ポケットモンスターHGSSエボリューション~新たに芽吹きし若葉~ (東海鯰)
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「第一話~芽吹きし二つの若葉~」

カントーを跋扈していた秘密結社ロケット団をレッドとブルーが壊滅させてから三年の月日が流れ、人々は平和を謳歌していた。そして、その平和の中、新たな若葉が芽吹き、力強く天へ向かって伸びようとしていた!!


ワカバタウン コトネの家

 

「いよいよ明日、俺達は正式にポケモントレーナーになるんだな。」

「何時かは来るものだと思ってたけど、何かドキドキするわね。」

 

ここは、始まり告げる風が吹く町ワカバタウン。ジョウト地方で一番カントー地方に近い小さなこの町から、二人の新米トレーナーが翌日の旅立ちの日を迎えようとしていた。

 

「しかも結構立派な証書も貰ってるしな。」

 

ワカバトレーナーズスクールを首席で卒業し、ポケモントレーナーとして一人で旅立つことを許可すると言う旨が記された証書を片手に話をするのはワカバタウン一のポケモンバトルセンスを持った少年ヒビキ。彼は卓越した闘いの能力を持ち、とても優しいこころを持った新米トレーナーである。一方で悪いことをしている人は許せないという義のこころも併せ持っていた。

 

「そしてこれからどんな出会いがあるのか、とっても楽しみよね!」

 

笑顔がとても似合う少女はコトネ。ヒビキの幼馴染であり、ワカバトレーナーズスクールを次席で卒業したヒビキより少し体格の大きい少女である。彼女はバトルセンスではヒビキに及ばないが捕獲に関しては高い素質を持ち、瞬時に必要なモンスターボールを選定し、的確にポケモンに当てることに優れていた。

 

「それでコトネ、本当に良いのかい?」

「何のこと? ヒビキ君。」

 

笑顔でヒビキの顔をまじまじと見つめるコトネ。

 

「俺と一緒に旅に出るってことで、本当に良いの・・・かい? 本当は一人で行きたいとか、思ってたりとかしない? ほ、ほら俺結構簡単にくよくよしちゃうからさ。足手まといになるんじゃないかって。」

「そんなことないよ!!」

「うわっ!!」

 

ヒビキを押し倒すコトネ。

 

「ヒビキ君に限ってそんなことが起こるなんてことないよ! それに、私はヒビキ君と一緒に旅が出来ることを楽しみにしてたんだから!!」

「そ、それなら良いんだけど。」

 

顔を赤くするヒビキ。実はヒビキはコトネのことが大好きなのだ。幼少期からずっと一緒に遊び、学び、そして怒られてきた。ヒビキはコトネがいじめられていたりとかすると直ぐに飛んで守ったり、逆にコトネはヒビキに分からないところを教えてあげたりなど双方とても深い関係を持っていた。それがこの年まで続き何時しか彼は彼女をただの友達ではなく、将来結ばれたい人へと昇華していた。

 

(ヤバい・・・ドキドキしすぎて心臓が持たないよ!!)

 

一方で、押し倒したコトネもヒビキと同様ドキドキしていた。彼女も同じく彼と結ばれたかったのである。

 

(ど、どうしよ!? ついノリでヒビキ君のこと押し倒しちゃったけどここから私どうしたら良いの? ドキドキしすぎて心臓の鼓動が止まらないわ!!)

 

「・・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・。」

「と、取り敢えず起きても良いかな?」

「そ、そうね! じゃ、どくから!」

 

コトネがヒビキから離れ、ヒビキはそれを見て起き上がる。

 

「さ、さっきはごめんねヒビキ君。」

「し、心配無用だよコトネ。あ、明日は寝坊しないようにね!」

「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」

 

 

((あー、ドキドキした。))

 

 

「それじゃ、俺は帰るから。明日いよいよ俺達の冒険が始まるから張り切っていこうぜコトネ!!」

「道論よヒビキ君!! 絶対に寝坊とかするんじゃないわよ!!」

「コトネこそすんじゃねえぞ! ま、俺はレッドさんを越える予定だからしないけどな!」

「そうやって寝坊とかしないでよね~www」

「絶対しないさ!! じゃあなコトネ!!」

「じゃあね!! ヒビキ君!!」

 

 

ヒビキの家

 

「そう、遂にこの日が来たのね。」

「・・・・うん。」

 

ヒビキは少し申し訳なさそうな表情を浮かべる。幼い日にヒビキの母親は海外を飛び回るヒビキの父親と別居生活を余儀なくされ、女一人で自分の面倒をみていた。夫が仕事で忙しい為夫婦の時間等殆どなかった為に彼女の生きがいはヒビキを育てることだった。その自分が彼女を置いて出て行こうとしているのだ。心優しいヒビキにとって本当は母親はそんなことを望んではいないのでは?と悩んでしまったのだ。

 

「ヒビキ・・・私は大丈夫だから。」

「お母さん・・・。」

「誰が言っていたのかは知らないけどね、男の子は旅に出るものなのよ。だからお父さんも今海外を飛び回ってるの。」

「でも・・・。」

「ヒビキ、私は女一人で貴方を育てて来たわ。だからこそ貴方はここにいちゃいけないの。外に出て、新たな世界を、風を感じてきて頂戴。」

「うう・・・お母さん・・・。」

 

その後ヒビキは母親の胸の中で泣き、その日はいつもより早く眠りについた。

 

 

翌日

 

「それじゃ、行ってきます!!」

「コトネちゃんにもよろしくね!! あまりあの子を困らせるんじゃないよ!!」

「分かってるよ!!」

 

自宅を出たヒビキはコトネの家へ向かい、彼女を迎えに行った。

 

「いよいよこの日が来たねコトネ!! 寝坊する事はなかったぜ!!」

「はしゃぎ過ぎると後に響いちゃうよヒビキ君。」

「それもそうだな! それじゃ、時間を確認しようぜ!」

「予定の10分前集合出来てるから、遅れはないわ。それじゃ、行きましょう。ウツギ研究所に!!」

 

 

ウツギ研究所

 

「やあ! 君達が来るのを待ってたよ!」

 

ヒビキとコトネを出迎えるのはジョウト地方でポケモンの連れ歩きについて研究をしているウツギ博士。今日はヒビキとコトネに最初の御三家ポケモンを与えることになっている。

 

「さあ、君達のパートナーとなるポケモンを選ぶんだよ!」

「「はーい!!」」

 

元気よく返事する二人。二人は三つのボールを見つめる。

 

「じゃあ、俺はヒノアラシ!!」

「私はチコリータ!!」

 

二人は最初のポケモンをそれぞれヒノアラシとチコリータに決めた。選ばれた二匹はそれぞれ新しい主人に期待のまなざしを送る。

 

「それで、二人にちょっとお願いがあるんだけど良いかな?」

「大丈夫ですよウツギ博士! なあコトネ!」

「勿論!!」

「ホント君達は元気があるね。それじゃあ、ヨシノシティを越えてキキョウシティに向かう道の途中にある30番道路にポケモンじいさんから卵を貰ってきて欲しいんだ。僕は研究でてんてこ舞いでね。お願い出来るかな?」

「「任せてください!!」」

「あははは、本当に君達は仲良し何だね。」

「まあ、小さい頃からの。」

「幼馴染、だからね。」

 

少し恥ずかしそうに顔を逸らしながら言う二人。

 

「あ、ヒビキ君にコトネちゃん。こちらを。」

 

二人は助手からきずぐすりを5個ずつ貰った。

 

「草むらではポケモンが出ることは知っていますよね?」

「ああ!! 野生のポケモンが飛び出してくるんだろ!!」

「小さい時は危ないから言っちゃ駄目って言われてから知ってる!! 傷ついたらこれで回復させるんでしょ?」

「その通りです。では、頑張って来てください!」

「それじゃあ、行こうコトネ!!」

「異存なしよヒビキ君!!」

 

こうして二人は元気よく研究所を飛び出し、旅に出ていったのであった。

 

「そんじゃ、ヨシノをまずは目指そうかコトネ!」

「それもそうね・・・ん?」

「どうしたのコトネ?」

「ヒビキ君、あの少年は誰かしら?」

 

コトネの指さした先にはウツギ研究所の窓から内部を除く赤い髪の少年がいた。

 

「ここがかの有名なウツギポケモン研究所・・・。」

「何か、ウツギ博士の研究所を覗いてる人がいるみたいなの。」

「本当だな。あんな奴うちの学校にいなかったし、多分ここの人間じゃないな。もしかしたら怪しい奴かもしんねえ。声を掛けておくか?」

「だ、大丈夫かな? もし本当に怪しい人だったら。」

「その為にもこいつがいるんだろ?」

 

博士から貰ったボールを出すヒビキ。

 

「コトネはそこで見ていてくれ。俺が行って来る。」

「わ、分かったわ。無理はしないでね。」

 

「・・・・あれが最後の御三家の。」

「おい!」

「!!」

「何してるんだ君は? 勝手に博士の研究所をのぞき見して。」

「うるさい!! じろじろ見てんなよ!!」

「おわっ!?」

 

赤い髪の少年に投げ飛ばされるヒビキ。

 

「ひ、ヒビキ君!!」

 

直ぐに駆け寄るコトネ。

 

「いてて。あいついきなり俺を投げ飛ばしてきやがった。」

「肩から落ちちゃったけど大丈夫?」

「大丈夫だよ。昔から体は頑丈だからさ。」

「なら良いんだけど。」

「彼女連れか? フン! これだから弱いくせに集まって強がる奴は嫌いなんだ。」

「何!? いつ俺が強がったって言うんだ?」

 

赤い髪の少年の言葉にカチンと来たヒビキが喧嘩腰になる。

 

「俺は事実を言っただけだ。それより、お前らは御遣い中なんじゃないのか? さっさと済ませたら良いんじゃないか?」

「・・・・・・・・・・。」

 

ボールに手をかけながら赤い髪の少年を睨むヒビキをコトネが押しとめる。

 

「い、行こうヒビキ君!! こんなのに構ってたら時間の無駄だよ!!」

「賢明な判断だな。弱い奴はそうするのが賢明だ。」

「・・・・・・・・・・。」

 

 

29番道路

 

「一体何だったんだあいつ。」

「全くよね。いきなり弱いだのなんだのってね。」

「しかし、やっぱりさっき投げ飛ばされた時肩を打ったところが痛むな。」

「大丈夫? ちょっと見せてヒビキ君。」

 

彼の肩を診るコトネ。

 

「・・・・そんなに腫れてはいないけど、無理はしないことね。一応シップは貼っておくわね。」

「すまねえなコトネ。さっきもお前に助けて貰ったようなものだからな。」

「別に気にしてないよヒビキ君。昔から私たちはそういう仲だったじゃない。」

「そう言えばそうだったな。俺が喧嘩して帰って来るといつも治療してもらってたっけ。」

「そしてある日は私がいじめられてる時、周りの子が動けない中いつもヒビキ君は助けてくれたわ。体格の違う相手にもひるむことなく立ち向かって私を助けてくれたこと、今でも覚えてるんだから!!」

「・・・・そ、そうだっけ、かな~?」

 

顔を赤くするヒビキ。

 

「さて、治療は終わったわよ。それじゃ、ヨシノシティを目指しましょ。」

「じゃあ、そこまでの間にレベル上げだな!! 俺はレッドさんを越えるんだからな!!」

「じゃあ、私はヒビキ君の事を全力で支えるわ。一人だと暴走してどこかに行っちゃいそうだしね。」

「頼むぜコトネ! 俺はコトネのこと、全力で守って見せるからな!」

「期待してるわ、ヒビキ君!」

 

ガサガサ!!

 

「野生のポケモンだな!! 行け!! ヒノアラシ!!」

「お願い!! チコリータ!!」

 

二人はこうして、ポケモントレーナーとしての一歩を踏み出した。一方その頃、もう一人の男の子が旅立とうとしていた。しかし、それは必ずしも褒められるものではない形で。

 

ワカバタウン

 

「大したことなかったな。あの研究所の防衛網は。」

 

その少年の手には一個のボールがあった。そして中にはワニノコが納められていたという。

 

「俺は最強のトレーナーになる男だ。例え非道と言われようとも、一人で強くならなきゃいけないんだ!!」

 

(続く)

 

 

 



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「第二話~託されし者~」

29番道路

 

「ヒノアラシ、ひのこだ!!」

「ポポーっ!!」

「よし! 良い調子だ!! もう一発だヒノアラシ!!」

「ヒノー!!」

「いい調子よヒビキ君!! あとはここでモンスターボールよ!!」

「ああ! 一発で仕留めて見せるさ!! いっけえええ!!!」

 

ポッポめがけてモンスターボールを投げるヒビキ。ボールは見事命中し、地に落ちる。

 

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

 

パチン!

 

「「や、やったあああ!!」」

 

ハイタッチして喜ぶ二人。ヒノアラシがボールを持ってヒビキの元に駆け寄る。

 

「これで飛行要員を確保出来たわねヒビキ君!」

「ああ。旅をするにはやっぱり鳥ポケモンの協力は不可欠だからね。」

 

ヒノアラシからボールを受け取るヒビキ。

 

「でも、何でポッポにしたの? 途中オニスズメとか、何故か昼に行動してたホーホーとかいたのに。」

「それはね・・・!!」

「どうしたのヒビキ君?」

「コトネ伏せろ!!」

「きゃああ!!」

 

ヒビキがとっさにコトネを押し倒す。そしてその直後に炎の塊が二人の頭上を通過していった。

 

「あ、ポッポの入ったボールが!!」

 

コトネを守る時に放り投げてしまったボールが炎の中に巻き込まれてしまう。

 

ボン!

 

「ポッポー!」

「あ! 折角捕まえたのに!!」

 

火でボールが破壊され、ポッポは野生へと帰ってしまう。

 

「一体どうしてこんなことが。」

「あれだコトネ!!」

 

ヒビキの指さした先には、

 

「ヒトカゲ? どうしてこんなところに!?」

「カゲッ!!」

「ヒノアラシ、ひのこで迎え撃て!!」

「ヒノッ!!」

 

ドーン!!

 

「何とか攻撃を相殺できたけど、俺とコトネのポケモンじゃあいつには不利だぜ。」

「何か打開策はないかしら?」

「カゲッー!!」

「ん?」

 

ヒビキはヒトカゲが口の中を気にしているに気が付いた。

 

(何で口をあんなに気にしてるんだ?」

 

「カゲ!!」

「コトネ! 右だ!」

「み、右ね!」

「カゲ!! カゲカゲ!!」

「右、右、左!!」

 

ヒビキの指示に従ってコトネがヒトカゲのひのこを回避する。

 

「で、いつまで逃げ続ければ良いのヒビキ君? もう私、スタミナが。」

 

急に激しい運動をする形になったコトネはもう足がガタガタだった。

 

「・・・今だ!!」

「カゲ!?」

 

ヒトカゲのひのこのPPが切れたところを見計らってヒビキがヒトカゲの口を開けて中を確認する。

 

「・・・やっぱり!! これが原因だったんだ!!」

 

ヒビキがヒトカゲの口から取り出したのは、バスラオの骨だった。

 

「これがのどに刺さってて、それを吐き出そうとしてひのこを無差別に放ってたみたいだ。」

「・・・・・・・・・・・・・。」

 

痛みがなくなり、先ほどとは変わりキョトンとおとなしくなるヒトカゲ。

 

「コトネ~、大丈夫だった~?」

「な、何とかね。でも、もう歩けないよ~、ヒビキく~ん。」

 

ペタンと地面に座り込んでしまうコトネ。

 

「じゃあ。」

「へ?」

「いや、ヨシノまで背負って行こうかと思って。」

「いやいやでも、私ヒビキ君より大きいし。」

「大丈夫だよコトネ。俺だって男なんだからさ!!」

「・・・じゃあ、お言葉に甘えて(問題は別のところなのよヒビキく~ん!!)」

 

「・・・・・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・・。」

 

(どうしよ? コトネの胸が当たってる。心臓がバクバクしてきた。)

(どうしよ? ヒビキ君の背中、ちゃんと鍛えられてる。何か心臓が。)

 

「カゲカゲ?」

「ヒノヒノ!」

「チコチコ!」

「何かあのヒトカゲ、俺たちの手持ちと仲良くなったみたいだね。」

「そうみたいね。同じ御三家同士、通じ合うものがあるのかもね。で、ヒビキ君はどうするの?」

「ヒトカゲのことかい? そうだね、まずはヨシノでこの子の持ち主がいないかを探してもらって、いなかったら手持ちに加えようかと思ってるよ。炎タイプで被っちゃうけど、育て上げれば飛行要員になるし、あの伝説のトレーナーレッドさんもリザードンを使ってるしね。」

「成る程ね~。じゃ、そろそろ私も歩こうかな。」

「良いの? もうちょっと休まなくて良いの?」

「大丈夫よ。こう見えても回復は早いから・・・たぶん。」

「あははは。コトネらしいや。」

 

ヨシノシティ

 

「さ~て、着いたぜヨシノシティ!!」

「まあ、まだ目的地にはたどり着いてないんだけどね。」

「まあ、そうだけどさ。」

「私たちのポケモンも傷ついて疲れてることだし、あそこで休憩しない?」

「それもそうだな! 俺たち自身も疲れてるしな! じゃあ行こうコトネ!!」

 

ポケモンセンター

 

「へえ~、噂では聞いてたけど本当に無料で治療してくれるのか~。」

「はい! 何時でもどなたでも利用できるポケモントレーナーの味方ポケモンセンターです!!」

「ちなみに料金は?」

「誰でも何回使ってもタダですよ!!」

「へえ~、タダで?」

「でも、タダだと何か悪い感じするよねヒビキ君。」

「それな。あの機械だってかなりの金が掛かってるはずだしな。」

「あとポケモンセンターってブラックだって聞いたしね。」

「正直100円でも良いから金取った方が良いと思うぜ。」

「そうそう。私もそう思ってた。」

 

(何この子達怖いんだけど?)

 

「で、でも~、そうしたらお金を惜しんで来なくなっちゃう人もいると思いますよ?」

「ま、それもそうだけど。」

「まあね。そう言われちゃあおしまいよね。」

「と、とにかく、元気になりましたから!! どうぞ!!」

「いや、本当にタダで良いのか?」

「良いんです!! 本部からそう言われてますから!!」

「正直運営資金何処から捻出してるのか気になるんだけど。」

「税金じゃね?」

「やっぱり?」

「そういう大人の世界はまだ君達には早いから!!」

「それとヒトカゲのことなんですが。」

「それは何かあったらまた連絡するわ。」

「了解で~す。」

「じゃ、行こう! ヒビキ君!」

「ああ!!」

 

ポケモンセンターを後にする二人をジョーイさんは見送った。

 

「・・・・・はあ、疲れたわ。さて、このヒトカゲを検索にかけてみてと。」

「・・・・第二目標、発見。」

 

 

30番道路

 

「まあ、取り敢えず元気になって、休憩もしたことだし、ポケモンじいさんの家を目指して行くか。」

「そうね。」

「さて、コトネ。」

「分かってるわよヒビキ君。」

 

それぞれ自らが履いている靴のスイッチを入れる。そして、

 

「「うおおおおおおおおおお!!!!!」」

 

彼らが履いていたのはランニングシューズ。普通に歩くよりも圧倒的に速く移動できる優れものである。

 

「行けヒノアラシ!! たいあたりだ!!」

「お願いチコリータ!! はっぱカッター!!」

 

しかし、

 

「走ると野生のポケモンが出やすくなるみたいだな。」

「まあ、大きな音を立てて住処を荒らしてるようなものだから仕方ないけどね。」

「そして。」

「何より。」

「「はあ、はあ、はあ。疲れる!!」」

 

 (いきなり走ったらそうなるよね普通。)

 

「なあ、ちょっとゆっくりと行かねえか? 正直疲れた。」

「同感。ちょっと脚痛くなって来た。」

「大丈夫か? 肩貸すか? さっきは怪我も治してもらったしな。」

「だ、大丈夫よ! 凄く痛いとかじゃないから。それにさっきおんぶしてもらったし。」

「そうか? なら良いけど。」

 

 

「あの家は・・・違うよな?」

「ポケモンじいさんの家はもう少し先だからね。あの民家は違うわね。」

「でも、何かこっち見てないあの人?」

「そうね。何やら怪しい箱を持ってこっちを見てるし。」

「・・・見なかったことにしよっか。」

「そうね。いかにも誘い受けしてる感じで怪しいしね。行きましょ。」

「・・・・・・・・・・・・。」

「で、どれくらい進めば良いんだ?」

「えっと、もうちょっと先ね~。」

「見なかったことにしないで!!」

「「うわっ!!」」

 

無視した男性が遠くに行きかけたヒビキとコトネを強引に呼び止める。

 

「いや~、わしの家をポケモンじいさんの家と勘違いする人が多くてねえ~。」

((いや、俺達(私達)別に勘違いしてないんですけど!?))

「まあ、それは別に良いんだけどさ~。」

((良いのかよおい。))

「そう言えば、こういう木他にも見たことあるでしょ? これ全部ぼんぐりの木なんだよ~。」

((いや、知ってますけど!? 予備知識として!! 途中にも生えてたし。))

「それでこのケースを君達にあげようと思うんだ~。これにぼんぐりを入れると凄く効率が良いんだよ~。」

「あ、はい。」

「その、ありがとうございます。」

「じゃ、わしはここで。良い旅を祈ってるよ!!」

 

バタン!

 

「・・・・・・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・・・。」

((何だったのあれ!?))

「まあ取り敢えず、貰っときましょ。これ。」

「あとついでにあのぼんぐりも収穫しておこうかな? まあ、最悪非常食にはなるよね?」

「最悪の場合わね。実際はボールに加工するんだけどね。」

「確かヒワダタウンのガンテツさんだっけ? 加工する人って。そう言えばこの前テレビに出てたかな。」

「最近は量産品のボールが主流でああいう職人さんが作るボールは少ないらしいからねえ。じゃ、先に進もうか。」

 

 

ポケモンじいさんの家

 

「おお、君達がウツギ博士から御遣いを頼まれた子達だね? 待っていたよ。」

「はい。」

「それで、ウツギ博士にお届けするのは一体何なんですか?」

「確か卵って言ってた気がする。」

「そう! この不思議な卵を是非! ウツギ博士の元に届けて欲しいのだよ!!」

 

ヒビキとコトネは不思議な卵をポケモンじいさんから受領した。

 

「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」

「・・・どっちが持つ? コトネ。」

「・・・どうしようかヒビキ君。」

「・・・交代で持とうか。ヨシノまでは俺が持つよ。」

「ありがと。じゃあ、ヨシノからは私が持つわ。」

「おお? 君達が新米のポケモントレーナーかな?」

「「!? この声は!! オーキド博士!!」」

「ふむ、流石はウツギ君が選んだトレーナーじゃ。この子達なら、この図鑑を託しても大丈夫そうじゃな。」

((図鑑?))

「このポケモン図鑑を君達に託そう! こいつの中身は一杯にするんじゃぞ~。あと戦闘データとかも見れるからな~。」

「「ありがとうございます!!」」

「ついでに君達のポケギアにわしの番号も登録させておくれ~。」

「はい! もちろんです!!」

「まさかポケモン研究の権威であるオーキド博士と番号交換ができるなんて光栄です!!」

「そうかそうか。そいつはありがたいの~。それじゃ、これからも頑張るんじゃぞ~。」

「「はい!!」」

 

 

「いや~、何か凄い物を貰っちゃったね。」

「そうね。ポケモン図鑑なんてね。」

 

ピリリリリ!! ピリリリリ!!

 

「あ、電話だ。・・・・ウツギ博士?」

 

ヒビキが電話に出る。

 

「もしもし?」

「もしもし!? ヒビキ君にコトネちゃん!! 大変なんだよ!!」

「ど、どうしたんですか博士!?」

「とにかく、急いで研究所に戻ってきて~!!」

 

ピッ、

 

「切れた。」

「一体何が起きたのかしら?」

「分からない。でも、何か不穏な気配は察した。それだけは確かだ。」

 

ヒビキとコトネは急いでヨシノシティへと向かった。一方ヨシノでは、

 

「フッ、こうもあっけなく手に入るものなんだな。」

 

赤い髪の少年の手には新たにもう一つのボールがあった。

 

「・・・来るか。あいつ等が。」

 

(続く)

 

 



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「第三話~赤い髪の少年との遭遇~」

ヨシノシティ

 

「さて、取り敢えずここまでは戻って来たな。」

「そうね。でも急がないと。あの話しぶりじゃ何かとんでもないことが起きたに違いないわ。」

 

ウツギ博士からの緊急連絡を受け、ランニングシューズを用いてここまで快足を飛ばしてきた二人。

 

「ああ。明らかに言葉足らずだったけど、不穏な気配を察したからね。」

「あの博士は慌てると言葉が出なくなるのよね。」

「そして。」

 

ヒビキは29番道路の方を見る。

 

「どうやら、不穏な気配はあそこからも漂ってきているようだ。」

 

二人の視線の先には何処かで見たことしかない少年の姿があった。

 

「・・・・・・・・・・・・・。」

「あ、あれはウツギ研究所をのぞき見してた赤い髪の!!」

「・・・・・・・・・・・・・。」

「!」

 

ヒビキは赤い髪の少年の手を見る。

 

(手にはモンスターボール。そう言えばウツギ博士の手元にはワニノコだけが残されていたはず。そして初めて此奴と会った時にモンスターボールは持っていなかったはず。持っていたのだとしたらポケットに膨らみがある程度あったはずだ。だが、あいつに投げ飛ばされた時にそんな感触は無かった。となれば中身はワニノコである可能性が。しかし、ポケットにも膨らみがある。何かを捕獲したのか、あるいはポケモンセンターで引き出したのか?)

 

ピリリリリ、

 

コトネのポケギアが鳴る。

 

「ヨシノのポケモンセンターからだわ。もしもし? ・・・・ええ!?」

「どうしたんだいコトネ!?」

「さっき、ポケモンセンターで私達が預けたヒトカゲが何者かに盗まれたって。」

「何だって!? ・・・・!!」

 

ヒビキは赤い髪の少年のポケットに膨らみがあることに気付いた。

 

(もしかしてあのボールの中身はワニノコ、そして隠し持っているボールは。)

 

「まさかお前、盗みを働いたんじゃないだろうな?」

「・・・・お前に何の関係がある。それよりそこにいると邪魔だ。どけ。」

「・・・そんなことは出来ないね。」

「何?」

「コトネ、卵を頼む。絶対に奪われるんじゃないぞ。」

「あ、うん。分かった! チコリータ、一緒に守って!」

 

コトネはチコリータを繰り出し、自らの前に配置する。

 

「・・・・そう言えば女、お前さっき研究所でポケモン貰ってたな。」

「だ、だから何なのよ! ウツギ博士から旅立ちの時のパートナーとしてヒビキ君と貰っただけよ!」

「ふん。お前みたいな弱い奴にはもったいないポケモンだぜ。」

「・・・・・・・・・。」

「何だよ女、何を言われてるのか、分からないのか?」

「・・・確かに私は弱いよ。何時もヒビキ君と喧嘩すれば負けるし、ポケモンバトルのセンスもないよ。ポケモンじいさんのところに行く途中何回もチコリータを危ない目に遭わせてはヒビキ君のポケモンに助けて貰う局面もあったしね。」

 

ある時の戦闘風景

 

「チコリータ、たいあたりよ!!」

「ポッポー!!」

「やった! 急所に直撃で一撃!!」

「!! ヒノアラシ、ひのこ!!」

「へ?」

 

チコリータの真上をヒノアラシのひのこが通過する。

 

「危なかった。コトネ、君のチコリータをビードルが狙ってたよ。しかもどくばり攻撃を今にもしようとしている場面だった。俺がすぐに気づけたから良かったけど。」

 

チコリータの後ろにひのこで戦闘不能となったビードルが倒れていた。

 

 

「何だ。分かってたのか。だったらそこを。」

「どかないよ。」

「何?」

 

コトネがヒビキの隣に立つ。

 

「こ、コトネ?」

「赤い髪の貴方、貴方はそういう価値観を持つ人なんだろうけど、私は違うよ。私にとってポケモンと言うのはパートナーだと思ってる。そこに強いも弱いも関係ないわ。それに、人それぞれの定義によって強い弱いなんていくらでも変わって来るわ。少なくともこの子は私についてきてくれる。貴方が何と言おうとね!!」

「コトネ!」

「アイツの話を聞いてたら黙っていられなくてね。つい言っちゃたわ。」

「あはは、コトネらしいと言えばコトネらしいや。」

「・・・・そうか、だったら仕方ない。オレもいいポケモン持ってるからな。どういうことか、お前らに教えてやるよ。最も女、お前は卵を抱えたまま闘うつもりなのか?」

「そ、それは・・・。」

「・・・コトネ。」

「ヒビキ君?」

 

ヒビキがコトネから卵を受け取る。

 

「コトネの覚悟を見せてもらったよ。やっぱり卵は俺が持つよ。俺は最初コトネには後方に下がってもらおうかと思ってた。俺は無意識に君を守らなきゃ、俺が立ち向かわなきゃ、そう考えてた。でも、コトネは覚悟を示した。なら、それに全力で俺も答えたい。俺とコトネの全力を見せつけてやる。なら、俺はコトネの持てるすべての力を出せるようにしてあげたい。それだけだ。」

「!! ヒビキ君! 卵が!!」

「え!?」

 

ヒビキが抱えていた卵にヒビが入り、眩い光と共に殻が割れる。

 

「チョッゲプリィイイイイイイ!!」

「ええ!? 卵の中にいたのは・・・ポケモン!?」

「・・・どうやらトゲピーって言うポケモンみたいだ。」

 

ポケモン図鑑でトゲピーを調べるヒビキ。

 

「でも、これで卵を抱えながら戦う必要はないみたいだな。」

「・・・・ふん。お前らみたいな弱いヤツ、簡単にひねりつぶしてやろう。かかって来るんだな。」

「・・・・ほう、このヒビキ、見知らぬ少年に随分となめられたもんだな。」

(あれは本気になった時のヒビキ君!!)

 

後ろ向きにかぶっている帽子を前にかぶりなおすヒビキ。

 

「行くよコトネ、俺たちの結束の力を見せつけてやるぞ!」

「勿論よ! ワカバの誇りを見せてやるわ!!」

「ありがとうコトネ。さて行くぞ! ヒノアラシ!!」

「お願い! チコリータ!!」

「・・・行けワニノコ、ヒトカゲ!!」

「・・・やはりワニノコか。」

「そしてヒトカゲね。ワニノコはヒノアラシ、ヒトカゲはチコリータに有利なタイプね。」

「まあ、予想通りだな。ヒノアラシ、たいあたりだ!!」

「チコリータ、はっぱカッターよ!!」

「迎え撃てワニノコ、ヒトカゲ!! みずでっぽうにひのこだ!!」

「させるかよ! えんまく散布!!」

「何!? これでは視界が!!」

「さて、どこに俺のヒノアラシがいるか、分かるか?」

「チッ、弱いくせに やるじゃないか。ならば全方位にみずでっぽうにひのこを回りながら発射しろ!!」

「そうやってえんまくを打ち消す作戦か。だけど、甘いね。ヒノアラシ!!」

「何!? 空からだと!!」

 

空中からワニノコめがけて突撃してくるヒノアラシ。

 

「か、回避だワニノコ!!」

 

しかし、腰が引けているのか、回避行動をとらないワニノコ。

 

「な、何をしている!! さっさと回避・・・まさか!! にらみつけるをしながら降下を・・・。」

「そして、たいあたりだヒノアラシ!!」

「くそっ! ならばヒトカゲはひのこで迎え撃て!!」

 

(えんまくで視界を奪い、にらみつけるで防御を下げたところでたいあたり。流石はヒビキ君。ワカバタウン一のポケモンバトルのセンスを持つだけあるわ。)

 

「よそ見してていいのかしら? チコリータ、たいあたりよ!!」

「くっ! ひのこで・・・しまった! 今照準はヒノアラシに。」

「今更気づいても遅いわ!!」

 

ひのこを発射しようとするヒトカゲの懐にチコリータが入り込む。

 

「・・・・・終わったな。」

 

三人の前には元気に立っているヒノアラシ・チコリータと戦闘不能となったワニノコ・ヒトカゲがいた。

 

「・・・・フン! 時間の無駄だったか。」

 

ワニノコをボールに戻す赤い髪の少年。

 

「どうしたんだ? 簡単にひねりつぶしてくれるんじゃなかったのか?」

「フン! 勝てて嬉しいか? まあ、ヒビキ?は少しは骨があるみたいだったが。」

「負け惜しみか? そもそもお前は何者だ?」

「・・・・オレが誰だか知りたいか? それは世界で一番強いポケモントレーナーになる男さ。お前らじゃ太刀打ち出来ないレベルでな。せいぜい今の勝利にうぬぼれることだな。・・・・何だよ。どけよ!!」

「きゃっ!」

 

進路上に立ちふさがっていたコトネを突き飛ばす赤い髪の少年。

 

「コトネ!! 大丈夫かい?」

「大丈夫。大した事なかったみたいだから。・・・あれ? これは?」

 

コトネは地面に落ちていた一枚のカードを手に取る。

 

「これってまさか・・・・。」

「あの少年の個人情報・・・よね?」

「「・・・・・・・・。」」

「返せ! それはオレが落としたトレーナーカードだ!」

 

コトネから強引にカードを奪い返す少年。

 

「ふん、オレの名前を見たのか。まあ、何が出来るかという話だがな。じゃあな。それと俺には弱いこいつはいらん。」

 

ヒトカゲの入ったモンスターボールをコトネに投げつける少年。

 

「あとは好きにしな。まあ、コトネだったか? 弱いお前にはお似合いだと思うけどな。」

 

その場を足早に立ち去る赤い髪の少年を見送る二人。

 

「・・・急ぎウツギ研究所に戻るぞコトネ。」

「ええ。あいつの名前を忘れないうちにね。でも、ヒトカゲは?」

 

少年に捨てられ、放置されているヒトカゲを三匹は心配そうな顔つきで見つめる。

 

「とりあえずポケモンセンターに届けよう。それから速やかにワカバに向かおう。」

 

二人はポケモンセンターにヒトカゲを預けた。そして、速やかにランニングシューズで高速移動しワカバタウンに戻った。

 

ウツギ研究所

 

「・・・・という訳でポケモンを盗まれてしまったんだ。」

「つまり、研究に夢中になっている間にポケモンを盗まれたということですね?」

「・・・はい。」

「それで、どういう人物だったか分かりますか? 特徴など分かりますか?」

「ええと、確か赤い髪の少年が。」

「「ウツギ博士!!」」

「おお!! ヒビキ君にコトネちゃん!! あれ? そのポケモンは・・・。」

「それは後でしょう博士!!」

「一体何が起きたの? あの電話じゃ何が言いたいのか分からないわ!!」

((まあ、ポケモンが盗まれたんだろうけど。))

「ええとね、簡単に言うと博士はポケモンを盗まれたんだ。」

 

取り調べをしていた警察官が二人に説明を始める。

 

「もしかして、ワニノコを盗まれたのか?」

「そう。博士がそこに置いていたワニノコが盗まれたんだ。そして特徴は赤い髪の少年でね。」

「「!!」」

「どうしたのかい二人とも? 何かひらめいたような顔をして。」

「・・・博士、お巡りさん。俺達、その少年と闘ったかもしれません。」

「な、何だって!?」

「特徴などは分かりますか?」

「まず目つきが凄く悪くて。」

「ふむふむ。」

「次に髪が赤かったわ。」

「ふむふむ。」

「そしてワニノコをもっていたぜ。」

「それとポケモンセンターからヒトカゲを盗んだ疑いがあるわ。ヒトカゲは放棄したけど。」

「!! それで、どこで出会ったのですか?」

「ヨシノシティのワカバタウン方面口でだな。あいつ、コトネに悪口の限りを尽くしやがった!! 許せねえ!!」

「それで、犯人は監視カメラとかには映っていないんですか?」

「ばっちり映ってるよ。見てみるかい?」

「「是非。」」

 

~映像確認中~

 

「そうですか。完全に一致ですか。それで、名前とか分かりますか?」

「はい。」

「あいつがトレーナーカードを落としていたので。奪い返されましたけどちゃんと覚えてます。名前はソウルです。」

「そうですか! 操作にご協力ありがとうございます!! では、私はこれで!」

 

研究所を去る警察官。

 

「・・・・とほほ。僕のワニノコが。」

「元気出してください博士! 必ず犯人は捕まりますから。」

「そうですよ!」

「だと良いけどね。とほほ。」

「そう言えば博士、卵から孵ったこのトゲピーなんですけど。」

「!! トゲピー!?」

 

人が変わったかのようにテンションが上がるウツギ博士。

 

「まさかコトネ、君が孵化させたのかい?」

「いいえ、孵化させたのはヒビキ君です。ただ、直前までは私が持ってました。」

「お陰様でこんなになつかれちゃって。」

「こらこら顔にしがみつかないの。」

 

二人の体に登ったり、顔を引っ張るトゲピー。

 

「そうか。ポケモンじいさんの卵はトゲピー。これは研究がはかどるぞー!!」

「あんなんやってるから侵入されたのに気づかなかったんじゃないか?」

「間違いなくそうね。」

「それで、この後どうするコトネ? 俺はレッドさんを越える下準備としてジムバッジ集めの旅に出ようと思うけど。」

「私はこの図鑑を一杯にする旅かな? でもバッジも集めた方が良いかな? まあ、私はヒビキ君と一緒なら何でも良いかな。」

「そう言われると何か照れるな。」

「そう?」

「それじゃ、今日は休んで明日から再出発しよっか。」

「賛成!!」

「おおおお!! これがこうなってああなってるのかあああああ!!!」

「まだやってるよあの博士。」

「放っておこうか。」

「それもそうだね。」

 

この時こっそり二人はげんきのかたまりとかいふくのくすりを五個ずつカバンにしまって出て行ったのだが、翌日まで博士は全く気付かなかったのだとか。

 

翌日

 

「それじゃ、行こうかコトネ!」

「ええ! 行こうヒビキ君!!」

「「この先に待つ光差す未来へ!!」」

 

ウツギ研究所

 

「ああ!! ここあった回復アイテムがない!!」

「そういえば二人が昨日持っていきましたよ。」

「そうなの!?」

(やっぱり駄目だなこの博士。)

 

(続く)

 

 



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「第四話~託されしカントーの魂~」

ヨシノシティ

 

「そう言えば、昨日預けたヒトカゲはどうなったんだろうな。正規の持ち主の手に戻ってると良いんだけど。」

「じゃあ確認してみましょ。丁度ポケモンセンターで休憩したかったところだし。」

 

ポケモンセンター

 

「すみませ~ん。俺とコトネのポケモンを診て欲しいんですけど~。」

 

ポケモンセンターに足を踏み入れた二人の前にはある老人がジョーイさんと会話している様子が目に入った。

 

「え?」

「何で?」

「「オーキド博士がヨシノのポケモンセンターに!?」

「!」

 

二人の存在に気付いたオーキド博士が此方に声をかけてくる。

 

「おお~、ヒビキ君にコトネちゃんじゃったか~。ワシが授けたポケモン図鑑の完成度はどうかの~?」

「正直俺よりコトネの方が埋まるのは早いと思います。」

「ほ~。何故じゃ?」

「彼女は俺より圧倒的に捕獲に関しては。」

「それより!!」

 

二人の会話を遮るコトネ。

 

「どうしてオーキド博士がヨシノのポケモンセンターにいるのかでしょヒビキ君!!」

「そう言えばそうだった。どうしてオーキド博士がこちらにいらっしゃるんですか?」

「ああ、それはコイツのことでな~。」

 

ジョーイさんが一個のモンスターボールをオーキド博士に手渡す。

 

「そちらのポケモンをお預かりしましょうか?」

「あ、お願いします。」

「私もおお願いします。」

「はい、お預かりしました。それじゃ、暫くお待ちくださいね。」

 

ジョーイさんが奥に戻ったところでコトネが話し始める。

 

「それで、そのボールには何が入っているんですか?」

「コトネちゃんは何だと思うかの?」

「う~ん?」

「ユリ・〇ラー?」

「ああ!! ユリ・ゲ〇ーね!!」

「たぶんそれは違う奴だし、訴訟ネタで有名な奴じゃないかの~。正解はヒトカゲじゃ。それも君達が赤い髪の少年から取り返してくれたあのヒトカゲじゃ。」

 

ガタガタガタ!

