仮面ライダーメレフ (辰ノ命)
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設定

仮面ライダーメレフの設定です
いつも通り更新していきナス!!

上から登場人物・ライダー・怪人・アイテムとなっております
尚、主要キャラの悪魔に関しては登場人物の方に記載します

1/11
デモンティアの説明文変更
怪人 シィスリ 追加
11/10
怪人 デモンティアの属性の説明 追加
怪人追加
11/11
ライダー 仮面ライダーメレフ スタンドジェイテン 追加
11/16
登場人物 ジェイクとティッツ 追加
ライダー 仮面ライダーメレフ スタンドティニーマ 追加
12/25
登場人物 エミー 追加
ライダー 仮面ライダーメレフ スタンドエミオン 追加
怪人 エフルニ 追加
4/11
登場人物 ゼフォー・深尾源次 追加
ライダー 仮面ライダーメレフ スタンドゼフゼロ・仮面ライダープリースト 追加
アイテム プレイドライバー・プリーストライズキー・プレイストウォンド 追加
4/21
登場人物 ネゴール 追加
ライダー 仮面ライダーメレフ スタンドネゴレイ 追加
4/26
登場人物 メロク 追加
登場人物 前王 追加
ライダー 仮面ライダーメレフ スタンドメローラ 追加
4/27
ライダー 仮面ライダーメレフ スタンドエイワンプラス 追加
5/18
登場人物 ワナイズ 追加
ライダー 仮面ライダーメレフ スタンドワナイマン 追加
デモンティア ゾンビル 追加
5/22
登場人物・怪人 エンジェルティア 追加
5/31
ライダー 仮面ライダーメレフ スタンドアドバンスエイワン 追加
6/1
怪人 ダテン 追加
6/13
ライダー 仮面ライダープリースト スタンドホリージェル 追加
7/1
怪人 カミナクシ 追加
7/17
ライダー 仮面ライダーメレフ スタンドドゥラスト 追加
7/20
ライダー 仮面ライダーサタンメレフ 追加


登場人物

プロフィール

大神 恭也 (おおがみ きょうや) 性別:男 年齢:18

職業・身分:無職 悪魔の王

説明

仮面ライダーメレフの変身者。最近まで普通の高校生だった一般人。就職できずに彷徨っていたところ、デモンティアの1人であるエイルと出会った事で運命がガラッと変わる。王としての宿命を背に、全てのデモンティアを封印する為に戦う。

 

 

エイル・ワン 性別:女 年齢:不明

職業・身分:王の側近 悪魔統括

説明

デモンティアのNo.1を務め、全てのデモンティアの統括する無属性の悪魔。王である恭也が好きで好きで仕方がないほど好きで初めから好感度が既にマックスを超えている。仮面ライダーメレフの初期フォームであるスタンドエイワンを始め、統括者として様々な悪魔を使役し、他フォームに変身するための台座となることもできる。

 

ジェイク・テンプ 性別:男 年齢:不明

職業・身分:10の位の統率者

説明

デモンティアのNo.10を務め、デモンティアの10の位を統率する火属性の悪魔。熱苦しい漢。己自身が認めるほどの熱い精神を持たない奴に対しては少し厳しい。王になりたての恭也に対して最初こそ厳しい態度を取ったが、彼の熱意を信じた事で力を貸してくれるようになった。

 

ティッツ・ニーマル 性別:女 年齢:不明

職業・身分:20の位の統率者

説明

デモンティアのNo.20を務め、デモンティアの20の位を統率する水属性の悪魔。基本的にホワホワとした態度で良く恭也をからかっており、デモンティア内でも非常に優しい悪魔だが、一度彼女の逆鱗に触れるとキレさせた相手は跡形もなく消えると言われている(滅多に怒らない)。

 

エミー・オン 性別:男 年齢:不明

職業・身分:30の位の統率者

説明

デモンティアのNo.30を務め、デモンティアの30の位を統率する風属性の悪魔。キザ。ナルシスト。自分のことが大好きである故に女の子達からモテていると思っている。一見軽い男に見えるが、情に厚い一面もあり仲間がピンチであるなら身を挺してでも守る。

 

ゼフォー・ゼロウ 性別:男 年齢:不明

職業・身分:40の位の統率者

説明

デモンティアのNo.40を務め、デモンティアの40の位を統率する雷属性の悪魔。本人は自覚していないが無口。死んだような目で何を考えているかわからない表情が特徴。1人でいる事が好きであり、恭也達と合流する前はフラフラと彷徨っていたようだ。(一応、恭也の事は探していたようだ。

 

ネゴール・レイ 性別:男 年齢:不明

職業・身分:50の位の統率者

説明

デモンティアのNo.50を務め、デモンティアの50の位を統率する土属性の悪魔。 ガハガハ系のおじさん。10番目の悪魔ジェイクと仲が良く、先代がいた頃はよく酒を飲み合っていた。基本的に優しいが、恭也の王としての成長に関しては厳しい態度を見せる。

 

メロク・オーラ 性別:女 年齢:不明

職業・身分:60の位の統率者

説明

デモンティアのNo.60を務め、デモンティアの60の位を統率する光属性の悪魔。 色気があり、いかにもご想像通りのお姉さんと言った感じ。見た目は悪魔とは思えず、一言で表すなら女神。真面目な時は真面目だが、それ以外は誰かを小馬鹿にするのが好きだったり、エイルと同じく王が好きだったりと自由な悪魔。エイルとは昔馴染み。

 

ワナイズ・マン 性別:男 年齢:不明

職業・身分:70の位の統率者

説明

デモンティアのNo.70を務め、デモンティアの70の位を統率する闇属性の悪魔。長老。デモンティア内でも1番の高齢。相手の力量を見極める事が得意であり、自分が認めた相手には忠誠を誓う。今も尚、凄まじい闇の力を持っているが、全盛期であれば更に凶悪であり、場所に限らずあらゆる物を闇に引き摺り込んだという。

 

深尾 源次(ふかお げんじ) 性別:男 年齢:35

職業・身分:デモンハンター

説明

仮面ライダープリーストの変身者。金好き。女好き。遊び好き。見た目はいいのだが、中身で全てが台無しになる男。デモンハンターというデモンティアを倒す組織に入っており、中でもたった1人プリーストに変身できる特別な存在である。

 

ホウリー・ジェルエ 性別:男 年齢:不明

職業・身分:天使

説明

エンジェルティアの少年。普通の少年と言った感じで、これと言って特徴がない。謎に包まれており、源次に助けられて以降、彼と共に行動するようになる。人間にも負けてしまうほど非力だが、本当の力は強大である模様…。

 

前王 性別:男 年齢:不明

職業・身分:初代デモンティアの王

説明

初代仮面ライダーメレフであった王。1000年以上も前に死んだと思っていたが、魂だけの存在となり、再びこの世に現れた。初代は誰からも優しいと称される者だったらしいが……?

 

 

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ライダー

仮面ライダーメレフ スタンドエイワン

身長 197.2cm

体重 97.2kg

パンチ力 7.2t

キック力 12.7t

ジャンプ力 ひと跳び72m

走力 100mを7.2秒

 

※『』の部分は各フォーム共通。

※「開錠」「憑依」は全フォーム共通。

※総じて変身音後に「スタンド○○○」とフォーム名を言う。

起動音「エイワン!!」

変身音「悪魔の名はエイル・ワン!!1の数字を持ち、その力の全てを王に捧げる者!!」

必殺音「エイワン!!『シャットアウト!!』」

 

説明

仮面ライダーメレフの基本形態。この形態はエイル・ワンが憑依する事で力を発揮する。属性は無であり、他の悪魔と相性は良くも悪くもないバランスの良さを持つ。専用武器に剣を装備し、近距離と言えどある程度は対応可能。しかし、メレフだけではフォームチェンジが不可能な為、様々な形態に変わる為にはエイルがいなければならない。

 

能力

・飛行

・頑固な鎧

 

仮面ライダーメレフ スタンドジェイテン

身長 198cm

体重 98kg

パンチ力 12.2t

キック力 17.7t

ジャンプ力 ひと跳び80m

走力 100mを6.5秒

 

起動音「ジェイテン!!」

変身音「悪魔の名はジェイク・テンプ!!10の数字を持ち、その獄炎は全てを焼き尽くす!!」

必殺音「ジェイテン!!『シャットアウト!!』」

 

説明

仮面ライダーメレフの別形態。10番目の悪魔ジェイク・テンプが憑依する事で変身可能。右腕を中心に強化。属性は火で火力が高く、特に単体の敵に対してはかなりの有効打となる。専用武器の大剣はメレフキーブレードに追加パーツとして取り付ける事で重量が変わり、素早く振るうことはできなくなったが威力が増した。更に炎によるブーストで大剣の振るう速度を飛躍的に向上させる事も可能。

 

能力

・炎による燃焼効果と火力増加

 

仮面ライダーメレフ スタンドティニーマ

身長 197.6cm

体重 97.3kg

パンチ力 7.3t

キック力 12.8t

ジャンプ力 ひと跳び73m

走力 100mを6.3秒

 

起動音「ティニーマ!!」

変身音「悪魔の名はティッツ・ニーマル!!20の数字を持ち、その荒波は全てを包み込む!!」

必殺音「ティニーマ!!『シャットアウト!!』」

 

説明

仮面ライダーメレフの別形態。20番目の悪魔ティッツ・ニーマルが憑依する事で変身可能。左腕を中心に強化。スペックは基本形態と変わらないが、水と氷の力を自由自在に扱う事ができ、水による敵の無力化や飛び道具等による攻撃を吸収、更に操った水を目の前で凍らせる事で盾代わりにする等非常に応用が効く。専用武器の杖は大剣状態からなら引き伸ばしで変形可能で、特に重いというわけでもなく寧ろ軽い方。水氷を操作する場合はこれを用いると安定性が増す。

 

能力

・水と氷を自由自在に操れる。

 

仮面ライダーメレフ スタンドエミオン

身長 197.5cm

体重 97.8kg

パンチ力 8t

キック力 14.2t

ジャンプ力 ひと跳び80.4m

走力 100mを5秒

 

起動音「エミオン!!」

変身音「悪魔の名はエミー・オン!! 30の数字を持ち、その突風は全てを吹き飛ばす!!」

必殺音「エミオン!!『シャットアウト!!』」

 

説明

仮面ライダーメレフの別形態。30番目の悪魔エミー・オンが憑依する事で変身可能。両腕を主に強化。風の力を扱い、ティニーマの様に自由自在というわけではないが、トリッキーな動きで敵を翻弄する事に関してはこちらの方が上手。専用武器は大剣や杖で使われたパーツを短剣として扱い、メレフキーブレードと併用し双剣にして扱う。

 

能力

・風を操れる。

 

仮面ライダーメレフ スタンドゼフゼロ

身長 198.2cm

体重 98.2kg

パンチ力 9.9t

キック力 15t

ジャンプ力 ひと跳び75m

走力 100mを5.5秒

 

起動音「ゼフゼロ!!」

変身音「悪魔の名はゼフォー・ゼロウ!!40の数字を持ち、その雷撃は全てを痺れさせる!!」

必殺音「ゼフゼロ!!『シャットアウト!!』」

 

説明

仮面ライダーメレフの別形態。40番目の悪魔ゼフォー・ゼロウが憑依する事で変身可能。両肩と背中を強化。雷の力という事で1人に触れればまた1人と、近くにいる者を感電させる。それにより広範囲に攻撃が可能となっている。専用武器は杖から変形させる事で槍となり、格闘戦も可能で、雷を纏った状態で投げる事で貫通力や破壊力を底上げし、更に広範囲への攻撃ができる。

 

能力

・雷を操る。

 

仮面ライダーメレフ スタンドネゴレイ

身長 199cm

体重 105.2kg

パンチ力 10t

キック力 15t

ジャンプ力 ひと跳び40m

走力 100mを8秒

 

起動音「ネゴレイ!!」

変身音「悪魔の名はネゴール・レイ!!50の数字を持ち、その硬度は全てを弾く!!」

必殺音「ネゴレイ!!『シャットアウト!!』」

 

説明

仮面ライダーメレフの別形態。50番目の悪魔ネゴール・レイが憑依する事で変身可能。主に上半身を強化。土→地面に該当される物ならなんでも操れる。他のどの形態よりも防御性能に優れ、その硬さを活かした攻撃も申し分ない。強いて弱点を上げるなら動きが鈍くなってしまう事。相手があまりにも速いと追いつく事ができない。専用武器は拳に装着されたメリケンが付いたグローブのような物。

 

能力

・地面に該当する物ならなんでも操る。

 

仮面ライダーメレフ スタンドメローラ

身長 197.5cm

体重 97.3kg

パンチ力 8t

キック力 13.1t

ジャンプ力 ひと跳び79.3m

走力 100mを3秒

 

起動音「メローラ!!」

変身音「悪魔の名はメロク・オーラ!!60の数字を持ち、その光源は全てを照らす!!」

必殺音「メローラ!!『シャットアウト!!』」

 

説明

仮面ライダーメレフの別形態。60番目の悪魔メロク・オーラが憑依する事で変身可能。主に両脚を強化。どの形態と比べても圧倒的なスピードが特徴。攻撃力は下の部類ではあるものの、そのスピードを活かして相手を翻弄に確実にダメージを与えていく。又、光属性なので光弾を放ったり、光による目眩しも可能である。専用武器はエイワンと同じく剣だが、逆手に持って相手を四方八方から切り裂く。

 

能力

・数秒間だけ光速で移動可能。(メレフの精神力によって持続時間は変化する。

 

仮面ライダーメレフ スタンドワナイマン

身長 198.4cm

体重 99kg

パンチ力 20t

キック力 31.9t

ジャンプ力 ひと跳び92.3m

走力 100mを3秒

 

起動音「ワナイマン!!」

変身音「悪魔の名はワナイズ・マン!!70の数字を持ち、その暗闇は全てを葬り去る!!」

必殺音「ワナイマン!!『シャットアウト!!』」

 

説明

仮面ライダーメレフの別形態。70番目の悪魔ワナイズ・マンが憑依する事で変身可能。全身の各パーツを強化。スペックがどの形態よりも高い。エイワンプラス以降はジェイテンなど火力特化型等には劣る。攻撃や防御に闇の手を地面から召喚して拘束やガード等を行う。暗い場所では更に凶悪となり、あらゆる場所から闇の手を召喚し、影を捕まえる事で相手の動きを制限することも可能。専用武器の鎌は近距離戦には向かないが、闇の手と合わせる事で容易に相手の首を刈り落とせる。

 

能力

・闇の手を召喚する。

・暗い場所ではより強くなる。

 

仮面ライダーメレフ スタンドドゥラスト

身長 198.8cm

体重 99kg

パンチ力 72t

キック力 117.2t

ジャンプ力 ひと跳び172m

走力 100mを2.7秒

 

起動音「ドゥラスト!!」

展開音「シッカリ開錠!! ガチ憑依!!」

変身音「 悪魔の名はンードゥ・ツーラスト!!72の数字を持ち、その闇は全てを呑み込み、闇へと帰す!!この闇から逃れる事はできない!!King of darkness!!」

必殺音「ドゥラスト!!『シャットアウト!!』」

 

説明

仮面ライダーメレフの別形態。72番目の悪魔ンードゥ・ツーラストが憑依する事で変身可能。全身が禍々しくなり、全体的に鋭利な姿となる。最強の姿と言っても過言ではないスペックを持つ。ワナイマンと同じく闇を操ることができ、その強さは全盛期のエイルとも互角レベルである。つまりどの悪魔よりも突出して強い。街全体を丸々呑み込むほどの闇を放ち、専用武器の薙刀で闇に空間を作り出し、相手を闇の中へと生きたまま永遠に葬り去る。

 

能力

・強大な闇の力。

 

仮面ライダーメレフ スタンドエイワンプラス

身長 197.4cm

体重 98.2kg

パンチ力 17.2t

キック力 27.2t

ジャンプ力 ひと跳び87.2m

走力 100mを3.2秒

 

起動音「エイワンプラス!!」

展開音「開錠!! 憑依!! プラスで憑依!!」

変身音「悪魔の名はエイル・ワン!!(プラス!!)1の数字を持ち、プラスされたその力は王を頂点へと導く!!」

必殺音「エイワンプラス!!『シャットアウト!!』」

 

説明

仮面ライダーメレフの強化形態。1番目の悪魔エイル・ワンが憑依する事で変身可能。エイワンの力、そしてメレフの王としての力が50%引き出された状態である為、一部を除き全ての悪魔は最早太刀打ちできないほど。更にメレフの力が半分解放されたので、他の形態にも影響を与え、エイワンプラスと同等のスペックを手に入れる。実質全形態プラス状態である。

 

能力

・一度の攻撃で2発分の攻撃を与える。

・装甲の軽量化によるスピードアップ。又、防御力向上。

・飛行。

 

仮面ライダーメレフ スタンドアドバンスエイワン

身長 197.4cm

体重 98.2kg

パンチ力 47t

キック力 77t

ジャンプ力 ひと跳び117m

走力 100mを2.5秒

 

起動音「アドバンスエイワン!!」

展開音「更に開錠!! 更に憑依!! 」

変身音「悪魔の名はエイル・ワン!!1の数字を持ち、その力は王に更なる力を与え、更に魂の限界を超える!! 更に言おう!! 既に超えた!!」

必殺音「アドバンスエイワン!!『シャットアウト!!』」

 

説明

仮面ライダーメレフの強化形態。1番目の悪魔エイル・ワンが憑依する事で変身可能。王の力が75%に達した事で今までより硬度が増し、万が一防御を貫通されようが、一瞬にして破壊された部位を再生してしまう。しかし、使えば使う程、魂のエネルギーを消費する為、力の解放速度が上昇する。更にこの形態になった事でプラスの時よりも他形態に影響が出て、この形態同様のスペックを手に入れる。

 

能力

・超再生能力

・硬度上昇

・飛行能力

仮面ライダーサタンメレフ

身長 199.6cm

体重 107.2kg

パンチ力 77.2t

キック力 172t

ジャンプ力 ひと跳び270m

走力 100mを1.27秒

 

起動音「サタンメレフ!!」

差込時「今、真の力を解放する時!!」

展開音「全開錠!! 全憑依!! 」

変身音「72の悪魔たちよ集え!!我は全てのデモンティアの王!!その名もサタンメレフ!!王の魂に懸けて全てを守る者!!」

必殺音「サタンメレフ!!リベレイション!!」

 

説明

仮面ライダーメレフの最終形態にして真の姿+恭也の王としての姿。72体の全ての悪魔が憑依したことによって、神をも越える悪魔の王としての力を極限まで引き出した形態。力の解放が本来100%であるが、この形態はそれを超え200%くらいまで上がっている。圧倒的な防御力に加え、全ての属性エネルギーを今までとは比にならないでレベルで扱え、また複数を組み合わせて使用することも可能。

又、命が吸われるというデメリットがなくなり、稼働するエネルギーはデモンティア全員分で動いている為、燃費は悪いがリスクは無くなったという点がある。

 

能力

・全てのデモンティアの能力、武器の威力や特性を倍以上にして扱える。

・飛行能力

・圧倒的防御力

・無のエネルギーを特にうまく扱え、触れたもの全てを無に帰す。

 

仮面ライダープリースト

身長 203.8cm

体重 98.3kg

パンチ力 11.1t

キック力 21.1t

ジャンプ力 ひと跳び71.1m

走力 100mを4秒

 

起動音「プリースト!!」

展開音「アンロック!!」

変身音「祈る!!願う!!導きのままに!!プリースト!!」

必殺音「プリースト!!『パニッシュ!!』」

 

説明

仮面ライダープリーストの基本形態。特に何か憑依しているわけではない。模造品とはいえ、聖なる力を宿しており、光属性の攻撃を可能とする。光は自由自在に操れるので、攻撃や防御なんかも可能であり、相手の目の前で爆発させる事で目眩しにもなる。

 

能力

・聖なる力を使える

・光を自由自在に操る

 

仮面ライダープリースト スタンドホリージェル

身長 204cm

体重 101.1kg

パンチ力 61.8t

キック力 87.4t

ジャンプ力 ひと跳び100.8m

走力 100mを2.2秒

 

起動音「ホリージェル!!」

展開音「アンロック!!」

変身音「聖なる!!鐘を!!皆に送ろう!!holy bell!!スタンドホリージェル!!」

必殺音「ホリージェル!!『パニッシュ!!』」

 

説明

仮面ライダープリーストの強化形態。天使であるジェルエが憑依する事によって変身可能となる。単なる模造品であったプレイドライバーにジェルエが一体化した事により、完全なものへと変化した事で基本形態を遥かに凌ぐ性能を引き出せるようになった。聖なる光の力は更に強化され、光属性の攻撃はより強力になり、防御面においてはアドバンスエイワンより高く、更に光属性の攻撃を全て無効化してしまう。背中に翼が収納されており、空も飛べるようになった。

 

能力

・飛行

・光を自由自在に操る

・光属性無効化

 

 

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怪人

デモンティア

全部で72体おり、それぞれが1〜72番までの数字を持つ。又、数字が1・10・20・30・40・50・60・70の数字を持つ者は俗に言う隊長格とされており、同じ位の1番ならばその下の2〜9を使役する。10番ならば11〜19までを使役する事となる。

そして位毎に属性があり「無・火・水・風・雷・土・光・闇」と8つある。もちろんお互いに弱点も存在し、

火は水に弱い

水は雷に弱い

雷は風に弱い

風は土に弱い

土は火に弱い

光は闇に弱く、闇も光に弱い。

尚、無属性のみ弱点が存在しない。

 

ゾンビル

説明

デモンティアたちが召喚できる使い捨ての悪魔もどき。人間にはもちろん勝てるが、メレフ等のライダーにはほぼ通用しない。

 

ビーツ「2」

説明

デモンティアで持つ数字は2番。爪を使った攻撃を得意とする。

 

シィスリ「3」

説明

デモンティアで持つ数字は3番。伸縮自在の身体を使った攻撃を行う。

 

デイフォウ「4」

説明

デモンティアで持つ数字は4番。発達した筋肉を持ち力が強い。

 

イーファイバ「5」

説明

デモンティアで持つ数字は5番。機動性に優れており、デイフォウとタッグを組んで隙のない攻撃をする。

 

エフルニ「6」「12」

説明

エフックスとエルニが合体した特殊な悪魔。衝撃波を飛ばす能力と炎の力を扱う力を兼ね備えている。

 

エンジェルティア

1000年以上も前からデモンティアと争っていた種族。デモンティア同様に72体存在し、属性も序列も同じ様だが、何らかの理由で7人となっている。(ジェルエを含めれば8人)。更に各天使は光属性も有する。

 

ダテン

説明

デモンハンターがエンジェルティアと契約した事でなった怪人。ゾンビルと同等の力を持ち、人々の魂を喰らおうとする。

 

ホウリー・ヒイテン

説明

火属性の男の天使。負けず嫌い。残酷。能力は分裂。

 

ホウリー・フウテン

説明

水属性の男の天使。冷静ではあるが、戦いの最中は少々荒くなる。能力は液状化。

 

ホウリー・ミイテン

説明

風属性の女の天使。淡々と喋る。任務は必ず遂行する。能力は透明化。

 

ホウリー・ヨオテン

説明

雷属性の男の天使。すぐキレる。能力は巨大化。

 

ホウリー・イツテン

説明

土属性の男の天使。カタコトで喋る。能力は肉体強化。

 

ホウリー・ムウテン

説明

光属性の男の天使。リーダー格。裏が読めない。

 

ホウリー・ナナテン

説明

闇属性の女の天使。面倒くさがり。能力は感覚強化。

 

カミナクシ

説明

使徒達が召喚できる雑魚怪人。しかし、その強さはゾンビル・ダテンの比ではなく、デモンティアやエンジェルティアたちが素の状態で圧倒されてしまうほど。プリーストは通常形態で全く歯が立たなかった。

 

 

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アイテム

デモンドライバー

説明

仮面ライダーメレフに変身する為のキーアイテム。これともう一つのアイテムを使用する事でデモンティア達の力を使用可能にする。

 

デモンティアイズキー

説明

仮面ライダーメレフに変身する為のもう一つのキーアイテム。一つ一つに悪魔達の力が宿っており、1〜9、10〜19…とそのキー1つで悪魔達の力を使用できる。

 

メレフキーブレード

説明

仮面ライダーメレフ スタンドエイワン時に使用する武器。この剣から様々なフォームに派生で変形する。

 

プレイドライバー

説明

仮面ライダープリーストに変身する為のアイテム。デモンドライバーを模して造られただけだが、ごく少数しか扱えず、変身まで持っていけるものはたった1人しかいない。

 

プリーストライズキー

説明

仮面ライダープリーストに変身する為のもう一つのアイテム。こちらも模造品ではあるが上記同様1人しか扱えない。

 

プレイストウォンド

説明

仮面ライダープリーストの専用武器。プリーストの身体から発せられるエネルギーを精密に操る為の武器。




デモンティアに関しては最終的に全員名前を載せますので暫く更新ありません。
リーダー格の方々は載せます。


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72の悪魔編
第1解「我は王、我にエールを」


皆さんご無沙汰しております。悶絶小説調教師の辰ノ命と申します。

今回、調教する小説は「仮面ライダーメレフ」

72体の悪魔が織りなす闇の戦い。
普通の青年だった主人公は王としての宿命を背負いどのように成長するのでしょう。

皆さんは私の小説に耐えきる事ができるでしょうか?
新たなライダーが歴史にその名を刻む瞬間を、それではどうぞご覧ください


 ─── それは満月の夜の事である。

 月の光が木々が生い茂る、とある遺跡を照らし、またその遺跡に侵入するものも照らしていた。

 遺跡は誰も入る事を許されず、周辺にも立ち寄っては行けないと昔から言われていた。言われているというのは、伝説の話、この話が御伽噺の世界であるから誰も信じない。ましてや信じるものなど殆どいる訳がない。

 別に規制されている訳でもないので、こうして悪戯に誰かが立ち入る事はあったが、今回の客人はどうやら違うらしい。

 

 

「………」

 

 

 光は遺跡の中まで入ることはないので、その侵入者は持っていた松明に火をつけて、中に入ると近くにある階段を使って地下へと入り込む。

 当然、中は真っ暗であり、足元も何も見えない地下へ行く事は中々勇気のある事だろう。

 ここまでが普通に行ける場所だ。問題は地下に行っても何もないと言うこと。行き止まりなのだ。

 

 

「………」

 

 

 そして侵入者は何もない壁に手を触れると、そこから壁を這う様に光が流れ、ゴゴゴゴゴッという音を鳴らしながら壁が左右二つに分かれた。

 何の手品を使ったのかは不明だが、その侵入者は臆することなく中へと歩み、更に奥へと進んで行く。

 最奥に出ると、そこは広い空間で当然真っ暗な場所である。

 松明の光だけが頼りであるはずなのに、侵入者はそれを突然捨てて、目の前にある「鍵」の付いた本を掴む。

「鍵」が付いている。こう聞くと普通に聞こえるだろうが、実際は鍵が刺さっていると言った方が適切なのかもしれない。

 無用心にもその本の鍵穴に「鍵」が刺さったままなのだ。

 

 

「───…… 時は満ちた」

 

 

 侵入者は鍵を掴むと、その手に力を込め、バチバチと電気を走らせながらも引き抜いた。

 すると、箱だけではなく遺跡全体が揺れ始めたかと思うと、本の中からこの世のものではない別の何かが溢れ出た。

 解き放たれた者たちのその姿を一言で表現するなら「悪魔」。

 侵入者はその光景を目にし、そこで1人微笑む────。

 

 

 ─── これは全ての悪魔を封印し、悪魔の王となる為の物語───。

 

 

 

 

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 あぁ、何てつまらないんだろうか。つまらな過ぎて退屈だ。

 そう似ている言葉を何度も繋ぎながら賑わう街をトボトボと1人歩く男がいた。見るからに冴えないボサボサ髪と黒いコートを身に纏って、明らかに目立つ事を嫌っている。そもそも目立とうなんて考えたこともないだろう。

 彼は大神 恭也(おおがみ きょうや)というごく一般的な高校生だった。過去形なのはもちろん彼はもう高校生ではないからだ。卒業し、既に新社会人としての歩みを始めているだろうこの時期に職に着けていない。

 それもその筈だ。先程言った通りの見た目が反映された性格をしている。要は得意な事が一つもない。本当の意味で何もできない落ちこぼれなのだ。

 

 

「はぁ… また落ちた…」

 

 

 これでもう何社目だろうかと思うと、すぐに考えるのをやめた。思い出したくもない数字を叩き出すからだ。

 恭也自身もこんな自分が嫌いであり、変わりたいと心底願っていたが、そんな想いは到底叶うはずが無いと思っていた。

 夢は幻で、妄想に留めておいた方が自分の為だと考えている人間だった。

 

 

「…… さっさと帰ろ」

 

 

 それから恭也はため息を吐いて自宅へと帰る───。

 

 ─── 住宅街にある2階建ての家。そこが恭家の住む家だ。

 自宅へ帰るとまず手を洗い、うがいをし、風呂に入り、飯を食う。

 恭也はそんな日常を毎日続けていた。彼は実家暮らしであり、一人っ子で両親と共に暮らしている。

 父はまだ帰ってきてはいない様だ。母が夕飯の支度をしてテーブルに並べていた。

 そこへ恭也は静かに着席をし、飯が並べられるのを待つ。

 

 

「今日はどうだった?… まぁいいのよ。いつかは何とかできる筈だから」

 

 

 また恭也の表情から察してくれた。母は毎回同じ事を言ってくれる。何度も待ってくれた。

 そんな母や父に対して、恭也は何もできない。何もしてあげられない。辛くて苦しくて仕方なかった。

 

 

「… ごめん。また落ちたよ。どうしても人と話す時、色々思い浮かぶんだ。なんて言えば面接官は自分をよく見てくれるんだろう。もう自分の事なんて落とすつもりなんだろうかとか… 毎回だよ。毎回の同じ様に思い浮かんじゃうんだ。俺… 本当にダメな人間だ… こんなんじゃ受かる筈もないって分かりきってる筈なのに…」

 

 

 恭也はそう言うが、母はいつも通りニコッと笑って慰めてくれる。

 

 

「私の息子がダメな人間なら、その子を産んだ私もダメな人間になるわ」

 

「… 母さん」

 

「とにかくあなたは今が頑張り時よ。まだ19歳なんだからきっと見つかる。私はそう信じてるわ。だって私の息子なんだもの」

 

「…… ありがとう。母さん」

 

 

 だから、ごめんと言いたい。何もできない息子でごめんねと。

 父も帰ってきて家族揃って暖かい夕食を済ませたが、恭也の胸は晴れないままだった────。

 

 そしていつもなら寝てる時間帯である23時頃、恭也は目が冴えて眠れないでいた。

 明日も早く起きて就職先を決めないと行けないのに、一体自分は何も思って起きているのだろうか。

 

 

「うーん…」

 

 

 もういっその事と、恭也はいつも通りの黒いコート羽織って着替えを済ませて外へと出る。

 外は暗く、街灯の光があるだけの道をトボトボと歩く。どうせ今から街の方へと出向いたところで閉まっているだろうから結局行くところもない。

 少し散歩でもしていようとそんな道をただひたすら何も考えずに歩く。

 

 

「ふぅ」

 

 

 夜の冷たい風が心地いい。気分も大体落ち着いてきた。

 そろそろ0時になるから家に帰らないといけない。0時頃は何となく不吉な予感がするからだ。それにお化けが怖いというのも本音。

 家の鍵だけを持っただけだから取るものも何もないだろうけれど、こんな時間に襲われても誰も助けには来ないだろう。

 なので、家に帰ろうと足早に帰路をつこうとしていた。

 

 

「… ん?」

 

 

 すると、恭也の目の前に何かが落ちて来た。それは一冊の本で、この時間とその場所に落ちてきたのが何より不自然で恐ろしい。

 恭也はそれを無視してさっさと逃げようと思ったが、再び本が目の前に落ちてくる。

 もう怖くて怖くて仕方のない恭也は普段は絶対にやらないであろう全力疾走で家までの道を走った。

 だが、やはりこの本は自分をピンポイントで捉えており、必ず目の前に落ちてくるのだ。

 次第に恭也はこの本を取らなければ死んでしまうのではないかと思い始め、意を決してその本を恐る恐る手に取った。

 

 

「い、いったい何なんだよ…!」

 

 

 その本はまるで人の名前を書いたらその人物が死んでしまう本と似ている。

 だったら目の前に死神でも現れるかと、冗談混じりにそんな事を思って顔を上げる。

 ちょうど時計が0時を刺した頃、目の前には白い服を着た女性で、コスプレでは決してないだろう角と尾と牙を持ち、こちらを見て微笑んでいた。

 あぁ、そうか。自分はここで死ぬかと、そこで恭也の記憶はプツリと切れた。

 

 今宵も満月。月がとても綺麗だ────。

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

 恭也は自室のベッドの上で目覚めた。

 そうか。昨日の事は夢だったのだろう。服装も部屋着に変わっており、昨日出会った悪魔の様な女性、そもそも実際は出かけていないのだから会うわけもない。

 ここまでのことは全て夢の中での出来事だと自分に言い聞かせていた。

 

 

「…… 時間も10時くらいか… 寝過ぎたな…」

 

 

 久しぶりにぐっすり眠れた気がする。ここの所ずっと職探しで忙しかった。

 こんなにやっているのに何故受からないのかなと自分でも思うし、そんな無能な自分が腹立たしい。何がぐっすり眠った疲れただ。お前は何もしていない。

 

 

「畜生…」

 

 

 それから服を着替えてから下の階に行くと、いつも通り父と母、そして昨日見た白い服を着た悪魔の様な女性がいた。

 どうやらもう昼食を用意している様なので、恭也は椅子に座り家族揃ってテーブルを囲んで飯を食べ始める。

 

 

「…… ん?」

 

「あら? どうしたの?」

 

「いやいやいやいやいやいやいや待て」

 

 

 明らかにおかしいだろう。何がいつもの日常だ。あんた誰だ。このいかにも人間と違う女性がいるのに両親は何故普通なのか。

 その女性は恭也に気づくと目を輝かせ、頬を赤らめて嬉しそうに喋り出す。

 

 

「どうかされましたか恭也様? お身体の具合が… はっ! もしや昨日倒れた時にお怪我を!? 私はなんて事を…!!」

 

「あ、いや…… 待てっ!! そもそもあんた誰だ!? それに何で母さんも父さんも普通にしてんだよ!? 俺にしか見えないわけじゃないよな!? 昨日拾った本手にしないと見えないとかあるの!!?」

 

 

 混乱する恭也に父は「落ち着け」と一言だけ言った。

 いや、説明してくれ。落ち着くから今すぐに説明してくれ。

 

 

「… 実はお前は王の血を引く後継者だ」

 

「………… は?」

 

「俺と母さんは代々から年に一度、デモンティア達の封印を強める為に儀式を行っていた。結婚する事も必然ではあったが、俺は母さんが好きだ。そこは間違えるな」

 

「あ、うん。それはわかった。だけど、デモンティア…? 儀式…? 父さんは何を言ってるんだ…?」

 

「デモンティアはこの世の俗に言う悪魔だ。彼らは欲のまま、本能の向くままに生き、人間達の魂を願いと引き換えに食らう恐ろしい存在だった… だから、俺たちの先祖は悪魔達を使役する謂わば王となり、鍵に封印し、その力を使ってデモンティアを全て封印する事に成功した」

 

「…… で? そのーデモンティアって悪魔達は今はどうなってるの? 明らかにこの女の人がそれっぽいんだけど……」

 

 

 恭也がチラリと例の彼女を見るとうっとりとした表情を見せ、ずいっと近づいてきた。軽くホラーである。

 

 

「お呼びでしょうか!?」

 

「お、お呼びではないけど、君は一体誰なの…?」

 

「はい! 私はデモンティアナンバー1、全てのデモンティアの統括を任されている『エイル・ワン』でございます。王を愛し、何より恭也様を愛する者です!」

 

「は、はぁ……? なんかよくわからないけど… 俺が王の血を引くなら君は俺の……」

 

「下僕でございます!!」

 

「下僕!?」

 

「はい! あなた様の様な御人は私の様なものと対等であろう筈がありません! 私は王である恭也様に全てを捧ぐ者でございます!」

 

「あーいや、どうも… えっとその、エイルはそれでいいの?」

 

「あぁ…!! 今私の名前を…!!…… はい? それでいいとはどういう…?」

 

「だから纏めると先代が元々エイル達を使役していたのに、俺みたいなダメ人間なんかで釣り合いが取れるわけないでしょ? それに俺、そのー王の血を引いててもこんなだし……」

 

「…… 私は恭也様に一目惚れをしたんです」

 

「うん?」

 

「何度挫けそうになっても前に進み続けるあなた様の意思が私にははっきり伝わっております。まさに王たるその姿を見て恋を… 恭也様に愛を…… ふふっ、ふふふふふふふふっ」

 

「ちょ、怖いんだけどぉ!!?」

 

 

 ──── なんやかんやありエイルや両親から色々と話しを聞きある程度は整理することができた。

 父と母はそういう一族の中に生まれ、先代の封印した悪魔達が再び封印解き暴れぬように、代々から受け継がれた儀式を年に一度行っている。

 今、エイルという悪魔、デモンティアが現れたのはその封印が解かれてしまったからだと言う事。

 そして王の血を継ぐ父でも復活した悪魔を止める力がない為、諦めかけていたが、どうやら恭也がその血が1番濃く、悪魔を使役するに相応しい力を持っていると言う事だ。

 それからエイルという悪魔は自らが選んで、昔からずっと王の側近として共に戦っていたようだ。

 

 

「……… えっと、つまりエイルさん」

 

「そんな畏まらず!」

 

「いやさ… つまりはデモンティアって悪魔がまた蘇ったのなら今街中でパニックになってるんじゃないの? 魂を食べるんでしょ?」

 

「… いくらデモンティアが本能のままにと言えど、奴らも自分たちが復活したということは再び封印される事を察しているかと。奴らは今、欲の深い人間を見つけ、その魂を喰らう為に街中に潜んでいると思います… 慎重になっていると言った方が正しいかもしれません」

 

「んー…… じゃあこれから俺が悪魔を封印しなきゃいけないのか……」

 

「…? 何か気に障りましたか…?」

 

「いやぁ… 俺、未だに仕事に就けてないし、これ以上親の迷惑になるのは嫌なんだ。それに俺みたいなのが悪魔を封印なんて… 今も全部聞いて信じられないけど、それが本当ならそんな大それた事できる筈ないよ…」

 

「恭也様……─────!!」

 

 

 すると、突然エイルは何かを察知し、窓から街の方を見る。

 そして恭也の元に戻り、デモンティアが現れた事を彼に告げた。

 

 

「デモンティアが出た…?」

 

「はい。街の何処かまでは私の力不足で察知する事はできませんが、もう少し近づければ特定できます」

 

「…… わかった。行こう」

 

「…っ恭也様!」

 

「とにかくまず見てみるよ。実際に見ないとわからないから」

 

「流石です恭也様!… では、この本をお持ちください」

 

「あ… これって昨日の夜見つけた…」

 

「あなた様の為の… 王の力です」

 

「… よし、わかった。案内してエイル」

 

「承知致しました」

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

「はぁ…」

 

 

 1人のサラリーマンの男性がビジネスバッグを持って大勢の人で賑わう街中を歩いていた。酷く疲れているようで何度もため息を吐き、俯いて悲しそうな表情でバッグを見つめる。

 

 

(あぁ… やっぱり今日も俺の企画はダメ出しと説教のダブルパンチ…… 上司が俺にかける言葉は精々「次はもっとマシな物を考えてこい!」だ。はぁ… 何でこんな仕事についたんだろ。俺って一体何のために生きてんの……)

 

 

 サラリーマンは今の自分が嫌で嫌で仕方がなかった。こんな人生クソ喰らえと周りにある物全てに怒りが湧いている。

 そんな彼にどこからか囁き声が聞こえてきた。

 

 

「… ん? 誰だ…?」

 

「俺だよ俺」

 

「俺って…?」

 

「ほら… 目の前」

 

「目の前って…… うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

 

 目の前と言われて向いた先には明らかにこの世のものとは思えない怪物がいた。怪物というよりもその姿形は皆がよく想像する悪魔を具現化したような、誰しもが悪魔とわかる見た目をしている。

 サラリーマンは思わず尻餅をつき、手を使って何とか後ろに下がる。

 

 

「お、おま、え、ええええ… 誰だよ!?」

 

「おいおい… 周りを見てみろ。俺が見えてんのはお前だけだ。変な行動をすると目立っちまうぞ」

 

「え…?」

 

 

 サラリーマンが周りを見ると、悪魔の言う通り周りの人間は彼を憐れむような表情で見てその横を通り過ぎているだけで、悪魔自体は全く見えていないという風に素通りしていく。

 

 

「…… お、俺に何を求めてる…」

 

「何って? 決まってるだろう。願いだ」

 

「願い?」

 

「お前の望むことを俺が叶えてやる。もちろん叶えてもいいが、タダじゃない。仮にも悪魔だからな。それなりの代償ってのはある」

 

「代償…? それは何だ?」

 

「少しばかり俺の言う事聞いてもらう。なーに心配するなよ。願いを叶えられれば俺は長生きできる。お前は願いが叶って喜べる。まさにウィンウィンの関係って奴だ」

 

「…… 信じられるわけ…」

 

「なら、いいんだぜ? また会社に戻って地獄を見ても」

 

「…っ! なぜそれを!?」

 

「どうする? 俺はこの世界で生きていく為には、できる限り多くの人間の願いを叶えなきゃいけない。だからお前の元を離れると次は確実に会うという保証がない。今、ここで決断できればそれでいいんだがな」

 

「願いを……」

 

 

 この話が実にうま過ぎる話だという事はこのサラリーマンも重々承知している。

 だが、彼の心はもう揺らぎ始めていた。もうこんな馬鹿みたいに過ごさなくていいのならと考えてしまうと、この悪魔が言う言葉を信じてみる気になってしまうのだ。

 だから彼は言ってしまった────。

 

 

「俺を…」

 

「ん?」

 

「俺を誰にも負けない、誰にも指図されない。この世の理不尽を否定できる存在にしてくれ」

 

 

 そして悪魔は願いを聞きニヤリを笑う。

 

 

「─── 契約成立だ」

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

 ─── 街中のとあるビルが爆発し、辺りは人の悲鳴とサイレンの音でいっぱいだった。

 恭也とエイルは彼女が感じ取ったという悪魔の気配を辿り、このビルへと到着した。今でもここから悪魔の気配を感じ取れるというエイルに恭也は息を呑む。

 

 

「そうか… ここにデモンティアの1人がいるんだな」

 

「はい、間違いありません」

 

「…… 俺にできるのかな…」

 

「恭也様ならやれます。私はそう信じてます」

 

「エイル… わかった。何とか警察を掻い潜っていけないかな?」

 

「お任せください!」

 

「ん?───」

 

 

 それからエイルは恭也を抱えて隠していた翼を広げて空へと舞う。

 恭也は背中に柔らかい何かを感じながら、ビルが爆発した場所へと降り立った。

 

 

「… 助かったよエイル」

 

「いえいえ… ん? どうされましたか? そんなに前傾姿勢に…… ま、まさか抱えた時に腹部を痛めましたか!?」

 

「いや違うんだ… 気にしないで…… というか暫く近くに来ないで、お願い。これバレたら人として最低だから、いや、引かれる。いくら君でも引かれる… うん」

 

「…?」

 

 

 暫くして収まりがつくと、恭也はエイルの言う気配のする方向へと歩いていく。段々と空気が重苦しくなってくるのがふつふつと伝わる。

 この先に悪魔がいるんだと思うと、心臓の鼓動が速くなり、その度に深呼吸をして自分を落ち着かせた。

 

 

「… そちらの部屋におります」

 

「この部屋か。この部屋に… デモンティアがあるんだよね」

 

「はい」

 

 

 そして恭也は最後の深呼吸を行い、そのドアを思いっきり開き中へと入る。

 中にはこちらの気配に気付いていたのか、先程の悪魔が机の上に座って恭也たちを待っていたようだ。

 

 

「ようやく来たか。エイルに… 人間? 何で人間がこんなところに…… なるほどそうか。そいつが次期王って奴か」

 

「お前がデモンティア…… それ以上暴れるのはやめてほしい」

 

「ほう? 何故?」

 

「何故って… 人が嫌がるから…」

 

「何故?」

 

「危ないだろ…? そんなことしたら…」

 

「何故だって聞いてんだ。俺は別に嫌な思いはしないし、そもそもあいつらは俺を認識する事すらできない下等な奴らだぞ?」

 

「認識できない?」

 

「俺たちデモンティアは人間に見えたり見えなかったりできんだよ。そんな事よりお前は俺をどうする気だ? 封印する気か?」

 

「そ、そうだ」

 

「できるのか?」

 

「それは…」

 

「…… まぁいいや。どっちにしろ封印されるんだったら… 軽い抵抗くらいはさせてもらうか!!」

 

 

 そのデモンティアはいきなり恭也に向かって鋭い爪を突き立ててきた。

 全く反応できなかった恭也は棒立ちのまま切り裂かれそうになったが、間一髪のところでエイルが彼を持ち上げて避ける。

 

 

「…っ! ご、ごめんエイル」

 

「いえ、お怪我はありませんか?」

 

「ないけど… どうしようこれ」

 

「私は今の力では『ビーツ』に及びません。ですが、恭也様が先程の本を使う事ができるのならこの状況を一変できます」

 

 

 どうやらあの悪魔はビーツというらしいが、この本を使えと言ってもどう使えばいいのだろうか。そもそも自分はこの本を使う資格があるのだろうか。

 そう考えていると再びビーツの爪が恭也に迫る。

 

 

「しまった…!!」

 

「恭也様!!」

 

 

 また間一髪のところで躱す事に成功したが、その時、エイルは掠ってしまったようで腕に爪の痕がつき、そこから血がタラリと流れる。

 

 

「エイル!!」

 

「大丈夫です恭也様。私に構わずその本の力を解き放ってください!!」

 

「この本の力…… 俺はできるのかな…?」

 

「あなた様だからこそできるのです。私は恭也様を信じております」

 

「………」

 

 

 何度思ったか。このままで本当にいいのだろうかと。

 自分を変える為の努力を今までしてきたか、いや、していた記憶すらないほど自分は自分に諦めていたのかもしれない。

 またこうして決断できなければ、こんな自分を命を張ってまで守ってくれている彼女の心すら無駄にしてしまう。

 そんな事は絶対に嫌だ。何度も同じ事の繰り返しはもうしたくない。

 恭也は覚悟を決め、ゆっくりと立ち上がりビーツを睨みつける。

 

 

「… ん? ついにやる気になったか?」

 

「─── ひれ伏せ」

 

「あ?」

 

「俺は悪魔の王… お前達を再び封印し、世界に安寧をもたらそう」

 

「な、何言ってんだお前…」

 

 

 すると、恭也の持っていた本は闇に包まれたかと思うと、その姿を変えて「デモンドライバー」へと変貌した。

 エイルは本の力が解放されたことを見届け、恭也に跪き、懐から鍵を取り出し、それを恭也に渡す。

 

 

「これは?」

 

「こちらは『デモンティアイズキー』。私の力を宿した『エイワンティアイズキー』と言います」

 

「… わかった。使わせてもらう」

 

 

 恭也はキーを受け取ると、自然に腰へとデモンドライバーを装着する。

 そして右腕を斜め下へと伸ばし、エイワンティアイズキーの持ち手の部分のボタンを押す。

 

 

《デモンドライバー!!》

 

《エイワン!!》

 

 

 キーを起動させ、そのままデモンドライバー右の鍵穴へと差し込むと、バイオリンで引いているような待機音が流れ出す。

 

 

「─── 変身ッ!!!」

 

 

 掛け声と共にキーを捻って、デモンドライバーの中央の右側にある本が開き、本の中にキーに宿ったデモンティアが映し出される。

 

 

《開錠!!》《憑依!!》

 

 

 そして本が開かれ、隣にいたエイルが宙へと舞い、元ある悪魔の姿へと戻って恭也に投げキッスをすると、その身体に憑依しアーマーを形成する。

 

 

《悪魔の名はエイル・ワン!! 1の数字を持ち、その力の全てを王に捧げる者!!》

《スタンドエイワン!!》

 

 

 全身が鍵穴だらけのその姿は王というには些か変ではあるが、その重厚たる姿は王と言っても差し支えはないだろう。

 これこそが「仮面ライダーメレフ スタンドエイワン」。デモンティアの1番、エイル・ワンが憑依し誕生した悪魔の王。

 

 

「行くぞエイル」

 

「承知致しました」

 

 

 そしてメレフは変身と同時に召喚した剣「メレフキーブレード」という鍵にも似たその剣を手に持ちビーツを斬りつけた。

 

 

「ぎゃぁ…!!」

 

「ふんっ!!」

 

 

 初めてとは思えないほどの剣捌きでビーツに攻撃の隙を与えずに連続して攻撃を浴びせる。ビーツが攻撃してこようと、その装甲の前には歯が立たず爪を痛そうに撫でている。

 そんなビーツに容赦をせず再び斬りつけ、最後にもう一撃と力を込めて横一閃に切り抜けた。

 すると、その圧倒的な力により吹き飛ばされたビーツはビルの上から墜落する。

 

 

「凄い… 身体が軽いし、あいつの攻撃も全然痛くない。これが王の力…… それとエイルの力か」

 

「あぁ… 長年この時を待っておりました…!! 恭也様と一つなるこの瞬間!! 私は今… 世界で一番幸せな悪魔… いえ、女でございますッ!!!」

 

「あ、うん…… さて、奴にはまだ仕置きが必要だ」

 

 

 それからメレフはビルの上から飛び降り、背中からエイルの翼で空を飛びフワリと地面に着地する。

 ビーツはヨロヨロと立ち上がると、爪を立て、その爪をメレフに向けて威嚇している。

 

 

「こ、これが悪魔の王の力か…!!」

 

「哀れだなビーツよ」

 

「なにぃ!?」

 

「今、この王が楽にしてやろう」

 

「さ、さっきからお前性格変わりすぎだろ!!? 何があったんだよそれ!!?」

 

「お前にはわからん。鍵の中で考えるがいい」

 

「ひっ…!!」

 

「─── 眠れ、悲しき悪魔よ」

 

 

 それからメレフは剣を地面に突き刺し、キーのボタンを押してから、再びキーを捻り、空中へと飛び立って片足をビーツへと向ける。

 そのまま急降下し、赤黒いエネルギーを纏ったその足でビーツを蹴り飛ばす。

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!」

《エイワン!! シャットアウト!!》

 

「グワァァァァァァァッッッ────!!!!!」

 

 

 凄まじい爆発を引き起こし、ビーツは木っ端微塵にはならなかったものの、ボロボロになって地面へと倒れた。

 エイルはそれに近づくようにメレフに頼むと、メレフはビーツに近づいて膝をつく。

 

 

「それから私のキーをビーツの胸に挿していただけますか?」

 

「なに?」

 

「恭也様が攻撃した箇所を見てください。鍵穴が浮き出ていると思います」

 

「…… 確かにそうだな。これが封印する為の穴という訳か」

 

「はい。その通りでございます。では、お願い致します」

 

「わかった。ここにエイルのキーを…」

 

 

 キーを差し込み捻ると、ビーツの身体はキーへと吸い込まれて跡形もなく消えてしまった。どうやらキーに吸い取られたらしい。

 

 

「… これで封印完了か?」

 

「さすが恭也様! 呑み込みお早い… 好きです。愛しております」

 

「あ、あぁ……… ん? 何だこれは…?」

 

「……… はい、これはそうです」

 

 

 メレフが先程のビーツを封印した場所を見ると、スーツを着た男が倒れていた。

 この男性はあの戦いの最中どこにもいなかったはずなのに、突然彼らの前に現れた。一体なんだというのだろうか。

 そしてエイルはその正体について話し出した。

 

 

「これは悪魔だった者です。恭也様」

 

「悪魔だった者…?」




はい!仮面ライダーメレフ始動です!いかがだったでしょうか?
ついに3作目に突入致しました。ありがたや…ありがたや…
1話目という事なので詰め込み過ぎると訳分からなくなるので次回に移します。ではでは、これからも仮面ライダーメレフと私、辰ノ命をよろしくお願いします!!
ついでに前作前々作仮面ライダートリガー・アベンジもよろしくお願いします!!

では次回、第2解「我は無、我の力」

次回もよろしくお願いします!!
※必殺音追加しました


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第2解「我は無、我の力」

皆さんご無沙汰しております。

前回、何の取り柄もない人間「大神恭也」は悪魔の王としての宿命を背負っているという信心られない事実に困惑したが、自分を変える為に人々を守る為に「エイル・ワン」という悪魔の力を使い、仮面ライダーメレフへと変身する。そして一体目の悪魔ビーツを封印すると、その場に残ったのは人間の姿であった…

それではどうぞご覧ください。


 昨日のあの戦いを気に恭也の人生はガラリと変わった。

 自分が本当に悪魔の王なんかになれるのかな、と寝て起きてもそんな想いが頭を過ぎる。

 だけど今はその宿命とやらに乗っかってみようと思う。何もできない自分を変える為のチャンスであり、自分が誰かの為に役に立てるのならやるしかないんだ。

 

 

「……… エイルよ」

 

「はい、なんでしょうか恭也様?」

 

「添い寝する事を許可した覚えはない」

 

「… はっ! 申し訳ございません! 隣が不自然に空いていたもので…!」

 

「空けてない! 壁寄りで寝る方が好きなだけなの! 俺はっ!…… っとと…」

 

 

 恭也は昨日からもう決めた。王になるのならまずは威厳を見せなければならない。

 だからこうして何も知らない自分を慕ってくれているエイルや他の悪魔達の為にも、見た目はともかく言葉の使い方だけはそれっぽくしなければと思っていた。

 

 

「それより昨日の… ビーツ? だったか? そのデモンティアは封印されてどうしているんだ?」

 

「昨日のビーツは私の直属の部下ですので、私のキーの中に待機しております」

 

「直属の部下…? エイル、お前はデモンティアの統括を任されているそうだな?」

 

「はい! おっしゃる通りです!」

 

「…… 俺はそもそもデモンティアの数やお前達の組織? 構成というのか? そう言ったものを把握していないのだが…」

 

「こ、これは申し訳ございません!! 本来ならば説明しなければならない事を後回しにしてしまって…!! この失態は私の身体で…!!」

 

「いらんいらんいらん!! やめろ!!…… とにかく俺はそれを知りたい。説明を頼む」

 

「承知しました!…… デモンティアは私含め72体存在します。そして特定の数字を持つ者は同じ位の者たちを使役し、今以上の力を解放する事が可能となっております」

 

「くらい…? 位とはなんだ?」

 

「私が1の数字を持つ悪魔ですので、その下の2〜9までの数字が私の直属の部下となっております。なので、順当に行くのであれば、10の数字を持つ者は11〜9までの悪魔を使役し、20の数字を持つ者は21〜9までの悪魔を… という風に72番までこのような構成になっております」

 

「ほう… つまりお前たちデモンティアは各位の数字ごとに隊長のような立ち位置のやつがいるという事か」

 

「左様でございます」

 

「… しかし、72番目ともなると人数が3人しかいないのか。そうなると60番目と混合と考えても…」

 

「あ、72番目は……──── っ!」

 

「どうした? いや、そういう事か」

 

「はい、再びデモンティアが現れたようです───」

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

 いつからだろうかと数年前から繰り返し頭の中で呟いている。

 男は今年で40歳となり、良い妻をもらい結婚もして子供もいて、とある会社の部長になって金銭にも困らず、毎日毎日大変だが幸せで豊かな暮らしをしていた。

 しかし、何故か男は満たされなかった。彼は今、自分が特別幸せだとは思っていない。それどころか不幸とも思っている。

 

 

(今日はうちの部署に新人が入って来るんだったなぁ…)

 

 

 今すぐ他の場所へ行ってくれと心の中で願う。

 身勝手極まりないのだが、男はもうこの忙しさにはウンザリとしていた。

 なんでも手に入ったし、これ以上のものはないと最初は自分もそう思っていたのに、結一番大切なものをなくしているのに気づいたのはいつからだろうか。

 

 

「時間がない…」

 

 

 自分の時間がない。家族や仕事、家に帰っても仕事仕事、自分の時間も取れやしないのに幸せだと?ふざけるな。上に立って見てからそう言ってくれよ。

 男は苛立ちながら自分の勤める会社へと到着し、廊下を歩いてその角を曲がると不思議な事に人がいなかった。

 

 

「あれ…? 誰もいない?」

 

 

 男が会社に着く時間帯はいつも1人だ。鍵を開けるのも男がやる為、この会社は男1人だけの空間となっている。

 この静寂した時間が好きというのもあり、いつも早くに家を出てくるのだが、今回ばかりは違うのだ。

 今日は大事な会議であり、全員この時間に来ると決まっていたはずである。なのに、誰1人としてそこにはいなかった。

 なら、会議室の方にいるのではないかと普通は思うだろう。その会議室ですらドアが開かれていないし、人の気配すらない。

 

 

「一体どういう事なんだ───」

 

「さぁ、どういう事だろうね?」

 

「……っ!!?」

 

 

 男は背後から突然声がしたので驚いて振り向き、声の主の姿を確認してからまた驚いた。

 それは悪魔だった。信じられないが、どこからどう見ても悪魔としか言いようがない姿をしている。鋭い牙に鋭い目、鋭い爪に鋭い尾。明らかに普通ではない。

 

 

「な、なんだ君は…!!」

 

「僕は『シィスリ』。君の味方だよ」

 

「私の…?」

 

「僕と契約をしようか。契約を交わせばなんでも手に入る。君は時間が欲しい。そうだろう?」

 

「何故それを…… だが、時間なんてそんな物どうやって…」

 

「君もわかる通り僕は悪魔だ。なんでもできる力を持っている。どうする?」

 

「どうすると言われても… 悪魔と言うならきっと裏があるはずだ。何か欲しいのだろう? 代償に魂とか」

 

「あーあーいらないいらない。僕が欲しいのは君の笑顔だ」

 

「………」

 

「信じてないね? まぁ別にいいよ。本当にこれからも時間がないままに、家庭に追われ、仕事に追われ、そうして生涯を自分の時間もなく終える。他人の為だけに使って自分に使えない。他人はそれを普通と思い、当然と思っている。君はそんな奴らの為に時間をくれてやるのかい? もう何年と生きれるかもわからない寿命… 時間をさ」

 

「………… 私は嫌だ」

 

「んん?」

 

「この先、他人に私の時間が取られるなどもうごめんだ」

 

「だからどうしたい?」

 

「… 契約だ。契約する」

 

「あっ…… ふふふっ、いいね。いいよ。じゃあ契約成立という事で────」

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

「エイル」

 

「はい!」

 

「そのデモンティアは人間の魂を喰らうわけだが、ビーツの一件で魂を喰われたはずの人間が何故生きているんだ?」

 

 

 現場へと向かう恭也は昨日のビーツの一件が気になっており、エイルにその疑問を投げ掛けた。

 恭也の言う通りデモンティアは人間の魂を喰らう。だが、ビーツは魂を喰らうどころか人間の身体に憑依していた。

 それを聞かれたエイルは笑顔が消える。

 

 

「それは…… 恭也様が変身なさるお姿メレフは私たちデモンティアの力を憑依させて初めて完成致します。それと同様に封印を解かれたデモンティア達もただの人間に憑依する事が可能です。しかし、恭也様のような特別な存在ではない限り、()()()()()という事は()()()()()という事です」

 

「まさかビーツはその人間に憑依後、縁のある者達を騙して魂を喰らおうとした訳か」

 

「はい。我々デモンティアの力は封印されて以降、その力の大半を失ってしまいました。私もその1人です… 契約など交わさずとも魂を喰らう事など容易でした。ですので、恭也様のお力さえお貸しいただければ、弱りきった我々デモンティアは真の力を発揮できるのです」

 

「容易にね……」

 

 

 容易か。このエイルも自分を慕ってはいるが、本当は他のデモンティア達のように人間の魂を喰って生きていたのだ。そんなのわかりきっている。

 恭也はエイルは信用したいと思っていた。昔から王に仕え、王の為に戦って来てくれた。そんな彼女を信じなくては王として威厳や誇りはどうする。

 …… あれ? そういえば、エイルは何故王に仕えるようになったんだ? 彼女はああ言ってはいたが、実際の所は具体的な内容というか根本の部分の話しがない。

 

 

「… エイル──」

 

「…っ! 恭也様! あちらに倒れている人間が!」

 

「なんだと…!?」

 

 

 そこには男が倒れていたが、周りを見ると1人どころではなく10人以上は気を失って倒れている。

 恭也は目の前にいる男に何があったと問いかける。

 

 

「ば、化け物が出たんだ… みんなそいつに襲われて…」

 

「やはりそうか… 怪我はないのか?」

 

「怪我はないが、早く警察に連絡を…!!」

 

「…… わかった。とりあえず連絡してと」

 

 

 そして恭也は元の口調で警察に連絡し、エイルに場所を聞きながらデモンティアを追う。

 どうやらここら一帯から既に離れており、別の場所へと移動しているようだった。

 

 

「一定箇所にいるというわけではないのだな」

 

「きっとこのデモンティアは慎重なのかも知れません… ならば、シィスリの可能性があります。奴は慎重派ですので場所を移動し、我々の追跡を逃れるつもりでしょう」

 

「逃れられるのか?」

 

「いえ、逃しません。この私にお任せを!」

 

 

 エイルは翼を広げて空を舞い、上空からデモンティアの反応がする方に目を向ける。

 この反応ならまだ近くにいるはずだ。王であるこの方の為なら秒で追跡し、捉え、封印し、そして…

 

 

「また添い寝を試みます!!!」

 

「… は?」

 

 

 こいつは何を言っているんだという目で見る恭也だが、逆にその視線が彼女を刺激したらしく身体をくねらせている。

 そんな中でも流石王の側近で全ての悪魔を統括する悪魔だ。しっかり指が悪魔があるだろう方向を示していた。

 

 

「とにかく行くぞエイル…」

 

「はい!」

 

 

 居場所がわかった2人はその方角に向かって走り出す────。

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

 森の奥深くまで入ってようやくシィスリと思われる悪魔を追い詰めた。

 見た目はビーツと似ているが、ビーツより細身で目が丸い。

 

 

「追い詰めたぞ…… えっと」

 

「確定しました。奴はシィスリです」

 

「そうだシィスリ。お前もここで封印してやろう」

 

 

 しかし、シィスリは余裕の笑みを浮かべ、恭也を相手に頭も下げずに肩にポンッと手を置く。

 その行為に今にも飛びかかりそうな従者を無視し、恭也はシィスリに再び顔を向ける。

 

 

「何が目的だ」

 

「これはこれは現王。どうやらお怒りの様だね」

 

「少しな」

 

「… 目的もこうも僕たちデモンティアは人間の魂を喰らって生きているんだ。そこのエイルから聞かなかったかい? デモンティアだって命はある。永遠じゃないんだ。君たちがやっている食べるという行為を僕らはただしているだけさ。そこのエイルだって──」

 

「──!! やめなさいシィスリ!!」

 

 

 エイルはシィスリが何かを言おうとすると血相を変え、彼が喋るのを横から入って止めた。

 

 

「エイル…?」

 

「す、すみません…」

 

「…… 訳は後で聞こう。それよりもシィスリ。お前の言うことは確かに正しい。だが、俺もお前たちを好きにさせるわけには行かない。デモンティアを封印する。その為に俺は戦う」

 

 

 恭也は腰にデモンドライバーを装着し、エイワンティアイズキーを手に持ち起動させる。

 

 

《エイワン!!》

 

「ふーん、現王も信念がある人か」

 

「借りるぞエイル」

 

 

 そしてエイワンティアイズキーをデモンドライバーの鍵穴に刺し込み構える。

 

 

「変身ッ!!!」

《開錠!!》《憑依!!》

 

 

 鍵を捻るとエイルが憑依し、強固なアーマーが展開され、恭也は仮面ライダーメレフへと変身する。

 

 

《悪魔の名はエイル・ワン!! 1の数字を持ち、その力の全てを王に捧げる者!!》

《スタンドエイワン!!》

「シィスリ。お前を封印する」

 

「できるかな? 僕には回避手段あるよ?」

 

「ならば… 見せてみるがいい!!」

 

 

 メレフはメレフキーブレードを召喚し、シィスリを縦に切り裂く。

 しかし、切られたシィスリは特に何もしない。普通この場合腕を使って防御する姿勢や少し後退するなどといった戦法を取る筈だ。

 そんなシィスリに違和感を覚えつつもメレフは剣を振り続ける。

 

 

「はぁっ!!」

 

 

 なぜ攻撃をしてこないのか。なぜ攻撃を受け続けるのか。

 奴の狙いがなんなのかわからない。わからないのだが、切り付ける度に嫌な気持ちになってくる。

 今までやった事がなかったからわからなかっただけだった。今ならわかる気がする。人を切るという感覚だ。

 

 

「んっ…!?」

 

 

 すると、メレフはシィスリを切り付ける手前でピタリと剣を止めた。

 シィスリはニヤリと笑って鋭い爪で切りつけてから、両腕を伸ばして手を組むと、ハンマーの様に上からメレフを叩きつけた。

 

 

「ぐはぁっ…!!」

 

「恭也様!!? どうされたのですか!!?」

 

「…… ダメだ」

 

「え?」

 

「攻撃できない…」

 

「何故ですか!!?」

 

「お前も見えている筈だ」

 

「あっ…!」

 

 

 シィスリの身体からは憑依した人間の顔が見えていた。

 彼の言う回避手段とは自分の憑依した人間をチラつかせ、メレフの攻撃を封じようというモノだった。

 先ほどの恭也の発言に反応したシィスリは先代の王の様に信念があると睨んだ。

 つまり恭也は人間だということ。デモンティアは本能のままに生きる生物。人間は何か信念が有ればほぼ確実に曲げる事はない。ましてや王の器となる人間が同族を斬るなどあり得ない。それが封印エネルギーを込めたキックだとしても傷つける事を拒む筈だ。

 だからシィスリは勝ちを確信していた。

 

 

「すまん… エイル」

 

「恭也様…」

 

 

 これは勝機と見たシィスリは再び腕を伸ばして鞭のようにしならせてメレフを四方八方から叩きつけた。

 いくらメレフの装甲が頑丈といえど限度は必ずある。このままではいずれにしろ破壊される。

 すると、エイルは恭也にドライバーにキーを回すよう頼む。

 

 

「それをすればメレフの力が……!!」

 

「いえ、エイワンティアイズキーのボタンを押さずにキーを捻ってください。きっと貴方様のお役に立てる筈です」

 

「…… わかった」

 

 

 そしてメレフはシィスリの腕をタイミング良く掴んで振り回して投げ飛ばす。

 そのほんの少しの隙を利用し、デモンドライバーに挿したキーをボタンを押さずに捻る。

 

 

《開錠!!》《憑依!!》

《エイワン!! ビーツ!!》

「な、なんだ… 力が溢れてくる…!!」

 

 

 シィスリは体勢を立て直し、再び腕を伸ばして拘束しようと試みるが、メレフは素早く剣を振って腕を弾き飛ばした。

 ただ先ほどよりもパワーアップしているのか、弾き飛ばした腕に引っ張られてシィスリは転んでしまう。

 

 

「これが同じ位の者同士、そして属性を持つ者の共鳴により起こる力。どうぞ私の力を貴方様のお力に…」

 

「だが、これでは人が…」

 

「恭也様があの人間を傷つけたくないという想いが強ければ必ず答えましょう。だから私たちの力をお使いください。貴方様の願う結末をお見せ致します」

 

「そうか… そうだ。俺は王だ。何もできない、何も成し遂げられない人生など2度とごめんだ…!!」

 

 

 そしてメレフはキーのボタンを押して飛び上がり、エイルとビーツの力が混ざり合った前よりも強力なライダーキックをシィスリに向けて放つ。

 

 

「こ、これを見てよ!! 人間があるんだよ!!? 人間がここにいるんだ!! 僕の中に…!!」

 

「安心しろ」

 

「え…?」

 

「俺が助け出す!!」

 

「ひぃぃ!!?」

 

「眠れ、悲しき悪魔よ!!」

《エイワン!! シャットアウト!!》

 

 

 メレフのライダーキックはシィスリに炸裂し、封印のエネルギーが身体の中を巡って爆発を引き起こした。

 そしてメレフはキーを抜き、シィスリにできた鍵穴に差し込んで捻り封印を完了させる。

 

 

「…… ふぅ」

 

「さすが我が愛しの恭也様!! 2人の悪魔の力を使いこなすとは…!! 好きです!! 凄く好きです!! 愛してます!!! 好きッッッ!!!!!」

 

「さて、彼を連れて帰るとしよう。ここに置いていくわけにもいかないからな」

 

「承知しました恭也様好きです好き」

 

「うむ、好きが語尾になっているようで何よりだ」

 

 

 メレフは悪魔の離れた男を抱えて街へと戻る───。

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

 シィスリに憑依された男は退院後、家路に着いたが、道中でもあまり気の利いた会話ができなかった。

 悪魔と契約したなどと信じてもらえる筈もない。それに信じてもらえる以前にそんな奴とあんな理由で家族すらも捨てようとした自分が情けなくて仕方がなかった。

 

 

「……… あのみんな」

 

「さぁあなた、早く家に入ってあげて」

 

「え?」

 

「いいから」

 

 

 男は妻に急かされながら家に入り、リビングへと行くといきなりクラッカーの音が響き渡る。

 そこには息子と娘がニコニコとしながら待っていた。テーブルにはケーキや豪勢な料理が並んでいる。

 

 

「こ、これは…」

 

「パパ退院おめでとう!!」

 

「大丈夫で良かったね!!」

 

「…… この子達がね? あなたが退院するから美味しいもの作ってっていうから、ふふっ。久しぶりに腕を振るっちゃったわ」

 

 

 男の目から自然に涙が溢れてくる。

 妻達は彼を心配しているようだが、彼はそんな妻達に感謝の言葉と謝罪の言葉が頭の中をぐるぐるとしていた。

 その涙は嬉しい気持ちもあり、申し訳ない気持ち、色んな気持ちが篭った涙だった。

 だから男はそんな気持ちを全てこの一言に収めた。

 

 

「愛してる…!!」

 

 

 そして男は妻と子供達を抱きしめ再び泣き始めた─────。

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

「これで2体か… エイルを含めて残り69体か。中々骨が折れそうだ」

 

「私はもう貴方様の心に封印されてます!!」

 

「あ、うん… それでだエイル」

 

「はい? なんでしょうか?」

 

「シィスリの言っていた言葉の意味はなんだ?」

 

「…っ!! そ、それは……」

 

「教えてくれ」

 

「あの……」

 

「……… そうか。よくわかった」

 

「え?」

 

「お前が話したくないのならそれでいい。だが、もしも話せる機会ができたら話してほしい。今はとにかくお前と共にデモンティアを封印する。それまでよろしく頼むぞエイルよ」

 

「恭也様…… はい!」

 

 

 恭也は優しく微笑むとエイルもそれに合わせて微笑んだ。

 2人の戦いはまだ始まったばかりである────。

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

「─── 全くよぉ!! 俺の部下のデモンティアは気合が足りねぇ!! 本能だけに支配されやがってちくしょぉぉぉぉ!!! … っと、早く王様のところに行って俺も熱くなりてぇなぁ!! 言うこと聞かねぇ馬鹿ども封印して頭冷やす… いや、燃やしてやらねーとなぁ!!!」

 

 

 そんな恭也たちの元に熱く燃える悪魔が近づいていた───。

 

 




2週間経ちましたね(汗
なんでエイルに対して誰も反応しないのー?とかデモンティア関係の事はまた次回説明いたします!

