[完結] FORMULA Renault 3.5 One year memory (九嶋輝)
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Round0 Anfang

俺が何故フォーミュラ・ルノー3.5V8に参戦する事になったのかはGP3最終戦アブダビでのスプリントレース後の出来事であった。そして今後の鍵を握ってる1人のキーパーソンとは一体誰なのか?


全ての始まりは、昨年のGP3最終戦、アブダビGPのスプリントレース終了後の事だった。俺は、王者獲得後の表彰台から帰ると、HFDPのトップを務めている山本さんに呼ばれて、来季の話をしていた。まず山本さんが開口一番「九嶋くん、君には来季、フォーミュラ・ルノー3.5で活動してもらう事にした。確かに君は、F1直下カテゴリーでまだまだ活動をしていたいと思うけど、これは、私が下した決断だ。私を悪く思わないで欲しい。」と言う衝撃的な一言が全ての始まりであった。俺は思わず「え、フォーミュラ・ルノーって…嘘…ですよね?でもフォーミュラ・ルノーで上手くいったらもう一度俺にチャンスをくれるんですよね?俺はどうしてもホンダと一緒に子供の頃からの夢であるF1で世界を走りたいんです!!お願いします!!」と泣きながら頭を下げると山本さんは次のような事を提案してきた。「じゃあフォーミュラ・ルノー3.5とかに興味があればだけどルーキーテストにでもエントリーしてみるか?あのレースレベルもF1に限りなく近い上にダウンフォースもF1に匹敵するくらいだから君ならすぐにでも走れそうな感じがするんだよ僕には。まぁ今からとある人に紹介状を書くから5分だけ時間を貰ってもいいかな?」そう言われるがまま、ちゃんと5分後に「出来た!!」と山本さんが俺にとある人宛に書いた紹介状を持たせて「1度アラゴンにて合流しよう。話はそれからだ!!」と今すぐにでもアラゴンに出発できる準備をした。俺はアラゴンに行く前に晴南が「先輩がFR3.5V8でレースをするなら私も!」なんて言ってきたから俺は、「晴南はEFOに残れ!あとは君に任せた!来年必ず戻って来る!」と言って全てを託して、スペインのアラゴンへと向かった。そしてこの日からフォーミュラ・ルノーのルーキーテストがあった為、そこにエントリーした。そして紹介状を持って、とあるチームのガレージを探していて、どのピットかなと歩き回ってたらある人が笑顔で手を振りながら「ヒカル!ココだよ!!」と叫んでいて俺はその声のするピットに向かうと俺はピットの裏側に連行された。そしてそこに居たのは、昨年世話になったチームの産みの親のだった。そして「やぁ、ヒカル。まさかお前さんがここに来るなんてどういう風の吹き回しやらね。」と聞かれ俺は「この声は…ト…トレバー!!」と答えるとトレバーは「やっぱりヒカルは、何かしらの縁で戻って来ると思ったよ。目をつけていて正解だった。」という一言を返してきた。そして俺は山本さんに書いてもらった紹介状をその人に渡すと、よく熟読して俺に「今すぐ走る準備をしよう。」と言ってきた。流石に俺もまだアップというよりいつものルーティンをしてなかった為「すいません3分だけ時間下さい。」と言いその3分間でルーティンを済ませていざマシンに乗り込むとしよう。と言いたいけど俺は「あれ?そういえば、シート作ってないよね?」と言うとオーナーは「いかん!忘れとった!今すぐ作ろう!」とかなり面白いリアクションをしてGP3で走れなかったという失意に満ちていた俺の心を笑いで満たしてくれたしまさか初日でこんなに笑ったのも無いくらい笑った。そしてシートを作っていざマシンに乗り込むとかなり新鮮な感覚が身体にまとわりついた。そして深呼吸してヘルメットバイザーを下ろしてメカニックに「エンジンスタート」と合図を送りエンジンに火が灯った。そしてギアを1速に入れて、初走行となる、アラゴンサーキットにコースイン。まずはいきなり飛ばすのではなく、まずはウォームアップして3周目からアタックを開始。ガレージからは、さっきまであんなに笑っていたオーナーの目が変わり、俺の走りを何か探るかのようにかなり興味深く見ていた。そして俺もそれに応えるように走っていたが何よりGがGP3のマシンとは比べ物にならない位凄いGが襲いかかって来た。そして1番キツかったのが下りストレートからのカーブ。あそこをノンブレーキで曲がろうものなら首を右側に預けてないとまず吹き飛ばされそうになる。それくらいGがかかるの所だけど1番楽しいのが裏ストレートに入った時が1番楽しい。何せあそこはスピードをどれだけ出せるかもそうだけど、侵入時にどれだけスピードを乗せて脱出出来るかが1番楽しいからだ。そして暫く走り込んで、ミシュランタイヤの特性にも慣れて来て順調にペースアップした所で1回ピットインの指示が出た為ひとまずガレージへと向かいマシンを引っ込めてマシンから降りると、まずトレバーが「す…スゴすぎるよ!ヒカルは!」と驚きが隠せてないようだった。俺は「初めてアラゴンで走ったんですけど自分ではまだまだです。」と言うとトレバーは「そんな事ないよ!!むしろ私はお腹いっぱいだよ!!」と言い俺も何故か知らないが納得していた。ルーキーテストが終わり1月に入ると東京オートサロンがある為、そこでどのメーカーもチームも体制発表をするというのが毎年恒例行事なのだ。俺はホンダ所属の為、ホンダの所にいた。そしてホンダのモータースポーツの体制発表の時間となり、各チームのドライバーが発表され、遂に俺の番となった。まずは山本さんが「ここで今回会場に来ているモータースポーツファン及び関係者の皆様に今年からフォーミュラルノー3.5に新規に参入するチームとドライバーをここで発表したいと思います。チーム名はTeam HFDP Carlin Racing、チームオペレーションは、無限とカーリン・レーシングの日英合同体制、ドライバーは九嶋輝選手、カーナンバーは13番を使用します。」とアナウンスがあった。そして俺も「今シーズン精一杯頑張りたいと思います!!応援よろしくお願いします!!」と素直な気持ちを述べた。そして暫くしてSNS上でマシンのカラーリングがお披露目された。マシンカラーはカーリン・レーシングのトレードカラーである青に白のラインを入れたカラーにHFDPやスポンサーをあしらったデザインとなり、それに伴い俺のヘルメットもデザインを変更した。ヘルメットデザインも昨年のキャリーオーバー。頭部にはホンダのロゴ。アッパー部分には「HFDP」といったロゴをあしらったデザインになり昨年のデザインにプラスアルファしたデザインになった。そしてレーシングスーツも同様のカラーになった。さぁアラゴンでの開幕戦が楽しみになってきた!!