 

「うおっ!」

 

ボールからヒトカゲが勢いよく飛び出す。

 

「きゃっ!」

 

ヒトカゲはコトネに抱き着いてきた。

 

「ど、どうなってるんですか博士~。」

「このヒトカゲはワシがマサラでゼニガメ、フシギダネと一緒に飼育していたポケモンなんじゃが、一週間前に脱走したんじゃ。」

「一週間でカントーからジョウトに移動ですか?」

「ちなみじゃが前回は二週間前に脱走してトキワの左で捕獲したんじゃ。」

「どんだけカントーから出たかったんだか。」

 

ヒトカゲを抱きかかえるコトネ。ヒトカゲは満足そうな笑みを浮かべてコトネにじゃれている。

 

「それで、どうしたら良いんですか? 完全に私の元から離れたくないって顔してるんですけど。」

「図鑑を託した時から思ってたんじゃ。もし、君たちが三年前にマサラを旅出ていたら君たちがカントーを駆け回り、ヒトカゲ達と旅をしていたんじゃないかとな。」

「「はあ。」」

「そしてヒトカゲはコトネちゃんと出会い、完全に君の手持ちであるかのように振舞っている。あの子たちとは違うが、どこか懐かしく感じる物が君達から感じる。ヒトカゲとコトネちゃんが出会ったのは運命かもしれん。それを引き離すことはワシには出来んのだ。押し付けられるような感覚かもしれんが、どうかヒトカゲをもらってくれんかの?」

「・・・しかし、それではヒビキ君が損してしまいます。私だけオーキド博士に優遇されてるみたいで。」

「いや、別に俺は気にしないよコトネ。」

「実はここにもう一個ボールがあるんじゃ。」

 

白衣のポケットからモンスターボールを取り出すオーキド博士。

 

「この中にはゼニガメが入っとる。こいつはヒトカゲが脱走するたびに心配でワシと一緒になって探してくれた心優しいポケモンじゃ。これをヒビキ君、君に託そうと思う。どうか受け取ってくれい。」

 

ゼニガメの入ったボールを手渡されるヒビキ。

 

「博士の想い、ありがたく頂戴致しました。」

「そうかしこまらんんで良いんじゃよ。未来ある若者を応援したいだけなんじゃ。それじゃ、ワシはカントーに帰るぞ。もし機会があったらマサラタウンに来てくれ。じゃあの。」

 

オーキド博士を二人は見送った。直後に元気になった彼らのポケモン達が帰って来た。

 

「それじゃ行こうかコトネ。新しい仲間と共に!」

「ええ! 行くわよヒビキ君!!」

 

二人はポケモンセンターを勢いよく飛び出し、31番道路へと向かって行った。

 

30番道路

 

「ゼニガメ、みずでっぽう!」

「ヒトカゲ、ひのこよ!!」

「ああ! 俺のコラッタが!! 畜生、強いな君達!!」

「それじゃ次へ行くぜコトネ!」

「言われなくてもよヒビキ君!」

 

途中のトレーナーを撃破し、二人は着実にキキョウシティに近づいて行っていた。一方、

 

 

キキョウシティ

 

「ここがキキョウシティか。ん?」

 

赤い髪の少年は掲示板を見る。

 

「・・・フン、人相書きか。こんなもので俺を捕まえられるなんて思ったら、大間違いだぜ。もう良いぞメタモン。」

 

メタモンが少年の顔から剥がれ落ちる。

 

「顔なんて、いくらでも変えられる。あの時の顔は偽の顔。これが本当の俺さ。

 

そこにはキリッとした目つきをした少年が立っていた。髪の色こそ大差ないが、顔や髪型は全く違っていた。

 

「さて、行くとするか。」

 

少年はキキョウシティジムへ足を踏み入れるのだった。

 

 

31番道路

 

「さて、すっかり暗くなっちまったし、ここいらで野宿と行くか。」

「それもそうね。テントを組み立てましょ。」

 

何でも入る最強のカバンからテントの用具を取り出して組み立てていく二人。

 

「さて、あとは焚火だな。火はヒノアラシとヒトカゲで良いとして、あとは燃やす元だな。良い感じの枯れ木を集めないとな。」

「私集めてくるから、ヒビキ君は夜ご飯の準備をしておいてくれる?」

「おう、分かったぜ。まあ、レトルトだけどな(笑)」

「それくらい分かってるって~。」

 

 

「はあ~、こうして焚火をしながら飯を食うと、旅をしてるんだって実感出来るな。」

 

焚火を挟んで向かい合って食事をとる二人。ポケモン達はそれぞれポケモンフーズを食べている。

 

「そうね。ちゃんとトレーナーズスクールで勉強しておいた甲斐があったわね。」

「今回はコトネが自力で火をつけたんだもんね。」

「だって何時も炎ポケモンがいるとは限らないじゃない。」

「まあ、そうだけどね。俺もそこは見習わなきゃかな。」

「別にそこは良いんじゃない?」

「そう? さて、ご馳走様だね。」

 

食器を片付け始めるヒビキ。

 

「キキョウに着いたらスプーンとか飯盒を洗わなきゃだね。」

「そうね。幸い皿は紙だから燃やせばいいけど。」

 

皿を火にくべ、スプーンや飯盒を片付ける二人。

 

「それじゃ、寝ようかコトネ。」

「そうね。寝袋だけど、ゆっくり休みましょ。」

 

寝袋を取り出す二人。

 

「あと歯磨きもあっちで、だね。」

「それは仕方ないわよね。取り合えず寝るわよ。」

 

テントに入り、寝袋に入る二人。

 

「それじゃ、お休みコトネ。」

「お休みヒビキ君。」

 

既にポケモン達はテントの内外で眠りについていた。そして、二人も眠りについた。

 

(続く)

 



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「第五話~マダツボミのとうの幽霊~

31番道路

 

「んん~! よく寝れたかいコトネ?」

「私はあんまり寝れなかったかな。」

「まあ、慣れてないし外だからね。仕方ないよ。」

 

テントを片付けながら会話する二人。既に朝食は簡単にシリアルで済ませ、キキョウシティへ向けて移動しようとしていた。

 

「そう言えば、あの洞窟が気になるんだけど行ってみない?」

 

コトネが指さした先はくらやみのほらあな。

 

「もしかしたら見たことのないポケモンがいるかもしれないしね。行ってみようか。」

 

くらやみのほらあな

 

「真っ暗だねここ。」

「ヒノアラシとヒトカゲがいなかったら水の中に落ちていたかもしれないわ。」

「ズバー!」

「ズバットね! 捕獲するわ!!」

「援護するよコトネ! ゼニガメ、みずでっぽう!!」

「ズバズバ!!」

「サンキューヒビキ君!! 行け、モンスターボール!!」

 

カーブボールを投げるコトネ。回転力をつけることでポケモンを脱出しにくくすることが出来るが、その分命中率が下がる投げ方である。

 

「良し!」

「流石コトネ!」

 

ボールは見事ズバットの懐に命中。一発で捕獲することに成功した。

 

「さて、あとはイシツブテがどこかにいるはずなんだけど。」

「あれじゃないコトネ?」

 

ヒビキが指さした岩をコトネは凝視した。一見、普通の岩にしか見えないが、

 

「流石ヒビキ君ね。その小さな違いを判別できる力が戦いを有利にしてきたのよね。チコリータ、そこにはっぱカッター!!」

「!!」

 

気付かれると思っていなかったイシツブテが急ぎ回避行動をとるも、躱すことはできずに命中。

 

「ここで、モンスターボール!!」

 

再びカーブボール。今度は前回より中心から外れてしまうも、一発で捕獲することが出来た。

 

「よし!」

「やったねコトネ!」

 

ヒビキとハイタッチするコトネ。

 

「それじゃ、今度はこうして。」

 

お互いの最初の御三家のボールを渡しあう二人。

 

「ズバ!」

「丁度いい。あのズバットを倒すよコトネ。」

「勿論よヒビキ君!」

「チコリータ、はっぱカッターだ!!」

「ヒノアラシ、ひのこよ!!」

「ズバー!!」

 

おや? ヒノアラシ・チコリータの様子が?

 

((ドキドキ))

 

おめでとう!! ヒノアラシはマグマラシ、チコリータはベイリーフに進化した!!

 

「よっしゃああ!!」

「これで新たに図鑑が二匹分埋まったわ!!」

「やっぱり親の違うポケモンを育成すると成長が違うな。じゃあ、ベイリーフを返すぜコトネ。」

「本で読んだ通りだったねヒビキ君。はい、マグマラシよ。」

「さて、キキョウシティに向かう上で提案なんだがコトネ、そのイシツブテを鍛えたらどうだ? タイプに岩が入ってるし、ベイリーフじゃ不利だし、ヒトカゲはいるけどこの次のヒワダを考えても育成して損はないと思うよ。それに、ベイリーフ一極集中じゃ過労死しちゃうのが目に見えてるしな。俺はこのポッポを呼び戦力に控えさせるつもりだし、どうかな?」

「それもそうね。だったら、ジム挑戦前に腕試しとしてマダツボミの塔に行かない? あそこにもポケモンが出るみたいだし、もしかしたらヒビキ君の力になってくれるポケモンもいるかもしれないよ。」

「だったら、こいつかな?」

「これは・・・ゴース?」

「ああ。マダツボミの塔に夜に出るらしい。地面タイプを受け付けないし、足の速いゴーストタイプだ。エンジュのマツバ対策にもなる。」

「じゃ、行こうっか。マダツボミの塔に!」

「ああ!! でもその前に。」

「?」

「ポケモンセンターに行こうぜコトネ。もうPPあまり残ってないぜ。」

「あ。」

 

 

マダツボミの塔

 

「フン! 所詮俺の前には坊主も無力ってことか。」

 

赤い髪の少年はマダツボミのとうに来ていた。何故ここに来ているのかと言うと、

 

 

キキョウジム

 

「確かに君は強い。見事俺のポケモンを打ち破ってみせた。だけど、君には足りないものがある。それを意図的に隠しているのかは知らないが、マダツボミのとうに行った方がいい。余計なお世話かもしれないが、経験値稼ぎにはなる。いや、行きたまえ。そして自分に足りないものを見つけてこい。そうしないと君はこの先損するだろう。これは俺から忠告だ。」

 

「あのハヤトとか言うジムリーダーにはあんなことを言われたが、俺からすれば負け惜しみにしか聞こえないな。まあ、残りの坊主もぶっ潰してやるか。経験値稼ぎには確かに丁度いいからな。」

 

 

ポケモンセンター

 

「さて補給も済んだことだし、行こうか。」

 

 

マダツボミのとう

 

「これがマダツボミの塔か。今は昼間だからゴースは出ないが、腕試しには丁度いい時間だな。」

「言い伝えによるとポケモン修行のために建てられたといわれる塔で、中央の揺れている柱は巨大マダツボミの体と言われているんだって。」

「成程な。だからマダツボミの塔か。それじゃ行くか、コトネ。」

「ええ!!」

 

「イシツブテ!! いわおとし!!」

「ふん! その程度では私のマダツボミの攻撃を止めることは出来ませんぞ!」

「狙いはそこじゃないわ!! ヒビキ君!!」

「何!?」

「サンキューコトネ!! 今だマグマラシ!! ひのこだ!!」

「何と! イシツブテの攻撃で私のマダツボミの動きを制限した上で岩に乗ってマグマラシが攻撃ですか。素晴らしい! そなたらは互いを信頼し、ポケモンを愛し、寄り添い、そして信頼し合っている。どうぞ長老とお手合わせを!!」

「「ありがとうございます!!」」

 

「さて、この先が長老がいるところか。うん? あれは・・・。」

「あ、あいつは!!」

 

二人の視線の先には忘れもしない赤い髪の少年がいた。

 

「そなたは確かに強い。ですが、ポケモンを労わる気持ちを少しは。」

「フン! 偉そうに長老なんて名乗ってる癖して全然歯ごたえないじゃないか。とうぜんだな、ポケモンに優しくとか、そんな甘い事言ってる奴にオレが負けるわけがない。オレにとって大事なのは強くて勝てるポケモンだけそれ以外のポケモンなんかどうだっていいのさ。」

「おい!」

「! ・・・何だ、ヨシノで会ったカップルか。」

「・・・ソウル。」

「・・・ほう、俺の変装を見破ったか。」

「何となく初めて会った時、本当の顔をじゃない気がしてた。でも、いくら顔を変えたところで漂ってくる雰囲気は変えられねえ。」

「そうか。」

「しかし、ソウル。聞いていればふざけたことをぬかしやがって。」

「ふざけたこと? これだから弱いヤツは嫌になる。」

「ヨシノで俺に負けたくせに弱い奴扱いか?」

「あれは調子が悪かっただけだ。最早目的は達成した。もう長居の必要もない。じゃあな。」

 

ソウルはあなぬけのひもで脱出していった。

 

「・・・すまないコトネ。つい熱くなっちまった。」

「気にしてないから大丈夫よヒビキ君。それで、どうする?」

「・・・・そなたらもワシに挑みに来たのか?」

「貴方が長老ならそうだな。」

「そうか。では見せて頂こう。そなたらの実力を。ポケモンを愛しているか。行くぞ!!」

「!!」

 

ヒビキが何かに気づき、視線を変える。

 

「どうしたのヒビキ君?」

「ポッポ! かぜおこしだ!!」

 

ポッポをボールから出し、指定したポイントにかぜおこしを撃つヒビキ。

 

「? 一体何を始めるつもりじゃ少年よ。」

「・・・長老さん、貴方はポケモンを愛してるんだよな?」

「無論じゃ。」

「なら、気づかなかったのか? この部屋にひんし寸前のゴースがいるってことにさ。」

「な、何じゃと!?」

 

ポッポに攻撃させた先にはゴースが倒れていた。

 

「言っておくが俺がひんしにさせたんじゃない。最初から像の影で倒れていた。」

「い、色違いじゃないヒビキ君!? でも、何でひんしに?」

「・・・コトネ、もし緑に覆われた場所に住む生き物がいたとする。その生き物は緑色になることで天敵から逃れてきていた。しかし、ある一匹だけ赤い色で生まれて来た。そしたら、その赤い生き物はどうなると思う?」

「・・・間違いなく天敵に襲われるわ。もしかして、そのゴースも。」

「ああ。他のゴースと色が違うことで差別的扱いを受け、敵にも襲われやすくなってしまった。もし俺が気づかなかったら、こいつは間違いなく死んでいた。」

 

ヒビキはゴースをモンスターボールに収める。

 

「長老さん、すまないが勝負はお預けだ。こいつが元気になるまではな。行くぞコトネ。急ぎポケモンセンターだ。」

「あ、うん!!」

 

二人は急ぎマダツボミの塔を脱出し、ポケモンセンターへ向かっていった。

 

 

ポケモンセンター

 

「何とか一命は取りとめたみたいだ。だけど、あと一日遅れていたら・・・だそうだ。」

「そっか。それで、この後ヒビキ君はゴースをどうするつもりなの?」

「本来ならあそこで息絶えていたはずのポケモンを俺は救ってしまった。まさに人間のエゴとでも言うべきことをしてしまった。このゴースは俺が責任を持って育てる。それが俺に出来る唯一の手段だ。」

「流石はウツギ博士が送り出した少年少女じゃな。」

「「!!」」

 

二人の背後にマダツボミの塔の長老が立っていた。

 

「まさか、一瞬の内にワシも気づかなかったポケモンの存在に気づくとは。お主、ただ者ではないな。本当にポケモンを愛し、寄り添い、そして信頼している。連れていたマグマラシやポッポからひしひしとな。それはベイリーフを連れたそなたからもじゃ。最早闘う必要はない。合格じゃ。お主等ならハヤトに勝てるじゃろう。」

「「あ、ありがとうございます!!」」

「これからもポケモンを愛し、寄り添って行くのじゃぞ。」

「「はい!!」」

 

長老が去り、二人はマダツボミのとうで再び出会った赤い髪の少年の話を始める。

 

「あのソウルtって子のことなんだけど、ポスターの顔をかなり異なっていたわ。」

「おそらくはメタモンを使って顔を変えていたんだね。しかもそれだけじゃなくて毛髪も落ちないように変装を。そして手袋で指紋は付かないようにしていた。」

「警察に通報するべきかしら?」

「俺たちの通報を信じてくれるならするべきだろうな。だけど。」

「どうしたのヒビキ君?」

「さっきのポケモンセンターで黒い噂を聞いたんだ。」

「どんな噂?」

「それはだね・・・。」

「え!? 本当なのヒビキ君!?」

 

(続く)



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「第六話~ジョウトの闇~」

アルフのいせき

 

「・・・ここが例の指定ポイントか。」

 

キキョウシティの南西、ジョウトのほぼ中央に位置するアルフのいせき。ソウルはある人物に会うためにここに来ていた。

 

「予定より5分早く着いたが、あの人のことだ。既にどこかにいることだろう。」

 

周りを見渡すソウル。

 

「しかし、どこにもあの人の姿は見えないな。一体どこに隠れている?」

 

感覚を研ぎ澄ますソウル。

 

「・・・・そこだワニノコ!!」

 

遺跡群の一角に攻撃するソウルのワニノコ。

 

「・・・流石はロケット団ボスの唯一の子と言ったところかしらね?」

 

遺跡群の陰からカメックスを引き連れた少女が現れる。ソウルの攻撃は固い甲羅で完全に無力化したようだ。

 

「そろそろね。」

 

ソウルのワニノコが光に包まれる。進化の瞬間である。

 

「・・・アリゲイツに進化か。この個体、悪くないな。」

「そりゃあウツギ博士が研究の為に保有していたポケモンよ。個体値も厳選されてるに決まってるでしょ?」

 

少々小ばかにしたような笑みを浮かべながらブルーは笑った。ソウルはそれにむっとしつつも会話を続けた。

 

「それで、本題に移ってくれないませんかブルー。いや蒼き。」

「ブルー姉さんと呼びなさい。そう教えたはずよ。」

「・・・すみませんでしたブルー姉さん。」

 

ソウルがアルフの遺跡で会っている人物。それは三年前にロケット団を壊滅させた英雄の片割れであり、国際警察公安部の捜査員であるブルーであった。片方は取り締まる側の人間、片方は取り締まられる側の人間と明らかにミスマッチとも言えるような組み合わせであるが、彼らが手を結ぶにはあるわけがあった。

 

「それで、本当なんですかブルー姉さん。ロケット団が復活していること、そして。」

 

 

キキョウシティポケモンセンター

 

「ジョウト警察はロケット団と内通しているって噂なんだ。」

「・・・噓でしょ? そんなことがあるの?」

「分からないよ! でも、そんな噂が流れているんだ。」

「ないと思うけどね、私は。」

「まあ、そうだよね。それじゃあ、ゴースの治療が完了し次第ジムに行こうか。」

「賛成!!」

 

 

アルフのいせき

 

「まあ、一般人は信じないでしょうね。まさか正義側であるはずの警察が悪党に味方してるってこと。」

「俺は何となくわかる気がするが。」

「そりゃあアンタはその悪党側にいたわけだしね。ウツギ研究所からワニノコを強奪したその見事な体の動き、見させて貰ったわよ。やっぱり私の目は嘘をついてなかったわ。」

「・・・ワニノコの強奪は貴女が俺に命じたんだろう。」

「だってそうでもしなきゃ貴方は世に出れないもの。だから私のメタモンを貸してあげたんでしょ?」

「そうだけど・・・でも良いのか?」

「何が?」

「公安部という、言わば取り締まる側の人間が犯罪を扇動した訳だ。それは許されるのか?」

「・・・・・・・・。」

「?」

 

ブルーはソウルの目を見る。

 

「やっぱり、貴方はまだまだ若いわね。」

「な!?」

 

急にソウルを抱きしめるブルー。

 

「な、何をする!!」

 

胸が頭に当たり、心臓がドキドキするソウルを無視してブルーはソウルを抱き続ける。

 

「悪に染まりきらずに正しい道に貴方は進んでいるわ。既に道を踏み外してしまった私とは違って。」

「ど、どういうことだ? 話が読めないぞ!」

「公安部っていうのはね、巨悪を叩き潰す為ならどんな手段だってとる。そして躊躇なく最善の手を打つように指導されてるの。時には基本的人権を侵害することだって容認される。時には同僚を見殺しにし、時には上司を使い捨てたり。今回だってそう。私は貴方に命じてウツギ博士からポケモンを盗ませた。でもそれはロケット団を壊滅させるという大義の為には仕方ないことだと私も本部も判断してる。」

「まさか、、俺を勧誘したのはロケット団を倒す、その為だけか?」

「・・・さあね? それは貴方が冒険して考えることね。さすれば答えは見えてくるわ。」

 

ソウルを放すブルー。

 

「でもねソウル、覚えておいて欲しいの。」

「?」

「例え世界の誰もが貴方の敵になったとしても、私は貴方の味方であり続けるわ。それだけは忘れないで。」

「・・・ありがとうとでも言えば良いのか?」

「も~、釣れない男! じゃ、私はこれで失礼するから。頑張ってこの先の任務を遂行してね。逐一報告もすること! 良いわね?」

「分かっている。」

「本当ね?」

「それくらいの約束は守れる。」

「そう。それじゃ次の任務はヒワダタウンに向かうこと、以上よ。」

「了解。」

 

ブルーはフリーザーをボールから出し、どこかへと飛び去って行く。

 

「・・・さて、俺も行くとするか。」

 

 

フリーザーの上

 

「ソウル、私は貴方が年相応の笑顔になって欲しいの。生まれとか、血統なんて関係ない。能力のある者がそこで腐ってるようじゃ、終わりなのよ。」

 

(続く)

 



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「第七話~挑戦! ジムリーダーハヤト!!~」

キキョウジム

 

「遂にジムに来たね。」

「いざ来てみると緊張するものね。」

「でも、それが俺の中に眠る闘志を燃やしてくれる。そう感じるんだ。」

 

ヒビキはモンスターボールを強く握りしめる。

 

「ゴース、君もそう思うだろう?」

 

ヒビキは回復の完了した色違いのゴースの入ったモンスターボールをのぞき込む。

 

「・・・いずれ君も分かるよ。今はそこで俺と他の手持ちポケモンの絆を見ていてくれ。」

 

ゴースの入ったボールをしまうヒビキ。

 

「ゴースは使わないの?」

「まさか。いきなり病み上がりのポケモンを酷使させるほど俺は鬼じゃないさ。でも、がくしゅうそうちは持たせておいたけどね。」

「昔からヒビキ君はそういうところは真剣よね。」

「俺はいつだって真剣だよ。」

「そう?」

「とにかく、行くよコトネ!」

「茶番はここまで。私も本気で行くわ!」

 

 

「トゲピー、ゆびをふる!!」

「イシツブテ、いわおとしよ!!」

「ぐああああ!!」

「よっしゃ!」

「最後のジムトレーナーを撃破よ!」

 

ハイタッチを交わすヒビキとコトネ。

 

おや? トゲピーの様子が? 

 

「おお!!」

「トゲピーとヒビキ君の想いが一つになったのね!」

「トゲピーの進化条件よトレーナーとの一体感が醸成されたとき。」

 

トゲチックの顔を見つめるヒビキ。

 

「これからも、共に歩んでいこうな。」

「チック!!」

「さて、あとは。」

 

ヒビキとコトネはジムの一番奥にいる人物に視線を向ける。

 

「いよいよジムリーダーか。しまっていくよ!!」

「おお!!」

 

「よく来たね。俺はジムリーダーのハヤト! 世間では飛行タイプのポケモンなんか電撃でいちころ。」

「そりゃあタイプ的に不利極まりないからな。」

「まあ、サンダーとかボルトロスだと話は別なんだけどね。」

(何か今しれっと別の地方のポケモンが出た気がするんだが!?)

「と、とにかく!! そんな風に馬鹿にする、俺はそれが許せない! 大空を華麗に舞う鳥ポケモンの本当の凄さを君達二人に思い知らせてやるよ!! かかって来な!!」

「そう来なくっちゃな! 行くぞコトネ! 準備はいいかい?」

「準備OKよヒビキ君!!」

「ふふふ、実に良い目をしているな君達は。ならば俺も本気でお応えしよう!! 行け、ポッポ! ピジョン!!」

「そっちが鳥ポケモンならこっちも鳥ポケモン! 行くよトゲチック!!」

「お願いイシツブテ!!」

「ふふ、この僕に鳥ポケモン対決を挑むか。ならその実力、拝見させてもらおう!! ポッポ、ピジョン!! かぜおこしだ!!」

「トゲチック、そのまま回避行動を!! そしてあくびだ!!」

 

トゲチックのあくび攻撃。ハヤトのポッポとピジョンの眠気を誘う。

 

「ほう! やるなチャレンジャー! だが眠らせるだけでは。」

 

(待て。そう言えば彼の相方のイシツブテは何をしている? 今まで攻撃を打ち上げて来なかったぞ?)

 

「・・・・そろそろか。トゲチック、急降下だ。地面に向かって一直線だ!」

 

突如として地面への降下を開始するヒビキのトゲチック。

 

(一体何を考えている。鳥ポケモンであるトゲチックを地に降ろすだと? しかし、このままにしておけば眠気でいずれは地に落ちイシツブテの射程圏内に入ることだろう。先ほどのあくびは地面で擬装して待機しているイシツブテの射程圏内に俺のポケモンを誘い込む為の策。そして初めの方に攻撃してこなかったのはイシツブテが地面に擬態する時間を稼ぐため。ふふふ、中々やるじゃないか。)

 

「構わん!追撃だ!! でんんこうせっか」

「トゲチック、そのままだ。」

 

ハヤトのポッポとピジョンがヒビキのトゲチックを猛追しながら互いの鳥ポケモンは地面へ降下していく。

 

「この一撃を当てさえすれば!」

「勝てる、ですね? でも、そうはさせませんよ。トゲチック、ゆびをふる!」

 

ゆびを振り始めるトゲチック。

 

「気が狂ったか!!」

 

ゆびを振ったらでんじはが出た!

 

「よし、右に急旋回だ!」

 

地面まであと4mほどの距離で右に急旋回するトゲチック。一方のポッポとピジョンはでんじは攻撃で足が鈍る。眠気は晴れたが、地面を目前して体の自由を奪われた。

 

「今だコトネ! あの鳥を撃ち落とせ!!」

「やはりあの先には・・・・・イシツブテか。このハヤト、勝負が始まる前から負けていたのだな。」

「サンキューヒビキ君。イシツブテ! いわおとし!!」

「・・・・ふふ、見事な連携だ。」

 

イシツブテのいわおとしがポッポとピジョンにもろに直撃する。

 

「・・・・・終わったな。」

 

戦闘不能になったポッポとピジョンがトゲチックとイシツブテの前に横たわる。

 

「・・・・・分かったよ。潔く地に降りるよ。」

「ポッポ、ピジョン戦闘不能!! よって勝者、チャレンジャーヒビキ、コトネ!!」

 

審判が彼らの勝利を告げる。

 

「よっしゃああ!!」

「やったね!!」

 

笑顔で手を叩く二人。

 

「ヒビキ君、コトネちゃん!」

「「は、はい!!」」

「見事な連携だった。君達の戦いぶりには脱帽したよ。ジムリーダーになって何年もたつけど、こんな闘い方もあるのかと勉強させて貰ったよ。実に見事としか言いようがない。さて、協会の規定通り君達には僕に勝った証であるウイングバッジを授与しよう。受け取るんだ。」

「「ありがとうございます!!」」

 

二人はジムバッジを受け取り、それぞれのバッジケースにしまった。

 

「そのバッジがあれば人から貰ったポケモンでもレベル20までのポケモンが言う事を聞くようになるだろう。更に秘伝技の いわくだきが使えるようにもなるんだ。そして俺からはこの技マシンをあげよう。はねやすめだ。有効に使ってくれたまえ。ただ使い捨てだからな。よく考えて使うんだな。」

(あれ? 技マシンって使い捨てだったけ?)

(最近のはね。要するに置き換え前の在庫処分って奴でしょ。)

(ああ、そういうことか。)

「何をテレパシーで会話しているかは知らないが次はどうするつもりなんだ二人は。」

「う~ん? 順番的にはヒワダかエンジュって言ったところですかね?」

「そうか。しかしいきなりエンジュのマツバに挑戦するにはレベルが足りないだろう。ここはヒワダのツクシに挑戦するのが良いと俺は思うな。」

「「アドバイスありがとうございます!!」」

 

 

ポケモンセンター

 

「じゃ、今日の残りは休んで、明日出発しようぜ!」

「そうね。それじゃ明日はヒワダを目指すよー!!」

「おー!!」

 

 

ヤドンの井戸

 

「これで全てですか?」

「はい、間違いありません!」

「そうですか。では、しっぽを切り落とすのです。ヤドンのしっぽは高く売れます。我らの元にボスが帰ってきて貰う為の資金源とするのです!」

「ははっ!!」

 

 

マサラタウン

 

「やはり三年前に滅ぼしたはずのロケット団は復活か。」

 

蒼い眼を持つ少女は自室で資料を眺めていた。

 

「私が出向いても良いわけだけど、本部からはあの子を使えと言う話だからねえ。」

 

ポケギアを手に取る少女。

 

「・・・もしもし? ・・・そういうことだから。至急ヒワダに向かって頂戴。今シンオウにいるから急な移動であることを憤ってると思うけど、私は上司だから。良いわね? 拒否権はないけどね。・・・そう、協力に感謝するわ。じゃあ。」

 

通信を切る少女。

 

「さて、次は。もしもし?」

 

(続く)

 



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「第八話~アルフの遺跡~」

32番道路

 

「んん~、良い天気だねコトネ。」

 

背伸びをしながらコトネに話しかけるヒビキ。

 

「そうね~。こうも天気が良いと何か良いことがありそうよね~。」

「絶対あるよきっと。」

「ついでにあれも収穫しましょうヒビキ君。」

 

コトネはキキョウシティの外れに生えていたぼんぐりの木を指さして言う。

 

「おお! あんなところにぼんぐりの木が! 気づかなかったよ。」

 

二人は木を揺すり、ぼんぐりを収穫する。

 

「この先のヒワダタウンでガンテツさんにボールにしてもらえるんだっけ?」

「そうそう! 私、色んなポケモンを捕まえたいから絶対に作ってもらうの!」

「捕獲のセンスが高いコトネにガンテツボールが加わったら正に鬼に金棒だね!」

 

二人は談笑しながら道を進める。

 

「そう言えば道は少し外れるけど、アルフの遺跡というダンジョンがあるみたいなんだけど、寄っていく?」

「寄る!」

「即答だねコトネ。」

「アルフの遺跡には一部の遺跡にしか発見されていないポケモンがいるって昨日ポケギアで聞いたの。だからそれを確かめたくて。ヒビキ君は大丈夫?」

「勿論! コトネだって俺のジム巡りに付き合ってくれているんだし、俺だってコトネの為に付き合うなんて当然だよ!」

「それじゃあ決まりね!」

 

二人はつながりのどうくつではなく、アルフの遺跡へ進路を変える。

 

アルフの遺跡

 

「これが謎のパズルか~。」

 

ヒビキとコトネは謎のパズルを前に思考を巡らせていた。

 

「確か誰もこれを解いたことがないんだってね。」

「うん。色んなトレーナーが挑んで分からなかったらしいよ。」

「そうなんだ。でも、何かこれポケモンのように見えるような気がするんだけど。」

「・・・言われてみればそうね。」

「ここをこうしてみよう。」

「ここをこうじゃない?」

「あ、何となくそれらしくなってきたかな。」

「確かに。それじゃここはこうで。」

 

コトネがパズルをはめる。すると、

 

ゴゴゴゴゴゴゴ、

 

「「え?」」

 

大きな音と共に床が開いたのが分かった。

 

「うわあああああ!!」

「きゃあああああ!!」

 

叫び声と共に二人は地下へと自由落下していく。

 

ビタン!!

 

「痛い!!」

 

先に落ちたのはヒビキだった。腰を地面に打ち付け、腰を痛めてしまう。

 

「うぎゃあ!!」

 

痛みを感じる間もなくコトネがヒビキの上に落ちてくる。ヒビキがクッション代わりとなった為コトネは無傷でいることが出来た。

 

「うう・・・あ! ヒビキ君!!」

「・・・コトネ。」

「大丈夫ヒビキ君!!」

 

直ぐにヒビキから降りて介抱するコトネ。

 

「うう、腰が痛いよ。」

 

腰をさするしぐさをするヒビキ。

 

「どう、立てる?」

「な、なんとか・・・うう!!」

 

顔をしかめるヒビキ。相当強く打ってしまい、かなり腰を痛めてしまったようである。

 

「無理はしないでヒビキ君。肩を貸すわよ。」

「ありがたい。是非コトネの肩を貸して欲しいよ。」

 

ヒビキはコトネの肩を借りて立ち上がり、階段を探して歩き始める。

 

「・・・・・・・。」

「どうしたのヒビキ君?」

「気のせいかな? 俺たち以外の誰かが俺たちを見ているようなきがするんだ。」

「え? そう?」

 

辺りを見渡すコトネ。

 

「でも、誰もいないよ?」

「・・・・。」

 

(確かに、コトネの言う通り誰も人はいない。でも、何となく感じる。俺たち二人以外の視線。戦う意思を持った者の気配が!)

 

「!」

 

ヒビキは腰に付けていたモンスターボールを取りだす。

 

「ゴース、そこに向かってしたでなめるだ!!」

 

ボールからゴースト・毒タイプのポケモンゴースを出し、攻撃を指示する。

 

「・・・やっぱりな。あの気配はポケモンだったんだ。」

 

二人の目の前にはゴースのしたでなめるで麻痺状態になっているアンノーンの姿があった。

 

「あれは・・・アンノーン! カントーのナナシマやシンオウのズイの遺跡で発見されたという報告のあったポケモン! このジョウトにもいたのね!」

「今だコトネ! 捕獲を!」

「了解! お願いモンスターボール!!」

 

手で回転をかけ、カーブボールをアンノーンに目がけて投げつける。

 

パシュウン!!

 

「よし!」

「・・・いや、駄目よ!!」

 

三回触れたところでアンノーンがボールから出てきてしまう。

 

「あいつらのせいね。」

 

コトネの指さした先には様々な形をしたアンノーン達の姿があった。

 

「もしアンノーンを捕獲しようと思ったらあいつら全部倒さないといけなさそうね。」

「どうする? 捕獲の天才として。」

「そりゃあ、決まってるでしょ。」

 

笑みを浮かべるコトネ。

 

「むしろ全部捕獲してやるわ!」

「コトネがその気なら、俺は全力で支援するぜ! 出てこい皆!」

「ありがとう。でも、腰は大丈夫なのヒビキ君? 一人で立ってるけど。」

「正直まだまだ痛いけど、今はコトネの為に全力を尽くす。それだけだよ。」

 

笑みには笑みで返すヒビキ。それを見てコトネも大いに奮い立つ。

 

「それじゃあ。」

「行くぜ。」

「ベイリーフ、イシツブテ、ヒトカゲ! はっぱカッター、いわおとし、ひのこよ!!」

「マグマラシ、トゲチック、ゼニガメ! ひのこ、ゆびをふる、みずでっぽうだ!!」

 

二人の手持ちポケモン達の攻撃。一方アンノーンはめざめるパワーで反撃する。

 

「めざめるパワーか! だけどその程度では。」

「私たちは倒せない!!」

 

レベル差からアンノーン達の力が弱まる。その一瞬の隙をコトネは見逃さなかった。

 

「行くわよ、モンスターボール!!」

 

アンノーン達の中心部にいたアンノーンにボールを当てるコトネ。今回は妨害を受けることなく捕獲に成功する。

 

「そして、あれと、それと、あいつも!」

 

他のアンノーンにもボールを当てていくコトネ。そして、数匹捕まえたところで、

 

「引くわよヒビキ君!」

「おう! マグマラシ、えんまくだ!!」

 

マグマラシのえんまくを目隠しにし、二人は戦いの最中に発見した階段を登り、地上へ脱出に成功した。

 

 

32番道路 ポケモンセンター

 

「いや~、今日は結構いい日だったわね~。」

 

アルフの遺跡を出て二人はつながりのどうくつの前にあるポケモンセンターで一晩を過ごすこととした。

 

「そうだね。珍しいポケモンを沢山捕獲できたしね。」

「それで、本当に大丈夫?」

 

腰の辺りを指さすコトネ。

 

「正直凄く痛いです。」

「ご、ごめんね。私、ヒビキ君の上に乗っちゃったから。」

「いや、俺はコトネを結果的に守れたから良いよ。コトネが乗る以前の問題だし。」

 

翌日には治っているのか!?

 

「そう言えば今日捕まえたアンノーン、あれで全部じゃないらしいわね。」

「となるとまたパズルを解いて俺たちがまた下に落ちるってことなんじゃないのか?」

 

 

(続く)



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「第九話~洞窟の中で~」

つながりのどうくつ

 

「地上の道が整備されたとは言っても、珍しいポケモンとかはこういうところにいるんだよなコトネ。」

 

すっかり昨日負傷した腰が癒えたヒビキはコトネと共にヒワダタウンを目指してつながりのどうくつを歩いていた。

 

「そうね。それでヒビキ君、本当に腰は大丈夫なの?」

「心配するなよコトネ! この通り元気いっぱいだぜ!!」

 

元気よく腰を回すヒビキを見てコトネは安心した。

 

「それは良かったわ。それで話は変わるんだけど、確かこの洞窟にはラプラスがいるらしいのよね。」

「へえ~。ラプラスか! 確か四天王だったカンナさんはナナシマで捕まえてたあのラプラスか!」

「もしかしたら知られてないだけで意外とラプラスってどこにでもいるのかもね。」

「確かアローラでは数が増えすぎて問題になってるけど、こっちでは逆にいなさ過ぎてカントー・ジョウト産は取引禁止なんだよな。」

「今流通しているのはちゃんと許可証が出たアローラ産だけだからね。」

 

二人が楽しく会話をしながら洞窟を歩いていると、何やら怪しい声が聞こえてきた。

 

「DSGREGWEFSHTFxふひdfjぎhfshごれ!!!」

「fへrgjれいgへりfじょvdふぃghうぇいおdkw!!!」

「何か騒がしくない?」

「そうね。殆ど人通りのない洞窟なのにね。」

 

二人は声のする方向へと降りて行く。

 

「さっさとボールに入りやがれ!!」

「あまり傷を付けるなよ。傷がついちゃ高く売れねえんだからな。」

「分かってるさ。だけどこうも抵抗されちゃな!!」

 

((あ、あれは・・・・ロケット団!!))

 

二人が見たのはラプラスの捕獲を試みるロケット団員の姿だった。

 

「で、でもロケット団は3年前に解散したはずだよねコトネ?」

「そのはずだけど・・・・。」

 

しかし、目の前にいる黒ずくめの男達の服には紛れもなくロケット団を意味するRのマークが描かれていた。

 

「ったく、早くしねえとランス様に怒られちまうだろうが!! この後此奴を使って取引が予定されてんだからさ!!」

((取引?))

「まあ、法を犯してでもラプラスを欲しがる連中は多いからな! 確かアローラ以外では絶滅危惧種で原則捕獲禁止のポケモンだったよな?」

「だからこそこのジョウト産は高く売れるんだ。早くしろ!!」

 

「やっぱりポケモンを使って悪いことを考えてるみたいだね。」

「だけど、ここは警察に通報した方がよくない? 私たちが行っても勝てる保証はないし。」

「そうだね。黒い噂はあるけど、ここは一度撤退しよう。」

 

静かにその場を去ろうとするヒビキとコトネ。

 

「ズバー!!」

「きゃっ!!」

 

いきなり飛び出してきたズバットに驚き声をあげてしまうコトネ。

 

「んあ?」

「誰かいるのか?」

(マズイ、気づかれた!!)

「誰かいんのかそこに!?」

「いんなら出て来やがれ!!」

 

此方に近づいてくるロケット団員。

 

「ご、ごめんヒビキ君。私のせいで。」

「起きたことを後悔しても仕方ないよ。それに、いきなりズバットが飛び出してきて驚かない人なんていないよ。さて、どうここを切り抜けるか。」

 

ヒビキはボールに手をかけた。

 

「た、闘うの?」

「そうするしかない。こっちの存在があっちに気づかれてしまった以上、もう逃げ切ることは不可能だろう。」

「そ、そうだけど。」

「一つ考えがある。俺が闘っている間に、コトネは脱出して警察を呼んできて欲しいんだ。それまでは時間を稼いで見せるから。」

「・・・・絶対に負けないでよね。」

「ああ、約束するよ。」

「絶対よ。」

 

小指で指切りげんまんをする二人。

 

「さあ、行くんだコトネ。洞窟を抜けた先にはヒワダタウンがあるから。」

「分かってる。」

 

「で、どこにいるんだ? こそこそ隠れてないで。」

「出てきてやったけど?」

 

怖いと言う心を抑えながらヒビキがロケット団員の前に姿を現す。

 

「ん? 誰かと思えばただのガキじゃねえか。」

「おいお前、ここはお前が来るようなとこじゃねえぞ。さっさとおうちに帰んな。」

「そうそう。おじさん達はお仕事中だからな!」

「お仕事? それってポケモンを密売して金儲けすること?」

「・・・・まさかてめえ、見てたのか?」

「うん。全部ね。国際条約で取引を禁止し、保護されているポケモンを捕まえようとしているところとかね。」

「・・・・クソガキ、俺たちが何か分かって言ってんのか? 俺たちは天下のロケット団様だぞ?」

「今回は見逃してやるからさ、帰った方が身のためだぜ? どうしても帰らねえというなら!!」

 

団員はアーボとドガ―スを繰り出す。

 

「「ただじゃ置かねえぞ!!」」

「そう。だったらこっちも本気で行くかな。」

 

帽子を回し、つばを前に向けるヒビキ。

 

「行くよマグマラシ、ゴース、トゲチック、ゼニガメ。あの悪党どもをぶっ潰そうぜ。」

 

 

「はあ、はあ、はあ。やっと、着いた。」

 

ヒビキが団員達を引きつけている間にヒワダタウンに辿り着いたコトネ。

 

「ええと、駐在所は・・・あそこか!!」

 

すぐさま駐在所にコトネは駆け込む。

 

「すみません!! 誰かいませんか!?」

「ん?」

「実は・・・。」

「・・・それで、あの洞窟にロケット団がいるって? まさか~。冗談はやめなよお嬢ちゃんwww。」

「本当なんです! ヒビキ君が今その団員と闘っているんです!!」

「闘っている? ・・・・そうか。」

「?」

「なら、お嬢ちゃんも始末してあげないとな!」

「え!?」

 

目の前にいた警察官は帽子や制服を脱いだ。

 

「ど、どうして・・・お巡りさんが、ロケット団員?」

「驚いた? 情報を渡すとさ、お小遣いくれるんだよね。それが馬鹿にならないくらい貰えちゃってさ。もうやめらんねえわけよ。」

「そ、そんな・・・。」

「さて、秘密を知ってしまった以上、君をここから逃がす訳にはいかないな。ふふふ、大丈夫さ。イイことをするだけだから 」

「う・・・ヒビキ君、ごめん。私・・・・。」

「愛する人のことを想うとか、ホントいい子だね君は。まあ、生きて返さないけどね!!」

「こ、来ないで!!」

(も、もう・・・・駄目だ!!)

 

ダーン!!

 

「・・・・・へ?」

「うぐ・・・。」

 

コトネの目の前には手を撃たれ、悶絶しているロケット団員の姿と、地面を転がる薬きょうがあった。

 

「大丈夫だったかい君? もう安心して大丈夫だからな。」

 

茶色いコートを着た男と一般の警官の制服を着た男がコトネの後ろに立っていた。

 

「我々は国際警察の者だ。最近この町でロケット団の構成員と見られる人物の目撃情報が多数報告されていてね、調査をしに来たところだった。そしたら駐在所で君が襲われているのを発見し、発砲に至ったというところだ。」

「警察だ!! 動くな!!」

「おとなしくしろ!!」

「サカキさま万歳!! サカキさま万歳!!」

 

よく分からないが、とにかく味方であるという事が分かり、安心したコトネ。

 

「・・・ええと、お名前は。」

「私はハンサムと呼ばれている。まあ、本名ではないのだがな。」

「ハンサムさん、実はつながりのどうくつにもロケット団の仲間が。」

「何? 本当か!? 直ぐに案内してくれ!!」

「はい!」

 

つながりのどうくつ

 

「てめえ、逃げてばかりじゃねえか!!」

「男なら面と向かって勝負だろうが!!」

「だったら黒いことなんかしてないでまっとうに金稼ぎでもしたらどうだ?」

「何だとごらああ!!」

「アーボ! その色違いにかみつけ!!」

「ゴース、さいみんじゅつ!!」

(まだかコトネ? これ以上はPPが持たない・・・)

 

 

「こっちです!!」

「まさかこんなところにもいるとはな。」

 

「どうしたどうした? 防戦一方だぜ?」

「いけいけ!!」

「・・・・・・・・そろそろだな。」

「んあ? 何がだ?」

「ヒビキ君!!」

「お前の連れか何かか? だがガキが一人増えたところで。」

「げげっ! 不味いぞ!!」

 

コトネの後ろから明らかに警察の制服を着た警官とその上司と思われる男性の姿が目のいい団員に見えていた。

 

「あれは・・・・国際警察か!!」

「まさかこんなところにまで出しゃばってくるとは!! 折角ジョウト警察を買収して骨抜きにしたっていうのに!!」

「おとなしく投降しろ!!」

 

警官が拳銃を向ける。

 

「へん! 撃てるなら撃って。」

 

バキューン!!