第3解「我と戦い、我の力となれ」

次回もよろしくお願いします!!

※また必殺音入れ忘れたので入れました申し訳ない…


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第3解「我と戦い、我の力となれ」

皆さんご無沙汰しております。いや、ご無沙汰し過ぎました。本当に申し訳ない!!

前回、王としての義務を果たすべく無理矢理性格を作って振る舞う恭也。エイルそんな恭也にキャーキャー喚いていると、デモンティア3番シィスリが出現する。変身し追い詰めるメレフだったが、シィスリの小賢しい手に苦戦する。しかし、メレフは封印したビーツの力を使い見事に封印した…

それではどうぞご覧ください


 この日、恭也はふらふらと外へ出て散歩していた。

 デモンティア達の標的にされている人たちの事を自分なりによくよく考えてみて、その被害者2人はどちらも社会人だと言う事に気づいた。

 どちらの理由もそれぞれ違うだろうけれど、結局は誰もが何かの為に仕事をしている。何かを欲しているからやっている。

 だから何をしようと人間から欲が消えることはない。戦い続けるしかない。

 

 

「…………」

 

「恭也様?」

 

「うぉっ!?… と、エイルか。どうした? 家で待っていろと言った筈だ。もしデモンティアが現れたとしてもすぐに駆けつける事は可能であると言ったのはお前だろう?」

 

「はい。ですが、恭也様のお側に居たくて…」

 

「そうか… いや、ダメだ。今日は1人でいたい。帰路に着け」

 

「何故ですか!? 貴方様のお側にてこの身を呈してお守りするのが私共の務めでございます!!」

 

「… お前はこの俺がデモンティア如きに遅れを取ると?」(そもそも1人じゃ何もできないんだけどね…)

 

「いえ、そんな滅相もございません! ただ…」

 

「ただ?」

 

「恭也様の隣で恭也様のお顔を見ながら恭也様と共に歩ければいいなと… ふふふふっ、ふふっ」

 

「すんごい怖いよ…」

 

 

 そんな事を話していると人混みの中から悲鳴声が聞こえてきた。

 2人は急いでその声のする方へ言ってみると、そこにはデモンティアがおり人々を襲っていた。目立った動きをしないデモンティアだったが、ここに来て中々攻めてきたものだ。

 

 

「エイル、あの2体は?」

 

「デモンティアナンバー4と5。『デイフォウ』に『イーファイバ』です恭也様。ですが、どちらも貴方様には及びません」

 

「いいだろう。早急に対処する」

 

 

 恭也は腰にデモンドライバーを巻き付け、エイワンティアイズキーを起動させてドライバーの鍵穴に差し込み、放ってドライバーの本が展開される。

 

《開錠!!》《憑依!!》

《エイワン!!》

 

「変身ッ!!!」

 

《悪魔の名はエイル・ワン!!1の数字を持ち、その力の全てを王に捧げる者!!》

 

 

 メレフへと変身した恭也はメレフキーブレードを呼び出し、デイフォウとイーファイバに向けて剣を振るう。

 彼らはその身に斬撃を喰らうものの、すぐさま体勢を立て直し、デイフォウがメレフの剣を掴み、イーファイバが隙をついて背中に蹴りを食らわせる。

 

 

「くっ…!?」

 

「ケケケッ!!」

 

 

 やはり2体同時に相手にするのは得策ではない。

 そしてメレフは一度後退し、2人の動きに注意しながら剣を構えてカウンターを狙う姿勢に入る。

 まずは敵を1体に絞り、そこでカウンターを喰らわせて一撃で仕留められれば1対1に持ち込めるはずだ。自分の腕を信じる必要はあるが、やるだけやってみるのもいいだろう。

 

 

「エイル。奴ら2人の能力差は?」

 

「はい。デイフォウは力が強く、イーファイバは機動性に優れます。恭也様のメレフとしてのお姿ならデイフォウとは互角であり、イーファイバには速度で劣ってしまいます」

 

「イーファイバの動きを封じる事はできるか?」

 

「あなた様の為ならば必ず成し遂げて見せましょう」

 

「頼んだぞエイル」

 

「お任せください」

 

 

《開錠!!》《憑依!!》

《エイワン!! ビーツ!! シィスリ!!》

 

 

 鍵を2回捻ると、エイルに加わり2体の悪魔たちの力がその身に宿り、メレフの力を今まで以上に高める。

 ビーツ1人だけの力とは違い、シィスリが加わった事で属性の力がもう1段階解放された。

 

 

「…っ… 凄まじい力だ。1人加わってこの重さ」

 

 

 メレフとしてこの力を完全に制御したという訳ではない。

 まだまだその力は未知数ではあるが、3人の悪魔が憑依しただけで全身を巡る熱さ。重さ。強さ。

 これら全てを支配してこその王としての器。これくらいなんて事はない。支配して見せようじゃないか。

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁっ…!!!」

《エイワン!! シャットアウト!!》

 

 

 そしてメレフは悪魔たちのエネルギーを剣に集中させ、デイフォウとイーファイバに向かって剣を水平に振るい溜めたエネルギーを弾き飛ばす。

 その凄まじいエネルギーの刃に2人は切り裂かれ、まともにダメージを受けてしまった事でようやく地面に膝をつく。

 

 

「これで終わりだ。お前達も今すぐに封印してやろう」

 

「ケケッ…」

 

「ん? 何がおかしい?」

 

「… 足元がお留守だぜぇ」

 

「──っ!? しまった…!!」

 

 

 どうやらイーファイバは相当なタフネスの様だ。膝をついたからかなりのダメージを期待し油断をしてしまった。

 しかし、実際は構えているだけ。すぐにでもメレフにタックルを食らわせられる様に構えていただけだ。

 だからこうして懐に入られ地面に叩きつけられてしまう。

 

 

「くそっ…!!」

 

「恭也様!!!」

 

 

 イーファイバが両手を組み拳というハンマーを作り出すと、メレフの顔面に向けてその拳を振り下ろした。

 この状態ではどうする事もできない。ダメなとわかってはいるが、手で顔を遮り防御をしようとした時だった。

 

 

「──っ!!?」

 

 

 次の瞬間、とてつもない熱気を感じたかと思うと目の前の悪魔たちが一瞬にして炎に包み込まれる。

 今までの悪魔とは比にならない程の力を感じたメレフは、その炎のする方へと目を向けた。

 すると、そこには燃えるような髪と赤い鎧を身につけたデモンティアが立っていた。

 

 

「久しぶりだな!! 王ッ!!」

 

「あ、あぁ… 久しぶりも何も俺はお前を知らないが…」

 

「だろう!!… なら、このバカ共をさっさと封印して俺の話を聞いてもらわねぇとな!!」

 

「何はともあれ助かった。礼を言う」

 

 

 そしてメレフはプスプスとこんがり焼かれたデモンティアを鍵に封じ込め、よくわからない熱くて赤い奴の話を聞く為に自宅へと戻る────。

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

「── 改めて名乗らせてもらおう!! 俺は『ジェイク・テンプ』!! 名前の通り10番目の悪魔だ!!」

 

「いや、名前を聞いただけではよくわからんのだが…」

 

「ん? エイルから聞いてねーのか? 特定の数字を持つデモンティアは二つ名を持つ事と一部のデモンティアを指揮する権利が与えられることをよ」

 

「そうなのか? それは知らなかった」

 

「… 本当に何も知らなんだなぁ!? これが王の器とは笑わせてくれるぜ!!」

 

「………」

 

 

 とにかく見た目もそうだが、この喋り方と熱気で非常に部屋の気温が高い気がする。冷房を効かせたい。

 そんな暑苦しいし熱苦しいジェイクに対して、王の器じゃないという一言にイラッとしたのか、エイルの目が血走り額に血の通りがよくわかるほど血管が浮き出ている。

 

 

「しかし、お前があの時、俺を助けてはくれなかったらどうなっていたか。礼を言う」

 

 

 恭也はジェイクに頭を下げると、ジェイクは膝を叩いて笑い始めた。

 

 

「どうした…?」

 

「はっはっはっ!! いや、先代の王の事を少し思い出しただけだ」

 

「先代か… 先代はあの力をうまくコントロールできていたんだろうな…」

 

「あの力だと? デモンティアのか?」

 

「あぁ、エイルに他2人の悪魔の力を加えただけで今まで以上に剣が重くなるのを感じた」

 

「王、それは至極当たり前だ」

 

「当たり前?」

 

「無属性3匹が束になったんじゃ、今のお前には負担が大きいだろう」

 

「属性だと? ゲームで言う所の火は水に弱いとか…」

 

「それに関してはよくわからねーが、デモンティアには1人1人属性を持っている。まぁ順当に言えば『無・火・水・風・雷・土・光・闇』と、お前が言った通り火は水の奴らに弱い。が、そんなもの気合いでなんとかなる!!」

 

「そうか… つまりエイルは無属性なのか」

 

 

 エイルを見てそう言うと、彼女は優しく微笑んで頷く。

 

 

「無は唯一弱点がありません。それどころか各属性を支配してしまうほどの力を有しております」

 

「お前の本当の力がそれか」

 

「左様でございます」

 

「…… ふっ、まだまだ俺にはやらなければいけない課題があるようだな」

 

「課題?」

 

「王としての使命を全うする為には、お前たちの力を全部引き出さなければならない。そしてその力を存分に振るってこそ王たる証拠だ。まずはメレフ… 俺自身が強くならねばならない」

 

「好き」

 

「唐突だな」

 

「大好き」

 

「大きくなったな」

 

「愛してます」

 

「限界突破か」

 

 

 恭也とエイルがいつも通りの会話を挟んでいると、ジェイクが何かを察知したようで急に立ち上がる。

 

 

「どうした?」

 

「どうやら自分を抑えられなくなった骨のねぇ奴らが動き出したようだぜ」

 

「…… はい、そのようです」

 

 

 そして限界突破していたエイルも冷静になってからデモンティアを捉えられたらしい。

 大事になる前に急いで向かわなければならないと、恭也は立ち上がって2人を着いてくるよう命じる────。

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

「あーなんでだよクソッ!!」

 

 

 その男はコントローラーを壊れないように柔らかい布団の方へとぶん投げる。

 どうやら格闘ゲームをやっており、オンライン上で何度も負けているようだった。

 男は所謂、ゲームで生計を立てているプロのゲーマーである。が、最近そのゲームにおいて良い成績を振るうことができなくなっていた。

 

 

「なんでだよ…… なんで勝てないんだ……」

 

 

 プロとして負けるわけにはいかない。生活する為にも勝たねばならない。

 だが、そんな誇りや硬い意思が男を徐々に蝕んでいた。日が経つにつれ、もっと上へ上へと目指したい男からは純粋に楽しむという根本的な欲が消え、誰よりも上に立ちたいという欲求が強くなっていた。

 

 

「── おいおいどうした?」

 

「え…? う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

 

 男は椅子から転げ落ちる。当たり前だ。目の前にはこの世の物ではない悪魔がいるのだから。

 

 

「ば、化け物…!!」

 

「化け物? 俺はデモンティアだ」

 

「デモンティア…?」

 

「いや、そんな事はどうでもいいんだ。お前… 勝ちたいだろ?」

 

「勝ちたいって…… ゲームにか?」

 

「そうだ。そのゲームとやらだ。随分気が立ってたからよ? どうだい。俺と組んだら強ーくなれるぜ?」

 

「…… 代償はなんだ」

 

「代償?…… あぁ、疑ってるのか。そりゃそうだな。代償は─── お前自身だ」

 

「俺自身?」

 

「深く考えるな。別に寿命が縮まるとかそういう命に関わるような事じゃねー。ただちょっとだけお前を貰うだけだ」

 

「断ったら殺されるのか…?」

 

「だからそういうんじゃねーよ。その身体を借りるだけ。俺が憑依すればお前は誰よりも強くなれる。単純な話だ。この力をどう使おうがお前の勝手。どうだ?」

 

「───……… わかった。使うよ。お前の力を使う」

 

「くっ…… はっはっはっ!!! いいねぇ。契約完了だ。よし、俺を使いな。俺の力はお前のもんだ!!」

 

「う、うわっ…!!」

 

 

 そして男の身体にデモンティアが憑依する。憑依した途端に男の身体からゲームをやりたいという欲求が生まれた。

 今なら誰にも負けない気がする。

 

 

「ははっ… はははっ…!! はははははははははっ!!!」

 

 

 その日、最強のゲーマーが頂点に君臨したという───。




はいどうもお久しぶりです。すみません。
クッソ遅い投稿ペースですが着いてきてくださると嬉しく思います。

次回、第4解「我は火、我が燃ゆる」

次回もよろしくお願いします!!


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第4解「我は火、我が燃ゆる」

皆さん本当にご無沙汰しております。

それと大変申し訳ないご報告があります。
今まで前回のあらすじを並べていたと思うのですが、今回から無くそうと思っております。
理由としては面倒くさいとか時間がないとかではなく、単に前書き自体短いもので収めたいと思ってしまったのです。ちゃっちゃっと本編書きたい!という欲求もあります故、長々とやってきたあらすじですが、申し訳ありませんが今回から無くそうと思います。何卒よろしくお願いします。

それではどうぞご覧ください。


「エイル、デモンティアが出たというのはどこだ?」

 

「こちらです」

 

 

 恭也はエイルに案内されてとある場所へとやってきた。

 そこは主にゲームのイベント会場として使われる大きなドーム状の建物である。

 今、世間では電子機器を使ったゲームの競技が盛んであり、中でもこの世界では格闘ゲームが人気だ。どんなギリギリの状況だろうと巻き返す事が可能で、そのコンボを行えるプロ達の技量は圧巻の一言。並々ならぬ努力では難しいだろう。

 そんな会場には多くの人が集まるのも必然的である。前回のデモンティアといい、最近は人目につくような場所に現れる。

 

 

「… ここにデモンティアがいるんだな?」

 

「はい、間違いありません」

 

「これほど人がいてそのデモンティアは何を考えているんだ? 今ここで襲った所で大きな騒ぎになるはず。奴らも俺の存在に気付いているだろう?」

 

「─── 主人を離れたデモンティアは本能で動く!! さっきもそう言っただろう現代の王よ!!」

 

 

 声を上げたのはジェイクだ。彼は恭也に近づき再び声を張る。

 

 

「奴らも俺たちも本来の力を失い、人の魂を多く必要とする状態だ!! 時間が経てば経つほどにその欲求は強くなる!! 人間も同じだろう? 欲のままに動けばデカい事をやるもんだ!!」

 

「ここなら敷地内で捕まえやすい。魂をより多く摂取できるというわけか。大胆な事をしてくれる…… この中にいるのか」

 

 

 ドーム内に入ると既に場は多くの人が集まり盛り上がっていた。

 この中にいるのはわかっている。誰が契約者なのか大体の候補が簡単に絞られるが、そこら辺は考えずともこちらにはエイルとジェイクがいる。簡単に探す事ができる。

 

 

「─── いました」

 

「どこだ?」

 

 

 エイルは「あちらです」と指を差した場所を見ると、そこには会場内で1番大きなモニターの前に座る2人の男が向かい合って格闘ゲームをやっている所が見えた。大きなモニターにはその2人のプレイする画面が見える。

 どちらも互いに引けを取らないどちらが勝つかわからない状態。この1本どちらかが勝てば終わりといった所か。

 

 

「凄いな… いや、そうじゃないな。右か? 左か?」

 

「右の耳当てを付けた方です」

 

 

 耳当て…? 多分彼女が言うのはヘッドフォンを付けている方を言ってるのだろう。

 彼は確かに上手いが今は押されている。あと1.2撃くらってしまえばKOだ。

 

 

「これは無理か─── っ!?」

 

 

 だが、その男は驚いた事に相手の技をガードしたと同時に一気に体力を削り始めたではないか。

 恭也は思わず見入ってしまうと、いつの間にか決着がついた。あの男の勝ちである。

 会場は大きな歓声が上がり、司会者は彼に近づき彼を称える。

 

 

「── あのコンボは凄かったですねー! やはり相当な練習を積んだ事でしょう!」

 

「えぇまぁ、コンボ以外にもあぁいう場面での立ち回り方もかなり練習しました」

 

「前大会優勝者がまさかの不参加となってしまったのは、やはり心残りというか悔しいですかね?」

 

「そうですね。彼に勝ってこそだと思ってましたので───」

 

 

 ─── 表彰式等が終わり、会場から人が居なくなり、男が帰路に着こうとした所を恭也は彼に声を掛けて止める。

 

 

「ちょっといいか?」

 

「はい…? 何か用ですか?」

 

「優勝おめでとうございます」

 

「え、はいどうも…」

 

「何故、悪魔と契約した?」

 

「…っ!? な、何を急に… 悪魔? なんですかそれ…」

 

「悪魔の力を使って優勝した所でお前は試合には勝ったがその時点で勝負に負けている。前回の優勝者もお前がやったんだろう?」

 

「何をバカな!! 急になんなんだよお前!! 悪魔だなんだってそんなもんいるわ────っ!!!」

 

 

 その男は急に人としての姿を失い、男に憑依したデモンティアが表へと飛び出してきたかと思うと、鋭い尻尾を恭也に向かって伸ばしてきた。

 

 

「くおっ…!!?」

 

 

 ギリギリの所でそれを躱してデモンドライバーを腰に装着する。

 そのデモンティアはケタケタと笑い、後方へ飛び距離を離す。

 

 

「よく避けられたな王」

 

「あの状況で表に出なかったのはこの為か?」

 

「あ? あぁ… さすがは王だ。この身体でもし表なんかに出てみろ、これからもこの先もこいつは疑われちまうだろう? だから1人ずつ食らって行くんだよ。最初の犠牲は前回の優勝候補者だったぜ!! はははっ!!」

 

「こいつ…!!」

 

 

 恭也はデモンドライバーにエイワンティアイズキーを起動してからセットし「変身!!」という掛け声と共にキーを回して変身する。

 

 

《開錠!!》《憑依!!》

《悪魔の名はエイル・ワン!!1の数字を持ち、その力の全てを王に捧げる者!!》

 

 

 メレフへと変身した恭也はメレフキーブレードを持ってデモンティアに近づいて縦に斬り込む。

 

 

「おぉっと!!」

 

 

 その攻撃を避けたデモンティアに追撃をしようと試みたが、突然目の前が光り輝くと同時にメレフは爆発に巻き込まれる。

 メレフは爆発の威力で吹き飛び地面を転がった。何が起こったのか分からず、剣を杖代わりにして立ち上がる。

 

 

「一体何がっ…!!」

 

「どうやらアレは俺の下っ端らしいな!!」

 

 

 メレフの後ろからジェイクはそう言い放つ。どうやらこいつはエイルの部下ではなく彼の部下のようだ。

 

 

「奴は『ケーチィ』。俺と同じ火の力を持っている。主に爆破系主体の野郎だ」

 

「なんだって…!!?」

 

「来るぞ王ッ!!」

 

 

 ジェイクに言われて振り向いた時には遅かった。

 咄嗟に剣でガードをしようとしたが、ケーチィはそれを縫うように避けて尻尾の先端をメレフの胸部へとピタリと付ける。

 そして先端が光を放ったかと思うと、防御のしようもない爆破攻撃をくらってしまう。

 

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」

 

「恭也様ッ…!!」

 

 

 その一撃を受けて恭也は変身が解けてしまい、胸を押さえながら倒れ込んでしまった。

 

 

「やっぱり王は力を取り戻してなかったか… まぁここで邪魔者を消しておくか」

 

「く、くそっ…!!」

 

 

 エイルは彼の前に立ちはだかり睨みを効かせる。

 無意味。今の彼女には何もできない。力を取り戻していない以上、彼女の力はジェイクにも劣る所か、本来なら格下のケーチィにすらも勝てない。

 そんな彼女を見てもジェイクは動かない。

 

 

「ジェイク何をしているの?」

 

「……」

 

「ジェイク!!」

 

「エイル。俺は今の王に熱さを感じない」

 

「熱さ? そんな事今はどうでもいいでしょう!?」

 

「王よ。俺はお前が力がないのは知っている。取り戻していないこともな。だが、それとこれとは別の問題がある」

 

 

 恭也はジェイクの言っている事がわかなかった。「今は助けてやろう!!」と、ジェイクはケーチィに向けて爆炎を浴びせる。

 

 

「くっ…!! ジェイクさんよ。これで終わりじゃないぜ」

 

「本当は消し炭の筈だったんだがなぁ!!」

 

「あばよ───」

 

 

 それからケーチィは地面に尻尾を突き刺して爆発を引き起こすと目の前から消えてしまっていた。

 恭也はふらふらと立ち上がり、ジェイクに視線を送る。

 

 

「ジェイク…」

 

「許せ王!! 俺の力を使うには熱さが必要だ!! それがなければ意味がない!!」

 

「熱さ……」

 

 

 全く何を言っているのかわからないまま、恭也はエイルに肩を貸してもらい、その場を後にする────。

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

「どうしてこんな事をしたんだ悪魔ッ!!」

 

 

 先程優勝した男は激昂した。自分はこういう勝ち方をしたかったんかではないとケーチィに言い放った。

 

 

「だけどお前それは違うだろう?」

 

「え?」

 

「お前はゲームに勝ちたい。上手くなりたい。そうしてやったのは誰だ?」

 

「そうだけど… だったら上手くするだけでいいんじゃないのか!!? 周りにも被害が出てるって…!!」

 

「あ? だからそうしてやっただろう?」

 

「だからそうじゃなくて───!!」

 

「─── 悪魔と契約してタダで力をもらえる訳ねーだろバカが」

 

「…っ!!?」

 

「お前が払った代償はお前自身。つまりお前をどう使おうと俺の勝手。だが、俺も力を与えるには魂が必要だ。だからこそお前ではなく他人の魂取ってやってるんだ。お前はゲームが上手くなるが、お前の魂には何の代償もない。凄くバランス取れてるとは思わねーか?」

 

「ふ、ふざけるな!! 俺は確かにゲームが上手くなりたかったけど、こんな勝ち方をしたかった訳じゃない!! この悪魔が!! 契約なんてくそくらえだ!!」

 

「お? それは()()()()って事か? 」

 

「そうだ!!」

 

「そうかそうか… なら、これからは勝手に使わせてもらう」

 

「な、何をするんだ…? やめろ…っ!! うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!───────」

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>

 

 ジェイクの言う熱さが恭也にはわからなかった。いや本当にわからない。急に親しげな感じから厳しくなったっていうか、とにかく彼が力を貸してくれる何かのきっかけが欲しいという事なのだろうか。

 家に帰宅してからずっとそれを考えていた。その意図を聞こうにも言った本人はどこかへ行ってしまったし。

 

 

「はぁ…」

 

「恭也様。奴の言葉は気にせず……」

 

「いや、いいんだエイル。これはジェイクなりの試練という奴なのだろう」

 

「試練…?」

 

「俺はお前の力を充分に扱えていない。だからそれを見ていたジェイクも理解している筈だ。奴の言う()()を持たない限り、奴は俺に力を貸すことはないだろう」

 

 

 どんな理不尽な事だろうとやるしかない。何もできない自分が唯一出来る事。

 ジェイクの言うこれが試練だというのならば、それを乗り越えて見せようではないか。それが王という称号を与えられた者の使命。

 

 

「恭也様───…っ!!」

 

「どうしたエイル?」

 

「ケーチィが動き始めたようです───」

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

 街は爆発音が鳴り響く度に悲鳴がこだまする。

 その燃え盛る炎の中に犯人がいる。それはケーチィだ。契約破棄と言われたらもう自分で動くしかないと思ったのだろう。大胆にも街を破壊している。

 

 

「怯えれば怯えるほど魂ってのは吸いやすい!! 人間ども!! 喚け!! 苦しめ!!」

 

 

 そんな彼を止めようと恭也は現場に辿り着き、デモンドライバーを装着し彼の前に姿を表す。

 

 

「… 来たか王様」

 

「貴様を封印する」

 

「やれるのか? さっきあんなにやられたのにか?」

 

「安心するがいい。俺に2度の敗北はない」

《エイワン!!》

 

 

 エイワンティアイズキーを起動しキーをドライバーにセットする。

 

 

「変身ッ!!!」

《悪魔の名はエイル・ワン!!1の数字を持ち、その力の全てを王に捧げる者!!》

 

 

 そしてキーを回してメレフへと変身すると先程同様にメレフキーブレードを構えて飛びかかる。

 ケーチィは剣を尻尾で受け止め、先端から爆発する液を飛ばしてメレフを吹き飛ばす。

 

 

「ぐっ…!! やはりこれが厄介だな!」

 

 

 今度は尾を地面に突き刺し、地面を爆発させて瓦礫を飛ばす。粉塵でメレフが見えなくなっている所にすかさず背後から尾の先端を当てて爆破させる。

 

 

「うっ!!」

 

 

 だが、メレフは脚を踏み込んで体勢を維持し、そのまま勢いで剣をケーチィに振るうと、流石の奴もこれには対応できずに斬られてしまう。

 

 

「な、なにぃ!!?」

 

「よし…… くっ!」

 

 

 やはりケーチィの爆破攻撃はまだまだ受けきれないのだろう。たった2発くらっただけでかなりのダメージだ。

 

 

「恭也様… このままでは」

 

「わかっている。だからこそ……… ジェイクッ!!!」

 

 

 メレフはその場で大声を上げてジェイクの名を叫ぶ。

 

 

「お前の言う熱さがどういう意味なのかはわからない。そもそもわかる訳がない。だがな、これ以上誰かが犠牲になるのは見たくない!! 王としてお前たちを全員使役していつか必ず平和を築いてやる!! それまで俺に力を貸せ!! 俺の覚悟を見ていてくれ!! 」

 

「………」

 

「…… まだ認められないか。しかし、ここで引く理由はない。貴様を倒すぞケーチィ!!」

 

 

 メレフがケーチィに飛びかかろうとしたその瞬間、大きな笑い声と共に目の前にジェイクがどこからともなく現れた。

 そしてジェイクはメレフの肩をバンバンと叩いて親指を上に向けて頷く。

 

 

「まだまだ王としては程遠いが、お前の言葉には嘘偽りがないのはわかる!! いいだろう!! お前が王として相応しいのか見ていてやろうじゃないか!! はっはっはっはっ!!」

 

 

 するとジェイクは手の平からデモンティアイズキーを生み出し、メレフの手にそれを置く。

 

 

「ジェイク…」

 

「お前の力にして見せろ!! 王、恭也!!」

 

「…っ!! いいだろう!!」

 

 

 それからメレフはドライバーの開いた部分を閉じてから、エイワンティアイズキーを引き抜く。

 そしてジェイクから貰った「ジェイテンティアイズキー」を起動しキーを差し込んで回す。

 

 

《ジェイテン!!》

《開錠!!》《憑依!!》

 

 

 メレフの右腕を中心に炎が燃え上がり、彼の身体に真っ赤な装甲が形成される。右手に装備していたメレフキーブレードは炎に包み込まれ、それを振り払うと一回り大きく分厚い大剣へと形を変える。

 

 

《悪魔の名はジェイク・テンプ!!10の数字を持ち、その獄炎は全てを焼き尽くす!!》

《スタンドジェイテン!!》

「── ひれ伏せケーチィ。炎の力で貴様を焼き焦がしてやろう」

 

「なっ…!! やってみろ!!」

 

 

 ケーチィは尾の先端から液を飛ばして爆発させるがスタンドジェイテンへとフォームチェンジしたメレフには全く通用しない。

 メレフは大剣を振り回しながら炎の力を溜め、それを思いっきりケーチィに向かって振り下ろすと、溜まった炎が吹き荒れてケーチィを吹き飛ばした。

 

 

「これはジェイクさんの火力ぅ…!!?」

 

「先程受けた攻撃の倍だ。その身を持って味わうがいい」

 

 

 炎を纏った大剣を丸で手足のように扱い、振るう度に重い斬撃がケーチィを襲う。

 そしてメレフはケーチィの尾を左手で掴んで振り回し上に飛ばして、落ちてきた所をまるで野球のバットのように大剣を振るって吹き飛ばす。

 

 

「ゲハッ…!!」

 

「トドメと行こう。ジェイクッ!!!」

「行け!! 恭也ッ!!」

 

 

 メレフは大剣を地面に突き刺し、ドライバーのキーを捻って力を解放し、右腕に炎のエネルギーを集中させる。

 それからその炎を凝縮した拳でケーチィの顔面を殴りつける。

 

「はぁぁぁっっ…───はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!」

《ジェイテン!! シャットアウト!!》

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!」

 

「─── 眠れ、悲しき悪魔よ」

 

 

 その後、爆発と同時に契約者の男が抜けた所でメレフはジェイテンティアイズキーをケーチィに差し込んで封印する。

 

 

「はっはっはっ!! 一時はどうなる事かと思ったが流石は王だな!! 1発でモノにしてしまうとは!!」

 

「あなたがさっさと力を渡していれば恭也様が傷つくことはなかったのに… 許さない…!! 後で首をへし折ってくれる!!」

 

 

 ようやく戦いが終わって一息つきたいところだったが、エイルはジェイクに溜まっていた怒りをぶつけている。

 これ以上はエイルが暴走してしまう為、変身を解除し気を失った契約者の男を一緒に運ぶよう命令した。

 

 

「……? この気配は…」

 

「どうしたエイル?」

 

「いえ… 気のせいのようです。申し訳ございません」

 

「そうか…? それより彼を起こさないように、そして落とさないように注意して運ぶぞ」

 

 

 エイルが気づいた気配は遠くから見据えていた。

 間違いなくデモンティアの1人であり、彼女たちに続く隊長格であるがそれはまた別の話────。




まずは大変長らくお待たせ致しました。
これより復活し完結まで頑張っていきます。そして宣言します。計10作やります。なので私のオリライダーストーリーは続きます!!!!!
めっちゃ頑張りますよ!!!!!

では次回、第5解「我は水、我は清らか」

次回もよろしくお願いします!!


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第5解「我は水、我は清らか」

皆さんご無沙汰しております。
それではどうぞご覧ください。


 ピンポーン。

 と、大神家のインターホンが鳴り、恭也母は「はーい」と玄関前まで出向いて行く。

 どうやら母の知り合いなのか親しげに話しているようだ。というより母が一方的に話しているだけのような気もするが…。

 

 

「── 恭也様、この気配は我々のものと同じです」

 

「なんだと?」

 

「態々出向いて来るとは… どんなデモンティアだ!? 気に入った!!」

 

 

 しかし、この部屋も少々狭くなった。エイルだけならまだしも肩幅の広いジェイクが居ると中々に窮屈だ。

 恭也はとりあえず臨戦体制でそのデモンティアを待つ。徐々に足音が近づいて来る。

 

 

「恭也ー?」

 

「なに母さん?」

 

「この子があなたに会いたいらしいわよ」

 

「…… デモンティア?」

 

「えぇ、そうよ」

 

「いや、うん… なんでそんなに冷静というか…」

 

「この子は大丈夫な子よ。開けるわね」

 

「え、ちょっ…!?」

 

 

 扉が開かれるとフードを深く被ったデモンティアが入ってきた。

 恭也は座っているので下からその人物の目が見え、それはこちらをジッと見つめているようだ。

 母はごゆっくりと扉を閉め、部屋の中は一気に暗い空気で充満した。用があると言いつつ、恭也たちに対して全く話しかけない謎のデモンティア。

 

 

「……………」

 

「…… お、ごほんっ… 俺に何の用だ? 意味もなく敵陣に踏み込むほど無謀な奴ではないと見るが?」

 

「……………」

 

「… な、何か言ったらどうだ?」

 

「……… ふふっ」

 

「ん?」

 

「… 作ってる〜」

 

「作ってるだと…? 何を?」

 

「口調〜!」

 

「………」

 

 

 ここに来て突っ込まれるとは思わなかったので、恭也もどう答えて良いのか困り、思わず目を背けてしまう。

 それに対しエイルは激怒しているようだ。彼の事になるとどのような事でも無礼と言う。偶に怖くなる。

 

 

「『ティッツ』!! あなた恭也様に向かってなんて事を…!! 無礼よ!! 死んで詫びなさい!!」

 

「もーやだな〜エイル。先代の時もそうだけど王のこと好き過ぎでしょ〜!」

 

 

 恭也は心の中で思った。思ってたんと違うと。

 フードを深く被り物静かなイメージだと思っていたのだが、口を開いた瞬間、明るいというか何というかホワホワとした感じになった。

 これでこのデモンティアが女性であることはわかったが、そんなことどうでも良く、とにかくエイルを沈めなければいずれ破裂する。

 

 

「エイル」

 

「はい!!!!!」

 

「静かにしろ」

 

「喜んでッッ!!!!!」

 

 

 機械かよというくらいピタリと止まる。凄いよこの悪魔。

 そんな訳で彼女ティッツがこの家に来たということは、仲間になりに来たかそれともジェイクのように試練を出すのか。どちらにせよ覚悟はできている。

 

 

「仲間に入れて欲しいんだけど良いよね〜?」

 

 

 ド直球な仲間になりたいコール。流石にそれ以外ここに来た理由はないかと恭也は問うが。

 

 

「え〜? なんでそんな事しなきゃいけないの? 面倒じゃない? 普通に前と変わらず王の下に着きたいってだけじゃダメ〜?」

 

 

 ティッツは座り込んで恭也の鼻と自分の鼻が付くほど程の距離で問いただす。

 理由はなんにせよ仲間になりたいと言ってくれているし、特に何か考えているというわけでもなさそうだ。

 恭也はティッツの両肩に手を置いて距離を離すと、エイルとジェイクに視線を送り決断する。

 

 

「歓迎しようティッツ。これからよろしく頼む」

 

「ねぇなんでその口調やめないの?」

 

「…………」

 

 

 そして再びエイルがキレてティッツに飛びかかるのを止める所から話は始まる────。

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

 ──── 皆が寝静まったとある街中。

 デモンティアナンバー6の「エフックス」とナンバー12の「エルニ」が同じ場所で出会した。必然的だったというべきか、2人は急に可笑しくなって互いに笑い合った。

 

 

「ははははははっ! なんでこんなに面白いんかね?」

 

「…… ふぅ、さぁね。でも面白いよね。()()()がこの時間この場所で会うなんて」

 

「運命か?」

 

「運命じゃない?」

 

「なら、答えは1つだな」

 

「僕らで変えるとしよう。僕らの()()()を使ってさ」

 

「それもこれも封印を解いた奴のお陰だ。契約者見つけて魂大量に食らってデモンティア界で最強になろうや」

 

「いいね… じゃあやるよ。君の無と僕の火を…────」

 

 

 その夜、無に火が灯った────。

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

 あの後、恭也、エイル、ジェイク、そしてティッツの4人は街へと出向いた。

 4人で歩くと流石に窮屈だなとは思うが、友人が0に等しい恭也にとっては嬉しいことなのかもしれない。仮に彼自身が多いと思っていたとしても、側から見たら1人で歩いているに過ぎない。

 

 

「エイル。もう少し離れろ」

 

「どうしてですか恭也様?」

 

「歩き難い。それに他から見たら怪しく思われる」

 

「私たちは見えませんのでご安心ください」

 

「わかっている。でも、そうじゃない。側から見たら俺が変人だと思われる歩き方をしているんだ」

 

 

 エイルはわかっていないが、彼女が恭也の腕に絡みついて非常に歩き難いのだ。体重も掛かっている為か、恭也の体は常時斜めになっている。

 これでは誰がどう見ても歩き方は可笑しく変な奴だと思われても仕方がないと言えよう。

 ティッツもこの光景を見て笑っている。

 

 

「…… ティッツ。笑っていないでコレを離せ」

 

「え〜でもでも、エイルがそうしたいって言うならそうさせてあげたいし〜後面白いよね!」

 

「俺は面白くないんだが…」

 

 

 ただのんびりと散歩しているだけだった彼らに終わりが来たようだ。

 このまま帰るまで絶対に離れないだろうと思っていたエイルが、突然離れて辺りを見渡し始めた。

 

 

「エイル… そうか、場所は?」

 

「はい…───っ!!? 目の前です!!」

 

「何っ…!!?」

 

 

 すると突然、目の前のビルが大きな爆発した。

 この時、昼だったという事もあり、街中は人が多く集まっていた。割れたガラスやコンクリートの塊等が人々に降り注ぐ。

 更に最悪な事態は続く。ビルがバキバキと音を立て、恭也達のいる方へと崩れ始めていた。

 

 

「ますい!! このままだと人がっ……!!」

 

 

 メレフに変身したとしても助けられるのは数名。ジェイクの力を借りたとしても塊が増えるだけ。

 そんな時、ティッツが恭也の横に立ち、彼の手を掴んでその手に鍵を握らせる。

 

 

「… なら、私を使ってよ」

 

「ティッツ?」

 

「私ならジェイクみたいに被害を増やすことはないよ。安心安全!」

 

「そうか… よしっ!!」

《ティニーマ!!》

 

 

 デモンドライバーを装着した後、恭也はティッツから貰った「ティニーマティアイズキー」を起動させ、そのままドライバーに突き刺して()()する。

 

 

「変身ッ!!!」

《開錠!!》《憑依!!》

《悪魔の名はティッツ・ニーマル!!20の数字を持ち、その荒波は全てを包み込む!!》

《スタンドティニーマ!!》

 

 本来の姿となったティッツの両腕から水が湧き出ると、メレフへと変身した彼の左腕を中心に装甲が形成されていく。

 そして変身完了すると共にメレフキーブレードにアタッチメントが装着されて杖のような形状へと変化する。

 

 

「はっ!!」

 

 

 そしてメレフは倒壊するビルに杖の先を向けると、その先端に水の玉が生成し始めた。玉は徐々に大きくなり、やがてメレフを包み込めるほどの大きさになったと同時に玉は弾け飛び、そこから水がレーザーのように勢いよく射出される。

 この勢いのままに水圧で弾き飛ばすというわけではない。水はメレフの意のままに操れる。途中で何十本も枝分かれをし、ビルや瓦礫を水の枝が全て受け止めた。

 

 

「そしてここから…!!」

 

 

 メレフはドライバーの鍵を捻り、ドライバーから送られるエネルギーを左腕から杖に渡らせる。それから全エネルギーを一点に集め、大量の水を氷のエネルギーに変換させた。

 すると、ビルを包んでいた水は凍り、目の前に降り注いでいた瓦礫類は全て空中でピタリと止まった。

 この日限定で二度とできて欲しくない氷のオブジェクトの完成だ。

 

 

「……… ふぅ、間に合ったようだな」

 

「私も結構やるでしょ〜?」

 

「あぁ、助かった。素晴らしい能力だ」

 

「ねぇねぇ、その口調いつまでやるの?」

 

「……」

 

 

 とにかくアレだけの事態になったが、幸い市民は怪我人が複数人出ただけで皆無事のようだ。

 このまますんなり終わってくれればいいのだが、このビルを倒壊させて真犯人の顔をまだ拝んではいない。

 

 

「エイル。場所はわかるか?」

 

「先程と同様にあのビルの中から反応が…」

 

 

 メレフが再びビルの方に向き直ると、受け止めていた筈の氷が徐々に溶け始めているのを認識した。

 どうやら今回のデモンティアも火属性、ジェイクの部下らしい。

 そのデモンティアは氷を全て溶かさず、自分が出れる程の穴を開けると、そこからメレフに向かってフワリと飛んできた。

 

 

「… 犯人はお前か」

 

「あぁ、()()()さ」

 

「僕たち…?」

 

 

 この悪魔は不思議なことを言う。メレフの目の前には火属性のデモンティアが1人いるだけ。わざわざ複数形するのは明らかに不自然。

 この被害をメレフの際にも責任があると言いたいのか?と思われたがどうやらそういうふざけた事ではない。

 

 

「恭也様…」

 

「なんだ? エイル」

 

「私の勘違いだったら申し訳ございません。あのデモンティア──── 2人います」

 

「2人だと? まぁ確かにまだ出てきてな───」

 

「奴が1()()()2()()なんです…!!」

 

「さっきから何が言いたい?」

 

「あのデモンティアからエフックスとエルニの気配が感じられるんです…!!」

 

「そんな馬鹿なッ…!?」

 

 

 その気配にジェイクも「エルニがいる」と言い、1人のデモンティアにもう1人のデモンティアが重なっている事が確定した。

 大体のデモンティアが属性通りの色をしているが、素体はエフックスで色や装飾品等はエルニの物のようだ。彼らの色はお互い混ざり切っていないような、浸透しきっていない印象を受けるグチャグチャの色合いであり、より一層悪魔の気味の悪さが目立っている。

 

 

「そうさ。僕たちは更なる力を手に入れるために1つとなった。そうだな……『エフルニ』なんてどうかな?」

 

「そんな事はどうでもいい。お前を封印することに変わりはない」

 

「やってみなよ」

 

 

 エフルニは両手を突き出すと、そこから炎を勢いよく吹き出した。

 しかし、今のメレフは水と氷の力を持つ形態。炎、つまり火属性の攻撃は相性的にこちらが有利である。

 そしてメレフはその火炎放射に向かって杖を向け、先程同様に水のレーザーを放出し炎をかき消した。

 これは思った通りの展開と言えるが、エフルニはやっぱりなと思っているのか余裕そうな表情を見せている。わかっているのなら引けばいいものを、彼は全く引く事はなくそれどころか直進してきたのだ。

 

 

「来るかッ!!」

 

「火属性だけだと思わない方がいい。言っただろう?」

 

「くっ…!!?」

 

 

 エフルニは掌をメレフに向け、グッと力を入れて突き出した。

 そうするとメレフは身体の表面上に強い衝撃を感じ、次の瞬間、後方へ大きく吹き飛ばされたのだ。見えない大きな壁が迫ってきたような大きな衝撃に態勢をすぐに立て直す事ができずに地面を転がる。

 

 

「ちょっと王様っ…!?」

 

「な、何が…」

 

 

 ティッツも今の衝撃に驚いたようだが、その衝撃は一体何なのか、立ち上がろうとした時、エイルはメレフを心配しながらも奴の力について話す。

 

 

「恭也様、エフックス自体の能力は衝撃波です」

 

「なるほど… 通りで内側まで攻撃が響いたわけだ…」

 

「こちらも形態を変えて応戦しましょう。貴方様ならきっとできます!」

 

「エイル…… いいだろう。力を貸してもらうぞお前たち。2人だろうと関係ない。王の力をその身に刻め!!」




1万文字書ける人ってホント凄いよね(涙

さて次回、「我は突風、我は飛翔」

次回もよろしくお願いします!!


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第6解「我は突風、我が飛翔」

皆さんご無沙汰しております。少々遅れました。
それではどうぞご覧ください。


 デモンティア2体が合体したエフルニという存在。

 本来は各隊長クラスのデモンティア達が、その位の者たちを使役して力を一時的に頂戴する事によって属性の効果を増幅させることができる。

 しかし、どの隊長たちでも合体という悪魔と悪魔の同種族同士での融合は不可能であり、先代の頃からもそのような前例はない。

 

 

「相手が悪かったようだな」

 

「ちっ…!」

 

 

 だからといってどうという事はない。

 先程からエフルニから衝撃波で攻撃されているが、それをメレフは周辺にばら撒いた水を凍らせて、その上をスケートのように滑り躱していた。

 悪魔同士が合体して2つの力を使えるとしても、相手と今のメレフとでは相性が悪過ぎる。

 奴の火力源でもある火属性がスタンドティニーマの水属性攻撃によって掻き消され、本来の能力が潰されてしまっているのだ。

 

 

「相方の能力を封じられたお前は、その衝撃波の能力しか使う事はできない。更に言えば、衝撃波を打つためにほんの一瞬溜めができる。その隙さえわかればこのスピードで十分対処は可能だ」

 

「1つ封じたからと言って僕を上回った? それは大きな勘違いだよ王」

 

「何をだ?」

 

「僕の力は2人分。つまり属性関係なしに元のスペックが大幅にパワーアップしているんだ。だから肉弾戦に持ち込めばこちらの────っ!!?」

 

 

 メレフは氷の上を滑りながら杖を構えて、先端から氷の弾丸を何十発もエフルニに撃ち放つ。

 その弾丸は追尾式である為、エフルニが何度も避けようとどこに居ようが捉えてみせる。速度も彼が全力で逃げたとしても追いついてしまうほどであり、やがて避け続けた代償か四方八方に弾丸が散らばり逃げ道がなくなる。

 

 

「終わりだなエフルニ」

 

「そんな…僕が……!!」

 

 

 そしてメレフが杖をクイッと傾けると、全ての弾丸はエフルニに向かって突き刺さり彼らの肉体は大爆発を引き起こす。

 今回は勝利したがティッツが力を貸してくれなければ、敗北も考えられたかもしれない。相性が有利で助かった。

 

 

「さて、封印するとしよう」

 

 

 エフルニが倒れた所へと近づき、封印しようと鍵を手に持った。

 

 

「んっ───!!? な、何だこの風は…!?」

 

 

 その瞬間、強烈な風がメレフは包み込み、視界が遮られてエフルニが何処にいるのかわからなくなってしまった。

 それからメレフはぐるっと回転して、水を周囲に撒き散らせてから弾けさせる。周囲の風を止めて視界を確保するが、そこにはすでにエフルニの姿は無くなっていた。

 

 

「何だったんだ今の風は……」

 

「今のは自然に起きた風ではありません…… まさかっ」

 

 

 エイルが何かに気づくと先程の風だろうか、メレフの前に小規模な竜巻が起こると、その中からスラリとした高身長の男が姿を現した。

 どう見ても人間ではないそれを見たエイルは、この上なく、今まで見た事がないほど嫌な顔をしている。

 実際には一つなっているので見えないが、そんな気がする。

 

 

「やぁやぁ我が王。お久しぶりだね!!」

 

「…… 誰だ貴様は」

 

「おっと… どうやら僕のことを知らないらしいね。まぁ無理もないさ。今の王は前の王とは違うのだから。では、まず自己紹介といこうじゃないか。僕はデモンティアナンバー30の数字を持つ悪魔『エミー・オン』。デモンティア内じゃ言わずと知れたクールな男さ。君の中にいるエイルちゃんやティッツちゃんも僕にメロメロになってしまっていたんだが、それより今君の中には────」

 

 

 長い。うざい。黙れ。失せろ。

 そんな感情がメレフの身体からひしひしと伝わってくる。これは恭也ではない。どう考えてもエイルだ。

 そんな事よりこのエミーという悪魔には聞きたい事があった。

 

 

「おい、お前の言いたい事はよくわかった。だが、これだけは答えろ。エフルニを何処へやった?」

 

「え? えふるに…? それはどういう料理なんだい? この時代はかなり進歩しているようだから、この僕に相応しいイケてる物だといいんだけど───」

 

「違う。そこにいたデモンティアだ」

 

「そこにいた?…… あぁ、あのセンスがない姿をした奴だろう?」

 

「アレをどうした? お前が風を吹かせた後、奴の姿は消えていた」

 

「その事なんだけど、何故か身体が勝手に動いて、彼を何処かに飛ばしてしまったようなんだ」

 

「は?」

 

「いや、待って欲しい。僕も本当にわからないんだ。気がついたら身体が勝手に動いてしまっていた。何処にいるのかすらもわからない。なんだろう… 誰かに操られていたというか……」

 

「…… とにかくお前にはもっと詳しく経緯を話してもらう必要があるな。ここら一帯を整理してから家に戻るぞ。話はそれからだ」

 

 

 メレフたちは変身を解除する前に倒壊したビルや周りの瓦礫をまとめようと動く。

 そのどこかの建物の陰から彼らを見据える男が1人────。

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

 それから家に帰宅した恭也たちは、エミーにいくつか質問をしたが何度聞いても特に不可解な点はないし、彼が嘘を言っているように見えなかった。

 だが、不可解というか気になったのは彼が言った「操られている様な」という言葉だ。

 自分以外にデモンティアを操れる人物がいるのか?恭也は何か引っかかりつつも今はエミーの事を迎え入れた。

 

 

「エミー、これからよろしく頼む」

 

「新しい王は話が早くて助かるよ。君なら僕の力も簡単に使いこなしてくれると信じてるよ」

 

「期待には応えよう…… それよりエイル。その顔をやめろ」

 

 

 エイルは誰が見てもそれはそれは素晴らしい美貌を持っておりスタイルも抜群。もし彼女がアイドルやらモデルやらやっていたら秒で売れている事間違いなしと言わしめるほどなのだが、エミーを前にした彼女の顔はそれはそれは般若のような……。

 

 

「エイル」

 

「で、ですが恭也様!! 奴は気持ちが悪いです!!キモいです!! 不快です!!」

 

「わ、わかった。だが、これから一緒にやっていく仲間だ。それに昔からの付き合いだろう…?」

 

 

 エイルはエミーの方にバッと向き直ると、彼はエイルにウィンクする。

 もちろんエイルは発狂する。

 

 

「はっはっはっはっ!! 昔からエミーは女悪魔からの評価が悪かったからな!!」

 

「うんうん… でも、私は別に嫌いではないけどね〜」

 

 

 結局のところジェイクにも言われているが、昔からこういう男なのだろう。キザというタイプだ。

 女性陣からの評価は著しく低いようだが、ティッツはそうでもないらしい。まぁあまり興味がないだけとも取れる。

 そんな事をしていると、エイルが急に表情を変えた。

 

 

「デモンティアか」

 

「はい。ですが、エフルニではないようです」

 

「全く、次から次へと休む暇もなく来るものだ」

 

 

 既に外は暗くなっていたが王に休みはなし。

 その日はデモンティアを封印する為に寝る暇を惜しんで戦う事となった────。

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

 そして数日が経ったある日、疲れて寝ていた恭也は突然エイルに起こされる。

 

 

「んん…… どうしたエイル?」

 

「睡眠の最中に申し訳ございません。どうやらエフルニが現れたようです」

 

「…… そうか、ようやくか。すぐに向かうぞ」

 

「承知しました」

 

 

 ここ最近デモンティアとの連戦で疲れが溜まっていたが、エフルニが出たとなればあの被害をもう一度出すわけにはいかない。

 恭也は重い身体に鞭を打ってエイルにその場所を案内させる────。

 

 ──── 現場に着くと、比較的街の被害は軽かったが、人々はエフルニに魂を吸い取られているようだった。

 そこら中に人が倒れており、前のビル倒壊よりも被害が大きいのは見てわかる。

 

 

「エフルニッッ!!!」

 

「………」

 

 

 そして恭也はエフルニに対して違和感を覚える。というのも声を掛けても返答しない。夢中になっているだけかと思いきやそうではない。

 

 

「様子がおかしい… 一体何が……」

 

「嫌な予感がします。恭也様、変身を」

 

「わかっている。行くぞエイル─── 変身ッ!!!」

《開錠!!》《憑依!!》

《悪魔の名はエイル・ワン!!1の数字を持ち、その力の全てを王に捧げる者!!》

《スタンドエイワン!!》

 

 

 それから恭也は開錠して仮面ライダーメレフへと変身すると、メレフキーブレードを取り出してエフルニに斬りかかる。

 エフルニはそれに即座に反応し、避けるのではなく両手から炎を放出して視界を奪う。

 

 

「ちっ…!」

 

 

 この程度でメレフは怯まず、剣で炎を斬り払い視界を確保する。

 だが、視界が開けた同時にメレフの身体は突如として吹き飛ばされた。忘れていたわけではないが、衝撃波を打つ能力持ちである彼に対しての警戒を怠ってしまったのは事実。

 メレフは剣を地面に突き刺し態勢を立て直し、エフルニに向けて再度剣を構える。

 

 

「………」

 

「なんだ… 何かが……」

 

 

 まるで人形と戦っているような感覚だ。中身がただの綿で敷き詰められた人形。

 そんな人形のようになってしまったエフルニは両手を広げ、メレフの周りに炎の壁を出現させて閉じ込めてしまう。

 

 

「この姿なら苦戦を強いられるだろう…… だが、相性有利な属性は既に確保している!! ティッツ!!」

《ティニーマ!!》

 

「はいは〜い」

 

 

 デモンドライバーに装着していた鍵を引き抜き、新たにティニーマティアイズキーをセットし、開錠してスタンドティニーマへと姿を変える。

 水と氷の力を宿したその力は、無属性があるにしても、相性有利な火属性を無効化する事ができる。

 

 

「残念だが悠長にお前と戯れている時間はない… ここで終わらせる!!」

 

 

 メレフは剣から変化させた杖を使い、巨大な水の球を作り出して、それを破裂させて辺りの炎の壁を鎮火させる。

 そして視界が再び開けたと同時に先程同様にエフルニが突っ込んできた。

 

 

「2度も同じ技を受けはしない!!」

 

 

 今度はメレフが水の壁を作り出し、エフルニを一瞬だが動きを鈍くした後、その隙を見逃さず、ドライバーの鍵を捻って、全エネルギーを一点に集中させた水球を打ち出す。

 

 

「─── 眠れ、悲しき悪魔よ」

《ティニーマ!!シャットアウト!!》

 

 

 エフルニは必殺技をその身に受け、爆発を引き起こし、抵抗する力もないまま倒れる。

 それからメレフは安堵のため息を吐くと、2人が1人となったエフルニに対して鍵を2つ分取り出して封印しようとする。

 その時、エフルニはそこで初めて口を開き、驚いたメレフは思わず杖で引っ叩く。

 

 

「いったいなっ…!!」

 

「いや、急に喋り出すお前が悪い… それよりもお前、なぜ今になって喋り始めた? 何かの作戦だったのか?」

 

「作戦…? 僕が気づいた時にはこうなってたよ。なんで負けたのかなって…… そしたら急に君が殴って来たんだ」

 

「気づいた時には… 待て、エミーもそう言っていたがもしかして……──っ!!?」

 

 

 突然、あの時と同じように風が吹き荒れた。これはエミーのものかと思ったがそうではない。今度ははっきりと視認できた。

 どうやらエミーの部下であろう別の悪魔がぐったりとしているエフルニを抱えて飛び去ろうとしているのが見える。

 

 

「貴様、待てッ!!」

 

 

 メレフは即座にその悪魔に飛んで追いかけたが、さすが風の悪魔と言って良いか。

 奴のスピードもそうだが、なにより不規則に飛び回るのが厄介だ。いくら飛べると言っても空中での戦闘は彼の方に軍配が上がる。

 

 

「このままだと逃げられる…!!」

 

「── そんな時こそ僕の力じゃないかな? 王」

 

 

 すると、隣でエミーがメレフを馬鹿にするかのようにクルクルと周りを回って見せた。

 なにかとイラッとさせる奴だが、彼の動きを見てこれならいけると確信が持てる。今必要なのは風だ。空を牛耳る王の力。

 

 

「ほら、受け取って。王に無礼を働いたままでいるのは癪だからね」

 

「感謝するぞエミー。この力、使わせてもらう!!」

《エミオン!!》

 

 

 エミーから受け取った「エミオンティアイズキー」を起動して、ドライバーの鍵と入れ替え、即座に開錠する。

 

 

《開錠!!》《憑依!!》

《悪魔の名はエミー・オン!!30の数字を持ち、その突風は全てを吹き飛ばす!!》

《スタンドエミオン!!》

 

 

 緑色の風がメレフの両腕を包み込み、そこから徐々に新たな装甲を装着していく。

 前3つのフォームと比べると細っそりとしているが、専用武器の双剣を持てばこの装甲の薄さも頷けるだろう。

 他にも風の抵抗を極力減らすように作られたこの装甲であるなら、不規則に動く悪魔にも追いつくことができる。

 

 

「はぁっ!!」

 

 

 そしてメレフは悪魔の後ろにベッタリとついて行き、周囲の風の力を操って悪魔の飛ぶ方向を制御する。

 本来なら抵抗できるのだが、エフルニを抱えたままの彼ではこちらの攻撃に対して集中できない。

 

 

「これで本当に眠ってもらう!!」

 

 

 メレフはドライバーの鍵を捻り両腕に風のエネルギーを集中させ、更に双剣を片手で高速に回転させる。

 すると、その行為によって風のエネルギーは増幅され、両腕を大きく振り上げると巨大な竜巻が悪魔を包み込み逃げ場をなくす。

 

 

「はぁぁぁ…───はぁッ!!!」

《エミオン!!シャットアウト!!》

 

「ぐぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁッッ…!!!」

 

 

 最後に風の檻の中へと閉じ込められた悪魔に双剣でX状に斬りつけると、更にそこへ無数の風の刃が襲い掛かり、遂には悪魔の身体はボロボロとなって爆発を引き起こした。

 

 

「見事だ王。僕の次に凄いよ」

 

「そうか…… だが、助かった。礼を言う」

 

「王の為ですので」

 

 

 エミーのわざとらしい言い方にまたもイラッとさせられるメレフであったが、これに構うよりもさっさと3体封印した方が良さそうだ。

 それからメレフは対応する鍵を3本取り出して、今度は誰にも邪魔される事なく全員封印する。

 

 

「これでようやく9体か…… 先は遠いな」

 

「恭也様なら必ず全てのデモンティアを支配下に置けることでしょう。何故なら王に相応しいお方なのだから… そして私の愛しき人… つまり夫……」

 

「いや何が『つまり』なのかよくわからないんだが… エイル?」

 

 

 エイル達を抜いて残り59体。恭也の王としての役目はまだ始まったばかりである────。

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

 ── 夜中の0時を過ぎた頃、誰もいない静まり返った街の中をコツコツと歩く男が1人。

 その男の首飾りには十字架… いや、どちらかといえば()に近いだろうものがぶら下がっていた。

 

 

「… 全くかわい子ちゃんとお話しする為には金だ金だ。おまけに金払っても触るなだと? ふざけやがってよ」

 

 

 男がフラフラと街を歩いていると、男の前にデモンティアが現れた。

 

 

「あーん…?」

 

「お前の願いを叶えてやる。俺と契約しなよ」

 

「断る」

 

「いいの? でも、勿体ないな〜… もし俺と契約できたら女の子と好きなだけイチャイチャできるぞ〜」

 

「断ると言ったんだ」

 

「全くお堅いな───」

 

「───…… お前をやれば好きなだけイチャつけるんでな」

 

「えっ…… お前まさかッ─────ッ!!!?」

 

 

 翌日、街のとある場所が何者かによって荒らされていたとの情報が恭也の耳に入るが、彼と出会うのはまた次の話。




結構詰めてやってしまった事を反省。

さて次回、第7解「我の敵か、我の味方か」

次回もよろしくお願いします!!


