドギアを持ちながら……光の映らない瞳をしていた。

 

「翼……? だけど……明らかに様子が違う……?」

 

 なるほど……彼はシンフォギアの世界を識ってるんだね……。なら……彼女達の動向……気になるよね?

 

「ひとまずは彼を見守ろう。そして今の彼女達の元へ導いてあげようかな……」

 

 訳がわからないままに彼はこの街を散策した。もしかしたら……他の人物がいるかもしれない。とりあえず1番近いのは誰だったかな……?

 

「そう言えば未来が戦おうとする事を彼は知らないかもしれないのか……」

 

 少し面倒だけど彼に軽い暗示をかけておこう。〈破軍歌姫〉の力で……足りるよね?

 

「あれは……未来か?」

 

「修君……また精霊に……狙われてる。なんで……あんなに仲が良かった私よりも……」

 

 やっぱり未来は諦め無いよねぇ……。まぁ………彼女がそれを見逃す訳無いから……絶対またやり合うかなぁ……

 

「シンフォギアでも無い……見たことも無い装備。そして……翼と同じ人物の名前を呟いていたな……」

 

 あれ?〈顕現装置〉を知らないのかな?……。となると彼は……案外原作知識ってのに明るい訳じゃないのかな?

 

「あぁ〜もう! なんでポンポンと()()()()は戻って来てんだよ! あたし様が修とイチャつけねぇじゃあねぇか! 」

 

「なんだ?あいつ……だが……見るからに不機嫌そうだな……」

 

 私は次に彼を来禅高校へと導いた。するとクリスちゃんがちょうどよく下校して来たみたいだね。でも……

 

「クリスちゃんに……反応しない?どういう事だろう?」

 

 もしかしたら……そもそもシンフォギアの知識に明るい人物では無いのかもしれないね。

 

「なんか俺がストーカーみたいだよな……って雨か!?」

 

 そう思っていると突然雨が降り始めた。あぁ……

 

「そう言えば修君……〈氷結傀儡〉のコントロールはまだあまり出来て無かったね。〈灼爛殲鬼〉の時は自動発動だけど……」

 

 彼は近くにあった神社で雨宿りを始めた。すると遠目ではあるが……珍しくセレナがやって来ていた。コレは私自身も予想外だね。

 

「あれは……たしか……」

 

 ん?さっきと様子が違う……?クリスちゃんには無反応だったのに……?

 

「どういう過ごし方をしたんだろう?ちょっと彼の生い立ちが気になるかも?」

 

 すると彼はセレナちゃんの様子を見守ってた。不思議だね……?

 

「アイツ……こんなところまで来てんだな……。だけどこの場所は日本みたいだし……何が起こってるんだ?」

 

 あぁ……なるほどね。〈F.I.S〉にいた頃のセレナちゃんを識ってるのか……。となると彼は……

 

「時系列を辿りながら過ごした転生者なのかな?」

 

「いつか……修さん記憶を思いだしたその時には……もう1度告白しよう。もし選ばれたら……その時は今度こそ…………」

 

 ふふっ……セレナちゃんもめげないね?でも……相手が悪いんだよねぇ……。

 

「ところどころ聞き取れ無かったが、また同じ名前を聞く事になるとはな……」

 

 雨音のせいか……セレナちゃんは彼に気付く事なく帰って行った。あぁ〜健気だよねぇ……。

 

「銀髪を……見失ったな……とりあえずどうするかなぁ……」

 

 彼は雨が上がると周囲を見渡してた。そっか……

 

「そう言えばクリスちゃんを探してる途中だったのにね……」

 

 宛もなく移動した彼は天宮市のショッピングモールにたどり着いた。とはいえ……中々目立つこの施設だし、この時間ならみんな結構来てるよね?

 

「どんな世界なのかいい加減……調べないとな……」

 

「君の様子も調べてるんだけどなぁ……」

 

 すると彼は()()2()()を見つけたみたいだね。もちろん彼女達は変装してるけど……

 

「計画は順調だ。奴等も続々とユウの元へと集って来ている。この調子なら今年中にケリをつけられるだろうな……」

 

「とはいえ……それだと記憶を取り戻す前に……ある事無い事を吹き込む人達もいるかもしれません。油断せずに行きましょう……」

 

「そうだな。ユウは……今は()()()()生活しているからな。焦らず確実に積み重ね無ければ……」

 

 2人共楽しそうに語り合ってるけど……

 

「キャロルちゃんのやり方……本当にえげつないよねぇ。目の前で勇君の記憶が戻る瞬間まで姿を隠すんだから……」

 

 そう思っていると彼も何かを言いたげだった。

 

「なんだか物騒な発言をしてるよな……。しかしこれで4回目……か」

 

 そっか……。()()()()()()()()()()()事情を知らない人からすれば……皆が修君の元に集う理由はわからないよね?

 

「あぁ……黒猫……可愛い……。撫でたい……抱き抱えたい……」

 

 書店に入ると動物雑誌を手に取るマリアが呟いていた。ええ……なんでまだ天宮市に潜伏してるの?

 

「恐らく猫好きな人なんだな。まぁ……女性に限らず可愛い動物というのは人を魅了するからな……」

 

「あれ?セレナちゃんに気付いてマリアさんに気づかないの?あれだけ特徴的なのに……?」

 

 そして彼は天宮市の情報雑誌を手にしていた。う〜ん……勇君があの時このくらい慎重だったらなぁ……。まぁ……転生して修君として過ごす今では詮無き事……何だけどもね?

 

「さて……この都市で俺の成すべき事って一体なんだろうな……」

 

 っと……彼が移動するみたいだね。まぁ……ソレは私も気になるけども……。

 

「しかし……翼が明らかにギアを纏っていない………………か。違和感しか感じないな……」

 

 いやいや……ソレ以上に私は君に言いたい事があるけども……

 

「マリアさんやクリスちゃんになんで気づかないかなぁ……」

 

 すると服屋の方から4人の女性達の言い争う声が聞こえて来た。って……あれは〈自動人形(オートスコアラー)〉 の4人だ……。今はホムンクルス体と使い訳をしてるけど……買い物かな? 

 

「美香てめぇ! 服選びが長いんだよ! マスターが待ちくたびれているだろ! 」

 

「しかたないぞ雫! アタシだって女の子だぞ! お洒落だってしたいんだぞ! 」

 

「派手に落ち着けお前達。いつの日にかマスターが旦那様に贈る服選びの下見が今日の目的だ。地味に目的を履き違えるなよ? 」

 

「とはいえ……まずはマスターからの命令を終わらせますわよ! その後でもう1度服選びをしましょう? 」

 

「相変わらず仲が良いのか悪いのか……。でもまぁ……勇君としての記憶を取り戻したその時は彼女達も笑顔になるんだろうけどね?」 

 

「……気にしてもしかたない……か。しかし……」

 

 あっ……彼がまた移動を再開しそうだ。とりあえず追わないと……。

 

グウゥゥゥ〜

 

 そっか……彼……お腹が空いてるんだ。

 

「腹……減ったな……使えるかはわからないが小銭はある。何か食べ物でも買うとするからな……」

 

「ひとまず彼のお金をこの世界のお金に変換しておこう。流石に可哀想だしね?」

 

 そうして彼は食料品売り場へと向かって行った。そして到着すると1人の男子高校生……ってあれ?

 

「修君……よりによって今買い物に来てるの?タイミング悪すぎ無い?」

 

 修君が買い物カゴにたくさんの食料品を入れていた。あぁ……今日は精霊皆での集まりの日なのかな?

 

「あぁ〜もう! 急に姉さんが先輩を連れて来るとか聞いてないよ! 材料が足りないじゃん! 」

 

「修君……確かに士道が突然来たら驚くけど……まずは緒川さんに相談すれば良いのに……」

 

 まぁ……それでも頑張るのが勇君としても……修君としても同じだから……。応援したくなっちゃうんだよねぇ……。

 

「なんだあの量……1人暮らしには多すぎだろうに……」

 

 あっ……彼が修君の買い物カゴの中身に注目してた。接触するつもりなのかな?

 

「ホームパーティーか何かだろうな。きっと料理を振る舞う人物がいるんだろうな……」  

 

「残念……調理するのも修君なんだよ?」

 

 そして件の修君が慌ただしく他の売り場へと急いで行った事でフロアは静かになった。ていうか修君……モールて騒がしいよ……

 

「修君は気づかないし、彼も関わるつもりは無いんだ。でも……ソレはソレで複雑だなぁ……」

 

 修君に注目してたら彼がいつの間にかレジを抜けそうだった。あぁもう!見失いそうだよ!

