三玖を愛する転生者の話 (音速のノッブ)
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登場人物紹介(ネタバレ注意)

そー言えば、登場人物紹介ってもっと前に投稿しますとか言ってたような……………うん。気のせいって事にしておこう!

林間学校より先の本編ももうすぐ開始予定です。幕間の物語は、次の出番四葉かぁ……………どーしよっかなー。

ある程度この小説を読んでいる方向けです。






火野 総悟

 

身長 162cm

 

体重 53kg

 

誕生日 8月8日

 

血液型 O型

 

得意教科 全科目(前世では文系科目。学年トップクラスの成績だった)

 

苦手科目 特になし(前世では理系科目。苦手と言ってもテストでは平均よりちょい上の点数を取っていたが)

 

趣味 アニメ、漫画、ライトノベルの鑑賞や聖地巡礼

 

 

《概要 》

 

前世では、子供を庇ってトラックに轢かれて死んだ大学生の18歳だった。転生して大好きな漫画『五等分の花嫁』の世界で第2の人生を歩む。前世の記憶は引き継いでいるが『五等分の花嫁』に関する情報の大部分は神様に削除されている。アニメや漫画、ライトノベルが趣味の自他誰もが認めるオタク。転生前は小学生時にクラスのリーダー的存在をぶん殴った事が原因で、友達と呼べる人はおらず一匹狼状態だった。兄弟又は姉妹がいたが─────?性格は基本的にはフレンドリーでノリが良い(前世では一匹狼だったのでその性格が表に出る事はなかった)。ヘタレ要素も少なからずあったりする。そしてドSの愉☆悦部員。趣味関連の話となるとテンションがとても高くなる。身体能力・戦闘能力は神様のアドバイスを受けて幼少期から運動したり、武術などの色々な習い事をさせて貰っていたので高い。勉強分野も高校までの膨大な時間を使って、得意な文系科目と比べて劣っていた理系科目を得意にした為、完璧と断言できる。三玖の事は大好きだが、他の4人の事も嫌いではないので4人に困ったことがあれば協力したりする。

 

転生特典

①金持ちの家に産まれる

②専属の使用人メイドがつく

③あらゆるアニメや漫画、ライトノベルを見たり読んだり出来る(※総悟の前世でアニメ等の最新話が更新されたりするとタブレットにも反映される)

 

・神様特製のタブレット………総悟の宝具。このタブレットでありとあらゆるアニメ等が見れる。普通のスマホやタブレットのような機能は持ち合わせていない。漫画、ラノベはタブレットモードから紙媒体のペーパーモードにして読むことも出来る。基本的に見えないように魔術が掛けられているが、総悟の任意で切り替えは可能。いかなるモードであっても、核でも傷付かないようなとんでもない強度を持っている。

 

 

 

 

神様(真名:????)

 

《概要》

 

総悟を転生させた張本人。かつて人間だった。人間だった頃は世界を救いまくったらしく、その功績で神の座についており、天界の序列第1位。要は1番偉い。基本的には総悟の行動を天界から見守っていて特に手出しをするつもりはないが、たまに様子を見に顕現して総悟と話したり弄ったりする。戦闘能力は作中最────否。ありとあらゆる平行世界のいかなる人物でも彼に勝てる者はいないので、作中と言うより全世界最強。ただし、弱点は一応ある。

 

 

 

 

白水 星奈

 

身長 167cm

 

誕生日 11月11日

 

血液型 A型

 

体重 55kg

 

趣味 読書

 

総悟の専属の使用人のメイド。総悟が産まれるよりも前に、使用人メイドとして働いていた。綺麗な顔立ちで巨乳と、ルックスに関しては完璧に近い。人間離れした身体能力を保持していたり、武術に秀でているので戦闘能力は総悟以上にとても高い。仕事面では苦手が存在せず、完璧な仕事振りで家事をこなしている。仕事の関係で総悟の両親がともに家にいないことが多かったので、総悟とは幼少期の頃から一緒に過ごす事が多かった。その為、互いに絶大な信頼を置いている。今の総悟にとっては姉みたいな存在で、彼女にとっては総悟は弟みたいな存在である。しかし、信頼している総悟にも話していない、ある秘密が存在している─────。




……………気のせいではないですね、すいません。大分遅れました。まぁ色々と裏であったんです、はい。

ここに載っていた 総悟の兄弟又は姉妹、星奈さんの秘密、神様の真名については本編や幕間の物語で判明していく予定です。ただ、この小説の状況次第では神様の真名については途中でヒントが示されるかも…………しれないし、示されないかもしれません。まぁ、でも真名とかは気にせずいつも通り楽しく神様を見ていてやってください!もちろん、総悟や星奈さん達の事も!

今日も読んでいただき、ありがとうございました。



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プロローグ

五等分おもろいな→三玖可愛いな→五等分の転生もんの小説少ないな→じゃあ転生モン書くか

こんな感じの経緯で生まれたのが当作品。見切り発車はしてる、だが後悔はないッ!反応が良かったり、気がのったら続きをやります。

それではプロローグをどうぞ。


「ん…………………は??どこだ、ここは……………?」

 

あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!目を開けたらよく分からん西洋造りの部屋に立っていた。な、何を言っているのか分からねぇと思うが…………俺も分からん……………。

 

「そ、そうか!夢かこれは!そりゃそうだよな、目を開けたら知らん場所に立ってるなんて夢しかあり得ないよな!そりゃそうだ!ハハハハ!」

 

「………………おーい、1人でぶつぶつ喋ってるそこの君ー、そろそろ良いかーい?」

 

「ん?」

 

後ろを振り向くと─────玉座にふんぞり返っている白いスーツの偉そうな男がいた。ああ、これはアレだ。結構横暴でわがままなめんどくさいタイプの

 

「だーれが、横暴でわがままなめんどくさいタイプだっつーの」

 

「なっ…………思考を読まれた、だと………!?」

 

「まー、僕は神様だし。そんくらい朝飯前だからねー」

 

「は?」

 

神様?GOD?俺の前で座ってるこいつが?

 

「そうには見えないけどな…………俺の中だと神様って言ったらもっとじーさんみたいなイメージなんだけど」

 

「君は縄文時代レベルの時代遅れだね」

 

「あぁ!?」

 

変な言い回しだが、イラッとさせるには充分の悪口だ。

 

「夢の中でもイラッとさせるな!現実では膨大な大学の課題でストレスが溜まってるんだから、せめて夢の中ではストレスフリーにさせろや!」

 

「……………ああ、君大学生だっけ?」

 

「おうよ!彼女歴無し=実年齢の童貞大学生だ!」

 

フッ、決まったぜ。俺の定番の自己紹介の台詞が!

 

「で、名前は?」

 

「スルーすんなよ!つっこめ!無視されるのが1番恥ずかしいだろうが!…………………名前?火野 総悟だよ」

 

「じゃ、総悟君。君、死んだんでよろしくねー」

 

「おう!………………………ん?シンダ?」

 

「そう、シンダ」

 

「……………………いやいやいや!夢の中だからって冗談きついぜ!俺がそう簡単に死ぬわけないだろ!」

 

俺は安全第一な主義だ。信号も守るし、曲がる時も左右の確認も徹底するし、未成年飲酒もした事がない。

 

……………まあ、正直守るのが当たり前の事だが。

 

「…………………やれやれ。どうやら事故のショックでど忘れしてるようだね……………」

 

そう言うと自称神様は指をパチンと鳴らすと視界から消え、辺りは真っ暗になると、目の前に映像が写し出される。

 

「あ?………………これは……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=================

「はー、いつも通り課題が大量……………頭にきますよ!」

 

大学からの帰路を歩きながら、講義で配られた鬼のような内容の課題の資料を見て教授に対して悪態をつく。あー、マジめんどい。

 

「こりゃ至福のアニメタイムはお預けか。五等分の花嫁見返したいってのに」

 

俺はアニメやラノベ、漫画が大好きなオタク大学生だ。数あるお気に入りの漫画の中でも現在ダントツで好きなの五等分の花嫁。内容も面白いし、ヒロイン5人がマジで可愛い。異論は認めぬ。その中でも俺が大好きな推しは三久だ。俺のハートはデレた時の可愛さと魅力、そして成長していく様子に心奪われた。

 

「俺もあんな可愛くて魅力的な女の子との出会いがあればなー。しかし、悲しいかな現実はねぇ…………」

 

そんなことを考えながら歩いていると、俺の目先をボールが転がって、それを取りに来たと思われる小学生位の子供が道路に出て行くのが見えた。

 

「俺もあれ位の頃は課題だの復習だの考えずに楽で良かったのになー。あー、羨ましい!…………っと、いけね。早く帰って課題やらねぇ…………………ん!?」

 

その時、俺は子供のいる道路の向こう側からかなり早い速度で走ってくるトラックに気づいた。運転手が居眠りでもしているのか道路にいる子供に気づいていないらしく、スピードを維持したまま子供に迫っていた。

 

「ま、マジか!?くそっ!」

 

何もしなければ間もなく起こる大惨事が頭の中を過った瞬間、俺は背負っていたリュックを放り捨てて無我夢中で走り出していた。

 

「間に合え───────!」

 

間一髪、俺は子供を大きく突き飛ばした。これで轢かれる事はないと安心する間もなく、鈍い音と伴に大きく吹き飛ばされた。頭を何度も打ち付け、50メートル程飛ばされた所で漸く止まったが、俺は恐らく助からないのを何となく感じていた。

 

(…………クソ………まだ……………完結まで見届けたい作品が何個もあるのに……………………)

 

そして俺の意識はプツッと途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………そう、だった……………俺、子供を庇って助けた後に轢かれて……………死んだ、のか…………?」

 

「そう、君は死んだ。漸く思い出したようだね?」

 

「お、おう……………それじゃあ、あんたもガチの神か?」

 

「うん、ガチの神だよ。神様って言っても色々といるんだけど、その中でも僕は序列第1位の神様─────要は1番偉くて最強の神様なんだけどね。まっ、何はともあれ信じて貰えたようで何よりな事で。毎回信じて貰う為に当人しか知らない黒歴史とか暴露してるんだけど、その手間が省けてラッキーだね」

 

「やり方がえぐいな!」

 

もっと他にやり方は無いのかよとは思うが─────嘘を言っているようには見えないし、状況的にどうやら本当に神様のようだ。

 

「…………そ、そうだ!あの子供は!?」

 

「君が突き飛ばしたときに擦りむいた位で命に別状はないよ。埋葬された集合墓地にもお参りに来て君にお礼を言っていたよ」

 

「そ、そうか…………無事なら良かった………」

 

「ちなみに君が助けた子供、50年後の日本の内閣総理大臣になるんだよねー」

 

「へー………………って、総理大臣ッ!?」

 

「うん。世界から戦争を無くした男として歴史に刻まれる事になるよ」

 

「さらっと言ってるけど、めっちゃ凄い事してんじゃん!!」

 

話が一段落ついた所で神様はさて、と話を切り出す。

 

「君のこれからについて話そうか」

 

「俺のこれから?」

 

「そう。選択肢は色々とあってね。天国に行くか別の世界に『転生か!?』…そ、そうだけど」

 

もしかしてと思って言ってみたが…………喜べ、オタク達よ。転生は実在したぞ!空想だけの存在ではなかったのだッ!!

 

「どうやら転生を君はお望みのようだね?」

 

「おう!転生ってどんな世界にでも行けるのか?例えば」

 

「漫画やアニメの世界も行けるよ」

 

「よっしゃあ!あんた最高だぜ!!」

 

「て、テンション高いな。ちょいと落ち着け」

 

おっと、思わず気持ちが高ぶっちまった。だが、転生と聞いて落ち着いてられるのが無理な話だ。何故なら全オタクにとって転生は悲願だからな(違う)

 

「それで、何の世界に転生したいの?」

 

「五等分の花嫁の世界で!」

 

勿論他にも転生してみたい世界もあるが、どうせ転生するなら俺が大好きな三玖のいる世界に転生してみたい。

 

「オッケー。あと、転生特典を3つ何か決めてね。乖離剣でもエクスカリバーでも、何でもOKなんで」

 

五等分の世界にいらねぇだろ、そんな物騒な兵器………いつ使うんだっつーの…………。

 

「そうだな……………じゃあ、1つ目は金持ちの家の子になる、だ。今までずっと貧乏生活だったから、第2の人生は金持ちを体験してみたい」

 

「なるほど。じゃあ1つ目はそれで」

 

「2つ目は…………俺専属のメイドがつくようにしてくれ!」

 

「…………………」

 

神様から生暖かい視線が送られてくるが…………気にしねぇ!メイドは男の夢なんだよ!

 

「それで3つ目がかなり重要なんだが──────好きな時にあらゆるアニメや漫画、ラノベを見れるようにしてくれ!」

 

3つ目を聞くと神様は苦笑する。

 

「君はオタクの鑑だね」

 

「まーな。その自覚はあるぜ?でもまぁ、人の趣味なんてそれぞれだろ?」

 

「あぁ、その通りだとも。それに、僕も人間だった頃からアニメとか漫画は好きだったから変だとは思わないよ」

 

へー、神様でもアニメとか漫画好きなんだ……………………ん?ちょっと待て。今、何か結構重要そうなワードが飛び出てきたぞ!?

 

「人間だった頃からって………………え、神様って元は人間だったの!?」

 

「まーね。死んだ後に何か現世での功績のせいか神様の役職を与えられたんだよねー」

 

「へー、そうなのか。現世での功績って具体的には?」

 

「まー、世界一の金持ちになったり、大国同士の戦争を丸く納めたり、地球に降ってくる隕石を破壊して地球滅亡の危機を救ったり、後は宇宙からの侵略者を撃退したりとか色々と」

 

「いや、規格外過ぎるだろ!特に後半の2つ!」

 

そりゃ序列第1位にもなりますわ!この神様、人間の頃から俺tueeeの領域を超えてやがる!つーか、本当に人間だったのかも疑わしく感じるぜ…………。

 

「うん…………こりゃアレだ、絶対あんたを敵に回さない方が良い気がするな」

 

「気分次第で世界の1つや2つ、1秒で消せるからねー」

 

よーし、気がするじゃなくて絶対敵に回さないようにしよう!

 

「あ、でも普通にタメ口で良いからね。そっちの方が楽でしょ?」

 

「タメ口で良いのか?そりゃありがてぇ。正直、敬語とか面倒だからな」

 

「同感だよ。……………よーし、話してる間に準備完了。そうだ、言い忘れてたけど初期キャラクター以外の知識は殆ど封印させて貰うからね」

 

「え、なんで?」

 

「だって、この先何が起こるか分かってるとつまらないだろ?」

 

「んー、それもそうか。分かった。それで、どうやって転生するんだ?」

 

「ついて来てくれ」

 

神様につれられて西洋風の部屋から出て少し長めの廊下を抜けると、虹色に光る扉があった。

 

「この扉の先へ行けば、転生開始さ」

 

「へー。何か魔方陣とか出てくるのかと思ってたが…………何か呆気ないと言うか」

 

「じゃ、もうちょっと面白いバージョンにしようか」

 

そう言うと神様は扉を2回ノックする。

 

「ほい、変えたよ」

 

「扉に特に変化はなさそうだが……………まぁ、良いや。それじゃ、世話になったぜ神様!」

 

「じゃ、第2の人生楽しんでねー」

 

「おう!」

 

そう返事して俺は扉を開ける。そして扉を潜り抜ける。扉を抜けた先には新たな世界が────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………え?」

 

─────何故か宇宙にいた。え、何で?どゆこと?

 

「………………って、宇宙服着てねぇ!ちょ、これ死ぬ!!窒息して死ぬ!!」

 

「いや、もう死んでるじゃん」

 

「あ、そっか。それなら大丈夫………………って、言うとでも思ったか!何で宇宙にいるんだよ!?」

 

「君が呆気ないとか言うから、もっと面白いverにしたんだけど?」

 

唐突に俺は嫌な予感がした。目の前に見える青くて丸い惑星が転生先の地球だろう。と、言うことは………………

 

「…………も、もしや……………ここから地球へ落下して転生………?……………やっぱ普通のにし」

 

「行ってらっしゃーい!」

 

神様なのに悪い笑みを浮かべた神様の光り輝く拳のパンチで、俺はとてつもない速さで地球へと飛ばされて行った。

 

「ギャァァァァァァァァァァ──────!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後の事は恐怖の余りよく覚えていない。大気圏突入寸前の辺りでもう記憶がない。気付いたら生まれた赤ちゃんが入れられる病院の新生児室らしき部屋にいた。産まれたてだからか余り目も耳も見えないし聞こえないが、何となく分かった。

 

(あのドS神、次会ったらぶん殴ってやらぁ…………!)

 

こうして俺の第2の人生が始まった。

 

to be continue……




こんな駄文を読んでくれてありがとうございます!次回やるとしたら……………修学旅行の話かな?

まぁ、次回があればその時にお会いしましょう!


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修学旅行での出会い

2話目です。修学旅行のお話です。個人的には修学旅行は高校しか良い思い出がありませんね。小中はお察しの通りです。転生してやり直せるなら色々とやり直したい黒歴史がつまってるのも小中時代を何とかしたいですねー………。

今回も他作品のネタ満載。全部分かったあなたは良いことあるかも?

さぁ、三玖との初めての顔合わせなるか……?


転生してなんともう11年目。時が過ぎるのは早いなー。早く高校生にならないかなー、なんて思ってたが何だかんだで2度目の幼稚園や小学校も楽しかった。友達も数人程度は出来た。前世では0に等しかったので数人だけでも中々の進歩だ。

 

「にしても、てっきりうちの小学校に風太郎もいるかと思ったらいなかったなー」

 

原作主人公は別の学校だった模様。高校まで遭遇出来ない運命なのかもしれないな。

 

「やぁ、総悟君!久しぶりだね!」

 

「げっ!出たな、このドS神が!」

 

この神様は大体3ヶ月に1回位のペースでやって来やがる。暇かよ。

 

「開幕早々暴言かーい……………で、僕が座る椅子は?用意してないのー?」

 

「え?あー………………オメーの席ねぇか「星ごとぶっ潰すぞ」どうぞ、こちらへ!」

 

俺は自分の座っていた椅子を差し出す。まだ三玖に会ってもいないのに地球ごとデッドエンドはごめんである。俺は三玖に会うまでは絶対に死ねない。三玖に会うためなら例え火の中、水の中、もしくはスカートの中でも潜り抜けるつもりだ。ついでにスカートの中は色々と絶景(意味深)あるし。

 

「………………取り敢えず、君が中々変態なのは分かった」

 

「おい!勝手に人の頭の中のプライバシーを侵害するな!」

 

「あー、はいはい分かった分かった」

 

返事適当すぎか!絶対分かってないだろ!

 

「つーか、結局何しに来たんだよ?」

 

「暇潰し」

 

「仕事は?」

 

「部下に全部押し付けてきた☆」

 

「クソ上司じゃねぇか!」

 

「まー、それは置いといて。どうだい、最近の調子は?」

 

「普通に元気だよ。神様に提案された事も継続してるし」

 

生まれてから1年位経った時に訪ねてきた時に、神様から

 

『君は前世でちゃんと勉強してたし、勉強面では多分心配はいらないだろうけど運動面とかそれ以外ではダメダメだったね。なら、この人生では運動能力や武術を磨くと良いんじゃない?勉強に対して時間を割く必要がないから時間を持て余すだろうし、いつか出来るかもしれない、大切な人を守る為にもね(・・・・・・・・・・)

 

と、アドバイスをしてくれた。最後の言葉に後押しされる形で前世では余りしてこなかった外遊びや運動をしたり、5歳からは習った事すらない空手などの武術を親に頼んで習わせて貰った。正直、心の中ではめんどくさい、やりたくない気持ちもあったが、それでも続けていく内に前世では出来なかった事が出来るようになっていくとだんだん楽しくなって、今に至るまで継続する事が出来た。

 

「そりゃ何よりだ。タブレットの調子は?」

 

「こいつは相変わらず完璧だ。ほんと最高だね」

 

ベットに置いてあるタブレットに触れながら即答する。このタブレットは転生してから初めて神様が来たときに貰ったタブレットで、これがあればありとあらゆる漫画やアニメ、ラノベが見れる。俺にとっては大切な宝具だ、わりとマジで。特殊な魔法が掛けられてるらしく、俺と神様以外には見えないらしい。ただ、俺の任意で解除も出来る。

 

「そうかそうか。まっ、それは僕が作ったものだから完璧で当然か!色々と便利すぎる機能もつけてあげてるんだから、もっと感謝してくれても良いんやで~?」

 

「めんどくさぇ神様だな!今まで散々言っただろ!」

 

「分かってないなぁ。褒め言葉ってのはね、なんぼあってもいいんだよ……………ん?何かカレンダーに二重丸がつけられてる日があるね?」

 

フッフッフ。よくぞ訊いてくれた!

 

「この日から3日間は修学旅行なんだぜ!京都だぜ、京都!京都に行くんだぜ!!」

 

「そ、そうなんだ……(謎にテンション高いなー)」

 

「しかも、この日から他の幾つかの学校も修学旅行らしいんだよ!これが何を意味するか答えられるか!?三玖に会えるかもしれないんだよ!そんくらい分かるだろ!」

 

「ああ、そう言うことね………(道理でテンション高い訳だ)」

 

非常に残念ながら、三玖を含めた五つ子は俺の通ってる小学校にはいなかった。あの5つ子の通ってる学校が判れば高校まで待たなくとも会えるかもしれないが、その考えを読んでいたのか前に神様が『君から会いに行こうとするのはやめた方が良いよ。結ばれるエンドを望むならね。君を転生させた身としても、ハッピーエンドを迎えて欲しいからね』とかいつになく真面目なトーンで言ってた。宇宙から突き落とすような神様だが、何だかんだで俺の事を案じてくれてるのは素直に嬉しかったが。

 

「なぁ、神様よ。前に俺から会いに行くのは止めた方が良いとは言っていたが、『修学旅行中に偶然とラッキーが重なって会った』なら俺からは会いに行ってないから悲惨なエンドにはならないよなぁ?」

 

「ま、まぁそうね…………君の言葉から執念深い何かを感じるのは気のせいとしておこう」

 

失礼な。俺の第一目的はクラスメート達と京都を回る事なんだからな!決して三玖と会うことが1番ではない!

 

「どうだかねぇ………………さて、そろそろ帰るか。いい暇潰しになったし。じゃーね、総悟君。また明日!」

 

「はいはい、また明…………………は?いや、来んな!部下に仕事押し付けてないで自分でやっとけ!」

 

そう叫んだが、果たして聞こえていたかどうか。さて、進〇の巨人の続きを読むとしよう。

 

「お、名言きた!──心臓を捧」

 

「総悟様、よろしいですか?」

 

「(クッ、タイミングが悪い!)……あ、良いですよ」

 

そう言うと扉を開けて入って来たのはメイド姿の美しき美女。俺専属のメイド兼付き人の星奈さんだった。俺の今の両親は共働きで、夜遅くまで仕事をしている事が多いため平日は殆ど一緒に夕飯を食べることはないし一緒に過ごす時間自体も少ない。その分休みの日は色んな所に連れて行ってくれたりして一緒に楽しい時間を過ごしてるし、どちらも俺を大切に思ってくれてるいい人なのでそれ自体は全然構わないのだが。まぁ、そう言う訳で平日は星奈さんと過ごす時間が多い。

 

「どうかしたんですか?」

 

「夕食の準備が出来たのでお呼びに来ました。今日はオムレツでございます」

 

「おおっ!星奈さんのオムレツは超美味しいから楽しみですよ~!」

 

まぁ、オムレツに限らず星奈さんの作る料理は何でも美味い。料理人としてでも働けるんじゃないかと個人的には思う。

 

「いやー、星奈さんはほんと凄いね。家事は完璧でスタイルも良くて美人ですし。モテますよね?」

 

「フフッ、そんなことはありませんよ。それに、誉めても何も出てきませんよ?」

 

そう言いながら星奈さんは笑う。笑った時の表情はマジでいつ見ても可愛い。S・M・T!星奈さん・マジ・天使!

 

ありがとう、転生特典その2。あなたが会わせてくれた天使のメイドは最高です!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時は過ぎて修学旅行前日。俺は三玖に会える可能性に期待で胸を膨らませ、中々寝付けなかった。当日は眠い目を擦りながら集合場所に向かい、新幹線での移動中もワクワクしていた。そして、京都に着いてグループで回ってる間も辺りを見回していた。

 

「さーて、三玖はいるのかなー?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……って、なる筈だったのに……………………………ど゛う゛し゛て゛な゛ん゛だ゛よ゛お゛お゛ぉ゛お゛!゛!゛!゛

 

「落ち着いて下さい総悟様。お身体に障ります」

 

※タイトル詐欺のお知らせ

 

どうしてカ〇ジ(藤〇竜也ver)のように叫んでいるかと言うと、前日になって高熱でぶっ倒れて修学旅行を欠席する事になってしまったのだ。クソッ!!運命様は俺を嫌っているのか!?

 

「今は早く風邪を直す事が優先ですよ。ほら、冷えピタシートを変えますよ」

 

「くっ……………折角の機会だったのに…………うぅっ……………冷えピタがキンキンに冷えてやがる………!」

 

「だ、大丈夫ですか?高熱のせいか口調が少し変ですが……………?」

 

熱と言うよりも、悔しさの余り俺の中の藤〇竜也が出てるだけだと思います…………。

 

「それにしても、本当に残念でしたね。総悟様が修学旅行をとても楽しみにしていたのは私も知っていましたから」

 

「…………今頃皆、京都で色々と見てるんだろうなぁ………俺が何をしたって言うんだ…………世界は俺を嫌っているのか…………ど゛う゛し゛て゛な゛ん゛だ゛よ゛お゛お゛ぉ゛お゛!゛!゛!゛

 

「お、落ち着いてください総悟様!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………すみません。取り乱しました」

 

「いえいえ、大丈夫ですよ。それほど楽しみにしていたのでしょう?」

 

「えぇ、まぁ色々と」

 

「色々と、ですか…………フフッ」

 

女の勘で何かを察したのか、星奈さんは笑みを浮かべる。あなたのように勘のいい女は──────嫌いじゃないね!S・M・T!星奈さん・マジ・天使!(2回目)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、取り敢えず暫く寝るようにと言って星奈さんは出ていった。そしてそれを見計らったようにサボり魔(神様)が音もなく現れる。

 

「なー、神様。願いを叶えてくれる聖杯くれない?それで風邪治したいんだけど」

 

「願いがしょぼいな…………あるけど、人間には絶対使えないよ」

 

あるにはあるのかよ。

 

「いや、俺一度死んでて超越者みたいな感じだから大丈夫でしょ、うん(適当)」

 

「あー、熱で頭がやられちゃったかな?」

 

至って正常ですぅ。今のも半分冗談ですぅ。

 

「あー、マジで行きてぇ。ここから脱走してでも行きてぇ。三玖に遭遇できたかもしれないのによぉ………」

 

「安心しろ。大サービスで教えてあげるが、仮に行けてても遭遇は出来なかったぞ」

 

「じゃ、別に行かなくても良いか」

 

「(変わり身早ッ。僕じゃなきゃ見逃しちゃうね)え、でも友達とかと行きたくなかったの?」

 

「それがなー、俺の班は俺が嫌いな自己中タイプの人間しかいなくてよ。だから、実質三玖に会える可能性の為に行くようなもんだったから、会えないならもうどうでも良いわー。どーぞ勝手に楽しんで来て下さいって感じ……………なぁ、神様。暇だし1つ聞きたいんだけど」

 

「ん?」

 

「………………これから高2になるまでに三玖と遭遇できる機会ある?」

 

「ない(無慈悲)」

 

熱が悪化した(確信)。後5年間の焦らしプレイなの!?ウソだ……僕を騙そうとしている……(宝生M風)

 

「ところがどっこい…………ウソじゃありません……………!」

 

「ウゾダドンドコドーン!(嘘だそんなこと!)」

 

おっと、動揺の余りオンドルゥ語が出ちまったぜ。

 

「…………あと、前に自分から会いに行くのは止めた方が良いとか言ってただろ?もし仮に会いに行ったらどうなるんだ?」

 

俺の質問に対して神様はどうしよっかなー、みたいな表情で悩んでいる様子だったが、すぐに『まぁ、いっか』と呟いた。

 

「一言で言うと、ロードローラーに潰される」

 

「いや、何だそりゃ!」

 

Dead endかよ!

 

「もれなく子安〇人似の声で『ロードローラーだッ!』の声もついてくる。ちなみにその声はロードローラーの運転手のおっちゃん。良かったな」

 

「よくねーよ!死ぬ直前に似てるとは言えど、知らない

おっさんの声のサービスはいらんわ!……………じゃあ、高2まで待つしかないのか……………はぁ」

 

「まぁでも、高校までに楽しいことは沢山あるから退屈はせんよ。それだけは保証しておこう」

 

……………まぁ、神様がそう言うならほんとに退屈しないんだろうけどよ。でも、会いたいけどなぁ。

 

「あぁ、そうだ。ついでに史上初となるタブレットの新機能実装のアップデートに来たのも忘れてたわ」

 

「アップデート?」

 

そんなの初めてだな。アップデートせずとも不満な点は一切無い完璧なものだったけどな。神様は俺の机の上に置いてあるタブレットを手に取ると、何故かそのまま頭に乗せた。

 

「みょん みょん みょん みょん みょん みょん…………よし、終わり」

 

「何だそのアップデートの仕方…………ヤバい奴にしか見えねぇぞ…………」

 

「もー、うるさいなぁ。パソコンとか使うよりも手っ取り早く済むんですー」

 

「そーですかい…………それで、新機能って?」

 

「まず、タブレットからスマホに変形できるようになった」

 

「……………あぁ、そう…………」

 

うん……………何か思ってたのよりはしょぼい。確かにコンパクトにはなるけども。

 

「2つ目は………………まぁ、直々に見せた方が良いか」

 

そう言うと神様はラノベを画面に表示する。表示されたのはソー〇アート・オンラインだった。

 

「え、まさか画面の向こうからキ○トがスター○ースト・スト○ームでも放ってくるの?フルボイスで」

 

「何でそうなる……………ペーパーモード」

 

神様がそう呟くと、タブレットが瞬きした一瞬で表示されていたSAOのラノベに変化した。

 

「フアッ!?」

 

「こんな感じで紙媒体でも読めるようにした」

 

「おぉ…………この機能は中々良いな」

 

確かに紙で読むのも良いからな。紙の質感とか楽しめるし、イラストも電子書籍で見るのと紙で見るのとでは違った風情がある。

 

「他人から見えないようになってるのも、可視・不可視の切り替えはタブレットの時と一緒だ。それと耐久力もね」

 

「耐久力なんて初めて聞いたな。と、言うと?」

 

「言ってなかったっけ?要はどちらのモードでも、どんな攻撃が直撃しても無傷って事だ。核でもこれを傷付ける事は出来ない」

 

「いや凄ッ!」

 

「なので、決して破れたりしない」

 

あ、ほんとだ。どんなに力を込めてページを破こうとしても破れねぇ。とんでもねぇ耐久力だな……………。

 

「中々良いアップデートだな、特に2つ目。ありがとよ、神様」

 

「どーいたしまして。さーて、やることは終わったし帰るわ。ほんじゃ、またなー」

 

来た時と同じように音もなく神は消えていった。……………よし!早速紙でラノベ読むか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────それから約5年後。高校2年生

 

「今日の授業はここまで。課題と復習を怠らないように」

 

授業が終わると、俺は財布を片手に学食へ向かう。今日は何を食おうかなー、と迷っていると知り合いとばったり会った。

 

「お、上杉だ」

 

「火野じゃないか。今日の数学のテストはどうだった?」

 

「(会って最初にテストの点数を尋ねるガリ勉の鑑…………)100点だったな」

 

内心苦笑いだが、目の前の上杉はそれを知るよしもない。

 

「流石だな。まぁ、俺も100点だったが。だが、最後の問題はすぐに閃かなくて焦ったな。時間ギリギリだったぜ」

 

「実はあれには10秒で解ける別解があるんですよねぇ」

 

「10秒だと!?飯を食いながら是非とも教えてくれ!」

 

「はいはい」

 

そしてこの日、漸く長年の焦らしプレイを経て本編が始まりだしたのだった。

 

to be continue……




こんな駄文を読んでくれてありがとうございます!

えー、そしてすいませんでしたァ!前書きで『散々三玖と会えるのかなー』みたいな感じで煽っておいてタイトルと内容が全然違う、タイトル詐欺をしてしまって。反省はたぶんしていますが、後悔はしていません。

次回から漸く原作開始です。しかし、10年以上律儀に待つ総悟も偉いですね。感心しますわ。自分が同じ立場だったら『時間を飛ばせやゴラァ!』とか言ってそうです。そして神様にうざがられて消されるのが定めか…………。

それと、1巻の内容が終わる位にキャラ設定とか出しますね────失踪してなければ。

それでは、次回でまたお会いしましょう。


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第1巻
五つ子の声優は豪華過ぎる


総悟が既に知っている原作の知識について。

・一花~五月、上杉兄妹のcv

・高2の2学期の何処かのタイミングから上杉と五つ子の家庭教師をする事になる。

・一花→長女。からかい上手の小悪魔的な性格だけど面倒見のよいお姉さん気質。ちなみに、呼び名は一花姉さん。

・二乃→ 二女。勝気でヒステリックな毒舌家。料理好きでオシャレに気を遣うなど女子力が高い。

・三玖→三女。超絶大好きな推し。口数の少ないクールな性格。社交的でなくミステリアスな部分がある。

四葉→四女。運動能力が高い元気の子。お人好しな性格。

五月→五女。真面目な性格。よく食う。

らいは→ 風太郎の妹。明るく素直で社交的。

風太郎→ガリ勉。

上杉「俺だけ極端に短くね!?」

神様「うっせぇ、ぶっころすぞ」

こんな感じです。それでは、原作第1巻突入!




「焼肉定食、焼肉抜きで」

 

「味噌ラーメン」

 

「はいよ」

 

それにしても……………もう散々聞いてきたが、上杉の焼肉のない焼肉定食の注文を聞くたびに虚しさを感じるぜ。慣れないもんは慣れん。そんな事を考えている間に注文した料理が乗った盆を受け取っていつもの席へと移動する。

 

「あー、眠い」

 

「夜まで勉強してたのか?流石だな」

 

いいえ、夜までポプ〇ピピックとか言うクソアニメ(褒め言葉)を見てました。全く、あのクソアニメは声優の無駄遣いで草が生えるぜッ!

 

心の中で呟きながら、俺達がいつもの席に盆を置こうとするのと同時に、もう1人料理の乗った盆を置く者が。その正体は────────

 

(フアッ!?い、五月!?今日がその日(原作開始)なのか!?)

 

「あの!」

 

おぉ、cv.水〇いのりだ……!生で聞くと感動的だな。

 

「私の方が先でした。隣の席に移って下さい」

 

「は?ここは俺達がいつも使ってるんだ。あんたが移れ」

 

「早い者勝ちです!」

 

うん…………俺的には正直どうでも良いんでどっか別の所に座って早く飯食わん?麺伸びるし。そう上杉に提案しようとした矢先

 

「早い者勝ち、か。じゃ、俺の方が早く座ったから俺の席だな!」

 

「ちょっ!」

 

お前は子供か(呆れ)

 

「火野も早く座って食おう、って!?」

 

あら、五月さんが座っちゃったよ。良いのか、男子と相席で。カップルに見えなくもないのだが。

 

「ちょ、そこ火野の」

 

「席は空いていました。それに、さっきも言った通り早い者勝ちです」

 

「まぁ、俺的にはどうでも良いけどね。いただきまーす」

 

隣の席に座って俺はラーメンを食べ始める。

 

「くっ、じっくり別解を聞こうと思ったのに………仕方がない、先に復習を済ませておこう」

 

上杉は食べながらテストの紙を取り出して復習を始める。

 

「行儀が悪いですよ、食事中に」

 

「テストの復習してるんだ、ほっといてくれ」

 

100点のテストを復習する意味とは(哲学)

 

「食事中に勉強だなんて、相当追い込まれているんですね。何点だったんですか?」

 

「あ、おい勝手に見るな!」

 

「えっと……………上杉風太郎君ですか。点数は…………ひゃ、100点………わ、わざと見せましたね!」

 

「何の事だかさっぱりだな」

 

わざとだろ(確信)

 

「おいおい、女性に対してそんな意地悪してちゃ恋とか出来ないぞ」

 

「恋?あれは学業からかけ離れた最も愚かな行為だ!いいか、火野もするなよ!学力が下がり、人生のピークを迎え、絶対後悔するからな!」

 

「……………この人はかなり拗らせてるようですね」

 

「この拗らせ方はダメみたいですね(諦め)」

 

とか言いつつ、上杉は五つ子の誰かとどうせ結ばれるんだろ。誰とかは分からんが。あ、でも三玖は俺と結ばれる約束を既にしてあるので(大嘘)そこら辺はよろしく。

 

「………それにしても、羨ましいです。勉強は余り得意ではないので。あ、私良いことを思い付きました!折角相席になったんですし、勉強教えて下さいよ」

 

「断る。ごちそうさまでした」

 

「ええっ!?」

 

即答で断りやがった。俺じゃなきゃ見逃しちゃうね!……………いや、そうじゃなくてだ。

 

「上杉、教えておいた方が後で色々と良いことがあるぞ」

 

「例えば?」

 

「好感度が上がる」

 

「別に上がらなくて良いわ。どうせもう関わることはないんだし」

 

ところがどっこい、後で家庭教師と生徒の関係で関わることになるんだなぁ。流石に未来の事を話すのはタブーだし訊かれたら面倒だから言わないが。

 

「ご飯、それだけで良いんですか?私の分を少し分けましょうか?」

 

「満腹だね。むしろあんたが頼みすぎなんだよ。太るぞ(・・・)

 

「オイィィィィィィィ!それ女性に対して絶対に言っちゃダメな禁句!!」

 

前々から思ってはいたが、無神経にも程があるだろ!!ほら、五月も動揺してるし!!

 

プルルル~♪

 

「ん?メールか…………悪い火野、らいはに電話する用事が出来たから先に行くわ。また放課後にでも教えてくれ。じゃ!」

 

「いや、待て!妹よりも先に取り敢えず謝っとけ!じゃないと後悔す…………行っちまった」

 

俺は言ったぞ、警告したぞ。後で後悔しても俺のせいじゃないからな。恨むなら自分の愚かさを恨むが良い!

 

「な、な、何なんですかあの人は!無神経にも程があります!」

 

うん、でしょうね。星奈さんでも多分言われたら不機嫌になって頭をぐりぐりされますわ。

 

「取り敢えず、悪いな。うちの上杉が無神経のアンポンタンで」

 

「え?……………そう言えば、いたのを忘れていました」

 

ぴえん。俺、そんなに存在感薄かったっけ……?

 

「あなたは彼の友達ですか?」

 

「まーね。あいつは独りよがりで社交性は皆無だし、他者に対して高圧的な態度を取ることが多いし、思ったことを口走っては周りから反感を買うことがしばしばある。……………が。まぁ、悪い奴ではない」

 

「……………そうには見えませんが」

 

「まぁ…………確かに。だが、本当に悪い奴なら俺は友達にはなってないけどなー」

 

知り合って1年近くの付き合い。確かに苦笑するような1面も色々とあったが、良い面も色々と見れた。だから、今も友達としての関係が続いている。

 

「……………ん?」

 

スマホの振動を感じて画面を覗くと、知らない番号から電話が掛かっていた。

 

─────────まさか。

 

「悪い、急用が出来た!またな!」

 

「え?あ、ちょっと!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食堂からすぐ近くの人気の無い場所に移動して、俺は電話に出た。

 

「も、もしもし」

 

『はじめまして。君が火野 総悟君かい?』

 

「そうです。それでご用件は?」

 

「単刀直入に言おう。君に娘の家庭教師の依頼をしたい。私は君の父親と付き合いがあって、彼から君を紹介されてね。こちらでも調べさせて貰ったが、今通っている高校の入学試験を首席で合格したそうだね?」

 

「えあ、まぁ………」

 

まぁ………高校受験は2度目だし?だからと言って油断せずちゃんと勉強もしておいたから余裕だった。

 

『1年の時の成績もとても優秀なのも君のお父さんから聞いてはいる。その実力を見込んで家庭教師の依頼をしたいのだがどうかね?アットホームで楽しい職場。給料は相場の5倍だ』

 

最後のだけ聞くと怪しい仕事にしか聞こえないな。そして勿論答えは──────

 

「分かりました。その依頼、お引き受けしましょう!」

 

三玖とお近づきになれるチャンスを逃す訳がないっ…………!!

 

「あ、ちなみに家庭教師って自分だけですか?」

 

『ああ、言い忘れていたね。家庭教師は君とは別にもう1人いる。上杉風太郎と言う名前で、君と同じ高校に通っているのだが』

 

「(まー、やっぱいるよな原作主人公(上杉)は)彼とは友達です」

 

『それなら一緒に家庭教師をする上で好都合だろう。期待しているよ。早速明日から頼みたいのだが、構わないかい?』

 

『無論です!』

 

『では、場所については後で君のお父さん経由で送ろう。では、失礼する』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(来たぜ来たぜ、俺の時代が!)

 

意味の分からん事を心の中で呟きながら俺は興奮を隠せなかった。いよいよ好きな漫画の、好きな推しのいる漫画の本編に俺が介入するのだ。楽しくない訳がないッ!!

 

(ほんとここまで長かったけどよ、待った甲斐もあって、オラわくわくすっぞ!!)

 

ニヤニヤ顔が見られないように俯きながら、どこぞのサイヤ人みたく嬉々としながら心の内で呟いていると、授業開始のチャイムと伴に先生が入ってくるのを音で感じていた。

 

「えー、授業を始める前に今日からこのクラスに転校生が来たので軽く自己紹介して貰う」

 

!!そう言えば五月の制服は別の高校のだった!!なら、後の4人もこの高校に転校して来たに違いない!!

 

てことは………………あぁ、もう既に確信した。あの神様の事だ。俺と三玖が一緒のクラスになるように配慮してくれてるに違いないッ!!さっすが神様、気が利くゥ!!

 

「それじゃあ、自己紹介を頼む」

 

さぁ、cv.伊〇美久の声を聞かせてくれッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「中野一花です。皆、よろしくね~」

 

ガチャン!!

 

俺は思わず椅子ごと床に倒れてしまう。当然ながら教室にいる全員からの注目を浴びるのは言うまでもない。

 

「お、おい大丈夫か、総悟?」

 

「だ…………大丈夫です………シリアスな雰囲気だったら確実に怪我してましたが、問題ありません!」

 

「意味はよく分からんが、大丈夫なら良い。気を付けろよ。と、言うわけで転校生の中野さんだ。皆、仲良くしろよ。それじゃあ席は今倒れた総悟の隣が空いてるからそこで」

 

フアッ!?しかも俺の隣!?マジか……………ちょ、心の準備が!胸がドキドキなんですけども!

 

「よろしくね。さっきは大丈夫?」

 

「よ、よろしくです…………え、えっと………ま、まぁ大丈夫…………です?」

 

「あはは、そんなに固くならなくても良いよ。改めてよろしくね」

 

「よ………よろしくー」

 

ふー、何とか挨拶できた。まぁ、別に一花姉さんも嫌いじゃないし、1年間花〇香菜ボイスを1年堪能出来るので良しとしよう。

 

「今度、cv.花〇香菜のキャラの名台詞でも言って貰おうかのー」

 

「??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このコーラ、キンキンに冷えてやがるっ………!」

 

放課後、帰る前に自販機で買ったコーラを堪能していると息を切らした上杉がやって来る。

 

「こ、ここにいたのか……………随分探したぞ…………ハァ……………ハァ……………聞いたぞ、火野。お前も家庭教師をやるって……………!」

 

「うん。そう言う訳だから、明日から頑張ろうねー。所で、お前のところにも転校生来た?」

 

「………………ああ………………しかも、知ってる相手だった…………」

 

知ってる相手(五月)だったとは、運が良いんだか悪いんだか。

 

「太るとか言っちゃった矢先、明日行けば即座にクビにされるかもね~」

 

「そ、それはまずい!相場の5倍なんて職場をみすみす逃すわけにはいかん!明日にでも謝らないと………」

 

「まー、頑張れ。言っておくが、明日の昼は教室で弁当食いながら漫画を読むのに忙しいから自分の失態は自分でカバーしろよ」

 

「あぁ、任せろ。既に完璧な作戦は考えてある」

 

完璧な作戦とか言う失敗しそうなフラグが立った気がするが、黙っておこう。気のせいだと良いのだが………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の放課後

 

「ダメだった……………」

 

「綺麗にフラグ回収したな」

 

待ち合わせの校門の前で俺は上杉から結果を聞いた。どうせそんな所だとは思ってたが。

 

「昨日は完璧な作戦を考えてあるとか自信満々に言ってたのは一体誰なんですかねぇ…………?」

 

「う、うるさい!友達と飯を食ってたから機会がなかったんだよ!…………しょうがない、帰り道なら1人になるだろう。五月はもう行ったのか?」

 

「ちょっと前に校門を出ていくのを見た。早めに歩いて追い付くとしますかねー」

 

指定された場所へ地図アプリを見ながら早歩きで進むとすぐに五月には追い付いた。だが、コンビニで買った肉まんを頬張る五月の他に二乃と我が推しの三玖がいた。

 

「どうする上杉…………って、なにやってんの?」

 

何故か上杉は顔出しパネルから五月達を眺めていた。遂に気でも狂ったか。

 

「いや、普通に見てたら変質者に思われるだろ?だから、顔出しパネルを利用して見ていれば怪しまれないと思ってな」

 

いや、逆に怪しさ倍増したと思うんですがそれは……(困惑)

 

………………つーか、五月が肉まんを食ってるの見てたら俺も食いたくなってきたな。

 

「コンビニで肉まん買ってくるわ」

 

ついでに上杉の分も買ってやるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほらよ、俺の奢りだ」

 

「に、肉まん!恩にきる!」

 

俺の手から受け取ると同時に肉まんにかぶりつく上杉氏。日頃焼肉のない焼肉定食を食べてるから肉に飢えているのであろう。1分も経たずして完食してしまった。

 

「あれ、五月達はもう行ったの?」

 

「お前がコンビニから出てくる30秒くらい前に行った。よし、肉まんでエネルギー補給した所で追い掛けるぞ!」

 

「へいへい」

 

俺も肉まんを頬張りながらどこぞのアンパン戦士のように元気100倍になった上杉の後を追い掛ける。

 

「ここら辺は金持ちの住んでるエリアだな……………あのマンションの最上階の部屋に住んでるのか。マジもんの金持ちだな。羨ましい」

 

ちなみに、俺もこの金持ちエリアに住んでいる。あのマンションには歩いて10分程の距離なので案外近かったりする。そして、マンションの入り口の曲がり角を曲がると───────

 

「なに君たち?ストーカー?」

 

「げっ!」

 

cv.竹〇彩奈!そして三玖も!

 

「お前……………」

 

「五月には言ってない」

 

よく分からんが俺が肉まんを買ってる間に上杉と三玖な間で何かしらのやり取りがあったのだろう。クソっ、俺の嫁(違う)と話しやがって、けしからん!

 

「五月に用があるならアタシらが聞くけど」

 

「お前達じゃ話しにならん。どいてくれ」

 

「しつこい。君らモテないっしょ。早く帰れよ」

 

見事な罵詈雑言。しかし、cv.竹〇彩奈だと傷付かないのが不思議に思う。ちなみに、俺は暴言を受けて悦ぶドMではない(ここ重要)

 

「帰るも何も、僕らの家はここですけど」

 

「え、マジ!?ゴメン…………」

 

「…………焼肉定食、焼肉抜き。ダイエット中?」

 

聞かれてんじゃん。

 

「あ、逃げるな!」

 

上杉、2人を振り切って逃走。取り敢えず無事に謝れることを心の片隅で祈っているとだけ言っておこう。

 

「あんたは逃がさないわよ、ストーカー男その2!」

 

「…………………」

 

「黙ってないで何とか言いなさい!」

 

ふむ、そうだな。

 

「いや、君の声聞いてたら何かアニメ見たくなってきたなー」

 

「何でそうなるのよ!?」

 

そりゃあ君の中の人が有名な声優さんだし…………ねぇ?今日の夜にでも『けい〇ん!』でも見るか。

 

「あれ、二乃と三玖に…………ソウゴ君?」

 

「どうかしたのー?」

 

ここで一花姉さんとcv.佐〇綾音の四葉も来たァ────!!

 

「一花、こいつと知り合いなの!?」

 

「うん、同じクラスで席も隣だよ」

 

「一花と同じクラスの人でしたか!私は中野 四葉です!」

 

「俺は火野 総悟。よろしくー」

 

「それで、どうしたのソウゴ君?もしかして私達に何か用があるの?」

 

流石一花姉さん、話が早くて助かるぜ!

 

「その通り。まぁ、その内容は中で話そうか。上で俺の友達も待ってるだろうしね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と言うわけで、4人とエレベーターに乗って最上階へ。扉が開くと、何故か絶望気味の五月と上杉がいた。

 

「あれ、優等生君!五月ちゃんと何してるの?」

 

「いたー!ストーカーよ!」

 

「ええっ、上杉さんストーカーなんですか!」

 

「二乃、早とちりしすぎ」

 

「よー、上杉。謝れた?」

 

「ま、まぁ一応……………って、それよりも!何でこいつらがここに…………?」

 

「なんでって、一緒に住んでいるからに決まってるじゃないですか」

 

上杉の視線の先には『NAKANO』の表札が。

 

「し、シェアハウスか…………仲が良いんだな………ハハハ……………(震え声)」

 

「違います。私達、五つ子の姉妹です」

 

「なっ……なんだと……!?」

 

「(かなり前から知ってます………)」

 

こうして遂に俺と言うオリジナル要素を加えた原作が始まった。

 

to be continue……




自分は銀魂がジャンプ作品の中でもかなり上位に入る程大好きなので、銀魂の最後の映画を昨日見てきましたが、面白かったですね。最後まで銀魂らしい映画でしたわ。ちなみに、特典は煉獄さんでした。もう1回行こうかな。

それではまた次回で。ぐだぐだな駄文でしたが、読んでいただきありがとうございました!


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お宅訪問 中野家の場合

冒頭のとあるシーンは半沢直樹の宮野〇守さんの例のシーンをそっくり輸入しました。面白かったなぁ、顔芸。


おっす、オラ総悟!

 

取り敢えず中にお邪魔させてもれぇ、上杉がどうしても五つ子の父親に確認を取りてぇってしつけぇから、ベランダでオラのスマホ電話している所だぞ!

 

「ほ、本当なんですね…………娘さん達が五つ子なのは………………」

 

『あぁ。正真正銘、一卵性の五つ子だ。君達には五人を卒業まで導いて貰いたい。無論、報酬は5人分払おう』

 

「そ、それはちょっと自信がなモガァ!?」

 

オラは上杉の急所を掴んでノックダウンさせ、スマホを奪い取る。

 

「お任せ下さい!!娘さんを全員笑顔で無事に卒業させてみせます!オラ…………じゃなくて、俺と上杉で!」

 

『期待しているよ。ところで、娘達はそこにいるのかい?』

 

「えぇ、事情を話して部屋に集まって貰うように頼んで……………いま、す…………?」

 

中に戻ると、まさに『そして誰もいなくなった』と言うべき状況だった。さっき『ちょっくら電話してくるから待っててくれよなー。頼むよ~』って言ったのに!この短時間で逃げられた!

 

『どうかしたのかい?』

 

「な、なんでもありませんッ!それでは、今から早速家庭教師としての職務を全うするので失礼します!」

 

ボロが出る前に通話を終えた。

 

「ふー………………何とか無事に終わったな」

 

「…………いや、お前のせいで俺は無事じゃないんだが…………」

 

「安心しろ。そんな強くやってねぇから、おめぇの2つのドラゴンボールは無事だ。………それにしても、自信がないとか馬鹿正直に言う奴があるかっての。こんなに良いバイトの話を白紙にされるぞ」

 

「うぐっ…………そ、それもそうだな。借金を返す為にも、自信があるとかないとか言ってないでとにかくやるしかないな」

 

「まぁ、安心しろ。ここには無数の修羅場を潜り抜けてきた頼れる人生の先輩がいるからな」

 

「先輩って、俺と年は変わらないだろ……………さて、あいつらはどこに」

 

「皆は自分の部屋に戻りましたよ」

 

あら、cv.佐〇綾音さんだ。いたんだ。

 

「お前は…………四葉だっけ?0点の………」

 

「マジか…………すげぇな、テストで0点取る奴とかほんとにいるんだな」

 

「えへへ、誉めても何も出てきませんよ?」

 

少なくとも誉めてはいないんだが。

 

「と言うか、何でお前は逃げてないんだ?」

 

「心外です!上杉さんと火野さんの授業を受ける為に決まってるじゃないですか。怖い先生が来るかと思っていましたが、同級生の上杉さんと火野さんなら楽しそうです!」

 

「………………四葉。抱きしめても良いか?」

 

「おい、バグったか?」

 

普段絶対言わない事を言いやがったぞ、こいつ。

 

閑話休題(それはさておき)

 

先ずは残りの4人を集める所からスタートである。

 

「私達の部屋は手前から五月、私、三玖、二乃、一花の順です」

 

「じゃ、取り敢えず五月から行ってみるか。ちゃんと、謝ったんだよなぁ?」

 

「ま、まぁ一応は…………ただ、俺達が家庭教師って事を言ったら軽く絶望されたんだが………」

 

…………………。

 

「大丈夫ですって!五月は凄く真面目な子ですから、余程の事がない限り協力してくれますよ」

 

四葉がフォローしてくれるが、俺的にはもう嫌な予感しかしない。

 

「嫌です」

 

「あれー」

 

ほらねー。

 

「そもそも、何故あなた達なのですか?この町にはまともな家庭教師はいないのですか?」

 

「酷い言われよう……………良いじゃない、俺ら学力に関して言えば首席だし」

 

「それに、昨日は勉強教えて欲しいとか言ってたろ」

 

「気の迷いです!」

 

あ、扉閉められた。

 

「あはは…………5人いれば1人くらいこうなりますよ!次は三玖です!三玖は私達の中で一番頭が良いですから、お2人と気が合うと思いますよ!」

 

5人の中で一番頭が良いとは、流石は俺の推し(何様)

 

「ふっふっふ。2人とも俺に任せておけ。三玖に関しては俺に絶大的な自信がある」

 

俺の推しであると言う補正で何とか説得できる気がするぜ!

 

「よく分かりませんが頼りになります!」

 

「とにかく頼むぞ、火野」

 

大船に乗ったつもりで任せておきな!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嫌」

 

ダメでした(絶望)

 

「どうして同級生なの?この町にはまともな(以下略)……………早く出て行って」

 

「「「ハイ…………」」」

 

こんな筈では…………あれ、おかしいな…………補正はどこに行った………見えない……涙で何も見えないよ…………?

 

「二乃はとても人付き合いが上手なんです。友達も多いのですぐに仲良くなれますよ!」

 

俺が凹んでいる間にも説得は続く────────が。

 

「部屋にもいないってどういう事!?」

 

説得以前の問題。そんでもって、最後は一花姉さんな訳だが。

 

「驚かないでくださいね…………」

 

そう断って四葉が部屋の扉を開けると、ごみ屋敷が目の前に広がっていた。とんでもなく不清潔極まりない。キレイ好きなのでこんなごみ屋敷を見ると無性に殺意が湧いてくる。

 

「な、なんだこれは……………ここに人が住んでるとでも言うのか?」

 

「もー、フータロー君。人の部屋を未開の地扱いして欲しくないなぁ~」

 

布団に籠ってるのは一花姉さん。学校から帰って早々寝てるんだが。

 

「片付けしないの、この()部屋」

 

「この前一緒に綺麗にしたばかりなんですけどね………」

 

おいおい、四葉の協力をすぐに無駄にするなっての。

 

「よーし、勉強の時間なのでさっさと布団とおさらばして貰うぞー」

 

「ダメダメ、ソウゴ君。服着てないから照れる」

 

「フアッ!?早く服着なさいよ!」

 

危なッ!あと少しで生まれたての姿を拝む事になっていた。……………なんか、嬉しいようなホッとしたような複雑な気持ちだな。

 

「はぁ……………一体最後にこの汚部屋で勉強したのはいつなんですかねぇ」

 

「もー勉強勉強って。折角同級生の女の子の部屋に来たのにそれで良いの?」

 

…………………………。

 

「よーし、上杉。ベッドにダイブしていただいてしまえ」

 

「何をだよ!?と言うか、絶対通報されるだろ、それ!」

 

まぉ、確実に通報されるだろうな。五月あたりに。

 

「取り敢えず早く服を着て、どうぞ」

 

「もー、しょうがないなぁ。えーっと、服は何処に…………」

 

着替え始めるのに部屋にいると通報されるので、俺と上杉は一花姉さんの部屋から退散。気のせいだろうか、部屋を出てから空気が美味しい気がする。

 

「フータロー」

 

あ、三玖。だが、俺には用事はなさそうだし……………と言うか、今話すと傷が悪化しそう…………。

 

「………先に下に言ってるぞー」

 

そう言って階段を降りると同時に、良い匂いが漂ってきた。思わず匂いの元を辿って行くと

 

「あんたは……………火野とか言ったかしら」

 

あ、二乃見っけ。

 

「むむむ、これは美味しそうなクッキー…………手作り?」

 

「そうよ。私が作ったの。食べてみて」

 

そう言って渡されたので、取り敢えず食べてみると

 

「美味い!見た目可愛いし、味も丁度良いじゃん」

 

これだけのものを作るとは、ほんと女子力高いな。感心していると、二乃は上にいる上杉と三玖らに話し掛ける。

 

「ねー、クッキー作りすぎちゃったから皆で食べない?」

 

「二乃、今それどころじゃ……………何で私のジャージ着てるの?」

 

よーく見たら、二乃が着てるジャージに三玖の名前がありますやん!

 

「自分の着れば良いのに」

 

「だって、調理で汚れたら嫌じゃない」

 

「他人………いや、姉妹のは良いのかよ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よーし、五月はいないがこれで4人揃った。先ずは実力を測る為にも小テストをしよう!!」

 

「「「「いただきまーす!」」」」

 

悲しいかな、上杉の言葉に誰も反応すらせずおやつタイムがスタート。上杉の目も流石に死にかけていやがる。

 

「上杉さん、火野さん!私はもう始めてます!」

 

四葉はテストを始めてくれてるみたいだな。えらいえらい。

 

「どれどれ……………って、名前しか書いてないじゃん!やる気があるだけまだ良いけども!ほれ、1問目の答えは?」

 

「分かりません!」

 

「即答ッ!」

 

この歴史の問題、覚えてれば余裕で出きるサービス問題ってやつなんだけどなぁ…………。

 

「ねぇ、クッキー嫌い?」

 

「いや、今はそう言う気分じゃ………」

 

「別に毒なんか盛ってないわよ。なら、こうしましょう。これ食べてくれたら勉強しても良いわよ」

 

謎の取引を上杉に持ち掛ける二乃。正直、裏がありそうな予感しかしない。が、誠意を見せる為か上杉はクッキーを食べ始める。

 

「うわっ、どんどん減ってる!そんなに美味しい?」

 

「あ、あぁ。うまいな…………」

 

「そっかー。あ、そうだ。パパとどんな約束したの?」

 

「……………!……特に何も……」

 

「5人揃って笑顔で卒業させてみせるって約束したぞー」

 

代わりに俺が正直に告げた。ここは誤魔化すより正直に言った方が得策だと思ったからだ。

 

「ふーん…………笑顔で卒業、ね。ぶっちゃけ、笑顔で卒業するだけなら家庭教師なんていらないんだよねー」

 

「むむっ……………」

 

金銭的な面から見れば、俺は別に金に困ってる訳ではないからクビになっても生活に支障はない。ただ、三玖と仲良くなれる機会がほぼゼロになる点で痛恨の大ダメージだが。しかし、上杉には借金がある。こんな高い報酬のある職場をクビにされるのはかなり痛手だろう。

 

「……なんてね。はい、お水」

 

「お、おう………サンキュ…………」

 

「あ、どうもー」

 

丁度水が飲みたかったのでありがたい。この水、うめぇ!キンキンに冷えてやがるッ!一瞬で飲み干してしまった。

 

「ばいばーい」

 

「んぁ?何を………………zzzz」

 

上杉が突然眠りに堕ちた。それを見て一瞬で何が起きたか察した。

 

「ま、まさか水に…………睡眠薬かっ……………よもや、ここまですると、は……………」

 

鬼〇の刃のどこぞの鬼(cv.平〇大輔)の台詞で言うところの、あれか。

 

堕ちていく─────夢の中へ─────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「煉獄さぁぁぁぁぁ…………………ん?知ってる天井だ………………」

 

無限〇車編の夢を見ていたが、良い所で目が覚めてしまった。あと少しだったし、もうちょっと見てたかったんだけどなー。

 

「お目覚めになりましたか、総悟様。うなされていたようでしたが大丈夫ですか?『炎の呼吸 一の型』や『禰豆子ちゃんは俺が守る』などと呟いていましたが……………」

 

えぇ…………どんな寝言だっつーの…………。

 

「ん?てか、何で俺は家で寝てるの!?いや、待てよ……………あ!二乃に薬を盛られたのか!」

 

「思い出したようですね。薬を盛られて寝てしまった総悟様を連れて私がタクシーで家に連れ帰った次第です」

 

そう言うことか………………あれ?星奈さんの口振りからしたら─────

 

「え、星奈さんは二乃が薬盛った事とか知ってるんですか?と言うか、星奈さんにあのマンションの住所言ったっけ……………?」

 

「総悟様がどんな仕事振りをしているのか私も見てみたくなったので、あなたのお父様から住所を聞いてサプライズで訪ねてみました。そしたら何故か総悟様とご友人の上杉君がぐっすり寝ておられまして。真面目な総悟様と上杉君が家庭教師の仕事の最中に寝るとは思えませんし、怪しいと直感しました」

 

「なるほど」

 

「それで、適当に鎌を掛けてみたら二乃と言う方が動揺の反応を見せまして。問い詰めてみたらあっさり自白しました。その後、キツくお灸を据えてから帰りました。睡眠薬を盛るのは下手したら犯罪になりますからね。本人もこれで懲りたと思いますよ。ああ、上杉君の方は五月さんが一緒に同行して帰りました。何でも、上杉君の財布の中にはタクシー代すら入ってなかったそうなので」

 

まぁ、あいつの財布の中は常に風通しが良いからな。

 

…………それにしても、二乃にはドンマイと少し同情しなくもない。星奈さんが怒るとマジで怖いからだ。俺も小学生の頃、雨が降ってたので部屋の中で剣道の練習をしていたら竹刀が手からすっぽ抜けて窓ガラスを盛大に割って怒られた事がある。怒鳴るわけでもなく静かに怒られたのだが、目に見えぬ圧力がマジで怖くて涙と小便が少し出かけた。ちなみに、ガラスは親が10万円☆PON☆と払って直してくれた。

 

「どうしますか、家庭教師の仕事は。総悟様のお父様に言えば今からでも辞めれると思いますが?」

 

「まさか。まだ始まってすらいないのに辞めるなど言語道断!絶対に5人揃って笑顔で卒業させてやる!(そして三玖とも付き合う!)」

 

聞こえてるか、二乃!こう見えても俺は骨のある男でな。命ある限り諦めんから覚悟しておけよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へっくし!…………誰かに噂されてるのかしら………」

 

to be continue………




余談

めちゃくちゃ怖い説教をされた二乃は星奈さんの事がトラウマになる程苦手になりました。まぁ、でも軽犯罪になる可能性があったからキツく怒られてもしょうがないね。

今日もヒャッハーな駄文を読んでいただきありがとうございました!

上杉君、ドラゴンボールをお大事に。



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屋上の告白

え?タイトルが原作のまんま?あー……………正直言うと、良いのが思い付かなかったのでまんまです。これからも思い付かなきゃまんまのスタイルで行きます。

では、どうぞ~。


「昨日の悪行は心優しい俺がギリギリ許すとしよう。今日はよく集まってくれた」

 

翌日、上杉から『昨日と同じ時間に来てくれ』とメールが来たので、マンションに行ったら5人全員揃っていた。 一花姉さんは寝てるし、二乃はスマホをいじって見向きすらしてないが。

 

「さて、今日集まって貰ったのは「待ちなさい」…………何だ、二乃?俺に聞きたいことでもあるのか?」

 

「あんたじゃなくて、隣のこいつよ」

 

ビシッと指差してきたのは俺の方だった。

 

「俺?」

 

「そうよ。…………昨日の………あんたの使用人の星奈とか言ってた人…………来てないでしょうね………?」

 

……………ははーん。相当星奈さんがトラウマになったのか。

 

「安心しろ、今日はお休みだからな。ついでに言っておくと、星奈さんは家庭教師関連については何も口出しする気はないぞ。立場的には部外者だからな」

 

昨日は誰かさんが犯罪になり得るとんでもない手段を用いたから怒っただけの話である。

 

「ホッ……………」

 

「だが、お望みとあらば電話して5分で来るぞ」

 

「呼ばなくて良いわよ!」

 

即答だな。

 

「話を戻すぞ。二乃、お前は昨日家庭教師はいらないと言っていたな。なら、それを証明してくれ」

 

「証明?」

 

「これは昨日できなかった小テストだ。このテストの合格ラインを超えた奴には金輪際近付かないと約束しよう。勝手に卒業して行ってくれ」

 

ふむ………………なるほど。馬鹿正直に5人教えるんじゃなくて赤点候補のみに絞って教えれば良い的な考えか。まぁ、悪くない考えと言えばそうだが………。

 

「………なんでそんな面倒な事をやらなきゃ」

 

「分かりました、受けましょう」

 

「は?五月、本気なの?」

 

合格すれば(・・・・・)良い話です。これでもう関わらなくて済みますから」

 

……………何かフラグが立った気がするのは気のせいだろうか。

 

「そう言うことならやりますか」

 

「頑張ろー!」

 

「合格ラインは?」

 

「60………いや、50あれば良い」

 

まぁ、このテストでその点数位あれば卒業は何とか出来るか。成績の中身が輝いているかはさておき。

 

「別に受ける義理はないけど…………あんまりあたし達を侮らないでよね」

 

他の4人の様子を見て、二乃もやる気になった模様だ。

 

「ところで、上杉。制限時間は?」

 

「そうだな…………30分って所か」

 

「30分…………それだけあれば、15分の短編アニメを2本見れる!」

 

「ふーん、あんたオタクなんだ。見た目はまぁまぁなのに、中身は陰キャね」

 

「よーし、星奈さん呼ぶか」

 

「え?!ちょ、冗談よ!だから呼ばないで!」

 

暫くは弄って楽しめそうだな(ゲス顔)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『衛〇さんちの今日のご飯』を見て唐揚げとサンドイッチ食いてー、とか考えている間に30分経過。その後、手分けして5人の採点を終えた。

 

「採点終わったぞ!100点だ!全員合わせてな!!」

 

上杉の顔が引きつってやがらぁ。しかし、三玖が1番点数が高いな。流石は俺の(以下略)

 

「お前ら…………まさか………」

 

「逃げろ!」

 

「あ、待て!」

 

自分達の部屋に逃走を図る五つ子。と言うか、何故に四葉も逃げるんだよ。その場のノリか?家庭教師が上杉1人なら今日は逃げられて終了だったろう。

 

──────────だが。

 

「げっ!」

 

「ところがぎっちょん、問屋はそう簡単に卸しませんッ!」

 

もう1人(オレ)いるんだなぁ、これが!こんな事になろうかと思って、階段の前でスタンバっておいて正解だったぜ。

 

「テスト終わってそれで終了!お疲れイエーイで終わっちゃダメでしょうが!これから間違えた所みっちり叩き込むぞ!喜べ、少女達。君達の学力はようやく上がる。………………何か麻婆豆腐食いたくなってきたな」

 

「何でそうなるのよ!?」

 

二乃はツッコミが上手いなー。原作でもツッコミキャラだったのだろう(適当)

 

それから2時間、何度も逃げられそうになりながらも上杉と一緒にたっぷり勉強させた。すんごく疲れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2日後の週明け

 

「ハァ、ハァ……………ギリギリセーフ…………」

 

「朝からお疲れだな」

 

HRの時間まで暇だったので散歩がてら校内をぶらぶら歩いてたら息を切らした上杉と遭遇した。

 

「お…………お前は辛くないのか……………家庭教師と自分の勉強の両立が…………俺は徹夜してたから眠くてしょうがないぜ……………」

 

「んー、別に」

 

上杉と違って体力あるんで(どや顔)

 

そんな話をしていると1台の黒いリムジンが俺達の近くに停車する。

 

「おお、見たこともないカッコいい外国の車だ………100万くらいはするだろうな………」

 

「お前の車の相場はどうなってやがる…………多分1000万円は超えてるぞ」

 

「なん、だと……………!?一体どこのどいつだ、こんな金持ちしか乗れない車に乗ってるのは……………って!」

 

「あっ!フータロー君にソウゴ君!」

 

「またあんた達?」

 

「…………………」

 

「おはようございます!」

 

「なんですか、ジロジロと不躾な」

 

あらー、誰かと思えば中から出てきたのは五つ子ちゃん達ではありゃせんか。車登校とは贅沢な気がしなくもない。

 

「おい、逃げるな!見ろ、俺達は手ぶらだ!害はないぞ!」

 

「騙されないわよ」

 

「参考書とか隠し持ってない?」

 

「油断させて勉強教えてくるかも」

 

二乃、一花姉さん、三玖の反応からどれだけ勉強嫌いなのかよーく伝わってくる。勉強に親友でも殺されたんか?

 

「私達の力不足は認めましょう。ですが、自分の問題は自分で解決します」

 

「1人でも出来る」

 

「そうそう、要は余計なお世話って事よ。じゃ」

 

「あっ、おい待てぃ(江戸っ子)」

 

五月、三玖、二乃がそう主張して去ろうとするのを俺は止める。

 

「そんなに自信があるなら、この前の小テストと同じ問題出されても答えれるよなぁ?」

 

「「「「「…………………」」」」」

 

何故誰も視線を合わせようとしない。おい、こっち見ろ。

 

「………厳島の戦いで毛利元就を破った武将を答えよ」

 

数秒の間の後、背を向けていた五月が振り返る。お、答えれるかと期待したのもつかの間。

 

「…………………(プルプル)」

 

無言ッ………………!この前2時間の時間を掛けた意味とは()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………火野……………あいつらは大の勉強嫌いで………ついでに俺達の事も嫌いらしい」

 

「うーん、悲しいかなそのようだね」

 

今も前を歩く五つ子達と物理的、そして精神的に距離がある。

 

「先ずは1人ずつ信頼関係を築く所からか……………俺の苦手な分野だ…………代わりに火野がやってくれないか?」

 

「俺だけ信頼関係を築くんじゃ駄目だろ、お前も家庭教師を続けるなら」

 

「はぁ…………やっぱりそうだよな……………ん?」

 

「どったの?」

 

すると上杉は『五つ子卒業計画』と書かれたノート を見せてくる。

 

「……………………むむっ。さっき俺が出した問1の問題、三玖は正解してるじゃん。あれ、じゃあ何で」

 

「さっき答えなかった、って事だよな」

 

うーむ……………総悟君的にこれは何か裏があるとみた。

 

「昼飯のタイミングにでも聞いてみるか…………だが、上杉。お前は何も言うな。俺が訊く」

 

「え?まぁ、別に良いがなんでだ?」

 

「だってお前、社交性とか無いやん。そんなお前が話してさらに関係が拗れたら面倒でしょうが」

 

「うぐっ……心当たりが有りすぎてぐうの音も出ない………」

 

─────とまぁ、表面上はそう言っているが実際は三玖と話したいだけだったりする。

 

三玖と2人で話すのに………上杉。お前は邪魔だ(無慈悲)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み

 

「いたいた……………やっほー、三玖」

 

「?」

 

食堂で三玖を発見した俺は話し掛ける。後ろには一応上杉がいる。

 

「ちょっと聞きたいことが……………何これ、抹茶ソーダ?何か面白い味がしそう…………」

 

三玖の好物か?元々覚えていた原作の知識にはなかったから初めて知った。

 

「……………意地悪するソウゴにはあげない」

 

ぴえんを通り越してぱおん。あと上杉、後ろで逆に味が気になるとかうるせぇ!

 

「えっとですね……………今日の朝の問題についてなんだが」

 

「上杉さん、火野さん!お昼一緒に食べませんか?」

 

ギャァァァァァァァ!

 

「な、なんだ四葉。それに一花もか。まったく、四葉。お前はいつも突貫だな。驚かせやがって…………」

 

「上杉の言う通りだ!急に来たから心臓止まるかと思ったぞ、もう……………」

 

「あはは、朝は逃げてすみません!それより見てください!英語の宿題、全部間違ってました!」

 

それを笑いながら言うのだから若干頭が痛くなってきた気がする。

 

「ごめんねーソウゴ君、邪魔しちゃって」

 

「一花も一緒に見て貰おうよ」

 

「うーん、パスかな。私達バカだしね」

 

「自覚はあるんだ……………なら普通は見て貰いたくならんのか?」

 

我ながら俺の声には純粋に呆れの成分がみっちり入っていた。

 

「そもそも、折角の高校生活を勉強だけってどうなの?もっと青春をエンジョイしようよ!例えば恋とか!」

 

「恋?」

 

あーもう。また後ろの上杉がスイッチ入っちゃったよ。

 

「アレは学業から最も掛け離れた行為だ。したい奴はすれば…………ッ!?」

 

俺がドラゴンボール(隠喩)潰しの構えに入ると察しの良い上杉は口を閉じる。以降もこうして強制シャットダウンさせよう。

 

「恋愛したくても先ず相手がいないんですけどね。三玖はどう?好きな男子とかできた?」

 

「えっ…………い、いないよ」

 

あ、行っちゃった。つーか結局訊けなかったし。

 

「あの表情、姉妹の私には分かります!三玖は恋をしています」

 

「え。………………だ、誰に?」

 

「うーん、それは流石に分かりませんが…………気になりますね!」

 

「うん、めっ──────────────ちゃ気になる!!」

 

誰だ?クラスの男子か?いや、しかし転校してきたばかりだし……………だが、可能性的に無くはない。くそぅ、誰だ?どいつを消せば良い(過激思想)

 

「ソウゴ君は三玖の好きな人が気になるの?」

 

「え……………うん、まぁ…………そりゃ」

 

クッ、痛いとこを一花姉さんは突いてきやがったな………流石に正直に言うのはちょっとまだ覚悟がなぁ…………。

 

「そりゃ気になるだろうな。勉強して貰わなきゃ困るのに、恋なんかされたらたまったもんじゃない!だろ、火野?」

 

「……………うん。まぁそんな所だ」

 

ナイスゥ、上杉!!今度ピザまん2個奢ってやるよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふー、にしても危なかった。まったく、一花姉さんは痛いとこを突いてきやがる。女の勘って奴は中々の脅威だな……………うん?

 

「手紙?誰から………………ッ!?」

 

まさかの三玖だった!!

 

『放課後に屋上に来て。ソウゴにどうしても伝えたい事がある。どうしてもこの気持ちが抑えられないの』

 

…………………………………え、マジ?これ……………………ラブレター?いやいや、マジ?!え、ちょ………………マジ!?(語彙力低下)

 

「あれ、ソウゴ君どうしたの?顔赤いし、ニヤついてるけど何か良いことでもあったの?」

 

「ちょ、話し掛けるな花〇香菜!俺は今とんでもない事態に直面していて精神的に生きるか死ぬかの瀬戸際のレベルなんだよ!」

 

「え!?て言うか、花〇香菜って誰!?」

 

「お前の中の人だよ!!」

 

「中の人ってどういう事!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後

 

「くそっ、静まれ俺の胸のドキドキ…………静まれってんだよ!…………あぁ、クソ!やっぱ無理だ!」

 

放課後になった瞬間に俺はダッシュで屋上に来たが、三玖はまだ来ていなかった。

 

「ヤバい、意識すればする程胸のドキドキが…………こんな状態じゃまともに話せる気がしない!こうなったら、別の事に意識を集中させるしかねぇ!ガチャ引くぞ!!」

 

どういう思考回路でスマホゲームのガチャを引くことにしたのか後になっても未だによく分からない。

 

「ハァ、ハァ……………引くぞ、俺は引く!☆5キャラを引く!引かなきゃ誰かの養分……………!行けッ………………来た、確定演出!!さぁ、吐き出せ!!お前らが喰らってきた課金ユーザーの金、命、魂、希望、絶望、その全てを吐き出せ!!行けェェェェェェ………………いや、ど゛う゛し゛て゛ダ゛ブ゛リ゛な゛ん゛だ゛よ゛お゛お゛ぉ゛お゛!゛!゛!゛

 

床を転がりながら、俺の中のカ〇ジ(藤〇竜也)が久しぶりに復活。まぁ、緊張を紛らわす目的もあったが純粋に欲しかったキャラでもあるので普通に悔しい。

 

「悪魔…………このド悪魔め!クソっ、この悲しみはTwitterに書き込んでや………………らぁ?」

 

その時、俺は漸く気が付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前に三玖がいた事に。

 

「……………………」

 

「……………………」

 

「…………い、いつから見てた?」

 

「……………引かなきゃ誰かの養分、辺りから」

 

……………………。

 

俺はスマホをポケットにしまう。そして、床を転がった時についた汚れを軽く払って、咳払いをする。

 

「………………安心しなよ。そんなに待ってないから」

 

「…………何事もなかったかのように進めるのは無理があると思う」

 

ですよねー!!あー、もう恥ずかしい所を見られちまったよ、畜生!!熱中しすぎて気づかなかった!!今日は何て日だ、厄日だ!!

 

「うん……………まぁ、見られちまったものはしょうがない。全部説明すると、ちょっとゲームのガチャでお気に入りの強いキャラを引こうとしたら全然欲しくないダブリが出てきて発狂するほど悲しんでたってだけ。取り敢えず、他の皆には言わないでくれると助かるなーとかお願いしてみたり…………?」

 

「……………分かった」

 

それを聞いて取り敢えずホッとした。

 

「さて、気を取り直してだ………………あの手紙について、なのだが……………」

 

「…………食堂で言えたら良かったんだけど、誰にも聞かれたくなかったから」

 

え。やはりまさか?

 

「ソウゴ、あのね。ずっと言いたかったの………」

 

フーッ………………良いぜ、俺も覚悟が決まった。どんとカモン!

 

「……………す………す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「陶 晴賢!」

 

クゥゥゥゥッ!!!来たぁ、告白!勝った!五等分の花嫁、完!!出会って3日しか経ってないけど、まぁ良いか!!その言葉をずっと聞きたかったんだよ、陶晴賢って言葉…………………を?

 

陶晴賢?

 

「陶晴賢……………すえはるたか…………………あ、1問目の答え…………。え、それを言いに来た系?」

 

「そうだけど」

 

「………………………」

 

あぁ………………………ほんとに。告白されると思い上がっていた自分が恥ずかしい。『くっ、殺せ!』の台詞しか今の俺の頭にはない。つーか、冷静に考えたらまだ出会って3日目じゃん!世の中、そう簡単に物事が全て思い通り運ぶわけがないだろ!それは転生しようとも変わらないのがこの世の摂理なんだよ、クソが!(半ギレ)

 

「よし、言えてスッキリした。それじゃ」

 

「あ、うん……………って、ちょっと待って!!」

 

このまま俺が恥かいただけで終われるか!せめて少しでも仲良くなって信頼を勝ち取らないと!

 

そう考えて去ろうとする三玖の肩を掴んだ衝撃で三玖の手からスマホが落ちる。

 

「わーっ」

 

「あ、ごめん!」

 

慌てて拾うとその衝撃で電源かついたのか画面が見える。ホーム画面には『風林火山』の武田菱────。

 

「見た?」

 

ヒッ…………こ、怖っ!

 

「…………み、見ました…………」

 

「………だ、誰にも言わないで………戦国武将、好きなの…………」

 

フム…………三玖は歴女だったのか。それならあの問1が正解できたのも納得できる。

 

「それにしても戦国武将かぁ…………切っ掛けは何だったの?」

 

「切っ掛けは四葉から借りたゲーム。武将達の野心に惹かれて本も沢山読んだ。でも、クラスの皆が好きなのはイケメン俳優や美人なモデル。それに比べて私は髭のおじさん………………変だよ」

 

……………………………。

 

「別によくない?」

 

「え?」

 

「仮にその趣味が人から見て変だとしてもよ。俺から言わせれば、人と変わったものを好きになって何が悪いって話よ。趣味なんて人それぞれバラバラで当たり前だろうし、周りがどうとかなんて気にしないで、三玖は自分が好きになったその趣味に対して自信と誇りだけ持ってれば良いんだよ。変とか言う奴がいても気にすんな。殴って黙らせときゃ良いんだよ………ってのは流石に冗談だけどな」

 

「…………………!」

 

……………あぁ、そう言えば。前にも────前世でもこんな事を言っていたな…………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==============

 

俺は小学生の頃からラノベが好きだった。切っ掛けは………………まぁ、正直に言うと本屋に行った時にたまたま視界に映ったラノベの表紙の女がエロ可愛いかったからだ。ちなみにそのラノベ、内容はめっちゃ感動的で涙腺がやられて本屋で大泣きして周りからドン引きされたり、見かねた店員さんからテイッシュを貰ったのは今となっては良い思い出。そのラノベを読み終わる頃には俺はすっかりラノベに夢中になり、そこから派生して漫画やアニメにも興味を持ち始めた。

 

少ない小遣いを貯めては買って、学校でも読み始めたりした。当時、友達はいなかったから別に俺がラノベとか読んでても特に何も言われなかった

 

小5までは。

 

小5になってクラス替えをすると、今まで同じクラスになった事のない奴とクラスが一緒になったのだが─────そいつが厄介者だった。そいつは陽キャでクラスのリーダー的な奴だった。だが、どうもラノベばっかり読んでる俺が気に入らなかったらしい。俺の事を馬鹿にしだしたり、悪口を言いふらしたりしやがった。リーダー的な奴が言い始めるとクラス全体の雰囲気もそう言う感じになって、クラスの居場所がなくなっちまった。

 

ただ、俺は関わるのも面倒だし正直どうでもよかったから何の反応もしなかった。それが奴にとっては面白くなかったのか、ある日呼び出された。

 

『んだよ、わざわざ呼び出して。俺はさっさと帰って今日発売の新刊を買いに行きたいんだが』

 

『安心しろ、お前が素直に従えばすぐ終わる』

 

『(こいつは相変わらずの上から目線の馬鹿だな)』

 

『お前もいい加減意地を張るのをやめろよな?余裕ぶっこいてるけど、ほんとは影口とか悪口を言われて、誰も味方がいなくて悲しく思ってんだろ?家で泣いてんだろ』

 

『(いや、どうでも良いと思ってますー。まぁ、家では(感動的なラノベを読んで)泣いてはいるが)』

 

『ほんと、お前って変な趣味を持ってるよな。お前みたいな何が面白いのか分からない変な本を読んでる陰キャがいるとクラス全体のイメージが汚れるんだよ。だから、2度と学校で読むんじゃねぇ』

 

『変な趣味、ね……………』

 

『あ?』

 

『いーや、何でも……………約束しろよ。止めれば、陰口とかなくなるんだな?』

 

『ふんっ……………あぁ。約束してやるよ。陰口とかはなくなる。さぁ、俺の前で2度とその下らない本を持って来ませんって言えよ』

 

『………………………』

 

『何を黙ってやがる!早く言え!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『だが断る』

 

『は!?』

 

『この岸辺ろ………じゃなくて、この火野 総悟の最も好きな事のひとつは自分が偉いと勘違いしてる上から目線の馬鹿に『NO』と断ってやることだ』

 

『て…………てめぇ……………良いぜ。なら、俺に歯向かった罰だ。こうしてやるよ!』

 

『あ、おい!』

 

奴は突然手に持っていたラノベをひったくると、そばにあったゴミ箱の中に捨てた。急いで拾うが、ラノベはゴミで汚れていた。

 

『ざまぁみろ!俺に歯向かうからこうなるんだ!』

 

『…………………』

 

『どうした?悔しかったら何とか言い返してみろよ、あ?あ、ごーめん!変な本ばっかり読んでる陰キャには無理か!ハハハハッ!』

 

『ふーっ…………………よし、お前に一言だけ言い返そう』

 

『お?何だ、言ってみろよ。どうせ大した事もな』

 

『オラァ!』

 

『グベラ!?』

 

不意打ちパンチが奴の顔面にクリーンヒット。咄嗟の事で防御もしなかった為、かなりの距離を吹っ飛んでそいつは倒れる。

 

『さっき一言だけ言い返すと言ったな。あれは嘘だ。一発だけ殴るの間違えだったわ。だが、お前には言いたい事が山ほどあるから、全部吐き出させて貰うぞ』

 

俺は奴の頭を掴んで未だに状況が呑み込めてなさそうな奴の目を真っ正面から見る。

 

『1000歩譲って俺の趣味が変だとしてもだよ、それの何が悪い。人と変わってるものを好きになって何が悪いってんだよ。俺はこの趣味を持ってる事に対して自信と誇りを持ってる。お前からどう思われようとも俺はこの趣味を捨てるつもりはねぇし、そもそも俺の趣味について他人のお前らからあーだこーだ言われる筋合いもねぇんだよ。笑いたきゃ勝手に笑ってろ。こっちも読んでもないくせにラノベを変だ、面白くないだの言ってるお前の滑稽さを逆に笑ってやるからよ。だが、また今みたいな事をやってみろ。暫く学校に来れなくなるかもな』

 

『ヒッ……………………!』

 

『おい、さっきまでの威勢はどうした?所詮は自分が強いとでも勘違いしてた頭お花畑のイキり野郎か?……………チッ、馬鹿馬鹿しい。時間の無駄だし帰るか。じゃーな、アホ陽キャ。また明日なァ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(………その後、あいつが何を言ったのかは知らないが、学校中で俺がヤバい奴みたいな噂が広まって、あいつも含めて避けられるようになったんだよなぁ…………しかも最悪な事に、あいつと同じ中学校と高校だったから、その状況が高校を卒業するまで続くと言う、あまり良いとは言えないオチなことで…………)

 

「…………………ソウゴ?」

 

「…………ごめんごめん。前にも似たような事を言ったなーって考えてただけだから……………そうだ!三玖が知ってる戦国武将の事を問題にして出してみてくれないか?」

 

「え?」

 

「こう見えてもですね……………俺、結構歴史好きなんですよねー。ワンチャン、三玖より詳しかったりして」

 

「………じゃあ問題ね!信長が秀吉を猿って呼んでたって話は有名けど、この逸話は間違ってるの!本当はなんて呼ばれてた?」

 

急にめっちゃ喋りますな……………まぁ、本当に好きな事を話すなら誰しもそうか。

 

「簡単ですねぇ。答えは禿げ鼠」

 

「せ、正解…………!」

 

そこから三玖もヒートアップしたのか、いわゆるマシンガントークと言うやつで喋ってくる。

 

「上杉謙信が女だったって説もあってね」

 

ありましたね、そんな説。昭和43年に小説家の八切止夫が提唱したんだっけ。

 

「三成は柿を食べなかったんだ。その話を聞いたときは感動したなぁ」

 

その逸話は石田三成の往生際の悪さとして紹介される事があるらしいが、個人的にはいい話だと思うぞ。

 

「信長が頭蓋骨にお酒を入れたとか………」

 

浅井久政と長政、朝倉義景の頭蓋骨に漆を塗ったやつね。

 

────そしてトークはまだまだ続き、1時間後に三玖が喋り疲れてか終了した。

 

「ほ、ほんとに…………詳しいんだね…………」

 

「まーね」

 

にしても、三玖の知識は中々のものだ。戦国武将にしか興味はなさそうだが、教え方次第では日本史とかすぐに好きになりそうな気もするな。

 

「暗くなってきたな……………そろそろ帰るとしようかね」

 

「え?……………あ、ほんとだ。いつの間にこんな暗くなってたんだ……………気付かなかった」

 

「熱中してたしね。楽しかったよ」

 

三玖がとても楽しそうに話してるのを見ると、こっちも無性に楽しかった。

 

「ありがとう、ソウゴ。私も楽しかった……………そ、それでね…………」

 

ん?

 

「あ、明日……………もし予定とかないなら……………また一緒に話さない…………?」

 

なにぃ!?三玖様からのお誘い、だと…………!?

 

「もっちのろんよ!俺で良ければ、いつでもどうぞ!」

 

断るわけがねぇでしょ!仮に予定が入っていたとしても、その予定を爆☆殺するわ!!

 

「!…………………じ、じゃあ明日…………放課後に校門の前で………………またね」

 

そう言って三玖は屋上から去って行った。それから暫く俺は何も言わずに立っていた。そして屋上から三玖が学校から出ていくのを確認した瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イ゙ェアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア───!!」

 

それから5分間、俺氏は狂喜乱舞の雄叫びをあげてたとさ。

 

ちなみにこの後、声を聞き付けて駆けつけた先生にめっちゃ怒られた。

 

to be continue………




三玖「(……………変な叫び声が聞こえたような…………不審者?夜道には気を付けよう……)」

全部見ていた神様「(その不審者、ついさっきまで君と話していた男です)」


今日も駄文を読んでいただきありがとうございました!


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5人で100点

シンエヴァを見に行くか迷ってます。1月になって既に銀魂で4000円位使っちゃってるんだよなぁ………。


「あー…………………マジで眠い」

 

昨日は誘われた嬉しさの余り遅くまで寝付けず、その結果睡眠不足である。そんな俺の様子を見てか隣の一花姉さんが話し掛けてくる。

 

「珍しいね、君が寝不足なんて。ちゃんと夜は寝なきゃダメだよ?」

 

「説得力に欠けるぞ」

 

授業中、隣でよく寝てるじゃねーか。そっちこそ夜にちゃんと寝て授業中は起きてなさいよ…………。

 

「授業中に寝るような性分だから勉強が出来ん訳だ………」

 

「もー、学校に来てまで勉強の事を持ち出さないでよー」

 

「………………ダメだこりゃ」

 

学校は勉強の場ではなかったのだろうか(困惑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『行くぞ、英雄王。武器の貯蔵は十分か』

 

『思い上がったな、雑種!』

 

放課後、授業が終わってすぐに校門の前でイヤホンを付けながらメイドin神様のスマホでアニメ(音声だけ)を楽しみながら、この前の確認テストの成績表の分析を行っていた。

 

(一花姉さんは数学、二乃は英語、三玖は社会(特に日本史)、四葉は国語、五月は理科が得意なのか……………もっとも、強いて言うならのレベルだが。にしても、得意科目が綺麗にバラバラだな。ほんとに五つ子かよ、なーんて思ったりして………………あ、もうすぐ死ぬな、AUO)

 

さらば慢心金ぴか、と心の中で呟きながら俺は背伸びをする。

 

(しかし、何かモヤモヤするような…………さっきの表を見て何か引っ掛かるんだよなぁ……………)

 

あと少しで答えが出かけているのに、出てこないもどかしさを味わっていると

 

「ソウゴ」

 

「!……………み、三玖か」

 

「待たせてごめん……………フータローに足止めされてた」

 

「へー、上杉から……………?」

 

「……………フータローはソウゴよりは大した事なかった。同じ首席でも全然違うね」

 

ああ、なるほど(察し)

 

大体分かった。………だが、奴の事だ。めっちゃ勉強してまたリベンジしてくるな。その内果たし状でも届く希ガス。

 

「ふーっ……………じゃあ、行きますか…………?」

 

「……………うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特に目的地もなく、俺は三玖と歩きながら武将トークをしていた。主に俺は聞き手側だったが。戦国武将の事を得意気に話している三玖は本当に楽しそうだった。それを見ていると俺も自然と笑みが浮かんでいた。

 

1時間くらい歩いていると、たまたま公園があったので休憩もかねて公園に寄ることを提案すると三玖も首を縦に振ったので寄ることにした。

 

「ほい、俺の奢りだ」

 

俺は自販機で買った抹茶ソーダを渡す。

 

「あ、ありがとう」

 

「鼻水は入ってないよ、ってね」

 

「!………………今度私が言おうと思ってたのに」

 

頬を膨らませて不満そうにする三玖────尊い。

 

「なら、俺が一本取ったって事で。よっこらせ……………いやはや、ほんとに三玖は物知りだね。俺も聞いてて楽しいわー」

 

「うん。私もいっぱい話せて楽しい。ありがとう、ソウゴ。私の話に付き合ってくれて」

 

そう言うと三玖はとてつもなく可愛い笑顔を見せてくれる。まずいな……………このままじゃ尊死しそう(小並感)

 

「…………昨日思ったんだけど、普通にその話を他の姉妹にしてあげれば良いのに。何で話さないの?」

 

「………………姉妹だから言えないんだよ」

 

「…………?」

 

「だって、私が5人の中で1番落ちこぼれだから」

 

………………ふむ。どうやら三玖は自分の好きな事に自信が持てないんじゃなくて、自分自身(・・・・)に自信が持てないようだ。

 

「1番落ちこぼれではないでしょ。現にこの前のテストでは三玖が1番出来が良かったよ」

 

………まぁ、正直に言ってしまえばどんぐりの背比べではあるが。

 

「ソウゴは優しいね…………でも、なんとなく分かるんだよ。私達は五つ子。私程度に出来ることは他の4人も出来る(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)に決まってるよ」

 

──────!今の三玖の言葉で頭の中で何かが弾け、ある仮説が頭を過った。先程のテストの表を確認してみると───やはりその通りだった。

 

「だからソウゴも私なんて諦めて」

 

「諦めるのはまだ時期尚早ってやつだと思うぜ」

 

「え………………?」

 

「自分に出来ることは他の4人にも出来る──────なら、言い換えれば他の4人に出来ることは三玖にも出来る、って事だろ?」

 

「そ、それは……そうかもしれないけど……」

 

俺は三玖に例の確認テストの分析表を見せる。

 

「ほら、何かに気付かないか?」

 

「…………………あ。正解した問題が1問も被ってない……………!」

 

「そう言うことだ。1人が出来ることは全員出来る───── 一花も、二乃も、四葉も、五月も…………そして勿論三玖も!皆には100点の潜在能力があるって事だ。そして……………その潜在能力を引き出す手伝いを俺達にさせて欲しい、って訳だ」

 

「……何それ。屁理屈……………五つ子を過信しすぎ」

 

「まぁ、確かに屁理屈だ。けどまぁ、鬼がかった屁理屈だと思うぜ」

 

鬼がかった、の言い回しがおもしろおかしかったのか三玖はクスッと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

「ライスはLじゃなくてRだ!Liceはシラミだぞ!」

 

「あわわわわ………」

 

翌日、図書館で上杉に四葉がしごかれている隣で俺は暇なのでボーッとしていた。しかし、ライスをLとRで間違えるのは致命的だな。最近は小学生でもriceは知ってるぞ。

 

「四葉、怒られてるのに何でニコニコしてるんだ?」

 

「家庭教師の日でもないのに上杉さんと火野さんが宿題を見てくれてるのが嬉しくて」

 

「と言っても、四葉の宿題の面倒が上杉だけで余裕で出来ちゃってるから、今の俺の仕事は脳内で上杉をからかうしか仕事がないんだが」

 

「どんな仕事だよ!」

 

「あーあ。誰でも良いから来て、俺の出番を作ってくれないかねー……………」

 

「声は掛けたんですけどね……………あ!火野さんの出番が来ましたよ!ね、三玖?」

 

お!!嬉しさの余り椅子を倒す勢いで立ち上がった。

 

「三玖、来てくれたのか……………って、あれ?」

 

声を掛ける上杉を盛大にスルーすると、三玖は俺の前に立つ。ど、ドキドキしますよ~…………。

 

「ソウゴに言われてほんのちょっとだけ考えちゃった。私にも出来るんじゃないかって…………だから、責任取ってよね」

 

「勿論、そうさせて貰うぜ」

 

喜んで、ばっちり最後まで責任を取らせて貰いますよ~!

 

「もしかして三玖の好きな人って…………火野さん?」

 

「!…………ないない」

 

「?」

 

四葉と何の話してるのかはよく分からんが─────何はともあれ、三玖からの信頼を勝ち取ったぜ!勝った!これを以て五等分の花嫁は完結!次回作にご期待下さい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勿論嘘です。まだまだ続くんよ~。

 

to be continue………




余談

凄くどうでも良いが、この翌日に上杉は三玖の信頼を獲得出来たらしい?

上杉「凄くどうでも良いってなんだよ!?つーか、何で疑問形で書いてんだ!ちゃんと獲得出来たわ!そもそも、描写はカットかよ!」

総悟「ツッコミの嵐だな…………いや、だって原作とほぼ同じ流れだし?書くの面倒だって作者が」

上杉「フアック!」


えー、今日もマッドな駄文を読んでくれてありがとうございました!


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キーアイテム=杏仁豆腐

神様「キーアイテムが杏仁豆腐?今回の話で杏仁豆腐で世界を救うんか?」

総悟「食ってこの話は終了だろ」

※実際は杏仁豆腐を食って終了のオチではありません。


今日は家庭教師の日である。家を出た後、約束の時間よりも早く着きそうなのでコンビニにでも寄って雑誌でも見て時間を潰そうとしていた………………のだが。

 

「新発売の杏仁豆腐かぁ…………何か美味しそうだし買っていくか」

 

「ゼリーどら焼き、だと!?くそぅ…………味が気になる!」

 

「何だこの新種のカップラーメンは…………グラタン味だと?良いだろう、その味を試させて貰おうか!」

 

「このジュース、Twitterでバズってたやつ!乗るしかないですよね、このビックウェーブに」

 

………………こんな感じで次々と買っていった結果、財布にあった野口3枚が綺麗に消えていた。『コンビニに寄ると、ついつい色々と買いすぎる事ってよくあるよね』とはまさにこの事。

 

「何やってんだ俺は………………これなら3000円分課金した方が良かったじゃねぇか……………それに、甘いの多すぎだろ…………」

 

レジ袋の中身は9割が甘いものを占めていた。

 

「はぁ………おやつには暫く困らないって事でよしとしよう。星奈さんにも後で何かあげよ。さて、そろそろ」

 

「ソウゴ?」

 

その声──────姿を見なくても、俺にはもう分かるぜ。

 

「お、三玖。買い物帰り?」

 

「うん。これ」

 

何々……………三玖さん定番の抹茶ソーダ2本に和風系のお菓子ですか。

 

「ちょうど良かった。これ、あげる。鼻水は入ってないよ」

 

なるほど、1本は俺用か。そして、よっぽどその台詞を言いたかったのだろう。言えて誇らしげな表情をしている。

 

「ありがと、三玖………………苦ッ!だが、悪くないだろう」

 

「ふふっ、良かった。じゃあ、行こ?勉強、教えてね」

 

「ああ、勿論」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三玖と一緒にマンションに着くと、何故か上杉が監視カメラに向かって喋っていた。

 

「何やってんだおめー?それ、オートロックだぞ?」

 

「ひ、火野!?………………べ、別に知ってたからな!ハハハハ!」

 

嘘つけ。

 

「じゃあ、どう使うの?」

 

「…………………………」

 

三玖の問いに冷や汗を流しながら視線をあちこち彷徨わせる上杉。見てる側としてはちょっと面白い。

 

「………………ここで私達の部屋番を入れてくれたら繋がるから」

 

「だ、だから知ってるからな、元々」

 

嘘つけ(2回目)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございます!私は準備万端ですよ!」

 

「私も見てようかな」

 

「私はここで自習してるだけなので勘違いしないで下さい」

 

四葉はやる気満々、一花姉さんは観戦、五月は自習……………でもまぁ、前と比べれば部屋に籠ってないだけ良い方だ。やはり最初の頃とはほんの少しだけ変わったのかもしれない。

 

「なーに?また懲りずに来たんだ?」

 

二乃を除いて。

 

「前みたいに途中で寝なきゃ良いけどね?」

 

怒られたのを懲りてなさそうな台詞を聞いた瞬間、無性に少しだけイラッとしたので一芝居する事にした。

 

「久しぶりにキレちまったよ……………星奈さんに1ミリも懲りてないって言ってもう3発雷落として貰うぞコラァ!」

 

「ッ!?……じ、冗談よ!ちょっとしたジョークだっての!それくらい察しなさいよ!」

 

「……なーんだ。それなら良いんだよ。察しが悪くてすまんのー」

 

ブラックジョークとして受け取っておこう。にしても、我ながら迫真の演技だったな(自画自賛)

 

「ど、どうだ二乃も一緒に」

 

「それは死んでもお断り」

 

残念、上杉の誘いは一瞬ではね除けられた。まぁ、前みたいな手段で妨害してこないならまだ良い。

 

「しゃーない。今日は4人でやりますか」

 

「…………そうだな。よし、じゃあやるか」

 

「はーい!」

 

早速始めようとする………………が。

 

「…………そうだ四葉。バスケ部の知り合いが大会の臨時メンバーを探してるんだけど、あんた運動出来るんだし今から行ってあげれば?」

 

「い、今から……!?で、でも………」

 

「5人しかいない部員の一人が骨折しちゃったらしくて、このままだと大会に出られないらしいのよ。頑張って練習してきたのに、かわいそう」

 

「……………お二人ともすみません!困ってる人を放ってはおけません!」

 

「嘘だろ…………」

 

上杉は呆然としているが、二乃が言い出した時点で俺はこうなる予感がしていた。四葉はお人好しだからなぁ……………これで3人に減っ

 

「そうだ、一花。あんた、2時からバイトじゃなかった?」

 

「あー、忘れてた」

 

……………2人に減っ

 

「五月も、こんなうるさいとこより図書館とかに行ったほうがいいんじゃない?」

 

「………それもそうですね」

 

……あれ?このままだと三玖だけになるんじゃね…?それはそれで三玖と話せる機会が増えるし、個人的には好都合なんじゃ……………。

 

(………いやいやいや!俺は家庭教師をしに来てるんだぞ!個人的な事は二の次だ!五月がいなくなるのを阻止するには………………!)

 

俺はコンビニ袋からあるものを取り出すと、五月の目の前にドンと置く。それを見た瞬間、五月の目の色が変わる。

 

「こ、これは…………!新発売の特製杏仁豆腐!」

 

「取引しようじゃないか、五月。別に俺らの授業を受けろとは言わん。ただ、ここで勉強してれば良い。そしたら、こいつはユーのもの。杏仁豆腐と引き換えのギブアンドテイクだ…………!」

 

だが断るな!断らないでくれっ……………!

 

「くっ…………良いでしょう、取引成立です」

 

や っ た ぜ

 

「ちょ、待ちなさい!五月、そんなの私が明日にでも買ってあげ」

 

「明日まで待てません!今日食べたいんですッ!」

 

これはどんなに説得してもこれは揺るぎそうにありませんな(勝ち確)

 

「くっ……………そうだ、三玖。あんた、間違えて飲んだアタシのジュース、買ってきなさいよ」

 

「もう買ってきた」

 

「え……………って、何これ!?」

 

抹茶ソーダですね。

 

「悪い、火野……」

 

「心配するな、杏仁豆腐(324円)は大した出費じゃない。とりま、2人残っただけでも良しとしよう」

 

それに………杏仁豆腐と引き換えに残留させた五月は上杉よりは好感度が高い(多分)俺が何とか出来る作戦がある。

 

「そうだな………よし、切り替えて行くとしよう」

 

「うん」

 

三玖もやる気充分そうですし、やりますかねー。

 

「俺ちゃん、今日の授業の為に日本史を最初から一通り勉強してきたんだよねー」

 

「そうなんだ。流石はソウゴ。フータローとは大違いだね」

 

「お、俺だって勉強したわ!」

 

「えー?ほんとにござるかぁ?」

 

「その煽りうざ過ぎる!」

 

そんな会話をしていると、またも二乃が口を開く。

 

「へー…………三玖。いつの間に仲良くなってたんだ。特にあんたと」

 

ん?あんたって俺の事か。

 

「こう言う冴えない顔の男が好みだったんだ。ま、こいつ(上杉)よりは良い方だとは思うけど」

 

「…………ソウゴは冴えない顔じゃない。冴えないのはフータローの方。二乃は相変わらずのメンクイだね」

 

「………お前ら、俺に酷い事言ってる自覚ある?」

 

上杉…………強く生きろよ!

 

「メンクイで何が悪いかしら?イケメンに越した事はないでしょ?なーるほど、外見を気にしないからそんなダサい服で出掛けられるんだ」

 

「この尖った爪がおしゃれなの?」

 

「あんたには一生分からないかなー」

 

「一生分かりたくもない」

 

「これが第5次姉妹戦争(シスターズウォー)と言うやつか……………いいぞ、もっとやれ」

 

「いや、煽ってないで止めろよ!」

 

しゃーないのー。

 

「もー、姉妹なんだから仲良くしろよ。外見とか中身とか今は良いでしょーが」

 

「……………そうだね。もう邪魔しないで」

 

やれやれ………………これで漸く始められ

 

「キミら、お昼食べた?」

 

突然二乃がそんな事を訊いてきた。

 

「俺は食ったが」

 

「そういや俺はまだ食ってない…………グゥ」

 

タイミング良く上杉の腹から空腹の音が鳴る。

 

「じゃあ三玖の言う通り中身で勝負しようじゃない。どっちが家庭的か料理で勝負よ!私が勝ったら今日は勉強なし!」

 

えぇ………そこまでやるぅ?

 

「すぐ終わらせるから座って待ってて」

 

「お前が座ってろ!」

 

上杉の叫びも虚しく、2人の料理対決はスタートした。

 

「……どうしてこうなった…………」

 

「これは上手く乗せられちゃったな。しょうがないから勉強でもしてな」

 

「そうさせて貰うぜ…………はぁ………」

 

ため息をつきながら上杉は参考書を取り出して自分の勉強を始めた。

 

「………………ん?」

 

ふと、後ろを向くと五月が何やらワクワクした表情でキッチンの方を見ていた。

 

(ああ…………食う気満々なのね…………)

 

「………………!」

 

俺の呆れの視線に気付いたのか、五月は前を向いて再び勉強を再開した。俺はスッと立ち上がってさりげなく後ろを通り過ぎつつ、勉強してる内容を確認する。

 

(今やってるのは化学の問題集ね…………次辺りの応用問題でつまづきそうだな……よーし!)

 

俺は持参していたノートとシャーペンとボールペンを取り出すと、超高速で問題の解き方とヒントを示した解説を作った。そして解説を書いたノートの1ページを切り取り、その紙を折って紙飛行機を作る。

 

「えっと………………この問題は……………」

 

予想通りその問題で悩んでいたので、紙飛行機をスッと投げる。投げた紙飛行機は五月の目の前に静かに落ちた。

 

「!?………これは……………」

 

五月がこちらをジーッと見つめてきてるのを背中で感じるが、『ナンノコトカサッパリダナー』と言った雰囲気を出しながら俺は口笛を吹いて誤魔化す。俺は今日教えない設定だからね、しょうがないね。数十秒後にチラッと見ると、五月の視線は俺ではなく紙の方へと向けられていた。

 

「…………………な、なるほど………この問題文が重要なヒントだったのですね。そしてこの法則を使うのですね。そう言えば前に教科書で見た気が……………なら答えは…………あ、出来ました!」

 

おー、良かったじゃん。その後、料理が出来上がるまでの時間に俺は紙飛行機をあと4つ程飛ばすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃーん!旬の野菜と生ハムのダッチベィビ~」

 

「お………………オムライス…………」

 

うん……………見た目だけだと二乃の圧勝になる。いかに推しと言えど、見た目は三玖の方が良いと言うのには流石に無理があるな。

 

「や、やっぱり自分で食べる…………」

 

「折角作ったんだから食べて貰いなさいよ~」

 

ニヤニヤ笑みを浮かべやがって、こん畜生め……………女であることと三玖の姉妹であることに感謝するんだな、二乃。そうじゃなかったらお前の髪にタバスコをぶっかけてたぜ。

 

「じゃー、審査員の上杉氏。食って、どうぞ」

 

「い、いただきます」

 

上杉は一口ずつ双方の料理を口にする。さて、その感想は………………

 

「うん、どっちも美味いな」

 

そう言うと思ったわ。貧乏舌な奴ですからな。

 

「はぁ!?そんなわけ……………あんた!一口で良いから食べなさい!」

 

おやおや、指名がきましたか。どれどれ……………

 

「………………………」

 

「さぁ!どっちが美味しかったのか正直に言いなさい!」

 

「良いだろう…………俺はベーコン派なので、生ハムを入れてやがった二乃は強制失格。つー訳で、三玖の勝利」

 

「ぶん殴るわよ!!」

 

こわいこわい、そんなに睨むなっての。それに、女の子がぶん殴るとか物騒な言葉を使っちゃ駄目だぞ?取り敢えず落ち着けって。ほらお手!

 

「犬みたいな扱いをするんじゃないわよ!!」

 

おっと、心の内で留めておくつもりが何故か出ちゃったかー(棒読み)

あれー、幻覚かな?二乃が唸って威嚇してる犬に見えなくもないぞー?

 

ちなみに、三玖の料理は正直に言うと不味い訳でもないけど超絶美味しい訳でもなかった。もし時間があれば練習して上達して欲しいな。やっぱ料理の出来る女の子は魅力的だしね!何なら、二乃が大好きな(笑)星奈さんを呼ぼうかな。三玖にその気があるなら、料理めっちゃ得意な星奈さんに教わるのもアリかもね。

 

「二乃、どこに行くの?」

 

「誰かのせいでストレス溜まったから自分の部屋でウサギの可愛い動画でも見て発散してくるのよ!」

 

一体誰のせいなんですかねぇ…(すっとぼけ)

 

「あの……………その料理、一口しかまだ手をつけてないですし私にもくれますか?」

 

そしてこいつ(五月)はぶれない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、双方の料理の8割は五月が食べ、残りの2割ずつは上杉が昼飯として食べた。そして後片付けをしてるとすっかり時間が経っていた。

 

「うーむ、結果的に二乃の目論み通りになっちまったな。今回は出直しとするか」

 

「ごめん…………」

 

「三玖は悪くないから謝んなっての」

 

俺でも三玖の立場だったら勝負に乗ってるだろうし。

 

「にしても、あいつとは分かり合える日が来るとは思えん」

 

うーん、でもまぁその内分かり合えると思うけどね。大方、原作ではクリスマスか大晦日のビックイベントにでも何とかなったんでしょ(適当)

ただ、ここに原作にはいなかった俺と言う存在がある。この存在によって二乃の件は来年に持ち越しとか、最悪のケースとして和解無し√とか出てこなきゃ良いんだけどなぁ……………。

 

「2人がちゃんと誠実に向き合えば分かってくれるよ」

 

「誠実って……………どうやって?」

 

「それを考えるのがフータロー達の仕事でしょ?と言うか、私も分からない」

 

分かんないんかーい!………………でもまぁ、確かにどうするのかを考えるのが俺達の仕事か。

 

「そうさな……………それは今後の俺達の課題だ。漫画を読む合間にでも考えとこっと」

 

「あくまで最優先は趣味の方なんだな…………」

 

そりゃ当たり前だよなぁ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しまった、財布を忘れてきた……」

 

「おいおい」

 

エントランスを出ていざ帰ろうとした時、上杉が忘れ物に気付いた。

 

「悪い、先帰ってて良いぞ」

 

「あー………暇だしここで待ってるから早く取ってきな」

 

「すまん、すぐ取ってくる」

 

そう言うと上杉は今日覚えたてのオートロックを使って入って行った。取り敢えず俺は壁に寄り掛かって座る。………………にしても、二乃はどうしてあそこまで俺らに悪意を持っているのやら。

 

「むむむむ…………これはどんなに考えても直ぐには答えは出んな…………」

 

「そんなに難しい問題なのですか?総悟様でも分からないような」

 

「正直『年頃の乙女心?これもう分かんねぇな』的な感じで…………………って、うぉ!?いつの間にいたんですか!!忍ですか!?」

 

「残念ながら忍ではありませんね」

 

そこにいたのは星奈さんだった。

 

「コンビニからの帰りに通り掛かったのですが、何故か総悟様が座り込んでていたのが見えたので、あの五つ子達からいじめにでもあったのかと心配になって来た次第ですが……………その様子ではそんな事はなさそうなので安心しました。もし本当にいじめにあったら絶対に相談して下さいね。私が物理的に天誅を下します!」

 

そしたら家庭教師のバイトも物理的に消滅しそうな気もするけど………………まぁ、俺の事を思ってくれてるのはありがたい。

 

「もしほんとにそうなったら相談しますよ……………つーか、今相談しても良いですか?いじめじゃないですけど」

 

「勿論です。私に答えれる事ならば何でもお答えしましょう」

 

そう言うと星奈さんは俺の隣に座る。ふむ………………付き合いもかなり長いが、めっちゃ美人さんである星奈さんが隣に来ると相変わらず緊張するな……………。前から思ってたが、星奈さんってほんとに年取ってるのかね?出会った頃から全然美しい美貌が変わってない気がするが。

 

「それで、何をお悩みなのですか?」

 

「星奈さんもかーなーり知ってる人物の事なんですが………………あ、ちょっと失礼」

 

話そうとした矢先にメールの通知音が横槍を入れる。サイレントモードにしようと電源をつけると、そのメールの差出人の名前が見えた。その名は上杉。気になったので中身を見てみると───────

 

『助けてくれ』

 

この1文だけ記されていた。

 

「……………………はい?」

 

to be continue………




神様「えー、ここいらでお知らせです。次回は2巻のお話に行くかと思って人、残念でした。次はFGOで言う幕間の物語でーす」

上杉「何の話をするんだ?」

神様「上杉君がストーカーになる話でーす」

上杉「いや、そんな話やらないからな!?」

神様「え、ガチでやるらしいけど」

上杉「え?」

神様「え?」

早くて明日、遅くても2日以内に多分投稿します。ストーカーになるのかならないのか、お楽しみに!

この駄文を読んでいただき、誠に陳謝!


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第2巻
扉を開けて(切実)


タイトル考えるのめんどくせぇよ。

て言うかもう、何もかもがめんどくさい。

チーズ蒸しパンになりたい。

総悟「銀魂の原作者のひとりごとのパクリじゃねーか」

おふざけタイムは終了、ではどうぞ。


「裁判長、ご覧ください」

 

そう言って五月はスマホの写真を見せる。

 

「被告は家庭教師と言う立場にあるにも関わらず、ピチピチの女子高生を前に欲望を暴発させてしまった…………この写真の男は上杉被告本人でまちがいありませんね」

 

「…………え、冤罪を主張する…………」

 

どうしてこうなった……………。上杉からのSOSを受けて行ってみれば、何故か裁判に巻き込まれた件について。ちなみに、俺は上杉被告の弁護人である。星奈さんは傍聴人的な感じ。

 

「裁判長」

 

「はい、原告の二乃くん」

 

「この男は一度マンションから出たと見せかけて、私のお風呂上りを待っていました。悪質極まりない犯行に、我々はこいつの今後の出入り禁止を要求します」

 

「お、おい!いくらなんでも!」

 

上杉にとってそりゃ不味いだろうな。

 

「異議あり!これは不慮な事故であると私は主張します!証言者の三玖さん!」

 

「忘れ物を取りに来たって言うから私がインターホンで通した。録音もある」

 

「以上より、私は被告人の無罪を主張します!」

 

帰って漫画読みたいので、さっさと冤罪を晴らして帰りたい。

 

「こいつはハッキリ撮りに来たって言ったの!盗撮よ!」

 

「違いますぅ。忘れ物を取りに来たと言う意味ですぅ。そもそも!この上杉風太郎と言う男は悪人顔ではあるがその心は完全なる悪では…………………いや、若干の悪かもしれないが!それでも、こいつは二乃を襲うような奴じゃない!!何故ならこいつは女を襲うような度胸のないチキン野郎だからだ!それは1年間一緒に過ごしてきた俺が保証するッ!!」

 

「…………おい、火野。俺への擁護が悪口に聞こえるのは気のせいで良いんだよな?…………おい、何で目を逸らす?」

 

「……………でも、こんな体勢になるかな?」

 

うーむ、一花姉さんから無罪判決を貰うまでには至らんかったか。

 

「一花、やっぱあんた話が分かるわ!こいつは急に私が覆い被さってきたの!」

 

「………………切腹」

 

「じゃあ、切腹で。これにて閉廷!お疲れ!」

 

「おい!」

 

だって三玖さんがそう言うんだし……………ねぇ?