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第7解「我の敵か、我の味方か」

皆さんご無沙汰しております。
それではどうぞご覧ください。


「─── という事であり、専門家たちは彼らを『悪魔』と判断した様です」

 

「… まぁ信じられない話しだが、あんな大規模な破壊活動を行われれば当然信じなきゃいけないわけでしてな」

 

「我々も悪魔の誘惑には気をつけないといけませんね」

 

 

 恭也は母の後ろからテレビ番組を見ていた。

 彼らが言う悪魔というのはデモンティアの事だろう。一応、神話とかそう言った類の話なので、その部類の専門家達からすればすぐに特定できる。

 更にはデモンティアの生態すらも把握されている様で、専門家達から彼らについての注意喚起が行われていた。

 

 

「もし皆さんも悪魔に甘い誘惑をされてたとしても、絶対に!くれぐれも!その誘惑に乗ってはいけません。自分の身は自分で守りましょう!」

 

 

 デモンティアに対して無視という選択肢を取れば、そのまま襲いかかる可能性もあるんだよなと恭也が思っていると、専門家であろう人物が恭也の胸を貫く一言を吐いた。

 

 

「── 悪魔の王。仮面ライダーにも注意した方がいい」

 

 

 悪魔の王。仮面ライダー。

 それは恭也本人に言っている訳ではないが、思わず背後を向いて確認してしまう。

 恭也の母も思わず「えっ」という声を漏らす。

 

 

「悪魔の王…?」

 

「はい、悪魔の王はそのままの通り、復活した彼らの王です。参考資料をお配りしたでしょう? どうやら1匹ずつ着実に封印している様ですが、元はと言えば彼が蒔いた種を回収しているだけに過ぎないのです。封印が解かれたのも彼の力が弱まったからでしょう」

 

「では、その悪魔の王がもし全ての悪魔を封印することができたとしたら…」

 

「その力を使い、この世界を支配するでしょう」

 

 

 何というデタラメなんだろう。何を根拠に言ってるんだ。

 恭也はその専門家に対して怒りが湧き、拳に力が入るが、彼よりも激怒していたのがエイルであった。

 

 

「この男!!! 恭也様を何だと思っているの!!? 許さない…!! 許さんっ…!!!」

 

「…… 落ち着けエイル」

 

「我らが王を! 愛しき貴方様を侮辱するこの男を許せるわけがありません!!!!」

 

「お前の気持ちはよくわかった… 待て、他にも何か…」

 

 

 騒ぐエイルの口を人差し指で抑え、恭也は再び専門家の話しを聞き始める。

 

 

「ですが、ご安心ください。彼ら悪魔に対抗する為にこちらも手を打たせていただきました」

 

「もしやそれは例の…」

 

「そう、我々専門家と研究員の皆様のご協力もあり── 悪魔達を封印するのではなく倒すことのできる 『デモンハンター』達を揃える事ができました」

 

 

 実はここ最近デモンティア達がやけに大人しいと思っていたら、どうやらこのデモンハンターと呼ばれる精鋭達が関係しているよだった。

 だが、驚くべき所はそこではなかった。専門家は続ける。

 

 

「しかし… ただの人間があれほどの被害を出す悪魔に勝てるんですか? そのおかげで被害者数は減っているとは言えど…」

 

「えぇ、()()()()()であるなら話は別です…… が、彼らの中にもただ1人だけ優れた才を持つ男がいるのです」

 

「それは?」

 

「もちろん──── 仮面ライダーです」

 

 

 

 

 >>>>>>>>>>>>>>>>>>

 

 

 ──── 数時間後、恭也と一行はデモンティアの出現を感知して現場に向かう。

 そこにたどり着く間、エイル達に例の自分達以外で悪魔と対峙する仮面ライダーについての話題を振る。

 

 

「皆、先程の仮面ライダー… デモンハンターについて詳しく知ってるか?」

 

「いえ、私や他の者たちも詳しくは… ただ最近デモンティアの反応が薄れているのは彼らが原因かと」

 

「…… つまり、どうなる?」

 

「どうなるとは…?」

 

「俺たちは封印してデモンティア達の力を抑えることができる。が、彼らが倒しているとすれば… 今まで感知できず仕舞いだったデモンティアは死んでしまったという事になるのか?」

 

「はい、そこは問題ありません。デモンティアは命ではなく肉体が消えてしまうだけで魂は残留するんです。今の私の力では魂の状態となったデモンティアを見つけ出すことはできませんが…」

 

「そうか… よかった」

 

 

 どうやら他のデモンティア達も彼らについては何も知らないらしく、昔に同じ様な組織がいたか?という質問を投げても、その様な組織すらないとの事で、デモンハンターという組織は現在で作られたものだとわかった。

 当時は完全に初代王が支配し、そもそも一般人では彼らに太刀打ちすることなど不可能。

 つまりデモンハンターは何らかの技術を使い、メレフ同様の力を手にして悪魔に対抗している。

 

 

「デモンティアの魂が残留するなら復活もあり得る。魂はお前達で感知できないなら、被害は知らず知らずに広がって対処が難しくなる筈だ。奴らよりも先に手を打つぞ」

 

「承知しました」

 

 

 暫くして恭也達はエイルが示した場所へと辿り着く。

 そこは道路を挟んで建物が並ぶ特に目立った所もないごく普通の場所だった。目立った所はないが、ここで戦えば多くの人に見られる事は間違いない。

 

 

「この短い期間の中でデモンティア達も大胆になって来たな…」

 

 

 そんな事を言っていると地面から水が湧き始め、やがてそこからスーッとデモンティアが現れる。

 この水の力はティッツの位の者で間違い無いだろう。

 

 

「何かをする前に止めに来たぞ」

 

「それはいいけど人目を気にせず変身できる?」

 

 

 女性のデモンティアは冷静にそう返す。

 確かにここで変身すると大勢の人から見られる事となる。そもそも恭也はメレフの姿としてであるならテレビで取り上げられており、もしここで正体がバレれば両親や親戚に迷惑をかけ、今後の動きを制限される可能性が出て来る。

 

 

「そう簡単にはできないが、俺には部下がいる事を忘れるな」

 

「忘れてないわよ。でも、私もこのまま捕まるのは嫌だし抵抗させてもらうわ」

 

 

 悪魔はちょうど近くを通ろうとした女性を掴み上げ、あり得ないことにその女性の中へと入っていく。

 

 

「強制契約ッ!!?」

 

「エイル、どういうことだ。その強制契約とは……」

 

「はい、強制契約は依代の密かな願いを契約とし、強制的に憑依する事を可能としたものです…… ですが、本来なら我々のような位を持つデモンティアでなければできない筈です」

 

「前回の融合といい、今回も…… 一体何が起こってるんだ」

 

 

 そうして憑依された女性はやがて異形の姿へと変貌し、周囲の水を自分に纏わせて戦闘体制に入る。

 その姿を見た人々は次々に悲鳴を上げて逃げ始める。こうなれば変身可能だ。

 

 

「態々変身できる機会を与えるとは、お前もまだまだのようだな」

 

「ふふふっ、最初からそのつもりだっただけの話よ」

 

「そうか… 後悔するな」

《エイワン!!》

《解錠!!》《憑依!!》

 

 

「変身」の掛け声と共にドライバーに差し込んだキーを回し、恭也は仮面ライダーメレフへと姿を変える。

 

 

《スタンドエイワン!!》

「ハァッ!!」

 

 

 メレフはメレフキーブレードを取り出し、瞬時に水の悪魔の背後を取って斬りかかる。

 が、先程周囲の水をその身に纏った事により、それがクッションのように剣を受け止めてしまう。奴の身体に刃が届かないではないか。

 

 

「なんだこれは…!?」

 

「残念ね。水はこういう使い方もあるのよ」

 

 

 そんな水があってたまるかと再び剣で切りつけるが、やはり刃は悪魔の体には届かない。

 

 

「なら、他の悪魔を……っ!!?」

 

 

 物理攻撃の意味がないなら別の悪魔の力を使う。

 そう思ってキーを変更しようとしたものの、悪魔が素早くそれに反応し、水を操りメレフをシャボン玉の様な水の空間に閉じ込めてしまった。

 

 

「ティッツ。これの破り方はわかるか?」

 

「うーん…… あいつがいれば容易に破壊することはできるけど… 私でもこれ壊すの時間かかると思うよ」

 

 

 ティッツが言うあいつとは多分ここにいない悪魔だろう。

 ならば、他の方法を取るしかないがジェイクの炎では相性最悪。エミーの風でもそもそもここに空気はあるのか?段々と薄くなっている気がする。

 

 

「何か… 何かないか…」

 

「ふふっ、そのまま酸素を取り込めないまま苦しんで死になさい。悪魔の王……… ん?」

 

 

 そんな絶体絶命の中、遠くの方からゆらりと歩く人影がこちらに向かってきている。

 ただの人間の男性であるようだが、こんな場所に一体なんの用だ。余りに危険すぎる。

 

 

「─── おーおー、ようやく見つけたぜ悪魔ちゃん。どうやら今回は女の子か。いいねぇ〜〜…… 仲間には悪いが1人で遊ばせてもらうますかね」

 

「…… あんた何者?」

 

「あ? 俺か? 俺はそうだなー…『デモンハンター』と言った所か?」

 

 

 そう言うと彼は見たこともないドライバーを取り出す。それを腰に装着すると、指先を口に当てて悪魔に投げキッスを送る。

 それに対して悪魔はブルリと身体を震わせた。

 

 

「おーい、そこの奴!お前見たことあるぞ!悪魔の王だろ!?」

 

「…… お前はデモンハンターか?」

 

「あぁ、まぁあんたには後で用があるからそのままでいてくれ。さて─── 仕事の時間だ」

《プレイドライバー!!》

 

 

 それから男── 「深尾源次」はデモンティアイズキーとよく似た「プリーストライズキー」を取り出し、キーについているボタンを押して起動させる。

 

 

《プリースト!!》

 

 

 相手にキーを向けてから横に薙ぎ払うようにするにして、ドライバーにセットすると、先ほどの彼のチャラついた態度とは異なる神聖な場所にいるかのような待機音が鳴り響く。

 

 

「変身!!」

《アンロック!!》

《祈る!!願う!!導きのままに!!プリースト!!》

 

 

 ドライバーにセットした鍵をメレフのものと同様に捻ると、身体にアーマーを形成し、その上から牧師が着るような服が装着される。

 まるで神に仕えるその人のような見た目をしたデモンハンター、またの名を仮面ライダープリーストへの変身が完了する。

 

 

「── 懺悔しな。しなけりゃ金にでもなりな」

 

「懺悔? 私は悔いる事なんてした覚えはないわ!!」

 

 

 そして悪魔は辺りにシャボン玉を生成すると、それらを隙間のないようにプリーストの周りへと配置する。

 このまま押し潰すのだろうかと言えばそうではない。狙いはやはりメレフ同様に窒息だろう。あのシャボン玉自体に攻撃力はさほどないが、防御力性能はかなり高いようだ。

 だが、そんな状況でもこの男は余裕そうだ。

 

 

「… いーや、お嬢さん。あんたは悔いる事になるぜ。最近流行りの男による天誅を喰らわせてやるよ」

 

「何を馬鹿な…… ん?」

 

 

 プリーストは冷静に目の前に手を翳すと、そこに身の丈ほどの杖が召喚される。

 その杖「プレイストウォンド」を空に掲げると、先端から光が漏れ出し、シャボン玉がその光を反射して悪魔の視界を奪う。

 

 

「ぐっ… 目、目がぁ…!!?」

 

 

 次の瞬間、悪魔の背中が焼ける。

 どうやって脱出できたのかそれはわからないが、プリーストは既に悪魔の背後に周り、杖から光弾を発射して吹き飛ばした。

 

 

「まだまだこの程度じゃ終わらないわ」

 

 

 続いて悪魔はシャボン玉を両手を1つに圧縮すると、それをプリーストに向けて一気に弾き出す。

 先ほどの防御力に優れたものではなく、今度は1つに圧縮する事によって生まれた爆発力で、圧倒的な攻撃力を誇る水の球を作り出したのだ。

 

 

「悪いが俺はちゃっちゃと終わらせてもらうぜ〜。こんな女の子に暴力はしたくねぇが、まぁ俺の愛だと思って受け取ってくれ」

 

 

 そしてプリーストはドライバーの鍵を捻り、全身から集められた光のエネルギーを杖の先端に集中させる。

 

 

「あばよ!」

 

「なっ…!!?」

 

 

 最大まで溜めた光弾を発射すると、圧縮された水の球は無惨にも弾け飛び、そのまま悪魔の元に光のエネルギーが飛んでいき、悪魔の身体にポッカリと穴を開ける。

 

 

「そ、そんな… 私がやられるなんて……────」

 

 

 それから悪魔は光と共に爆発し、跡形もなく消え去ってしまった。

 悪魔がいなくなった事により、メレフを捕らえていたシャボン玉は破裂し、新鮮な空気を吸えるようになる。危うく窒息死してしまう所であった。

 

 

「はぁ… はぁ…… なんとか助かった。礼を言っ────」

 

 

 しかし、メレフが安心するのも束の間、プリーストは杖を彼に向けて来た。

 

 

「安心してる所悪いが… 俺はあんたに言ったよな? わかるだろ?」

 

「………」

 

「ちょっとここで倒させてもらうからよー… 悪魔の王様」

 

 

 逃げることは不可能。聞こえないはずのゴングが鳴り響いた気がした。




お久しぶりです。ごめんなさい!!
次回はもうちょっと早めにやります!!

では次回、第8解「我は雷撃、我の天罰」

次回もよろしくお願いします!!


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第8解「我は雷撃、我の天罰」

皆さんご無沙汰しております。
今回からちょっと文体変わってると思いますが気にせず。
それではどうぞご覧ください。


 この状況下でメレフができる事といえば、プリーストに「見逃してくれ」「助けてくれ」と命乞いをするしかないだろう。

 プリーストの持つ杖「プレイストウォンド」という武器からは光属性の攻撃が可能と思われるエネルギーを操る力がある。これが彼の能力なのかは知らないが、何にしろこの至近距離から狙われているのだから、どの能力だろうと結局逃げられない。

 

「…… 俺を倒してお前に何の利点がある?」

「利点か… 利点ではなく利益って言った方が正しいなー。まぁ、お前がただの人間として普通の生活を送っているならテレビを観るはずで、俺のことを知っていたから観た前提で話をさせてもらうぜ」

 

 すると、プリーストは杖をメレフに向けたまま自分の名前と目的を話し始めた。

 

「俺は仮面ライダープリーストで名前は深尾源次。年齢は20代と言いたいところだが、30超えてんだ。ま、そう見えないのはよーーーくわかってるがな。そんな俺はデモンハンターって職に就いてる訳で、お前という元凶を潰すことで大量の報酬が手に入る。デモンティアとかいう悪魔だけでも結構入るが、悪魔の王となったら報酬爆上がりするのは当然って思えるだろ?」

「だから俺を倒すと?」

「当たり前の当たり前」

「なら、さっさとその杖から攻撃すればいいのではないか? 俺から聞いたことだが、お前からしたらこの話をする必要もないだろう」

 

 プリーストは確かにという様な顔で首を縦に振る。

 それから杖を握り直してメレフの顎を掬うように上げさせる。マスク越しではあるものの顔をよく見ているようだ。

 

「… ちっ、なーんか見にくいなーこの仮面はよ」

「先ほどからお前は何がしたいんだ…」

「んー? 絶体絶命な悪魔の王様の素顔を拝見するいいチャンスかなと思ったんだが… 見えやしねぇ」

「そうか。俺もこのまま死ぬのも悪魔たちに示しがつかない。この姿から変えよう」

「ほう? 変身解除でもしてくれるのか?」

 

 そうしてメレフはデモンドライバーのキーに手を掛ける。だが、これは変身を解除する為に触れたのではなく、この状況を打開する為の一手。この男が油断したこの瞬間が狙い目だった。

 キーを捻ってドライバーからエネルギーを右脚に集中させ、顎で杖を弾き、身体をグルリと回転させてエネルギーを収束させた蹴りを浴びせる。

 いきなりの事でガードもできなかったプリーストは堪らず吹き飛ばされてしまった。

 

「くっ! この野郎!?」

「油断したお前が悪い。お前の悪いところだろうなそこが。そこに救われた訳だ」

 

 そしてメレフは後退し、そのまま逃げようとした。

 

「おいおい逃げられるとでも思ってるのかー?」

 

 プリーストは体勢を立て直し杖を構えると、その先端から光弾を発射する。光弾は追尾式である為、逃げる事は不可能。

 案の定、光弾はメレフの背中に直撃した。彼もこうなる事はわかってはいたが、実際に受けると中々に威力が高い。地面に転がってしまった。

 

「残念だったな。もう少し脚が早ければ逃げられたと思うぜ?」

「………!!」

 

 せっかく作ったチャンスさえ意味がない。

 このプリーストという仮面ライダーは悪魔と戦う為にそれなりの力を有しているようで、本当の力を取り戻していないメレフ自身とエイルでは歯が立たないらしい。

 もしかしたら他の悪魔の力を使えば逃げられるところだろうが、メレフに変身した時点で悪魔達はキーに戻ってしまう。つまり命令したとしても背後からの奇襲や逃げる為の隙を作るといった数で押すことが不可能なのだ。

 そしてこの状況では他のフォームへの変身もできそうにない。先ほど同様に隙を作れる状態にまで持っていく事は難しいだろう。

 

「さぁて、仕上げだ。安心しろよ。貰った報酬でいい墓を立てといてやるぜ!」

 

 必死に打開策を練っていたその瞬間だった。

 プリーストは肌にピリピリとした違和感を感じる。杖にエネルギーを溜めている時に発せられる振動かと思ったが、まだその段階ではないのでそれはない。

 

「何だよこの痺れは…?」

「ん…?」

 

 メレフは気づいた。プリーストの背後に、全身に電気を纏っている悪魔が現れたのだ。

 その光に流石のプリーストも背後を取られていたが気がついて振り向いた。が、振り向くと同時に彼の身体を電気ショックが襲う。

 

「あばばばばばばばばばっ!!?」

 

 黒焦げになった彼を無視し近づいてくる悪魔はメレフに向けて一言だけ言う。

 

「…… 逃げるぞ」

「わかった…」

 

 悪魔はその場に雷を呼び起こすと、その雷鳴と共にメレフを連れてその場から消えた─────。

 

 

 ---------------------------------------

 

 

 どうやら恭也たちを救い出してくれた悪魔の名は「ゼフォー・ゼロウ」というらしい。らしいという曖昧な感じだが、この男、ゼフォーはあまり喋らない無口な悪魔なようで、名前はエイルから聞いたのだ。

 恭也達はその後、なんとか自宅へと帰れた。あの時、彼が来てくれなかったらと思うとゾッとする。

 

「ゼフォー、お前今までどこほっつき歩いていたんだ?」

 

 ジェイクがそう聞くと、ゼフォーは溜めて、やがて押し出すように言った。

 

「─── 迷っていた」

「おいおい… 相変わらずで安心はしたが…」

「偶然、王を見つけた…… とりあえず助けた」

 

 本当になんというか無口というより喋るのが苦手なんじゃないか?と、思うほどに一言一言それ以上でもそれ以下でもなく、皆に向けてそう告げていく。

 そういえばこのゼフォーといい、他の悪魔達はやはり幹部達の場所を知らないのだろうか。

 気になった恭也は早速ゼフォーに質問する。

 

「ゼフォー、お前が俺を見つけるまでに他の悪魔達と会ったか?」

「いや…… さっきの悪魔が初めてだ……」

「そうか… 他に変わった事はあるか?」

「他に変わった事か…… いや特にっ───」

 

 その時、ゼフォーは何か思い当たる節があったのか言葉が詰まる。

 ゼフォーは王を見つめながら、言葉数は先ほどと同じだが、本人は真剣にその何かについて話し始めた。

 

「… 融合した悪魔がいる」

「お前もそれを知っているのか… 待て、お前はさっき誰にも会ってないと言ったがどうしてそれを知ってるんだ? 情報を仕入れようにもどうやって…」

「…… 俺はその悪魔を見た事はない… だが、記憶はある」

「なに?」

「俺に何故この記憶があるのかはわからない… それにこの融合した悪魔といい…… 俺の予想では、いや、これは予想というか妄想に近い… 何故ならあり得るはずがないからだ…… しかし、どうか考えてもこのような有り得ない事ができる奴は1人しかいない…」

「それはつまり…?」

「─── 先代の王が復活した可能性がある」

 

 その言葉にエイルは声を荒げて否定する。

 

「ゼフォー、あなたふざけているの!? そんなはずはない!! 先代の王はあの時、我々を完全に封印した後に命を落としたはずでしょう!!? 仮に生きていらしたとして1000年の時を生きられる人間なんて……」

「いない… だが、そうとしか考えられない…」

「根拠は?」

「…… 根拠も何も悪魔の力を融合させる、なんて芸当1人しかいないだろう… 逆に… そのようなことができる人間が王以外にいると思うか?」

 

 この言葉に流石のエイルも口が閉じる。

 そして恭也はこの場を借りて、その先代の事について触れてみる事にした。

 

「この場を借りて聞かせてもらう。エイル」

「はい…」

「俺はお前について深く追求しないと言ったな。ただ、これだけは答えてほしい。1000年前に命を落としたというのは一体どういう事だ?」

「それは…」

「何故、先代はお前達を封印した後に命を落とした? 自らが死を望んでそうした訳ではないだろう? 落としたという言葉は何者かによって殺されたという事なのか?」

「………… 申し訳ございません恭也様… その事については……」

 

 先代について聞けば聞くほどエイルの顔が歪んでいく。どうやら彼女にとって相当重大なことがあったらしい。

 他のメンバーもその事に気づいており、ゼフォーが口を開こうとしたが、それをジェイクが止める。

 この事について深堀はよそう。そうしないといけない気がする。今は。

 

「… そうか。すまない、深く聞かないと言っていたが、俺とした事が」

「いえ、恭也様のせいではッ!! アレは私が───…… っ!」

 

 その時、エイルが気になる事を言おうとしたが何かを察知し、土下座をしそうになった所でピタリと止まる。

 この状態になったのなら何が起こったのかすぐにわかる。デモンティアが出現した。

 

「では、向かうぞ。奴らに先を越させるな」

「承知しました」

 

 それから恭也はメレフへと変身し、空を飛んで現地へと向かう────。

 

 

 -------------------------------

 

 

 やはり先ほどの水の悪魔が復活している。魂がそこらを彷徨ってるなら容易に復活できるだろうと思うが、魂だけの状態では流石の彼らも数日と時間を掛けなければならない。

 しかし、今メレフ達の目の前にいる悪魔は紛れもなく先ほどの水の悪魔だ。

 それと隣にいらない奴もいるようだが…。

 

「よう悪魔の王。元気かー?」

「… 貴様、邪魔をするなら失せるがいい。我々は奴を封印する為にここにいる。貴様らのように倒してばかりでは埒が明かない。現に復活している悪魔がいるのだからわかるだろう?」

「あー…… まぁそうだな。確かにそうだ。だけどよー王様。こいつらが復活したとしてもあんたのせいじゃないのか? 実はこれも演技だったりして───」

「お前を封印する」

「ちょ、待てよ!!?」

 

 メレフは源次を無視して水の悪魔に突っ込んだ。

 水の悪魔── ブイセカードは22番目の悪魔。水をシャボン玉にして操ることができる力を有している。

 だが、今回のブイセカードは何かが違った。たった1つのメレフの顔くらいの大きさのシャボン玉が割れると、メレフの身体は後方へと吹き飛ばされた。

 

「な、なんだこの威力…!? さっきとはまるで違うだと…!?」

 

 その威力にメレフは無様に地面を転がる。

 源次はやれやれと首を横に振り、ドライバーを装着してキーを差し込んでプリーストへと変身する。

 

《祈る!!願う!!導きのままに!!プリースト!!》

「よう可愛い嬢ちゃん。あんまり悪さしてると俺みたいな奴に狩られちまうぜ」

「それはどうかしらね」

 

 ブイセカードはそう言って指を鳴らすと、辺りからボコボコッと黒い影のようなものが生えてきた。その影達はやがて人型となり、まるでゾンビのようにメレフ達に襲いかかってきた。

 

「な、なんだぁこりゃ!!?」

「雑魚か… こいつらは封印する意味もないって事でいいな」

 

 メレフはこいつらに魂がないと感覚だがわかった。

 封印する必要がないこの影達はゾンビル。自らの力で何度でも呼び出せる使い捨ての怪人だ。

 次々に切り伏せていくが、流石にこの数は分が悪すぎる。

 

「これじゃあ近づくこともできないわね」

「そうか。なら─── 俺に近づかせなければいい訳だ」

《ゼフゼロ!!》

 

 そしてメレフはドライバーの鍵をゼフォーの力、雷の力を宿したゼフゼロティアイズキーを差し替える。

 それを捻ると雷のエネルギーが溢れ出し、メレフの両肩と背中を中心にアーマーが形成されていく。

 

《解錠!!》《憑依!!》

《悪魔の名はゼフォー・ゼロウ!!40の数字を持ち、その雷撃は全てを痺れさせる!!》

《スタンドゼフゼロ!!》

「ハァッ!!」

 

 仮面ライダーメレフ スタンドゼフゼロ

 この形態となったメレフはメレフキーブレードを変形させて槍にし、それを思いっきり振り回す。それは槍なのでリーチが長いこともそうだが、雷を纏った事で1人に触れるだけでまた1人また1人と感電し、大きく広がっていく。

 

「おいおい!! それ振り回すな危ねーな!!? 俺に当たったらどうするつもッ──」

「この雑魚は頼んだぞ」

「あ? おいちょ、待っ…!!」

 

 プリーストがゾンビル達に囲まれている隙に、メレフはブイセカードの元へと走る。

 ただ真っ直ぐに走ってくるだけなので、それは隙だらけで馬鹿のやる事である。シャボン玉をそのまま真っ直ぐに飛ばせば確実に仕留められよう。

 

「馬鹿めッ!!」

「── 馬鹿は貴様だ。愚か者が」

 

 ブイセカードが飛ばしたシャボン玉はメレフの槍の一振りで粉々になった。

 このシャボンの威力は上がったとしても、属性有利でメレフの方が有利。更に言えば既にメレフはドライバーのキーを捻り、雷のエネルギーを槍に集中させていた所だ。

 

「ま、まずい…!! 逃げないとッ…!!」

 

 そしてブイセカードはシャボン玉を辺り一面に撒き散らし逃走を図った。が、飛んで逃げた所でもうメレフの射程範囲内だ。

 メレフは地面を思いっきり踏みしめ、身を大きく仰け反らせ、全身を使って槍を投げる。

 

「ひぃっ───」

「── 眠れ、悲しき悪魔よ」

 

 雷を纏った槍はブイセカードの身体を貫通し、彼女は空中で大きな爆発と共に崩れ落ちる。

 メレフはすぐさま鍵を取り出して彼女を封印する。

 ようやく終わったのだが、あちらも終わったようで背後からゆっくりと迫るプリースト。

 

「…… やる気なのか?」

「勿論だ。やられてダサいままで終われるか。せっかく可愛いあの子とまた喋れたってのに邪魔しやがって」

「そうか… だが、俺はやるつもりはない。また会おう。できれば会いたくはないがな」

「…ッ!!? 待ちやがれこのッ!!───」

 

 そしてメレフが手元に戻ってきた槍を地面に突き刺すと、雷が辺りに降り注いで視界を遮ったかと思うと、そこには既にメレフの姿はなかった。

 

「あ、あのやろぉ…… 今度会ったら絶対に倒してやるからなぁおぉぉぉぉい!!!────」

 

 

 -------------------

 

 

「おい、エイルやめろ」

「はい」

「『はい』ではない、わかっていないから言っている。命令だ、離れろ」

「承知しました」

「言葉を変えただけでは意味がないんだが!?」

 

 先ほどの反省?という事でエイルは恭也にひっついている。説明しろと言われても反省らしい。反省とはなんの反省かは知らんが、そんな事はどーでも良く、これが反省だと?犬用にするのがか?男としては本望だろうが、今の恭也のプライドは鼻の下を伸ばす事を許さない。

 

「と、とにかくこれで5人揃った訳だ」

「そうですね。これも恭也様の圧倒的なお力のお陰であります」

「この先、どんな悪魔が待ち構えているかはわからないが、俺は俺なりに王としての責務を全うする。皆、力を貸してくれ。俺が本当の王になるその日まで」

 

 その言葉にジェイクは「何を今更」と言う。他の悪魔達も笑っている。

 エイルが、いや他の悪魔も隠している事がある。だが、それでいい。今はそれで構わない。

 いつかわかった時があったとしても王として戦うだけなのだ。メレフとして、どんな苦難にも────。

 

 

 ----------------------------------

 

 

「─── 現王よ。真実はすぐそこまで迫っているぞ。お前が思うほど悪魔は単純ではない。悪は悪なのだよ」

 

 ── 恭也の知らないどこかで何かが動いていた。




文体リニューアルしましたが如何でした?
抜けてる部分とかありますがご愛嬌。当たり前だよなぁ?

次回、第9解「我は頑固、我は鉄壁」

次回もよろしくお願いします!!


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第9解「我は頑固、我は鉄壁」

皆さんご無沙汰しております。
それではどうぞご覧ください。


 よう、俺は深尾源次だ。デモンハンターっていう組織のリーダーではないが、まぁ最重要人物であり、組織にいなきゃいけない素晴らしい人間な訳で、スポーツ万能で週1でジムに通っていたこともあった。やめたが。

 それに天才と称され、将来有望とまで言われたこの俺なんだが、今とある奴を取り逃しちまったもんで、組織のリーダーから篦棒に説教くらってる訳だ。

 

「源次。お前、例の王様を取り逃がしてよく生き生きとした顔で戻ってこれたな。死ぬ寸前の顔で帰ってこなきゃおかしいよな。もしお前が死にかけで戻ってきたのなら少しは同情してやっただろうが、特に理由もなしに逃してきて、その後は女と遊んでただと? 舐めてるのか?」

「おいおいリーダー。一応、ここは国が設立したありがたーい組織な訳だ。こんな悪そうな感じで集まったら逆に捕まっちまうぜ。もっとスマイル大切にしなきゃよ」

 

 リーダー格の大男はこの言葉を聞いた途端に立ち上がり、源次の胸ぐらを掴んで拳を固める。

 

「お前は自分の立場というものがわかってるのか? 俺たちはデモンハンターとして、これ以上犠牲者を出さない為にこの組織に入った謂わばエリートだ。誰よりも優れているからこそ誰かを守る事ができる。今の世になければならない立場なんだぞ。それなのにお前は最重要人物を流して女遊びだと? ふざけるなッ!!」

「あー…… お言葉なんだがリーダー?」

「なんだ?」

「俺たちが誰よりも優れているって言ったよな?」

「言った。だから守れるものが───」

「守れるって実際現在大体が俺の手によって守れているだろ?」

「…っ!!」

 

 源次はそう言うと胸ぐらを掴んでいた手を払い除け、パッと手でシワを直す。

 そして人差し指を突き立て、更に激しくリーダーを、彼らを責め続ける。

 

「いいか、よく聞けよ? お前達が選ばれたんじゃなくて俺が選ばれたんだよ。この中で仮面ライダーに変身できる奴いるか? 今までに何回失敗した? ほら、挙手しろよ、ほら。さぁ!!」

 

 静寂。誰も手を上げられるはずなかった。プレイドライバーを使えるのは源次の言う通り選ばれた者のみ。

 このドライバーを造った研究員達数十名は、過去の文献からデモンドライバーを参考に現在へと甦らせた。謂わば模造品。

 ただし、模造品と言えども変身する為には体力試験等が実施され、強い精神力も必要となる他、最終的には残った数名の中で最も適合率が高い者が選ばれる。

 それがこの深尾源次だった。

 

「はいはい、じゃあ俺はまた好きにやらせてもらうので」

「ま、待てどこに行く!!?」

「勿論、悪魔退治。それ以外に俺がやれる事ってあるか? あってもやだね。俺は好きな時に好きなだけ遊びたいのよ」

 

 手をヒラヒラとさせて彼は部屋を出て行ってしまった。

 リーダーは大きなため息を吐くと近くにあった椅子に座り直し、テーブルに置いてあったコーヒーを一気に飲み干す。

 

「リーダー… あいつッ……!!」

「よせ。言っても無駄だ」

「ですけど!!」

「いいんだ。あいつが文句を言いたいのもわかる。自由にする理由もな……」

「そりゃまぁ…… 確かにそうですが、いくらなんでもあんまりですよ」

「うーん…」

 

 深尾源次という男の背中はいつも何かが乗っかっているんだ。

 金でも女でも責任でもない。例えるなら悪魔。あいつの背中には何匹も嫌な悪魔がのし掛かってるんだ────。

 

 

 --------------------------------------

 

 

 その頃、恭也たちは順調に悪魔達を封印していた。

 ここ1週間の間に20人以上は封印済みだ。あまりにも振り回されている為、彼らの身体はボロボロであり、そろそろ休みが欲しいという時であった。

 

「はぁ… はぁ……… これで何人目だ?」

「29人目でございます」

「29か…かなりの数だな」

「… あの恭也様?」

「なんだ?」

「ここ最近、お休みになられてないようですが… お身体の具合はよろしいのですか?」

「うむ、どちらかと言われれば良くはないな。1週間で力を使い過ぎたのか、身体が妙に重い。偶に睡魔に襲われる」

「添い寝致しましょうか?」

「この数秒で何があった」

「…… 共に寝させていただきませんか?」

「お願いになったな」

 

 恭也を心配するエイルだが無理もない。

 エイル達も相当身体に負担がかかっているはずだ。それなのに自分が休むなんて王としての威厳や使命が無駄になる。無理をしてでもやらなければならない。平和の為に。

 そう思っていた時であった。

 少しの油断を見せたその瞬間を狙って、隠れていた悪魔が恭也に襲いかかってきたのだ。

 

「恭也様ッ!!!」

「しまった…ッ!!」

 

 悪魔の電撃が恭也に降り注ぐかと思われた。

 その時である。

 突如、彼の前に大きな壁が出現したかと思うと、その壁は雷を全て地面へと受け流し、恭也の窮地を救ったのだ。

 

「この岩壁は───」

「ガハハハッ、久しぶりだな!! 王よ!!」

「お前が助けてくれたのか?」

「王を助けるのは当然だッ!!… さて、まぁお互い話したいこともあるだろうから、こいつをさっさと黙らせてやろう」

「あぁ、感謝するッ!!」

《スタンドエイワン!!》

 

 恭也は地面を操る悪魔の助けを借りながら、メレフへと変身し、メレフキーブレードを手に取って雷の悪魔の元へと突っ込んだ。

 当然、ただ真っ直ぐ突っ込んでいくのだから、悪魔側からしたらこれほど狙いやすいことはない。両手から雷を発生させるが、メレフの通り道を壁が覆うものだから全て無効化されてしまう。

 

「眠れ、悲しき悪魔よ────」

《エイワン!!シャットアウト!!》

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ…!!!」

 

 雷の悪魔にメレフキーブレードの斬撃が浴びせられる。切り裂かれた悪魔に鍵を挿してやると、鍵に悪魔が封印される。

 謎の悪魔の手助けにより苦戦する事なく、無事に悪魔を封印できた。

 恭也は変身を解くと、その悪魔に尋ねる。

 

「さて、話をしよう。予想はついているが……」

「予想通りわしは『ネゴール・レイ』。会いたかったぞ王ッ!! ガハハハハハハハッ!!」

 

 そしてネゴールは嬉しそうに、力強く恭也の背中を叩いた。

 この無礼に犬が威嚇するような声を上げながらエイルが牙を向けている。その横でジェイクが笑いながらネゴールと肩を組む。

 

「久しぶりだなッ!! ネゴール!!」

「お前はジェイクだなぁ!!? 久しぶりだなッ!!?」

「今までどこにいたんだ!!? 俺はこの王と共に悪魔を熱く!! 世界にその名が轟くほど封印してきたぞ!!!」

「そうかそうか!! わしもその名を聞いてここまで来たんだ!!! お陰で予定より早く会えたわい!!!」

 

 ガハハハハハハハッと、これ以上にうるさい絵面があっただろうか。暫く基本的に静かな状態だった我が家に、重低音スピーカーが1つ追加されるな。

 すると、ネゴールはピタリと笑うのを止め、恭也に真面目な顔で質問をしてきた。

 

「そういえば王。お前は先程の悪魔で封印したのは何体目だ?」

「ん? 30体目だが… 更に前に遡れば数体封印に成功している。デモンハンターによって魂だけとなった奴らもそれなりには…… だから40体くらいか?」

「40… 既に半分か」

「順調ではあると思っているが… 何か問題が?」

「いや、問題ではない。寧ろ良い。だが、半分も封印しているのならそろそろ力の解放ができているはずなんだがなぁ…」

 

 その力の解放という言葉を聞いた恭也は、それが何なのか予想がついた。

 それを確かめる為にネゴールに聞く。

 

「王の力だろう?」

「その通りだ。半分も封印しているのなら、王の力も半分以上解放されている筈だ。ただ今見た所、お前はまだその半分すら出せていない。2割程度と言ったところだな」

 

 たったの2割という言葉に恭也は耳を疑った。既に40体という数を封印しているにも関わらず、解放している力は王としての力に慣れた程度なのだ。

 恭也は思わずやや前のめりになって問う。これから先どんな強敵が待ち構えているかわからない。その為にも早く力を解放しなければならない。

 

「ネゴール。王としての力を解放するにはどうしたらいい?」

「…… あ?」

 

 ネゴールは何言ってるんだ?という顔で恭也を見つめる。

 

「なんだその顔は…?」

「いや、お前知らないのか? そんな訳はないだろ、エイルから聞いて───」

 

 その時、エイルがデモンティアを察知した様で、恭也を早急に向かわせようと促す。

 この行為がまるで今の話を遮ろうとしている様にも捉えられたが、それは後でもいい。今は一刻も早く現地に向かうことが優先だ。

 

「よし、行くぞお前たち───」

 

 

 --------------------------------------

 

 

 恭也たちが着いた頃には既に終わっていた様で、そこにはプリーストが立っていた。

 まだ正体がバレていない恭也は物陰に隠れメレフに変身し、プリーストの元へと歩み寄る。

 

「───…… おっ、なんだ王様じゃねーか。残念だがもう終わったぜ」

「ご苦労。俺はやる事がある。早々に立ち去って貰うと助かるんだが…」

「そいつはできない相談だな。俺はデモンハンター、目の前に悪魔… それに王もいるってなら話は変わってくる。お前を倒して金にも女にも困らない生活させて貰うぜ?」

「… ネゴール、俺に力を貸してくれ」

 

 メレフはネゴールにそう言うと、彼は「その力でどこまでやれるか見せてみな」と言い、ネゴレイティアイズキーをメレフに渡した。

 それからメレフはドライバーの鍵をネゴレイティアイズキーへと変更し、そのまま回して土のエネルギーを増幅させる。

 

《ネゴレイ!!》

《解錠!!》《憑依!!》

《悪魔の名はネゴール・レイ!!50の数字を持ち、その硬度は全てを弾く!!》

《スタンドネゴレイ!!》

 

 上半身を岩の様なゴツゴツした鎧で包み込み、そこから両手にメリケンの様に棘が着いた岩のグローブが装着される。

 仮面ライダーメレフ スタンドネゴレイ───。

 

「今度はガチガチに固めてきたってわけか。まぁ、いいぜ。前と同じ様にフルボッコにしてやるだけだからな!!」

「そう同じように事が進むと思わない方がいいぞ」

 

 プリーストは杖から光弾を発射する。この光弾は自在に動かすことが可能であり、例えどれだけ攻撃を避けようと最終的には当てられる。

 それにこの形態からして素早く動くことは困難。装甲の薄い部分から攻撃すれば問題ないだろう。プリーストはそう思った。

 

「同じようになっちまうのがデモンハンターの俺の腕よ!!」

 

 光弾はメレフに直撃した。直撃した筈だ。

 しかし、プリーストは何か違和感を覚えた。

 

「なんだ…?」

 

 装甲に当たった時のような金属音というのだろうか。それが一切なかった。硬くはない。まるで砂糖のような…。

 

「あ、えっ!?」

「同じようにならなかったな。デモンハンター?」

 

 メレフの身体に分厚い砂が纏わり付き、光弾の威力を下げ、衝撃を吸収したのだ。

 だが、たった1発回避しただけ。四方八方から放てばどこかしらには当たる筈だとプリーストは考えた。それに全部とは言わないが、数個なら無理なく操れる。

 

「くらいなっ!!」

 

 そしてプリーストは光弾20発を同時に発射した。

 思った通り避けようとしない。それはそうだ。メレフ自身もわかっている筈だ。避けても追っていくと。

 

「はい、じゃあお疲れぇっ!!」

「── 俺は避けられないんじゃない。敢えて避けないだけだ」

「は…?」

 

 次の瞬間、メレフが地面に手を触れると、周りに岩の壁が出現し次々に光弾を防いでいく。

 それをプリーストは光弾を操って避けようとするものの、壁はパカッと肉食獣のように口を開いたかと思うとそれを飲み込んで無効化してしまう。

 まさに防御は最大の攻撃と言えよう。メレフは次に砂を巻き上げ、プリーストの身体に纏わせて動きを封じた。

 

「こ、こんなものぉ…!!」

 

 どこにそんな力があるのか。火事場の馬鹿力で砂の拘束を纏ったまま杖を振り上げ、光弾を放って周りの砂を弾き飛ばす。そして杖から光のレーザーを放ち、まるで剣のように振り回す。

 

「これでぶった斬って─── えっ」

「気づかなかったのか?」

 

 プリーストがメレフに向き直ると、彼は影に覆われていた。

 恐る恐る上を見ると、巨大な岩が砂で下から支えられていた。本当にいつから浮いていたのだろうか。

 

「まさか… 砂は拘束する為じゃなく、俺の視界を遮る為にか…?」

「その通りだ。だが、わかった所でもう遅いがな」

「へっ、へへっ…… 一旦話し合う事はできない感じでしょうか…?」

「ふむ… もう少し早かったら聞いていたかもな」

「そーかいッ!!」

《プリーストパニッシュ!!》

 

 そしてプリーストはドライバーの鍵のボタンを押してから捻って、レーザーの威力を強くして上から岩を真っ二つに切るように振り下ろす。

 それと同時にメレフも彼に向かって巨大な岩を投げ飛ばした。

 

《ネゴレイ!!シャットアウト!!》

「ハァッ!!」

 

 互いの必殺技がぶつかり合い、目の前が光ったかと思うと、大爆発を引き起こし辺りが砂埃に包まれる。

 メレフはそれらを掻き分けてプリーストを確認するが、そこに彼の姿はなかった。

 

「…… 逃げたか」

「ですが、奴もこれで恭也様は最強で完璧で素晴らしいお方だと気づく筈です」

「そ、そうだな」

 

 エイルの事はさておき、ネゴレイの防御力がなければどうなっていたかわからない。王としての本当の力。解放するのはいつになるのか。

 

「とりあえず、今回はここにいた悪魔を封印して引き上げ────」

 

 その時だった。メレフに光弾が直撃する。

 

「がはっ…!!?」

「恭也様ッ!!」

 

 更に光弾は飛んでくるが、壁を作ろうにも追いつかず、その身で何発を受けてしまった。

 この光弾はプリーストか?何故、どこから見ていた?帰ったんじゃなかったのか?

 いや、これは違うとメレフは思う。確かに同じ光ではあるが、威力がだいぶ違う。こちらは威力こそ低いものの速い。

 

「一体… 誰だ!!」

「………」

 

 そこに立っていたのは見た目ですぐにわかった。女の悪魔だ。だが、他とは全然違う個体だと感覚でわかる。

 それを見たエイルはそれが誰かわかった。

 

「… アレは60番目です」

「なに?」

「60番の悪魔、『メロク・オーラ』です!」

 

 彼女、メロクの目に光はなかった。ただその手には光の力が込められていた。

 そして再び彼女から光弾が放たれる───。




まさかの敵対…?こんな事エミーの時もあったような…なぜ?

次回、第10解「我に裏切り、我は戸惑い」

次回もよろしくお願いします!!


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第10解「我に裏切り、我は戸惑い」

皆さんご無沙汰しております。
それではどうぞご覧ください。


 メロク・オーラ。属性は光で、No.60の悪魔でありその位の統率者でもある。

 エイルとは良き相談相手として、時に王を巡るライバルとして共に過ごした。見た目は女神と言われても差し支えないほど美しく、煌びやかであり、悪魔と言われてもまず信じられないだろう。

 性格も好戦的ではなく、寧ろ会話でその場を片付けることを好む。もし、順番が違えば彼女が全ナンバーの統率者をしていたのかもしれない。と、後にエイルは語る。

 

「メロクッ…!!」

「…………」

 

 エイルが彼女の名前を呼ぶが、彼女からは何も返っては来ない。

 その代わりという風に、メロクは右手を翳し、そこへと光のエネルギーを収束させて打ち出した。

 

「くっ…!!」

 

 光の弾は凄まじい速度でメレフに着弾する。ネゴレイの防御が追いつかない。あれほどの速度、いや光速の弾丸をどう避けられるだろうか。

 

「ここは一旦引くッ!!」

「…… はい」

 

 デモンティアイズキーから発せられた声は恭也の一言でピタリと止まる。悲しみが伝わる。鍵越しだったとしても。

 メレフはキーを差し替え、他形態と比較して1番速いスタンドエミオンへと変化し、敵に背を向けて空を飛ぶ。追い風を起こし、そのスピードを更に上げる。

 

「今はダメだ…… 今は」

 

 これは逃げているだけではなく、エイルの為でもある。彼女の姿は見えないが、心から感じられたあの悲しみの気持ち。メロクに攻撃してはならない。傷つけてはいけない。

 何か対策法があるまで逃げるしかない。

 

「─── なっ…!!」

 

 当然の事だが、いくらエミオンが速いと言えど、メレフの中ではという話であり、光速の相手から逃げるとなれば話は別だろう。

 回り込まれていた。まるでメレフたちの速度がカタツムリの様に鈍いとでも言うような顔をして、メロクは彼らの前に立ち塞がる。

 そして両手を翳した上で、そこに光を溜めてとてつもないスピードで発射する。

 

「お、おぉぉぉぉッ…!!」

 

 エミオンの力を使い、感覚を最大限に研ぎ澄ませて風を感じ、光速で飛んでくる攻撃を全身を掠めながらもなんとか避けていく。

 しかし、このまま何度も避け続けることは困難である。いずれ限界が来て全弾もらうがオチだ。

 

「避けられないのなら!!」

《スタンドネゴレイ!!》

 

 光の攻撃の最中にネゴレイへと形態を変え、その攻撃を全て身体で受けきる。

 いくら硬いネゴレイだとしてもこの数をくらえば相当堪えるが、これで良い。これしかない。

 そのまま落下するメレフにメロクは再び手を翳してトドメを刺そうとする。

 

「よし、次ッ!!」

《スタンドティニーマ!!》

 

 続いて水の力を操るティニーマへと姿を変え、周囲の水分をメロクの目の前に集め、即座に「スタンドジェイテン」へと形態を変更し、そこへと大剣を振り回して巨大な火炎の斬撃を飛ばす。

 

「………」

 

 メロクは余裕そうに避けるが、これは彼女を狙ってやったわけではない。

 すると、メロクの周りに水蒸気が発生し辺りが見えなくなってしまう。これを彼女は光速で吹き飛ばすが、その一瞬の隙をついて逃げられてしまった。

 

「…………」

 

 何もなくなった場所をメロクはただジッと見続けていたが、やがて何かに呼ばれる様にその場から姿を消した────。

 

 

 -----------------------------

 

 

「エイル…… 大丈夫か?」

「…… はい、問題ありません」

 

 問題ないとは言っているが、顔は見るからなそんな風には見えない。

 現在、無事逃げられた恭也は道中にて、熱い2人に肩を担がれてフラフラとしながら家に帰ろうとしていた。

 これは力を酷使し続けた事による疲労が全て今来たらしい。身体がもうほとんど動かない。既に1週間休みをほぼ取らずに戦い続けたから仕方ないだろう。

 いつもならそんな彼を心配するエイルも今回ばかりは違った。

 

「安心しろ。メロクの様子からしてアレは誰かに操られている。そうだろう? この俺に逆らえる悪魔などいないからな」

「はい… 左様でございます」

「……… あ、あれだ。お前と会ってから随分と経つな… いや、まだそんなに… とにかくお前とは長い付き合いだ。気晴らしにどうだ? どこかに出かけるというのは?」

「お言葉はとても嬉しいのですが、恭也様は身体にお疲れが溜まっております。私に気にせずお休みなさってください」

「えっ、あ、そうだな… すまない」

「いえ…」

 

 ここまで調子が狂うことがあるか?

 あのエイルが恭也のアプローチとも言える言葉に全くと言って良いほど反応しない。これから先こんな現象はお目にかかれないだろう。

 だが、恭也は思う。自分にもしも親友と呼べる者がいて、あのような形で再会となったらきっとこうなる筈だ。胸が締め付けられるような感覚に。

 

「…… 大丈夫だ」

「え?」

「俺が必ず元に戻す」

「はい、ありがとうございます…」

「違うぞエイル」

「はい…?」

「『恭也様なら必ず戻せます』だろう? いつもお前が言ってるではないか。それともこの俺が信用できないと?」

「い、いえ、その様な事は決して…!!」

「── なら、俺を信じてくれ。俺も戻すと言っても具体的にどうやるかはこれから決めるとして… とにかくメロクを戻す為には少なからず王としての力が必要だ。だから俺を… お前の王を信じてくれ」

「恭也様……… はいっ!!!」

 

 彼のその言葉にエイルは笑顔を見せた。

 そして他の悪魔たちも互いに顔を合わせ、メロク奪還を決意する。

 

「よーーーーしっ!!メロクッ!! 気合と俺の情熱と熱血と熱と熱で必ず助け出してやるからなぁっ!!!」

「ジェイク熱いね〜、水ぶっかけるね〜」

「エイル、僕がいるからには安心した方がいい。彼女の心を溶かすことができるのはそう僕ッ!! このエミー・オッ…!!」

「……… 慈悲はないのか」

「がっはっはっはっはっ!! エイルの拳が顔にめり込んでいやがるなぁ!!」

 

 そんな彼らと心が通じ合えている事を実感できるこの瞬間。この間に恭也は違和感を覚える。

 今、どこからかはわからないが嫌な寒さを感じた。これは殺意だ。それがわかるほど強い。とてつもない殺意。

 恭也は辺りを首をあらゆる方向に振りながら全体的に見渡すが、やはり近くにはいないのか、その一瞬の殺意はなくなり、悪魔たちのわちゃわちゃとした声が聞こえるだけだった。

 

「…… デモンドライバーか…?」

 

 このドライバーが強く反応したのだろうか?それはわからないが、よくよく考えればこのドライバーから先ほども感じ取れた。

 それはメロクから逃げた際だ。何かの視線を感じたかと思うと、デモンドライバーが強く反応したのを覚えている。

 

「このドライバーと関係がある……… やっぱりそうなのか?」

 

 わかっている。信じられないのは確かだ。

 だが、ゼフォーから聞いたあの件はメロクの様子を見てわかる。メロクは操られていた。エイルからも彼女がそういう奴ではないと聞いている。

 それに傘下の悪魔たちならまだしも、統率者を操るレベルの悪魔がいる筈がない。操れたとしてもそれは誰だ?いくら探しても1人しかいないだろう。それは王の資格を持つ者だけ。

 現在、王として数えられるのは恭也のみ。そしてもう1人いる。大昔にたった1人だけ。

 そう、強大な悪魔すら操れる人間がいるという事はつまり─────。

 

「先代の王はッ───!!」

「─── ようやく辿り着いたか。現王よ」

「…っ!!?」

 

 ただのどこにでもある様な一本道。一通りはまるでないそこに王が2人立っていた────。

 

 

 --------------------------------

 

 

 その時、皆が言葉を詰まらせた。他の悪魔たちが何も言えなくなるのは当然の事だ。恭也はもちろん顔も知らないし、どういった人物なのかもさっぱりだ。

 しかし、相対して見て、王の勘というのだろうか、目の前にいる人物がどれだけ強大な力を持っており、王としての威厳を感じられる程の強い気迫の持ち主か伝わってくる。

 

「お、お前は……」

「はははっ、先代に対してお前とは随分と大きくなったな」

「名乗れ。今すぐにお前が誰なのか教えろ」

「先ほどから言っているだろう。私はお前よりも遥か前に王として悪魔を従えた者だ」

「先代の… 王だと…?」

 

 この状況で聞いたのは恭也自身であるが、事実を伝えられて頭の整理が追いつかないでいた。

 1000年前に死んだ人物がなぜ生きている?いや、仮に悪魔と共に封印されていたとして、そもそも彼は普通の人間であるからそれもあり得ない話だが…。

 誰も言葉を発することがない中で、エイルが唇を震わせながら口を開く。

 

「前王様…… な、なぜ、貴方様がここに…?」

「おぉ、エイルよ。久しぶりだな。1000年ぶりだが、相変わらずの様で安心したぞ。嬉しく思う」

「わ、私も嬉しいです… が、何故……?」

「あぁ、そうだな。何故、死んだ筈の人間がこの1000年の時を超えて生きているのか。答えは簡単だ」

 

 前王はニヤリと微笑み言い放つ。

 

「お前のせいだ、エイル」

 

 その一言でエイルの身体がビクリと跳ね上がる。

 知っている。前王は間違いなくエイルの秘密を知っている。恭也はすぐにその事について触れようとした。

 

「お前、一体エイルの何を知っ───」

 

 しかし、恭也はその質問をしようとしたが、急に胸が苦しくなって口を閉じた。

 彼女が言いたくないからここまで聞かずに過ごしてきたのに、今だって彼女に信じろと言っておきながら、じゃあお前の秘密を教えろなんて都合が良過ぎるじゃないか。エイルが恐怖して身体を震わせているのに、王である自分が更に追い詰めてもいいのか。

 

「ほう、こいつを庇うか。あの一瞬でエイルの気持ちを察し、敢えて聞かない事を選んだお前の姿はまさに王と呼べよう」

「何をしに来た」

「…… それが質問でいいのか?」

「何をしに来たと言っている!!」

 

 恭也は声を荒げて前王を威嚇する。

 彼はその気迫すら微風だという風に鼻で笑うと、淡々と話し始めた。

 

「消そうと思ってな─── デモンティア達を」

「…っ!! それは何故だ。彼女達はお前の… 王の為にその身を粉にしてでも働いてくれた。世界平和の為にだ。なのに、その言葉はどういう事だ? お前を崇拝してきたデモンティア達に対して殺すなんてよく言えるなッ!!」

「殺すでない、消すのだ」

「………?」

「この世から1匹も残さず消す。それがこの世界を平和にする為の唯一の方法だ」

「平和にする為にだと…?」

「ここまで言ってわからないか? この世界が今危機に晒されているのは知っているだろう。いや、知っているというより実際にそれに相対し、戦い、封印し続けているだろう?」

「はっ───!!」

 

 それは当然の事だった。今、自分達が戦っている相手こそデモンティアなのだ。デモンハンターは敵でなく、彼らは世界を守る為に動いているだけに過ぎない。

 

「悪を使役し、悪による裁きを下す。デモンティアの王に選ばれた時点で決定している。我々の運命はな…」

「全員封印したら…… どうなる?」

「… その質問はエイルに関わる事だが?」

「うっ…」

 

 やはり、過去の話をしようとすれば必ずエイルが関連する。

 名前を言う度に彼女の身体は震えを強くしていった。怯えているのか、それともただ辛いから? 何にせよこの場をどうにか収めなければならない。

 この場から逃れる為にドライバーに手をかけながら話し始めると、瞬間、前王の口から衝撃の事実が聞かされる。

 

「… お前には質問したい事が山ほどあるが、今はお互いの為に引く事を提案す────」

「デモンティアの力は魂を食らう事で増していく。それは各ナンバーも同じ事だ。この意味がわかるな? デモンドライバーも同じ様に魂を食らう事で力を解放していく」

「おやめくださいッ…!!!」

 

 その時、エイルが前王を止めようと走り出すが、どこからともなくメロクが現れて彼女を受け止める。

 

「よくやったメロク─── ここまで言えばもうわかるだろう?」

「まさか…… そんな……」

「デモンドライバーの力を最大限に使う為に必要な悪魔、それがエイルだ。そしてドライバーを使用する際に使われるエネルギーはそう、現王──── お前の魂なのだよ」

 

 恭也は何も言い返す事ができなかった。ただ歯を食いしばることしかできなかった。何も考えられない。整理にも時間がかかる。

 

「私が1000年の時を経て生きているのは、私自身が魂だけの存在となったからだ。全ての生命を吸い尽くしたデモンドライバー…… その中に内蔵されていた私は封印が解放すると共に、再びこの世に蘇った。所詮、悪魔は悪魔。我々の様な王たるべき存在がいなかったら、人間と悪魔の戦争となっていたことだろうな」

「………」

「私に告げる事もしなかったこの事実。こいつは本来の力を手に入れる為に我々を器にしたのだよ」

「………」

「私がこの世界を変える。この私の手で平和を守る。さぁ、デモンドライバーを渡せ。お前は良くやった後は私に─────」

「嘘もいい加減にしろ、前王よ」

「なんだと?」

「途中から矛盾している。お前はこの世界の平和の為とほざいておきながら、悪魔同士の無理な融合、精神的な操作をし、更に一般人にも被害を出している。これのどこが平和なんだ? お前の本当の目的を教えるがいい」

「───… ふっ、いいだろう。ただし、私に勝てたのならだがな──」

 

 そう言うと前王は灰色のデモンティアイズキーを取り出し、それを胸へと差し込んで回す。

 すると、彼の身体はみるみるうちにデモンティア達の様な、いや、彼らよりも醜悪な身体へと変化する。

 

「…… さぁ、準備完了だ。死はすぐそこに迫っているぞ」

 

 今、前王と現王の戦いが幕を開ける───。




デモンズドライバーと被っちゃってるよぉ…お前なぁ…。
もっと早くからやれ(戒め

次回、第11解「我は光、我の輝き」

次回もよろしくお願いします!!


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第11解「我は光、我の輝き」

皆さんご無沙汰しております。
それではどうぞご覧ください。


「お前の本当の目的はなんだ!! 言うがいい、前王ッ!!」

「知りたければ力づくで来るのだなッ!!」

 

 恭也はメレフへと変身し、悪魔よりも恐ろしく禍々しい見た目をした前王と戦っていた。しかし、攻撃の流れや受け身、戦いにおける攻めと引きを理解している分、前王の方が遥か上をいく。

 メレフが剣で切り裂こうとするが、その鎧の様な身体に傷はつけられない。装甲が薄そうな腹や手足、丸出しの顔の部分を狙ってはいるが、肉体的にも硬度が高いのか攻撃しても前王は平気だとばかりに動き続ける。

 

「なら、俺の全てを貴様にくらわせてくれるッ!!」

《スタンドジェイテン!!》

 

 そしてメレフはまず「スタンドジェイテン」へとフォームチェンジし、業火を纏った大剣を振り回し、前王を斬りつける。

 例え傷はつかなくても属性攻撃ならば通る筈だと考えた。

 

「1000年の時を経て火力が落ちたな、ジェイク!!」

 

 前王は火だるまになった状態でメレフを掴み、上空へと放り投げ、両手から無数の針を飛ばす。

 空中でその針を避ける事はできないと、大剣に先ほどよりも更に炎を纏わせ、針を溶かそうとした。だが、針は数本防げただけで他はメレフの身体へと突き刺さる。

 

「がはっ…!!」

「全てをくらったな?」

「くっ…… まだこれからだ」

《スタンドエミオン!!》

 

 空ではこの形態「スタンドエミオン」の方が圧倒的である。

 風を操り、前王の周りを4つの竜巻で囲うと、そのまま彼を押しつぶす様に1箇所に収束させる。激しい突風が吹き荒れ、周りの物が吹き飛ぶ中、何をしたんだと言わんばかりに身体についた塵を払って竜巻の中から出てきた。

 再び風を操ってぶつけようとしたが、前王は翼を展開して空を飛び、一瞬にしてメレフの目の前へと辿り着くと、首を掴んでそのまま落下し地面へとめり込ませる。

 

「ぐおぉぉ…ッ!!!」

「全て無意味だったな?」

「……っ!!」

 

 先ほどと同じセリフを吐かれ、怒りを露わにしたメレフは前王を両足で蹴り飛ばし、ドライバーのキーを変更して「スタンドティニーマ」へと姿を変える。

 

「ふっ!!」

 

 周りにある水分を操り、前王を包み込んでそれらを回転させる。これは攻撃ではなく視界を遮るための囮だ。視認できない所から防御すら取れない一撃を与えでやる為。

 そしてメレフは《スタンドゼフゼロ》へと変身し、キーのボタンを押して捻り、雷のエネルギーを専用武器の槍へと収束させる。

 それから地面が割れるほど踏み込み、身体を思いっきり捻って、雷を纏った槍を前王に投げつける。

 まるで本物の雷の様な一閃が、ティニーマによって作られた水の壁に突き刺さり、後ろの壁も貫通して後方へと槍は消えていった。これはつまり前王を貫いたという事だろう。

 

「これでッ!!」

 

 しかし、前王は翼を広げた。効いていない。無傷のままだった。

 

「なんで……」

「弱い、弱過ぎる。本当に王として選ばれた者か? この力…… 私の間違いでなければ2か3割程度の力しかない。これで私に勝とうなどという傲慢さは非常に腹立たしい」

 

 既に力の差があった。メレフの攻撃が通らないどころか、現在の力の度合いすらも前王は把握していた。レベルが違い過ぎると改めて実感できる。

 

「まだだッ!!」

「いや、終わりだ」

 

 前王は両手を合わせ、そこへと無のエネルギーを溜めて一気に放出する。

 それに対してメレフは防御体制を取るが、防御力とかの問題ではなく、この攻撃が装甲を無視してダメージを与えてくるものだった。

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁっ…!!!」

 

 その強烈な一撃に恭也は変身解除へと追い込まれてしまう。立ち上がろうとしても脚に力が入らない。

 そして前王がトドメを刺そうと恭也へと近づいてくるが、他の悪魔たちがその前に立ち塞がる。

 

「退け」

「…… いけません」

「私の命令に背くと?」

「……………」

 

 皆の顔に恐怖が見える。これは力の差が圧倒的だからではない。1000年前とは言え、忠誠を誓った先代の王が彼に対して命令をしているのだ。命令に背くという事は王の意志を裏切るという事。彼ら、彼女らからしたらそれがどれだけ罪であり、辛い事なのかよくわかる。

 

「あの男は王に向いていなかった。お前たちが私に付いていたのは、私が誰よりも強き王だったからではないのか? その圧倒的力の前に忠誠を誓ったのではないのか? なら、なぜ庇う。その男の何を見ている?」

 

 その質問にエイルが唇を震わせながら言う。

 

「私は今でもあなた様の事を愛しています。忠誠も誓いました……… ですが、我々にとっての王は恭也様でございます」

「私の命を奪っておきながらよく言えたものだな」

「……… はい、そうです。私は悪魔です。魂を喰らわなければ生きていけない悪魔… そんな悪魔に対して恭也様は最後まで聞こうとする事はありませんでした。ずっと私を守る為の行動をしてくれました…… この方の優しさは私だけではなく、他の悪魔たちにも伝わっている筈です。だから守りたいのです」

「理由になってないぞ」

「この方を愛しています」

「なぜ?」

「理由にならないので、お答えする事はできません」

「ふっ… 私を前に冗談を吐く様になったか。いいだろう、エイル。お前はお前の友に殺してもらうとしよう」

 

 そう言うとメロクがエイルの前へと立ち、右手を首に掛ける。徐々に力を加えられ締め上げられる。

 

「うっ…ぐ…っ……!」

「………」

 

 メロクは何も言わない。その目には先ほどと同じ様に光は見えない。

 

「メロ…ク…… 聞いて」

「…………」

「私が恭也様と初めてお会いしたあの日… 私はあの方を好きになった…… 最初は王だからという理由だったのかもしれない……」

「…………」

「でも、今は違う… そう言える…… 私はあの方の全てが好きなった…… 悪魔である私たちを迎え入れ、どんな苦難も乗り越えるそのお姿……」

「…………」

「だからこそ言いたくなかった… 私の秘密を言いたくなかった…… 恭也様に嫌われると思ったから…… 私は使命を優先してしまったのよ… 酷い話でしょ…? 愛してるのにあの方を殺そうとしてるなんて…… これも何かの罰なのかもしれないわ…メロク、あなたに殺されるならそれでいい……… これが少しでも罪滅ぼしになるなら───」

 

 涙を流すエイルに、恭也は声を荒げて否定する。

 

「エイル、違う!! それは罪滅ぼしでもなんでもない!!」

「恭也様……!」

「罪は一生ついてくる!! 例えお前がここで死んでしまったとしても、その罪はお前の心から決して離れる事はない!!」

「なら… 私は……」

「その罪がお前に一生ついていくなら、俺の元で一生償い続けろ!!」

「それでは恭也様の命が…!!」

「何の取り柄もなかった俺に光を見せてくれたのはどこの悪魔だ? 俺をこの運命に引き込んだのなら、最後まで付き合ってもらう。これは命令だッ!! もう一度俺に力を貸せッ!! エイルッ!!!」

「恭也…様……!!」

 

 その時、恭也の手の中から光が漏れ出す。手を広げるとそこに自然と握られていたエイワンティアイズキーが光を放っていた。

 その鍵をエイルに向けると、彼女と共にメロクもその光に包まれる。光は強烈に発光したかと思うと、やがて消えてしまい、光に包まれた2人は倒れてしまう。

 

「エイル!!」

 

 恭也は力を振り絞って立ち上がり彼女達の元へと駆けつける。悪魔たちも彼が倒れない様に横へと着く。

 

「……… 恭也様…?」

「大丈夫か?」

「はい…… っ! メロクは!?」

「メロク……」

 

 そしてメロクの方を見ると、彼女も目を覚まし、辺りを見渡している。

 何が起こったのかわからないという顔になっている彼女に、恭也は声をかける。

 

「お前も大丈夫か、メロク?」

「あなたは………… そう、大体把握できたわ」

「色々と話したい事もあるんだが… 理由は聞かず今は力を貸してくれるか?」

「もちろんよ。何故かわからないけど、あなたたちの気持ちは私に伝わったから」

 

 それからメロクは恭也の手に「メローラティアイズキー」を渡す。

 恭也は前王に向き直り、そのキーを起動させる。

 

《メローラ!!》

「この力でもお前に勝てるとは思わない。だが、最後まで抵抗はさせてもらうぞ。俺たちの力でな」

「ふんっ… なのに、私にまだ対抗すると? 無謀にも程がある」

「無謀だけどやるしかない。それが王である俺の姿勢だ」

「面白い… 来るがいい」

「行くぞ、エイル、メローラ………… 変身ッ!!!」

《解錠》《憑依》

《悪魔の名はメロク・オーラ!!60の数字を持ち、その光源は全てを照らす!!》

《スタンドメローラ!!》

 

 仮面ライダーメレフ スタンドメローラ。

 この形態は脚を中心にアーマーが構成されている。スタンドエイワン時の剣を逆手に持ち、数秒間、光の速度で移動できる形態である。

 メレフは動く。光の速度で前王の背後を取ると、そのまま斬りつける。

 

「何かしたか?」

 

 やはり効いてないが、メレフは気にもせずに斬り続けた。もちろん攻撃は通らない。

 四方八方から飛ぶ斬撃に対応する必要のない前王は、容易くメレフを捉え、手刀でメレフを叩きつける。が、しかしそれでも彼は止まらない。

 

「何の意味がある…?」

 

 前王にこの攻撃の意図が全くと言っていいほどわからなかった。態々効かない攻撃を続ける必要があるのだろうか。どれだけ攻撃しようと、メローラの攻撃力は知っているので、避ける事をせずに隙を見て一撃を食らわせてやればいい。何も心配事などいらない。これが圧倒的力の差。

 そう思っていた────が、

 

「─── っ」

 

 何故か脇腹の部分に少しばかり違和感を覚える。この違和感の正体がわからない。先程は何もなかった筈なのに、徐々にその違和感がハッキリとするようになってきた。

 

「こ、これは…!!」

「今更気づいたか… もう遅いッ!!」

 

 これは痛みだ。痛みが襲ってきていたのだ。

 メレフは四方八方からデタラメに攻撃していた訳ではなく、光速で脇腹に叩き込んでいた。

 絶対に効かないなんて事はあり得ない。だったら同じ攻撃を同じ場所に同じ力で撃ち込む続ければいい。

 

「貴様ッ…!!」

「ハァァァァァァァッ!!!」

《メローラシャットアウト!!》

 

 前王が無のエネルギー波を繰り出そうとして来たが、既にメレフはドライバーのキーを回し、光のエネルギーを両脚に溜めていた。

 光速で脇腹に斬撃を浴びせ、最後に両脚から剣にエネルギーを集中させ一気に斬りつける。

 

「ぐおぉぉぉぉっ…!!!」

 

 流石の硬い装甲もその連続した攻撃には対応できず、前王は吹き飛ばされてしまう。かなりダメージとなったのか脇腹を苦しそうに抑え、ゆっくりと立ち上がる。

 

「油断してしまったな。謝っておこう。お前たちの力を甘く見過ぎた…… 次に会った時は本気で相手しよう────」

 

 そう言うと前王は闇に消えてしまった。

 その姿を見たメレフもまた身体の力が抜けてしまい、いつの間にか視界が真っ暗になってしまう────。

 

 

 --------------------------------------

 

 

「きょ……ま……」

「…………」

「きょ……や……様ッ」

「…………」

「恭也様ッ!!」

「…っ!」

 

 そこは自宅のベッドだった。恭也はエイルや悪魔たちに囲まれ、ベッドの上で寝ていたのだった。

 エイルは滝の様な涙を流しながら、恭也を抱きしめてきた。一瞬にして服がびしょ濡れになる。

 

「良かった… 良かった……!!」

「エイル… 皆も無事の様で良かった」

「……… 恭也様… 私は───」

「もういい、エイル。それ以上言う事は許さん」

「ですが───!!」

「そうなる運命だっただけだ。それに俺が死ぬと決まったわけじゃない。何かしら方法がある筈だ。それに……まぁ、お前たちもいる事だ」

 

 恭也は悪魔たち一人一人に目を合わると、各々が頷く。

 

「お前がそう望むのであれば喜んで戦おう!! 俺たちはその為に燃え上がらせよう!! 闘志を!!! 熱を!!!! 想いを!!!!」

「当たり前だよ〜、今の王は恭也さまさまだからね〜。しっかりサポートするから安心して二度寝してもいいよ」

「僕より優れてるとは言わないけど、君の王としての姿は真似できないよ。ま、僕にかかれば君の死の運命なんて、ヒラリとどこかへ吹き飛んでしまうのさ。ちなみに僕の───」

「それがお前の意志であるなら従おう…」

「この短い期間で随分と肝が据わったな。これは王としての覚醒も近いな!! ガッハッハッハッ!!」

 

 そして騒がしい中、恭也にメロクが近づいて来て頭を下げる。

 

「どうした?」

「王、無礼をお許しください」

「何だそれか。お前は操られていた。仕方のない事だったではないか」

「いえ、罰をお与えください。いくら操られていたとしても王に牙を向けてしまったのです。罰を受けなければ私の気が済みません」

「ふむ…… ならば、俺に尽くせ。それがお前の罰だ。これでいいだろう?」

「承知しました……」

 

 メロクはそれを了解すると、同じベッドの中に入り込んできた。

 

「いや、は?」

「今からあなたに尽くしたいと思うのだけれど… これでいいわよね」

「何も良くはない、退け」

「ふふふっ、恥ずかしいのかしら」

「おい、先程のあの感じはどこへいった」

 

 その光景を見るや否や、エイルもまるで蛇の様にメロクと逆側の方に入り込んできた。

 明らかにおかしい光景に悪魔たちは笑っている。

 

「退きなさいメロク」

「あら、エイルは罰を与えられていないのだから、退いた方がよろしくなくて? これは無礼に値するわよ?」

「あなたこそ無礼よ。恭也様が嫌がってるわ」

「あなたがいるからじゃなくて?」

「何ですって…!!?」

 

 なるほど。友人とはライバル関係という事だったのだろう。彼女たちは恭也を挟んで喧嘩をし始めた。

 その光景を見て更に笑い出す悪魔達、そして耳を塞ぎただ天井を見上げる恭也。

 

「頼む、もう勘弁してくれッ!!!」

 

 恭也の嬉しい様で苦しみの叫びが部屋にこだました。

 

 ──── そんな中、誰も気付かないところでエイワンティアイズキーが淡く光始めていた。




次で1章目終わりです!!本当に時間がかかってしまい本当に申し訳ないです!!本当に本当にほんまにごめんなさい!!

