裸ノ乙女達 ~魔力健康法実践の為にすっぽんぽん生活を強いられる御嬢様(ロリ)に執事として仕えることになりました~ (室谷 竜司)
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Prologue
暗室で……①


「……」

 

「……」

 

 真夜中の薄暗い室内で、僕は目の前で佇む少女と黙ったまま対面していた。室内を照らすのは蝋燭の頼りない炎だけ。何時消えてもおかしくないほどのか弱いそのオレンジ色の光を受け、目の前の少女の姿が暗闇の中に薄っすらと浮かび上がる。一目見て幼いと分かるその小さな身体は、蝋燭の火のように頼りない。

 

 そんな彼女は何一つとして衣服を身に纏っていない。つまり全裸である。まぁ、()()()()にいるのだから、彼女が全裸であることは何らおかしいことではない。

 

 平坦な胸部も、その先端の桜色の蕾も、まだまだ未成熟な股間の秘部も、全てさらされているが、ここではそれが普通だ。だから、それに違和感を覚えたり、ましてや興奮などしてはならない。

 

 してはならないことは理解しているはずなのに……、目の前に佇むまだ幼き少女の一糸纏わぬ姿態が放つ異様なまでの艶めかしさを前にして、僕の心臓の鼓動は加速度的に強く速くなっていく。

 

 普段の彼女に対する性的な感情はどうにか理性で抑え込むことができていたが、今自分の目の前にいる彼女には理性による抑えも利かず、身体の一部分が否応なしに反応してしまう。

 

 何度視線を逸らしても、ふと気づいた時には薄暗闇にぼんやりと浮かぶ彼女の未発達で艶やかな裸体に再び視線が吸い寄せられてしまう。こんな幼き少女に興奮してしまうなんて、僕はどれほど罪深き男なのだろうか……。

 

 罪悪感に苛まれながら無意識的にその薄い胸に注いでしまっていた視線を上に引き上げる。すると当然、僕の瞳には少女の小さな顔が映る。

 

 薄暗い室内に浮かび上がる彼女の表情は熱に浮かされたようにとろんと緩んでいたが、その潤んだ瞳には確かな決意の色を覗かせていた。

 

 まだ幼いはずなのに、その表情は可愛らしいというよりも美しいと表現する方が適切であるように感じられた。これが御令嬢としての気品というやつなのだろうか。

 

 ほんのり色づいた頬や腰まで伸びた銀色の毛髪、そして一糸纏わぬ起伏の少ない裸身が蝋燭の火に照らされ淡く輝く様はまるで絵画のようで、そのあまりに幻想的な姿に思わず僕は息を飲んでしまう。

 

 呆然と彼女の姿を見つめていると、不意に彼女の小さな薄桃色の唇がゆっくりと開かれた。

 

「ナギサさん……、お願いがあるのです……」

 

「お、お願い……とは……?」

 

 彼女の唐突の申し出に、僕……望月(もちづき) 渚沙(なぎさ)は思わずそう聞き返してしまう。すると彼女は、一度深く息を吸い、それから再度口を開いた。

 

「私のお相手をしていただけませんか?」

 

 彼女のその言葉に、僕は思わず言葉を失ってしまう。こんな夜遅くに男である僕の部屋を訪れ、自分の相手をしてほしいと言われれば、誰だって良からぬ想像をしてしまう。彼女は……、僕と一夜を共にするつもりなのか……と。

 

 いや、しかし彼女はまだ10歳だ。日本の常識に当てはめるならば小学4年生なのだ。そんな彼女では、性行為の知識なんてろくに持ち合わせてなどいないはずだ。たとえここが日本でなくとも……である。

 

 だが、貴族令嬢ならもしかしたら……という可能性も捨てきれない。だから僕は、彼女の言葉の真意を確認することにした。自分の穢れた考えが間違いであることを願って。

 

「そ、それはどういう意味でしょうか……?御嬢様がお眠りになられるまで、お話のお相手を務めればよろしいのでしょうか?」

 

「いいえ、違います。そんな子供みたいな理由ではありません」

 

 僕の問いかけに対し、彼女はほんの少し頬を膨らませながら首を横に振って答えた。子供でなくとも夜眠れなくなることはよくあるように思うが、彼女にとっては子供扱いされたと感じてしまうことだったようだ。

 

「すみません、御嬢様。そういうつもりではなかったのですが、気に障ってしまいましたか?」

 

「い、いえ……。ただ、貴方だけには子供として見られたくなくて……」

 

「私に?」

 

 心無し彼女の頬が先ほどよりも濃い目の桃色に染まったような気がした。それに、声も少し震えているように聞こえた。やはり、先ほどの言動で彼女のことを怒らせてしまっただろうか?

 

 しかし、何故僕限定なのだろう……?僕だけに子ども扱いされたくないとはどういうことなのだろうか?まさか、年の割に背が低く童顔で、さらに声も高い、まるで少年のような風貌の僕に年上ぶられるのが気に入らない……ということなのか?そ、それはちょっと……いや、かなり傷つく……。コンプレックスなのに……。

 

 などと一人、心の中で問答をしながら自らの心を自傷していると、彼女は顔を俯かせながら少し迷いを含んだ声色で小さく呟く。

 

「私……、貴方には子供じゃなくて……女として見られたいのです……」

 

 そう言うと彼女は自分の心を落ち着かせるように再び大きく息を吸い、それから俯かせていた顔を勢いよく上げ、真っすぐ僕の瞳を見据えてきた。

 

「ナギサ・モチヅキ様、貴方に……私の初めてをもらっていただきたいのです」

 

「……えっ!?」

 

 彼女の口から伝えられたその言葉の意味を正しく理解するのに少し時間を要してしまう。そして、その意味を理解するや否や、僕は短い驚愕の声を漏らしてしまう。まさか、僕の良からぬ想像が当たってしまうとは思ってもみなかった。

 

「お、御嬢様っ!?それ、本気で言っていらっしゃるのですか!?」

 

「ええ、本気です。冗談でこんなこと言いません。私は貴方に自分の初めてを捧げたいと思っております」

 

「そ、それが何を意味するのか、ご存じなのですか!?」

 

「それくらい分かります。セックス……と言うのでしょう?子供を成すための行為。私はもう子供じゃないので、これくらい知っていて当然です」

 

 またも子ども扱いされたと感じてしまったらしく、御嬢様は赤らんだ頬をぷくっと膨らませながら一切の躊躇なくセックスという単語を言い放った。10歳で子作りに関する知識を持っているのは、この世界では普通のことなのだろうか……?

 

 いやしかし、幾ら彼女が精神的に大人であり、セックスに関する知識を持ち合わせていたとしても、、彼女の身体は男を受け入れる準備もろくにできていないはずだ。どれだけ彼女が大人だと言い張っても、年齢を覆すことはできないのだ。

 

「しかし御嬢様、10歳の身体では流石にまだ男を受け入れるには早すぎます!痛い思いをして終わるだけです。それは嫌でしょう?」

 

 僕は必死で彼女に訴えかける。こんな幼い身体でセックスなどしてしまえば、彼女の身体は壊れてしまう。僕としてもそれは何としても避けたい。

 

 もし、彼女が一時の気の迷いでこのような行動に出たのなら、彼女に仕える者としてちゃんと正しい路へと戻してあげなくてはならない。

 

「貴方が相手ならそれも本望です。それに、確かに身体はまだ小さいですし、貴方の子種を受け止める準備もまだ整ってはいないかもしれませんが、気持ち良さを感じるための準備は既に整っています。昨日、それは確認いたしました」

 

「……」

 

 彼女の言葉に僕は絶句してしまう。彼女は何故、僕なんかに固執するのだろう。彼女からすれば、僕は異世界からやってきたなどと言う怪しい人間でしかないのだ。僕自身、未だに異世界にやってきたなんて信じ切れていない。

 

 どうしてそんな僕に、まだ幼い身体を捧げようだなんて考えるのだろうか。僕は、彼女の気持ちを理解する術を持っていなかった。

 

 そんな風に僕が一人頭を悩ませていると、彼女はさらに言葉を重ねた。相も変わらず強い意志の篭った瞳で真っ直ぐ僕を見据えながら。

 

「子供を成すことだけがセックスの目的ではないと私は考えています。貴方と……、お慕いする殿方と一つに繋がり、胸の高鳴りを感じたり気持ち良いという感覚を味わうことだって、立派なセックスの目的だと思うのです」

 

「お、お慕い……!?それってどういう……」

 

「そのままの意味です。私、アルフィオーネ・ローラントは、ナギサ・モチヅキ様のことをお慕いしております。貴方のことを異性として好いているのです」



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暗室で……②

「私、アルフィオーネ・ローラントは、ナギサ・モチヅキ様のことをお慕いしております。貴方のことを異性として好いているのです」

 

「っ……!?」

 

 僕はまたもや言葉を失ってしまう。まさかこのタイミングで告白などされるなんて考えていなかった。というか、彼女と僕はまだ出会って数日の仲のはずなのだけど……。

 

「な、何故私を……?御嬢様とはつい先日お会いしたばかりですよね……」

 

「ええ。私にも明確な理由までは分かりません。ですが、一目見た時から、貴方が私の運命の相手なのだと本能的に理解いたしました」

 

 そ、それって……、いわゆる一目惚れ……というやつなのか?一目惚れするにしても、普通その相手は僕のような小さくて頼りない男じゃないだろう。しかも今なら、謎多き異世界人(仮)というレッテルまでついてくる。こんな怪しさ満点のチビ男を好きになってくれる人なんて……、特殊な性癖を持つ大人の女性以外にいるはずない。……うっ、身震いと涙が……。

 

「私なんかを好きになる人なんてそういませんよ……。御嬢様、今一度よくお考え下さい。早まってはなりません」

 

「そう卑下なさらないでください。貴方を好きになる女ならここにいます。これは勘違いでも何でもありません。私の心は私が一番理解していますから」

 

 そんな純粋な瞳を向けられると、途端に罪悪感がこみ上げてくる。今、何気に僕は彼女の思いを勘違いだ何だと言って踏み躙ってしまったことになる。たとえ僕に向けられる好意を信じられなかったとしても、そんなことは言うべきではなかった。

 

「も、申し訳ございません。御嬢様のお気持ちを疑うようなことを言ってしまいました。。し、しかし、だとしても御嬢様の身体で性行為を行うのは危険です。執事として、御嬢様が危険な目に合うのを見過ごすわけには……」

 

「ふふっ、貴方はお優しいのですね。そんなところも素敵です。ですが、先ほども言いましたが、受け入れる準備なら整っております。膣内の分泌腺がちゃんと機能することは確認済みです。挿入時の負荷は軽減できるはずです。ですので、ご心配なさらないでください」

 

「確認って……、どういう……?」

 

「それはその……、じ、自慰行為……というやつです……。昨晩、貴方を思い浮かべながら自慰を行いました……。その時、ちゃんと分泌液が分泌されることはこの目とこの手で確認いたしました……。って、こ、こんな恥ずかしいこと言わせないでくださいっ!!」

 

「も、申し訳ございませんっ!」

 

 じ、自慰行為まで行っていたとは……。しかも、僕がオカズって……。この御嬢様……、一体何処までの性知識を有しているのだろう……?というか、この年で分泌液ってちゃんと分泌されるのか……。

 

「で、ですが、たとえ受け入れる準備ができていたとしても、御嬢様はまだ成人されていません。それに、私は貴女にお仕えする執事です。貴女を汚すわけにはいかないのです」

 

 この世界での成人年齢は15歳らしい。そういう意味でも、彼女に性行為というのはまだ早いように思う。また、彼女に仕える立場にある僕が彼女を汚すわけにはいかないのだ。い、いやまぁ、後者については単なる個人的な意見で合って、根拠も何もないのだけど……。

 

「成人していないからといって、性行為が禁じられているわけではありません。そもそも貴族社会では、気に入った殿方とは幼い頃から肌を重ねるのが普通なのです」

 

「そ、そうなのですか!?」

 

「ええ。それに、主人と従者が結ばれるなんていうケースは決して珍しいことではありません。もっとも、貴方は契約執事ですから普通の執事よりも自由度は高いのです。お父様も言っていたではありませんか。私たちとは友人のように接してくれて構わない、と。貴方は私たちにとって友人のような存在なのです。そして、友人から恋人に昇格することは何もおかしいことではないと思います」

 

 僕は何も言い返せなかった。もう、彼女の誘いから逃れるための口実が見つからなかった。

 

「もちろん、私のことを好きになってくれだなんて言うつもりはありません。貴方にだって恋をする自由はあるわけですし、その可能性を私が奪ってしまうのは本意ではありません。ですが、貴方にとっての一番でなくても構いませんので、どうか私を貴方の傍に置いていただけませんか?」

 

 切な気な瞳を僕に向けてくる御嬢様。そんな目をされてしまっては、断ろうにも断れない。しかし、未成熟な少女を汚してしまうことには、どうしても抵抗感を覚えてしまうのだ。どうしたものだろうか……。

 

「もし貴方が私を拒んだとしても、もう私は止まることなどできません。この気持ちは抑えることなどできないのです」

 

「お、御嬢様……?……なっ!?」

 

 御嬢様がゆっくりと僕に歩み寄る。そして、僕のすぐ傍まで近づくと、不意に僕の身体に手を触れさせた。彼女の手は淡い光を宿していた。

 

 すると次の瞬間、僕の身体はまるで石にでもなったかのように一切の身動きができなくなってしまっていた。これはまさか、魔法……というやつなのだろうか!?

 

「今、貴方の動きを魔法で封じさせていただきました。こんな強引な手段を使ってしまい、本当に申し訳ございません。でも……、それでももう我慢できませんっ!!」

 

「えっ……、わっ……!?」

 

 そして僕は、彼女によってベッドの上に押し倒されてしまった。どうやら、自分の意思で身体を動かすことはできないが、外から力を加えられれば動くようだ。

 

 って、そんな暢気な分析をしている場合ではないだろう。このままでは御嬢様の無垢な身体を汚してしまう……。

 

 だが、僕が抵抗することはできない。くっ、御嬢様が優秀すぎるのが、まさかこんなところでマイナスに働くとは……。従者として主人の優秀さを喜ぶことができないのは何とも心苦しい。

 

 などと考えている間に、御嬢様はベッドに上がり僕の身体の上に素早く覆い被さってきた。寝間着越しに御嬢様の温かくて柔らかい素肌の感触が伝わってきて、ダメだとは分かっているのに僕の股間が反応してしまう。

 

 そして、その股間の反応は現在僕に密着している御嬢様にも当然分かってしまうわけで……

 

「こ、これ……、ナギサさんの……。と、とても硬くて立派です♡」

 

「お、御嬢様……、い、いけません……」

 

「でも、こうしてここを硬くされているということは、貴方も少なからず興奮なさっているのでしょう?」

 

「そ、それは……」

 

 僕は何も言い返すことができない。実際、この状況に興奮してしまっているのは、僕の股間が証明してしまっている。それを指摘されてしまっては、もはや何も言えない。

 

 この状況……、まるで()()()と同じはずなのに……、あの時とは違って恐怖は全然感じない。これではまるで、本気で彼女を受け入れようとしているみたいではないか……。

 

 今日に至るまで僕は決してロリコンではないと必死で自分に言い聞かせてきたが……、流石にもう言い逃れはできないようだ……。僕はどうやらロリコンの気があるみたいだ。こうして興奮しているのが何よりの証拠だ。僕ってこんな変態だったのか……。

 

 などと心の中で嘆息していると、御嬢様の火照った童顔が僕の眼前に迫っていることに今更ながら気づいた。綺麗な金色の瞳が徐々に近づいてくる。こ、これはまさか……

 

「ダ、ダメですよ……、御嬢様……。んむっ……」

 

「んっ……♡ちゅっ……♡」

 

 案の定、僕の唇は御嬢様の小さくて柔らかい薄ピンクの唇によって塞がれてしまった。正真正銘、これはキスだ。口ではダメと言いつつも、僕の心の中には嬉しいという感情が芽生えようとしていた。

 

「んんっ……♡んちゅるっ……♡ちゅぷ……♡こ、これが私のファーストキスです♡どうしても、貴方に受け取ってほしかったのです」

 

「ほ、本当に私でよろしかったのですか……?」

 

「貴方じゃないと嫌です!私にとっての運命の相手はナギサさんだけですから♡」

 

 もう……、そんなことを言われてしまっては今まで自分を抑えつけてくれていた理性など吹き飛んでしまう。いけないことのはずなのに……、僕は既に彼女との続きを待ち望んでしまっていた。

 

 ……未成年でもこの世界じゃ合法……。主人と従者が結ばれることは普通……。そして彼女はもう男を受け入れる準備ができている……。そんな言い訳ばかりが脳内をぐるぐると駆け巡る。

 

「んんぅ……♡んはぁぁ……♡あぁぁん……♡」

 

「っ……!?」

 

 突如、僕の股間に何か途轍もなく柔らかな感触が伝わってきた。その瞬間、僕の上に重なった御嬢様の口から艶めかしい声が漏れ出る。

 

 それから、遅れて聞こえてくるくちゅくちゅという何処か卑猥な水音……。つまり今、僕の陰茎と御嬢様の女性器が僕の寝間着越しに触れ合っている……ということなのだろう。

 

 そして、彼女の秘部は既に潤いを帯びている……。彼女は彼女で、この状況に気持ちがかなり高ぶってしまっていたのだろう。

 

 どうして御嬢様は、こんな僕にここまで執着してくれるのだろう……?僕に特別な何かがあるとでも言うのだろうか?

 

 僕の上でぎこちなく腰を振る御嬢様の金色の瞳を見つめ返しながら、僕はそんなことを考えていた。



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望月渚沙のトラウマ

 僕はごく普通の日本人だ。会社勤めの父親と主婦業に勤しむ母親という特にこれといった特徴のない両親の間に生まれ、平凡ながらも平和な家庭で育ってきた。

 

 しかし、僕の成長速度だけは普通ではなかった。元々日本人は世界的に見てあまり身長が高くないが、僕はその中でも特に身長が低かった。

 

 この身体的特徴が如実に表れ始めたのは中学生の頃だっただろうか。小学校でも同学年の男子の中では身長が一番低かったが、その当時はまだ目立つというほどの周囲との身長差はなかったのでそこまで気にならなかった。

 

 しかし、中学に上がり、周りの男子たちが成長期を迎えぐんぐんと慎重を伸ばしていく中で、何故か僕だけは身長の伸びが悪かった。とは言っても、全く伸びないというわけではなかったんだけど。

 

 二次成長期には本来あるはずの声変わりもなく、僕の声はずっと高いままだった。だから、中学の時はよく周りの男子たちから"女の子みたいだな"とからかわれたりもした。

 

 女子からも、可愛いだ何だと冷やかされたり女装を強要されたりなど、結構散々な目に合ってきた。正直、学校内ではかなり居心地が悪かった。

 

 では、学校外ならそうではないのかと言われると、決してそういうわけでもない。僕が街中を歩けば周りの人たち……特に年上の女性たちから変な視線を向けられていた。当時はその視線の意味がよく分からなかったが、何か途轍もない寒気を感じてはいたと思う。

 

 まぁ、こうして常に周囲からたくさんの視線を集めていたものだから、実家だけが僕の安息地帯だと思い込むようになり、自然と休みの日に外出する機会も減っていった。

 

 だが、引きこもってばかりもいられないので時々気分転換に外に出かけることはあった。外の光を浴びないと成長しないという両親の言葉が大きかったかもしれない。

 

 そんなある日のことだった。その日も僕は散歩がてら近所の書店に買い物に出かけていた。その書店にはいつも不思議な店員さんがいた。店内の片隅でやけに分厚い本を片手にいつもブツブツと何事かを呟いている若い女性店員だ。ちょっと……いや、かなり不気味で、僕はあまり近寄らないようにしていた。

 

 確かその日僕が訪れた時間帯は、僕とその不気味な店員さん以外、店内に他に人はいなかったと思う。そのため、普段外に出ている時は必ずと言って良いほど感じる周囲からの視線を感じなかったので、僕はかなり気を緩ませてしまっていた。店員さんの存在も忘れ、僕は本選びに没頭してしまっていたのだ。きっと、それがいけなかったんだと思う。

 

「フフッ、可愛い子……」

 

「っ!?」

 

 本棚と向かい合っていた僕の背中にそんな言葉がかけられ、次の瞬間には背中からがっちりと抱きしめられてしまっていた。恐怖のあまり、後頭部や背中に当たる柔らかな感触を気にする余裕もなく、僕は彼女の腕から逃れるべく藻掻いた。

 

 しかし、どれだけ身じろいでも彼女の拘束から逃れることはできなかった。そしていつの間にか、僕は店の床の上に押し倒されてしまっていた。

 

「貴方はこれ以上成長しちゃダメよ」

 

 そう言いながら、彼女はズボンの上から僕の男性器をさわさわと撫でまわしてきた。その店員さんはかなり美人で普通の男なら喜ぶべきシチュエーションなのだろうが、当時の僕は恐怖感しか覚えなかった。ただひたすら怖くて、僕は声すら出せずにいた。

 

 そんな僕の様子などお構いなしと言うように彼女が僕の男性器を撫でたり握ったりしているうちに、僕の全身に何かよく分からない気持ちの悪い感覚が広がっていくのが理解できた。

 

「……こんなものかしらね」

 

 などと呟きながら彼女はようやく僕を解放してくれたが、僕はしばらくの間身体に力が入らずそのまま地べたに仰向けに寝転がった状態で静かに涙を流していた。

 

 その日から、僕は年上の女性……に限らず、僕より大きな女性に対して無条件に恐怖感を覚えるようになってしまった。そして何故か、その日から僕の身体の成長は完全に止まってしまった。ある一部を除いて……。



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不幸な僕……

 そして時は流れ、僕は中学を卒業し高校に入学した。

 

 この年になると、同学年の女子ですら僕の身長を余裕で超えてくる。正直、僕にとって女子のいる環境全てが地獄に見えてしまっていた。だから、できることなら男子校に通いたかったのだけど、僕の家から行ける範囲内に男子校がなかったので、あまり学生数の多くなさそうな近所の高校を受験した。

 

 高校に入学してからも、当然のように僕は周囲から奇異の視線を向けられた。男子にしてはあまりに華奢すぎる、女子の中に交じっても目立つほど小柄な僕に興味を持たない学生はいなかった。

 

 それでも、入学当初は特に何事もなく良好な人間関係を築けていた。まぁ、基本的に男子だけだったのだけど。女子にはやはり近づけなかった。回りを見ればみんな僕より背が高かったから。

 

 時折クラスの女子たちからは、街中で大人の女性たちから向けられるものと同じ、まるで獲物を狙う獣のようなギラギラとした視線を感じていた。その度にぞわぞわとした感覚と吐き気を覚えていた。僕のような外見の男を好む人種がいることはこれまでの経験から痛いほど理解していたが、学校の中でまでこんな視線を向けられないといけないのは本当に辛かった。

 

 もし、あの時の書店の店員さんのように僕に迫ってきたら……、僕はどうなってしまうのだろう……。想像するだけで怖かった。

 

 そんな僕の想像が現実になるのは思ったより早かった。ある時、クラスの中でも特に身長が高くてスタイルの良い女子たち数人が、瞳をギラつかせながら僕を取り囲むように迫ってきた。しかも、よりによって教室内でだ。

 

「あー、もう無理っ!我慢できない」

 

「可愛すぎるんだもんねぇ♪」

 

「お持ち帰りしたくなっちゃう♪」

 

 女子たちは口々にそう言いながら、徐々に僕との距離を詰めてきていた。僕の心臓は破裂せんばかりの勢いでドクドクと激しく拍動し、呼吸は浅く速くなっていた。全身の立毛筋が収縮し、それから眩暈までも起こってしまっていた。

 

 そして、彼女たちが僕のすぐ傍までやってきた瞬間、僕は我慢できずにその場で嘔吐してしまった。僕自身、まさか嘔吐までしてしまうとは思っていなかった。苦手とは言っても、触れられたら嫌悪感を覚える程度だろうと思っていたのだ。

 

 しかし、現実は違った。突然吐しゃ物をぶちまけた僕の様子に、クラス中が騒然となった。驚愕の表情を浮かべる者、嫌悪の視線を向けてくる者など反応は様々だったが、そのどれもが負の感情だったことは言うまでもない。

 

 自分が成した目の前の惨状を呆然と見つめながら、僕は気が遠くなる感覚を覚えていた。こんなことを仕出かしてしまったのだから、きっともうこの学校に僕の居場所などなくなってしまうのだろう……。そんな考えが僕の脳内を支配していた。

 

 僕の予想通り、その日を境に僕の築いた人間関係はあっさりと崩れ去った。もっとも、入学してからそこまで時間も経っていなかったので、人間関係と言っても大したものじゃなかったのだけど。それでも、あるとないとでは全然違うものだ。

 

 女子たちの大半はふざけ半分で僕のトラウマを刺激するような行為を次々と仕掛けてきた。数人で僕を取り囲んではまるで誘惑でもするかのように僕に対して過剰なスキンシップを図ってきたり、酷い時は女子トイレや女子更衣室に連れ込まれそうになることもあった。

 

 健全な男子であれば、きっと夢にまで見るシチュエーションだろう。女子にもみくちゃにされる僕の様子に、男子たちは嫉妬の視線を向けてきた。そして、それはやがて僕への虐めに発展することとなる。

 

「そんななよなよしてるから女子にナメられるんだよ」

 

「俺たちが鍛えてやるよ」

 

 などと言いながら、彼らは僕を扱き使い、時には暴行を加えてきた。単なる鬱憤晴らしであることは充分に理解していたけど、僕は何も言い返すことができなかった。

 

 また、それだけでなく……

 

「おい、お前ちょっと女子更衣室に突入して来いよ。んで、コイツで写真の一枚でも撮ってこい」

 

「お前ならできるだろ?なあ?」

 

 などという無茶ぶりまで要求されたこともあった。これがバレれば僕だけじゃなくて彼らも大変な目に合うのだと説得しようとしたけど、それは無駄な努力に終わった。彼らに逆らうことはできなかった。

 

 とは言っても、僕は一定以上女子に近づくことができないので、結局その命令を遂行することはできなかったのだけど……。あの時はいつも以上にボコボコにされたものだ。両親への誤魔化しが大変だった。でも、両親に心配をかけることはしたくなかったので、何とか誤魔化しきった。

 

 それ以降、彼らから女子たちの写真を要求されることはなくなったが、僕に対する仕打ちは相変わらず続いた。来る日も来る日も身体のあちこちに傷をつけられ、僕は心身ともに疲弊していった。日を重ねるごとに自分の身体が丈夫になっていくのはもはや皮肉としかおもえなかった。

 

 そうして辛く苦しい高校生活も半年と少しほど過ぎ、季節は冬に移り変わる。そんなある日のことだった。

 

 その日は最低気温が0℃を下回るほどの真冬日で、地面にはところどころ凍結した箇所が見受けられた。

 

 僕はなるべく滑らないよう細心の注意を払いながら、自宅の近所にある高校を目指してとぼとぼと歩いていた。

 

「……赤だ」

 

 僕は通学路の途中にある横断歩道で運悪く赤信号に引っかかってしまい、寒さで身を縮こまらせながら信号が青に変わるのをじっと待っていた。あまりの寒さに、僕は目の前の信号と僕自身にしか意識を向けられていなかった。

 

 だから、後ろから迫る存在に気づけなかった……。

 

「おっはよう、望月ちゃん♪」

 

 そう言いながら、クラスメイトのとある女子が背中から僕にそう元気よく声をかけてきた。そして、いつものおふざけの要領で僕の背中に触れてきたのだ。

 

 僕は突然現れた女子に過剰に反応してしまい、身体を飛び跳ねさせてしまった。それくらいならいつものことなのだが、今日はそういうわけにもいかなかった。

 

 僕はその勢いのまま凍結した地面で足を滑らせてしまった。そして、そのまま身体が車道に投げ出されてしまう。

 

 信号はまだ赤のまま。つまり、車道には多くの車が行きかっている。そんなところに飛び込めばどうなるか?

 

 そう、僕は丁度通りかかった一台の車に撥ねられた。そして、呆気なく命を落としてしまったのだ。

 

 最後にチラリと見えたクラスメイトの女子の顔は、何が起こったのか分からないというようにぽかんとしていた。その後は分からない。なんせ、そこで僕の意識はブラックアウトしたのだから。

 

「ーー貴方の人生はあまりに不幸すぎました。よって、貴方には第2の人生を与えます。…………を…………し、…………を…………いたします。それでは、幸せな人生を送れることを願っております」

 

 ふらふらと暗闇の中を漂う感覚の中で、僕はそんな声を聞いたような気がした。意識が朦朧とした状態では、その言葉の意味などほとんど掴めなかったのだけど……。

 

 それから僕は、ゆっくりと浮上するような感覚に苛まれ、そうして目を覚ましたのだった。



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Chapter1. 転生したら御嬢様の専属執事になってしまった
目覚めと幼天使?


「んん……、んんん……」

 

 真っ暗な空間から意識が浮上する感覚を覚え、僕はそんなうめき声とともにゆっくりと瞼を開く。

 

 すると、僕の視界いっぱいに白い世界が飛び込んできた。回らない頭ではそれ以上何も考えられない。さらに、身体の感覚も朧気だった。

 

「っ!?め、目覚めたのですか!?」

 

「えっ、ホント!?」

 

 そんな声が聞こえた気がしたが、僕の脳の処理速度は追いついてくれない。僕はただぼんやりと目の前に広がる白い世界を見つめていた。

 

「私たちの言葉、分かりますか?」

 

「目覚めたなら返事を頂戴」

 

 やけによく通る高い声が脳内に響き渡る。その声に引っ張られるように、僕の意識はよりはっきりしたものに変わっていく。

 

 全身の感覚も少しずつ元に戻っていく。そして僕は、何か柔らかくて心地の良い感触に身体が包まれていることに気がついた。

 

「……布団?」

 

「はい、今貴方はベッドの上にいます」

 

「さっきまでずっと眠ったままで、声かけても全然起きる気配なかったのよ、貴方」

 

「……えっ?」

 

 先ほどまではぼんやりしていて処理できていなかった高い声が、今度ははっきりとした意味を持って僕の耳から脳内に流れ込む。それはよく聞きなれた言葉だった。

 

 僕は横たわったままだった身体を勢いよく起こし、そして声の聞こえた方へと視線を向けた。利きなれない声で聴きなれた言葉を発せられたことに思わず驚いてしまったのだ。

 

 僕が視線を向けた先にいたのは、一目見て幼いと分かるくらい小さな背丈の二人の少女だった。綺麗な金色の瞳や長い銀髪、そして顔立ちに至るまで、彼女たちは瓜二つの容姿をしていた。恐らく双子なのだろう。

 

 そして、その少女たちの容姿が日本人離れしたものであることに、僕は遅れて気がついた。というか、こんな子僕は知らない……。

 

 いや、そもそもここは何処なのだろう?病院……っぽくはない。それっぽい機材も置いてないし消毒液っぽい臭いもない。というか、あれだけ勢いよく車に撥ねられたのだし、むしろ生きている方がおかしい。

 

 じゃあ、もしかしてここは天国……というやつなのだろうか?となると、目の前にいる二人の童女は神様……いや、その見た目的に天使といったところか?そうか、僕は死んで天国に来られたんだ……、地獄じゃなくて良かった。

 

 僕はそんなことを考えながらほっと一つ息を吐く。そして、改めて二人の童女……天使様へと視線を向けた。すると、二人は何やら呆けたように口をあんぐりと開いたまま固まってしまっていた。ん?何事だろうか?心無し頬も赤いような……?いや、気のせいか。

 

 まぁ、とにかくいろいろと話も聞きたいし、ひとまず話しかけてみることにしよう。天使様だったら、きっと何でも答えてくれるだろう。

 

「あの、天使様方……、お聞きしたいことが……」

 

「「て、天使様っ!?」」

 

 僕が話を切り出そうとすると、二人の幼天使様はそんな驚いたような声を同時に漏らす。えっ、何か変なこと言ってしまったのか?も、もしかして、彼女たちは天使でなく神様だったりするのだろうか?となると、ちょっとまずいことをしてしまった……。

 

「そ、そんな……、天使様だなんて……。そ、そんなに褒められると照れてしまいます……。え、えへへ……」

 

「わ、私は別に照れてないし……。天使とか言われたって何とも思ったりしないし……。アルフィみたいな反応を期待してたかもだけど、私はそんなにちょろくないから。ふん、残念でした」

 

 二人のうち片方は身体をもじもじとさせてうわごとのように何かを呟き、もう片方は顔を真っ赤にしながら僕を睨みつけていた。ヤバい……、怒らせてしまった……。

 

「す、すみませんっ……、怒らせるつもりじゃ……」

 

「べ、別に怒ってるわけじゃないわよ……。わ、悪い気はしなかったし……」

 

「え、えっと……、貴女方は……天使様ではなく、もしかして神様なのですか?」

 

「「……はい?」」

 

 今度は二人そろって首をかしげる。その仕草もやっぱり似ていると暢気に考えてしまう。思ったより僕の心は落ち着いているみたいだ。

 

 だが、どうも話が噛み合っていないようにも思っていた。何というか、僕が天使様と呼んだ時の彼女らの反応が、まるで可愛いねと褒められた少女の反応のようだった。片方は素直に喜び、もう片方は照れ隠しで強気な態度を見せる……。なんか、そんな感じの反応だったように思えてしょうがなかった。

 

 てっきり天使と神様を間違えたことに対して怒っているのかと最初は思ったけど、もしかすると彼女たちはそのどちらでもなく、普通の幼き少女……なのだろうか?えっ、それじゃあ本当に、ここは何処なんだ!?

 

「あ、あの……、ここは何処ですか……?」

 

 僕はストレートにそう聞くことにした。最初からそうしていれば良かったのだ。勝手にここは天国なのだと決めつけてしまったのが悪かった。

 

「えっと、ここはローラント家の屋敷でございます」

 

「ロ、ローラント……?何処ですか……、それ……」

 

「ローラント家を知らない……、ということは、貴方は他国の人間……?」

 

「いえ、人間族はこの国にしかいないはずだわ。それに、見た感じでは魔族とも、亜人族とも思えないし……。もしかして、記憶喪失……なのかしら?」

 

 少女たちは何やら難しい表情でブツブツとそんなことを呟いていた。人間族?魔族?亜人族?な、何だそれ……?もしかして、今流行りの異世界に転生した……とでも言うつもりか?そ、そんなまさか……。

 

「失礼ですが、お名前を伺っても?」

 

「あ、はい。望月渚沙と言います。出身は日本です」

 

「変わった名前ね。それに、ニホン……って何処なのかしら?私、聞いたことないわ、そんな国。アルフィはどう?」

 

「いえ、私もないです、エルシャお姉様」

 

 日本を知らない……?それも二人して……。日本ってそんなマイナーな国だったかなぁ……?いや、そんなことはない……はずだよなぁ……。

 

 ってか、そもそも彼女たちが使っている言語は日本語だ。それなら、日本を知らないはずはないと思うのだけど……。なんか、疑念がさらに深まったような……。

 

「でも、名前も出身もはっきり覚えてるのね……。じゃあ、記憶喪失っていう線はないのかしらね……」

 

「単純にローラント家の知名度不足なのではないでしょうか?」

 

「そんなことあるのかしら……。お父様もお母様もお兄様方も、みんなこの世界のいろんなところで活躍されているのよ。少なくともこの国でローラント家を知らない人間なんていないはずなのだけど……」

 

「ですがお姉様、この方はローラント家を知らないとおっしゃっているのです」

 

「もしかしてあれじゃない?この人の知識不足なんじゃない?」

 

「お、お姉様っ!そんなこと言ってはなりませんよっ!!す、すみません、姉が失礼なことを……。どうかお気になさらないでください」

 

 そう言いながらぺこぺこと僕に向かって頭を下げてくる銀髪の少女。先ほどからの会話を聞くに、やはりこの二人は姉妹のようだ。そして、今こうして僕に頭を下げているのが妹なのだろう。

 

 そして、少し態度がきつめなのが姉というわけだ。容姿は似ているけど、性格は真逆なんだな。まぁ、それも当然と言えば当然か。

 

 そして、一見容姿は瓜二つに見えるが、よくよく見ると妹の銀髪には少しだけ癖っ毛が混じっていた。最も目を凝らさないと分からないくらいの小さな違いだけど。

 

「あ、いえ、平気です。その、できればここが何という国なのか教えていただけませんか?」

 

「はい。ここはアルテロア王国、人間族の住まう国です」

 

「アルテロア……、すみません、やっぱり聞いたことがないです」

 

「そう……ですか。貴方は人間……なんですよね?」

 

「人間です。先ほど、魔族とか亜人族とか言っていましたけど、そんな人種が存在するのですか?」

 

「え、ええ。いますよ、魔族も亜人族も」

 

 ……これはもしかすると、本当に異世界とやらに来てしまったのかもしれない。クラスメイト達が時々話している内容を聞いて覚えていただけで、実際僕自身はそういう類の本は読んでこなかったのだけど。

 

「ねぇ、さっきから話が全然噛み合っていないように思うのだけど……?私たちにとって当たり前のことは何一つとして分からないみたいだし、ニホン……だったかしら?よく分からない国名を言い出すし……。貴方、ホントに人間?」

 

「お、お姉様、先ほどから失礼ですよ……」

 

「でも、こういう疑問を持って当然だと思わないかしら?」

 

「確かに、何かしら認識に齟齬があるようには感じますが……。それでも、言い方というものがあると思うのです」

 

「そ、そうよね……。ごめんなさい、流石に言い方が悪すぎたわ」

 

「あっ、いえいえ、お気になさらず。それより、一つだけ思い当たることがあるのですが……」

 

 そこまで言って僕は少しだけ躊躇いの感情を覚えてしまう。異世界だなんて馬鹿げた話を、彼女たちは果たして信じるのだろうか?

 

 けど、あくまで可能性の話だしな。話すだけ話してみよう。そう思い、僕は再び口を開こうとした……のだが、それを遮るようにコンコンというノック音が聞こえてきた。

 

 僕たち三人はその音が聞こえた方へと視線を向けた。そこには、一枚の扉があった。その存在に今更になって気づいた僕だった。



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望まぬ拒絶……

 ノックの音に反応し僕と少女二人が一斉に扉へと視線を向けると同時に、扉の向こうから声がかかる。

 

「エルシャローゼ様、アルフィオーネ様、ライネでございます。意識不明者の様子を伺いにまいりました」

 

 声からして、恐らく女性だろうと推測はつく。それも大人の。その声を聞いた瞬間、僕の身体はぶるりと小さく震えてしまう。大人の女性の声を聞くだけでも、過去のトラウマは疼いてしまうのだ。

 

 いやまぁ、扉の外の彼女が僕より小さいという可能性だって有るし、何なら僕のように高めの声の男の人かもしれないから、声だけで身体を震わせるのは流石に過剰反応すぎるとは自分でも思うけどね。

 

「入って頂戴、ライネ」

 

 扉の外からかけられた声に反応したのは姉の方だった。今のやり取りから察するに、部屋の外に待機している女性(推定)は使用人か何かなのだろう。

 

 先ほどの彼女たちの言動的に、このローラント家はそれなりに地位の高い貴族であると思われる。だから、使用人がいても何らおかしいことはないのかもしれない。

 

「失礼いたします」

 

 少女の返事を聞いた扉の外の女性(推定)がゆっくりと扉を開けて部屋の中に入ってきた。やがてその姿がはっきり見える。

 

 案の定、女性だった。それも、僕の予想通り大人で高身長の……。そして、そんな彼女は日本ではなかなかお目にかからないメイド服というやつを身に纏っていた。やはり、使用人で間違いないみたいだ。

 

「おや?お目覚めになられたのですね」

 

 メイド服を着た彼女はベッドの上の僕に視線を向けると、一瞬驚いたような表情を浮かべた後、すぐににこやかな笑みを僕に向けてくれる。そこに悪意など一切ないことは充分理解しているのだが、それでもやはり僕の身体は拒絶反応を示してしまう。

 

「は、はい、つい先ほど……。その……、まだ状況が呑み込めていないんですが、助けていただきありがとうございます」

 

「御身体の調子はどうですか?」

 

「ええ、問題ないです。それであの……、僕はどのような経緯でこの部屋まで運ばれたのでしょう……?」

 

 そういえば肝心なことを聞き忘れてしまっていたと思い、僕はここまでの経緯について彼女たちに尋ねることにした。なるべく身体の震えを悟られないよう、布団で上手く隠しながら。

 

「貴方、屋敷の前で倒れてたのよ。それを偶然私たちが見つけたの」

 

「御嬢様方からすぐに報告を受け、私がこのお部屋までお運びいたしました」

 

「そ、そうだったんですね。救助していただき、本当にありがとうございました……って、えっ……!?」

 

 メイドさんの言葉に僕は改めてお礼を言おうとしたところで、思わず硬直してしまった。メイドさんが僕をこのベッドまで運んだ……?ということはつまり、無意識の間にこのメイドさんが僕の身体を触ってしまった……ってことだよね……。

 

 そう考えた瞬間、僕の身体は先ほどよりも強い拒絶反応を見せ始める。動悸がして胸が苦しい……。息も荒くなり、眩暈で目の前がぐらぐらと揺れ始める。強烈な吐き気に襲われ、僕は思わず右手で口を覆ってしまった。

 

「ど、どうかなさいましたか!?」

 

「か、顔真っ青ですよっ!?だ、大丈夫ですか!?」

 

「も、もしかして体調が悪いのかしら!?ど、どうしたら……」

 

 突然息を荒げ始めた僕の様子に、二人の少女とメイドさんがおろおろし出してしまう。特に御嬢様二人は軽いパニック状態だった。だが、油断したら今すぐにでも嘔吐してしまいそうなこの状況では、流石に彼女たちに気をやることなどできなかった。

 

「ひ、ひとまず熱があるかどうかの確認を……。少し失礼いたしますね」

 

 流石と言うべきか、メイドさんは驚きつつもすぐに冷静さを取り戻した。そして、僕の体温を確かめるべく、さっと素早くベッドに近づいてきた。だが、僕にとってそれは最悪の展開だった……。

 

「んうぐっ……」

 

 とうとう僕は我慢できず、吐しゃ物をベッドの上に盛大にぶちまけてしまった。失礼にもほどがあることは分かっているつもりだが、それでも拒絶反応を止めることは僕にはできなかった。

 

「えっ!?ちょっ……、大丈夫なのっ!?」

 

「た、大変っ!!ど、どうしましょう……」

 

「先ほどの反応……、私が近づいたら状態が悪化したように見えました……」

 

「そ、それ、どういうことなの!?」

 

「分かりません……。ですが、私のような容姿の女性に何かしらトラウマを持っていらっしゃるのかもしれませんね……。となると、私が近づくのは止めておいた方が良さそうですね」

 

 このメイドさん、察しが良いな。まさにその通りだった。僕は気持ち悪さのあまり声を出すことはできなかったけど、メイドさんの言葉に肯定の意思を見せるために軽く頷いた。

 

「簡単な受け答えはできるみたいですね。えっと、私がこの部屋にいるのはまずいでしょうか?」

 

 なるほど、首を縦か横に振って答えてほしい、ということだな。僕は彼女からの質問に少しだけ頭を悩ませる。

 

 一定の距離さえあれば、別に同じ空間にメイドさんがいても問題はない。それに、態々僕の事情で席を外させるのはあまりに心苦しい。

 

 けど、最善を期すなら席を外してもらった方が良いのかもしれない。罪悪感の所為でなかなか答えを出しきれない。

 

「どうか、遠慮なくおっしゃってください」

 

 僕が答えに迷っていることを察したメイドさんが、微笑みながらそんなことを言ってくれた。まだ罪悪感は残っているが、彼女のその言葉で少しだけ心が軽くなったような気がした。

 

 だから僕は、首を縦に振った。遠慮するなと言われたのだから、むしろここで遠慮してしまった方が相手に失礼だろう。

 

「分かりました。えっと、御嬢様方も……一緒に退出した方が良いでしょうか?」

 

 その質問に、僕は首を横に振った。彼女たちは近くにいても問題ないから。僕のこのトラウマは、あくまで僕より大きい女性にしか反応しない。だから、この御嬢様方には僕の身体は反応しないのだ。

 

 いや……、でも待てよ?吐しゃ物の前に彼女たちを待機させたままというのは少し問題だよな……?となると、むしろ部屋から一度退出してもらった方が……。

 

 そう思い、僕は訂正するように首をぶんぶんと縦に何度も振った。そして、何とか口を開き声を絞り出す。

 

「吐しゃ物が……あるから……。この場にいるのは……まずいと……思います……、うぐっ……」

 

「む、無理して喋らなくて大丈夫ですよ。えっと、私たちがいても問題はないのですね?それなら、ここにいさせてください」

 

「そうね。ちょっと心配だし、貴方が良いならここにいさせてもらうわ」

 

 どうやらパニックから立ち直った二人の御嬢様が、それぞれ僕に対してそんなことを言ってくれる。この子たちは何と優しいのだろう……。というか、家族以外の人たちにこんなに優しくされたのは何時ぶりだろう……?

 

 僕の心の中に温かいものが流れ込んでくる感覚を覚えた。それが僕の身体内に纏わりついていた気持ち悪さを緩和してくれた。

 

「あ、ありがとうございます……、心配してくださって…」

 

 僕の口から、自然とそんな感謝の言葉が漏れ出た。



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優しい世界

「あ、ありがとうございます……、心配してくださって……。それと……、本当にすみませんでした……」

 

「い、いえ、お気になさらず。それより、もう声出されても平気なのですか?あまりご無理はなさらない方が……」

 

「だ、大丈夫です。少し楽になりましたので……」

 

「そ、そう、それなら良かったわ」

 

 ほっと安堵の息を吐く二人。そんな二人の様子に、僕の心はさらに癒されていく。まさか、彼女たちの優しさに物理的に救われるとは思っていなかった。

 

「あと、これ……汚してしまいましたね……。本当にすみません……。実は僕……、女性の方が苦手なんです……」

 

 僕は自分のトラウマについて軽く説明しておくことにした。メイドさんに対してかなり失礼なことをしてしまったが、決してメイドさんのことを嫌っているわけではないという意思表示のために。

 

「なるほど、そうだったのですね」

 

 女性が苦手という僕の言葉に、メイドさんはこくりと一つ頷く。その表情には、僕に対する軽蔑など一切なかった。本当に、ここには優しい人がたくさんいるんだなぁ。

 

 ちなみに、以前例の店員さんに襲われたことなどは話さなかった。こんな話には興味ないだろうし、僕自身あまり思い出したくなかったからね。

 

「では、男性の使用人を呼んでまいりますね。少々お待ちくださいませ」

 

 そう言うとメイドさんはこの部屋から出て行ってしまった。その優しい気遣いに、僕の心は完全に元気を取り戻していた。

 

「あ、あの、私たちは……大丈夫なんですよね?」

 

「え、ええ、大丈夫です。あくまで、僕よりも大きい女性が苦手なだけで……」

 

「そ、そうなのですね。……幼くて良かった……と、喜んで良いのでしょうか……?ちょっと複雑です……」

 

 何やらぼそぼそと呟いているようだったが、残念ながら僕の耳には届かなかった。

 

 それから少しして、執事服を着こなした若い男性が室内に入ってくる。先ほどのメイドさんと言い、この執事さんと言い、何というか容姿のレベル高くない?やっぱり、そういうのも採用基準に入っていたりするのだろうか?

 

「体調は大丈夫ですか?」

 

「ええ、もう平気です。ご心配、ありがとうございます」

 

「いえいえ、礼など構いませんよ。それより、すぐに綺麗にいたしますので、少しだけお待ちくださいね」

 

 そう言うと若い執事さんは何事かを呟き始める。英語……ではなさそうだ……。じゃあ、フランス語……?イタリア語……?ドイツ語……?うーん、よく分からない。

 

 などと考えていると、次の瞬間淡い光が執事さんの手から漏れ出した。その光景に僕が唖然としていると、彼はその手をベッドにかざし、最後に一言……

 

洗浄(クリーン)……」

 

 と呟いた。すると、先ほどまでの惨状が嘘のようにベッドの上の汚れが一瞬にして消え去り、新品同然のふかふかベッドに元通りになっていた。あまりに現実離れしすぎていて、僕は完全に言葉を失った。

 

「これで綺麗になりましたね。おや?どうかなさいましたか?」

 

 満足気に一つ息を吐いた執事さんは、すぐさま僕の様子に気がつきそう問いかけてくる。その声で僕は我に返った。

 

「あっ……、い、今のって……」

 

「今の……?もしかして、洗浄(クリーン)のことですか?」

 

「は、はい、多分それだと思います……。よ、汚れが一瞬で……」

 

「今のは魔法ですよ。もしかして、魔法をご存じないのですか?」

 

「ま、魔法っ!?」

 

 僕は驚きの声を上げてしまう。彼はあっけらかんと魔法と言ってみせた。冗談のようにも思うが、実際に汚れが一瞬で消える様を僕は見せられている。だから、疑いようがない……。魔族とか亜人族などと聞いた時、確かに一瞬魔法の存在が頭を過ったが、まさか本当に存在しているとは……。

 

 これはもう、異世界で間違いないのでは?僕は元の世界で車に撥ねられて命を落とし、何らかの理由でこの世界に転生してしまった……。もう、そうとしか考えられなかった。

 

「魔法の存在も知らないなんて……。やっぱり貴方、何か変よ……?」

 

「そ、そのことなのですが、先ほど思い当たることが一つあると言いましたよね?」

 

「そういえば、そんなことを言っていたわね。途中で話が途切れちゃってたけど。それで、その思い当たることというのは何なのかしら?」

 

「信じられない話かもしれませんが……」

 

 僕は彼女の問いかけに大して、最初にそう前置きしてから、一度息を整えて再び話し始める。

 

「僕はもしかしたら、異世界から来たのかもしれません……」

 

「「い、異世界……?」」

 

「ええ、そうです。この世界とはまた別の次元に存在する世界……。もしかしたら僕は、その別次元の世界からこの世界に転生してきたのかもしれません……」

 

「に、にわかには信じがたいわね……」

 

 僕の言葉に、御嬢様(姉)がそう呟く。まぁ、そういう反応になるのは仕方ないことだろう。むしろ、あっさり受け入れる人なんてそうはいないだろう。

 

「確かに普通なら信じられないですが……、ナギサ様なら……もしかしたら有り得るのではありませんか?」

 

「そうなのよねぇ……。いろいろと説明がついちゃうのよねぇ……」

 

 けど、御嬢様二人は僕の話を受けて真面目に頭を悩ませていた。正直、個人的には案外説得力あるような気もしていた。だから、真剣に考えてくれている二人の様子に安堵している自分もいた。

 

「異世界……?以前、旦那様がそのようなことをおっしゃっていたような……?」

 

 すると、不意に執事さんのそんな呟きが耳に届いた。旦那様……ということは、彼女たちの父親ということなのかな?その方が異世界について話していた……。もしかしたら、何か知っているかもしれない。

 

「あ、あの、旦那様……というのは……」

 

「私たちのお父様のことよ。それにしても、お父様が異世界について話していた……ねぇ……。イスト、それは本当なの?」

 

「ええ、詳しい内容までは覚えておりませんが……」

 

「そうなのですね。とすると、お父様なら何か分かるかもしれませんね」

 

「私もそう思っていたところよ」

 

 どうやら御嬢様二人も同じことを考えていたようだ。それなら話は早いかもしれないな。僕は改めて口を開く。

 

「その、できればその方のところへ連れて行ってはいただけませんか?異世界についてお聞きしたいです。それに、僕を匿っていただいたわけですから、お礼もしたいんです」

 

「貴方、律儀なのね。……そういうところもちょっと素敵……なのだけど……。って、私は何をっ……!?」

 

「そうですね。一度旦那様にお会いいただいた方がよろしいかもしれませんね。御嬢様方も、それでよろしいでしょうか?」

 

「ええ、異論ないわ」

 

「もちろん、私もありません」

 

 という感じに、執事さんとそれから御嬢様二人の許可もいただいたので、僕たちは彼女らの父親の元へと向かうのだった。いろいろと謎が解けると良いなぁ。



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家主との対面

「旦那様、イストでございます。例の少年をお連れしてまいりました。入室してもよろしいでしょうか?」

 

 僕たちが連れ立ってとある一室の扉の前までやってくると、執事さん……イストさんがその大きくて立派な扉をコンコンと叩き中にそう呼びかけた。すると、中から男の人の声が聞こえてくる。まぁ、イストさんが旦那様と言っていたのだから、男なのは当然なのだが。

 

「ん?おお、そうか。入ってくれ」

 

「失礼いたします」

 

 そう言うとイストさんはゆっくりとその大きな扉を押し開く。こまめに手入れされているのか、その扉は一切の音を立てず静かに開いていく。開いた扉の隙間から垣間見えた室内はとても広いように感じた。こ、これがお金持ちクオリティ……。

 

 先行してイストさんが室内に身体を滑り込ませ、それに続くようにして御嬢様二人もすたすたと室内に入っていく。僕は少々委縮しながらも、二人の後を負うようにして恐る恐る室内に脚を踏み入れた。

 

「おお、エルシャとアルフィも一緒だったんだな」

 

 室内は外からチラリと見えた時以上に広々とした空間だった。落ち着いた色合いのインテリアは高級そうな雰囲気を醸し出しながらも、何処か安心感のようなものを僕に与えてくれる。

 

 そんな室内の中央に置かれたこれまた立派なソファには、少女たちと同じ銀色の毛髪を携えた穏やかそうな風貌の男性が腰かけていた。年は……だいたい30歳後半から40歳前半くらいといったところだろうか。だが、向こうの世界でよく見かけるおじさんとは違い、姿勢も非常に綺麗で気品を感じられた。流石、貴族の方は違うね。どうやら僕は、こういうことを考えられるくらいには余裕があるようだった。

 

 彼は室内に入ってきた僕らに視線を向けると、まず最初ににこりと微笑んで御嬢様方……自分の娘たちにそう優しく声をかけていた。

 

「ええ、お父様」

 

 姉方がこくりと頷く。それに追随するように、妹方も微笑みながら同じように頷いてみせた。先ほどの印象だと姉方より妹方の方がしっかりしているのかと思ったが、こういう時に率先して返事をするのは姉方のようだ。

 

「それで……、どうやら目覚めたみたいだね。良かったよ」

 

 彼はその優し気な瞳を彼の娘たちから僕へと移し、そう声をかけてくれる。貴族ということで少し怯えてはいたが、それっぽい圧とかも特になく、僕はほっと胸を撫で下ろしていた。

 

「はい、おかげさまで。助けていただき、本当にありがとうございました」

 

「いやいや、気にしないでくれ。むしろ、手を差し伸べられない方が恥ってものさ。それよりも、もう大丈夫なのかい?苦しいとか痛いところはないかい?」

 

「ご心配をおかけしてしまいすみません。この通り、もう大丈夫ですので。お気遣い、ありがとうございます」

 

 僕の返答に彼は満足げに頷いてみせた。本当、優しい人たちだなぁ、みんな。助けてくれたのがこの人たちで良かったと本気で思える。それと同時に、かなり心配をかけてしまっていたのだと分かり、申し訳ない気持ちも込み上げてくる。

 

「ところで、君は何処から来たんだい?」

 

 次にそんな質問をされる。まぁ、身元の確認を行うのは当然のことだろう。それに、僕もそのことについて話に来たのだし。

 

「えっと、そのことなのですが……、僕はもしかしたらこの世界の住人ではないかもしれないんです……。えっと、異世界……と言うべきでしょうか」

 

 少し強縮しつつも、僕は自分の考えを述べる。突拍子もない話だけど、イストさんの言うことが本当なのだとしたら、異世界というキーワードを聞けば何かしらの反応を示してくれるはずだと僕は考えている。

 

「異世界……、異世界か……」

 

 そして、僕の予想は当たり、彼は何度も異世界という単語を呟きながら俯いて何やら考え事を始めた。やはり、何か心当たりがあるのだろう。というか、何かしらあってほしい……。

 

 そう思っていると、彼は俯かせていた顔を再び上にあげ、僕を見据えながら言葉を紡いだ。

 

「何か、根拠などはあるかな?」

 

「あっ、はい。根拠ですが……」

 

 そうして僕は、自分が異世界から来たという考えの根拠について話した。まぁ、根拠とは言っても先ほど御嬢様二人と話している時に生まれた違和感について述べるだけなのだけど。

 

 けど、そんな僕の話を、この屋敷の主人である彼は真剣な眼差しで聞いてくれていた。僕はそんな彼の真剣なまなざしに答えるように、今の自分の頭の中で分かっていることをなるべく漏らさずに口にしていく。

 

「……なるほどね、ありがとう」

 

 そして、僕が話を終えると彼はそれまで浮かべていた真剣な表情を弛緩させ、温和な笑みを浮かべながら僕にそう声をかけた。

 

「そうかぁ……、記憶喪失というわけじゃないけど、魔法とか魔族とか亜人族についての知識が一切ないのか。そして、ニホンという国名は私も聞いたことがない。試しに、君の知っている国名を言えるだけ言ってみてはくれないかな?」

 

「あ、はい、分かりました。えっと、アメリカ、イギリス、ロシア……」

 

 僕は言われるまま分かる限りの国名を答える。僕が口にした国名に、この場にいた僕以外の人たちは揃って首をかしげていた。

 

「うーむ、知らない国名ばかりだね……。これは本当に、君は異世界からやってきた……ということで間違いないかもしれないね」

 

「ですが、不可解なこともあるんです」

 

「不可解なこと、とは?」

 

「それは、今こうして僕が皆さんとお話しできていることです」

 

「話ができることが不可解……?それ、どういうことなの?」

 

 御嬢様のうち姉方が首をかしげてそう尋ねてくる。イストさんもピンとこないようで、同じように首をかしげて僕に疑問の視線を投げかけてきている。

 

 一方、妹方と彼女らの父親は何となく理解できたというように何度も頷いている。ふむ、どうやら妹方は優秀であられるようだ。

 

「なるほど、言われてみれば確かにそうだね」

 

「別の世界とこの世界の言語が全く同じ……というのは、確かに不思議ですね」

 

「あ、あー、そういうことね。アルフィは相変わらず頭が良いわね。私、全然思い至らなかったわ」

 

 二人の言葉を聞いてようやく合点がいったというようにポンと手を打ち合わせる姉方。やっぱり、妹方に比べて少し抜けているのかもしれない。っと、そんなことを考えるのは失礼だな。止めておこう。

 

「文献に何かヒントがあるかもしれない……。ちょっと待っててくれ」

 

 そう言うと家主の彼は徐にソファから立ち上がり、背後にあった本棚へと歩み寄る。そして、しばらく本棚のあちらこちらへと視線を彷徨わせた後、一冊の本を手に取ってソファへと戻ってきた。

 

「そうそう、この本……。ええっと……、異世界伝説の話は……っと」

 

 などと呟きながらパラパラとページを捲る。異世界伝説……、そんなものがあるのか……。少し気になるな。きっと、彼が異世界という話をあっさり受け入れられたのもその異世界伝説とやらが関わっているのだろう。イストさんの心当たりとはこれのことか。

 

「お父様、異世界伝説……とは何ですか?」

 

 などと考えていると、妹方も同じように気になっていたらしく、自身の父親に対してそう問いかけていた。今更だけど、彼女は父親に対しても丁寧な口調を崩さない。まぁ、僕の想像する貴族もそんなイメージなので、特に疑問は持たない。

 

「ん?ああ、これのことかい?異世界伝説っていうのは、昔から言い伝えられている複数世界論のことだよ」

 

「そのようなものがあるのですね……。初めて知りました」

 

「こういう文献を読むのは一部の物好きだけだからね。世間的にはあまり信じられていない論説だし。まぁ、私はその物好きなのだけど」

 

 そう言ってはははと笑う家主様。曰く、この世界はかつて異世界からの訪問者によって守られ永遠の平和を手に入れた。今こうして多種族が共存できているのはその訪問者のおかげなのだと。

 

 信じる者は少ないが、世界各地にそれらしき人物の石像が存在していたり、この世界では珍しい色素の毛髪を持った人が散在していることから、その伝説を正しいものと証言する人もいるようだ。

 

 でも、現在この世界にその訪問者と実際に会ったことがある、という人物は存在しない。だから、眉唾物として捉える人が多いのもまぁ頷ける。僕だって、普通なら信じられないと思う。

 

「私は信じます。この異世界伝説」

 

「そうね、私も信じるわ。だって、実際に目の当たりにしたわけだし」

 

「そうだね。私も、この伝説が真実であるという確信にまた一歩近づけたよ。……っと、あったあった。これだね」

 

 どうやら目当てのページが見つかったらしく、彼は静かに本へと視線を落としていた。僕らは、彼がそのページを読み終えるのを固唾を飲みながら……というのは大げさかもしれないが、それなりの緊張感を持ったまま待っていた。

 

「ふーむ、なるほど……」

 

「何か分かったのですか?」

 

「まぁ、それらしきことは書いてあったよ。一つ確認させてもらっても良いかい?もし良ければ、ここで目覚める直前の記憶について教えてくれないかな?」

 

「直前の記憶……ですか。分かりました」

 

 僕は素直に答えることにした。直前の記憶となると、僕が登校中に車に撥ねられて命を落とした、という記憶だろう。正直、この話をして空気が悪くなったりしないかと不安にもなったが、それでもなるべく質問には答えたかったのだ。



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異世界伝説

「し、死んだ……!?そ、そうだったのですか……!?ジドウシャ……というのは存じ上げませんが、よっぽど痛くて辛かったのでしょう……?」

 

「うーん、痛みとかはあまり覚えていないですね……。けど、両親に別れを告げられなかったのは少し悔やまれます」

 

 心配そうに僕の右手を優しく包むように両掌で握ってくれる妹方に対し、僕はなるべく笑顔を心掛けて話し返す。

 

 そう、両親に別れの言葉を言えなかったのは少しだけ寂しい。二人だけは、いつも僕の味方でいてくれたから、せめてお礼くらいは言いたかった。後悔があるとすればそれくらいだ。

 

 それ以外は正直何の未練もない。むしろ今は、こちらの世界に来れたことを喜んですらいる。やっぱり人間は、虐められるより優しくされた方がずっと幸せに感じられるものだ。妹方の掌の温もりが僕の手を伝い、そして全身に広がっていく。それがとても心地良かった。

 

「そう……ですよね……」

 

「私だって、突然家族に会えなくなるのは悲しいわ……」

 

 妹方とは反対側から、姉方も寂し気な表情を浮かべて僕の顔を見上げてくる。彼女の手は僕の空いた左手に延びては引っ込みを繰り返している。恐らく、妹のようにしたいという気持ちと、異性の肌に触れることへの抵抗感とが胸中に同居しているのだろう。御嬢様だもんね、そういう教育を受けているのかもしれない。むしろ、妹方が躊躇わずに僕の手を握ったことに驚いてしまう。

 

 だが、たとえ手を握られずとも、彼女たちの優しい気持ちは充分に伝わってきていた。だから僕は精いっぱいの笑顔を浮かべて、彼女たちに言葉をかける。

 

「そんな悲しい顔しないでください。僕はこの世界に来られて良かったとも思っているんです」

 

「そ、そうなのですか?」

 

「ええ、そうです。お二人みたいなとても心優しい方に出会えて嬉しいと思っています。ですから、ほとんど未練はないんです」

 

「私……たちに……!?」

 

「う、嬉しい……って……」

 

 僕の言葉に、僕の両サイドにいた二人の少女は顔を真っ赤にして俯いてしまった。僕、何かおかしなことでも言ってしまったのだろうか?いや、ただ照れているだけなのかな?まぁ、怒っているわけじゃなさそうだし良いか。

 

「おやおや……」

 

「娘たちももうそんな年頃か……」

 

 家主様とイストさんがそんなことを呟いていたが、僕にはその意味を理解することができなかった。

 

「あ、会えて嬉しいだなんて……そんな……、え、えへへへへ……」

 

「こ、これって……やっぱり運命……なのかしら……?ふ、ふふふ……。って、私は何を考えているのよ……」

 

 御嬢様方も何やら自分たちの世界にトリップしてしまった。これ、そのまま放置してて大丈夫かな?ひとまず本題に戻りたいのだけど……。

 

「え、えっと、話戻しますね。それで……、僕がこの世界に来るまでの経緯が何か関係あるのですか?

 

 もういいやと思い、話を先に進めることにした。

 

「おっと、そうだったね。うん、この文献によると、世界移動には二つのパターンがあるみたいなんだ。一つは召喚、もう一つは転生……。つまり、君は後者の転生によってこの世界に来た、ということになるのかな」

 

「そうなるんですかね」

 

 僕は曖昧な返事しかできなかった。一応、向こうの世界で一度死んだわけだし、転生と言って良いのだとは思うが、現実感がないのではっきりと断言はできない。

 

「それでだな、転生の場合、目覚める前に誰かの声が聞こえるらしいんだけど……、何か分かることはあるかい?」

 

「誰かの声……ですか?」

 

 そういえば、意識が浮上する前に何か変な声を聞いたような気がしなくもない。もしかして、誰かの声というのはそれのことなのか?

 

「た、確かに聞いたかもしれません。あまりよく覚えていないのですが」

 

「おお、そうか。内容までは……覚えていなさそうだね」

 

「すみません……」

 

「いや、仕方ないさ。肝心なのはちゃんと声を聞いた記憶があるかどうかってことだからね。その声を聞いた者は、転生先の世界で生きていくにあたって不自由のないように常識を一部書き換えられるらしいんだ」

 

「ということはつまり、僕は常識を書き換えられたから、この世界の言葉で喋ることができているのですね」

 

「うむ、そういうことになる。まぁ、この文献によると、ではあるけどね。試しに、この文を読んでみてくれないかな?」

 

「あ、はい、分かりました」

 

 そう言って手渡された本のタイトルの文章を読み上げる。僕の目には日本語にしか映っていなかったけど、恐らくこれも常識改変によるものなのだろう。

 

「ちゃんと読めるみたいだね。なるほど、君は本当に異世界からの訪問者のようだ。いやぁ、信じていただけに、こうして本物の異世界人を目にできるなんて嬉しい限りだよ」

 

 そう言うと家主様は相貌を崩して嬉しそうに笑う。そんな彼の言葉に、イストさんも、そしていつの間にか我に返っていた御嬢様方も同意というように頷いていた。僕は、彼らに受け入れてもらえたのだと思い、言いようのない嬉しさを心の内に覚えていた。

 

「おっと、そういえば自己紹介がまだだったね。うっかりしていたよ」

 

 苦笑交じりにそう言うと、家主様は改めて居住まいを正して僕に向き直る。そういえば、僕も家主様にはまだ名乗っていなかった……。

 

「私の名は、ルクストール・ローラント、ローラント家の現当主だ。私のことは気軽にルクスと呼んでくれ」

 

「わ、分かりました。えっと、僕は望月渚沙と言います。……この場合は、ナギサ・モチヅキと名乗った方が良いかもしれませんね」

 

 僕は家主様改めルクスさんにぺこりと頭を下げる。

 

「あら、ナギサが名前だったのですね」

 

「貴方の世界では随分と変わった名乗り方をするのね。まぁ良いわ。そういえば私たちもまだ名乗っていなかったから、ついでに……。私はローラント家長女、エルシャローゼ・ローラントよ。そして、こっちが双子の妹の……」

 

「アルフィオーネ・ローラントと申します。以後、よろしくお願いいたしますね、ナギサさん」

 

「はい、よろしくお願いします、皆さん」

 

 僕は彼女たちにもペコリと一礼する。やはりというべきか、この二人は双子だったようだ。これだけ容姿が瓜二つなのだから、当然と言えば当然なのだろう。

 

「ところで、ナギサ君。君の歳はいくつなんだい?」

 

 唐突に、ルクスさんからそんな質問が投げかけられる。

 

「見た感じ、今君が着ているのは学園の制服……だよね?」

 

「えっ、これが制服って分かるんですか……?」

 

 僕は驚きの声を上げてしまう。けど、言われてみれば、ルクスさんやエルシャローゼさん、アルフィオーネさんが着ている服は、何処となく元の世界の文化を彷彿とさせた。それに、先ほどから服に関する疑問は投げられなかった。彼らにとってこの服は大して違和感ではなかったのだろう。

 

「やはり制服で合っていたんだね。この世界の制服のデザインとよく似ていたから、何となく分かったんだ」

 

「そうだったんですね。はい、僕は学生です。年は16歳です」

 

「16歳で学生……?うーむ、ここは少し常識にずれがあるみたいだね。この世界では、15歳を迎えると成人したことになるんだよ。だから、学園も15歳で卒業なんだ」

 

「あっ、そうなんですか!?ってことは、この世界では僕はもう成人……ということなんですね」

 

 まさか、成人年齢が異なるとは……。いや、でもよく考えてみれば元の世界でも国ごとに成人年齢は違ったわけだし、特に驚くことでもなかったかもな。

 

「ちなみに……、御嬢様方はおいくつなのですか?」

 

「私たちはまだ10歳になったばかりです」

 

 10歳……か……。分かってはいたけど幼いなぁ。そんな幼い彼女らと目線の高さがそこまで変わらないのは、やはりちょっと傷つく……。

 

「成人なら、働き口に困ることもないのかな」

 

 そうぼそりと呟くルクスさん。そうか、よく考えればそうだ。これまでは親の手を借りて生活してきたけど、ここには僕を支えてくれる人はいない。だから、僕が一から働いてお金を稼がないといけないのだ。そのことを見落としていた。

 

「そうですよね。これからこの世界で生活していくには、仕事をしてお金を稼がないと。あの、何か働き先を探せる場所とかってありますか?」

 

「ああ、もちろんあるよ。そこを紹介しても良いんだけど……」

 

 そう言いながらルクスさんは僕……いや、正確には僕の横に立つ御嬢様方に視線を向けていた。

 

 つられて僕も二人に視線を向ける。すると、二人の御嬢様は僕を見つめながら、何処となく寂し気な表情を浮かべていた。その視線が僕に"もう何処かに行っちゃうの?"とか"もっと一緒にいたい"と訴えかけてきているように思えてしまった。こういうところはまだ幼い少女、ということなのだろうか。

 

 まぁ、本音を言えば僕も彼女たちと一緒にいられないのは少し寂しい。それに、少し心苦しくもあるなんせ、彼女たちは僕を拾ってくれた恩人なのだ。何か恩返しの一つや二つはしたい。けど、僕にその方法は思いつかない。

 

 お金さえあれば……とも思うが、残念ながら僕に持ち合わせはないのだ。だから、どうにかしてお金を稼ぐ必要がある。彼女たちに恩返しをするのはそれからになって……いや、一つだけ……たった一つだけ彼女たちとずっと一緒にいられる方法がある……。

 

 上手くいけばそれが恩返しにもなるかもしれない。もっとも、そうなるかどうかは分からないのだけど……。でも、ここは一つ、頼み込んでみる外ない。

 

「あ、あの、もし……もし良ければ、僕を使用人として雇ってはいただけないでしょうか?僕を助けてくださった皆さんに恩返しがしたいのです」



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執事になりました

「あ、あの、もし……もし良ければ、僕を使用人として雇ってはいただけないでしょうか?僕を助けてくださった皆さんに恩返しがしたいのです」

 

 僕がルクスさんにそう進言すると、ルクスさんは口角を釣り上げてにやりと笑みを浮かべた。それはまるで、その返答を待っていたとでもいうような表情だった。いやいや、それは流石に考えすぎだろう。僕は一瞬思い浮かんだ考えをすぐに振り払い、改めてルクスさんに向き直り返答を待つ。

 

「もちろん、大歓迎だよ。まぁ、恩返しとかは特に気にしなくて良いんだけどね。私たちも、行く当てのない君を放っておくのは心苦しい。だから、是非とも私の屋敷で働かないか、と言おうとしていたんだよ」

 

「そ、そうだったのですか……」

 

 まさか、僕の考えは気のせいではなかったのか……。まぁでも、彼らの申し出は非常にありがたい。僕は彼らの優しさに視界が潤みそうになるのを何とか堪えながら、一つ大きく頷いた。

 

「それならぜひ、僕……いえ、私を雇ってください」

 

「良いだろう。契約成立だね」

 

 というわけで、僕はこの屋敷……ローラント家の契約執事として働くこととなった。どうやら使用人にも二つほど種類があるらしく、イストさんや最初に僕が眠っていた部屋に顔を覗かせたメイドさんは僕のような契約使用人ではなく奴隷使用人という立場らしい。

 

 奴隷という言葉に一瞬驚いたが、この世界では奴隷は合法で、大きな借金を抱えた人が一次的になるものらしい。また、僕が想像していたような酷い仕打ちをされることもこの世界ではほとんどないみたいだ。僕は少し安心した。

 

 契約使用人と奴隷使用人との違いはほとんどなく、強いて挙げるとすれば、契約使用人の方が少しだけ生活の自由度が高い、ということくらいなものらしい。とは言っても、奴隷使用人にももちろん休みは与えられるので、決してブラックなわけじゃないようだ。何という優しい世界……。

 

 また、奴隷使用人……というか、奴隷の中には身寄りのない子供たちもいるようで、僕は何処となく孤児院のようなものを想像してしまった。

 

「というわけで、これからよろしく頼むよ、ナギサ君」

 

「はい、よろしくお願いいたします、ルクスさん……いえ、ルクス様」

 

「そんな堅苦しくなくて良いよ?」

 

「いえ、そういうわけには」

 

 僕はルクスさんと正式契約を終え、そんなやり取りを交わす。使用人になったのだから、立場は弁えなければならない。彼らは主人で、僕は従者なのだ。

 

「それではナギサさん、仕様人用の服に着替えましょうか」

 

「あ、はい。あの、これからよろしくお願いします、イストさん」

 

「はい、よろしくお願いしますね」

 

 というわけで僕はイストさんに案内され、使用人の更衣室に通された。それから執事服に袖を通し、再びルクス様たちのもとへと舞い戻る。ルクス様からもう一つお話があるようだった。

 

「失礼いたします。今戻りました」

 

 僕が再びルクス様のお部屋に足を踏み入れると、御嬢様二人から同時に視線を向けられた。

 

「ナギサさん、とてもよくお似合いです!すごく、か、カッコいい……です」

 

「そ、そうね。な、なかなか様になってるじゃない。わ、私は別に、か、カッコいいとは思ってないけど……。お、思ってないからねっ」

 

 良かった、二人の反応的に似合っていないことはないのだろう。アルフィオーネ様の評価は少々過大評価のようにも思えるけど……。

 

「おお、よく似合っているよ。それはともかく、最後の要件なんだけど、君にはエルシャとアルフィの専属執事を引き受けてほしいんだよ」

 

「お二方の専属執事……ですか?ぼ……私でよろしいのですか?」

 

 ルクス様のそんな提案に、僕は思わず驚きの声を上げてしまう。僕のような新米に専属執事など務まるのだろうか……?そんな不安が胸中を支配する。

 

「ああ、もちろんだよ。むしろ、君こそが適役なんだ。というのもね、この二人は明後日から王都にある魔法学園に通うことになっているんだよ」

 

 ルクス様曰く、エルシャローゼ様とアルフィオーネ様はその魔法学園に入学するにあたって、専用の学生寮に入ることになるらしい。

 

 これまでは、御嬢様方がずっと自宅にいたことと、元々ローラント家が自立を重んじる家訓を掲げているということもあり、彼女たちに専属使用人をつけてこなかったようだ。

 

 しかし、学生寮に入るにあたって、彼女たちにも専属の使用人をつけようという話になったらしい。

 

 そこで何故僕が選ばれたのかというと、どうやらなるべく年の近い使用人をあてがいたかったようだ。これは主に御嬢様二人の要望らしいが。僕以外にも若い使用人はいるみたいだが、僕が一番若いということと、先ほど御嬢様方から直々に指名があったようなので、僕が専属執事に選ばれた、というわけだった。

 

「その……、お願い……できませんか?」

 

「ま、まぁ、私は別に貴方じゃなくても良いのだけど、年が近い方がいろいろ話しやすいっていうのも事実だしね。そ、それに、アルフィが望んでいるんだもの」

 

「お姉様……?……まぁ良いですけど……」

 

 二人……特にアルフィオーネ様から懇願するような目を向けられる。そんな目をされては断れない。というか、僕としてもこの二人の専属執事に慣れるのは正直嬉しくはあった。だから、僕は一つ頷く。

 

「分かりました。喜んでお引き受けさせていただきます」

 

「よし、決まりだね。それじゃあ、明日の午後出発だから、それまでに準備をしておいてくれ」

 

「分かりました」

 

 準備については先ほど説明を受けた。僕はこれから、仕様人としての一通りのスキルを先輩の使用人さんたちに教えてもらうこととなっている。仕事内容は軽く説明を受けたのだが、掃除や洗濯、炊事など、ごく一般的な家事仕事が主らしい。

 

 家事には自信があったので、僕は最初からやる気満々だった。というのも、元の世界では母親に一通りの家事スキルを叩き込まれていたのだ。だから、家事は人並み以上にできると自負している。唯一と言って良い僕のアピールポイントだったりする。

 

 結果、僕は一発で合格点をいただいた。というか、この屋敷で一番の腕かもしれないとやや過剰なお褒めの言葉までいただいてしまった。やったぜ!

 

 その晩、ルクス様や御嬢様方に食事を振舞ったが、こちらも大絶賛だった。僕はほっと安堵の息を吐いた。なお、食文化は元の世界と特に変わりはなかった。一つ驚いたことを挙げるとすれば、貴族でも普通に一般家庭で出るような料理を食べるということだろうか。むしろ、それが一般的らしかった。

 

 そうして無事に僕は御嬢様二人の専属執事として認められ、次の日を迎えることができた。

 

「それでは、行ってまいります」

 

「行ってくるわ」

 

「二人とも、くれぐれも病気には気を付けて。それと、ママからも頑張ってと伝えておいてほしいとさっき連絡があったよ」

 

「お母さまから?そうですか、ありがとうございます。頑張ってきます、と伝えておいてください、お父様」

 

「分かったよ。それではナギサ君、二人をよろしくね」

 

「はい、お任せください、ルクス様」

 

 そしてその日の午後、僕とエルシャローゼ様とアルフィオーネ様は、王都の魔法学園に向けて出発するのだった。寮に家具類は揃っているらしいので、僕の荷物は今朝いただいた服だけだ。あと、財布代わりのカードもいただいた。彼女らの生活費はこれで賄えば良いらしい。便利だ。

 

 というわけで僕らは、馬車に乗って王都の魔法学園を目指した。期待と不安を背負いながら。

 

    *

 

 しばらく馬車に揺られているうちに、僕たちは王都へと到着していた。そして、魔法学園の学生寮までやってくる。

 

「えっと、御嬢様方の寮は……こちらですね」

 

 僕は御嬢様二人を連れて、幾つも立ち並ぶ寮のうちの一棟までやってきていた。この魔法学園の寮の創りは、一つの建物に幾つかの個室があり、数人の学生で一つの建物を使うらしい。もちろん、男女で別れている。ちなみに、僕のような使用人は例外で、専属であれば性別関係なく寮に入れるらしい。女子寮に入るのは少し躊躇われるが、これも御嬢様方に仕えるためだから仕方ない、と割り切ることにした。

 

「ここね。さて、どんな方と一緒に住むことになるのかしらね」

 

「少しワクワクしますね、お姉様」

 

「ふふっ、そうね。では、早速入りましょう」

 

「それでは、僕は馬車に積んでいたお二方の荷物を持ってまいりますね」

 

「ええ、任せるわ」

 

 そうして僕は、御嬢様方の荷物を取りに一度馬車へと戻った。寮の扉が閉まる寸前、御嬢様方が驚きの声を上げたことには気づかなかった。

 

 そして僕は馬車から一通り荷物を下ろし、それを持って再び御嬢様方にあてがわれた寮へと戻る。家事仕事をしていて分かったのだが、こちらの世界にやってきたことが理由かどうかは分からないが、僕の身体能力が上がっていた。だから、御嬢様方の荷物を一気に持ち運ぶことも、今の僕には可能だった。

 

 そうして寮へと戻り、僕は扉を開けて中へと入る。すると、奥の方でキャッキャとはしゃぐ声が聞こえた。思ったより騒がしかった。

 

 そのはしゃぎ声の中には御嬢様方と思しき声もあった。どうやら、早速他の住人と打ち解けたようだった。僕は嬉しさを覚えながら、二人の荷物を事前に伝えられていたそれぞれの個室に届け、それから御嬢様方の声が聞こえてくる部屋……恐らく共有スペースだろうと思われる部屋へと向かった。

 

「エルシャローゼ様、アルフィオーネ様、いらっしゃいますか?」

 

 僕は軽くノックをし、中にそう呼びかける。

 

「ナ、ナギサさんっ!?も、戻られたのですか!?」

 

「えっ、ど、どうすれば……」

 

「あら、もしかして二人の専属使用人?って、どうしてそんなに慌てているのかしら?女の子同士なのだし、別に恥ずかしがることなんてないじゃない」

 

「え、えっと、そうじゃなくて……その……」

 

「どうぞ、入ってくださいな」

 

 御嬢様の声ではなかったが一応入室許可は出たので、僕はドアノブを捻り共有スペースへと足を踏み入れる。

 

「ちょっ、ナギサっ!!ま、待って!!」

 

「ナ、ナギサさんっ!!ダ、ダメぇ!!まだ心の準備が……!!」

 

 そんな制止の言葉がかけられるが、力を入れ始めてしまった僕の腕は止まらない。そして、扉が完全に開き、中の様子が僕の目に飛び込んできた。

 

「……えっ?」

 

 僕はそんな素っ頓狂な声を上げてしまった。いや、仕方ないだろう。だって、中にいた人たちは、何故か全員服を着ていなかったのだから……。

 

「ひゃうぅ……。ナ、ナギサさんに見られてしまいました……」

 

「ダ、ダメって言ったのにぃ……」

 

 小さく縮こまりながら細い両腕で自分の身体を抱きしめるようにして肌を隠しながら、御嬢様二人は僕に恨みがまし気な視線を向けてくる。僕には、全くもって状況が分からなかった。

 

「えっ……?」

 

「っ……?」

 

 そして、そんな御嬢様方とは対照的に、その場に佇んだまま呆然と僕を見つめる二人の少女がいた。こちらも全裸である。硬直してしまっているので、二人とも自分の身体を隠そうともしない。発展途上の健康的な身体が惜し気もなくさらされていた。

 

「えっ、ええええええええっ!?殿方だったのですかああああああ!?」

 

 そして、我に返った一人の少女がそんな叫び声を上げたのだった。いけないと分かりつつも、僕は彼女の剥き出しの薄い胸や無毛の股間に視線が吸い寄せられてしまっていたのだった。ぼ、僕だって男なんだから、女の子の裸はついつい見ちゃうんだよ……。それが僕より小さい子なら尚更である。ロ、ロリコンじゃないから!



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魔力健康法

 あまりの衝撃的な光景に僕は思わず硬直してしまっていたが、何とか思考停止状態に陥っていた頭を回転させ、目の前に広がる状況について考える。ついでに裸体の少女たちから視線を外すように顔を下に向けた。幼いとは言え、相手は女の子だ。裸をジロジロ見られるのは良い気持ちはしないだろう。

 

 それでも少しの間だけ凝視してしまっていたのは、行ってしまえば不可抗力だ。それについてはどうか許してほしい。だ、大丈夫、僕は危ない人じゃない。視線の先にある僕の股間も盛り上がっていないから。

 

 だが、何故彼女たちはこんなところで衣服を全て脱いでいるのだろう。ここが浴室ならまだしも、そういうわけではなくここはリビングだ。そんなところで服を脱ぐ理由が分からない。

 

 などと一人で首をかしげぐるぐると思考を巡らせていると、今さっき声を上げた眼前の少女がまだ少しだけ狼狽した様子で僕に恐る恐る声をかけてきた。

 

「あ、あの、その恰好……、使用人ということで間違いはないのですわよね……?」

 

 と、僕に確認してくる。恐らく、僕が安全な人間なのか、それとも否か、それが知りたいのだろう。まぁ、たとえ不審者が現れたとしても、僕は危険ですだなんて答えるはずがないだろうが。

 

 でも、僕は正真正銘白だ。この場にはエルシャローゼ様とアルフィオーネ様という二人の証人もいるから疑いようがない。

 

 だから僕は俯かせていた顔を上げ、少女の碧い瞳を見据えながら嘘偽りのない真実だけを伝えた。もちろん、彼女の裸体を視界に収めないように気をつけながらではあるが。

 

「はい、そうでございます。私はエルシャローゼ・ローラント様とアルフィオーネ・ローラント様の専属執事をさせていただいております、ナギサ・モチヅキと申します」

 

「お二人とも、これは間違いではないのよね?」

 

 僕の言葉を聞いた少女は、チラリと横に視線を流してエルシャローゼ様とアルフィオーネ様にそれが真実であることを確認する。

 

「え、ええ、間違いないです……。その方は私たちの専属執事です……」

 

「が、害がないことは保証いたします」

 

 お二人は僕の言葉を肯定するように強く頷いた。未だにしゃがんだままで恥ずかしそうに顔を紅色に染めてはいたが。

 

「そうなのね。ならば信じますわ。ごめんなさい、疑うような真似をしてしまって」

 

 御嬢様の言葉を聞いて僕の言葉が真実であると理解してくれたらしく、目の前の少女は僕に頭を下げながら謝罪の言葉を述べてきた。少しウェーブのかかった長い金髪が彼女の動きに合わせて肩口より前側に流れる。その所作一つ一つがとても丁寧で綺麗だった。この少女も恐らく貴族の子なのだろう。

 

「い、いえ、頭をお上げください。疑ってしまうのも無理ないでしょう」

 

「お気遣い、ありがとうございます」

 

 僕の言葉を聞いて、少女はようやく下げていた頭を上げてくれた。実際、彼女らの肌を見てしまったのだし、僕が謝られるのは何か違うような気がした。

 

「それで……、私からもお聞きしたいことがあるのですが……」

 

「ええ、分かりますわ。何故リビングでこのような恰好をしているか、ということですわよね?」

 

「は、はい……。も、もしかして、執事とは言えども、異性はリビングには立ち入り禁止……というルールがあったり……」

 

「しませんわ。使用人であれば何の問題もありませんわ」

 

「そ、そうなのですね、良かったです……」

 

 ひとまず、ルールを破ってしまったとかそういうわけじゃなかったようなので安心した。いやまぁ、たとえリビングが男子禁制だったとしても、ここで全裸になる理由はよく分からないのだが……。

 

「それでは何故、そのような……」

 

「実は、私たちの通う魔法学園では昨年より新たに、魔力を取り入れた健康法が導入されたのですわ」

 

「魔力を取り入れた健康法……ですか?」

 

 この世界に魔法が存在しているということは、昨日学園に関する説明を聞いた時についでに教えてもらったのである程度把握しているつもりだが、魔力を用いた健康法が存在しているという話までは利いていなかったので僕は思わず聞き返してしまう。

 

 魔力とは、人間の体内を流れるエネルギーのようなもので、この世界の人間は種族関係なく誰でも持っているものらしい。その量は人それぞれであり、その魔力の種類……属性?というのもまた人それぞれとのことだった。魔法とは、この体内を流れる魔力を体外へと放出することで発動できるものらしい。どのような現象を発生させられるかはこの属性?とやらに起因するみたいだ。

 

 ファンタジー系の小説を読んでいる人ならすぐに呑み込めるような話かもしれないが、残念ながら僕には馴染みがなかったので、憶えるのが少し大変だった。属性なんて既に忘れかけてるし……。

 

 ちなみに、この世界の住人ならば誰でも使える魔法だけど、僕の体内には魔力の流れは一切感じられないようだった。もしかしたら魔法が使えるかも?という僕の期待はあっさりと打ち砕かれてしまった。

 

 余談だが、僕が元いた世界で電気やガスによって動いていたものは、この世界では全て魔力で動くという仕組みになっているようで、それらの魔力で動く道具を総称して魔道具と言うらしい。うん、そのままだね。

 

 昨日、料理する際に魔力コンロを初めて使ったのだが、使用感としては元の世界のガスコンロと何ら変わりなく普通に使いやすかった。というか、魔力を持たない僕でも仕えるんだなぁと少し感動した。

 

 また、水道やトイレ、お風呂のシャワーなんかも全て魔力によって機能しているらしい。抱いた感想としては、何でもありなのか……という感じだ。いやまぁ、ものすごく便利だとは思うよ。元の世界に帰ることが可能だったら、是非とも持ち込みたいと思える。帰れないのだけど……。

 

 っとと、かなり話が脱線してしまった。今はひとまず魔力を用いた健康法について聞かねば。寮で裸になる理由は単純に気になるし。

 

「ええ。体内に魔力が流れているということは常識的な知識ですわよね」

 

「そ、そうですね」

 

 僕がこの世界の常識に疎い異世界人であることはあまり大っぴらにしない方が良いだろう。ルクス様曰く、異世界伝説については賛否両論分かれるみたいだし。

 

「それだけでなく、魔力は空気中にも存在しています。ごく微量ではありますけどね。それはずっと昔に証明されています」

 

 へえ、そうなのか。そこまでは教わっていなかった。となると、空気中元素の量割合もまた少し変わってくるのかな?確か元の世界の常識だと、窒素が一番多くて、次に酸素、二酸化炭素とかアルゴンとか……とかそんな感じじゃなかっただろうか。いや、詳しく勉強していたわけじゃないから不確実なのだけど。

 

「また、体内の魔力が身体の調子を整える働きを持っているということも知られています。魔力を放出しすぎると体調を崩すことからもそれはよく分かることだと思いますわ。また、息を吸うことで枯渇した魔力をほんの微量ではありますが回復することも可能です」

 

 魔力を持たないから僕には一生分からない感覚だろうなぁ、などと考えながら、彼女の話に静かに耳を傾ける。

 

「そこでとある研究者は考えたようなのです。人間が常時息を吸うように、常に外気に肌を露出させれば、体内だけでなく身体の外部も綺麗にできるのではないかと。そして、試しに一月ほど家の中で全裸で過ごしてみたようなのです」

 

 うわぁ、研究者の発想ってすごいなぁ。普通なら大分頭おかしいこと言っているんだもんねぇ。そもそも、体内と大概で魔力の作用の仕方が同じかどうかも分からないのだし。まぁ、だからこそ思いついたことを試してみたのだろうけど。きっと研究なんてそんなものなのかもしれない。

 

「その結果、本当に肌が綺麗になり、血の巡りも少し良くなったようなのです。残念ながら、この現象についてはまだ証明されていないので公には周知されていないのですが、この魔法学園では先んじてこの健康法を実践しようということになり……」

 

「学生は寮内で全裸で過ごすことになった、ということですか」

 

「ええ、そうなりますわね」

 

 僕の言葉に、金髪少女はこくりと頷いてみせた。



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裸の乙女たちに認められ……

「昨年、入学早々このようなルールが取り付けられたので、当時は私も戸惑ったものですわ」

 

 当時のことを思い出すように、全裸の金髪少女は苦笑を浮かべながらそうポツリと呟いた。

 

 当然戸惑うだろう。いきなり"日常生活では服を脱ぐこと"などと言われてしまっては、たとえ幼くとも、そしてたとえ周りが同性ばかりだったとしてもいろいろ困惑してしまうはずだ。

 

 というか、彼女たちだって本当は嫌だろう……。だって、大人の研究のために裸にさせられているということだろう。そんなの堪ったものじゃない。大人の都合とは言えども、乙女に肌をさらすことを強要し恥ずかしい思いをさせるのはどうかと思う。僕ならすぐに声を挙げると思う。

 

 こんな状況でも文句の一つも上げない彼女たちは、きっと僕なんかよりずっと大人なのかもしれない。僕はそんな彼女たちに対して、感心と尊敬の念を抱いていた。

 

 そんなことを考えている間にも話は進む。

 

「な、なるほど……、だから私たち新入生にも事前連絡がなかったのですか……」

 

「そうなるわね。しかし……、昨年はこの寮には使用人含め女性しかいなかったので気にしていなかったのですが、そういえばこの寮、使用人なら女性だろうと男性だろうと入室可能なのですよね……。すっかり忘れてしまっていましたわ……」

 

 そう言いながら僕をチラチラと見つめてくる目の前のすっぽんぽん金髪少女。その顔はほんのり赤みがかっている。いや、うん。そりゃそうだよね。恥ずかしいに決まってるよね。未成熟とはいえ、普段は不用意に他人に見せたりしない胸のぽちりや股間の割れ目を僕に見せてしまっているのだから。

 

 というかさ、こういうルールができたのなら、使用人も同性に限定した方が良いんじゃないの?もしものことがあったらどうするのだろう?い、いやまぁ、僕はそんなことしないからね?本当だからね?ロリペドではないからね!?

 

「あ、あの、今からでも同性の使用人に変更いたしましょうか……?その方が皆様としてもまだ気が楽ですよね?」

 

 流石に彼女たちが可哀そうに思えてきてしまい、気づけば僕はそんな提案を持ち掛けていた。こういう事情があると分かれば、きっとルクス様もエルシャローゼ様とアルフィオーネ様の専属使用人の変更も許してくれるはずだ。

 

「「そ、それはダメっ!!」」

 

 しかし、そんな僕の提案に異議を唱えたのは、他でもない御嬢様方だった。未だにしゃがんだまま恥ずかしそうにプルプル震えてはいるが、それでも強い意志の篭った視線で真っ直ぐ僕を見据えてきていた。

 

 僕はその視線に少し気圧されてしまう。どうして彼女たちは僕に拘ろうとするのだろうか?年が近いというのはそんなに重要なことなのだろうか?二人からの視線を受けながら、僕はそんなことを考えていた。

 

「い、今から変更するのは手間じゃないかしら。貴方をすぐに屋敷に戻らせるのは流石に申し訳ないわよ」

 

「そ、そうですっ、エルシャお姉様の言う通りですっ!そ、それに、年の近い使用人は皆、男性ばかりなのです。ですから、変更する意味はあまりないように私は思うのですっ!」

 

「で、ですが……、御嬢様方が良くても他の方が……」

 

「いいえ、私は別に構いませんわ。こちらに来て早々帰らせるのは不憫でなりませんわ。ここからローラント家はそれなりに距離もありますし」

 

 金髪少女は僕の言葉に首を横に振ってそう答えた。えっ、ゆ、許されちゃうの?気遣ってくれるのはとてもありがたいことなんだけど……。本当に良いのかなぁ、これ。だって、これから毎日のように僕が彼女たちの裸を見ることになるってことでしょ?まぁ、ジロジロ見なければ問題ないのかな。

 

 それと、今考えることとしては少し違うかもしれないが、彼女はローラント家の屋敷の場所を知っているようだ。まぁ、ローラント家はこの世界ではかなり有名な貴族らしいので、知られていて当然なのかもしれないけど。

 

「そ、それに……、貴方なら……嫌ではないですわ。も、もちろん、恥ずかしいという気持ちは多少ありますけど、貴方がこの場にいることを嫌だとは全然思えませんの」

 

 そう言って頬を赤らめながらも微笑を浮かべる目の前の金髪少女。まだ幼い少女のはずなのに、その姿はとても美しく見えた。彼女が全裸であることも忘れ見とれてしまいそうになる。まぁ、寸前で踏みとどまったけど。

 

 ってか、ちょっと待って?僕に見られて嫌じゃないっていうのは、つまり僕の容姿が男っぽくないから、というわけじゃなかろうな?うっ……、心に刺さる……。い、いや、被害妄想だよな、これは流石に。余計なことは考えないようにしよう。これ以上自分の心を傷つけないためにも。

 

「……本当に、私がこの場にいてよろしいのですか?」

 

「ええ、問題ありません。ユーア、貴女も異論はないわよね?」

 

 すると彼女は首だけ回してもう一人の少女に確認の視線を送る。先ほどから一切言葉を発していなかった黒髪の少女は、金髪少女の言葉にこくりと一つ頷いた。あっ、今更気づいたけど、黒髪の子の頭に猫耳がついてる……。それに、細長い尻尾も見えた。これが噂に聞く亜人族……というやつなのだろうか。

 

 というか、黒髪の少女は他3人とは異なり、自身が裸であることを一切恥ずかしがっていない。身体を隠そうともしなければ、頬を紅潮させてもいない。い、いや、だからといって彼女の裸身をジロジロ見て言い口実にはならないので、僕は彼女の剥き出しの素肌にはなるべく視線を向けないよう心掛ける。

 

 僕が内心でそう硬く決心しているのを他所に、すっぽんぽん金髪少女はすっぽんぽん黒髪猫耳少女の反応を見て満足気に頬を綻ばせていた。

 

「満場一致ね。というわけで、これからよろしくお願いいたしますね。えっと……、ナギサさん……で良かったかしらね?」

 

「はい、大丈夫です。よろしくお願いいたします、えっと……」

 

「あっ、自己紹介がまだでしたわね。私の名前は、シャルティーナ・アルテロアと申します。以後、お見知りおきを」

 

 そう言ってぺこりと綺麗な所作で頭を下げる金髪少女、シャルティーナ様。……あれ?アルテロア……?何処かで聞いたような……?