 

「結局使えたな……ってなんだ!?」

 

「あ……違和感無く使ってた。少しは疑うと思ったんだけどなぁ……」

 

 買ってたあんぱんと牛乳を公園で彼が食べているとオーロラカーテンが現れた。

 

「はぁ……よくわからない世界だったな……」

 

 彼がこの世界に来た理由はよく分からなかったし、見知った人物がいたと思ったら、主要人物にも……気付いて無かった人がいたし、結局修君と出会えてなかった。話しかけても良かったのに……。

 

「私からすれば君の方がよくわからないんだけどなぁ……」

 

そして彼はいつの間にかこの世界を後にした。

 

「あのオーロラカーテン……もしかしてディケイドの?」

 

 私の疑問の答えを語れる人物は……その場には存在しなかった。

 

〜〜凜祢sideout〜〜

 

 




はい!こちらではそういう訳で優斗君の行動を含めて、凜祢さんの視点でお送りしてきました!優斗君の視点はレイドさんの視点でご確認をお願いします!

こちらがそのURLとなります。

https://syosetu.org/novel/237050/

ぜひご確認ください!


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五章 トラベラーサババ
再会の前に……


お久しぶりデェス!Fate作品を無事に完結させられたのでこちらも再開します!

さて……本章からは〈あの2人〉が帰って来ます!それでは皆様本編へどうぞ!


修! そこに座りさい! 

 

 朝から高崎家では大声が聞こえた。

 

「はぁ〜……なんだよ翼…………何があった?」

 

「いや……僕にもなんでここにあるのか……」

 

 修困惑する修だが、翼は強引に修からある物を奪い取り机の上に置いた。その正体は……

 

正義を信じて、握り締めて

 

 現在話題沸騰中の高校生アイドルである〈太陽 輝〉の初回限定版のCDだった。

 

オイ修……コイツは一体どういう事だ? 太陽のCDはこの家には無かったはずだろ? 

 

 クリスも端から見れば明らかに不機嫌な表情をして修に詰め寄るが……修自身も困惑していた。

 

待ってよ翼! クリス姉さん! 僕だって……知らないよ! 朝郵便受けに入ってたんだよ! 

 

「嘘が下手ですよ修さん? だって……()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 更にその部屋には起床してきたセレナも合流してきて、状況はより修羅場へと発展する。

 

セレナ! 誤解! 誤解だから! 僕だって……知らないんだよ! 今朝気づいたら入ってたんだよ! 

 

 修が必死に弁解したが……女性陣は聞く耳を持たない状態だった。

 

「う〜ん……()()()()()()()()()()()()……偶然じゃないよね? 

 

 そして朝の高崎家にしれっと混ざる未来に……誰もツッコミを入れないのも最早恒例となっていた。

 

「とりあえず修が浮気をしたのはわかったわ。だから……御仕置よ?」

 

フガッ!? むがぁ!! 

 

 翼が修の口内へと右手を突っ込み……そして……

 

パチンッ! 

 

 鳴ってはならない音が鳴り響いた。

 

あぁぁぁぁぁ!!!! 痛い! 痛い! 痛い! なんで! なんでだよ翼! なんで……()()()()()()()()()()()()()()()()()! 痛いよ! 酷すぎるよ! 

 

 修は必死に怒りを訴えるが……当の翼には聞こえていなかった。

 

「浮気はだめと言ったはずよ? 次に太陽に現を抜かしたら……現実でも…………ね?」

 

「そうですねぇ……修さんには私達がいれば充分ですからねぇ……」

 

 セレナも肯定をする為……最早状況は混沌としていた。

 

「お前等……早く登校しないと遅刻するぞ?」

 

「「行くぞ(よ)修(君)! 」」

 

 そして修は翼と未来に引き摺られて今日も来禅高校へと登校する。余談だが、口内のホッチキスによる傷は、〈灼爛殲鬼(カマエル)〉の加護で治っている。

 

「とはいえ……翼の暴力が……日に日に増えてるような……」  

 

 修の脳内は比較的現実を認識していたが、防衛本能故か修自身の恋愛感情にはたどり着いていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜見守る前任者〜〜

 

「相変わらずの独占欲だよなぁ……彼女達は……」

 

「ククク……我が愛しき伴侶の士道よ……我と交わらぬか?」

 

「解説。耶倶矢は士道とのデートを望んでいます。まぁ……夕弦も望んでいますが……」

 

 天宮市のタワーで現在早朝にも関わらず……3人の男女が展望台で話し込んでいた。

 

「そう言えば……もうすぐ来禅は修学旅行だったな……」

 

「あ〜……そう言えばそうだな……」

 

「追想……確かこの辺りの時期だったかと……」

 

「DEMの動きが読めないからなぁ……一体どうなるやら……」

 

 士道の不安は……修達の試練を暗示していた。

 

「それともう1つ……素直な心で戦争(デート)を始めようぜ!

 

〜〜見守る前任者(終)〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい! そういう訳で修学旅行は沖縄に決定しました! 来週からの出発なので必要な物は各自準備してくださいねぇ〜!」

 

「高崎! あたし達と班を組まない?」

 

「ナイスです創世!」

 

「アニメみたいな仲良し班ね!」

 

「後は平原と……翼……未来かな?」

 

「当たり前のようにカウントするんだな高崎。まぁ……異論ならないけど……」

 

「じゃあ決まりだな! 各自楽しもうぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜クリスside〜〜

 

『そうか……やはり天使の力は……』

 

「ああ……修に……いや、()()()()()()()()。代わりにイチイバルが手元へと返ってきた。オッサン……やっぱりコレは……」

 

『その件について詳しく話を聞きたい。勇君達の修学旅行中はこちらに出向いて来れないか?』

 

「しゃ〜ねぇか。じゃあ緒川さんと風見達に任せるかぁ〜!」  

 

『すまないな。しかし……()()()()()()()()は心配要らんぞ? 何せ……いや……コレ以上は無粋だな……』

 

「オッサン……詳しい話は出向いたら聞かせて貰うからな?」

 

 全く……修の修学旅行を写真に映せないのはキチぃなぁ……。後で未来と交渉するか……

 

〜〜クリスsideout〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜修学旅行当日〜〜

 

はい! こちらが今回のカメラマンのエレンさんとジョンさんですよ〜! 

 

「はじめましてエレンです。私達の仕事が皆様の素敵な思い出の一助となれば光栄です……」

 

「青春の1ページを素敵に彩らせて貰える事……とても嬉しく思いますよ? これからの旅行期間……よろしく頼みますね?」

 

 中々に好印象な2人だな。その雰囲気からはベテランの気配がするし……。

 

男女の配慮もバッチリなのでたくさんの思い出を作ってくださいねぇ〜! 

 

「男女別だから色々気を遣わせないのもありがたいよな。まぁ……男女比率がアレなウチの班だけど……」

 

「ははは……しかし……君達の班は美少女揃ですねぇ。まぁ……それも青春ですから……」

 

おっ! ジョンさんわかるじゃん! 

 

「ははは……凄いよね……平原のコミュ力は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜凜祢side〜〜

 

調! 今度はソーキそばを食べるデスよ! 沖縄のうまいもんマップを完成させるのデス! 

 

「もう……切ちゃんったら……」

 

「ふふ……大丈夫だよ2人共。沖縄グルメは目を引く物がまだまだあるからね?」

 

()()()()ありがとうデース! 

 

「ありがとうございます。せっかくの旅行中に……」

 

「いいのいいの。だって……()()()()()()()()()()()()()……」

 

 先日勇達と接触した少女……〈園神 凜祢〉は……現在〈暁 切歌〉と〈月読 調〉を連れて沖縄観光をしていた。後に到着する修達と……2人を引き合わせる為に……。

 

「まぁ……この2人が早くに見つかって良かったかな……。八舞の2人は……自由過ぎたけど……」

 

凜祢さーん! 次行くデスよ〜! 

 

「あっ! 今行くから〜!」

 

 まぁ……修君ならなんとかなるかな?

 

〜〜凜祢sideout〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜修side〜〜

 

「さぁて……じゃあ水族館でも……」

 

修君! ショーを見ようよ! 

 

修! 大きな水槽で魚を見ましょう! 