次回、第12解「我は強大、我にプラス」

次回もよろしくお願いします!!


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第12解「我は強大、我にプラス」

皆さんご無沙汰しております。1章終わりです。
それではどうぞご覧ください。


「ふぉふぉふぉ… 前王よ。お前さんやられたそうじゃのう」

「何をしに来た『ワナイズ』」

 

 どこかもわからない廃墟の中、前王が戦いの傷を癒していると、闇から現れた老人が彼を小馬鹿にする様に話しかけて来た。

 

「王として情けないのー… お前さん昔より弱くなったんじゃないのか?」

「口を慎め!!」

 

 前王はワナイズと呼ぶ老人に対して掴みかかろうとするが、気づくと彼は背後に回り込んでいた。暗闇の中を自由に動ける様だ。

 

「……『ンードゥ』はどうした?」

「あの方はその時を待っておる」

「その時?」

「現王の覚醒じゃよ。それを待っておられる」

「…… 奴を使いこなせると?」

「そうじゃのぉ〜…… お前さんですら使いこなす事ができなかったあの方を、あの小僧が使いこなせるとは思わんが…」

「私にはそれがわからない。何故、奴はそれほどの力を持ちながらも私に従ったのか」

「それはわしの口からは直接… まぁお前さんよりは使いこなせそうじゃがの─────」

 

 この言葉に遂にプツリとキレた前王は即座に怪人態へと姿を変え、ワナイズのいる方へと無の波動を放つ。その威力により廃墟が半壊し光が差し込む。

 が、それほどの力で撃ったにも関わらず、どこからともなく声が聞こえて来た。

 

「ふぉふぉふぉ、昔と比べて… いや、昔はこうではなかった筈じゃがのぉ」

「貴様ッ…!!」

「話はこれくらいじゃ…… それと昔からの馴染みだから言っておいてやろう。現王はお前さんとの戦いで成長している。前よりも更に強くなってお前さんの元へとやってくるだろう───」

 

 その言葉を最後に声はプツリと消えた。

 前王は怒りで拳を握りしめていたが、やがてその手を広げ深呼吸をし、翼を広げて外へと飛び出す。

 

「悪魔を全てこの世から消してくれよう。平和の為に…… いや、()の為にッ!!」

 

 

 --------------------------------------

 

 

 あれから1ヶ月が経ち、悪魔達も少なくなって来た影響もあってか、随分と楽になって来た。久しぶりの休みもあり、王としての生活もだいぶ慣れ始めた。

 

「エイル、これで残りの悪魔の数は?」

「残りは…… 13体ほどです」

「13か… これでもう終わりの様だな」

「はい、お疲れ様でした」

「…… しかし、この速さで封印するのであれば、メレフに変身する必要はなくならないのか?」

「えぇ……」

 

 最近、エイルが何か隠そうとするとすぐにわかる様になった。

 だから恭也はこういう時、彼女にこう言う。

 

「隠そうとするなら罰を与えるぞ」

「はい喜─── そ、それだけはおやめくださいーー い、今すぐに言いますのでお許しくださいーーー」

「何だこの棒読み」

 

 一応罰である為、喜んではいけないのだが、初手で既に「喜」まで聞こえた。秘密隠す前にそちらを隠した方が良いのではないか。

 

「残りは13体と申しましたが、残りの3人が… 恭也様でも勝てる相手かどうか…」

「…… 70番の奴らか」

「はい、左様です。70番の悪魔『ワナイズ・マン』71番『ヲワンダ』────…… そして私と同じく全デモンティアを統括できる権限持つ『ンードゥ・ツーラスト』です」

「エイルと同じだと…!?」

「そして全デモンティアの中でも最強と評される実力者です」

 

 それを聞いていたネゴールはそれに付け足す様に恭也に言う。

 

「ンードゥは昔っから何考えてるかわからない奴だ。あの前王でも従えていたのではなく、協力関係に置いていたくらいだ」

「なんだと!?… 王の力ですら敵わないのか?」

「あぁ、あいつは本当に強い。全盛期のエイルですら手を焼いた相手だ」

 

 72番。デモンティア最後の数字を持つ悪魔。いずれ相対する時が来るだろう。その時までにもっと強くならなければならない。その為にも前王を倒せる実力がなければ…そう思っている時だった。

 皆がビクッと身体を震わせた。そして恭也にもわかった。この殺意はあいつだ。

 

「行くぞ皆。前王を止めるぞ───」

 

 

 --------------------------------------

 

 

 人が賑わう街の中心部。そこはカップルがよく集う場所で有名である。真ん中に噴水、その周りを囲う様にベンチがあり、そこを通れる様に東西南北の4方向から道が伸びている。

 そんな憩いの場の噴水が突然爆発し、辺り一面を水浸しにした。破片が飛んで何人か怪我を負い、先程までの雰囲気は消え失せ、そこには叫び声が響いていた。

 

「来るがいい現王。決着をつけようぞ」

 

 ──── その数分後、恭也達は現場へと到着した。

 既に現場は怪人態となった前王によって、あの綺麗な憩いの場は静寂に包まれ、瓦礫の山と化していた。

 瓦礫の山の中には下敷きとなってしまっている一般人もいるようだ。ここまで堕ちてしまったのか。恭也は怒りに満ち溢れた。

 

「前王ォォォォッ!!!」

「…… 来たか。現王よ」

「お前の目的は我々であったはずだ。なのに、一般人を巻き込むとはどういう事だ!!?」

「お前達がもう少し早く現場へ駆けつけていれば、ただの人間に被害が出ることはなかったのではないか?」

「なん…だとっ…!!」

「私はお前達を消す為であるならなんでもしよう。それが例えなんの関係もない者だったとしてもな!!」

「…… お前だけは許しておくことはできない… 今日がお前の最後だ… 前王ッ!!!」

《エイワン!!》

「来いッ!! 真の王はどちらかその身に教えてくれる!!」

「変身ッ!!!」

《開錠!!》《憑依!!》

《悪魔の名はエイル・ワン!! 1の数字を持ち、その力の全てを王に捧げる者!!》

 

 メレフへと変身した恭也は剣を握りしめ、雄叫びを上げながら前王に向かっていく。

 今までに感じられなかった威圧感の前に前王は怯むことなく構える。両手を前に出し無数の針を打ち出した。針はメレフに真っ直ぐと向かって来ており、横に大きく回避すればいいだけ、しかし、ここで避けてしまえば隙ができる。前王はそれを予想していた。

 だが、メレフは剣を振り回して針を切り落とし、そのまま真っ直ぐに進んできたのだ。

 

「ば、馬鹿なッ!!?」

「こんな針ごときで俺を止められると思わないほうがいいッ!!」

 

 それは明らかな変化だった。メレフは成長している。

 前王は驚いたその隙を狙われ、刃がその身体を捉える。装甲すら傷一つ付けることができなかった剣である筈なのに、斬撃の後がくっきりと現れる。

 

「なんだとっ…!!? 貴様一体何故これほどまでの力を…!!?」

「俺もわからない… ただ、お前を倒したいという想いが強くなればなるほど、身体から力が溢れてくるのを感じる!!」

 

 すると、段々とデモンドライバーに差し込まれていたエイワンティアイズキーが、あの時と同様に光を帯び始めた。

 メレフが前王を押せば押すほど、その光は強さを増していった。

 

「な、なんだ…? エイルのキーが光を…!!」

 

 その光にメレフも気づいた。この光が溢れる度に身体に力が溢れてくるのを実感できる。

 エイワンティアイズキーを引き抜くと、鍵は光を強くし、やがて鍵は2つに分離し、光もそれと同時に消え去る。

 

「エイル、これは…」

「はい、私も感じます。恭也様のお力を…」

「これなら勝てる。わかるぞ。新しい王の力だってことが!!」

「準備は出来ております!!」

「よし─── 行くぞッ!! エイル!!」

《エイワンプラス!!》

 

 恭也の成長によって生み出された「エイワンプラスティアイズキー」を起動し、ドライバーに差し込む。

 

「何か… 何かまずい…!! 消えるがいい現王ッ!!」

「ハッ!!」

 

 前王が両手から針を飛ばすと同時に、メレフはドライバーのキーを回す。

 

《開錠!!》

《憑依!!》《プラスで憑依!!》

 

 怪人態と化したエイルがメレフを後ろから抱き締めると、エイワンのゴツゴツとした頑固な鎧から、シャープな鎧へと変化を遂げ、至る所が鋭利なものとなる。より悪魔の様な仮面へと変化し、ドライバーに記載される絵はエイルがハートを包み込んでいる様に変更される。

 

《悪魔の名はエイル・ワン!!『プラス!!』1の数字を持ち、プラスされたその力は王を頂点へと導く!!》

《スタンドエイワンプラス!!》

「ふっ…」

 

 仮面ライダーメレフ エイワンプラスへと変身した彼は防御態勢もとらないまま、全ての針をその身で受ける。

 

「馬鹿めッ!! 直撃だな!!」

「……… 何かしたか?」

「なにっ…!!?」

 

 見た目はシャープなものへと変更されたが、その硬度はエイワンの時と比べても圧倒的であった。今までであるなら、あの前王の攻撃を真正面から受け切ることなど不可能。しかし、このプラス状態はエイワンの鎧に、更に硬度がプラスされたと言ってもいい状態。二重の鎧。全盛期でもない、ただの魂だけの存在となった前王の攻撃が通る事はない。

 

「ならば、こいつはどうだ?」

 

 そして前王は両手に無のエネルギーを集中させ、それを一気に放出させた。いくら硬い装甲と言えど、この攻撃は防御を無視しできる。避けなければ大ダメージは免れない。

 しかし、メレフは避けない。

 

「何故、何故避けぬッ!!」

「避ける? 何故、回避する必要がある? その必要はない…… 正面から叩き潰すだけだからなッ!!」

 

 そう言うとメレフは拳をエネルギー波に打ち込んだ。普通なら腕が吹っ飛ぶ威力があるはずなのだが、気づいた時には波動はどこかへと消えていた。散っていた。無となった。

 

「あっ… なっ…!!」

「安心するがいい」

「き、貴様ッ… いつの間にッ!!?」

 

 前王の目の前にメレフは立っていた。先ほどの攻撃で目を奪われていた時に移動して来た様だ。

 それからメレフはエイワンティアイズキーのボタンを押して捻る。両腕に力を込め連続で拳を前王にめり込ませる。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!!」

「ぐぶぉっ!!?」

 

 拳を当てる度に一撃が更に重くなるのを感じる。1発分の威力のはずが、ここまでの威力を叩き出すのは明らかにおかしいと感じる。

 

(そうか…!! 1発ではない!! 2発分になっている!! 一度攻撃を当てさえすれば、更にもう1発分の攻撃がプラスしてやってくる!! そうか… これがッ!!)

 

 そして前王を天高く打ち上げ、それと合わせてメレフもジャンプし、飛び蹴りの姿勢を作る。

 そのまま前王に向かって、無のエネルギーを纏った必殺の一撃を食らわせ、地面に直撃させると、そこへもう1発、必殺技の威力が重くのしかかる。

 メレフは前王から離れ、彼を背にすると、大きな爆発が辺りを揺らした。

 

「ぐはぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

《エイワンプラス!! シャットアウト!!》

 

 それから前王の方に向き直ると、彼は怪人態から普通の人間へと姿が戻っていた。全てが終わり、身体が徐々に消えていこうとしていた。

 メレフは変身を解き、リーダー格だけではあるが、悪魔達を解放すると彼らは急いで前王の元へと向かう。

 前王は先ほどの恐ろしい表情はもう見せず、優しい表情でエイルの頬を撫でる。かつての暖かい手にエイルは目から涙を流す。

 

「許してくれ… お前たち。私はお前たちになんて事を……」

「何故、何故なのですか… あなたという慈悲深いお方が何故あの様な事を……」

「私にもわからない… 気づいた時にはお前たちに倒されていた…… そしてようやくこの身体は解放されたんだ……」

「一体誰がッ!! 誰が前王様をッ!!!」

 

 悪魔たちが怒りに震えているものの、前王は彼らに告げるのではなく、現王恭也を見つめながら告げる。

 

「現王よ……お前はこれからより大きな戦いが待っている……」

「大きな戦い…?」

「我々の封印を解いた存在がいる… その者を突き止めるんだ…」

「それは一体誰だ? 俺たちの知らない別の…」

「それはわからない。だが、はっきりと言える事は我々を憎む存在だろう…… この世のものであるが、もっと上の…… 恐ろしい存在である事は確かだ」

「……… わかった。後は俺たちに任せるがいい…… いや、お任せください。先代」

 

 そして前王は再び悪魔たちの方を向き、微笑みながら礼を言う。

 

「ありがとう… お前たちのおかげでこの人生楽しかったぞ」

「前王様……!! いけません……!!」

「はははっ… 現王を支えてやってくれ。今の主人は彼だ… これから先、強敵と立ち向かっていくにはお前たちの力が必要だ… 頼んだぞ」

「うぅ…… 前王様ぁ……っ!!」

「皆、元気でな… ありがとう……… 後は任せたぞ現王、大神恭也…────────」

 

 彼はそう言い、昔と同じ様な温かな笑みを浮かべ消えていった。

 恭也は初めてあったから涙は出なかった。悲しい気持ちはあったが、彼の記憶では恐ろしい王という存在が心に残っていたからだ。

 しかし、悲しみの感情よりも強かったのは怒りである。自分が愛する悪魔たちの涙を見て、そしてずっと苦しんでいた前王の悲しみを感じ、今までにない怒りが込み上げて来た。

 

「お前たち…… 元凶を絶対に見つけ出すぞ。前王の為にもッ!!」

「… はいッ!!!」

 

 新たな敵との戦いを前に彼らは再び、決意する────。




1章終わり!!です!!
次回から新章開幕です!!源次ことプリーストようやくスポット当たります!!よかったね!!

次回
2章エンジェルティア編 第13話「我と悪魔、我と天使」

次回もよろしくお願いします!!


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エンジェルティア編
第13解「我と悪魔、我と天使」


皆さんご無沙汰しております。2章でございます。
新たな敵は……?
それではどうぞご覧ください。


「よう、王様ッ!! ここであったが何回目だ? まぁ何回でもいいが今日で終わりにしてやるぜ!!」

「お前に構っている時間はない。退け」

 

 前王との戦いから1ヶ月が経ち、残す所あと4体、70番台を除き残りは1体。という所でこの場所へと来たわけだが、悪魔ある所にこの男があり。デモンハンターの源次が例の如く邪魔をして来た。

 早速、恭也は変身してメレフ隣、プリーストと戦っているわけだ。

 

「おっと… 退けと言われて素直に退く奴がいるか?」

「お前の様な馬鹿でなければ、普通は逃げるがな」

「ほぉ〜ん、まぁ残念だったなメレフ!! お前がいくら悪魔を封印しようと、俺の強さに追いつく事はできないぜ!!」

 

 そう言うとプリーストは杖を構え、光弾を発射して来た。

 そしてメレフはそれを剣で流し、キーを変更して「スタンドメローラ」へと姿を変える。

 

「それは…… 見たことないな」

「お前と同じ光だ…… しかし、偽物の光とはレベルが違う」

「はっ! ならやってみ────」

 

 威勢よく返そうとしたプリーストだったが、その言葉を言い終える前に背中を斬りつけられる。何が起こったのかわからないという表情だ。

 この形態は数秒間自身を光速化する力を持つ。いくらスペック上は上をいくプリーストだったとしても、光速に追いつく事は不可能である。

 

「ちょ、待て!!」

「ん?」

 

 すると、彼は急に地面に寝転がり手をヒラヒラとさせた。

 あまりに急な出来事にメレフは剣をすんでの所で止め、腰に手を当てその光景に呆れながら立ち止まる。

 

「…… 何をしている?」

「少し突っ込んでもいいか?」

「あ、あぁ……」

「お前なんか強くなり過ぎてるんだよッ!!! ふざけんな!!」

「お前… いくら封印しようと俺の強さに追いつく事はできないとか言っておきながら…」

「お前と会わないこの2ヶ月!! 俺は女の子と遊び回ってた!! そこはいい!!」

「悪魔を止める為に回れ!!!」

「そして久々に会ったらなんだこの実力差は!! ていうかさっきから基本的な姿にも負けてたんだけど!!? 俺が一体何をしたと!!?」

「明らかに遊んでいたのが悪いと思うのだが!!?」

「隙ありぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

 プリーストは卑怯にも杖を即座にメレフの懐に向け、予め手に溜めておいたエネルギーを即座に杖に移動させて光弾を放った。

 当然何の構えもしてなかったメレフはその攻撃をまともに食らってしまう。

 

「ぐはっ…!! 貴様っ!!」

「はははっ!! 形勢逆転だなっ!!」

「いいだろう。俺も舐められたままは王として許されることではない。本気で行くぞッ!!」

《エイワンプラス!!》

 

 そう言うとメレフはエイワンプラスティアイズキーを取り出し、ドライバーのキーと変更し、形態を変化する。

 

《開錠!!》《憑依!! プラスで憑依!!》

《悪魔の名はエイル・ワン!!『プラス!!』1の数字を持ち、プラスされたその力は王を頂点へと導く!!》

《スタンドエイワンプラス!!》

 

 この姿は王としての力が50%覚醒している状態。普通の悪魔はもろろんのこと、あの前王でさえも勝てなかった力である。

 プリーストはその新たな姿に一瞬宇宙が見えたが、すぐに頭を切り替え杖を構えて光弾を発射する。

 だが────。

 

「あ、あれ…?」

「ふんっ!!」

「あぼしゃ!!?」

 

 その装甲には傷一つ付かず、即座に顔面を殴られた。

 不思議なことに1発のはずの攻撃が2発分に変わり、一撃でもかなりの威力であるが、もう一撃飛んできたら耐えるどころの話ではない。

 プリーストはヒビの入った仮面を押さえながら、地面に杖を向け、彼らに手を振る。

 

「ごめん!! 急用を思い出したわ!! また今度会おうぜっ!!」

「あっ…」

 

 そしてプリーストは地面に光弾を発射して砂埃を起こし、その隙に何処かへと姿を消してしまった。

 メレフはため息をつきながら、69体目の悪魔を封印し、変身を解く。

 

「エイル、これで残りは例の奴らだけだな」

「はい、お疲れ様です恭也様」

「さて、いつ出会えることやら────」

 

 また数日探し回ることになりそうだと思ったその時、目の前が黒く染まったかと思うと、そこからスッと見たこともない悪魔が現れる。

 だが、その気配は只者ではない事がわかる。

 

「お前はまさか…!!」

「ふぉふぉ… 初めましてじゃのう。現王よ」

 

 不気味な気を放つ70番目の悪魔が恭也たちの前に現れた────。

 

 

 -------------------------------------------

 

 

 源次は酒を飲みながら街を歩いていた。誰がどう見てもやさぐれたおっさんである。歩く人々の視線はとても痛い。目で人を殺める事が可能と思われるくらい痛い。

 

「あーあ…… 俺の人生なんでこうなっちまったかなぁ……」

 

 彼はポツリとそう呟く。デモンハンターになってからというもの、収入は安定しないし、それでも人よりはもらっている方だが、これといって趣味はないから夜のお店には通い酒を飲み、吐き、二日酔いになってフラフラとする。何か取り柄はあるかと言われても、特にないと答えるのが当たり前。

 そういう人生を歩んできたのだ。

 

「どっかに可愛い子いねぇーかなぁー…… あ、お姉ちゃんちょっと話を……」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………… あぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 いや、何でそんな叫ぶんだというレベルで叫んだ美人な女性は、源次を突き飛ばして全力で走り去ってしまった。

 全くどいつこいつも頭のネジ狂ってるんじゃないかと、訳の分からない思考を浮かべていると、ちょうど通りかかった男たちが妙な会話をしているのを耳にする。

 

「そういやあの翼の生えた小僧はどうした?」

「あーあれか。動画でも撮ってネット辺りに上げれば金になると思ってよ。もう使われてねー倉庫の中に縛って閉じ込めてるよ。どうせ飛んで逃げることもできねーだろ。怪我してるし」

「まさか悪魔の他に()使()もいるとはな…… しかも弱りきったよ」

 

「天使」という言葉に源次は耳を疑った。が、今にして見ればデモンティアとかいう悪魔もいるのだから当然天使がいたっておかしくないわけだ。

 源次は後をつけてみることにした────。

 

 ──── それから男のたちの跡をつけていくと、古くてボロボロになった倉庫に辿り着いた。

 男たちがそこへと入ると同時に動き出し、見つからない様に倉庫へと侵入する。中にはもう使われていないだろう資材等が置かれていた。その中に一本だけ柱の様なものが立てられており、そこに先ほどから言っていた翼の生えた少年がいた。

 

「よう、元気してたか?」

「…………」

「元気に動いてくれねーと、動画映えしないんだけどなぁー」

 

 男はその少年の頭上に不自然に浮かんでいる輪っかを指で弾く。

 少年はその行為に明らかな怒りを見せ、彼の手に噛みつこうとした。が、縛られてしまっているので身動きがとれないでいた。

 

「おいおい… あぶねーなぁ。もう一回大人しくさせて欲しいか?」

 

 そして男は手を振り上げて少年を殴ろうとした。

 その時、源次は男たちの所へ出向くと、その男の手を掴んで後ろで待機していた奴らの所へ放り投げる。

 

「何だこのやろう!! 誰だてめぇ!!」

「誰だ? おいおい、このハンサムな俺を知らないと? デモンハンターだよ、デモンハンター。ニュースくらい見てんだろ?」

「デ、デモンハンターだって!!? 何でそんな奴がここに……」

「あ? 決まってんだろ……… お前らみたいな子供にも容赦しねー悪魔どもを狩る為だよ」

「1人で何ができるんだ? デモンハンターだか何だか関係ねぇ!! やっちまえ!!」

 

 源次は女、酒、金が大好きな所謂ダメ人間ではあったが、子供手をかける様なゲスな奴らは許せない性格であった。どれだけクズと言われようと、本物のクズは絶対に許さない彼なりの正義があるのだ。

 ─── そして数十分が過ぎた所で全員源次によってのされ、男たちは悲鳴を上げながら何処かへと逃げていった。

 

「大丈夫か?」

 

 源次は少年の縄を解いてやろうとする。

 

「……… おじさんこそ大丈夫なの?」

「あ? あぁ、もちろん。俺を誰だと思ってんだ? 深尾源次、最強のデモンハンターだぜ?」

「凄い顔腫れてるけど……」

 

 少年が心配するのも当然だ。源氏の顔はありえないくらい腫れ上がっている。前が見えてるのか気になる所だ。

 

「……… どうして助けたの?」

「なんだ? 『自分は化け物だから助けてくれないと思った』とかか? まぁ正義の味方やってるしな一応。デモンティアと比べれば楽でいい」

「えっ… デモンティアを知ってるの!!? おじさん!!?」

「おぉ、知ってるぜ。これでもデモンティアの王とやり合った事も…… 待て、俺はおじさんじゃねぇぞ!!!?」

「デモンティアの王…… 大変だ!! おじさん!! 僕を彼らの元へ連れてって!!」

 

 その少年の表情や声を聞き、一瞬で只事ではないと察した源次は、彼を一旦落ち着かせ事情を聞く。

 

「わかった、なんかやばい事になるんだな? 連れてってやるから条件がある」

「条件?」

「俺はおじさんじゃない。深尾源次だ。デモンハンターのな。しっかり名前で呼びやがれ。それとお前の名前だ。名前を聞かせろ」

「…… 『ホウリー・ジェルエ』」

「そうか、ジェルエだな。今から移動するが、その間に事情説明しな。行くぞジェルエ」

「うん、ありがとう源次───」

 

 

 -----------------------------------------

 

 

「ワナイズ、何の用かしら?」

「これはこれはエイル殿。お久しぶりじゃのう」

 

 すると、その悪魔ワナイズは深々とお辞儀をする。他の悪魔たちとは違い、しっかりとエイルの立場を理解しているようで腰が低い。

 だが、逆にそれが不気味である。

 

「私は質問をしているのよ。答えなさい」

「これは失敬。なにせ1000年ぶりですからなぁ、話したい事が多いのです。しかし、その質問に答えを言うには、王と話させてもらう事なんじゃが…」

「俺は構わない。話せ」

 

 恭也はワナイズの前に立ち、質問の答えを聞こうとする。

 

「王よ。前王を倒したそうじゃのう」

 

 このワナイズは恭也には敬語を使わない。認められていないのか?と思ったが、どうやらそうではないらしい。

 次に彼が話し始めるとその意味がわかった。

 

「彼を助けてくれてありがとう」

「え?」

「わしは良く前王から相談相手として話を聞いてやっとったんじゃ。この老人に親しい友人ができたような… あの時、奴に直接会って少々煽ったんじゃが、本当に別人のようになっていてな。本当に… 本当……」

 

 恭也の身体がビクリと跳ねた。ワナイズは怒っている。

 

「王よ。お前さんに力を貸そう。わしの力を使って元凶を倒してくれんか」

「本当か…?」

「ふぉふぉふぉ… 裏があるのとでも思っとるのか? だとすればそれは無駄な思い違いじゃよ。安心せい。わしは本当に力を貸すだけじゃよ。ただ…… あの方はそうとは限らんがのう」

「あの方…? もしかして…」

「そうじゃ最後のナンバーを持つ悪魔。ンードゥ────」

 

 ワナイズが彼の名前を出そうとしたその時、恭也たちの周りに光の柱が立ち始める。何本も立ったそれを、悪魔たちは恭也を囲って警戒していると、中から白い翼が生え、頭上には光る輪っかが浮かんでいる人物が現れた。

 

「お、お前たちは……」

「お前がデモンティアの王だな」

 

 その謎の人物の1人が恭也を見る。

 そして、その姿を見たエイルやその他の悪魔たちの表情に焦りが見える。

 

「どうしたエイル。あれは何だ?」

「…… 奴らは『エンジェルティア』です」

「エンジェルティア? 何だそれは?」

「我々が悪魔デモンティアであるなら、その対となる存在。天使エンジェルティアです」

「天使だと…!?」

 

 エンジェルティアと呼ばれる彼らは恭也に対し、こう告げる。

 

「我々はお前たちを絶滅させる」

「なにっ!?」

「1000年前の戦いに決着をつける時だ。覚悟するがいい」

 

 そう言うと、彼らは恭也たちに向けて手を翳し光のエネルギーを溜め始めた。

 こうなってしまっては変身する隙もない。

 

「くそっ…!!」

 

 恭也たちの運命は───。




はい、2章始まりです。
今度の敵は天使だぞ〜これ。

次回、第14解「我は闇、我は漆黒」

次回もよろしくお願いします!!


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第14解「我は闇、我は漆黒」

皆さんご無沙汰しております。
それではどうぞご覧ください。


 今にも打ち出しそうな天使たち。それを少しでも抑えようと構える悪魔たち。全員無事では済まないだろうこの状況、遠くの方から聞き慣れた声が聞こえる。

 

「あれは…!!」

「おーーーい!! 大丈夫か!!?」

 

 恭也はすぐさま悪魔たちを盾にしてしゃがむ。変身を解いている状態で正体を知られるのはまずいと思ったからだ。

 天使たちもその声に反応し攻撃を一時中断する。ただそれは声を聞いたから止めた訳ではないようだ。

 源次の隣に天使たちと同じ姿をした少年が立っていた。

 

「ジェルエ。お前は今までどこに行ってたんだ?」

「えっと… 捕まってた……」

「捕まっていた? 誰だ? デモンティアにか?」

 

 すると、天使たちは血相を変え、再び恭也たちに光弾を放とうとしてきた。

 

「いや、デモンティアじゃないんだ!! 人間に捕まったんだよ!!」

「人間だって…?」

「う、うん……」

「それはただの人間か?」

「うん………」

「……… そうか。よくわかった」

「あっ……」

「この恥晒しめッッ!!!」

「がっ…!!」

 

 ジェルエは蹴り飛ばされる。それを源次はすぐに抱き止めると、眉を吊り上げ天使たちに怒鳴る。

 

「お前ら子供に何てことしてやがる!!」

「黙れ人間。お前たちのように我々の住む世界は甘くはない。人間にやられているようでは、これからの戦いに邪魔になるというだけ。それならいっそ死んでしまった方がいい」

 

 その言葉に恭也も源次も怒りが最高点へと達した。

 彼らの子供かどうかはわからない。だが、まだ幼い子供に向かって死ねと平然と言えるのだけはどうしても許せない。

 

「お前たち…… 戦うことになるが構わないな?」

「えぇ、準備はできております。恭也様」

「行くぞ… この腐れた連中を叩き潰すッ!!」

《エイワン!!》

 

 それに続いて源次もドライバーを腰に巻き、プリーストライズキーを起動させる。

 

《プリースト!!》

「下がってなジェルエ。ここはデモンハンターの仕事だ…… おい、そこにいるんだろ王様!! だったら協力しろ!! どちらにせよ戦うことになるんだろ!!?」

「いいだろう。だが、邪魔はするな」

「する訳ねーだろ… こいつらには懺悔させてやるよぉッ!!」

「「変身ッッ!!!」」

《悪魔の名はエイル・ワン!!1の数字を持ち、その力の全てを王に捧げる者!!》

《祈る!!願う!!導きのままに!!プリースト!!》

 

 変身した2人は天使たちの元へと走り出す。怒りのままに動いている為か、2人は圧倒的な力で天使たちを次々に倒していく。

 しかし、天使たちの動きが妙である。先程は見るという余裕がなかった為に余り気にもしなかったが、よくよく見ると天使たちの動きはどこか人形的である。まるで誰かに操られているかのようなそんな動きだ。

 

「…… 待て、プリースト」

「あ? なんだよ」

「奴らもしかしたら1人かもしれん」

「1人だって? お前何言ってるんだ?」

「本体は多分あそこにいる奴だ。俺がそれに一撃を与える間、周りの偽物をどうにかしろ」

「いやいや待て!? 命令すんなの前にどういうことだ!?」

「とにかく攻撃し続けろという事だッ!!」

「あ、おいっ…… あーくそっ!!」

 

 そう言うとメレフは剣を巧みに扱い、次々に天使を切り伏せていきながら前進する。プリーストは不服に思いながらも、メレフに近づく敵を杖から飛ばした光弾で援護した。

 この2人がいきなり組んだことにより勢いがつき、遂にメレフは本体であろう天使の元へと辿り着く。

 

「貴様が本体だな!!」

「なにっ…!?」

「ハァッ!!」

《エイワンシャットアウト!!》

 

 それからメレフはドライバーの鍵のボタンを押してから捻り、刃へ無のエネルギーを送って巨大な剣に変化させ、本体の天使へそれを振り下ろした。

 天使の身体に斬撃の跡がつき、たまらず大きく後退する。先ほどまでの涼しい顔は何処へやら、メレフの力を前に驚いた表情と同時に怒りも露わにした。

 本体にダメージを与えると、他の天使たちが消え、元の1人へと戻る。

 

「よく私だと気づいたな」

「お前がリーダーであるという事は最初から予想はできていた。他の天使たちは一切喋ろうとはしてなかったからな。だが、それでお前が1人だと確信した」

「それは?」

「命令してなかっただろう? それどころか周りに合図すら送ってなかった。他にも天使たちの様子からして俺は確信したわけだ。お前が本体だと」

「見事だ。デモンティアの王よ…… だが、お前は1つ勘違いをしているぞ」

「勘違いだと?」

「何故、私が1人で来たと思う?」

「それはお前の能力が───」

「分裂だからか? それもある。ただそれだけではない。あれは私の力の一部だ。力を分裂させてしまえば、私の本来の力をも弱まるという事。これがどういう意味かわかるだろう?」

「まさか───っ!!!」

 

 次の瞬間、メレフの身体は吹き飛んでいた。胸に激しい痛みを感じる。それに気づいたのは吹き飛ばされた後だった。

 それを間近で見ていたプリーストは、天使の強さが想像以上であることに気づく。

 

「ぐっ…がはっ……!! いつ攻撃を…!!」

「おい、王様よ…」

「… なんだ?」

「こいつ力を分裂させてたっつったよな?」

「あぁ、そういう事だろう…」

「これが本気ってことかよ!! あいつの!!」

 

 天使の本当の力。大勢で来ていたと思われたが、それは彼自身の力を分裂させて作り出した謂わばもう1人の自分。分裂させればさせるほど、本体の力は徐々に失われてしまうので、格下の相手にしか使えない。それが彼の失敗であった。メレフを格下だと思っていた傲慢さから来る油断。これにより痛手を負ってしまった。あんな悪魔なんぞに。

 天使はプライドを傷つけてしまった自分とメレフに怒りを覚えた。だから、こいつらを倒すという意思を持ち、メレフたちに名乗る。

 

「私は『ホウリー・ヒイテン』。貴様らを倒すものだ」

「ホウリーって事はこいつの……」

 

 プリーストがジェルエの方を見ると彼は酷く怯えていた。やはりこのヒイテンとかいう天使が原因らしい。

 

「子供は… どうするつもりだ」

「先ほどは死んでしまえばいいと言ったな? 安心しろはっきりと言ってやろう。お前も殺してくれよう」

「……っ!! させるかよぉ!!」

 

 その答えにプリーストは大声を出しながらヒイテンへと光弾を無数に発射する。が、まったくと言っていいほど効いておらず、いつの間にかプリーストの背後へと回り込んでいた。

 

「いつの間にっ…!?」

「ただの人間風情が」

 

 ヒイテンは腕だけ分裂させると、後は凄まじい勢いでプリーストを殴りつける。

 これにより力は分散するがその代わりに全体へとダメージを与えることができる。何度も殴れば分散もしない。寧ろ威力は跳ね上がる。

 

「グハァッ…!!!」

「プリースト!!」

 

 凄まじい威力の攻撃を喰らったプリーストは、その衝撃により変身が解けて地面に転がってしまう。

 このあまりの力の差にメレフはエイワンプラスで対抗しようかと考えるが、負けはせずとも勝ちもしない戦いになる事が予想できた。

 同じ力の持つもの同士が戦えば、どちらも無事では済まず回復までに時間を有するだろう。だが、このヒイテン以外にも天使がいると考えると下手な戦いをしてはいけない。

 

「どうすれば……」

 

 その時、ワナイズがメレフに話しかけてきた。

 

「わしのデモンティアイズキーを使うといい」

「お前の?」

「ふぉふぉふぉ、天使もわしらと同じように属性を持っておる。相性ではわしの闇が効くんじゃよ」

「闇か……」

「安心せい。今のお前さんならわしの闇くらいなら使える筈じゃ」

「…… わかった。使わせてもらうぞ。お前の闇の力ッ!!」

《ワナイマン!!》

 

 メレフはワナイマンティアイズキーを起動し、ドライバーに差し込む。

 それから鍵を捻ると、闇のエネルギーが溢れ出し身体のあらゆる箇所にアーマーを形成していく。形成し終わると今までのどの形態よりも全身に力が漲るのを実感する。

 

《悪魔の名はワナイズ・マン!!70の数字を持ち、その暗闇は全てを葬り去る!!》

《スタンドワナイマン!!》

「なんだこの力は…!」

「わしの力は闇。こんな老いぼれではあるが、単純な身体能力はどの形態と比べても負けてはおらんはずじゃ」

「そうか。なら、勝てるという事でいいな?」

「それはお前さん次第じゃよ。最もわしの力が使いこなせなければ、あの方の力を使うなど諦めた方が良い───」

「行くぞッ!!」

 

 そしてメレフはスタンドワナイマンの専用武器である鎌を手に取ると、それをヒイテンに向かって振り下ろした。

 当たり前だが、そんな大ぶりな攻撃が当たるはずもなく、ヒイテンは軽々と避けて、先ほどプリーストにやった攻撃方法で殴りかかってきた。

 

「姿を変えた所で私との差は埋まらない!!」

 

 そう言って分裂した右の拳がメレフの顔面を捉えようとしていた。

 しかし、ヒイテンの攻撃はメレフに当たる事はなく、ギリギリな所でピタリと止まってしまう。全力で殴ったはずなのに、その手前で止まってしまうとはどういう事なのか。それは本人が1番理解できないだろう。

 

「こ、これは…!?」

 

 ヒイテンは気づく。腕に無数の手の様な影が地面から現れ、無数に張り付き、その攻撃を止めていたのだ。

 あの大ぶりな攻撃はメレフに注意を引かせる為の敢えて行ったもの。ヒイテンはまんまと罠にハマってしまった。またしても油断だ。

 影は腕に限らずヒイテンの全身に張り付き、その動きを完全に封じ込めてしまった。

 

「よし、このまま奴を───!!」

「ここは引くことを薦めるぞ、王よ」

 

 この大きなチャンスを前に、ワナイズはメレフに引く様に告げる。

 こらに対してメレフは当然ながら疑問をぶつける。

 

「何故だワナイズ。このままやれば奴を……」

「ふぉふぉ、確かにこのままやれば確実に奴を仕留めることができるのぉ。しかし、天使1人に集中し過ぎて、周りが見えていないのは頂けない事じゃ」

「なに…?」

 

 メレフが周りを見渡すと、次々に天使たちが空から舞い降りているのが目に入る。合計6人くらいはいるだろうか。このままやれば不利になる事は間違いない。

 

「わしの力を使ってお前さんは闇と共に消えるといい。そうすれば助かる」

「わかっている。あの男と少年も含めてな」

「…… 子供の方は離れ過ぎている。今すぐにでも逃げんと取り返しがつかないことになるぞ」

「それでも見捨てるわけにはいかない」

「わしらが死んでもかの?」

「違うな。王は誰も見捨てない。そして誰も死なせはしない」

「ほう… なら、見せてみぃ。お前さんの力を」

 

 それからメレフはドライバーの鍵をボタンを押してから捻り、鎌をジェルエの方へと投げる。鎌の投げた方に影が続き、ジェルエを闇に包み込むと、彼よりも近くにいた源次を片手から闇を溢れさせて捕まえる。

 それと同時に、天使たちから光弾が飛んできたが、辺りが黒く染まってすんでの所で全員闇へと溶け込むことができた。

 ヒイテンの拘束も解かれ自由になると、降ってきた一体の天使が彼に向かって言う。

 

「無様を晒したな。あのまま攻撃されていたら終わっていたぞ」

「…… いや、それは奴らも同じことだ。私が拘束を解いていたら奴らは……」

「言い訳は無用」

「くっ…」

「我々は奴らを全滅させなければならない。それがあの方の意思である────」

 

 

 -------------------------------------------

 

 

 源次が目を覚ますとそこはどこかの部屋だった。部屋の中は比較的綺麗に整頓されており、本棚には就活の本がズラリと並べられていた。

 そんな学生の様な部屋に人が入ってきた。見たこともない青年だ。

 

「あっ…」

 

 その青年に声を掛けようとした時、後ろから見たことある人物がずらずらと後から入ってきた。人物というよりも…。

 

「デモンティアだと!!? つーことはまさかお前……」

「この姿は初めましてだな。プリースト」

「お、おおおおお前、あのメレフだよな!? えっ!? 普通のだよな…? 普通の人間じゃねーかよ!!?」

「そうだ。ただの普通の人間だ。18歳の本当にただの一般人」

「仮の姿とかではなく?」

「悪魔の力を借りなきゃ戦えない人間。就職もできずに彷徨ってたダメな奴に、悪魔がやってきて人生が変わってしまった男さ」

「………」

 

 源次はメレフの本当の姿を見て言葉を失った。自分より10も違う年齢の男が今までずっと悪魔と戦っていたのだ。それに自分とも戦った。殺すつもりで。

 

「お、おい…… お前そのー… 人類の敵とかには…」

「なるのだったら断っている。俺はこの世界を守りたい。そう思って悪魔たちと戦ってきたが…… 今度は俺に力を貸してくれた悪魔が危機に晒されている。あの天使… 邪魔をするなら人間でさえも容赦しないらしい」

「エンジェルティアか…… あっ、そういえばジェルエは!!?」

「ジェルエ…? あぁ、あの子供なら両親の部屋で寝ている」

「良かった…… さてと、まぁそれでお前が俺に正体を打ち明けたって事はそういう事だよな?」

「急に本題に入るか」

「当たり前だろ。こんな状況で喧嘩腰でやってられるかよ。それにお前から色々聞き出すのも後でもいいしな。とにかく今はあいつらの事を聞かせてもらおうか?」

「恩に着る…… エイル頼む」

「承知しました───」

 

 そしてエイルの口から、エンジェルティアとデモンティアの因縁について語られる───。




あのクソ天使がよぉん!?(暴言)

次回、第15解「我に語る、我ら因縁」

次回もよろしくお願いします!!


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第15解「我に語る、我ら因縁」

皆さんご無沙汰しております。
それではどうぞご覧ください。


 エンジェルティア。デモンティアと対を成す存在であり、デモンティアが悪魔なら、こちらは謂わば天使と呼ばれる存在だ。

 この2つの種は1000年以上も前から争っていた。実力差は互角であり、何年も同じ様に戦っては止め、戦っては止めと、永遠とも呼べる時間の中、ずっと理由がないままに戦い続けた。何故、彼らは戦いをやめないのか。何故、戦いを始めたのか。理由なんて最早ないのかもしれない。彼らは本能的に、ただそういう運命に従っていた。

 しかし、その戦いは王の出現により終わりを迎える事となる。

 最初からその者は王という訳ではない。ただの1人の人間だ。人間はまず天の使いであるエンジェルティアに交渉をしたが、彼らは聞く耳を持たず人間の言う案を呑まなかった。

 逆にデモンティアはその案をすぐに受け入れた。彼女らからしたらあまりに都合が良過ぎるからだった。誇りとかは関係ない。ただその契約に従えばより確実に簡単に欲求を満たせるからだ。

 

「悪魔と契約する事がどういうことかわかっているの?」

「あぁ、わかっている。それより君たちに暴れられる方が数百倍困る」

「この契約内容、あなた─── 死ぬわよ?」

「それでこの世界を守る事ができるなら本望じゃないか?」

「バカな人間ね。それよりこの鍵なんかに私たちの力が収まるなんて、見ても聞いても信じられない話だわ」

 

 全デモンティアを統括するNo.1の数字を持つ女の悪魔、エイルは人間にそう言った。

 王になろうとする人間はその鍵を「プロトティアイズキー」と呼び、彼女たち72体の力を9本に封じ込めた。が、エイルに次ぐ脅威的な圧を放つ1人の悪魔はその10本目に収まる事はなかった。

 そして圧倒的な力を持つ彼はこう言う。

 

「我の力はお前たち人間では扱う事はできない」

「なら、扱える様にするまで」

「できると思っているのか?」

「できなければ君たちと契約なんぞ結ばない」

 

 72番目の悪魔ンードゥに対し、人間は一切動じる事なく笑顔で返してみせた。その姿を見たンードゥは彼を気に入り、おとなしく封印された。

 ── この一件からデモンティアは世間が思っている様な恐ろしい存在ではなく、共存できる生物へと性格が変わっていった。こうなったのも他ではない先代が彼らとの歩みを始めたからだ。

 こうしてエンジェルティアは彼らは最早脅威ではないと悟り、長きに渡った戦いは終わりを告げたのである───。

 

 

 *****

 

 

「─── その後、前王様はお亡くなりになる前に、我々デモンティアは本当の意味で封印されたのです。我々に感情というものを教えてくださったあの方だったとしても、我々の内に眠る欲の暴走を止める事はできませんでした」

「しかし、何故エンジェルティアは今になってデモンティアの事を狙い始めたんだ? 因縁があるとは言え、今の話では既に戦いは終わったはずじゃ……」

「我々が復活し、恭也様というデモンティアの王を迎え入れた事で、エンジェルティアは脅威となると思ったのではないでしょうか」

「… そのついでと言うように積年の恨みを返そうと。天使というものはもう少し慈悲の心があると思っていたぞ…」

 

 恭也はふと疑問に思う。この考え方をするのであれば、先代を復活させたのはエンジェルティアではないと言える。彼らに因縁があるのはわかっているので、ここで争うことは何ら不思議ではないが、先代に関しては復活させたところでメリットはあるのか。もしくは見せしめとして?わからないが、とにかく直接聞いてみる必要が出てきた。

 すると、黙って聞いていた源次が口を開く。

 

「王様よ。今の話を聞いて思うんだが、あいつらの狙いはデモンティアだけって話になるよな?」

「そうなるな」

「そうなるよな…… じゃあそれってつまり俺からしたらチャンスって事になるな」

 

 その言葉を聞いた悪魔たちの表情が変わった。何かする前に恭也が手をあげて静止する。

 だが、それに臆する事なく源次は続ける。

 

「お前考えてもみろよ。俺は国に雇われてお前たち悪魔を倒す為に、正確に言えば金の為に戦ってるんだ。そんなお前らがエンジェルティアとかいうあいつらに絡まれて敵が2ついる状況を作ってる。戦う理由は違えど、あいつらは俺たちデモンハンターと同じ目標がある訳だ」

「…… それでどうする?」

「お前たちに協力する」

「なに?」

「あのジェルエを守っちまったからな。結局もう俺は敵と見做された訳だ。あーあ、大金手に入ると思ったのになー…」

「いいのか?」

「やっちまった事に後悔するより、次にどうすればいいか最善を尽くすのが俺だ。それがお前と協力する事。それに……」

「それに?」

「子供傷つけられてキレるような奴に悪い奴はいないからな」

「感謝する…… だが、本当にいいんだな?」

「くどいぜ。まぁ俺も生活があるから何か有れば俺は俺のやりたい様にする。構わないな?」

「それで構わない」

 

 この言葉が恭也にとってどれだけ心強いことか。だが、同時に不安もあるのは間違いない。源次という人物がどういう男なのか、まだ何もわかっていないからである。

 

「それじゃあ俺は用事があるんでよ」

「ん? どこに行く?」

「どこってそりゃお前───」

 

 

 ------------------------------------------

 

 

「─── ありがとうございました〜」

「おほほほほほっ!! んじゃあね、また来るぜッ」

 

 夜の街。人間の欲が最も深くなる時間帯と言ってもいいだろう。女や酒を求める男たちがずらずらと街に溢れ、簡単に金が飛んでいく光景が見られる。

 そんな街をフラフラと酒と女で酔って歩く源次の姿があった。

 

「うぅ…… ヤッベ飲み過ぎた」

 

 この日は少し飲み過ぎたのか、近くにあった公園のベンチに座り、上を向いてぼーっとしていた。

 その時、彼を心配そうに、いや、呆れた様子で声を掛ける少年ジェルエがいた。

 

「源次はいつもこんな生活しているの?」

「悪いか?」

「…… んー、悪くはないと思う」

「おっと意外な答えだ」

「人間はストレスが重なると身体を壊すって聞いたよ」

「わかってるなー… まぁ壊れるのは身体ってより精神面だろうな」

「人間って脆いよね」

「脆いからこそ必死なんだよ。他人に壊されたくないからどんな手段使っても治そうとするんだ。例えばこういう風に俺は飲んだりして忘れようとする」

「何を忘れるの?」

「……… 何を忘れようとしたんだろうな」

 

 これからエンジェルティアとの戦いが始まる。デモンハンターとして戦っていた源次だが、既にデモンティアは恭也によって封印され、残り2体となっていた。街への被害はない。もう彼にやる事はないのだ。

 そう思っていたのだが、つい先日、組織から改めて命令が下された───。

 

 

 *****

 

「は? それはまた急な…」

「当たり前だろう。脅威な事に変わらない」

 

 恭也と協力する形を取った後、彼は変わらず夜の街で遊び呆けていた。

 そして先日、デモンハンターのリーダーから招集がかかり、こんな事を言われた。

 

「王のメレフを倒す。これはわかったが、今の俺にあいつを止められるだけの力はないぞ」

「ほう? 誰よりも優れていると言っておきながら倒せないと? お前報告が来ないと思ったら、悪魔は殆どが封印され、おまけに王に負け続けていたとはな」

「仕方ねーだろ。あっちは72体の力を使えるんだぜ? 対して俺は1人。力の差は元々わかりきってたんだよ」

「言い訳するな。お前には確かに才能がある。それは認める。が、お前は碌に訓練はせず、遊んでばかりいて、それで力の差で負けましただと? なら、技術を磨け。それしか勝つ方法なんてないだろう?」

 

 これがど正論である為、源次は軽口を叩けずに黙ってしまう。

 しかし、やはり源次がずっと黙るという事はなかった。すぐに反撃に出た。

 

「技術磨いた所で勝てねーんだよ」

「なに?」

「悪魔たちにならその技術でなんとかなったんだろうよ。だがな、本命は王だ。その王が悪魔だけでなく、自分自身を強化したんだ。その形態に俺は手も足も出なかった。俺の攻撃は全て弾かれ、逆に相手の攻撃は俺にめちゃくちゃ当たった。そんな奴に技術どうこうで何とかなると? はっ! まずは戦ってから言うんだな!!」

「…… お前は戦ったのか?」

「え?」

「お前はそいつと全力で戦ったんだよな?」

「全力で……」

 

 その言葉に、源次は思わず口が閉じる。

 

「全力で戦って負けて悔しい。誰だってそう思うだろう。どんな競技だとしても、自分の力を出し切って挑み、あと一歩の差で負けたとなれば、老若男女誰だろうと悔しい気持ちが溢れてくる筈だ。なのにお前は負けたからと言い訳ばかりで、自分の悪い点を1つも言ったことがない」

「そ、それは…」

「それはなんだ? また言い訳か? 他人を貶すようなら、まず自分を見直してみるんだな!! 源次、お前は優れた人間なんかじゃない!! 自分の立場をもっと理解しろ!!」

「…… わかってるよ… んなこと」

 

 源次はそれ以降何も言わず、静かにその場を後にした────。

 

 

 *****

 

 

 メレフを倒すという前と変わらない命令の筈なのに、今はどうしてか心が重い。メレフの本当の姿を知ったからではない。リーダーに言われた言葉が思わぬほど刺さった。

 

「…… くそっ」

「…っ! 源次!!」

「なんだよ」

「エンジェルティアが来たッ!!」

「なんだって…!? どこだ!?」

「えっと…… え? ここ───」

 

 ジェルエが場所を言おうとした時、空から天使が舞い降りてきた。

 ヒイテンではないのはすぐにわかった。何故ならこの天使は女の天使だったからである。

 

「ひゅー… これはまた美人な天使さんがやってきたな」

「我が名は『ホウリー・ミイテン』。お前と話をしにきた」

「ジェルエは渡さねーぞ。どうしてもってんなら…… なに?」

「我々に協力しろ。深尾源次」

「こいつは一体どういう風の吹き回しだ?」

「私が聞いている。質問の答えは『はい』か『いいえ』のみとする」

「いやだから待て────」

 

 源次が理由を聞こうとすると、光弾が足下に飛んできた。

 

「…っ!!?」

「『はい』か『いいえ』か」

「ま、待てッ!! 理由を聞かせろ!! 理由もなしにハイハイと答えられる訳ないだろ!!?」

「…… それもそうだな。いいだろう。話してやる」

 

 その理由を聞いた源次はこう答える────。

 

 

 ------------------------------------------

 

 

 恭也は71番目の悪魔ヲワンダを封印した。

 この悪魔はとても無口であり、ゼフォーが喋る方であるとよくわかる。何を聞いても黙っており、上司であろうワナイズが何か質問しても首ぐらいしか動かさない。ワナイズはそれを見て何を考えているかわかってしまうらしいが、恭也にはそれがなんなのかまるで理解ができない。

 

「ふぉふぉふぉ、言っただろう? わしが来いと言ったら来ると」

「あぁ、それは助かるが…… あともう1人は?」

「お前さんもわかっての通り、わしでは動かせんよ。力が違い過ぎる」

 

 ンードゥという最後の数字を持ち、エイルと同じ権限がある大きな存在。まだ姿形や声すらも聞いたことがない謎の悪魔。その強さは今の恭也では使いこなす事はできないらしい。

 そんな最後の1人について考えていると、家の外から風を切る音が聞こえた。

 

「お前は───!!」

「『ホウリー・フウテン』。それが俺の名だ。こちらに来てもらうぞ」

 

 ──── フウテンに連れられてやってきたのは森の中だった。人気がないのはまず間違いないが、他に動物の気配すらもしない。あまりにも静かで不気味だった。

 

「さぁ、早速殺し合いだ」

「1つ聞かせろ。お前たちがデモンティアの王、俺の先代を生き返らせたのか?」

「なんの話だ?」

「それはとぼけているのか?」

「聞きたければ力ずくで聞き出せ!!」

 

 恭也はフウテンの攻撃を避けながらデモンドライバーを装着し、エイワンティアズキーを差し込んで変身する。

 

《悪魔の名はエイル・ワン!!1の数字を持ち、その力の全てを王に捧げる者!!》

「お前たちの因縁なんぞ知らん。だが、俺の部下を傷つける奴は誰であろうと容赦はしない!!」

「俺もそうだ。私の仲間を傷つけたお前たちを容赦しない!!」

 

 再び、デモンティアとエンジェルティアの戦いが始まる────。




話スギィ!!次回バトります。ようやく。
今更なんですがキーを捻った時の音声「解錠」ではなく「開錠」だった事に気づいて途中から開ける方にしてます。ずっとやってなかったから作者自身ド忘れしてるという……ぷももえんぐえ(崩壊

次回、第16解「我の脅威、我と対峙」

次回もよろしくお願いします!!


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第16解「我の脅威、我と対峙」

皆さんご無沙汰しております。
それではどうぞご覧ください。


 フウテンはティッツのように自由で応用のきく、水属性の攻撃を得意とし、メレフを着実に追い詰めていた。

 一方のメレフも何とか剣で捌いていくものの、変幻自在な水に動きを全て防ぐことはできず苦戦している。

 

「光以外の属性を身につけているとはな!!」

「お前たち悪魔とは格が違う!!」

 

 そう言うフウテンの言葉に嘘はない。この水の動きは熟練されていなければできない動きだ。この攻撃を避ければ次はこう行くだろう、という予測が彼にはできている。

 それを今のメレフはできない。動かせても本当の意味で自由自在とまではいかない。

 

「なら、その差は相性で埋めるのみ!!」

 

 メレフはドライバーのキーをゼフゼロと入れ替える。スタンドゼフゼロへと姿を変え、雷を纏った槍を薙ぐと、それは水を伝わってフウテンに電撃を浴びせる。

 

「ぬぐぅ…!!」

 

 続いて槍にキーを差し込み、それを捻るとメレフの武器に内蔵されたコアから、その対応する属性エネルギーを増大させ、専用武器を属性エネルギーの塊に変化させる。

 

《解器!!》

「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

《雷の一撃!!》

 

 それからメレフはその雷エネルギーが増幅された槍を、フウテンへと全力で投げつける。

 フウテンは凄まじい速度で飛んでくる槍を難なく躱す事はできたが、まだ攻撃が終わっていないことには気づいていなかった。

 メレフは手を彼に向けてから、槍を引っ張るようにすると、槍はメレフの方へと戻ってきてフウテンを貫いた。

 その様に見えたが、常人離れした反応速度によりギリギリ躱してしまう。

 

「何とか避けっ…!!?」

「甘い!!」

 

 そこで完璧に避けていればよかったものの、少し掠ってしまった事により、電撃はその少しから一気にフウテンの身体に伝導する。

 全身に相性最悪の雷のエネルギーを喰らってしまい、思わず地面に膝をつける。が、すぐに立ち上がってみせた。

 

「ぐぐぐっ……!!」

 

 もしもまともに喰らっていたら立つことはできなかっただろう。

 まだ痺れて動けないようなので、メレフは質問する。

 

「終わりだ。今のお前では俺の攻撃を避ける事はできない。答えるがいい。先代を復活させたのは貴様らなのか?」

「………」

「どうなんだ?」

「────…… 違う」

「なに?」

「奴を復活させて私たちに何の利益がある」

「内部崩壊させる事でお前たちが有利になるだろう?」

「そう考えることもできただろう。昔の怒りや恨みが消えたわけではない。だが、態々お前たちの王を復活させてまで戦う理由はない」

「…… なら、一体誰が先代を…」

「話はここまでだ」

 

 そう言うとフウテンは水を身体に纏って地面へと消えていく。

 

「待てッ!!」

「恭也様」

「… どうした? エイル?」

「奴の他に反応があります」

「次から次へと…… 場所は?」

「はい。ご案内します」

 

 メレフはエイルの案内により、その場所へと急ぐ────。

 

 

 ---------------------------------

 

 

 そこは神々しい光が常に差している場所であった。地面は雲のようになっており、辺りには6本の柱が並び、背の高い椅子が中心を囲うようにして7個置かれている。

 その一つに座った天使がフウテンに向けて言う。

 

「君も苦戦したようだね」

「すまない。油断をした」

「まぁ生きて帰ってきただけでも良しとしよう…… さて」

 

 その天使は1番高い椅子に座っていた。その椅子からそこに座る天使たちに向けて言う。

 

「僕たち天使も随分と消えてしまった事は言うまでもないね。残り僕を含めた7人。力も数も僕らの方が上。人間にさえ心を許してなければ、デモンティアも強いままでいられたのに」

「ねぇ『ムウテン』。さっさと話してよ。私たちはあんたの演説を聞きにきたんじゃないわよ」

「おっとごめんね『ナナテン』。では、本題に移るとするよ」

 

 ムウテンと呼ばれる天使が指を弾くと、中央に光の球が現れ、そこから人間が1人出てきた。

 それを見た天使たちは怒りの声を上げてムウテンに言い放つ。

 

「ふざけるなムウテン!! 人間をこの神聖な場所に踏み込ませるとはどういう事だ!!? ()()()に許可は取ったのか!? 無礼にも程があるぞ!!」

「落ち着いて『ヨオテン』。()()()も理解してくれるはずだよ」

 

 すると、ヨオテンの隣に座っていた天使が片言でムウテンに聞く。

 

「ムウテン、お前の事、理由、ある。なんだ?」

「『イツテン』ありがとう。この人間を呼んだのにはちゃんと理由がある。ミイテンに頼んで連れてきてもらったんだ」

 

 人間の隣にいる少年は彼らを見て身体を震わせる。人間はそんな少年の頭を撫でて落ち着かせる。

 

「んで、俺をどうしたいって?」

「おおっと、ごめん。ミイテンから言われた通りさ。承諾したんだろう? だからここに来た」

「あぁ」

「なら、話は早いね。まずお礼を言わせてくれ。ありがとう」

「そんな事はいい。さっさと例の奴だ」

 

 全く怯む事ない人間、源次は聞く。

 

「ふふっ、急がなくても逃げないよ。()()()()()()()────」

 

 

 *****

 

 

「─── 力を?」

「そうだ。お前が協力した暁には我々の力を貸してやる」

 

 数時間前、ミイテンに理由を聞いた源次は驚きを隠せなかった。協力を要請してきた彼女から理由を聞くと、源次にとってこれ以上にないチャンスが舞い込んできたからだ。

 

「力って事は… そのー…… デモンティアの奴らみたいな事だよな?」

「デモンティアの王同様に我々の力をお前が使えるというものだ」

「裏がある事は確実だな」

「断るか?」

「断ったら殺すだろう?」

「その通りだ」

 

 源次は考えた。ここで力を貸してもらうことができればメレフを倒すことができる可能性が出てくる。だが、それをすれば彼を裏切る事となり、ジェルエもどうなってしまうかわからない。

 沈黙は続いた。

 

「どうする?」

 

 やがて、源次は重い口を開いた。それは覚悟した目つきである。

 

「お前たちに協力しよう」

「ほう、意外だな」

「ただし俺からも約束しろ。この子には手を出すな」

「…… ふむ、勘違いしている様だな」

「あ?」

「確かに本来であればジェルエは始末されていることだろう。だが、この状況においては別だ。それがいなければ我々もこの案を出す事はできない」

「それって……」

「あぁ、ジェルエは────」

 

 

 *****

 

 

「─── ジェルエは要だよ。僕たちの力を使う為のコア」

 

 ジェルエはエイルと同様にエンジェルティアの力を使う為の存在だった。そんな重要な役目を担っているジェルエを何故始末しようとしたのか。

 その理由をムウテンは語る。

 

「ジェルエは造られた存在なんだよ」

「なんだって…?」

「まぁ僕たちもそうなんだけど、ジェルエは特別さ。いくらでも代替が利くし、量産できるのに誰よりも優れた力を持っている。びっくりするだろう?」

「だから壊しても平気だと…?」

「怒らないでくれよ。これが僕たちのやり方さ。人間と同じ様に見てもらっては困るよ。種族によって価値観があるのは当然だろう? 僕たちは食事をしなくてもいいけど、人間は食事をしなければ生きていけない。君たちの当たり前は僕たちのとっての非常識。そういうものさ」

「…… わかった。その件については一旦置いておく。それで俺は何をすればいい?」

「そのドライバーを貸してもらえるかい? 大丈夫、ここまでして騙す様な事はしない」

 

 そして源次は言われた通りに渋々とプレイドライバーを取り出すと、ドライバーだけ光に包まれてムウテンの手元へと運ばれる。

 

「デモンドライバーを真似ただけでよくこんな物を造れたね。だけど形だけだ。中身は人間の限界と言ったところさ」

「何をする気だ?」

「中身を弄るだけだよ。中身をより優れたものにするだけ……」

 

 ムウテンが手をかざすと、プレイドライバーに光が宿る────。

 

 

 --------------------------------------------

 

 

 メレフはエイルに案内された場所へと辿り着いた。森の中にある今は使われていないだろう古い館があった。

 

「…… ここか?」

「はい、ですがこの力─── っ!? 周りに注意してください!!」

 

 その館へと足を踏み入れようとしたその時、周りに見た事があるゾンビたちが現れた。

 

「ゾンビル… だったか?」

「はい…… え?」

「どうした?」

「何故奴らがここに?」

「エイルどうしたっ…!!」

 

 話す暇もなくゾンビル達はメレフに襲いかかってきた。かなりの数がいる様で、1人倒しても次から次へとどこからともなく湧いて出てくる。

 

「キリがないぞ!!」

「なら、わしを使うといい」

「ワナイズか」

「日が落ちて来たという事は、わしの力が増す時間帯じゃよ。この群れを闇に引き摺り込んでやるとしよう」

 

 どうやら気付かないうちに日が落ちて来ていた様で、辺りはすっかり闇に包まれかけていた。

 それからメレフはワナイマンティアイズキーを取り出して差し込み、スタンドワナイマンへと姿を変える。

 

「闇に呑まれろッ!!!」

 

 地面に手をつけると暗闇から次々に手が出現してゾンビル達を掴む。身動きが取れないその隙に、メレフはドライバーのキーを捻って鎌に闇のエネルギーを溜める。

 

「ハァッ!!!」

《ワナイマンシャットアウト!!》

 

 全体に行き渡る様に一回転して鎌を振るうと、闇のエネルギーでできた刃が、ゾンビル達の首を空へと飛ばす。

 周りのゾンビル達が爆発し、辺りは再び静寂に包まれた。

 

「…… これで終わりだな。それでエイル。お前は何を言おうとしたんだ?」

「恭也様。このゾンビルを造るには我々の力を使わなければできません」

「……っ! つまりこの館にいるのは……」

「デモンティア以外ありえません」

「そうなれば、奴しかいないという事になるだろう」

 

 恭也は変身を解くと、館の扉を開き、中へと進んでいく───。

 

 

 ---------------------------------------

 

 

 ワナイズは道中何も言わなかった。これから会うデモンティアの正体がわかっているとしても、何をしてくるのか、何が目的なのかも言おうとはしない。

 ただ一言だけ恭也に告げる。

 

「退くな」

 

 この言葉がどれほど重いのかわかる。逃げようものなら命はないだろう。それぐらい今から会う悪魔は常識が利かないという事。

 

「ここだな…」

 

 長い廊下を渡り奥へ進むと、行き止まりがあり、そこに扉があった。

 エイルはその奥から異様な気配を感じているようで、他の悪魔達も全員息を呑む。

 

「開けるぞ」

「はい」

 

 その扉を深呼吸をしてから意を決し、勢いよく開けると中は画用紙を黒のペンで殴り書きしたかの様に真っ暗だった。

 ここに来る道中も暗かったが、外の月明かりで多少は足元も見れていたし、メロクの力で暗い場所も難なく動けた。

 が、その光を持ってしてもその空間においては全くの無意味だった。メロクが光を呼び出しても辺りは明るさを取り戻さない。まるで白い点だ。そこだけ消しゴムで消した様なあまりに不自然な光景。

 

「─── よく来たな、現王よ」

「…っ!!?」

 

 次の瞬間、後ろの扉が閉まり、本当に何も見えなくなってしまった。

 エイルの声が聞こえる。だが、どこにいるかまるでわからない。

 

「お前は…… いや、わかっている。会いたかったぞ──── ンードゥ」

 

 デモンティアNo.72、ここに来たる───。




今更で実はで初なんですが、メレフの武器もちゃんと鍵を差せます。いつか出すつもりでしたが、設定すっかり忘れてました。(焦り
天使の数が少ない…?源次は…?最後は最後のやつ…!?(語彙力

次回、第17解「我に迫る、我の時間」

次回もよろしくお願いします!!