………………って言うおふざけはさておき。どうすればチェックメイトに持ち込めるもんか。

 

「ちょっと良いですか?」

 

その場の全員がその声に注目する。声の主は星奈さんだった。その手には借りたのか五月のスマホが。

 

「この写真、棚から落ちた本を守ったように見えません?」

 

「うーん、確かに言われてみれば」

 

「そう見えなくもない」

 

「可能性としてはあり得なくないですね」

 

「可能性じゃなくて!そ、その通りなんですよ!」

 

星奈さんの指摘に一花姉さん、三玖、五月が賛同を示し、上杉も慌てたように言う。

 

「感情論にはなりますが、私も彼の事は少しばかりですが知っています。先ほど総悟様が述べられた通り欠点はありますが、女の子を襲うような方ではないと思います。何でも恋人が勉強のような人ですから」

 

「………………やっぱり、フータロー君にそんな度胸はないかな」

 

「さすが星奈さん!我々に出来ない事件の解決を平然とやってのけるッ!そこにシビれる、あこがれるゥ!」

 

よし、一花姉さんもそう言ってることだしこれにて閉廷!さっさと帰って飯食った後に『ジの奇妙な冒険(第1部)』でも見るとしよう!

 

「って、待ちなさい!何解決した感じ出してんの!?」

 

「二乃、しつこい」

 

あーあー、また二乃と三玖の間でバチバチ火花が散ってるよ。昼の時と言い、仲良くしなさいよー。

 

「まぁまぁ、そうカッカしないで。私達、昔は仲良し五姉妹だったじゃん」

 

「ッ………………昔はって…………私は…………!」

 

勢いよく二乃は飛び出してしまった。

 

「良いのか、追い掛けなくて?」

 

「放っておけば良いよ。その内戻ってくるだろうし」

 

「ふーむ………………」

 

三玖はそう言うものの、俺は少しばかり心残りだった。だが、いつまでもここにいる訳にもいかないので帰ることにした。

 

「……………あの、火野君」

 

帰る直前に話し掛けて来たのは五月だった。

 

「えーっと………何か…………不味いことしたっけ?」

 

「いえ、そうではなくて……………今日はその、あのヒントに助けられたのでお礼を言わなくてはと思いまして……………」

 

……………………。

 

「にゃんのこと?」

 

「え?で、ですから」

 

「俺は杏仁豆腐のギブアンドテイクの取引の時に言ったぜ?教えたりしない、って。だから五月を助けたヒントをくれたのは……………まぁ、学問の神様みたいなもんでしょ(適当)」

 

お礼を言ってくれたのは嬉しいが、悪いな五月。俺は設定を最後まで貫き通す男なんだッ!そんな俺はなんてカッコいいのだろうか(自画自賛)

 

「……………ふふっ。確かにそうでしたね。では、お礼はその学問の神様に言わなくてはいけませんね」

 

「そーだな。後で手を合わせて言っておくと良い。チョロい神様が会いに来てくれるかもしれない『誰がチョロいって?ぶっ〇すぞ?』………ぜ?」

 

………………今一瞬、声が聞こえた気がしたのは気のせい、だよね?と言うか、気のせいであって!まだ死にたくない!

 

「どうかしましたか、火野君?」

 

「い、いや何でもない…………そ、それじゃお邪魔しましたー」

 

…………神様!チョロいとか言ってすみません!許して下さい!何でもしますから!(何でもするとは言ってない)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「漸く帰って勉強が出来る…………」

 

「さすが、恋人が勉強の男だ」

 

「それは誉めてるのか?」

 

「半分誉めて、半分呆れてる」

 

軽口を叩き合いながらマンションのエントランスを出ると、エントランスの側で二乃が体育座りしていた。何とも微妙な雰囲気が漂う中、二乃は自動ドアに向かって走り出す。だが自動ドアは既に閉じてしまい、開くことは無かった。

 

「チッ、使えないわね」

 

俺らのせいなんですかねぇ……(困惑)

大方、鍵も持たず飛び出してしまったのだが、中の3人に開けてもらうのもバツが悪いと考えているのだろう。

 

「何見てんのよ。さっさと帰ったら」

 

「はいはい」

 

本人がそう言うんだし、さっさと帰って第1部を見ましょうかねー。

 

「……………………………」

 

………………とは言ったものの。やっぱり放っておくのはなぁ………………。このまま帰るともやもやして帰って純粋に漫画を楽しめない気がするし……………………やれやれ、しょうがない………………。

 

「上杉、星奈さん。先に帰ってて貰えますか?」

 

「総悟様を置いて帰るなんてとんでもない。近くで待ってますよ」

 

「待て、火野。俺も行く」

 

何か思うところがあったのであろうか、上杉と一緒に俺はエントランス前にリターンして二乃の側に座り込む。

 

「な…………何してるのよ?」

 

「どうしても解けない問題があってな。解いてから帰らないとスッキリしない」

 

「俺はまぁ……………漫画見る前のナイトルーティンを済ませてから帰ろうかと」

 

「どんなナイトルーティンよ……………」

 

いやまぁ、適当に言ったんで特にないんだけど。今考えたのだと全裸で『エクスプロ──────ジョン!』って叫ぶとかどうですかね?え、却下?

 

「………………馬鹿ばっかで嫌いよ。あんたらも……………姉妹の皆も」

 

「姉妹が嫌い?それは嘘だな」

 

上杉か確信を持った声で呟く。

 

「!……………嘘じゃない!あんたらみたいな得体の知れない男達を招き入れるなんて、どうかしてるわ」

 

「……………『私達5人の家にあいつらが入る余地がない』。あの時お前はそう言ったな」

 

「!」

 

ほーう、財布を取りに行った時に二乃がそんな事を言ってたのか。それを聞いて俺は理解した。

 

「二乃は姉妹の事が嫌いじゃなくて、むしろその逆──────姉妹の事が大好きって事か。それで、部外者の俺達が気に入らないって訳だ。なるほどねぇ」

 

「何それ…………見当違いも甚だしいわ。人の事分かった気になっちゃって。そんなのありえない。キモ」

 

ドMなら歓喜している罵言雑言の連続。だが

 

「……………悪い?」

 

「……………俺は羨ましいよ、正直」

 

「え?」

 

「姉妹を大好きと思えるのが、だよ…………俺は」

 

─────最後まで()を好きになれなかった。

 

「俺は、何よ?」

 

「─────俺は独りっ子だからな。上杉の方が二乃の気持ちは良く分かるんじゃない?」

 

「まぁ、そうだな。俺にも妹がいるから二乃の気持ちは良く分か」

 

「そうよ!私、悪くないよね。よくよく考えたら何で私が落ち込まなきゃいけないわけ?」

 

……………あれれ?

 

「やっぱ、私はあんたらを認めないわ。それであの子達に嫌われようともね」

 

「うっ…………」

 

「えー…………」

 

何か逆に心の扉を閉ざされたんだけど!余計信頼を得るのが難しくなったやんけ!どうしてこうなった………。

 

「二乃、いつまでそこにいるの?早くおいで」

 

あ、三玖。何だかんだで二乃を回収しに来たのか。優しいですなぁ。

 

「あ、ソウゴ。丁度良かった。明日」

 

「帰るわよ、三玖!」

 

「え、でも…………」

 

「いいから!」

 

オイィィィィィィ!!俺のメインヒロインの言葉を最後まで聞かせろよ!!

 

「……………………やれやれ、これだから過度な干渉は嫌いなんだ………取り敢えず今日のところは帰ろうぜ」

 

「そうだな。俺もすぐ帰って二乃がタンスの角に小指をぶつけやすくなる呪いを編み出す必要が出来た。大罪を犯した事を身を以て教えてやらればなるまい…………!」

 

「急にどうした!?」

 

ちなみに、帰って『ジの奇妙な冒険(第1部)』見てたら呪いの事はさっぱり頭から消えたとさ。

 

to be continue………

 




シンエヴァ延期になっちゃいましたね。残念。公開できる日を楽しみにしています。

そして、総悟の前世にも関わる情報が1つ開示されました。どうやら彼には兄弟or姉妹がいたが、仲は良くなかったのが読み取れますね。だから、姉妹の事が大好きな二乃が眩しく、そして羨ましく映ったのかもしれませんね。まぁ、この辺の話しはもっと先にします。

今日も読んでいただき、ありがとうございました!


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今日はお休み

特に言うことないんで今日の前書きはパスで。


日曜は家庭教師の仕事はなく、要はお休みと言うやつである。と、言うわけで朝っぱらからこの世界オリジナルのアニメの主題歌を耳コピしてピアノでひたすら弾く男、総悟です。オーディエンスは星奈さんただ1人。日曜日は星奈さんはお休みなのだが、親の出張が長引いて家に不在なので臨時で来てくれた。

 

「朝から好きなアニソンをピアノを弾くとか、スゲーッ爽やかな気分だぜ。新しいパンツをはいたばかりの正月元旦の朝のよーによォ~~~~~~~~~~~~ッ」

 

「何とも独特で面白い言い回しですね……………そして、それを思い付くのも流石です」

 

「と、どうも…………」

 

まぁ、俺が考えたんじゃなくてジの奇妙な冒険(第4部)の名言からパクリ輸入しただけなので誉められても素直に喜べないんですけどね。本当に流石なのは原作者の荒◯先生である。

 

「それだけの才能を持ちながらもピアノのコンクールに出たりしないのも勿体無い気もしますね」

 

「俺は別にコンクールで賞を取るとかに興味は無いですよ。ただ、アニソンをピアノで弾きたいだけですわ。さーて、次は何の曲を弾こうかな」

 

スマホで何か弾き応えのある曲を調べていると、インターホンの鳴る音がした。星奈さんがいち早く応答する。

 

「はい……………ああ、三玖さんですか」

 

「ぬぁに!?」

 

三玖が来ているだと!?家庭教師のない日に、わざわざこの家に!!

 

「総悟様に渡すものが?分かりました。少しお待ちくださいね。………聞いての通りです。私はお茶を用意するので総悟様はお迎」

 

「行ってきますッ!!」

 

星奈さんが言い終わるのを待てずに、俺は勢いよく部屋を飛び出して行った。

 

「ふむ………………もしや三玖さんの事が…………これは楽しみですね」

 

星奈さんがそんな事を呟いていたのは当時の俺は知るよしもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……………はぁ………………や、やぁ…………三玖……………」

 

「だ、大丈夫………?息切れしてるけど…………」

 

そりゃ嬉しさとかで爆走しちゃったからネ!2回くらい同じ通路を通った気もしたけど、多分気のせいだな!

 

「外で立ち話するのも悪いし…………入って、どうぞ」

 

「じゃあ…………お邪魔します」

 

「十 悔い改めて 十(ボソッ)」

 

「え?何か言った?」

 

「ん?言ってないよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と言うわけで、三玖を連れて先程の部屋に戻って椅子に座らせる。ピアノの上に置いてたスマホとヘッドフォンを片付けていると、三玖が話し掛けてくれた。

 

「ピアノを弾いてたの?」

 

「あぁ。休日のモーニングルーティンと言うやつだ」

 

「凄い…………ソウゴは何でも出来るんだね」

 

「俺は完璧人間じゃない。俺にだって出来ないことはあるさ」

 

──────君の心を盗むとか、ね………………少なくとも今は。

 

いつかどこぞの警部の名台詞のように『奴はとんでもないものを盗んで行きました。あなた(三玖)の心です』みたいに盗んでやる!今から予告状でも送っておこうかな。

 

「……………あ!そのヘッドフォン………」

 

「ん?ああ、三玖の使ってるのと一緒だね。趣味が合いますなー」

 

そうなんです、俺の使ってるヘッドフォンは三玖のと一緒のなんですよねー。発売当日に即購入した思い出がある。傷が付いたら嫌なので、学校には持っていかずに家でしか使わないとヘッドフォンを買った電気屋の店員に誓ってる。

 

「お茶をお持ちしました」

 

星奈さんが温かいお茶を持って来た。それを3人で堪能しつつ、三玖が本題に入る。

 

「はい、これ。ソウゴの家庭教師のお給料」

 

「初給料ですね、総悟様」

 

「初給料と言うのは何か感慨深いな」

 

まぁでも、2回しか行ってないし諭吉×1かなー、なんて予想しながら中身を確認する。中から出てきたのは……………………諭吉×5だった。

 

「…………………あのー、三玖さん。諭吉が4人、じゃなくて4枚多い気が……………何かの手違いなんじゃ…………」

 

「手違いじゃない。1人5000円を5人分。それが2日分で計5万円。全部ソウゴのもの」

 

ま、マジ!?5万円あればゲーム機とソフトを買ってもお釣りは来るし、ラノベや漫画も何冊買える事やらじゃねぇか………………………いや待て。でも冷静に考えるとなぁ……………。

 

「……………受け取れないな」

 

「え?」

 

「俺はこの額に見合う程の勉強を教えられてないし、成果も出してない」

 

流石にこんな大金を受け取るのは気が引けた。俺は前世で色々とあってお金の価値やありがたみを痛感している。大した事もしてないのにこんな大金を貰うのはおこがましいにも程があると思ったのだ。

 

「そんな事ないと思う」

 

「え?」

 

「うまく言葉では言えないけど、ソウゴとフータローは私達5人の何かを変えつつある。それだけでも充分な成果だと私は思う」

 

「…………………」

 

「だから、返金は受け付けない。自由に使って」

 

「三玖がそこまで言うなら……………」

 

しかし、5万円か。何に使うかね……………。

 

「………………やっぱゲームに課金?」

 

「「……………………」」

 

「じ、冗談だから!流石に5万円をぶち込む程の廃課金じゃないから!」

 

星奈さんのみならず三玖からも呆れの視線が突き刺さった気がするので慌てて撤回。

 

……………まぁ、1万円位はぶち込むかもしれないけど……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、何やら予定でもあるのか三玖は帰って行った。そして星奈さんも何か頼んでおいたものを取りに行く予定があるらしく1時間前に出掛けて行った。取りに行くその何かについては『秘密です』と言って教えてくれなかったが。なので、現在家には俺1人だ。

 

「…………………ん?へー、今日は祭りがあるのか。そういや、この時期にいつも花火も打ち上げられてたような」

 

スマホでネットニュースを見ていると地元のニュース欄にてそんな記事を見つけた。

 

「ま、行かないけど。人混み苦手だし。家でアニメとか漫画見てた方が有意義だし」

 

「君は相変わらずのインドア派だね」

 

出ました、神様。

 

「全く、口には出さなかったが祭りがやってるのに君は毎年家で漫画やアニメとかでゴロゴロして。折角なんだしお祭りに行って来なさいよ。僕は君を引きこもりに育てたつもりはないぞ」

 

「別にあんたは育ての親じゃないでしょーが……………祭りとか関係なく、俺は人混みが多いところが苦手なんだよ」

 

「なら、人混みが苦手と言うのがどうでも良くなるほどのスペシャル情報を教えてあげよう」

 

スペシャル情報だぁ?

 

「勝手に教える分には構わないけど、多分俺の意思は変わらないぜ」

 

「今日のお祭りに三玖が来ると言っても?」

 

「行きますねぇ!」

 

人混みが嫌いと言ったな。あれは嘘だ。ちょろい?うっせぇ、ぶっ○すぞ。

 

「星奈さんに家から会場までの案内をお願いして、彼女に付いて行けばすぐ会えるよ。そんじゃ、あでぃおす!」

 

「ただいま戻りました」

 

神様が消えるのと同タイミングで、後ろから星奈さんの声が掛かる。

 

「あ、戻ってきたんですね。用事は終わっ……………た………」

 

振り返った俺は言葉を失う。何故なら星奈さんの姿は可愛らしい浴衣姿で髪飾りもつけてとても綺麗な姿だったからだ。

 

「どうでしょうか?似合っていますか?」

 

「えっと……………その、似合いすぎて語彙力が3歳児レベルに低下しました」

 

「ふふっ、それは良かったです」

 

何だこの美しき天使は……………危うく悩殺される所だった。危ない危ない。

 

「もしかして、今日のお祭り用のですか?」

 

「その通りです。奮発してレンタルしました」

 

「…………俺も来年行く時はレンタルしようかな」

 

「……………おや?その口振りから察するに今日の祭りに行く気満々のようですね。誘う手間が省けましたが……………休日はほとんど家で過ごすインドア派の総悟様が外出に積極的となると急に雨が降って中止にならないか心配になりますね」

 

失礼な!時と場合(三玖関連)によってはアウトドア派になるんですぅ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

身支度を済ませた俺と星奈さんは家を出た。そして神様に言われた通り会場までの案内をお願いし、承諾した星奈さんに俺は付いて行った。

 

(取り敢えず言われた通りにしたが……………これで会えるのか?)

 

半信半疑だったが、それはすぐに確信へと変わった。ゲーセンの近くに見知った顔である三玖も含めた五つ子と上杉兄妹の7人がいたからだ。

 

「あれ、上杉?お前が休日に勉強せず外出なんて珍しい。何してんの?」

 

「火野!丁度良かった。こいつら宿題もせずに祭「あ、火野さんと星奈さんだ!お二人もお祭りに行くんですか?」…………ら、らいは?」

 

上杉を遮って妹のらいはちゃんが話し掛けてくる。いやー、いつ見ても可愛い妹だ。上杉が羨ましい。

 

「うん、そうだよー」

 

「じゃあ、火野さん達も私達と一緒にお祭りに行こー!」

 

「ま、待て!こいつらの宿題が終」

 

「ダメ?」

 

「……………も、もちろん良いさ………」

 

相変わらず妹には弱いな。シスコンだからね、しょうがないね。

 

じゃけん、祭りに行きましょうね~。

 

to be continue………

 




今日も読んでいただきありがとうございました!

幕間の物語のその2とキャラ設定は執筆中ですので、もう暫くお待ちを!


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今日はお休み②

ちなみに、作者はもう2、3年以上花火を生で見てませんねー。彼女でも出来たら行きたいなぁ、なんて思いながら書きました。書き終わったとき、謎の虚しさが残ったが気のせいとしておきましょう。


「もう花火大会始まるのに………何で家で宿題やってるのよ!」

 

これも全て、『祭りに行くのは良いとは言ったが、宿題をすっぽかすのは良いとは言ってねぇ!』と主張する上杉風太郎って奴の仕業なんだ。この5人は祭りに行く途中で勉強星人の上杉に会ってしまったのが運の尽きだったな。まぁ、花火大会で楽しんだ後に(5人が)大嫌いな勉強なんて気分的にしたくもないだろうし、お楽しみの前に厄介事を済ませておくのが良いだろう。

 

「いいかお前らー。1人でも逃げる素振りを見せてみろ。二乃が再び星奈さんの雷の犠牲になるぞー」

 

「何で私だけなのよ!」

 

「次は地下行きですかね」

 

「地下!?」

 

こんな感じでギャーギャー騒ぎつつも、二乃も含めて反抗もなく案外すんなりと宿題に取り掛かっていたので1時間もしないで宿題は終わらせた。

 

と言うわけで、今度こそ…………じゃけん、祭りに行きましょうね~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっと終わったー!」

 

「花火って何時から?」

 

「19時から20時まで」

 

「じゃあ、その間に屋台に行こー!」

 

宿題を終わらせて晴々とした表情を浮かべてる四葉、二乃、三玖、一花姉さんの4人。それと対称的に隣の上杉はどんよりとしている。

 

「おい、祭りに来てまでどんよりとした空気出すなっての」

 

「折角の日曜だってのに……………俺はなんて回り道をしてんだろうな………」

 

「良いじゃねぇか、たまには回り道もよ。普段見れない景色が見れてさ」

 

「そんなもんかね……………」

 

と、そこへ。

 

「何ですか、その祭りにそぐわない顔は」

 

むむっ。髪型が変わってるが─────。

 

「……………五月、だよな?」

 

「!…………意外です。火野君は私達の見分けがつくようになってきたのですね」

 

「……まぁ多少はね?」

 

ホットドッグを食ってたと言うのが決定的な証拠になったのは黙っておこう。

 

「火野はよく分かるな。つーか、顔が同じでややこしいんだから髪型変えるなよ」

 

「なっ……………どんな髪型にしようと私の自由でしょ!」

 

あーあ、怒らせちゃったよこの勉強バカ(上杉)は。デリカシーないのー。

 

「女の子が髪型を変えたら褒めなきゃ。もっと興味を持ちなよ~」

 

「そうなのか…………?」

 

いやはや、ほんと一花姉さんの言う通りでございますよ。

 

「ところで2人とも。浴衣は本当に下着を着ないか興味ない?」

 

「え」

 

「それは昔の話だ」

 

「ほんとにそうかな~?」

 

なっ、なにぃ…………!?なら是非とも見せ

 

「なーんて、冗談でーす!ドキドキした?」

 

…………み、見せてとか言うわけないじゃないですかーアハハ!つーか、見るなら三玖の方を…………って、なに言っとるんじゃ俺は!!完全に変態の発言じゃねぇか!!最低だ……………俺って…………。

 

「………………星奈さん。俺を殴ってくれ」

 

「いや、流石にそれはちょっと……………ほら、行きますよ」

 

星奈さんに促されて俺も歩き始める。何処に向かって歩いてるのかはさっぱりだが。

 

「あれ?一花姉さんは何処に行った?」

 

「少し離れた所で電話で話してますよ。…………それと総悟様。これ、いりますか?」

 

星奈さんから手渡しされたのは金魚がパンパンに詰まった袋×4。

 

「な、なんですかコレ………?」

 

「四葉さんと『どちらが大量に金魚を救えるか競争』をした結果、こうなりまして…………四葉さんも似たようなものでしたので、お店の方は涙目でした」

 

「来年から要注意人物として出禁にならなきゃ良いですが………らいはちゃんにあげるのは?」

 

「もう既に四葉さんがあげてまして…………」

 

あ、ほんとだ。らいはちゃんの手にも袋×4が。てか、反対の手に花火セットがあるんですが、それ今日いるんですかね………(困惑)

 

「この金魚はさておき……………皆さん何処へ向かっているのですかね?」

 

「俺に訊かれても分かりませんよ。あ、丁度良い所に。三玖に訊いてみますわ」

 

俺達は少し先を歩いていた三玖の元へ行く。

 

「なぁ、三玖。1つ聞きたいんだけども、皆は何処へ向かってるんだ?」

 

「二乃が予約したお店。そこの屋上から花火を見るの」

 

「ブルジョワですね……………しかし、そこなら人もいないでしょうし快適なのは間違いなしですね」

 

すると、側にいた二乃から声が掛かる。

 

「そう言えば、祭りに来たのにアレも買わずに行くわけ?」

 

アレ、とは?

 

「そういえばアレ買ってない……」

 

「アレやってる屋台ありましたっけ」

 

「あ、もしかしてアレの話してる?」

 

「早くアレ食べたいなー」

 

アレ、とは?(食い気味)

 

「せーの………」

 

「「「「「かき焼き氷そばリンゴ人形飴焼きチョコバナナ 」」」」」

 

バラバラじゃねぇか!!

 

「全部買いに行こう!」

 

「…………なぁ、火野。あいつらがほんとに五つ子なのか怪しく思えてきたんだが…………」

 

「奇遇だな、上杉。俺もだ。うーむ…………もしや、本当は三つ子で、残りの2人は宇宙人説もあり得るんじゃ…………」

 

「それはないだろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それぞれの欲しいものを買い終わり、人混みを歩いている。その中でも二乃は誰よりも先に先頭を歩いていた。

 

「あんた達遅い!」

 

「…………二乃の奴、張りきってるなー。勉強もあれくらい張りきってくれりゃ良いのに」

 

俺のぼやきに星奈さんと三玖はクスッと笑う。そのまま三玖は花火に対する想いを話し始める。

 

「花火はお母さんとの思い出なんだ。お母さんが花火が好きだったから毎年皆で見に行ってた。お母さんがいなくなってからも毎年見に行ってる」

 

……………そうか、三玖らのお母さんはもう亡くなってたのか。そう言えばお母さんを見たことなかったな。そして、家族の大切な思い出ならば姉妹の事が大好きな二乃が張りきるのも納得だ。

 

「私達にとっては花火ってそういうもの」

 

「なるほどね」

 

「家族の大切な思い出と言うわけですか……………おや、わたあめの屋台が良いところに。ちょっと買ってきますね」

 

好物なのか反対側にあるわたあめの屋台の方へ行く星奈さん。俺も何か買おうかなー、と思って屋台を見回していると。

 

『大変長らくお待たせいたしました。まもなく花火大会を開始します』

 

そのアナウンスが掛かった瞬間、大勢の人々が一斉に動き始めて俺は人のビックウェーブに飲み込まれた。

 

「もう、物売るってレベルじゃねーぞ、オイ!これだから人混みは苦手なんだよォォォォォォ!」

 

前世でのP3の販売時の光景を思い出しながら、そのまま俺は流されて行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………あー、酷い目に遭った……………………」

 

漸く人の波から抜け出した俺氏。幸いにしてキッズに何回か足を踏まれた以外に被害はない。

 

「つーか、三玖や星奈さん達とはぐれちまった…………そして花火も始まっちまった」

 

周りに三玖、星奈さん、上杉らの姿は何処にもない。先程のビックウェーブのせいなのは明白だ。

 

「困ったな……………こういう時は………テッテレー!スマートフォンー!」

 

青いネコ型ロボットみたくひみつ道具を出すと思った?残念、ただのスマホでーす。

 

「これで電話すれば…………………って、電池が切れてるじゃねぇか!クソッ、ゲームしてないでちゃんと充電しとけば良かったな……………」

 

過去の行為を後悔してもどうしようもない。モバイルバッテリーもないので電話路線は諦めることにした。

 

「そうなるとこの大量の人の中から辺りを歩き回って探すしか…………ん?」

 

辺りを見回していると、少し離れた所にベンチに座り込む三玖の姿が。慌てて転びそうになりながら駆け寄る。

 

「三玖!」

 

「そ、ソウゴ?他の皆は…………?」

 

「三玖が1人目。あとの4人は何処にいるのやら………あ、そうだ!誰かに電話とかした?俺のスマホは電池がきれて眠りに着いちゃってよ」

 

「さっきしてみたけど、二乃しか出なかった。二乃は四葉とらいはちゃんを迎えに行くって」

 

二乃が四葉を回収するとして…………残るは一花と五月か………。

 

「よし、じゃあ2人で手分けして探すとしようか」

 

「あ、待って!足が…………」

 

三玖の足を見ると、赤く腫れていた。

 

「誰かに踏まれたのか?」

 

「うん…………」

 

三玖の足を踏みやがって、こん畜生め……………俺がその場にいたら死罪ものだぞ!!

 

「私の事は良いからソウゴは先に行ってて」

 

…………………………………。

 

「いや、それは俺には無理だな」

 

怪我してる女の子を放っておくなんて俺には無理だねっ!!

 

ちょっと待ってて、と断って俺は目先にあったコンビニで包帯を購入してすぐに三玖の元へカムバック。掛かった時間は僅か90秒。

 

「一旦草履を脱がさせて貰うぜ」

 

「う、うん…………」

 

「(………いやー、綺麗な足な事で。スベスベ…………って、おい!!んな事より応急処置だっつーの!!)」

 

暗黒面に堕ちる寸前で自分を取り戻し、手早く包帯を足に巻いた。

 

「これでよし、っと。少しは楽になるでしょ」

 

「う、うん…………あ、ありがとう」

 

「良いってことよ。じゃあ、三玖はここで休んでなよ。俺は一花と五月を探してくるぜ」

 

「………うん。気を付けてね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………と、カッコつけたのは良いものの。やっぱり見つけるのはかなり面倒だな…………」

 

この会場に1000人位は来てるのだろうか?その中から2人を探すのはかなりハードだな。

 

『知人ですけどー!?』

 

…………この声を俺は知ってるな。声のした方へ急ぐと予想通りの人物がいた。

 

「やっぱり上杉か」

 

「誰かと思えば火野か。よく俺を見つけれたな」

 

さっきの声で目立ってたもんですから。

 

「で、お前はなにしてんの?」

 

「さっき一花を見つけたんだが、何故か逃げやがってな…………」

 

「に、逃げたぁ?」

 

「一花を見つけて話し掛けようとしたら謎の髭のおっさんに遮られてな。『一花ちゃんとはどんな関係?』って訊かれて、その答えに悩んでいる間に逃げられちまった」

 

「その髭のおっさんも気になるが、何で逃げたんだ?……………いや、今それを言ってもしょうがない。早く探さないとな」

 

「……なぁ、火野。あのアホ毛の女、五月じゃないか?」

 

上杉が指差した方向を見ると、確かにアホ毛の女がいた。あの髪型は多分五月だ。俺達はダッシュで距離を詰めて五月に声を掛ける。

 

「五月見っけ」

 

「!!……………なんだ、あなた達ですか」

 

「悲しいかな、残念そうな表情をされちゃったよ……………これで後は一花姉さんだけか。取り敢えず、五月と上杉はひとまず三玖と合流してろ。ここを真っ直ぐ行った所にあるベンチで三玖が休んでる。一花姉さんは俺が引き受けた」

 

「探しに行くなら俺も」

 

「体力なしのお前が無理すんな。歩きすぎで既に足が少し震えてんぞ。残りのお1人はスピードに優れた俺がとっとと探してくるわ」

 

「………分かった」

 

「分かりました。……………火野君」

 

探しに行こうとすると五月から呼び止められた。

 

「……………一花の事を、よろしくお願いします」

 

「…………ああ、任された」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっそー…………何処に行きやがった!」

 

360度くまなく探すが中々見つからない。ったく、何故逃げたんだ?お母さんとの思い出の花火を5人で見るんじゃなかったのか?

 

「あとは一花姉さんだけだってのに……………!」

 

「………そっか。よかった、他の皆とは合流出来たんだね」

 

背後を勢いよく振り返ると捜索対象(一花姉さん)がいた。つーか、何処から現れやがった。

 

「こっち来て」

 

「は?ちょっ!?」

 

何故か俺の手を掴んで駆け出す一花姉さん。

 

「花火見た?凄く綺麗だよね」

 

「ちょ、何処に行くんだっての!?5人で見るんじゃ」

 

「はは。いーから、いーから」

 

「…………………」

 

どこか陰りのあるようにも見える笑顔で言う一花姉さんに引っ張られて路地裏まで連れてこられる。

 

「フータロー君から聞いてる?」

 

「聞いてるって……………髭のおっさんの事か?」

 

正解と言わんばかりに一花姉さんは頷く。そして───────唐突に壁ドンされた。

 

「その事は皆に秘密にしておいて。私は皆と一緒に花火を見れない」

 

「なん、だと………?」

 

to be continue……




おまけ

一花姉さん 「前から思ってたけど、ソウゴ君って私だけ呼び名が違うよね?姉さんってついてるけど、何で?」

総悟「長女だってのもあるし、一花姉さんって呼び方が何故かしっくりくるからな」

一花姉さん「へー、そうなんだ。まぁ、確かに私ってお姉さん気質だからしっくりくるのも無理はないよね!」

総悟「ハッ!」

一花姉さん「あー!今、馬鹿にしたでしょー!」

今日もこんな駄文を読んでくれてありがとうございました!


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今日はお休み ③

事前に言っておきますが、明日投稿したら区切りも良いし1日お休みをいただきます。予定があるのとストックを貯めたいので、そのつもりで。


「遅い………ソウゴ、大丈夫なのかな………」

 

一方その頃、三玖は独りでソウゴを待っていた。何気なく鏡に映る自分を見つめていると、先程の一花の言葉を思い出す。

 

『女の子が髪型変えたらとりあえず褒めなきゃ』

 

「………………………」

 

三玖はヘッドフォンとお面を置くと、長い髪を纏めるのだった。

 

「……………ソウゴは褒めてくれるのかな……………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「急なお仕事頼まれちゃって。だから花火は見に行けない。ほら同じ顔だし一人くらいいなくても気づかないよ」

 

「それは無理があろうかと思われます、なんだが…………」

 

「あっ、ごめんね。人を待たせてるから」

 

「ちょ待てよ!せめて何でかは説明してくれ!」

 

「なんで?」

 

「へ?」

 

なんで、とは…………?

 

「なんでお節介焼いてくれるの?家庭教師だから?」

 

「ちげーよ、花◯香菜」

 

「だからそれ誰!?」

 

中の((ry

 

「何で俺がお節介を焼くか?そりゃあ、ユーが俺の大切な友達だからよ。お節介を焼くのにそれ以外にまだ理由がいるか?」

 

「……………そっか。ありがとね。でも、私は……」

 

「あ、ちょっと!?」

 

路地裏から出ていこうとするのを慌てて止めようとするが

 

「あ、やば」

 

出ていった瞬間にすぐ戻ってきた。そして身を引いて様子を伺っている。俺も顔だけ出して一花姉さんが見ている方向を見てみると、髭のおっさんがいた。

 

「上杉が言ってた髭のおっさんか?」

 

「うん。あの人、仕事仲間なの」

 

「ユーを探してる説が濃厚だな………って、こっちに来たし!」

 

慌てて俺と一花姉さんは顔を引っ込める。

 

「どうしよう………抜け出してきたから怒られちゃう!」

 

「どうしようって……………奥から逃げれば良いんじゃね?」

 

「あーもう!間に合わないよ!………あ、そうだ!」

 

何かイカしたアイデアを思い付いたのかと思いきや、一花姉さんは俺に抱きついてきた。

 

「フアッ!?」

 

「ほら、もっと近くに来て!」

 

「え、あ、はい…………」

 

一花姉さんに言われるがままに密接し、手も回して抱きしめた。そしてやって来た髭のおっさんがこちらを見る。角度的に一花の顔は見えていない。…………あのおっさんからしたら抱き合ってるリア充カップルに見えてんのか?

 

「よっこいしょ」

 

そこに座るのか………。

 

「あの~一花姉さん?我々はいつまでイチャイチャしてれば良いんですかね?」

 

「ごめん、もうちょっとだけ」

 

よもやよもやだ。人生初のハグを捧げる相手が一花姉さんになるとはな。

 

「私達、傍から見たらカップルに見えるのかな?」

 

「そりゃそーだろ。俺には聞こえるぜ。『爆発しろ』、『イチャイチャしてんじゃねーぞ』、『リア充、タヒね』とか呪詛の声がな」

 

「あはは…………本当は友達なのに悪いことしたみたい」

 

「まぁ、別にこれくらい良いんだけどよ……………」

 

そんな会話をしていると、路地の出口にいるひげの男の声が聞こえてくる。

 

「もしもし………少しトラブルがあって………撮影の際は大丈夫ですので………」

 

撮影?

 

「そういや仕事って…………?」

 

「あの人はカメラマンなの。私はそこで働かせてもらってる」

 

「カメラアシスタント的な?」

 

「…………うん、まぁそんな感じ。いい画を撮れるように試行錯誤する。今はそれがとても楽しいんだ」

 

はえー、カメラアシスタントの仕事か。

 

「何か面白そうだね、カメラアシスタントって。どんな事するの?」

 

「えっ……………と…………それは………」

 

「一花ちゃん見つけた!!」

 

なっ!?しまった、油断したかっ!……………と、思ったのも束の間。

 

「こんなところで何やってるの!言い訳は後で聞くから、早く行こう!」

 

「えっと…………えっ?」

 

おっさんに手を引かれていたのは───────。

 

「「三玖!?」」

 

髪を結んでイメチェンした三玖だった。

 

「まさか、私と間違えて………」

 

「つーか、上杉と五月は何やってんだ!?三玖と合流してたんじゃ…………って、んな事は後回しだ!さっさと止めないと!」

 

俺と一花姉さんは慌てて路地裏を飛び出す。するとジャストタイミングで上杉と五月が現れる。

 

「ひ、火野君に一花!大変です、三玖が変な人に連れ去られました!私がたこ焼きを買いに行った隙に!」

 

「俺も歩き回って疲れたから飲み物を買おうと離れた隙に……………すまん」

 

確かに2人の手にはそれぞれたこ焼とただの水(¥90)があった。

 

「ったく……………取り敢えず、止めてくるわ」

 

そう言って俺は急加速して全力で走り出す。前世ではこんな速度で走るなんて不可能だったなー、なんて考えながら人混みをスピードを殆ど落とさず駆け抜け、素早くおっさんの前に回り込む。そのまま三玖の手を掴む男の手を払うと、三玖を自分の方に引き寄せる。

 

「な、なんなんだ君は!?」

 

「通りすがりの仮面ラ……………じゃなくて、俺の大切な友達だ!おっさん、よく見ろ!彼女は一花じゃない!」

 

「その顔は見間違える筈がない!さぁ、うちの大切な若手女優を離しなさい!」

 

「だが断…………る?若手女優?」

 

え、まさか……………撮る側じゃなくて…………

 

「と、撮られる側?」

 

俺の間の抜けた問い掛けに一花は俯いたまま無言で頷くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、まさか一花ちゃんが五つ子だったとは…………ほんとに3人ともそっくりだ…………」

 

事情を説明された髭のおっさんは驚いたように一花、三玖、五月の顔を眺めていたがすぐに一花の手を取る。

 

「行こう、一花ちゃん!車で行けばまだ間に合う!」

 

「あ、おい!」

 

「止めないでくれ。人違いをしてしまってのは申し訳なかった。だが、これから一花ちゃんには大事なオーディションがあるんだ」

 

「なっ………………一花!花火は良いのかよ!」

 

「…………皆によろしくね」

 

上杉の問い掛けに笑顔でそう言うと髭の男と行ってしまった。

 

「そ、それにしても…………一花が女優だったなんて…………」

 

「前にあのおじさんを見たことあったけど…………あれは仕事終わりに送って貰ってたんだ…………」

 

五月は知らなかったらしいが、三玖は少しだけ心当たりがあった様子。

 

「ところで三玖、足の方は大丈夫か?」

 

「うん。それよりも、一花の方に行ってあげて」

 

「私からも…………改めて、一花の事をお願いします」

 

「…………おう!」

 

三玖と五月の後押しを受けて俺は駆け出す─────その前に。

 

「三玖」

 

「?」

 

「あー…………そのイメチェンした髪型に似合ってるぜ」

 

「!……………ふふっ、ありがとう」

 

三玖の嬉しそうな顔を記憶に刻んで、俺は駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここにいたか。あのおっさんは?」

 

「ソウゴ君………………今は車を取りに行ってるとこ」

 

「逃げるなら今の内だぜ」

 

俺の言葉には何も答えず、一花姉さんはタブレットを差し出す。画面に映ってるのは台本だった。

 

「半年前に社長にスカウトされてこの仕事に就いたの。ちょくちょく無名の役をやらせてもらってたんだ。それでさっき、大きな映画の代役オーディションがあるって知らせを貰ったところ。いよいよ本格デビューかも」

 

「……………それがやりたい事か」

 

「そうだ!折角だし練習相手になってよ」

 

そう来ましたか。

 

「まっ、面白そうだし良いけど」

 

「やった!じゃあ、お願いね」

 

そう言うと一花姉さんのスイッチが切り替わる音がしたかと思えば、真剣味の帯びた表情を浮かべていた。………………よし、俺も真剣にやるとしよう。

 

「…………卒業おめでとう」

 

「先生、今までありがとう」

 

ちなみに、ベタな学園ものドラマの感動シーンのようだ。

 

「先生。あなたが先生で良かった。あなたの生徒で良かった」

 

「………………………」

 

「あれ?もしかしてジーンと来ちゃった?」

 

「…………いや、脚本の台詞がベタ過ぎんか、って思っただけ。俺の方が良い台詞考えられそう」

 

「そっちかい!」

 

「まぁ、それはさておきだ。中々うまいじゃん」

 

「そ、そうかな?褒められるとお姉さん照れちゃうなー」

 

───────ただし。

 

「今の演技では100点はあげれないねぇ。見え透いた作り笑いをしてるようじゃ」

 

「……………え?」

 

「笑って自分の本心を押し殺す─────俺は現実でもアニメとかでもそう言う奴を見てると少しイラッとするぜ」

 

「っ……………」

 

「少々話が逸れるが、さっきなんでお節介を焼くかって訊かれて友達だから、と俺は答えたが勿論それは本当だ。だが、特に言う必要はないと思って言わなかったが、もう1つ別の理由もある。上杉でも同じことを思うだろうが、大して勉強を教えてないのにかなり高額な給料を貰ってしまった。課金したらそれこそガチャが200連位出来る程のな。だから、貰った分の義理はきっちり果たしたいってのもある。これが俺の本心の全てだ」

 

「………………」

 

「お前も本当の所はどうなんだよ。さっきも余裕ぶってたくせに、さっきイチャイチャ&ラブラブ抱き合ってた時に震えてたじゃん」

 

「イチャイチャもラブラブもしてなかったと思うけどね………………」

 

そう苦笑しつつも、一花姉さんは漸く本心を語り始めた。

 

「…………この仕事を始めてやっと長女として胸を張れると思ったんだ。1人前になるまでは皆には言わないって決めてたの。だから、花火の約束があるのに最後まで自分の口からは言えなかった…………これでオーディション落ちたら、ますます皆に会わす顔がないよ……………花火、もうすぐ終わっちゃうね………」

 

フィナーレに突入したからか、連続で咲く花火を見て寂しそうな表情を浮かべる一花姉さん。

 

「やっぱ花火は見たかったか?」

 

「………………うん」

 

やっぱな。

 

「それにしても、私の細かな違いに気づくなんてね。お姉さんびっくりだ」

 

「いや…………白状すると、会って日が浅いから細かい違いなんてまだ分からん。ただまぁ……………他の4人と笑顔がなんか違った。そんだけだ」

 

「……………まいったな。ソウゴ君1人を騙せないようじゃ、自信がなくなるなぁ」

 

演技ってある意味人を騙すようなもんだからな。

 

「俺も別に演技の経験があるわけじゃないから大したアドバイスは言えんが……………取り敢えず笑うときは作り笑いをするんじゃなくて、楽しい事とか嬉しい事があった時に笑うみたいに、いつも通りの笑顔で笑えよな」

 

そう言って俺もニッと笑みを浮かべる。スマイル一丁!

 

「いつも通りの………笑顔で…………」

 

その時、車が俺達の前に停まったと思えば、窓が開いておっさんが声を掛ける。

 

「一花ちゃん、早く乗って!」

 

「は、はーい!」

 

「……………まっ、上杉はかなり反対するだろうが、説得する時は俺も付き合うぜ」

 

「!」

 

「はいはい、早く乗った乗った!」

 

こちらを振り返ろうとしていた一花姉さんを俺は車に押し込んでドアを閉める。その瞬間、車は急発進して行った。

 

「ふぅ……………ん?そういや何か忘れてるような……………あ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そういや星奈さんって何処にいるんだ!?」

 

漸く星奈さんの存在を思い出した俺氏。我ながら遅すぎる。

 

「すっかり忘れてたし!星奈さんは何処にいるんだ?!」

 

「後ろにいますよ」

 

若干の不機嫌さが滲み出た声が聞こえた瞬間に振り向けば、確かに探し人(星奈さん)はいた。

 

「………わ……………忘れてたとか言っていましたが、あれは嘘」

 

「完全に忘れてましたね?」

 

「ハイ、スミマセン」

 

「まったく、連絡も取れませんし心配しましたよ………………まぁでも、色々と奔走していたのは先程会った三玖さん達から聞いたのでそこまでツーンとしてませんけども」

 

えー、ほんとにござるかぁ~?そうには全然見えないんですけど。と言うか、ツーンって言って拗ねる人始めて見ましたよ………………。

 

「あぁ、それと。上杉君から伝言を預かっていまして。『用が終わったら一花を連れて祭り会場の近くの公園に来い。花火(・・)を諦めるにはまだ早い』とのことで」

 

「!………………そう言う事か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

================

 

「では最後の中野一花さん」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

場所は変わってオーディション会場。一花の審査が始まった。 

 

「卒業おめでとう」

 

審査員が台本を読み上げ、一花は台本通り答えていく。

 

「先生、今までありがとう」

 

──────上手く笑えてるかな。こんな時…………皆ならどうやって笑うんだろう。

 

四葉なら。三玖なら。五月なら。二乃なら。

 

そして─────────

 

『ちげーよ、花◯香菜』

 

『…………いや、脚本の台詞がベタ過ぎんか、って思っただけ。俺の方が良い台詞考えられそう』

 

『笑うときは作り笑いをするんじゃなくて、楽しい事とか嬉しい事があった時に笑うみたいに、いつも通りの笑顔で笑えよな』

 

──────(総悟)なら。  

 

「……………先生。あなたが先生でよかった。あなたの生徒でよかった」

 

そうして見せた笑顔は作り笑いでもない、嘘偽りでもない、心からの笑顔だった。 

 

to be continue……




Q.総悟とはぐれている間、星奈さんは何をしてたか?

A.

男「そこの姉ちゃん!花火よりも俺とイイことしない?」

星奈さん「……………(無言の圧力)」

男「…………お、俺と」

星奈さん「ポキッポキッ(指を鳴らす音)…………俺と、なんです?」

男「す、すみませんでしたァ!!」

こんな感じの事が何回かあった。


星奈さん「(法律がなければ次来たら半〇しにするんですけどね………)」

読んでいただきありがとうございました!


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今日はお休み ④

最近、ギャグマンガで一番好きなのが銀魂だと気付きました。今日の前書きはそれだけです。


「お疲れさん。終わったみたいだな」

 

「う、うん……………何やってるの?」

 

「見たら分かるだろ。ジェンガだよ」

 

暇なので近くにあったド◯キで買って、星奈さんと対決なうでござる。

 

「次は俺の番か……………俺は勝つ、勝たなきゃ誰かの養分……………いけっ……………ああっ!ど゛う゛し゛て゛な゛ん゛だ゛よ゛お゛お゛ぉ゛お゛!゛!゛!゛

 

「……………一花ちゃんの友達は少し………いや、かなり変わってるね………」

 

「あはは…………」

 

仕方ないだろ、俺の中のカ◯ジ(藤◯竜也ver)が暴れだすんだから。それはさておき、星奈さんとジェンガを片付けて一花姉さんに向き合う。

 

「で、どうだった?」

 

「うーん、どうなんだろう………」

 

「どうも何も最高の演技だった。私は問題なく受かったと見ている。まさか一花ちゃんがあんな表情を出せるとは思わなかったよ……………それを引き出したのは恐らく君だ」

 

「そうか?大したアドバイスはしてないんだけどな」

 

「どうだかね…………私も個人的に君に興味が湧いてきたよ」

 

見るな…………俺をそんな目で見るな!いや、ほんとマジでやめて(切実)

 

「…………用事も終わったようですし、一花さんをお借りして失礼しますよ」

 

「あ、ちょっと!?」

 

星奈さんナイスぅ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だあのおっさん……………危うくおホモだちになるとこだった」

 

「また色っぽい目で見たら総悟様のお父様に頼んで事務所ごと潰す事も考えた方が良いかもしれませんね」

 

「いや、そうすると私の働く場所がなくなっちゃうんだけど……………」

 

安心しろ、冗談だ。

 

「ところで、何処に向かってるの?」

 

「近くの公園だ。もう皆集まってるぜ」

 

「…………やっぱり皆怒ってるよね。花火を一緒に見れなかったこと」

 

「さーな。だけどまぁ、花火を諦めるのはちょいとばかし早いんじゃねーか?」

 

「!」

 

一花姉さんの目に花火をする4人の姿が映った瞬間、驚愕の表情を浮かべた。

 

「迫力では劣りますが、中々風情があって良いですね」

 

全くもって、星奈さんの言う通りでございますよ。

 

「あ、一花に火野さんと星奈さん!我慢できずおっ始めちゃいました!」

 

お、四葉だ。必要性のない花火セットをらいはちゃんに買っていたらしく、そのお陰で5人で花火をする事が出来たので、今回のMVPである。

 

「勿論、俺達の分は残してるよなぁ?」

 

「当然です!」

 

「良かったー。もし無かったら上杉に八つ当たりしてましたよ~」

 

「何で俺!?」

 

あれ、上杉いたの?てっきり帰って勉強してるのかと思ってたが。

 

「あんた!一花に変な事しなかったでしょうね!」

 

「心外だな、二乃。上杉じゃあるまいし、セクハラ紛いの変なことは一切してないと誓おう」

 

「あれは事故だろ!」

 

「……………まっ、それもそうね。あいつじゃあるまいし」

 

「納得するな!」

 

上杉もツッコミキャラと化してきたなー。

 

「とにかく、あんたには一言言わなきゃ気が済まないわ!

 

お!つ!か!れ!」

 

「アッハイ」

 

文句言われると身構えてたのに、紛らわしくて草が生えるぜッ!

 

「五月……」

 

「一花も花火をしましょう。三玖、そこにある花火持ってきてください。星奈さんと………ついでに火野君と上杉君の分も」

 

あくまで男2人はついでなのか……(悲哀)

 

「うん……………はい、どうぞ」

 

「ありがとうございます、三玖さん」

 

「ありがと、三玖!」

 

「さ、サンキュー……」

 

「さぁ、本格的に始めましょう!」

 

四葉の声掛けで花火を本格的に始める雰囲気になったその時

 

「みんな!ごめん!私の勝手でこんなことになっちゃって…………本当にごめんね」

 

そう言って一花姉さんは頭を下げた。

 

「一花、そんなに謝らなくても」

 

五月がフォローするが二乃が割って入ってくる。

 

「全くよ。なんで連絡くれなかったのよ。今回の原因の一端はあんたにあるわ。…………けど、目的地を伝え忘れてた私も悪い」

 

「私は自分の方向音痴さに嫌気がさしました…」

 

「私も今回は失敗ばかり」

 

「よく分かりませんが、私も悪かったということで!」

 

フッ、何と美しい姉妹愛であることか。ああ、ほんと…………羨ましい。

 

「みんな…………」

 

「はい、あんたの分よ」

 

一花姉さんは二乃から花火を受け取り、5人で花火を始めた。その様子を見ながら五月は口を開く。

 

「昔、お母さんがよく言ってましたね。誰かの失敗は五人で乗り越えること。誰かの幸せは五人で分かち合うこと。喜びも、悲しみも、怒りも、慈しみも、私たち全員で、『五等分』ですから」

 

5人の楽しそうな声を聞きながら、少し離れた所で俺と星奈さん、上杉の3人も花火を静かに楽しんでいた。

 

「ん?待てよ……………あいつらは花火を楽しんでる。らいはは満足して寝てる……………これ、帰って良いんじゃね?漸く自習を再開できるな」

 

「えぇ………(困惑)」

 

「ここまで勉強に執着してると恐怖すら感じますね………勉強に親友でも殺されたんですか?」

 

「人をヤバそうな奴みたいな目で見ないでくれます!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後何だかんだで上杉は残る事となった。そして5人は最後の5本の花火を選んでいる最中のようだ。

 

「そーいや、俺も日曜日が丸々潰れたな。あーあ、いつもならぐだぐだしながらアニメでも見てたのにねぇ」

 

「口ではそう言っておりますが、中々楽しそうでしたよ?」

 

……まっ、星奈さんの指摘通りだ。人混みは相変わらず苦手だったが、確かに楽しかった。また来年行くのも悪くないだろう。

 

「けど、俺は五つ子探しに奔走してたから打ち上げ花火をゆっくり楽しむ暇もなかったぜ。それだけが少し心残りだったなぁ……………」

 

「ならばその願い、この花火の神様(・・)が叶えてやろう」

 

後ろを振り向くと、サングラスを掛け、はっぴを着て祭り用の鉢巻きを巻いた謎の男(棒読み)がいた。何故か肩にはバズーカを背負っている。

 

「おい、何してんの神さ」

 

「神様ではない!お祭り男だ!」

 

さっき花火の神様とか言ってたじゃねぇか!!

 

「人前で神様とか言うなっての。変な奴に見られるでしょ!」

 

と、小声で言ってますが………はっぴ姿にサングラス掛けて極めつけにバズーカ持ってれば変な奴にしか見えないのは俺の気のせい?俺の目が曇ってるだけ?

 

「総悟様、このお方は?」

 

「えーっと………………」

 

何て説明すりゃ良いんだよ!馬鹿正直に神様なんて言えないし!

 

「はじめまして。僕は火野君のお友達の…………お祭りを愛する男、宮野◯守です」

 

何で宮野◯守の名前を出したんだよ!?確かに高身長なのは共通してるけども!!つーか、お祭り男って言ったら宮◯大輔じゃないのかよ!!

 

「おい、何する気だっての!?」

 

「何って、君が花打ち上げ火見たかったなー、って言うからガチのやつを打ち上げに来てやったんだよ。安心しろ………俺ァはただ、この花火バズーカで壊すだけだ────この腐った世界を」

 

「目的が変わってるじゃねーか!そしてお前は鬼〇隊の晋助君じゃねーだろ!つーか、声真似上手ッ!お前実は本人さんじゃないの!?」

 

「……………何をヒソヒソ話してるの?」

 

「!」

 

いつの間にか三玖が目の前にいたァ!つーか、三玖だけでなくて他の4人もいるし!

 

「え、えっとねー!こいつは俺の友人の宮野◯守って言ってね!声優のオーディション行ってたら打ち上げ花火見れなかったらしくて、だから自分で花火バズーカで打ち上げに来たらしいよー!ねー?」

 

「まー、そんな感じかな!」

 

ふー、危ない危ない。何とか誤魔化せた。

 

「よーし、早速打ち上げるとしようか。何なら、ユー達も見ていきなよ。まぁ、火野君からは鑑賞料を取るけど」

 

ふざけんな。

 

「じゃあ、お言葉に甘えて見させて貰おうかな」

 

「ま、どでかい花火で締めるのも悪くないんじゃないかしら?」

 

「動画撮る…………」

 

「はっぴまで着て気合いが入ってますね!」

 

「それにしても、お腹がすきました…………」

 

一部関係のないコメントが流れた気がするが、それはさておき。

 

「よし、行くぜ!」

 

そう言うと宮n……………神様は少し距離を取って花火バズーカを空に向けて構える。つーか、ガチの打ち上げ花火をやるときって市とか消防に許可を取んなきゃいけないんじゃなかったっけ?そう言う決まりだった気がする。

 

─────は?何で神様が人間のルールに従わなあかんの?僕がルールだっつーの。

 

こいつ、直接脳内に…………!つーか、言ってる内容がAUOじゃねーか。もう神様って言うか暴君じゃね?

 

「よーし、じゃあ3つ数えたら打ち上げるぞー。いーち」

 

ドォン!

 

「まだ1しか数えてねぇじゃねぇか!」

 

「うっさいなー。男は『1』と『0』。これさえ覚えておけば生きていけるんだよ」

 

「おお!何か名言な気がします!」

 

「僕が作り出した名言だぜ!」

 

嘘つけ!騙されるな、四葉!それ銀◯のだから!

 

「それよりも、もうそろそろだな。ほら、たーまやーって。せーの!」

 

「「「「「「たーまやー!」」」」」」

 

そして次の瞬間、パーンと言う音と伴に夜空に1発の綺麗な花火が咲いた───────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んじゃ、バズーカの処分は君が頼むわ。ダンボールのゴミの日に出しておいて」

 

「何で俺!?お前が処分しろや!え、てかこれダンボール!?花火バズーカ、ダンボールだったの!?…………って、もういねぇ!逃げやがった!」

 

くそっ、人にバズーカの処分を頼むとかとんでもねぇ野郎だ!つーか、このまま出したら通報されかねないな。『ごみ捨て場にバズーカが置いてあります!』みたいに。それも面倒だし、帰ったら解体しないとなぁ……………。

 

「ソウゴ君」

 

声を掛けてきたのは一花姉さんだった。

 

「私は先に失礼してますね」

 

空気を読んでか星奈さんは公園から退散して行った。

 

「どうした?他の皆は?」

 

「先に帰ってて貰ったよ。まだお礼を言ってなかったからさ。応援してくれた分、私も頑張らなきゃね。女優も……………勉強も」

 

「!」

 

それってつまり………!

 

「これからよろしくね、せんせー?私は一筋縄ではいかないよ?」

 

「………… 勿論だっつーの」

 

これで3人。信頼を勝ち取れた、かな。良かった良かった。だが、ここで終わればノーマルエンド。真のトゥルーエンディングに辿り着く為には──────

 

「…………一筋縄では行かないと言えば…………あの勉強界のラスボス(上杉風太郎)の説得も一筋縄ではいかなそうですな」

 

「あー………確かにそうだね………」

 

ベンチに腕を組んで俯きながら座っている上杉はラスボスに見える…………見えない?

 

「取り敢えず、成績下がるからヤメレとか言うだろうから…………勉強と仕事を絶対両立させるから、とか授業受けるからー、とかそんな感じの事を言えば良いんじゃね?俺もサポートするけど」

 

「うん、分かった」

 

と言うわけでラスボスの討伐もとい説得に向かう俺と一花姉さん。目の前に立っても上杉は何も言わない。

 

「えっと…………フータロー君。知っての通り、私駆け出しの女優やっててさ」

 

「………………………」

 

「寄り道とかじゃなくて、これが私の目指してる道なの。これからは授業も受けるし勉強も頑張るから、両立を認めて欲しいなー、って思うんだけど…………」

 

「そう言う訳だ、上杉。授業を受けてくれる気にもなったし、本人も頑張って両立させるって言ってるから俺からも頼むわ」

 

…………てか、これアレだな。これ、『お父さん、娘さんを僕に下さい!』って、実家のお父さんを訪ねて結婚を認めて貰うような感じだな。いつかガチで三玖のお父さんに『三玖を僕に下さい!』って言う日が来るのだろうか………………。

 

「…………つーか、静か過ぎね?」

 

「うん、私もそう思ってた…………もしかして」

 

2人同時に上杉の顔を覗き込むと─────

 

「zzzzz………」

 

「「…………」」

 

目を開けながら寝てやがりました、こん畜生。つーか、目を開けながら寝てるの怖すぎだろ。そもそも、こんな芸当出来るの初めて知ったんだけど。

 

「……………どうする?」

 

「……説明は明日にしようかな。空振っちゃったし」

 

「そーね……………けどさぁ」

 

このままじゃ何か締まらないんで………。

 

「ねぇ、一花姉さん。さっきジェンガと一緒に家で使う油性ペンを買ったのよ。そして、目の前には無防備に寝てる上杉が…………もう分かるよなぁ?」

 

「………ははーん、そう言うことかぁ………」

 

俺が言いたいことを察したのか、一花姉さんも小悪魔のような笑みを浮かべる。

 

「折角だ。花火大会での思い出をもう1つ作るとしようかねぇ………!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だこりゃ────────!?」

 

その夜、上杉家から落書きされた自身の顔を鏡で見た上杉の怒りの叫びが聞こえたとか聞こえなかったとか。

 

ちなみに、お風呂でしっかり洗って落としたらしい。

 

to be continue…………




感想

一花姉さん「途中で起きないかのスリルとの隣り合わせを味わいながら落書きするのはとっても楽しかったー!」

総悟「まさに愉☆悦!」

※子供とかいい子は真似しないで下さい。

今日も読んでいただき、ありがとうございました!


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アドレス交換

どうも、お久しぶりです。いつの間にかお気に入り登録者が100人を突破しましたね。まだ10話程度しか投稿してないのに非常に嬉しいですね、これは。これからも頑張るのでよろしくお願いします!


「どーした上杉?少し不機嫌そうに見えるが」

 

「昨日、油性ペンで顔に落書きされたんだ。俺が寝てる間にいたずら好きの子供にでもやられたんだろうがな。お陰で親父やらいはに爆笑されちまったぜ」

 

「ドンマイダネー」

 

一体誰なんでしょうね、俺の友達にそんなことをするいたずら好きの子供は(すっとぼけ)

 

「2人ともおっはー」

 

おや、いたずら好きの子供(一花)だ。今日から冬服か。

 

「朝から何のようだ、一花」

 

「学校まですぐだけど一緒に登校しようと思って。フータロー君、何か不機嫌だね?」

 

「昨日、寝てる間にいたずら好きの子供に顔に落書きされて家族から盛大に笑われたからな」

 

「酷いことする子もいるもんだねー」

 

平然とそう言いつつ俺の方を向いてニッと笑う一花姉さん。可愛いな。

 

「昨日、皆に仕事の事を打ち明けたんだ。皆ビックリしてたよ」

 

「そりゃそうだわな」

 

駆け出しとは言え女優なんだし。

 

「でも、スッキリした」

 

「そりゃ良かった……………ところで上杉」

 

昨日は空振ったが、今日は説明せなアカンなー、と思って長期戦覚悟で声を掛けるが意外な言葉が返ってくる。

 

「……………勉強と両立させれるんだろうな?」

 

「え?あ、うん。そのつもり。だからこれからは授業も受けるつもりだよ」

 

一花姉さんの答えを聞いて風太郎は軽くため息をついた後─────

 

「…………そうか。それなら俺からは特に何も言うことはない。精々仕事の方も頑張ってくれ」

 

あれれー、おかしいぞ~?あっさりOK出ちゃったよ。

 

「お姉さん、もっと反対するかと思ってたけど………」

 

「俺も長期戦を覚悟してたんだがのー」

 

「別に全面的に賛成してる訳ではないが…………その、俺達は協力関係にある『パートナー』なんだから、勉強意外の事も少しは応援する必要があると考えただけだ」

 

…………そう言えば、何か髭のおっさんにどんな関係と訊かれてたんだっけ。それに対して上杉なりの答えが『パートナー』って事か。なるへそ。

 

「……………あ、そうだ。はい、これ」

 

突然、一花姉さんは俺達に向けてスマホを差し出す。

 

「くれるのか?」

 

それは流石にないやろ(即答)

 

「もー違うよフータロー君。2人とメアド交換しよってこと!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後

 

「メアド交換、大賛成です!」

 

上杉が四葉にメアド交換について話した結果としては大賛成でした。にしても、そう言えばメアド交換してなかったなぁ。三玖のメアド、欲しいなー(直球)

 

「その前に、これを終わらせちゃいますね」

 

先程から四葉は千羽鶴を生産中。誰かにあげるのかね?

 

「一応聞くが何やってるんだ?」

 

「友達の友達が入院したそうなので千羽鶴を作ってます!」

 

「勉強しろー!」

 

今日も上杉のツッコミが炸裂。平和なことで。つーか、友達の友達の分を作るとか、マジでお人好しだな四葉は。程々にした方が良いぞ、ほんと。いつか悪い大人に利用されんぞ。

 

「半分寄越せ、俺もやる!」

 

「パパッとやって、終わりっ!にしますよ~」

 

千羽鶴を折るのとか何年振りですかねぇ…………あれ、折り方どうだっけ…………これもう、わかんねぇな(迫真)

 

「お、中野。ちょうど良いところにいた。ノートを皆の机に配っておいてくれ」

 

「はーい!」

 

流石はお人好し、一言で快諾ぅ。上杉もイライラしてきてるのが目に見える。

 

「…………そもそも、俺は別にお前達の連絡先なんて…………」

 

おーっと、そんなネガティブ発言を言うのは総悟君は予測済みでございますよ。

 

(………つー訳で、一花姉さんよろしくー)

 

目配せで合図すると、一花姉さんはスマホを操作する。数秒後、ガラケーの着信音が鳴って上杉が確認した瞬間、奴に動揺の表情が浮かぶ。

 

「………みんなのメアド知りたいなー」

 

一花姉さんを睨みつつ言うが、当の姉さんは涼しい顔で笑っている。まっ、何はともあれその気になってくれたので何よりだ。ちなみに、送られたのは例の写真である。落書きしておいて写真に納めない訳がない。ちゃんと連写しました☆

 

「協力してあげる」

 

最初にメールアドレスを見せてくれたのは三玖だった。

 

「あっ、そうだ(唐突)足の方はもう大丈夫?」

 

「う、うん。もう平気」

 

そりゃあ良かったですわ。もし悪化でもしようもんなら切腹もんでしたよ~、ほんと。さて、残りは四葉と二乃と五月ですか。

 

「二乃と五月は食堂にいますよ!帰らない内に聞きに行きましょう!」

 

じゃけん、行きましょうね~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お断りよ。お・こ・と・わ・り」

 

「私達にあなた達の連絡先を聞くメリットはありません」

 

四葉と上杉と共に行って貰ったのがこの返答……………うん、まぁこうなるとは思ってた。

 

「くっ…………ならばこれはどうだ!俺と火野のを交換すれば、らいはとの連絡先もセットでお買い得だ!」

 

「…………背に腹は変えられません」

 

ちょろいな(直球)

 

「二乃姉貴は教えてくれないんスか?」

 

「当たり前よ。……………あと、あんたに姉貴呼ばわりされる筋合いはないわ」

 

「しょうがねぇな(悟空) 二乃抜きで楽しいお話でもしましょうねー」

 

「…………書くものを寄越しなさい」

 

や っ た ぜ

 

「…………おっと、書くもんの持ち合わせがなかった。上杉、何かない?」

 

「書くもの…………なら、俺の生徒手帳に書いてくれ」

 

上杉は二乃に生徒手帳を渡す。よーし、これで後は1人だ。

 

「な、四葉?」

 

「へ?何で私なんですか?」

 

えぇ……(呆れ)

 

「………俺と上杉がアドレス交換した人物を順番にあげてみ?」

 

「えーっと…………一花、三玖、五月、二乃……………あー!私、してませんでした!」

 

上杉が内心『こいつアホだわー』って思ってるのが目で分かる。かく言う俺も少しそう思ってるが。

 

「こちらが私のアドレスです!」

 

そう言って見せた瞬間、四葉のスマホ画面に着信表示とそれを知らせる音が出る。

 

「……………あ、そう言えばもう1つ頼み事があったんでした。失礼しますね」

 

「ふぇ?」

 

行っちゃった。何だろうね。一瞬見えた着信画面にはバスケ部部長とか書いてあったような………。

 

「バスケ部ってまさか…………!」

 

「どーした上杉氏?」

 

「入部でもして勉強しない理由を作る気なんじゃ…………!」

 

そうか?ほんとに勉強する気ないなら、初日の時も他の姉妹と同じく逃げてたと思うけどな。

 

「悪い、ちょっと行ってくる!」

 

上杉も四葉の後を追って行ってしまった。大方入部を誘われたんだろうが、断るんじゃねーのか、多分。特に根拠もないがそんな希ガス。

 

「おっ、二乃姉貴書き終わりましたか」

 

「だから姉貴って呼ぶなっての!」

 

はいはい(空返事)

 

上杉の生徒手帳に書かれたのをパパッと登録して、終わり!

 

「……………よーし、これで全員分登録終了っと。二乃には夜に1人でトイレに行けなくなる程の怖い画像でも送…………嘘だから、安心しろ。そんな睨むな。ソウゴ君ジョークだ。じゃ、俺は戻るわ。え?上杉の生徒手帳?ここに戻ってきた時にでも渡しなよ。俺はめんどいからパス」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「たらいはー」

 

「お帰りソウゴ君。全員と交換出来た?あと、フータロー君は?」

 

「お陰さまで何とか。上杉は死にました(適当)」

 

本人がいたら『勝手に殺すな!』とか言ってるんだろうが、生憎今はツッコミが不在である。

 

「ソウゴ、ここを教えて」

 

「どれどれ………おや?これ英語じゃん」

 

いつもはお得意の日本史ばかりなのに苦手な英語とは珍しいな。今日は雪でも降るんじゃ………………って、失礼でしょうが三玖に!!

 

「……………少し頑張ろうと思っただけ」

 

「!……………うんうん、その調子でございますよ。えーっと、これはね…………」

 

これはかなり良い変化と言えるんではないだろうか。この調子で皆もどんどん変わってくれれば良いのだが。

 

「ねぇ、ソウゴ君」

 

「どーした、一花姉さん?」

 

「私に因数分解されてみない?」

 

「フアッ!?」

 

「…………一花」

 

「あはは、冗談だよー」

 

三玖のたしなめる視線を受けて一花姉さんは笑いながらそう言う。まったく、とんでもない事を言いやがりますよこの姉さんは。

 

「そー言えばお2人さん。もうすぐ何があるか知ってます?」

 

「……あ!林間学校だね」

 

「楽しみ」

 

うん、まぁ…………それもそうなんだけども。三玖の言う通り俺も楽しみなんだけども!

 

「その前に中間テストとか言う壁があるでしょーが」

 

「あー……………」

 

「憂鬱」

 

良い反応は当然ながら皆無である。

 

「まっ、中間試験で退学になる訳じゃないからそんな焦る必要はないけど、だからと言って中間テストを疎かにするつもりも毛頭ない。少しでも良い点を取って自信を持てるようにしないとね。俺も上手く教えられるように頑張らないと」

 

「ソウゴは自分の勉強は大丈夫なの?」

 

「当然です、プロですから」

 

「自分で言っちゃうんだ…………」

 

「一花姉さん。俺にも自画自賛してみたい時だってあるんですぅ。…………って、そんなことは良いんだよ。ほれ、手と頭を動かせぃ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

 

その日の夜、食事をしている五つ子達。彼女らの携帯が一斉に鳴る。

 

「!…………ソウゴからだ」

 

「私もです!」

 

「一斉送信でしょうか」

 

「何だろうねー?」

 

「どーせあいつの事だから、しょうもない事でしょ」

 

様々な反応を見せる五つ子ら。中身を見てみると

 

『まさか初メールが宿題の送信になるとはなー。これも全部上杉風太郎って奴の仕業なんだ。え?宿題を誰が送るのかを決めるじゃんけんで負けたお前が悪い?違う違う、じゃんけんで勝つあいつが悪いんです。俺は1ミリも悪くない。

 

と、言う訳でこの課題を3日以内に終わらせておいて下さい。3日後に解説します。終わらせてない人が1人でもいたら二乃が星奈さんに筋肉バスターされます!手筈は整えました☆ けどまぁ、俺はそこまで鬼畜ではないから問題は少し簡単にしてある。なので、頑張れば絶対出来る筈。では、諸君の健闘を祈ってまーす。二乃は筋肉バスターされないと良いネ!俺はされるのを見たいけど。

 

ps.ゲームのガチャで☆5キャラじゃなくて☆2キャラしか出なかった』

 

「どんだけ私を弄ってるのよ!!」

 

「まぁまぁ、二乃落ち着いて」

 

「何で1人でも終わってなかったら私だけ筋肉バスターとか言うよく分からない罰ゲーム受けなきゃならないのよ!?それに見たいって言う本音が洩れてるじゃない!あと、最後のpsの部分はどう考えても私達に言う必要ないでしょうが!」

 

ちなみに、『何か二乃って弄りたくなるんだよねー。そう言うキャラで安定してるからかなー?あ、でも愛のある弄りなんでそこんとこは忘れないでや~』と、後に総悟は語るのだがそれは別の話。それにしても、『送った課題をやっておいて』の一言で済むのに大量の蛇足で長文にする男は如何なものか。

 

「…………不本意だけど、ほんとに筋肉バスターってのを喰らわされたくは無いし、今回だけはやるしかないわね………い、言っておくけど別に私はあいつらを認めた訳じゃないんだからね!私は筋肉バスターを回避する為にやってるだけなんだから!」

 

「二乃、ツンデレの発言にしか聞こえない」

 

「ッ~~~~~~!ほんと調子狂わせてくれるわね、あいつ!覚えてなさいよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ、唐突に寒気が…………誰かに宣戦布告されたような気が…………夜道には気を付けよ………」

 

to be continue……




おまけ

上杉「これで写真は消したな?」

一花姉さん「消したよー(バックアップしてあるから消しても意味ないんだけどね)」

総悟「この際だから俺も消しておいたぞ(バックアップしてあるけどねぇ………)」

上杉「お前も犯人かよ!」


















神様「ちなみに、この次の話で上杉は生徒手帳を二乃から取り返しに行くんだけど、めんどいし原作とほぼ変わらんからまたカットするってばよ!」

上杉「俺の出番をもっとくれよォォ!!」

こんな駄文を読んでくれて誠にありがとうございます!次もぜってぇ見てくれよな。


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第3巻
積み上げたもの


次回は幕間の物語です。もしかしたら明日は投稿は無理かも知れないのでご了承を。


「来週から中間テストです。今回も赤点は30点以下とするので、各自復習を怠らぬように」

 

教科書を盾にして漫画を読んでいる俺の耳に定期テストの到来を知らせる先生の声が入ってくる。ページを捲る手を止めて隣をチラリと見ると、爆睡している一花姉さんの姿があった。

 

「…………こんな調子で大丈夫かねぇ…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

休み時間、暇潰しに上杉の教室に行ってみると、丁度五月と話してる真っ最中だった。

 

「休み時間なのに予習してるなんて偉い!家でも自習してるんだってな?それに無遅刻&忘れ物もしたことない!お前は姉妹の中で一番真面目だ!」

 

ふむ、あれか?勉強会に参加させようと誉めまくって口説いてる最中だろうか。

 

「そ、そうでしょうか」

 

「そうだ!ただ、馬鹿なだけなんだ!」

 

「いや、馬鹿はどう見てもお前だろうが!」

 

思わずツッコミながら俺も教室へ入って行った。

 

「なんだ、火野か。お前からもガツンと言ってやってくれ」

 

「いや、五月じゃなくてお前にガツンと言いたいわ!」

 

そんな口説きで参加する訳ないでしょうが!こいつ、勉強は出来てもやはりある意味馬鹿だ!

 

「………………そうですね。私も1人では限界があると感じてました。この問題を教えて貰っても良いですか─────先生」

 

「分かりました、後で職員室まで来なさい」

 

ほらー、言わんこっちゃない。さらに参加しなくなったじゃん……………。こいつ、某アーサー王の如く人の心が分からないんじゃないの、ガチで。

 

「どうしてこうなった………」

 

「(オメェのせいだよ)」

 

「兎に角、次だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お次は二乃である。

 

「二乃、中間試験は」

 

「みんな行こー」

 

おそろしく速いスルー。俺じゃなきゃ見逃しちゃうね!

 

「あの人、二乃の事呼んでなかった?」

 

「あいつら私のストーカー」

 

「おい待て!上杉はストーカーでも変態でも何でも良いが、俺はどう考えてもストーカーじゃないだろうが!」

 

「何で俺は良いんだよ!…………二乃!俺は諦めないぞ!祭りの日は一度付き合ってくれただろ!もう一度考え直してくれないか!」

 

こ、こいつ………よりを戻そうと説得しているように聞こえる事に気付かないのか。だが、面白そうなのでもう暫く放っておこう……(ゲス顔)

 

「なんならお前の家でも良いぞ!あと1回だけで良いんだ!お前の知らない事をたくさん教えてやるよ!」

 

だ、ダメだ………笑いを堪えられそうにねぇ…………完全に(ピー)したい人の発言じゃねぇか………このままだと上杉がビースト(意味深)と誤解されかねないのでここいらで止めますかねー。

 

「おっ、おい………ブフッ………上杉…………フフッ、ちょいとそこいらで止めとけって………グフフ………誤解を生むからよ………」

 

「は?誤解?何を言ってんだよ。なっ、に…………二乃?」

 

上杉の目の前には羞恥で顔を赤くしている二乃が。ここで漸く上杉が何かまずかった事に気付いた時にはこの説得の結末は決まっていた。

 

「誤解されるでしょうが────!!」

 

「ブヘッ!?」

 

二乃の ビンタ こうげき!

 

こうかは ばつぐんだ!

 

あいての 上杉は 倒れた!

 

二乃は 去って行った!

 

「あーあ、真っ赤な紅葉が出来ちゃったね」

 

「き、今日はなんて厄日だ………どうして俺がこんな仕打ちを…………」

 

ほぼお前のせいだけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局五月と二乃を除くいつメンで勉強会をする事に。2人の事は取り敢えず一旦忘れる事にした。

 

「上杉さん、火野さん!問題です!今日の私はいつもとどこが違うでしょうか!」

 

「お前ら、もうすぐ何があるか知ってるな?」

 

「無視!」

 

上杉はスルーの呼吸 二の型(適当)で完全に無視。 しょうがないから代わりに俺が解いてやんよ~。

 

「………………………あ、分かった!リボンが違う!」

 

「火野さん、大正解です!最近の流行はチェックだと聞いて変えてみました」

 

へー、そうなんだ。ファッションの流行とかあんまり気にしないからよく知らんが。そんな四葉のチェック柄のリボンを上杉が鷲掴みする。

 

「良かったな、四葉。お前の答案用紙も流行りのチェックでいっぱいだ」

 

「わ~~~、最先端~~~…………」

 

「そのチェックは流行るとまずいですぞ…………うーん、このままテストを向かえると嫌な予感しかしませんな」

 

「火野の言うとおりだ。このままでは試験を乗り切れない!だからこそ、この1週間で国数英理社を徹底的に叩き込むぞ。だから三玖も日本史ばかりやってな…………み、三玖自ら苦手な英語を勉強している、だと…………!?」

 

当の三玖は日本史ではなく英語をやっていた。俺からすればデジャブだけどね。

 

「ね、熱があるなら帰って」

 

「スパーン!」

 

「痛ッ!」

 

俺氏の こんぼう(丸めた教科書)叩き こうげき!

 

こうかは ばつぐんだ!

 

上杉は あたまをおさえた!

 

「熱なんかねーぞ、上杉。三玖は変わったんだよ。もう今まで勉強から後ろ向きだった頃の彼女はもういないのだ!」

 

「そ、そうなのか……?よく分からんが良い方向に変わったのなら何よりだ………………てか、今叩かれる必要あったか?」

 

「それはノリで」

 

「どんなノリだよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー疲れた!」

 

「早く帰りたい………」

 

俺も四葉と三玖ど同意見だわ。疲れたし早く帰りたい。

 

「不味いぞ、火野。放課後だけでは全然時間が足りない。週末にどれだけ詰め込めれるかが重要だな………」

 

「……少しは肩の力を抜けよ、上杉。ずいぶんと根詰めてるが、別に俺らの目的は中間テストで赤点回避する事じゃない。卒業させる事だ」

 

「そ、それは……………確かにそうだが………」

 

ここで一花姉さんから援護射撃が入る。

 

「ソウゴ君の言うとおり、フータロー君は根詰め過ぎだよ。中間試験で退学になる訳じゃないんだし、私達も頑張るからじっくり付き合ってよ。ね?」

 

「………………確かに、2人の言う通りそんなに焦らなくても良いのかもな」

 

そうそう。そんなに気を張り過ぎるのも身体に毒だしな。

 

「あ、でもご褒美あればもっと頑張るかなー」

 

「駅前のフルーツパフェが良いです!」

 

「私は抹茶パフェ」

 

「ああ^〜、いいっすねぇ^〜。………てか、今食いてぇ」

 

「じゃあ、今から行きましょう!」

 

「早く帰りたいんじゃなかったのか…………」

 

確かにそう言ったな。あれは嘘だ。

 

「よし、行くぞ上杉!甘いもん食って消費した分の糖分補給じゃぁ!」

 

「上杉さーん!置いてっちゃいますよー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ファミレス

 

「……………そして、俺と四葉の誘いを勉強するからと断って帰るのがガリ勉の鑑の上杉氏。いやぁ、もうほんと尊敬しちゃうネ!」

 

「言葉とは裏腹にそうには聞こえないけどね…………」

 

よく分かってるじゃないか、一花姉さん。クラスで隣だから俺の事も分かってきたようだ。しかし、今更だが女子3人の中に男が1人いると何か気まずいな。気のせいか、妬む視線があちこちから突き刺さってるような気がするし。帰り道、後ろからグサッと刺されたりしないか心配だな。

 

「フータローはいつもあんな感じなの?」

 

「大体の誘いを勉強で断るぞ、奴は。そこまで勉強する理由ってなんなんだろうね」

 

尋ねてみたことはあるが、適当な理由で有耶無耶にはぐらかされてしまい、真の理由を俺は知らない。

 

「火野さんはどう言った経緯で上杉さんと友達になったんですか?」

 

「どう言った経緯?あー、それは」

 

その時、俺のスマホから電話が鳴る。3人に断ってから俺は電話に出る。

 

「誰だ誰だ、幕間の物語の話をしようとしてる最中に電話を掛けてくる輩は!!」

 

『…………火野君。娘が世話になっているね』

 

「(お…………お父様かよォォォォ!!)…………ど、どうも。こんにちは………何か、すみません………」

 

『構わないさ。顔を出せなくて済まないね。家庭教師の調子はどうだい?』

 

「あー、カテキョに関してはちゃんとやってますよ」

 

『上杉君も君と同じことを言っていたが、君もそう言うのなら本当なのだろう。順調そうで何よりだ。ところで、近々中間試験があると聞いてね』

 

「………………そう、ですね」

 

……………嫌なよーかんがする。

 

『少々酷だが、ここで君達の成果を見させて貰おう。一週間後の中間試験、五人のうち一人でも赤点を取ったら、君には家庭教師を辞めてもらう』

 

……………………え。ヤメテモラウ?

 

「………そ、そう来ましたか…………」

 

『この程度の条件を達成できなければ安心して娘たちを任せておけないからね。上杉君にもこの事はつい先程通達しておいた。それでは健闘を祈るよ』

 

それだけ言い残して電話は切れた。通話を終えた俺氏の心境はと言いますと─────

 

(あ…………あと1週間で全員赤点回避、だと……………!?とんでもねぇ難易度のハードルじゃねぇか!!目の前の3人は可能性がまだあるとしても、未だに教えを拒んでる残りの2人はかなりまずいだろ!特に二乃!勉強も嫌い、俺らも嫌い!最悪のスーパーベストマッチじゃねぇか!!しかも、これを知られたらさらに勉強しなくなるに決まってる…………!)

 

「……………ソウゴ?」

 

脳裏に無理ゲーと言う文字が浮かび上がってきた俺氏は三玖の声に引き戻された。

 

「(言えば逆にプレッシャーになりかねないか…………)な、何?」

 

「さっきの電話、多分お父さんからだよね?」

 

「ま、まぁね」

 

「何を話したの?」

 

「た、大した事ない………そう!せ、世間話さアハハ!」

 

「世間話だけでそんなに汗かくの…………?」

 

やめろ、一花姉さん!そこにつっこむな!

 

「緊張したんですぅ!声的にあの人何か怖そうだし!マジでそれだけだから!……………す、すみませーん!ジャンポパフェ1つお願いしまーす!」

 

「はーい」

 

話題を強制的に打ち切る為に、糖尿病になると言う都市伝説(?)で有名なジャンポパフェを注文。そして届いたパフェを5分で完食した。もう少し年取ってれば一発で糖尿病確定か?今はそんなことはどうでもいいが。

 

「あの量を1人で全部食べきっちゃった…………お姉さん、すごくびっくり」

 

「ソウゴって五月と同じく大食いなんだね」

 

「大食い対決すれば、五月といい勝負になるかも知れませんよ!」

 

「そ、そーかい…………なら、今度やってみるのも悪くないかもな……………」

 

ジャンボパフェのせいで甘いのは暫くもう良いやと思いながら、糖分を補給したからか冷静になった頭で覚悟を決めた。

 

(クビにされたら三玖といい関係を構築させる機会も減るし、何より5人を笑顔で卒業させると宣言したんだからこんな志半ばで終わりたくねぇ!こうなったら上杉と協力して何とかするしかねぇ!上等だ、やってやらぁ……………!)

 

俺は静かに闘志を燃やし始めたのだった。男は根性なんだよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたからは絶対に教わりません!」

 

「お前にだけは絶対教えねー!」

 

そして、勉強馬鹿(上杉)がハードルの難易度をさらに上げてしまったのをすぐに知ることになる──────。




神様「(あれ……………オリ主より原作主人公の方が足を引っ張ってね?)」

上杉「(何か失礼な事を言われた気が………)」

今日もありがとうございました!


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いじっぱりの似たもん同士

五等分の花嫁の2期でスクランブルエッグがカットされるかも知れないのでと言う噂を聞いて『えぇ………(困惑)』な状態になってます。


家庭教師の時間の15分前。上杉から話しておきたいことがあると言うのでマンション前に集合。そして話を聞いている内に俺の顔は般若の如くこわーい表情を浮かべる。お陰でマンションから出てきた子供は全員怯えて走り去る始末であるが、そんな事は知ったことではない。

 

そして、話を聞き終わった次の瞬間────

 

「…………んだと、この勉強馬鹿がぁ!!」

 

「すみませんでしたァ!!」

 

総悟は激怒した。必ず、かの目の前で土下座している上杉を粛清しなければならぬと決意した。総悟にはテスト前に五月と一悶着起こす上杉の心がわからぬ。総悟は、ただの勉強も出来るオタクである。漫画やラノベを読み、アニメと共に暮して来た。けれども三玖と会える機会を減らそうとする悪に対しては、人一倍に敏感であった。

 

「このバカチンがぁぁぁぁぁぁ!!全員赤点回避しなきゃクビだってのに、その可能性を高める事をしでかす奴があるか!!………………マジでどうすんだよ……………」

 

「ほ、ほんとにすまん!つい動揺と勢いで……………必ず何とかする……………」

 

「3秒以内にやれ。でなきゃぶっ〇す」

 

「それは無理があるだろ!!」

 

その後

 

・二乃にはクビの事は伝えない。

 

・上杉は五月と和解する。

 

・とにかく頑張る

 

上杉との話し合いでこの3点を決めた後、俺達はマンションの中へ入って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数時間後、勉強しまくったので休憩と言うことで俺は上杉、一花、三玖、四葉と人生ゲームを楽しんでいた。1回だけな筈だったのに白熱してか結局3回も遊んでしまった。ちなみに、五月と話す機会は無かったのはお察しして。

 

「いえーい、勝ったー!」

 

「うーん、あと少しだったんどけどね………」

 

「ソウゴ、強すぎ……」

 

「3回やって3回とも火野さんが1位で上杉さんが最下位です!」

 

「何故三回連続で最下位なんだ……………」

 

「俺の別名『 』(くうはく)に敗北はあり得ないのさ。ゲームは始める前に終わっているが信条なのでね」

 

うん、まぁ…………何かかっこよく決めてるけど実際はノーゲー〇・ノー〇イフの最強ゲーマー兄妹からパクっただけなのだが。ガチでご本人いたらこてんぱんにされるんだろうなー。流石にあのチートレベルまでゲームは強くない。

 

「なんだー、勉強サボって遊んでるじゃない」

 

ここで家庭教師アンチの二乃が登場。

 

「ほー、挑戦者か。言っておくが、『 』に敗北はあり得ないぜ?」

 

「は?何カッコつけてるわけ?キモ」

 

あ?

 

「テメェ、榎〇祐先生に謝れゴラァ!俺を侮辱するのは構わんが、『 』と言うより、ノ〇ノラを侮辱するのは許さんぞォ!映画化もしてるのに!円盤もかなり売れたのに!」

 

「何を言ってるのかよく分からんが、落ち着け火野!」

 

離せ、上杉!羽交い締めにすんな!

 

「あんたも混ざる?五月」

 

!………い、いつの間に…………ステルス性能高すぎィ!だが、今がチャンス!行け、上杉!

 

「き、昨日は……」

 

「私はこれから自習があるので失礼します」

 

「あ、おい!」

 

ダメみたいですね(諦め) …………こりゃ、相当怒らせたようだな。

 

「……………ほら、あんたらもカテキョーは終わったんでしょ?帰った帰った!」

 

「へいへい」

 

「あ、ああ…………」

 

あーあ、取り敢えず今日はここまでかぁ……………もう不安しか残らん。

 

…………と、思いきや。

 

「…………もー、2人とも。何言ってるの?約束と違うよ?」

 

「「「え?」」」

 

「今日は泊まり込みで勉強教えてくれるって話でしょ」

 

「「ええーっ!?」」

 

「ファッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………と、言うわけでよく分かりませんが泊まる事になりました」

 

「よく分からないのですか…………」

 

俺は枕が変わると寝れない系男子なので、枕とかその他諸々を取りに帰るついでに星奈さんも説明しておいた。正直なところ、一花姉さんが助け船出してくれたのは助かった。これだけ時間があれば上杉も五月に謝る機会を見いだせるかもしれないし、何より赤点回避の可能性が少しでも増やせるだろう。

 

「………………まぁ、ご両親には私が説明しておきます。ですが、くれぐれも欲をスパーキングさせて新たな生命を誕生させないで下さいね」

 

「し、しませんわ!誰が(ピー)とか(見せられないよ!)みたいな事したり、(自主規制)的な事をするもんですか!」

 

「そこまでは言ってないのですが………」

 

「………………あ」

 

…………よーく考えたら今の俺、放送禁止用語やR18指定を喰らいそうなワードを連発したヤベー奴じゃん!最悪だよ、星奈さんの前で何やってるんだ俺はァ!せ、せ、星奈さんのせいなんだからね!(責任転嫁)

性よ…………じゃなくて欲をスパーキングさせないでとか柄に合わない事を言うから動揺しちゃったからなんだからね、ほんと!!…………あぁ、もう!言い訳してたら余計恥ずかしくなってきた!

 

「………これがエロ動画をこっそり見てたのが親に見つかって死にたくなるほど恥ずかしくなるような気分ってやつか……………中々に最悪だな……」

 

「? 何か言いましたか?」

 

「何でもないです、それでは!!」

 

そのまま走り去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戻ったぜー。あれ、上杉はどうした?」

 

「先にお風呂に入ってるよ。ソウゴ君も一緒に入ってきたら?」

 

「死んでも嫌だね!」

 

男2人で風呂とか誰得だよ。

 

「ソウゴ、荷物多いね。何を持ってきたの?」

 

「えーっと……………まず枕でしょ?後はパジャマとかアイマスクに耳栓で、他にも水鉄砲に木刀、けん玉にゲーム機とかその他諸々」

 

「それ殆どいらなくない………?」

 

一花姉さんから何か聞こえた気がするが空耳としておこう。何も聞こえませーん。

 

「火野さん!この木刀に書いてある洞爺湖って何ですか?」

 

「あー………………代々、俺の家系は木刀に洞爺湖って彫るしきたりなもんで。男のロマンみたいなもんでいいでしょ?」

 

「はい!よく分かりませんがカッコいいと思います!」

 

まぁ、このロマンはSF人情なんちゃって時代劇コメディーの銀〇を読んでないと分かるまい。

 

「で、二乃と五月は相変わらず部屋に引きこもってるのか?」

 

「五月ちゃんは部屋にいるけど、二乃は…………あ、ちょうど帰ってきた」

 

噂をすれば二乃が来た。そして俺を見ると何故か不敵な笑みを浮かべる。

 

「二乃、何かあったのー?嬉しそうに見えるけど」

 

「ええ。とっても良い事(・・・)が聞けたもの。嬉しいに決まってるわ」

 

………………あっ(察し)

 

俺は二乃にこっそり駆け寄って小声で話し掛ける。

 

「なぁ、二乃」

 

「…………何よ」

 

「例の条件を聞いたな?」

 

「…………ええ。言っておくけど、私は」

 

「違う違う、そうじゃなくて。お前にばらしやがった上杉を木刀でぶっ〇してきても良いか?」

 

「良いわけないでしょ!私達の家を殺人の現場にするつもり!?」

 

「ちぇ。分かったよ。じゃ、俺もお風呂入って来るわ」

 

「木刀持って殺る気満々じゃない!置いてきなさいよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「頭を垂れてつくばえ。平伏せよ」

 

「は、はい………」

 

丁度お風呂から出た上杉を突撃。俺の顔を見て全てを察したのか、全裸で素直に平伏する。

 

「す、すまない火野………だがこれには深い訳が」

 

「誰が喋って良いと言った?」

 

「す、すみません…………」

 

はぁ…………まぁ、大方騙されたのだろう。自ら暴露するとは思えんし。パワハラ上司鬼のパワハラ会議パロはここまでにしておこう。

 

「取り敢えずだな、上杉。二乃に知られたからと言っても別に俺達のやることは何も変わらん。赤点回避を目指して教えるだけだ。出来る事は全てやるぞ!良いね?分かったら返事ィ!!」

 

「は、はい!!」

 

「よし、じゃあ俺も風呂に入るからさっさと出ていけ」

 

「ちょ、待ってくれ!せめて髪を乾かせて!いや、それよりも服を着させてくれ!」

 

「さっさとそのはしたないものをしまえ。もいで新しい仕事場としておかまバーに送るぞ」

 

「怖ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふー、さっぱり。待たせたな」

 

マジで広い風呂だったな。5人でも入れそう。

 

「…………火野。何だこれ?」

 

「『星砕き』と呼ばれる木刀や。んな事より、さっさとやるぞ」

 

木刀をしまって4人を座らせる。何故か二乃が離れた所にいるが気にしない気にしない。

 

「はーい、詰めて詰めて」

 

「!?」

 

み、三玖が俺の近くに…………!お、落ち着け火野総悟!スパーキングさせるな!

 

「三玖が分からない所があるって」

 

「い、一花……っ!」

 

「何でも教えるぞー、この上杉がな!あとよろしくー」

 

「人に全部任せるなよ!……………ああ!何でも答えてやる!分からないところがあったらなんでも聞け!」

 

「上杉さん!討論する、って英語でなんて言うんでしたっけ!」

 

「debate!デバテと覚えるんだ!確実に今回のテストに出るから覚えておくんだぞ!」

 

「だってよ、二乃」

 

「…………………」

 

俺の振りに一切反応せず無視。スルーされるのは少し悲しい。せめて反応してくれ(懇願)

 

「教えてほしいこと…………好きなタイプは?」

 

「「!?」」

 

え、マジですか三玖さん。

 

「ちなみに、上杉が好きなのはらいはちゃんだよ。こいつ、ロリコン&シスコンだし」

 

「誰がロリコンだ!」

 

シスコンは否定しないのか……。

 

「………俺は恋愛なんて興味がない。そう言うスタンスなんだよ」

 

「………………じゃあ、ソウゴは?」

 

「そうだねぇ……………」

 

…………折角だ。勉強に繋げるか。

 

「じゃ、ノートを3ページ埋めたら教えま…………って、もう取り掛かってるし…………」

 

単純と言うかなんと言うか。まぁ、やってくれてるんだし良いか。

 

「終わった」

 

「終わったよ~」

 

「終わりました!」

 

「いつになくやる気だしてたな……………俺の好きなタイプは──────細かいことは抜きにすれば、シンプルに優しくていい人、かな(流石にこの場で三玖とは言えん……………)」

 

「…………あ、もしかしてお姉さんの事かなー?」

 

「部屋が汚いので論外」

 

「酷いッ!」

 

意外と潔癖性なんで。ま、確かに一花姉さんはいい人だけどね。

 

「少なくとも我々に対しては優しくないし、二乃もあり得んかなー」

 

「こっちから願い下げよ」

 

両者、意見が一致。

 

「二乃は女としては見れないな。俺の中ではただの弄りキャラだ」

 

「誰が弄りキャラよ!」

 

「そう怒るなって。今も弄られて楽しそうじゃん?」

 

「あんたの目は節穴か!」

 

そんな感じでギャーギャー騒いで楽しんで(?)いると

 

「騒がしいですよ。勉強会はもっと静かなものだと思ってましたが」

 

誰かと思えば五月だった。

 

「悪いな、二乃が突っ掛かってくるもんだから」

 

「突っ掛かって来たのはあんたでしょーが!もういいわ!」

 

そう言って二乃は部屋に籠ってしまった。やれやれ、誰のせいでこうなったのやら()

 

「三玖、ヘッドホンを貸してもらえますか。1人で集中したいので」

 

「いいけど………」

 

「…………お前の事、信頼して良いんだな?」

 

「…………足手まといにはなりたくありません」

 

上杉の問いにそう短く返すと五月は自分の部屋へ戻って行く。結局謝れてないし。やはりいざ顔を合わすと謝まりづらいのかね。うーん、このままの状態を維持するのはまずいだろうし…………どうしたもんかね。

 

「……………ねぇ、2人とも。星が綺麗だよ。少し休憩しない?」

 

「俺は良いぞー。教えすぎてそろそろ暇になってきたしな」

 

「そこまでやってないだろ……………まぁ、良い。三玖と四葉も少し休憩……………は、必要なさそうだな」

 

三玖が四葉に歴代の将軍の名前を教えていた。こうやって教えあうのも悪くないだろうな。もっと成長したらお互いの得意科目を教えあえるようにしようかな。

 

さて、外に出て上を見上げると満天の星空が広がっていた。取り敢えず無言で連写する。

 

「そう言えば、オーディション受かったよ」

 

「おー、良かったじゃん。いつからやるの?」

 

「テスト後だよ。だから安心しなよ、フータロー君?」

 

「……………まぁ、それなら良いが」

 

………………さてさて。

 

「で、本題は?それだけを伝えにわざわざ寒い外に呼び出したのではないだろ?」

 

「鋭いね、ソウゴ君。……………フータロー君、五月ちゃんと喧嘩しちゃった?」

 

「……………気付いてたか。まぁ、いつもの事だ」

 

「そうだな。いつも通り、9割5分はお前が原因かなー……………」

 

「うぐっ…………」

 

「こらこら、ソウゴ君もそんなに意地悪を言わないの」

 

へーい。

 

「今日はいつもと違う気がしたよ。2人には、仲良く喧嘩してほしいな」

 

「仲良く喧嘩って……矛盾してるだろ」

 

要は喧嘩するほど仲が良い的な喧嘩って事かな、多分。

 

「あの子も意地になってるんだと思うよ。小さい頃から不器用な子だったからね。素直になれないだけなんじゃないかな?きっと今も一人で苦しんでる。私も出来る限りの事はするけど、フータロー君やソウゴ君にしか出来ない事もあるから。そこはお願いね?」

 

「上杉に出来ることか………………丸刈りにして全裸で土下座の謝罪?」

 

「何だよそりゃ!余計避けられるだろうが!」

 

ヌルフフフ。冗談はさておき。

 

「つーか、感心したぜ。ほぼ同時に生まれたとは言え、長女の責務を全うしてるんだな」

 

「あれ?ソウゴ君、やっぱりお姉さんに惚れちゃった?」

 

「ハハハ、こやつめ。俺を惚れさせるにはハリウッド女優になるか汚部屋を清潔な状態に一生保てるようになってから言えい」

 

そう言って俺はからかい目的で頭をわしゃわしゃ撫でる。

 

「もー、子供扱いしてるでしょ!」

 

「俺からすりゃ、どいつもこいつもガキみたいなもんよ」

 

一応前世の分も足せばもう30年以上は生きてるからな。……………まぁ、精神的には未だに高校生位な気がしなくもないが。永遠の高校生か?

 

「それにしても秋なのに暑いねー」

 

「俺ちゃんはいい加減寒いんですが…………戻らんと寒くて凍え死ぬぅ…………」

 

「いい加減戻るぞ。そろそろ再開しないとな」

 

上杉の後に続いて俺も中に戻って行った─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「寒い…………かなぁ………?」

 

──────頬をほんのり赤く染めて白い息を吐いている一花姉さんに気付かずに。




そう言えば、Fate HF最終章のBDとDVDがもうすぐ発売ですね。早くまた見たいなー。

今日も読んでいただき、ありがとうー!


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2人きりの夜食

夜食は太るんでやめましょう。五月みたいにな…………おっと、誰か来たようだ


取り敢えず今日はここまでと言うことで寝ることに。

 

『ソウゴは私のベットを使って良いよ』

 

『じゃあ、上杉さんは私のベットを使って下さい!私と三玖は一花の所で寝ますので!』

 

と、言う訳で三玖のベットなうです。布団から三玖の匂いがしますが…………夜の運動(意味深)はしないように理性が自制しておりまする。三玖の匂いで(ピー)とかあり得んだろ………そこまで暗黒面に堕ちてないわ。つーか、三玖がわざわざベットを提供してくれたのに、流石にそう言うのはまずいだろ!

 

「しかし、三玖の部屋は和風テイストですな………あの木刀もここに飾れば画になるんじゃね?」

 

違和感/zero説濃厚だったりして。

 

「…………って、下らない事考えてないで寝るか」

 

布団を掛けて俺は目を閉じるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1時間後

 

「………くっ…………ね、眠れねぇ………!」

 

だ、ダメだわ!やっぱり三玖の使ってるベットで寝てるからか興奮が収まらず、理性はデンジャラスビーストモード寸前。このままでは1人で夜の大運動会(意味深)を開催しかねない…………!

 

「ふ、ふざけるな!エ○ァの旧劇みたく『最低だ……俺って……』になってたまるか!アニメでも見て発散じゃあ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらに1時間後

 

「ふー、何とか冷静になれたな…………」

 

リビングにてOPの主題歌が1億再生されて話題となったアニメ『ダ○ベル何キロ持てる?』を静かに笑いながら見てたらデンジャラスビーストモードはとっくに引っ込んでいた。

 

「やれやれ、30年近く生きてても俺の頭は思春期の考える事と同じってか?成長してるんだかしてないんだか、これもう分かんねぇな。………にしても、何か腹減ったな」

 

時刻は12時近くだった。飯を食べたのはかなり前だから腹が減っても多分不思議じゃない。

 

「確か夜食に適したミニカップラーメンを2つ位持ってきたっけ。お湯でも沸かして食うか。えーっと、カップ麺はどこだ?無駄に物を持ってきたから探すのも面倒だな…………」

 

ゲーム機や黒ひげ危機一髪などを掻き分けてカップラーメンを探す。

 

「お、あった」

 

数分後に探し当てると同時に扉が開く音がする。振り返った俺の視界に入り込んできたのは────

 

「……………誰かと思えば火野君ですか」

 

「何だ五月か…………こんな夜遅くまで勉強か。偉いな」

 

「…………足手まといにはなりたくないだけです。火野君は何をしているのですか?」

 

「まぁ………色々とあって寝れなくてよ。腹でも減ったから小腹を満たし『グー』……………ん?今何か鳴ったよね?」

 

「き、気のせいです!」

 

「いや、今完全に鳴ったよね?つーか、五月の方から鳴ったよね?」

 

「な、鳴ってません!火野君の気のせ『グ───』………き、気のせいですよ………

 

顔を真っ赤ながら消え入りそうな声で言われても説得力が皆無なんですがねぇ…………。

 

「………2つあるけど………食う?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「…………」」

 

沸かしたお湯を入れて3分間待ってる間、五月は俺から少し距離を置いて目も合わせてくれない。ついでに無言の状態も続く。

 

「(き、気まずい……………何とかこの状況を打破せねば…………)う、上杉ってシスコンなの知ってたー?」

 

「………………」

 

話し掛けた結果、反応すらしてくれない結果だけしか残らなかった。何て虚しいんだ…………。

 

「(こんな気まずい空間で食うとかちょっとした地獄ですやん!この際だから贅沢は言わないから二乃でも良いからどうにかしてくれー!)」

 

心の中で他力本願していると、遂に五月が沈黙を破ってくれた。

 

「…………火野君は知っていますか?私と上杉君が諍いを起こしてしまった事を」

 

「………あー、うん。まぁ、一応」

 

「…………どうも彼とは馬が合いません。些細なことでむきになってしまいます……………私は一花や三玖のようにはなれません」

 

「そうか?そのアホ毛をぶち抜いて髪を整えれば三玖になれるんじゃね?一花の場合はばっさり切らないとダメだろうけど」

 

「そう言う事ではありません!真剣に言ってるんですよ!」

 

すまんすまん、おふざけが過ぎた。

 

「無理に一花や三玖みたいにする必要はねーよ。少しずつ信頼を築けば良いと俺は思うぜ。そもそも、別に五月が気に病む必要はねーよ。悪いのはあのガリ勉野郎だし」

 

「…………そうでしょうか」

 

「そうに決まってるだろ」

 

……………まぁ、全面的に擁護する訳ではないが上杉が五月に思わずああ言う風に言ってしまったのも理解出来なくはない。突然クビの件を聞いて焦りや動揺してしまうのは無理もないだろう。

 

そう話してる間に3分が経ち、2人で静かに麺をすすっているとまた五月が話し掛けてくる。

 

「1つ火野君に聞きたかったのですが………火野君はどうして私達の家庭教師を引き受けたのですか?」

 

「へ?」

 

「三玖に聞きましたが、火野君も私達と同じく余りお金に困っている訳でもないそうですね?それなら、どうしてなのかと気になりまして……………」

 

「あー……………まぁ、先生みたいに誰かに教えたりするのに憧れていてね。良い機会だからやってみたいなーって………」

 

─────まぁ、決して嘘と言う訳ではないが、1番の理由は『三玖とお近づきになって良い感じの関係を築きたいから』なのだがそれは黙っておこう………今はね。

 

「では、将来は先生に?」

 

「……………かーもね」

 

その可能性は微レ存かなぁ…………。

 

「…………ごちそうさまでした」

 

「ん。……………まー、これはただの独り言なんだが。もし上杉の奴が素直に頭を下げてきたらそん時は許してやって欲しいなー…………って思ったりして」

 

「……………………」

 

五月は一瞬立ち止まったが、何も言わずに部屋へと戻って行った。

 

「ま、後はあいつに任せるか…………あー、眠い。さっさと歯磨きして早く寝よっと」

 

腹も膨れたからからか、現に三玖のベットに入ってもデンジャラスビーストモードは発動せず、数分で眠りについたのだった。睡眠欲>> 欲になった瞬間である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふー、(自主規制)しなかったか………総悟君が(見せられないよ!)したらこの小説にR18タグつけなきゃいけなくなるから危なかったよー。この小説はそういう系じゃないんだから」

 

メタい事を呟く男は無論、神様。仕事終わりに転生者をリアルタイムで見れるテレビで総悟の様子を見てみると、何やら子供には刺激が強すぎる事をしそうだったので面白さ半分、ひやひや半分で見ていたのである。

 

「これ五月ちゃんともワンチャンあるんじゃね?三玖ちゃん一筋縄なのも良いが、五月√…………いや、三玖ちゃん以外の√も見てみたい気もするなぁ……………まぁ、俺は誰と結ばれようが祝福するけどね。さーて、僕も寝るとし…………ん?」

 

リモコンで消そうとする神様の手はドアが開かれる音で止まる。

 

「あ、三玖ちゃんだ…………お、総悟君の布団の中に入って寝始めちゃった。客観的に見たらナニとは言わないけど、事後のカップルみたいに見えるな……………うん、明日の総悟君の反応に期待だネ!」

 

これを他の姉妹に見られたら総悟の立場が危ういのだが、神様にあるのは心配ではなく総悟のリアクションに対する期待。神様と言うか、ただの愉快犯もどきじゃねとかは言ってはいけない。

 

果たして、隣に推しの三玖がいた時の総悟の反応はいかに!次回へ続く!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、でも…………これで総悟君が目覚めて野獣と化して(ピー)し始めたら確実にR18じゃん…………大丈夫かな…………」

 

to be continue………




次に投稿する時にR18タグが付いてたら…………まぁ、そう言う事です。

あと、何で朝っぱらの5時に投稿したかと言いますと、五月の回であるからとか『5時に投稿したら何人アクセスするかなー?』って、実験的な面もあったりなかったり。

本日も読んでいただき、ありがとうございました!


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朝からハプニング

誤ってこの話の次のを投稿しちまったよ、あぶないあぶない。見れちゃった人はある意味ラッキー(?)ですね!


「ふぁ~………朝か。完全に寝坊したな」

 

時刻は8時を過ぎた所。いつもならこの時間はアニソンを2時間位ピアノで弾いてるか。

 

「まー、良いか。たまに寝坊すんのも。さーて、起きて上杉と作戦会……………ぎ?」

 

布団から出ようとして俺は気付いてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三玖(・・)隣ですやすや寝ている事に(・・・・・・・・・・・・)

 

「……………。そ、そっか!これも夢か!そ、そうだよね!まさか俺と三玖がヤった後みたいに一緒に寝てるなんてあり得ないよな!まったく、ビックリするなー、アハハ!……………ゆ、夢だよね………?だから、自分で自分に平手打ちしても痛くないよね!?オラァ!!」

 

─────バチーン!!

 

「痛ァ!!……ってことは、夢じゃないのか…………」

 

冷静でいられたのもこの時までだった。俺の頭の中は混乱と興奮とかその他諸々で満タン。アドレナリンも大洪水だった。

 

「(オィィィィィ!!何で!?どゆこと!?何でいるの?!まさか……………昨日、俺は無意識の内にヤってしまったのかぁ!?)」

 

ま、マジでヤってしまったのか!?デンジャラスビーストモードは鎮まった筈じゃ!?

 

「(う、嘘だろ……………確か三玖は一花の部屋で四葉と一緒に寝てた筈じゃ…………連れ出してヤったってのか……………?)」

 

コンコン

 

「!?は、はいはい!今開けますよー!」

 

取り敢えず三玖には頭まで布団を被せる。どうしてこうなったのかはよく分からんが、こんなのを見られたらヤバい!取り敢えず今は隠すしか道はねぇ!!

 

「どうし……………ファッ!?」

 

あれ、三玖ゥ!?どうしてここ……………いや、待て。何か違うな。この三玖は──────

 

「い、五月でござるか…………?」

 

「……………分かるんですね。と言うか、ござる………?」

 

「そこは気にするな!………ま、まぁ多少はね?」

 

…………正直に言えば、三玖じゃない事しか分からなかった。誰なのかとか考えてられる程の余裕なんてねーわ!当てずっぽうで言ってみたら当たってたってだけの話だ。

 

「起きたか、火野。お前が1番寝てたぞ」

 

う、上杉か…………。

 

「………上杉もやられたのか?」

 

「いや、俺はもう起きてたからな。そこで五月が一花や二乃に髪型をいじられて三玖にされてるのも全部見ていただけだ」

 

「そ、そうなん『ゴソ…』だぁ!?

 

「「?」」

 

「じ、じゃあ俺は着替えるんで失礼するぜ!アディオス!!」

 

「待て、今日の予『バタンッ!!』」

 

上杉の台詞を強制的に遮って俺は扉を勢いよく閉める。予定なんて後回しで良いんだよ、俺にとっては!!多少の不自然さは残ったが、何とかしのげたか………?いや、しのげたと信じたい。

 

「み、三玖さーん………」

 

小声で身体を揺らしながら三玖を起こす。

 

「………………ふぇ?」

 

「お、おはようございます………」

 

「お、おはよう………………え!?ソウ」

 

「シー!静かに!」

 

危ない危ない。ここで聞かれちゃゲームオーバーだった…………………。

 

「………………あ。そうだ、私…………トイレから戻って来たらこっちに…………そのままソウゴと一緒に………うぅ…………」

 

「そ、そう言う事だったのね…………」

 

いや、マジで良かったァ!どうやら俺はとんでもない事をヤらかして無かったようだ。取り敢えずは一安心。一安心したら一緒に寝た事実に悶えてる三玖の顔にキュンとしてきたわ。

 

「ご、ごめんね」

 

「あ、いや別に特に迷惑は掛けてないし………俺も迷惑とか顔とかに色々と(意味深)かけてなくて良かったわ………

 

「?」

 

「な、何でもないよ」

 

…………よーし。漸く平常心に戻ってきた。頭も冴えてきたぜ。

 

「さてさて、三玖」

 

「?」

 

「元々一緒に寝てた一花姉さんとか三玖がいなくなった事に気付いてるじゃん?で、このまま2人で外に出たら色々と疑われて面倒じゃん?何があったと言うより、ナニがあった、って」

 

「た、確かに…………」

 

「なので、俺はイカしたアイデアを思い付いた。俺はこれから部屋を出て皆にさりげなーく近くにある図書館で勉強するように提案する。何とかして言葉巧みに図書館へ誘導させるから、皆が出て行ってから時間差で三玖もここから出て図書館で合流してくれる?それまでは待機って事で」

 

「わ、分かった……」

 

「まー、二乃とか五月はワンチャン行かないかもしれんが、見つかったら忘れ物取りに来たとかで誤魔化しておいてくれ。じゃ、俺は先に行くわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、ソウゴ君?着替えるんじゃなかったの?」

 

「いや、腹減ったんで朝ごはん食べてからにしようかなーって(三玖がいる前で着替えられるかっつーの!)…………あれ、俺の分は?」

 

「生憎だけど、あんたらの分のご飯の材料はないから」

 

二乃ェ……………。

 

「チッ、二乃の分際で生意気な………まぁ、言うと怒るだろうし黙っておこう」

 

「全部聞こえてるわよ!」

 

おっと、またもや心の声が洩れてしまったか。

 

「そう言えば、三玖がどこに行ったか知らない?私が起きたらいなくてさー」

 

「……あー、何か図書館行くとか言ってたけど………俺らも行く?」

 

「そうだね、たまには気分転換で別の場所で勉強しようかな。探しに行ってる四葉が帰ってきたら一緒に行こっと。2人はどうするの?」

 

「私は勿論パスよ」

 

「………私も家で自習するので」

 

つーか、上杉は五月にまだ謝ってないみたいだな。折角昨日、良い感じにセッティングしておいたのに。もう散々言ってるし、本人も言われなくても分かってるだろうから言わないけど。まぁ、図書館行きがすんなり決まったので良しとするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「三玖はどこにいるのかなー?」

 

「どこでしょうねー」

 

まぁ、三玖はまだ図書館にはいないのだが。

 

「……………なぁ、四葉」

 

「はい!何でしょうか、上杉さん?」

 

「もしもの話なんだが……………5人の誰かが成績不良で進学できなかったとしたら、どうする?」

 

「私ももう1回2年生をやります」

 

当然です、と言わんばかりの即答だな。

 

「…………まぁ、私が1番可能性が高いんですけどね。でも、上杉さんと火野さんがいればそんな心配ありませんね!」

 

おおぅ、俗に言う期待と言う名の重圧(プレッシャー)ですな…………。

 

「…………フータロー君。私、うっかり筆箱忘れちゃった。私たちだけで先に始めてるから、忘れ物とってきてくれる?」

 

「……ああ。忘れ物(・・・)を取ってくる」

 

無論、その忘れ物とは筆箱ではない。それ位は俺でも分かる。漸く決心がついたか。

 

「……………じゃ、2人はお先に席を取っておいてよ。俺は三玖を探してくるからさ」

 

「おっけー」

 

「了解です!」

 

2人が席の方へ行ったのを見送ると、俺は図書館のエントランス付近で待つ。待つこと数分、三玖が若干息を切らせてやって来た。

 

「お、来たか。誰かに遭遇した?」

 

「フータローに遭遇しかけたけど、隠れてやり過ごした」

 

「そっか……………一応聞くんだけど、どこか痛かったり、だるかったりとかしない?」

 

「?ないけど……………どうして?」

 

「いや、特に深い理由はないから気にしないで良いよ」

 

………と、口先では言っているが────実際はナニとは言わないが、してないかの最終確認だったりする。

 

「そ、それよりもだ。一花と四葉が待ってるから行こうか」

 

「う、うん……………ソウゴ」

 

「!?……………な、なに?」

 

え、まさか一緒に寝てしまった事で嫌われたとか────

 

「今日も勉強、教えてね?」

 

おっふ…………いや、良かったわー!嫌われたりしてたら病みルート突入する所だったわー。流石にヤンデレみたいなのにはなりたくない。Scho○l Daysみたいな展開はマジでごめんだから!死ぬのは誠だけで充分だから!

