無残じゃない無惨 (憲彦)
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自分は鬼舞辻無惨だった

明るく楽しい無惨様を目指しておりますw。


「鬼舞辻無惨?なんだその残念な名前の人」

 

「え?知らないの?今話題の人気マンガのラスボスだよ?今じゃ見ない日はないと思うけど?」

 

「こちとら午前2時に退社して午前5時に出社しなきゃいけないんだぞ……しかも土日祝日盆に年末年始。どれもこれも出勤でサビ残ありのブラック企業勤めだぞ……娯楽のマンガなんか読む暇あるか……」

 

「だからこんな夜中にスーツ姿でコンビニに飯買いに来たのか……お疲れさん」

 

「クソブラック企業が……!!」

 

 コンビニのレジの店員と草臥れた様子の男がそんな話をしていた。男の目は血走ってるし、酷い隈もある。余程あれな環境で働いているようだ。

 

「ほら。弁当温まったぞ。ここで無駄な時間過ごしてないで、早く帰って休みやがれ。休みの日に鬼滅の刃全巻持っていってやる」

 

「その休みがあればな」

 

 そんな約束を交わして、男は家路に付いた。マンションのポストの中から郵便物を取り出して、階段を登りながら内容を確認していく。因みに全部公共料金だ。

 

「テレビなんてもう何年も見てねぇよ。最後にガスと水道使ったのいつだっけ?あぁシャワーか……はぁ、明日払おう」

 

 そんなことを呟きながら、自分の部屋へと入っていき、買ってきた弁当をテーブルの上に置いた。袋から取り出していつでも食べられる様にしたが、水を飲んで椅子に座ると、そのまま死んだように眠ってしまった。

 

「あぁ~…………楽になりたい……」

 

 無意識かどうかは定かではないが、その言葉を言った後、ピクリとも動かなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ハッ!?いま何時だ?!……ん?」

 

 慌てて目を覚ますと、何故か自分がいつも住んでいるマンションの1室ではなく、時代劇に出てくるような古風な建物の中にいた。部屋の作りはかなり豪華。華美と言う訳ではないが、かなり広く綺麗。自分の下半身が入っている布団もかなり質が良い。着ている寝間着も肌触りがスゴく良い。いつも着ている安物のスーツやワイシャツと比べて、肌への負担も少なく感じる。

 

「ん?なんだこれ?鉈?」

 

 右手が何かを掴んでた。それに目を向けると、かなりの大きさの鉈だった。しかも赤黒い液体が滴っている。

 

「え?……はぁぁぁぁぁあ!!!?なにこれぇぇぇえ!!!!」

 

 鉈の先には頭を割られた男がいた。状況的に見て、完全に自分が殺った感じだ。

 

(ヤベッ!大声出しちまった!?逃げねぇと……!!)

 

 鉈を捨ててその場から逃げようとした。さっきの大声を聞いてか、人が部屋へと近づいてきた。急いで建物を出ようとしたが、5歩くらい大股で走ると突然倒れた。

 

(なんっだよ急に!10時間外回りで歩き回った事のある俺が?!たった5歩で?!息が上がって倒れる?!ハア!?)

 

 いきなり体力が悲惨な事になっている事に驚きつつも、逃げることを第1に考えて、その場から這って逃げていく。

 

「1回隠れねぇと……!!」

 

 縁の下に潜り込んで、部屋に入ってきた人達をやり過ごす事にした。何かを叫んでいる様だが、一切聞こえない。自分の激しい心音と流れの速くなった血液の音しか聞こえない。おまけに耳鳴りも酷い。

 

「マジでどうなってんだよ!夢なら覚めてくれ!!殺人犯になるくらいならブラック企業で働いてる方がマシだっての!耳鳴り酷くて何言ってるかも分かんないし!」

 

 土まみれになりながらも、這いながら建物の敷地から出ていき逃げることに成功した。

 

「しまった。もう目眩が……!意識も……!!ヤベッ……死ぬ……マジで…………」

 

 そのままゲロを吐きながら倒れて、男は意識を手放した。




はいは~い。唐突に始まった新連載(笑)です。次回は気長にのんびりお待ちください。感想なんかよろしくお願いします!