 

「ほら、貴女も自己紹介なさい」

 

 僕が頭を悩ませている間に話は進んでしまっていた。

 

「はい、姫様。初めまして、わたしの名前はユーア。シャルティーナ様に仕えるメイドです。どうぞよろしくお願いします」

 

 黒髪猫耳少女は自己紹介のためにようやく口を開いた。初めて聞くその声は、見た目通りとても可愛らしかった。鈴を転がしたような声とはこういう声を差すのかもしれない。いや、それよりも……

 

「……って、姫様?」

 

 猫耳メイドさんが発した"姫様"という単語に、僕は少し引っ掛かりを覚えていたのだった。



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魔力健康法の効果

 アルテロア……。確かこの国の名前じゃなかったっけ?御嬢様方が度々その名前を口にしていたような気がする。

 

 そして、ユーアさんの言動……。アルテロア……、姫様……。考えられることとしたら、シャルティーナ様はこの国の王族……ということだが……。

 

 異世界人であるということを隠さなければならないので、下手にこのような質問をできない。恐らく、この国の人間であれば誰でも知っているような常識のはずなのだから、"貴方は王族ですか?"なんて聞けば変な目で見られること間違いなしだ。

 

 これは、後でこっそり御嬢様に聞くほかないかなぁ。今はそれっぽい態度を取っておこう。幸い、僕は執事だ。遜った態度を取るのは何らおかしいことはないだろうし。

 

「あっ、そっか……。え、えっと、シャルティーナ王女」

 

 すると、少し困惑していた僕の様子に目ざとく気付いたアルフィオーネ様が、あえてシャルティーナ様の名前を敬称付きで呼び、僕にフォローを入れてくれた。すごいな、僕の考えていることが分かってしまうなんて…。アルフィオーネ様はなかなかの観察眼をお持ちのようだ。

 

 僕はフォローを入れてくれたアルフィオーネ様に感謝の念を伝えるべくぺこりと一礼した。すると、アルフィオーネ様は恥ずかしそうに顔を真っ赤にしてもじもじしてしまっていた。って、そうだよな。彼女たちは裸なんだ。不用意に見られたくはないよね。そう思った僕はすぐにアルフィオーネ様から目を逸らす。

 

「……?っとと、それでアルフィオーネ、どうしたのかしら?改まって」

 

「あ……、はい……。そ、その……、シャルティーナ様は既にこの生活を1年間ほど経験されているのですよね……?」

 

 僕の様子に一瞬疑問の表情を浮かべたシャルティーナ様だったが、すぐにアルフィオーネ様との話に戻った。シャルティーナ様からの問いかけに対し、アルフィオーネ様は何処か落胆したような声色でそう言った。やはり、僕に裸を見られたことがショックだったのだろう。大事なところはしゃがんでいるおかげで隠れているとはいえ、乙女にとって自らの肌を好きでもない異性に見られること自体屈辱的なことだろうからな。

 

 だが、そうなると今後彼女たちとはどのように接していけば良いのだろうか?僕は彼女たちの専属執事だ。だから、今後も彼女たちの生活のサポートを行っていかなければならない。けど、彼女たちは僕に裸を見られることに抵抗感を覚えてしまっている。

 

 となると、やはり使用人を変更すべきなのではないだろうか?年が近いという理由で僕が選ばれたというのは理解しているつもりだが、それでも乙女の柔肌を異性である僕が見てしまうのは申し訳ない。

 

 それならば、年が近いという条件は一旦除外して、同性の使用人をここに呼ぶべきなのではないだろうか?使用人の役目とは、主人たちに快適な暮らしを提供することだろう。ならば、不快な異分子はさっさと排除するに限る。

 

 御嬢様方には後で改めて提案してみることにしよう。先ほど変える必要はないと言ったのは、あくまで来たばかりの僕をすぐに帰らせるのは気が引けるから、という理由に過ぎないだろうし、もう一度提案すれば彼女たちも本心を吐露してくれるはずだ。

 

 僕は職場が変わろうと全力を持って働くつもりだ。ローラント家の皆さんに恩を返すために。まぁ、女の子の裸体を合法的に拝める幸せ空間から離れるのは少しだけ名残惜しくはあるが。でも、これに関しては単なる僕の下心のようなものだし、それを理由にここに留まるのはあまりに不誠実だろう。それに、こんな欲を抱いてしまっては、僕はロリコンのレッテルを貼られてしまう。

 

 僕はロリコンではないはずなのだ。現に、僕の股間は平常の状態を保ったままだ。彼女たちの裸に少しドキドキしてはいるが、たったそれだけだ。僕の強靭な理性は興奮なんかに負けたりしない。……理性で興奮を抑えようとしている時点でロリコンに片足突っ込んでしまっているのかもしれないけど……。

 

 まぁ、とにかく後でお二人と話し合おう。そう決意している間に、アルフィオーネ様とシャルティーナ様のお話は進んでいた。

 

「ええ、そうよ。でも、それがどうかしたの?というか、ちょっと暗くない?何処となく落ち込んでいるように見えるのだけど……、何かあったのかしら?」

 

「い、いえ、気にしないでください……、私の問題ですから……。そ、それより、1年間で何か変化があったとか、そういう成果は見られたのでしょうか?」

 

「あー、そういうことね。ふふん、よく聞いてくれたわね。そうなのよ!これ、本当に効果があったのよ!ちょっと触ってみて頂戴、私の腕」

 

「えっ、あっ、は、はい」

 

 そう言うとアルフィオーネ様はチラチラと僕の方を伺いながら恐る恐る立ち上がり、シャルティーナ様の傍まで近づいていく。

 

 見ないよう心掛けてはいたが、それでも男としての習性には抗えずに少しだけアルフィオーネ様の姿を視界に捉えてしまった。細くて白いその身体は少し触れただけでも壊れてしまいそうなほど繊細で、そして美しかった。

 

 胸部や腰回り、無毛の股間の秘所、それから脚に至るまで、肉付きはまだまだ不十分で、それが一層彼女の華奢さを引き立てていた。平坦な胸部の先端に佇む二つの乳頭は、その無垢さを象徴するような薄い桃色をしており、緊張しているからか少し膨らみツンと上を向いていた。

 

 などと御嬢様の裸身に視線を向けていると、不意に彼女の表情がチラリと映る。その表情には羞恥の色を見せつつも、何処か嬉しそうにも見えた。いや、気のせいか。

 

 女性は男の視線に敏感だと聞くが、もし彼女が僕の視線に気づいているのなら、羞恥は分かるが嬉しいという感情を覚える意味が分からない。むしろ露骨に嫌な顔をされるはずだ。

 

 だから、きっと僕の見間違い。もしくは、彼女が僕の視線に気づいていないかのどちらかだ。そう結論付け、僕はアルフィオーネ様から視線を外した。

 

 一瞬、誰かから視線を向けられているような感覚を覚えたが、きっと裸をチラ見していたことが誰かに気づかれ睨まれているのだろう。本当に申し訳ない……。

 

「で、では失礼して……。わあ、とてもすべすべです!すごい、私のものとは全然違います!こ、こんなに綺麗になるものなのですね!」

 

「そうなのよ!すごいでしょ?魔力健康法は実在するのよ、きっと。現に、私の肌がこうして証明しているわ。ユーアもそう思うでしょう?」

 

「そうですね。ですが、中にはあまり効果が見られないという学生もいるようです。もしかすると、人によって効果の強弱が異なるのかもしれません。姫様はこの健康法と非常に相性が良かったのでしょう」

 

「そうなのかしらね。まぁでも、大なり小なり効果は期待できるはずよ。だから、アルフィオーネもエルシャローゼも恥ずかしがらずに試してみましょう」

 

 シャルティーナ様は実に堂々とした立ち居振る舞いでエルシャローゼ様とアルフィオーネ様に対し笑顔でそう言った。彼女の魔力健康法に対する絶大な信頼が伝わってくる。きっと、御嬢様方にもその素晴らしさを分かってほしいのだろう。

 

「わ、私もシャルティーナ様のようにきれいになりたいです!」

 

 既にアルフィオーネ様は魔力健康法の魅力に魅入られているようだった。きっと、シャルティーナ様の肌に触れて実際に効果を目の当たりにしたことで、自分もそうなれるのではという小さな希望を抱くことができたのだろう。

 

「ええ、一緒に綺麗になりましょう!」

 

「はい!改めて、これからよろしくお願いいたします、シャルティーナ様」

 

「よろしくね、アルフィオーネ」

 

 そう言って裸のまま握手を交わす姫様と御嬢様。そんな二人の様子を、ユーアさんは静かに、でも何処か嬉しそうな表情で見つめていた。

 

「綺麗になって、振り向いてもらえると良いわね」

 

「へ?」

 

「フフフ、頑張ってね、アルフィオーネ」

 

「は、はわわわわ……、何故それを……!?」

 

「気づかないはずがないでしょう?あからさまな態度だったもの」

 

「そ、その、本人には言わないでいただけると……」

 

「分かってるわよ。そんなことはしないわ」

 

 お互いの手を握ったまま、姫様と御嬢様はこそこそと小声で何かやり取りをしていたが、僕にはよく聞こえなかった。というか、ひそひそ話をするということはあまり聞かれたくない内容なのだろう。僕に盗み聞きするような趣味はないので、無理にお二人の話を聞こうとも思わなかった。

 

 だが、シャルティーナ様と話をしているアルフィオーネ様の顔が、見る見るうちに紅潮していく様子が少しだけ気になった。もしや、先ほど僕がチラチラアルフィオーネ様の裸を見ていたことをシャルティーナ様が目ざとく気付いて、アルフィオーネ様に報告されているのでは!?なんか、こちらをチラチラ盗み見てきているような気がするし……。

 

 最悪の場合、即解雇なんてことも有り得ない話ではない。これは……、後で覚悟しておかなければな……。はぁ、男ってどうしてこうも欲望に忠実なのだろう……。本当に愚かな習性を持った生き物だよ……、トホホ……。



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解雇の危機に怯える僕

 主人公の勘違いがウザい回。


「さてと、後はエルシャローゼね。何時までそのままでいるつもりなのかしら?アルフィオーネはもう堂々としているわよ」

 

「そ、そう言われましても……、は、恥ずかしいですし……」

 

「フフッ、そう……」

 

 シャルティーナ様に催促されてもなお立ち上がろうとしないエルシャローゼ様。いや、本来はエルシャローゼ様のような反応が正しいと思うけどね。

 

 そんなエルシャローゼ様の様子を見かねたシャルティーナ様は、何か企むような意地の悪い笑みを浮かべながら、じりじりとエルシャローゼ様ににじり寄る。エルシャローゼ様は怯えたような表情で、アルフィオーネ様やユーアさん、そして僕に救いの手を求めるように視線を向けてきていた。

 

 しかしながら、アルフィオーネ様は今し方魔力健康法に賛同され、シャルティーナ様同様維持の悪い笑みを顔に貼りつけていた。そして、ユーアさんは自身の主人であるシャルティーナ様には歯向かえない。

 

 そして、僕は僕でルールに口出しできるような立場ではない。故に、エルシャローゼ様のすがるような目線に答えてあげられない。

 

 僕らが動く気配を見せないことから自分は既に詰んでいると理解したらしく、エルシャローゼ様は落胆したように肩を落としてしまった。そして、再度僕に視線を向けてくる。しかし、その視線は先ほどの助けを求めるようなものとは異なり、何かを問うようなものだった。

 

 けど、実際に何を問われているのか分からない。だから僕は首をかしげることしかできなかった。そんな僕の反応を見たエルシャローゼ様は大きく嘆息してしまう。で、でも、視線だけじゃ分からないこともあるのだ。許してほしい。

 

 そんな間にもシャルティーナ様はエルシャローゼ様にゆっくり近づいていく。そして、エルシャローゼ様のすぐ傍まで接近したシャルティーナ様は、エルシャローゼ様と視線の高さを合わせるようにその場にしゃがんだ。

 

「ねぇ、このままじゃアルフィオーネに取られちゃうわよ?」

 

「な、何をですか?」

 

「フフッ、分かっているくせに……。彼のことよ。良いの?アルフィオーネに独占されちゃうわよ?」

 

「なっ、べ、別に私はそんなんじゃ……」

 

 そして、先ほどアルフィオーネ様にもしていたように、エルシャローゼ様の耳元に口を近づけ何やらひそひそと呟き始めた。

 

 すると、エルシャローゼ様の顔もアルフィオーネ様同様真っ赤に染まっていく。えっ、もしかしてまた僕のチラ見罪を暴露されてる!?あああ、これはもう契約使用人解雇待ったなしだ……。ローラント家から追放される……。

 

「素直じゃないわねぇ。なら、アルフィオーネと一緒に私も彼にアタックしてみようかしら。私たち二人にくぎ付けにしてしまえば、きっともう貴女には振り向いてくれないでしょうねぇ」

 

「うっ……、そ、それは……」

 

 などと一人絶望している間にも、彼女たちの小声でのやり取りは続く。お願いします……、お願いします……。どうか、もう勘弁してください……。解雇だけはどうかお許しを……!!

 

「ま、まぁ、どうせここで生活するならこの姿にも慣れていかないといけないから仕方ないことよね。こ、これは別に、シャルティーナ様の口車に乗せられたわけじゃありませんから。あくまで淑女としての嗜みというやつです」

 

「フフッ、そうね。たしなみね、フフフ」

 

「そ、そうよ。だ、だから、ナ、ナギサのためってわけじゃないの。その辺、履き違えないで頂戴」

 

 心の中で必死に手を合わせて契約解消回避を願っていると、不意にエルシャローゼ様のそんな言葉が飛んできた。も、もしや、今回は見逃された……ということか!?よ、良かったぁ……。

 

 彼女の言動から察するに、僕をローラント家で働かせる彼女たちなりの目的があるのだろう。僕のためではない何か別の意味が。だから僕は、決して見逃されたわけではない。それは履き違えないようにしよう。

 

「分かっております。そのような愚かな勘違いなどいたしません」

 

 僕はそう言って頭を下げた。というか、いつの間にかエルシャローゼ様も身体を隠すのを止めて立ち上がっていた。白く肌理細やかな若い素肌が惜し気もなくさらされてしまっていたが、僕はほとんど見ていない。

 

 それにしても、シャルティーナ様のあの意地の悪い微笑みは何だったのだろう?もしかして、気づかぬうちに説得していたのかな?

 

 それか、僕の悪事を暴露することで彼女の怒りを掻き立て、恥ずかしさを忘れさせるという作戦だった、とかか?うーん、よく分からない。まぁ良いや。

 

「むぅぅっ、なんかその態度ムカつく……」

 

「ええっ!?も、申し訳ございません、御嬢様」

 

「もう良いわよ。何言っても無駄なのは理解してるから……。とにかくシャルティーナ様、よろしくお願いいたします」

 

「ええ、よろしく、エルシャローゼ。フフッ、貴女も頑張ってね」

 

「ち、ちがっ……、はぁ……」

 

 僕はこの状況についていけていなかったが、ともかくエルシャローゼ様もアルフィオーネ様も無事この裸生活に前向きな姿勢を向け始めてくれたようだ。慣れるにはもう少し時間がかかるだろうが、きっと彼女たちなら大丈夫だろう。

 

 そして、彼女たちの精神的負担を少しでも軽減するために、今僕ができることはただ一つ……

 

「御嬢様方、改めてご提案なのですが……」

 

「あっ、却下よ」

 

「えっ!?まだ何も言ってないのに!?」

 

「どうせ専属使用人の変更の申し出でしょう?ナギサの顔を見てれば分かるわよ」

 

 僕ってそんなに分かりやすいのかな?言いたいことが顔に出てしまっているのだろうか。気をつけないとな。

 

「ま、まぁ、そういうわけですので、誰か別の……」

 

「だから却下よ。何度も言わせないで頂戴」

 

 が、僕の提案はまたもあっさり却下されてしまった。この期に及んでまだ僕を気遣おうとしてくれているのか……。その優しさは嬉しいけど、僕のために彼女たちに我慢を強いてしまうのは本意ではない。

 

「お、御嬢様、私をお気遣いいただけるのは嬉しいことですが、私は貴女方の負担にはなりたくありません。やはり、同性の使用人にお任せすべきかと」

 

「はぁ、貴方が優しいのは分かるけど、勝手に私たちの考えを決めつけないでほしいものね。別に、貴方のことを負担だなんてこれっぽっちも思ってないわ」

 

「そ、そうです。それに、貴方は私たちに恩返しをしてくれるのでしょう?それなら、私たちのために精一杯働いてください」

 

「うっ、お、おっしゃる……通りです……」

 

 確かに、彼女たちのためと良いように言っているが、実際やろうとしていたことは職務放棄と変わりない。それはダメだ。僕は僕を助けてくれた彼女たちに恩を返すと約束したのだ。

 

 そして、幸いと言うべきか、彼女たちは僕を負担だとは思っていない。それならば、職務を全うすることが今の僕に課せられた使命だ。

 

「そういうわけだから、貴方には引き続き私たちの専属使用人として働いてもらうわ。力もあるし、料理も美味しい。こんな優れた人間、傍に置いておく外ないでしょう?」

 

「お、お姉様……、そういう言い方は……」

 

「いえ、構いません。むしろ、お褒めにあずかり光栄の極みでございます」

 

「ナギサさんがそれで良いのなら……」

 

 というわけで、ひとまず僕は彼女たちの傍に置いてもらうことができた。気を引き締めなければ。職務全う、それから、彼女たちの裸体を不用意に見ない。今後の僕のスローガンだ。

 

「あら、お料理が上手なんですの?」

 

 などと考えていると、不意にシャルティーナ様が僕たちにそう問いかけてくる。もしかして、料理に興味があるのかな?とは言っても、僕の料理は言うほど大したことないと思うのだけど。ローラント本家で使用人の方々からお褒めいただいたのも、きっと世辞のようなものだと思うし。

 

「い、いえ、私はそんな……」

 

「もう絶品なのです!」

 

「ええ。あんな美味しい料理、初めて食べました」

 

 ちょっ、それは過大評価ではないか!?美味しいと言っていただけるのは嬉しい限りだけど、流石に褒め方が大げさすぎる。

 

「なんと!それは是非とも食べてみたいですわ!ユーアもそう思うわよね?」

 

「はい、姫様。わたしは料理はあまり得意ではないので、是非とも参考にさせていただきたいです」

 

「えー……、そんなに期待されても困るのですが……」

 

 御嬢様方が過剰に褒めすぎるから、かなりハードルが上がってしまった。うわぁ、これかなりのプレッシャーなんだけど……。

 

「っと、申し訳ございません。でも、エルシャローゼとアルフィオーネが絶賛する料理、とても気になりますわ」

 

「え、えっと、私の料理で良ければ何時でもお創り致しますよ?」

 

「ほ、本当ですの!?嬉しいですわ!」

 

 そういえばこの寮、キッチンとか風呂なんかは共用みたいだけど、使用人が複数いる場合は業務の分担とかするべきなんだろうか?この辺りはユーアさんに聞いてみるのが良いだろう。

 

「あ、あの、ユーアさん、今後の業務について教えていただきたいのですが……」

 

「あっ、そうですね。わたしも、何時お話しすべきか考えていたところです」

 

 と、その時、背後の扉がガチャリと開く音が聞こえた。慌てて僕は背後の扉へと視線を向け、入室者を確認する。

 

 ゆっくりと扉が開かれ、その奥から顔を覗かせたのは、これまた小柄な少女だった。綺麗なワインレッドの毛髪をツインテールにしたその少女は……

 

「うわっ、何じゃこりゃ!?」

 

 そんな驚きの声を上げていた。



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魔族国の姫様

「な、なんでみんな裸なの!?」

 

 赤毛の少女は少し引き気味にそう言った。うん、それは多分平常な反応だと思う。普通、部屋にいる人たちがみんな全裸だったらおかしいと思うはずだ。いやまぁ、僕は服を着たままなのだけど。

 

 驚きの表情を浮かべ入り口で佇む赤毛の少女の姿を、室内の4人の裸少女たちはじっと見つめる。そのうちの一人、アルテロア国の王女シャルティーナ様が最初に口を開いた。

 

「あら、もしかして貴女、ラトナータ?」

 

「え、ええ、そう……だけど……。って、もしかしてシャルティーナ姉様!?」

 

「フフッ、やっぱり貴女だったのね。お久しぶりね」

 

「お、お久しぶり……」

 

 そう言って挨拶を交わす赤毛の少女とシャルティーナ様。この二人はどうやら知り合いのようだ。まぁ、シャルティーナ様は王女様なのだし、顔が広いのも当然と言えるかもしれないけどね。

 

「えっ、あ、貴女がラトナータ様なのですか!?」

 

「お、お初にお目にかかりますっ!わ、私、アルテロア王国第Ⅰ貴族、ローラント家の長女、エルシャローゼ・ローラントと申します」

 

「同じく次女のアルフィオーネ・ローラントです」

 

 "ラトナータ"という名前に反応した御嬢様二人が慌てて居住まいを正し、それぞれ自己紹介を済ませる。御嬢様方の反応的に、この赤毛の少女もシャルティーナ様同様かなり地位の高い方なのだろうか?

 

 とにかく、御嬢様二人に倣って僕も挨拶をしておかないとな。

 

「私、ローラント家に仕える契約使用人のナギサ・モチヅキと申します。どうぞ、よろしくお願いいたします」

 

「貴方は服着てるのね……。え、ええ、よろしく。まぁ、皆さん知っているようだけど、改めて自己紹介させてもらうわ。アタシの名前は、ラトナータ・フォルレット。魔族の国フォルレットの第4王女よ」

 

 ふむ、なるほど。この方も王族だったのか。魔族の国があるという話は聞いていたが、フォルレットという国名だったとは知らなかった。

 

 にしても、この寮に位の高い方々集まりすぎじゃない?人間族の国の王女様に魔族の国の王女様……。さらには、人間族最上位貴族ローラント家の御嬢様……。僕、こんなところにいて良いのかな?何という場違い感……。

 

 ちなみに、この世界の貴族はⅠ~Ⅹの10階級に分けられているらしい。これは万国共通であり、数字が小さくなるにつれて階級が上がっていくようだ。ローラント家は第Ⅰ貴族なので、この国の最上位の貴族ということになるわけだ。

 

「そ、それで、皆さんは何故何も着ていないのかしら……?そういうルールでもあったりするの?……いや、まさかね……」

 

「ルール……と言えるかは分からないけど、一応あるわ。別に私たちが裸族とかそういうわけじゃないから勘違いは止めて頂戴ね」

 

「ええっ、ホントにあるの!?い、一体どんなルールなの!?」

 

 まさか本当に裸にならなければならない理由があるとは思っていなかったのか、シャルティーナ様の言葉に目を丸くして驚愕の声を上げるラトナータ様。そんなラトナータ様を他所に、シャルティーナ様は決まりごとの説明に移る。

 

「これは魔力健康法の実践なの」

 

「魔力……健康法……?」

 

 それからシャルティーナ様は、先ほど僕らにもしてくれた魔力健康法の説明をラトナータ様にも繰り返し行った。

 

 ラトナータ様はシャルティーナ様の説明を終始真剣な面持ちで聞いていた。時々、納得するように頷いてもいた。

 

「というわけなの。だから、私たちもこうして寮の中では衣服を身につけず過ごしているのよ」

 

「なるほど……。確かに、そういう説があっても何らおかしいことはないかもしれないわね……。アタシたちの髪の毛がこうして綺麗に保たれているのも、魔力あってこそっていう考え方もできるわけだし」

 

「フフッ、流石は魔族国の王女ね」

 

「まぁね」

 

 シャルティーナ様に褒められて誇らし気に胸を張るラトナータ様。こういう反応は実に子供っぽくて和む。

 

「というわけだから、この寮にいる間はなるべく衣服は身につけないようにして頂戴。最初は恥ずかしいかもしれないけど……」

 

「ええ、分かったわ。んしょっと……」

 

 シャルティーナ様が言葉を続けるよりも早く、ラトナータ様は着ていた服に手をかけ、ひょいひょいと勢いよく脱ぎ捨てていく。よっ、良い脱ぎっぷり!なんて口に出したりはしない。

 

 そうして、全ての衣服を脱ぎ終えたラトナータ様は何の躊躇いもなく大きく伸びをしてみせた。

 

「んんっ、はぁ。この解放感、なんか良いかも」

 

「な、何の躊躇もなかったわね……」

 

「まぁ、決まり事だしね。ところで、貴方は脱がなくて良いの?」

 

 ラトナータ様は僕に対してそう問いかけてくる。だから僕は首を横に振って彼女の問いかけに答えた。

 

「いいえ、これはあくまで学生のルールでございます。ですので、私には適応されないかと」

 

「あら、そうなの。そういえばさっき、契約使用人って言ってたもんね。パッと見分からなかったけど、契約使用人ということはつまり成人しているってことだもんね。人は見かけによらないってよく言ったものよね」

 

「ぐふっ……」

 

 彼女のストレートな物言いに、僕は思わずその場に崩れ落ちてしまう。そ、そうですよね……、パッと見じゃ僕が成人しているだなんて思えないよね……。うん、分かってる……、分かってるさ……。

 

「あっ、ご、ごめんなさい、つい本音が……」

 

「か、構いません……。じ、事実ですから……」

 

「ナギサ、自分の容姿気にしてたのね……」

 

「私は素敵だと思うのですけど……。って、私ってば、またこんなことを……。は、恥ずかしいですぅ……」

 

「アルフィ、貴女ねぇ……」

 

 思った以上にダメージが大きく、今は彼女たちの話声も頭に入ってこなかった。歯に衣着せぬ言葉はやはりグサグサと心に突き刺さるな……。でもまぁ、子供ってだいたいそういうものだし、咎めるつもりもない。

 

「ア、アタシの所為で……。ど、どうすれば……。って、ん……?」

 

 僕の様子を見てあたふたしていたラトナータ様だったが、不意に落ち着きを取り戻したようにじっと僕を見つめながら首を傾けて何事かを考え始めてしまった。

 

「えっと、どうかなさいましたか?何か私の身体に変なところがありましたか?」

 

 僕は急に様子を変えたラトナータ様を不思議に思い、うじうじするのを止めてそう問いかけた。もしかしたら、魔族にはこの世界の人間と異世界人との見分けがついたりするのだろうか?

 

 だが、しばらくの沈黙ののち、ラトナータ様は何でもないと言うように首を横に振って僕の言葉に答えた。

 

「いえ、気のせいね。それより、先ほどは余計なことを言ってしまって申し訳ございませんでした。王女としてあるまじき失態ね」

 

「あっ、いえいえ、お気になさらないでください。私なら平気ですので」

 

「貴方は優しいのね。気に入ったわ」

 

「えっと、あ、ありがとうございます」

 

 面と向かって優しいと言われ、僕は照れくさい気持ちになってしまう。その照れくささを隠すように頭を下げた。

 

 そんな僕の横で、アルフィオーネ様が誇らし気に声を上げた。

 

「ナギサさんは私たちの自慢の執事なのです」

 

「仕事もできるし気遣いもできるモノね。だから、もっと誇って良いと思うわよ、ナギサ。……まぁ、鈍いところがたまに残念だけど……」

 

「そ、その、お褒めいただけるのは大変光栄なのですが、あまり期待値を上げられると……プレッシャーが……」

 

 またも浴びせられる絶賛の声に、僕は喜びと恥ずかしさと異様なまでの重圧感を感じてしまう。これじゃ、下手な失敗はできなさそうだ。もっとも、御嬢様方に快適な生活を提供しなければならないのだから、端から失敗などするつもりはないのだが。

 

「別にプレッシャーなんて感じる必要ないわ。失敗したって誰も咎めやしないもの。完璧なんて求めてないわよ。まぁ、責任感の強い貴方にはこんなこと言っても無駄化もしれないけどね」

 

 嘆息混じりにエルシャローゼ様がそう言った。だが、エルシャローゼ様のその言葉は、僕の心の重圧を軽減するには充分だった。僕なんかより彼女たちの方がずっと優しくて素敵だと思う。まぁ、重圧を与えてきたのも彼女たちなのだけど……、彼女たちはそれを意図していたわけでもないだろうし気にしたら負けだ。

 

「いえ、お気遣いありがとうございます。おかげで気持ちが軽くなりました」

 

「そう、それなら良かったわ。ところで、ラトナータ様は使用人は連れておられないのですね」

 

 僕の言葉を聞いてにこりと微笑むと、エルシャローゼ様はラトナータ様に向き直り話を変えた。確かに、言われてみれば彼女は一人だ。使用人も護衛も連れていない。王女なのに一人って、安全面的に大丈夫なのかな?

 

「自分の身は自分で護る。誰かに護られるなんて、吸血鬼としてのプライドが許さないわ。だから、フォルレットは使用人も護衛も雇っていないの」

 

 まだ未成熟の薄い胸を目いっぱい張りながら、赤毛の魔族姫様はそう言ってみせた。というか、今更だけどラトナータ様って吸血鬼だったのか……。でも、そういえばラトナータ様って魔族っぽい特徴がないような……?

 

 特徴部位って普段は隠すことができたりするのだろうか?と思ったら、今チラリと彼女の背中に小さな羽が見えた。なんだ、普通にあったじゃん。見逃していただけだったようだ。

 

「なるほど、そういうものなのですね。変なことを聞いてしまい申し訳ございませんでした、ラトナータ様」

 

「良いわ、気にしなくて。それと、もう一つ確認しておきたいことがあるのだけど……」

 

 ぺこりと頭を下げるエルシャローゼ様に対して笑顔で首を振ったラトナータ様は、また別に気になることが有ると言って話題を切り替えた。



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使用人たちのお話

「それと、もう一つ確認しておきたいことがあるのだけど……」

 

「何かしら?」

 

「ここに住むメンバーは今この場にいる人たちだけ?」

 

 リビングをぐるりと見まわしながら、ラトナータ様はシャルティーナ様にそう問う。今この場にいるのは、シャルティーナ様にラトナータ様、エルシャローゼ様、アルフィオーネ様、そして使用人のユーアさんと僕の計6人だ。いやまぁ、僕は学生じゃないので数に数えるのはどうかと思うけど。

 

 そういえば、ユーアさんは使用人だけど学生でもあるのかな?他の方同様に服を脱いでいるわけだし。それに、奴隷使用人の()もつけているから、僕のように見た目は幼いけど成人している、なんてこともないだろう。ということはつまり、使用人でも学園には通えるということなのだろうか?うーん、よく分からないな。

 

 ちなみにだけど、奴隷使用人の証というのは腕輪のことだ。奴隷使用人は必ず左腕に黒い腕輪をはめている。契約使用人にはそのような証はない。奴隷使用人か契約使用人かは、腕輪の有無で見分けられる。

 

「いえ、もう二人ほどいるわ。それも、貴女たちと同じ、新入生よ。こんなに新入生が来てくれるなんて嬉しいわ」

 

「あら、そうなの。というか、貴女たちも新入生だったのね」

 

「はい、そうです」

 

「同じクラスになれると良いわね」

 

「ふふ、そうですね」

 

 なるほど、シャルティーナ様以外はみんな新入生なのか。でもそうなると、この場に上級生はシャルティーナ様しかいないということになるのか?あっ、ユーアさんもいるのか。けど、結局その二人だけ。しかも、ユーアさんは分からないけどシャルティーナ様は御嬢様方と一つしか年が変わらない。

 

 つまり、この場には元の世界で言えば小学生くらいの少女しか集まっていないということになる。……これ、僕に都合が良すぎではないか?まぁ、気持ち悪くなってここにいる人たちに心配をかけてしまうよりかはずっとマシだけど。

 

「せっかくだし、もう二人の新入生もここに連れてきましょう」

 

「あっ、もういらっしゃってるのですね」

 

「ええ。今は自室の片づけをしてると思うわ」

 

「そうなのね。でも、それだったら今は連れてこない方が良いんじゃないかしら。片付けの邪魔するのも申し訳ないわ」

 

「うーん、それもそうね」

 

「それに、アタシも一度部屋の整理がしたいわ」

 

「そう。なら、私たちも一度解散しましょうか。お話なら何時でもできるものね」

 

「はい、そうですね」

 

 というわけで、この場は一度解散の流れになった。僕は御嬢様方のお部屋の片づけを手伝いに行こうとしたが、その前にユーアさんと確認しておくことがあったのを思い出し、そのままリビングにとどまる。

 

 そして、この場に残っているのが僕とユーアさんだけになったことを確認してから、僕は彼女に話しかけた。

 

「ユーアさん、お話よろしいでしょうか?」

 

「はい、大丈夫です。それと、わたしは貴方と同じ仕様人ですので、そんなに畏まらないでください」

 

「わ、分かりました」

 

「敬語も要りません。もっと気楽に話しかけてください」

 

 僕が一度頷くと、彼女は僕の口調も訂正してくる。でも、正直なところ彼女のその申し出は非常にありがたかった。気楽に接することができる相手は欲しかったからね。

 

「え、えっと、そういうことなら、分かった。それじゃあ、ユーアさんも僕には敬語要らないよ」

 

 僕も彼女に同じように提案する。使用人仲間なのだし、僕だけじゃなくてお互い遠慮なく話せる関係の方がずっと良いだろう。

 

「うん、なら遠慮なく。それで、今後の業務に関する話……だよね?」

 

 僕の言葉に素直に頷いたユーアさんは、早速本題を切り出してくる。僕は彼女の言葉に一つ頷き、気になったことをいろいろと聞いていく。

 

「うん。業務は分担して行うってことで良いんだよね?」

 

「それで良いと思う。あっ、でも、学園がある日はナギサさんにいろいろお任せしちゃうかも」

 

「あ、それは構わないよ。やっぱり、ユーアさんも学生なんだね」

 

「そう。本来使用人は学園には通えないんだけど、主人の護衛のために特例で通わせてもらえてるの」

 

 そういうことだったのか。疑問を一つ解消できた。なら、ついでにもう一つ気になっていたことを聞いてみよう。

 

「なるほど。ちなみに学年は?シャルティーナ様と同学年?」

 

「ううん、姫様より一つ上。今は第3学年なの」

 

「あ、そうだったんだ。ってことは、この場では一番上級生なんだ」

 

「そういうことになる。まぁ、上級生の割には身体小さいんだけどね」

 

 そう言って苦笑を浮かべるユーアさん。確かに、ユーアさんはかなり小柄だ。恐らくそのことを少し気にしているのだろう。僕にはその気持ちがよく分かる。だから、彼女の見た目については特に何も言わない。

 

「っとと、それで、業務内容なんだけど、わたしたち使用人が担当するのは主に共有スペース……こことかトイレ、あとお風呂、そういったところの掃除が一つ。あとは炊事と洗濯ね。一般的な家事仕事と変わらないよ」

 

「ふむふむ。ちなみに、個室はどうするの?」

 

「各自の部屋は基本的に各自で管理することになってるから、使用人は手をつける必要はないよ。まぁ、何かしら手伝いが必要な場合はもちろん対応しなきゃだけどね」

 

「なるほどね。でも、洗濯を僕が担当するのはちょっとまずくない?僕は男なわけだし、着ていた衣服を僕に触られるのは抵抗あるんじゃないかなぁ」

 

「そうかな?別に皆さんも気にしないと思うけど」

 

 もしかして、心配のしすぎなのかな?使用人に脱いだ衣服を触れられるのは別に大したことじゃないのかもしれない。それがたとえ自分に仕える使用人でなく、またその使用人が異性だったとしても。

 

 御嬢様の世界の常識は分からないな。どうしても僕の常識で考えようとしてしまう。慣れるのは大変そうだ。

 

「皆さんも、ナギサさんには一定以上の好感を持ってるから、そこまで気にしなくて大丈夫だよ。そもそも、こうしてナギサさんに自分の裸を見られることを受け入れてるわけだしね」

 

「本当に嫌じゃないのかな?僕に裸見られて」

 

「あはは、心配しすぎだってば。現に、ナギサさんが時々わたしたちにチラチラ視線向けてても誰も咎めなかったでしょ?」

 

「うぐっ、そ、そりゃ気づかれてるよね……」

 

「まぁね。やっぱり男性は女の子の裸は気になっちゃうものなの?」

 

「多少はね」

 

「ふふっ、えっち」

 

「ご、ごめん……。で、でも、気になるとは言っても、性的に気になってるわけじゃないからその辺は安心してほしい」

 

 僕は必死で弁明する。確かに、今も全裸のユーアさんを前にして少しドキドキはしているけど、本当にそれだけなのだ。それ以上の感情は抱いていない。

 

「つまり、わたしたちにはそういう魅力はないと?」

 

 だが、僕の弁明はまた別の誤解を生んでしまった。

 

「い、いや、そういうわけでもないんだけど……」

 

「あはは、ごめんなさい。ちょっとからかいすぎたね。まぁ、とにかくナギサさんは何も気にしなくて良いんだよ。むしろ、堂々としてないと逆に怪しまれるかもよ」

 

「あー、それもそうだよね。それなら、あまり深く考えるのは止めようかな」

 

「うん、それで良いと思う。あっ、皆さんの中にはもしかしたらナギサさんに自分の裸をもっと見てほしいって思っている方がいるかも?」

 

 などと冗談めかしてそんなことを言ってくるユーアさん。そういうからかいは勘弁してほしいなぁ。

 

「いやいや、それはないでしょ。からかうのは止めてくれよ」

 

「ご、ごめんごめん。……あーあ、確かに鈍いなぁ。こりゃ苦労しそうだよ……。皆さん、頑張れ……」

 

「ん?何か言った?」

 

 何やら独り言をブツブツと呟くユーアさんに、僕は首をかしげてそう問いかける。けど、彼女は首を横に振って僕に答えた。

 

「あー、いや、何でもない何でもない。さてと、それじゃあそろそろお風呂掃除しないとね」

 

「あっ、それなら僕が」

 

 そう言って僕は手を上げる。場慣れする絶好の機会だろう。そう思って名乗り出たのだが、ユーアさんは少し遠慮がちな表情を浮かべてしまう。

 

「えっ、で、でも……」

 

「一度お風呂も見ておきたかったしね」

 

 僕は迷うユーアさんに対して、さらに言葉を重ねる。

 

「うーん、なら一緒にやる?ここのお風呂、結構広いし。二人の方が効率上がると思うんだ」

 

 それでも少し迷うようなそぶりを見せていたが、やがて良いことを思いついたとばかりにポンと手を打ち合わせ、僕にそんな提案をしてくる。

 

「そうだね。それじゃあよろしくお願いするよ」

 

 僕は迷わず頷いた。特に断る理由もなかったからね。

 

「うん、こちらこそ」

 

 ユーアさんも笑顔で頷き返してくれた。そんなわけで僕とユーアさんは、連れ立って浴室に向かうこととなった。

 

 その道中……

 

「あっ、そうそう、さっきの話なんだけど」

 

「さっきの話って?」

 

「ユーアさんも、もちろん他の皆さんも、とても魅力的だと思ってるから。そこは心配しなくて大丈夫だよ」

 

 先ほどはあいまいな返事しかできていなかったから、改めてフォローの言葉を入れておくことにした。決して彼女たちに魅力がないわけではないのだ。ただ、僕の中の常識が彼女たちを性的な眼で見ることを拒絶しているというだけなのだ。

 

「にゃっ!?そ、そんないきなり……!?ふ、不意打ちはずるいって……」

 

 彼女は一瞬ぴくりと身体を跳ねさせると、何やらブツブツ言いながら顔を俯かせてしまった。あ、あれ?なんかまずいこと言ったのかなぁ?

 

「え、えっと、何か気に障るようなこと言っちゃった……かな?」

 

「い、いや、そういうのじゃないから大丈夫……。……すごい破壊力だにゃ……。無自覚なんだろうけど、あんなこと言われたらわたしまで……」

 

 ほ、本当に大丈夫かな?でもまぁ、本人が平気と言うのだから、これ以上心配するのは止しておこう。彼女の頭頂部に生えた三角猫耳がぴょこぴょこ跳ねていることも気になったが、それが悪感情からくる反応でないことを信じて何も聞かないことにした。



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お風呂掃除with猫耳ロリメイド(全裸)

「よーし、それじゃあお風呂掃除始めよっか」

 

 浴室に辿り着くまでの間、僕たち二人の間には気まずい沈黙が流れていたのだが、浴室に到着するなりユーアさんは気持ちを切り替えるように元気よくそう宣言した。

 

「うん、そうだね。それで、掃除用具は何処にあるの?」

 

 僕も彼女に倣って一度気持ちをリセットする。そして、風呂掃除をするにあたって必要な掃除用具の在処について彼女に尋ねる。

 

「あっ、それはここにあるよ。はい」

 

「ありがとう」

 

 脱衣所の隅にあったロッカーから二本のブラシを取り出し、そのうちの一本を僕に手渡してくれるユーアさん。僕は彼女に一言礼を述べ、それからそのブラシを持って浴室に入ろうとした。

 

 だが、その前にユーアさんに止められてしまった。

 

「えっ、そのままやるの?」

 

「う、うん、そのつもりだけど……」

 

「濡れちゃうでしょ。そのままだと」

 

「うーん、大丈夫だと思うよ」

 

 彼女はどうやら僕の執事服が濡れてしまうことを心配してくれていたようだ。だが、転んだりしない限り、そう簡単に服が汚れるなんてことはないと思う。

 

「で、でも、もしものことがあるし……」

 

「まぁ、それもそうだね。それじゃあ、上着だけは脱いでおこうかな」

 

 ユーアさんの心配を無下にするのも悪いと思った僕は、執事服の上着だけ脱ぐことにした。流石に彼女の前で全裸になろうとは思わなかったけどね。というか、男の汚い身体を彼女の目に映してしまうのは躊躇われた。

 

「えっ、上着だけじゃあんまり意味ないと思うけど……」

 

 けど、ユーアさんは未だに僕の服が濡れてしまうのではないかと心配してくる。それならばと、僕はシャツの袖を捲り、ズボンの裾をロールアップした。あまり意味があるかは分からないが、やらないよりかはマシだろう。

 

「えっと、これでどうかな?」

 

「ま、まぁ、良いんじゃないかな……?……はぁ、これ以上脱いではくれないのね……。チャンスだと思ったのになぁ……」

 

「え、えっと、ユーアさん?何か?」

 

「う、ううん、何でもない。そ、それじゃあお風呂掃除始めちゃお」

 

 最後に何事かを呟いていたが、残念ながら僕の耳には届いてこなかった。だが、僕が聞き返しても、彼女が同じことを繰り返し言ってくれることはなかった。ブラシと洗剤を片手に抱え、彼女は脱衣所と浴室を隔てる引き戸をガラリと勢いよく開いた。

 

 僕は慌てて彼女の後を追う。必然的に彼女の剥き出しの白い背中やお尻が視界いっぱいに映って少しドキドキしてしまったが、今後ここで働くならばこの光景にも慣れていかなければならない。

 

 などと考えながら浴室に入る。浴室内はユーアさんの言っていた通りかなり広々としていた。共用だけあって、一度に複数人入れるような創りになっている。何というか、近所にあった銭湯を思い出す。

 

「えっと、浴槽と洗い場、どっちがどっちを受け持つ?」

 

 そんな風に元の世界を懐かしんでいると、先に浴室に入っていたユーアさんが僕にそう問いかけてくる。僕ははっと我に返り、改めて浴室内を見渡してみる。

 

 扉から見て手前側3分の2ほどが洗い場で、奥の3分の1ほどのスペースが浴槽となっている。

 

「それなら、ユーアさんには浴槽を任せても良いかな?僕は洗い場を担当するよ」

 

 僕は彼女にそう提案した。仮にも男だしね。こういう時はより広さのある洗い場を僕が担当すべきだろう。少しくらい格好つけさせてほしい。いやまぁ、別にモテたいとかそういうわけじゃない。彼女はまだ未成年なわけだし。

 

 ほら、でも……、男としてのプライド的な……ね。一応、僕にだってそういうプライドはあるのさ。まぁ、下心がないってことさえ分かってもらえれば良いです。

 

「えっ、洗い場の方が広いよ?」

 

 彼女は、あえて広い方を選んだ僕を不思議そうな眼で見てくる。良かった、くだらない男の見栄が見透かされていないようで安心した。

 

「まぁ、浴槽も洗い場もほとんど変わらないんだし大丈夫だよ」

 

「そ、そう?……ナギサさん、やっぱ優しい」

 

「ん?何のこと?」

 

 浴室内にいるということもあって、声はよく響く。だから、今の彼女の小声もはっきり聞こえてきた。

 

 けど、優しいなんて言われるのはとても照れくさくて、僕はあえて聞こえていないフリをした。単なるちっぽけなプライドで行動しただけだったので、彼女から好意的な言葉を向けられるのは非常に恥ずかしかった。

 

「あっ、な、何でもないの……、気にしないで。と、とにかく、ナギサさんがそれで良いなら、わたしも異論はないよ」

 

「良かったよ。それじゃあ、早速作業に入ろうか」

 

「うん、分かった」

 

 というわけで僕は洗い場の、そしてユーアさんは浴槽内の掃除をそれぞれ始める。軽く床をシャワーのお湯で濡らし、ブラシの毛先に洗剤を纏わせてごしごしと磨いていく。ローラント家の浴室よりも一回り広いので、かなり掃除のし甲斐がある。

 

 掃除は好きだ。掃除をすると心がスッキリする。一時でも嫌なことを忘れられるので、学校で常に虐げられてきた僕にとって掃除とは娯楽と言っても差し支えないくらいの安らぎの時間だった。

 

 幸い、こちらの世界にやってきてからは誰かに虐げられるなんてことはないけど、それでも掃除が好きという気持ちは変わらない。むしろ、自分のストレス発散をしながら誰かの役に立てるなんて最高ではないか。掃除がもっと好きになりそうだ。

 

「ふんっ♪ふんっ♪ふふんっ♪」

 

 僕は鼻歌を歌いながら手を動かしブラシを洗い場の床に擦りつける。どうやら、今の僕はいつも以上に機嫌が良くなっているみたいだ。

 

「ナギサさん、すごく楽しそうだね。鼻歌まで歌っちゃってるし。もしかして、掃除するの好きなの?」

 

 楽し気な僕の様子が気になったのか、浴槽内にブラシを走らせながらユーアさんが僕にそんなことを聞いてきた。

 

「あ、うん、実はね。ごめん、うるさかったかな」

 

「ううん、平気。むしろ、そんな楽しそうなナギサさんが見れて嬉しい。仕事上、他の皆さんには遠慮なく接するなんてできないでしょ?だから、ナギサさんのこういう姿を見られるのはわたしだけの特権何だなぁって思うと、それがすごく嬉しいんだ」

 

 そう言って小さく笑うユーアさん。言われてみれば、確かにそうかもしれない。立場上御嬢様方にはどうしても砕けた態度で接するなんてことはできない。それはつまり、御嬢様方には自分の素の部分はどうしても見せられないということだ。

 

 しかし、同じ使用人相手であれば、こうして自分の素を出して接することができる。ということは、今この場でユーアさんの素の姿を知っているのは僕だけということになる。それって、かなり役得なのではないだろうか?

 

「それならきっと、僕も役得なんだろうね。ユーアさんと遠慮せずに接することができるんだから」

 

 僕も彼女と同じように笑いながらそう言葉を返す。彼女が僕の素の部分を見れて嬉しいと言ってくれることも、そして僕が彼女の素の部分を見れているということも、どちらも僕にとって非常に嬉しいことのように思えた。その喜びの感情が自然と笑みとしてこぼれたのだ。

 

 しかし、今の発言は流石に恥ずかしすぎた。言った後でそんなことを考えてももう遅いのだけど。

 

「そ、そんなこと言われたらますます嬉しくなっちゃうよ、えへへ」

 

 しかし、僕の言葉を受け、ユーアさんはくすぐったそうに、けれども嬉しそうに可愛らしく微笑んだ。あ、良かった、気持ち悪いとか思われていなくて。

 

 それからしばらく、僕らはお互い無言のまま掃除に没頭していた。シュッシュという床とブラシが擦れる音だけが浴室内に響く。

 

 しかし、決して気まずい沈黙などではない。現に、ユーアさんの身体からは嬉しいという感情がオーラのように発せられていた。心無し彼女の黒く細い猫尻尾も少しだけ揺れているように見えた。あっ、あくまで見ていたのは尻尾で合って、ユーアさんの小さくて可愛らしいお尻を見ていたわけじゃないよ?本当だよ?

 

 なんて、誰に向けてかも分からない弁明をしていると、突然浴室の入り口の引き戸がガラガラと音を立てて開く。何事かと僕とユーアさんは同時に扉へと視線を向けた。

 

 すると、扉の奥から一人の少女が顔を覗かせた。僕は真っ先にその少女と目が合った。肩の辺りで切りそろえられた艶やかなエメラルドグリーンの毛髪と同色の瞳。目鼻立ちはまだまだ幼気だが、将来はきっと相当な美人になると予感させるほど整っていた。

 

 だが、それよりも僕の目を引いたのは彼女の耳だった。ユーアさんのように頭頂部に耳があるというわけではなかったが、その形状が僕のよく知るものとは違っていた。

 

 耳介は横に長く、その先端は尖っている。これは……、いわゆるエルフという種族ではないだろうか?元の世界でもファンタジーの定番として有名だったので、流石の僕でも知っていた。

 

 というか、この世界にもエルフは存在していたんだなぁ。まぁ、魔法もあって何処となくファンタジーっぽいなぁと思っていたから、いてもおかしくはないよねと納得はできる。むしろ、いて当然なのかもしれない。

 

 そんなエルフ少女だが、僕に視線を固定させたまま浴室の入り口で固まってしまっていた。当然、ここにいるということは彼女も全裸である。起伏のほとんどない白い身体が隠されることなくさらされている。

 

 恐らく彼女が、先ほどシャルティーナ様が言っていたもう二人の住人のうちの一人なのだろう。そして、僕を見て固まってしまっているということは、まだ僕の存在について誰からも説明を受けていないのだろう。

 

 やがて、少しずつ今の状況に思考が追いついてきたのか、エルフ少女の透き通るような白い頬が赤く色づき始め……

 

「お、男の人……!?男の人がどうして!?」

 

 そして、次の瞬間エルフ少女はあたふたと慌て始めてしまった。



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エルフの少女

「お、男の人……!?男の人がどうして!?」

 

 そして、次の瞬間エルフ少女はあたふたと慌て始めてしまった。やっぱりそうだよね。女子寮に男の存在があれば普通はそういう反応になるよね。

 

 しかも、学生はこの場では全裸でいなければならないというルール付きだ。ならば尚更、この場に男がいることに対して驚かないはずがないだろう。

 

「あっ、し、執事服……?も、もしかして使用人さん……なのですか……?」

 

 おっと、思っていたより冷静だったようだ。僕が今身に纏っている執事服を見て、僕が使用人であるとすぐに理解したようだった。

 

「え、ええ、そうでございます。私、本日よりこの寮に入寮されたエルシャローゼ・ローラント様とアルフィオーネ・ローラント様の専属使用人のナギサ・モチヅキと申します。このような場所でのご挨拶、誠に申し訳ございません」

 

 僕は一度ブラシを床に置き、今一度彼女に向き直ってそう名乗った。そんな僕の挨拶に、目の前のエルフ少女は未だに困惑の色を表情に浮かべ、僕とユーアさんに交互に視線を向けてきていた。

 

「そ、その、本当……なのですか?」

 

 そして、ユーアさんに確認するようにそう問いかけていた。もちろん、ユーアさんの返事は

 

「はい、この方の言っていることは真実です。ナギサ・モチヅキさんは、わたしと同じ使用人でございます」

 

 そうフォローしてくれた。良かった、この場にユーアさんがいてくれて。一人で風呂掃除を申し出なくて正解だった。

 

「そ、そうなのですか!?ご、ごめんなさい、疑うような真似をしてしまって」

 

「構いません。このような場所に男がいれば、誰だって慌ててしまうものです」

 

 ユーアさんのフォローもあって、エルフ少女はどうやら信じてくれたみたいだった。僕の存在を疑っていたことを慌てて謝罪してくるが、あの状況で疑いの念を抱いてしまうのは仕方ないことというのは理解していたので、僕は気にしなくて良いと言うように首を振った。

 

「わっ、よ、よく見たらすごく素敵な……」

 

「ん?どうかなさいましたか?」

 

 不意にエルフ少女が僕に謎の視線を向けてきていたので、僕は首をかしげてそう聞き返してしまう。何事か呟いていたようだったが、現在浴室の扉は全開になっており音の反響は小さく、僕にその声は聞き取れなかった。

 

 しかし、僕の聞き返しに対し、エルフ少女は顔を真っ赤にしてぶんぶんと首を横に振った。ややオーバーリアクションだ。

 

「な、何でもないんですっ、すみませんっ。!て、お掃除中でしたよねっ!?ご、ごめんなさいっ!!お仕事の邪魔してしまって……」

 

 今度は別の理由で慌て始めるエルフ少女。この人、よく慌てるなぁ。何というか、ちょっと危なっかしい。風呂場は滑りやすいから余計に。

 

「って、ひゃあっ!?」

 

 と思ったら、本当に足を滑らせてしまった。僕が余計なこと考えた所為なのか!?これが世に言うフラグ回収というやつなのか!?

 

 って、まずいな。彼女が床に頭を打ちつけたら大変だ。僕は瞬時に彼女のすぐ傍まで近づき、その場に倒れそうになる彼女の身体を何とか腕で支える。僕が足を滑らせるなんて言うヘマはしない。

 

「っとと、良かった。えっと、大丈夫ですか?」

 

「ふえ……?は、はわわわわっ、ワ、ワタシっ、今男の人に抱えられてるっ!?」

 

 腕の中のエルフ少女に視線を向けてそう問うと、彼女はまたもあたふたし始める。って、それもそうか……。今彼女は初対面の男に抱きかかえられている状態だ。しかも、彼女は衣服を一切身に纏っていない。つまりすっぽんぽんだ。そりゃ慌てないわけないわな。

 

 ってか、地味に初めて女の子の素肌に触れてしまった。女の子の肌ってこんなにすべすべしているのか……。しかも、すごくぷにぷにしていてとても触り心地が良い。こんなに柔らかい感触、生まれて初めて触れた。って、今僕の片手が振れているの、エルフ少女のお尻じゃないか!?うわっ、事故とはいえこんなところを触ってしまうなんて、僕はなんて罪深い人間なのだろうか……。

 

「え、えっと、立てますか?」

 

「ひゃ、ひゃい、大丈夫……でしゅ……」

 

 彼女の返事を聞いた僕は、彼女の身体からゆっくり手を放す。本当、僕はなんてことをしてしまったのだろうか……。相手は初対面の女の子だというのに……。

 

「あ、ありがとう……ございます……、助けてくれて……」

 

「い、いえ。むしろ、突然抱きかかえるような真似してしまい、申し訳ございませんでした」

 

 お礼を言ってきた彼女に対し、僕は誠意をもって謝罪する。今のはお礼を言われるようなことではない。

 

「そ、そんな、謝らないでください。そ、その……、い、嫌じゃ……なかったと言いますか……何と言いますか……」

 

「え?」

 

 彼女はもじもじしながらか細い声でそんなことを言ってくる。嫌じゃなかった……って、まさかな……。きっと彼女なりの気遣いなのだろう。こんな小さな子に気を遣わせてしまうなんて……。うっ、余計に申し訳なくなってきた……。

 

「にゃ、にゃんでもにゃいでしゅっ!お、お仕事の邪魔をしてしまいしゅみましぇんでしたぁっ!!」

 

 顔をさらに紅潮させたエルフ少女は、そんな叫び声を上げながら浴室から飛び出していってしまった。呂律も回らないくらい恥ずかしかったのだろう。僕は彼女をそれほどまでに辱めてしまった……。なんてことだ……。これから彼女とはどう接していくべきだろうか……。

 

 僕は、エルフ少女が脱衣所から姿を消すまで彼女の小振りな丸いお尻を見つめながら、罪悪や後悔の念を膨らませていた。僕はさっき、意図的ではないにしろあのお尻に手を触れさせてしまった……。それが余計に僕の中の罪悪感を大きくさせていた。

 

 そうして、彼女の姿が見えなくなってから、僕は浴室の入り口の扉を音を立てて閉めた。もちろん、心の中に生まれた罪悪感と後悔は消えない。

 

「う、羨ましい……。こうなったらわたしも……」

 

 引き戸が閉まる音が大きくて、僕の耳にその声は届かなかった。

 

「あー……、どうしよう……。とんでもないことやらかしたよ……」

 

 そして、ユーアさんと二人きりになったことで、僕はようやく嘆息した。

 

「さ、さっきのことは気にする必要ないと思うよ?彼女も気にしてないって行ってたし。む、むしろ、なんか……」

 

「でも……、かなり恥ずかしがってた……」

 

 僕は自分への怒りをぶつけるようにブラシを思いきり床に擦り合わせる。ごしごしという摩擦音は浴室内に良く響く。

 

「そ、そりゃあねぇ……。……ナギサさんみたいな素敵な殿方に抱きかかえられたら、誰だってドキドキするに決まってるもんね……」

 

 その摩擦音の所為で、ユーアさんの言葉は聞き取れなかった。

 

「えっ、な、何か言った?」

 

 僕は慌てて手を止めて彼女にそう聞き返す。

 

「あっ、ううん、何も」

 

 だが、さほど重要なことではなかったのか、彼女は首を振って何でもないと言った。そんなユーアさんの顔が赤く見えたのは、きっと掃除のために身体を動かしていたからだろう。

 

「と、とにかく、そこまで気にすることじゃないよ。彼女を怪我させずに済んだんだし、誰もナギサさんを咎めたりはしないって」

 

「そ、そうなのかなぁ……。でも、ユーアさんがそう言うならそうなのかも……」

 

 ユーアさんの表情は嘘を吐いているように見えなかった。それなら、僕も彼女の言葉を信じよう。もしエルフ少女が僕に怒りの感情を覚えているなら、後でまた謝れば良い。もちろん、精いっぱいの誠意をもって。

 

「さ、さーてと、浴槽は粗方終わったかな」

 

 そう言うとユーアさんはシャワーヘッド型の魔道具を一つ手に取り、浴槽についた泡をお湯で洗い流していく。ちなみに、シャワーヘッド型魔道具は、手持ち部分にはめ込まれた丸い石に触れるとお湯が出てくる仕様だ。僕の元いた世界のものとは異なり、ホースには繋がっていない。なので、何処へでも持ち運べる。かなり便利だと思う。

 

 そうして一通り泡をお湯で洗い流したユーアさんは、一度魔道具を元の位置に戻してから再びブラシを持って洗い場に移動してくる。

 

「そ、それじゃあ、こっち手伝うよ」

 

「い、良いの?」

 

「も、もちろんだよ。ふ、二人でやった方が早く終わるしね」

 

「あ、ありがとう、ユーアさん」

 

「う、ううん、気にしないで」

 

 というわけで、僕とユーアさんは分担して洗い場の掃除を進めていくことになったのだが……

 

「きゃっ……」

 

「ちょっ、危ないっ!!」

 

「うにゃあっ!?」

 

「えっ、ま、またっ!?」

 

 といった感じに、彼女は何度も足を滑らせ転倒しかけていた。その度に僕は彼女の身体を抱きかかえ支えていたのだが、ユーアさんが尋常じゃないレベルで転びまくるので途中からはハラハラしてしまって掃除に身が入らなかった。

 

 最初の方は彼女の肌の感触にドキドキしてしまっていたが、彼女に対する心配の方が勝り、そんなドキドキも途中からは消えてしまっていた。

 

「だ、大丈夫?疲れてるんじゃない?休んだ方が……」

 

「へ、平気平気。心配かけてごめんね。なんか、今日はいつもより滑りやすくて……、えへへ」

 

「そ、そうなの?それなら良いけど……。あんまり無理しちゃダメだよ?」

 

「うん、ありがと、ナギサさん。はぁ、優しいなぁ……」

 

 時折うっとりとした目で僕を見つめてくるのは何だったのだろうか?

 

 まぁ、そんなこんなで風呂掃除も無事……?に終わり、僕たちは後片付けを済ませて浴室を後にしたのだった。なんか、いろいろありすぎて疲れた……。けど、この後もまだ業務は控えているので、気を引き締めなければ。

 

「ふんっ♪ふふんっ♪ふふーんっ♪」

 

 ユーアさんの機嫌がものすごく良くなっていたのが気になったけど、理由を尋ねても答えてはくれなかった。



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猫耳メイドの冗談

「あっ、そういえば……」

 

 風呂掃除を終えて次の業務に移るべく共有スペースへと戻るその道中、僕は一つ確認しておきたかったことを思い出し、隣を歩くユーアさんにそう話を切り出した。

 

「ん?どうしたの?」

 

 ユーアさんは首をかしげながら顔をこちらに向け、僕の顔を覗き込んでくる。僕はその可愛らしい垂れ目を真っすぐ見返しながら話を続ける。

 

「使用人の生活スペースってどうなっているのかなって思って」

 

 御嬢様方の専属執事に任命されたのは昨日のことだったというのもあって、僕は魔法学園やその学生寮に関する情報はあまり持ち合わせていなかった。だから、使用人たちの居住スペースなどについてもよく把握できていなかったのだ。

 

「あっ、そっか。その説明もしておかないとだったね。使用人専用の居室も同じ建物内にあるんだ。学生の居室とは少し離れた位置にあるんだけどね。ほら、廊下のずっと奥に扉があるでしょ?あれが使用人の専用居室なんだ」

 

 そう言いながら、彼女は左側を指差す。今僕たちはT字になった廊下の交差地点に立っており、右側を向くとこのユニットの出入り口がある。つまり、彼女が指差す扉は出入り口とは対極の位置にあるということになる。

 

 ちなみにだが、今僕たちが歩いてきた廊下は浴室やトイレと共有スペースを繋いでいる。そのため、現在僕たちは共有スペースの扉の正面に立っているということになる。そして、この廊下を挟んだ左右に学生たちの居室がそれぞれ3部屋ずつあり、共有スペースの扉から見て左側……ユニット出入り口側手前から1~3号室、右側……使用人専用居室側手前から4~6号室という風に居室番号が割り振られている。

 

 とまぁ、このユニットの大まかな構造はこんな感じになっているというわけだ。改めて見ると結構広いもんだな。流石は王都の魔法学園の寮……と言うべきなのだろうか。

 

「あー、あれがそうなんだ。そうしたらさ、一度部屋に自分の荷物置きに行きたいんだけど良いかな?」

 

「あー、そういうことか。それならわたしが案内するよ。って、あれ?でも、肝心の荷物は何処?」

 

「馬車に積んだままになってるから、ちょっと取りに行ってくるよ」

 

「うん、分かった。行ってらっしゃい」

 

 というわけで僕は一度ユニットを出て外に止めたままの馬車に戻る。そして積んでいた自分の荷物を下ろし、馬車をローラント家の屋敷に戻らせる。

 

「すみません、お待たせしてしまって」

 

「いえいえ、構いません。それでは、また何かあったらお呼びください」

 

「ありがとうございます」

 

 最後に御者さんに謝罪とお礼の言葉を告げ、馬車がこの場から去っていくのを見送った。馬車を見ていると、自動車がどれだけ便利な代物だったのか思い知らされる。速度も乗り心地も次元が違うのだ。

 

 なんて余談はさておき、僕は馬車から下ろした荷物を手に持って、ユーアさんの待つユニットへと舞い戻った。

 

「ごめん、お待たせ。荷物持ってきたよ」

 

「そんなに急ぐことなかったのに」

 

「いや、待たせるのは悪いし」

 

「あはは、まぁナギサさんっぽいけどね。さてと、それじゃあお部屋まで案内するからついてきて」

 

 そうして僕はユーアさんに先導されるまま廊下の奥へと進んでいく。彼女の後を追うようにして歩いているので、僕の視界には彼女の剥き出しの背中やお尻がバッチリ見えてしまっている。しかし、徐々にではあるが、僕はその光景を当たり前のものとして受け入れ始めていた。もちろん、まだ少しドキドキはするけどね。

 

 それにしても、彼女の身体は傷一つなく綺麗だな。先ほど浴室で滑って転びそうになった彼女を抱き抱えた時に触れた肌はとてもすべすべで、発展途上ながらも確かな柔らかさを手に伝えてきた。って、何故僕は彼女の身体に見とれているんだ……。しかも、肌の感触まで思い出したりして……。僕はロリコンじゃないんだぞ……?

 

「あっ、そうそう、使用人の専用居室なんだけどね」

 

 などと考えていると、不意にユーアさんがこちらに振り返った。僕は慌てて彼女のお尻に向けていた視線を上にあげた。だが、僕の反応は一歩遅く、僕がお尻に視線を注いでいたことが彼女に気づかれてしまった。

 

 彼女は途端ににやりと意地の悪い笑みを浮かべて僕の瞳を覗き込んでくる。僕のような男に身体をジロジロ見られても恥ずかしがらないのはメイドとしてのスキルなのか、それともこの裸生活を既に1年ほど経験し適応してしまっているからなのか……。

 

 と思ったが、よくよく彼女の顔を見たら、薄っすらとではあるけど頬が少し桃色に染まっていた。どうやら、彼女でも恥ずかしいと感じてはいるようだった。いや、そりゃそうだよね。

 

 ……けど、何処となく嬉しそうなのは何故だろう?

 

「あれれ?もしかしてナギサさん、わたしのお尻ずっと見てたの?やっぱり、ナギサさんもなんだかんだえっちじゃん」

 

「ご、ごめんっ、そういうつもりじゃなかったんだ」

 

 僕は咄嗟に謝罪する。けど、それと一緒に僕の口は言い訳を始めようとしてしまっていた。謝罪が先に出ただけマシか。

 

「えー、じゃあどういうつもりだったのぉ?」

 

「そ、その……、傷とか全然なくてすごい綺麗だなって……。ご、ごめん、どんな理由でも女の子の身体ジロジロ見ちゃうのは失礼だったよね」

 

 僕は再度謝罪の言葉を口にし、彼女に頭を下げる。たとえ性的な意味でなくとも、女の子の裸をジロジロと見てしまうのはあまりに失礼極まりない行為だった。その辺の配慮が全然なっていなかった。

 

「えっ、あっ、き、綺麗って……、そ、そんな……」

 

 そうして僕が頭を挙げると、そこには顔を先ほどよりずっと赤くさせてあたふたしてしまっているユーアさんの姿があった。もしかして僕、さらにまずいことを言ってしまったのだろうか?

 

「ぼ、僕、また変なこと言っちゃった……かな?」

 

「い、いや、そういうことじゃないんだけど……。ま、まぁわたしは、別にジロジロ見られても気にしない……から……。ほ、ほら、それよりお部屋、見に行くんでしょ?」

 

 そう言うと彼女はすたすたと廊下を先へと進んでいってしまう。見られて気にしない……というより、彼女はきっと気にしないよう我慢しているのだろう。やはり、先ほどの視線は失礼だったな。この空間にいる限り、彼女たちを見ないなんてことはできないけど、それでもジロジロ見るのはダメだよね。反省しよう。

 

 そうして僕は先を進んでいく彼女の背中を再び追った。今度はお尻に視線を集中させないよう細心の注意を払って。

 

「あれ?そういえばさっき、何か言いかけてなかった?」

 

 僕は、先ほどユーアさんが何かを言いかけていたことを思い出し、彼女の背中にそう話しかけた。すると、ユーアさんは僕に振り替えることはせず、

 

「あっ、そ、そうだった。え、えっと、実はね……、ここの使用人専用居室なんだけど、一人一人に与えられるってわけじゃないんだよ……」

 

 と答えた。一人一人に与えられるというわけではない……ということは、つまり一つの居室を数人で使用するということか。まぁ、そりゃそうか。使用人一人一人にまで態々居室なんて与えていられないもんな。

 

 恐らくだけど、使用人専用居室は男用と女用でそれぞれ分かれているのだろう。けど、現在このユニットで働いている使用人は僕とユーアさんの二人だけだ。だから、一人部屋と変わりないような気がする。

 

「あ、そうなんだね。でも、それがどうかしたの?」

 

「え、えっとね、要するにね……、わたしとナギサさんは同じお部屋に寝泊まりすることになるんだよ……」

 

 彼女のその言葉の意味が掴めず、少しの間だけ沈黙してしまう。しかし、その言葉の意味を理解するや否や、僕は驚愕の声を上げてしまう。

 

「ええっ!?ぼ、僕とユーアさんが一緒の部屋!?ふ、普通そういうのって、男性は男性、女性は女性って感じに分かれるものじゃないの!?」

 

「う、うん……。で、でも……、この寮には一部屋しかなくて……、あ、あはは」

 

「そ、そうなんだ……。それじゃあ仕方ないのかな?」

 

「う、うん……。仕方ない……、そう、仕方ないんだよ……、うんうん」

 

 何というか、ユーアさんの言葉は何処となく歯切れが悪い。それに、頑なにこちらに視線を向けようとしない。ずっと前を向いたままだった。まぁ、彼女としても男と一緒の部屋に寝泊まりなんて嫌なんだと思う。きっと、心の中でいろいろ迷いがあるからこんな曖昧な反応になってしまっているのだろう。

 

 一部屋しかないというのは大変だなぁ。今後、同じ部屋で生活するにあたっていろいろとルールを設けた方が良いかもしれない。特に、彼女の精神衛生のために。

 

「は、はい、ついたよ。ここがわたしたちの居室」

 

 そんなことを考えている間に、廊下の突き当りまで到着していた。まぁ、所詮はユニットの中なので、大した距離なんてないのだけど。

 

「そ、それじゃあ今開けるね」

 

「うん、よろしく。って、あれ?」

 

 僕はそう頷きかけたが、途中でその動きを止めた。何故かというと、僕の視界の端にまた別の部屋の扉が見えたからである。

 

「あっ……」

 

 僕が突然疑問の声を上げたのを聞いて、ユーアさんは恐る恐るといったようにゆっくりと僕の視線を辿る。そして、視線の先にあるもう一つの扉を見てそう小さく声を漏らしていた。

 

「ユーアさん、あの部屋は何?」

 

 彼女の反応を見て何となく察した僕は、なるべく優しい声色でそう尋ねた。これは、十中八九彼女にからかわれていたのだろう。

 

「え、えっと……、その……」

 

「あの部屋も仕様人用の居室、だよね?」

 

「うぅ……、はい……、その通り……です……」

 

「はぁ、やっぱりね。僕は最初からユーアさんにからかわれていたわけだ」

 

「ご、ごめんなさい……。で、でも……、からかったつもりじゃないの……」

 

「それって、どういうこと?」

 

 先ほどのがからかいじゃないのだとすると、どうして彼女は僕に嘘を吐いたのか……?その理由が僕にはいまいちよく分からなかった。

 

「う、うーん……、なんていえば良いのかな……」

 

「もしかして、あっちの部屋って訳あり?だからあえてユーアさんの部屋に入れようとしてくれてたの?」

 

「あっ、え、えっと、そういうわけでもないんだけど……」

 

 うーん、何ともはっきりしないなぁ。けど、この反応的に何かしら理由はあったのだろう。それなら、僕は彼女を咎めるつもりはない。もっとも、理由がなかったとしても咎めたりはしなかっただろうけど。

 

「じゃあ別の理由かな。まぁ、言いづらいことなら態々言わなくて良いよ」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

 彼女は力なく謝罪の言葉を口にする。僕はそんな彼女に対して首を横に振って答えた。

 

「謝らなくて良いよ。さっき、僕も君に失礼な視線向けちゃってたんだし、これでお相子ね」

 

「あ、ありがとう……、はぁ……」

 

「それじゃあ、僕はあっちの部屋を使うことにするよ。荷物、置いてきちゃうね」

 

「あ、うん、分かった。……はぁ、またチャンスを取り逃がしちゃったなぁ……。まぁ、仕方ないか……」

 

 僕がもう一つの使用人専用居室に入ろうとしたとき、ユーアさんの方から何やら独り言が聞こえてきた。内容までは聞き取れなかったけどね。

 

 それから僕は、持ってきていた荷物を部屋の中に放り、すぐにユーアさんのもとに戻る。その時には、彼女は既に落ち着きを取り戻していた。

 

「ふぅ、案内ありがとうね、ユーアさん」

 

「ううん、大丈夫。むしろ、変な嘘吐いちゃってごめんね」

 

「ははっ、それはさっきお相子ってことになったじゃん」

 

「えへへ、そうだったね。さてと、それじゃあリビングに戻ろ」

 

「そうだね」

 

 というわけで僕たちは来た道を戻り、そして共有スペースへと入っていく。

 

「あら、戻ったわね、ユーア。それと、ナギサさんも一緒だったのですね」

 

 そうして、僕たちが共有スペースに戻ると、そこにはシャルティーナ様が待ち構えていたのだった。



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裸エプロンの魅力

「あら、戻ったわね、ユーア。それと、ナギサさんも一緒だったのですね」

 

 そうして、僕たちが共有スペースに戻ると、そこにはシャルティーナ様が待ち構えていた。ユーアさんは、自身が使える主人を前にし、表情をぐっと引き締めた。流石の切り替えの早さだ。

 

「姫様、わたしに何か?」

 

「あ、そうだったわね。今日の夕食についてなのだけど、せっかく新入生たちが来たのだし、パーティー的なことをやりたいと思ってね」

 

「あー、なるほど。では、それ相応のお食事を用意いたします」

 

「ええ、よろしくお願いするわ」

 

 なるほど、歓迎パーティーか。年長者として新入生たちを精いっぱいもてなしてあげたかったのだろう。シャルティーナ様はとてもお優しい方だ。

 

 畏まりましたと隣で頭を下げるユーアさんの瞳は、シャルティーナ様への敬愛の色で満ちているように見えた。

 

「それならば、私もお手伝いいたします」

 

 僕もユーアさんに便乗してシャルティーナ様に頭を下げた。けど、シャルティーナ様から帰ってきたのは驚きの声だった。

 

「えっ、ナ、ナギサさんが手伝う必要はありませんよ?むしろ、貴方は歓迎される側なのだし……」

 

「いえ、そういうわけにはいきません。それに、私は学園関係者でもありませんから。歓迎されるような立場ではございませんよ」

 

「で、でも……」

 

「そういえば先ほど、私の作る料理が食べてみたい、とおっしゃっていましたよね?それでしたら、この機会に是非私の料理を皆様に振舞わせてください」

 

 少し卑怯かもしれないけど、こう提案すればきっとシャルティーナ様は僕が食事の準備を手伝うことを許してくれるはずだ。僕としては、使用人でありながら御嬢様方の食事の準備をしないというのはある種の職務放棄だからね。

 

 それに、僕はあくまで契約使用人であって、魔法学園の新入生ではない。だから、歓迎される側に交じるわけにはいかないだろう。

 

「そ、そういう言い方はずるいと思いますわ……。わ、分かりました。それでは、お願いいたします」

 

「はい、畏まりました」

 

「そ、その、楽しみにしてますね」

 

「ふふっ。ええ、お任せください」

 

 シャルティーナ様は僕の返事に満足気に頷くと、共有スペースの奥に設置されているダイニングテーブルに駆けていった。その足取りはとても軽かった。

 

 ユーアさんより少し肉付きの良いお尻がプルプルと揺れる目の前の光景にさり気なく視線を向けながら、僕は思った。あー……、これ……、相当期待されているやつだ、と。

 

 まぁ、期待されている以上、それ相応のものを用意できるよう頑張らないと。御姫様の御眼鏡に適うと良いなぁ。

 

「それじゃ、キッチンに行こうか。お料理、いろいろと教えてね」

 

「いやいや、教えられるほどの腕はないって。とにかく、皆さんに美味しいと思ってもらえるよう一緒に頑張ろう」

 

「うん、そうだね」

 

 というわけで、僕とユーアさんは連れ立って共有スペースの奥にあるキッチンへと移動した。そういえば、この寮のキッチンにも初めて入るな。内装はどんな感じなのかなぁと思い、僕はキッチン内を一通り見渡す。

 

 コンロやシンクの配置なんかはローラント家の屋敷のキッチンとだいたい変わらないかな。屋敷に比べると広さはそこまでない。まぁ、それでも元の世界の僕の実家よりかはずっと広いんだけど。

 

 でも、あまり広すぎても逆に落ち着かない。多分、これに関しては僕自身の慣れが影響しているのだろう。

 

 それはさておき、僕は隣に立つユーアさんの姿を見て少し心配になった。裸のまま料理って、ちょっと危なくないかな?ひとまず本人に聞いてみるのが手っ取り早いな。

 

「そういえばユーアさん、まさかその恰好のまま料理はしないよね?」

 

「えっ、あ、うん。流石にね」

 

「そうだよね。油が跳ねたりしたら危ないしね」

 

「うん。だから、お料理する時はエプロンをつけるようにしてる」

 

 そう言うとユーアさんは、キッチンに備え付けられている棚の引き出しから白い布……畳まれたエプロンを取り出した。

 

 そうしてユーアさんはそのエプロンを広げ、自分の身体に身につける。シンプルなデザインなのかと思ったら、フリルが要所要所にあしらわれたとても可愛らしいデザインのエプロンだった。

 

 しかし、それ以上に今の彼女の恰好は何というか……ちょっとエッチだ。元々彼女は衣服を何も身につけていなかった。そのため、現在の彼女の恰好は裸エプロンということになる。年も外見も幼い少女が裸エプロン姿でキッチンに立っている……。あまりに背徳的な光景だった。

 

 くっ、これは流石に刺激が強い……。今まで落ち着いていた心臓の鼓動が再びドクドクと力強く脈動を開始する。裸エプロンって、こんなにドキドキするものだったのか……。知識はあれどエロに疎いことに間違いはなかったので、初めて目にする女の子のエッチな姿に途端に恥ずかしさを覚えてしまう。

 

 けど、決して興奮はしない。僕の理性は頑丈なのだ。これくらいで崩壊するほど軟弱ではない。故に、僕の股間は未だに下着の中で通常サイズを保ち続けている。ピクリとも反応しない。理性があれば余裕で興奮を抑え込むことができる。だから僕はきっとロリコンなんかじゃないはずなのだ。

 

「このエプロン、姫様にいただいたものなんだぁ。どう?似合ってるかな?」

 

 などと心の中でそんなことを考えていると、ユーアさんは自分のエプロン姿を僕に惜し気もなく見せつけてくる。きっと彼女にとっては裸エプロン=エッチな恰好という認識にはならないのだろう。いやまぁ、まだ幼いのだし分からなくて当然だ。むしろ、分かられても困る。

 

 ひとまず僕は心中に渦巻く邪念を取っ払い、改めて彼女の今の恰好を眺める。彼女は僕に感想を求めているのだ。それならば、ちゃんと答えてあげなければならないだろう。

 

 だが、見れば見るほどエッチな恰好に思えてきてしまう……。首掛けの紐が長い所為か、胸元の露出はかなり激しい。おかげでユーアさんが動く度にその未発達な桜色の小さなぽっちがチラチラと見え隠れしている。それを見るだけで、僕の中の羞恥心は高まっていく。

 

「え、えっと、すごく可愛いと思うよ。う、うん、似合ってる。ユーアさんの髪の毛が黒いから、白いエプロンがよく映えているね」

 

 そんな感想を溢す。もちろん、全て嘘偽りのない僕の本心だ。元々可愛らしい容姿をしているユーアさんがフリル付きで可愛いエプロンを身につけることによって、彼女の可愛さがさらに引き立っていた。

 

 それと、黒と白のコントラストはとても綺麗だった。純粋な気持ちで彼女の姿を見れば、今の彼女は天使級にキュートだろう。

 

「ホ、ホント?う、嬉しいな、えへへ」

 

 僕の言葉を受け、ユーアさんは頬を朱に染めて照れ笑いを浮かべる。その表情も非常に可愛らしい。けど、見方を変えるとやはりエッチだった。

 

 こ、これはまずいな……。別のことに気を移さないと、幼女×裸エプロンの魅力に引きずり込まれてしまいかねない。僕は、ロリコンに成り下がるつもりはないんだ。

 

「よ、よし、そろそろ料理始めよう」

 

 僕は気を紛らわすようにそう宣言する。

 

「うん、そうだね。それで、何を作ろうかなぁ」

 

 彼女も僕の言葉に便乗してくれる。料理に集中しさえすれば、恐らく彼女の恰好も気にならなくなるはずだ。僕はいろいろな意味で気合を入れる。

 

「うーん、とりあえず食材の確認しても良い?」

 

「平気だよ。というか、この冷蔵庫は共用なんだし、別にわたしに許可を取る必要なんてないよ」

 

「あ、ごめん。つい癖で。それじゃ、失礼して……」

 

 そう言って僕は冷蔵庫の戸を開く。もちろんのことながら、この冷蔵庫も魔道具である。いやぁ、便利だなあぁ。

 

「って、結構たくさん食材入ってるんだね」

 

 冷蔵庫の中には大量の食材がぎっしり詰まっていた。こういった食材等は自分たちで買い集めなければならない。恐らく、これらの食材はユーアさんが定期的に買いに行っているのだろう。

 

「あー、うん。多いよね。これ、実は旦那様……王様からちょくちょく仕送りとしていただいてるものなんだ」

 

「あっ、そうだったの?てっきり、ユーアさんが買いに行っているものとばかり……」

 

「あはは、違うんだなぁ、それが。仕送りの量が多すぎるから、わたし最近お買い物も全然行ってないんだよ」

 

「そ、そうだったんだ……。これ、使って大丈夫?」

 

「あ、うん。それは平気だよ。むしろ、どんどん使っちゃって。じゃないとなくならないから。現に、大分前にいただいた食材もまだ残ってるしね」

 

「そっか、分かった」

 

 僕は彼女の言葉に一つ頷くと、再び冷蔵庫の中身を吟味し始める。実はこの世界の冷蔵庫、非常に優秀なのだ。というのも、食材を冷蔵庫に入れておけば、その食材は腐ることなくそのままの鮮度を保ち続けるのだ。つまり、消費期限などを気にする必要もないのである。いやうん、魔力って有能すぎるよね。

 

 というか、先ほど魔力健康法の話を聞いたということもあって、この冷蔵庫の仕組みと魔力健康法には何かしらの関係があるのではないかと考えてしまうな。根拠も何もないんだけどさ。

 

「おっ、鶏もも肉あるじゃん。それなら、今日のメインは唐揚げにしようか。あとは……、ペンネがあるからグラタンとかも良いなぁ」

 

 食文化が変わらないのは非常に助かる。元の世界基準で料理を考えられるからね。今、僕の頭の中には幾つもの献立が思い浮かんでいる。なかなか悩むなぁ。何が一番喜んでもらえるだろうか……?

 

 ひとまず、みんな大好き……なはずの唐揚げは作ることに決めた。す、好きだよね?子供は特に。これはどの世界でも共通……だと良いなぁ。

 

「おっ、トマト缶がある!なら、グラタンはラザニア風にしようかなぁ。それから……、サラダも必要だよね……」

 

「す、すごい……。よくそんなに献立がポンポン思いつくね」

 

「いやぁ、これだけ食材が充実してれば、結構いろいろ思い浮かぶものだよ」

 

「そういうものなのかぁ。尊敬しちゃうなぁ」

 

「それは大げさだって。ただ献立考えてるだけなんだし」

 

 僕は彼女の言葉に思わず苦笑を浮かべてしまう。料理の手際が良く、それでいて味も良い……という点を尊敬されるならまだしも、僕は単に献立を考えているだけなのだ。そこを尊敬されても逆に困ってしまう。

 

「あっ、スモークサーモンか、良いね。それに、アボカドもある。なら……、あとは玉葱、胡瓜、レタス、トマトも使ってサラダを作れば良いかな。なかなか豪勢じゃないか」

 

「おお、確かに美味しそう。スモークサーモンとアボカドをサラダに使うんだね。サ、サーモン……、ふへへ……」

 

 サーモンに異様なまでの反応を示すユーアさん。これって、猫族だからなのだろうか?好みは元の世界でよく見かける猫と変わりないのかな?

 

「おっと、いけないいけない。ついサーモンに反応しちゃった。後でのお楽しみにしておかないとね。いやぁ、歓迎会楽しみだなぁ。ナギサさんもそう思うよね?」

 

「えっ、い、いや、僕は流石に混ざれないよ。ユーアさんは学生でもあるから交じっても問題ないだろうけど、僕は部外者だからね。使用人が主人と一緒に食事をするなんてできないよ」

 

「あっ、そういうのは姫様の前じゃ通用しないよ。姫様、主人だとか使用人だとか関係なく、食事はみんなで行うものだって考えてるから」

 

「えっ、そ、そうなの?で、でも……」

 

「多分ナギサさんでも許してはくれないと思うなぁ。それが姫様だから」

 

「そうなんだ。シャルティーナ様は本当にお優しい方なんだね。率先して歓迎会をやろうと提案してきたこともそうだけど」

 

 思わず感心してしまった。本当に、この世界の人はなんて心優しいのだろうか。自然と僕の心が温かくなってくる。

 

「えへへ、でしょ?姫様はとても優しくて素敵な方なの」

 

 そんな僕の言葉を受け、ユーアさんはえへんと胸を張る。きっと、敬愛する自分の主人が褒められたことが嬉しかったのだろう。

 

 僕はそんなユーアさんの姿についほっこりしてしまった。あぁ、この世界に来られて本当に良かった。今僕はとても幸せだ。

 

 それから僕とユーアさんはそれぞれ手分けして歓迎会のための食事の用意を進めるのだった。

 

「うわぁ、やっぱりすごく料理上手だぁ!すごい!」

 

「えっ、そ、そうかな?」

 

 料理している最中、僕はユーアさんから頻りに持て囃されていた。正直、悪い気はしなかった。というか、普通に嬉しかった。



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最後の新入生

「よし、良い感じかな」

 

 そう言って僕はコンロの火を止める。元の世界のガスコンロとは違い、魔力の籠められた石に手をかざすと火の点け消しができる仕様だ。

 

「わあ、美味しそう!やっぱり手際が良いね」

 

 僕の声に反応したユーアさんが隣から手元のフライパンを覗き込んでくる。ユーアさんの瞳がお世辞なんかじゃないと物語っており、僕は照れくささと嬉しさを感じてしまう。まぁ、まだ味を褒められたわけではないけどね。

 

「あはは、ありがとう。んで、そっちはどう?」

 

「あ、うん。色は良い感じ。ちょっと見てくれない?」

 

 そう言われ、僕はユーアさんの手にしたフライパンの中身を覗き込む。今、ユーアさんにはフライドポテトを任せていたのだが、ユーアさんは出来上がっているか否かの見極めに自信がないらしく、こうして何度か僕を頼ってきていた。

 

「フライドポテトなんて普段作らないから、どのタイミングで火を止めて良いか分からないんだよね」

 

 苦笑を浮かべながらそんな言葉を漏らすユーアさん。でも、フライドポテトの調理法なんて単純明快だし、初めてでも作りやすいとは思うんだけど。現に、覗き込んだフライパンの上には良い感じにきつね色に色づいた細長くカットされたジャガイモがホクホクと湯気を立てていた。

 

 正直、ナイスタイミングだと思う。ユーアさんはもっと自分の料理の腕に自信を持つべきだと思ってしまう。

 

「うん、良い感じだよ。グッドタイミング。菜箸で掴んだ感触で分かるんじゃないかな?ほら」

 

「そ、そうなんだけどね。どうしてもこれで良いのかなぁって思っちゃって」

 

「いやいや、不安になる必要なんてないって。もっと自分に自信持ちなよ。ユーアさん、普通に料理上手だよ。僕が保証する」

 

「そ、そう?で、でも、ナギサさんが嘘を吐いてるようにも見えないし……。わ、わたしって、思ったよりお料理できるのかな?」

 

「うん、充分できてる。むしろ、ここまでできるなんて感心しちゃったよ。僕がユーアさんくらいの年の頃は、ほとんど料理なんてできなかったし」

 

 これはお世辞抜きの感想だ。実際、僕が料理を始めたのは、外出の機会が少なくなっていった中学生くらいの時だったので、それまでは料理なんてからっきしだった。だから、まだ幼いユーアさんがここまで料理できることに、僕は少なからず尊敬の念を抱いてしまっていた。

 

 って言うと、"お前何様?"とか言われそうだけどね。それに、流石にユーアさんを子供扱いしすぎかもしれない。

 

「そ、そっか。え、えへへ、ナギサさんに褒められちゃった♪」

 

「あはは、そんなに嬉しかった?でも、お世辞でも何でもないからね」

 

「えへへ、うん。ありがとう、ナギサさん。おかげで少し自信がついたよ」

 

「それは何より。っと、そうだ。ユーアさん、こっちの味見してほしいんだけど、良いかな?」

 

 そう言って僕は自分の手元のフライパンを指差す。ちなみに、先ほどまで僕が作っていたのは茄子の揚げびたしである。こちらも大して難しい料理ではない。素揚げして味付けすれば良いのだから。あっ、もちろん、御嬢様方にお出しする以上、丁寧に作ってはいるけどね。

 

「あ、味見?い、良いの?」

 

「うん。ほら、口開けて。あーん」

 

「へ?え、えっと……、あ、あーん」

 

 僕はフライパンの上の茄子を一切れ菜箸で掴み、充分に熱を冷ましてからユーアさんの口元まで運ぶ。

 

 ユーアさんは一瞬だけ躊躇うような仕草を見せたが、すぐにその小さな口を目いっぱい開いて僕の差し出した成すの揚げびたしを口の中に受け入れてくれた。

 

「んむっ……んんっ……、んんっ!!お、おいひいっ!!」

 

「おっ、そりゃ良かった」

 

「味の濃さも丁度良いし、火の通り具合も最高だよ!すごーい、こんな美味しく作れるものなんだぁ。わたしも、いつかこれくらいできるようになりたいなぁ」

 

「そ、そんなに褒められると照れるなぁ。でも、ユーアさんの腕なら、僕なんてすぐに追い抜かされそうだよ。というか、もう追い抜かれてるかも?」

 

「それはないよ。だってわたし、自分の料理味見しててこんなに感動したことないもん。ふわぁ、もうとっくに飲み込んだのに、お口の中がまだ幸せだよぉ、えへへ」

 

 両頬を手で押さえながら表情を緩ませるユーアさん。僕の料理でここまで喜んでくれるなんて嬉しいな。作ったこっちまで幸せな気持ちになってくる。

 

「これなら、姫様たちもきっと喜んでくれるよ!」

 

「あはは、そうだと良いな。よし、それじゃあそれぞれ器に盛ろうか」

 

「分かったよ。お皿は……うん。これで良いかな。あっ、フライドポテトを盛り付けるお皿にはシート引いた方が良いよね?油がすごいだろうし」

 

「うん、そうだね。唐揚げと同じような感じで盛り付けよう」

 

「オッケー、任せて」

 

 フライドポテトの盛り付けはユーアさんに任せ、僕は茄子の揚げびたしを大皿に盛り付けていく。

 

 そして、手早く茄子の揚げびたしの盛り付けを終え、僕は次にサラダの作成に取り掛かる。とは言っても、既に材料は先ほどユーアさんに全て切ってもらっていたので、後は綺麗に盛り付けるだけの簡単なお仕事だ。

 

「よし、ポテト盛り付け終わったよ」

 

「ありがとう。それじゃあ、一応シートを上から被せておいて」

 

「うん、了解」

 

「さてと、サラダも盛り付け終わったし、あとやることは……っと、グラタンはどんな感じかなぁ……。えっと……」

 

 サラダの盛り付けを終わらせた僕は、キッチン備え付けのオーブンレンジに近寄り、中の様子を覗き込む。現在、オーブンでラザニア風グラタンを焼き上げている最中なのである。

 

「おっ、良い感じに焦げ目がついてるね。なら、そろそろ取り出しても良さそうかなぁ。えっと、ミトンは何処かなぁ……」

 

「あっ、はい、ミトン」

 

「ありがとう、ユーアさん。それじゃ……」

 

 ユーアさんからミトンを受け取った僕は、それを両手に装着してからオーブンを開き、中からグラタンが盛り付けられた容器を取り出す。うん、良い感じに焼き上がっている。見た目良し。

 

「おお、美味しそうだね!」

 

「うん、見た目は良い感じ。あとは味だけど……、まぁ大丈夫かな。何も変なもの入れてないし。この見た目を信じよう。あっ、ユーアさん、ちょっと濡れタオル用意できる?この器を一度冷ましたいんだ」

 

「はいはーい、任せて」

 

 ユーアさんは僕のお願いに一つ頷くと、すぐにタオルを水道で濡らしたものを用意してくれた。準備が早くて助かる。

 

「そしたら、そのタオルを調理台の空きスペースに広げてもらえる?」

 

「うん、分かったよ」

 

「ありがとう、よいしょっと」

 

 僕はユーアさんが広げてくれた濡れタオルの上にグラタンの入ったアツアツの器を乗せる。器の熱を冷ましておかないと、もし御嬢様たちのうちの誰かが器に触れた時大変なことになってしまうからな。その辺りによく気を遣わねばならない。使用人として。

 

「ふぅ、これで粗方用意は終わりかな。っと、丁度ご飯も炊けたみたいだね」

 

「うん、そうだね。じゃあ、そろそろ皆さんの取り皿の用意とか始めようか」

 

「分かった」

 

「んー、良い匂いがする!」

 

 そうして二人して食器棚に足を向けたところで、キッチンの入り口から聞きなれない声が聞こえた。いや、ここにいる人の声は大抵聞きなれないのだけど……。

 

 僕とユーアさんは声の聞こえたキッチン入口へと同時に視線を向ける。すると、そこにいたのは……

 

「ほへ?おお、ホントに男の人がいる!」

 

 そこには、見知らぬ少女の姿があった。頭頂部から三角の耳を生やしているので亜人族なのだろうということは理解できるが、何の種族だろう?犬?狼?それとも狐かな?