 

「もっちのろんよ!」

 

何だかんだで、今日も平和です。

 

to be continue……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蛇足だが、上杉と五月の方は何とかなったらしい。

 

上杉「蛇足って言うな!つーか、俺の所もカットせずに書けよ!」




上杉「俺のこの小説内での待遇改善を求める」

神様「要求は分かった。だが断る

今日も読んでいただき、ありがとうございました。


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中間テストとツンデレの機転

間違ってフライング投稿してしまった今回のお話。すぐに消したので誰も見てない…………と、信じたい。


テスト前日

 

『はぁ!?今日も泊まり込みで勉強するの!?この間したばっかりよ!?』

 

『明日が試験なんだ!効率度外視で一夜漬けだ!』

 

『参加しない奴がいたら、二乃が星奈さんから十字固めさせられまーす』

 

『なっ!?そ、そんなの卑怯よ!』

 

『フハハハ、何とでも言えい!今日くらいは二乃にも勉強して貰うぞ!その為にはどんな手段でも用いてやる!』

 

『くっ…………五月、あんたも何か言いなさいよ!』

 

『今日くらい、いいじゃないですか』

 

『『『『『え』』』』』

 

『……勝った……計画通り…!』

 

…………とまぁ、デス○ートの名言をかます俺氏だが、実際はちょっと驚いてたりする。と言うわけで、五月の擁護を得られず二乃にとっては不服ではあるだろうが、2度目のお泊まり勉強会が開かれたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日のテスト当日 AM 7:00

 

五つ子と上杉の6人はリビングで寝ていた。昨日は日付が変わるまで勉強していたからかぐっすり寝ている。しかし、このまま放っておけば遅刻しそうなのでそろそろ起こすとしよう。既に手筈は整っていた。

 

「すいませんねー、星奈さん。荷物運びと組み立てを手伝って貰って」

 

「それは良いのですが……………ただ、何故にこれを?」

 

「目覚ましドッキリにこれほど最適な物はないでしょう。じゃ、行きまーす」

 

「やれやれ…………」

 

星奈さんと俺は耳栓を装着。そして撥(ばち)を軽く振りかぶり────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グワァァァァァァーン」

 

「「「「「「!?」」」」」」」

 

くっ─────そうるさい銅鑼(どら)の音に6人は一瞬で飛び起きる。しかも、一花、二乃、三玖、四葉、五月の産まれた順に起きると言うミラクルが起こった。

 

「わぁ!?」

 

「誰よ、朝っぱらからうるさいわね!」

 

「………あれ………天守閣でのデートは………?」

 

「な、何事ですか!?」

 

「うぅん…………あれ、大盛りのカレーは………?」

 

「…………うん、100点はないな」

 

中々面白い反応ですな。つーか、三玖はデートって言ってたな?後で誰とデートしてたか聞かないとな。もし夢の中でのデート相手が俺以外ならそいつをぶっこ(以下略)

 

「おはよう、諸君!今日は雲ひとつない快晴で中間テスト日よりだな!」

 

「ちょっと、あんた!なんでうちにそんなの持ってきてるのよ!」

 

「なんでって、そんなの決まってるだろ二乃。お前らを確実に起こす為しかないだろ。高かったんだぞー、これ。送料含めて5万円だったんだからな」

 

「普通に起こしなさいよ!」

 

「でもこれ、俺の家にはいらないから二乃にあげるわ。良かったな」

 

「いらんわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、朝からお騒がせしたと言う理由で俺が朝飯を全員分作る事に。おかしいな、俺はただ善意(笑)で銅鑼を用意しただけなのにどうしてこうなったのやら。まぁ、別に料理が嫌と言う訳ではないので、中野家に残ってた食材を使っておにぎりと目玉焼きにサラダ、味噌汁を20分足らずで作った。ちなみに、皆の前に出す時に『おあがりよ!』って言ってみたのだが、反応は薄かった。俺的には上杉は中の人繋がりでツッコミをいれて欲しかったのだがなー。

 

「凄く美味しいです!火野君は料理が得意なのですね!」

 

と、五月が目を輝かせながら申しております。

 

「………………意外と美味いわね」

 

二乃もすんなり賞賛の言葉をくれた。『私と比べたら大した事ないわね!』とか言うと思ってたから少し意外。

 

「機会があれば今度はもっと凄いのを作ってやるよ。おそまつ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

AM 8:00

 

身支度を終えて余裕を持って出発。結局銅鑼は俺の家に星奈さんが担いで持って帰って行った。星奈さんには朝から申し訳なかったな。今度埋め合わせをしないと。

 

ついに当日か……………二乃には昨日しか教えることは無かったが、何とか回避すると信じるしかないな。

 

………まぁ、最悪の場合は────

 

「あれ、あの子…………」

 

「泣いていますがどうかしたのでしょうか?ちょっと話を聞いてきます!」

 

一花姉さんが泣いている子供を発見し、そのまま四葉と駆け寄るのに俺も続く。

 

「ふーむ。俺氏の推測だと迷子ですかね?」

 

「ママとはぐれちゃったのかなー?ボク~、お姉さん達に話を聞かせてくれる?」

 

笑みを浮かべる一花姉さん。だが

 

『I wanna meet my mother……』

 

「「……」」

 

英語に固まる一花姉さんと四葉。ヘルプを求めるように後ろの三玖と五月の方を見るが、揃いも揃って目を逸らす。おいおい…………。

 

「ど、どうしましょう?」

 

「どうするもこうするも、簡単な話だろ四葉。英語でコミュニケーションを図れば良い話だ。よし、丁度良いから2人で自らの英語力を駆使して何とかしてくれ。俺は手を貸さんぞ」

 

「そんな~!」

 

「むむむ………」

 

四葉は嘆くが一花姉さんは既に考え始めてる模様。その様子を一歩離れた場所で俺は見守る。

 

「………ちょっと男子2人。こっちに来なさい」

 

「あ、ああ……?」

 

「へ?」

 

突然、二乃に呼ばれて上杉と俺は三玖と五月から少し離れた場所に誘導される。

 

「あらかじめ言っておくけど、私は真実をそのまま伝えるから。…………あの子達も頑張ってるみたいだけど、果たして結果はどうなのやら」

 

「……………限られた時間で俺達2人でやれる事はやったつもりだ。二乃、お前も頼んだぞ」

 

「俺も上杉と同意見だな」

 

短い会話を済ませ、元いた場所に戻って見守りを続けると、進展があった。

 

「あ!一花、今ホスピタルって言わなかった?ホスピタルって確か…………病院だよね?」

 

「四葉、ナイス!それなら………ゴホン。Did you go to the hospital with your mother?」

 

一花姉さんの英語による問い掛けに子供はコクンと頷く。

 

「私、この子と近くの病院に行ってきます!」

 

四葉が子供と一緒に小走りで病院の方へ去って行った。チラッと後ろを見ると、二乃は少し驚いた表情を浮かべていた。

 

「通じて良かったぁ………」

 

「お疲れー、一花姉さん。これは英語も期待出来たりして」

 

「ど、どうだろうねー」

 

その後、帰ってきた四葉から母親に届けた事を聞かされた後、登校時間の5分前に学校に到着した。

 

「じゃ、努力した自分を信じて頑張れよ」

 

「まっ、赤点とか気にせずインプットした事をアウトプットしてきなさんな。よーし、頑張ろうぜい!」

 

「「「「おー!」」」」

 

「………お、おー……」

 

二乃もマジで頼むよ~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

================

 

社会

 

「(難しい問題ばかり…………でも、歴史なら分かる…………ソウゴより良い点数取ったらどんな反応するかな?)」

 

国語

 

「(うーん……)」

 

『選択問題は正解を探すんじゃなくて、間違ってるものを消して行く戦法もある。え?それでも分からんかったら?……………好きな数字で良いんじゃね?』

 

「(火野さんもそう言ってましたし、4で!)」

 

英語

 

「(討論…………分かんないや、次)」

 

『デバテと覚えるんだ!』

 

『だってよ、二乃』

 

「(……………ふん)」

 

数学

 

「(こんもんかなー。それじゃ、お休みー)」

 

「ンンッ!」

 

隣から聞こえてきた咳払いで一花は言われていた事を思い出す。

 

「(一花姉さんは計算ミスをする時が度々ある。見直しは忘れるなよ。忘れたらハラキーリだから)」

 

「(…………見直そっと)」

 

理科

 

『1人でも赤点を取ったら辞めて貰うと、先日は伝えたんだ』

 

『本当ですか、お父さん………』

 

五月は己の父との会話を思い出しながらシャーペンを走らせる。

 

「(あなた達を辞めさせません!上杉君に辞められるとらいはちゃんが悲しみます!火野君は…………えーっと…………そ、そう!辞められると2度とあの美味しい料理を味わえなくなる可能性があります!念のため!)」

 

──────そして、全てのテストが終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1週間後のテスト返却日。

 

「よーし、全員集合っと。悪いね、集まって貰って」

 

「どうしたの?改まっちゃって」

 

「水臭いですよ」

 

「間違えたところ、また教えてね」

 

「…………まずは………答案用紙を見せてくれ」

 

「はーい。私は………」

 

上杉の言葉に一花姉さんが喋ろうとする。が、

 

「見せたくありません」

 

五月の拒否の言葉が遮る。俺はこの言葉で全てを察した。

 

「テスト結果なんて他人に教えるものではありません!断固拒否します!」

 

「……………ありがとな。だが、覚悟は俺も火野も出来てる。だから見せてくれ」

 

「っ……………!」

 

五月も観念して自身のテスト結果を見せる。結果として、一花は数学。二乃は英語。三玖は社会。四葉は国語。五月は理科。それが赤点を回避出来た科目だった。それ以外は人によってはギリギリだったり惨敗だったりするが赤点だった。

 

「うーむ…………俺ちゃん的にはかなりやった感じだったのだが………」

 

「改めてこいつらの頭の悪さを実感して、落ち込みそうだわ………」

 

「うるさいわね」

 

上杉の酷評に二乃がムッとした表情で言葉を返す。

 

「……………だがまぁ、俺的には1科目だけでも全員赤点回避出来てるのは褒めても良いか。つーか、合格した教科が全員違うのは5人らしいな。ねー、上杉?」

 

「…………そうだな。最初の頃と比べれば確実に成長できてるな」

 

そう。5人で100点の時よりは大きな進歩だ。このまま行けば次回のテストには全員赤点回避も夢じゃない。ただ、そうする為の手助けをもうしてあげれない─────俺は(・・)

 

「…………三玖。偏ってはいるが、今回の難易度で68点は普通に凄い。姉妹にも教えられる箇所は自信を持って教えてやってくれ」

 

「えっ?」

 

俺の言葉に何かを感じ取ったのか不安そうな表情を浮かべる三玖。その顔を直視出来ずに俺は視線を逸らす。

 

「四葉はイージーミスが目立つぞ。焦らず、慎重にな」

 

「了解です!」

 

上杉の言葉に四葉は笑顔で答える。

 

「一花姉さんは一つの問題に拘らなさ過ぎ。最後まで粘れよ。あと、テスト中に寝ようとしたな?」

 

「あはは………まぁ、結局寝ずに見直したからチャラって事で」

 

「そう言う事にしておこう」

 

次は上杉から二乃への一言である。

 

「二乃…………結局、最後まで俺達の言うことを聞かなかったな。いや、でも前日だけは聞いてくれたか……………」

 

「…………あれ(星奈さん)は不可抗力よ」

 

「そうか………きっと俺らは他のバイトで今までの様に来られなくなる………俺達がいなくても、油断すんなよ」

 

「ふん………」

 

「ま、待って!」

 

ここで三玖が会話に入ってくる。

 

「………他のバイトって、どういうこと?来られなくなるって…………なんでそんなこと言うの?」

 

「………それは………」

 

「…………三玖。今は聞きましょう」

 

どう伝えるべきなのかを悩んでいると、五月が助け舟を出してくれた。

 

「………サンキュー。それでだ、五月」

 

「……………はい」

 

「後で筋肉バスターの刑な?」

 

「はい…………って、ええ!?名前的に痛そうですし嫌ですよ!」

 

ジョーダンです。

 

「1問に時間かけすぎて、最後まで解けてないですやん。これはまずいですよ!」

 

「は、反省点ではあります………」

 

「次から頼むよ~」

 

「………でも、あなた達は………『♪~』………父からです」

 

「来たか………俺に貸せい」

 

上杉が手に取るよりも早く俺は五月のスマホを取って電話に出る。

 

「どーも、火野です」

 

『ああ、五月君と一緒にいたか。個々に聞くよりも君の口から聞こう。嘘は分かるからね』

 

「そのつもりは1ミリもないのでご安心を…………ただ。上杉は(・・・)クビにしないで貰いたい」

 

「なっ!?おい、何を言ってモガァ!」

 

上杉をいつぞやの掴み技でダウンさせて俺は通話を続ける。

 

「(…………まっ、2人クビにされるより1人だけの方が良いだろ?それに、お前には借金の事もあるしな)あいつは優秀です、俺よりもよっぽど。だからまぁ、クビにするなら俺だけにすることをお勧めしますよ」

 

『…………つまり結果は?』

 

「結果はですね、赤点回避は「貸しなさい」………へ?」

 

突然二乃がスマホを奪い取った。突然の事に俺も困惑している中、二乃は電話を変わる。

 

「パパ、二乃だけど。なんであんな条件出したの?」

 

『僕にも娘を預ける親としての責任がある。だから、高校生の彼等が君達の家庭教師に相応しいのか試させて貰っただけさ』

 

「私達の為って事ね。ありがとう、パパ………でも。数字だけじゃ相応しいかなんてわからないわ」

 

『それが1番の判断基準なんだよ』

 

「……………そう。じゃあ、教えてあげるわ。私達全員で5教科全ての赤点を回避したわ」

 

なっ……………!?

 

『…………それは本当かい?』

 

「嘘じゃないわ」

 

『………二乃君がそう言うのなら間違いないだろう。これからも上杉君と火野君と励むといい』

 

そうして通話は終わった。

 

「………二乃、お前…………」

 

驚いたように呟く上杉だけではなく、俺も素直に驚いていた。我々のアンチ的存在の二乃が嘘をついてまでグヒを回避させてくれたのだから。

 

「私は英語で、一花は数学、三玖は社会、四葉は国語、五月は理科。5人で5科目クリアよ。嘘はついてないわ」

 

「…………まぁ、屁理屈な気もするが、嘘でもないのか…………?つーかお前のお父さん、ほんとは勘づいてたんじゃね?」

 

「かも知れないわね。多分2度と通用しないわ。だから、次こそ実現させなさい」

 

「…………言われなくてもそのつもりだっての。やれやれ………よりにもよってツンデレ姉様にデカい借りを作っちまうとはな」

 

誰がツンデレ姉様よ、って声はスルー。

 

「………ねぇ、ソウゴ。これからも勉強、教えてくれるよね………?」

 

「…………さっき来られなくなると上杉が言っていたな。あれは嘘だ」

 

それを聞くと三玖は不安そうな表情から一転、嬉しそうな表情を浮かべる。俺も三玖と同じく嬉しいですよ~!

 

「じゃあ、このまま復習しちゃいましょー!」

 

「良いねー!…………と、言いたい所だが」

 

頑張った奴には頑張った分だけ報酬がないと我慢ならないって、とある原作エロゲーのヒロインも言ってた事ですし────

 

「喜べ、少女達。復習の前に今から俺の奢りで駅前のファミレスでパフェを食いに行くぞ」

 

「おー!ソウゴ君も太っ腹だねー」

 

「仕方ないわね、奢られてあげるわ」

 

「抹茶パフェ、楽しみ………!」

 

「良いんですか!?やったー!」

 

「では、私は特盛で!」

 

「特盛でもてんこ盛りでもなんでも頼め。臨時収入が入ったからな。上杉はどうする?」

 

「そんなの決まってるだろ。人の金で食うものほど美味いものはないからな!ハッハッハ!!」

 

懐が痛まないからかキャラ崩壊寸前のレベルでテンションが高い上杉氏。何かムカつくので激辛料理でも食べさせてやる事にしよう…………。

 

………………今回は運良く救われたが、次こそ二乃が言っていた通り全員赤点回避を実現させてやらぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば、上杉さんと火野さんは何点だったんですか?」

 

「うわっ、やめろ!見るな!」

 

「えーっと、上杉さんは………ひゃ、100点!?」

 

「あー、めっちゃ恥ずかしい!」

 

「その流れ、気に入ってるのですか………?」

 

「しょーもねー………奢るのやめようかなー」

 

「えっ……」

 

いや、そんな世界の終わりみたいな表情されると逆に困るんですが…………分かった分かった、意地悪言った俺が悪かった。と、言うわけで8000円の出費となりました。

 

それと、俺もオール100点ですよ?当然です、プロですから(ドヤ顔)

 

to be continue……




五月「ちなみに、火野君が言っていた臨時収入と言うのは?」

総悟「例の銅鑼をめっちゃ綺麗に磨いてオークションに出したら6万円で売れてね。1万円の儲けがあったって訳よ」

五月「…………と言うか、いるんですね。銅鑼を6万円も出して買う人が」

総悟「まぁ、人の趣味は様々ですからね。…………ちなみに、残額は全部ゲームのガチャに溶かして爆死したんだよね…………あはは………」

五月「………そ、そうですか………………すみません、こう言う時に何と言えば良いのか思い付かなくて………」

総悟「……………笑えば良いと思うよ」

ここまで読んでいただきありがとうございました!

シン・エヴァ、見たい!!早く公開してくれェェェェ!!


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暗黒物質(ダークマター)と林間学校

明日はお休みなのでそのつもりで。次の話は早くて2日後に投稿です。手放せない用事があるのでね、すみませんー!


「何これ?」

 

「いやいや、四葉さんよ。この料理はどう見ても暗黒物質(ダークマター)でしょ」

 

「いや、おはぎじゃないのか?」

 

「コロッケだけど…………と言うか、暗黒物質(ダークマター)って何…………?」

 

…………それは知らない方がよろしいかと。

 

「味には自信がある。3人とも食べてみて」

 

と言う訳で、俺と上杉と四葉の3人で試食。味の方はと言うと

 

「………ま、まぁ……良いんじゃないですかね?」

 

「美味いな!」

 

「あまり美味しくないー!」

 

俺は素直には言えずに濁したが、上杉と四葉は直球を投げる。

 

「何だ、四葉はグルメだな」

 

「上杉さんが味音痴なだけなんですよー!」

 

四葉が大正解。そして勉強もこの調子で大正解してくれ(切実)

 

「よし、じゃあ試験の復習を…………」

 

「待って。3人が満場一致で美味しいって言うまで作るから食べて」

 

「「「え」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「上杉が死んだ!この人でなし!」

 

「勝手に殺すな……………」

 

あれからコロッケ…………いや、暗黒物質(ダークマター)?…………本人の名誉の為にもコロッケで良いか。コロッケを食べまくった結果、俺は胃が丈夫なので何とかなってますが、上杉はそうではなかった模様で、胃もたれでダウン。

 

「何してんのあんた。ひとんちで昼寝?」

 

「二乃か。あれの食い過ぎで上杉が死んで、この人でなし!って感じなんだよ」

 

「え………何あれ?おはぎ?」

 

「コロッケ」

 

「コロッケはあんなに黒くないわよ!」

 

三玖に対する二乃のツッコミはごもっとも。あれはコロッケに似た別の何かだ……………。

 

「レシピ通り作っても全部これになって…………ちなみに、ソウゴが作ったのがこれ」

 

さっき、三玖にお手本を見せる為に作った。そして三玖も見る限り手順通り作っていたのだが、何故か全て暗黒物質(ダークマター)になった。解せぬ。

 

「あ、あのー…………火野君のコロッケ、食べても良いですか?美味しそうです!」

 

「どうぞー」

 

五月がぶれないのはもうツッコまん。毎回ツッコんでたらきりがない。

 

「ん~!美味しいです!今まで食べたコロッケの中でもかなり上位の方に入る美味しさです!二乃が作るのといい勝負になりますよ!」

 

──────この五月の感想が、とあるツンデレの闘争心に火をつけた。

 

「へぇ…………私のといい勝負、ね。なら、ここではっきりと勝敗をつけるわよ!決闘よ、決闘!」

 

「良いだろう、闇の決闘(デュエル)の始まりだ……!」

 

推奨BGM:熱き決闘者たち

 

こうして五月を審査員として、急遽闇の決闘(デュエル)もとい、どっちのコロッケが美味しいか選手権が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=================

 

「見てれば何かを学べるかも…………!」

 

三玖はメモ帳を取り出してキッチンの方へ駆け寄る。

 

「……………完全に俺達の事は忘れ去られてるな」

 

「置いてきぼりですね…………」

 

さて、取り残されたのは上杉と四葉。もう誰も彼等が眼中にない。

 

「キングオブコロッケは俺だ!」

 

「いいえ、私よ!」

 

「凄い手捌き……!」

 

「早く食べたいです~!」

 

総悟と二乃の白熱した声、三玖の感心した声、五月の完成を期待する声を聞くと上杉はため息をつく。

 

「これは、今日1日潰れるな…………」

 

「あはは…………そう言えば上杉さん。二乃が上杉さんと火野さんがいるのに家から追い出そうとしなかったのに気付きましたか?」

 

「え?あー……………偶々だろ」

 

「そうでしょうか?…………見てください、上杉さん!皆、楽しそうですよ!皆が楽しそうな様子を見てると私も嬉しくなります!これも上杉さんと火野さんが家庭教師として来てくれたお陰ですね!」

 

「……………俺としてはコロッケ選手権で楽しむよりも勉強して欲しいんだがな…………四葉、次こそはお前も赤点回避するぞ」

 

「はい!頑張ります!」

 

四葉の元気な返事を聞いた上杉はフッ、と笑みを浮かべる。

 

「どうかしたんですか?」

 

「いや……………お前みたいな素直でまっすぐな奴が味方でいてくれて助かった、って思っただけだ」

 

「………………。どうして私が上杉さんの味方をするか分かりますか?」

 

「どうしてって………………」

 

「好きだから」

 

「…………え?」

 

見たこともない真面目な顔で言ってくる四葉の顔に上杉の目が見開かれる。頬が赤く見えるのは窓から入りこんで来る陽の光のせいか、それともあのコロッケのせいで視力が低下したのだろうか。

 

「………上杉さん。今、私は好きって言いましたよね?」

 

「は?いや………ちょ………?」

 

「あれは嘘だ、です」

 

「……………………」

 

無言で呆けた表情を浮かべる上杉に対して四葉はいたずらっ子のような笑みを浮かべて立ち上がった。

 

「やーい!引っ掛かりましたね!火野さんに上杉さんをからかう面白いやり方を教えて貰ったので、実践してみたらかなりの効果がありました!」

 

「あの野郎………もう誰も信用しない………」

 

「おあがりよ!」

 

「さぁ、召し上がりなさい!」

 

そして遂に両者完成した模様である。

 

「おお!どちらも美味しそうです!上杉さん、少し貰ってきましょうか?」

 

「俺が食い過ぎでダウンしたのを覚えてるか………?」

 

上杉の胃もたれは数時間後に解消したとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

================

 

数日後

 

「似合ってるじゃん、上杉。金髪ピエロも悪くはないが……………お前はペ〇ルギウスなんだよなぁ」

 

「いや、誰だよペ〇ルギウスって!?」

 

脳が震えたり、怠惰ですね~、とかの魔女教の奴です。上杉は知る由も無いだろうがね。

 

「そろそろ四葉辺りが来そうだし、試しに驚かしてみれば?」

 

「…………試しにやってみるか」

 

と、言うわけで待つこと5分。

 

「もうすぐ林間学校ですよ、上杉さん!」

 

「四葉」

 

「うわあああああああああ!!」

 

「ペニーワ〇ズの劣化版だァァァァァァ!」

 

「図書館では静かに!!!」

 

「「「すみません」」」

 

調子に乗りすぎました。

 

「こんなに仮装道具持ってきて、どうしたんですか?」

 

「ソウゴと一緒に肝試しの実行委員になったんだって」

 

「珍しいですね。上杉さんにしては珍しく社交的です」

 

「俺もやりたくてやってる訳じゃない。クラスの奴等に俺が自習してる間に、面倒な役を押し付けられただけだ。とびっきり怖がらせて、一生忘れられない夜にしてやろう………」

 

「ノリノリだね。…………ソウゴは何で立候補したの?無理を言って実行委員にしてもらったって言ってたけど」

 

「え?だって、人を怖がらせるのってめっちゃ愉☆悦じゃん」

 

「ドS…………」

 

「火野さんはどんな衣装を着るんですか?」

 

「それは当日のお楽しみで。ちなみに、衣装とかはオーダーメイドでその他色々と注文してね。俺の今の財布の残高は5円だ。……………早く給料とお小遣いくれないかなぁ…………課金できない………」

 

「………フータローより気合い入ってるね」

 

まぁ、好きな事には金を惜しまない性分ですからね。

 

「私のお友達から聞いた林間学校が楽しみになる話をしましょう!曰く、最終日に行われるキャンプファイヤーのダンスのフィナーレの瞬間に踊っていたペアは、生涯を添い遂げる縁で結ばれるというのです!」

 

「ええー?ほんとにござるかぁ?」

 

「ほんとにござるですよー!」

 

最近、四葉もノリが良いな。……………じゃあ、三玖と踊れば結ばれるのか?夢がありますな~!

 

「非現実的でくだらないな」

 

「うん」

 

「冷めてる!」

 

「現代っ子ェ………」

 

三玖まで否定的なの!?むぅ……………確かに非現実的と言えばそうかもしれないが。あくまで伝説で、100%結ばれる訳ではないだろうし。

 

「学生カップルなんてほとんどが別れるんだ。時間の無駄遣いだな」

 

「学生カップルからゴールインした奴に謝れ」

 

「そうですよー!」

 

四葉と共にブーブー文句を言っていると、三玖がポツリと言葉をこぼす。

 

「……なんで好きな人と付き合うんだろ」

 

「「え」」

 

何故好きな人と付き合うか………(哲学)

 

「うーむ…………俺のアンサーとしては『特別扱い』したいから、とか?」

 

「うんうん、火野君のアンサーは正解だね」

 

おやおや、誰かと思えば一花姉さんではないですか。

 

「三玖も心当たりあるんじゃない?」

 

「ないよ!」

 

「?」

 

何を話してたんだ?小声で聞き取れなかったが。女子トークってやつか?

 

「一花遅いぞ!今から勉強始めるぞ!」

 

「ごめん、フータロー君。今日は撮影入ってるからパスね」

 

「意外と忙しいんだなー、女優って」

 

「あのオーディション以来、仕事が軌道に乗ってるんだ。人気者は辛いね~」

 

ハッ!まだ駆け出しでしょーが。心の中でツッコミを入れた瞬間、一花のスマホから着信音が鳴る。

 

「あー、ヤバ………ごめん、三玖。林間学校の決め事がまだあったみたいで呼び出されちゃった。私は仕事に行かなくちゃいけないからいつもの頼んで良い?」

 

「うん。フータロー、ウィッグ借りるね?」

 

「あ、ああ………」

 

いつもの…………?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で上杉もついて来てるんだよ!」

 

「お前がついて来たんだろうが!

 

四葉には『しおりを熟読しといてー』と課題(?)を出して、『いつもの』が気になった男2人で三玖の後を追跡なう。

 

「あ、トイレに入った……………と、思ったらすぐに出てきた…………んん?一花!?」

 

「違うな、火野。あれは三玖が変装した一花だ」

 

「…………なるほど。そうして事を済ませようと言う魂胆か」

 

……………しかし。俺が見たり読んできたアニメやラノベでも、嘘をついた奴は大抵痛いしっぺ返しを喰っていると言う法則がある。大丈夫かね…………?

 

そんな不安とは裏腹に一花姉さん、もとい俺のクラスの教室に一花(三玖)が入る。

 

「な、中野さん。来てくれてありがとう」

 

この声は………前田だっけ。あんまり俺と絡みはないけど。

 

「えーっと、他の皆は?」

 

「わ、悪い………君に来て貰う為に嘘をついた」

 

ほぉ?……………にしても、三玖は演技うまいなぁ。今だけはcv.伊藤〇来じゃなくてcv.花澤〇菜に聞こえる。

 

「そ、それでですね…………お、俺とキャンプーファイヤーで踊って下さい!」

 

「私と?何で?」

 

「それは…………好きだからです」

 

なんと!告白キタァ!!その瞬間を立ち会ってしまったよ、我々。かなりレアじゃね?

 

「あ、ありがとう。返事はまた今度に」

 

「今答えが聞きたい!」

 

「えっ………まだ悩んでるから」

 

「じゃあ、可能性はあるんですね?」

 

「えっと……………」

 

「やれやれ、時間を無駄にしたな…………俺は先に戻って四葉をしごいてるわ。お前も早めに戻ってこいよ」

 

「えー、見ていかないの?まぁ、良いや」

 

と言うわけで、上杉離脱。俺は残ってこっそり見守っていると、案の定不安は的中した。

 

「おっ?…………中野さん、雰囲気変わりました?」

 

「「!」」

 

「髪…………いや、なんだろ…………そう言えば、中野さんって五つ子でしたよね。もしや………」

 

………………どうやら、残って正解だったらしい。そう心の中で呟いて俺も教室へ足を踏み入れた。

 

「ここにいたか、一花姉さん」

 

「そ、ソウゴ……君?」

 

「4人が探してたぜ。早く行って来いよ」

 

「おいコラ火野。何勝手に登場してんだよコラ。つーか、気安く中野さんを下の名前で呼んでんじゃねーぞコラ。………お、俺も名前で呼んでいいのかコラ」

 

「それは自分で決めろっての…………告白されれば動揺する人もいるでしょーが。返事くらい待ってやるのがハードボイルドってもんだろ」

 

「は、ハード……なんだ?」

 

…………どうやらハードボイルド知らないらしい。ただの知識不足のようだ。

 

「つーか、お前関係ないだろ!」

 

「ところがぎっちょん、大アリだね!」

 

「お、落ち着いて!」

 

「一…………中野さん。邪魔者をすぐ片付けるんで暫しお待ちを」

 

「ほーう?この東方不敗に勝負と来たか。良いだろう、この右手から放たれる爆熱ゴッドフィンガーを見せてやろう………!」

 

「上等だコラ!」

 

「ま、待って!」

 

ガン〇ムファイト、レディーゴー!しそうになった瞬間に一花(三玖)が間に入り、思いもよらぬ事を口にした。

 

「わ、私…………この人と踊る約束してるから!」

 

「(ファッ!?)」

 

「あ」

 

反応を見る限り、どうやら咄嗟に言ってしまったらしい。

 

「嘘だ!こんな奴が中野さんに釣り合う訳がない!」

 

「ぶっ飛ばすぞ」

 

「そ、そんなことない!………そ、ソウゴ君は………カッコいいよ………

 

「つ、付き合ってるんですか………?」

 

…………えーい、ままよ!

 

「そ、そうなんですよねー。実は我々そう言うラブラブな関係にありまして。ねー?」

 

「う、うん!それじゃ、仲良くラブラブ帰ろうねー!」

 

ふー……………これだけ言えばもう引き下がるだろ。

 

と、思いきや

 

「ま、待て!恋人なら…………手を繋いで帰れるだろ」

 

うっ…………そう来たか……………。

 

「(嫌だったら後で謝るから今は許してねー……)そんなの当たり前だよなぁ?」

 

「!……………えっと、その…………とにかく、はじめてじゃないから…………本当にごめんね」

 

「…………くそー!林間学校までに彼女作りたかったのにー!」

 

ふー……………漸く諦めてくれたようで何よりだ。にしても、ヤバい………三玖と手を繋いじゃってるよォォォォォォ!!幸福感と嫌がってないかどうかの不安で心拍数が限界突破しそう~~~~~~~~!!

 

「あの………私が聞くのも変だけど、何で好きな人に告白しようと思ったの?」

 

「中野さんがそれを言うか…………そーだな。好きな人を独り占めにしたい、に尽きるな」

 

……………ああ、そりゃそうだな。俺も手を握ってる彼女を独り占めしたいわ。

 

「ったく、中野さんを困らせんじゃねーぞ」

 

「アッ、ハイ」

 

「ソウゴ君、行くよ」

 

ファッ!?そんなにくっつくとナニがとは言わないが当たってる!!当たってるから!!し………鎮まれ、俺のビースト………………!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

教室を出て人目につかない所に着くと、俺も変装を解除した三玖も壁に寄りかかって座り込む。

 

「「つ……疲れた………」」

 

両者ともにこの感想である。

 

「………ソウゴ、ありがとう。来てくれなかったら危なかったかも………」

 

「良いってことよ………………それよりも、良いのか?勝手に一花姉さんと踊る約束しちゃったけど………三玖が一花姉さんに変装して踊るか?」

 

「!………い、いいよ。私が言っておくから、本物の一花と踊って(…………私は大丈夫)」

 

「(………結ばれる伝説………三玖や上杉も非現実的とか言ってたし…………)そっか。三玖がそう言うならものほんと踊るとしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして遂に林間学校前日

 

「よー、上杉。今何やってんの?」

 

『今は一花達に連れられて服を買ってた所だ。奢ってくれるらしい』

 

「へー、気前の良い事で。いいか、明日は絶対来いよ。お前が最初に驚かせた後に俺が驚かす手筈なんだからな。勉強したいとかでサボったら許さんぞ。引きずってでも連れて行くからな!」

 

『分かった分かった!さっき四葉にもうるさく言われた所なんだ。ちゃんと行く』

 

「そうか、それなら良いんだ」

 

マジで『勉強したいから林間学校休むわ』とか言いかねないからな、この勉強大好き男は。これくらい言っておけば大丈夫か。

 

「じゃ、また明日なペ〇ルギウス」

 

「だから誰だそいブチッ」

 

通話終了。

 

「頼んでいたものもAmzonから届いて準備万端!オラ、ワクワクすっぞ!早く明日にならないかな~!」

 

そんな楽しみでワクワクしている俺氏は────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………もしもし。………え?らいはが倒れた!?」

 

────上杉にそんな一報が届いた事を知らない。

 

to be continue………




選手権結果:五月が優勝を決められずドロー

総悟「命拾いしたようだが、次は俺が勝つ」

二乃「いいえ、勝つのは私よ。じゃ、次はカニクリームコロッケをどちらが美味しく作れるかで良いかしら?」

総悟「望むところや!」

上杉「何でコロッケに拘る…………?」

本日もありがとうございました!


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『6人』じゃなくて『7人』で

今日で山場を用事面での山場を一通り越えました。ふー、しんどかった。これからは無理のないペースで投稿していきますのでよろしくおねがいします。


それと、お気に入り登録160人超え&評価バーに黄色が点灯しましたね!登録&高評価してくれた方、ありがとうございました。


「あれ、あいつどこにいるんだ?」

 

余裕と荷物を持って集合場所にやって来た俺氏。上杉と明日の肝試しの確認でもしとくかと思い立って探しているのだが、一向に見つからない。

 

「おっ、あそこにいるのは…………おーい、五月ー」

 

「火野君?どうかしたのですか?」

 

「ガリ勉星人を見なかった?」

 

「ガリ勉星人?…………ああ、上杉君ですか。そう言えば見てませんね。もうすぐ出発の時刻の筈ですが…………」

 

と、そこへ。

 

「ここにいたか、火野!」

 

「先生?どうしたんですか?」

 

「肝試しの事なんだが………お前1人でもいけるか?さっき、上杉から林間学校を休むとの連絡が来たんだが………」

 

「「!?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=================

 

「らいは!生きてるか!」

 

本編では9話にして漸く初登場の上杉の父、勇也が焦り声をあげながら家のドアを開ける。

 

「親父、静かにしてくれ。らいはがまだ寝てる」

 

そこにいたのは自分の息子だった。本来なら林間学校のバスに乗っている筈なのだが………。

 

「看病してくれてたのか…………って、もう林間学校のバス出てんじゃないのか!?」

 

「そうか?どーでも良すぎて忘れてたぜ。まぁ、これで3日間勉強出来るな」

 

「……………風太郎。忘れ物だ」

 

「…………………」

 

風太郎は勇也から渡された付箋たっぷりのしおりを複雑そうな目で見る。

 

「早く帰ってやれなくて悪かったな。今からでも行ってこい」

 

「…………いや、でもバスはもう発車して「あー!お腹空いたー!」ら、らいは!?熱は………?」

 

「もう治った!」

 

ここで熱で倒れていたらいはが復活。もうピンピンしている。

 

「あれ、お兄ちゃん何でここにいるの?私はもう大丈夫だから、ほら早く行った行った!」

 

「俺の気遣い返せ!!…………いやだから、もうバスは行っちまったんだ。今からじゃどうにも」

 

「バスについてはもう大丈夫。何故って?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が来た!!!

 

声がした方を3人が振り向くと、そこにいたのは身長2メートル超えの『平和の象徴』とされるNO.1ヒーローのオー〇マイト………………などでは当然なく、総悟だった。

 

「つーか鍵開けっぱでしたけど、泥棒とかに入られますよ?」

 

「おお、そういや閉めるの忘れてたな。だがまぁ、うちは貧乏だし盗む価値のあるもんなんて置いてないから、泥棒が来てもガッカリして帰るのが目に見えてるな!ガハハハ!」

 

「そう言う問題なんですかねぇ……(困惑)

…………って、それよりもだ。らいはちゃんは大丈夫?」

 

「うん!この通りピンピンしてるよ!」

 

「それならよし!行くぞ、馬鹿兄貴!じゃ、行ってきまーす!」

 

「行ってらっしゃーい!お土産話、楽しみにしてるねー!」

 

「気を付けて行けよー!」

 

「お、おい!?」

 

らいはと勇也の声を背中に受けながら荷物を持った風太郎は総悟に連行されて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、待てよ火野!お前、バスは…………?」

 

「バス?あー、バスね。DETROIT SMASH(デトロイト・スマッシュ)で破壊してきた」

 

「は!?」

 

「まぁ、勿論嘘ですけど。………お前が来ないと肝試しで皆を怖がらせて愉☆悦する俺のプランの質が下がるからな」

 

「……………だが、今からどうやって」

 

「俺が何の考えもなくここに来たとでも思ったか?ほれ、代車なら既に用意済みだ」

 

「!」

 

上杉の目に映ったのは高級リムジン。そして───

 

「おそよー、フータロー君」

 

「ったく、何してんのよ」

 

「フータロー、やっと来た」

 

「こっちですよ、上杉さーん!」

 

「遅いですよ、上杉君」

 

────自分の生徒である五つ子達だった。

 

「お、お前ら…………」

 

「勘違いしないで貰える?別に私はあんたが休もうがどうでも良かったんだけど、こいつ(火野)がどーしてもって言うから仕方なくよ」

 

「ねー、聞いた三玖?もう完全に二乃の発言がツンデレそのものなんだけどー?」

 

「ソウゴの言う通り二乃はツンデレ」

 

「あんた達、聞こえてるわよ!!」

 

二乃がギャーギャー騒いでいるのを総悟が笑いながら軽く流しているのを見て上杉はやれやれ、と俯きながらため息をつく。だが、その俯いた顔には笑みが浮かんでいた。

 

「……………仕方ない、行くとするか。………おい、二乃と火野もそこまでにしろ。近所迷惑だ」

 

「しょうがねぇなぁ(悟空)」

 

「…………それもそうね。こんな下らない事で道草食ってないで、さっさと行くわよ」

 

と、言うわけで7人はリムジンに乗車。

 

「上杉さん、火野さん、乗り心地はどうですか?」

 

「ああ!ふわっふわだな!」

 

「俺んちの車と同じくらい良いですねー」

 

「それなら良かったです!それじゃあ、しゅっぱーつ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===================

───────遡ること約15分前。取り敢えず肝試しは1人で頼んだぞ、と声を掛けて先生は去っていく。その姿が見えなくなった瞬間、総悟は地面に膝をつく。

 

「そんな………上杉が来れないなんて………あいつがいないとダメなんだよ………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あいつがいないと、肝試しの時に皆を恐怖のどん底に突き落として怖がる姿を見て愉☆悦出来ないじゃないかー!!」

 

「ええ…………」

 

ドSな目的を聞いて五月は若干引く。

 

「…………ですが、怖がらせるだけなら火野君だけでも…………」

 

「違うんだよ、五月。先ず上杉が怖がらせて精神的に揺らがせた後に、俺がトドメを刺しに行く予定だったんだよ…………これじゃ怖さは半減だな…………」

 

「そ、そうなのですか………(よくよく考えれば、逆にこれはラッキーなのでは?肝試しの怖さが半減するようですし………)」

 

怖いのが苦手な五月にとっては上杉の欠席は少々嬉しい誤算のようだ。

 

「……………あ、そうだ。何なら、五月が肝試し手伝ってくんない?トゲ付きの鉄球を持ってメイド服姿で襲いかかるとか」

 

「ええ!?嫌ですよ!暗闇で待機してなくちゃいけないなんて無理です!!断固拒否します!!」

 

「ちぇ、弱虫!」

 

「弱虫で結構です!!」

 

「ぐぬぬぬぬぬ……………ヴっ!」

 

突然、火野は頭を押さえてしゃがみこむ。

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

「な、何か………マイクのハウリング音みたいなのが頭に響いてきて………」

 

「は、ハウリングとは………?」

 

残念、知識不足のようだ。

 

『……………あ、あー…………悪い、ハウリング直ったかな?おーい、総悟君。聞こえるかーい?』

 

頭の中に響いてきた声。その声は総悟にとって聞き覚えのある声だった。

 

「(か、神様!?なんだよ、今それどころじゃないんだって)」

 

『まー、聞きなって。折角いい情報を提供しようとしてるんだから』

 

「(情報?)」

 

『上杉君が林間学校を休もうとしてる理由は、昨日熱で倒れたらいはちゃんを看病する為なんだ。でも、らいはちゃんの熱はもう完全に治って今は寝てるだけだから、上杉を連れ出してもOKって事よ!』

 

「(マジか!ほんとに良いんだな?)」

 

『この偉大な神様が言うのだから間違いない!』

 

「(よっしゃ!これで計画通りに行ける!…………あ、でもバスが出るまであと5分か………今から電話して来させるとかにしても確実に間に合わないだろうし…………俺の親は仕事に行ってるし、今日は星奈さんも有給で何処かに出掛けてるから、上杉を車で拾って貰ってバスに追い付いて貰うってのも無理だし…………)」

 

『そこはまぁ、隣にいる彼女の力を借りれば良いんじゃない?』

 

「(!………そう言うことか。サンキュー、神様。恩にきるぜ)」

 

『まぁ、僕も君らが肝試しで恐怖のどん底に突き落とすのを見たいから手を貸したまでの事さ。そんじゃ、後は頑張ってー!』

 

……………どうやら、神様も総悟と同じくドSの愉☆悦民族のようだ。

 

「ひ、火野君?具合が悪いなら先生に」

 

「いや、大丈夫。五月、悪いが1つ頼みがある。上杉を連れて行くぞ。どーせサボりだろうし」

 

「え、ええ!?(そ、そんなことされたら肝試しが本来の怖さに逆戻りじゃないですか!)」

 

「けど、今から奴の家に迎えに行くにしても、電話して来させるにしてもバスが確実に行っちまう。そこでだ…………あのリムジンを今から呼び出せない?」

 

「い、今からですか!?………で、出来なくはないかもしれませんが、しかし…………」

 

「(あとひと押し………!)ダメ元でも良いから!やるだけやってくれたら今度五月が食べたこともないようなカレーでも作るから!」

 

「!!(私が食べたこともないようなカレー………!?どんな味なのか是非食べてみたいですが…………しかし、肝試しの怖さが……………いえ、やはりここはカレーです!!)わ、分かりました。取り敢えずは連絡してみます」

 

五月の中で

 

カレー>>>>越えられない壁>>>>肝試し

 

になった瞬間である。

 

五月はすぐに電話を掛け、案外すぐに通話を終えて総悟の方を向く。

 

「構わないそうですよ。20分程で上杉君の家に着くそうです」

 

「よっしゃあ!マジで恩にきるぜ、五月!約束通り今度カレーを作るわ!じゃ、俺は先にあいつの家に行ってくるわ!」

 

「あ、ちょっと!?」

 

五月が止める間もなく総悟は去って行った。

 

「かなり仲良さげだったね~、五月ちゃん?」

 

「ひゃあ!?」

 

唐突に聞こえた後ろからの声に変な声を出す五月。振り返ると、一花、二乃、三玖、四葉が勢揃いしていた。

 

「き、聞いてたんですか…………?」

 

「……………最初らへんから聞いてた」

 

少し不満気に三玖が呟く。

 

「折角だから私達も上杉さん達と一緒に行こうよ!その方が絶対楽しいよ!」

 

「賛成」

 

「確かにそっちの方が楽しそうだし、そうしようか?」

 

「…………そうね。あいつらだけに私達の車を独占させるのも気にくわないし。五月、あんたはどうするの?」

 

「…………そうですね、皆が行くのでしたら私も行きます。先生にバスを見送ると言っておきますね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────こうした経緯で、7人で目的地へと向かう事になったのである。

 

「(この3日間を上杉さんの思い出の1ページに絶対にしてみせます!無論、火野さんもです!)」

 

「(…………この前のテストでお2人の必要性は感じましたが、私が理想とする教師像からはかけ離れています。…………まぁ、火野君は上杉君よりは良いですが。料理も美味しいですし。とにかく、この林間学校でお2人の家庭教師としての覚悟を見せて貰います)」

 

一方で四葉と五月にはそんな思惑があるのは誰も知らず、林間学校はまだ始まってすらいない─────。

 

to be continue…………




おまけ

総悟「(……でも正直言うと、五月にリ〇ロのレ〇の恰好して欲しかったけどなぁ‥‥)」

ちなみに、ごとぱずでメイド服姿の五つ子が見れます。猫耳メイドの三玖は可愛すぎんよー。

今日も駄文を読んでいただきありがとうございました。

次もぜってえ見てくれよな(悟空風)


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第4巻
結びの伝説 Day1


ちなみに、この小説のタグにある『たまにシリアス』のタグが使われるのが今回の林間学校編です。原作の流れの事を指してる訳ではないですよ?
このタグは林間学校編ともう少し先の巻の話で使われます。つまり使われるのは実質二回(の予定)。度合いで言えば林間学校編よりもう少し先のやつの方が断然シリアスです。

さて、それでは林間学校編開始です。


総悟が上杉を連れてくるのを待っている間、一花は三玖に小声で話し掛ける。

 

『三玖。キャンプファイヤーの話、本当に私でいいの?』

 

『うん。私がその場しのぎで決めちゃったことだから』

 

『そっか。ならソウゴ君の相手をしてあげようかな』

 

ふと、三玖の脳裏に前田が言っていた事が思い返される。

 

─────相手を独り占めしたい。

 

『(………そんな事はしない。私達は五等分…………それに、一花なら心配ない)』

 

『(…………三玖が言うなら良いよね)』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

====================

 

「暇だー……………」

 

大雪のせいで大渋滞が発生したので、1時間以上足止めをくらってる一行。『五つ子ゲーム』などをしていたが、長く続かず暇になった。

 

「二乃ー、何か面白い話しでもしてくれー。でなきゃ暇で死ぬー」

 

「じゃあ死になさい」

 

「ひでー」

 

二乃も暇すぎてか対応が雑。辛辣なのは変わらんが。

 

「じゃあ、ソウゴ君が面白い話をしてくれない?」

 

「えー……………じゃあ、こわーい怪談話でもするか」

 

「…………え?」

 

五月がマジで?みたいな顔をしているがスルーしてスタート。暗闇ではないが雰囲気だけでも出そうと懐中電灯で顔を下から照らしてスマホで怖い系のBGMを流す。

 

「あるところに女神を守る5人の少年がいたアル」

 

「何でアル…………?」

 

そこは気にするな、三玖さんよ。

 

「でも、あるとき女神は敵の矢に胸を射ぬかれて少年たちは女神の命を救うため敵の本拠地に乗り込むことになったアル」

 

ここでBGM切り替え。曲名はペガサス幻想 -PEGASUS FANTASY-(俺氏による再現)

 

「それから少年たちはクソ長え十二宮殿へ続く階段を延々と上り続けて夏休みも吹っ飛んだアル。終わり」

 

「かいだん違い!怪談話じゃなくて階段話じゃない!!」

 

「おお、二乃のツッコミにキレが戻ってきてホッとしたぜ」

 

「ホッ………」

 

五月が怪談話じゃなかったからかめっちゃホッとしてらァ。

 

「もー、折角怖い怪談話をしてくれるかと思ったのに」

 

一花姉さんは意外にも聞きたかったらしい。

 

「やるなら夜の暗闇でやった方が雰囲気的に面白いだろ。機会があったらとびきりのを話すと約束しよう。つーか怪談話よりも、映画でも見よーぜ。面白いのあるからよ」

 

この後、例のタブレットで1時間ほど(勿論この世界の)アニメ映画を見て過ごした。ちなみに、かなり好評だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おおっ!いい感じだな!」

 

「はえー、すっごい大きい」

 

ドライバーの人が午後から用事で帰らなければならないと言うことで、俺らは近くの宿を急遽予約して泊まる事になった。まぁ、降ろされて目的地まで歩いていくのも無理がある距離なので妥当な判断だな。

 

「ねぇ、本当にこの旅館に泊まるの?こいつらと同じ部屋は嫌なんだけど!そもそも、4人部屋に7人って狭すぎでしょ!」

 

「団体のお客さんが急に入ったとかで一部屋しか空いてなかったんだもん。仕方ないよ」

 

「…………あ、外にもう一部屋あったわよ」

 

「犬小屋だろうが。俺らを殺す気か」

 

それで死んだら化けてでも出てやる。…………にしても、まさか男2人と女5人で一緒の部屋に泊まる事になるとはな。前世では絶対あり得なかったな、こんなシチュエーションは。

 

「よもやよもや、だな」

 

「見ろ、火野!窓から雪の綺麗な景色が眺めるぞ!」

 

「おー、すげ。にしても、お前いつもよりテンション高いな。まっ、林間学校だしそりゃそうか」

 

「旅館で外泊なんて久しいからな!今日は誰も俺を止められないぜ!ハッハッハ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

 

「女子、集合よ」

 

高笑いする上杉を見て二乃が他の4人に集合を掛ける。

 

「不本意だけど、ご覧の有り様よ。各自気をつけなさい」

 

「気をつけるって何を…………?」

 

「一晩同じ部屋で過ごすわけだから………あいつらも男だって事よ」

 

「大丈夫だって。俺は紳士だし、上杉は襲う度胸のないチキン野郎だから」

 

「分からないわよ。男ってのはいつ欲望を爆発させ……………って!何であんたがしれっと混ざってるのよ!」

 

二乃がビシッと指さすとそこにはあぐらをかいた総悟が。会話に自然に入ってきたものだから二乃も気づくのに一瞬遅れた。

 

「だって呼んだじゃん」

 

「あんたはお呼びじゃないわよ!」

 

「それよりも…………やらないか?」

 

「「「「「!?」」」」」

 

総悟のとんでもない(?)発言に5人は一斉に総悟から離れる。

 

「え、何で離れた…………上杉がトランプを持ってきたからやんないって事なんだけど………」

 

「………そ、そう……………って、紛らわしい言い方するんじゃないわよ!」

 

「……………あー、ヤるの方か。つまりユー達が想像してたのはセッ」

 

「シャラップ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すげぇ料理だな。タッパーに入れて持って帰りたい…………」

 

「帰る頃には腐ってるぞ…………にしても、こんなのを食べたら明日のカレーが見劣りしそうな希ガス」

 

「三玖、あんたの班のカレーを楽しみにしてるわ」

 

「うるさい、この前練習したから」

 

二乃の奴め……………それ以上言ってみろ。明日のお前の班のカレーにわさびとか辛子をぶち込んで悲惨な目に遭うぜ?班の奴等も巻き添えだな、可哀想に(無慈悲)

 

「そういえばキャンプファイヤーの伝説の詳細がわかりましたよ」

 

「そんなの関係ないわよ。そんな話したってしょうがないでしょ。どうせこの子たちに相手なんていないんだから。ま、伝説なんてどうでも良いけど」

 

……………あー、そう言えば。四葉と二乃の会話で思い出したが、俺は一花姉さんと踊る約束してたんだっけ?まぁ、三玖も伝説は非現実的って言ってたし、別に良いか。

 

………………………良いよね?

 

「あ、そうそう。この宿、温泉があるらしいよ。えーっと、確かここら辺に書いてたような…………え、混浴…………?」

 

「ファッ!?」

 

宿のパンフレットを見ていた一花姉さんから飛び出した衝撃発言。全米が震えたこと間違いなし。

 

「おおおおおお、落ち着け!とととと、取り敢えず温泉の源泉を皆で堀りに行くぞ!」

 

「先ずはあんたが落ち着きなさいよ!」

 

「源泉を堀りに行くなんて楽しそうですね!準備して皆で掘りに行きましょう!」

 

「いや、行かないわよ!?」

 

動揺しまくりの俺氏に源泉掘りにノリノリの四葉。場がカオスになりかけていたが、その後一花姉さんが温浴を読み間違えたのに気付いてカオス化は避けられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、上杉と温泉を満喫し部屋に戻ると5人はまだ戻って来てなかった。上杉はもう寝るらしいが、夜型人間の俺にとっては『まだまだこれからだぜヒャッハー!』的な感じなので、何をしようかなーと考えた結果、『押し入れに隠れて5人が帰ってきたら出てきて驚かすか』と言う結論に至った。そのまま10分位、狭さが妙に落ち着く押し入れで寝っ転がっていると扉が開いて5人が帰ってきた音がした。

 

「…………もう寝てるわね」

 

「皆平等にしたけど、多分する必要なかったかもねー」

 

「…………あれ?ソウゴは………?」

 

「ここでーす」

 

押し入れを勢いよく開けると5人はビクッと体を震わせて驚いた。予想通りの反応である。上杉が寝てなかったらもっとオーバーに行ったんだけどね。今回は省エネです。

 

「なんで押し入れなんかに入ってるのよ!」

 

「やることなくて暇だったからよ。こうなったら押し入れにでも入るしかないって結論に至るだろ」

 

「そうはならないと思いますが……………」

 

なるんですぅ。五月とは思考回路が良くも悪くも違うんですぅ。

 

「つーか、髪型変えたな。そういや、平等とか一花姉さんが言ってた気がするが………まぁ、んなことはどうでも良くてだ。上杉は寝ちまったが、全員揃ったし始めようじゃないか」

 

「始めるって………何を?」

 

「おいおい、鈍いな一花姉さん。今は夜。部屋は電気をつけてないから暗闇。アレ(・・)を話すには絶好のコンディションじゃないかッ……………!!」

 

「………も、もしかして………?」

 

五月の顔が青ざめるのを尻目に俺は懐中電灯を取り出す。

 

「さぁ、諸君。お待たせしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

階段話じゃなくてガチの怪談話をしようじゃないか……!

 

to be continue………




そう言えば、暗殺教室の作者の最新作が連載開始しましたね。めっちゃ面白そう。期待大ですね。ファンサで前作キャラとか出てきませんかねぇ‥‥。いや、流石に時を超えて出てくることはないか(笑)

本日もこんな駄文を読んでくれてありがとうございました。


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結びの伝説 Day2

今回の話だけで色んなネタやパロをやってます。明日は可能だったら投稿する予定なのでよろしくお願いします。


「懐中電灯よーし、BGMよーし、やる気よーし…………それでは、総悟君プレゼンツのおふざけ無しの怪談話をおっ始めま~す」

 

「ほ………本当にやるのですか火野君………?今日は早めに寝た方が…………」

 

「安心しろ、五月。5分も掛からんからな。終わったらすぐ寝れるさ……………幽霊に怯えず寝れれば、ね?」

 

「誰かこの人を止めてください~!」

 

五月の声も虚しく響くだけ。 残念ながら誰も俺を止められない!

 

「全く、五月もビビり過ぎよ。どうせ十二宮殿の

階段の続きを話すだけよ」

 

「少年達は女神様の命を救えるのでしょうか?」

 

ちげーよ、もう 聖闘〇星矢………じゃなくて、階段話じゃないわ。つーか、四葉は半日前に言ってたことをよく覚えてたな。その記憶力を勉強にも是非とも活かしてくれる事を切に願う。

 

「ええい、静粛に!……………ごほん。それでは始めます」

 

懐中電灯を下から照らし、怖いBGMを流して、低い声で語り出す。

 

「あるところに夫と妻、その娘の3人家族がいました。しかし夫婦の仲は険悪。夫は外に女を作り、いつしか妻の存在を邪魔に感じるようになっていました」

 

「「「「「……………」」」」」

 

五月はガクブル、それ以外は今のところは黙って聞いている。

 

「その時は、来るべくして来たのかもしれない。いつもの夫婦ゲンカのさなか、夫は激情にかられ妻を殺害してしまったのです…………」

 

「「「「「…………!」」」」」

 

ついに物騒な話題が出てきて皆の顔に緊張が走る。五月はさらにガクブル。

 

「夫は娘が起きる前に、妻の死体を担ぎ夜中の山中へ死体を埋めた。妻から解放されたという思いとは裏腹に夫の足取りは重くなるばかり。殺人を犯した罪悪感もありましたが、何より娘のことが気がかりでした。そんな心中を知るはずもなく、朝起きてきた娘の顔は…………『笑顔』。母がいないことにも触れず、笑顔を振りまいていた……………」

 

「「「「「………………!!」」」」」

 

クライマックスに差し掛かり、二乃や四葉も震え始める。一花姉さんと三玖も互いに身体を寄せ合って手を繋いでいる。五月は超絶ブルブル((( ;゚Д゚)))。

 

「夫はその笑顔に安堵すると言うよりも違和感を感じていた。どうしてそんなに機嫌がいいのか?それを尋ねると『だってお父さんとお母さんいつもケンカばかりしてたのに仲直りしたみたいだから』と。お母さんなら実家に帰っていないよ、と思わず父がついたウソに娘はこう返しました」

 

ここで敢えてBGMを中断。

 

「何言ってるのお父さん。お母さんならお父さんの背中に抱きついてるよ。………そう、お母さんは……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前の後ろだァァァァ!!」

 

「わぁ!?」

 

「ヒッ!」

 

「ひゃあっ!」

 

「お、お化け────!!」

 

「もう嫌ですぅぅぅぅ!!」

 

背後から懐中電灯を下から照らした上杉の叫びに5人は悲鳴をあげながら一斉に飛び退いた。

 

「何すんのよ、あんた!心臓が飛び出るかと思ったじゃない!」

 

「ハッハッハ!いつぞやの睡眠薬の仕返しだ!」

 

「あー、びっくりした…………ソウゴ君と打ち合わせ済みだったの?」

 

「いや、全然。俺も少し驚いたわ」

 

「まぁ、()………じゃなくて、俺は天才だからな」

 

………ん?

 

「じゃ、俺は寝るぜ………zzz」

 

「寝るの早っ…………まぁ、取り敢えずビビってくれて俺的には大成功だったね。どうだった?」

 

「結構怖かった…………でも、楽しかった」

 

「私も面白かったです!火野さんは怪談話で将来食べていけますよ!」

 

三玖と四葉には好評。だが、食っていくのは多分無理。

 

「かなり良かったとお姉さんも思うよ」

 

「…………まぁ、怪談話としては及第点かしら」

 

二乃は上から目線。いや、いつもの事か。

 

「五月は………………聞くまでもないか」

 

一番ビビってた五月は涙目で二乃に抱きついてる。怖かったのはもう聞くまでもない。

 

「もう2度と火野君の怪談話は聞きません!怖すぎます!」

 

まぁ、こんな感じで良かっか悪かったかは人それぞれの怪談話の会は終了。全員就寝についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=================

 

翌朝

 

「………んー」

 

窓から差し込む光を受けて、一花は寝返りをうって目を開くとそこには総悟の寝顔があった。

 

「Zzzzzz…………」

 

「(そ、ソウゴ君!?あれ、でも昨日寝るとき隣はソウゴ君じゃ……………って、みんなめちゃくちゃ…………私もだけど)」 

 

一花が起き上がって総悟の顔を覗き込んで見ていると、寝言が総悟の口から飛び出す。

 

「………澤さん、椅子いる…………?俺、椅子になろうか…………?」

 

「………ふふっ。どんな夢を見てるのかな?」

 

そう笑うと一花は胸に手を当てる。センサーは平常──────少なくとも今の所は。

 

「………友達なんだから、これくらい平常心でいられなきゃ…………大丈夫だよね……………」

 

言葉とは裏腹に心臓の鼓動が早まっていく─────果たして本当にセンサーは平常なのだろうか────?

 

「もう朝ですよ。朝食は食堂で」

 

だがその時、外に出ていた五月が部屋の扉を開けて、その光景が目に入ってしまう。五月は反射的に扉を閉め、それに気付いた一花も反射的に寝たフリをしようとするが─────

 

「……北京ダック!!!」

 

それよりも前に、予兆もなく総悟の意識が覚醒して上体をかなりの早さで起こす。残念ながら一花は回避する事が出来ず総悟の頭突きを喰らって倒れる。

 

「(ッ~~~~~~~~~!)」

 

声を出さずに痛みに耐え、一花は寝たフリをする。

 

「…………夢か。全く、ざーさんが北京ダックって言うと同時に目が覚めるとはな………………お、五月?扉を少しだけ開けてこっちを見てどったの?てか、起きるの早いなー。俺は第2位か」

 

実際は2番目に起きたのは一花である。即ち───

 

「「(……気付いてない?)」」

 

どうやら顔を覗き込んで見ていた一花に気付いてなかったようだった。寝たフリをしている当人はそれを聞いて一先ずホッとした。意外な所で女優の演技力が活かされた………のか?

 

「中野、ここで何やってるんだ!」

 

「せ、先生………?」

 

その後、偶然雪による足止めで同じ宿に泊まっていた学校の皆と合流出来たのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

================

 

部屋のチェックアウトを済ませた俺達はクラスごとにそれぞれ別れてバスに乗り込む。そして偶々一花姉さんと隣になった。

 

「いやー、まさか学校の皆も泊まってたとはね。会わなかったなのが逆に凄いな。ね、一花姉さん」

 

「(……………頭突されるのは流石に予想外だったよ…………幸いなのが触ったら痛い程度で済んだ事かな…………)」

 

「おーい、一花姉さん?」

 

「え?う、うん。そうだね……………そう言えば、ソウゴ君。今日頭をぶつけたりしなかった?頭痛んだりとかしてない?」

 

「?…………全然痛くないし、ぶつけたりもしてないけど……………何で?」

 

「………皆、寝相悪かったりしたからぶつかってないかなー、って思っただけだよ(石頭なんだなぁ………)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遂に林間学校スタート。先ずはカレー作りからである。俺は料理が得意なので野菜を切ってる。

 

「見える………見えるぞ!私にも野菜が見える!……………おーい、二乃!動いてないから当たり前だろってツッコミ入れろやー!!」

 

「私はあんた専属のツッコミ担当じゃないわよ!!班の人にでもやってもらいなさい!!」

 

少し離れた所から二乃の声が帰ってくる。いやぁ、でも班の人はツッコミの経験値が足りなさそうだし、やっぱ二乃なんだよなぁ。

 

「火野君って二乃ちゃんと仲が良いんだね?」

 

「そうか?」

 

少なくとも今は(・・)ボケとツッコミの関係とか教師と生徒の関係としか思ってないのだけどね。友達と呼ぶにはまた早いだろ。まぁ、別に嫌いじゃないんだけどね。根は姉妹想いだし。

 

「よーし、これで全部か」

 

「じゃあ、これを鍋に入れてくるね」

 

「サンキュー」

 

一花姉さん気が利くぅ。さーて、少し時間が出来たし他の所がどんな感じか見てくるか。

 

…………おや、あそこにいるのは三玖………って、何か入れようとしてるけど!?とんでもないものを入れるんじゃないだろうね!?

 

「三玖ちゃん、何入れようとしてるの!?」

 

「味噌。隠し味」

 

………なーんだ、味噌か。三玖と同じ班員の子もそこまで驚くもんじゃないゾ?入れると和風カレーになるし。

 

「三玖、味噌は最後に入れると良いよ。煮込む段階で入れると風味とか飛んじゃうからね」

 

「そうなんだ………分かった」

 

「………いや、でも入れるのは自分のだけにして!」

 

ちなみに、俺はカレーの隠し味はマヨネーズ派です。でも、マヨラーではない(どうでもいい)

 

「おいコラ、火野」

 

誰かと思えば前田氏。

 

「一………中野さんとは順調なんだろうな?」

 

「まーね」

 

「くそっ、結局独り身で林間学校を迎えちまった。お前は良いよな、中野さんと踊れて。そりゃあ、俺は喧嘩に明け暮れてたし見た目も怖いかもしれねぇが、俺だって恋の1つや2つしてみたいんだけど、どうすれば恋人…………」

 

「(長い………)恋人をワンチャン出来るかもしれない方法を教えてやろうか?」

 

「そ、そんな方法があるのか!?」

 

「吊り橋効果ってのがあってだな。まー、要は不安や恐怖を強く感じる場所で出会った人に対し、恋愛感情を抱きやすくなる現象だ」

 

「なるほどな………」

 

「つー訳で、今日の肝試しにクラスの女子でも誘ってこい。そうすれば、後は肝試しの実行委員隊長である俺が吊り橋効果を発動させるからよ」

 

「そ、そうか……………なら、ちょっと声でも掛けて誘ってみるとするか」

 

「がんば~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===================

 

そして、遂にやって来た夜。三玖は一花、二乃は五月と行くことになっている。四葉は肝試しの応援に行った。

 

『─────ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

「す、凄い悲鳴だね…………」

 

「うん………」

 

遠くから聞こえてくるのは悲鳴。それを聞いた一花の呟きに三玖が同意する。果たしてこの悲鳴は風太郎によるものなのか、それとも総悟によるものなのかは身をもって体感しなければ分からないだろう。

 

「よし、次のグループ行って良いぞー」

 

「あ、私達の番だ」

 

「い、行こう」

 

果たしてどんな仕掛けがあるのやら、と2人は楽しみ3割ドキドキ7割で森に入って行く。そして歩いて3分、最初の関門に突入した。

 

「う、うらめしやー!」

 

「食べちゃうぞー!」

 

「「………………」」

 

…………まぁ、残念ながら上杉に関してはもうネタバレしてるので驚きも何も無かった。

 

「………何だ、ネタがバレてる2人か」

 

「わぁ、びっくり!」

 

「ばればれの嘘でもお気遣いをどーも…………だが、忘れるな。この先には本命が控えている事をな!ハッハッハ!」

 

敗北者の捨て台詞みたいな言葉を残して上杉と四葉は引っ込んで行った。何とも言えぬ空気にはなったが、2人は先を進む。少し歩くと、看板が立っていた。もしやその看板から飛び出してくるのかと2人は警戒していたがそんな事はなく、ただイラストが描かれた紙が貼ってあるだけだった。

 

「何々…………『恐怖を味わう前に可愛い鬼のメイド少女のイラストで和んでください♪』だって」

 

「凄い完成度…………ソウゴは絵も上手いんだ。写真取っておこ」

 

「あ、私もそうしよっと」

 

イラストは複数枚あり、中には鬼の角が生えた形態で棘付きの鉄球を振るっているものや、髪を長くして子供を抱えているのもあった。

 

さて、2人はパシャパシャ写真を取り終わって再び歩き始めて早々、恐怖の時間がスタートした。

 

『フォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッ──────』

 

「「!?」」

 

後ろを2人は振り向くが、そこに誰もいない。

 

『フォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッ──────』

 

声は今度は前から。だが、向いても誰もいない。そして右、左、さらには上からも声はするが姿はどこにもない。

 

「な、なにこの声…………?」

 

「さ、さぁ…………色んな方向から聞こえるから、いつどこから来てもおかしくないね…………気を引き締めて行こっか」

 

姿は見えずに不気味な声だけ響く。いつどこから来るか分からない恐怖に2人は少し怖がりつつも歩き進める。ある程度歩くと唐突に謎の声もピタリと止まり──────

 

「なるほど~これはこれは確かに興味深いですね~。あぁなぁた、もしや傲慢ではありませんですかね」

 

先程よりも不気味な天の声が彼女等に響き渡る。

 

「ソウゴ……………?」

 

「ここで仕掛けてくるのかな…………にしても、本当にソウゴ君?何かフータロー君に声が似てるような気が…………?」

 

一花が言っていることは概ね正解である。ソウゴが仮装しているのはフータローの中の人の迫真の演技で人気キャラとなった400歳の男なのだから。

 

「あぁなぁたですよ、ショートカットの少女……………お訊きするのデスが…………何故花〇香菜などと呼ばれているのデス?」

 

「(いや、それ私が1番聞きたいんだけど…………)」

 

「……あぁ、無視は寂しいデスね! こんなにも、ワタシはアナタに好意的に接しているというのにのにのにのにににににに!」

 

まさに狂気と言うべきか。ここまで来ると一花らは演技に感心するのを通り越して恐怖を感じていた。

 

「………あぁ、そうデスか。ワタシとしたことが、ご挨拶をしていないではないデスか。ワタシは魔女教、大罪司教『怠惰』担当、ペテルギ〇ス・ロマネコンティ……デス!

 

間髪入れず総…………いや、ペテルギ〇スは続ける。

 

「さて、さて、さてさてさてさてさてててててて………そこの長髪の少女」

 

「わ、私?」

 

今度は三玖である。

 

「その体から漂ってくる濃密なまでの寵愛。実に、実に実に実に実につにつにつにつにぃ、興味深い……デス!

 

「………………一花。私、臭くないよね?」

 

「う、うん全然大丈夫…………それに、多分そう言う事じゃないと思うよ………」

 

真に受けて自分の身体を嗅ぐ三玖に一花は静かにツッコミを入れる。そんな中、遂にクライマックスを迎える。

 

「あぁ、濃密に漂う濃密な寵愛……………脳が、

 

一花と三玖は背後から肩をトントンと優しく叩かれる。反射的に振り返った次の瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

脳が震えるるるるるるるるるっ───!!」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「…………………」

 

いつの間にか背後にいた、深緑の髪をおかっぱみたいな長さで切り揃えたとんでもない面で叫ぶ男を間近で見た瞬間、一花は絶叫。三玖は無言だったものの、腰が抜けてその場にへたり込んでしまった。

 

「……………………あー、疲れた」

 

マスクを外してスッキリした顔を見せる総悟。未だに顔が引きつっている一花と腰を抜かしてへたり込んでいる三玖を見て満足そうにニヤリと笑う。

 

「あー、もうびっくりした…………」

 

「……………………」

 

未だにドキドキしている一花が気が抜けたように呟くが、三玖は未だに言葉が出ないようだった。

 

「ソウゴ君、そのマスクは自分で作ったの?」

 

「自分で作ったイラストを業者に持って行ってオーダーメイドで作って貰った。かなりの額だったなー。あとはマスクの中に付けるボイスチェンジャーと衣装を自作したり、スピーカーとかも何台も買ったりしてね………………半分本気で言うんだけど、お金くれない?マジで金欠」

 

「えー?」

 

「女優でかなり稼いでるだろ。貯蓄は何桁だ?8?それとも9?」

 

「流石にそこまではないかなー………」

 

「………………ハッ!」

 

「あー!今、馬鹿にしたでしょ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………………」

 

胸が苦しくなるような気がした。一花は家庭教師であり、友達でもあるソウゴと話しているだけなのに。それだけなのにその光景を私は直視出来なかった。

 

「玖──────三玖?」

 

「!…………な、なに?」

 

「この先、崖があるからルート通り進むんだよ。まぁ、俺が念には念を入れてテープで規制をしてるから大丈夫だとは思うけど」

 

「…………分かってる。行こ、一花」

 

「え?あ、うん……………」

 

胸の苦しさを紛らわすように早足で歩く。 そんな私に一花が話し掛けてくる。

 

「三玖、早いよ~。…………それにしても、折角だからもう少し一緒にいれば良かったのに」

 

「…………………私、変かも」

 

「?」

 

「ソウゴは皆の家庭教師なのに……………一花は、ソウゴの事をどう思ってる……………?」

 

to be continue…………




林間学校終了後の会話

総悟「上杉に取り憑いてただろ、あんた」

神様「バレてたか…………ドSの血が騒いでな。つい来ちまった!」

総悟「…………神様とは良い酒が飲めそうだ!成人が楽しみだネ!」


《肝試し概要》

第一関門 『ペニー〇イズ(劣化版)ゾーン』…金髪ピエロの上杉と助っ人のミイラ四葉が脅かしてくるゾーン。ポジション的には前菜ではあるが意外と怖い。ハァイジョージィ

第二関門『バル〇ン星人ゾーン』…某光の国の巨人と戦った、じゃんけんでチョキしか出せない星人の声(総悟制作)が色んな方向から聞こえてくる。声だけで何も襲っては来ないが、夜の森から聞こえてくる姿なき不気味な声は中々の恐怖。

第三関門『怠惰ゾーン』…今回の肝試しのラストに待ち構える大本命。顔の気色悪さと総悟の迫真の演技で恐怖のどん底に突き落とす。彼の前では男も女も大絶叫不可避。

今回も読んでいただきありがとうございました。

…………五月は肝試しで死ななきゃ良いが…………。


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結びの伝説 Day2 その2

すみません、今日(2/10)はバイトの面接があるため、次の投稿は明後日になる可能性があるますのでよろしくお願いします!


次にやって来たのは二乃と五月のペアだ。

 

「うぅぅぅぅ…………やはり参加しない方が良かったのかもしれません…………」

 

「ちょっと、離れなさいよ。そんなに怖がることないでしょ………………それにしても、林間学校ってもっと楽しいと思ってたんだけどなぁ」

 

「え?まだ始まったばかりじゃないですか」

 

「その始まりでもう躓いてたでしょ!あいつらと同じ部屋に泊まることになるし……………何もなかったから良かったけど………」

 

「!……………と言うことは、昨日のは二乃じゃないんですね」

 

「え?」

 

そしてちょうど、2人に第一の刺客が襲来する。

 

「勉強しろやァ──────!」

 

「食べちゃうぞォ─────!」

 

上杉は木に足を紐で結びつけて上から襲来し、四葉は近くの茂みから襲来した。

 

「も、もう嫌ですぅぅぅぅぅぅ!!」

 

「ちょ、待ちなさい!走ると危ないわよ!」

 

五月、泣きながら通常の3倍の早さで逃走。だがしかし、残念ながら恐怖はまだ終わらない。五月の中の人繋がりの可愛い青鬼のイラストに目もくれず、五月はバル〇ン星人ゾーンに突入。

 

『フォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッ──────』

 

「ひいっ!?こ、来ないで下さいぃぃぃぃぃ!!」

 

ネタバレすると声だけで誰も来ないのだが、暗闇から聞こえる不気味な声に五月はさらにパニック。通常の4倍まで加速した所でクライマックスである。

 

「脳が震えるるるるるるるるるっ───!!」

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ────!!」

 

蜘蛛のように這って(しかも意外と速い)五月を追いかけるとんでもない形相の緑のヤバそうな人を見て五月は通常の5倍を越えて、通常の3倍のさらに2倍の6倍で走って行った。

 

「……………あれ?そういや二乃がいないな。まだ後ろか?」

 

起き上がった総悟が振り返ると、丁度二乃が走って来ていた。

 

「おお、来た来た。…………ワタシは魔女教、大罪司教『怠惰』担当、ペテルギ〇ス・ロマネコン「五月、待ちなさいよ!」…………へ?」

 

総悟の事は眼中になしか、二乃は完全スルーして走って行った。

 

「えー、行っちゃったよ。二乃はギャフンと腰を抜かしてやろうと思ったのにぃ。つまらんなー………………ん?」

 

総悟は規制テープが無くなっている事に気が付いた。そして五月がとんでもないスピードで駆けていた事を思い出す。

 

「……………まさか…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……………はぁ……………つ、疲れました…………」

 

恐怖の余り通常の6倍のスピードで走っていた五月も流石に疲れて大きく息を吐きながら立ち止まる。

 

「ま、まったく…………上杉君に四葉も本気で怖がらせに来すぎです!特に火野君のあれは何なんですか!気合いが入りすぎです!もうトラウマになりましたよぉ…………二乃も大丈夫でしたか………?」

 

そう尋ねながら五月は振り返る。しかし、後ろにいると思われていた二乃の姿は──────何処にも無い。

 

「に………二乃…………?何処にいるんですか…………?」

 

そう問いかける五月の声に答える者はない。五月の頭の中には迷子の二文字が浮かぶ。

 

「…………そ、そうです!スマホで今いる位置を確認すれ……………ば………」

 

五月はポケットを探るが、スマホは何処にもない。

 

「(そ、そう言えばスマホは必要ないと思って部屋に置いてきていたのを忘れてました!ど、どうしましょう!?それに、森に入ったきり行方不明になった人の幽霊が出ると言う噂もありますし…………早く抜け出したいのですがどっちに向かえば良いのでしょうか……………取り敢えずこっちでしょうか?)」

 

こう言った森で迷子になった場合、むやみに動かずに見つけて貰うのが定石なのだが…………悲しいかな、知識不足なので五月はそれを知らない。かくして、五月は何となくの方向で歩き出す。

 

「うぅ……………どうしてこんな目に遭わなくてはいけないのでしょうか…………悪いことはしてないのに………二乃ぉ………どこに行ったんですかぁ……」

 

半べそをかきながら二乃の名前を呼ぶが、当然応える声はない。

 

「せめて懐中電灯でもあれば良か「カサッ」ヒッ!」

 

音がした方をとんでもない早さで向く五月。恐怖の余り音に鋭敏になっているのか。音のした茂みから出てきたのは──────

 

「ホロ?」

 

「……………り、リスでしたか…………まったく、驚かさないで下さいよ……………わぁ!?」

 

警戒心がないのか、そのリスは五月の足を登って肩に乗って来る。そして、つぶらな瞳で五月を見つめる。

 

「わぁ……………こんな近くで見るのは初めてですが、可愛いくて癒されま「─────ァァァァ!」すぅ!?」

 

癒しタイムから一転、遠くから聞こえてきた悲鳴に五月は脱兎の如く走り出す。どういう訳か、リスも離れようとせず必死に肩にしがみつく。そして、そんな彼女を木から木へとフリーランニングで跳び移る影があった。五月の姿を認識すると一気に加速して抜かし、木から飛び降りて五月の前に現れる。

 

「ひゃ!?こ、来ないで下さい!!私は美味しくないですぅ!!」

 

「いや、誰が食うかっての………」

 

その声を五月は知っていた。当然であろう、彼は───

 

「ひ…………火野君…………?」

 

「よー、五月。まったく、ここまで手間を掛けさせやがって」

 

─────同級生であり、家庭教師でもあるのだから。

 

「うぅぅ………よ、良かったですぅ…………幽霊じゃなくて火野君でぇ……………」

 

「おいおい、泣くなっての。………お?そのリスはどうした?シマリスか?」

 

「え?…………ああ、実は先程会って早々懐かれまして…………」

 

「へー、野生なのに懐かれたんだ。変わったリスなことで。ほれ、こっちにカモン」

 

総悟が手を出すとリスは跳び移る。そのまま総悟はリスを近くの木の側に降ろしてあげた。

 

「よし、行くぞー」

 

「あ、待ってください。申し訳ないのですが、写真を取って貰っても良いですか?可愛いので写真に収めたいところなのですが、スマホを持っていなくて…………」

 

「お安いご用よ…………わーお、めっちゃカメラ目線。はい、ちーず」

 

総悟は写真が取れていることを確認してスマホをしまう。

 

「んじゃ、後で送るよ」

 

「ええ、お願いします。少し別れが惜しいですが…………」

 

「バイバイ~」

 

2人はリスに別れを告げると、総悟と伴に歩き始める。

 

「さーて、最後は二乃か」

 

「……………すみません、ご迷惑をお掛けして。この森は出ると噂を聞いていたので、過剰反応してしまいまして…………」

 

「……………ああ、ごめん。白状すると、その噂の出本は俺だわ」

 

「えぇ!?」

 

思わぬ所から噂を広めた犯人が発見された。

 

「そう言う噂をしときゃ肝試しの怖さが増すかなー、って広めてたんだよねー。ちなみに、実際はそんな噂は一切ございません。アレは出ません」

 

「…………も、もう!ほんとに怖かったんですからね!」

 

「めんご めんご、MNG」

 

手を合わせて軽く謝ってくる総悟を見て五月はため息をつく。

 

「はぁ………それを聞いたら全然怖くなくなりました」

 

「お、いつもの調子に戻ったみたいで何よりでありま……………あ、二乃じゃないの、あれ」

 

「……………あ、ほんとです!二乃ー!」

 

五月が声を掛けると二乃もすぐに気が付いた。

 

「五月!まったく、どこ行ってたのよ!」

 

「すみません、迷惑を掛けて…………二乃はよく1人で平気でしたね」

 

「違うわ、私はこの人……………あれ?」

 

二乃の視線に釣られて総悟と五月も見るが、その先には誰もいなかった。

 

「誰もいないじゃん。………ははーん、さては恐怖の余り頭の中で生み出した妄想の人物と一緒だったと言う訳ですな?」

 

「違うわよ!!もう、どこに行っちゃったのかしら…………まぁ、良いわ。………待ってるから

 

「「?」」

 

そんな彼等の近くの木の陰に金髪の男がいたのだが、彼等は知る由もない。総悟は二乃と五月を順路へ帰した後、再び愉悦を再開したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ソウゴ君の事をどう思ってるのかって……………一言で言えば、ソウゴ君は普通に良い人って感じだけど…………あ、でも少し変わってるかな。私の事を何故か花〇香菜って呼んでくる事があるからね。そんなに似てるのかな、その人と」

 

「……そう………」

 

そんな三玖の様子を見た一花は1つ提案をする。

 

「……………ソウゴ君との最終日のダンス、変わろうか?心配なんでしょ?」

 

「……………平等。一花が相手をしてあげて」

 

「……………後悔しないようにね。今がいつまでも続く訳じゃないから」

 

─────こうして、初日最後のイベントの肝試しが終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、疲れた疲れた」

 

道具を全部回収して上杉と一緒に宿泊施設に戻る最中、どうも肝試しで怖がらせ過ぎてか恨みの視線を感じた気がするが、多分気のせいだろう。

 

「上杉、肝試しはどうだったかー?」

 

「まぁ、楽しくなかった訳ではないが…………1つ厄介な事になっちまってな………」

 

「と、言いますと?」

 

「実は、かくかくしかじか………」

 

上杉が話した内容を簡単に要約すると、俺に二乃と五月を探すのを手伝ってくれと頼まれ、金髪のカツラをつけたまま探しに行った先で二乃を発見。そこで色々とあって二乃に惚れられたらしく、最終日のキャンプファイヤーで踊ってくれないかと頼まれたらしい。

 

「要は、遂にモテ期が来たって事か」

 

「何でそうなるんだよ!…………前に色々とあって二乃に昔の頃の俺を見られたんだ。その時にタイプとか言われていたのをすっかり忘れてたぜ。覚えてたらカツラを取ってたんだがな……………」

 

「ま、今更言ってもしょうがない。明日、再びキンタローになって踊るんだね。どうせやること無いだろうし、丁度良いだろ」

 

「はぁ…………面倒だが、二乃に真実を打ち明けて弱みを握られるのもなぁ…………仕方ない、踊るとするか」

 

「…………そもそもお前、ちゃんと踊り方分かる?」

 

「……………………………」

 

ダメみたいですね(諦め)

 

…………まぁ、勉強しか興味ないような奴だからどうせ知らんとは思ってたけど。

 

「頼む、火野!俺に踊り方を教えてくれ!」

 

「しょうがねぇな(悟空)」

 

1つ貸しだぞ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と言う訳で、『ほんとは自分の部屋でアニメでも見てたいけど、俺ちゃんは優しいから(自画自賛)教えるかぁ』と思っていたのだが、同じクラスの男子にキャンプファイヤーの準備を手伝ってくれと頼まれた。断るのも気が引けるので、上杉にはダンスの件を後回しにして貰って丸太運びを手伝う事に。

 

「お、四葉じゃん」

 

「火野さん!お手伝いに来てくれたんですか?ありがとうございます!」

 

「いえいえー。まぁ、肝試し手伝ってくれたお礼って事で…………よっと」

 

おー、意外と軽いな。でも、前世の俺なら持ち上げるのも一苦労だったのかな。てか、四葉も1人で持ち上げてやがりますよ。女の子なのに凄いなー。そのまま四葉と運びながら肝試しの事で会話を咲かせる。

 

「来年から肝試しとか廃止になったりしてねー」

 

「ええ!?どうしてですか?」

 

「『怖すぎ!』『ビックリ死させる気か!』とか苦情殺到して廃止とかになりそうな予感がしてな。五月も泣いちゃったし、少し罪悪感があったりなかったり………」

 

「五月は昔から怖いのは苦手ですからね。まぁ、流石に廃止にはならないと思いますよ」

 

「それなら良いんだけどな…………つーか、来年もやりてぇ。恐怖のどん底に突き落として愉☆悦してぇなぁ…………!」

 

「火野さんが悪い顔を浮かべてます………!」

 

そんな会話をしながら俺と四葉でポンポン運んでいく。

 

「中野さん、ちょっと良い?」

 

「あ、はーい!」

 

大分運んだ所で、四葉は同じキャンプファイヤー係の人に呼ばれてそちらに行く。倉庫の中を覗くと、残り1本だった。

 

「あれ、ソウゴ君?」

 

持ち上げようとするところにやって来たのは一花姉さんだった。あれ、姉さんはキャンプファイヤー係だったっけ?

 

「私も頼まれてお手伝いに来たんだ。ソウゴ君と一緒かな?」

 

なるほど。

 

「じゃ、あと1本は俺が運んどくわ」

 

「え、でも折角来たんだし私も片側持つよ。その方が楽でしょ?」

 

「そう?じゃ、よろしくー。せーの………っと」

 

あー、らくちん。

 

「……………そう言えば、さ。なんか踊るみたいだね、私達」

 

「…………あー………」

 

肝試しの愉悦に浸っててすっかり忘れてたぜ。明日踊るんでしたね。

 

「どうする?練習でもしとく?」

 

「えー…………練習してる暇があったら、ラノベとかアニメでも見たいんですがねぇ………」

 

「あはは、ソウゴ君はぶれないなぁ」

 

まーね。ダンスなんてYou〇ubeで『フォークダンス』って検索して1番上に出てきたのを見とけば何とかなるだろ(適当)

 

「しかし、女子とダンス踊るなんて初体験だな」

 

「へー、そうなんだ。まぁ、私も初めてだけどね」

 

「ほう……………つまり、お互いの初めてを奪っちゃう訳ですなぁ」

 

「言い方が完全に別のナニかに聞こえるのはお姉さんの気のせいかな……………?」

 

キノセイ、キノセイ。

 

「よーし、全部運んだわね」

 

唐突に声が聞こえてきた瞬間、俺は丸太を音も立てずに壁に立て掛け、一花姉さんの手を掴んで丸太の陰に隠れる。この間、僅か4秒の早業である。

 

「あはは………前にもこんな事があったね…………と言うか、隠れる必要あった………?」

 

「……………確かにぃ…………」

 

考えるよりも先に反射的に隠れてしまったが、確かに隠れる必要なかったな。エロゲーのように『倉庫内で2人きりでチョメチョメしてました』みたいなやましい事なんて1ミリもしてないし。やれやれ、さっさと出るとしま

 

ギィィィ───ガシャン、ガチャ。

 

「…………ガシャン?」

 

「…………ガチャ?」

 

ま、まさか……………扉を押してみるがびくともしない。

 

「あのー、まだ中に2名いるんですけどー!?」

 

へんじがない……

ただのしかばねのようだ………。

 

……………って、こんな状況でドラ〇エの名台詞を思い浮かべてるんじゃねぇ!!完全に閉じ込められましたやん!!

 

「ヤバイ!!鍵を閉められた倉庫に2人きりとかもう完全にエロゲーのシチュエーションじゃねぇか!!誰か助けてー!!このままじゃNTR・不倫で小〇賢章に殺される!!ゴールドエ〇スペリエンス・レク〇エムによって永遠の死を味わう事になる!!」

 

「お、落ち着いて!と言うか、小〇賢章って誰!?」

 

「お前が結婚してる相手!!」

 

「いや、結婚してないよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺氏が落ち着いたのは3分後でした。頼むから

世界を超えて小〇賢章さんは来ないで下さい、お願いします()

 

to be continue………




五月「(そう言えば、森を1人で迷っている時に聞こえたあの悲鳴はなっだったのでしょうか………?)」

神様「(それ、総悟君が捜しに行ってていない間に僕が脅かしてた時の生徒の悲鳴です)」

ちなみに、当然神様はマスクなしでペテ公を完全再現可能。声も勿論つくつぐボイスを100%再現。もはやただのペテ公本人。

本人も読んでいただき、誠にセンキュー!


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結びの伝説 Day2 その3

神様「おっす、おらGOD。作者がこの林間学校編でオリジナルのシリアス要素入るとか言ってただろ?そのシリアス要素を没にする事になったみてぇでよ。理由としては何か『興が乗らん!』って中〇悠一がcvの生き恥をさらした男の台詞を丸パクリして言ってたぞ。要はつまんなかった訳だ。これを投稿すれば評価も駄々下がり、お気に入り登録者が離れてくのを懸念して没にする判断になったらしいぞ」

総悟「ちなみに、どんな話だったん?」

神様「五月と何かピンチになる話だったらしい」

総悟「ふーん。なら、没で正解だな。そんな話をしてる暇があったら三玖との幕間の話でもしろって話だ。あ、つー訳で今日のお話どうぞー」




「ふー‥‥……悪かったな。動揺のあまり暴走しちまった」

 

「もー、暴走しずぎだよ。小〇賢章って人と私が結婚してるとか訳の分からない事とか言い出すし」

 

正確には中の人同士、でしたね。いやぁ、あのお2人が結婚したって報告を聞いたときは『エンダ─────!』って叫びましたよ。

 

「マジですまん。俺のせいでこんな事になっちまって。今度タピオカでも奢りますわ」

 

「お、言ったね?絶対忘れないでよ?……さてと。どうしよっか?」

 

「この丸太で突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)して脱出、そしてハピエンとしよう」

 

一花にとっては意味が分からないワードが一部出てきたが、取り敢えず扉を壊そうとしているのは何となく分かった。

 

「待って!あれ、ドアを壊したら警備員が飛んでくる系の防犯センサーじゃない?」

 

「………あー、そうみたいね。でもまぁ、逆に見つけてもらえるしラッキーってことでいきまーす」

 

「そ、そんなことすると林間学校が台無しになっちゃうよ!壊すのは最終手段にしておこ?(…それに、三玖に知られたら…)」

 

「‥‥まぁ、一理あるな。じゃ、突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)は最終手段ってことで」

 

取り敢えず丸太の投擲を止めてくれたので一花はホッとする。

 

「そ、そうだ!ダメもとで解除出来るかセンサーを見てみない?」

 

「んー………まぁ、良いけど。しかし、随分と高い位置にあるな。脚立とかないもんかね?」

 

2人はあたりを見回してみるが、残念ながら脚立は見当たらない。

 

「しゃーない。ここは肩車と行くか」

 

「(っ‥‥!)」

 

一花の脳裏に三玖がよぎるが、これは確認に必要な行為でやましいことは何もないと言い聞かせる。

 

「おーい、早く乗れい」

 

「………お、重いとか言わないでよー?(平常心…平常心………)」

 

心の中で言い聞かせながら肩に乗り、乗ったのを確認すると総悟は立ち上がる。一花がセンサーをチェックしていると、突然総悟が『ムフフッ』と笑う。

 

「ど、どうしたの?」

 

「あ、いや何でもないです」

 

慌てたように言う総悟。その怪しい態度を見て女の勘が働いた。

 

「あ、もしや太ももを堪能してるね!?」

 

「し、してませんけど?『ギュム』って全然堪能なんてしてませんけど?」

 

「してるじゃん!コラ、堪能禁止!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

================

 

調べた結果、解除には鍵が必要なことが分かった。だが、それは即ち誰かを待つと言う選択肢しか穏便に済ますには無い事も同時に示していた。あーあ、こう言う時に限ってスマホを両者とも部屋に置いてきてしまうとは…………。

 

「なー、マジで突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)しない?人が来るまでに寒さで参っちゃうんじゃね?」

 

「男の子なのに弱気だなぁ。女の私ですらこれくらいの寒さなんてへっ……………ちゃ…………クショッ!………やっぱ無理かも」

 

前言撤回早すぎィ!全然へっちゃらじゃないやん!

 

「……………しゃーないなー」

 

俺は羽織っていた上着を一花姉さんに掛けてあげる。

 

「そ、ソウゴ君…?」

 

「まー、俺はレディファーストの紳士ですから。遠慮無く使いたまえ」

 

「あ、ありがとう………ふぅ、あったかい」

 

一花姉さんの顔が綻んでて何よりで……………………うう。カッコつけ半分、善意半分で貸したのは良いが、やっぱ寒い。暖炉もないし………ここにあるのは木だけだし……………いや、待てよ。木か………………俺は倉庫にあった材料で道具を作って木を摩擦し始める。

 

「…………あのー、ソウゴ君?何をしてるの?」

 

「火をおこそうと思ってな。ま、昔の人も出来たんだから俺にも出来るだろ、多分。スクリンプラーも見たところ無さそうだから問題ないだろうし、さっさと付けましょうねー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5分後

 

「おい、全然付かねぇぞ!どうなってんだ!ふざけんな!(憤怒)」

 

「いや、私に言われても…………」

 

そりゃそうなんだけどね……………昔の人は凄いなぁ。

 

「じゃあ、作業用BGM的な感じでお姉さんが楽しい話をしてあげようか?」

 

「そりゃあ良いね。是非とも頼む」

 

「そうだね…………じゃあ、あのお話にしようかな。私達が小学生の頃の話なんだけどね────」

 

と言う訳で一花姉さんの楽しいお話を聞きながら作業続行。一花姉さんは姉妹との思い出のエピソードを色々と話してくれた。姉妹の面白エピソード、皆で遊んだりしたこと、皆で旅行に行ったこと等々……………どれも楽しそうなお話ばかりだった。他にも一花姉さんの主に仕事での愚痴や苦労話なども聞いたりした。

 

「……………やっぱ駆け出しでも女優って大変なんだな」

 

「ほんと、大変だよー。でも、その分やり甲斐もあるけどね………………あ、ごめんね?すっかり私の愚痴話に付き合って貰っちゃって」

 

「そんな事は気にすんなっての。俺は一花姉さんの先生でもあるからな。愚痴とか相談を聞いて生徒の悩みを解決するのも先生の役割だろ」

 

「…………………………」

 

……………あれ?急に黙り込んでどうしたんだろ?何かいけないことを言ってしまったのだろうか………?

 

「あ、あのう…………何か不味いことを言っちゃったなら謝るけど…………」

 

「あ、いやいや!全然そんなことないよ!ただ、相談に乗って貰おうかどうか迷ってただけだから」

 

「何かお悩み事があるなら、YOU、言っちゃいなよ!俺で良ければ力になるZOY?」

 

「………………じゃあ、相談しちゃおうかな」

 

良いぜ、ドンとカモン!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

 

「私、学校辞めるかも」

 

「なーんだ、そんなこ………………へ?」

 

ソウゴ君は思わず2度見してきた。それ程に衝撃的だったし、予想外だったのかな。にしても、彼のこんな驚いてる表情は初めて見たかも。

 

「今までも何度か学校を休んで仕事に行ってて。私と同じ年齢の子らも留年覚悟で休んだり、芸能活動に肯定的な学校に転校したりしてるの」

 

「………………………」

 

「私は知っての通り馬鹿だし…………高校に未練はないかなーって、思ったり…………思わなかったりして(それに、私がいなくなれば三玖も…………)」

 

何となくそう濁しながらチラッと彼を見ると、いつになく険しい表情を浮かべていた。これは……………ちょっと旗色が悪いかな…………?

 

「ごめん、やっぱり忘れ」

 

「良いんじゃないの、別に」

 

「………………え?」

 

軽いノリで言っているようにも聞こえる口調で、それでも真剣味のある口調で彼はサラッと言ってのけた。

 

「女優活動が本当にやりたいこと、好きなことなら学校を退学したりして専念する価値はあると俺は思うけどね」

 

「ソウゴ君…………」

 

「でもまぁ、君のいる界隈ってのは声優界みたいに成功出来るのは一握りの世界だからね、多分。現実的な事を言って悪いが、正直失敗する可能性も高い。だが、たとえ失敗しても得られた経験や努力する過程で得られたものはきっと人生の糧になるだろうね。まぁ要するにだ…………何事もチャレンジ精神がインポータント、ってね!…………ついたぁ!」

 

彼が先程まで摩擦していた木から煙が出始めた。

 

「ちょっと息を吹いてて!小さい板を取ってくる!」

 

「う、うん!フーッ、フーッ…………!」

 

──────そして数分後には、私達は焚き火で温まっていた。ソウゴ君も随分と幸せそうな表情をしている。

 

「……………ソウゴ君」

 

「お?」

 

「ありがとね、相談に乗ってくれて。もう少し考えてから最終的な結論は出すよ」

 

「………‥…そっか。まぁ、俺の長い人生経験からのアドバイスが役に立ったなら、ちょっと嬉しいかな。ま、仮に失敗して無職になるような事態になっても安心しろ。俺の親のコネを使って声優業につかせてやるわ。芸名は花〇香菜で4649」

 

「アハハ!じゃあ、その時はよろしくね」

 

本気なのか、おふざけののか分からない口調で言うから私も思わず笑ってしまう。……………やっぱり、彼と『友達(・・)』になれて良かったな。色々と話せたし。

 

「しかし、これでいよいよやることがなくなったなー……………あっ、そうだ(唐突)」

 

「どうかしたの?」

 

「踊らね?」

 

「え?」

 

「さっき『練習しとく?』とか言ってたじゃん。暇だしやらね?」

 

「……………うん、やろっか。今夜は2人だけのキャンプファイヤーだよ」

 

───────センサーに異常無し。彼とは『友達』の関係。これ位は大丈

 

「そーいや、一花姉さんはこのキャンプファイヤーの伝説って知ってるか?」

 

────ドクッ。

 

「………伝説、って………?」

 

「四葉が言ってたけど、要はキャンプファイヤーで一緒に踊ったペアは結ばれるらしいぜ」

 

「!…………それ、三玖も知ってるの?」

 

「ああ。その場で聞いてたな。まぁ、本人はあまり気にしてなかったみたいだけど。俺も最初はマジかー、なんて思ってたけど、よくよく考えたら100%じゃないし………………一花姉さん?」

 

「(…………違う、三玖の様子を見る限り気にしてなくなんかない………そ、そんなつもりじゃ…………三玖にとってキャンプファイヤーは………それなのに私は……………!)」

 

「?………………って、一花後ろ!」

 

彼が初めて『姉さん』付けしないで叫んだ時にはもう遅かった。足を丸太にぶつけてしまい、丸太が私の方へ倒れてくる。ぶつかる────と、思った矢先にソウゴ君の手が私の腕を掴んで引き寄せてくれて、そのまま彼の胸に収まってしまった。

 

「あ、危なかったぁ……………一花姉さんって案外ドジって言うか抜けてるところあるなぁ、全くー」

 

───────ビー!ビー!ビー!

 

心のセンサーのブザーが鳴り響いて止まらない。だ、だって!至近距離に彼の顔があって、しかも抱き寄せられたら平常心なんて保てる訳がないに決まってるでしょ!

 

「………………って、すんませんでしたァ!!」

 

彼も自分の行為に恥じらいを感じたのか、後ろにジャンプすると同時に別のブザーが鳴り響く。

 

『衝撃を感知しました。30秒以内にアンロックしてください。解除されない場合直ちに警備員が駆けつけます』

 

「ファッ!?まずいですよ!逃げないと!」

 

「う、うん!………って、冷たっ!」

 

突然、上から冷たい水が降ってきた。

 

「あ、マジ!?スクリンプラー見落としてた!?」

 

「火を消さないと!あと、センサーも何とかしよう!」

 

「その為の鍵がないんですけども!ええい、こうなったら突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)しかねぇ!!」

 

その時だった。スクリンプラーもブザーも止まったのは。

 

「鍵ならここにありますよ」

 

「「!!」」

 

「一花。2人して、こんなところで何をしていたんですか」

 

扉が開いて、そこにあったのは2人の影。

 

「い、五月ちゃん……それに………!」

 

「…………み、三玖………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────後に、ソウゴ君はこの時の心情を私にこう語っていた。『あ、これ死んだな(色んな意味で)』と……………。

 

to be continue……




上杉「出番カット組同士で仲良くしようぜ、五月」

五月「私は今回カットされた代わりに幕間の物語の出番を頂いたのでチャラです。あなたと同じにしないで下さい」

上杉「」

えー…………シリアスを楽しみにしてた方は申し訳ないです。シリアスタグが本編で使われるのはまだ先の話ですが、幕間の物語でもしかしたら使われるかもしれません……………もしかしたらね。

ちなみに、五月の幕間の話はガチです。林間学校が終了した後の話を投稿する予定です。

本日もこんな駄文を読んでいただきありがとうございました。


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結びの伝説 Day3

すみません、ミスって一回消しちゃったので再投稿しました。


あの後、一花姉さんと三玖と五月に『事故で閉じ込められただけで何もふしだらな事はしてません!』と軽く説明はした……………半信半疑だったが。そして先生にも説明してからの大目玉のコンボを喰らい、散々な目に遭って解放された後、自分の部屋に戻ってすぐ寝た。

 

え?上杉に教える約束?んなもん、頭から抜け落ちたわ(上杉すまん)

 

(……………三玖と五月への詳しい弁明は明日の俺に丸投げしよ……………zzz)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つー訳で翌日。起きて早々若干憂鬱な気分になってしまうのは無理もないだろう。

 

「あーあ…………どうしてこうなった…………」

 

昨日は先生に怒られるし、三玖と五月からの信頼度は絶対下がったし、不幸の2コンボ…………ほんと、マジでどうしてこうなった………………いや、落ち込んでる場合じゃねぇ!!どうにかして信頼回復に努めなければ!!

 

「そうと決まれば行くしかねぇ!!……………って、三玖や五月がどれを選んでるか分からねぇ!!」

 

気合いを入れた矢先に詰む綺麗なオチ……………とか言ってる場合か!!今日は自由選択で『川釣り』、『山登り』、『スキー』の3つに分かれているのだが、一体2人はどれを選ぶのやら………………。着替え終えて頭を悩ませながら取り敢えず自分の部屋を出てロビーに行くと、スキーウェアの四葉と上杉に遭遇。

 

「おはようございます、火野さん!」

 

「…………四葉と上杉はスキーか?」

 

「はい!二乃と三玖もスキーですよ!残念ながら一花は体調を崩して休んでいて、五月はその看病をしていますが」

 

……そーいや、四葉はキャンプファイヤー係でしたねぇ。よし、四葉だけ今度の宿題4倍だな(ゲス顔)

 

閑話休題(それはさておき)

 

取り敢えずスキーを選べば三玖には弁明できそうだな。五月は一花姉さんの看病に付きっきりだろうし、後にしておこう。

 

「俺もスキーにしようかな。滑ったことないけど」

 

「大丈夫です、私が教えますから!」

 

「そりゃありがてぇ。スキーグッズ一式借りてくるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、言うわけで俺もスキーウェアと棒とか板(名前が分からん)をレンタルしてスキー場にやって来ました。一般客もいるから意外と人が多いな。

 

「さぁ、滑り倒しますよー!」

 

「さ、寒っ……………滑れんし、ふつーに寝かして欲しいんだが…………」

 

「……………ははーん。さては、夜中に勉強してたから寝不足って訳か?まったくー!」

 

「もー、林間学校の時くらい勉強の事なんて忘れましょうよ!どうしても滑れない時はご安心を。私が手を引いて滑ります!」

 

「何かやる気出てきたぞー!」

 

上杉のやる気が強制着火させられたが…………二乃と三玖はどこに?四葉に聞いてみると────

 

「二乃はもう滑っていて、三玖は…………あ、来ました!」

 

お、スキーウェア姿の三玖でございますよ。可愛いな、おい。よし、ここは先ずは軽く『そのスキーウェア似合ってるね』って言っておきますか。

 

「……………」

 

「……………」

 

‥……………ダメだ、話そうと思ってはいるんだが何か気まずくて話せん!完全にコミュ障になってるじゃねか!!

 

「さぁ、びしばし教えますよー!」

 

「………おー……………」

 

「(何か急にテンション低くなったな、あいつ……)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

20分後

 

「スキーはかなり上手くなったな‥…大本命の方は全然上手く行かないが」

 

三玖の方は全然話せんかった。こう言う時にガンガン話しかけられる性格なら良かったのになぁ……………30年近く生きててもヘタレ成分は少なからず残るものらしい…………。溜息をついていると、ぎこちない滑りで上杉がやって来る。

 

「どうした火野。いつもよりテンションが低いな。何かあったのか?」

 

「どうもこうも、昨日から散々な目にあってよ。実は昨日」

 

「お、フータロー君にソウゴ君だ」

 

やって来たのは…………フード被ってるし、ゴーグル付けててマスクのせいで声がくぐもってるから分からんが、この呼び方的に………。

 

「……一花姉さん?」

 

「当ったりー」

 

あれ、休んでたんじゃ……?

 

「体調は良くなったのか?」

 

「まだ万全じゃないけど大丈夫。あと、五月ちゃんは顔を合わせづらいから1人で滑ってるってさ」

 

「顔を合わせづらい?火野、五月と喧嘩でもしたのか?」

 

「…………まぁね………」

 

……取り敢えずこのスキー場内にはいるのか。見つけ次第、ちゃんと弁明しなければな。

 

「一花ー!この二人、全然言ったとおりに覚えてくれないー!」

 

四葉さんよ、それが普段我々が思ってることなんだよなぁ…………(しみじみ)

 

「じゃあ、楽しく覚えようよ。そうだなぁ……おいかけっこしよう!四葉が鬼ねー」

 

「はーい!いーち……」

 

そう提案すると一花姉さんは滑って行き、四葉は数を数え始めた。

 

「(……………これ、誘ったりすれば三玖と一緒に滑れるし、弁明するチャンスなんだが……………上手く話せる自信がなぁ………………)」

 

───────何事もチャレンジ精神がインポータント、ってね!

 

「(…………………いや。一花姉さんにそう言った本人がチャレンジ精神を怠ってどうするって話だよな……………よし!覚悟を決めろ、火野 総悟!お前も男ならな!)………三玖、一緒に滑らな…………って、もういねぇ!!つーか、誰もいねぇ!!」

 

折角覚悟を決めたってのに!クソ、このままいても捕まるだけだし、取り合えず俺も滑り出すしかねぇ!!俺も慌てて勢いよく滑り始める。

 

「……………おお!風と一体化したようで気持ちええええええええええええ!!」

 

懸念事項は色々とあるが、純粋に滑りを楽しんでいる俺氏に近づく人物が1人。一瞬、四葉がもう追いついてきたのかと思ったが、その人物は一花姉さんだった。

 

「確認したいんだけど…………昨日の事は誰にも言ってないよね?」

 

昨日の事……………ああ、学校辞めるかもの事か。

 

「言うわけないだろ。つーか、周りにペラペラ話すような案件じゃないでしょうが。完全に取り扱い注意レベルの案件ですやん」

 

「!!それって…………「…………そういやこれってどうやって止まるんだ…………?」……………え」

 

「…………………ちゃんと教えろや四葉ァァァァァァァァァァ!!」

 

「ひ、火野君───────⁉」

 

総悟君、大加速。一花姉さんからどんどん距離が離れていく。『もう誰にも止められない』とはまさにこの事か。そういや、ワン〇ースのイン〇ルダウン編の523話のタイトルも『もう誰にも止められない』だったような────────

 

「……………って、んなことはどうでも良いわ!!」

 

今この状況で世界、いや宇宙一どうでも良い事だわ!!どうやって止まるかを考えねぇと!!それと、ちゃんと教えなかった四葉は宿題8倍だ!!

 

「おいおい、どうすりゃ良いんだ!?このままじゃあの小屋に激突するぞ!…………そうだ!俺が今まで見た漫画やアニメとかにスキー回のとかあった筈!それを参考にすれば……………!」

 

思い出せ、火野 総悟!お前は今まで幾多の漫画・アニメを見てきた!その蓄積されたデータを今こそ解き放ち、魔王にトドメを刺すのだ(?)

 

「………………………………あ、そうだ!銀〇にスキー回あったじゃん!将ちゃん回の!」

 

──────そう、確かあの回も今の俺みたいに止まれなくなっていた。その時に天パ侍が考案したブレーキ方法があった筈だ──────確かその名は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「前(自主規制)ブレーキだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………いや、ダメだ!!そういやあの回はスキーじゃなくてスノボだったから参考にならねぇ!そもそも前(見せられないよ)ブレーキなんてしたら公然わいせつ罪で逮捕されて信頼を取り戻す所じゃないし、事故ったらワンチャン、オ(ピー)とかセ(×××)出来なくなるじゃん!!」

 

放送コードに余裕で引っ掛かりまくる発言をかましているが、もう小屋は目の前に迫ってきていた。

 

「あー、もうアカン!最終手段や!神様ー!止まり方を教えてくれー!!」

 

人頼み、いや神頼み!もうこれしかねぇ!

 

『………ガッ………ザザッ…………』

 

無線の雑音みたいなのが頭の中に聞こえてきた!来てくれたって事で良いんだよな!やっぱ神様は頼りにな

 

『…………おかけになった電話をお呼びしましたが、お出になりません。現在、神様はシン・エ〇ァンゲリオンと銀〇 THE FINALとヴァ〇オレットエヴァー〇ーデンを見に行っていますので、5時間後位にもう一度おかけ下さい』

 

「何か留守電サービスに繋がったんですけどおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?って、ぶつかるぅ!?ンアーッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3分後

 

「ふぅ……………何とか逃げきったかな…………?」

 

三玖はボーゲンのハの字の角度を広げて止まる。こちらはちゃんと止まりかたを教わっていた。上杉と総悟は四葉が教えるのを忘れていた為、犠牲となったのだ(死んでないけど)

 

「……………そう言えば、さっきソウゴがもうスピードで叫びながら抜かして行ったような…………」

 

本人は抜かしている事にすら気付きもしなかったが(つーか、それ所じゃなかった)、三玖は気付いていた。何処かにいるのかなと考えていると、同じくスキーをしていた子供が何人か集まって話しているのに気付いた。

 

「この人、雪の上で寝てるー」

 

「何やってるんだろー?」

 

「変な人ー」

 

三玖も気になって見てみると─────倒れてる人物は知り合いだった。

 

「そ、ソウゴ!?」

 

まさか頭でも打ったんじゃ、と三玖が駆け寄るとソウゴは意識があった。そして無言で指を指す。指した方向を向くと、人がぶつかった跡が刻まれている巨大雪だるまがあった。

 

「『そのときふしぎな事が起こった』って感じで……………まぁ、無我夢中でよく覚えてないが曲がったんでしょうな…………そんで、壁じゃなくて雪だるまにぶつかって事なきを得たって感じ…………」

 

「そ、そうなんだ………災難だったね」

 

「全くだ。四葉め………ちゃんと教えないから………今頃上杉も衝突して雪に埋まってるんじゃね?」

 

書くのがめんどいから省くけどソウゴの予想は大正解である。

 

「ねーねー」

 

「んあ?どうした子供達よ」

 

「お兄さんとお姉さんって恋人?」

 

「ファッ!?」

 

「え!?」

 

予想外の子供の質問に2人は動揺する。

 

「そそそそそそそそそそそ、そんな事ないですよ!!!ねねねねねねぇ、三玖さん!?」

 

「え、あ…………う、うん!こ、恋人とかじゃなくて………と、友達だから!」

 

「あー、やっぱり恋人なんだー!お母さんが、恋人って訊かれて焦りながら友達って答えたら大体カップル成立してるって言ってたー!」

 

「何を余計なことを言ってんだ、お母さん!!つーか、見世物じゃないんだし、さっさと散れい!」

 

「わー、雪だま投げてきたー!」

 

「逃げろー!」

 

「お幸せにー!」

 

「はいはい、どうもー!………じゃねーよ!」

 

走って逃げていく子供達。総悟は肩で息をしていたが、子供の姿が見えなくなるとやれやれ、と言いたげにため息をつく。

 

「ったく、最近の子供ってのは案外侮れねぇと言うかなんと言うか。俺と三玖が恋人とか……………ねぇ?まだ出会って1年すら経ってないのに……………ねぇ?」

 

「う、うん………」

 

三玖の顔は未だに少し紅かった。その顔を見られないように三玖は少し俯く。まぁ、顔が紅かったのは三玖だけではないのだが。

 

「………おっと、あそこにかまくらがあるな。…………ちょっと寄っていかない?四葉から隠れて休むには最適だろ」

 

「………そ、そうだね。隠れるには最適だと思うし………」

 

to be continue……




次もぜってぇ見てくれよな!


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結びの伝説 Day3 その2

明日はワンチャンお休みになるかも知れませんので、ご了承を。


「はえー、すっごい狭い…………けど、意外と暖かいな」

 

「ちょっと意外かも………」

 

取り敢えず俺と三玖はシットダウン。……………ちょっと狭すぎませんかね。けど三玖とほぼ密着状態です、ありがとうございます!

 

……ふー……………よし、チャレンジ精神!

 

「あ、あのさ。昨日の話なんだが……………昨日は軽くしか言えなかったけど、詳しく説明するとですね……………」

 

緊張の余り少し噛みそうにもなりながら、俺は昨日の件についての詳しい経緯を包み隠さず話した。その間、三玖は終始黙って聞いていた。

 

「─────と言う訳でして。要するにだ………………一花姉さんとは何も変な関係とかマジで何もないから!!ふしだらな事とかマジでしてないから!!…………って事です………何か、ほんとごめん。許してください、何でもしますから!もう土下座なら幾らでもするし靴でも何でも舐めま」

 

「い、良いよそんなことしなくて…………閉じ込められたのは事故だったんでしょ?それに、何もなかったならそれで良いし、怒ったりもしてないから…………もうこの話しはこれで終わり。ね?」

 

「………ああ……………三玖様ァ……………!!」

 

若干泣きそうになりながら言う俺が面白かったのか、三玖はクスッと笑う。久しぶりに尊いが突き刺さってきたァ!