 

 現在の僕は翼と未来に両手を引っ張られながら水族館を回っている。ちなみに平原は創世達と4人で行きやがった。裏切り者め……

 

「わかったよ! まずはショーを見よう。その後で水槽をゆっくり見るから……」

 

「「約束(だ)よ! 」」

 

 こうして僕達はイルカショーを見た後に巨大な水槽で優雅に泳ぐ魚達を見て楽しんだ。そして日が暮れる頃……

 

調! 次は何処に行くデスか! 

 

「待ってね切ちゃん。凜祢さんに電話するから……」

 

 そこで快活な笑顔を見せる女の子と、物静かだけど……しっかりしてそうな女の子に出会った。

 

ああ〜! 調! あの人デスよ! 

 

「凜祢さんの言ってた人だ!」

 

 2人は僕の元に駆け寄るといきなり抱きついて来た! 

 

「修……どうしたのかしら?」

 

「浮気……? 浮気なの修君?」

 

 目が怖いよ2人共……。

 

「えっと……君達は……?」

 

「あたしの名前は暁 切歌デース! やっとお兄さんに会えたのデース!」

 

「月読 調。ずっと貴方を探していました……」

 

 2人は目に涙を浮かべて僕を見つめていた。一体……何がどうなっているんだ? 

 

「未来……話があるわ?」

 

「奇遇ですね翼さん。私達の見間違いじゃあなさそうですね……」

 

「えっと……なんで……僕に?」

 

運命デス! 

 

「貴方と私達は前世で再会する約束をきっとしています。だから……この胸の高鳴りはとまらないんです!」

 

「ねぇ……2人共……? 貴女達は一体何者なの?」

 

「泥棒猫なら……殺すわよ? 

 

「調……この人達物騒デスよ?」

 

「きっとお兄さん……危険な目に遭ってるよね? 私達が……絶対に守ってあげるからね?」

 

「なんで……こんな事に……」

 

 僕の沖縄修学旅行は……間違い無くトラブルに巻き込まれたな……。

 

〜〜修sideout〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜凜祢side〜〜

 

「ふぅ……やっと()()()()()()()()。後……4人かな。いや……奏さんも加えて5人だね。そして……※※※ちゃんの記憶を……蘇らせるには……」

 

 修君が()()()()()を取り戻す為に接触が必要な人物は後5人。だけど……力を取り戻すなら……後7人の封印が必要だけど……

 

「フィーネはとにかく……サンジェルマンがなぁ……」

 

 虎視眈々と修君との接触の機会を伺う筈だけど……

 

「能力が能力だからなぁ……」

 

 私の不安は……まだまだ続きそうだね……  

 

()()……必ず記憶を取り戻させてあげるからね……。それが……()()()()()()()()()()()()()()で約束だから……」

 

 私の呟きは……風に吹かれてかすれてしまった。




ちなみに凜祢さんは要所で再登場していただく予定です。

さぁ……ザババの2人の今後を是非見守ってください!



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2人の目的

巡り合う修とザババの2人。そして……現れた……転生者が……彼等との距離を詰める。


 あのあと……切歌ちゃんと調ちゃんは後に来禅に転校してくる後輩という事でひとまずは落ち着いた。令音さんには感謝しよう。

 

「ごめんなさい……トラブルを持って来て……」

 

「いや……ユウのせいでは無いな。コイツ等の力も封印しておかなくてはな……。でなければ勇としての力を取り戻せん……

 

「どうしましたか? 最後が聞こえ無かったんですけれど……」

 

「ああ……心配はいらないよ。私自身もあの2人への興味があるからね。それと……2人の言っていた()()だが……」

 

「やっぱり……偶然じゃないですよねぇ……凜祢……」

 

いや……()()()()。凜祢の事だ……恐らくわかってやっているだろうな……

 

 ひとまずは凜祢の事はさておき……今は切歌ちゃんと調ちゃんの事……かな? 

 

「じゃあ……2人の様子……見てきますね?」

 

「ああ……頼むよユウ……。それとすまないが……フラクシナスとの連絡が取れない。どうやら……()()()()()()()()()が起こっているだろう。先の2人の精霊の攻略も含めて現状の課題は山積みだが……頼んだよ?」

 

「わかりました。後はお願いします……」

 

 こうして僕は令音さんとの打ち合わせを終えた。

 

「やはりDr.ウェルが動いたか。ならば……そろそろファラ達も活動する頃……か。ひとまずはガリィとミカに前線に出て貰うか。ファラとレイアは……まだ()()()()()()()からな……」

 

 この時の令音さんの呟きは……僕には聞こえ無かった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて……問題の2人は……」

 

 僕は〈切歌ちゃん〉と〈調ちゃん〉という2人の精霊の攻略をする事になったが……翼と未来が2人と話があると言ってつれて行ったから、心配なんだよなぁ……。

 

 

 

 

「トラブルにはなりませんように……」

 

 そうして僕は4人の過ごす部屋の扉を開けた。

 

「おお! それは大変デェス! それじゃあ修さんは安心出来ないデス!」

 

「そうでしょ切歌ちゃん? 修君はね……とても困っているの。だって……()()()()()()()()()()()()……」

 

「翼さん……お兄ちゃんの身の回りのお世話をできる人が、貴女を含めて少ないのは問題ですよ? いくら大きな組織がバックアップしてても甘えないでくださいね?」

 

「ごめんなさい……私達が至らないばかりに……」

 

 なんか切歌ちゃんを洗脳しているように見える未来、未来に感激してる切歌ちゃん、怒ってる調ちゃん、怒られている翼さんという混沌とした雰囲気に部屋が包まれていた。

 

「なにが……あったの?」

 

「それはあたし達が説明するデス!」

 

「私達はお兄ちゃんの普段の生活を聞きました。精霊としての力を封印したら、たくさんの女の子がお兄ちゃんの周りにいるけど……」

 

その中で先輩を癒せてる人たちは少な過ぎるのデス! 

 

 言われてみればそうかもしれない。身の回りで家事ができるのは1人暮らしをしていた〈姉さん〉〈未来〉そして……〈僕〉だけなんだよね。そして封印が成功してからはセレナも協力してくれてるけど……

 

「確かに……姉さんと未来には()()()()でヒヤヒヤしているからね……」

 

 主に貞操とか……

 

「そういう事。私達がもし封印されたら……お兄ちゃんのお世話をしてあげるよ? 将来のお嫁さんにもなってあげるよ?」

 

あたし達は2人で1人デス! 先輩は仲良くあたし達の共有財産デース! 

 

 なんだか知らない間に話が進んでいた。

 

「まずはお風呂で汗を流してあげる。ついでに私達の魅力を存分に味わって貰うよ?」

 

「先輩があたし達をお嫁さんにしてくれる為ならなんでもやるデスよ?」

 

「切ちゃん……()()()()()()?」

 

「任せるデス調!」

 

 すると切歌ちゃんは僕の腕を掴み……

 

「え……ちょ……うわァァー!!! 

 

 僕はそのまま強引に切歌ちゃんに引き摺られて、風呂場へと連行された。調ちゃんが隣にいないのが気がかりだけど……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に来ちゃったか……。でも……ここは……」 

 

「大丈夫デスよ? ()()()()()()()()()男性は入って来ないデスから……」

 

「お待たせ切ちゃん。お兄ちゃんの服一式と()()()()()()()()()よ?」

 

 何を……したんだ? 

 

ありがとうデース! やっぱり調は頼りになるデース! 

 

「一体……何を……?」

 

「まぁまぁ! そんな事よりあたし達が背中を流すデース! 

 

「全身綺麗に洗うから心配しないでね?」

 

「え……ちょ……待ってうわぁぁ──!!! 

 

(※ 修君はただ全身を、浴室備え付けのスポンジで洗われているだけです)

 

誰か……助けて……

 

 そこから先の僕の記憶は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「気がついたかい……ユウ? お風呂でのぼせたそうだね? 湯あたりは夏場も気をつけるべきだが?」

 

「この年齢で女子との入浴は刺激的過ぎますよ? 何かあったはどうするつもりですか……?」

 

ふん……既におびただしい回数の出来事があったというのに……世界が変わると難儀なモノだな……

 

「令音さん?」

 

「ああ……すまないねユウ。ならば……今後は()()()()()()()検討しよう。恐らく……今後も色仕掛けの機会は増えるだろうからね?」

 

「…………否定出来ないですね。すみません……」

 

「いや……ならばいつか私と入浴するかい? 私ならば間違いは起こっても問題は無いぞ? 何せ……ユウに好感を抱いているからな……」

 

「…………機会があれば……いずれ……」

 

 何故だろう? 令音さんとの行動が……とても心地よく思えるのは……。僕と令音さんは……一体……? 