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Round0.5 Rookie trial

今シーズンの開幕を目前に控えたと言うより、バリバリ控えまくってるフォーミュラ・ルノー3.5。今回は、チームがドライバーを選ぶ基準及びドライバーにテストドライブの機会を与える、「ルーキートライアル」というのがカタロニア・サーキットで行われている。俺は、ホンダからの推薦で昨年のGP3から引き続き、カーリンからこのトライアルにエントリーしている。ただ、スポンサーの関係上、ロゴを掲載する事が出来ないので、黄色に赤のツートンカラーリングのみという感じだ。俺は、初めて乗るダラーラT12にかなり緊張していたのと、楽しみもあった。この際トレバーから「今回は、GP3みたいに甘く見るつもりは無いから。よろしく。」と無線で言われると「こっちだって手抜きするつもり無いし、むしろ普段通り行かせてもらう。」と返した。そして、セッション開始と同時にコースイン。早速500psオーバーの世界へと誘われた。シートに押さえつけられて、どこまでも加速していくそのマシンは、まるで狂おしく身をよじる様に加速していた。俺は、普段の倍集中力を切らさないようにしていた。少しでも縁石に乗り過ぎないように、少しでも速く走る為に。タイムは、慣らし運転かつ初走行にも関わらず、とんでもないタイムを出していた。これには、カーリンのメンバー全員が度肝を抜かれた。慣れない左足ブレーキを少しでも身につけようと、周りよりも慣れるべく、走り込んだ。結果として、俺のタイムを誰1人として上回るドライバーは出て来なかった。俺は、ガレージに戻ってマシンから降りると、トレバーが「ヒカル…お前…いつの間に左足ブレーキを…」と言ってきて「トレバー、いつの間にって言ってっけど、俺、今日初めて左足ブレーキを使ったばかりだぜ?GP3時代を見てみ?唯一の右足ブレーキなんて皆に言われてたんだぜ?そりゃ左足ブレーキも身に付けたくなるよ。だから敢えてモノコックを吊るしで使ってんのよ。」と返したりもした。そして、ルーキートライアルからしばらくしたある日、カーリン側から「今シーズンは、ヒカルを走らせたい!!どうしてもだ!!」とオファーが舞い込んできた。俺はオファーが来なかった場合の事まで考えていた。「いっそ日本に帰国して、国内でのキャリアで終焉とするか、海外カテゴリーに残るか、無理をしてまでもGP3のシートを探すか。それかEFOに飛んでF3で走るか、全日本F3で走るか。」と色々プランを模索していた時に、カーリンからのこのオファー、俺が蹴っ飛ばす訳が無い。俺がHFDPの山本さんからこの話を聞いた時に即決で快諾。メディアでも「九嶋、来季はカーリンからフォーミュラ・ルノー3.5に挑戦決定!!」と大々的に報じられたりもした。なんていう裏がある。



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Round1 Riot

前回は新天地でのレース活動を開始し、心を入れ替えて挑むという事を決意して迎えた開幕戦アラゴン。ルーキーの走りをとくとご覧あれ。


前回は、初のフォーミュラ・ルノー3.5でのレース活動を開始して、心を入れ替えて挑むという事を決意して迎えた開幕戦アラゴン。でも実は1つだけ問題が生じていた。それは、まだ体制がまともな体制では無いと言うこと。ひとつ言うと、フォーミュラルノー史上初の2ヶ国合同チームと言う事で、確かに周囲からの注目は凄かった。でも肝心なコミュニケーション面での問題が、実はルーキーテスト時から露呈していたのだ。そう、日本語が分かるメンツが限られているという事だ。これは走る以前の問題である。でも海外チームとは言え、こっちは、あくまで日本と英国の合同チーム。あっち側にも少し位は日本人が居る。だから日本語がかろうじて通じるレベルなのである。だから俺が英語しか無理なメカニックの為に、英語でセッティングとかのやり取りをするしか今の所手がないのだ。でもほんっと皆、ここでのレースが楽しみで、いつもガレージでは笑顔と笑い声が絶えない。こういうチームに所属してるというだけで俺は幸せ者だと思ってる。そして、そうこうしてるうちにセッション開始の時間になった。俺は深呼吸して自分を落ち着かせて、まずメガネを外してイヤープラグを着けて耐火マスクを被りヘルメットを着けてバイザーを上げてメガネを着けてHANSを装着して走る準備を整えてマシンに乗り込んだ。そして俺がエンジンスタートの合図を送りエンジンに火が灯った。俺はギアを1速に入れてピットアウト。さぁ木曜のフリー走行が始まった。まずはここで土台を作る。そして体を慣らす。そんなのが木曜のフリー走行である。でもダラーラT12とGP3/13には大きな違いがある。確かに作ってるメーカーはダラーラだけど基本構成がかなり違うのだ。まず前者の場合エンジンは3.5リッターV型8気筒を搭載しており500psを楽に超えてるバケモノエンジンである事。そして1番の違いがパワステの有無である事。後者の場合は排気量3.4リッターV型6気筒の直噴自然吸気エンジンであり、馬力は全日本F3を少し超えてるレベル。そして前者は、KYB製の電動パワステを搭載してる為、レース中そんなに疲れない上にオンオフ出来る。だけど後者は、超古典的な重ステでハンドルをフルに切ろうもんならかなりの力で切らないと、重すぎてまともに動かせないという所だ。そして木曜フリー走行の結果を見ると8位と新規に参入したチームとしては、まずまずの結果であるが、個人的には納得行く結果となった。金曜フリー走行は、前の日のセッティングを少しだけいじったセットを試す事にした。メインストレートでもスピードは昨日より格段に上がった。けどこのセットもいいけど実は、オーバーランをしてしまいまだダウンフォースが足りてないのだ。取り敢えずピットに戻り「ダウンフォースが不足してるから少し増やしてくれ」と無線でお願いして増やしてもらい再度コースイン。そして問題であったエリアも難なく走り、3位と大きくタイムアップをした。そして迎えた予選。予選はとにかく今は上位に行く事を目標にした。そして予選開始の時間になって、各車一斉にコースイン。俺もすぐさまコースインをして、ウォームアップを行いアタックを開始した。予選はかなり荒れた展開となった。赤旗が2回くらい出されて残り時間5分となった所で再開して予選終了と同時にギリギリでゴールラインを潜った俺は何とか上位を獲得した。でも皆は第1目標をいきなり達成したもんだから大喜び。俺も大満足の予選だった。そして決勝レースは予選より荒れたレースになった上にどうしてアラゴンで4ワイドをやろうとしたのか訳が分からなかったレースになった。まず事の発端はレース後半に起きた。メインストレートで4台並んで横一列になり誰がトップになるか争ってた時にDAMSのマシンに、俺のリアとのフロントウイングが当たってしまい、俺のリアタイヤがバーストして、そのままバリアに突っ込んで、横転する寸前の大クラッシュをしてしまい、これで俺の開幕戦は終わった。仕舞いには俺が悪い訳では無いのにペナルティーとペナルティーポイントまで課せられ、あまりに理不尽過ぎて納得いかない開幕戦だった。マシンから降りて凄い悔しくて涙が止まらなかったけど皆は「よく頑張った!お前の暴れっぷりを俺達はすごい楽しく見ることが出来た!!次も頑張れ!!」と励ましてくれた。続くレース2では、昨日のレース1での怒りをぶつけるかの様なペースで初の表彰台を獲得した。