 

「ぐあっ!」

「あの野郎、マジで撃って来やがった!!」

「こちらはお前を撃つことが出来るのは明白だ! おとなしく投降するんだ!」

「くっ・・・・申し訳ありませんランス様。」

 

 

ヒワダタウン

 

「ラプラス確保に向かった団員は任務失敗の上に国際警察の捜査官に捕まりましたか。奴らが我々の匂いを嗅ぎつけているとは聞いていましたが。」

「如何致しますか? ランス様。」

「我々の任務に変更はありません。引き続き町のヤドンからしっぽを切り落とすのです。」

「了解しました!!」

 

 

つながりのどうくつ

 

「今回はロケット団団員の拘束に協力して頂き、誠に感謝する。」

 

ハンサムとその部下が深々と頭を下げる。

 

「僕達はただラプラスを助けたかっただけです。でも、その結果コトネを。」

 

俯くヒビキ。

 

「大丈夫だからヒビキ君! 私は結果的に何もされてないし。」

「でも何かされる前までは行ってしまった。これは僕の責任だ。過去を後悔しても仕方ないのは自分がよく分かってる。でもあそこは素直に逃げるべきだったかもしれない。本当、コトネには辛い思いをさせてしまった。本当に申し訳ないよ。」

「・・・ヒビキ君。」

 

そっと寄り添うコトネ。

 

「とにかく俺はロケット団を許せない。ポケモンを苦しめ、不法に密売する。そして一番許せないのが俺の大切な人に手をかけようとした。」

 

目に涙があふれるヒビキ。

 

「俺は一番大切な人を守れなかった。自分のエゴの為に君を危険に晒してしまった。うう・・・。」

「ああー、少年? そうネガティブにならなくても。」

「俺はただ事実を言っているだけだ。」

「ヒビキ君。」

「コトネ。」

 

そっと優しくヒビキに抱きつくコトネ。

 

「私は分かってるよ。ヒビキ君が本当に私のことを考えてくれてること。でも、ちょっと自分で全てを背負いすぎてるって感じるよ。私を守って来ることは本当に嬉しいし、頼りになるわ。でも、時には私にも頼って欲しいよ。ヒビキ君が苦しむ様を見てなんていられ・・・ない・・・のよ。」

「・・・・何で泣くのコトネ。俺が悪いからコトネは。」

「違うの。私があそこで声をあげたから。」

「・・・・・その辺にしたらどうかな君達。君達の判断は責められるものじゃない。そもそも駐在所の警官が内通していなければそういうことは起こらなかった。一般人からすれば警官が内通してるなんて想定外のことだ。どちらも悪くないんだ。悪いのは悪いことをする人間だけだ。自分達を責めてもどうにもならん。これが、私からのアドバイスだな。」

「「・・・・・・・・・・。」」

 

自然と涙が引いていく二人。

 

「ありがとうございます。お陰で心の整理が出来ました。」

「そうか。君達のような心理状況に陥った結果、挫折するトレーナーも多数いたという報告書もあってな、そうはなって欲しくなかったのが正直なところさ。」

「国際警察の人は色々知ってるんですね。」

「まあな。それじゃ、またどこかで会おう。」

 

そう言って国際警察の捜査官たちは彼らの前から風のように去って行った。

 

「・・・・・ねえ、コトネ。」

「どうしたの、ヒビキ君?」

「・・・・どうくつを抜けるまで、手を繋いでくれないかな。」

「・・・・是非繋がさせて。」

「ありがとう。」

「どういたしまして。」

 

二人はお互いの手のぬくもりを感じながら洞窟を抜けて改めてヒワダタウンを目指して行く。

 

 

マサラタウン

 

「ハンサム、すまなかったわね。無理やりジョウトに向かわせて。もうシンオウに戻って良いわ。あとはこっちで対処するから。」

 

ブルーはハンサムとの通信を切り、ソウルへ繋ぎ直す。

 

「ソウル、貴方に新たな指示を出すわ。ヒワダタウンに向かいなさい。それヒワダタウンでロケット団の討伐をしてもらうわ。まあ、仮に間に合わなかったら・・・よ。良いわね?」

 

(続く)

 



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「第十話~手を繋ごう~」

ヒワダタウン

 

「なんと酷いことを。」

 

ヒワダタウンでぼんぐりからボールを作る職人ガンテツはロケット団が行っていた行為、ヤドンのしっぽを切り落とすという蛮行に怒りを覚えていた。

 

「しかし、今出ても勝てそうにないわい。」

 

外には住民が余計なことをしないようにロケット団員が警戒に当たっていた。しかも駐在所の警官は内通者であり、警察に頼ることもできない。更に運の悪いことにジムリーダーのツクシは現在キキョウでハヤトと会合中で不在。最早絶望。しかし、そんなガンテツ達ヒワダの住民一筋の光が差し込んだ。それはまるで地面から芽吹く若葉のように美しく、華麗な光だった。

 

「ゼニガメ、みずでっぽう!!」

「ヒトカゲ、ひのこよ!!」

「「ぐおああああ!!」」

 

一筋の光。それはつながりのどうくつを抜け、ヒワダタウンにやって来たヒビキとコトネである。

 

「・・・・どうやら、俺たちはロケット団から逃れられないみたいだね。」

「そうね。今度はヤドンのしっぽを。叩き潰すしかないわね。」

 

おや? ゼニガメとヒトカゲの様子が?

 

「進化か!」

「いたぞ!! あいつらだ!!」

「準備は出来てるかい?」

「勿論よ。」

 

「迎え撃てマグマラシ!」

「貴方もよイシツブテ!」

 

ゼニガメとヒトカゲの進化を妨害させまいと二人は別の手持ちポケモンで応戦。そして団員を蹴散らし、二人はヤドンの井戸へ迫る。

 

 

ヤドンの井戸

 

「何事ですか? 何やら外が騒がしいみたいですが。」

「ランス様!!」

 

息を切らせた団員がランスの元へ駆け寄る。

 

「ほ、報告します!! 現在ヒビキとコトネとかいう二人の少年処女がこのヤドンの井戸に迫っております!!」

「何?」

 

眼を吊り上げるランス。

 

「それで、現在はどう迎撃している。」

「は! 現在団員を総動員して迎撃に当たっておりますが、それをもろともせず突っ込んできます! 更に現地住民が蜂起。ガンテツを中心に我々に攻撃を仕掛けてきており、完全に劣勢です! 更に。」

「まだあるんですか?」

「はい。それも、悪い知らせであります。」

「・・・聞こう。」

「それは。」

「うぐあああああ!!」

「「!!」」

 

ヤドンの井戸の入り口で見張っていた団員が井戸の下へ落ちてきた。

 

「あの爺、俺を落っことしやがって・・・くそう。うぎゃ!」

 

 

「コトネ! こっちだ!!」

 

ガンテツが落下させた団員を踏み台にヒビキが降下。

 

「何ですか? 私はロケット団で最も冷酷と呼ばれた男。」

 

「今行くわ! お願いねトゲチック!」

 

コトネもヒビキを追いかけて降下。もしものことを考えてヒビキのトゲチックがコトネをぶら下げて降下する。

 

「・・・・あれだね。」

「そうね。」

 

二人は視線の先に立つ男に正対する。

 

「・・・・・・。」

 

ぎゅっ、

 

「ヒビキ君?」

「コトネ、俺はもう君を一人にはしない。だから手を繋ごう。俺たちの絆で巨悪をぶっ倒そう。」

(! 震えてる!)

 

コトネはヒビキが震えているのに気付いた。

 

(そうか。ヒビキ君も怖いんだ。言葉では私を心配させまいと強い言葉を使うけど、本当はヒビキ君が一人になりたくないんだ。)

 

「私もヒビキ君を一人にはしないし、させないわ。」

 

ヒビキの手を強く握り返すコトネ。

 

「それに、こうして一緒にいるといつも以上に力を発揮できそうだしね。」

「ありがとうコトネ。」

「一体何を考えているかは。」

「マグマラシ、ひのこ。」

「ベイリーフ、はっぱカッター。」

「最期まで言わせずに攻撃とは。どうあれ私達の仕事のジャマなどさせはしませんよ!」

「「なら俺(私)たちはお前の(あなた)の邪魔をしてやる(するわ)!!」」

「ぬう! やれお前たち!!」

 

手持ちポケモンを繰り出すランス。

 

「マグマラシ!!」

「ベイリーフ!!」

 

あっけなくランスのポケモンはヒビキとコトネの御三家に蹴散らされる。

 

「馬鹿な・・・たかが少年少女ごときにランス様が敗れた・・・だと?」

「て、撤退だ!! 撤退!!」

 

一目散に逃げ出していく団員達。

 

「くっ・・・ まだ子供だと侮っていたらなんということ。」

「「・・・・・・・・・・・・・・・。」」

 

俗物を見るような目でランスを睨みつける二人。

 

「・・・ふふん 、確かに我らロケット団は3年前に解散しました。しかしこうして地下に潜り活動を続けていたのです。あなた達ごときがジャマをしても私達の活動は止められやしないのですよ! これから何が起きるか怯えながら待っていなさい!」

「「・・・・・・・・・・・・・。」」

(何か喋れよ!! 睨みつけてくんな!!)

 

逃げる様に去って行くランスを見送る二人。駐在所の警官が内通者だったことでこの場に駆けつけられる警官などおらず、そもそも買収されて骨抜きにされている警察に通報するなど団員の増援を呼ぶようなものだったからだ。

 

「・・・ヒワダジムに行こうか、コトネ。」

「そうしましょう。」

 

ヤドンの井戸の団員を全滅させた二人はその足でポケモンセンターに向かい、休息をとるのであった。

 

 

???

 

「ランスは少年少女及び国際警察に阻まれて任務失敗ですか。国際警察はマークしていましたが、新たにこの少年少女もマークしなくてはなりませんか。しかし、我々の計画を邪魔される訳には行きません。全てはサカキ様の為!! サカキさま万歳!!」

 

 

ヒワダ上空

 

「こちらソウル。ヒワダに到着。団員は確認できず。詳細をこれより調査する。以上。」

 

(続く)

 



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「第十一話~挑戦! ジムリーダーツクシ!!~」

ヒワダジム

 

「ここが虫タイプのジムだね。」

「虫タイプということはヒビキ君のマグマラシ、私のリザードとイシツブテが有利ね。」

「ジムトレーナーは相性だけで勝てるだろうけど、ジムリーダーはそうはいかないだろうね。気を引き締めて行くよ!」

 

二人はイトマルの形をした乗り物に乗りながら奥へ奥へと進む。並みいるジムトレーナーをなぎ倒しながら突き進み、遂にはツクシの元へと辿り着いた。

 

「やあ! 僕はツクシ! 虫ポケモンのことなら誰にも負けないよ! シンオウの四天王リョウさんにも負けないよ! なんたって将来は虫ポケモン研究で偉い博士になるんだから! というわけで僕の研究成果をみせてあげるよ!」

「なら俺たちは絆の力を見せてやるぜ!!」

「「「勝負!!」」」

「行くんだトランセル、コクーン!!」

「行けマグマラシ!!」

「お願いリザード!!」

「炎タイプか! 虫ポケモンなんて炎で一撃とか皆思ってるだろうけど、そうはいかないよ!! トランセル、コクーン! かたくなる!!」

「構うことはないぜマグマラシ! えんまくだ!」

「何!?」

 

炎タイプの攻撃が来ると予想し、防御を固めさせていたツクシは予想外の動きに驚きを隠せない。

 

「ど、どこから攻撃が来る。」

「・・・・そこだ!!」

「!? 地面からだって!?」

 

トランセル、コクーンの真下から炎が噴きあがる。二匹は炎にまかれ戦闘不能となる。

 

「・・・そうか。僕はリザードでそのまま来ると思っていたが、違ったんだね。」

「そうよ。ヒビキ君のマグマラシがえんまくで視界を奪った後直ぐにイシツブテに交代。穴を掘り進めながら貴方のトランセルとコクーンの真下までマグマラシを誘導したのよ。」

「あはははは!! 実に面白い作戦だね! だけど、次はそうはいかないよ!! 行くんだ! ストライク! ヘラクロス!」

「ストライクにヘラクロス。大将の御登場か!」

「ヘラクロス! インファイト! ストライクはしんくうは!!」

「コトネのイシツブテを狙って来たか! マグマラシ、かえんぐるまで迎え撃て!!」

「遅い!」

「は、速い!!」

 

ストライクはマグマラシのかえんぐるまをひらりと躱しイシツブテ目がけて突き進んでいく。

 

「なら先にあのカブトムシからだ!! マグマラシ!!」

 

ストライクに続いて突っ込んでくるヘラクロスに攻撃がヒット。双方大ダメージを受ける。

 

「君のマグマラシ、よく鍛えられているね! 僕の自慢のヘラクロスと互角なんだからね!! だけど、もう体力はほとんど残されていないかな?」

「くっ、戻れマグマラシ!!」

 

マグマラシが戦闘不能になる前に撤退させるヒビキ。ヘラクロスを戦闘不能に追い込むことは出来たが、マグマラシにはこれ以上の戦闘に耐えうるだけの体力は残されていなかった。

 

「さて、そのイシツブテを仕留めるんだストライク!!」

「イシツブテ、いわおとし!」

「遅い遅い!! そのまま突っ込め!!」

「・・・・・勝ったよ、ヒビキ君。」

「・・・・まさか、影からの一撃とはね。」

 

イシツブテを目前にして戦闘不能になったストライクがそこに転がっていた。

 

「如何に僕のストライクが速くても絶対に付いてくるものがある。」

「それが影だ。俺のゴースは影に隠れることが出来る。マグマラシを戻した後に繰り出したのがゴース。」

「そう言えば君が何かを繰り出していたにも関わらず姿が見えていなかった。まんまとやられたよ。噂には聞いていたけど、君たちはポケモンに詳しいんだね! あーあ、僕研究もまだまだだ! うん! 分かったよ。 このバッジを持って行ってよ! これが僕に勝ったことを示す証のインセクトバッジだよ!」

 

ヒビキとコトネはツクシからバッジを受け取り、ケースにしまう。

 

「インセクトバッジをね、付けてると人から貰ったポケモンでもレベル30までのポケモンがすなおになるよ!あとね、いあいぎりを覚えたポケモンは戦っていないときでもその技を使えるんだよ! それとこれを持って行って!」

 

二人はわざマシン89を受け取る。

 

「わざマシン89の中身はとんぼがえりだよ!」

「このわざをつかったポケモンは攻撃した後手持ちのポケモンと入れ替わる、でしたよね?」

「そう! どう? 凄いでしょ!?」

「実際強い技ですからね。」

「ちなみにその使い捨ての技マシン、協会の本部から在庫処分しろって言われてる代物なんだ。折角だからあと二つずつあげるよ。」

「「ありがとうございます!!」」

「ごめんね、押し付けちゃって。ジムリーダーもノルマがあるから・・・理解して。」

 

 

ガンテツの家

 

「ほう! お主らがロケット団をやっつけたのか!」

 

ツクシを倒したヒビキとコトネはガンテツの元を訪れていた。

 

「はい。」

「少し怖かったですけど、私たちが行かなければ誰も立ち向かえないので行きました。」

「凄い子達じゃな。少し違う気はするが職責を越えて一致協力みたいな感じじゃ。まるで三年前にシルフでサカキを倒したというマサラの二人組みたいじゃ!」

「マサラの二人組・・・レッドさんとブルーさんですか?」

「確かそうじゃったかのお? それで、お前さん達はワシにボールを作って欲しくてきたんじゃろ? ここにお前さんの持ってるぼんぐり全部置いていけ。特別に全部ボールにしたるわ!」

「良いんですか?」

「このヒワダからロケット団を追い出してくれた礼じゃ!」

「「ありがとうございます!!」

「でもボールにするには一日かかる! 申し訳ないが明日また来てくれ!」

「「はい!!」」

 

ヤドンの井戸

 

「・・・・・既にロケット団がいないだと?」

 

ヒワダタウンに到着したソウルは情報に基づきロケット団を捜索していた。しかし、彼らの姿を見つけることが出来ないでいた。

 

「しかし、すごかったよなあの少年少女。」

「!」

 

ヒワダの住民の会話にそば耳を立てるソウル。

 

「ホントな! 確かヒビキとコトネだっけか? 確か今日ツクシさんを倒したらしいぜ。」

「マジかよ! それならロケット団を撃退したってのは本当みたいだな。あの虫博士を倒したっていうならその実力は本当だろうしな!」

 

(・・・ヒビキとコトネが倒しただと? そんなはずは!!)

 

 

(続く)

 



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「第十二話~ソウルの変化~」

ポケモンセンター

 

「しかし、今日はいろいろあったね~。」

「まず最初につながりのどうくつでロケット団と戦って、交番に行ったら内通者で国際警察に救われて、そして次はヤドンのいどとヒワダタウンのロケット団を撃退して、その後はジムに挑戦。沢山やり過ぎて疲れちゃったわ。」

「まあ、でも今日は一日ゆっくり休んで明日ガンテツさんからボールを受け取ってコガネシティを目指そうか!」

「賛成!」

「それじゃあ、今日泊まる部屋の鍵がこれだよコトネ。」

 

ポケモンセンターに併設されているカプセルホテルの一人部屋用のカギを渡すヒビキ。

 

「ええ~? 一人部屋なの~?」

「テントなら仕方ないけどさ、そうじゃない時はプライバシーに配慮しないと。」

「私は別に良いのに~。」

 

顔を膨らませて文句を言うコトネ。

 

(実際は俺の身が持たないんだよコトネ。君と一緒の部屋で寝たら幸せ過ぎて心臓が張り裂けかねないんだよ。理解してよ~!)

(もう~、ヒビキ君はこういうところではヘタレなんだから~。まあ、それも好きだけどね!)

 

 

ヤドンのいど

 

「というわけで、ヒワダタウンに展開していたロケット団はヒビキとコトネが撃退したようだ。最初は信じられなかったが、民衆からの聞き取りで裏が取れた。」

 

ソウルはヒワダタウンで調べたことをブルーにポケギアで報告していた。

 

「それで、この後はどうすれば。・・・・え?」

 

驚愕の表情を浮かべるソウル。

 

「・・・はい。指示通りにする。」

 

通信を切るソウル。

 

「・・・・あの人もつくづく話が読めない奴だ。ヒビキとコトネ、二人と戦えなんてな。」

 

井戸の底から空を見上げるソウル。

 

「・・・今日の夜空は天の川が良く見えるな。・・・そう言えば、親父と決別した日の夜空も、天の川は綺麗だったな。一人一人では弱い癖に群れで集まって強がる奴、俺はそういう奴らが大っ嫌いだ。親父も、ロケット団も、そして・・・。」

 

声が詰まるソウル。

 

「・・・・何故、ここで声が詰まる? 何故この言葉が言えないんだ。ヒビキと、コトネの、言葉を。まさか、俺の心が揺らいでるとでもいうのか? そんな馬鹿なことがあってたまるか!!」

 

井戸の壁を右手で殴るソウル。

 

「・・・何故だ・・・何故だ!! 俺は正しい! 一人で強くなってやるという俺の考えは正しいはずだ!! なのに・・・。」

 

再び夜空を見上げるソウル。

 

「・・・夏の大三角か。アルタイル、ベガ、デネブの三つの一等星が作り出す輝き。」

 

(もし、あの三つの星のうち二つがヒビキとコトネだとしたら、残り一つは誰だるうか。)

 

「・・・そんなことを考えても仕方ないか。寝るか。」

 

幻想的な夜空をそのままソウルは見つめ、その後眠りにつくのであった。それと同時に、ソウルはヒビキとコトネと出会ってから心情に変化が出ていることを感じるのであった。

 

 

マサラタウン

 

「ソウルもだんだんと心を開いてきてくれたわね。このまま残りの一つの星になって、三角形を結んで欲しいわね。・・・・さて、私も出るとしようかしら。」

 

ブルーはモンスターボールを取りだす。

 

「行くわよフリーザー!」

「ギャース!!」

 

フリーザーにまたがりブルーは夜空へと消えていった。

 

(明日はあの工作をしないといけないからね。ちゃんとヒワダのジムリーダーと調整もしたし、抜かりはないわね。)

 

 

ポケモンセンター

 

「ふう~、服も洗濯に回せたし、これでまた綺麗で清潔な予備を確保できるよ。」

 

「どうしよ? 予備これしかないんだけど? 乾くとは思うけどこれもたまには着ていつものを休ませないとだめ・・・よね?」

 

(続く)

 



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「第十三話~真の目的~」

翌日 ヒワダタウンのポケモンセンター

 

「う~ん、たまには別の服を着るのも良いな~。」

 

いつもの服を洗濯し、次の街であるコガネシティのポケモンセンターに送ったヒビキは金銀の主人公が着ている服装をしていた。

 

「でも中々コトネが来ないな~。一体何をしてるんだろう?」

「ま、待たせてごめんねヒビキ君!!」

 

顔を赤らめながら現れたコトネ。服装は水晶版の女主人公が着ている服装だった。ナイスバディな体型なコトネはあちこちが目立ってしまう。

 

「ま、待たせてなんてとんでもないよ! お、俺もさっき来たところだからさ!!」

 

((どうしよう。いつもと違う君を見ていると心が持たなそう。))

 

互いが互いを注視し合っていたヒビキとコトネだが、その視線は赤い髪の少年によって断ち切られた。

 

「ヒビキにコトネ!」

「「!!」」

 

二人の視線の先には忘れもしないあの赤い髪の少年ソウルがアリゲイツを引き連れて立っていた。

 

「・・・一体何のようだよ。」

「お前らに聞きたいことがある。ロケット団が復活してるってホントか? 」

「そうだ。」

「まあ、私とヒビキ君でやっつけちゃったけどね。」

「何!? お前らが倒しただって? ウソ言うなよな。」

「いや、嘘ついてないし。」

「本当のこと言っただけなんですけど。」

「もしそれが本当だと言うなら・・・その実力、オレにみせてみろ!」

「「・・・・・・・・・・・。」」

(どうするこの犯罪者。)

(でも警察呼んでも糞しかいないからねえ。)

(でも闘わないと五月蠅そうじゃないあれ?)

(じゃあ、闘っちゃう? どうせやられ役だし。)

「何コソコソ話してんだ!! さっさとポケモン出せよ!! いつもと違う格好しやがって。お洒落のつもりか? バカバカしい。似合ってねえし、そんな恰好やめちまえ!!」

「は? どうやらお灸を据えてやるしかないねコトネ。行けマグマラシ!!」

「同感よヒビキ君。私はベイリーフ!!」

「お前らがそう来るなら俺はこれだ。行け! ゴース、ズバット!!」

「行くよコトネ!!」

「行くわよヒビキ君!!」

「マグマラシ、かえんぐるま!!」

「ベイリーフ、はっぱカッター!!」

「フン! そんな攻撃。」

 

効かねえ、と言おうとしたソウル。しかし、現実は違っていた。

 

「・・・負けた。おいおいこんな奴らに負けるなんて冗談じゃないぞ。」

 

一瞬で手持ちのポケモンを全て撃破され、茫然と立ち尽くすソウル。

 

「・・・フン! 使えないポケモンだぜ。」

「お前さ、手持ちに対してその態度はねえんじゃないのか? 少しは労わってやれよ。あん!!」

「・・・いいか、お前が勝てたのはオレのポケモンが弱かったからさ。オレは弱い奴が大嫌いなんだ。ポケモンだろうがトレーナーだろうが。そういう弱い奴らがうろついてるのが目ざわりでしかたない。ロケット団も同じだ。」

「「!!」」

「一人一人は弱いくせに集まっていばり散らして偉くなったつもりでいる、そんな奴らが許せないんだ。お前らはうろちょろするなよ。オレの邪魔をするならついでにお前らも痛い目に遭わせてやるからな。」

 

そう言ってソウルは立ち去った。

 

「・・・・・・・・・。」

「何なのあいつ? 自分の実力のなさをポケモンのせいにして!!」

「・・・おそらく、今ソウルは悩んでいるんだ。その悩みが何かは俺には分からないけど、何時かは分かり合える日が来そうだ。」

「ヒビキ君がそういうのなら、間違いなさそうね。それじゃ、ガンテツさんからボールを貰いましょう!」

「賛成!!」

 

 

ウバメの森

 

「くそっ!! くそっ!!」

 

木の幹を殴りながら悔しさを露にするソウル。彼の手持ちポケモン達が心配そうに彼を見つめる。

 

「何故だ!? 俺はあいつらに勝てるだけの素質も、ポケモンも揃えていたはずだ!! なのに何故・・・何故負けたんだ!!」

 

再び木の幹を殴るソウル。

 

「・・・・・・。」

「何だよお前! 今は一人にしてくれ!!」

 

心配して近くに寄ってきてくれたアリゲイツにひどい言葉をかけるソウル。

 

「・・・何だよ。何でもないはずなのに何故涙が・・・。」

 

アリゲイツを罵倒したソウルだが、自然と目に涙が浮かんでいた。

 

「前の俺はこんなことなんてなかった。なのに・・・まさか、あの国際警察の女の目的は・・・・・いや、そんなはずは。そんなはずはない!! 俺は・・・俺は・・・俺・・・は。」

 

 

ポケモン協会本部

 

「・・・順調ね。」

 

カントー・ジョウトを管轄するポケモン協会カントー・ジョウト支部には国際警察公安部のブルーが一般職員という身分で潜入していた。

 

「このまま上手くいけば、彼らは大きな戦力になる。結束の力、一+一は二じゃない。三にも四にも出来る。それを貴方には成し遂げて欲しいのよ。」

 

ブルーはソウルのポケギアに細工を施していた。それは、ソウルのポケギアを通じて彼の言動を把握できる盗聴器の設置だった。

 

「さて、次は・・・。」

 

(続く)

 



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「第十四話~ラプラス~」

ヒワダタウン

 

「さて、ウバメの森を抜けてコガネシティを目指そうか!」

「そうね。それじゃ。」

「何だこりゃあ!!」

「何で此奴がここに!?」

 

ヒワダの住民が騒ぎ出す。一体何事かと思った二人は騒ぎが起きている場所へと向かう。

 

「一体何があったんだろ?」

「ロケット団の残党がまだいたのかも。」

「だとしたら大変だね。」

 

 

「「こ、これは!」」

 

二人の視線にはつながりのどうくつでロケット団から救ったあのラプラスがあった。

 

「間違いない! あのラプラスだ!」 

「まさかつながりのどうくつからやって来た!?」

「!」

「わっ!」

 

ラプラスはヒビキとコトネを見つけると直ぐにこっちにすり寄って来た。それも嬉しそうな鳴き声をしながら。

 

「な、何なのこの喜びぶり?」

「・・・礼がしたいって言ってるみたいだよコトネ。」

「それって私たちの手持ちになりたいってこと?」

「!!」

 

その通り!と言わんばかりに大き鳴き声で鳴くラプラス。

 

「でも国際条約か何か新規の保有って制限されてたような。」

「図鑑埋めの為にも是非とも欲しいけど、不味いよね?」

「大丈夫! このツクシに任せといてよ!!」

「「?」」

 

困っていた二人の元にツクシが駆け付ける。

 

「「ツクシさん?」」

 

ヒワダジム

 

「ラプラスみたいな貴重なポケモンは新規の保有が厳しく制限されてるけど、ジムリーダーが申請して、ポケモン協会が承認すれば保有が認められることになってるんだ。」

「でも、手続きが大変そうじゃないですか?」

「確かに。役所ってそういうのめんどくさいイメージ。」

「大丈夫。あーでこーでと。送信!!」

 

申請書を本部に送信するツクシ。

 

「ほら、もう許可が出た!」

((早っ!!))

「そ、そんなに早く許可って出るもんなんすか?」

「よく分からないけどそうみたい。」

「取り敢えず許可出しとけって感じの仕事に見えたんですが。」

「そんなことないと思うよ! いつもは一年ぐらいかかるんだよ! きっと君達の活躍を見てる人がいたんだね。凄いなあ!」

「「・・・・・・・・・・・・・。」」

((見てる人って誰なんだろう?))

 

 

ポケモン協会本部

 

「本当にもう許可出しちゃったんですか!?」

「あら~? いけなかったかしら?」

「駄目ですよ!! いくら何でも早すぎる!!」

「かつてロケット団を壊滅させた私のお願いでも駄目かしら? あの二人からは私とレッドと同じ匂いがするもんだから、出しちゃった☆」

「・・・・・・仕方ありませんね。」

「ありがと。」

「でも次はちゃんとやってくださいよ!! 今は貴女は協会の人間なんですから!!」

「分かってるって。」

 

上司が去って行く。

 

「・・・・またやらかしたのかお前?」

「あら? トキワにいなくて良いの?」

「良いから来てんだ。何となくお前が何かやらかしそうな気がしたからな。」

「あら~。もしかして私の事。」

「黙れ。」

「冗談よ。それより、復活したみたい。ロケット団。」

「あっそ、と言いたいところだが、今の俺はそういう訳には行かねえ立場だ。情報はあるか?」

「ここにあるわ。一緒に見ましょ。」

「ああ。」

 

 

ヒワダジム

 

「それで、どっちがラプラスを持つの?」

「それはラプラスに決めて貰ったらいいんじゃないか?」

「ヒビキ君の意見に賛成!!」

「そっか。じゃ、ラプラス! 着いていきたい人のところに行って!!」

「!!」

 

ラプラスは二人の顔を見て少し迷った。

 

「悩んでるみたいだね。まあ、無理はないね。ラプラスから見たらどちらも恩人だからね。」

「・・・・!!」

「わ、私で良いのラプラス?」

「!!」

 

コトネにじゃれつくラプラス。ツクシから渡されたモンスターボールをコトネに手渡す。これに入れてくれと言っているようである。

 

「それじゃ、コトネちゃん。ラプラスを幸せにしてあげてね! ラプラスは賢いポケモンだから、ちょっとやそっとの嘘は分かっちゃうからね!!」

「分かりました! よろしくねラプラス!!」

「!!」

 

ラプラスはモンスターボールに収まった。そして二人はヒワダタウンを立ち、コガネシティへと向かって行った。

 

「・・・さて、やれって言われたからやったけど・・・あのブルーって人は本当にただのマサラ出身の一トレーナーなのかな?」

 

 

ガンテツの家

 

「それでラプラスが手持ちに加わったのか! 流石はオーキド博士とウツギ博士が認めたトレーナーじゃな! それじゃ受け取るが良い! ワシのかいしんの出来のボールを受け取るがよい!!」

「「ありがとうございます!!」」

 

ヒワダタウンゲート

 

「それじゃあ行くよコトネ!!」

「全速前進で行くわよヒビキ君!!」

 

(続く)

 

 

 



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「第十五話~神のきまぐれ~」

ウバメの森

 

「お~い、どこに行くんだよカモネギ~。」

「ぐわー! ぐわー!!」

「くそ~、俺じゃ言う事聞けないっていうのかよ~。」

「ぐわー!!」

「待ってくれよ~!!」

 

このウバメの森は炭作りが盛んな地域であり、ヒワダの住民はこの森の木を伐採して得た資源を使って非常に質の良い木炭を作り全国各地に販売しているのだ。

 

「やっぱり親方のポケモンは俺の言う事聞かねえな~。今日は親方に頼まれて来たけど、もう踏んだり蹴ったりだ!!」

「ぐわー!! ぐわー!!」

「へ?」

 

突然踵を返して戻ってくるカモネギ。

 

「ど、どうしたんだカモネギ・・・ああ!!」

 

 

「ここを抜ければコガネシティも目の前だね。」

「そうね。それじゃ張り切って行きましょう!!」

「助けてくれー!!」

「「!!」」

 

突然の悲鳴にボールを構えるヒビキとコトネ。

 

「聞こえたかいコトネ?」

「ええ。あれは明らかに助けを呼ぶ声。それも偽りのない。」

「急ごう!! もしかしたら生命の危機にあるかもしれない!!」

 

森の中を走る二人。

 

「どけ!! 今はお前たちに構っている場合じゃない!! カメール!!」

「リザード、貴方もよ!!」

 

途中出てくる野生ポケモンを蹴散らしながら進む。そして遂にそこに辿り着いた。

 

「あれは・・・ロケット団!!」

「そして近くにいるのは・・・ソウル?!」

 

 

(・・・不味いな。目標を発見したは良いが、数を前に押されているな。)

 

ヒビキとコトネより先にウバメの森に入っていたソウルはコガネへ向かう途中でロケット団と遭遇。そのまま交戦していた。実力はソウルが上回っていたが、相手は三人。数を前にじりじりと押されていたのである。

 

(おまけに民間人もいやがる。コイツがいなければこんな敵なんぞ!!)

 

「アーボック!! どくばりだ!!」

「アリゲイツ!! かみつく!!」

「隙あり!!」

「くっ! ズバット!!」

「ならこれでどうかな? ラッタ、ひっさつまえば!!」

「うぐっ!!」

 

ラッタの攻撃をかわし切れず左腕を負傷するソウル。

 

「どうするコトネ。もしあのままにしてたらソウルは確実に負ける。そしてその背後で震えてる民家人に被害が及ぶのは確実だ。」

「でも、何でロケット団とソウルが?」

「おそらくロケット団はあのカモネギを強奪しようとしていたんだろう。で、そこにソウルが来て戦闘になったという感じだろう。」

「成る程、それなら納得できそうね。」

 

ボールを構える二人。

 

「コトネ、君は民間人の保護を。俺はロケット団に立ち向かう。」

「了解。絶対に負けないでね。」

「勿論さ。君が俺のせいで泣くのは、もう見たくないからね。」

 

意を決し、木の陰から二人が飛び出す。

 

「な。」

「何だあのガキは?!」

「マグマラシ、カメール、ゴース!! ソウルを援護しろ!!」

 

マグマラシ、カメール、ゴースがロケット団員のポケモンを攻撃。それぞれ目の前にいた敵を蹴散らし、ソウルの手持ちの援護を行う。

 

「行くわよベイリーフ、リザード、ラプラス!! 男性とカモネギをヒワダに!! 急いで!!」

 

コトネは手持ちポケモンに男性とカモネギをヒワダタウンへ搬送するように指示。

 

「あ、ありがとうございます!」

「ぐわー!!」

「礼はヒワダに戻ってからにしてください!!」

 

ラプラスが男性とカモネギを乗せ、ベイリーフとリザードを護衛にヒワダへ引き返していく。

 

「ヒビキにコトネ! 何勝手なことをしやがる!! こいつは俺の獲物だ!!」

「俺らはただお前のポケモンが苦しんでる、そしてお前が一人で苦しんでるのを見ていられなかっただけだ。」

「フン! お前らがいなくたって俺は!!」

「・・・・ソウル。」

「何だ?」

 

ゴフッ、

 

「ぐあ・・・。」

 

ヒビキの腹パンがソウルに炸裂。

 

「君は疲れているんだ。無理して体を壊すべきじゃない。暫くそこで休んでいるんだ。」

「ヒビキ君! こっちは手配が完了したわ!!」

「了解!」

「くそ~、突然の増援なんて聞いてねえぞ!!」

「あ、あれはランス様を退けたという。」

「ヒビキにコトネか!! どうりで強かったはずだ!!」

「怯むな! ここで奴らを倒せば俺たちは出世間違いなしだ!!」

「そ、そうだ!!」

「や、やっちまえ!!」

「どうやら、まだやる気のようね。」

「コトネ、君はこれを使うんだ!!」

 

一個のモンスターボールを投げるヒビキ。

 

「サンキューヒビキ君! 最高の一匹ね!」

 

モンスターボールの開閉スイッチを押すコトネ。

 

「行くわよトゲチック!! ゆびをふる!!」

 

ゆびをふるトゲチック。

 

「な、何か嫌な予感だ! そのトゲチックを狙え!!」

「「おう!!」」

「させるか! マグマラシ、かえんんぐるま! カメール、みずのはどう! ゴース、したでなめる!」

 

トゲチックへの攻撃を阻止しようと行動するマグマラシ達。

 

「・・・・!!」

「な、何だ!?」

「この光!?」

 

突然森の奥から強烈な光が場にいた全員を襲う。

 

「・・・・・・・!!」

(・・・あれは?)

 

光が薄くなり、全員の視界が回復する。

 

「「「ああ!! 俺たちのポケモンが!!」」」

 

全員の視界に写っていたのは戦闘不能となったロケット団員のポケモン達だった。

 

「お、お前ら!! トゲチックにどんな技を出させた!!」

「わ、分かんねえよ!! 気が付いたらこうなってたんんだよ!!」

「ど、どうするよ?」

「・・・撤退だ!! ここで国際警察が来られたらたまんねえ! 撤退だ!!」

 

蜘蛛の子を散らすかのように逃げていくロケット団員。

 

「ふう、よくわかんないけど勝てたわねヒビキ君!!」

「・・・・・・。」

「しかし、一体どんな技なのかな? ヒビキ君でも知らない技を出したのかな?

「・・・・・・。」

「ヒビキ君?」

「セレビィだ。」

「へ?」

「あの光は・・・セレビィだ!! 間違いない!!」

 

突然走り出すヒビキ。

 

「ああ、待ってヒビキ君!?」

 

 

「はあ、はあ、はあ。やっぱり!!」

「どうしたのヒビキ君!? 突然走り出しちゃって!!」

「これを見るんだコトネ!!」

 

ヒビキが指さした先には小さな祠があった。

 

「これは、ウバメの森の神様を祭ってる祠よね? もしかしてさっきの光ってこの祠から!?」

「ああ。それの証拠によく見て欲しいんだ。」

 

祠の扉を開くヒビキ。

 

「ああ!!」

 

中には光輝くボールのような物が置いてあった。

 

「これがさっきの光の正体。そしてこれは・・・GSボール!?」

「そう。ガンテツさんの家にあったボールの資料にあった幻のボール。」

 

ガンテツボールを作ってもらうときに実はこっそりとヒビキは資料を読んでいた。その時時を捕らえるボールとセレビィの存在を知ったのだ。

 

「おまけにこれだ。」

 

ポケモン図鑑を示すヒビキ。そこにはセレビィの姿が登録されていた。

 

「図鑑も証明してる・・・ってことね。」

 

次の瞬間、再び強い光が祠から放たれた。その光はヒビキとコトネを包み込んでいく。

 

「い、一体今度は!!」

「何なの!?」

「「うわあああああ!!」」

 

(続く)

 



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「第十六話~ソウルの真実~」

「・・・うう、大丈夫かいコトネ?」

「私なら大丈夫よヒビキ君。」

 

眼を擦りながらお互いの顔を確認し合う二人。

 

「確か祠の中から出た光に巻き込まれて。」

「そうよね。」

 

周囲を見渡すヒビキとコトネ。

 

「ここはどこかしら?」

「ポケギアを開いてみよう。」

 

左腕に装備したポケギアを開くヒビキ。

 

「ここは22番道路か。」

「へえ~。」

「「・・・・え? 22番道路!?」」

 

驚いてお互いの顔を見つめ合うヒビキとコトネ。

 

「さ、さっきまで私達はウバメの森にいたはずよね? なのにどうして今カントーにいるの!?」

「確かに・・・!!」

 

ポケギアを見て更におかしいことにヒビキが気付いた。

 

「コトネ! ポケギアのカレンダーはどうなっているかい!?」

「カレンダー? ええっと・・・ええ!?」

 

コトネは自分のポケギアのカレンダーを見て更に驚く。

 

「これは・・・ロケット団がレッドさんやブルーさんに滅ぼされた日の翌日の二年前!?」

 

ヒビキとコトネのポケギアの時刻は二年前の日を示していた。

 

「ヒビキ君のポケギアも?」

「ああ。どうやら俺達はセレビィのときわたりで二年前のカントー地方に来てしまったらしいね。」

「そんな!!」

「親父!!」

「「!!」」

 

二人は声のする方向へ振り向く。

 

(あ、あれは・・・ソウル!? そして近くにいるのは・・・サカキ!?)

 

二人の視線の先には激しく言い合うソウルとサカキの姿があった。

 

「行っちまうのかよ親父!! 最強だって言ったじゃないか!! なのに負けちまったのかよ!!」

「・・・・・・・・。」

「何か言えよ!! 所詮烏合の衆だったのかよ!?」

「シルバー、今のお前には分からないだろうが、団員達との結束の力こそが強き力を作り上げるのだ。」

 

((シルバー?! ソウルと言うのは偽名だった?!))

 

「訳の分からない少年少女に負けて何が結束だ!!」

 

モンスターボールをサカキに投げつけるシルバー。

 

「・・・何のつもりだ息子よ。」

「吐き気がしてくるぜ。こんな集団で集まらないと粋がれない、威張り散らせない奴の息子だったこと、そしてそんな奴からポケモンを貰ったことがよ!!」

「・・・・・・・。」

 

優しく投げ返すサカキ。

 

「いらねえよ!! こんなの!!」

 

遥か遠くに投げ捨てるシルバー。そのモンスターボールはヒビキとコトネも元へ転がる。

 

「シルバー、お前にも何時か分かる。組織の力、そして結束の力が。」

「分かりたくない!! 俺は一人で強くなってやる!! 親父と同じ何かにならねえぞ!!」

 

シルバーはシロガネ山の方角へ走っていった。

 

「・・・・・・シルバー。」

 

ヒビキとコトネの方へ歩いてくるサカキ。

 

「・・・聞いていたのか。ふっ、年端もいかない子供達に親子喧嘩を見せてしまったか。」

「あ、あの~。」

「これ。」

 

モンスターボールを手渡すコトネ。

 

「すまないな。」

「・・・おじさん、その中には何が入っているんですか?」

 

ヒビキはサカキと言わずにおじさんと呼んだ。ここでサカキと呼べば警戒されるかもしれない。幸い此方を敵視していないのを悟ったヒビキは相手がまさかロケット団のボスだなんて知らないよという素振りを見せる。

 

「ああ、中身はコイツだよ。」

「にゃ~ん!!」

 

中から出てきたのはペルシアンだった。

 

「私が息子に世話役として、最初の手持ちポケモンとして与えたのだがな。」

 

少しどこか悲しそうな表情を浮かべるサカキ。

 

「にゃ~ん。」

「どうしたペルシアン。」

「にゃんにゃん!!」

 

ヒビキに匂い付けをするペルシアン。

 

「・・・そうか。」

「わっ!」

 

ペルシアンのモンスターボールをヒビキに投げ渡すサカキ。

 

「暫くは君が持っていたまえ。それが最良の選択のようだからな。」

「ああ、ちょっとおじさん!?」

 

サカキはそのまま立ち去った。

 

「・・・・と、とりあえずボールに戻したら?」

「そ、そうだね。戻れペルシアン!」

 

ヒビキがペルシアンをおボールに戻す。

 

「さて、この後どうしたら。」

 

次の瞬間、再び光が二人を包み込む。

 

「これは!」

「ときわたり!!」

「「うわあああああああ!!」」

 

(続く)

 



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「第十七話~動き出す者達~」

「・・・・うう。」

「またあの時の光が。」

 

眩い光が薄れ、視界が段々と明瞭になる二人。

 

「・・・ここは・・・ウバメの森だ!!」

「じゃあ私達、戻ってこれたんだ!!」

 

互いのポケギアのカレンダーを確認するヒビキとコトネ。

 

「「・・・ときわたりする前の日にちに戻ってる!!」」

「「「!!」」」

 

二人が帰還して喜んでいるところにヒワダから引き返してきたコトネのポケモン達が現れる。

 

「あ、ベイリーフ! リザード! ラプラス! 会いたかったよ~!!」

 

ぎゅっとそれぞれを抱きしめるコトネ。

 

「そう言えばソウル・・・・・・・・いやシルバーは何処へ?」

 

辺りを見渡すヒビキ。

 

「・・・・もう何処かへ行ってしまったようだな。」

 

サカキから受け取ったモンスターボールの中に目をやるヒビキ。

 

「ペルシアン。コイツがソウル・・・シルバーの最初のポケモンか。」

「!!」

「・・・帰りたいか? あいつの元に。」

「!!」

 

モンスターボール越しにシルバーの元への帰還を訴えるペルシアン。

 

「・・・だよな。如何にポケモンを使って悪いことをするサカキだって人間だ。俺にお前を託したのは一番シルバーに近づけると認めたからだろう。」

「!!」

「安心しろ。必ずあいつのところに戻してやる。だから、その時までは俺と共にいよう。な?」

「!!」

「・・・ありがとう。」

 

モンスターボール越しであるが、ぺルシアンが納得したことがヒビキに伝わる。

 

「それじゃ、行こうかコトネ。」

「うん! ヒビキ君も決着がついたみたいだしね!!」

 

一路コガネシティを目指す二人はウバメの森を抜けて行く。しかし、この時彼らはこのウバメの森である計画の為にロケット団が動いていたことを知らない。

 

 

ポケモン協会本部

 

「・・・ソウル、まんまと囮に引っ掛かったようね。」

 

密かにウバメの森上空に展開させていたブルーのミュウが姿を消しながらロケット団の動向を監視させていた。

 

「・・・あの子はロケット団を見ると直ぐに戦闘したがるのよね。過去との決別が何とかとかいってさ。それで本当に倒すべき相手を見失っているわ。」

 

ブルーの脳にはミュウが見て感じた情報が伝わる。

 

「・・・ロケット団がまいこはんを拉致。・・・まさか奴らの目的は!? そうなればあの子一人じゃ明らかに荷が重すぎる。ヒビキとコトネでも対処は困難。」

 

これ以上は見るに堪えられないと判断したのか、ミュウがテレポートで帰還してくる。

 

「お疲れ様。よく頑張ってくれたわ。」

 

ボールにミュウを戻すブルー。

 

「これは・・・不味いことになりそうね。あまりやりたくはなかったけど、私が直々に動くしかなさそうね。それと本部にも協力要請を。」

 

 

???