 

「まぁ……今は休んで行くと良い。それに……2人は夏休み明けからはセレナとのクラスメイトだ」

 

「セレナも……喜びそうですね……」

 

「だろうな。いい傾向だな……」

 

 僕の身の回りが……どんどん賑やかになるな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜ジョンside〜〜

 

「さて……それでは始めますよエレン?」

 

「わかっています。彼と行動する〈プリンセス〉……そしてこの場所に現れた〈ベルセルク〉……その動向を監視・接触するのが今回の任務ですから……」  

 

「ええ……今回はあくまでも()調()()()()ですよ? 本番前のデータ採取……その範疇である事をお忘れ無く……」

 

「心得ていますよ? それでは……」

 

 エレンは話を終えると直ぐに空中艦へと連絡を始めた。やれやれ……()()()()()()()()()()()。それに……

 

「勇君……いえ、今は修君でしたね? 彼の絶望を……この目で見ない事には……」

 

 まずは風鳴 翼だ。この次に行動するディーヴァ(立花 響)の活動時が恐らく1番良い頃合いですから……。まずは彼の覚醒段階をチェックしましょう。それに……

 

「シェム・ハより僕に与えられた試練は離別……自分の愛の強さを自覚していない彼は……1度灸を据える必要がありますから……」

 

 その対価として霊力とシンフォギアのデータサンプルの採取が認められていますからね……。僕自身の野望は英雄になる事でしたが……()()()()()()()()というのはある意味英雄ですからね。人を導くという点では同じですから……。

 

「次の機会は天宮合同文化祭の時……ですね?」

 

 それまでは……大人しく指示をこなすとしましょう。

 

〜〜ジョンsideout〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜令音side〜〜

 

「ガリィ……奴らの動向はどうだ?」

 

『マスターの予想通りですよ? 島との連絡手段が絶たれています。現在マスターの使用している()()()()()()()()以外では連絡は難しいかと……』

 

 やはり……ウェルか。

 

「わかった。恐らく今回はウェルが現れる筈だ。空中艦は()()()()()で叩け。遠慮など要らんぞ?」  

 

『マスタァー……表向きは〈氷室〉と〈火神〉ですよ?』

 

「そうだったな。すまなかった。今回は氷室と火神に活躍して貰うぞ? そして……風見の力は今回の件が片付けば戻るだろうな……」

 

『ええ……舞華ちゃんの力はラファエルですから……』

 

「その点では……土屋には割を食わせたな……」  

 

『覚悟の上ですよ? 旦那サマの全てを取り戻す為、そしてマスターの幸せの為に……あたし達は頑張る事ができて嬉しいのですから……』

 

 本当に……変わったな。嘗てのオレ達の……関係性は……違っただろうに……

 

「だが……それもまた悪く無いな……」

 

『ええ……。その通りですね……』  

 

 オレも1つずつ……確実に行動すとしよう……。

 

〜〜令音sideout〜〜




もちろん令音さんを始めたくさんよく知る人物が再登場する本作品では自動人形達も後々全盛期の実力へと戻ります!

つまり精霊攻略こそがクソゲー並の難易度に……(ヤンデレ警報発生中!)

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動き出す影

人類最強(?)が準備体操を始めました。それでは本皆様編へどうぞ!


「お兄ちゃん……お話があります……」

 

「先輩……話があるのデス……」

 

「切歌ちゃん……調ちゃん……」

 

 本当は2人に誘われるままついて行く事になった。

 

「その雰囲気……()()()()()()?」

 

「お兄ちゃんは……精霊の事を……」

 

「どこまで識ってるデスか? 

 

 やっぱり……2人は……

 

「元は人間だったこと、そして……この世界に()使()()()()()()()()()()()()()放り出された精霊がいる事……かな。中には例外がいるみたいだけど……」

 

 そしてもしかしたら……()()()()()()()()かも知れないって……事だな。もちろん……気の所為かもしれないけど。

 

「うん。私と切ちゃんは……」

 

「きっと先輩の知り合いかもしれないデス。だって……」

 

「「先輩(お兄ちゃん)といると胸のトキメキが止まらないから(デス)!! 」」

 

 どういう事だ……? なんで……僕の心を……? 

 

「顔に出てるよ?」

 

「あはは……そう……かな?」

 

「だから先輩にはあたし達の恋人になって貰うデス! 聞けば先輩は……今は正式な恋人さんがいないそうじゃあないデスか!」

 

「だったら好都合。霊力を封印して貰ってお兄ちゃんのお嫁さんになる。コレ以上に都合の良い展開は2度と来ないよ?」

 

「待って……落ちついて……」

 

「「絶対に今答えを聞く(デス)! 」」

 

ドオォォン!! 

 

「ッ!?」

 

 2人に詰め寄られた時に轟音が響き……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と、()()()()()()()()()()()()()()()2()()()()()が現れた。

 

「はじめまして〈ベルセルク〉……私はDEMインダストリー所属、第2執行部部長魔術師(ウィザード)メイザースと申します」  

 

「僕はそこの研究員で、名前はDr.ウェルと言います。まぁ……今日は顔合わせとでも思ってくださいね?」

 

 〈DEM〉……? 姉さんから聞いた話では、ASTみたいな組織に顕現装置(リアライザ)を供給してる……そんな企業だよね? 

 

「そんな大企業の重役と言える人達が僕達ただの学生に何の用ですか?」

 

「いえいえ……謙遜は不要ですよ高崎修君? 我々は精霊の起こす事象に興味を抱いています。特に……この春まで反応が確認されていたのにも関わらず、最近反応が観測されない精霊が増えてるのでね。その調査……という訳ですよ。よろしければ我々にもその秘密を……とね?」

 

「調……この研究員……」

 

「なんでだろう? とても気持ち悪い……」

 

 2人の感覚はとにかく、僕も謎の嫌悪感をDr.ウェルから感じた。偶然じゃないかもしれない? 

 

「話す事がなければどうするつもりですか?」

 

「そうですね……()()()()()()()……というのはどうですか? 人類の脅威たる〈空間震〉……その原因との関わりを解明できますよ? そうすれば……貴方達も平和が訪れますよ?」

 

「先輩……」

 

「お兄ちゃん……」

 

 この2人の発言は()()()()()()()。だけど……震える手で僕を掴む2人を見ていたら……嘗ての決意を思い出せる。だから僕は……

 

「断りますよ? だって……僕の側には怯えた女の子がいるんだから! 

 

「そうでしょうね。では……ドクター! ()()()()バンダースナッチの展開をお願いします! 

 

お任せくださいMs.メイザース! 仕事だぞバンダースナッチ! 

 

 僕達の目の前で現れていた兵器が活動を始めた! 

 

「調! とりあえずアイツ等をぶっ潰すデス!」

 

「行こう切ちゃん! お兄ちゃんを守る為に!」

 

「「いでよ颶風騎士(ラファエル)! 」」

 

 2人が纏ったのは身体を締め付けるような拘束具のような礼装だけど……その2人の周囲から吹き荒れる風は……凄まじい勢いだった! 

 

「これが……2人の……」

 

「メイザース……少しだけバンダースナッチを使い潰しませんか? 中々有用なデータが取れそうですよ?」

 

「そうですね。()()との接触を前に試運転をするのは良い判断かと。それでは……」  

 

 エレンと呼ばれた魔術師は僕に剣を向けた。

 

「せっかくなのでプリンセス……風鳴翼も呼んで貰えますか? 剣士としての手合せができる機会というのは面白いですからね?」

 

蒼ノ一閃! 

 

 僕の目の前を蒼い斬撃が通り過ぎた。ええ……翼……礼装纏ってるし……

 

「修を傷つけて良いのは私だけ。修の怯えた表情を見て良いのも私だけ。もちろん愛されて良いのも私だけよ? さて……泥棒猫を排除する前にガラクタ掃除も始めましょうか?」

 

「おやおや……貴女の口から掃除とは…………。人は変わると言いますがこれはまぁ…………」

 

 ウェルの言葉に違和感を覚えるも、この状況の打開を優先したい僕はその疑問を頭の片隅へと追いやった。

 

行くぞ天羽々斬! 修の安全を守り……あわよくばその先の関係に踏み込むぞ! 