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Round2 Unstoppable

前回はかなり悔しい幕切れだったけど心機一転。次なる舞台はモナコ。


前回はクラッシュしてリタイアした上に理不尽過ぎるとも言えるペナルティーポイントまで食らって、表彰台獲得もしたけど、何か納得行かないまま終わった。けど、いつまでもこんなのでウジウジしてる訳にも行かない!気持ちも入れ替えて挑む次なる舞台は、モナコ。このコースはF1モナコGPで有名なサーキットある。そんなコースで決戦が行われようとしていた。そして木曜フリー走行が始まると俺はこのコースでの勝ち方を理解してる為いきなり「ハイダウンフォースにしてくれ。」とメカニックに伝えてダウンフォースをかなり増やす事にした。最初の内は監督からも「お前正気か?」と聞かれたが俺は「このコースでの大決戦を制する為にはこのセッティングがベストマッチだと判断したので。」と言うと監督も「わかった。」と納得していた。セッション開始の時間になりマシンに乗り込みエンジンに火が灯った。そしてメカニックに誘導されコースイン。このレースウィーク中は、ウォームアップをせずにそのままアタックラップに直行した。タイムはトップタイムを出したけど、まだまだ行けると判断して思いっきり攻める事にした。ブレーキを踏むタイミングを早めたりスロットルを踏むタイミングを早めたり遅めたりしながら走り、何とこの日の全体ベストを出したのとトップスピードも310Km/h前後と、かなりの速さを見せつけた。そして金曜フリー走行はまさかの事態に陥った。実はこのウィーク中、オーバーヒートやエンジンを起因とするトラブルが多発しており俺もそれに見舞われた。実は気温が32度とかなり暑くエンジンに負担がかかるのは必至だった。そしてそれはホームストレートで起きた。俺がホームストレートに差し掛かった所でアクセルを踏んだらメット越しに「バンッ!!バリバリバリ!!」と嫌な音が聞こえてミラーを確かめたら火を吹いていて煙も上がっており、急いでホームストレートのピットウォール脇にマシンを止めて消火器で火を消す為に急いで消火器を取りにマーシャルの元へと直行した。幸いにも位置が止まった所のすぐ近くだった為マシンから飛び降りてウォールを越えて左右安全確認をしてダッシュでマーシャルの元へと駆け込み「消火器ちょうだい!!」と言って消火器をもらい消火活動に入ろうとした時かなりの燃え方をしており1人で消すには不可能に近い状況になっていて慌ててメカニックも来てくれたからすぐに火が消えてくれた。これにより赤旗中断。でもマーシャルさんがかなり迅速な対応をしてくれたおかげですぐに赤旗が解除された。そしてマシンから飛び降りた際マーシャルに「大丈夫?怪我とか無いか?」と聞かれて俺は「大丈夫。身体も無事だよ。」と答えるとマーシャルさんが「それなら良かった。明日明後日頑張れ!!」と応援してくれて俺も少しだけ自信が持てた。そして迎えた予選。予選は昨日よりも気温は下がったもののやっぱり暑い。でも2度下がっただけでも随分違う。その分エンジンにかかる負担が減るからだ。そして予選開始の時間になりマシンに乗り込みエンジンに火が灯った。そしてメカニックの合図のもとコースイン。ポールポジションをかけたサバイバルアタックが始まった。もう狂気の沙汰である。まず俺がトップタイムを出すと、すぐにDAMSのキム・ユジン選手が塗り替えてトップに立つと、今度はDAMSのニコラス・デフリース選手が塗り替えトップに立つと言った超大混戦だった。だけどラスト3分で俺が最後のアタックを敢行して、ポールポジションを獲得した。迎えた決勝レース。決勝は燃料フルタンクからのハードタイヤを履かせてノーピット戦略を取る感じにしていた。シグナルがブラックアウト。スタートはロケットスタートを決めて、そのままホールショットも奪った。そしてレースは後半に突入し、皆オーバーテイクシステムを使っていたが俺はまだ2回しか使ってないため、残り3回と十分に残弾を保持しており、あとは逃げるために使うという戦略にしていた。ラスト3周で丁度使い切りそのままトップでフィニッシュ。自身初優勝をして、アラゴンでの雪辱を晴らすことができた。この瞬間をガレージで見ていた皆は大喜びしていて俺もマシンをパルクフェルメに止めて降りて思いっきりガッツポーズをして喜びを大爆発させていた。トレバーからも「よくやった!!まさか初めてのポディウムが優勝なんて凄いよ君は!!」と太鼓判を押してくれた。自分でも勝てると信じてて正解だった。そして皆を信頼してるから勝てたんだと思った瞬間でもあった。



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Round3 Drive us crazy

前回は待望の初優勝をして波に乗り始めた俺が向かったのはベルギー・スパ・フランコルシャン。


前回は待望の初優勝そして初表彰台を獲得してチームも日本の環境に慣れ始めて迎えた第3戦ベルギー、スパ・フランコルシャンサーキット。このサーキットは高速レースでレースファンに親しまれており、オールージュからラディオンの高速バトルが名物サーキットでもある。そして天候は「スパウェザー」と言うだけあって、全日程通してバラバラ。気温も前回よりは涼しめである。だけど路面温度が低い為、入念に熱入れないとタイヤはグリップしないは、ブレーキはろくに効かないはのまさに危険な状態になってしまう。しかもブレーキはカーボンブレーキの為、よく効く代わりにかなり熱入れないとやる気出してくれないという代物である。そんな不安に悩みながらレースウィークが幕を開けた。まずは木曜フリー走行からだけどこの路面温度のせいか皆スピンしまくってる。俺も危うく巻き添えを喰らう所だった。まずは前方走ってたポンスの1台がスピン。そしてそのすぐ近くに俺がいて、咄嗟に回避行動を取り難を逃れたけどマジで危なかった。でもよかった。変な所では無くて。もしこれが幅がそんなに広くないとこだったら多分俺もやらかしてた。これでひとまずマシン回収の為、赤旗中断。俺もピットへと戻り気を落ち着かせていた。マシン回収完了とのアナウンスが表示されて再開。タイムもそんなに悪くなく滑り出しは良い感じ。金曜フリー走行は昨日と打って変わって雨となった。しかもFR3.5で初体験となるミシュランのウェットタイヤ。どんなもんか見せてもらおうではないか。セッション開始の時間になった。俺はマシンに乗り込み、タイミングを見計らってコースイン。監督からも「雨だから慎重に」と指示があり、俺も普段より控えめだった。そして事態は思わぬ方向に傾あた。実はアタック中に、水しぶきはいいんだけど前方視界が恐ろしく悪く、相手の後ろ以前に前が殆ど見えてない状態だった。各チームも、流石に危険と判断して皆ピットに引っ込めて、雨が落ち着くのを待っていたが、雨足が落ち着く気配無し!結果赤旗中断のまま再開無し。そのまま終了となった。土曜日なんて、もう走る以前の問題で雨は酷いは、雷は鳴るはのもう予選所の騒ぎでは無くなってしまった。その為、予選は明日の決勝の前にやるという判断が下された。でもミシュランのウェットタイヤも、俺の予想よりかなり良いグリップ力を発揮してくれたから運転してても全く怖くなかった。そして迎えたFR3.5史上初となる予選決勝同日開催。まずは予選を行い、その後2ヒート75分の超スプリントレースをやるという事になった。天候は青空快晴。そしてセッティングは2日間とも使い物にならない為、コースを見て、ミディアムダウンフォースというあまり使わないセッティングを使う事にした。そしてコースレコード更新をかけた予選が始まった。誰が1番前か分からないくらい荒れた。けど結果はストラッカのユジンとエリアスが最前列を占め、その後ろに俺という形になった。そして75分の超スプリントレースが幕を開けた。燃料はフルタンクからのハードタイヤを履きノンピット作戦を取る事にした。そしてこの作戦が見事予想的中してレースを大きく変えるのだった。そしてシグナルがブラックアウト。ロケットスタートを決めてホールショットは俺が取った。そこからみるみるリードを広げて行った矢先にイエローとなり、これでマージンはおじゃんになったけど、燃費的に見てもこちらが1枚上手の為、ピットに入らずそのまま走る事に。そしてイエローが解除されてレース再開。俺はそのままリードを広げて、2ヒート75分の超スプリントレースを制した。終わった後、俺は思わず勝つよりもマシンから降りて「ふぅ…疲れた」という心の声が思わず漏れるほど過密スケジュールだった。そしてランキングでも遂に首位になった。



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Round4 !NVADE SHOW!