 

「まさかサカキ様のご子息が我々に牙を剝きましたか。残念ではありますが、致し方ありません。団員には彼は我々の裏切り者。死を持って成敗せよ、そう伝えさせなければなりませんな。」

「それとランスを打ち破ったというヒビキとコトネ。丸で三年前のレッドとブルーを彷彿させるあの小僧と小娘も対象にしないとな。」

「それは当然です。我々に歯向かうあの三人は生かしておけません。必ず仕留めなければなりません。幸いジョウト警察は骨抜きにしてあります。我々が三人を始末したとしても警察は動きませんし、むしろ協力してくれることでしょう。」

「我々をこんな状況に陥れた国際警察への対応は? カントーには憎きブルーがいますわ。彼女が要請すればジョウト一円に国際警察の部隊が駆け付けてきてしまいますわ。そうなれば終わりですわよ?」

「ああ。それが悩みの種だ。如何に国際警察の介入を遅らせるか。それが鍵だ。」

「それなら大丈夫でしょう。カロス地方でフレア団を名乗る団体が、イッシュ地方ではプラズマ団を名乗る宗教団体が動き出しているとのこと。我々ばかりに構っていることは出来ないしょう。」

「だが、あの小僧と小娘を野放しにはしておけぬ。どこかで一発我々の恐ろしさを教えて込んでおきたいものだがな。」

「それなら、俺に策があるぜ。」

「ほう、聞きましょう。」

「それはな・・・・。」

 

 

国際警察公安部部長室

 

「ブルーからジョウトへの応援要請と自身のジョウトでの活動許可申請・・・ですか。」

「如何致しましょう? 我々公安部はカロスやイッシュ、更にはガラルへも諜報部員を展開しており、ジョウトへの部隊の展開は難しい状況です。」

「・・・人材は限られているからね。致し方ないわね。ただ、何かあったら直ぐにジョウトへ向けられるようにはしておいて。アポロのことだからどでかい一発をかましてくるかもしれないわ。」

「ははっ!!」

 

(続く)

 



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「第十八話~緊張の夜~」

34番道路

 

「ふう~、やっとウバメの森を抜けたよ~。」

 

うっそうとし、日光があまり入らないウバメの森を抜けるとそこは眩しい太陽が照らす34番道路。ここを通り抜ければ後はコガネシティが待っている。

 

「でも、コガネに入るにはウバメの森で時間を使いすぎちまったな。」

 

ヒビキが自身のポケギアで現在の時刻を確認する。時計は夜の7時30分を示していた。

 

「私にいい案があるよヒビキ君!!」

「それはなんだいコトネ?」

「良いから私に付いてきて!!」

 

二人は途中勝負を挑んできたトレーナーやポケモンを卓越した連携攻撃で蹴散らしながら前へ進む。

 

「着いたよ!!」

「・・・これは、そだてやさん?」

「そう。実はね、この34番道路の育てやさんは私のおじいちゃんとおばあちゃんが経営してるの! 今日はここに泊めてもらいましょう!!」

「い、いきなり押しかけて大丈夫なのコトネ? こういうのは段取りが。」

「良いから!!」

 

コトネはヒビキを引っ張りながら育てやさんに入っていく。

 

「おじいちゃ~ん、おばあちゃ~ん!」

「お!」

「コトネかい? 久しぶりだねえ!」

「しかもボーイフレンドも一緒か。これは将来有望じゃのう。」

「それほどでも。」

「・・・・・・。」

 

満更でもない表情を浮かべるコトネに対し、自分のことをボーイフレンドと呼んだことを全く否定しないコトネにヒビキは顔が真っ赤になっていた。

 

「それで、いきなりでごめんなんだけど。」

「泊まりたいんじゃろ? うちはいつでも歓迎だよ、上がりなさい。」

「可愛い孫とその婿をこんな危ない夜道に歩かせるなんてとんでもないことじゃからな!」

 

 

「ね? うまくいったでしょ?」

「・・・・・・・・。」

 

コトネの曽祖父に昔コトネが泊まる時に使っていた部屋に案内されるヒビキ。

 

(しかし、よりによってコトネと同室かよ!! もしかして夜このまま一緒に寝るとか言うんじゃないだろうな? 何故か布団が一枚、しかも大き目だぞおい!?)

 

「どうしたのヒビキ君? 頭を抱えて。」

「そりゃあ抱えるだろ!! この布団って明らかに二人で寝ろと言ってる布団じゃねえか!! コトネは嫌じゃないの!?」

「わ、私は別に大丈夫よ!!」

 

ヒビキがどきどきしていたのと同じく、コトネもどきどきしていたのである。

 

(ドキドキしないわけないじゃない。だって相手はヒビキ君なのよ? 私にとって一番好きで、大切な男の子なのよ。そんな子と一緒に寝ると知って心臓が今にも爆発しそうなのよ。)

 

どうこうしているうちに就寝時間がやってくる。

 

「・・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・。」

「・・・寝ようか。」

「・・・そうね。お休みヒビキ君。」

「お休みコトネ。」

 

緊張しながら布団に入る二人。布団の中で離れようにもそれには小さい布団。どこかは必ず接触してしまう。

 

((・・・ええい!! どうにでもなれ!!))

 

意を決して二人は互いに抱き合う。

 

「・・・・やっぱり。」

「・・・・私達。」

「「考えること、同じなんだね(なのね)。」」

 

((ああ、何か急に眠くなってきた。))

 

二人はそのまま眠りについた。翌朝まで二人で仲良くそのまま。

 

(続く)

 



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「第十九話~青と緑の突入~」

「さ~て、一晩休んだことだしコガネを目指そうか!」

「そうね。おばあちゃん、おじいちゃん、ありがとうね!」

「頑張っていくんじゃぞ~。」

「辛くなったらまた来てもええぞ~。」

 

二人は育てやさんを出て一路コガネシティを目指す。

 

「少しずつみえて来たね。」

 

二人の視線の先にはジョウト一の大都会にしてこの国の副首都であるコガネシティの街並みが見え始めていた。

 

「あれがコガネシティね! テレビとか本で見た街並みとはまた違った趣があるわね!」

 

遠くからも分かる無数の高層ビルやコガネ名物のラジオ塔が見えて興奮するコトネ。

 

「こうして見ると、やっぱりコガネは大きな都市だよね。かつては停滞してた時期もあったみたいだけど。」

「そうなの?」

「まあ、政治の詳しいことなんて俺には分からないけどね。気が付いたら都になってたし。」

「ふ~ん。」

 

二人は遂にコガネシティへ足を踏み入れる。

 

 

「・・・・あれ?」

「あの人だかりは一体何かしら?」

「地図によると・・・コガネ駅。JRのジョウトにおける重要駅みたいだけど・・・何があったんだろ?」

 

コガネ駅

 

「現在リニア中央新幹線は停電の影響で全線で運転を見合わせております!! また東海道・山陽新幹線はヨシノからシン・アサギの間で運転を見合わせています! 現在運転再開の見込みは立っていません!!」

 

既存の東海道新幹線のバイパスとして開業したリニア中央新幹線。開業に至るまでに様々な困難に直面し、一時は白紙化も囁かれていたが今はこうしてこの国の大動脈として機能している。しかし現在その二つの大動脈がストップし、駅は大混乱に陥っていた。

 

???

 

「まずは手始めにJRの新幹線、それも全て運行を停止させることでコガネシティの一部を混乱させる。」

「しかし、よくこんなに上手く出来たな。都合よく二本とも。」

「ジョウト警察を骨抜きにした俺様だぜ? 当然JRの中にスパイを潜り込ませたのさ。そのスパイに変電所を攻撃させ、停電を起こさせた、それだけだ。」

「成る程な。しかし、それで本当にあの小僧と小娘はおびき出されてくるのか?」

「勘の良いあの小僧と小娘のことだ。もう間もなく引っ掛かるだろうよ。くっくっ。」

 

紫色の頭髪をした幹部は気持ち悪い笑い方をする。

 

「さて、獲物は罠にかかったみたいだぜ。」

 

 

ピトン!

 

「うう、あれ?」

 

空から垂れてきた滴で目が覚めるヒビキ。

 

「な、なんだこれは!!」

 

目が覚めて見てみれば手を後ろで縛られていた。

 

「確か・・・俺とコトネはコガネ駅に向かってる途中に。」

 

ここに至るまでの経緯を振り返るヒビキ。

 

「駅の構内で駅員さんに事情を尋ねたら此方へと連れられて・・・もしかして、あれは偽物の駅員!?」

「いいえ、あれは本物の駅員ですよ。」

「誰だ!」

 

ヒビキの目の前にコガネ駅で会話した駅員が現れる。

 

「え、駅員さん?」

「はい。ですが、それは世を忍ぶ仮の姿。本当の姿は!!」

 

駅員の制服を脱ぎ捨てる男。

 

「ま、まさか・・・駅員さんがロケット団?」

「ええ。」

「まさかコガネ駅のあの混乱はお前たちロケット団が引き起こしたものなのか!!」

「勿論ですとも。いやあ~、まさか天下の日本鉄道の駅員が反社会的勢力と繋がってるなんて夢にも思いませんよね~。会長がバリバリの右ですからね~。さて、そろそろ始めるとしますかね。」

 

指を鳴らす団員。すると背後に手と足を椅子に縛られ、口には布を当てられたコトネがスポットライトに照らされる。横には屈強な団員が一人立っている。

 

「貴様! コトネを解放しろ!! 俺の、俺のコトネに手を出すな!!」

「そうですね~、条件次第では認めましょうかね?」

「ふざけるな! 貴様ら反社会的勢力の条件なんて飲めるか!!」

「生意気な小僧にはおしおきが必要なみたいですね!!」

 

コトネの横に立っていた団員がコトネの首を絞め始める。

 

「どうしますか? このままにしておくと貴方の女、死んじゃうよ?」

「・・・・・・・・・・。」

「睨んでも無駄です。無論助けなんて来ませんし、貴方達の手持ちは取り上げておきましたから。」

「な、なんだコイツは!? うわあああ!!」

「! 一体何事です!!」

 

次の瞬間、扉を蹴破って一人の少女が突入してきた。

 

「何だこの小娘は!」

「・・・甘い甘すぎるわよ!」

 

少女は屈強な団員のパンチをひらりとかわし、逆に脇腹に一発拳を叩き込む。

 

「ぐおっ!」

「な、何をしているのです! 複数人で囲んで始末しなさい!!」

「俺もいるけどな!」

「な、何ぐえ!!」

 

ヒビキの目の前にいた団員は茶髪の少年に飛び蹴りを食らって倒れ伏す。

 

「お前、大丈夫だったか?」

「あ、貴方は・・・トキワシティジムリーダーの。」

「話は後だ。よし、ほどけたぞ! ブルー、そっちは?」

「こっちも人質を救出したわ。グリーンは彼らを連れて脱出を!」

「分かった。おい、付いてこい!」

「「は、はい!!」」

 

グリーンに連れられて逃走するヒビキとコトネ。

 

「さて、どうやらとんでもない事態になってしまったわね。」

 

ブルーはグリーン達の脱出を見届けると本部への交信を開始する。

 

「・・・・というわけです。・・・了解しました。では。」

 

 

ポケモンセンター

 

「グリーンさん、本当にありがとうございます。」

「お陰で私たちは救われました。」

「気にすんな。俺はブルーに呼ばれてきただけだ。」

「ブルーさんに?」

「ああ。しっかしコガネに来てくれって言うから来てやったらこれだもんな。」

「でも、貴方も拒否しなかったでしょ?」

 

用事を全て済ませたブルーがグリーンの背後から話しかけてくる。

 

「おお、ブルー戻ったのか。」

「ええ。まあ、色々あってね。」

 

グリーンの横に座るブルー。

 

「今気分はどう? 大丈夫?」

「私は何とか。でもヒビキ君がかなり落ち込んでて。」

「だ、大丈夫だよコトネ!! 俺は!!」

「成る程ね。コトネを守れなかったことで自分を責めているのね。」

「そんなことは!!」

「ああ、図星みたいね。」

 

優しい笑みをヒビキに向けるブルー。

 

「・・・・うう。」

「ヒビキ君・・・。」

 

コトネをヒビキはぎゅっと抱きしめる。

 

「・・・コトネ、これを渡しておくわ。」

 

ブルーはコトネにポケモンセンター併設のホテルのカギを渡す。

 

「ああ、お礼とかは良いわよ。お金はグリーンの財布から払っておいたし。」

「え? いつの間にお前俺の財布を?!」

「だって隙ありまくりなんだもん。」

「ブルー! てめえ!!」

「それじゃ、私達はこれで失礼するわよ。」

 

コトネは何か言い合いながらポケモンセンターを後にする二人を見送ると、ホテルの一室へ泣くヒビキを連れながら入っていくのであった。

 

(続く)

 



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「第二十話~二人で一つ~」

ポケモンセンターのある一室

 

「うう、ううコトネ。」

 

コガネ駅でロケット団に襲われたヒビキとコトネは緊急参戦したブルーとグリーンの二人に救われ、ポケモンセンターまで安全に移動した。そして安全なところに辿り着いて安心したのか、ヒビキが泣きだしコトネにしがみついて離れない。

 

「ごめんよ、俺がもっとしっかりしてたら。」

 

何か喋ったかと思えばヒビキはコトネに懺悔の言葉のみ口にする。

 

 

「俺があの駅員が何かおかしいと気付いていたら、俺がコガネ駅に行かなければコトネはあんなことに。」

「もう済んだことよヒビキ君!! 私はこの通り元気よ!!」

「それは結果論だよコトネ。今回は何故か事前にブルーさんが察知してたから助かったけどあのままだったらコトネは間違いなく俺のせいで死んでた。」

「でも、相手はロケット団。公安が監視してるテロ組織よ。あんなのに屈しろというほうがどうかしてるわよ! 例え私がどうなったって!」

「でも、それでもしコトネがいなくなっちゃたら俺は・・・。」

 

ヒビキがコトネを異常に大切にするには訳がある。それはトレーナーズスクール入学前まで遡る。

 

「それじゃ、頑張るんだぞ我が息子よ!」

「うん! お父さんもお仕事頑張ってね!!」

 

ヒビキには海外の商社で働く父親がいる。父親は海外を転々としながら仕事をしているため中々ワカバには帰ってくることが出来ず、ヒビキへの電話も一か月に一回出来るかどうかというくらいの忙しさだった。しかし、そんな父親の働きのお陰でヒビキは金銭に関しては苦労することは一切なかった。

 

「ありがとう! その言葉のお陰でお父さんも頑張れそうだ! ありがとうな!! 今からお父さんはイッシュの地下鉄の改革提案をしてくるぞ!!」

「よくわからないけど頑張ってお父さん!!」

 

一見平和そうに見えるヒビキだが、一度外に出れば世界が変わってしまう。

 

「おい、お前んち金持ちなんだろ?」

「だったらさ、少しは俺たちに分けてくれたって良いよな?」

「そうそう! 富の配分って奴だぜ!!」

「賛成!」

 

ヒビキと同い年の子たちの中で性格の悪い奴らはかなりのお金を持っているヒビキ一家を正直疎んでいた。俺達より沢山の金を持っている気に食わねえ!! 金を巻き上げてやれ!! という考えからだ。しかもそいつらの派閥が幅を利かせている上に他者を暴力で押さえつけるという徹底ぶりである。

 

「・・・・・・・・・。」

 

その結果、いつしかヒビキは家に引き籠るようになってしまった。外に出ても庭でオオタチと遊ぶくらいのもので絶対に自宅から出ない、それを徹底していた。でも、

 

「貴方が噂のヒビキ君ね!」

「き、君は?」

「私はコトネ! 今日コガネシティの南の方からお父さんと引っ越してきたの!!」

 

彼女との出会いがヒビキの全てを変えた。凍てついた彼の心に暖かい太陽の光が差し込むかのようだった。

 

「俺は・・・ヒビキ。コイツは家族のオオタチ。」

 

どういうことか、彼女とは良い関係が結べそうだ。そうヒビキは感じていた。それから二人は何時も一緒に遊ぶようになった。周囲から軽蔑の目で見られることが非常に多くあった。昔は誰も味方がいなかったために心が凍ってしまった。でも今は絶対に裏切ることのない味方がいる。そして何時しかヒビキはコトネのことを全力で守るようになっていた。そしてその関係が今まで続いてきていたのである。

 

 

「俺は弱い奴だ。コトネがいなきゃ何も出来ない、そんな奴だ。」

「ヒビキ君。」

 

コトネは優しくヒビキを抱き締める。何も言葉を掛けずにぎゅっと彼の全てを受け止める。

 

「大丈夫、私は何時でもヒビキ君の傍にいるわ。例え引き離されたとしても絶対に貴方の隣に立ってやるわ。約束するから。だから、今は前を向いて。」

 

自然とコトネの目にも涙が溢れていた。

 

「・・・・へ?」

「ありがとうコトネ。お陰でふんぎりが付いたよ。」

 

気付けばヒビキがコトネの涙をハンカチで拭いていた。

 

「俺たちは二人で一つ。昔君が言っていた言葉を思い出したら涙が引いたんだ。」

「そうなんだ、良かったわ。」

「どんな困難が待ち構えていようとも、二人で力を合わせて乗り越える。そういう意味で言ったんだよね。」

「そうよ。周囲から完全に浮いていた私達が私達らしさを出すための魔法の言葉よ。」

「それじゃ、行こうか。」

 

ヒビキが立ち上がる。

 

「コガネジムに挑戦しよう。ジムリーダーアカネのミルタンクは強力だけど。」

 

ここでコトネも立ち上がる。

 

「私達が力を合わせれば。」

「「敵じゃない!!」」

 

(続く)

 



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「第二十一話~エージェントセン~」

コガネジム

 

「ここがコガネシティジムか。」

 

ポケモンセンターを出発したヒビキとコトネはコガネジムに辿り着いていた。

 

「でも、ドアに鍵がかかってるね。」

「あ、張り紙があるよコトネ!」

 

張り紙にはこう書かれていた。

 

~今ラジオ塔に出かけているので不在やで~

 

「そう言えば、ラジオ塔に行ってないね。」

「せっかくだし、行ってみようか! アカネさんが帰ってくるまでの時間つぶしとして。」

 

 

ラジオ塔

 

「・・・・・アンタか? うちを呼びだしたのは。」

 

コガネシティジムリーダーのアカネはある人物から呼び出され、この市のシンボルであるラジオ塔に来ていた。

 

「久しぶりねアカネ。いや、コードネームセン。」

「・・・ああ、やっぱりアンタか。何となくそんな気がしてたよ。」

 

アカネの目の前には公安部所属の捜査官ブルーが立っていた。今回は身分を隠すために何時もの恰好ではなく、紺のスーツにサングラスといった格好だった。

 

「わざわざそんな恰好せんでもええのに。話は聞いとるよ。昨日のリニアの停電がロケット団によるものであることとヒビキとコトネだったけ? あの二人の拉致監禁やろ。」

「ご名答、流石はセン。勘のよろしい方で。」

「何か年下に言われるとむかつくなあ。」

「当組織に年は関係ありません。」

「そうやけど、で何をして欲しいんや?」

「そうですね・・・・。」

 

 

「ここがラジオ塔かあ。」

 

ラジオ塔に辿り着いた二人は下からてっぺんを眺めていた。

 

「高いなあ。あそこから下を見下ろしたら綺麗だろうなあ。」

「!」

 

コトネはラジオ塔の入り口から見覚えのある人物が出てくるのを見た。顔はマスクをしていた為直接見えなかったが、茶髪のロングの髪型からある人物ではないかと予想していた。

 

「どうしたのコトネ?」

「・・・いや、何でもないわ。ラジオ塔にはいりましょ。」

 

(今さっき出てきたスーツにグラサンの女性。もしかして、ブルーさん? だとしたら何のために?)

 

 

「はあ~、案の定協力要請。まあ、断る訳にはいかんちゅーのは分かってるんやけど。」

 

ブルーがアカネに会っていたのはロケット団の捜査への協力要請だった。アカネは国際警察の捜査官としての一面も持つジムリーダーであり、ジョウト地方のジムリーダー達の動向を監視する役割を持っていた。そこにブルーは目を付けた。応援の捜査員の要請が通りそうにない為、近くにいる捜査員を使う路線を選択。所属が違う為難色は示されたものの、アカネを説き伏せ協力を取り付けさせることに成功。

 

「おまけにヒビキとコトネ、あの二人を守れ、か。」

 

アカネはブルーの意図を図りかねていたが、了承してしまった以上は仕方ないとして二人が来るのを待つことにした。

 

 

「あ! コトネ、アカネさんだよ!!」

「本当だ! あの張り紙のとおりね!!」

 

二人の声に気付いたアカネがしゃべりだす。

 

「はーい! うちがアカネちゃーん!!今な、ラジオカードが貰えるクイズをやっとるゆーてな、うちも貰いに来たんやけど、このクイズめっちゃ難しいやん! マジやで!!」

「ラジオカードだってコトネ!!」

「じゃあ、私達も挑戦しよう!!」

「そんじゃ、終わったらジムにきーや。待ってるで。」

 

そう言ってアカネは立ち去った。

 

「それじゃ、行くよコトネ!!」

 

三分後

 

「よっしゃあああ!!」

「ラジオカード獲得!!」

 

クイズに正解し、ラジオカード取得の権利を手に入れたヒビキとコトネ。

 

「それでは、お持ちのポケギアを更新します。更新には少々お時間がかかりますので、ご了承願います。」

「そんじゃ、その間にジムに挑戦しよっかヒビキ君!」

「勿論だぜコトネ!!」

 

二人はラジオ塔を飛び出してコガネジムを目指す。

 

 

???

 

「それで、計画は失敗したと?」

「はっ! まさかあそこでブルーとグリーンが介入してくるとは想定外でした。」

「ブルーにグリーンですか。ブルーは三年前に我が組織を壊滅状態に追い込み、グリーンはサカキ様のジムを不当に占領する不届き者。どちらも許しがたい存在です。」

「ですが、まずはヒビキとコトネからではないでしょうか? 彼らはまだコガネにいる様子。二人を始末する機会はあります。」

「そのことなら既に手配済みだぜ。」

「本当ですか?」

「コガネ警察も根回し済みだ。作戦事態の実行は可能だ。」

「ではそのように行きましょう。そう言えば、まいこはんの拉致は順調なのですか? 我々の華々しい復活には虹色の鳥と渦を巻き起こす海獣が必要なのですよ。」

「それに関しては妨害を受けていませんわ。あのブルーもそこまでは手が届かないようですわ。」

「そうですか・・・では実行しなさい。」

「「「はっ!!」」」

 

(続く)

 

 



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「第二十二話~挑戦! ジムリーダーアカネ!~」

コガネジム

 

「カメール、みずのはどう!!」

「リザード、ほのおのうず!!」

 

おや? カメール、リザードの様子が?

 

「遂に最終進化だ!!」

「やったあ!」

 

おめでとう!! カメールはカメックス、リザードはリザードンに進化した!!

 

「よし、あのトレーナーを倒せば次はジムリーダーのアカネだ!」

 

コガネジムに挑戦した二人は破竹の勢いで奥へ奥へと進撃していく。

 

「次はマグマラシ、君の出番だよ!!」」

「お願いベイリーフ、貴方の力に期待してるわよ!!」

 

 

「中々強いやないかあの二人。」

 

ジムの一番奥で二人のバトルをモニターで視聴するアカネ。

 

「そう言えば、三年前もあんな感じに高い能力を持った少年少女がカントーを駆け巡ってたような・・・って、ブルーはその一人やないかい!!」

 

 

「か、勝ったぞ!」

「これで後はジムリーダーだけね!!」

 

おや? マグマラシ、ベイリーフの様子が?

 

「「おお!!」」

 

おめでとう!! マグマラシはバクフーン、ベイリーフはメガニウムに進化した!!

 

「流石だよ!!」

 

バクフーンに抱き着くヒビキ。

 

「きっと、目の前でカメールが進化したから自分も負けじとって感じね。」

「それじゃ、回復させてと。」

 

薬やきのみを手持ちのポケモン達に与えるヒビキとコトネ。次の相手はジムリーダーのアカネ。

 

「次は決して簡単には倒せない相手だよコトネ。」

「何人もの新米トレーナーの心をへし折ったというアカネのミルタンク。あれには要注意ね。」

 

奥へ進む二人。その先には待ってましたと言わんばかりの表情を浮かべるアカネの姿があった。

 

「はーい!

うちが アカネちゃーん!! そういや、アンタらさっきラジオ塔におったカップルやろ? やっぱり来てくれたんやな。そうなるんじゃないかって思ってたわ。」

 

カップルと言われ顔を赤らめるヒビキとコトネ。それを見てアカネは悪い笑みを浮かべる。

 

「だったらさ、そこのコトネはんだっけ? アンタの彼氏の雄姿を見て見たくない?」

「え?」

「ほなやっぱり見たいか。そらそうよな。まさか彼女と一緒じゃないと勝てない情けない男やないないやろ?」

「・・・・・・。」

 

情けない。そう言われヒビキの心に火が付く。

 

「分かりました。」

「お?」

「ヒビキ君?」

「アカネさん、俺一人で貴女を倒します。そして、もし俺が勝ったら。」

「分かってるって。彼女にもわたしゃええんやろ? うちもそのつもりやで~。それと、言うとくけどうち、めっちゃ 強いでー!」

 

互いにモンスターボールを構える。

 

「行くよバクフーン!」

「いっけえオオタチ!!」

「バクフーン、かえんぐるまだ!!」

 

「頑張ってヒビキ君。」

 

観客席で祈るように戦況を見つめるコトネ。今彼女に出来ることは彼の勝利を祈ること、それだけだった。

 

「オオタチ、あなをほる!!」

 

バクフーンの攻撃を穴を掘って回避するオオタチ。

 

「それは予想済みだ。バクフーン!!」

 

オオタチの掘った穴に照準を合わせるバクフーン。

 

「えんまくだ!!」

 

煙が穴に向かって吸い込まれていく。出ていく量より多くの煙を穴に流し込む。

 

「そのまま発射し続けるんだ。」

 

ひたすら穴にえんまくを放つバクフーン。

 

「・・・そうか! ヒビキ君の狙いは!!」

 

「あかん! 脱出やオオタチ!!」

 

煙から逃れるために這う這うの体で脱出するオオタチ。

 

「逃がしはしない。バクフーン、かえんぐるまだ!!」

「オオタチー!!」

 

バクフーンのかえんぐるまが直撃。オオタチを撃破する。

 

「オオタチ、戦闘不能!! バクフーンの勝ち!!」

「なら次はこの子や! うちの切り札を見したるわ!!」

 

(来るか)

(来るのね)

 

「ミルタンク、あんたの出番やで~!!」

 

(あれが数多くの新米トレーナーを挫折させたミルタンク。だけど、俺は絶対に負けるわけにはいかない。俺を信じて付いてきてくれるポケモン、そして)

 

観客席を一瞬見るヒビキ。

 

(共に歩んでくれるコトネの為に! この戦い、絶対に負けるわけにはいかない!!)

 

「・・・戻れバクフーン。」

 

バクフーンをボールに戻すヒビキ。

 

「どうやら、コイツが戦いたがってるみたいなんだ。すまないけど、譲ってやってくれないかな?」

 

モンスターボール越しに話しかけるヒビキ。

 

「・・・そうか、ありがとう。君の優しさに感謝だよ。」

 

別のモンスターボールを手に取るヒビキ。そのボールは黄色と黒のボールだった。

 

(あれは・・・もしかして!!)

 

「行くよ・・・ペルシアン!!」

 

(続く)

 



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「第二十三話~こころを合わせて~」

「成る程ね~、ノーマル対決ってわけか。おもろいやないか!! やったるで~!! ミルたん、ころがるや!!」

「ペルシアン!」

 

ヒビキは特にどういう技を出せという指示は出さなかった。

 

「ニャウニャウ!!」

 

ペルシアンはまもるを使い、防御。ミルタンクはシールドに弾かれ態勢を崩す。

 

「流石だペルシアン。そこで・・・こうだ。」

 

ヒビキは手を横に払う。

 

「ニャウニャウ!!」

 

ペルシアンはミルタンクの急所に鋭い爪で攻撃をかます。

 

「これは・・・きりさく!? あかん。ミルたん、ミルクのみやで!!」

 

重い一撃を食らったミルタンクを回復させようとアカネは試みる。

 

「ミル!!」

「な、何してるんやミルたん!! ころがるやないで!!」

「気付かないんですか?」

 

中指をアカネに向けるヒビキ。

 

(これは・・・挑発!!)

 

観客席で試合を見つめていたコトネ。ヒビキの手の動きで技を見抜く。

 

「アカネさんのミルタンクが強敵と言われる理由は強烈な一撃だけじゃなくて、回復手段があるから。それをヒビキ君は潰しにかかってる。そして現にアカネさんのミルタンクはそれにはまってしまった。」

 

試合はヒビキの思うがままに進んでいた。流石はワカバ一の戦いのセンスの持ち主。

 

「それだけじゃない。今ヒビキ君は手のしぐさだけで指示を出してる。ペルシアンに一度も〇〇だ。なんて言ってない。」

 

「さあ、終わりにするよペルシアン!!」

「ニャウニャウ!!」

 

回復手段を失っていたミルタンクはペルシアンの猛攻を耐えきることが出来ず、戦闘不能となった。

 

「ああ、ミルたん!!」

「しゃああ!!」

 

勝利の雄たけびをあげるヒビキ。

 

「ニャウニャウ!!」

 

ヒビキの元に駆け寄るペルシアン。ヒビキのふくらはぎに頬をこすり付ける。

 

「ははは、くすぐったいよペルシアン。よくやってくれたね!! 凄いよ!!」

「ニャウニャウ!!」

「それじゃ、ボールに戻って休んでてね。」

 

ペルシアンをボールに戻すヒビキ。

 

「コトネ、勝ったよ!!」

 

コトネの元に駆け寄るヒビキ。

 

「凄かったよヒビキ君!」

 

互いにハグする二人。

 

「本当に凄いよ!! まるでポケモンと心を一つになったみたいで!!」

「そう? 無意識で良くわかんなかったかな。」

「わーん!! わーん!!」

「「!?」」

 

突然の泣き声に驚く二人。

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」」

 

暫く二人はアカネを見つめていたが、どうも泣き止む様子はなかった。

 

「・・・ちょっと外に行ってようか。」

「そうね。暫く一人にしててあげましょ。」

「それじゃ、一時間後にまた来てみようか。どこかでご飯食べない?」

「それは良いわね! 私コガネの串カツ食べてみたい!!」

「俺も食ってみたいな! 行こうか!!」

 

アカネを置いて二人はそのままジムから出ていく。

 

「ぐっすん、ひっぐ・・・ひどいわー!! 負けたのもそうだけど、あたいが泣いてるのに置いていくのもひどいわー!! もうジムバッジなんかやらんわ!!」

「それが出来るとでも思った?」

「ブルー、何でそこにあんたがいるんや!?」

「で、ジムバッジやりなさいよ、そして私が指示したこと守りなさいよ? もし逆らったら・・・分かるわね?」

「うう・・・。」

 

※一時間後戻って来たヒビキとコトネにジムバッジは渡しました。

 

一方コガネの串カツ屋

 

「うめええええ!!」

「おいしいおいしい!!」

 

※カオスなコガネジムと打って変わって串カツを堪能してました。

 

(続く)

 



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「第二十四話~空振り~」

ポケモンセンター

 

「さて、アカネさんから無事バッジを貰えて休憩したらしぜんこうえんの虫取り大会に行こうって思ってたんだけど。」

 

ザーザーザー

 

「雨・・・なのよね。」

「こんな天気で虫取り大会は実施されるのかな?」

「正直難しいんじゃない?」

 

ゴロゴロ、ピシャーン!!

 

「おいおい、雷まで鳴ってるよ。これは中止でしょ。」

「これで中止されなかったら大会担当者の頭の中お花畑かブラックのどっちかでしょ。」

「ポケギアで調べてみようか。」

 

ポケギアの検索機能で今日の虫取り大会の予定を調べるヒビキ。

 

「しかし本当最新のポケギアって便利だよね。昔は折り畳みタイプだったのに今はこんな薄い板だぜ。」

「その上出来ることが以前より増えてるのは大きいわよね。」

「ただその代わり稼いだ賞金の一部が使用料で溶けちゃうんだよね。」

「それは辛いわよね正直。」

「今日は・・・・悪天候の為中止とします。また、振替を明日に行う予定です。だってコトネ。」

「それじゃ今日はコガネの行ってないところを回ることにしよっか。」

「賛成! どこか行きたいところがあるのかい?」

「それはね・・・。」

 

 

しぜんこうえん

 

「・・・・はっくしょん!!」

 

雨が降りしきるしぜんこうえん。何時もなら虫取り少年達で溢れているこの公園だが、急な雨のせいか全く人がいない閑散とした姿を見せていた。しかし、そこに怪しげな黒い服に身を包んだ男がくしゃみをしながら立っていた。

 

「さて、上からの命令で爆弾を仕掛けたヘラクロスをこの公園に放ったのは良いが・・・。」

 

天を仰ぐ男。

 

「今日虫取り大会中止だなんて聞いてねえぞおおおおお!!」

「アンタがロケット団だね?」

「うひゃあああ!!」

「っていうか、少しは自分がロケット団っちゅうことを隠す努力しーや。ほな、行くで。あとそこのヘラクロスに仕掛けてた爆弾はウチのオオタチが解除したから。」

「く、くっそおおおお!!」

 

 

???

 

「まさか今日雨が降るとは・・・。これでは奴らを抹殺出来ないではないか!」

「不覚だったぜ。まさか予報通り雨が降りやがるなんてな。」

「おのれ~、ヒビキにコトネと言ったか。実に運のいい奴らだ。だが、あの計画さえ上手くいけば・・・。」

 

 

コガネデパート

 

「いやあ、今日は色々安くなってたね~。」

「これで暫くはボールとか、薬には困らなそうだわね。」

「あとはどこかで一稼ぎ出来たら良いんだけど。」

「ジムリーダーと再戦するって出来るのかな? 私も出来たらアカネさんと戦ってみたいし。」

「それは良いね!!」

 

※この後コトネがしぜんこうえんから帰って来たアカネをフルボッコにしました。

 

「ぐっすん、ひっぐ・・・ひどいわー!! ゴースでボコボコにしてくるなんてひどいわー!! しかもミルたん倒して進化してるし!!」

「レベル上げとコトネの手持ちの厚みを増すために一時的に貸しただけ。」

「そうそう。一時的に借りただけ。」

「ぐっすん、ひっぐ・・・ひどいわー!!」

「何か酷かったかな?」

「さあ?」

 

(続く)

 

 



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「第二十五話~思わぬ大物~」

35番道路

 

「う~ん、昨日とは打って変わって良い天気になったね~。」

「天気が良いと気持ちも良くなるわよね!」

「トレーナーとのバトルも連戦連勝。賞金もしっかり稼げたし、このまましぜんこうえんを目指すよコトネ!」

 

ヒビキはコトネの手を引いて先へ進む。傍からは仲良しカップルが歩いているようにしか見えないだろうが、二人には関係なかった。

 

 

しぜんこうえん南口ゲート

 

「ヒビキ君は誰で行くの?」

「俺はゴーストで行くよ。さいみんじゅつが使えるし、ノーマルや虫タイプに有利に当たれるからさ。」

「成る程ね~。」

「それじゃ、俺はこのゴーストで行きます。」

 

ヒビキは係員に他の手持ちを預ける。

 

「コトネは誰で行くの?」

「私はパラセクトかな。ウバメの森で捕まえたパラスを育てて捕獲要員にしたの!」

「流石は捕獲のプロだね!」

「プロって、そこまでじゃないよ~。」

 

コトネはパラセクト以外の手持ちを預ける。

 

「それじゃ、この大会では互いにベストを尽くそうな!」

 

今までは二人で協力して様々な試練を乗り越えてきた二人。しかし、この虫取り大会ではそうはいかない。参加者全員がライバルとなる。無論、ヒビキとコトネもこの場ではライバル同士となるのだ。

 

「言われなくも分かってるわよヒビキ君。」

 

そして程なくして虫取り大会が開始された。

 

「行くぜゴースト!! まずは誰でもいいから一匹捕まえるぞ!」

「パラセクト、あのスピアーを狙うわよ!!」

 

開始から10分(ヒビキ視点)

 

「お! あれはストライク!! 捕獲できれば高得点間違いなしだぜ!! ゴースト!!」

 

ヒビキはこの大会でカイロスと共に高得点が期待できるストライクに狙いを定めた。

 

(ただボールはこの一個しか残されていない。確実に捕獲しないとな。)

 

ヒビキの方針はどんどん捕まえてよりレベルが高いポケモン、より得点の高いポケモン、そして如何に体力を残して捕獲できるかだった。ゴーストにさいみんじゅつを使わせ、極力攻撃しないで捕獲していたのだが、全てが上手くいくわけではなく、ボールを何個も失っていたのだ。

 

(今捕獲しているのは体力を黄色ゾーンで捕獲したバタフリー。だが、ここで満足しちゃいけねえ!!)

 

「ゴースト、さいみんじゅつだ!!」

 

ストライクに向けてゴーストのさいみんじゅつが飛んでいく。

 

「・・・・ZZZZ」

「よし! 眠った! あとは上手く当てるのみ!!」

 

ヒビキは支給された最後のコンペボールをストライクに目がけて投げる。

 

「・・・・・・・。」

 

揺れるボールを見つめるヒビキ。

 

「・・・・よっしゃあ!」

 

ストライクの捕獲に成功し、喜びを露にするヒビキ。

 

「あとは最終結果がどうなるか、だ。だけど、ベストは尽くしたぜ。」

「・・・。」

「お前も頑張ってくれたなゴースト。ありがとうな。」

 

ゴーストを優しく撫でる?ヒビキ。

 

「!!」

 

ゴースとも嬉しくてヒビキに笑顔を向ける。

 

「さて、コトネはどうなったのかな?」

 

友の戦況が気になるヒビキであったが、邪魔してはいけないと思い審査員のいる方向へ向かって行った。

 

(コトネ視点)

 

「まだね、このカイロスじゃ勝てないわ。」

 

カイロスをみねうちとキノコのほうしで眠らせ捕獲したコトネだったが、満足してはいなかった。コトネの方針はキャタピーやビードルといった得点の低いポケモンは無視し(虫だけに)、カイロスとストライクにのみ狙いを定めていた。仮に出現しなければ捕獲0で終わってしまう危険な試みであったが、結果的にはカイロス2匹、ストライク1匹を捕獲している。

 

「仮に色違いとかだったら考えるけど。」

 

ガサガサ!!