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第17解「我に迫る、我の時間」

皆さんご無沙汰しております。
それではどうぞご覧ください。


「あのゾンビルはお前が造り出したんだな」

「その通りだ。あの程度でくたばる様では我の力を扱うなど夢のまた夢に等しい」

「…… 俺を呼び出した理由は? 敢えてエイルに気付かせる為に気配を強めたのだろう?」

「そうだ。用というのは───」

「恭也様ァァァァァァ!!! どちらにいらっしゃいますかぁぁぁぁぁぁぁ!!! 私がついておりますご安心くださいッッッ!!!」

 

 ンードゥが恭也に話をしようとした瞬間、エイルが彼を探し雄叫びを上げている。とてもありがたい事なのだが、正直今はやめてほしい。

 

「…… あ、ンードゥ。明かりが欲しいんだが…」

「光はあまり好かないのだが… やむを得ん」

 

 すると、一瞬にして辺りに光が灯る。どうやらそこは書斎の様で周りには本棚がズラリとあり、その中心にンードゥが椅子に腰掛けていた。

 エイルは恭也を発見するや否や飛び掛かって来て、その勢いに思わず倒れてしまう。

 

「ご無事でしたか恭也様!!?」

「無事だ。だから離れてくれ…… 奴と話をしたい」

「奴…?」

 

 恭也が指差す方向にはンードゥがいた。エイルは無言で立ち上がり、目をキッとさせて腕を組む。

 

「久しぶりね、ンードゥ」

「久しいなエイル。我の見ない間に…… どうなっている?」

 

 あのンードゥすら困惑しているようだ。前王の時とはまた違うのだろうか。

 

「それより恭也様を呼び出して何のつもりかしら? まさか大人しく封印されるつもりではないでしょう」

「当たり前だ。別の件でお前たちをここに呼んだ」

「それは?」

「王の覚醒が近いことについてだ」

 

 その言葉にエイルの顔が青ざめた。やはりその件について触れられるのは都合が悪いらしい。

 恭也は立ち上がりエイルの横に着いて、代わりに話を進める。

 

「皆もわかっているんだろう? 俺の力が既に何割増しになっているかを…… ンードゥ。俺の力は今どれ程なんだ?」

「7割だ。お前の力は既に7割を越えようとしている」

 

 この短い時間の中で既にそこまで喰われているようだ。身体に異常がない分、実感が湧きにくいが、着実に恭也の生命は終わりに近づいている。

 

「俺は…… 死ぬのか?」

「死ぬ」

「そうか。聞かない様にしていたが、やはりそうなる運命か……」

 

 恭也はエイルの方を見ると、俯いて身体を震わせているエイルが見えた。そんな彼女に何も言わずに自分の方へと寄せる。

 

「恭也様…?」

「安心しろ。恐怖はない。お前を恨むつもりもない。俺は使命を全うするだけだからな」

 

 それから恭也はンードゥに聞く。

 

「あるんだろう? 助かる方法が」

「ほう…」

「俺をここに呼び出したのは、俺の王としての覚悟を見る為。その覚悟を見たお前は次に何をする?」

「王よ、お前に試練を与える」

「それは?」

「我の力を使いこなせ。それが死を回避する方法だ────」

 

 

 --------------------------------------------

 

 

 ンードゥは言う。先代も最後まで自分の力を使う事は容易ではなかった。だから死んでしまった。真にデモンティアの力を全て扱えれば、魂を喰らわれることなく、デモンティアの力をより強く、より優れた使い方ができる様になると。

 メレフの全身に施された錠前の様なアーマー。これを解き放つ事によって先代すら辿り着けなかった真なるメレフになるという。

 今のデモンドライバーは最初に先代が造り出し、それをエイルとンードゥの力によって完成するに至った。模造品のプレイドライバーとの違いはここだった。

 悪魔の力を宿し、悪魔の力を使えるドライバーとそのキー。この2つを本当の意味で扱えるものこそ、デモンティアの王と呼べる存在なのだ。

 

「はぁ……」

「恭也様…?」

「すまない。全身の力が抜けてつい…」

 

 あれからンードゥと話が終わり、彼はあそこに留まり、恭也たちは自宅へと帰還した。

 ンードゥは「次の力を解放した時、お前の元へと姿を現そう」と言い、館から動こうとはしなかった。

 

「今まで言わなかったが… 正直俺はどうすればいいかわからない」

「………」

「ここ何ヶ月か王として皆の為に戦ってきたが、お前達の力を使いこなせているとは思えない。これから先、本当にンードゥの力も使えるか…… 自信がない」

「大丈夫です」

「エイル…」

「恭也様ならきっと使いこなす事ができます。我々は王が望むなら何でもします。どうか、生きてください」

「…… ふっ、ありがとう。そう言ってもらえると助かる」

 

 その時、ドアを叩く音が聞こえた。母かと思ったがそうではなかった。

 

「源次……」

 

 恭也は察した。源次の表情はあの敵対していた時と同じ顔なのだ。

 

「… 場所は?」

「用意してくれたよ… 広いところをな」

「用意してくれた…?」

「まぁいい。さっさと行くぞ」

 

 源次に連れられ、その場所へと向かう────?

 

 

 ----------------------------------------

 

 

 その場所はよくスポーツ選手達が使う競技場であった。そこに人はいない。それどころかここに目指す最中も人の気配はしなかった。

 恭也と源次はその真ん中に向き合って立っている。

 

「デモンハンター… の仲間がやったわけではなさそうだな」

「あぁ、あいつらは関係ねーよ」

「…… ジェルエはどうした?」

「んな事はいいんだよ。わかってんだろ? 今からやるのは戦いだ」

「待て、お前まさかっ…!!」

 

 源次がプレイドライバーを腰に巻きつけると、上空から天使が7人翼を広げ舞い降りてきた。

 その瞬間、恭也もデモンドライバーを腰に巻き付け、キーを構える。

 

「エンジェルティアと契約したのか!?」

「そーだよ。悪いか?」

「そいつらは……!!」

「何かしたのか?」

「なに?」

「こいつらは一般人に対して何もしてないだろう? しても精々そこら辺の地面抉ったくらいだ。直接何かしたわけでもない」

「それは…」

「エンジェルティアの目的はただ1つ。お前たちデモンティアを滅ぼす事。で、俺の仕事はデモンハンターでお前たちを倒す事。行き着く場所は同じだ。だから協力し合う話になったわけだ」

「………」

「何も言えないよな? どちらもお互いの存亡を懸けてんだ。やらなきゃどちらかが終わるのみ。生きる残るのはデモンティアか、それともエンジェルティアか。決めようぜ王様よ」

《プリースト!!》

「やるしかないのなら…!!」

《エイワンプラス!!》

「「変身ッッ!!!」」

 

 2人はキーを差し込んで捻り、仮面ライダーへと変身する。その際、プリーストの方はメレフ同様にエンジェルティア達がその身に入り込んだ。

 見た目は通常のプリーストではあるが、その中身は得体の知れない不気味さを醸し出している。

 

「今のうちに懺悔しな… 俺と戦う事になッ!!」

「後悔するのは貴様だッ!!」

 

 スタンドエイワンプラスに変身しているメレフは、前に戦った事を思い出し、そのまま防御もせずに突っ込んだ。

 プリーストはそれに対して冷静に杖を向ける。

 

「ヒイテン…」

 

 そう言うと杖の先から光弾を作り出すと同時に炎を纏わせ始めた。プリーストは光を扱うライダーであり、本来ならばこれは絶対にあり得ない事なのだ。

 

「それがどうした!!」

「先に言っておく。避けろ─── 燃えるぞ」

 

 杖の先から炎を纏った光弾が発射され、それをメレフは力一杯に切り裂こうとするが、光弾に当たると剣が押し戻される。

 そうなれば防ぎようがない。メレフはまともに喰らってしまう。

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 光弾に当たって吹き飛ばされたメレフだったが、すぐに体勢を立て直す。

 だが、その威力に思わず膝をついてしまう。

 たった一撃のはずであり、エイワンプラスの装甲を持ってしても防ぐ事ができない。明らかに今までのプリーストとは違う。

 

「こんなものかよ王様ッ!!」

「これだけなわけがないだろうッ!!」

 

 メレフは素早く移動しながら、剣にエイワンプラスティアイズキーを差し込んで捻り、無のエネルギーを増大させる。

 

「ハァッ!!」

 

 剣を薙ぎ払うと、無の刃が空を斬ってプリーストの元へと向かっていく。

 それに対してプリーストは避ける事なく、地面に杖をトンッと突く。そこから霧状の闇が溢れ出してその無を呑み込み、闇はメレフの前に現れ、先程飛ばした斬撃がメレフへと帰ってきた。

 

「なんだとっ…… がはっ!!!」

 

 あれだけ力の差を見せつけたエイワンプラスの力が、今のプリーストにはまるで通じなかった。

 メレフの装甲を破るほどの火力、無を呑む闇。属性の力もメレフのそれとは比較にならないほど圧倒的。それに属性も切り替える事なく、プリーストの状態で全て使う事ができる。属性を変更したところで、瞬時に不利属性に変更されてしまうだろう。

 

「どうだ恭也。これが俺の新たな力ってやつだ」

「…… 何故、契約を……」

「さっきも言っただろう? 目的が一致したからだよ。それ以外に理由なんてねーよ」

「そいつらは子供を殺そうとしたんだぞ」

「それだけだろ? それに仲間内だ。種族での価値観の違い…… 仕方ねー事だったって思えば……」

「貴様ッ!!」

 

 メレフはプリーストの肩を掴む。

 

「…… ジェルエは天使であって天使じゃなかった」

「なに?」

「替えの利く人形だって言えばわかるか? 奴はそれだったんだよ」

「だからと言って…… 彼も生きていた筈だッ!! なのに!!」

「なのになんだ!? 辛そうだからエンジェルティアを殺すのか!?」

「違う!! 俺は…!!」

「こいつらにも生きる理由はある!! じゃなきゃジェルエは…!!」

「源次…?」

 

 そしてプリーストはメレフの腹部に杖を当て、炎の光弾を炸裂させる。

 近距離での爆発を受け、メレフの装甲にヒビが入り、後方へと大きく吹き飛ばされた。

 

「かっ…はぁっ……!!」

「何度も言わせんなよ。俺は… やらなきゃいけねーんだッ!!!」

 

 それからプリーストはメレフが立ち上がると同時に脚を土で固めて動けなくし、周囲に火・水・風・雷・土・光・闇の全属性のエネルギーの塊を召喚する。

 

「くたばれぇ!! メレフゥゥゥゥゥゥゥゥッッ!!!」

「あぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!」

 

 メレフはドライバーのエイワンプラスティアイズキーのボタンは押して捻り、剣に全エネルギーを集中させてその攻撃を受け止めようとする。

 全属性による隕石のような波状攻撃に、やがてメレフの装甲は砕け、攻撃が止む頃には変身が解けてしまっていた。

 あのまま受けていたら間違いなく死んでいた。だが、全力で受けたとしても身体はもうボロボロであり、次の攻撃に備える体力は残ってはいない。

 

「くっ……そっ…!!」

「よく生きてられるな…流石だぜ」

「源次… お前は……」

「わかってくれ… あいつの為なんだ」

 

 そう言って杖を恭也へと向け、エネルギーを溜め始める。

 

「……… くっ!!」

 

 プリーストが目を瞑り光弾を発射しようとした、その時だった。

 

「な、なんだ…!!」

 

 恭也の持つエイワンティアイズキーが前と同じように輝き出したのだ。プラスの時とは違う。更に強い光が辺りを包む。

 

「これはまさか!」

「恭也様!」

「あぁ、わかる… これなら戦える!!」

 

 そして恭也はその光により体力が回復したのか立ち上がり、鍵を構えて起動する。

 

《アドバンスエイワン!!》

「変身ッ!!!」

《更に開錠!!》《更に憑依!!》

 

 その新たな鍵「アドバンスエイワンティアイズキー」をドライバーに差し込み捻ると、エイワンプラスの時とは違い、シャープさはなくなり、より重厚感のある装甲へと変化する。頭部にはエイルの様な角が生え、悪魔のような、それでいて王と呼べる見た目に変貌を遂げる。

 

《悪魔の名はエイル・ワン!!1の数字を持ち、その力は王に更なる力を与え、更に魂の限界を超える!! 更に言おう!! 既に超えた!!》

「ふんっ!!」

 

 メレフが手を払うとプリーストは思わず吹き飛ばされる。

 

「なっ、なんだよこれ…!?」

「お前のことはよくわかった。任せるがいい」

 

 それからメレフは構えた。

 

「この力があればエンジェルティアを止められる」

 

 仮面ライダーメレフ スタンドアドバンスエイワン。

 解放された75%の王の力が猛威を振るう────。




いきなりの新フォームです!!
75%解放されたその実力は…。

次回、第18解「我は進化、我の命」

次回もよろしくお願いします!!


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第18解「我は進化、我の命」

皆さんご無沙汰しております。
それではどうぞご覧ください。


 プリーストはメレフに攻撃できずにいた。いや、正確には攻撃する意味を考えていた。決めつけるのは良くないが、この場合、決めつけておいた方が自分の身を守れるのかもしれない。

 まだ戦ってすらいないのに、こいつは強いと思える。エンジェルティアの力を使ったとしても勝てないと思わせる程に。

 

「…… まーだそんなの隠し持ってたのか」

「これは奇跡ではないぞ。俺の力がそこに達したから生まれた力だ」

 

 このまま話を続けても、結局メレフはエンジェルティアを倒すのだろう。そうなる前に先手を打たなければならない。

 例え、勝つ事が不可能に近いとしても。

 

「これでも喰らいなッ!!」

 

 そしてプリーストは100発の光弾に各属性を乗せて撃ち放った。どの属性でも、どんな防御力でも防ぎようがない数と力。避ける事ももちろん不可能。この光弾はどこまでも追尾する。

 

「何…!?」

 

 メレフは避けない。それどころ防御態勢すら取らない。

 

「馬鹿かッ!?」

 

 全弾直撃した。凄まじい爆発の量に流石のプリーストも開いた方が塞がらない状態だった。杖を構える事もせずただ突っ立っていた。

 それが隙となる事も考えられない。

 

「来るよ源次。もう間に合わないけどね」

「はっ…!!」

 

 ムウテンに言われハッとなったプリーストだったが、時既に遅し。

 メレフはいつの間にか彼の間合いに入っており、それに気づいた頃には地面に倒れていた。胸部に鋭い痛みが走る。

 

「がぁぁぁぁぁ!!…ぐぅ…っ!!」

「………」

 

 攻撃、素早さどちらも凄まじい程に仕上がっている。天使達の力を結集してパワーアップを遂げたプリーストであったが、新たなメレフの力に圧倒されてしまっている事にイラつき始める。

 それを感じ取ったムウテンはプリーストを宥める。まだ完全に負けたわけではないというのだ。

 

「君は焦り過ぎだ。もう一度攻撃してご覧」

「無理だ。奴の力は前よりも強大になっちまった。見ただろ? 俺の攻撃全てが効いてなかったんだぞ」

「いや、もう一度やってみるんだ。そしてよく見て。絶対ではないと気づくよ」

 

 そしてプリーストはもう一度100発の光弾をメレフ目掛けて放った。先ほど同様に逃げる隙間はない。喰らうだけ。

 しかし、メレフにはやはり効いていなかった。1度ダメだった攻撃がもう1度やった所で、それはただの二度手間。無意味な行動。エネルギーをただ消耗し続けるだけ。

 そう思っていた。

 

「さぁ、これでも君は効いてないと言うのかい?」

「こ、これは…!」

 

 プリーストはムウテンに言われた通り、メレフの身体をよく見た。すると、彼の装甲はプリーストの攻撃によってひび割れ、それどころか砕けている箇所まである始末だった。

 ムウテンに言われなければ気づかないほど、焦っていたようだ。だが、これで焦る必要はない。効いているのなら攻撃し続けるのみ。ムウテンもやれると確信した。

 ただプリーストはもう一つの疑問を捨て切れていなかった。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 光弾が飛ぶ。ただし、今回は攻撃されてもいいように地面を操って周りを固める。水で衝撃を防ぎ、風で受け流すつもりだ。もし、相手の行動に気づくのが早ければ、闇で拘束してもいいし、光の力で逃げたっていい。隙なんてない。勝てる。

 

「─── 痛みはあるが、これはいい」

「なっ…!!!?」

 

 プリーストの光弾はまたも全て当たった。この時、彼は気づいてしまった。この疑問が晴れた瞬間だった。ムウテンもそれに気づく。

 だが、後悔するのにこの一瞬の時間は短すぎた。

 

「ヌンッ!!!」

「ぐほぉっ…!!?」

 

 防御態勢を取っていたプリーストは呆気なく後方へ吹き飛ばされ、凄まじい速度で壁にめり込む。

 そしてその衝撃と共に変身解除に追い込まれてしまった。

 

「お前… その力は……」

「まさかエイルの力… 王の力を解放しても全て防げなかったのは流石だな。エンジェルティア」

 

 すると、メレフの身体は凄まじい速度で修復されていき、この喋っている間にすっかり元通りとなっていた。

 エンジェルティアの力を結集したプリーストの力は想像以上に強大である。それ故に75%解放したメレフの鎧であったとしても、完璧に防ぐことは困難であった。が、それ以上にメレフの王としての力が異常だったのだ。

 

「超再生能力…… いよいよ本当の化け物になってきたじゃねーか」

「話せ源次。お前に一体何があった」

「話してやりてー所だが───」

 

 次の瞬間、メレフの目の前が真っ白になる。強烈な光だ。視界が元に戻ると、そこには既に源次の姿はなくなった。

 

「どうやら引いたようだな」

 

 そう言って恭也も変身を解除すると、いきなり肩に重石を乗っけられたような疲労感に襲われ、地面に膝をつく。

 それに対して急いで駆け寄るエイルは心配そうに声をかける。

 

「恭也様、大丈夫ですか!?」

「あ、あぁ… 急に身体が……」

「…… それは私のせいです」

「これも王の力の解放が原因だろう」

「はい、超再生は身体に大きな負荷が掛かります。この力を使い続けるとやがて…」

「生命エネルギー… 王としての力が解放されるスピードが早まる。100%になった時、死ぬか生きるか… だろうな」

 

 恭也ははっきりとそう言った。これは確認の為に言ったわけでない。覚悟が揺らがない為に敢えて口に出した。死にたくない。内心ではそう強く願っている。強さを手に入れる度に死へと向かう身体。18歳の青年が背負った代償と使命。

 

「エイル… みんな、大丈夫だ。俺は… 大丈夫だから」

「恭也様…」

 

 その後、恭也はエイルの肩を借りながらゆっくりと帰路に着く────。

 

 

 -------------------------------------------

 

 

「契約内容を忘れた訳じゃないよね?」

「あぁ…」

 

 源次は再びあの椅子が7つ置かれた神聖な間にいた。そこでムウテンに契約違反であると、注意と言うべきなのか、脅しに近い事を言われている。

 

「もう一度君の為に言っておくよ。悪魔の王やその他の悪魔に助けを求める行為は禁止。王を倒すまで契約は継続。そして…… 王を倒せばジェルエは無事に君の元へ戻る。いいかい?」

「わかってる」

「ジェルエは僕たちを扱う為の器。逆に僕たちはいつでもその器を壊す事ができるし、君自身も簡単に始末する事だって可能さ」

「それもわかってる」

「……… ふふっ、ごめんよ。少々脅しが過ぎたよ。僕たちは人間で言う所のビジネスパートナー。平和に行こうじゃないか」

「… あぁ」

 

 ただの人質じゃねーかふざけんな。と、源次は思う。

 

「───…… あ、そうだ」

「なんだ?」

「君はデモンハンターとかいう悪魔を倒す職に就いてるんだったね」

「それがどうした?」

「一つ提案があるんだけど…… どうだい?」

「どうせ碌な事じゃねーんだろうが… まぁいい、聞いてやるよ。断ったら何されるかわかんねーし」

「そう警戒しなくてもいいよ。お互いwin-winな関係になるだけさ───」

 

 

 *

 

 

 今日はおかしな事が起きている。リーダーの男は嫌な予感が的中しないように、心の中でただただ祈っていた。

 何故なら、デモンハンター達は源次に呼び出されたからだ。彼から呼び出されるなんて事は今まで一度たりともなかったのに、今回いきなり集まって欲しいとリーダーに頭まで下げたという。

 

「………」

 

 静かにソファーに座って待っていると、ドアをコンコンと叩く音が聞こえ「入れ」と、中に入るように言う。

 ドアを開けて入ってきたのは源次だ。時間通りである。これも初めてだ。

 

「時間通りに来るなんて、お前にしては珍しいな」

「俺だってたまには真面目に守る時だってあるんだぜ?」

「………」

「………」

 

 お互いに沈黙が続く。先に口を開いたのはリーダーの男だ。

 

「… そこにいる奴はなんだ?」

「は?」

「お前の事はこれでもわかってるつもりだ。源次、この静寂の中、お前は何かの声を聞いていたな?」

「…… なにかって?」

「それはわからない。だが、そこに俺の知らない何かがいる事はわかる。誰なんだそいつは? 俺たちに一体何を話す?」

 

 すると、源次の背後からどこからともなくムウテンが姿を現した。そこにいたデモンハンター達は銃を構えるが、リーダーは手を挙げてそれを静止する。

 

「やぁ、デモンハンターの諸君。初めまして」

「デモンティア… いや、違うな。お前は一体何者だ?」

「僕はエンジェルティアのムウテン。先に言うけど、君たちの味方と認識してくれて構わない」

「証拠は?」

「僕がデモンティアみたいに野蛮なら、今ここで君たちを皆殺しにしてるよ」

 

 警戒態勢が解かれる事はない。この言葉に思わず源次をゾッとした。冗談で言ったのだろうが、周りからすれば本気と言わざるを得ない不気味さがあった。

 そんなムウテンは早速、用件を話し始める。

 

「君たちをここに呼んだのは他でもない。僕たちと契約を結んで欲しい」

「契約…? デモンティアと同じような事を言うな」

「あいつらと同じ風に思わないでくれ。僕たちは君たち人類をこれ以上傷つけたくないんだ」

 

 嘘だとわかる。本来の目的はデモンティアの抹殺だ。人類がどうなるなんて考えてすらいないだろう。源次はそう思った。

 ムウテンは続ける。

 

「一応聞こう。契約内容は?」

「メリットデメリットだけ話すなら、メリットは君たちは人間の力を遥かに凌ぐほど、強大な力を手に入れる事ができる。デメリットは──── ない」

「ない? 何もない訳がないだろう?」

「ないよ」

 

 源次は思わず小声で「嘘だろ」と呟いた。

 その言葉を聴こえていたのか、ムウテンは源次に言うように続けた。

 

「僕たちの目的はデモンティアを全滅させる事。君たちの目的はデモンティアを倒す事。まぁ意味は同じだろう。目的も一緒さ。だけど君たちの武器では彼らに太刀打ちできない。更に言えば、ここ最近のデモンティアの王は以前より遥かに強くなっているそうだね。このプリーストでさえも既に足元にも及ばなくなってきている」

「もうこの銃も使いものにならないのか?」

「君たちの使うその特殊な弾丸かい? 今は効いていたとしても、デモンティアが本来の力を取り戻したら最後、君たちの技術では到底敵わない。全滅。人類に明日はないよ」

「そうならない為には…」

「契約して強くなる他ない。そこら辺にいる人でもいいんだけど、君たちのように鍛え上げられた肉体を持ち、戦いにおいての基本を身につけている人じゃないと圧倒的に不利だからね。一般人を巻き込みたくはないだろう?」

「そうだが……」

 

 リーダーの男は源次を見る。思わず源次は目を逸らす。

 

「源次」

「……… なんだよ」

「お前が決めろ」

「なんだって…?」

 

 リーダの言葉にざわつき始める。それもそうだ。デモンハンター内部で1番の問題児であり、ダメ人間の彼に全てが委ねられたのだから。

 

「いや、リーダーであるあんたが決めなきゃ───」

「エンジェルティア? に詳しいのはお前だ。お前に任せる」

「ふざけんな。ストレスで頭イカれちまったのかよ」

「過去を忘れようとしても忘れられない。だが、世界を救いたい。お前の本当の気持ちはわかっているつもりだ。この組織に入る前から一緒にいるんだからな」

「…… でも」

「俺は覚悟が決まってる。お前も既に決めてきた筈だ。それを選ぶだけでいい…… だろう? 皆もそう思うな!!?」

 

 デモンハンター達は後ろで手を組み背筋を伸ばして立つ。なぜここまですぐに覚悟を決める事ができるのだろうか。たった1人の為に。

 そしてリーダーは源次の耳元まで行き囁いた。

 

「… お前の場合、この契約云々の前に守りたい奴がいるんだろう?」

「…っ!」

「俺たちは仲間の為ならこの命を懸ける。例えどれだけ憎たらしいお前でも、真っ当な理由があるならそれに手を貸そう」

「……… ホント馬鹿だぜ。あんた」

「それはお前もだ」

 

 源次はムウテンに告げる。ムウテンはニコリと微笑むと、デモンハンターたち全員と契約を結んだ。

 そうして彼らは強大な力を手に入れた。が、その代償はあまりに大きかった───。




人類にまで手を出したなお前な(呆れ

次回、第19解「我が知らぬ、我の過去」

次回もよろしくお願いします!!


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第19解「我が知らぬ、我の過去」

皆さんご無沙汰しております。
それではどうぞご覧ください。


 源次はジェルエと共に公園を訪れていた。辺りはだいぶ暗くなっており、人の気配は既にない。

 そんな時間帯にコンビニで買った飯を、街灯の明かりに照らされながら、ジェルエと机に座って食べていた。

 

「これ初めて食べた」

「だろうな」

「これ甘いね」

「新作だってよ。お前の口に合うなら良かった」

「源次は食べないの?」

「甘いのは好きじゃねーんだ」

「ふーん…」

 

 1週間前にデモンハンターたちがエンジェルティアと契約を結び、ドライバーの一部となっていたジェルエは力を源次以外にも供給する為に、変身前は外へ出られるようになったのだ。

 だが、結局誰かが変身すればジェルエは力をいいように扱われるだけ。奴らは何も思ってない。その気になればいつでもジェルエを殺せるし、源次もハンターたちも殺される。

 それをしないのはメレフの件があるからだろう。もう既に誰も勝てないとリーダーであるムウテンはわかっていた。全てのエンジェルティアの力を一つに収束すれば、今のメレフにも勝てる可能性が見えてくる。その為の肉壁。いや人質を増やす為、デモンハンターたちと契約を結んだのだろう。

 

「源次…?」

「あー… あ?」

「どうしたの?」

「なんでもねーよ」

「……… 僕が何かしたんだよね」

「おいおい、俺がボーッとしてたら自分のせいっておかしいだろ…」

「何も覚えてないけど、源次の顔がどことなく悲しそうだったから…」

 

 ジェルエは一連の出来事を何一つ覚えてない。エンジェルティアの力を扱うだけの道具となっていた彼は、ずっと眠っているような状態であったのだ。

 

「なんかなー… お前とはそんな長い付き合いじゃねーけど、なんだか懐かしい感じするんだよ」

「懐かしい?」

「あぁ、あいつら… デモンハンターの奴らと出会ったのは俺がまだまだガキの時だった。今のリーダーが兄貴分みたいな感じでよ。世話になったもんだ…… 今もだが」

「それで?」

「あんまこういう事、話すような柄じゃないんだが…… まぁいいか。話してやるよ────」

 

 

 *****

 

 

「お母さんテストで満点取ったよ!」

「あら、よく頑張ったわね〜」

「俺が教えたから当然だよ。な!」

「ふふっ、あなたも偉いわ『源気』」

 

 俺には2つ上の兄がいた。名前は源気。名前の通り元気を具現化したようなやつで、小学生の頃、頭も良かったが、それ以上にスポーツがずば抜けてた。

 漫画の主人公みたいな奴でサッカー、バスケ、バレーとか、スポーツだったらなんでもできるとかいう天才児だった。

 

「兄ちゃんみたいになりたい!」

「なんだよ突然」

「俺、いっぱい頑張って兄ちゃんみたいになんでもできるようになる!」

 

 そんな俺は兄貴に憧れた。俺は兄貴ほど頭も良くなきゃ、運動だってできない訳じゃなかったが真ん中辺り。当然、兄貴のようになんでもこなせる訳じゃなかった。

 兄貴はいつも俺に言ってた。

 

「俺みたいになるなよ」

「… なんで?」

「なんでもできたらつまらないから」

「んー? 自慢…?」

「違う!!…… まぁ、とにかく源次は好きな事をやれよ。自由に生きるって本当に楽しい事なんだぞ」

「本当かな〜…」

 

 昔の俺には兄貴の言葉の意味がよくわからなかった。なんでもできるって楽しいだろうって思ってたからな。クラスではアホみたいにモテて、先生からは褒められて、周りからどれだけ期待の眼差しを向けられてたか。

 …… だけど、それが兄貴を苦しめていたんだ。

 

「源気くんちょっといいかい?」

「はい?」

 

 その日、兄貴は先生に呼び出されてた。俺は偶々それを見つけて2人の後についていったんだ。

 体育館の後ろでその先生は兄貴に対してこんな事を言っていた。

 

「次の試合、負けてくれないかい?」

「え?」

「いや、確かに良くはないと思ってる。だけどな… お前はいくらなんでも前回点を取り過ぎた」

 

 サッカーの試合の事だろう。言うまでもなく、兄貴はその試合で6点決めている。0-6の兄貴が全て入れた。

 

「他の子たちはサッカー一筋でやってきたんだ。君みたいにパッと出の子が目立つと困るんだよ」

「ですが… 俺はみんなの為に…」

「負けなくても君が前に出なければいい。他の子に点を決めさせてやってくれ」

 

 兄貴はいつからかサッカー選手になる事が夢だった。だが、先生からのこの言葉に兄貴は熱が冷めたのか、呆れたのか… それはわからねーが、きっちりその試合0-8で決めて帰ってきた。で、サッカーを辞めた。

 当時のその記録に誰もが驚き、誰もが兄貴を説得した。やめて欲しくないってないってな。それでも兄貴は辞めた。

 それが先生の気にでも触ったんだろうな。

 

「君…… なんて事をしてくれたんだ」

「はい?」

「あれはなんだ!! 私が言っていた事とまるで違うじゃないか!!」

「俺は嫌だって言いましたよ」

「ふざけるな!!」

 

 その日からあのクソ教師は兄貴の暴行し始めた。親にもそれを隠してた。段々と兄貴と喋らなくなったのはその時からかもな。

 中学生になる頃、兄貴はサッカーをやめてから、色んなチームに参加していずれ有名になろうと考えてた。何になりたいとかじゃなくて、ただ名を広めたかったんだろう。あの教師を見返してやりたかったってのもあるかな。

 だけど、それが更に兄貴の人生を狂わせた。各方面に恨まれるようになったんだ。そりゃそうだろ。中途半端ってレベルじゃねーけど、他から見たら嫌がらせだからな。

 

「なんなんだよあいつ… 調子乗りすぎ」

「うちらのこと舐めてんのかよ…」

「泥棒」

「うざい」

「帰れよ」

「消えろ」

 

 その恨みは段々と強く深くなっていき、やがて持っちゃいけない感情が芽生えた輩がいた。

 どこかの子供の親が兄貴を刺した。誰かって言うのは調べなかった。怖かったんだ。とりあえず親が言ってた事をチラッと聞いて知った。

 兄貴は重傷ですぐに病院に運ばれた。何とか一命は取り留めたが、2度と歩けない身体になっちまった。

 今でも思い出したくないほど傷だらけだったからな。生きていたのが不思議なくらいだ。

 

「兄ちゃん……」

「源次、ようやくわかったか? これがなんでもできるっていう代償だ」

「こんなの酷過ぎる…!!」

「… 確かに。俺も今すぐこうしてやった奴の所へ行って殺してやりたいくらいだ。だけど…… それをしちゃいけないってわかってる」

「なんでさ!!」

「これは俺も悪いんだ。身の程を考えず、人を馬鹿にするような行動をした俺の責任でもある…」

「それでも… 兄ちゃんは二度と歩けなくされたんだよ!? あんまりじゃないか!!?」

「あぁ、酷いな… だけどなんだろう。涙が出ないんだ。なんでだろうな。なんで……」

「兄ちゃん…?」

「辛いな源次。でも、お前は自由に生きろよ。俺の分まで」

 

 その言葉を最後に、兄貴は次の日に死んだ。

 両親も俺が高校生になる頃には持病の悪化で死んじまったよ。2人して病気持ちとは笑えねー冗談だよな。

 高校生になって暫くして、俺は今のデモンハンターたちの奴らと出会った。進路決めてる時にな。良くしてもらったよ。本当の家族みたいな関係だった。

 そこから自衛隊となって、なんだかんだとあって今の職についた訳だ────。

 

 

 *****

 

 

「今の地位を勝ち取る為に、俺は死に物狂いで努力した。お陰で頭は滅茶苦茶良くなったし、運動神経も抜群。イケメンになった訳だ」

「…… 仮面ライダーになったのも自由になる為?」

「よくわかってるな。そうだ。仮面ライダーにさえなりゃ、誰も俺より強い奴なんて出てこないし、誰も逆らえなくなるだろう? 自由に生きられる…… って思ってたのによ。結局、俺は自由にはなれなかった… それどころか長生きできそうにない。仲間も売っちまって…… 俺は… 一体何がしたいんだろうな…」

 

 ジェルエは気づいていた。源次が涙を流している事に。

 そしてジェルエは何かを覚悟したように源次に言う。

 

「源次、倒そう」

「…… なに?」

「エンジェルティアを倒すんだ」

「…… あ……? お前何言って…」

「僕が悪い事をしたんだよね? だったら償いをさせて!」

「待て、お前は何もしなくていい。俺に任せとけ」

「1人で背負い込まないでよ! 僕だって協力したいんだ!」

「なら、お前に何ができるんだ? まだ子供のお前に何ができるってんだよ!」

 

 何も知らないジェルエ。全て知っている源次。2人は睨み合う。どちらもお互いの為を思って言っている。だが、源次からすればジェルエを守りたいと言うのが1番な理由。下手に動けばデモンハンターたちも何をされるかわからない。

 

「… 僕も自由になりたいんだ」

「ジェルエ…」

「本当は少しわかってるんだ。僕が普通の天使じゃないくらい…」

「………」

「僕だって変わりたい。今のままじゃダメなんだ… お願い源次。教えてよ全部」

「………」

「僕も守らせてよ!! 源次に恩返しさせてよ!!……… 源次の悲しそうな顔見たくないよ……」

「………っ!!」

 

 その時、源次の頭に源気の声が聞こえてきた。

 

「自由になれ、源次」

「兄貴……」

 

 源次は口を開く。ジェルエに全てを打ち明ける。

 

「─────…… ということだ。それでもお前はやるのか?」

「…… うん、やる。全部聞いてわかったよ。そしてもう一度言える。僕は自由になりたい。源次もそうでしょ」

「あぁ…… 俺も自由になりたい。兄貴の分まで… 自由にッ!!」

 

 2人の間に固い絆が結ばれる────。

 

 

 ----------------------------

 

 

 一方、恭也は再びンードゥの元へと足を運んだ。運ばされたと言ってもいいだろう。

 態々、王を動かした事によってエイルはご立腹のようだが。

 

「王の力の件だろう?」

「そうだ。我の力を使う時が近い」

「…… ンードゥの力か」

「我の力は現在に至るまで100%解放された状態だ。他の悪魔… エイルに至っては王と同じように8割と言ったところか」

「待て、8割だって?」

「お前が新たな力を手に入れたのは知っている。だが、それは二の次だ。1番の問題は今のように力の解放が異常なまでに早い」

「それはなぜだ?」

「考えられるのは……」

 

 ンードゥがエイルを見る。すぐに目を逸らし、再び恭也に向き直る。

 

「エイルの… お前への想いが度を過ぎている」

「……… は?」

「言い方を変えるなら愛が重い」

「………」

 

 ふざけているように感じてしまうが、ンードゥは何一つふざけて言っていない。すこぶる真面目な顔で話している。

 

「そ、それが… その…… 何か関係が?」

「想いが強い… それはお前自身もそうだが、エイルを深く信じているからこそ、互いの心が繋がりあい、より一層王への目覚めが早くなってきている。エイルはお前を強くする為に魂を吸い取り、逆にお前は守る為にその力を求める。それが循環となり、効率化し、解放速度を上げていると考える」

「それって……」

「どうする事もできないだろう。お互いに蔑む仲になる他ないと言えるが… それは無理な話であるな」

「………」

 

 恭也はエイルに声を掛ける。

 

「エイル、大丈夫か?」

「はい…」

「そうか。お前に一つ聞きたい」

「なんでしょうか?」

「俺を信じられるな?」

「も、もちろんです!!」

「…… よし、わかった」

 

 それから恭也はンードゥに向き直り、手を差し出す。

 

「………」

「…………」

「なんだ? その手は何を意味する?」

「俺に力を貸せ」

「なんだと?」

「俺に時間がないのはわかった。なら、早急にお前の力を使いこなすというだけの話」

「… お前の身体への負担は尋常ではない。8割解放しているとはいえ、まだ未熟であるお前に使いこなせるほど、我の力は甘くはない」

「どうせ時間がない。今更ここで引くくらいなら、王の地位を捨てて逃げている」

「ふっ… お前はやはり選ばれた人間だ。いいだろう。このキーを渡しておこう」

 

 そしてンードゥは恭也の差し出された手に向けて、闇を操りデモンティアイズキーを置く。

 今までのどのキーよりも大きく、明らかに他と異質な事が見ただけでわかる。

 

「すぐに使えとは言わん。お前が我の力を欲した時に使うといい。ただし、使えば最後、お前の身がどうなったとしても、我はお前を助けない」

「…… わかった。ありがとう」

「………」

「な、なんだその顔は?」

「礼を言われるまでもない… と、思っただけだ」

「そうか…… では、失礼するぞ。これからよろしく頼む」

 

 恭也たちの背中を見たンードゥは昔を思い出していた。

 先代に非常に似ているそれを見て、今更ながら感情というものが溢れてきたのかもしれない。

 

「…… ふっ、ふふっ…… 我の力を呑むに足る存在か。見せてもらうぞ。大神恭也───」

 

 ── その頃、エンジェルティアはデモンティアを全滅させる為、最後の戦いに向けて準備を進めていた─────。




まだ19話なんですが(焦り)

次回、第20解「我の友、我は自由」

次回もよろしくお願いします!!


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第20解「我の友、我は自由」

皆さんご無沙汰しております。
それではどうぞご覧ください。


 エンジェルティアは街に赴いた。それを率いるムウテンはビル上のから全体を見下ろし、何かを決めた様に後ろを振り向いて彼らに指示する。

 

「じゃあ暴れてもらってもいいかな?」

「……」

「おおっと、ごめんよ。言葉が足りなかったね。人間に危害は加えずに所々破壊するだけでいい。そうすれば王は簡単に釣れる。君たちはその手に入れた力でそのまま戦っても良し。僕も源次を見つけ次第すぐに行くから耐えても良し」

「…… わかった」

 

 デモンハンターたちはリーダーの指示でキーを取り出し、そのキーを自らの身体に差し込む。

 すると、その身体は異形なものへと変わり、まるで堕落した天使の様な中途半端な見た目へと姿となる。

 

「デモンティアがゾンビルというのを生み出したから…… そうだなー…… よし。君たちの名前は『ダテン』だ。応援してるよダテン」

「…ウゥ……」

「ははっ─── もう聞こえてないか」

 

 ダテンたちはビルの上から飛び降り、地面に着地すると、人間の時よりも遥かに強化された腕で次々に街を破壊し始めた。天使である為、翼があり、空を飛んで上空から人々を襲おうとする者もいた。

 

「…… さて、源次はどこに行ったのかな───」

 

 ムウテンは源次の気配を頼りに、その場所へと翼を広げて飛び立った。

 他の天使たちはメレフが来るのを今か今かと待っていた。すると────。

 

 

 ---------------------------------------

 

 

「ワナイズ!!」

「ふぉふぉ、これまたやってくれたのぉ…」

 

 スタンドワナイマンへと変身したメレフは闇の手を辺りから出現させ、ダテンに襲われそうな人たちを次々に助けていく。

 

「奴ら… 遂には人間にも手を出し始めたのか!!」

 

 メレフは怒った。今まではデモンティアを、仲間を傷つけられそうになったとか、幼い子供に手を出したとかで怒りを露わにしていたが、今回のこれは違う。関係のない人たちまで巻き込んだという事が何より許せない。

 

「出てくるがいい、エンジェルティア!! いるのはわかっている!!」

 

 そうメレフが叫ぶと、エンジェルティアはすぐにビルの上から舞い降りてきた。人数は6人。1人足りない様だ。

 

「もう1人はどうした?」

「ムウテンならプリーストを連れ戻しに行ったわよ。まぁその前にあんたを殺せば意味ないんだけど」

 

 闇の天使ナナテンはそう言う。

 ナナテンが手を翳して攻撃しようとすると、火の天使ヒイテンがそれを止める。彼女はそれを気に入らない。ヒイテンを睨みつけた。

 

「なによヒイテン」

「私がやろう。調子に乗ったこの愚か者どもをここで葬る」

 

 そしてヒイテンが前に出てくる。 前にも戦った相手だ。恐れる事はない。

 

「前は属性の力を使わなかったが、今は全力で使って相手してやろう。かかってくるがいい」

「…… ティッツ。久しぶりに行くぞ」

《ティニーマ!!》

「はいは〜い、任せてよ王様〜」

 

 ワナイマンティアイズキーと入れ替え、ティニーマティアイズキーを差し込み、鍵を捻って形態を変える。

 

《悪魔の名はティッツ・ニーマル!!20の数字を持ち、その荒波は全てを包み込む!!》

《スタンドティニーマ!!》

「行くぞッ!!」

 

 メレフは周りに水を生成すると、それを凍らせて槍状にし、ヒイテンに向けて飛ばす。

 それをヒイテンは炎の壁を目の前に作って溶かし、すぐさま反撃に出るが、いつの間にかメレフは彼の周りに水の壁を作り出していた。

 

「いつの間に…!?」

「水は効くが氷は効かない。あれはただの囮だ。既に地面に這わせていた」

 

 水の壁は上側だけ空いていた。ヒイテンはすぐに翼を広げて脱出しようとするが、そこにはメレフが杖を構えて待ち構えていた。

 当然、杖の先端からまるでレーザーの様に水が勢いよく噴射し、ヒイテンは壁に阻まれ避ける事はできず、そのまま地面へと押し戻される。

 

「ぬおぉぉぉぉぉぉっ…!!」

「お前は確か分裂する能力があったな… だが、この状況でどうする事もできまい」

 

 それから水で濡れたヒイテンの身体を身動きができない様に凍らせる。

 ただ、この行動をチャンスと思ったヒイテンは身体を熱くし、氷を溶かそうと試みる。相性的には有利な筈と勝手な勘違いをしていた。

 氷は全く解けなかった。

 

「な、何故だ!?」

「無様だなヒイテン」

「これはどういう事だ!!」

「属性の理解をしていないのか? お前が先程溶かす事ができたのは、俺が本気で撃っていなかっただけ。本来はお前に有利な水属性。それは氷と言えど元は水。水の力を利用して作ったものだ。お前は俺が解くまで一生そのまましかない」

「くっ…!!!」

 

 ヒイテンは下に見られたことが何より気に食わなかったのか、腹の底から声を出して叫んだ。相当悔しかったのだろう。

 メレフはそんな彼を放置し、ダテンたちを止めようとするが、他の天使たちの存在を忘れていた。

 

「あーまずいまずい!! 恭也避けてー!!」

「どうしたティッツ─── ぐはっ…!!?」

 

 これは雷属性の攻撃だ。直撃を受けけしまった。

 ヒイテンの他に天使がいることをすっかり忘れていた。手を出さないから放っておこうと思っていたのが間違いだった。

 

「うっ… くぅ……っ!!」

「どうだぁこらぁ!!? 身体が痺れて動けねーよなぁ?? 属性を理解してないのはお前なんじゃねーかぁ!!?」

 

 王の力、アドバンスを解放した事で他の形態のスペックもそれ相応に伸びたのだが、ここでは通常形態で戦った方が好ましかった。

 ティニーマの水で逃げ遅れた人を助けようという考えだったが、それはヒイテンのみの時にやるべきだった。こうしてピンチになっている。

 ヨオテンはバリバリと雷の力を腕に溜める。

 

「このままドきつい一撃をぉ、てめぇのその脳天にくらわせてやる事で死ぬ!! ザマァねぇなぁ!!?」

「…… 甘いな。お前は」

「あぁっ!!?」

「さっさと攻撃していればいいものを……」

「なんだとテメェッ!!!」

 

 そしてヨオテンが雷を纏った拳で殴りかかってこようとしたが、次の瞬間、ヨオテンの身体は宙へと浮き、他の天使たちも後方へと吹き飛ばされた。

 

「な、何…!!?」

「あまり使いたくはないが… 仕方ない」

 

 スタンドアドバンスエイワン。雷で属性不利だったとは言えど、力の解放は進んでいた。多少動けなくなったくらいで、あの様にベラベラと喋って数秒の隙が有れば、すぐにでも立てるくらいには回復してしまう。

 ヨオテンはすぐさま立ち上がり攻撃を再開する。

 

「このクソ雑魚がぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

「自己紹介なら最初にやっておくのだな」

 

 メレフはメレフキーブレードを取り出し、ヨオテンの拳を受け流し、そのまま懐へ一気に攻め込む。

 懐に入られたヨオテンは両拳でメレフの頭を両側から潰そうとするが、それも一歩遅く、彼の身体に刃が入る。

 

「かはぁっ…!!」

「はぁぁぁぁっ!!!」

 

 ヨオテンを切り飛ばす。彼は無様に地面へと転がる。

 他の天使たちはそれを気にも留めず、4人は前に出てきた。ナナテンという女の天使がメレフに言う。

 

「あんた… これで勝ったつもりになってる訳?」

「力の差は歴然だ。大人しくしろ」

「…… あっそ。じゃあこれでも?」

 

 ナナテンが指を差す方向を見ると、そこには逃げ遅れた人々がダテンによって人質に取られていた。

 

「… お前らッ!!」

「はーい、これで私たちの勝ち」

「デモンティアを倒す為だけに他の人を犠牲するなッ!! お前たちの目的は俺たちだけだろう!!」

「私たちも良くはないってのはわかってるんだけど、仕方ないのよ。これ以上時間かけちゃうと()()()に怒られるから」

「あの方…?」

「はい、話は終わり。そしてあんたもここで終わり。大人しく始末されるなら解放してあげてもいいけどー?」

「くっ…!」

 

 メレフは選択を迫られる────。

 

 

 ------------------------------------

 

 

 源次とジェルエは携帯の情報を頼りに急いで街へと向かっていた。

 

「街の方で派手に暴れてるみたいだな!」

「そうだね…」

「気にするなジェルエ。お前の力であぁなってる訳じゃない。あいつらが全部わりーよ」

「うん」

「急ぐぞ。俺の予想が正しけりゃ、あのクソ天使共に1発ぶち込んでやらねーといけない気がする!!」

 

 その道中、目の前に天使が舞い降りた。ムウテンだ。

 

「やぁ、お2人さん」

「ムウテン…!」

「おやぁ? 何やらとても焦っているようだけど、何か急ぎの用事でもあるのかい?」

「お前には関係ねーよ。さっさとどっか行けよ」

「それはできない。君たちの力を使う時が来た」

「ほう?」

「街の方で暴れているダテンという奴がいてね。そいつらを使ってメレフを倒してほしい。安心して僕たちも手を貸す」

「…… 1つ聞いてもいいか?」

「なんだい?」

「そのダテンって奴らが暴れてるのお前らのせいだよな? それあいつらだよな?」

「デモンハンター達だけど、彼らが暴れているのは彼らの意志さ。僕は何も指示していないよ」

「嘘も大概しろよな… 全くこのクソ天使」

「酷いなぁ。とにかく早くしてよ」

 

 すると、源次はプレイドライバーを腰に装着する。

 それを見たムウテンはニコッと笑って何をするつもりか問う。

 

「その行為は一体何を意味するんだい? もしかして今から変身してすぐにでも現場へ駆けつけるとか?」

「馬鹿、ちげーよ。目の前にいる敵を倒す為に準備してんだ」

「………」

 

 ムウテンから笑顔が消えた。彼のこんな顔は初めて見た。妙な不気味さを醸し出しているが、源次に恐怖はなかった。

 

「行けるなジェルエ」

「うん」

「まぁ応援しててくれや。こんな奴は秒で倒しちまうからよ!」

「頑張ってね… 源次ッ!!」

 

 ジェルエがドライバーの中へと入ると、源次はプリーストライズキーをドライバーにセットし、回して変身する。

 

「変身ッ!!」

《祈る!!願う!!導きのままに!!プリースト!!》

 

 この状況でムウテンは構えようとはしない。目には光を感じられない。

 プリーストはムウテンがどのような感情を抱いているかわかる。あれは殺意だ。殺すつもりだ。

 

「いいかい? 僕に逆らうという事は、君にとって最悪な結末になるとおもうけど…… それでも君は僕と戦う?」

「戦って勝つ。そして仲間を救う。お前みたいなクズな奴らに縛られて、俺の自由を妨げられてたまるかよ!!」

「…… 手加減はなしだよ」

「上等だ… 懺悔しろ。お前が今までやってきた行いをなッ!!────」

 

 

 --------------------------------------------

 

 

「どうすれば…」

 

 ダテンにより人質が取られている今、メレフに残された選択は1つ。エンジェルティアにこの命を渡すという事のみ。

 更にナナテンは煽る。

 

「ほら、さっさと決めないと1人殺すけど?」

 

 ナナテンが手を挙げると、ダテンは1人の首を掴み、そのまま捻って首を折ろうとし始めた。

 

「やめろ!!」

「やめてほしいなら、あなたの命を貰うけど」

「わ、わかった…」

「きゃはは!! そうよね。それしかないものね…… 安心して。簡単には殺さないから。何度も何度も何度も痛めつけて、地獄の苦しみを与えてからお陀仏だからよろしく」

「…………」

 

 そしてメレフは立ち上がり、ドライバーの鍵を引き抜く。が、変身は解除しない。それどころかもう一本別の鍵を取り出す。他の鍵とは違い、それはひと回り大きいものだった。

 その行為にナナテンは顔を歪め、ダテンに人を襲わせようとする。

 

「何をする気か知らないけど、それ以上変な事をするとただじゃおかないわよ?」

「どうしようもない時ってこういう時だよな……」

「は?」

「頼むぞ───…… ンードゥ」

《ドゥラスト!!》

 

「ドゥラストティアイズキー」を起動した瞬間、辺りは一瞬で濃い闇へと包まれる。全ては闇へと飲み込まれ、やがてそこには静寂だけが訪れる。

 

「─── え?」

 

 恭也が気づいた時には変身が解除され倒れていた。

 辺りを見渡すと、そこには誰1人としていなくなっていた。

 

「…… まさか… そんな事がっ…!!」

 

 今少しだけ覚えている光景は全てが闇に呑まれた所。気づけば辺り一面殺風景になっているという事だけだ。瓦礫やビル、人も天使も全てが無くなっていた。

 

「俺は取り返しのつかない事を───」

「───する前でよかったな」

 

 恭也はいきなり声をかけられ、驚いて後方へと反射的に下がる。

 声の主はンードゥであった。

 

「ンードゥ…」

「これが我の力だ。その身で思い知った事だろう」

「……っ!! そうだ! エイル達は!?」

「我の闇でこの場から避難させた。今はお前の根城で寝ている」

「そうか…… いや、他にも……」

「人間共も同様にこことは別の場所へ移動させた。天使共は早々にゾンビルに似た奴らを連れ、どこかへと逃げ出したようだがな」

「…… よかった」

「もし、その鍵を使い姿を変えようものなら、どうする事もできなかっただろう。起動段階で済んで運が良かったな」

「ありがとう… ンードゥ」

「今回だけだ。次に何かあろうと我は手助けはしない」

「あぁ… 気をつける。いらない世話をさせた」

 

 ンードゥは言わなかった。助けないのではなく、助けられないという事を。今の王の力は前王よりも強力になっていると、既に感じ取っていた。

 最後の数字を持つ彼を使いこなせる日が来るのだろうか。そういう不安を抱える最中、エンジェルティアの暴走は更に加速する───。




今更ですが、前王が使っていたデモンティアイズキーについては番外編にて回収させて頂きますので、すいやせ〜ん…ま〜だ時間かかりそうですかね〜って言う方々!もう少しお待ちください!
そしてエンジェルティア編も終わりに近づいております。(ついで

次回、第21解「我と絆、我と共闘」


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第21解「我と絆、我と共闘」

皆さんご無沙汰しております。
それではどうぞご覧ください。


「恭也〜、源次さんが来たわよ〜」

「入れて」

 

 母がそう言ってきたので、恭也は源次に中へ入るように言う。部屋のドアを開けて、源次とジェルエが静かに入ってきた。

 そして彼は部屋に入ってきて早々に頭を下げる。

 

「すまなかった」

「いや、気にしていない。お前が無事で良かった」

「理由は聞かないのか?」

「その子の為… だろう? あの時の目を見たら大体察しはつく」

「そうか…… じゃあ、お互いの話を始めようぜ。洗いざらいな」

「あぁ、これからエンジェルティアとの最後の戦いが始まる───」

 

 

 *****

 

 

 プリーストは光の鞭を杖から出現させ、ムウテンに攻撃を行う。鞭は先端部分が返る瞬間、一時的にだが音速を超えるらしい。変身した状態ならば、より速度は増し、避ける事は困難と言えよう。

 だが、エンジェルティアでリーダーに位置し、誰よりも強い実力者。そんなムウテンには片手で簡単に防がれる。

 

「お前、どうなってるんだよそれっ!!」

「防いでるだけだよ。この腕で」

「だから意味がわからねーんだよ!!」

 

 続いてプリーストは光弾を拡散させ、ムウテンの四方八方から攻撃を行う。よく使う戦法であり、避ける事はできないから受けるしかない。今までもそうだった。

 

「なるほど… こういう風に見えていた訳か」

 

 そう言うとムウテンは身体を脱力させ、僅かな隙間を縫いながらプリーストへと近づいてきたのだ。

 徐々に近づく彼にプリーストは光弾を放ち続ける。ここまで近くに来れば避ける事は更に困難を極める。近づけば近づくほど不利になる。

 それなのにムウテンはいつの間にか目の前に立っていた。片手で杖は掴まれ、もう一方の手は腹部に当てられていた。

 

「はやっ…!!?」

「遅いよ」

 

 猛烈な痛みと吐き気が一気に押し寄せた。そして凄まじい速度で後方へと吹き飛ばされ、壁に激突しズルズルと落ちる。

 変身解除にまで至る事はなかったが、だからといってこの後どうすればいいのか予測ができない。自分ではムウテンに勝てないとわかっていた。今のままではどうしようもない。

 

「…… まぁ諦めない… 諦められないってのあるよな」

「ん?」

「ジェルエが同士裏切ってまで覚悟して俺と戦ってくれてんだ… ここで俺が諦めちゃ、お前に勝った後の美味い酒も不味くなっちまうよ」

「えっと…… そうか。よくわからないけど、君は最後まで抵抗し続けるということだね」

「無理だろうがな」

「矛盾してるのに何故だろう。その考え方は愚かで、逆に気に入ったよ」

 

 ムウテンが右手を空に伸ばすと、掌から光の球が現れ、それが形を変えていき、やがて槍へと変化する。刺し貫こうと言うのだろうか。

 

「それじゃあね」

「ちっ…!!」

 

 そして槍を振りかぶったムウテンは、プリーストの頭を串刺しにする寸前で手が止まる。プリーストとは別の方向を見ている。何かを感じ取ったようだ。

 それからムウテンは槍を消し、翼を広げて上昇し始めた。

 

「どこへ行く!!」

「いや、ちょっと…… まずいね。すぐに行かないと全滅だ」

「……?」

 

 ムウテンは一瞬にしてその方角へと姿を消していった────。

 

 

 *****

 

 

「─── そんなこんなで俺は生き延びた。ヤベェな。死んでたわ」

「そうか。無事で良かった」

「お前の方もかなり厳しかったらしいな… まぁ無理もないか。6人相手は流石にな」

「俺の話はいい。それより源次の仲間が、俺の見た天使の様な怪人になったというのは本当なんだな?」

「あぁ、倒さないでくれて助かるぜ…」

「俺も倒さずにおいて良かったと心の底から思う…」

 

 その後も恭也と悪魔一向、源次とジェルエは互いに情報を交換し合い、エンジェルティアと戦う準備を進めた。

 そして話を聞く中で、ジェルエは源次の力になれない自分に怒りを覚えた。結局、ただのドライバーの一部で、源次に恩恵を与えていないどころか、敵に力を与え続けているだけ。この力を操る事ができたら、源次の仲間たちを解放する事ができる。

 

「………」

 

 契約解除すらできていない源次は常に狙われる身。このままでは自由になんて暮らせない。恩も返せない。

 ジェルエは決断する。

 

「源次…… 戦おう」

「あ? あぁ…?」

「……… 例え僕がどうなったって…」

 

 ジェルエは聞こえない声量でそう呟いた────。

 

 

 -----------------------------

 

 この聖域に入れば多少の傷はすぐに回復する。戦いで傷ついたヒイテンもすぐに回復した。

 ムウテンは椅子に座りながら天井を見上げていた。ただ光が降り注ぐだけの天井を、ナナテンに声を掛けられるまでずっと見ていた。

 

「ねぇ、ちょっと」

「…………… ん? なんだいナナテン?」

「さっきから何ボーッとしてるのよ。こっちは恥かかされてイライラしてるのに」

「ごめんよ。でも、僕たちはとんでもない奴を忘れていたようだ」

「あの闇…… 私でもどうする事もできないわ。闇を闇が呑み込む… なんて聞いた事ある?」

「ンードゥ。あの闇は強力だ。僕なら優位に立てる可能性はあるけど、彼はその光すらも呑み込む勢い…… 僕らがこうして生きていられたのも()()()のおかげって言えるね」

「で? どうするわけ?」

 

 ムウテンはそう言われると、椅子から降りて真ん中へと降り立つ。

 そして手を広げ、エンジェルティアたちに命令する。

 

「これから僕たちエンジェルティアとデモンティアの最後の戦いが始まる。幸いあの闇を王は使いこなせていないようだ。ダテンたちを盾に使い、明日から奴らの元へ攻め込む。人間だろうと何だろうと関係ない。僕らの邪魔をするなら仕方のない犠牲。決着をつけよう。僕らエンジェルティアの誇りに懸けて!!」

 

 今、悪魔と天使の決戦が始まろうとしていた────。

 

 

 ----------------------------------------

 

 

 翌日、恭也と源次は街に出向く。昨日のンードゥの力の影響により更地になった街を見るためだ。が、そこはいつも彼らが見る街並みがあった。まるで何もなかったかのように機能していた。

 

「ンードゥか……」

 

 あの時、理由は何であれンードゥは街を元に戻した。闇の力はブラックホールというわけではない為、彼のような力を持ってすればすぐに元の状態へと戻すことができる。最もエンジェルティアによって元々壊された部分はまでは再生しない。あくまで恭也がキーを起動するほんの少し前の状態、元に戻すだけなのだ。

 

「まぁよ。元に戻ってるならいいんじゃねーか? そのンードゥって奴も初回限定サービスみたいにしてくれたんだろ」

「それが本当なら次はないだろうな……」

「王様は弱気だな。そんなんじゃあのヤバい力を使いこなせないぜ」

「……… あぁ、そうだな。一度もらった慈悲だ。ありがたく使わせてもらおう」

「お前は堂々としてろよ。俺みたいに」

「それは遠慮する」

 

 そう言って街から離れようとした時であった。突如、辺りに悲鳴が響き渡る。2人は急いでその方角へと走っていくと、そこにはダテンがおり人々を襲っていた。

 恭也は急いで変身しようとするが、それを源次は止める。

「なんだ源次!」

「お前周り見ろ…」

「なに?」

 

 源次に言われて周りを見ると、逃げ惑う人々はいるが、何故か途中で止まっていた。そこに何もないはずなのに、彼らはそこをまるで壁があるかのようにペタペタと触れていた。

 人々はドーム状のバリヤーの中に閉じ込められてしまった。

 

「これは一体…!?」

「エンジェルティアのせいだろ。誰かは知らないがそういう能力持ちがいる」

「……… なるほど。俺たちは罠に嵌ったというわけか?」

「そうみたいだな。ほーら、そこにいつもの奴らがご登場だぜ」

 

 空を見上げると、人々の注目を浴びながらエンジェルティアが舞い降りてきた。

 その中のムウテンは手を合わせて音を鳴らすと、先ほどまでの悲鳴が聞こえなくなった。皆、彼らの方に向き直る。

 

「… さて、お集まりの皆様。ご機嫌よう…… まずは安心して欲しい。君たちにはこれ以上危害は加えない」

 

 ムウテンたちは恭也たちを見なかった。彼らの目的であるはずの恭也たちを無視し、ムウテンは市民に聞こえように、語りかけるように話し始める。

 

「まず一つ、ここにいる怪人はダテンと言ってね。君たちの様な弱い種に襲い掛かる恐ろしい生物さ。そしてこれを操っているのは僕らエンジェルティア。聞いたことないかい? まぁデモンティアなら聞いた事あるんじゃないかな?」

 

 ムウテンの目的はわからない。ただ市民に向かって話し続けた。

 

「これだけ聞くと僕らが悪い奴と感じる事だろう。だけど聞いて欲しい。僕たちは犠牲を払ってでも倒したい相手がいるんだ。デモンティアの王。そいつさえいなければ今頃こんなことにはなってなかった」

「あいつ… まさか……!!」

 

 そして恭也は一歩前に出ようとした時、足元に炎の槍が飛んできた。ヒイテンが警告している。それ以上行くなと。

 

「君たちに教えてあげよう! 悪魔の王とは一体何なのか! 悪魔なのか人なのか!」

「くそっ…!!」

「─── ねぇ、メレフ。大神恭也」

 

 ムウテンは恭也に指を差してそう言った。周りが騒ついている。それから暫くすると、1人の男性が声を上げた。

 

「おい! あいつ知ってるぞ! 大神さんの家の息子だ!」

「それはうちの会社の社員だぞ!? 一体どういう事だ!?」

「大神さんって近所の…… 嘘……」

「待て、隣にいるのはデモンハンターじゃないか? 前にテレビで見たことあるぞ!!」

「デモンハンターと悪魔の王は繋がっていたのか…?」

 

 恭也と源次は互いに誤解を解こうと試みるが、彼らはそれに聞く耳を持たない。目の前にいる得体の知れない奴らを目にして、恐怖で考えるという行動に移さないでいた。

 この状況を利用して更にムウテンは続けた。

 

「そう! 彼はメレフ! 悪魔の王! この悪魔の騒動も、我々エンジェルティアがこうして暴挙に出る理由も、全てこの大神恭也、ただの人間1人によるものだったのさ!!」

「デタラメを言うな!!」

「ふふふっ、これで君の信頼は無くなったね。それどころか君の両親にも被害が出てしまった様だ。僕のせいじゃないよ。僕はただ真実を伝えたまでさ」

「貴様ァッ!!!」

《エイワン!!》

《開錠!!》《憑依!!》

《悪魔の名はエイル・ワン!!1の数字を持ち、その力の全てを王に捧げる者!!》

 

 恭也はメレフへと変身し、ムウテンに向かって走り出した。源次は後を追う様に変身し、メレフの援護に向かう。

 待機していたエンジェルティアとダテンは、それを合図に一斉に飛びかかる。

 

「落ち着け、恭也!! 俺たちに誤解ができちまっている今、変に暴れ回ればあっちの思うツボだ!!」

「…… すまない」

「ここは一旦、市民を守る事を優先するぞ。このドーム内から出るには奴らの誰かを倒さないとダメだ」

「なら、俺はムウテン以外のエンジェルティアを相手する。ムウテンは頼んだぞ」

「お前それって…」

「決着をつけたいのだろう? ダテンは俺が止める。市民も守る。エンジェルティアも倒す!!」

「おいおい、無茶が過ぎるな王様はよぉ…… だが、その心意気乗ったぜ。一応できるんだよな?」

「あれ以外に奴らを攻略する方法はないだろう」

「… よし、それじゃあ行くとするか!!」

「あぁ!!」

 

 2人はエンジェルティアに向き直り、一気に駆け出す。

 悪魔と天使、最後の戦いが始まる───。




残り数話でエンジェルティア編完結です。

次回、第22解「我の聖域、我は舞う」

次回もよろしくお願いします!!