前回は超スプリントレースを制して波に乗って迎えた4戦目シーズンも残す所あと3戦となった。


前回はFR3.5史上初となる予選決勝同日開催というレースだったが、あれもあれでかなり楽しめた。そして迎えた第4戦の舞台はハンガリーにある、ハンガロリンク。このサーキットは、2006年にホンダがワークス・チームとしては、30数年ぶりに優勝したサーキットでもある。そんなサーキットで迎えた第4戦。天候は全日程通して雨だけど前よりはマシ。そして木曜フリー走行が始まった。ガレージには、また前回みたいになるんじゃないかと不穏な空気が漂ってた。はっきり言って俺もすごく不安だった。だけど走るしかない。セッション開始の時間になり、俺は深呼吸してマシンに乗り込んだ。エンジンに火が灯りメカさんの誘導でコースイン。ピットロードを出るともうかなり路面が濡れてるのがわかった。そして一番俺が恐れてるのが「ハイドロブレーニング」という簡単に言うと、タイヤが水の膜の上に乗ってしまい、全くグリップせず制御が効かなくなる現象を恐れているのだ。だけどミシュランのウェットタイヤは、かなりよくグリップするので、安心して運転できるのだ。そしてタイムも良い感じのタイムを出してこの日は終了。金曜フリー走行はかなり予選への手応え十分な日になった。そして予選は超大波乱の予選と化した。まずはフォーテックのマシンがスピンして、そのままウォールに直行。幸いにもマシンとドライバーに大した事は無かった。俺もアタックラップ2周目に入ったところで縁石に乗りすぎてしまいスピンして、ウォールに当たってしまいクラッシュしてしまった。そしてこれが決定打となり最後尾スタートに。俺的にも凄い悔しくてたまらなかった。ガレージに戻ると俺はオンボードを見返していた。そして友達の武藤選手が、ポールを獲得した時に思わずガッツポーズして大喜びしていた。ポールを獲得した時に、俺はマシンの近くまで行き「やったな!」と握手をした。迎えた決勝。決勝は雨が酷くて、3周減算して行われる事になった。シグナルがブラックアウト。俺はお得意のロケットスタートを決めて、スタートしてからすぐにトップ10に入る事が出来た。そしてピット作業も難なくこなしトップ3で迎えたラスト3周。なんと俺のマシンに、パワステのトラブルが起きてしまい、所謂重ステで走る羽目になった。そして俺の体力と腕が限界になってきた為、これ以上の迫撃を諦めて3位を死守する方向にシフトして、何とか完走して表彰台を獲得した。



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Round5 Soul soldier

前回はパワステのトラブルに苦しみながらも表彰台を獲得した俺達が向かったのはレッドブル・リンク。


前回はパワステのトラブルに苦しみながらも何とか表彰台を獲得してランキングでも遂に2位と同点になった。そして迎えた次なる舞台はオーストリアにあるレッドブル・リンク。このコースは、F1が行われてる事もあって、割と認知度が高いサーキットでもある。そしてこのサーキットの一番の特徴は「アクセル全開率」が高い事でも有名なサーキットでもある。ここはタイヤ戦略が全てを握ってると言っても過言ではない。そして天候は全日程通して晴れ。雨ではないから心配する必要は無い。セッティングは前回同様ミディアムダウンフォースセッティングを施す事に。そしてシーズンもあと残す所4戦となり、王者獲得とルーキーオブザイヤー獲得も時間の問題になってきた。そして木曜フリー走行が始まった。俺もマシンに乗り込みコースイン。もう今日に関してはひたすら走るだけ。そして初めて走るこのコースに慣れるのみ。そしてガレージに戻りメットを脱いでまず開口一番「Gが凄い。普段より2倍以上かかってるみたい。でも楽しい。」とメディアに応じていた。そして俺もかなり良い手応えを感じていた。続く金曜フリー走行はもう決勝のセッティングで走って決勝を前提とした走行の練習をしてた。そして予選では、何とかトップとの差が各車1秒以内に収まるという超大混戦となり、俺も半歩間違えてたら、2桁グリッドになってたかもしれない。そんな荒れた予選であり、俺もステアリングのモニターで予選が終了したというサインが出た時に思わず無線で「今何位?」と聞くと監督は「10位だ!」と答えて思わず「危ねぇ!!いくら何でも心臓に悪過ぎるよ!!」と答えたりもした。そしてこの予選は、FR3.5の歴史に新たな1ページを作るのだった。それはラスト5分での出来事だった。皆コースレコード更新合戦となりもちろんその合戦に俺も加わっていた。まずはアーデンがコースレコードを樹立した数秒後に、今度はロータスがコースレコードを更新。そしてまた数秒後にAVFがコースレコードを更新。また数秒後にストラッカレーシングがコースレコードを更新とかなり白熱した争いを展開していた。その争いもラスト1分で思わぬ方向に。今度は俺の番となり、最後のアタックをしてる最中だった。もう全コーナー最速表示のままホームストレートに帰って来てそのままコースレコード更新してポールを獲得して4ポイントをゲットした。そしてこの瞬間にランキングトップになった。そして迎えた決勝。決勝では、レース1でピットでミスってしまい2位になったけど、ちゃんと2レース共にマシンを壊さずに帰って来る事が出来たので、個人的には嬉しい限りだ。そしてポイントランキングでも少しリードしたまま第6戦を迎える。



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Round6 Determination symphony

前回はタイヤ泣かせの難コースで表彰台を獲得しポイントランキングトップで迎える第6戦。遂に物語もクライマックス!!


前回は高速コースのレッドブル・リンクで2位をゲットしてランキングトップで迎える第6戦。第6戦の舞台はイギリスにあるシルバーストーン。このサーキットの特徴はズバリなんと言っても「最後の1周まで分からないレース」である。しかもセッティングは、ミディアム寄りのハイダウンフォースという少し中途半端なセッティングが1番ベストだと判断していた為ミディアムダウンフォースセッティングに少しだけダウンフォースを増やした。と言ってもウィングを少し起こしただけ。これでもかなりの差が出てくるとか。そして木曜フリー走行開始の時間になり、普段あまり使わないミディアムタイヤを折角だからこの機会に試すことにして見た。まぁ物は試しと言うし、やってみなくちゃ分からない。タイヤが装着されて、エンジンに火が灯り、メカさんの合図でコースイン。まだタイヤが冷たい為、2周くらいウォームアップを行いそこからアタックラップへと突入した。はっきり言ってかなり首に負担かかるコースでもある。でも走っていてかなり楽しいコースでもある。そしてタイムもかなり良い感じのタイムが出て凄い大満足の1日だった。金曜フリー走行でもこの勢いは止まることを知らず、全体トップタイム。こうして迎えた予選。予選では遂に魔物も黙ってみる訳にはいかなかったようで容赦なく牙を剥いた。まずは俺がコースインをする際にまさかのエンストしてしまい、再始動するにあたって少しだけ時間をロスしてしまった。だけどコースインすると俺はそのタイムロスを無かったかのような走りを見せた。そして2戦連続ポールを獲得。4ポイントもゲットして2位との差を少しだけ広げる事が出来た。そして迎えた決勝。この魔物宿りしコースを制するのは誰か。シグナルがブラックアウト。スタートはかなり良い感じに決まった。このまま後続との差を広げたままピットイン。ピット作業も難なくこなしてトップのまま戦線復帰。そのまま1歩も譲らずにポールトゥウィン。そして全て終わった後に俺は山本さんに「君に話したい事がある。ちょっと来てくれ」と言われて着いていき、山本さんが「まぁ落ち着きな。ひとまず今日のレース優勝おめでとう!見てたよガレージで。」と言われ俺も「ありがとうございます!」と返すと山本さんからかなり衝撃的過ぎる言葉が出て来た「そう言えば九嶋君まだ来年何したいかまだ決まってなかったと思うんだよ。そんなに君には来季また海外に行ってもらおうかと思う」と言われ俺は「また海外でレース出来るってホントですか!?けどどのカテゴリーですか?」と山本さんは「君にはもう一度、GP3に行ってもらおうかと思う。このレースはF1の直下レースでもある。」と聞かされ「もう一度F1への道が開いたという事で良いですか!?」と思わず聞いた。そしたら「つまりそういう事だよ。」と言われ俺はかなり喜んだ。「そして気になる事がひとつあるんですけどチームはどこのチームですか?」と聞くと山本さんは「フランスにあるART GPだよ。このチームはホンダとも提携していて、ほら今年さ松浦君がGP2で走ったチームだよ。」と聞かされ俺も思わず「あぁ〜あそこか。」と納得していた。でもこう考えてみると俺って1回2013年にGP3で世界王者になってるからその点考えても久しぶりの海外でレースするとなるとワクワクしてきた。そんなに嬉しいニュースが舞い込んだ第6戦だった。