 

「よ、良かったぁ……………って、喜ぶのもまだ早かったりするんだよねー…………」

 

「五月の事?私と同じ事を話せば分かってくれるよ」

 

「そうかな…………『問答無用です』とか言ってトゲの付いた鉄球で殺しに掛かってきたりしないかな…………」

 

「それは絶対に無いと言い切れる…………と言うか、本気でそう思ってたの?」

 

「正直に言うとですね。9割そんなことは無いと思ってるけど、1割だけガチであり得そうと思ってる……………大丈夫かなぁ………」

 

「ふふっ。じゃあ、私も一緒に五月に言ってあげる。それなら絶対大丈夫でしょ?」

 

「…………あ、ちょっと待って。三玖の優しさにガチで泣きそう」

 

『それでも男か(呆れ)』、とか『涙腺緩すぎィ!』とか思われるかも知れないけどさぁ!!もう優しさの塊の天使過ぎてヤバイんだよぉ……(小並感)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何とか涙は堪えた俺氏。男の面目は保てたと信じたい。

 

「そーいや、三玖から昨日の肝試しの感想とか聞いてなかったね。どうだったよ、肝試しは?」

 

「一言で言うと…………ソウゴはやり過ぎ。切腹」

 

「あはは……………」

 

そりゃすんません。反省はしているが、後悔はしてない。

 

「しかし……………もう今日で最終日か。早いな」

 

「初日の予定が丸々潰れちゃったからね」

 

「でもまぁ、その初日も濃かったけどね」

 

振り返ってみれば、初日は7人で泊まって階段話(聖〇士星矢)や怪談話をしたり…………2日目はカレー作ったり、肝試しで愉☆悦したり、一花姉さんと閉じ込められるハプニングやらがあったり…………そして最終日はスキーで雪だるまに衝突して、今はこうして三玖と一緒にお喋りしてる。

 

…………うん。初日だけじゃなくてこの3日間が濃すぎるネ!(白目)

 

「いやー、ほんと楽しかっ『キンタロー君、待ってよー!』………今の声って」

 

「………二乃?」

 

さらに───────

 

『あ、上杉さんみーっけ!』

 

四葉の声も聞こえてきた。どうやら挟み撃ちのようだ。

 

「(ここで四葉に捕まったらキンタローが上杉ってバレるな。中に収まると良いが………)悪いけど、さらに狭くなるぞ」

 

「まさか………」

 

そう、そのまさかよ。俺はかまくらから飛び出すと、上杉のスキーウェアを掴んでかまくらに押し込み、入り口をスノーボードの板で隠した。この間、僅か5秒の早業である。我ながらすげー。

 

『あ、二乃見っけ』

 

『って、四葉?!ねぇ、金髪の男の子をみなかった!?』

 

『見てないよ。二乃こそ上杉さんを見なかった?』

 

『あいつなんて見てないわよ。おかしいわね…………まだ近くにいる筈よ。探してくるわ!』

 

『あ、捕まったのに逃げないでよー!』

 

そんな会話と伴に2人が遠ざかって行くのをスノーボードの板の隙間から確認し、一先ずホッとする。

 

「ひ、火野…………それに三玖………助かったぜ。これ、かまくらか?お前ら2人で作ったのか?」

 

「いんや、元々作ってあった」

 

「そうか…………意外に中は暖かいな」

 

「ふ、フータロー………余り動かないで………」

 

あ!上杉の肩に三玖のボール(意味深)が当たってやがる!!……………………今からでも二乃か四葉に付き出して来ようかな。え、裏切り?ナニソレ、オイシイノ?

 

「……………悪い。暑いし少し外の空気を吸ってくるわ」

 

「そうだ、とっとと出てけ。外でネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲でも作っとけ」

 

「何だそりゃ……」

 

てかアーム2回言わなかったか、とぶつぶつ言いながら上杉は出て行った。上杉が出て行ったので俺も元いた位置(三玖の隣)に戻る。

 

「ふー……………にしても、四葉って結構運動出来るん?」

 

「うん。姉妹のなかでは1番出来る。無尽蔵のスタミナ持ち」

 

「わーお。うーむ…………どうやって逃げきろうかね」

 

俺も努力の甲斐あってかなり運動は出来るんだが………………四葉相手だとどうなんだろう?

 

「……………そうだ。四葉にはハンデを貰おうよ」

 

「ハンデ?」

 

「何か荷物を持ってもらって、足の早さを『平等』に!」

 

………ふむ。確かにそちらの方が盛り上がるだろう………………だが。

 

「…………『平等』を全否定するつもりはないけど、俺的には『公平』の方が好みだね」

 

「…………『公平』?」

 

「そう、『公平』。五つ子なんだから、三玖達の身体能力は恐らく一緒だったのだろうよ。なら、四葉のずば抜けた身体能力は恐らく本人が後天的に身に付けたものだろ?遊びまくってたとか、走りまくってたとか………まぁ、色々と全部含めて要は『努力』して」

 

「それは……そうだけど……」

 

「だからまぁ……………四葉に重しのハンデを付けるとその『努力』を否定するような気がしてな。それはちょっとなーって…………無論、全員平等が悪いとは言わない。ただ、時には『公平』だ。皆一緒の『平等』じゃなくて、各々の努力に応じた『公平』にでも行きましょうぜ?」

 

「…………………!!」

 

「つーか、ハンデなんて俺的にはいらないね。身体能力が優れてるなら頭を使って逃げ切ってやろうじゃないの、って考えると俺は超絶燃えるね!」

 

そう言ってニヤッと笑い掛けると、三玖も笑みを浮かべる。

 

「…………ソウゴらしいね。鬼がかった考え、かな?」

 

「!…………だろ?」

 

cv伊〇美来から鬼がかった、と言う言葉を聞けるとはな。中々レアじゃありやせんか?あれ、てか五等分からリ〇ロに変わってないよね?cv.石〇彰のあいつとか出てこないよね?

 

……………なーんて、冗談はさておき。

 

「そろそろ狭い空間にも飽きてきたし、外に出るか」

 

「あ、じゃあ先に外に出てて。私も電話してから行くね」

 

「オッケー。外でネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲を作ってるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

 

「…………ソウゴが言ってたネオアー…………何だっけ?…………まぁ、良いや」

 

ネオなんとかも気になるけど、それよりも先にやることがある。私は電話帳から一花の名前を選択して電話を掛ける。

 

「(『平等』じゃなくて『公平』…………そう言う考え方は思い付かなかった。やっぱり、ソウゴは凄いや)……もしもし?」

 

『どうかしたの、三玖?』

 

「…………一花。話したい事がある」

 

to be continue………




総悟「え、パンドラのcvがくぎみー!?………くぎゅうううううううううううううううう!」

神様「(あ、また釘宮病を発病しやがった。治療法はないし、こいつはもうダメみたいですね)」

いやぁ、危うく作者も発病しかけましたよ、マジで。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


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結びの伝説 Day3 その3

眠いんで今日の前書きはパスで。


三玖が一花に電話を掛ける2時間前、風邪で寝込んでいる一花に五月は付き添っていた。

 

「あーあ、最終日に体調崩すなんてついてないなぁ…………」

 

「不注意が招いた事故です。日中は大人しくして反省していてください」

 

「はぁい…………五月ちゃんは私に付き合ってないでスキーしてきなよ。私も体調が回復したら行くからさ」

 

「ですが…………」

 

「…………ソウゴ君と顔合わせづらい?」

 

「………………………」

 

核心を付かれた五月は黙ってしまう。そんな五月を見ながら一花は話を続ける。

 

「まぁ、あんな事があったら無理もないか。それに五月ちゃん、あの旅館からずっとソウゴ君を警戒してたよね」

 

「………あれは一花でしたか…………まだ出会って3ヶ月しか経っていないのに、こんな事になるとは思いもしませんでした…………」

 

「ソウゴ君が悪い人に見える?」

 

「そう言う訳では…………」

 

「ソウゴ君が変わってる人に見える?」

 

「…………それは見えます」

 

やっぱそうだよねー、と一花は心の中で苦笑しながら呟く。

 

「男女の仲となれば別問題です。私は火野君の事を知らな過ぎる……………………………………………あ、それと上杉君の事も」

 

「(………あれ、もしかしてフータロー君の事忘れてた…………?)」

 

一花にフータロー忘れ去られてた疑惑を掛けられている事を当人はいざ知らず、五月は今は亡き人物(母親)が言っていた台詞を復唱するかのように呟く。

 

「男の人はもっと見極めて選ばないといけません─────」

 

「……………。確かにそうかもね。でも大丈夫だよ、五月ちゃん。あの2人は………お父さんとは違うよ」

 

一花は2人の背中を思い浮かべながらそう断言するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミニ版だが、見ろよ上杉。ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃねぇか。完成度高けーな、オイ」

 

「すぐに壊せ!」

 

え、なんで?

 

「何を不思議そうな顔してんだ!どうみてもアレだろうが!」

 

「アレじゃない。ネオアームストロングサイクロンジェット………って、ああ!」

 

上杉によってネオア(以下略)は破壊された。棒(意味深)と玉(意味深)は雪へと還ってしまったのだ。

 

「あーあ…………そんなにヤバいものに見えるか?言っておくが、宮城県の仙台市の小学生が作ったNSA砲が夕方のゴールデンタイムの時間に放送されていたとある番組の提供バックで紹介されてんだぞ?」

 

「嘘付け!こんな規制や苦情殺到間違いなしの大砲が提供バックで紹介されてたまるか!」

 

いやいや、とある世界線にこんな大砲をゴールデンタイムで流したアニメがあったんだよなぁ。遠くを見ながらそんな事をしみじみと思っていると、かまくらからスマホを持った三玖が出てくる。

 

「電話終わった?」

 

「違う。スピーカー、っと………」

 

『…………ソウゴ君、フータロー君、聞こえる?』

 

この声は一花姉さんか。

 

「おう。今どこにいるの?」

 

『私も滑ってたんだよねー。そしたら少し咳が酷くなっちゃって』

 

「病人は寝てろっての…………」

 

『三玖にも言われたから、もう今から戻る所だよ。………三玖とソウゴ君が一緒にいるなら、ちょっと安心………かな

 

「え、何て?」

 

『何でもないよ。………じゃあ、3人にお願い。1人でいる五月ちゃんを見つけてあげて。ほんとは寂しい筈だから』

 

「りょーかい。心当たりがある」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれれー、おかしいぞー?」

 

「食堂に五月がいないとはな…………」

 

「2人とも失礼………」

 

うーむ。自信あったんだけどなぁ。渾身の予想が外れて少しガックリしつつも外に戻る。

 

「そういや、五月の姿を1度も見てねぇな。三玖と上杉は?」

 

「私も見てない」

 

「…………俺もだ………もしかしたら上級者コースに…………ッ…………」

 

突然上杉がクラっとして壁に手をつく。

 

「フータロー、大丈夫?汗凄いけど………」

 

「………って、お前!凄い熱じゃねぇか!!おでこめっちゃ熱いぞ!?」

 

「…………どうやら、らいはから貰ってたか………」

 

…………思い返せば、寝たいとか言って体調不良のサインを出してたな…………クソッ、気付いてやれれば良かったのに、不覚……………!

 

「すぐに戻って休んだ方が良いよ。五月は私達が」

 

「3人とも見っけ!」

 

背後から三玖に四葉が抱きつき、三玖は顔面から雪にダイブ。そういや、すっかり忘れてたな。

 

「これで後は五月だけです!」

 

四葉も五月を見付けてないのか………。

 

「おーい、こっちこっち!」

 

「まったく、私も人捜ししてるってのに………」

 

四葉に呼ばれて来たのは二乃と一花姉さん。これで五月以外は全員揃ったって訳だ。

 

「つーか、一花姉さんは何故コテージに戻ってないんですかねぇ………」

 

「ごめんごめん、四葉に捕まっちゃって」

 

「ったく……………一花姉さんとフータローはさっさとコテージに戻って休め。上杉、歩けるか?」

 

「………ちょっと待ってくれ……………四葉。五月には逃げ切られたのか?」

 

「いえ、見かけすらもしませんでした」

 

「……………事態は………思ったよりも深刻かもな…………」

 

「…………遭難か?」

 

「ああ…………その可能性がある」

 

上杉の言葉に三玖ら4人も険しい表情を浮かべる。広いゲレンデとは言え、確かにこれだけ動き回って姿すら見ないのは何かあったとしてもおかしくない。俺は懐からゲレンデのマップを取り出して広げる。

 

「五月は他のを選択したとかないの?」

 

「一花、五月はスキーに行くって言ってたんだよね?」

 

「え………うん。もしかしたら上級者コースにいるんじゃないかな?」

 

「そこは私が行ったけどいなかったわ」

 

ふむ。と、なると───────

 

「……………ここはどうだ?」

 

「え、ここって…………先生が整備されてなくて危険だから進入禁止って………」

 

「三玖の言う通り。真面目な五月に限ってその話を聞いてないと言うのは無いとは思いたいが─────ここまで見かけてないと、ここで滑った結果、事故って動けなくなってる可能性もあり得るな」

 

「!………コテージにいないか見てくる」

 

「私は先生に言ってくるよ!」

 

俺も上杉を連れてコテージに行くか、と決めた矢先に一花姉さんがマスクに覆われた口を開く。

 

「ちょっと待って。もう少し捜してみようよ」

 

「なんでよ。場合によってはレスキューも必要になるのよ」

 

「えっと………五月ちゃんもあんまり大事にしたくないんじゃないかな、って」

 

「大事って…………五月の命が掛かってるのよ!」

 

「っ…………ごめんね」

 

マジで五月はどこに行ったんだ………………さっきはああは言ったものの、真面目な五月が話を聞いていないとは考えづらいし、やっぱ何処かで俺は見掛けてたとかあるんじゃねーのか?

 

……………今日の出来事を振り返ってみるか。四葉、上杉と一緒にスキー場に来て、遅れて来た三玖と気まずい空気になって、さらに遅れて来た一花姉さんの提案で鬼ごっこをする事になって、逃げてる最中に一花姉さんから昨日の件について訊かれて、止まり方が分からなくて────待てよ?そう言えばあの時、一花姉さんは俺の名前を─────

 

『ひ、火野君─────⁉』

 

─────あの時はどうやって止まるかしか頭に無くて何とも思っていなかったが、どうやら答えはもうとっくに出ていたようだ。…………やれやれ、名探偵のコ〇ン君なら大分前に気付いてたのかね?

 

「もういいわ、私が先生を呼んでくる」

 

二乃が歩き出そうとするのを、俺は肩を掴んで止める。

 

「ちょっとあんた!まさかあんたも一花みたいな事を言うわけ!?」

 

「まさか。体は子供、頭脳は大人の小学生名探偵に遅れて、五月の居場所が分かっただけさ!」

 

「「「「「!?」」」」」

 

「後は全部俺に任せろ。皆は上杉を運んでやってくれ。さっさと五月を見付けて来るわ」

 

「………………信じて良いのよね?」

 

「とある名探偵の座右の銘を借りて言えば、『僕が良ければ全て良し』ってね」

 

「………………なら、さっさと行ってきなさい。こいつは私達で運んでおくわ」

 

「よろしくな。…………ああ、そうだ。名探偵の助手として一花姉さん。ちょっと一緒に来て手伝ってくれ」

 

「!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

====================

 

「高いのー」

 

「確かにかなりの高さだけど…………もしかして、ここから見つけるの?」

 

「そゆこと」

 

一花と総悟の2人はリフトに乗っていた。

 

「にしても、腹減ったな…………夏ならスキー場の雪にシロップをかけてかき氷で食うのにな。五月も食いそうな希ガス」

 

「…………。いや、流石にそれはないと思うけど………」

 

一花がそうツッコミを入れて前を向くと、前に乗ってるリフトのペアが肩を寄せあってイチャイチャしているのが目に入った。

 

「…………や、やっぱり止めな「あ、いたわ」………ど、どこ?」

 

総悟は下の方を指差す。

 

「ほれ、今真下を通過してるのだよ。絶対そうだろ」

 

「そ、そうかなぁ………」

 

「ほら、よーく見てみ」

 

「うーん………あれは違うような」

 

「ああ、違うね。どう見てもおっさんだし」

 

「…………え?」

 

総悟は一花の頭に手を置くと、髪の毛─────いや、カツラを取る。

 

「かくれんぼは俺の勝ちだな、五月」

 

「………………!!」

 

一花──────いや、五月は何も言わない。しかし、驚いていた。隣にいる男に変装が見抜かれるとは考えてもいなかったからだ。

 

「五月は眼鏡がないと遠くとかよく見えないだろ?」

 

「…………………」

 

「にしても、大事になっちゃったな。後で二乃辺りから怒られるだろうが、それは我慢してクレメンス」

 

「………………怒って、ないんですか」

 

「別にそうでもない。俺は懐の深い男ですからな」

 

「……………1つ、聞かせてください…………いつから気付いていたんですか…………?」

 

「最初から………………なーんて言えたら名探偵っぽくてカッコ良かったんだけどね。気付いたのはつい先程。だが切っ掛けは時を遡ること、俺が止まり方を分からず暴走する少し前─────俺を『火野君』と呼んだ事だ」

 

「!!」

 

「あの時はどうやって止まるかで頭がいっぱいだったから気付かなかったけどな。一花姉さんは『ソウゴ君』って俺を呼ぶ。あと一歩、つめが甘かったな。上杉が俺と同じ立場でも見抜かれてただろうね。いくら他人に関心が薄いあいつでも、それくらいは皆の事を絶対に知ってる」

 

「っ……………すみま、せんでした……………私、どうしても確かめたくて……………」

 

「………………………」

 

「………ひ、火野君?」

 

総悟の雰囲気が変わった事に気付き、五月は声を掛ける

 

「…………確かめる……………ああ、そう言うことね……俺って信用されてなかったのね…………」

 

「ち、違います!そう言う訳では!」

 

ネガティブな雰囲気が流れ出した総悟に五月は慌てて言うが、総悟のネガティブ化は止まらない。

 

「そうだよね、俺ってうるさいドS陰キャだもんね…………それに、昨日の肝試しだって五月を泣かせてるもんね…………女の子を泣かせるような奴を信用できないなのは当たり前だよね…………あはは…………」

 

「(火野君のネガティブ化が止まりません………!)そ、そんな事無いです!火野君の事は信頼してますよ!だって、その………………り、料理が美味しいですし!」

 

「…………そっか……………俺は料理の腕だけしか信頼されてなかったのね…………衝撃の新事実……………」

 

「誰か助けて下さいー!ネガティブ化が止まりませんー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リフトの終点に総悟と五月は到着した。

 

「おー、まだ人がたくさん滑ってるな。この中に強い奴が滑ってると思うとオラ ワクワクすっぞ!」

 

「あれ………全然ネガティブと言うか落ち込んでない…………?」

 

「当たり前だろ。この総悟君が落ち込むのはよっぽどの事態か、アニメとかの趣味が関連しないと無理だな。え?じゃあさっきのは何、だって?……………つい、からかいたくなってな。要は『からかい上手の火野さん』ってね♪…この滑ってる人混みの中にcv.梶〇貴の西片いねーかな(笑)

 

「『からかい上手の火野さん』ってね♪………じゃ、ありません!もう!」

 

「フハハ!人に散々心配を掛けたんだ!ささやかな仕返しだ!」

 

五月は頬を膨らませてからかわれた事に対して不満そうな表情を浮かべ、総悟はささやかな仕返しが出来た事に満足そう。そんな2人に話し掛けてくる影が。

 

「あ!さっき雪で倒れてた人だー!」

 

「ほんとだ~!」

 

「何してるのー?」

 

「げっ、あん時のキッズ達…………」

 

「知り合いですか?」

 

「うん…………まぁ色々と訳あり…………」

 

散々面倒な目に遭わされたキッズとの再会に、総悟はまたもや嫌な予感に襲われる。そして、すぐにその予感は的中した。

 

「あ!さっきのお姉さんと違う女の人を連れてるー!」

 

「あ、ほんとだー!」

 

「てことは……………お兄さん、浮気だー!」

 

「違うわ!!!」

 

お兄さん(総悟)、全力で否定。周りの目もあるので超全力で否定。

 

「いけないんだー!浮気をする男は最低って、お母さん言ってたー!」

 

「うん、まぁそれは確かにお母さんの言う通りなんだけども!でも、別に浮気じゃないから!!そもそも付き合ってないからね!?」

 

「そ、そうです!私は彼と付き合っていません!!」

 

「……………あ!付き合ってないって事は、結婚してるんだー!」

 

「「!?」」

 

逆転の発想とでも言えば良いのだろうか。取り敢えず、予想外の発言に2人は反応できず絶句。

 

「じゃあ、あのさっきの女の人も結婚相手なのかなー?」

 

「結婚相手が2人いるんだー!」

 

「僕知ってるー!お兄さんみたいなのをハーレムとか女たらしクソ野郎って言うんだって、お父さんが言ってたー!」

 

「おのれお父さんッ!余計なことを教えやがって!子供にはまだ早いでしょうが!」

 

「どんな教育をしてるんですか!」

 

総悟と五月で息ピッタリのダブルツッコミを入れる。

 

「息ピッタリだからやっぱり結婚してるんだー!」

 

「ハーレムだー!」

 

「女たらしクソ野郎だー!」

 

「やろぉぉおぶっくらっしゃぁぁぁ!!(野郎オブクラッシャー!!)」

 

「雪だるまを持ち上げてこっちに来たー!」

 

「潰されるぞー!」

 

「逃げろー!」

 

「ひ、火野君!?落ち着いて下さいー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、遊んでくれた(?)と言うことで3人の親と何だかんだで仲良くなって連絡先を交換してから2人はスキーで滑ってコテージに帰ったとさ。おしまい。

 

to be continue………




次回で林間学校編は完結です。長かったような希ガス。
五月の幕間の物語も絶賛執筆中です。お楽しみに。

次もぜってえ見てくれよな。


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結びの伝説 Day3 その4

林間学校編、終了です。


「……………そうですか。上杉君は安静にしているのですね」

 

「……………………」

 

色々とあってあのキッズらの親と仲良くなって連絡先を交換して滑ってコテージに帰ってきた後、上杉の部屋で荷物をまとめていた四葉から俺達がいなかった15分間の話をしてくれた。

 

「………私のせいだ………」

 

「「!」」

 

「具合が悪いのに気付かないで上杉さんを振り回して……林間学校を台無しにしちゃった……………こんなに楽しみにしてたのに…………」

 

四葉が見せてくれたのは付箋でびっしりの上杉の林間学校のしおり。これだけであいつがどれだけ楽しみにしていたのかが一目瞭然で分かった。

 

「四葉だけのせいじゃないだろ。上杉の側にいたのに体調不良に気付いてやれなかった俺にも責任がある」

 

「そ、そんな!火野さんのせいじゃありません!上杉さんに林間学校を楽しんで貰おうとして…………私が余計なことをしたから…………」

 

目に涙を浮かべて今にも消えてしまいそうな声で呟く四葉を見ていると胸が締め付けられる気がした。どうしたものかと考えていると、五月が四葉の持っているしおりを取るとページを捲る。

 

「結局のところ、上杉君がこの林間学校をどう感じてたのかは聞かないと分からないでしょう…………ですが」

 

「「!」」

 

五月はページの間に挟んでいたメモ帳を見せてくる。そこに書いてあったのは『らいはへの土産話』と称した林間学校の感想だった。そこには楽しくなかった等のネガティブな事など何処にもなく、むしろ楽しかったと書いてあるものしかなかった。

 

「『四葉と火野とやった肝試し。火野が愉悦とか言ってる意味が分かった気がする。楽しかった』…………ハハハッ、あいつもドSの要素があるな」

 

「『四葉が教えてくれたスキー。だが、四葉が止まり方を教えそびれてて色々と大変だったが楽しかった』………そう言えば上杉さんに教えてませんでした」

 

ええ、ついでに俺にもな。そーいや、五月を探す時にしおりに何か書いてたのを見たが、あれは四葉が読んだスキーの事についてだったのか。

 

「これ、本当なのかな………?上杉さん、楽しかったのかな……………?」

 

「楽しかったに決まってるだろ。こんなに『楽しかった』って連発してるんだし。四葉は余計なこと、って言ってたけどよ────ここに書いてある通り、あいつにとっては良い思い出になっていた。無駄じゃなかったって訳だな。ま、それでも不安なら今度本人でも訊いてみな」

 

「…………じゃあ、今訊いてきます!」

 

気がはえーな、おい。

 

「いや、上杉の部屋には先生がいるんじゃなかったか?さっき四葉が言ってたような」

 

「こっそり行けば大丈夫ですよ!……………あ、危うく伝え忘れるところでした。火野さんに一花から伝言があります!」

 

一花姉さんから俺への伝言?

 

「『約束(・・)、忘れないでね』だそうです」

 

「…………………ああ、その事(キャンプファイヤーのダンス)ね。ちょっと行ってくるわ。伝えてくれてありがとよ、四葉」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一花は独りでキャンプファイヤーに盛り上がっている生徒らを見つめていた。すると、後ろから『抹茶ソーダ(ホット)』が差し出される。

 

「風邪は水分補給が大事」

 

「そ、ソーダなのにホットなんだ………まぁ、ありがとね三玖……………あと、ごめんね」

 

「?」

 

「ソウゴ君とのダンス、断るべきだった。伝説のこと、三玖の思いにもっと早く気付いてあげられれば良かったのに………(そしてこの気持ちにも…………)」

 

三玖は暫く黙っていたが、やがて無言で一花を抱きしめる。一花が困惑していると三玖は自分の心中を語り始める。

 

「ずっと思ってた。私だけ特別なのはだめ。『平等』じゃないといけないって」

 

「そんなこと…………」

 

「でも、ソウゴに言われて『平等』はやめた」

 

──────『公平』にでも行きましょうぜ?

 

三玖はそう言ってくれた男の顔を思い出して微笑を浮かべながら一花に『宣戦布告』する。

 

「私はソウゴが好き。だから好き勝手にする。でも、一花達もお好きにどうぞ。……………これで『公平』だね」

 

「!」

 

「けど、私は負けるつもりはないから」

 

一花はその言葉を聞くと自然と笑みが浮かんだ。妹の力強い成長を喜ぶかのように。意図してなかったとしても、自分の想いさえも肯定してくれた事を嬉しく思うように。一花はホットな抹茶ソーダを開けて1口飲む。

 

「…………絶妙に不味い………けど、効力は抜群だね。ありがと」

 

「どういたしまして」

 

「……………お、きたきた」

 

「!」

 

「待たせたな(ス〇ーク風)」

 

やって来たのは誰であろう、三玖が好きな人物(ソウゴ)だった。

 

「もー、遅いよソウゴ君。てっきり来ないのかと思ってたよ。でも、これで約束通り三玖(・・)と踊れるね、ソウゴ君?」

 

「………………え!?」

 

「ファッ!?」

 

「ほら、だってダンスの約束は私の格好をした三玖(・・)としたんでしょ?だったら三玖と踊らなきゃ、ね?」

 

そう言うと一花はスッと立ち上がる。

 

「それじゃあ、私はフータロー君の様子を見てくるから後はお2人でごゆっくり~」

 

「ちょ、お姉さん!?」

 

総悟の声をスルーして、一花はコテージに戻って行った──────

 

「(…………上手くやりなよ、三玖)」

 

──────心の中で妹に一言エールを呟いて。

 

彼女が本格的に動き出すのは、まだまだ先のようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===================

取り敢えず、前田氏に見つかると面倒なので三玖を連れてキャンプファイヤー場から少し離れた人目のつかない所へ移動。

 

「(てかさ………一花姉さんに俺が三玖の事を好きなのバレてね?くっつけさせられたよね、これ…………)」

 

さっきの口調的に絶対そうだろ、完全に。三玖LOVEな空気を一花姉さんの前で出した覚えはないのだが──────まぁ、良いや。一花姉さんと踊る筈が三玖と踊る状況にcv花〇香菜によって作られちまったが、ありがとよ姉さん。姉さんが作り出したこの状況を無駄にはしないし、このご恩は一生忘れないぜ。

 

「ふーっ…………………み、三玖さん?」

 

「…………うん」

 

「………俺と…………踊ってくれない………か?」

 

「……………!」

 

「え、えっと………そ、その……………や、約束してたし!?元はと言えば三玖と約束してたし!?俺は一度交わした約束を守る男だし!?あと、ダンスとかやった事ないから踊ってみたいし!?ででで、でも、伝説とか気になってたりするとか、俺と踊るのが嫌なら別に断っても良いからね!?全然落ち込んだりしないからね!?だって俺、結構長生きしてるし!?結構精神的なメンタル強いし!?あ、あとは、えっと、その………」

 

「お、落ち着いてソウゴ…………」

 

「──────はっ!?俺は何を言ってたんだ…………?」

 

好きな子をダンスに誘うとか、前世含めてもやった事がないから緊張し過ぎて、自分でも何を言っていたのか思い出せん……………一花姉さんの時はふつーに『踊らね?』って言えてたのに。一花姉さんが『like』で、三玖が『love』だからなのかなぁ…………?

 

「取り敢えず、深呼吸して」

 

「アッハイ……………スーゥ………ハァー……」

 

深呼吸を5セット繰り返すと、スーパー緊張モードから完全にいつも通りの感じに戻った。

 

「……………よーし、オケオケ。あー……………それで、アンサーを聞かせて貰っても?」

 

「う、うん…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………よ、喜んで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=================

「モキュモキュ…………楽しそうですね~、お2人とも」

 

コテージの屋根の上から、映画館で余ったポップコーンの残りをおつまみにして総悟と三玖が踊るのをGOD様は見ていた。

 

「まぁ、これで三玖ちゃんと結ばれる……………なーんて展開も王道的で良い。けど、僕の見立てでは他の子と結ばれる可能性(・・・・・・・・・・・)が現時点ではまだあるんだよねぇ」

 

神様は残っていたポップコーンを一気に自分の口に流し込んで飲み込むと、ポップコーンの入っていた容器を消滅させて立ち上がる。それと同時にフィナーレのカウントダウンの声が聞こえてくる。

 

「結びの伝説なんて関係ない。恋なんてものは伝説が決めるんじゃなくて、自分の手で切り開かれるものだからね。前世からの推しの三玖と結ばれるのか、それとも心変わりがあって別の子(・・・)に惹かれていくのか──────どちらにせよ、君の恋路のゴールがどうなるのか楽しみだネ!」

 

ニヤリと不敵な笑みを残して神様はその場から消えて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

《ダンス終了後》

 

「あー、楽しかった!何かアレだな。最初の方は『女子と手を繋いでダンスしちゃってるー///』的な感じの事を考えてたけど、慣れりゃ大した事はないな、うん」

 

「うん。私も同じことを思ってた。楽しかったし、また機会があったらやりたい」

 

「そっか」

 

意外と乗り気ですな。あれ、と言うか……………………結びの伝説によるとこれで結ばれる確定…………………?

 

「…………いや、そりゃないか」

 

「え?」

 

「いーや、何でもないよ」

 

ロマンではあるけど、やっぱり改めて考えてみると三玖や上杉も言っていたように非現実的だし、恋ってのは自分の手で切り開いていくもの。三玖と付き合えるかどうかは、今後の俺の行動次第か。伝説を非現実的と言っていた三玖は今回踊ったところで俺に恋心的なのは抱かないだろうし、猛アタックあるのみだな!

 

「……………月が綺麗だね」

 

「え?あ、うん。そうだね」

 

……………残念、知らなかったかぁ。

 

to be continue…………




別に一花は総悟が三玖の事を好きなのを知らないのに、総悟が盛大に勘違いしてます。正確には一花は三玖が総悟の事を好きなことしか知らないんですけどねぇ。まぁ、言い方的にそう思っても仕方あるまい。許してやってくれ。

さぁ、漸く三玖が総悟の事が好きなのを自覚。改めて、互いに互いの事が好きな状態になりましたね。ここからくっつくのにどんくらい時間が掛かるのやら。あらかじめ言っておきますけど、そんなにすぐにはくっつかんですよ。すんませんね。

そして一花姉さん含めた他の4人達との恋の発展はあるのでしょうかねぇ……………?

今回もこんな駄文を読んでいただき、ありがとうございました!

明後日、五月の幕間物語を投稿です。幕間は54321の順で行く予定ですのでお楽しみに。


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第5巻
そうだ、お見舞い行こう


お待たせしやしたー。シン・エヴァ、公開日決まりましたね。夏だと予想してたんで外れて嬉しいですわ。



林間学校も終わり、授業のあるいつもの日常に戻った。上杉は入院する事になってしまったので、その間は俺1人で5人の面倒を見ていた。

 

「いやー、1人減っただけでここまで大変になるとは……………上杉、早く戻って来てくれー」

 

上杉がいなくても授業の質が落ちないようにする為に結構頑張ってるので、俺はお疲れなのだ。

 

「星奈さんに手伝って貰うとかは出来なかったの?」

 

「それがですねー、三玖。星奈さんは今、有給で旅行に行ってて不在なんだよねー……………二乃、今ホッとしただろ?」

 

「………べ、別に何とも思ってないわよ」

 

うん、ホッとしたな(確信)

 

「……………そーいや、明日は俺がいつも買ってる漫画雑誌の発売日か。上杉が入院してる病院の中にコンビニがあったし、そこで買うついでにちょっと顔を見せてくるか」

 

「…………あ、私達も明日フータロー君の入院してる病院に予防接種を打ちに行くから、そのついでに私達もお見舞いに行こうかな」

 

「よ、予防接種!?」

 

「明日なんですか!?」

 

予防接種と聞いて二乃と五月が動揺する。

 

「何だ、2人とも高校生にもなって注射がそんなに怖いんか?痛みは一瞬だろ。今時は小学生でも『注射?なにそれ、おいしいの?』的な感じで怖がらない奴もいるってのに」

 

「だとしても、痛いのは嫌なのよ!」

 

「うぅ…………どうにかして回避する方法はないのでしょうか…………」

 

「(回避する方法なんて)ないです」

 

ちなみに俺は予防接種を受けると、逆に風邪とかインフルに掛かりやすくなる法則があるので打たない男である。この2人と違って断じて別に注射が嫌いとかではない。一緒にすんじゃねぇぞ(辛辣)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の放課後

 

5人と一緒に病院に来た俺は中にあるコンビニで漫画雑誌を買った後、上杉の部屋に早速お邪魔に行くかー、と考えていたら三玖がやって来た。

 

「ソウゴ、二乃と五月を見てない?」

 

「見てないけど…………一緒にいたんじゃないのか?」

 

「…………逃げられた。不覚」

 

「えぇ…………(困惑)」

 

注射が嫌すぎて逃げ出す奴なんて始めて聞いたぜ。2人はほんとに高校2年生なんですかねぇ………?

 

「私は一花と四葉と一緒に探してるから、見つけたら教えてね」

 

「オッケー」

 

見つけ次第、容赦なく通報してやんよー………と、無慈悲に考えていたが、上杉の部屋に着くまでの道程で探してみたが何処にもいなかった。

 

「案外こいつの部屋にいたりしてな………失礼すっぞ、上杉ー」

 

「ん?何だ火野か。見舞いに来てくれ………いや、その雑誌を買いに来たついでか」

 

背中に隠したが時既に遅しだったかぁ。

 

「あっ、そうだ。忘れない内にお前が休んでいる最中の学校のプリントを渡しとくわ。お前と唯一の友達なんだろって事で預けられたからよ」

 

「サンキュ」

 

にしても、学校のティーチャーはよく知ってんな………教師の情報網、恐るべし。

 

「で、調子はどうよ?」

 

「もう少し入院が必要らしい」

 

「そうかー……………あ、そういや1つ聞きたいんだが、ここに「上杉さん!ここに二乃と五月が来ませんでしたか?」……四葉ェ………」

 

四葉に台詞を奪われました。何か屈辱ぅ。その後ろには一花姉さんと三玖もいた。

 

「やっほー。久しぶりだね」

 

「意外と元気そうだね」

 

「一花に三玖も…………ったく、誰が来いって言ったんだっての………」

 

と、言いつつ何処か嬉しそうに見えるのは気のせいですかねー。

 

「む!この部屋から二乃の臭いがします!くんくん………」

 

「あいつ、そんなに体臭キツいのか。かわいそうに」

 

………………おびきだしてみるか。

 

「お前は完全に包囲されているー。大人しく出てきなさーい。いつまでゴリラみたいなおっさんの体臭をこの部屋に撒き散らすつもりだー」

 

「誰がゴリラみたいなおっさんの体臭よ!香水の臭いだっての………あ」

 

自分の失態に気付いた時にはもう時既に遅し。バカめ、スルーすれば良かったものを思わずツッコミを入れに出てきて自爆するとは草が生えるぜッ!

 

「二乃、発見ー!」

 

「し、しまった………!」

 

「ツッコミキャラだからね、反応しちゃうのもしょうがないね」

 

「ツッコミキャラじゃないわよ!」

 

「じゃあ、二乃が見つかったところで私達も行くね」

 

「フータロー、早く元気になると良いね」

 

二乃を連行しながら 、一花姉さん、三玖、四葉は部屋から出ていった。滞在時間は2分。早えーな、おい。

 

「…………ったく、嵐のように来て嵐のように去っていきやがった…………ん?」

 

「どったの?」

 

「いや、何か……………熱がいつの間にか下がったような…………」

 

「俺らがお見舞いに来てくれた嬉しさの余り治ったんじゃね(適当)」

 

「…………さーな。もしくは、今来たお前らに風邪を移したから治っただけだったりしてな」

 

「ハッハッハ!もしそうだったら、ぶっとばすぞ?」

 

「笑いながら物騒な事を言うのはやめろ!入院期間をさらに延長させる気か!…………ちょっと、診て貰いに行ってくるわ。明日で退院出来たりしたら良いんだが」

 

そう言うと上杉は診察室の方へと向かって行った。暇だし診察結果を聞いてから帰るかー、と決めて漫画を読んでいると10分後に何故か看護師に押されて上杉が帰ってきた。

 

「ほら、安静にしておく!そうしないとまた悪化して明日に退院出来なくなるぞ!」

 

「あ、はい…………裏切り者ってどう言うことだ………?」

 

ちょっとそれについてはよく分からんが、まぁ良いや。

 

「それよりも、明日退院だって?」

 

「ああ。これで漸く学校に行ける。…………にしても、まさか予防接種のついでだったとは、あいつら………」

 

「ははは。ま、何はともあれ良かったな」

 

その後、考え事でもしてるのか暫く上杉はベットで目を瞑っていた。明日退院するのが分かったし帰ろっかなー、なんて思ったが漫画があと少しで全部読み終わりそうなので、読み終えてから帰ることに決めた。ラスト1個の漫画を読もうとした時、上杉が口を開いた。

 

「…………にしても、どこかで見覚えがあるんだよな、あの人………」

 

「あの人?」

 

「俺を診てくれた先生の事だ」

 

「へーそーなんだー」

 

「全然興味なさげだな………」

 

「前に俺がアニメの話をした時、お前もこんな感じの対応だったぞ」

 

まぁ、人間ってのは興味ない事に対してはそんなもんだろ。……………よし、読み終わったし帰ろ………って!

 

「……………おい、上杉。左見ろ」

 

「へ?……………あっ!」

 

そこにいたのは五月────別にさほど驚くことではなのだが、何故か上杉は驚いていた。まるで、唐突に初恋の人(・・・・)とか恩師に再会したような反応をしていたように感じたが───────

 

「……………なんだ、五月か。驚かすなよ」

 

「そ、それはこっちの台詞です!そもそも、お2人は何故私に気付かないんですか!」

 

──────気のせいか。

 

「俺は漫画を読んでいたから1ミリも気付かなかったわー。てか、四葉達が捜してたが?」

 

「な、何の事でしょうか…………」

 

おい、しらばっくれんじゃねぇ。

 

「そ、それよりも!今日は上杉君に尋ねたいことがあって来ました」

 

あ、話題を強制的にすり替えやがった。

 

「教えて下さい──────あなたが勉強をする理由を」

 

「勉強は学生の性分だから。終わり」

 

嘘つけ、絶対他に理由があるゾ。それだけの理由だけで、異常に思えるほどあんな熱心に勉強に取り組むとは思えないゾ。

 

「ジーッ─────」

 

五月は上杉をジーッと見つめている。これは─────

 

「あれか?話してくれるまで見つめます作戦的な?」

 

「ええ、その通りです!」

 

「なら、俺はお前が諦めるまで見つめるとしよう!」

 

上杉も対抗してか五月を真っ正面から見つめ合う。はたから見れば仲良しカップルに見えなくもない。と、そこへ看護婦2人が通り掛かる。

 

「熱いね~」

 

「恋人同士なのかな~?」

 

「そうだよ(肯定)」

 

「やっぱり!」

 

「お幸せに~!」

 

「いや、違いますから!」

 

「火野君!」

 

めんご めんご。そして観念したのか、上杉はついに語り始めた。

 

「…………はぁ…………あれは5年前の京都での事だ…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上杉の話を原文のまま話すとこうだ。

 

小学校の修学旅行の自由行動の時、色々とあって独りになって黄昏てたら盗撮犯と間違えられてたところ、色々とあってカメラを渡すのを躊躇してたら知らない女の子が無実を証言してくれた直後、将棋星人が攻めてきて地球は爆発したとかしなかったとか。

 

「……………こうして、俺の修学旅行は終わった」

 

「なんですかそれ!」

 

「所々誤魔化しすぎだろ!色々とあってを2回も使って面白そうな場面を省いてんじゃねーか!」

 

「は、話すと長くなるから省いて良いんだよ(言えねぇ………初恋の同級生を盗撮してたとか絶対に言えねぇ………)」

 

「地球はどうなったんですか!?将棋星人は!?と言うか、その先を知りたいのに!」

 

「いや、何で五月は将棋星人を信じてんだよ…………」

 

ガチで将棋星人が攻めて来てたとしたら、ワンチャンお前らはここにいないぞ。

 

「話すとは一言も言ってねー。つーか、話したくない」

 

「と言いつつ、全部が嘘には聞こえなかったが?」

 

「……………代車のお礼だ」

 

…………なるほどな。

 

「とにかく、今のあなたと昔のあなたが大きく違うことは分かりました。その子との出会いがあなたを変えたんですね」

 

「さぞロマンチックな出会いがあったんですな」

 

「そんなもんじゃねーよ」

 

「……………私も、あなたみたいに変われるでしょうか………もし出来るなら、変わる手助けをして欲しいです」

 

そして、五月は俺の事も見据えながら言った。

 

「あなた達は、私達に必要です」

 

五月からはっきり俺達が必要と言ってくれるとは。最初の頃は絶対に言わなかっただろうに。そう言う意味では、五月はもう変わったな。

 

「…………俺達に教わってどうにかなるのか?平均29.6点」

 

「うっ……………どうにかします!見てください、昔持っていたお守りを引っ張り出してきました!」

 

「まさかの神頼み…………」

 

…………おーい、神様。頼まれてんぞー。何とかしてやればー。

 

『You〇ube見るのに忙しいから自分で何とかしてー』

 

動画見たいから却下らしい。断る理由がしょうもない……………。

 

内心呆れていると、上杉が体を起こして五月の持つお守りを指差す。

 

「…………それって何処で買ったんだ?」

 

「これですか?買ったのか貰ったのかは記憶が曖昧ですが……………京都で5年前に」

 

京都で5年前──────上杉がその子と出会ったのも京都で5年前──────あれ?これって偶然?もしかして?

 

「まさか……実は出会「あ、五月!ここにいたんだー!」……また四葉ェ………」

 

今度は台詞を遮られましたよ…………。ついでに、五月の逃〇中もゲームオーバーのようだ。

 

「五月!どうせ打たれるなら、あんたも道連れにしてやるわ!」

 

「い、嫌ですぅぅぅぅぅぅぅ!」

 

五月、道連れ狙いのハ〇ター(二乃)によって確保。連行されて行った。捕まったので賞金は0円だ(元からないけど)

 

「……5年前…………京都…………偶然だよな………?」

 

「…………さーね」

 

恐らく上杉が5人の誰かと会っていたのは確定だろう。幾多の漫画やラノベ、アニメを見てきた俺の第六感がそう告げている!これは原作でも謎解き要素だったのだろう。

 

「(けど、今までの5人の対応を見る限り京都で出会った子…………略して京都の子は上杉と会ったことを忘れてる…………もしくは忘れたフリをしてるのか?)」

 

忘れたフリをしてるなら、何故そんな事をしてんのって疑問は残るが──────まぁ、いずれ全てが分かる時が来るのだろう。漫画とかで言うなら伏線回収ってやつだ。

 

「……………よし、俺は帰るわ。ああ、それと。もし俺に風邪をうつしてたらぶっ〇す」

 

「さっきよりも過激になってるじゃねぇか!」

 

to be continue………




おまけ

お見舞い4日前

五月「教えて下さい。あなたが勉強する理由を」

総悟「うーん………まぁ、アニメとか漫画ばっかり見てても飽きるから、気分転換にかなー」

五月「……………どうしてでしょうね。不思議とそんな理由な気がしてました……………」

総悟「テヘッ♪」

本日も読んでいただきありがとう!


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火野少年の事件簿

元々、タイトルは『名探偵(?)と5人の容疑者達』ってやつだったんですけど、投稿直前に思い付いたのが上のタイトルです。


退院した翌日から上杉が家庭教師に復帰する事になったので、今は俺と一緒にマンションに向かってるなうである。

 

「いやー、良かった良かった。マジで1人で5人見るのは中々にキツかった…………」

 

原作ではたぶん上杉1人で面倒を見てるんだろうし 、ほんと凄いよな。

 

「俺がいない間、ちゃんと教えてたんだろうな?まさかずっとアニメや漫画を仲良く鑑賞してたとかはないだろうな??」

 

「お前は俺をなんだと思ってるんだ」

 

給料を貰ってる以上、そんな事をする訳がないだろうが!

 

「安心しろ。お前がいない間、この総悟君はめっちゃ頑張ってたんだからな。事件も何もなく家庭教師の使命を全うし…………………いや、強いて言うなら1つ事件があったな。もう解決済みだけど」

 

「事件?」

 

「お前が退院する3日前の出来事なんだが─────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

 

「あー眠い…………久しぶりにとある科学の超〇磁砲を寝落ちするまで見てたから眠くてしょうがねぇ………」

 

玄関で靴を脱ぎながら呟く俺氏。昨日は何時に寝たのかすらもう分からん。ただ、明日は家庭教師の仕事があると言うのに見たのは失敗だったな。まぁ反省はしてるが、後悔はしてない。

 

「ふあぁぁぁ…………やー、諸君。頼りがいのある学園都市第1位の男が来……………ま」

 

「………………!」

 

バスタオル姿のお風呂あがりの誰かに遭遇。ふむ……………これはアレだな。良いものを見させて貰いま

 

「変態!」

 

「ペプシ!?」

 

テレパシーで心の内を読まれたかのように、そう罵られながら持っていた紙袋を投げつけられて顔面直撃。学園都市第1位じゃないので反射しなかったのは言うまでもない。紙袋が顔面に当たって床に落ちると、中から紙が5枚出てくる。

 

「ん?………って!?」

 

紙を見た俺はさっきの誰かがいた方を向くが、もうそこには誰の姿もなし。逃げられた後、と言うやつだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10分後、俺は5人を緊急招集。さっきの事を全部話した。

 

「────と、言うわけだ。この中の誰かが俺の顔面にぶん投げた袋の中に入っていたのは、先日俺が課題で出した、しかもご丁寧に名前の破られた小テストだった。採点してみると5教科全部0点と言うね」

 

バスタオル姿だったのに加え、声も聞き逃してたので誰なのか分からなかったんだよなー。声をちゃんと聞いてれば分かる自信があったんだけどなぁ…………べ、別に良いもの(意味深)を見るのに夢中だったから聞きそびれたとかじゃないからな?(震え声)

 

「さぁ、犯人は素直に自首しなさーい」

 

「「「「「……………」」」」」

 

…………無言。誰も名乗り出ない。

 

「名乗り出ないなら、犯人は四葉って事で、適当に見繕うぞー」

 

「当然のように私が疑われてる!私は全教科0点なんて取ってないですって!適当に見繕わないで下さいー!」

 

本当ですかねぇ……………はっきり言うと、四葉が1番勉強が出来てないので犯人の最有力候補なんだが。

 

「あの時に見分けられてればもう解決だったんだが、出会ってまだそこまで経ってないからか、顔だけじゃまだ見分けられないんだよなぁ…………ユー達はよく判別がつくな」

 

「そりゃそうよ。こんな薄い顔なんて三玖しかいないわ」

 

「こんなうるさい顔は二乃しかいない…………薄いってなに?」

 

「うるさいってどういう事よ!」

 

「ええい、喧嘩はやめい!」

 

にしても、三玖が薄いとは失礼しちゃいますよ。まぁ、二乃がうるさいのは否定しないが(おい)

 

「火野さん、良いことを教えますよ。お母さんが言ってました。『愛』さえあれば自然と分かると!」

 

「『愛』ね…………」

 

俺はまだ『愛』が足りないって事なのかー。なら───────大地よ、海よ。そして生きている全てのみんな………。このオラに、ほんのちょっとずつだけ『愛』を分けてくれ…………!!

 

『元〇玉』ならぬ『愛玉(ラブボール)』──────つまらんジョークはさておき。

 

「あ、そうだ。ほくろで見分けられるよ」

 

おお!三玖さん、そりゃお手軽ですな。

 

「どこにあるんだ?」

 

そう尋ねると、何故か三玖はソファーに寝転がる。

 

「え、えっと…………ソウゴになら見せても………」

 

え。まさか、ほくろがあるのって────?

 

「ダメです!そもそも犯人のほくろを見てないと意味がないでしょう!」

 

「…………確かにぃ」

 

五月が余計なゲフゲフン………正論で止めてくれた。確かに姉妹がいる所では色々と不味いからね、しょうがないね……………………はぁ………。

 

「ソウゴ君、実はね………私たちには隠された6人目の姉妹…………六海はいるんだよ。彼女が犯人かも」

 

「……………へぇー。で、どこにいんの?」

 

「それはこの家の誰も知らない秘密の部屋に!…………そ、ソウゴ君?指を鳴らしながらどこに行こうとしてるのかな……?」

 

「秘密の部屋ってのは壁をぶち抜いた先にあるのが鉄板だからな。今から一花姉さんの部屋の壁をぶち抜いてくるわ」

 

「ま、待って!六海なんていないから私の部屋を穴だらけにしないで!」

 

閑話休題(茶番はさておき)

 

「結局、有力な手掛かりはこの答案か」

 

一花姉さんならもっと雑だろうし、二乃はファイリングしてるらしいから四つ折りにはしないだろうし、三玖よりは字が上手くなくて、四葉より漢字が書けていて、五月なら消ゴムで誤字を消すだろうし…………うーん、一貫性が皆無。あー、もう!

 

「犯人捜しが面倒になったので、元々今日やる予定だった確認テストで犯人を見繕う事にしたっ!内容はこの小テストから全部出てるから、これが解けなかった奴を犯人に認定&罰ゲームとする!」

 

「ば、罰ゲーム!?」

 

「そんな無茶な!」

 

四葉と五月が何か言ってるが、知らん!

 

「ついでに解くのが一番遅かった奴も犯人に認定!はい、スタート!」

 

「わーっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

================

 

「(ふっふっふ…………追い詰められたね、ソウゴ君)」

 

五つ子たちがテストを解いている中、心の中で笑っている人物がいた。その人物────否、犯人は一花。バスタオル姿を見られて袋を顔面に直撃させたのも彼女である。

 

「(あの時はびっくりして追い返しちゃったけど………逆にそれが功を奏したみたいだね。みんなに悪いけど、さっさと終わらせよっかな)」

 

テストを解いている姉妹たちを見ながら、一花は答案を5人の中で1番の速さで埋めていく。

 

「(小テストの時は油断しちゃったけど、私だってやればできるんだから)」

 

そして最後の答えを埋めようとした時、一花は鋭い勘で総悟の意図に気が付いた。

 

「(…………そうか、筆跡!何食わぬ顔で筆跡を比べようとしてるんだ!危ない危ない…………)」

 

一花は消ゴムで消してから筆跡を変えて答案を書き直した。これで完璧、と一花は確信して声を挙げる。

 

「はーい、一番乗り!(あの短時間で髪を乾かせるのは私だけ。服を着る余裕はもう少し欲しかったけど…………君はフータロー君よりはちゃんと女の子を見ているけど、今回は君の敗けだね)」

 

「ふむふむ………」

 

総悟は渡された答案を眺めて頷く。そして次の瞬間、とんでもない速さで自分のリュックの中に手を突っ込み─────

 

ピコッ

 

「犯人見っけ」

 

一花はピコピコハンマーで頭を叩かれていた。

 

「な、なんで…………?筆跡だって変えたのに…………」

 

「こ↑こ↓」

 

総悟が指差したのは数学の問題のb=5と書いてある所だった。

 

「筆記体でbと書く生徒が(一花)いるのはちゃんと知ってましてねぇ……………筆跡を変えたようだが、ここを直さなかったのは爪が甘かったな!」

 

「や、やられた~!」

 

「アーッハッハ!」

 

勝ち誇った総悟はピコピコハンマーで肩を叩きながら高笑いをあげた。

 

「あのー、私達も終わりました」

 

「お疲れさん。一応見ておきましょうねー」

 

総悟は渡された答案を眺める。見ている内に何かに気付いていった総悟の顔がひきつっていく。

 

「…………五月の平仮名の書き方、三玖の『4』…………二乃の門構え…………四葉の送り仮名の間違い…………犯人のと同じですねぇ…………?」

 

先程、犯人は一花と述べたが────正確に言うなら一花は犯人の1人である。即ち

 

「オイィィィィィィ!!1人ずつ0点の犯人じゃねぇか!!」

 

「「「「「……………」」」」」

 

総悟のツッコミに5人は一斉に目を逸らす。

 

「何してんのよ一花、こいつが来る前に隠す約束だったでしょ」

 

「ごめーん」

 

「隠そうとすんな!成敗!」

 

ピコッ、ピコッ、ピコッ、ピコッ、ピコッ!

 

何故か一花もまた叩かれ、残りの4人にも総悟による超高速ピコピコハンマー叩きによる罰ゲームが執行された。ちなみに、三玖だけこっそり他の4人よりは優しくしていた。何らかの補正()が入ったのだろう。

 

「よくも0点のテストを隠したな!怒ったかんな~、許さないかんな~!今日はみっちり復習だかんな~!」

 

「何かキモいわね」

 

「シャラップ!!」

 

ピコッ!!

 

二乃のストレートな───でもまぁ、あながち間違いとは言えない発言が刺さった総悟はさっきより少し強めにピコピコハンマーで頭を叩くのだった。

 

その後、総悟によって全員まとめてみっちりスパルタ指導で復習させられたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==============

 

「────とまぁ、そんな事があった訳よ」

 

「ったく、あいつら………」

 

「ま、みっちり復習したからもう大丈夫だ。と、そんな話をしてる間に到着っと」

 

オートロックで中に入り、エレベーターで最上階まで上がって突撃する。今日もちゃんと全員揃っていた。

 

「喜べ、今日から上杉が復帰だぞー」

 

「上杉さん!もう大丈夫なんですか?」

 

「心配するな、四葉。もう完全に治った。じゃあ授業を始める………………前にだ。お前らに1つ聞きたいことがある」

 

お、何かなーと注目していると、上杉は予想外の質問を繰り出した。

 

「この中で、昔俺に会ったことがあるって人ー?」

 

「「!」」

 

この前の病院での話を知っている俺と五月はその質問の意図がすぐに分かった。さぁ、誰か手を─────

 

…………しーん。

 

──────挙げない。多分いる筈なんだけど。会ったことを忘れてるのか、それとも忘れたフリ(・・)をしてるのか─────。

 

「…………そりゃそうか。そんな都合よく近くにいる筈がない。そもそも、お前らみたいな馬鹿があの子な訳ねーわ」

 

「ば、馬鹿とはなんですか!」

 

辛辣ぅ。五月がそう言うのも分かる。ストレート過ぎるからね、しょうがないね。

 

「間違ってねーだろ。火野から聞いたが、全員テストで0点を取って隠そうとしてたらしいな?」

 

「「「「「……………」」」」」

 

あ、また目を逸らした。俺にとってはデジャブな光景だが。

 

「俺が復活したからにはもう0点なんて取らせねーぞ。次の期末試験に向けて、授業を始めるぞ!」

 

教師2人に生徒5人─────久しぶりにいつもの光景が戻ってきた。うん、やっぱいつもの光景ってのは良いもんだネ!

 

to be continue………




おまけ

総悟「ジッチャンの名に懸けて、美食王に!!!俺はなる!!!!」

神様「色々と混ってんなー」

今日もこんな駄文を読んでいただき、ありがとうございました!

シン・エヴァがもうすぐ公開!やったやったー!


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勤労感謝ツアー 総悟の場合

花粉が……………花粉症が辛い…………。


「明日は勤労感謝の日………星奈さん、喜んでくれると良いけどなー」

 

いつも色々とお世話になっている星奈さん。趣味が読書なので、1週間前に面白そうな小説を調べてポチっとネット注文で買っておいた。既に品物は届いており、後は明日渡すだけ。

 

「明日、星奈さんは10時から上杉の家でらいはちゃんとクレープ作りをするらしいから、その時にサプライズで行って渡『~♪』……おっと、電話が。誰から………だ!?」

 

画面に出てきていたのは三玖の名前だった。ちょっと待って、電話に出る前に深呼吸を2回させて………………………………………………………よし。

 

「………もしもし?三玖、こんな夜にどったの?」

 

何か解けない問題でもあってそれを訊いてきたのかなー、なんて予想していたのだが──────

 

『ソウゴは明日って何か予定入ってる?』

 

「明日は午前中にいつもお世話になってる星奈さんにサプライズでプレゼントを渡す以外は特にないかなー」

 

『……じゃあ………明日、それが終わったら一緒に出掛けない?』

 

フアッ!?マジですか!

 

『明日は勤労感謝の日だから、いつもお世話になってるソウゴに何かお礼が出来ないかと思って……………』

 

ああ、なるほど…………。人からお礼をされるのは普通に嬉しいが、三玖からのお礼となると超スーパーウルトラダイナミックアルティメットメテオスターバースト(以下略)嬉しいッ!!

 

「……じゃあ、明日は何処かに出掛けよっか」

 

『!…い、良いの?』

 

「全然ええでー」

 

寧ろ大歓迎ですッ!!そもそも断る理由もないッ!!

 

「じゃあ、明日は10時半に駅の近くの公園に集合って事で良いか?」

 

『うん、大丈夫。それじゃあ、おやすみ』

 

こうして通話終了。通話が切れた瞬間、俺はベットにダイブして足をバタつかせる。

 

「アカン!!マジか!!明日、三玖とお出掛けやー!!今日寝れるかなー!!ヒャッハー!!ホワチャー!!」

 

以上、くっそうるさい咆哮をあげながら悶えて騒ぐ俺氏でした。ほんと楽しみすぎてよく寝れんかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(さ………誘えちゃった!明日は2人きりでデート………!今日、ちゃんと寝れるかな………?そうだ、寝る前に何処に行くか決めておかないと…………何処が良いんだろう?ソウゴが好きそうな所……………)」

 

後に聞いたのだが、咆哮はあげずともこちら(三玖)も同じくベットで足をバタつかせて悶えていたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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翌日AM10:20

 

「………ふー、着いた着いた」

 

どうやら公園には俺が1番乗りのようだな。三玖は………まだ来てないか。

 

「よし、来るまで昨日買った新刊のラノベを読むとすっかー」

 

それにしても、心地よい風が吹く公園のベンチに座りながら本を読むのも、たまには悪くないだろう。ヒュ~。

 

「さて…………………あれ、出だしの文見覚えあるぞ……………って、このラノベ最新巻じゃない!」

 

………三玖とお出掛けすることに気を取られて珍しいミスをしてしまったらしい。それほどお出掛けが楽しみすぎたのだな、俺は。

 

「やれやれ………しょうがない男だなー、総悟君は」

 

そう言いながらベンチの背もたれに深く寄っ掛かりながら延びをした。その拍子にベンチの足が地面から浮き──────―

 

「アラー!?」

 

どこぞのハンバーガーチェーン店のピエロ道化師のような声をあげながらベンチごと後ろに転倒した。公園にいた子供が笑っているような声が聞こえる気がするが、幻聴ってことにしておくZE☆。

 

「だ、大丈夫……?」

 

俺の顔を覗き込んできたのは俺を笑ってた子供―――――――――――などではなく。まぁ正直言うと子供であって欲しかったのだが、残念ながら覗き込んでいたのは三玖だった。

 

「…………どこから見てた?」

 

「…………叫びながらベンチごと倒れるところから」

 

………うん…………あのー……………俺は三玖に恥ずかしい醜態を見せやすい呪いでも掛けられてんの!?前回は藤〇竜也で、今回は某D社じゃない方のド〇ルド!!どんだけ三玖に恥ずかしい所を見せなきゃならんのだ!!マジで近いうちにお祓い行こうかな!!

 

「ふーっ…………………まーた、みっともない姿を見せちまったがこれは無かったって事でよろぴく………………それで、何処に行く?」

 

「………ソウゴって肩とかこってたり、疲れとか溜まってない?」

 

「んー…………確かに肩こりとか疲れはあるかもねー。まぁ、カテキョが原因と言うより漫画やアニメの見すぎなだけな気がするが………」

 

「(………やっぱり。予約して正解だった)………じゃあ、着いてきて」

 

何処に行くんだろう?肩こりとか疲れとか言ってたが…………温泉とかかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=================

 

「ソウゴ、どう?気持ち良い?………あと、こっちは見ちゃダメだからね(………流石にちょっと………まだ無理………)」

 

「あ゛あ゛………効゛く゛う゛…………」

 

小さなランプの暖かい光が照らす部屋で私達はスパのマッサージを受けていた。ソウゴは初体験らしく中年男性のような声をあげていた。

 

「ああ……最高か………ここが全て遠き理想郷(アヴァロン)だったのかぁ…………グランドなクソ野郎のお兄さんが塔から手を振ってるよう……………」

 

ふふっ。よく分からない言葉が出てきたけど、喜んでくれてるのは伝わってきたので何より。

 

「…………三玖はここの会員だっけ?」

 

「うん。ここのスパはお気に入りなんだ」

 

「良いところを見つけたねぇ………あ゛あ゛……また来たいのう……………」

 

「(中年からさらに老けて、おじいさんみたいな口調になってる………)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、マジで疲れが取れたぁ!危うく途中で幽体離脱するかと思ったぜい!」

 

「良かった、喜んでくれて」

 

「マジでありがと!今ならマッハ20で上海まで行けそう………………お、もうお昼時かー。時間が経つのは早いことで」

 

お昼……………ソウゴはどんなご飯が好きなんだろう?それを尋ねてみると───────

 

「好きなご飯?んー……………正直に言うと、『美味しければ何でも良いネ!』的な感じでして」

 

……………なるほど。その点、五月と似てる気がする。じゃあ、昨日ネットで調べておいた男の子が好きそうなご飯とか、ここら辺のお店の評価を統合して決めた所に予定通り行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やって来たのはラーメン屋さん。私とソウゴは2人席に案内された。

 

「ほおー……………こんな所にラーメン屋さんがあったんだ。全然知らんかった。しかし、人気だねー」

 

「まだ開店してから2週間しか経ってないんだけど、口コミで広まって人気が凄く出たらしいよ」

 

「へー………五月とか開店初日に来てたりして」

 

「あり得そう」

 

そう言って2人で笑い合う。まぁ、後に本当に開店初日に来ていたことが判明するけど、それは別の話。私は醤油ラーメン、ソウゴは味噌ラーメンを注文した。届くまでの間、私達は雑談話に花を咲かせていた。

 

「もうすぐ11月が、と言うか今年が終わるねー」

 

「うん。今年は色々とあった」

 

学校を転校したり、ソウゴが家庭教師になったり…………あ、フータローもだった。林間学校も楽しかったな。楽しい思い出を沢山作れたし。

 

「あと1ヶ月でクリスマスか………クリスマス=性なる夜(ボソッ

 

「え?何か言った?」

 

「………何でもないですぞー (リア充爆破しろ!………なーんて、言えるのも今の内だったりして。三玖と付き合いだしたら言われる側になるもんなー……)」

 

何か言ってたような気がしたんだけど…………気のせい?

 

「クリスマスと言えば…………去年は南の島で弾丸冬忘れツアーだった」

 

「クリスマス感を微塵も感じないな………」

 

「一昨年は北の島で超ホワイトクリスマス」

 

「修行にでも行ったんか………」

 

「……………でも、場所とかはそこまで重要じゃない。お母さんが言ってた。『大切なのはどこにいるかじゃなく、5人でいること』って」

 

「5人でいること、か。良いこと言うじゃん、お母さん」

 

そこへ注文したラーメンが来たので、いただきますと手を合わせて私とソウゴも食べ始める。ラーメンはそこまで頻繁に食べないし、大好物と言うわけでもないけど、とても美味しかった。………ソウゴと一緒だからかな?

 

「うまい!うまい!うまい!うまい!うまい!うまい!うまい!うまい!うまい!うまい!うまい!うまい!…………ちなみに、今俺は12回言いました」

 

「そ、そうなんだ………」

 

ちゃんと数えてるんだ…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、美味しかった。替え玉を3つも頼んじゃったし、満足満足。でも、奢られちゃったけど良いの?流石に昼飯代位は全然払うけど…………?」

 

「今日は私の奢り。いつものお礼だからソウゴは奢られて良いの」

 

「……じゃあ、お言葉に甘えてごちになりまする!」

 

正直、私にとってはそこまでの出費じゃない。スパに昼飯の出費があったけど、財布の中はまだ全然潤ってる。よし、次のプランは───

 

「ソウゴは映画とか見に行く?」

 

「映画?まぁ、よく見に行くねー(主にアニメ映画をだけど)」

 

「じゃあ、これ見に行かない?一花が出てるんだって」

 

2週間前、一花から私達4人に映画の前売り券のチケットをくれた。『私も出てるし、絶対面白いから見に行ってみて!』って言ってたから少し気になってたし、そして映画デートも出来るから一石二鳥と思ってプランに組み込んでいた。

 

「へー、一花姉さんがか!そりゃ気になるね。名も無きモブなのかな?それとも物語の鍵を握る重要キャラ?」

 

「それは聞いてないから分からないけど…………どうなんだろう?」

 

一花も駆け出しとは言え、演技もかなり上手いし…………実力が認められてかなりの大役を任されてる可能性もあるかも?とにかく、見に行ってみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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100分後

 

映画の上映が終わり、シアターに電気がつく。隣を見ると、三玖はハンカチを手に持っていた。少し泣けたのかな?

 

「どうだった、三玖?」

 

「ラスト15分の展開はとても感動して泣けて良かった。……………けど」

 

「…………一花姉さんは序盤であっさり死んだな。ゾンビになって仲間に撃たれ、そのまま瀬戸内海に落ちて退場。モブだったかぁ…………」

 

しかしこの映画─────内容は良かったけど、バ〇オハザードの臭いがプンプンしたぜ。俺の前世でこの映画をやったら、バ〇オハザードの劣化版とか叩かれてネットで炎上しそう(小並感)

 

「ソウゴは映画の本編では全然泣かなかったね。泣いてたの…………本編前のアニメ映画の予告でだったね」

 

「いやぁ、遂に完結かと思うとつい感極まってな………あんなヘタレだった主人公が立派に主人公やってたからよ…………」

 

本編ではなく本編上映前の予告で泣く男、総悟です。本編も後もう一押しで泣けたかもしれないんだけどなー。

 

「それと…………休日なのに、見に来てる人が俺と三玖しかいなかったね…………」

 

まぁ、それはそれで三玖と2人きりだし良かったんだけどネ!

 

「………言われてみれば確かに………今日、公開初日だからもっといると思ってたけど(…………まぁ、ソウゴと2人きりだったし良いけど………)」

 

……………他の映画館も調べてみたけど、結構がら空きですやん!一花姉さんが出てるんだし、もっとヒットして欲しいんだけどなぁ。新〇誠監督の『君〇名は』とか『天〇の子』位ヒットしないかなー。ワンチャン、口コミで大ヒットし……………いや、普通に考えてこの映画があの2つの作品レベルの大ヒットは絶対無理だと断言できるわ(無慈悲)

 

心のなかでそう結論付けていると、いつの間にか映画館の外に出ていた。もう夕方の4時か……………。

 

「三玖は時間とか大丈夫なの?もう夕方だけど」

 

「7時までに帰れば大丈夫。ソウゴは?家の用事とかがあるなら今日は解散にするけど………?」

 

「予定とか何もないから全然大丈夫」

 

「!……………そうだ。折角だし、ソウゴは何処か行きたいとかある?」

 

「俺が行きたいところ?」

 

「うん」

 

そーねぇ…………。

 

「あー…………電車で30分位の所なんだけど良いか?」

 

そう確認すると三玖はコクッと頷くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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電車+徒歩で移動すること30分。ソウゴが行きたい場所に到着した。

 

「ここは…………?」

 

「セントラルパークの広場」

 

「何でここを?……………ああ、もしかして聖地巡礼って言われてるやつ?」

 

「三玖のように勘の鋭い女は嫌いじゃないネ!」

 

思い付きで言ったら当たっちゃった。それからソウゴは色んな場所で写真をパシャパシャ撮っていた。何のアニメの聖地かは分からないけど、相当思い入れがあるのか時折懐かしむように風景を見つめていた。

 

「………なぁ、三玖。 良かったら一緒に写真撮らんか?」

 

「え?」

 

「ここだと名古屋テレビ塔をバックにいい写真が撮れそうだし……………ど、どうですかね?い、嫌なら別に全然断ってくれても」

 

「と、撮るっ!」

 

この後、沢山連写した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

折角だし名古屋テレビ塔から夜景でも見ようと言うことでお金を払って入場。スカイバルコニーでソウゴと夜景を眺めていた。

 

「ソウゴも知ってると思うけど、愛知県で有名な戦国武将に織田信長がいるでしょ?」

 

「ああ、ノッブね」

 

「の、ノッブ………?まるで信長と友達みたいな言い方だね……………えっと、何だっけ…………あ、思い出した。もし信長がこの夜景を見たら何て言うんだろうね」

 

「うーん…………『こんなキラキラしている町を見下ろしてたら敦盛したくなるのも是非もないよネ!』とか?」

 

「…………口調以外はあり得るかもね」

 

「いや、もしかしたら何処かの世界線にロリボディでそんな口調の女信長がいるかもしれないぞー?」

 

「とんでもない世界線………」

 

そんな信長がいたら色んな意味で凄い。

 

「……………そーいや、信長の残した名言にこんな言葉がある。『絶対は絶対にない』ってね。信長は無謀や不可能な事柄に対しても、最初から諦めたり、無駄だと考えたりはしなかったらしい」

 

「…………初耳。知らなかった。何だか悔しい」

 

「あはは…………信長が言いたいのは、『最初から無理や不可能は事は存在しない。存在してると思ってしまうのは自分が勝手に一線を引いているからで、諦めなければ道は開けるだろう』的な感じ?まぁ、あくまで総悟君の解釈だけどさ」

 

「………………」

 

………思い返せば、『私なんかじゃ勉強なんて無理だ』って私は勉強に対して一線を引いていたのかもしれない───────ソウゴに出会うまでは。

 

『1人が出来ることは全員出来る───── 一花も、二乃も、四葉も、五月も…………そして勿論三玖も!皆には100点の潜在能力があるって事だ』

 

そう言ってくれた(ソウゴ)がいたから、私は勉強を無理や不可能って一線を引いて諦めるのではなく、私にも出来るんじゃないかって諦めずに今も頑張れてるのかもしれない。

 

「さて、そろそろ時間も時間だし帰るとするか…………三玖、今日は楽しい時間をほんとありがとな」

 

「どういたしまして。私の方こそソウゴと出掛けられて凄く楽しかった。こちらこそありがとう」

 

───また一緒にどこか行こうね、私の初恋の人(ソウゴ)

 

to be continue………




はい、と言うわけで勤労感謝ツアー 総悟編でした。わざわざ総悟編って表記すると言うことは、勿論風太郎の場合もあります。お楽しみに。

ネタバレすると、原作とは殆ど展開が異なりますッ!

今日も読んでいただき誠に感謝!


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勤労感謝ツアー 風太郎の場合

今日は………………特にないんで前書きはパスよー。


AM10:10

 

「ふふふ、今日は休日!勉強せずして何をすると言うのだ!」

 

そう呟くのはキング・オブ・ガリ勉の上杉しかいない。

 

「もー、お兄ちゃんたら。折角の勤労感謝の日なのに、勿体ないよ。あ、クレープの試作品第1号が出来たけど食べる?」

 

「おお、サンキュ。………うん、うまいな!」

 

まぁ、この男は貧乏舌なので『うまいな!』の言葉がいまいち信用性に欠けるのだがそれはさておき。

 

「…………そうだ、らいは。いつも働いてくれてるお前に贈り物を作ったんだ。ミサンガのお礼も兼ねてな」

 

「プレゼント!?なになに?」

 

「自作ですと、マフラーとかでしょうか?」

 

「いや、俺にそこまでの裁縫能力はないですから……………これだ!『ガチで見やすいテスト対策問題集!』」

 

「いらない」

 

「ほあーっ!?」

 

差し出して1.4秒で受け取り拒否。流石の上杉も若干落ち込む。

 

「別に私は働いてるつもりはないからいいけど、それよりも四葉さんにお礼をしてきなよ」

 

「四葉?何でだ?」

 

解せぬとでも言いたげな表情の兄に妹は長いため息をついてから喋り出す。

 

「お土産話によれば、林間学校は四葉さんにスキーを教えて貰ったりとか色々とお世話になったんでしょ?」

 

「………た、確かに………肝試しも担当じゃないのに手伝ってくれたしな…………」

 

「だったら、お礼の1つもあってもいいんじゃない?」

 

「し、しかし……」

 

「まぁ、お兄ちゃんに四葉さんへの感謝の気持ちがないなら良いけどね」

 

良心に刺さる言葉がトドメとなり、上杉は財布を持ってきて中身を確認する。

 

「財布の中は1652円…………これであいつが喜びそうな贈り物か……………」

 

何を送るのが良いのか上杉が考え込んでいると、突然家のチャイムが鳴る。らいはが玄関をあけると、そこにいたのは────

 

「やっはろー」

 

「あ、火野さんだー!お兄ちゃんに用事ですか?」

 

「兄貴じゃなくて星奈さんに用事があってな。あがらせて貰っても良いか?」

 

らいはは勿論快諾し、総悟は上杉宅にお邪魔する。

 

「総悟様、どうかされたのですか?私に用事と聞こえましたが……………?」

 

「えー………星奈さんにはいつも色々とお世話になっているので、その感謝の意を込めてこれをどうぞ、と思いまして」

 

「!………これは私のお気に入り作家の新作ですね。とても嬉しいです。ありがとうございます、総悟様」

 

「いえいえ、こちらこそいつもありがとうございます。………良かったー、喜んでくれて。上杉は日頃お世話になってるらいはちゃんに何か渡したか?」

 

「…………これだ。即座に返品されたが」

 

「………そりゃそうだわな。誰が感謝の印にこれを渡されて喜ぶんや」

 

「うっ………そ、そうだ。火野、四葉が喜びそうなものを知らないか?」

 

これ以上、傷に塩を塗り込まれるのはごめんな上杉は話題転換も兼ねて総悟にそう尋ねる。

 

「四葉?何で急にそんなことを?」

 

「………実は─────」

 

上杉は包み隠さず全てを話す。

 

「なーるほど………そう言えばお前が入院してる最中にだな………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

================

それは家庭教師がお休みの日。5人用の課題プリントを作成し終わり、気分転換がてら総悟は最寄りのデパートに出掛けていた。

 

「秋と言えば食欲の秋…………秋が旬の食材が色々と揃ってんなー」

 

何気なく食品売場をぶらつく総悟。果物のコーナーを通り掛かると、袋詰めされているある果物が総悟の視界に映った。

 

「お、みかんだ。ラスト1袋か。旬は冬だからこいつは早生か。12個入りで600円…………美味しそうだし買うかー」

 

総悟が買おうとみかんの袋を掴んだ瞬間、同じタイミングで横から袋を掴む手が。その手の人物は──────

 

「火野さん……?」

 

「四葉……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=================

 

「そん時に四葉がみかん好きって聞いたんだよねー。見た目的にみかんに親近感があるらしいぞ。ちなみに、この後お金を半分ずつ出しあって買って、互いに6個ずつ持ち帰った」

 

「なるほど、みかんか………よし、安いのを買ってくる」

 

「おっ、待てい(江戸っ子)」

 

財布を持って出て行こうとする上杉の服の首もとを掴んで止める。

 

「何だよ火野。言っておくが、俺の財力的にそんなに高いのは」

 

「まぁ、話を聞け。そんなに金も掛からず、ただ買うよりももっと良い案がある。えーっと、確か…………あった」

 

総悟はスマホに表示されているとあるHPを表示

する。上杉だけでなく、らいはと星奈もその画面を見る。

 

「………これは………」

 

「これ良いと思うよお兄ちゃん!絶対楽しいし、四葉さんも喜ぶよ!」

 

「ただみかんを買うよりも、下手すればこちらの方が金銭的にお得だと思いますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

20分後

 

「え………?みかん狩りに行かないか、ですか…………?」

 

目をぱちくりさせながら、四葉は上杉の口から飛びだした提案を動揺しながら復唱した。

 

「や、やっぱり風邪が治ってないんじゃ…………」

 

「治ってるわ!……………今日は勤労感謝の日だろ?四葉には林間学校で肝試しの手伝いをして貰ったからそのお礼に、と思っただけだ」

 

………手伝って貰ったんだからお礼をするのが当たり前だろ的な感じで言っているが、実際は妹に言われて動き出しただけである。

 

「それで、行くのか?行かないのか?行かないなら俺は帰って勉強するが(……帰ったら帰ったでらいはに色々と小言を言われるんだろうが………)」

 

「わー、行きます行きます!今から身支度してきます!」

 

「駅から出てる無料のシャトルバスが30分後に発車らしいから、さっさと済ませてこい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四葉の身支度が終わり、2人は駅から出ている無料のシャトルバスに揺られること30分。目的地に到着した。

 

「想像してたよりもでかい果樹園だな…………もっと小さいのかと思ってたが」

 

「上杉さん、ぼーっとしてないで早くみかん狩りしましょうよ!みかんが私を呼んでいます!」

 

「分かったから引っ張るなっての!」

 

上杉は四葉と自分の分の計800円を支払って入園。これで園内のみかんは食べ放題である。さらに貰ったビニール袋に入る分は持って帰っても良いらしい。

 

「(やれやれ………折角天気も良くて、しかも休日で勉強し放題だってのに…………)」

 

「さぁ、上杉さん!今日はみかんを沢山収穫し、食べまくって元を取りますよ!」

 

そう言いながら笑みを浮かべる四葉。上杉は一瞬その笑顔が京都で出会ったあの子に重なって見えた─────ような気がした。

 

「(………未練がましいぞ、俺…………いい加減折り合いをつけろってんだ。京都で出会った子はあいつらの中には………………。折角勉強日和の休日だが、あいつが楽しそうな事に免じて良しとするか)」

 

そう結論付けて上杉は借りたハサミで茎を切って収穫したみかんの皮を剥いて、口に入れる。

 

「どうですか、上杉さん?自分で収穫したみかんのお味は」

 

「甘くてふつーに美味いな」

 

「どれどれ…………うーん、少し酸っぱくないですか?私のと比べてみて下さい!」

 

「モグモグ…………そんなに変わるか?」

 

「……そう言えば上杉さんは味音痴でしたね…………折角ですし、私が美味しいみかんの見分ける4つのポイントを教えて差し上げましょう!題して『四葉の美味しいみかんの見分け方講座』です!」

 

と、言う訳で突然四葉によるみかん講義が開始された。

 

「1つ目のポイントは色ですね。色がオレンジのものは完熟していますが、黄色とか黄緑のはまだ熟しておらず酸っぱい可能性がありますのでスルーしましょう!」

 

「…………じゃあ、こいつはスルーか」

 

「そうですね、このみかんはまだ収穫には早いでしょう。さて、2つ目のポイントは形です。品種によっては異なりますが、基本的にみかんは横から見て平らなのが美味しいらしいですよ!理由は知りませんが」

 

「知らないのかよ」

 

「3つ目のポイントはみかんの皮の表面のぶつぶつです!このぶつぶつが小さい方が美味しいそうです!何でかは知りませんが」

 

「そうだと思った」

 

「4つ目のポイントは軸の細さです。この軸が細ければ細いほど甘くて美味しいそうですよ!逆に太いと甘さが下がるそうです。何ででしょうね?」

 

「……………俺も知らないが、たぶん太いと水分が多く送られるから甘さが薄まって、細いと逆に甘さが濃くなるんじゃないのか?」

 

「そうなんですか?流石は上杉さんです!」

 

ちなみに、上杉はこれまで勉強した知識を元に何となくの予想で言っているが何気に正解だったりする。

 

と、言う訳で上杉は四葉から習った4つのポイントを元に収穫したみかんを食べてみると─────。

 

「…………確かにさっきのよりも甘い気がするな」

 

「ししし!講座の効果は絶大ですね!誉めてくれても良いんですよ?」

 

そう言って四葉は嬉しそうに笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、2人はみかんを堪能しつつ持って帰る分のみかんも収穫していた。

 

「ふぅ…………かなり収穫したが、50個以上は取ったか?らいはと親父が食い過ぎに注意すれば2、3週間は持つな。……しかし…………重い…………」

 

上杉の袋の重量は約5kg。物で例えるならスイカ1個分の重さである。収穫中は地面に置いていたが、いざ持つとなると運動不足で筋力のない上杉にとってはかなり肉体的にキツい。

 

「お待たせしました、上杉さん。ついつい選ぶのに時間が掛かってしまってすみません」

 

四葉も上杉と同じ位パンパンにつまっていて、重量もさして変わらないのだが余裕そうに片手で袋を持っていた。

 

「上杉さん、腕がプルプル震えてますけど大丈夫ですか?私が代わりに持ちますよ?」

 

「………だ、大丈夫だ………これ位何とも………」

 

男の意地故か、上杉は両手で袋を持って足を踏み出す。だが、意地だけではどうにもならず数歩ですぐに袋を下ろしてしまう。

 

「えっと……やっぱり持ちますね」

 

「………お願いします……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

停留場に着くがそこにバスの姿はなく、時刻表を見ると次のバスは30分後だった。すると、果樹園のスタッフが『みかんは預かってるからバスの時間まで近くをぶらりとしてな』と心遣いを貰ったので、上杉と四葉は果樹園の近くをぶらりと歩いていた。

 

「いやー、それにしても自然豊かだからか空気が美味しいですね!」

 

「確かに、こんな環境で勉強したらはかどりそうだな」

 

「何でも勉強に繋げるあたり、上杉さんらしいですね……………あ、小さいですけど公園がありますね。ブランコもありますし、少し乗って行きませんか?」

 

「ブランコなんて久々に見たな………まぁ、良いか。暇潰しにもなるだろう」

 

上杉はブランコを立ち漕ぎをしながら四葉の方を向く。

 

「(何か……良い庶民感だな) 久々だけど結構行けるな。凄いだろ、四葉!」

 

「もー、子供みたいに。私がお手本を見せてあげましょう!」

 

四葉も立ち漕ぎを始める。上杉と同じかそれ以上のスピードてブランコを揺らし、そして勢いよくブランコからジャンプして着地する。

 

「あまり広くないので本気では飛べませんが、こんな感じですかね。たまに行く公園のブランコなら本気で行けるのですが」

 

「たまに行く公園?」

 

「落ち込んだりした時はそこの公園に来てブランコでギコギコしたりしてるんです。勢いよく漕ぐと心暖かくなるほっこりした景色が見れるんですよ。……さぁ、上杉さんはここまでジャンプして来れますか?」

 

「………フッ、俺を舐めて貰っては困る。うおぉぉぉ!」

 

さらに勢いよく漕ぎ始める上杉。そして次の瞬間、四葉の側に着地する音がして、四葉が顔を向けると─────

 

「え」

 

─────靴のみがそこにはあった。当の上杉は勢いをつけすぎたのかブランコのてっぺんを通って1週。その後、激しく揺れる。四葉は上杉のブランコの勢いが落ち着くまで言葉が出なかった。

 

「…………ハッ!う、上杉さん大丈夫ですか…?」

 

「……ハッ、ハハハハハ!何が起きたんだよ!ハハハハハ!」

 

無邪気な子供のような笑みを浮かべる上杉。それは今日見せた中でも、100点満点の笑顔だった。

 

「────そう言えば、まだお礼を言ってませんでしたね。上杉さん、今日は楽しい思い出をありがとうございました」

 

「お、おう……みかん狩りを楽しんでくれたなら俺としても来た甲斐があったってもんだ」

 

「みかん狩りも勿論そうですが………今も思い出(上杉さんの笑顔)を貰いました」

 

「?そう、なのか…………?」

 

上杉はいまいち分かっていなそうだったが、気にせずに微笑を浮かべながら四葉は雲のない青い空を見上げる。

 

「またみかん狩りに来ましょうね。今度は皆も一緒に!」

 

「……………ま、それも悪くないな。だが、五月と火野が来たら園内のみかんが全部食べ尽くされそうだな。火野の奴も意外と食うし」

 

「……ぷっ。あははは!」

 

2人によってみかんが食べ尽くされる光景を想像した四葉は吹き出して笑う。四葉の顔に浮かぶ笑顔は先程上杉が見せたものと同じように100点満点の笑顔だった。

 

to be continue………




この話を書こうと思った切っ掛けは作者も四葉と同じくみかん好きだってのも理由の1つにあります。ちなみに、みかん狩りには行ったことないので色々と調べたりしました。意外と大変だった………。

本日もこんな駄文を読んでいただき、ありがとうございました。


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リビングルームの告白

7つのさよならまであと少しやな……………そしてアニメ二期も終盤。まぁ…………SW編は原作でも色々と荒れてましたね。内容が内容なだけにしょうがないけどさ。まぁ、残りも楽しみにしてます。


明日から期末試験のテスト週間。二乃から貰ったチャンスを無駄にしない為にも、俺も頑張らなければ。無論、本人たちが1番頑張らなければならないのだが───────

 

「と、と言う訳でして…………」

 

「……………………」

 

「あ、あのー…………怒ってますか?」

 

「顔見れば1発で分かるやろ?」

 

「で、ですね………」

 

次の瞬間、 俺は四葉のリボンを掴んでブンブン揺らす。

 

「四葉ァァァァ!!なぁぜ断らんのだァァァァ!!お前は部活よりも勉強優先だろうがァァァァ!!」

 

「す、すみませんー!」

 

何故か四葉がジャージ姿でどこかに行こうとしてたので問い詰めると、陸上部で近い内に駅伝があるらしいが突如として欠員が発生した為に、バスケ部での活躍を聞き付けてか四葉に白羽の矢が立ったらしい。それで今日は練習だとか。

 

「あのねのね!四葉は部活やってる場合じゃないでしょうが!自覚あるだろうけど、四葉が1番勉強出来ないんだからな!」

 

「わ、私も勉強を理由に何度も断ったのですが…………『あと1人いないと駅伝に出られないからお願い!』って何度も必死に頼まれて…………」

 

「それで折れた訳か…………」

 

「で、でも明日からはテスト週間ですよね?駅伝はテストの後ですから、今日の練習が終われば部活動もテストが終わるまで休みになると思いますので………」

 

………ほんとかぁ?『駅伝あるからテスト週間でもやるよ、てへぺろ☆』的な事とか普通にあり得そうなんだが。

 

「…………まぁ良い。だが、もしテスト週間中に練習するような事になったら『どうしても外せない用事があるのですみません!自主練しておきます!』とでも言うんだぞ!絶対だかんな!返事は!!」

 

「は、はい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………つー訳で、四葉はお休みなんだが…………二乃と五月は?」

 

「……………映画を見に行くらしい」

 

「「………はぁ」」

 

────上杉とため息のシンクロ率が400%(完璧)を超えています!

 

そんなフレーズが唐突に浮かんだ。しかも、あんまり面白くない。くそつまんねー。

 

「ソウゴ、フータロー、元気だして」

 

「まぁまぁ2人とも。ため息ついてると幸せが逃げちゃうよ?」

 

「確かにぃ……それはよろしくないな………」

 

「………それもそうか。はぁ、仕方な………って、ため息ついちまった。いかんいかん………仕方ない、今日は一花と三玖の2人だけでやるか」

 

「あ、私は用事があるから帰るね。事務所の社長の娘さんの面倒を見なきゃいけないから」

 

俺を何かヤバそうな目つきで見てきた社長に子供?……うーむ、何か想像できないな。結婚してそうな雰囲気では無かった気がするけど。

 

「おい待て。勉強をサボりたいが為に適当な事を言ってるんじゃないのか?あの髭のおっさんに娘がいるとか想像出来ないぞ!」

 

「ほ、ほんとだってばー!」

 

上杉も同じことを思ったのか、去ろうとする一花を止めて問い詰める。

 

「そんな娘がいるんなら連れてきてみやがれ!」

 

と、上杉が言うので──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「菊ちゃん、おとなしくしてて偉い」

 

「マジで連れてきやがった………」

 

「たまげたなぁ」

 

────一花姉さんがガチで連れて来ました。

 

「だからそう言ってたじゃん…………急な出張が入った社長の代わりに面倒を見ることになったんだ」

 

「へー…………じゃあ、俺は菊ちゃんにお勧めの漫画とかラノベを布教してくるわ」

 

「布教してないで家庭教師の仕事をしろ!」

 

……………ちぇ。つーか、よーく考えたらまだ漢字とか読めないだろうから無理があるな。

 

「ったく…………子供は静かに遊ばせておいて今は勉強す」

 

「おい。アタシの遊び相手になれ」

 

何か…………上から目線やな。まぁ、子供だし大目に見よう。

 

「お遊びって何をするんだ?」

 

「最近のトレンドはおままごとだ。お前はアタシのパパ役。そこのアホ毛のお前はパパの部下」

 

「ほーう…………つまり俺は上杉を顎で使えるわけですなぁ…………」

 

「嫌な上司の予感しかしねぇ…………」

 

「あ、じゃあ私はママ役をやる!」

 

「うちにママはいない。ママは浮気相手と家を出て行った」

 

そこはリアルなのか…………しかし、とんでもねぇ母親だな。ポプ〇ピとか言うクソアニメのキャッチフレーズを借りて言うなら、『どうあがいても、クソ』がお似合いの母親だぜ。

 

「ほら、早く始めろ」

 

「はいはい…………菊、幼稚園で友達できたかー?」

 

「ガキばっかしかいない」

 

「そうかー。お父さんの部下もクソガキでよ。仕事は出来て優秀なんだが、何か顔を見てるとむしゃくしゃするんで、来月からカンボジアに飛ばす事にした」

 

「飛ばす理由がとんでもないな…………むしろクソガキはお前の方だろ」

 

あれ、何か恨み節聞こえたような。気のせいかなぁ(すっとぼけ)

 

「ガラガラ。へー、ここがパパの会社なんだ」

 

ああ、会社に来たって事ね。

 

「そこの2人はパパの事務員」

 

「え、私たちも?」

 

「事務員さん?」

 

「そう。パパに惚れてる」

 

ほーう…………中々面白い設定じゃないの。

 

「社長、いつになったら2人きりでご飯に連れていってくれるの?今夜行こうよ、今夜」

 

「…………コフッ!!」

 

近い!!めっちゃ近い!!そしてめっちゃ可愛い!!吐血しそう!!

 

「(本当に素直になったね、三玖…………けど、演技なら負けないよ)菊ちゃん、新しいママ欲しくなーい?」

 

「あ、ずるい。私がママになる」

 

「三玖になれるかなー?」

 

「………じゃあ、2人ともパパの好きなところを言え」

 

お!!いいぞ、ドンとカモン!!

 

「えーっと………少し変わってるけど男らしくて……………あと、ドSな所とか?」

 

「頭が良い、頼りがいがある、背も高い、カッコいい」

 

いやぁ、よしてくれよ三玖。お世辞とかだったとしても、照れるゾ。………それと、一花姉さんよ。あなた、ドsな所が好きな所としてあげてたけど、それじゃ姉さんがドМって事に認定されかねないが、それでええんか……?

 

「菊ちゃんはどっちが良いと思った?」

 

三玖だろ(断言)

 

「私は…………ママなんていらない」

 

あら、まさかの第三の選択肢『どちらも選ばない』ですか。

 

「どうして?」

 

「‥‥‥…寂しくないから。ママのせいでパパはとっても大変だった。パパがいなければ寂しくない」

 

………………。

 

「……ったく、大人ぶって強がっちゃってやんの。パパはそんな子に育てた覚えはないぞー?」

 

「な、何をする!」

 

「お母さんがいなくて寂しくないわけないだろ、お前さんはお母さんに甘えたりしたい年頃だってのに。大人ぶろうとしないで、子供はわがまま言ってる方が可愛いもんなんだよ。………ママが欲しいか?」

 

「…………………………………欲しい」

 

「なんだ、素直に言えるじゃん。そうだなぁ‥‥‥…菊ちゃんは通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きか?」

 

「いや、どんな質問だよ!?子供に意味の分からん質問をしてんじゃねぇ!」

 

「何だようっさいなー。カンボジアじゃなくて北極に左遷させるぞ、パンツ一丁で」

 

「殺す気か!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

 

─────ソウゴのこう言う所だ。目の前の人をちゃんと見て、真っ正面から向き合ってその心に寄り添う─────そんな温かい心をソウゴは持っている。

 

(ああ、そっか……………ソウゴは私にも優しく寄り添ってくれてた…………だから惹かれたんだ…………もしかして一花も、なのかな?)

 

『仮にその趣味が人から見て変だとしてもよ。俺から言わせれば、人と変わったものを好きになって何が悪いって話よ』

 

『三玖は自分が好きになったその趣味に対して自信と誇りだけ持ってれば良いんだよ』

 

───そして、気がつけば私の思いを口にしていた。

 

「ソウゴ…………私と付き合おうよ」

 

「!?」

 

………………あ。

 

「(い……………言っちゃった!ど、どうしようどうしよう!?ソウゴも凄く驚いてるのが顔を見て分かる!何かこう、もっと告白するのに良い感じの雰囲気とかあるのに!あーもう、私の馬鹿馬鹿!)」

 

「(………………あ、そゆことか)なーにを仰ってるのだ三玖」

 

「え、えっとね…………」

 

「ここは結婚しようだろ?」

 

そ、そっか。そうだよね。付き合おうじゃなくて結婚しようって言った方が良いよ……………え?

 

「け…………………結婚?!えぇ!?」

 

急展開についていけない!!と言うか、高校生同士で結婚なんて出来るの!?あれ、でも前にどこかで出来るって聞いたことあるような…………え、てことはやっぱり本気なの!?ほんとに私と結こn

 

「菊、やったぞ!俺は三玖と結婚するからママができたな!通常攻撃がクリティカル攻撃で………三玖だから、3回行動出来るママが出来たぞー!まぁ、おままごとの中だけどね」

 

「(………え)」

 

………………あ、そう言えばおままごとの最中だったのを一瞬忘れてた…………ソウゴの中で私の告白はおままごとの中での事として処理されてしまったみたい。状況が状況だったから仕方ないけど………………残念なような安心したような………はぁ。

 

小さくため息をついていると、他の3人も帰ってきた。

 

「ただいまー!ってあれ?可愛い女の子だ!」

 

「何してんの?」

 

「おままごとだ。先程三玖と結婚してな。そして今から上杉の身ぐるみ剥がしてパンツ一丁にし、コンテナに閉じ込めて北極に送ろうと思ってな」

 

「上杉君は何をしたんですか………」

 

「顔がムカつくから北極に送られるらしい」

 

「んなことより、菊ちゃん。残りの3人にも配役を決めてあげな」

 

「……………じゃあ、うちのワンちゃん」

 

「ワンワン!」

 

「そこの2人はおば……何だ?」

 

あ、ソウゴが菊ちゃんに何か耳元で囁いてる。何だろう?

 

「……………じゃあ、そこの星形の方は面倒見の良いおばちゃん。長い髪の方はヒステリックで面倒くさいおばちゃん」

 

「あんた、余計なことを吹き込んだわね!」

 

「記憶にございません」

 

……………………。

 

「………一花」

 

「………ん?」

 

「ソウゴを独り占めしたいはずなのに、こんな風に7人で一緒にいるのも嫌いじゃないんだ…………変かな?」

 

一花は変じゃない、と言葉には出さずに首を横に振る。

 

「………………私もそう思うよ。このまま皆で楽しくいられたら良いね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに、おままごとはフータローと、ついでに二乃が北極送りにされて幕を閉じた。めでたし、めでたし。

 

to be continue……………




二乃「いや、ふざけんじゃないわよ!なんで私がついで扱いなのよ!」

上杉「いや、怒るとこそこ!?」

えー、シンエヴァが公開しましたね。作者も来週見に行きます。今週は予定がハイパーつまってるので。投稿もワンチャン出来ない可能性がありますが、ご了承を。

本日も読んでいただきありがとうございました!

さーてこの次も、サービスサービスゥ!


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7つのさよなら その1

お 待 た せ

最終話放送後に投稿だよーん。



「…………遅いですね」

 

五月は玄関前で正座待機をしていた。今日は家庭教師の日なのだが、その家庭教師の2人が何故か時間になっても来ないのだ。

 

「折角皆集まっていると言うのに、一体何をしているのでしょうか…………?」

 

五月は玄関の扉を開けてマンションの廊下を覗く。そして彼女が見たのは──────

 

「………おや、タイミングが良いですね」

 

「あなたは…………星奈さん、でしたよね?」

 

「ええ。五月さんとは祭り以来ですね。…………ああ、そうでした。寝ている教師のお届けものです」

 

そう言って星奈は両手で抱えている男2人(総悟と風太郎)を差し出した。取り敢えず反応に困ったが、五月は星奈を中に入れて2人は床に置く。

 

「し、死んだように寝てますね…………」

 

「揺らしたりしても起きないので仕方なく担いでここまで走ってきました」

 

「………そ、それは凄いですね」

 

五月の頭の中で星奈が2人を米俵のように担いでい疾走する姿が浮かぶ。

 

「この2人は夜更かしでもしたのですか?」

 

「ええ。これを徹夜で作ってました」

 

星奈は上杉の背負っているバックからとんでもない厚さの紙の束を五月に渡す。

 

「…………こ、これは………」

 

「今回のテスト範囲をカバーした問題集だそうで。今日の課題が終わったら取り組んで貰うとか昨日言っていましたね。これを解けばかなりレベルアップするそうですよ」

 

「……………………」

 

「……………流石に多すぎて受け取りたくないとか思ってません?」

 

「!?」

 

「顔に出てます」

 

図星を付かれて驚く五月に星奈はスマホでとある動画を何枚か見せる。

 

「!………これは………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁ~……………良く寝たぁ……………って!?何でマンションにいんの!?」

 

まさか、ついに孫〇空みたく瞬間移動を身に付け

 

「私が運んだのですよ、総悟様。揺すっても起きないので取り敢えず必要そうな物を詰め込んでここに運んできた次第です」

 

「……………ああ、そう言うことですか…………迷惑を掛けてすみません」

 

「いえいえ、この位良いんですよ。それよりも、いい加減上杉君を起こした方が良いのでは?」

 

「おお、そうですな……………グッドモーニング、起きろ上杉!!」

 

「…………んだよ、耳元で騒がしいな……………って!?何でマンションにいるんだ!?」

 

おい、俺と台詞が大分被ってんな。そう思いながら説明すると上杉も星奈さんに一言お礼を言った後にため息をつく。

 

「にしても…………貴重な時間を失っちまったな。俺らいつまで起きてたんだ?」

 

「取り敢えず4時までは起きてた事を覚えてるんだが」

 

「よくそんな夜遅くまで…………いえ、朝までやりますね」

 

「まーね」

 

「お前達だけにやらせるのもフェアじゃないからな。俺達が『お手本』にならないとな」

 

「…『お手本』……………」

 

「よーし、じゃあカテキョをやるか。今日の俺は一味違うぜ。睡眠不足ですぐぶちギレる気がするZE☆」

 

「も、揉め事は起こさないで下さいね?時間は限られているんですから、皆仲良く協力し合いましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リモコンを渡しなさい!今やってるバラエティに好きな俳優が出てるの!」

 

「この時間はドキュメンタリーがやってる。しかも今日は戦国武将の特集なの!」

 

仲良くしようと五月が言った矢先、二乃と三玖の間でリモコンの争奪戦争が繰り広げられてんだけど………。

 

「この2人はよく喧嘩するな………」

 

「まぁ、でも喧嘩する程仲が良いとも言うからね。取り敢えず、平和的にささっと俺が止めてくるわ…………おーい、やめろ2人とも!喧嘩すな!」

 

俺は2人の間に割って入る。

 

「まー、落ち着け。2人の言い分は分かった。そこでだ……………バラエティとドキュメンタリーの間をとってアニメを見ると言うのはどうかな?」

 

第3勢力(アニメ派)として参戦してるんじゃねぇ!こいつに任せた俺が馬鹿だった!勉強中はテレビは消しまーす!」

 

あ、上杉がリモコンを取り上げてテレビを消しやがった!

 

「もー、上杉。折角俺がシリアスな空気を破壊しようとしたのにぃ」

 

「いや、全然破壊できてないんだが!」

 

ほんとだ、まだバチバチしてる。

 

「一花姉さんよー。あの2人って仲悪いのか?」

 

「まぁ、犬猿の仲って感じかな?特に二乃は繊細な子だから、結構衝突が多いんだよね」

 

へー………………。

 

「はーい、皆再開するよ。それじゃあ、ソウゴ君、フータロー君。これから1週間、私達の事をお願いします」

 

「ああ。リベンジマッチだ」

 

「いっちょやってみっか(悟〇風)」

 

口調とは裏腹に何事もなければ良いんだけどなー……なんて不安を俺は抱えていた。そして、その不安はすぐに的中することを俺はすぐに知ることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===================

星奈も『面白そうなので見ていたい』と言うわけで少し離れた所で見学。見ているだけなので何をしようが特に口出すつもりはないと言うことなので、二乃も渋々と言った表情で黙認していた。

 

さて、開始から10分。早速また二乃と三玖の間で諍いが発生した。

 

「ちょっと、それ私の消しゴムよ!」

 

「借りただけ………………あ、それ私のジュース」

 

「借りただけよ…………って、まずっ!」

 

生憎、三玖のジュースは抹茶ソーダだったので二乃の口には合わなかったようだ。

 

「まずいぞ、火野。このまま放置しておけば仲違いして赤点回避どころじゃなくなる……」

 

「それはよろしくないな…………どーすっかなー…………誰か、アイデアくんない?」

 

総悟のアイデア募集に真っ先に手を上げたのは四葉だった。

 

「きっと慣れてない勉強でカリカリしているんですよ!だから、良い気分に乗せてあげたら喧嘩も収まるはずです!」

 

「なるほど…………いっちょやってみ「待て火野。俺がやる」…………えぇ……(困惑)」

 

先程の1件が原因か、火野ではなく今度は上杉が作戦を実行することになった

 

「はっはっは!いやー、いいねぇ!」

 

「「?」」

 

「素晴らしい!」

 

「「…………」」

 

「いや、2人ともいい感じだね。なんというか凄く良いしっかりしてて………健康的で………うーん………偉い!」

 

「(誰か時を戻してー!俺の方が絶対上手くやれるからー!!)」

 

総悟の心の叫び通り時が戻る訳もなく、作戦は失敗に終わった。

 

「あえて厳しく当たることで2人にヘイトを集める『第3の勢「却下」……もー!せめて最後まで言わせてよー!」

 

「あはは…………(三玖に厳しく当たって嫌われでもしたらたまったもんじゃないっての…………)」

 

総悟の思惑もあって一花の作戦は却下された。

 

「五月は何かあるか?」

 

「そ、そうですね……………何も言わずに無言の圧力を掛けるのはどうでしょうか?そしたら2人も何かを察して喧嘩をせずに出来るかも…………」

 

「ふーむ………それなら上杉にでも出来るな。よし、やってみたら?」

 

「ああ」

 

と、言うわけで『無言作戦(総悟命名)』がスタート。

 

「……………」

 

「……………」

 

「……………」

 

「……………」

 

「……………」

 

「……………」

 

「さっきから黙って何見てるのよ!」

 

無言の空間に耐えられず、二乃が叫ぶ。どうやらあまり効果はなかったようだ。

 

「あ、いや別に……………そ、それより課題は終わったか?」

 

「あんたに言われなくても、もう終わるところよ。ほら!」

 

「………………ん?ここ、テスト範囲じゃないぞ」

 

「あれぇ!?やば…………」

 

「二乃。やるからには真面目にやって」

 

「っ………こんな退屈な事なんてやってらんないわ!部屋でやるから放っておいて!」

 

10分も持たず、早速1名離脱。

 

「くそっ、セットが1つ無駄になった…………」

 

「…………いやいや、俺らこれを作るのにどんどけ時間使ったと思ってんねん!こんな所で離脱されてたまるかっての!」

 

「火野君の言う通り、まだ諦めないでください。頼りにしてますから」

 

五月の応援も受けて、総悟と風太郎は階段を上っている二乃に説得を試みる。

 

「ちょ、待てよ二乃!まだ始めて10分も経ってない。アニメで言えばAパートも終わってない」

 

「どんな例えだよ…………だが、火野の言う通りまだ始まったばかりだ。もう少し残ってくれよ」

 

「……………………」

 

総悟と風太郎の言葉に二乃は何も言わない。

 

「ただでさえお前は姉妹の中でも出遅れてるんだ(・・・・・・・・・・・・・)。しっかり勉強して追い付こうぜ?」

 

─────無論、上杉に悪気はない。色々とされた身ではあるが、意地悪をしたかった訳でもない。だが、彼の発言は彼女の地雷をしっかりと踏んでいた。二乃の表情は冷徹なものに変わる。

 

「うるさいわね、何も知らない部外者のくせに。あんたらみたいな雇われの家庭教師にとやかく言われる筋合いはないわ!」

 

「……………二乃」

 

そこへ割って入ったのは三玖。その手には彼等が作った問題集が。

 

「これ、ソウゴとフータローが私達のために作ってくれた問題集。受け取って」

 

「……問題集作ったくらいで何だってのよ。そんなの、いらないわ!」

 

二乃は三玖の手を振り払う。その拍子に三玖の手から階段にパラパラと落ちる。黙って見ていた星奈も流石にその行為を不快に思ったようで眉をひそめると同時に自分の主の方を見る。恐らく彼女の主も思うところはあったに違いないが、それでも何も言葉には出さなかった。

 

「ね、ねぇ………2人とも落ち着こ?」

 

「そうだ、お前ら」

 

「二乃」

 

仲裁に入ろうとする一花と風太郎を遮って三玖は二乃の名前を呼ぶ。

 

「…………拾って」

 

静かながら明らかに怒気の含まれた三玖の声と蔑むような視線を感じ取った二乃は怒りの余り────

 

「こんな紙切れに騙されてんじゃないわよ…………今日だって遅刻したじゃない!こんなもの渡して………いい加減なのよ!それで教えてるつもりなら大間違いだわ!」

 

────拾った1枚の問題集を破り捨てた。

 

「……………おい」

 

ここで漸く総悟が一言だけ発する。その一言だけで近くにいた風太郎と星奈も総悟が完全にキレているのにすぐに気が付いた。最も、キレているのは総悟だけでなく隣の彼女(三玖)もだったが。

 

「(…………………まずい予感しかしないですね…………)」

 

「(このままだとこいつらの仲が修復不可能になる………!)」

 

風太郎は三玖と総悟の間に割って入ろうとし、星奈も止めようと小走りで近付こうとしたその時だった。

 

──────パチン!

 

乾いた音がリビングに流れた。

 

「二乃。謝って下さい」

 

その音とは五月が二乃にビンタした音だった。キレていた総悟と三玖も五月の行動に思わず毒気が抜かれたようで驚愕の表情を浮かべていた。

 

「………………ッ!」

 

二乃も呆然としていたが、すぐに怒りの表情を露にして五月と同じようにビンタを─────

 

「!」

 

「……………」

 

─────寸前で星奈が無言で二乃の腕を掴んで止めていた。星奈の力は強く、びくともしなかった。不本意ながら二乃はビンタをしようとした手を下ろし、その代わりに口を開く。

 

「五月、あんた………!」

 

「この問題集は火野君と上杉君が私達の為に作ってくれたものです。粗末に扱っていいものではありません。彼らに謝罪を」

 

「………まんまとこいつらの口車に乗せられたってわけね。そんな紙切れに熱くなっちゃって。いつの間にこいつらの味方になったのやら」

 

「………………星奈さん。申し訳ありませんが、二乃にあの動画を見せていただけませんか?」

 

「………………」

 

星奈は無言でスマホを取り出して操作すると、二乃に画面を向けて再生する。

 

「…………!」

 

画面に映っているのは総悟の家にある大量の参考書に囲まれた上杉と総悟。映像と同時に音声も流れ出す。

 

『おい、火野。二乃の問題集の英語の問題はこんな感じで良いんじゃないのか?』

 

『どれどれ…………んー、二乃は英語のここら辺のは多分出来るからカットして良いと思うよ。あ、でも他の姉妹のはカットすんなよ』

 

『分かった…………お、この参考書の数学の問題はかなり良いんじゃないのか?』

 

『………ああ^~いいっすね^~。よし、その問題も追加しておくか。あー、でも一花姉さんは案外すんなり解けそうだから、姉さんだけこっちの似た系統のもう少し難し目のやつを選ぶとすっかなー』

 

ここで動画は終わった。

 

「………呆れました。この問題集、私達ひとりひとり問題が違うんです」

 

「「「「!!」」」」

 

五月の言葉を受けて、一花と四葉は渡された問題集の1枚目の数学の問題を見てみると────。

 

「……あ………ほんとだ………」

 

「………私と四葉の数学の問題、問1から既に違ってる……」

 

四葉の方は基礎系の、一花の方は少しばかりの応用力が試される問題から始まっていた。無論、他の科目も同様に1人1人問題が彼女等の実力に合わせて微妙に違っているのは言うまでもない。

 

ここで漸く星奈が二乃に向けて口を開く。

 

「…………二乃さん。あなたが寝ている間も彼等は眠い眼をこすりながらこの問題集を作っていたのです────他でもない、あなた達の為に。その問題集を破り捨てるのが作った彼等に対して最大の侮辱であることが、あなたにも分かるでしょう?」

 

「…………………」

 

言葉の端々に怒りが滲んでいながらも冷静に諭す星奈に二乃は何も言わない────否、言い返せない。

 

「二乃。私達も彼等に負けないように真剣に取り組むべきです。彼等が自分達の時間を私達の為に費やして、ここまでしてくれたのですから」

 

「…………………」

 

二乃はチラリと姉妹の方を見る。自分の事を擁護でもして貰いたかったのかもしれないが────

 

「二乃…………」

 

「いい加減受け入れて」

 

─────二乃に注がれる視線は困惑や心配、そして責めるようなものだけ。姉妹達からすらも擁護は何もない。

 

この空間に二乃の味方は誰もいなかった。

 

「…………分かったわ。私よりこいつらを選ぶってわけね………いいわ。こんな家、出て行ってやるわ!!」

 

二乃による緊急家出宣言が発令された。

 

「冷静になれ、二乃」

 

「いや…………何も家出まですることは無いだろ………」

 

「そうです、そんなの誰も得しません!」

 

「損とか得とか、そんなの知ったことじゃないわ。それに、これは前から考えてた事なのよ」

 

風太郎、総悟、五月が順に説得するが二乃は聞かない。

 

「こんなのお母さんが悲しみます!」

 

「…………いつまでも未練がましくその演技を続けるのはやめなさい!あんたはお母さんじゃないのよ!」

 

「(…お母さん…………)」

 

総悟が心の中で呟くなか、一花や四葉も仲裁に入る。

 

「二乃、早まらないで」

 

「そ、そうだよ!話し合おうよ!」

 

「話し合う必要なんてないわ。先に手を出したのはあっちよ。あんなドメスティックバイオレンス肉まんおばけなんかと一緒にいられるわけないわ!」

 

大食いの五月にとってその暴言はクリティカルヒット。怒りの余り、りんごの如く顔を真っ赤にさせる。

 

「そ……………そんなに邪魔なら、私が出ていきます!!それに肉まんおばけとは失礼な!!五人の体重も五等分ですよ!?」

 

「五等分ですって?誤魔化してるくせに何言ってるのよ。いいわ、この際だから言ってやるわよ。あんたの本当の体重は「わー!!わー!!」」

 

五月は大声を出してネタバレキャンセル。その後、2人は言い争いを始めてしまい、もう誰にも手を負えなくなってしまった。

 

「ど、どうしたら…………」

 

「なんだよこの展開………」

 

結局その後、今日はもう勉強どころではないのと2人がいてもどうにもならないので星奈と共に3人で帰る事に。帰路につく彼等の間に会話は殆ど無く、重苦しい雰囲気だけが広がっていた─────────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総悟は家に帰るとすぐに部屋に籠ってしまう。この件で落ち込んでいるのではないかと思った星奈は部屋をこっそり覗いてみるが、当の総悟は寝不足でただ寝ているだけだった。一先ずホッとして星奈は扉を閉じる。

 

「……まさか、あんなことになるとは……………本当に家出する事態にならなければ良いのですが…………」

 

────星奈の懸念はすぐに的中することになるのを、総悟はまだ知らない。

 

to be continue………




そう言えばシンエヴァンゲリオン見てきました。ネタバレ無しで言うと……………………何か色々と凄かった(小並感)

僕は新劇場版からエヴァンゲリオンを見始めた男なんですよね。ちなみに、エヴァのパイロットの中でも綾波とマリが特に好きです。

この駄文を読んでいただきありがとうございました。……………………ん?Fate HFの再上映だって?行くしかないっしょー!!Foo!!


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7つのさよなら その2

映画化とは……………………たまげたなぁ。

反応薄いけど、これでもかなり驚いてるんです。

以上、どうでもいい前書きでした。


翌日

 

「…………………」

 

昨日ぐっすり寝た後、夕方に三玖に連絡してみたのだが喧嘩は一花の仲裁の甲斐もあって収まったらしい。昨日はあんな事があったからか何もする気が起きず、さっさとやることを済ませてベットに入った。夕方まで散々寝てたのだが、案外すんなりと寝れた。

 

「……大丈夫かねぇ……………」

 

不安を紛らわすかのようにスマホをいじっていると、三玖からの着信が来た。

 

「………………まさか」

 

無性に嫌な予感がした。その予感が外れる事を願って電話に出る。

 

「………もしもし?」

 

『もしもし、ソウゴ?朝から電話を掛けてごめん。実は二乃と五月が─────』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=================

急いでマンションに駆けつけると、ちょうど上杉も同タイミングで到着した。

 

「2人ともごめん。日曜日なのに呼び出して」

 

「気にすんな、暇だったからよ…………それよりも」

 

「2人揃って家出って本当か!?」

 

「お、落ち着いてフータロー。全部話すから」

 

「…………わ、悪い。それで、何でそんなことになった?」

 

「えっとね………」

 

三玖の話によると、昨日俺に連絡したとおり喧嘩は一度収まったのだが再び夜に再勃発。何故か2人とも出ていく事になったらしい。

 

「一花と四葉が説得したんだけど、お互いに意地を張って先に帰ったら負けみたいになってて…………」

 

「えぇ……(困惑)」

 

個人的にはそんな家出までする事じゃないと思うんだけどね、しかも2人揃って。

 

「……………それで、その2人は?」

 

「外せない用事があるって。一花は仕事だと思うけど」

 

──────ん?まさか四葉は…………?

 

電話を掛けてみるが応答なし……………これ絶対部活やろ!!あのリボン、事情聴取決定や!!