 

「!」

 

新たな虫ポケモンの気配を察知するコトネ。

 

(・・・でも何かおかしいわ。この感じ、ストライクでもカイロスでもない。勿論キャタピーやビードルでもないわ。だけど、強い虫ポケモンだってことは分かるわ。)

 

「パラセクト、そこにキノコのほうしよ!!」

 

気配のする方角にほうしをばら撒くコトネのパラセクト。

 

「・・・・え?」

 

コトネはわが目を疑った。彼女の目の前にいたのは本来虫取り大会では出るはずのないポケモンだったからだ。

 

「・・・あれは・・・ヘラクロス!? こ、こんなこと言ってる場合じゃないわ!! パラセクト、みねうちよ!!」

「パラ!!」

 

ぐうぐう眠っているヘラクロスにみねうちが炸裂。

 

「ここでコンペボール!!」

 

勢いのついたカーブボールをヘラクロスにぶち当てるコトネ。結果は見事ゲット。

 

「・・・野生のポケモンではあったわね。さて、審査員にはどう説明したらいいのやら。」

 

コトネは複雑な気持ちでパラセクトと共に審査員の元へ向かった。

 

 

「ええ~、それでは今回の虫取り大会の結果をお知らせ致します!!」

 

審査員が参加者に結果を伝える。

 

「まずは三位ユタカさん、捕獲したのはスピアーです! 得点は334点!!」

「なんでや!! 阪〇関係ないやろ!!」

「続いて二位はヒビキさん、捕獲したのはストライクです! 得点は383点!」

(最高点で二位・・・という事は一位の人はどんなポケモンを捕まえたんだろう? そう言えば、コトネの捕まえたポケモンで審査員が何か協議してたような。)

「最後に一位の発表です。実はこの結果にするかどうか、我々審査員は最後まで悩んでおりました。しかし、不正は確認されず、むしろ潔白が証明出来たため結果を承認することとしました。」

「? コトネ、君何かしたの?」

「私はただ目の前のポケモンを捕まえただけよ!」

「一位はコトネさん、捕獲したのはヘラクロスです! 得点は384点!」

「「「ええええええええ!?」」」

「マジか!? ヘラクロスいたの!? 気づかなかったわ!!」

「不正じゃないのか?」

「我々もそう思ったのですが、どこを調べても不正の証拠はなく、どうやら大会前に紛れ込んでしまった為出現してしまったと考えられます。ともあれ、一位のコトネさんには優勝京浜としてたいようのいし、二位のヒビキさんにはかわらずのいし、三位のユタカさんにはオボンのみを進呈致します! また参加者全員にはきれいなぬけがらを差し上げまして、今回の大会を示させて頂きます。皆さんお疲れさまでした!」

 

大会が終わり、皆手持ちを返却してもらいそれぞれ帰宅の途につく。一方ヒビキとコトネはしぜんこうえんのベンチで仲良く談笑していた。

 

「いやあ、凄いなコトネ! ヘラクロスを捕まえるなんてさ!!」

「ヒビキ君だって審査上の最高得点を叩き出したんでしょ? そっちの方が凄いよ!」

「「あはははは。」」

 

 

コガネジム

 

「あ、そう言えば爆弾を外したヘラクロスそのまましぜんこうえんに置いてきてたわ。」

 

(続く)

 

 

 



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「第二十六話~ブルーの策略~」

セキエイ高原

 

 

 

「・・・・あれから三年。私とレッドがヤマブキでロケット団を壊滅させてから丁度三年目。」

 

 

 

自身のデスクでブルーはコーヒーを嗜んでいた。

 

 

 

「しかし、それを認めない輩が乱を起こそうとしている。」

 

 

 

ブルーは紙の資料に目をやる。

 

 

 

「チョウジタウンのギャラドス大量発生、コガネ周辺での不審者目撃証言の増加、更には鉄道会社施設やサーバーへの攻撃被害。これら全てに奴らが一枚噛んでる。」

 

「ぷりり。」

 

「そしてこのポケモンリーグも。」

 

 

 

別の資料にはロケット団と内通している役員や職員の個人情報が記載されていた。そこには、現在の理事長の名前も記載されていた。

 

 

 

「・・・・・来たわね。」

 

 

 

大きな足音を立てながら複数の男たちが迫る。

 

「ここで間違いないか?!」 

「ああ! ここに我々ロケット団の復活を阻止せんとしている野郎がいる!!」

 

 

「いい加減私が敵だって気付いたようね。まあ、今更気づいたって遅いんだけどね。ミュウ、お願いね。」

 

「みゅう!!」

 

 

 

ブルーはミュウの能力でセキエイ高原から離脱した。そして程なくしてブルーを拘束せんとロケット団や内通している警官が駆け付けたものの、ものけの殻だったという。

 

「」

 

 

「さて、暫くはどこかで身を隠さなきゃね。シルバーに聞いてみようかしら? それともグリーンのジムに匿ってもらおうかしら?」

 

 

 

追われている身であるにも関わらず、どこか余裕が感じられるブルー。

 

 

 

「アンタも自分のやったことを後悔してるんでしょ? ねえ、MrS?」

 

 

 

 

 

36番道路

 

 

 

「さ~て、次はエンジュだねコトネ!!」

 

「そうねヒビキ君!」

 

「あ、その前に一つお願いがあるんだコトネ。」

 

「? 一体どうしたのヒビキ君?」

 

「俺のゴーストをだね。」

 

「通信交換してってことね!!」

 

「流石コトネ! 物分かりが良いぜ!!」

 

「当たり前でしょ!! 伊達にヒビキ君と一緒に旅してないから!! それじゃ行くよ!」

 

 

 

図鑑同士を向き合わせてゴーストを通信交換するヒビキとコトネ。

 

 

 

おや? ゴーストの様子が?

 

 

 

「よし!」

 

「ゲンガーに進化ね!!」

 

 

 

おめでとう!! ゴーストはゲンガーに進化した!!

 

 

 

「やったねヒビキ君!!」

 

 

 

コトネは両手を上げて万歳する。

 

 

 

ゴツン!

 

 

 

「あ、図鑑を木に当てちゃった!」

 

「いや、木じゃないよコトネ。」

 

「え?」

 

 

 

後ろを振り返ると周辺の木とは見た目が違う木が立っていた。

 

 

 

「こいつは・・・ウソッキーだ!」

 

 

 

ヒビキが図鑑を向けると図鑑はウソッキーと表示する。

 

 

 

「ウソッキー、捕まえてないポケモンね! 捕獲するわ!!」

 

 

 

(続く)

 

 



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「第二十七話~捕獲の天才~」

36番道路

 

「ウソッキーはいわタイプのポケモン。正確な特性は分からないけど、みずタイプかくさタイプの技で!!」

 

コトネはパラセクトを繰り出す。

 

「まずはターゲットを眠らせるよ!パラセクト、キノコのほうしよ!!」

 

パラセクトは背中の茸から胞子を吹き出す。

 

「う、ウソ~。」

 

突然の胞子にウソッキーは回避することが出来ずにもろに食らってしまう。

 

「う、う、ウソ~。ZZZZZZZZZZZ」

 

やがて胞子による眠気に耐え切れずウソッキーはその場で眠ってしまう。

 

「よし、ここで貴方の出番よ! メガニウム!!」

 

続いて繰り出したのはくさタイプのメガニウム。

 

「はっぱカッターよ!!」

「!!」

 

(みねうちじゃなくて効果抜群のはっぱカッターだと? もしかしたらウソッキーを倒して逃げ出しちゃうかもしれないのに!?)

 

ヒビキの疑問をよそにコトネのメガニウムははっぱカッターを発射し、攻撃はウソッキーへと向かって飛んでいく。

 

「!?」

「やっぱり!! 私の狙い通りね!!」

「ま、まさか。あのウソッキーの特性は。」

 

あきらかに一撃で倒せるダメージを与えたはずだったが、ウソッキーはふらふらになりながらそこに立っていた。

 

「あのウソッキーの特性は・・・がんじょうか!!」

「そして!!」

 

コトネはカバンからとあるボールを取り出す。」

 

「ここでラブラブボールよ!!」

「ウソ~!!」

 

怒ったウソッキーはその場にあった石をコトネに向けて蹴り飛ばす。

 

「コトネ!! 危ない!!」

 

そう言うとヒビキはコトネの前に立ち、蹴り飛ばされた石を受ける。

 

「ぐあ!!」

「ひ、ヒビキ君?!」

「俺には構わずコトネはボールを!!」

 

頭に石を受け、額には血が流れていたが、ヒビキはコトネにボールを投げる様に指示。

 

「わ、分かったわ!!」

 

コトネはボールをウソッキーに目掛けて投げつける。ボールはウソッキーに狂いなく中心に見事命中。

 

「・・・・あのウソッキーは雌だったのか。」

 

コトネが使用したメガニウムの性別は雄。そしてラブラブボールは異性のポケモンの時に効果を発揮するボール。

 

(流石捕獲の天才だ。一瞬にして野生のポケモンの特性を把握し、一番有効な技とポケモンを展開。そして一番適切なボールを一ミリの狂いなく投入。俺とは違う。何もかも。でも、闘いに関しては油断があったねコトネ。はっぱカッターで一気に体力を削ったのは良かったけど、それでウソッキーを起こして怒らせちゃったし)

 

「ひ、ヒビキ君! 頭の傷は大丈夫?!」

「ははは、これくらい大したことないよ。それより、捕まえたウソッキー、送らなくて良いの?」

「そ、そうね! 捕獲したウソッキーをウツギ博士の元に送らないとね!」

 

捕獲したウソッキーを図鑑を介して研究所にコトネは転送する。その後包帯と消毒液でヒビキの傷をコトネは治療する。

 

「さて、道は開けたよヒビキ君!」

 

満面の笑みでヒビキに話しかけるコトネ。

 

「そうだね。それじゃ行くよ、ジョウトの二大古都エンジュへ!!」

 

(続く)

 



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「第二十八話~にじいろのはね~」

 

 

エンジュシティ

 

 

 

「ここがキキョウと並ぶ古都エンジュか。」

 

 

 

景観に配慮し、高い構造物の少ないエンジュシティの街並みに二人は飲まれていた。

 

 

 

「コガネは大都会で、キキョウとこのエンジュは古都。実にいい地方ね、ジョウトは。」

 

「新たな文化と古き文化が共存するのがジョウトらしくて良いよね。」

 

「それよね。だからジョウトが好きなのよね。」

 

「それじゃ、まずはポケモンセンターに行こうか。」

 

「賛成賛成!!」

 

 

 

 

 

やけたとう

 

 

 

「ここがエンテイ、ライコウ、スイクンのいるやけたとうか。」

 

 

 

シルバーは大きく空いた穴から下をのぞく。

 

 

 

「あれが・・・そのポケモンのようだな。」

 

「おお!! あれがスイクンか!!」

 

 

 

シルバーの横から突然謎の青年が現れる。

 

 

 

「あははは。本当にミナキ君はスイクンが好きなんだね。」

 

 

 

続いて現れたのはエンジュのジムリーダーのマツバだ。

 

 

 

「さて、行くぞおお!!」

 

 

 

突然ミナキが飛び降りる。

 

 

 

「!?」

 

 

 

シルバーは目の前で起きていることに理解が追いつかなかった。

 

 

 

「スイク~ン!!」

 

「あはははは。」

 

「・・・・・理解できねえ。」

 

 

 

シルバーは気まずくなり、やけたとうから去った。

 

 

 

「・・・・何なんだあいつらは。」

 

 

 

悪態を吐きながらエンジュの街を歩くシルバー。

 

 

 

「・・・さて、どうしたものか。」

 

 

 

 

 

ポケモンセンター

 

 

 

「さて、回復も出来たし、エンジュの街並みを歩こうか!」

 

 

 

ポケモンセンターを出るヒビキとコトネ。そこにたまたま歩いていたシルバーと遭遇する。

 

 

 

「・・・・シルバー。」

 

「・・・何だ? 二人でまだ一緒にいるのか? そうやって弱い自分を強く見せようってか?」

 

「「!!」」

 

「いいか、チャンピオンという称号は最強のトレーナーになると誓ったオレにこそ似合うんだ。お前らはせいぜいロケット団のしたっぱにでも遊んでもらうのがお似合いさ!」

 

「でも、その二人に負け続けたのは誰かな?」

 

「確か、赤い髪の少年だったと思うけどな~。」

 

「・・・馬鹿にしやがって。あれはお前らのレベルに合わせて遊んでやっただけだ。」

 

「ふ~ん、そうなんだ~。だったらさ、私とやってくれないかな~?」

 

 

 

コトネはモンスターボールをシルバーに突きつける。

 

 

 

「お前と勝負だと? 笑わせやがって。ヒビキの袖に隠れているおまえが俺に勝てるとでも?」

 

「じゃあやってみればいいんじゃないかな?」

 

「なら、やってやろう。そして俺と戦ったことを後悔させてやる!!」

 

 

 

シルバーがモンスターボールに手をかけたときだった。虹色のポケモンがエンジュの上空で旋回したのは。

 

 

 

「・・・あれは!?」

 

「!!」

 

 

 

一度大きな声で鳴いたのちに虹色のポケモンは去っていった。

 

 

 

「・・・・これは、あのポケモンのはね?」

 

 

 

ヒビキはにじいろのはねを拾い上げる。

 

 

 

「・・・・コトネ。」

 

「どうしたのヒビキ君?」

 

「絶対に負けるなよ。きっと今のポケモンはコトネを応援しに来たんだよ。きっと。」

 

「妄想もたいがいにしておくんだな。さあ、勝負だ!!」

 

 

 

(続く)

 

 

 



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「第二十九話~信頼~」

「それじゃ行かせてもらう。ズバット!」

「私はラプラスよ!」

「ラプラスか。図体はでかいが機動性では此方が上手だ。一気に畳みかける!」

 

ソウルのズバットは敵に攻撃の照準を合わさせない為にジグザグに飛行しながらコトネのラプラスに迫る。

 

「これなら自慢の氷技は当てられないだろう! ズバット、エアカッターだ!!」

「ラプラス、こおりのつぶてよ!!」

 

攻撃の為に一瞬停止したところを狙って攻撃を仕掛けるコトネのラプラス。

 

「何!?」

 

攻撃が命中し、一撃で撃破あれるソウルのズバット。

 

「使えない奴め、次はお前だコイル!!」

 

ズバットが撃破されコイルを繰り出すソウル。

 

「コイル、でんきショックだ!!」」

「これしきの攻撃受けきって見せるわ!!」

 

コイルの電気技を受けきるラプラス。

 

「みずのはどうで返り討ちよ!!」

 

ラプラスの攻撃は狂いなく命中。コイルも一撃で撃破される。

 

「・・・・使えねえ。行けゴース。」

 

悪態を吐きながらゴースを繰り出すソウル。

 

「それじゃ、私も交代ね。戻ってラプラス!」

 

ラプラスを戻すコトネ。

 

「次は貴方の出番よ! リザードン!!」

「フン! 俺が捨てた奴の最終進化か。捨てる神あれば拾う神、基使い倒す神ありとはよく言ったもの。」

「だいもんじ!!」

 

ソウルが御託を並べている隙に攻撃するコトネのリザードン。

 

「・・・・てめえ、ふざけやがって。」

 

ゴースをボールに戻し、オーダイルを繰り出すソウル。

 

「潰せ。」

 

オーダイルはリザードンに向かって突っ込んでくる。

 

「かみくだくだ。」

 

殺気立った目で攻撃の指示を出すソウル。

 

「くっ!」

 

その殺気立った表情にひるんで攻撃の指示が遅れるコトネ。攻撃はリザードンに命中し、首筋にかみついている。

 

「どうした? やはり所詮はヒビキの袖に隠れているだけの存在だったか?」

「貴方からそう見えてるんでしょうね。でも、私は負けない!! リザードン、ソーラービーム!!」

 

太陽の光を集め始めるリザードン。

 

「フン! ならその前に倒すだけだ!!」

「!!」

「「「!?」」」

 

突然響き渡る謎のポケモンの鳴き声。

 

「あ、あの鳴き声は虹色のポケモンから。うっ、急に日差しが!」

 

突然辺りが晴天となり、手を目に当てるヒビキ。そして光を吸収したコトネのリザードンはソーラービームの発射体制が整った。

 

「ソーラービーム、発射!!」

 

ソーラービームはオーダイルに命中。オーダイルを撃破することに成功。

 

「・・・・何故だ。何故勝てないんだ。」

 

オーダイルをボールに戻しながら嘆くソウル。

 

「・・・使えない奴らだ。」

 

ソウルはそのままどこかへ向かおうとする。

 

「・・・なあソウル。」

「・・・何だ。」

「・・・ポケモンを少しは信頼しろ。それだけだ。」

「・・・・・・。」

 

ヒビキの発言に耳を貸さずにその場をソウルは立ち去った。

 

「・・・・・・・・。」

「ヒビキ君。」

「無理してるな、あいつは。さて、コトネのポケモンを回復させようか。」

 

ヒビキとコトネはポケモンセンターへ引き返した。

 

 

やけたとう

 

「何が信頼だ。ポケモンなんて所詮は・・・・・。」

(信頼しろ!)

「!!」

 

突然聞こえるヒビキの声。それは幻聴ではあったが、ソウルの心を酷く揺さぶる。

 

「・・・・・・・。」

 

(続く)

 



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「第三十話~VS! エンジュジムリーダーマツバ!!~」

エンジュジム

 

「やあ、よく来たね。ヒビキ君に、コトネちゃん。僕はマツバ。ちょっとさっきまで親友のミナキ君とやけたとうにいたんだ。」

「ミナキ?」

「もしかして、あの有名なスイクンハンターのミナキですか?」

「良く知ってるねコトネちゃん。」

「昔テレビでスイクンを追い続ける男として紹介されてたので。」

「へえ~。ミナキ君もテレビに出てたんだ。でもそんなミナキ君も今は・・・。さて、ここエンジュでは昔からポケモンを神様として祭っていた。そしてしんの実力を備えたトレーナーの前に伝説のポケモンは舞い降りる、そう伝えられている。ん?」

 

マツバはヒビキのカバンから不思議な雰囲気が気付いた。丸でそこだけ虹のように光り輝いているかのように。

 

「・・・・どうやらヒビキ君、君は僕が求めている物を持っているのかもしれないね。」

「?」

 

どういうことか分からないという表情を浮かべるヒビキ。

 

「とにかく、僕はその言い伝えを信じ、生まれたときからここで秘密の修行をしてきた。時には死にかけ、後に親友となるミナキ君にも助けられながらここまで来た。そのおかげで他の人には見えない物も見えるようになった。僕に見えるのはこの地に伝説のポケモンを呼び寄せる人物の影。僕はそれが僕自身だと信じているよ! そしてそのための修行、君達にも協力してもらおう!」

 

(最も、僕自身それが君達、特にヒビキ君。君なんじゃないかとも思い始めてるけどね。)

 

「行こう! ムウマ、ゴースト!!」

「行くぞバクフーン!」

「行くわよメガニウム!」

「二人とも思い入れの強い二匹か。良いね、タイプ相性ではなく想いを優先させたその考え。だけど、このバトルに勝つのは僕だ! ムウマ、ゴースト、シャドーボールだ!!」

「メガニウム、はっぱカッターよ!!」

 

(ゴーストにはいまひとつな草タイプの技?)

 

攻撃がぶつかり合い、メガニウムの放った葉が宙を舞う。

 

「そのままはっぱカッター!」

「撃ち返すんだ!」

 

攻撃がぶつかり合う中、ヒビキは顔を下に向けたまま動こうとはしない。

 

(・・・一体何のつもりだヒビキ!? そもそもメガニウムはゴーストやゲンガーには不利だ。ここは、相手の気持ちを読み取るしかない!)

 

千里眼を発動させるマツバ。

 

「!! 退くんだムウマ、ゴースト!!」

「逃がしはしねえぜ!! バクフーン、だいもんじだ!!」

 

ヒビキとコトネの作戦に気付いたマツバは退かせようとするも、それをヒビキのバクフーンは上回った。

 

(先ほどまでのはっぱカッターはバクフーンの炎技の威力を上げるため! そして十分に燃やす物が舞ったところでだいもんじ。)

 

「見事なものだよ。」

 

倒されたゴーストとムウマを見てそういうマツバ。

 

(まさか、やはり呼び寄せる影は・・・。)

 

「いやいや、まだまだ! 信じているのだよ! 誰よりも修行を積んだのに! なんということだ・・・。」

 

混乱するマツバ。

 

「・・・・行くんだゲンガー!!」

 

マツバは切り札ゲンガーを投入。

 

「ゲンガーが相手なら、俺もゲンガーだ!!」

 

ヒビキはバクフーンを戻し、色違いゲンガーを投入。

 

「コトネ、ここは俺に任せてくれ。」

「勿論! 私はヒビキ君を信じてるから!!」

「ありがとうコトネ。君の信頼に感謝するよ! 行くぜゲンガー!!」

 

「「シャドーボール!!」」

 

ヒビキとマツバは同時に同じ技を発射。

 

ドーン!!

 

攻撃は相殺し、砂埃が舞い、視界が遮られる。

 

「・・・・そこだよゲンガー!!」

 

マツバは持ち前の千里眼でヒビキのゲンガーを視認。再び攻撃を、

 

「!?」

 

一瞬マツバの視界を虹色のポケモンの影がよぎる。

 

「こ、これは!?」

「今だ撃てゲンガー!!」

 

一瞬の隙を見逃さずにヒビキはマツバのゲンガーを攻撃するように指示。

 

「・・・・・やっぱり、あの影は君なのかもしれない。」

 

砂埃が晴れ、そこには撃破されたマツバのゲンガーと撃破したヒビキのゲンガーの姿があった。

 

「勝負の実力ではそれほど負けていないはず、と言いたいけど。」

 

寂し気な表情を浮かべるマツバ。

 

「けれど君達、特にヒビキ君にはそれだけではない何かが。いや、コトネちゃんにも何かが見える。分かった。このバッジは君達のものだよ!」

 

ファントムバッジを手渡すマツバ。

 

「それじゃ、君達の旅が良いものとなることを願っているよ。」

 

笑顔で二人を見送るマツバ。

 

「・・・・・クソッ!!」

 

地面を叩くマツバ。

 

「どうして何だ!! 小さい時から血を吐くような修行を重ねてきたというのに!! 伝説のポケモン、ホウオウにルギアはこの僕ではなく、ヒビキ君とコトネちゃんを。そしてスイクンはミナキ君を。どうして僕は・・・僕は!!」

 

悔しがるマツバ。そこに漬け込む黒い影があるのを彼はまだ知らない。

 

(続く)

 



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「第三十一話~ミルタンクに取り憑く影~」

38番道路

 

「アサギヘ向けて駆け抜けていくよ!!」

 

元気よくコトネは晴れ渡る38番道路を駆け抜けていく。

 

「ま、待ってよコトネ~!!」

 

笑顔で彼女を追いかけるヒビキ。構わずコトネはヒビキの先を走る。

 

「あははは! このままじゃ私が先にアサギに着いちゃうよ~。」

「その前に俺が追いつくから大丈夫だよ~。」

 

無邪気に笑いながら39番道路へ向けて走るヒビキとコトネ。

 

(しかし、こうやって二人で走ってると、小さい時を思い出すわね。)

 

 

幼少期のある日のワカバタウン

 

「待ってよコトネ~。」

「どうしたのヒビキ君? このままじゃ追いつけないわよ~?」

「そ、そうだけど。うう。」

「!? ヒビキ君!?」

 

 

(あの時ヒビキ君が急に熱を出して倒れちゃってちょっと焦っちゃったのよね。)

 

「えい!!」

「きゃあ!」

 

遂にヒビキが追いついてコトネの背中にタッチする。

 

「えへへ、何か考え事してたかいコトネ?」

「ん? 何も考えてないよ~。」

「本当~?」

「本当だってば~。」

 

二人は笑顔で語り合いながら39番道路に辿り着く。

 

「リア充め・・・・・・爆発しろ」

 

ヒビキとコトネにバトルで敗れたトレーナーが彼等が立ち去った後にそう言ったとか言ってないとか。

 

 

39番道路

 

「確かこの39番道路にはミルタンクの乳から搾るモーモーミルクが絶賛って評判だってね。」

「じゃあ、休憩も兼ねて一服しましょ!!」

「賛成!!」

 

モーモー牧場

 

「「ごめんくださ~い!」」

「あ、お客さん。申し訳ないんだけど。」

「「?」」

「実はね・・・。」

 

 

「ミルタンク全員不調、ですか?」

「そうなんだよ。ここ数日間おらの牧場のミルタンクの全てがミルクを出さなくなっちまったんだ。お客さんもおらの牧場のミルクを飲みに来たんだろ?」

「そうですね。」

「本当申し訳ねえ。でも、おらもこんな事態は初めてなんだ。全てのミルタンクが不調になるなんて。」

「ジョーイさんとかに診て貰ったりはしたんですか?」

「それが予定が立て込んでるとかで明日になるまで来れないんだそうだ。もしかして何かの病気で全頭殺処分とかになっちまうのかな? そうなるとおらは破産だ。」

「・・・・・。」

 

席を立つコトネ。

 

「あ、ちょっとお客さん?」

「お宅のミルタンクを見せて貰っても良いですか?」

「ああ、ええけども・・・何か分かったんか?」

「何となくですけど、解決できるかもしれない気がするんです。」

 

 

牛舎

 

「ここにいるのがおらの牧場のミルタンク達だ。」

「・・・・・・・・・・。」

 

一頭ずつ体の細部に至るまで観察していくコトネ。

 

「・・・・これは! ヒビキ君!!」

「コトネ、何か分かったのかい!?」

「ゲンガーに攻撃を命じて!! シャドーボールを!!」

「!! そうか、そういうことか!!」

「ああ!? ちょっと!?」

 

ヒビキはゲンガーを繰り出す。

 

「ゲンガー、ミルタンクにシャドーボールだ!!」

 

すると、ミルタンクの背後から何かが飛び出す。

 

「こいつはムウマ!! そうか! ミルタンクに取り憑いて生命エネルギーを吸い取ってたのか!!」

「ここからは私の出番よ!!」

 

コトネはカバンに手を入れる。

 

「一撃で決めるわ!! 今回は・・・これよ!!」

 

コトネが選択したのはダークボール。暗いところで効果を発揮するボールだ。牛舎は外に比べ薄暗いところがあったため効果を出すことが出来たのだ。

 

「いっけええええ!!」

 

カーブボールはムウマの首飾りの一番大きい場所に命中。無事ムウマはボールに収められた。

 

「ふう、何とか捕獲出来て良かったわ。狭い空間でキノコのほうしを使う訳にはいかないから上手くいくかは運任せだったけど。」

「それじゃ、あとは。」

 

ヒビキはミルタンク達にオレンのみを与えていく。ミルタンク達はみるみる元気になり、遂にミルクを出すようになっていった。

 

 

39番道路

 

「あはは、こんなにお礼を貰っちゃったねコトネ。」

「まあ、牧場にとっては死活問題だしね。」

 

お礼という事で3ダース分のモーモーミルクを貰ったヒビキとコトネはアサギヘ向けて前進を行っていた。

 

「しかし、よくミルタンクにムウマが取り憑いてるだなんて分かったなコトネ。」

「昔似たようなことがあったからね。」

「? そんなことあったっけな?」

「覚えてないの? 小さい時にムウマに取り憑かれて熱を出してたくせに~。あの時は大変だったよ~。マリルにヒビキ君を攻撃させて追い払ったんだから~。」

 

(まあ、結果風邪をひいて結局再び熱を出しちゃったんだけどね☆)

 

(続く)

 



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「第三十二話~未来を創る仲間~」

アサギジム

 

「・・・何? 不在だと?」

「申し訳ありません! 今ジムリーダーのミカンさんはアカリちゃんの看病にかかりきりでして。」

「アカリちゃん? ・・・ああ、もうお役御免になったデンリュウのことか。」

「な!? ちょっとアンタ! その言い方はねえんじゃないのか!!」

「フン。戦えない弱いポケモンなんかほっとけばいいのさ。さて、ここまで来てバッジを手に入れられないのは癪だな。」

 

シルバーはジムの奥へと入っていく。

 

「ちょっと、君!?」

「いないなら、俺が直々にバッジを取ってやろうと思った、それだけだが? まあ、悪いのはここにいねえジムリーダー様のせいだしな。じゃあな。」

 

シルバーはスチールバッジを奪うとジムから出て行こうとする。ジムトレーナーは制止させようとするが、

 

「オーダイル、邪魔者を蹴散らせ。」

「!!」

 

シルバーは手持ちのオーダイルで強引にジムトレーナーを排除し出ていった。

 

「さて、次は海を越えてタンバか。ん?」

 

 

アサギシティ

 

「ここがジョウト一の港町か。」

 

39番道路を駆け抜けてきたヒビキとコトネはアサギシティに辿り着いていた。

 

「カントーやシンオウ、ホウエンは元より海外とも繋がる重要な港町。大小さまざまな貨物船が停泊してるわね。」

「中には白い海上保安庁の巡視船や巡視艇の姿もあるな。」

「で、あれがアサギの灯台ね。」

 

コトネが指を指した先にアサギのシンボルであるアサギの灯台の姿があった。

 

「ああ。最近まではデンリュウってポケモンが灯りを照らしてたらしいけど、今はLEDに切り替わってるらしいな。」

「じゃあ、デンリュウはどうなっちゃったのかな?」

「さあな。ん?」

 

ヒビキは此方を睨む視線を感じ、その視線の方向へ体を向ける。

 

「・・・シルバー。」

「・・・ヒビキにコトネか。相変わらず育てやに一緒に預けたら秒で卵が発見されそうな感じだな。」

「「・・・・・・・・・・・・。」」

 

シルバーを睨むヒビキとコトネ。その表情に少し内心怯むシルバー。

 

「・・・・何その気になってんだ? 第一な、オレはお前らみたいな弱い奴は相手にしない。」

「そう言って負け続けてるのは誰だよ。」

「いい加減正直になった方が良いよ。本当は強がってるだけでポケモンのことを。」

「黙れ!!」

「・・・・シルバー。」

 

ヒビキはペルシアンの入ったモンスターボールをシルバーに投げつける。

 

「何の真似だ。」

「そいつがお前のところに行きたがってる。とでも言えば良いのかな。まあ、正確に言うのなら帰るべきところに返したって感じだがな。」

「フン! しかし弱いと言えばここのジムリーダーもいないぜ。何でも弱ったポケモンの世話をしに灯台へ行ってるんだとよ。」

「良いことじゃないか。」

「貴方だってポケモンがひんしになったら回復させるじゃない。それと何か違うの?」

「・・・フン! 馬鹿馬鹿しい! 弱ったポケモンなんかほっときゃ良いのさ。戦えないポケモンに何の価値もないからな。お前らも灯台で修行してみたらどうだ? 少しは一人前のポケモントレーナーになれるかもしれないぜ。」

「ご忠告どうも。でもなシルバー、俺もお前に忠告させてもらうぜ。」

「ほう、俺に説教をしようと言うのか。面白い、聞いておいてやる。」

「ポケモンは道具じゃない。ポケモンとは共に未来を創っていく仲間と考えている。それがポケモントレーナーとしてあるべき姿だと思ってる。無論君に強要するつもりはない。でも俺はこの考えを曲げるつもりはない。それだけは君に伝えておくよ。」

「未来を創っていく? フン! 実に馬鹿馬鹿しい。こんな奴に負けてたのかと思うと吐き気がする。じゃあな。」

 

足早に立ち去るシルバー。

 

「良いのヒビキ君? ペルシアンをシルバー君の元に返しちゃって。もしかしたら逃がしちゃうかもしれないのに。」

「いや、そんなことはないだろう。今のあいつにはそんなことは出来ねえだろうよ。」

 

 

 

40番水道

 

「・・・親父が俺に最初に与えたポケモンペルシアン。だが、今は親父とは違う。親父の忘れ形見なんぞ・・・・。」

 

ボールを海に投げ捨てようとするシルバー。

 

「・・・・何をするお前ら!!」

 

シルバーを羽交い絞めにするかのようにオーダイル達シルバーの手持ちが彼を押しとどめる。

 

「ポケモンは道具じゃない、共に未来を創っていく仲間だと? ・・・それで強くなど・・・だが、ヒビキは俺より強い。」

 

シルバーはペルシアンの入ったモンスターボールをポケットにしまう。

 

「オーダイル! 海を渡るぞ!!」

 

シルバーはオーダイルにまたがり、海へ出る。

 

「なら、試してみるか。ポケモンを少しは信じてみるとするか。それで強くなれるのならな。」

 

(続く)



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「第三十三話~駆け上がれ!!~」

アサギの灯台

 

「アカリちゃん、しっかりして。御願いよ。」

 

数十年前まではデンリュウが灯台を照らしていたアサギの灯台。しかし、ポケモンの明かりに依存することは即ちポケモンの体調に左右されるということであり、安定性のなさが以前から問題視されていた。またそこでアサギ市議会は機械式の灯台へ換装する予算案を成立させ、近年ようやく工事が完了したのであった。一方で、アサギ市民から親しまれていたデンリュウによる明かりは機械が故障した時の予備兼観光用として灯台に留まることとなったのだが、

 

「・・・やっぱり、タンバのひでんのくすりがないと・・・。」

 

そのデンリュウは病に苦しんでいた。どういう訳か、全く元気がないのだ。

 

「やっぱり、機械式にしておいて正解でした。もし、アカリちゃんに依存していたらアサギは大変なことになっていたでしょうね。」

 

アサギシティジムのジムリーダーであるミカンは以前から灯台の機械化を訴えていた。一時は市民から反発を買い、ジムリーダーを解任しろと過激派が市議会を襲撃する事態なども起きたが、改めて自分の考えが正しかったと感じていた。

 

「でも、私がここを離れるわけにはいかないし、と言っても最近マツバさんには連絡がつかないし・・・。」

 

 

「そう言えば、シルバーの奴言ってたよな。アサギジムリーダーのミカンさんが弱ったポケモンの世話に言ってるって。」

「確かに。」

「もしかして何だけど、ミカンさんはこの灯台を離れたくても離れられない状況にあるんじゃないか?」

「どういうこと?」

「もしちょっと調子が悪い程度だったら、ポケモンセンターに連れて行けば解決することだし、それが出来ないならジョーイさんに来てもらえばいい話だ。でも、それをした形跡がない。これは俺の予想何だが、ミカンさんが今看病しているポケモンは特別な薬がないと治せない。それを知っているからポケモンセンターには連絡していない。でも、自分が離れれば看病しているポケモンが危ない。だからここを出れない。」

「だとしたら、誰かが助けにいかないと。」

「ああ。だが、ミカンさんはこの灯台の機械化を訴えて市民からの評判は良くないらしい。だから誰も手を差し伸べない。」

「「・・・・・・・・・。」」

 

ヒビキとコトネは灯台の内部へ入っていく。

 

「俺が。」

「私が。」

「「やらなければ、誰がやる!!」」

 

二人は灯台を駆け上がる。途中戦いを挑んでくるトレーナーが何人もいたが、全員得意の連携攻撃で蹴散らしながら頂上へ駆け上がっていく。

 

「戦いを挑む暇があるんだったら少しは助けてやれよって思うけど、人は面倒ごとには関わりたくない生き物。」

「悲しいけど、それが現実なのよね。」

 

悪態を吐きつつ階段を駆け上がる。

 

「・・・・ここからもう登れない・・・か。」

 

ヒビキとコトネの前には外へ飛び降りろと言わんばかりに空いている穴を見つける。

 

「コトネ、俺が先に降りる。コトネは後に続いてくれ。」

 

ヒビキは外へ飛び降りる。

 

「トゲチック! 減速を頼むぞ! ゲンガーは下で待機!!」

 

ヒビキは着陸する為にトゲチックとゲンガーを出動させる。

 

「よし! コトネ~! そこから降りるんだ!!」

 

着陸に成功したヒビキはコトネに降りるように指示を出す。

 

「しっかり捕まえてよね!!」

 

コトネも続いて飛び降りる。風で帽子が飛ばないように右手で押さえながらヒビキの待つ下へ降りた。

 

「・・・・おりゃああ!!」

 

ヒビキはポケモンの手助けなしでコトネをキャッチする。丁度姫抱っこする形でコトネをヒビキは捕まえることに成功したのだった。

 

「流石ヒビキ君ね。なんとなくこうなるんだろうなあって思ってたけど。」

 

コトネはヒビキの頬へキスした。

 

「でも、あまり無理はしないでね。ヒビキ君が怪我するところなんて、見たくないから。」

「・・・・ありがとうコトネ、大好きだよ。」

 

ヒビキは優しくコトネを地に降ろす。

 

「それじゃあ、行こうか。」

「無論よ。」

 

二人は再び灯台の内部へ突入していく。デンリュウのアカリちゃんのいる頂上まであとわずかとなっていた。

 

(続く)



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「第三十四話~嵐の海へ~」

アサギの灯台

 

「まさか心優しいトレーナーさんが来てくれるなんて・・・思ってもいませんでしたわ。」

 

並みいるトレーナーを打ち破り、灯台の頂上に辿り着いたヒビキとコトネはデンリュウを看病していたミカンと出会った。

 

「そもそも誰も手を差し伸べないのがおかしいんです。ここにいるトレーナーは誰も動こうとはしない。」

 

怒りを露にするヒビキ。

 

「誰も行かないなら俺が行くしかない。俺が行かなかったら誰が行く。その思いでここまで来ました。」

「私もヒビキ君と同感です。私達がやらなきゃ誰がやる。二人で決めたことです。」

 

コトネとヒビキは互いに目で会話し、意思を確認する。

 

「そうですか。本当に貴方達は正義感と熱いハートの持ち主なのですね。」

 

(この人たちは信頼に値するトレーナーだわ。まるで三年前のあの少年のよう。)

 

「では、私のお願いを聞いてください。このアサギから海を越えた先の四国島にタンバという町があります。そこにはジョウト一の薬屋さんがあります。そこのひでんのくすりを貰ってきて欲しいのです。」

「ひでんのくすり・・・それほど酷い状況なのね。」

「任せてくださいよ! 俺とコトネならどんな困難でも乗り越えられますよ!!」

 

笑顔で承諾するヒビキ。その時、

 

びゅうううううううう!!!!

 

「な、何だ!?」

「ヒビキ君! あれを見て!!」

 

二人は海を見る。

 

「おいおいウソだろ? さっきまで晴れてたじゃねえかよ。」

 

先程までは快晴だった天候が急に一変。海は時化ており、時折雷も見えていた。

 

 

うずまきじま

 

「やはりこのポケモンの力は凄いとしか言いようがない。このアサギタンバ間の海を一瞬にして時化にしたのだからな。それに。」

 

白いスーツを身に纏った男は不敵な笑みを浮かべながら背後を見つめる。

 

「以前我々がこのうずまきじまの伝説を追い求める時に失敗したのは彼らを用いなかったから。しかし、今回は用意周到に確保することが出来ました。」

 

彼の背後では着物姿の女性を黒い団員服を着た者達が指図して舞わせていた。

 

「そして伝説を追い求めるあまり我々の駒となった男の能力も素晴らしいものです。流石は伊達に千里眼を名乗っていませんね。さてヒビキにコトネよ、この海を越えられるのか?」

 

 

アサギの灯台

 

「どうするコトネ。今海は最高に時化ってる。もしこの状態で航海に出れば命を落とすかもしれない。船便も欠航になってしまったからポケモンで行く以外の選択肢がない故だ。」

「定石ならここ出航を諦めるべきなんでしょうね。」

「だけど。」

 

ヒビキとコトネは出口へ向かう。

 

「ええ!? ちょ、ちょっと?!」

 

ミカンの制止を振り切って外に出るヒビキとコトネ。

 

「この波を越えなければ、俺はレッドさんを越えられないんだ!!」

「そういうと思ったよヒビキ君!! お願いラプラス!!」

 

荒波の中、ヒビキとコトネはタンバシティへの航海へ出たのである。

 

 

タンバシティ

 

「急に時化て来やがったか。まあ良い。どうせジムを制しなければどうしようもないしな。」

 

(続く)



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「第三十五話~虹色の奇跡~」

40番水道

 

ビシャーン!! ゴロゴロ!!

 

「なんて酷い天候なのよ。普通なら諦めるレベルだわ。」

 

コトネのラプラスの背中にまたがるヒビキはコトネと共に大海原へ乗り出し、一路タンバシティへ向けて突き進んでいた。

 

「しかし、ヒビキ君の提案には心底驚いたわ。トゲチックのしんぴのまもりで雨風を防ぐバリアを作ろうだなんて。」

 

現在二人が全く雨や波に濡れずに航海が出来てる要因、それはヒビキのトゲチックにあった。本来は状態異常を防ぐ技であるしんぴのまもりを雨風を防ぐ防壁として転用していたのだ。常人なら考えつかない正に発想の転換。

 

「これが、一部ではレッドさん以来の逸材と言われるヒビキ君の能力。」

「雑誌がどう書いてるのかは知らないけど、俺は俺の思うようにやってるだけだ。レッドさんにはまだまだ追いつけてないと思ってるしね。」

「でも私はヒビキ君ならレッドさんを越えられると信じてるわよ。」

「コトネの心遣いには感謝するばかりだよ。」

 

ラプラスは航海を続け、40番水道を駆け抜け、41番水道に差し掛かろうというところだった。

 

「ん? 何か見えるぞ?」

 

ヒビキは荒れる海の上に怪しげな影を見つける。

 

「あれは・・・・ええ?!」

「どうしたのヒビキ君? 驚いた声を出して。」

「コトネ、ここは海だよな。」

「何当たり前のことを聞くのよヒビキ君。」

「なら、あれを見たらおかしいと気付くんじゃないかな?」

「へ?」

 

ヒビキの指さした先には水色のポケモンの姿があった。

 

「あれは・・・マリル?!」

 

二人の視線の先には本来海では生きられない淡水に住むポケモン、マリルの姿があった。

 

「あの様子じゃかなりの海水を飲み込んじゃってるわ。」

「淡水で生きるポケモンにとって海水は毒になってしまう。このままじゃ!!」

 

ヒビキはコトネにカバンとポケギアを預ける。

 

「出てこいカメックス!! マリルを助けるぞ!!」

 

ヒビキはしんぴのまもりの防壁を出て荒波の中へ飛び出していった。

 

「・・・絶対に帰ってくるんだよ!! 絶対にね!! 死んじゃ嫌なんだからね! ヒビキ君!!」

「勿論だよコトネ!!」

 

カメックスはヒビキを甲羅に乗せてマリルの元へ全速力で駆け付ける。

 

「うおおお!」

「頑張ってヒビキ君!!」

 

途中からカメックスの背中から飛び降り、嵐の中泳ぐヒビキ。

 

「おいお前! まだ生きるのを諦めんじゃねえよ!!」

 

もう既に虫の息となっていたマリルをその右腕でカメックスの甲羅の上に引き上げる。

 

「コトネの元へ戻るぞ! 急げ!!」

 

しかし、戻ろうにも荒波の中視界が遮られていた。

 

「だけど、こんなこともあろうかと。」

 

複数回光が点滅する方向へヒビキは進む。

 

「流石コトネ、俺がやって欲しかったことを分かってる!!」

 

コトネはヒビキが楽に戻ってこれるようにバクフーンをボールから出し、その背中の炎を一定の周期で輝かせていた。

 

「バクフーンの灯りを頼りにして戻るからよろしく! ってことでしょ。分かってるよ、幼馴染だもの。」

 

そんなこんなでヒビキがマリルを引き上げコトネの元に舞い戻った。

 

「直ぐにメガニウムの力で手当てを!」

「了解よ!」

「戻れカメックス! 御苦労だったな!!」

 

コトネがメガニウムをボールから出して治療を開始したその時だった。

 

「きゃあ!」

「うわあ!」

 

ひと際強い風が二人を襲う。

 

「ヒビキ君?!」

「こ、コトネ! マリルを・・・。」

 

風でラプラスが揺れ、その反動でヒビキが海へ落ちてしまう。直ぐに探そうとしたコトネだったが、白波が立っておりヒビキの姿は見えなくなっていた。

 

「しかもここは渦潮がよく発生する海域。もしその渦にヒビキ君が巻き込まれてたら・・・。」

 

 

(・・・だらしねえぜ。一匹のポケモンの命と引き換えに自らの命を落としちまうなんてよ。)

 

海に落下したヒビキは力なく渦に引き込まれつつあった。

 

(・・・ああ、意識が・・・酸素が・・・。)

 

キラン!