 

 そして、彼女も例によって全裸である。ということはつまり、恐らく、彼女が最後の新入生なのだろう。

 

 にしても、僕を目の前にしても彼女は全く動じていない……。恥じらいの感情を一切抱くことなく、彼女はすたすたとこちらに近づいてくる。後ろに見えるふさふさの獣尻尾がぶんぶん揺れている様子からも、全く警戒心を抱かれていないということが理解できた。

 

 元気よく揺れ動くライトブラウンの獣尻尾に視線を向けながら、僕は考えてしまう。是非とも、クッションにさせてほしい、と。あの尻尾を抱きしめたら絶対気持ち良いだろう、と。

 

「あっ、ユーアさん……だっけ?さっきぶり!」

 

「あ、はい、先ほどぶりですね、フィノレア様」

 

 ユーアさんが彼女と挨拶を交わす。なるほど、彼女の名前はフィノレアというらしい。あっ、そういえばさっきのエルフ少女の名前はまだ聞けていなかったな。まぁ、さっきはそれどころじゃなかったし、仕方ないかもしれないけど。後で機会があったら聞いてみよう。というか、ユーアさんなら知っていそうだよな。ユーアさんに聞いてみるのも良いかもしれない。

 

「あはは、様付けはなんかくすぐったいなぁ。別にあたしは御嬢様でも何でもないんだし、気軽にフィノって呼んでくれて良いんだけど」

 

「すみません、そういうわけにもいかなくて……」

 

「まぁ、無理にとは言わないけどね。それで、そっちの男の人は?さっきシャルティーナ姫様から男性の使用人がいるとは聞いたんだけど」

 

 そう言いながら今度は僕に視線を向けてくるフィノレア様。なるほど、シャルティーナ様から事前に僕について聞いていたから、初対面でも彼女は驚かなかったのか。いや、それにしても反応が薄すぎるような……。羞恥心が一切感じられないんだもんなぁ。

 

 もしかして、これって亜人族の特性だったりするのか?てっきりユーアさんは職業上感情をあまり表に出さないよう振舞っているだけかと思っていたが、亜人族って裸を見られても動じない種族なのだろうか?いやでも、さっきユーアさんは僕にお尻をジロジロ見られて恥ずかしがっていたような……?

 

 それか、単純に彼女がまだ羞恥という感情を知らないだけなのか……。まぁ、あまり深く気にすることでもないか。相手が恥ずかしがっていようがいなかろうが、こちらはジロジロ見ないよう気を付けるだけだ。

 

「初めまして。私、エルシャローゼ・ローラント様とアルフィオーネ・ローラント様にお仕えする専属使用人のナギサ・モチヅキと申します」

 

「あっ、エルシャ様とアルフィ様の仕様人さんだったんだ!よろしく!あたしは、フィノレア・ビステルト。ラストネームはあるけど、これでも普通の平民なんだ」



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大きなおっぱいは魅力的

「よろしく!あたしは、フィノレア・ビステルト。ラストネームはあるけど、これでも普通の平民なんだ」

 

 ん?ラストネームがあるけど平民?どういうこと?平民って普通はラストネームを持たない、とかか?今の彼女の言い方的に、多分そういうことなのかな?

 

 ってことは僕、もしかすると事情を知らない人たちからは何処かの貴族化何かと勘違いされていたりするのか?ま、まいったなぁ……。僕もこっちの世界の常識で言うところの平民なんだよねぇ。

 

 よし、ここは一つ、自分でフォローを入れておくことにしよう。

 

「そうなのですね。実は、私も同じです。ラストネームはありますが平民です」

 

「あっ、そうなの?……あれ?案外普通のこと……なのかな?」

 

 僕の言葉を受け、何やら一人で考え込み始めるフィノレア様。僕、もしかして盛大な勘違いをかましてしまった……のか?う、うわ、どうしよう……。勝手に自分一人の判断で突っ走るんじゃなかった……。エルシャローゼ様とアルフィオーネ様に確認すべきだった……。

 

 いや、単なる僕の考えすぎなだけかもしれない。だって、ユーアさんは特に疑問を覚えていないみたいだし。むしろ、納得したような顔をしているし。だから焦るな、落ち着け、僕。

 

「そっか、よろしくね、ナギサくん」

 

「ええ、よろしくお願いいたします、フィノレア様」

 

 まさか歳下に君付けされるとは思っていなかったが、きっと彼女も僕のことは同年代の男子と思っているのだろう。うん、もう慣れた。だからいちいち傷ついたりはしない。……ほんのちょっとだけ心に来るものはあるけど……、それだけだ。

 

「でも、どうしてナギサくんは服着てるの?脱がなくて平気なの?」

 

「ええ、問題ありません。私、これでも成人しておりますので」

 

「あっ、そうだったの!?ってことは、学園生じゃないんだ。まぁでも、何となく他の人たちより大人びた雰囲気持ってるし、なんか納得かも」

 

 あ……、ちょっと嬉しい……。どうやら、分かる人には分かるみたいだ。僕が歴とした大人であることが。

 

「でもその場合、くん付けはまずいかなぁ?」

 

「いえ、お好きに呼んでいただいて構いませんよ」

 

「あっ、そう?それなら、今後もナギサくんって呼ばせてもらうね。そういうわけだし、ナギサくんもあたしのことは気軽にフィノって……」

 

「それはちょっと……できかねます」

 

「ちぇっ、やっぱダメかぁ。知ってたけど」

 

 唇を尖らせながらフィノレア様はそう悪態を吐く。申し訳ないとは思うが、立場上僕は彼女たちに下手に砕けた態度は取れない。ある程度の線引きは必要だろう。

 

 いや、本当にユーアさんがいてくれて良かったと思う。気軽に話せる相手が一人いるだけで全然違うだろうし。

 

 とまぁ、それはそれとして……、先ほどからフィノレア様に視線を向ける度に何となく違和感を覚えてしまっている僕がいるんだよなぁ。なんでだろう?フィノレア様におかしなところは……ないはずだよな?

 

 失礼かもしれないが、今一度彼女の身体を確かめてみよう。まずは頭だが……、獣耳が頭頂部にちょこんと乗っかっている以外は特におかしなところはない。ふさふさの耳やふわふわしてそうな茶髪、そして丸い瞳と、とても可愛らしい印象を与えてくる。うん、別に何も変なところはない。いたって普通の亜人族の少女といった感じだろう。

 

 次に、僕は少し視線を下に下げる。すると、僕の視界には彼女の剥き出しの胸部が映る。白くてつやつやしていて、一目見て健康的であることが伺える。そして、肉感的な胸部の二つの膨らみ……膨らみ?

 

 あっ、そういうことか!違和感の正体はその胸だ!彼女は幼いながらも、何故か立派に実った乳房を携えていたのだ。

 

「ほへぇ……」

 

 僕は思わずそんな感嘆の息を漏らしてしまう。まさか、幼いのにこんなに発育の良い子がいるとは……。僕が小学生だった頃にも、彼女ほど発育の良い子はいなかったと思う。

 

 確かに、小学校高学年にもなれば、少しずつ身体つきが大人の女性に近づき始める頃だとは思うが、それでもごくわずかな変化しか見られないだろう。

 

 でも、フィノレア様のそれは明らかに子供の域を超えている。少し身じろいだり呼吸をするだけでプルプルと小さく揺れるその二つの果実は、ひょっとしたら成熟しきった大人の女性にすら引けを取らないように思える。彼女のおっぱいは、それほどまでの重量感を誇っていた。

 

 だが、彼女のおっぱいはそれだけでなく、若さを象徴するように重力に逆らってしっかりと前に突き出ていた。そして、その先端に鎮座する乳首は、他の人たちと同じように無垢な薄桃色をしていた。乳首や乳輪の大きさも、乳房のサイズに対して少し小さめだったが、他の人たちに比べるとやはり大きい。

 

 幼い顔立ちやまだまだ低い背丈に不釣り合いな巨乳……。このアンバランスさは、その手の人たちには相当喜ばれるんだろうなぁ。性的な意味で……。

 

 しかし……、これまでは大きなおっぱい=大人の女性というイメージしかなかったから、大きなおっぱいを見たいと思うことはなかったけど、相手が僕よりも小さい子のものだったら全然不快感なく見ることができるな。っと、いかんいかん。ジロジロ見るのはダメだ。

 

「ん?どうかしたの?ナギサくん」

 

「いえ、何でもございませんよ」

 

「そう?それなら良いけど、にしても、さっきからすごく良い匂いがしてるね。シャルティーナ姫様が今日は御馳走だって言ってたからテンション上がってたんだけど、この匂い嗅いでさらにテンション上がっちゃった!」

 

 そう言いながらぴょんぴょんと跳ね全身で喜びを体現するフィノレア様。彼女が跳ねる度にその大きな二つの膨らみもブルンブルンと激しく揺れ、自然と僕の視線を引き付ける。これは、ロリコンじゃなくても見ちゃうって……。

 

 でも、何とか必死で首を持ち上げ、下に向こうとする視線を上に引き上げる。こ、これがおっぱいの魅力か……、知らなかった……。けど、僕は屈しないぞ。

 

「……」

 

 隣からユーアさんが冷ややかな視線を向けてきているような気がしたが、気のせいだと思いたい……。いや、それは無理な話か……。そうだよね、気づかれてるよね……。僕がフィノレア様のおっぱいに視線を向けていたことなんて……。

 

「あとどれくらいでできるの?」

 

「もうほとんど完成しておりますよ。あとは運ぶだけです」

 

「あっ、そうなんだ。じゃあじゃあ、あたし手伝う!良いよね?」

 

「え、で、ですが……」

 

「ダメ……?」

 

 彼女の懇願するような瞳を受け、僕は思わずドキッとさせられてしまう。この上目遣い、正直すごく可愛い。

 

 そしてそれと同時に、彼女の申し出を断るのが申し訳なく感じてくる……。そんな悲しそうな瞳で懇願されたら、立場がどうのこうのという理由で断るのが憚られるなぁ……。どうしようか……。

 

 うーん、まぁ良いか。あんまり重いものさえ持たせなければ問題ないだろう。せっかくの彼女の申し出を無下にするより全然マシだ。

 

「では、これを向こうのテーブルまで持って行っていただけますか?」

 

 そう言って僕は、比較的軽めのもの……サラダの入った皿をフィノレア様に託す。これならば誰にも咎められまい。ユーアさんも特に何も言ってこないしね。

 

「はーい!お任せあれー!」

 

 そう言うとフィノレア様はすたすたと軽い歩調でキッチンから出ていった。そうしてこの場に残ったのは僕とユーアさんの二人。

 

「ナギサさんのえっち……」

 

「うぐっ……、やっぱり気づかれてた……?」

 

「そりゃそうだよ。あんなあからさまに視線向けてたら誰だって気づくよ」

 

「……すみません……」

 

 ユーアさんに責められ、僕は素直に謝罪の言葉を口にした。いやまぁ、この場合謝罪する相手はユーアさんではなくフィノレア様なのだろうが。

 

「ったく……。……確かにフィノレア様はおっぱいが大きいけどさ……。というか……、羨ましいなぁ……おっぱいあるなんて……。わたし……皆さんより年上なのにスカスカだし……、はぁ……」

 

 彼女は小さくそうぼやく。何というか、反応に困る。どう声をかけてあげれば良いのか分からない。女の子の身体の悩みって難しい……。

 

「え、えっと、だ、大丈夫だよ。ユーアさんももう少ししたら大きくなるって。僕とは違って、まだまだ成長するはずだよ」

 

 うーん、ちょっと無責任な言い草だったかな?でも、今かけてあげられる言葉なんてこれくらいしか思いつかなかったし……。

 

「って、聞こえてた!?……なんで肝心な時は鈍いのにこういう時だけ……」

 

「か、肝心な時?鈍い?僕、何かまずいことしてた!?」

 

「し、知らないっ!ほ、ほら、さっさとお料理運んじゃうよ。姫様方を待たせるなんて使用人失格だからね」

 

「あ、う、うん。分かった……?」

 

 何か腑に落ちないが、ユーアさんの言う通り人を待たせるのは使用人としてあるまじきことなのは確かなので、僕は彼女の言葉に従い、料理が盛り付けられた皿を迅速に皆様の待つダイニングへと運ぶ。

 

 そうして僕とユーアさんの二人でせっせと皿を運び、ものの数分で食事の準備が整った。ダイニングに設置された広めの丸テーブルの上に並べられた料理をざっと眺めながら、僕は満足感を覚えていた。

 

「まあ、素晴らしいですわ!」

 

「ええ、そうね。すごい御馳走よ」

 

 人間族国と魔族国のお姫様二人がそんな感嘆の声を漏らす。その反応だけで嬉しいと感じてしまう。

 

 しかし、どうして誰も席に着かないのだろう?全員、何かを待っているような感じだ。うーん、これから何かあるのかな?

 

 それと、丸テーブルの周囲に置かれた8つの席が気になる。背もたれのところに1~8の数字が書かれた紙が貼られているのだ。

 

 もしかすると、今からくじか何かで全員の席を決めるのかもしれないな。席に貼られた番号は恐らくそのためのものだろう。

 

「こほん、それでは今から一人ずつくじを引いてもらいますわ」

 

 などと考えていると、シャルティーナ様が一つ咳ばらいをした後、高らかにそう宣言した。



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ユニット内歓迎会開始。自己紹介前編

「こほん、それでは今から一人ずつくじを引いてもらいますわ」

 

 あっ、僕の予想は当たっていたようだ。にしてもシャルティーナ様、準備が良いな。何時の間にくじとか用意していたのだろう。

 

「それじゃあ皆さん、並んでくださいまし」

 

 シャルティーナ様の指示のもと、御嬢様方が列をなす。そして、一人ずつ袋に入ったくじを1枚引く。

 

「アタシは……、3番ね」

 

「あっ、私4番です。ラトナータ様のお隣ですね」

 

「あら、そう。嬉しいわ」

 

「はい、私もです」

 

 最初にくじを引いたラトナータ様とエルシャローゼ様が仲睦まじ気に話をしながらくじに書かれた番号の席に向かっていく。

 

「よいしょっ!……っと、8番だね」

 

「私は……、1番ですね」

 

「ってことはあたし、アルフィ様の隣?」

 

「はい、そういうことになりますね。よろしくお願いしますね、フィノレアさん。いろいろお話しできると嬉しいです」

 

「うん!……じゃなくて、はい!こちらこそよろしくです!」

 

「ふふっ、敬語じゃなくて構いませんよ。同級生なのですし」

 

「あ、そう?助かるよぉ」

 

 次いで、アルフィオーネ様とフィノレア様が並んで席に向かう。こういう和気藹々とした雰囲気、とても和む。

 

「ワ、ワタシは……、6番……です……」

 

 続いて、名前の分からないエルフ少女がおどおどしながらくじを引いた。あっ、そういえば、彼女の名前をユーアさんに聞くの忘れてたなぁ。まぁ、さっきはそれどころじゃなかったし仕方ない。

 

 そうしてエルフ少女も書かれた番号通りの席へと向かっていく。時折チラチラとこちらを伺ってきていたな。やはり、先ほどのことを気にしているのだろう。何処となく恥ずかしそうだ。

 

「ほら、次はユーアよ」

 

「はい、姫様」

 

 そう言いながらユーアさんがシャルティーナ様のもとに歩み寄り、彼女の手にした袋から1枚くじを引いた。

 

「わたしは……、2番です」

 

「ということは、ラトナータとアルフィオーネの間ね」

 

「そのようですね」

 

 そう言うとユーアさんは指定された席に近づいていく。

 

「お隣、失礼します」

 

「あら、ユーアが隣なのね。ふふっ、久々にいろいろお話しましょう」

 

「私も、ユーアさんとお話したいです」

 

「はい。皆様、よろしくお願いいたしますね」

 

 アルフィオーネ様とラトナータ様に挟まれながら、ユーアさんはにこやかに言葉を返していた。同年代の同性と身体を隣り合わせて話すことができるのが嬉しいのか、ユーアさんの猫耳は忙しなくぴょこぴょこ跳ねまわっている。可愛い。

 

「さて、あとはナギサさんだけですわ」

 

 席に着いて談笑する御嬢様方に視線を向けながら一人和んでいると、シャルティーナ様が僕の名前を呼んだ。そっか、8席あるということは僕もあの輪の中に混ざるってことなのか。

 

 そういえばさっきユーアさんも、シャルティーナ様は使用人とか関係なく全員で食卓を囲まないと気が済まない方だと言っていたな。

 

「えっと、一応確認なのですが、私も一緒で大丈夫なのですか?」

 

「ええ、もちろんですわ」

 

「ありがとうございます。では、失礼して……」

 

 僕はシャルティーナ様に一言感謝の言葉を述べてから、彼女の持つくじの入った袋に手を伸ばした。そして、中から紙切れを1枚抜き取る。とは言っても、中に残っていたのは僕とシャルティーナ様分の2枚だけだったのだけど。

 

 今空いている席は5番と7番か。というか、あのエルフの子の両サイドじゃないか。ということは、必然的に僕は彼女の隣ということになるわけか。この機会に彼女ともお話ができると良いな。

 

 そう思いながら僕は掴んだ紙切れに視線を落とし、そこに書かれた番号を確認する。5番であればエルシャローゼ様、7番であればフィノレア様と隣り合わせになる。まぁ、特にどっちが良いという希望はない。どちらでも嬉しい。

 

「あ、私は5番ですね」

 

「では、私は7番ということですわね」

 

 僕とシャルティーナ様はお互いに自分の番号を確認し合うと、それぞれ席に向かう。

 

「失礼いたします」

 

「ふ、ふーん、ナギサが隣なのね」

 

「はい、エルシャローゼ様」

 

「あ、あの、よ、よろしくお願い……します……」

 

「あ、はい。よろしくお願いいたしますね」

 

 僕は自分の席の隣のエルシャローゼ様とエルフ少女にそれぞれ挨拶を交わし、それから静かに着席した。と、その時、僕の真正面に座るアルフィオーネ様と視線が重なった。

 

「あっ……、えへっ……」

 

 すると、アルフィオーネ様は僕に向かって可憐な笑顔を向けてくれる。僕はその笑顔に一瞬見とれてしまった。

 

「こほん、それでは、これより歓迎会を始めたいと思います」

 

 だが、シャルティーナ様のそんな掛け声で僕は現実に引き戻された。もし、あのままアルフィオーネ様の笑顔に視線を奪われ続けていたら、僕はどうなっていただろうか。

 

 危ない扉を開きかけてしまったかもしれない。シャルティーナ様に感謝しないとな。現実に引き戻していただいてありがとうございます。

 

「では早速、一人ずつ自己紹介をしていきましょう。では、僭越ながらまずは私から……。皆さんご存じかとは思いますが、私はアルテロア王国第3王女、シャルティーナ・アルテロアと申します。現在、第2学年です。皆さんの一つ上ですわね。何か困り事がありましたら何でも聞いてください。できる限りお力添えしたく思っております」

 

 そう言ってぺこりと綺麗な所作でお辞儀をするシャルティーナ様。そんな彼女に、他のメンバーたちから拍手が浴びせられる。全員からの拍手を受けて、彼女は何処となく照れくさそうにはにかみながら、お辞儀をしたことで少しだけ乱れてしまった金髪を片手でさっと直していた。

 

「ありがとうございます。あっ、それと、一応このユニットのユニット長も務めておりますわ。それでは、改めてよろしくお願いいたしますね」

 

 それからシャルティーナ様はもう一度お辞儀をした後、静かに自分の席に着席した。やはり王女様というだけあって、こういう挨拶は手慣れているのだろうか?

 

「それでは、次に参りましょう。そうですわねぇ……、やはりここは在校生からが良いですわね。じゃあ、ユーア。次は貴女よ」

 

「畏まりました、姫様」

 

 シャルティーナ様から指名され、黒髪猫耳メイドことユーアさんはすっくと座っていた席から立ちあがる。それから居住まいを正し、全員に向き直る。

 

「わたしは、シャルティーナ様に仕える使用人のユーアと申します。ここにいる間は、皆様方のお世話もさせていただきますので、お困りのことが有れば何なりとお申し付けくださいませ」

 

「ちなみに、ユーアは第3学年よ。この中では最高学年生ってことになるわね」

 

「学園のことについても、何かありましたらお声かけください。それでは、改めてよろしくお願いいたします」

 

 そう言ってこちらも実に丁寧な所作で頭を下げ、それから席に座り直す。うん、メイドモードの彼女と僕と話す時の彼女の雰囲気は全然違うね。当たり前だけど。

 

 恐らく、ユーアさんからすれば僕も同じように映っているのだろう。

 

「ありがとう、ユーア。それじゃあ次は新入生の番ね。番号順に自己紹介してもらいましょう。というわけで、最初はアルフィオーネね」

 

 シャルティーナ様はそう言いながらアルフィオーネ様に視線を向ける。アルフィオーネ様はシャルティーナ様に一つ頷き返し、それからゆっくりと席から立ち上がった。

 

「改めて、皆様ごきげんよう。私は、アルテロア王国第Ⅰ貴族ローラント家次女、アルフィオーネ・ローラントです。これからよろしくお願いいたします。できれば、気兼ねなくアルフィと呼んでいただけると嬉しいです」

 

 そう言ってにこりと微笑む我が主人、アルフィオーネ様。その言葉には、変に遠慮する必要はないというアルフィオーネ様の思いが込められていた。

 

 彼女としては、身分とか関係なく全員と仲良くしたいのだろう。それは他の人たちも同じようで、アルフィオーネ様の言葉に皆一様に頷き返していた。

 

「次はアタシね。もう既に皆さんとは一度お話してるけど改めて。アタシはフォルレット王国第4王女、ラトナータ・フォルレットよ」

 

 アルフィオーネ様の次は、魔族国王女にして吸血鬼の少女、ラトナータ様が自己紹介を行う。ラトナータ様は、言葉は端的だけど表情がとても人懐っこいので、冷たい印象は抱かせない。

 

 そういえば、吸血鬼ということは、やはり人間の血液も飲んだりするのだろうか?それとも、何かしら代用品が存在するのかな?赤毛の吸血姫様を見ながら、僕はふとそんな疑問を抱いていた。

 

「一応王女という身分だけれど、そういうの気にせず気軽に接してほしいわ。そういうわけで、どうぞよろしくね。……さてと、次はエルシャね」

 

「はい」

 

 ラトナータ様は自己紹介を終えると、隣に座るエルシャローゼ様に一言声をかける。エルシャローゼ様はラトナータ様の言葉に一つ頷くと、さっと席から立ち上がり他のメンバーたちをぐるりと一瞥する。

 

「ごきげんよう。先ほど挨拶をしたアルフィオーネの双子の姉のエルシャローゼ・ローランとと申します。私のことも、気軽にエルシャと呼んでいただけると嬉しいです。妹共々、これからよろしくお願いいたしますね」

 

 それからエルシャローゼ様は、ふわりと優しく微笑みながらそう名乗る。普段はとても強気な方だけど、こういう場では落ち着いた印象を与えてくる。オンとオフの切り替えがしっかりしている辺り、やはり流石と言う外ない。

 

 そうしてエルシャローゼ様は静かに着席した。次の自己紹介は僕……で良いのだろうか?それとも、あくまでこれは学生たちの交友の場だから、僕は下手に出しゃばらない方が良いだろうか?

 

 ひとまず、シャルティーナ様の言葉を待ってみよう。

 

「え、えっと、次は……」

 

「ナギサじゃないの?」

 

 僕の両サイドの二人が困惑の表情を浮かべながら僕とシャルティーナ様を交互に見やる。そんな彼女たちに対し、シャルティーナ様が口を開く。

 

「いえ、ナギサさんは最後にしましょう」

 

 僕の自己紹介は最後らしい。まぁ、おまけ的な感じだろう。僕は首を縦に振って了承の意をシャルティーナ様に伝えた。



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ユニット内歓迎会開始。自己紹介後編

「ということは、次はワタシ……ですよね……?」

 

「ええ」

 

 というわけで、次は緑髪のエルフ少女が自己紹介する番となった。シャルティーナ様に促され、彼女は少し緊張した面持ちで席から立ち上がる。結構恥ずかしがり屋な性格なのかもしれない。

 

「み、皆さま、初めまして……。ワ、ワタシは、リレイナ・アルヴィレントと申します……。そ、その、極度の人見知りで、最初の内はあまり上手くお話しできないかもしれませんが、慣れてくれば普通にお話できるようになると思うので、その……仲良くしていただけると……嬉しいです……」

 

 もじもじしながらではあったが、彼女は自己紹介を終えてぺこりと頭を下げた。そんな彼女の自己紹介に、他のメンバーたちはパチパチと大きな拍手を送る。彼女は恥ずかしそうに頬を紅潮させながらも、何処となく嬉しそうな表情を浮かべていた。エルフ特有の長い耳も心無しぴくぴくと動いているように見えた。

 

 それはそうと、彼女の名前はリレイナというらしい。これで皆さんの名前を一通り知ることができた。

 

 彼女もラストネームは持っているようだったが、この方は貴族の方なのかな?それともフィノレア様のような平民の方なのかな?僕には知る由もないな。

 

「リレイナさん、ありがとうございます。それじゃあ、次はフィノレアさんね」

 

「はーい。よいしょっと」

 

 リレイナ様の自己紹介が終わると、シャルティーナ様は次にフィノレア様を指名する。僕を除いてまだ自己紹介を済ませていないのは彼女だけだしね。

 

 フィノレア様は元気よく席から立ち上がると、ニコニコと満面の笑みを湛えて席に座っている他のメンバーたちを見据える。

 

「フィノレア・ビステルトです!見ての通り狐族です。ここにいる人たちみんな、すごく身分の高い方ばっかりで最初はびっくりしていたんですけど、話してみたら皆さんとても優しい人たちで、今すごく安心してます、えへへ。今後とも仲良くしてください!よろしくお願いしまーす!」

 

 そう言うとフィノレア様も他の人たちと同じようにぺこっとお辞儀をしてみせた。快活な印象の彼女だが、お辞儀はとても丁寧で綺麗だった。それこそ、貴族である御嬢様方にも見劣りしないくらいに。平民でもこれくらいできて当然なのかな?

 

 というか、身分の高い方ばかりということは、やはりリレイナ様も貴族の御息女なのだろうか?

 

 などと僕が一人そんなことを考えていると、周りの方々がざわついていらっしゃることに遅れて気づいた。一体何事かと思い、僕は彼女たちの視線の先を辿る。

 

 するとそこには、頭を下げたことで重力に引っ張られ下に垂れるフィノレア様の二つのおっぱいがあった。うわっ、すごっ……。重力の所為で元々深かった谷間がさらに強調されてる……。

 

 それが無防備にプルンプルンと揺れる様は、何というか……圧巻だった。こりゃ確かに視線集めるわな。かなりの存在感だもんなぁ。

 

「な、何よアレ……。ホント、でかすぎでしょ……」

 

「あのボリューム、すごいわね……」

 

「お、大きい……です……」

 

「そ、そうですわね……。と、年下……なのよね……?」

 

「う、羨ましいです……。私もあれだけ大きければ……もっと……」

 

 などと口々に呟く女性陣。全員、あの大きな胸の前に圧倒されてしまっているようだった。そして、彼女たちの瞳は羨望の色で染まっていた。彼女たちぐらいの年でも、やはりスタイルというのは気になるものなのだろうか?ユーアさんも、先ほどキッチンでいろいろ言っていたし。

 

 でもまぁ、あのおっぱいを見せつけられれば誰だって羨ましさを覚えてしまうものなのかもしれないな。他の方々と彼女では、サイズ感の差が一目瞭然だし……、ないものを欲しがるのが人間ってものだろうからね。

 

 でもきっと、皆さん全員望みはあると思う。確かに、まだまだ肉付きは薄いかもしれないが、決して全くないというわけでもないのだ。ほんの少しとはいえ、彼女たちにも膨らみは認められる。特にシャルティーナ様とラトナータ様はきっと将来有望だろう。

 

 それに、おっぱいが大きいのがすべてというわけでもないだろう。スレンダーな体型と言うのも、それはそれで一つのスタイルの良さだと僕は思う。とにかく言えることは、ここにいる方々はきっと、将来は絶世の美女に成長されること間違いなし、ということだ。

 

 まだ幼いとはいえ、そんな方々の裸体を間近で見てしまっていることに、改めて罪悪感を覚えてしまう。精々罰が当たらないよう気をつけないとな。

 

「あれ?どうしたんですか?あたしのことそんなに見て……」

 

 などと考えている間にフィノレア様は頭を上げていたようで、他のメンバーたちからの視線に戸惑いの表情を浮かべてしまっていた。

 

「い、いえ、何でもないですわ……。そ、その……、スタイルがとてもよろしくて、少し見とれてしまっていただけですわ……」

 

 シャルティーナ様が即座にフォローの言葉を入れる。その声は何処となく切な気だった。年下の女の子にスタイルで圧倒されたのがよほどショックだったのだろう。

 

「えー、あたし、スタイルよくないですよー?回りに比べて胸だけ大きくなっちゃったし……。村の友達からは時々からかわれちゃうし……」

 

 そう言いながら自分の両乳房をその小さな掌で弄ぶフィノレア様。彼女が手を動かすたびに、二つの乳肉がぐにぐにと形を変える。見ているだけで、そのおっぱいがどれだけ柔らかいのか理解できる。

 

 とまぁ、そんな感想はさておき、フィノレア様はフィノレア様で自分の身体にコンプレックスを感じてしまっているようだ。まぁ、こういう悩みを持っているのも当然のことかもしれないな。周囲とは違うから変に目立ってしまう。それが彼女にとってストレスになってしまっているのだろう。

 

「あっ、その、ごめんなさい。からかっているわけじゃないんです。むしろ、非常に羨ましいと言いますか何と言いますか……」

 

 シャルティーナ様も、フィノレア様が少し気落ちしてしまった様子から彼女のコンプレックスに触れてしまったのだと察し、すぐに謝罪の言葉を述べていた。

 

「あっ、いえ、平気です。でも、これが羨ましいってどういうことですか?ただただ重くて邪魔なだけですよ……?」

 

 シャルティーナ様の言葉に、フィノレア様はよく分からないと言うように首をかしげていた。まぁ確かに、あれだけ大きいと動く時とかちょっと邪魔にはなりそうだよな。男は喜ぶけど、実際問題女性からすればデメリットの方が多いということだろう。現実を知る女性の意見なんてそんなものなのかもしれないな。

 

「で、ですがやはり、胸が大きいというのは女性としての魅力を引き上げてくれますし。そ、そうですわよね、皆さん?」

 

 そう言って他の人たちに同意を求めるシャルティーナ様。そんな彼女の言葉に、他の人たちは総じてコクコクと首を縦に振っていた。

 

「そ、そういうものなんですかね?」

 

「ええ、きっとそうですよ。だから、フィノレアさんはもっと自信を持って良いと思います」

 

「あ、あはは、ありがとう。なんか、少しだけ自信がついた気がする」

 

「それなら良かったです」

 

 アルフィオーネ様の一言に元気づけられたようで、フィノレア様は先ほどまでの調子を取り戻し、ニコニコと眩しいくらいの笑みを浮かべてアルフィオーネ様にお礼を言っていた。

 

「まぁ、そういうわけで、これからよろしくお願いします!」

 

「はい、よろしくお願いいたします、フィノレアさん。それじゃあ、最後は……」

 

 そうしてフィノレア様も自己紹介を済ませ、自分の席に座り直した。それから、シャルティーナ様の視線がこちらに向く。フィノレア様が自己紹介を終えたということはつまり、あと自己紹介をしていないのは僕だけということになる。

 

 僕はシャルティーナ様の視線に答えるように頷き、それから静かに座っていた席から立ち上がり、居住まいを正して皆さんの方へと向き直る。

 

「最後は私ですね。皆様方には既にご挨拶をさせていただいておりますが、改めて自己紹介をさせていただきますね。私は、こちらにいらっしゃるエルシャローゼ様とアルフィオーネ様の専属使用人を務めさせていただいております、ナギサ・モチヅキと申します」

 

 そう言ってまずは一礼。それから再び口を開く。

 

「見ての通り、私は男です。そして、皆さまとは異なり、成人しております。また、私はつい先日使用人になったばかりでまだまだ至らぬ点も多々あるとは思いますが、皆様が快適な生活を送れるよう全力を尽くす所存ですので、どうぞよろしくお願いいたします」

 

 そうして僕は今一度頭を下げた。一応、伝えるべきことは全て伝えられたと思う。こういう自己紹介はあまり得意ではないけど、それにしては上手くできたのではなかろうか。

 

「ナギサってば、そんなに固くならなくて良いのよ。もう少し肩の力を抜いたらどう?そんなんじゃ、すぐに疲れてしまうわよ」

 

 と思ったら、エルシャローゼ様がそんなことを言ってくる。自分では上出来と思っていたけど、周りから見たら少し要らぬ力が入っているように見えてしまっていたのだろうか?緊張していることを勘づかれてしまったかな。

 

「も、申し訳ございません。なかなか慣れないものでして……。と、とにかく、何かお困りごとなどあればお気軽にお申し付けください。男の私ではお力になれることは少ないかもしれませんが」

 

 苦笑しつつ、僕はそう言った。事実、僕のような男よりも、同性であるユーアさんの方が気持ち的に頼りやすいはずである。年頃の女性なら特にそうだろう。そのため、基本的に今後の彼女たちとの関わりはあまりないと考えられる。

 

「いえいえ、男性がいてくださるだけでとても心強いですわ。頼りにしております。今後ともよろしくお願いいたしますね、ナギサさん」

 

「そうね。女だけだといろいろ大変なこともあるだろうし、男性がいてくれるだけですごく頼もしいわ。というわけだから、よろしく、ナギサ」

 

 だが、二人の王女様から返ってきた反応は、僕が思っていたものとは違っていた。まさか、頼りにしているとまで言われるとは……。でも、考えてみればそうかもしれない。男がいるのといないのとでは、力仕事などでかかる負担に大きな差が生まれてしまうだろう。そう言う意味では、確かに男は頼りになる存在かもしれない。

 

 幸い、僕は力はそれなりにある。というか、転生してから何故か筋力とか体力が増えたのだ。転生する際に、少しだけ僕の肉体に変化が生じてしまったのだろうか?それなら、できれば身長を伸ばしてほしかったのだが……。

 

 それか、もう一つ考えられることとしたら、前世で散々身体に暴行を加えられてきたのが功を奏し、ここにきて急激に身体が丈夫になったのか、だが……。その場合、僕からすれば不本意でしかないよなぁ。

 

 まぁ、今はそんなことはどうでも良いか。とにかく、僕は思ったより彼女たちから頼りにされているようだし、これからさらに気合を入れて業務に取り組まなければならないな。彼女たちに期待されていることで、俄然やる気が湧いてきた。

 

「はい、よろしくお願いいたします」

 

 彼女たちの期待にしっかり答えられるよう、これから精いっぱい頑張ろう。心の中でそう新たに決意し、僕は裸の少女たちに今一度頭を下げたのだった。



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歓迎会とその後

 そうして無事に僕の自己紹介も終わり、賑やかな食事タイムへと移行した。種族とか身分とかそういうものは関係なく、皆分け隔てなく楽しく会話を交わしながら、テーブルの上に並べられた僕とユーアさん特製の料理たちに手をつけていく。

 

 皆一様に満面の笑みを浮かべ、食事を口に運びながら近くの席の人たちと会話に花を咲かせている。その様子がとても暖かくて、僕の表情も自然と綻んでしまう。

 

「あ、あの、ナ、ナギサさん……」

 

 すると、不意に隣からそう名前を呼ばれた。見ると、リレイナ様がじっと僕の方へ視線を向けてきていた。僕は首をかしげながら、彼女に応じる。

 

「はい、どうかなさいましたか?」

 

「そ、その、改めてお礼が言いたくて……」

 

「お礼……ですか?」

 

 はて?お礼とな?僕、彼女にお礼を言われるようなことしたっけ?などと頭の中でぐるぐると思考を巡らせていると、リレイナ様が再び口を開く。

 

「お、お風呂でのことです……」

 

「お、お風呂……!?お風呂って何!?」

 

 リレイナ様の言葉に僕が反応する前に、何故かエルシャローゼ様が過剰に反応していた。何か引っかかることでもあったのだろうか?

 

 それはそうと、お風呂でのことって、もしかして彼女が足を滑らせてしまった時の事か?確か、もう既にお礼はいただいていたような気がするのだけど……。

 

「転びそうになってしまったワタシを助けていただき、ほ、本当にありがとうございました。おかげで、怪我をせずに済みました」

 

「あっ、いえ、お礼を言われるようなことではありませんよ。とにかく、リレイナ様が御無事で何よりです」

 

「は、はぅ……。そ、その……、あの時のナギサさん……、と、とても……格好良かった……です……」

 

 顔を耳まで真っ赤にさせながら、リレイナ様がもじもじと身体をくねらせそんなことを言ってくる。ストレートに格好良いとか言われるのって、何だか非常にくすぐったい。でも、今まで可愛いと言われたことはあっても格好良いと言われたことがなかった僕にとっては、正直最高の褒め言葉でもあった。

 

「そ、そう言われると何だか照れてしまいますね……。ですが、咄嗟の行動だったのであまり格好の良いものではなかったかと」

 

 でも、結局照れが勝ってしまい、僕は素直に喜びの感情を表現できなかった。自分に自信がない証拠だな。人にはもっと自信持つべきとか言っておきながら、当の本人が自信なさ気というのは何とも説得力がない。

 

「そ、そんなことないです……!ワ、ワタシ、思わずその……ド、ドキドキ……してしまいました……」

 

 上目遣いでそんなことを言ってくるエルフ少女リレイナ様。なんだ、この生き物……。滅茶苦茶可愛いじゃないか……。何というかこう、ぎゅっと抱きしめたい可愛さを彼女は持っている気がする。

 

 が、もちろんここは我慢だ。こんなところで急に抱きついたりすれば、一瞬で犯罪案件だ。異世界に転生してきて早々犯罪者に成り下がるのは御免だからね。

 

「えっと、この場合……、ありがとうございます……で、良いんでしょうか?」

 

「わ、分からないです……。あ、あの、こ、こんなこと言われて、もしかして迷惑……でしたか……?」

 

「あっ、いえいえ、そんなことありませんよ。あまりそういうことを言われた経験がなかったので少し驚きはしましたが、とても嬉しいお言葉でしたよ」

 

「あ……、よ、良かった……です……」

 

 さっきからリレイナ様の反応が、まるで恋する乙女みたいな反応なのは気のせいだろうか?いやいや、まさか……。だって、リレイナ様とは今日初めて会ったのだ。恐らく、年上への憧れ的な何かなのだろう。

 

「も、もしかして……、二人は……その……い、一緒にお風呂に入ったのかしら……?い、何時の間にそんなこと……」

 

 すると、横からエルシャローゼ様がそんな質問をしてくる。あー、なるほど。そういう勘違いをしてしまっていたわけか。ここはちゃんと訂正しておかないとな。

 

「いえ、そういうわけではございませんよ。えっと、先ほど私とユーアさんの二人で浴室の清掃を行っていたのですが……」

 

「その、お掃除中にワタシがお風呂に入ってしまったんです……。そ、それで、慌てて出ていこうとした時に足を滑らせてしまって……」

 

「あ、なるほど。そ、そういうことだったのね……。それでリレイナさんは転びそうになったところをナギサに助けられた、というわけね」

 

「は、はい、そういうことになります……」

 

 エルシャローゼ様の言葉に、リレイナ様は恥ずかしそうにしながら頷く。すると、エルシャローゼ様は何処となく誇らし気に胸を張られていた。

 

「ま、まぁ、うちの執事は優秀だからね。それくらいできて当然よね」

 

「そ、そんなに格好良かったのですか?」

 

 さらに、シャルティーナ様まで話に加わってくる。そ、そんな大事にするようなことでもないと思うのだけど……。は、恥ずかしいなぁ……、こういうの。

 

「ええ、姫様。先ほどの彼はとても素敵でした。まるでナイトのようでした」

 

 と思ったら、ユーアさんまで便乗してきてしまった。恐らく彼女に関しては、僕が恥ずかしがっているのを知っていながら便乗してきたに違いない。どうやら彼女は僕をからかうのが好きなようだからね。

 

「まあ、それは確かにすてきですわね」

 

「流石です、ナギサさん」

 

 シャルティーナ様とアルフィオーネ様がうっとりとした目で僕のことを見てきていた。そ、そこまで持て囃されるようなことじゃないんだってば……。そんな憧れの眼差しを向けるのは止めてくれ……!

 

「ふふっ、すごい人気ね」

 

 御嬢様方の賑やかな声の中で、ラトナータ様のそんな呟きが微かにではあるが聞こえてきた。こ、これを果たして人気といえるのかは分からないけど、まぁ少なくとも嫌われているというわけじゃなさそうだしまぁ良いか。

 

「はむっ、もぐっ、んんっ!どれもすごく美味しい♪」

 

 ただその中で、フィノレア様だけはひたすら我が道を進んでいたのだった。

 

    *

 

 そうして無事?に歓迎会も終わり、御嬢様方は揃って入浴に向かわれた。その間に僕は食事の後片付けを行う。

 

 ちなみに、ユーアさんには御嬢様方と一緒に入浴に行ってもらった。彼女もきっと同年代の女の子ともっとお話がしたいだろうと考えたためである。これくらいの洗い物なら一人でも苦じゃないしね。

 

 そして僕は食器の後片付けを速やかに終わらせ、それから明日の朝食の仕込みも行う。大人数の食事を用意する経験はあまりなかったので使用人として御嬢様方の食事を用意するまでは分からなかったのだが、正直かなり時間がかかる。

 

 夕食の準備ならそれなりに余裕をもって行うこともできるだろうが、朝食となるとそう言うわけにもいかないだろう。特に学園がある日なんかは、ユーアさんも自分の準備に少し時間がかかってしまうだろうし。それならば、前日の内に仕込みだけでも済ませておくべきだろうと考えたのだ。

 

「うん、こんなものかな……」

 

「お風呂、いただきました」

 

「ふぅ、気持ち良かったぁ」

 

「ナギサさん、次どうぞ」

 

 そして、僕が明日の朝食の仕込みが終えた頃、御嬢様方が入浴を終えて共有スペースに戻ってきた。

 

「あ、はい。分かりました」

 

 僕はキッチンから顔を覗かせつつ、彼女たちにそう返事をする。すると当然、彼女たちの姿が視界に飛び込んでくるわけで……

 

 彼女たちは先ほどと変わらず全裸だった。まぁ、そうだよね。知ってた。

 

 風呂上りということもあり、彼女たちの肌はほんのり桃色に染まっていた。髪の毛はほとんど乾かされているが、毛先の方がまだ少しだけ濡れている方もいるようで、その火照った顔や身体に貼りついてしまっている。少し色っぽい。子供だけど。

 

 けど、それ以上に気になることが有る。

 

「あの、寝る時も恰好はそのまま……なのでしょうか?」

 

 僕は思わずそう質問してしまう。寝る時まで全裸のままでは、もしかしたら身体が冷えてしまうのではないかという心配が僕の中にあったのだ。

 

「あっ、そういえばそうよね。あんまり気にしてなかったけど、その辺りどうなの?シャルティーナ姉様」

 

 僕の質問を聞いて"確かに"と頷いたラトナータ様が、僕に追随するようにシャルティーナ様にそう問いかける。

 

「ええ、そうね。寝る時もこのままですわ。少なくとも、私たちはこれまでそうしてきました。そうよね?ユーア」

 

「はい、姫様」

 

「その場合、身体は冷えたりしないのでしょうか?」

 

 僕は続けて質問する。

 

「それに関しては問題ありませんわ。王都の建築物は全て、室内温度を一定に保たせるよう魔法が施されておりますの」

 

「そうなのですね。安心しました。皆様がお風邪をひいてしまわれるのではと少し心配しておりまして……」

 

「まあ、心配してくださっていたのですね。嬉しいですわ」

 

「そ、そうね。悪い気はしないわね。ふふっ」

 

 シャルティーナ様とラトナータ様がそれぞれそんなことを言ってくる。彼女たちの気持ちは分かるな。やっぱり人間は、誰かに心配されると嬉しくなる生き物だからね。それだけ相手に大事に思われているってことだし。

 

「はあ、ナギサさん……、やっぱり優しいですぅ……、えへへ」

 

「ワ、ワタシも……、う、嬉しい……です……。ど、どうしよう……、頬が勝手に……緩んじゃう……」

 

 他の方々もそれぞれ嬉しそうに顔を綻ばせている。そんな彼女たちの様子を見ていると、自然と僕まで嬉しくなってしまう。こうして彼女たちが僕の心配を嬉しく思ってくれているということはつまり、僕は彼女たちに認めてもらえているということだろうからな。そんなの、嬉しいに決まっている。

 

 けど、ちょっと反応が過剰なのではないかとも思ってしまう。たかが心配一つでそんなに喜ばれるのか?その反応はまるで、恋人に大切にされて喜ぶ乙女の反応のようにも思える。彼女たちの心はよく分からない。いや、人の心を完全に理解するなんてことできっこないんだけど。

 

「ま、まぁ、そういうわけなのでご心配なく。それでは、明日は学校なので、私はこれで失礼させていただきますわ。皆さん、おやすみなさい」

 

「おやすみなさい、シャルティーナ姉様」

 

「おやすみなさいです!」

 

「おやすみなさいませ、姫様」

 

「おやすみなさいませ」

 

 最後にペコリと一礼した後、シャルティーナ様は共有スペースを後にし自室へと戻っていった。時刻は21時ごろなので、就寝時間としては丁度良いだろう。というか、非常に健康的だ。

 

 ちなみに、この世界の時間間隔は元の世界と変わらないようだ。1日24時間で、それが30日でだいたい1カ月である。そして、12ヶ月で1年となる。季節も春・夏・秋・冬という四季が存在するらしい。その辺りの常識が変わらないのはとてもありがたかった。自分自身の概日リズムが崩れる心配がないからね。

 

「それじゃ、アタシもそろそろ寝ようかしらね。皆さん、おやすみなさい。明日からまたよろしくね」

 

「はい、こちらこそよろしくお願いいたします、ラトナータ様」

 

「よ、よろしくお願いいたします。おやすみなさい」

 

「うーん、あたしもちょっと眠くなってきちゃったなぁ。それじゃあ皆さん、また明日。おやすみー」

 

「ええ、おやすみなさい、フィノレアさん」

 

 そうして続々と自室に戻り始める御嬢様方。やはり、このくらいの年の子は寝るのが早いんだなぁ。僕も昔はこれくらいの時間に寝てたっけ。

 

「そ、それじゃあワタシももう寝ますね。み、皆さん、おやすみなさいです」

 

「はい、おやすみなさい、リレイナさん」

 

「おやすみなさいませ、リレイナ様」

 

 そうしてリレイナ様も自室に戻られ、共有スペースにはエルシャローゼ様、アルフィオーネ様と僕ら使用人だけとなった。そこで僕は、御嬢様二人に渡しておかなければならないものがあったことを思い出した。

 

「御嬢様方、お渡ししておかなければならないものがありました」

 

「ん?何かしら?」

 

「えっと、これを」

 

 僕はズボンのポケットからとあるものを取り出し、それを彼女たちに手渡した。

 

「あっ、これ、持ってきていたのね」

 

「はい。何かございましたら、これをお使いください」

 

 僕が彼女たちに渡したものとは、ボタンのついた小さな魔道具である。これはファミレスなんかによくある呼び出しボタン的なものだ。これがあれば、彼女たちは何時でも僕を呼び出すことができるわけである。もちろん、効果範囲はあるが。でも、少なくともこのユニット内でなら何処からでも呼び出し可能だろう。

 

 こんな魔道具があるなんて、本当に便利だ。僕もできることなら魔法を使ってみたいものだ。魔力がないのでどうにもならないけど。

 

 ちなみに、このボタン式魔道具、エルシャローゼ様のものとアルフィオーネ様のものとでは、僕に届く音が異なる。なので、音を聞けばどちらが呼び出したのかがすぐに分かるというわけだ。

 

「ありがとうございます、ナギサさん」

 

「何か困ったことがあったら遠慮なく使わせてもらうわ」

 

「はい。その時は遠慮せず私をお呼びくださいませ」

 

「はい、そうします。えっと、それじゃあ私もそろそろ寝ますね」

 

「そうね。私ももう寝ようかしらね。それじゃあナギサ、ユーアさん、おやすみなさい」

 

 そう言うとエルシャローゼ様とアルフィオーネ様も共有スペースを後にしてそれぞれあてがわれた寝室へと向かう。そんな彼女たちの背中に僕たちは……

 

「はい、おやすみなさいませ、御嬢様方」

 

「おやすみなさいませ」

 

 そう言葉を返した。

 

「ふぅ、ひとまず今日の業務は終わりかな」

 

 そして、使用人である僕とユーアさん以外いなくなったところで、僕はほっと息を漏らしそう呟いた。

 

「うん。お疲れ様。というか、最後の方はいろいろ任せちゃってごめんね」

 

 ユーアさんは僕にペコリと頭を下げてくる。

 

「いやいや、気にしないでくれ。それより、お風呂ではゆっくりできた?」

 

「うん、おかげさまで。ホント、ナギサさんは優しいなぁ」

 

「そうかな?でもまぁ、ありがとう」

 

「ありがとうはこっちのセリフだってば。今日1日、ホントにありがとう。ナギサさんがここに来てくれてすごく嬉しい」

 

「ははっ、大げさだなぁ」

 

「大げさなんかじゃないよ。とにかく、これからもよろしくお願いします」

 

「うん、こちらこそよろしく。お互い頑張ろう」

 

「えへへ、うん」

 

 それから僕たちは明日以降の業務の確認を簡単に済ませてから、本日の業務を終了させたのだった。

 

「それじゃ、おやすみ、ナギサさん」

 

「うん、おやすみ」

 

 そう言葉を交わしてから、ユーアさんは自室……使用人専用居室へと戻っていった。僕は最後に一人で風呂に入り、それからユニット内の小頭を済ませ就寝したのだった。



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寮生活二日目を迎えて……

 次の日、僕は朝早くに目を覚まし、自分の身支度を済ませてから共有スペースに赴く。そして、早速朝食の準備に取り掛かった。とは言っても、昨日のうちに仕込みは済ませているので、大して手間はかからないのだが。

 

 途中でユーアさんも合流したので、朝食の準備はスムーズに進んでいった。

 

 そして、朝食の準備が終わったところで、御嬢様方も共有スペースにやってくる。グッドタイミングだ。

 

「お、おはよう……ございます……、ナ、ナギサさん……」

 

 アルフィオーネ様が何故か恥ずかしそうに頬を赤らめながら僕に朝の挨拶をしてきたのが印象的だった。何かあったのかな?いや、裸生活を強いられているのだから恥ずかしがるのは当然か。

 

 シャルティーナ様やユーアさんは全裸スタイルに慣れているので大して恥ずかしがってはいなかったが、他の方々はそういうわけにもいかず、まだ少し恥ずかしそうに身体をもじもじさせていた。

 

「おっはよう、ナギサくん!」

 

 ……フィノレア様は、全く恥ずかしがっていなかったけど……。

 

『いただきます』

 

 そうして全員での朝食の時間。昨日の夕食時同様、食卓はとても賑やかだった。全員、朝にはそれなりに強いようだった。

 

 それからしばらくして全員が朝食を食べ終わり、僕は食器の片づけに入る。他の方々はそれぞれ身支度を済ませるために自室に戻っていく。

 

 そうして僕が洗い物を終えた頃に、御嬢様方が共有スペースに戻ってきた。その姿は、全裸……ではなく、全員学園の制服を身に纏っていた。なんか、今までずっと全裸しか見てこなかったからとても新鮮だった。

 

「ど、どう……ですか?」

 

 アルフィオーネ様は、相変わらず恥ずかしそうに頬を紅潮させながら僕にそう尋ねてくる。もう服を着ているわけだし、恥ずかしがることなんてないような気もするのだけど、きっと何かあるのだろう。

 

 それはともかく、僕は彼女の言葉に即座に応じる。

 

「ええ、とてもお似合いですよ、アルフィオーネ様」

 

「ほ、本当ですか!?う、嬉しいです」

 

 アルフィオーネ様は僕の言葉にニコニコと嬉しそうに微笑みながら肩を揺らしていた。とても可愛らしい反応だ。

 

「わ、私にも、何か言うことがあるんじゃないかしら……?」

 

「っとと、申し訳ございません、エルシャローゼ様。とてもお似合いですよ」

 

「そ、そう。ま、まぁ当然よね」

 

 エルシャローゼ様はあくまで強気な態度を崩すことなくそう言った。しかしながら、緩む表情までは隠せていない。似合っていると褒められて喜ぶのは、どの世界の女の子も共通のようだ。

 

 そんなこんなで、彼女たちはユニットを出て学園へと向かわれた。新入生の方々は少し緊張した面持ちで、そして上級生の二人はそんな新入生たちを温かい目で見守っていた。

 

 そうして御嬢様方がいなくなると、途端に仕事がなくなってしまう。学園には学食もあるようなので、僕が昼食を用意する必要もない。

 

 一応、共有スペースやトイレなどの掃除は行うが、元々清潔に保たれていたのでそれもすぐに終わってしまう。

 

「あ、本当に暇だ……」

 

 この世界の娯楽なんてものは、最近転生してきたばかりの僕にはよく分からない。そのため、今の僕には暇つぶしの手段があまりに乏しすぎるのである。

 

 でも、暇を理由にだらけるのは本意ではない。そういうわけで僕は、御嬢様方がお帰りになるまでの間、トレーニングをして自分の身体を鍛えることにした。元々筋力はそれなりにあったけど、他にやることも思いつかなかったから。うん。今度、何かしら娯楽を見つけよう。そうでないと、いつか本当にだらけてしまいそうだ。

 

 そう決意しつつ、僕は無心でトレーニングに励み、それから一人で昼食を摂った。正直、とても寂しかった。御嬢様方がいないだけでこんなに違うものなのかと実感した。元の世界じゃ、一人なんて当たり前だったのにな。たった数日で僕は大分変ったようだ。精神的な意味で。

 

 それから午後は寝室としてあてがわれた使用人専用居室の掃除をした後、午前中し忘れていた浴室の掃除も済ませた。その際、ついでにシャワーを浴びてかいた汗を洗い流した。

 

 そうしているうちに時間は14時を周り、御嬢様方がようやく帰宅された。嬉しいという気持ちをぐっと心の奥に押しとどめ、僕は玄関で彼女たちを出迎えた。

 

「お帰りなさいませ、御嬢様方」

 

「ええ、ただいま」

 

「ただいま戻りました」

 

「たっだいまー!」

 

「た、ただいまです」

 

「ただいま、ナギサ」

 

 お帰りなさいという僕の言葉に、彼女たちは笑顔で応じてくれる。それだけで、僕は満たされた気持ちになってしまう。改めて、僕がどれだけ寂しがっていたのか思い知らされた瞬間だった。

 

「おや?シャルティーナ様とユーアさんがまだのようですが……」

 

 そこで僕は、彼女たちの中にシャルティーナ様とユーアさんの姿が見えないことに気づく。そうして彼女たちに尋ねてみると、

 

「上級生は16時まで授業があるらしいわ」

 

 ラトナータ様がそう答えてくれる。

 

「なるほど、そうなのですね。ありがとうございます」

 

 僕はラトナータ様に感謝の言葉を述べて頭を下げる。

 

「ねぇねぇ、聞いて聞いて!あたし、今日の魔法テストでA判定もらったの!」

 

 すると、フィノレア様が唐突にそんなことを言ってきた。声色だけでも彼女の喜びは充分伝わってきたが、腰から生えた尻尾がぶんぶんと揺れており、嬉しいという感情を強調していた。

 

 にしても、魔法テストなんてものがあったのか。A判定ということは、相当高得点だったのだろう。なるほど、フィノレア様は魔法の扱いが上手なのか。

 

「それはすごいですね。フィノレア様はとても優秀な方なのですね」

 

「えへへー、ありがと!でもね、あたしだけじゃないんだよ。実はね、ここにいるみんな、A判定だったんだよ!」

 

「なんと。流石でございます」

 

 すごいな、このユニット。優秀な方々ばかりとは……。

 

「まぁね。一応これでも魔王の娘だし」

 

 そう言ってえへんと胸を張るのはラトナータ様。

 

「ワ、ワタシは……、たまたまですよ……」

 

 そんなラトナータ様とは対照的に謙虚な態度を見せるリレイナ様。

 

「一番点数が高かった貴女が何言ってるのよ」

 

「そ、それこそたまたまですよぉ……」

 

 まさかの最優秀者だった。リレイナ様、すごすぎ。

 

「わ、私も、A判定取れました」

 

 控えめながらも嬉しそうに、アルフィオーネ様がそう言ってくる。

 

「流石です、アルフィオーネ様」

 

「え、えへへ、ありがとうございます。ナギサさんに褒めてもらえて、私とても嬉しいです」

 

 この方はまたそんな可愛らしい反応を……。思わずドキドキさせられてしまう……。年が離れていなければ、僕は今確実に彼女に恋をしていただろう。流石に6歳も年が離れた彼女を恋愛対象として見たりはしないけど。いやまぁ、恋愛感情を抱いたらその時点でロリコン確定だしね……。

 

「エルシャローゼ様も、A判定を取られたのですよね?」

 

 僕は気を反らすようにエルシャローゼ様に話しかける。

 

「えっ!?あっ、ま、まぁ、そうね」

 

「流石です。こんな優秀なお二人に仕えられて、私は幸せです」

 

「「ふぇっ!?」」

 

 僕の言葉に、エルシャローゼ様とアルフィオーネ様が同時に顔を真っ赤にさせてしまった。そんなに照れるほどのこと、僕言ったかなぁ。まぁ良いや。

 

「っとと、足止めしてしまいすみません。ずっと制服のままというわけにもいきませんよね」

 

 僕は彼女たちに一言謝罪する。それから僕は廊下の脇に寄り、彼女たちのために道を開ける。

 

「あっ、そっか。ここだと服脱がなきゃなんだっけ」

 

 僕の言葉で寮内でのルールを思い出したらしく、フィノレア様がそう言いながらその場で制服に手をかける。えっ、何?ここで脱ぐの!?

 

「ちょっ、フィノレアさん!?どうしてここで脱ごうとしてるの!?」

 

「そ、そうですよ!ここ、玄関ですよ!?」

 

 両サイドに立つラトナータ様とリレイナ様が止めに入る。

 

「え?でも、何処で脱いでも変わらなくない?結局、この後みんなすっぽんぽんになるわけだし」

 

 だが、当のフィノレア様はそんな二人の制止など意に介さず、プチプチと制服のブラウスのボタンをさっさと外してしまう。

 

 そうして全てのボタンを外し終えたところで、その奥からそれまでブラウスによって抑えつけられていた彼女の大きな二つの膨らみがぽよんと飛び出す。うん、何時見ても圧倒的なボリューム感だ。

 

「うっ……、相変わらずすごい迫力ね……。こんなの反則よ……」

 

「はぅぅ、う、羨ましい……」

 

 大迫力のおっぱいの前に、それまでフィノレア様をどうにか制止しようとしていたラトナータ様とリレイナ様も圧倒されてしまう。おっぱい、恐るべし。

 

 それからフィノレア様はブラウスをふぁさりと脱ぎ捨て、そうしてプリーツスカートのファスナーを下ろしてそれもすぐに脱ぎ去ってしまう。

 

 そうして彼女は、玄関先でパンツと靴下だけの姿になってしまった。白いパンツが可愛い……じゃなくて、幼いけどちょっとエッチかも……でもなくて、フィノレア様には羞恥心がほとんど備わっていないらしい。あまりに堂々とし過ぎている。

 

「んしょっと、ふぅ」

 

 などと考えている間に彼女はパンツと靴下も脱ぎ払い、すぐさま全裸になられてしまった。解放感を味わうかのようにぐいっと背伸びをしていた。彼女が身動きする度に、その大きなおっぱいもプルンプルンと揺れ動く。

 

「制服着てると胸の辺りがきついんだよね。だから早く脱ぎたかったんだよぉ。んーん、この解放感、最高!って、あれ?他のみんなは脱がないの?」

 

 他の肩が未だに制服を着たままであることに疑問を持ったフィノレア様が、可愛らしく小首をかしげてそう尋ねる。

 

「い、いえ、私たちは自分のお部屋で着替えます」

 

「そ、そうね。ここで脱いだら、制服が荷物になっちゃうし」

 

「あー、それもそっか。あはは、考え無しだったよ」

 

「そ、そういうわけなので、今から着替えてきます」

 

「はい、分かりました」

 

 そう言うと彼女たちはそれぞれ自分の部屋に戻っていく。僕はそんな彼女たちに一言返事をすると、一つ安堵の溜息を吐いた。意図せずフィノレア様のストリップを見てしまった僕だったが、理性は未だ決壊することなくしっかり残っていた。セーフだ。ちょっと危なかったけど、身体にこれといった反応はないのでセーフだ。

 

 それからしばらくしてシャルティーナ様とユーアさんもユニットに戻ってきた。その後、僕は着替えを済ませたユーアさんとともに夕食の準備に取り掛かり、19時頃には全員での二度目の夕食が始まった。

 

 夕食時の話題は、自然と魔法テストの話になる。新入生たち全員がA判定を取ったことに、シャルティーナ様とユーアさんは驚きながらも、笑顔で祝福の言葉を新入生たちに送っていた。

 

「去年が懐かしいわね」

 

「姫様もA判定でしたよね。わたしは2年次編入だったのでこれといってテストはなかったのですが」

 

「そうだったわね」

 

 そんな感じで、その日の夕食も賑やかに過ぎていった。そうして御嬢様方は入浴を済ませ、僕はその間に洗い物と明日の朝食の仕込みを終わらせる。

 

 そして、彼女たちが各々自室に戻られた後に僕も入浴を済ませ、それから居室に戻った。昨日と何一つとして変わらない流れだ。

 

 しかしながらこの後、昨日はなかった展開が僕を待ち受けていたのだ。

 

「ん?」

 

 寝間着に着替え就寝モードに入ろうとしていた僕は、不意に聞こえたノックの音に反応し、部屋の扉へと視線を向ける。こんな時間に一体誰だろうか?

 

「どちら様ですか?」

 

 僕がそう扉の外に声をかけると……

 

「あの、ア、アルフィオーネです」

 

 そう返事が返ってきた。

 

「アルフィオーネ様?こんな時間にどうかなさいましたか?」

 

 僕は慌てて扉を開き、扉の外に立っていたアルフィオーネ様の姿を確認する。そうして、こんな時間に態々僕のところを訪ねてきた理由を聞く。

 

「あ、あの、ひとまず中に入ってもよろしいでしょうか?」

 

「え、ええ、それは構いませんが……」

 

 僕は彼女の希望通り、自分の部屋の中に彼女を招き入れた。



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暗室で……③

 第1話、第2話のあらすじ

 暗室にて、ナギサは全裸のアルフィオーネにエッチしようと誘われる。ナギサはその意図を理解できずにいた。

 ↓

 見かねたアルフィオーネに愛の告白をされる。ついでにオナニーをしていたことも告白される。

 ↓

 この世界ではロリとのセックスは合法であること、主人と従者がそう言う関係になるのは普通のことである、などということを、ナギサはこのタイミングで知ることになる。

 ↓

 なけなしの理性による抵抗も虚しく、ナギサはアルフィオーネの魔法の力によってベッドの上に押し倒され、ファーストキスを捧げられる。この時点でナギサの股間の象徴はSTAND UP。

 ↓

 ナギサの性器にアルフィオーネの性器が押し付けられ、行為が始まる3秒前。


 では、続きをどうぞ。


「はぁ……♡んんっ……♡はぅぅ……♡」

 

 回想だけでかなり時間がかかってしまった……。ま、まぁそういう経緯を経て、今こうしてアルフィ様に愛の告白をされ、魔法で身体を動けなくさせられ強引に押し倒されているわけである。

 

 思い返してみれば、アルフィオーネ様の行動や反応に少し引っかかる点はあったかもしれない。

 

 例えば、僕がアルフィオーネ様を褒めたりする度に、彼女は過剰なまでの喜びを見せていた。それはもしかしたら、僕のことを好いてくれていたからこその反応だったのかもしれない。もっとも、確信なんて持てないし、未だに信じられないという気持ちの方が強いけど。

 

 でも、目の前で甘い吐息を漏らし僕の股間に自分の股間を擦りつけているアルフィオーネ様を見れば、先ほどの告白が嘘でも何でもないことは理解できた。

 

 そして僕自身、彼女のことはとても可愛らしい方だと思っているし、それに今の彼女はすごくエッチだなとも思っている。つまり僕は、アルフィオーネ様のことを異性として見ている、ということだ。それがこの世界では許されることも、さっき彼女の口から既に聞いている。

 

 それならば、彼女の思いに応えても何も問題ない……のだけれど、まだ一つだけ引っかかることが僕の心の中にあった。

 

「あ、あの……、御嬢様……、もう一つだけ……お聞きしたいことが有るのですが……、よ、よろしいでしょうか……?」

 

 先ほどから僕の股間に彼女のぷにぷにで温かな女性器が擦りつけられていたということもあり、僕は多少の快感を覚えてしまっていた。けど、今は気になることについて彼女に聞くのが最優先事項と考え、何とか快感に抗いながら僕は言葉を紡ぐ。

 

「んあぁ……♡はぁぁ……♡は、はいぃ……♡な、何ですかぁ……?♡」

 

 アルフィオーネ様は腰を止めることなくそう返事をした。その声には艶やかな吐息が混じっており、聞いているだけで脳が溶かされてしまうのではないかと錯覚するほど甘く淫靡だった。

 

 僕は僅かに残る理性を総動員し、思考を桃色から切り離す。

 

「その……、先ほど御嬢様は……、一番じゃなくても良いから傍に置いてほしい……とおっしゃっていましたよね……?」

 

「は、はい……♡い、言いました……♡」

 

「それってどういう意味なのでしょうか……?」

 

 僕が気になっていたのはこのことだ。自分を一番に見てくれていないのに、そんな相手と関係を持つというのは女性的にあまり良く思えないのではないだろうか?それなのに、彼女は傍に置いてほしいと言ってきた。それが先ほどから少し引っかかっていたのだ。

 

「そのままの……意味です……、あんっ……♡私を正妻にしてほしいとは言いません……、ひぅ……♡で、でも……、せめて側妻として……愛してほしいのです……、ひにゅ……♡」

 

「そ、側妻……!?」

 

 僕は彼女の物言いにそんな驚きの声を上げてしまう。現代の日本ではめっきり聞かなくなった側妻という単語がまさか彼女の口から出てくるとは思っていなかった。そ、側妻ってあれだよね……?本命じゃない、2番目以降の妻……ってやつだよね?

 

 それって、一夫多妻制が認められていないとなりたたない言葉……だよね?ということはつまり、この世界……かどうかは分からないけど、少なくとも人間族国アルテロアでは一夫多妻制が認められている……ということなのか?

 

「え、ええ、ご存じ……ないですか……?♡」

 

「い、いえ、知ってはいます……。ですが何分、私の元いた世界……、正確には、私の住んでいた国にはそのような制度がなかったもので……、馴染みがないと言いますか……」

 

「そ、そうなのですか……!?はぁん……♡ふぅ……♡し、信じられません……」

 

「私の元いた国では、一夫一妻が常識……でしたから……」

 

「そ、そうだったのですね……、んうぅん……♡そんなの……、私は嫌です……。思い人の一番になれないと添い遂げられないなんて……、悲しすぎます……」

 

 彼女は僕の話を聞くと、先ほどまで浮かべていた恍惚の表情の中に僅かに悲し気な影を映した。

 

「もちろん……、自分自身が思い人に嫌われているのであれば悲しくはありますが諦めることはできます……。でも……、そうでないのに諦めなければならないなんて絶対に嫌です……」

 

 確かに、自分に思いを寄せてくれている人を受け入れてあげられないというのは、自分としても相手としても辛いことだと思う。まぁ僕は、欲望の視線にさらされたことはあっても誰かに思いを寄せられるなんていう経験はなかったんだけどさ。複数人からなんてもっての外だし。だから、モテる人たちの気持ちが完全に分かるというわけではない。

 

「確かに、御嬢様のおっしゃる通りかもしれませんね……。まぁそういうわけなので、私は一夫多妻というものには馴染みがないのです……」

 

「そう……ですか……」

 

「むしろ、僕が他の女性と関係を持つことを、御嬢様は許せるのですか?私はそれが気になって仕方がありません……」

 

「ナギサさん……♡」

 

 いつの間にか彼女は腰を動かすことを止め、じっと僕の瞳を覗き返してきていた。その金色の瞳には力強い意志の色が見えていた。

 

「つまりナギサさんは、複数人の女性と同時に関係を持つことは不誠実……と考えてるのですか?」

 

「そ、そうなりますね……」

 

「ふふっ♡やはり貴方はお優しい方ですね♡ですが、私は貴方が私以外の女性と関係を持ったとしても、決して貴方を咎めたりいたしませんよ。むしろ、貴方がそれだけ多くの女性に愛されているのだと実感できるのは嬉しいことなのです♡」

 

「そういう……ものなのですか?」

 

「ええ、そういうものです♡郷に入れば郷に従え、ですよ♡」

 

 そう言ってにこりと柔らかく微笑むアルフィオーネ様。郷に入れば郷に従え……か。その通りかもしれない。僕はもうこの世界の住人なのだから、こちらの世界の常識に従うべきなのかもしれないな。

 

「今はどうか……、私を愛してください……♡貴方ならきっと、私を受け入れてくれるはず……ですよね?♡」

 

「……どうしてそう言いきれるのでしょうか?」

 

「ふふっ♡それは簡単な話です♡ナギサさんが私でちゃんと興奮なさっているからですよ♡嫌いな女相手に欲情なんてしないでしょう?♡ですから、少なくとも貴方は私を嫌だとは思っていない……。そうでしょ?♡」

 

 彼女は再度僕の屹立した男性器に自分の秘部を擦り合わせながらそう言った。まぁ……、そうだな。彼女の言う通り。というか、アルフィオーネ様のことを嫌いになんてなれるはずがないだろう。彼女は僕を助けてくれたのだから。それに、とても可愛くて綺麗だし。

 

「……はい、おっしゃる通りでございます。御嬢様はとても可愛らしく美しい方です。これは外見的な意味だけではございません。内面的にもです」

 

 僕は彼女の言葉でようやく覚悟を決めることができた。僕は僕を好いてくれている彼女を受け入れたい。そう考えられるようになっていた。

 

「そんな貴女に愛していただけるなんて、私は幸せ者でございます」

 

「ナ、ナギサさん……♡そ、そんなこと言われたら……私……♡♡」

 

 僕の言葉を聞いたアルフィオーネ様は、顔を真っ赤にさせて照れてしまわれた。けど、表情が先ほど以上にとろんと蕩けていることから、彼女がちゃんと喜んでくれているのだと理解できた。

 

「アルフィオーネ様、貴女のお気持ち、私に受け止めさせてください」

 

「はい……、はいっ……♡ナギサさん……、ありがとうございます……♡私……、今とても嬉しいです……♡あぁ……♡ナギサさん……♡ナギサさん……♡♡」

 

 そう言ってアルフィオーネ様は僕に抱きついてくる。その声や身体が少し震えていることから、彼女が涙を流しているのだと分かった。きっと彼女は不安だったのだろう。自分の気持ちを受け入れてもらえないかもしれない……と。僕に魔法を施し強引に迫られたのも、きっとその不安の所為で空回りしてしまったからなのだろう。

 

 僕は、自分勝手にうじうじ悩み続けていた自分自身に呆れてしまう。本当、僕は男として情けないよ……。

 

「御嬢様、お返事が遅くなってしまい申し訳ございません」

 

「いえ、良いのです。こうして受け入れていただけただけで私は幸せですから♡」

 

「御嬢様……」

 

 涙を流しながらではあるが、アルフィオーネ様は僕にふわりと笑いかけてくる。そんな彼女が愛おしく感じて、僕は彼女の小さな身体を抱きしめ……られなかった。その理由は言わずもがな、彼女の施した魔法である。

 

「お、御嬢様、できれば……魔法を解いていただきたいのですが……」

 

「あっ、そ、そうですよね、ごめんなさい……」

 

「いえ、御嬢様の魔法がなければ、私はあのまま元の世界の常識にとらわれたままだったのです。ですから、謝らないでください」

 

「ナギサさん……、ありがとうございます♡それでは、魔法を解除いたしますね」

 

 そう言うと彼女は再び手に魔力を纏わせ、その手で僕に触れてくる。温かな魔法の光に包まれ、次の瞬間には僕の身体は自由に動かせるようになっていた。

 

「はい、これで解けました……、って、ひゃっ……♡」

 

 そして、僕は自由になった両腕を、未だ僕の上に重なったままのアルフィオーネ様の身体に回し、優しく抱き寄せる。

 

 アルフィオーネ様は一瞬驚いたように肩をピクリと跳ねさせたが、すぐに僕の抱擁を受け入れ、身体の力を抜いた。

 

「ナギサさんから抱きしめていただけるなんて……♡はぁ……幸せすぎますぅ……♡」

 

そうしてアルフィオーネ様はそんな蕩けた声を漏らす。出会って数日だというのに、どうして彼女はこんなにも僕を好いてくれているのだろう。思い返しても、その理由まではやはり分からなかった。

 

 けど、理由は分からずとも、僕はもう彼女を受け入れると決めたのだ。後に引きさがるつもりはない。

 

「御嬢様、とても温かいです」

 

 そう言いながら、僕は彼女の剥き出しの背中をゆっくりと撫で摩る。それと同時に、もう片方の手で綺麗な銀髪を梳くように彼女の小さな頭も撫でる。そうすれば、彼女の表情には再び恍惚の色が戻り、潤んだ瞳で僕をうっとりと見つめてくる。

 

 やがて彼女の吐息は熱く甘いものに変わってきた。顔の赤らみの具合も増し、一目見ただけで彼女が発情していることが理解できた。

 

「ナギサさん……♡んんんぅ……♡」

 

「御嬢様、私も……もう止まることはできませんよ」

 

「はいぃ……♡早く……ナギサさんを感じたい……ですぅ……♡はぁ……♡はぁ……♡んぅぅ……♡だからお願いです……♡私を……もらってください……♡」

 

「はい、喜んで」

 

 そう言って頷いてから、僕は彼女を抱きしめたまま一度状態を起こし、それからアルフィオーネ様をベッドの上に仰向けに横たえさせる。彼女は僕にされるがままになっていた。もはや余裕はないようで、荒い呼吸をずっと繰り返していた。

 

 それから、僕はそんな彼女の上に覆いかぶさる。先ほどとは上下が逆の体勢である。僕の小柄な身体でも余裕で覆い隠せるほど小さくて華奢なこの身体を、僕はこれから汚してしまうのだ。本来ならばそれはいけない行為なのだけど、この世界ではそれが許されている。

 

 未だ元の世界の常識が残る僕にとってそれは背徳感や罪悪感を煽る行為でしかないが、今の僕にはそれすら興奮の材料となって僕の身体を火照らせる。

 

 彼女を僕のものにしたい……。早く彼女の温かさを感じたい……。彼女と一つに溶け合いたい……。そんな欲求が僕の脳内を駆け巡っていた。

 

「御嬢様……。唇、失礼いたします。んっ……」

 

「んんっ……♡ちゅっ……♡んちゅっ……♡」

 

 僕は、自分の意思でアルフィオーネ様の唇を奪う。彼女のその薄桃色の小さな唇はとても柔らかく、そして瑞々しかった。

 

 今僕は、自分の仕える主人と唇を重ねている。けど、今の僕にはそんなことなど関係ない。今ここでは、彼女は僕の"御嬢様"ではなく、"愛しい女性"なのだ。今だけは、対等な関係でありたかった。

 

「んんっ……ちゅるっ……んはぁ……」

 

「ちゅぷっ……♡ちゅぴっ……♡んふぅ……♡え、えへへ……♡ナギサさんからキス……されてしまいました……♡私……、こんなに幸せで良いのでしょうか……♡」

 

「私……いえ、僕とのキスでそこまで言っていただけるなんてとても嬉しいです、アルフィオーネ様」

 

「ふふっ♡ようやく素の貴方が見れました♡この場では、貴方と私は対等な男女です♡主従関係など気にしなくて良いですからね♡」

 

 そう言って彼女は微笑む。どうやら彼女も、僕と同じことを考えていたようだ。僕はそれが嬉しくて、自然と笑みがこぼれてしまう。

 

「はい、そのつもりです」

 

「それと、私のことはアルフィと呼んでください♡」

 

「い、良いのですか……?」

 

「ええ、もちろんです♡むしろ、呼んでくれないと嫌です♡愛する殿方には愛称で呼んでいただきたいものなのですよ、女は♡」

 

「分かりました、アルフィ様」

 

「えへへ♡はい、ナギサさん♡」

 

 僕は彼女の要望通り、彼女の名前を愛称で呼ぶことにした。まぁ、様付けは変わらないのだけど。これに関しては数日間での慣れもあって、すぐには抜けそうにない。敬語も同じくである。

 

 アルフィオーネ様改めアルフィ様は、僕が自身のことを愛称で呼んだことが相当嬉しかったらしく、満面の笑みでこくりと頷き返してくれた。可愛い。

 

「それではアルフィ様……、身体、触りますね」

 

 そうして、僕は一言そう告げてから、彼女の裸体に手を伸ばしたのだった。



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暗室で……④

「それではアルフィ様……、身体、触りますね」

 

 そうして、僕は一言そう告げてから、彼女の裸体に手を伸ばす。先ほど背中に触れた時にも感じたが、彼女の素肌はとてもすべすべで触り心地が良かった。魔力健康法なんてなくても、彼女は充分綺麗だ。

 

「はぁぁ……♡はぅぅ……♡んんぅぅ……♡」

 

 最初から感部(秘部?)に触れたりはせず、まずは首筋や腹、脚を撫でて彼女を快感に慣れさせる。何となく、そうした方が良いのではと思ったからだ。

 

 僕にエッチの知識なんてあまりない。童貞だし。だから、もしかしたら触り方が拙いかもしれない。

 

「んんぁぁ……♡ふあぁぁ……♡ナギサさぁん……♡」

 

 けど、見た感じアルフィ様はちゃんと感じてくれているようだ。良かった。

 

 僕はほっと安堵しながら、彼女の剥き出しの素肌を入念に撫でまわしていく。少しすると、アルフィ様の肌がしっとりと汗ばんできた。彼女の気分がそれなりに高まっている証拠……で良いのかな?

 

 僕は勝手にそう判断し、次の段階へと移行する。これまで腹や脚を撫で続けていた手を、今度はゆっくりと彼女の胸に持っていく。

 

「んあっ……♡んああっ……♡」

 

 そうして僕は、ついに彼女の胸に触れた。まだまだ未成熟なアルフィ様の胸は、それでも女の子特有の柔らかさを僕の掌に伝えてくる。僕はその微かな膨らみを優しくこねるように揉み解す。

 

 そうすると、アルフィ様は先ほどよりも大きな声を漏らす。とは言っても、普段の声量からすれば大した大きさではないのだが。

 

「んはぁ……♡はうぅぅ……♡ナギサさん……それ……気持ち良い……♡んあぁんっ……♡はあぁんっ……♡気持ち良いですぅ……♡」

 

「御嬢様のここ、とても柔らかいです」

 

「んんぃぅ……♡ナ、ナギサさんは……、こんな小さいおっぱいでも……良いんですか……?♡んああ……♡ふはぁぁ……♡」

 

「大きさなんて関係ありません。僕はアルフィ様を選んだのです。ですから僕にとっては、貴女の全てが愛おしいのです」

 

 不安そうに僕を見つめてくるアルフィ様に対し、僕はできる限り優しい笑みを心掛けながらそう答えた。僕は、相手の胸の大きさだけで好き嫌いを判断するような愚かな男ではないつもりだ。

 

 たとえアルフィ様の身体がまだ発展途上だったとしても、彼女を受け入れた以上全力で愛すつもりだ。

 

「ナギサさん……♡はあああ……♡さっきから……ずっと喜ばされてばっかりです……♡んぁぁ……♡好き……♡大好きです……♡ナギサさん……、愛してます……♡ふああああ……♡んああああ……♡」

 

 彼女は何度も何度も僕に愛の言葉を囁いてくる。それだけで僕の中の幸福感もどんどん満たされていく。コップに例えるなら、もはや溢れる寸前といったところだ。

 

 僕はふわふわした気分のまま、彼女の胸の先端にある小さな突起物に触れた。既に僕から与えられた快感によって硬く勃ち上がったそこはまだとても小さく、しかしながら男のものとは何かが違っていた。

 

 僕は両手の指を使って、彼女の勃起した乳首をピンと弾く。また、それだけでなく、くにくにと摘んだりして、様々な刺激を乳首に与えていく。

 

「んはあああ……♡あああぁ……♡良い……♡良いですぅ……♡ナギサさんに……そこ触られるの……とても気持ち良いですぅ……♡んふぅぅ……♡んひあぁぁ……♡」

 

「アルフィ様の顔、とても気持ち良さそうですね。すごく蕩けてます」

 

「き、気持ち良いのだから……、はうぁんっ……♡し、仕方ない……でしょう……、んふぅぅ……♡ひぅぅぅ……♡」

 

 そうしてアルフィ様は、僕から与えられ続ける刺激に耐えかねてか、小さく身じろぐ。すると、彼女の脚の方からくちゅりという水気を孕んだ音が聞こえてきた。

 

「嫌……♡はしたない音立てちゃいました……♡」

 

「アルフィ様、確認しても?」

 

「は、恥ずかしいけど……、どうぞ……♡」

 

 僕はアルフィ様から許可を取り、それから片手を水音のした方……アルフィ様の股の付け根にある秘部へと近づける。

 

「んぅぅ……♡はぅぅぅぅ……♡」

 

 そうして僕は、彼女の女性器にぴとりと触れる。アルフィ様は一瞬だけ抵抗するように足を閉じかけたが、僕がそれを手で制止するとすぐに大人しくなった。

 

「すごい濡れてる……。アルフィ様、こんなに濡らされているということは、相当興奮なさっているのですよね……?」

 

「い、言わないでくださいぃ……♡んはぅ……♡はぁぁ……♡ふあぁぁっ……♡」

 

 初めて触れるアルフィ様の無毛の女性器は、既に彼女自身の分泌した愛液でぐちょぐちょに濡れそぼっており、僕が指を動かす度にくちゅりくちゅりという淫らな水音を響かせていた。

 

 僕はぴっちりと閉じた女性器の割れ目から未だ止まらず染み出る愛液を指で少しだけ掬い、それを自分の口元へと運ぶ。単なる興味本位だ。いやまぁ、興味本位でこんなことをしてしまうのはなかなか気持ち悪いかもしれないけど。

 

「んっ……、ちゅるっ……」

 

「ちょっ……、ナ、ナギサさん……!?な、何やって……」

 

「すみません、味が気になってしまいました。アルフィ様の味、とても淫靡で美味しいです。これで、私の身体は貴女に染まりました」

 

 正直、自分でも何言っているか分からない。けど、一つ言えることとしては、彼女の愛液は確かに美味しかった。無味のはずなのに、アルフィ様のものだと考えると甘く感じてくる。

 

「そ、そんなこと言われたら……、何も言えませんよぉ……♡」

 

 アルフィ様は顔を羞恥で真っ赤にしながらも、何処か嬉しそうだった。まぁ、気持ち悪いとか思われていないなら良かった。

 

 そんなことを考えながら、次は彼女の秘裂に自分の指を挿し込んでいく。もう少しきついものかと思っていたが、僕の指は思ったよりもすんなり彼女の秘裂の奥に入り込むことができた。

 

 そういえばさっき、自慰行為をしたとか言っていたな。恐らくそのおかげであっさり僕の指を受け入れることができたのだろう。

 

 僕は心の中でアルフィ様が自慰行為を行ってくれていたことに秘かに感謝の念を抱きながら、秘裂に挿し込んだ指をゆっくりと動かしていく。

 

「ああぁぁ……♡んひぁぁ……♡す、すごい……です……♡うにぅ……♡んうふぅ……♡一人でした時とは……全然違いますぅ……♡んあぁぁぁ……♡くあぁぁぁ……♡」

 

「アルフィ様の中、とても暖かいです。指が溶けてしまいそうです」

 

 そう言いながらも指の動きは止めない。女性器の構造なんて詳しくないから、何処がどういう場所でどう感じるのかなんて分からないけど、とにかく至るところを指の腹で擦ってみる。

 

 中にある襞がうねうねと蠢いて、僕の指にきゅっと絡みついてくる。入れているのは指だというのに、その襞の動きがとても気持ち良く感じられてしまう。ここにもし男性器を入れてしまったら、一体どうなってしまうのだろう……。

 

 そんな期待感を胸に彼女の膣の中に指を出し挿れしたり、膣以外の場所をひたすらに穿り回していると、彼女の女性器の上部で僕の指先が何か硬い感触を捉えた。

 

「ひああんっ……♡ふやああんっ……♡」

 

 何度か突いてみると、アルフィ様が今までで一番の反応を見せた。これって、もしかして陰核……クリトリスというやつなのではないだろうか?硬さはしっかり伝えてくるが、まだ幼く小さなそれは完全には顔を覗かせきれていなかった。

 

「そこ……すごいぃ……♡ふあぁぁぁぁ……♡んはぁぁぁぁぁ……♡き、気持ち良すぎですぅ……♡ひにゅぅぅぅ……♡」

 

 優しく慎重に包皮を捲ってから、彼女の愛液を纏った指で何度も突き、時にきゅっと摘む。その度にアルフィ様は甲高い嬌声を上げて身体をぴくぴくと跳ねさせる。一番敏感なところというのは知っていたが、まさかここまでのものとは思っていなかった。

 

「アルフィ様、ここ気持ち良いんですね」

 

「はいぃ……♡すごく……気持ち良いですぅ……♡んあぁぁぁ……♡ああぁぁ……♡頭が……真っ白になっちゃいますぅ……♡ダメ……♡ダメぇ……♡」

 

 僕はクリトリスをツンツンと突きながら、別の指で彼女の膣を少しずつ解していく。すると彼女はさらに大きな嬌声を上げて、僕から与えられる快感に身を震わせていた。

 

「アルフィ様……、とても可愛いです……。それに、すごくエッチ……」

 

「ひやぁぁ……♡そんなこと……言わないでくださいぃ……♡恥ずかしいぃ……♡んあっ……♡んはぁっ……♡んっんっんっんっ……♡あっあっ……♡んああああ……♡♡♡」

 

 僕がとどめというように彼女の耳元で小さくそう囁くと、アルフィ様はとうとう限界を迎えたらしく、ビクビクと身体を大きく痙攣させてオーガズムに達した。彼女の膣口からは、透明感を残しながらも少し白濁した分泌液がどろりとこぼれ出していた。

 

「あっ……♡あっ……♡はぁ……♡はぁ……♡はぁ……♡す、すごかった……です……♡自分の指とナギサさんの指とでは……こんなに違うのですね……♡はぁ……♡はふぅ……♡」

 

「ふふっ、先ほどのアルフィ様、最高に可愛かったですよ」

 

「も、もぅ♡ナギサさんってば……、えへへ……♡」

 

 そう言って照れたようにはにかむアルフィ様。そんな彼女が愛おしくて、僕は彼女の頭を撫でてしまう。

 

「あっ、えへへ……♡頭撫でられるの、好きです♡」

 

「それなら良かったです。そ、それで、この後……なんですが……」

 

 先ほどまでのアルフィ様の痴態を見続けてしまった所為で、僕の興奮も既に最高潮に達しようとしていた。今まで性欲というものをほとんど感じたことがなかっただけに、自分の中で暴れ狂う欲望の渦をコントロールするのは難しかった。

 

 故に、僕は今暴走する一歩手前まで追い詰められてしまっていたのだ。だから、僕は情けなくも懇願するような視線をアルフィ様に向けてしまう。

 

「ええ、分かってます♡次は、貴方を直接感じたい……です……♡今気持ち良くなったばかりなのに、私の身体は先ほど以上に疼いてしまっています……♡特に、お腹の奥がとても切ないです……♡」

 

 アルフィ様ももう我慢の限界なのか、切な気な瞳で僕の顔を見据えてくる。彼女が深く呼吸する度に、彼女の薄い胸が小さく上下するのが分かった。

 

「それに……、ナギサさんもお辛いのでしょう……?先ほどから、私の脚に当たってますから分かりますよ……♡」

 

「お、お恥ずかしい限りです……」

 

「いいえ、恥ずかしいことなんてないですよ♡私、貴方に女として見られているのがとても嬉しいです……♡きゅんきゅんしてしまいます……♡」

 

「アルフィ様……。その……、本当によろしいのですね?」

 

「ふふっ♡何度も言っているではありませんか。私は、貴方と一つになりたいです♡貴方のそのご立派なご一物で、私を貫いてください……♡はぁ……♡ふぅ……♡」

 

「……分かりました。それでは……」

 

 僕はアルフィ様に最終確認をしてから、一度ベッドの上に膝立ちになり、履いていたズボンと下着を一気に膝元まで下ろした。

 

 すると、その奥から既に硬く膨張した性器がぶるんと顔を覗かせた。自分でも驚きだ。こんなに大きくなるなんて……。これまで勃起経験もあまりなかったから、正直今ちょっと引き気味である。

 

 僕の身体は中学生で成長を止めてしまったのだが、何故か男性器だけはその後も成長を続けた。というか、中学3年くらいになってから急激に大きくなり始めた。

 

 おかげで、僕の男性器は自分の小柄な身体に不釣り合いなほどの大きさになってしまったのだ。そして、勃起すれば当然その迫力は増すわけで……。長さで言うと、もしかしたら20cmほどあるかもしれない。

 

 そんな男性器を今からアルフィ様の未成熟の小さな穴に挿入することになる。彼女には相当な負担をかけてしまうかもしれない。

 

「ふわぁ……♡とても……大きいです……♡はぁ……♡はぁ……♡これが今から……、私のここに……入るのですね……♡ド、ドキドキ……します……♡ふぅ……♡ふぅ……♡は、早く……、早く入れて……ください……♡ナギサさん……♡ナギサさぁん……♡私……、貴方が……欲しいです……♡」

 

 けど、彼女の懇願するような瞳と腰を揺さぶる動作に、そんな心配事と理性は吹き飛んでしまった。

 

 そうして僕は再びアルフィ様に覆いかぶさり、ゆっくりと自分の暴力的な男根を彼女の秘部に押し当てた。



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暗室で……⑤

「はぁ……はぁ……、アルフィ様……」

 

 アルフィ様の濡れた割れ目に膨らんだ亀頭をあてがう。たったそれだけだというのに、僕の全身は電流を流し込まれたかのような感覚に苛まれてしまう。指で触っていた時から分かってはいたけど、アルフィ様の唇肉はぷっくりとしていてとても柔らかかった。

 

 そんな柔らかな感触に、今僕の一番敏感なところが受け止められている。こんな感覚、初めてだ……。すごく気持ち良い……。

 

「はぁぁ……♡ナギサさんの……当たってるぅ……♡すごく熱い……♡」

 

 アルフィ様が恍惚とした表情を浮かべてそう言った。そんな彼女の放つオーラは、もう完全にピンク一色に染まってしまっている。

 

 まだ幼く、そして可憐な少女がこんなエッチな顔を浮かべている様子に、僕の中の雄の本能が掻き立てられていく。早く、目の前の雌を自分色に染め上げたい……。

 

「アルフィ様……、それではいきますよ……」

 

「はい……♡何時でも……きてください……♡」

 

 僕は彼女に一つ頷きかけ、そしてゆっくりと腰を前に突き出した。僕のペニスがアルフィ様の女性器に食い込み、その唇肉がふにゅんと歪む。

 

 それと同時に、ぬちゅっというねばっこい水音が二人の性器の間で響く。温かく、それでいてとろとろとしたアルフィ様の愛液と僕のペニスの先から染み出たカウパーが混じり合い、僕の亀頭を少しずつ侵食していく。

 

 それだけで軽く意識が吹っ飛びそうになるのをぐっと堪え、僕はさらに腰を押し進め、アルフィ様の無垢な割れ目を少しずつ広げていく。

 

 すると、しばらく柔らかな感触ばかりを伝えてきた僕の亀頭が何か突っかかりを覚えた。どうやら、亀頭の先がアルフィ様の膣口に達したようだ。

 

 もにゅもにゅと僕の亀頭の先に優しく吸いついてくる彼女の膣口は、先ほど触って確認した時にも感じたがやはりとても小さい。まだ10歳の少女のものなのだから、あれだけ小さくても何らおかしいことはない。

 

 しかしながら、果たしてここに僕のペニスは入るのだろうか?本番を目前にして、改めて不安感が僕の心中に込み上げてきてしまう。

 

「あれ……?ナギサ……さん……?」

 

 僕が一向に先に進もうとしないことに疑問を覚えたアルフィ様が、熱に浮かされながらも心配そうに声を上げる。そんな彼女の表情には、僕と早く一つに繋がりたいという感情が一面に現れていた。

 

 ……そうだよな。彼女は僕を求めている。そして僕も、彼女を求めている。なら、多少の困難があろうとも、迷わず突き進むべきだよな。何も不安に思うことなんてない。きっと何とかなる。

 

 彼女の表情で勇気づけられた僕は、うじうじと心の中で悩むのを止め、先に進むことを決意する。ここからは、アルフィ様にとって、そしてもちろん僕にとっても大変な道になるだろう。だが、それに怯えて逃げていたんじゃ、彼女の僕への思いを踏み躙ったのも同然だ。

 

「アルフィ様、ここからは痛い思いをさせてしまうかもしれません。それでも……」

 

「ええ……、お願いします……♡貴方と一つになれるなら、それくらいの痛みなど乗り越えてみせます♡」

 

「ふふっ、流石は僕の御嬢様だ。頼もしいです。それでは、いきますよ」

 

 最後の言葉は、アルフィ様に対してというより、自分自身に対する宣言だった。僕なりの覚悟というやつだ。

 

「っ……」

 

 そうして僕は、一度止めてしまっていた腰をさらに彼女の奥へと押し進めていく。少しきつくはあったけど、充分に潤っていたことと多少解されていたことが功を奏し、少し力を加えるだけで僕のペニスの先端は彼女の陰穴の中へと沈み込んでいった。

 

「んはぁっ……、あっ……はぁっ……」

 

 すると、アルフィ様の口からほとんど声の混じっていない吐息が漏れる。かなり苦しそうだ。亀頭が入っただけでこれなのだから、破瓜の瞬間はもっと辛いだろう。

 

「んぅぅ……、す、すごい締めつけ……、あぁ……」

 

 しかし、とろとろの膣に亀頭がきつく締めつけられる感触に僕の脳は蕩け始め、未知の快感への興味で頭がいっぱいになってしまっていた。アルフィ様は辛いかもしれないが、もう今の僕には止まることなどできなかった。

 

 僕はさらに腰を突き出し、アルフィ様の小さな膣穴を押し広げていく。にゅるにゅると絡みついてくる無数の襞を掻き分けてペニスを奥へと突き進めていくにつれて、アルフィ様の呼吸はどんどん荒くなっていく。

 

 けど、その表情は決して嫌がっているようには見えない。むしろ、僕のペニスの突き挿さる深さが増せば増すほど、彼女は幸せそうに目尻をとろんと下げるのだ。苦しいはずなのに、それでも喜んでくれている。

 

 そんな彼女に対する愛おしさのあまり、僕の掌は反射的に彼女の頬を撫でていた。多分僕自身、アルフィ様のことが好きなのだろう。6歳も年下の女の子にこんな感情を抱くなんて元の世界じゃおかしいことかもしれないけど、ここはそれが許される別世界だ。ならば、開き直っても別に良いだろう。

 

「はぁ……はぁ……、ナ、ナギサ……さぁん……♡んぅ……くぅ……、それ……安心……します……♡はぁ……くはぁ……」

 

「それなら……良かった……です……、ふぅ……はぁ……」

 

 彼女の言葉を聞いて僕も少し安心できた。だから僕は、再び腰に力を入れて、自身の性器をアルフィ様の狭い膣内の奥深くへとゆっくり沈めていく。

 

 腰は止めない。だが、なるべくアルフィ様に負担をかけないよう、慎重に力を籠める。そうしているうちに、再び引っ掛かりを覚えた。

 

 とうとうここまで来たようだ。恐らく、この引っ掛かりこそが彼女の無垢の証なのだろう。僕はこれから、この無垢の証を突き破る。

 

「うぅ……んふぅ……、アルフィ様……、これから……貴女の処女膜を貫きます……。ですので、どうか身体のお力を抜いてください……」

 

「は、はいぃ……♡はぁ……んはぁ……くぅ……」

 

「では……、くっ……んんっ……」

 

 アルフィ様の身体の強張りが少し弱まったのを掌で確認した僕は、今まで以上に腰に力を入れて彼女の膜の奥へとペニスを突き入れる。

 

 次の瞬間、ぶちっという音が本当に聞こえてくるかのような錯覚を覚えた。それほどまでに、彼女の処女膜姦通は僕に確かな感触を伝えてきたのだ。

 

「あぁっ……ああぁ……、くっ……ぅぁ……、い……たい……、はぁぁぁ……くぁぁ……、けど……幸せ……ですぅ……♡あぁ……んぁぁ……」

 

 処女膜姦通の痛みに苦しそうなうめき声を上げながらも、アルフィ様は顔だけでなく全身から喜びのオーラを噴出させていた。彼女の瞳からはボロボロと涙がこぼれているが、きっとこれは痛みから流れるものだけじゃないのだろう。

 

 そんな彼女の様子を見て、僕の心も幸福な気持ちで満たされていく。目の前の少女が僕にここまでの愛情を見せてくれていることに、言いようのない喜びが心の底から湧き出してくる。

 

 僕はそのままペニスを彼女の奥深くまで突き込み、亀頭が何か硬いものにぶつかったところで腰の力を抜いた。

 

 まだまだ発展途上の彼女の膣道はとても短く、僕の性器はまだ半分ほど外部に露出している。でも、全部入りきらないなんていうのは僕の中ではほんの些細な問題だった。というかそもそも、問題にすらならない。アルフィ様とこうして一つに繋がれたことが何より嬉しかったから。

 

 僕はふと、二人の結合部に視線を落とす。すると、そこからは赤い鮮血が滴り落ちていた。見た感じ、かなりの出血量に思える。

 

 僕、本当にアルフィ様の純血を奪ってしまったんだ……。同時に、僕は彼女に自身の童貞を捧げたのだ……。

 

 痛々しい光景を眺めながら、僕は達成感にも似た感覚を覚えていた。もちろん、アルフィ様に痛い思いをさせてしまったことへの罪悪感もないわけではない。けど……

 

「ひっく……ひっく……、私……ナギサさんと一つに……♡えへへ……♡んぅ……ぐすっ……、嬉しい……です……♡」

 

 僕の眼下で嗚咽を漏らしながら涙を流す彼女の姿を見て、罪悪の感情なんて抱く必要がないのだと思い知らされてしまう。むしろ、ここで彼女に謝りでもしたら、きっと彼女を怒らせてしまうだろう。

 

「アルフィ様……、僕も幸せです……」

 

 だから僕は、罪悪の感情を全て振り払い、目いっぱいの愛情をもって僕の下のアルフィ様の小さな身体を優しく抱きしめた。

 

「ナギサさん……♡ナギサさぁん……♡大好き……♡愛してますぅ……♡ひっく……ひっく……うぅ……うぅぅ……」

 

「僕も好きですよ、アルフィ様」

 

「ナ、ナギサ……さん……♡嬉しい……♡ナギサさんに好きって言ってもらえました……♡んうぅぅ……ひっく……くすん……」

 

 僕が素直な気持ちを彼女に伝えると、彼女の瞳からこぼれる涙の量がさらに増した。あぁ、とても可愛らしい……。

 

「んっ……♡んちゅっ……♡ちゅるっ……♡」

 

 僕が彼女の姿に見とれていると、不意にアルフィ様が僕の唇に自身の唇を触れさせてきた。ちゅっちゅとついばむようなキスがとても気持ち良い。僕もアルフィ様とのキスに没頭してしまう。しばらく互いの口唇を触れ合わせ続けていた。

 

 そうしていると、突然にゅるりとした感触が僕の唇を割り開いて僕の口腔内に入り込んできた。これは……、アルフィ様の舌……?