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Round7 Invincible Figter

前回の第6戦も表彰台を獲得してポイントランキングトップで迎える第7戦。


ポイントランキングトップのまま迎える第7戦。しかし2位との差は拡がっておらず、どっちが王者になっても可笑しくない状況である。そんな俺に課せられた王者獲得の条件は「トップでフィニッシュする事」すなわち優勝こそ王者獲得の為の絶対条件であった。そんな極限の戦いが鈴鹿で繰り広げられるのだ。しかも今回はFR3.5史上2度目となる2ヒート制で行われる。まずレース概要は土曜日に予選とレース1を行い、その次の日にレース2を行う事となったが、レース2に関してはリバースグリッドが適応される為、トップが8番手となりそして8番手がその逆となる。そして木曜フリー走行開始の時間になった。俺はこれと残す2レースをフォーミュラ・ルノー3.5でのラストレースと決めていた。俺はこの事をオーナーのトレバーに伝えると、トレバーは「僕も君というとてつもなく速いレーサーに出会えて光栄だった。そして僕もフォーミュラ・ルノーというハイレベルなレースが気に入ったみたいだ。でもとにかく僕は君に感謝している。何故かって?王者獲得まであともう少しの所まで来てるからだ。そしてヒカル、君来年海外に復帰するんでしょ。もしなんならウチで今年のマカオF3走ってみないか?絶対君は世界のテッペン取れる!」と感謝と今季のちょっとした「プラン」を伝えると俺は「ありがとう!トレバー!俺決めたよ!今年のマカオF3ここで走るよ!また、カーリンでね。」とあっさり今季のマカオグランプリ出場を快諾した。そして俺はマシンに乗り込みコースイン。そしてただひたすら走り込んだ。セッティングは今回限定の「シルバーストーン・スペシャル・ダウンフォース」という俺に王者を獲得させる為に今まで培ったノウハウを全部ぶっ込んだセッティングである。ちなみにこのセッティングは色々な意味で秘密が多過ぎるので口外しない。そしてタイムも3番時計と良い感じのタイムで木曜フリー走行は終わり、金曜フリー走行は途中何回か中断を挟んだが全体トップと、もう完全にドツボにハマって波に乗った状態である。迎えた予選。予選では遂に怒涛のスーパーラップ合戦となりかなり盛り上がった。まずは俺が我先にとコースイン。今回は少し多めにウォームアップをしてそこからアタックラップへと突入。そしてまずは俺がトップタイムを出して1度アウトラップに入った間に更新されてすぐさまアタックラップへと突入した。そしてタイマーが0になり第1セッションをトップで通過。第2セッションでは少しだけ荒れた展開となった。何とランキング2位のコムテックからエントリーしてる進堂結斗選手がクラッシュ。これには解説も思わず「マジかよ…」とつぶやくレベルの衝撃だった。幸いにもドライバーの命とかには別状無く普通に脱出してたので、そこは良かった。でもこれにより進堂選手が予選アタックを出来なくなったので、実質的に俺が王者となった訳だが、まだ喜べる状態ではない。迎えた決勝レース1は、俺がトップのまま征服して圧勝。そしてレース2は、ファイナルラップまでトップ争いを繰り広げた。そして決着は最後のコーナーで着いた。俺が最終コーナーをノンブレーキでクリアしてく時に進堂のマシンがアウトに持ってかれそのままコースアウト。そしてコーナーを俺が攻略してフィニッシュすると俺は天高く拳を突き上げ喜びを大爆発させた。そしてマシンをパルクフェルメに止めて2位の進堂選手と健闘をたたえあった。



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Round8 NEMESIS

前戦で王者を確定させた俺が向かった次なる舞台は、ドイツにあるニュルブルクリンク。このコースはF1ドイツGPやニュルブルクリンク24hでも有名なコースだ。ここで第8戦の幕が上がった。天候は全日程通して晴れ。フリー走行は、初のニュルに慣れるべく、とにかく走り込んだ。初日で、良いデータが取れた為、金曜フリー走行でもそれを元にして走り込んだ。こうして迎えた予選。予選では、DAMSとのポールポジション争いを展開した。ユジンの次に俺、俺の次にデフリースと言った感じに。そして予選は思わぬ方向に傾いた。何と最後の最後でチームメイトのイム・ウヒョンが自身初のポールポジションを獲得というドラマも起きた。このラウンドから最終戦までエントリーしている、嶋村春花選手は8番手グリッドを獲得している。そして迎えた決勝レース1。俺は、チームタイトルも決めようと頑張っていた。シグナルがブラックアウト。スタートは、完璧に決まった。開始早々にソマンを捉えてトップに浮上。だけどウヒョンも負けじと俺に仕掛けてくる。レース1は、最後の最後までソマンが仕掛けて、ゴールラインでコンマ数秒の差で初勝利を手にした。俺はそのコンマ数秒差で2位に入ってカーリンのワンツーを達成した。レース2では、昨日の反省点を活かしたレース運びを展開。実は、ソマンの所属してるカーリンと俺が所属してるカーリンは、同じなんだけどちょっと扱いが違っている。ソマンの方は「ジャゴニャアヤム・カーリン」というリオ・ゲラエルのお父さんが社長だかをやってるケンタッキー・ジャゴニャアヤムがスポンサーになってるチーム。一方俺が所属してるカーリンは「Team HFDP Carlin無限」という日英合同体制のチームの為、あくまでもカーリンなんだけど「単独エントリー」という扱いになっている。こう見ると結構複雑だ。話を戻すと、反省点を活かしたレース運びを展開して、終始落ち着いたペースでと言いたいけど、ここに来てDAMSのユジンがペースアップ。俺を引きずり下ろす作戦に出た。けど、こっちはまだまだ温存していたOTSや、タイヤがあるので逃げ切る事にした。無線でも「ユジンとの差だけ教えてくれ。」としか言わなかったくらいだ。それだけレースに集中したかった。レースも終盤に突入。ここに来てユジンが差を縮めて来た。俺は、これを待ってたかのようにOTSを起動させて逃げ切る作戦に出た。結果は、俺がトップのまま優勝という感じになった。



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Round9 sparkle

前回のニュルブルクリンクから、次なる舞台は、フランスにあるル・マン・ブガッティ・サーキット。このコースは、ル・マン24hで有名なコースであり「サルト・サーキット」という名称でも親しまれている。今回はそのサーキットである「ブガッティ・サーキット」という所で第9戦が行われる。ここをフォーミュラで走るのは少し新鮮な気がする。今シーズンのFR3.5も残す所、次のヘレスが最後となる。ドライバータイトル争いは決着したものの、チームタイトル争いが未だに続いており、トップは俺の所属してるHFDPカーリン無限だけど、このラウンドから「HFDP・カーリン無限ホンダ」という名称に変わった。チームのウェアにもルノーのマークとホンダのマークが着く事になった。迎えたフリー走行。俺は、コース特性を活かした走りをしてトップタイムを連発した。続く予選では、ジャゴニャアヤムのハリアントが初のポールポジションを獲得。インドネシア人ドライバーとしても初のポールポジションを獲得した。レース1は、スタートからいきなり荒れた展開のレースになった。1周目から多重クラッシュという大波乱もあった。そんな中トップに躍り出たのは俺。2位にハリアント、3位には、来季フル参戦を目指して「予行演習」として参戦している、アジア初のFR3.5のチームとなった「チーム・ハヤテ・Splash☆Star!!レーシング」の榎本舞選手という順に。結果は、俺の優勝という形に。続くレース2は、Splash☆Star!!2人組が、大躍動した。樹元咲選手と榎本舞選手が連携プレーで他チームを引っ掻き回すレースを展開。俺もそのペースに呑まれてしまい、思う様なレース運びを出来ない状態を強いられていた。追い付きたくても追い付けない状況がずっと続いていて、タイヤにも相当な負担になっていた。俺は無線で「ダメだ。タイヤと燃料が持たない!入る!この周で!!」と言って、緊急ピットイン。ソフトタイヤに交換後燃料をフルにしてコースイン。すぐさま、あの2人のペースから抜けるべく、前の周回よりも速いペースで走っていた。そして、ストレートで2人組をパスしてようやくトップに。あとは俺のペースに皆が着いて来れるかの問題だ。レースも終盤に入り、ここで皆一斉にペースアップ。俺の予想通りのレース運びになった。俺は、タイヤと燃料にもかなり余裕があったので、更にペースアップ。そのまま逃げ切って、連勝という形になった。この瞬間、カーリン無限ホンダのチームタイトルが確定。日本人初のFR3.5年間王者及び日本籍チームとしても初のFR3.5を制覇したとして歴史にその名を刻んだ。



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[最終回]Round10 あこがれ Go My Way!!