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代わってた体

ギャグになるのかシリアスになるのか。それは作者にもわからない。


「…………ハッ!?いま何時だ?!……この台詞この前も言ったな……」

 

「おんや?ようやく起きたか?お前さん4日間も寝てたんだぞ」

 

「4日も…だと……!?(納期が今日までの仕事がわんさか残ってると言うのに……!!)」

 

 同僚のペンギンに仕事全てを任せることにして、もう色々と諦めることにした。そもそも、気を失って起きたら元の場所。なんて言うことを想像していたが、現実は無情と言うことだ。仕事も帰ることも考えることも諦めて、拾ってくれた翁の質問だけに答えることにした。

 

「お前さん、名前は?」

 

「(この体の本来の持ち主の名前は)……分からない」

 

「大丈夫かお前さん?まぁ取り敢えず外に出て日の光でも浴びてスッキリ……どうした?」

 

「いえ。何故か日の光を浴びてはいけないような気がして……」

 

 目が覚めてから色々おかしい。4日間も眠ってた割には腹も減っていないし、体のダルさもない。少し動けば耳鳴りがして吐き気を催し、心臓の鼓動と血液の流れる音が頭の中を支配し気を失ってしまうくらい弱かった体が、今はなんともない。日光に対して無意識に拒絶を覚えてしまうこと以外には。

 

「おっかしな事言うな~。まぁ良い。取り敢えず婆さん呼んでくっから、お前さんは休んでろ」

 

 その直後、お婆さんがやってきて軽く話をした。何故か日光を拒否する体をお互いに不審に思ったが、まぁ無理なら無理で良いと言うことになり、深く追求することは辞めた。

 

 が、当然タダでここに住む訳には行かない。と言うか、社畜を長くやっていたお陰か、何もせずに過ごすと言うことができないのだ。言うなれば、泳ぐのを止めると死んでしまうマグロみたいなもの。この男は働いてないとどうにかなってしまうのだ。

 

「では、昼間は家の中の仕事を。夜は畑を害獣から守りますので、よろしくお願いします」

 

 それから数ヶ月。この男と老夫婦の少し奇妙な生活はそれなりに順調に進んでいった。その生活の中で、いくつか気付いた事がある。

 

 1つ目は、昼間よりも夜の方が動き回れると言うこと。日光を嫌っている故、これはある種当然と言える。しかし、常人のそれとは違う。普通の人間が昼間に動き回るのと変わらずに動けるのだ。夜と言う視界が最悪の空間を自由にだ。お陰で、畑の害獣被害はかなり減った。

 

 2つ目はやたらと体が丈夫な事。あの屋敷から逃げ出した時なんか、大股で5歩走っただけで目の前がチカチカして酷い耳なりに襲われ、一切動けなくなったと言うのに、今ではそんなことも無く、むしろ畑を荒らす野生動物を追いかけられるくらいに体が元気になっていた。すぐに死にそうなくらいに青白いのはそのままだが。

 

 そして最後に1つ。食事の量が極端に少ない。最初は若いからと気を遣って老夫婦が自分達よりも多めに食事を出してくれていたのだが、それでと人里離れた山の中で畑で野菜を育ててほとんど自給自足の生活をしている家だ。それ以外は弓矢による狩猟や川で釣ってきた魚。多く出てくるとは言え、量なんてたかが知れてる。にも関わらず、わずかに食べただけですぐに食べられなくなるのだ。満腹と言うわけではない。むしろ腹は減っている。感覚としては、受け付けられないと言う感じだ。

 

 そんな体の変化に一抹の不安を覚えつつも、食事が終わった後に与えられた自分の部屋に行き布団の中に入った。その日は何もなかったのだが、問題が起きたのは次の日の夜だ。食事を終えていつも通りに与えられた部屋に入るが、扉を閉めると突然膝をついて口元をおさえ始めた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 両目が紅く光、人間では考えられない瞳孔の開き方をしている。そして何故だかヨダレが溢れ出て止まりそうにない。

 

 苦しそうな呼吸と悶えた時の音に気付き、翁達が部屋の扉を開けて入ってきた。大丈夫かと声をかけて近寄ろうとすると、男が声を荒らげて来るなと叫んだが、時既に遅し。近付いた翁に掴みかかり肩に噛みついてしまった。犬歯が発達し牙の様になっているため、用意に皮膚を貫いてしまう。

 

「あっ、アァァァァァ……!!ウゥッ!逃げて、逃げてくれ!……私から、離れてくれぇぇぇぇえ!!!」

 

 なんとか正気を取り戻し、床や柱に頭や体を打ち付けて2人を喰らおうとする衝動に堪えるが、もう無理だと判断すると、壁を突き破って家を飛び出した。

 

「やってしまった……何故こんなことを……」

 