 

「んんっ……!?んっ……」

 

「んはぅんっ……♡んちゅるんっ……♡はむんっ……♡れろんっ……♡」

 

 アルフィ様の小さな舌が僕の口腔内で縦横無尽に暴れ回る。作法なんてない、とても拙い動きだけど、僕の幸福度をいっぱいに満たすには充分だった。

 

「んあぁ……♡ナギサ……さぁん……♡んちゅっ……♡ちゅぱっ……♡んるんっ……♡」

 

 衝動に任せ、僕もアルフィ様に倣って舌を動かす。経験なんて全くないので、ただひたすら無我夢中で彼女の舌に自身の舌を絡めさせ、さらに彼女の口内をチロチロと嘗め回す。すると、彼女は気持ち良さそうな声を上げ、より積極的に僕の舌に自らの舌を絡め返してきた。

 

「んむぅ……♡ちゅるんっ……♡ちゅぱっ……♡んはぅん……♡」

 

 しばらくお互いの口内や舌を貪りあい、愛情を求めあう。幼くとも、アルフィ様の性への欲望は本物だった。こんなエッチな幼女がいて良いのか……?こんな姿見せられてしまっては、我慢なんてできないだろう。

 

「アルフィ……様……、んんっ……はんっ……」

 

「んあぁ……♡んはぁん……♡んむぅ……♡ナギサさん……♡ナギサさん……♡んはぅ……♡んむぁ……♡ちゅぱっ……♡」

 

 アルフィ様が身動ぎする度に、未だに彼女の膣内に挿さったままの僕のペニスに刺激が与えられ、僕は思わず身を震わせてしまう。さっきまで童貞だった僕にこの刺激はちょっと強すぎる。オナニーすらしたことなかったので、なかなか快感に慣れることができないのだ。

 

「んんぅ……♡んふふっ……♡ナギサさん……さっきから私の中でビクンビクンってなってますよ……♡」

 

 一度唇を放すと、アルフィ様は幼女らしからぬ妖艶な笑みを浮かべて僕にそう語りかけてくる。今のアルフィ様、ものすごく色っぽい……。先ほどに増してエッチだ。

 

「……お気づきでしたか……」

 

「当然です♡はぁ……♡ふあぁ……♡ナギサさん……辛そうですよ……♡」

 

「はぁ……くっ……、アルフィ様の中がとても気持ちいからです……、はぁ……はぁ……うっ……。あの……、そろそろ……動いてもよろしいですか……?」

 

「はい♡大丈夫……ですぅ……♡痛みは大分引いてきましたので……♡いっぱい……動いて……♡いっぱい……気持ち良くなってください……♡ナギサさん……♡はぅぅ……♡はぁぁ……♡」

 

 僕の言葉にアルフィ様は潤んだ瞳で僕を見据えながらそう返す。その言葉を受け、僕は休ませていた腰に再度力を入れ、アルフィ様の膣の中に突き挿さったままの自身の性器を抽挿させ始めた。



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暗室で……⑥

「んくっ……あぁぁ……、はぁ……はぁぁ……」

 

 ゆっくりと腰を引き、そしてまた奥へと突き入れる。その度に、温かくぬめったアルフィ様の膣内の襞が四方八方から僕の性器に纏わりついてくる。これまで一切経験したことのない甘い刺激に、僕の全身から力が抜けそうになってしまう。

 

 何とか倒れ込まないよう踏ん張りながら、僕はもっと強い快感を味わうためにペニスの膣への出し入れを繰り返す。身体が火照り、吐く息が秒ごとに荒くなっていくのが自分でもよく分かる。

 

「うぐっ……あっ……くぅ……、かはぁ……くはぁ……」

 

 しかし、一方のアルフィ様はやはり苦しそうな吐息を漏らし続けている。一時的に痛みは引いていたが、僕が動けばまだ痛みを覚えてしまうようだ。まぁ、それも当然のことだろう。

 

 元々まだ未成熟だった膣内に大人サイズの男性器を突き込まれてしまえば、かなり激しい痛みが持続的に伝わってくるということは、誰にだって想像できるはずだ。僕だって理解していたし、最初は心配だってしていた。でも……

 

「んうぅ……んぐぅ……、はぁ……ふぅ……、ナギサ……さぁん……♡ナギサさぁん……♡もっと……♡もっとですぅ……♡くはぁ……くぅん……」

 

 彼女の瞳は僕に、決して遠慮しないでほしいと訴えかけてきていた。言葉だってそうだ。彼女は、心の底から僕を求めてくれているのだ。それに答えないのは男として失格だろう。

 

 だから僕はなおも動き続ける。自分のために。そして何より、アルフィ様のために。アルフィ様の愛情を全力で受け止め、そして僕も愛情を返してあげたい。そんな思いから、僕は腰を振り、自身のペニスと彼女の膣壁を擦り合わせる。

 

「んぅっ……くぅっ……、アルフィ様……とても気持ち良い……ですよ……、はぁ……ぐぅっ……」

 

「良かった……♡良かったですぅ……♡うぅぅ……んぐぅぅ……かはぁっ……、ナギサさんに……気持ち良くなってもらえて……私嬉しい……です……♡うぁぁっ……はぐぅ……、痛いけど……それすら今は幸せ……なんです……♡」

 

 目尻に涙の雫を湛えながら、アルフィ様は満面の笑みでそう言ってくれる。何処までも一途で健気で、とても愛おしい少女……。こんな子を好きにならないわけがないだろう。

 

 僕の全身に快感とはまた違う甘くて温かな感覚がじんわりと広がっていく。それがやがて同居する快感と共鳴し、僕はぞくぞくとした奇妙な感覚に見舞われた。

 

 そして次の瞬間、僕の頭の中は真っ白になった。

 

「ああぁ……うぅぅぅ……んぐぅぅぅ……!!」

 

 そんなうめき声を漏らし、僕は硬直したまま身体をぶるぶると震わせてしまう。すると、僕の性器の先から尿が排出されるような感覚を覚えた。もしかして、これが射精する感覚というやつなのだろうか?

 

 オナニーもなければ夢精だってしたことがない。正真正銘、これが僕の初吐精ということになる。こんなに気持ち良いのか、イクという感覚は……。

 

 初めて味わう吐精の快感を前に、僕はだらしなく口を半開きにさせてしまっていた。襲い来る快感にじっと身を委ねていた。

 

「ぁっ……はぁ……くはぁ……くはぁ……、す、すごかった……、これが……射精……なのか……」

 

 やがて射精が終わり、僕の頭もホワイトバックから元に戻る。そうして僕は、譫言のようにそんなことを呟いていた。

 

「お腹の中……熱い……♡はぁ……ふぅ……、これが……ナギサさんの精液……なのですね……♡」

 

「って、す、すみませんっ、思わず中に……」

 

「いえ、良いのです……♡むしろ、中に出してくれて……嬉しかった……です……♡んふぅ……んくぅ……♡こんな幸せな感覚……これまで味わったことありません……♡あぁ……うあぁ……♡」

 

 苦しさの中に熱っぽさの混じった吐息を断続的に吐きながら、アルフィ様はうっとりとした表情でそんなことを言う。彼女の掌は、さすさすと自身の真っ白な下腹を撫でていた。その仕草でさえも、僕からしたらとても愛らしい。

 

「むしろ……、まだ身体が子供な自分が少し悔しい……です……、ふぅ……んふぅ……♡こんなにたくさんの赤ちゃんの素をいただいたのに……私の身体ではまだ子供を成すことができないなんて……」

 

 しかし、次の瞬間には残念そうに表情を少しゆがめてしまう。非常に嬉しい発言ではあるのだが、僕としては彼女がまだ子供を成せない身体で良かったとも思えてしまう。

 

 子供を作るにしても、今のままじゃ責任何て取れっこない。そういうことをするのは、ちゃんとこの世界で生きていく基盤を築けてからだと僕は考えている。

 

「アルフィ様、その言葉はとても嬉しいのですが、子供を成す以上、当然責任が伴います。ですが、今の僕ではまだ責任を取れるという約束をすることは難しいのです。ですが、いずれは僕も貴女との子を成したいです……。ですから、僕がちゃんと責任を取れるような大人になるまでは……どうか……」

 

「ナギサさん……♡はい……♡そこまで考えてくれているのですね……♡あぁ……♡もう嬉しすぎてどうにかなっちゃいますよぉ……♡」

 

 アルフィ様の顔がさらに蕩けたものになる。僕の言葉にそこまで喜んでくれているなんて、僕としても嬉しすぎる……。こんな幸せな気持ち、味わったのはいつぶりだろうか……?いや、もしかしたら初めてかもしれない。

 

「ねぇ……、ナギサさん……♡まだ……満足できていないのでしょう……?ナギサさんの……、私の中でまだビクビクしてますよ……♡はぁ……んあぁ……♡それに……硬くて熱い……♡」

 

「アルフィ様……、はい……。もっと……アルフィ様を感じたいです……」

 

 彼女の言葉に、僕は情けなくも本音をポロリと溢す。けど、彼女は決して僕に嫌な顔など向けず、むしろ恍惚とした表情でコクコクと何度も頷いてくれた。

 

「はい……、しましょう……♡私も……もっと貴方を奥で感じたい……です……♡はぁ……んふぅ……♡次こそは……私もきっと気持ち良くなれると思います……♡だから……続き……しましょう……♡」

 

「なら、遠慮なく……」

 

 そう言ってから、僕は再び抽挿を開始する。先ほど放った精液と、アルフィ様の膣から分泌された愛液とが混じり合い、より滑らかな潤滑剤と化す。

 

 僕はほとんど抵抗のなくなった彼女の膣内を自らの凶悪な肉根で何度も引っ掻き回す。先ほどまでよりも少し速いピストン運動をしているため、二人の結合部から響くぬちゃぬちゃという水音が大きく室内に響く。

 

「んあっ……んあっ……ふあぁ……♡まだちょっと痛いけど……なんだか……気持ち良い感じがします……♡あんっ……♡はんっ……♡んぅんっ……♡」

 

 眼下のアルフィ様も、先ほどまでとは違い、明らかに感じているような艶っぽい声を上げていた。ようやく彼女にも気持ち良くなってもらえたのだと分かり、その嬉しさから僕の腰を動かす速度はさらに勢いを増した。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……、アルフィ様……、アルフィ様……」

 

「んあぁんっ……♡んはぁん……♡ナギサさん……♡ナギサさぁん……♡私……初めてでちゃんと感じることができてますぅ……♡あっ……あぁっ……♡んあんっ……♡幸せ……ですぅ……♡んうぁんっ……♡ひぅんっ……♡」

 

「はい……、僕も嬉しいです……、アルフィ様が僕でちゃんと感じてくれていること……、僕も今……すごく幸せです……、はぁ……くあぁ……」

 

「ひぁん……♡ふあんっ……♡ナギサさん……♡私……♡私……身体がふわふわして……頭が……真っ白に……♡あっ……♡あっ……♡んあっ……♡ふあぁぁ……♡」

 

 アルフィ様はそう言いながら、自ら腰を振ってさらなる快楽を貪ろうとしていた。涙で濡れたその顔は真っ赤で、瞳の奥にはピンク色の靄が見え隠れしていた。これまで幼き少女だとばかり思っていた我が主人が、今僕の前で雌の顔を浮かべて淫らによがっている。その事実を再認識した途端、僕の股間にこれまで以上の熱が集まるのを感じた。

 

「あぁ……、出る……、また……くる……、んはぁ……んぐぅ……」

 

「あんっ……♡んはぁ……♡また……出そうなのですね……♡お願い……♡また私の中に……熱いのいっぱい注いでくださいぃ……♡もう一度……貴方の精液が欲しい……ですぅ……♡ああぁ……♡んひぁぁ……♡んうぅぅ……♡」

 

「あぁ……もう……ダメ……、イク……、うあぁぁ……んくぅぅ……!!」

 

 僕は最後にペニスの先端を思いきりアルフィ様の子宮口に押しつける。その瞬間、まるでペニスが爆発したような錯覚を覚えるほどの勢いで、鈴口から大量の精液が発射された。アルフィ様の膣内で、精液を奥へ奥へと送り込むためにペニスがドクドクと脈動を繰り返す度、僕の全身は喜びや達成感からぶるりぶるりと震えあがる。

 

「はぁぁ……♡んああぁ……♡きたぁ……♡熱いのいっぱい奥にきたぁ……♡ひうぅぅ……♡はぅぅぅ……♡♡♡」

 

 そして、僕の精液を最奥で受け止めたアルフィ様も、身体をビクビクと痙攣させて絶頂に達した。初めてのセックスなのに、まさか相手を絶頂させることができるなんて……。あまりに出来過ぎた話かもしれないけど、それでもやっぱり嬉しいものは嬉しい。

 

 しかし、アルフィ様がイッた後も、彼女の膣襞はうねうねと僕のペニスの表面を這い回りながらきゅうきゅうと甘く締めつけてくる。尿道に残った残液まで絞り尽くす勢いだ。それが気持ち良くて、僕はまた軽くイッてしまう。

 

「はぁ……はぁ……、あぁぁ……」

 

 射精後もねっとりと吸いついてくる彼女の膣襞に完全に精液を搾り取られた僕の性器は徐々に硬度を失くし、そして僕は崩れ落ちるようにアルフィ様の身体の上に重なった。だが、最後の力を振り絞り、何とか彼女を押しつぶさないよう、彼女の身体の少し横にずれることができた。

 

「んはぁ……♡はぁぁ……♡私……ナギサさんのおちんちんで気持ち良くなれました……♡えへへ……♡」

 

 そう言いながらアルフィ様は寝そべったまま隣に寝転ぶ僕の身体に甘えるように抱きついてくる。先ほどまでの何処か妖艶な姿からは想像できないほど、今の彼女の姿は幼く見えた。いや、それが普通なのだけど。

 

「それなら何よりでございます、アルフィ様」

 

 僕は、摺り寄ってきたアルフィ様を優しく受け止め、耳元でそう囁いた。彼女は少しくすぐったそうに身を捩らせながらも、幸せオーラ全開といった様子で僕の胸に頬擦りしてきていた。

 

 そんなアルフィ様があまりに可愛すぎて、僕は思わず悶えそうになってしまった。僕、アルフィ様にベタ惚れなのかなぁ……。だとすると、ちょっとちょろすぎない?

 

「ナギサさん、大好き……♡これからもよろしくお願いしますね♡」

 

 などと考えていると、アルフィ様がじっと僕の瞳を見つめながら改まった口調でそう言ってきた。真っ直ぐに僕のことを思ってくれる女の子……。僕は、そんな彼女を一生大切にしたい……。

 

「はい、こちらこそよろしくお願いいたします、アルフィ様」

 

 僕はそう決意し、アルフィ様の瞳を見つめ返しながらそんな言葉を返した。それから僕たち二人は、嬉しさやら照れくささやらの入り混じった笑みを同時に溢した。



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彼女たちに歩み寄るための一歩を

「はぁ、良かったですぅ……。ちゃんと思いが通じて」

 

 そうして、改めてお互いの気持ちを確かめ合うと、アルフィ様はほっと大きな溜息を溢れさせながら脱力したようにそう口にした。

 

「ナギサさん、私の気持ちに全然気づいてくれませんでしたから、さっきまでずっと不安だったんですよ?」

 

「そ、その、申し訳ございません……」

 

「というか、意図的に目を逸らされているようにも感じて、すごく辛かったんですからね?本当、ちゃんと責任取ってくれないと嫌ですからね?」

 

 アルフィ様は僕の胸を指でツンツンと突きながら、頬を膨らませてそんなことを言ってくる。しかし……、彼女の気持ちに気づけていなかったのは確かだけど、意図的に彼女から目を逸らしていたつもりはなかったのだが……。

 

「え、えっと、目を逸らしていたつもりはなかったのですが……」

 

「でも、何かに怯え、逃げているような感じに見えましたよ?これまでのナギサさんは。多分、私以外の人もそう感じていたと思います」

 

 僕が何かを怖がっていた……?でも、この場所に僕が怯えるような何かがあるようには思えないのだが……。ここには、僕のトラウマを刺激する人はいないわけだし。

 

「そ、そんな風に見えていたのですか……」

 

「何となくですが……、はい……。その……、確かナギサさんは大人の女性が苦手……なんでしたよね……?もしかして、実は大人の女性に限らず女という存在自体が苦手……というわけだったりは……」

 

「いえ、そんなはずはありません。もしそうだったら僕は今、アルフィ様に触れることなどできるはずがありませんから……」

 

「そうですか……、それなら良いのですが……。でも、それならもっと私たちのことを見てください。みんな、貴方のことを受け入れています。誰も拒絶なんてしません。ですから、貴方ももっと私たちに歩み寄ってきてください」

 

「アルフィ様……」

 

 僕にそんなつもりがなくとも、無意識的に距離を感じさせる振る舞いをしてしまっていたのだろう。少なくとも、アルフィ様たちにはそう感じさせてしまっていた。もしかしたら、以前心に植え付けられたトラウマの所為で、異性と関りを持つことそのものに慎重になりすぎていたのかもしれない。

 

 けど、僕を心から受け入れてくれている彼女たちにそんな態度を見せてしまうのは間違っている。向こうが手を差し伸べてくれているのなら、僕はその手をちゃんと掴まなければならない。今までの僕にはそれができていなかった、ということだろう。

 

「ちゃんと、みんなの気持ちに気づいてあげてください……。そして、もっと貴方のことを見せてあげてください……」

 

 みんなの気持ち、か。一歩引いたところからでは、そんなものは絶対に見えてこない。それに、僕自身のことだって、歩み寄らなければ誰にも知ってもらえるはずがないだろう。

 

 もっと積極的にならないと。自分からもう一歩先に踏み出して、彼女たちに近づいてあげないと。受け身にばかりなってしまっていたら、僕のことを受け入れてくれた彼女たちに失礼というものだ。

 

「分かりました。頑張ってみますね」

 

 僕はそう言って一つ頷いた。彼女たちが僕に文字通り全てをさらけ出してくれているのだから、僕ももっと自分をさらけ出そう。そして、本当の意味でユニットの一員になってみせるんだ。

 

「ふふっ、お願いしますね。私だけじゃなく、みんなのことも受け入れてあげてくださいね」

 

「あの……、アルフィ様と他の皆さんでは、受け入れるの意味合いが少し変わってきませんか?」

 

 アルフィ様は僕のことを好きだと言ってくれたが、他の人たちはそういうわけではないと思う。けどまぁ、どちらにせよ、彼女たちとはちゃんと向き合うつもりではいるけどね。

 

「そんなことないです。私以外にも、貴方を慕っている人はいますから。だから、みんなの気持ちにちゃんと気づいて、そして答えてあげてくださいね」

 

 すると、アルフィ様がそんなことを言ってきた。突拍子もないその言葉に、僕は思わず咽てしまいそうになる。アルフィ様以外にも、僕のことを好いてくれている人がいる……?そんなことが……。正直、信じられない。

 

「えっ、まさか……」

 

「やっぱり、気づいていなかったのですね……。分かってはいましたが……。そういうところですよ?」

 

「うぐっ……、確かにそうかもしれませんね……。皆さんのこと、全然見れていなかったのですね……。すみません……」

 

「とにかく、これから頑張ってください♪」

 

 そう言ってアルフィ様が再び僕にぎゅっと抱きついてくる。どうやら、お話はこれでおしまいのようだ。

 

 アルフィ様の他に、僕に思いを寄せてくれている人がいるなんて未だに信じられないけど、この答えは僕が一歩を踏み出せばきっと分かる。だから、頑張ろう。僕の背中を押してくれたアルフィ様のためにもね。

 

 そんな決意を胸に、僕は目の前の愛しい存在の裸身を抱き返した。心地の良い柔らかさと温もり、それから、先ほどまでの行為で蓄積された疲労感も相まって、僕は次第にうとうとし始めてしまう。

 

「んにゅぅ……♡ナギサさん……温かいですぅ……♡」

 

 それはアルフィ様も同じようで、その金色の瞳は眠たげに細められていた。きっと、アルフィ様は僕異常に疲れているだろう。早く寝かせてあげないとな。

 

「もう寝ましょうか、アルフィ様」

 

「うぅん……、ちょっと名残惜しいですけど……そうしますぅ……」

 

 僕の言葉にしっかり受け答えはしてくれるアルフィ様。でも、もう本当に限界のようだ。眼瞼は開閉を繰り返し、吐息は寝息のように深く長い。これはもう、僕がアルフィ様をお部屋まで運んであげないとダメそうだな。

 

 と思っていると、アルフィ様が譫言のように、

 

「ナギサさぁん……、寝てる間も……ぎゅってしてて……くださいねぇ……♡んぅ……んにゅぅ……」

 

 そんなことを呟いた。えっ、一緒に寝るの?そんな展開になるとは予想していなかった。まぁでも、別にいっか。僕たち、一応もうそう言う関係……なんだもんね。

 

「分かりました。では、おやすみなさい、アルフィ様」

 

「おやすみなさい……ナギサ……さん……♡んっ……♡ちゅっ……♡」

 

 最後にアルフィ様は僕にキスをし、そうして完全に意識を手放してしまった。いきなりのことで一瞬思考が停止してしまった僕だったが、次の瞬間には幸福感が全身に広がり、ふわふわとした感覚に包まれた。

 

「おやすみ……、アルフィ……」

 

 ボーっとしながらそんなことを呟き、僕も眠りに就いた。自身でも、もはや何を呟いたのか分からなかったが、たとえ変な言葉が口からこぼれてしまっていたとしても、誰にも聞かれるはずがないのだから、気にすることじゃないだろう。

 

「……」

 

 そうして、長い夜は更けていった。

 

    *

 

「んん……、朝……か……」

 

 僕は室内に差し込む陽の光の眩しさで目を覚ます。まだちょっと意識がぼんやりしているが、仕事があるのでさっさと起きなければ……。

 

 そう思い、ベッドから身体を起そうと思ったのだが、何故か上手くいかない。どういうことだと思い視線を泳がせていると、僕の隣ですうすうと寝息を立てる裸の少女の姿があった。

 

「ア、アルフィ様……?って、そっか……。昨日……」

 

 そこでようやく僕の意識がクリアになり、今現在の状況をすんなりと飲み込むことができた。そうだ、昨晩僕はアルフィ様と……したんだ……。

 

 僕は昨晩のアルフィ様との情事を思い出し、少し気恥ずかしさを覚えてしまう。だがそれと同時に、昨晩覚えたばかりの情欲がムクムクと鎌首を擡げようともしていた。いや……、流石に今はダメだ……。仕事があるんだから……。

 

 僕は目覚め始めた欲望を無理矢理振り払い、それからアルフィ様を起こさないようそっと彼女の腕を程気、ようやくベッドから身体を起すことに成功した。

 

「って、そういえば昨日、後処理とか全然しないまま寝ちゃったんだっけ……。このままだとまずいなぁ……」

 

 そんなことを呟きながら、僕は一度ベッドから這い出て下着とズボンをしっかり身につけ、身体を拭くためのタオルを用意するべく部屋を出た。頼む、誰も起きていませんように。

 

 そんな願いが届いたのかは分からないが、僕は無事誰とも出会うことなく洗面所へと到達し、タオルを2枚ほど持って自室に戻ることができた。

 

 そうして部屋に戻った僕は、ひとまず自分の身体……特に股間のアレを念入りに拭き、それからベッドシーツに付着した汚れも軽く拭った。もちろん、それだけではほとんど無意味なので、後で洗濯する必要はあるだろうけど。

 

「さて……と……」

 

 ベッドシーツの特に目立つ汚れを一通り拭い終えた僕は、チラリとそこに横たわる裸身の御嬢様の姿を見やる。

 

「一応、拭いてあげるべきだよね……」

 

 そうポツリと呟き、まだ使っていなかった2枚目のタオルを手に取って彼女のもとへと近づく。無防備に裸身をさらして眠るアルフィ様の寝顔はとてもあどけなく、昨晩僕と交わり艶めかしい嬌声を漏らしていた存在と同一人物とは到底思えなかった。

 

 だが、そんな彼女の股の付け根は、一晩明けたはずなのに未だに昨晩の残滓で少し濡れていた。その光景が僕に現実を突きつける。

 

「本当に……してしまったのか……、僕は……」

 

 冷静になった頭で改めて昨晩のことについて考えると、少しばかり罪悪感を覚えてしまう。それと同時に、僕は昨晩の自身の行いに少し引いてしまっていた。

 

 けど……、うん。アルフィ様を好きだという気持ちに変わりはない。彼女を手放したいとも思わない。その気持ちがあれば充分だ。いやまぁ、そんなことを考えている時点で、既に僕は冷静さを何処かに置いてきてしまったのかもしれないけど。でも、まぁ良いじゃないか。

 

 そんなことを考えながら、僕は朝日に照らされたアルフィ様の無防備な裸身に手にしたタオルを重ね、昨晩の痕跡をなるべく丁寧に拭き取っていく。

 

「んっ……♡んんぅっ……♡んあぁ……♡」

 

 すると、彼女の口から少々艶めかしい声が漏れる。うっ、その声は朝の僕には刺激が強すぎる……。立ち上がりそうになる僕の愚息をぐっと押しとどめながら、僕は作業に没頭した。気にしちゃダメだ。気にしちゃダメだ……。

 

「んんん……んはぁ……♡あれ……?ナギサさん……?」

 

 そうしているうちに、アルフィ様が目を覚ましてしまった。なるべく起こさないようそっと触れていたつもりだったけど、起こしちゃったかな。

 

「っと、申し訳ございません。昨晩の汚れを取って差し上げようと思ったのですが、起こしてしまいましたよね」

 

「いえ、大丈夫ですよ。むしろ、ありがとうございます、んんぅ……♡」

 

 少しくすぐったそうな吐息を漏らしながらも、彼女は律儀に僕にお礼の言葉を言ってくる。僕はそんな彼女に微笑んで見せたが、内心では現在情欲との格闘の真っ最中だった。朝はダメだ……、静まってください……、お願いします……。

 

「んふぅ……♡そういえばナギサさん……、昨晩寝る前に私の名前呼びましたか?」

 

 ふと、アルフィ様がそんな質問を投げかけてきた。どうしてそんなことを聞くのか分からなかったが、確か"おやすみなさい、アルフィ様"とは言った気がするので、僕は正直に首を縦に振った。

 

「ええ、おやすみなさい、アルフィ様……とは言った覚えがありますが、それがどうしたのでしょうか?」

 

「いえ、その……、昨晩ナギサさんに、アルフィと様付け無しで名前を呼んでいただけたような気がしたのですが……、気のせいだったのでしょうか……?」

 

 僕がアルフィ様を呼び捨てに?それは流石にないと思うなぁ……。立場上、流石にそんな呼び方はできない。僕はそこまで礼儀知らずではないつもりだ。

 

「恐らく気のせいかと。それか、アルフィ様の夢の中のお話か、ですかね?」

 

「うーん、残念です……。あっ、なら、今呼んでみてください♡アルフィって、様付け無しで私の名前を呼んでみてください♡」

 

 唐突にそんな提案を持ち掛けてくるアルフィ様。僕はいやいやと首を横に振って答えた。そんなこと、できるわけがない。

 

「そ、そういうわけにはいきませんよ」

 

「むぅ、つれないです、ナギサさん」

 

「そんなこと言われましても……。一応、立場というものがありますから。っと、あらかた拭き終わりましたね」

 

「ありがとうございます、ナギサさん。でも、立場なんて気にする必要ないんですよ?わ、私たち、もうその……そう言う関係……なんですから……♡」

 

 恥ずかしそうにきょろきょろと視線を彷徨わせながら、頬を赤らめつつそう言うアルフィ様。とても可愛らしい姿だった。

 

「そ、それは無理ですよ。仕事上、ルールは守らなければなりませんので」

 

「ナギサさん、頑固です……。じゃあ良いです。その代わり、今からまた私とその……エ、エッチ……してください……♡」

 

「そんな時間はありませんよ」

 

「もぅ、どれもダメじゃないですかぁ……、酷いですぅ……」

 

「そ、そんなこと言われましても……。そ、その……、でしたら今晩、また僕の部屋に……」

 

「はい、喜んで♪」

 

 返答があまりに早すぎる。アルフィ様、こんな性格だったっけ?まぁ、結局可愛いから良いんだけど。

 

「さてと、それでは起きましょう、アルフィ様」

 

「はーい♡おはようございます、ナギサさん♪」

 

「はい、おはようございます、アルフィ様」

 

「んんっ……♡」

 

 そんな朝の挨拶の後、僕はすぐさまアルフィ様に唇を奪われた。すごい積極的だな、この御嬢様……。いや、もちろん僕も嬉しいんだよ?

 

「んふふっ、これくらいは……良いですよね♡」

 

「まぁ、そうですね」

 

 そう言って微笑みあい、それからもう一度僕たちは唇を重ねた。それは、互いの愛を確かめ合うための、とても甘く、そして優しいキスだった。



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Chapter2. ユニット内の御嬢様たちと仲良くなろう
アルフィ様、エネルギー補給中……


 アルフィ様が一度僕の部屋から去った後、僕は寝間着から執事服に着替え自身の身支度を速やかに整えた。

 

 それから僕は共有リビングまで出向き、そそくさとキッチンに入って御嬢様方の朝食の用意を始める。前と同じく、既に昨日のうちにできる限りの仕込みは終わらせていたので、あとは仕上げの作業を行うだけである。

 

 こうして、どうすれば仕事をより効率的に進められるかを自分自身で考え、それを実行するのはとても楽しい。元々家事全般に自信があって、尚且つ好きだからこそそう考えられるのかもしれないけど、正直今の自分のこの状況……執事として御嬢様方に仕えるということに、すごくに生きがいを感じていた。

 

 周りも良い人達ばかりだし、好きなことを仕事としてできるし、本当に異世界に転生出来て良かった。家族には申し訳ない気持ちもあるけど、やはり自分の生きやすい環境には執着してしまうものだろう。

 

「これだけ好条件な環境なのに、僕はどうして積極的になれてなかったんだろうなぁ……。何も怖がることなんてないってのは分かってるつもりなのに……」

 

 ふと、昨晩アルフィ様から言われたことを思い出してしまう。今の環境に、僕は何の不満も持っていないし、それどころか自分自身の感覚的には結構楽しんでいるつもりですらいた。

 

 だが、客観的に見ると僕の態度は何処か腰が引けているように見えてしまっていたらしい。あのトラウマの所為で、人間関係に対してかなり臆病になってしまっていたのは自覚しているが、まさか無意識的に態度に出てしまうほど酷いものだったとは流石に思っていなかった……。

 

「ちゃんと改善しないとなぁ……」

 

 そうしないと、またアルフィ様に怒られてしまう。それに、僕だってもっと皆さんと仲良くなりたい。せっかく同じユニットのメンバーになれたのだから。もっとも、僕は学園生ではないので、正確にはユニットメンバーには数えられないのかもしれないけど。まぁ、そんな細かいことは今は気にする必要もない。

 

 とにかく、今後は意識的に皆さんと積極的に関わっていきたい。……アルフィ様には嫌われたくないしね。

 

「ナギサさぁん♪やっぱりここにいましたね♪」

 

 などと、改めてユニットの皆さんとの関わり方についての決意表明をしていると、キッチンの入り口からアルフィ様がひょっこりと顔を覗かせていた。耳を澄ましてみるが、リビングの方から他の方の声は聞こえてこない。要するに、現在この空間にいるのは僕とアルフィ様の二人だけということだ。だからアルフィ様は、僕に対して砕けた態度で接してきたのか。

 

 そう一人で納得しつつ、僕は作業の手を止めることなく顔だけアルフィ様に向けて返事をする。

 

「はい。今、皆様の朝食を用意しているところですよ。完成までもう少々お待ちくださいね」

 

「はぁい♪」

 

 そんな気の抜けた返事をしながら、アルフィ様はとてとてとこちらに歩み寄ってくる。てっきり僕の様子を覗きにきただけかと思っていたが、他に何か用があるのだろうか?そう思い、僕は首をかしげる。

 

「あの、僕に何か?」

 

「ふふっ♪まぁ、ちょっとした用事ですよ♪」

 

 やけに楽しそうな声色で、アルフィ様はそう言った。けど、その用事について詳細なことを話すつもりはないらしく、それ以上は特に言葉を発することなく鼻歌を歌いながら僕のすぐ傍までやってきた。

 

「えいっ♪」

 

 そして次の瞬間、そんな可愛らしい掛け声とともにアルフィ様が背中から僕にぎゅっと抱きついてきた。僕が作業中であることを考慮してか勢いは抑えめだったが、それでも少しだけ僕の集中力がそがれてしまう。主に、僕の心臓の鼓動がうるさい所為で。

 

 だ、だって仕方がないだろう?昨日初めて恋心を抱いた相手に、こんな可愛らしい態度で抱きつかれたら、そりゃ嫌でもドキドキするよ……。

 

 それに、こんな密着状態では、彼女の身体の柔らかさをもろに感じてしまう……。なんせ、アルフィ様は裸だし……。それに、僕はどうやらロリコンらしいから……、思わず身体の一部が反応しかける。いや、ちょっと手遅れかもしれない……。ま、まぁ、位置関係的にアルフィ様には気づかれないだろうけど。

 

「あ、あの……、アルフィ様……?これは一体……?」

 

「ナギサさん成分の補充です♪学園に行ったら、しばらくナギサさんとは会えませんからね。寂しくならないように、今のうちにナギサさんの温もりとか匂い、いっぱい感じたいんです♡」

 

 アルフィ様は僕の背中に顔を埋めながらそう言った。何ともいじらしい彼女の姿に、僕の心中に甘い感覚が広がっていく。この人は、僕のことをどれだけ悶えさせれば気が済むのだろうか……?もう、可愛すぎて今すぐ抱きしめたい……。いやまぁ、キッチンでそんなことはしないけどね。

 

「……アルフィ様、そんな可愛らしいお姿を見せられてしまったら、私の心がどうにかなってしまいますよ……」

 

「いやん♡さり気なく褒めないでくださいよぉ♡嬉しくなってしまいますからぁ、えへへ……♡」

 

「そういうところもすごく可愛いです。ですがアルフィ様、こんなことをしていたら、いずれ他の人に見つかってしまいますよ?」

 

 他の人……というか、ユーアさんなんだけどね。基本的にキッチンには僕とユーアさんの使用人組しか立ち入らない。だから、ユーアさん以外の人に気づかれる可能性はいたって低いけど、ユーアさんに関しては確実にここにやってくる。

 

 ずっとこうしてアルフィ様に抱きつかれていたいという気持ちもあるけど、そんなことをしていたらユーアさんに見つかってしまう。何となくだけど、こんなところを誰かに目撃されるのはまずいような気がする。

 

「それがどうしたのです?」

 

 しかし、アルフィ様はあっけらかんとそう答えた。僕とは違い、何の危機感も抱いていなかった。まずいと思っているのは、どうやら僕だけのようだった。

 

「誰に見られても別に良いじゃないですか♡疚しいことなんて何もないのですから♡もしかして、ナギサさんの世界では男女の関係は隠すものだったのですか?」

 

「そ、そうですね。あまりオープンにする人はいなかったかと。僕自身にはそう言う経験もなかったので、実際のところはよく分からないのですが」

 

「なるほど。でも、こちらの世界では男女関係は基本的にオープンなので、コソコソする必要はありませんよ。堂々とイチャイチャできます♪」

 

「そ、そうなのですね。それなら……、まぁ……良いのかな……?」

 

 やっぱり、こういう感性の違いにはまだ時々翻弄されてしまう。けど、郷に入れば郷に従え精神に乗っ取り、今後は僕もアルフィ様との関係はなるべくオープンにしていくことにしよう。

 

「えへへぇ……♡ナギサさんの匂い、好き……♡とても落ち着きますぅ♡」

 

「ア、アルフィ様、頬擦りされるの、ちょっとくすぐったいですよ……」

 

「ふふっ、ごめんなさぁい♡でも、止めてあげません♡」

 

「それは残念です、ふふ」

 

「その割には嬉しそうですよ? ナギサさぁん♪」

 

「嬉しくないわけがないじゃないですか。僕だって、アルフィ様のことをお慕いしているのですから」

 

「んもぅ……♡またそんなこと言って私を喜ばせようとしてくるんですから……♡これじゃ、何時まで経ってもナギサさんから離れられませんよぉ、えへへ……♡」

 

 そんな感じで、しばらく僕とアルフィ様は何ともこそばゆいやり取りをしていた。その間も、当然僕は手を休ませることなく皆さんの朝食の準備に力は入れ続けていた。仕事は仕事としてちゃんとこなす。それが当たり前だ。

 

 それから少しした頃、ふと僕はキッチンの入り口の方から何処となくジトっとした視線を感じたような気がした。

 

 もしやと思い、僕は恐る恐るキッチン入り口の方へと視線を向けた。視線の中に明らかな負の感情が込められていたので、正直振り向くのは怖かった。けど、そうも言っていられないだろう。

 

「……」

 

 するとそこには、入り口からこちらを睨む黒髪猫耳メイド、ユーアさんの姿があった。まぁ、そうだろうと思ったさ。先ほども言ったように、ここには僕とユーアさん以外の人は滅多に立ち寄らないからな。

 

 僕はユーアさんの裸身を視界に収め、少しだけ自分の中の性欲が刺激される感覚を覚える。ロリコンを自覚した瞬間これか……。呆れてしまう……。

 

 だが、すぐに彼女の冷ややかな視線で僕の思考は冷静な状態に引き戻された。よ、喜んで良いのか悪いのか、全然分からない……。とにかく、ユーアさんの視線が怖かった……。

 

「え、えっと、おはよう……ございます……、ユーアさん……」

 

「あら、おはようございます、ユーアさん。いらっしゃったのですね。気づくのが遅くなり申し訳ございません」

 

 一応朝の挨拶は大切だろうということで、僕は少し言葉に詰まりながらではあるがユーアさんに朝の挨拶をする。すると、アルフィ様もようやくユーアさんの存在に気づいたようで、一度僕の背中から離れてユーアさんに挨拶の言葉をかけていた。

 

「はい、おはようございます、お二人とも」

 

 ユーアさんはというと、アルフィ様が振り向いた瞬間に先ほどまでの負のオーラをしまい込み、いたって平常心を装い僕たちにそう挨拶を返してくれた。流石の切り替えの早さに、僕は感心してしまう。

 

 などと考えていると、一度離れたはずのアルフィ様が再び僕の背中にべったりとくっついてきた。あれで終わりではなかったようだ。

 

「あ、あの、アルフィオーネ様、こんな時間にどうかなさったのですか……?」

 

「今、ナギサさんから元気をいただいているんですぅ……♡でないと、学園に行った時、寂しい思いをしてしまいますからぁ……」

 

「さ、寂しい思い……って、まさか……」

 

「そのまさかですよぉ……♡昨晩、ようやく……♡♡」

 

「えっ、う、嘘……。そんなことって……」

 

 やけに声が蕩けているアルフィ様と、そんな彼女とは対照的に少し声のトーンが低めなユーアさんがそんな会話をしている。ちょっと居心地が悪い。

 

「も、もしかして昨晩聞こえてきた変な声って……」

 

「き、聞こえてしまっていたのですか……? ちょっと恥ずかしいですね……♡で、でもまぁ、そういうことです……、えへへ♡」

 

「えっ、ええっ!?」

 

「……っと、これで補給完了です♪ナギサさん、ありがとうございました♡」

 

「あ、い、いえ……」

 

 そう言うとアルフィ様は次こそ僕の身体から離れ、そして未だに呆然と立ち尽くしているユーアさんのもとへと歩いていく。いや、ユーアさんに近づくというより、出入り口に向かっていると言った方が正しいのかな。

 

「ユーアさんも、きっと大丈夫ですよ。私が保証します♪」

 

 そうして最後に、ユーアさんの耳元でそう囁いたアルフィ様は、そのままキッチンから出て行ってしまった。うーん、今この状況で僕とユーアさんを二人きりにされるのはちょっと怖いなぁ……。

 

 それと最後の言葉……、あれは一体どういう意味なのだろうか……?

 

 まさか、昨晩アルフィ様が言っていた、アルフィ様以外に僕を慕ってくれている人、というのはユーアさんのこと……だったりするのか?い、いやいや、そんなまさか……。で、でも、絶対に違うと断言もできない……よね……。

 

「……ナギサさん、アルフィオーネ様とその……そう言う関係になったんだ……?」

 

「え、えっと……、まぁ……うん……、そうかな……」

 

「ふーん……」

 

 ユーアさんが再びジトっとした視線をこちらに向けてくる。うっ、ものすごい負のオーラだ……。でももし、この視線が嫉妬によるものだったら……?あー、くそっ、ユーアさんの考えていることが分からない……。

 

「ひ、ひとまず、朝食の用意……済ませよう……?」

 

「分かってる」

 

 そう言ってユーアさんはお馴染みのフリルエプロンを身につけ、それから僕の隣に立ち朝食の準備に取り掛かり始めた。

 

「……」

 

 何処となく、包丁の扱い方がいつもより荒々しく見えたのは、きっと僕の気のせいなんかじゃないはずだ……。怖い……。

 

 それと、時折こちらにチラチラと視線を投げかけてくる。本当に気になる……。気になりすぎてヤバいよ……。

 

 でもなぁ、直接訪ねるなんてこと、僕にはできないし……。だって、自意識過剰とか思われそうじゃん。くっ、どうすれば……。

 

 そんな悶々とした気持ちを抱えながら、僕はユーアさんの様子を伺いつつ皆さんの朝食の準備を黙々と進めるのだった。言わずもがな、キッチン内には非常に気まずい雰囲気が漂っていたよ……、はぁ……。



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ユーアさんの気持ちと、自信が持てない僕

 キッチン内はしばらく静寂に包まれていた。正直、気まずくてユーアさんに話しかけられなかった……。相も変わらず、僕はビビりのようだ。

 

 そんな感じの雰囲気ではあったが、朝食の準備は着実に進み、僕らの無言の連携により支度はすぐに終わった。出来上がった朝食を、二人で協力してダイニングまで運ぶ。その途中、僕は勇気を出してユーアさんに話しかけてみることにした。

 

「あ、あの……、ユーアさん……」

 

「……何?」

 

 少し低めのトーンで、ユーアさんはそう一言だけ返事をしてくる。その瞳はまだ恨みがまし気ににも見えるが、よく見てみるとその奥にほんの少しだけ期待しているような色も覗かせているような気がした。

 

 本当に……、本当に僕の予想は当たっているのか……?分からない……。まだ全然自信が持てない……。ただの自意識過剰なのではないかという考えがぐるぐると脳内を駆け巡っている……。

 

 下手なことを言ってユーアさんとの関係に傷をつけたくない。でも……、このまま何もしないというのも、それはそれで何か引っ掛かりを覚えてしまう……。ど、どうすれば良いんだ……。

 

「もしかして、アルフィオーネ様とのことで何か?」

 

「あ、え、えっと……、その……」

 

 言葉が出ない。話すべきかどうか決め切れない。一体、何が正解なんだ……。彼女にもっと近づくための一歩は、どうすれば踏み出せるんだ……。やはり僕は、以前までの自分から変わることはできないのだろうか……。悔しさから、僕はユーアさんから目を逸らし、顔を下に俯かせてしまう。

 

「……ふーん、まだ分からないんだ……」

 

 だが次の瞬間、ユーアさんは小さくポツリとそう呟いた。昨日までの僕ならばきっと聞き逃してしまっていただろうその言葉は、しかし今の僕の耳にはちゃんと届いた。

 

 僕ははっとしてユーアさんの顔を覗き込む。すると僕の瞳に、寂し気な表情を浮かべるユーアさんの姿が映る。心無し彼女の瞳は潤んでいるように見えた。

 

 ……いや、僕はちゃんと変われている。昨日までは見えなかった彼女たちの姿が、今はちゃんと僕の瞳に映っている。そして、彼女たちの感情も聞こえている。ここまで分かっているのに、自信だけが足りなかった……。

 

 自分に対して後ろ向きなまま彼女たちに歩み寄ったところで、その先に何も見いだせない。僕が僕を見止めてあげないと、本当の意味で変わることなんてできないのかもしれない……。

 

 僕に……できるか……?しっかり前を向くことが……。姿勢だけじゃなく、心も前向きにさせることが……。

 

「あ、あのさ……、ユ、ユーアさんって……」

 

「う、うん……」

 

 僕が口を開くと、ユーアさんの瞳には再び希望の光が灯る。目の前でこんなに分かりやすい反応をしてくれているんだ。ユーアさんを……、いや、僕を信じろ……。

 

「もしかして……さ……、僕の……」

 

「ふわぁ、今日も良い匂いだねぇ♪」

 

「「わっ……!?」」

 

 僕が次の言葉を言い出そうとした瞬間、声を弾ませながらフィノレア様がキッチン内に入ってきた。突然のことだったので、僕もユーアさんも肩をびくつかせて驚きの声を上げてしまった。

 

 というか、なんてタイミングだ……。これじゃまるで、漫画のような展開じゃないか……。でも、フィノレア様の無邪気な表情を見れば、彼女が決して悪意を持ってここにやってきたわけではないことは理解できる。

 

 だから、これはただの偶然……。運が悪かっただけなのだ……。それに、ユーアさんの思いはほとんど確信できたと言って良いと思っている。ならば、次のチャンスを伺う他ないだろう。

 

「ありゃ?どうしたの?二人とも」

 

 しばらく固まってしまっていた僕とユーアさんの姿を見て、フィノレア様は不安気に首をかしげて僕たちの様子を伺ってくる。しまった、無言の時間が長すぎたな……。フィノレア様に心配をかけてしまうのは本意でない。

 

「っとと、申し訳ございません。少々考え事をしてしまっておりました」

 

「あっ、そうなんだ。タイミング悪かったかな?ごめんね」

 

「いえいえ、フィノレア様が謝る必要はございません。それはそうと、おはようございます。もうお食事は出来上がっておりますので、もう少しだけお待ちください」

 

 僕は気持ちを切り替え、フィノレア様に向き直り言葉を返す。ユーアさんも直に硬直状態から抜け出し、メイドモードに戻った。

 

「おはようございます、フィノレア様。今からお食事をお運びいたしますね」

 

「あ、はーい♪あっ、今日もお手伝いしたい!」

 

「ふふっ、ありがとうございます。では……、これをお願いします」

 

「うん、任された♪」

 

 そう言ってフィノレア様が皿を抱えてキッチンから出ていった。するとユーアさんは先ほどまでのメイドモードをオフにして大きく嘆息した。

 

「はぁぁ……、なんだかなぁ……」

 

「さ、さっきのこと……なんだけどさ……、また帰ってきてから話そう?その方がお互い落ち着いて話せるだろうしね」

 

「……分かった。き、期待しても……良いんだよね……?」

 

「え、えっと……、多分……?」

 

 そんな曖昧な返事をしてしまう。確信はしているけど、こういうところがまだまだなんだろうな。これからもっと頑張らないと。

 

「い、いまいち信用できない……。け、けど、期待しちゃうからね……?違ったら嫌……だからね……?」

 

「う、うん。そ、それじゃあ、残りのお皿も運んじゃおう」

 

「うん、了解」

 

 それから僕とユーアさんの二人で手分けして食事が盛り付けられた皿を順々に運んでいった。僕とユーアさんの間に、先ほどまでの気まずさはもうほとんどなかった。

 

 にしても、まさかユーアさんが僕のことを……。アルフィ様もそうだったけど、どうして僕なのだろう……?もちろん嬉しいよ?嬉しくはあるんだけど、アルフィ様ともユーアさんとも、出会ってまだ数日しか経っていないのだ。そんな数日間の付き合いしかない僕に一定以上の感情を抱くのが何とも不思議でならない。

 

 僕、女の子に一目惚れされるほど良い容姿しているのかなぁ?ただただ年の割に小さくて頼りない男にしか見えないと思うのだけど……。くっ、言っていて悲しくなってきた……。本当、どうして男性器以外育たなくなってしまったのだろう……?悔しくてしょうがないよ、僕は。……うん、この話はひとまず置いておこう。これ以上は僕の心が病んでしまう……。

 

 でもまぁ、理由がどうであれ、彼女たちが僕のことを思ってくれるなら、僕も当然その思いに真剣に向き合うつもりでいる。これは、言ってしまえば僕なりのけじめみたいなものだ。

 

 改めてそんな決意を固めながら、僕はユーアさんの背中を負って、最後の皿を手に持ちキッチンを出た。彼女の細い尻尾は、少しだけ嬉しそうにゆらゆら動いていた。……あくまで見ていたのは尻尾だから……。お、お尻じゃないから……。

 

    *

 

 そうして全ての皿を運び終わり、今は全員がダイニングテーブルの周りに集合している……のだが……、

 

「くん……くん……、すん……すん……」

 

「ひぁ……♡く、くすぐったいですって……、フィノレアさん……」

 

 よく分からない光景が広がっていた。唐突にフィノレア様がアルフィ様の身体の匂いを嗅ぎ始めてしまったのだ。いや、本当に何なんだろうね、この状況……。

 

「なんかアルフィ様、昨日とは違う臭いしてるよ?すん……すん……、何処かで嗅いだような臭い……だね……」

 

「えっ、に、臭います!?それってもしかすると……」

 

「あぁ、この臭い、ナギサくんの臭いだ!」

 

 あっ……、臭いで気づかれた……。やっぱり分かってしまうものなのだろうか?い、いやまぁ、今朝タオルで身体を簡単に拭っただけだから、臭いはそれなりに残ってしまっていたのかもしれないな。

 

 それに、フィノレア様は狐系の亜人族だったはずだ。狐がどれほどの嗅覚を持っているかは僕にはよく分からないが、少なくとも普通の人間よりかはずっと敏感だと思う。そりゃ、気づかれないはずがないよね。そのことに何故僕は気づけなかったのか……。

 

「んぅ……♡そ、そうですか、えへへ……♡ナギサさんの臭いがちゃんと染みついているのですね……、嬉しい……♡」

 

 周囲に他のユニットメンバーが勢ぞろいしているにもかかわらず、アルフィ様はうっとりとした表情を浮かべてしまわれていた。この人、本当に隠すつもりがさらさらないようだ。まぁ、それがこの世界の普通らしいのだけど。

 

「すん……すん……すん……、なんか……ここから特に強い臭いがするね……」

 

 そう言いながら、フィノレア様はアルフィ様の剥き出しの股間に鼻を近づけ、くんかくんかと臭いを嗅ぐ。フィノレア様はフィノレア様で結構大胆だなぁ……。これが亜人族の普通なのだろうか……?

 

「ひやん……♡そこ……本当にくすぐったいですよぉ……」

 

「んん、アルフィ様とナギサくんって、もしかしてパートナーだったり?」

 

 アルフィ様の股間から顔を放したフィノレア様は、今一度アルフィ様に向き直って確信を突く一言を口にした。そんなフィノレア様の言葉に対し、アルフィ様は……

 

「はい、その通りです♪」

 

 と、満面の笑みで肯定の言葉を言い放った。すごいなぁ、躊躇がないなぁ……。僕は未だに慣れないってのに……。

 

「えっ、ええっ!?も、もうそんなところまで……!?」

 

「アルフィったら、行動に出るの早かったわねぇ」

 

 人間族の姫様と魔族の姫様がそれぞれそんな言葉を漏らす。シャルティーナ様はかなり驚いているようだったが、それに対してラトナータ様はそれほど驚いた様子はなく落ち着いていた。

 

「ア、アルフィ……、貴女……」

 

「す、すごいです……」

 

 一方、エルシャローゼ様とリレイナ様は唖然とした表情を浮かべてしまわれていた。うん、まぁそう言う反応になるのは仕方ないよね。僕だって、早いなぁと驚いていたわけだし。

 

 というか、僕とアルフィ様が関係を持ったことについて、姉であるエルシャローゼ様はどう思うのだろう?あまり良く思われていなかったらどうしよう……。

 

「ふ、ふーん、そ、そう。よ、良かったじゃない、アルフィ」

 

「えへへ、ありがとうございます、お姉様♪」

 

 と思ったが、エルシャローゼ様はそんな祝福の言葉をアルフィ様に送っていた。ちょっと顔が引きつっていたけど、悪感情を抱いているようには見えなかったのでひとまず安心……かな。

 

「ふふふ、お姉様も頑張ってください♪」

 

「し、知らないっ」

 

 アルフィ様がエルシャローゼ様に耳打ちし、その耳打ちの内容を聞いたエルシャローゼ様は顔を真っ赤にしてしまっていた。もしかすると、エルシャローゼ様にも意中のお相手がいるのかもしれないな。

 

「お、おめでとうございます、アルフィさん」

 

「おめでとう、アルフィ」

 

「ふふっ、良かったじゃない」

 

「ええ、ありがとうございます、リレイナさん、シャルティーナ様、ラトナータ様」

 

 その後、リレイナ様やシャルティーナ様、ラトナータ様からも祝福の言葉が送られ、アルフィ様は嬉しそうに顔を綻ばせながらそう言葉を返していた。どうやら、僕とアルフィ様の関係を皆さんに受け入れてもらえたようだ。良かった。

 

 そんな、僕とアルフィ様との関係の報告も終わり、僕たちはようやく朝食を摂り始めたのだった。

 

「私、ナギサさんの隣です♪」

 

「え、ええ……、そうですね……」

 

「ナギサさぁん、食べさせてほしいですぅ♡」

 

「え、ええっ!?」

 

 食事中、僕の隣の席に腰かけたアルフィ様が、ひっきりなしに僕に甘えてきていたのは言うまでもないだろう。そして、そんな僕たちに、他のユニットメンバーたちから生暖かい視線が注がれていた。……いや、ちょっとばかし冷ややかだったかもしれない。まぁ、どちらにせよ、恥ずかしいことに変わりはなかったのだけど……。

 

 その後、各々朝食を済ませた御嬢様方は学園に行く準備を整えるべくそれぞれの自室に戻っていった。その間に僕は朝食の後片付けを済ませる。

 

 それから、着替えを終えて荷物を持った皆さんが再びリビングに集合し、そして学園へと出発した。最後にアルフィ様に口づけをせがまれたが、流石にそれは恥ずかしかったので丁重にお断りした。

 

「むぅ、ナギサさんの意地悪……」

 

「も、申し訳ございません……。ですが、こればかりは流石に……」

 

「仕方ないですねぇ……。じゃあ、帰ってきたら私のこと、ちゃーんと構ってくださいね♡約束ですよ♡」

 

「は、はい。分かりました、アルフィ様」

 

 そんなやり取りをした後、アルフィ様も学園へと向かわれたのだった。これで、今日僕はアルフィ様とユーアさんの二人と約束をしたことになるな。だが、僕の気持ちは軽かった。というか、少し心が弾んでしまってすらいた。

 

「さて、それじゃあ今日も1日、仕事頑張ろう」



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アルフィ様は甘えん坊。時々悪戯っ娘

「ただいま戻りました♪」

 

 細々とした業務を済ませ午後になった頃、玄関先からそんなアルフィ様の声が聞こえてきた。どうやら、今日の学園での日程が終了したようだ。

 

 僕は使用人専用居室から出て彼女たちを出迎えに行く。だが、廊下の先……玄関にはどう見てもアルフィ様の姿しかなかった。

 

 他の皆さんの姿が全然見当たらない。もう各々自室に戻られたのか?いや、そもそも物音ひとつ聞こえてこないんだよなぁ……。となると、まだアルフィ様しか帰ってきていない、ということだろうか?

 

「お帰りなさいませ、アルフィ様……ぐほぁっ……!?」

 

 僕が急いで玄関先に佇むアルフィ様のもとへと駆け寄ると、次の瞬間には何故か僕は床の上に仰向けに倒れてしまっていた。

 

「ナギサさんっ、会いたかったですぅ♡」

 

 そして、仰向けに寝そべる僕の上にはアルフィ様。どうやら僕は、アルフィ様の全力タックルを受けて、その勢いのあまり背中から後ろに倒れてしまったようだった。筋力が上がったとはいえ、まだまだ僕は貧弱のようだ。悲しいなぁ……。

 

 い、いや、いきなりのことだったから構えられなかったんだ。きっとそういうことなんだ。だから、うん。落ち込む必要なんてない。……そう思うことにしよう。

 

「あ、あはは……、僕も会いたかったですよ、アルフィ様。ですがまさか、勢いよく飛び込んでこられるとは思っておりませんでした……。受け止めきれず、申し訳ございません。お身体、大丈夫ですか?」

 

 僕は、自分たち以外に誰もいないことを良いことに、僕の身体の上に乗っかったアルフィ様の身体を両腕で抱きしめつつ、彼女の身体に怪我がないか確認する。受け止めきれず僕が倒れてしまったことでアルフィ様に怪我を負わせてしまっていたら目も当てられないからね。というか、責任を感じてしまいそうだ。

 

「え、えへへ、ナギサさんとやっと会えたのが嬉しくて、思わず飛びついちゃいました♡私は大丈夫ですが、ナギサさんは?その、痛いところはありませんか?」

 

 だが、どうやらアルフィ様には怪我もないらしい。良かった、安心した。それと、セリフがいちいち可愛いのはどうしてでしょうかね?惚れた弱み?それとも、アルフィ様は男を喜ばせる天才?まぁ、どっちでも良いか。

 

「私は大丈夫ですよ。とにかく、アルフィ様が御無事で何よりです」

 

「ナギサさん、やっぱり優しいです♡ますます好きになっちゃいますよぉ♡」

 

 うっとりとした微笑みを浮かべながら、アルフィ様はそう言った。そんな彼女の全身から幸せオーラが噴出していた。ただ執事として当たり前の心配をしただけなのだけど、アルフィ様はそれすら喜んでしまわれているようだ。

 

「執事として、ご主人様の身を案じるのは当然のことでございます」

 

「もぅ、今は私たちだけなのですから、もっと砕けた話し方で良いんですよ?というか、皆さん公認の仲なのですし、もう私に畏まる必要なんてありませんよ。そもそも、お父様だって初めから畏まらなくて良いと言っていたではありませんか」

 

 アルフィ様の表情がころころ変わる。先ほどまで幸せそうな笑みを湛えていたその顔は、今は不機嫌そうにしかめられている。頬をぷくっと膨らませている姿が可愛らしいと思ってしまったことは黙っておこう。

 

「そ、そう言われましても……、一応仕事ですから……」

 

「はぁ、やっぱり頑固です、ナギサさん……。まぁ、別に良いですけど」

 

「えっと、ところで、他の皆様は?一緒じゃなかったのですか?」

 

 僕の返答を聞いて嘆息するアルフィ様。僕としては、やはり立場は弁えるべきだと思っている。だから、アルフィ様達に気軽に接するなんてことはできない。でも、確かにちょっと頑固なのかもな。

 

 などと思いつつ、僕は先ほどから気になっていたことをアルフィ様に尋ねてみることにした。未だにアルフィ様以外の方々がユニットに戻ってくる気配がない。まさか、仮病で途中早退……とか……?いやいや、アルフィ様に限ってそれは流石にないだろう。……ないよね?

 

「あっ、他の皆さんももう少ししたら戻ってくると思いますよ。私はナギサさんに早く会いたいがために、学園から走って帰ってきたので♡」

 

「そ、そうだったのですね……、それなら良いのですが……」

 

 うん、やはりアルフィ様はそんなことはなさらないよね、安心した。というか、少しでも疑ったりしてすみませんでした、と、一応心の中で謝罪しておく。

 

「はわぁ、ナギサさんの温もり、やっぱり安心しますぅ♡」

 

「そ、それは嬉しいのですが……、そろそろ他の皆様もお帰りになられるのですよね……?このままでは皆様に見られてしまいますよ……?」

 

「良いじゃないですかぁ♡見せつけちゃいましょうよ♡」

 

 そう言いながらさらに強い力で僕に抱きついてくるアルフィ様。この人、本当に甘えん坊だなぁ。なんか、事あるごとに僕に抱きついてきている気がする。妹だから……というのが関係していたりするのかな?そこら辺はよく分からないな。けどまぁ、一つ言えることとしたら、滅茶苦茶可愛い。

 

 可愛いし、甘えられることはとても嬉しいことなのだけど……、やはり僕としてはこんな状況を他の皆さんに見られてしまうということはちょっとばかし恥ずかしい。だから、今は我慢してほしいんだけど……、そういうわけにもいかないのかなぁ……。

 

「ちゅっ……♡えへへ……♡」

 

 などと考えている間に、アルフィ様が啄むようなキスをしてきた。この人、本気で止めるつもりがないらしい。このままだと、そのまま行為にまで発展してしまいそうだ。アルフィ様ならば本気でやりかねないのが怖いところだ。

 

「あ、あの……、こんな場所で……んっ……、してしまうのは本気でまずいと……んんっ……、お、思うのですが……んむっ……」

 

 アルフィ様によるキスの雨が止まない。その所為で、思ったように言葉が紡げなかった。だが、それを嫌だと思う自分は何処にもいなかった。キスをされること自体はこの上なく嬉しいことだから。

 

「ふふっ、キスする度にナギサさんのお顔が少しずつ赤くなっていくのがちょっと面白いです♪それに、何だか可愛い♪んんっ……♡ちゅっ……♡んへへ♡」

 

「い、言わないでください……、恥ずかしいんですから……。そ、それと……、こういうことは……もっと時と場所を考えていたしましょう……?」

 

「……仕方ないですねぇ……、分かりました」

 

 そう言うとアルフィ様はあっさりと僕の顔から自身の顔を放し、それからゆっくりと身体を起し立ち上がった。聞き分けの良い御嬢様で助かった。あのままだと、僕の理性が決壊してしまいそうだったからね。幼いのに、どうしてアルフィ様はこんなにエッチなのだろうか……。

 

「では、着替えてまいりますね」

 

 そう一言僕に告げると、アルフィ様は自室に向かって歩みを進めた……と思ったら、何故かすぐに立ち止まってしまった。丁度僕の顔の真横で。

 

 僕は未だに廊下の上に仰向けになったままである。対して、アルフィ様は立っている。そして、彼女の服装は制服。女子なので当然スカートである。そうすると僕とアルフィ様との位置関係的に、僕の眼前に広がる光景は必然的にアルフィ様のスカートの中……ということになるわけで……。

 

「っ……」

 

 アルフィ様の身につけていた純白の下着が目に入ってしまった。全裸を見ている上、アルフィ様とそう言う行為まで行ってしまっているのに何を言っているんだという話ではあるが、僕は目の前に広がる光景に思わずドキドキしてしまっていた。

 

 今までパンチラでこんな感覚になることはなかった。でも、今はアルフィ様のスカートの中を見てドキドキしている。僕って、本当にロリコン何だなぁ……。改めて思い知らされた……。

 

「あっ、ナギサさん、私のパンツ見てますね?ふふっ、えっちな人ですね♪」

 

「す、すみません」

 

 クスクスと可笑しそうに笑いながら、アルフィ様が意地の悪い瞳で僕を見下ろしそんなことを言ってきた。正直、何も言い返す言葉がない。だから、素直に謝罪の言葉を口にする。

 

「いえいえ、構いませんよ♪そもそも、わざと見せているんですからね♪ちょっとナギサさんをからかいたくなっちゃっただけです♪」

 

「えっ!?か、からかうのは止めてくださいよ」

 

 と思ったら、僕はただ単にアルフィ様にからかわれていただけだったようだ。6歳も年下の女の子に遊ばれてしまっている……。なんか悔しい。

 

「えへへ、ごめんなさい♡では、今度こそ着替えてきますね。あっ、そうそう、続きは今晩……しましょうね?」

 

「……そうですね。気が向いたら、いたしましょう」

 

 少し潤んだ瞳で僕の顔を覗き込んでくるアルフィ様に対し、僕は仕返しのつもりでそう言ってやる。分かっている……、大人気ないことくらい……。それでも、やられっ放しっていうのはなんか嫌だった。

 

「えっ、そ、そんなっ……、し、してくれないのですか……?」

 

 僕の返答が予想外だったらしく、アルフィ様は一瞬ぽかんとしてしまっていたが、すぐに悲し気な表情に変わる。……罪悪感がすごいな、これ……。本当に大人気がなさ過ぎたな……。

 

「すみません、冗談です」

 

 そう言ってから僕も身体を起し、それからアルフィ様の傍まで近寄り、その小さな頭を撫でる。謝罪の念を込めて。

 

「すみません、からかいのつもりだったのですが、流石に大人気なさすぎました」

 

「むぅ、本当です。言って良い冗談と悪い冗談があると思います」

 

「おっしゃる通りですね、申し訳ございません」

 

「まぁ良いです、許します。そ、それでその……、今晩またナギサさんのお部屋……訪ねても良いんですよね……?」

 

「はい、来てください。続き、ちゃんとしましょう」

 

 僕は、アルフィ様の白くて柔らかな頬を撫でながら、しっかり彼女の瞳を見つめてそう言う。僕だって、もっとアルフィ様とイチャイチャいしたいからね。

 

「はい、絶対行きます♡楽しみにしてますからね♡」

 

「僕も、楽しみにしてます」

 

「えへへ、はい♡」

 

 照れたように、しかし嬉しそうにはにかんだアルフィ様は、次こそ自室へと向かって言った。

 

「「ただいまー!」

 

「戻ったわ」

 

 廊下の奥に消えていくアルフィ様の後ろ姿を眺めていると、唐突に玄関の扉が開き、そこから他の御嬢様方がぞろぞろとユニット内に入ってきた。もう少しで僕とアルフィ様のやり取りが見られてしまうところだった。危なかったなぁ……。

 

「お帰りなさいませ、御嬢様方」

 

「アルフィは?」

 

「先に戻られてますよ」

 

「あー、やっぱりそうだったのね。そんな気はしてたのよね」

 

 ラトナータ様が案の定かという表情を浮かべてそう言った。僕は少し反応に困ってしまう。

 

「今日のアルフィさん、すごかったですからね……」

 

「あっはは、そうだね。まぁ、見てて面白かったけど」

 

「姉としてはちょっと心配なのだけど……」

 

 一体、学園で何があったのだろうか……?気になるという気持ちもあるが、その反面、聞くのがちょっとだけ怖い。僕が知るべきことではないようにも思えるし……。うん、ここは聞かないでおこう。

 

「ところでさ……、ナギサくん」

 

 そんなことを考えていると、不意にフィノレア様が僕にそう声をかけてきた。何かと思い、僕は首をかしげる。

 

「はい、何でしょう?」

 

「いやね、ナギサくんの身体からアルフィ様の匂いがするの。ここからでも分かるくらい強い匂いが。もしかして、あたしたちが帰ってくるまで二人でしてたの?交尾」

 

「ごほっ……げほっ……」

 

 ド直球ストレートなフィノレア様の問いかけに、僕は思わず咽てしまった。少女の口から交尾という言葉が出てくるとは……。

 

「えっ、そ、そうなの!?」

 

「わっ、わわっ……、こ、交尾……!?」

 

 エルシャ様とリレイナ様は、二人して顔を真っ赤に染めながら僕のことをチラチラと伺ってくる。一切の恥ずかし気もないフィノレア様とは対照的に、このお二人は初心な反応をしていた。年相応の反応……と言って良いのだろうか?

 

 でも、それは誤解なんだよね……。大事になる前に早く訂正しておかないと……。そう思い、僕は口を開く。

 

「し、してませんよ!?」

 

「えー、ホントかなぁ?」

 

 フィノレア様は疑惑の視線を僕に向けてくる。うっ、信じてくれないみたいだ……。本当のことなんだけどなぁ……。

 

「あら?皆さん、おかえりなさい」

 

 フィノレア様からの視線に困惑していると、背後からアルフィ様の声が聞こえてくる。どうやら、着替えを終えて部屋から出てきたようだ。

 

「それで、えっと……、どうかなさいましたか?」

 

「えっとね、ナギサくんからアルフィ様の匂いがしててね、もしかして二人はさっきまで交尾してたのかなぁって思って」

 

 現在のこの場の状況を疑問に思ったアルフィ様がそう問いかけると、フィノレア様は再びド直球な言葉をアルフィ様に投げていた。本当に躊躇がない。

 

「こ、交尾……はしてないです。た、多分、ナギサさんから私の匂いがしたのは、さっきまでずっとナギサさんに抱きついていたからだと思います♡」

 

「あっ、そうだったのかぁ。ちゅーもしてないの?」

 

「え、えっと……、それはしました、えへへ♡」

 

 アルフィ様は聞かれたことに対して素直に答えてしまった。あーあ、隠しておきたかったけど、そういうわけにはいかなかったようだ。まぁ、仕方ないか……。

 

「おお、ラブラブだねぇ♪」

 

「ふふっ、お盛んね、二人とも」

 

 フィノレア様とラトナータ様から冷やかしの言葉が浴びせられる。うん、やっぱり恥ずかしいわ、これ。多分、僕の顔相当赤くなってるんだろうなぁ。

 

「ちゅ、ちゅーって……」

 

「は、はわわわわ……」

 

 そして、多分僕と同じくらい、エルシャ様とリレイナ様の顔も真っ赤に染まってしまっていた。……もしかしたら、僕以上なんじゃないかな?

 

「幸せでしたぁ♡」

 

 ただ、そんな中でもアルフィ様は平常心だった。……恐るべし、アルフィ様……。



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ご報告と魔法の練習

「ただいま戻りましたわ」

 

 アルフィ様たち1年生組が帰ってきてからしばらく経った頃、玄関先からシャルティーナ様の声が聞こえてきた。どうやら上級生組が帰ってきたようだ。僕はリビングから出て彼女たちを迎えに行く。

 

「お帰りなさいませ、シャルティーナ様。それから、ユーアさんも」

 

「はい、ただいまですわ」

 

「ただいま戻りました。それでは、すぐに着替えてまいります」

 

「では、私も着替えてまいりますわ」

 

 そう言ってユーアさんとシャルティーナ様は靴を脱いで各々の自室に戻っていった。ユーアさんは心無しそわそわしているようだったな。まぁ、僕も同じようなものなんだけどさ。

 

「……何時話そうかなぁ……、あのこと……」

 

 例の件について、ユーアさんと何時話すべきか、僕は頭を悩ませる。できることなら、二人きりでゆっくり落ち着いて話したい。やっぱり……、夜を狙うのが一番なのかなぁ……。となると、アルフィ様との約束をどうしようか……。

 

「ナギサさん、こんなところでぽつんと佇んでどうしたのですか?」

 

 そんなことを考えていると、不意に背後からアルフィ様に話しかけられた。確かに、玄関先で一人でつっ立っていれば変に思われるのも当然だよね。

 

「あ、いえ、その……」

 

 僕は返事に迷う。ユーアさんとのことについて、アルフィ様には話しておくべきなのか考えてしまう。それと、今日の夜の約束のことも……。

 

 いや、ここは話しておくことにしよう。もしかしたらアルフィ様だけでなくユーアさんとも関係を持つことになるかもしれないのだ。報告は必要なことだろう。

 

「アルフィ様が昨晩言っていらっしゃった、アルフィ様以外にも僕を慕ってくれている方がいる……というお話についてなのですが……」

 

「もしかして、見つけましたか?」

 

「恐らくですが……、はい」

 

「そうですか。ふふっ、できるじゃないですか、ナギサさん♪早速一歩歩み寄ってくれたのですね。私、嬉しいです♪」

 

 僕の言葉を聞いたアルフィ様は、本当に嬉しそうに満面の笑みを浮かべてそう言ってくれる。そんな彼女の姿を見れただけで、一歩を踏み出してみて良かったと思えてくる。やっぱり、僕はアルフィ様に相当惚れこんでしまっているみたいだ。

 

「それで……ですね……、今日の夜なのですが……」

 

「分かっています。私のことは気にせず、ちゃんとお話ししてください。私との約束はその後で構いませんから♡」

 

「あっ、今日は無し……ということにはならないのですね」

 

「当然です♡ナギサさん、私が今どれだけ我慢しているか分かっているのですか?もう、早くイチャイチャしたくて仕方がないのです♡」

 

 ほんのり上気した顔や潤んだ瞳、そして、幼くも綺麗な裸身を隠すことなく、アルフィ様は僕に摺り寄ってくる。廊下には現在、僕たちしかいない。だから、僕はアルフィ様の身体をそっと抱きしめる。

 

「僕も、早くアルフィ様を感じたいです。ですから、お預けにならなくて良かったです。安心しました」

 

「そうですか、えへへ♡もしあれでしたら、その方も交えて3人で……なんていうのも楽しそうですね♪」

 

「そ、それは……その方次第ですね……」

 

 いきなりユーアさんとそこまで進展できるとは考えていない。そもそも、アルフィ様といきなり肉体関係まで持ってしまったことに、僕は未だに少し驚いているのだ。普通そういうのって、もう少しお互いの仲を深めてからじゃないのかなぁ……と思うのだけど、これも異世界クオリティなのだろうか。

 

「あっ、そうそう、これから私たち、魔法の練習をするんです。ナギサさん、良ければ見学してみませんか?」

 

 などと考えていると、アルフィ様は唐突に別の話題を振ってきた。魔法の練習か……、何だか面白そうだな。優秀な御嬢様たちが魔法を使う姿、是非とも見てみたい。

 

 だが、果たして何処で練習をするのだろうか?学園の敷地内に魔法の練習をするための施設が設けられていたりするのだろうか?

 

「それは是非とも見学させていただきたいです。ですが、場所はどちらで?」

 

「ここですよ。このユニット内です」

 

 このユニット内?どういうことだ?このユニット内にそんな練習施設があるのか?少なくとも、僕はそんな施設は見たことがない。一体、何処にあるのだろうか?そのことについて、僕はアルフィ様に尋ねてみる。

 

「そ、そうなのですか?そんな施設があるなんて初耳です……。それは何処に?」

 

「あら、ナギサさんはまだ知らなかったのですね。まぁ私も、昨日シャルティーナ様から教えていただいたばかりで、実際にそこに足を踏み入れたことはないのですが」

 

 アルフィ様はそう一言前置きしてから、再び口を開く。

 

「このユニットの地下に魔法の練習ができるお部屋があるようなのです」

 

「地下……?そ、そうだったのですか……」

 

「すごいですよね。地下施設まで備わっているなんて、やはり王都の学園だけはあります。私、早く行ってみたいです♪」

 

「確かにすごいですね。僕も少し気になります」

 

 と、その時、廊下の奥に見える扉が開くのが見えた。ユーアさんの専用居室だ。僕は慌ててアルフィ様から身体を放す。まぁ、ユーアさんには朝、既に僕とアルフィ様がイチャイチャしているところを見られてしまっているんだけどね。それでもやっぱり、恥ずかしいことに変わりはない。

 

「むぅ、ナギサさん……、態々離れなくて良いじゃないですか……」

 

「ご、ごめんなさい、アルフィ様。でも、やっぱり少し恥ずかしいです」

 

「まぁ良いです。少しずつ慣れて言ってくださいね」

 

「が、頑張ります」

 

 これ、慣れるまでかなり時間がかかりそうだなぁ……。けど、アルフィ様に言われてしまっては、頑張るしかないだろう。

 

「あ、あの……、ナギサ……さん……」

 

 僕がアルフィ様とお話をしている間に、ユーアさんが僕たちの近くまでやってきていた。そして、もじもじしながら僕の名前を呼ぶ。この人、結構態度に出やすいなぁ。例の件について気になっているのがよく分かる。

 

「ふふっ、良かったですね、ユーアさん♪」

 

「えっ、あっ、そ、その……」

 

 僕が気づけるということはつまり、必然的にアルフィ様にも気づかれてしまうというわけで……。意味あり気な笑みを浮かべるアルフィ様の様子に、ユーアさんは戸惑いの声を漏らしていた。

 

「あら、皆さん、そんなところでどうなさったのですか?」

 

 すると、着替えを終えたシャルティーナ様が廊下の先から姿を現した。シャルティーナ様は、僕たち3人が玄関先に集まっていることが気になったようで、どうしたのかと首をかしげて話しかけてきた。まぁ、そりゃ気になるよね。

 

「あっ、い、いえ、何でもありません、姫様」

 

「あら、そう?それなら良いのだけど」

 

「シャルティーナ様、昨日お話しされていた地下施設で魔法の練習をしてきてもよろしいでしょうか?」

 

 アルフィ様が話題を変えてシャルティーナ様に話しかけに行く。僕たちに気を使ってくれたようだ。アルフィ様、僕なんかよりもずっとお優しい方だ。

 

「あら、そうなの?良いわね、練習。私もご一緒しても良いかしら?」

 

「はい、もちろんです。シャルティーナ様と一緒に魔法の練習ができるなんて、とても嬉しいです♪」

 

「うふふ、嬉しいこと言ってくれるのね。それで、練習場を使うのは貴女だけかしら?それとも、1年みんな?」

 

「はい、みんなでしようって話になってます」

 

「そうなのね。それじゃあ、みんなを連れて早速行きましょう」

 

「はい、よろしくお願いします、シャルティーナ様♪」

 

 そう言ってシャルティーナ様とアルフィ様は連れ立ってリビングに入っていった。二人の背中がリビングの中に消えていくのを見届けてから、僕はユーアさんへと視線を向け直す。

 

「今日の夜、またお話しよう」

 

 そして、そう一言だけ告げてから、僕もアルフィ様達を追ってリビングに戻っていく。

 

「……待ってる……♡」

 

 ユーアさんはそうポツリと呟き、僕に続いた。

 

    *

 

「いくわよ、はあっ!!」

 

「負けないよっ、それっ!!」

 

 現在、地下にある練習場に手御嬢様方が魔法の練習をしている。練習とは言っても、ほとんど遊びみたいなものだ。各々自分の魔法を使ってボールを打ち合っている。落とした人が負け、というルールらしい。

 

 これはシャルティーナ様が提案されたものだ。練習は楽しくやるべきということで、ボールを使ったゲーム風の練習になった。ちなみに、使っているボールの素材は特別な物らしく、魔法の力を加えても簡単に壊れたりはしないようだ。そんな素材まで存在しているのかと、僕は感心してしまった。

 

「え、えいっ!」

 

「私もいきますわ、はいっ!!」

 

 様々な属性魔法が打ち出され、ボールが四方八方へと飛び回る。目まぐるしいその攻防に、僕は既に目が回りそうだった。

 

「来たわね……、ていっ!」

 

 飛んできたボールをエルシャ様が魔法で弾き返した。お見事だ。やはり、このユニットにいる方々は素晴らしい魔法の才をお持ちのようだ。すごいなぁ。

 

 そして、エルシャ様の弾いたボールはアルフィ様とユーアさんの丁度中間点へと飛んでいく。それに反応したアルフィ様とユーアさんは、ほとんど同時に魔法を繰り出し、飛んできたボールを迎え撃とうとする。

 

「ナギサさんが見てるので張りきっちゃいます♪はあっ!!」

 

「わ、わたしだって!たあっ!」

 

 二人の魔法が飛んできたボールに着弾する。そして、見事にボールを跳ね返した。……のだが、

 

「うわっ、速っ……」

 

「あ、あれに反応するのは……」

 

 二人分の魔法の力が加わったボールは予想以上のスピードで直進してしまい、御嬢様方は誰も反応することができなかった。もちろん、僕も反応が遅れてしまう。

 

 だが、一つ言えることは、そのボールの直進方向に丁度僕が立っている、ということだ。そして、誰にも拾われなかったそのボールは……

 

「ぐほあっ……!?」

 

 当然、僕に着弾する。あまりの勢いに僕は受け止めることもできず、ボールに撃ち抜かれるままその場に崩れ落ちてしまう。

 

「ナ、ナギサさんっ!?そ、そんなっ!?」

 

「う、嘘っ……!?は、早く手当しなきゃ……!」

 

 微かにアルフィ様とユーアさんの慌てたような声が聞こえてきたような気がしたが、意識がもうろうとして上手く判断ができない。ぐるぐると回る世界の中で、僕は思った。……魔法の威力は強烈だ……と。

 

 そうして次の瞬間、僕は意識を失った。



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ようやく届いた思い

「んん……、んんぅ……。こ、ここは……ベッド……?」

 

 目を覚ますと、そこはベッドの上だった。どうやら僕は、ボールにぶつかって気を失った後、誰かによってベッドまで運ばれたようだ。

 

 というか、誰が運んでくれたのだろう?ここにいるのは皆10歳ちょっとの少女ばかりである。そして僕は、男としては小柄とは言え、このユニット内では一番大きいし重いと思う。

 

 果たして、このユニット内に僕を運ぶことのできる方がいるのだろうか?そんなことを考えながら、僕はベッドから身を起こす。

 

「ナ、ナギサさんっ、よ、ようやく目を覚まされたのですね」

 

「よ、良かった……」

 

 すると、ベッドサイドから二人の少女の声が聞こえた。アルフィ様とユーアさんの声だ。そういえば、この世界で初めて目を覚ました時も、似たような状況だったっけ。あの時はアルフィ様とエルシャローゼ様だったな。

 

 などと、異世界生活初日のことを思い出しつつ、僕はベッドサイドで心配そうに僕を見つめるアルフィ様とユーアさんに視線を向ける。

 

「ご心配をおかけしてしまい申し訳ございません」

 

「そ、そんな、ナギサさんが謝ることなんて何もないです」

 

「そ、そうです。わたしの不注意でこんなことに……、すみませんでした……」

 

「私も、もっと正確にコントロールできていれば、ナギサさんに痛い思いをさせずに済んだのに……。ご迷惑をおかけしてしまいすみません、ナギサさん……」

 

 そう言いながらアルフィ様とユーアさんの二人は何度も僕にぺこぺこと頭を下げてくる。うーん、どうしたものかなぁ……。あれは偶然が重なった事故だしなぁ……。決して誰も悪くない。だから、二人が謝る必要なんてないと思うんだよね、僕としては。

 

「い、いえいえ、お二人は悪くありません。といいますか、誰も悪くありませんよ。偶然起きてしまった事故ですから、仕方のないことですよ」

 

「ナギサさん……」

 

「だから、そんなに気を落とさないでください」

 

 そう言って僕は、右手でアルフィ様の頭を、左手でユーアさんの頭をそれぞれ優しく撫でる。しょぼんとしてしまっているお二人をどうにかして元気づけたかった。もっとも、頭を撫でることが効果的かどうかは分からないけど。

 

「……ありがとうございます、気を遣ってくれて」

 

「ナギサさん、相変わらず優しいです、えへへ……♡」

 

 だが、どうやらお二人には効果があったらしい。先ほどまで暗かった表情が見る見るうちに明るくなっていく。ちゃんと慰めになったようで、僕は少し安心する。やっぱり笑顔が一番だからね、人間は。彼女たちの落ち込んだ表情は見たくない。

 

「それにしても、皆さん本当にすごかったです。私、思わず見とれてしまいました」

 

「そ、そうですか?ほ、褒めてもらえるなんて嬉しいです、んへへ♡」

 

「わたしの魔法は御嬢様方に比べると少し見劣りしてしまうと思います。わたし、魔法の才はありませんから」

 

 僕の言葉にアルフィ様は嬉しそうに顔を綻ばせていたが、反対にユーアさんは少し自嘲気味にそう言葉を返してきた。僕としてはそんなことないように思ったんだけどなぁ。ユーアさんも充分すごかったと思う。

 

「そんなことありませんよ。少なくとも、僕はユーアさんの魔法もすごいと思いましたから。ここにいる方は皆とても優秀な方ばかりで、そんな優秀な方々のもとで働けることを改めて嬉しく思いました」

 

「ナギサさん……、そ、そんなに褒められると……照れてしまいます……。か、顔が熱い……。あ、あまり見ないでください……」

 

 僕がフォローのために発したその言葉にユーアさんは照れてしまい、真っ赤になった顔を隠すように下を向いてしまった。ちょっと気合入れて褒めすぎたかな?でも、ユーアさんの魔法をすごいと思ったことも、ここで働けることが僕にとって幸せであることも事実に変わりない。

 

 というか、あれだな。照れているユーアさん、すごく可愛い。もっと照れさせたい、喜ばせたい……。そんな欲が顔を覗かせる。

 

「あっ、ところで、何方が私をここまで運んでくださったのですか?」

 

 そういえば肝心なことを聞き忘れてしまっていた。そう思い、僕は気持ちを切り替えてお二人に尋ねてみることにした。

 

「あっ、そ、それはわたしが」

 

「ユーアさんお一人ですか?私、重くありませんでしたか?」

 

 まさかユーアさんが一人で僕をここまで運んだのかと、僕は思わず驚いてしまった。僕とユーアさんだと、それなりに体格差もある。それに、練習場は地下にあるため、僕をここまで運ぶとなると、必然的に階段を上ることになる。

 

 どうやらユーアさんにはかなりの重労働を強いてしまったようだ。申し訳ないことをしたなぁ。せめて僕が気さえ失っていなければ……。身体が強くなったと言っても、僕はまだまだへっぽこなのか……。

 

「え、えっと、わたし、身体強化の魔法を使えるので、ある程度の力仕事ならこなせるんです」

 

「あっ、そうだったんですね。すみません、ご面倒をおかけしてしまい……」

 

「い、いえ、気にしないでください」

 

 なるほど、身体強化系の魔法が使えたのか、ユーアさん。確かにそれなら、僕くらいの体格の人なら普通に運べるのかもな。まぁそれでも、僕を運ぶのに態々魔法を使わせてしまったことには申し訳なさを覚えるのだが。

 

 って、待てよ……?ある程度の力仕事はできる……ということはつまり、僕のアイデンティティ失われてない……?あれ、もしかして僕、お払い箱?……になるわけないか。変なことを考えるのは止めよう。

 

 もし、こんなことを考えていたことがアルフィ様に気づかれてしまったら、きっとこっ酷く叱られてしまうことだろう。6歳も年下の少女に叱られるのって、結構精神的にくるものなんだよ……。

 

「ユーアさん、ここまで運んでいただきありがとうございました」

 

「は、はい……。ど、どういたしまして……」

 

 またも恥ずかしそうに顔を伏せてしまうユーアさん。お礼の言葉だけでも照れてしまうのか。ユーアさんは結構照れ屋なんだな。

 

 などと考えていると、ユーアさんが俯きながらも時折チラチラとこちらに視線を向けてきていることに気づく。それは僕だけでなく、アルフィ様にも視線を送っているようだった。

 

「……?あっ、ふふっ……♪」

 

 僕が何事かと首をかしげながらユーアさんのことを見ていると、不意にアルフィ様から含み笑いが漏れた。見ると、アルフィ様は悪戯っ娘モードになっており、満面の笑みを浮かべて僕とユーアさんを交互に見ていた。

 

「ふふっ、私、ちょっと外に出てきますね♪それではお二人とも、ごゆっくり♪」

 

 そう言うと、アルフィ様はそそくさと部屋から退出してしまった。これってつまり……、そういうこと……なんだよな?まったく、気遣いの出来る御嬢様だ。というか、お節介?まぁ何でも良いや。

 

 ひとまず、今は目の前のことに集中することにしよう。アルフィ様には後でちゃんとお礼をしないとな。

 

「ねぇ、ユーアさん」

 

「う、うん……」

 

 アルフィ様が退出されたことで僕たちは二人きりとなり、先ほどまで使っていた敬語を取り払う。やはり、ユーアさんとだとこっちの方がしっくりくるな。

 

 僕の言葉に反応したユーアさんは、恐る恐るといったように顔を上げ、そして僕の顔を覗き込んでくる。その瞳には、期待と不安が入り混じっていた。

 

「朝の話の続き……なんだけどさ」

 

「う、うん……」

 

 僕は一つ深呼吸し、それから再度口を開きついにその言葉を口にした。その頃には、僕の中の迷いは既に消え去っていた。

 

「ユーアさん、僕のこと……好き?」

 

「……やっと、気づいてくれたんだね、ナギサさん。うん、好き……大好き……♡アルフィオーネ様にだって負けないくらい、ナギサさんのことが大好きなんだよ、わたし♡」

 

 ユーアさんは僕の問いかけに対し力強く頷いてそう言った。そして、僕のことを強い意志の籠った瞳でじっと見つめてくる。彼女の思いの大きさがはっきりと伝わってきていた。

 

 なんでもっと早くに気づいてあげられなかったのだろう。僕の心の中にそんな後悔の念が渦巻いていた。

 

「そっか、ありがとう、ユーアさん。それと、気づくのが遅くなってごめん」

 

「ホントだよ、まったく……。わたし、何度もアピールしてたのに、ナギサさんは全然分かってくれなくて……」

 

 僕がユーアさんに謝罪の言葉を述べると、ユーアさんは僕を視線で責めてきた。頬も膨らませており、ユーアさんは相当ご立腹のようだった。まぁでも、それくらい僕は彼女の気持ちを蔑ろにしてしまっていたのだ。責められて当然だよね。

 

 と、その時、ユーアさんの瞳からほろりと一粒の涙がこぼれるのが見えた。ユーアさんもそれに気づき自身の手で涙を拭おうとするが、涙は次々と彼女の瞳からこぼれ落ちてきてしまい、ユーアさんの意思では止められなかった。

 

「うぅ……うぅぅ……、ぐすっ……」

 

 ユーアさんはこんなにも思いつめてしまっていたのか……。それを考えた瞬間、僕の腕は咄嗟にユーアさんへと伸びていた。

 

「ユーアさん……、本当にごめん……」

 

 そして、僕はそっと彼女の身体を抱き寄せた。もう決して目を逸らしたりしない……。そんな誓いを込めて、彼女の震える身体を胸で受け止める。

 

 それから、何度も何度も、彼女の耳元で謝罪の言葉を呟く。どれだけ謝っても、決して僕の中の罪悪感は消えないだろう。けど、それでも口にしてしまう。それがせめてもの誠意だと僕は思うから。

 

「ナギサさんのバカぁ……。もっと早く振り向いてほしかったよぉ……。わたし……、すごく寂しかったんだから……」

 

「ごめん……、本当にごめん……」

 

「許してあげないもん……。わたしのこと……ちゃんと幸せにしてくれないと許さないんだからね……」

 

「うん、約束する。ちゃんと幸せにするから」

 

「じゃあ……、証明して……。その言葉が嘘じゃないこと……、わたしに証明してみせてよ……」

 