 

翼!? どういう事!? 

 

 僕の疑問を他所に翼はバンダースナッチと呼ばれた兵器と交戦を始めた。

 

「おや……? 君は何もしないのですか?」

 

 ウェルの問い掛けは……何処か挑発めいた節があった。

 

「ええ……僕の()()()()()はわかってますから。まずはお話を聞かせてくださいよ。なんで僕を……そして精霊を狙うのか?」

 

「う〜ん……教えたいところは山々ですが……僕自身の立場がありますので1つだけ。

 

 〈精霊と君は無関係ではない

 

 その意味は……いずれ然るべき人物より語られるでしょう……」

 

 なるほど……違和感のヒントには充分かな。翼達との出会いが偶然でも……僕が翼達に惹かれたのは偶然じゃない。つまり……()()()()()()にも関わる重要な事何だから。

 

「ありがとうございます。じゃあ……僕も行きますから……」

 

「ええ。次の出会いを待ってますよ?」

 

 ウェルの言葉の真意は……()()()()とやらに任せてみるか……。

 

やはり……あの世界での状態よりも……ですね。まぁ……この様子ならば順調に覚醒するでしょう……

 

 Dr.の言葉が……僕には聞こえ無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「翼! 大丈夫か!」

 

 僕は翼の元へと駆け寄ると……翼は所々に傷を負っていた。姉さんを止めたあの翼が……ここまで……

 

「ごめんなさい。あの女……とても強いわ。私が……ここまで……」

 

「いえ……謙遜ですねプリンセス。私が倒し損ねている時点で貴女の力量は高いです。コレがDr.の言っていた愛の力……そういう訳ですか。それならば……力を十全に使いこなした貴女との手合せも……してみたいモノですがね?」

 

何故そこで愛! どういう意味ですか! 精霊と愛が関係ある筈が!」

 

 僕が知らされたのは……以前姉さんから伝えられた情報だけだ。それを識ってるメイザースさんは何者なんだ? 

 

「まぁ……良いです。今度は貴方が戦いますか? 彼女を守る為に……?」

 

「確かに……僕は翼を守りたいよ。だけど……その力が無い事を僕は()()()()()。だけど……()()()()()()

 

 そして僕は大きく息を吸い込んで叫んだ。

 

来い! 鏖殺公(サンダルフォン)! 氷結傀儡(ザドキエル)! 翼を……そして切歌ちゃんと調ちゃんを助ける為に力を貸してくれ! 

 

 僕は嘗て姉さんや未来と相対していた時に纏っていなかった2人の天使の名前を叫んだ。するとペンダントから青と紫の光が僕を包み……2つの礼装を展開した。

 

「プリンセスと……ハーミットの力ですか。しかし……それを纏うのが貴方では……宝の持ち腐れではありませんか?」

 

「かもしれません。ですが……ここで貴女を退けて翼達との日常に帰る為ならば! 僕は覚悟を決められる! 

 

「よく言ったわね修君♪ それじゃあ……アタシが助太刀するわよ? もちろん……ミカちゃんも既に活動を始めているわよ?」

 

 そこで僕は……意外な人物の声を聞いた。

 

「…………貴女は?」

 

「フラクシナスのクルー……氷室 雫。アンタの相手をする魔術師ですよ?」

 

「雫……貴女……()()()()()()()()

 

「構わないわ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「そうね。修……ここは彼女に任せて行くわよ? 2人を……救うんでしょう?」

 

「ッ! 氷室さん! 後はお願いします! 

 

「ええ……アタシに任せなさいね♪」

 

 僕達は氷室さんにメイザースさんの相手を任せて切歌ちゃんと調ちゃんの元へと急いだ。




氷室さん出撃!さぁて……もはや彼女は前作並のスペックなんだけどなぁ……

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ソラと地上の戦い

迫りくる空中艦と現れる魔術師との戦いが始まり、
〈彼女達〉が戦場へと帰って来た。


〜〜緒川side〜〜

 

勇君……いえ、修君の安全の為にもここで敵艦を鎮圧します! ミカさん! お願いします! 

 

「アタシに任せるゾ! だけど……援護射撃は要求するゾ!」  

 

「お任せください! レイアさん! ファラさん! 艦体制御をお願いします! 僕が随意領域(テリトリー)の制御を担当します!」

 

「頼みましたよ緒川さん! 勇君の記憶を……必ず取り戻す為に!」

 

 僕達はミカさんに突撃をして貰って……その援護をする事で作戦を整えた。まぁ……キャロルさんの信頼できる自動人形たるミカさんに、何の不安もありませんけどね? 

 

「3時の方角! 60-55-70-65の範囲で随意領域の展開をお願いします! 世界樹の葉(ユグド・ホリウム)を7基を魔力生成に回してください! 残る3基は僕が制御します!」

 

 これは僕達の戦いです。勇君が記憶を取り戻す為に、できる事をするのが僕達の恩返しであり……大人の役割ですから! 

 

「緒川さん! ミカちゃん交戦開始しました!」

 

「フラクシナスの防衛を第1にミストルティンの発射を可能にしておいてください。制御はこれも僕が行います!」

 

「いいえ……それは私が引き受けますわ。旦那様の記憶を取り戻す為の道のり……その一助となるならば。それに……私達の方がミカちゃんとの連携慣れしてますわよ?」

 

 そうですね。ファラさん達は元々勇君とキャロルさんの自動人形……ここは彼女たちを信じなければ……

 

「ファラさんとレイアさんにミストルティンの射出管理をお願いします! 僕は随意領域の展開に専念します!」

 

「機体制御は私達が引き受けます! 緒川さん……全員でこの局面を乗り切りましょう!」

 

「「「はい! 」」」

 

 まずは敵艦の出方を確認しなければ……

 

『フラクシナス! サババの2人が敵艦との交戦を始めたゾ! アタシとの面識は忘れてるみたいだけど、少し面倒だゾ……』

 

「切歌ちゃんと調ちゃんが!?」

 

 想定外ですね……

 

「ミカさん! 援護射撃はしますが、ミカさんの思うままにお願いします! 大丈夫です。お2人も必ず守りますから!」

 

『緒川! 約束だゾ!』

 

「緒川さん……調ちゃんと切歌ちゃんまで……」

 

「しかたないです。まずは敵艦を落としましょう。幸い……切歌さん達のおかげでこちらへの砲撃は減っています。ならば……反撃に出ますよ!」

 

「「「「了解! 」」」」

 

 ふふ……このメンバーでの共闘……勇君がいなければありえない光景でしたね。勇君にも……見せてあげたかったですね……。

 

〜〜緒川sideout〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜氷室(ガリィ)side〜〜

 

「さぁて……アタシの力は旦那サマの力。だけど……旦那サマは今……記憶を失っているわ……」

 

「ほう? 本来は彼の力という訳ですか……。中々に興味深いですね。となると……精霊の力は全て……」

 

「ええ。本来は全て旦那サマの力よ。だけど……アンタ達は旦那サマが乗り越える試練にちょうど良いわ。だから……今はアタシが遊んでやるよ! 

 

「ッ! 防性随意領域展開!」

 

 アタシの氷刃とエレンの随意領域が衝突したけど……流石は氷結傀儡(ザドキエル)の力ね。久しぶりに使ったけど……凄く馴染むわ。

 

「ペンドラゴンの随意領域がここまで……これが……天使の……」

 

「ええ……これが旦那サマの力の一端よ。だけど……テメーはアタシが惨めに叩き潰してやるよ! 

 

 まずはその随意領域ごと凍結させるのが手っ取り早いけど……流石は嘗ての旦那サマが一目置いた魔術師。……遊びは無していきましょうか……。

 

アイシクルコフィン! 

 

「ッ! 氷の刃を……射出!?」

 

 エレンは動揺しつつも射出された氷刃を迎撃、レイザーブレイドで反撃の機会を伺っていた。

 

それだけじゃあ済まねえぞ! 

 

 アタシはエレンの周囲を吹雪で包む。確実に機動力を落とし……この氷刃でエレンの顕現装置を停止させる。旦那サマの記憶の通りなら……エレンは機能停止まで追い込めば然程怖くは無い。

 

「これが……天使を操る魔術師……ですが! 私は人類最強を目指す魔術師です! 壁が高いならば乗り越えるまで! 