今シーズンのフォーミュラ・ルノー3.5も、遂にここ、スペインのヘレス・サーキットでフィナーレ。前戦でチームタイトルを獲得して、王者として迎えた最終戦。このコースは、F1が開催されていた事でも有名なサーキットだ。セッティングは、高速重視のセッティングにしている。マシンにも最終戦限定仕様として桜が散りばめられたり、リアカウルには日の丸に、俺の名前「輝」が刻まれたりと、最後の走りをするには持ってこいの仕様に仕上がったが、フリー走行や予選では破損する際のリスクを考慮して、前までのカウルを装着して走る事にした。こうして迎えたフリー走行。実は、俺自身ヘレスを走るのは意外にも初だったりする。まずは慣れるべく、フリー走行でひたすら走る事にした。ひたすら走ってる内に、トップタイムを連発していた。予選では、俺がポールポジションを獲得。2位にウヒョンというカーリンのワンツーに。続くレース1では、Splash☆Star!!の2人組とカーリン総動員という欧州フォーミュラカテゴリーでは、まずお目にかかることが無いレース展開になった。俺は、前回のニュルブルクリンクでの反省点を活かしつつ、どうすれば攻略出来るのかを探りつつ、走っていた。そして、ストレートでソマンを利用してパス。トップに浮上した。あとは、抜かれないように、ブロックしたりしながら走るのみになった。ミラーにはソマンの姿といきたいが、写ってたのは、ハリアントのマシンだった。結果は、俺が優勝。ハリアントが2位に入ってソマンが3位というカーリンが表彰台独占という形に。迎えた今シーズンのフィナーレを飾る、レース2。ここに今シーズンのフォーミュラ・ルノー3.5の「全て」が凝縮されてると言っても過言では無い。俺もその中の一人だ。去年の暮れに、いきなりこのカテゴリーに挑んでみないか?と言われた時から、既に今シーズンが始まっていたんだと思う。そしてマシンにも、この日までキープしていた限定仕様のカウルを装着して迎える、最終戦ヘレスのレース2。ガレージを出る時に「行ってきます。」とだけ言って、俺はコースイン。マシンをグリッドへと向かわせた。俺は、グリッド上で全神経を集中させていた。ヘルメットの中から聞こえるのは、心臓の鼓動、呼吸、観客の歓声、チーム達の動く音や声。そして、エンジン音。シグナルが1つ1つ灯って、ブラックアウト。俺は、今シーズン最高のスタートリアクションを決めて、ロケットスタートを成功。トップのまま甲高いV8のエンジン音を轟かせて、1コーナーを制圧。あとは、周りが俺にどう対応するかになってきた。レースも中盤に入り、そろそろ荒れる頃合いだなと予想していた。ただ、皆最終戦と言うだけあって、かなりクリーンなレース運びをしている。もしかしたら今シーズン初の全車完走も現実味を帯びてきている。レースも遂にファイナルラップに。泣いても笑っても、これが今シーズン最後のレース、最後のファイナルラップ。俺は、ミスすること無くトップのまま、ゴールラインを突っ切った。優勝は、俺。2位にはポンスの小林選手という日本人ワンツーも達成することが出来た。けど、俺はここで終わると思っていたが、まだやる事が1つ残っていた。それは「マカオF3日本人ドライバー完全制覇」という2001年大会以来の偉業が。



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特別編 今シーズンのエントリーリスト

今シーズン、圧倒的な強さを見せつけた「HFDP・カーリン無限ホンダ」を駆る俺の圧勝劇で幕を閉じた、フォーミュラ・ルノー3.5。今回は、今シーズンエントリーしたチームとドライバーを一挙紹介!!

 

今シーズン、圧倒的な強さを見せつけた、HFDP・カーリン無限ホンダ

 

No13 九嶋 輝(ルーキー)(フル)(日本)

 

失意のGP3シート喪失から一転。欧州でもその強さは衰え知らず。本当に強かった!!

 

 

 

今シーズンも俺の次に強かったし速かった、DAMS

 

No15 シン・ユジン(フル)(韓国)

 

No16 ニコラス・デフリース(フル)(オランダ)

 

このチームは、とにかく強くてすごかったね!!噂だと、来年レッドブル・ジュニアチームとして動く事も囁かれているとか。オマケに友達まで出来た!!特にユジン、速かったな…追いつけなかったもん。仲良い奴の背中って意外と遠いもんなんだね。

 

 

最後の最後まで俺に食らいついて見せた チーム・フォーテック

 

No40 ナジム・ジャファー(フル)(マレーシア)

 

No41 進藤 結斗(ルーキー)(フル)(日本)

 

今年は、CoCo壱大好きなジャファーと、俺の最大のライバル進藤選手がタッグを組んだ、このチーム。進藤選手は最後の最後まで強さを見せつけて、サーキット内が大いに盛り上がった。ジャファーもCoCo壱パワーを全開。表彰台取ったりと結構良い所に着けたりしていた。

 

 

 

今シーズンは、若手2人を起用して戦闘力も強化しつつある、ストラッカ・レーシング

 

No10 トニー・エリナス(フル)(キプロス)

 

No11 バルテリ・マリジャ(フル)(スウェーデン)

 

このチームは、上位がカオスになった時に強さを見せつけたりしていたね。後はミシュランタイヤとのマッチングに苦しんでたのも否めなかったね。

 

 

 

そして今シーズン、突如現れた謎多きチーム、ハヤテ Splash☆Star!!Racing

 

No34 樹元咲 (Rd8~9)(ルーキー)(日本)

 

No35 榎本舞 (Rd8~9)(ルーキー)(日本)

 

このチームは、何かいきなり来て、いきなり速さ見せるレースが多かったような気がするんだけど…俺の気の所為じゃ無いよね?マジで?

 

 

 

今シーズン、なんかイマイチパッとしてない様な気がしていたシーズンを過していた、アーデン

 

No64 ニック・ラティフィ(フル)(カナダ)

 

No65 イゴール・ペトロフ(ルーキー)(フル)(ロシア)

 

このチームは、強い時と弱い時のメリハリがハッキリしすぎていて、上位勢がろくでもないことになった時や、予選とかでは強いんだけどね…。

 

 

 

さぁ、トヨタ勢でも名門チームとして名を馳せている、TGRペトロナス・トムス・レーシング

 

No1 中嶋大貴(Rd1,3~10)(日本)、大嶋寛太(Rd2)(日本)

 

No2 村瀬 ツバサ (フル)(日本)

 

このチームは、トヨタ育成でかなり強くて、意地を見せつけてくれたね。おかげで今シーズン凄く楽しかったよ。

 

 

 

さて、今年はアジアンドライバーコンビとなった、ジャゴニャアヤム・カーリン

 

No3 イム・ソマン(ルーキー)(フル)(韓国)

 

No4 ショーン・ハリアント(ルーキー)(フル)(インドネシア)

 

このチームは、たまに良い所に着けたりしてる所謂「伏兵」的なポジションに位置している。

 

 

 

今シーズンはSFで活動していた早川選手を持ってきた、AVF

 

No7 早川 亮 (ルーキー)(フル)(日本)

 

No8 カルロス・セリス・Jr (ルーキー)(フル)(スペイン)

 

このチームは、トヨタ育成勢の早川選手が表彰台を多く取ったり、結構すごかった!