 

(・・・? 何か光ったか? ダメだ・・・・・頭が・・・・)

 

 

「ヒビキ君!! どこにいるの!? いるなら返事してよ!!」

「ショオォーッ!!」

「へ?」

 

急に彼女の頭上を虹色のポケモンが通過する。

 

「あれは・・・もしかしてエンジュで見た。」

「ショオォーッ!!」

 

その虹色のポケモンの咆哮が周囲に木霊する。

 

「・・・・嘘!? さっきまであんなに荒れてたのに?!」

 

その咆哮が木霊した次の瞬間には海は先ほどまでの荒波が嘘かのように凪いでいた。

 

「ぷはっ!!」

「ヒビキ君!!」

 

その直後にヒビキが海から顔を出した。直ぐにコトネはヒビキをラプラスの上に引き上げる。

 

「もう終わりかと思ってたら急に虹色にコイツが光ったんだ。」

 

意識が薄れゆくヒビキが見た光。それはエンジュで手に入れたにじいろのはねだった。

 

「ショオォーッ!!」

 

何処かへ飛び去って行く虹色のポケモンを二人は見つめる。

 

「もしかしたら、この羽があのポケモンを呼び込んだのかもしれないな。」

「そう言えば、寒くない? 大丈夫?」

「どういう訳か、全く服が濡れてないんだ。もしかしたら、あの虹色のポケモンのお陰かもな。あとそれとこれをコトネにやるよ。」

 

ヒビキはコトネに銀に輝く羽を渡す。

 

「こいつは俺が海面に顔を出す途中に海中を漂っているのを見つけて手に取ったんだ。もしかしたら、何かの加護があるかもしれないと思って。」

「これは・・・ぎんいろのはね? かな? たぶん。ヒビキ君のにじいろのはねと言い、良く分からないけど羽を手に入れるわね、私達。」

「それじゃ、行くよコトネ!」

「勿論よヒビキ君!!」

 

「「タンバシティへ!!」」

 

 

うずまきじま

 

「あの荒波を越えましたか。流石は愚かにも我々にたてつくことだけはありますね。ですが。」

 

白い幹部服を着た男は二つのマスターボールを持ち不敵に笑う。

 

「この二匹を従えている以上、我々の計画が揺らぐことはないですよ!! あははははははは!!」

 

(続く)



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「第三十六話~マリル~」

荒波をトゲチックやラプラスの活躍や虹色のポケモンの加護もあり、ヒビキとコトネは41番水道を駆け抜け、タンバシティの沖合に到着した。

 

タンバシティ

 

「遂に海を越えて辿り着いたな。」

「ありがとうラプラス、メガニウム。ゆっくり休んでてね!」

「トゲチックも休んでてくれ!」

 

ここまで来るうえで活躍したポケモン達をボールに戻すヒビキとコトネ。

 

「今は安定してるが、今後どうなるか分からねえからコイツを診て貰おう。」

「そうね。あとメガニウム達の回復もしたいしね。」

 

 

ポケモンセンター

 

「それでは、このポケモン達をお預かりします! しばらくお待ちくださいね!」

「それで、マリルは助かるんでしょうか?」

「大丈夫です。幸いにも貴方達の献身な介護の甲斐もあって、最悪の事態は回避できたみたいですよ。」

「そうですか。良かった。」

 

二人のポケモンの入ったモンスターボールをトレイに乗せて奥へ入っていくジョーイさんを見送るヒビキとコトネ。

 

「さて、それじゃこのタンバにある薬屋さんに行くか。」

「そうね。そっちが本来の目的だしね。」

 

 

タンバくすりや

 

「へいらっしゃい! 効果が強すぎることで定評のあるタンバくすりやだよ!」

「ええと、この薬屋さんで一番効果の強い薬を頂きたいのですが。」

「一番効果の大きい! となるとひでんのくすりだな! でも、何でそいつが必要何でい?」

「実はアサギの灯台の。」

「アサギの灯台・・・灯台のマスコットのアカリちゃんに必要ってわけか! アンタらの表情を見る限り、そいつは一大事やな。至急薬を調合したる! でも調合が終わるには数日かかんだわ! あまり需要のねえ秘薬故に在庫がねえんだわ。すまねえが、どっかで時間を潰してくれや! そうだな・・・タンバジムに挑戦したらどうかな? バッジ集めてんだろ? 悪い話じゃねえと思うぞ。それでも時間が余ったらサファリにでも行っておいてくれや。」

「それで、お代は。」

「後でミカンに付けとくから心配いらん! それじゃ、今から調合するから一人にしといてくれや!!」

 

 

タンバシティの海岸

 

「さ~て、そろそろポケモンの回復も終わるころだね。」

「今日は疲れちゃったから、ジムの挑戦は明日にしない? それにヒビキ君の助けたマリルの処遇も決めないとだし。」

「それもそうだね。」

 

 

ポケモンセンター

 

「お待たせしました! お預かりしたポケモンは皆元気になりましたよ!!」

「「ありがとうございます!!」」

「りるる!!」

 

預けたポケモンで唯一ボールに入っていないマリルがヒビキの元に駆け寄る。

 

「りるる!」

「・・・これは、懐かれてる・・・のかな?」

 

ヒビキの左足のふくらはぎに頬をこすり付ける仕草をするマリル。

 

「どうやら絶望的な状況から救ってくれたことに恩を感じてるみたいね。そのまま手持ちに入れてあげたら? 無下にしたら可哀そうよ。」

「それもそうだな。これから俺と共に頂点を目指そうぜ!! マリル!!」

「りるるる!!」

 

ヒビキはカバンからフレンドボールを取りだし、優しくコツンと当てる。

 

「マリル、ゲットだね。・・・そうだ!」

 

何かを思いついたヒビキ。

 

「コトネもマリルを持ってるじゃん? いきなり俺たちの手持ちに馴染むのは難しいと思うからさ、話し相手として仲良くさせてやれないかな?」

「確かに。同じ種類のポケモンとなら気がすぐに合うかもね。」

 

コトネはパソコンを起動し、自身のボックスを呼び出す。

 

「ええと、パラセクトを預けて・・・代わりにマリルを入れて・・・っと。」

 

ポケモンの交換が完了し、コトネのマリルの入ったモンスターボールが出てくる。

 

「出ておいで! マリル!!」

「むふっ!」

「え? もしかしてこの子・・・ちょっと太った?」

「りるる!」

 

コトネのマリルを見てヒビキのマリルが近づいていく。

 

「りるる!!」

「りるる?」

「どうやら、直ぐに仲良くなれそうだね。」

「そうね。あとあの子絶対太ったわね。痩せさせなきゃ。」

「りるる~。」

「りるる!!」

「ああ、それは駄目だよマリル~。」

 

コトネのマリルのお腹を触り、のしかかりの刑を受けるヒビキのマリル。

 

「でも、見たところ手加減はしてるみたいだわ。良いコンビになれそうで良かったわ。」

「シルバーが見たらまた何か言いそうではあるけどね。」

「何時ものことじゃん。」

 

この日はゆっくり休んだヒビキとコトネであった。

 

(続く)



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「第三十七話~挑戦! タンバシティジムリーダーシジマ!!~」

ポケモンセンター

 

「さて、タンバジムに挑戦しよっか。まだ薬は出来てないみたいだし。」

「でも、薬が出来たかどうかをどうやって知るかが問題よ。」

「それなら問題ないよ。」

 

ヒビキはじゃれあうマリル達に視線を向ける。

 

「マリル!」

「りるる?」

「俺たちは今からタンバジムに挑戦するんだ。」

「りる?!」

「いきなり戦って戦力になるわけないって? 確かにそうだろうね。でも、俺は君に大切な仕事をお願いしようと思って。」

「りるるる?」

 

 

タンバジム

 

「まさかヒビキ君と私のマリルをお留守番として派遣するなんて想像出来なかったわ。」

「何でも薬の原料が足りないみたいで、急遽ホウエンに行って仕入れてくるんだって。」

「薬屋さんのおじさん、凄く喜んでたわね。これで泥棒に入られなくて済むって。」

「何でも最近タンバでニューラが盗まれたって聞いたけど・・・。」

「「・・・・・・・・まさかね?」」

 

二人の脳内には赤い髪の少年が思い浮かんだのは公然の秘密である。

 

「ヘラクロス、かわらわりよ!!」

「カメックス、みずのはどうだ!!」

「・・・見事なり。」

 

ジムトレーナーを相変わらずのコンビネーションで撃破していくヒビキとコトネ。

 

「・・・・何か滝に打たれてる人いないあれ?」

 

二人の視線の先には入った時からずっと滝に打たれている中年の男性の姿があった。

 

「何時からあそこで打たれてるのかしら? 正直寒くないのかって思うんだけど。」

「・・・取り敢えず、水の長れを止めようか。」

「そうね。このままじゃ話し合いとか無理そうだもんね。」

 

ヒビキはジムの最上段にあるハンドルを回し、水の流れを止める。

 

「ぬおぉぉー! 激しく流れ落ちる滝がわしの頭の上にズドドドド・・・ってコラー! 勝手に水を止めるなー! わしの修行の邪魔をしおってー!」

「貴方に挑戦に来たんですよ。」

「それに滝に打たれてて話にならないので止めちゃいました。」

「ほう、そうかそうか! 言っとくがわしは強いぞ! こうやって毎日滝に打たれているからな! 何? ポケモンとは関係ない?」

「「はい。」」

「・・・・・それもそうだ。」

 

((納得しちゃうのそれ!?))

 

「では勝負といくかぁ! かかってこいや!!」

「行くぞゲンガー!!」

「お願い! ムウマ!!」

「行けえい! オコリザル! ニョロボン!!」

「コトネ! 不用意に接近はするなよ!!」

「OK! ムウマ、こごえるかぜよ!!」

「ふん! その程度の寒さなどわしには効かんぞ!!」

「狙いはそこじゃないわ!!」

「ぬおお?! 足元が滑るぞ!!」

 

ムウマの攻撃は地面に対して行われたものだった。

 

「まさかこのフィールドを有効利用するとはな! やりおるな!! じゃが、それではわしには勝てんぞ!!」

 

バリン!

 

凍った床を叩き割るオコリザルとニョロボン。

 

「オコリザル、ニョロボン! 反撃するぞ! いわなだれ、そしてなみのりだ!!」

 

全体攻撃でヒビキとコトネのポケモンに攻撃を仕掛けるシジマ。

 

「・・・そこだ! 打て!!」

 

ヒビキが手を上げ、ゲンガーに攻撃の指示を出す。

 

「全体攻撃には攻撃するまでに一瞬の隙がある。そこを逃しはしないぜ!!」

「まさか、わしがムウマに注意が行くのを見越して、更に近づくなという事で接近してこないだろうと心理戦も仕掛けるとは。」

「シャドーボール!!」

 

オコリザルの背後から一撃を食らわせるヒビキのゲンガー。オコリザルは背後からの攻撃で大きなダメージを負い、いわなだれ攻撃を失敗する。

 

「私も行くわよ! ムウマ、交代よ!!」

 

ムウマを戻すコトネ。

 

「かくとうには、かくとうよ!! ヘラクロス!!」

 

代わりに戦線にヘラクロスを投入するコトネ。

 

「だが、なみのり攻撃を未然に防げてはおらんぞ!! ニョロボン、なみのりだ!!」

 

大きな波がヘラクロスに襲い掛かる。ヒビキのゲンガーとシジマのオコリザルを巻き込みながら波はヘラクロスへ襲い掛かる。

 

「・・・・ヘラクロス! 波を突き破って!!」

 

波に向かって突撃するコトネのヘラクロス。

 

「その波に向かって、かわらわり!!」

「な、何だと?!」

 

波を突き破るコトネのヘラクロス。

 

「そのままかわらわり!!」

「ニョロボン! きあいパンチで迎え撃て!!」

「遅い!!」

 

ニョロボンが反撃するより先にヘラクロスの攻撃が顔面に決まり、戦闘不能となる。先のなみのりでオコリザルがヒビキのゲンガーと共に戦闘不能になっており、ヒビキとコトネの勝利が確定した。

 

「か、勝った!」

「やったあ!」

「「いえい!!」」

 

互いの手を叩き喜ぶ二人。

 

「うーむ、わしが負けるとは! こりゃ参った参った! よーしっ! このショックバッジはお前らに相応しい! 受けとるがよい!!」

 

シジマからバッジを受け取る二人。すぐさまケースにバッジをしまった。

 

「しかし、本当に見事だった。お主のヘラクロス、わしのニョロボンのなみのりに恐れることなく突っ込んできた。実に気合の入った闘いだった。そしてお主のゲンガーもわしのオコリザルの背後を突き見事。実に度胸の据わったポケモンじゃ!」

「「ありがとうございます!!」」

「この先も負けるんじゃないぞ!!」

「「はい!!」」

 

 

ポケモンセンター

 

「さっき見た感じだと、まだ薬は完成しないみたいだね。」

「まだ店主も帰ってきてなかったしね。」

「それじゃ、明日はサファリにでも行ってみよっか。」

「そうね。マリル達もお留守番で御苦労さまだし、ゲンガーとムウマを代わりに明日はお留守番させましょ。で、マリル達をサファリまで一緒に連れ歩いて。」

「賛成! それじゃ、明日はその方針で!!」

 

(続く)

 

 



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「第三十八話~平和な一時~」

47番道路

 

「うわあ~、凄い崖だねコトネ~。」

 

ヒビキは遥か高い崖の上から真下を見つめる。

 

「もしここから落ちたらとか思うと怖いよね。柵もないし。」

「そう怖いこと言わないでよコトネ~。もし本当に落ちちゃったらどうするんだよ。」

「大丈夫だって。そう簡単に落ちたりとかしないよ~。」

 

無邪気に笑いながらサファリ方面へ向かう二人。その姿を悪意を持った者に見られていることを知らずに。

 

「ターゲット確認。これより抹殺に向けたを下準備を開始する。」

 

彼らより高いところから二人を監視していた者が銃を構える。

 

「目標、プレミアボールみてえな帽子を被ったガキだ。」

 

プシュッ、

 

サイレンサーが取り付けられた狙撃銃から弾丸が放たれる。弾丸はコトネ目掛けて狂いなく突き進む。

 

ピトッ、

 

「? 何か当たったかな?」

「どうしたのコトネ?」

「いや、何かが当たったかなって。」

「そうなの? どの辺か分かる?」

「この辺だと思うんだけど。」

 

コトネは首筋を指さす。

 

「・・・・・特に何もないよ?」

「そうなの? じゃあ気のせいかな?」

 

気を取り直し二人はサファリゾーンへ向けて足を進める。そして再び洞窟へと二人の姿が消えたところで男が姿を現す。

 

「さて、私も戻りましょう。アポロも伝説を揃えたようですしね。ゴルバット!!」

 

狙撃銃を肩にかけ、どこかへと戻る男はロケット団のランスだった。ロケット団一冷酷な男と言われる彼は組織の邪魔となる人物は徹底的に排除しなくてはならない。その考えから今回の行動へと至った。

 

「しかし、ラムダの奴も面白いものを見つけてくるものですね。埋伏の毒。まあせいぜい楽しませて頂きましょうか。」

 

 

サファリゾーン

 

「見つけたよコトネ! バオバ園長からの課題ポケモンのイシツブテだ!!」

「OKヒビキ君!! ここは私に任せて頂戴!!」

「ほほほ、実に元気のいい子達じゃのう。」

 

サファリゾーンを無垢の笑顔で楽しむヒビキとコトネ。そんな二人を陰で見ている存在があったが、当然彼らは知らない。

 

「・・・・彼女におそらくあの子が憑依してしまっている。その時彼は彼女を討てるのか。見せてもらうとしましょうか。さて。」

 

そう言うと二人を見ていた陰は何処かへと飛び去った。

 

「間もなく奴らが動く。そしてそれを未然に防ぐことは不可能。歯がゆいものね。」

 

 

「いやあ、楽しかったねコトネ!」

「元気に走り回り過ぎて足が疲れちゃった。ヒビキ君おんぶして~。」

「もう! しょうがないんだから~。」

 

同時刻タンバシティ

 

「・・・・そうか。我が親友は敵の手に堕ちたか。」

 

世界中を駆け巡り、汚れた水を清めると言われるポケモンスイクンを前にしてミナキはそう呟いた。

 

「いや、そうなんだろうなとは思った。最近あいつと連絡が取れなくなったし、どうもおかしいと気付いていたところだ。そこにスイクン、君が来て教えてくれた。」

 

ミナキはスイクンの頭を撫でる。

 

「なあ、スイクン頼みがある。私は親友を救いたい。例え相手が巨悪であろうとも、一人で闘うこととなろうともだ。その為にどうか。」

 

 

ミナキはスーパーボールを取り出しスイクンに懇願する。

 

「一時的で構わない。どうか私に力を貸してくれないか。」

「・・・・・・。」

「・・・・頼む。」

 

スイクンにミナキが頭を下げているところにぶっきらぼうに話しかける者が現れる。

 

「さっさと投げちまえよ。その方が早いだろうが。」

「・・・・・君は焼けた塔で。」

「フン! そんなことよりお前はお前が果たす道をさっさと進めよ。」

「・・・・そうだな。」

 

ミナキはスーパーボールを優しくスイクンに当てる。スイクンはミナキの想いに応え、ボールに収まる。

 

「さて、行くとするか。そろそろ動き出すんだろ?」

「ああ。だが一つ知りたいことがある。」

「なんだ。」

「シルバー君、君は一体何者なんだい?」

「・・・・・・・知りたいか? 知りたいなら教えてやるよ。思い出したくもないと思いながらも忘れられない俺の呪われし血筋をな。」

 

(続く)



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「第三十九話~薬を受け取ろう~」

タンバシティ

 

「・・・・・そうだったのか。君はサカキの息子であり、かつてはロケット団の次期首領だったとはな。」

「ああ。あの日までは親父のことを尊敬してたし、親父の後を継ぐことが正しいことだと思ってた。だが。」

 

シルバーの脳裏にはレッドに敗れ、ブルーに組織を壊滅させられた日の翌日を思い出す。

 

「・・・・無理に思い出す必要はない。それに。」

 

ミナキは一枚の封筒をシルバーに差し出した。

 

「ロケット団を壊滅させたブルーから書状を預かっていてな。」

「書状・・・だと?」

 

シルバーはミナキから受け取った書状を受け取るとすぐにそれを読んだ。

 

「・・・・・・・・あの野郎・・・。」

 

シルバーは怒りを露にする。

 

「一体何が書いてあったというのだ。」

「奴らが・・・・群れなければ強くなれない連中が決起しようとしている・・・そう書いてある。」

「・・・・やはりか。」

「これなったら出来ることはただ一つしかねえ!!」

 

するとゴルバットをボールから出すとそれにぶら下がり飛び立つ。

 

「行くぞ者ども!! 俺達の強さを見せつけに行くぞ!!」

「・・・・やれやれ、世話がやける坊やだ。」

 

ミナキはワタッコをボールから出しシルバーを追いかける。

 

「私も、親友を救わなくてはならないのでな。シルバー君、君と共に闘わせてもらうよ。」

 

 

それから数分後

 

 

「さて、タンバに戻って来たねコトネ。」

「そうね。次はアサギのミカンさんね。」

「まずはアカリちゃんの病気を治すのが先だね。いい加減薬も完成した頃だと思うし。」

 

タンバくすりや

 

「おお、待たせたな。これがひでんのくすりだ。これをアカリちゃんに飲ませてやりな。」

 

ヒビキは薬屋の店主からひでんのくすりを受け取る。

 

「急ぎアサギに戻るよ! コトネ、リザードンを!!」

「OKヒビキ君!! お願いリザードン!!」

 

コトネはリザードンを繰り出す。リザードンは二人を乗せてアサギシティに向けて飛び立つ。

 

 

アサギシティ

 

「全力で飛ばしてきたつもりだけど、到着は夜間になっちゃったわね。」

「でも、アサギの夜景は奇麗だよコトネ。」

 

二人の眼下にはかつてこの地域を襲った大災害からの復興を果たしたアサギの街並みが広がっていた。上空から見るアサギの夜景はまさに絶景であった。

 

「でも、もしもロケット団がジョウトを支配したら、この夜景はどうなっちまうんだろうな。」

 

ヒビキは神妙な顔つきで夜景を見つめる。ここまで来る途中たまたま聞いたポケギアのラジオでロケット団と思われる集団による犯罪が増加しているとニュースが流れたからだ。

 

「見れなくなっちゃうかもしれないわね。あのマフィア達に支配されたら。」

「もしそうなったら、コトネとは離れ離れになっちゃうかもしれない。それだけは耐えられない。」

「つながりのどうくつやヒワダで闘った以上、あいつ等のブラックリストに載っちゃてるだろうからね。もし奴らが支配したらそうなるわね。私も耐えられないわ、ヒビキ君。」

 

二人はその後アサギの灯台に直接乗りつけ、灯台の中へと入った。

 

 

アサギのとうだい

 

「わざわざ本当にありがとうございます。これでアカリちゃんも元気になります!」

 

ヒビキから薬を受け取ったミカンはアカリちゃんにひでんのくすりを処方した。

 

「アカリちゃん、具合はどう?」

「バルッ! バルルッ!」

「すげえ効き目だなこの薬。」

「本当に凄いわね。」

「ああ、良かった。本当に良かったです。ありがとうございます、お二人のお陰です。」

 

深々とお辞儀するミカンとデンリュウ。

 

「気にすることないっすよ。俺達は当然のことをしたまでですから。」

「そうですよ!」

「ふふふ、本当に心の優しいトレーナーさん達ですね。では、あたしジムに戻ります。お二人の挑戦、お待ちしていますよ。」

 

そう言うとミカンは灯台を後にした。

 

「さて、明日はジムに挑戦しよう。その後にチョウジに向かおう。」

「でもヒビキ君、ちょっとは体と心を休めましょ。ミナキさん達の話を聞いて気が張っちゃてると思うけど、無理は良くないよ。」

「・・・・それもそうだね。ちょっと無理してたのかな。そう言えば急に疲れが。」

 

その場で崩れ降りるヒビキ。

 

「もう、ヒビキ君ったら!!」

 

この後コトネに担がれてポケモンセンターに戻ったヒビキであった。

 

(続く)

 

 



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「第四十話~挑戦! ジムリーダーミカン!!~」

コガネ都庁知事室

 

「・・・・・・まさかな、ここまで浸透しとったとは。予想はしとってんけど、嘘であって欲しかったな。」

 

ジョウト一の都会であり、行政改革の最先端を行く街コガネ。カントーのヤマブキを参考にしつつ改良を加えた改革を達成し、市民から絶大な人気を集める男ヒロフミは執務室で溜息をついた。

 

「やけど、幸いにも事前情報のお陰で内通者をコガネ警察から駆逐出来よった。彼女には感謝やな。さて。」

 

ヒロフミは資料を片付け始める。来るべき日の為に。

 

「このコガネを奴らの好きにはさせへん!」

 

 

アサギシティ

 

「休憩も十分に出来たし、アサギジムに挑戦しないとね!!」

「そうね。来るべきロケット団との決戦の為にもね。」

 

二人は手を繋ぐ。

 

「どんな敵が待ち受けていようとも。」

「私達は負けない!!」

 

 

アサギジム

 

「灯台ではありがとうございました。お陰でアカリちゃんは元気になりました。でも、勝負は別ですよ。」

 

真剣な顔つきに変わるミカン。

 

「改めて自己紹介します。あたしはジムリーダーのミカン。使うポケモンはシャキーン!!」

「「・・・・・・。」」

 

突然のキャラ崩壊に唖然となるヒビキとコトネ。

 

「は・・・鋼タイプです。鋼タイプってご存知ですか? とっても硬くて冷たくて鋭くてつ、強いんですよ? ほんとなんですよ? 行きますよ!! コイル!!」

 

ミカンはコイルを二匹繰り出す。

 

「行くよバクフーン!!」

「行こうリザードン!!

 

ヒビキとコトネは炎タイプのポケモンを繰り出す。

 

「「かえんほうしゃだ(よ)!!」

 

コイルを包み込むかのような炎がコイルを襲う。一瞬のうちにコイルの体力を奪い、撃破することに成功した。

 

「流石ワカバのホープトレーナーですね。ですが、次のポケモンはそう簡単には溶けたりはしませんよ!! ハガネール!!」

 

ミカンは自身の切り札であるハガネールを繰り出す。

 

「・・・・簡単には倒せなさそうな雰囲気が漂ってるねコトネ。」

「そうねヒビキ君。流石ジムリーダーの切り札ね。」

 

コトネはモンスターボールを取りだす。

 

「戻ってリザードン!!」

「コトネ。」

「やっぱり、私達はこうでなくちゃいけないんじゃない?」

 

コトネは笑顔と共にモンスターボールをヒビキに見せる。それは、博士から最初に貰ったポケモン、チコリータの最終進化形態メガニウムの入ったモンスターボールだった。

 

「それもそうだね。行こうコトネ!」

「勿論よヒビキ君!!」

「俺たちの!」

「私達の!!」

「「新たな境地へ!!」」

 

コトネはメガニウムを繰り出す。

 

「初めの二匹で来ますか。ならばあたしに見せてください。貴方達の絆を!!」

「行きますよミカンさん!!」

「見せますよ!! 私達の絆を!!」

「バクフーン、ほのおのちかいだ!!」

「メガニウム、くさのちかいよ!!」

 

メガニウムが作り出した草の柱をバクフーンのバクフーンの炎が燃え移る。その炎は相手フィールド全体に拡散する。

 

「・・・凄い。イッシュ地方で初めて発見された技をここで見れるなんて・・・。」

 

二人の想いを乗せた業火によりハガネールは一撃で戦闘不能になってもおかしくないダメージを受けた。特性ががんじょうでなければ一撃で戦闘不能になっていたのは確実だった。

 

「ですけど、鍛え抜かれた鋼はこれくらいでは錆びないの! 最後まで諦めない鋼の心で! ハガネール、じしんです!!」

 

おそらくこれが最後の攻撃になるだろう。ミカンはそう思いながら指示を出す。

 

「ば、バクフーン!!」

「メガニウム、ギガドレイン!!」

 

ハガネールに最後の一撃をコトネのメガニウムが叩き込む。

 

「お見事でした。」

 

三人の目の前には戦闘不能になったハガネール、ひんし寸前のバクフーンとそれを介抱するメガニウムの姿があった。

 

「バクフーン!! 大丈夫か?!」

 

バクフーンの元に直ぐに駆け寄るヒビキ。

 

「直ぐにポケモンセンターに連れて行くからな。ゆっくり休んで手てくれよ。」

 

バクフーンをボールにしまったヒビキ。

 

「ポケモントレーナーとして貴方達の方が上手みたいね。強さも優しさもね。では、リーグの決まり通りバッジを差し上げます。」

 

ヒビキとコトネはミカンからスチールバッジを受け取る。

 

「あ、あの。あんまり上手く言えないけど。・・・頑張ってくださいね。」

「はい!」

「そのつもりです!!」

 

二人はミカンに深々とお辞儀をしたのちにジムを後にした。

 

「・・・彼等ならきっとやってくれるわ。あたしも出来る限りの支援は、するつもりだから・・・。」

 

 

チョウジタウン

 

「ふふふふ、最早我々を止められるものはいません。あとは・・・。」

 

(続く)

 



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「第四十一話~ブルーの潜入~」

ヒビキとコトネが47番道路を進んでいる時より少し前のチョウジタウン某所

 

「・・・・・・・・・・・。」

 

換気用の通気ダクトの鉄格子を静かに外し、監視カメラの死角から内部に侵入する黒い影。ロケット団の制服である黒の女性用服を身に纏った少女は何食わぬ顔で内部を突き進む。

 

「・・・・・・ジョウトにおけるロケット団の活動拠点の監視体制も大したことはないわね。」

 

そういうと少女は密かに隠していたカメラで随所を撮影する。

 

「しかし、ここまで団員に全く遭遇しないわね。深刻な人手不足か、それとも。」

 

すぐさま彼女はカメックスを繰り出し背後に向けて攻撃を指示する。

 

「ハイドロカノン。」

「カメ―!!」

 

狂いなくハイドロカノンをお見舞いするカメックス。

 

「ぐお?!」

「ズバー!!」

「・・・・どうやらこの私を試しているだけのようね。なら、隠す必要もないわね。」

 

そういうと少女は団員服を脱ぎ捨てる。

 

「マサラタウンのブルー、国際警察鬼の公安部のブルー推参!!」

 

そういうとブルーは拳銃を手にし、目の前の団員に向けて発砲する。

 

「貴様!! 武器を使うとは卑怯だぞ・・・ぐあ!!」

「卑怯? それで結構よ。」

 

ブルーは拳銃で死なない程度に重傷を負わせた団員の汚い顔を足で踏みつける。

 

「どんな手を使ってでも任務遂行を優先する、それが国際警察公安部よ!!」

 

ジリリリリリリリリリリ!!!

 

館内に鳴り響く警報音。それに比例して団員がこちらに向けて集まりだす足音が聞こえる。

 

「それで対処できるほど。」

 

ブルーは左手にも拳銃を構える。

 

「このブルーは甘くないわよ!!」

 

パン! パン!

 

「うっ!」

「うあ!」

 

曲がり角を出て来たところを狙い撃ちにし、敵の進行を遅らせるブルー。

 

「さて、目的の資料を強奪したら、ずらかるとしましょうか。行くわよカメックス!!」

 

ブルーはカメックスの甲羅にしがみつく。

 

「ハイドロカノン!!」

 

大技の発射の反動を利用して高速移動するブルー。その初速を利用し、目標のある区画の壁をぶち破りながら更に内部に侵入する。

 

「な、何だ此奴は!!」

「おっと! その資料、頂いていくわよ!!」

 

うろたえる研究員からマル秘と書かれた資料とパソコンを拝借するブルー。

 

「それじゃあ、バイバーイ!! ミュウ!! テレポート!!」

「みゅう!!」

 

この時ブルーが拝借したマル秘資料は彼女を驚愕させるものであった。すぐさま本部へ報告すると共に指示を仰ぐこととなった。それに加え、現地協力者であるシルバーとミナキに対して独自の指示書を発行することとなるのである。

 

(続く)



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「第四十二話~エンジュを目指して~」

38番道路

 

「さて、アサギから歩いてきたけど、すっかり暗くなっちゃったね。」

 

アサギジムでミカンを下したヒビキとコトネは次の目的地であるチョウジタウンへ向かっていた。この日はエンジュシティを目指して移動していた。

 

「でも、ここで野宿する訳にもいかないしね。」

「出来るならしたいんだけどね~。でもロケット団に寝込みを襲われるかもしれないからな~。」

 

これまでの彼等なら迷わずここでキャンプをしていたが、今はロケット団に目を付けられている身。下手にキャンプをしようものならロケット団に隙を狙われるのは火を見るより明らかだった。

 

「とは言え、コトネ疲れちゃったよ。」

 

膝に手をついて完全に息切れしたコトネ。

 

「ヒビキ君、コトネもう歩けないよ。脚もガタガタ、もうダメ。」

 

その場で座り込むコトネ。彼女の足は長い距離を歩いてきた影響でパンパンになっており、これ以上無理しようものならどうなるか分からなかった。

 

「まあ、しょうがないよね。ずっと休まずに歩き続けてたもんな。バクフーン!」

 

モンスターボールからバクフーンを出すヒビキ。

 

「夜で眠いと思うけど、俺の背後を守ってくれないかな? 俺はコトネをおんぶするからさ。」

「へ?! ヒビキ君!?」

 

息を吐くように自分を背負うと宣言したヒビキにコトネは驚いた。

 

(本当に大丈夫なの? 昔からそういうことはあったけど、今は私の方が大きいし重いのに・・・。それにヒビキ君だって疲れてるはずなのに・・・それにコトネ重いねとか言われたら立ち直れないよ・・・ないと思うけど。)

 

「バクバク!!」

「ありがとなバクフーン! それじゃ俺の背中を頼むぜ! 待たせたなコトネ!!」

「わっ!!」

 

勢いよくコトネを背負うヒビキ。

 

「それじゃ、エンジュ目指してもうひと踏ん張りするぞ~!!」

「バクバク~!!」

 

一路エンジュ目指して再び歩き出すヒビキ。

 

(もう~! ヒビキ君の馬鹿馬鹿!! 私の気も知らないで!!)

「しっかり掴まってるんだよコトネ~。落として怪我とかさせたくないからね。」

「あ、うん。分かってる。」

「そんじゃ、行くよ。全速前進DE!!」

 

顔を真っ赤にしながらコトネはヒビキの背中にしがみつき、それなりの速さでエンジュまで移動した。エンジュ到着後、二人はポケモンセンター併設の宿に泊まり、この日の冒険を終えることとなるのだった。

 

ポケモンセンター

 

「本当コトネの脚、パンパンだね。筋肉痛にならないように揉んであげるよ!」

「・・・あ、うん! ありがとねヒビキ君!(だから私の気もしらないんだから~!!)」

 

※ヒビキはコトネの体を本気で心配しているだけです。

 

(続く)



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「第四十三話~助けを呼ぶ声~」

42番道路

 

「ここを真っすぐ行けばチョウジタウンか。」

 

ヒビキは自分のポケギアのマップ機能を使い今の位置を把握する。

 

「そして今私達の横にそびえたつ山がスリバチ山ね。」

 

二人は目の前にそびえたつ山を見つめる。

 

「今は素通りしてチョウジに向かいましょう。噂ではチョウジでロケット団が良からぬことをしているっていう話だしね。」

 

前日のポケモンセンターでヒビキとコトネはジョーイさんから良からぬ噂があるとして話を聞いていた。

 

前日のポケモンセンター

 

「ええと、ヒビキ君にコトネちゃんよね?」

「はい。」

「そうです。」

「そう。なら、貴方たちにはこの噂を話しても良さそうね。」

「噂。」

「ですか?」

「はい。何でも最近このエンジュの隣チョウジにロケット団と思わしき不審者の目撃情報が相次いでいるらしいの。で、何人か警察に通報したんだけど、なあなあに済まされちゃってて皆怯えているの。それに、このエンジュのジムリーダーマツバさんも最近不在だし。」

 

(相変わらず警察はロケット団に骨抜きにされているのね)

(税金で養われているくせに働かないとか屑も良いところだな)

 

「それもそうだな。」

 

そんなこともあり、二人はそのままチョウジタウンへ向かおうとする。その時だった。

 

「・・・・タスケテ。」

「ん?」

 

ヒビキは何かが自分の脳に語り掛けてきていることに気が付いた。

 

「ヒビキ君・・・だよね? お願い・・・タスケテ!!」

「い、一体何なんだ?!」

 

いきなりの幻聴に頭を抱えるヒビキ。

 

「ど、どうしたのヒビキ君?! 何か具合でも悪いの?」

「何かが俺の頭に語り掛けてきているんだ。それも、何かどこかで聞いたことのあるような声でな!」

「・・・コトネちゃんもいるのかい?」

「ああそうだよ!! いるさ! 何時も一緒にな!! 一体誰なんだお前は!!」

 

しかし、その問いに返答が来ることはなくヒビキに謎の声は聞こえなくなってしまった。

 

「・・・うう、一体何だったんだ? 今のは。」

「しっかりしてヒビキ君!!」

 

突然の刺激にふらふらになってしまったヒビキをコトネが支える。

 

「とにかく、早くこのスリバチ山から離れよう。ここにいたら頭がおかしくなりそうだ。」

「そ、そうね。それじゃ、お願いラプラス!」

 

 

スリバチやまの地下一階

 

「うう、何故・・・何故ヒビキ君にこんなことをしなくてはいけないんだ・・・。」

「おい! 何やってる!! しっかりせんか!!」

「・・・流石の千里眼でもこれが限界ですか。」

「残念ながらそのようであります。ランス様。この後如何致しますか? 今ならあの憎き二人を始末できますが?」

「次の私達の役目はコガネに向かうことです。それにチョウジは所詮実験拠点に過ぎません。大いなる計画に比べれば大したものではりません。奴らが壊すというのなら、壊させてやれば良いのです。」

「そ、そうでしたか! 言葉が過ぎました!!」

「分かったなら千里眼を持つこの男を回収しなさい。」

「はっ!!」

 

部下の団員達が後片付けをするのを横目に冷酷な男ランスは邪悪な笑みを浮かべて言う。

 

「果たして彼らに我々のアジトを制圧できるのか。見物ですね。まあ、アテナに上手くやってもらうこととしましょう。さて、行くとしますか。コガネシティへ!!」

 

 

コガネシティ

 

「・・・都民を見捨てて、私だけ逃げろと君は言うのか? アカネにブルーよ。」

 

(続く)

 

 



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「第四十四話~ギャラドスの舞~」

チョウジタウン

 

「さて、ここにロケット団のアジトがあるって聞いたけど。」

 

周囲を見渡すヒビキとコトネ。

 

「・・・・・・・どこにあるんだろうね?」

「さあ?」

「この町のどこかにはあるはずなんだけどねえ。」

「・・・取り合えずポケモンセンターに行こうか。」

「それもそうよね。」

 

 

ポケモンセンター

 

「・・・・何読んでるのヒビキ君?」

「週刊誌だよコトネ。」

「何か面白い記事とかあった?」

「気になったのはあったよ。」

 

ヒビキはそのページをコトネに見せる。

 

「ええと・・・いかりのみずうみの赤いギャラドスはロケット団の仕業。・・・そう言えば、町を行く人々が口々にギャラドスの舞を見に来たのかとか言ってたわね。でも、単純に色違いとかじゃないの?」

「俺も最初はそう思ったんだ。でも、記事を読み進めるうちにある疑問が湧いてきたんだ。」

「疑問?」

「ああ。それも、この内容だ。」

 

ヒビキはその部分を指でなぞる。

 

「ここには、赤いギャラドスは正規の進化ではなく、チョウジタウンの何処かから放たれている特殊の電波の影響である。とあるんだ。そこで俺はポケギアの電波の強度を調べてみたんだ。そしたら。」

 

自らのポケギアのラジオの電源を入れるヒビキ。

 

「ザザザザザザザ」

 

「どういう訳か、全くラジオの電波を受信出来ないんだ。それも、何か強力な何かで阻まれているのかのように。」

「・・・ヒビキ君がそういうなら、きっとそうなのね。ヒビキ君の勘は当たるからね。」

 

二人はポケモンの回復を終えると、いかりのみずうみの方角へ歩き始めた。

 

 

43番道路

 

「さて、ここを抜ければいかりのみずうみだね。」

「あ! ヒビキ君! あそこにゲートがあるよ!!」

「本当だね。草むらを通ると疲れるし、そこを通るか!」

 

ゾクッ、

 

「!!」

「どうしたのヒビキ君?」

「嫌な予感がする。」

 

ヒビキはコトネを傍に引き寄せる。

 

「絶対に俺から離れるんじゃないぞ。」

「あ、うん。」

 

 

43番道路中央ゲート

 

「おっと! こちらの通行料は1000円になって。」

「ストライク! きりさく!!」

「ぐほおあ?!」

「き、貴様ああ!!」

「黙れ! きりさく!!」

「うぎゃあああ!!」

「やれやれ・・・早速勘が当たっちゃったよ。」

 

ヒビキは倒したロケット団員に縄をかけ動きを封じる。

 

「縄は余ってたあなぬけのひもでヨシと。」

「絶対用途間違ってるよねそれ。」

「それな。まあ、でもこれで暫くは動ねえだろ。それじゃ行くよコトネ!」

「おー!!」

 

二人はいかりのみずうみへ進む。

 

「・・・・くそが・・・あのリア充め・・・。」

「爆発しろよマジで・・・。」

 

 

いかりのみずうみ

 

「・・・・着いたねえって雨がすげえな。」

「さっきまであんなに青空が澄み渡ってたのにね。」

 

ヒビキはカバンから傘を取りだす。

 

「一緒に入ろう。ちょっと小さいけど。」

 

コトネはヒビキが開いた傘の中に入る。

 

「ん? あれは?」

 

ヒビキの視線の先には湖の中央で激しく舞う一匹のポケモンの姿があった。

 

「あれは・・・・。」

「紅いギャラドス?」

「「・・・・・・・・。」」

 

ヒビキは傘を閉じ、コトネはモンスターボールを手に取る。

 

「行くか、コトネ。」

「無論よヒビキ君。」

 

二人は土砂降りの雨の中走り出す。

 

「お願いラプラス!」

「行くぞカメックス!」

 

二人は水ポケモンを繰り出し、それらにまたがってギャラドスの元へ向かう。

 

「・・・やっぱりな。何かがおかしいぜ。」

「まるで何かに苦しんでいるかのようね。」

 

ヒビキとコトネの視線の先には此方を食うかのような目つきで睨みつけるギャラドスの姿があった。

 

「少し痛いかもしれねえが、我慢してくれよ!!」

「直ぐにその苦しみを解き放ってあげるからね!!」

「行け、ストライク!!」

「お願いよムウマ!!」

「ウギャアアアア!!」

 

ストライクとムウマに威嚇するギャラドス。

 

「ムウマ、こごえるかぜ!!」

「ストライクはつるぎのまい!!」

 

コトネのムウマがこごえるかぜでギャラドスの動きを封じている隙にヒビキのストライクはつるぎのまいで攻撃を上げる。

 

「ストライク! きりさくだ!!」

 

最大まで上げた攻撃でギャラドスに襲い掛かるヒビキのストライク。

 

「うぎゃああああああ!!」

「急所に当てたか! よし、コトネ!!」

「任せてヒビキ君!」

 

ギャラドスに大ダメージを与え、動きが鈍ったところを狙ってコトネがモンスターボールを投じる。

 

「ここはこれ! レベルボール!!」

 

ボールはギャラドスに命中。ギャラドスを吸い込んだレベルボールは湖に浮かぶ。

 

「・・・・・捕獲、完了ってことね!」

 

紅いギャラドスの入ったボールを拾い上げるコトネ。

 

「週刊誌に、無理矢理進化させられたってあったから、もしかしてレベルが低いんじゃないかって思ったの。」

「それでレベルボールか。俺はてっきりルアーボールとか、ネットボールを使うかと思ったよ。」

「へへ~ん! 残念外れでした!」

 

笑みを浮かべるコトネ。

 

「それじゃ、岸に戻るよ。このままじゃ確実に風邪をひいちゃうからさ!」

「・・・は、は、はっくしょん!!」

 

(続く)

 



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「第四十五話~決意~」

いかりのみずうみ

 

「あの紅いギャラドス。どう考えてみても様子が普通じゃなかった。」

 

ヒビキとコトネが湖の中心部で紅いギャラドスと戦闘を行っていた頃、一人のマントの男が岸から二人の闘いを眺めていた。

 

「・・・やはり誰かの仕業で無理やり進化をさせられてしまったのか。そうでなければレベルボールには入りようがない。」

 

男はコトネがレベルボールでギャラドスを捕獲したところを見て言った。

 

「確かヒビキとコトネだったか。三年前の少年少女とは違う雰囲気だが、どこか似た物も感じるな。何故だろうな。」

 

男はコトネのことを更に凝視する。

 

(ん? あれは?)