 

「こんな時に…………試験勉強はどうするんだよ…………」

 

「ほんとそれな。あーあ…………昨日までは5人一緒だったのになぁ…………」

 

「…………こんなに部屋が広く感じたのは久しぶり」

 

ほんと三玖の言う通り────こんなに広かったんだな、ここは。

 

「………だが、こんなところでボーッとしててもしょうがない。上杉、三玖。二乃と五月を探すぞ」

 

「……ああ、そうだな」

 

「うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2時間後

 

「つ、疲れた……………」

 

「はぁ…………はぁ………」

 

三玖も体力切れのようで、上杉と共にお疲れ。俺?勿論まだまだ余裕。

 

「しっかし、全然2人とも見つからないなー」

 

公園とかデパートとかその他諸々、いそうな場所に行ってみたのだが見つからなかった。二乃の友達には三玖が電話して聞いてみたのだが、手掛かりはなし。五月の方は同じクラスなのに上杉が五月の友達が誰なのか知らないので詰んだ。同じクラスじゃない俺はしょうがないとしても、何で同じクラスの上杉も知らないんですかねぇ……………(呆れ)

 

「となると…………後はホテルぐらいか。」

 

「………確かに………二乃が野宿とか考えられない………」

 

いるとしたらどこのホテルかなー、とスマホで調べていると通り掛かったおばちゃんが三玖の顔を見て、『あら』と声をあげる。

 

「さっき似たような子をホテルで見たねぇ。もしかして姉妹かい?」

 

「間違いねぇ、そいつが二乃だ!」

 

おばはん、マジでナイス!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

====================

3人は二乃の泊っているホテル前に到着。

 

「はえ~、すっごいおおきい(迫真)」

 

「まさに金持ちが泊まるような高級ホテル「な、なんであんた達がここにいるのよ!?」……え?」

 

後ろを振り向いていたのはまさかの二乃。どうやら手に持っているタピオカを買いに外に出ていたようだ。

 

「三玖と似た子を見掛けたっておばはんの情報提供があってな。あー、それでですね」

 

「…………二乃。昨日の事は」

 

「帰って!私たちはもう無関係の他人なの!」

 

「待て待て待て待て!」

 

ホテルに入る前に慌てて上杉が二乃の手を掴む。

 

「二乃、どうしたんだ……お前は誰よりあいつらが好きだったはずだ。なのにどうして…………」

 

「……だから、知ったような口きかないでって言ったでしょ!こうなったのは全部あんたらのせいよ!」

 

二乃はさらに決定的な言葉を畳み掛ける。

 

「あんたらなんか来なければ良かったのに!!」

 

「「……………」」

 

二乃の口から放たれた決定的な拒絶の言葉─────2人はそれに対して何も返さなかった。

 

「…………返しなさい!このミサンガは私のよ!」

 

「あ」

 

上杉が身に着けていたミサンガを二乃は奪い返す。このミサンガはらいはが作ってくれた物をキンタロー(上杉)が二乃にお守りとしてあげて、その後熱で倒れた上杉に二乃が貸していた代物で──────要は元を辿れば風太郎のものなのだが、二乃はそれを知るよしもない。

 

「あんたじゃなくてキンタロー君が家庭教師だったらよかったのに…………彼はどこなの?会わせてよ」

 

「それは………出来ない」

 

「……………あっそ。じゃあ、もう用はないわ」

 

「ま、待ってくれ!他に出来ることなら何でもする!」

 

ホテルに入って行った二乃を風太郎が追うが──────

 

「お客様以外の立ち入りはご遠慮願います」

 

ホテルマンに止められる。当然の流れだ。

 

「二乃!お前、試験」

 

「………フータロー。今日はもう諦めよ?」

 

「三玖……………けど」

 

「今は何を言っても聞かないだろうしそれに、どうせ学校でまた会うんだから説得する機会は幾らでもある。今日は居場所が分かっただけ良しにしよ?」

 

「………そう、だな」

 

風太郎は背を向けてホテルから去ろうとする─────が、勢いよく二乃の方を振り向く。丁度二乃はエレベーターに乗っていた。

 

「二乃!俺は諦めねぇからな!」

 

「…………………………」

 

扉が閉まる直前になっても二乃からの返事は当然なく、彼等を隔てる─────拒絶するように扉は閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「二乃は見つかったが、五月の方は手掛かりなしか…………まぁ、あいつもホテルに泊まってるだろ」

 

「それが……………あの子、財布を忘れてるみたいで…………」

 

「……………マジか」

 

風太郎の脳裏にダンボールを布団にして公園のベンチで寝ている姿が思い浮かぶ。

 

「…………いや、流石に誰か友達の家に行ってるよな。火野もそう思うだろ?」

 

「……………………」

 

「……おい、火野?」

 

「え?…………ああ、うん。そうだね。流石に友達の家に泊まってるだろうから大丈夫だろ」

 

「………どうかしたの、ソウゴ?……………もしかして二乃に言われたことを気にしてる?」

 

「ん?別に落ち込んだりなんかしてないぞ。こう見えてもメンタルは強いからな(30年近く生きてりゃメンタルも強くなるもんだからな。ま、前世の頃から既に強かった自覚はあるけど)」

 

内心そう呟いた後、総悟は2人に語り始める。

 

「ちょいと考え事をしててよ。二乃って俺らの事を本当に嫌ってんのかなー、って」

 

「いや、どう見ても嫌ってるだろ。さっきのホテルでも」

 

「だったらさー……………何で中間テストの時、嘘をついてまで俺らを庇ったのかな、って」

 

「「!」」

 

─────そう。本当に2人の事が嫌いならそのまま突き放せば良かったわけで。にも関わらず、二乃は2人に助け舟を出した。それは何故なのか──────。

 

「……………まぁ、何でも良いや。俺が考えたところで答えは当人しか知らないんだし。ぶっちゃけ考察するのは漫画やラノベ、アニメの謎だけで充分だし。そもそも、俺らがめっちゃ頑張って作ったプリントを破りやがった二乃の真意を何で考察せにゃあかんのだ」

 

考えるのが面倒くさくなったのか、総悟は考察放棄。ついでに昨日の件をかなり根に持っている模様。そして、時間的に今日はこれで解散と言うことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃

 

「(……まさか財布を忘れてきてしまうとは…………)」

 

家出少女その2こと五月は公園のベンチでため息をついていた。家出をしてから1時間後に財布を部屋に忘れてきた事に気がついたのだが、意地からか家に帰らず公園のベンチで寝て過ごした。起床してからも特にやることなく、暇潰しに辺りをぶらついていたのだが─────

 

「(うぅ………お腹がすきましたぁ…………)」

 

───────エネルギー切れである。

 

「(はぁ……もう家に帰りま…………い、いえ!今回は二乃が先に折れるまで帰らないと決めているんですから!皆にもそう言っている以上、帰るわけには……………ですが、お腹がすいて力が…………)」

 

どこぞのアン〇ンマンみたいな台詞をかます五月。と、そこへ。

 

「…………五月さん?何をしているんですか?」

 

「……せ、星奈さん!?」

 

そこに現れたのはたい焼きを手に持つ星奈だった。たい焼きを見て五月の腹が鳴ったのはもはや言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「モグモグ……………たい焼きってこんなに美味しかったんですね!ありがとうございます、星奈さん!」

 

星奈にたい焼きを半分分けて貰った五月は3分も掛からず完食。

 

「それにしても、まさか本当に家出をしたとは……………しかも財布を忘れると言う致命的なミスをして………はぁ……」

 

五月から事情を聞いた星奈はやれやれと言いたげにため息をつく。

 

「い、言っておきますがたい焼きをくれたとは言え、星奈さんに帰れと言われても絶対に帰りません!二乃が折れるまでは絶対に!」

 

「それ、めっちゃハードじゃん」

 

「わぁ!?」

 

後ろからの声に五月がびっくりしてベンチから飛び退く。後ろにいたのは呆れ顔の総悟だった。

 

「私がメッセージを送って呼びました」

 

「たまたま近くにいたから来た。……………マジで野宿してたとは…………けど、今夜は昨日よりもかなり寒いらしいけどどーすんの?流石に耐えられんと思うぞ?」

 

「……………あ、そうです!上杉君の家に」

 

「ただでさえ家計が厳しいのに、五月まで居候したらさらに負担が増えるぞ(………特に食費)」

 

「た、確かに…………」

 

「私は1人暮しですので、色々と用意がないのでちょっと……………(取り敢えず食料が足りないのは断言出来ますね………)」

 

2人に心の中で遠回しに食いすぎと言われているのだが五月本人は知る由もない。

 

「……………し、仕方ありません。そこら辺に落ちているダンボールなどで寒さを何とか耐え抜くとします…………」

 

再び野宿を決意する五月。それを見かねたこの男(総悟)は──────

 

「………………しょうがねぇなぁあああ!五月は俺の家に来い!」

 

「え?」

 

「泊まるところないようだから泊めてあげようと言う総悟君のお心遣いなんですー!来んのか来ないのか、どっち!?」

 

「………すみません、暫くお世話になります!」

 

と言う訳で、五月の火野家への滞在が決定した。

 

to be continue…………




《悲報》火野家、五月の食費で破産決定ww

五月「そんなに食べませんっ!!」

今日も読んでいただきありがとうございました。


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7つのさよなら その3

今日はちょっと短めです。SAOの映画の特報見たけど、五月のcvの水瀬いのりさんがご出演されるそうで。

……………………行くしかない(使命感)




星奈さんと別れ、俺は五月と共に歩いて自宅に到着した。

 

「ここが火野君の家…………大きいですね………………」

 

「まーね。入って、どうぞ」

 

「お、お邪魔します……」

 

「十 悔い改めて 十(ボソッ)」

 

「え?何か言いましたか?」

 

「ん?言ってないけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えー、実は」

 

「まさか、彼女が出来たの!?」

 

「貴様、うちの息子を誑かしやがったな!!」

 

「違う、そうじゃない」

 

取り敢えず五月の事を親に話しておこうと思ったら、第一声がこれだよ。人の話を聞けとはまさにこの事。この後、一旦宥めて事情を全部説明した。

 

「なーんだ、お前の生徒さんか。彼女かと思ってびっくりしたぜ。にしても、家出とは思いきったな。しかも昨日は野宿とは中々やるじゃねえか!気に入った!」

 

「幾らでも滞在してもらって良いわよ。自分の家だと思ってくつろいでいってね」

 

許可はあっさり出た。夕飯が出来るまではまだ時間があるとの事なので、俺の自室にご案内した。

 

「良いお父さんとお母さんですね」

 

「まーな」

 

「それにしても、綺麗に整頓されていますね」

 

当然です、潔癖症のプロですから。

 

「一花の部屋とは大違いですね…………」

 

「よくあんなお部屋で生活できるよな。ゴキブリが湧きそう」

 

「……………年に数回は一花の部屋から出現して大騒ぎになります」

 

やっぱねー。いや、逆に数回で済んでるのは凄いな。しかし、大騒ぎになってる光景は見てる分には面白そうだから見てみたい気もするな(ゲス顔)

 

「ちなみに、五月はゴキブリは絶滅した方が良いと思うか?」

 

「それはまぁ…………見るだけで鳥肌が立ちますし」

 

「まぁがゴキブリ大好き人間以外は、そう思うだろうな。だが、ゴキブリが絶滅すると生態系が崩れたりして温暖化や砂漠化が進行する可能性がある。五月は理科が得意だから何となく分かるだろ?」

 

「確かに…………何となく分かります」

 

「さらにゴキブリは医学や科学の発展にも寄与している。生命力が高いから実験に使われる事もあるし、何と奴らは体内で抗体成分をを作る事が出来る。その成分やメカニズムを利用して病気に対抗する研究が進められている。だから、意外とゴキブリって重要な役割を果たしてたりするんだよね」

 

「そうなんですね…………でも、やっぱり家には出てきて欲しくないです………………」

 

それは完全同意。

 

「思い出の中で…………あ、違うわ。森の中でじっとしててくれって感じだよな」

 

え?ファイ〇ルファンタジーのシリーズの中でどれが一番好きかって?……………………興味ないね(クラ〇ド風)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PM9:30

 

夕食の後(五月がおかわりしまくってたのは言うまでもない)、ぐだぐだしていると五月が学校の制服等々を家に忘れていた事が発覚。まぁ丁度あの家に、もっと言うと四葉に用事があったので俺が取りに行くと言うことでレッツラゴー。インターホンに出た一花姉さんに事情を話して上がらせてもらった。さて、四葉の部屋に突撃──────しようと思ったのだが。

 

「え、四葉もう寝てんの?」

 

「うん。爆睡してるよ」

 

マジかー……………俺からしたらまだ9時半なのにもう寝てるのって感じだけど。部活で疲れたのかね。

 

「起こした方が良い感じかな?」

 

「あー…………………いや、そこまでしなくて良いや」

 

流石に叩き起こしてまで事情聴取したいとは思わん。明日にすっかなー。

 

「ソウゴ、これ。五月の荷物」

 

「あ、サンキュー三玖」

 

「……………ごめんね、ソウゴ。ソウゴの家族にも迷惑を掛けて」

 

「三玖が謝る事じゃないだろ。それに五月を家に招き入れたのは俺だから良いんだよ。流石にあのまま野宿させるのは俺の良心が黙ってないからね、しょうがないね」

 

「…………ドSなソウゴ君にも良心があったんだね」

 

「は?(憤怒)」

 

「じ、冗談だよ~、あははー」

 

まぁ、冗談だってのは知ってたけど。つーか、一花姉さんもからかい好きのドSじゃね?まぁ良いや。

 

「じゃ、俺は帰るわ」

 

「ソウゴ君、五月ちゃんをよろしくね」

 

「はいよー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほい、荷物」

 

「何から何まですみません………それと、お先にあがりました。私の家のと同じ……いえ、それ以上に大きかったですね」

 

だろー?にしても、お風呂から出た直後の五月は何か新鮮だな。何か……………うん、何て言って良いのか分からんけど、何か良い。三玖のお風呂上がりも見てみたいなー(直球)

 

「で、今は誰かお風呂に入ってる?」

 

「火野君のお母さんが入ってますよ」

 

マイマザーは意外と長風呂だから、30分位は出ないな。その間何すっかなー。今日はアニメとかないし…………。

 

「五月ー、暇だし何か面白い話をしてくれねーか?林間学校初日の旅館でしてあげたんだから、そのお返しに」

 

「あれは面白い話じゃなくて怖い話ですっ!……………今日は月が綺麗に見えますね。暇なのでしたら、少し近くを歩きませんか?」

 

と、言いう訳で、池のある公園にやって来た。上着は着てきたが、それでも少し寒いな。まぁ12月だからね、しょうがないね。

 

「………………あ、月が雲で見えなくなってしまいました」

 

「ありゃ。ま、その内見えるようになるだろ(たぶん)……………にしても、今日めっちゃご飯おかわりしてたな。うちの親も驚いてたぞ」

 

「し、仕方ないでしょう、ご飯を食べるのは1日ぶりだったのですから………」

 

「いや、ほんと上杉の家に行かさないで正解だったわ。食費がとんでもない事になるし、つーかリッチな生活してたお嬢様に上杉家での生活は流石に耐えられんやろ」

 

「…………わ、私達はお嬢様ではありません」

 

へ?

 

「実は………数年前まで私達も上杉君の家と同じような生活をしていたんです」

 

「あ、そうなの………?」

 

それは初耳。てっきり産まれたときから金持ち生活なのかと思ってたわ。

 

「今の父と再婚するまでの私たちは極貧生活を送っていました。私達5人を女手1つで同時に育てていたのですから、当然です。けれど、私達の世話と仕事での疲労が重なってか母は体調を崩して入院してしまい……………」

 

「………………」

 

「だから私はお母さんの代わりになると決めたんです……………けど、中々うまく行かない現状で…………」

 

なるほどね……………あのビンタも母を真似てか。にしても、五つ子にそんな過去があったとは。ほんと彼女らのお母さんは凄いな。女手1つでよく5人を育てたもんだ。さぞ立派なお母さんだったのだろう。

 

「母親代わりねぇ……………なら俺は父親の代わりになろうかな、なーんて……………おい、何で露骨に嫌そうな顔をしてんだ」

 

「………火野君が父親だと、皆が影響されてドSになってしまう気がするのでちょっと………………」

 

た、確かにドSな三玖とか見たくねぇ!…………………いや、でもどうなんだろう。ドS女王様みたいな三玖……………………案外悪くないのか?これはじっくり考える必要がありますね。姉妹喧嘩の解決や期末テストよりよっぽど重要案件だな(おい)

 

「あ、見てください!雲が晴れて月が見えてきました。本当に今日は月が綺麗ですね」

 

「……………………。それ、告白の際に用いられたりする言葉なの知ってた?」

 

「……………………え?」

 

「有名な夏目漱石の話でI love youを『月が綺麗ですね』って訳した逸話があってだな。だから、相手への告白の際に用いる言葉として有名なんだが知ってたか?」

 

五月の顔がお風呂上りみたいに真っ赤に染まっていく。もっと紅くなれば美味しいりんごになるぜ(意味不明)

 

「……………………五月はもっと勉強した方が良いな、うん」

 

「そ、そうですね……………………そ、それと…………さっきの言葉はこ、告白とかじゃなくて、その………………こ、言葉通り純粋に月が綺麗と言う意味ですので……………」

 

「はいはい、分かってるよ。……………そろそろ帰るか」

 

この後、家に帰るまで何か少し気まずかった。

 

to be continue………




……………………えー。皆さんお気づきでしょうか。四葉ですよ、四葉。流れが原作とは違います。気づいた方は鋭い……………………ってことにしてやんよ(上から目線)

この小説の四葉は原作のとは少し違うよん……………多分。

あ、四葉の幕間の物語はつい最近思いついたので執筆開始すんよー。笑いはほぼ無しのシリアス寄りの予定。お楽しみに。

今日もこんな駄文を読んでくれてありがとうございましたっ!



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第6巻
7つのさよなら その4


今日は後書きで言い訳と言うか解説と言うか……………………取り敢えずそんな感じのが載ってます。アニメでも京都の子の正体がバラされてるから、心置きなく解説できますねぇ!


翌日の月曜日、俺は上杉と一緒に登校していた。五月は朝飯で毎度のごとくおかわりしまくったせいで学校に行く準備が出来てなかったので、本人に断って先に出ていた。

 

「……………四葉が昨日部活に行っていた可能性があるだと!?」

 

「多分と言いうか、ほぼ確定な気がする」

 

「テスト期間中は部活はないんじゃなかったのか……………あいつにはあとで話を聞く必要があるな…………!」

 

リボンを掴みの刑の執行が確定。

 

「2人も行く必要はないだろうし、話を聞くのはお前に任せるわ」

 

「分かった…………ったく、こんな時に限って面倒なことになっちまったもんだ………………」

 

それは激しく同意。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、一花姉さん、三玖、五月(家に帰ってこいと言う一花姉さんの説得には首を縦に振らず)に勉強を教えていると上杉が30分以上遅れて合流。曰く、四葉に関しては俺の予想通り部活だったらしい。上杉は辞めるようには言ったが、四葉は例の問題集を部活と並行して進めているようで、勉強と部活を両立させるつもりらしい。ちゃんと両立させてくれるなら俺としては特に言うことはないのだが。四葉が部活の方行った後、上杉は学校に来ていた二乃と会って説得を試みたらしいが、結果は残念賞だったらしい。試験なんてどうでも良いと拒絶されているとか。

 

「………………火野」

 

「うん?」

 

「明日から放課後の勉強会での3人の面倒は途中までお前に任せて良いか?俺は二乃や四葉の説得をするから今日みたいに後で合流する」

 

…………確かに2人とも説得側に回るよりもそうした方が良いか。四葉は兎も角、二乃は何とかしないとな。

 

「分かった。勉強面は俺に任せな」

 

「ああ。頼む」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな会話から3日後の水曜日。この3日で上杉による二乃への説得は成功する事はなかった。四葉はともかく、正直二乃の説得は無理なんじゃないかと思ったりした───────上杉が諦めてないようなので言わないが。さぁ、今日も教えるとすっかな………………ん?

 

「…………お、四葉」

 

「あ、火野さん。実は、あの問題集は明日で全て終わる予定なんです!」

 

「!」

 

マジか!あの量のプリントを部活と平行してやってたのか。ちゃんと両立出来て………………いや、でもちゃんと出来てるのか?あの問題集には暗記系の問題とか結構入っている。用語とかごっちゃになって覚えてたりしてなければ良いんだが。

 

「(…………ちょっと問題出して確かめてみるか)四葉、少し確」

 

「中野さーん。練習行くよー」

 

「あ、はーい!それでは火野さん、今日は別の場所で走り込みですので失礼します!」

 

「あ、ちょ……………早いな、オイ………」

 

バックを持って電光石火のごとく行っちまったよ……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

 

それは偶然だった。上杉さんが走り込みしている公園にいたのは。いつもタイミングを見計らっていたけど、忙しそうだった事や私自身も部活があったので中々実行するタイミングがなかった──────あの思い出と、この想いを消すタイミングが。

 

けど──────今がその時だ。

 

最後尾を走っていた私は前を走ってる先輩達にバレないようにこっそり離れて、そのまま荷物が入ってるバックを取ってきて茂みに隠れる。誰もいないのを確認してバックの中に入っている服装に着替える。この服はいつその時が来ても良いように出来る限り常備していた。

 

私は嘘をつくのが下手だ。姉妹のふりを演じるのもあまり上手く出来ない。けど、今回は違う。

 

────昔の私(・・・)を演じれば良い。上杉さんと京都で会った頃の私を。私にとっては姉妹のふりをするよりもよっぽど容易いことだ。

 

「─────また落ち込んでる」

 

風が吹く。帽子が飛ばされないように私は手で押さえる。

 

「やっぱり君は変わらないね、上杉風太郎君」

 

「……………お前は…………」

 

「久しぶり。イメチェンしたのかな?5年前に京都で出会った頃とは見違えたね」

 

上杉さんはハッとした表情で生徒手帳から写真を取り出す。─────多分、あの写真だ。確か清水寺で撮ったんだっけ。

 

「もしや…………京都の…………元気そうでなにより……………じゃ!」

 

「え!」

 

まさか逃げるとは思いもせず、慌てて上杉さんの服を掴む。

 

「放してくれ!俺はまだお前には会えない!…………あっ」

 

「こ、これを返して欲しかったら言うこと聞いてね」

 

上杉さんの手から生徒手帳を奪って人質……………いや、これは物だから……………って、そんなことは何でも良くて。

 

「じゃあ…………逃げられないようにあのボートに乗ろうか。池の真ん中まで行ったら返すよ」

 

「くっ…………」

 

仕方なくと言った表情で、上杉さんは私とボートに乗る。

 

「………そう言えば、俺はお前の名前を知らない」

 

「私は……………………零奈」

 

………ごめんなさい、お母さん。ほんの少しだけ名前を借ります。

 

「えっと…………あれから勉強して学年一位になって、家庭教師もしてるんだって?」

 

「……誰から聞いたんだ?」

 

「……か、風の噂で…………」

 

危ない…………何とか咄嗟に誤魔化せた。…………誤魔化せたよね?

 

「風の噂………?まぁ、確かに俺は家庭教師をしてる。同じ学年1位の奴とな。しかも五つ子の家庭教師をな」

 

「うんうん…………………あっ。す、凄いね五つ子って!漫画の話みたいだなー、あはは!」

 

「お、おう…………だが、そいつらは困った馬鹿ばかりなんだ」

 

「…………………」

 

「長女は夢追い馬鹿。女優を目指してるんだとよ。成功するかは分からんが、まぁ根気だけはある。だが馬鹿だ」

 

「次女は身内馬鹿。姉妹贔屓ですぐ噛みつく…………だけかと思っていたんだが、今はよく分からん。だが馬鹿だ」

 

「三女は卑屈馬鹿。初めは暗くて覇気のない顔をしてたが…………火野と仲良くなってから生き生きしてるように見える。あ、火野ってのは俺と学年1位の奴の事な。だが馬鹿だ」

 

「四女は脳筋馬鹿。やる気もあって頼りになるが、1番の悩みの種だ。けど、姉妹の中で1番素直かつお人好しな奴だ。だが馬鹿だ」

 

「五女は真面目馬鹿。あいつとはまず、相性が悪いが、本当はやればできる奴だ。このままじゃもったいない。だが馬鹿だ」

 

……………………。上杉さん、私達の事をそんな風に思っててくれてたんだ…………本来の目的も一瞬忘れて素直に嬉しかった。

 

「…………ひとりひとり、真剣に向き合ってるんだね。きっと君はもう必要とされる人になれてるよ」

 

「……………同じことを俺は五女───五月に言われた。だが………………俺はあの日から何も変われてない」

 

「……………そっか。なら、君を縛る私は消えなきゃね」

 

「…………え?」

 

その時、水が吹き出して私達に水がかかる。

 

「……噴水だ!逃げろー!」

 

「また俺に漕がせるのかよ……!」

 

「もー、遅いよ風太郎君(・・・・)!」

 

…………………あ。つい名字じゃなくて名前で呼んじゃった。でも……………それくらいは神様がいたら許してくれるよね。だって………………私が名前で呼ぶのはこれで最後になるんだからっ………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

 

「お疲れ様」

 

「はぁ…………はぁ………」

 

乗り場のところまで2人を乗せたボートは帰ってきた。結局1人で漕いだので、体力のない上杉は息切れを起こしているが。零奈は先にボートからあがる。

 

「約束通りこれ(生徒手帳)は返してあげる。でも……………これ(写真)は返してあげない」

 

「は…………?どうして…………」

 

「………私は…………………もう君と会えないから」

 

上杉にとっては意味が分からなかった。突然現れたかと思えば、突然もう会えないと告げられる─────意味が分からないのは当然だ。そんな上杉の心情を知らずなのかは零奈は去ろうとする。

 

「………ま、待ってくれ!どういう事なん…………!?」

 

急いで追おうとして焦ったせいか、上杉はボートから足を踏み外す。水面に顔面から落ちる寸前───────

 

「……………さよなら」

 

──────悲しそうにも見える零奈からの別れの言葉が上杉に告げられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………………」

 

零奈──────否、四葉は変装を解いてすぐにジャージ姿に着替えて茂みから出てくると、丁度部長と遭遇した。

 

「あ、中野さん。何処に行ってたの?途中から姿が見えなかったけど」

 

「その…………トイレに行ってまして。すみません」

 

「なーんだ、それなら良かった。てっきり帰っちゃったのかと思ったよ」

 

「………あのー、私そろそろ帰って勉強したいのですが…………」

 

「何言ってるの、3年の先輩も受験があるのに来てくれてるんだよ?」

 

「うっ……………そ、そうですよね。帰ったら先輩に悪いですよね……………」

 

四葉は横目でチラリと上杉が陸に上がって何処かに去っていくのが見えた。

 

「(……………上杉さん、ごめんなさい。でも、私だけが特別であっちゃダメだから…………)」

 

「ほら、中野さん。止まってないで走るよ」

 

「………………はいっ!」

 

切り替えるように無理に明るい声を出し、四葉は走り出す。別れを告げたのにも関わらず、釈然としない気持ちを抱えたまま───────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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PM 6:30

 

家に帰って俺の自室にて五月の勉強の面倒見ていると、何故か今日は遅れても勉強会に来なかった上杉が家を訪ねてきた。二乃のホテルから帰るついでに寄って来たらしい。上杉の奴、何か髪がいつもよりサラサラしてね?気のせいか?とりあえず 自室に招き入れて話を聞くと──────────

 

「え?二乃がプリントを破った事を謝ってた?」

 

「ああ」

 

上杉によると、今日は何故か二乃が部屋に入れてくれたらしく、色々と話した時に謝っていたとか。正直、謝ってくるとは思ってなかったので少し驚きだ。

 

「…………にわかに信じがたいです。二乃がそんなにすんなりと謝るとは思えません」

 

五月は二乃に対して疑心暗鬼らしい。まぁ、その気持ちも分からなくはないが。

 

「本当だ!お前もいつまでも意地を張ってるんじゃねーよ。ほら、この前二人で映画行ってたんだろう?また……」

 

「そうは言いますが、上杉君。あの後観たい映画の話で揉めたんですよ、『恋のサマーバケーション』と『生命の起源〜知られざる神秘〜』のどちらが面白そうかで。昔に比べて好みが変わってしまったのです。絶対に『生命の起源〜知られざる神秘〜』の方が面白いですよ!」

 

「いや、こっちの来年1月公開のこのアニメ映画の方が100倍面白いに決まってるだろ(断言)」

 

「別にお前も張り合わないで良いわ!」

 

「………………思ったけど、今なら俺も二乃の部屋に入れて貰えるんじゃね?上杉が行けたなら」

 

「どうだかな…………明日また行くつもりだが、お前も来るか?」

 

「……………そーね。久しぶりに二乃と話せるかもしれないし。五月、悪いが明日の勉強会は最初は各自自習ってことで。そんなに長居はせずにすぐに学校に戻って来るつもりだけど」

 

「はい、分かりました」

 

後で一花姉さんと三玖にも伝えとこっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、放課後。予想通り二乃の部屋に入れた。ちなみに、四葉に確認テストをしようと思ったのだが………………授業の間の休憩やお昼は一花姉さんと三玖に問題集の質問をされまくったので訊きに行く時間もなく、ならば放課後にと思って行ったらもうどこにも姿はなし。今日の最後の授業が体育(ちなみにバレーボール)だったから片付けとかで遅くなったので、グラウンドに陸上部自体の姿が見えないのでまた何処か別の場所に走り込みでも行ってしまったみたいだ。今日はお疲れだろうと夜に電話で確認テストをすることを決めて俺は二乃の部屋に上杉と来ていた。

 

「つーか、いい部屋泊ってんなー。にしても2人とも、喉渇いた………喉渇かない?(迫真)」

 

「確かに、何でも良いから飲みたいな。学校からここまで意外と遠いから喉が渇いた」

 

「じゃあ、ルームサービス呼ぶけど何頼む?」

 

「俺はアイスティー」

 

「俺も火野と同じのでいい」

 

「アイスティーね」

 

二乃は部屋にある電話でルームサービスを呼ぼうと受話器を手に持ち――――――そして元あった場所に戻した。

 

「……………………よくよく考えたら、何で当たり前のようにいんのよ‼しかも今日はこいつ(火野)もいるし‼」

 

「おいおい、何を今更のようにツッコんでるんだ。少し会わないうちにツッコミの熟練度が低下したか?練習するか?」

 

「しないわよ!」

 

つーか、俺らを部屋の中にいれたの二乃やろ。なのに何で『当たり前のようにいんのよ‼』って言われなくちゃいけないんですか(正論)

 

「にしても、昨日のしおらしさは何処に行ったのよ。寝たらリセットされてずうずうしくなったわけ?」

 

「……………昨日の1件は勿論ショックだった。だが、零奈から1つ学んだ事もある。それは「あっ、おい待てぃ(唐突)」……なんだよ、火野」

 

「零奈って誰の事だゾ?」

 

「あんた、こいつに昨日の事を話してないの?」

 

(聞いて )ないです。

 

「簡単に言うとね──────」

 

二乃によると、昨日上杉は5年前に出会った女の子────『京都の子』に再会したらしい。だが、真意を明かさず『もう会えないから』と言い残して別れたらしい。

 

折角会えたのに、それは残念だな…………にしても、彼女の言葉の真意も気になるなー……………。

 

「こいつ、昨日はかなり落ち込んでたわよ。あんな表情を見たことがなかったもの」

 

………………………ふむ。

 

「……………それを見た二乃は放っておけなくて部屋に入れたのか」

 

「!?………べ、別にそう言う訳じゃないわよ!ただ、その…………暇潰しに話し相手が欲しかったから入れただけよ!」

 

「oh…………This is Japanese ツンデレ! 」

 

「追い出すわよ!」

 

…………ふっ。久しぶりな感じがするなー、この二乃との漫才みたいなやり取り。

 

「さて、茶番はさておき。その…………零奈さんから何を学んだのよ?」

 

「脱線から漸く戻ってきた…………………俺は零奈から、人が変わっていくのは避けられない。過去に執着するのではなくて、今を受け入れていかなきゃならない─────って事を学んだ。だから二乃。お前も仲直りして帰ろう」

 

──────それは正しい。人は色んな経験をして成長─────変わって行く生き物だ。過去に執着せず、受け入れるのも人生において必要な場面は必ず出てくるだろう。

 

「…………そんな簡単に割り切れないわよ。これは独り言だけど…………」

 

二乃は俺達に語り始める。『過去』を───────言い換えれば『弱さ』とも言えるのかもしれない。

 

「私たちが同じ外見で、同じ性格だった頃は全員の思考が共有されているようで居心地がよかった」

 

「…………でも。それは五年前から少しずつ変わっていった。外見も変わって、好きな事もバラバラになった─────五つ子なのに『同じ何か』が共有されなくなっていった」

 

「皆は五つ子から巣立っていった──────私だけを残して。私だけが未だに殻を破れていない。あの頃を忘れられないでいる。だから……………髪の長ささえ変えられずにいるの」

 

「……………だけど、無理やりにでも巣立たなくっちゃ(変わらなくちゃ)ならない。私一人だけが取り残されたままは嫌だから」

 

───────なるほどね。漸く理解した。姉妹への愛が誰よりも強く、そして過去への固執故に巣から飛び立てていない二乃にとっては変わっていく姉妹が寂しかったのかもしれない。それと同時に自分だけが取り残されて───────自分だけが変われていないのかと苦悩していたのかもしれない。

 

「……………まぁでも、俺から言わせれば変わらずにいることも大切だと思うぜ」

 

「……………どういう意味?」

 

「二乃が自分でも分かってる通りお前は変わらなくちゃならない。けど、二乃が過去―――昔から抱いていた『姉妹が大好き』って思いは無理やりにでも変わったり、忘れたりする必要はないだろ?」

 

「それは……………………そうね」

 

「過去から変わらなくても良い事は突き通し続ければ良い。『変わらなければならないこと』と『変わらなくていいこと』の区別はちゃんとしておけよ。『変わらなければならないこと』が変われれば、二乃はもう巣から飛び立ててると思うぜ」

 

「「……………………」」

 

………………あれ?何か変な事を言ったか?

 

「……………ドSの癖にこういう時だけ良い感じの事を言ってて、無性にムカつくわね」

 

「いつものお前からは想像も出来ない言葉だったな……熱でもあるのか?」

 

「しばくぞ」

 

人が折角真面目にアドバイスしてるってのに、失礼な!

 

「『変わらなければならないこと』と『変わらなくていいこと』、ね………………ま、確かにその通りだし覚えておくわ。……………そうだ上杉。丁度良いから頼みがあるんだけど」

 

「なんだ?」

 

何だろう…………?

 

「あんたの従弟のキンタロー君に会わせてくれないかしら」

 

「「!?」」

 

実を言うともう目の前にいるんですが、それは…………。

 

「林間学校の時、しっかりお別れできなかったの。だからもう一度会ってちゃんと一区切り付けたいのよ。どんな結果になろうと、今の関係のままじゃ嫌だから」

 

――――――さっきの俺の言葉で表せば、二乃の中では『変わらなくていいこと』じゃなくて『変わらなくちゃいけないこと』って訳か、キンタロー(もう1人の上杉)との関係は。

 

……………………どうする、上杉?選ぶのはお前自身だ。

 

「……………………分かった。あいつもお前に話したいとか言ってた気がするし………………1時間後に会う約束を取り付けておけば良いか?」

 

「ええ、それで良いわ。私も色々準備したいから」

 

――――――やる気(変装する)のようだ。

 

to be continue‥…




と、言う訳で原作とは違って四葉自らがさよならを告げる展開にしてみました。この展開を後に活かせる……………ようにストーリー構成を頑張ります。

そこまで原作と会話を変えなかったのは、五つ子は昔は同じ性格だったので『昔の五月』=『昔の四葉』と言えて、原作で五月が零奈への変装を頼まれたときに『昔の五月のままでいい』と四葉が言っていたじゃないですか。なので原作の零奈は『昔の五月』≒『原作の零奈』とも言えなくもない訳で、そうすると『この小説の零奈』ともイコール関係を結べる気がします、多分。

図にすると 

『原作の零奈(五月)』≒『昔の五月』=『昔の四葉』=『この小説の零奈(四葉)』 → 『原作の零奈』≒『この小説の零奈』

的な感じで会話は大きくいじらなかった訳です。ガバガバ理論じゃない事を祈るが、もしそうだと感じたら……………………目を瞑ってください(震え声)

何で演技が苦手な四葉が『零奈』が上杉に四葉とバレずに完遂出来てるかどうかに関しての理由付けとしてはまぁ、上の図が頭にある前提として述べると本編でも触れた通り四葉の中で

昔の自分を演じる>>>>姉妹に(を)変装する/演じる

的な感じのがあったわけです。姉妹のフリを演じるのがゲームのレベルで言う『ハード』なら昔の頃の自分を演じるのが『ノーマル』的なレベルの差がある感じです。だからギリギリだった訳じゃないけどバレなかったみたいなもんです。

……………………作者は現実世界においてもこう言ったのも含めて誰かに説明するのがあまり上手じゃないんです。なので、これで納得してくれたなら嬉しいのですが腑に落ちないとか、『ガバガバ理論で草』とかだったらすみません。つーか、逆に誰か分かりやすく説明して欲しいくらい(他力本願)

『俺のこの説明の方が分かりやすいですよ的』な人がいれば感想とかで書いてくれたら採用して書き換える可能性が微レ存…………?

取り敢えず理由とか理屈とかは放っておいて、原作とは違って『京都の子』の四葉が自分自身でさよならを告げたって事だけ覚えておけばおkです。500字も使って理屈とか説明しないで最初からそれだけ言えばよかったのかなー、なんて気もしますが総悟が一花姉さんに言っていたように『何事もチャレンジ精神』なので理屈の説明に思い切って挑戦してみた感じです、うん。

ここまでお付き合いいただきありがとうございました。よし、寝よ……………………。


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7つのさよなら その5

Fateの再上映を見に行ったら特典のポスターが意外と大きかった……………………。どうするかお悩みなう。


『じゃ、俺は勉強会に戻るんで』と断って俺も二乃の部屋から上杉と共に撤収。そのまま学校に向けて歩く。

 

「つーか、お前どーすんの?今から金髪に染めるんか?」

 

「そんな訳あるか。学校に戻って林間学校で使ったカツラを取ってくる。何処にしまってあるかも知ってるから問題ない」

 

「そうか……………で、どうすんの?正体明かすの?」

 

「………………今後の事を考えるとキンタローを演じ抜くのが良いと思ってるが……………」

 

「……………ま、そこら辺はお前が選べ。悔いが残らんように、な」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上杉と学校で別れた後、俺は図書館で自習をしている一花姉さんら3人の元へ。

 

「待たせたな(ス〇ーク風)」

 

「あ、ソウゴ。二乃とは話せた?」

 

「まーね。いつものツンデレツッコミウーマンで何よりなことでしたわ」

 

「それで、フータロー君は?」

 

「あいつは二乃の心残りのケリを付けるのを手伝ってる。所でユー達の方はどうよ?進捗率は」

 

「ふっふっふ…………じゃーん!3人揃って問題集を解き終わりましたー!」

 

「あ、マジ!?よくやったぞ、3人とも!」

 

俺の想定よりも少し早くて驚いた。やっぱ成長してんすね~。

 

「よし。この問題集を解いた君達にこれを渡そう。持ってきておいて正解だったな」

 

「お、もしかしてプレゼント?」

 

「カレーですか?」

 

(カレーでは)ないです。プレゼントとは─────

 

「ほい。問題集その2」

 

「「「…………」」」

 

3人は石化したかのように固まっている。まぁ、こんな反応をするだろうとは思っていた。

 

「問題集を終えた人から渡そうと思って作った、いわゆるボーナスステージだ。これは俺氏1人で1日で作ったのだ。見て分かる通りその1よりは分厚くはない。けど、内容はその1を踏まえた上での内容となってるから少し難しめかな?」

 

厚さとしてはその1の1/5位ですかね?

 

「火野君…………ちなみにですが、これが終わったらその3もあるんですか……………?」

 

「その3はない。………………今、全員ホッとしたろ?」

 

あ、全員目を逸らした。これは確定演出ですね。

 

「つー訳で、最終下校時刻までやるぞー!」

 

「………よーし、皆頑張ろう!」

 

「うん!」

 

「はい!」

 

何か…………自分の生徒が頑張ろうとしている光景を見てると、ポカポカしますね。ポカポカと言えば……………エ〇ァンゲリオンのぽか波が思い浮かびますネ!

 

「……………………いや、んなことは今はどうでも良いわ!」

 

「「「!?」」」

 

「…………あ、こっちの話だから気にするな。続きをやって、どうぞ(………テストが終わったら『序』から『シン』まで一気見するか)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PM8:00

 

最終下校時刻を過ぎて学校前で解散した後、家に帰ってから飯食って、自室で気分転換にソシャゲをやっていると上杉から着信が。

 

「もすもす?終わったか。どうだったよ、二乃はケリを付けれたか?」

 

『……………………………』

 

――――――まさか。

 

「………………失敗したか?」

 

『………………キンタローが俺だったことがバレて二乃を怒らせちまった。そしてまた睡眠薬で眠らされてて、その間に二乃はあのホテルから出て行っちまった…………』

 

うーむ………………林間学校の肝試しの時は暗かったことが幸いしてバレなかったのかもしれないが、今回はバッチリ顔が見えたからバレたのかもしれないな。

 

「………………ま、気にすんな。起きてしまったことにあーだこーだ言ってもしょうがない。居場所が分からない以上、もう後は信じて待つしかやる事はないな」

 

『………そう、だな………悪い、迷惑掛けて』

 

「あんま気にすんな。じゃ、また明日」

 

上杉との通話は終了。と、そこへお風呂から出た五月が部屋に顔を見せる。

 

「火野君、お風呂空きましたよ」

 

「はいよー」

 

よし、俺も入ってくるかー。

 

「(………………そういや、何か忘れてるような………………まぁ良いや。今はお風呂だ、お風呂!Foo↑)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

pm10:00

 

「ふー、スッキリしたぁ」

 

長風呂し過ぎたな。まぁ、たまには良いだろ。…………べ、別に前に五月が入ってたからって残り湯を堪能する為に長風呂したわけじゃないからな、ほんと!?

 

「あ、火野君。長かったですね」

 

「ま、多少はね?で、どったの?」

 

「この問題集その2に分からない所があって…………」

 

「どれどれ…………あー、こいつはですね―――――」

 

かくかくしかじかで分かるやすくヒントを出して答えに導く。

 

「――――――なるほど!つまり答えはこうなる訳ですね!」

 

「そうだよ(同意)」

 

うーん…………この問題はノーヒントじゃ少し難しかったか。後で一花姉さんと三玖と四葉にヒントでも送っ………………四葉?

 

「ああっ!」

 

「!?………ど、どうしたんですか急に大声なんて挙げて………………?」

 

「四葉に確認テストの電話をするのすっかり忘れてた!!………………まぁ、でもまだ10時だし起きてるべ。あっぶね、あっぶねー」

 

ギリギリ、いやふつーにセーフって事で四葉に電話しまーす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ただいま電話に出ることが出来ません。ピーっと鳴りましたら――――――』

 

………………訂正。セーフじゃなくてアウトだったかも。3回掛けて3回とも留守電に繋がった。

 

「もしかしたら、もう寝てるのではないですか?」

 

「………そういや、前に行った時もこの時間帯は寝てたな。すっかり忘れてた……………『~♪』…………………四葉じゃなくて一花姉さんからだった。もしもしー?」

 

『ソウゴ君、今時間良いかな?』

 

「良いけど………………その前に、四葉は今どうしてる?」

 

『四葉?ちょっと待って………………部屋でぐっすり寝てるよ』

 

電話に気づかない位爆睡してるらしい。部活と勉強でお疲れなのだろう。

 

『もしかして四葉に用事でもあったの?起こした方が良い?』

 

「まー、そうだけど…………………………………………あー、やっぱ叩き起こすのも何か罪悪感あるし明日で良いや!そんで要件は?」

 

『えーっとね、丁度四葉の事なんだけど。何か明日は朝練もあるらしくて』

 

「…………は?まじでブラックじゃねーか」

 

テスト期間中だってのに、ついに朝にもやるようになったか。朝練を決めたであろう人物の部長はマジで駅伝の事しか眼中にないみたいだな。テストについては無関心か。

 

『当事者同士で解決するのが1番だと思ってたんだけど、そうも言ってられないみたい。四葉はかなり無理をしているようにお姉さんには見えるんだよね。本人はそう言うことは言ってないけど』

 

「そうか…………四葉はあの問題集は全部終えてるのか?」

 

『うん。今日で全部終えてたよ』

 

「…………取り敢えず、俺は明日陸上部に行って四葉が両立できてたのか確認しに行くけど、一花姉さんも来るか?」

 

『あー、ごめん。私、明日は朝から仕事で学校は休むんだ』

 

「そうか…………なら、上杉と…………暇そうだし五月もつれて一緒に行くわ。「暇そうってどういうことですか!」ジョークだ、ジョーク…………じゃ、一花姉さんも早めに寝ろよ。仕事に支障が出ないようにな」

 

『うん。それじゃ、おやすみ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

「起きろ五月ー!今日は早めに行く約束だろうがー!」

 

「あ、あと5分…………」

 

昨日、『さっきはああは言ったけど別に行かんでもええで?』と言ったのだが、四葉の事が気になるのか結局行く事に。なお、上杉はすぐに承諾した。

 

「ダメですぅ。早く起きてくださいー」

 

「いいじゃないですか二乃…………あっ。いや、その…………」

 

二乃の名前を出す辺り、何だかんだで結局は大切に思ってるみたいねー。目が覚めたところでさっさと朝飯を食べて(勿論五月はおかわりしてた)準備して家を出た。上杉とは学校前で合流。さぁ、と言う訳で四葉の所へ凸しよう!

 

「悪いが2人とも、四葉の前に二乃の所に行っても良いか?」

 

─────と、上杉が申しているので先に二乃の所へ。だが

 

「二乃?今日は休むらしいよ」

 

「「「…………」」」

 

《悲報》二乃、遂に学校にすら来なくなる。……………こりゃ完全にご立腹か。前にも上杉にも言った通り、もう信じて来るのを待つしかない。

 

気を取り直して、今日の本題(四葉)へ。グラウンドに行くと丁度休憩中のようだった。

 

「来週は高校駅伝本番だね。あなたがいなければ参加できなかった!中野さん、走りの天才のあなたを頼りにしてるよ!」

 

「お前が天才とは世も末だな」

 

「運動は出来るからね、しょうがないね」

 

「う、上杉さんに火野さん…………」

 

「……………君達は?」

 

「あんたが部長か。期末テスト前ってのに練習とはご立派じゃねぇか」

 

「ブラック企業…………いや、ブラック部活ェ…………」

 

「ブラックとは失礼しちゃうなぁ。大切な大会があるから練習してるだけだよ。試験なんかよりよっぽど大切だからね」

 

「………あ?試験なんて?」

 

ヤバイヤバイ、上杉キレそうやんけ!

 

「わー!大丈夫です、ちゃんとやれてますから!」

 

だが、部長と上杉の間に四葉が割って入った事で何とかキャンセルされた。

 

「四葉、無理をしてませんか?」

 

「ちゃんとやれてのか?」

 

「大丈夫です、ちゃんとやれてます!あの問題集は昨日で全部終わらせて、両立もさせてます!」

 

「!」

 

俺は昨日の時点で承知だが、上杉は知らなかったので少し驚いているように見えた。

 

「もう良いかな?もう少し走っておきたいから」

 

「まぁ、四葉がそう言うなら止めねぇよ」

 

「おっ、待てい(江戸っ子) まだ話は…………え、良いの?」

 

「ちょっと、良いんですか?」

 

あっさり引くの、と思いきや上杉は上着を脱ぎ捨てる。

 

「俺も一緒に走りながら四葉がどれくらい出来てるのか確認しよう。それなら邪魔じゃないだろう?」

 

………………え?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5分後

 

「戻ったぞー。…………この様子ならスポドリ買ってきて正解だったな」

 

「ゼェ………!ゼェ…………!し、死ぬ…………」

 

何周したのかは知らないが、体力がない男だからどうせ死にかけると思ってスポドリを買いに行ってる間に上杉はベンチに寝そべって大きく息を吐いていた。スポドリを渡すと、すぐに半分を飲み干す。

 

「で、何周出来た?あと四葉は出来てたか?」

 

「さ…………3だ…………そんなことよりもだ。四葉の奴、全部微妙に間違って覚えていやがった。だが、本気で部活と両立させようとしてたんだな……………」

 

「…………そうか。『させようとしてはいた』が、厳しい言い方になるけど『出来てはいなかった』か。あと2日で間違った知識を何とか叩き直さないといけないんだが………………もしこの土日も部活を入れられたらたまったもんじゃないな」

 

はっきり言うと、陸上部は勉強の邪魔でしかない。

 

「…………どうする、火野?」

 

「…………部活をやめさせるにしても、部外者である俺らがいくら騒いだ所で無意味だ。本人の口から辞めたいと言わないとな。…………俺としては本人の意思を尊重したいのだが、四葉はどうしたいのやら」

 

「………………………………」

 

一花姉さんは無理をしていると言っていた。だとしたら、本当は四葉は部活を辞めたい可能性があるが、それはあくまで可能性────────実際の所は言葉にしてくれなきゃ分からない、とはまさにこの事か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、いつもの図書室での勉強会に一花姉さんも合流。あの社長に車で学校まで送ってくれたらしい。取り敢えず、姉さんに朝の事を報告した。

 

「そっか………………よし。じゃあ、後で私が四葉の本心を探るよ」

 

「そんなこと出来るのか?」

 

「フータロー君、私は四葉のお姉ちゃんだよ?一緒に過ごしてきたあの子の事は何でも知ってる。それくらい簡単な事だよ」

 

流石は姉さん。頼りになるぅ。

 

「四葉については本心を聞いてからどうするか決めるとして、後は二乃か……………」

 

説得するにも居場所から特定せにゃあかんのかぁ……………三玖に『私と似たツンデレ臭のする女を見ませんでしたか』的な事をやって貰うか?

 

「…………あ、そうだ。私、二乃の居場所を知ってた」

 

「あー、そうなんだ。三玖は二乃の居場所を知っ……………………ファッ!?マジでか!?」

 

「ソウゴ君、声が大きいって!」

 

あ、ヤバいヤバイ。怒られちゃう怒られちゃう……………。

 

「…………三玖は何で知ってるの?」

 

「一昨日、二乃が泊まってるホテルに行ったらキャリーバッグを持って出ていく二乃を見掛けたから、こっそりついて行って泊まってるホテルを特定しておいた」

 

おお!流石は三玖……………いや、三玖さん!

 

「二乃の説得は私に任せて。だから皆は」

 

「待った。二乃の説得には俺も行くわ」

 

「ソウゴ?」

 

「殴り合いのキャットファイトが起きた場合にストッパーの保険が必要だろ?」

 

………………まぁ、色々と聞いたり話したいって言うのもあるけどね。

 

「じゃあ、三玖とソウゴ君が二乃の所へ。四葉は場合によってはフータロー君と五月ちゃんで何とかするよ」

 

「おっけい。先ずは四葉の本心を探るのは任せたよ。…………よし、取り敢えず切り替えて勉強するか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===============

 

『上杉さんすみませんでした。私本当は』

 

そこまで打って、四葉の指が止まった。

 

案の定と言うべきか、何と土日で合宿をすることになってしまった。流石に四葉も断ろうとしたのだが、周りも予想外な事に肯定的でしかも部長から本人も無自覚であろう圧力を加えられて断れなかった。

 

結局、心に蓋をするかのようにメールを消す。すると後ろからひょっこり現れる女が1人。

 

「送らないの?」

 

「うわあっ!?」

 

その人物は一花である。

 

「し、心臓に悪いよー。一花は何しに来たの?」

 

「私も歯磨きだよ」

 

「そ、そっか。じゃあ、私はうがいし」

 

「待って。歯ブラシ据えてただけで磨けてないじゃん。やってあげるよ」

 

「え?…………で、でも子供じゃないん……もごご………に、苦い~」

 

「私の使ってる歯磨き粉。これが大人の味なのだ。四葉にはまだ早かったかな~?」

 

「よ、余裕のよっちゃんだよ!」

 

売り言葉に買い言葉で思わず四葉はそう言い返す。

 

「身体だけ大きくなってもやっぱり変わらないね。1人じゃ辛いことは、無理しないで言ってくれたらいいのに」

 

「む、無理なんて」

 

「どれだけ大きくなっても四葉は妹なんだから。こういう時は素直にさ――――――お姉ちゃんを頼ってくれないかな」

 

長女として、頼れるお姉ちゃんとして出た言葉のジャブは――――――四葉が本心を思わず零してしまう程の威力があった。

 

「私………………部活 辞めちゃダメかな………………………」

 

――――――四葉の口からかぼそい声で出た本心。その場にいる長女と3人(・・)は聞き逃さない。

 

「辞めてもいいんだよ」

 

「………ハッ!や、やっぱだめだよ!陸上部の皆んなに迷惑がかかっちゃう!そ。それに勉強と両立出来てるんだから……………一花がお姉さんぶるから変なことを言っちゃった」

 

まぁ、実際は出来てるとは残念ながら言い難いのだがそれはさておき。一花は洗濯機からあるものを取り出す。

 

「こんなお子様パンツ履いてるうちはまだまだ子供だよ」

 

「わーっ!そ、それ上杉さんと火野さんには見せないでよ!…………明日も部活があるからもう寝るね」

 

「はーい」

 

四葉が部屋に入ったタイミングで一花姉さんは隠し持っていたスマホを2台取り出す。一つは自身の。もう一つは三玖の。一花の携帯越しに聞いていた上杉と三玖の携帯越しに聞いていた総悟、五月に一花は呼びかける。

 

「聞こえてた?」

 

『お子様パンツ』

 

『やっぱお姉さんなんだなぁ……(しみじみ)』

 

「それじゃあ………私たちのするべきことは決まったね、五月ちゃんにフータロー君」

 

『ええ』

 

『四葉を解放するぞ!』

 

『よーし……………明日で全て終わらせるぞ』

 

家出騒動に部活騒動。この2つの問題に終止符を打つ為に5人は動き出す――――――。

 

to be continued………




今日は少し真面目(?)と言うかこの作品を書き始めた背景の話を。

当作品はノッブじゃない真名の名義で書いていた処女作の続編を書いてる内に何か面白くなくてモチベも下がって消去して2か月後に、五等分の漫画を読んでたらこの作品を思いついて特訓も兼ねて書き出したと言う背景があります。『あっそ』と思ってる方もいるかもしれませんが、まぁ『ふーん』って感じで結構です。そしたらかつて書いてた続編や処女作の評価やお気に入り登録者を約2か月で上回ってびっくりドンキーです……………………何だ今のギャグ。くっそつまんな。

………………ごほん。ここまで書いてこれたのも読んでくれる皆様の存在があってこそです。とても感謝しています。そしてこれからもこの作品を読んでいただけると幸いです。よろしくお願いします。

あー、ちなみに近い内に自分で課したノルマと言うか条件が満たされて作者の真名が解放されると思います。解放された所で特に何もないんですが。あ、メッセージが送れるようになるとかありますね。ちなみに、コラボとか結構好きなんで話を頂ければリアルの忙しさ等を吟味してOKだすかも知れなかったり。まぁ、そもそもとしてそう言う話は真名解放されてからですね。

今日もここまで読んでいただきありがとうございました。


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7つのさよなら その6

もうその6か。早いなー。ここら辺の五等分はマジでお気に入りの回が多くて『FOO↑』ってなりながら書いてます。楽しいなー。そういやもう三月終わりですね。一月は行く、二月は逃げる、三月は去るとじゃこの事じゃな。


「お邪魔します」

 

「おはやっぷー☆」

 

「…………私にプライバシーはないわけ?」

 

ホテルを変えてもまさかやって来るなんてね。そして三玖の変装でセキュリティも突破されてるし。もっと遠くのホテルにしておけば良かったかしら。

 

「…………言っておくけど、何を言われようと帰らないから」

 

「お茶淹れるけど飲む?」

 

「ここ私の部屋なんだけど!?」

 

図々しい妹ね…………三玖も火野や上杉の悪影響を受けたのかしら。

 

「二乃は何か飲むか?俺は心優しいから三玖の分とついでに淹れてやろうじゃないか」

 

「あっそ。じゃあ、紅茶。砂糖は2つ分入れといて」

 

「へいよー、 かるでらっくす」

 

変な返事ね。まぁ、これがあいつの通常運転かしら。

 

「そんなに砂糖をいれてたら病気になる」

 

「私の勝手でしょ。その日の気分によってカスタマイズできるのが紅茶の強みよ」

 

「よくわかんない。無駄に甘そうだし………」

 

「そんなおばあちゃんが飲むようなお茶が好きなあんたには一生分からないわよ」

 

「あの渋みが分からないなんてお子様」

 

「誰がお子様よ…………って、こんな時にあんたとまで喧嘩してらんないわ」

 

「(二乃も少しは大人になったのか………これはたまげたなぁ)」

 

「……………あんた、何か失礼な事を考えてなかった?」

 

「いや、全然(こやつ、エスパータイプかよ……………)」

 

火野はそう言いながら私と三玖に紅茶と緑茶を出す。

 

「これ飲んだら帰りなさいよ。ていうか、どうやってここを見つけたのよ?」

 

「一昨日に前のホテルに行って、そこで飛び出す二乃を見つけて尾行した」

 

「ガチのストーカーじゃない」

 

「いや、ガチのストーカーは天井裏とか軒下とか電柱の陰に常時いるもんだぞ」

 

「…………………あんた……………ストーカーでもされてた経験でもあるの?やけに詳しいって言うか、言葉に重みがあるって言うか」

 

「漫画の話だけど」

 

「……ああ、そう」

 

…………よくよく考えれば、このドSオタクにストーカーする程好きな物好きな奴はいないか。

 

────いや。もしかしたら三玖とか一花は好きなのかしら?一花は同じクラスで隣らしいから好きになるとかあり得るだろうし、三玖はこいつといると楽しそうに見える気がするし。

 

「………………ま、人の好みはそれぞれだから別に良いんだけど」

 

「「?」」

 

「なんでもない。こっちの話よ」

 

「そう………………二乃。一昨日、フータローと何かあったの?何だか様子がおかしかったからあの時は声をかけられなかったけど………」

 

………………この際だ。全部ぶちまけてしまおうか。

 

「あいつは絶対に許されない事をしたのよ…………聞いて驚きなさい!!あいつ、変装して騙してたのよ!!」

 

「なんだ」

 

「そう……(無関心)」

 

…………………。

 

「いや、反応薄ッ!」

 

「だって俺は一昨日上杉から聞いてたし」

 

「変装なんて私達がいつもやってる事でしょ」

 

「それは……………そうかもしれないけど…………」

 

…………いやいや。私の心を奪ったのが、変装したあいつ(上杉)だったなんて。許せる筈がない。

 

「それだけ?」

 

「それだけよ!……それだけだわ」

 

「ほんとに?」

 

「嘘つけ、絶対にまだ何かあるゾ」

 

………………勘の鋭い2人ね。

 

「…………5人でいてほしいって言われた。試験とかどうでも良いって」

 

「!………………勉強大好き男の上杉が『試験なんて』とはね。…………あいつもお前らと出会って変わったらしい」

 

「……私の都合を聞いた上で勝手な事を言ってくれるわよ、ほんと」

 

「二乃は帰りたくないの?」

 

「なんで帰らなきゃいけないのよ。 …………私達はもう一緒じゃない。好き嫌いも変わって、すれ違いも増えたわ。だからストレスも溜まる。そんなバラバラの私達が一緒にいる意味なんて」

 

「家族だから。………それだけじゃダメ?」

 

「それだけで充分やろ(断言)」

 

「…………。そうね」

 

火野の言う通り、それだけで充分過ぎるわね。

 

「まったく、そんなことも分からんとは…………あんたバカァ?」

 

「うっさいわね!」

 

この男は私に対してはいつも一言余計だっての!ストレートに言ってくれるわよ、ほんと。…………まぁ、バカなのは全否定出来ないかもしれないけど。

 

「それに、私からすれば二乃も十分変わってるよ」

 

「…………何がよ」

 

「昔は紅茶を飲まなかった。以上」

 

「…………いや、それだけ!?」

 

「冗談。………料理やお洒落が出来るようになって、社交的になって頼れるお姉ちゃんになった」

 

「……………そ、それはどーも」

 

面と向かって言われると何か照れるわね…………。

 

「私たちは1人20点の5分の1人前。……………あの問題集の問3。正解は長篠の戦い」

 

「……………な、何よ急に。自慢のつもり?」

 

「ううん。元々好きだから…………戦国武将」

 

「!」

 

三玖の言葉を聞いて何故か火野は驚いた表情を浮かべた。そして微笑を浮かべながら口を開く。

 

「……………少し前まで姉妹には言えないって言ってたのに、今は笑顔すら浮かべて誇らしげに言うとは…………三玖、変わったな。勿論、良い方向へ」

 

「うん。これも全部ソウゴのお陰。屋上と公園で言ってくれたから、今の私がある」

 

………………良く分からないけど、私の知らない所で色々とあったみたいね。

 

「これが私の持つ20点。そして」

 

「あっ…………」

 

三玖が私の紅茶を飲んだ。

 

「…あ、甘過ぎる…………」

 

「何やってんのよ…………」

 

「………でも、この味は二乃がいなければ知れなかった」

 

「!」

 

「確かに昔は5人そっくりで、諍いもなくて平穏だった。でもそれじゃあ、皆んな同じ20点のままだよ。笑ったり、怒ったり、悲しんだり─────5人各々が違う経験をして、足りない(80点)ところを補いあって私達は1人前(100点)になろう」

 

「……………」

 

「だから、違ってていいんだよ」

 

「……………」

 

………………違ってていい、か。

 

「二乃。前に自分は昔から変われてない的な事を言っていたな。でも、さっき三玖が言っていたように、昔の二乃にはなかったもの、要は『個性』がある──────実際は変わっていたって訳だ。本当は気づいていたんじゃないのか?」

 

──────火野の言う通りだ。私は昔の頃とはもうとっくに違っていた。変わっていた。『個性』と言う名の羽は得ていたが巣から飛べずにいた。それは居心地の良かった昔に執着するあまり、自分も含めて姉妹(みんな)が変化していく=違っていく事を受け入れる事が出来なくて。あるいは受け入れる事を恐れて。

 

けど、この子(三玖)は私が『変わっている』、そして『違ってていい』と言ってくれた。単純な話、私は誰かにそう言って欲しかっただけなのかもしれない。飛び立つための最後の一押し(勇気)が欲しかった。ただ、それだけだったのかもしれない。

 

妹に最後の一押しをされるとは………………本当に大きくなったわね、三玖。心の中でそう呟きながら私は三玖の緑茶を飲む。これは三玖の20点だ。

 

「……苦い。これでハッキリしたわ。紅茶の方が美味しいわね」

 

「紅茶だって元は苦い」

 

「こっちは気品な苦味よ。きっと高級な葉から抽出されてるに違いないわ」

 

「緑茶は深みのある苦味。こっちの方が良い葉を使ってる」

 

「………ふっ」

 

私達の会話を聞いていた火野が笑い声を漏らす。

 

「何よ、急に。今の会話に何か面白い所なんてなかったと思うんだけど」

 

「いいや、バッチリあったぞ」

 

「………………分かった。二乃が言ってたことが間違ってたからだ」

 

「どうだか。実際は緑茶がそこら辺の雑草を使ってて、あんたの方が間違ってるんじゃないかしら?」

 

だけど、実際はと言うと――――

 

「紅茶も緑茶も『カメリアシネンシス』って言う同じ樹からできてるんだよなぁ」

 

「「…………」」

 

「違うのは発酵度合いとかよー」

 

───────どっちも不正解だった。三玖と同じく私も思わず笑ってしまう。

 

「ふふっ」

 

「ハハハハハ、何よそれ!こんな面白い話、皆んなにも、教えてあげ………あ」

 

……………我ながら、姉妹への想いは誰よりも強いらしい。これは一昨日に火野が言ってた『変わらなくてもいい』事。そして『変わらなければならないこと』は───────もう見えている。変わる覚悟も三玖のお陰で出来た。私は荷物から鋏を取り出す。

 

「え?………ちょ、二乃さん?」

 

「な、何を…………?」

 

「三玖、火野。あんたらも覚悟しなさい」

 

「「!?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

====================

場面は変わって四葉解放チーム。突然、一花のスマホに総悟から着信が。

 

「もしもし?どうかしたの総悟君?」

 

『ヤバい!二乃が遂に頭がイカれたァァァァ!今、風呂場に三玖と籠ってる!『誰の頭がイカれたよ!ちょっと、早く出てきなさい!』……一花、お願いだから早く来て何とかして……もうダメかも…………』

 

「!そうだ、丁度良い。一花、三玖を連れてきてくれ!」

 

「!…………そう言うことね、分かった!2人とも、今から急いでそっちに向かうね!あ、それと五月ちゃん!念のため、変装用のリボンの予備を1つを預けておくね!」

 

「は、はい!」

 

『マジで殺される前に早めに頼むわ!『いや、違うわよ!私はただ』ブツッ』

 

二乃が何か言おうとしていたが途中で通話は切れた。今一状況は把握できてないが、一花はホテルに向けて駆け出す。

 

「上杉君、もしかして」

 

「そうだ。四葉が断れないならお前達が断れば良い…………入れ替わり作戦だ」

 

「やはりですか…………私は入れ替わりは少し苦手でして…………前に一花の真似をした時も心臓バクバクで」

 

「そうには見えなかったが…………まぁ、良い。だから変装の名人の三玖を呼んだんだ。一花が連れてきたらお前のジャージを着て貰う。そして俺が……………って、もう陸上部の奴ら出発してやがる!駅に着く前になんとかしないと………やりたくもない部活で貴重な土日を潰されてたまるか!」

 

取り敢えず上杉と五月は距離を取って尾行。ただ、このまま尾行してるだけでは意味がない。

 

「…………やむを得ん。五月、三玖が来るまでお前が四葉の代わりをやるんだ」

 

「え!?」

 

「早くリボンを付けろ!駅に着いちまう!」

 

「………わ、分かりました!」

 

半ば上杉に強引に押される形で五月はリボンを付けて星形のアクセサリーは外す。

 

「え、えっと……………嫌です!こんな役目もう辞めたいですー!……………みたいな感じで良いですか?」

 

「そうだ、そのアホっぽさのある喋り方はまさに四葉だ!見た目も完璧だし、これで行けるぞ」

 

「そんなにうまくいくでしょうか………」

 

五月の中に一抹の不安が残るなか、上杉は作戦を説明する。

 

「俺が四葉を何とか陸上部から引き剥がす。そして何気なくお前が四葉のフリをして戻って退部を申し込んでくれ。頼んだぞ」

 

どうやって四葉を引き剥がすのかと言う疑問が浮かんだ五月は尋ねようとするが、それよりも早く上杉は息を大きく吸い込み───────

 

「痴漢だー!痴漢が出たぞー!」

 

陸上部の面子にも聞こえるくらいの大声で叫んだ後、近くの階段を駆け上がる。

 

「そこの人、止まりなさーい!」

 

そして声に釣られた四葉も上杉を追って階段を駆けていく。なんともまぁ捨て身な作戦である。

 

「(信じますよ………私は四葉、私は四葉…………)」

 

五月は内心でそう呟きながら陸上部の元へ─────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「捕まえましたー!」

 

「グエッ!」

 

誰の目からも分かりきっていた結末ではあるが、上杉はあっさりと四葉に捕まった。

 

「あれ、この匂い…………う、上杉さん!?ど、どうして…………痴漢なんて………」

 

「嘘!痴漢なんて嘘!……これはお前を誘き寄せるための作戦だ」

 

「誘き寄せる………?」

 

「今、五月がお前の代わりに退部を申し込んでる」

 

「!……………わ、私はへっちゃらですから!」

 

「いい加減にしろ!へっちゃらな訳があるか!昨日、お前も辞めたいって言ってただろ!四葉、お前が本当に大切にしたい物は何だ!?」

 

「!…………そ、それは…………」

 

「…………隠れろ!」

 

四葉の口を押さえて柱の陰に隠れる。様子がおかしいことに気が付いたからだ。

 

「わ、私は四葉ですよー。ほら、リボン」

 

「うん。似てるけど違うよ。髪の長さが違うし」

 

「くっ、何て鋭い観察眼なんだ…………!」

 

早速バレた。

 

「上杉さんはもっと他人に興味を持ってください………私のためにすみません……………でも!」

 

「ま、待て!」

 

四葉は陸上部の元へ走り出してしまう。このまま戻られてはもう万事休す─────。

 

「お待たせしましたー!ご迷惑おかけしました、皆さん!」

 

「よ、四葉の奴…………もう陸上部に戻って……………ない?」

 

上杉の目の前にちゃんと四葉の姿はあった。当の四葉は陸上部の元にいる自分自身を見て固まっている。

 

「中野さん!」

 

「今度は本物ですよね………?」

 

「あはは。ちょっとしたドッキリでした。五つ子ジョーク!」

 

「なんだ、冗談だったんだね。でも笑えないからやめてよ。中野さんの才能を放っておくなんてできない。私と一緒に高校陸上の頂点を目指そうよ!」

 

「……………まぁ、辞めたいのは冗談じゃなくて本当なんですけどね」

 

部長の言葉を笑顔で切り捨てる四葉(?)。四葉(?)の発言に部長と五月は驚いていた。

 

「な、中野さん?なんで………」

 

「なんでって、そんなことも分からないんですか。とあるドS野郎の言葉を借りて言えば『あんたバカァ?』ですね。………………調子のいいこと言って私の事は何も考えてくれないし、前日に合宿を決めるなんてありえません」

 

トドメとばかりに四葉(?)は部長に一歩近づいて普段の四葉なら絶対出さないようなナイフのように鋭いかつ冷たい声で一言叩きつける。

 

─────マジありえないから

 

「ヒッ……………………ご………ごめんなさい………………」

 

そのまま力が抜けたのか部長は地面に崩れ落ちてしまう。用は済んだとばかりに四葉(?)は去っていき、五月も慌てて付いて行く。

 

「で、出た……………ドッペルゲンガー!うわーん、死ぬ前に皆とみかん狩りに行きたかったですー!」

 

「ふっー………………何とか間に合ったか」

 

そこへ息を切らした一花と総悟が戻ってきた。

 

「つ、疲れたぁ…………」

 

「陰から見てたけど、すげぇスカッとしたなー」

 

「一花に総悟………三玖を連れてきてくれてありが」

 

「あれは私じゃない」

 

「………………え?」

 

総悟の後ろから三玖がひょっこり姿を見せ、上杉は間の抜けた声をあげてしまう。そこへ五月と四葉(?)が5人の元へ戻って来る。

 

「三玖、間一髪でした。ありが………………あれ!?」

 

「一、三、四、五…………まさか…………」

 

上杉の頭の中に浮かんだ答えを肯定するように総悟はニヤリと笑みを浮かべながら笑う。

 

「そう言う事だ、上杉。喜べ諸君、第2の姉さまのお帰りだ」

 

四葉(?)はリボンを取って蝶の髪飾りを付ける。長かった髪はバッサリ切られてもうない。だがそこにいたのは紛れもなく─────二乃だった。

 

「私もホテルに着いて二乃の部屋に入った時は驚いたよ。そんなバッサリいくなんて、もしかして失恋ですかー?」

 

「……………ま、そんなところね」

 

「いやー、にしても最初に二乃が鋏を持って迫ってきた時はぶっ〇されるかと思いましたよー。すぐに誤解が解けたから良かったけどさぁ」

 

「ほんと、こっちもあんたらが急に風呂場に籠って一花に電話して騒ぎだした時は驚いたわよ」

 

「にしても、『あんたバカァ?』を勝手に使いやがったな?」

 

「ふん。どうせあんたが作り出した台詞じゃないんだろうし、好きに使おうがあんたにとやかく言われる筋合いはないでしょ」

 

「確かにぃ………(正論を言い返されちまった………これも〇ーレのシナリオ通りか………………)」

 

次に二乃は四葉の方を向く。

 

「四葉。私は言われた通りやったけれど、本音で話し合えばあの子達もわかってくれるわ。あんたも変わりなさい。辛いかもしれないけど、きっと良いこともきっとあるわ」

 

「……………。うん、行ってくる」

 

「1人で大丈夫?ついてこうか?」

 

「ありがとう、一花。でも、1人で大丈夫だよ」

 

一花の気遣いに感謝をしつつ、四葉は1人で陸上部へと戻って行った。さて、残る課題はこの2人(二乃と五月)についてだ。

 

「「………………」」

 

「…………お、おい2人と」

 

「はいはい、邪魔者は退散するぞ。…………あの2人はもう大丈夫だ」

 

「火野…………そうだな」

 

「腹減ったし、コンビニで何か買うかなー」

 

「私も抹茶ソーダ買う」

 

「あ、私はフラペチーノにしよっと」

 

4人が去ってその場は二乃と五月の2人きりに。先に話を切り出したのは五月からだった。

 

「二乃、その…………先日は」

 

「待って、謝らないで。あんたは間違ってない。今回は全部私が悪かったわ。……………強いて言うならビンタが強すぎた事くらいよ」

 

「二乃ぉ……!」

 

五月の瞳にはたっぷりの涙が浮かぶ。仲直り出来たのが相当嬉しかったのだろう。二乃も涙は浮かべなかったものの、内心は嬉しかった。

 

「そ、そうです。お詫びをかねてこれを─────この前二乃が見たがってた映画の前売り券を渡そうと思ってたんです」

 

そう言って五月は『恋のサマーバケーション』のチケットを取り出す。それを見た二乃は一瞬目を丸くしたが、すぐに口元に笑みを浮かべる。

 

「全く…………思い通りにいかないわね」

 

二乃は差し出そうとしていた映画の前売り券─────『生命の起源〜知られざる神秘〜』の前売り券を後ろに隠す。

 

同じではなくとも/変わってしまっても─────やっぱり彼女等は姉妹と言う事である。

 

to be continued…………




今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

三月に去られると忙しい4月がやって来るよー。やだー。


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7つのさよなら その7

次回で7つのさよなら編終了です。既にお気づきかと思いますが、この7つのさよなら編だけは何となくノリで毎日連続投稿でやらせて貰いました。これが終わったらまたマイペースに投稿します。今回は4000字程度。そして次回は10000字程度。まぁ、文字数増えたからと言って特に何か内容がスペシャルなわけでもないのですが。いつも通りです。ちなみに、次回のパロはつい最近アニメ二期が終わった小説のがメインです。ロリ推しが増えたかなー。

では、どうぞー。


かくして無事に懸念事項は全部解決。一行はマンションに戻って来た。自宅の玄関に入る直前、四葉は廊下に何とも美しいジャパニーズ土下座をする。

 

「この度は、ご迷惑をおかけして」

 

「ぬわああああん疲れたもおおおおん」

 

こいついつも疲れてんな

 

「朝から大変だったね〜」

 

「早朝だったのでご飯を食べ損ねてしまいました」

 

…………誰か四葉に反応してさしあげろ。

 

「全ては私の不徳の致すところでして」

 

「飲み物以外にも買ってくればよかったな〜」

 

「今日はシェフ(二乃)がいる」

 

「シェフ、何か高級なコース料理を作ってくんない?」

 

「姉妹の分だけなら良いわよ」

 

「は?(威圧)」 

 

誰も四葉に対して反応しない。四葉は思春期症候群を患って誰からも見えてない可能性が微レ存………?取り敢えずバニーガール姿で藤沢の図書館をうろつこうか(悪魔の誘い)

 

「大変申し訳なく」

 

「その前に」

 

一花は最後尾の2人(二乃と五月)を振り返る。

 

「おかえり」

 

「「ただいま」」

 

2人はそう言った。だが、両者共に玄関から先に入ろうとしない。

 

「早く入りなさい」

 

「お先にどうぞ」

 

「じゃあ同時に入るわよ。せーの………」

 

「「………」」

 

─────────動かない。 

 

「なんで動かないのよ!」

 

「二乃だって!」

 

「早く入って、どうぞ(迫真)」

 

「わぁ!?」

 

「ちょ、押さないでよ!」

 

めんどくさいので総悟が押して同着で家に入れさせた。 

 

「久々に賑やか」

 

「うん。よーし、じゃあこのまま」

 

「問題解決を祝って夜までパーティーをやりますねぇ!(食い気味)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、試験勉強だろうが!!」

 

パーティーになりかけた所で上杉からのストッパーが入った。

 

「明後日から期末試験なのを忘れたか?全ての問題が解決したんだから、勉強に全振りだ。文句ある奴いるか?」

 

「も、もちろん、そう言おうとしてたよー」

 

「そういや試験をすっかり忘れてたわ。朝から色々あったからね、しょうがないね」 

 

一同が話している中、空気の如く扱われている四葉は痺れを切らして顔を上げる。

 

「もー、皆聞いて」

 

「あ?いつまで気にしてんだ?早く入れ」

 

「じゃあ四葉が食事当番」

 

「おにぎりプリーズ」

 

「さっ行こ!」

 

「………うん!」

 

姉妹たちや教師達の優しさに少し涙を浮かべる四葉だが、拭ってすぐに家に入って行った。残念、バニーガールは永久にお預けかぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、何か言い訳はありますか?」

 

「……あ、ありません………………」

 

ソファに座っている私服姿の星奈さんの目の前では二乃が正座をしていると言う、何とも面白い光景が広がっていた。俺的には中々見れないであろう光景が見れて愉☆悦。

 

「言いましたよね?睡眠薬を盛るのは下手したら犯罪になると」

 

「は、はい…………」

 

何故こうなっているかと言うと、どうも二乃が上杉に対して睡眠薬を使ったのが如何なる経路かは不明だが(上杉は話してないらしい)星奈さんにバレて、一花姉さんに許可を取ってここで帰って来るのを待っていたらしい。星奈さんを認識した時の二乃の『ああ、死んだわこれ』的な絶望の表情は一生忘れられない思い出(?)になった。二乃本人も思い出になるかトラウマになるかはさておき一生忘れられないだろう。

 

「ほんとに話しを聞いてたんですか?散々お灸を据えたつもりだったのですがね」

 

「そ、その………騙されてた事が分かって怒りの余りすっかり忘れてて…………も、申し訳ありませんでした…………こ、今後は二度とやらないので…………」

 

「謝る相手は私じゃないと思うんですがね?」

 

二乃は上杉の方へ方向転換。そして頭を下げる。

 

「また睡眠薬使って………ご、ごめん…………」

 

「……お、おう………………ま、まぁ星奈さん。二乃を騙した俺も悪かった訳ですし、俺も全然ピンピンしてるんで……………」

 

「…………………………」

 

そ、そのー………………これくらいで勘弁してあげては如何かと思うのですが………ど、どうでしょうか………

 

「………………」

 

星奈さんの無言の圧故か声が小さくなる上杉。気持ちはすんごく分かる。

 

「………………はぁ」

 

星奈さんは小さく息をつくと、フッと場の空間を支配していた無言の圧力が跡形もなく消え去るのを感じた。

 

「………………まぁ、上杉君がそう言うのならば私からはもう言う事はありません。本人も今回はちゃんと反省しているようですし。もう次は無いですからね」

 

「!………………は、はい!」

 

少し離れた所で見守っていた姉妹たちも張りつめていた空気が漂う時間が終わって漸く安心したかのようにホッと息をつく。

 

「では私は帰りますね。この後、買ってきた本を読む予定があるので。………………あ、四葉さん。このおにぎりを1つ食べてもいいですか?美味しそうですね」

 

「勿論です!」

 

「………………あ、美味いですね。では、総悟様に上杉君。最後の追い込み、頑張ってくださいね」

 

「勿論です」

 

「はい」

 

「………………二乃さん」

 

「!?………………な、何ですか…………?」

 

「試験勉強、頑張ってください。勿論、他の皆さんも」

 

「「「「「…………はい!」」」」」

 

5人の揃った声を聞いて星奈さんは微笑を浮かべた後に去って行った。と言う訳で、腹も減ったしモグモグタイム開始。

 

「で、陸上部とはどうなった?」

 

「あの後ちゃんとお話しして、大会だけ協力してお別れする事にしました」

 

「大会も断ればよかったのに。まぁ、大会は期末試験後だから別に良いか」

 

あの部長、諦め悪そうな感じだしなー。

 

「また何か言われたら教えなさい。今度こそ教育してやるわ」

 

「あぁ^〜いいっすねぇ^〜。今度は徹底的にやりますかねぇ…………」

 

「SとSが手を組んでSSになってる…………」

 

面白いことを言うねー、三玖───────さて。本題に移ろうか。

 

「一花姉さん、三玖、五月の3人は問題集その2に取り掛かっていて、四葉と二乃はその1は終えてる、と。取り敢えずその1は全員終わってる訳だ」

 

「お前、いつの間にその2なんて作ってたのか…………………」

 

まーね。

 

「私達ちゃんとレベルアップしてるのかな?」

 

「元が村人レベルだからな。ようやくザコを倒せるようになったくらいだ」

 

つまり、スライムレベルが倒せるようになった訳か。だが、期末試験は中ボスレベルだからなぁ。この2日でどこまで経験値稼ぎをしてレベルアップ出来るかどうか。

 

「そこでだ。俺は秘策のチートアイテムを持ってきた………………カンニングペーパ!これがあればボス(期末試験)を倒せるぞ!」

 

ファッ!?ちょっと、まずいですよ!

 

「あ、あなたはそんなことしないと思ってたのに…………」

 

「そんなことして点数取っても意味がないですよ!」

 

「なら、もっと勉強するしかない!カンペなんて使わなくてもいいようにこの2日でみっちり叩き込むぞ!覚悟しろ!」

 

…………なるほどな。5人のやる気を焚きつけるためのカンペだったわけか。

 

「……と、いう感じで進めていきますがよろしいでしょうか二乃様」

 

「えぇ…………(困惑) 何で家出少女その1にそんなことを聞く必要があるんですか(正論)」

 

「………………全くよ。今まで好き勝手にやってたくせに。今まで通り、そのまま好き勝手にやればいいじゃない。………………やるわよ。よろしく」

 

………………漸く5人揃った。ここに至るまで3か月。最初は四葉だけで、次に三玖、そして一花姉さんに五月……………最後に二乃。これで全員集合。ある意味、ここからがスタートラインだ。

 

「…………ふぅ」

 

「どうかしたの、ソウゴ?」

 

「いや…………ここまで長かったような短かったような気がするなー、って」

 

「………ふふっ。良かったね」

 

「ああ……………よーし、やりますかね上杉氏!」

 

「………………………」

 

「…………もしもーし?オートパイロット状態になってんぞー?」

 

「!……………悪い、少し考え事をしてた。………よし、やるか」

 

何を考えてたんだ?………まぁ、何でも良いや。じゃけん、さっさと教えましょうねー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2日後の試験当日。五月は俺の親がもっと泊っていけとか言ったせいで結局土日も泊まっていった。特に泊る必要性はないのにねー。マイペアレントは五月を相当気に入ったらしい。

 

「火野君、これをご両親に渡しておいてくれませんか?諸々のお礼です」

 

「お金か……………あー、その事なんだけど。五月がこれを渡してくる事を父さんは予想していたらしくて、渡して来たら伝えるように言われてた伝言があってな」

 

「伝言、ですか?」

 

「『別に金はいらん。特に困ってないし。金の代わりにこれからも総悟と友人でいてくれれば、それでいい。今度は姉妹全員で遊びにでも泊りにでも来な。1週間、楽しかったぜい』だってよ………………でもまぁ、それとは別に俺個人への感謝って事でそのお金をくれてもええんやで?そしたらかなりの額をゲームに課金出来るしネ!」

 

「……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局くれなかった。色々やってあげたのに、解せぬ。まぁ、どうせもうちょっとで給料とかお小遣いが入るから良いか。そう結論付ける頃には学校に到着。皆揃っていた。

 

「ついに試験当日かぁ………」

 

「土日にあれだけやったとは言え少し不安はあるわね……」

 

「やれることはやった。私達もソウゴとフータローも」

 

「あれ、上杉さんはどこに行ったんだろう?」

 

「らいはちゃんに電話ですって。さっきこっそり私の所に来て電話を借りてまで行ったのですから、今じゃなきゃいけない用事だったのでしょう」

 

へー、いつの間に。全然気付かなかったわー。何だろうね、らいはちゃんに用事って。今日のご飯はオムライスが良いとか?………まぁ、いいや。取り敢えず俺もテスト頑張るか。テストが終わったらペル〇ナ3の映画でも見るかなー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本日を持って家庭教師を退任させていただきます」

 

──────俺がそんな呑気な事を考えている裏で上杉がそんな決断をしていた事を知るのはもう少し先の話である。

 

to be continued………




今日もこの駄文を読んでいただき、圧倒的感謝ッ……………………!


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─────ゼロから

毎日投稿期間終了ー。タイトルを見て分かる通り、今回はリゼロの名シーンを盛大にパク……………………パロるゾ。あとはエヴァの台詞もちょいとね。

ではでは、どうぞー。


試験から4日後、結果が返却された。隣の一花姉さんのを他の姉妹よりも先行公開で見せてもらうと、赤点回避(30点以上)出来ていた科目は3つ。前回は回避出来てたのは数学だけだったので中々の進歩だと思う。

 

「数学にソウゴ君の問題集その2に出てきてた問題とほぼ同じのが何個あったのに気付いたときは内心しめしめと笑っちゃったよー」

 

「俺も解いてる時、『あ、これ俺がその2で出したやつやん!出来てると良いなー』なんて考えてたんだよねー」

 

いやー、解けてて良かった。一花姉さんの場合、後は国語と社会科目か。まぁ、これもあと数点なので次の試験では全科目回避は出来る希ガス。

 

「ソウゴ君はどうだった?」

 

「プロですから」

 

「あはは、やっぱ流石だね~」

 

俺がオール100点なのは約束された勝利の結末なので(どや顔)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の放課後、家庭教師の日なので上杉と共にマンションに行こうかと思いきやその姿がなし。先に行ったのかと自己完結して俺もマンションへゴー。

 

「どーも、お久しぶりでーす」

 

「あ、火野さん!…………あれ、上杉さんと一緒じゃないんですか?」

 

「おろ?」

 

あいつ来てないの?てっきりもう来てるのか思ってたが。

 

「まぁ、その内来るか。よし、取り敢えずテストの結果を見せてくれ」

 

どれどれ………………フム。三玖が前回と続いて1番の成績か。赤点なのも英語のみと。

 

「三玖、やるねぇ………前回よりもさらに出来るようになってる」

 

思わずそう呟くと三玖は嬉しそうな表情を浮かべた。尊い…………。

 

「えっとー、次に点数が高いのは五月か」

 

赤点回避出来たのは3科目か。やっぱり理科がずば抜けて高いな。

 

「………………ちなみに五月さんよ。あなた、この数学の問題に見覚えない?」

 

「え?………………………………あっ!その2で見たのと同じです!うう………」

 

「じゃけん、次同じのが出てきた時は完璧に解けるようにしましょうねー」

 

と言うわけで次。

 

「えー、二乃は………………何かムカつくな」

 

「なんでよ!?」

 

2日間しか指導してないのに、1週間鍛え上げた一花姉さんらを差し置いて英語で1番の成績を取ったからですぅ。

 

「最後に四葉は……………まぁ、一桁の科目がなくなってるから少しは成長してるって、はっきりわかんだね」

 

「ありがとうございます!」

 

これでも、上杉だったら褒めないでリボンを掴んでブンブン揺らしてそう(偏見)

 

「そう言えば、ソウゴはテストはどうだった?」

 

「あー、俺はですね」

 

「どうせ満点でしょ」

 

「……………君のような勘のいいガキ(二乃)は嫌いだよ」

 

そう呟くと笑いが起こる。皆につられて思わず俺も笑ってしまう。その時、来客を知らせるチャイムが鳴った。漸く上杉が来たのか。インターホンに出た五月が上杉の到着を知らせる─────かと思いきや。

 

「………上杉君じゃありませんでした」

 

「え?」 

 

じゃあ誰やねん、と言う疑問はすぐに解消した。やって来たのは前に林間学校の時にお世話になったリムジンの運転手の江端さんだった。

 

「失礼いたします、お嬢様方。それと火野総悟様」

 

「なんだー、江端さんか」

 

「あ、こんにちは。それと、林間学校の時はありがとうございました」

 

「ホホホ、どういたしまして」

 

「今日はお父さんの運転手お休み?」

 

「小さい頃から江端さんにはお世話になってるけど家に来るとか初めてだよね」

 

「私から見たら、まだまだ皆様は小さなお子様ですよ」

 

「江端さんはどうしていらしたのですか?」

 

「本日は上杉様の代わりとして参りました」

 

………………………………………………。

 

「上杉の代わり、ですか?………………上杉の奴、勉強のし過ぎでぶっ倒れたのか?」

 

「あいつならあり得そうね」

 

「頭がパンクしたのかなー」

 

ここまでは大方体調不良で休んでるのかと思った。ここまでは

 

「……………お嬢様方と火野様にはお伝えすることがございます」

 

「「「「「「?」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「上杉風太郎様は家庭教師をお辞めになられました」

 

………………………………は?辞めた?上杉が?家庭教師を?

 

「新しい家庭教師が見つかるまで私が上杉様の後任を勤めさせて」

 

「待て待て!待ってください!あいつが家庭教師を辞めたって……………まさか」

 

こんな時でも俺の頭は冴えてると言うか。期末試験当日の日、五月のスマホを借りてらいはちゃんに電話していたと言う話を思い出す。まさか……………………あの時電話していたのはらいはちゃんじゃなくて

 

「もしかして…………………期末試験の日に」

 

「………………旦那様から連絡がありました。期末試験の当日を以て上杉様の契約を解除したと」

 

─────やはりか。もしかして土曜には、いやそれ以前から辞めるつもりだったのかもしれない。

 

「本当なの………………?」

 

「事実でございます」

 

三玖の問いに冗談でした、と言う答えを何処かで期待していた──────────ただ、頭ではそんな答えは返ってこないと分かっていた。これがドッキリでもない事が分からない程、馬鹿じゃない。無論、他の5人も。

 

「え……………つまり、フータロー君はもう来ないの……………?」

 

一花姉さんの問いに改めて江幡さんは無言で肯定の意を示す。場の空気はさっきとは打って変わって重苦しいものに変わっていた。

 

「やっぱり……………赤点の条件は生きてたんだ」

 

「二乃、どういうこと?」

 

「試験の結果のせいよ。あいつは無いって言ってたけどやっぱりパパに言われてたんだわ」

 

「………そりゃないな。もしその条件が生きてたなら俺も今この場にいないだろうよ。つーか、今回はマジで言われてないぞ」

 

「火野様の言う通り、今回旦那様はノルマを課しておりません。上杉様はご自分からお辞めになったそうです」

 

「自分からって…………上杉さん、どうして……………」

 

「……………そんなの急に言われても納得いきません。彼を呼んで直接話を聞きます」

 

そう言って五月はスマホを取り出す。だが

 

「申し訳ありませんがそれは叶いません。上杉様のこの家への侵入を一切禁ずる。旦那様よりそう承っております」

 

「いや……………普通そこまでやる……………?」

 

侵入禁止とかは流石に解せぬ。

 

「なぜそこまで……………それならばお父様に電話して「もういいよ五月」……………ひ、火野君?ですが……………」

 

「電話した所で解除するとは思えない」

 

「なら、直接あいつの所に行くわよ!」

 

……………………俺は二乃の前にスッと立ちふさがる。

 

「どきなさいよ、あんた!」

 

「……………家庭教師の立場的に(・・・・・・・・・)ここでお前が行くのを見過ごして、それが江端さん経由でバレたら家庭教師失格の烙印を押されて俺までも消える事になりかねないんだが」

 

「「「「「……………………」」」」」

 

当然、俺だって今すぐにでも上杉の所に行って色々と聞いたり言ってやりたい事が山ほどある。ただ…………………今の俺は家庭教師として来ている。しかも雇い主の側近的な立場の人がいて、あちらに素行が伝わる可能性がある以上、ここで見過ごしちゃうのはマズい。

 

─────だから、さっさと終わらせて行く。

 

「…………今から家庭教師の時間だ。今日は前に没にした今回の試験問題の範囲をカバーしたテストを復習って事で解いてもらう。…………すんなり終われば今日はこれで終了だ」

 

「「「「「!」」」」」

 

俺の意図が伝わったみたいだな。皆がさっさと終わらせれば行けるって事だ。

 

「では、火野様。もしすんなり行かなければ補習授業と言う事でよろしいですな?」

 

「え…………………………あ、そうですね……………………」

 

二乃から『何で断らないのよ!』的な視線が刺さってるけどさぁ…………ここでノーとか言うとやる気無しと見なされてクビとかあり得そうだからしょうがないだろ。つーか、全部解けば良い話!

 

「時間は今から30分でよろしく。…………悪いが江幡さん。俺は少し外で頭を冷やしたいので数分間彼女等を見ていて貰ってて良いですか?」

 

「分かりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

 

「全く、あいつどういうつもりよ」

 

「私はまだ信じられないよ、上杉さんが自分から辞めたなんて……………」

 

「本人の口からちゃんと聞かないとね。誰か終わった?」

 

「私はもうすぐです」

 

「私も」

 

一花の問いに答えたのは期末試験でNo.1&No.2の座を取った三玖と五月。とは言え、他の3人も順調に進んでいる。

 

「ソウゴの作ったこの問題を解いてると、私達成長したんだなって感じるね」

 

「そうね。前の私達なら危うかったに違いないわ。自分でも不思議なほど問題が解ける……………悔しいけど、全部あいつらのおかげだわ」

 

彼等の存在が自分達が思っていたよりも大きかった。改めて5人はそれを実感する。戻ってきた総悟にも見守られながら問題を解き進める。そして────────

 

「あと1問………あと1問なのに………!」

 

「私もあとは最後だけです…………時間も残り僅か…………」

 

「ホホホ。その程度も解けないようであれば補習は確定ですな」

 

このままでは補習確定で上杉の元へ行くのがさらに遠ざかってしまう─────。

 

「こ、これ前にやったよね?」

 

「うーん…………」

 

「なんだっけなー」

 

「…………………………」

 

最後の問題で姉妹たちが頭を悩ませる中、五月が意を決したように言葉を切り出した。

 

「あのー………カンニングペーパーを見ませんか?全員筆入れに隠してた筈ですが…………」

 

「「「「「!」」」」」

 

真面目な五月から不正しようと言う提案が出たことに皆は少し驚く。

 

「え、でも…………良いのかな…………」

 

「今は有事です。なりふり構ってられません」

 

「五月が上杉さんみたい!」

 

「あんた変わったわね……………」

 

そう呟きながら二乃はチラリと総悟の方を見る。彼女等の思惑を察したのか、わざとらしく『水でも飲みましょうねー』と言って台所の方へ向かう。江端の方も5人のお茶でも作るのかお湯を沸かしているので今がチャンス。五月はカンニングペーパーを開け─────

 

「…………あれ?」

 

「どうしたの、五月?」

 

「何と言うか…………私のはミスがあったみたいです」

 

「じゃあ、私の使おう」

 

一花が自分のカンニングペーパーを開ける。が

 

『安易に答えを得ようとは愚か者め』

 

そこに記載されてたのは答えなどではなく、その一言だけだった。

 

「…………あいつ、初めからカンニングさせるつもりなかったのね」

 

「フータローらしい」

 

「ほんと、フータロー君らし…………待って。何か続きが書いてある…………②?」

 

「②…………私のかしら?」

 

次に二乃がカンペを開く。 

 

『カンニングする生徒になんて教えてられるか→③』

 

「…………次は私」

 

三玖のカンペには────────── 

 

『これからは自分の手で掴み取れ→④』

 

そして四葉

 

『やっと地獄の激務から解放されてせいせいするぜ→⑤』

 

「…………あはは。やっぱり上杉さん、辞めたかったのかな?」

 

「…………最後は五月ちゃんだけど……………五月ちゃん?」

 

黙っていた五月は一花に言われて最後の文を読み上げた。

 

「『だがそこそこ楽しい地獄だった。じゃあな。ps 後は頼んだ。お前なら出来る』」

 

「「「「「…………………………………」」」」」

 

最後のpsが誰に向けてのメッセージなのかはもはや言うまでもない。

 

「………あの野郎……………買いかぶり過ぎだっての………………」

 

いつの間にか五月の背後に来ていた総悟が上杉からのメッセージを見て一言呟く。そして次に声をあげたのは四葉だった。

 

「……………私、まだ上杉さんに教えて貰いたい…………7人で勉強したいよ………」

 

「四葉……………」

 

「けど、あいつはここに来られない。もうどうしようもないわ」

 

「二乃、諦めが早い」

 

「じゃあ、あんたは何か名案でもあるわけ?」

 

「………………皆。私から提案がある。また7人で勉強できる案が。耳を貸して」

 

二乃と三玖が軽く口論になりそうになった所で、一花が声をあげる。 5人は一花の提案を小声で聞く。さりげなく総悟も身体を傾ける。

 

「…………ファッ!?」

 

「一花、本気なのですか?」

 

「うん、本気。どうかな?」

 

「……私は良いわ」

 

「私も。皆と一緒なら大丈夫な気がする」

 

「わ、私も!」

 

「私も構いません」

 

賛成の意志を述べる5人。総悟は彼女等の目を見て本気である事、そしてどんなに言おうと覆さない意思を感じ取った。

 

「ここでの生活を捨ててまでの覚悟、か。…………………良いぜ。客観的に見れば正しくない──────────間違ってるのだろう。だが、その『間違ってること』に俺も付き合おうじゃないか。…………これで俺も悪だくみの共犯で、6等分ってか?」

 

総悟の言葉に5人は笑みを浮かべる。そして5人は立ち上がると丁度お茶を持って行こうとしていた江端の前へ。

 

「おや、どうなされました?」

 

「江端さんもお願い。協力して欲しい事がある」

 

「!」

 

江端の目に映っていたのは小さなお子様などではない。何か強い決意を瞳に浮かべた──────────大きくなった5人の姿だった。江端は変わった彼女等を見て微笑を浮かべる。

 

「─────大きくなられましたな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

================

12月24日。性なゲフゲフン………聖なる夜のクリスマスの前日のクリスマスイブ。昨日で全ての準備が完了した。さぁ、1日早いが奴に驚きと言う名のクリスマスプレゼントを渡そうか。星奈さんと伴に上杉がバイトしている店へ凸を開始。

 

「メリークリスマス!ケーキはいかがですかー?」

 

…………いたいた。事前に調べておいた通り、ケーキ屋で働いてますねぇ。

 

「すいませーん」

 

「はい!……って、火野と星奈さん…………」

 

「ケーキを1ホールと、エクレア2つプリーズ」

 

「………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ^~うめえなぁ!(迫真)おかわり、オナシャス!」

 

「どんだけ食うんだよ……………」

 

「次で最後よー」

 

俺のテーブルの上にはお皿の山が。甘いもの好きだからね、しょうがないね。

 

「…………………で、何をしに来たんだよ」

 

「何をしに、ねぇ………………それはお前が1番分かってるだろ?」

 

「……………………」

 

上杉は目を逸らす。分かりやすい反応な事で。

 

「店長ー、ここ配達って出来ます?上杉にケーキの荷物持ちをさせたいんですけどー?」

 

「は!?いや、配達なんてやってな」

 

「ああ、そんなことなら構わないよ」

 

「店長!?」

 

「もう店も閉める。こっちはいいから、友達の方に行ってあげなよ」

 

店長がそう言いながら最後のエクレアを持ってきてくれる。

 

「まぁ、男2人で華がないかも知れないけど…………メリークリスマス!」

 

「(この職場、辞めようかな………)」

 

「(見るな……………俺達をそんな憐れむような表情で見るな!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=================

 

「走れそりよ~♪ 風のように~♪ 特異点を~♪ パドルパドル~♪」

 

どこぞの黒サンタ王の歌を口ずさみながら、雪が降りしきる中を総悟は歩く。その後ろを星奈と上杉がついていく。

 

「さっきまで雪が降っていなかったのに、急に降り始めましたか。ホワイトクリスマスイヴになりましたね」

 

「そうですね……………あ、ここを左か」

 

「……………ん?おい、お前の家はこっちじゃ」

 

「あってるぞー」

 

「(──────わざと遠回りしてるな…………)」

 

仕方なく、上杉も総悟らに着いて行く。

 

「……………あのさ、火」

 

「上杉」

 

上杉が話そうとするのを振り返らずに総悟が遮る。

 

「俺から聞きたいのは1つだけだ─────なぜ辞めた?本当はすぐにでも訊きたかったが、生憎俺も色々と忙しかったもんでな」

 

「…………………」

 

上杉は俯いて視線を下にしながら簡単な話だ、と続ける。

 

「……………家庭教師を始めて3ヶ月。三玖や一花、五月が参加してくれるようになったのはお前の尽力のお陰だった。前回の中間テストでは五月と仲違いを起こしたり、二乃に赤点の条件をバラして足を引っ張った。今回の家出騒動も二乃の説得には失敗して、結局二乃が家に戻ったのはお前と三玖のお陰だった…………」

 

「…………………」

 

「お前に助けて貰ったり、足を引っ張るばかりで俺自身(・・・)は何も出来なかった。……………………あいつらに必要な家庭教師はあいつらの気持ちをしっかり考えてあげられる奴だ。……………勉強しかしてこなかった俺にはそれが出来なかった。だが……………お前ならそれが出来る────いや、既に出来ている。だからお前に後任を任せた。……………これが俺が辞めた理由の全部だ。俺は………………『不要だ』」

 

「……………『不要』ね」

 

「……………そうだ。俺はお前らにとって

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不要な」

 

「あんたバカァ!?」

 

上杉の発言を一蹴するように大声をあげる総悟。1年からの付き合いの上杉でも総悟が大声をあげる所は初めて見た。そして総悟は少し呆れた様子で言う。

 

「あのねぇ……………………まぁ、上杉の言う通りお前は確かに色々とやってくれたよ。けどな………………………………俺がお前を『不要』なんて言ったことある?」

 

「………それは…………………」

 

「ないだろ?だからお前は不要じゃない。Q.E.D.証明完了」

 

「…………どんな理論だよ…………」

 

何とも強引な理論を押し付けてくる総悟に思わず上杉も苦笑してしまう。

 

「それに、お前は俺を買い被りすぎだっての。林間学校の後にお前が入院してた時、上杉がいなくて俺1人で5人の面倒を見てただろ?もうあの時はマジで大変だったんだぞ、猫の手も借りたい程にな。2度とごめん被るね、1人で見るのは」

 

「…………………」

 

「それと、大した成果を出せてない的な感じに言ってたけどよ。俺1人だけじゃあんなに凄く良い問題集は生まれなくて、それに関連して皆も期末試験のテストも今よりも悪かっただろうし、二乃が家に戻ったのもお前があいつの所へ毎日諦めずに行ってたからあいつと話せる機会が出来て、そこから解決に向かったんじゃねぇか。なのに成果を出してない的な事をほざきやがって………………ぶっ〇すぞ」

 

「………はっ………お前の口の悪い暴言も久しぶりに聞くとなると懐かしく感じるな」

 

それを聞いた総悟はニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

 

「自分ではそうは思ってないかもしれないけど、お前の存在はデカい──────────色々言ったが要するにだ。俺はお前を『不要』なんて思ったことなんて1度もねぇ。俺からすりゃ、家庭教師をするに当たってお前は必要って事だよ。6人(・・)じゃ物足りない。7人(・・)じゃないと面白くないんだよ」

 

「……………!」

 

「………………俺から言いたいことは以上。ほれ、選手交代だ」

 

「!」

 

俯き気味だった視線をあげると──────────

 

「やっほー、フータロー君。久しぶりだね」

 

「やっと来たわね。まったく、か弱い乙女をこんな寒い外で待たせるなんていい度胸してるじゃない」 

 

「二乃がか弱い乙女……………?」

 

「お待ちしていました、上杉さん!」

 

「火野君、ケーキは…………?」

 

「ありますあります」 

 

─────そこにいたのは元教え子の5人。同じクラスの五月以外とは会う機会が殆どなかったので、数週間ぶりとは言え上杉は懐かしさを感じてしまう。最初に話を切り出したのは二乃だった。

 

「あんた、ほんとにこれで良いわけ?5人揃って笑顔で卒業させるって言ったのに、あんただけ私達を見捨てる気?」

 

「…………だがこれ以上、俺の身勝手にお前らを」

 

「そうね。あんたらはずっと身勝手だったわ。したくもない勉強をさせられて、必死に単語や公式を暗記して…………………でも、勉強して問題が解けるようになったら嬉しくなっちゃって。…………こうなったのは全部あんたらのせいよ」

 

かつてホテル前で遭遇して彼等を拒絶した時と同じ言葉。たが─────────続きの言葉はあの時とは違う。

 

「最後までこいつと身勝手でいなさいよ!謙虚なあんたなんてらしくないわ!」

 

「ッ……………………悪い。俺は戻れない。もう家に入ることも禁じられているんだ」

 

「ああ、それなら問題ないよ。言うのが遅くなったけどケーキの配達ご苦労様」

 

「………………ん?いや、お前らの家はまだ先じゃ」

 

「ここだよ。ここが私達の新しい家」

 

高層マンションとは似ても似つかない、古びたアパートを指差しながら一花はそう告げた。

 

「私が借りたんだ。私って女優でしょ?それなりに稼いでるからね」

 

「借りたって………………いや、でも…………未成年だから契約は」

 

「契約は別の人に頼んだよ。お父さんにも事後報告だけどもう言ったから」

 

「………はあぁぁぁぁ!?」

 

「いい反応ね。サプライズ大成功かしら」

 

「………計画通り」

 

上杉の驚きっぷりに二乃と総悟はニヤリと笑う。

 

「これでもう障害は無くなったね、フータロー」

 

「………………嘘だろ。それだけのためにあの家を手放したのか…………?馬鹿か、今すぐ前の家に戻れ!こんなの間違ってる!」

 

「いいえ。上杉さん、私は─────私達は戻りません。だって、私達は上杉さんと火野さんの2人に勉強を教えて貰いたいですから。勿論、ここでの生活がとても大変なのになるのは分かっています。──────でも、皆覚悟は出来ています。星奈さん、お願いします!」

 

四葉に名前を呼ばれた星奈は懐からカードを5枚取り出す。

 

「それは…………お前らのマンションのカードキー………」

 

「最終確認ですが………………本当にやっていいんですね?」

 

「はい!月に届かせる位の勢いでやっちゃってください!!」

 

「………………では、遠慮なく!」

 

「ちょ、待」

 

何をしようとしてるのかを察した上杉が制止しようとした時には既に遅し。星奈はカードキーを持った手を月に向けて大きく振るった。

 

そして次の瞬間には星奈の手にカードキーの姿は何処にもなかった。

 

「あー、たった今大気圏を突破しましたねー(適当)」

 

「え、本当ですか!?」

 

「なっ…………カードキーを…………!?」

 

総悟の適当な大嘘を四葉が真に受けている中、上杉は空を見上げていた。尤も、カードキーの姿は空の何処にもないが。

 

「これが彼女等の覚悟だ──────さぁ。君はどうする?上杉風太郎」

 

「……………………………………」

 

上杉はまだ迷いがあるのか何も言わない。すると、上杉に対してまだ何も言っていなかった五月が前に出て総悟の隣で語り掛ける。

 

「前に言った筈ですよ、上杉君。私達にはあなたが『必要』ですと」

 

「!」

 

「だから、またこの場所から始めまし…………え、何ですか火野君?……………はぁ。まぁ、私が言おうとしていた事と同じなので構いませんが………………」

 

途中、総悟が五月に何かを囁いたので中断されたが、気を取り直してテイク2がスタート。

 

「……………上杉君。ここから始めましょう、イチから──────いいえ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゼロから!

 

『演出してやんよ』とでも言いたげに五月の上空を川に立っていた白い鳥が飛び去る。どこぞの異世界生活アニメの名シーンのオマージュを見れた総悟は内心ガッツポーズ。当然五月は総悟が何故この台詞をリクエストしたのかよく分かってなかったが。

 

「……はっ……………はははっ!」

 

五月の台詞に対してなのかは分からないが、上杉は笑った。そして最初に目の前の2人に向けて口を開く。

 

「……………先ずは素直に礼を言うぜ、火野と五月。俺を『必要』と言ってくれてありがとう」

 

「よせやい、照れる」

 

「どういたしまして」

 

そして今度は全員に向けて語り掛ける───────吹っ切れた表情で。

 

「俺はお前らの事を考えて家庭教師を辞めたんだが……………………何だかお前らの事を配慮するのも馬鹿馬鹿しくなった。だから、俺もやりたいようにやらせてもらう。俺の──────いや、俺達(・・)の身勝手に最後まで付き合えよ!」

 

「………漸く帰ってきたか、いつもの上杉が」

 

上杉の家庭教師復帰宣言に総悟は嬉しそうにニヤリと笑う。5つ子達も、星奈も同じく笑みを浮かべる。

 

「よーし、それじゃあフータロー君の復帰とクリスマスイヴのお祝いを兼ねて、皆でケーキを食べよう!」

 

「俺も良いのか?」

 

「勿論ですよ、上杉さん!」

 

「じゃけん、俺も食いましょうねー」

 

「え……………お前、散々店で食ってたのにまだ食うの…………?」

 

「当たり前だよなぁ?……………でも、皆良いのー?俺らが入ると五等分出来んぞー?」

 

────5人は弾けたように笑った。

 

to be continue………




パーティー終了後

星奈「ポイ捨ては環境に悪いと思ったので、一応投げるふりをしておいたのですが……………………このカードキーはどうしましょうか?」

総悟「んー……………………星奈さんが持っててくれますか?あの5人もいつか元のマンションに帰る時が来るでしょうし。それに、俺が持つより安心ですからネ!」

星奈「了解です」

ちなみに、江端さんがイメチェンしたかどうかはご想像に任せます(放り投げ)書いてから『あ、そういや…………まぁ、別に支障はないし良いか』って感じです。けど、次回に描写を入れれば何とかなるかもだな……………………まぁ、どうするかは考えておきます。

あ、少し前の話になりますがシンエヴァンゲリオンの興行収入が60億突破だそうですね。おめでとう(パチパチ)

さてさて、今回も読んでいただきありがとうございました。この次も、サービスサービスぅ!


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第7巻
Re:ゼロから始めるアパート生活


昨日リゼロの第一期の18話を見てたら上のタイトルが思いつきました。ダサいとかの異論は認めます。

あ、それと近い内に真名解放します。自分に課してた条件をクリアしたので。お楽しみに………………で良いのか…………?


パーティーの前に俺は外で五つ子のお父様に電話。どうせその内あっちから来るでしょうし、ならこっちから行ったれ的な感じである。

 

『連絡を待っていたよ、火野君。それで、どういうことか説明してもらおうか』

 

怒ってるな(確信)

 

「簡潔に説明するとですね。あの5人は俺と上杉の7人で勉強したいから家出しました。ほら、上杉はあなたが出禁にしたじゃないですか」

 

『ああ。僕は彼が嫌いだからね』

 

直球ぅ。

 

「新住所は江端さんから聞いてると思うんで説得するも差し入れするもご自由にって感じなんですが……………ちなみに、上杉は家庭教師として復活したんですが出禁解除の見通しはありますか?」

 

『ないね』

 

即答ェ……………。

 

「あー……………………じゃあ、暫く娘さん達絶対に帰ってこないと思いますよ」

 

『…………そうかい』

 

「と言うか、何でそんなに上杉を嫌ってるんですか?『この馬鹿野郎が!』的な事でも言われたんですか?」

 

『……………………』

 

…………あ、これ図星だろ。電話越しでも分かるやつやん!