 そう言いながら自分の手を見てみる。その手は妙に筋肉が発達していて、丈夫な爪が伸びている。ちょっとやそっとじゃ折れそうもない爪だ。まるで獣の爪である。近くにあった水溜まりに顔を映すと、相変わらず目は紅く妖しい光を放ち、犬歯は牙の様に伸びていた。

 

「これは……本当に人間なんだろうか……目が覚めたら平安時代の貴族の屋敷にいて、目の前には自分が殺ってしまったであろう頭の割れた男の死体。なんとか逃げて拾われて、体調が良くなったと思ったら、とても人間とは言えない何かに変わってて、そして助けてくれた2人を襲ってしまって……もう何がどうなってるんだ……」

 

 改めて冷静に自身に起きた事象を並べてみると、気が狂いそうになってくる。それを全力で走りながら考えていた。そして気付けば日の出が近い時間に。

 

「あっつ……!!」

 

 木々の間から溢れた日光が腕に当たると、尋常ではない熱さと痛みが襲い、その部分だけ焼鏝でも入れられた様になっている。影になっている所に引っ込めると、すぐに再生した。

 

「もういっそのこと、この日に焼かれて……」

 

 そんなことを思ったが、1歩を踏み出す勇気が出なかった。こんなクソ見たいな状況に食人衝動。本当に死にたくなってくる。1歩足を踏み出せば全てが終わると言うのに、それができないでいる。

 

 仕方なく近くにあった洞窟に入り込み、天井部分を殴りわざと落盤させて道を塞ぎ出られないようにした。人と接触しなければ衝動に刈られて人を襲うこともないし、そもそも出られないため誰かに危害を加えることもできない。ここでできることは1つ。黙って眠りながら寿命で死ぬのを待つ。それだけだ。

 

「5年ぶりの長期休暇とでも思って、今まで寝れなかったぶん寝ることにするか……」




さっさとギャグパートに行きてぇな。まぁご都合改変がたくさん増えるので、今の内に覚悟決めといてください笑

感想よろしくお願いします!


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目覚め

書きたくない病を絶賛発症中です


 洞窟に入り込み、奥に一定のスペースを作り天井をわざと崩落させて自分を閉じ込めてから、一体どれ程の時間が経ったことか。何度も空腹による食人衝動に襲われたが、眠って耐えるを繰り返す内に、いつの間にかそれを感じなくなってしまった。

 

 隙間から入ってくる僅かな光で時間を確認し、手頃な岩を削って窪みを作り、染みてきた雨水を溜め込みそれを飲む。眠気を感じたら寝る。たまに間接と筋肉を伸ばすストレッチをして、それ以外はのんびりと過ごす。ブラック企業に勤めていた時とは比べ物にならない程にリラックスした時間を過ごせていた。

 

「少し外に出てみるか……」

 

 一応、酸素確保の為に上の部分には大して瓦礫を積んでいない。故にすぐに崩すことができる。穴を作って頭から入り、身を捩れば外に出られなくはない。しかし、自分を助けてくれた老夫婦を危うく食べてしまいそうになったあの事件。その光景が脳にチラつき、出ることに恐怖を感じてしまう。

 

「すぐに戻ればなんとかなるか……?」

 

 そんな考えを持ち、外へと出た。時刻は日が沈みかけている夕方。試しに少し腕を影から出して様子を見てみる。多少はヒリヒリするが、気にならない程度で、出ても問題ないと判断して洞窟から出た。

 

「あ、」

 

「あぁ?おい!こんなところに人がいるぞ!」

 

 洞窟から完全に出た瞬間、荷車に大量の荷物を乗せて腰に刀をぶら下げ弓矢や槍などをもって武装した集団と鉢合わせてしまった。身なりからして野伏せりの類いだろう。

 

 平安時代は王朝国家体制が確立し、朝廷は地方統治を事実上廃止。更に桓武天皇が軍団を廃止した結果、地方は無政府状態に陥り治安が悪化していた。16世紀までは日本列島の各地で戦乱が頻発していたくらいだ。

 

 故に、目の前にそう言った集団がいるのは何もおかしくないし、どちらかと言えばいない方がおかしい。と、歴史が得意なこの男は考えていた。

 

「俺たちに会うとは、ついてねぇ男だな~。おい、金目の物、全部渡しな。そうすれば命だけは助けてやるぜ?」

 