 

 エレンは強引に突破する為に賭けに出たようだ。ブレイドに魔力の大半を注ぎ込み……吹雪に風穴を開けて脱出を図るのだろう。ならばアタシの次の一手は簡単だ。

 

「テメェの引き連れたガラクタは壊してやるよ!」

 

 バンダースナッチを破壊する事。それが旦那サマの為に行うアタシの最重要任務。別に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。何故ならば彼女は()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。その機会を奪う事こそが背反と言えるだろう。

 

「だからテメェはアタシと遊んで行けや!」

 

「調子に……乗るなぁ!   」

 

 エレンは本当に随意領域を剣先に収縮させてアタシの吹雪を突き破って来た。しかし……〈ペンドラゴン〉の機体は既に損傷が確認されていた。

 

「どうする? まだやるか? もちろん……バンダースナッチはスクラップにしたけどよぉ?」

 

「グッ……このままでは任務が……」

 

パチパチパチ……

 

 乾いた拍手がアタシ達に贈られた。

 

「いや〜……流石は氷結傀儡の力を使いこなす自動人形の〈ガリィ・トゥーマン〉ですねぇ。やはり嘗てのキャロルに近い実力を取り戻されたご様子……メイザース……ここは退却しますよ? 今回の目的である()()()()()()()()()()()()()()()。つきましては本命(天央祭)の舞台までは大人しくするべきでしょう?」

 

「そうですね……わかりましたよDr.。貴女……ガリィと言いましたね? 私はいずれ貴女を倒します。それまでは相見えない事をお互いに祈りましょう?」

 

「残念だけどもう1度言うわ。アンタ達は旦那サマの試練よ? つまり……アンタ達は旦那サマに倒されるわ。だって……アタシ達の愛しい愛しい旦那サマだからなぁ! 

 

「そうですねぇMs.ガリィ。では……僕達も再び備えるとしますよ? 互いの目的の為にね?」

 

「アァ! そうだなぁ!」

 

 そう告げてウェルとエレンは退却して行った。まぁ……これで旦那サマの覚醒する為に相応しい敵を用意できた。あとは……

 

「アタシ達のマスターの筋書きを信じるとしようかしら?」

 

 アタシ達の全ては旦那サマとマスターの幸せの為に……

 

〜〜氷室(ガリィ)sideout〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜修side〜〜

 

 氷室さんの助けもあり……僕は切歌ちゃんと調ちゃんが交戦した空中艦を発見した。だけど……

 

「あれば……フラクシナス?」

 

「緒川さん……風見……」

 

 僕と翼の視線の先には……

 

「調! あの艦……あたし達を援護してるみたいデス!」

 

「切ちゃん! ひとまず……そのまま援護して貰おう!」

 

 2人は恐らくメイザースさんの仲間と思われる艦と、フラクシナスの援護を含めて交戦していた。だけど……どうして? 

 

「緒川さん……貴方が……修の為に……」

 

 翼の言葉の真意を……僕は気づけなかった。

 

「翼……どうすればこの事態を打開できるかな……。2人に……僕の無事を知らせるには。そして……あの艦をこれ以上傷つけない為には……」

 

「あら? 修の事を……そしてフラクシナスを狙った艦よ? 助ける必要があるかしら?」

 

「なんでかはわからない。けど……僕達はきっと必要以上には傷つけたらいけないよ。だって……あの艦にも人の命があるからね?」

 

「ふふふ……流石修ね。なら……まずは互いの中間に最後の剣(ハルヴァンヘレブ)を放ちなさい? もちろん私が身体を支えるわ。そうすれば……全ての人物は私達に注目するわよ?」

 

 コレは僕の中でも危険な賭けだ。だけど……それでも僕はやるべきだと…………そう思うから……。

 

行くよ鏖殺公(サンダルフォン)! 僕に力を貸してくれ! 

 

『大丈夫だ。その力は……本来心優しいお前の力だからな……』

 

 凄く優しくて……何故か既視感のある声が聞こえたような気がしたが、僕はその言葉を信じる事にした。

 

うおおおぉ──ーぉぉぉぉ!!! 

 

 僕と翼の斬撃はフラクシナス・切歌ちゃんと調ちゃん・謎の艦の視界を派手に横切った。

 

先輩! なんでまだここにいるんデスか! 危ないデスよ! 

 

お兄ちゃん! ここは危ないから今すぐ逃げてよ! 

 

 2人は僕の側に降りるとすぐに離れるように訴えて来た。だけど僕は……今しかチャンスが無いと思った。

 

「翼! 今すぐにフラクシナスに連絡をとって欲しい! この手戦いを止める為に!」

 

「任せなさい修!」

 

 翼がフラクシナスへと連絡をする間に、僕は2人へと確認をする事にした。

 

「切歌ちゃん……調ちゃん。もしこの事態をなんとか平和的に打開できたら……君達はその矛を収めてくれるかい?」

 

「当然。お兄ちゃんが安全なら私達はそれだけで良いから……」

 

もちろんデース! あたし達は先輩が大好きデース! そんな先輩が安全ならあたし達は争う理由は無いのデース! 

 

 良かった。こっちは……

 

「修……緒川さんとの通信が可能になったわ。すぐに代わるわね?」

 

『修君……敵艦はかなりの損傷をさせました。コレ以上こちらへの攻撃は不可能です。でも……()()()()()()()()()()()()

 

「はい。この島からの離脱を。そして()()()()()()()()()()()()()()。僕達が叩きのめしたことで関係は最悪かもしれません。ですが……()()()()()()()()()()()()……」

 

『ふふふ……修君は優しいですね。わかりました。こちらで交渉を進めます。それと……氷室さんが捕らえたメイザースさんとDr.ウェルは彼等の指揮官でした。合わせて引き渡しますよ?』

 

「わかりました。お願いします……」

 

「本当に……優しい人……」

 

「きっと……以前のあたし達は先輩のこんなところに惹かれたのデスね……」

 

 すると切歌ちゃんと調ちゃんが僕に抱きついて来た! 

 

ちょっ!? 2人とも!? 

 

 慌てる僕に2人は交互にキスをしてきた。

 

「きっとこのキスが……」

 

「あたし達と先輩がしないといけない事で……」

 

とっても幸せになるキスだから! 

 

「……ダメね。気が狂いそうだわ……」

 

 ん? ……コレは……まさか? 

 

「翼……落ちついて……」

 

「大好きな修はモテモテだもの。私はね……覚悟を決めたわ……」

 

「え……ちょ……うわあぁァァ!!! 

 

 後に僕は、この夜の記憶を……()()()()()()()()()

 

 

 

 

 




はい!そういうことでザババの2人の封印に成功しました。しかし……嫉妬に狂った翼に〈食べられ〉ました。

明日は旅行から帰った後に一足早く〈彼女〉が戻って来ます!

お楽しみください!

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2人の願いとこの旅行のオワリ

ザババ編のエピローグであり、次章のプロローグとなります!


 切歌ちゃんと調ちゃんはあの後無事に封印する事に成功した。そして緒川さんの交渉により、今回僕達フラクシナスを襲撃した空中艦〈アルバテル〉の艦長〈バディントン〉さんと、魔術師のメイザースさん、そしてDr.ウェルを見逃す事にした。

 

「しかし……まさかただで返すとは思いませんでしたよ? てっきり捕虜にする等あったでしょうに……」

 

 メイザースさんの言葉通り、()()()()()()()()()事は簡単だ。だけど……僕達は争うつもりは無いからね。だから……恩を売る事にした。

 

「今回の2人の精霊……そちらの識別記号でベルセルクの活動情報を提供しましょう。もちろん……()()()()()()()()()何の参考にもなりませんけどね?」

 

「そうですね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。よって今回は手を退きましょう……」

 

「聡明な判断に感謝します」

 

 緒川さんとメイザースさんは形式的とはいえ停戦を確約した。とりあえずあとは……

 

「修学旅行を楽しむのですよね? ええ……()()()()()()()()()()()()

 

 メイザースさんとウェルがカメラを構えてようやく気づいた。

 

「エレンさんと……ジョンさん!?」

 

「はい。まぁ……今回の貴方方の修学旅行に同行する表向きの職業ですが、受けた依頼は果たすつもりなのでご安心を。その為の対価は先程いただきましたよ?」

 

 なるほど……。緒川さん……凄いな。

 

「これぐらいは僕達のやるべき事ですから。もちろん……修君の頑張りを嬉しく思いますよ?」

 

「ありがとうございます緒川さん! 行こうよ翼! 切歌ちゃん! 調ちゃん!」

 

はいデス! 夏の思い出を作るデース! 