 

「…まぁ、その話はさておき…………………どうせバレるのも時間の問題だと思うんで、自白すると俺も家出にかなり協力しました。あと父親も」

 

パソコンで物件探しに夢中になってたら後ろから覗かれてることに気づかずバレました☆ 仕方なく事情を話したら『そう言う理由なら協力してやんよ~』的な感じで物件探しとかその他諸々でめっちゃサポートしてくれたわ。ちなみに、あのアパートは父親の知り合いの不動産から紹介してもらった物件です。

 

『……………そうかい。家出が実行されてる時点で何となくそう予想していたがやはりか』

 

「反対派ならあなたに密告してますからね……………と言う訳で、家庭教師的に素行不良だと思うので責任を取って俺も今日で家庭教師を辞めます」

 

これで俺も上杉と一緒だ。俺だけ金貰うのも不公平だし。つーか、どうせクビにされるだろうから潔くこちらから辞めまーす。

 

『………………そうかい。こちらから言う手間が省けたよ』

 

「あ、でも今月分のお支払いはちゃんとしてくださいね。ちゃんと並行して家庭教師の仕事もやってたんで(正月ガチャとかあるしな)」

 

『…………良いだろう。今月分の給料は君の父親の口座に振り込んでおこう。では、失礼する』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=====================

 

「お待たせしました、ケーキです」

 

星奈さんが8等分にカットしたクリスマスケーキを持って来る。断面を見て分かるけど、切り方が上手いなー。

 

「これ、凄く綺麗に切れてますけど何かコツとかあるんですか?」

 

「包丁を温めてあるんです。冷たいと刃がクリームが絡んで、断面が汚くなりやすいので。あとは一気に垂直に下ろすのではなく、押す・引くの前後の動きで切るとこのように切れます」

 

「なるほど……………」

 

料理好きの二乃はフムフムと頷く。

 

「それじゃあ……………………フータロー君の家庭教師復活とクリスマスのお祝いを祝して、乾杯!」

 

「「「「「「「乾杯!」」」」」」」

 

一花姉さんの乾杯の音頭で飲み物の入ったグラスを合わせる。

 

「う、うめぇ……………このコーラ、キンキンに冷えてやがる………!それにこのケーキもうまいのー」

 

「お前、店で甘いものを食いまくってたのによく食うな……………」

 

上杉は総悟に呆れ気味。本人は構わずモキュモキュと食べ進める。

 

「モキュモキュ………………それにしても、家具とかはまだ殆ど無いんだな」

 

「まぁ、必要な物から順次揃えていくつもりなんだよねー。ちなみに、アレはネットで買って明日に届く予定なんだよね」

 

「アレとは?」

 

「こたつ」

 

「………もっと他に優先して買った方がいいのとかあるんじゃね…………?」

 

総悟のツッコミはごもっともなのだが、どうせ明日こたつはやって来る運命なので今更それを言ってもどうしようもない。

 

「ソウゴって1人暮らしした事とかあるの?」

 

「……………どうしてそう思った?」

 

「手続きについてとかやけに詳しかったから、何となくそう思った」

 

「……………ふふっ。面白いことを言うね、三玖。別に1人暮らしはしたことはないぞ。今のご時世、ネットで調べれば色々と出てくるからな」

 

少しの間を置いてそう答えると総悟はコーラを飲み干す。そして今度は星奈がそれにしても、と話し始める。

 

「まさか5人の住む場所がここになるとは………………これから皆さんとは会う機会が増えそうですね」

 

「…………あー、確かにそうなりますねー」

 

「これも何かの縁ですね」

 

星奈と総悟の会話を聞いて他の6人はすぐにある仮説が頭に浮かぶ。代表して五月が尋ねてみる。

 

「その口振りからして、もしかして星奈さんはここの近くに住んでいるのですか?」

 

「近くと言うか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()のここよりは綺麗なアパートです」

 

「「「「「隣!?」」」」」

 

予想は大的中である。しかも徒歩1分(たぶん)の隣のアパート。日本に激震が走るほどの衝撃(?)の新事実である。

 

「星奈さんがご近所とか超幸運やな。星奈さんはめっちゃ強いし何でも出来てとんでもなく可愛くて頼れる女性だからね」

 

「そ、総悟様…………そう言ってくれるのはとても嬉しいのですが、皆さんの前で言われると……………て、照れます…………」

 

恥じらう姿を見て五つ子はこう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────か、可愛い…………と。

 

「(ヤバい!反則級に可愛い!)」

 

「(い、今ので百合に目覚めた子いそうね……………)」

 

「(………世の中に百合とかが実在する訳が分かった気がする)」

 

「(星奈さん、可愛すぎますー!)」

 

「(こ、これは……………ギャップ萌えと言うものでしょうか……………?)」

 

それぞれ感想を抱く5人。なお、百合に目覚めてる者はいない……………………よね?話の展開的に目覚めるのはやめてくれよ(震え声)

 

「…………………おーい?皆戻ってこーい」

 

「急にボーっとしてどうした?」

 

「「「「「…………はっ!」」」」」

 

総悟と五つ子と違って特に何とも思わなかったシスコンの呼びかけで5人は自分の世界から帰って来る。

 

「別のユニバースの人間と交信でもしてたんか?…………まぁ、良いや」

 

「ちなみに私は1人暮らしですので、遊びに来てもらっても構いませんよ。あと、困った事があれば頼ってくれても構いません。可能な限り協力しますよ」

 

「星奈さん、マジでいい人過ぎんよー」

 

総悟の呟きはこの場の全員が同意だったりする。まぁ、実際にいい人だしね。

 

「よーし、明日は学校も家庭教師もないし……………………朝まで飲むぞー!」

 

「いや、帰れ!飲み会じゃないんだから!」

 

誰のツッコミであるかはもはや言うまでもない。それから1時間後にお開きとなったとさ。総悟はまだ物足りなさそうな様子だったけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上杉の家庭教師復帰宣言から3日後の夕方。今日は家庭教師の日じゃないけど様子を見にとアパートを訪ねた。上杉はあのケーキ屋で年内最後のバイトらしいのでいない。と言う訳でピンポーン。

 

「俺が来たぜ、ヒャッハー」

 

『あ、火野君ですか。今開けますね』

 

出迎えてくれたのは五月。手にはおやつのあんぱんが。ちなみに、俺は白あんぱんが結構好き。取り敢えず中に入れてもらって…………はえー、すっごく狭い(迫真)

 

「家にいるのは……………三玖と五月だけか」

 

「いらっしゃい、ソウゴ」

 

「今日はどうかしたのですか?家庭教師の日ではないですが」

 

「様子見にね。この後、本屋で雑誌を買ってくるからそんなに長居はしないけど。まだ住み始めて3日しか経ってないけど、どうよ新居生活は」

 

「色々と慣れてない事も多いですが、何とかやっていますよ」

 

「布団を敷いて皆で一緒の部屋で寝るのは久しぶり……………ただ、四葉の寝相が悪くて………」

 

「もうロープで縛って固定すれば(鬼畜)………………お?」

 

こたつがあるじゃーん。

 

「………そういや頼んでたとか言ってたな」

 

「あまり贅沢は出来ないので安物ですが………」

 

「ソウゴも中に入りなよ」

 

あ、じゃあ遠慮なく………………ふぁー、あったけー。安物でも暖かいもんはあったけー。

 

「ソウゴの家にはこたつはないの?」

 

「うちは全部屋床暖房」

 

「流石はお金持ちですね…………」

 

まぁ、ユー達もつい数日までお金持ちの家で暮らしてたんですけどね。

 

「けど、こたつはこたつで床暖房とか違う感じがして良いなー…………………今更聞くけど、他の3人はどうしたの?」

 

「一花はお仕事。二乃と四葉は買い出しとその荷物持ち。そろそろ帰ってくると思う」

 

「なぁーるほど」

 

その内荷物持ちとかやらされそう(未来予知)

 

「そう言えば星奈さんとは何かあった?」

 

「昨日、『魚釣りしたらアジが大漁だったのでいりますか?』ってお裾分けしてくれた」

 

「しかも事前に内臓の処理や水洗いをしていてくれてまして。夕食でシンプルに塩焼きにして美味しくいただきました!」

 

「そりゃ良かったのー」

 

わざわざ下処理をしておいてあげる人間の鑑こと、星奈さん。流石ですわぁ………………。

 

「ただいまー………………って、何であんたがいるのよ」

 

「火野さん、いらっしゃいませー!」

 

あ、二乃と四葉が帰ってきたわ。

 

「皆が無事に過ごしてるかどうかの様子見」

 

「私達のこたつでぐだぐだしているようにしか見えないんだけど」

 

「……気のせいだよ(震え声)…………ま、二乃も相変わらずのツッコミだし大丈夫そうか」

 

「ツッコミを判断基準にしてんじゃないわよ」

 

「じゃ、俺は帰るわ。明日も家の大掃除で色々と忙しいぞー」

 

「ソウゴの家は広いから大変そうだね。私達は今は家具とかそんなにないから楽だけど」

 

ほんと楽で羨ましいわー。こっちは2、3日も掛かるくっそデカイ家だから大変で仕方がない。年末になって大掃除が近づくとマジで憂鬱ぅ。

 

「1日じゃ終わらないとか言うちょっとした地獄なんだよなぁ………………では、サラダバー」

 

『199X年、世界は核の炎に包まれた!』の北〇の拳のアニメ最終話の台詞の空耳を残して俺はアパートを出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────そして月日は流れ。

 

『あーあーあーあーああああー♪』

 

「Foo!↑ UN〇CORN(再現版)で年越しィ!ハッピニューイヤー!」

 

完 全 勝 利 しながら総悟は年を越した。

 

「今年はどんな1年になるかなー。つーか、去年は家出騒動とか家出の準備とかで時間がなくてデートとか全然出来んかったな………………よーし、来年は三玖ともっとデートして付き合えるように頑張ろう!………………取り合えずあけおめメッセージを送っておくか」

 

to be continued……………

 




おまけその1

総悟父「案の定、クビになったな総悟」

総悟「まぁ、家出に協力した時点でこうなるとは思ってたけど。中々高収入だったから少し惜しい気もしたが……………………まぁ、しょうがない。切り替えて行こう」

総悟父「つーかお前、俺が協力したのをあいつにバラしやがって。さっき電話が掛かってきてめっちゃ言われたぞ。面倒だから途中で『あー地下で電波がー』って切ったけど」

総悟「正直に言うと、俺への矛先を少しでも和らげようと思ってばらした」

総悟父「はっはっは、正直な奴め!その正直さに免じて許す!」


おまけその2

総悟「あー……………………じゃあ、暫く娘さん達絶対に帰ってこないと思いますよ」

マルオ「…………そうかい(………やっぱり出禁解除も視野に入れておこう………)」

おまけその3

《昨年の総悟の年越し》

総悟「Foo!↑誠が死んで年越しィ!や っ た ぜ」

Scool Daysの最終話を見て、年越しした瞬間に誠がタヒんで清々しい新年を迎えたとか迎えなかったとか。



今日も読んでいただき、誠にありがたい……………デス!(ペテルギウス風)

ちなみに、作者は毎年UNICORNで年越ししてます。


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初春とお年玉

はいー、と言う訳で真名解放~。ノッブ改め音速のノッブです。

……………………まぁ、誰もがそんな変わってないじゃんと思うでしょう。経緯としては、『ノッブ』って名前で書いてたら何か気にいったので元の名前とか色々と混ぜてこうなったって感じです、はい。

ちなみに、課していた真名解放の条件としては『お気に入り登録者が333人を超える』でした。3のぞろ目にした理由は恐らく語るまでもないでしょう。圧倒的ヒロイン(三玖)なのですから。……………………ただ、これが予想よりも早く達成してしまったのが想定外でして。解放するにあたって(しかも名前も変えるので)色々な後始末とかに準備に時間がかかってしまった訳です。すんません。

まぁ、そんな訳ですが今後ともよろしくお願いします。えー、ちなみに真名解放したのでお分かりかと思いますが、私の処女作は暗殺教室のです。ただ、この作品のよりも超絶駄文です。正直リメイクしたいような気がしなくもないような……………………現時点ではする気はないですが。読もうが読まないかはご自由に。読んだら何か良い事がある……………………とは保障しませんが。あ、ちなみに処女作とこの作品は(『同じ世界線』では)ないです。この作品は処女作の『続編』ではないのでそのつもりで。主人公、違うしねー(事実)

まぁ、処女作本編の最終話でも語ってる通りかつて処女作の続編を書いてました。ただ、書いてるうちにモチベーションが下落した結果、削除して白紙に戻って無期限の延期中です。いつか書きだす予定ですが今のところは未定です。それでまぁ、少しこのサイトとも離れてたのですが、どういう風の吹き回しかこの作品の構成を思いつきまして。病みのリハビリって程でもないですけど書いてみるかー、って感じでいつやめても良いように匿名で書き始めて今も続いてる感じです。

いつぞやの後書きか前書きで書いた通り、これは読んでくれている読者のお陰です。本当にありがとうございます。これからもよろしくお願いします!

さて、前書きが長くなりましたが……………………それでは本編をどうぞ!


「ぬわああああん疲れたもおおおおん」

 

新年早々、朝から俺は家族と共に親戚の家に挨拶回りをしていた。漸く回り終わって、帰りの車の中でくっそうるさい叫び声をあげていた所である。

 

「まったく、若いのにだらしないな。俺なんてまだ余裕なのによ」

 

「疲れるものは疲れるんですぅー。あー、もう帰ったらぐだぐだしたい……………」

 

「その前に、最後に神社に寄ってお参りをしなくちゃね」

 

締めとして最後に近くの神社に寄る。車を近くの駐車場に止めてレッツラゴー。にしても、やっぱ人が多いなー。あそこに上杉みたいな奴とかいるし…………

 

「…………って、上杉じゃーん!それにらいはちゃんにお父さんもいるし」

 

「お、総悟もここに来てたか!」

 

「火野さん、あけましておめでとー!そして今年もよろしくー!」

 

「おー、らいはちゃんも明けましておめでとう!今年もよろしくね!」

 

あー、可愛い。らいはちゃんはやっぱ可愛い(再確認)

 

「誰かとも思えば火野か。取り敢えず今年もよろしくな」

 

「おう。よし、じゃあ折角だし皆でお参りすっか」

 

と言う訳で、皆でお参り。それが終わって後におみくじ(1回100円)を引く事になった。俺の両親は共に中吉。どっちも同じの引くとか、ある意味運良すぎィ!上杉パパは末吉。本人は納得がいかずもう1回引こうとしてらいはちゃんに止められていた。

 

「……………お、大吉!やったやったー!」

 

思わず喜びのダンスを始めてしまう。嬉しいな~。

 

「……………あ!やった、私も大吉だ!お兄ちゃんはどうだった?」

 

「……………………大凶だ(まぁ、引かなくてもなんとなく分かっていたが……………………あいつらと出会ってからずっと大凶だし)」

 

あれま、マジか。ちなみに、前に何かのネット記事で見たことがあるが大凶が出てくる確率は1.2%(※諸説あり。神社によって異なる可能性アリ)らしいから、逆に上杉は運が良いとも言えるのかも……………?

 

何て事を考えていると、神社の階段を上って来た晴れ着姿の6人の美女の姿が。うわー、超可愛い。1番前にいる人は星奈さんにそっくりだし、あのヘッドホンを付けている女の子は三玖にそっくりだなー…………………………………………いや、待て。

 

「………………おや、総悟様もここに来ていたのですか。あけましておめでとうございます。そして今年もよろしくお願いします」

 

そっくりじゃない、ものほんじゃん!

 

「星奈さん、こちらこそあけましておめでとうございます。そして今年もよろしくお願いします」

 

「あけましておめでとう、ソウゴ。今年もよろしくね。あと、フータローも」

 

「おー、三玖もあけましておめでとう!今年もよろしくネ!」

 

「ああ、よろしく」

 

「つーか、何でいつもあんた達がいるのよ!」

 

「運命の赤い糸で結ばれてんだろ(適当)」

 

「それだけは絶対に嫌よ!」

 

まぁ、結ばれてるかはさておき。近場だから遭遇するのもあり得る話しだからなー。

 

「………にしても、凄いですねその晴れ着」

 

「前に花火大会で着物を借りた所でまた借りまして。後ろの5人もそうですよ」

 

「へー……………でも、これ高そうな希ガスだけど…………?」

 

めっちゃ豪華だからさぞレンタル料も高いのでは?一花姉さんの貯蓄が死にそうな気が……………。

 

「彼女等のレンタル料は私持ちです。去年のボーナスが安めの一軒家やマンションも買えたりする程の額だったので、これ位痛くも痒くもないです」

 

すんごいな(白目)

 

まぁ、星奈さんはうちの両親にもめっちゃ気に入られてるからなー。

 

「そうだ!よかったら皆さん、うちに寄っていきませんか?」

 

「あ、いいの?なら行くわー」

 

「いや、悪いが新年初勉強が」

 

「いくー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

====================

その後、総悟と上杉は了承を得て親と別れて中野家にお邪魔していた。星奈と五つ子達は晴れ着を脱いで普段着に着替えて録画していたドラマを見ていた。そして丁度キスシーンへ突入。

 

『僕も君が好きだ』

 

「わっ…………キ、キスしました…………」

 

「ロマンチックだわ」

 

「録画してよかったね!」

 

五月、二乃、四葉は恋愛ドラマに釘付け。

 

「ガチャ大爆死…………燃え尽きた…………燃え尽きたよ、真っ白にな…………」

 

一方、総悟はガチャ大爆死で燃え尽きて真っ白になった模様。なお、ジーと違って生死はしっかりと判明している模様。

 

「何のために俺を呼んだんだよ…………帰るぞ、らいは」

 

「まぁまぁ、フータロー君。折角の正月なんだからゆっくりしてきなよ」

 

「フータロー、おせち作ったけど食べる?」

 

「!?…………い、いや大丈夫だ」

 

「じゃあソウゴはいる?…………と言うか、大丈夫?燃え尽きてるような………」

 

三玖が総悟を優しく揺する中、らいはは何処か落ち着かない様子で周りを見渡していた。それに気づいた四葉が話し掛ける。

 

「どうかしたんですか、らいはちゃん?」

 

「えっと………私、勘違いしてたみたい。中野さんのお宅はお金持ちだって聞いてたから…………」

 

「去年、色々とあってこうなったんだよ」

 

三玖のおせち(?)の味で燃え尽き症候群から速攻で復活した総悟が四葉の代わりに言う。

 

「今は必要なものから揃えてる段階です!」

 

「いや、それならテレビは後回しだろう」

 

「確かに今はアプリとかで見れるしなー」

 

「アプリだと期間限定が多いじゃない。だからテレビはあって正解よ。録画もできるし」

 

「まぁ、とにかく自分の部屋だと思ってくつろいでいってよ」

 

一花の言葉もあって上杉は総悟の隣に腰を下ろす。すると、炬燵に入っている二乃から声が掛かる。

 

「ちょっと、何でそこに座んのよ。寒いし炬燵に来なさいよ」

 

「……………じゃあ、二乃の隣は上杉がどうぞ(俺は三玖の隣が良いんで)」

 

「いや、らいはが」

 

「いや、上杉が」

 

「いや、らいはが」

 

「いや、上杉が」

 

人に押し付けあう情けない(?)教師2人に今度は一花が話し掛ける。

 

「ほーら、2人とも遠慮しないで………………あ、そうだソウゴ君。マッサージしてあげるよ。肩とかこって疲れてるでしょ?」

 

「へ?」

 

「一花だけズルい」

 

「早い者勝ちだよー」

 

「じゃあ、私は上杉さんの腕を!」

 

「仕方ないわね」

 

「私は足をもませてもらいます」

 

そして次の瞬間、らいはと星奈の瞳には上杉が二乃と四葉の2人に、総悟は一花と三玖、五月の3人にモミモミ揉まれている光景が広がっていた。

 

「お兄ちゃんに………………モテ期が来た……………!後でお母さんに報告しないと!」

 

「……………一夫多妻を認めてる国はどこでしたっけ?」

 

「いい!調べないで良いですから!………………急にどうしたん?」

 

「なんのつもりだ?」

 

「日頃の感謝だよねー?」

 

「嘘つけ!」

 

いつもならしないであろう行動なので、上杉がそう言うのも無理もない。

 

「いつもお疲れ様」

 

ニコニコ笑みを浮かべる二乃。怪しい。

 

「私のですがよければ食べてください」

 

あの五月が自分のお菓子を差し出す。二乃以上に怪しい。

 

「五つ子バージョンの福笑いを作りました」

 

四葉がとんでもない難易度の福笑いを差し出す。

 

「え、ちょ……………………あの二乃がお礼を言ったり、あの五月がお菓子を差し出したりと、マジでどうしたんだ?ゲイ・ボルクの魔槍の雨が降りそそいで地球が滅ぶ前兆か?」

 

「あの二乃ってどう言う意味よ!」

 

「あの五月ってどう言う意味ですか!」

 

総悟に対して二乃と五月がぷんすかしていると、三玖が口を開く。

 

「えっと………………2人に渡したいものが」

 

「三玖、それはまだ早いよ!皆、隣の部屋に行こっか!」

 

一花の鶴の一声で5人は隣の部屋に引っ込んで行った。それをよく分かってない表情で見送る上杉が首を捻る。

 

「………………何を企んでやがるんだ?」

 

「さぁ……………渡したいものって、お年玉か?……いやぁ、でも今の中野家の財政的にそんな余裕はないかぁー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、中野家のファイブシスターズはと言うと。

 

「どうする?」

 

「あいつら全然気にしてなさそうだったけど」

 

「でも、このままじゃ上杉さんと火野さんに悪いよ。クビになった2人に仕事でもないのに家庭教師を続けてもらうんだから」

 

そう。四葉の言う通り、今の2人は中野父に雇われている家庭教師ではない為、時給0のボランティア状態。ちなみに、総悟のクビは彼自身が全員へ一斉送信したメッセージで伝えられた。本人は『別に借金とかないし気にすんな』と5人が罪悪感等を感じさせないように気遣いの一言を添えてくれていたが。今日の行動もそれが理由だったのだが、5人は揃ってアレだけでは足りないと感じていた。

 

「何かしてあげたい……………」

 

「でも、お父さんにはできるだけ頼りたくないね」

 

「とは言っても、私達があいつらにやってあげられることって何かしら」

 

5人が悩んでいると、先ほど自分達がいた部屋から総悟とらいはの声が聞こえてくる。

 

『わー!ちゅーした!アニメのちゅーもロマンチックだね!』 

 

『だろー?俺的にはアニメの方がなんかイイんだよな』

 

『ニヤニヤして気持ち悪いな………………』

 

『あ、そうだ(唐突)おい上杉ィ!お前さっき俺がらいはちゃんにキスシーンを見せてる時画面をチラチラ見てただろ(因縁)』

 

『興味ないから見てない』

 

『嘘つけ絶対見てたゾ。………………あとお前、クリーム付いてるぞ』

 

そんな会話が耳に入って来たせいか……………………5人の頭の中には先ほどのドラマでのキスシーンが共通して思い浮かんだ。

 

「ふ、不純です!!」

 

「あんたも同じことを考えてたでしょうが!」

 

「き、キスがお礼はちょっとハードルが高いと言うか……………………」

 

五月と二乃に続いて、四葉も顔を真っ赤にして呟く。

 

「けど、あいつらも男なんだから案外喜ぶかもしれないわよ。一花は女優だしほっぺにくらいなら出来るんじゃない?」

 

「じ、女優を何だと思ってるの!……………で、でもそう言う事なら三玖の方が適任じゃないかな!」

 

「え?わ、私が……………………」

 

三玖の頭の中でシミュレーション、一言で言えば妄想が展開される。

 

『ソウゴ……………ちゅっ』

 

『……………三玖!』

 

次の瞬間、キスした相手(総悟)は目つきは獲物を品定めするかのように鋭く─────『野獣の眼光』が三玖の瞳を射抜く。

 

『俺をその気にさせたな?もう誰にも俺を止められないぜ?』

 

『ええっ!』

 

『勿論、このままキスだけじゃ終わらねーよ?その先もイキますねぇ!』

 

『えええええええっ!?だ、ダメだよソウゴ……私達まだ高校生だし………………止めて………………………やっぱり止めないで……………………ソウゴになら……………………』

 

「あんたが止まりなさい!三玖、現実に帰ってきなさい!」

 

「……………………はっ!………私は何を…………」

 

三玖が現実に帰還したところで、五月が別の案を出す。

 

「無難にお菓子とか料理でいいのではないでしょうか?二乃も得意ですし」

 

「!……………………だめ。折角忘れてきたんだから……………」

 

「?」

 

二乃の脳裏にはキンタロー──────────いや、ホテルでフータローとシュークリームを作ったことを思い出してしまう。それを知らない五月はクエスチョンマークを浮かべていたが。

 

「やっぱり…………予定通りこれにしようか」

 

一花が取り出したのはお金の入った2つのお年玉袋。そこまでの金額は入ってないが、状況が状況なので仕方がない。

 

「ですね、彼らも一番喜ぶと思いますよ」

 

話が纏まり、5人はドアを開けて部屋に戻る。すると扉の前には総悟が。

 

「あ、ソウゴく「動くな」…えっ?ちょ…………」

 

総悟の顔が急接近。どんどん近づいて来る。 

 

「な、何を………………やめっ……………………んっ……………っ…………」

 

「……………………ウム!」

 

キスするのかと身構えてた矢先、総悟は満足そうな声を上げるとさっさと上杉兄妹の元へ戻った。

 

「やっぱこれじゃないかねー」

 

「火野もそう言うなら間違いないな」

 

「えー、こっちだと思うけどなー」

 

残念、ただ福笑いで遊んでただけでしたー。緊張の糸が切れたのか一花が床にへたりこんでしまうのを三玖と五月が慌てて支える。その拍子で一花が手に持っていたお年玉が床に落ちる──────────寸前に星奈がキャッチ。

 

「……………………ああ、なるほど。そういう事でしたか」

 

星奈は完全に理解。その後、改めて5人は総悟らに説明した。

 

「…………なるほど、そゆ事ね。別に気にすんなとは言ったけど、やっぱ気にしてたか」

 

「ええ……ですから、せめてこれだけでもと思いまして」

 

五月は2人にお年玉を差し出す。総悟と上杉の2人は顔を見合わせると、揃って突き返した。

 

「別にいらねーよ。俺はやりたくてやってんだ。給料の事は気にすんな」

 

「そうそう。俺の場合は親戚からのお年玉ですでに潤ってますから。このお金は自分たちの生活に充てな」

 

「2人とも…………………」

 

場が良い感じの雰囲気になった中、次の瞬間上杉から衝撃的な言葉が放たれる。

 

「給料は出世払いで結構だ」

 

「「「「「………え」」」」」

 

「ちゃんと書いとけよ!一人一日五千円!一円たりともまけねぇからな!」

 

「…………そういや、こう言う奴だったわね……………」

 

「人間の屑か(大袈裟)」

 

「あはは…………」

 

これには星奈も苦笑しかない。

 

──────────と、言う訳で7人の新しい年は始まったばかりである。

 

to be continue……………




今日も読んでいただきありがとうございました。


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今日はお疲れ その1

星奈さんの過去篇の企画が進行中。三玖の幕間の物語は最後の期末試験が終わったら投稿しようかと。続報をお楽しみに。


「もうこんな生活うんざり!」

 

朝の9時、三玖に鍵を開けてもらって上杉と共にアパートに入って早々、二乃のそんな声が耳に入る。まだ1ヶ月も経ってないのにはえーな、おい。

 

「五月、なんで布団に入り込んでくるのよ!それにあんたの髪がくすぐったいし、ばっさり切っちゃいなさい!」

 

「さ、寒いのですからしょうがないでしょう!髪に関してはずるいです、自分が切ったからって!」

 

「あー、もう朝から騒がしいな……………あれ、三玖はどうしたの?頬を押さえて?」

 

「………………四葉の寝相が悪くて。それで……………………」

 

なるへそ。四葉ァ……………………ゆ゛る゛さ゛ん゛!!

 

「よし、四葉は外で寝ろ(鬼畜)」

 

「いや、寒くて死んじゃいますって!」

 

「四葉なら大丈夫だろ(適当)」

 

「いやいや、無理ですって!……………それにしても、布団で寝るのは久々なのでまだぐっすり寝られないんですよね。まぁ、ベットから落ちなくなった点は何よりですが」

 

「四葉、それはあんただけよ」

 

どんだけ寝相が悪いんですかねぇ…………………。

 

「はぁ………………新生活早々これか。これだけの騒ぎの中でぐっすり寝ている一花を見習え!」

 

「いや、上杉。アレは見習ってはいけない(戒め)」

 

「既に汚部屋の片鱗が見えるのですが………………」

 

この姉さんと言う女はどうしてこんなに片づけが下手くそなのだ、まったく!さっさと叩き起こしてくれる!

 

「おい、姉さん起きろ!勉強すんぞ!」

 

「…………………むにゃ……………あ、ソウゴ君。おっはー」

 

「ファッ!?」

 

そういやこの姉さんは露出教徒だった!すっかり忘れてたァ!……………………掛け布団を取っ払ったら全部見れ((殴

 

「2人とも、見ちゃダメ!」

 

「って言うか……………仮にも乙女の寝室に入って来てんじゃないわよ!」

 

「乙女………………二乃以外はそうだな」

 

「当然のように省いてんじゃないわよ!私も含めなさい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから1時間後、5人が朝ご飯を食べたりなどを色々と済ませて漸く勉強会が始められるまでに持ってこれた。もー、準備が長すぎてアニメを見ちゃってましたよー……………って。

 

「一花姉さんー。うとうとしてんぞー」

 

「……………あっ、ごめんごめん。それと、先ほどはお見苦しいものをお見せして申し訳ない。……………それともご褒美だったかな?」

 

………………まぁ、否定はしない(正直者)

 

「…………全く、服着ないと風邪ひくぞ」

 

「習慣とは恐ろしいもので、寝てる間に着た服を脱いじゃってるんだよね。まぁ、家限定だけど」

 

「恐ろしすぎィ!」

 

えっ、何、その習慣………(困惑)

 

「それと、これからは勉強に集中出来るように仕事をセーブさせて貰ってるんだ。次こそは全科目で赤点回避したいからね」

 

「うん」

 

「そーね」

 

「今度こそは合格しましょう!」

 

「ええ、そうですね」

 

………………よすよす。その意気だ。

 

「まっ、皆の点数の伸びしろを見る限りは行けそうな気がするけどネ!」

 

「点数的には、な。だが、油断は禁物だぞ火野」

 

「分かってるっての。よーし、始めるとすっかなー。勿論、冬休みの課題は終わってるよなぁ?」

 

「当然よ。課題なんてとっくに終わってるわ」

 

5人はそれぞれ課題を書き込んであるノートを見せてくる。やりますねぇ!(食い気味)

 

「……………ん?どうした上杉。不思議そうな顔を浮かべてるけど」

 

「いや……………終わらせてるとは正直思ってなくてな。先ずは冬休みの課題を片付ける所からだと思ってたんだが……………」

 

「私たちを舐め過ぎ。これくらいの課題なら出来るわよ。そんな事も分かんないなんて……………………あんたバカァ?」

 

「う、うっせー!」

 

「ハハッ………………あと、意外とそれ気に入ってるだろ」

 

「………言い方と言い、何か妙に癖になるのよね。自分でも不思議だわ」

 

ツンデレキャラのア〇カの名台詞『あんたバカァ?』を同じくツンデレの二乃が気に入るのは運命の可能性がアリ………………?

 

……………おっと、それよりもだ。課題は終わってるので通常通りやりましょうねー。

 

「ソウゴ、ここが分からないんだけど」

 

「どれどれ………………サイコロを3つ投げてその和が奇数になる場合は何通りか、ね」

 

「(ち…………近い!ソウゴの顔がすぐそこに………………!)」

 

「3つのさいころの目の和が奇数となるのは、奇数+奇数+奇数、奇数+偶数+偶数の2パターンでして(説明中略)……………そしたら答えはどうなるかなー?」

 

「えっと………………108通り?」

 

「しょゆことー。あ、ちなみに次の問題の『目の積が偶数になるのは何通りか』の問題はパターンは非常に多いんで、余事象を使っ……………………一花姉さんー。起きて、どうぞ」

 

目を離した隙に寝てやがりますよー。

 

「いやー、ごめん。寝て……………ない……………よぉ……………zzz」

 

「即(寝)落ち3コマか」

 

「この野郎………………何が全科目赤点回避したいだ……………」

 

すると二乃が口を開く。

 

「少しは寝させてあげなさい。さっきはあんな風に言ってたけど、本当は前よりも仕事を増やしてるみたいなの」

 

「……………………。まぁ、5人分の生活費を払うとなると結構お金が必要となるしね」

 

「こうやって教えてもらえてるのも一花のおかげ」

 

確かに三玖の言う通り。このお姉さんがいなければ俺の目の前にこの光景は広がってなかっただろう。

 

……………………頑張ってるんだなぁ、一花も。

 

「…………だからって無理して勉強に身が入らなきゃ本末転倒だ」

 

ただ、上杉の言う事も正論な訳で。どうしたものか……………………あっ、そうだ(唐突)

 

「思ったんだけど、皆もバイトとかすれば?そしたら一花姉さんの負担を少しでも減らせるだろ」

 

「それは良い提案です。勉強の邪魔にならないようにすればいい話ですし」

 

「赤点回避で必死なお前らがバイトと勉強を両立出来るとは思えな「あんたは黙ってなさい!(黒崎)」モガァ!?」

 

宮野〇守を強制トランザムさせたお久しぶりの股掴みでネガティブな事を言おうとしている上杉を取り敢えず黙らせる。

 

「………………えー、じゃあ順番に。五月はバイトするならタウンワー………………じゃなくて。何が良い?」

 

「そうですね……………………あ!家庭教師はどうでしょうか?教えながら学ぶ!これなら自分の学力も向上し一石二鳥です!」

 

「……………………。却下」

 

「ええ!?」

 

「まだ人に教えられる程の学力はないでしょうが……………………はい、次!」

 

「それならスーパーの店員はどうですか?近所にあるのですぐ出勤できますよ」

 

「……………レジの操作とか覚える事とか結構多いけど大丈夫なのか?」

 

「……………………」

 

ダメみたいですね(察し)

 

「私……………メイド喫茶やってみたい」

 

「ファッ!?」

 

「あんたには無理よ。料理とか接客は向いてないでしょ」

 

「むぅ……………」

 

三玖がメイド………………………………………俺なら毎日行くわ(信者)

 

「二乃はやっぱり女王様?」

 

「やっぱって何!」

 

「二乃にとっては天職だな(断言)」

 

「天職認定するな!」

 

いや、冗談抜きでマジで合ってると思うけどな。中々のSだし。

 

「二乃はお料理関係だよね」

 

「まぁ、やるならね。女王は死んでもごめんよ」

 

………………ちぇ。

 

「二乃は自分のお店を出すのが夢だもんね」

 

「へー、そうなのか」

 

「初めて聞いたな」

 

「…………子供の頃の戯言よ。本気にしないで」

 

別にいい夢だと思うけどね、俺は。

 

「居酒屋、ファミレス、喫茶店、和食に中華、イタリアン、ラーメン、蕎麦、ピザの配達……………………今まで様々なバイトをしてきたが、どれも生半可な気持ちじゃこなせなかった」

 

「食べ物系ばっかり」

 

「まかないが出るからでしょう」

 

「仕事を舐めんなってことだ!一花が目指す夢も分からんでもないが………………今回ばかりは無理のない仕事を選んでほしいもんだ」

 

「………………まぁ、取り敢えず今は30分位寝かしておいてやるか。少し寝たら頭もスッキリすんだろ」

 

さーて、大分脱線したがそろそろ本題の勉強に戻るとすっかー、と思った矢先。

 

「……………………んー……………」

 

………………おや!? 一花姉さんのようすが……………!シン・一花姉さんに進化するのか()

 

「……………服が邪魔だなぁ……………」

 

習 慣 発 動

 

「ヤバい!×3(いいぞ、脱げ!)」

 

「このままだと上杉さんと火野さんの前で脱いじゃう!」

 

「フータローとソウゴも見ちゃダメ!」

 

「一花、ここではダメですー!」

 

「見てんじゃないわよ、上杉!この変態!」

 

「何で俺だけ!?」

 

あーもうめちゃくちゃだよ(cv.杉田〇和)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、父さんがワイの部屋に降臨。何事かと思って身構える俺氏。そして父から言い渡されたのが──────────

 

「……………………は?サイン貰ってこい?」

 

「そうそう」

 

何でも、明日上杉の働いてるケーキ屋さんで映画の撮影が行われるらしい。そこに来る『みいちゃん』、『りなりな』、『こんタン』のサインを父さんは欲しているらしい──────────ちなみに、俺は3人とも全く知らない。あんまりドラマとか見ないし興味ないからね、しょうがないね。だが、父さんはどうしても外せない仕事があるので、代わりに貰ってきてくれと俺にお願いに来たらしい。

 

「頼む!この通りだ!貰いに行ってくれたら何でもするからよ!」

 

「ん?今なんでもするって言ったよね」

 

「ああ、そう言ったぞ(強者の風格)」

 

よしよし。言質は取ったぞ(ニヤリ)

 

「それなら俺が行ってやるか。しょうがねぇな(悟〇風)」

 

「おお!流石我が息子!ちょろゲフンゲフン………………良い奴だな!じゃ、明日の14時から撮影開始らしいからヨロシクゥ!」

 

「…………今ちょろいとか言い掛けたな!ふざけんな!(声だけ迫真) ちょろいとか、頭にきますよ!(憤怒)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、時間まで暇なので中野家のアパートを訪ねると、星奈さんがいた。何でも、三玖にチョコの作り方を見せてほしいと頼まれたらしい。そして出来たチョコを五月が食すと言う循環が出来上がっていた。一花姉さんは仕事で、二乃と四葉は買い物とその荷物持ちで不在。

 

「………………なるほど。それで総悟様が代わりに貰いに行くのですね」

 

「そうなんですよー。ちなみに、三玖は『みいちゃん』とか知ってる?」

 

「知らない」

 

即答ゥ。俺と同士やなー。

 

「………………あ、そうだ。折角だし三玖も来ない?」

 

「!…………………ごめん、ソウゴ。今日は星奈さんに色々と教えてもらいたい事があるから…………」

 

「あー、そっか。全然いいよー」

 

うーむ、残念。まぁ、また機会もあるだろうし良いか。

 

「………………あ、そろそろ時間だ。じゃ、行ってきまーす」

 

「行ってらっしゃいませ」

 

「行ってらっしゃい」

 

……………………そういや、一花姉さんも仕事って言ってたな。もしかして、今日の現場にいたりして……………………なんて流石に都合良すぎか。この世に一花姉さんと同じ立場の女優はごまんといるしネ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………誘ってくれたのに良かったのですか?行けば良かったのに、と率直に思いますが」

 

「……………………あと1か月でバレンタイン。それまでに美味しいチョコを作れるようになっていたい。星奈さんも普段はお仕事があって、こうやって作ってる様子を見て勉強させて貰える機会は少ないから、少しの時間も無駄に出来ない……………!」

 

「(……………ふふっ。気合が入ってますね)じゃあ、続けますよ────」

 

to be continue………




作者はコラボ大好き人間なので、お声かけしてくれればリアルの状況も加味して前向きに検討します。三玖推しの同士なら即座にOKする……………かもしれなかったり、そんなことなかったり。

真名解放したのでメッセージとか送れると思うので、もし仮にガチでしたい作者さんがいたら………………いいよ、来いよ!

今日も読んでいただき、ありがとうございましたー。


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今日はお疲れ その2

今日、三玖達の誕生日。おめでとう!いつか誕生日回も書くかなー。


はい、と言う訳でケーキ屋に到着ゥ。おっ、あいてんじゃ~ん。お邪魔しまーす。はえ~、すっごい大きい……………いや、そうでもないわ(辛辣)

 

「あー、すいません。今日はもう……………って、火野か」

 

「よー、上杉。話は聞いてるか?」

 

「見学に来る奴がいるとは店長から聞いてたんだが……………お前なのは予想外だったな。お前も『みいちゃん』とか興味あるのか?」

 

「俺じゃなくて父さんの方なんだよなー。仕事があるからって代理でサイン貰ってこいと頼まれてさー」

 

「ああ、そういう事か」

 

と、そこへ店長が。

 

「君が火野君か。そう言えば前に店に来て大量にエクレアを注文してたね」

 

……………………この店長の声、エロい声・叫び声に定評がある事で有名なcv.鳥海〇輔やな。前に来て声を聞いた時からそんな気はしてたが、今もう一度聞いてハッキリと確信したぜ。

 

「おー、覚えててくれて光栄です。あと、うちの父親がすみません。ほんとはこう言うのダメなんじゃないですか?」

 

「まー、何か言われたら適当に誤魔化しておくからたぶん大丈夫。彼とは昔からの知り合いの友人でね。今回もそのよしみでOKした訳さ」

 

うちの父親、交友関係広すぎィ!

 

「ところで上杉も見て」

 

「誰も知らないから帰る」

 

知 っ て た。

 

「失礼します。今日はよろしくお願いします」

 

あ、スタッフーが来た。あ、その後ろには女優さん達が。うわー、キラキラしてんなー。可愛いオーラがで、出てますよ…………。

 

「わー、おいしそー!」

 

「よろしくお願いしまーす!」

 

「オッスお願いしまーす!(迫真)」

 

「ど、どうも……(早く帰ろ)」

 

そこへもう1人、遅れて入って来る人物が。

 

「よろしくお願いしまーす」

 

「オッスお願いしまーす!(迫真&2度目)」

 

おー、こちらも可愛いですね~。まるで一花姉さんのような……………………

 

「……………………なっ!?」

 

「…………………そっくりじゃねぇ!」

 

このセーラー服の女の子は一花姉さんで間違えねぇ!本人だ!マジでいたよ、さっきのは冗談だったのに!

 

「な、なんで………………あ!それにこの店って確か 」

 

「……………………店長。やっぱ見学して行きますわ。知ってる女優がいたんで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と言う訳で、少し遠くから一花姉さんらが打ち合わせしているのを見守りなう。忙しそうなのでサインを貰うのは後にするとしよう。映画の撮影ってこんな感じなのか。生で見れるなんて中々出来ないレアな体験やなー。

 

「それにしても、冬休みの客入れ時に撮影なんてよく許可しましたね」

 

「あー、確かに」

 

「最近、向かいの糞パン屋にお客を取られていてね。もしこの映画が大ヒットすればファンが押し寄せる事間違いなし!取り敢えず撮影で使うパイに店名の入ったピックを差し込むんだ。上杉君、君も積極的にアピールするんだぞ」

 

「はえー、すっごいハングリー精神」

 

「逆に見習いたい……………」

 

良くも悪くも感心している間も準備は進み、遂に撮影開始となった。

 

「それではシーン37の4。アクション!」

 

どんなシーンなんだろう?普通に談笑シーンか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここのケーキ屋さん一度来てみたかったのです〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「 」」

 

取り敢えず言葉を失う教師2人の構図が完成。え、何これは…………(困惑) 

 

「……………なんの映画だ、これ」

 

「ホラーって聞いてたけど」

 

「最近のホラー映画ってこんな感じなのかぁ……(しみじみ)」 

 

「それ呪いのリプライだよ!」

 

「送られると死んじゃうっていう…………」

 

「う~ん。タマコには難しくて、よく分からないのです~。それよりもケーキを食べるのです~」

 

「これ配役間違ってるだろ……………」

 

「クックックッ……………!」

 

俺は面白過ぎて笑い声を噛み殺すのに超必死。マジで面白すぎんよ~。いやー、今日来て良かったわー。

 

「間違ってないよ。一花ちゃんは幅広い役を演じられる女優だと私は信じているよ」

 

デデドン!(絶望)

 

……………こ、この声はっ……………………!?

 

「久しぶりだね。Chu」

 

ヒッ……………やっぱりホモ(真偽不明)の社長!取り敢えず俺は上杉と位置交換。ガードベント(近くにいたお前が悪い)

 

「ど、どうした急に」

 

「こうする以外に他に方法があるだろうか、いやない(反語)」

 

「?」

 

上杉を間に置いて身代わりにしていると、いつの間にか撮影に一段落ついたのか休憩に入ったようだ。……………………おや、一花姉さんがこっち来た。

 

「ちょっと、2人とも来てもらえる?」

 

「「?」」

 

良く分からんが取り敢えず人気のない所まで連れて来られると、ドン、と2人まとめて壁に手をつく。これは俗に言う(?)ダブル壁ドンってやつか。

 

「どうした、たまこちゃん」

 

「壁ドンとか、ホラーじゃなくてラブコメかよ」

 

「……………2人とも、恥ずかしいから見ないでもらえるかな?」

 

「えー、いいじゃん別に。どうせ近い内に俺も含めた大勢の人に映画館で『ここのケーキ屋さん一度来てみたかったのです〜』とか『う~ん。タマコには難しくて、よく分からないのです~。それよりもケーキを食べるのです~』って見られるんだからよ」

 

「こ、こら!恥ずかしいから真似禁止!」

 

「お前、声真似が上手いな……」

 

出そうと思えば(王者の風格)

 

「そもそも、恥ずかしがるような役をやるなよ」

 

「皆には誤魔化してるけど。貯金が心許無くて。光熱費や食費って思ったより掛かるからね。だからどんな小さな仕事でも引き受けるって決めたの。あの子達のためにも私が頑張らなきゃ」

 

……………………。やっぱ彼女は5人のお姉さんなんだな。

 

「言っておくけど、やめろと言われても」

 

「その努力を否定はしない。それに、家庭教師を続けるチャンスを作ってくれた一花には感謝してる」

 

「そうだよ(便乗)」

 

「………!」

 

「だがこの仕事、まだ拘束の割に収入は少ないんじゃないのか?勉強に本腰入れなきゃいけない今は、女優業に拘らなくても良いと思うんだが」

 

「…………いいから言うこと聞いて!でないとこの写真を皆にばら撒くよ」

 

「………そ、その写真は…………!?」

 

上杉、驚愕。当然であろう、一花姉さんが見せたのはずっと前に消したはずの花火大会の写真なのだから。

 

「馬鹿な…………あの時目の前で消させた筈じゃ…………!?」

 

「今の便利な時代、バックアップとか言う便利な機能がありまして。『ラ○ュタは滅びぬ! 何度でも蘇るさ!』とか言う大佐の名言があるように、『写真も滅びぬ!何度でも蘇るさ!』って訳」

 

誰だよ大佐って、と言う上杉からの問いはスルー。

 

「く、くそ…………ただの寝顔なら勝手にしろなのに、こんな落書きされた顔を盾にされては敵わん…………」

 

「これで言うことを聞いてくれるようで何よりだね。皆にも内緒。お姉さんとの約束だぞ?ソウゴ君もね」

 

「あ、いいっすよ(快諾)」

 

と言う訳で次のシーンの撮影行くどー。はい、よーいスタート(棒読み)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、美味しいのですー」

 

一花姉さ……………………いや、たまこちゃんはパイを食べてそう言う。

 

「なーにがお姉さんだ。この姿をあいつらにも見せつけてやりたいぜ」

 

「ヒヒヒッ………………!」

 

相変わらず俺は笑いを堪えるのに必死。面白いからね、しょがないね。

 

「はい、カット!今のもいいけど、もう一パターンやってみようか」

 

「はい!」

 

……………あ、てことはパイがもう1つ必要になるな。

 

「…………お、あった」

 

辺りを見回して発見。気を利かせて、スタッフに渡す。

 

「これ使って、どうぞ」

 

「あ、すみません。ありがとうございます」

 

ふー、俺いい事したなー(自画自賛)と、心の中で呟きながら上杉の隣に戻る。

 

「スタンバイ出来ました!」

 

「よし、本番!」

 

よーい、アクションする直前だった。上杉がパイを見て口を開いたのは。

 

「……………ん?おい、あのパイピックが刺さってなくないか…………?」

 

「ん?………あぁ、そうだな」

 

「…………まずい、あれは俺が作った生っぽい失敗作だ…………」

 

…………………え?

 

「アクション!」

 

「「ま………」」

 

止めようとするも、時既にお寿司…………じゃなくて遅し。失敗作のパイが一花姉さんの口に入っていった。そして────────

 

「うーん、美味しいのです〜」

 

───────鬼がかった笑顔を浮かべた。本当にそのパイが美味しいかのように。上杉のパイが不味いのを一切悟らせない尊死級の笑顔だった。

 

正直──────少し感動した。

 

「いいねぇ!最高!」

 

「ありがとうございます!」

 

監督も大絶賛。そりゃそうだわな、と心の中で頷いていると上杉が立ち上がった。

 

「あれ、どったの?」

 

「もう充分見たから帰るんだよ。……………困った生徒だ。仕事を変えろだなんて言えなくなっちまった」

 

どうやら上杉も今の演技に何か思うところがあったらしい。勿論、良い意味で。つー訳で上杉は帰宅。さてさて、休憩中みたいだしちょっと一花姉さんに労いの言葉でも………………って、いないし。どこに行った?

 

「……………………ん?何か落ちてる」

 

何だこれ………………って、台本だ。しかも一花姉さんの。がさつ過ぎんだろ………(呆れ)

 

取り敢えず一花姉さんを探すと、すぐに見つかった。

 

「!」

 

俺の存在には気付かない程、集中して勉強していた。……………あ、間違えを見っけた。

 

「問5が間違ってんぞ」

 

「!……………はは、見られちゃったか。こう言うのは陰でやってるのがカッコいいのに」

 

「あー、分かるぜその気持ち。…………つーか、台本は読まなくて良いのか?台詞とか大丈夫なのか?」

 

「それはもう覚えたから大丈夫。序盤で呪い殺されて死ぬから、台詞が少ないんだよね」

 

あの四国のバイ〇ハザードもどきみたく、また序盤で退場かよ…………。

 

「そう言えば、ここのケーキ大丈夫なの?何か個性的な味がしたんだけど…………」

 

「あー、あれは上杉の作ったやつだから。奴が厨房に立つのはまだまだ先の話だな」

 

上杉も不定期で星奈さんにしごいて貰ってるんだけどねー。まだまだ足りないと言うことか。

 

「……………にしても、あのとんでもないパイを食べてのあの演技。上杉の奴も驚いてたな」

 

「そうなんだ。……………ソウゴ君は?」

 

「俺?勿論、あの迫真の演技には驚かされたよ。たまげたなぁ、って。何と言うか……………女優らしくなったな、うん。マジで少し感動した」

 

「!」

 

「将来はマジで大物女優になるかもな、前は冗談で言っていたハリウッドで名を轟かすよ………うな!?」

 

寝てるし!!人が折角ベタ褒めしてるのに!!激おこぷんぷん丸!(憤怒)

 

「ったく。…………じゃけん、この映画が公開されたら皆と見に行きましょうねー。そして一花姉さんの迫真の演技を是非とも見せてあげないと(使命感)……………まぁ、とにかくだ」

 

俺は一花姉さんの頭に手を置き、わしゃわしゃ撫でる。前回はからかい目的だったが、今回はリスペクトと労いを込めて。

 

「お疲れさん、一花」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(…………こんな顔、見せられないよ)」

 

あぁ、ほんとに。どうして彼の言葉にはこんなにも心が満たされるような暖かさがあるのだろう。その言葉を1番言って欲しい人物が、欲しいタイミングで、スッと差し出す。

 

……………反則だよ、もう。

 

「(………三玖が彼を好きになる訳だね……………………)」

 

───────それを今更になって漸く理解したような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみにこの映画、大ヒットとまでは行かなかったが男の幽霊が2人映ってるとかで一部の心霊マニアから聖地扱いされ、来客がほんのちょい増えたとか。そして総悟君はサインもしっかり貰って、『何でもして貰う券(1回限り)』をゲットしたとさ。めでたし、めでたし。

 

to be continue………




後日

店長「何か店内でこっくりさんとかやり出す輩が増えたんだけど……………」

総悟「その方面のマニアの名スポットになった訳ですかー」

店長「これで売り上げが落ちたら呪いのせいだね(断言)」

上杉「呪いのせいにするんですか………(呆れ)」

















(呪いのせいで売り上げ減少とか)ないです。店の事を一から見直して、どうぞ(辛辣)

今日も読んでいただき、ありがとうございましたー。


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子供と大人、娘と父親

今期の春アニメで1番好きなのは『スライム倒して300年』です。皆可愛い!FOO!↑ 

以上、今回の前書きでした。


とある喫茶店(ス〇バ)

 

五月とその父、マルオが席に座っていた。テーブルにはアイスコーヒーが。

 

「飲まないのかい?」

 

「え、えっと………」

 

「それとも食べたばかり……『ぐ――――――』………………ではないようだね。すみません、サンドウィッチを全種ください」

 

「ああっ、お気遣いなく!」

 

「いらないのかい?」

 

「…………いただきます………」

 

「いい子だ。五月君は素直で物分かりが良い。賢さというのはそのような所を指すのだと僕は思うよ」

 

「………お父さん、私をここに呼んだ理由はなんですか?」

 

「父親が娘と食事をするのに理由が必要かい?(…………変ではないよね?食事するのに理由は無くても問題はないよね…………?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「上杉、早くしろよー」

 

「お、重いっ…………………!!」

 

何か二乃に召集を掛けられたと思えば、俺と上杉と四葉は買い物の荷物持ちとして連れてかれた。前に適当に未来予知した事がマジで現実になっちゃいましたよー。ワン〇ースで言う見〇色の覇気を極めすぎて未来予知が出来るようになった可能性が微レ存……………?

 

「り、力学的に1番効率的なのは………………だめだー!」

 

勉強ばかりしてたつけが来たみたいですね(呆れ) 結局、米袋は四葉が持つことに。

 

「あー、そういや今日は特売日か。まぁ、家計の事を考えると安い時に買っとかなきゃアカンわなー………………ちなみに、二乃が女王様のバイトをやればもうちょい生活が楽になるんだがね」

 

「だからやんないっての!……………あ、そうだ。三玖から頼まれてたんだった」

 

?……………………あ、チョコレートか。そういやもうすぐバレンタインだなぁ。恐らく研究用のチョコレートを買ってくるように頼んでる辺り、三玖も誰かにチョコレートを渡すつもりなのかな?本命だろうが、義理だろうが、友チョコだろうが、俺にくれたら発狂しながら街を全裸で走りますよ~(変態)

 

「三玖の奴、そんなにチョコを食うのか」

 

「……………あんた、察し悪すぎ」

 

「やれやれだぜ…………(承〇郎)」

 

バレンタインデーって今どきは小学生でも知ってるんだけどなぁ(挑発)

 

「さっ、買う物は全部買ったしさっさと会計を済ませ「ごめん、二乃!トイレ行くから持ってて!」え、ちょ……………てか、重っ!」

 

我慢してたのか米袋を二乃に預けて四葉はトイレへと爆走。唐突に中々の重量のある米袋を預けられた事と、ハイヒールだった事もあって足をふらつかさせる二乃。慌てて米を持とうとするが、俺よりも先に上杉の方が早く米袋を掴んだ。二乃と2人で仲良く持っている状態だ。

 

「ふぅ、ギリセーだったな」

 

「そ、そうね……………あ、ありがと………」

 

「よし、せーのでカートに乗せるぞ。せーの……………………っと」

 

お米がカートに乗車。はい、と言う訳でレジまで運びまーす。にしても……………………最近、二乃の上杉を見る目が変な気が。今も一緒に持ってる時に乙女の顔を垣間見た気がしたんだが……………………キンタローの事を忘れられてないからなのか、それとも……………………ね?

 

「……………ん?何だこのお菓子?」

 

ねる〇るねるねじゃん。

 

「ああ、それ四葉のおやつよ」

 

「子供かよ」

 

俺も上杉と同じ感想。お子様パンツと言い、四葉は子供っぽいっすねー。

 

「あら、女はいつまでも少女の気持ちを忘れないものよ。お城で舞踏会とか白馬に乗った王子様とか今も憧れてるんだから」

 

「へー(無関心)」

 

上杉は安定の無関心。

 

「逆にあんたらは少年の心とかないのかしら?」

 

「ありますねぇ!(食い気味)ありますあります」

 

「食い気味に何度も言わなくて良いわよ…………まぁ、あんたは当然持ってるわよね。よく少年漫画とか読んでるし」

 

「いくつになっても少年・少女の心を忘れちゃいけないって、それ一番言われてるから……………………だが二乃。純粋な少女の心を持つのは良いが、それを利用してとんでもない敏腕で魔法少女の悪徳勧誘をしてくる一見すれば白くて耳長の可愛らしい姿の地球外生命体とかいるかもしれないから気をつけてくれよなー。頼むよ~」

 

「はいはい、気を付ける気をつける(適当)」

 

……………いやー、今振り返っても『ま〇マギ』って色々と凄かったなー。ちなみに、俺は『ま〇マギ』で初めて虚淵〇のアニメ脚本に触れた。あの第3話の衝撃展開は初めて見たときは『ファッ!?』ってなりましたよ~。後々考えると魔法少女だろうが、やっぱり虚淵〇は虚淵〇だったんですんねぇ………………。

 

さてさて、6283円の会計も終わってレジ袋に詰め終わるが……………………四葉が中々戻ってこない。遅くね?

 

「小生、迷子になった説を提唱するでござる」

 

「何その一人称……………まぁ、迷子はあながち否定できないわね」

 

「仕方ない、迷子センターに……………………って、あそこに四葉が……………いや、違うな。あいつは」

 

「五月だな」

 

「……………本当だわ。何であの子がここに…………?」

 

ス〇バで男の人と2人席で座ってるな。誰だあの男の人は?傍から見たら怪しい感じ、犯罪臭がするんですが、それは………?

 

ファッ!?ファザーなの!?

 

「!………………あの人だ。俺が林間学校の後に入院した時に診てくれたのは」

 

「あ、そうだったんだ」

 

あの人が5人の父親か…………名前は父さんが言ってたな。えーっと……………確かマルオさんか。黒田 〇矢ボイスだけでも大分怖かったけど、後ろ姿だけでも何か威圧感みたいなのを感じるな………………。

 

「何を話してるのか気になるな……………………盗み聞きするか」

 

「ああ^〜いいっすね^~。ちなみに、こ↑こ↓は着席前に注文しなくちゃいけないんだけどどうする?後で金は貰うから俺が2人の分も買ってくるわー」

 

「じゃあ一番安いコーヒーで頼む(………まぁ、精々150円位だろう)」

 

「私もそれで良いわ」

 

「オッケー」

 

―――――まぁ………実際は上杉の予想の倍の値段で上杉は後で発狂(大嘘)するのだが、それは別の話。コーヒーを2人に渡して、五月らから少し離れた席に着席。3人で聞き耳を立てる。

 

「君達のしでかした事には目を瞑ろう。しかし、サンドイッチを全種類残さず食べる辺り、満足いく食事もとれていないようだね」

 

マジかよ、五月大食いだな(周知の事実)

 

「……こ、これは……その……」

 

「すぐに帰りなさいと、他の皆にもそう伝えておきなさい」

 

まぁ……………………そりゃそう言うよな。親の立場としては。

 

「…………………他の皆んな、とは彼らも含まれるのでしょうか?」

 

「上杉君と火野君はあくまで外部の人間だ。それにはっきり言って…………………………僕は彼らが嫌いだ」

 

大人げない………………大人げなくない?

 

「ちなみに上杉、お前は何をした?」

 

「えーっとだな……………………」

 

「何よ、話しなさいよ」

 

「……………実はだな」

 

上杉が話した事を一言で言うとこうだ。『パパに喧嘩売った』

 

「………良かったな、上杉。俺と同じくお前の再雇用の可能性も低いぞ」

 

「いや、全然良くねぇ……………マジでなんであんな事を言ってしまったんだ………………」

 

若気の至りってやつですねー。……………………まぁ、上杉が喧嘩売るような事を言ったのも分からんでもない。上杉からの話だけで察すれば、マルオ氏は『過程』に興味がなく『結果』が全てなスタンスなのだろう。家出問題も『解決したならそれで良し』で『何で家出に至ったか』の『過程』には無関心と言う訳で。

 

……………………まぁ、多額のお金を掛けて彼女等に何一つ不自由のない生活させてあげてるんだし、悪い人ではないし彼なりの愛情は注いでるのだろうけど、自分の娘と距離を置いてるのはちょっとダメだろ。もっと関心を持って、家にはもっと帰って交流を増やさないと。彼女等はまだ子供だ。導いてあげる大人………………いや、親が必要だ。

 

2度目の生を受けて今の親に愛情を注いで貰ってそう感じた────────もしくは1度目(・・・)の親の反面教師としての存在か。

 

「……………………まだ帰れません。彼らを部外者と呼ぶにはもう深く関わりすぎています。せめて、次の試験までの間、私たちの力で暮らして」

 

「君たちの力とはなんだろう。家賃や生活費を払ってその気になっているようだが、明日から始まる学校の学費は?携帯の契約や保険はどう考えているのかな?僕の扶養に入っているうちは何をしても自立とは言えないだろう」

 

「そ、それは…………」

 

完膚なきまでに理にかなった正論……………………確かにその通り。どこに住んでいようと、結局はまだ親の庇護下にいることに変わりはない。……………………やっぱ手強いな、この人。

 

「(………………仕方ない。本当はあんまりやりたくないけど…………)では、こうしよう。上杉君と火野君の立ち入り禁止を解除し、家庭教師を続けてもらおう」

 

「え?」

 

そマ?嫌っている俺達の出禁を解除するばかりか、家庭教師を続けることを許可するとは……………………やっぱ大人やな!(盛大な手のひら返し)

 

「その代わり僕の知り合いのプロ家庭教師との二人体制で、2人は彼女のサポートに回る………………君たちにはメリットしかない話だと思うが。プロの教師がついてくれるし、彼らの出禁も解除される」

 

なるほど、条件付きと来ましたか…………………確かに、この折衷案にはメリットしかない。彼女等もプロがいてくれた方が安心だろう。首を横に振る必要がない────────合理的に考えれば。

 

「…………子供のわがままって言われればその通りなんだけどさ。ここまで来たら俺はこの7人でやりとげたいなーって。赤点回避も…………………5人揃って笑顔で卒業も」

 

「…………………そうだな」

 

「………………そうね。それは私も同意よ」

 

―――――その想いは五月も同じのようで

 

「しかし、この状況で皆頑張ってますし……………今の体制でも」

 

「四葉君は赤点回避出来ると思うかい?」

 

……………………。

 

「2学期の試験の結果を見たが……とてもじゃないが、僕にはできるとは思えない」

 

「(…………2学期の成績だけじゃなくて………前の学校で失敗した事も踏まえて言ってるだろうな)」

にしても……………そこまで言うか?そのつもりは無くとも、言葉通り受けとれば四葉を侮辱と言うか、見限ってるように聞こえるんだが。上杉も父親らしからぬ言葉に怒りを感じたのか、飛び出そうとするのをニ乃が止めた。

 

「やめなさい。あんたが行っても何も変わらないわ」

 

「しかし…………」

 

「そうだよ(便乗) あの人の言ってることは全否定出来ねーよ」

 

別にマルオさんは間違った事は言っていない。むしろ間違ってるのはどちらかと言われればこっちの方なのだろう。

 

………………ただ、これだけは言わせて貰おう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===================

 

「そう、ですね…………確かにプロの教師がいた方が」

 

「あっ、おい待てぃ(江戸っ子)」

 

マルオと五月が声のした方を向くと、そこにはコーヒーを片手に持って立っている総悟がいた。先程、上杉に対して『行っても何も変わらない』と言う二乃の言葉に『そうだよ(便乗)』しておきながら、自分はふつーに行ってるのには……………取り敢えず今は目を瞑って差し上げろ。

 

「ひ、火野君!?」

 

「よー五月。…………あー、ゴホン。取り敢えずマルオさん、あけましておめでとうございます」

 

「…………あけましておめでとう」

 

きちんと新年の挨拶をする人間の鑑こと、総悟。マルオも挨拶されたので仕方なくと言った感じで返す。

 

「……………盗み聞きとは趣味が悪いと思うがね、火野君」

 

「いやいや、偶々ですよ偶々。…………それよりもマルオさん。四葉が赤点回避は無理とか言ってましたけど、人の限界を勝手に決め付けないでくれませんかね(プチ憤怒)知ってますか?人間ってのは成長する生き物なんですよ(名言)」

 

「…………人間が成長する生き物と言うのは否定はしない。だが、テストの結果を見る限りそう言わざるを」

 

「やれます」

 

いつから聞いていたのかは不明だが、そう断言したのは何処からともなく現れた四葉だった。

 

「私達と上杉さん達ならやれます!今度こそ、7人で成し遂げたいんです………………だから信じてください!お願いします!」

 

四葉は頭を下げる。その様子を見てもマルオは何も言わない。相変わらずの仏頂面なので何を考えてるのかもその場の誰もよく分からない。

 

「……………マルオさん。彼女達は去年の2学期期末試験の2日前にまとまった──────漸くスタートラインに立ったんです。それまで姉妹喧嘩したり、アイスティースリーパー(二乃)が邪魔してきたり、俺達を認めてくれなかったり色々とあったんです…………………まぁ、あなたは家に全然帰ってないみたいなので知らないでしょうけど」

 

「……………………」

 

皮肉が混じっているようにも捉えられる言葉にもマルオは反応しない。スルーしているのか、事実でもあるので言い返せないだけなのかはさておき、総悟は気にせず続ける。

 

「彼女達は漸く同じスタートラインに立って走り始めたばかりなんです。だから、せめてその終着点(ゴール)──────最後の期末試験の結果をあなたにも見届けて欲しいです」

 

「……………………」

 

それでもマルオは黙っていたが、やがて仕方ないと言った雰囲気で口を開く。

 

「……………良いだろう。そこまで言うのなら、3学期の期末試験の結果を見届けるとしよう。ただし、その期末試験で全員が全科目の赤点回避が出来なかった場合は、5人揃って元の家に帰って来る……………それで構わないね?」

 

「ええ。それで結構です」

 

「ああ、いいっすよ(快諾)」

 

マルオの最終確認に五月と総悟は迷いなく頷く。

 

「…………………そうかい。それでは、話は以上だ」

 

そう言ってマルオは立ち上がって去ろうとする。その背中に五月が声を掛ける。

 

「お父さん。私が素直で物分かりが良くて…………賢い子じゃなくてすみませんでした」

 

「………………謝る必要はないさ。子供の我が儘を聞くのも、そして子供の我が儘を叱るのも親の仕事だからね」

 

そう言って去ろうとするマルオに今度は総悟が声を掛ける。

 

「………あっ、そうだ(唐突) マルオさん。漸く一致団結した5人と、勉強の出来るオタクとガリ勉の教師2人を合わせた7人の力、見せてあげますよ~。なー、四葉?」

 

「!……も、勿論です!」

 

「…僕も期待しているよ」

 

そう言い残して今度こそマルオは去って行った。それを見計らって二乃と上杉も彼等の元へ。

 

「行ったか」

 

「わっ!上杉さんと二乃もいたんですか?」

 

「ええ。……………にしてもあんた、上杉がパパの所に行くのは止めておきながら自分は普通に躊躇なく行ったわね」

 

「…………まぁ、多少はね?」

 

「何が多少なのよ……………」

 

答えになってない言葉で誤魔化す総悟。話題を切り替えるようにそれよりも、と切り出す。

 

「もし強制送還になったら俺らの出禁とかどうなるんやろうな」

 

「多分解除しないだろ。それであの人が言っていた知り合いの女のプロの家庭教師が教えることになるんじゃないのか?」

 

「だよねー……………まっ、良いや。失敗したらとか、余計な事を考えるのはやめだ!俺達はただやりたいようにやるだけよな。赤点回避させて、皆を進級させて、笑顔で卒業!そうダルルォ、上杉ィ!」

 

「ああ、そうだ!今はそれしか眼中にねぇ!」

 

「…………ふふっ、頼もしい限りですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな5人を見つめる影が1つ。その正体は新年初登場の我らがお馴染みGOD様。デパートの屋上からスター〇ックスラテを堪能しつつニヤリと笑う。

 

「さぁ、総悟君。2年生最後の試験で3度目の正直となるのか期待しているよ。そして、オリジン(原作)とは違う風(・・・)を巻き起こして僕を楽しませてネ!」

 

to be continue………………




もうお気づきでしょうが、この作品のマルオは原作よりも感情豊かと言うか、コミカルな人間になってます。なぜそう言う性格にしたかと言いますと、作者の『コミカルな要素が多いマルオとか面白い……………………面白くない?』的な悪ふざけです。以上!

今回もこんな駄文を読んでくれてありがとうございました!次もよければヨロシクゥ!


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最後の試験 case一花

作者「…………あー疲れたぁ…………」

バン!ババン!バン!(迫真)

作者「!?」

総悟「おい、ゴルァ!!てメェ、1ヶ月も投稿しないで何してやがったァ!!」

作者「い、いや、その………」

三玖「サボりだったら許さない。切腹」

神様「ウマ娘か?妖精円卓領域(FGO)か?」

作者「違うから!つーか、妖精円卓領域は2日前から始まったんだから1ヶ月投稿してないのとは無関係でしょ!?」

神様「まぁ、良い。ウマ娘だろうとキャストリアだろうと、どうでも良い。とにかく、俺が読者に変わって裁きの鉄槌を下してくれるわ」

作者「ちょっ、ちょっと待ってください!助けて!お願いします!ああああああ!!!!!」








神様の凸ピン痛い…………えー………お待たせしました。別にサボりではないです。ウマ娘でもアヴァロン・ル・フェでもないです。単純にリアルでやらなきゃならないことが立て込んでただけです。これからもリアルに支障がないように頑張ります。

それではお久しぶりにどうぞ!


『なんで好きになっちゃったんだろ─────』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「三玖、まだ起きてたの?」

 

「一花………………起こしてごめん」

 

何か音がしたので見に行ってみると、三玖がチョコを作っていた。その手元には大量の紙が。

 

「チョコ作りの調子はどう?そろそろソウゴ君の好みを把握してきたんじゃない?」

 

「!……………気付づいてたんだ。まぁ、好みは何となく把握してきた。このレビューのお陰で」

 

一花が三玖の手元に置いてあった紙の1つを手に取って見てみると、300字以上でみっちりと感想が描かれていた。 

 

「…………ソウゴ君、よくこんなに長文レビューを書けるね……………語彙力が半端ないと言いますか…………」

 

「それは私も思ってた」

 

三玖もそう同意しながら手を動かしてチョコの材料を作っている。覗き込むと、材料からドクロマークが浮かび上がっているーーーーーーーーーーような錯覚が見えた気がした。 

 

「何か………ドクロマークが出てたような気がするけど…………?」

 

「…………眠いからドクロマークは錯覚だと思ってたけど、やっぱり現実だった……………どうして上手くいかないんだろう。星奈さんにちゃんと技術は教わった筈なんだけど…………」

 

「んー…………もっとシンプルなレシピでいいんじゃないかな?溶かして固めるみたいなのとか」

 

「………………………」

 

無言でも、やっぱり手作りで渡したいのが一花に伝わって来た。どうしたものかと考えていると、彼女の脳裏に料理が得意な人物の姿が思い浮かんだ。

 

「…………そうだ。私の知り合いに料理上手な人がいるから、その人に教えてもらいなよ」

 

「…………え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

========================

 

「(三玖、ファイト!)」

 

私は外からカーテンの隙間を通して二乃と三玖がチョコ作りをしているのを見守っていた。二乃はかなり料理が上手いから何とかしてくれるだろう。これで三玖はソウゴ君にチョコを渡せる。これで良い……………………良い、筈だ。

 

……………………私の中にモヤモヤした何かが霧のように広がって晴れない。原因は明確だ。勉強の出来ない馬鹿な私でも分かる。

 

「…………はぁ………………何で好きになっちゃったんだろう…………」

 

「なにやってんだオメー?」

 

「うわああっ!?『ドンッ!』痛っ!」

 

背後から聞こえてきた声にびっくりして思わず窓の格子に手をぶつけてしまう。

 

「あ、すまん。驚かせるつもりはなかったんだが………………」

 

「そ、ソウゴ君…………!?」

 

まさか……………………

 

「き、聞こえた?」

 

「え?いや、何も聞こえてないけど………?」

 

「そ、そっか!カラスの鳴き声がした気がしたけど私の耳の錯覚かな、うんそうだね!」

 

「それを言うなら幻聴でしょーが」

 

「そ、そうだねー。あはは……………………」

 

あ、危ない……………セーフだったぁ……………。

 

「そ、ソウゴ君は何をしに?」

 

「俺が昨日の勉強会で持って来た参考書を持って帰るのを忘れてな。間違えて捨てられたりする前に回収しに来たって感じ」

 

「(や、やばっ!今中に入られたら…………!)そ、それ!私が間違って捨てちゃったかも!」

 

「時すでに遅しだった………」

 

「だ、だから今から買いに行こうと思ってて!あ、丁度いいからソウゴ君もついてきて!」

 

「あ、ああ………?」

 

我ながら早口でまくしたてた後、ソウゴ君の背中を押して家から離れて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーっと……………………あー、これだね」

 

「(…………って、2500円!?)」

 

最近の参考書ってこんなに高いの!?

 

「……………財政的に厳しいようなら俺が」

 

「だ、大丈夫!お姉さんに任せなさい!じゃあ支払いしてくるから適当にブラブラしてて!」

 

顔に『ヤバイ』って出てたのかな……………………こういう時、咄嗟に冷静を装えれば良いのに。私も女優としてはまだまだって事かなぁ……………………。

 

「(お姉さんぶって見栄を張った結果、痛い出費をする羽目になったけど……………………まぁ、これでソウゴ君が喜んでくれるなら………………って!)」

 

ストップストップ!こんな関係は間違ってるよ!もし私たちが付き合ったら私が貢いでソウゴ君がダメ男になっちゃうのが目に見えてるよ!そんな彼は見たくないし、諦めるのが1番だよね、うん。それが正解……………………正解に決まってる……………………。

 

自分に言い聞かせるように心の中で呟いている間にお会計が終わり、袋を持ってソウゴ君を探すとすぐに見つかった。意外にも彼は心理学の本を立ち読みしていた。

 

「お待たせ、ソウゴ君」

 

「お、買い終わったか」

 

「うん。……それにしても、ラノベとか漫画以外の本も読むんだね。てっきり『ラノベとか漫画以外は本じゃねぇ!』って感じで読まないのかと」

 

「俺に対してそんなイメージを抱いてたのか……………………………俺はラノベや漫画を読むのが特に(・・)好きなだけで、ジャンルを問わず本を読むこと自体好きだからな。試し読みして気が向いたら買ったりもしてる」

 

「へー、そうなんだ……………あ、そろそろ行こうか」

 

「おっ、そうだな…………あ、手が…………」

 

「え?………ああ、さっきぶつけた所が腫れちゃってさ。まぁ、そんなに痛くないから気にしないで」

 

「(………俺が驚かしたのが原因だしなぁ…………)ちょっと待っててなー」

 

「へ?あ、ちょ……………走って行っちゃった………」

 

よく分からないけど取り敢えず待とうと思って近くのベンチに座る。何気なく頭をからっぽにしてボーっとしていると

 

「な、中野さん!」

 

「へ?………あ、水澤君に谷田部君」

 

誰かと思えば、同じクラスの同級生だった。

 

「プライベート中野さんだ…………」

 

「こんな所で会えるなんて!しかも名前まで覚えてくださってるなんて感激です!」

 

「ま、まぁ私ってクラスの皆んなのお誘いをほとんど断っちゃってるし。そう思われても仕方ないのかな」

 

「とんでもないむしろアリです!」

 

「お二人は俺達みたいな下界の人間と別次元のお方ですから!今日は何しに」

 

「バカ、本買いに来たに決まってんだろ」

 

……………これだけ慕われてる(?)のに女優をやってるのがバレてないのは小さい映画とかモブ役だからなのかなぁ………………喜んでいいのか複雑なところだろうけど。

 

「…………って、中野さんのゴッドハンドが!」

 

「たたたたたたたたた大変だ!」

 

「今すぐ救急車をお呼びします!」

 

「この店にお医者様はいませんかー!」

 

「も、もー!大袈裟だって!」

 

あー、もう心配してくれるのは嬉しいけども一々反応が大袈裟と言うか…………………。

 

「お待たせ―………………え、何この状況は(困惑)」

 

「ちょっと色々と大袈裟過ぎて………………」

 

「はぁ………………」

 

その後、ソウゴ君の説得(物理)によって2人は何とか静かになって、ソウゴ君から『他の客の迷惑になるから大声はやめんか!あと、お前らが一々大袈裟すぎて困ってるでしょーが!』と軽く説教を受けた後に2人は私に『すいませんでしたァ!』とビシッと頭を下げて謝って帰って行った。

 

「なんか凄く疲れたよ……………」

 

「救急車まで呼ぼうとするとか馬鹿じゃねぇの(直球)」

 

「あはは………ところで、ソウゴ君は何処に行ってたの?」

 

「あ、そうだった。これを買ってきたんだよね」

 

ソウゴ君が差し出したのは湿布だった。

 

「………………もしかして、私に?」

 

「まーね。俺がびっくりさせたのが原因だから、これ位はしないと」

 

………きっと、こういう優しい所なんだろうなぁ………………。

 

「はい、つー訳で貼りまーす」

 

「あ、うん…………ん?いやいや、これ位は自分で出来るって!」

 

「一花姉さんだと雑に貼りそうなんで俺がやりまーす………………はい、綺麗に貼れた」

 

「………あ、ありがとう………」

 

早業で貼られちゃったよ……………湿布の効果なのか、ソウゴ君が貼ってくれたからなのか痛みが引いた気がした。………………………………これ以上好きになったらいけないのに………。

 

「よーし、帰るか。にしてもテストまであと1ヶ月か。まぁ、一花姉さんは仕事と両立出来てる辺り器用だし、そして飲み込みも早いから油断しなければ行ける気がするネ!今後こそ合格すんぞー!」

 

「………………」

 

「………………あのー、お姉さん?聞いてます?」

 

「!……う、うん。やれるだけやってみるよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私、この期末試験で赤点回避する。その上でこれまでの試験と同じく5人の中で1番の成績を取って自分に自信を持てるようになったら……………今度こそ好きって伝える」

 

「!………………い、いいんじゃないかな。三玖がそう決めたのなら………………」

 

その告白に胸が締め付けられた気がした。……………ちゃんと笑みを浮かべられてるだろうか、今の私は。

 

「………………林間学校の時、私は1度キャンプファイヤーのダンスを一花に譲った………………『平等』を理由に。でも、今回は全員『公平』………………早い者勝ちだから。私は一花を待たない」

 

「……………………。ま、まぁ私も手加減出来る余裕はないから……………………頑張ってね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後

 

「(頑張れって、本当に何様のつもりなんだろう私……………三玖、本当に変わったね……………いや、今も進行形でどんどん変わっている、が正しいか…………)」

 

数日前の事を思い出しながら心の中でそう呟く。仕事から帰った後、他の姉妹は皆寝ていたので、起こさないように最小限の明るさで電球をつけて勉強をしていた。

 

……………三玖にあの宣言をされてから私は確実に焦っていた。このままでは─────、と。

 

宣言前よりも私は確実に勉強に身が入っていた。その理由は勿論、三玖の告白を阻止したいが為に

 

「(って、違う違う!これは赤点回避する為…………私は仕事もやってるんだから夜に少しでも勉強するのは当然だからね、うん……………………)」

 

今月に入って自分に言い聞かせるのは何度目だろう……………………って、ヤバい。仕事の疲れで眠くなってきた……………………今日はやめて明日に

 

『後悔しないようにね。今がいつまでも続く訳じゃないから』

 

脳裏に過ったのは──────────林間学校の肝試しの時に三玖に対して言った言葉。

 

「……………もう少しだけ…………頑張ろう…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テスト当日

 

「……………………ふぅ」

 

私は自分の机で数学のテストの最終確認をしていた。確認がひと段落済んだ所で時計を見ると、予鈴のチャイムが鳴るまで1分を切っていた。

 

「それにしても、ソウゴ君遅いなぁ……時間かかり過ぎじゃない?」

 

5分程前に『ちょっとお茶でも買って来るかな~』と言って行ったきり帰ってこないけど。どうしたんだろう……………?そして遂に予鈴のチャイムが鳴る。すると

 

「あっぶねあっぶねー」

 

滑り込みでソウゴ君が戻って来た。

 

「ギリギリで滑り込んでたけど、どうかしたの?」

 

「三玖に分からない所を教えてたからなー」

 

「!…………そ、そっか。じゃあ、お互い頑張ろうね」

 

「勿論だ」

 

先生が教室に入って来たのもあって、手短にエールを送って会話を終わらせる。

 

「(余計な事は考えちゃダメ………………今は赤点を回避する事だけに集中しよう……………………)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから月日は経ってテスト返却日。私は最後の科目の答案を先生から受け取って席に戻る。

 

「どうだったよ?」

 

「…………………」

 

「…………………」

 

「…………………」

 

「…………………」

 

 

「…………………」

 

「………………………え?」

 

無言+無表情を浮かべていると『まさか………?』と言いたげな不安な表情を浮かべるソウゴ君。そして次の瞬間、答案を見せながら私は笑みを浮かべてる。

 

「じゃーん!全科目赤点回避成功したよ!合計は、えーっと……………………240点かな、たぶん」

 

中野一花 全科目赤点回避 合計240点

 

「よ………良かったぁ……………黙ってるから失敗したのかと思ったぞ……………驚かせやがって…………」

 

「あはは、ソウゴ君見たこともないような不安気な表情を浮かべてたね」

 

「そりゃ無表情で黙ってりゃ不安にもなりますわ。ここまでは赤点回避出来たのに最後の最後でしくったのかと思ったわ………この小悪魔姉さんェ……」

 

我ながら演技が上手かったみたい。ドッキリ大成功、かな?

 

「とにかく、赤点回避出来てて良かったわ………………さて。今日まで秘密にしてたが、俺から提案がありましてね」

 

「提案?」

 

「俺ちゃんと上杉は今回のテストで全員赤点回避出来てると予想してまして。なので、皆で『赤点回避おめでとうばんざーい』のスイーツパーティーを上杉のバイト先の店でやろうと計画してたんスよ。パーティーやりませんか?やりましょうよ~」

 

「良いね、それ!じゃあ、放課後になったら私が先にお店に行って席を取っておくから、ソウゴ君は他の皆の結果を聞くのとパーティーの事を伝えてきなよ」

 

「あ、そーね。メールで送って見忘れたとかあったら困るし、結果聞くついでにパーティーの事も言っておこっと。にしても姉さん、気が利きますねぇ!」

 

「やっと気付いた~?私は元から気が利くいい女だよ?」

 

そう軽くボケてみる。『ハッ!』とか鼻で笑ってくるかなー。

 

「そーねぇ。確かに一花姉さんは気が利くいい女ってはっきり分かんだね」

 

ほらね、やっぱ………………え?

 

「いや、その………………え?」

 

「何だよその困惑気味の反応はー?」

 

「いや、てっきり『ハッ!自分でいい女って言うけどお前部屋が汚い時点でアウトだから!もっと女磨いてから出直してこいや、このアホンダラがぁー!』とでも言うのかと……………」

 

「…………一花姉さんってM属性?そんなに罵倒して欲しかった?」

 

「いや、違うから!Mじゃないから!」

 

………まぁ、ソウゴ君にだけなら別にMでも……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………いや、やっぱ良くないね、うん(冷静)」

 

「?」

 

《悲報》一花姉さん、ドM化を回避………

 

to be continue……………




後日談

神様「ちなみに、もし誰か赤点回避出来てなかったらどうしてたの?」

総悟「神様に頼んで点数改竄して貰おうかなーって(笑)」

神様「アハハッ!お主も悪やのー」


まぁ、神様は根は真面目なので仮に頼まれてたとしてもやらないですけどね。

読んでいただきありがとうございました。閃光のハサウェイと新バージョンのシン・エヴァは見なければ………(使命感)


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最後の試験 case四葉

シンエヴァ、久しぶりに見ても面白かった。皆も見に行こうぜ!(勧誘)そしたら100億行く………………行かない?

今年の春アニメも終盤ですが、個人的に1番面白かったのは『スライム倒して300年』でしょうか。作画良いし、OPとEDも良いし、みんな可愛いし、ほのぼのと優しい世界だし、伏線とか皆無だから脳みそを一ミリも使わずに見れるし(ココ重要)、最高やな!自分はdアニメストアに入ってるんですけど、お気に入り登録者が春アニメの中で恐らく1番多いのでけっこう見てる人とか多いんですかね、たぶん。

皆さんは今期の春アニメはいかがでしたかね?何が良かったですか?よければ感想と一緒に教えてくれると嬉しいです。ちなみに、アニメに関してだけの感想はルールでダメなのでご注意を。

前書きが長くなりました。それでは、本編をどうぞ。


『もう─────足を引っ張るだけの私じゃないんですか?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………と、言う訳で、前から言ってる事の繰り返しにはなるが、現代文は自分の主張や心情を文章に移入しないで客観的に………………って、聞いてるのかお前ら?」

 

「「「「「……………………」」」」」

 

ダメみたいですね。上杉の問いかけにどよ~んとした雰囲気の5人は無言で返す。

 

「うーん………………これは集中力が限界突破しちゃった感じかな」

 

連日勉強漬けだし、無理もないな。

 

「どうする、火野?このままじゃ勉強にならないぞ」

 

「んー………………よし、明日はオフにしてガス抜きするか」

 

俺は手札(財布)より『遊園地の招待券』を10枚召還ッ!この招待券の効果により、1日だけ全てのアトラクションが無料で乗れるようになるッ!

 

「今朝、うちの父親から貰ってな。『知り合いの社長から貰ったから、暇な時にでも皆で行って来いよ』ってな。お前の妹ちゃんや星奈さんも誘って行く…………………行かない?」

 

「まぁ、決して暇ってわけではないが……………………このまま勉強するのもな。良いガス抜きにはなるだろうし………よし、お前ら明日は………………って、もう聞こえてるか」

 

おやおや、先ほどまでの暗い雰囲気は何処へやら。5人ともわくわくしてるって一目で分かんだね。

 

「遊園地なんて久方ぶりなので楽しみです!」

 

「ママに連れて行って貰った以来かしら」

 

「ソウゴ君は遊園地とか行ったりするの?」

 

「長期休み期間に星奈さんと親と一緒に行ったりするかなー。ほら、山梨にある富士〇ハイランドって知ってるか?」

 

「あー、あそこね。たまにCMとかで見るわね」

 

いやはや、この世界にもあると知ったときは結構驚きましたわー。意外と前世に存在したのと同じやつとかあったりするんだよね。例を挙げるとA〇azonとか。

 

「いつか皆で行きたいねー。1日疲れ果てるまで遊んだ後、リゾートホテルでうまいディナーを食べて、そして温泉とか岩盤浴で体を癒す………………これって最高ですねぇ(確信)」

 

「絶対楽しい」

 

うんうん、三玖もそう言うならもう間違いないね。これはもう世界の理だよ(大袈裟)

 

「よーし、取り敢えず明日は休み!思う存分羽を伸ばしたら、明後日から富〇急ハイランドの為に勉強頑張るぞー!」

 

「「「「「おー!」」」」」

 

「いや、赤点回避の為に勉強を頑張れよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、五つ子と総悟と星奈、そして上杉兄妹の9人は遊園地へ来ていた。

 

「わー、凄く大きい遊園地!総悟さん、招待券をありがとう!」

 

「私も誘っていただきありがとうございます」

 

「いえいえ。まぁお礼なら俺にと言うよりも招待券をくれたうちの父親に、ね。とにかく今日は死ぬほど遊ぶぞー!Foo!↑」

 

「朝からよくそんなハイテンションでいられるわね…………まぁ、分からないでもないけど」

 

二乃のツッコミ&珍しいフォローが決まった後、9人は入場した。

 

では、ここからはダイジェストで彼等が遊園地で楽しむ様子をお届けしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジェットコースター

 

総悟「あー、落ちる落ちる……………ンアッー!!

 

上杉「めっちゃうるせぇ…………」

 

三玖「(ソウゴ、楽しそう………)」

 

 

 

 

 

 

お化け屋敷

 

ゾンビ「ウガァー!!」

 

総悟&三玖&星奈「「「………」」」

 

ゾンビ「(えぇ………この人等全然驚いてねぇよ………(困惑))」

 

三玖「(林間学校で耐性がついたのかな……?)」

 

総悟「(富士〇ハイランドの絶〇迷宮が恐すぎて逆に驚けないなー)」

 

星奈「(なんかメイクがありきたりなんですよねー………)」

 

総悟「あっ、そうだ(唐突)この辺にぃ、うまいランチの店があるらしいですよ。行きませんか?行きましょうよ」

 

星奈「そう言えば昨日調べたらオムレツが美味しいと口コミに載ってましたね」

 

三玖「じゃあ、後で行こう」

 

総悟「じゃけん、後で行きましょうね~」

 

ゾンビ「(お化け屋敷でする会話じゃねぇだろ!)」

 

 

 

 

 

 

売店

 

総悟「フアッ!?」

 

一花「!?………ど、どうしたのソウゴ君?もしかして財布を落としたとかの緊急事」

 

総悟「俺の好きなアニメとのコラボグッズが売ってやがるッ!マジか、知らなかったー!これは買うしかない!(使命感)」

 

一花「あはは…………これは緊急じゃなくて通常運転だね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次はあれに乗りましょう!」

 

「い、五月ちゃん少し待ってぇ……」

 

はしゃいでる五月に振り回される一花。中々にレアな光景である。そんな光景が繰り広げられている一方、二乃があることに気が付く。

 

「あれ、四葉は?」

 

「そういやいないな」

 

「どーせまたトイレだろ(適当)………………ん?

 

「四葉ならお腹が痛いからトイレだって」

 

「何故直接言わない……………」

 

呆れる上杉。そんな彼の肩を総悟が叩く。

 

「ん?何だ火野」

 

「………………」

 

総悟が無言で指をさした方を向くと、上杉は一瞬で察した表情になる。

 

「………すまん、ワイらもトイレ行ってくる」

 

「あっそ。先行ってるわよ」

 

「ああ、すぐ追い付く」

 

と、言う訳で2人は便所に駆け込み解放(意味深)───────はせず、やって来たのは少し離れた観覧車。

 

「え、もう一周ですか?他にお客さんもいないからいいですけど、一体何周するんですか………」

 

「……すいません、俺等も乗りまーす。相乗り良いっすかー?」

 

「!………ど、どうぞ」

 

四葉が乗っていたゴンドラに総悟と上杉の2人も乗り込み、再び上昇していく。

 

「それにしても………………お2人とも、よくここが分かりましたね」

 

「リボンがバッチし見えてるからな。詰めが甘いのー」

 

「ああっ!まさに頭隠してリボン隠さずですね!」

 

微妙に上手い事を言う四葉。そんな彼女の傍らにはテキストやノートが広げられており、彼等の目にも答え等が書き込まれているのが目に見えた。

 

「ここで勉強してたって訳か。ノート、見ても良いか?」

 

「勿論です!」

 

許可を貰った総悟は四葉のノートを手に持って無言で眺め始める。

 

「にしても、勉強の事は忘れて羽を伸ばせって昨日言っただろ?」

 

「私は皆よりも体力があるのでまだやれると思ったんです。…………それに、私は姉妹で一番おバカなのでもっと勉強しないといけませんから」

 

「それは否定はしないが……………今日くらいは休め。せっかく火野の招待券で遊園地に来てんだ」

 

「……………いいえ。上杉さんは(・・・・・)知りません。私がどれだけおバカなのか」

 

「……………………」

 

今まで聞いたこともない四葉の暗い声に上杉も黙り込んでしまう。ノートに目を落としていた総悟も視線を上げて四葉の方を見る。そして四葉は改めて語りだす。

 

「私たちが前にいた高校はいわゆる名門高校で、試験に落ちれば落第なんて珍しい話ではありませんでした…………………ただ、救済措置として追試のチャンスが与えられ、それに受かれば落第は回避出来るのですが………………」

 

「……………………」

 

四葉を見つめる上杉。少しの間の後に、上杉の聡明な頭は正解(言葉の続き)を導き出した。

 

「……………お前だけ落ちたのか?」

 

「……………さすが上杉さんです。なんでも正解しちゃいますね」

 

陰りのある笑顔を浮かべながら四葉は続ける。

 

「本来なら私だけ今の高校に転校する筈だったんですが、皆は私についてきてくれたんです……………………」

 

「…………………前に三玖が言ってたな。『大切なのはどこにいるかじゃなく、5人でいること』ってお母さんが言ってたって。四葉について行ったのはその教えか」

 

その教えは二つの側面を持っている。1つは『救済』。そしてもう1つは大きな『枷』……………………もっと残酷な言い方をすれば『呪い』のようなものとも言えなくもないだろう。

 

「この前も陸上部との一件で皆や上杉さん達に迷惑を掛けました……………勉強でもそれ以外でも、もうこれ以上皆の足を引っ張りたくないんです……………………だから今は勉強させてください。お願いします」

 

「……………………もう残り半周か。それまで手持ち無沙汰だな。いい機会だし、授業するか」

 

「!………………は、はい!」

 

「ふっふっ、昨日理解できなかった国語の現代文をここで「あ、それはもう大丈夫です」……………え?」

 

「この観覧車で勉強している間に完全に理解しました!」

 

「え………あ…………そうなのか…………?」

 

「そうだよ(割り込み)」

 

四葉の代わりに唐突に割り込んで便乗してきた総悟からそのまま四葉のノートを渡され、上杉もじっと見る。まぐれ等ではなく根拠を以てちゃんと解けていた。

 

「(ここ最近の授業やノートを見て改めて実感したが、四葉の実力がついてきたな。全体的に上がりつつはあるが、特に国語はそれが顕著に表れている………………各々実力が良い感じについてきたし、これはそろそろあの作戦を実行するかなー)なぁ、この総悟君がいいアイデ」

 

「四葉!光明が見えてきたぞ!国語はお前も教えるんだ!」

 

「………………………………」

 

去年の病院での四葉に続いて、今度は上杉にも遮られる始末。三玖に醜態を晒しやすい呪い(?)と似たようなものにでもかかっているのだろうか………………。

 

「わ…………私が国語を………………………………無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理!」

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!(D○O様)」

 

「うるせぇ!火野は急にどうした!」

 

「四葉が無理無理ラッシュをするもんですから、こっちは無駄無駄ラッシュで対抗してみようと思っただけですぅー」

 

「何で拗ねてんだよ……………四葉。お前は姉妹の中でも国語が得意なんだ。何も特別な事はしなくて良い。感じたまま言えば伝わる。何故な」

 

「何故なら五つ子なんだからな。四葉に出来る事は皆出来る。1人が出来ることは全員出来る───── 一花も、二乃も、三玖も、五月も…………そして勿論四葉も!」

 

?『遮られたら遮り返す………倍返しだ!』

 

「もう─────足を引っ張るだけの私じゃないんですか?」

 

「ああ」

 

上杉は間髪入れずに肯定する。

 

「………………こんな私でも……………出来ますか?皆に勉強を教える事が…………」

 

「四葉なら出来る。お前も皆を引っ張っていくんだ」

 

「頑張れ頑張れできるできる絶対できる頑張れもっとやれるって!やれる気持ちの問題だ頑張れ頑張れそこだ!そこで諦めるな絶対に頑張れ積極的にポジティブに頑張る頑張る!(松〇修造)」

 

上杉の肯定と総悟のくっそ熱い応援を受けた四葉───────微笑を浮かべて宣言する。

 

「…………はい!任せてください!私が皆を合格に導きます!」

 

「いや、第一は自分が最優先だから。そこんとこは忘れないで(冷静)」

 

「熱くなったり冷静になったり、忙しい奴だなお前…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『~♪』

 

放課後、テスト結果を聞く前にトイレに行こうとしている総悟の携帯に着信。相手は四葉である。

 

「もしもしー?」

 

『火野さん…………ありがとうございました…………私、初めて報われた気がします………』

 

その声は震えていた。電話の向こうで頭を下げている姿が脳裏に容易に浮かんだ。

 

中野四葉 合計184点

 

「てことは、合格したんだな!やったじゃーん!よし、今日は上杉のバイト先で祝賀会やるから急いで来いよー!返事ィ!」

 

『は、はい!分かりました!火野さん、本当にありがとうございました!』

 

「おう、どいたまー……………………ふぅ。さて、あとは3人。まっ、大丈夫しょ。 ヘーキヘーキ」

 

果たして、残りの3人の点数はどうだったのか……………?

 

to be continue……………




一花 240点
二乃 ???点
三玖 ???点
四葉 184点
五月 ???点

本日も読んでいただきありがとうございました。この次もサービス、サービスぅ!……………………シンエヴァ、暇だったらまた今度行こうかなー。


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最後の試験 case五月

『私は……あの時の気持ちを大切にしたい──────』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フンフフーン♪」

 

「朝からやけにご機嫌だな」

 

「昨日見に行ったアニメ映画が最高だったからな。ほら、前に五月が気になってたサマーなんちゃらの100倍面白いって言ったじゃん?まぁ、そのサマーなんちゃら見てないけど」

 

「見てないなら本当に100倍面白いかは分からないだろ」

 

「…………マジレスはやめてくれよ(切実)」

 

そんな下らない会話をしている内にアパートに到着。ピンポーンすると

 

「待っていました、火野君!上杉君!」

 

バァン(大破)させそうな勢いでドアが開かれると、そこにいたのは五月。

 

「今日もビシバシやってください!そして確かめてください!試験突破には一体何が必要なのかを!」

 

「お、おう………」

 

「アッハイ(気合いが超入ってんなー)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1月14日

 

「───五月がいねぇ!前にビシバシぜひやってくださいとか確かめてくださいとか言ってたのに……………ふざけんな!(声だけ迫真) 」

 

「ソウゴ、落ち着いて…………」

 

三玖がそう言うので落ち着くけども(チョロい言うな)………………五月はマジでどこに行ったん?

 

「ったく、今日は折角の日曜日だってのに……………誰か知ってる奴はいないのか?」

 

上杉の質問を受けて口を開いたのは二乃。

 

「五月はアレよ。今日は『あの日』なのよ」

 

……………………あっ(察し)『せ』から始まって『り』で終わるやつの日ね……………………まぁ、それならしょうがない。よし、じゃあ今日は五月抜きで授業を

 

「あ?『あの日』ってなんだよ!ハッキリ言えよ!」

 

えぇ………(ドン引き)ノーデリカシーと書いて上杉風太郎。上杉風太郎と書いてノーデリカシーと読むってはっきり分かんだね(確信)

 

「お前さ上杉さぁ……………小中学生の頃保健の授業でその方面の事について習わなかったわけ?ちゃんと習ってたらすぐに察すると思うんですが、それは」

 

「保健の授業は後ろの席だったのを良い事に5教科の内職をしてたからな」

 

おー、真面目……………じゃねぇ!不真面目!ちゃんと先生の話を聞けよ!あ、ちなみに俺は実技の動画(意味深)を見て保健の勉強をしてました()

 

「言っておくけど、火野が想像してるのじゃないわよ」

 

「え、そうなの?」

 

「今日は母親の命日なのよ」

 

あー、なるほど。あれ、でもそれなら皆は何故行かずに五月だけ……………………待てよ。まさかマルオ氏には5人の愛人がいて、そしてそれぞれに子供がいてその子供と言うのが……………………。

 

「5人の女性と関係を持つとか……………俺、あの人に説教して来るわ。腐った性根に喝を入れてくれる(憤怒)」

 

「あんた深読みし過ぎ。今日は月命日ってやつよ」

 

「え?……………あぁ、そうなんだ。二乃さぁ、そう言うのはもっと早く言ってくれよなー。頼むよ~」

 

後5秒言うのが遅ければドアをバァン!(大破)させて飛び出してましたよー。

 

「お母さんが亡くなったのは8月14日で、その日に皆一緒に行ってるんだけど」

 

「五月は毎月お墓参りに行ってるの。あの子は律儀だから。今度ソウゴとフータローも時間があればお線香あげて」

 

「りょーかい」

 

……………………そう言えば、前に五月は『お母さんの代わりになる』とか言ってたっけ。これは最近になってふと思った事なのだが

 

「(俺の見当違いならそれで良いんだが、五月はずっと母親の背中を追っているって言うか……………………囚われてような気がするんだよなぁ……………………)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=================

 

遊園地からの帰り道

 

「えー、遊び過ぎてクタクタでしょうが、ここでお知らせです」

 

皆が駅で電車を待っていると、突然総悟がそんな事を言い出す。

 

「どうしたのですか、急に改まって」

 

「まー、色々とあって。良いお知らせと悪いお知らせの2つがあるんだけど、三玖はどちらから聞きたい?」

 

「…………じゃあ、悪い方から」

 

オッケー、と答えるとソウゴは真剣な表情を浮かべる。

 

「悪いお知らせとしてはですね………………総悟君の財布の中身が5円になってしまった事です」

 

「そりゃそんだけ買えばそうなるわよ」

 

二乃の正論なツッコミが炸裂。総悟の両手にはお土産が大量に詰まっている袋が4つ。合計で36850円。その内の8割は総悟が好きなアニメとのコラボグッズである。

 

「まったく、真剣な表情を浮かべるもんだから何を言うのかと思って身構えて損したわ」

 

「それで、良い知らせの方は?」

 

三玖に促され、良い知らせの方も総悟は発表する。

 

「良い知らせはですね……………明日から家庭教師の体制を3人体制に変更しまーすって事」

 

「「「「「?」」」」」

 

疑問符を浮かべる5人。総悟の言葉を上杉が引き継ぐ。

 

「自分が得意な科目を他の姉妹に教えるんだ。そうすれば俺達がいない時も互いに高め合える。そうして全員の学力を引き上げていく……………………即ち、お前らも先生になる。だから3人体制って訳だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2月14日

 

三玖から場所を聞いて上杉と一緒に彼女等のお母さんのお墓がある霊園へ。ちにみに、来る前にお線香とお花を上杉と半額ずつ出しあって購入した。

 

「着いたは良いが…………これだけお墓の数が多いと探すのに一苦労だな」

 

「いや、その心配はないだろ」

 

だって恐らくいるだろうし…………………あ、ほら

 

「見っけた」

 

「本当に毎月いるんだな」

 

「火野君に上杉君………?どうしてここに?」

 

「三玖達から聞いてな。俺らもお墓参りに来たんだ。ちゃんとお花とお線香も買ってきたぜ」

 

と言う訳で、俺と上杉もお花とお線香をあげた後、お墓の前で手を合わせる。全て終わるまで五月は黙って後ろに立っていた。

 

「ありがとうございます、2人とも。わざわざお墓参りに来てくれて」

 

「どういたしまして。……………そう言えば、3人の家庭教師大作戦(俺氏命名)はどんな感じよ」

 

「かなり良い傾向にあります。教わること以上に教えることで咀嚼できることもあるんですね。もっと早くやるべきでした」

 

まぁ、俺的にはやりたい気持ちはかなり前からあったけど、皆の実力的にはまだ時期尚早だったからな。そろそろ良いかなー、って思い始めたのはつい最近の話。

 

「………俺らなんかいらないと言いたいのか?」

 

「違いますよ、上杉君。貴方達に教えられた事を噛んでいるのですよ。感謝してます」

 

あらあら、嬉しいお言葉を頂戴したよーん。

 

「教えた相手にお礼を言われるのはどんな気分ですか?」

 

「なんだよ、恩着せがましいな」

 

「そりゃあ嬉しいに決まってるね。上杉はクールぶってるが、本当は子供みたいに泣きそうになる程嬉しいと思うんですけど(名推理)」

 

「べ、別にそんなことねーよ!」

 

あ、そっぽ向いた。

 

「なんだよ上杉、嬉しそうじゃねーかよ~」

 

「上杉君、少し笑ってますよ?」

 

「……………………………………………ま、まぁ少しはな」

 

あー、ほら。やっぱ嬉しいんですねぇ。

 

「私もです。私も姉妹に教えて感謝された時、とても嬉しく……………やり甲斐も感じました。私は………あの時の気持ちを大切にしたい─────」

 

……………たぶん、それは母親の代わりになりたいからじゃない。囚われてる訳でもない。

 

五月本人の意思で──────────その『夢』を見つけたんだな。

 

「私は─────先生を目指します」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後

 

「とっとっと、トイレにレッツラゴ~♪」

 

「あ、火野君。今よろしいですか?」

 

くっそ酷くて聞く価値が一切ない歌詞を口ずさみながら廊下を歩く総悟に五月が話し掛ける。

 

「トイレに行く途中だったけど良いよ。手短によろしくー」

 

「では手短に………………全科目赤点回避出来ました!合計224点です!」

 

中野五月 合計224点

 

「いいねェ、おめっとさん!上杉にはもう言った?」

 

「はい、既に報告済みです」

 

「そうか。じゃ、五月も上杉のバイト先に行って先に合流してくれない?一花姉さんが席取ってるだろうし」

 

「上杉君のバイト先に、ですか?…………?」

 

「そそ。まだ全員の結果は知らないんだけど、俺と上杉は5人全員赤点回避出来てると予想しててな。なので、上杉のバイト先で祝賀会のスイーツパーティーをやろうと思ってまして」

 

「スイーツですか!?」

 

食べ物が絡んだ瞬間、五月のテンションが通常に5倍に跳ね上がる。

 

「こうしてはいられませんね……………では、私は教室に戻って身支度を整えた後に先に行って注文しておきますね!」

 

「気が早すぎィ!………………ま、いいけど。じゃ、また後で」

 

「……………火野君」

 

「?」

 

「火野君と上杉君がいなければ……………恐らく今の私たちはなかったでしょう。ですから、改めて感謝を。ありがとうございました」

 

「…………………。何か……………アニメとか漫画の最終回みたいな雰囲気……………え、もしかして俺ら今日でクビなの?死ぬの?」

 

「何でクビ=死なんですか…………安心してください。クビなんて話はありませんよ」

 

「そ、そうか。よくよく考えたら俺らは皆が卒業させるまでが仕事だからそりゃクビにはならんわな。あー、良かった良かった…………」

 

超絶安心する総悟に対して、五月はスッと手を差し出す。

 

「火野君。これからもよろしくお願いしますね」

 

「………はいよ。任されたぜ」

 

夕陽が差し込む教室の廊下で2人は握手を交わすのだった。

 

to be continue……………




一花 240点
二乃 ???点
三玖 ???点
四葉 184点
五月 224点


ご愛読ありがとうございました!作者の次回作にはご期待しないでください!











総悟「………………いや、何終わろうとしてんだよ!?まだ最終回じゃなぇからな!(取り敢えず俺と三玖が結ばれるまでは終われねぇんだよ!)」

五月「しかも次回作にご期待下さいじゃなくて、期待しないでくださいになってますし……………まぁ、今回の話が妙に最終回みたいな雰囲気が少し漂っていたのは否定しませんが…………」

総悟「どっちかって言うと『俺達の戦いはこれからだ!』みたいな感じがしたような」

五月「ちょっと、打ち切りにありがちな定番文句はやめてください!本当にいつか打ち切りになったらどうするんですか!」




まぁ、今のところは打ち切る予定はないです。この作品の執筆は楽しいので。

今日も読んでいただきありがとうございました!


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最後の試験 case三玖

三玖の幕間の物語を執筆中。もうすぐ完成予定です。ちなみに、新キャラ登場します。女です。

うらみちお兄さんのアニメを見たら五月の幕間の物語2を思いつきました。三玖、一花、二乃の順に終わったら投稿しよ。ちなみに二乃の幕間の物語の内容は決めていて、一花姉さんはまだ未定。女優関連のにしたいと思ってるんだけどね。


『他の姉妹にも負けない……………………あの日、そう決めたんだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1月某日

 

「はい、ソウゴ。今日も持って来た」

 

「サンキュー」

 

「全部食べたら感想教えてね」

 

「ああ、いいっすよ(快諾)」

 

三玖と総悟の一連のやりとりを聞いていたその他の面子達。代表して上杉が呆れ顔で呟く。

 

「お前、最近ずっと三玖にチョコを無理やり食わされてるが………………大丈夫か?よく鼻血とか出ないな」

 

「鍛えてますから(HBK)……………それと、無理やりとかじゃないんで(強調)。そこんとこ頼むよ~」

 

ここ最近、総悟は三玖から大量の市販のチョコを貰っては食べるのが習慣になっている。三玖がチョコを差し出す理由としては総悟のチョコの好みの系統を知る為である。以前、星奈に色々と教わっていた時にこんな会話があった。

 

『ソウゴのチョコの好みを探る?』

 

『ええ。チョコと言っても苦味重視とか甘味重視とか色んなタイプのがありますからね』

 

『確かにソウゴの好みは知っておいて損はないけど、どうやって………………あ、そうだ。市販のチョコを沢山あげて感想を聞いていけば好みが知れるかも』

 

『それで良いと思いますよ』

 

『………………でも、それだとソウゴが嫌がったりし』

 

『しないですよ。むしろ、『おやつ代が浮いて課金に金を使える!やったやった~!』みたいに喜びますよ』

 

そして星奈の予想は見事大的中。嫌がる事もなく大量のチョコをモキュモキュ食べ、一つ一つにレビュー(平均350字)をしてくれくれた。

 

「まぁ、お前が良いなら別に良いが……………………じゃあ授業を始めるか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2月某日

 

バレンタインまであと少し。ソウゴから貰ったレビューを元に色々とやっているのだが、中々上手くいかない。星奈さんから必要な技術は全て教わったのだが…………………。

 

「(料理をするのは嫌いじゃないしむしろ好きな方なんだけど、肝心の腕に問題アリ……………まぁ、でも今日は一花の知り合いの料理上手な人が教えに来てくれるから良かった。色々と教わろう)」

 

そしてやって来たのは───────

 

「あれ?1人で何してんのよ」

 

「に、二乃?……………もしかして一花が言ってた人って…………」

 

確かに二乃は料理上手だけ『ドンッ!!』!?……………え、何今の音?

 

「び、びっくりした……………って、なにこれ?」

 

「…………私が作ったチョコ」

 

「美味しくなさそうだし、めちゃくちゃじゃない。こんなのあげて誰が喜ぶのよ」

 

うっ…………………。

 

「あんたは味音痴と不器用のダブルパンチなんだから、おとなしく市販のチョコを買ってればいいのよ。その方が相手の人も喜ぶわよ」

 

「……うるさい……………」

 

「!?(え、ちょ………『う・る・さ・い』みたいに言うと思ってたのに!?)…………ま、まぁ料理は真心っていうし手作りに意味があるのよね!私だって失敗することあるし、これなんて虫っぽくて可愛いわよ!」

 

…………虫っぽくて可愛いとかフォローになってない………………。

 

「…………………あー、ごめん。普通に言い過ぎたわ。食べてもないのに美味しくなさそうとか普通に失礼だし……………ヴッ」

 

チョコを口に入れた二乃が聞いたこともないような声をあげた………………味の方もダメみたい。よくよく見たらドクロマークが薄っすらと浮かんでるし。

 

───────だからこそ。このままじゃ終われない。

 

「……………私が不器用なのも知ってる。だけど、作りたい。思わず食べたくなるようなチョコを……!」

 

「………………」

 

「…………だから、作り方教えてください。お願いします」

 

「…………。言っておくけど、やるからには中途半端なのは許さないわよ。覚悟しなさい」

 

「!………うん!二乃、ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな会話から数日後────遂にやって来た2月14日バレンタインデー。朝まで作ってたのでとても眠い。けれども、満足のいくチョコは何とか作れた。

 

「ふあぁぁ…………眠い…………」

 

「あ、おはようございます、三玖」

 

「遅せーぞ。何時まで寝てんだ」

 

「……………………」

 

あ、フータローにソウゴ。来てたんだ…………うん?何かソウゴが暗いような…………?

 

「…………ああ爆死 ガチャ引いたら もう爆死…………どうせ俺は運に見放されたブツブツ………」

 

「……………何かゲームで欲しいキャラが手に入らなかったらしい」

 

「さっきまではこたつの中でふて寝してました…………」

 

「な、なるほど…………」

 

よっぽど欲しかったのか、ショックのあまり特に捻りのない俳句を読んでるし……………………チョコをあげれば少しは元気になってくれるかなと考え、台所に置いていたチョコを部屋の端で体育座りしたいるソウゴに持って来る。

 

「えっと…………ソウゴ。はい、これ。バレンタインのチョコ」

 

「……………………」

 

「……………………」

 

「………………俺にチョコ?」

 

「うん」

 

「……………………」

 

ソウゴは無言で私の顔とチョコを何度も交互に見ていた。私もどう反応すれば良いのか分からないので取り敢えず黙っていると、きっかり1分後───────

 

「……………………ファッ!?」

 

驚いた声をあげながらソウゴは突然飛び上がる。それだけに留まらず────────

 

ドゴッ!!

 

「ンアッー!!」

 

「ソウゴ!?」

 

「火野君!?」

 

「火野!?」

 

そのままソウゴは天井に頭を盛大にぶつけた……………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5分後

 

「アァァァァァァァァァ……………このアパート、天井低すぎる……………低すぎない…………?」

 

「いや、お前のジャンプ力がヤバいだけだ」

 

フータローの指摘には私も同意。

 

「だ、大丈夫ですか火野君?すごい音でしたけど…………」

 

「大丈夫大丈夫。……………そういや今日はバレンタインデーでしたな。ちゃんと1年前からカレンダーに〇をつけてたのに朝のガチャショックの余り忘れてたぜ」

 

1年前から〇をつけてる辺り、結構楽しみだったみたい……………で良いんだよね?

 

「いやはや、三玖からチョコを貰えるとは。嬉しさの余り飛び上がっちまったよ」

 

!…………………まだ食べて貰ってないけど、そう言ってくれるのは嬉しい。

 

「これ………今食べてくれる……………?」

 

「勿論よ。いただきまーす」

 

小さめなので一口でソウゴは平らげた。

 

「モキュモキュ……………………」

 

「えっと………………どうだった?」

 

「どうだったか、だって?」

 

…………………………………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「美味しいに決まってるよなぁ?」

 

!……………やった!喜んで貰えた!!

 

「これ、手作り?」

 

「うん。私、頑張ったんだ」

 

「そっか………………ありがとね、三玖。これは俺もホワイトデーに本気を出さねば(使命感)お返しは期待しててくれよな~。頼むよ~」

 

「うん、分かった」

 

本当に良かった、喜んで貰えて…………後で二乃と星奈さんにお礼を言っておこう。

 

「あっ、そうだ(唐突)三玖に伝えておかねばならんことがあってな…………………やっぱり三玖が1番ってはっきり分かんだね」

 

!?