 

 

今年は、双方で8名のドライバーを起用したりと結構話題になった、ポンス・レーシング

 

No19 フィディオ・パズ・アルマンド(ルーキー)(Rd1~4,6)

(インドネシア)

 

リチャード・ファン・ビューレン(オランダ)(Rd5)

 

嶋村春花(ルーキー)(Rd7~9)(日本)

 

 

No20 リカルド・メルヒ・ムンタン(スペイン)(Rd1,3~5)

 

ジェームス・フォンタナ(ルーキー)(Rd2)(スイス)

 

デイモン・ブラット(ルーキー)(Rd6)(イギリス)

 

クリスチャン・ビンダー(オーストリア)(Rd7)

 

ヴィタリー・ゾロビン(ルーキー)(Rd8~9)(ロシア)

 

このチームはドライバー皆の活躍が目立ちに目立ったね。後はシトさんの大将ぶりも健在!

 

 

 

今シーズンも安定した結果を残した インターナショナル・ドラコ・コルセ

 

No38 アンドレ・ファンティン (ブラジル)(Rd1~7)

 

ピエトロ・ネグラオ(ブラジル)(Rd8)

 

No39 アイルトン・ボニファシオ(ブラジル)(Rd1~8)

 

ピエトロ・ネグラオ(ブラジル)(Rd9)

 

このチームは常に安定した結果を残したりしていて、それなりに強かった!

 

 

昨シーズンから参戦開始したイギリスのチーム、コムテック

 

No21 ルカ・デレトラズ(ルーキー)(フル)(スイス)

 

このチームは、たまにいい所にいたりするから、侮れないんだよね。特にデレトラズは、雨のレースに強いイメージがあるかな?俺には。

 

 

今シーズンは、ダブル・ルーキーコンビで挑んだテック1。

 

No17 リナス・ニッサニー(ルーキー)(フル)(イスラエル)

 

No18 アラン・パニス(ルーキー)(フル)(フランス)

 

このチームは、たまに速さを見せたりなど、結構見せ場を作って盛り上げてくれた。反面、焦りから来る自爆とかも目立ちがちなレースも多かった。

 

 

今シーズンも、伝説のJPSカラーは健在だったロータス。

 

No9 ミシェル・バキシビエール(フル)(フランス)

 

No81 マックス・バン・ビューレン(Rd1~4)(オランダ)

 

トミー・ストッキンガー(Rd5,7~9)(フィリピン)

 

ニッキー・イェロリー(Rd6)(イギリス)

 

このチームは、結構な強さでダムスとかに並ぶ3強チームに匹敵する強さを持ってるから侮れなかった。特にスペインGPでは、トップ争いに食い込むといった所も見せたくらい。

このチームは、安定したペースで走るのが得意で、たまに表彰台を取ったりと、かなりクリーンで良いレースをしていた。

 