 

「沖縄の美味しいモノ……お兄ちゃんと……」

 

「沖縄の伝統文化は素晴らしいわよ? せっかくだから観光もするわよ!」

 

「じゃあ……安藤達とも合流しようか!」

 

 僕達は他の班員との合流を決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くよ高崎〜!」

 

「いや……安藤……元気過ぎるよ……」

 

「それが創世だから……」

 

「まっ……こういうのも悪く無いだろ?」

 

「とはいえ……あたし達の要望ばかり通してるけど、あんた達は大丈夫なの?」

 

「班員を放っておいた以上は当然の報いだと思ってるからね。荷物持ちだろうがボディガードだろうが頑張るよ?」

 

 本当に安藤達に申し訳なさ過ぎるからね……。

 

「それが修さんの誠実なところでしたわね。まぁ……今回は自業自得かもしれませんが……」

 

 おぉぅ……詩織にこう言われるあたり本当に今回はまずいかも……

 

「それに……切歌ちゃんと調ちゃんまで戻って来たし……

 

「未来?」

 

「ううん! 何でも無いよ!」

 

 それなら良いけど……

 

せーんぱ〜い! あたしとお土産買おうデース! 

 

お兄ちゃんとの思い出は一生のお宝だよ! 

 

それに……()()()()()()()()()()()()()()()

 

とても楽しい()()()()()過ごそうね? 

 

「ッ! 2人共! 

 

 その耳打ちに僕は顔を真っ赤にさせてしまった! 

 

調……これは脈アリというやつデスね! 

 

油断大敵だよ切ちゃん。勇さんは筋金入りの堅物だから……

 

 2人の囁きに謎の恐怖をしたが、今の2人だけのやり取りも聞こえ無かったがとても嫌な予感しかしない。

 

もちろん私もいつでも構わないわよ? 

 

いつでも襲ってくれて良いよ? だって修君を愛してるから……

 

『あたし様も待ってるからな? 男らしく婿に来いよ?』

 

 なんで皆僕の将来を縛るの? 昔の僕は一体何をしたんだよ……。

 

みんな〜! 早く来ないと置いてくよ〜! 

 

早く来てくださ〜い! 

 

アニメじゃないんだから〜! 

 

逸れても知らねぇぞ〜! 

 

 ヤバい! 

 

「行くよ皆! せっかくの班行動だから!」

 

「しかたないわね。学生だもの……」

 

「翼さんが修君と……でも負けないから!」

 

調! あたし達もくっつくデース! 

 

「うん! 一杯甘えるよ切ちゃん!」

 

 この修学旅行以降……切歌ちゃんと調ちゃんが、実質的に僕の新しい同居人になるんだよね……。(本当は隣のマンションだけど……)

 

「エレン……とは素晴らしいですねぇ……」

 

「ええ……。これが精霊の力の源なのでしょうね。ウェル……()()()()()()()()()()()()()

 

「ええ。()()()()()()()()()()。僕の行動を啓示する彼女の言葉ですから……」

 

 そんな僕は2人の会話には気づいていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただいま〜! って……言っても監視されてたから実感わかない「おかえりなさい修さん! 」うん。ただいまセレナ……」

 

 そうだった。セレナがいたよね……。

 

「来禅での生活はどう?」

 

はい! とても楽しいです! 

 

 それは良かった。

 

「セレナ……久しぶり。()()()()()()()

 

セレナ! 久しぶりデース! 

 

 え……? 切歌ちゃんと調ちゃんは……セレナを()()()()のか? でも……どうして……? 

 

「これは……一体?」

 

「あぁ……そうだよな。修の反応は当然だよな。じゃあやっぱり……ピ〜ンポ〜ン! こんな時間に誰だ?」

 

 現在の僕達は修学旅行から帰って来たので、時計は20時を過ぎている。こんな時間に一体誰が? 

 

「とりあえず僕が出てくるね? 宅配便かもしれないし……」

 

「あ〜……頼むわ。とりあえずコイツ等に色々教えるから……」

 

 姉さんと僕はひとまず役割分担をして、僕が来客の対応をする為に玄関へと向かい……その扉を開けた。

 

「はいは〜い! どちら……さ……ま……」

 

 僕は扉の先にいた人物に絶句した。何故ならばその人物は……突然僕に抱きついてこう言ったからだ。

 

「見つけたよ! 私のお日様! もう絶対にこの手は離さないから!」

 

「え……? なん……で……?」

 

 僕は動揺のあまり言葉を失っていた。だって彼女は……

 

ねえ修くん! 私の送ったCD……もう聞いてくれたかな! 

 

 だって……()()は……

 

()() ()()……ちゃん……?」

 

 栄部西高校に在学する現役学生アイドル……太陽 輝ちゃんだからだ。その明るい笑顔で……たくさんのファンを魅了した……期待のアイドルの……。

 

「あ……ごめんね修君。私の本名はね……立花 響って……言うの。太陽は私の芸名だから。でも……修君が望むなら太陽でも響でも……好きな呼び方をしてくれていいよ!」

 

 僕の手をとる太陽……いや、立花さんは()()()()()()()()()()()()()()()()

 

修〜! 対応にいつまで時間をかけてるんだよ〜! 後輩共が痺れを切ら……す……ぞ……

 

 姉さんが僕を呼びに玄関に来て太陽ちゃんを見た時に言葉を詰まらせた。

 

「オイ……なんでテメェがこの家に来てるんだよ……。()()()()()()()()()? ……

 

「あり? クリスちゃん? ()()()()()()()()()()()()()()()ダメだよクリスちゃん……()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 姉さんは……なんで太陽ちゃんの本名を……()()()()()()? それに……なんで太陽ちゃんは姉さんを……()()()()()()()話せるんだ? 

 

「とりあえず要件を言え。今の修は修学旅行帰りだ。日を改めろ……」

 

「あ〜……修君が私に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ようやく合点がいったよ……」

 

「残念だが響のやる事は()()()()()()()。響の天使と〈太陽 輝〉としてデビューしたその時からな。何せ響は……()()()()()()()()()だろ? どうせ……あの人(宵待 月乃)みたいにな……」  

 

「心外だよクリスちゃ〜ん。私だって……たくさん努力したんだよ?」

 

「識ってるさ。響の出したシングルの数は、()()()()()()と同じ勢いだからな……」

 

 姉さんは僕に……()()()()()()()()()? 

 

「まぁ……私の用事は1つだけだよ? 修君……()()()()()()()()?」

 

 え……? 立花さんは……何を……? 

 

「今……なんて……」

 

「も〜……鈍いなぁ修君は! じゃあしょうがないから端的に言うね? ()()()()()()()()()()? 

 

 そう言って立花さんが取り出したのは……まぎれもなく()()()だった。

 

「返事はまた別の日に聞くから……今日はこれで帰るね?」

 

 そう言って立花さんは帰っていった。

 

「何が……起こって……いるんだ?」

 

 僕の呟きに答えられる人物は……()()()()()()()




ビッキー現る!そして今まで出していたシングルは修の家に送りつけられていた!?しかも婚姻届……これは真○ちゃんだよ!

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精霊の真実

おっそくなりましあぁ!(土下座)


化石の如く更新が凍結してましたが、ゆっくりと執筆して更新して行きます。


 太陽さんもとい立花さんの訪問の翌日……僕達は話し合いをする事になった。この家には現在、僕・姉さん・セレナ・翼・切歌ちゃん・調ちゃん……そして()()()()がいた。

 

「まぁ……ひとまずは情報を整理しようぜ?」

 

 姉さんの進行で今回の状況を整理する事になった。

 

「まさか……響さんが……」

 

「なんともびっくりデス……」

 

 僕以外の皆は太陽さん……いや、響さんの行動に困惑していた。少し違うかな? 僕は()()()()()()()()()() ()()ちゃんとしての活動しか知らないけど、明らかに皆は()() ()()()()()()()()を識ってるような雰囲気だった。一体……何故? 