 

「い、1番って…………それはどう言う」

 

「先日行った模擬試験の結果よ!三玖が1番だった!やったネ!」

 

「………………あ、うん」

 

「Foo!↑三玖が天下一ィ!」

 

勉強の方の話だった……………………てっきり『1番良い女!』とか言われるのかと思ってしまったが…………流石に思い上がり過ぎた。

 

「……………私頑張るから。見ててね、ソウゴ……………………………………………あ、それとフータローも」

 

「…………長い間があったが、俺の事を一瞬でも忘れてなかったか?」

 

ソウゴみたいに言うとこうだろうか?『君のように勘の鋭い男は嫌いだよ』、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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その日の夕方。

 

「お仕事お疲れ様、一花」

 

一花が視線を上げると三玖がアパートの階段の前にいた。

 

「三玖?こんな寒いのに外でなにしてるの?っていうか今日はチョコを渡せた?」

 

「うん、渡せた。………………一花は渡さないの?」

 

「!……………………ど、どうしたの急に……………?」

 

予想外の質問に一花は困惑。上手く回らない頭でしどろもどろに何とか言葉を絞り出す。

 

「ま、まぁ…………………誰もあげなかったらかわいそうだからお姉さんが買ってあげようと思ったけど……………………三玖があげるなら安心かなと思ってさ、うん」

 

「安心って何が?」

 

「…………………」

 

グイっと詰め寄った三玖に言葉を失う一花。何も言わない一花。三玖は視線を外すと夕焼けの空を見上げながら己の決意を語る。

 

「私、この期末試験で赤点回避する。その上でこれまでの試験と同じく5人の中で1番の成績を取って自分に自信を持てるようになったら……………今度こそ好きって伝える」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テスト当日

 

1時間目は数学のテスト。これまでのテストの時とは比べ物にならない緊張を抱えつつ、私は自分の机で最後の確認をしていた。

 

「この問題は………………えっと…………………………………どうやるんだっけ……………………?」

 

…………ヤバい。ど忘れした……………緊張のせいだろうか……………。

 

「(あと4分後には着席してないといけない……………………急いでソウゴの所に行って来よう)」

 

教室を飛び出してソウゴのクラスへと向かおうと廊下に出ると。

 

「………あ、いた」

 

「ん?あ、三玖じゃん」

 

ラッキーな事に私のクラスの教室の前で遭遇した。手にお茶が握られてるから自販機で買って来た帰りみたい。

 

「ソウゴ、この問題の解き方を教えて」

 

「どれどれ……………あー、これか。てか、あと4…………3分後には座ってないといけないのか。よし、巻きでいくからな、巻きで」

 

「分かった」

 

いつもよりも速いペースでソウゴは解説するのをこれまでにない程集中して聞く。そして時間ギリギリで解説は終了。私も何とか思い出してしっかり理解した。

 

「これで大丈夫。ありがとう、ソウゴ」

 

「どういたしま『キーンコーンカーンコーン♪』って、予鈴のチャイム鳴ったぁ!!それじゃ、頑張ってな!」

 

私が返事をする暇もなくソウゴは急いで教室に戻る。無論、私も急いで自分の席に座る。

 

「(他の姉妹にも負けない……………………あの日、そう決めたんだ。やれる事は全部やった……………………後は自分を信じてやるだけ……………!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「二乃はいないかー…………」

 

トイレからの帰り道、丁度二乃のクラスの教室を通りかかったので覗いてみたがすでにもぬけの殻であった。

 

「んー、これはあれか?姉妹の誰かから打ち上げの事を聞いてもう店に行った的な感じですかね?もしかしたら三玖も」

 

「私は後ろにいるよ」

 

その声を聞いた総悟は何故か2回転して後ろを振り向く。そこにいたのは三玖であるのは言うまでもない。

 

「お、噂をすれば三玖じゃん。テストはどうだった?」

 

「私は「あ、ちょっと待って。心の準備が…………」あ、うん」

 

総悟はスーハー、スーハーと深呼吸する。やはり自分の好きな人の点数を聞く故に緊張しているのだろうか。

 

「よし……………………いいぞ、カモン!」

 

「うん。ちゃ「ちょっと待って、やっぱもう1回深呼吸するわ」……………う、うん(そんなに緊張するもの……………?)」

 

再度深呼吸する総悟。結果を言うのは一舜で終わるにも関わらず、もう既に1分経過している。

 

「……………………ふぅ。覚悟は良いか?オレは出来てる……………………よし、テストはどうだった?」

 

本家(第5部)みたくまるで命を懸けるかのような雰囲気を出す総悟。別にこの状況で懸ける命など世界中を探しても何処にもないのだが。

 

「ちゃんと合格したよ。赤点回避出来た(やっと言えた………)」

 

「Foo‼↑やったー!おめでとう!やっぱ三玖は出来ると信じてたよ!」

 

「ありがとう、ソウゴ。赤点回避出来るようになったのはソウゴのお陰」

 

「いやいや、これは三玖の実力だよ。誰が教えようが結局の所は自分次第だからね」

 

謙遜の姿勢を見せるソウゴにそんな事はないと三玖は首を振る。

 

「覚えてる?半年前の事を」

 

「半年前……………………公園で言った事?もしくは俺が三玖に屋上で恥をさらした事?…………アレについてはマジで記憶から消し去りてぇ………………

 

「前者の方。……………あの時、ソウゴが私にも出来るって言ってくれた。そう言ってくれたから、今の私がある。だから、ソウゴのお陰。本当にありがとう」

 

「……………三玖の感謝の言葉に涙が…………で、出ますよ(感動)」

 

割とマジで涙を流しそうになっているソウゴだが男の意地で何とか涙は堪えた。

 

「それにしても、これで二乃以外は全員合格が判明したかー」

 

「皆合格してたの?」

 

「二乃以外は合格を確認済み。ちなみに三玖、二乃を見掛けてたりは…………………?」

 

「してない」

 

「そっかー。やっぱもう行ってるのかな、うん」

 

「行ってるって、どこに?」

 

総悟はかくかくしかじか、と祝賀パーティーの事を話す。

 

「勿論三玖も参加だよね?」

 

「うん、勿論」

 

「よし、じゃあお店に行こっか」

 

こうして2人揃ってお店に行くのだった───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、そうだ(唐突)」

 

──────その前に。総悟は聞き忘れていた事を訊ねる。

 

「三玖って

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テストの合計は何点だったん?」

 

ここが───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の点数は────────」

 

──────────分岐点(・・・)である。

 

to be continue…………




一花 240点
二乃 ???点
三玖 2??点
四葉 184点
五月 224点

うらみちお兄さんはdアニメストアで見たんですけど、面白くて鼻から勢いよく鼻息でました(意味不明)

今日も読んでいただきありがとうございました。面白かったら高評価とお気に入り登録お願いします(Youtuber)

舞台挨拶全国中継ですか、シンエヴァ、……………………これは100億行ったな(確信)



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最後の試験 case二乃

やらなきゃいけない事がびっしりで辛いんじゃ……………。

漸く二乃まで来ました。それではどうぞ。



『あり得ない……………あり得ないわ。私があいつの事を好きだなんて…………………絶対に認めない』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お化け屋敷 in遊園地

 

「ったく、お前が遅いから出るのに時間が掛かったじゃねーか」

 

「う、うるさいわね!」

 

余裕そうに私の前を歩く上杉。その姿が一瞬林間学校でのもう一人のあいつ(キンタロー君)にダブって見えた。頭をブンブン振って搔き消して置いてかれないように私も歩く。

 

それにしても何で私がこいつと一緒にお化け屋敷に入る羽目に………………原因は明確で、火野が『折角だからペア組んでお化け屋敷入ろーぜ』とか言い出したせいだ。ちなみにペアの組み合わせは『火野・星奈さん・三玖』、『四葉・(らいは)ちゃん』、『五月・一花』、『私とあいつ(上杉)』になった。

 

漸くお化け屋敷から出ると、皆勢ぞろいしていた。私たちが最後に入ったのだから当然ではあるが。

 

「おー、やっと来た。意外と時間掛かってたなー」

 

「二乃がビビりまくるもんだから中々進まなくてな」

 

「お、乙女はこう言うのに弱いのよ!皆だって怖かったに決まってるでしょ!」

 

「余裕っす(ドヤ顔)」

 

「富士〇ハイランドにあるお化け屋敷レベルじゃないと私は怖くないですね」

 

「林間学校のソウゴの方がもっと怖かった」

 

「同じく私もです…………うぅ、あの緑の顔を思い出しただけで鳥肌が立ってきました………………」

 

「あはは、あれのお陰で耐性ついたのかなー?」

 

「らいはちゃんと一緒だったので大丈夫でした!」

 

「私も四葉さんと一緒だったから怖くなかったー!」

 

…………………マジか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やった、1人で出来た!」

 

「ま、あんたにしたらかなり良いと思うわ」

 

「うん、自分でもそう思う。これでソウゴも喜んでくれる筈……………………!」

 

嬉しそうに出来たチョコを見ながら語る三玖─────────

 

『シュークリームを作ろうと思うんだ!』

 

─────────今度はホテルでキンタロー君(上杉)に向けてシュークリームを作った事を思い出してしまう。

 

「っ!…………思い出させないで………

 

「え?何か言った?」

 

「………………何も言ってないわ。それよりも、さっさと片付けて寝ましょ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時と場所は飛んで上杉のバイト先のケーキ屋。自ら席取りを志願した一花姉さんは無事に席を確保し終わり、皆が来るのをコーヒーを飲みながら待っていた。

 

そしてきっかり5分後

 

「あ、五月ちゃーん!こっちだよー」

 

先ずやって来たのは、(一花は知る由もないが)通常の歩行速度の3倍でやってきた赤い彗星五月である。

 

「一花、火野君から聞きましたよ!合格したんですね!」

 

「うん、合格したよ。五月ちゃんはどうだった?」

 

「私も合格しました!合計で224点です!一花の方は点数はどうでしたか?」

 

「私は確か240点かな」

 

「と言う事は、今のところ一花が一番じゃないですか!」

 

「…………そうなの?」

 

「一花の点数が1番高いですよ」

 

「あっ、そうなんだ……………………………取り敢えず何か飲み物でも頼んだら?」

 

「それもそうですね。えーっと…………………」

 

メニューに夢中になっている間、五月は一花が一瞬だけ不敵な表情を浮かべたのに気付かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=========================

 

それから五月ちゃんと待っていると、次にやって来たのは四葉とフータロー君。四葉の結果は合格だった。

 

「四葉、おめでとー!」

 

「やりましたね、四葉!」

 

「えへへ。合計184点でギリギリだったけど、何とか合格出来て良かったよー」

 

「お前が1番危なかったが、何とか合格出来て俺もホッとしたぜ……………………ところで、火野はまだ来てないのか?」

 

─────ドキッ。

 

フータロー君の口から彼の名前が出てきただけで胸が高鳴った。

 

「火野君はまだ来てませんよ」

 

「そう言えば来てませんね。さっき電話で私に早く来るよう言っていたので、てっきりもういるものかと思ってましたが。一花、何か知らない?」

 

「………うん、知らないかな………………」

 

私は上の空で返事する。今の私はソウゴ君がどこにいるとかよりも別の事を考えていた。

 

「(三玖を応援していた気持ちに偽りはない、筈………………けど、もし今回のテストで私が1番だったら……………私が告白しても良いのかな………………?)」

 

自問自答を繰り返す私。正直、これはテストの問題を解くよりも頭を悩ませる問題だった。

 

──────そして悩んでいる内に彼は来てしまった。

 

「待たせたな(ス〇ーク)」

 

「あ、火野君。それに三玖も一緒ですか。随分遅かったですね?」

 

「…………………スッ(無言で漫画雑誌と単行本を見せる総悟)」

 

「…………………スッ(無言で抹茶ソーダを見せる三玖)」

 

「ああ、なるほど…………(察し)」

 

そんな会話を上の空で聞きながら、私はフラッと立ち上がってそのままソウゴ君の元へ向かう。ソウゴ君の姿を見たら悩むのがどうにも馬鹿らしくなってしまった。

 

───────もう告白してしまおう。

 

そう決めた。二乃と三玖の点数がまだ判明してないのだけれど、そんな事は頭から抜けていた。いや、後から考えれば私が1番だろうと根拠もなく決めつけて自分に言い聞かせていたのかも知れない。彼に近づくに比例して心臓がバクバク音を鳴らす。

 

そして

 

「…………ソウゴく「あ、一花姉さん。ちょっと三玖の隣に並んでくれる?」へ?……………あ、うん…………?」

 

意図が分からないまま言われた通り三玖の隣に並ぶ。ソウゴ君は咳払いすると、皆の方を向いて口を開く。

 

「えー、皆さん。速報です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現時点で一花姉さんと三玖が2人とも同点で1番でーす!」

 

……………………え?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===================

 

「(あいつ(上杉)は私の事なんて何とも思ってない……………………けど、私はあいつを見ると私の心を奪ったキンタロー君(上杉)を思い出してしまう……………………だから、もうあいつには会わない……………)」

 

そんな事を考えていると、久しぶりに見る黒いリムジンが路肩に止まり、ドアが開いてパパが出てきた。

 

「帰って来たんだね二乃君」

 

「パパ、その君付けやめて」

 

「悪かったね二乃く…………に、二乃。…………先程赤点回避の連絡をもらったよ。君達は見事7人でやり遂げたわけだ。おめでとう(僕は娘の名前を呼ぶくらいで何を緊張しているんだ………落ち着け落ち着け…………)」

 

「あ、ありがとう」

 

「どうやら上杉君と火野君を認めざるを得ないようだ。だから明日からはこの家」

 

「あいつらとはもう会わない!…………それと、もう少し新しい家にいることにしたわ」

 

「(……………え)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===================

 

「すごーい!三玖、やったね!」

 

「おめでとうございます、三玖!」

 

「………うん、ありがとう」

 

同点とは言え1位だったのだが、三玖は心中複雑そうだった。それに気付いたのは一花のみ。

 

「…………………」

 

「どーした姉さん?三玖の方を見つめて」

 

総悟が一花の顔を覗き込む。

 

「!?………その、やっぱり三玖は流石だなー、って」

 

「そーだな。……………にしても、二乃はどーこに行ったんですかねぇー。もう学校にはいなかったから、てっきり誰かが祝賀会の事を二乃に話していて、もうここにいるのかと思ってたが」

 

「電話しようか?」

 

一花がそう提案した所で総悟のスマホに着信。相手は星奈さんからだった。

 

「もしもし、どうかしましたか星奈さん?何か緊急事態ですか?」

 

『いえ、緊急事態と言う訳でもないのですが……………先ほど私が買い物から帰ってる最中に二乃さんと会いまして』

 

「え、二乃と!?」

 

総悟の驚きの声に皆注目する。総悟はスマホをスピーカーモードにしてテーブルに置く。

 

『ええ。それでテスト結果の紙を渡されたのと急ぎの伝言を頼まれまして………………伝言は『おめでとう。あんたらは用済みよ』、だそうです。本人から伝えてくれと言われたので言いますが、二乃さんの合計点は209点。全科目で赤点回避出来てました』

 

中野二乃 209点

 

「Foo!↑………喜べ、少年少女達。全員赤点回避の夢は漸く叶った」

 

「「「「やったぁ!」」」」

 

声を上げて喜ぶ二乃を除く五つ子達。上杉もホッとした様子を見せる。

 

「つーか用済みって………………卒業させるのが我々の仕事なんだから、まだ全然用済みじゃないと思うんですが………………これもうわかんねぇな(疑問)」

 

クエスチョンマークを浮かべる総悟。すると横から上杉が電話越しに星奈に問い掛ける。

 

「星奈さん、二乃がどこに行ったか分かりますか?」

 

『例のマンションの前です。何故か私に伝言やテストを預けたりと、いつもと様子が変だったので何かあるんじゃないかと少し心配になりまして。訊いても言ってくれなさそうな女の勘がしたのでこっそり後を追ってたんですよね。今も少し離れた場所から見てるんですが、誰かと待ち合わせでもしてるんでしょうか?もしかしてマルオさんですかね?』

 

「……………………まぁ、とにかく赤点回避の祝賀会は全員参加なので、今から二乃を迎えに行きます」

 

『では、私はもういなくても大丈夫そうですかね?』

 

「そうですね。何かいつもすいませんね、星奈さん」

 

『総悟様が謝る必要はありませんよ、私が勝手にやった事ですので。それでは、祝賀会楽しんでくださいね。あ、それと赤点回避おめでとうございます』

 

祝いの言葉を残したのちに星奈との通話は終わった。そこに話しを聞いてたのか店長がやってくる。

 

「上杉君。もうすぐバイトの時間だからバイク使って良いよ」

 

「!どうも。じゃ、行ってくる」

 

店長からパスされたキーを受け取った上杉は店の駐車場に止めてあるバイクに跨るとすぐに発進させて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

================================

 

今の家でもう暫く暮らす事を告げてもパパは相変わらずの仏頂面。怒ってるのか、驚いてるのか、悲しんでるのかもよく分からない。本当に何も思ってないのかしら。

 

「試験前に5人で決めたの。一花だけに負担はかけない、私も働くわ」

 

「…………それは」

 

「正しくないのは承知の上。自立なんてしたつもりもないわ。でもあの生活が私達を変えてくれそうな気がする。少しだけ前に進めた気がするの」

 

「……理解できないね。前に進むなんて抽象的な言葉になんの説得力も無い。君達の新しい家とやらも見させてもらったが、僕にはむしろ逆戻りに見えるね」

 

言ってくれるじゃない……………………まぁ、確かにそれは否定出来ないかもだけど。

 

「五年前を忘れたわけではあるまい。もうあんな苦しい生活は嫌だろう?だからマンションに戻っ」

 

次の瞬間、バイクのエンジン音が聞こえてくると同時にまばゆい光が私達を照らす。そこに現れたのは───────

 

「情報通りだな。祝賀会に行くぞ、二乃」

 

「う、上杉!?な、何でここに……………?」

 

「だから赤点回避の祝賀会をやるからお前を迎えに来たんだよ。俺はバイトもあるから早く乗ってくれ」

 

「二乃、君が行こうとしてるのは茨の道だ。うまくいく訳がない。後悔する日が必ず訪れるだろう。だからこっちに来なさい」

 

まさに板挟みと言う言葉がお似合いの状況。…………それにしても

 

「(茨の道、ね…………)」

 

……………………仮にそうだとしても、(姉妹)と…………あの2人(上杉と火野)がいれば行ける気がする。乗り越えられる気がする。……………………私の心は決まった。私が選んだのは白馬(なのかは分からないけど)の王子様(上杉)。貰ったヘルメットを付けて上杉の後ろに乗る。

 

「パパ、私達を見てて。……………それと、5年前を『苦しい生活』の一言で片づけないで。確かにママとの生活は大変な事沢山あったけど、それと同じくらい楽しい事も沢山あったから………………上杉、行って!」

 

「お、おう。え、えーっと…………お父さん。娘さんを頂いていきます…………?」

 

そして私と上杉を乗せたバイクは走り出した。高揚した気持ちを乗せて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「江端。めでたいことに娘たちが全員試験を突破したらしい。………僕は笑えているだろうか」

 

「勿論でございます」

 

「そうか……………………当然だね、僕は父親なのだから(…………帰ってくると思っていたのだが私が失言したばかりに…………いや、それ以前に今まで距離置いてたのとかがダメだったのかなぁ……………………春休みに少しでも距離を縮める為に家族旅行でも提案してみようか…………………けど、承諾してくれるかどうか……………………いざ誘って断られると意外と凹む気がするし……………………どうしたものか……………………)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、星奈さんから聞いてないの?伝言を頼んだんだけど」

 

「あぁ、聞いたぞ。お前らを無事に卒業させるまでが俺達の仕事だから全然まだ用済みじゃないだろ。火野も不思議そうだったぞ」

 

「…………………はぁ。そうね。そうだったわね……………って言うか、このバイク」

 

「店長に借りた。前に免許持ってるって言ったろ」

 

「そう言えばそんな話もあったわね……………あんた、バイクがびっくりする程に似合わないわね」

 

「安心しろ、自覚はある。それと、知ってるかもしれないが他の4人も試験合格した」

 

「えっ、なに!?風で聞こえない!………あっ、これのこと?」

 

「あ!やめろ!見んな!」

 

上杉風太郎 合計459点。

 

「!………あんた……」

 

「…………一生の不覚だ。マジで恥ずい」

 

「……………あいつ(火野)はどうだったのよ」

 

「………オール満点だ。火野にも負けちまった」

 

火野総悟 合計500点

 

「……………私たちのせい?」

 

「違ぇーよ。そんな事は良いから飛ばすぞ。しっかり捕まってろ」

 

そう言われた二乃は笑みを浮かべながら上杉にしっかり捕まる───────が。何故かそこまでスピードは上がってない。

 

「……………………ちょっと、飛ばすんじゃなかったの?スピード遅すぎない?」

 

「仕方ないだろ、後ろに重いのを抱えて走ってるんだからな」

 

「はぁー!?重いって誰に向かって言ってんのよ!………………まったく、相変わらずデリカシーのなさは一級品ね…………」

 

「…………………」

 

「まったく嫌になるわ…………けど、あんたはずっとそうだったわね……………ほんと最低最悪」

 

「…………………」

 

「あとは……………………そうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「好きよ。あんたのこと」

 

to be continue……………




前回の予言(?)通りシン・エヴァの興行収入100億行きましたね。おめでとう(パチパチ)

今日で終映なのでラストで見てきます。特典まだあるかなー?ちなみにこれで4回目です。

今日も読んでいただきありがとうございました!この次もサービスサービスゥ!


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第8巻
聞いてなかったは許さない


この前の話で後書きに書こうと思ってたけど忘れてたんで、今回の前書きとミックスしてここで書かせてもらいます。

一花 240点
二乃 209点
三玖 240点
四葉 184点
五月 224点

前回を書く時、最後は二乃のあの台詞で終わらせると決めてました。何か良いじゃん?

そして一花姉さんが軽く暴走して危うく告白しかける展開。アブナイアブナイ。原作で二乃に『暴走機関車』とか言っていたが、この小説の一花も若干暴走機関車やな(確信)

そして今作では三玖が一花と同点で同率1位。ちなみに、case三玖であった通りテストの直前に数学の分からないとこを総悟に聞いてなければ原作通りでした。わざわざそう言う描写を入れたのはつまりそう言う事。ここが分かれ目やったのさ……………………。

さて、ここから三玖、一花はどうするのか……………………具体的には今回の話ではなく次に持ち越しとなります。お楽しみに。

今日はFGOのソロモンの映画ですね。午前中に見てきます。個人的には沖田さんやノッブとかのイベント組が来るか気になるところ。個人的に沖田さんは大好きなので、来て欲しい……………………欲しくない?

あと、呪術回戦の冬映画の事で何か発表があるみたいですね。皆さんがこれを見てる頃にはもう何なのか判明してますが。今日はそれを見てから寝ます。

はい、それじゃ本編です。よーい、スタート(棒読み)


上杉が運転するバイクはケーキ屋に到着。

 

「(ヤバイ!言っちゃった!好きって言っちゃった!こいつが好きだなんてどうしちゃったの!初めての告白なのに、なんで突然言っちゃったのよ!あー、どうしよう!………っていうか、なんでこんなに無反応なのよ!?驚いたりしないわけ!?)」

 

そんな二乃の心情を知らない上杉はつかつかとケーキ屋に入っていくので、二乃もそれに続く。

 

「上杉君、間に合って良かった!今、キッチンに1人しかいないから急いで入ってくれる?」

 

「はい、バイクありがとうございました」

 

「(……………まぁ、良いわ。後にしておいてあげる。先ずは祝賀会かしら)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えー、と言う訳で見事に全員の赤点回避に乾杯!」

 

「「「「「かんぱーい!」」」」」

 

各々が注文したケーキが届いた後、総悟の乾杯の合図に合わせて皆はグラスを合わせる。バイトが終わって上杉も合流したら改めてもう一度やる予定。ちなみに、本来なら総悟の奢りになる予定だったのだが、店長が『その代わりに☆5のレビューをつけてね』とご馳走してくれる事になった。総悟としても『お金が浮いてラッキー♪』って感じである。

 

「それにしても、本当に赤点回避できるとは思わなかった」

 

「いやー、皆赤点回避出来てほんと良かった良かった。これで恐らく5人揃って3年に進級出来そうだしね。俺は今日までずっと不安でいつもよりアニメを見る気力が湧かなくてさー。お陰で毎日8時間睡眠してたからな。不健康な生活やで、ほんま」

 

「いや、むしろ健康的だと思うけど…………?」

 

一花の正論ツッコミ!総悟は死んだ(大嘘)

 

「この答案を額縁に入れて飾ろうかなー」

 

「四葉、それはもっと良い点数取ってからにしなさいよ」

 

ワイワイ話に花を咲かせる6人。すると突然、三玖が四葉にケーキを差し出した。

 

「え?三玖、何これ?」

 

「現代文の問題、四葉の問題がドンピシャだったからそのお礼」

 

「確かにあれは助かったわね。じゃあ私からも」

 

「じゃあ私も」

 

「私も」

 

「ええええ!」

 

と言う訳で5人からシェアされたケーキを四葉はパクり×4

 

「色んな味を楽しめておいしいー!…………あ、でも私も皆に助けて貰ったんだから分けないと」

 

「では、少しずつシェアしましょう。今回の試験もきっとそうやって突破できたのでしょうし……………それに、色んな味を堪能できますっ!」

 

「むしろそれが目当てなんじゃ………」

 

「それが目当てやろ(断言)」

 

一花の呟きに総悟が断言する。そんな一花の隣からケーキが差し出される。差し出し主は三玖である。

 

「はい、一花」

 

「!」

 

「ありがとう。それにおめでとう」

 

「う、うん………………三玖も1位おめでとう」

 

「……………ありがとう」

 

一花も祝福の言葉を送るが、当の三玖は複雑そうな表情を浮かべている……………………一花は改めてそう感じた。確かに三玖は『1番』ではあるものの同率で自分(一花)も1番である為、自身が宣言した『5人の中で1番(4人の点数を上回る)』は達成出来なかったので素直に喜べてないのだろう、と一花は推測する。

 

「三玖はともかく、まさか一花も1番とはね。意外と言ったら失礼かもだけど、どこにそんな力を隠してたのよ」

 

「一花姉さんに限らず皆YDK(やればできる子)だから、まぁ多少はね?」

 

「あはは…………運が良かっただけだよ………………それにしても、五月ちゃんのケーキ凄く美味しいね」

 

話題を切り替えるように一花は五月に話を振る。

 

「ええ、私のおすすめです。もう一度食べてみたかったんですよ」

 

「当然のように来たことがあるのね……………」

 

「流石ですねぇ……………」

 

「……………………あの、皆んなに話しておきたいことがあるのですが」

 

「「「「「?」」」」」

 

「私、学校の先生になりたいんです」

 

「「「「「……………………」」」」」 

 

少し顔を赤らめながら五月は自身の将来の夢を語った。さて、5人の反応はと言うと

 

「うん、いいと思う!五月の授業わかりやすかったしぴったりだよ!」

 

「私達も当然応援するよ」

 

「じゃあ五月は大学受けるんだね」

 

「まぁ、真面目だしピッタリなんじゃない?」

 

「皆……………」

 

四葉、一花、三玖、二乃から肯定的な反応を貰う。

 

「勿論、俺も応援するぞ。そしたら、どこの大学のどの学部を受けるのかとか高校卒業後の進路も考えていかないとね。勿論、五月だけじゃなくて皆もだけど」

 

無論、総悟もである。

 

「進路、か。いよいよ3年生って感じね」

 

「進路と言えばお父さんにも言わないとね。さっきもテスト結果を報告したけど返事がまだ…………」

 

「あー、それについては大丈夫よ一花。さっき私が直接話してきといたから」

 

「やっぱりお父さんに会ってたんだ……………それでお父さんはなんて?」

 

一花の問いに二乃は当たり前だけど、と前置きしてから語る。

 

「良い反応は貰えなかったわ。……………今はまだ甘えさせてもらってるけど、いつかはけじめをつけないといけない日が来るはずだわ」

 

「……………………けじめ、か。俺と上杉も早めにユー達のお父さんと和解しとかなければなー……………………ちなみに二乃。上杉の奴がお父さんに何か変な事を言ってなかった?」

 

「……………………そう言えば、あいつ『娘さんを頂いて行きます』とか言ってたわね」

 

「………………上杉の再雇用の可能性がさらに低くなったってはっきり分かんだね(呆れ)」

 

もっと他に言い方があるでしょうが、と総悟が心の中で呟くなか、二乃はふと思ったことを口にする。

 

「そう言えばあいつ、バイクで私を迎えに来たんだけど絶望的に似合ってなかったわ」

 

「まー……………そいつは否定できねぇな」

 

「ほんと調子狂ったわ。……………だからあんなこと言っちゃったのよ

 

「「「「「?」」」」」

 

「………あ、そうだ!お皿片付けて来よっかな!ついでに店長さんにお礼を言ってくるわ」

 

「あ、じゃあ私もお手洗いに行ってから手伝うよ」

 

二乃に続いて一花も立ち上がると店の奥へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、僕は少し休憩入れてくるからあとよろしくね」

 

「あ、店長。プリン一つ取り置きしてもいいですか?」

 

「いいけど、好きだったっけ」

 

「明日のバレンタインのお返しに」

 

「!?…………君は仲間だと思ってたのに、裏切り者……………」

 

「いや、妹のですけど…………」

 

「…………な、なんだ。てっきりあの五人のお友達の誰かからだと思ったよ」

 

「あり得ないですよ(そもそも誰からも貰ってないんだからな……………そういや火野の奴は1月からずっと三玖から沢山貰ってたな……………………)」

 

そんな事を考えながら洗い物をする上杉。するとそこへ

 

「ご苦労様………………って、店長は?」

 

「誰かと思えば二乃か。店長に何か用でもあったのか?今奥に行ったが」

 

「店長さんにお礼を言おうと思ったんだけど………………少し待とうかしら。…………その間暇だから洗い物を手伝うわよ」

 

「え?いや別に」

 

「良いから!ご馳走になったお礼よ」

 

「…………じゃあ、頼む」

 

上杉の隣で器具などを洗う二乃。2人になった事でペースは当然早くなり、みるみるうちに片付いていった。

 

「……………………よし、これで終わりだな。悪いな、わざわざ手伝って貰って。店長には伝えておくから先に席で待ってろよ」

 

「そ、そうね。そうするわ」

 

二乃は厨房を去ろうとする──────────が突然足が止まる。

 

「?どうした?」

 

「……………やっぱり、バイクで言った事は忘れてちょうだい」

 

「………………」

 

「突然すぎて困らせちゃったわよね。少しアクセルを踏み過ぎたみたい。何やってるんだろうね、私」

 

「……………二乃」

 

二乃の名前を呼ぶ上杉。どんな言葉が来るのかと二乃が身構えていると

 

「なんのことだ?」

 

「………………ええっ!?」

 

流石にその言葉は予想外だったのか、少し遅れて驚愕の声を挙げる二乃。

 

「心当たりがないんだが。つーか、あの時風強かったから聞き逃してたかもな」

 

「な、な、な………………………何よそれー!」

 

二乃の大声が厨房に響き渡る。

 

「いや、だから何を……」

 

「な、なんでもない!」

 

二乃はそう言って出て行った。

 

「?………………よく分からんが………………っと、それよりも早く片付けるか」

 

上杉は器具を所定の場所にテキパキとしまっていく。

 

「よし………………これで終わりっと。にしても二乃の奴なんだったんだ………………?」

 

少し考えてみるが答えは出てこない。心の中でモヤモヤしたものが残る上杉の耳に足音が。

 

「あ、店長。全部片づけま……………し……………?」

 

店長が来たのかと思って振り向く上杉。だが、そこにいたのは店長ではなかった。いたのは──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんたを好きって言ったのよ」

 

そこにいたのは─────そう言ったのは─────二乃だった。告白を聞いてなかったは許さない、もしくは告白を聞いてなかったのならもう一度聞かせてやる、と再告白しに戻って来たのだろう。

 

「は………………?」

 

その言葉(告白)を聞いた上杉は混乱して固まる。当然である。

 

「返事なんて求めてないわ。ほんとムカツク。対象外なら無理にでも意識させてやるわ。…………そう言えば、前にあんたみたいな男でも好きになってくれる人が一人くらいいるって言ったわよね………………そ、それがよ。残念だったわね」

 

「っ……………!」

 

混乱で頭が一杯の上杉に対して二乃は赤面しながら改めてそう宣言した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

 

「厨房は……………あ、ここか」

 

お手洗いを済ませた後、私も二乃の手伝いをしようと厨房に入ろうと思った時。

 

『……………やっぱり、バイクで言った事は忘れてちょうだい』

 

この声は二乃………………バイクで言った事?私は入ろうとする足を止めて聞き耳を立てる。

 

『突然すぎて困らせちゃったわよね。少しアクセルを踏み過ぎたみたい。何やってるんだろうね、私』

 

女の勘か、私の頭の中に浮かんだのは『告白』の2文字。……………いや、流石にそれはあり得ないか。今までそんな素振りもなかったし。

 

『……………二乃。なんのことだ?』

 

『………………ええっ!?』

 

『心当たりがないんだが。つーか、あの時風強かったから聞き逃してたかもな』

 

『な、な、な………………………何よそれー!』

 

『いや、だから何を……』

 

『な、なんでもない!』

 

二乃が去っていく足音が私にも聞こえた。………………何だったんだろう、結局。告白じゃないとしたら……………………………………………考えてみてもやっぱり分からない。

 

「(………………片付けも終わっちゃったみたいだし、取り敢えず皆の所に戻ろうかな)」

 

踵を返して去ろうとする。だが、私の耳に飛び込んできた言葉が再び私の足を止めた。

 

『あんたを好きって言ったのよ』

 

…………………………………………え?

 

『は………………?』

 

『返事なんて求めてないわ。ほんとムカツク。対象外なら無理にでも意識させてやるわ。…………そう言えば、前にあんたみたいな男でも好きになってくれる人が一人くらいいるって言ったわよね………………そ、それが私よ。残念だったわね』

 

『っ……………!』

 

思わず手で口を覆う。そうでもしないと驚きの余り声を挙げてしまいそうだったからだ。

 

「(う、嘘……………………二乃がフータロー君の事を好きって……………………ええっ!?)」

 

これ程までの衝撃を受けたのは久しぶりな気がした。

 

to be continued……………




今回も読んでいただきありがとうございました。

そう言えば、最近ウマ娘にハマりました(今更かもしれませんが)。次の話で好きなウマ娘とか色々と自分なりに熱く語ります(予定)


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スクランブルエッグ Ⅰ

妖精円卓の感想はちょっと次の話とかにしますわ。書こうと思ったら何か色々と思い出してうまく言葉がまとまらなかったので。かろうじて出てきた言葉はメリュジーヌが超可愛くて凛々しくて好きすぎる(※マジです)

それでは、どうぞ!


「じゃ、皆お疲れー」

 

「き、気をつけて帰れよ………(震え声)」

 

無事に祝賀会は終了。総悟と上杉(コクられて動揺中)は5人にそう声を掛けて去って行った。

 

「何か物足りませんね…………コンビニで何か買いませんか?」

 

「いいねー!」

 

「あんたら太るわよ」

 

「だ、大丈夫です!食べた分運動もしますから!」

 

「わ、私も明日ランニングするからたぶん大丈夫だよ!」

 

二乃と五月、四葉がそんな会話をしながら歩いている中、距離を置きながら後ろを三玖は何処か浮かない顔をして歩いていた。そんな彼女に話し掛けるのは───────

 

「三玖、どうかしたの?」

 

一花である。

 

「い、一花……………べ、別に何で」

 

「何でもなくないよね。お姉ちゃんはお見通しなんだから。話してみなよ、大方テストの事でしょ?」

 

「!……………やっぱり、一花はお姉ちゃんだね」

 

三玖は一花に己の胸中を話し始める。

 

「私、前に一花に宣言したよね。『5人の中で1番の成績を取って自分に自信を持てるようになったら好きって伝える』って」

 

「うん、そうだね」

 

「結果として確かに1番だったけど、『5人の中で1番(4人に勝つ)』は達成出来なかった…………………あ、別に一花を責めてるとかじゃないよ?」

 

「うん、分かってるよ。それで?」

 

「………………宣言は達成出来なかったけど、正直ソウゴに告白したい気持ちが私の中にある。5人の中で1番ではないけど1番なのには変わりはないし、別にソウゴはその宣言を知らないから告白しても良いじゃん、って……………………………………一花はどう思う?」

 

「……………………」

 

この時、『お姉ちゃんは三玖が告白したいならしても良いと思うよ。結局の所1番なんだから、そんな細かい事は気にしないでさ!』と後押ししていたかもしれない ────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────三玖と好きな人(総悟)が被ってなければ。

 

「……………………三玖が悩んでるって事はさ。三玖の中には告白したい気持ちと、自分でした宣言を破って告白するのはどうなんだろうって迷いの気持ちがあるんじゃないかなぁ?」

 

「それは………………………………もしかしたらそうかも……………………」

 

「やっぱりそうでしょ?宣言を破って告白したら結果はどうあれ後ろめたいものが残って後悔するとお姉さんは思うよ?」

 

「……………………」

 

「(……………あと一押し、かな)私も告白後に三玖にそんな気持ちが残ってほしくないしさ。別にこれから先も機会がないわけじゃないし……………だから今回は見送った方が良いと思うよ」

 

「………………うん、そうだよね。それにソウゴとプライベートでデートとか全然してないから今告白しても成功する可能性は低そうだし……………………今回は見送る事にする」

 

「……………そっか」

 

「一花に相談して良かった。ありがとう」

 

「どういたしまして。私は三玖を応援(・・)してるから、また何か相談があったら遠慮なく頼るんだよ?」

 

一花はそう言って笑った ────────────そして内心でも三玖の告白を阻止できた事に対してほくそ笑んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰宅後、私はベランダで1人空を眺めていた。

 

『三玖が悩んでるって事はさ。三玖の中には告白したい気持ちと、自分でした宣言を破って告白するのはどうなんだろうって迷いの気持ちがあるんじゃないかな?』

 

『宣言を破って告白したら結果はどうあれ後ろめたいものが残って後悔するとお姉さんは思うよ?』

 

先程の三玖との会話を思い出しながら私は口を開く。

 

「……………………これで、三玖はソウゴ君に告白はしない。暫くこの現状を維持出来る……………………三玖と同点だったのは予想外だったけど、良かった良かった……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『私は三玖を応援してるから、また何か相談があったらお姉ちゃんに遠慮なく頼るんだよ?』 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………最低だね、私…………………」

 

………………何が良かっただ。そんな事を思ってしまう自分が本当に嫌になる。

 

私は……………………私は、嫌な女だ。自分が嫌になる。

 

ずっとこの関係が続いて欲しいと言う私の自己満足の為に人の、しかも自分の妹の脚を引っ張って恋路を邪魔して。そのくせお姉さんぶって頼れ?……………なんて滑稽なんだろう。偉そうに、何様のつもりなのだろうか。

 

多分彼は私が気が利いて面倒見の良いお姉さんなんて思ってるのだろう。それはとんだ勘違いだ。本当の私はソウゴ君や皆の前でお姉さんぶってるだけの嘘つきで卑怯な女だ。

 

「ははっ……………………これをソウゴ君が知ったら幻滅するね、きっと……………………」

 

小さな自嘲の声は夜空に消えて行った─────────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

土日を挟んで翌週の月曜日、俺はドンッと紙の束を皆(一花姉さんは不在。たぶん仕事)の前に置く。

 

「はい、これ春休みの宿題ね。……………露骨に嫌そうな表情をすな!今までの復習みたいなもんだからヘーキヘーキ」

 

やらなかったら二乃が何らかの形で餌食になりますからちゃんとやってくださいねー(暗黒微笑)

 

「そう言えばソウゴは春休みに何か予定はあるの?」

 

「俺は春休み初日から東京に行ってくるんだー。好きな声優さんのライブの抽選に当たったからさ。ついでに東京と神奈川の観光と言う名の聖地巡礼してくるんだ。3泊4日の長旅だZE☆」

 

ライブはとんでもない高倍率だったから当たったのはマジで奇跡に違いない。今年の運を全て使い果たしたかもなー。

 

「そうなんだ(むぅ…………初日からお出かけに誘おうと思ってたのに……………)」

  

「旅行かぁ。私達もお金に余裕があれば行けるんだけどねー」

 

「良いなー、火野さん。私も東京の聖地巡礼してみたいな~」

 

「火野君、美味しいお土産を期待していますね!」

 

「はいはい」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから月日は経ち─────────終業式が終わり、春休みに突入。俺は予定通りライブ、そして東京・神奈川での聖地巡礼を十分に満喫してご帰宅した。4日後に帰って来たのが深夜だったので帰ってすぐ爆睡。翌日の正午近くまで寝ていた。その後、旅行で疲労した体を休めながらぐだぐだ買って来たお土産グッズ達を鑑賞したり、ライブの事を思い返していたらあっという間に1日が終わった。帰って1日ぐだぐだしてたらもう完全に疲れは吹っ飛んだ。今の俺に疲労のひの字も無い。いやー、マジで体鍛えてて良かった。前世の俺なら3日は筋肉痛とかで死んでたわ。

 

さて、その日の夜。父さんの口からとんでもない話が出てきた。

 

「え?星奈さんと2泊3日の旅行行ってくれば?東京と神奈川に旅行に行ってたばかりなんですがねぇ……………………」

 

なんでも、親父の知り合いがスーパーのくじ引きで温泉旅行のペアチケットを当てたらしい。だが、両親ともに暫く予定が詰まっているので行く暇がないらしく、そこで俺と星奈さんで行ったらどうか、と言う訳だ。星奈さんには既に話を通しているらしい。

 

「いいじゃねーか、今度は都会じゃなくて自然豊かな島なんだしよ」

 

「遊べるときに遊んでおいた方が良いわよ。社会人になったら学生の時よりは遊べなくなるもの。あーあ、私も学生に戻りたいわね~」

 

…………………うぅむ。確かに母さんの言うことは一理ある。

 

それに、だ。

 

明日にでも皆にお土産を渡すつもりだったので、三玖に『明日お土産を渡しに行こうと思うんだけどおK?何か予定でもあったりする?』とメッセージを送ってみたのだが、何と明日から2泊3日の旅行に行くらしく、お土産は帰ってきてからでお願いと言う内容が返ってきた。お土産渡すついでに三玖とお出掛け……………要はデートに誘えたらと思っていたのだが、残念ながら旅行なので無理である。そして特にやることもなくて暇でもあるので……………………

 

「…………………………うん、行こっかな。それで、いつ?」

 

「明日」

 

「は?(威圧)」

 

明日とか急過ぎィ!

 

「なんでもっと早く言わないんですかねぇ(正論)」

 

「すまんすまん、すっかり忘れてた。まぁ、旅館の予約とかは全部済ませておくからそれでチャラで頼むわ」

 

「釣り合ってないような気がしなくもないが……………………まぁ、そう言うことにしておこう(寛大)」

 

さて、急いで準備しないと。ヤバイヤバイ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の午後2時、俺と星奈さんはフェリーに揺られてました。

 

「~♪」

 

「星奈さん、ご機嫌ですね。そんなに楽しみだったんですか?」

 

「ええ。総悟様とペアチケットで行かなくても自費で行こうと思っていたので、少し得しました。この島は私の好きな小説の舞台になっていますので、とても楽しみにしていたんです」

 

「ははーん、なるほど」

 

その気持ちはとても分かりますねぇ。俺も聖地巡礼大好き人間ですから。

 

……………それにしても船か。船と言えばなんだろう……………………あっ、そうだ(閃き)

 

「星奈さん、2階のデッキに行きませんか?ちょっとやってみたい事がありまして」

 

「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あのー、総悟様?そのポーズは一体……………………?」

 

数分後、デッキに着いた俺氏は星奈さんに腰を支えて貰いながら両手を広げていました。そうです、タイ〇ニックポーズです。

 

「これはアレです。船に乗ると全人類がついやりたくなるポーズです」

 

「そんな話は聞いたことがないですが……………………」

 

「いやいや。気持ちの良い潮風が吹き、目の前には青い海が広がっているんですよ……………これは手を広げるるしかない(断言)」

 

「……………………」

 

星奈さんは考え中の模様。そして──────

 

「……………何故だか私も無性にやりたくなってきましたね。」

 

「Foo!↑やっぱり皆やりたくなるんですねぇ。じゃ、どうぞー」

 

つー訳で交代。今度は俺が星奈さんの腰を掴んで支えます。……………つーか、女性の腰に手を添えるとか何か恥ずかしいような気もするが…………レオ〇ルド・デ〇カプリオもやったんだから俺も出来る筈!(トンデモ理論)

 

「………………何か飛んでるみたいで面白いですね。それに潮風も気持ち良いです」

 

星奈さんは気に入ってくれた模様。良かった良かった。

 

ちなみに、俺らがデッキを去った後でタイタニックポーズを真似るカップルがいたとかいなかったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、そんな事をやってる内に島へ到着した。

 

「たまには、こう言うのどかな場所も悪くないものですね」

 

「あー、確かにのどかでええですのう。それに見所も多いみたいですね、この島。今はいないけど時期によってはイルカと会えたりもするのかぁ」

 

星奈さんはスマホでパシャパシャ撮ってると、星奈さんが双子連れの家族から頼まれてツーショットを撮ることに。撮り終わると『折角だからお2人さんも撮ってあげるよ!』と言われたので星奈さんのスマホで撮って貰った。

 

「おー、中々綺麗に撮れてますね」

 

双子に手を振って別れた後、星奈さんに見せて貰うと中々綺麗に映っていた。

 

「何かこうして見るとカップルみたいですねー」

 

「カップルと言うより姉弟みたいな感じがしますね。まぁ、実際に私は総悟様を弟のようにも思っておりますが」

 

「確かに!しっかりしてて頼りになるし、まさにお姉ちゃんって感じですよねー……………星奈お姉ちゃん?」

 

「コフッ!?」

 

…………ちょいとからかい目的で言ってみたら何故か大ダメージを受けてる件について。ちょっ、大丈夫ですか?どこぞの桜セ〇バーみたく吐血してないですか?

 

「いえ、その………………不意討ちでしたので、かなり動揺しまして………………ふふっ」

 

「?」

 

「ああ、すみません。私も頼りがいのあるお姉ちゃんみたいと言われるまでに昔よりも成長出来たのなら、少し嬉しく思いまして。……………………あの、総悟様。もう一度お姉ちゃんと言って貰っても良いですか?」

 

「お安い御用ですよ、星奈お姉ちゃん」

 

「……………ふふっ、ふふふ………………」

 

嬉しそうに笑う星奈さん。ふつーに可愛い、と俺氏は思ってしまうのだった。この後連呼したらめっちゃ嬉しそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………殺してください……………………」

 

「それは星奈さんが強すぎて無理です(即答)」

 

真っ赤になった顔を手で覆いながらそう呟く星奈さん。あれから冷静になって恥ずかしくなったのだろう。まぁ、俺的には星奈さんの可愛い一面が見れて得したんですけどね。ただ、俺も少しからかいすぎたかもしれんな。

 

「すいません、俺も面白くなって連呼しちゃって。後々恥ずかしくなって悶えるでしょうし、流石に自制しますね」

 

「是非ともそうしてください…………………いえ、自制と言っても全面的にではなく週1のペース位でお願いします……………………」

 

りょーかいです(笑)……………………さて、そんなやり取りをしながら俺と星奈さんは取り敢えずぶらぶら見ながら辺りを歩き回っていた。

 

「いやー、やっぱ自然豊かなのは良いですね。心が落ち着く」

 

「そうですね。総悟様は将来、どちらかを選ぶとすれば都会に住みたいですか?それともここのような田舎ですか?」

 

それは究極クエスチョンQQ!ですねぇ……………………。

 

「そうですねぇ…………………………………………どっちかと言われれば都会ですかね。アニ〇イトが多いですし」

 

「総悟様らしい理由ですね……………」

 

「けどまぁ、こう言った自然豊かでのどかな田舎も嫌いじゃないですからね。どちらかを選ぶとかじゃなきゃ、都会と田舎の中間位が丁度良いですかねー」

 

「私もそう思います……………………おや、あれは鐘ですか」

 

あ、ほんとだ。何の鐘だろう?後でパンフレットでも見ておこっと。鐘のすぐそこには柵が設置されていて前方には海が、下を覗くと崖が広がっていた。

 

「本来なら山に向かってやるのが鉄板なんでしょうけど、折角ですし海に向かって『やっほー!』って叫びませんか?」

 

「ええ、構いませんよ。旅の定番と言っても過言ではないですしね」

 

「よーし、じゃあ……………………せーのっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「やっほー!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………ちょっと待て。今、俺と星奈さん以外の声が混じったよな?

 

そう思いながら隣を見ると────────

 

「……………ファッ!?」

 

「おや……………………」

 

「…………………はぁ!?」

 

「…………………えぇ!?」

 

……………知ってる顔(上杉と五月)があった。

 

「う、上杉君に火野君、それに星奈さんも!?どうしてここに!?」

 

「お前らこそ……………」

 

「はえー、すっごい偶然……………………いや、もはや運命(Fate)と言っても過言じゃないな…………」

 

まさか旅行先でも遭遇するとは…………それに五月がいると言う事は…………

 

「五月、早いよー…………………………って、上杉さん達じゃないですか!」

 

「はぁ…………………はぁ……ふ、フータローも当たってたんだ……(……………って、ソウゴもいる!?)」

 

………嘘………

 

「!…………ふふふっ」

 

「まさかのお前らも家族旅行かよ………ありえねぇ……………」

 

あー、ですよねぇ。皆いますよねぇー。……………………だが、これはチャンス。幸いにして島には色々とスポットがある。ここで三玖をお出かけに誘ってさらに親睦を深めるチャンS

 

「まさに家族旅行だ。しかし気を抜いてはいけないよ。旅にトラブルはつきものだからね」

 

「(お、お父さんっ………………!)」

 

「(マルオさんまでいるじゃないですかー、やだー!)」

 

これは……………お出かけはダメみたいですね(即諦め)

 

「!………………零奈、さん……………?

 

「「「?」」」

 

こっちを見ながら何か呟やいていた気がするが、すぐに視線を外してこちらに背を向けてしまった。何だったんだ?まぁ、それはさておき……………………この状況、どーしよ(笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(………今、私を見ていたような気が……………………)」

 

to be continued…………




はい、と言うわけで始まったスクランブルエッグ編の第1話でした。

三玖は一花の一押し&告白の成功率を危惧して告白は断念。ただし、諦めるとは言ってないので春休み初日から誘おうと思っていた模様。なのに初日から東京・神奈川にライブや聖地巡りに行ってしまうオタクの総悟ェ………………。まぁ、彼は悪くないんですけどね。

一花姉さんは三玖の告白を阻止出来たのが嬉しくて内心悪い笑みを浮かべる。が、そんな笑みを浮かべてしまう自分に対しての嫌悪も感じており、相反する感情が彼女の中を渦巻いていている状況。姉妹に対して表面上ではいつも通りにしていても裏では結構悩んで思い詰めてる。この旅行で救いはあるのかどうか。

星奈さん、キャラが若干崩壊。幕間の物語でらいはちゃんの可愛さに悶えていたが、総悟からの唐突なおねえちゃん呼びはそれ以上に悶えていた模様。そして後から恥じるオチ。それでも悪い気はしない、むしろ嬉しいので週一で呼ばれたいらしい。何だこのお姉ちゃん、可愛すぎかよ。

そしてマルオは星奈さんを零奈さんに重ねる。別に今のところは恋が始まる予定はないけど、どうなんだこれ。

今日もこんな駄文を読んでいただきありがとうございました。これからの話の展開どうしよっかなー……………………。


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スクランブルエッグ Ⅱ

さて、と。突然ですが総悟君の設定を新しく追加と言うか公開です……………………が、これは林間学校編で前田の前で三玖が一花に変装している回で明かさなければならない設定だったんですが……………………その頃はもう鬼のように色々と忙しすぎたんですっかり忘れてました、はい。最近まで気づかず申し訳ないっ!最初の方にも書いとかなきゃ。

………………とは言え、上述したその回で『今だけはcv.伊藤〇来じゃなくてcv.花澤〇菜に聞こえる』とか書いたので『みんな何となく自己補完してたんじゃね?なら問題ねーかなー』とか思ったりもしたんですが一応名言しておきましょう。

・五つ子が姉妹の誰かの声真似や変装している時は総悟には変装している相手の姉妹のcvで違和感なく聞こえる。五つ子が声真似や変装を止めればcvは元に戻って聞こえる。なお、総悟が変装の正体を見抜いていたりしても、そのまま声真似や変装を続けていると総悟には声真似・変装をしている相手のcvで聞こえる。

(例)三玖が一花の声真似や変装したりすると、総悟にはcv.伊藤美来からcv.花澤香菜に聞こえる。『私は三玖だよー』って感じで正体を明かせば元に戻る。総悟が変装の正体を見抜いたりしても、そのまま三玖が一花の声真似や変装をしていると総悟にはcv花澤香菜で聞こえる。

……………………まぁ、こんな感じで一応明言しておきます。これで何か矛盾とか生じたりしたら感想でもメッセージでも何でも良いのでこっそり教えてください。即座にサイレント修正しますので。

それでは、どうぞ。


「この島随一の観光スポット、誓いの鐘でございます。この鐘を二人で鳴らすとその二人は永遠に結ばれると言う伝説が残されているのです」

 

「…………………は、はは……どこかで聞いたことある伝説だな。そういうのどこにでもあるんだなー。コンビニか!」

 

江端さんの解説を聞いてそうボケる上杉。

 

「(まさかのマルオさんまでいるとは…………和解したのかなー?)」

 

「……………火野、つまらないとかでも良いからせめて何か言ってくれ…………」

 

初端から滑る上杉。つまらなさすぎて総悟は完全スルーして別の事を考える始末である。ほんとくっそつまんねぇな

 

「………さて、ここで昼食にしようか。全員準備を始めてくれ(それにしても、一体誰なんだ火野君の側にいる女性は………零奈さんに雰囲気が似ている気がして気になってしまう…………)」

 

マルオも上杉のくっそつまらないボケに聞く耳を持たず星奈さんの事を気にする始末である。

 

おい火野。いつの間にあいつらは父親と和解したんだ?

 

俺も知らなかったな。進級したから、とか?…………あれ、そうすると俺らの立場は?もしかしてクビ?ちょ、訊いてくるわ

 

嫌な予感がした総悟は近くにいた一花に話し掛ける。

 

「あのー、一花姉さん」

 

「あはは………ごめん、忙しいから後にしてくれる?」

 

「え、あ…………うん…………よつ」

 

「う~緊張するなぁ…………」

 

「………………」

 

総悟は余所余所しい壁があるのを感じた。

 

「…………すみません、星奈さん。俺、イルカに慰めて貰いたいです…………」

 

「この時期にイルカはいませんが…………」

 

「…………次は俺が行くか」

 

少し凹んだ総悟に変わって上杉が事情を聞こうとすると

 

「あんたら、さっきからどうしたのよ?」

 

「に、二乃ッ……………!」

 

こちら側の様子を変に感じたのか二乃からやって来た。上杉の脳裏には否応なしにあの時(告白された)時の事が思い浮かぶ。

 

「言いたい事があるならハッキリ言いなさい、フータロー」

 

そして上杉→フータローの呼び方の変化。上杉も色々と困惑する中、この会話を聞いていた三玖が反応する。

 

「二乃、今フータローって言ってたけど…………いつの間に呼び方変えたんだ」

 

「まぁね。私達も出会って半年が過ぎたじゃない?だからそろそろ距離を詰めてもいいと思わない?」

 

「まぁ…………確かに(私も常々ソウゴとの距離の詰め方を考えてるし…………)」

 

「あ、そうだ!あだ名とかどうかしら?三玖、何か考えなさい」

 

「何で私が……………」

 

口ではそう言いつつも三玖は上杉のあだ名を考えてみる。

 

「上…………風……………フー……………フー君、とか?」

 

「フー君…………良いわね、それ」

 

「…………思ったけど、フータローをあだ名で呼ぶならソウゴもあだ名で呼ぶの?(呼ぶならソウゴのあだ名は私が考える……………!)」

 

「火野?………………火野は別にそのままで良いわ」

 

「なんだよ、てっきりソー君とでも呼ぶのかと思ってたわー」

 

そう言うのは無事に凹みから回復した総悟。

 

「ソー君?……………何かキモいわね」

 

「は?(キレ気味)」

 

「ほら、二乃準備するよ」

 

気を利かした三玖が二乃の背中を押していった。

 

「(……………よくよく考えたら二乃からソー君呼びはないな。ふつーに火野で良いわ)」

 

「い、五月………」

 

総悟がそんな事を考えている間に何故かこちらを見つめる五月の視線に気づいた上杉が話し掛けようとするが──────

 

「五月君、何をしてるんだい?江端から弁当を受け取ってくれ」

 

「お、お父さん!あ、あの…………」

 

「さあ準備を始めよう」

 

「先日は…………」

 

「久々に全員が揃ったからね。家族水入らずの時間だ」

 

完全にバリアを張られており、上杉は完全に蚊帳の外の状況であった。

 

「……………俺達、完全に嫌われてるな」

 

「そーね……………まぁ、お前は色々と言ったし娘さんを頂いて行ってるから俺より上杉の方が嫌われてるんじゃね?機会があったら謝っとけば?」

 

「………それもそうだな」

 

土下座でもしようかなと真面目に上杉が検討していると先を進んでいたらいはと勇也が戻って来た。

 

「遅いよお兄ちゃー…………あれ、何で皆いるの?」

 

「らいはちゃん!」

 

「やはり上杉さんも家族でいらしてたのですね」

 

「じゃあ、あの人がお父さん?」

 

「む…………似てるわね……」

 

「……………そう?」

 

三玖は不思議そうだったが、二乃の呟きは金髪姿の上杉(キンタロー)を知っているが故である。ふと、勇也は5人の奥にいる人物を見つける。

 

「ん?ありゃ……………」

 

「おや、雨が降ってきたね」

 

「いや、今は雲一つない快晴ですけど」

 

「山は天気が変わりやすいものだからね。下山して宿に行くとしようか。江端、片づけを頼むよ」

 

「雨なんて一ミリも降ってないんですけども」

 

「……………急に雨が降るとは残念なものだ(強引)」

 

不思議そうな総悟に対して意地でも雨が降ってると言い張ってマルオは去って行った。

 

「あはは、仕方ありませんね…………」

 

「じゃあね、ソウゴ」

 

四葉と三玖はそう言って残りの面子も去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何かもう色々とわけわかめ…………………」

 

「どうも皆さん余所余所しいかったですね」

 

ハテナマークが大量に浮かんでいるワイ将軍の隣に星奈も来て同意する。

 

「それと…………………どうも私はマルオさんからちらちら視線を感じてたような気がします」

 

「え?」

 

マルオ氏から視線?

 

「何だろう……………何処かで会った事でもあるんですか?」

 

「いえ、全くないですね……………………まぁ、私の気のせいなら良いんですが」

 

それなら良いんですけどねー。

 

「おい、火野。ちょっと良いか?」

 

上杉は俺を皆から少し離れた所へ連れて行く。

 

「おっす、どうしたスベリ―風太郎?」

 

「やめろ!傷口に塩を塗るな!」

 

ちゃうちゃう。総悟君はねぇ、傷口に塩じゃなくてタバスコを塗る派なんだよ(鬼畜)

 

「えーっと、何を言おうとしてたんだ……………………そうだ、さっき五月から後でお話があるって言われたんだが」

 

ほほう。

 

「それは…………つまり皆が余所余所しい状況についてか?」

 

「恐らくな」

 

まー、取り敢えず後で説明してくれるだけ良き良き。このまま理由も不明なまま精神的な壁が設けれれるよりは遥かに良い。理由を聞けば解決策も考えれれるし。

 

……………しかし、皆が余所余所しい理由は何なんだろう………んー…………………………

 

「!………………なるほどな」

 

「まさか……………………分かったのか?あいつらが余所余所しい理由が」

 

俺は良い感じに『全てお見通しさ』と言いたげな表情を浮かべて言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「分からん!」

 

「じゃあ何でちょっといい顔したんだよ!?」

 

その後らいはちゃんに頼まれて上杉家の写真を撮ったり、辺りをぶらついてから上杉一家と一緒に宿に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

森の中を歩くと大きな旅館が見えてきた。名前は虎岩温泉。見た目から老舗な雰囲気が漂っているが、中に入るとさらに老舗な匂いがした。

 

「ここが私の好きな小説で舞台になった旅館ですか…………!」

 

星奈さんは辺りを物珍しいような様子で見ている。にしても、偶にはこういうThe旅館みたいな旅館に泊まるのも良いな。

 

「そういや五月の奴、後でっていつなんだよ?」

 

確かに後っていつなんだ?

 

「あそこにいるスタッフの人に五月の部屋を訊いて行ってみるか?」

 

「客の個人情報を教えるわけないやん。そんなことしなくても電話すれば良いだけやろ」

 

「確かに…………じゃあ悪いが火野が電話してくれるか?ここ最近電話を使ってなかったもんだから充電してなくてな」

 

「はー、つっかえ…………」

 

地震とか非常事態が起こったときに安否確認とかで携帯使うやろ。充電位しとけや、この猿ゥ!…………よし、電話しまーす(切り替え完了)

 

「…………ん?あ、いた」

 

電話する直前にふと中庭を見ると五月がいるのを発見した。フロントで鍵を貰っていた星奈さんに俺は声を掛ける。

 

「星奈さん、ちょっと所用を済ませてくるので先に部屋に行っててくれますか?」

 

「了解しました」

 

「悪いらいは、親父。俺も行ってくるから先に部屋に行っててくれ」

 

と言う訳で俺と上杉は中庭へ。そう遠くに行ってない筈だが…………

 

「…………なっ!?おい火野、あそこに五月がいるぞ!」

 

「え?…………ファッ!?」

 

嘘やろと思って上杉が指さす方を向くと旅館の2階の廊下を歩く五月の姿が見えた。

 

「いつのまにあんな所へ…………たまげたなぁ」

 

「兎に角俺達も行くぞ、火野!」

 

つー訳で俺達も2階へレッツラゴー。到着する頃には上杉はもうバテバテ。そして五月は……………………あ、トイレに入って行った。

 

「ついでに俺もトイレ行ってくるから五月が出てきたら捕まえておいてくれるか?」

 

「分かった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お客様」

 

「すみません」

 

「不審者が女子トイレ前にいると聞きまして」

 

「すいません」

 

「他のお客様が怯えていますので」

 

「すいません」

 

トイレから出てスッキリして出てきてみれば上杉が女性スタッフから注意されてた件。確かに五月が出てきたら捕まえろとは言ったが何も女子トイレの前で待つ必要はないでしょーが。そんなことする奴はたぶん変態だと思うんですけど(名推理)

 

「やれやれ、とんだ目にあったぜ…………」

 

「女子トイレ前に堂々と立ってたらそうなるのは当たり前だろうが。馬鹿じゃねぇの(辛辣)」

 

「うっ……………………えぇっ!?」

 

突然上杉が大きな声を挙げる。

 

「どった?」

 

「……………………スッ(無言で指さす上杉)」

 

「……………………ファッ!?」

 

上杉が指さした方を向くと、先ほどの中庭に五月の姿があった。

 

「お前、女子トイレの前に立ってたんじゃないの?」

 

「そ、その筈なんだが……………お、おかしいな。いつの間にトイレから出てたんだ?全然気付かなかった………………」

 

「はぁ~~~(クソデカ溜息)」

 

上杉ェ……………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう疲れたから一旦風呂入ってさっぱりしましょうよ~、って感じで俺と上杉は入浴中。上杉は混浴で家族で入るらしい。俺は男湯、しかも今現在は貸し切り状態で満喫中。

 

「ぬわああああん疲れたもおおおおん………」

 

肩まで温泉にどっぷり浸かりながらそう呟く。しかし、結局の所皆はなんで余所余所しいんですかねぇ。これもう分かんねぇな。

 

「痴漢でもして嫌われた?」

 

「んな訳あるかっての……………って、うおっ!?」

 

いつの間にか隣にいるやん、神様!驚かせやがって、どうしてくれんの(憤怒)

 

「まー、そう怒んなって。久し振りに会いに来てやったんだからさ」

 

「……………まぁ、確かに久しいな。ここに来たのは疲れを癒しにか?」

 

そう尋ねると神様はいつになく真剣な表情を浮かべて首を横に振る。

 

「………………ここへはあくまで寄り道。君が最近元気にしているか見にね。本命としてはちょっと調査しに来たんだ」

 

「調査?」

 

「そ。最近、この世界で魔力を行使している痕跡が見つかってね。現地調査ってわけ」

 

魔力?

 

「魔力って………ここは剣と魔法の世界じゃないんだぞ?」

 

「そう、ここは剣と魔法の世界じゃない。だからこそ妙なんだ。魔力の反応が見つかるなんて」

 

確かに。当然ながらこの世界にはこの〇ばとかFaeみたいに魔法とか魔術は実在しない。なのに魔力を行使した反応があるのはおかしい。

 

 

「何だろう………………もしかしてこの世界に魔法の力を持って転生者が来たとか?ほら、特典で魔法が使えるようにとか願って」

 

「それも疑ったんだけど、この世界に転生者は君しかいないんだよね……………………大方、僕のアンチの仕業かなー」

 

アンチ?

 

「僕って人間上がりの1番偉い序列1位の神様なんだけど、実はこれはかなりイレギュラーでね。本来なら序列1位は神界人から選ばれるんだ」

 

「そもそも神界人ってなんだ?」

 

「詳しく話すと3時間位掛かるから……………………シンプルに人間を遥かに超越した力を持ち、世界を管理する使命を請け持つ存在。神界()と、人を名乗っておきながら人とは異なる存在、とでも言っておこうか」

 

へー……………………まぁ大体分かった。要は幼女〇記とかで言う存在Xみたいな創造神的な感じでしょ(多分)

 

「僕が寿命で死んだとき、丁度先代の序列1位の神様である神界人が辞任する事になってね。普通なら序列1位の神様は総選挙的なので選ばれるんだけど、今回は僕の1個前の第1位から既に指名が入っていてね」

 

「それがあんた、って訳か」

 

「世界を何度も救いまくってる功績もあったから選ばれたらしい。まぁ、他にも下らない理由はあるんだけどね。でまぁ、面白そう(・・・・)だったしで序列1位の神様に就任した訳よ」

 

「……………………何か、理由が面白そうって軽過ぎねーか?緊張とかしないわけ?日本で言えば総理大臣になるみたいなもんだぞ」

 

「好奇心が緊張に勝った瞬間的な?そもそも人間だった頃から緊張とか無縁だったからねー。でまぁ、就任したはいいものの……………………大ブーイングの嵐でね。毎日デモばっかよ」

 

あらら。

 

「だったら、逆に見返してやろうと思ってね。色んな事をやって成果を出して行くうちに段々支持してくれる人が増えてきた。そして1年経つ頃には殆どの神界人が僕の事を支持してくれるようになったのさ」

 

盛大に掌返しさせてやったって訳か。やっぱこの神様はすげーや。人間だった頃から格が違い過ぎたんだろうな。

 

「じゃあ、さっき言ってたアンチの話に戻ろうか。僕はさっき殆どの神界人が支持してくれるようになったと言った。だが、あくまで殆ど(・・)。少しばかりとは言え今でも僕の事を気に食わない神界人は一定数いる。そう言ったアンチはよく嫌がらせしてくるんだ」

 

「例えば?」

 

「不意討ちとか爆殺とかその他色々」

 

もう嫌がらせってレベルじゃねぇぞ、おい。アンチって言うか殺し屋みたいなもんじゃねーか!

 

「なんつーか、壮絶な人生…………いや、(じん)生を送ってるな…………」

 

(じん)生とは上手く言ったもんだね。まぁ、取り敢えず退屈はしないねー」

 

嫌がらせ(?)を楽しんでやがる……………この神様頭おかC。

 

「誰の頭がおかCって?」

 

「いひゃいひゃい」

 

バレてたし!すみません、嘘です!だから頬を引っ張らないで(懇願)

 

「………………まぁ、そんな訳でだ。今回の魔力反応も恐らくそのアンチの仕業だ。何でこの世界で魔力を行使してるのかは知らんが、厄介事を起こす前にその芽を摘み取ってくるとしようって訳さ。野放しにして君や三玖ちゃん達に何かあってからでは遅いからね。そうなったら色々と報告書とか作らなきゃいけなくなって、それはめんどいから避けたい」

 

「途中まで良い感じにカッコ良かったのに最後の一言で色々と台無しなんですがねぇ………………」

 

「……………………さてと。じゃ、僕はそろそろ行くよ。取り敢えずこちら側の問題に君達を絶対に巻き込まない事は約束するから、風呂だけにさっぱり忘れて旅行を楽しみたまえよ。では、アディオス!」

 

そう言い残すと神様は温泉のお湯に波紋の1つも立たせずに一瞬で目の前から消えた。

 

「……………………俺も出るか」

 

出たらお風呂上がりの王道を征く、コーヒー牛乳を飲みますかねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっんっんっんっ…………………… FOO!↑ 気持ちい~!(爽快)」

 

コーヒー牛乳(130円)がうますぎィ!この爽快感、悪魔的だっ……………………!

 

「さて、この後はどうすっかな~」

 

卓球台とかあるらしいし、誰か誘って遊ぶのも一興だが……………………

 

「おい火野」

 

「ん?誰かと思えば上杉じゃん。どったの?」

 

「この紙をお前に見せようと思ってな」

 

何々……………………今日の0時に中庭へ?この字は……………………五月っぽいな。

 

「ふーん……………そんなに何か重大なのか?わざわざ深夜に且つ中庭って事はよっぽど誰かに聞かれたくないって内容なんじゃね?」

 

「みたいだな。ま、そういう訳だから忘れるなよ」

 

「おk」

 

ま、取り敢えず余所余所しい理由が聞ける目途が立った所で……………………

 

「上杉、卓球しようぜ」

 

「え?……………いや、俺運動苦手なんだが」

 

「安心しろ、俺も卓球は初心者だしそこまで激しい動きもしないからな。ねっ?」

 

「……………………やれやれ。仕方がないから付き合ってやるよ。だが、やるからには俺が勝つ(火野は俺と違って運動神経抜群だが、まぁ卓球は初心者らしいし俺にも十分勝機があるだろ)」

 

「いいね、そうこなくっちゃ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総悟vs上杉 対戦結果

 

1回戦 11-2

 

2回戦 11-1

 

3回戦 11-0

 

結果:総悟全(圧)勝

 

「…………………………………………お前、絶対卓球やってただろ。絶対プロだろ」

 

「いや、そげなことはないです(ガチ)」

 

「見るからにこれはお兄ちゃんが弱すぎるだけだよー」

 

「ぐはっ!」

 

観戦していたらいはからの言葉が心にクリティカルヒット。そして2度と総悟と卓球はしないと心に誓う上杉であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

AM:0:05

 

「ヤバいヤバイ…………………完全に寝落ちしてたわ…………」

 

星奈さんが寝てるので暇つぶしに電気を付けてアニメとか見るには出来なかったのでボーっとしたたらいつの間にか寝てて気づいたら日付が変わっていた。慌てて部屋を出る俺君。

 

「上杉と五月はもう中庭にいるのかな………………いっそげ~」

 

階段を静かに駆け下りて1階へ。……………………って、受付におじいちゃんがいるやん。無言で全然動いてないし、しかも夜だから若干怖いな……………ちゃんと生きてるよね?幽霊とかじゃないよね?幽霊だったらドラ〇もんの歌を歌いながら逃げるよ?

 

「あっ」

 

「あれ、五月じゃん」

 

中庭の方から五月が。これは……………もう終わってたか………。

 

「あー、すまんな遅刻して。寝落ちしちまってさー。それで結局何だったんだ?」

 

「え、えーっと……………………取り敢えず中庭へ……………」

 

「は?何でもう一度わざわざ中庭へ行く必要何かあるんですか(正論)こ↑こ↓で良いでしょ」

 

「え、えっと………………火野君は私達との関係をどう思っていますか?」

 

関係?

 

「関係……………そりゃ友達でしょ?」

 

「………………」

 

「あと、教師と生徒……………………そうだ、上杉風に言えばパートナーもそうだなー、うん」

 

「いいえ。もう私達はパートナーではありません」

 

「え?……………………まぁ確かに最近は授業とかやってないけど、あくまで教師の春休みって感じでまた近い内にやる予定だからな。5人揃って笑顔で卒業させるのが俺らの目標だからね」

 

「もう結構です。後は私達だけでできそうです。この関係に終止符を打ちましょう」

 

「そっか。私達だけで出来るなら心配はな……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………は?終止符?即ちクビ?

 

「う、嘘やろ………………なななななななな何で急に!?」

 

何を言ってんだこのcv.水瀬い〇り!?思わず五月の肩を掴んで揺らす。動揺していたせいか力加減を間違えて、五月の太腿の裏をぶつけてしまった。

 

「痛っ」

 

「す、すまん!け、けどどうして急に言」

 

言葉は最後まで続かなかった。唐突に視界が回転したかと思えば気づけば天井が映っていた。…………………いや、天井だけじゃない。受付にいたおじいさんも映っていた。背負い投げされたのか?無意識に受け身を取ってたのか痛みは全然ないが。

 

「…………、………」

 

「え?何です?」

 

「……………、…………」

 

「あんだって?」

 

聞き取りづらいのでおじいさんの口元で耳をそば立てた。そして耳に飛び込んできたのが

 

「わしの孫に手を出すな…………………殺すぞ…………………………」

 

「………………………」

 

これ色々ともう………………………分かんねぇな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………てか、孫って事はこの人5人の祖父なの!?

 

to be continued…………




終盤だけ見ていた神様「あー、やっぱ偽五月の正体は□□かぁ……………………さて、早く終わらせてかーえろ」

一体誰なんだ偽五月の正体は……………………まぁ、皆もう今まで見てて分かってたり、既に知ってたりするかもだけどね(意味深)

上の意味深な言葉をどう捉えるかはお任せします。取り敢えずは明かされるまでをお楽しみに。

それと原作がラブコメとはとても思えない新用語、神界人については後々詳しく書きます。

あと、久し振りに登場したフリーダム神様が序列1位になりたての頃の話も案としては浮かんでいますが、これを話にするかはまだ未定。ただ、見たい人が多ければするかも。

そうでもなければ没になるだけです(無慈悲)

そういや『シン・エヴァンゲリオン劇場版』アマプラ配信初日の視聴者数歴代トップになったらしいですね。流石、社会現象を巻き起こしたアニメだ。面構えが違う。

本日も読んでいただきありがとうございました。この次も、サービスサービスぅ!


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スクランブルエッグ Ⅲ

お待たせしました。暫くぶりですが………………………………まぁ、夏休み的なもんです(適当)
後書きに今更ながらFGOの二部6章の感想を載せましょうねー。

あと、誤字報告ありがとうございます。大助かりです。つーか、何で何回も見てるのに気づかないんや、ワイは……………………。

それではどうぞ。


背負い投げされた後、おじいさんは元いた受付の所に戻って行った。起き上がるとそこに五月の姿は無かった。

 

「くそぅ、理由も言わずに一方的に解雇宣告とかふざけんな!(憤怒)万が一、解雇されるにしても、理由位は話してもらうぞ!」

 

さて、どこに行ったのか…………………………あ、2階を小走りする五月を発見!恐らく自分の部屋に戻ってる最中だな。

 

「逃がさんぞー!」

 

階段ダッシュで2階に駆け上がった所で待ち構えていたのは──────

 

「……………………」

 

マルオ氏じゃないですか、やだー!

 

「火野君、ここから先は僕と娘達の部屋しかないが何か用かな?」

 

「……………………」

 

うぅむ…………………………ここで素直に五月に用事があると言っても通してもらえなさそうだな。こんな夜中に娘の部屋に男をいれる父親なんておらんだろうし。俺が父親の立場だったらそんな変態野郎はさっきのお爺ちゃんみたく背負い投げしてやるよ(確固たる意志)

 

「んにゃぴ……………これは部屋を間違えました。ヤバいヤバい。寝ぼけてるってはっきり分かるんですね」

 

「そうかい」

 

「失礼しましたー」

 

ここは戦略的撤退の一択あるのみ(策士?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………………」

 

睡眠時間約6時間で起床。睡眠時間が少ないし、唐突に解雇宣言させられるし、背負い投げをされるし、不機嫌が全力全開である。

 

「おはようございます、総悟様…………………………おや?どうかされましたか?」

 

「いえ、何でもないですよー☆」

 

表情筋さんが仕事して笑顔を浮かべさせる。……………………今更だけど、星奈さんと同じ部屋で泊まってます。でも、変な気は当然起きないし起こしませんよー、残念でした。

 

その時、スマホに着信が入って震える。

 

「誰だァ………………あ、五月だ………………五月……………………五月…………………あ!!」

 

急いで電話に出る。

 

「おい、五月ィ!ワイは激おこぷんぷん丸やぞ!7時間前のアレはどういうことや!」

 

『それはこちらの台詞です。どうして中庭に来て下さらなかったのですか』

 

………………んんんっ?何か話が嚙み合ってないぞ?

 

「…………あっ(閃き)…………まさか、あの五月は五月じゃなかったのか……………………?」

 

『え?どういう事ですか?』

 

「……………五月さんよ、ちょっと一度会って色々と整理したいから話せないか?」

 

『……………そうしたいのは山々なのですが、監視の目があって抜け出せそうにありません…………』

 

ふむ……………………あっ、そうだ。

 

「五月、それなら良い場所があるぜ」

 

『え?良い場所と言うのは…………?』

 

「それはね……………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

混浴風呂にて1人ボーっとしている俺氏。まだ6時半だから上杉は寝てる可能性があったし、流石に部屋に行って叩き起こすのはらいはちゃんや勇也さんにも迷惑が掛かるので後で話すことにした。

 

………おっと、女子風呂と扉が開く音が。じゃけん、打ち合わせした通り合言葉の確認をしましょうねー。

 

「レ〇の英雄は」

 

「せ、世界一です……………」

 

よし、本物やな(大確信)

 

「あ、あの……………いくらなんでも温泉で仕切り越しと言うのは……………」

 

「じゃあこっちに来るか?」

 

「来ません!それにそう言う意味ではないです!」

 

分かってる。冗談だからマジで来たら逆に困る。

 

「けどまぁ、ここならマルオさんも来ないべ」

 

「まったく、あなたという人は…………………相変わらず無茶苦茶ですね」

 

柵越しでも五月が苦笑してるのが目に見えるぜ。

 

「さてと、本題を話そうか。今日の深夜12時、俺はフロントで五月に会った。そこで何か良く分からんけどもうパートナーじゃないとかで家庭教師の解雇宣言された」

 

「……………えぇ!?」

 

「その反応を見る限り、あれは偽五月って事でおk?」

 

「は、はい。私はそんな事は言ってません」

 

ふぅむ………………つー訳で、五月を除くあの4人の内誰かが俺を拒絶している訳だ。

 

「何か五月は心当たりない?…………そういや何でわざわざ五月に変装してたんだろう?」

 

「あ、それには理由がありまして。実は──────」

 

五月が話した事を要約すると、四葉がアクセサリーとしてあのリボンを付けると俺を背負い投げしたお爺ちゃんが寝込んでしまったらしい。何でも、そっくりの五つ子だったのに四葉がリボンを付けて違う恰好をした事で仲が悪くなったのではないかと心配したそうで。それでお爺ちゃんの前では五月の姿で統一してるんだとか。個人的には寝込むほどではない気がするけどなぁ。四葉もお洒落に目覚めただけなんじゃ──────

 

「(──────いや、それはどうだろうか?)」

 

四葉が、と言うのが少し引っ掛かる。普段の明るい性格に反して暗い過去を持つ四葉だから、お洒落ではなくて何か違う意味があるんじゃないかと勘繰ってしまう。例えば──────他の姉妹に間違えられない為(・・・・・・・・・・・・・)、とか?

 

「…………………火野君?」

 

「ああ、すまん。それで、心当たりはない?」

 

「心当たりと言われても………………春休みに入ってから一花も、二乃も、三玖も、四葉もどこか変なのです」

 

ふーむ、何かお悩みでもあるのだろうか……………………?

 

「昨日はそれを尋ねるために2人を呼びました。上杉君は何も知りませんでしたが、火野君は何かご存じありませんか?」

 

「(ご存じでは)ないです……………………皆がお悩みなのも気になるけど、優先順位としては偽五月を何とかしないとなー。このままじゃマジで家庭教師解消になりかねん。

偽五月の真意を探らなければ(使命感)」

 

お悩み相談は後回しにしよう。

 

「そ、そうですよね。しかし、私も偽五月に共感できる所もあります」

 

「………………と、言いますと?」

 

「私達はもうパートナーではありません。偽五月の真意は分かりませんが、もう利害一致だけのパートナーではないということです。数々の試験勉強の日々、花火大会、林間学校、年末年始など多くの時間を共有してきたのです。それはもはや──────友達でしょう?」

 

「……………………ふっ。そうだな。まぁ、俺は結構前からそう思ってたけど」

 

……………………とは言え、最初は俺らを嫌っていた五月が『友達』と口に出して言ってくれるのは普通に嬉しい。……………………しょうがないな。

 

「優先順位をつけるのはやめだやめだ。お悩み相談も偽五月問題も両方まとめてやってやろうじゃないの!」

 

「……………………」

 

……………………アレ?無反応?聞こえてなかったのか?テイク2しようかと思ったその時──────

 

バンッ!(迫真)

 

「ありあとうございます!」

 

「エッッッッッッッッッッッッ!?」

 

どういう風の吹き回しか五月が混浴の方へ来た。タオル越しとはいえ発育が良い体が否応なく目に焼き付けれ、そのまま俺が入っている温泉に入って近くに来る。

 

「ななななななな、何でこっちに来たんですぅ!?」

 

「混浴なので問題ないです!」

 

「あっ、そっかぁ(納得)……………………じゃなくて!俺いるけど!?」

 

「何を言ってるんですか、友達ならこれ位当たり前……………………ではありませんね……………」

 

急に冷静になったのか、距離を取ってからの背を向けて恥ずかしそうにしやがる。急に暴走しやがって……………………。

 

「すみません……………忘れてもらえると助かります……………」

 

「(それはどう頑張っても無理です)」

 

もうばっちり記憶に焼き付けれちまったよ。良くも悪くも、その他色んな意味で忘れられない思い出になったわ。

 

「……………………あっ、そうだ。後で五月にやってもらいたい事があるんだが」

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=====================

 

「お父さん、少し話があるのですが」

 

「なんだい?(何と言うことだ、五月君の方から来てくれるなんて……………………何か嬉しい…………)」

 

五月がマルオの気を引いている間に総悟と上杉は監視の目を突破する。

 

よーし、ここを突破すれば容易いものだな

 

そうだな。………………それにしても、まさか昨日そんな事が起こってたとはな

 

なお、上杉に五月の姿をした誰かが家庭教師解消宣言をした事と皆が何かお悩みがある事は説明済みである。

 

ちなみにだが、クビになるとしたらお前だけで俺はクビにならないのか?

 

それは知らんが……………………まさか、『俺がクビにならないからそれで良いし、適当にやろ☆』とか思ってんじゃねぇだろうなぁ?そうならぶっ〇すぞ(マジトーン)

 

そんな事は思ってないからマジトーンで怖いこと言うな!

 

そうか、それなら良いんだ

 

仮にクビにならないとしても、総悟が抜けてしまうと今まで2人で見ていた5人の面倒を1人で見ることになって負担が増え、自分の学業にも悪影響が出かねないので上杉とってもこの件は看過できないものである。

 

そうこうしてる内に5人の泊っている部屋の前に到着である。

 

「よし、行くぞ。朝飯の前にさっさと終わらせてやる!」

 

「あ、ちょっとノック位しろっての!」

 

知り合いだからか、遠慮を一ミリもせずノックも無しに上杉は扉を開けてずかずかと部屋に入る。そして主室の襖を開けると──────上杉は固まった。五月が4人いたからである。

 

「な、何だこれは……………………五月の森、だと…………………?」

 

「(…………うーわ、マジかー。部屋の中でも常時変装してるのかぁ……………………確かによくよく考えれば急にお爺ちゃんが来た時困るから当然と言えば当然か…………………)」

 

「2人とも、ノックくらいしてよー」

 

「びっくりさせちゃった?」

 

「な、何で五月に変装してるんだ…………………?」

 

『どうせ部屋の中では普段通りだろうから五月の変装してるのを説明するのは後で良いか、めんどいし(サボり)』、と総悟が説明していなかったので上杉は現在進行形で困惑中。

 

「あ、これはですね」

 

「待って。丁度良かったわ、あんたらにはもう一度試してみたかったのよ。覚えているかしら?林間学校の移動中にやった五つ子ゲーム」

 

「あー、何か隠した指から誰かを当てるゲームだっけ。親指が一花姉さんでー、的な。そういやそんな事もありましたねぇ…………………………………………え。まさか……………?」

 

勘の良い総悟は何を言おうとしてるのかを察した。

 

「五つ子ゲーム第2弾よ。私達が誰だか当ててみなさいよ」

 

to be continued………………




本日もこんな駄文を読んでいただきありがとうございました。次回は早めに投稿したい(目標)







妖精円卓領域の簡単なかんそー

個人的には2部の中ではトップクラスに面白かったし、良くも悪くも心が抉られました。やっぱ~きのこの~シナリオを…………最高やな(語彙力低下)

一部を除いて妖精は〇ね(直球)って、マジで頭の中で過ったよ。聖剣作るのサボってんじゃねーぞ(ガチギレ)
特にモルガンがリンチにされてる時は死ぬほどムカついたし悲しすぎたよ、ほんと。つーか、6章は悲しいことが多すぎるよ。ガレスとか、パーヴァン・シーとかさぁ…………………………悲しくなるからこれ以上は言わないけど、プレイした人ならもう分かるべ?

ただ、カッコよくて興奮する所もありましたね。キャスニキの登場とか、コヤンが助けてくれて所とか、アヴァロンでの村正とか、汎人類史のランスロットとガヴェインが召喚された時とか、アルトリア・アヴァロンが登場した時とか、メリュジーヌが最後の最後にカルデアを助けてくれた時とかね。

前にもどこかで書きましたが、作者はメリュジーヌが大好きなので最後の所は『うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』ってなりました。

理由:不要
目的:ブリテンを脅かす、その全ての討伐

…………………………惚れた(即落ち)

まぁ、そんな所ですかね。6.5章でもメリュジーヌが出たらいいなーって思わずにはいられない。考察されているとは言え、メリュジーヌがマスターを恋人扱いしてくる理由も明言されてなかった気がするし。あと、オベロンの第3臨の会話で『あの見苦しいビースト(コヤン)がアルビオンを取り込んだらどうなるのかなー』的な事を言ってたじゃないですか?その答えが6.5章で明かされたり…………………………………しないかなぁ?取り敢えず予想しておきます。

6.5章が配信されて当たったら感想で褒めてください。

あと、関係ないけどプリヤ見てきました。面白かったし、続編やるらしいですね。たぶんかなり先になるんでしようけど。楽しみやわぁー。


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スクランブルエッグ Ⅳ

前回のおまけ

総悟がマルオの所から去って5分後。

マルオ「………………………」

上杉「ったく、火野の奴………………結局来なかったじゃ…………………あ」

マルオ「…………………何か用かい、上杉君」

上杉「い、いや、その…………………と、トイレですよ、トイレ!そ、それでは…………………」

マルオ「……………………………」

上杉「…………………(無言でUターン)…………………………あの!」

マルオ「?」

上杉「昨年の事なんですが……………子供の分際で生意気な事を言ってすいませんでしたァ!(土下座)」

マルオ「!?……………取り敢えず顔は上げてくれ」

上杉「あの時、あなたがあいつらの事に無関心なんだと早とちりしてしまって………………………本当に無関心なら家庭教師も雇ったりもしないだろうし、今回みたく旅行にも一緒に来たりもしないのに…………………本当にすみませんでしたァ!!」

マルオ「わ、分かったから取り敢えず顔は上げてくれ、いや本当に(切実)……………………………ゴホン。謝罪は素直に受け取っておこう。だが、1つ断っておくと家庭教師の再雇用は話は別だ。君と火野君は先の試験で娘達を赤点回避させてくれた功績があるとは言え、君達の存在が僕達家族にとって有益かどうかは未だ決めあぐねているのが現状だからね」

上杉「……………………で、ですよねー(まぁ、そりゃそうだよなぁ…………………そんなにすんなりいくとは思ってなかったけど)」

マルオ「さぁ、夜も遅い。早く寝なさい」

上杉「で、では失礼します……………(めっちゃ緊張したぁ…………こんな事は2度とやりたくねぇ………)」

マルオ「(めっちゃビックリしたぁ………………急に土下座なんてするから………………………)」

ちなみに、スクランブルエッグ編は7話構成です。もう既に大方は仕上がってるので後はチェックとか微調整的な事をしたりして投稿します。


1人目

 

Q.自己紹介してください。

 

A.「自己紹介ですね!中野五月、5月5日生まれ。17歳のA型です。」

 

 

 

2人目

 

Q.好きなことを教えてください。

 

A. 「好きなこと、ですか…………………やはり、美味しいものを食べている時は幸せですね」

 

 

 

3人目

 

Q. (ピ──────────)を教えてください。

 

「なっ!?そんなことは答えられません!上杉君!女の子にそんな質問をしてはいけませんよ!」

 

 

 

4人目

 

「………………………………」

 

「くそぉ、全然わかんねぇ!」

 

「わけわかめ………(激寒)」

 

見分けるために別室で3人の五月と1人ずつ面談したのだが、違いが分からな過ぎた。現在4人目だが、分からなさすぎる状況は特に変わらない。

 

「はー…………………アニメの感想サイト見るか」

 

「おい、逃げるな!気持ちは分かるが現実逃避するな!」

 

「へへへ、昨日の展開は衝撃的だったぜ……………感想サイトも賑やかに違いねぇや…………何せ主人公の」

 

「わ、わー!それ以上はダメです!まだ見ていないんですからネタバレしないでくださ………………………………………あ!」

 

失言に気付いたみたいだがもう時既にお寿司、じゃなくて遅し。5人の中でアニメ好きなのは1人しかいねぇ!

 

「「お前四葉だろ!」」

 

上杉とハモった。まさかこんな意外なところから見分けてしまうとは……………………まぁ、今回は見分けたというよりも相手(四葉)がアニメのネタバレされたくないからバラしたと言うか自爆したみたいなもんか。

 

「な、なんの事かわかりませーん」

 

「四葉、ここから誤魔化すのは流石にもう無理があるぞ…………………そう言えば、何で全員五月の格好をしてるんだ?」

 

「…………えっと、話すと少し長いんですが……………」

 

上杉の質問に対して五月の変装を諦めた四葉が俺がさっき五月から聞いた事と同内容の事を話した。さっき聞いた内容なので俺は昨日のアニメの事を考えながら聞き流してたのだが────────

 

「────なので、この旅行が決まってからちゃんと変装できるか不安で不安で……………」

 

────────この言葉を聞いた俺は目を光らせた。そういや昨日緊張するなー、とか言ってたな。なるほど、四葉の悩み(うまく変装出来るか)は分かった。悩みを聞く限りでは、四葉が偽五月の可能性は低そうだな……………………となると、答えは三択か。一体誰なのやら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、一通り話してみて分かったのですか?」

 

「正直言って、1人(四葉)自爆した以外は無理だったわ。五つ子ってこんなに似てるもんなんですかねぇ(疑問)」

 

「実はお前ら研究所産まれのクローンじゃないのか?世界を支配するために将棋星人によって作られた超人クローンの試作1から5号機みたいな。そして幻の6人目が」

 

「どうした急に」

 

急に上杉がSF作品とかでよくありがちな事を語り出したその時だった、部屋の扉がノックされる音がしたのは。その音を聞いた総悟は思考するよりも反射的に4人が入っているこたつの中へ滑り込む。同じ事を考えていた上杉は先を越され、焦りながら辺りを見回して近くにあった押し入れに急いで入り込んだ。

 

彼らが隠れ終えて数秒後、入ってきたのは彼女等のお爺ちゃんであった。

 

「あ、お爺ちゃん」

 

「おはよー」

 

「…………、…………」

 

「え?なぁに?」

 

「なんか心配してくれてるみたい」

 

「安心して!今でも仲良しだから」

 

「朝ごはん教えに来てくれたの?」

 

「大広間だよね」

 

「( あっぶね、あっぶねー…………見つかるところだったぁ……………しかし、隠れた先には可愛い女の子の綺麗な足があると言う状況…………………まるでラブコメ漫画でありそうな状況じゃないか(歓喜) )」

 

彼女等の会話を聞きながら内心喜々としている総悟。彼も健全な男の子と言うわけである。

 

「じゃあ大広間に行こうか」

 

「そうだ、今日は海に行こー」

 

サービスタイム終了のお知らせである。5人は部屋を出て行ってしまった。それを見計らって総悟はこたつの中から、上杉は押し入れから出てくる。

 

「危ないところだった……………………父親かと思ったがまさかの爺さんだったな。バレなくてなりよりだったな、火野」

 

「おっ、そうだな(欲望に忠実に従って正直に言えば、もうちょっと見ていたかったなー……………)」

 

適当に返事しながら内心でそんな事を考えているのは誰も知らない。そして2人も部屋から出ると待ち構えている人物が。

 

「ちょっといいですか?」

 

「…………………………四葉?」

 

「ブー」

 

さっそく上杉が外した。

 

「ヒントです」

 

そう言うと五月の格好をした五月は首元にいつも掛けている何かを触っているような素振りを見せる。

 

「二乃!」

 

「………」

 

期待を裏切らない(?)この男(上杉)は見事に外す────────────────が。もう一方は違った。

 

「…………………三玖?」

 

「!…………………正解」

 

五月の格好をした三玖は嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

「マジかよ…………何で分かったんだ?」

 

「今のヒントがヘッドホンを表してると勘づいてな。…………………だが、一目で見分けるのは無理だったわ。はぁ………………」

 

「そんなに落ち込まないで、ソウゴ。ヒントありで分かっただけでもかなりの進歩だと思う」

 

「ま、まぁ俺もあと少しあれば分かっ「それは絶対に嘘」うぐっ………………」

 

三玖にばっさり切り捨てられる上杉。正体も分かった所で三玖に総悟は質問する。

 

「三玖達もスーパーのペアチケットに当たったから来たのか?」

 

「うん。フータローと応募した懸賞で間違ってマンションの住所を書いちゃって。当たってたからかお父さんから家族旅行の連絡が来て、それでみんなで行くことになったんだ」

 

「へー。そう言えば、あれはペアチケットだから2人まででしょ?残りの3人分はお父さん負担なのかな?」

 

「訊いてはないけど、そうだと思う。それにしても、ソウゴも当たってたんだね」

 

「俺じゃなくて父さんが、な。予定がツムツムだから譲ってもらったんだ」

 

「そうだったんだ。…………………ところで…………………」

 

三玖は後ろを振り向く。総悟も振り返ると上杉が三玖の後ろ姿をがん見していた。

 

「君はさっきから三玖の後ろ姿を汚らわしい目でみつめて何をしてるのかなぁ、変態終末期君?」

 

「誤解される呼び名はやめろ!汚らわしい目でなんか見てないわ!俺はただ色々と考えてただけだ!」

 

「えぇー、ほんとにござるかぁ?」

 

と、そこへ。

 

「…………、…………」

 

「あ、お爺ちゃん」

 

「何て言ってるんだ?」

 

「あー、近くに寄らないと聞こえんぞ」

 

総悟に言われて上杉はお爺ちゃんの近くによって耳を立てる。

 

見たぞ、貴様………………いや、変態終末期とやら。孫を汚らわしい目で見ていたな?………………殺すぞ?

 

「(怖っ!火野みたいな事をマジトーンで言いやがる!つーか、俺の名前が変態終末期になってるじゃねーか!)いや、見てませんって!それと俺の名は変態終末期じゃなくて上杉風太郎ですから!見てないよな、三玖!なっ、なっ!?(必死)」

 

「三玖よ、何もされておらんか?」

 

「………………う、うん」

 

上杉の必死そうな表情もあってなのかはさておき、お爺ちゃんの問いに三玖は肯定する。まぁ、実際に何かされてはいないから嘘ではないが。それを聞いたお爺ちゃんは何かブツブツ言いながら去っていく。

 

「お、おっかねぇ……………………あんな怖い爺さんの為に変装してお前ら偉いな」

 

「怖い?普通に凄く優しいよ。私は好き」

 

「怖いのはお前が変態終末期と言う人類悪だからだ…………………あれ?そういやさっき…………………」

 

『俺は変態終末期でも人類悪でもねぇ!』と言う上杉の声を耳から耳へと受け流しながら総悟はある事に気が付いた。

 

「悪い三玖、先に行っててくれ!行くぞ、上杉ィ!」

 

「えっ?ソウゴ?」

 

「お、おい!?」

 

突然総悟は上杉を連れてお爺ちゃんが去って行った方へ小走りで向かう。

 

「ど、どうしたんだよ急に」

 

「まだ気づいてないのか?あの爺さん、五月の格好をしていても三玖ってちゃんと分かってたんだぞ」

 

「!」

 

漸く上杉も総悟の言いたいことを理解した。そして2人はお爺ちゃんに追いつく。

 

「お爺さん………いや、お師匠様!」

 

「?」

 

「お願いがあります!俺と火野に教えてください!あいつらの見分け方を!」

 

「………………………………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二乃から誘いがあった時点で何となく要件は分かった気がした。これが俗に言う女の勘と言う奴だろうか。

 

「はぁ~……………相変わらず気持ちいわね、この温泉。昔と変わらないわね」

 

「………………そうだね」

 

二乃と2人きり、と思っていたのだが既に入浴している知り合いがいた。

 

「それにしても、意外だったわ。てっきり2人だけかと思っていたら星奈さんまでいるなんてね」

 

そう、私達の住んでいるアパートのご近所さんである星奈さんだった。

 

「実は朝風呂とか結構好きなタイプでして。2人もそうですか?」

 

「特に好きとか嫌いとかでは無いんですけど、ちょっと2人きりで一花話が聞きたくなって」

 

「なるほど。それでここを選んだ、と言う訳ですか。では、私はおいとました方が良さそうですね」

 

「あ、でも折角だから星奈さんにもちょっと聞いて欲しいんです。一花は告白の経験とか多そうだし、人生経験豊富な大人の女の人の視点からの意見も聞きたくて」

 

「………経験豊富な大人の女と言う訳でもないですが…………………まぁ、構いませんよ。それで聞いて欲しい事と言うのは?」

 

「──────好きな人が出来たんです」

 

ああ、やっぱり。今その話はやめて欲しかった。だって、否応なく(ソウゴ君)の事が頭に浮かんじゃうから─────────。

 

「出会いは最悪だったんです。でも、気付いちゃいました。あいつが好きなんだって」

 

「ふむふむ」

 

「相手は……………………こればっかりは言えないわ!秘密!」

 

「(私はもう知ってるけどね…………………)」

 

「(出会いは最悪、と聞くと何となく分かる気が……………)」

 

そのまま二乃の話は続く。

 

「それでつい先日そいつに告白しちゃったんです」

 

「そうですか……………………えっ、告白したんですか!?………………今更言ってもしょうがないですが、何か色々と飛ばしてません?告白までにはデートとかあるのが一般的な気がしますけども………………」

 

「まぁ、それが正解だったのかは私も分からないですけど……………………そこで2人に聞きたいのが、告白されたら多少は意識したりするものなのかどうかって事で」

 

───────もし仮に。私がフータロー君の事を好きになってたらどう答えるのだろうか?もしくは二乃がソウゴ君を好きになってたら?

 

『私の経験では、だけど…………………ごめん、そういうことは無かったかな』

 

───────そんな答えが浮かんだ。二乃の足を引っ張る、セーブするような答えが。真っ先にそんな答えが浮かぶ辺り、自分に嫌気が差した。

 

「それはまぁ………………告白なんてされたら多くの人が個人差はあれど意識せざるを得なくなると思いますよ」

 

「一花はどう思う?」

 

「……………………ちょっと良く分からないや、ごめん」

 

私は上の空でそう返した。

 

「それにしても、出会いは最悪だったんでしたっけ?よくそこから告白してしまうほど好きになりましたね。あ、別に嫌味とかではないですよ」

 

「…………………あいつ(フ―君)は私の大切なものを壊す存在として現れました。だけどあの夜、王子様みたいなあいつ(フー君)別人(キンタロー君)と思い込んだまま好きになっちゃって。そして理解しちゃ………………………いや、多分理解はしていたけれど納得が出来ていなかったんだわ。私が拒絶していたのは彼の役割であって彼自身ではなかったことを。王子様が彼だと気付いてからは、もう歯止めが利きませんでした」

 

二乃はそう言って少し恥ずかしそうに笑う。

 

「……………………一つ思った事があるのですが。すこし辛口になりますが宜しいですか?」

 

「えぇ、全然」

 

「彼が好きと言うのは否定しませんが……………少しばかり都合が良い、とは思いました」

 

…………………口には出さなかったけど、それは私も思っていた。

 

「…………………そうですよねー。こればかりは自分でも引いてるけれども……………………ま、諦めるつもりもなんて更々無いですけどね」

 

「えっ…………………な、何で?」

 

思わず二乃にそう尋ねてしまう。

 

「何でって…………だってこれは私の恋だもの。私が幸せにならなくちゃ意味ないわ」

 

「!」

 

「ふふっ………………そうですね。いかに都合が良かろうと諦める理由にはならない。それが恋愛というものでしょう」

 

「ですよね!」

 

同意を得た二乃は嬉しそうだ。そして星奈さんは私が少し気になっていた事を代わりに質問する。

 

「ちなみに、その同じ人の事を好きな人がいたら二乃さんはどうします?」

 

「そりゃ蹴落としてでも叶えますよ、勿論」

 

「ふふっ、強気な二乃さんらしい。そう言うと思っていました」

 

「(と、止まらない!愛の暴走機関車だ!!)」

 

この子ってこんなに積極的ではなかった筈。そう言えば、恋は人を狂わせるってネットか何かの記事で見たきがするけど、こんなに変わるものなのだろうか…………………。

 

「よし…………………私、決めたわ。たぶんあいつは告白された事で少なくとも多少は意識してる筈。そこからさらに追い打ちを掛けて、もっと意識させてやるわ」

 

「な、何をするつもりなの………………?」

 

「手を………ううん、抱きしめて………………………いや……………キスするわ

 

えっ!?

 

「き、キスとは大きく出ましたね……………」

 

「前にどこかで恋愛は大胆にグイグイ攻めたものが勝つって読んだことがあ…………………でも、冷静に考えるといきなりして下手くそだったら嫌われるかもしれないわね」

 

いや、問題はたぶんそこじゃな………………って、何で二乃はこっちを見て…………………

 

……………………まさか。

 

「あんた、キスシーンとかもうしたでしょ!」

 

「ち、ちょっと何をするつもりなの!?」

 

「決まってるでしょ、練習よ練習!姉妹同士だし減るもんじゃないから問題ないわね!」

 

「問題大ありだよ!姉妹同士だからダメなのー!」

 

「ふむ、これは百合好きが見たら喜びそうな光景ですね。そう言えば総悟様も『女の子同士の禁断の愛、即ち百合ってのも嫌いじゃない』とか前に言っていたような…………………」

 

「星奈さんものほほんと見てないで二乃を止めてぇー!」

 

この後、星奈さんにも止めてもらって何とか二乃にファーストキスを捧げる事態は免れた。

 

「一花、気が変わったらいつでも言いなさいよ」

 

「(うん、絶対言わないよ………)……………すみません、星奈さん。ご迷惑をお掛けしました」

 

「いえ、ご迷惑と言うほどでもないですので気にしなくて良いですよ…………………さて、私もそろそろ上がりますか」

 

「二乃、私たちもこの後海に行くからそろそろ上がろうか」

 

「そうね。………………どうやってアタックして行こうかしら

 

……………………二乃、そして三玖は本気でフータロー君やソウゴ君に恋をしている。私みたいに人の恋路の邪魔をするような卑怯な奴とは違う。

 

ああ、二乃と話さなければ良かった。だって、自分がいかに卑怯で嫌な奴なのかを再めて認識させられちゃったから───────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひゃっ!やめてくださいよぉ」

 

「ししし」

 

「まだ冷たい…………」

 

一花と二乃を除く3人は海に来ていた。

 

「あ、一花と二乃も来たよ」

 

「お爺ちゃんは?」

 

「あそこでフータローとソウゴと釣りしてる」

 

「いつの間に仲良く………………………あ、火野君がふて寝しはじめました」

 

「ソウゴは何があったの………」

 

「ふーん、あいつ(フー君)も来てるんだ」

 

一方、総悟と上杉はと言うと

 

「今来たのが一花と二乃」

 

「えっ」

 

「あれが三玖」

 

「えっ」

 

「その隣が四葉」

 

「(全然わからん…………!)」

 

上杉は内心そう嘆く。ふて寝している総悟も無反応だが内心では『なるほど、分からん(キッパリ)』状態である。三玖を見抜いたとは言えヒントありでの話だったので、やはり彼でも一目で見抜くにはまだ無理がある。今更だが、星奈は勇也とらいはと共に別行動中である。

 

と、そこへ五つ子達もやって来る。

 

「わぁ、沢山釣れてますね!」

 

「殆どは爺さんが釣って、俺が釣ったのはこの中の2匹位だ」

 

「…………………ところで、さっきから何故火野君は地面にふて寝してるんですか?」

 

五月の疑問に上杉はただ一言、『火野の隣にある釣れた物を見てみろ』とだけ言う。5人は隣を見てみると、一瞬で察した。

 

何故なら隣には長靴やサバの缶詰、ジュースの空き缶などが山積みになっていたからだ。

 

「何故かこいつはゴミしか釣れなくてな」

 

「そりゃ確かにふて寝もするわね………………」

 

珍しく二乃にも同情される始末。すると、総悟が口を開く。

 

「俺、決めたよ。今度海にゴミを捨ててるクソどもがいたら逆にそいつらを海の藻屑(ゴミ)(意味深)にしてやるって」

 

「物騒な事を言わないでください、火野君!」

 

総悟が藻屑にしない事を祈りつつ、閑話休題(それはさておき)

 

「これは何て魚ですか?」

 

「クロダイ」

 

「これは?」

 

「アイナメ」

 

「これは?」

 

「メバル」

 

物知りなお爺ちゃんである。これには総悟も『はえー、すっごい物知り………(感心)』と呟く。ちなみに、彼は放課後て〇ぼう日誌とかで釣り系アニメをかじっているので魚の事も少しは分かったり分からなかったりする。

 

「じゃあ、これは?」

 

「こいつは、キスだな」

 

「!」

 

二乃が反応。上杉に向かって歩き出すのを見て『こんな所で仕掛けるの!?』と一花は驚く───────が。

 

「……………………今じゃないわね。五月の姿じゃ効果が見込めないかも」

 

二乃らしく感じて思わず一花は苦笑い。

 

「(はぁ…………………同じ姉妹なのにどうしてこうも違うんだろう…………………痛っ!)」

 

足の痛みを感じて思わずバランスを崩してしまう。転びそうになる私を誰かの手が支える。

 

「よっ、と……………………でぇじょうぶか?」

 

「(そ、ソウゴ君……………!)」

 

支えたのは何故か某サ〇ヤ人みたいな事を言う総悟だった。

 

「ご、ごめん。ちょっとよろけちゃって。昨日足を痛めちゃっ」

 

言い終わるよりも先に目をギラリと光らせた総悟が旅館のバスの陰に彼女を連れ込み、そして壁ドン。

 

「足を痛めたと言ったな?つー事は昨日のはユーだろ?」

 

「え、っと………………」

 

『あれ、ソウゴはどこに行ったんだろう………………?』

 

だがその時、消えた総悟を探しに三玖が近くにやって来た。咄嗟に一花はさらに奥の方へ総悟を引っ張って座り込む。偶然の成り行きか総悟は胸にうずくまっている状態で抱きしめられている。

 

ご、ごめん!静かにしてて!

 

な、何を…………!?マジで誰………?

 

「(……………そっか。今の私が誰か分かってないんだ………………)」

 

『手を………ううん、抱きしめて………………………いや。キスするわ

 

ふと、唐突に一花の脳裏に温泉での二乃の言葉が過った。

 

「(…………………キスしたら、私の事も意識してくれるのかな…………キスしたら、変装していても一花だって気付いてくれるのかな…………いや、もう面倒な事を考えなくて良いか………………)」

 

思考を止めた彼女の頭は目の前にいる好きな人物に対しての愛おしさや自分だけのものにしたいと言う所有欲が支配していた。一花は総悟の顔をそっと上げてじっと見つめる。

 

「え?え?」

 

いまいち状況を呑み込めてない総悟。そんな彼に顔を近づけようとしたその時。

 

「そこに誰かいるの?」

 

さらに足音が近づき、一花はハッと我に返ったかと思えば次の瞬間、反射的に手が動き───────

 

「……………………は?(困惑)」

 

───────バシャ―ン、と総悟は海に投げ出されていた。突然抱きしめられたかと思えば見つめられ、そして海へポイされた総悟からしたら『わけがわからないよ(キュゥ〇え)』となったのは言うまでもない。

 

「あれ、一花?そんな所で何してるの?」

 

「あはは、何でもないよー。ささっ、お爺ちゃんのところに戻ろ~(あー、もう私は何やってるの!ソウゴ君、ほんっとにごめん!)」

 

心の中で謝りながら一花は三玖の背中を押して離れて行った…………。

 

to be continued…………………




※本作の二乃は足にペディキュアをしてない設定になっていますのでご了承下さい。

saoがIMAX、だと!?行くしかねぇ!!

最近YouTubeで連邦に反省を促すダンスを1日1回は必ず見てます。何だろうね、あの中毒性は。いつかこの小説でも踊る日が来るのかどうかは……………知らん(未定)

本日も読んでいただきありがとうございました。今年はガキ使ないのかぁ……………ぴえん。


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スクランブルエッグ Ⅴ

偽五月の正体が判明。たぶん明文するよりも皆は早く気付くね。

あっ、そうだ(唐突)ウマ娘をハーフアニバーサリーから始めました。今んとこ楽しくやってるが、1周年まで飽きずにやってるかなー…………あ、ちなみにワイはミスターシービーが欲しいんでガチャに来るまで石は一定の数まで温存します。はよ実装カモン。つーか、シービー来るまではウマ娘やってますね、たぶん。

ちなみに、ミスターシービーを好きになったのはハーメるんのとある小説が大きく影響してます。何の小説なのかはワイのお気に入り小説を見て、どうぞ。

そしてURA運営に反省を促すダンスを踊ろう!