 証明……か。何をすればいいのか……なんて迷いはない。今僕がすべきことは決まっている。

 

「分かった。それじゃあ、顔上げて、ユーアさん」

 

「……うん」

 

 僕はユーアさんの頭をそっと一撫でし、耳元でそう囁きかける。すると、ユーアさんは素直に頷き、僕の要望に応じてくれた。

 

 僕を見上げる彼女の瞳と、彼女を見下ろす僕の瞳が交差する。ユーアさんのその瞳の奥には、もう既に不安の影はなくなっており、期待に満ち溢れていた。頬も上気し、これから行われるであろう行為を心待ちにしているようだった。

 

 アルフィ様もユーアさんも、とても良い人たちだ。そんな良い人たちにここまで愛されているなんて、やっぱり僕は幸せ者だな。

 

「ユーアさん……」

 

「ナギサ……さん……、んっ……♡」

 

 僕たちの口唇の距離が少しずつ縮まり、そして僕たちはそっと口唇を重ねあった。ユーアさんとの初めてのキスだ。

 

 柔らかな彼女の唇が僕を求めるように何度も何度も僕の唇に押し当てられる。その度に、僕の心にじんわりと温かい何かが広がっていく感覚を覚える。そして、ユーアさんに対する愛おしいという気持ちが溢れ出してきた。

 

「んんっ……♡んちゅっ……♡好き……♡ナギサさん……大好き……♡ちゅっ……♡ちゅぱっ……♡んんぅっ……♡」

 

 しばらくの間、僕たちはお互いの唇を重ね続けていた。彼女が暮れる僕への愛情がとても心地良かった。だから僕も、思わず彼女とのキスに没頭してしまっていた。

 

「んんんっ……♡んはぁ……♡キス……しちゃったね……♡」

 

「そうだね……、はぁ……はぁ……。ど、どうかな、これで証明になったかな?」

 

「うん、ありがとう、証明してくれて。わたし、ナギサさんのこと信じてるから。絶対、幸せにしてよね♡」

 

「ははっ、任せておいて……っていうのは僕のキャラじゃないかな」

 

 ユーアさんのこと、一生大切にしよう。もちろん、アルフィ様もだ。僕のことを好きだと言ってくれる子たちへの、僕なりの精いっぱいの恩返しだ。……っていうのは、流石におこがましい話かもしれないな。

 

 でも、彼女たちを一生大切にし幸せにするという決意に狂いはない。僕はこの誓いを絶対に果たす。

 

「へへっ、これからよろしくね、ナギサさん♡」

 

「うん、よろしく、ユーアさん」

 

 満面の笑みを浮かべて僕の身体に抱きついてくるユーアさんの小さな身体を、僕も優しく抱き返した。



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異世界人の末裔

「ところでさ、ユーアさん。どうして僕のことを?」

 

 お互いに気持ちが落ち着いたところで、僕は彼女にそう尋ねてみることにした。アルフィ様はきっかけが曖昧だったけど、ユーアさんには僕のことを好きになる明確なきっかけというものがあったのか、どうしても気になってしまった。あまり聞くべきことではないのかもしれないけどね。

 

「そういうこと、あんまり聞くものじゃないよ?ナギサさん」

 

「あっ、やっぱりそうだよね。ごめん、デリカシーがなくて」

 

「良いよ。ふふっ、女の子との接し方、まだ不慣れなんだね。ちょっと可愛い」

 

 ユーアさんは僕の腕の中でくすくすと笑っている。確かに僕は女の子との関わり方なんて全然分からない。元の世界では、ずっと逃げ回っていたようなものだったし。僕は自身の情けなさから苦笑いしてしまう。

 

「わたしね、ナギサさんの優しいところが大好きなの。何をするにも、ちゃんとわたしたちのことを考えて行動しようとしてくれるナギサさんが」

 

「僕、そんなに優しい男かな……?あんまり自覚ないんだけど」

 

「だと思った。どうせ無自覚なんだろうなぁとは分かってたよ。まぁ、そういうところもナギサさんらしいけど、ふふっ♪」

 

 ユーアさんは未だに可笑しそうに肩を揺らして笑っている。ユーアさん、さっきからよく笑うなぁ。ユーアさんの笑い声を聞いていると、何だか和む。

 

「でもわたしね、実は初めてナギサさんと会った時から引かれてたんだよ。なんでかはよく分からないんだけど、一目見た時からなんか良いなって思ったの。一目惚れってやつなのかな?」

 

 なんて考えていると、不意にユーアさんは囁くようにしてそんなことを言った。てっきり最初は何とも思われていなかったと考えていただけに、そんなユーアさんの言葉に僕は少しだけ驚いてしまった。

 

「そうなの?」

 

「うん、そうなんだよ。それから、ナギサさんに優しくされて、完全に惚れこんじゃった感じ。結局、出会ったその日にはメロメロにされちゃってたんだよね、わたし」

 

「な、なるほど……、そうなんだ」

 

 僕に優しくされたのが決め手になったが、ユーアさんもアルフィ様同様出会った時から僕に引かれていたのか……。二人とも共通して僕に一目ぼれした、ということになるのかな。うーん、不思議だな……。どうして二人して同じような理由で僕のことを好きになったんだろう……?偶然……で片付けるにはあまりに不可解だよなぁ……。

 

 もしかして、転生したことで僕の身体に何か変な影響が出ていたりするのかな?……っていうのは考えすぎか。このことについては、あんまり深く考えない方が良いのかもしれない。若干謎は残るけど偶然ということにしておこう。

 

「……まぁ、心当たりがないことはないんだけどね……。ナギサさんに引かれた理由」

 

「え?それってどういうこと?さっきはよく分からないって言ってたけど……」

 

「混乱させちゃったよね、ごめんね。さっきまでは話すかどうか少し迷ってたから誤魔化しちゃったけど、やっぱり隠したままにするのは嫌だから話すね。まぁ、薄々気づかれてはいるかもしれないけど……」

 

 そう言ってユーアさんは決意の籠った瞳で真っ直ぐ僕の顔を見据えてくる。……一体、どんな話だろう?というか、薄々気づかれているかもしれない……とはどういうことだろうか?僕にはさっぱり分からないのだが……。

 

「言いづらいことなら無理しなくて良いんだよ?」

 

「ううん、大丈夫。確かにちょっと言いづらいし、信じてもらえないかもしれないけど、それでも好きな人に隠し事はしたくないから」

 

 正直、僕としてはユーアさんにあまり無理はしてほしくない。けど、彼女の強い意志を見てしまうと、もう止める気にはならなかった。それに、好きな人に隠し事はしたくない、なんて言われたら、何も言えないじゃないか。

 

 僕は無言でユーアさんに話の続きを促す。すると、ユーアさんはゆっくりと口を開き、彼女自身の秘密について話しだした。

 

「わたし、実は異世界人の血を受け継いでるんだ」

 

「……え?」

 

 異世界人の血を受け継いでいる……?ユーアさんが?まさかの真実に、僕は短い驚きの声しか出なかった。

 

「ほら、わたしの髪の毛って、この世界では珍しい黒色でしょ?これは、異世界人の血が混じってるからなの。ナギサさんも、こんな話何処かで聞いたことあるでしょ?信じる・信じないは別にして」

 

 僕が固まっている間にも、ユーアさんは話を続ける。黒い髪が異世界人の血を引いている証拠……?そうだったのか……。

 

 いや、待て……。この世界に転生してきた初日、ルクス様からそんな話を聞いたような……。確か、この世界では珍しい毛髪の色を持つ人が存在していて、その人たちが異世界と何かしら関係がある……とか何とか……。

 

 なるほど、これは黒髪のことだったんだな。ということは、歴代の異世界人たちも皆黒髪だったということになるのかな?僕も黒髪だし。

 

 そして、そんな異世界人の血を引き継いでいるから、ユーアさんの髪の毛も黒色であるってわけなんだな。確かに、異世界伝説を信じている人なら、ユーアさんの髪質を見れば勘づくかもしれない。

 

 けど、残念ながら僕はこの世界に疎い。信じる・信じないの前に、異世界伝説というものすら詳しく知らなかったのだ。だから、少し反応に困ってしまう。

 

 しかし、ユーアさんが秘密を話してくれたのだ。ここは僕も包み隠さず自身の秘密について打ち明けるべきかもしれない。僕も、ユーアさんに隠し事をするのは嫌だから。

 

「ごめん、知らなかったよ。僕、この世界の常識に疎いんだ」

 

「そ、それってどういう……」

 

「今まで隠してたけど……実は僕、ついこの間異世界から転生してきたんだ。日本っていう国から」

 

「えっ……」

 

 僕が自分の秘密について暴露すると、ユーアさんは絶句してしまった。まぁ、そりゃ驚くよね。いきなり、僕は異世界人です、なんて言われたら。でも、ユーアさんならきっと信じてくれる……。そんな気がしていた。

 

「……そう……だったんだ……。でも、言われてみれば確かにそんな気はするかもね。ナギサさんも黒髪だし、それに名前もちょっと珍しいし」

 

「うん。そういうわけだから、ユーアさんが異世界人の血を受け継いでいるってこと、僕は信じられるよ。というか、それを否定しちゃったら、僕の存在自体を半分否定しているようなものだからね」

 

「ナギサさん……、話してくれてありがとう。わたしね、ナギサさんが秘密を打ち明けてくれたこと、すごく嬉しかった」

 

「僕だけ隠し事をするのは嫌だったからね」

 

 お互いの秘密を共有したことで、ユーアさんとの心の距離がさらにぐっと近くなったような気がする。そのことに僕は、言いようのない嬉しさを憶えていた。それはユーアさんも同じようで、僕たちはお互い顔を見合わせてにこりと微笑みあった。

 

「それで……、さっきの話に戻るけど、ユーアさんの髪の毛が黒ってことと僕のことを好きになることにはどんな関係が?」

 

「あっ、そうだったね。えっと、多分わたし、ナギサさんに親近感みたいな何かを感じてたのかなぁって思ったんだ。同じ黒髪だったから」

 

「あー、なるほどね」

 

「うん。異世界人の血を引き継いでるのはわたしだけじゃないんだって、ナギサさんを初めて見た時に思ったの。まぁ、ナギサさんは異世界人の末裔じゃなくて、本物の異世界人だったわけだけど」

 

 なるほど、そう言う関係があったわけか。自分と同じ黒い色の毛髪を持つ僕に対して、ユーアさんは親近感を覚えていたのか。そこから恋愛感情に発展した、と。

 

「なんか、すごい運命を感じちゃうなぁ。まさか好きになった人が、先祖と同じ異世界人だったなんて」

 

「確かにそうかもね」

 

「これでどう?これが、わたしがナギサさんを好きになったきっかけの全部だよ。聞けて満足?」

 

 少し意地悪そうな笑みを浮かべながら、ユーアさんが僕の瞳を下から覗き込んでくる。そんなユーアさんの問いかけに、僕は一つ大きく頷き、そして彼女の小さな頭を撫でた。異世界人の証であるその綺麗な黒髪を労わるように。

 

「話してくれてありがとう。聞けて良かったよ」

 

「いえいえ、どういたしまして♪あー、良かった。先祖が異世界人って話、あんまり信じてくれる人いないからちょっぴり不安だったんだよね。もし、ナギサさんにまで信じてもらえなかったらと思うと……、ちょっと寒気が……」

 

「それなのに話してくれたんだね。ユーアさんが僕を大切に思ってくれているのがよく分かって嬉しかったよ」

 

「わたしも、ナギサさんのお話が聞けて良かった。ちなみに、このことは他の人は知ってるの?例えば、アルフィオーネ様とか」

 

 不意にそんなことを聞いてくるユーアさん。特に隠す必要もないので、僕はそのことについても話すことにした。

 

「うん、アルフィ様とエルシャローゼ様は知ってるよ。というか、僕を拾ってくれたのが御嬢様方なんだ。僕が執事になったのは、ローラント家の方々に恩返しがしたかったからなんだよ」

 

「そうだったんだね。お二人は信じてくれたの?ナギサさんが異世界人だってこと」

 

「うん。実はローラント家の当主様……ルクストール様は、異世界伝説にご興味があったらしくてね。僕のこともあっさり信じてくれたんだ」

 

「へぇ、そうなんだぁ。あれだね、運が良かったね、ナギサさん。異世界伝説って、ほとんどの人は信じてくれないから」

 

 少し寂しそうな表情を浮かべながらユーアさんがそうポツリと呟く。何か過去に辛い経験をしたのかな?それでも僕には包み隠さず話してくれた。そう考えると、ますます嬉しくなってくる。

 

「仕方ないよ、荒唐無稽な話なのは事実だしね。けど、大丈夫。僕はユーアさんの味方だから」

 

「……ナギサさん、そういうところだよ、ホント……。もぅ……、もっと好きになっちゃうじゃん……、へへっ……♡」

 

「あれ……?また何か変なこと言った?」

 

「変なことじゃないけど、また無自覚にわたしを喜ばせるようなことは言ってたかな♡この無自覚女誑しめ♡えいっ♪えいっ♪えへへ♡」

 

 僕の頬を指でツンツンと突っつきながら、ユーアさんは楽しそうに微笑む。どうやら僕はまた可笑しなことを言ってしまっていたようだ。けどまぁ、ユーアさんが元気を取り戻してくれたようだから良かったかな。

 

「お話、終わりましたか?」

 

 と、その時静かに扉が開き、その奥からアルフィ様が顔を覗かせた。そして、少しニヤニヤした表情のまま僕たちにそう声をかけてきた。これ、絶対外で僕たちの話聞いてたな……?悪い御嬢様だ。

 

「ア、アルフィオーネ様っ!?ど、どうしよう……、こんな姿見られちゃって……恥ずかしい……」

 

 僕の膝の上であたふたし出すユーアさん。そんなユーアさんの様子を、アルフィ様は実に楽しそうな表情で眺めている。

 

「恥ずかしいことなんてありませんよ、ユーアさん。ふふっ、良かったじゃないですか、思いが通じて。これで私たち、一緒ですね♪」

 

「ア、アルフィオーネ様……、ありがとう……ございます……」

 

「私は何もしていませんよ♪」

 

 最初は恥ずかしそうだったユーアさんだったけど、アルフィ様のフォローもあり、すぐに元の笑顔に戻ってくれた。うん、やっぱり二人とも笑顔が似合う。

 

「ところでアルフィ様、僕たちの話聞いてましたよね?」

 

 それはそうと、盗み聞きされていたことについては一応問いただしておくべきだろう。そう思い、僕はなるべく優しい笑顔を心掛けてアルフィ様にそう尋ねた。

 

「あっ……、えっと……その……、ごめんなさい……。お二人のお話が気になってしまいつい……」

 

「はぁ……、貴女って人は……。ということは、ユーアさんの秘密についても聞かれていた……ということですよね?」

 

「……はい。で、ですが、私は異世界伝説は信じていますから、安心してください、ユーアさん」

 

「……そういう問題ではないのですが……、まぁ良いです。でも、今後はこういう悪戯はしないように」

 

「は、はい……、気をつけます……」

 

 とまぁ、簡単に説教だけはしておく。主人が道を踏み外しそうになっていたら正しい路に戻してあげる。これも従者としての役割だ。

 

「アルフィオーネ様、信じてくださってありがとうございます」

 

 と思ったら、ユーアさんはアルフィ様を咎めるでもなく、そんな感謝の言葉を述べた。まぁでも彼女からしたら、話を盗み聞きされていたことよりも、自身が異世界人の末裔であることを信じてもらえたという事の方が重大なことなのかもしれないな。

 

「あっ、いえ、その……むしろ盗み聞きしてしまいすみませんでした」

 

「そんな、謝らないでください。アルフィオーネ様にはいずれお話しするつもりでしたから」

 

「そうだったのですね。ですが、失礼なことをしてしまったのは事実ですから、どうか謝罪は受け取ってください」

 

「そ、そういうことなら、はい。えっと、ちゃんとナギサさんの言うことは聞きましょうね、アルフィオーネ様」

 

 そう言われ素直にアルフィ様の謝罪を受け取ったユーアさんは、柔らかく優しい口調でアルフィ様を注意した。そんな彼女の注意を受けたアルフィ様は、何処となく嬉しそうな表情を浮かべていた。

 

「はい。あっ、それと、ユーアさんも是非私のことはアルフィとお呼びください。私たち、ナギサさんの未来の妻なのですから、ユーアさんとはもっと仲良くなりたいんです♪」

 

「つ、妻……、そ、そういうことに……なるんだ……♡えっと、わたしももっとアルフィオーネ様……いえ、アルフィ様と仲良くなりたいです」

 

「ふふっ、それなら良かったです♪それでは、これからよろしくお願いしますね、ユーアさん♪」

 

「は、はい、よろしくお願いいたします、アルフィ様」

 

 そうして彼女たちはお互いの手を握り合った。僕の未来の妻という言葉に、僕は少しだけ気恥ずかしさを覚えてしまっていたのだった。

 

「でも、羨ましいです、ナギサさんと敬語無しでお話しできるなんて」

 

「ふふっ、使用人の特権です♪」

 

 でも、この二人となら一生楽しく過ごせそうだな。



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アルフィ様とユーアさんと、お風呂でイチャイチャ① 脱衣所にて

 その後しばらく3人で他愛もない雑談で盛り上がっていたが、気づくと窓の外が大分暗くなってきており、僕とユーアさんは慌てて夕食の準備をするべく部屋を飛び出した。すっかり話に夢中になっていて、うっかり仕事を忘れてしまっていた。これは大失態だ。

 

 でも、アルフィ様は僕たちが仕事を忘れてお話に没頭していたことについては何とも思っていなかったようで、

 

「今日も楽しみにしてますね♪」

 

 と言って、僕たちを笑顔で見送ってくれた。その言葉は果たして今日の夕食を意味しているのか、はたまた別のことを意味しているのか少し気になったが、それでも彼女の笑顔に充分以上の元気とやる気をもらうことができた。

 

 そうして僕とユーアさんの二人は颯爽とキッチンに入り、テキパキと夕食の準備をこなしていく。もちろん、御嬢様方に提供するのだから手は抜いたりしない。素早く、そして丁寧な作業を心掛ける。

 

「……えへっ♡」

 

 時折隣に立つユーアさんからチラチラと視線が向けられ、また、嬉しそうにはにかむような声も聞こえてきていたが、流石に気にしている余裕はなかったので、作業の合間に軽く頭を撫でるだけに留めておいた。

 

 すると、一層嬉しそうに顔を綻ばせ耳とか尻尾をぴょこぴょこと跳ねさせるものだから、思わずもっと構ってあげたくなってしまった。くそっ、アルフィ様もユーアさんもどうしてこんなに可愛いのだろう。年下の女の子たちの魅力が僕を呑み込む。

 

 そして、時々視界の端に映る彼女の裸エプロン姿に、昨日初めて芽生えた雄としての欲望がムクムクと目を覚まし始めてしまう。僕はもう、後に戻れないくらい重症のロリコン患者のようだった。

 

 いや、今はダメだ……。今は目の前の作業に集中しなければならない。今晩も皆さんにとびきり美味しい料理を提供するんだ……。僕はそんな思いを胸に、目覚めようとする自身の欲望に抗いながら無我夢中で手を動かしていた。

 

 それから少しして、今晩の夕食が完成した。ユーアさんは日に日に料理の腕を上げているため、食事の支度時間もそんなユーアさんの成長に合わせて日を追うごとに早くなっていっていた。

 

「ユーアさん、また上達したね、料理」

 

「えへへ、ありがと♪ナギサさんのおかげだよ♪」

 

「僕は何もしてないよ。全部、ユーアさんの努力の賜物だよ。頑張り屋さんなんだね、ユーアさんは」

 

「そ、そんなに褒められると……照れちゃうよぉ……、にゃはは♡」

 

 頬を染めて照れたように微笑むユーアさんの姿に、僕は眩暈を覚えてしまっていた。あまりの可愛さにくらくらしてしまう。うっ、こんなの反則じゃないか……。

 

「わたし、もっと頑張る。そ、それでね、ナギサさんの……お、お嫁……さん……、立派なお嫁さんになるの♡……は、はじゅかしい……」

 

 僕は思わずその場に崩れそうになってしまった。えっ、何、今の……?もしかして、僕を殺しにかかっていたりするのか……?危うく吐血しかけたぞ……。

 

「そ、そっか……、う、うん、楽しみに……してるよ」

 

 僕は何とか声を絞り出す。言葉を失ってしまうほど、先ほどのユーアさんは強烈な衝撃を僕に与えてきていたのだ。

 

「ナ、ナギサさん……、顔……ニヤニヤしてる……」

 

「えっ……、あっ、ごめん……。ユーアさんがあまりに可愛すぎて……」

 

「にゃっ……♡も、もぅ……そんにゃこと言われたら……わ、わたしだってニヤニヤ……しちゃいそうだよ……♡」

 

「も、もう既に充分ニヤニヤしてると思うけど……?」

 

「うにゃっ!?あ、あれ……、どうしよう……、顔に力が……え、えへへへへ……♡は、はじゅかしいからあんまり見ちゃ嫌……♡」

 

「でもなぁ、ユーアさんのこと、もっと見てたいな」

 

 そんな風に、僕たち二人はここがキッチンであることとか、出来上がった夕食を運ばないといけないということを忘れてイチャイチャに没頭してしまっていた。ユーアさんの可愛らしい一挙一動を見ていたら、もう我慢できなかった。

 

 ユーアさんも、恥ずかしいと口にしながらも、身体は構ってカマッテと僕に摺り寄ってきており、僕たちはもう既にお互いしか見えなくなってしまっていた。

 

「……二人で何してるんですか……?」

 

 だから、キッチンに誰かが入ってきていたことに、僕もユーアさんも気づくことができなかった。そう声をかけられたことで、僕たち二人は一気に冷静になった。そして、仕事を忘れて思わず二人の世界に入り込んでしまっていたことに今更ながら慌ててしまう。

 

「ア、アルフィ様……!?も、申し訳ございませんっ」

 

「す、すみませんでした……、つい欲に負けて……」

 

「そうですか……」

 

 いつの間にかキッチンに入ってきていた存在……アルフィ様に冷ややかな視線を向けられて、僕とユーアさんはぺこぺこと何度も謝罪を繰り返す。だが、アルフィ様はほとんど反応を示してくれない。こ、これはまずい……、まずすぎる……。と思っていると、アルフィ様の方が小刻みに震えていることに気がついた……。怒っているのか、悲しんでいるのか……。もしくはどちらもか……。

 

 とにかく、これは早急に何とかしなければ……。そう思い一歩前へと足を踏み出そうとした瞬間のことだった。

 

「ずるいですっ!私もナギサさんとイチャイチャしたいのにぃ!!ユーアさん、職権乱用はずる過ぎますっ!!」

 

「へ?」

 

 アルフィ様のその言葉に、僕はそんな素っ頓狂な声を上げてしまった。てっきり仕事をすっぽかしてしまっていたことについて言及されるかと思っていたが、アルフィ様の口から放たれたのは二人きりでイチャイチャしてずるいという内容だった。

 

「そ、その、ご、ごめんなさい……」

 

「んもぅ、私もナギサさんともっとイチャイチャしたいです」

 

「で、ですがその……、もう夕食のお時間ですので……」

 

「むむむぅ……、ずるい……ずるいですよぉ……。し、仕方ありません……、今晩のイチャイチャタイム、覚悟しておいてくださいね……」

 

「は、はい……、分かり……ました……?」

 

 一体、今日は何をされるのだろう?アルフィ様の様子を見る限り、自分をイチャイチャに混ぜてもらえなかったことが相当ショックっぽかったからなぁ。恐らく、今晩のアルフィ様は超甘えん坊モードになっていることだろう。

 

「あ、あの……、アルフィ様……、わ、わたしは……」

 

「……ユーアさんも一緒です」

 

「……ありがとうございます、アルフィ様。それと、先ほどは本当に申し訳ございませんでした」

 

「い、いえ、考えてみれば私は昨晩ナギサさんと二人きりでイチャイチャしていましたから……、これでお相子かもしれません……。騒いでしまいすみませんでした」

 

「お相子……、そうですね。こ、今後は……なるべく一緒に……♡」

 

「は、はい、え、えへへ♡」

 

「にゃはは♡」

 

 ということで、騒ぎもすぐに収まり、僕たちはすぐに完成した料理を皆さんの待つダイニングまで運び、それから全員そろっての夕食が始まった。

 

 どうやら、ダイニングにいた皆さんにもキッチン内でのやり取りは聞こえてしまっていたらしく、ユーアさんまでもが僕と関係を持ち始めたことはあっさりと皆さんに露見してしまった。

 

「ふふっ、おめでとう、ユーア」

 

「あ、ありがとうございます、ラトナータ様」

 

「おめでとう!ユーアさん」

 

「お、おめでとうございます」

 

「み、皆さん、ありがとうございます。こんなに祝福していただけるなんて、とても嬉しいです……」

 

 ラトナータ様やフィノレア様、エルシャローゼ様からそれぞれ祝福の言葉をもらい、ユーアさんは恥ずかしそうに、けれども嬉しそうに微笑みを浮かべていた。

 

「まさか、従者に先を越されるなんて思わなかったわ」

 

「そ、その、申し訳ございません、姫様……」

 

「良いのよ、謝らなくて。……私も、もっと頑張らないと……」

 

「……姫様?」

 

「いいえ、何でもないわ。とにかく、おめでとう、ユーア」

 

「……?あ、ありがとうございます、姫様」

 

 それからユーアさんはシャルティーナ様からも祝福されていた。けど、一方でシャルティーナ様は何処か寂し気な表情を浮かべており、僕はそんな彼女の様子が気になってしまっていた。

 

「い、良いなぁ……、ユーアさんまで……。ワ、ワタシも……」

 

 リレイナ様は時折こちらにチラチラと視線を向けながらそんなことを呟いていた。……あれ?もしかしてこれは……。今度、リレイナ様ともう少しお話してみようかな。多分、僕の予想が正しければ彼女も……。

 

 そんなことを考えながらも、僕は裸の御嬢様方との賑やかな食事を楽しんだ。人知れず興奮してしまっていたことは、きっと誰にも気づかれていなかっただろう。原因は恐らく、先ほどのユーアさんとのやり取りだと思う。本当、ロリコンって怖いな……。

 

    *

 

「おやすみなさい、アルフィ、ユーア、ナギサさん」

 

「おやすみ、3人とも」

 

「はい、おやすみなさいませ」

 

「おやすみなさいませ、姫様、エルシャローゼ様」

 

「お姉様、シャルティーナ様、おやすみなさい」

 

 就寝のためリビングから出ていくエルシャローゼ様とシャルティーナ様を、僕とユーアさんとアルフィ様で見送った。

 

 あれから僕たちは夕食を済ませ、御嬢様方はいつも通りみんなでお風呂に入りにいった。ユーアさんも一緒に……と促したのだが、ユーアさんはどうしても仕事がしたいとのことだったので、僕たちは二人で食器の後片付けを行うことになった。

 

 そうしたら、アルフィ様まで僕たちと一緒にいたいと言い出し、結局ユーアさんとアルフィ様は他の御嬢様方とは別で入浴することとなった。

 

 そうして僕とユーアさんはアルフィ様に見守られながら洗い物を済ませた。そして、僕らが仕事を終えるころには5人の御嬢様方が入浴を終えてリビングまで戻ってきた。

 

 それからすぐに、御嬢様方は各々の自室に戻っていき、エルシャローゼ様とシャルティーナ様を見送ると、リビングの中には僕・ユーアさん・アルフィ様の3人しかいなくなっていた。

 

「3人だけになってしまいましたね♡」

 

「そうですね、ふふっ♡」

 

 ユーアさんとアルフィ様はニコニコ笑顔を浮かべながらそんなことを言っていた。どうやら二人とも、この後に待ち受ける出来事に少なからず気分を高揚させているらしかった。まぁ、それは僕も同じなのだけど。

 

 けど、まずは入浴を済ませた方が良いだろう。イチャイチャするのはそれからだ。そう思い、僕は彼女たちに声をかける。

 

「先にお風呂にしましょう。僕は最後で構いませんので、先にお二人で入ってきてください」

 

「「え?」」

 

 僕が入浴を提案すると、何故かユーアさんとアルフィ様は揃って素っ頓狂な声を上げた。あれ、入浴はすべてが終わった後にするつもりだったのかな?もしかして、水を差しちゃった感じか、これ……。

 

 などと、自分の発言に後悔していると、アルフィ様が不思議そうな表情のまま口を開いた。

 

「えっと、もしかしてナギサさん、私たちと別々にお風呂に入るおつもりですか?」

 

「えっ、ち、違うんですか?」

 

「一緒に入るに決まっているではありませんか。だって私たち、もう一緒にお風呂入ってもおかしくない関係ですから♡ね?だから、ナギサさんも一緒に入りましょ♡ついでにお風呂でイチャイチャしちゃいましょ♡」

 

「というわけだからよろしく、ナギサさん♡あっ、拒否権は無しね♡」

 

 というわけで、何故か僕は彼女たち二人と一緒に入浴することとなった。半ば強引に……。けどまぁ、正直嬉しかったんだけどね。

 

    *

 

「ほらほら、ナギサさん、早く服脱いで♪」

 

「ふふっ♪私がお手伝いいたしましょうか?」

 

「い、いえ、一人で脱げますから……。そ、その……、あんまり見られると脱ぎづらいと言いますか……」

 

 脱衣所にて、僕は裸の美少女二人に脱衣を催促されていた。いやまぁ、お風呂なんだから服を脱ぐのは当たり前なんだけどさ……。ジロジロ見られると恥ずかしいんだよね。特に脱衣の瞬間って。

 

「えー、恥ずかしがることないじゃないですか♪だって私たち、昨日もう既に大事な部分見せあった仲じゃないですか♡」

 

「というか、ナギサさんは毎日わたしたちの裸見てるくせに、自分だけ隠そうとするなんて不公平。だから、ナギサさんの裸も見せて♡」

 

「そ、そう言われると弱いなぁ……。わ、分かったよ……」

 

 彼女たちに促されるまま、僕は着ていた執事服を脱ぎ払い、インナー姿となった。すると、先ほどまでは執事服のズボンによってある程度隠すことができていた股間の膨張が下着越しに露わとなる。

 

 流石に下着1枚じゃ膨張した一物を抑えつけるのは不可能だ。僕の視線の下に、大きなテントが出来上がっていた。そしてそれは、当然目の前の彼女たちにも露見してしまうわけで……。

 

「あはっ♡もうこんなに大きくされて……、えっちです♡」

 

「す、すごい……、こ、こんなに膨らむんだ……♡」

 

 アルフィ様とユーアさんは、各々そんな言葉を漏らしていた。僕は恥ずかしさのあまり顔が熱くなるのを感じた。けど、このままというわけにもいかないだろう。そう思い、僕は意を決して残りの衣類も全て取り払った。

 

「やっぱりご立派です……、ナギサさんの……ここ……♡」

 

「お、おっきい……♡と、というか、こんなにおっきくしてるってことは……、ちゃんとわたしでも興奮……してくれてるってこと……なの……?」

 

 ユーアさんが潤んだ瞳を僕に向けながらそう尋ねてくる。

 

「そ、そりゃね……、興奮……しないわけがないよ……。だってユーアさんもアルフィ様もすごく可愛いし……」

 

「わ、わたしみたいな背も低くて胸もぺったんこな女でも……、ちゃんと興奮してくれるの……?」

 

「う、うん……。むしろ、僕より小さい人じゃないと興奮できないから、僕」

 

「えっ、そ、そうなの!?」

 

 僕の発言に、ユーアさんは目を丸くして驚いていた。そういえば、ユーアさんにはこのことはまだ話していなかったっけ。

 

「ちょっとしたトラウマ……みたいなものかな」

 

「そ、そうなんだ……。で、でも、安心した……♡ちゃんとわたしでも興奮してくれるって分かって……♡」

 

 そう言って、ユーアさんは本当に嬉しそうににこりと微笑んだ。その頬は桃色に色づいており、無邪気な子供らしさの中に少し色っぽさを感じさせた。それを見て、僕の一物がぴくんと小さく跳ねる。

 

「ナギサさんのおちんちん……、ぴくぴくしてる……♡可愛い……♡」

 

「た、確かに……、なんか可愛いかも……♡」

 

「ふふっ♪ユーアさんったら、乳首……膨らんでますよ♡」

 

「そ、そういうアルフィ様だって……、ぴ、ぴんぴんに膨らんでいるじゃないですか……♡お、お互い様ですよ……♡」

 

「それもそうですね♡では、そろそろ入りましょう♡」

 

 というわけで、僕たち3人は並んで浴室へと足を踏み入れた。



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アルフィ様とユーアさんと、お風呂でイチャイチャ② 二人に身体洗ってもらっちゃいます・前編

「では早速、ナギサさんのお身体を綺麗にしてさしあげましょう、ユーアさん」

 

「は、はい、分かりました」

 

 そう言いながらアルフィ様とユーアさんがそれぞれ僕の手を取り洗い場まで誘導してくる。僕は彼女たちに腕を引かれるまま、洗い場に置かれた座椅子の一つに腰を下ろす。正直、主人であるアルフィ様に身体を洗ってもらうなんて恐れ多い話ではあるのだが、彼女の楽しそうな笑顔を見ているとそんなことは言えるはずもなかった。

 

 一方、ユーアさんはと言うと、少し恥ずかしそうに頬を染めてはいたが、それでも僕の身体……特に股間をじっと凝視してきていた。異性の身体に興味津々のようだ。勃起した一物を見つめられると、何とも言えない奇妙な感覚が身体中に広がっていくような錯覚を覚えてしまう。か、快感……じゃないよね……?僕……、見られて感じるような奴……ではないはずだよね……?

 

「それじゃあ、頭と身体、どちらを担当しますか?ユーアさん」

 

「え、えっと……、ど、どちらでも……」

 

 僕を座椅子に座らせたアルフィ様とユーアさんは、僕の身体を挟んで向かい合いそんな話し合いを始める。座ったことで僕の視線は彼女たちよりも低くなり、横を向けば丁度彼女たちの剥き出しの胸部が目の前に見えてしまう。

 

 先ほどの脱衣所でのやり取りで彼女たち自身が言っていたが、確かにどちらも胸の先端の小さな薄桃色の蕾をぷっくりと膨らませていた。このユニット内にいる限り、たとえ裸であっても寒さは感じないと一昨日シャルティーナ様が言っていた。

 

 ということはつまり、今彼女たちは少なからず興奮している……ということなのだろう。もっとも、それは彼女たちの表情を見ていれば分かることなのだが。

 

 って、何まじまじと彼女たちの恥ずかしいところを観察しているんだ……。僕って、こんな変態だったんだ……。元の世界では知り得なかった真実に少しショックを受けてしまう。

 

「いやん♡ナギサさんったら、そんなにジロジロ見て……♡ふふっ……、えっちなんですからぁ……♡ふふふ♡」

 

「あっ、も、申し訳ございませんっ」

 

「わ、わたし……、こんな間近でナギサさんに恥ずかしいところを……、んにゅぅ……♡にゃ、にゃんか身体が……変にゃ感じ」……♡」

 

「私も……ぞくぞくしてきましたぁ……♡見られてこんな気持ちになるなんて……、私もナギサさんのこと言えないくらいえっちですね……♡」

 

 僕の頭上から聞こえるアルフィ様とユーアさんの息がだんだんと熱く荒いものに変わってきていた。今この瞬間にも、彼女たちの興奮の度合いは加速度的に上昇しているようだった。僕もそんな彼女たちの熱に充てられ、股間のむずむずが大きくなっていく感覚を覚えていた。見ると、僕の陰茎の先から透明な液体が垂れている……。

 

「そ、それでアルフィ様……、どういたしますか……?」

 

「……そうですね、それではユーアさんにはナギサさんのお身体をお願いできますか?私は頭を担当いたします」

 

「わ、わたしが……ナギサさんの身体を……♡」

 

「先ほどからナギサさんのおちんちんばっかり見ていらっしゃいましたからね、ユーアさん♡ふふっ、任せましたよ」

 

「にゃぅ……♡わ、分かりました……♡」

 

 どうやら担当は決まったようだ。アルフィ様はユーアさんに向けて意地悪そうに微笑むと、洗い場の台に置かれていたシャンプーのボトルに手を伸ばす。一方、ずっと僕の股間を凝視していたことをアルフィ様に指摘されたユーアさんは、一層恥ずかしそうに顔を真っ赤にしてチラチラと僕の表情を伺ってきていた。

 

 それでもたまに視線が逸れて僕の股間に落ちている。けど、すぐに視線を上げて再び僕の顔を覗き込む……。このループを繰り返していた。

 

「ユーアさん、異性の身体が気になるのは仕方ないことだと思うよ。僕だって、二人の裸が気になってしょうがないもん」

 

 フォローになるかは分からないけど、居心地が悪そうにしているユーアさんを放置したままにするのは可愛そうだったので、僕はそう声をかけることにした。

 

「し、仕方ない……こと……、そっか、そうなんだね……。わたしが特別えっちってわけじゃないんだね……」

 

「ふふっ、そうですよ、ユーアさん♡私たちみぃんなえっちなんです♡」

 

 アルフィ様は何処か誇らし気にそう言った。果たして、エッチであることが誇らしいことなのかは分からないのだが……、まぁ態々水を差す必要はないだろう。それに、僕もアルフィ様もユーアさんも、みんなエッチであることは事実だし。

 

「ほらほら、ユーアさん、早く準備してください。一緒にナギサさんを綺麗にしましょ♪」

 

「は、はい、そうですね」

 

 そうしてショックからすぐに立ち直ったユーアさんは、アルフィ様に促されるまま台の上に置かれたボディソープのボトルに手を伸ばし、何プッシュかして自身の掌を白い泡まみれにした。

 

 アルフィ様の掌も、既にふわふわの白い泡に包まれており、僕の隣に立ってスタンバイしていた。けど、僕はそんな彼女たちを一旦制す。

 

「あ、あの、まだ身体濡らしていませんよ」

 

「「あっ……」」

 

 二人とも忘れていたらしい。ちょっとポンコツなところもすごく可愛いと思ってしまう僕だった。

 

「す、すみません。今、お湯かけますね」

 

「いえ、もう手に泡をつけてしまってますよね。流石に流してしまうのは勿体ないです。ですので、身体濡らすのは自分でやります」

 

「わ、分かりました」

 

 というわけで僕は壁にかけられたシャワーヘッドを手に取り、埋め込まれた魔石に手を触れさせてお湯を出す。それから、自身の身体に満遍なくお湯をかけていく。

 

「っと、こんなものかな。はい、お待たせしました」

 

 ある程度身体が濡れたことを確認した僕は、シャワーを止めてシャワーヘッドを元あったところに戻し、それまで待機していたアルフィ様とユーアさんにそう言った。

 

「そ、それでは、今度こそ失礼します」

 

「え、えっと、まずは背中から……で良い……かな?」

 

「うん、任せるよ」

 

「それじゃあ、私は前側に移動して……と」

 

 アルフィ様とユーアさんは素早く立ち位置を変更し、僕の前にアルフィ様、後ろにユーアさんという位置取りになった。

 

 僕の眼前にはアルフィ様の可愛らしい小さなぽちりがある。僕の頭を洗うために身体をぐっと寄せてきているので、僕の視界にはもはやアルフィ様の胸しか映っていなかった。僕はその薄桃色のぽちりに無性にしゃぶりつきたい欲望に駆られていた。

 

「わあ、すごい……♡ナギサさんの背中……、思った以上に固い……♡小柄だけど、筋肉はすごいんだね……、ナギサさん……♡なんかカッコいい……♡」

 

「そ、そうかな?と、特に鍛えたりはしてなかったんだけどね」

 

 実際に筋トレをやり始めたのはこちらの世界……というか、この寮にやってきてからである。それまでは、自主的に身体を鍛えることはしてこなかった。……無理矢理鍛えられてはいたけど……、虐めの一環で……。まぁでも、今それを態々言う必要はないだろう。

 

「まぁでも、ありがとう。褒められるのって嬉しいもんだね」

 

「にゃはっ、ナギサさん、照れてる♡」

 

「ユーアさん、羨ましいです♡ナギサさんの頼もしいお背中に触れられるなんて♡ナギサさん、後で私にもいっぱい触らせてください♡」

 

「そんな大したものじゃないんですが……分かりました」

 

 そんなに気になるものなのかなぁ、男の身体つきって……。でも、考えてみれば男だって女性の身体つきを気にする生き物なわけだし、女性が男の筋肉に興味を示すのは男で言えば女性の胸に興味を持つことと同義なのかもしれない。

 

 そう考えると何も言えなくなってしまい、僕はアルフィ様の強く懇願するような瞳に見つめられながらコクコクと首を縦に振った。

 

 そういえば、昨日は下半身しか裸になっていなかったっけ、僕。とすると、こうして上半身の衣服も脱ぎ払った僕の素肌に最初に触れたのはユーアさんなのか。もしかすると、アルフィ様が過剰に羨ましがっているのにはそこら辺も関係しているのかな。ヤキモチ的な感じで……。あっ、それ何だか可愛い。

 

 って、何考えてるんだろう、僕は。高が僕の身体一つでアルフィ様がヤキモチを焼いているとか妄想してしまうなんて、僕はどれだけ自意識過剰なんだ……。アルフィ様とユーアさんの二人に思いを寄せられているからって、思い上がったりするのは良くないな。……まぁ、僕に思いを寄せてくれている人はこの二人だけじゃないような気もしてはいるんだけど……。それでも、調子に乗るのは止めておこう。

 

「えへっ、ありがとうございます♡」

 

 アルフィ様が気分良さ気に身体を揺らす。前後……左右……上下……、いろんな方向に……。すると、僕の目の前数センチ先にあるぷくりと膨らんだ桜色の蕾もアルフィ様の身体の動きに合わせてぷるぷると小さく揺れ動いていた。うっ……、これは僕を誘惑しているのか……。しゃぶりつきたい欲がどんどん膨らんでいく……。

 

「っ……!?」

 

「ひんっ……♡♡」

 

 と、その時だった。アルフィ様が身体を前側に倒してきたタイミングで、僕の唇が彼女の小さくも少し硬くなったその蕾に触れてしまった。しゃぶる……とまではいかなかったものの、本当にアルフィ様の乳首に口を触れさせてしまった。べ、別にわざと触れさせたわけじゃないぞ……?これは事故……、事故なんだ……。

 

 僕の唇とアルフィ様の乳首が接触した瞬間、それまで愉快そうにゆらゆらと揺り動かしていた身体をピクリと跳ねさせ、口から可愛らしくもちょっと艶っぽい声を漏らした。意図していなかった刺激に身体が反応してしまったようだ。

 

「す、すみませんっ、アルフィ様……」

 

「ひぅん……♡い、いえ……、自覚なしに身体をゆらゆらさせてしまっていたのは私ですから……♡♡♡そ、それに……、ナギサさんになら……その……何されても嬉しいですから……、え、えへへ……♡んんぅ……♡」

 

「んむっ……!?んんっ……、ア、アルフィ様……!?」

 

 突然、アルフィ様が僕の口元に自身の膨らんだ乳首を押し付けてきた。まさかの事態に、僕は彼女の乳首を咥えたまま固まってしまう。けど、そんな僕を他所に、アルフィ様は身体をもぞもぞと動かし、僕の口内に入った乳首に刺激を与えていた。

 

 と同時に、彼女のぷにっとした柔らかいお腹の下方に僕の硬くなった一物が当たってしまっており、僕は二重で衝撃を受けてしまう。元々アルフィ様が洗いやすいように僕は脚を開いており、その間にアルフィ様は身体を割り込ませていたのだが、彼女が僕の口元に乳首を押し当てるため前に倒れ込んできたために、彼女の下腹にペニスを押し付ける形となってしまった。

 

「んんんぅっ……♡はぁ……♡ふぅ……♡ナギサさんの……熱いおちんちんが……お腹に当たってる……♡んあっ……♡ふあぁ……♡」

 

 アルフィ様も、お腹に当たる僕のペニスの存在にすぐに気づき、激しい吐息を漏らしながらぐにぐにと乳首とお腹をさらに強く押し付けてきた。

 

「あっ……♡はぁ……♡はうぅ……♡ナギサ……さぁん……♡」

 

 頭上からはアルフィ様のまだ幼さの残る喘ぎ声が断続的に聞こえてくる。どうやらアルフィ様は完全にスイッチがオンになってしまったようだった。そして僕も、そんなアルフィ様に感化され徐々に理性が抑えられなくなってきてしまっていた。

 

 ペニスをあと少し下に下げれば……、彼女の大事なところに辿り着ける……。それに……、僕が今舌を動かせば……、彼女の可愛らしい嬌声がもっと聴ける……。そんな考えが僕の脳内を支配しかけていた。

 

「……アルフィ様だけ気持ち良くなってずるいです……。というか、今はナギサさんの身体を洗うのが先です……」

 

 と、そこでユーアさんが気持ちが高ぶった僕とアルフィ様に待ったをかけた。僕はそこではっと我に返る。もう少しで完全に欲望に溺れるところだった……。ユーアさんに助けられたな。

 

「あっ、す、すみません……、気持ち良くてつい……♡ナギサさんも、すみませんでした、無理矢理変なことをしてしまい……」

 

「い、いえ、構いません。というか、僕も気持ちが高ぶってしまっていましたから……。で、ですが、こういうことはちゃんとみんな身体を綺麗にしてからにしましょう、アルフィ様」

 

「そ、そうですね、後で……ふへへへへ……♡♡」

 

 そう言うとアルフィ様は僕の顔から身体を放し、そして洗髪作業へと戻った。しかし、発情した顔はそのままに……。

 

「ナギサさん……、ちゃんとわたしのことも構ってよね……♡」

 

「う、うん、もちろん……。ごめんね、ユーアさん。それと、止めてくれてありがとう」

 

「どういたしまして♡それから、楽しみにしてるね、へへっ♡」

 

 ユーアさんは僕の耳元でそっとそんなことを囁いてきたのだった。とてもくすぐったくて、それでいて心地の良い囁きだった。



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アルフィ様とユーアさんと、お風呂でイチャイチャ③ 二人に身体洗ってもらっちゃいます・中編

「さてと、これで背中は終わりかな。それじゃあ、次は腕ね。ちょっと失礼して」

 

 それからユーアさんは、気持ちを切り替えるように一言そう言うと、僕の耳元から顔を放し、さっと身体を僕の左横にずらして左腕を手に取った。それから慣れた手つきで僕の左腕を優しくこしこしと擦るようにして泡を塗り広げていく。使用人としてのスキルの一つだったりするのかな?

 

 まぁ、それはともかくとして、先ほど背中でも感じていたが、ユーアさんの掌はぷにぷにしていてとても柔らかい。腕の感覚は背中の感覚より鋭いので、ユーアさんの手の柔らかさがよりはっきり伝わってきた。

 

「腕もがっちりしてるよね♡さっき抱きしめてくれた時も感じたけど♡」

 

「あはは、なんか照れるなぁ」

 

「ふふっ、ホント頼もしくてカッコいいよ、ナギサさん♡んしょっ、これで左腕は終わり。次は右を……、ふん♪ふふん♪」

 

 ユーアさんは鼻歌を歌いながら、今度は僕の右側に移動し右腕を洗い始める。とても楽しそうなユーアさんの様子に、僕もついついほっこりしてしまう。良いな、こういう雰囲気。

 

「はぁ……♡はぁ……♡」

 

 だが、目の前で発情した顔を惜し気もなくさらすアルフィ様を見ていると、それまで和んでいた気持ちがまたもエッチな方向に傾きかけてしまう。横を見ると、ユーアさんもアルフィ様に影響されて息を荒くしもじもじと足を擦り合わせ始めた。

 

「ナギサさんの手……、硬い……♡指も……わたしとは全然違う……♡こ、これで身体触られたら……どうなっちゃうんだろう……わたし……♡はぁ……♡はぁ……♡身体……熱い……♡こんな強いの……初めて……♡」

 

 僕の目の前と右側に発情した全裸の少女たちが立っている。こんなの……、興奮しない方が無理な話じゃないか……。

 

「う、腕……終わった……。だ、だから次は……、前……洗うね……♡ア、アルフィ様……、場所……交代していただけますか……?」

 

「わ、分かりました……、んふぅ……♡はぁ……♡ふぅ……♡」

 

 そう言って二人はポジションをチェンジさせ、今度はユーアさんが僕の目の前に、そしてアルフィ様が僕の背中側に位置取った。その間も、彼女たちの熱くて荒い呼吸が収まることはなく、浴室内で反響したその吐息が耳から僕の脳内をとろとろに犯してくる。

 

「ナギサさんの……お、おちん……ちん……、すごいおっきい……♡それに……、なんか透明のお汁が出てる……♡」

 

「あ、あんまり見ないで……、恥ずかしいから……」

 

「ナ、ナギサさんだって……、わたしの裸見てるじゃん……♡だから……お相子……なんだよ……、ふぅ……♡ふにゅぅ……♡」

 

 ユーアさんは半ば自分に言い聞かせるようにそう口にすると、そっと腕を伸ばし僕の胸の上に手を置いてきた。その間、ユーアさんの視線は僕のいきり立った一物に注がれたままだった。

 

「ナギサさんの胸も……、やっぱり硬いね……♡それに……お腹も全然ぷにぷにしてない……♡」

 

 胸から腹へと手を滑らせながら、ユーアさんは熱い吐息混じりにそんな言葉を呟いていた。その吐息が勃起し上を向いた僕の一物の先端に吹きかかり、僕の身体全身にぴりりとした感覚が走る。

 

「あっ……、今……ナギサさんのおちんちん……ぴくんってなったね……♡はぁ……♡ふにゃぁ……♡もしかして……息……かかるだけで気持ち良いの……?」

 

「う、うん……、そうみたい……、んくっ……くぅぅ……はぁ……」

 

「ふふっ……、可愛い……♡じゃあ、もっとふーふーしてあげる……♡ふーっ♡ふーっ♡えへへ……♡すごいぴくぴくしてるよ……♡はぁ……♡ふぅ……♡」

 

 何度も息を吹きかけられ、その度に僕は腰を震わせてしまう。ダメだ……、これ……気持ち良い……。

 

「むぅ、ユーアさんだって抜け駆けしてるじゃないですかぁ……、ずるいですよぉ……」

 

「べ、別に抜け駆けなんてしてませんよ……」

 

「でもぉ……ずるいものはずるいですぅ……」

 

「そ、それなら、一緒に……します……?見たところ、もう頭は洗い終えたようですので……。どうなさいますか?アルフィ様」

 

「も、もちろんやりますっ♡」

 

 そう言うとアルフィ様はささっと自分の手に付着したシャンプーの泡をシャワーで洗い流し、それからボディソープのボトルをプッシュし手に泡を馴染ませてから僕の身体の前側……ユーアさんの隣に位置取った。

 

 ここからは、二人で協力して僕の身体……下半身を洗ってくれるようだ。どうしよう……、期待のあまり一物が跳ねまわる……。

 

「あはぁ、ナギサさん……、おちんちんぴくぴくさせて……えっちです……♡はぁ……♡はぁ……♡はぁ……♡」

 

「ふふっ、わたしたち二人で綺麗にしてあげるからね♡」

 

「そ、それでは……、まずは脚から……」

 

「はい、そうですね……、んしょっと……」

 

 ユーアさんとアルフィ様が同時にその場にしゃがみ込む。そして、ユーアさんは左脚に、アルフィ様は右脚にそれぞれ手を滑らせ、ぬるぬるの泡を念入りに馴染ませてくる。あぁ、どちらの手も柔らかくて気持ち良い……。

 

 爪先から下腿部、膝、そして大腿部へと二人の手は徐々に上向する。やはり手慣れているらしく、右脚を担当するアルフィ様よりも左脚を担当するユーアさんの方が洗うペースは速い。

 

「ユ、ユーアさんには負けません」

 

「えっ、これは競争だったのですか!?」

 

「そうです。どちらが先にナギサさんのおちんちんに辿り着けるかの勝負です♡」

 

「お、おちんちんに……!?そ、そういうことならわたしだって負けられません……♡んいしょっ……♡んいしょっ……♡」

 

 そうして二人は、何故か僕の股間を求めて競い始めてしまった。二人の目線はもはや僕の股間に固定されており、早くその場所に辿り着きたいという一心で手を動かし僕の脚をすごい速さで白濁に染めていく。

 

 今の彼女たちの瞳の奥には、幼い少女は普通は浮かべるはずのない欲望の桃色を湛えていた。それほどまでに、彼女たちの性的欲求が爆発寸前ということなのだろう。男の股間を求め瞳をぎらつかせる目の前の二人の美幼女からは、何とも背徳的な魅力が溢れ出していた。

 

 しかし、この光景を背徳的だと思うのはこの世界では僕以外にはそうそういないのだろうな。彼女たちのような未成熟の少女が性的欲求を高ぶらせることは、この世界では決して珍しいことでもいけないことでもないのだから。

 

「も、もうすぐ……、もうすぐです……♡はぁ……♡んはぁ……♡」

 

「むむむぅ……、な、なかなかやりますね……、アルフィ様……、ふぅ……♡はぁ……♡んしょっ……♡」

 

 彼女たちは一心不乱に僕の大腿部を遠位から近位にかけて泡まみれにしていく。あまりに必死過ぎて、もはや腕だけでなく全身を激しく動かしていた。そのため、時折彼女たちの柔らかな身体が僕の脚に触れるのだ。

 

 アルフィ様に至っては、僕の脚を自身の両脚で抱え込みながら懸命に全身を動かしていたため、僕の膝には彼女のまだ膨らみかけの胸が、そして脛下部には彼女のぷにぷにとした股間の唇肉がそれぞれ当たってしまっていた。

 

 脛に当たる彼女の秘部からは、泡とは明らかに異なる温かくてぬるりとした液体の感触が伝わってくる。彼女の様子から予想はついていたけど、彼女の股間はもう既に分泌液で相当濡れているようだった。

 

「あぁ……♡あっ……♡んんっ……♡はぁ……♡はぁ……♡後は付け根だけ……です……、んはぁ……♡あぁん……♡ナギサさんの脚が……気持ち良いところに当たってますぅ……♡けど……今は勝負に……集中するんです……、あっ……♡んあぁ……♡ふぅ……♡はふぅ……♡」

 

「にゃっ、アルフィ様が色っぽい声を……!?こ、これはチャンスかも……」

 

「そ、そうはさせませんよ……、んふぅ……♡はぁ……♡あふぅ……♡」

 

「うっ、そんな状態でどうして一定のペースを保っていられるのですか……!?くぅ、アルフィ様は強敵です……、はぁ……はぁ……」

 

 アルフィ様は、自身の股間に伝わってくる刺激に艶やかな嬌声を漏らしながらも、決して手を動かす速度は落とすことなく、ぬるぬると僕の代替表面を滑らせていた。

 

 一方ユーアさんは、艶っぽい声を漏らしながらも決してペースダウンしないアルフィ様の様子に驚愕の声を上げながらも、負けじと手を動かしていた。

 

「「っ!!」」

 

 そうして彼女たちは、等々僕の大腿部を全て白濁の泡まみれに仕立て上げ、そしてほとんど同タイミングでその手を僕の股間に伸ばした。

 

 次の瞬間には、僕の一物は彼女たちの泡まみれの小さな手に両サイドから握りしめられていた。ぬるっとした泡の感触と、ぷにっとした彼女たちの手の柔らかさが同時に僕の一物に襲い掛かる。

 

「んうぅっ……、んくぅ……」

 

 そして僕は、そんな情けない声を漏らしてしまった。あまりの気持ち良さに声を押し殺すことができなかった。

 

「はぁ……はぁ……、ど、どっちの……勝ち……?」

 

「あぁ……♡はうぅ……♡わ、分かり……ません……、あんっ……♡ああぁ……♡」

 

 眼下の少女二人は、僕の一物をお互いに片手で握りしめながら顔を見合わせる。一方は疲労から、そしてもう一方は快楽からそれぞれ熱い吐息を漏らしている。いや、アルフィ様に関しては吐息というより喘ぎ声だな。

 

 というか今気づいたが、アルフィ様の身体が小刻みに揺れ動いている。僕の一物を握りながら、同時に自身の股間を僕の脛に擦りつけ少しずつ快感を増幅させていた。また、時折膝にこりっとした小さな突起物の感触も伝わってきており、アルフィ様が股間だけでなく乳首にも刺激を与えようとしているのが分かった。

 

「ア、アルフィ様……、気持ち良さそう……♡」

 

「あんっ……♡はぁんっ……♡え、えへへ……、気持ち良いですよ……、これ……♡そ、それはそうと……、勝負は……どうしますか……?」

 

「え、えっと……、引き分け……ですかね……♡」

 

「ふふっ、そうですね……♡あぁっ……♡んひぅ……♡にしても……、昨日はこうして手で触れることはしませんでしたが……、ナギサさんのおちんちん……とても太くて硬いです……♡んふぅ……♡あぁぅ……♡」

 

 結局、先ほどの勝負は引き分けという形で収まったようだった。それから、アルフィ様は感触を確かめるようにそのぷにぷにとした小さくて温かな掌で僕の一物をにぎにぎしてくる。一般的には可愛らしい仕草なのだが、なんせ握っているものがものなので、可愛らしさよりもエッチさの方が勝ってしまう。

 

 そういえば、昨日アルフィ様と肌を重ねた際には、僕の一物を直接手で触れてもらうことはしなかったんだっけ。ということは、彼女はまだ膣内でしか僕の一物の感触を知らなかった、ということになるわけか。

 

「た、確かに……、すごく太くて硬い……♡こ、これがナギサさんの……おちんちん……なんだね……♡はぁ……♡はぁ……♡すごいなぁ……、こんなに熱いんだ……♡それに……、さっきからびくびくしてる……♡なんだか……、ここだけ別の生き物みたいだね……♡」

 

 そして、ユーアさんも興味津々といったように手を僕の一物を揉むように動かし、硬さや太さを確かめていた。初めて触れる男の一物の感触に驚きながらも、彼女の表情は徐々にうっとりとした雌のものに変わってきていた。

 

「というか、なんか変な形……。先っぽだけすごく膨らんでて……、あとはちょっとくびれてる感じ……。キノコみたいだね……♡」

 

「ふふっ、確かにそうですね……、あっ……♡はぁ……♡んうぅ……♡けど……私たちのよく知るキノコよりもおっきくて……、それでいてとてもえっちです……♡そもそも……、食用のキノコをえっちだと思ったことはありませんが……」

 

「ナギサさんのおちんちんは……、見ているだけでなんかすごく身体が熱くなってくる……♡わわっ、またぴくんって跳ねた……♡ふふっ、もぅ……えっちなキノコさんだなぁ……♡」

 

「では、おちんちんも綺麗にしてさしあげましょう、ユーアさん……♡んうぅ……♡はぁぁ……♡んふぅ……♡」

 

「は、はい、そうですね……♡はぁ……♡はぁ……♡」

 

 そう言って、彼女たちは互いに頷き合い、そして僕の一物に添えていた手を動かし始めた。



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アルフィ様とユーアさんと、お風呂でイチャイチャ④ 二人に身体洗ってもらっちゃいます・後編

「はぁ……♡はぁ……♡」

 

「んにゅぅ……♡ふぅ……♡」

 

 二人は協力して泡だらけの手を動かし、僕の一物の表面に懸命に泡を馴染ませてくる。最初は二人とも片手だけしか一物に添えていなかったが、僕の屹立した一物を効率よく洗うには彼女たちの小さな手一つだけでは難しいということに気づいたのか、途中からは二人とも両手を使うようになっていた。

 

 そのため、今僕の一物には計4つの柔手が添えられ、ぬるりぬるりとその表面を上へ下へと滑っていた。単なる洗体行為ではあるのだが、僕は彼女たちの手が一物の上を滑るだけで言いようのない快感を覚えてしまっていた。

 

 性的知識に乏しい僕だけど、手を使って一物を擦り気持ち良くなるという方法は流石に知っていた。今の状況はまさにそれだった。だから、こうして気持ち良さを覚えてしまうのは言ってしまえば当然のことなのかもしれない。

 

「んおぉ……んうぅ……」

 

「ナギサさん……、とても気持ち良さそうです……♡はぁ……♡んはぁ……♡あんぅ……♡おちんちん触れられるだけで……気持ち良くなってしまうものなのですね……♡」

 

「そ、そうなんだね……、ふぅ……♡ふぅ……♡んふぅ……♡あっ……、先っぽからぬるぬるした透明のお汁がいっぱい溢れてきてるね……♡これも、気持ち良くなると出ちゃうものなのかな……?」

 

「う、うん……」

 

 僕はユーアさんの問いかけにそう頷いた。頷くことしかできなかった。それくらい、今の僕に余裕というものはなかったのだ。二人の手から齎される快感に、僕の全身がぶるぶると震えあがる。それと同時に、昨日初めて感じた射精感というものがまたも僕に襲い掛かってきていた。

 

「わたしたちが手を動かす度に、ぬちゃぬちゃっていう音がしてる……♡なんでだろう……、よく分からないけど……なんかえっちな音に聞こえてくる……♡」

 

「そうですね……、分かります……♡あんっ……♡んうんっ……♡この音聞いてるだけで……さらにえっちな気持ちになってしまいます……♡んはぁ……♡うあんっ……♡あぁ……♡ふあぁ……♡」

 

「あっ、おちんちんが……さっきよりもっと膨らんだ……♡はぁ……♡んうぅ……♡特に……先っぽがパンパンになってる……♡」

 

「あぁ……くぅ……、もう……くる……」

 

 ユーアさんの言った通り、僕の一物は先ほどよりもさらに膨張していた。精子が尿道を競り上がり、もうすぐそこまで迫っていた。

 

「ナギサさん……、はぁ……♡はぁ……♡もう出そうなのですね……♡んあっ……♡あぁんっ……♡はうんっ……♡」

 

「で、出そう……って……、何が…出るの……」

 

 アルフィ様は僕が限界に近いことを察しているようだったが、ユーアさんは今の状況が掴めていないようだった。すると、そんなユーアさんの困惑した様子を見たアルフィ様は悪戯っ娘のような微笑みを浮かべながら一言呟く。

 

「ふふっ、見ていれば分かりますよ♡えいっ……♡んえいっ……♡」

 

「ア、アルフィ様……、あぁ……ああぁ……!!!」

 

 そうして、アルフィ様の手が茎部と亀頭の間の段差に引っかかった瞬間、僕は背中を大きく仰け反らせ、身体を一層大きく震わせながら、とうとう果ててしまった。

 

 どぷっ……どぴゅっ……びゅるるるるるっ……ぶぴゅっ……ぶびゅるるる……ぴゅっ……ぴゅっ……

 

 そして、僕の一物の先からはものすごい勢いで精液が放出され、目の前にいたアルフィ様とユーアさんの二人の顔を白く汚していく。だが、自分の思っていた以上に射精は長く続き、やがて精液は彼女たちの顔だけでなく胸や腹をも侵食していった。

 

「わっ……、わわっ……!?にゃ、にゃにこれ……!?」

 

「はぁぁぁ……♡んあぁぁ……♡熱い……ですぅ……♡それに……こんなにいっぱい……♡ふあぁぁ……♡すごすぎますぅ……♡」

 

「こ、これってもしかして……、あ、赤ちゃんの……素……!?」

 

 一物から勢いよく放出された白濁液を真正面から浴びたユーアさんは驚きの反応を見せ、一方のアルフィ様は自身が白濁に染められていく様子をうっとりとした瞳で見つめていた。二人の反応の差は、性行為の経験の有無なのか、それとも本質的な部分の違いなのか……、それは分からない。

 

 ただ、一つ言えることとしては、アルフィ様は想像以上にエッチな方なのかもしれない、ということだろうか。一時的に気分が高揚してしまっているにしても、精液を浴びせかけられたことに驚くことなく喜びの表情を浮かべるのは正直普通じゃないと思う。少なくとも、僕の中の常識ではそうだ。

 

 そしてこの反応がもし、彼女の本質的なものだったとしたら……、僕はとんでもないエッチな御令嬢を主人に……そしてパートナーにしてしまったことになるわけで……。もしかしたら、毎日のようにエッチをせがまれるかもしれない。それはそれで悪くない……なんて考えてしまうのだから、僕もアルフィ様のことは言えないよな。

 

 って、今はそんなこと考えている場合ではなかった。我慢できずに二人の顔や身体に精液を解き放ってしまったことについて早急に謝罪しなければ……。アルフィ様……は別にしても、少なくともユーアさんには不快な思いをさせてしまったかもしれないのだ。

 

「ご、ごめん、ユーアさん……、我慢できなくて……」

 

「だ、大丈夫……♡き、気持ち良かった……ってことなんだよね……?これが出たってことは……♡」

 

「ま、まぁ……、うん……、そう……です……」

 

 実際気持ち良かったのだが、それを面と向かって言うのは非常に恥ずかしい。僕は途轍もない羞恥心に苛まれ顔を下に俯かせてしまう。すると、僕の視線の先には先端以外を泡まみれにされた自身の男性器が映る。先ほど思いきり射精したはずのそこは、未だに元気を失うことなく膨張したままだった。それを目にした僕は、思わず深い溜息を吐いてしまった。あれだけ出したのに、ちっとも満足感を得られていないなんて……。

 

「そ、そっか……♡そうなんだ……♡にゃふふ……♡わたし、ちゃんとナギサさんを気持ち良くできたんだね……♡良かった……♡」

 

 などと一人うなだれていると、ユーアさんのそんな嬉しそうな声が届く。僕を気持ち良くできたことに満足感を覚えたようだ。

 

「で、でも……、汚しちゃったよね……」

 

「えっ?う、ううん、汚されたなんて思ってないよ♡ナギサさんの精子は汚くなんてないから♡む、むしろ……、熱くてどろどろしてて……なんか気持ち良いかも……♡それにね、ナギサさんの精子の臭い嗅いでるとね……、ナギサさんのことがさらに好きになってくる感じがするの……♡」

 

「それ……んじゅるっ……♡分かります……♡ちゅぱっ……♡れろん……♡このえっちな臭い嗅いでると……、ナギサさんへの愛情がますます大きくなって……、ドキドキが止まらなくなってしまいます……♡んちゅるん……♡じゅるる……♡んはんっ……♡」

 

「って、ええっ!?ア、アルフィ様!?何してるんですか!?」

 

 僕は思わずそう叫んでしまう。いや、でも仕方ないだろう。だって、アルフィ様は自身の口周りに付着した僕の精液を舌で舐め取っていたのだから……。それも、とても美味しそうに……。

 

「そ、そんなもの、舐めてはダメですよ……!」

 

「えー、なんでですか……?んちゅる……♡れろ……♡んん……♡すっごく濃くてえっちで……こんなに美味しいのに……♡ユーアさんも、一度舐めてみてはいかがですか?」

 

「え、あ、はい、それでは……、んっ……♡れろ……♡んちゅむ……♡」

 

 アルフィ様に言われるまま、ユーアさんまで僕の出した精液を口に入れ始めてしまった。二人とも、精液を口に入れることに全く躊躇いがない……。もはや僕は声すら出なかった。

 

 僕が唖然としている中、ユーアさんは口に含んだ僕の精液を咀嚼するようにして味わっていた。その間、ユーアさんは一切表情を変えていなかったので、やはりまずかったのだろうと僕は予測していた。……のだが、

 

「んん……♡んくっ……♡なんか……ちょっと苦い……♡それに……、喉に絡みつく感じ……♡けど……、嫌じゃ……ないかも……♡というか……、胸がぽかぽかしてくる……♡この感じ……、好きかも……♡」

 

 精液を嚥下し終えて口を開いたユーアさんは、僕の予想とは全く異なる答えを述べたのだ。先ほどまで無表情だったのは、単に精液を味わうことに集中していただけなのだと理解する。

 

 そして、今の彼女の表情は、アルフィ様と同じような恍惚とした表情に変わってしまっていた。せ、精液って飲むものだったっけ……?

 

「ふふっ、ユーアさんなら分かってくれると思ってました♡」

 

 ユーアさんの回答に、アルフィ様は本当に嬉しそうに微笑む。頬を赤らめ、瞳を潤ませ、顔面や身体に精液を付着させたまま微笑むアルフィ様の姿は、これまで見てきた彼女の姿の中で一番と言って良いほど淫靡で魅惑的だった。

 

「は、はい♡何というか、癖になる独特の美味しさです♡」

 

「ええ、だから何時まででも舐めていられる……♡んちゅっ……♡ちゅぱ……♡んんん……♡美味しいですぅ……♡」

 

「ナギサさんの味……、そう思うだけでもっと病みつきになりそう……♡んむっ……♡ぺちゃ……♡ぴちゅっ……♡」

 

 そんなことを呟きながら、二人は口周りや胸元に残った精液をペロペロと舐め取っていく。決して無理しているようなことはなく、二人とも自らそれを求めるように、精液の付着したところへと舌を伸ばしていた。

 

 やがて、自分一人で舐められる場所を全て舐めきってしまったアルフィ様とユーアさんはお互いに顔を見合わせると、それぞれ相手の顔面や身体に顔を近づけ、そしてお互いに付着した精液を舐め合い始めた。

 

「んちゅるんっ……♡んはむんっ……♡」

 

「れろんっ……♡ぴちゅり……♡ちゅぷり……♡」

 

 裸の美少女二人がお互いの身体を舐め合う姿に、僕の股間がじんわりと熱くなるような錯覚を覚えた。そして同時に、自分の吐き出した精液をこんなに美味しそうに舐めてくれる二人のことが愛おしくてしょうがなくなってしまった。自分の精液を舐められて喜んでしまうなんて、僕も堕ちるところまで落ちてしまったようだ。

 

「んぷはぁ……♡ごちそうさまでしたぁ……♡」

 

「にゃふふ♡美味しかったよ、ナギサさん♡はぁ……♡んにゅぅ……♡」

 

「そ、そっか……」

 

 何と反応すれば良いのか分からず、僕はそんな短い返事をすることしかできなかった。ここで素直に"舐めてくれてありがとう"なんて言うのはあまりに変態っぽくて躊躇われてしまった。

 

「なんかすごい……♡全身がぽかぽかしてる♡」

 

「ええ……♡それに……すごく元気が湧いてきました……♡こんなに元気をいただけるなんて……、毎日でも飲みたくなってしまいます……♡」

 

「アルフィ様は、ただエッチがしたいだけなのでは?」

 

「えへっ♡バレました?っとと、そろそろナギサさんの身体の泡、流してさしあげないとですね」

 

「あっ、そうですね。それじゃナギサさん、お湯かけるね」

 

 そう言うと、ユーアさんはシャワーヘッドを手に取り、流れ始めたお湯で僕の身体に付着した泡を洗い流す。アルフィ様も、別のところからシャワーヘッドをもう一つ持ってきて、僕の髪の毛についたシャンプーの泡を綺麗に洗い落としてくれる。

 

 それからすぐに、僕の全身の泡は洗い流され、僕は二人にお礼を言って座椅子から立ち上がった。

 

「ありがとうございました、アルフィ様。ユーアさんもありがとう」

 

「いえいえ、どういたしまして、えへへ♡それじゃあ次は私たちの番ですね。ユーアさん、どちらが先にいたしましょうか」

 

「アルフィ様、お先にどうぞ」

 

「分かりました。それでは、よろしくお願いしますね」

 

 この流れは……、恐らく僕も参加ということで良いのかな?でも、女の子の身体なんて洗ったことないから、力加減とか大丈夫かなぁ……。

 

「アルフィ様は髪が長いので、ナギサさんみたいに頭と身体を一遍に洗うってことは難しそうですね」

 

「そうですね。それではまず、頭からお願いできますか?」

 

「畏まりました。ナギサさん、女の子の髪の毛って洗ったことある?」

 

 ユーアさんが僕にそう問いかけてくる。僕は素直に首を横に振って答えた。正直、髪の毛はユーアさんに任せたかった。だって、アルフィ様の綺麗な銀髪に傷なんてつけたくないから。

 

「な、ない……かな……」

 

「そっか。じゃあ、今は見てて」

 

「う、うん、ありがとう。助かるよ」

 

 それからユーアさんはシャンプーを手に馴染ませ、アルフィ様の長くて綺麗な銀髪を丁寧に洗っていく。時々僕にアドバイスなんかを挟みながら。これ、いつかは自分でできるようにってこと……なんだろうか……。

 

 それってつまり、今後も彼女たちと一緒に入浴することになる……ということなのかな?嬉しい……じゃなくて、良いのかなぁ……。

 

「はい、これで頭はおしまいです」

 

「ありがとうございます。ユーアさん、お上手ですね。とても気持ち良かったです」

 

「まぁ、昔はよく姫様のお身体を洗っていましたからね。慣れというやつですよ。でも、お気に召していただけたようで何よりです。それで、どう?ナギサさん」

 

「力加減が難しそうだね」

 

「女の子の身体は繊細だからね。力はあんまり入れちゃダメだよ。それじゃアルフィ様、次はお身体を……」

 

 そうしてユーアさんはチラリとこちらに視線を向けながら……

 

「ナギサさんが綺麗にいたします♡」

 

「で、ですよねぇ」

 

 何となく予想していたユーアさんの言葉に、僕はそんな声を漏らしてしまった。

 

「ふふっ、よろしくお願いいたします、ナギサさん♡」

 

「は、はい。何とか、頑張ってみます……」

 

 アルフィ様の期待を込めた瞳に見つめられ、僕は緊張しながらコクコクと頷いた。や、優しく……、優しく触れることを心掛けるんだ……。

 

「いっぱい、気持ち良くしてくださいね♡」

 

「えっ、そ、それはどういう意味で……!?」

 

「えへへ♡もちろんえっちな意味で……ですよ♡はぁ……♡ふあぁ……♡」

 

 太腿を擦り合わせながら、アルフィ様は甘い声でそう囁いた。最初からエッチなことしか頭にないアルフィ様だった。

 

 いや、よく考えてみればすぐに分かることだったな。彼女の期待するような瞳や放つオーラがピンク一色なのだから。

 

 そして、そんなアルフィ様の様子に、僕もエッチな期待を膨らませてしまうのだった。当然、股間も限界まで膨れ上がってしまっていた。



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アルフィ様とユーアさんと、お風呂でイチャイチャ⑤ アルフィ様の身体を愛撫・前編

「痛くないですか?」

 

 アルフィ様の小さくて肌理細やかな背中にボディソープの泡を塗り広げながら、僕は彼女にそう問う。自分の身体を洗う時のように力を籠めすぎてはならないので、どうしても慎重になってしまう。

 

「はい、とても気持ち良いですよ♡ナギサさん、お上手です」

 

「そ、そうですか、良かったです」

 

 だが、そんな僕の心配など不必要とばかりに、アルフィ様は本当に気持ち良さそうな声で僕の問いかけに答えてくれた。その言葉がお世辞でも何でもないと僕自身ちゃんと理解でき、ほっと安堵の息を漏らしてしまった。

 

「毎日でも洗ってほしいくらいです」

 

「えっと……、それはつまり……毎日僕と一緒に入浴し、エッチなことをしたい……と、そういうことでしょうか?」

 

「えへへ、はい♡その通りです♡私、毎日ナギサさんと身体を触れ合わせて、もっともっと愛を深めたいのです♡そして、ユーアさんとももっと仲良くなりたいです。それには、こうしてみんなでお風呂に入るのが一番だと思うんです」

 

 アルフィ様は少し恥ずかしそうにそう言った。僕としては、毎日のように一緒にお風呂に入ってエッチなことをしていたらいつか箍が外れてしまうのではないか……と思っていたのだが、アルフィ様にそんなことを言われてしまったらもはや何も言えない。

 

「ア、アルフィ様……。わ、わたし、すごく嬉しいです。アルフィ様にもっと仲良くなりたいと言っていただけて」

 

「ふふっ、当然じゃないですか。同じ空間で生活する仲間なんですし、それに今はお互いナギサさんのパートナーなのですから♡あっ、もちろん、他のユニットメンバーの方々とももっと仲良くなりたいと思ってますよ」

 

「アルフィ様……、はい、そうですね。わたしも、アルフィ様や他の皆様ともっと仲良くなりたいです。立場など関係なく」

 

 ユーアさんはアルフィ様の言葉に感激し、瞳を潤ませていた。使用人とは言えユーアさんも年頃の女の子だもんな。もっと同年代の子たちと友人のようにお話したりしたいのだろう。

 

「そ、それから……、わたしも……ナギサさんともっといっぱいくっつきたい……です……♡え、えっちなこと……もっといっぱいしてみたい……♡」

 

 それから、ユーアさんは僕へと視線を映し、もじもじしながらそう言ってくる。アルフィ様ほど積極的でないにしろ、やはりユーアさんも人並み以上にはそういうことに対する好奇心も持っている……。今のユーアさんの言葉を受けて、僕はそれを改めて実感させられた。

 

 アルフィ様もユーアさんも、こんなに僕のことを求めてくれている……。そのことに、僕は言いようのない幸福感を覚え、心の奥がじんわりと温かくなる。二人のことが愛おしくて堪らない……。

 

「ありがとうございます、アルフィ様。そしてユーアさん。僕も、お二人と同じ気持ちですよ」

 

「えへっ、良かったです♡ですから、毎晩こうして一緒にお風呂に入っていっぱいいっぱい愛を深め合いましょ♡そして、みんなで気持ち良くなりましょ♡」

 

「は、はい、わたしも賛成です♡」

 

「分かりました。ですが、一つ約束があります」

 

「えっ、な、何でしょう……?」

 

 それまで頬をゆるゆるに緩ませていたアルフィ様は、僕の言葉を受けて少し不安気な表情を浮かべてしまう。ユーアさんも同様に不安そうに僕のことをじっと見つめてきていた。そ、そんなに不安になることじゃないんだけど……、ちょっと言い方が悪かったかな……?

 

「あっ、いえ、そんな変なことじゃないので安心してください、お二人とも。えっとですね……、その……そういうことをするのはお風呂……と言いますか、夜だけにしましょう、と言いたかっただけなので」

 

 多分、調子に乗っていろんなところでエッチなことをしていたら、僕たちの日常生活がかなり爛れてしまうと思う。それを防ぐために、致す時間くらいは限定しておくべきだと僕は考えた。

 

「あっ、そ、そうだよね。所かまわず……っていうのはダメだよね。うん、分かったよ、ナギサさん。わたし、約束ちゃんと守るね」

 

 ユーアさんは、僕の言いたいことをすぐに理解し、ちゃんと頷いてくれた。話が早くて助かる。

 

「夜だけ……ですか……。むぅ、ちょっと残念です……」

 

 一方のアルフィ様は少し残念そうに唇を尖らせていた。まぁ、そうだよね。今朝起きぬけに、"えっちしたいです"なんて言ってきたんだもんね。でも、彼女に仕える執事として、主人が爛れた生活を送ることは看過できない。というか、ルクス様に申し訳なさすぎる……。だからここは、アルフィ様にもちゃんと頷いてもらわなければ。

 

「アルフィ様、あまりこういうことばかり考えていたら、日常生活に支障をきたしかねません。お二人も、そして僕も、まだ若いのですから、規則正しい生活を送ることはとても大切なことです。ですから、ここはどうか僕の提案を受け入れてはいただけませんか?その分、夜はこうしていっぱいイチャイチャしましょう」

 

「ナギサさん……、やっぱり優しい……♡そんなこと言われてしまったら、頷くことしかできないじゃないですか……♡その……、夜はちゃんといっぱい可愛がってくださいね……?じゃないと嫌ですからね……?」

 

「はい、もちろんです、アルフィ様。まったく、僕のご主人様……いえ、未来のお嫁様はすごくエッチな方ですね」

 

 アルフィ様の上目遣いでの懇願に、僕は微笑みを浮かべて一つ大きく頷いた。正直、今のアルフィ様、滅茶苦茶可愛すぎる。ぎゅっと抱きしめたくなってしまった。

 

「あはは、確かに。自分からナギサさんの口に乳首押しつけたり、えっちなことは夜だけって言われて残念がったり……、アルフィ様はとてもえっちな方ですね」

 

「ま、まぁ否定はしません♡け、けど、それを言うならお二人だって充分えっちだと思います。ユーアさんだって、さっきからずっと息荒いままですし、乳首だって勃ったままです」

 

「にゃっ、ア、アルフィ様、あんまりはっきり言われるのは恥ずかしいですよ……」

 

「それはお互い様です。今のは仕返しですよ、ユーアさん」

 

「も、もぅ、アルフィ様ったら……、にゃふふ♡」

 

「えへへ♡」

 

 お互いにえっちなところを指摘し合い恥ずかしそうにしていたが、そんな自分たちのやり取りが可笑しかったのか、二人は顔を見合わせ笑みを浮かべていた。とても微笑ましい光景に、僕の顔も自然と綻ぶ。いやまぁ、最初からかなり緩んでしまってはいただろうけど。

 

 と、そこで僕は、話に集中しすぎて手を動かすことを忘れてしまっていたことに気づいた。

 

「っとと、まだアルフィ様の身体洗っている途中でしたね。つい話に夢中になってしまいました」

 

「あっ、そうでしたね。ではナギサさん、続きをお願いします♡」

 

「畏まりました、アルフィ様」

 

 そう言って僕は、再びアルフィ様の身体に泡まみれの自身の掌を滑らせ始めた。シャワーのお湯でしっとりと濡れたアルフィ様の肌には傷など一切なく、とてもすべすべしていて心地良い感触だった。これが若さ……というやつなのか……。いやまぁ、僕もまだまだ充分若いのかもしれないけど。それか、これだけつるつるすべすべなのは女の子だからなのかな?

 

「腕、失礼します」

 

「はぁい♡んん……、脇……くすぐったい……、んふっ……♡」

 

 アルフィ様は時々くすぐったそうな声を漏らしていた。それだけでもちょっと艶っぽく聞こえてしまうのは、元々のアルフィ様の気質なのか、それとも僕の気分が高ぶりすぎているからなのか……。

 

 そんなことを考えながら、背中、腕、脚の順に泡を丁寧に塗り広げていく。本当、何処も彼処もまだまだ小さく、彼女がまだ幼い女の子であることを再認識させられる。身体はこんなに小さいのに、こういう時に放つ雰囲気や口からこぼれる吐息や声はどうしてこんなにエッチなのか……。

 

 そうして僕は背中・腕・脚を洗い終え、そこで一度手を止める。こ、この先に進んで問題ないんだよね……?多分アルフィ様もそれを望んでいるんだろうし。

 

「えっと、次はお腹……失礼します」

 

「ふふっ、お楽しみは最後、ということですね♡」

 

「い、いや、そういうつもりはなかったのですが……」

 

「ということは、無意識的に私を焦らそうとしていたのですね?いやん♡ナギサさん、とっても意地悪です♡」

 

 アルフィ様からすると、これは焦らし行為みたいなものだったのかな……。けど、なんか嬉しそう……?意地悪とか言いながらも、口元はかなりにやついている。そして、頬も赤い。焦らされて喜んでいるってことなのかな?