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Round EXTRA マカオF3に緊急参戦

FR3.5が終わって一段落したと思ったら、今度はマカオに緊急参戦という超タイトな日程を送る事になった我々かあ御一行。今回はその栄光の瞬間をお送りする。


前回は、オーナーのトレバーから「今年のマカオうちで走らないか?」という提案を受け、俺が即快諾して急遽決定したマカオF3への参戦。これで俺自身5回目でもあり、最後のマカオF3となったマカオGPへの参戦を決めた。本来ならば、ここに参戦するという予定では無くて、このままフランスへと向かう予定だったが、急遽行き先をマカオへと変えて現地に直行した。そして誰もが憧れ、F1への近道とも言われるマカオグランプリが行われる、マカオギアサーキットへと到着した。すごい久しぶりに来たギアサーキットは、あの時以来なんも変わってない。実はなぜ5回目かと言うと、昨年はGP3に参戦してる都合でエントリー出来なかったからだ。でも今回はエントリー出来ると聞いて、俺自身めちゃくちゃ嬉しかった。このコースでF3とかをやると、もはや日常茶飯事となってる事がある。それは、1台事故るとただでさえ狭いコース故にすぐ多重クラッシュが起きて、一時赤旗中断とかである。俺自身過去4回も経験してるから慣れてるけど、初めての奴にとって、このコースはたまったもんじゃないと思う。このコースの一番の特徴としては、市街地コースでも数少ない高速コースであること。それと「普段の常識」がここでは、一切通用せず、逆に「非常識」となる事である。その為、極めて特殊なセッティングを要求される、「超ハイレベルなコース」でもある。だけどタイヤは、全日本F3時代に散々お世話になったヨコハマと、使い慣れてる我々にとっては、少しだけどアドバンテージを得る事が出来た。そして俺は、このマカオ限定オリジナルパッケージのマシンとご対面。カラーリングは、カーリン伝統の紺色になっており、エンジンもホンダが、晴南を「育成枠」でユーロフォーミュラオープンに送り込んで、そこで得たデータを元に、やっと「重い腰」を上げて製作した「ホンダHRF3-204」という、今回が更なるデータ収集と初めての実戦投入となる、来季導入予定の最新スペックのエンジンを搭載している。が、これは裏の名前で、表向きは「無限MF204改」という名称で、従来型のアップデート版という事だが、このエンジンと今のエンジンを見比べると、見た目こそ変わらないが、かなり細部は違っており、前のエンジン(MF204)からキャリーオーバーされたパーツは、せいぜいボルトとナットとガスケットとスロットルとインジェクター(改良型)くらいである。その為、現行型とは似て非なるエンジンである。そして現行型から素材を変更して、従来比約55%と大幅に軽量化しており、非常に軽量かつ頑丈で、パワフルなエンジンに仕上がっている。気になるコストも、上記のパーツをキャリーオーバーしたおかげで安く済んだとの事。ちなみにECUは、ボッシュから最新スペックの物を調達している。このエンジンを、このチームのマシン全てに搭載するというのだから、それに見合った結果を出さなければいけないという、デカいプレッシャーにも襲われている。チーム名も「チームカーリン無限ホンダレーシング」というチーム名になり、全車このエンジンを搭載しているが、他チームは「どうせ改良版とか言っても、そんなに速くないさ。俺等が速いに決まってんだから。」なんて寝言をほざいてる様だが、実はマカオに行く前に、1度このチームの皆を集めて、富士と鈴鹿で全日本F3のメーカーテストやタイヤテストに紛れてテストした時は、かなり良い結果が出てるから、他チームは、さっきみたいな寝言をほざいてる暇など無いはずである。ちなみに、このエンジンをテストした時は極限まで情報漏洩を防ぐ為、総動員で真っ黒なカーボン地のマシン、そしてホンダの関係者は無地の黒いジャンパーに無地の黒いシャツ、当然俺達も、スポンサーの同意を得て真っ黒なレーシングスーツに、普段着用してるヘルメットやバイザーにも前の部分に「HONDA」というハチマキやロゴを掲載しない代わりに、自分の名前やチーム名を掲載するという、超厳戒態勢を敷いてテストするレベルであり、このプロジェクト自体、マジの超極秘機密クラスのプロジェクトの為、開発責任者兼プロジェクトリーダーでもある駒沢さんから「今からやる事は、全員口外禁止及び、ネット上にも公表禁止!!そして、これに関連する書類の持ち出しも禁止!書類の保管は、所定の金庫に必ず入れて厳重に保管すること!!設計図もだ!!何か聞かれたら単なる肩慣らし、もしくは、リフレッシュだとか暇つぶしだとか適当に言って誤魔化す事。いいか!!」と、かなり徹底的に対策を施してのテストであり、走行してガレージに戻っても、特にエンジン周辺は、黒い横断幕で完全に隠して、いや、シャッターを閉めるなどして、機密漏洩防止を徹底するくらいであった。そして各コースともに、かなり良いタイムを出して大満足の結果で、マカオへと向かった。ガレージでは、このエンジンの開発責任者兼プロジェクトリーダーの駒沢さんが「実はね〜、このエンジンは、私がすごく暇になっていた時に、ふと設計図を作っていたんだけど、上の人からの許可がなかなか降りなくて、私が痺れを切らして、今F3に関与してる連中全員集めて作ったんだよ。だけど、このエンジンは、今後トヨタやスリーボンド(日産)よりも安い値段で、ばら撒く予定からここで結果を出さないと意味無い!!そしてこのエンジンには全世界のF3走ってるチームの命運がかかってる!!全力全開で行くぞ!!気ィ抜くんじゃねぇぞ!!」と普段ではありえないくらい熱く燃えていた。(普段は凄い優しくて面白い人なんだけどね…実際、俺も何度駒沢さんに助けられたか、分からない位助けられている。)俺達も、これに応える為に全力全開で行く事を誓った。皆で円陣組んで「ぜってえマカオ、いや世界のテッペン取るぞぉ!!」と俺が言うと皆は「おぉ!!」と足踏みして持ち位置に着いた。そして今回限りのチームメイト2人であるローゼンクヴィスト、エリクソンとも「派手に行こうぜ!!」と言い握手を交わした。そして迎えた水曜フリー走行。もうこの日からマカオF3名物の大波乱の始まりである。俺が走行中に、ブラインドセクションで1人壁に刺さっており、危うく俺も巻き込まれそうになったが、間一髪で回避。車両回収の為、一時赤旗中断。だけど、このエンジンも期待通りのパフォーマンスが出ている。事実、バックストレートやメインストレートでは、世界最強クラスのエンジンとも言われてるワーゲン(スピース)やベンツ(HWA)を楽に超えるスピードを叩き出してるし、元々これらのエンジンを超えるスペックになる前提で作られてるから、むしろこれくらい出してもらわないと困る。(実際に、何故あそこまでスピースやHWAが強いのかを探る為に、晴南にはスパイになってもらう形で育成枠で、ユーロフォーミュラオープンに出向という形でエントリーしてもらっていた。)だけど、1番凄いのが、その適応性である。実は、マカオが始まってからどのチームもセッティングで頭を抱えており、一概にこれと言ったセッティングが見つけられないというチームが多数見受けられたが、カーリンは、これまでの経験やノウハウをかなりフィードバックしてる為、すぐに最適なセッティングが見い出せたのである。そして、この日のトップ3は、俺達が占め、カーリンの底力を見せつけた。木曜は昨日の結果を踏まえた所謂、熟成走行をするだけで特にこれといって特筆するものは無いが、満足いく日になった。そして迎えた金曜。この日は予選レースの順位を決める予選である。セッション開始の時間となりコースイン。結果は俺がポールポジションを獲得そして2位にはトムスの宮田颯とマカオグランプリ史上初の日本人ワンツーとなった。だけど喜ぶにはまだ早い。まだあと2日残ってるからだ。そして迎えた予選レースのレグ1。特に注意すべき点はスタート直後にリスボアに刺さってこれを起因とする多重クラッシュそして赤旗中断である。俺はとにかくリスボアさえクリアすればこっちのものだと考えている為、とにかくそれに集中していた。フォーメーションラップを終えてグリッドに着き、シグナルがブラックアウト。スタートは俺に軍配が上がり、後はリスボアさえクリアすればこっちのものだ。そして肝心なリスボアも難なくクリア。が…ミラーを見ると毎年恒例マカオの多重クラッシュ。これにより赤旗中断となった。俺は即座に無線で「2人は無事か?!」と聞くと「安心しろ2人とも無事だ。」と来た為とにかく一安心。その間一時的にピットで待機していたがマシンからは降りずいつでも行けるスタンバイをしていた。そして全車回収完了というレースディレクターの指示が入りもう一度コースイン。もう一度フォーメーションラップを行いグリッドに着き、リスタートとなった。そしてシグナルがブラックアウト。スタートは完璧に決まり後は自分のペースで進めていき、最後の最後までトップを守り抜きそのままポールトゥウィン。だけどこれで喜ぶなんてもってのほかである。本当に喜んでいいのは明日の頂上決戦である。これは明日の最終決戦のグリッドを決めるだけのレースであり、決勝では無い。俺は記者会見でも「これで喜んでるなんて思わない方がいい。今日の結果より俺は明日の結果が全てだと思ってるから。」と応えるくらいここにかける思いは大きいのだ。そして迎えた決戦の日。日曜日。この日で全てが決まると言っても過言では無い。はっきり言って、昨日のレースで馬鹿みたいにはしゃいでるようじゃ、今日は痛い目に遭うという事を理解してる奴とそうでない奴はっきり別れている。もちろん俺は前者に該当する。そして俺は深呼吸して全ての準備を済ませマシンに乗り込み、俺の担当メカニックでもあるジェームズの「GO!!」という掛け声と共に決戦の地ギアサーキットへと向かった。今の俺には目に見える全てのドライバーが敵だとしか認識してない。例えそれが親友だろうがチームメイトだろうが何だろうが関係ない。ここに足を踏み入れた以上は皆敵である。俺は心の中で「来るなら来い!徹底的に叩き潰してやる!情け容赦、くだらん寝言、能書き、戯言必要ない!」と叫んでいた。決戦の時は刻一刻と迫っていた。心臓の鼓動は高鳴り、呼吸はすごくゆっくりになり、周りの物や車はかなりゆっくり動いてる様にも見える。フォーメーションラップが終わり、グリッドに着き、これが泣いても笑っても最後の決戦の時が来た。シグナルがオールレッドからブラックアウト。スタートは俺が得意とするロケットスタートでトムスの宮田を潰しにかかりリスボア直前で制圧。リスボアも難なく通過して、後は自分のペースで引っ張るだけとなった。レースも中盤に差し掛かり、戸田から出てる金石が近づき始めてるが、高速コーナーで撃沈させてトップを守り抜いた。レースは、ファイナルラップ。遂に俺の悲願達成まで僅かとなった。そしてチェッカーフラッグ。俺は無線で思いっ切り感情を爆発させてただ叫ぶ事しか出来なかった。マカオの表彰台には堂々と日の丸が掲げられ君が代が響き渡った。そしてレース終了後俺はオーナーのトレバーから「よくやった!!君は本当に凄いドライバーだよ!!」と太鼓判を押してもらえた。そして俺はテディに「来季EFOからGP3に1人乗せたいドライバーがいる。」と言うとトレバーは「一体誰なんだい?」と聞き、俺はこう答えた「そのドライバーの名は、セナ・サトウ。彼女も俺同様ホンダ育成ドライバーでありF1を目指してる者でもある。そんな彼女にホンダは海外で経験を積ませる為、引き続きGP3の参戦を表明したんだ。そしてチームに関しては、俺が推薦するような感じなんだけどここで走らせて欲しいんだ。その方がきっといい経験になる。」と言うとトレバーは「君、興味深いドライバーを知ってるもんだね。」と言うと俺は「俺の一つ下のドライバーですからそれくらい知ってますし、何せgp3時代から俺が育てている後輩なので。」と言うとトレバーも「すぐにオファーを出そう!!こんな人材は早い内にゲットしないと大変な事になってしまう!!」と大慌てで書類とかを書いていた。そして一段落するとトレバーは「それより何故彼女をここで走らせようなんて考えたんだ?」と言うと俺は「ここは言ってしまえばホンダの海外でのメインチームかつワークスチームにも等しいチームだからだよ。その方が彼女にとっても安心してレースに取り組めるしサポートが手厚い方が心強いでしょ?」と言うとテディもうんうんと頷いていた。そしてテディは「1度彼女をイギリスのサリーにあるカーリンのファクトリーへと呼んでくれ。」と言いトントン拍子で話が進み、その年の暮れにはカーリンのファクトリーでシート合わせとかを行い、正式に契約してカーリンから来季のGP3に参戦するのであった。そしてこのエンジンは世界各地のF3選手権にばら撒く事も決まった。



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