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第22解「我の聖域、我は舞う」

皆さんご無沙汰しております。
それではどうぞご覧下さい。


 エンジェルティア随一の実力を持つムウテン。他の天使は火や水等の属性を持ち、天使特有の光属性も持ち合わせており、敵の属性が有利だったとしても光属性で対抗できる。が、ムウテンはそれができない。誰もが持つ光のみ。一見、属性面では劣っている様にも思える。

 しかし、それは実際に相対すると、この評価がガラリと変わるのだ。

 

「源次、君がどう立ち回ろうと無意味だ。僕にはわかる。次何をするのかもね」

「くっ…!」

 

 そして、エンジェルティアとデモンティアの大きな違いはここだ。属性以外に各々特殊能力を持ち合わせていることだ。ただ、この力はヒイテンからナナテンまでの7人しか発言していない。かつての仲間も、この特殊能力は付与されていなかった。

 そんな彼らの中で非常にシンプルながらも最強とされる力を持つのがムウテンだ。

 

「はい、残念」

「こいつっ……!!」

 

 プリーストの追尾する光弾を次々に避けながら、それを彼に当たる様にギリギリまで近づく。この素早い動きにプリーストは反応できる訳もなく、自分の攻撃を自分自身で食らってしまう。

 まだ攻撃は終わらない。怯んだその隙をついて、ムウテンが作り出した光の槍が彼を捉える。近距離で食らってしまった為、プリーストの装甲が耐え切れるはずもなく、ヒビが入り始める。

 ここでプリーストもただ何もせずにいたら身体を貫通してしまう。身体を限界まで仰け反らせ、槍の勢いをなんとか殺してギリギリで避けた。

 

「はぁ…… はぁ………」

「まぁそう来ることも分かっていたけど、簡単に倒してしまっては契約破棄の代償があまりにも軽過ぎる」

「破棄した覚えはないがな」

「破棄したも同然さ。それに勝てるはずもない相手に無駄に挑むその姿… もう少し見ていたいんだ。これは個人的にやりたいだけ」

「全くよぉ…… どうしたらそんな化け物みたいな思考になるか…」

 

 ムウテンは見えている。プリーストがどう動くのか、どう避けるのか、どう攻撃するのかも全てわかる。それが彼の特殊能力である未来予知。彼の前では全ての攻撃は読まれ、簡単に対処されてしまう。

 

「それじゃあもっと実力差をわからせてあげようと思うんだけど……」

「やっぱり本気じゃなかったか…!」

「もちろんさ。君の様な人間にいきなり本気を出すわけないだろ?─── 準備はいいかい?」

 

 その瞬間、ムウテンの姿は消える。まるで光の如きスピードでプリーストのあらゆる箇所に打撃を与えていく。反応できるはずもなく、サンドバックの様に攻撃され続け、段々と身体の至る所にヒビが入り始める。

 

「うっ…!! くッ……!!… そおぉぉぉぉぉぉッッ!!!」

 

 プリーストは杖を振り回す。当たるかもしれない。光速で動く彼に当たる可能性は極めて低く、予知されているにも関わらずがむしゃらに振るった。

 全ての攻撃は空を切り続け、ムウテンの攻撃は着実に大きなダメージとなっていく。最後に杖を振るった瞬間、プリーストの身体は宙へと浮かび、装甲は砕け、強制的に変身が解除された。

 そうして地面へ無様に転がった源次の腹を、ムウテンは軽く足を置き、徐々に力を込めて圧迫する。

 

「かはっ…!!」

「本気を出す必要もなかったけど、最後くらい君には味わっておいて欲しくてね。僕と君、人間とエンジェルティア。まさに天と地。絶対に勝てない存在だと知ってから死んでくれ」

「何が天と地だ! お前なんか宇宙に出たら塵以下だボケッ!!」

「…… じゃあ君はその塵に負けた事になるね。気分はどうだい?」

「負けてねーよ… 俺が認めてない」

「あ、そう」

 

 ムウテンは更に力を強くする。内臓が押し潰されそうになり、息も苦しくなってきた。

 

「うがぁっ…!!」

「このまま口から内臓を飛び出させてもいいけど、流石の僕もそれを見たいとは思わない。だから君には慈悲として跡形もなく消えてもらうよ。そうすれば痛みはないし、君の言ってる諦めない気持ちが残ったまま死ねる」

「それでも俺は負けねぇよ…… お前を倒して、あいつらも助けて俺は…… あいつらと自由を手に入れるッ!!」

「…… そうかい。それじゃあね」

 

 ムウテンは翼を広げ、上空へと飛んでいく。それから天へと手を掲げると、そこへ光のエネルギーが溜まっていき、やがて源次をいとも簡単に飲み込めるほどの大きな球体となる。

 それを源次目掛けて振り下ろす。絶対に逃げる事はできない。

 

「デモンハンターの馬鹿野郎ども…… すまねぇ……!!」

 

 光は彼を包み込む─────。

 

 

 --------------------------------------------

 

 

 一方その頃、メレフはエンジェルティア6名とダテンを同時に相手していた。スタンドアドバンスエイワンの力を使い、その性能を活かして時には大雑把に詰める戦いを行った。だが、そんな戦い方もそう長くは続かない。恭也の魂は苦しんでいた。

 

「はぁ…… はぁ……」

 

 ダテンが2体、メレフへ向けて投げ飛ばされた。メレフが攻撃できない事を知っているからこその行動だろう。

 

「くそっ…!」

 

 2体に攻撃を加えない様に剣を使って流す。が、それを見越してか、フウテンが液状化しメレフの身体に纏わりつく。更に後ろから透明化したミイテンが羽交い締めにする。

 そして完全に身動きができなくなった所で、ヒイテンの分裂、ヨオテンの巨大化、イツテンの肉体強化による一斉攻撃が行われようとしていた。

 エンジェルティアたちが力を溜めている間、ナナテンが前に出てメレフを嘲笑う。

 

「全員相手にするとか大見得切ってた割にはこの程度かしら?」

「… 大勢で攻撃してきてよく言ったものだな」

「はぁ? あんたがやるって言ったんでしょ? 私たちのせいにしないでくれる?」

「それでこのままどうする気だ?」

「ここにいる全員の力をあんたに食らわせる。そうすればいくらあんたの再生能力があっても間に合わない… 死ぬだけよ」

「いや、まだ終わりではない。俺には秘策があるからな…… いや、愚策か」

「……… あんたホントに意味わかんない。さて、あんたたちここで終わらせるわよ」

 

 ナナテンの合図で天使たちが一斉に構え、そして最大まで溜めたエネルギーを一気に放出した。

 そして身動きが取れなかったメレフだったが、直後拘束が解かれる。すぐさまドライバーのキーを回そうとしたが間に合わず、全攻撃をその身で受けてしまった。

 凄まじい爆発音と共に砂が舞い散り、景色が見えた時にはメレフの装甲はズタズタとなり、所々から血が噴き出した。

 

「恭也様ッ…!!!」

「大……… 丈夫だ…… エイル…」

 

 エイルの傷つけたくないという想い、恭也の負けたくないという想いが混ざり合い、メレフは瞬間的に再生する。何事もなかったかの様に。

 だが、それは魂を大きく削り、メレフは胸を抑えて苦しみ始める。

 

「がっ… ぐぅ……ッッ!!」

 

 これにより限界に近づいたメレフは変身が解除される。

 ナナテンは感覚を研ぎ澄ませ、恭也の心臓の音を聞く。着実に弱ってきていることがわかった。

 それからエンジェルティアは苦しむ彼の元へと近づいて行く。

 

「恭也様…… そんなッ!!」

「はぁ… はぁ…… うぅ………!!」

「…… 皆、恭也様の盾にッ!!」

 

 恭也の前にデモンティアたちが集結する。遥か昔であるならば、この状況なら五分五分といったところで特に問題はない。昔ならば。

 今、彼らの力は本来のものではない。ここでエンジェルティア達と正面を切って戦えば確実に負ける。死が待っている。

 

「やめろ…… お前たち!!」

「いえ、私たちはあなたをお守りするのが役目。絶対に死なせません!!」

 

 エンジェルティア達が攻撃態勢に入る。今ここで何もしなければ全員死ぬ。

 恭也は無意識にアレに手が伸びる。

 

「─── 俺はお前達を死なせる訳にはいかないッ!!!」

 

 そして恭也はドゥラストティアイズキーを起動する────。

 

 

 --------------------------------------------

 

 

「─── え?」

 

 源次は生きていた。どうやら一瞬気を失ってしまった様だ。何が起こったのかわからず、瞬きをしていると、目の前に光が入ってきた。段々と音も大きくなっていく。

 それからハッとなって状況を理解する。源次はムウテンの作り出した光の球の中にいる。その中で生きて入れられるのは、ドライバーから出てきたジェルエが作り出したバリアがあるからだった。

 

「ジェルエ!!」

「大丈夫!? 源次!?」

「お前これ……」

「僕もこんな力があったんだよ… 君を守りたいって思ったら出てきたんだ」

「そりゃ… すげぇけど…… 大丈夫なのかよ!?」

「無理だね… 僕の力じゃムウテンの攻撃を凌ぎ切るなんて事できない……」

「それじゃあ俺たちはこのまま……」

「死なないよ」

「何?」

「源次は自由を満喫して、お兄さんの分まで生きたんでしょ?」

「そうだけど…」

「じゃあ源次だけは生きてよ。僕は源次に命を救われた。だから今度は僕が救う番だから……」

「お前何言って…!!」

 

 ジェルエはバリアを更に大きく貼り、外の景色が見える程の長い道を作った。

 

「さぁ!! 早くここから逃げて!!」

「ジェルエ……」

「短い間だったけど… 僕も少しだけ自由を貰えて嬉しかったよ…… 楽しい思い出ができてよかった……」

「…………」

「最後に食べたあのスイーツ美味しかったよ。ありがとう…… 源次────」

 

 そう言って更にジェルエは力を込める。が、限界が近づき、バリアにヒビが入り始めた。

 

「源次早くッ!!!」

 

 バキバキという音を立て、今にも壊れそうな勢いだ。ジェルエは必死にバリアを維持し続けていた。もう源次は逃げただろうか。あとどれくらいバイアは持つのか。状況が見えないほど必死だった。目をぎゅっと瞑り目の前に集中していた。

 そんな時、頭に優しく誰かの手が添えられる。

 

「なんで………!!」

 

 それは源次であった。逃げていなかったのだ。

 ジェルエはそんな彼に怒鳴った。生きていて欲しいのに、どうして彼はまだこの中にいるのだ。

 

「─── 俺はお前にも生きて欲しい」

「え?」

「お互い何かの縁で出会っただろう? これは運命だ。そん時から決まってんだよ。俺とお前は相棒同士だって事が」

「源次……」

「自由へ羽ばたこうぜ。誰も俺たちを止める事はできない。お前と俺で勝ち取ろう。自由への道を!!」

「……… うん… うんっ…… うんッ!!」

「それにまだまだお前には色々知ってもらうぜ。この地球には美味いもんばっかあるんだ。全部食うまで死なせるかよッ!!」

「じゃあ死なないよね……… 戦おう!! 源次ッ!!」

「おうッ!! 行くぜ… ジェルエッ!!!」

 

 ──── その直後、光球が散った。上空から見ていたムウテンは思わず「えっ」と声が漏れる。

 真ん中には源次とジェルエが立っていた。2人の間に何かが浮かんでいる。それは見たこともない鍵だった。

 

「君たち…… どうやって生き延びたんだい…? それにその鍵は… 一体何を……」

「さぁな。俺たちもそこら辺の細かい事はわからねぇ。多分奇跡ってやつだろう。常識じゃ測れない不思議な力だ」

「それで? その奇跡とやらの力を使って僕を倒すのかな?」

「それもわからん。だが、負ける事は無くなったな」

「…… それじゃあ来なよ。これが本当に最後だ」

「あぁ、やってやるぜ。自由を手にするのは… この俺たちだッ!!」

《ホリージェル!!》

 

 新たなキー「ホリージェルトライズキー」を起動すると、源次の周りをジェルエが光を放ちながら飛び回る。そのキーを胸に当て叫ぶ。

 

「変身ッッ!!!」

《アンロック!!》

 

 そしてキーをプレイドライバーに挿して回すと、ジェルエの神々しい翼は源次を包み込むほど大きくなり、その翼を閉じて彼を隠す。

 源次の身体にアーマーが形成され、プリーストの時よりもより神々しく、源次の性格を再現した様な少々尖ったものへと変更される。

 

《聖なる!!鐘を!!皆に送ろう!!holy bell!!スタンドホリージェル!!》

「─── 懺悔しな、ムウテン」

「ふっ… ふふっ…… 形が変わった所で僕との実力差は埋まらないよ」

 

 ムウテンは光速で移動し、一瞬にしてプリーストの目の前に来ると、光を纏った蹴りを彼に浴びせた。

 が、それは塞がれる。微動だにもせず、たった一本の腕に。

 

「は…?」

「終わったな。これで確信したぜ──── 俺たちの勝ちだ」

 

 仮面ライダープリースト スタンドホリージェル。

 今、彼の反撃が始まる───。




遂に出ましたプリーストの最強形態スタンドホリージェル!!
果たしてその実力は……。
そして次!!エンジェルティア編ラストでございます!!

次回、第23解「我は堕ちる、我の深き闇」

次回もよろしくお願いします!!


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第23解「我は堕ちる、我の深き闇」

皆さんご無沙汰しております。エンジェルティア編終わりです。
それではどうぞご覧ください。


 プリーストの新形態スタンドホリージェル。メレフ同様に憑依する事でなる形態だが、プリーストにはそういう機能はなかった。

 だが、ジェルエという特異な天使の力により、それが可能となった。ただし普通こうなる事はないのだから、まさに2人で起こした奇跡と呼べる力だ。

 そんな力を前にムウテンは全く歯が立たないでいた。

 

「そ、そんな事が…!?」

 

 今まで自分を苦しめてきたものは何一つなかった。それはそうだろう。ムウテンは誰よりも強かった。エンジェルティアの中では常にトップへ位置し、他の天使達を束ね、リーダーの様な存在へと成り上がった。誰もが文句は言えど、逆らう者なんていなかった。

 

「……ッッッ!!」

 

 そんな無双伝もこのプリーストの前では何もかも無力であった。先程までの立場が一転し、どの角度から攻めても全て弾かれる。どう動くかもわかっている。なのに、予知を行って攻撃してもすぐに対応されてしまう。

 

「源次… 君はもしかして未来が見えているのかい…!?」

「いや、別に何も見えてねーぜ」

「じゃあ何故君は動ける!! 予知をしている僕よりも先に!!」

「予知した所で意味なんかねーよ。お前より速く動けばいいだけの話だ」

「そんな頭が悪い考えで済んでしまったら困るんだけどね!!」

 

 ムウテンは両手で光の槍を何本も作り出すと、それをプリースト目掛けて投げる。

 プリーストはそれにプレイストウォンドを掲げると、光の槍がピタリとその場で動きを止め、それから杖を振るうと槍はムウテンの方を向く。

 

「えっ…」

「おやおや? これはどういう事でしょう…… かッ!!」

 

 槍はムウテンに逆らい、彼に向かって飛んでいく。その攻撃を予知し、光速で避けてあらゆる方向から再び槍を飛ばす。

 

「残念だが、何度もやっても同じなんだな」

 

 プリーストがぐるりとその場で杖を振るうと、またしても槍が目の前で止まり、今度は跡形もなく消されてしまった。

 それに対してムウテンはかつてない程、顔が青ざめた。

 

「まさか…… 君ッ……!!」

「あぁ、そうみたいだな。俺に光は効かない。光は俺の源であり、また光は俺の意志で操れる。形も自由に変え、自由に消すことだってできる」

「あぁ… あぁ……ぁ……あぁぁぁ!!」

 

 ムウテンの身体能力は既にプリーストには劣っている。特殊能力である予知も、プリーストが素早く動けるから無駄となる。更にムウテンは光属性単体である為、1つの属性による攻撃は凄まじいと言えど、今のプリーストは光を全て無効化する力を得た。

 つまり、ムウテンが勝てる要素が無くなってしまった。幸か不幸か、彼に対して特効過ぎる力。手も足も出ないのは明白だ。

 

「俺は諦めないから勝てた。お前はどうする? オススメは諦める方だけど───」

「黙れ」

「あ?」

「黙れ…… 下等な人間がッ!!」

 

 そしてムウテンは巨大な光の球を作り出す。先程プリーストに放ったものだろうが、それよりも更に大きく、莫大なエネルギーを費やしている。

 

「ははっ…はははっ…… これで終わりだよ。この力は防げない…!!!」

「やってみろよ。お前がそう思うならな」

 

 その言葉を聞き、怒りに身を任せて光球を投げた。熱い。本当に最後の攻撃だろう。この一撃に全てを懸けているのがわかる。

 しかし、それは一瞬にして終わりを迎える。

 

「悪いなムウテン──── これで決めさせてもらうぜ」

 

 プレイストウォンドを掲げ、光球を切る様に振り払うと、球は真っ二つに割れ、跡形もなく散ってしまった。

 まさに一瞬。ムウテンは唖然とし、予知をする事はおろか、プリーストの次の動きも見えていない。

 プリーストはムウテンと同じくらいの高さまで翼を展開し、空高く舞い上がる。それからプレイドライバーに挿しているキーのボタンを押し、ムウテン目掛けて飛び蹴りを行う。

 

「ハァァァァァァァァァァァァッッ!!!」

《ホリージェルパニッシュ!!》

 

 光のエネルギーを纏った蹴りがムウテンに直撃する。

 その時、ムウテンの頭に天使達の姿が浮かんだ。これがどういう感情かわからなかったが、目から自然と涙がポロリと落ちる。

 

「……… そうか。そうなんだ…… これが─────」

 

 そして辺りは光に包まれ、直後に大爆発を引き起こす。

 プリーストは地面に着地すると、空から落ちてきたムウテンを光で包み込んでゆっくりと下ろす。

 それから変身を解き、彼に近づく。

 

「気分はどうだ?」

「うん…… 悲しいかな……」

「悲しい?」

「こうして君と戦って、人間がこの世界で生き延びた理由がわかった気がする。君の攻撃を食らった時、頭の中にかつての仲間達が浮かんできたんだ。72人いた時の……」

「まぁ、お前が色々と思う事はあんだろうけど、さっさと恭也と俺の仲間を解放してくれ。話はそっからにしようぜ」

「そうだね。それじゃあエンジェルティア達に────」

 

 ムウテンがヨロヨロと立ち上がった時だった。彼は身体を震わせた。そして何かを感じ取ったのか、その方向を見る。

 この感じを人間である源次も気付き、同じくその方向を見た。互いに汗が流れる。

 

「やばい…… こいつはやばい!!」

「これは前よりも凄まじい力の様だね」

「そういや前に戦った時もお前何か感じ取って飛んでったよな? まさか……」

「あぁ、この力はあの王の…… いやもっと深い。彼が動き出したんだろう」

「恭也…… アレを使ったのか…!?」

「君の仲間もそうだけど、王すらも危ないだろうね」

「全くこっちは全快じゃねーのによ!! 急ぐぜジェルエ!!」

「うん!!」

 

 源次は再び仮面ライダープリーストスタンドホリージェルに変身し、ムウテンを光で包み込んで、その方角へと飛んでいく─────。

 

 

 --------------------------------------------

 

 

 何も見えない。何も聞こえない。何も感じない。

 恭也の目の前は全てが深い闇だった。自分が今どういう状態なのかも把握ができない。デモンティアの皆んなはどうなったのか?エンジェルティアは?記憶がない訳ではない。あのキーを起動した途端、この深い闇の中へと取り込まれた。

 

「エイルッ!! 皆んなッ!!」

 

 叫ぼうとしたが、その声、音すらも響かない。

 途方に暮れていると、誰かの声が聞こえてきた。この声は聞いた事がある。

 

「我の力を使ったな」

 

 ンードゥだ。それに対して恭也は返事をする。が、しているつもりになっているだけで、実際は声は出ていない。

 どこからともなく彼の声が聞こえてくる。

 

「ここはお前の精神世界。我と対話をしたいのだろうが、今のお前は闇に囚われ、感覚はおろか、声すらも出せない筈だ」

「……………」

「言っておくが我ではどうする事もできない。お前の身体を乗っ取るという手はあるが契約上無理だ」

「……………」

「どうすればいいか…… と聞きたいのだろう。方法はただ一つ。我を使いこなせ。それ以外に道はない」

「……………」

「後は解放しろ。お前の王としての力を────」

 

 恭也はその闇の中で必死に抗った。自分の状況はわからないが、とにかくエイル達の事を想い、闇の中から抜け出そうとした。

 すると、段々と闇の中に少しばかりの光が見え始めた。その光に手を伸ばす。そして光に吸い込まれ、恭也は目の前が真っ白になる。

 ──── 次に目を開けた時、恭也が立っていたのは闇に染まった地面だった。辺りにあるビルはその闇の中へとズブズブと沈んでいく。

 恭也は見えてはいないが、自身の身体は闇に包まれ、黒い塊の様になっていた。

 

「……………」

 

 何が起こっているのかを見る事ができるだけで、手足は動かさなかった。指一本もだ。

 自分の状況が良くない事はわかっているが、他の状況がわからない。少ない情報量だが、目だけ動かし辺りを見ると、エンジェルティアの数名が闇に引き摺り込まれているのが見えた。

 

「なんなのよこれッ!! マジで意味がわからないんだけどッ!!」

 

 この声はナナテンのものだろう。彼女も闇属性の力を有してはいるが、この闇に対してなんの抵抗もできていない。

 同じ闇すらも呑み込んでしまう深き闇。これがンードゥの力。このままでは全てを無にしてしまう。

 止まれ、止まってくれ。そう願うしかなかった。

 

(源次の仲間がッ…!!!)

 

 ダテン達の姿が見えない。見えないだけであってほしい。闇に沈めば今の恭也ではどうする事もできない。

 そんな状況の中、空から何かが飛来した。見た事もない姿をしていたが、それはプリーストだった。その隣にムウテンがいるが、どうやら決着はついた様で、2人はこの状況をどうにかしようと闇に向けて攻撃を行う。

 

「おいおい、冗談じゃねーぜ!! せっかく手に入れた力なのに全部あの黒い所に沈んでいくんだが!!?」

「どうやら思っていた以上に強大な力の様だね……」

「あいつらは………」

 

 源次は仲間を探した。が、この闇の中にそれらしき姿は見つからない。

 

「クソっ……!!」

「諦めるのは早いよ。彼がこの力を制御する事ができるのなら助かる可能性がある」

「なんだって?」

「この力で消された筈の街が元に戻っていただろう? その要領でやればここにいる皆を助けられる筈だよ」

「こんなバカみたいな力…… その場で使いこなすなんての無理な話だろ?」

「属性には相性がある。この闇の力。僕たち光属性の力を王にぶつけて強制的に変身解除に持ち込もう」

「それしかないなら仕方ねぇ。行くぞッ!!」

 

 プリーストとムウテンは力こそもうほとんど残ってはいなかったが、互いに光を一点に集中させ、メレフへと向けて放つ。

 光のエネルギーがメレフに直撃すると、彼の周りを包んでいた闇が吹き飛び、その全身が露わになる。

 まさに悪魔とも呼ぶべき禍々しい見た目になっており、炎の様な流動的な鎧が身につけられている。全体的に真っ黒で、目は血の様に赤く光り、腕と脚に鋭い棘が生えていた。

 

「さっさと戻って来い!! 恭也!!」

 

 ───────。

 

 

 -------------------------------------------

 

 

 恭也はプリーストとムウテンの光のお陰で、ようやく闇の中で自分を認識できる様になった。動く事もできるが、動いた所で行き止まりのない永遠と続く闇が広がっているだけだ。

 その闇の中で恭也は叫ぶ。

 

「エイル!! ジェイク!! ティッツ!! エミー!! ゼフォー!! ネゴール!! メロク!! ワナイズ!!」

 

 全員の名を呼ぶが返事がない。ただ1人を除いては。

 

「…… ンードゥ!!」

「動ける様になったか王よ」

 

 この力の源。ンードゥだけは別だった。どこからともなく目の前に現れた。

 恭也は彼に皆がどこへ行ってしまったのか聞く。

 

「ンードゥ。皆はどこへ行ったんだ?」

「当然、闇の中だ」

「場所はわかるか?」

「わかった所で我は何もしまい。いや、どうする事も出来ない」

「…… 俺がこの力を制御しなければいけないという事か」

「そうだ。今の我はお前により制限がかけられている。暴走しているとは言えお前の力。闇に呑まれた生物の生き死にはその手一つで簡単に決まる」

 

 ンードゥの言葉はとても冷たく感じられたが、彼なりの優しさなのだろう。王としての力を期待している。自分を扱う、自分の主の力量を測っているのだ。

 恭也はそれに応える様に胸に手を置く。

 

「……? 何をしている?」

「俺の魂を…… メレフの力を解放する」

「覚悟は決まった様だな」

「あぁ…… 皆を守る為ならいくらでも懸けてやろう」

 

 そして恭也は王の力を解放した─────。

 

 

 ---------------------------------------------

 

 

「やべぇよ!! もう街が……」

「どうする事もできないみたいだ……」

 

 プリーストとムウテンは街の様子を見て絶望していた。最悪の場合、メレフを倒さなければならなくなる。プリーストはそれだけは避けたかった。

 

「頼む… 頼むぞ恭也!!」

 

 するとその時、メレフの指がピクリと動く。それを見逃さなかったムウテンはプリーストの肩を叩く。

 

「王が… 動いた」

「なに?」

 

 そして驚いた事に沈み切ろうとしていた街が闇の中から徐々に抜け出し、遂には元の場所へと戻ってきたのだ。他にもエンジェルティアやダテン達も無傷でその場に浮かび上がり、闇は静かに消えていった。

 

「……… やってくれたな恭也!!」

 

 それからメレフの変身は解け、恭也は倒れる。

 源次は変身を解くと、彼に駆け寄り肩を叩く。そうすると、恭也はゆっくりと目を開ける。

 

「終わったぜ」

「あぁ…… その様だな」

「お前のお陰で皆んな無事だ…… まぁ、そのぉー…… ありがとよ」

「礼をするのは俺の方だ… 勝ったのだろう?」

「勝ったし、それに────」

 

 源次がムウテンの方を向く。その方向を恭也も一緒になってみると、ムウテンはエンジェルティア達へと出て宣言していた。

 

「僕たちは負けた。この長い戦いの中でエンジェルティアとデモンティアの決着はついた」

「…………」

「これ以上の戦いは意味をなさない。戦った所で僕たちの敗北は決定している。戦いは終わりだ。僕たちは再び在るべき場所へ帰ろう」

 

 エンジェルティア達は不満げな顔をしていたが、誰一人として文句を言う者はいなかった。ムウテンがリーダーだからという訳でなく、各々が理解したのだろう。

 それからムウテンはダテン達を元の人間へと戻した後、翼を広げて天へと飛び立つ。

 それを見た源次はジェルエにわざと聞く。

 

「お前は帰らなくていいのか?」

「これから美味しいものを食べさせてくれるんじゃないの?」

「そうだな。いや、そうだったかなぁ…?」

「絶対食べるッ!!!」

「わかってるよ!! 殴るなっ!!」

 

 そして恭也はエイル達に肩を担がれながら立ち上がる。

 

「すまない皆んな…… 迷惑をかけたな」

「いえ、恭也様は正しい事をしました。誰も気にしておりません」

「そうか…… それでは帰るとしよう」

「はい!」

 

 恭也や源次、そしてエンジェルティア達は各々あるべき場所へと帰っていくのであった─────。

 

 

 -------------------------------------------------

 

 

 王の力の解放──── 99%。

 王としての覚醒、即ちそれは死を意味する。助かる為には全ての悪魔の力を我者としなければならないが、ンードゥの力を操る為に一気に解放してしまった事で、恭也の身体は限界を迎えようとしていた。

 ──── だが、彼らに休む暇はない。新たな脅威が迫ってきている。かつてないほど強大な力。

 デモンティア、エンジェルティアをも越える力────。




エンジェルティア編………完!!!
ホントご覧いただきありがとうございます。ホント感謝してます。感想貰えるだけでホント幸せもんです。ありがとうございます。

次回
3章 使徒編 第24解「我ら使徒、我ら滅び」

次回もよろしくお願いします!!


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使徒編
第24解「我ら使徒、我ら滅び」


皆さんご無沙汰しております。新章です。中盤戦です。
それではどうぞご覧下さい。


 エンジェルティアたちが起こした騒動から1ヶ月が過ぎた頃、恭也達が暮らす街は何事もなかったかの様に、今までと同じ通りの生活が始まっていた。

 この騒動の発端であるエンジェルティア達はその後どうなったのかはわからないが、普通に天界で暮らしているのではないだろうか。

 デモンティアも全て封印され、エンジェルティアも倒され、デモンハンター達は解散するかに思えた。しかし、例のムウテンのお陰で、市民に悪魔との繋がりがあると思われてしまった為、源次達は引き続きその責任を取る様な形となり、打倒メレフに向けてデモンハンターとして残る事になった。源次達はその事情を知っている為か、何とか誤解を解く為に動いてくれているそうだ。

 一方、激しい戦いを終えた恭也はと言うと────。

 

「うぅん………」

「大丈夫ですか恭也様?」

「私たちが隣にいるから安心して眠りなさい」

 

 自分の部屋の1人用のベッドに川の字になって、左からエイル、恭也、メロクの3人で寝そべっていた。恭也はあの日、一時的にだがンードゥの力を操った事、そしてそれを行う為に王の力を最大限に発揮した事による反動で、この1ヶ月の間ずっと体調が悪い。

 なのに、彼女達は恭也を挟んでいる。心配してくれているのはわかるが、非常に息苦しいのでやめてほしい。ていうかやめて。

 

「エイル、メロク…… 偶にならまだいいが、こう毎日続けられると困るのだが……」

「えぇッ!!!!??」

「何故そんなに驚く」

「恭也様がお持ちになっていた本を少々読ませていただいたのですが、人間の男はこうすると喜ぶと………」

「ジェイクゥゥゥゥゥ!! 今すぐその本を燃やしてくれぇぇぇぇぇ!!」

 

 この様に悪魔が8人もいれば部屋はぎゅうぎゅうに詰められ、必然的に騒がしくもなる。騒がしいのだが、静かな時よりずっといい。調子が悪いと言えど、愉快な悪魔たちがこうしてくれるだけで一時的に忘れられる。

 

「…… さて、少し動くか」

「あまり無理なさらない方が… それに───」

「わかっている。動くにしても夜中だ」

 

 あの騒動により正体をバラされた恭也の生活は、以前と全く同じままとはいかず、家にテレビ関係の人達が集まったり、警察が駆けつけたりと、散々な目にあっている。両親は正しい事をしたと言ってくれてはいるが、会社の同僚や隣人、友人たちにも広まり、更には恭也達の家系が悪魔に関連していることがわかった事でより一層迷惑を掛けることとなっている。

 

「… デモンティアも一応だが全員封印して、エンジェルティアとの因縁も終わった……… なのに、どうして俺は戦っているんだろうな」

「恭也様…?」

「いや、その…… 俺の王の使命って全てのデモンティアを使役する事だよな」

「はい、その通りでございます」

「もしも俺の王の力が全て解放されて、ンードゥも配下となり、悪魔の王として君臨するなら、それはそれで全く問題はないと思う。だが、もし俺が死んでしまったとして、お前達のその後はどうなるんだ?」

「……… 万が一恭也様がお亡くなりになられたとして、その場合は我々デモンティアは封印から解き放たれ、本能のままに人間を襲う事でしょう。再びエンジェルティアとの戦いが始まり、やがて世界は滅びる事になる可能性があります」

「そうか。なら、俺は何としてでも生き延びなきゃいけない訳だ」

 

 この身体は既に限界が近づいて来ている。あと何回変身することができるのだろうか。再びンードゥの力を使ったらこの身は持つのだろうか。

 先の不安が溜まっていく一方、エイルが何かを察知する。玄関前に珍しい客人が来ているらしい。

 恭也は玄関まで行き、恐る恐るドアを開けると、そこに立っていたのはムウテンであった。

 

「ムウテンッ…!!?」

「やぁ、久しぶり王。今日は君に話があって来たんだ。源次も一緒だよ」

「……… 何があった?」

「あぁ、非常にまずいことが起きた」

「まずい事?」

「───── ()()()がお怒りだ」

 

 

 ------------------------------------------------------

 

 

 恭也達が連れて来られた場所は、かつて源次も出入りしていたエンジェルティア達の住む天界だ。不思議な光に包まれて、ここへと一瞬できた訳だが、そこには既に源次とジェルエ、それからエンジェルティア達全員が集っていた。

 以前ならばあり得ない光景だが、それほど非常事態なのだろう。ムウテンは早速本題に入り始めた。

 

「君たちに集まってもらったのは他でもない…… 先ほども言ったあの方の怒りを買ってしまった」

「あの方?」

「王。君に質問するけど、エンジェルティアの数が少ないのは何故だと思う?」

「それは1000年前にお前達が…… いや、デモンティアとは互角だった筈だ。仮にそちらの1人2人倒しているなら、こちらも72体全員無傷とはいかない筈だ」

「そうだよ。本来ならそうなるんだ。でも、これはデモンティアのせいじゃない」

「じゃあ何だって言うんだ?」

「僕たちの大半を消したのは他でもないあの方、僕たち天使より位が高く、生物の概念が通用しない絶対的存在───── 神だよ」

 

 神。悪魔と天使がいるのならあり得ない話ではないが、実際「神」と言われると、規模の大きさをわかっているので少しばかり疑ってしまう。

 

「神……」

「本題に戻ろう。あの方がお怒りになられた。理由は簡単…… デモンティアとエンジェルティアがこうしているのが気に食わないみたいだよ」

「… 互いに戦い合う関係であるにも関わらず、俺たちは争う事をやめてしまったからか?」

「そうとも言うのかな…… あの方は生物の本能を尊重する方だ。それが絶対であり、真理であるからこそ、僕ら天使と君たち悪魔は共に仲良くしちゃいけない。永遠に戦う続ける運命にあるんだ」

「その考えは間違っている。理が云々関係ない。俺たち人間、悪魔も天使も感情を与えられた生物だ。自分がしたいまま生きるのが当然じゃないのか」

「…… あぁ、今ならそれなりにはわかるよ。だけど、人間はそうだとしても僕たちは違うんだ。デモンティアも含めてね」

「なに? それはどういう─────」

「── 恭也様ッ!!」

 

 恭也がムウテンの言葉に反応したその時だった。エイルに名前を呼ばれて振り向くと、そのタイミングで顔のすぐ横を何かが通り過ぎる。少し掠ったようで頬から血が垂れる。

 そして恭也はすぐさま飛んできた方向に身体を向けて構える。

 

「誰だ!!」

 

 そう恭也が叫ぶと、攻撃してきた張本人であろう人物が、深く被ったフードの隙間からこちらを赤い目でジッと見つめて来た。

 その人物はエンジェルティア同様に翼を生やしており、宙に浮かびながら指を突き出して次の攻撃に備えてエネルギーを溜めていた。

 

「これはまずいな」

「おい恭也! 変身するぞ!」

「源次… わかっている」

 

 2人は横に並ぶとそれぞれドライバーを装着した後、エイワンティアイズキーとプリーストライズキーを起動し、それをドライバーに差してからキーを回す。

 

「「変身ッ!!!」」

 

 仮面ライダーメレフ、プリーストに変身した2人は攻撃に備えて構えた。その後ろから援護ができるよう、エンジェルティア達が並び立つ。

 それを見た謎の人物は地上へ降り立つとゆっくりとフードを外す。そして唐突に話し始める。

 

「悪魔の王よ。無駄な抵抗はよせ」

「…… お前は誰だ?」

「その質問に答える必要はない」

「神の部下か?」

「ほう…… 流石にわかるようだな」

「エンジェルティアがこの場にいるのに、他に誰がこの場に来ると言う?」

「それもそうだな。いいだろう答えてやる。私は神『ゴエティア』様の使徒。名は『リアル』。お前たち悪魔と天使を抹殺する者だ」

「抹殺だと…!?」

「ゴエティア様はお前たちが共存の道を選んだ事を、この上なく気に入らない様だ。だからだ」

「ふざけるな!! 争い続ける事に意味はないだろ!! そのゴエティアは生命をなんだと思っている!!」

「神の意志に意見するとは…… いいだろう。この場で今すぐに消してくれる」

 

 その直後、リアルの指先からレーザーが放たれる─────。

 

 

 --------------------------------------------

 

 

 エンジェルティア達が住む天界は原型を留めないほどの大惨事に見舞われた。使徒の強さは圧倒的で、ムウテンを除くエンジェルティア達は既に戦闘不能状態。メレフはスタンドアドバンスエイワン。プリーストはスタンドホリージェルで対抗。

 この2つの形態は現状最強と言えるのだが、この形態で挑んでも互角であるという状態。そこにムウテンも加勢しているので、実際は3人で戦っているようなものである。

 

「マジかよ…… こんなの聞いてねぇぞ畜生…」

「源次、安心しろ。俺の力は奴に対してあまり効果的ではないが、お前の攻撃は通っている。俺とムウテンが隙を作る。その隙を突け」

「いいよ。本当は逆らいたくない所だけど、仲間がこうなっている以上、黙っている訳にはいかないからね」

 

 ムウテンも随分変わった。メレフはそれに内心嬉しく思いながら、剣を構えて使徒リアルの元へと駆け出す。その後ろから援護態勢で飛ぶムウテンがついていく。その2人の後ろから一点集中で狙いを定めるプリースト。

 3人の息が合えば互角ではなく、全体的な攻撃力が格段に上昇し、リアルも1人では太刀打ち手がないはずだ。

 メレフ、ムウテンは互いにリアルへと隙を見せない連続攻撃を食らわせる。その猛攻にリアルは対処しきれず、段々と明確に隙が見え始める。

 

「隙が見え見えの見え見えだぜ!! 使徒さんよぉッ!!!」

 

 そしてプリーストはドライバーのキーを回し、杖先に溜めた光のエネルギーをレーザーにして放つ。

 それに本能的に気づいたリアルであったが、凄まじい勢いで近づくレーザーを避ける事ができず、そのまま全身を包み込む程の光を食らってしまう。

 

「よくやった源次」

「これで終わってくれればいいんだがな……」

 

 これで終わりであってほしい。そう願う彼らの願いは、案外簡単に叶う事になった。

 リアルは全身ボロボロとなり、その場に倒れていた。暫く様子を見たが動く様子がなく、ムウテンが言うには生命反応もないらしい。完全に死んでしまっているようだ。

 

「ここまで簡単でいいのか…?」

「まぁまぁ終わったんだからいいじゃん。神の使いだかなんだか知らねーけど、俺たちの力には遠く及ばなかったって事で」

 

 そうフラグを建築したプリーストに、次の瞬間、細かく枝分かれしたレーザーがあらゆる箇所に直撃し、後方へと吹き飛ばされてしまう。

 

「うおっ…!!?」

「源次ッ!!」

 

 すぐにメレフは戦闘態勢に入り、リアルが倒れていた方を見る。リアルは生きていた。先ほどまで何もなかったかの様な出立ち。ただの再生とは全く違う。まるで生まれ変わったかの様な、それを確信させるのはやはりこの出立ちだ。ボロボロというのは原形を留められていないくらいの外傷だ。もしスタンドアドバンスエイワンだったとしても、あれほどのダメージを受ければ再生することは困難だろう。

 なのに、リアルは何もかもリセットしてその場に立っていたのだ。

 

「……… どういう事だ…!!」

「私は使徒。ゴエティア様から直接お力を頂き、どんな攻撃を喰らおうと、この身体が細切れになろうと、例え細胞の一つも無くなったとしても、何度でもこの世に生まれ変わり存在することが出来るのだ」

 

 こんなデタラメな能力は生物的にアリなのだろうか?そう思うくらい狂っている。

 いくらこちらの戦力の方が上でも、このまま戦ったら永遠にループし続け、確実に負ける事は予想できる。

 

「くそっ…!!」

「さぁ、これで終わりだ。悪魔の王よ」

 

 ─── 使徒に勝つ術はあるのか─────?




新たな敵は使徒。そして神。メレフ達は勝てるのか…!?

次回、第25解「我を笑う、我を食らう」

次回もよろしくお願いします!!


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第25解「我を笑う、我を食らう」

皆さんご無沙汰しております。
それではどうぞご覧ください。


 使徒リアルはメレフたちへ向けて、10本の指先からレーザーを放出する。

 指は関節が多くある為、小さな針の穴に糸を通す複雑な動きをすることができる。レーザーが指1本から放たれていたから避けられていた。それが10本ともなると、容易に避けることが困難な動きをするのだ。

 メレフたちはそれを避け続けながら、リアルにダメージを与えて確実に倒すのだが────。

 

「─── 無駄だ。私はゴエティア様の加護を受けている。今の私に死ぬという概念はない」

 

 ゴエティアという神がいる限り使徒は何度でも蘇る。細かく刻まれようと、細胞すらも消し去ろうと、彼という存在がこの世から消えることはない。このリアルを倒すには神を倒す他ないのだ。

 今、ここで戦い続けるのは、メレフたちにとっては圧倒的に不利である。この場から早急に退いた方がいい。

 メレフは皆に聞こえる様に作戦を伝える。

 

「源次! お前は俺の援護を頼む! ムウテンは仲間を連れて逃げろ!」

 

 その言葉を聞いたムウテンは最初何か言おうとしたが、黙って頷き、光のベールでエンジェルティア達を包み込んでその場から消えた。

 そして残ったメレフとプリーストは互いに頷き合い、ドライバーのキーを回して高く飛び上がり、ダブルライダーキックをリアルに向けて放つ。

 

《アドバンス!! シャットアウト!!》

《ホリージェル!! パニッシュ!!》

 

 それを避けられた筈のリアルであったが、その攻撃を敢えて受けた。当然、2人の強力なキックを受ければ、その身体は耐え切れるはずもなく爆発する。

 何度も復活する肉体だからこそできる事。神の使いであったとしても、慢心してしまう事もあるようだ。

 リアルが再びこの地に足を踏み締めた時には、そこにメレフたちの姿はなかった。

 

「……… 逃げたか。だが、いつかお前たちは滅びる。私が手を出すまでもなく、1番守りたかったもの、人間に裏切られる事となる。世界は不条理の上で成り立っているのだ。王よ────」

 

 

 -------------------------------------------------

 

 

 恭也たちは特に追われるような事もなく使徒から逃げ切った。全身の力が一気に抜け、怠惰感が襲う。

 その後、源次は恭也と別れると、ムウテンたちの様子を見にジェルエの案内で、何処かは不明だが森の奥地へと向かったそうだ。

 自宅へと戻った恭也はぐったりとしてベッドに倒れる。

 

「…………」

 

 エイルが何か話し掛けてきているようだが、その声は段々と遠くなっていく。妙に身体が重たい。きっと力の使い過ぎが原因だろうか。

 

「………──────」

 

 恭也は眠りにつく────。

 

 

 *****

 

 

 ここはきっと夢の中だろう。先程と違い身体は軽く、空も飛べる。そしておかしな事に意識がハッキリとしている。

 恭也は何かに導かれるままに空を飛び、その場所へと向かう。

 

「あれは────」

 

 そこには見た事ある建物が見えてきた。これはンードゥが住む屋敷だ。どうしてここに辿り着いたのだろうか。

 扉の前に降り立ち、開けて中へと入る。夢の中なので屋敷内も変わっており、永遠と続いていそうな廊下が、目の前にずっと広がっていた。

 その長い廊下を導かれるままに奥へと進んでいく。

 

「ンードゥが呼んでいるのか…?」

 

 奥は奥へと進んでいくと、急に巨大な扉が現れ、その扉は押すまでもなく勝手に開いた。

 恭也はその扉の中へ入り、ンードゥの名前を呼ぶ。

 

「ンードゥ! いるのだろう! 出てこい!」

 

 そう呼ぶとンードゥはどこからともなく現れた。しかし、その隣にンードゥ以外に男が現れ、男は真ん中に置かれた椅子に座り込む。その後にンードゥももう一つの椅子に座る。

 謎の人物の出現により動揺していた恭也の横に椅子が現れる。恭也も2人を見ながらゆっくりと腰掛ける。

 

「……… お前は?」

「俺か? 俺は悪魔だよ」

「悪魔だって?」

「名前は言うつもりはない…… いや、捨てられたと言ってもいい」

「ん…?」

「そんな事はどーでもいい。俺がお前をここに呼んだ。単刀直入に言わせてもらうが、お前は後3回変身したら死ぬ」

「3回……… か」

「驚かないんだな?」

「あぁ、もう身体の限界が近づいてきているのがわかる。それは変身する自分自身がよくわかっている」

「更に言うがンードゥの力を使った所で、お前は死ぬ運命から逃れる事はできない」

「それは…… そうだろうな」

「なに?」

「ンードゥの力を使って、正気に戻った事が一度だけある。あの時、一瞬でも制御できてしまった。これが普通であるかはわからないが、王としてならば当然と言える。だが───」

「だが?」

「俺はンードゥの力を扱う事ができれば、それでいいと思ってた。しかし実際は違った。この力を扱えたとしても、俺の生命は減るばかりだ。もっと根本的な…… 悪魔の王という根本的な所が問題なのではないかと」

「……… ほぉー… 思っていた以上にやるな。それが正解だ。王の力はただ悪魔の力を使うのではない。己自身の力だ。悪魔を屈服させるその力こそ王の真髄だ。お前は未熟過ぎた。まだ器ではなかったんだよ」

「そうか。そうだろうな……」

 

 未熟。器ではない。恭也は悪魔にそう言われた。王の力は己の力。エイルは確かに重要な存在ではあるが、結局彼女も元を返せば王の盾なのだ。

 どれだけ彼女が元の強さに戻ろうと、彼女がどれだけ力を付けようと、恭也自身には然程の影響もない。デメリットとして命をエネルギーとしているという点だけだ。

 本当の王の力を手に入れる為にはどうすればいいのか。そのヒントを悪魔は告げる。

 

「神に会え」

「神?…… ゴエティアという奴か?」

「そうだ。そいつに会えば答えが出る」

「………」

「どうした?」

「…… お前は何者なんだ?」

「その話はまた別の話だろうな。ンードゥ、返してやれよ」

 

 そして隣にいたンードゥは立ち上がり、恭也に「我の力を使え」と言い、腕を払うと周りが真っ暗になり何も見えなくなった─────。

 

 

 *****

 

 

「─── はっ…!!」

 

 恭也はベッドから起き上がる。外はもう既に真っ暗であった。布団を掛けられていたので、きっと誰かが眠りやすいように整えてくれたのだろう。

 周りを見るが近くにエイルたちはいない。一体どこへ行ってしまったのだろうか。

 

「我の力を使え…… か」

 

 あれは夢であって本当のンードゥとは限らないが、恭也の答えは出た。

 それから恭也はドゥラストティアイズキーを手に持つと、外へと出て行く────。

 

 

 -----------------------------------------------------------

 

 

 エイルたちは恭也に申し訳ないと思いつつ、エンジェルティアたちが身を潜めている森の奥へとやってきた。

 ジェルエが恭也の自宅まで来て、エイルたちを呼び出したのだ。そんな彼もムウテンに言われて呼びに来たらしいが、どうやら何か話したいことがあるらしい。

 訳を聞く為、森の奥地へと着いたエイルたちは、そこに天界でも見たような座り方したエンジェルティアたちを目にする。

 

「やぁ、待っていたよ」

 

 いつものようにニコッと笑っていたムウテンだが、すぐに表情を一変し、真面目な顔つきで彼女たちにも座るように促す。

 デモンティアとエンジェルティアしかいない異様な光景。なんの為に戦い続けているのかも分からなかった両者だが、こうして1つの障害を乗り越える為に手を取り合うのはこの1000年の間のことを考えたらあり得ない話だろう。

 

「デモンティアの諸君… と言ってもンードゥは来てないようだけど…… とにかく君たちに話したい事があって、今日ここへ集まってもらったよ」

「要件は何? 私は恭也様のお側に居なければならないのだけど???」

 

 エイルの額に血管が浮き出ているのを見たムウテンは、目を逸らして重要な話を始める。

 

「…… エイル、君は何故僕らが戦い続けていたのか考えた事はあるかい?」

「考えるだけ無駄よ。私たちはただ戦い合うだけの生物。他に理由なんてないわ」

「果たして本当にそうだったのかな」

「え?」

「僕らは神によって生み出された。君たちもそうだ」

「…… 続けて」

「他のエンジェルティアにこの事を言っても笑われるか、冗談は後にしろと怒られたこともあった…… けど、僕は君たちとの戦いで、徐々にその記憶が真実へと到達しようとしている。断片的にだけど思い出せるんだ。僕たちはかつて神との戦いに参加していた。エンジェルティアとデモンティア…… じゃない。何かの為に……」

「ちょっと待ちなさい。神との戦いって事はゴエティア以外にも神がいたって事なの?」

「あぁ、そうだよ。その名は『スレイマン』。あの方… ゴエティアが僕らの神なら、スレイマンは君たちの神だ」

「つまり… その… 私たちは本来は王ではなく、神の配下という事になるの? そうだとしたら、何故その記憶が消されているのかがわからないわ」

「あれ? 否定しないんだね?」

「恭也様は確かに特別なお方。けれど、今の話を聞いて思ったのよ。デモンティアの力を使う代償である魂を糧に戦う力を、神がいるのであれば、その力を代償なしに使う事ができる筈。そしてそれは同時に人間では到底扱う事はできない力という事も…… つまり恭也様は───」

「いずれにしろ死んでしまう」

 

 ムウテンの言葉を聞き、何か言いたげなエイルだったがすぐに開けた口を塞ぐ。これが事実にしろ、恭也は永くは持たない。

 

「…… そのスレイマンはどこにいるの?」

「さぁね。僕にも検討がつかない」

「恭也様にこの話をするわ」

「してもどうしようもない。もし引き受けたとしても使徒すら倒せないと……」

「恭也様ならきっと勝てる」

「根拠は?」

「恭也様だから」

「……………」

 

 そしてそれを聞いたデモンティアたちも、そうだそうだと、エイルに同意する。

 それに対してムウテンは頭をやれやれと振り、立ち上がってエイルたちに言う。

 

「君たちならできそうな気がしてきた」

「当たり前よ──── っ!?」

 

 すると、エイルは急に立ち上がり、何かを感知して翼を広げる。

 

「何があったんだい?」

「恭也様が外出なさって…… 一体どうされたの!!?」

 

 それからエイルはすぐに空を飛び、恭也の元へと急いだ。他のデモンティアたちも彼女の後を追いかけてその場から飛び立った。

 

「……… ジェルエ。君も行った方がいいかもね」

「え?」

「嫌な予感がするんだ… とても嫌な予感が─────」

 

 

 -----------------------------------------------------

 

 

 恭也はドゥラストティアイズキーを握ったまま夜中の街を歩いていた。だいぶ遅い時間なので辺りに人は全くいない。

 だが、そんな時間にもう1人眠れないものがいた───。

 

「リアルだな」

「王よ。この時間に1人とは、そして仲間も連れずにいるとは一体どういう意志の表れだ?」

「この時間なら周りに誰もいない。この上なく戦いやすい状況だ」

「私が出ることも想定済みか?」

「そうだ。お前は今ここで倒す」

「……… 王、何を焦っている?」

「焦りたくもなる。俺の寿命は既に限界に近い」

「そうか。ならば、せめてもの慈悲で一瞬で殺してくれよう」

「一瞬で呑まれるのは─── お前の方だがな」

《ドゥラスト!!》

 

 ドゥラストティアイズキーを起動すると、一瞬にして辺りは光すらもない程に真っ黒な闇へと染まる。

 その異常なまでの闇の広がりを、少し離れたエイルたちにも視認ができた。

 

「恭也様がお使いになった……」

「ふぉふぉ…… これは随分と濃い闇じゃのう」

 

 ワナイズはどこか嬉しそうに笑う。いつもなら怒りを露わにするエイルも、ンードゥの力を使用してしまった恭也の安否が心配になり、ワナイズを見ずに急いで彼の元へと駆けつける。

 恭也の隣へと降り立ったエイルは声を掛ける。

 

「恭也様!!」

「大丈夫だ…… エイル……」

「ですが… その力を使えばまたッ!!」

「ンードゥが言った。俺を使えと… この俺に…」

「え…?」

「今、覚悟を決める時だ」

 

 そして恭也はドゥラストティアイズキーをデモンドライバーに差し込む。すると、ドライバーから晴明の終わりを告げる様な暗く、重い音が流れ始める。

 

「変身」

《シッカリ開錠!!》

《ガチ憑依!!》

 

 それからドゥラストティアイズキーを掛け声と共に回すと、エイルが憑依した後、それを呑み込むようにして炎の様に流動的な装甲が形成される。全身が闇の様に真っ黒で、目は血の様に赤く光り、腕と脚に鋭い棘が伸びる。

 

《悪魔の名はンードゥ・ツーラスト!!72の数字を持ち、その闇は全てを呑み込み、闇へと帰す!! この闇から逃れる事はできない!! King of darkness!!》

 

 仮面ライダーメレフ スタンドドゥラスト────。

 

「闇に呑まれろ、悲しき使徒よ」

 

 今、最後のナンバーが解き放たれる─────。




色々と説明が多い回でしたが、次回あのンードゥの力を使いこなす……?
いきなりどうして……?

次回、第26解「我が手にする、我の淵源」

次回もよろしくお願いします!!


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第26解「我が手にする、我の淵源」

皆さんご無沙汰しております。
それではどうぞご覧ください。


 使徒は息を呑む。この緊張感は自分の生まれたその日から一度たりともなかった。

 今、目の前にある強大な力に圧倒され、足が前に出ない。動いたら負けではなく、動かなくとも負ける。つまり何もできない。本能的に相手の危険性を察知し、使徒リアルが出した答えはこれだ。

 

「………」

 

 様子を見る。これが1番最善の策だ。それ以外に何があるのだろう。

 この先が見えない真っ暗な闇の向こうに行くなんて死んでもごめんだ。

 

「来ないのであれば、こちらから行くぞ」

「………」

 

 メレフはそう言うと地面に手を着く。着いた箇所から段々と闇が広がり、辺りにある建物や植物など、ありとあらゆるものがズブズブと呑まれていく。

 それはリアルと同じだった。ジャンプして避けようとしたが、まるで触手の様に闇が脚に絡みつき、リアルを引き摺り込もうとしていた。

 

「お前…… 何故だ」

「何がだ」

「何故これほどまでの力を使える。ゴエティア様によれば、お前はこの力を制御できず、この街を呑み込んだそうではないか」

「確か。俺は一度この力を制御できずにいた…… だが、今は違う」

 

 王の力は最早9割と言ったところまで解放していた。そしてこの形態になる為に恭也は99.9%まで、魂の限界値のギリギリまで自力で解放したのだ。

 しかし、これは恭也自身何故こうなったのかわかってはいない。直感的にできると思ったのだ。あの対話が夢なのか、それとも恭也自身の心の表れたなのか定かではないが、確定している事は更に成長し強くなったということだ。

 

「あり得ない」

「あり得ているからこそ、今、俺はこの力を使えている」

 

 リアルがこの夜中に戦った事が運の尽き。失敗だろう。

 闇の力は暗ければ暗いほど、よりその範囲を広くし、闇属性のエネルギーを大幅に引き上げる。これによりこの街全体は最早メレフの思うがままに操れる。

 これはまずいと必死に抵抗を試みるリアルだが、闇の引力があまりにも強過ぎる為、引き抜こうとする度に闇へと引き摺り込まれていく。

 

「……… だが、お前は忘れている」

「なに?」

「私は何度でも蘇る。何度も殺そうと無駄なのだ。細切れにされようと存在を抹消されようと、私は神の御加護がある限り────。

「誰がお前を消すと言った?」

「なんだと──?」

 

 そしてリアルは闇へと呑まれた。闇の世界は何もかも真っ暗であり、自分が今どこにいるのかもわからない。

 リアルは鳥の様な翼を広げ、見当たらない出口へと向かって飛び続けた。

 

「ほう、私を取り込んだわけか。しかし、このまま私が死ぬ事があれば再び蘇る」

 

 そしてリアルは飛び続けていたが、やがて翼をしまい、無重力の様な空間をひたすら彷徨っていた。

 

「─── まさか…!?」

 

 それからリアルは気づくのだ。この闇は終わりがない。一度入ったら出る事はできない。

 この中は人間であるならば餓死して死んでしまう事だろう。だが、リアルはそれができない。ここで自らを傷つけてしまうのも手だが、再び蘇ったからと言ってこの闇から抜け出せる筈もない。

 全てを勘違いし、絶望したリアルは永遠と闇の中を彷徨うのだ。ンードゥが死ぬその日まで────。

 

「…… ンードゥ、これで奴は永遠を繰り返すのだな」

「そうだ。我の闇に一度取り込まれれば抜け出す術はない。その様な者は誰一人として存在しない」

「そうか…… うっ………」

 

 メレフはフラフラになりながら、闇に呑まれそうになる街を元戻すと、全身の力が一気に抜けて地面へと倒れる。

 この僅かな時間5分と言ったところか。ンードゥの力は扱える様になったと言えど、短時間の使用しかできないらしい。

 エイルは恭也に膝枕をし、彼の様子を見る。すっかり気が抜けて眠ってしまった様だ。

 

「……… ンードゥ」

「なんだ、エイル」

「どうして恭也様はあなたの力が使えたの」

「王の力を解放した。我は()に合わせたまで。この男はどうやら前王のアレを受け継いだ様だな」

「アレ…?」

「…… 我も細かい部分まで把握していない。だが、現王が王として… 絶対的な力を解放しかけている事は確かだ。死か生か─── この男がどちらに転がるか。それとも………」

「もういいわ。とにかく恭也様が無事でよかった…」

 

 エイル達は恭也の無事を確認し、ンードゥも含め、自宅へと戻る────。

 

 

 ----------------------------------------------------

 

 

 源次は森の奥地へムウテン達の様子を見に出向いていた。少しばかり遠いが、道中でジェルエと雑談を挟みつつ向かうので、そこまで気になる事はない。

 

「そういえば源次の仲間はまだ病院?」

「あぁ、まぁもうすぐ退院だがな」

「源次は怒ってないの? あんな事されて」

「あ───…… 怒ってないと言えば嘘になるな。今からでも殴らせてもらうくらいは恨んでるぞ」

「えぇ!? なのにこんな所まで態々お見舞いに来るのぉ!?」

「お前一応天使仲間だよな…… ま、そうだな。普通おかしいけどよ。全部終わっちまった事だし、全員無事で奴らも反省、というか仲間とか絆とかそういう人情的ことを分かってくれたし、それ全部ひっくるめて俺はそれでいいと思ってる」

「ふーん… 源次ってやっぱりおかしいね」

「そんなおかしな奴についてくるお前もどうかと思うがな」

「へへっ」

 

 2人はたわいない会話を挟みながら、森の奥へと進んでいった。

 しかし、今日はやけに静かであった。エンジェルティアたちは楽しい会話を挟む様な柄ではないので当然だが、そういう意味ではなく、嫌な方の静けさなのだ。

 

「……… 用心しろジェルエ」

「え? うん」

 

 ジェルエは気づいていないが、源次は奥に進むにつれて周りの木々が不自然に倒れているに目がいった。更に奥へと入ると木だけではなく、地面も抉れ、動物が焼けた臭いが漂う。

 流石にジェルエもおかしいと感じ、源次と顔を見合わせ、その場所に急いだ。

 

「おい…… マジかよ」

 

 本来なら、ムウテンたちが話し合いをする場として設けている所で、椅子の様なものが7つ並べられている筈なのだが、源次たちが来た時には既に更地と化していた。

 その場には翼がボロボロとなった天使たちが倒れており、地面の所々に大きな穴が開いている。戦闘が行われたのが見てわかる。

 源次は倒れているナナテンに駆け寄り何があったのか聞き出す。

 

「おい、ナナテン! 何があった!?」

「源次…… か? 見ての通り私たちは負けたんだよ……」

「誰だ。誰にやられた?」

「私たちが敗北するなんて、使徒以外にありあると思う?」

「リアルか?」

「いや、違う。別のやつだ……とんでもない強さだったよ……」

「……… ムウテンの姿が見えないな。まさかだと思うが…」

「あぁ、そうだよ。あいつは1人で戦い続けてる。私たちも加勢したけどこの様だ。ほんっと腹立つ」

「どこに行ったかわかるか?」

「あっちだ」

 

 ナナテンが指差した方を見ると、遠目ではあるが、光のレーザーが空に向かって飛んでいったのが見えた。

 それから源次はその場に急いで向かう為、仮面ライダープリーストスタンドホリージェルへと変身し、翼を広げて飛び立った。

 

「……… ムウテン… 死なないでよ……」

 

 ナナテンはムウテンを心配する様に呟くと気を失ってしまった──────。

 

 

 ---------------------------------

 

 

 森の木々が焼け、そこに住まう動物たちの鳴き声が響く。光が飛び交い、白い羽根がパラパラと舞い散る。

 そう、ムウテンは既に限界を迎えていた。戦っている使徒は「レビト」と言い、リアルに続いて強力な神の力を宿した者だ。

 

「ぐはっ…!!」

「けけけけけけけけっ!! 死なないで!! 死んで!!」

 

 このレビトは下半身をまるでタコの様な触手に変える事ができ、伸縮自在でどこまで追いかける事が可能である。

 なので、ムウテンが空を飛び回ろうとも、触手はそれに応じて伸び、いとも簡単に相手を捉えて地面へと叩きつける。先ほどタコ様だと述べたが、実際はタコよりも多くの触手を生成でき、個々が強靭な筋肉を持ち合わせているので、並大抵の力では解く事も難しい。

 そんなレビトと戦うのに持久戦は向かず、次第にムウテンは避ける事が困難になっていく。

 

「あれ? けけけけけけけけっ!! これもう死んだ!!? 死なないでよ!!」

「しまった……!!?」

 

 ムウテンの身体がくの字に曲がる。大きな丸太の様な触手が彼の腹部を捉えた。骨のミシミシとする音が聞こえると、そのまま地面に叩きつけられ、その上から間髪入れずに触手の雨が降り注いだ。

 

「………!!…!!!─────」

 

 段々と視界がぼやけて来る。ムウテンは死を悟った。全身に痛みを感じなくなりかけた時、急に視界が開いた様な気がした。

 その時、レビトが吹き飛んでいた。巨大な光のレーザーがムウテンの上を飛んでいったのだ。

 

「おい!! ムウテン無事か!!?」

「…… 源…… 次………?」

「全く無茶しやがってよぉ…」

「君じゃ勝てない…… 奴は強過ぎる……… 逃げるんだッ…!!」

「アホか。こんなボロ雑巾になるまで戦った奴を置いていけるかよ。暫くそこで横になってろ」

 

 プリーストは杖を構えて、光のエネルギーを溜め始める。使徒はこの程度で倒れるはずがない。寧ろ倒れられたらまた初めからやり直しだ。

 そしてレビトは思った通りに起き上がり、触手を広げて乱暴にプリーストへと向かってきた。

 

「お前!! いい!! けけけけっ!!」

「気持ちわりーんだよ!! タコ野郎!!」

 

 プリーストは杖に溜めた光を目の前で十字に斬り、更にその上からバツを描くと、それを交差させてレビトへ向かって放った。

 レビトはその光を避ける事もせずにまともに当たり、身体はぶつ切りとなって地面へと転がり落ちた。

 当然ながら使徒は、この重度のダメージを負ったとしても直ぐに再生できるので、レビトはすぐさま元の状態へと戻り、再びプリーストへと向かって走る。

 

「そう来ると思ったぜ!!」

 

 その僅かの間に溜めた光を、プリーストは杖を掲げて空に向かって放つ。

 ただの隙となる攻撃に対し、レビトは触手をプリーストの首に巻き付けて力強く締め付ける。首の装甲は薄いので、締め付けられると息を吸う事ができない。

 

「……っ!…かっ……!」

 

 これで終わりだとレビトは更に力を込めようとすると、次の瞬間、首を絞めていた触手がバッサリと切られた。最初何があったのかわからないレビトだったが、気づいた時には彼の周りに光の槍が降り注いでいた。

 その見た目は檻。彼の触手では通れないほどの感覚で造られた光の檻である。

 レビトはそれを壊そうと暴れ回るが、触れる度に身体を傷つけ、全身がボロボロになっていく。

 

「けけっ…… なにこれ?」

「お前らどうせ死なないんだからこうするしかねーだろ…… 一時的に閉じ込めさせてもらったぜ。お前がそこで死ぬほど暴れたとしても、復活できるのはその場だ。だから俺のエネルギーが尽きない限り、永遠にお前はその中で再生し続けるって事だ」

「けけけけけっ!! 考えたね!! ぶっ殺す!!」

「やって見ろよこの野郎…… まさかこんな短時間でエネルギーアホみたいに消費してするとは思ってなかった。さすが使徒だな」

 

 プリーストは翼を広げてムウテンを包むと、杖で地面を叩き、光のベールを出現させてその場から消えていった。

 そして暫く時間が経った後にレビトは光の檻から解放された。それから空に向かって声を大きくして笑い転げる。

 

「けけけけっ!! けけけけけけけけっ!! 次は必ず殺すっ!! けけけけけけけけけけけけけけけっ!!!」

 

 その日、何もない筈の森から不気味な笑い声が響き続けたという────。

 

 

 --------------------------------------------

 

 

「そうか。リアルは闇に呑まれ、レビトは実質的な敗北を期した訳か……」

「はい、その様でございます」

「どうやら我々が思っている以上に力をつけてきている様だな」

 

 どこかもわからないその場所に、3人が真ん中に置かれた水晶の中を除いていた。その内の2人はリアル・レビトと同じように使徒であり、それぞれ「アスモ」「ガーズ」という。

 そしてもう1人が水晶から手を離すと、水晶に映っていた2人の様子は見えなくなってしまった。それからその人物は背の高い椅子へと座り、2人の使徒を手招きして呼ぶ。

 

「お呼びでしょうか?」

「お前たちも悪魔の王の元へと行くがいい。そしてリアルを闇から解放し、レビトを連れ、奴らを殺せ」

「はい、承知致しました。『ゴエティア』様」

 

 そう言うと使徒たちはゴエティアの目の前から一瞬にして消えていった。

 ゴエティアは1人残ると、指をくいっと曲げ、水晶を浮かせて自分の方へと持って来る。再び手を触れると、そこに映し出されたのは恭也であった。

 

「王よ… 我の力が戻った時、お前は絶望するだろう。使命の意味など何もないことを悟るがいい」

 

 そうしてゴエティアは不気味な笑みを浮かべ、水晶を握り潰した───。




遅れましたごめんなさい。
中盤戦頑張ります。

次回、第27解「我の熱さ、我の流れ」

各悪魔たちとの絡みが何話か続きます!!
次回もよろしくお願いします!!