 

男は水面に映る彼女の姿に気付く。

 

(一見彼女の姿がそのまま映し出されているように見えるが・・・しかし薄く何か別の姿が映し出されていないか? 姿かたちも彼女によく似た・・・別の少女の姿が・・・)

 

 

「ん? あれは・・・?」

 

ヒビキは岸部でカイリューを付き従えるマントを翻す男を発見する。

 

「・・・まさか・・・いや、間違いない。・・・・コトネ。」

「カイリューにマント。そして赤い髪。間違いなくあの人は。」

 

「「ポケモンリーグチャンピオンワタル!!」」

 

二人はワタルの目の前に到着し、陸へと上がる。

 

「・・・・ワタルさん、ですよね?」

「・・・もし違うと言ったらどうするかね?」

「・・・・。」

 

モンスターボールを構え、コトネを守るかのように手を出すヒビキ。

 

「・・・・冗談さ。君達の想像通りだ。俺はワタル。ポケモンリーグチャンピオンのドラゴン使いさ。」

「そのチャンピオンが何故こんなところにいるんですか?」

「此処の噂、紅いギャラドスの話を聞きつけてね、真相を調べていたんだ。」

「俺達もですよ。何でもロケット団が関わっているって話で。」

「・・・あの少女からの入れ知恵だろう。確か、ブルーだったかな? まあいい。ヒビキ君! コトネちゃん! さっきの闘いを見れば君達が相当な実力のトレーナーだと分かる。良かったら俺にちょっと力を貸してくれないか?」

「・・・・・・・・・・・・・。」

「疑いの目を俺に向けるか。無理もないな。」

 

ワタルはヒビキに背を向ける。

 

「君達は可憐な少年少女。にも拘らず君達は創造神の悪戯で巨悪に立ち向かうことを強いられている。本来なら俺達大人の仕事なのだがな。」

 

ワタルは悲しげな表情を浮かべる。

 

「もう一度言わせてくれ。俺に力を貸して欲しい。巨悪に立ち向かうには君達のような柔軟な発想を持つ子供の力が必要なんだ。」

「分かりきったことを聞くんですね。」

「!!」

 

ヒビキとコトネはワタルの手を引いて言う。

 

「俺とコトネは奴らと闘った時から巨悪と闘う定めにあることを身をもって知りました。」

「それはワタルさんが嘆いたとしても変わりようがないものです。」

「ワタルさん。一緒にあの糞野郎共を叩き潰しましょう。」

「一人より二人、二人よりは三人。力を合わせましょう。」

「・・・!! ・・・すまない。では、俺は先にチョウジに戻る。君達が戻るころまでには何か奴らのアジトに繋がる何かを見つけてみせる。それじゃ、またな。」

 

ワタルはカイリューに乗り、いかりのみずうみを飛び去る。

 

「・・・良いのかいコトネ?」

「良いのよヒビキ君。私も何時までもヒビキ君に守られてばかりじゃいられないし、これが運命ならあえて逆らう必要なんてないわ。」

「・・・・・。」

 

ヒビキは優しくコトネを抱きしめる。

 

「・・・・ごめんねコトネ。俺と一緒になったばかりに君を・・・。」

「気にしないでヒビキ君。さあ、私達もチョウジに行きましょう。ヒビキ君に涙は似合わないわ。」

「うう、コトネ。」

 

ヒビキはコトネをまた傷つけてしまう恐怖から涙していた。

 

(・・・・私がもっと強ければ、ヒビキ君を苦しませずに済むのかな?)

 

その時だった。彼女の心の内側で封じられていた陰が密かに動き出したのは。

 

「・・・・・ゴールド・・・・もうすぐ・・・。」

 

(続く)



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「第四十六話~アジトへの突入~」

チョウジタウン

 

「さて戻っては来たけどワタルさん、どこに行っちゃったんだろうね?」

「取り敢えずはポケモンを元気にしようか。アジトに突入したら休憩は出来ないだろうしね。」

「確かに、ヒビキ君の言うとおりだわ。」

 

 

ポケモンセンター

 

「ええ?! ストライクを私に渡すって?!」

「そうだよ。丁度ここにストライクを進化させるアイテム、メタルコートがある。アサギに向かう時コトネがコイルを捕まえた時に持ってたアイテムだ。これでハッサムにするんだ。」

「でも、そうしたらヒビキ君の手持ちが減っちゃうよ? それに私の手持ちにはヘラクロスがいるし。」

「コトネ。」

 

ヒビキはコトネの顔を確と見つめながら言う。

 

「この先俺達は奴らのアジトの内部に突入することになる。もしかしたら別れて行動することにもなるかもしれない。そうなったら俺は君を守ることが出来ない。守るって、心に誓ったのに。」

「・・・・・・。」

「良いかいコトネ。ストライク、いやハッサムは俺の手持ちじゃなくなるわけじゃない。君の護衛、七匹目の手持ちとして行動を共にさせるという事なんだ。」

 

回復を終え、二人の手持ち達が走ってやってくる。

 

「ストライク!」

「!!」

「このアイテムを持ってコトネの元に向かうんだ。一時的に俺の指揮下から外れるが、これだけは守ってくれ。コトネを、頼むよ。」

「!!」

 

ストライクは任せろと言わんばかりに鳴き、メタルコートを持ってコトネの元へ向かう。そして、進化の光がストライクを包み込み、ハッサムへと進化を遂げる。

 

「・・・分かったわ。ヒビキ君の想い、魂を受け取ったわ。でも、無理はしないでね。それと、私からはこれを。」

 

コトネはカバンから光り輝く石を取りだす。

 

「これはね、ひかりのいしよ。ヒビキ君のトゲチックを進化させるのに必要なアイテム。どこかのタイミングで渡そうかと思ってたけど、それが今だと思うから。」

 

コトネはひかりのいしを手渡す。

 

「・・・ヒビキ君。私は君に守ってもらえるの、凄く嬉しい。常に私を一番に考えてくれてるって感じるから。でも、時には自分のことも大切にしてね。ヒビキ君は私の悲しむ顔を見たくないんだろうけど、私もヒビキ君の悲しむ顔なんて、見たくない・・・・から。」

「・・・コトネ。」

 

二人は強く抱き合う。互いの強い絆を確認し、彼らはポケモンセンターを出る。すると、

 

ドーン!!

 

「爆発音?!」

「あそこだ!!」

 

二人が辿り着いたのはチョウジタウンの土産屋だった。

 

「カイリュー、もう一度はかいこうせん。」

 

ドーン!!

 

「「ワタルさん!!」

「遅かったねヒビキ君! コトネちゃん! やはりここからおかしな電波が流されてる。」

「うう、くそ・・・。」

 

カイリューは男をどけると大きな像を破壊する。

 

「階段は・・・ここだっ!」

「像の下に。」

「秘密階段?!」

「ヒビキ君! コトネちゃん! 手分けして中を探ろう! 俺から先に行くよ!」

 

ワタルがカイリューと共に内部に突入する。

 

「まずはコイツを縛っておかないとな。」

 

ヒビキはうずくまる男をあなぬけのひもで縛る。

 

「もしかしたら町の外から増援を呼んでくるかもしれないからね。念には念をね。」

「それじゃ、行くよヒビキ君!」

「勿論さコトネ!」

 

 

ロケット団アジト管理室

 

ビー! ビー! ビー! ビー!

 

「何事だ!!」

「第七区画に侵入者!!」

「おい! こいつは四天王の!!」

「ワタルか!! 何故ここがばれたんだ!!」

「更に第三区画、第一区画にも侵入者!!」

「ガキが二人じゃないか!」

「いや、こいつ等はランス様を下したあのガキだぞ!!」

「糞が! 取り敢えずワタルの方を何とかするんだ!!」

「総員戦闘配置!! 総員戦闘配置!! 武器の使用制限を解除!! あらゆる手を使ってでも敵を排除しろ!!」

 

 

「・・・さて。敵のお出ましか。おまけに奴ら自動小銃とポケモン、それもドガースで武装か。おっかねえおっかねえ。だけど、それが命取りだぜ! バクフーン、だいもんじだ!!」

 

 

「こっちは敵が少ないわね。という事はヒビキ君とワタルさんの方に敵が向かったのかしらね。」

「!!」

 

ハッサムがコトネの背後に潜み、銃口を向けていた団員を発見し、バレットパンチで撃破する。

 

「ありがとうハッサム。そうね、油断は禁物よね。とにかく、悪いことをやめさせなくちゃ!!」

 

 

(続く)



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「第四十七話~かいでんぱの発信源を突き止めろ!!~」

ロケット団アジト発電区画

 

「しっかし、まさか本当に侵入者が現れるとはな。」

「今日も何もなく終われるはずだったのに!! くそ! 折角のカップ麺が伸びちまったぜ!!」

「でも、ガキ二人とワタルだったか? たかが三人ならすぐ何とかなるんじゃないのか?」

「まあ、だろうけどな!」

「「「あははははは!!!」」」

 

ドガーン!!

 

「な、何だ?!」

「音の方角から第三区画からだぞ!! それも何かが誘爆したかのような。」

「・・・そう言えばだが、確か第一区画にも侵入者がいたよな?」

「・・・!! 第一区画って、真っすぐここに向かってくる区画だぞ!! 直ぐにドアを閉めさせるんだ!!」

「りょ、了解!!」

 

 

第一区画

 

「しかし、拍子抜けするくらい敵がいないな。」

 

第一区画を進んだヒビキは順調に内部へと進行していっていた。

 

「・・・・やはりハッサムをコトネに渡していて正解だったな。」

「いたぞ! 例のクソガキの片割れだ!!」

「ぶっ殺せ!!」

「そうはさせるかよ! バクフーン! かえんほうしゃだ!!」

 

ヒビキはバクフーンと共に並みいるロケット団員を蹴散らしながら前へ前へ突き進む。

 

「・・・コトネ・・・絶対に死ぬなよ。」

 

第三区画

 

「・・・ふっ、みっともないものね。威勢よく中に入って、ヒビキ君にポケモンを貸して貰ったのにね。」

 

コトネは頭から血を流し、力なく壁に寄りかかる形でメガニウム達手持ちのポケモンと共に倒れていた。

 

「・・・・あはは。所詮、私も正義ぶった小娘だったってことだよね・・・これ。」

 

敵が一番多い区画に飛び込む形となったコトネ。初めは手持ちのポケモン達と共に多数の団員を蹴散らしながら前へ前へと突き進んでいた。しかし開幕早々にヒビキやワタルに比べ力が弱いことを見抜いたロケット団員達はコトネに向けて戦力を集中。数の暴力を覆すことは出来ず、こうして遂に力尽きてしまった。

 

「・・・ヒビキ君、ごめんね。私、ヒビキ君を悲しませちゃったよ。」

 

最後に倒した団員のアーボが放ったどくばりが掠ったところから毒が回り、コトネは完全に意識を手放した。

 

「・・・・フフフ、無防備だこと。それに彼は・・・・これは使えそうだわね。丁度ランスが酷使させたせいで代わりの人材が必要になってたし、それに彼女の心の奥底には・・・フフフフ。」

 

白い幹部服を着た女はコトネを連れ去り、誰にも見つかることなくアジトを後にした。

 

 

第一区画最奥部

 

「ここが最奥部か。」

 

遂に区画の最奥部に辿り着いたヒビキは周囲を見渡す。

 

「あ! ワタルさん!!」

「ヒビキ君!! 君もここに辿り着いたんだね!!」

「ワタルさんこそ! でもどうしてここに?」

「俺が倒した団員から聞き出したんだ。かいでんぱの発信源をね。しかし、ドアに鍵がかけられているみたいだな。」

 

二人の目の前の扉はオートロック式であり、何らかのパスワードを入れなければ開きそうになかった。

 

「パスワードか・・・カイリュー、はかいこうせん!!」

「ええ?!」

 

カイリューは扉に向けてはかいこうせんを発射。

 

「・・・・ダメか。」

 

攻撃を受けたにも関わらず扉は傷一つ付いていなかった。

 

「どうやら本当に何かを入れないといけないのかもしれないな。」

「サカキサマバンザイ!!」

「「?!」」

 

二人の目の前に突然一匹のヤミカラスが現れる。

 

「待てヤミカラス! そっちは・・・ワタル!! それと非リア充である俺の敵、リア充の男の方!! 何故おまえらがここに?!」

「サカキサマバンザイ!!」

「ば、馬鹿!!」

 

ウィーン!!

 

ヤミカラスを追いかけて来た団員の制止を振り切り、ヤミカラスはドアを開けてしまう。

 

「開いた。」

「そうか! ヤミカラスのその声がパスワードだったのか!! ヒビキ君! この団員は俺が引き受ける! 君は中へ!!」

「りょ、了解です!!」

 

 

「・・・・こ、これは!!」

 

ヒビキの眼前には多数のマルマインが中央の大型の装置へ電力を供給していた。

 

「マルマインを悪いことに利用していたのか!! それも強制的に!!」

「な、何でガキがこんなところに!!」

「黙れええええええ!! バクフーン!! ゲンガー!! カメックス!! トゲチック!! あの黒い奴らを蹴散らせ!!」

「「「「!!」」」」

「う、うわああ!!」

「助けてくれええ!!」

「ぎゃああ!!」

「よし、トゲチックは団員の監視! 残りの皆でマルマイン達を気絶させるぞ!!」

 

ヒビキはトゲチックに団員の始末を任せ、残りの手持ちでマルマインがいる電力区画へ向かった。

 

「バクフーン、かえんほうしゃ! ゲンガー、シャドーボール! カメックス、なみのり!」

 

一匹ずつ気絶させ、遂に最後の一匹をカメックスが気絶させたところでワタルも内部に突入してきた。どうやら外の団員は蹴散らしたようだった。

 

「ありがとう。君とコトネちゃんの協力でかいでんぱは完全に停波したみたいだ。本当にありがとう!!」

「・・・コトネ・・・。コトネ!! ワタルさん!! コトネ・・・俺の一番大切な・・・一番好きな人はどこにいる!! どうしていつまで経ってもここに来ないんだ?!」

「俺にも分からない。取り敢えず外に出よう。もう歯向かってくる団員はいないようだしな。」

 

 

チョウジタウン

 

「外には警察が集まってきてるな。それじゃ、俺はここでお別れだな。」

「はい! こちらこそありがとうございました! ただ、コトネは見つかりませんでしたが・・・。」

「コトネちゃんのことだ。どこかで君を驚かせようとしてるんじゃないかな?」

「・・・ですよね。」

「・・・・ヒビキ君!」

「は、はい!!」 

「ポケモンマスターへの道は長く険しいという・・それでも目指すのか?」

「・・・・・・・。」

「・・・・そうか。そうだよな。諦めるくらいなら最初から夢なんてみないよな。じゃあ、また会おう!」

 

ワタルはカイリューで飛び去って行く。其の直後、ヒビキのポケギアにウツギ博士から電話が入った。

 

「・・・・あ、ウツギ博士!! ・・・・ええ!?」

 

(続く)

 

 

 



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「第四十八話~動き出した巨悪~」

チョウジタウン

 

「そ、それは本当なんですか?」

 

ヒビキはウツギ博士からかかって来た電話の内容に驚いた。それはロケット団が蜂起しコガネシティ中心部を占拠したこと、そして

 

「コトネがロケット団に捕まって操られている・・・ま、まさか・・・そんな・・。」

 

ヒビキにとって一番衝撃だったのは幼い時から一緒で共に愛し合っていた人が敵の手に落ちたという事だった。

 

「・・・・ですが、それは受け入れられません博士。」

 

ウツギ博士からは警察に任せ、コトネを助けようなどと言う行動はしないようにとのことだった。だが、それは彼の心が許さなかった。

 

「コトネは独りぼっちであった俺のことを何時も守ってくれた。だから俺は大きくなったらコトネを守るって決めたのに・・・・。」

 

ヒビキはバクフーンにまたがるなりコガネシティへと急行した。

 

「コトネ!! 待っていろよ!! 絶対に救って見せてやるぞ!!」

 

 

ワカバタウン

 

「繰り返します!! 現在コガネシティは北区の一部がロケット団を名乗るテロ集団に占拠されました!! 現在コガネシティには多数の民間人が取り残されているとみられ、現在政府は官邸に対策本部を設置し対応に当たるとのことです!! またJRによりますと、この占拠の影響で現在東海道・山陽新幹線はエンジュからシンアサギの間で運転を見合わせており、それぞれ折り返し運転を実施し、九州新幹線との直通運転も中止しています。北陸新幹線・リニア中央新幹線も運転を見合わせており、全線での運転再開の見通しは立っていないとのことです。またコガネ都内を運行するコガネメトロは占拠された区域を走行する地下鉄線の運転を中止しており、運行中の路線は避難民で混雑しているとのことです。またコガネ都知事のヒロフミ氏の安否も分かっておらず・・。」

 

 

「・・・ヒビキ君、君と言う奴は・・・。」

 

渋い顔をするウツギ博士。彼は決してコガネには行くな。そう彼に伝えた。しかし、電話は一方的に切られてしまった。おそらくはコガネに向かったのだろうと推測した。

 

「・・・・今は祈ることしか出来ないか・・・。」

 

 

コガネ放送局

 

「順調ですね。」

「はっ! 事前に内通させておりました協力者の力添えもあり、抵抗も少なく占拠に至りました!!」

「そうですか。実に素晴らしい。」

 

ロケット団四将軍の棟梁アポロは邪悪な笑みを浮かべる。

 

「そしてチョウジでアテナが拾ったあの少女、まさか前世の記憶を持っていたとは。」

「初めは本当か疑わしいと思いましたが、まさか本当だとは思いませんでした。」

「おお、ランスか。それで、どうなった。都知事の身柄は確保出来たのか。」

「・・・・残念ながら。」

「・・・・そうですか。冷酷な貴方が取り逃がしたということは、相当優秀な者がいたのでしょうね。それも、三年前に我々のボス、サカキ様の野望を打ち砕いた少女が。」

 

アポロは外を見つめる。

 

「ですが、それも意味を成すことはないでしょう。今の我々には。」

「・・・!!」

 

アポロの背後に爆発した前髪が特徴の少年が現れる。

 

「さて、此方にヒビキが向かっていることを彼女が探知したみたいですね。では、命じるとしますか。」

 

アポロは彼女に正対してこう告げた。

 

「彼を・・・・潰しなさい。徹底的に。」

「・・・・・・・。」

 

(続く)

 

 

 



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「第四十九話~書き換えられた人格~」

コガネ放送局

 

「・・・・やはり彼女が絡んでいましたか。」

 

アポロはコガネ放送局のテレビに映し出される画像を見てそう呟いた。冷静を装いつつも、怒りを持った声で。

 

 

コガネシティ・テンノウジ区役所

 

「コガネシティの皆さん! 私はコガネ都知事のヒロフミです。一時行方不明との報道が流れ、指揮系統の混乱を招きましたこと誠に申し訳ございません。本当は都民の皆さんを、仕事や観光で訪れた人々を置いて逃げることは後ろ髪を引かれる思いでありました。しかし、私は都知事であり、コガネシティの危機に立ち向かわなくてはならない立場の人間であり、失ってはならないと諭され、今ここで皆さんにメッセージを送っております。この場で私をロケット団の手から救ってくれた、三年前にロケット団を倒した英雄である彼女、ブルーさんには感謝の意を表明致します。」

 

コガネシティの行政区の一つであるテンノウジ区の行政の中心テンノウジ区役所に設置された臨時の放送局からヒロフミは取り残された都民へ向けて放送を行っていた。

 

「そして今取り残されている多数の都民の皆さまに約束致します。現在から24時間以内にコガネシティを解放し、ロケット団を壊滅させます!! 現在我が党所属の国会議員を通して政府に対し彼らをテロリスト集団として鎮圧させるよう働きかけております。もし、政府が動かない場合はコガネ及び周辺の警察組織の総力を結集し、コガネが奪回致します!! 既にアサギ、エンジュの警察当局は協力することを表明しており・・・」

 

 

コガネ放送局

 

「・・・・フン!」

 

テレビの電源を切り、アポロはリモコンをテレビの画面に投げつける。画面に若干のヒビが入る。

 

「さて、都内の情勢は?」

「初めは良かったのですが、正直現在芳しくねえな。」

「・・・ラムダか。」

「ヒロフミの言うようにマジで周囲の警察が集まってきてやがるぜ。どうやら内通させてた奴らも捕まっちまったみたいだしな。」

 

ロケット団はジョウト地方の警察にスパイを送り込み、情報を抜き取り、骨抜きにしていた。しかし、

 

「しかしなあ、まさかそれもブルーはお見通しだったとはなあ。」

 

ロケット団は骨抜きに出来ていたと思っていたのだが、それは違っていたのだ。実際は国際警察のブルーがあえて奴らを泳がせていたのだ。動き出したときに一網打尽に出来るようにと。

 

「時間が経つごとに多数の武装した機動隊が此方を包囲する形で前進しつつあるようね。だけどそれも無駄なことよ。」

 

アテナは不敵な笑みを浮かべながらそう言った。

 

「それもそうだな。それじゃ、俺は配置に着くぜ。」

 

ラムダはある人物に変装して別の部屋へと移動した。

 

 

エンジュシティ

 

「まずエンジュに到着か。暫し休息に入るか。」

 

バクフーンから降りるヒビキ。

 

「しかし、このままじゃ到着する頃にはバクフーンが力尽きちまう。」

 

ポケモンセンターでヒビキはバクフーンをジョーイさんに預け、自身も休息に入る。

 

「・・・・・かくなる上は・・・。」

 

ヒビキはコトネから貰い受けたひかりのいしを取り出す。

 

「トゲチック。」

 

ヒビキはトゲチックをボールから出す。

 

「それじゃあ、行くよトゲチック。」

「チック!!」

 

ひかりのいしをトゲチックにかざし、進化を始める。

 

「・・・・これがトゲキッス・・・。シンオウチャンピオンシロナさんも手持ちに入れているポケモンか・・・。」

 

ヒビキはトゲキッスをまじまじと見つめる。

 

「トゲチック。これから俺は困難な闘いに挑む。どうか俺に力を貸して欲しい。」

「キッス―!!」

 

任せてくれ! と言わんばかりに鳴くトゲキッス。

 

「そうか。ありがとう。」

 

ヒビキはトゲキッスに抱きつく。その後バクフーンの回復が完了し、ヒビキはエンジュシティを後にした。

 

「頼むぞトゲキッス!!」

 

ヒビキはトゲキッスにまたがるとコガネシティに向けて前進を再開した。

 

 

コガネ放送局

 

「・・・・・ぐあ・・・・。」

「貴方じゃ私には勝てない。それに、貴方は私が探している人じゃない。私が探している彼は・・・・どこにいるのか・・・吐け!!」

「くっ!!」

 

 

コガネシティ北区郊外

 

「最高速度で飛ばしたお陰であっという間に着いたな。トゲキッス! ゆっくり休んでてくれ!!」

 

コガネシティに辿り着いたヒビキはロケット団の監視の目が緩いエリアを選んで着陸した。

 

「さて、ここからどうすればいいのやら。」

 

コガネに着いたとは言ってもコトネがどこにいるのかなど知る由もない彼は何処から彼女を探すべきか。それを考えていた。

 

「放送局だ。コガネ放送局に・・・コトネは・・・い・・・る。」

「!! シルバー!!」

 

ヒビキの目の前には命からがら脱出してきたシルバーが現れた。所々服が破け、頭から血を流していた。

 

「ど、どうしたのシルバー!! ボロボロじゃないか!!」

「ヒビキか・・・悪いことは言わねえ。逃げろ。コトネが俺を。」

「な、何を言ってるんだよ! コトネが何したのよ!!」

「いや、奴はコトネじゃねえ。コトネのような別の人間と言うべき存在だった。いくら俺が語り掛けても・・・うう。」

「あ、無理しちゃだめだ!!」

 

ヒビキは直ぐにシルバーの傷の手当を始める。そして気持ちを落ち着かせてから話を聞いた。

 

「・・・みっともねえな。最強になるとか、群れる奴は嫌いだとか言ってたのにさ。」

「シルバー、何があったのか教えてくれる?」

「・・・あれは俺が放送局に乗り込んだ時のことだ。」

 

 

30分前のコガネ放送局

 

「フン。やはりロケット団なんて大した事ねえな。」

 

俺は下っ端の連中を蹴散らしながら放送局の内部を突き進んでいた。

 

「! 誰だ!!」

 

俺は背後に気配を感じ、後ろへ振り向いた。

 

「・・・コトネか。驚かせやがって。お前も来ていたのか。」

「・・・・・・・シルバー。」

「ああん? どうしたんだお前? そう言えばヒビキは一緒じゃねえのか?」

「・・・ヒビキ・・・・そう。今彼はヒビキと言うのね? 私の探している最愛の人は。」

「・・・・おいコトネ、お前何か変な物でも・・・・!!」

 

次の瞬間俺の腹を切り裂こうとハッサムが突っ込んできた。

 

「な、何をしやがる!!」

 

もしあと少し反応が遅れてたら確実に死んでいた。今思えば初めからおかしかった。

 

「私はコトネ何かじゃない。私はクリス。ワカバのトレーナーにして。」

 

「ギャアァーース!!」

「ルギアに選ばれし者よ。」

「・・・ルギア・・・だと?」

「やりなさいルギア。私の想いを妨げようとする邪魔者を渦の餌食にしてしまいなさい。」

「ま、待てコトネ!! お前は今!!」

 

俺はコトネの奴が洗脳されてることに気付いた。洗脳を解こうと戦うことにしたが、

 

「・・・・ぐはっ。」

「・・・・シルバーも随分と弱くなったものね。私が知ってるシルバーはもっとバトルを楽しませてくれた。シルバーの化けの皮を被った偽物め!」

 

俺は奴に勝てなかった。ルギア一匹にしてやられた。

 

「お、お前。トレーナーに直接攻撃は。」

「卑怯・・・と言いたいの? 偽物に対して当然の報いだと思うけど?」

「偽物・・・だと?」

「最早これ以上の問答は不要ね。殺りなさい、ルギア。」

「くっ!!」

 

「あの時は煙玉で何とか逃げ切った。命からがらな。」

「・・・・・・。」

「今のコトネは完全に人格を書き換えられてる。ヒビキ、お前が行って敵う相手じゃねえ。だがら。」

「逃げないよ。」

「な、何を言ってる。」

「シルバー、俺はコトネの幼馴染だ。誰よりもコトネのことを知ってるし、誰よりも寄り添って来た自信がある。そしてコトネに俺は昔何度も助けてもらった。もし、今コトネが苦しんでるっていうなら、俺が助ける。いや、コトネは今俺の助けを待っている。そして今コトネがルギアを従えていると言うなら!!」

 

ヒビキはにじいろのはねを取りだし、空に掲げた。すると何処からか鳴き声が聞こえてきた。

 

「ショオォーッ!!」

「俺はホウオウに選ばれただ。」

「・・・・なら、俺は何も言わねえ。道案内はしてやる。そこからは、知らねえけどな。」

 

 

コガネ放送局

 

「・・・・ホウオウは我々の支配下から離れましたか。やはり始末しておくべきでしたか。過ぎたことを言っても仕方ありませんが。」

 

 

コガネシティ上空

 

「・・・・・・・・・・。」

 

(・・・今の私は・・・誰なの? ヒビキ君・・・早く・・・早く・・・・助けて!!)

 

 

(続く)

 



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「第五十話~前世の人格との邂逅と真実~」

コガネ放送局外

 

「おいおい、本当に俺達は勝利できんのかよ?」

「都知事のヒロフミを捕らえることによってコガネは、ジョウトに俺達ロケット団が蘇ったことを高らかに宣言するはずだったのだが・・・。」

 

刻一刻と不利になる戦況に団員達は動揺していた。

 

「ど、どうするよ? サカキ様は帰ってきてくださるのか? 幹部の連中は俺達の行動でサカキ様が。」

「お、おい! 何か聞こえるぞ!!」

 

 

コガネ放送局スタジオ

 

「諸君!! 私はロケット団ボスのサカキである!! 諸君らの働きをみて私は大いに感動した!! 今日、たった今この瞬間ロケット団の完全復活を宣言する!!」

 

動揺する団員達の士気を上げ、警察側に容易に手出しできないようにする為にラムダは得意の変装でサカキに変装。コガネ放送局から全国に放送を行ったのだ。それも、何の意味をなさないことを知ることなく。

 

「そして諸君! これを見よ!!」

「ギャアァーース!!」

 

コガネ上空を飛行するルギアの姿が映し出される。

 

「これは幻想ではない。私の優秀な部下たちはジョウトに伝わる伝説のポケモンホウオウを従えることに成功した!! 如何にコガネ警察が、日本政府が我々に歯向かおうとも何の意味をなさないことをここに示して見せよう!!」

 

コガネ上空

 

「あそこがコガネ放送局だ。俺はあそこでヒビキに会った。」

 

ヒビキとシルバーは時折地下通路を通り、敵の眼をかいくぐりながらコガネ放送局へ向かっていた。

 

「しかし、妙だな。」

「何が?」

「いや、俺が行ったときは上空も地下も監視の目が強かった。多数のヤミカラスやゴルバットが飛行し、警戒態勢が敷かれていた。にも拘らず今はむしろ無警戒だ。まるで誰かの為にあえて空を空けているような。」

 

二人が地上に出たその時だった。

 

「そのまさかよ。」

「「!!」」

「エアロブラスト。」

「!! ホウオウ!!」

 

ホウオウをボールから出して盾にするヒビキ。

 

「う、うわあ!!」

「シ、シルバー!!」

 

突然の風圧でシルバーが遠くへと投げ飛ばされる。

 

「トゲキッス!! シルバーを連れて安全なところに!!」

 

トゲキッスの入ったモンスターボールをシルバーに目掛けて投げるヒビキ。ボールはシルバーの体に当たると開閉機構が作動し、トゲキッスがボールから飛び出す。そしてトゲキッスはシルバーを拾い上げると安全な速度で地上へと向かった。

 

「・・・コトネ。」

「・・・・・・・。」

 

ルギアの背中に仁王立ちするコトネをヒビキはホウオウと共に地上から見上げた。

 

「・・・ゴールド・・・いや、この世界ではヒビキと言うのよね。」

「・・・何の真似かは知らないがコトネの体から速やかに出て行ってくれ。コトネが苦しんでいる。」

「それは分かってるわ。」

「・・・なら!」

「出来ないのよ。」

「出来ない?」

「ええ。今の私はコトネちゃんの心の奥底で幽閉されている存在。それが何の訳かは分からないけどこうして表に出てきてしまったの。」

 

コトネの体を使っている何かは涙を流し始める。

 

「出来ることなら私も早くこの身体をコトネちゃんに返してあげたい。でも、問題があるの。」

「問題? ・・・・まさか戻る先がないのか?」

「そう。コトネちゃんの心の中で幽閉されていた私には実体がどこにもないの。」

「なら、その実体はどこにあるんだ。」

「それは。」

 

コトネに乗り移っている者はヒビキを指さす。

 

「貴方の心の奥にある者が持っているわ。」

「・・・・俺の心の奥?」

「ええ。私はコトネちゃんの心の奥底に幽閉されてしまったのに対してゴールドはヒビキとして生まれ変わることが出来た。その結果貴方の心の奥には以前の私の実体に関する記憶が封印されているのよ。」

「・・・・・・・・・・・・・・。」

「いきなりのことで信じられないと思うわ。でも。」

 

ルギアは風を起こし、ヒビキに向けて放つ。

 

「うわっ!」

 

風によろけるが、ヒビキは何とか踏みとどまり、視線をコトネの眼に向ける。

 

「黄金の心を持つ者と白銀の魂を持つ者が古都に美しき音を響かせることで水晶に閉じ込められた者は。」

「実体を取り戻す・・・・というのか。」

 

ヒビキはホウオウの背中にまたがる。

 

「つまりは俺と君が闘うことで二人の命を救うことが出来る・・・ということか。なら、俺も全力で応じる! そしてコトネを救ってみせる! そして心の奥底に幽閉されている君もね!!」

「・・・・ありがとう。勝負はルギアとホウオウによる一騎打ち。全力を望むわ!!」

「望むところだ!!」

「「行くぜ!!(行くわよ!!)」」

 

(続く)

 



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「第五十一話~もう一人の主人公~」

コガネシティ上空

 

「ホウオウ! せいなるほのおだ!!」

「ルギア!! ハイドロポンプで迎え撃つのよ!!」

 

ドーン!! バリバリ!!

 

衝撃波がコガネシティ上空で木霊し、周辺の窓ガラスが割れる。

 

「ぐっ!」

 

割れたガラスが風に乗りヒビキに降り注ぐ。

 

「隙を見せたわね! ルギア、ヒビキにじんつうりき!!」

「うぐう!!」

 

トレーナーへの直接攻撃に悶えるヒビキ。

 

「どうしたのかしら? その程度の覚悟じゃコトネちゃんを救うことなんて不可能よ!!」

「不可能? そんなこと・・・・あるかあああああああああああああああ!!!」

 

伝説ポケモンの攻撃を必死に耐え、ヒビキも反撃を開始する。

 

「ホウオウ! もう一度せいなる炎を放て! 目標はコトネだ!!」

「!!」

 

本当に良いのかという表情を浮かべるホウオウ。

 

「構うな!! こちらに直接攻撃してきたんだ。それ相応の反撃を受ける覚悟があるはずだ。そうでなきゃ始まらねえ!! 絶対にコトネは助かる!! だから、撃て!!」

 

ヒビキの迫真迫る表情に押されホウオウは攻撃態勢に入る。

 

「せいなるほのお、発射!!」

「・・・・そう。この時を待っていたわ!! ルギア!! ヒビキに向けて・・・エアロブラスト!!」

 

双方の伝説ポケモンが双方のトレーナー目掛けて大技を放つ。

 

「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」

 

やがて双方は攻撃を躱すことなく直撃する。

 

「ぐあ・・・・。」

「うぐ・・・・。」

 

双方が攻撃に晒され、傷だらけの身体で空に投げ出される。その時だった。

 

「この世界は…奇跡で出来ている。」

 

先にコガネシティにシルバーと共に突入していたミナキはコガネデパートの地下倉庫で幽閉されていたマツバらと共に外へと出ていた。

 

「マツバ、身体の方は本当に大丈夫なのか?」

「まあ、大丈夫なわけないけど・・・あれは見ておかなきゃいけないからね。」

 

マツバはミナキの方を借りながら落下していく二人とホウオウ、そしてルギアを眺める。

 

「スリバチ山で二人の心の奥を見たんだ。ロケット団の監視の目を掻い潜ってね。その時、あの子達の心の奥にはもう一人の人格がいるって。こうなることは・・・運命だったのかもしれない。」

「黄金の心を持つ者と白銀の魂を持つ者が古都に美しき音を響かせることで水晶に閉じ込められた者は実体を取り戻す・・・か。」

 

ミナキはスイクンにまたがると彼らの落下するであろうポイントへ向けて走り出した。

 

「急ぐぞマツバ。あの二人を死なせてはならん。」

「当然さ。それが僕に出来る精一杯のお詫びだからね。」

 

 

「ヒビキ!! コトネ!!」

 

別の場所ではバクフーンに介抱を受けていたシルバーが落下する二人を見ていた。

 

「糞!! なんて馬鹿なことを!! 無理心中なんてしやがって!! この大バカ者が!!」

 

ボロボロの身体を押してシルバーは走り出す。そしてすぐ後ろをバクフーンが追いかける。

 

「絶対にあいつらを死なせてなるものか! 俺が唯一得た信頼出来る・・・・友を!!」

 

涙を流しながらシルバーは必死に走る。その時、空からホウオウの羽がシルバーの後頭部におちて来ていたのをこの時彼は気付くことなかった。

 

 

(・・・・・・・・身体中が痛む・・・意識が・・・だんだんと失われていくのを感じる。そうだ! コトネは!!)

 

薄れゆく意識の中でヒビキはコトネを探す。

 

(いた。コトネ!!)

 

ヒビキは一緒に落下していくコトネに必死に手を伸ばす。コトネもヒビキの気配を察して同じく手を伸ばす。

 

(あと・・・・少し)

 

やがて双方の右手が固く結ばれる。

 

(・・・・・光?)

 

最期に光が二人の眼の前を覆い隠したところで意識を完全に手放した。

 

(コトネ・・・最後君と一緒に逝けて俺は・・・・幸せだよ・・・)

(ヒビキ君・・・・私もよ・・・)

 

そしてそのままの勢いで二人は地面に強く叩きつけられる。それでも二人は手を放すことなく、力なく倒れ伏すのである。

 

「・・・・・・ここは・・・・?」

 

(続く)

 

 



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「第五十二話~ロケットレーダー~」

コガネシティ地下鉄駅入り口付近

 

「・・・・・・・。」

 

眼を覚ました少女は自らの手を握ったり離したりして手の間隔を確認していた。

 

「・・・・生きてる・・・私・・・生きてる?」

「光はこの辺りで光り輝いていたはずだ。」

 

少女が信じられないという表情を浮かべているところにミナキとマツバがスイクンと共に現れる。

 

「・・・・・き、君は・・・!!」

「・・・・・み、ミナキさん?」

 

二人が驚いているのを他所にスイクンが少女の顔に自身の顔をまるで猫のようにすりすりする。

 

「・・・・やはり君は・・・・クリス?」

「・・・・・うん。」

 

ミナキはクリスのことを優しく抱き抱える。

 

「私は信じていたんだ。君と再び会える日を。」

「ミナキさん・・・。」

 

クリスも自分のことを知っていた人がいたことに安心してミナキに抱きつく。

 

「・・・でも、君が蘇ったということは・・・。」

 

マツバが少し顔をしかめる。次の瞬間、シルバーの悲痛の叫びが木霊する。

 

「ヒビキー!! コトネー!!」

「「「!!」」」

 

三人は急ぎ声のした場所へと急ぐ。

 

「ヒビキ!! コトネ!! 嘘だよな!! 嘘だって言ってくれよ!!」

 

シルバーは力なく倒れているヒビキをその場で膝をつきながら抱き、泣き叫ぶ。

 

「なあ!! 起きてくれよ!! 起きろよ!!」

「・・・・・。」

 

バクフーンは何も言わずにシルバーの傍に控える。

 

「・・・・・・やはり。」

 

三人の眼前には完全にこと切れているヒビキとコトネとそれを不可能と分かりつつも生き返れと叫ぶシルバーの姿があった。

 

「・・・・・・・。」

「・・・・・・・。」

 

悲しい現実に目を逸らすミナキとマツバ。

 

「・・・・・・シルバー君。」

 

一方、クリスはシルバーの隣に向かう。

 

「・・・・・・何者だ。」

「・・・・私はクリス。ヒビキ君とコトネちゃんの心の奥底に封印されていた者よ。」

「じゃあ、お前がヒビキとコトネを殺したのか!!」

 

怒りに任せてクリスの胸倉を掴むシルバー。直ぐにバクフーンが止めに入り、シルバーは我に帰る。

 

「・・・・そんなわけねえよな。お前が殺したわけねえよな。すまなかったな。」

「・・・・シルバー君。」

 

クリスはヒビキとコトネのカバンから二つの羽を取り出す。

 

「・・・・これはにじいろのはねと、ぎんいろのはね・・・か?」

「そうよ。この羽に祈るのよ。正しい心を持つ人なら、ホウオウとルギアは応えてくれるわ。」

「・・・・正しい心・・・か。けっ! 俺には到底かなわねえことだな。」

 

そういうとシルバーは羽を地面に叩きつけ、足で踏みにじった。

 

「・・・・俺はワカバでポケモンを奪い、二人を侮辱し、ポケモンを傷つけ、そしてサカキの息子だ。そんな俺が正しいこころだと? フン! 冗談も休み休みにしておけ!! 結局は俺は二人を救えないまま終わるんだよ! それが犯罪者血を引く俺にお似合いの末路さ!!」

 

涙ながらシルバーは己の本音をクリスにぶちまける。

 

「・・・シルバー君。」

「ギャアァーース!!」

「ショオォーッ!!」

「な、何?!」

「クリスちゃん! シルバー君! 空を見るんだ!!」

 

マツバの指摘に二人は空を見上げる。

 

「・・・・・う、ウソだろ?」

「・・・・・あれは・・・。」

 

彼らの視線の先には再びロケット団の支配下に堕ちたルギアとホウオウの姿があった。

 

 

ラジオ塔

 

「・・・・何とか間に合いました。感謝しますよランス。」

「こんなこともあろうかと準備していたのが。」

 

二人の視線の先にはロケット団の支配下に堕ちたルギアとホウオウの姿があった。

 

「「ロケットレーダー。」」

 

ロケット団技術班が伝説のポケモンを支配下における装置の開発をミュウツー開発と並行して進めていたロケットレーダー。それがたった今完成の時を迎え、試運転に臨んでいたのだ。

 

「そしてヒビキとコトネを無力化した。これで邪魔者はおりませんね。」

「ええ。これでサカキ様もお戻りになられるであろう。」

 

 

「・・・・・どうすれば良いんだ。」

 

敵の手に再び堕ちたルギアとホウオウを見てシルバーはその場で崩れ落ちる。

 

「・・・・・どうすれば良いか、教えて欲しいか?」

「!! その声は!!」

 

(続く)

 



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「第五十三話~父~」

「・・・・お、親父・・・・。」

「久しぶりだな息子よ。」

 

シルバーの眼の前には三年前に姿を消した父親。それもただの父親ではなくロケット団のボスサカキの姿があった。

 

「・・・・い、今更何の用だ!! まさか、あのラジオ放送を聞いてきたのか!! 奴らとご流するために!!」

「・・・・はじめはそのつもりだった。だがな。」

 

サカキは空を見上げる。

 

「やはり私も所詮は人の親でしかなかった。苦しんでいる息子を見てしまってはその気が失せてしまった。三年前に息子を裏切ったが故の罪悪感でな。」

「・・・・・・・・。」

「それで・・・何をしようというの?」

「・・・・見慣れぬ顔だな。だが、どこか懐かしさも感じさせる少女だな。」

 

サカキはクリスを見て懐かしい表情を浮かべる。

 

「勝手なことであるが、お主に我が息子の事を任せるとしよう。」

 

サカキはそう言うとクリスにあるものを手渡す。

 

「・・・・これは一体?」

「これがあればアポロの持つ秘密兵器を無力化出来るであろう。ただ、射程範囲が狭いのが欠点だがな。」

 

クリスが受け取ったのは小さなリモコンのような物だった。

 

「これを使えば勝てる可能性が上がるであろう。あとは。」

「シルバーの決断次第・・・。」

 

サカキはシルバーの傍に向かい、腰を下ろして頭を撫でる。

 

「・・・・シルバー。」

「・・・・なあ親父。・・・俺は・・・俺は・・・。」

 

シルバーは泣きながら力なく倒れるヒビキを抱く。

 

「お前は、お前のすべき道を進め。それは今お前にしか出来ない。それがヒビキやコトネを救うこととなる。」

 

そう言うとサカキは踵を返し、その場を立ち去った。

 

「・・・・シルバー。これが私に出来る最大の誠意だ。アポロ達を討つわけにはいかぬゆえにな。」

 

 

「・・・・俺の進むべき道・・・か。」

 

シルバーはヒビキとコトネを優しく地面に置くと涙を拭いた。

 

「・・・・絶対に響きとコトネは救う!! 必ずな!! その為に皆、力を貸してくれ!!」

 

シルバーは手持ちポケモン全てをボールから出す。

 

「オーダイル、ゴルバット、レアコイル、ニューラ。これから俺はヒビキとコトネを救い、俺の闘いの決着をつける!! 頼むぞ!!」

「「「「!!」」」」

「シルバー君、私も行くわ。」

 

クリスは過去から引き継いだ残された唯一の手持ちであるオーダイルを繰り出す。

 

「・・・ほうクリス、お前もオーダイルを使うのだな。実に頼りになりそうだな。」

 

シルバーはクリスと共にラジオ塔に向け、歩みを進める。

 

「・・・・待っていてくれヒビキ、コトネ。絶対に!! 絶対に!!」

「・・・・ゴールドから頂いたこの命・・・生まれ変わりのヒビキ君に捧げる!!」

 

(続く)



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「第五十四話~俺は・・・・~」

ラジオ塔頂上

 

「・・・・まさかシルバー坊やがこちらに向かって来るとはね。」

 

ロケット団残党軍の頂点に立つアポロは下位層から上がって来る部下からの報告を聞きながら彼はルギアとホウオウをロケットレーダーで制御をしていた。

 

「さて、シルバー坊やはどういった選択をするのか、実に楽しみですねえ。ふふふふ、はははははははははは!!」

 

 

「な、何だこのガキ共は!!」

「ヒビキとコトネは始末したんじゃねえのかよ!!」

「そんなこと言ってる暇があれば応戦しろ!! ここは突破されるわけには・・・。」

「どけ!! 貴様ら雑魚に構っている暇なんてねえ!! オーダイル、ハイドロカノン!!」

 

気迫のこもった表情でシルバーは並みいる敵をなぎ倒し、ラジオ塔という大舞台?で派手に大技のハイドロカノンをぶちかましながらながら突き進む。

 

「オーダイル、シルバー君のオーダイルのカバーを!! たきのぼり!!」

 

一発撃つと隙が大きい究極技。その隙をカバーするかのようにクリスが援護する。

 

「・・・・・・ここから先には行かせませんよ!!」

 

ラジオ塔の最上階へ繋がる階段には残党軍の幹部ランス、アテナが立ちはだかる。

 

「行けゴルバット!!」

「行きなさいヘルガー!!」

 

敵のポケモンがシルバー達に向かって来る。

 

「シルバー君! 貴方のオーダイルをいったんボールに戻して!!」

「ど、どういうことだ?!」

「良いから早く!!」

 

取り敢えず言われるがままにシルバーはオーダイルを戻す。

 

「一体何をする気かは知りませんが、私は容赦しませんよ!!」

 

ランスのゴルバットはシルバー、アテナのヘルガーはクリスのオーダイル目掛けて突っ込んでくる。

 

「こうするのよ!!」

 

クリスはそう言うとシルバーの腕を掴み、オーダイルにまたがる。

 

「たきのぼり!!」

 

オーダイルは階段の前に立ちはだかるランスとアテナを弾き飛ばしながらたきのぼりの勢いで階段へ突き進む。

 

「「な、何?!」」

「オーダイル、れいとうビーム!!」

 

動揺する幹部たちを後目にすかさずれいとうビームで足場に障害物を設置し、進撃を妨害する。

 

「さあ、行きましょう!!」

「あ、ああ。」

 

二人はそのまま最上階まで駆け上がる。この間に団員は誰一人おらず、比較的スムーズに最上階までたどり着いた。

 

「・・・・来てしまいましたか。」

 

アポロはそういうとシルバー達の方へ振り向く。

 

「・・・・しかし、ここまで来るに至ってはかなりの体力を消費してしまったのではありませんか? それに我々には。」

「ギャアァーース!!」

「ショオォーッ!!」

「ルギアとホウオウ、それに加えてサカキ様もおられる。勝ち目などない。」

「そうだシルバー。今なら若気の至りで水に流すこともやぶさかでは。」

「黙れ!! お前は親父じゃねえ!! どうせラムダの変装に決まってる!! いや、そうだろ!!」

「・・・・分かってるじゃねえか。」

 

ラムダはサカキの変装を解く。

 

「だがよう坊ちゃん? 伝説を従える俺達に勝てるとでも思うのか?」

「勝てる勝てないじゃない!! 勝たなきゃいけねえ!! ヒビキとコトネ! あの二人を俺は救わなきゃいけねえんだ!!」

「では、その為には一人の命を犠牲にしなくてはならないと言ったら?」

「・・・・・何?」

「!!」

「太陽が人照らせば必ず影が出来る。それは切り離すことは出来ず、常に対となる。」

「何が言いたい。」

「貴方の隣に控えるその少女、彼女はヒビキ・コトネと対になる存在。彼らが光だとしたら、彼女は影。そして切り離すことは出来ない。もし、彼女が光となってしまったら?」

「・・・・・まさか、ヒビキとコトネは・・・・。」

「ええ。今坊やが考えている通りかと。光と影は共存できず、どちらかは表舞台から引っ込まなくてはならない。」

 

アポロはシルバーを指さして選択を迫る。

 

「さあ、選ぶのです!! 戦友を犠牲に友を救うか、友を犠牲に戦友を生かすかを!! 魂の光か、心の闇かを!!」

「・・・・・・・・・・・・。」

 

顔面蒼白となり、その場で固まるシルバー。

 

「その一瞬の動揺が命取りになるぜ!! マタドガス!!」

 

ラムダのマタドガスがシルバー目掛けて毒ガス攻撃をする。

 

「!! しまった!!」

 

回避もポケモンの展開も間に合わない。被弾をシルバーは覚悟する。

 

「!! な、なんてことを!!」

 

咄嗟にクリスがシルバーの盾となり、毒ガス攻撃を受けていたのだ。

 

「んあ? わざわざ攻撃を受けに来るなんてな! なら、お前から始末してやるぜ!!」

「・・・・う、うおおおおお!!」

「な、何をすんだてめえ!!」

 

クリスはボロボロの身体を降り立たせ、自分ごとラムダを勢いよくラジオ塔のガラスへ叩きつける。

 

「オーダイル、ラムダ目掛けてたきのぼり!!」

「!!」

 

シルバーはクリスがやろうとしていることを一瞬で理解した。

 

「や、やめろクリス!! そんなことするんじゃねえ!!」

 

シルバーは制止するも、オーダイルはクリスごとラムダをたきのぼりの勢いでラジオ塔のガラスを突き破り、外へ突き落した。

 

「・・・・はははははは!! まさか自ら死を選ぶとは!! 流石は影!! 自身の役割を理解されている!! さて、これで良かったですねえ坊や。ヒビキとコトネは救われますよ! 貴方が生き残ればの話ですがねえ!!」

 

アポロは右手を上げ、ルギアとホウオウに攻撃の指示を出そうとする。

 

「・・・・俺は決めた。俺は!!」

 

そういうとシルバーはクリスがぶち明けたガラスから外へ飛び降りる。

 

「俺は・・・・選ばない!! いや、全員を救う! ヒビキも、コトネも、クリスも!!」

「・・・・・傑作です!! 最高のショーですねえ!! ですがそれも無意味!! ルギア、ホウオウ! 坊やたちを焼き払うのです!!」

 

ルギアとホウオウが攻撃態勢に移る。

 

「・・・・そう言えば・・・使ってなかった。」

 

落ち行く中、意識が遠くなる中でクリスはサカキから渡された物のスイッチを入れる。

 

「・・・・でも、これでシルバー君は悩まなくて・・・・すむ・・・。」

 

(クリス、知っているか? 誰かが言っていた。この世界は奇跡で出来ていると。もし、彼らが強く願うのなら・・・固く強い意志があれば・・望みは光、輝き、空に木霊するだろう)

 

(今の声は・・・?)