 

 そんなことを考えながらも、僕は手を動かす。ぽっこりしているわけじゃないけどぷにぷになアルフィ様のお腹の上に掌を滑らせ、撫でるようにして泡を広げていく。とても触り心地が良い。一応、昨日も触っているのだけど。

 

 しかし、例に漏れず小さなアルフィ様のお腹を洗い終えるのに、そう時間はかからない。僕はついに、アルフィ様の胸とお尻、それから股の付け根を残した全ての部位を洗い終えてしまった。そして、チラリとアルフィ様の表情を伺うと、それはもうびっくりするほど期待に満ちていた。これから齎されるであろう刺激を、今か今かと待ちわびていた。いや、この人……本当にエッチすぎじゃありませんかね……?幼女とは一体……。

 

 でも、ここで立ち止まるわけにもいかない。というか、本心としては僕もアルフィ様を早く気持ち良くしてあげたいのだ。ならば、躊躇う必要など何処にもない。そう思い、僕はゆっくりと掌を上方へと移動させた。

 

 すると、僕の掌に微かに盛り上がった感触が伝わってきた。まだまだ発展途上だけど、決して成長していないというわけではないアルフィ様の胸の膨らみに触れたのだ。10歳で既に膨らみ始めているということは、アルフィ様は将来かなり大きく成長されるのではなかろうか。彼女の将来が楽しみだ。

 

「んあぁ……♡ナギサさん……手つきがちょっとえっち……♡んんぅ……♡」

 

「そ、そうですか……?でもアルフィ様、喜んでますよね?絶対」

 

「あんっ……♡んふふ、まぁそうなんですけどね……♡ひんっ……♡ナギサさんの手……とっても気持ち良い……ですからね……♡んうん……♡はんっ……♡」

 

 最初は膨らみの外縁に沿ってくるくると円を描くように手を動かし、そして徐々に中心へと手を近づけていく。すると、アルフィ様はそれだけで甘い吐息を漏らし、嬉しそうに微笑む。

 

 だから僕も調子に乗って、手を胸の表面に這わせるだけじゃなく、時々力を籠めてその小さな膨らみをふにふにと揉むように動かしてみる。そうすれば、アルフィ様はさらに色っぽい声を上げてくれる。

 

 閉め切られた浴室内では、アルフィ様のその甘い声がよく響く。そして、その嬌声は僕やユーアさんをもさらなる興奮へと導くように、僕たちそれぞれの脳内にじんわりと浸透してくる。脳内が少しずつ桃色に染め上げられていく。

 

 僕は興奮に任せて手をさらに動かし、そしてとうとう彼女の膨らみの中心でぽつんと佇む薄紅色の小さな突起物に触れた。

 

「ひあんっ……♡あぁんっ……♡」

 

 その瞬間、アルフィ様は声のトーンをさらに跳ね上げ、ぶるりと身体を小さく震わせた。僕の身体を洗っている時からちょくちょく刺激を与え続けていた彼女の蕾は今、相当感度が高まっているらしい。

 

「んひぅん……♡はうん……♡ナギサさんのぬるぬるの手で乳首擦られるの……すごく気持ち良いですぅ……♡はぁぅ……♡んふあんっ……♡」

 

「アルフィ様……、すごく気持ち良さそう……♡す、すごい……、見てるだけでわたし……、身体が熱くなって……♡はぁ……♡んにゃぅ……♡」

 

 ユーアさんが、アルフィ様の喘ぐ姿を見て息を荒げ、もじもじと身体をくねらせている。けど、どれだけ身体が火照っても、自分自身で身体を触ろうとはしていなかった。

 

「ユーアさんは、これまで気持ち良くなった経験とかあるの?」

 

「にゃっ、そ、それは……その……、あ、ある……よ……♡一昨日……、初めてナギサさんと会った日の夜に……、じ、自分で乳首……触って……♡」

 

 つまり、ユーアさんもアルフィ様と同じで、僕のことを考えながら初めて自慰行為をした、ということなのかな?それは嬉しいことだけど、やっぱり少し気恥ずかしくもある。

 

「そうなんだ。じゃあ、下は……触ったことある?」

 

 何故だか唐突に、僕はユーアさんにもっといろいろとエッチなことを教えてみたくなってしまい、彼女にそう問いかけた。

 

 そして、僕はユーアさんの視線を誘導するようにアルフィ様の胸から股間へと手を移動させ、人差し指でぴったりと閉じた陰裂に触れ、その縦筋を上から下までなぞるようにゆっくりと指を動かしてみせた。

 

 そんなアルフィ様の股間は、お湯とは明らかに異なるぬるぬるの分泌液でびちゃびちゃに濡れていた。



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アルフィ様とユーアさんと、お風呂でイチャイチャ⑥ アルフィ様の身体を愛撫・後編

「ひあぁん……♡んはぁん……♡」

 

 僕が陰裂に置いた指を動かすと、アルフィ様は先ほど乳首に触れた時よりもさらに大きな嬌声を漏らし、身体を軽く仰け反らせた。やはり、最も敏感なところだけあって、アルフィ様の反応は非常に良い。

 

 一方、ユーアさんはというと、そんなアルフィ様の陰裂にじっと熱い眼差しを向けていた。かなり興味津々のようで、その様子から、ユーアさんが気持ち良くなるという目的で自身の陰部に触れたことはまだないということが何となく伺えた。

 

「その様子だとなさそうだね」

 

「う、うん、ない……。けど……アルフィ様……、すごく気持ち良さそう……♡それに、なんか透明なお汁がぽたぽた垂れてる……♡さっき、ナギサさんのお、おちんちん……♡♡から出てたのと似てる……」

 

 僕の問いかけに、ユーアさんはこくんと頷きそう返答してくれた。そして、アルフィ様の陰裂から止め処なく溢れ出るぬるっとした透明な分泌液について指摘してきた。

 

「うん、これは女の子が気持ち良くなると出てくるんだ」

 

「そ、そうなの?わたしが乳首触った時は出てこなかったけど……」

 

「そうなんだ。ってことは、人によって濡れ方は違うのかな」

 

「分からない。もしかしたら、わたしがあんまり気持ち良くなれてなかっただけかもしれないし。その……、乳首を軽く摘んだり擦っただけだったから……

 

「そっか。まぁ結局、試してみないと分からないね」

 

 僕はユーアさんとそんな話をしながら、割れ目の周りのぷにっとした大陰唇に泡を塗り広げていく。まぁ、泡だけじゃなくアルフィ様の分泌物も一緒に塗り広げてしまっているのだが。

 

「あ、あの、アルフィ様、もっと近くで見てみても良いですか?」

 

「ふあんっ……♡ひあんっ……♡は、はいぃ……♡良い……ですよぉ……♡あぁんっ……♡ふはぁん……♡表面だけじゃ……ちょっともどかしい……ですぅ……♡」

 

 喘ぎ声を上げながらも、アルフィ様はユーアさんのお願いに嫌がることなく頷く。すると、ユーアさんは恐る恐るアルフィ様に近づき、そしてアルフィ様の正面にしゃがみ込んだ。今の彼女の位置からなら、アルフィ様の泡と愛液にまみれた女陰部がはっきりと見えるようになっただろう。

 

 だから僕は、人差し指と中指を左右の唇肉に触れさせ、ぴっちり閉じたその陰裂をゆっくりと開いていく。ユーアさんに見せつけるように。

 

「わ、わわっ、す、すごい……♡透明なお汁がとろとろっていっぱい溢れてきた……♡な、中はこんな風になってたんだ……、知らなかった……。綺麗なピンク色……♡」

 

「ああぁ……♡いやぁ……♡ユーアさんに……中覗かれちゃってる……♡んあぁ……♡ひあぁ……♡恥ずかしいはずなのに……すごく興奮……しちゃいますぅ……♡」

 

 ユーアさんは興奮で息を荒げながらアルフィ様の陰裂の奥の領域をまじまじと覗き込む。というか、無意識なんだろうけど、ユーアさんの顔が少しずつアルフィ様の股間に近づいていた。

 

 そんなユーアさんに自身の秘所をじっくり観察されているアルフィ様もまた激しい呼吸を繰り返しながら、恥ずかしそうに……しかしながら気持ち良さそうに身体を震わせる。見られて興奮してしまうようだ。

 

「ここが……おしっこの穴……、その下にも穴がある……。おしっこの穴よりちょっと大きいね……。なんか、すごいひくひくしてる……♡もしかして……、ここにお、おちんちん……♡♡入れたりするのかな……?」

 

「うん、そうだよ」

 

「ってことは昨日、アルフィ様のここにナギサさんのおちんちんが……♡♡は、入ったの……!?サイズ……、全然違うけど……」

 

 ユーアさんは僕の一物とアルフィ様の穴の大きさを見比べ、驚きで目を見開いていた。まぁ、そういう反応になるよな。僕自身、ちゃんと入ったことにびっくりしたし。

 

「は、はい……♡ちょっと痛かったですけど……、ちゃんと入りました……♡あぁ……♡はぁぁ……♡」

 

「な、なるほど……。わ、わたし……、大丈夫かなぁ……」

 

「後で確認してみよう、ユーアさん」

 

「う、うん、分かった♡」

 

 僕の言葉に頷くと、ユーアさんは再びアルフィ様の女陰部に視線を戻す。なお、アルフィ様はもどかしそうに身体を揺らしていた。うーん、そろそろアルフィ様には一度気持ち良くなってもらった方が良いかもな。そう思い、僕はユーアさんが見ている前で、自身の指をアルフィ様の陰裂の奥に滑り込ませた。

 

 くちゅりという音とともに、アルフィ様の陰穴は僕の指を呑み込んだ。そして、懸命に僕の指に襞を絡ませてくる。かなり我慢させてしまっていたらしい。だから僕は、アルフィ様の膣壁を擦るように前後に指を前後させる。

 

「はぁぁ……♡うはぁ……♡ひうぅ……♡こしこしされるの……すごいぃ……♡あぁぁ……♡うあぁぁ……♡」

 

「ゆ、指で擦るだけでこんなに気持ち良さそうに……♡はぁ……♡はぁ……♡わ、わたしも……こんな風になっちゃうのかな……♡ド、ドキドキする……♡」

 

「それから……こっちもこうして……」

 

「ひにゃぁぁ……♡ふああああ……♡」

 

 一度膣から指を抜き、そしてそのまま手を上部に移動させる。それから、包皮に包まれたアルフィ様の陰核に指を這わせる。そっと包皮を剥き、ぬるぬるの愛液を纏わせた指で優しく撫でてあげるだけで、アルフィ様はびくびくと身体を大きく震わせる。

 

「わっ、お、お豆みたいなのが出てきた……♡」

 

「ここが多分、女の子が一番感じるところだと思う。まぁ、僕も詳しくはないんだけどね。でもほら、アルフィ様すごく気持ち良さそうでしょ?」

 

「う、うん……♡はぁ……♡ふぅ……♡」

 

 ユーアさんに説明を加えながら、僕はラストスパートをかけるように指を激しく動かし、アルフィ様の陰核を重点的に愛撫する。

 

「あっ……♡ああぁ……♡はぁぁぁ……♡もう……ダメですぅ……♡頭……真っ白になって……♡ああぁ……♡んひあぁぁ……♡ああっ……♡」

 

 ついでにもう1本指を使い、彼女の膣と陰核を同時に攻める。すると、アルフィ様は余裕なさ気な嬌声を漏らし、自ら陰部を僕の指に押しつけ、そして軽く腰を振っていた。

 

「あああ……♡ひああぁ……♡ッッ~~~……♡♡♡はぁ……♡んはぁ……♡」

 

 そうして次の瞬間、アルフィ様は声にならない声を上げながら身体を一段と大きく震わせ絶頂に達した。

 

「わっ、さっきよりもたくさんお汁が垂れて……♡それに今、アルフィ様の身体がすごく震えてた……♡顔もすごく蕩けてたし……♡」

 

「はぁ……♡はぁ……♡私……ナギサさんの指でてっぺんまで昇ってしまいました……♡ユ、ユーアさん、これが絶頂というものです……♡はぁ……♡んふぅ……♡」

 

「ぜ、絶頂……、今のが……そうなんだ……」

 

「後でユーアさんも体験できますよ……♡ですので、楽しみにしていてくださいね、ふふっ♡すっごく気持ち良いですから♡」

 

「は、はい……♡そ、そんなに気持ち良いんだ……♡ワ、ワクワクしてきたかも……♡はぁ……♡んにゃうぅ……♡」

 

 アルフィ様は絶頂後の余韻を残した艶めかしい表情のままユーアさんににこりと微笑みを浮かべる。そんなアルフィ様の言葉を受けて、ユーアさんは期待度マックスといった感じの表情を浮かべた。ユーアさんが絶頂できるかどうかは僕次第なんだよね……。ちょっとばかしプレッシャーだ。

 

 そんなことを考えながらも、僕は最後に洗い残していたアルフィ様のお尻にちらっと視線を向けた。座椅子に座っていることで尻肉がふにゅっと柔らかく潰れて形を変えている。その様子が何処かエッチに見えてしまった。

 

「ア、アルフィ様、最後にお尻、失礼しますね」

 

「あ、はぁい♡お願いします♡」

 

 僕は彼女の股間から手をお尻へと移動させ、そっと表面を洗っていく。時々座椅子から腰を浮かせてもらいながら、例に漏れず小さな、それでいてぷりぷりしたアルフィ様のお尻の左右の丘を丁寧に泡まみれにしていった。なるべく愛液の付着した指は使わないようにしながら。

 

 それにしても、アルフィ様のお尻はこんなにもすべすべしていてもちもちしているのか……。ダメなのは分かっているが、ずっと触っていたくなってしまう……。それくらい気持ち良いのだ。

 

 なおアルフィ様は、先ほど絶頂したばかりということもあってか、お尻の表面を撫でられるだけでもぴくぴくと身体を小刻みに震えさせていた。そして、僕の手が彼女のお尻の左右の丘の真ん中にある割れ目へと滑り込んだ瞬間……

 

「ひにゃぁん……♡お尻……気持ち良い……♡そこ……ダメですぅ……♡ふああああ……♡♡♡」

 

 と言って2度目のオーガズムを迎えた。まさかお尻の割れ目を擦られるだけで絶頂するとは思っていなかったので、僕もユーアさんも少しばかり驚いてしまう。どうやら、相当感度が高くなっているみたいだ。

 

 僕は慎重に手を動かし、彼女のお尻の穴の周囲のしわしわとした感触の皮膚に泡を広げていく。一応、排泄機関なので丁寧に洗うことを心掛ける。

 

「ああぁ……♡はぁぅぅ……♡お尻……しゅごいぃ……♡♡」

 

 アルフィ様が気持ち良さそうな声を上げる度に、彼女の肛門がひくひくと蠕。すると、僕の指がちゅるりとその穴の奥へと滑り込んでしまった。

 

「ふにゃああああ……♡ひううううう……♡♡♡」

 

 その瞬間、アルフィ様はまたも身をぶるりと痙攣させて3度目の絶頂に至った。そんな彼女の陰裂からは、ぷしゅっと勢いよく液が噴出していた。絶頂すると分泌液が噴き出してくることもあるんだ……。

 

 って、そんなこと考えている場合じゃなかったな。早く指を抜いてあげないと……。こんなところに指突っ込まれ続けるのは流石に気持ち悪いだろうし。

 

「す、すみません、アルフィ様。すぐに指抜きますね」

 

「ふえ……?えっ、ちょっ、ちょっと待ってくださいっ……♡♡あ……♡ああ……♡ああぁ……♡」

 

 慌てて指に力を籠めてしまった所為で、アルフィ様の制止の声に反応することができなかった。そして、ちゅぷっという音を立てて、僕の指はアルフィ様のお尻の穴から脱出した。すると、アルフィ様はぶるぶると身体を揺らし、力の抜けた声を漏らした。い、一体どうしたのだろうか……と思っていると……

 

「ダ、ダメぇ……♡で、出ちゃいますぅ……♡♡」

 

 というアルフィ様の叫び声とともに、ちょろちょろという水音が聞こえてきた。僕は慌ててその音の根源を確認すべく、身体を前に乗り出した。

 

「あっ……」

 

 そして、僕はそんな声を漏らしてしまった。見ると、彼女の女陰裂から薄黄色の液体が一筋流れ出ていたのだ。どうやら、アルフィ様は絶頂したことで身体から力が抜けてしまい、さらに僕が敏感になった彼女の肛門から慌てて指を引っこ抜いてしまった所為で、尿道筋が完全に弛緩してしまったらしい。

 

「ああぁ……♡み、見ないで……♡見ないでくださいぃ……♡んあぁ……♡嫌ぁ……♡お、おしっこ……止まらないぃ……♡」

 

 アルフィ様はいやいやと首を振りながらも、排尿の気持ち良さに抗えず艶っぽい声を漏らしてしまっていた。でも、流石のアルフィ様でも自身がお漏らしする姿を見られるのは恥ずかしいようだ。まぁ、当たり前か。

 

 僕はそんなアルフィ様の姿に興奮してしまっていた。ま、まずい……、このままだと何か変な趣味に目覚めそうだ……。こ、これ以上見てはいけない気がする……。

 

 しかし、股座から未だに薄黄色透明の尿を垂れ流すアルフィ様の姿から目を離せないでいた。ど、どうしよう……、お漏らしするアルフィ様がエッチに見えてしまってしょうがない……。

 

 なお、ユーアさんは既にアルフィ様の脚の間から移動していたので、アルフィ様の小水を身体に浴びる……なんてことにはならなかった。

 

「はぁ……♡はぁ……♡はぁ……♡み、見ないでって言ったのにぃ……」

 

「す、すみません……」

 

 やがて小水を全て出し終えたアルフィ様は、頬をぷくっと膨らませ唇を尖らせながら僕に恨みがまし気な視線を向けてきた。僕は素直に謝ることしかできない。

 

「ナギサさん、すごい凝視してたよね……?えっち……♡」

 

「うぐっ……、返す言葉もございません……」

 

「も、もぅ、は、恥ずかしかったんですからね……?で、でもその……、ちょっと気持ち良くもなってしまいました……♡これで変な趣味に目覚めたりしたら、全部ナギサさんの所為にしますからね……♡せ、責任……取ってもらいます……♡」

 

 どうやら僕は、アルフィ様をさらにエッチな人に仕立て上げてしまったようだ。というか、やっぱりこの人、見られて興奮するタイプだ……。

 

「せ、責任……とは……?」

 

「優先的にナギサさんとエッチする権利をいただきます♡」

 

 指をびしっと僕に突きつけながら、アルフィ様はそう宣言した。結局エッチなことに直結する辺り、流石はアルフィ様と言うべきなのだろうか。

 

「にゃっ、ず、ずるいですよ、アルフィ様っ」

 

「こ、これは全部、私を変態にさせかけたナギサさんが悪いのです♡」

 

「ぐぬぬぅ……、ナギサさんのえっち……!」

 

 ユーアさんが僕をキッと睨みつけてきた。いや、決してユーアさんを蔑ろにするつもりはないんだけどなぁ……。

 

「え、えっと、ユーアさんには何もしない……ってわけじゃないと思うけど……」

 

「あっ、そ、それもそっか。なぁんだ、びっくりした。てっきりわたしのことはあんまり構ってくれなくなっちゃうのかと思った」

 

「そ、そういうつもりで言ったわけじゃないです。ただ、いつも私を最初に気持ち良くしてくれることを約束していただければ良いんです」

 

「わ、分かりました……」

 

「それから……♡♡」

 

 アルフィ様はそう言って一呼吸置き、それから再び口を開いた。先ほどまでのちょっと強気な態度から一変して、今は何処か恥ずかしそうだった。

 

「そ、その……、私……お尻をいじいじされる快感にも目覚めてしまったかもしれないです……♡♡な、なので……、これから毎日……お尻もいっぱいいじいじしてほしい……です……♡♡」

 

 うん、やっぱりアルフィ様はアルフィ様だった。エッチなことに貪欲な幼女とか……、何というパワーワード……。まぁでも、僕はそういうエッチなところも含めてアルフィ様のことが好きなわけだしね。アルフィ様の性への貪欲さに、僕は何処か安心してしまっていた。

 

「ふふっ、はい、畏まりました、エッチな御嬢様」

 

「んもぅ、私をえっちにしたのはナギサさんなんですからね?そこのところ、覚えておいてください♡♡」

 

「ははっ、分かりました。っと、それではそろそろお身体お流しいたしますね」

 

「……お願いします♡」

 

 というわけで、僕はシャワーヘッドを手に取り、流れるお湯でアルフィ様の身体に付着した泡を全て洗い流していく。

 

「ひんっ……♡んうあぁ……♡あっ……♡♡♡」

 

 その最中、僕の手が再び彼女の陰部に触れ、アルフィ様は本日4度目の絶頂を迎えていた。流石にお漏らしはしなかったけど。べ、別に残念なんかじゃないから……。

 

 そうして、アルフィ様の身体に付着した泡や愛液、尿などを全て流し終え、僕はシャワーを止めた。全てが流れ落ちたアルフィ様の身体はとてもつやつやしていた。

 

「ふぅ、気持ち良かったですぅ♡」

 

「お漏らしが?」

 

「ち、違いますっ!……違くないかもですけど……♡♡んもぅ、からかわないでくださいよぉ、本当に恥ずかしかったんですからぁ……♡♡」

 

 アルフィ様がぽすぽすと僕の腹を叩いてくる。自分が人前で失禁してしまったこと、また、それをあろうことか気持ち良いと感じてしまったことがよっぽど恥ずかしかったらしい。まぁ、そりゃそうか。

 

 しかし、アルフィ様に叩かれても全然痛くないな。どうやら、腕に力が入っていないようだ。というか、なんか可愛い。

 

「あはは、ごめんなさい」

 

 つい笑みがこぼれてしまった。そんな僕の反応が気に食わなかったようで、アルフィ様は顔を羞恥で真っ赤に染めたままぷくっと頬を膨らませていた。

 

「もぅ……、全然反省してませんね……、ナギサさん……。本当、意地悪な人です……♡まぁ、そういうところも好き……なんですけど……♡まったく……、意地悪されてちょっと嬉しいなどと思ってしまうなんて……、私も私で困った女ですよ……、本当に……♡えへへ……♡」

 

 アルフィ様はすねたようにそうポツリとぼやいていた。けど、最後には口元を緩ませていたのだった。



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アルフィ様とユーアさんと、お風呂でイチャイチャ⑦ ユーアさんの身体を綺麗にしよう・前編

「さてと、それじゃあ次は……」

 

「うん、わたしの番だね」

 

 僕がアルフィ様から視線を外しチラリとユーアさんの方を見やると、ユーアさんは緊張半分、期待感半分といった面持ちでこくりと頷いた。

 

 先ほどまでのアルフィ様の痴態を目の当たりにしたことで、ユーアさんの興奮もほとんど最高潮と言って良いくらいまでに高まってきているのだろう。元から息は荒かったけど、今は彼女の全身が熱によって薄桃色に染まり、お尻の上の細い黒尻尾がピンと伸びている。発情したネコが同じような反応を見せるかは僕には分からないけど、少なくとも今のユーアさんが発情状態にあることは一目瞭然だった。

 

 ……というか、本来は身体を洗うことが目的なんだよね……。それがいつの間にか、気持ち良くなることがメインになってしまっていた。まぁ、そこは別に気にするようなところじゃないかもしれないけど。結局後で目いっぱいイチャつくんだし。その予定が少しばかり繰り上がっただけのこと……と考えるべきだろう。

 

「それじゃアルフィ様、ユーアさんと場所交代していただけますか?」

 

 僕は未だに座椅子に腰かけたまま先ほどの絶頂の余韻に浸っているアルフィ様にそう声をかける。すると、アルフィ様は僕の言葉にこくりと頷いてくれる。

 

「はい……、分かりました……、はぁ……♡はぁ……♡んしょっ……、あ……あれ……?んいしょっ……んんっ……、んぅぅ……。どうしましょう……、身体に力が入らないです……。椅子から立てません……」

 

 が、アルフィ様は先ほどの計4回の絶頂の性で足腰に力が入らなくなってしまっていた。そのため、何度力を入れても椅子から立ち上がれないでいた。そんなアルフィ様も可愛らしいと思ってしまう僕は、そろそろ末期なのではないだろうか。

 

「あっ、そういうことでしたらアルフィ様はそのままその椅子に座っていてください。それで……、ユーアさんはこっちに座ってもらえる?」

 

 僕はアルフィ様の座る座椅子の隣にもう一つ座椅子を設け、そちらにユーアさんを招く。幸いこの寮の浴室には、複数人がまとめて入れるよう洗い場や座椅子がいくつかある。なので、態々アルフィ様を移動させる必要もない。最初からそうしていれば良かったな。

 

「あ、うん。そ、それじゃあ、こっちに失礼して……」

 

 ユーアさんはそわそわしながら僕が用意したもう一つの座椅子に腰を下ろす。そこにはいつもの綺麗な所作がなかった。

 

「あはは、慌てなくても僕は逃げないよ」

 

「う、うん。それは分かってるんだけどね……。さっきからなんかこう、すごくドキドキしちゃってて……」

 

「それは見ていれば分かるかな。そんなに楽しみにしてくれてるの?」

 

「ア、アルフィ様のあんな姿を見せられたら……、誰だって期待しちゃうよ……♡そ、その、よろしくお願いします……♡」

 

 うん、やっぱり緊張しているな。肩に少し力が入ってしまっている気がする。ちょっとばかし気を紛らわせてあげた方が良いかもしれないな。そのためには……

 

「分かった。まぁ、最初は身体洗うだけなんだけどね。本番はその後だから。準備段階ってやつだよ。もっとも、アルフィ様はその準備段階だけで何度も気持ち良くなっちゃったみたいだけど」

 

 そう言いながら僕はチラリとアルフィ様に視線を向ける。すると、ぷくっと頬を膨らませたアルフィ様の顔が視界に映った。

 

 僕はアルフィ様をちょっとからかってみることにした。アルフィ様ならきっとこの場の雰囲気を和ませてくれるだろうと期待して。

 

「むぅ、途中からナギサさん、完全に私を気持ち良くするつもりでしたよね?その言い方はあんまりだと思いますぅ」

 

「ふふっ、申し訳ございません。ちょっとからかいたくなっちゃって」

 

 むくれるアルフィ様のなんと可愛らしいことか……。僕は口の端が釣り上がるのを止めることができず、笑みを溢しながらアルフィ様に謝罪した。

 

「も、もぅ……、私、からかわれても嬉しくなんて……♡」

 

 僕から顔を反らしたアルフィ様はまるで怒っているようには聞こえない声でそんなことを言っていた。というか、チラリと見えた彼女の表情は何処か嬉しそうですらあった。口元が少し緩んでいるような気がするし。

 

「あっ、えっと、アルフィ様……、顔……ちょっとにやけてますよ……?その……、説得力が……ないかなぁ……なんて……」

 

 それはユーアさんにも見えていたようで、少し申し訳なさそうにそんな指摘をアルフィ様にしていた。

 

「ユーアさん、言わないでくださいよぉ……。ナギサさんに気づかれたらさらにからかわれちゃうじゃないですかぁ……♡」

 

「でも、それが嬉しい……と?」

 

 アルフィ様の反応が面白かったようで、ユーアさんも何処か楽し気にアルフィ様をからかい始めた。

 

「ええ、まぁ……♡って、言わせないでくださいっ!」

 

 アルフィ様のノリツッコミが炸裂した。アルフィ様、やっぱりこの状況を楽しんでいるよなぁ、絶対。僕たちにからかわれてすごく嬉しそうだし。生粋のM……ってことなんだろうな、きっと。

 

「あと、アルフィ様の口元がにやついていたことはナギサさんにもバレバレだと思いますよ」

 

「アルフィ様は、からかわれて喜んじゃうのですね。変態さん」

 

「んうぅ……♡」

 

 アルフィ様が顔を真っ赤にして俯いてしまった。でも、そんな彼女の口から甘い吐息が漏れていることに、僕もユーアさんも気づいている。

 

「さてと、アルフィ様をからかうのはこれくらいにして……。それじゃあユーアさん、そろそろ始めるね」

 

「あ、うん、お願いします」

 

 ユーアさんは先ほどより幾分か余裕のある声でそう答えてくれた。緊張を少しでも取り除けたなら良かった。

 

 流石はアルフィ様だ。僕の期待を裏切らない。後でいろいろとお礼しないとな。犠牲にしちゃった感もあるし。

 

 まぁでも、当のアルフィ様も喜んでいるみたいだし、これはこれである意味一石二鳥と言えるのかな?アルフィ様をさらなる変態に仕立て上げてしまったようにも思うのだけど……。本当に良かったのかはよく分からない。

 

「まずは身体濡らすよ」

 

 アルフィ様に対して芽生えかけた罪悪感のような何かをひとまず心の内に押しとどめ、僕はシャワーヘッドを手に取ってお湯を出す。

 

「はーい」

 

 ユーアさんからの返事を聞いてから、僕は出したシャワーのお湯をユーアさんの身体に満遍なくかけていく。そういえば、僕の元の世界でのいわゆる猫って生き物は基本的にお風呂が嫌いとか聞いたことあるけど、あれは果たして真実だったのだろうか。いやまぁ、ユーアさんを見てこんなこと思い出すのは失礼かもしれないけど。そもそも猫人族と動物の猫はまた違うだろうし。

 

 などと考えながら、僕はユーアさんの全身を温かなお湯で濡らしていった。なんでだろうね、身体が濡れただけでちょっと艶めかしく見えてしまうのは……。思わず僕の股間がピクリと跳ね上がってしまった。幸い……と言うべきかは分からないけど、アルフィ様とユーアさんには気づかれなかった。

 

「よし、じゃあまずは頭からだね」

 

 そう言って僕はシャワーヘッドを所定の位置に立てかけてからシャンプーのボトルに手を伸ばす。そして数回プッシュして充分量の泡を出し、それを僕の手に馴染ませてからそっとユーアさんの艶やかな黒髪に触れる。

 

「髪の毛、すごく細いね。やっぱり僕のとは全然違うや」

 

「そ、そうかな?」

 

「うん、同じ黒髪だけど、僕よりずっと綺麗」

 

「き、綺麗……?う、嬉しい……、えへっ♡」

 

 そんなやり取りを交わしながら、僕はユーアさんの細くて綺麗な黒い毛髪に指を滑らせる。先ほどユーアさんがアルフィ様の頭を洗っていた時のように丁寧な手つきを心掛け、そっと優しく撫でるイメージでユーアさんの頭皮にシャンプーの泡を広げていく。

 

 ユーアさんは嬉しそうに、そして気持ち良さそうに僕に身を委ねてくれていた。うん、多分こういう感じで合っているっぽい。

 

「あっ、そういえば耳ってどうすれば……」

 

 ふとそんな疑問が口からこぼれ出る。

 

「耳もそのまま洗ってくれて大丈夫だよ。人間さんと同じで、耳の裏側を念入りに」

 

「了解。えっと、じゃあついでに聞くけど、尻尾はどうする?」

 

「尻尾も普通に洗ってくれて大丈夫。そ、その……、多分お、おちんちん……洗う感じに似てると思う……♡♡」

 

「お、おう、なるほど……。ま、まぁ、とにかく理解した」

 

 ユーアさんの発言で、僕は思わず先ほどアルフィ様とユーアさんの二人に自分の股間を洗われた時のことを思い出してしまう。もう一度先ほどの快感を味わいたいと強請るように、僕の股間がまたもピクリと跳ねる。

 

 けど、今はひとまずユーアさんの身体を綺麗にすることに集中しないとね。僕は黙々とユーアさんの黒髪に泡を馴染ませる。時々ピンと伸ばされた彼女の尻尾に僕の股間が擦れてその度に痺れるような快感を感じてしまうが、それでも洗髪作業に没頭する。

 

 そうしてしばらく洗髪作業に集中していると、いつの間にかユーアさんの黒髪が泡で真っ白に染まっていた。どうやら僕は無心状態だったようだ。

 

「えっと、尻尾はそのままシャンプーで洗えば良いのかな?」

 

「うん、そうしてくれると嬉しいです」

 

「分かった」

 

 僕は一つ頷くとゆらゆら動く彼女の黒色尻尾へと手を伸ばす。そして、優しく手を添えながら、表面を擦るようにして自身の手に付着したシャンプーの泡を塗り広げていく。先ほどユーアさんが"おちんちん洗う感じに似てる"とか言った所為で、少しだけ変な想像をしてしまった。

 

 これは男のアレではない……。男のアレではない……。猫尻尾……。猫尻尾なんだ……。そんな風に心の中で自分に言い聞かせることで、何とか変な想像を頭から取っ払う。

 

「んにゃぅん……♡く、くしゅぐったい……♡」

 

「あっ、ご、ごめん。なんかまずかった?」

 

「そ、そういうわけじゃないんだけどね……、なんかナギサさんの手つきがちょっとえっちで……♡」

 

「う、嘘っ!?そんなつもりはないんだけど……」

 

「んにゅぅ……♡そ、そうなの……?てっきりそういうつもりで触っているのかと思ったよ……」

 

「ナギサさんは無自覚に女の子を気持ち良くしてしまいますからね。ナギサさんも私のこと言えないくらいエッチな人ですもんね」

 

 あれぇ、そんなつもりは本当にないんだけどなぁ……。なるべく優しい手つきは心掛けていたけど、それがかえってよくなかったのかな……?調整が難しいなぁ。

 

 あと、アルフィ様は多分意趣返しのつもりで僕にそんな言葉をかけてきたのだろうけど、もう既に僕はエッチな男であると開き直っているので全くからかわれた感はないんだよね……、実際のところ。

 

「ご、ごめんね、ユーアさん。くすぐったいの、もうちょっとだけ我慢してね」

 

「にゃぅ……♡はうぅ……♡う、うん……♡へ、平気……だよ……♡こうされてると……、くすぐったくもあるんだけど……、同時に身体がすごくぽかぽかしてくるんだ……♡はあぅぅ……♡」

 

「ふふっ、それが気持ち良いという感覚の前兆ですよ、ユーアさん」

 

「こ、これが……♡♡」

 

 アルフィ様とユーアさんがそんな会話を交わしている間に僕はユーアさんの尻尾を洗い終える。そして一度立てかけたシャワーヘッドをもう一度手に取り、ユーアさんの頭部や尻尾についた泡を洗い流していく。

 

 耳にお湯をかける際は、お湯が耳の穴に入らないよう細心の注意を払う。しかし、あれだな。改めて思うけど、耳の位置が違うってなんかすごく不思議な感覚だ。

 

「これで……うん、頭は終わりかな」

 

「んふぅ……♡ありがとう、ナギサさん♪すごく気持ち良かったよ♡」

 

「それなら良かった。んじゃ、次は身体だね」

 

「尻尾だけであれだけ気持ち良かったんだから、身体触られたらどうなっちゃうんだろ……♡ドキドキするよ……♡」

 

「ユーアさんが気持ち良さそうにしている姿、隣でずっと見ていてあげますからね」

 

「そ、それはちょっと恥ずかしいかも……♡」

 

 そうして僕はボディソープの泡を自身の掌に落とし、それをしっかり手に馴染ませてから、期待感マックスといった様子で僕を待つユーアさんの小さな背中に手を伸ばした……のだけど……、

 

「ひんっ……♡んにゃんっ……♡」

 

「……」

 

「ふにゃんっ……♡うにゅぅ……♡」

 

 おかしいな……。ただ背中洗っているはずなのに、どうしてかユーアさんは先ほどから甘い吐息を漏らし続けているのだ。これ、僕の手つきがどうのこうのとかいう話じゃなくて、ユーアさんの身体が元々すごく敏感なのではないだろうか……?彼女の背中を洗いながら、僕はそんな予感をひしひしと感じていた。

 

「え、えっと、背中と腕終わったから、次は前……なんだけど……」

 

「はぁ……♡んにゃぅ……♡う、うん……、お願い……しましゅ……♡」

 

「その……、大丈夫?」

 

「う、うん……、平気……♡ちょっとびっくりはしてるけど、すごく気持ち良い……から……♡というか、こんなに気持ちいんだね……、ナギサさんに身体触られるのって……♡はぁ……♡ふにゅぅ……♡」

 

「これは……、感部に触れた時が楽しみですね……」

 

 ユーアさんの様子を眺めながらアルフィ様がポツリとそう呟く。確かに、これだけ敏感なユーアさんの感部に触れたら一体どうなってしまうのか……、少し気になりはする。まぁ、苦しそうだったら止めるけど。

 

「よし、それじゃあ前洗うね」

 

「うん、分かったぁ♡」

 

 そうして僕はユーアさんの身体の前側に腕を回し、そして彼女の胸元にそっと掌を置いた。……好奇心に勝てず、真っ先に胸に手が伸びてしまった。

 

 そして僕の指先が彼女のまだ小さな、しかしちゃんと勃ち上がった幼き蕾にちょこんと触れる。すると次の瞬間、

 

「ふにゃあああああっ……♡♡うああああっ……♡♡♡」

 

 という嬌声を上げ、背中を反らせながらビクビクと身体を震わせた。ある意味想定内ともいえる反応だったことに、僕は逆に驚いてしまった。

 

 そうして少しの後、ユーアさんはぐったりと僕の身体にもたれかかってきた。



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アルフィ様とユーアさんと、お風呂でイチャイチャ⑧ ユーアさんの身体をきれいにしよう・後編

「大丈夫?ユーアさん」

 

 僕の身体にもたれかかってきたユーアさんの両肩に手を置き彼女の身体を支えながら、僕はユーアさんの顔を覗き込みそう尋ねる。予想はしていたけど、まさか本当に軽く乳首に触れただけでここまでなってしまうとは……。

 

「はぁ……♡にゃぅ……♡だ、大丈夫……だよ……♡はぁ……♡ふわぁ……♡でも……こんな感覚……初めて……♡すごい……♡」

 

 ユーアさんは荒い呼吸を繰り返しながら、恍惚とした表情でそう言った。そんな彼女の口の端からは透明の唾液がぽたりとこぼれ出ていた。

 

「ふふっ、すごかったでしょう?ユーアさん」

 

「ええ……、ホントに……♡これが……気持ち良いという感覚……なんですね……♡ふぅ……♡にゅぅ……♡はうぅ……♡乳首……触られるだけでこんなになっちゃうなんて……♡」

 

「多分だけど、ユーアさんは特別感じやすい体質なんじゃないかな」

 

「あ……、そうなんだ……、はぁ……♡はぁ……♡でも確かに……、ナギサさんに背中洗われてる時からなんかピリピリした感じがしてたかも……。わたしって思ってたより敏感なのかな……」

 

 そう言いながらユーアさんは自身の手で自分の胸の先端の蕾に触れた。しかしながら、その反応は敏感な人のそれではなかった。

 

「んん……♡んぅ……♡自分で触ると……大した事ない……かも……。前に自分で……その……そういうことしようとした時も確かこの程度だった……。これって、相手がナギサさんだから気持ち良かったってこと……なのかな……♡」

 

「そうだと思いますよ。私も、自分で慰めた時よりナギサさんに触れられた時の方が感じる刺激が強かったですから♡」

 

「好きな人効果……なんですかね♡」

 

「きっとそうですよ♡私たちの大好きなナギサさんに触れられているから、私たちはこんなにも気持ち良くなれているのです♡」

 

 アルフィ様がうっとりとした瞳で僕を見つめてくる。そんなアルフィ様の両太腿が何かを我慢するようにもじもじと擦りあわされていた。もしかしたら、一度オフになりかけていたアルフィ様の発情スイッチが再びオンになってしまったのかもしれない。先ほど4度も絶頂しているのに、よくそんなに体力……というか性力?持つなぁ……。

 

 僕なんて、昨日2回ほど射精しただけで相当疲れてしまったのに……。やっぱり、男と女では感覚が異なるということなのだろうか。それとも、アルフィ様が特別強いだけなのか……。うーん、性知識に乏しい僕じゃ分からないなぁ……。

 

 などと一人で考察していると、不意にユーアさんの肩に乗せた僕の手に柔らかくて小さな手が重ねられた。ユーアさんの手だ。

 

「ナギサさん……、続けてほしいな……♡んぅぅ……♡はぁぅぅ……♡」

 

「良いの?」

 

「うん……、平気だよ……♡わたし……、もっとナギサさんの手の温もり……全身で感じたい……♡大好きな人だから……、もっといっぱい触れてほしいの……♡だから……、お願い……、続けてください……♡はぁ……♡ふあぁ……♡」

 

 その言葉に僕の胸が高鳴る。ユーアさんの甘くて熱い感情が重ねられた掌から僕の身体に流れ込み、まるで気のように全身を駆け巡る。

 

 僕はその感情に誘われるまま、再びユーアさんの未成熟な胸部へと手を伸ばす。

 

「あ、その……一つ良いですか……?」

 

 と思ったら、アルフィ様が申し訳なさそうに小さく手を挙げて僕の行動を遮った。僕は首をかしげながらアルフィ様に次の言葉をを促す。

 

「そのですね……、是非とも正面でユーアさんの姿を見てみたいなぁと思いまして……。先ほどユーアさんも同じようなことしていましたし」

 

「あー、なるほど。そういうことですか」

 

「そ、その……、そんなに見たいですか……?」

 

 ユーアさんが羞恥で頬を朱に染めながらアルフィ様にそう尋ねる。そりゃまぁ、自分が感じている姿を真正面からじっと見つめられるのはかなり恥ずかしいだろう。

 

 けど、アルフィ様も言っている通り、先ほどユーアさんはアルフィ様に対して同じことをしていたのだ。アルフィ様としては、あの時の恥ずかしさをユーアさんにも味わわせたいのだろう。

 

「ええ、気になります。自分だけじゃ分からないこともありますからね。それに、私だけ恥ずかしい思いをするというのは不平等です」

 

「んうぅ……、そうですよね……。はい……、分かりました……。恥ずかしいですけど……、どうぞ……」

 

「えっと、じゃあこうすれば良いかな……」

 

 ユーアさんが頷いたことを確認した僕は、彼女の座る座椅子を90度回転させて、ユーアさんをアルフィ様と向かい合わせにさせた。

 

「ふふっ、いっぱい見てあげますからね、ユーアさん♪」

 

「ううぅ……、恥ずかしい……」

 

 アルフィ様に正面から見つめられ、ユーアさんは身体を縮こまらせる。小さく丸まった身体はぷるぷると震えており、本気で恥ずかしがっていることが容易に理解できた。

 

「え、えっと、洗って良い?」

 

 続きをして良いか、僕は一応ユーアさんに尋ねてみる。すると、ユーアさんは無言で頷いてくれた。そんな彼女はちょっと涙目だった。

 

「そ、それじゃあ失礼して……」

 

 許可はもらえたので、僕は今度こそユーアさんの身体前面へと腕を回し、ほとんど平坦な胸部に泡まみれの手を置いた。

 

「ひぅん……♡あぅん……♡声……出ちゃう……♡」

 

 僕が手を動かす度に、ユーアさんは大げさなくらいに身体を跳ねさせて可愛らしい喘ぎ声を口から溢していた。ユーアさんが敏感な体質であるということと、今現在真正面からアルフィ様に視姦されていることが、ユーアさんの性感をより高めているのかもしれない。見られて興奮するのはアルフィ様もユーアさんも同じ、ということなのかな。

 

「ユーアさん、顔……すごく気持ち良さそう……♡私にジロジロ見られてるから……、余計に感じちゃってるんですか?」

 

「しょんにゃこと……にゃい……でしゅよぉ……♡あぁん……♡んにゃんっ……♡わたし……、しょこまでえっちじゃ……にゃいもん……♡ふにゅぅ……♡んにゃうん……♡ひにぁぁ……♡」

 

「ふーん、そうですか……。それにしても、乳首ぴんぴんですね……。なんか、さっきよりもちょっとだけ膨らんでません?」

 

 それは僕も感じた。指に触れるユーアさんの乳首が、先ほどよりも少し膨らみ硬さを増しているように感じるのだ。口では否定しているけど、やはりユーアさんはこの状況に強く興奮しているようだ。よく言ったもんだよね、身体は正直って。

 

「それに、私に声をかけられる度にユーアさんの声、どんどん大きくなっていっていません?ふふっ、ユーアさんってば、変態さんですね♪」

 

「ひんっ……♡んあぁぁ……♡しょんにゃこと……言っちゃダメぇ……♡ダメでしゅよぉ……♡ああぁ……♡うにゃあぁぁ……♡♡♡」

 

 アルフィ様の意地悪気な言葉に、ユーアさんは身体をぶるぶると震わせていた。この反応的に、もしかしたらまた絶頂を迎えたのかもしれない。

 

 僕は念のため、ユーアさんの身体を片腕で後ろから支える。すると、ユーアさんは安心したように僕の腕に身体を預けてきた。

 

 僕はそのまま彼女の胸の上を滑らせていた手を下……つまり腹部へと下らせる。そしてその柔かなお腹に撫でるようにして泡を広げ、それから手を脚へと移動させる。

 

 その間も、ユーアさんはぴくりぴくりと身体を震わせていた。あと、アルフィ様からの言葉攻めも続いていた。アルフィ様って、Mでもあるけど、それと同時にSの気もあるのかな。ユーアさんにいろいろと囁きかける彼女の表情は何とも楽し気だった。

 

「……よし、脚も終わりかな。じゃあ、次は……」

 

 そう言って僕はユーアさんのほとんど閉じられていた両脚をそっと開く。ユーアさんからの抵抗はなかった。まぁ、抵抗の意思があったとしても、身体に力が入らず抵抗できていなかっただろうが。

 

 そうして、アルフィ様の目の前にユーアさんの女の子の部分がさらされた。それを目の当たりにしたアルフィ様の反応は……

 

「綺麗なピンク色です……。なるほど、こういう色をしているのですね」

 

 うんうんと何度も頷いていた。自分じゃ自分の陰部はよく見えないだろうからね。鏡でも使わない限り。女の子は男と違って前に突き出したものがないわけだし。

 

「嫌ぁ……♡アルフィ様に……こんにゃところ……見られちゃって……♡♡はぁ……♡んにゃぁ……♡恥ずかしいのにぃ……、気持ち良くにゃる時みたいに……身体熱いよぉ……♡」

 

 ユーアさんは頭をぶんぶんと何度も横に振っているが、その表情には羞恥だけじゃなくて興奮の色をも浮かべている。これ、もしかしてユーアさんこそが生粋のM気質だったりするのかな……?

 

 まぁ、それはそれとして、これだけ感じているのだし、きっとユーアさんの大事な部分も相当潤っているはずだろう。それを確かめるべく、僕はそっと彼女の陰部へと手を伸ばした。

 

「あ、あれ……?」

 

 けど、彼女の陰部に触れた僕の手は、ほとんど水気の感触を伝えてこなかった。大陰唇表面がシャワーのお湯で濡れてはいるが、ぬるりとした分泌液には触れなかった。……濡れていない……ということか?……?あれだけ感じていたのに……?

 

 もしかしてユーアさん、まだ女性器の分泌腺が発達しきっていないんじゃ……?それか、これもまた体質の問題か……。

 

「あんまり濡れていませんね」

 

「ホ、ホントだ……。あれだけ気持ち良かったのに……、アルフィ様みたいに全然濡れてない……。な、なんでだろう……?」

 

「体質……でしょうか……?」

 

「そうですね、体質か、もしくは腺が発達しきっていないかですかね。僕も詳しいことは分かりませんが」

 

「んはぁん……♡ふにゅん……♡んふあぁ……♡」

 

 僕はユーアさんの乳首や臍、首筋などを撫でながら彼女に刺激を与え、そしてユーアさんの女性器の反応を今一度確かめる。しかし、彼女がどれだけ喘いでも、彼女の女性器が潤いを帯びることはなかった。

 

「うーん、どうしようか……。この状態のままじゃ多分痛いだろうし……。っとと、とにかく洗うだけ洗っちゃうね」

 

 僕はささっとユーアさんの女性器の表面に泡を広げる。するとユーアさんはぴくりと身体を跳ねさせた。ふむ、一応触られれば少しは反応するのか。いやまぁ、今は僕の手が泡でぬるぬるしていたからかもしれないけど。

 

「えっと、それじゃあ次はお尻ね。んしょっと……」

 

 僕は一度問題を先送りにし、先にユーアさんの身体を洗いきることを優先させた。小さいけど丸みを帯びたユーアさんのお尻に手を這わせ、盛り上がりから割れ目に至るまで念入りに綺麗にしていった。

 

「あぅ……♡♡はぁぅ……♡お尻で……感じちゃう……♡んうあぁ……♡んきゅうぅ……♡アルフィ様の気持ち……分かる……かも……♡♡」

 

「お尻、気持ち良いでしょう?私もびっくりしちゃいましたけど♡」

 

 アルフィ様の時と同様に、ユーアさんもお尻を触られて気持ち良さそうに声を上げていた。アルフィ様のように絶頂にまでは至らなかったけど。

 

「はい、おしまい。それじゃあ流すよ」

 

 というわけで僕はシャワーから噴き出すお湯でユーアさんの身体に付着した泡を全て洗い流した。これで洗体作業は一通り終わりということになる。ここからが本番……なのだが……、

 

「うーん、困ったなぁ……」

 

 ユーアさんの女性器があまり濡れないということがどうしても気がかりだった。僕は一人、頭を悩ませてしまう。

 

「あの、ユーアさん、もう一度お股のところ見せてもらっても?」

 

「は、はい。ど、どうぞ……」

 

 そう言うとユーアさんは僕とアルフィ様の目の前で脚を開いた。今度は受動的ではなく能動的に、である。まぁ、これはわけがあってのことだからなのだろうけど。

 

 僕とアルフィ様は今一度ユーアさんの女性器を確認すべく、彼女の脚の間に身体を滑り込ませた。

 

「わっ、穴小さいなぁ……」

 

「本当ですね。ナギサさんのおちんちん、入るのでしょうか……?」

 

「いやぁ、難しいでしょうね……。濡れてないわけですし」

 

 ユーアさんの女性器の奥の領域を覗き込むと、僕の指1本分くらいの大きさの膣穴が視界に飛び込んできた。これじゃ、ユーアさんと繋がるのはなかなかハードだなぁ。

 

「ユーアさん、ちょっと触るね」

 

「う、うん、分かった♡」

 

 僕はそっと自身の指を1本、彼女の小さな膣穴にあてがう。そして、恐る恐る表面を滑らせてみると……

 

「痛っ……」

 

「っとと、ごめんね」

 

「う、ううん、大丈夫」

 

 案の定、ユーアさんは痛がってしまう。潤滑液がないとそうなるよね……。うーん、本当にどうしよう……。

 

 ユーアさんも、雲行きの怪しさに悲痛な表情を浮かべ始めてしまっている。まずいな……、このままじゃユーアさん、自信失くしちゃう……。僕は何か良い案がないか、脳をフル回転させて考える。

 

 と、その時……

 

「あの……、それでしたら一つ、私に考えがあるのですが……」

 

 アルフィ様がそう言って手を挙げた。僕とユーアさんは同時にアルフィ様へと視線を向ける。彼女の提案がこの状況を打開してくれると信じて。

 

「あ、あんまり期待されても困るのですが……。え、えっと、指で触れるのは痛いんですよね?なら、ナギサさんのお口でユーアさんのお股に触れてみる……というのはどうでしょう?」

 

 そのアルフィ様の提案に、僕は一瞬何を言われたのか理解できず固まってしまう。そんな僕を置いて、ユーアさんとアルフィ様は会話を続ける。

 

「え、ええっ!?そ、それって、こ、ここをナギサさんに舐めてもらう……ということですか!?」

 

「そういうことになりますね」

 

「こ、こんなところ舐めるなんて、き、汚いですよ……!?」

 

「今綺麗にしたばかりでしょう?きっと平気ですよ。……って、あれ?ナギサさん、どうかなさいましたか?」

 

 そうアルフィ様に問いかけられ、僕はようやく硬直から立ち直る。

 

「す、すみません、思わず固まってしまっていました……」

 

「えっと、それでナギサさん、どう思いますか?」

 

「ど、どうと言われても……」

 

 正直、性器を舐められるというのは良い気分じゃないのではなかろうか?……けど、実際そういうエッチが存在するとも聞いたことは有る。もしかして、アルフィ様はそういう知識を持っていたりするのか?

 

「ユ、ユーアさんは嫌じゃない?」

 

「わ、わたしは嫌じゃ……ないけど……、ナギサさんの方が嫌なんじゃ……」

 

「い、いや、僕も全然抵抗はないんだ。もちろん、これはユーアさんに対してだけじゃなくて、アルフィ様が相手だったとしても全然嫌じゃない」

 

「ナギサさん……、嬉しいです……♡♡」

 

「わたしも……嬉しい……♡♡そ、そういうことなら……、な、舐めてもらっても……良い……かな……♡」

 

 恥ずかしそうにそうお願いしてくるユーアさんに、僕は大きく頷いてみせた。それから、僕は再びユーアさんの両脚の間に身体を割り込ませ、そして顔をユーアさんの股間へと近づける。こうなったら、やるだけやってみよう。

 

 僕は舌を自分の唾液で充分に濡らしてから、脚を開いたことでほんの少しだけ中のピンク色を覗かせる彼女の陰裂にその舌を伸ばす。そして、そっと舌尖を触れさせた……。結果……

 

「んぅ……、ちょ、ちょっと痛い……かも……」

 

「こ、これでもダメでしたか……」

 

「二人とも、ごめんなさい……」

 

「いえいえ、ユーアさんが謝ることはありませんよ。しかし、他に何か良い手はありますかね……」

 

 アルフィ様は自身の頬に掌を当て、何か良い案がないかと視線を彷徨わせる。僕も腕を組んでぐるぐると思考を巡らせていた。

 

「何か分泌液の代わりになるものがあると良いんだけど……。ローションみたいなやつが……。でもなぁ、こんなところにあるわけないし……」

 

「分泌液の代わり……。分泌液……?そうだ、それなら……」

 

 ポンと手を打ち合わせながら、アルフィ様が座椅子から立ち上がる。あっ、もう足腰は回復していたんだ……。って、今はそれは置いといて……。

 

「何か、思いついたのですか?アルフィ様」

 

 僕は立ち上がったアルフィ様を見上げながらそう問いかける。するとアルフィ様は頬を紅潮させながら、しかし得意気な様子で胸を張る。彼女の膨らみかけの胸の先端では、硬く屹立した二つの小さなさくらんぼが浴室の電灯の白い光を浴びながらふるふると小刻みに震えていた。

 

 少し視線を下げれば、彼女の剥き出しの女性器が視界に映る。そこは充分すぎるくらいに潤っており、僕がユーアさんの身体を洗っている間もずっと興奮し続けていたことが伺えた。この二人、対照的だなぁ。

 

 などと考えていると、アルフィ様は一歩、僕へと歩み寄る……。僕は期待感半分、不安半分といった心持で彼女の次の言葉を待った……。

 

「それはですねぇ……」



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アルフィ様とユーアさんと、お風呂でイチャイチャ⑨ ユーアさんの処女喪失

「あぁ……♡んあぅぅ……♡ナギサさんの指……中で動いてぇ……、ふあぁ……♡ひうぅ……♡んうぅ……♡また……頭が真っ白になっちゃいそう……ですぅ……♡ひくぅ……♡ひゅぅぅ……♡」

 

「しゅご……いぃ……♡あっ……♡あにゃんっ……♡お股……しゃわられると……こんにゃに……気持ち良いんだぁ……♡あぅぅ……♡ふにゅぅ……♡」

 

 浴室内に、そんな二人の嬌声とくちゅくちゅという少し粘性のある水音が響く。二人から同時に発せられる可愛らしい喘ぎ声が僕の脳を痺れさせる。

 

 現在、アルフィ様とユーアさんの二人は浴室の床に敷いたタオルの上に並んで寝そべっている。僕は二人の身体の間にしゃがみ込み、両手でそれぞれの性器を弄っていた。

 

 アルフィ様はともかくとして、どうしてユーアさんが僕に女性器を触られて痛みではなく快感を感じることができているのか……。

 

 それは、今ユーアさんの女性器にはアルフィ様の分泌液が大量に塗りたくられているからである。これが、アルフィ様が思いついた"良い案"というわけだ。

 

 正直、他の人が分泌した体液を自分の粘膜に触れさせるというのはあまり気持ちの良い行為ではないのでは……と僕は思った。それも、アルフィ様とユーアさんの間には好意はあれど恋愛感情はないはずだから尚のことである。

 

 けど、どうやら僕の考えすぎだったようで、ユーアさんはアルフィ様の提案をあっさりと受け入れ、涙目で感謝までしていた。

 

 そうしてアルフィ様の案を実行することになったのだが、結果的にこうしてユーアさんがちゃんと気持ち良くなれているので、作戦は大成功したと言って良いだろう。やはり、ぬるぬるしたものじゃないとダメなんだなぁ。斬新な案だとは思ったけど、そこまで頭が回るアルフィ様は流石だ。

 

「にゃ……にゃにこれ……!?さっき……身体洗われていたときより……もっとおっきいにゃにかが……くる……♡はうぅぅ……♡うあぁぁ……♡ぁ……♡にゃあぁぁっ……♡♡♡」

 

 などと考えている間に、どうやらユーアさんは絶頂まで登りつめたようだった。ユーアさんの膣穴に少しだけ挿し込んでいた僕の指が彼女の膣肉にきゅっと甘く締めつけられる。指先は決して性感帯ではないのだが、その締め付けは何か不思議な気持ち良さを僕に伝えてきた。

 

「ユーアさん、気持ち良い?」

 

「はぁ……♡はにゃぁ……♡う、うん……♡しゅごく……気持ち良い……♡うにゃぁ……♡はふぅ……♡今日はもうダメかなって思ってたから……こんなに気持ち良くなれて……嬉しい……♡あぁ……♡うはぁ……♡ひうぅ……♡アルフィ様……ありがとうございます……」

 

 そう言うとユーアさんは自身の隣で同じように寝そべり僕の指愛撫に身もだえるアルフィ様の頬をそっと撫でた。

 

「あんっ……♡ああぁ……♡えへへ……、喜んでいただけて……、はあん……♡うあん……♡何より……ですぅ……、ひやん……♡んんうん……♡私も……ユーアさんと一緒に気持ち良くなれて……嬉しいですよ……♡あっ……♡ああっ……♡きちゃう……♡きちゃいますぅぅっ……♡はうぅぅっ……♡♡♡」

 

 アルフィ様はユーアさんを見つめ返しそう言うと、頬に触れるユーアさんの小さな手に自身の手を重ねた。それからすぐ、ユーアさんを追うようにしてアルフィ様も絶頂を迎えた。

 

 びくりびくりと全身を痙攣させ、股間からは多量の分泌液を溢れさせている。また、瞳からは涙を、緩んだ口の端からは涎をそれぞれ垂れさせ、彼女の白くて綺麗な顔の上にキラキラした軌跡を描いていた。

 

 しかし、それでもアルフィ様はユーアさんの手から自身の手を放さなかった。お風呂でのエッチをきっかけに、二人の心の距離がこれまでよりさらに縮まったことがそこから伺えた。それが嬉しくて、僕の表情も自然と緩む。

 

「アルフィ様……、気持ち良さそうです……♡はぁ……♡はぁ……♡顔……すごくゆるゆるになってます……」

 

「それを言うなら……、はぁ……♡んふぅ……♡ユーアさんだって同じですよぉ……♡んうぅ……♡んひうぅ……♡さっきの表情……とろんとろんに緩みきっていましたよ……♡」

 

「うぅ……、やっぱり……ですか……、は、はじゅかしい……♡」

 

「ふふっ、恥ずかしがるユーアさん、可愛い……♡」

 

 そう言うとアルフィ様は、ユーアさんの手を握っている方とは逆の手をユーアさんの顔へと寄せ、その細い指で彼女の頬をつんつんと突く。

 

「あはぁ、ぷにぷにしてます。じゃあ、こっちはどうなんでしょう?」

 

 アルフィ様はユーアさんの頬を何度か突いて満足したのか、その指を下の方へと徐々に滑らせ始め、やがてユーアさんの小さな胸の蕾に触れた。

 

「ア、アルフィ様……!?そこは……ひゃうん……♡ダ、ダメですよぉ……、ひんっ……♡んはんっ……♡乳首……ちょんちょんしちゃ……、あぁ……♡あんっ……♡」

 

「小っちゃいけど、こりこりしてます……。感触はみんな同じなんですね……、えいっ……えいっ……」

 

 アルフィ様の指で乳首をくにゅくにゅと弄ばれ、か細い嬌声を上げるユーアさん。彼女が声を上げる度にその身体がぴくぴくと小さく跳ねる。また、ユーアさんの膣内に挿し込んだままの僕の指に、彼女の膣口がひくひくと拡縮を繰り返す様子が伝わってくる。

 

「わ、わたしだって……、やられっ放しじゃ……ありませんよ……、んえいっ……」

 

「えっ……?ひぁんっ……♡」

 

「あっ……、わたしのより……ちょっと大きいかも……。うぅ……、これでも一応年上なのにぃ……。このぉ……このぉ……、アルフィ様何て……こうしちゃいます……、えいっ…んえいっ……」

 

「あひぁん……♡んひゅぅ……♡ユーアさん……激しい……ですぅ……♡あん……♡やんっ……♡すごい……お上手……ですね……♡」

 

 僕の目の前でお互いの乳首を弄りあうアルフィ様とユーアさん。その……、女の子同士っていうのも……ちょっとあり……かも……。って、いかんいかん。昨日今日のエッチの影響で僕の頭が壊れかけている……。

 

 僕は自分の脳裏に過った雑念を振り払い、そして彼女たちの女性器の愛撫を再開した。ユーアさんの膣内は先ほどまでの愛撫でそれなりに解れてきていたが、念のためもう少し解しておこうと思った。穴がかなり小さいから、余計に慎重になってしまう。本当、こんな小さな穴に挿れていいのかなぁ……。

 

 しかし、そんな考えとは裏腹に、僕の一物はこの後の展開への期待で限界レベルまで硬くなってしまっている。ちょっと痛いくらいに。

 

 それに、ユーアさんも僕と繋がることを心から望んでいる。ここで止めたら、お互いに辛い思いをしてしまうだろう。だから、怖くはあるけど、このまま行為は続けよう。

 

「ひあっ……♡ナ、ナギサさんっ……♡あぁぁ……♡ひあぁぁっ……♡」

 

「にゃうぅ……♡そんな……いきなり……、はぁぁ……♡うあぁぁ……♡しかも……激しいよぉ……♡ナギサさん……♡ナギサさぁん……♡」

 

 二人は突然の股間部への刺激にびくっと身体を震わせ、お互いの身体をぎゅっと抱き寄せながら大きな喘ぎ声を漏らし始める。

 

 僕はアルフィ様とユーアさんそれぞれの膣内に挿し込んだ指の屈曲・伸展運動のペースを徐々に上げながら、時々別の指を使って膣以外の場所……陰核や尿道口を同時に攻める。すると、二人の膣口はそれぞれ異なったリズムで収縮を繰り返す。左右で異なった反応を確認できるのはちょっと面白かった。

 

「はんっ……♡」

 

「ひうぅっ……♡ユ、ユーアさん……!?あ……♡あぁんっ……♡」

 

 すると突然、ユーアさんがアルフィ様の乳首の片方を口に咥え出した。そして、唇をもにょもにょさせながら必死でしゃぶりつく。これって、声を我慢するため……なのかな?

 

「んきゅぅ……♡そんな激しく……乳首吸っちゃ……、あっ……♡あああっ……♡こ、こうなったら……私だって……、はむっ……♡れろんっ……♡」

 

 ユーアさんに乳首を吸われ身体をがくがくと震わせながらさらに甲高い嬌声を口から溢すアルフィ様。しかし、ただユーアさんに一方的に快楽を与えられるのは悔しかったようで、対抗するようにユーアさんの黒い猫耳をぺろぺろと舐め始めた。

 

「んんんっ……♡んんうぅ……♡」

 

 アルフィ様の舌で自身の耳をちろちろと舐められぴくりと肩を震わすユーアさん。だが、口に咥えたアルフィ様の乳首は放さない。

 

 しばらく、二人分のくぐもった嬌声と、僕の指と彼女たちの女性器との間で奏でられるぐちゅぐちゅという淫靡な水音が浴室内を支配していた。

 

 だが、少ししてアルフィ様もユーアさんもとうとう限界を迎えたらしく、乳首もしくは耳をしゃぶりながら瞼を固く閉じて絶叫を漏らす。

 

「んんんんうぅっ……♡♡♡」

 

「んむぅぅぅぅっ……♡♡♡」

 

 二人の膣が激しく収縮するのが指先に伝わってくる。まるで僕の指に抱きつくような甘い締めつけに、僕の身体の奥がじわりと熱くなるのを感じた。僕もそろそろ我慢するのが難しくなってきた。

 

 そんなことを考えながら、僕はユーアさんの膣肉の解れ具合を確かめるようにそっと指を動かす。絶頂し一度脱力したユーアさんだったけど、僕が指を動かしたことで再び身体を強張らせ幼いけど艶っぽい声を上げる。このくらいの動きでもユーアさんは感じてしまうのか。やっぱり敏感なのかなぁ。

 

 そう思いながらユーアさんの膣を優しく弄っていると、僕はとある違和感を指先に覚えた。

 

「あれ……、ユーアさんのここ……、こんなに濡らしてたっけ……?」

 

 指を挿れる前にアルフィ様の分泌液である程度潤したユーアさんの膣だが、何故か弄り始めた時よりもさらに潤っているような感覚を覚えたのだ。

 

 ぴちゃぴちゃと指でユーアさんの膣内に充満した分泌液を弾きながら、僕はとある可能性を思い浮かべる。

 

「あぅん……♡ひにゃんっ……♡そ、それって……」

 

「もしかして……、ユーアさんの性器の分泌腺がちゃんと機能し始めた……ということ……なんでしょうか……」

 

「かもしれません。腺を直接刺激されたことで機能し始めた……と考えるのが妥当なんじゃないかと思います」

 

 僕は自身の頭の中に思い浮かんだ予想を二人に話す。あくまで可能性だけど、有り得ない話ではないと思う。うーん、この辺りは生態学とか性知識に明るければすぐに理由を突き止められるんだろうけど、僕にはそういう知識あんまりないからなぁ。

 

「ってことは、これからはわたし……アルフィ様に協力してもらわなくてもちゃんとエッチできる……ってこと……?や、やった……、嬉しい……♡」

 

「良かったですね、ユーアさん」

 

「はい、ありがとうございます、アルフィ様。そ、それで……、ナギサさん……、わたしのそこ……どう……?もう……できそう……?」

 

 今後は自分一人でも問題ないと分かり満面の笑みを浮かべるユーアさんだったが、すぐに不安そうな面持ちに変わり、足元にしゃがむ僕へと視線を向けてきた。

 

「うーん、かなり解れてはいると思うから、できないことはないと思う……。どうする?やる?サイズ的に、ユーアさんにはかなり負担かけちゃうだろうけど……」

 

「やるっ!ここまできたんだもんっ!ナギサさん、お願い……♡」

 

 ユーアさんは決意のこもった真っ直ぐな瞳で僕を見据え、そう懇願してくる。僕は元々ユーアさんの返答に任せるつもりだったので、ユーアさんが力強くやりたいと言うのならそれに従うまでだ。

 

「分かった。それじゃあ、始めようか。アルフィ様、行為中のユーアさんのフォロー、お願いできますか?」

 

「はい、任せてください」

 

「よ、よろしくお願いしますっ♡♡」

 

「そんなに緊張しないでね」

 

 そう言ってから、僕はタオルの上に寝そべるユーアさんを一度抱き起す。それから、彼女を抱きかかえたまま浴室備え付けの座椅子に近づき腰を下ろす。

 

 そして、ユーアさんを僕の膝の上に座らせた。どういう体位が最もユーアさんに負担を駆けさせずに済むのか僕には分からなかったため、一番僕の身体にしがみつきやすそうな対面座位を選んだ。ほら、痛みに耐えようとする時って、無性に何かに力いっぱいしがみつきたくなると思うんだよ。人によっては、何かに噛みつきたくなる人もいるんじゃないかな。

 

 そう考えた時、この体位が一番都合が良いんじゃないかと思ったわけだ。あくまでこれは僕なりの考えで合って、これが正しいとは考えていないけどね。

 

「なるべくユーアさんに負担をかけさせないよう頑張るけど、それでも多分すごく痛いと思う。だから、止めてほしい時は遠慮なく言って。僕はユーアさんのペースに合わせるから」

 

「分かった。でも、多分大丈夫」

 

「そ、そう?まぁ、無理はしないでね。それじゃあ早速……」

 

「う、うん……、んんっ……♡」

 

 僕は最初にユーアさんに軽くキスをしてから、自身の一物を彼女の股間の割れ目にあてがう。すると、亀頭に温かくてぬめっとした水気を感じた。僕はそのぬめぬめした彼女の分泌液をできる限り満遍なく亀頭全体にまぶす。

 

「はぁぁ……♡ふあぁぁ……♡ナギサさんの……すごく熱い……♡はぁ……♡んふぅ……♡それに……少しぴくぴくしてる……♡」

 

「こうして……先端を擦りつけているだけでも……気持ち良いんだよ……、んうっ……んくぅ……、っと、こんなものかな……。じゃあいくよ、ユーアさん。なるべく力抜いててね」

 

 僕はそう宣言してから、腰をゆっくり前へと押し進め、ぴったりと閉じたユーアさんの陰裂を割り開く。ちゅぷりという音が響き、それからすぐに尿道口周囲の粘膜が先ほどよりも暖かくてとろとろとした女性器粘膜に迎え入れられる。

 

 この時点ではまだユーアさんも余裕そうだ。まぁ、それも当然か。ほとんど入っていないわけだし。問題はここからだろう。

 

 僕はユーアさんの膣口の位置を正確に捉えるために亀頭の位置を微調整すると、再び進行を開始する。膣口に触れた亀頭先端が突っかかりを覚え、ここからがユーアさんにとっての一番の山場であると僕は瞬時に理解した。

 

 僕はもう一度彼女の唇にキスを落とすと、覚悟を決めて腰に力を入れた。そして、亀頭を徐々に膣口の奥へと沈めていく。

 

 多少解したとは言えど、元々指一本分のサイズしかなかったユーアさんの膣口に僕の身長に見合わない大きさの男性器を挿入するにはかなりの力を要した。

 

 しかし、力を籠めすぎて勢いよく彼女の膣を貫いてしまうのはまずい。なので、力は籠めつつもなるべくゆっくり彼女の膣口を押し開くよう神経を研ぎ澄ます。

 

「あぐぅ……んぐぅ……、ナギサさんの……が……中に……、んあぁ……ぐうぅ……、痛い……けど……頑張れる……」

 

 ユーアさんは苦し気な声を漏らしながら両腕を僕の背中に回し、そしてがっちりと僕の身体にしがみつく。そんな彼女の身体はぷるぷると小刻みに震えていた。

 

 僕はそんな彼女の様子を心配に思ったが、それでも彼女の表情は"止めちゃダメ"と僕に訴えかけてきていたため、腰に入れた力を弛緩させはしなかった。

 

 そうして何とか腰を押し進め、どうにかこうにか亀頭をユーアさんの膣内に収めることはできた。体格に釣り合わないサイズの男性器を挿し込まれた彼女の女性器は、痛々しいと思えるほど無理に広げられていた。

 

「くはぁ……かはぁ……、入った……の……?」

 

「まだ全部は入ってない……かな……、んくぅ……はぁ……」

 

 苦しそうに息を吐くユーアさんとは対照的に、僕は気持ち良さから荒い息を漏らしてしまう。彼女の膣内はものすごく狭く本来なら痛みすら感じそうなくらい僕の亀頭を締め付けてきているのだが、その圧迫感がむしろ僕に快感を与えてきていた。しかも、膣内でうねる襞が亀頭表面をさわさわと撫でてきて、僕は既に射精一歩手前だった。

 

 けど、こんな中途半端なところで果てるわけにはいかない。だから僕は押し寄せる射精感を我慢しながら、もっと奥へと男性器を進ませるべく再度腰に力を入れた。

 

「はぁ……はぁ……、ああぁ……あぐあぁ……」

 

「ユーアさん、頑張ってください、あともう少しです。もう少しでナギサさんと……大好きな人と一つになれます。だから、もう一踏ん張りですよ」

 

 挿入の痛みに耐えるユーアさんのすぐ後ろにはアルフィ様が立っており、彼女を励ますような声をかけながら優しく彼女の耳や背中を撫でている。少しでもユーアさんの感じる痛みを取り除こうとしてくれているのだろう。

 

 アルフィ様も昨日同じような痛みを経験している。だからこその彼女なりの優しいエールがそこにはあった。そんなアルフィ様の姿に、僕の心が温かくなる。

 

 などと考えているうちに、僕の亀頭がまたも引っ掛かりを捉えた。ここが最終関門だろう。僕は"よし"と小さな声で気合を入れ、そしてその最終関門を一気に突き破った。

 

 すると、アルフィ様との初めての時にも感じた何かがぶちっと破れるような感触が、僕の亀頭先端から伝わってきた。

 

「ぐああああ……ふにゃああああ……、お腹……割けちゃいそう……、だけど……あと少し……だから……、くふぅ……はひゅぅ……はふぅ……」

 

 ユーアさんの腕に一層力が籠る。肩は激しく上下し、荒い呼吸をずっと繰り返している。やはり、処女膜姦通のダメージは相当なもののようだ。

 

 それでも、ユーアさんは一切泣き言を言わない。僕の亀頭が彼女の最奥にゴールインすることを真っすぐな瞳で待ち望んでいた。それだけ僕のことを好いてくれているのだろう。嬉しい。嬉しすぎる。

 

 だから僕は、彼女が待ち望むゴールへとラストスパートをかけるように自身の腰をぐいっと前へ突き出した。そして、ようやく僕の亀頭がこりっとした子宮口の感触を捉えた。

 

「ユーアさん……、奥まで……入ったよ……」

 

「はぁ……はぁ……、ほ、ほんと……?」

 

「うん、本当だよ……、くあぁ……はぁ……。よく頑張ったね」

 

「やりましたね!ユーアさん!これで、ナギサさんと一つになれましたよ!」

 

 僕とアルフィ様に同時に頭を撫でられ、ユーアさんはようやく待ち望んだ結末を迎えることができたと理解し、ぽろぽろと涙を流し始めた。

 

「やった……、やったよぉ……。ナギサさんと……繋がること……できたんだ……、ああああぁ……うあああああ……、嬉しい……、嬉しいよぉ……」

 

 そうして僕の首筋に顔を埋めて泣きじゃくるユーアさん。その後ろではアルフィ様がもらい泣きしていた。

 

 そんな二人の様子に満足感を覚えた僕は、ふっと全身から力を抜いた……。と、その時だった。

 

「うあっ……!?ぐああっ……」

 

 力を抜いたことで元々抑えつけていた射精感が急激に駆けあがってくる感覚を覚えた。しかも、現在僕のペニスは半分ほどがユーアさんの膣内に沈んでいる。必然的にその部分は彼女の膣に強く締めつけられ、しかもねっとりと膣襞に絡みつかれている。

 

 だから、射精欲がさらに煽られ、僕はすぐに我慢の限界を迎えてしまった。

 

「ナ、ナギサ……さん……?」

 

「ダメ……、もう……出ちゃう……!ご、ごめん……、ユーアさん……、僕……我慢できない……、あぁ……くあぁぁっ……!!!」

 

 そんなうめき声とともに、僕はユーアさんの膣内で吐精してしまった。びゅるびゅると吐き出された精液がユーアさんの膣内を満たしていく。

 

「……ほえ?」

 

 当のユーアさんは、うめく僕の様子を呆けた表情で見つめていた。そんな彼女の瞳からは、未だに涙が溢れ続けていた。



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アルフィ様とユーアさんと、お風呂でイチャイチャ⑩ アルフィ様と騎乗位で繋がって……

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 僕は息を荒げながら、ユーアさんの膣内に精液を最後の一滴まで注ぎ終える。その間、ユーアさんは状況を飲み込めないといったようにぽかんとしてしまっていた。

 

 そんな彼女の様子に僕ははっと我に返り、慌てて視線を下……つまり、僕とユーアさんの性器の結合部へと視線を向けた。

 

 すると、結合部の隙間から彼女の膣内に収まりきらなかった僕の精液が溢れ、彼女の破瓜の証と交じり合いピンク色の混合液となって僕のペニスを伝い、そして僕の下腹部に液溜りを作っていた。

 

 その量の多さに、僕は自分で出しておきながらドン引きしてしまう。また、それと同時にユーアさんからの出血の多さを目の当たりにして、僕は急激に不安感を掻き立てられてしまう。これ、アルフィ様の時よりも出血量多いよね、絶対……。

 

「ご、ごめん、ユーアさん……、こんなに出しちゃって……。そ、それと、かなりの出血だけど……、大丈夫……?貧血とか……なってない……?」

 

「え?あ、うん、平気。お股の奥がじんじん痛むけど、貧血とかの心配はないよ。でも、心配してくれてありがとう、ナギサさん♡」

 

「そ、そっか、それなら良かったよ」

 

「それよりも……、ナギサさんはわたしのここ……お、おまんこ……?で気持ち良くなってくれた……んだよね……?こ、これ……、出してくれたってことは……」

 

 ユーアさんはそう言いながら僕の下腹部に溜まっていた精液と破瓜血の混じったピンク色の液を指で掬い、そのまま自身の眼前に掲げた。

 

 確かに、今のユーアさんの仕草は見方によってはなかなかエッチかもしれない。普段の僕ならば、その仕草だけでも赤面していたかも……。

 

「お、おまっ……!?え、えっと、う、うん、そういうことになる……かな」

 

 だが、僕は別の理由でうろたえてしまう。まさかユーアさんの口から女性器の俗語が飛び出すなんて思っていなかった……。ちょっと驚いたのと、俗語を耳にして思わず恥ずかしくなってしまった。う、初心なのは分かってるさ……。

 

 なんてことを考えながらも、僕は彼女からの問いかけに素直に頷いた。ここで変に躊躇して返答しなかったら誤解が生じてしまうかもしれないから。それは嫌だった。ユーアさんの膣内は本当に気持ち良かったのだ。

 

「う、嬉しい……♡わたしの身体でも、ナギサさんはちゃんと気持ち良くなってくれたんだ……、えへへ……♡痛かったけど、頑張って我慢して良かった……♡おかげで、こんな幸せな気持ちになれたんだもん♡」

 

 僕の返答を聞いたユーアさんは次の瞬間、ぱあっと満面の笑みを浮かべ、さらに黒い猫尻尾をゆらゆらと揺らしながら本当に幸せそうな声色でそう言った。

 

「ユーアさん、おめでとうございます!」

 

 ユーアさんのそんな幸せそうな様子を受け、先ほどまでもらい泣きしていたアルフィ様も喜びの笑みを浮かべてむぎゅっとユーアさんに背中から抱きついた。アルフィ様は人の感情に影響されやすいのかな?

 

「ア、アルフィ様、ちょっと苦しい……です……」

 

「あっ、ご、ごめんなさい。つい嬉しくて……」

 

「えへっ、ありがとうございます。わたしも、アルフィ様が一緒に喜んでくれてすごく嬉しいですよ」

 

「これで私たち、一緒ですね」

 

「はい、そうですね」

 

 二人は顔を見合わせて微笑みあう。二人とも全裸で全身を火照らせ、しかもユーアさんに関しては股間に男のペニスを突き挿されたままだというのに、僕は目の前の光景にほっこりしてしまっていた。

 

 だが、その間もユーアさんの膣内に挿れたままの僕のペニスは、彼女のまだ少しだけ強張りの残る膣肉に締め付けられ、襞に絡みつかれ、さらに亀頭の先端が密着したままの子宮口に吸われるようにむにゅむにゅと弄ばれてしまっている所為で、再び性感が高められていく。

 

 ほっこりしていた気分は、またすぐにエッチな気分に引き戻されてしまう。いやまぁ、一応エッチの最中だし、僕がエッチな気分を抱くことは何も間違いじゃないのだけど。

 

「……あれ?なんか……、お腹の奥……びくびくしてる……?も、もしかして……、ナギサさんのお、おちんちん……が……?」

 

「み、水を差しちゃってごめん……。その……、まだユーアさんの中に挿れたままだから……、ずっと気持ち良いままで……さ……」

 

「そ、そうなんだね。ホントだ、ナギサさんの顔、すごく気持ち良さそう♡もしかして、また出ちゃいそうなの?」

 

「じ、実は……、うぐっ……うあぁっ……!!!」

 

 言い終わる前に僕の頭は真っ白になっていた。ユーアさんの僅かな身動ぎだけでも今の僕のペニスには刺激が強かったらしく、僕はあっさりとユーアさんの中で二度目の吐精を始めてしまった。

 

 尿道口からドクドクと勢いよく吐き出される新たな精液が古い精液を押し退けて再び彼女の膣内を染め上げていく。というか、なんかさっきよりも吐精の時間長くない……?一応、これで本日3回目の射精のはずなんだけど……。

 

「わわっ、また出てる……!なんか、お腹の奥がぽかぽかする……。この感覚……、好き……かも……♡」

 

「ユーアさん、ナギサさんに2回も精液注いでもらって……、羨ましいです……。これはもう、私にも同じくらい注いでもらわないと……ですね♡」

 

 二人がそんなことを話している間に、ようやく吐精が終わった。そうして僕は、またも一人で勝手に気持ち良くなってしまったことをユーアさんに詫びる。

 

「ご、ごめん、また一人で気持ち良くなっちゃって……。つ、次はちゃんとユーアさんのことも……」

 

「あ、う、うん。よろしく……お願いします……♡」

 

 ユーアさんは恥ずかしそうにしながらも、僕の言葉にこくんと頷いた。僕は一つ気合を入れてから、抽挿するために腰を引いた。ユーアさんの膣内は彼女自身の分泌液と僕の吐き出した精液のおかげでかなりぬるぬるになっていたので、先ほどよりかは速めの動きでも問題ないだろう。そう思ったのだが……、

 

「い、痛っ……」

 

 僕が腰を引いたと同時に、ユーアさんはそんな声を漏らした。こ、これだけぬるぬるでもやっぱり痛いのかぁ……。

 

「ごめんっ、ちょっと速かったかな。もう少しゆっくり動いてみるよ」

 

「う、うん」

 

 そうして先ほどよりもゆっくりとした動きを心掛けたのだが……

 

「うっ……、い、痛い……かも……、あうっ……」

 

「こ、これでも痛いかぁ……」

 

 ユーアさんは身を強張らせて苦悶の表情を浮かべてしまう。比較対象が毎度アルフィ様になってしまって非常に心苦しくはあるのだが、彼女の時は痛みが弱まるのにそこまで時間はかからなかったため、ユーアさんもきっと大丈夫だろうという軽率な予測をしてしまっていた。

 

 けど、そりゃ人なんだし、みんながみんな同じような体格をしているわけでもなければ、痛みへの順応速度だって異なる。僕は、そのことについての考えを疎かにしてしまっていた。

 

「本当にごめん、ユーアさん。ちょっと考えなしすぎたね。ちゃんとユーアさんのペースを考えなきゃいけなかったのに」

 

「ナ、ナギサさんは充分わたしのこと考えてくれてたよ?だ、だから、そんなに気にしないで。そもそも、わたしの身体が年の割に小っちゃすぎるのがいけないんだよ。それに、わたしがもっと我慢強ければ……」

 

「いやいや、ユーアさんは何も悪くないよ」

 

「け、けど……、ナギサさん……続き……したいんでしょ……?まだ大っきいままだし……、おちんちん……」

 

「でも、ユーアさんの身体が第一だから。ユーアさんのことを気持ち良くしてあげられなかったのは少し残念だけど、今後もいっぱいイチャイチャできる機会はあるでしょ?僕たちの関係は今日限りのものじゃないんだし。だからさ、ゆっくりユーアさんのペースで慣れていけば良いと思うんだ、僕は」

 

 僕はそう言いながら、努めて優しい手つきで彼女の綺麗な黒髪を撫でる。すると、ユーアさんはまるで顔に火が灯ったようにぽっと顔を赤らめ、そしてこくんと小さく頷いてくれた。

 

「もぅ……、ナギサさんは優しすぎ……。そういうの、ホントずるいと思う……♡」

 

 それから、自身の顔を隠すように僕の剥き出しの胸元に顔を押し当ててきた。ひとまず納得はしてもらえたみたいだな。

 

「本当に、貴方は優しすぎます。でも、そういうところに私は……いえ、私だけじゃありませんね。私たちは惹かれているのでしょうね♡」

 

「め、面と向かってそう言われるのは、何だか照れてしまいますね」

 

「ナギサさん、頬が赤いです。ふふっ、ちょっと可愛い♡それはそうと、次は私の番……ですよね……♡」

 

「そ、そうなりますね」

 

 先ほどまでの優し気な瞳から一変、アルフィ様の瞳はとろんと垂れ、彼女の全身からエッチなピンク色のオーラが放たれ始めた。本当に、10歳とは思えない色気を持っているよなぁ、アルフィ様って。

 

 というか、現時点でこれなのだから、思春期に突入してさらに性的欲求が強くなったら、彼女は一体どうなってしまうのだろう?興味半分……、怖さ半分……って感じだな。

 

「あ、それじゃあ、そろそろわたしは退いた方が良いね。んしょっと……、ひぅ……、やっぱりちょっと痛い……」

 

「大丈夫?立てる?」

 

「う、うん、それは平気」

 

「そっか、良かった。とりあえず、血とかいろいろと付着してすごいことになってるから、一度シャワーで流そう」

 

「あ、うん。そうだね」

 

 そうして僕とユーアさんは、先ほどの交わりで酷い有様に成り果てたお互いの下半身をシャワーで流し合った。まぁ、結局のところイチャイチャしていただけだが。

 

    *

 

 それから僕は、興奮の所為で息が荒くなったアルフィ様に手を引かれてタオルが敷かれたところまで戻ってきた。

 

 そして、彼女に促されるままそのタオルの上に仰向けに寝そべる。そんな僕を、アルフィ様はハートマークの浮かんだ瞳で見下ろしてきていた。

 

「はぁ……♡はぁ……♡こ、今回は……私が上に……なりますね……♡ナギサさんはそのまま寝ててください……、ふぅ……♡はふぅ……♡」

 

「わ、分かりました。あっ、ユーアさんもこっちにおいで。さっきのじゃユーアさんも満足できてないでしょ?せっかくだから、一緒に気持ち良くなろう」

 

「えっ、あっ、う、うん。それじゃあ、お言葉に甘えて……」

 

 ユーアさんは僕に招かれるままとてとてとこちらに歩み寄り、そしてすぐさま僕の隣に寄り添うように寝そべる。僕の腕にしがみつき、頬をすりすりと寄せてくる様子が何とも可愛らしい。

 

「で、ではいきます……♡んっ……♡んうぅ……♡はぁぁ……♡」

 

 そうしているうちに、アルフィ様はテキパキと僕の腰の上に跨り、素早い動作で腰を下ろし僕のいきり立ったペニスを自身のびしょびしょに濡れた幼き膣内へ沈めた。昨日の行為のおかげで痛みは完全になくなったらしく、アルフィ様は僕のペニスを膣内に受け入れるや否や吐息混じりの嬌声を漏らした。

 

「んくぅっ……あぁ……」

 

 僕は僕で、彼女の温かな膣内粘膜に自身の最も敏感な部分が擦れ、そんな情けない声を上げてしまう。幼さを象徴するように狭く、しかしながら同時に包み込むような柔らかさをも伝えてくるアルフィ様の膣肉は、ユーアさんとはまた異なった感覚を僕に与えてくれるのだ。

 

 さらに、ペニスのあちこちがとろとろに潤った幾本もの膣内襞にちゅっちゅと吸いつかれ、まだ抽挿すらしていないのに僕はもう既に頂へ登りつめてしまいそうになっていた。どうしよう、この気持ち良さが癖になってしまったら……。

 

「んんうぅぅ……♡あぁぁ……♡ナギサさんの……奥まできましたぁ……♡あぁ……♡うあぁ……♡んひあぁ……♡まだ……動いてもないのにぃ……私……もう……、はうぅぅっ……♡♡♡」

 

 僕のペニスの先端が、アルフィ様の膣最奥部にこつんと接触した。その瞬間、アルフィ様は僕の腰の上でぶるぶると大きく身体を震わせて甲高い嬌声を浴室全体に響かせた。そんな彼女の股間部へ視線をやると、僕のペニスを咥え込んだ彼女の雌唇から少し白濁混じりの透明な液体がだらだらとこぼれ、僕のペニスを根源までぬるぬるに濡らしていた。

 

 そして、彼女の膣内壁が急激な収縮運動を始め、僕のペニスのうち彼女の膣内に埋まった部分が先ほど以上に強い力で締めつけられる。それが引き金となり、僕は本日4度目となる射精を迎えた。

 

「あぁ……うぐあぁっ……!!!」

 

「はぁ……♡ふわぁ……♡で、出てます……♡ナギサさんの……精液……♡はぁ……♡ふぅ……♡んふぅ……♡ほとんど同じタイミングで……気持ち良くなれたんですね……私たち……♡えへへ……♡嬉しい……♡」

 

「はぁ……はぁ……、や、やっぱり……アルフィ様も絶頂……されていたんですね……、ふぅ……はぁ……、何となく……そんな気はしてました……」

 

 アルフィ様が蕩けた笑みを溢す。何となくそうなんじゃないかなぁとは思っていたのだが、どうやら案の定、アルフィ様は亀頭が自身の子宮口を叩いたところで絶頂を迎えていたようだ。

 

「良いなぁ……。わたしも早く、アルフィ様みたいにナギサさんと繋がって気持ち良くなりたいなぁ……」

 

 今の一連の流れをじっと眺めていたユーアさんがぽつりとそう呟く。やはり、先ほど途中で行為が終わってしまったことを悔いてしまっているらしい。納得はしたけど、それでも後悔の念が消えたりはしないよなぁ。

 

「じゃあ、そのためにはこれからもいっぱいエッチしないとね。僕も、ユーアさんとも一緒に気持ち良くなるために頑張るよ」

 

「ナギサさん……、ありがとう……」

 

「だから、今日はひとまず僕と一つになれたことを喜ぼうよ。ユーアさんは今日だけで1ステージも2ステージもクリアできたんだ。それって、きっとすごいことだと思うんだ、僕は」

 

「……そうだね、うん!」

 

 これが正しい励ましかどうかは分からないけど、それでもユーアさんはちゃんと笑ってくれた。自信をつけさせるような励まし方は、どうやら間違ってはいなかったようだ。

 

「なんかごめんね、ネガティブなこと言っちゃって。雰囲気壊しちゃったよね」

 

「そんなことないよ。さて、それじゃあ続きをしましょうか、アルフィ様。もちろん、ユーアさんのことも一緒に気持ち良くしてあげるからね」

 

「うん、お願いね、ナギサさん♡」

 

「はぁ……♡はぁ……♡ふふっ、3人で……いっぱい気持ち良くなりましょうね、ナギサさん、ユーアさん♡」

 

「「はい」」

 

 そうして、アルフィ様が腰を上げるために脚に力を籠める……。が、その前に僕は一つ気になったことをアルフィ様に尋ねた。

 

「す、すみません、始める前に一つ聞いても?」

 

「えっ?は、はい、何でしょう?」

 

 僕に水を差されたというのに、アルフィ様は嫌な顔一つせず僕の問いかけに応じてくれた。本当、この人は心優しい人だ。

 

「アルフィ様、その態勢……辛くないですか?」

 

 現在、彼女は浴室の床……正確には敷いたタオルの上に足を置いているのだが、彼女の膝は床についておらず、中途半端に屈曲させた状態であった。膝をつけば僕のペニスが彼女の内臓を無理に押し上げてしまうということを理解しているからだろう。

 

 なので、彼女の今の体勢はなんちゃって空気椅子みたいな感じになっているのだ。それだと足腰が必要以上に疲れてしまうのではないかと心配になったのだ。

 

「あっ、平気ですよ。今、身体強化の魔法……弱いやつですけど、それ使ってるので。でも、ご心配ありがとうございます、ナギサさん♡」

 

 魔法かい……。便利……というか、都合よすぎでしょ……。しかも、まさか魔法をエッチのために使うなんて……。って、考えてみれば昨日も魔法使って押し倒されたんだっけ、僕。

 

「そ、そうでしたか、それなら良いんですが……」

 

「それでは、今度こそいきますよ、んんっ……♡んんうぅ……♡はぁぁ……♡」

 

 僕からの問いかけに答えたアルフィ様は、次こそ脚に力を入れて腰を上下に動かし始めた。身体強化の魔法を使っているからか、その動きは思ったより速かった。

 

 僕は、アルフィ様一人に任せっきりになってしまうのが申し訳なくて、なるべく自分でも腰を動かすことにした。まぁ、下になっているのであんまり大きな動きはできないけど、やらないよりはマシでしょ?

 

 そんな風に下半身はアルフィ様と呼吸を合わせながら、僕は同時進行で腕をユーアさんの身体に回し、掌で彼女の小さな胸の蕾や猫耳、尻尾を優しく撫で回す。ユーアさんも興奮は途絶えていなかったようで、指で触れた蕾は硬く突き出ていた。

 

「あ……♡あぁ……♡その優しい手つき……好き……♡んあぁ……♡ひゃうぅ……♡耳も……尻尾も……撫でられてるだけなのに……すごく気持ち良くて……、んうあぁ……♡にゃうぅ……♡こ、声……出ちゃうよぉ……♡」

 

「私も……大きな声……出ちゃってますぅ……♡あっ……♡うあぁ……♡ひやぁぁ……♡これ……ダメ……♡腰……止まりません……♡んふぁっ……♡んおあぁ……♡んひぃ……♡こ、こんな……こんなの……はしたない……けどぉ……気持ち良くて……抑えられませんよぉ……♡あふぅ……♡ひきゅぅ……♡んひゃぁ……♡」

 

「アルフィ様……激しい……ですね……、んぐっ……んあぁ……、ユーアさんも……アルフィ様みたいに……我慢せずもっと大きな声出して良いからね……、んっ……んくぅ……、ほら……」

 

 そう言って僕はユーアさんの股間に手を伸ばす。そして、彼女の股座から溢れ出た淫液を充分に指にまぶしてから陰核包皮を丁寧に剥き、そしてその中に隠れていた陰核をきゅっと摘んだ。

 

「んひゅぅぅ……♡はにゃぁぁ……♡しょれ……ダメぇ……♡ホントに……声我慢できにゃくにゃっちゃうからぁ……♡あああ……♡うにゃあああ……♡」

 

「はぁ……♡うあぁ……♡え、えへへ……、ユーアさんの声……えっちで可愛い……ですぅ……♡ひあぁ……♡んはぁぁ……♡んひあぁぁ……♡」

 

「んくっ……ふぅ……はぁ……、僕からすれば……ユーアさんもアルフィ様も……どっちも可愛い……ですよ……、ぐぅ……んかぁ……」

 

 僕がそう口にすると、唐突にアルフィ様の膣内の収縮が強くなるのを感じた。さらに襞のうねりも複雑になり、彼女の上下運動も合わさって僕にさらなる快感を与えてきた。

 

 一方、ユーアさんの方は身体の震えが増していた。もしかして二人とも、僕の言葉を聞いただけでこんなに反応しちゃったのか……?そんなの、可愛すぎるじゃないか……。僕は指に加える力を強くし、それと同時に先ほどより激しめに腰を振り出す。もっともっと、目の前の愛らしい少女たちを気持ち良くしてあげたくなった。

 

「あああぁ……、♡にゃぎしゃしゃぁん……しょんにゃにちゅよくこりこりしゃれたらぁ……わたし……何処かに跳んでっちゃうよぉ……♡ふああああ……♡ひにゃあああっ……♡」

 

「私も……下から突き上げられて……、うううぅ……♡ああああぁ……♡あ、頭の中……真っ白になってしまいますぅ……♡ナギサさん……♡ナギサさん……♡ナギサさぁぁんっ……♡」

 

 二人の嬌声が一段と高くなる。そして、アルフィ様がラストスパートをかけるように膝の屈伸運動の速度を上げる。また、それだけでなく彼女は腰を上手い具合に回旋させて、僕のペニスに新たな刺激を加えてきた。それにより、僕の吐き出す吐息もさらに荒くなってしまう。

 

 浴室内に3人分の喘ぎ声とぐちゃぐちゃという水音が同時に響く。時々ちゅぱちゅぱという、ユーアさんが僕の頬や耳にしゃぶりつくようにキスをする際のリップ音も混じり合い、僕たちの脳を徐々に甘く痺れさせていく。

 

 そこから限界に至るまではそう長くなかった。

 

「うあぁ……♡んにゃああああっ……♡♡♡」

 

 最初にユーアさんが身体を仰け反らせて絶頂を迎える。身体は心配になるくらいぶるぶると痙攣させて、股座からはこれでもかというくらいの量の淫液を溢れさせていた。

 

「あああっ……♡き、きますぅ……♡んひああああっ……♡ふわああああっ……♡♡♡」

 

 そんなユーアさんにつられるように、アルフィ様もびくりびくりと身体を震わせて絶頂に達した。それまでも充分以上に締まっていた彼女の膣は、今日最大の絶頂に至ったためかさらに強く締まり、まるで僕のペニスを噛み千切ろうとするかのような勢いで圧迫してきた。

 

「すごっ……うぐっ……ああっ……ああああっ……!!!」

 

 僕はその圧迫感に自身の中の快楽ゲージを限界まで引き上げられてしまい、ユーアさん・アルフィ様に続くようにして本日5度目の吐精を始めた。

 

「ナギサさんの……精液……出てますぅ……♡暖かい……♡はぁ……♡はぁ……♡んはぁ……♡それに……すごい量……ですよぉ……♡」

 

 アルフィ様の言う通り、今回の僕の射精は10秒以上……もしかしたら20秒以上続いていたんじゃないかと思わせるくらいに長かった。5回目だというのに、一体僕はどれだけ精を吐き出せば気が済むのだろう……。

 

 そうしてしばらくの後、僕の吐精は終わった。と同時に、絶頂して力尽きたアルフィ様が僕の胸の上にぱたりと倒れ込んできた。

 

「ふはぁ……♡幸せですぅ……♡」

 

「わたしも……いっぱい気持ち良くなれた……♡はぁ……♡はぁ……♡今ね……心がぽかぽかして……すっごく幸せなの……♡えへへ……♡」

 

 そう言うと、ユーアさんも僕の身体に半身だけ乗っけてきた。僕は両腕を使って彼女たち二人の身体を抱きかかえる。

 

「二人が嬉しそうにしてくれて、僕も嬉しいです」

 

「ナギサさん……、キス……したいです……♡」

 

「わ、わたしも、その……ナ、ナギサさんと……ちゅ、ちゅー……したい♡」

 

「分かりました」

 

 僕は言われるまま、アルフィ様、ユーアさんの順に唇を重ねた。ちゅっと軽く触れ合わせるだけのキスだったけど、彼女たちは元々幸せそうに綻ばせていた頬をさらに緩めてくれていた。

 

「改めて、ナギサさん、大好きです♡愛しています♡」

 

「わたしも、ナギサさんのこと、大好きだよ♡」

 

 そうして、僕は二人に同時にぎゅっと抱きつかれた。彼女たちの温もりを全身で感じ、その温もりを手放したくないと思ってしまう。僕、なんだかんだでこの世界の考えに染まってきているのかもな。

 

「僕も、愛しています、アルフィ様。そして、ユーアさん」

 

 だから、僕は素直にこの言葉を口にすることができたのだろう。

 

「えへへ♡」

 

「にゃふふ♡」

 

 それからしばらく、僕たちはその場に倒れ込んだまま先ほどの行為の余韻に浸っていたのだった。



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行為後の安息時間

 あれから少しして体力も大方回復した僕とアルフィ様とユーアさんの3人は、一度全身……特に下半身に付着した汚れをシャワーで洗い流した後、揃って広い湯船に身体を沈めた。

 

「んん、気持ち良いです」

 

「そうですねぇ。いつもの数倍極楽です」

 

 浴槽の中で胡坐をかいた僕の左右の太腿に腰を下ろしたアルフィ様とユーアさんが、少し力の抜けた声でそんなことを呟く。その声や遠慮なく僕の上半身に背中を預けてきている様子からも、彼女たちが先ほどの行為で相当疲労してしまっていたことが容易に伺えた。特にユーアさんなんて、こういうことをするのは今回が初めてなのだし、かなりの負担をかけてしまっていたのだろう。

 

 けど、肩口から覗き込んだ彼女たちの表情には悪感情など一切なく、むしろ幸せいっぱいといった穏やかな笑みが浮かべられていた。その表情を見て、僕自身も改めて幸せを噛みしめる。

 

 それから僕は、彼女たちへの感謝の気持ちや僕の抱いている喜びの感情を伝えるように、彼女たちの身体に回していた両腕にぎゅっと力を籠めた。

 

「あっ、ナギサさん……♡」

 

「これ……好き……♡なんか、ナギサさんにすっごく大事にしてもらえてる感じがする……、えへへ♡」

 

 そう言いながら、ユーアさんが僕の胸にすりすりと頬擦りをしてきた。こういうところ、本物の猫と重なるよなぁ。可愛い。

 

 あと、ユーアさんが頭を動かす度に僕の下顎の辺りに彼女の黒い猫耳がさわさわと擦れる。くすぐったいけど、なんか心地良い。

 

「それ、分かります♡それに、こうしているとナギサさんの温もりをより強く感じられて、とても落ち着きます♡ナギサさん、もっと強く抱きしめてください♡」

 

「えっ、それだと苦しくありません?このくらいの力加減の方が丁度良いのでは?」

 

 アルフィ様の上目遣いでの懇願に、僕は思わず疑問の声を上げてしまう。これ以上力を入れたら、華奢な彼女たちには若干苦痛に感じてしまいかねないと思うのだが……。

 

「ナギサさんに抱きしめられているのに、苦しいなんて思うはずがないですよ」

 

「アルフィ様の言う通りだよ。むしろ、ナギサさんに強く抱きしめられれば抱きしめられるほど、わたしたちはもっともっと幸せになれるんだよ♡なんてったって、ナギサさんのことが大好きだからね♡わたしも、もちろんアルフィ様も」

 

「ですので、構わずぎゅってしてください♡」

 

 二人から同時に甘えるような瞳を向けられ、僕はつい頬を熱くさせてしまう。こんな可愛すぎる仕草、反則だと思う。鼻血とか、出ていないよな?

 

「わ、分かりました」

 

 僕はかすれた声でそう返事をし、自身の両腕にさらに力を籠めて僕の膝上に座る彼女たちを思いきり抱き寄せた。

 

「あはは、ナギサさん、顔真っ赤だよ♪それに、声もかすれてる」

 

「だ、だって、二人が可愛すぎるから……」

 

「ふ、ふにゃっ!?そ、そっか、そうなんだ……、え、えへへ……♡嬉しい……♡あ、あのね、ナギサさん……」

 

 ユーアさんが自身の頭を僕の肩にこてんと預け、それから僕の腕を優しく包み込むように抱きしめる。

 

「今日はホントにありがとう♡わたしの気持ち、受け入れてくれて嬉しかった♡それと、これからもよろしくね♡」

 

 そう言って満面の笑みを浮かべるユーアさん。だから僕も精いっぱいの笑顔を浮かべて彼女の瞳を見つめ返す。

 

「僕も、ありがとう。そして、よろしく」

 

「えへへ、うん♡あっ、アルフィ様も、ありがとうございました。年上だけど、いろいろと助けられちゃいました」

 

 僕に感謝の言葉を告げたユーアさんは、続いて自身の隣に同じように座っているアルフィ様に視線を向けて感謝の言葉を紡いでいた。

 

「ちゃんと助けになったなら良かったです。正直、あんまり大したことはできていないと私的には思うのですが……」

 

 アルフィ様はユーアさんからの純粋な感謝の言葉を受け、照れくさそうに自身の頬を撫でながら控え目にそう言ってみせた。

 

「そんなことないですよ。アルフィ様がいなければ、もしかしたら今日はナギサさんと一つになれていなかったかもしれませんし」

 

「な、なんだか照れてしまいますね。こうして感謝されるのって」

 

「あっ、ホントだ。照れてますね、アルフィ様。さっきのナギサさんみたいに顔が真っ赤です」

 

「い、言わないでくださいよぉ。ま、まぁ、とにかく、ユーアさんのお力になれたのなら幸いです」

 

 そうして微笑みあうアルフィ様とユーアさん。そんな二人の様子に、僕も自然とほっこりしてしまう。やっぱり良いな、こういう雰囲気。

 

「それじゃあ私からも……」

 

 なんて考えていると、アルフィ様がそれまでユーアさんに向けていた瞳を今度はこちらに向けてきた。はて?と僕は思わず首をかしげてしまう。

 

「ナギサさん、今日はありがとうございました。私とユーアさん、二人とエッチ……してくれて。まだ2回目だったけど、すごく気持ち良かった……です……♡」

 

 恥ずかしそうに、しかしながら本当に幸せそうな表情でアルフィ様が僕にそんな感謝の言葉を告げてきた。そんな彼女の様子を目の当たりにした僕の脳裏に先ほどの彼女たちの痴態がフラッシュバックしてしまい、途端に僕も少し恥ずかしさを覚えてしまう。

 

 幸いと言うべきか、先ほどの行為でもう既に5回も射精してしまっていたため、彼女たちの痴態を思い出しても僕の男性器には一切の反応がなかった。けど、なんか違和感があるような……?

 

「って、ア、アルフィ様!?さり気なくそういうとこ撫でないでください!!」

 

「えー、でも、私たちのこといっぱい気持ち良くしてくれたナギサさんのおちんちんにもちゃんと感謝の気持ち伝えないとと思いまして……♡えへへ、今日は気持ち良くしてくれてありがとうございます♡」

 

「あっ、そ、そう……ですよね♡わたしも、ナギサさんのお、おちんちん……に感謝しないと♡あ、ありがとう、わたしと一つに繋がってくれて……♡その……これから少しずつ慣れていけるよう頑張るから、これからもお願い……ね♡」

 

 アルフィ様に便乗してユーアさんまで僕の一物をその小さな手で撫で始めてしまった。流石に反応するほどの性力は残っていないとは言え、それでも何だかこそばゆいな、これ……。二人同時だと尚更……。

 

「ふ、二人とも……待って……」

 

「なんかふにゅふにゅってしてる……。さっきまではあんなにカッチカチだったのに、不思議だなぁ……♡」

 

「そうですねぇ。でも、これはこれで可愛いかも……♡ずっと撫でていたくなっちゃいます、えへへ♡よしよし♡」

 

 って、二人とも聞いていない……。どうやら、この行為を止めるつもりはないようだ。このままだと、もしかしたら性力が回復しかねないな……。最悪の場合、もう1回戦……なんてことになってしまうかも……。

 

 これ以上行為を重ねたら明日の業務に支障をきたしそうだ。だから、どうか持ち堪えてくれ……。そう願うしかないな。

 

「確かに可愛いけど……、それでもわたしたちの手にはちょっと大きめですね」

 

「まぁ、エッチの際にはあんなに大きかったのですし、通常時でも私たち子供の手じゃ包み込むことは……」

 

 と、そこまで言ったところで、アルフィ様は言葉を一度止めてしまう。ん?一体どうしたのだろうか?気になった僕は、そっとアルフィ様の顔を覗き込む。

 

「アルフィ様?どうかなさいましたか?」

 

「あっ、いえ、ごめんなさい。ちょっと気になったことが有って」

 

「気になったこと……ですか?」

 

 アルフィ様は少し不安そうに表情を歪めながら、じっと僕の瞳を見つめ返してくる。それから一呼吸おいて、彼女が再び口を開いた。

 

「えっと、子供で思い出したのですが、ナギサさんは大人の女性……といいますか、ナギサさんより背の高い女性が苦手……なのですよね?私たちが初めて会った日、確かそう言っていましたよね」

 

「あっ、はい。まぁ……、そうですね」

 

 唐突にそう問われ、僕は少し戸惑いながらもそう返事をする。というか、何故"子供"という言葉で今の話を思い出したのだろうか?