 

「なんで皆は太陽さんを識ってるの? それに……なんで太陽ちゃんは僕の事を識ってるの?」

 

 太陽さんの行動から2つの疑問はほぼ同時に発生した。

 

「それでは私が説明致しますわ。修君のご様子からここは第三者たる人物が適任かと思われますが、艦長としてはどうですか?」

 

「あ〜……確かにその通りかもな。あたし達だと感情が先行しそうだしよ……。風見達に頼むわ……」

 

「任されましたよ艦長♪ それじゃあ雫ちゃん達が解説しますね?」

 

「…………すまない。先に2人に渡す物があるのだが……」

 

 そうして説明がされる前に令音さんが割り込んだ。……何をするつもりだろう? 

 

「およよ……? あたし達に……デスか?」

 

「う〜ん……なんだろう?」

 

「まぁ……このペンダントなんだけどね?」

 

 そうして令音さんが取り出したのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だった。

 

「令音さん……そのペンダントは……」

 

「あぁ……3()()()()()()()()()()()()()さ。もちろん……同様の効果がある」

 

 これまでの経験上あのペンダントを見ていたら聞こえる詠があった。

 

「調……これは間違い無いデスよ?」

 

「そうだね……。なんで令音さんが持っているかはわからないけど、とにかく受け取ろうか……」

 

 2人はそう告げて受け取ると、()()()を告げた。

 

Various shul shagana tron〜♪ 

 

Zeios igalima raizen tron〜♪ 

 

 そう告げた2人が纏ったのは、()()()()()()()()()が纏ったモノと同じだった。

 

()()()()()()()()()()……。お前達が颶風騎士(ラファエル)を纏った時点でわかる事だもんな……」

 

 どういう事なんだ……? 

 

「あぁ……すまないねユウ。()()()()()()()()()()と言う事さ。それに……念の為の確認でも予想通りクリス……()()()()()()()()だろう?」

 

「あぁ……。みたいだな。あたし達の世界にいた〈暁 切歌〉と〈月読 調〉で間違いねぇよ。それも……霊力を宿した……な」

 

()()()()()()()()()()? ……それはどういう意味だ? 

 

「その説明は私達が致しますわ……」

 

 風見さん達の説明は……とても重要な事の筈だ。

 

「まずラタトスク機関ですが……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。しかしこの世界ではここまで大々的に活動する必要は()()()()()()()()

 

 どういう事だ? ラタトスク機関は元々存在していたけど活動する必要が無かった? 一体なんで? 

 

()()()()()()()()()修君の先輩である士道君を支える組織だったからだゾ。だけど……その因果は2()()()()()()()()で終わった筈だったんだゾ……」

 

「先輩を……支える組織?」

 

「あぁ……俺は2年前のその世界で十香達精霊の封印をしたんだよ。もちろん……折紙や琴里も例外じゃないさ。そして今年の4月10日に修は翼と邂逅した。その時点で()()()()()()()()()と同じような運命に巻き込まれたんだよ……」

 

「わかり易く言うなら翼の鏖殺公(サンダルフォン)は十香先輩、あたしの灼爛殲鬼(カマエル)は琴里の天使だった……」

 

 翼の〈鏖殺公〉が元々は十香先輩の……なら折紙先輩も……。

 

「じゃあ折紙先輩にも〈天使〉ってのがあるんですよね?」

 

「あぁ……本来の折紙の天使は絶滅天使(メタトロン)……そして継承者は()()()()()()()。だけど修達の知る通り今の未来は……」

 

「天使を折紙に預けてやがる。もちろん預かるに当たり前任者の折紙は〈絶滅天使〉に封印をしてあるよ。だから折紙の意思が変わらない限りは霊力は漏れない。だから折紙自身はまだ安全だ……」  

 

 未来は……なんで折紙先輩に……? 

 

「え〜……とよろしいですか? 私達が並行世界の住人だと言う話をしていた筈なのですが……」

 

「あぁ……ごめんな風見さん。話の再開を頼むよ……」

 

 風見さんが話を再開させた。

 

「なので彼女達はこのラタトスク機関に接触したんだよ。精霊の事をよく知り、その生活を支えていた組織……その協力が何よりも必要だからね……」

 

「じゃあ……姉さんや未来達は……」

 

「元々は別世界の住人さ。()()()()の為にこの世界へとたどり着いたんだよ……」

 

 なんだか点と点が繋がる気がする。

 

「それじゃあ……本部の人達は……」

 

「弦十郎さんと八鉱さん以外本来は、フラクシナスのクルー達だったよ。現場を私達に任せる為に本部の方へ戻っただけさ……」

 

「そして翼に続いてセレナ・マリア・切歌・調の現界が確認された。もう偶然では無いだろうね。それに……響と未来に至っては()()()()()この世界で過ごしていた。全く恐ろしい程の愛だよ……」

 

何故そこで愛! 

 

 令音さんの説明で僕の関わる精霊が僕と()()()()()()がある事が証明された。だけど……

 

「肝心の響の事ですよね? もちろんアタシ達も困惑しています。何せ……現役のJKアイドルなんて……やってるので……」

 

「そんな響の目的は修との結婚……か。とうとう我慢の限界って……訳だな」

 

「その理由って……一体……?」

 

「修が好きだからだろうな。その証拠に誘宵先輩に弟子入りして、自分の世界の歌でアイドルデビューする事に成功させたんだよ……」

 

「それじゃあ太陽さんが言ってたプレゼントって……」

 

「響のデビュー当時からの初回限定版のCDだよ。もっとも……あたし様が修を婿にするつもりだから処分していたけどな?」

 

「クリス姉さん……それ犯罪だよね?」

 

細かい事は良いんだよ! とにかく! 響の目的は修との結婚だ! これは姉ちゃんの目が黒い内はぜってぇに認めてやらねぇ! もちろん修があたし様と結婚するなら話は変わるけどな! 

 

 愛が……重い……そう僕が思っていた時だった。

 

グサッ!  ピキピキ……

 

「う……グアァァァァ! 

 

「酷いわ修……私はこんなにも胸が張り裂けそうなのよ?」

 

「そんなの認めませんから……」

 

 揺れる僕の意識で聞こえた声は姉さんに劣らない程重い愛だった。

 

調……畳みかけるデスか? 

 

そうだね切ちゃん……

 

チュ……ガブッ! 

 

ンンンん!! んん──!! 

 

 調ちゃんに唇を奪われ……切歌ちゃんに背後から胸を押し付けられながら首筋を噛まれた。どれほど嫉妬しているって……いうんだ? 

 

「これがアタシ達の愛デース!」

 

「お兄ちゃんは私達に救われないと可哀想。だから証を刻んでるだけだよ?」

 

「へぇ……中々やるわね……」

 

「お2人共大胆ですねぇ。私もアプローチを変えてみましょうか……」

 

 僕がキスから解放されると、翼とセレナは2人の行動に感心と警戒をしていた。なんで……僕に……ここまで……

 

「それが前の世界で修君に惚れた女の子の意地よ♪ まぁ……アタシ達も修君に出会ってから大好きになったのよ?」

 

「派手に同意だ。私達は短い付き合いだが修君と行動したいのだからな……」

 

「アタシ達は大好きな修君に甘えられるチャンスを逃すつもりはないゾ!」

 

「まぁ……前の世界での修君は既に恋人がいたらしいですわよ?新参の私達は一歩引いて行きますが……」

 

 風見さん達まで僕に……? それに()()()()()()()()()()()……か。一体どんな人物なんだろう? 

 

「まぁ……そんな修だから太陽は修の家に訪問したんだろうな。修と確実に結ばれるように婚姻届まで用意して……」

 

 士道先輩の言葉で僕は現実を思い出した! 

 

そうですよ! 今は彼女の事です! 

 

「そうだね。まずは響の天使から解説をヴヴヴヴヴ!! 空間震警報だと!?」

 

皆さん! 空間震です! 波形パターンは〈ディーヴァ〉……響さんからの物です! 

 

 緒川さんからの緊急通信が入った事で高崎家は騒然とした。そして僕の携帯が唐突に着信音を告げた。

 

「相手は……太陽さん!?」

 

 僕は驚くもそのまま通話に応じた。

 

『修君……空間震の発生地点に1人で来てね? じゃないとこの天宮市を私の拡大する空間震で消し飛ばすよ? もちろん()()()()()()()()()()()?』

 

 太陽さんがそう唐突に告げて通話が終了した。…………コレは間違い無く脅しの電話で……絶望が僕を襲った。




はい!これでめでたく精霊が前作のヒロインで構成されている真実をクリスちゃんが白状しました!しかし……キャロル様は一体何処にいるんでしょうねぇ?(すっとぼけ)

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