 

その瞬間、ルギアのエアロブラストとホウオウのせいなるほのおがぶつかり、大爆発を引き起こす。

 

(続く)

 

 

 



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「第五十五話~不死鳥~」

ラジオ塔

 

「ふふふ、まさか自ら死を選ぶとは。ですがこれでサカキ様もお戻りになれるはず。」

 

キラン!!

 

「ん? なんだあの光は?」

 

 

(・・・・ここはどこだ? 真っ暗で・・・何も見えやしねえ・・・いわゆる、あの世って奴か? ・・・・そうか、ホウオウとルギアの攻撃で生じた爆発に巻き込まれたんだったな。そりゃあ、死んでも仕方ねえよな)

 

その時、シルバーの脳裏に何者かが語り掛けてくる。

 

「・・・・・正しき心を持つ者よ。」

「んあ? 一体誰のことだ?」

「シルバー。そなたの行動を我は見ていた。そして見定めようとした。」

「・・・そもそも、お前は一体何者だ。」

「・・・・我は正しき心を持つ者に舞い降りる不死鳥なり。」

「不死鳥? へっ、冗談も休み休みにしろってもんだ。」

「・・・・我を信じぬか。まあ、それも無理はあるまい。だが、最後にお主がとった行動。それこそがまさに正しき心、魂を持ち、真の気持ちを解き放ち、明日を切り拓こうとした。それにほかならぬ。」

「・・・・俺らしくねえことをしたもんだな。最後の最後にな。」

「自分らしくない・・・か。我にはそうは思えぬ。最後にお主がとった行動こそが、シルバー、そなたが心の底から願い続けたものだ。信頼できる友と歩んで行きたい。例え、その先がいばらの道であったとしても・・・。」

「・・・・ヒビキとコトネ、それにクリスのお陰・・・か。なら、最後の最後に俺の我儘を聞いてくれねえか。」

「良かろう。我もそのつもりであった。」

「なら話がはええじゃねえか。」

 

シルバーは不死鳥と名乗る者に相対する。

 

「ヒビキ、コトネ、クリス。あいつらと共に歩める世界。それを俺にくれ。それだけだ。」

「・・・・・ふふ、正しき魂で未来を掴んだな、シルバー!!」

 

その瞬間、辺りが明るくなり、不死鳥と名乗った者の姿が明るみになる。

 

「!! お、お前は!!」

 

シルバーの眼前には遥か昔、それも前世の時代に好敵手としてジョウトで闘い続けた盟友の姿があった。

 

「シルバー、僕は君と共にある。それだけは忘れないで欲しいな。」

 

不死鳥の正体はゴールドだった。そしてやがてゴールドの身体は灰へと変わっていく。

 

「ゴールド!! どういうことだ!! ゴールド!!」

「僕の身体を使い、せいなるはいを作り出しているんだ。」

「そ、そんなことをしたらお前は!!」

「ああ。完全に君やクリスの記憶からは消される。それに、ホウオウと約束したんだ。僕の体と記憶と引き換えに、シルバーやクリスに新しい道を作って欲しいって。その代わりにそれまで僕の魂はホウオウと共にあると。」

「え?」

「僕の生まれ変わりであるヒビキは立派に独り立ち出来たし、コトネという信頼できる親友、そしてシルバーが好敵手として控えた。最後にクリスはこの世に解き放たれた。ヒビキ達と入れ替わってしまう可能性があったけど、それをシルバー。君のお陰で乗り越えることが出来た。僕の願いは全て叶ったんだ。もう、悔いはない。あとはホウオウにこの身体をお返しするだけ。」

「ば、馬鹿野郎!! なんでそんなことを!!」

 

泣きながらゴールドの傍に駆け寄ろうとするシルバー。その間にもゴールドの身体は灰へと変わっていく。

 

「シルバー、最後に一言だけ言わせて。・・・・・・さようなら。」

 

シルバーがゴールドの前に着いた時には彼は完全に灰へと変わってしまった。

 

「・・・・俺は忘れねえ。絶対に忘れねえからな!! ゴールド!! お前の事をな!!」

 

ポテン、

 

シルバーの眼の前に一つのモンスターボールが落ちる。

 

「・・・ホウオウか。これで現世に帰れ・・・それがあいつ(ゴールド)の最後の願い・・・か。」

 

シルバーはホウオウをボールから出す。

 

「ホウオウ、そらをとぶだ!!」

「ショー!!」

 

 

 

「・・・・光の中から現れたのは・・・ホウオウ?」

「アポロ様!!」

 

血相を変えたロケット団員が報告の為に室内へと入って来る。

 

「どうしたのです? そんなに血相を変えて。」

「アテナ様、ランス様、ラムダ様と連絡が取れません!!」

「な、何?! そう簡単に彼らが負けるはずなどない!!」

 

次の瞬間、アポロの背後から重たい一撃が放たれる。

 

「ぐふっ・・・。一体・・・・誰が・・・」

 

痛みに悶えながらアポロは背後に振り返る。

 

「・・・な、何故・・・お前が・・・。」

「・・・この世界は奇跡で出来ている・・・らしいぜ。」

 

アポロの背後に立っていたのはシルバーだった。しかも、それだけではなかった。

 

「もっとも、その奇跡は己の力で手繰り寄せるものだけどね!!」

「さあ、ロケット団もここで終わりよ!!」

「覚悟は出来たかしら?」

「ヒビキに、コトネに、クリス・・・だと? 何故?」

「それとお前が操っていたルギアとホウオウはもうロケット団の支配下にはないぜ。」

 

シルバーの背後にホウオウ、ヒビキの背後にはルギアが控えていた。

 

「まさか、解除したと言うのか!! 我々のロケットレーダーを!!」

「落ちるときにちょっとね。」

「ぐぬぬぬ、こうなったらこのラジオ塔を爆破するのみ!! お前らを道連れに・・・。」

 

パアン!!

 

「往生際が悪いというのは、まさにこのことね。」

「「ブルーさん?!」」

「・・・誰?」

「・・・何だ、遅いじゃねえか。少しヒヤヒヤしたぜ。」

「ごめんなさい。他の幹部の拘束とか、爆発物の解除に手戻っちゃってね。」

 

アポロを背後から拳銃で射撃したのはブルーだった。各地の警察や国際警察公安部本部からの応援を待ってから突入した為、ヒビキ達より攻撃が遅れてしまったのだ。

 

「国際警察公安部ブルー!! 公安部よりの特命によりアポロ、貴方の身柄を拘束する!! 既に四将軍のアテナ、ランス、ラムダは私達の支配下に落ちている!! おとなしくなさい!!」

 

ブルーはカメックスを繰り出し退路を断つ。そして速やかに手錠と猿ぐつわ、結束バンドで拘束に成功する。

 

「アンタらがジョウト警察を骨抜きにしたのと同じように、私達もロケット団に工作員を潜り込ませていたのよ。それに、アンタらが期待していたサカキとも取引済みだしね。」

 

やがてロケット団に潜入していた工作員が集まり、捕らえた四将軍を速やかに外へと運び出す準備に取り掛かる。

 

「彼らは少々お疲れみたいだから、休ませてあげて。」

「「「ははっ!!」」」

 

工作員たちの手によりアポロ達は睡眠薬を注射で射込まれ、意識を手放す。

 

「外で待機させているトラックの荷台に入れてコガネから急ぎ脱出!! コガネ市街に待機している回収部隊とアンタらは合流しなさい!!」

「はっ!」

「それじゃあ、貴方たちも一緒に脱出なさい。この後無能なジョウト警察が現場検証とかと称して貴方たちを拘束しようとするでしょうからね。それだとこっちも面倒だし、貴方たちも早く冒険を再開したいでしょうしね。」

「「「はい!!!」」」

「・・・・・・ふっ。」

 

ブルーの手引きで四人はチョウジタウンへと脱出する。

 

 

チョウジタウン

 

「さて、ここまで来れば問題ないでしょうね。この先どうするかはあなたたち次第よ。それとシルバー、現地協力者としても使命、ご苦労様。少しばかりの謝礼金を口座には振り込んでおいたから、確認すると良いわ。それじゃあ。」

 

ブルーはフリーザーで何処かへと飛び立つ。

 

「さて、この後どうしようか? 俺とコトネはチョウジジムに挑戦しようと思うけど。」

「でも、クリスちゃんはどうするの? 戸籍とか諸々の問題があるけど。」

「その点はブルーがどうにかしてくれたようだ。」

 

シルバーがクリスの戸籍に関する資料をヒビキとコトネに見せる。

 

「とはいえ住むところが現状無いのは変わらねえ。それが悩みだ。クリスはどうしたいんだ?」

「私はワカバタウンに帰りたいかな。世界観は違ってもワカバはワカバだし。」

「そうか。ならせめてもの償いだ。俺が責任を持って届ける。それに、俺もワカバに行かなきゃならねえしな。」

 

シルバーは傍らに控えるオーダイルに一瞬視線を向ける。

 

「俺は俺のやらなきゃいけねえことをする。だがなヒビキ! コトネ! 俺は必ずお前達を倒す!! それだけは忘れるなよ!!」

「望むところだ!!」

「何回でも倒してあげるわ!!」

「何時までも俺が負けっぱなしだと思うなよ。それじゃあな!! ホウオウ!! そらをとぶ!!」

 

シルバーはホウオウにクリスを乗せワカバタウンへ旅立つ。

 

「・・・・行っちゃったね。」

「シルバー君、吹っ切れたのか笑顔を見せる様になったよね。」

「そうだね。あれが真のシルバーなんだろうね。・・・・コトネ。」

「・・・・何? ヒビキ君?」

「今はこうして二人で旅してるけど、最後にポケモンリーグチャンピオンになれるのは一人だけだ。」

「ええ。だけど、私だって頂に立ちたいと思ってるわ。その時はヒビキ君であろうとも、容赦なく倒すわ。」

 

二人はモンスターボールを構える。

 

「セキエイ高原を背後に全力でぶつかり合おう。」

「でも、今はその時じゃない。」

 

二人はボールをしまう。

 

「さあ、行こうコトネ!!」

「行くわよヒビキ君!!」

「「更なる高みへと続く道を!!」」

 

(続く)



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「第五十六話~つながり~」

チョウジタウン

 

シルバーとクリスを見送ったヒビキとコトネは再びジム巡りを再開し、今まさにチョウジジムに挑もうとしていた。

 

「さて、次に挑戦するのはチョウジジムか。氷タイプ使いのヤナギさんが待ち受けているんだよな。」

 

ヒビキはチョウジタウンジムに視線を向ける。

 

「氷タイプに対抗出来るの基本は炎タイプか。」

 

ヒビキはモンスターボールを手に取り、ポケモンを繰り出す。

 

「バクフーン! さあ、行くぞ!!」

 

ヒビキが繰り出したのはワカバタウンからずっと付き従ってきたポケモンバクフーンである。

 

「私はリザードン! と言いたいけどちょっと疲れてるだろうし、私はこの子よ!」

 

コトネもモンスターボールを手に取り、ポケモンを繰り出した。

 

「ヘラクロス! 氷を叩き割ってね!!」

 

コトネが繰り出したのはヘラクロス。虫取り大会で捕まえた貴重な格闘タイプと虫タイプを併せ持つポケモンだ。

 

「それじゃあ、行こうかコトネ。」

「勿論よヒビキ君。」

 

二人はジムの扉を開けジムの中へと入る。

 

「バクフーン、かえんほうしゃだ!!」

「ヘラクロス、かわらわりよ!!」

 

(・・・・やっぱりコトネは仲間として本当に頼もしい。一緒に居てくれることが安心に繋がる・・・)

 

ジムトレーナーを蹴散らしながらヒビキはコトネを見つめていた。

 

「!!」

 

ヒビキが自分を見つめていることに気付いたコトネは笑顔で返す。

 

「・・・ふふ。」

 

同じく微笑みながら返すヒビキ。その一方で心の奥には煮え切らない、闇を抱えていた。

 

(でも・・・僕は・・・結局コトネを守れなかった・・・一人称を俺に変えて・・・少しでも強くなろうと思ったけど、結論としてコトネは・・・コトネがいなきゃ今頃僕は孤立していたのに・・・)

 

後にヒビキの心の奥底にある闇が爆発することとなるのはこの時誰も知る由もなかった。

 

 

「・・・・ほう、中々楽しませてくれそうな子供達じゃな。」

 

並みいるジムトレーナーを蹴散らしながら自らのいる奥地へと向かって来るヒビキとコトネをモニター越しでヤナギは嬉しそうな顔で見ていた。

 

「久々じゃな。闘う前から心が躍るトレーナーはな。さて、私も準備するかのう。」

 

ヤナギはモンスターボールを手に取る。

 

「さて、お前達の出番が来たようじゃな。」

 

ヤナギは一瞬を目を瞑った。

 

「ポケモンも人も生きていると色々ある。私も色々辛いことを味わった。」

 

ヤナギの脳裏には辛い過去の風景が過る。

 

「・・・・あの時別れたあのラプラスは元気にやっておるのかのう。私があの日救えなかった・・・・あのラプラスよ。」

 

ヤナギは再び目を見開く。

 

「人生の先輩としてヒビキにコトネよ。それを教えてやろう。冬のヤナギと呼ばれるその実力を。」

 

 

 

「・・・・ラプラス? 一体どうしたの?」

 

コトネはラプラスの入ったモンスターボールが揺れていることに気付いた。

 

「どうしたんだいコトネ?」

「ラプラスが出たがってるの。まるで会いたい人がいるかのように。」

「へえ~、まあここは氷タイプのジムだし、何か惹かれるものがあるのかもね。」

「かもしれないわね。」

 

(とは言ったけど、とても普通じゃない気がするのよね。でも何でなのかしらね?)

 

(続く)

 



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「第五十七話~挑戦!! ジムリーダーヤナギとラプラス~」

チョウジタウンジム

 

「ついに、着いたぞ!」

 

ヒビキとコトネはチョウジジム特融の滑る床を滑りながら最深部まで突き進み、遂にヤナギのいる区画へとたどり着いた。

 

「しかし本当に滑るわねこの床は。冷房にどれだけ電気代を使ってるのか気になるわね。」

「停電したら確実にヤバいよねこのジム。」

「停電と言えばナギサでジムが原因で停電してるらしいわよ。あれはどうなったのかしらね?」

 

雑談を挟みつつ二人はヤナギに向かい合う。

 

「お主らが挑戦者だな? ふっ、挨拶は不要だ。さあ始めるとしようぞ!!」

 

ヤナギはジュゴンとイノムーを繰り出す。

 

「さあ、己の全力をかけてかかってこい若造よ!!」

「・・・これがヤナギさんの貫禄か。燃え上ってきたよ。行くよコトネ!!」

「勿論よヒビキ君!!」

 

二人はモンスターボールを構え、ポケモンを繰り出した。

 

「俺とお前の駆け上がる情熱を見せつけろ! バクフーン!!」

「氷をものともしないその力を見せて! ラプラス!!」

「!!」

 

(・・・・あのラプラスは・・・もしや?)

 

「・・・考えすぎか。イノムー、あられだ!」

「バクフーン、だいもんじだ!!」

 

バクフーンのだいもんじがイノムーに向けて放たれる。

 

「ふふ、甘いぞ若造よ!! ジュゴン!!」

 

だいもんじの射線にジュゴンが割り込む。攻撃をもろに受けたジュゴンはやけどを負った。

 

「どうして自ら射線に? イノムーに回避指示をさせれば。」

「!! 違うよコトネ、ヤナギさんはわざとジュゴンを射線に入れたんだ。」

 

二人の視線にはねむるを使い体力を回復させるジュゴンの姿があった。

 

「なら寝ている間に攻撃よラプラス!! のしかかり!!」

「甘いわ!! ジュゴン!!」

 

ジュゴンはこおりのつぶてでラプラスに応戦。ダメージこそは少なかったがコトネに与えた衝撃は大きかった。

 

「・・・ねごと・・・か。」

「気づいたか? 流石はヒビキ君、冬のヤナギの恐ろしさを少しは知っていたか。だがもう遅いぞ!! イノムー、どろばくだん!!」

 

あられで視界が悪いフィールドから不意にバクフーンに向けて地面タイプの攻撃が放たれる。

 

「ラプラス! 撃ち落として!!」

 

コトネはラプラスにみずのはどうを発射させ、攻撃を防ぐ。

 

「ほう、防いだか。だがあられはじわりじわりとバクフーンの体力を奪っていくぞ?」

「・・・くっ!!」

 

事実ヤナギの言う通りにバクフーンはあられのダメージを受けていた。そして攻撃をしようにもいつの間にかイノムーは視界から消えてしまい捕捉不能、ジュゴンは攻撃してもねむるで体力を回復させてくる難攻不落の要塞。まさに鉄壁。

 

「・・・・・・。」

「さあどうするよ若造。ここで諦めるか?」

「!!」

 

諦める。その言葉にヒビキが反応した。

 

「諦める? 何を言っているんですか?」

 

ヒビキは帽子を反対向きにかぶり直す。

 

「俺は勝ちますよヤナギさん。無論、バクフーン、そしてコトネと共にね!!」

「・・・・ほう。」

 

実に心を躍らせてくれる。そうヤナギは感じていた。

 

「コトネ、力を貸してくれ!!」

「勿論よヒビキ君!!」

 

一致団結しようとする二人を見るヤナギ。

 

(さて、二人はどうこの壁を破るのか、気になるのう)

 

「でも、どうやって勝つのヒビキ君?」

「そのカギはコトネのラプラスにある。」

「わ、私の?」

「ああ。大丈夫だ、このヒビキを信じるんだ。絶対に勝って明日へ行こう。」

 

コトネに笑顔を向けるヒビキ。

 

「・・・・そうね。それじゃ、どうすれば良いの?」

「それはね・・・。」

 

 

「成程ね。それじゃあ行くわよ!! ラプラス、なみのりよ!!」

 

巨大な波を作り出し、その波に乗ってコトネのラプラスが突き進む。

 

「フン、無駄だ! いかに全体攻撃であろうと君達の攻撃は全てこのジュゴンが引き受ける! 迎撃しろジュゴン! オーロラビーム!!」

「甘いな!!」

「何?」

 

(そういえばなみのりは全体攻撃。バクフーンも被害は免れないはずだが・・・)

 

「うてぇええ!! バクフーン!! きあいだまだ!!」

「ま、まさか・・・・。」

 

ヤナギの眼に入ったのは波に乗るラプラスにまたがるバクフーンの姿だった。

 

「いっけえええええ!!」

 

バクフーンからきあいだまが放たれる。攻撃はジュゴンに直撃し、鉄壁の壁は破られた。

 

「壁は破れたわ! そのままなみのりで突き進んで!!」

 

ジュゴンというイノムーへの攻撃を完全に防いでいた壁を打ち破り、コトネのラプラスはヤナギのイノムーへと迫る。

 

「だが私のイノムーはゆきがくれ。そう簡単には。」

「当てさせないか? そうはいかねえぜ!!」

 

ヒビキはここでバクフーンをモンスターボールへ下げた。

 

「さあ、お前の出番だ! ハッサム!!」

 

バクフーンに変えてハッサムをヒビキはフィールドへ送り出した。

 

「そのままバレットパンチを叩きこめ!!」

 

イノムーの回避より先にハッサムのバレットパンチが炸裂する。そして遅れてラプラスのなみのりも直撃。こうしてヒビキとコトネはヤナギのポケモン達を打ち破ったのだった。

 

「ふうむ、策が尽きたか。見事。」

 

拍手で二人を称えるヤナギ。

 

「人やポケモンを乗せて運ぶことが好きなポケモンラプラスの特性を活かした戦術だ。なみのりで勢いをつけることでジュゴンに回避の時間を与えずにきあいだまを直撃させる。君達の全力を思い知った。」

 

ヤナギはコトネのラプラスに近寄る。

 

「そして君も良いトレーナーと巡り合えた。私はそれが嬉しい限りだ。」

 

コトネのラプラスの頭をヤナギは優しく撫でた。

 

「? ヤナギさんはコトネのラプラスと何か関係があるんですか?」

「・・・・実はな。だが今はまだ話せん。」

 

しんみりとした表情を前に二人は事の詳細を聞き出す気にはならなかった。

 

「・・・そうですか。」

 

二人はヤナギからアイスバッジを受け取り、ジムを後にした。

 

 

ポケモンセンター

 

「さて遂にバッジが七個。いよいよ次が最後だね。」

「そうね。」

 

ウキウキするヒビキを見ているとコトネは嬉しくならないわけがない。でもコトネは知っていた。

 

(セキエイ高原に行けるのは・・・ヒビキ君か私のどちらか一人だけ。いつかこの旅も終わりがきてしまう・・・もしその時私はヒビキ君に必要って言ってもらえるのかな?)

 

何時もコトネはヒビキの事を傍でずっと支え続けていた。それはヒビキが心配だったのはあるが、一番は彼のことを愛していたからだった。だからこそコガネでは洗脳されたヒビキを取り戻そうと尽力した。

 

(でも、ヒビキ君はきっと私を心配させまいと優しい言葉をかけてくるに決まってる。だけど・・・)

 

「どうしたのコトネ?」

「・・・な、なんでもないわ。」

「? ・・・そっか。それじゃ、次の街へ行こうか!」

「そ、そうね!!」

 

去り行く二人を人知れずヤナギは見つめていた。

 

「氷と雪が溶ければ春になる。」

 

ヤナギはどこか悲しげな顔をするコトネを見ていた。

 

「君はこれから長い時間ポケモンと一緒にいられる。無論彼とも。それを大切にな。」

 

そう言ってヤナギはジムへと戻った。

 

「正直に話せば彼は間違いなく応えてくれる。勇気をだすんだ。」

 

(続く)

 



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「第五十八話~ブルーからの最後の贈り物~」

44番道路

 

「この44番道路を抜けるとフスべへと至るこおりのぬけみちに辿り着くみたいだね。」

「こおりのぬけみち・・・聞いただけでも寒気がするダンジョンね。」

「となるとどこかで寒さ対策をしなきゃいけないね。バクフーンやリザードンだけじゃ彼らが元気じゃなくなったら凍えちゃうからね。」

「どこかって・・・どこで対策するの?」

「・・・確かに。」

 

そこまでは考えてなかったと言わんばかりに頭を掻くヒビキ。

 

「お困りのようね。」

「「!!」」

 

聞き覚えのある声に二人は後ろを振り向いた。

 

「「ブルーさん!!」」

「お久しぶりね二人とも。相も変わらず青春してるわね~。」

「「そ、そんなことは!!」」

「冗談よ。うふふふ。」

 

あたふたする二人を楽しんでいるブルー。

 

「それで、今困ってるんじゃなかった? どうやってあのこおりのぬけみちを抜けるかで。」

「そ、そうですけど。」

「どうして知ってるんですか?」

「ヤナギのおじさまに言われたのよ。あのままじゃ貴方たちが苦労するだろうから何とかしてやっててね。」

「そ、そうなんですか。」

 

(まあ、実際はミュウのテレパシーで見てたんだけどね。それに海外でとある宗教勢力が動き出しそうな雰囲気があるし、彼らを味方にしておきたいのよね)

 

「それで貴方たちにこの服をあげるわ。これを着てあの抜け道を抜けてね!」

 

ブルーは厚手のコートを二人に授ける。ヒビキには赤色のコート、コトネには黄緑色のコートであり、それぞれの御三家ポケモンをイメージした色となっていた。

 

「わあ、凄い! 内側にヒノアラシ、マグマラシ、バクフーンの絵柄がある!」

「私はチコリータ系統!!」

 

ブルーから渡されたコートに感動するヒビキとコトネ。

 

「「わざわざありがとうございましたブルーさん!!」」

 

二人を見送るブルー。

 

「・・・さて、私もそろそろこの地方を発たないとね。」

 

ブルーはカバンから一通の黒色の封筒を開封した。

 

「・・・ヒビキ、コトネ、シルバー、クリス。ジョウト地方は任せたわよ。」

 

ブルーはフリーザーをボールから出し、そのまま彼女はアサギへと向けて飛び立った。それぞれ、目標へと向かって。

 

 

フスべシティ

 

「やっぱり血には抗えないわね! いくよ! シルバー君!!」

「そっちこそ、遅れを取るんじゃねえぞ!!」

 

クリスを連れ、ワカバタウンへ向かう途中にフスべシティへ立ち寄ったシルバーは彼女の要望でフスべジムに挑戦していた。丁度ジムバッジを欲していたこともあり、要望を快諾していた。

 

「ふふふ、シルバー君も根は良い子なのよね。」

「ああん?! と、とにかくあのキングドラをやるぞ!!」

 

「「ハイドロカノン!!」」

 

(続く)



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「第五十九話~こおりのぬけみち~」

こおりのぬけみち

 

「気を付けてよヒビキ君。ここを抜ければ最後の街フスべシティだけど、一歩間違えば転倒しちゃうからね。」

「そうだねコトネ。手を繋いで慎重に行かないとね。」

 

チョウジタウンジムリーダーヤナギを倒したヒビキとコトネは最後の街フスべシティを目指すべく、二つの都市を繋ぐ抜け道である「こおりのぬけみち」を進んでいた。

 

「夏でも溶けることはなく、氷で覆われたことからこおりのぬけみち、か。随分しゃれた名前だよね。」

「距離的にはここが最短且つ、車とかが通れないからまさに抜け道って感じよね。」

「しかし、寒いよね。」

 

辺り一面氷に覆われたこの抜け道は確かに距離では最短ルートであるのだが、いかんせん気温が低すぎるのである。

 

「その影響で凍死しちゃう人も・・・・へっくし!!」

「大丈夫コトネちゃん? 脚とか寒くない?」

「そりゃあ寒いけど、ヒビキ君だって人のこと言えたもんじゃないじゃない。」

 

予想以上の寒さに二人は互いに体を密着させながらダンジョンを突き進む。吐く息は白くなり、時折現れるまさこ・・・・ルージュラやズバットを倒しながら二人は先へ先へ歩みを進める。

 

「・・・・どうしよう? 道がないよ。」

「そうね・・・・あるのは陥没した穴だけ・・・。」

 

二人はここまでは先人たちが命がけで作り上げた階段や狭かったり、崩落寸前の通路を通って来たが、ここに来て道がなくなってしまったのである。

 

「「う~ん?」」

 

二人は暫し熟考する。

 

「・・・・穴があったら?」

「入ってみよう!!」

 

二人は意を決し、手を繋ぐと

 

「コトネ、何があっても一緒だからね!!」

「当たり前でしょ!! ヒビキ君を置いて行ったりなんかしないから!!」

 

「「うおおおおおお!!」」

 

穴へと吸い込まれていく。二人とも相手に抱きつきながら穴へと入る。

 

「「!!」」

 

二人の眼前には一面氷に覆われた床が広がっていた。

 

「「うわあああああああああ!!!」」

 

ゴチーン!!

 

「いてててて・・・、コトネ~、大丈夫?」

「あいたたた、何とか大丈夫よヒビキ君。」

「さてさて。」

 

つるん!!

 

「「わ!!」」

 

立ち上がった二人だったが、凍った床に滑り、勢いよく壁に向けて進んでしまう。

 

「きゃあああああ!!」

「危ない!! コトネ!!」

 

ごすっ、

 

「うぐっ!!」

 

コトネをかばい、背中を壁に強打するヒビキ。

 

(・・・・うっ、背中が尋常じゃないくらいいてぇ・・・・もしかしたら骨にヒビ入ったかもしんねえ・・・)

 

「だ、だいじょぶか・・・コトネ。」

「私なら・・・ってヒビキ君?! 顔色が凄く悪いわよ!!」

「ああ・・・さっき壁に強く当たっちまって・・・お陰で背中が・・・。」

「も、もう無理してしゃべんなくて良いよ!! と、とにかくここから早く脱出しなきゃ!!」

 

焦るコトネ。ヒビキをバクフーンに担がせ、前へ突き進んでいく。滑る床に苦戦しつつも、時折手を振り、先への道を示すヒビキに従いながら出口を目指す。

 

「・・・・次は・・・あの・・・階段・・・あれで、最後・・・。」

「ありがとうヒビキ君。ゆっくり休んでてね。」

 

力尽きて眠りにつくヒビキ。コトネは急いで出口に向かい・・・外へ出た。

 

 

フスべシティ・ポケモンセンター

 

「・・・・どうなんですか? ヒビキ君は・・・。」

「背中の椎間板が一般的な人より潰れちゃってる。いわゆる椎間板ヘルニアというものだ。」

「・・・・それは大丈夫なんですか?」

「一般生活には問題ないかな。だけど、癒えるまでは腰に爆弾を抱える形になるね。」

「旅を続けることは出来ますか?」

「まあ・・・大丈夫だと思うよ。」

「どうですか、ありがとうございます。」

 

 

「ごめんねコトネ。僕が弱いからまた君を傷つけちゃったね。」

「違うの!! 謝らなきゃいけないのはアタシ!! そう無理しないでよヒビキ君!!」

「・・・コトネ・・・。」

 

ヒビキはコトネを優しく抱き締める。

 

(・・・もっと・・・もっと強くならないと・・・。)

 

ヒビキの心の中に眠る闇の想いが更に強まっていたが、この時は誰も気づく由もなかったのである。

 

(続く)

 



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「第六十話~最後の挑戦 ジムリーダーイブキ~」

フスべジム前

 

「本当に大丈夫なの? ヒビキ君?」

「大丈夫な訳ないよ。今も腰が痛くて痛くてしょうがないよ。」

 

ジョウト地方最後のジムであるフスべシティジム。このジムの前でヒビキはコトネの手を借りながら入ろうとしていた。

 

「でも、それ以上に僕は・・・・俺はコトネ、君と一緒に戦いたいんだ。」

「だけど、それでヒビキ君の身体が更に悪くなったら!!」

「その時はその時だよ。それに。」

「?」

 

ヒビキはコトネの方に優しい顔を向ける。

 

「一緒にジムバトル出来るのは、このジムで最後なんだよ。後はポケモンリーグに向けて突き進むだけ。でも、四天王チャンピオンに挑めるのは俺とコトネのどちらかだけ。どうせ挑めないのなら、最後のジムくらい、無理をさせてくれよ。・・・うっ!」

 

腰に力を入れてしまったのか、苦悶の表情を浮かべるヒビキ。

 

「・・・・コトネ、ごめんな。こんな情けない男の我儘を聞かせてな。君なら、もっといい男を捕まえられると言うのに・・・」

「ヒビキ君以上にいい男なんていないよ!! ヒビキ君にアタシしかいないのと同じ! アタシには、ヒビキ君しかいないのよ!! そう自虐して自分を傷つけないで!!」

「・・・・・・ありがとうコトネ。君は本当に優しいね。」

 

そういうとヒビキはコトネの頭を優しくなでた。

 

(・・・・ああ、でも本当に・・・これが最後のジム戦なのか・・・)

 

手負いの状態ではあるものの、その卓越したバトルセンスは健在だった。コトネの肩を借りながらとは言えども、的確な采配で闘いを勝利へと導く。

 

「・・・・そこだ!! ゲンガー!!」

「!!」

「こごえるかぜ!!」

「だが、これしきのダメージ!!」

「狙いはそこじゃ・・・うっ!! ・・・・こ、コトネ。」

「ラプラス!! れいとうビーム!!」

「ハクリュー!!」

 

ヒビキのゲンガーが前衛として敵を引き付け、こごえるかぜで機動力を奪い、おびき出された敵をコトネのラプラスで狙い撃ちにする。見事な連携術で二人は最後のジムトレーナーを突破することとなった。

 

「・・・流石だね、僕の負けだよ。さあ、次はいよいよジムリーダーのイブキ様だ。思いっきりぶつかってこい!! まあ、イブキ様が負けることなどないがな!!」

 

「ご忠告ありがとう。でも、俺達は止まらない。」

「そのイブキさんを倒すまでね!!」

 

そう言うと二人は先へと進む。

 

「・・・・・・・。」

「大丈夫なの? ヒビキ君?」

「・・・・・・・。」

 

顔色はすこぶる悪く、簡単な受け答えも無理そうだった。コトネが隣にいてくれるから持っている。そんな感じだった。」

 

「・・・・は、早く行こうよコトネ。」

「・・・そ、そうね。」

 

こうして二人はイブキの前へと駒を進めた。

 

「来たわね、私がイブキ! 世界で一番のドラゴンつかいよ! 実力もポケモンリーグ四天王にだって負けてなんかないわよ!」

 

イブキは威嚇の為にハクリューとキングドラを繰り出した。

 

「「・・・・・・・・・?」」」

「どう? それでも闘うの? 今なら引き返すことも許可してあげるわよ?」

「・・・引き返す?」

「あはははは。」

「?」

「一体何の冗談を。」

「ここで退き返すなんて。」

「あり得ない判断だ。」

「こんなところで諦めてたまるってもんですか。」

「俺達は。」

「アタシ達は」

 

二人はモンスターボールを構える。

 

「「貴方に勝つ!!」」

「そう、分かったわ! じゃあ始めましょう! 私もトレーナー、どんな相手だって全力でぶつかってあげる! 鍛え上げたドラゴンポケモンで叩きのめしてあげるわ!! 覚悟してなさい!!」

 

こうして二人の最後のジム戦が始まった。

 

「ゲンガー! こごえるかぜ!!」

「ラプラス! れいとうビーム!!」

「その程度じゃキングドラは倒せないわよ!! りゅうのほどう!!」

 

まさに一進一退。そう表現すべき技の応酬となった。やがて互いのポケモンが倒されていき、とうとうヒビキとコトネに残されたのは博士から託された御三家のみとなっていた。

 

「流石は最後のジムリーダー。一筋縄ではいかないな。」

「だけど、それでこそ、よね!」

「コトネ!」

「ヒビキ君!」

「「勝利の栄光を君と!!」」

 

二人はバクフーンとメガニウムを繰り出す。

 

「これで決めようヒビキ君!」

 

コトネはメガニウムに指示を出す。

 

「ハードプラント!!」

「くっ!! だけど、その技では倒せないわよ!!」

「・・・確かに、ハードプラントだけを撃ったのなら・・・ね。ヒビキ君!!」

「ああ!! バクフーン!!」

 

ヒビキはここで少し思案した。

 

(ああ、これで・・・コトネとの旅路も・・・)

 

少しの涙が流れる。

 

「バクフーン!! ブラストバーン!!」

 

コトネのメガニウムの放ったハードプラントを巻き込みながら炎がキングドラを包み込む。本来ならば今一つなダメージだが、草タイプの技を巻き込むことで威力が上昇する。

 

「・・・・う、嘘でしょ!! この私が負けるなんて。」

 

彼らの眼前に広がっていたのは戦闘不能となったキングドラの姿だった。

 

「ど、どうして? 信じられない・・・何かの間違いよ・・・・。」

「それじゃ、ジムバッジを。」

 

二人はジムバッジを求めた。しかし、

 

「私は認めないわ。」

「・・・・は?」

 

何でだ。怒りを持ったヒビキ。しかし、闘いが終わり、アドレナリンが解けてしまったのか、腰の痛みがここで再発してしまう。

 

「うっ!!」

「ヒビキ君!!」

「何故ですか? アタシ達は貴方に勝ちましたよね? 何か落ち度がありましたか?」

「負けて言うのもなんだけど、貴方達の考え方ではポケモンリーグに挑戦なんて無理に決まってるわよ!」

「「・・・・・。」

 

二人はイブキを睨みつける。

 

「どうしても渡してくれませんか? もし・・・・渡さないのであれば明らかに不当であり。」

「そうだわ!」

 

ヒビキの言葉をイブキが遮る。

 

「このポケモンジムの裏にりゅうのあなと呼ばれる場所があるの。中央に祠があるからそこへ行ってごらんなさい。もしそこで貴方の考えを認められたなら私も貴方がジムバッジを渡すにふさわしいトレーナーだと認めてあげるわ!」

「・・・・そうですか。正直不服ですし、協会通報案件だと思いますが貴方の策に乗りましょう。皆、行こうか。」

 

歩みだすヒビキ。しかし、

 

「うっ!!」

 

その場で倒れ伏すヒビキ。

 

「ヒビキ君!!」

「・・・・やっぱり、腰が持たなかったよ・・・コトネ。」

 

痛みを堪えながらヒビキはコトネに笑顔を向ける。

 

「すまないコトネ、りゅうのあなには・・・君だけで言ってくれ。もう・・・うっ!!」

 

こうしてヒビキはここでリタイアすることとなった。この日はポケモンセンターで一泊し、翌日バクフーンに跨りながら彼は単身ワカバタウンへ先に戻ることとなった。

 

「頑張って来てねコトネ。君なら大丈夫だよ。僕がいなくてもね。」

 

ヒビキはコトネの手を握り、額にキスをした。

 

「僕の愛しのコトネ、勝利の栄光を君に。」

 

そう言ってヒビキはコトネの前を去って行った。

 

「・・・・・やっぱり僕が弱いから・・・もっと・・・もっと力が・・・・。」

 

(続く)

 



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