 

「えっ、そ、そうだったの!?」

 

 などと考えていると、反対側からユーアさんのそんな驚きの声が飛んできた。そっか、この話をしたのはアルフィ様とエルシャローゼ様の二人だけだったっけ。それなら、ユーアさんが知らなくても当然だよね。

 

「うん、実はね。昔のトラウマで、大人の女性、それと僕よりも背の高い女性が苦手になっちゃってね」

 

 僕は肩をすくめながらユーアさんに軽く説明を加える。トラウマの詳細までは放さなくて良いだろう。

 

「トラウマ……?な、何があったの……?」

 

 と思っていたのだが、ユーアさんはトラウマの詳細が気になったらしく、続けて僕にそう質問してきた。

 

「ユ、ユーアさん、あまりそういうことを聞くのは……」

 

「あっ、そ、そうだよね、ごめんなさい……」

 

 だが、すぐに隣のアルフィ様に窘められ、ユーアさんは僕にそう謝罪してきた。正直、ありがたい限りだった。あまり話す気にはなれなかったから。

 

「ううん、大丈夫だよ。むしろ、話してあげられなくてごめんね、ユーアさん」

 

「そ、そんな、ナギサさんが謝ることはないよ。わたしが無神経すぎただけだから……。ホントにごめんね……」

 

「い、いや、そんなに謝らないでよ。気にしてないから」

 

 そう言って僕は、しょぼんと落ち込んでしまったユーアさんの頬をそっと撫でる。トラウマについて気になってしまうのは当然のことだと思う。だから、ユーアさんは何も悪くない。その疑問に答えてあげられない僕の心が弱いだけで……。まったく、情けないなぁ、僕は。

 

「あ、ありがとう、ナギサさん。気遣ってくれて。やっぱり優しい……。けど、わたしが無神経だったのはホントのことだから、謝らせてほしい」

 

「わ、分かった。でも、そんなに落ち込まないでね」

 

「うん。あっ、えっと、すみません、アルフィ様。途中で話を遮っちゃいましたよね、わたし」

 

「あ、いえ、平気です。それでですね、ふと気になったのですが、今はまだ子供で背も低い私たちですけど、もし私たちが今後成長してナギサさんよりも背が高くなってしまったら……どうなってしまうのでしょう……と思いまして……」

 

 アルフィ様が口にしたその疑問に、僕ははっとさせられる。そういえば考えたこともなかった。

 

 けど、決して有り得ない話ではないんだよな、アルフィ様達が僕よりも背が高くなるということは。

 

「そ、そっか、そうなった場合、もしかしたらわたしたちもナギサさんの苦手な女性の対象になっちゃうかもしれないってこと……なんだよね……」

 

「ええ。まだ可能性の話ではありますが……」

 

「そ、そんな……」

 

 彼女たちは、これからも僕と一緒にい続けられるかどうか分からないということに不安の念を抱いてしまっているようだった。

 

 しかし、流石にそれは僕のことを見くびりすぎというものだ。僕は勝手な思い込みをして落ち込む二人にお仕置きをするつもりで、彼女たちの柔らかな頬をくにっと引っ張る。まぁ、あまり痛くするつもりはないけどね。

 

「にゃっ!?ナ、ナギサさん!?」

 

「んぅ、い、痛い……ですぅ……」

 

「あのですね、僕のこと何だと思ってるんですか……。流石に、好きになった女性を、僕より身長が高くなったという理由だけで嫌うような最低人間になったつもりはありませんよ、僕」

 

 そして、溜息混じりにそう言ってみせる。僕より背の高い女性ならば無条件に苦手意識を持ってしまう、なんていう愚かな男ではないつもりだ。もしそうだとしたら、母親すらも拒絶してしまっていただろう。

 

 しかし、それは違う。僕は一度として自身の母親を拒絶などしなかった。僕が苦手意識を持つ女性の対象はあくまであまり関わりのない大人の女性、もしくは僕より背の高い女性というだけなのである。

 

「僕は一度だって母親に苦手意識を持ったことなどありませんでした。それは、僕にとって母親が大切な人だったから。そして、アルフィ様もユーアさんも、今は僕にとっての大切な人です。拒絶などできるはずがないでしょう」

 

 僕は二人をぎゅっと強く抱き寄せながら、二人の耳元でそう囁く。手放すつもりなど毛頭ない、という意思表示をするように。

 

「そ、そう……ですよね……、ごめんなさい……ごめんなさい……。ナギサさんの気持ちを軽んじるようなことを言ってしまって……、ごめんなさい……」

 

「わたしも、ごめんなさい……。そうだよね、ナギサさんがそんな酷いことをするような人じゃないってこと、この数日で理解していたはずなのにね……」

 

 気づけば、腕の中の彼女たちの身体は震えていた。顔を覗き込めば、二人の瞳からはポロポロと大粒の涙がこぼれていた。

 

 し、しまった。二人を泣かせるつもりはなかったのに……。ど、どうしようかな……、この状況……。

 

「ご、ごめんなさい、泣かせるつもりはなかったんです……。え、えっと、し、心配しなくても、僕はずっと二人の傍にいます……と言いたかっただけで……」

 

「うぅ……ひっく……、あ、あのですね……、私が涙を流しているのは、決してナギサさんに怒られてしまったから……というわけじゃないんですよ……。その……、嬉しくて……」

 

「わたしだって、アルフィ様と同じ気持ちだよ、ひっく……ぐすっ……。ナギサさんに大切にされてるんだって思ったら、なんか涙が……出てきちゃって……。うぅ……、嬉しすぎてしょうがないよぉ……。もぅ……大好き……♡ナギサさんなんて……大好きなんだから……♡」

 

「ナギサさん、ありがとうございます。私も、愛してますからね♡」

 

 涙混じりではあるが、アルフィ様とユーアさんの二人が頬を綻ばせて満開の笑顔を僕に向けてくれる。よ、良かった、ちょっと強く言い過ぎたのかと冷や冷やした…ていたから、彼女たちの言葉を聞いてほっとした。

 

 それと同時に、僕の彼女たちに対する愛おしいという気持ちが溢れ出す。僕はもう、この二人にベタ惚れなんだな……。何一つとして後悔などないんだけどね。

 

「僕も愛してますよ、アルフィ様、ユーアさん……ん?なんか違和感が……って、アルフィ様!?またですか!?」

 

「お股だけに?」

 

「全然上手くありませんからね!?」

 

 せっかく良い雰囲気だったのに台無しだった。僕はアルフィ様に自身の股間を撫でられながら溜息を吐く。もちろん、反応はしない。

 

「あっ、アルフィ様だけずるいです!わ、わたしもっ……♡」

 

「ふふっ、じゃあ一緒に撫でてあげましょう♡感謝の気持ちをいっぱい伝えるために♡そして、あわよくば……ふふっ……、ふふふっ……」

 

 不敵な笑みを浮かべるアルフィ様。うん、薄々気づいてはいたけど、やっぱりそういうつもりだったのね。本当、アルフィ様はまだ幼いはずなのにどれだけエッチな人なのだろうか……。

 

「今日はもうしませんからね、アルフィ様。というか、これ以上は僕の身体が持ちませんので」

 

「か、回復魔法ならいくらでも……」

 

「ダメです」

 

「えぇ、そんなぁ……」

 

 そんな感じで、少ししんみりしかけたが、概ね賑やかなバスタイムは過ぎていったのだった。ユーアさんとも、そしてアルフィ様とも、さらに仲良くなれた気がするな。裸の付き合いって本当よく言ったものだよな。そう思った。

 

    **

 

浴室の扉をじっと見つめる者がいた。

 

「……良いなぁ、アルフィさんもユーアさんも……」

 

 そうポツリと呟かれた言葉は、しかし浴室の中にいる者たちにはきこえない。その呟きを聞き取れるのは、呟いた本人だけ。

 

「もっと積極的にならなきゃダメなのに……」

 

 脱衣所と浴室を隔てる扉へと足を伸ばしかけ、途中で踏みとどまってしまう。あの扉の奥に広がる夢の空間へと近づこうとしても、最後の勇気が振り絞れないようだった。

 

 だが、扉の奥からは二人の女子の艶やかな声が鮮明に聞こえてくる。その声を聞いていると、無性にむずむずするような、よく分からない気持ちにさせられてしまうようだった。

 

 扉の前に佇む存在は、訳も分からず自身の太腿を擦り合わせてしまっていた。ただし、扉の奥から聞こえてくる嬌声に掻き消され、微かに響くくちゅっ、くちゅっという水音は聞こえていなかったみたいだが……。

 

「……戻ろう、お部屋に」

 

 これ以上この場所にいても結局勇気が持てずにそのよく分からない気持ちをひたすらに掻き立てられてしまうだけだと理解したのか、その者は踵を返して脱衣所を後にし、おぼつかない足取りで自身の部屋に戻っていってしまった。

 

 ()()の歩いた床の上には、ぽつぽつと小さな液溜りが幾つもできていたが、当人が気づくことはなかった。



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お風呂上がりに……

 お風呂から上がり僕が脱衣所で着替えをしていると、

 

「おや……?」

 

 と、身体をタオルで拭き終えたアルフィ様が小さく声を上げた。その声につられるように、自身の黒い髪に残っている水分をを丁寧に拭き取っていたユーアさんがアルフィ様の視線を追う。

 

「あれ、どうしてあんなところが濡れてるんでしょう……?」

 

  そして、こくんと首をかしげて不思議そうにそんな声尾を漏らすユーアさん。よく見てみると、確かにユーアさんの言う通り脱衣所の床にところどころ水溜りができていた。

 

 僕たちの身体から水滴が垂れてしまったのか……とも思ったが、位置的にそれは有り得なかった。なんせ、その水溜りは浴室の扉よりも脱衣所と廊下を隔てる扉寄りのところにできていたのだ。

 

 少なくとも、お風呂から上がってすぐあんなところまで移動した覚えはない。しかし、僕らがお風呂に入る前にはあんな水溜りはなかったようにも思う。

 

「もしかして、私たちがお風呂に入っている間に誰かここに来たのでしょうか?その際、水を溢してしまった……とか」

 

「だ、誰かがここに!?」

 

 そんなアルフィ様の推測に、ユーアさんがびくりと身体を跳ねさせそう応じる。その表情には強張りが見え、猫尻尾は縮こまるようにくるくると巻かれていた。

 

 頬もかなり上気している。お風呂上りであることを考慮したとしても、あの赤さは尋常じゃないだろう。

 

 恐らく、自分が先ほどまでお風呂の中でエッチなことをしていた様子を誰かに聞かれてしまっていたかもしれないことに羞恥の感情を覚えてしまっているのだろう。まぁ、その気持ちは僕もよく分かる。現に、今若干頬が熱いし。

 

 というかむしろ、どうしてアルフィ様はそんなに平然としていられるのだろうか。その図太さが羨ましいような……そうでもないような……。

 

「えっと、どうしてそんなに驚くんですか?」

 

「だ、だって……、もしかしたらさっきの……誰かに聞かれてしまっていたかもしれないんですよ……?は、恥ずかしいじゃないですか……」

 

「うーん、そうですかね……?」

 

 ユーアさんの言葉に対し、アルフィ様はきょとんとした顔でそう答える。そんなアルフィ様の反応に、ユーアさんは信じられないといった様子でぽかんと口を開いたまま固まってしまった。

 

「あ、あれ……?私、何か変なこと言いました……?もう既に私たちの関係は知られているわけですから恥ずかしいことなんて……ないですよね?」

 

 アルフィ様の問いかけに、僕とユーアさんは同時に首を横に振った。やはりこの御嬢様はいろいろとずれている……。僕が異世界人だとかそういうのは関係なく、ただアルフィ様が少しずれた感性を持っているだけなのではないだろうか……。僕にはそう思えて仕方がなかった。

 

「そ、そんなぁ……」

 

 僕たちの反応を見てがっくりと肩を落とすアルフィ様。申し訳ないという気持ちもあるけど、こればかりは流石に彼女の感性には同意しかねる。

 

「うぅ……、もしかしたら姫様に聞かれてたかも……。明日からどんな顔したら……。はじゅかしい……」

 

 一方、ユーアさんはユーアさんで頭を抱えてその場に蹲ってしまっていた。うん、こっちに関してはよく分かる。多分、この場に一人しかいなかったら僕も同じように蹲って発狂してしまっていただろう。

 

 特に、エルシャローゼ様に聞かれていたかもしれないと考えると……、か、考えないようにしよう……。我を失いそうで怖い。

 

「ま、まぁ、ともかく、どなたかが水を溢されたと考えるのが妥当でしょうね」

 

 この話は終わりというように、僕は話題を元に戻す。

 

「うーん……。でも、少し違和感もあるんですよね」

 

 すぐに立ち直り、アルフィ様も僕に次いで本題に戻る。ただ、ユーアさんは未だにプルプルと身体を震わせ、"恥ずかしい……"とうめき声を連呼しているが……。彼女のことはそっとしておくに限るな。

 

「違和感……ですか?」

 

 僕はアルフィ様に聞き返す。すると、アルフィ様はこくりとと頷き、それから言葉を続けた。

 

「はい。水を溢すにしても、洗面台から離れすぎていませんか?」

 

「言われてみれば……、確かに」

 

 この脱衣所に設置されている洗面台は、どちらかというと浴室の扉側にある。だから、脱衣所の出入り口側の床にできた水溜りからは距離があるのだ。アルフィ様の言う通り、水を溢したというには少し違和感がある。

 

「それに、小さな水溜りがドアに向かって転々と続いているのも気になります」

 

「そうですね……」

 

 アルフィ様の言う通り、一番手前側の大きな水溜りから道標が伸びるかのように転々と幾つも小さな水溜りが連なっている。

 

「不自然ですね……。どうしてあそこの水溜りだけあんなに大きいんでしょう。もしかして、誰かがここでお漏らしを……?」

 

 などと一人推測を始めるアルフィ様。お漏らしって……、流石にそれはないと思うけどなぁ……。もし仮にあったとしても、そのまま放置する人はいないんじゃないかなぁ……。少なくともこのユニットには。

 

「いえ……、でもおしっこにしては色が薄すぎですね……。ってことは……、もしや……、ふふっ……」

 

 アルフィ様の推測に対して心の中でいろいろと考えていると、彼女は不意に不敵な笑みを溢し始めた。そんな彼女の姿に、僕は嫌な予感を覚えずにはいられなかった。

 

「ちょっと確かめてみましょう」

 

 そう言うと、アルフィ様はとてとてと大きな水溜りに近づいていく。そして、水溜りのすぐ傍にしゃがむと、人差し指でそれを一掬いする。

 

 現在、アルフィ様は僕に背中を向けた状態でしゃがんでいる。そのため、僕の位置からだと彼女のぷりっとしたお尻が丸見えなのである。しかも、少し脚を開いてしゃがんでいる所為で裂け目の奥の領域までばっちり見えてしまっていた。

 

 好きな人が無自覚に見せてくるその光景に呼応するように、先ほどまで萎えかけていた僕の中の熱情が再び目覚めようとしてしまっていた。

 

 もう既に5回も射精して身体には相当量の疲労が蓄積されているはずなのに、それでもまだ心は満足できていないとでも言うのか……。僕の性欲は僕の身体を壊したいのか……?

 

 流石にこれ以上眺めていたら抑えきれなくなりそうだったので、僕はアルフィ様の姿から目を逸らした。

 

「ねばねばしてますね……。ふふふ……、これは私の推測通りかもしれないですね……。しかし、一体誰のものなんでしょうねぇ……」

 

 僕が自身の中の性欲と戦っている間にも、アルフィ様は一人でブツブツと何事かを呟きながら一人で考え込んでいた。

 

 しかし、アルフィ様は勇気あるなぁ……。水かも分からない謎の液体に自ら触れようとするなんて……。僕、そういうの怖くて触れない。

 

「猫人族ならもしかしたら分かるかも……。ユーアさん、ちょっとこちらに来てもらっても良いですか?」

 

「えっ、あっ、は、はいっ!!」

 

 それまでずっと縮こまっていたユーアさんだったが、アルフィ様に名前を呼ばれてようやく我に返ったのか、身体を跳ねさせて大げさにそう返事をした。

 

 それから、言われた通りすぐにアルフィ様のもとに近づき、

 

「これ、誰の匂いか分かります?」

 

 と言って差し出されたアルフィ様の人差し指を素直にすんすんと嗅ぎ始めた。その表情から察するに、今の状況については全くと言って良いほど理解できていないのだろう。

 

 それでも素直に従ってしまうところが少し可愛く思えてしまう。けど……、少しは警戒すべきなのでは……?とも思う。

 

「これは……、えっと……」

 

「分かりましたか?」

 

「え、ええ、一応……。というか、この水溜りは一体……」

 

「それはですね……」

 

 そう言うと、アルフィ様はユーアさんの耳元で何事かを呟いた。そんなアルフィ様のひそひそ話に耳を傾けながら、ユーアさんは何とも言えない微妙な表情を浮かべていた。

 

「というわけなんです。どうです?」

 

「え、えっと……、何というかその……楽しそうですね……、アルフィ様……」

 

「ええ、とても。それで、誰の匂いがしましたか?」

 

「今の話を聞かされた後だと言いづらいなぁ……。うーん、でももし彼女もわたしと同じだったら……、別に悪いことじゃ……ないのかな……?」

 

 にんまりと笑みを溢すアルフィ様に問い詰められたユーアさんは、猫尻尾を左右にゆらゆらと揺らしながら逡巡を見せる。しかし、答えることに決めたらしく、チラチラと僕の様子を伺いながらアルフィ様の耳元に口を近づけ、僕には聞こえない程度の声量で何事かを囁いていた。

 

 これ、僕がいたらまずい話なのかな……?乙女だけの秘密……的なやつ……なのだろうか?

 

「ふふふ、なるほどです。やはりあの人でしたか。一番可能性が高そうでしたからね、あの人が」

 

 などと考えている間にも、彼女たちの話し合い……?は続いていた。まぁ、もし本当に僕に聞かれたらまずい話をしているのだとしたら、恐らく今頃ここから追い出されているだろう。何も言ってこないということは、要するに僕がここにいても問題ないということ……と考えることにしよう。

 

「それはつまり……」

 

「私たちと同じですよ、多分」

 

「そうなんですかね?若干腑に落ちないような……」

 

「いえいえ、絶対そうですよ。私たち以外の人たちはみんな寝る準備を済ませて自室に戻っていったのはユーアさんも見ましたよね?」

 

「は、はい、まぁ……」

 

 何故か勢いづいているアルフィ様に押され気味になりながら返事をするユーアさん。今のアルフィ様、すごく生き生きしているな。

 

「じゃあ、寝る支度を済ませた人は脱衣所に来ますか?」

 

「……確かに、用があるとは考えづらいかも……ですね」

 

「つまり、そういうことなんですよ」

 

「う、うーん……、やっぱり何か腑に落ちない……」

 

「それに、この水溜りが何よりの証拠ですよ。まぁ、とにかく行ってみればすぐに分かりますよ」

 

 そう言うと、アルフィ様は徐に立ち上がり、そして脱衣所の出入り口に向かってすたすたと歩き始めた。そんな彼女の後姿を見つめながら、

 

「アルフィ様って、実は思い付きで突っ走っちゃうようなタイプ……だったりするのかなぁ……。意外な一面を見た気がする……。で、でも、彼女の普段の態度的にも、案外アルフィ様の推測は間違いじゃない……のかな」

 

 ユーアさんはそう呟いていた。そしてすぐ、アルフィ様の後を追うようにその場から立ち上がり出口に向かう。

 

「あっ、ナギサさんもついてきてくださいね♪」

 

「わ、分かりました……?」

 

 廊下に出る寸前、アルフィ様はこちらに振り返り実に楽しそうな笑顔で僕にそう言ってきた。

 

 何が何だか分からないが一応頷く僕。変なことじゃないと良いんだけど……、不安だなぁ……。

 

「そ、その、アルフィ様のためにもちょっとだけ付き合ってあげて」

 

「う、うん」

 

 僕にそう言ってきたユーアさんの瞳は、自由気ままな妹を見守る姉のそれだった。ユーアさんは、見た目は小さいけどやっぱり最年長なんだなぁ……と再認識させられた瞬間だった。

 

「っとと、忘れないうちに……」

 

 彼女たちについていく前に僕は一度浴室に戻り、湯船の栓を抜いた。それから浴室の電灯を落とし、脱衣所の床を軽く掃除した。

 

 その際、謎の水溜りにうっかり触れてしまう。

 

「なんかぬるぬるしてる……。って、これ……まさか……!?」

 

 そして、ここでようやく彼女たちが放していた内容をほんの少しだけ理解する僕だった。……これ、もしかしてまだ休ませてくれないやつ……?

 

「うぅ、疲れてるのに……」

 

 と言いつつも、少しだけ期待してしまっていた。先ほど無理矢理抑えつけた熱情が再燃し始める感覚を覚える。

 

「……とりあえず二人を追いかけよう」

 

 そう呟くと、僕も脱衣所を後にした。それから、廊下のところどころにできていた水溜りにチラチラと視線を向けながらもアルフィ様とユーアさんを追う。

 

「あっ、来ましたね、ナギサさん♪」

 

 そして、角を曲がった先に二人はいた。僕の姿を捉えたアルフィ様は小声で僕に語り掛けながら、自身の唇の前に人差し指を当てて"静かに"と僕にジェスチャーを送ってきていた。

 

 僕は一つ頷くと、黙ったまま彼女たちがじっと見つめる扉に意識を向けた。そこは2号室……、つまり、リレイナ様のお部屋だった。そして……

 

「んんぅ……♡はうぅ……♡あっ……♡あぅぅ……♡ナ、ナギサ……さん……♡♡んあぅ……♡はぁぁぅ……♡」

 

 その扉の奥から、そんな可愛らしい嬌声が漏れ聞こえていた。しかも、僕の名前まで呟いている……。

 

「……まさか、アルフィ様の推測が当たっちゃうなんて……」

 

「ふふっ、夜はまだまだ長いですよ、ナギサさん♪」

 

「そ、そう……みたいですね……」

 

 身体の疲労など関係ないと言うように膨張を始める自身の股間を見下ろしながら、僕は溜息混じりにアルフィ様の言葉に短くそう応じたのだった。男って、本当何なんだろうね……?



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リレイナ様に突撃開始

「あー、でも、ここで始めちゃうのは少しまずいですね」

 

 リレイナ様のお部屋の扉に手を描けようとしたアルフィ様だったが、思い出したように周囲をきょろきょろと見回し始めた。

 

 それから、一度ドアノブから手を放し、アルフィ様が悩んだ様子を見せる。先ほどまで乗り気だったアルフィ様の急な態度の変化に、僕は首をかしげてしまう。

 

 ここに来て今更遠慮する……なんてこと、アルフィ様はするのかな……?そういう人には見えない。少なくとも僕はそう感じた。

 

「えっと、アルフィ様?どうかなさいました?」

 

 態度が急変したアルフィ様に対し、僕と同じように不可解に思ったユーアさんがそう問いかける。

 

「もしかして、止める気になりました?」

 

「いえ、そういうわけではありません。そうではなく、夜遅くで皆さんも恐らく寝静まっているのに、こんな場所で行為を始めてしまったら迷惑かな……と」

 

 続けざまに質問したユーアさんにアルフィ様は首を振って答え、そして自身が躊躇し出したその理由を語り出した。

 

 まぁ知ってはいたけど、止めるつもりはないんだなぁ……。リレイナさんにも心の準備とかあるだろうに……。

 

「そういうことでしたか。でも……、確かにそうですね……。その……、こ、行為を始めたら、恐らくうるさくしてしまいますからね……。他の皆さんを起こしてしまいかねませんね」

 

 アルフィ様の懸念に確かにと頷くユーアさん。その頬が朱色に染まっていたのが、暗闇の中にいるにもかかわらずはっきり分かった。先ほどの浴室での行為を思い出してしまったのだろう。か、可愛い……。

 

 だが、二人の言うことは確かだろう。浴室での二人の様子から、静かに行為を行う……ということはできないだろう。しかし、アルフィ様は行為まで済ませないと気が済まなさそうだしなぁ……。

 

 僕としては、別に行為まで至る必要はないと思うんだけど……。リレイナ様の気持ちを確かめることさえできれば、それだけで充分だと思っている。期待をしていないわけではないけどね。

 

「や、やはり今日は止めておきませんか?」

 

「それではリレイナさんが可哀そうです」

 

「では、気持ちを伝えるだけに留めるとか……」

 

 ユーアさんも僕と同じような考えを持っているようだ。扉の前で腕を組み悩むアルフィ様に、横からいろいろと意見を言ってくれていた。

 

「でも、リレイナさんは今こうして自慰行為に励んでます。それって、もう抑えきれないってことだと思うんです。私もそうでしたから。ユーアさんだってそうでしょう?」

 

「にゃっ……!?そ、それは……、はい……」

 

 アルフィ様に図星を突かれてしまったようで、ユーアさんは先ほどよりも赤みの増した顔をこちらにチラチラ向けながら遠慮がちに頷く。

 

 やっぱりアルフィ様っていろいろとずれてる……。どうしてあんなに堂々と自分が自慰行為に励んだことを暴露できるのだろう……。

 

 あれ?でも、そういえばアルフィ様から初めて告白を受けた時にも同じことカミングアウトされたけど、その時は恥ずかしがっていたような……。

 

 一度僕に話してしまったことで吹っ切れたのかな?……恥は捨てるべきものではないと思うのだけど……。

 

「まぁ、そういうわけですから、リレイナさんもきっと我慢できなくなってしまいますよ。それに、私ももっとナギサさんと愛を深め合いたいですし♪」

 

 それまで真面目な表情だったアルフィ様が、唐突に乙女の表情を浮かべだす。求めてくれるのは嬉しい限りなのだけど、アルフィ様は疲れたりしないのだろうか?正直、僕は既に結構疲れてしまっているのだけど……。

 

「そ、それは……、わたしも同じ気持ちですけど……。ナギサさんともっといっぱい触れ合いたい……♡♡」

 

「なら、やっぱり作戦は決行ですよ、ユーアさん」

 

「で、でも、ここでは周りの人に迷惑が……」

 

「うーん、そこが困りどころですねぇ……。あっ、そうだ」

 

 結局アルフィ様に丸め込まれてしまったユーアさんだったが、周囲に迷惑がかかってしまうという問題は未だにクリアできておらず、二人は再び頭を抱え出す。

 

 しかし、アルフィ様が何か良い案を思いついたのか、ポンと手を打ち合わせ声を上げた。とは言っても、周囲に配慮して小声だったが。

 

「別にここでする必要はないんですよ。リレイナさんを上手く誘導して別の場所に移動さえできれば、あとは……ムフフ……♪」

 

「な、なるほど。……ところでアルフィ様、その笑い方はどうにかなりませんか……?その……、御嬢様が発して良い声じゃないと思うのですが……」

 

「細かいことは気にしちゃダメですよ、ユーアさん。今は雰囲気を楽しまないと♪」

 

「そ、そういうものなのでしょうか……」

 

 ユーアさん、半眼だ。まぁ確かに、今のアルフィ様は御令嬢らしからぬ下品さを醸し出しているからな。常にエッチなことばかり考えている思春期男子みたいな感じ……という表現が今の彼女にはぴったりかもしれない。

 

「そ、それはそうと、場所を変えると言っても、何処に移動するのでしょう?浴室に戻りますか?」

 

 気を取り直してユーアさんがそう尋ねる。そんな彼女に対し、アルフィ様はちっちっちっと人差し指を左右に振ってみせる。あの仕草、久々に目にした気がする。

 

「浴室でも良いのですが、今回は雰囲気を大事にしてベッドのある所が良いと思うんです。なので、ナギサさんのお部屋にしましょう」

 

「えっ、ぼ、僕の部屋ですか……?」

 

 指名されたのが自分の部屋だっただけに、それまで黙って話を聞いていた僕は思わずそう聞き返してしまった。

 

「た、確かに、ナギサさんのお部屋ならこの場所からは多少離れてますし、誰にも迷惑かけずにその……エ、エッチなこと……できますね。……欲を言えば、わたしも初めてはベッドの上が良かったなぁ……なんて」

 

「でもユーアさん、お風呂エッチに乗り気だったじゃないですか」

 

「うっ……、それを言われると弱いです……。ま、まぁ、とにかくわたしはアルフィ様の意見に賛成です。はぁ……、リレイナ様がうらにゃましい……」

 

 ユーアさんがアルフィ様の意見に同調した。まぁ、別に僕の部屋に皆さんを招くことに抵抗はこれっぽっちもないから良いんだけどね。

 

 そういうわけで、僕もユーアさんに続くように一つ頷いて賛成の意思をアルフィ様に表示した。

 

「僕も構いません」

 

「では、決まりですね。さて、あとはリレイナさんをどう誘導するかですね……。あくまで推測ですけど、リレイナさんの場合、ナギサさんがいると萎縮しちゃいそうですね。なので、ナギサさんには先にお部屋に戻っててもらいましょう。良いですか?ナギサさん」

 

 僕からの返事を聞いたアルフィ様は、満足した様子で次の話に移った。と、そこで僕はアルフィ様から先に部屋に戻るよう指示を受けた。いやまぁ、指示というほど強制力の強い口調じゃなかったのだけど。

 

「分かりました、アルフィ様。それでは、先に戻って準備しております」

 

「お願いしますね」

 

「あっ、それならわたしも……」

 

 僕が彼女たちに背を向けかけたところで、ユーアさんが僕についていくと手を挙げた。が、その提案はアルフィ様によってばっさりと切り落とされてしまう。

 

「いえ、ユーアさんには残ってもらいます。私一人よりも二人いた方がより確実にリレイナさんをナギサさんのもとまで誘導できると思うので」

 

「そ、そうですか……」

 

 そんなアルフィ様の言葉に、ユーアさんは何処となく残念そうな表情を浮かべていた。頭頂部の三角猫耳はへにゃりと力なく垂れていた。

 

「それにユーアさん、ナギサさんと二人きりになって先にイチャイチャしたかっただけでしょう?魂胆丸見えでしたよ?貴女らしくない……」

 

「……お見通しでしたか、すみません。で、では、わたしもこちらに残りますね。ナギサさん、準備の方よろしくお願いね」

 

「うん、分かったよ」

 

 先ほどからユーアさんがいろいろ可愛すぎる。僕はそんな彼女の頭をそっと撫でると、今度こそ二人に背を向けて自室……男性使用人用控室へと戻るのだった。

 

    **

 

「うん、分かったよ」

 

 ナギサさんはそう言うと一度わたしの頭を撫で、それからわたしたちに背を向けて廊下の奥へと消えていった。

 

 あ、頭……、撫でられちゃった……。それが嬉しくて、わたしの耳が頭の上でピコピコと跳ねまわる。

 

「ユーアさんだけずるいです」

 

「あっ、え、えっと……、あはは……」

 

 しかし、横から飛んできたアルフィ様の嫉妬の視線を受け、わたしだけが美味しい思いをしてしまったことに少しだけ罪悪感を覚えてしまう。

 

 け、けど、アルフィ様は昨日の夜ずっとナギサさんを独り占めしていたわけだし、これくらいのご褒美があっても別に良いよね、うん。

 

「はぁまぁ良いです。、私もあとでいっぱい可愛がってもらうので♡さてと、それではユーアさん、そろそろ突入しましょうか」

 

 しばらく不機嫌そうな表情を浮かべていたアルフィ様だったが、深呼吸をして気持ちを落ち着かせると、改めてリレイナ様の住まう2号室の扉へと向き直った。

 

「はぁ……♡はぁ……♡はぁ……♡あっ……♡あああっ……♡ナ……ギサ……さぁん……♡♡んふぅ……♡んはぁ……♡んあぁ……♡」

 

 中からは相変わらず彼女のエッチな声が聞こえてくる。この声だけで周りの方々に気づかれてしまうのでは?なんて考えてしまうが、この魔法学園の学生寮は細部までしっかりと創られており、壁などにもある程度の防音対策は仕込まれている。

 

 なので、自慰行為で発する声くらいなら隣の部屋に漏れ聞こえてしまう心配はない。これで扉もしっかり防音対策が施されていれば尚良し……なんだけど、そこまで都合よくはいかないようだ。

 

 結果として、扉のすぐ外にいるわたしたちには彼女の喘ぎ声が聞こえてしまっているわけである。まぁ、決して防音対策が一切なされていないというわけでもないので、こちらに漏れ聞こえてくる彼女の声はそれなりに小さいのだけど。

 

「あ、あれですね……。こうしてエッチな声を聞いていると……、身体がちょっとうずうずしてきちゃいます……♡」

 

 アルフィ様がもじもじしながらそう言ってくる。興奮の所為か、彼女の顔は少しずつ火照りを見せていた。ある程度なら夜目が利くので、この暗さでも色彩の変化くらいなら認識できる。

 

 なお、言葉として発することはしないが、わたしもアルフィ様同様少しエッチな気分になり始めていた。身体がむずむずする……。

 

「と、とにかく、早くリレイナさんをここから連れ出して、一緒にナギサさんに可愛がってもらいましょう。わたしもそうですが、ユーアさんももう限界のようですからね」

 

「ど、どうしてそれを……!?」

 

 何も言っていないはずなのに、アルフィ様が今のわたしの状態をズバリ当ててきた。アルフィ様って、もしかしてこの暗さでも普通に見えているのだろうか……?

 

 わたしと同じように夜目が利くのなら、確かに気づかれてしまっても無理はない。顔が赤くなっていることは自分でも理解しているし……。

 

「ユーアさんの乳首、勃ってます」

 

「にゃっ……!?こ、こんなとこ見にゃいでくださいよぉ!!」

 

 アルフィ様からそう指摘され、わたしは慌てて自身の胸を腕で隠す。せ、せめて顔の赤さを指摘してほしかった……。

 

 というか、この場にナギサさんがいなくて本当に良かった。身体の……、それも恥ずかしいところに起こる生理的反応を、あの人の前でこんな堂々と指摘されていたとしたら……。うぅ、考えるだけで死にそうなくらい恥ずかしい……。

 

「そこが一番分かりやすかったので。というか、もう既にもっと恥ずかしい姿を見せあった仲じゃないですか。今更乳首一つでそんなに恥ずかしがらないでくださいよ……。これじゃ、まるで私が痴女みたいじゃないですか……」

 

 わたしの反応を見たアルフィ様が呆れ気味にそう溢す。い、いやいや、時と場合というものがあると思う……。

 

 あと、アルフィ様は既に痴女一歩手前のような気が……。

 

「なんか、失礼なこと考えてません?」

 

「い、いえ、何も……」

 

 危うく気付かれるところだった……。この人、鋭すぎ……。

 

「ふーん、まぁ良いです。それじゃ、突撃しますよ、ユーアさん」

 

「は、はい、畏まりました、アルフィ様」

 

 話が大分横道にそれてしまったが、ようやく作戦決行に移るようだ。アルフィ様はリレイナ様のお部屋のドアノブに手をかけると、音をたてないようにそっと捻り、そしてできた隙間から中を覗き込む。

 

「はうぅ……♡はわぁ……♡指……止まらない……よぉ……♡んあぅ……♡んやぁ……♡ナギサさん……♡ナギサさん……♡ナギサさん……♡んんんぅぅ……♡♡」

 

 扉が開いたことで、中の様子がよりはっきり聞こえてきた。リレイナ様の嬌声だけでなく、くちゅくちゅという聞いているだけで赤面しそうになるような恥ずかしい水音も漏れ聞こえてくる。

 

「わ、わぁ……、お部屋の中……すごいことに……♡」

 

 中を覗きながら、アルフィ様がポツリとそう溢す。そんなアルフィ様だが、かなり大胆に太腿同士を擦り合わせている。あのまま放置していたら、すぐにでも自慰行為を始めてしまいそうだ。

 

「アルフィ様、覗くのも良いですが、用事を済ませてしまわないと」

 

「はっ、そ、そうでした。では、失礼して……」

 

 後ろから声をかけると、アルフィ様ははっと我に返り、それからゆっくりと扉を押し開いていった。

 

 そして、人一人分の隙間を作ると、そろりと身体を滑り込ませ、静かに中へと突入していった。わたしもその後に続く。

 

「失礼いたします」

 

 突入に成功したわたしは、後ろ手にそっと扉を閉め、それから部屋の主であるリレイナ様の姿を探す。

 

「えっ、ええっ!?ど、どうして……お二人が……!?」

 

 彼女の姿はすぐに見つかった。どうやら、扉の正面にしゃがみ込んでいたようだ。彼女はわたしとアルフィ様の姿を視界に捉えると、それまで懸命に動かしていた手を止め、慌てた様子でそんな言葉を発した。

 

「静かに。皆さんが起きてしまいます」

 

 動揺するリレイナ様に対し、アルフィ様は唇に人差し指を当てながらそう注意を促す。いやまぁ、慌てるなという方が無理あるだろうけど、こんな状況じゃ……。

 

「は、はい……。で、ですが、お二人はどうしてここに……?」

 

「それはですね……」

 

 リレイナ様に問われ、アルフィ様はここまでの経緯を一つずつ話し始めた。

 

 浴室から出たら、脱衣所に奇妙な水溜りができていたこと。その水溜りの匂いを確かめたら、そこからリレイナ様の匂いがしたこと。確かめるためにリレイナ様のお部屋の前まで来たら、中から喘ぎ声が聞こえてきたこと……。

 

 そんな風に事細かに説明を加えていくアルフィ様を前に、リレイナ様は真っ赤な顔で口をパクパクさせていた。

 

「で、今に至ります」

 

「あわわ……、ど、どうしよう……」

 

「ふふっ、とても気持ち良さそうでしたよ、リレイナさん」

 

 その追い打ちは止めてあげてくださいっ、アルフィ様っ!!多分、恥ずかしさに押しつぶされてしまいますっ!!わ、わたしだって同じことされたら……、み、身震いが……。

 

「はうぅ……!!も、もしかして、ナギサさんにも……」

 

「ふふふ、それはどうでしょう?」

 

 満面の笑みを見せるアルフィ様と、それとは正反対に青ざめた表情を見せるリレイナ様。ア、アルフィ様、ドSだ……。

 

「あっ、そ、そんなに顔を蒼くしないでくださいよ。別にリレイナさんは悪いことなんて一切してないんですから」

 

「で、ですが……」

 

「ナギサさんのこと、好きなんですよね?」

 

「……はい」

 

 アルフィ様の問いかけに、リレイナ様はやや遠慮した様子で小さく頷く。あの様子から察するに、リレイナ様は自分がナギサさんに思いを寄せることがいけないことだと考えているみたい。

 

 まぁ多分、相手がアルフィ様だからというのもあるだろうけど。これでもアルフィ様、一応第Ⅰ貴族であるローラント家のご息女だからね。

 

「なら決まりです。リレイナさん、今からナギサさんのところに行きましょう。そして、リレイナさんの気持ち、ぶつけちゃいましょう」

 

 けど、アルフィ様は決してナギサさんを独り占め仕様だなんて考えない。現にわたしのことを受け入れてくれているわけだし。

 

「えっ……!?い、良いのですか……!?」

 

 アルフィ様から差し出された手を驚きの表情で見つめながら、リレイナ様が申し訳なさそうな声でそう言ってくる。

 

「良いに決まってます。ダメなんて言いません。というか、私としてはむしろウェルカムです。リレイナさんも加われば、ナギサさんの周りがもっと賑やかになって、さらに楽しくなりそうですからね♪」

 

 優しい笑みを浮かべながら、アルフィ様がリレイナ様に答える。

 

「で、でも……、ナギサさんは受け入れてくれるでしょうか……」

 

「ふふ、それは行ってみれば分かりますよ。ささ、早く向かいましょう」

 

「えっ、ええっ……!?ちょ、ちょっと待ってくださいよぉ……!!こ、心の準備が……!!ア、アルフィ様ぁ……」

 

 やや強引にリレイナ様の手を取ったアルフィ様は、そのまますたすたと軽い歩調でリレイナ様のお部屋を出て行ってしまう。リレイナ様の抵抗など気にした様子もなく。さ、流石はアルフィ様……。

 

「……そういえば、これ……片付けなくて良いのかな……?す、すごいことになってるけど……」

 

 アルフィ様とリレイナ様がお部屋から出ていった後、わたしは室内の惨状を見て思わずそんな言葉を漏らしてしまう。

 

 かなり夢中になって自分を慰めていたらしく、先ほどまでリレイナ様がしゃがみ込んでいた床には大きな液溜りができていた。あ、あんなに出して……、脱水症状になったりしないのかな……?かなり不安だ。

 

「心配だし、お飲み物でも持って行ってあげようかな」

 

 そう言って、わたしもリレイナ様のお部屋を後にする。お片付けは後ですればいい。い、今はとにかくナギサさんと……。

 

「って、わ、わたしってば、え、えっちなことばっか考えちゃってる……」

 

 膨らみそうになった妄想を無理矢理振り払い、わたしは駆け足でその場を離れた。膨らみきってしまった胸と股間のお豆を手で隠しながら。



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リレイナ様の告白

「さて……と……」

 

 アルフィ様の指示のもと自室である使用人控室まで戻ってきた僕は、ひとまず執事服から寝間着に着替え、軽く寝台の整頓をした。

 

 これからさらに体力を消耗することになる。明日の業務を考えると、できればハードワークは避けたいところなのだが、リレイナ様の気持ちを考えるとそうも言っていられない。思いには真剣に答えたいから。

 

「はぁ……、でも、今の状態じゃリレイナ様に申し訳ないよなぁ……」

 

 整頓を終えたばかりの寝台にぐったりと身体を預けながら、僕は自身の体力が枯渇状態にあることに心肺の声を漏らす。

 

 真剣に向き合いたいという気持ちはあるのだが、疲れ切った今の状態では恐らく真剣さが感じられないだろう。それではリレイナ様に申し訳ない。

 

「そういえば、アルフィ様が回復魔法使えるとか言ってたなぁ……。最悪、それに頼ろうかな」

 

 使用人である僕が主人であるアルフィ様の助けを請うなんて本来あって良いことではないだろうが、彼女のことだからむしろ頼ってほしいなどと口にしそうだ。

 

 気乗りはしないが、いざとなったら彼女に頼ろう。そう決意した僕は、彼女たちがこの部屋にやってくるまでの間、少しでも体力を回復させるために寝台の上で大の字になっていた。

 

 横になると自然と眠気も襲ってくるが、流石に眠ってしまうわけにもいかないので僕は何とか落ちそうになる眼瞼を引き上げ続けていた。

 

 そうしてしばらく睡魔と格闘していると、部屋の外から小さな足音が数人分聞こえてきた。どうやらアルフィ様とユーアさんがリレイナ様の連れ出しに成功したようだ。

 

 僕は寝台の上に横たえていた自身の身体を起し、それから部屋の扉が叩かれるのを待った。

 

「き、来ちゃった……。あ、あの……アルフィさん……、本当に……言わなきゃダメ……ですか……?ま、また後日に……ということには……」

 

「ダメです♪溜め込むと辛いだけですよ?それなら、この機会に全部吐き出しちゃいましょう。その方がきっと楽ですよ」

 

「……そ、そうですね、その通りかもです……。我慢するのは……大変でした……」

 

 扉の向こうからそんなやり取りが聞こえてきた。声の主はアルフィ様とリレイナ様の二人のようだ。ユーアさんの声は聞こえてこない。

 

 聞き耳を立てるつもりはなかったが、辺りが静寂に包まれていたからか二人の声は自然と耳に入ってきてしまう。

 

 リレイナ様は扉の前でしばし逡巡しているようだったが、アルフィ様の言葉を受けて前向きになったのか、肯定的な声が聞こえてくるようになった。

 

「覚悟、できましたか?」

 

「は、はい。大丈夫です。が、頑張ります」

 

「そ、そんなに固くならないで。リラックスですよ、リレイナさん」

 

 直後、すーはーすーはーという大きな深呼吸音が耳に届く。気持ちを落ち着ける時によくやるあれだろう。

 

「ふぅ、た、多少はマシになりました」

 

「そうですか、良かったです」

 

「では、行きます」

 

 そんな決意のこもった言葉の後、部屋の扉がコンコンと2回叩かれた。僕は寝台から降り、その足で扉へと近づく。

 

「今開けます」

 

 そう言ってドアノブを捻り、扉の外の存在を中に招き入れる。……そこにはユーアさんの姿はなかった。声がしないだけと思っていたが、そもそもこの場にいなかったようだ。

 

「アルフィ様、それとリレイナ様、どうかなさいましたか?」

 

 この後の展開も全て理解してはいるが、アルフィ様の視線が"知らないフリをしてください"と訴えかけてきていたので、僕はそれに従い小さく驚いた反応を作り彼女たちを迎えた。

 

「あ、あの……、その……、お、お話ししたいことが……あって……。こ、こんな夜分遅くにすみません……」

 

 扉を開ける前は多少緊張も解れていたリレイナ様だったが、実際に僕と対面したことで先ほどの緊張が戻ってきてしまい、ガチガチに身体を硬直させてしまっていた。

 

 その隣でアルフィ様が"リラックス!リラックス!"と小声でリレイナ様に語り掛けていたが、余裕を失ったリレイナ様の耳にはその言葉は届いていなかった。

 

「お話……ですか?っとと、このまま立ち話も何ですので、ひとまず中にお入りください、お二人とも」

 

「ひゃ、ひゃいっ!し、失礼しましゅ……」

 

「はい、それでは失礼します」

 

 真面に発音すらできなくなってしまっているリレイナ様と、これから起こる展開にワクワクした様子のアルフィ様がそれぞれぺこりと頭を下げてから入室してくる。リレイナ様の所作はぎこちなかった。

 

 そんな彼女の様子に思わず吹き出しそうになるのを必死に堪え、僕は部屋の扉をぱたんと閉める。

 

 が、その直後……

 

「にゃっ、し、閉めないで……」

 

 そんなか細い声を聞き、慌てて扉を再度開く。するとそこには、コップの乗ったトレイを手に持ったユーアさんがしょぼんとした様子で佇んでいた。

 

「ご、ごめん、気づかなかった……」

 

「ナギサさん、酷い……」

 

「ほ、本当にごめん……。さっきドア開けた時にはいなかったから……」

 

「お水用意してたの」

 

 そう言うと、持っていたトレイを強調するように前に突き出してくるユーアさん。そこに乗っているコップの数を見て、僕は首をかしげる。

 

 ここには僕ら4人しかいないのだが、トレイの上のコップは人数分より多かった。その理由が思い当たらない。

 

「コップ、多いね」

 

「足りないかと思って。ねぇ、それより早く入れて」

 

「あっ、ごめん。どうぞ」

 

 ユーアさんに催促され、僕はすぐにユーアさんも部屋に招き入れた。そして今度こそと扉を閉めた。

 

 振り向けば、3人の全裸の美少女がいる……。若々しい甘酸っぱい香りが室内に充満し、僕の性欲を刺激してくる。

 

 というか、匂い強いな……。生々しさすら感じさせる少女臭に若干の眩暈を覚えつつ、その理由を探ろうと彼女たちをじっと見つめる。

 

 が、すぐに分かった。リレイナ様の下半身がところどころ濡れている。恐らく、先ほど自室で自慰行為をされていた時に分泌した愛液だろう。強い雌臭の原因はそれだろう。

 

 それを理解するや否や、つい先日ロリコンであることが確定した僕の性欲は一気に爆発ギリギリまで高まっていく。自分のことを考えて行ってくれた自慰行為の残滓が目の前にあると考えると、それだけで言いようのない興奮が僕の心身を襲う。

 

 ま、待て待て……。今はその時ではない。あとでそういう展開になるかもしれないが、今は真面目に話を聞かないと。

 

 そう思い、僕は数度深呼吸を繰り返し、芽生えた興奮を無理矢理抑え込んだ。とは言っても、ごくごく一部だけなのだが。

 

「ユーアさん、それはお水ですか?」

 

「はい。水分補給用にと」

 

「そうでしたか。態々ありがとうございます」

 

「いえ、これも仕事ですから」

 

 奥の方でアルフィ様とユーアさんがそんなやり取りをしている。だが、そのやり取りすらもリレイナ様の耳には届いていないようで、自身の胸を押さえながら何度も何度も激しい呼吸を繰り返していた。

 

「え、えっと、リレイナ様、その……大丈夫ですか?」

 

 届くか分からなかったが、一応声はかけておく。心配だし。

 

「ひゃい、平気ですっ」

 

「い、いえ、そうは見えないのですが……。と、とりあえず落ち着きましょう。ゆっくり深呼吸です、リレイナ様」

 

 僕の言葉に従い、リレイナ様はゆっくりとした深呼吸をし出す。

 

「息を吐くのを長めにすると良いですよ」

 

「は、はい、やってみます」

 

 効率の良い深呼吸法をリレイナ様に伝えると、リレイナ様が素直にそれを実践してくれる。自律神経の意図的な調節ができる……とかなんとか聞いたことが有る。

 

 それからしばらくの間、リレイナ様は行きを吸っては吐いてを繰り返していた。そうしているうちに、何とか気持ちを落ち着けることができたようで、先ほどまで荒かった呼吸が穏やかなものに変わってきた。

 

「ありがとうございます。大分楽になりました」

 

「良かったです。それで、お話がある……ということでしたが……」

 

 リレイナ様からのお礼の言葉に僕は軽く頷くと、早速本題を切り出すことにした。リレイナ様が落ち着いている今のうちに話を進めるべきだと考えた。

 

「そ、そうでした。緊張で本題を忘れてしまうところでした……。そ、そのですね……、お話というのは……」

 

 躊躇したように俯くリレイナ様。決心したとは言っても、告白というのはどうしても勇気がいるものだと思う。

 

 僕は急かすことなく彼女の次の言葉を待った。

 

「ワタシ……は……、ナ、ナギサさんのことが……」

 

 そこまで言って、彼女の言葉が止まる。どうしてもその先を声に出せないのだろう。彼女の唇は"う"の形を保ったまま固まってしまっている。

 

 "す"と発音したいということはもう既に分かっている。だから、助け船だって出せる。……けど、安易に"好きなのですか?"などと聞きたくはない。

 

 しかし、このまま彼女を放置してしまうのも可愛そうだ。せっかくここまで言ってくれたんだし、そろそろ何らかの助け舟は出したって罰は当たらないはずだ。

 

 ……別の方法で、何か言い手助けはあるだろうか?僕は一瞬の間に様々な案を頭の中に思い描く。

 

 と、そんなとき、僕の視線が彼女の唇に向く。"う"の形を保ったまま……ということは、つまりこちらに唇を突き出した状態であるということ……。

 

 そこで僕は一つの案を思いついた。上手くいくかは分からないけど、僕は無性にその案を実行に移したくなった。ちょっとした悪戯心だ。

 

 そう思い、僕はその場に少し屈み、リレイナ様と目線の高さを同じにする。そのまま間髪入れず、僕は彼女の突き出された唇にそっと口づけを落とした。

 

「んっ……♡って、え、ええっ!?」

 

 顔を放すと、そこには赤面状態のリレイナ様がいた。まぁ、そういう反応になるよね。苦笑いを浮かべながら、僕は次の講堂に移る。

 

「ふええっ!?」

 

 彼女の身体に腕を回し、そのまま抱き寄せる。突然のことに驚きの声を上げた彼女の小さなその身体は、緊張で再びガチガチになってしまっていた。

 

 逆効果……だったかもな。目の前の少女があまりに可愛すぎた所為で、思わず突っ走ってしまった。

 

 うーん、どうにかしてここから軌道修正を図りたい……。

 

「……おまじないですよ。リレイナ様がちゃんと言いたいことを言えるようにするための、ね」

 

 咄嗟のことだったが、案外それっぽいことは言えたのではないだろうか。もちろん、今の行動にはおまじない要素など一切ないけど。

 

「おまじない……ですか……」

 

「さあ、言ってみて」

 

 彼女の特徴的な長い耳に向かってそう囁く。一瞬、リレイナ様の身体がぶるりと震えたような気がしたが、今は気にしない。

 

「は、はい、ありがとう……ございます……、ナギサさん……。勇気、出ました。それじゃあ、言いますね」

 

 それから一呼吸置き、彼女が再び口を開いた。

 

「ナギサさん、ワタシは貴方のことが……好きです」

 

 彼女から発せられたその言葉は、何を言われるか知っていたはずの僕の心臓を急激に高鳴らせた。それくらい、彼女の言葉には破壊力があった。

 

 自然と彼女を抱きしめる僕の腕に力が籠る。腕の中の彼女の身体は、先ほどの緊張時とは違ってとても柔らかかった。

 

「その……、ワタシも……貴方の傍に……いさせてください……」

 

「はい、もちろんです」

 

 僕がそう言葉を返すと、今度はどちらからともなく互いの唇を寄せ、ちゅっと軽く触れ合わせた。とても甘いキスだった。

 

「やりましたね、リレイナ様」

 

「安心です。まぁ、ナギサさんが断るとは最初から思っていませんでしたけど」

 

「ですね。でも、緊張はしてしまいますね。あっ、お水飲みます?」

 

「はい、いただきます」

 

 それまでこちらの様子を静かに伺っていたアルフィ様とユーアさんが、僕たちの様子を見てほっと胸を撫で下ろしていた。

 

 それから、ユーアさんが持ってきたコップに口をつけ、緊張で乾いた喉に水を流し込んでいた。

 

 そんな光景を眺めながら、僕はふっと小さな笑みを溢す。なんだかんだ僕も緊張してしまっていたようだ。彼女たちの姿を見て、僕も身体に入っていた無駄な力を抜くことができた。

 

「リレイナ様は喉乾いていませんか?」

 

 そして、現在僕の腕の中で幸せそうな吐息を漏らしているリレイナ様に対し、僕はそう尋ねた。

 

「あっ、え、えっと、そ、そうですね、ちょっと乾いてるかもです」

 

「と思いましたので、持ってきました。はい、どうぞ」

 

 リレイナ様からの返事を予想して先回りしていたユーアさんが、いつの間にか水の入ったコップを手に持ってすぐ傍までやってきていた。

 

「あ、ありがとうございます、ユーアさん」

 

 リレイナ様はそう言ってコップを受け取ろうとする。しかし、今は僕に抱きしめられた状態で、彼女は身動きが取れない。

 

 そのことに気づいたリレイナ様が、申し訳なさと名残惜しさの混じった瞳でこちらをチラリと一瞥してきた。

 

「そ、その……、ナギサさん……」

 

「ん?どうかなさいましたか?」

 

 またも悪戯心が芽生えてしまった僕は、少しだけ口元を緩ませながら彼女の耳元でそっとそう囁く。

 

「ひぅ……♡は、放してもらわないと……、お水……飲めなくて……。だ、だから……あの……その……」

 

「僕、今はリレイナ様と離れたくないです」

 

「んんぅ……♡」

 

 そう言ってやると、リレイナ様は顔を一気に紅潮させる。そして、彼女の口からは喜色に満ちた吐息がこぼれ出る。可愛いなぁ。

 

「だから、僕が飲ませてあげます」

 

「えっ……?ふ、ふええっ!?」

 

 そう言って、僕はリレイナ様を抱きしめたまま立ち上がり、そしてそのまま寝台に腰を下ろした。

 

 その際、リレイナ様の身体をくるりと反転させ、僕に背を向けた状態にさせた。即ち、現在は背面座位の状態である。

 

 僕は彼女の細いけど柔らかなお腹に腕を回し、彼女が膝から滑り落ちないようぎゅっと力を込めてその身体を支える。

 

「ユーアさん、コップ貸して」

 

「はいはーい。どうぞ」

 

 それから僕はユーアさんからコップを受け取る。受け取ったコップは思っていた以上に冷えていた。

 

「それではリレイナ様、口開けてください」

 

「えっ、あっ、は、はい……。あ、あーん……」

 

 僕の言葉に応じ、リレイナ様は素直に口を開いてくれた。その口元にコップを近づけ、口腔内へと冷たい水をゆっくり流し込んでいった。

 

 リレイナ様は恥ずかしそうにしながらも、口腔内に入ってきた水をこくこくと喉を鳴らして飲み下していく。そんな彼女の嚥下音と喉元の小さな動きが妙に色っぽく見えてしまった。

 

「……美味しかったです、お水。ごちそうさまでした。ユーアさん、ナギサさん、ありがとうございます」

 

 やがてコップの中身を全て飲み干したリレイナ様が穏やかな笑みを浮かべながらそんな感謝の言葉を述べてくる。

 

 その頬は未だに赤く、そのためか彼女の纏う色っぽさは消えていなかった。かなりドキドキさせられてしまっている。

 

 太腿の上に乗る彼女のお尻の感触が、僕の興奮を一層強く掻き立ててくる。疲れているはずなのに、それを感じさせないくらい僕の男性器は怒張し、寝間着のズボンとさらにその上のリレイナ様のお尻を突き上げている。

 

「な、なんかお尻に硬いものが……」

 

 お尻の下の硬い存在にリレイナ様が気づき、そんな疑問の声を漏らす。

 

「すみません、リレイナ様。僕、興奮してきちゃいました」

 

「興奮……?ふえ……、ふええええっ!?こ、こここ、これって……もしかして……ナギサさんの……おちん……♡♡はうぅ……♡」

 

「はい」

 

 僕は股間の怒張を彼女の尻肉にぐにぐにと強く押し当てながら、耳元で一言そう呟く。興奮に任せた行動だったが、どうやらリレイナ様は嫌がってはいないようだ。

 

 というか、あれ……?何故か今は気持ち的にも元気だ。リレイナ様達がこの部屋にやってくるまでは、疲れの所為であまり気分が乗っていなかったはずなのに、今は心身ともに性行為に前向きになっている。

 

 どうしてだろう……?と思いながら辺りをきょろきょろと見回していると、不意にアルフィ様と目が合った。彼女はサムズアップしていた。

 

 あ、なるほど。知らないうちに僕はどうやらアルフィ様に回復魔法を施されていたようだ。抜かりない御嬢様だった。



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御嬢様たちによる性のお勉強

「えと……えと……」

 

 お尻に当たる硬い感触に、リレイナ様はか細く困惑の声を漏らしている。その反応があまりに可愛くて、僕の一物はズボンの中でぴくぴくと跳ね躍ってしまう。

 

 体力が回復した途端にここまで性に貪欲になってしまうなんて……、この数日でかなりエッチな性格になってしまったようだ。

 

「わわっ、い、今ぴくって……う、動いた……」

 

「すみません、つい。お嫌でしたか?」

 

 僕の一物の反応に驚いた様子を見せたリレイナ様。僕は今になって彼女の合意を得ていないことを思い出し、肩口から彼女の顔を覗き込みそう尋ねる。

 

「い、いえ、嫌じゃ……ないです……。そ、その、男の人は興奮すると……その……か、硬くしちゃうっていう話……、ほ、本当だったんですね……」

 

 今にも煙が噴き出しそうなほど顔を真っ赤にさせながら、リレイナ様が俯きがちにそう返してくる。

 

「男のこれ、触れたのは初めてですか?」

 

「は、はい……」

 

 僕が聞けば、彼女は恥ずかしそうにではあるが、素直に頷いてくれる。

 

「で、でも、どうして興奮すると硬くなるんですか……?ここって、男の人がその……お、おしっこを出すためのところ……なんですよね……?初めて友達から教えてもらった時からずっと不思議に思ってたんです……」

 

 リレイナ様がそんな疑問を口にする。"おしっこを出すためのところ"という部分に、アルフィ様とユーアさんの二人は少し引っかかったようで、二人して小首をかしげていた。

 

「お、お二人は知っていますか?」

 

 二人の反応を見て何か知っているのだろうと思ったのか、リレイナ様がアルフィ様とユーアさんに話を振る。

 

「えっとですね、まず男性器……おちんちんについてなのですが、おしっこをする以外にも役割があるんです。まぁ、端的に言うと子孫繁栄ですね。えっと、リレイナさん、セックスというのがどういうものかはご存じですか?」

 

「愛し合っている男の人と女の人が裸で抱き合う……とだけ……。で、でも、それと子孫繁栄にどのような関係が……?」

 

「あー……、なるほど……」

 

 リレイナ様からの返答を聞いて、全てを理解したように頷くアルフィ様。その隣では、ユーアさんも納得したような表情を浮かべていた。

 

「えっ、も、もしかして違いましたか……?」

 

 二人の反応を見て、不安げに首をかしげるリレイナ様。どうやらリレイナ様は、アルフィ様やユーアさんに比べて性に関する知識が著しく乏しいようだ。

 

 現在、彼女は10歳だ。元の世界の常識で考えるとまだ性知識を必要としない年齢だろう。

 

 だが、ここは前の世界とは異なった常識により成り立っている異世界だ。元の世界の物差しで測ることはできない。これまでにも散々思い知らされたことだ。

 

 だから性知識についても、この世界では10歳程度の少年少女が知っていても何らおかしくないのだろう。現にアルフィ様やユーアさんは当然のように知っていたわけだし。

 

 そう考えると、リレイナ様は同年代の他の人たちに比べて性知識の習得が遅れているのかもしれない。

 

 ……そんな娘に今から性行為を迫るのは酷だな。

 

「違う……というわけではないのですが……、リレイナ様の説明だとあまりに不十分ですね」

 

「そ、そうなんですか!?」

 

「えっとですね、セックスというのはですね、女性器の奥部に男性の子種……精子を送り込む行為のことなんですよ。運が良ければ、その精子が卵管にて卵子と結びつき、その結果として子供が生まれます。要するに、セックスそのものが子孫を反映させるための行為、というわけですね」

 

 僕が少しだけ冷静になった頭でリレイナ様との行為について改めて考えなおしている間に、僕を除いた3人はそのまま話を続ける。というか、いつの間にかアルフィ様とユーアさんによる性行為講座になっていた。

 

 それにしても、ユーアさん詳しすぎ……。12歳の少女が性行為が何なのかを詳細に説明する光景はあまりにシュールだ。

 

「ふ、ふえぇ……。そ、そうだったんですか……、知らなかった……。ですが、精子はどうやって中に入れるんですか?抱き合うだけで勝手に入るものなんですか?」

 

「抱き合うだけじゃ無理ですね。確かにセックスは、外から見れば裸の男女が抱き合っているように見えますが、実際は男性器と女性器……柔らかく言うと、おちんちんとおまんこですね。それを結合させているんですよ。なので、抱き合うという説明は間違いというわけではないのですが、大事な点が抜け落ちてしまっているんです」

 

「な、なるほど」

 

 二人の説明に興味津々といった面持ちで頷くリレイナ様。そんな3人のやり取りを、僕は静かに見守ることにした。

 

「ということは、精子はお、おちん……男性器から出ると考えれば良いですか?」

 

「そういうことです。だから、おしっこを出すだけの場所じゃないということです」

 

「べ、勉強になります。そ、それで、男の人はどうして興奮すると男性器を硬くするのですか?」

 

 ここで最初の疑問に戻るように、改めてリレイナ様がそう疑問を口にした。

 

「うーん、それについては私も詳しくは分からないんですよね。ユーアさんは何かご存じですか?」

 

 だが、流石のアルフィ様でも、性行為に関する知識はあっても、身体の生理的メカニズムについては把握しきれていないようだった。ま、まぁ、そこまでくるとかなり専門的な話になってくるからなぁ。分からないのも無理ないと思う。

 

「すみません、わたしにも……。けど、性的興奮してお、おちんちん……を大っきくすることで、セックスによる女性への種付けをより確実に行うことができるから……なんじゃないかなぁと。男性の性的興奮は、本能的な女性への種付け欲と同一でしょうし」

 

「なるほど、相手への種付け欲が性的興奮を生み、それによって瞬時に身体をセックスにより適した状態にさせている、ということですか」

 

「あ、あくまでわたしの意見ですからね?」

 

 でも、興奮による勃起というのは、元を辿ればそういうことなのではないだろうか?今でこそ自律神経がどうの……だとか、血流がどうの……などと理論的に説明されているが、結局は交尾をする準備なのではないだろうか。

 

 彼女たちの話を聞きながら、僕はユーアさんの頭の回転力に感心してしまっていた。これでまだ12歳なのだから、尚のことだろう。

 

「でも、強ち間違いじゃないんじゃないですか?女性が興奮することで膣内を分泌液で濡らすのも、セックスを円滑に行うための準備と考えることができますし」

 

「た、確かに」

 

「ですから、もっと自信持って良いと思いますよ、私は」

 

 謙遜するユーアさんに対し、そんなことないと彼女の意見を推すアルフィ様。僕は心の中で"そうだそうだ!"と同調しておく。

 

「そう……でしょうか」

 

「ええ。謙遜する必要はないですよ」

 

「わ、分かりました」

 

 アルフィ様の勢いに負け、ユーアさんはこくりと一つ頷いた。

 

「あ、あの……、今の説明が正しいとすると……、さ、さっきナギサさんはその……ワ、ワタシに……子供を産ませたい……ってことに……」

 

 一方、二人のやり取りをしばらく黙って聞いていたリレイナ様は、不意にこちらへ視線を投げ、そんなことを言ってきた。その表情は緊張で強張っていた。

 

 好きとは言ってくれたけど、子供を産むことまでは考えていなかったのだろう。その強張った表情は、無理矢理種付けされてしまうかもという恐怖からくるものだと僕は理解した。のだが……、

 

「ワ、ワタシ……、まだその……子供を産む準備はできてないんです……。ご、ごめんなさい……」

 

「えっ、そ、そっち!?」

 

 彼女の発言に、僕は思わずそんなツッコミを入れてしまった。けど、内心では怖がられていなかったことに安堵していた。

 

「だ、だから、その……セ、セックスはできないんです……」

 

 申し訳なさそうにそう言うリレイナ様。先ほどのアルフィ様とユーアさんの説明を聞いたことで、セックスは子供を作るためだけの行為と考えるようになったらしい。まぁ、それならそれで健全なお付き合いができるし、僕としては何の文句も……

 

「それは違いますよ、リレイナさん」

 

 と思っていたのだが、アルフィ様が待ったをかける。

 

「セックスとは、定義上は確かに子作りのための行為ですが、それだけじゃないんですよ、リレイナさん」

 

「そ、そうなのですか!?で、では、他にどのような目的が……?」

 

「それはですね……」

 

 リレイナ様からの質問に、アルフィ様はもったいぶったように一呼吸置く。

 

「お互いの愛を確かめ合い、そして気持ち良くなること!それこそが、恋人同士のセックスというものなのです!」

 

「き、気持ち良くなる……ですか?セックスとは気持ち良いものなのですか?」

 

「はい、とても。というか、先ほどご自身でオナニーされてましたよね?」

 

「オ、オナニー……?」

 

 アルフィ様に指摘されるが、オナニーというものが何なのか理解できていないリレイナ様ははて?と首をかしげることしかできないようだ。

 

 そうか、リレイナ様は先ほど自室で行っていた行為がどういうものなのかご存じでなかったようだ。衝動に任せ、本能的に身体を弄っていたのかな。

 

「先ほど貴女がお部屋でやっていたこと、あれがオナニーです。ほら、気持ち良かったでしょう?えっちな声、いっぱい出してましたものね」

 

「あ、あれがオナニー……。って、わああっ!!ナ、ナギサさんの前でそのことは言わないでくださいよぉ!!」

 

 ふむふむと頷くリレイナ様だったが、次の瞬間わたわたと慌てだす。自分の部屋でやっていたことが恥ずかしいことだというのは理解しているようだ。

 

「あ、やっぱり恥ずかしいんですね」

 

「あ、当たり前です……。だ、だって、あんな変な声出して……。そ、それに、お漏らししたみたいにお股が濡れて……、あっ……」

 

 気が動転したリレイナ様は、さらに恥ずかしいことを口走ってしまう。そんなリレイナ様に、アルフィ様はまるで追い打ちでもするかのように、

 

「ちなみに、ナギサさんは既にこのこと知ってますよ?リレイナ様の声、ナギサさんも扉の前で聞いてましたし。それに、お風呂場の水溜りはナギサさんも見ていますからね」

 

「ふえっ、ふええええっ!?」

 

「ナギサさん、興奮してました。ね?ナギサさん♪」

 

「え、ええ、まぁ……」

 

 そこで僕に話を振るのは止めてほしかった。というか、興奮していたことに気づかれていたんだ……。

 

「ど、どうしてあんなことを……」

 

「リレイナ様は興奮していたんです。無意識的にナギサさんの子供を求めて。お股の奥、とてもうずうずしたでしょう?」

 

「は、はい……」

 

「んで、我慢できずに触ってしまったんですよね?そして、それが気持ち良くて止められなくなってしまった……」

 

「はい……、そうです……」

 

 なんだろう、在任が尋問を受けているようにしか見えない。

 

「それは当然のことなんですよ、リレイナ様。好きな男性のことを強く思うと、本能的にその人のおちんちんを求めてうずうずしてきちゃうんです。けど、その場にその人のおちんちんがないからセックスができない。だから、せめてその疼きを解消するために、自身の手で身体の特に敏感なところを弄って大きな刺激を求めようとしてしまうんです。私だって、ナギサさんがいない状況でナギサさんのことをいっぱい考えたらそうなってしまいます。実は、今日学園で何回かオナニーしてました、私」

 

「そ、そういうもの……なのですね。……って、が、学園でされていたんですか!?そんな素振りは見せていなかったような……」

 

「一人きりになれるタイミングでしてましたからね。流石に、私も他の人にオナニーを見せびらかす趣味はありませんので。恥ずかしい姿を見せるのはナギサさんにだけです♡」

 

 アルフィ様の衝撃発言に、リレイナ様はもちろんのこと、ユーアさんも僕も思わず驚きで目を見開いてしまう。アルフィ様……、相も変わらずいろいろとぶっ飛んだ御嬢様だ……。

 

「まぁそういうわけで、オナニーをすることは普通のことです。他人に見られるのは確かに恥ずかしいことですけど……」

 

 僕たちの反応に動じた様子もなく、アルフィ様は淡々と話を続けた。

 

「それで、本題に戻りますが、セックスは人にもよりますが、オナニーと同等かそれ以上の気持ち良さを得ることができます。最初はとても痛いですが」

 

「い、痛いんですか……!?」

 

「はい、残念ながら。ですが、慣れれば痛みはなくなります。ちなみに私はもう痛みはありません」

 

「わ、わたしは今日が初めてだったので……♡♡まだ慣れてはいないです……。で、でも、エッチというのはセックスが全てじゃありませんからね。わたしは他の方法でナギサさんに気持ち良くしてもらっちゃいました、え、えへへ……♡♡」

 

 アルフィ様に続いてユーアさんがそうカミングアウトする。頬を赤らめ恥じらいながらのその言葉はずるい。最後のはにかみ笑顔とか、危うく鼻血を噴き出してしまうところだったぞ。

 

「エ、エッチ……ですか?」

 

「はい、好きな人とのえっちな行為全般のことですね。セックスはそのうちの一つであり、メインディッシュ的な立ち位置です」

 

「なるほど。ほ、他にはどういったものが……」

 

「うーん、それは実際に体験してもらうのが一番でしょうかね」

 

「そ、そうかもですね」

 

 顔を合わせて頷き合ったアルフィ様とユーアさんが、同時に僕の方へと視線を投げてきた。これはつまり、彼女たちからGOサインが出された、ということだろう。

 

 い、良いのかなぁ……?などと思いつつも、僕の一物ははち切れんばかりに膨らんでしまっていた。ま、まぁ別に、前戯だけで止めれば良いだけの話だしね。

 

 そう思い、僕はとうとうリレイナ様の華奢な身体に手を伸ばすのだった。



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たくさんの気持ち良いをリレイナ様に

「ひぅ……♡」

 

 まずは首筋を手で撫でる。すると、リレイナ様はいきなりの刺激に驚きの混じった可愛らしい声を漏らす。

 

 その反応に満足した僕は、彼女の肩や脇腹、おへその周り、太腿を順々に撫でていく。その度にリレイナ様ははぁはぁと荒い息を繰り返していた。

 

「どうですか?気持ち良いですか?リレイナ様」

 

 僕は彼女の気分をさらに高ぶらせるため、彼女の耳元でそっとそう囁く。ついでにその特徴的な形状の耳に息を吹きかけてみたりもしてみる。

 

「あぅぅ……♡それ……ダメ……ですぅ……♡んうぅ……♡」

 

 リレイナ様はもじもじと身体を揺らしながらか細い声でそんなことを言ってくる。よしよし、良い感じだ。

 

 僕はそのまま耳元や首筋に息を当てながら、それまで細くて白い脚に滑らせていた手を彼女のまだ未発達な胸部へと移動させた。

 

 最初は小振りな膨らみの輪郭をなぞるように指先で撫で、彼女の反応を確かめてみる。……うん、先ほどよりもさらに息が上がっている。手に触れる彼女の肌がしっとりと潤い始めているのも確認できた。

 

「はぁ……♡はぁ……♡見ているだけでちょっと息が上がってしまいますね……、んふぅ……♡んふぅ……♡」

 

「わ、わたしも……興奮してきちゃいました……♡んうぅ……♡はぁぁ……♡我慢……できそうもありません……」

 

「そ、そうですね……、あぁ……♡はうぅ……♡い、いざとなったら……お互い慰め合いましょう……、ユーアさん……」

 

「は、はい……」

 

 僕たちの正面にはアルフィ様とユーアさんがしゃがみ込んでおり、息を荒げながらそんな会話を繰り広げていた。

 

 しかし、彼女たちの発情色に満ちた4つの視線がこちらから外れることはなく、その様子はまるで餌を待つペットのようだった。

 

 あー、これは多分、後でいろいろ強請られそうだなぁ。体力持つかなぁ……。でもまぁ、彼女たちのために頑張らないと。

 

 などと考えつつ、僕は休むことなくリレイナ様のすべすべとした肌へと指を滑らせ続けていた。

 

 指で彼女の胸部を撫でていると、やがて彼女の身体がピクリピクリと小さく震え始めた。大分性感も高まってきているようだ。

 

「んあぁ……♡む、むずむずしますぅ……♡」

 

「何処がむずむずしますか?」

 

「そ、それは……その……、こ、こことか……♡あ、あと……ここも……♡」

 

 僕が尋ねると、リレイナ様は恥ずかしがりながらむずむずする部位を指で指し示す。最初に指で指されたのは乳首だったのだが、次に指が向かった場所に僕は少しだけ驚いてしまう。

 

「み、耳……ですか?」

 

「は、はい……、耳……むずむずします……♡んうぅ……♡そ、その……触って……いただけないでしょうか……?はぁ……♡んはぁ……♡あうぅ……♡」

 

 上目づかいでそんな懇願されたら断れるわけがない。僕は静かに頷くと、そっと彼女の長い耳へと手を伸ばした。

 

「あぁぁ……♡はうあぁ……♡優しくにぎにぎされるの……気持ち良いですぅ……♡あああ……♡んひぃぃ……♡」

 

 思った以上の反応が得られたことに、僕は内心驚いていた。エルフの耳って、もしかして相当敏感な場所だったりするのか?

 

 何となく、アルフィ様やユーアさんの乳首に触れた時の反応に似ている気がする。エルフにとって耳とは、それくらいデリケートな感覚器官ということなのだろう。やはり人とは違うんだなぁ。非常に興味深い。

 

「うあぁ……♡も、もっと……もっといっぱい撫でてほしい……ですぅ……♡い、いっぱい触ってぇ……♡あああぁ……♡ふあああぁ……♡」

 

「そ、そういうことなら……んっ……」

 

 リレイナ様はさらなる刺激を耳に求めているようだったので、僕はそっと彼女の耳の先にキスを落とした。

 

「んはあああ……♡ひうぅぅぅ……♡それ……すごいぃ……♡」

 

 おおぅ……、すごい反応だ……。こんなに感じてくれるのは、男としてはやはり嬉しいものだな。

 

 そんなことを考えながら、僕は引き続き彼女の耳にキスをしたり舌で舐めたりしながら、両手でかのじょの胸部の小振りな二つの膨らみをやわやわと優しく揉む。

 

「ふわあああ……♡ひああああ……♡こ、こんなの……初めてぇ……♡んあああ……♡はぁぁぁ……♡さ、さっき自分で触った時よりずっと気持ち良いですぅ……♡ひうううぅ……♡あああぁぅぅ……♡」

 

「ふふっ、それは何よりです……、んっ……ちゅぱっ……」

 

 リレイナ様はプルプルと小刻みに震え続ける身体を完全に僕に預け、襲い来る快感に身を委ねていた。艶めかしい嬌声が室内に響く。

 

 そんな彼女の可愛らしい反応に、彼女のお尻の下の僕の一物もビクビクと震えてしまっていた。彼女の重みとお尻の柔らかさがズボン越しに伝わってきてしまい、それが微かな刺激となって僕の身体を甘く痺れさせる。

 

 しかし、今はリレイナ様を気持ち良くすることに集中しなければ。最悪、後で何かしらの方法で抜いてもらおうかな……。

 

「ひあああああんっ……♡♡」

 

 すると突然、リレイナ様は先ほどまでよりも一際トーンの高い嬌声を漏らした。何事かと思い彼女の身体を確認してみると、僕の手が彼女の乳首に触れていた。

 

 一応触れないようにしていたのだが、意識を別のところに持っていかれてしまっていたために誤って触れてしまったようだ。

 

 でも、まぁそろそろ良いか。そう思った僕は、そのままリレイナ様の突起した、しかしまだ小さな桜色の蕾を指で捏ね繰り回し始める。

 

「ふああああっ……♡ひにああああっ……♡♡な、なんか……くる……♡きちゃうぅ……♡頭……真っ白になって……お、おかしくなりそうですぅ……♡うああああっ……♡はあああああっ……♡ダメ……♡ダメ……♡」

 

 乳首を弄り始めた瞬間、先ほどよりもずっと良い反応を見せてくれるリレイナ様。耳と乳首の同時攻めで、彼女は既に絶頂寸前のようだった。

 

 ここにさらに股間への刺激を加えたらどうなるだろうか?不意にそんな悪戯心が芽生えた僕は、両乳首に這わせていたうち片方の手をそこから放し、そのまま肌の上を滑らせるようにして彼女の無毛の女性器へと移した。

 

 そこは既にぐっしょりと濡れており、これまでにリレイナ様がどれだけ感じていたのかを如実に物語っていた。

 

「ここ……すごく濡れていますね……、はむっ……んんっ……」

 

「はあああああっ……♡♡そこは……あっ……♡ああああっ……♡ダメダメダメダメぇぇぇぇぇぇっ……♡♡身体……ふわふわして……どっか飛んでいっちゃいますぅぅぅっ……♡ああっ……♡いやあああああっ……♡♡」

 

 縦に走る一本筋の上端に指が少し触れただけなのに、リレイナ様は身体をビクビクと大きく震わせ叫び声のような嬌声を上げていた。

 

「リ、リレイナさん……とても気持ち良さそうです……あぁ……私……もうダメかも……♡はぁ……♡はぁ……♡はぁ……♡」

 

「ア、アルフィ様……!?う、うわぁ……す、すごいびしょびしょ……ですね……♡はぁ……♡はぁ……♡んふぅ……♡」

 

 正面の二人も、とうとう我慢できなくなったのかお互いの身体に触れ始めた。女の子同士というのも……良いな。

 

 おっと、またまた意識が逸れかけた。

 

「んちゅっ……じゅぽっ……、どうですか?3箇所同時刺激は」

 

 耳をしゃぶりながら、余裕のなさそうなリレイナ様にそう問いかけてみる。全身を震わせ喘ぐその姿がもはや答えなのだが、言葉によって得られる快感もあるだろうと思ったのだ。

 

「あああああっ……♡す、すごすぎますよぉぉ……♡こんなのぉぉ……♡ナギサさんっ……♡ナギサさんっ……♡ナギサさぁぁぁぁんっ……♡♡」

 

「ふふっ、可愛い。それに、気持ち良い証拠がいっぱい溢れてます……、暖かくて……ぬるぬるしてますね……、ふふふ……エッチです」

 

「やああああっ……♡い、言っちゃ嫌ですぅぅ……♡はわあああああっ……♡♡」

 

 乳首を摘み、耳を甘噛みし、そして潤滑液で潤った一本筋を指頭で撫で上げる。リレイナ様は既にそれらによって生み出される快楽の虜になってしまっているようだった。そして……

 

「もう……ダメぇぇ……♡きちゃうぅぅぅぅぅっ……♡♡♡」

 

 そんな叫び声を上げると同時に、リレイナ様はぶるぶると身体を大きく揺さぶりとうとう絶頂を迎えた。

 

 口の端からは唾液がぽたぽたと溢れ出し、また彼女の秘裂からは淫蜜がどろどろとすごい勢いで流れ出ていた。

 

 絶頂により見せた彼女の蕩けたような表情は、幼い少女が浮かべるにはふさわしくないほどに淫靡だった。

 

 そんな彼女の表情を見た僕の心には、膝の上の彼女をもっともっとよがらせたいという欲が芽生えてしまっていた。

 

 未だ放心状態のリレイナ様に構わず、僕は先ほどよりも少し強めの力で硬く腫れた彼女の幼い乳首を抓り上げる。

 

 それから思いきり耳にしゃぶりつき、舌を精いっぱい使って根源から先までねっとりと舐め上げていく。時々耳の穴を突いたりもしてみる。

 

 当然これだけではない。空いたもう片方の手で彼女の陰筋をすりすりと速いペースで擦る。ぬちゃぬちゃという卑猥な水音をわざと大きく響かせながら。

 

「ふええええええっ……♡♡んああああああっ……♡♡さ、さっきよりも……激しいですよぉぉぉぉ……♡♡うああああああっ……♡♡んうううううううっ……♡♡」

 

 絶頂の余韻に浸る間もなく、リレイナ様は再び叫び声のような嬌声を上げ、僕の膝の上で為す術なく悶え始める。

 

 ぴくんっ、ぴくんっと断続的に身体を痙攣させる様子から、彼女が小さな絶頂を何度も繰り返しているのだと分かる。

 

 アルフィ様もユーアさんもそうだったが、リレイナ様も例に漏れずかなり感じやすい人のようだ。初めてのエッチでここまでイけるものなのか……?それも幼い身体で……である。

 

 もしかしたら僕のテクニックが……?なんて言うつもりはない。僕だって昨日までは童貞だったのだ。エッチに対する自信なんて有りやしない。

 

 やはり、明確な快楽の声を上げてくれる目の前の彼女たちの身体の感度がすぎるいのだろう。そう自分を納得させる。

 

「ひうううううぅぅっ……♡♡ひゃうううううううぅぅっ……♡♡頭……おかしくなっちゃいますぅぅぅぅぅっ……♡♡あうんっ……♡あうんっ……♡あうあうあうぅぅぅぅっ……♡♡あっ……♡あっあっあっあっあっ……♡♡」

 

 そんな間にも、リレイナ様は身体の痙攣を止めることもできず、ただ襲い来る快楽に委ねるままに淫靡な嬌声を上げ続け、陰裂から粘性の強い淫蜜を滴らせていた。

 

 そんな彼女の様子にさらに気を高ぶらせた僕は、指に籠める力をもっと強くさせる。すると……

 

「あっ……」

 

「ああああああああああっ……♡♡♡」

 

 勢い余って、僕の指がちゅぽっという音を立ててリレイナ様の陰裂の奥に入り込んでしまった。しかも、その指は偶然にも彼女の膣穴に挿さってしまい、その瞬間リレイナ様は2度目の大きなオーガズムに至るのだった。

 

 僕の人差し指を咥え込む彼女の膣口はとても狭く、男性器を挿入するにはあまりに小さすぎるように思える。ここに僕のモノを挿れると考えただけで少し鳥肌が立ってしまう。

 

 というか、アルフィ様やユーアさんのも同じくらい狭かったはずなのに、本当よく挿ったよなぁ……。ユーアさんに関してはリレイナ様以上に小さかったし。

 

 ……そう考えると、案外大丈夫だったりするのかな?うーん、どちらにせよ試してみないことには分からないな。もっとも、試す機会が何時になるか……なのだが。

 

「リレイナ様……気持ち良さそう……♡んんん……♡はぁぅ……♡私も……ナギサさんにおまんこの中弄ってほしくなっちゃいます……♡ああっ……♡そこ……良いです……ユーアさん……♡んあっ……♡んあっ……♡」

 

「わ、わたしも……はぁ……♡はぁ……♡うぅんぅ……♡うにゃあっ……♡ア、アルフィ様……そこはダメ……♡ああっ……♡ううっ……♡」

 

 僕の指が挿ったリレイナ様の女性器に、アルフィ様とユーアさんの熱い視線が注がれている。そんな彼女たちは、いつの間にかお互いの四肢を絡ませ幼い身体を擦りつけ合っていた。まるで我慢に耐えるかのようなその姿に、思わず僕は二人に構ってあげたいという気持ちに苛まれてしまう。

 

 でも、今僕が相手にしているのはリレイナ様だ。それも、リレイナ様にとってはこれが初めての性行為になるのだ。できれば一対一で向き合ってあげたい。

 

 「わたしの時はそうじゃなかったじゃん……!!」というユーアさんのツッコミが脳内で再生されるが、ユーアさんの場合は分泌液が出ないという問題があったから仕方なかったんだ……と言い訳させてほしい。

 

 ……いや、それではまるでユーアさんの所為にしているようなものだな。言い訳は止めよう。……後でユーアさんには償いをしないとな。

 

 そう決意し、僕はリレイナ様に意識を戻す。先ほどの膣内への指挿入の刺激で2度目の大きな絶頂に達したリレイナ様は、肩で息をしながら快楽の余韻に浸っていた。

 

 しかし、その瞳の奥には未だ興奮の色を灯し続けており、もっと続けてほしいと僕に訴えかけてきているように思えた。

 

 ならば遠慮なく……と、僕はリレイナ様の膣に挿入させた指先に随意的振戦を加え、彼女に新たな刺激を与え始める。

 

「うあっ……♡あああっ……♡ま、すごい……♡すごいよぉ……♡ぶるぶるって震えてるの……気持ち良い……♡んやあっ……♡あああぅ……♡えっちな声……止められないですぅぅ……♡んひいぃぃぃぃっ……♡♡んはあああっ……♡♡」

 

 自身の敏感なところに新たに与えられた振動刺激に、リレイナ様はそれまでぐったりと弛緩させていた身体を再び強張らせ、僕の膝の上で淫猥に乱れていく。

 

 僕は彼女の淫らな反応をもっと見たくて、膣内に挿れたままの人差し指を前後に動かし、膣への出し挿れを始める。もちろん、指の振戦はそのままに。

 

 僕の指が彼女の膣内を出入りする度に、ぐちゅり……ぐちゅり……という卑猥な水音が響く。その音を聞けば聞くほど僕の中の興奮のパラメータの上昇は加速し、それに比例するように指の動きもどんどん速くなっていく。

 

「は、激しい……♡♡んううううううっ……♡♡はううううううっ……♡♡ナギサさんの指……すごすぎます……♡♡ああっ……♡ダメ……♡♡また……うあああああああっ……♡♡ひうううううううううっ……♡♡」

 

「そろそろ限界のようですね……。それなら……」

 

 背中を仰け反らせ天井に顔を向けながら絶叫を上げるリレイナ様の様子を見て彼女の絶頂が近いことを悟った僕は、彼女がより最高のオーガズムに達せられるようにと空いた親指を使って陰裂上端にある皮に包まれた小さな陰核をボタンの用量でポチっと押し込む。

 

「っっ……!?ふわあああああああっ……♡♡な、何これぇぇぇっ……♡♡ワ、ワタシ……こんな気持ち良いの……知らないですぅぅぅぅぅっ……♡♡」

 

「ここは陰核って言って、女性の特に敏感なところ……と言われています。今は皮を被ってしまっていますが、こうやって皮を剥いて……直接触ってあげると……」

 

「ふえええええええっ……♡♡び、びりびり……すごいぃぃぃぃぃぃっ……♡♡こんなの……耐えられませんよぉぉぉぉぉぉっ……♡♡」

 

「ね?すごいでしょう?それじゃあ、このままイカせてあげますからね、リレイナ様。んんっ……じゅぷっ……じゅるるっ……」

 

 陰核に触れた時の反応を確認した僕は、ラストスパートをかけるように耳、乳首、膣、陰核に同時に刺激を与え、リレイナ様を3度目の絶頂へと導く。

 

 リレイナ様は僕にされるがまま、幼さを残しつつも艶めか視差に満ちたよがり声を口から溢れさせていた。

 

 ぐちゅぐちゅというハイペースな水音と彼女の艶やかな嬌声とが共鳴し、聴神経を通じて僕の脳内をぐちゃぐちゃに溶かしにきていた。

 

 それと同時に、ピクリピクリという彼女の身体の痙攣が間接的に僕の一物に刺激を与えてきており、射精欲がゆるゆると、しかし着実に迫ってきてしまっていた。

 

 けど、こんなところで暴発してしまうのはあまりにあっけない。そう思い、僕は下腹部に渾身の力を籠めて襲い来る射精欲に抗う姿勢を見せる。

 

 その所為で身体の他の部位にも余計に力が入ってしまう。その結果……

 

「ひああっ……♡い、いきなりそんなの……も、もう……耐え切れないぃぃぃぃぃっ……♡♡んひいいいいいいいいいっっ……♡♡♡」

 

 僕は想定以上の力で彼女の乳首を摘み、さらに陰核を強く擦ってしまった。それにより、リレイナ様はそれまで蓄積させていた性感を一気に爆発させるように大きく背を反らし、両脚をピンと伸ばして本日3度目の強烈な絶頂へと至るのだった。

 

 そんな彼女の膣口からは大量の愛液がこぽこぽと音を立てて溢れ出し、下に合った僕のズボン越しの太腿をぐっしょりと濡らしていた。



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ひと時の安息。エルフ・猫娘・変態令嬢によるふぇらちお協定?

「あうぅ……あうぅ……ま、まだ身体びりびりしてますぅ……♡」

 

 しばらくの間、襲い来る快感に身体を跳ねさせていたリレイナ様だったが、ようやく多少落ち着くことができたようで、全身を弛緩させて僕の胸にしなだれかかってきた。とはいえ、まだ少し余韻は残っているようだが……。

 

 僕はそんな彼女の小さな肩を片手でそっと抱き留め、空いたもう片方の手を彼女のさらさらとした綺麗なエメラルドグリーンの毛髪へと滑らせる。撫でる度にミントのようなさわやかな香りがふんわりと漂い、僕の心を落ち着かせてくれる。

 

 もっとも、僕のいきり勃った一物は抑えきれないのだけど。未だにリレイナ様のお尻の下でビクビクと射精欲を滾らせている。

 

 要するに、落ち着いたというのはほんのちょっとであって、結局まだ興奮しっ放しというわけである。そりゃ、目の前であんな淫らに悶える少女の姿を見せられれば、欲情するのも無理ないでしょう。

 

「ふふっ、とても気持ち良さそうにされていましたね、リレイナ様」

 

 しかし、今はひとまず平常心だ。回数は少ないけど、僕は一応経験者なのだ。初めてこういうことをするリレイナ様をリードしてあげなくては。それに、興奮丸出しじゃ大人として情けないしね。

 

 そんな考えのもと、僕は余裕な態度を取り繕いリレイナ様にそう囁きかける。……僕だってたまには格好つけたいのさ。

 

「は、恥ずかしいです……♡でも……、はい。とっても気持ち良かったです……♡何度も頭が真っ白になっちゃって……、お空にふわふわ浮かんだような感覚になっちゃってました……♡」

 

「その感覚のことを絶頂って言うんですよ、リレイナ様。柔らかく言うと、イクって言います」

 

「イク……ですか……。な、なるほど……。あの不思議な感覚は、絶頂というものだったのですね」

 

 身体を愛撫している最中から何となく察してはいたが、リレイナ様は絶頂というものすら知らなかったようだ。エッチの時に何度か味わった意識が飛んでしまうような感覚……、それが絶頂というものであると理解し、彼女はふむふむと何度か頷いていた。

 

 エッチに関する新たな知識を得て、少し嬉しそうなのがちょっと可愛い。好奇心のままにいろんな知識を吸収していく子供って、何だかほほえましいよね。覚えた内容は……まぁあれだけど……。

 

「ワタシ、ナギサさんに何度もイかされちゃったんですね……、ふふっ♡……つ、使い方合ってます?」

 

 リレイナ様の姿にほっこりしていると、不意に彼女が少し潤んだ瞳で僕の顔を覗き込み、ポツリとそう呟いてきた。

 

 その仕草でのその言葉は破壊力がありすぎる……。破壊力はあったんだけど……、最後の最後に自信なさ気になってしまうのはやっぱりリレイナ様らしいな。ドキッとさせられたけど、結局ほっこりしてしまう僕だった。

 

「はい、合ってますよ」

 

 僕はそう一言返事をすると、一呼吸おいてから再び口を開いた。

 

「まだまだ拙い愛撫でしたが、リレイナ様に気持ち良くなってもらえて安心しました。いっぱいイッてるリレイナ様のお姿を見ることができて良かったです」

 

「は、はうぅ……♡み、耳元でそんな恥ずかしいこと言っちゃ嫌ですよ……♡ナギサさん、さっきから時々意地悪です……♡でも……、ありがとうございます、ワタシのことも受け入れてくれて……♡あ、あと、気持ち良くしてくれて……♡」

 

 そう言って、リレイナ様はお腹に回された僕の手にそっと彼女の小さな手を重ねてきた。その顔は真っ赤だったけれど、眩しいほどの笑みで満ちていた。

 

「僕も、ありがとうございます。リレイナ様の気持ちを聞けて嬉しかった。こんな僕だけど、これからもよろしくお願いしますね」

 

「はい、ナギサさん♡……あ、あの、その……」

 

 僕の言葉にこくんと頷いたリレイナ様は、もじもじと恥ずかしそうにしながら、僕の顔と僕の手に重なった自身の手に視線を行き来させていた。そんな彼女の瞳が何かを欲しがっているように見えたのは、単なる僕。の思い過ごしかもしれない

 

 けど、僕の身体は迷うことなく動いていた。丁度僕の顔に視線が向けられたところで、僕は彼女の片頬にそっと手を添え、その瞳をじっと見据える。その間、僕は一言も言葉を発さない。

 

 リレイナ様は一瞬だけ驚いたような表情を浮かべたが、すぐにこちらの意図を理解してくれたのか、ゆっくりと瞼を閉じた。その表情は、何処となく安心しているように見えた。

 

 彼女が目を閉じたことを確認すると、僕は自身の顔を彼女の顔に近づけていく。そして、その小さな唇に自身の唇を押しあてた。

 

「んっ……♡んんっ……♡」

 

 それからたっぷり20秒ほど、僕たちは唇を重ね合わせ続けていた。彼女の柔らかな唇の感触と、ミントのようなさわやかな香りをじっくりと堪能する。

 

 そうして、僕たちはゆっくりと顔を放す。瞼を上げ、改めて僕の姿を視界に捉えたリレイナ様は、満足げに熱っぽい吐息を漏らしていた。

 

 どうやら、今の僕の行動は正解だったようだ。そのことにほっとした僕は、ふっと小さな笑みを溢した。

 

「キス、気持ち良いですね♡癖になっちゃいそうです……♡」

 

「そう言ってもらえるなんて光栄です」

 

「またしたくなったら、ナギサさんにお強請りしちゃうかも♡」

 

「あはは、その時は喜んでお受けいたします」

 

「う、嬉しいです……♡」

 

 しばらく、僕たちはそんなこそばゆいやり取りを交わしていた。完全な二人きりの空間を作ってしまっていた。

 

「「んううううう~~~~~~っっ♡♡♡」

 

「わっ……!?」

 

「ひゃっ……!?」

 

 だから、突然聞こえてきた絶叫に、僕もリレイナ様も身体をびくりと跳ねさせ、驚きの声を上げてしまった。

 

 それから、二人してその絶叫が聞こえてきた方へと視線を移す。すると、そこには床の上でもつれ合うアルフィ様とユーアさんの姿があった。二人とも、ぴくぴくと身体を痙攣させている。

 

 ……そういえば、二人の存在をすっかり忘れてしまっていた。リレイナ様との行為に夢中になりすぎて。

 

「あ、あの、お二人とも……、だ、大丈夫……ですか……?」

 

 不安げな面持ちで、リレイナ様が二人にそう問いかける。その声に反応するように、アルフィ様とユーアさんはほぼ同時にこちらに顔を向けてきた。その瞳は発情色に染まりきり、頬や顎は涙と唾液でぐちゃぐちゃになってしまっていた。

 

「わわっ……、知らない間にすごいことに……」

 

 二人の顔を見たリレイナ様は、少し引き気味にそうポツリと溢す。僕は苦笑いを抑えきれなかった。

 

 二人には相当我慢させてしまっていたのだろう。それを思うと心苦しくもあった。……複数の女の子を相手にするって、改めてかなり難しいことなのだと実感させられる。

 

「が、我慢できなくて……、つい……♡」

 

「そ、そうしたら、想像以上に熱が入ってしまい……、気づいたらこんなことに……♡あ、あはは……、お恥ずかしいところをお見せしてしまいました……」

 

 顔に着いた涙や唾液を手で拭いながら、二人は恥ずかしそうに視線をそらしそう言った。あんな顔がぐちゃぐちゃになってしまうほど盛り上がっていたのに、どうして気づかなかったのだろう……?

