馬鹿は恋の提議を知らない (唯野婆華)
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馬鹿は恋の提議を知らない
どうしてこうなった
「はぁ…」
放課後、騒がしい教室で一人の少女は溜め息を漏らした。それは草臥れたようなものではない。そもそも彼女はバスケットボール部に所属していて体力は有り余っているし、ましてや今日は教職員全員が昼から出張である為、四時間目までで授業は終わり部活動もない。その溜め息を表現するとしたら戸惑うような、悩んでいるような、そんな溜め息。別に午後から誰と、何をするかは決まっているので悩む理由はないように思うがその相手が問題なのだ。
彼女こと、時雨 舞は恋をしている。午後からはその愛しい人との二人だけのカラオケなので緊張しているのだ。そんな中、舞の席まで近ずく少女。
「舞、遅くなってごめ〜ん。また先生に怒られちゃって。」
そう言って舞の最愛の人、馬場鹿 結は笑う。
「ううん、大丈夫。馴れてるし。じゃあ、行こっか。」
舞もそう言って席を立つ。そして二人はカラオケへと向かった。
カラオケにて
「ふぅ〜、やっとついた。舞〜先歌っていい?」
と、結は問う。舞は「いいよ。」と、軽く返す。
「やった〜。採点も入れるね。」
と、結が曲と採点を入れる。舞はそれを見て微笑む。
すると結がん?と首をかしげ、
「どうしたのすっごいにやけてるよ?」
と、言った。舞は大慌てで
「な、何でもないよ〜。」
と返した。
「いや〜、やっぱり舞と遊ぶのは楽しいな〜。」
「わ、私も結と一緒にいるの好きだよ。」
帰宅途中、舞と結はそんな会話をしながら歩いていた。もともと家が近く、帰る方向が同じだからだ。そんな会話の中、舞の顔がいきなり暗くなる。
「ねえ、私達って付き合ってるよね。」
と、雰囲気の変わった舞が言う。
「何言ってるのよ〜。先週私から告白して、舞がOKして晴れてカップルになったでしょ?」
と結が頬を赤く染めて言う。
「ならさ…」
「なんで私以外の人とあんなに楽しく話してるの?」
「え、」
「結は私の彼女なのに結のことを理解してるのは私だけなのにあんなオスなんか結のことをなんにも分かってないのになんで私以外と話すの私は家族とも話して無いのになんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで」
結は混乱していた。普段はおとなしくて優しい舞が狂ったように自らの想いをぶちまけている。その内容が理解出来ない。否、理解出来る訳がない。それだけ舞の愛は重いのだから。
「あ、そうだ。」
舞が明るい声色でそういった。だが結にはそれがおぞましく感じたのか、小刻みに震えていた。舞はその事を感じ取ったようで、
「そんなに怖がらなくて大丈夫。だって
愛してアゲル
私の愛を理解してもらうまで監禁するだけだから。」
その言葉を理解する前に結の意識は深い場所に沈んでいった。
最初はヤンデレじゃなかったのにいつの間にかこうなった。
だが私は謝らない(謝れ)
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