 刀を抜きながら、先頭にいたリーダーらしき男が近付いてくる。絶体絶命なこの状況だが、何故か恐怖を感じない。冷めた目で野伏せり達を見ている。が、それが野伏せり達の神経を逆撫でしたのか、刀を突き付けながら話をしてくるようになった。

 

「おい。死にたくないならさっさとしろ!今にも死にそうな青白い顔してんだ。命は大事にしろよ?」

 

 男のその言葉に、後ろにいる連中は笑い始めた。確かに、病弱だった頃の名残なのか、四六時中顔色が悪い。何も知らない人からすれば、すぐに医者を呼んで診察を受けさせるレベルだ。だからこそ野伏せりはそう言っているのだが……

 

「気色悪いヤツだな~。まぁ、死んでから持ってるモン奪えば良いかぁ?!」

 

 そう言って、刀を振り下ろしてきた。正直、元の時代でブラック企業の営業マンをやっていた時、取引先や上司からこの程度の罵倒はいつも浴びせられてきたし、時には手も出された。

 

 故に、別に何かしらの反応を示すこともなく冷静だったのだ。しかし流石に斬られるのは不味い。早く避けるために動こうと思ったが、しばらく何も食べていない為か、思うように動けず白刃をその身に受けてしまった。

 

 バキィン!!

 

 が、自分が斬られると言うことはなく掠り傷程度で、逆に刀の方が折れてしまった。この時代の刀、江戸時代以前に作られた刀は古刀と呼ばれるもので、地域ごとに材料や製鉄法方に差があったとされる。その為、強度や切れ味もチマチマであったと予想できる。故に、折れることはなんらおかしくはないのだが、それでも掠り傷しか付かないのは明らかに異常だ。

 

「なっ!?」

 

 それを見て、全員が動揺した。すぐに後ろに居たのが弓で矢を放ち当てるが、男は一切の反応を示さない。辺り所から考えて即死したとは思えない。野伏せり達が固まっていると、男は自分で突き刺さった矢を引き抜いて地面に投げ捨てた。

 

「あの。私別に金目の物なんな一切────」

 

「ハァァァァアッ!!」

 

 また1人槍で突き刺してきたが、当然槍が折れた。それを見て、自分たちの目の前に居るのがとんでもない化け物だと思ったのか、奪ったであろう水や食料、衣服や金目の物を渡して、命だけは助けてくれと叫びながら山の中へと走り去って消えていった。

 

「えぇぇぇぇ…………」

 

 しょうがないと思い、渡されたものを素直に貰い、洞窟の中へと運んでいく。別に欲しいわけではないが、あって困るものではない。誰かから奪ったものであるのは確実だが、ありがたく使わせて貰うことにした。

 

 その日を境に、少し外に出てみようと言う気になり、何度か外を出て洞窟周辺の地理を確認していった。野伏せり達にあったとに、食人衝動に襲われなかった事が、外へ出ても問題ないと言う自信に繋がったのだ。

 

 しかし、どうやら自分の住んでいる洞窟周辺の道は、野伏せり達の通り道のようで、頻度は少ないが毎回別の集団と出会う。その度に金目の物を出せだの着ている服を寄越せだの言われて攻撃されるのだが、毎回自分の武器が破壊されるだけで、一切の傷を負わせられず、その姿に恐怖を覚えて逃げていくのだ。しかも別にいらないのに、これで手打ちにと言わんばかりに全員奪った物品を置いていく。

 

「流石に迷惑だな……」

 

 と言っても、人と極力関わらずに生きていくと言う考えに変わりはない。その為に使えるものは使おうと言う考えで、物は全部洞窟に運び込んでいる。

 

 最初は気付かなかったが、洞窟はかなり広いもので結構な荷物を入れても全く狭くならない。これ幸いにと、荷車は解体して風呂や扉、その他家具に変えて、樽等は水を溜めるために再利用し、布団を作るなどしたら、いつの間にか洞窟の中が住みやすい空間に様変わりしていた。松明で明かりも確保している。もうスゴい事になっていた。問題は金の類いだ。本当にこの空間では必要ない。近くに魚の泳いでいる川を見付けたし、釣り道具もある。網もあるため定置網もできる。生きるためには必要な筈なのに、この状況下ではマジで使い道が無いのだ。

 

「まさか金がいらないなんて台詞を吐く日が来ようとは……!!」

 

 まぁ、そんなこんなで、しばらくリッチな生活を送る男であった。




なんとか書き上げました。疲れたな~

次回もお楽しみに!感想や評価、お気に入り登録もよろしくお願いします!!


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