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第27解「我の熱さ、我の流れ」

皆さんご無沙汰しております。遅れましたごめんなさい。
それではどうぞご覧ください。


 恭也の身体は限界だった。ンードゥの強大な闇の力を使用した事により、その負担はより大きく、魂をより多く消耗し、最早いつ死んでしまってもおかしくない状態であった。

 先日のリアルとの戦いの後は特に身体に異常は見られず、誰もが安心しきっていた。が、今日になって異変が起きた。一見するとこれといって変わった所はないのだが、悪魔たちが言うには生命エネルギーを感じられないそうなのである。

 これがいつ死んでもおかしくないと言われる理由だ。要はゾンビになりかけ、生きているのか死んでいるのかわからない状態。

 エイルはその身体の状態を心配し、酷く泣いた。自分を責めているようだ。

 自室の隅で泣き続ける彼女に恭也は声をかける。

 

「エイル」

「……… 申し訳ございません」

「俺は現実を受け止めている。使命を果たす為、この命を使う。それは王となったものの宿命だ」

「何故…… 恭也様はそんな強くいられるのですか?」

「…… はっきりと言えば恐怖を抱いていない訳ではない。あれほど苦しかったのに、今では何も感じなくなっている。死期が早くなっていると言う解釈になるだろうが、やはり実感が湧かないというのが強い。何故だろうな。結局、俺にもよくわからない」

「…………」

「んー………─── よし」

 

 恭也は何か思いついたようで、悪魔たちを自分に注目させる為に手を叩いた。

 悪魔たちが恭也に注目すると、彼はある提案をする。

 

「皆、出掛けるぞ。今更だが、親睦を深める────」

 

 このいきなりの提案に誰もが驚き、そして誰も止めるものはいなかった────。

 

 

 -------------------------------------------

 

 

 本来、外に出る事は人目があり禁止されている。なので、恭也は人気がない場所を選び、そこへジェイクとティッツを連れて来た。

 この珍しい組み合わせに2人は困惑したが、1000年以上前からの長い付き合いなので今更なんだと、すぐにいつもの状態に戻った。

 

「それでここはなんだ? 王よ?」

「歩くの疲れたよ〜」

「もう少しだ」

 

 2人を連れてやって来たのは街が見える高台であった。ここは普段ならばデートスポットとしてカップルが多く訪れる場所なのだが、悪魔の件や天使の件等が重なり、その影響で所々が壊れてしまい立ち入り禁止になっている。

 ここの街灯は当然ながら機能しておらず、辺りはすっかり暗くなっていたので、ジェイクに頼んで炎を散りばめてもらった。暗闇に揺らめく炎を見つつ、恭也はニコッと笑いながら話し始める。

 

「お前たちに会ってからまだ1年も経っていないのに、俺はお前たちを部下や仲間ではなく、家族だと認識する様になった」

「あ?」

「急にだと思うだろう… 王の気まぐれという奴だ。こうしてお前たちとゆっくり話がしたかった」

 

 ジェイクとティッツは顔を見合わせる。やはり急な事で動揺を隠せていない。

 ティッツは恭也に本当の目的はなんだと聞く。

 

「王様〜… 本当はなんなの〜」

「…… お前たちはわかっているだろう。俺はいつ死んでもおかしくない状態だと」

「あ、うん…… もしかして私たちを呼び出したのって」

「あぁ、もう長くないからな。その家族の様なお前たちと話せる場が欲しかった」

 

 そして恭也は2人の顔を見ながら彼らとの思い出を話し始める。

 

「まずジェイク、お前と会った時、最初は力を使わせてもらえなかったな」

「あぁ、あの時のお前は熱さが足りなかったからな! だが、今となっては俺が求める熱さを手に入れた。何者にも平伏すことのない圧倒的心の熱さ!」

「俺はまだ王として未熟だった。それに自分に自信がなかった」

「自分に?」

「そうだ。今は王としてやっているが、実際は何も稼げてない親の脛を齧って生きてる人間だ。就職をしようにも何度も落ちて…… だが、お前みたいな熱い悪魔のお陰か、俺の中でお前の言う熱さ?が燃え上がった気がした。王になるきっかけを作ったのはエイルだが、自分に自信が持てるようになったのはお前のお陰だと思っている」

「はっはっはっ! 褒めた所で何も出ないぞ!」

 

 次にティッツに顔を向けると、彼女は珍しく頬を赤く染めた。まだ何も言っていないのだが、ベタ褒めされる事に期待しているのだろう。

 

「ティッツ」

「な、なに〜」

「お前とは普通に出会ったな」

「え、あ、はい」

 

 期待していたのとは裏腹な言葉にティッツはスッと真顔に戻った。

 

「はははっ、すまない。だが、お前の親しみやすさが俺の心の支えになっていた。誰に対してもその物腰の柔らかさがお前のいいところだぞ」

「へへ〜 そうでしょ〜」

「…… もう少しだけお前たちといたかった」

「恭也……」

 

 あと何回変身したらこの命は尽きてしまうのか。ンードゥによれば残り数回程度で終わるらしい。変身せずとも魂を使用し続けていた為、普通の人間よりも寿命が短く、この先長く生きられないのは確かである。

 そんな底知れない恐怖をポツリと恭也は溢した。

 

「王。まだお前が確実に死ぬと決まったわけじゃない!! ンードゥも言っていただろう!!?」

「そうだよ〜!! みんなの力を使いこなせれば済む話なんだから落ち込まないでよ〜!!」

 

 2人は恭也を励ました。この悪魔たちは王としてではなく、恭也という1人の人間として好いてくれたのだろう。

 王の良いところを一頻り言って励ました後、恭也は気分を良くし、そろそろ帰路に着こうかと言ったところで、後ろから凄まじい殺気を感じて振り返った。

 

「お前は…!!」

「私はリアル。あの時は世話になったな」

 

 そこには闇に封じ込めたはずの使徒リアルの姿があったのだ────。

 

 

 -------------------------------------------

 

 

 恭也はメレフに変身し、リアルと激しい戦いを繰り広げていた。これといって変わった所は見受けられないが、ンードゥの力を使ってようやく封じ込めたのだから弱い筈がない。

 リアルは指先のひとつひとつからレーザーを放ち、時には屈折させたりと、攻めるチャンスを潰してくるような攻撃を行ってきた。これも前とは変わらないが、これが非常に厄介なのだ。

 これに対してメレフは防御以外の行動を取れずにいた。

 この状況を打開する為には、ンードゥを呼び出して再び闇に送り込む方法が取れる。しかし、それをした所でこの様に脱出される事がわかったのだからその場凌ぎにしかならない。倒すしかない。

 

「くぅ…!!」

「やはり奴の力がなければこの程度の様だな」

 

 メレフがレーザーを1本を弾いたと同時に逆の方向からレーザーが飛んできて、それを防ぐ事はできるはずもなくまともに食らってしまった。

 受け身や次の攻撃に対する防御をしようとするが、間髪入れずにレーザーがメレフを捉えた。

 闇に閉じ込められた恨みを晴らす様に、何本ものレーザーが雨の如く降り注ぎ、やがて満足したのかピタリと止まる。

 

「かはっ!!」

「お前の近くにいた悪魔は使えないな」

「…… なんだと?」

「奴らの力を使った所でンードゥの力に及ばない。出てきたとしても私に完膚なきまでに叩きのめされるだけ。それにも関わらずお前は奴らを大切な仲間だとほざく。何故だ? 闇の力さえ使っていれば勝てるのだぞ?」

「お前は何もわかってないようだな……」

「ん?」

「弱いとか… 強いとか… そんなものはどうでもいい。奴らは俺の大切な仲間… 家族だ。その絆の強さは闇の力さえも上回る」

「絆……? そんなものなんの役に立つ? ならば証明してみせよ。その力とやらを」

「聞こえるかジェイク… ティッツ。俺はお前たちを信じる。お前たちの力は奴よりも気高く、そして強い。だから…… 奴を葬る為の力を貸せ!!!」

 

 そしてメレフはジェイテンティアイズキーを取り出すと、それをドライバーに装填し捻る。身体は炎に包まれ、スタンドジェイテンの姿に変身する。

 

《悪魔の名はジェイク・テンプ!!10の数字を持ち、その獄炎は全てを焼き尽くす!!》

「ふん…!!」

「…… 哀れ」

 

 そう言ってリアルがレーザーを放つと、メレフはメレフキーブレードを大剣に変化させ、身体を大きく捻り、炎の斬撃をリアルに向けて放った。

 2つの攻撃はぶつかり合い、相殺もしくはメレフの斬撃が貫通されてしまう可能性があった。が、2つの選択肢は間違いだ。炎の斬撃はレーザーを真っ二つに裂いて突き進みリアルを凄まじい熱量で燃やしたのだ。

 

「な、なんだとッッ!!?」

 

 そのあまりの熱量にリアルは思わず地面を転がった。今までとは比べ物にならないほどの炎を纏ったこの形態。

 それに1番驚いていたのはジェイク自身だった。

 

「お、おい王…… これは一体どういう事だ!?」

「わからない… だが、俺の中に今までとは違う力が芽生えたのを実感できる。まるで魂が燃え上がる様な感覚だ」

「なるほどなぁ!! つまり熱さがとんでもないという事か!!」

「そういう事になるな…… 行くぞッ!! 全てを焼き尽くす!!」

 

 全くと言っていいほど理由にならない答えだが、メレフの中で何かが変わったのは見て取れる。

 メレフはリアルの方へと走り、大剣を豪快に振るい、リアルが出すレーザーごと叩き斬っていく。全てを焼き尽くすさんとするその一撃は、やがてリアルの両手をも燃え上がらせた。

 

「わ、私の手がぁぁぁぁぁぁッッ!!?」

「ふんっ!!!」

《ジェイテンシャットアウト!!》

 

 ドライバーのキーを何度も捻って10番台全ての悪魔の力を結集させ、大剣にとてつもない炎を纏い、身体が軋むほど大きくのけぞり、それをバネにして脳天からリアルを叩き斬った。

 

「燃えるッ!!…… だが、無駄だ!! 私は倒されようと何度でも…!!」

「ティッツっ!!!」

《悪魔の名はティッツ・ニーマル!!20の数字を持ち、その荒波は全てを包み込む!!》

 

 そしてメレフはすかさずスタンドティニーマへと変身すると、大剣を杖に変化させ、リアルを水で包み込んで拘束し、そのまま氷山の様に凍らせてしまう。

 先程のジェイクの炎もそうだが、ティッツの水や氷も彼同様に強化されており、リアルは芯まで凍らされて身動きどころか生命活動もままならない状態にされてしまう。

 

「──── 終わりだ」

「……ッッッ!!!」

 

 それからメレフはドライバーのキーを何度も捻り、20番台の水の悪魔の力を杖に宿し、杖の先から硬い氷をも貫通する極太の水のレーザーを勢いよく放った。

 リアルは当然凍らされているのだから身動きが取れず、そのままその身を全てレーザーに包まれ塵となってしまう。

 

《ティニーマシャットアウト!!》

「─── 眠れ、悲しき使徒よ」

 

 

 -----------------------------------------------------

 

 

 リアルは塵となっても余裕だった。自分は使徒なのだから復活できると。復活したと同時にメレフを殺してやると。そう意気込んでいた。

 だが、数秒、数分、数十分と経ってもまるで身体は再生しなかった。叫ぼうとしても身体が元に戻らないのだから叫べるはずもなかった。

 

「っっ……っっっ!!!」

 

 やがてリアルの身体は朽ちて二度と復活することはなかった。使徒リアルはゴエティアに謝罪する間もなくこの場にて散る────。

 恭也はリアルが朽ちる様子を見つつ変身を解く。若干フラッとしたが身体に異常は見受けられず、寧ろ前よりも軽い感じがした。

 

「…… 一体この力は…?」

「あの時お前に何があったんだ? この短時間でここまでの力を引き出すとは……」

 

 ジェイクにそう聞かれるが恭也自身何が起こったのか全くわからない。

 するとティッツが「あっ!」と言い恭也にこう言った。

 

「もしかしてもしかして〜さっきの絆とやらが関係してるんじゃない〜?」

「なに?」

「恭也が王!って感じじゃなくて私たちを対等とか仲間とか、そういう近い関係だって思ったからなんじゃないかな?」

「んー…… 確かに。あり得なくはないな」

「つまり恭也がこれからみんなとの絆を深めていけば…!!」

「なるほど。そうすれば先程の様に力を引き出すことができ、俺が死ぬ事は無くなるかも知れないということか」

「そういう事〜」

 

 仲間仲間と言っておきながら、恭也は結局のところ部下という根本的な認識は変わってなかった。だが、今回の件で彼自身の見方が変わったのか、はたまた彼自身の成長具合によるものなのかはわからないが、どちらにせよ大きく前進した事に変わりはない。

 恭也は再び悪魔たちとの関係を深める為、彼らに歩み寄る事を決意する───。




ごめんなさい1ヶ月送れました。
また次回から早めに投稿できますのでご安心ください+いつも見てくださっている方々、本当にありがとうございます。

次回、第28解「我が嵐、我が轟く」

次回もよろしくお願いします!!


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第28解「我が嵐、我が轟く」

皆さんご無沙汰しております。
それではどうぞご覧ください。


 今となって重要なのは絆の力。恭也はこの絆という力の源については全くぴんと来てはいなかった。

 デモンティアたちは自分にとってかけがえのないもの、家族そのものだと考えて今までこうして過ごしてきたが、結局は彼がそう思っているだけで主従関係であることに変わりなかった。

 だが、リアルを倒してからというもの、絆の大切さが今になってどれほど重要かが身に染みてわかる。

 

「おいおい、そりゃいい兆候だな」

「俺も驚いた。だが、これをモノにする事ができたら残りの使徒も倒せるだろう」

「俺はもういらねーな」

「そんな事はない。しかし今回に至っては俺たちに任せて欲しい」

「別にいいぜ。ま、陰ながら見守るって事で」

 

 恭也の自宅にて源次にこれまでの事を話した。

 絆の力が生み出す奇跡。この力が強まれば恭也の死は回避できる。皆がそう思っていた。

 

「お次はレビトって奴をやりてーな……」

「お前たちを襲った奴か」

 

 レビトは使徒の中でも随一に狂った奴で、下半身をタコの様な触手にして攻撃を行う見た目も中身も気味の悪いやつだ。

 この使徒と戦った源次だが、案の定倒す事はできても、すぐに復活されてしまうのでその場から一時離脱した。ムウテンたちですら手も足も出せない奴だ。

 

「だからよ恭也!! お前の悪魔たちとのそれで奴らをぶっ倒してくれ!!」

「わかってる。任せておけ」

「…… あの天使の奴らはよ。最初は本当クソ野郎だったんだ。今でもちゃんと許せるかって言われたら無理な話さ…… でも、更生してマジになってよ。仲間守るとか昔のあいつらにはなかった優しさだ。だからあいつらを傷つけた使徒どもはどうしても許せねぇ!! 昔は何であれ今は俺たちの仲間だ!!」

「…… ふっ、前とは違うな。今を見るか」

「今を見た方がいいだろう? その方が肩が軽くなる」

「よし、ならば早々に奴らを倒さなければならないな」

 

 そう意気込むと同時にエイルたちが使徒を感知した。

 

「行くぞお前たち。俺たちの偉大さを奴等に刻み込んでやるぞ────」

 

 

 ----------------------------------------------------

 

 

「けけけけけっ!!! けーけっけっけけけけけけけけけっ!!!」

 

 街に出向くと、既にレビトが暴れ回っており、触手で人を掴んで今にも握り潰してしまいそうな所を目撃し、恭也はメレフへと変身して剣を振り翳す。

 レビトは瞬間、人を地面に叩きつけたかと思うと、血がべったりと付いた触手を薙ぎ払って血を飛ばし、メレフの視界を血で染めて遮った。

 

「ちっ…!!」

 

 人を救えなかったという無念に思いながら、同時にこのレビトが意外に頭を使う事に驚いた。

 そしてレビトの触手は何も見えないメレフを無慈悲に捉えて地面へと叩きつけた。

 

「ぐはっ!!」

「けけけっ!!! 気持ちいいかぁ!!?」

 

 次に無数の触手がメレフに襲い掛かろうとしたその時、デモンティアイズキーからエミーの声が聞こえた。

 

「頭を使おうが何しようが僕たちの柔軟さには敵わないさ。特に僕の素晴らしいほどのか柔らかボディには───」

「まぁ今だけはノってやろう。力を借りるぞエミー!!」

《エミオン!!》

 

 風の力を有したエミオンティアイズキーをドライバーに装着し、それを捻ってその身に新たな装甲を纏う。

 

《悪魔の名はエミー・オン!!30の数字を持ち、その突風は全てを吹き飛ばす!!》

 

 スタンドエミオンの姿へと変わったメレフは風を操り、ギリギリな所で触手を躱して空へと舞い上がる。

 レビトは使徒リアル同様に翼を有しているが、発達した触手を数本も抱えて空を自由自在に舞えるはずがない。メレフはそう思い、エミオンの専用武器の双剣へと持ち替え、レビトの頭上から風の刃を放った。

 

「けけっ!! もしかして上ならやれると思った!!? 優位に立ち回れると思ったのか!!?」

「なに?」

 

 するとレビトは人並み程しかなかった翼を、触手と大差ない程に大きくし、発達した触手で地面を叩いて空へと舞い上がった。

 メレフの放った風の刃を、その見た目から想像できないくらいヒラリと身軽に躱して見せ、彼の元へと凄まじい速度で飛んできた。

 

「速いっ……!!」

 

 メレフはその身を風に任せてレビトの突進を躱そうとした。

 だが、レビトは風を切るように翼を大きく羽ばたかせると、突風が吹き荒れ、メレフの身体はそれによってバランスを崩してしまう。

 風を操ろうとするが、想定以上の風の強さにより、エミオンの力は無力と化した。

 

「けけけけけけけっ!!!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」

 

 あらゆる方向から伸びてきた触手の殴打がメレフを襲う。

 レビトの凄まじい風圧による避けようのない攻撃を受け、上空から真っ逆さまに落ちる。

 

「王、この後はどうするんだい?」

「ひとまず地面への直撃を防ぐ」

 

 そしてメレフは風の力を操り、その風をクッションの様にして自身を優しく受け止め、不安定であった体勢を立て直す。

 

「さて、奴はどうしたものか…」

 

 使徒レビトは特殊な攻撃手段は持ち合わせてはいないものの、肉弾戦においては右に出る者がいない。

 あの時、プリーストが勝てたのも真正面からではなく、光の力を使った遠距離からの攻撃によるものだった。それは源次自身もわかってのことだ。

 ただ相対しているこの状況、前回戦った時よりも遥かに筋肉量が多い。当然、メレフは初戦闘となる訳だが、源次から色々と聞いている為、相手の技等は少しは把握できている。

 が、実際はこちらがテクニックを用いて戦っているのに対し、相手は力こそパワーというデタラメな物理手段でねじ伏せてくる。

 

「……… 王、お前の力はこの程度ではないだろう」

「ゼフォーか」

「……… 風と雷は相性が悪い… だが、今のお前であれば… 相性の悪いこの2つをうまく使いこなすことができるはずだ」

「その2つをどうしろという?」

「奴が物理で攻めてくるのなら…… 俺たちは魔法… 遠距離からの火力で攻めるまで…」

「なるほどそうか。雷は風に弱いのであれば……」

「そうだ… 奴が逃げられないほどの巨大な雷風に沈めてやろう…」

「そうと決まれば…… 行くぞッ!! エミー!!」

 

 そしてメレフはエミーの力を使い、誰もが視認できるほどの強烈な風を周囲に発生させる。

 その風に乗ってレビトの周りを飛行しながら、エミオンティアイズキーをゼフゼロティアイズキーと交換し、雷の力を有した形態「スタンドゼフゼロ」へと姿を変える。

 レビトはそれを見て嘲笑う。

 

「けへっ!! もう何をしようと無駄だ!! お前たちのやわな攻撃じゃ傷ひとつつかないぃぃぃぃぃ!!! 撃ち落として血の噴水を作ってやるっ!!!」

「無駄ではない。俺たちの力はお前の想像を遥かに凌ぐ」

「やってみろぉぉぉぉッッッ!!!」

 

 今にも飛びかかろうとしてきたレビト。

 だが、それよりも早くメレフはゼフゼロの専用武器の槍を作り出し、雷のエネルギーを纏ったそれをレビトに向かって投げた。

 当然、その槍は簡単に弾かれてしまう。

 

「さっきよりも弱いなぁ!!! けけけけけけけけっっ!!!」

「当たり前だ。お前に攻撃する為に投げたのではない」

「け?」

 

 弾かれた槍はエミーの作り出した風に乗り、徐々に上昇し、やがてメレフの手はと戻っていった。

 すると、竜巻の様な風はバリバリと音を立て始め、気づいた時にはレビトの周りには雷と融合した風が吹き荒れる。

 

「…… けっ!! これがどうしたぁ!!? すぐ壊してやるッ!!」

 

 そう言ってレビトが風の中に腕を突っ込むと、強烈な痺れが腕を伝って全身を駆け巡る。慌てて腕を引っこ抜き、再び竜巻の目の中へと戻った。

 竜巻は徐々に間隔を狭め、身体にピリピリとした痺れを感じさせる程に近く付いた。

 

「な、なんだこれ!!? なんでこんな力がッ…!!」

「…… 相性の悪い雷。本来であれば風によって分散され、やがて消える。だが、逆にそれを利用した。威力の低い風の力を広範囲で威力の高い雷、その力を落とさずにうまく分散させる事で本来ならばあり得ないはずの大きな力へと昇格させた」

「そんな細かく動かせる力が一体どこに……!!」

「知らないな。ただ言える事は王としての力が使う度に覚醒している事。そして俺の死も早め──── まぁいいだろう。ここで終わりだレビト」

 

 メレフはゼフゼロティアイズキーのスイッチを押して捻り、槍に強大な雷のエネルギーを集中させる。更に槍にエミオンティアイズキーを差し込んで捻ると、それに被さる様に風の力が纏わりつく。

 すると、レビトを取り囲んでいた風が、今度は急に逆回転をし始める。

 

「うぐぐっ…!!!?」

 

 風は上昇するのではなく、凄まじい勢いで下降し、レビトの身体を地面へと押さえつける。

 

「本来ならばあり得ない風の動き… しかし、それを現実的に変えてしまう。これが王の力──── 眠れ、悲しき使徒よ」

《ゼフゼロシャットアウト!!》

 

 メレフは上空から槍をレビトに向かって投げつけた。槍は下降する風に乗って速さを増し、更に周りを取り巻く雷のエネルギーによって回転数を上げ、威力と貫通力を最大限に高める。

 

「う、うがぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 そんなレビトは触手を使って、無理やり上半身だけ持ち上げた。

 だが、そうした事も束の間、レビトの胸を槍が貫き、全身に強大なエネルギーが駆け巡ると、勢いよく爆発して散ってしまった。

 

「……… うっ…!」

 

 それから恭也は強制で変身が解除されて地面へと落下しそうになるが、エミーがすかさず風を操り、彼を安全にゆっくりと地面へ下ろした。

 全身の力が抜けきっている恭也にエミーとゼフォーは近づく。

 

「はぁ…… はぁ……」

「どうだい? 僕達の力を最大限に使った感想は?」

「悪くない… お前たちよくやった」

 

 息を整えながら恭也はレビトを倒した事に安堵すると、残りの使徒たちが後何人いるのかと考え始める。

 相手の数が多いほど自分の命が持つかどうか…。

 

「悪魔たちの為に……」

 

 恭也はボソリと呟くとそのまま眠ってしまった────」

 

 

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「そうか。レビトがやられたか」

「その様だ」

「…… ゆっくりとしている暇はない」

「王の力が覚醒している。俺たちもただでは済まない」

「だからと言ってどうする事もできん。私たちの目的はただひとつ。ゴエティア様が真の力を発揮されるまで耐える事のみ」

 

 ゴエティアに仕える使徒が2人、アスモとガーズは兄弟である。アスモが兄で、弟はガーズ。

 2人はメレフの戦闘能力を把握する為、しばらく様子を見ていたが、レビトまでもがやられてしまった事で傍観している場合ではないと悟った。

 

「兄上。俺はあの悪魔狩りの方を倒す」

「ならば、私は悪魔の王を倒そう。そちらは頼むぞ」

 

 神の力を取り戻す為、最後の使徒が動き出した───。




以上です!!めっちゃ遅れました!!
多分本編初で武器にデモンティアイズキー差し込んで必殺技しました。はっきり言ってこの仕様を忘れてました。ははっ。

次回、第29解「我が堅き、我の閃光」

次回もよろしくお願いします!!


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第29解「我が堅き、我の閃光」

皆さんご無沙汰しております。
それではどうぞご覧ください。


「はぁ…… はぁ……」

 

 背の高い木々で覆われるそこはエンジェルティアたちが新たに拠点として選んだ場所。つい最近のこと、使徒レビトに襲われ、重傷を負わされた彼らであったが、源次が助けた事で難を逃れた。

 暫く平穏を保ち、傷が癒えてきた頃、新たな使徒が彼らを襲った。

 エンジェルティアのリーダー的存在であるムウテンは仲間たちと力を合わせて必死に抵抗していた。

 

「なんなのこいつ…!!」

「集中するんだ!!─── くっ!!」

 

 闇の力を持つ天使ナナテンは感覚が鋭い。その能力を活かして自ら囮となり、仲間の天使達が攻撃できるように隙を作ろうとする。

 だが、ムウテンや他の天使たちがこうして必死に抵抗しているにも関わらず、レビトと同じ様に歯が立たずにいた。

 それどころかこの使徒に関しては圧倒的な力の差があった。あのレビトをも凌ぐ強大な力だ。

 

「ここまでやって効いていないのか…!?」

 

 全方位から各属性攻撃。どれも本気で打ち込んでいるはずだ。

 使徒は尚も平然としている。避ける動作すらしない。

 

「君の力は一体なんなんだい…… 『アスモ』」

「エンジェルティアのムウテン。最早この程度とは…… いや、この程度になったのは人間に関わりを持ったからだろう」

「…… そうかな。人間は僕達の思っている以上に強い。その人間から僕達は色々と学ばせてもらったよ。エンジェルティアの面々を仲間と認識できたのもとある人間のおかげさ」

「ふむ、そう思うのは結構であるが、その仲間とやらもそろそろ限界が近づいてきているようだが」

「仲間は守るさ」

「その仲間は()、殺した」

「えっ─────」

 

 ムウテンが周りを見ると、天使たちは胸を貫かれて倒れていた。

 少し目を離した隙。ほんの一瞬でアスモはムウテン以外の天使たちに致命傷を与えた。

 

「なんだと……っ!!?」

「…… 私の力はお前たちの属性如きでは傷ひとつ付かない」

「何をした」

「私の能力は単純明白。対象を確実に捉え、そして確実に仕留める。お前の仲間というものに、私は既にマークしていた。安心するがいい。急所は外しているが、いつ死んでもおかしくはないだろう」

「…… 何故、殺さない?」

「お前たちに最後のチャンスをくれてやろうと思ってな」

「最後のチャンス…?」

「ゴエティア様に仕えていたエンジェルティア。本来であるならば始末するべき存在であるが、もう一度その身を捧げるというのなら、そして──── ゴエティア様の生贄となるのなら、私があの方に話をつけに行ってやる」

「断ったら殺される。断らなくても死ぬ…… ははっ、どっちを選んでも地獄かい」

「地獄? ゴエティア様の糧となれるのだ。これは褒美だろう…… あまり無礼な事を言うな」

 

 アスモはムウテンを睨む。目を合わせているだけで気を失いそうなほどの圧力だ。

 そしてムウテンは暫く黙り、エンジェルティアたちの事や源次の事を考え、やがてその重い口を開く。

 

「わかったよ。でも僕にもう1つだけチャンスを貰えないかい?」

「そのチャンスがこれだが?」

「いや、もう1つだ」

「お前にその権限はない」

「確かにそうだ。だけどこれだけは頼む。それをするなら僕は… 僕達はこの命をいくつでも懸ける」

「ほう…… 聞こう」

「あぁ、僕は───────」

 

 

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 恭也は最近元気のないエイルを連れ、人気のない場所へと歩いて向かっていた。付き添いとしてメロクとネゴールにも来てもらい、辺りの確認をしながら進んでいく。

 未だに晴れる晴れることのない悪魔の王としての脅威。人々が自らを敵だと思わないようにするには色々と難しいところがある。

 家族に迷惑をかけ、そして自分は王の使命を背負い命を懸け続ける。まだ10代には重過ぎる代償だ。

 

「…………」

 

 王の使命。そう何度も繰り返し言っている。だが、実際のところ具体的なことがわからなくなっていた。

 悪魔の王として、この世に解き放たれてしまった悪魔を封印し、ただ使役すればいいと思っていた。ところがエンジェルティアという存在が現れ、戦い、勝ち、また次に使徒という存在が現れ、戦う。

 王の使命とは結局なんなのか。王になればいいという訳ではないのだろうか。

 

「偶に声が聞こえる気がする」

「声…?」

 

 エイルは突然呟いた恭也に聞き返す。

 

「王の使命を果たせと。だが、俺は一体何をすればいいのだろう。幾度も戦い、お前たちとも絆が芽生えた。なのにまだ何かが足りない…… 王の使命。本来の意味があるはずだ。俺はその何かを終わらせなければならない」

「恭也様…… 私は王の使命について全てを知っていると思います。ですが……」

「わかっている。記憶がないのだろう」

「お役に立てず申し訳ありません」

「いや、いいんだ。それよりお前は元気を出せ。これは命令ではなく、俺としてのお願いだ」

「はい…」

 

 そうして一向は海辺へと辿り着いた。ここは変な噂が流れ、寄り付く人がいなくなった。実際それは嘘であったが、ゴミなどが散らばり、不気味さがある為、朝は誰もここへは来ない。寧ろ夜の方がいるくらいだ。

 

「さて、ここで休憩を取ろう。任せたぞネゴール」

「任せとけ」

 

 ネゴールは砂を操り、簡単なテーブルや椅子などを自在に作り出した。

 そこへ持っていた風呂敷を広げ、クッキーなどの甘味を皆が食べやすいように広がる。

 

「ここにいる奴だけだ。特別だぞ」

「こりゃ美味そうだな」

「ふふふっ、久しぶりに甘味なんて食べるわね」

 

 そしてメロクとネゴールはそれを食べ始めたが、エイルは椅子に座ったまま俯いていた。

 

「エイル、お前も食べろ」

「ですが……」

「いつまでも下を向くな」

「恭也様…… ですが、私はふっ───!!?」

「これでも食べて落ち着け」

 

 何か言おうとしたエイルの口に恭也はクッキーを詰める。

 それにエイルは顔を赤らめ静かに食べ始めた。

 

「さて…… メロク、ネゴール。今の俺を見てどう思う?」

 

 そう恭也が言うと、その質問に答えようとしたメロクだったが、ネゴールがそれを遮って代わりに答えた。

 

「正直、不思議な事だがお前からは精気が満ち溢れている」

「そうか… 俺もそう思っていた」

「そうだろうな。お前の力が日に日に力を増しているのを感じる。わしらも本来の力を取り戻してきた。だが……」

「あぁ、自分では問題ないと思えるほど、王の力が強大になって、今まで弱っていた身体が嘘のように元気を取り戻した。だが、実際は身体の限界が来ている。レビトとの戦いが終わり、その直後、驚く隙もない程に身体が疲労し、気が付いたら家にいた」

「しかし、お前は今なお生きている。それでも十分な気がするがな」

「確かにそうだな…… 残り数回で死ぬのなら、今を… お前たちと長く…」

 

 エイルが「恭也様」と言い掛けたその時、後ろからゾッとする気配を感じとった。

 4人はそちらの方に急いで振り向き、すぐさま戦闘態勢に入る。

 

「俺は『ガーズ』。王と配下の者たちよ。ゴエティア様の命により、お前たちにはここで死んでもらう」

 

 

 -----------------------------------------

 

 

「おい嘘だろ…」

「── 源次!! あれ見て!!」

 

 ジェルエが指を差した方向にはムウテンが倒れていた。その周りは激戦を繰り広げた事で生じた穴や木の残骸がある。

 源次はこの状況が前にもあった事を思い出し、それがすぐに使徒である事がわかった。だが、この状況が前とは違い、圧倒的不利の中で戦った事が見て取れる。その証拠にムウテン以外の姿が見えない。

 これになんとも言えない感情を抱きながらも、源次はムウテンに近づき詳しい訳を聞こうとした。

 彼の身体はボロボロで吐く息も細かった。

 

「ムウテンしっかりしろ!!」

「……… あぁ… 大丈夫かもね…」

「大丈夫な訳ねーだろう… 他の奴らは?」

「死んだよ」

「……っ!!」

 

 やっぱりそうかと源次は歯を食いしばる。

 ムウテンは深く息を吸いながら続ける。

 

「僕も馬鹿な事をした…… 今回の使徒はレベルが違ったよ。僕たち7人が一斉に飛び掛かっても、彼にとっては僕たちは耳元を飛ぶハエ同然…… 全く歯が立たなかった」

「お前だけが生き残ったのか…」

「なんとかね…… でもアレがなかったら僕はとっくに死んでたさ」

「何?」

「あの時────」

 

 

※※※※※

 

 

「僕は──── 僕含めた7人を源次に託して君を倒す」

「…… 何を言っている?」

「それがチャンスだ。1回限りのね」

 

 ムウテンはアスモにその条件で戦おうと言い出した。

 

「お前は何を言っているのか自分で把握しているか?」

「わかっているからこその条件だ」

「群れが1つの束になったところで何も変わらない。その理由は明白だ。ただの足し算に過ぎない」

「いや違う。掛け算だ」

「根拠は?」

「僕たちは彼に仲間の大切さを教わった。仲間がどれだけかけがえのない存在かを… そしてそれがどれほどの力を生み出すかを……… 君がもし最後のチャンスとしてこの条件を呑むのならそうしてほしい。でも、呑めないというのであれば…」

「あれば?」

「……… いや、他に選択肢はないか。何せこれが最後だから」

「ふむ……」

 

 アスモは少し考えてから答えを出した。

 

「いいだろう。ただしお前たちが負けたら…… わかっているな?」

「いいよ。ゴエティア様の糧になろう」

「その源次という人間もだ」

「……… わかった」

「では、また明日ここへ来るとしよう。時間は今から24時間後だ」

 

 そうしてアスモは去っていった─────。

 

 

※※※※※

 

 

「─── ごめん源次… 君を売るような真似をしてしまった…」

「そんなこと気にすんな。それより今の話が本当ならさっさと契約しちまおう」

「君は本当に話が通じる」

「はっ、一度契約した仲だ… まぁ最初はいいもんじゃなかったがな」

 

 そして源次は再びムウテンと契約を結ぶ。アスモを倒すという条件だ。

 しかし、源次にある疑問が浮かび上がる。

 

「…… なぁ、ムウテン」

「なんだい?」

 

 徐々にベルトに吸収されていくムウテンを見ながら、源次は自分に流れてくるエネルギーに違和感を覚えた事を伝える。

 

「何でこんな悲しいんだ?」

「えっ?」

「お前…… 他のエンジェルティアの奴らはどうしたよ」

「………」

「話せ… お前が計画してる本当の事を」

「…… ははっ、やっぱり言うしかないよね──── 僕たちは今1つの状態、つまり僕の身体に6人のエンジェルティアが入ってる」

「それは何となくわかってるんだよ。だけど……」

「あぁ、僕たちはこの怪我だ。例え時間が経っても完全に治すことは不可能だろう。だからそれぞれのエネルギーをかき集めて1つの身体に移動した。そしてこの力を君に託すことで──── 僕たちは消える」

 

 ムウテンのその言葉を聞き、源次は拳を振り上げるが、その手をゆっくりと下ろして硬く握りしめる。

 

「他に方法はなかったのかよ…」

「ない。こうなる運命だった」

「くそっ…!!」

「僕たちは確かに消えてしまうけど、いつまでも君の中で生き続ける。源次…… 僕たちの力を使ってくれ。そして仇を取ってくれ」

「あぁ…… 必ず」

 

 そしてムウテンは源次からジェルエに目線を移す。

 

「ジェルエ」

「…… なに?」

「すまなかった……」

 

 今まで一度も言われたことのない謝罪。それはたった一言だけだったが、ジェルエにとっては重く、辛く、そして心に響く言葉だった。

 

「…… ううん… 大丈夫」

「そうか…… 君は本当に優しい……」

 

 半分以上身体が消えかかったムウテンはもう一度2人の顔を見ると、少し微笑み一言だけ告げた。

 

「ありがとう───」

 

 そうして彼は光となってベルトに吸収される。

 そこにはもう人間と子供の天使が居るだけだった。

 

「…… ジェルエ」

「わかってる」

「絶対に奴を倒す」

「うん…!!」

 

 エンジェルティアが残した未練と誇りを背負い、決意を新たに源次はその場をあとにした─────。




またまた遅れてました。

次回、第30解「我の意志、我の怒り」

次回もよろしくお願いします!!


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第30解「我の意志、我の怒り」

皆さんご無沙汰しております。
それではどうぞご覧ください。


(何故光の速さについて来る…!!)

 

 仮面ライダーメレフ スタンドメローラ。

 この形態は光の力を操る事ができ、数秒間だけではあるが、自らのスピードを光速にまで上げられる。

 だが、ガーズは光の速度についてきた。

 そしてメレフの維持できる光速は数秒で終わったが、ガーズは光速を保ったまま移動を続ける。

 

「しまった…!!」

 

 ガーズは光速の蹴りを放つ。

 その閃光の蹴上げはメレフの腹部を捉え、彼の身体を「つ」の字に変えるほど曲げてしまう。

 そうしてメレフは更に上空高く吹き飛ばされた。

 光速で移動するガーズは瞬時に回り込み、地面に向けてメレフを踵落としで落下させる。

 

「ぐはぁっ……!!!」

 

 一瞬で地面に激突するメレフ。

 それを追撃しようと光の速さで向かおうとするガーズはその動きをピタリと止める。

 

「ほう… 流石は悪魔の王の後継者であると言えよう。受け身を取ったか」

 

 仮面ライダーメレフ スタンドネゴレイ。

 ネゴールの属性は土。それは土だけに止まらず、岩や石、コンクリートでさえも土という地面に該当するものであるならば何でも操ることができる。

 現代社会においてこれほど強い能力はとても頼もしい。

 今もガーズに吹き飛ばされた瞬間、その一瞬の間にフォームチェンジを行い、ネゴレイによる地面の操作で受け身を取ってみせた。

 

「だが…… 砂は砂か。なるべく散らそうと思ったが、あの一瞬でそこまで操作はできないか… ごほっ!」

「おい、王! 大丈夫か!?」

「あぁ、なんとかな……」

「わしの力でどうにかなる相手ではない…… が、メロクでも追いついてくるとなるとなぁ…」

「スピードもパワーも桁違いか」

 

 メレフは砂をかき集め、クッションの様にしようとはしたものの、砂を1箇所に固めては最早それは地面に等しい。衝撃を吸収しきれない。

 こうして敢えて散らばらせては見たが、多少どころか結構な衝撃をくらってしまった。

 

「あいつの能力はそれか?」

 

 メレフがそう思っていると、上空から凄まじいスピードでガーズが向かってきた。

 それに慌てて目の前に岩壁を作ったが、ガーズの前では最早無意味。

 ガーズは岩壁を拳による一撃で破壊すると、そのままメレフの顔面に強烈なパンチをくらわせる。

 その一撃にメレフの顔の装甲にヒビが入る。

 

「ぐはぁっ…!!」

「まだ次があるぞ」

 

 そうしてガーズの右腕がみるみるうちに膨れ上がる。

 それを見たメレフはガーズの能力に察しがついた。

 

「肉体強化か!!」

「だからどうしたというのだ」

 

 なんだこの重さは。

 右腕が肥大化したガーズのパンチは先ほどのものと比べようがないほど強烈だった。

 メレフは後方に大きく吹き飛ばされ、その勢いのまま変身が解除される。

 

「うぐぅ……っ…!!」

「王よ。最早この程度だったか」

「ガーズゥ……!!!」

「冥土の土産にお前達に教えておいてやろう」

「なにをだ」

「エンジェルティア達は全滅した」

「………… なんだと……?」

 

 その言葉に嘘偽りがない事はわかった。

 エンジェルティア達が全滅しただと?こいつは何を言っているんだ?

 

「俺の兄、アスモの手により、奴らは粛清された」

「ふざけるな……」

「これは神に背いた罰だ。そしてお前達も神に背き、我々の計画を阻止しようとしている」

「お前達の計画だと?」

「これは本来言うはずもない事。だが、冥土の土産にエンジェルティアが全滅しただけでは、あの世へ行ったところで手持ち無沙汰ではあるだろう。特別に教えてやろう」

「……?」

「我々の計画それは──── 全人類の滅亡である」

「なっ……!!!」

 

 人類滅亡。

 こいつらの神は人間を消し去るつもりなのか?

 

「なぜだ… 何故そんなことをするッ!!!」

「不要だからだ。ゴエティア様にとって人類とは価値のない異物。存在そのものが罪なのだ」

「ふざけるな貴様ッ…!!」

「これが神の意志だ。俺がどうこうする訳ではない。神の意志は絶対なのだ」

「そんなものが神の意志だと…? この世界に住まう者たちにお前達は理解しようとしたのか? 何でもかんでも自分の思い通りにしようとしているだけの我儘ではないのか!!?」

「黙れッ!!」

 

 恭也はガーズに腹部を力強く踏みつけられ、身動きが取れず、呼吸するにも息をうまく吸えない。

 

「お前達の様な人間では理解できない。神はそれほど絶対だ」

「…… であるならば、やはり神の方が不要だ」

「なんだと…?」

 

 そして恭也は倒れているエイル、ネゴール、メロクに向けて叫んだ。

 

「エイル!! ネゴール!! メロクッ!!」

「うぅ……」

「お前達は俺に従うのだろう!!? ならば今、俺にもう一度力を貸せッ!! 俺の命がどうなろうと構わない!! 俺はガーズを倒したい!! その為にはお前達の力が必要だッ!!」

「恭也様……っ…!!」

「こいつらの様な身勝手で…… 人類を…… エンジェルティア達を…… デモンティア達を…… 命だと思わないこいつらを俺は許せんッッッ!!!」

 

 ガーズは更に脚に力を込める。

 

「ぐわぁぁぁぁあ………!!!」

「やはり悪魔の王よ。お前の思想は危険だ。ここで排除しておく方がいい」

「エイルッ!!! ネゴール、メロクッ!!! こいつを…… 倒すぞッ!!!」

 

 恭也の言葉に彼らは立ち上がった。

 そしてガーズがトドメと脚を持ち上げた所で、彼らの力が有するデモンティアイズキーが光りだす。

 怒り、憎しみから生まれた力。

 だが、その力は固く結ばれる絆となって、彼らの力を引き上げる。

 

「変身ッ!!!」

 

 恭也はデモンドライバーにネゴレイティアイズキーを差し込んで捻り、スタンドネゴレイへと変身する。

 それからメレフはサッと立ち上がって踏みつけをかわし、スタンドネゴレイの専用武器である岩の拳をガーズに喰らわせる。

 

「うぐぉっ…!!?」

 

 自らの拳と同じ様に凄まじく重い一撃に、ガーズは受け身を取らないまま吹き飛ばされた。

 デモンティアイズキーの光は今も尚、強く光る。

 

「こ、この力は……!!? まさかリアルとレビトがやられた例の……」

「そうだガーズ。お前達では到底理解できない悪魔と人の結ばれた力だ」

「そんなものは存在しない…… ただの人間が調子に乗るでない」

「お前達の力がどれほど醜く、その考えがどれほど浅はかか。その身を持って知れッ!!!」

 

 

 *****

 

 

 その後の展開は圧倒的と言えるほど、メレフとガーズには差が生まれ、メレフが優位に立ち、自身の能力を最大限に発揮した凄まじい猛攻を続けていた。

 

「はぁッ!!」

「ぬぐぅうッ……!!」

 

 スタンドネゴレイによる雨の様に降り注ぐ砂。

 まるで八岐大蛇の如く、砂の首が何本も唸り、ガーズに攻撃するチャンスを与えない。

 先ほどの力とは比べるまでもなく、全く別物と言える変貌を遂げていた。

 

「絆の力だと? たかが人間の言う妄想がここまでの脅威となり得るのか?」

 

 ガーズは信じたくはなかった。

 神ゴエティアの様な最も高貴な存在が人間を愚弄したのだから、それが真実なのだと何一つ疑うこともなかった。

 この世に神を超える力はないと、人間は下等な生物だと。神への信頼が誰よりも厚く、神の手により造られ、神の力を与えられた存在の自分が敗北する筈もない。

 ましてや絆などという絵空事を信じるデモンティアの王が許せない。

 

「兄上…… 俺は信じない。神の命により、この下劣な存在を滅ぼす」

「やれるものならやってみるがいい、ガーズ。今のお前では俺たちの真の力の前に圧倒されるのみだ」

「その口をまずは引きちぎってくれようッ…!!」

 

 ガーズの腕が膨れ上がって血管が浮き出る。血管から赤い血が吹き出す。

 使徒であっても生物なのだ。

 と、戦いの最中でも実感できた。

 

「ネゴール!!」

「おうッ!!」

 

 そしてメレフは拳が当たる瞬間、ガーズの足元の地面を操り、その地面のみを突出させて上空へと吹っ飛ばした。

 手を振り回し、周りの砂をまるで嵐の様に激しい渦へと変貌させる。

 その砂が身体にまとわりつくガーズは、完全に身動きを封じられてしまった。

 

「はぁぁぁぁぁぁ──────」

 

 メレフは粘土を捏ねる様に周りにある地面に該当する全てを集め、目の前に巨大な土の球を作り出した。

 土属性のエネルギーが最大限に高まったそれを、身動きの取れないガーズへと発射する。

 

「お、大きいッ……!!」

 

 その大きさはガーズの身長を遥かに超え、包み込めるというよりも飲み込まれると言った方がいい程、巨大で高密度の塊が彼を襲った。

 更に天へと舞い上がったガーズ。雲よりも高く上がっただろうか。

 ガーズは態勢を立て直し、忌まわしきメレフの方を見るが、既にその場には誰1人として生物はいなかった。

 

「─── こっちだ。ガーズ」

「はっ……!!!」

 

 メレフはスタンドメローラにフォームチェンジし、光速でガーズの後ろへと回り込んでいた。

 背後を取り、剣をガーズに突き立てる。

 だが、ガーズは尚も諦めてはいない。

 

「俺はまだ終わってなどいないッ!!」

 

 メレフと同様に光速で移動し、距離を取ると、両腕を巨大化させ、拳を固めてから前方へと突き出した。

 すると、空気を揺らす衝撃が発生し、その衝撃波はメレフを襲った。

 

「くおっ…!!」

「神の為にッ!!」

 

 ガーズは光速でメレフの元へと行き、最大まで固めた拳でメレフの胸を殴った。

 ─── が、その拳がメレフに当たることはなかった。

 

「なんだとッ……!!?」

「その拳では最早、俺を捉えることはできん」

「悪魔の王ッ!!!」

「終わりだ」

 

 そしてメレフは光速に移動しながら、逆手に持った剣でガーズを縦横無尽に斬りつける。

 本来ならば光速化できる時間は僅かなのだが、今のメレフは数十秒と動ける様になっている。

 それでもたったの数十秒。少ないかもしれないが、光速の世界でその秒数があればお釣りが来るだろう。

 この止まることのない猛攻に、ガーズは内心で想像してしまった。

 自分が敗北する姿を。

 

「─── 眠れ、悲しき使徒よ」

《メローラシャットアウト!!》

 

 デモンドライバーに差し込まれているメローラティアイズキーのボタンを数回押し、光のエネルギーを最大まで剣に溜め込み、キーを捻り、光を纏った剣で一閃する。

 ガーズは左肩から右脇腹に掛けて切り裂かれ、そこから光が吹き出した。

 

「神よ……… 申し訳ございませ─────」

 

 そしてガーズは光と共に爆発し、この世界から跡形もなく消え去った。

 

「…… うぅ………」

 

 その時、勝利したメレフだったが、ガーズから受けたダメージにより、変身解除され、空から真っ逆さまに地面へと落ちてしまう────。

 

 

 *****

 

 

「───…… ここは……?」

「よう、起きたか」

「源次か…?」

「聞いたぜ恭也。やったんだな」

「あぁ」

 

 恭也は自室で寝ていた。

 どうやらエイル達が助けてくれた様で、その後も何かあった訳ではなく、無事自室で回復を図ることができたらしい。

 互いに使徒に勝った事を喜び、それから互いの情報を交換した。

 やはりエンジェルティアが滅んだのは確からしい。

 

「エンジェルティア達と和解できた…… これからだったはずだッ…!!!」

「あぁ、ふざけやがってッ!!! 見つけたら必ずぶっ倒してやるッ!!!」

 

 2人は怒りについ声を荒らげてしまうが、エイルやジェルエが彼らを宥める。

 

「…… アスモか。ガーズの兄らしいが、エンジェルティアをたった1人で倒すとは相当な実力者だ」

「そのガーズ以上って可能性あるな。ここまで強いと…… 最後って感じするぜ」

「最後の使徒か……」

「使徒に最後もあんのか知らねーけど、とにかくあいつだけは絶対に許せねぇ!!」

「そうだな。必ず奴を倒すぞ」

 

 アスモを倒す為、健闘を祈る2人の元に闇からンードゥが姿を現した。

 ンードゥは2人が驚いている事には触れず、恭也を見て一言。

 

「我に着いて来い」

 

 そう言うと再び闇の中へと消えていった。

 闇はその場に留まり、恭也が来るまで開いている様だった。

 

「話ってのはなんなんだ? 恭也、大丈夫かよ……?」

「いや…… ただ行くしかない。とても重要な事であるのは確かだ」

 

 恭也は重い身体を引き摺りながら、闇の中へと入っていく────。




皆さん大変お久さしぶりでございます。ごめんなさい。
現在、ポケモンエレメントというのをやっておりますが、あれは時間が空き、それの息抜き、又は気分転換に書いた作品となってます。
そしてこれにより私のオリ仮面ライダーシリーズようやく復活となりました。
更新間隔が空かない様に努めていきますので、これからもどうぞよろしくお願いします。

では次回、第31解「我の明日、我と血」

次回もよろしくお願いします!!


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第31解「我の明日、我と血」

皆さんご無沙汰しております。
それではどうぞご覧下さい。


 ンードゥに呼び出され、闇の中へと入った。

 闇の中は何もなく、どこを見ても真っ暗であり、僅かな光は恭也の入ってきた場所から差し込むのみ。

 その光も恭也の入場と同時にすぐに消える。

 自分が今どの位置にいるのかも把握できない。

 

「王よ。肉体の疲労はどうだ?」

「ンードゥか…? あぁ、寧ろ疲労というより何か力が湧いてくる様だ」

 

 闇の中でンードゥの声が聞こえるが、直接脳内に語りかけてくる様な感覚。

 声があちこちから聞こえてくる。

 

「お前さんの力が解放されて来ているのは大いに結構。だが、身体もそろそろ限界が来ているようじゃ」

「ワナイズか」

「変身できてもあと『2回』が限界じゃろう」

「2回か……」

「意外と驚かんのじゃな?」

「もう察しがついていた。今更驚くことではない」

「ふぉっふぉっ、成長しておるわい」

 

 ワナイズも闇属性。何処かにはいるのだが、ンードゥと同じ様にどこからともなく聞こえる。

 そして恭也は察しがついた。

 この2人がここにいるということは例の話をする為なのだと。

 

「本題を話せ。俺をここに連れてきた理由…… 絆の話だろう」

「左様」

「お前達ともそれを極めることが出来れば、俺は死の運命を逃れ、強大な力を得る事になるはずだ」

「それに関しては問題ない。我々は既にそれを結んでいる」

「なんだって?」

 

 絆の力は戦いの最中に発現した奇跡的なものだ。

 それをンードゥ達が既に結んでいるとはどういうことなのだろうか。

 

「ンードゥ。詳しく話を聞かせてくれ」

「……… お前の力がより強大になった事で、魂の器が広がった。前に一度会った時は3回ともう1人の男が告げた事だろう。その影響によりお前は寿命が少しばかり伸びている。そして……… それにより我の抜けていた記憶が元に戻りつつある」

「記憶とは?」

「悪魔と天使がまだ戦争をしていた時だ」

「……ッ!!」

 

 神と神、悪魔と天使が争っていた時代。

 その時の記憶は皆消えてしまっている様だが、ムウテンが少しだけその事について話していたのを思い出す。

 

「スレイマン。この名を聞いたことはあるか?」

「あぁ、ムウテンが話していた」

「この神はかつて我々の神として、天使の神であるゴエティアと戦った。この2体の神が争った理由。それは人間が関係している」

「人間だって?」

「そうだ。スレイマンは人間を愛していた。か弱き生命体、その日を生きるのもやっとな彼らが互いに力を合わせ、苦難を乗り越え、新たな文明を開花していくその姿を、神はこの上なく愛しく思っていた。だが、ゴエティアは人間の醜さを知っている。何かを得る為に争い、奪い、殺す。見るに堪えないあまりの醜さに奴は人間という存在そのものが、この世界にとって不必要だと悟った」

「だから今、この世界にいる人間を滅ぼそうとしているのか…… 身勝手過ぎるッ…!!」

「それが神の考えなのだ」

 

 神の意志、という言葉をガーズが言っていた。

 そこまで神がえらいのか。神は何を得たいのか。自分勝手な神こそ醜いのではないのか?

 

「そして我々デモンティアとエンジェルティア戦争が始まり、最初の数年は決着のつかない戦いをしていた……… だが、デモンティアは劣勢を強いられる事となった」

「なぜ?」

「我々の力は同じだとしても、神の力は違う。そしてスレイマンは誰よりも慈悲深い神だったことが災いし、ゴエティアに…… 人間の人質を取られてしまったのだ」

「そんな卑怯な…!!」

「案の定、スレイマンは敗北した。なんとも情けない最後であったが、誇れる存在であった事は間違いない」

「…………」

「それからは一瞬だ。地盤が崩れた事で、デモンティアも早々に敗北した。そしてゴエティアにより記憶を抹消されたのだ」

 

 ゴエティアにより?

 ゴエティアがンードゥたちの記憶を消したのか?

 

「……… そしてここからが真実だ」

「真実?」

「スレイマンの敗北後、我々は記憶を失った。そこまでは知っている筈だ」

「あぁ、記憶を無くして彷徨っていた頃、前王…… 初代悪魔の王にあったのだろう?」

「そうだ。前王は()()我々を集めたのだ」

「再び? どういう事だ? 前王はお前達とは初対面のはずだ」

「初対面などではなかった。これは…… 必然、運命であった」

「つまり……」

「つまり我々の王、初代デモンティア王の正体。それは記憶を消され、新たな人としての道を歩まされていた────『スレイマン』だ」

 

 

 *****

 

 

「変身ッ!!」

《アンロック!!》

《祈る!!願う!!導きのままに!!プリースト!!》

 

 源次は仮面ライダープリーストへと変身し、街に突如として現れた怪人達と交戦していた。

 この怪人達はゾンビルやダテンといった使い捨ての雑魚といった具合に、皆それぞれ特徴もなく同じ見た目をしている。

 しかし、その強さはゾンビルやダテンの比ではなく、誇張なしで言うならば、現在の恭也のデモンティア1体に匹敵する力を持つだろう。

 

「─── だぁぁぁぁぁぁあぁぁっっっ!!! クソッ!! 数が多過ぎんだよ!!」

 

 そう言いながらプリーストは持っている杖に光のエネルギーを一気に溜めて空へと打ち出した。

 空へ放たれた光は怪人達を追尾し、身体を貫通し、的確に多くの怪人を倒していく。

 

「へっ…… これで終わりだッ!!」

《プリースト!! パニッシュ!!》

 

 それからプリーストはドライバーのキーを捻り、杖の先端に光を集め、タコの脚のようにそれを伸ばすと、鞭を振るうかのようにくるりと回転し、全方位を一気に殲滅した。

 

「まぁそれなりに手強かったが、まぁまぁまぁまぁ…… 俺にかかればこんなも─────」

 

 瞬間、プリーストは何かを察知して横へと飛んだ。

 だが、彼は避けれなかった。何かが胸に当たる衝撃を感じた。

 

「ぐ、ぐおぉぉぉぉぉぉぉッッ!!?」

 

 プリーストは思いっきり身体を捻り、その何かを無理やり別方向へと逸らした。

 何かは勢いよくどこかへと飛んでいったが、胸の装甲はとてつもない威力で抉られてしまっている。

 

「危ねぇ…… あのまま避けてなかったら死んでたぜ……」

 

 いや、そもそも当たっている方がおかしいのだ。

 彼の直感とプリースト自身の機能により、当たらない位置に、最低でも掠るくらいに素早く避ける事ができていたはずだ。

 あの時、それをしていた筈なのに、何かは急に起動を変えてプリーストの胸部に突き刺さった。

 

「こんな馬鹿げた事すんのはよ。アレしかいないだろうが…… 出てきやがれッ!! 使徒さんよッ!!」

 

 そう言うと何処からともなく使徒は現れた。

 

「─── 『カミナクシ』をよく1人で倒せたな。どうやら実力はあるようだ」

「お前は……」

「私はアスモ。お前の仇だ」

「……っ!! つーことはエンジェルティア達をやったのはお前か」

「そうだ」

「態々出てきてくれて助かるぜ。探す手間が省けた」

《ホリージェル!!》

《アンロック!!》

《聖なる!!鐘を!!皆に送ろう!!holy bell!!スタンドホリージェル!!》

 

 プリーストはスタンドホリージェルへと変身し、アスモに向かって無数の光の弾を発射する。

 そして翼を広げ、絶対に避けられないように全方位から包み込むように光の弾丸を放ち続けた。

 

「蜂の巣になりやがれッ!!」

 

 弾は小さく。それでいてエネルギーを高密度に。

 そんな凄まじい光を凝縮した弾丸を何発もアスモへと食らわせる。

 無数の光でアスモの状態が確認できないが、少なからずこの量を食らえばひとたまりもないはず。

 

「─── 待てよ…?」

 

 プリーストは違和感を覚え攻撃を止めた。それによりアスモの状態が確認できる。

 アスモを包んでいた光。その隙間から確認できた。光の弾丸は数センチ付近でバリアの様なもので封じられていたのだった。

 

「なんだってッ───── がはっ!!? こ、これは………!!?」

 

 また何かが飛んできて、プリーストの腹部に直撃する。

 またしても身体を捻り軌道を逸らそうとしたが、今度は全くと言っていいほど逸れはしない。

 それどころか段々とプリーストの腹に減り込んできていた。

 

「くそっ!! なんなんだこれはッ…… ごぽっ…!!」

 

 プリーストはマスクの中で血を吐いた。

 それと同時に何かは腹を突き抜けて彼方へと飛んでいった。

 

「大丈夫!!? 源次!!?」

「あ、あぁ…… 大丈夫だジェルエ………」

 

 ジェルエに心配されながら、プリーストはゆっくりと地面に降りて膝をついた。

 アスモの方を見ると、彼は何事もなかったかの様に首を鳴らし、手を銃の様に構えながらプリーストの方へと近づいてきた。

 

「なんだこの能力はッ!!」

 

 そしてプリーストは杖を構え直し、先端をアスモに向けてそこからビーム放つ。

 ビームは確実にアスモに当たったのだが、アスモがいる部分が膨れ上がり、次第にビームが裂け始めた。

 

「な、なんだ……」

 

 手元の杖が震える。ビームの真ん中を何かが突き抜けてきているのを感じる。

 

「避けなきゃまずい…… 確実に次は…… 殺される…!!」

 

 何かが近づいてくるにつれて、杖の震えが激しくなっていく。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!!」

《ホリージェル!! パニッシュ!!》

 

 プリーストは何とか杖を片手で持ち、もう片方の手でドライバーのキーを捻って、光エネルギーを極限にまで高めてビームの威力を跳ね上げる。

 そして杖を思いっきり横へとスライドさせて、突っ込んできた何かを光に閉じ込めたまま吹っ飛ばす。

 

「はぁ…… はぁ……」

「お前に休んでいる暇があるのか?」

「くっ……!!」

 

 今度は避けようもなかった。

 が、杖を咄嗟に前に出した事でそれが勢いを潰す形となり、装甲を破って少し突き刺さる程度で済んだ。

 そのせいで杖は折れてしまい、いよいよ守るものがなくなってしまった。

 

「お前…… なんだこの能力は…」

「この力はゴエティア様に頂いたものだ。私は狙った獲物を確実に仕留める。いついかなる時も、何処にいようと、どの様な手段を使おうとも必ずだ。しかしながら、お前が初めてである。私の攻撃を3度も避けるとはな」

「自動追尾弾って事かよ……」

 

 先ほど手を銃の様に構えたのも、アスモは指先から弾丸を放ち、自身が決めた標的に自動で追尾させる事ができるからだ。

 弾丸は1発だけしか発射できないが、標的を再度指定し続ける事で、バリアを張ったかの様に攻撃を攻撃によって潰し、自身を守ることも可能。

 この芸当ができるのもアスモが優れた観察眼と洞察力、圧倒的反射神経、そして弾丸に込められた高密度のエネルギーからなせる技だからだ。

 

(さて、困ったぜ…… 腹に穴が空いてかなりやばいが、運悪く…… いや、この場合は運良くもう1発刺さっちまった。内臓に達してるか……? だとしても出血してるのはまずい。プリースト…… なのに回復能力ないってどういう事だよ…… このままだとマジに死んじまう……)

 

 そんなことを考えている間にアスモが近づいてくる。

 

「こんな所で死ぬ訳には……!!!」

「さらばだ。プリースト」

「… くっそ…… 畜生ッ………… うわぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!!!」

 

 ──── 無慈悲な弾丸が放たれた。




「もう1人の男」に関しては「第25解」をご覧下さい。
ちょっと出てきてます。
あといつもの如く遅くなってます。申し訳ないです…… だから同時進行はダメって決めてたのに(今更)

次回、第32解「我と友、我の天」

次回もよろしくお願いします!!