 

 それほどまでに、僕はリレイナ様に夢中になってしまっていたということ……なのか。

 

「あっ、そ、そうですよね……。ワタシ、ナギサさんを独り占めしちゃって……」

 

「あ、い、いえ、それは別に良いんですよ、リレイナさん。私たちは既に一度ナギサさんとしてますから」

 

「そ、そうですよ。リレイナ様が責任を感じる必要はありませんよ」

 

「で、でも……」

 

 申し訳なさそうな表情を浮かべるリレイナ様に、アルフィ様とユーアさんは悪いのは自分たちだと言い張る。

 

「そ、それなら、ここからはお二人も一緒に……しませんか?」

 

「えっ!?で、でも……」

 

「リレイナ様はまだ本番までされていないのでは……?」

 

「えっと、本番というのは……セックスのことで良いんですよね?た、確かに、まだそこまではしてませんよ。けど、急いでする必要もないんじゃないかなって思うんです」

 

 遠慮がちな二人に対し、リレイナ様ははっきりとそう言いきってみせた。

 

「そ、それに、今すぐ本番までしてしまったら、この時間が終わってしまうような気がして……。で、できれば、もっともっとナギサさんとゆっくり触れ合っていたいんです♡そこにお二人もいれば、きっとこの時間がワタシにとっての最高の思い出になると思うんです。だから、一緒にしてくれませんか?アルフィさん、ユーアさん」

 

「リレイナさん……、はい、もちろんです」

 

「そんな風に言ってもらえるなんて嬉しいです。わ、わたしも喜んで」

 

 リレイナ様の説得に、アルフィ様とユーアさんは満面の笑みで頷いた。そんな二人の反応に、リレイナ様も嬉しそうにはにかみ笑顔を浮かべた。

 

「ありがとうございます、リレイナ様」

 

「ワ、ワタシはただ自分の願望を言っただけですよ……。お、お礼だなんて……照れちゃいます……、え、えへへ……♡」

 

 僕が感謝の言葉を継げると、リレイナ様は照れくさそうに自身の頬に手を当ててしまう。そんな姿も可愛らしい。

 

 ともかく、彼女のおかげで少し崩れかけた雰囲気が元に戻った。……ちょっと不甲斐ないな。本来は僕がどうにかしないといけなかったんだけど。

 

「というわけだから、ナギサさん。ここからはわたしたちも参戦するね♡」

 

「みんなで一緒に気持ち良くなりましょうね♡」

 

「た、楽しみです♡」

 

 まぁでも、今はとりあえず彼女たちとの行為に集中しよう。名誉挽回は……また何処かで。

 

    *

 

「え、えっと……、これで良いんですか……?」

 

 あれから、僕はアルフィ様の指示のもと、服を全部脱がされてしまった。そうして今はベッドの上に仰向けに寝そべらされている。

 

「ええ、完璧です。はぁぁ……♡何時見ても立派です……、ナギサさんのおちんちん……♡♡あぁ……♡見ているだけで身体が疼いてきます……♡♡」

 

「ナギサさん、すっごく元気になってる……♡♡む、胸のドキドキ……止まらなくなっちゃってる……♡」

 

「こ、これが……お、おちん……ちん……♡こ、こんなに大っきかったんですね……♡♡お尻に触れていた時は分からなかった……」

 

 僕の股間に注がれる6つの熱い視線がもどかしい。思わず、一物をぴくぴくと震わせてしまう。

 

「わ、わわっ……!?い、今……、ぴくって動いた……、す、すごい……♡なんか別の生き物みたいですね……」

 

「そうですね、はぁ……♡はぁ……♡私たちを一瞬にしてえっちな気分にさせてしまう、とってもえっちな生き物です……♡」

 

「た、確かに……、ナギサさんのおちんちんは、見てると何だか身体が熱くなってきちゃいます……♡で、でも、これがナギサさん以外の男の人のと考えると……、怖いだけです……。お、おちんちんとは不思議ですね……」

 

「ええ、まったくです。好きな人のおちんちんは、どうしてこうも私たちの気分を高まらせてしまうのでしょうね……♡」

 

 リレイナ様とアルフィ様が何やら一物について語り合っている。そんな二人の荒い息が股間に吹きかかって、何とも言えない甘い刺激が身体中に走る。

 

 先ほどのリレイナ様との行為の際に彼女のお尻で緩く刺激を受け続けていたこともあって、僕の一物の先は既にカウパー腺液でぬるぬるに濡れてしまっていた。

 

「ナギサさんのお顔、切なそう……♡可愛い……♡」

 

「ユ、ユーアさん……、男は可愛いって言われても嬉しくないんだよ……?」

 

「にゃはは、ごめんなさーい♡それで……アルフィ様、今回はどうするんですか?」

 

 僕の返事を軽く受け流したユーアさんが、アルフィ様に指示を煽ぐ。すると、アルフィ様は良くぞ聞いてくれたと言わんばかりにその小さな胸を張った。

 

「今回はですね……、前々から気になっていたことをしてみようと思います」

 

 アルフィ様のその言葉に、ユーアさんとリレイナ様が同時に小首をかしげる。僕も不安半分、期待半分といった気持ちでアルフィ様の次の言葉を待った。

 

「フェラチオって、分かります?」

 

「ふぇらちお……?」

 

 アルフィ様の口から発せられたその単語に、まずリレイナ様が何それ……?というような反応を見せる。

 

 なお、斯くいう僕もよくは分からない。名前だけなら聞いたことはあったけど、その内容までは知らない。

 

「え、えっと、フェラチオ……ですか?な、なるほど……、確かに……わたしもちょっと気になるかも……♡」

 

 だが、ユーアさんは知っているようだった。アルフィ様からの提案を受け、その表情に溢れんばかりの期待の色を滲ませている。

 

「ユーアさんなら理解してくれると信じてました。っとと、リレイナさんに簡単に説明するとですね、フェラチオというのはお口でのご奉仕のことです」

 

「お、お口でのご奉仕……?え、えっと……、も、もしかして……その……お、おちんちんに……ですか……?」

 

「ご名答。居間から3人のお口を使って、ナギサさんのおちんちんを気持ち良くしてあげようと思ったんですよ♡」

 

「く、口でっ!?」

 

 アルフィ様の説明に、僕は思わずそんな疑問の声を上げてしまった。ま、まさかフェラチオというのがそんな内容だったとは……。

 

 というか、男性器に口をつけるなんて汚くない?よくそんな行為が成立するな……。世の女性たちは嫌がらないのか……?

 

「あら、ナギサさんもご存じなかったんですか?」

 

「え、ええ、性知識には乏しくて……。そ、それにしても……、口でなんて汚くありません?」

 

 思ったことをそのまま問いかける。すると……、

 

「「ナギサさんは汚くなんてありませんっ(ないよっ)!!」」

 

 アルフィ様とユーアさんから同時にそんな否定が返ってきた。二人の剣幕に気圧され、僕はそれ以上何も言えなかった。

 

「好きな人が相手だったら何だってできちゃう。それが女というものです♡」

 

「そういうわけだからさ、わたしたちにお口でご奉仕させてくれないかな?」

 

「ワ、ワタシも、精いっぱい頑張ります、ふぇらちお♡」

 

 続けざまに3人から注がれる懇願するような視線を受け、僕は無言で首を勢いよく盾に振った。そうすることしかできなかった。

 

「良かった。それじゃあ二人とも、場所はどうします?お腹側に一人、脚側に二人……という配置にしようと思っているのですが」

 

「わたしは何処でも構いませんよ」

 

「え、えっと、ワ、ワタシも……何処でも平気です」

 

 アルフィ様からの問いかけに対し、ユーアさんもリレイナ様も特に希望無しと回答。そんな二人の様子に、アルフィ様は少し困り顔を浮かべていた。

 

「あらら……。そういうことなら、ローテーション制にしましょうか。ナギサさんが射精したら交代、という形で」

 

「そうですね。それが良いかと」

 

 って、ちょっと待って……。それってつまり、彼女たちが1周するためには僕は少なくとも3回は射精しないといけない……ということか?

 

 さっきの浴室での行為で、僕は既に5回も射精してしまっている。アルフィ様に回復魔法をかけてもらいはしたけれども、そんなにたくさん射精できる気がしない……。

 

「それじゃあまずは……、私とリレイナさんの二人がこっちで、ユーアさんがお腹側……で良いですか?」

 

「はい、大丈夫です」

 

「ワタシも平気です」

 

「では、みんなでナギサさんを気持ち良くしてあげましょう」

 

「「おー!!」」

 

 僕が目を白黒させている間に、彼女たちは最初の配置に着こうと動き始めてしまっていた。

 

 こ、こうなったら、もうやるっきゃない。男を見せる時だ、望月渚沙。射精限度なんて知ったことか!僕は彼女たちを満足させるんだ。

 

「じゃあナギサさん、ここ失礼するね♡」

 

 僕がそんな決意を胸に抱いていると、ユーアさんがそう言いながら、脚を僕の頭に向けた状態で僕の上半身に自身の小柄な身体を重ねてきた

 

 途端、僕の目の前にはユーアさんの小さくて丸いお尻と、その下のまだ未成熟な無毛の女性器がドアップで広がる。彼女の一本筋の奥からは、とろとろと透明な愛液が溢れ出し、大陰唇全体を濡らしていた。

 

 僕は、そんな淫猥な光景に堪らず唾を呑み込んだ。

 

「ナギサさん、始めますね♡」

 

 目の前の絶景に見とれていると、アルフィ様からそう声をかけられた。と同時に、一物の先端にぬるりとした感触が伝わってきた。



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小さなお口は侮れない……

「っっ……!!」

 

 声にならない、ほとんど吐息だけのうめきが僕の口からこぼれ出た。同時に、閃光により目くらましを喰らったかのように、目の前は白一色に埋め尽くされる。

 

 それほどの衝撃が僕の身体に走ったのだ。アルフィ様に一物の先端を軽く一舐めされただけだというのに。

 

「わっ……!?今ぴくってなりましたね……♡たった一度ペロッと舐めただけなのに……♡もしかして、そんなに気持ち良かったのですか?」

 

 僕の大きな反応を目の当たりにしたアルフィ様が、嬉しさと興味を隠し切れない様子でそう尋ねてくる。ユーアさんの身体に阻まれ彼女の表情を覗き見ることは叶わないが、きっと彼女の顔色も声色同様に喜色に満ちていることだろう。

 

「は、はい……、と……ても……」

 

 アルフィ様に答えようとして吐き出したその言葉は、僕自身の想像を上回るほどに震えを帯びていた。僕は思っていたよりもずっと余裕を失ってしまっていたようだ。ほんの一瞬の刺激だけで……。

 

 その事実に、僕は動揺を隠せなかった。フェラチオという行為の凄まじさをその身で味わい、これまでの行為の中で芽生え始めていた自信が脅かされるような感覚に苛まれる。

 

 ペニスを女性の粘膜に触れさせるという行為は、既にセックスで経験済みだった。だから、口という、器官は違えど同じ粘膜であることには変わりない……そんな場所に同じようにペニスを触れさせたところで、セックスと同じくらい……もしくはそれ以下の刺激しか得られないだろうと高をくくっていた。

 

 だが、現実は異なった。少しは性行為にも慣れてきたかな……と過信していた僕の余裕を全て奪い去るくらいには、口内粘膜による刺激は僕に強烈な快感を与えてきたのだ。これが驚かずにいられるだろうか?

 

 性行為は奥が深い……。そんなことすら知らずに、浅瀬に足を突っ込んだ段階で強くなった気でいた自分が恥ずかしい……。

 

 僕が大切な人たちを見つけた瞬間に、今まで女性が苦手だからと目を逸らし続けていた性の経験というものが突然牙を剥いて襲い掛かってきた……、そんな瞬間を垣間見た気がした。

 

 ……これからは真面目に勉強しよう。このままではまた恥ずかしい姿をさらすだけだ。というか、知識不足の状態で彼女たちに向き合うことが単純に申し訳ない。

 

 そう決意した僕は、しかし今は何もできることはないと半ば諦め状態で、恥も捨てて彼女たちに全てを委ねることにした。

 

「つ、続けて……いただけますか……?」

 

「分かりました。それでは……んっ……♡ちゅっ……♡」

 

「じゃあわたしもいくね……♡んんっ……♡んちゅるっ……♡」

 

「え、えっと……えっと……、ど、何処を舐めれば……。あっ、な、ならワタシはここを……はんっ……♡んんぅ……♡んんっ……♡」

 

 僕が促すと、アルフィ様とユーアさんの二人が真っ先に僕の一物へと舌を伸ばした。そんな二人に一瞬遅れて、リレイナ様も唇を寄せる。

 

 途端、一物の異なる3箇所に同時にぬるりとした感触が伝わり、それが甘い刺激となって身体から脳に至るまでを隈なく侵し始めるのだ。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 上がる息を止められない。むしろ、脳に流れ込む甘い感覚を意識すればするほどその呼吸は激しさを増していくばかりだ。

 

 全身に汗がじんわりと滲み、ありとあらゆる立毛筋が収縮するのが、ぞわりという感覚で何となく分かる。

 

 フェラチオはまだ始まったばかりだというのに、僕は既に幾度もの行為を終えた後のように満身創痍の状態だった。

 

「ふわぁ……♡すごいですね……♡んっ……♡れろっ……♡舐めるだけで……ちゅぱっ……♡こんなにすごい反応をしてくれるなんて……♡」

 

「ふふっ、可愛い……♡リードしてくれるナギサさんは優しくて格好良かったけど、される側のナギサさんもやっぱり好きだなぁ……♡んはむっ……♡ちゅるっ……♡ちゅぷっ……♡こんな姿見せられちゃったら……わたし……ナギサさんのことむぎゅってしたくなっちゃう……♡」

 

「ユーアさん、顔がすごくうっとりしてますね……んじゅるっ……♡じゅぷっ……♡ちゅるんっ……♡まぁ、気持ちは分かりますけど……♡はぁぁぁぁ……♡ナギサさんの透明汁……、苦くてしょっぱくて……美味しいです……♡癖になる味です……♡」

 

 リレイナ様が玉袋を、ユーアさんがカリの段差を、そしてアルフィ様が鈴口をそれぞれ唇や舌で弄びながら、各々思い思いの感想を溢す。発声時の振動すら、今の僕には刺激が強い。

 

 そんな強刺激の前じゃ、"可愛い"というユーアさんの言葉に反論することすらできない。み、認めたわけじゃないんだぞ……。

 

 何か……、何か別の形で彼女の言葉に反論できないだろうか……?ほとんど快楽に埋め尽くされた頭で考える。

 

 と、その時、僕の視界に透明な雫が映る。その雫はぽたりと僕の首元へ落ちた。出所は……、眼前に迫るユーアさんのお尻……、正確にはその下の女唇の裂け目からだ。

 

 僕の身体を跨いだことで覗けた僅かなピンク色は、浴室での苦難が嘘のように潤った透明な薄い膜を何重にも張り、それでもなお許容しきれない水分を雫として雌口の外へと溢れさせていた。

 

 その雫は、ユーアさんが身動きしたことで先ほどの者とは異なった気道を描き、今度は僕の下顎へと降り立つ。

 

 下あごに熱感を覚えながら、なおも僕は彼女の小さな雌の象徴へと視線を注ぎ続ける。まるで何かを欲しがるように涎を垂らす陰口が僕を引き付けて放さない。

 

 ……そうか。これはつまり……、僕に反撃しろと訴えかけてきているということか……。やられっ放しの僕じゃないと証明するための一手がそこにあるような気がした。

 

「んっ……♡んっ……♡はぁ……♡ナギサさん成分が身体に染みわたりますねぇ……♡これだけで軽くイッてしまいそうですぅ……♡はぁ……♡はぁ……♡んちゅっ……♡ちゅぱっ……♡じゅるるっ……♡」

 

「アルフィ様だけずるいです……んっ……♡れろんっ……♡わ、わたしだって……ナ、ナギサさんのエッチなお汁……舐めたいです……♡はんっ……♡んちゅっ……♡」

 

「もちろん良いですよ。んはぁ……♡んふぅ……♡なら……私は別のところを……っと♡はむっ……♡れろ……♡れろん……♡ちゅっ……♡ちゅるんっ……♡」

 

 僕がアイディアを得たとほぼ同時に、今まで以上の鋭い刺激が僕を襲った。アルフィ様が舌を移した場所がどうやら敏感な部位だったらしい。

 

 その刺激によって吐き出しそうになる情けない声を隠すように、僕は咄嗟に目の前の未成熟な雌唇へとしゃぶりついた。齎された快感に促されてではあったが、アイディアを実行に移すことができた。

 

「ひゃっ……♡ああっ……♡んんんんんぅっ……♡そ、そんにゃ……いきにゃりぃぃ……♡んひゅっ……♡んきゅうううううっ……♡ダメぇ……ダメだってばぁぁ……♡これじゃ……ご奉仕に集中できにゃくにゃっちゃうからぁ……♡あんっ……♡あひぃ……♡んにゃああ……♡」

 

 筋の開き目から舌尖を割り込ませ、ゆっくりと上下に動かせば、粘膜を擦られた刺激にユーアさんが熱のこもったうめき声を上げる。

 

 彼女の言う通り、快楽に耐えることに必死になって僕の一物から口を放した状態になっていた。それでも、他二人から与えられる電撃のような刺激は止むことがない。ユーアさんの陰口を舐めながらも、僕の身体は絶え間なく震えてしまっていた。

 

「ふふっ……、ナギサさんならそうしてくれると信じてましたよ……♡んっ……♡んふぅ……♡ローテーションが楽しみです……♡はむっ……♡んむぅ……♡んん……♡飴玉みたいで……舐めるの楽しいですね……、これ……♡」

 

「わわっ……!?こ、こんな間近にユーアさんの気持ち良さそうなお顔が……ちゅっ……♡ちゅぷっ……♡こ、こんなにえっちなんですね……♡ワ、ワタシもさっき……こんな顔してたのでしょうか……?考えたら恥ずかしい……」

 

「恥ずかしいことなんてないですよ、リレイナさん……んちゅっ……♡ちゅるっ……♡それだけナギサさんに気持ち良くしてもらっているということなのですから、恥ずかしがらず……いえ、むしろ堂々と声を上げてその気持ち良さに浸るのが正解……というものです」

 

「……アルフィさんって、時々豪快ですよね……」

 

「そうですか?っとと、ほらほら、口が止まってますよ。ユーアさんが機能停止に陥っている今、ナギサさんを気持ち良くしてあげられるのは私たち二人だけです。ささ、どんどんペロペロちゅっちゅしちゃいましょう……♡はむっ……♡ちゅるっ……♡じゅるるるるっ……♡」

 

「す、すごい……、アルフィさん……大胆……。で、でも……、そうですね……。ワタシも頑張ります……んんっ……♡んはんっ……♡ちゅっ……♡ずずっ……♡」

 

 身動きの取れないユーアさんの分まで頑張ろうと、アルフィ様とリレイナ様の二人の舌遣いがより一層激しさを増す。

 

 先ほどまでの一点集中での攻めは、今や一物の根本から先端……そして玉袋に至るまでを満遍なく舐め尽くすスタイルへと変貌を遂げていた。

 

「舐めるだけではいけませんね……はむんっ……♡じゅぽっ……♡」

 

 それだけに治まらず、ついには一物の先端がアルフィ様の口に咥えられてしまう。流石に彼女の小さな口では僕の亀頭全てを咥え込むことはできていないようだったが、それでも亀頭の広い範囲が温かい粘膜に包み込まれる感覚は、控え目に言って最高だった。

 

 僕はユーアさんの股間により強く顔面を押し当て自身の口を塞いだ。そして、激しく……しかし優しい力加減を心掛けて、ぬちゃぬちゃとユーアさんの陰口内を懸命に嘗め回す。自然、滴る淫蜜が舌を伝って僕の口腔内へ流れ込んでくる。

 

 独特な苦みと塩味、さらには甘味の混じったその淫蜜を喉奥へと流し込めば、僕の腹の奥底から熱が湧き上がるのを感じる。その熱が原動力となり、僕はさらに激しくユーアさんの淫らな雌穴を求め舌に神経を集中させた。

 

「ああああっ……♡そんにゃ激しくされたらぁぁぁ……♡ふにゃああああああっ……♡♡ひにゃあああああっ……♡♡にゃぎささんの舌……えっちだよぉぉぉ……♡♡んんんんんんんっ……♡♡んううううううううっ……♡♡」

 

「んんっ……♡んじゅるっ……♡ぷはぁ……♡ふふっ……ユーアさん、本当に気持ち良さそう……♡羨ましいですね……♡そんなお顔とろとろにされちゃって……♡はむっ……♡ちゅずっ……♡じゅぷっ……♡じゅぽっ……♡」

 

「んむっ……♡はむんっ……♡ちゅるっ……♡ちゅぴっ……♡こんなになっちゃうなんて……はぁ……♡んはぁ……♡ワ、ワタシもこんな風になっちゃうのかな……な?なんかドキドキしてきました……♡ちゅぱっ……♡ちゅるっ……♡れろんっ……♡」

 

「んひぃぃぃ……♡♡ア、アルフィ様もリレイナ様も……や、やられたら分かりますよ……♡♡ああああんっ……♡♡うにゃあああんっ……♡♡こ、これ……すごすぎぃぃ……♡♡え、えっちな声……抑えられにゃいぃぃぃ……♡♡」

 

 会話もままならないくらい、ユーアさんは僕の舌によって齎される刺激に悶え喘いでいる。そんなユーアさんの姿を羨望に満ちた声色で冷やかすアルフィ様とリレイナ様の二人は、やり取りもないのにまるで示し合わせたかのような抜群のコンビネーションで絶妙な刺激を僕に与えてくる。

 

 特に、裏側の筋張った部分と鈴口とを同時に刺激されると、それだけで意識が飛ばされそうになる。

 

 ここまで何とか耐えてきたが、流石にもう限界かもしれない……。初めて経験する刺激に、そんな長い時間抗い続けられるはずもないのだ……。

 

 そう思ったが最後、これまで無理矢理かけ続けていたリミッターは外れ、休息に性感が射精欲となって下腹部を熱していく。

 

「んんんっ……♡んふぅ……♡ナギサさんのおちんちん……さっきよりも大きくなりましたね……♡ということは……そろそろということですね……♡リレイナさん、おちんちんの先っぽは任せました」

 

「んんっ……♡は、はい……、任されました……!で、では……はむんっ……♡じゅるっ……♡れろ……♡ちゅぷぷぷ……♡」

 

「私はこっちを……♡はむっ……♡あむっ……♡ちゅっ……♡んむぅ……♡」

 

 僕に限界が訪れたことをペニスの変化から読み取ったアルフィ様とリレイナ様が、お互いに呼吸を合わせてラストスパートをかけてくる。

 

 リレイナ様は口を窄めストローの用量で尿道を吸い上げ、同時に唾液に満ちた舌を使って鈴口の周りをちろちろとくすぐってくる。

 

 アルフィ様はその小さな唇で茎部を根本から先端にかけて甘噛みしてくる。それはまるで、僕の尿道の奥に溜まり込んだ精液を絞り出すかのような動きに感じられた。

 

 二人係で精液が引っ張られ、僕は思わず固く目を閉じ目の前のユーアさんの腰に両手でしがみつく。そのまま舌を滅茶苦茶に動かし、ひくひくと蠢く膣口や尿道口をやや乱暴に突きまくる。

 

 大口を開けていた所為で、僕の下唇は皮越しに彼女のぷっくりと膨らんだ豆粒大の陰核を擦っていたが、むしろ好都合だとばかりに僕は膣に舌を出し挿れしながら顔を上下に揺さぶり始める。

 

「あひゅぅぅっ……♡♡あっ……♡あっ……♡あっ……♡あっ……♡うあああっ……♡♡あんっ……♡♡んいいいいいいいっ……♡♡にゃうぅぅぅぅぅっ……♡♡」

 

 ペニスをしゃぶる二人の動きに合わせて苛烈になっていく雌陰攻めに、ユーアさんはもはや満身創痍だ。舌に触れる襞の微細な蠢きが快楽への喜びを体現しているのだと、僕は直感的に理解する。

 

 このまま……ユーアさんと一緒に果てたい……。そう思った僕は、最後の一撃というようにユーアさんの小さくすぼまった膣口へ唇を押しあて、そのまま中にある淫蜜を全て飲み干す勢いで吸引する。

 

 と同時に、腰に入っていた力を解き、射精を拒んでいた最後のロックを外す。その瞬間、ギリギリまで貯め込まれ濃縮された精液が尿道を猛スピードで駆け上がるのを感じた。

 

 そして……

 

「ひゃっ……♡♡」

 

「うあっ……♡♡」

 

 爆発するような感覚の後、ペニスの先から大量の精液がびゅるびゅると噴き上がり、勢いに驚いたアルフィ様とリレイナ様の身体を上から下まで満遍なく汚していく。

 

「っっっっ~~~~~~~……………!!!」

 

「ひあっ……♡♡ひにゃあああああああっっ……♡♡♡」

 

 一方、刺激を受けていたサイドはというと、僕の声にならない絶叫とユーアさんの一際大きな嬌声とが重なり合っていた。

 

 吐精の感覚に酔いしれながら、眼前の雌穴からこぽこぽと吐き出される多量の愛液を顔中に浴びる僕。どうやら、同時に絶頂に達することができたようだ。充足感が胸中に湧き出す。

 

 ……それにしても、吐精の時間が長い。ビクビクと拍動を繰り返すペニスから、未だ断続的に精液が溢れているのが見ずとも分かる。

 

 一応、今日の射精回数はこれで合計6回だ。しかし、その射精量は果たして本当に6回目なのか……?と疑いたくなる。

 

「すごい……♡こんなにたくさん……♡」

 

「こ、これが……精子……なんですね……♡白くて……ねばねばしてて……なんかえっちな臭い……♡」

 

「はむっ……♡んん……♡んん……♡はぁ……美味しい……♡今日だけで何回も射精しているはずなのに、量も濃さも変わらないなんて……、流石はナギサさんですね……♡れろ……♡んちゅっ……♡ちゅぱっ……♡はぁぁ……幸せぇ……♡」

 

「えっ!?舐めてる……!?な、なら、ワタシも……はむっ……♡ちゅっ……♡んっ……♡んぅぅ……これ……喉に絡みつく……。けど……嫌じゃないかも……♡苦いのに……美味しい……♡んじゅるっ……♡ちゅぷっ……♡」

 

 吐き出された精液を夢中で舐め始めるアルフィ様とリレイナ様。本来ならば口に入れるべきものではないはずなのに、美味しいと言われるとどうしてか僕の中の支配欲がくすぐられてしまう。

 

 浴室でも同じようなことが有ったが、やはり僕の心は喜びで満ちてしまっている。これがいけないことなのか……、その判断すら僕にはつけられない。

 

 そんな風に、止め処なく湧き上がってくる嬉しいという感情に困惑していると、僕の両掌ががくがくという震えを感知した。

 

 僕の手は今、ユーアさんの腰に添えられている。つまり、その震えは必然的にユーアさんのもの、ということになる。

「はぁぁぁ……♡♡はぁぁぁ……♡♡んふぅぅぅ……♡♡」

 

 直後、ユーアさんから荒い息遣いも聞こえてきた。大丈夫かと声をかけるべく、彼女の股座から顔を放した……次の瞬間、

 

「むぐっ……」

 

 動かした僕の顔を追うように、ユーアさんの腰が上から落ちてきた。結果、僕は再び彼女の性器に顔を埋めることとなる。

 

 いや、腰だけではない。彼女の身体全身が僕の上半身の上にぐったりと預けられていた。絶頂により全身の力が緩んでしまったようだ。大分激しくしてしまったかな……、反省……。

 

 し、しかし、この状態を保持するのはきついな……。ユーアさんが重い……というわけではない。そうではなく、射精によりある程度戻ってきた僕の理性が再び壊れそうなのだ……。

 

 その理由は、ユーアさんから香る匂いだ。現在、僕はユーアさんの性器で口が塞がれ、鼻での呼吸を余儀なくされている。

 

 しかし、僕の鼻もまたユーアさんの殿裂に埋もれている。気道が確保できるくらいの僅かな隙間はあるのだが、ほぼ密着状態では息を吸うたびに空気と一緒に彼女の匂いまで思いきり取り込まれてしまう。

 

 ミルクのような甘い香りと汗ばみ蒸れた雌の香りとが混じり合い、僕の脳髄をぐらぐらと揺るがしてくる。急激にエッチな気分が頂点レベルまで回復してしまう。

 

 当然、ペニスへと血流は戻り、復活の咆哮を上げる勢いでむくりと鎌首を擡げた。あっという間に、硬く張りつめた勃起ペニスの再誕である。

 

「おお、また大っきくなりましたね♪」

 

「げ、元気です……♡素敵……♡」

 

 ペニスの復活の一部始終を見守っていたアルフィ様とリレイナ様が、ほぼ同時にそんな歓喜の声を上げた。彼女たちもまた、同じようにまだまだやる気いっぱいのようだ。

 

 アルフィ様はともかく、リレイナ様もかなり積極的だ。先ほどまでは緊張していたが、どうやらこの空気感にも慣れてきたようだな。

 

「あっ、まだ先っぽに精子残ってますね♡」

 

「本当ですね♡なら、吸い取ってあげないと♡」

 

「ワ、ワタシもやりたいです♡」

 

「では、交互に……んちゅぅ……♡じゅるるっ……♡」

 

 そう言うと、二人は協力して尿道に残った精液を吸い上げ始めた。僕は心地良い幸福感と甘く蕩けるような快楽に壊されそうになる僅かな理性を何とか繋ぎ止めながら、心を落ち着かせるように未だ痙攣を続けるユーアさんの背中をそっと撫でていた。



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猫耳メイドの本気?

「ぷはぁ……、こんなものでしょうか?」

 

「多分、粗方吸いきれたと思います」

 

「でも、またぴくぴくし始めてしまいましたね♡」

 

「それでこそナギサさんです♡まだまだ余裕たっぷりのようですね♡」

 

 尿道に残った精液を綺麗に吸い終え、アルフィ様とリレイナ様の二人は僕の一物から一度口を放し、興奮冷めやらぬといった様子で熱い吐息を漏らしている。

 

 その吐息が未だ硬く腫れあがったままの一物に吹きかかり、ぞくぞくとした感覚を僕に伝えてきていた。

 

 一度射精を済ませた一物はただでさえ敏感なのに、口による後処理と彼女たちから断続的に吹きかけられる吐息によって先ほど以上の速さで射精欲が高められつつあった。

 

 この状態でもう一度しゃぶられたりしたら、恐らく一瞬で果ててしまう。情けない限りだが、そんな自信があった。

 

「ぴくぴくしてるの、とっても可愛いです♡」

 

「あっ、もしかして私たちの息で気持ち良くなってます?そういえば、お風呂場でもユーアさんに息ふーふーって吹きかけられて気持ち良さそうにしてましたものね」

 

「そうなんですか?え、えっと、こんな感じ……?ふー……♡ふー……♡わあ、本当に反応してる……♡さっきよりもぴくぴくが大きくなりました♡」

 

「それに、おちんちんの先から透明なお汁がまた溢れてきました♡ナギサさんはやっぱりえっちな人です……♡そういうところも大好きですけど♡ふー……♡ふー……♡えへへ♡」

 

 彼女たちの吐息で僕が感じてしまっていることをあっさりと見抜いた二人は、悪戯をするように僕の一物を吐息だけで攻め立ててきた。

 

 要所要所がその温かな吐息にくすぐられ、僕の一物は素直な生理反応を見せる。再度分泌され先端部から染み出してきたカウパーに、二人の熱視線が注がれていることは想像に難くない。

 

「本当、さっきまで疲労困憊だったのが嘘のようです」

 

 興奮に支配されそうな頭が、アルフィ様のその一言で少しだけ冷静になる。彼女の発言に、僕はどうしても違和感を覚えずにはいられなかった。

 

「んむっ……んぐっ……もがっ……」

 

 けど、彼女に何かを問いかけようとしても、残念ながら僕の口は塞がってしまっており、意味のある言葉を紡ぐことはできない。

 

「んっ……♡んんぅ……♡にゃうぅ……♡」

 

 無理に言葉を発しようとしてしまった所為で、僕の口に密着したままのユーアさんの幼い陰部に刺激を与えてしまったらしい。僕の下腹部に顔を伏せ気絶していたユーアさんが、不意にそんな呻き声を上げた。

 

 同時に、僕の口腔内に先ほどの行為で分泌された彼女の愛液の残滓が流れ込んできてしまう。反射的にそれを呑み込めば、冷静さを取り戻したはずの脳が再び熱っぽい感覚にとらわれそうになる。

 

「ナギサさん、どうかなさったのですか?」

 

「ずっともごもご言ってますね。でも、ユーアさんのお尻が乗っかっちゃってて、何を言ってるか分からない……」

 

「んん……んえ……?あ、あれ……?わたし……、寝てた……?って、わわっ、ナギサさんのおち……おち……おちんちんがこ、こんにゃ目の前に……!?」

 

「あっ、目が覚めたみたいですね」

 

 陰部への刺激が引き金になったのか、ユーアさんがようやく意識を取り戻した。ただ、少し呆けてしまっているようで、いまいち状況を理解できていないらしい。目の前にそそり勃つペニスを見て驚きの声を上げている。

 

「アルフィ様……?それに、リレイナ様も……。って、そ、そっか。今、ナギサさんに3人でフェラチオを……」

 

 だが、すぐにアルフィ様とリレイナ様の存在にも気づき、そこで状況を全て把握したようだ。

 

「わたし、ナギサさんにお、おまんこ……舐められて気持ち良くなっちゃって……、気を失っちゃったんだ……♡」

 

「ユ、ユーアさん、とてもえっちなお顔してました♡」

 

「い、言わないでくださいよぉ……。も、もぅ、せっかくご奉仕してあげようとはりきってたのにぃ……。ナギサさんの意地悪……」

 

 少し悔しそうにそう呟きながら、ユーアさんが身体を起す。その所為で、僕の顔にさらに体重が乗ってしまい、肉付きは薄いが確かな張りと柔らかさのあるユーアさんのお尻が顔面いっぱいに押しつけられてしまう。

 

 先ほどまで辛うじて行えていた鼻呼吸も、僕の鼻がユーアさんの殿裂に完全に沈んでしまったためにできなくなり、酸素を取り込む手段を失ってしまう。

 

「ちょっ、ユ、ユーアさん!ナ、ナギサさんが死んでしまいますッ!」

 

「えっ……!?ど、どうして……って、そ、そうだったっ!!ご、ごめんなさいっ、ナギサさんっ!!い、今すぐ退くから!」

 

 幸い、アルフィ様が指摘してくれたおかげでユーアさんも僕の顔を踏んでしまっていたことに気づき、僕の顔面はすぐに開放された。

 

 僕は少しだけ大きめに吸息し、若干不足した酸素を体内に取り込む。それから、申し訳なさそうに僕の顔を覗き込むユーアさんに、気にしなくて良いと視線を送る。

 

「それよりユーアさん、身体の具合はどう?」

 

「あっ、えっと、平気。ちょっとふわふわした感じはあるけど、嫌な感じはしないかな。むしろ、身体がぽかぽかしてて気持ち良い」

 

「それなら良かった。ごめんね、ちょっとやりすぎちゃった」

 

「まぁ良いよ。実を言うと不満なんてこれっぽっちもないし。というか、ああやって激しくしてもらえて嬉しかったから……♡」

 

 先ほどの行為を思い出してか、ユーアさんが羞恥に頬を赤く染める。後ろに見える猫尻尾は左右に揺れていた。

 

「そ、それに、さっきできなかった分、次で挽回すれば良いだけだからね♡」

 

「ふふっ、ユーアさん、やる気ですね。ところで、先ほど何を言おうとしていたのでしょうか、ナギサさん?」

 

 アルフィ様から問いかけられ、僕はそうだったとアルフィ様に向き直り、先ほどの疑問をもう一度口にする。

 

「その、先ほどアルフィ様は、さっきまで疲労困憊だったのに……とおっしゃっていましたよね?」

 

「ええ、確かに言いましたが……」

 

「僕はてっきり、アルフィ様が僕に回復魔法をかけてくれたから今も元気でいられているのかなと思っていたのですが……」

 

「えっ?回復魔法なんて使っていませんよ、私」

 

 そ、そうだったのか……。今体力が有り余っているのは、アルフィ様の回復魔法のおかげとばかり思っていたために、彼女から告げられた真実に思わず驚いてしまった。

 

 となると、どうして僕は急激に体力が回復したのだろう?彼女たちがこの部屋に来る前までは、確かに疲労困憊だったのだ。

 

「でも、考えてみたら確かに不思議ですね。あんなに疲れた顔をしていたのが嘘みたいに、今のナギサさんはぴんぴんしてますよ。表情もおちんちんも♡」

 

「う、うーん……、反応に困るなぁ……、その言い方」

 

「ふふっ♡まぁでも、私としてはナギサさんが元気なのは嬉しいことですし、あまり細かいことは気にしなくて良いかと」

 

「……それもそうですね。すみません、水を差してしまいましたね」

 

 リレイナ様の気持ちを知ることができて気分が高揚しているだけかもしれないな。そんな難しく考える必要はないよな。

 

「いえいえ。では、第2ラウンドといきましょう。ローテーションして……、次はリレイナさんがナギサさんの上に乗る番ですね」

 

「は、はい、分かりました。ド、ドキドキする……♡ナ、ナギサさん、上……失礼します……」

 

 そうして話を終えると、そんなアルフィ様の号令により3人がポジションを変えた。どうやら、次はリレイナ様が僕の上半身の上に乗っかるようだ。

 

 しかし、やはり軽いな。上に乗っかられていても全然苦に感じない。

 

 などと考えながら、目の前までやってきたリレイナ様の秘裂に視線を注ぐ。先ほどの愛撫で触れはしたが、こうしてまじまじと見るのはこれが初めてだった。

 

 まだ雄を受け入れたことのない彼女の秘裂はぴっちりと閉じており、綺麗なピンク色の一本筋を作っていた。

 

 けど、肉の付き具合はユーアさんよりリレイナ様の方が多い気がする。ぷっくりとした大陰唇により裂部にできた陰影が、先ほどまで目前にあったユーアさんのものよりも少しだけ深いように感じた。誤差の範囲だろうけど。

 

「こ、この恰好……、思った以上に恥ずかしい……。お、お股……ナギサさんに丸見えになっちゃってます……♡」

 

 僕がじっと彼女の股間を見つめていると、リレイナ様は恥ずかしそうに身を捩る。それにより、彼女の性器がふにゅりと柔らかく形を変える。生々しいその光景に、僕は思わずごくりと唾を呑んだ。

 

 そんな彼女の秘裂からはじわりと愛液が染み出し、大陰唇や内太腿を淫猥に濡らしていく。やがて、それは水滴となって僕の身体に落ちてきた。彼女は、自身が恥ずかしい恰好をしているということに少なからず興奮を覚えているようだ。

 

「でも、リレイナさんのおまんこを見れて、ナギサさん喜んでるみたいですよ。その証拠に……ほら、おちんちんがぴくんぴくんって跳ね躍ってますよ♡」

 

「ナ、ナギサさん、喜んでくれてるんですか……?」

 

「は、はい。う、嬉しいですよ、とても……」

 

 恥ずかしいことこの上ないが、下手に威勢を張って否定の言葉を口にしてしまったらリレイナ様を傷つけてしまいかねない。なので、ここは恥を忍んで素直な心情を吐露するに限る。

 

 すると、リレイナ様から安堵の息がこぼれるのが分かった。と同時に、秘裂から先ほどよりも多量の愛液を溢れさせていた。

 

 落ちてきた雫を一滴舌で掬い、それを口に運んでみる。味はやはり、独特の塩味と苦味が強いな。その中に、花の蜜のような優しい甘味も感じられた。不思議な味だが、口にすればするほどもっと欲してしまう。中毒性がヤバいな……。

 

「ナギサさん、リレイナさんのおまんこ、いっぱい舐めてあげてくださいね♡」

 

「そ、その……、よろしく……お願いします……♡それと、ふぇらちおに集中できなくなっちゃったらごめんなさい」

 

「えっ?あ、はい……」

 

 僕の独断で始めてしまった口愛撫だったが、アルフィ様から2ラウンド目以降も続けるよう言われてしまう。リレイナ様もそのつもりだったようで、緊張とそれ以上の興奮を声に滲ませていた。

 

 まぁ、やってくれと言われたのだし、僕はそれに従うまでだ。ぶっちゃけ、彼女たちの性器に口で触れられるのは嬉しいし。……どんどん変態的思考が加速していくね、僕。

 

「それじゃあ皆さん、準備は良いですね?では……、しつれいします……♡んちゅっ……♡ぴちゃっ……♡んんっ……♡れるっ……♡」

 

「ふふっ、今度こそナギサさんを気持ち良くしてあげるんだから……♡はむっ……♡ちゅるんっ……♡れろっ……♡んじゅるっ……♡」

 

 慣れた様子でアルフィ様が舌を伸ばしてくる。それに追随するように、ユーアさんがそんな意気込みを呟き、同じように舌でペニスに触れてきた。

 

 2回目だが、やはり刺激は強烈だ。敏感になっているから余計に。これは、本当に一瞬で果ててしまいそうだ。危機感を覚え、僕はぐっと今まで以上に腰に力を込める。

 

「それでは、僕も……んっ……じゅぶっ……」

 

 その状態のまま首を持ち上げ、リレイナ様の潤みきった陰部に口づける。柔らかな陰肉に口唇が沈み込むと、その瞬間に卑猥な水音が思ったよりも大きく響く。

 

 とろとろと中に溜まっていた愛液が溢れ、僕の顎や頬を濡らす。だが、僕は構うことなく彼女の股座に顔を沈め、その秘裂の奥へと舌を伸ばした。

 

「ああああうぅぅ……♡ナギサさんの舌が……中に入ってきてる……♡うあっ……♡あああんっ……♡た、確かに……これすごいぃぃ……♡ふあああっ……♡ひぐうぅぅぅ……♡こんなに気持ち良いなんてぇ……♡はあうぅぅ……♡うあああんっ……♡ふぇらちおに集中できないですぅぅぅぅっ……♡」

 

 僕の口攻めを受けて、リレイナ様は口奉仕に参加することもできずただただよがり声を上げる。彼女の身体の微かな痙攣を、僕の上半身がダイレクトに受け取る。

 

 僕は彼女のほっそりとした腰を両手で支えつつ、かくかくと首の屈伸運動を行い彼女の陰裂に舌を抜き挿しする。今回は、最初からそれなりに激し目だ。

 

「あうぅぅぅっ……♡舌がぬるぬるって……ワタシのお股に出入りしてますぅぅ……♡あひゅううぅぅぅ……♡はうううぅぅぅぅ……♡顔……緩んじゃいますぅぅぅぅ……♡は、恥ずかしい……♡」

 

「当事者側が恥ずかしいって思うのは当然だけど、こうして眺める側になってもなんか恥ずかしいかも……ちゅっ……じゅるるっ……。わ、わたしもさっき、こんなえっちな顔をさらしてたんだ……」

 

「私はぞくぞくしてきますけどね……じゅるっ……♡じゅぷっ……♡んぷっ……♡にゅぷっ……♡ちゅるっ……♡んんっ……♡」

 

「さ、流石ですね、アルフィ様は……ぷちゅっ……♡ぴちゃっ……♡んむぅっ……♡ぷはっ……♡さてと、ちょっと本気出しても良いですか?アルフィ様」

 

「本気……じゅぶっ……♡ちゅるるっ……♡ですか……?ぷはぁ……♡」

 

 ユーアさんが何やら自信ありげな様子だ。い、一体何をされるのだろうか……?恐怖からか、もしくは期待からか、僕の身体がぶるりと震えるのを感じた。

 

「はい。実践は初めてなので、ちゃんとできるかは分かりませんが……」

 

 そう言うと、ユーアさんはペニスの先端をぱくりと加える。僕はそれだけで少し背を反らせてしまう。

 

 だが、先端を加えるのは先ほどアルフィ様やリレイナ様もしてくれていた。なので、真新しさはなかった。

 

「んっ……♡じゅぶぶっ……♡♡」

 

 と思ったのは一瞬のことだった。先端を咥えられて終わり……かと思ったら、ユーアさんはそのまま僕のペニスを口腔内の奥の方まで送り込ませた。

 

 亀頭は全てユーアさんの口の中。茎部も少しだけではあるが彼女の口腔内に入り込んでしまっていた。

 

 その状態で、ユーアさんは唾液で潤った舌をねっとりと亀頭に絡ませ始める。それだけでなく、ユーアさんは首を前後に動かしてペニスの口腔内への出し挿れをも行っていた。

 

「じゅぷぷっ……♡♡じゅぶぶぶっ……♡♡じゅぽっ……♡♡にゅろんっ……♡♡んんんっ……♡♡んじゅるっ……♡♡じゅずずずっ……♡♡」

 

「んんっ……!?んんんんんっ……!!」

 

 リレイナ様の女性器に舌を突き立てながら、僕はあまりの刺激にそんな絶叫を漏らしてしまう。亀頭全体が温かな口内粘膜に擦れる感覚は、全身が焼け付くかのような強烈な快楽を僕に叩きつけてきていた。

 

 舌で舐められるのもペニスの先っぽを加えられるのも当然気持ち良いのだが、広い範囲を一遍に刺激されるのは正直別格だった。

 

 また、一物を口に出し挿れさせていると、まるで疑似的にセックスを行っているような感覚になり、僕の気分がより高まっていくのを感じる。

 

 気づけば下腹部は一際熱を持ち、ぐつぐつとマグマのような精液を噴射させる準備を整えていた。

 

「んんんっ……んぐうううううううっ……!!!」

 

 そうして、僕はあっけなくユーアさんの口腔内に精液を解き放ってしまった。リレイナ様への口愛撫はほとんどできなかった。

 

「んんっ!?んんんっ……♡んくっ……♡んくぅ……♡んむぅぅぅっ……♡」

 

 当然のように大量放出される精液を、ユーアさんは少し驚いた表情を浮かべつつそのまま喉奥へと流し込んでいた。

 

 しかし、彼女の小さな口では許容オーバーだったようで、吐き出された精液の一部が口の端からぷしゅっと外へ吹きこぼれてしまう。

 

「んっ……♡んっ……♡んっ……♡んちゅぅ……♡ぷふぅ……♡量が多くて、ちょっと溢しちゃった」

 

 やがて、口腔内や尿道に残った精液を全て飲み干したユーアさんは、僕の一物を口の外へ解放し、それから名残惜しそうにそう呟いた。

 

「あ、あっという間……でしたね……、す、すごい……」

 

「メイドの本気というやつです♡でも、ナギサさんの先っぽが大きすぎて、正直顎が外れるかと思いました……」

 

「メイドの本気……、凄まじいです……。でも、できれば私ももう少しおちんちんを味わっていたかったです……」

 

「あっ、そ、そうですよね……、ごめんなさい……。おちんちんも精子も独り占めしちゃってました……、わたし……」

 

 ほとんどユーアさん一人で射精まで導いてしまったという事実に、残念そうに肩を落とすアルフィ様。そんなアルフィ様を目の当たりにして、ユーアさんは調子に乗りすぎたと反省していた。

 

「いえ、お気になさらず。まだ終わったわけじゃありませんし。この調子だと、まだあと数回はできそうです♡」

 

「あー……、確かに……。というか、結構全力のフェラチオだったのにまだ硬いままだなんて……、ホントに元気すぎでしょ……♡」

 

「私たちとしては嬉しい限りなのですけど♡それだけナギサさんとえっちなことできるわけですからね♡」

 

 まだやれると主張するように硬さと大きさを保ったままの一物を、アルフィ様はその小さな指先で優しく撫でる。その微弱な刺激にも、一物はピクリと反応してしまう。

 

「あ、あの……、もしかして2ラウンド目ってもう終わり……ですか?」

 

 突如、悲愴感漂う声色でリレイナ様がこの場にいる全員に向けてそう聞いてきた。舌を突き挿れたままの彼女の膣口は物足りなさそうに蠢き、分泌液は止め処なく溢れだしていた。

 

 僕があまりに早く果ててしまった所為で、リレイナ様は満足な快楽を得ることができなかった……。今のままじゃ、ただの生殺し状態だもんな。うぅ、不甲斐ない……。

 

「え、ええ、そういうことになりますね」

 

「ふええぇ……、身体むずむずしたままなのにぃ……」

 

「あ、あらら……」

 

「せ、せめてむずむずが解消されるまでしていただけないでしょうか……」

 

 身体の上からそんな懇願の声が降ってくる。もちろん、そうしてあげたいという気持ちはある。

 

 ……あるのだが、何故かこのまま放置してみたいという悪戯心も同時に芽生えてしまっていた。彼女が満足できなかったのは僕の所為なのにね……。

 

 どうすべきか悩んだ末、僕は……

 

「ふえええええ!!ナギサさん、意地悪すぎますよぉぉぉ!!ちゅっ……♡ちゅぱっ……♡んふぅぅ……♡」

 

 放置だった。自分の中の悪戯心には勝てなかった。

 

 結局、リレイナ様はそんな泣き言を叫びながら第3ラウンド目を迎えることとなってしまった。いやうん、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです……。

 

「ナ、ナギサさん、思ってた以上に鬼畜だよ……じゅぽっ……♡じゅぷっ……♡うぅ……にしても顎が痛い……」

 

 茎部に横からしゃぶりつきながら、ユーアさんがそう呟いた。見えないけど、きっと今彼女は相当ジト目になっているんだろうなぁ。

 

 罪悪感と若干の満足感を胸に秘めつつ、僕は僕で与えられた役目を真っ当に果たしていた。役目といっても、結局先ほどまでと変わらないのだけど。

 

「んおほぉぉぉっ……♡♡んひいぃぃぃぃっ……♡♡これ……ダメなやつですぅぅぅっ……♡♡ああああっ……♡♡ひああああああんっ……♡♡」

 

 ここにいる3人の中では最も発育していると思しきアルフィ様の女性器を舌でぐちゃぐちゃと引っ掻き回しながら、ユーアさんとリレイナ様から与えられる強刺激に本日8度目の射精欲の高ぶりを感じていた。

 

「ひぐううううううっ……♡♡あひいいいいいいいっ……♡♡こんなの……すぐにイッてしまいますぅぅぅ……♡♡ふわあああああっ……♡♡んいいいいいいいっ……♡♡ナギサさんの舌……激し……あっ……♡♡ひきゅううううううううっ……♡♡♡」

 

「ア、アルフィさんはあんなに気持ち良さそうにしてる……じゅるっ……♡じゅぷぷぷっ……♡ず、ずるいですよぉぉ……ワタシだけこんなのぉぉ……あうぅ……♡んふぅぅ……♡んちゅっ……♡んんんぅ……♡」

 

 大きく背中を仰け反らせるアルフィ様を羨ましそうな瞳で見つめるリレイナ様が、僕の太腿に欲求不満な自身の股間を擦りつけていることには気づかないフリをすることにした。

 

 ただ、それでも彼女の舌は休むことなく僕の一物を刺激してくれていた。



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リレイナ様の初体験

「んあうぅぅぅぅぅぅぅぅっっ……♡♡♡」

 

 限界まで腫れ上がったアルフィ様の肉豆に思いきり吸いつくと、彼女は身体を強張らせながら艶声を上げて絶頂した。

 

 同時に、尿道からぷしゃっと噴き出した液体を顔で受け止める。尿……にしては少しべとべと感が強い。それに、あの独特のアンモニア臭もない。

 

 でも、何だろう……。頭がくらくらしてきた……。全身の熱感もさらに増したような気がする……。女の子から分泌される液体はどれも僕を欲情させてくる。

 

 その上、ユーアさんとリレイナ様によるフェラチオは未だに続いている。性欲の爆発はすぐそこだった。

 

「んむぁっ……んんんんんんっっ……!!!」

 

 全身の熱が一挙に股間に集まり、新たに作り出された精子たちを勢いよく体外へと押し出した。ペニスが内部から焼き焦がされると錯覚してしまうほどの熱さに、喉の奥からうめきが漏れる。

 

「うわっ、すごい震え……ひああっ……♡」

 

「うああぁ……♡熱いぃ……♡んうぅぅぅぅぅぅっっ……♡♡♡」

 

 体外へと放出された精液がユーアさんとリレイナ様に直撃したらしく、二人は艶交じりの悲鳴を上げていた。これ、火傷とかさせないよね……?大丈夫だよね……?ちょっと心配になる僕だった。

 

「んああああ……♡私にもかかってるぅぅ……♡ダ、ダメぇ……♡また……またイッちゃいますぅぅぅ……♡はうううううううっっ……♡♡♡」

 

「んぐっ……もがっ……」

 

 なんて考えていると、僕の顔面に圧しかかったままのアルフィ様の股座からまたも液体が溢れ出してきた。しかも、今回はさっきよりも量が多い……。

 

 それが口の中へとダイレクトに流し込まれ、いきなりのことに驚いた僕は呼吸ができなくなってしまった。

 

 やがて口の中に入りきらなくなった液体が外へ溢れ出し、一部が鼻の中まで入ってきてしまう。うっ、このままだと本当に呼吸できなくなる……。

 

「んくっ……んくっ……」

 

 そう思った僕は、口の中の液体を飲み干すことにした。そんな間にも、先ほど口から溢れ出した雫が鼻の中を滑りながら進んでいた。

 

 何とかして酸素を確保しようとして鼻をすすると、その雫の臭い成分を感知してしまった。

 

 このツンとした刺激臭はまさしく尿だった。……いや、分かっていたけどね。それでも、僕は飲尿を止めない。

 

「はぁぁ……♡ま、また……おしっこがぁ……♡」

 

 どうにかお漏らしを止めようとしたのか、アルフィ様はぎゅっと両太腿に力を込めた。だが、既にストッパーの解除された尿道はその程度では閉まらない。柔らかな彼女の太腿肉が僕の頭を圧迫してくるだけだった。すべすべもちもちで気持ち良い。

 

 なんて感想を抱きつつ、僕は嚥下運動を続けていた。ごくごくと次々流れ込んでくるアルフィ様の小水を胃の奥へ流し込む。全ては十分な気道を確保するために。

 

 にしても、好きな人のとはいえど、他人の尿を飲むことに抵抗を覚えない僕って何なんだろうね……?挙句、それをちょっと美味しい……とか思ってしまっているからもう救えない。

 

「ナ、ナギサさん……!?わ、私のおしっこ飲んじゃってる……!!」

 

「はぁ……♡はぁ……♡ほへぇ……ホントだ……、ごくごくいってる……、良い飲みっぷり……」

 

 ユーアさんが感心したような声を上げているが、感心されるような行為じゃないからね?これ。何なら、ただの変態行為だし。

 

「はうぅ……♡や、やっと止まりました……」

 

 やがて尿の勢いが弱まり、そして最後にぽたぽたと数滴の雫を落としお漏らしは止まった。僕は仕上げとばかりに彼女の尿道をぺろりと舐める。

 

「ひぅっ……!?」

 

 その刺激に、アルフィ様は身体を跳ねさせる。それから、すぐさま僕の上半身から身体を退かせ、そのままさっと身体の向きを180度変える。

 

「ナ、ナギサさん……」

 

 アルフィ様の顔が僕の顔に寄せられる。うーん、ちょっとやりすぎちゃったかな……?気道を確保するためとはいえ、流石に飲尿はまずかったかなぁ……。

 

「んっ……♡れろ……♡」

 

 と思っていたら、唐突に頬を舐められた。何事かとアルフィ様の顔を覗き込むと、その表情は羞恥の朱に染まりきっていた。

 

「んちゅっ……♡んじゅるっ……♡ナギサさんの……変態……♡んれろ……♡ちゅる……♡私のおしっこ……そんなに美味しかったんですか……?」

 

「いや、えっと……その……まぁ……はい」

 

 アルフィ様の行動の意図が未だに理解できていない僕は、困惑したまま彼女からの問いに素直に頷いてしまう。

 

 すると、アルフィ様はさらに顔を真っ赤にし、頬を舐める彼女の舌の動きはねっとりとしたものへと変わる。熱い吐息とぴちゃぴちゃという彼女の唾液の音が耳のすぐ近くで響、それを聞いていると先ほど放出したはずの熱がよみがえってくるような感覚を覚える。

 

「また完全復活しましたね♡」

 

「そうですね♡流石はアルフィ様です。おしっこと顔舐めだけでナギサさんをここまで奮い立たせられるのですから」

 

 ユーアさんとリレイナさんによる実況が耳に届く。うん、自分の性器について実況されるのは恥ずかしい。というか、顔舐めはまだしも、アルフィ様のおしっこで興奮し勃起していたなんて知りたくなかった……。

 

 まさか、抵抗感なしどころか、喜んで飲尿していたとは……。気道確保だなんて建前だったのか……?悲しい……、変態が極まりすぎて悲しいです……。

 

「そういえば、すっきりされました?リレイナ様」

 

「すっきり……ですか?」

 

「さっき、ナギサさんのお膝にお股擦りつけてましたよね?」

 

 あっ、ユーアさん、そのことについて指摘しちゃったのか……。黙っておこうと思ったんだけど……。

 

「あ、あれは……その……、途中で寸止めされちゃったから……むずむずが止まらなかったんですよぉ……」

 

 リレイナ様の手によって太腿がぺしぺしと叩かれる。よほど寸止めが辛かったんだろうなぁ。やっぱり、悪戯が過ぎたかな……。

 

「確かに、あれはきつそうでしたね……。わたしも同じことされたら多分……」

 

「で、ですよね?仕方ないことですよね?」

 

「は、はい。それで、ちゃんとすっきりはできたんですか?」

 

「多少は……♡で、でも、何だかお腹の奥の方にまだ違和感があって……。擦ってるだけじゃどうにもできなかったんです……」

 

「そうですか。ということは、リレイナ様も次のステップに進むべきかもですね」

 

 そんな二人の会話が繰り広げられている中、アルフィ様は無言で僕の頬や顎を丹念に嘗め回し続けていた。

 

 彼女の頭は右へ左へと慌ただしく動き回っているが、その瞳だけはずっと僕の眼を捉えて離さなかった。潤んだ金色の瞳の熱量に、僕の鼓動は早鐘を打つ。

 

「あ、あのぉ……、これは一体……何をなされているのでしょう……?」

 

 ついには、胸の高鳴りと沈黙に耐え切れなくなり、僕は先ほどから気になっていたアルフィ様の行動の意図について聞くことにした。

 

「んじゅるっ……♡はんっ……♡これは後始末です……♡私が汚してしまったのですから……んちゅ……♡れる……♡綺麗にしないといけないと思ったんです……はむっ……♡ちゅるるっ……♡」

 

「そんな、汚されただなんて……」

 

 むしろ喜んでしまっていたのだと、僕の一物が証明してしまっている。……認めたくはないけど。

 

 アルフィ様にだって、先ほどのユーアさんとリレイナ様の会話はちゃんと聞こえていたはず……。だから、分かっているはずなのだけど……。

 

「それに、これ以上私の汚液をナギサさんが口にする姿を見たくないんです……」

 

 うぐっ、やはり引かれていたか……。こっちが彼女の本心なのだろう。きっとアルフィ様は僕を正常な人間に戻そうとしてくれて……

 

 ん?いや……、それにしては目の色がおかしいような……?気持ち悪がっている相手に、こんな熱っぽい瞳を向けるだろうか?

 

「それってどういう……」

 

「これ以上ナギサさんに私のおしっこ飲まれたら、後戻りできなくなってしまいそうなのです……」

 

「あ、後戻り……?」

 

「ナギサさんに私のおしっこ飲んでもらうことに喜びを感じたくないんです……。流石の私も、おしっこ飲ませを性癖にしたくはないんです……!!」

 

 必死の叫びだった。だが、その内容はあまりに残念過ぎた……。僕も大概だけど、アルフィ様は僕のさらにその先を行っているように思う。まさに変態令嬢……。

 

 けど……、そんなエッチなアルフィ様もやはり可愛い。彼女のためなら幾らでもおしっこを飲んでやる……。

 

「アルフィ様……んっ……はむっ……」

 

「んんっ!?んぅ……♡んあぁ……♡ちゅるっ……♡れろっ……♡ナ、ナギサさん……♡んんんぁ……♡んんんぅ……♡」

 

 僕の顔を縦横無尽に這い回るアルフィ様の舌を自身の舌で絡め取り、そのまま口内へと引きずり込む。さらに片手で彼女の後頭部を押さえ、唇が離れないようがっちりロックする。

 

 アルフィ様はほんの一瞬だけ抵抗を見せたが、すぐに甘えるようにして舌を絡ませ返してくる。切り替えが早いことで……。

 

 ……しかし、おしっこを幾らでも飲んでやる……ってのは流石にどうかと思う……。冷静になって考えると、何とも馬鹿な考えのように思う。いや、思うというか100%馬鹿な考えなんだけど。

 

 口に出さなくて本当に良かった……。アルフィ様の舌を口内で受け止めながら、僕は心底そう思うのだった。

 

「んんっ……♡んんんぅ……♡んはぁ……♡えっちなキス……しちゃいました♡」

 

「すみません、思わず……」

 

「嬉しかったので平気です♡っと、汚れも粗方舐め取り終えましたね。ナギサさん、気持ち良くしていただき、ありがとうございました♡それと、改めてお顔を汚してしまいすみませんでした」

 

「いやいや、汚いなんて思ってませんよ。またおしっこ引っかけたくなったら、何時でも言ってください」

 

 ……って、ヤバっ!結局言ってしまった……。

 

「止めてぇ!!私の性癖をこれ以上増やさないでぇ!!」

 

「おおぅ……、最後の最後で鬼畜ナギサさん発動だ……」

 

 き、鬼畜ナギサさん!?な、何それ!?いつの間にかユーアさんの中で謎モードが命名されていた。

 

 鬼畜なことって言っても、リレイナ様への寸止め攻撃くらいしかやってないでしょ!?僕……。さっきのは決して鬼畜発現なんかじゃなかったはず……だよね……。

 

「でも、アルフィさんはいっぱい気持ち良くしてもらってました……。だから、やっぱり不公平ですよ……」

 

「あ、あはは……、根に持ってるなぁ……」

 

 僕が口を挟む間もなく、彼女たちの会話は続く。にしても、リレイナ様には相当根に持たれているなぁ……。後のフォロー、頑張らないと……。

 

「それなら、リレイナさん、ナギサさんとセックスしては如何ですか?先ほど、ユーアさんともそのようなお話をされていたようですし」

 

「ただ、最初はホントに痛いので、気持ち良くなれるかは……」

 

「やります!ナギサさんとセックスします」

 

 強い口調でそう言いきるリレイナ様。ユーアさんのあの痛そうな表情を思い出し、少し不安感を覚えてしまう。

 

「そ、即答ですね……。普段のリレイナさんからは考えられないほどの積極性……。エッチ一つで、人はこんなに変わるんですね……。私もそうですが……」

 

「……アルフィ様は元々の資質では?」

 

「ユーアさんも酷い!」

 

「す、すみません……。ひ、ひとまずナギサさんの身体から降りません?」

 

「っとと、それもそうですね」

 

 ユーアさんに促され、アルフィ様が僕の上半身から身体を放した。それを確認した僕は、ゆっくりと上半身を寝台から起こす。

 

 その瞬間のことだった。リレイナ様がすごい勢いで僕に詰め寄ってきたのだ。何なら抱きついてきた。

 

「ナギサさん、セックスしましょう!いえ、するんです!拒否権なしですからね」

 

「は、はい、分かりました」

 

 ものすごい剣幕だ……。拒否権なしと言われ、僕はただただ首を縦に振ることしかできない。まぁ、元より断るつもりはなかったけど。

 

 いや、でも本当に別人のようだ……。少し前までの頼りない面影は一体何処へ行ってしまったのか……。これ、僕の所為ではないよね?大丈夫だよね?

 

「それじゃあ、私たちはまた少し離れたところから見守るとしましょう」

 

「そうですね」

 

 そう言って寝台から降りようとするアルフィ様とユーアさんの手を掴んで引き留める。二人とも、驚いた表情をこちらに向けてきた。まぁ、当然か。

 

「どうかなさいましたか?」

 

「その、近くにいてあげてほしいんです」

 

 そんな彼女たちに、僕は自分の考えを伝えた。二人が寄り添っていてあげた方が、きっとリレイナ様も安心できると思う。

 

 今は大分強気だけど、やはり痛いのは怖いだろうしね。その恐怖や不安を少しでも軽減できるよう、取れるだけの対策は取っておきたい。

 

 こんなに慎重……というか臆病になっているのは、ユーアさんの痛がる姿を見てしまったからだ。

 

「ふふっ、流石はナギサさん。お優しいですね。ではリレイナさん、私たちもここにいてよろしいでしょうか?」

 

「大丈夫です。ワタシとしてもお二人がすぐ傍にいてくれるのは心強いですから」

 

 アルフィ様の問いかけに対し、リレイナ様はにこりと微笑みながらそう頷いた。

 

「そういうことなら、分かりました」

 

「リレイナさん、頑張りましょうね!」

 

「はい、頑張ります。。ではナギサさん、よろしくお願いします」

 

 話はまとまったようで、リレイナ様は僕に視線を戻しそう言った。

 

「はい」

 

「その……、次は意地悪しないでくださいね……?今度は、一緒に気持ち良くなれると嬉しいです……

 

「が、頑張ります……」

 

 一抹の不安を抱えながら、僕は早速目の前のリレイナ様をそっと抱きかかえ、それから寝台の上に横たえた。

 

 アルフィ様とユーアさんは、それぞれリレイナ様の両隣に移動する。そして、リレイナ様を安心させるように優しく彼女の手を握った。

 

「二人とも、ありがとうございます」

 

 そのおかげか、リレイナ様の表情には緊張こそあれど恐怖や不安といった感情は見受けられなかった。

 

「では、リレイナ様、脚を開いていただけますか?」

 

「はい……っと、これで良いですか?」

 

「大丈夫です」

 

 左右に開かれた脚の間に、僕は身体を割り込ませる。あぁ、僕も緊張してきた……。居間から、僕はリレイナ様の処女を奪うんだ……。これで3人目とはいえ、やはり慣れるようなものではないな。

 

「ひゃう……♡んうぅ……♡」

 

「……よし」

 

 秘部がちゃんと潤っていることを指で確認する。幸い、彼女の股座は充分すぎるほどにぐっしょりと濡れていた。ユーアさんの時よりもずっとびしょびしょだ。これなら……なんとかいけるかも……。

 

 一つ頷いた僕は、片手で自身の一物を握り、ゆっくりとその先端を彼女の小さな秘裂にあてがう。たったそれだけの接触だったが、接触部分からはくちゅ……という水気に満ちた猥音が響いた。

 

 その状態で、僕は腰を筋に沿って上下に動かす。できる限り多くの潤滑液を一物の先端にまぶすためだ。

 

「それでは、いきますよ、リレイナ様」

 

「お願いします……」

 

 全ての準備を終えた僕はリレイナ様に一言声をかけ、そしてゆっくりと腰を前方へ突き出した。

 

「「……♡」」

 

 肉裂の奥にペニスが少しずつ埋もれていく様子に、アルフィ様もユーアさんも興味津々といった様子で見入っていた。

 

 そんな二人を気にしないようにしながら慎重に腰を押し進めていくと、一物の先端が小さな穴を捉える。ひくひくと拡縮を繰り返しながら、すぐ前まで突き出された僕の一物をどうにかして咥え込もうとしていた。

 

 けど、彼女の小さな穴では先端に吸いつくことすらままならない。こんな小さな穴を無理矢理押し広げて良いのか……?僕の中の臆病が顔を覗かせる。

 

 いや、怖気づいていてはダメだな。これはリレイナ様が求めていることなのだ。彼女の思いに応えなくてどうする……。

 

 僕は覚悟を決め、さらに腰を前へと押し出し、肉茎を膣穴の奥へと沈めていく。途端、リレイナ様の表情に歪みが生じるが、ここで遠慮してはならない。

 

「かはっ……中が……押し広げられて……」

 

「リレイナさん、大丈夫ですか?」

 

「大丈夫……です……、痛くはありませんから……」

 

 苦しそうではあるが、今のところ痛みまでは感じていないようだ。その事実に少し安心しつつ、一物の先端をきつく締めつけてくる膣壁を何とか押し退けながらさらに奥を目指す。

 

 結合部をちらりと見ると、既に亀頭は全て中に納まっていた。肉裂の広がり具合がすごいな……。改めて感じるこのサイズ差……。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 だが、リレイナ様はなおも痛がる様子を見せない。苦し気に呼吸を繰り返すだけだ。これなら、もしかしたら破瓜の瞬間も余裕で乗り切れるかもしれない。

 

 と考えていると、先端部が何かに阻まれる感触を捉えた。ようやく処女膜まで到達したようだ。

 

「リレイナ様、痛いかもしれませんが……」

 

「はい、大丈夫です、ワタシのことは気にせず、どうかもっと奥へ……」

 

「分かりました……ふっ……」

 

 一つ息を吐き、僕は腰に力を込めて乙女の園の最終防衛線を突破した。ぶちり……という音が聞こえたような、そんな錯覚を覚える。少し鳥肌が立ってしまった。

 

「んうっ……くぅぅ……こ、これは……確かに痛いですね……。けど、耐えられないほどでは……ありません」

 

 多少辛そうだが、やはりそれほど痛みを覚えている様子はない。リレイナ様は本当に痛みに強いようだ。

 

 それでも、僕は彼女の感じる痛みを和らげた久手、彼女の頬をそっと撫でる。実際に効果があるかは分からないけど、僕にできることはこれくらいなのだ。

 

「あっ……えへへ……♡嬉しいです……♡」

 

「あともう少しですからね」

 

「はい、そのまま一番深くまできちゃってください」

 

 言われるまま、僕はそのままの勢いで彼女の最奥まで一物を押し込んだ。先端がこりっとした感触を捉えたところで、リレイナ様がビクンと小さな震えを見せた。

 

「あひゃぁ……♡♡お腹の奥のむずむずに届いた感じがしました……♡」

 

 どうやら、最奥への一突きで感じたようだ。えっと、リレイナ様って初めて……で良いんだよね?まさか、アルフィ様以上のポテンシャルを持っているのか……!?

 

 そんなことを考えつつ、僕はふっと身体かの力を抜く。最奥まで到達できた達成感と安心感がそうさせた。

 

 と、その瞬間……

 

「うあっ……うううううううっっ……!!」

 

 ぬるぬるの襞が一物の周りを這い回る感覚と幼い膣壁にみちみちと圧迫される感覚に、僕の射精感は休息に限界値まで高められてしまう。

 

 結果、びゅくびゅくびゅるるるるっ……!!と僕の一物から大量の精液がリレイナ様の最奥へと放たれてしまうのだった。



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エルフがエロフになった時

「ふわぁ……♡お腹の奥が暖かいです……♡」

 

「ナギサさん、すごく気持ち良さそうな顔してる♡」

 

「やりましたね、リレイナさん。ナギサさんを一番奥まで受け入れることができましたね。今、リレイナさんは、ナギサさんの精子を一番奥で受け止めているんですよ」

 

「は、はい、嬉しいです♡」

 

 射精中で余裕がない僕に変わって、アルフィ様がリレイナ様に現状の説明をする。リレイナ様、本当に嬉しそうな表情を浮かべている。それを見れただけで、僕も満たされた気持ちになれるというものだ。

 

「ワタシの中でナギサさんのがビクンビクンってなってます……♡ワタシ、セックスでもちゃんとナギサさんを気持ち良くできたんですね♡」

 

「あぁ……♡やっぱり見ているとむずむずしてきますね♡」

 

「さっきあんなに絶頂してたのに……。ナギサさんもそうだけど、アルフィ様も底なしですよね……」

 

「アルフィさんはとてもえっちな人なんですね、よく分かりました。……あっ、ビクビクが止まった」

 

 長い射精が終わったことに、リレイナ様はすぐに気づいた。そうして、彼女はじっと僕の顔を見つめてくる。恐らく、僕の口から直接感想を言ってほしいのだろう。

 

 そんな彼女の表情には心配の色はなく、自信たっぷりといった感じだ。あれだな、感想というよりも、よくできたと褒めてほしそうな顔だ。

 

 僕は精いっぱい彼女に微笑みかけ、エメラルドグリーンの綺麗な神を指で梳くように撫でる。

 

「すみません、もう出しちゃいました。とても気持ち良くて」

 

 ……少し情けない発言かもしれない。というか、あれだよね。僕って、挿れてすぐに射精すること多くない?

 

「えへへ、良かったです♡」

 

 でも、リレイナ様が幸せそうな表情を浮かべてくれているわけだし、そんなことは気にする必要もないな。

 

「でも、これで終わりじゃないですからね?ナギサさん♡」

 

 だが次の瞬間、リレイナ様は幸せそうな笑顔を妖艶なものに変化させた。その笑みに、僕は思わず言葉を詰まらせてしまう。

 

「ワタシのことも、ちゃんと気持ち良くしてください♡多分、もう痛みは感じないと思うので、何の遠慮も必要ありません♡」

 

「わ、分かりましたっ」

 

 尋常じゃないほどの色気に気圧され、僕は断ることもできず首を縦に振ってしまう。リレイナ様のキャラがまるで違う……。今の彼女には逆らえる気がしない。

 

「……もしかして、リレイナ様はアルフィ様以上の……?わ、わたしも、もっとえっちにならないとダメなのかにゃ……」

 

「大丈夫ですよ、ユーアさん」

 

「そ、そうなんですかね?」

 

「ええ。だって、今でも充分えっちですから」

 

「それなら良かったです……って、あれ?よく考えたら、これって別に喜ぶべきことではないような……?」

 

 よく分からない理由で頭を抱えるユーアさん。別にエッチであることが良いことってわけじゃないと思うけどね……。まぁ、どんなユーアさんでも僕は気にしない。……本音を言うと、アルフィ様級にエッチなユーアさんも見てみたくはあるかもしれない。

 

「にしても、本当に痛くなかったのですか?リレイナさん」

 

「あっ、それはわたしも気になりました」

 

 両サイドからの問いに、リレイナ様は余裕の表情で首を横に振っていた。こんな自信満々なリレイナ様も良いな。おどおどしている彼女を見慣れていた分、良い意味でギャップを感じる。

 

「平気です。魔法は得意ですので」

 

「魔法……?もしかして、回復魔法か何かで……」

 

「はい、その通りです」

 

 なるほど、魔法にはそんな使い方もあるのか。でも、回復魔法アルフィ様も使えるのでは……?だが、アルフィ様と初めて身体を重ねた時、彼女はそれなりに長い時間痛がっていた気がする。

 

「初めての時、私もその方法は試しました。でも、あまり効果はなかったはずです……。その、リレイナさんの扱える回復魔法って、難易度はどれくらいなのですか?」

 

 あっ、使ってたんだ。けど、ほとんど無意味だった……と。

 

 それと、難易度なんてものが存在するんだな、知らなかった。

 

「ワタシ、これでも上級回復魔法が使えるんです」

 

「上級!?す、すごいですね……。流石はエルフ……」

 

「いえ、エルフだとしても、幼いころから上級魔法を操ることのできる人はそう多くありません。現に、わたしの学年でも上級魔法が使える人はごく少数ですから」

 

「ということは、リレイナさんがずば抜けて優秀ということなのですね!すごいです、尊敬しちゃいます」

 

「えへへ、そんなに褒められると照れてしまいます」

 

 そういえば、魔法の試験を1位で通過した……とか言っていたっけ。リレイナ様の凄さを改めて垣間見た……。

 

 いや、本当に謎だ……。どうしてこんな優秀な人たちがピンポイントでこの寮に集まったのか……。

 

「在学中に最上級魔法までマスターするのがワタシの目標何です」

 

「立派な目標だと思います。私、応援してます」

 

「ありがとうございます、アルフィさん。っとと、少し話が脱線してしまいましたね。それではナギサさん、よろしくお願いしますね♡」

 

「えっ、あっ、は、はい」

 

 しばらく呆然としてしまっていた僕だったが、リレイナ様からの要望を受け、慌てて腰を動かし始めた。動揺を若干引きずりながら……。

 

「んっ……んんぅ……」

 

 だが、腰を引いた瞬間、残っていた動揺は全て快楽に押し流されてしまう。ペニスを逃がさぬよう複雑に絡みついてくる肉襞のあまりの気持ち良さに、僕は我慢できずに声を漏らす。

 

 射精を終えてあまり時間が経っていないから、余計に敏感になってしまっているのだろう。けど、流石にこんなところでまた呆気なく果ててしまうのは本当に情けなさすぎる。だから、僕は歯を食いしばり、リレイナ様の膣から抜け出る寸前まで引いたペニスを再度彼女の一番奥へと打ち込む。痛みは感じていないようなので、ちょっと強めに突き込んでしまった。

 

「ひゃぅ……♡ああぁ……♡お腹の奥がこつんって叩かれて……なんかすごいです……♡衝撃が頭のてっぺんまで伝わってきました……♡」

 

「……ホントに痛がってない。これが上級魔法の力……。い、良いなぁ、気持ち良さそう……、羨ましい……」

 

 小さく喘ぐリレイナ様に羨望の眼差しを向けるユーアさん。まぁ、そうだよね。初体験を痛いまま終えちゃったもんね。本来はそれが普通なはずなんだけど、周りの人が規格外揃いだから、気にしてしまうのも仕方ないことだと思う。

 

 僕は腰の動きは止めないまま、ユーアさんの背中を優しく撫でる。気休めでしかないだろうが、そうしてあげたかった。

 

「ナギサさん……、ありがとう……」

 

「気に……しないで……、んぅ……はぁ……」

 

 ここで気の利く言葉の一つや二つかけてあげられれば格好いいのだけど、残念ながら今の僕には言葉を発するだけの余裕がなかった。

 

 だが、せめてこれくらいは……と、ユーアさんに微笑みかける。すると、ユーアさんも僕に微笑みを返してくれた。少しは気が紛れたかな。

 

 彼女の様子に安心した僕は、腰振り運動に集中することにした。

 

「はぁぁ……♡あうぅ……♡こ、これが……セックスの気持ち良さ……なんですね……♡はうぅぅ……♡んひうぅぅぅ……♡お股を触られていた時とはまた違った感じがして……んあぁぁ……♡はわぁぁ……♡新鮮です……♡」

 

「でしょう?衝撃が身体を突き抜ける感覚、癖になっちゃいますよね♡」

 

「はひぃ……♡その気持ち……分かる気がしますぅ……♡あっ……♡うあっ……♡んひぅぅ……♡ナギサさん……お願い……もっと……もっとたくさん奥突いてください……♡あああっ……♡んうぅぅ……♡ナギサさんお願いぃぃぃ……♡」

 

「くっ……はぁ……あぁ……、はい……分かりました……、んぐぅ……くはぁ……あぅ……、絞め付けが……すごい……、ああっ……うぐぅ……、襞々も気持ち良い……、あああ……ううう……」

 

 リレイナ様に言われた通り、僕は腰を振る速度を速めた。ぐちゃぐちゃと、僕とリレイナ様との結合部から聞こえるはしたない水音がより一層大きくなる。見ると、彼女の分泌した愛液と先ほど僕が吐き出した精液の残滓、それから彼女の破瓜の血液が混じり合った混合液が、二人の結合部から泡立った状態で外に漏れ出していた。

 

 その混合液がベッドの上にシミを作るが、今はそんなこと気にしていられない。いや、気にするどころか、今の僕はもっともっとベッドをシミだらけにしてやる……ってくらいの勢いを持っている。

 

 無我夢中で抽挿を繰り返し、ずちゅん……ずちゅん……とリレイナ様の最奥を何度も叩く。一突きする度に僕の中の射精欲が膨張し、それに呼応するように息の荒さも少しずつ増していく。

 

「あああっ……♡はひゅううううう……♡激しい……♡激しすぎますぅぅぅ……♡奥ずんずんって叩かれて……頭が真っ白になっちゃいそうですぅぅぅぅ……♡はわあああ……♡んううううう……♡気持ち良いよぉぉぉ……♡」

 

「本当に気持ち良さそうです♡繋いだ手にすごい力入ってます。あっ、そうだ。ちょっと悪戯しちゃいましょう♡」

 

「い、悪戯ですか?一体何を……」

 

「それっ……♡えいっ……♡くにくに……♡ふふっ」

 

 アルフィ様がリレイナ様の乳首を指で捏ねくり回し始めた。捻ったり引っ張ったりと、やりたい放題だった。

 

「んうぅぅ……♡んひいい……♡ア、アルフィさん……今それされたら……あっ……♡あっ……♡あっ……♡うああっ……♡ダメぇ……♡頭がどうにかなっちゃいますぅぅ……♡はううう……♡あうううう……♡」

 

「リレイナさん、可愛い♡ほら、ユーアさんも一緒に」

 

「えっ、わたしもですか!?わ、分かりました……。リ、リレイナ様、すみません……。失礼いたしますね……、えいっ……♡」

 

 アルフィ様に促され、ユーアさんまで悪戯に加わってしまう。身体の敏感なところを3箇所同時に攻められ、リレイナ様はいやいやと首を振りながら余裕なさげな悶え声を上げている。

 

 そういう僕ももう限界ギリギリなんだけどね……。ぬるぬるで温かなリレイナ様の膣内粘膜の上を統べる度に、僕のペニスはその形状をさらに膨れ上がらせていく。気を抜いたらすぐに吐精が始まりそうだ。

 

「あうううううううっ……♡はあああああああっ……♡ひあっ……♡ひあっ……♡ひああああああっ……♡ナギサさん……♡ナギサさん……♡ナギサさん……♡んんんんんんんんっ……♡んひううううううううううっ……♡♡」

 

「あああっ……リレイナ様……リレイナ様ぁぁ……うぐうう……はあああ……ぐっ……うああっ……」

 

「お二人とも、もう限界のようですね……はぁ……♡んはぁ……♡うっ……そろそろ私も我慢ができなくなってきてしまいました……♡」

 

「お、同じく……ふぅ……♡んふぅ……♡お二人の声とかえっちな音聞いてるだけで頭溶けちゃいそうです……♡」

 

 4人の荒い息遣いが重なる。視線を下に向ければ、リレイナ様、アルフィ様、ユーアさんの3人の熱に浮かされ蕩けた6つの瞳が視界に映る。潤んだその瞳の全てにハートがちりばめられており、僕への熱い感情を痛いほど感じさせた。

 

 僕、本当にこの娘たちに愛されているんだな……。僕の胸の中に、幸福感がこれでもかというほど溢れ出してくる。

 

 そんな幸福感が僕の股間をさらに熱くさせる。早く精を吐き出させろと、リレイナ様の膣の中で僕のペニスが暴れ出す。

 

「リレイナ様……僕……もう……あっ……ぐっ……」

 

「はひぃ……♡ワタシも……一緒に……ああっ……♡うあああっ……♡はわああああっ……♡ナギサさん……♡ナギサさん……♡大好きです……ひああああああああっっ……♡♡♡」

 

「んくううううっっ……!!!」

 

 絶対にこの娘たちを幸せにする……。そんな誓いを込めて、僕はリレイナ様の一番深くに全てをぶちまけた。

 

 びゅくっ……びゅるるるるるっ……どぷっ……どぷっ……なんて激しい放出音でも出ているのではないかと錯覚するほどの勢いで僕のペニスの先から放たれた精液は、リレイナ様の最奥を叩きながら内側を僕の色に染め上げていく。

 

 リレイナ様は僕の身体の下で大きな絶叫を上げ、ぶるり……ぶるり……と身体を大きく痙攣させていた。

 

 そんな身体の痙攣とともに彼女の膣肉が収縮を繰り返し、僕の吐精を促進させてくる。その収縮は、まるで僕の中に溜め込まれた精を全て搾り取ろうとしているかのようだった。とても積極的な膣内だった。

 

「わあ、すごい蕩け顔です……はぁ……♡ふぅ……♡」

 

「涙と涎ですごいことになってる……それだけ気持ち良かったってことなんですね……わたしも早くセックスで気持ち良くなれるよう、もっと頑張らないと」

 

 リレイナ様が絶頂に浸る様子を両サイドで眺めながら、アルフィ様とユーアさんが各々感じたことを呟いている。しかし、二人の表情は共通してピンク色の期待に満ちていた。この後、二人を相手にする余裕、僕に残っているだろうか……?

 

 いや、弱音なんて履いていられない。根性でどうにかしてやるさ。3人まとめて幸せにすることこそが僕の使命だから。

 

 そんなことを考えながら、射精を終えるまで僕は恍惚の表情で涎を垂れ流すリレイナ様を見つめていた。

 

 その後、案の定アルフィ様とユーアさんに押し倒され、僕は彼女たちと何度も肌を重ね続けた。

 

 リレイナ様の協力もあり、ユーアさんもセックスで気持ち良くなることができるようになっていた。ユーアさんが懸命に腰を振る姿はとても可愛らしく、それでいてエッチだった。

 

 結局、僕たち4人は日付が変わるまでひたすら交わり続け、快楽を貪り、いろんな体液を寝台のあちこちに撒き散らしていた。

 

 そうして体力が底を尽きへとへとになった僕たちは、行為の後始末も忘れて4人、裸のまま折り重なってずぶずぶと眠りの世界へ落ちていくのだった。……って、考えてみれば、僕以外の3人はいつも裸か。

 

    *

 

「うわっ、何じゃこりゃ……」

 

 目覚めてからの第一声はそれだった。僕の眼前には半開きの女性器とお尻の穴が、右を剥けば剥き出しの平坦な胸部が、そして左を剥けば少女のあどけない寝顔が、それぞれ広がっていた。

 

 鼻に届くのは、ミルクのような甘い香りと汗の香り、それと性の生々しい香りだった。特に臭いが強いのは、正面に広がる幼い秘部である。よく見ると、無毛の陰唇に白色透明の粘液が付着していた。

 

「……後始末、忘れてた」

 

 まいったなぁ……と、僕は自身の頭に手を置きながら深い溜息を溢す。昨晩は、僕を含めみんな乱れに乱れまくっていた。挙句、事後処理も忘れて溶けるように眠った結果がこれだよ……。

 

 早朝に嗅ぐにしてはあまりに生臭いその性臭に、僕の頭が軽い痛みを訴え始める。でも、このままうなだれていても仕方ないし、さっさと後始末を済ませるとするか……。

 

「って、これじゃ動けない……」

 

 3人とも、僕に身体を密着させて熟睡していた。今僕が動けば、必然的に彼女たちを起こしてしまう。それは憚られた。

 

 結論、彼女たちが目を覚ますまで何もできず、そのままじっと時が経つのを待つことしかできないのだった……。

 

「うっ……、気持ち悪い……。後でお風呂入ろう……」

 

 そんな決意をしつつ、僕は改めて目の前の光景に目をやる。一体誰が何処にいるのか、それを確認するためだ。

 

 まず、一番分かりやすいのは左隣で眠る少女だ。なんせ、横を剥けばすぐそこに顔があるのだから。

 

「そうか……、左はリレイナ様か……」

 

 そう呟きながら、僕はリレイナ様の頬をそっと撫でる。すると、まるで嬉しがるようにむふぅ……と深い呼気を漏らすリレイナ様。その温かな吐息が僕の頬をくすぐり、心地良い気分にさせてくれる。

 

 続いて、右隣へと視線を向ける。そこには、先ほどと変わらずほとんど膨らみの感じられない胸とその左右に対を成して鎮座する小さな乳首があった。頭の上から聞こえてくる呼吸音に合わせて、小さな乳首は微かに上下していた。

 

 僕は頭の上へと視線を移した。そこには、何とも気持ち良さそうなユーアさんの寝顔があった。僕は、今度は頬……ではなく、ユーアさんの可愛らしい猫耳を指でくすぐるように撫でる。あっ、ピコピコ動いてる。可愛い。

 

 そして、最後は正面……。今の体勢では顔を見ることはできない。だが、左右にリレイナ様とユーアさんがいたということは、眼前に突き出された小振りなお尻と無毛の女性器の持ち主はアルフィ様で間違いない。

 

 朝からこんな光景、刺激が強すぎる……。半開きの唇肉の隙間から覗けるピンク色の粘膜を前に、僕の顔が熱を持ち始めるのを感じる。

 

 その上、股間の膨張も抑えられない。しかも、アルフィ様の寝息が股間にかかり、さらに刺激されてしまう。あっという間に僕の一物は完全タイトなってしまった。

 

 まずいぞ……、今アルフィ様が目を覚ましたらいろいろと面倒なことになりそうだ……。まだ起きないで……、アルフィ様……。せめて股間の膨張が治まるまで寝ていてください……。

 

「ふわぁ……、んぅ……、もう朝ですか……」

 

 はい、起きちゃいましたとさ……。

 

「わあ、目が覚めたら目の前にナギサさんの大っきなおちんちんが♡♡こ、これはもう、ペロペロするしかありませんね♡♡」

 

「ちょっ、お、お止めください!!アルフィ様!!」

 

 ほら、言わんこっちゃない……。アルフィ様なら絶対やりかねないって思ったよ……。僕は必死で両手を伸ばし、僕の一物にしゃぶりつこうとするアルフィ様の頭を寸前で抑えた。

 

「ナ、ナギサさん……、酷いです……!残酷です……!生殺しも良いとこです……!!お願いですから舐めさせてください!」

 

「ダメです!幾らアルフィ様でも、朝からそういうことをするのは許しません!どうか諦めてください!」

 

「はぐっ……うぅ、届かない……。お、おちんちんがぁ……」

 

「んんぅ、何事……?」

 

 あっ、しまった。声張り上げすぎたな……。ユーアさんを起こしてしまった。彼女は寝ぼけ目をこすりながら、騒がしくしているアルフィ様と僕を一瞥する。

 

「あ、朝からフェラチオしようとしてるの!?ず、ずるいですよ、アルフィ様」

 

「ち、違う違う。というか、ユーアさんもアルフィ様止めて!」

 

「えっ?あ、うん、分かった」

 

「なっ、ユーアさん!?ぐぬぬ……、これで勝ったと思わないことです、ナギサさん。いつか絶対に朝のご奉仕を成功させてみせますから」

 

 ユーアさんによって僕の身体から引き剥がされたアルフィ様は、悔しそうに波が見しながらそんな捨て台詞……?を吐いていた。

 

「絶対させませんからね?」

 

「えー、ダメなの?」

 

「ユーアさんまで……!?ダ、ダメだよ?朝からこういうことをするのは不健全だよ。せめて夜にしよう、ね?」

 

「ぶー!ぶー!ナギサさんの意地悪!」

 

「……したかったなぁ、朝フェラ」

 

 ユーアさんは、決して僕の味方ではなかった。悲しいなぁ……。

 

「んん……ほえ……?どうかしたんですか……?」

 

 そうこうしているうちにリレイナ様も目を覚ましてしまう。結局、全員起こしてしまったな。

 

「……って、にゃぎしゃしゃんの裸っ!?はうぅ……、ワタシ……昨日本当にナギサさんと……♡♡」

 

 状況を理解した途端、リレイナ様は顔を真っ赤にした。この中では一番まともな反応である。というか、これが正常な反応だと思う。目を覚ました途端男性器にしゃぶりつこうとするのはどう考えてもおかしい。

 

「おはようございます、リレイナ様」

 

「ひゃ、ひゃいっ、おひゃようごじゃいましゅ……」

 

 噛み噛みだった。相当恥ずかしがっているんだな……。昨晩の行為の最中はすごく積極的だったのに、性欲から解放されると普段通りに戻るんだな。エッチになるとモードチェンジか、面白いな。

 

「とりあえず、皆さんお風呂に入られてはどうでしょう?」

 

 寝台から身を起こし、僕は裸の少女3人にそう提案した。正直、今の彼女たちはタオルで拭う程度の処理じゃ綺麗にならない気がする。

 

「そうですね、そうします」

 

「ワ、ワタシもそうします……」

 

「それなら、ナギサさんも一緒に入ろうよ♡」

 

「い、いや、それは……」

 

「大丈夫です。何もしませんから」

 

「……そういうことなら、分かりました」

 

 結局、僕も一緒に入浴することとなった。なお、浴室で歯……、

 

「ナギサさん♪身体洗ってあげます♪」

 

「特に、おちんちんは念入りにね♡」

 

「お、お手伝いします♡」

 

「あっ、その後はちゃんと私たちの身体洗ってくださいね?」

 

「……騙しましたね、アルフィ様。ユーアさんも……」

 

 そんなやり取りが繰り広げられていた。まぁ、何とか逃れたけどね。本当、油断できないな……、この娘たちは……。

 

 でも、そんな彼女たちとのやり取りを楽しんでいる自分もいた。賑やかで楽しい、そう思えていた。

 

「ナギサさん、笑ってます」

 

「わたしたちの裸見てにやにやしちゃってるの?えっち♡」

 

「いや、違うから。ただ、みんなといるのが楽しくてね」

 

「ナギサさん……。ワ、ワタシもです♡」

 

「にゃはは、わたしも楽しいよ♡」

 

「もちろん、私も同じ気持ちですよ♡」

 

 そうして、また新たな1日は始まったのだった。



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