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第32解「我と友、我の天」

皆さんご無沙汰し過ぎております。
それではどうぞご覧ください。


 アスモの放った弾丸。それはプリーストに確実命中した。

 だが、弾丸は不思議な事にプリーストの目の前で止まっていた。どう足掻いても逃げられないゼロ距離で放った弾丸が空中に留まっている。

 

「私の弾丸が……!? 一体何が……」

「はっ───!!」

 

 プリースト、アスモにもそれは見えた。

 それは跡形もなく消滅させられてしまった筈のエンジェルティアの面々であった。

 うっすらと今にも消えそうな光の集合体。

 だが、その光はあまりにも暖かく、それでいてとても強い意志を感じる。

 

「お前たちどうして…!!」

「君が僕らを呼んだんだ」

 

 それに答えたのはムウテンだった。

 

「源次、僕たちは消えてしまった。だけど君の想いが、僕たちをこうして呼び戻してくれたんだ」

「でも、これは……」

「そう…… 完全な復活とは言えない。ただの形さ。それでも僕たちはここにいる。さぁ、使ってくれ源次。奴を倒そう。僕たちの力でッ!!」

 

 プレイドライバーにエンジェルティアたちの想いのエネルギーが集約し、ドライバーはこれ以上にないほど光り輝き出す。

 更に全身が輝きを放ち、スタンドホリージェルの見た目は変わらないが、そのエネルギーの増幅量は、アスモも少しばかり驚いてしまうほど強力であった。

 ただそれだけである。何も変わらない。と、アスモは最初こそそう思っていた。

 

「ほう、先ほどとは違う様だが…… しかし、特段変わったというわけではない。力の差は埋まらないままだ」

「……… 果たしてそうかな?」

「なに?」

「お前に見せてやるよ。俺たちの絆をって奴をなぁ!!」

 

 すると、プリーストは自身を何十人と分裂させ、一瞬にしてアスモの周りを囲う。

 

「ふんっ…!」

 

 アスモはそれをモノともせずに弾丸を放つ。

 が、その弾丸は全てプリーストの身体をすり抜けた。

 

「確実に捉えたはず…… 一体何が……」

 

 そう、アスモの弾丸は絶対に当たる。相手を死の淵まで追いかけ、確実に急所に当ててしまう。

 つまり分裂したとしても、自動的にそれが本体だとわかってしまうはずなのだ。

 しかし、今打った弾丸に手応えがまるでなかった。まるで液体に向けて放った様な────。

 

「まさか貴様……!」

「そうだ!! ヒイテンとフウテンの能力だぜッ!!」

 

 ヒイテンは分裂。フウテンは液状化。

 これにより分裂して撹乱すると共に、本体含めて分身も液状化してしまう事で、アスモの攻撃を無効化しつつ、分裂による一斉攻撃を可能としている。

 

「くらいやがれ!!」

 

 そしてプリーストは杖の先から光のエネルギーをレーザーの様に放出し、それと同時に分身達もアスモに向かってレーザーを放つ。

 アスモはそれに対して弾丸を身の周りに展開させ、各方位のレーザーを弾き飛ばす。

 

「無駄だ。お前達がいくら束になろうと、私の身に攻撃が通ることはない」

「まだまだァッ!!!」

「……!!」

 

 続いてプリーストは姿を消した。

 これは透明化。ミイテンの能力である。

 

「姿を消した所で何の意味も──── むっ…!!」

 

 上空から巨大な何かが降ってきた。巨大である事がわかるほどの質量にアスモは思わず両手を使って押し上げようとする。

 だが、それはかなりの重みであり、思わず膝を地面につけてしまった。

 

「ぬぐぅ……!! 小癪な!!」

 

 アスモは片腕で何とか耐えながら、もう一方で弾丸を放つと、それはプリースト目掛けて飛んでいき、液状化で無効化しているとは言えど、アスモの本気で放った弾丸に思わず透明化を解除してしまう。

 そして巨大化していた身体も縮まって元の姿へと戻った。

 

「この力は……」

「ヨオテンの巨大化。イツテンの肉体強化だ」

「私に膝を着かせるとは…… 生意気な人間め」

「もう俺は無敵だ、アスモ。今の俺たちには勝てないぜ」

「減らず口をッ!!」

 

 アスモは弾丸を放つが、プリーストはヒョイっとそれを避ける。

 弾丸はこれでもかと何度もプリーストを追いかけるも、その弾丸は彼に当たることは決してなかった。

 

「な、なぜ当たらない…!!」

「わかってるだろ。あの2人の力だよ」

 

 ムウテンの予知。そしてナナテンの超感覚。

 これによって液状化しなかったとしても、先読みでき、尚且つ感覚が研ぎ澄まされているので攻撃が当たる事はなくなったのだ。

 この感覚について身体が来られるのも肉体強化能力のおかげである。

 エンジェルティア達全ての力が使えるプリーストに最早隙はなかった。

 

「ぐぅ…!!」

 

 アスモはわからなかった。全滅させたはずのエンジェルティア達が、こうして再び自分の前に現れ、プリーストに力を与えただけなのに。

 何故、こんなに差が生まれてしまったのか。

 この差は一体なんだ。

 この間に何が生じた。

 

「私を本気にさせた事を後悔するがいい」

 

 それからアスモは両手を拳銃の様に構え、その指先から高エネルギー弾を何発も発射する。

 本気、と言った彼だが、まさしくその通りであろう。この無数の弾丸から逃げ出すことは不可能であり、確実にプリーストの息の根を止めようとしている。

 

「行くぜ……… 掛かってきやがれぇッッ!!!」

 

 弾丸を避ける。避ける。避ける。

 プリーストは次々に襲い掛かる無限の弾丸を避け続けた。

 そして逆にプリーストはアスモに光の攻撃を当て、確実にダメージを蓄積していった。

 

「こいつでトドメだ!! はぁっ!!」

 

 プリーストは次の弾丸を避けた後、透明化してアスモの背後に回り込んだ。

 弾丸は自動で追尾し、プリーストの元へと飛んでいく。

 

「小癪な真似をッッ…!!」

 

 アスモは弾丸の軌道から即座に考え、行動に移し、自らが放った弾丸を避ける。

 背後にいたプリーストもまたそれを避ける。

 そして何度もそれを繰り返され、アスモが慣れてきた頃、つまり彼が少し油断をしてしまったほんの一瞬であった。

 

「はっ…!!」

 

 アスモは自身で撃った弾丸に胸を貫かれた。

 自分自身何が起こったのかさっぱりといったところであろう。

 

「アスモ…… こいつは意外と効くだろ…?」

「貴様……!!」

 

 いくら神の使いであるアスモだったとしても、意思があるから思考もある。

 相手は自分よりも格下で、神の膝下にすら居られないようなそんな存在。

 だからこそ油断をした。何度も繰り返す中で、自分と相手の両方を考え続ける事で生じた隙。

 アスモは自身の攻撃どころか、相手の策略にハマってしまったこと、どちらも思考が追いつかない程の怒りを露わにした。

 

「貴様如きが…… 貴様如きがこの私を、この私を嵌めたのかぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」

「そうだ。お前は俺に負けた。お前を倒せる程の強力な攻撃なんざ全くできなかったけどよ…… お前の言うちっぽけな存在が束になりゃ、こうして少しくらいやってやれるんだよ」

「……ッッ!!!」

「あばよ、アスモ」

 

 アスモは天に向かって咆哮しながら爆散した。

 実に呆気ない最後だったが、エンジェルティア達の無念を晴らせるならそれで。

 そう思っていた矢先である。

 プリーストは大事な事を忘れていた。そしてすぐに思い出す事になる。

 

「───…… あーあー、そうだったよなぁ……」

 

 倒したはずのアスモがそこには立っていた。

 使徒は死んでも転生する。これを倒せるのは現状、メレフ以外にいないのだ。

 

「貴様に私を倒せない…… この位置がわかるであろう?」

「あぁ、わかってる。なら、何度でもお前を倒し続けりゃいい」

 

 また弾丸が飛んできた。先程よりも異常な量だ。

 プリーストは液状化と分裂、それから透明化に肉体強化、更に感覚と予知を発現させた。

 ほぼ全ての能力を解放して無数の弾丸を攻略していく。

 

「一撃を浴びせる…… どんなやろだって吹き飛ばせるほど強力な光っ!!」

 

 それからプリーストは弾丸を避けつつ、杖を持ってその先に光のエネルギーを集約し、アスモの隙を作ろうと飛び回る。

 けれど、先ほどのような隙をもう一度見せるはずもなく、警戒しているのか中々隙がうまれない。

 

「いや…… こいつでッ!!」

 

 プリーストは透明化しつつ巨大化し、脚をこれでもかと限界まで上に伸ばし、それからアスモに向けて強烈なキックをお見舞いする。

 流石のアスモも態勢が崩れる。

 今がチャンスとプリーストは杖の先端を構え、その先から溜めに溜めた光のエネルギーをレーザーのように発射する。

 アスモも急ぎレーザーに向けて渾身の弾丸を放った。

 

「何度やっても同じだ…… 私の事を倒すことは不可能」

「ぐぅぅぅぅぅぅ……… でも、それはどうかな?」

「なに…?」

「俺の後ろ見てみろよ」

「────ッッ!! な、なぜ貴様らが!!」

 

 レーザーを放つプリーストの横へとムウテンは近づいて、耳元で話す。

 

「もう僕たちの力もそろそろ限界だ。あとは全て君に託す」

「ムウテン………」

「さぁ…… 僕たち全ての属性を解放するんだ。これで決着がつく」

 

 そういうとプレイドライバーへとエンジェルティア達が吸い込まれる。

 その瞬間プリーストの身体が虹色に輝くと、光のレーザーが全ての属性を含む極太のレーザーに変化する。

 

「これで最後だッ!!! アスモ!!」

「私は滅びぬ!!」

 

 そうだ絆だ。絆の力があればアスモを倒せる。

 なんとなくそんな感じが伝わってきた。いや、それよりもエンジェルティア達の想いが、全てプリーストの身体を包み込む。

 杖を押さる手があまりの威力に震える。その手をジェルエが優しく包む。

 

「源次っ…!!」

「ジェルエ…… あぁ、行くぜ。相棒ッ!!!」

「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッ!!!!!」」

 

 弾丸がジュッと音を立ててレーザーに飲み込まれた。

 

「くっ…!!」

 

 アスモの身体を虹の光が包む。

 

「あぁ………」

 

 その光を感じたアスモは叫ぶことはなかった。

 ただ、何か伝わったような気がした。とても今は穏やかである。

 

「お前達に負けたのか………」

「あぁ、そうだ。お前は俺たちに負たんだよ」

 

 プリーストはそう言いながら近づいていく。

 

「お前達は勝てるのか? 神に?」

「それはやってみなきゃわからねぇ…… ぶっちゃけお前とやり合ってた時、俺は死んだと思ってたよ。でも実際こうして立ってる。もしかしたら勝てちまったりするのかも知れねーなぁ…」

「ふん……… 下等生物め。抗ってみるがいい。人類最後の希望はお前達だ──────」

 

 プリーストは変身を解き、アスモが徐々に消えていく様を見続ける。

 

「全くホントに神ってのは自分勝手な野郎だぜ」

 

 源次はそう言い、消えていくアスモを背に、恭也の元へと向かう。




お久しぶり過ぎてホント申し訳ナス……
そろそろ畳み掛けて書いていきますよろしくお願いします。
つまりもう後半戦で最終回が迫ってます。

次回、第33解「我は神、我は王」

次から多分早いです。
次回もよろしくお願いします!!


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第33解「我は神、我は王」

皆さんご無沙汰してます。
それではどうぞご覧ください。


 神、スレイマン。それはゴエティアと対を為す存在。

 いつしかこの神はデモンティアの王となり、デモンティア達を従えるようになった。

 そう、王とは前王。前王は神であったのだ。

 神々の戦いは人間を生かすか殺すかで対立し、デモンティアとエンジェルティアは死力を尽くして戦い抜いた。

 その結果、スレイマンとデモンティアは敗れ、それは見せしめか、はたまた遊びか、彼らはゴエティアにより記憶を消され、下界へと降ろされた。

 

「──── そして運命か必然か。前王とデモンティアは記憶がないながらも出会い、そして彼を王と崇めた」

「左様」

 

 恭也の言葉にンードゥは頷く。

 スレイマンは記憶を消され下界に降ろされた。これによりスレイマンは神の座を外され、人間となったのだ。

 だが、ただの人間がたった1人で、72体の悪魔の力をその身一つで背負える筈もなく、代償はより多くのしかかった。

 それが命。

 

「悪魔との取引は自らの命。我と最初に出会った頃も、王は我が身などどうでも良いと、蝋燭の火を消すかの如く簡単に命を差し出した」

「………… だからエイルは……」

 

 エイルが自分を責めるのも頷ける。

 ただそれは彼女のせいではない。いや、そもそも誰のせいというわけでもない。

 

「エイル」

「は、はい!」

「俺は自分の運命を受け入れている。俺の命は人類を…… あのゴエティアという神を倒し、スレイマンの果たせなかった使命を為す事だ。世界を守るという使命。それが王としてやるべき事なんだろう?」

「……… 私には記憶がはっきりとしていません。ですが、王の使命を果たすという事は愛するあなたが死んでしまうという事。私が蒔いた種なのに…… 私は… 私はどうしたら……!!」

「エイル────」

 

 エイルに声を掛けようとした時、ちょうど玄関から誰かが入ってくる音が聞こえた。

 それを聞きンードゥは闇の中から元の部屋へと戻る。

 足音で大体誰かはわかる。ドアが開くと、そこにはボロボロで脇腹を抑え、ジェルエに介護されていた源次の姿があった。

 

「源次ッ…!!」

「その傷は?……って言いたそうな顔だな。まぁ無理もねぇ。いつつっ……… 別に話しても長くねーけど、とりあえず俺の状況を説明させてくれや」

 

 源次はそう言うと自分が使徒を倒した事、そしてエンジェルティア達が本当に全滅してしまった事を息が詰まりながらも話してくれた。

 恭也はあの源次がここまで神妙になるなんて、と最初こそ思ったが、自分もデモンティア達が消えてしまったら現実を受け止めきれないだろう。

 

「アスモは倒したぜ…… みんなのおかげでな」

「……… 使徒はこれで最後なのか?」

「わからねぇ…… ただあの強さは本物だった」

「俺の変身は残り2回…… 源次は負傷…… さて、いよいよ追い詰められたというわけだ」

「残り2回…? お前何言って─────」

 

 その時、恭也の部屋の壁が一気に吹き飛んだ。

 屋根が剥がれ、2階に大きな穴が開く。

 

「な、なんだ…!!?」

「おいおい…… 今降臨するのは流石に卑怯ってもんじゃねーかぁ…?」

 

 大きな翼をはためかせ、その神は降臨した。

 奴はゴエティア。スレイマンを神の座から引き摺り下ろしたものだ。

 

「デモンティアの王よ。その様子では我のことは聞いているな?」

「聞いている。お前を倒せば全て終わる」

「なら、もう一つお前達に教えてやろう」

「なんだ?」

「ついて来い─────」

 

 ゴエティアが指を弾くと、瞬く間に恭也と源次たちは別の場所へと移動した。

 そこは人がいないであろう岩壁だらけの広い土地だった。

 

「早速だが王よ。デモンティアの封印を解いた者の真の目的はわかるか?」

「真の目的……?」

「無理もない。我はな王よ。人はこの世に不要だと気づいてしまったのだ」

「なんだと?」

「人は愚かだ。幾度となく争い、幾度となく死を繰り返した。さて、王。お前は王として力を手に入れた。お前は人類より遥か上の存在へ変わったのだ。そこから見下ろす景色はどうだ? 何が見えた?」

 

 恭也はそう言われ人々の冷たい視線を思い浮かべた。

 暖かい眼差し?声?そんなもの最初から全く思い浮かばなかった。

 自分が王となってからチヤホヤされたりだとか、崇められたりだとか、世間ではそんな評価ではなく、悪魔。世界を混乱に貶める悪者として認知されていた。

 これが現実だ。

 

「………… 現実は俺を嫌った」

「そうだ。お前のような悪魔の王など最初から期待されていない。忌み嫌われる存在なのだ」

「─── だがッ」

「……?」

「人間はそうして成長し、進化してきた。お前が何を言おうと、人はお前の様に要らないからと捨てる様な薄情な生き物ではない!! お前が人の人生を決めるな!!」

「なら、お前はやはり人の側に着くと?」

「当たり前だ」

「やはりそうか…… 誠に残念だ。王よ。察しがついているだろうが、我が封印を解いた張本人である。その目的自体は失敗に終わったが、最終的にはお前の命が尽きようと言うのだ。それに関しては成功と言っていいだろう」

「目的とはなんだ」

「デモンティアがデモンティアによる自然消滅。あわよくば王の魂ごと持っていってもらうつもりであった。だから前王を向かわせたのだ。お前が前王に負けたとしても、前王が現王として成り代わればいいだけの話なのだからな」

 

 こいつは態々その為だけに封印を解いて、デモンティアの戦いを上で胡座をかいて笑っていたというのか?

 その間に大勢が犠牲となり、自分の部下すらも傷ついたというのに。

 恭也はあまりの身勝手さに叫ぶ。

 

「ふざけるなッ!! お前は命をなんだと思っている!!」

「命は創れる。我からすれば命など粘土細工と一緒だ……… 全く。静観するつもりであったが、どうやらもうそうは言ってられないようだ。改めて褒めてやろう。よく使徒を倒したな」

「貴様ァァァァァァァァッッ!!!」

「来い、現実を教えてやろう」

 

 恭也と源次はドライバーをセットし、キーを回して変身する。

 

《ドゥラスト!!》

《シッカリ開錠!!》

《ガチ憑依!!》

《悪魔の名はンードゥ・ツーラスト!!72の数字を持ち、その闇は全てを呑み込み、闇へと帰す!!この闇から逃れる事はできない!!King of darkness!!》

 

《ホリージェル!!》

《アンロック!!》

《聖なる!!鐘を!!皆に送ろう!!holy bell!!スタンドホリージェル!!》

 

 仮面ライダーメレフ スタンドドゥラスト。

 仮面ライダープリースト スタンドホリージェル。

 どちらも現状、最強の姿と言ってもいい。この姿で使徒を倒した。例え神でも苦戦を強いられるだろう。

 

「行くぞ。これで決着をつけてやろう」

「懺悔しな…… しなければその命、エンジェルティア達に返しやがれ!!」

 

 2人の仮面ライダーは神に向かっていった。

 そして次の瞬間、彼らは力の差というものすら存在しない事に気づかされる。

 

「え──────」

 

 変身が解除されていた。

 周りにはデモンティア達とジェルエが大きな傷を負って倒れていた。

 

「な、なにがあったんだ……っ!!!」

 

 そもそも彼らは同じ位置にすら辿り着けて居なかった。

 神と人の差という概念はない。そもそもそういう次元の話ではないのだ。

 ゴエティアが腕を払っただけで2人は変身が解除され、一瞬のうちにデモンティア達をズタズタに切り裂いてしまった。

 1秒という時間もあっただろうか。本当に一瞬の出来事だった。

 

「ここまであるのかよ…… 神と俺たちじゃ……!!」

「まだだ…… まだ俺は後もう一度変身できる…!!!」

 

 そう言って恭也がデモンドライバーを腰に装着しようとすると、エイルが足を引き摺りながらも必死に止めに入る。

 

「ダメです……!! いけません恭也様!!」

「離せエイル!! ここで負けたら人類はッ……!!」

「私は…… 私はあなたに死んで欲しくありません!!」

「なら、どうしろという!!!」

「……ッッ!!!」

 

 恭也にいつもの様な冷静さはなく、エイルを振り払おうと必死にもがく。

 そしてエイルはそんな彼を必死に止めた。

 その姿を見たゴエティアは口を大きく開けて笑い始めた。

 

「はっはっはっはっはっはっ!!! これは滑稽だ。いいだろう。悪魔の娘よ。お前の一つ条件を出してやろう」

「え…?」

 

 ゴエティアはニヤリと笑いながら言い放つ。

 

「お前の命を差し出せ」

 

 それに対して恭也は怒りを露わにしてゴエティアに言い放とうとしたが、エイルは恭也の前に出て身を差し出す姿勢を取る。

 

「な、なにをやっている…… エイル!!」

「あなたを守る為にはもうこうするしかないのです」

「お前が死んでなんのメリットがあるんだ!! 俺の命だけだろう!!?」

「あなたはッ!! 自らの命を軽んじているッ!!」

「エイ…… ル………」

 

 その言葉に思わず言葉を詰まらせる。

 

「私が犠牲になれば…… 恭也様だけでも救ってくれる」

「バカな真似はよせ…… エイルッ!!」

「今まで本当に申し訳ありませんでした。私はあなたの為に、あなただけを見て、あなただけを信じてきました…… 愛するあなたの為に、今度は私の命くらい掛けさせてください」

「よせ…… やめてくれエイル……!!」

「───── ゴエティア!!! さぁ私の命を取りなさい!!」

 

 エイルがそう言うと、ゴエティアは掌をエイルに向ける。

 次の瞬間、エイルの身体がみるみるうちに塵になっていく。

 

「エイル…… エイルッ!!!」

「さよなら──── 私の愛する王、恭也様────────」

 

 そうしてエイルは──── 白い煙の様に跡形もなく消えてしまった。

 

「……ッッ………ァァァァァァァァアアアアアアアァァァァァァッッ……!!!」

 

 言葉にならない叫び。

 恭也は喉が潰れるほどの声で叫んだ。

 

「エイルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッッ───!!!!!」

 

 世界は終焉へと向かう─────。




以上です。
一応ですがエイルはただでは消えてないので次回ご説明……。
本当はもうちょっと長くやりたかったのですが、僕の事情で色々と飛んでしまい、煮詰めることができなくなってしまったのが反省点であります(涙

次回、最終章「神と王編」
第34解「我の絶望、我は誰だ」

次回もよろしくお願いします!!


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神と王編
第34解「我の絶望、我は誰だ」


皆さんご無沙汰してます。
それではどうぞご覧ください。


 あの時から恭也はまるで魂が抜けてしまったかの様に、ずっと部屋にこもって誰とも会話をせずにいた。

 両親も彼のことを心配して声を掛けたが、まるで反応が返ってこなかった。

今、彼の家はボロボロに崩れてしまっている為、仮設住宅にいる。

 

「……… 王様よ。いつまでそうしてるつもりだよ?」

 

 炎の悪魔ジェイクが恭也にそう言うが、彼は全く見向きもせず、ただ部屋の壁をずっと見ているだけだった。

 

「もうあの日常は戻らない…… 何をどうしたとしても……」

 

 ──── エイルが消えた。

 あの日から1ヶ月。世界はまるで闇に包まれたかの如く、曇りが続き、その間に太陽は顔すらも見せない。

 だが、これはゴエティアによるものだけではなく、エイルによる影響も大きいのだ。

 そうあの時──────。

 

 

 *****

 

 

 エイルは自身の姿が無くなったことを理解すると、すぐにゴエティアと融合をした。

 神と融合などと馬鹿げているが、それほど彼女は必死であり、そしてゴエティアもこれには無反応であった。

 気づいてはいたが敢えて反応しなかったのだろう。たかが悪魔1匹の抵抗だと。

 

「───ッ!!!?」

 

 そしてエイルは彼の身体に入った瞬間、過去にあった全ての光景が脳裏を過ぎる。

 あの日、前王と交わした約束。スレイマンと出会ったあの日──────。

 

「……… そうよ。私はあの日、前王様と約束した…… 恭也様………」

 

 記憶を取り戻したと同時に、エイルはかつての力をその身に溢れさせた。

 その力は、そう、神にも匹敵するほどの力。だが1人ではダメなのだ。

 

「私にはこうする事くらいしか………!!」

 

 ゴエティアもその変化に気づき、流石に焦りを覚えた。

 だが、そう思った時点で遅かった。彼の身体はみるみるうちに白く輝きを帯び、やがて繭の様にその場に留まってしまった。

 

「足掻くか…… 悪魔の娘よ」

「恭也様が撤退できる時間くらいは稼げるわ」

「何故、神に抗い、何故、王に期待する?」

「だって──── 私の愛する王ですから」

 

 その答えにゴエティアは呆れるどころか、聞き流す。

 何を戯言を。この封印が解かれれば、世界は終焉へと向かうのだ。

 時間稼ぎがいつまで続くか。エイルはたった1人で神に抗っていた──────。

 

 

 *****

 

 

「……………」

 

 恭也はそんな事を知らないのだ。エイルがたった1人で立ち向かっていることに。

 他の悪魔達は気づいてはいるが、ンードゥによって止められていた。

 

「ンードゥ…… 何故言わない?」

「奴が王としての目覚めなければならない。自ら気づき、自ら立ち上がらねばならない」

「……… ほう、お前もそういう悪魔になったのか?」

「ふんっ…」

 

 ジェイクはンードゥを揶揄う。

 ただそこに笑いは一切起こらなかった。軽いジョークも今は彼には届かない。

 そんな時、恭也はゆっくりと彼らを見る。その目の下はクマだらけで、一瞬彼かどうかも疑わしく思える程だ。

 

「なぁ……… ンードゥ」

「なんだ?」

「俺は…… 何か間違えたのか?」

 

 ンードゥはそれに対して何も答えない。

 

「あれは誰が悪いんだ…? 王ってのはこんなにちっぽけなのか…?」

 

 いつも王としてデモンティア達の前では、それ相応の態度を取っていた恭也であったが、今はまるで年相応の、まるで子供の様な態度を取り始めた。

 何度も彼は辛い。きつい。苦しいと呟き続けた。

 そして遂にンードゥは言い放つ。

 

「哀れだな」

「なに……?」

「哀れだと言った」

 

 これに恭也はンードゥの胸ぐらを掴み、声を荒げて怒鳴り散らす。

 

「お前に何がわかるんだンードゥッ!!! お前に…… 大切なものを失う気持ちがわかるっていうのかッ!!!?」

 

 それ対してンードゥは「わかる」と言った。

 恭也はスッと手を離す。思わぬ答えに思考が纏まらない。

 

「前王を失った時、我は今まで感じた事のなかった感情とやらが揺れ始めた。あの時の感情を言葉で表現するのならば…… 悲しい、だったはずである」

「…………」

「我々は今一度ゴエティアの元へと向かうつもりだ」

「……ッッ!! なんでっ…!!?」

「何故……か。それが使命というのではないか?」

「えっ…… でも、俺はもう力がない…… エイルがいなきゃ俺なんてただのニートなんだよ……」

「…………」

「俺は元々、王の器じゃなかったんだよ。ただの一般人だったんだ…… それなのに急に悪魔がやってきて、使命だなんだって…… 俺はもう辛いんだよ!! 俺は……死にたくないんだよ……ッ!!」

 

 恭也は自身がうちに秘めていた事を全て口にした。

 それを聞いたデモンティア達は部屋から出ていく時、それぞれ王へと言葉を贈る。

 それは罵倒であるのかそれとも………。

 

「見損なったぜ、王様。俺の見込み違いだったか? 今のお前からはなんの熱さも感じねぇな」

「じゃあね王様〜…… まぁ無理強いしないよ。だって王様だし〜」

「今の君は美しくないよ、王。君の中にあった風はこんなに緩やかだったかな?」

「…… それが本音か?……… なら、ぶつける事だな」

「こんなもんで終わる野郎じゃねーだろう?」

「あなたがそれでいいのなら、私は何も言わないわ…… ただ友人の仇は取らないと…ね?」

「わしが力を与えたのはこんな弱い男じゃったかの? もう闇に染まってしまったのか?」

「……… 我はお前をもう王としては見ない。後は好きにするがいい。選択するのはお前自身だ」

 

 皆はそう言うとゴエティアの元へと向かってしまった。

 

「俺は…… 何になりたいんだ……?」

 

 恭也はただ1人、頭を抱え、下を向く。

 彼にはもう明日を見る力もないというのか─────。

 

 

 *****

 

 

「やっぱり来なかったか……」

「しょうがないよ…… だってまだ若いんでしょ?」

「お前が言うのかジェルエ…… まぁそうだな。年上として大人の余裕ってやつを見せてやらねーとな」

 

 ゴエティアが白い繭へと化し1ヶ月、源次とジェルエはその間に何度も彼の前を訪れた。

 いつ復活してもいい様に戦える準備を進めていた。が、1ヶ月前にあったあの驚異的な強さを前に勝てる見込みは微塵もなかった。

 寧ろ死ぬ為にいる様な感覚だ。

 

「はぁ…… 全く。こいつが復活したら世界の終わりかぁ…… 俺、とんでもないことに巻き込まれてんなぁ…」

 

 そう言って源次はドライバーに指を這わせ、目を閉じる。

 この短い期間の中で色々な出来事を目蓋の裏から思い出す。

 

「エンジェルティアのみんな…… もう少しだけ力貸してくれ」

「……… 何を黄昏ている」

「来やがったな悪魔ども」

 

 源次が振り向くとンードゥとデモンティアの面々が立っていた。

 そこにもちろんエイルはいない。そしてもう1人─────。

 

「やっぱり来なかった……」

「奴に王としての器は荷が重すぎた。我々のみで対処するまで」

 

 デモンティアたちはそれぞれの属性エネルギーを増幅させ、それを形取って武器へと変える。

 

「我々の力も全盛期と同等に戻っているはずだ。ここで畳み掛けるぞ、デモンティアよ」

「こりゃ頼もしいなぁ……… そろそろか?」

「来るぞ─────」

 

 そして繭がミシミシと音を立てたかと思うと、次の瞬間に爆発する様な光を放ち、神が再びこの地へと降臨する。

 

「─── さぁ世界の終焉だ」

「……… へっ、やれるもんならやってみやがれ!! 変身ッ!!」

《ホリージェル!!》

 

 

 *****

 

 

 ごめんエイル。本当にごめん。

 恭也は何度も心の中でそう呟いた。今更後悔しても帰ってこないのに、どうして悩み続けるのだろう。

 これじゃあまるで少しでも希望が見えている様ではないか。

 

「……… 期待してるのか…… 俺は」

 

 恭也様。

 まるで幻聴の様に毎日聞こえてくる。末期だな。これは。

 

「ははっ……」

 

 だから幾度も謝り続けるのだ。あれが誤りだったのかはわからないから、何度も何度も呪文の様に繰り返す。

 恭也様。

 またこれだ。これが聞こえるから何度も呟くのだ。

 

「エイル……」

 

 恭也様。

 待て、これは本当に幻聴なのか。段々とはっきり聞こえてくる。

 恭也様。

 

「…… いるのか、エイル?」

 

 どうして欲しいんだエイル。

 ゴエティア。

 ゴエティア?ゴエティアの中にいるのか?

 

「……… でも俺はもう戦えない…… 俺に王なんて無理だったんだ……」

 

 私は────── あなたを信じています。

 

「エイル……… 俺はッ……」

 

 恭也は振り向いた。

 そこには誰もおらず、ただ少しばかり暗くなった壁があるだけだった。

 だが、そんな暗がりの中、微かな光が彼には見えていた。

 

「…… みんなが言っていた言葉…… あれは俺を見限った訳じゃない。彼らはいい奴らなんかじゃないんだ。悪魔だ。どうしようもないお節介達の集まりだ」

 

 信頼。絆。これが王としてあるべき形なんだ。

 

「エイル、みんな……… 今行くッ!!」

 

 恭也は覚悟を決めて走り出す。

 今度はしっかりと前を見て──────。




テンポ上げてます。えぐいです()
恭也はなりたい王になれるのか?

次回、第35話「我に希望、我と共に」

次回もよろしくお願いします!!


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第35話「我に希望、我と共に」

皆さんご無沙汰してます。
それではどうぞご覧ください。


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」

 

 プリーストの変身が解除し、砂に塗れながら地面を転がる。

 デモンティアたちも必死に抵抗をして見せるが、まるで歯が立たない。歯すら立っていないだろう。

 ゴエティアが少し腕を振るうだけで簡単に吹き飛ばされてしまう。

 

「ぐぅぅ……!!」

「お前達デモンティアが何人集まろうと、我の前では何もかもが無力。そして光の僧侶よ。お前もだ」

「まだまだぁ…!!」

 

 そして源次はゴエティアの元へと走り、硬く握りしめた拳を振るって殴り掛かった。

 が、その腕はゴエティアが少し触っただけで、バキバキという音を立てて関節が逆の方向を向いた。

 あまりの痛みに源次はその場をのたうち回り、吐き気を催す。

 

「源次ィィィィィィィィィィ!!」

 

 彼の元へジェルエが翼をはためかせて飛んでいくと、ゴエティアがジェルエの肩にビームを放つ。

 肩に穴が空き、ショックのあまりそのまま地面へ倒れて気を失った。

 

「ジェルエ……っ!! くそぉっ!!」

 

 デモンティア達も皆一斉に立ち向かうも、ある者は脚がズタズタにされ、ある者は肋骨を折られ、ある者は全身を焼かれた。

 あらゆる力を使える神。それがゴエティアなのだ。彼らの持つ属性も元は彼ら神が分け与えたものに過ぎない。

 当然、全ての属性をどの種族よりも強大な力で行使できる。

 

「デモンティアよ。これがお前達の結末だ。お前たち悪魔…… 天使も含め、我より格下のものなど、本来、我に触れることすら許されぬのだ。こうして対峙してやるのも有り難く思うがいい」

「……… これがエンジェルティアの神だと言うのか」

「……?」

 

 ンードゥは続ける。

 

「我は知っている。貴様よりも遥かに慈悲深く、例えそれが悪魔であろうと境なく接する者がいる。我は初めて感情というものを知ったのだ。それは前王だけではない。今の王からも学べるものは多くあった」

「ほう…… それで、その王とやらは何をしている? 今ここにいない様だが……」

「奴は来る。我の認めた王は必ず……」

「では、その王とやらに出てきてもらおうではないか。出て来れるのであれば────」

 

 砂を踏む音が聞こえる。

 それはここにいる誰のものでもない。これはそう。

 

「来たか、王」

 

 そこに立っていたのは恭也だった。

 以前の彼とは違い、その瞳には炎が宿っていた。

 

「ごめん、みんな。ンードゥも心配かけた」

「…………」

「俺はみんなの言葉を聞こうとしなかった。王なら声を聞かなきゃならないのに……… だから、今度はしっかり聞く。俺は王として欲しいものは自分の手で…… いや、みんなの力を使って掴みに行く!!」

 

 恭也は雄叫びを上げ、ゴエティアに向かって走り出した。

 それにゴエティアはため息を吐き、手から炎を出して焼いてしまおうと考えたが、その手は全く動こうとしなかった。

 

「お前か…… 小娘…!!」

「エイルゥゥゥゥゥゥゥゥッッ!!!!!」

 

 そして恭也の意識はゴエティアの体内に流れた─────。

 

 

 *****

 

 

「ここは………?」

 

 ここは精神世界。現実の時間とは全く別の場所。

 神はその力だけではなく、身体の構造やはり人のそれとは全く違う。

 

「恭也…… 様…?」

「その声はエイルか?」

 

 一際暗い場所から声だけではあるが、エイルの声が聞こえてきた。

 恭也はそこに手を伸ばす。

 

「エイル!! 一緒に帰ろう!!」

 

 恭也がそう言うも、エイルの返事がない。

 心配になって暗闇へと近づくと、不気味な黒い手が恭也を掴もうとしてきたので、なんとか後ろに避ける。

 

「恭也様、早くお逃げ下さい。この闇はゴエティアの心臓部。つまり異空間です。一度入れば二度と戻ってくることはできません」

「だからと言ってお前を置いていく訳にはいかないだろ!?」

「私はこのまま奴の体内から攻撃を与え、奴と共に散ろうと考えています」

「何を言っているんだエイル!! そんな事許す訳がない!!」

「私は!!…… 私は…… あなたを殺そうとしたのですよ? これがせめてもの償いなのです」

「………… エイル。お前はずっと俺の名を呼んでいたな?」

「え?」

 

 何故、という風な声で彼女は問う。

 

「私が恭也様を…?」

「あぁ、そうだよ。あれは確かに君の声だった。君はずっと俺を信じて待っていてくれた。だから助けるんだ」

「でも、私はあなたを……」

「それ以上にエイルは俺を救ってくれたし、俺に未来を見せてくれた。なんの希望もなかった俺に王という場所をくれたんだ」

「そんな…… それじゃああまりに欲張りじゃ……!!」

「欲張りでいいんだよ。悪魔ってのはそういうものだろ?」

「恭也様…… 私ッ────」

「あぁ、俺も愛してるよエイル」

「ぇ…?」

 

 

 *****

 

 

「な、なんだ? ゴエティアの身体の中に恭也の拳が埋まって──── うおぉっ!!?」

 

 恭也が腕を引っ張り出すと、その手に握られていたのは別の手。綺麗な女性の手であった。

 

「エイルッ!!」

「エイルぅ〜!!」

 

 それはエイルであった。消えてしまったはずのエイルがそこにはいた。

 

「恭也様…… ご心配をお掛けしました」

「いやいや俺も心配ばっかかけてさ。悪かったよ。ごめんな」

「それで〜… あの時のお言葉はぁ〜?」

 

 恭也は尻尾をブンブンと振るエイルを宥めて落ち着かせる。

 世界終焉前だってのになんだかいつもの日常が戻ってきた様な気がする。

 

「よしっ────── 皆ッ!!」

 

 そう恭也が大声を上げて呼ぶと、ボロボロな筈の彼らは立ち上がる事やっとなはずなのに彼の横へと並び始めた。

 

「お前達がいくら増えようとも神の意思が揺らぐことはない。ここで死ぬがいい」

「─── 俺ももう揺らぐ事はない。俺は王だ。デモンティアの王。仮面ライダーメレフだッ!!!」

 

 そう叫ぶとデモンティア達の身体が属性毎に光を放ち、更にはデモンティアイズキーも全て光だして空へと舞う。

 全てのキーは空中でぐるぐるとひとしきり回った後、一気に収縮して一つの大きな塊になった。

 太過ぎて驚くが、これが新たなデモンティアイズキーらしい。

 

「そうか…… これが皆の力か」

 

 恭也は皆の顔を見て覚悟を決めて頷いた。

 最後にエイル見て互いにキーを両側から掴むとそこにデモンティア達全員が吸い込まれる。

 それから恭也は新たなデモンティアイズキー「サタンメレフティアイズキー」を起動する。

 

《サタンメレフ!!》

 

 それをデモンドライバーの鍵穴の部分に差し込むと、神々しく重厚感のある待機音が鳴り始める。

 

《今、真の力を解放する時!!》

 

 両手をクロスさせ、拳をギュッと握りしめ、それから思いっきり腕を広げて右手で鍵を回す態勢に入る。

 

「変身ッ!!!」

 

 その合図とともに鍵を捻ると、エイルがいつものアーマーを形成したかと思うと、そのアーマーの至る所に存在する鍵穴に向けて、全悪魔達が鍵を差し込んでいく。

 そして全て解除すると溢れんばかり光が周りに漏れ出す。

 

《全開錠!!》

《全憑依!!)

 

 これがメレフの本来の姿。これが神を超越する王の力。

 全身に今までの各スタンドパーツの特徴が出ているアーマーが形成され、より神々しく、より強固に、より重厚が増したその姿。

 輝くマントを靡かせて、遂にその仮面ライダー。悪魔の王が降臨する。

 

《72の悪魔たちよ集え!!》

《我は全てのデモンティアの王!!》

《その名もサタンメレフ!!》

《王の魂に懸けて全てを守る者!!》

 

「さぁ、神をも超える王の力。とくと味わうがいい」

 

 仮面ライダーサタンメレフ。

 デモンティアの王、復活───!!!




最終フォームです。ぶっちゃけばり強いです。

次回、第36話「我に集結、我の全て」

次回もよろしくお願いします!!

最終回まで残り………あと1話


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第36解「我に集結、我の全て」

皆さんご無沙汰してます。
それではどうぞご覧ください。


 仮面ライダーサタンメレフ。王としての本来の姿。

 だが、この形態は前王ですら辿り着けなかった境地でもあるのだ。

 真の姿ということに加え、この形態はあくまで彼自身が手に入れた、恭也だけの王としての形だ。

 

「何が王の力だ? 神を越えるだと? 神の前で冗談を言うとは命知らずな奴よ」

「お前は俺に勝つ事はできない。何故ならお前とは違い、俺は1人で戦っている訳ではないのだからな」

「……… くふふっ、笑わせてくれる。たかが王の力を取り戻しただけの姿に過ぎない。ならば、スレイマンと同じ道を辿らせてやろう。死ぬがいいッ!!」

 

 ゴエティアは土属性のエネルギーを活性化させ、サタンメレフの周りを取り囲むように巨大な土壁を作り出す。

 そしてサタンメレフを、その土壁で思いっきり挟み込む。彼の悲鳴が聞こえるまで、凄まじい圧力を掛け続けるゴエティア。

 

「──── こんなものか、ゴエティア?」

「むっ…!?」

 

 次の瞬間、土壁の隙間から炎が溢れ出したかと思うと、爆発を引き起こし、壁はいとも容易く呆気なく破壊された。

 

「王様よ!! この熱さだッ!! これを待ってたぞぉ!!」

「あぁ、待たせたなジェイク。力を借りる!!」

 

 そう言うとサタンメレフは、ドライバーに装填しているサタンティアイズキーを2回だけ回す。

 すると、10〜19までの炎の悪魔たちの力が解放され、その力を全身に纏わせ、炎の力を最大限に発現させる。

 

《10番!! 整列!! 開錠!!》

「はぁっ!!」

 

 サタンメレフは右手をゴエティアに翳すと、その手から爆炎が発生し、灰に変えんばかりの火力を放出する。

 それに対しゴエティアは、川や海、空気中の水分から水をかき集め、それを使って炎をなんとか掻き消す。

 

「小癪な…!!」

 

 そしてその水を砲弾のように放ち、サタンメレフを吹き飛ばさんとする。

 が、サタンメレフは再びキーを5回回し、雷の力を発現させる。

 

《40番!! 整列!! 開錠!!》

「行くぞ、ゼフォー!!」

「…… あぁ…!!」

 

 ゼフォーの専用武器の槍を召喚し、槍投げの様に力を込めて、水の砲弾に向けて放った。

 砲弾は容易く槍によって破裂し、その槍の勢いは止まる事なく、ゴエティアの脇腹を貫通した。

 

「ガハッ…!! あ、悪魔ごときがぁ…!!!」

「悪いが、俺は悪魔の様に容赦はしない」

「神を越える事など不可能だっ!!」

 

 ゴエティアは突風を発生させ、サタンメレフの足場を崩す。

 そして足場が崩れた事でバランスを失った彼に対し、竜巻を発生させて取り囲む。

 

「このまま呑まれてしまえ!!」

「無駄だ…… ネゴール!!」

 

 キーを6回、土の力が増幅される。

 

《50番!! 整列!! 開錠!!》

「ガハハハハハハハッ!! 王よ、任せい!!」

 

 周りにある砂や土、地面に該当するもの全てがサタンメレフに集まり、ゴエティアの放った風を全て消し去った。

 そのまま地面は拳の形を作り、ゴエティアに隙を与えぬほどの打撃を何発も喰らわせる。

 

「ごっ………!! こ、こんな…… 神がここまで……!!」

「俺は1人ではない。デモンティアたち全員分の力が俺を強くしてくれるッ!!」

 

 サタンメレフの力は全てのデモンティア達の力を使えることに加え、その力を意のままに、そして今まで以上に、100%の力を遥かに越える。

 その力に限界はない。

 

「貴様ァァァァァァッッ!!!」

 

 そしてゴエティアは炎と雷を掛け合わせ、巨大な雷火球を作り出し、それをサタンメレフに向かって投げつける。その巨大さは山すらも呑み込むほどである。

 だが、サタンメレフに対しては無力。

 キーを3回、間を取って4回回す。

 

《20番!! 整列!! 開錠!!》

《30番!! 整列!! 開錠!!》

「ティッツ!! エミー!!」

「任せて〜、ほい!!」

「神なんか僕が吹き飛ばしてあげるよ」

 

 水と風の力が雷火球を蒸発、そして吹き飛ばし、そのままゴエティアを包んで大爆発を引き起こす。

 ゴエティアは最後の抵抗とばかりに、怒りに我を任せ、光と闇のエネルギーを纏ったレーザーを放ってきた。

 

「この神の我を…… 我をォォォォォォォォッ!!!」

「終わりが近いな…… 哀れな神、ゴエティアよ」

《60番!! 整列!! 開錠!!》

《70番!! 整列!! 開錠!!》

「ふふふっ、醜い光ね」

「わしの力とンードゥ様の力。とくと味わえい」

「王よ、決めるがいい」

 

 言わずもがなゴエティアのレーザーは最も容易く消し去った。

 全ての属性の力が効かないとわかったゴエティアは、無の力を増幅させ、体内にある全てのエネルギーを使用し、世界すらも無に帰そうとする。

 そんな事はサタンメレフ、王が許すはずもない。

 

「エイル」

《1番!! 整列!! 開錠!!》

「恭也様」

「「はぁッ!!!」」

 

 無の力はまさしくそのままの意味。ゴエティアの無のエネルギーは、エイルと恭也の無の力によって跡形もなく消し飛んだ。

 神は無さえも無くした。無がなければ何がある?無の次はあるのか?

 もうゴエティアには次の一手すら考える余裕がなくなっていた。

 頂点から突如として引き摺り降ろされた感覚。初めてであり、こんなにも屈辱的な事は今までになかった。あるはずもなかった。

 

「……… デモンティア…… 王…… 我がッ…!!!」

「これで終焉だ、ゴエティア」

 

 サタンメレフはサタンメレフティアイズキーの手持ちの部分である場所のボタンを押し、計8回回すと、右足に全属性エネルギーを集約させ、背中に悪魔の様な翼を発現させて上空へと飛び立つ。

 

「王の名の下にッ!! 食らうがいいゴエティアッ!!」

《サタンメレフ!! リベレイション!!》

「はぁぁぁぁぁ────── はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!」

 

 全ての属性エネルギーを纏った右足が、ゴエティアの胸部を捉えた。

 そのままゴエティアを壁の方まで蹴り飛ばし、サタンメレフは空中でくるりと回転して着地する。

 

「我が…… たかが人間なんぞにぃぃ…!!」

「眠れ、哀れな神よ─────」

「ぐわァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッ────────!!!!!!」

 

 そして世界は光を取り戻す─────。

 

 

 *****

 

 

 あれから数ヶ月が経った。

 恭也たちは神による被害やエンジェルティア、それからデモンティア達のこれから処遇など色々と国からあれやこれやと言われていた。

 そして、デモンハンター達は後始末に追われながらも無事に解散し、源次は今、元デモンハンター達とジェルエで自警団として働いている。

 一方の恭也はというと────。

 

「さて、皆」

「……………」

「既に滝ような涙を流しているが…… とにかく今日でお別れだな」

「いやですゥゥゥゥゥゥゥゥッッッ!!!」

 

 そう恭也が言うと、エイルは恭也の部屋で他のデモンティア達がいるにも関わらず大泣きし始めた。

 結局、恭也は王としての座、デモンティア達の始末を国から言い渡された。悩んだ末に再び彼女らを封印する事で無かったことにするとの話になった。

 誤解も解け、神も倒したのにこの処遇は一体どういうことだと不満タラタラではあったが、平和に暮らしていくのならこの選択は間違いではないのだろうと思う。

 そう、今日がその封印の日──── 別れの日だ。

 

「はぁ…… 別に居なくなるわけじゃないだろう?」

「でも、封印が解かれた後に恭也様が生きてる保証なんてありません…!!」

「お前もの凄く失礼なことを言っている気がするが……… まぁ、確かにそうだな」

「こうなったら王の力で国を変えましょう!! 私たちを突き離す世界などいりません!!!!!!」

「エイルお前なぁ…… わかった。約束する。いずれこの国を俺が変えてやる。そしたらお前達の封印を解き、また一緒に暮らそう」

 

 この言葉にエイル以外のデモンティア達は大いに驚き、そして大いに笑った。

 バカにする意味ではなく、この王ならばできるだろうという信頼から起きる笑いだ。

 

「恭也様、私…… エイルはずっと待っております。大切なあなた様をずっと」

「あぁ、待っていてくれ。必ず迎えにいく」

「はい!!」

 

 そして恭也は1人1人と顔を見合わせる。

 全員、別れの時だが悲しい顔などしていない。またいずれ、いつかの明日に希望を持っている。

 そして恭也はデモンドライバーとデモンティアイズキーを各種取り出し、それらをエイルに渡す。

 それからサタンメレフティアイズキーを持ち、封印の準備を開始する。

 

「………… ジェイク!! ティッツ!! エミー!! ゼフォー!! ネゴール!! メロク!! ワナイズ!! ンードゥ!! そして、エイル!! 今までよく俺と共に戦ってくれた!! またいずれ…… いつか会おう!! 俺はお前達の王となれた事を誇りに思うッ!!!」

 

 最後は皆が笑顔の別れ。

 サタンティアイズキーを突き出すと、デモンドライバーを中心に大きな鍵穴が出現し、徐々にエイル達の身体を吸い込み始める。

 

「恭也様」

「なんだエイル」

「私もあなた様と共に戦えた事を誇りに思います。今までありがとうございました」

「あぁ、俺も感謝する」

「またいずれお会い致しましょう。私の愛する──── 王様」

 

 デモンドライバーに全てのデモンティア達が吸い込まれ、そしてドライバーはパタリと静かに床に落ちる。

 それを手に取る恭也の目に涙が少し浮かんだが、すぐにそれは引っ込んだ。

 

「いつか会える…… その日を楽しみにしてる。ありがとう、デモンティア。俺を変えてくれて」

 

 悪魔と天使、そして神。

 数々の種が争い、犠牲を払い、世界に平和をもたらした。

 人と悪魔の物語。絆の物語。

 

「眠れ、愛すべき悪魔達よ─────」

 

 そして恭也は新たな世界へ踏み出す。

 王ではなく、人として─────。

 

 

 仮面ライダーメレフ The end。




最終回前ですが、実質的な最終回はこちらです。
反省点としては私が時間を取れなかったことと、体調不良諸々原因で書きたいことが書けなくなった事で、あまり煮詰めて書けなかったのが本当に悔しくて堪りません。
次回はいつも私のところだとやっております外伝作品(映画的なやつ)+最終回という形でお出し致します。
凄く詰め込んでしまって本当に申し訳ないのと、自分の不甲斐なさでいっぱいです。

最終回の中に新ライダーも登場致しますので、また次回作、及び仮面ライダーメレフの最終回をどうぞご期待ください。

次回、最終解「我は悪魔の王、我々の誓い」+仮面ライダーメレフ Your ALE

次回もよろしくお願いします!!


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最終解「我は悪魔の王、我々の誓い」+仮面ライダーメレフ Your ALE

皆さんご無沙汰してます。

あらすじ
神を倒して1年の時が経ち、恭也はデモンティアも暮らせる世界を作ろうと、勉強をしながら、源次が勤める自警団に入って少しだが働きつつ、日々奮闘していた。そんな時、突如として謎の悪魔が復活し、再び世界は危機に追いやられてしまう。変身できない恭也は一体どうなってしまうのか────。

それではどうぞ最終回+外伝一緒にご覧ください。


 ようやくまともに働けた。

 恭也はあれから時が経ち、20歳を超えた頃、源次が副リーダーを勤める自警団で勉強をしつつ働いている。

 なぜ副リーダーなのかは彼の性格だろう。リーダーはデモンハンターの時もリーダーを務めていた男がやっているらしい。

 彼は相変わらずで、夜は女の子と遊ぶ為にブラブラとしているそうだ。

 

「それじゃあお疲れ様です」

「おう、気をつけて帰れよ」

 

 恭也がいつも帰宅したら、まずやる事は勉強だ。

 デモンティアを自らの手で封印したが、それは彼の意に反する。国から言われただけで自分はまだ一緒に暮らしたかった。

 今、源次の元にジェルエはいるが、あの子な事は隠しているらしく、見つかったら大ごとになるそうだ。

 そんな訳で恭也は働きつつも、デモンティアたちが暮らせる国に変えようと日々勉強をしている。

 途方もない事はわかっているが、それほど彼の気持ちは強いのだろう。

 

「………」

 

 机に置かれたデモンドライバーとサタンメレフティアイズキー。

 今はすっかり色を失い、少し埃が被ってしまっている。度々綺麗にするのだが、毎日というのは少々厳しい。

 あれから1年。昨日のことのように思い出す。

 

 プルルルルルルルッ

「──── ん?」

 

 携帯に着信が入ってきた。

 一体誰だと見てみると、源次からの着信だった。

 

「はい、もしもし?」

 

 恭也は電話に出る。

 すると、いつものおちゃらけた声が電話越しに響く。

 

「よぉ〜、元気か恭也〜!」

「なに」

「お前、俺に対しては冷たいよな…… 前の王っぽい口調はどうしたよ」

「はぁ…… 俺は今勉強中なんだけど?」

「あ?…… あー…… そういえばそんな事言ってたなぁ……」

「じゃ」

「あー待て待てっ! 今日はお前を誘おうと思ってよ!」

「どーせ夜出かけるアレでしょ」

「違う違う! 普通に俺とお前でサシだ」

「え?」

 

 珍しいこともあったもんだと恭也は思う。

 

「で、どうするんだ?」

 

 ずっと勉強をしていて息が詰まって来ていたところだ。

 偶にはこういう飲みもいいだろうと、恭也は「わかった」と返事をし、荷物を持つと指定された場所まで向かった─────。

 

 

 *****

 

 

「あれから1年かぁ…… なんだか短く感じるな」

「もう1年……か」

 

 小洒落た居酒屋の個室で、2人は向かい合って飲んでいた。

 恭也はこの後も少し勉強をしようと、アルコールを飲まずにいるが、目の前でガブガブと飲む源次がちょっと腹立たしい。

 

「勉強の方はどうだ?」

「それなり。頭が良い方じゃなかったから苦戦中」

「そっかぁ…… 偶にはよ。こういう息抜きもいいだろう? 最近お前、すっげ〜顔色悪かったぜ?」

「寝る間も惜しんでやってたから……」

「おいおい、睡眠の質を下げると、総じて勉強の効率も下がっちまうぜ? 頑張るのもいいが、休む事も大事だぞ?」

「わかってる」

「……… 恭也、お前がデモンティア達の事を気にしているのは知ってる。でもな。もし封印が解けた10年後、20年後、お前のそんなやつれた顔、あいつらが見たいと思うか? あ?」

「…………」

「何を焦ってんだ。人生気楽に行こうぜ。詰め込んだってしょーがねーよ」

「……… ははっ、源次に言われると説得力あるけど、なんかやだな」

「なんかやだってなんだよ!!」

 

 2人はそれから飲み続け、23時頃になった時、店が閉まると同時に出できた。

 ふらふらの源次をタクシーにぶち込み、恭也は暗い道を1人で歩いていた。

 月明かりが差すこんな日。エイルと初めてあった日のことを思い出す。

 

「─── ん?」

 

 そう思っていると、目の前に人影が見えた。

 この展開は前にも見た事があるが、その不気味さはあの時とは違う。これは殺意か?明らかに危険だ。

 

「……っ!!」

「王よ、久しぶりだな」

 

 その人影は話しかけてきた。どこかで見たことある顔だ。

 

「お前…… ンードゥと一緒にいた……」

 

 彼はンードゥと一緒に恭也に王としての話をしていた悪魔だ。

 名前も数字すらもわからない悪魔。なんとも不気味だ。

 

「俺になんのようだ?」

「まさかお前が神に勝つとは思わなかった。な? 答えは出ただろう?」

「王としての力は目覚めたし、王も今は一時的に引退してる。ンードゥに用なら今はいないぞ。俺は急いでるからこの辺で────」

 

 その悪魔の隣を通り過ぎようとすると、恭也の首をぎりぎり鋭利な爪が掠めた。

 恭也は生唾を飲み込みつつ、ゆっくりとその悪魔を見る。

 

「お前は誰だ……?」

「俺は『エイス・ゼロ』。王に捨てられた悪魔だ」

「王に捨てられた悪魔?」

「お前あのエイルの番台が9()()()()ただおかしいと思わなかったのか? ワナイズとンードゥの70番は別として」

「……… 何故だ」

「俺は創られた存在。デモンティアの0番として─────」

 

 

 *****

 

 

 デモンティアとエンジェルティアは、人間の善と悪が生み出した生物だ。

 その数は言わずもがなそれぞれ72体。どちらも相いれない存在同士であった。

 そんな彼らを指揮する者が現れた。

 それが現在で言うスレイマンとゴエティアだった。

 

「ゴエティアよ。デモンティアはこうして心を改めた。もう人は襲わない」

「いや、スレイマンよ。本題はそこではない。デモンティアが生まれたのもそもそも人が原因ではないか」

「……… やはりお前は人を……」

「あぁ、そうだ。我は人間を根絶やしにする。不要な存在はこの世から消さなければならない」

 

 こうして神同士、悪魔と天使の戦争が勃発した。

 そして敗北したスレイマンは記憶を消される訳だが、結局回りに回って記憶を失う前の状態に戻った。身分は違えへどデモンティアは彼に着いていったのだ。

 これが表の歴史。だが、裏の歴史は違う。

 

「──── 俺は……」

 

 エイルがまだ悪魔として人間を襲っていた頃、彼は、エイスはスレイマンの手により生まれた。

 最初はエイスがスレイマンの為に悪魔を嗜め、味方につけていた。そう、彼には封印する力があったのだ。

 悪魔の身であり、悪魔を封印する。唯一神の力を与えられた存在であった。

 しかし、時は経ち、皆が記憶を失い、ンードゥだけが彼を知る形となった頃。

 

「…… ンードゥ、俺は何故、記憶を失わなかった」

「失いたかったのか?」

「お前達が記憶を失い、俺はただ1人下界に降ろされなかった。俺はその間にゴエティアにいいように使われたんだぞ? それもこれも…… 全てスレイマンのせいだ」

「なに?」

「スレイマンが俺さえ創らなければ、こんな地獄を味わう事もなかった…!!」

 

 それは単なる逆恨み。

 しかしンードゥもその時、全ての記憶がある訳ではなかった。だから彼に同情する事や、彼の考え方に賛同する事もなかった。

 

「王が覚醒した所だ。そこで俺は奴を殺す」

「……… できるのか?」

「王がゴエティアを倒せればいい。その時、王の力は全て戻り、総じて俺の力も全て元に戻る───」

 

 

 *****

 

 

 エイスの力はあの全盛期のエイルよりも、そしてンードゥよりも強力である。

 彼はこのタイミングを待っていたのだ。ただの逆恨みと言ってしまえばそれまでだが、彼にとっては永く、辛く、それほどゴエティアの元での仕打ちは地獄であったのだ。

 

「俺はこの力を持ってして、お前を殺す」

「………っ」

「ただ今、お前のデモンティア達は封印されている。これでは王に戻っているとは言えない」

「えっ…?」

「この街を破壊してやる。そうすればいやでも封印を解くことになるからな」

「お前…!!」

「明日、お前がどうするか見ものだな───」

 

 そう言ってエイスは闇の中へと消えていった。

 恭也は急いで源次に電話を掛けるも、全く電話に出ようしない。そこから何度も掛かるがやはり出ない。

 

「…… まずい事になった…!!」

 

 それから恭也は急ぎ自宅へと戻る────。

 

 

 *****

 

 

 次の日、エイスは宣言通り街を破壊していた。

 それも見境なく、誰1人も逃さんと破壊の限りを尽くす。

 その現場には源次が遅れながらも到着し、「仮面ライダープリースト スタンドホリージェル」へと変身し、なんとか被害を最小限に抑えようと戦っていた。

 

「ここまで自分を恨んだのは久々だ!! くそっ!! なんで昨日はあんな飲んじまったんだ!!」

「源次のせいじゃないよ! 源次、昨日は恭也を励ます為にやってくれたんだし……」

「それでもだ。結果はこれだ…… 1人でも多く救ってやるよ…!!」

 

 逃げ惑う人々の中を掻き分け、プリーストはエイスと戦う。

 そして一方の恭也は一睡もせずに封印を解除しようとしていたが、驚く事に封印が全く解除されないのだ。

 

「な、なんでだ……」

 

 王としての力が消えてしまったのか。いや、そんな事はない。だったら何故。

 恭也はデモンドライバーとサタンメレフティアイズキーを手に取り、勉強の最中に免許を取り、源次に譲り受けたバイクに跨り、現場へと急行する。

 

「頼む…… エイル…… みんなッ──────!!!」

 

 ───── 現場に到着する前だった。

 恭也はバイクに急ブレーキを掛けて止まった。

 

「こ、これは……」

「ミョルルルルルルルルル」

 

 なんだこの気持ちが悪い鳴き声は。明らかに見た目は人間ではない。

 全身に触手のようなものが垂れており、それが何体もその場で蠢いているのだ。

 恭也はその見た目から悪魔とは違う姿に()()した。

 

「ミョルルルルルルルルル!!」

 

 それらは恭也の何かがトリガーとなったのか、彼に向かって一斉に走り出した。

 デモンドライバーを腰に装着しようとするが、今は全く反応がない。

 

「く、くそっ!!」

「ミョルルルルルルルルル!!」

「一か八かで……!!」

「ミョルルルル─────」

 

 その時、凄まじい炎が、まるで火山の噴火が如く目の前を焼き焦がした。

 その炎に最初はジェイクだと思ったが、デモンドライバーは色を失ったままであった。

 恭也が前を見ると、そこには見た事もない()()()()()()が立っていた。

 

《リラティブ! ウィズアングリー!》

「ここはどこだ? ふっ、まぁいい。てめぇら…… ここで死に晒せ!」

「ミョルルルルルルルルル!!」

「はっ!!」

 

 口が悪いその仮面ライダーが殴る度にマグマが迸る。

 触手の怪人は殴られる度に灰になって消し飛んでいった。

 

「どけどけどけどけぇぇぇぇぇ!! オラァッ!!」

「ミョルゥゥゥ……」

 

 次々に燃え尽きる触手怪人。

 粗方燃やしてしまうと、謎のライダーは恭也の方を向き、ズンズンと歩き出す。

 そして目の前まで来ると、デモンドライバーを取り上げて、それを色んな角度から見始める。

 

「お、おい! 返せッ!」

「なんだこれ? 見た事もねぇドライバーだなぁ……」

「それは大事なものなんだ! 返せよっ!」

「あ? なんだその口の聞き方は? お前、俺を怒らせようってのか──────」

 

 そのライダーが手を出そうとした瞬間、すんでの所で止まり、自らのドライバーに触れ始める。なんともぎこちない動きだ。

 そのドライバーは両端がメダルを差し込める様になっており、元々装填されていた赤いメダルを取り出してひっくり返す。裏側は青い色合いになっており、青い方を表にして2枚同じ場所に入れる。

 ドライバーの上部のスイッチを押すと、真ん中の部分がぐるりと回転し、赤だったものが青へと変化し、火山の様な見た目から、冷たい見た目、まるで氷山の様な印象を受ける見た目に変貌する。体格と少し小さくなっただろうか。

 

《リラティブ! ウィズソロー!》

「ご、ごめんね〜。こいつ戦いになるとすぐキレるから…… あ、これ返すね」

 

 先ほどまで荒々しい男性の声がしていたが、今は少女の声が聞こえる。

 少女の声がするそのライダーはデモンドライバーを返すと、改めて敵に向き直り、華麗な動きで怪人を翻弄しつつ戦う。

 

「はっ! やっ!」

 

 次々に倒れていく触手怪人。

 少女のライダーはドライバーの上部を長押しすると、真ん中の丸い部分が激しく回転し、彼女の左脚にエネルギーが集約される。

 

「これで決まり─── だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

《ソロー! フィーリング!》

 

 氷のエネルギーを纏った蹴りを受け、触手怪人達は次々に氷に包まれ、最後には爆散してしまった。

 

「──── おぉっとと… よしっ! 全くあなたが暴れるから関係ない人まで巻き込みそうになったじゃない」

『す、すみません…… 僕、気持ちが昂るとどうも制御が効かなくて……」

「わかってるわよ。全く……」

 

 彼女は1人で何を話しているのだろうか?

 先ほどの男性は近くにはいない様だが……。

 

「あぁ、そうだ。そこの仮面ライダー!」

「え、俺?」

「あなた以外に誰がいるのよ。早く行って。道なら開けてあげるから」

「ありがとう…… 君は?」

「私? 私はリラティブ。『仮面ライダーリラティブ』」

「リラティブか…… 覚えておくよ。それじゃあ!」

 

 そして再び恭也バイクを走らせた─────。

 

 

 *****

 

 

 恭也が現場に到着すると、すでにプリーストは限界を迎え、変身解除にまで追い込まれていた。

 

「す、すまねぇ…… 恭也」

「源次ッ!!」

「あいつの封印能力のせいで、こっちの力が封じられて何もできねぇ……」

「なんだって…!!?」

 

 エイスはそれ見て不敵に笑う。

 

「エイスッ!!」

「さぁ、王!! 変身しろ!! そして俺と戦え!!」

「くっ……」

 

 デモンドライバーは反応しない。変身は不可能だ。

 それに気づいたのかエイスは先ほど浮かべていた笑みが消え、まるで子供がおもちゃに興味を失ったかの様な顔をし、自身の前に無のエネルギーを溜め始める。

 

「もういいや…… 跡形もなく消えろ」

「頼む、デモンティア…… 俺に力を…… 俺に力を貸してくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっ!!!」

 

 その時、デモンドライバーが輝き始め、自然と彼の腰に装着される。

 そして輝きの中からデモンティアの面々が姿を表し、彼の横へと並び立つ。

 

「エイル………皆んなッ!!」

「遅れて申し訳ございません、恭也様」

「ど、どうして封印解除されなかったんだ!?」

「それは…… 封印後、ちょうど1年経過しなければ封印が解かれないのです」

「え、何その仕様……… という事は今がちょうど1年って事か」

「恭也様」

「ん?」

「お会いしたかったです」

「……… あぁ、俺もだ」

「それとこちらをお使いください」

 

 エイルが手渡してきたのは見た事もないデモンティアイズキーであった。

 

「それは私の全盛期の力、本来のエイワンでございます」

「なるほどな…… じゃあ───── 久々に行くぞ、皆ッ!!」

《ベリタスエイワン!》

 

 ベリタスエイワンティアイズキーをデモンドライバーに差し込み、捻ってドライバーの本を展開する。

 全身に装甲を纏ったその姿は、スタンドエイワンと酷似しているが、こちらは黒と白がはっきりと別れており、エイワンにあった鍵穴はなく、装甲自体はサタンメレフ寄りと言える姿をしている。

 

《開錠!!》《憑依!!》

《悪魔の名はエイル・ワン!!1の数字を持ち、その力の全てを王に捧げる者!!》

《スタンドベリタスエイワン!!》

「さぁ、勝負だ。悲しき悪魔よ」

「デモンティアおぉぉぉぉぉぉぉぉぉうッッッ!!!」

 

 スタンドベリタスエイワンは、あのサタンメレフの力を微々たるものだが上回る。

 それもそのはずであり、全盛期のエイルの力と王としての恭也の力が組み合わさる事で、本来ならばあり得ないはずのエネルギーを生み出し、基本形態に酷似しているが、中身はサタンメレフといった矛盾を生み出しているのだ。

 

「はぁっ!!」

 

 メレフキーブレードによる一撃で、最も容易くエイスは吹き飛ばされる。

 そしてエイスは様々な角度から光弾を飛ばしてくるが、メレフはそれら全てを躱し、流し、斬り伏せる。

 

「な、なんだとっ……!!? ならば、このエネルギーで封印してやる!!」

「無駄だッ!!」

 

 王として覚醒したメレフに封印の力は通じない。

 メレフキーブレードで封印エネルギーを弾き返し、逆にエイスが能力を封印されてしまう形となった。

 

「そ、そんな…… この俺がッ!!」

「お前は悪くない。悪いのはこの世界だったな──── すまない」

 

 そしてメレフはドライバーのベリタスエイワンティアイズキーのボタンを押してから回し、高く飛び上がって両足をエイスに向ける。

 

「王、お前が、お前さえいなければ………────── はっ!!」

 

 エイスは見えた。彼が前王、スレイマンと重なる瞬間を。

 次の瞬間、エイスの胸部にメレフのエネルギーを纏った両足が食い込んだ。

 

「い、嫌だッ…… 俺はこんなッッ…!!」

「眠れ───── 悲しき悪魔よ」

「ぐわぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!」

 

 メレフは地面に着地し、彼の爆発した後を振り返る。

 

「お前に救いがないのであれば、俺がその道を作ってやろう」

 

 そう呟くとメレフはデモンティアイズキーを取り出した─────。

 

 

 *****

 

 

 あの後、エイスは封印された。

 そもそもデモンティアは異例な事がなければ死ぬ事はない。魂だけが彷徨う形となるのだ。

 エイスも創られた存在とは言えど、そこに魂はあった様で、暫く反省としてデモンティアイズキーの中で大人しくしてもらっている。

 あれから変わった事と言えば──── そう。生活環境かな。

 

「わはははははっ!! 今日は飲むぞネゴール!!」

「おう!! わしに勝てるかなぁ、ジェイク!? がははははははははっ!!」

「あら? ティッツったらもう酔っちゃったの?」

「メロクぅ〜、私は別にお酒得意じゃないぃ〜……」

「……… そうだよねゼフォー。僕かっこいいよね」

「エミー…… 俺は何も言っていない……」

「ふぉふぉ、賑やかになりましたなぁ、ンードゥ様」

「ふんっ……」

 

 デモンティア達が両親と共に祝い酒をしている。

 なんの祝いかって?それはもちろんデモンティア達と暮らせる権利を取ったからだ。

 

「まさかこんなすんなりと権利を取得できるとはな……」

「それもこれも恭也様のお力があってこそです」

「いや、俺は1人ではなにもできない。弱い人間だ」

「そ、そんな事は……!!」

「だが──── お前達といれば俺は強い人間になれる」

「恭也様ッ…!!」

「ありがとうエイル、俺の隣にいてくれ────」

「好きぃっっっ!!!!!」

「えぇ……」

 

 こんな感じでもう暫くデモンティア達と暮らせる事となった。

 これから先、何が起こるかわからないけれど、家族が増えた事はまぁ良いことだ。

 この騒がしい感じ、悪くない。

 

「それでは、皆!! 改めて乾杯ッ!!──────」

 

 仮面ライダーメレフ 真・The end

 

 

 *****

 

「…………」(手を銃の形にしてる

「まだやるんですかそれ……」

「それで…… お前達の方はどうなんだ?」

「ぼ、僕らはとりあえずまぁ…… はい」

「ちょっと適当に言わないでよ! とにかく私たちも頑張ります!!」

「おう、先輩として言わせて貰うが敵はかなり手強いから気をつけろ?」

「僕たちも応援してますから!」

「俺も助太刀くらいはしよう。前に助けてもらったからな」

「は、はい! よーし…… 頑張りましょう!」

「それじゃあ行くわよ! 次のステージ!」

 

 仮面ライダーメレフ To be continued…




3年間ぐだぐだとしてしまいましたが、これにて仮面ライダーメレフの物語は一時終了致します。
今までご愛読頂きありがとうございました!!そして本当にお待たせして申し訳ございません!!
それでは皆様新たな物語にて……。









ん?ん?ん?流れが……?









感情────。
それは人間ならば誰しもが持つ気持ち。

時に悲しみ、時に怒り、時に喜ぶ────。

その感情が限界を突破して誕生する怪人「エモーション」。
エモーションは人々の感情を食らい、世界を恐怖に陥れる。

現役女子高生の「寒波 氷」は、ひょんな事から謎の青年、愛称「モヤシ」と1つになり、「仮面ライダーリラティブ」としてエモーションから人々を守る為に戦う!!

表裏一体、一心同体。
─── 愛を超えるものはなし。

新連載!!【仮面ライダーリラティブ】!!
早めに投稿するのでよろしくお願い致します!!
ではまた次回ッ!!!!!


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