……………えー、それでは本編をどうぞ。今日は後書きが結構長めです。


「────────つー訳で、何故か偽五月に突き落とされて酷い目にあった」

 

「そ、そんな事があったのですか…………」

 

数時間後の旅館の温泉にて。朝と同じような感じで総悟は五月を招集した。

 

「余談だが、あの後人懐っこくて親切なイルカが背中に乗せて砂浜まで運んでくれたわ。突き落としてくれたお陰で貴重な体験が出来たのは何とも複雑ですけどねぇー。ちなみに、今の俺の中では親切なイルカの方が偽五月よりも好感度が高いでーす」

 

「そ、そうですか………………まぁ、それも致し方無いかもしれませんね………………」

 

混浴の向こう側の女湯にいる五月は苦笑いする。

 

「取り敢えず、偽五月が判明したら上杉を死なない程度でしばくわ」

 

「そうですか………………って、何故上杉君の方を!?」

 

「俺がゴミを釣っている中、魚を二匹も釣ったのがムカつくからでーす……………………まぁ、冗談はさておきだ」

 

漸く総悟は本題に入る。

 

「一つ分かったことがあってだな。偽五月は足を負傷してる。具体的には(もも)の辺りか」

 

「足を、ですか?」

 

「ああ。そういや言ってなかったが昨日、クビ宣告をされた俺が動揺して問い詰めようと揺らした時にぶつけさせちゃって……………………もしかして、今日突き落としたのはその逆襲か?」

 

「さぁ、それは分かりませんが…………………」

 

「……………確認したいんだが、足を負傷してる姉妹を知ってたりする?」

 

それを聞いた五月は少し呆れた様子を見せる。

 

「それを私に聞きますか……………………火野君は自分で解決する気はないんですか?」

 

「あるわ!そりゃ自分の問題なんだから自分で解決したいわ!…………………………けど、この問題を先送りにしたら俺は気になって春休みを楽しめないし?それだけじゃなくて今後の事とか含めて春休み中もカテキョやる事とか色々と考えると先延ばしにしないで旅行中とか早めに解決しといた方が良いでしょ?だからもう振り構ってられなんねー、って感じ」

 

「まぁ、早急に解決する方が良いのは当然と言えば当然ですが……………………………残念ですが、私は足を負傷している姉妹は知りませんのでお力にはなれません。恐らくその素振りを見せないようにしているのでしょう」

 

「……………………やっぱ自分で解決しろって事なのかねー…………………取り敢えず頑張るかぁー………………」

 

「えぇ、それでこそ火野君です。私も陰ながら応援していますので、頑張ってください。見分け方は前に四葉も言っていましたが、覚えていますか?」

 

「えーっと、何だっけ……………ああ、思い出した。確か────────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜の11時。部屋にてマルオの前に正座させられている五月が2人。その奥で爆睡している四葉が1人。

 

「一花君、五月君。僕の娘は双子だっただろうか」

 

何を隠そう、三玖と二乃が行方不明だった。

 

「こんな夜にいなくなるとはね。家出癖がついてしまったんだろうか。行方は聞いていないのかい?」

 

「二乃は着替えてたから旅館の外かも……………」

 

「三玖は『眠れないからちょっと旅館内を歩いてくる』と言ったきりで……」

 

「………………となると、優先すべきは二乃君の方だね。捜してくるから大人しくしてなさい(特に失言した覚えもないし僕が原因と言う訳でもない……………筈だけど無性に不安だなぁ…………原因が僕でないのなら良いんだけど…………いや、そんな事よりも夜道で何かに足を引っかけて転んだりして怪我とかしてないと良いんだけど………)」

 

内心で色々と心配しているマルオは部屋を出て行った。

 

「三玖は兎も角、二乃はどこに行ったんでしょう?」

 

「…………………さぁ、どこに行ったんだろうね」

 

嘘である。一花は二乃の行先を知っている。海に遊びに行った旅館のバスでの帰り道、二乃の独り言を一花は聞いていた。

 

『やっぱりお爺ちゃんの前だと色々と制限されるわね…………………旅行も明日までだってのに2人きりになれるチャンスが全然ないわ…………………こうなったら、夜になったら旅館を抜け出して会いに行くしかないわね。場所はあの誓いの鐘が良いわね。後で連絡とかしておこっと…………………』

 

『……………………』

 

総悟を連想してしまう事からこれ以上恋愛話に付き合いたくなかったので、一花は何も言わなかった。

 

「一花、ただ待ってるだけなのもなんなので温泉にでも行きません?(そう言えば、今日だけで温泉に何回も入ってるような……………………まぁ、そんな事は良いでしょう)」

 

「………………うん、良いよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上杉と廊下を歩いているとお爺ちゃんを発見。上杉が早速声を掛ける。

 

「なぁ、爺さん。いい加減教えてくださいよ。あいつらを見分けるコツとかないんですか?」

 

「……………………」

 

相変わらずお爺さんは無言。今日一日中付き合っていたが見分け方については口を開いてなかった。…………………ああ、そっか。上杉は知らないんだっけ。俺もついさっきまで忘れていた5人の見分け方。そういやあの日(・・・)は入院中だったのを忘れてたわ。

 

「──────

 

「………………………」

 

「…………………愛?」

 

その一言でお爺ちゃんは足を止めた。ついでに上杉も。

 

「前に四葉が言ってました。お母さんからの教えで、『愛があれば見分けられる』と──────────この教えはあなたが発端なんじゃないですか?」

 

根拠はない。ただ、何となく。直感的にそんな気がした。

 

「…………………いかにも。その通りだ」

 

「ま、マジか………………火野は知ってたのか?」

 

「ついさっき思い出してな。言うのを忘れてて悪かったな。お前が入院中の時の事でな。だから当然知らない事を忘れてたわ」

 

「そういう事だったのか……………(愛ねぇ……………トンでも理論だな…………………)」

 

内心でそんな事を考えている上杉と総悟の方を向いてお爺ちゃんは口を開く。

 

「長い月日を経て、相手の仕草、声、ふとした癖を知ることそれはもはや愛と呼べる──────孫を見分けると言ったな。それは一朝一夕では出来ん」

 

「「…………………」」

 

「お主達に…………………孫たちと向き合う覚悟はあるのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===================================

 

もうすぐ日付が変わろうとしているが、俺は布団の中ではなく中庭の長椅子に座っていた。

 

「……………………旅行も明日で最終日、か……………………明日で全てにケリをつける……………………つけれると、良いんだけどなぁ……………………」

 

先ほど、五月から連絡があった。『偽五月と会って欲しい』、と。集合場所と時間も記されていた。一体何があったのかは知らないが、明日会ったらやることはもう決めている。偽五月の正体を見破る。五つ子ゲームのリベンジだ。

 

やることは単純かつ明解…………………………………………なんだけど。

 

「不安だぁ……………出来るのかなぁ、俺に………………」

 

うん、不安しかない。三玖の変装だってヒントありで漸く分かったのに、果たしてノーヒントで見破れるのかどうか。あのお爺ちゃんも一朝一夕じゃないと言ってたし。外した時どうなるのかとか考えたくないのに考えちまう。嫌だー。逃げて―……………………けど。

 

「逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ……………って、おふざけじゃなくてマジで言葉通りの状況なんだよなぁ………はぁ……………」

 

と、その時である。

 

「…………………ソウゴ?」

 

声がしたのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中庭でソウゴが悩んでいる所から時間は少し巻き戻る。一花と五月は脱衣所で浴衣を脱いでいた。

 

「ソウゴ君達、大変そうだね」

 

「一花達も何も家族旅行と言うタイミングで彼らを試さなくても良いじゃないですか…………彼らもだいぶ苦戦しているようですし」

 

「…………仕方ないよ。たった半年の付き合いで私達を見分けようなんて無理な話だったんだよ」

 

何処か暗い雰囲気を匂わせながら一花はそう呟く。

 

「………………そうですね。このまま彼ら………………………………………」

 

言葉の途中で五月は黙り込んでしまう。どうかしたのかと一花が五月の方を振り向くと、素早い動きで一花の手を浴衣ごと掴む。

 

「どうしたの、五月ちゃん?」

 

五月の視線は一花の足、具体的には()に向いていた。

 

「………その足の傷………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………一花、だったんですね。偽五月の正体は」

 

それを聞いた一花は五月から背を向ける。

 

「………………。そっか……………………五月ちゃんは偽五月の正体を暴くヒントを知ってたんだね」

 

そう呟く一花がどんな表情を浮かべていたのかは、誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

声のした方に首を向ける。そこにいたのはまさかの三玖だった。

 

「三玖…………………どったの、こんな夜に?」

 

「まぁ、眠れないから暇つぶしにここに来たって感じ。ソウゴこそ、どうしたの?」

 

「……………………………まぁ、俺も三玖と似たようなものかな。寝れないから暇つぶしと言うか」

 

「…………………それだけじゃないよね?」

 

「!?」

 

予想外の言葉過ぎて俺は驚いた表情を三玖に晒してしまう。当の三玖は少し呆れたように言う。

 

「今日一日、いつものソウゴと様子が違っていた感じがしたし、それにソウゴとはもう半年以上の付き合いだよ?何か悩んでいる事くらい何となくだけど分かるよ。……………………隣、座っても良い?」

 

「え………………………あ、うん(…………………………何か……………………ええわぁ……………(語彙力喪失))」

 

「(や、やばい……………自分から座っておいてなんだけど、ソウゴの顔がすぐそこに…………うぅ…………)」

 

──────互いにこんな事を思ってたとはこの時は知る由もない。

 

「すっー……………はぁー……………………ソウゴ」

 

「…………………………」

 

深呼吸をして、気持ちを落ち着かせてから発せられる三玖の真剣味を含んだ言葉に俺も思わず表情を引き締める。

 

「もし良かったら…………………何を悩んでいるのか私に話してくれない?そしたら私もソウゴと一緒に悩んで、解決策を考えてあげられるかもしれないし。ほら、三人寄れば文殊の知恵って言葉もあるでしょ?…………………まぁ、ここには二人しかいないけど」

 

「…………………………」

 

「今まで私はソウゴに助けられてばっかりだったし、たぶんこれからもソウゴには助けられてばっかりになると思う。私はソウゴみたいに頭は良くないけど……………………それでも、何か悩んでいるなら今度は私がソウゴを助けたい。力になってあげたい」

 

「…………………………」

 

………………………あぁ、本当に痛感する。三玖は成長した。立派になった。たぶん出会いたての時の三玖ならこんな事を言わなかっただろう。

 

「………………ふふっ」

 

「?」

 

「ごめんごめん。何て言うか……………………三玖がめっちゃ頼れる妹みたいに見えてさ」

 

「………むぅ……………ソウゴとは同い年なのに妹扱いなのは少し納得がいかないような……………………」

 

不満そうに頬を膨らませる三玖が可愛すぎて尊い…………………。

 

「ふー………………………ねぇ、三玖」

 

「?」

 

「君達5人を楽に見分けられるようになるコツってあるの?」

 

「コツ……………………いや、ちょっと待って。総悟はその事をずっと真剣に悩んでたの?」

 

どうやら三玖にとっては予想外だったらしい。

 

「そうだよ。…………色々とあって真剣に悩まにゃあかんからね」

 

「…………………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一花……………………何故あなたが火野君との関係を絶とうとしてるのですか?あなたは姉妹の中でも最初期の頃から協力的だった筈ですが……………………」

 

「……………………………」

 

一花は五月に背を向けて暫く黙っていた。五月も何も言わずに黙って一花の言葉を待っていると、1分程経って一花は口を開く。

 

「………………理由はね、ソウゴ君の事が好きだから」

 

「………なるほど、そう言う事だったんですか…………………………………って、ええっ!?」

 

ビックリ仰天した五月は背を向けていた一花の肩を掴んでグルんと自分の方を向かせる。

 

「ど、どうしたの五月ちゃん!?急に大きな声を出して………………?」

 

「当然でしょうっ!これがどうして大きな声を出さずにいられますか!一花って火野君のことが好きなのですか!?友人として好きとかではなくて、恋愛的と言うか恋人的な感じで!?」

 

「…………………う、うん」

 

動揺してか早口で尋ねる五月に戸惑いつつも一花は肯定する。

 

「で、でも、いいのでしょうか……………私達は仮にも生徒と教師(・・・・・)なのに……………それに、よく分からないのですが。教師と生徒の関係を切る事と火野君の事が好きな事はどのような関係が…………?」

 

「…………教師と生徒の関係があったら私とソウゴ君の関係はずっと変わらない。多分、ずっと友達止まり………………私はそれが嫌だった。だから、私はこの関係に終止符を打たなくちゃいけないと思っていた。そしたら昨日の夜、偶然ソウゴ君に会ったから言った………………けど、そう言った時にソウゴ君が悲しそうな表情を浮かべたように見えたんだ……………」

 

「………………」

 

「それが間違っていた事を悟った時にはもう取り返しがつかなかった。それでソウゴ君がお爺ちゃんに投げられた時に逃げちゃって…………そのままどうして良いか分からなくて。今に至るまでずっと逃げてきてたんだ…………五月ちゃんに気付かれなかったら今後もずっと逃げてたんだろうね、私」

 

自虐的な笑みを浮かべながらに呟く一花。五月は恋と言うものがまだ分からない。だが、目の前の長女が恋を起因として苦しんでいると言う事だけは痛々しい程に分かった。こんなにも苦しんでいる自分たちのお姉さんを見るのは初めてだった。

 

「…………………一花の気持ちは分かりました。その上でお願いです。最後に火野君に会ってあげてください」

 

「!…………………それは………」

 

「…………火野君と会うのに躊躇するのは分かります。ですが、このまま逃げ続けてもいられませんよ……………それに、敢えて厳しい事を言わせてもらいますが─────────これは一花が蒔いた種です。ですから、私としてはしっかりとそのケジメはつけてきて欲しいです」

 

五月の言いたいことを一言で表すと『逃げるな』─────────一花にもそれは分かっていた。

 

正直、一花は行きたくなかった。いつもと違って総悟と会うのが、会って何を言われるのかが無性に怖くて仕方がなかった。

 

………………………けれども、五月が言った通りこのまま逃げてはいられない。逃げ切ることは不可能。故に彼女には彼と向き合う以外に選択肢はなかった─────────

 

「……………………うん、分かったよ」

 

────────────たとえ、どのような結末を迎えたとしても。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三玖は何か思案するかのように黙り込んでいた。が、それもほんの一瞬ですぐに口を開く。

 

「……………ソウゴは前に四葉が言っていた私達を見分ける方法を覚えてる?」

 

「……………『愛』だよね?」

 

俺の言葉に三玖は頷く。

 

「正直、コツみたいな近道的なのはたぶん無い。『愛があれば見分けられる』──────これに尽きると思う」

 

「………………………………そっか」

 

……………………これは、楽とか近道的なことをしてはいけないんだ。それをしてしまえば、真正面から向き合う事から逃げてると言っても過言ではない。偽五月の正体を、そして皆を見分けるにはそのような事をしてはいけない。そう理解した。…………………やれやれ、危うく俺は真正面から向き合うことを放棄する所だった。家庭教師としても、そして5人の友人としても猛省案件だな。

 

俺は長椅子から立ち上がる。

 

「…………………ありがとう、三玖。答えは得たよ」

 

「……そうなの?大したことは言ってない気がするけど…………」

 

「いいや。大したことあったよ」

 

「…………………そっか。うん、それなら良かった」

 

そう断言した俺の言葉を聞いて三玖はそう言って笑みを浮かべた。うん、可愛い。

 

「あ、そうだ。ちょうどいいタイミングだから聞くけどさ…………………三玖も何か悩みとかないの?いや、あるでしょ?」

 

「私?いや、特に悩みはないけど……………………何で?」

 

「五月が春休みに入ってから皆様子が変だからって、俺に言ってたからな………………………マジで無いの?」

 

「うん(春休み中はソウゴと何処にお出かけに行ったりするかを考えてずっとそわそわしてたけど………………………それで五月に何か悩みがあるって思われたのかな?)」

 

「そ、そうなんだ………………………それなら良かった………ふわぁ~……………何か眠くなってきたし、そろそろ戻ろうか」

 

「うん、そうだね……………私も眠いし…………………」

 

不安は当然残ってる。けど、覚悟は決まった。明日、俺がすべきことは偽五月と正面から向き合う。ただ、それだけだ。

 

to be continued………………




部屋への帰り道

総悟「ふわぁー………………あれぇ、二乃じゃん。それにお父さんも」

マルオ「君にお父さんと呼ばれる筋合いはないよ」

総悟「ふあぁー………………もしや外をぶらぶらしてた系?」

マルオ「(聞いてないし…………)」

二乃「…………ま、そんな所よ。……………ところであんた、フー君は今どうしてるか知らない?」

総悟「(フー君……………………あぁ、上杉の事かぁ……………)あいつはたぶんもう寝てるぞ」

二乃「…………そう(…………ってことは、あいつは携帯に送ったメッセージを見てないって事かしら?)」

マルオ「二乃、立ち話もそれくらいにして早く部屋に戻って寝なさい」

二乃「………はーい」

総悟「ワイもさっさと戻って寝よ……………」


さて、ここから偽五月こと一花姉さんの心情を少し解説。この頃の姉さんは三玖の恋路の邪魔しか出来ない自分への嫌悪感で病んでると言うか少し心が壊れていた感じなんですよね、演技で誰にもそれを悟らせませんでしたが。

教師と生徒の関係がある限り進展はないと薄々考えていた一花は偶々遭遇した総悟に対して原作での三玖の行動を取って、見事に後悔。取った行動の是非は兎も角、三玖の恋路の邪魔をしなかったのは個人的には評価できると思いますね。

普通の精神状態ならそんな事をしても総悟を困惑させたり悲しませたりするだけと分かるのに、上述の状態だったのでそこまで思考が回りませんでした。愛は人を狂わせるんやな………(しみじみ)

間違いに気付いた時はもう時既に遅し。身バレして嫌われる事を恐れて総悟がお爺ちゃんに背負い投げされたら隙に逃げ出してしまう。そして、五月に見破られるまで内心ずっと正体がバレて嫌われるかもしれないと怯えていました。なお、キスしたら正体分かってくれるかなとか考えてキスしようとすると言う、矛盾してる行動取ったのは、彼の事が好き過ぎる余り思考が一時的に正常じゃ無くなった為です。

やっぱ愛は人を狂わせるんやな……(2度目)

ただ、五月も言っていた通りこのままでもいられません。逃げてもいられるのも限度があります。仮に旅行中は逃げきったとしても総悟は偽五月の正体の追求を続けていつかはバレるでしょう。

遅かれ早かれ総悟と向き合う以外に選択肢はない。五月の言うことはごもっともで、一花もそれは内心分かっていたがそれが出来ませんでした。五月に言われて漸く向き合うのですが、別に勇気を出したとかじゃなくて、もうどうにでもなれと、半ば自暴自棄気味です。最後の最後まで渋ってたしね。

総悟も総悟で向き合う覚悟を決めたようで、果たして次回はどうなることやら。

こんな駄文をここまで読んでいただき誠にありがとうございました。


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スクランブルエッグ Ⅵ

いやー………………キングヘイローとライスシャワーの育成が超絶むずかった。勘弁してくれよ…………。

あと、テイオーの春シニアとか三冠とかも。マックイーンは楽だったのになー。

そういや、次回のガチャのピックアップキャラがカフェと言う噂があるらしいですね。自分もその可能性が高いと思ってます。

………………で、シービーはいつ来るんや?天上分までのストックは貯まっとるんだが。はよ実装カモン。

では、どうぞ。


翌日の朝

 

星奈には大事な用事があるとだけ断って、総悟は指定されていた大広間へ。指定された時間よりも前なので、中にはまだ誰もいなかった。

 

「………………ふーっ………………………」

 

リラックスする為に深呼吸する総悟。扉に背を向けて畳に座り込む。

 

「(『愛』、か…………………………少なくとも、俺は皆と友()があると思ってる。その友愛をもってして見抜けるかどうか……………………いや、『どうか』とかじゃなくて絶対見抜いてみせる。それが俺の覚悟だからな)」

 

静かに総悟は少女を待つ──────────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

 

「…………………………………」

 

何の変哲もないただの扉。だが、今はありもしない重圧を感じる。

 

「(さっき星奈さんが1人で廊下を歩いているのを見た…………………………だから多分、ソウゴ君はもう中にいる…………………………)」

 

──────────逃げたいなぁ。

 

この場に及んで、おもわずそんな考えが過ってしまう。自分で種を蒔いておいたくせに。

 

「(…………………でも)」

 

でも、だ。私には選択肢は無い。

 

五月ちゃんも言っていた。このまま逃げ続けてもいられない。そしてケジメをつけろ、と。その通りだ。これで拒絶されたとしても、それは私のせいだ。受け入れるほかない…………………………………………………ない、のだが…………………………………。

 

「…………………っ!」

 

拒絶されたら、なんて考えると悪寒が走る。胸が締め付けられる。

 

……………拒絶を受け入れられる気がしない。いや、そもそも拒絶されたくない。絶対に嫌だ。だって、私は──────

 

ブーッ、ブーッ!

 

『うおっ!?………………スマホのアラームを切り忘れてたか。ビックリさせやがって………………………』

 

中からしたスマホの振動音と声で現実に引き戻された。スマホで時刻を見ると、丁度約束の時間になっていた。

 

「(拒絶されるとかされないとか…………もうどうでもいいや……………)」

 

もうこれ以上何も考えたくなかった。だから私は考えるのをやめて、自棄になった私は扉を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=================

 

扉が開く音がして総悟は立ち上がり、そして目の前にいる五月の姿をした誰かと向き合う。

 

「えー……………ユーは初日の夜、俺と話した五月ってことでいいんだよね」

 

「はい。……………………私は」

 

正体を明かそうとする偽五月――――――いや、一花。だが、それを総悟は手で制して止める。

 

「五つ子ゲームを結局俺は正解できなかった。だだ、生憎俺は負けず嫌いでね……………………だから、色々と話を聞く前に先ずは正体を暴く。リベンジだ」

 

「……!」

 

思いもよらぬ宣言に内心驚く一花の事などいざ知らず、総悟は続ける。

 

「先ず…………四葉は君らのお爺ちゃんの前で上手く変装できるかどうかで悩んでいた。その悩みはこの旅行が終われば無事に解消する…………………だから正体は四葉ではない。そうだろ?」

 

「………………正解です」

 

そして次に―――――――――

 

「…………………レ〇の英雄は?」

 

「………え?れ、レ〇の英雄…………?」

 

困惑した反応を見て総悟はホッとする。

 

「………………反応的にもやっぱり本物の五月でもないな。まぁ昨日、本人も言ってたから今のは蛇足だったかもしれないが」

 

「………えぇ、私が本物の五月である可能性はないです。それで残りは3人に絞られた訳ですが………………」

 

「…………………………」

 

一花は3人と言うが、実際は総悟の中では既に2択だった。三玖が偽五月であると言う可能性は昨日の中庭での会話の中でほぼゼロに近いと確信していたので候補から外していた。

 

目の前の少女は一花か、二乃か。

 

「(一花って言われれば一花に見えるし、二乃って言われれば二乃に見える…………くそっ…………)」

 

二択に詰まる総悟。それは一花にも伝わっていた。

 

「(………………………私は何を期待してるんだろう…………昨日の五つ子ゲームでも見分けられてなかったのに…………………………)」

 

一花は詰まる総悟を見て心の中でそう呟く。

 

「(どうする………………何か話せばその内ボロが出て見抜けるかもしれな…………………………って、そんなやり方じゃ見抜いたなんて言えないだろうがッ…………!)」

 

目の前の少女を真剣な目で見つめる総悟。だが、非情にも答えが浮かぶ事は無かった。

 

「………………分からないんですね」

 

「っ…………………!」

 

数分の沈黙が続いた後に、ついに目の前の偽五月(一花)に内心を代弁されてしまう。総悟は悔しそうに歯がゆい表情を浮かべる。否定したい。そんなことない、違うと言いたい。

 

だが、言えなかった。理由は至極簡単、その通りだったからだ。

 

「仕方ないですよ。たった半年で私たちを見抜こうなんて誰であろうと無理がありますから…………(クラスも一緒で隣だったから、私がソウゴ君と1番距離が縮まってると思ってた。だからもしかしたら見抜いてくれるんじゃないかって………………けど、それは妄言だ。私が勝手に期待を押し付けてただけだった…………………もう全部話して、拒絶でも何でもされてしまおう……………………)」

 

「!」

 

悔しそうにする総悟を気遣ってか、もしくは内心の暗い感情を総悟に見せまいと思ってか、微笑を無理やり浮かべながら偽五月(一花)はそう言った。

 

そして、自分の正体を明かそうとする。私は、と切り出そうと改めて口を開く────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=========================

 

「(……そうか……………………………)」

 

……………知っている。俺は知っている、この笑みを。見え透いた、俺が嫌いな自分の本心を誤魔化す作り笑い(・・・・)を。

 

どこで見たんだっけ……………あぁ、そうだ。去年の秋祭りでだったな。彼女(・・)が俺を先生として認めてくれた日。

 

「(まったく、俺って奴は………悲しませちゃったのかな………)」

 

少しばかり、悔しさと申し訳なさが浮かぶ。あの誤魔化し笑いをさせてしまった事に、そしてその笑みが決めてになってしまった事が不甲斐ない。

 

だが、いつまでも悔しさやらに浸っているつもりもない。答えは得た。なら、答え合わせだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

====================

 

「…………笑って自分の本心を押し殺す─────俺は現実でもアニメとかでもそう言う奴を見てると少しイラッとするぜ、ってあの時(花火大会)に言ったんだっけ」

 

…………………え?

 

その言葉に心臓がドキっとする。無意識の内に俯いていた顔を上げる。私の目に申し訳なさそうに見える表情を浮かべたソウゴ君が映った。

 

「……………すまなかったな。俺のせいで誤魔化し笑いをさせて。まったく、俺も目が衰えたのかねぇ。1年間同じクラスでずっと隣だったのに、すぐに分かんないなんてさ」

 

あぁ……………あぁっ……………………………。

 

「ふーっ…………………………………お前の正体は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一花だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……当たり……………………!」

 

「タ゛ッ゛ク゛ル゛⁉」

 

ウイッグが落ちる。

 

涙が零れるよりも先に彼に抱きついていた。そのままソウゴ君を畳に押し倒してしまう。

 

「あ…………アメフト選手かっ!急にタックルしやがってぇ………………」

 

「…ぐすっ………うっ………うぅぅ……………」

 

「…………おいおい、泣くなって。女の子は笑顔が1番似合うって、それ1番言われてるから。よすよす」

 

そう言いながらソウゴ君の胸で声を押し殺しながら泣く私の頭を撫でてくれる。何とも言えない心地よさを感じた。

 

「………ぐすっ……………………どうして、分かったの?」

 

「…………………情けないんだが、一花姉さんが仕方ないですよって言いながら笑ってただろ?その笑みが秋祭りの時の誤魔化し笑いと重なってな。…………悪い、がっかりした?」

 

私はソウゴ君の胸から離れて座り込むと首を横に振る。

 

「ううん。切っ掛けとかは正直どうでも良い。ただ、私だって見抜いてくれた…………………それだけで充分」

 

「そう………………つーか、見抜いてもらえたら嬉しいものなん?」

 

それは─────

 

「勿論、嬉しいよ」

 

『愛』があれば見分けられる、だからね……………………まぁ、もしかしたらソウゴ君のそれは『友愛』かもしれないけど────────それでも良い。少なくとも、今は(・・)

 

「………………そうだ、それよりも……………ソウゴ君、本当にごめんね。旅行中に変なことに気を遣わせちゃって。………………………怒ってる?」

 

「……………そもそもの話、何で俺をクビにしようと思ったん?つーか、今もクビになって欲しいんか?」

 

「ううん、今はそう思ってないよ。それで……………理由は「おk、分かった」………………まだ何も言ってないけど…………………訊かないの?」

 

恐る恐る聞いてみた。

 

「…………………………………何か言いづらそうな感じがしたし、無理に聞こうとは思わんだけ。興味ないね(ク〇ウド)…………………逆に訊いて欲しいんか?」

 

…………………………私の事を気遣ってくれたんだ。あぁ、ほんとに……………………こう言う所もなんだろうなぁ。

 

「…………………ううん。じゃあ、今はお預けって事でお願い。いつか話すよ」

 

「まぁ、話そうが話さまいがどっちでも良いけど、そう言う事にしといてやっか。しょうがねぇな(寛大)…………………………あぁ、ちなみに安心しろ。別に怒ってないよ………………少なくともこの件ではね(・・・・・・・・・・・)

 

…………………………あぁ、やっぱり。

 

改めて思った。私、ソウゴ君が好きなんだ。恋をしていた。前からずっと。だから拒絶されたくなかった。そりゃそうだ、当然だ。

 

……………………ずっと今が続けば良いと思ってた。この一番心地良い空間が変わって欲しくなかった。

 

けど、本当は。

 

……………………誰にも取られたくなかったんだ

 

「?」

 

………………今思えば、初めからそんな事分かってたんだと思う。けど、お姉さんとしての立場や彼に恋する三玖の姿が本心をさらけ出す事を躊躇していた。

 

けど、それもついさっきまでの事。

 

『ま、諦めるつもりもなんて更々無いですけどね』

 

『これは私の恋だもの。私が幸せにならなくちゃ意味ないわ』

 

………今なら二乃が言っていた事が分かる気がする。確かにその通りだ。

 

『ちなみに、その同じ人の事を好きな人がいたら二乃さんはどうします?』

 

『そりゃ蹴落としてでも叶えますよ、勿論』

 

…………………………うん。三玖に応援すると言っておいて悪いって気持ちはある。けど、それでも私は三玖にとっての恋のライバル(・・・・・・)になる。

 

「いま何か言った?」

 

「ううん、何でもないよ。ただの独り言」

 

「なら良いけどさ………………………まぁ、一花姉さんに限った事じゃないけど、言いたい事があるならガツンと真正面(・・・)から言ってきて良いんだからね。…………………ぶつからなきゃ伝わらないことだってあるよ。例えば、自分がどれくらい真剣なのか、とかね

 

「!」

 

………………うん、そうだよね。言いたいことは真正面からぶつからないと駄目だ。こそこそと誰かの足を引っ張ったりするんじゃなくて。それに多分、そんなことをしても無意味な気がする。

 

今の私のままでは駄目だ。少しずつでも良いから、変わっていこう────────彼の隣に立ちたいなら。振り向かせたいなら。

 

「……………………ソウゴ君、とっても良い事言うね。今の名言っぽかったよ」

 

「ぽいとかじゃなくて名言だよ。まぁ、俺の言葉じゃないんだけどねー。………………………さて、一段落付いたら腹減ったな。ほら、食堂行こうぜ」

 

「……………うん!」

 

差し出された手を取って立ち上がると部屋を後にするのだった。入る前と違って晴れやかな気持ちで。

 

「ねぇ、ソウゴ君」

 

「?」

 

「私を見つけてくれて、ありがとう」

 

「…………………ん」

 

to be continued……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまK

 

 

「…………………あっ、そうだ(唐突)結局、昨日俺を海から落としたのって一花姉さんだったん?」

 

「え?あー…………うん。2人きりなのを見られたくなくて、咄嗟に…………………ごめんね?」

 

「…………………………………」

 

……………………あれ?

 

「あのー………………もしかして怒ってる?」

 

「ん?いやいやー、全然怒ってないから安心しろって。ヘーキヘーキ。それよりも一花姉さん!」

 

何だろう………………………無性に嫌な予感がするのは気のせいだろうか……………………。

 

「近いうちに、一花姉さん宛に段ボール2箱分の追加の春休みの宿題が着払いで届くと思うけどよろしくねー(暗黒微笑)」

 

やっぱり!

 

「ま、待って!今月の家計的に着払いだけは………………………いや、そうじゃなくて!春休みも仕事が入ってるから追加自体も頼むから勘弁してよ~!」

 

「仕事とかそんなの知らん!(無慈悲)一花姉さんが突き落としたお陰でイルカに乗れるとか言う貴重な体験をさせてもらったとは言え、俺にゴミしか釣れさせないと言うとんでもない大罪を犯したんだから、これくらいの罰は当たり前ダルルォ!?(八つ当たり)」

 

「いや、ゴミしか釣れなかったのは絶対私のせいじゃないよね!?」

 

この後、説得して何とか着払いと段ボール一箱分の追加は免れた

 

※追加が無いとは言っていない




はい、つーわけで恋のスマ○ラに一花姉さん参戦!
もしくは三玖に挑戦者が現れましたとでも言えば良いのだろうか。

次でスクランブルエッグ編は終了。そしたら二乃の幕間の物語やって、その後は1話か2話オリジナルの話をやって3年生編に突入じゃい!!

このスクランブルエッグ編の実質ヒロインだった一花姉さん。自分への嫌悪感と総悟が好き過ぎるあまりにやらかしますが、それでも最後はちゃんと謝ってクビも撤回してケジメをつけたに加えて、『愛』を以て総悟に見抜かれて嬉しかったのは言うまでもないです。ここからの一花姉さんは原作のとは大きく異なります。総悟が引用したSAOのユウキの名言も実は大きな役割を果たします。

どんな方向へ舵を取っていくのかは、今後のお楽しみで。

本日も読んでいただきサンキューベリーマッチョです。

…………………で、シービー実装はまだ?


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スクランブルエッグ Ⅶ

おひさです。言っておきますが、別にウマ娘やってたから遅くなったとかではないです。忙しいんです。

そういや今日からSAOの映画でしたっけ。最速上映で見た人とかいるのかね?まぁ、良いや。作者は明日行くので感想欄でネタバレとかするなよ、フリとかじゃなくて絶対だかんな!

それでは、スクランブルエッグ編最終回どうぞ。


日付は一日前に遡る。

 

「それじゃあ、早く寝なさい」

 

確保された二乃が部屋に戻り、少し前に部屋に戻っていた三玖、そして一花や五月、四葉の3人がすやすや寝ているのを確認したマルオは部屋から出て行った。

 

「(まさかパパに捕まるなんてね………………ついてないわ。にしても、フー君はメッセージを見てなかったのかしら?)」

 

誰にも頼らず上杉と会おうとした二乃。少し前に上杉の携帯にメッセージを送っておいたのだが、残念ながら会いに来たのは上杉ではなくマルオであった。上杉の携帯の電源が入ってないのを二乃は知らない。

 

「(はぁ………………………旅行中はこれまでね。大したアプローチの一つも出来なかったわ。けど、一花と星奈さんに相談して色々とスッキリ出来たのは良かったわ。………………………覚悟してなさいよ、フー君。絶対に………………振り向かせるから!)」

 

そう宣言して二乃は眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

30分後

 

「(………………………相変わらずいい湯だった)」

 

二乃を部屋に届けた後、マルオは1人で貸し切り状態の温泉に浸かっていた。そして今、温泉から上がった所である。

 

「(それにしても、二乃君はこんな夜に一体何をしに外に出かけていたのだろうか?……………………そう言えば、さっき火野君に上杉君の事を聞いていたが、まさか…………………いや、流石に考えすぎだろうか?)」

 

脳内でブツブツ呟きながら脱衣所から出るマルオ。男湯の暖簾をくぐると、同じタイミングでに2つ隣の女湯の暖簾をくぐって出てくる人物が。何気なくその人物に目を向けたマルオの心の中にビックリマークが乱立する。

 

「………………………おや」

 

その人物は星奈であった。容貌は違えども、やはりかつての奥さんである零奈と面影をマルオは感じてしまう。

 

「あなたは…………………マルオさんでしたか。確か会うのは初めてですよね?私は白水 星奈と申します」

 

「……………………ど、どうも(やはり気のせいではない……………否応なく零奈さんの面影を感じる……………!)」

 

マルオは動揺しつつも、何とか返事を返して会釈する。

 

「それにしても、春だというのに今日は少し冷えますね」

 

「………………………そ、そうですね…………ははは(棒読み)」

 

緊張とか動揺で不自然すぎる迫真の棒読みを披露してしまう。この失態に脳内で頭を抱えているマルオ。そんなマルオの心情を知ってか知らずかさておき、星奈はさて、と切り出す。

 

「マルオさん。少し聞きたいことがあるのですが……………………………私の事をよく見てきていましたね?」

 

「!」

 

「……………やはりそのようですね」

 

何も言ってないのだが、顔に出てたのか星奈は確信したように呟く。

 

「その………………………私に何か御用ですか?何か話したい事がある、とか?」

 

マルオは考える。このまま何も言わなければ何故かこちらをちらちら見てきた怪しい変人と思われ、それを星奈が総悟らに話し、そこから更に総悟が自分の娘たちにも話して伝わってしまう可能性がある。そんなことになっては引かれた娘からはさらに距離を置かれるかもしれない。そんな状況は望まないので、ここは正直に話して誤解を解いたりする必要性がある────────そう結論付けるまで掛かった時間は僅か1.35秒である。

 

………………………尤も。そう言った打算を抜きにしても、純粋な興味から零奈と雰囲気が何処となく似ている星奈と話してみたい気持ちはあったが。

 

周りに誰もいないことを確認すると、マルオは口を開く。

 

「……………似ていたんです、あなたが」

 

「……………誰とですか?」

 

「私の妻です─────もうこの世にはいませんが。それでついつい気になってしまって……………」

 

「!………………………すみません、辛いことを思い出させてしまって」

 

「いえ、謝るべきは僕の方です。不審に思われるような事をして申し訳ありませんでした」

 

そう言ってマルオは頭を深く下げた。

 

「別に怒ってもいませんし、気にしてませんから頭を上げてください。…………そう言う事でしたか。私はそんなに似ているんですか?顔とかそっくりなんですか?」

 

「いえ、そっくりと言うわけではないんですが…………………凛としている雰囲気が何処となく似ています」

 

「そうなんですか……………………あ、立ち話もあれですし、座りませんか?」

 

星奈の提案にマルオは頷くと、2人は近くにあった長椅子に座って話を続ける。

 

「………昨日から少し気になっていたのですが、星奈さんは火野君とはどんな関係なんですか?姉弟(きょうだい)みたいに仲が良さそうでしたが」

 

「私は総悟様の家で働かせてもらっている使用人でして。まぁ、総悟様は実の弟のように思っていますが…………………総悟様と言えば、彼はマルオさんの事を私に時々話していましたね」

 

「…………彼は私の事をなんと?」

 

「………………『悪い人ではないけど、娘と距離を置いたりしてるのは『親』としてはちょっとダメなんじゃないのかなー………………例え血の繋がりがないとしても。親なのは変わりはないんだし』と」

 

「!………………火野君は僕と娘に血の繋がりがない事はどこで知っていたのですか?」

 

「前に五月さんが総悟様に話していたそうで。他にも『上杉との電話での会話を聞く限り、家出問題は『解決したならそれで良し』で『何で家出に至ったか』の『過程』には無関心っぽくて……………確かに結果も大事だけど、過程も同じくらい大事だと思うんですよねー』などと言っていましたね」

 

「…………………………」

 

マルオにとっては少し、いやかなり耳が痛くなる言葉だった。子供の言葉故に認めるのは少し癪だが、それらの発言自体はあながち間違えではないからだ。

 

「人の家庭に口を出したり、会ったばかりでこんな事を言うのは無神経かもしれませんが…………………………私も総悟様概ねに賛同です、特に前者は。前に五月さんが話していた事を総悟様から聞いていますが例え血の繋がりはなくとも、娘と距離を取るのはどうかと私は思いますが」

 

「……………………………」

 

全く以てその通りだった。マルオ自身もこのまま距離を取っているままではいけない事は分かっていた。

 

「………………僕もこのままではいけない事は薄々分かっていた。だから今回、別の思惑(・・・・)もありはしましたが、思いきって家族旅行を提案したんです。今までは僕抜きだったんですが…………………………結局、この旅行でも何も変われなかった。相変わらず娘達から距離を取ってしまう………………しかも、距離を取ってしまう理由が分からない。何度自問自答しても分からないっ……………………!」

 

マルオにしては珍しく感情が高ぶったようで拳を強く握りしめていた。

 

「いや、そもそもとして。娘達を引き取って5年間、今まで変われてこなかったのに急に変わろうだなんて無理な話だったと言う訳か…………………きっと僕はこれからもずっとこのまま「それは違いますよ」……………え?」

 

思わず間の抜けた声を上げるマルオ。そんなマルオを目に据えながら星奈は強い口調で語る。

 

「人は変われますよ。決して諦めようとしなければ、ね」

 

「…………………………………」

 

「何でそう言い切れる、と言う顔をしていますね?……………………私もかつて似たような事で苦しみました。変わったと思っていたのに何も変われてなくて………………………そんな時に私のお父さんが言ってくれたんです。『変わりたいと心の底から願っているなら、人は絶対変われるよ。何故なら人間は己の弱さを受け入れて、それと戦える生き物だからね』と」

 

「!」

 

──────人の限界を勝手に決め付けないでくれませんかね。知ってますか?人間ってのは成長する生き物なんですよ。

 

マルオは数か月前に総悟が自身に言っていた言葉を思い出した。成長する/変われる──────言葉こそ違えど、意味合いやその本質はどちらとも一緒なのだろう。そして当の四葉もテストでかつての自分(・・・・・・)からは変わった/成長した事を証明してみせた。

 

「変わりたくて今回の家族旅行を提案したんでしょう?もし今も変わりたいと思っているなら、例えどれだけ時間が掛かったとしても変われますよ。必ず、きっと──────私がそうだったように」

 

そう言って星奈は笑って見せる。その笑顔も何処か零奈と重なって見えた気がした。

 

「…………あなたのお父さんはいい父親ですね」

 

マルオがそう言うと星奈は遠い目をしながら語る。

 

「………………私のお父さんは命の恩人です。絶望して挫けそうになった私をもう一度立ち上がらせてくれました…………………………お父さんがいなかったら私は今ここにいなかったでしょう。あまり頻繁には会えないですけど、私は大好きですし尊敬しています。そして、私のお母さんも命の恩人ですね。もう既に亡くなってしまっているのですが…………………………お父さんと同じく大好きですし尊敬しています」

 

「………そうですか」

 

「………………さて、長く話し過ぎましたね。そろそろお開きとしましょうか」

 

腕時計で時刻を見てみると、もう日付も変わっていた。

 

「とても有意義な時間でした。………………まぁ、不器用なりにやれるだけあがいてみようと思います」

 

「えぇ、それで良いと思いますよ」

 

こうして大人同士の会話は幕を下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の女子風呂にて、5つ子やらいは、星奈は帰る前にもう一度温泉に入りに来ていた。各々が堪能する中、四葉がらいはに話し掛ける。

 

「らいはちゃん、今日で旅行もおしまいだけど、どうでしたかー?」

 

「うん、すっごく楽しかったよ!昨日はお父さんとたくさん遊びに行って、凄いところにブランコがあったんだー!とっても良い所だったって学校が始まったら友達に自慢するの!」

 

「わぁーっ!やっぱりらいはちゃんは良い子です!戸籍の改ざんと言う犯罪ギリギリの事をしてでも自分の妹にしたいくらいです!」

 

「思いっきり犯罪ですが………………」

 

「ふふっ」

 

とんでもない事を口走る四葉に五月が静かにツッコミを入れ、それを見て星奈は笑う。

 

「そういえば、三玖さんと一花さんはどこにいるの?」

 

「お2人ならそこのサウナですよ。そう言えば、サウナって脂肪が燃焼してダイエットに効果があるそうで。何かの雑誌で読んだ気がします」

 

「五月、入ってきたら?」

 

「なっ!?何を言っているんですか二乃!別に私は太ってませんよ!……………多分ですが

 

ちなみにこの後、二乃が体重計に乗せてこようとするのに五月が超全力で抵抗したとかしてないとからしいが、その真偽は闇の中である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、サウナの中では三玖と一花によるサウナの我慢対決が行われていた───────ちなみに、別にどちらとも『サウナ耐久レースやろー!』的な事は言ってないのだが、何となく始まった感じである。

 

「三玖……もう限界なんじゃない……………………?」

 

「まだ平気………………………それよりも一花」

 

サウナの熱のせいか表情がとろけそうだっが、三玖はその表情を引き締める。

 

「何か私に言いたい事でもあるの?」

 

「…………………よく分かったね」

 

「一花からサウナに誘われた時に何かあるんじゃないかって。…………それで、話って?」

 

話を促された一花も表情を引き締めると、三玖に叩きつける─────────恋の宣戦布告を。

 

「私ね……………ソウゴ君が好き」

 

「………………………。そっか」

 

演技などではなく、三玖は大して驚いた様子は見せなかった。一花にとってはそれは少しばかり驚きだった。

 

「………………………もしかして、気づいてた?」

 

「ううん。……………ただ、もしかしてって気は少ししてた。確信はなかったけど」

 

「………そうだったんだね」

 

どうやら確信が無かったから口には出さなかっただけで、内心では半信半疑のような感じだったようだ。

 

「三玖には背中を押すとか応援するとか言っておいて急にこんな事を言い出したのは悪いとは思ってる。ごめん。……………………………けど、私は誰よりもソウゴ君の事が好き。だから、例え妹が恋のライバルだとしても………………………………譲るつもりはないから」

 

そう言って一花は三玖に宣戦布告を叩きつけた。三玖はそれを聞いて数舜黙り込んでいたが、すぐに口を開く。

 

「さっき一花が言っていた事だけど、1つだけ間違ってるよ─────────誰よりもソウゴの事を好きなのは私だから」

 

「!」

 

「前にも言ったけど、私は一花を待たない。だって」

 

「早い者勝ちだから………………でしょ?」

 

「ふふっ……………うん、そうだね」

 

一花/三玖も恋のライバル(三玖/一花)に対して笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば、前にネットの記事で読んだんだけど、サウナって脂肪燃焼の効果があるからダイエットに良いらしいよ」

 

「そうなんだ………………それなら五月ちゃんはサウナに入った方が良いかもね」

 

「この旅館でもかなり食べてたもんね」

 

ここでもサウナを勧められる五月であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、男子風呂では。

 

「それで昨日、星奈さんにブランコを押してもらってたんだよ!らいはも超楽しそうだったんだぜ!」

 

「ああ^~いいっすね^~。やっぱりブランコは王道を征く遊具ってはっきり分かんですね」

 

「…………………………………」

 

「(……………………何だこの異様な空間は……)」

 

勇也の思い出話を聞く総悟と無言で温泉に浸かるマルオ、そして居づらいと言うか気まずさを感じている上杉と言う光景が繰り広げられていた。

 

「カーッ!にしても風呂で飲む酒は堪んねぇな!マルオ、お前も一杯どうだ?」

 

「上杉、僕を名前で呼ぶな。……………………それに、酒は特別な日だけと決めているんだ」

 

「ったく、相変わらず固い事言うなー」

 

「……………じ、じゃあ俺は先上がるわ」

 

「おー」

 

これ以上耐えられず上杉は先に出て行った。

 

「そういや2人とも、さっき仲居さんから不思議な話を聞いたんだが」

 

「不思議な話と言いますと?」

 

「知っての通り、この旅行はうちの息子、総悟、そしてお前んとこの嬢ちゃんの3人が偶然当てたもんだ。だが、そんな都合のいい話があると思うか?5組限定だぜ?そこで仲居さんに質問したんだ。この旅行券が当たった客は何組来ましたかって」

 

「正確には俺の親父なんですけどね。それで、何組来てたんですか?」

 

「何と俺らより先に既に3組来てたんだとさ」

 

「…………………不思議な話もあったものだね」

 

「だろー!?」

 

「…………………あっ、ふーん(察し)」

 

賢さSSの総悟は大体分かった(ディ〇イド)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昨日、マルオ氏とお爺ちゃんとのこんな会話を俺達はこっそり聞いていた。

 

『最後くらい、孫たちとまともに話してはどうか?貴方に残された時間は少ない』

 

『思い出は残さぬ。あの子らに二度と身内の死の悲しみを与えたくない』

 

そんな訳で俺は賢さLv99の俺はマルオ氏がわざわざ自腹でここに来た真意を悟っていた。無論、上杉もだろうが。

 

さて、もうすぐチェックアウトの時間なので俺達はお爺ちゃんの所に来ていた。

 

「…………………………………」

 

……………………来たんだけど、生きてるよね?マジで微動だにしないな。

 

「お世話になりました」

 

上杉が代表してお礼を良い、一緒に頭を下げる。するとお爺ちゃんが口を開く。

 

「孫達はわしの最後の希望だ。零奈を喪った今となってはな」

 

「え………」

 

「!」

 

…………………そうか。四葉が正体を隠して名乗った『零奈』と言う名前は今はもう亡きお母さんの名前だったのか。これで上杉は零奈が5人の中の誰かと分かった筈だ。上杉が零奈の正体を見抜くのも、そして四葉が再び過去と向き合うことになるのも時間の問題かもな。

 

「どうか孫達に伝えてくれ。自分らしくあれと」

 

「「………………………」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、荷物を片付けたりしたら旅館を後にする時間になっていた。全員が外に出るとお爺ちゃんが見送るために外に出てくる。

 

………………………さてと。

 

「1つ提案なんですけど、折角だから旅館をバックに記念写真を撮りませんか?」

 

「賛成ー!皆で写真撮ろうー!」

 

らいはちゃんが賛同したこともあって記念写真を撮ることに。そして少し離れた所で微笑ましそうに見つめているお爺ちゃんの声を掛ける。

 

「お爺ちゃんも一緒に撮りませんか?撮りましょうよ~(提案)」

 

「………………儂もか?」

 

「そう、儂もです!記念写真は皆揃って撮らなきゃいけないって、それ一番言われてますから。そうだよねー?」

 

「そうですよ!お爺ちゃん、一緒に撮りましょう!」

 

四葉の言葉に他の4人もうんうん、と頷く。他ならぬ大切な孫に言われては断れないのか、お爺ちゃんはこちらにやって来る。立ち位置はセンターだ。

 

「それでは撮りますよ。はい、チーズ」

 

江端さんがカメラで撮ってくれたのを真っ先に見せてもらうと、お爺ちゃんは照れくさそうに、楽しそうに笑っているのがはっきり分かった。皆が撮った写真を見て盛り上がっている中、俺はお爺ちゃんの所へ。

 

「良いんですか、思い出残しちゃって?」

 

「……………はて、何の事だかな。年を取ると忘れっぽくなって困るものだ」

 

「フッ………………まぁ、俺から誘っておいて言うのも何かアレなんですけどね。けど、写真のあなたが楽しそうで良かったです」

 

「孫との写真を嫌がる祖父がいるわけなかろう?」

 

「そりゃそうですわな。……………彼女達はきっとあなたの死も乗り越えます。あなたが思っている以上に彼女達は強い。半年ばかりの付き合いですが、それだけは保証します」

 

「……………そうか」

 

「思い出を残さないなんてもう言わないでくださいよ、そんなの悲しすぎますから。また彼女達との思い出を作りに何度も来ます。その時には」

 

「姉妹の顔くらい見分けられるようになっているんだな────もう1人の方にもそう伝えておいてくれ」

 

「えぇ、分かりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから30分後、総悟はフェリーのデッキにて独り潮風に当たっていた。

 

「Foo!↑気持ちぃ~」

 

「ここにいましたか、火野君」

 

そこに現れたのは五月だった。

 

「ん?あぁ、五月か。………………五月にはこの旅行中で色々とお世話になったな。ありがとさん」

 

「ふふっ、どういたしまして。何があったのかは存じませんが、一花もスッキリした表情を浮かべていましたよ」

 

「そっか。そいつは何よりなことで。この旅行中は色々とあったが、まぁ終わりよければ全て良し…………………………………いや、待てよ。二乃の悩み相談をまだしてないやん!今からここに呼んで聞くしかねぇ!」

 

「二乃は今寝てますよ。と言うか、私以外の姉妹は皆寝てます」

 

「ウゾダドンドコドーン!」

 

膝をついて叫ぶ総悟。が、『………まぁ、ええわ。船が着いて起きたら聞けばええか』と秒速で自己完結した。ちなみに、この後二乃に聞いて『悩み?確かにあったけど、もう解決済み』的な事を言われる。

 

「つーか、もうすぐ3年か………………………ここから受験まであっという間だぞ、マジで。高3の1年間は体感的に早すぎィ!って感じだからな」

 

「そうなんですか…………って、その口振りだと既に体験しているかのような気がしま」

 

「親!親が言ってたの!」

 

慌てて誤魔化す総悟。実際は五月の言う通り高3の1年間は体験済みなのだが。

 

余談だが、彼は前世よりも更にパワーアップしてるので1度目の高3の時よりは色んな面で余裕がある。全国模試の成績も絶好調であり、彼は知るよしもないがこの時点で極端なサボタージュしなければ何処の大学にでも行ける未来が確定している。

 

「受験とか皆も頑張るぞー!テイ、テイ、オー!(…………………帰ったらウマ娘2期見よ)」

 

「いや、そこは普通『エイ、エイ、オー!』なのでは!?」

 

五月のツッコミがデッキに響き渡るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太平洋上にある無人島。辺りには海以外に何も見当たらない静かな無人島の静寂を打ち破るかのように空から明滅する何かが勢いよく落ちて、爆音を辺りに響き渡らせて大きなクレーターを作る。

 

「よっ、と」

 

クレーターのすぐ側に静かに着地するのは序列第1位の神様だった。未だに砂埃で視界不良な中、第1位はクレーターに向けてどこからか取り出したメガホンで声を掛ける。

 

「そろそろ抵抗もやめたらー?3時間も戦っては逃げたりを繰り返してさぁー。戦ったり追ったりするこっちの身にもなってくんない?」

 

「ならば死ね、第1位ッ!!!」

 

クレーターから飛び出した男が巨大な大剣を振り下ろすが、第1位は余裕のバックステップで避ける。

 

「やれやれ、人気者は辛いって言葉が身に染みるねぇ」

 

「調子に乗るなァァァァァ!!!」

 

その咆哮には反応せずにどこか呑気な第1位は後ろに出現した黄金の波紋から剣を取り出す。その剣は青く美しい剣身をしており──────そして鍔には青い薔薇(・・・・)の装飾が施されていた。

 

男は大きく跳躍して第1位に襲い掛かる。当の第1位も男に向けて飛び出し────────────互いにすれ違いざまに剣を振るい、そして背を向けた状態で位置を入れ替えて着地した。

 

ピシッ

 

大剣にひびが入る。瞬く間にそのひびは全体に広がった次の瞬間、男の大剣は粉々に砕け散った。だが、男には驚愕する時間すら与えれない。

 

「エンハンス・アーマメント」

 

振り向きざまに第1位がそう唱えて剣を地面に突き刺すと、刺した所から青薔薇の枝のように広がった冷気が男を頭から下を一瞬で凍らせた。氷を破ろうにも既に消耗しているせいで不可能。

 

勝敗は既に決した────────────否。(第1位)と対峙した時点で既に勝敗は決していたのだ。

 

「…………クソッ……………なるほどな。元人間だろうと第1位と呼ばれるだけの実力はあるって訳か……………………」

 

「ほー、やけにあっさり負けを認めるじゃないの(………………俺を襲ってくる奴らには共通してる点がある。特殊な魔術によってあらゆる能力を駆使しても『思考(・・)』や『記憶(・・)』が全く読めない点。しかも無効化や解除が一切出来ない。色々と研究はしているけど、未だにこの魔術の解除法が見つからない………………………厄介なものだな。相手の思考や記憶さえ読めれば黒幕(・・)も分かって解決も早まるんだけどなー)」

 

内心ではそんな事を考えつつ第1位は男に近づく。

 

「で、君の目的は何だったわけ?」

 

「…………………………………」

 

「この世界で何をしでかしたのかと思って魔力が行使された場所を調査してみれば、あらビックリ。君は何もしてなかった(・・・・・・・・)。世界各地で無害な何らかの魔術を行使して魔力の痕跡を残して各地を転々としていた………………………僕に神界を不在にさせる作戦って訳か」

 

そう問い掛けると、男はニヤリと顔を歪ませる。

 

「…………………フハハハハハッ!!流石は第1位サマだなァ!その通りだ、大正解だ!………………………だが、気づくのが遅かったな。もう遅い。既に俺の目的は達成させられた!!神界に連絡でも取ってみろよ。今頃大混乱に陥っ」

 

いつから僕がたった今気づいたと錯覚していた?

 

「………………何?」

 

「僕を不在にさせる誘導なんじゃないかってのは調査初日で予想していた。だからあっち(神界)に連絡して警戒レベルを上げておくように行ったら…………………………ビンゴっ!昨日、機密情報を盗もうとした輩を捕らえたと部下から連絡が入りました~!どんどんぱふぱふ~」

 

「なっ……………………」

 

「覚えておくと良い。僕のモットーは『人の100歩先を行く』、ってね」

 

「この……………たかが元人間風情がァ………………!」

 

「君が見下しているその元人間に出し抜かれちゃってどんな気持ち~、とだけ言っておくよ。はい、つーわけで君を連行してさっさと帰りまーす。こちとら溜まってる通常業務と忙しくて出来なかった漫画の最新話のチェックとか色々やらなアカン事があるからな……………………ぶっちゃけ今は調査と追跡で疲れてるから仕事はしたくない気分なんだけどねー。こいつだけ先に送って海水浴でもしてから帰ろうかなー…………………まぁ、帰るの先延ばしにしても仕事が減らないんだけどね………

 

憂鬱そうにため息をつきながら一時の現実逃避を行おうか真面目に検討している第1位。だから、彼への警戒がほんの一瞬だけ緩んでしまう。それが攻撃の隙となった。

 

「チイッッ!!!!!」

 

会話の為に氷漬けにしてなかった首が眩しく光りながら胴体から外れて彼に飛び掛かる。

 

「このまま牢にぶち込まれるくらいなら───────テメェを道連れにしてやらァ!!!!!」

 

「………………やっべ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、巨大な熱エネルギーが島を丸ごと呑み込んだ───────。

 

to be continued…………………




何だこのマルオ……………………原作よりも感情豊かじゃね?知らんけど。書けば書くほどマルオが原作と乖離していくような……………………だが、これで良い!(強引)

神様が使ってたSAO要素は……………………まぁ、『映画がもうすぐだし、おまけ程度にいれるかー』って感じで入れた。もう一度言うが、ネタバレするなよ、ほんとに。

星奈さんの過去編の大筋は大体纏まっています。いつからやるかはまだ未定ですが、そこら辺で彼女のお父さんやお母さんも出てきますので、お楽しみに。

…………………まぁ、お父さんかお母さんかは言いませんが、どちらかは片方はもう既にこの小説に出てきてるかもしれませんし、出てきてないかも。さー、どっちかなー。

そういや、上杉関連の恋が全然進んでないな……………………まぁ、上杉は別に主人公ではないし、別に良いか。(後で)何とでもなるはずだ!(マ〇ティー)

次回は久々の幕間の物語。二乃と総悟の絡みです。たぶん一週間以内には投稿します。破ったらすまん。

本日もこんな長い駄文を読んでいただきありがとうございました。


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クルーズの夜旅

春ならではとか言ってたけど、その要素はさほど無かったな………………………。そういや今月、オグリンとドーベル来ました。やったぜ。

………………………………最近ウマ娘の話ばかりですみません。今やってるゲームがウマ娘しかなくてね。他に面白いゲームがあれば教えて欲しいくらいです。出来ればサービスが長く続きそうな良いやつを。

それじゃ、どーぞ。


春休みも残り僅かになったある日の夜。五つ子達はとある場所に来ていた。

 

「……………何か、この辺暗いね」

 

「ほんとだね。人気も少ないし……………」

 

「まさか、人気のない所に私たちを連れ出して………………?」

 

「最低です!」

 

「まったく、あいつはどういうつもりなのかしら」

 

三玖、四葉、一花、五月、二乃の順に喋りながら歩く。事の発端は昨日の夜までに時間を遡って台本形式で説明しよう。  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昨日の夜、総悟から電話が掛かってきた。

 

総悟『明日の夜って皆は何も予定はない?』

 

三玖『私は無いよ。皆は?』

 

一花『私も無いよー』

 

二乃『同じく私もよ』

 

四葉『ありませんっ!』

 

五月『明日の夜は特に予定は入っていません。ですが、何故急にそんな事を………………?』

 

総悟『そうかそうか………………………よし、明日の夜の7時に後で送る地図の所に来てねー』

 

二乃『はぁ?何でよ』

 

総悟『それは当日までのお楽しみに~。じゃ、サラダバーブツッ』

 

5人『??』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

よく分からないが結局5人揃ってやって来た訳である。

 

「さて、と。お姉さんのナビによればここが地図の場所だけど………………」

 

「ソウゴはいないね………」

 

「まさかたちの悪いいたずら…………………………いや、あいつは弁える所は弁えるから、それはないか」

 

二乃も何だかんだで総悟の事を信頼してるんだなー、と他の4人が心の中で思っているとそこへ新たな来訪者が。

 

「…………お前らも来てたのか。まぁ、何となくいる気はしていたが」

 

「こんばんはー!」

 

「わー!上杉さんにらいはちゃん!」

 

新たに現れたのは上杉兄妹だった。

 

「フー君も火野に呼び出された感じなの?」

 

「その通りだ。らいはと一緒に地図の場所に来てくれってな。ただ、一体何の用でここに呼び出されたのかはさっぱりだが……………………」

 

「火野さんの事だから何かサプライズでもあるんだよ、きっと!何だろう、楽しみ~!」

 

らいはが期待に胸を膨らませていると、遂に彼をここに呼びだした張本人が姿を見せる。

 

「おっ、時間通りですねぇ。関心関心」

 

「あ、ソウゴ……………………何で浴衣を着てるの?」

 

「それはすぐ分かるよ。それじゃこっちに来てちょーだい」

 

総悟の後を7人は付いて行く。そして歩くこと3分。目的地に到着した。

 

「こ↑こ↓(迫真)」

 

そこは船の待合室だった。

 

「あっ、あそこに船が停まってるよ!」

 

「ソウゴ、もしかしてあの船に乗るって事?」

 

「その通り!『屋形船で夜旅を楽しみましょう!』って感じ。うちの親が何か知り合いから屋形船の団体チケットを貰ってな。ただ、うちの親は揃って『花より団子』気味なんで俺にくれたわ」

 

「それで私達も誘ってくれたんだ。気が利くね~、ソウゴ君!」

 

「まーね。船が出るまでまだ時間はあるし、あっちで俺みたいに浴衣を借りれるから見てきたら?」

 

「そうさせてもら…………………あれ、ちょっと待って」

 

二乃はある事に気が付いた。

 

「今日は星奈さんはいないの?」

 

「確かに今日は姿を見ていませんね………………」

 

「あぁ、星奈さんなら…………」

 

「私はここですよ」

 

総悟が言うよりも前に、奥の部屋から浴衣をまとった星奈がやって来る。髪飾りなどの装飾品も付けており、その場の誰もを魅了する程にとても美しかった。

 

「「「「「「尊い………!」」」」」

 

いつもバラバラな5人もこればかりは満場一致であった。

 

「星奈さん、浴衣がすごい似合ってますね!」

 

「らいはちゃんの言う通り過ぎるわぁ………………似合い過ぎて上杉にドロップキックして川に落としたくなってきますねぇ!」

 

「何でそうなる!?」

 

この後、上杉はドロップキックで川に落ちた(大嘘)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==========================

 

15分後、着替え終わった女子の6人が戻ってきた。

 

「おー、皆ええやん!」

 

特に三玖はさいかわや……………………何で三玖はこんなに可愛いんですかねぇ(哲学)

 

「お前ら浴衣を選ぶのに時間掛けすぎだろ。船が出る時刻の5分前だぞ」

 

「上杉、お前は逆に時間掛けなさすぎ」

 

上杉は5分で戻ってきやがったんだよなぁ。曰く、『何か良い感じのを適当に選んだ』とか。そんで皆が来るまで単語帳を眺めていやがる。よくそんなに勉強出来るな……………………。

 

「まったくよ。フー君はもっとおしゃれに気を使いなさいよ(自分のを決めた後に私がフー君の浴衣を選んであげようと思っていたのにぃ…………あんなに早く決めるなんて想定外だったわ……)」

 

何か二乃が残念そうに見えるのは気のせいか?まぁ良いや。じゃけん、船に乗りましょうねー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わ………………結構大きいね、ソウゴ」

 

「そうだな。これを9人で貸切れるのは最高やな~」

 

「屋形船の中ってこんな感じになってるんですね!」

 

三玖に総悟、四葉が口々に感想を語る。そして屋形船は静かに動き出した。

 

「あ、動き出しましたよ。風が気持ちいですね~」

 

「風も船の揺れも気持ち良いね……………………何か眠くなってきちゃった……………………」

 

「えぇ……………(困惑)」

 

はやくも寝落ちしようとしている一花にワイは呆れ気味である。

 

「ねぇ、ここって屋上デッキもあるんですって!行ってみましょうよ」

 

「デッキ…………二乃さん、デッキで面白い事を教えてあげますよ。総悟様曰く、船に乗ると全人類がついやりたくなるポーズだそうで」

 

「面白そうだから私も行くー!」

 

二乃にタイ〇ニックポーズを広めようとする星奈さん。そして四葉も興味を示した模様。

 

「んー……………じゃあ、30分後の夕食の時間までは自由行動ってこ「夕食っ!火野君、どんな料理が出てくるのかはご存じですかっ!?」……………海の幸とかじゃね(適当)」

 

「となると……………………刺身とかでしょうか。もしくは活け造りブツブツ」

 

「はい、つーわけで一旦解散でーす」

 

1人夕食の考察に盛り上がっている五月を取り敢えずスルーする俺ちゃんであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………よーし。三玖を誘って船の中を見て回ったりしますかね。旅行から帰ってから数日後、三玖を遊びと言うかデートと言うか……………………兎に角誘おうと思ったんだが、ここ最近はずっと雨が降ったりで遊びにはとてもじゃないが誘えなかった。運命、もしくは神のいたずらなのかなー。

 

……………………さて、無駄話はこれくらいにしよう。こんな事もあろうかと、IQ300の俺は誘い方を3通り考えておいたので完璧やな。

 

「(ふー………………よし)三『ソウゴ、良かったら一緒に船を見て回らない?』………………いいよ!」

 

三玖に先を越されたんですが、それは……………(困惑)IQ300とは一体……………。

 

……………………そう言えば、前にも勤労感謝の時も三玖から誘われたな。あの時は日頃の感謝として誘われた……………………が、今回のはどうなんだろう。ただの男友達としてなのか……………………もしかしたら、それ以上の─────────

 

「………………ソウゴ?どうかした?」

 

「……………………いや、何でもないよ。行こうか」

 

「うん(緊張したけど、何事もなく誘えて良かったぁ………ソウゴと一緒に船の散策、楽しみ……………!)」

 

……………………うん、取り合えず今は三玖と一緒に船を見て回れる事を楽しもう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、見てソウゴ。ここで釣りが出来るみたいだよ」

 

「あー、そう言えば釣りができるとかホームページに書いてあったな。釣った魚は調理してくれて食べ『食べれるんですよね!!』うおっ、びっくりした!?」

 

いつの間にか2人の背後に五月が来ていた。

 

「船員さんにここの事を聞いて急いでやって来ましたが、お2人もそうですか?」

 

「まー、ぶらぶら歩いてたらって感じ。折角だし釣りしよっか。俺はこの前(・・・)のリベンジを果たしたいし、ねぇ……………思い出しただけで神経が苛立つなー…………」

 

「(そう言えば、旅行の時にソウゴはゴミしか釣れなくてふて寝してたっけ…………………)」

 

「(まぁ、あれは怒って当然ですよね……………)」

 

三玖と五月が少し前の旅行の事を思い出したのはさておき、3人は釣り針に餌をつけてリリースする。

 

「釣りをするのは初めてだけど、大丈夫かな?」

 

「その点は大丈夫だって三玖。上杉も釣りは初めてだったらしいけど、あいつは1匹だけとは言え一応釣れてたからな……………………ほんと、なんで俺だけ釣れなかっ」

 

「さ、さぁ楽しい釣り大会始めましょう!」

 

ソウゴがまた暗くなりそうなのを察した五月が慌ててフォロー。三玖もうんうん、と首を縦に振る。

 

かくして、3人による釣り大会がスタート。開始から3分、最初に掛かったのは五月だった。

 

「あっ、釣り竿が急に重くなりました!これって何かが掛かったんですよね!?そうですよね!?」

 

「とりま落ち着け」

 

「い、意外と重いですね……!これは確実に大物です!夕食が豪華になることは確実ですね……………!」

 

五月はそう呟きながら竿引いていく。が、魚の方も抵抗しているらしく、五月も中々苦戦していた。

 

「くっ、凄い力です……………!」

 

「ソウゴ、五月を手伝ってあげて。このままじゃ糸が切れたりして逃げられちゃいそう」

 

「おk(快諾)」

 

三玖の頼みであることもあって一瞬で快諾したソウゴは五月と一緒に竿を持つ。

 

「五月、せーので一気に釣り上げるぞ」

 

「は、はい!」

 

「せーのっ!」

 

総悟の合図と共に両者は力を合わせる。そして見事に釣り上げた。

 

「や、やりました!あれだけ力があったんです、とてつもない大物で……………………す?」

 

釣れたのはただの小魚であった。

 

「小さい……………」

 

「ちっさ……………」

 

「そ、そんな…………私の夕飯が……………………」

 

五月はがっくりと肩を落とす。そんな五月を慰める暇を与えないかのように、今度はソウゴの竿が反応する。

 

「来たー!っと、意外と重いな!……………………だがしかし、この総悟君の前では余裕のよっちゃんじゃぁ!」

 

フルパワーで一気に釣り上げる。川から姿を現した魚は勢い余って針から外れ、ソウゴの頭上を飛び越えて後ろの方の船のデッキに落ちた。

 

「おめでとう、ソウゴ。これでリベンジ達成だね」

 

「サンキュー、三玖。いやー、すかっとしたわ~。さてさて、何が釣れ…………………………………」

 

突然総悟が押し黙る。その目は総悟が釣ったものの方へ向いている。

 

「……………ソウゴ?」

 

「どうしたんですか、急に押し黙っ………‥‥‥‥‥‥‥‥あ」

 

三玖と五月は総悟の視線の先を追う。その先にあったのは魚──────────ではなかった。

 

それは『かつおのだしが効いた味噌汁』と書いてある空き缶だった。要はただのゴミ。

 

「……………ふふっ。ふふふ。ふふふふふふふふふふふふふふふふ…………………………………ごみを川に捨てるクソカスどもがァァ!!」

 

突然笑い出したかと思えば次の瞬間、ブチキレた総悟は綺麗に立っていた空き缶の上に踵落とし。見事に踵落としを決められた空き缶君は綺麗に潰されるのだった──────────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

20分後

 

「…………とまぁ、そんな事がありまして…………………………」

 

「‥‥…あいつも災難だな」

 

「まぁ、そりゃキレるわね……………」

 

「しかも2回目だしね………………」

 

食事中、五月から釣りでの出来事を聞いた上杉、二乃、一花は星奈と話している総悟に対して同情の意を示す。まぁ、三玖が大きな魚を釣り上げた事もあってか、機嫌は何とかV字回復したが。

 

「そう言えば五月ちゃんはどうだったの?釣れた?」

 

「釣れはしたのですが…………………その、引きが強かった割にはとても小さくてがっくりしたと言いますか……………………」

 

「釣れただけ良いじゃない。釣れただけ、ね」

 

「(何か憐れまれたような‥‥‥‥…‥‥)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで皆は景色を楽しみつつ食事を終えると、夜桜クルーズも遂に終盤である。

 

「もうすぐこの船旅も終わりだと思うと惜しいですね」

 

「楽しい時間って過ぎるのが早いですよね~……………………さて、そろそろかな。よーし、そんじゃ諸君。上のデッキに上がるぞー」

 

「デッキに?何でよ」

 

「この船旅の終わりを最高の景色で飾ろうじゃないの、って事!」

 

そう言い残すと総悟はダッシュで上のデッキへと駆けて行く。その後ろ姿を残りの皆も急いで追う。そして、デッキに上がった彼らの視界に広がっ─────────

 

「わぁ…………………!」

 

「すごい………………!」

 

満開の夜桜だった。この光景には一花と三玖も感嘆してしまう。

 

「すごいね、お兄ちゃん!どこを見回しても満開の桜だよ!」

 

「確かにこれは凄い景色だな………………折角だから写真に収めておくか」

 

上杉も自分のガラケーで写真を撮る。

 

「夜の桜も良いね、ソウゴ」

 

「そうだな。昼とは違った風情が味わえて良いもんだな。ちょうどいい時期に来れて良かったよ。同じ料理を食べて、同じ景色を見て、思い出を共有する……………………最高やな!(確信)」

 

「うん、そうだね。この景色を皆と見れて良かった。…………………次は2人きりで見たいな

 

「何か言った?」

 

「ううん。何でもないよ」

 

「そっか………………よし、上杉。桜も満開だから何か一句読んでみ(唐突)」

 

「は!?」

 

「少し考えればパパっと浮かぶやろ。ほらほら、早く早く~」

 

総悟にせかされるままに上杉が考える事30秒。頭をフル回転させて上杉が作り出した一句がこちら。

 

「……………ああ桜 桜咲いたら 満開だ」

 

「「「「「「「「…………………」」」」」」」」

 

何の捻りもない一句に反応に困った8人は押し黙る。言ってから上杉も空気が白けている事に気づいたが、一度出た言葉のクーリングオフは不可能である。

 

「…………………………頼む、火野!俺をドロップキックして川に落とせ!そうすればこの空気も少しは良くなる筈だ!さぁ、来い!」

 

「自分からドロップキックを志願するのか………(困惑)」

 

この後、上杉はドロップキックで川に落ちた(大嘘&2度目)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「楽しかったねー、お兄ちゃん!忘れられない思い出が出来たよ~」

 

「…………………そうだな。確かに『忘れられない思い出』は出来たな」

 

良くも悪くも皆にとって忘れられない思い出になりましたとさ。めでたしめでたし。




この後、上杉は俳句の勉強をしたとかしてないとか。

にしても、もうちょいでこの小説を書き始めてから1年経つんですね。早いなー。

今日も読んでいただき、ありがとうございました。次回から3年生編開始なのですが、丁度いい区切りなのでこれからの予定を告知するのも兼ねてちょっとした超短編予告的なのを3つ書きました。

























「あぁ、全く以て不愉快だよ。だがこうも思わないかい?────────この評価を一気に手のひら返しにさせてやるのは最高に面白い、と」

「なので、選択肢は1つ──────────『逃げ』しかないですね!」

「そもそも、俺は間違っていない!!間違っているのはお前らの方だ!!俺達の方が人間よりも格上だ!!人間を格下に見て何が悪い!!」

『Past of God』。それは第1位の始まりとプロローグに至るまでの話。




















「…………………被験体AGW-111。それが私の名前」

「…………………やっぱり、あなたは人間だよ。私にはそうにしか捉えられない」

所有物(モルモット)ごときが俺に楯突くのかァ!!この恩知らずの売女がァァァァァァァ!!!!」

「人間は無駄に数だけはある。だから、実験材料としては最適だろう?」

「もう分かるでしょ?………………お姉ちゃんは生きてちゃいけない存在だって事。だから、死んじゃいなよ」

『星の誕生』。これは、彼女が人になる物語。

「変わりたいと心の底から願っているなら、人は絶対変われるよ。何故なら人間は己の弱さを受け入れて、それと戦える生き物だからね」


















「これは運命だ。僕達兄弟が世界を超えて再び相まみえるのも。そして、この京都の地で兄さんが死ぬのもね」

「生憎だが、ここでは死んではやらねぇよ」

「あー………………僕の神生(じんせい)もここまでかぁ」

「……もう……これ以上大切な人を失いたくない………………」

「……………私達は……………ソウゴから見たらただの漫画のキャラクターだったの………?」

「あいつを殺す。その為ならこの妖刀村正が手を貸してやろう」

本編、オリジナル長編決定。全てを懸けて。だって、絶対に守りたいから─────。

詳細は後に発表します。ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


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第9巻
ようこそ3年1組へ(五つ子のいる教室へ)


1ヶ月近く投稿できなかった主な理由

①12月中はマジで忙しかった
②話が思い付くのに時間が掛かってやる気ダウン。
③正月ボケ




「皆にお知らせでーす。これからはお家賃を五人で五等分します。そして、払えなかった人は前のマンションに強制退去になりまーす」

 

「「「「!?」」」」

 

「皆んなで一緒にいられるように頑張ろ!と、言うことでよろしくねー(これまでは確実な仕事しかしてこなかったけど………………これからは自分のやりたいことにも挑戦していこう)」

 

こうして3年生の進級を期に、姉妹揃って公平な立場に立って新たなスタートを切ることになった。戦わn…………働かなければ生き残れない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、言う訳で私は清掃員のバイトを始めたんです!」

 

「そうか」

 

3年初日、四葉は偶然会った上杉に先日の事と自身のバイト合格を報告していた。

 

「道理で俺のバイト先に二乃が面接に来た訳か」

 

「あ、そうだったんですか!それで二乃は採用されたんですか?」

 

「あぁ」

 

「そうでしたか!二乃は料理が得意ですからピッタリですね!」

 

「まぁ、俺としては勉強に支障が出なければ何でも構わないが。来年は受験だからな。お前も気合入れていくぞ」

 

「了解です!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方の総悟。

 

「ふぅー………………良い朝だぜ…………………」

 

彼にとっては2度目の高校生活の集大成。その始まりの朝を総悟は静かに過ごしていた────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やべー!!遅刻だ遅刻ゥ!!」

 

────────と、思いきや。新学期初っ端から寝坊する始末である。気が引き締まっていると言っていたが、あれは嘘だ(コ〇ンドー) 気が引き締まっている人間が新学期から遅刻するだろうか、いやしない。誰か起こしてやれば良いのにと思うかもしれないが、今日は星奈は休暇で、親も出張で家にいなかったので寝坊しても起こしてくれる人は誰もいなかったのである。

 

食パンを口に咥えながら走る女子高生を再現する暇もなく、急いで総悟は家を飛び出す。

 

「あかん、このままじゃ新学期から遅刻するゥ!今まで休みと遅刻なしの皆勤賞だってのに!皆勤賞は絶対に譲らない。絶対に、絶対に……………………『絶対』は、ボクだ―――!!!(トウ〇イテイオー)……………やべー、2期最終回を思い出したら何か泣きそうになってきたよ、ヤバいヤバい。俺はいつになったら泣けずに見れるんだろうなー」

 

朝から泣きそうになっている総悟氏。遅刻しそうな状況でもウ〇娘を思い出して泣きそうになっている辺り、ほんとにこいつは馬鹿と言うかブレないと言うか能天気な奴である(呆れ気味)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(ありえねぇ……………………何で同じクラスにあいつら全員(五つ子)いるんだよ!しかも火野も同じクラスだし!)」

 

そして、先に学校に来ていた上杉は同じクラスにいる5人を見て心の中で呟く。まぁ、確率的にはとんでもない数字なので当然と言えば当然である。一方の五つ子達はと言うと。

 

「まさか全員同じクラスになるんなんてね~(しかもソウゴ君とは2年に続いて3年も同じクラス……………………やった)」

 

「全くよ。よりによってあのドSも一緒だし…………(まぁ、でもフー君と同じクラスになれたのはラッキーね)」

 

「(やった……………!ソウゴと一緒のクラスだ………………ふふっ)」

 

「皆一緒だと何か安心するね!」

 

「えぇ、そうですね」

 

こんな感じで盛り上がっていると、チャイムが鳴って教室に先生が入って来た。五つ子達も含めて皆は席に着く。

 

「よーし、ホームルームをはじめ「あっぶねあっぶねー!」…………………おいおい、新学期早々から遅刻かよ、火野」

 

「いやいやいや、定時定時!定時定時定時!ほら、まだチャイムも鳴り終わってないですし、ね?ここは同じ漫画やアニメ好きのよしみで大目に見てくださいよ~。オナシャス!」

 

「ったく、しょうがねぇなー。じゃ、改めてホームルームをはじめるぞー」

 

「(ふー危なかっ……………………ファッ!?よくよく見たら上杉とか三玖達もいるじゃん!急いでたからクラス発表の紙をよく見てなかったが。高校生活最後の1年を三玖と同じクラスで過ごせるとか…………………………………や っ た ぜ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホームルーム終了後、五つ子達は皆に囲まれていた。

 

「わぁ、中野さんが五つ子ってのは知ってたけど」

 

「実際揃ってる所を見ると凄ぇな~」

 

「ほんとにそっくりだね~」

 

まぁ、一卵性でそっくりな五つ子なんて珍しいに決まっているのだからこうなるのも当然と言えば当然である。

 

「苗字だと分かりづらいから名前で呼んでもいい?」

 

「うん、その方が私達もありがたいかもー」

 

「あれやってよ!同じカード当てるやつ」

 

「ごめんねー、テレパシーとか無いから」

 

「三玖ちゃんも似てるんでしょ。もっとよく顔見せてよ」

 

「………」

 

「わわっ」

 

「皆さん落ち着いて!」

 

とは言え、少々盛り上がり過ぎである。そんな状況を見かねたのか

 

「退いてくれ」

 

「上杉君!」

 

「た、助けてくださ〜い」

 

「何?上杉君も中野さん達のこと、気になるの?」

 

「トイレだ。邪魔だからど」

 

「上杉ィ!」

 

そんな上杉にいつの間にか後ろにいた総悟が声を掛ける。

 

「何だ、火野?」

 

「『何だ、火野?』じゃないわ!お前はもうちょっと愛想よく、社交的にせんかァ!ぶすっとな!」

 

「いたたたたたたたたたたっ!?」

 

上杉は総悟に手のツボを押さえられて痛みに悶える。

 

「な、何しやがる!?」

 

「何しやがるとは酷いなぁ。ここは目の疲れがとれるツボでね。日々勉強に頑張る上杉君に対して心優しい総悟君が善意(半分嘘)でツボを押してあげてるのさ」

 

「善意とか絶対嘘いたたたたたたたたたたっ!?」

 

「何か言ったかな~?(威圧)」

 

「言ってない言ってない!もう大丈夫だから押すな!いや、押さないで下さい頼みますから!」

 

懇願されて『しょうがねぇなぁ(悟〇)』と呟いて総悟は手を離すと、『確かに目がスッキリしたような…………』と呟きながら上杉は本来の目的だったトイレに向かって行った。

 

「まったく、あの勉強星人ェ………………」

 

「上杉君は2年の頃からあんな感じなんです。あまり人と関わらないと言いますか………………」

 

「ふーん。根は悪い奴じゃないのに損してんなー」

 

総悟がそう呟いている間に、再び五つ子達に対しての質問攻めが再開される。

 

「ねぇ中野さんあれやった事あるでしょ。幽体離脱ってやつ」

 

「あとシンクロしたりとかさー」

 

「あ、そういやどこ住んでるの?」

 

「………いい加減に………」

 

遂に二乃はキレそうになったのを察した総悟が『あっ、おい待てぃ(江戸っ子)』と割って入るよりも前に間に入った男が1人。

 

「皆やめよう。そんなに一気に捲し立てたら中野さん達も困っちゃうよ。ね?」

 

「武田君!」

 

「………………確かに武田の言う通りだな。はしゃぎ過ぎちゃって、ごめんな」

 

武田が出した助け舟によってはしゃいでいた生徒もクールダウンしたようだった。

 

「だけど気持ちは分かるよ。五つ子だなんて珍しいからね。皆んな君達のことがもっと知りたいんだよ。ね?」

 

「は……ははは……………………」

 

「(流石はcv.斉〇壮馬…………………………………胡散臭いけどいい声してんねぇ……………)」

 

どこか胡散臭さを感じ取って苦笑いで返す二乃。そして胡散臭いけどカッコいい声に感心する総悟であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、1時間目はオリエンテーションである。

 

「よし。そんじゃ係とか決めるぞ。先ずは学級委員長から決めるか。まぁ、自らやりたい奴なんていな「先生!ワイが学級委員長やりたいです!」……………それマ?」

 

手をビシッと挙げて立候補したのは総悟だった。

 

「まぁ他にやりたい奴がいないなら、俺としては男子は火野で良いぞ。何か面白そうだし」

 

『理由ェ………』と、大勢の内心でツッコミが行われているのは本人は知る由もない。結局立候補する人はおらず、男子の学級委員長は総悟に決定となった。

 

「じゃ、女子の方も決めていくか。やりたい奴はいるか?」

 

「いないなら、上杉と二乃をサハラ砂漠に埋めちゃうぞ☆」

 

「「何でそうなる(のよ!?)」」

 

意味不明な言動に対して新学期早々から二乃と上杉の安定のツッコミが炸裂。今日も平和である。

 

「ふぅむ、誰も挙がらんか…………………これは仕方がない。先生、上杉を女装させて女子の学級委員長をやらせましょう!」

 

「いや、しないからな!?」

 

「流石にそれはちょっとな…………………………まぁ、誰もいなかったら最後の手段としてそうするか」

 

「先生!最後の手段として保留しないで下さい!」

 

そんな下らないコント的な事を繰り広げていると、『あ、あのっ』と声を上げて立ち上がる者が1人。

 

「そ、そのっ……………私、ソウゴとやります。学級委員長……………!」

 

その人物は三玖だった。これには一花達もビックリである。まぁ、三玖は学級委員長をやるようなタイプではないように思われていたので当然かもしれないが。

 

「(マジか!まさかの三玖と学級委員長をやれるなんて……………………………や っ た ぜ(本日二度目))」

 

「(言うの緊張したぁ…………………でも、これでソウゴともっと一緒にいれる機会が増える………………!)」

 

「(これで女装を免れた……………三玖、マジでサンキュー………………)」

 

こうして、ハジケリストと歴女ペアの学級委員長が誕生した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……………………朝から疲れたぜ………………」

 

トイレでため息をつく上杉。朝からソウゴにツボを押されるわ、二乃と共にツッコミをやらされたりで上杉のHPは大きく減少している。そんな彼のもとに現れるのは胡散臭い武田である。

 

「上杉君。前々から思っていたけど、君は随分と火野君や彼女達と仲が良い。随分信頼されてるみたいだ。ね?」

 

「……急になんだよ」

 

「同じクラスになれたんだし、折角だから僕のライバルに挨拶をしておこうと思ってね。これから1年よろしく頼むよ」

 

「…………何だったんだ?」

 

先に去って行った武田の背中を見つめながらそう呟く上杉。取り敢えずトイレを出ると、近くで待ち構えていた三玖が駆け寄る。

 

「フータロー、ちょっといい?質問ある」

 

「質問?勉強のか?」

 

「違う、そうじゃなくて……………………ここに魔法のランプがあります」

 

「ないが」

 

「あります。………五つ願いを叶えてくれるとしたら、フータローは何をお願いする?」

 

「何かの心理テストなのか?………俺なら、お金持ちになる、とかか?」

 

「お金……………………残り4つは?」 

 

「んー…………………………………体力が上がったらとか考えたことはあるが…………あと、最近は疲れが溜まる一方だから、疲労回復とかもアリだな。あと、最近寝つきも悪いしな。そうだ、運気も上げてもらいたいな。お正月のおみくじも大凶だったし」

 

「ふむふむ…………………分かった」

 

「分かったって、何が分かったんだ?」

 

「……………………………」

 

「え、なんで答えてくれないんだ?」

 

と、そこへ総悟がやって来る。

 

「三玖ー、ちょっと良い?先生がワイ達呼んでたよん」

 

「うん、分かった」

 

「………あぁ、そうだ上杉。色々よろしくね~☆」

 

「?」

 

意味深な言葉を残して2人は立ち去る。どういう意味なのか考えていると、そこへ同じクラスの女子生徒がやって来る。

 

「あ、いたいた!上杉君、探したよー」

 

「………………探したって、どういうことだ?」

 

「火野君に中野さん達の事を教えて欲しいって言ったら、『そう言うのは上杉の方が向いてるよ。あいつは学級委員長の器はあるから、5人の事をちゃんと見てるからねー。頼めば普通に教えてくれるだろ』って言ってたんだ」

 

「………………は!?(色々よろしくって言ってたのはそう言う事か!!火野の奴、俺に丸投げしやがって……………………!)」

 

「ほら、ついて来て!」

 

「5人の事もっと教えて!」

 

「ちょ、待っ………………」

 

上杉は背中を押されて行き、この後五つ子達の見分け方等々を皆に教える事になり、数日後には五つ子達の窓口として何だかんだでクラスに溶け込めたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お金持ちになりたい、、体力向上、疲労回復、運気アップ、ね……………………面白いこと考えるね、上杉は」

 

「ソウゴはフータローの誕生日に何かあげてた?」

 

「んー……………高1・高2共にアイケアグッズをあげて好評だったな。『これで目の疲れも取れて永久的に勉強できるぜ!』とか」

 

「…………………フータローって、勉強に対する熱がほんと凄いよね」

 

「この気持ち………まさしく愛だ!(グ〇ハム)って感じなんだろうね」

 

to be continued…………




新キャラ紹介です。と言うか、原作に出てた先生に名前とか設定を足したようなもんです。

神谷先生

・総悟らの担任。漫画大好きで、微妙にハジケリストかもしれない。総悟とは1年の頃から馬が合う。仲良くなった切っ掛けは、コンビニ売っていた最後の1冊の漫画を買おうとして総悟とジャンケンによる争奪戦になり(勝者は総悟)、この後2人で仲良く読んだことが切っ掛け。


ということで総悟と三玖が学級委員長になりました。そして、これからは総悟ボケの二乃と上杉ツッコミの漫才が1年間も見れるぞ。良かったね!(白目)

ちなみに、武田君と総悟は2年は同じクラスでした。そもそも教室内での描写はそこまで無かったから彼の出番もありませんでしたが。つーか、そんな寄り道してたら終わらないんでカットは当然ですね(無慈悲)

ちなみに、上杉へのプレゼント企画は総悟も知っていますが、内緒にするように言われてます。なお、今年もアイケアグッズをあげる模様。喜ぶんだなぁ、これが!(ゾル○ン)

まぁ、そんなこんなで読んで下さりありがとうございました。次は早めに投稿します(たぶん)


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上杉vs武田vsダー〇ライ

ホワイトデーの話

総悟「はい、三玖。これ、お返しの姫路城の天守閣を再現したチョコだよ!」

三玖「…………………………」←凄すぎて言葉を失ってる。

総悟「本とはお堀とか完全再現しよかなとも思ったけど、それだとチョコが多すぎて三玖が参っちゃうだろうから天守閣だけにしたわ~」

三玖「す、凄い出来ばえ……………………ありがとう、ソウゴ!」

総悟「(くっ、尊い笑顔………………………この笑顔の為なら3週間試行錯誤した甲斐ってもんがあったぜ!)」

バレンタインも近いんで、どっかの話で張っていた『お返しも期待しててね』の伏線の回収、完了。

それでは、どうぞー。


「えー、そう言う訳で。もうすぐ皆さんが待ちに待ったイベントがあります。それは何でしょうか?上杉君、お答え下さい」

 

「ふっ、俺を馬鹿にしているのか火野?それくらい俺にも分かるさ……………………答えは全国実力模試だ!」

 

「はい、不正解ー。答えは修学旅行でしたー。罰として、上杉君は二乃を競馬場のダートに埋めてきて下さーい……………………いや、埋めちまえ(命令形)」

 

「なんで私なのよ!?」

 

今日もこのクラスは平和でなによりである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーっ……………………レコード勝ちしたな(確信)」

 

「はぁ、はぁ………死ぬぅ…………………………」

 

体力テストの最期の種目の50m走。完走しても余裕そうな総悟の隣で死にかけている上杉。見事な対称となっている。

 

「死ぬな上杉!鬼になると言え!」

 

「はぁ…………はぁ…………はぁ……」

 

「……………マジで大丈夫?」

 

ツッコミする余裕もない上杉を心配する総悟。と、そこへ三玖がやって来る。

 

「そ、ソウゴ………………先生が…………器具とか片づけておいて………………だって…………………」

 

「あー、そういや今日は体育委員の人が休みだったなー…………………俺が全部片づけておくから三玖は休んでれば?」

 

「だ、大丈夫…………重いのは無理だけど、軽いのなら問題ない……………………」

 

「…………………じゃあ、俺は重いのやるから軽いのはよろしくね。けど、無理はしないでね」

 

「分かった…………………」

 

「そんじゃ上杉。先行ってるなー」

 

「……………あぁ」

 

取り敢えず返事が出来るまでに回復した上杉から離れて2人は器具の置いてある場所に行って搬送を行う。

 

「ソウゴ君、私も何か手伝おうか?」

 

「私もお手伝いします!」

 

「一花姉さんじゃーん……………じゃあ、三玖を手伝ってあげてくれる?俺はノー問題だからね」

 

「そんな重そうなの持ってても余裕そうなあたり、流石は男の子だね~」

 

「鍛えてますから(HBK)」

 

と、言う訳で仲良く片づけを行う3人であった。

 

「ソウゴ君が持ってる鉄球見てたら、次の仕事の事を思い出したな~。私、今度鉄球で殴られて殺されるんだよね~」

 

「言葉だけ聞けば物騒すぎる………」

 

「何で高確率で一花姉さんは死ぬんですかねぇ(困惑)」

 

「………正直、それは私も知りたい………………何で私は高確率で死ぬんだろうね………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは上杉がトイレ中の出来事であった。

 

「上杉君。中野さん達の家庭教師は大変そうだ、ね?」

 

「!?な、何故それを知って…………………!?」

 

「僕の父がこの学校の理事長でね。中野さんのお父様とはかねてより懇意にさせていただいているのさ」

 

ボンボンコミュニティめェ………………と、上杉が内心呟いているのはいざ知らず。武田は衝撃的な事を提案する。

 

「君は他でもバイトをしているみたいじゃないか。大変だろう?だから、中野さん達の家庭教師は僕が変わってあげてもいいけど、ね?」

 

「……………残念ながら、俺を雇っているのはあいつらだ。俺が決める事じゃねぇ」

 

「………………。しかし、君はこんな事をしている場合ではないだろう?他にやるべきことがある筈だ」

 

「は……………?」

 

「失望したよ。腑抜けた君に用はない。これからは()だけが僕のライバルのようだね………………………それでは失礼」

 

何のことだ、とでも言いたげな上杉の間の抜けた返答を聞いた武田はそう言って去って行った。

 

「何だったんだ、あいつ……………………まぁ、良いか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===========================

 

放課後、おんぼろアパートにて勉強会が開かれていた。何か久しぶりっすねー。

 

「ここで集まって仕事するのも久しぶり」

 

「最近は皆んなバイトだものね」

 

「そんでもって一花は仕事かぁ。……………そういや五月はバイト決まったん?」

 

「ぎくっ……も、もう少しだけ考える時間をください……………………」

 

「ふぅーむ…………………飲食店とかは?賄いとか出る良い感じのお店でバイト募集の張り紙を見た記憶が………………………いや、でも五月の賄いだけでそのお店が破産しそうだな(確信)」

 

「な、何を言ってるんですか火野君!そんなに食べたりなんかしませんよ……………………たぶん

 

絶対ないとは言い切れないんですかねぇ………………(困惑)

 

「お前ら、口より手を動かせ!全国模試はもうすぐだぞ!」

 

「一通り埋めたわ。はい、答え合わせよろしく。………フー君」

 

………………………うん。やけに二乃と上杉の距離が近いな。別に上杉から縮めてると言うよりも二乃から縮めに行ってるようだな……………………これはもう確信の領域に入ってますねぇ……………。

 

「上杉さん!私も終わりました!」

 

「ソウゴ。私も終わった」

 

「火野君、私も終わりました」

 

どうやら皆終わったらしいな。

 

「どう、手応えは?」

 

「自信はあります。何せ私達は学年末試験を乗り越えたんですから!」

 

ほほーう、随分と自信満々じゃないか五月さんよ…………………………まぁ、この全国模試の模擬試験は学校のテストとそこまで難易度はさほど変わらないしね。何とでもなるはずだ(ハ〇ウェイ)

 

そんじゃ、答え合わせしましょうねー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果、殆ど赤点でした☆………………………嘘やろ?

 

「嘘だろお前ら………………………あれか?学年が上がると脳がリセットされる仕組みにでもなってるのか………………?」

 

「ウゾダドンドコドーン!」

 

「言い訳になるかもだけど、ここ最近仕事ばかりであんま自習できてないのよね」

 

「道理で五月はさほど点数が下がってないんですねぇ」

 

「すみません、すみません!」

 

これはちょっと想定外だったが………………………まぁ、俺らのやることは変わらん。

 

「じゃ、間違えた箇所を順番に確認していくぞ」

 

「じゃけん、間違い直ししましょうねー」

 

「お、お願いします!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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間違い直しはテンポよく進んで行った。これも彼女たちの学力がしっかり上がって行っている証拠である。

 

「ソウゴ、ここなんだけど……………………」

 

「どれどれ………………あー、こいつは少し難しくてですねー……………………これはん!?

 

三玖の質問を受けていた総悟が急に大きな声を出す。

 

「急に大きな声を出してどうかしたんですか火野君?」

 

「…………………スッ(無言で指を指す)」

 

皆が総悟の指さした方を見る。そこにいたのは黒いボディを輝かせる、不清潔な場所に現れては多くの人間に悲鳴をあげさせる奴─────────G

がいた。

 

「ヒッ!」

 

「…………………………」

 

「で、出たー!」

 

「あわわわわ……………」

 

「つ、ついに出やがった……………」

 

小さな悲鳴を上げる二乃、声を出さずに戦慄する三玖、叫ぶ四葉、腰を抜かす寸前の五月、先の4人よりは冷静な反応をする上杉、等々様々な反応を見せる。

 

「原因は一花姉さんの汚部屋だってはっきり分かんだね(確信)……………………あ、隣に行ってもうた」

 

例のGはドアの隙間を通ってカサカサと隣の部屋の方へ行ってしまった。

 

「……………………よし!間違い直しを再開しようか」

 

「いや、出来るか!」

 

二乃のツッコミが炸裂した。

 

「え、何で?」

 

「何で、じゃないわ!隣にGがいるのに勉強なんて出来るか!」

 

二乃の発言に三玖、四葉、五月も首を縦に振って同意する。

 

「安心しろ、今のはジョークだ。俺も流石に隣の部屋にGがいる状況だと気が散ってしょうがない。ビニール袋とか、殺虫スプレーとかあったりする?」

 

「ビニール袋はありますが、殺虫スプレーのようなものは買ってなくて………………」

 

「はぁ~……………(クソでかため息)仕方ない、俺が素手で行ってくるわ。どーせ上杉はビビッて行かないだろうし」

 

「そ、そんな事な「じゃあやる?ティッシュ越しとは言え素手で掴む事になるけど」……………………遠慮しておく」

 

と、言う訳で『時間が惜しいし勉強しとけよな~』と一言残してビニール袋とティッシュを持ってGハンター総悟は駆除に向かうのだった。

 

「………………よし、それじゃあ再開す『ピンポーン♪』……………………今度は何だ?Gの次はH(ハチ)か?」

 

またも邪魔をされて若干不機嫌な上杉。代表して五月が玄関の方に行き、そして入って来たのは─────────

 

「失礼するよ」

 

「「「「!?」」」」

 

現れたのは五つ子の父親、マルオであった。突然の訪問にその場に緊張が走る。

 

「もうすぐ全国模試と聞いてね。彼を紹介しに来たんだ。入り給え」

 

「お邪魔します。突然の訪問、申し訳ない」

 

入って来たのは何と武田だった。武田がこの場にいる理由が分からず皆が困惑していると、マルオはとんでもない事を口にする。

 

「今日から上杉君に代わって、この武田君が君達の新しい家庭教師だ」

 

「はぁ!?」

 

「どういう事でしょうか?説明してください」

 

「上杉君、先の試験での君の功績は大きい。成績不良で手を焼いていた娘たちだが、優秀な同級生に教わることで一定の結果を残してくれた」

 

「…………………それなら代える必要は無い筈ですが」

 

「それは、彼が未だ優秀ならの話だ。火野君は学年1位をキープしているが、残念ながら上杉君はどの科目も点数も順位を落としている。…………………そして、上杉君に代わって火野君と同点で新たに学年1位の座に就いたのが彼だ。ならば、家庭教師に相応しい優秀な同級生と言うのは上杉君よりも彼の方だろう、と言うわけだ」

 

一応筋は通っている理屈ではあるので、迂闊に反論が出来ずにいると─────────

 

「ふっふっふ……………くくく……………………………ヤッター!勝った!勝ったぞー!イェス!オ~!イェス!」

 

狂喜乱舞する武田を何だこいつ的な目で見る五つ子の4人。彼女達には目もくれずに武田は上杉の方を向く。

 

「上杉君!長きにわたる君とのライバル関係も今日で終止符が打たれた!ついに僕は君を超えた!火野君とは決着がつけられなかったのは残念だが、これで目標その1は達成された!この家庭教師も僕がやってあげよう!始まりは」

 

「(急にテンション高くなりやがった………………目標その2は火野に勝つって所か……………………と言うか)ちょっと待て。その前に、お前は誰だ」

 

「…………………………………えっ。いや…………………………ずっと2位で君と火野君に迫っていた武田祐輔………………………」

 

「突っかかってきてたのはそう言う事か。悪いが、今まで満点しか取った事が無かったから2位以下は気にも留めなかったわ。悪い」

 

「2位以下ッ!……………………2位以下…………………………」

 

精神的なダメージを受けて急にテンションが低くなる武田。何か憐れである。

 

「……………………そもそもとして、今フータローを雇っているのは私達。家庭教師を変えるとか、何を言われようと関係ない」

 

「そうよ!三玖の言うとおり何を言われようとフー君を」

 

「いい加減気付いてくれ」

 

先ほどの狂喜乱舞の時とは違って、何処か冷たさも感じるような冷静な口調で武田が二乃の言葉を遮る。

 

「上杉君が家庭教師を辞めると言うのは、他ならぬ上杉君の為だ。君達のせいだ。君達が天才だった上杉君を凡人にしたんだ!」

 

「「「「………………!」」」」

 

武田の言葉に彼女たちは何も言えなかった。上杉が点数を落とした要因として、自分たちの存在が挙げられるのは彼女達にも分かっていたからだ。

 

「この際だからはっきりと言わせて貰おう。君達は上杉君の

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

重荷にな「獲ったどォォォォォォォォー!」ドフゥ!?」

 

その時、不思議な事が起こった!叫び声と共に武田の後ろに位置していた隣の部屋のドアが勢いよく開き、そのドアによる迫真の一撃を喰らった武田が勢いよく吹っ飛んで行った!

 

「ちょこまかと逃げるから手こずりましたよ~も~」

 

現れたのはシリアスブレイカー(総悟)なのは言うまでもない。

 

「ところで、ドア開けたら何かとぶつかった気がしたんだが」

 

「あぁ、それはそこで倒れてるあいつに当たっただけよ」

 

尻を抑えている武田を見ながらそう教える二乃。心の中では『ナイス、火野!』と少しスカッとしてるのは誰も知らない。

 

「おー、すまんすまん。まさかドアの前に人がいるとは予想もしてなかったわ」

 

「い、いいって事さ火野君……………………君と僕の関係だ、これくらいどうってことないさ……………………」

 

「そっかそっかー…………………………………ところで話は変わるんだが、斉〇壮馬君よォ…………………」

 

穏やかな雰囲気から一転、総悟は般若のような表情を浮かべる。

 

「……………って、誰だその人は!君にも僕の事を認知して貰ってなかったのかい!?取り敢えず僕の名前は」

 

「今はそんなんどーでも良いわァ!!さっきから黙って聞いてりゃ彼女たちに重荷だの、君たちのせいだの、アニオタきもいだの、好き勝手色々と言いやがって!!」

 

「ヒッ…………………さ、最後のは言ってな」

 

「うるさいんじゃい!人に言っていい事と悪い事の区別がつかない奴にはGを食わしてやらァ!!」

 

「ヒィィィィィィィ!?」

 

「お、落ち着け火野!Gは食い物じゃないぞ!流石に斉藤が不憫だからそれはやめとけって!な?な?」

 

「だから僕は武田だッ!!」

 

「………………しょうがねぇな(悟空)。これくらいで勘弁してやっか(寛大)」

 

「……………………えっ?」

 

今にもGを食わされる覚悟をしていた武田はさきほどの般若の表情から一転した総悟に対して間の抜けた声を上げ、それに対して総悟は呆れ気味で返す

 

「あのさぁ……………Gを食わせるとか鬼畜と言うか人間の屑の所業でしょうが。んなこと流石にやるわけないでしょーが。俺はそう言う奴じゃありませんー」

 

「あら、あんたらならそう言うのもやるんじゃないかしら?」

 

「えぇ………………二乃は俺の事を人間の屑だとでも思ってるんですかねぇ………(困惑)」

 

「冗談よ。……………………それよりも、パパ。話の続きをしましょ」

 

「!…………そ、そうだね」

 

怒涛かつカオスな展開に呆気を取られていたマルオも二乃に促されてやっと我に返ったようだ。

 

「とは言え、今回の話に関しては俺は無関係か。まぁ、俺は既に家庭教師に相応しい優秀な同級生だからね、しょうがないねって事で良いんですよね、マルオさん?」

 

「………………まぁ、そう言う事になるね(彼は学校のテストだけじゃなくて模試でも今までずっと学年1位だから、学力面だとほんとに付け入る隙がないんだよなぁ………マジで優秀過ぎるでしょ、この高校生………)」

 

「しれっと自慢アピールしやがって…………………しかもそれが事実ってのが腹立たしいが……………………………さっき斉と……武田が言っていた事は全くもってその通りだな」

 

しれっと言い間違い掛けているが、本人は未だに放心状態から立ち直っていないのかツッコミは無かった。

 

「だが、去年の夏まで…………………………いや、この仕事を引き受けてなかったら俺も凡人になれてなかっただろうな。そして、世の中にこんな馬鹿共がいるって事も、俺も案外馬鹿だって事とかも知れなかった。それらを知る事が出来たのは、俺の人生にとって確実にプラスになったと断言できるな」

 

「上杉風太郎…………… おめえ……なんかちょっぴり、カッコイイんじゃあねーかよ………」

 

どこぞのリーゼントス〇ンド使いみたいな感じで総悟も主人公みたいに良い感じの事を言う上杉に感心してしまう。

 

「こいつらが望む限り俺は付き合いますよ。解放なんて願い下げです」

 

「…………君にそこまでする義理はないだろう」

 

「かもしれません。けど、この仕事は俺にしか…………………いや、俺達(・・)にしかできないって自負があります!」

 

「そうだよ(便乗)」

 

「俺とこいつらの成績は2度と落としはしません。俺の成績に関してはご心配おかけしました。そのお詫びにと言っては何ですが、俺がこいつらの家庭教師に相応しい事を証明して見せます!」

 

「…………ほう。それはどう言った形でだい?」

 

「次の全国模試で、俺は武田に勝って学年1位に……………………いや、全国1位に!」

 

「「「「!?」」」」

 

「それマ?」

 

その宣言に二乃ら4人と総悟もそれぞれ大小の差はあれど、驚きの反応を見せる。

 

「そして……って、何しやがる!?」

 

「上杉君、全国1位は無茶ですって!」

 

「もう少し現実的に…………」

 

「学校内で1位なら今までと一緒じゃねーか!」

 

何か言おうとする前に口を塞がれる上杉。結局、色々と議論して『全国10位以内に入る!』に変更となった。上杉は不服そうだったが。

 

「……………大きくでたね。いくら2人体制とは言え、5人を教えながら全国10位以内なんて無理に決まっている」

 

「そう断言するのは時期早々ってやつだろ。だって、可能性はゼロじゃないんだし。マルオさん、この条件でどうですか?」

 

「……………………良いだろう。もし次の全国模試で武田君に勝ち、全国模試で10位以内に入れたならば、上杉君を家庭教師に相応しいと認めよう」

 

と、言う訳で。上杉vs武田のシン・川中島の戦いが始まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総悟「あー、そうだ。君らの勝負とは全然関係ないんだけど、さっきの武田君の言動が大変ムカついたから次の全国模試で完膚なきまでにフルボッコで叩きのめす事にしたから☆」

 

武田「えっ」

 

総悟「だから、上杉もついでに叩きのめすんでよろしくね☆」

 

上杉「フッ…………………そうこなくちゃな!」

 

マルオ「(彼の事だからやっぱりそう来るよなぁ………………)」

 

《速報》ダー〇ライ(総悟)参戦!

 

to be continued…………




今、神がメインの話を書いてるんですけど、これが中々終わらん。書いてるうちに『あれ、これじゃないな』って感じでマジで終わらん。ついでに予防線を張らせて貰うと、神の話はそんなに長く続けるつもりはないのと(たぶん4話くらい?)、本編のようなクオリティは期待しないでください。まぁ、極力面白いのを書きますが、勿論。

力を入れたい星奈さんの方に力は残しておくって事で4649。

それでは、また次回で。武田は生き残れると良いけどなぁ………………(遠い目)


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変化球or直球(ストレート)

あのですね……………………上杉vs武田vsダー〇ライと7人での戦いの間にもう一つ話があったのをすっかり忘れてました。だいぶ前に仕上げてたのにね。まぁ、ちょうどその時に病気でぶっ倒れたからね、しょうがないね(正当化)

と、言う訳でこちらをまず投稿。前回言った神様編は間もなく準備が整うのでしばしお待ちを。

何を隠そう、今回の話は本家で言う所の良くも悪くもインパクトを与えた一花姉さんが三玖の姿でやらかす部分です。何でこんな大事な話を忘れるんだかね。

さぁ、この小説の一花姉さんはどうなるのやら。

それではどうぞ。


前回までのあらすじ!

 

上杉と武田が全国模試で対決する事になり、その対決に(いないもの扱いだけど)総悟が個人的に参戦!

 

勝つのは上杉か、武田か、総悟か?

 

作者としては『勝手に戦え!』、もしくは『もう結果だけ教えろ!』って感じなんですけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日。

 

「いやー、ウイングガ〇ダムってほんと不遇な扱いやなぁ…………………」

 

上杉は登校中も参考書を片手にブツブツ言っているのに対して、このアニオタ総大将(適当)は色々とネタが豊富な新機動戦記ガ〇ダムWについて呟く始末。模試に対する温度差が太陽の表面温度と南極の気温位の差がある(大嘘)

 

「ソウゴ君、おっはー。これ、差し入れなんだけど飲むー?」

 

「具体的には海に沈んだり、自爆させられたり……………………………」

 

「……………………あ、あれ?無視?お、おーいソウゴ君ー?」

 

「挙句の果てには乗り捨てられたり…………………………………(不遇な扱いに)涙がで、出ますよ(迫真)」

 

「ソ・ウ・ゴ・君!」

 

「あん?何だ一花姉さんか。おはー。朝から大きな声を出すあたり、元気そうでなりよりで」

 

「別に出したくて出してる訳でもないんだけどなぁ…………まぁ良いや。うん、おはよー」

 

そう言って笑みを浮かべる一花。普通に可愛い。

 

「あとこれ差し入「センキュー!」…………………………おおぅ、最後まで言わせてくれない程の良い飲みっぷりですねー(取り敢えず差し入れ作戦は成功………………………なのかな?)」

 

「ふー……………………あれ、眼鏡掛けてる……………?」

 

「おっ、気づくのが早いね~。どう?少しは知的に見えるでしょ?」

 

「さぁ、興味ないね(ク〇ウド)………………………………不満そうに顔をふくれさせるなって。多少は知的に見えるよ、たぶん」

 

「ふーんだ。どうせ私は知的じゃないですよーだ」

 

「分かった分かった、一花姉さんは天才天才(棒読み)」

 

「もー、わざと棒読みしてるでしょー」

 

不満そうに顔をふくれさせながら一花。こちらも普通に可愛い。

 

「さて、ソウゴ君をからかうのはこの辺にしておいて、と。昨日の事聞いたよ?またお父さんとひと悶着あったんだって?」

 

「(どっちかと言うとからかわれてたのそっちじゃ………………)まぁ、俺は公的には無関係だけどな」

 

「フータロー君対武田君かぁ………………武田君とは私たちは2年の時に同じクラスだったけど、結構勉強もできてザ・好青年って感じだったよね」

 

「その好青年を模試で完膚なきまでにボコボコに叩きのめしてやるのが今から楽しみだぜ………………(暗黒微笑)」

 

「わー、ドSモードに入ってるー…………」

 

「そして、ユー達も勉強漬けなんで覚悟しておいてね☆」

 

「わ、私達もかぁ………………はぁい。……………それにしても、フータロー君の誕生日はもうすぐなのに言いづらくなっちゃったなぁ…………………」

 

一花がそう呟くと総悟も『確かに状況が状況だしねぇ』、と賛同する。

 

「全国で10位以内かつ武田君に勝たないといけないからな。誕生日プレゼントを渡すのは勉強の妨げに少なからずなる可能性はあるからなー…………………………………模試を乗り越えてから渡すとかが良いんじゃない?」

 

「んー……………………それもそうだね。後で皆にも提案してみるよ」

 

「………………………さて。話が一段落ついた所で、さっきから気になってたんだが、何で眼鏡をつけてたん?」

 

「あー、一応これ変装なんだけよね」

 

「変装、と言うと?」

 

「ほら昨日、私の出た映画の完成試写会があって……そこそこテレビで取り上げられたみたいだしさ…………………お、覚えてる?あの時の映画なんだけど………………………」

 

「…………………あぁ、思い出したぜ。『ここのケーキ屋さん一度来てみたかったのです〜』とか『う~ん。タマコには難しくて、よく分からないのです~。それよりもケーキを食べるのです~』とかやってたアレか………ふっ、ふふふふっ……………思い出しただけで草生える………………………………」

 

「もー!恥ずかしから再現しないでよー!しかも再現度高いし!」

 

この男の声真似はマジで精度が凄い。前にも中野パパの声真似で彼が普段言わなそうなことを言いまくり、五つ子や風太郎達の腹筋を大崩壊させたエピソードがあったりする位だ。

 

「(──────あぁ、本当に楽しいなぁ……………………こんな時間がずっと続けば良いのになぁ……………………)」

 

「おっ、皆だ。追いついたみたいだな」

 

「ッ─────」

 

しかし、現実は無常。楽しい時間に限って長くは続かないものである。

 

「はえー、五月はまーた何か食ってやがりますよ(呆れ)」

 

「(…………やめて。他の子に目を向けないで。ずっと2人きりなんて無理なのは分かってる。皆と過ごす時間も嫌いじゃない…………………………………けど。今は。今だけは………………)待って」

 

一花は彼の制服の手を掴んでいた。

 

「ねぇ、今日2人でサボっちゃおうよ」

 

そんな事を口に出していた。それを聞いたソウゴは──────

 

「え、やです(即答)」

 

「(即答ッ!?)いいじゃん少しだけ!今日1時間目体育だし!」

 

「その体育があるからサボりたくないの!今日はテニスだからな。武田を誘ってボコボコにしてやるのが楽しみだからなぁ………フフッ…………フハハハハハッ………………楽しみだなぁ……………………!」

 

「(………うん、これ絶対首を縦に振ってくれないやつだ)」

 

この後の1時間目で武田はテニスでボコボコにされる事が確定しているのは言うまでもない。テニスの〇子様を見ている総悟と対戦する時点で勝負はもう既に決まっているのだ(意味不明)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つーか、サボりたいとか何か嫌な事でもあったん?」

 

「いや、そー言う訳ではないんだけど…………………………まぁ、何でも無いよ」

 

「そ。なら良いんだ「あ、一花さん!」ファッ!?」

 

教室の扉を開けた瞬間、大歓声が起こった。

 

「中野さん、朝のニュース見たよー!」

 

「女優ってマジ!?」

 

「うちのクラスにこんなスターがいたなんて知らなかったぜ!」

 

あれ、もうバレてる!? 

 

「バレてて草。そんなに大きな映画だったん、あのタマコちゃん?」

 

「ま、まぁ意外とね………」

 

「そうには見えないんですがねぇ…………………………でもまぁ、オーディション受けて良かったな。もう立派な女優だよ、一花姉さんは」

 

「!」

 

…………………こんな単純で良いのかな?君が私を気にかけて覚えていてくれた。たったそれだけが、クラスメイトのどんな讃辞よりも胸に響いてしまうんだ。

 

「おぉ、武田。おはよー………………………今日のテニスでお前を〇す(生存フラグ)」

 

「!?」

 

……ソウゴ君、私の中で折角良い感じの雰囲気だったのに今ので少し台無しになったんだけど…………………………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の話題でクラスは1日中持ちきりだった。そしてずっとひっぱりだこだったので、だいぶ疲れた。

 

「一花、先に図書館行ってるよー」

 

「うん、分かった。ごめん私そろそろ……」

 

「えー!」

 

「もう少しだけ良いじゃーん!」

 

「もっと話聞きたーい!」

 

「ご、ごめんね!」

 

私はダッシュで飛び出すと用意しておいた変装セットで三玖に変装して、何とかクラスメイトを蒔く事に成功するのだった。

 

「(ふぅー……………………さて、私も図書館に)」

 

「ふぁぁ…………危うく寝落ちする所だったぜ………………………まぁ、これも全部昨日のアニメの展開が凄すぎたのがいけないんだよなぁ………………」

 

あ、ソウゴ君だ。どうやら私にはまだ気づいてないみたい。

 

「にしても、一花姉さんは今日は人気者で大変だったなー。三玖が言っていた公開日まであと少しだし、プロモーションとかガンガンやるだろうし、こりゃクラス内だけじゃなくて校内でも有名人となるのも時間の問題だろうなぁ」

 

!…………………そっか。三玖から………………あれから色々とあったもんね。私の事だけ、何ていかないか…………………………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………いやだ。

 

彼には私の事だけを見ていて欲しい。私だけに夢中になって欲しい。…………………その為にはどうすれば良い?

 

『──────お好きにどうぞ。負けないから』

 

林間学校での三玖の言葉が蘇る。お好きに、か。

 

『──────ちなみに、その同じ人の事を好きな人がいたら二乃さんはどうします?』

 

『そりゃ蹴落としてでも叶えますよ、勿論──────』

 

家族旅行での星奈さんと二乃の会話が蘇る。…………………蹴落としてでも叶える、ね。

 

今の私は三玖の恰好だ──────────これはチャンスだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ソウゴく……ソウゴ」

 

「ん?あれ、三玖?先に行ってたんじゃなかった?」

 

「まぁ、ちょっと色々あって。そんな事よりソウゴ、教えてあげる」

 

「教えるって…………………何を?」

 

「一花、ソウゴが好きだよ」 

 

「……………………え?」

 

「凄くお似合いだと思う。私、応援するね」

 

「……嘘…………………………だろ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘘じゃないよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────なんて、以前の私ならやっていたかもしれない。

 

「ソウゴ君」

 

「ん?あぁ、一花姉さんか。今日は大変だっ…………………………………ん?何そのかつら?」

 

「あぁ、これは変装用。ちょっと蒔くのに使ってね」

 

「あっ、ふーん(察し)…………………じゃけん、さっさと図書館で勉強しましょうねー」

 

「はーい」

 

私がそう言った手段(・・・・・・・)を取らなかったのは、あの言葉が頭の中に残っていたからだ。それは家族旅行の最終日にソウゴ君が言ってくれた言葉。

 

『──────────ぶつからなきゃ伝わらないことだってあるよ。例えば、自分がどれくらい真剣なのか、とかね』

 

三玖の姿を借りて言うようではぶつかったにすら入らない。だって、それは私の言葉じゃないから。私自身は何も想いをぶつけてないから。それに、三玖との関係を壊すようなやり方なんて間違いでしかない。

 

そう、私自身(・・・)がぶつかっていかなくてはならないんだ──────────彼の事が好きならば。

 

「………………………ソウゴ君」

 

「ん?」

 

「……………………。うんん、やっぱ何でもないや」

 

「おk」

 

………………………今はまだ無理。でも、いつかこの一歩も必ず踏み出してみせる──────。

 

to be continued………………




一花姉さんが闇落ち回避したのは総悟のおかげと言うよりもSAOのお陰。と言う訳でみんなも次の映画も見に行って差し上げろ(命令)にしても、マザーズ・ロザリオ編は涙がで、出ますよ………………。

皆さんもコロナには気をつけてくださいね。最近は悠木碧さんだったり、鬼頭明里さんなどの有名声優さんも感染してますからね。

それでは、また次の話で。


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7人での戦い

超遅れた理由。

その1 病気に倒れて1ヶ月近く苦しんだ。
その2 その間の諸々のしわ寄せが一気に来た。
その3 時間が無くなった。

以上です。活動報告で言えばよかったんですけど、最近まで存在自体を忘れてました。

これからも無理なく進めていくのでよろしくお願いします。

では、久しぶりにどうぞ。


「モキュモキュ……………………」

 

おら総悟。さっきまで図書館で皆でお勉強してたんだけど、一旦休憩って事で今はモグモグタイムでありまする。食ってるのはアンパン。今日の朝、漫画を買いに行くついでに寄ったコンビニで安売りしてたので買った。

 

「あー………………………糖分補給ですわ…………………………あー……………………」

 

武田に圧勝する為にはトップ5くらいには入らなければならないと俺は予想している。その為にはガチで勉強せにゃあかんのだが、自分の事だけではなく三玖らの面倒も見ながらなので、疲れを感じてないと言えば嘘になる。

 

が。それでも頑張って両立させるのだ。それでも僕はやるマゲドン…………………………………あんま面白くないな。

 

「あ~、迷ってたら遅れちゃった」

 

あ、二乃だ。こいつめ、どこに行ってやがったァ………………………ん?何だその荷物は?

 

「このツンデレ野郎、何だそれ?」

 

「誰がツンデレよ!……………………これは疲労回復効果のアロマよ。もうすぐあいつの誕生日だし」

 

「………………………ん?上杉の誕プレって模試の妨げになるから模試が終わったらするんじゃなかったっけ?」

 

「あぁ、そう言えば一花がそんなメッセージ送ってたわね。でも、あげたいものはあげたいもの。………………………あれ?てことは、私だけって事よね……………………………ふふっ、効果絶大ね

 

こ、こいつ…………………………………抜け駆けする気満々じゃねーか!

 

「おま…………………………汚い大人やな!(ヒ〇ル)人間の屑が、この野郎(大袈裟)」

 

「いや、そこまで言う!?」

 

「まぁ、大袈裟と言えば大袈裟だが。渡したい気持ちも分からんでもないが、ここで抜け駆けすれば渡すのを模試後まで我慢した正直者が馬鹿を見る羽目になるのはどうかと思うんですけど(正論)」

 

「うっ…………………そ、それは………………………」

 

完膚なきまでのワイの正論に二乃は押し黙ってしまう。ここでもう一押し。

 

「それともアレか?抜け駆けしないと喜んでもらえないと?上杉に好きになってもらえないと?全員一斉に渡したら1番になれないんだー。ふーん……………………(煽り)」

 

「んなわけないでしょうが!……………………ふん、良いわ。あんたの口車に乗ってあげ…………………………………ん?あんた、今なんて言った?」

 

「ふーん……………………(煽り)」

 

「それより前よ!」

 

「全員一斉に渡したら1番になれないんだー」

 

「その1個前よ!」

 

「上杉に好きになってもらえないと?………………………やっべ」

 

ここで漸く口を滑らせた事に気が付いた。これではまるで、二乃が上杉が好きな事を知っているかのようだ。いや、『ようだ』と言うのは正しくない。もうほぼ確信してはいたのだが。

 

「な、何で私がフー君を好きって知って……………あっ!」

 

トドメを指すかのように二乃は自爆してて草。これでほぼ確信ではなく、100%の完全なる確信に至ってしまったじゃないかー(棒読み)

 

「まぁ………………何かふつーに好きなんかなー、って。引っ越したあたりから何か二乃の上杉を見る目が違って見えたし、何かあだなで呼び始めるし、バイト先も同じところにするし、今日だって抜け駆けしようとするし…………………………ねぇ?」

 

「……………そう言えば、あんたは妙に鋭いのをすっかり忘れてたわ…………………………………」

 

ここまで来たら誤魔化しようがなく、二乃はあっさりと認めるよな言動を口にする。

 

「まぁ、取り敢えず本人は勿論、誰にも言うつもりはないから安心しろ。まぁ、取り敢えず頑張れー」

 

「……………言われなくてもそのつもりよ。あんたが好きそうな言い方すれば、『欲しいものは全部手に入れる』ってところかしら」

 

「いいねぇ、その言い回し。最高だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

 

「わっ!…………………ビックリしたー、上杉さんかと思ったよ~」

 

二乃と図書館に戻ると、四葉が折り紙で鶴を作っていた。

 

「何をしとるん?」

 

「上杉さんの誕生日プレゼントの千羽鶴の作成です!あと495個作れば完成です!上杉さんがずっと元気でいられるようにって願いを込めて作ってます!」

 

マジか。1人でもう500個近く作ったのかよ、凄いな…………………。

 

「こりゃ上杉もビックリするな」

 

「はい!模試の後に渡すのが楽しみです!」

 

「そうだな。『模試後』に渡すのが楽しみだよねー、二乃?」

 

「……………………そーね」

 

その反応を見て、一花は二乃が抜け駆けで渡そうとしていたのを察して、二乃らしいと心の中で苦笑するのだった。

 

「とは言え、当日は何もないのも少し寂しい気もする…………………」

 

「………………………ふむ。まぁ、確かにねぇ…………………………………あぁ、そうだ名案を思いついたで」

 

「何よ、名案って」

 

「こいつさ」

 

俺は四葉が折った鶴を指さして、名案の概要を説明するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4月15日 pm18:00

 

ワイは帰宅して勉強していたが、少し疲労を感じたので気分転換がてらひとっ走りしてコンビニにやって来ていた。何となくラスト1個のピザまん買ってコンビニを出るとーーーーーーーーー

 

「誰かと思えば火野君でしたか」

 

「おー、五月か。例のアレ(折り鶴)は渡してきたのか?」

 

「えぇ、ちゃんと渡してきましたよ」

 

「おk」

 

それなら良かった。本命のプレゼントはもう少し先だが、まぁちょっとした誕生日プレゼントにはなっただろう。

 

「ところで、火野君が持っているのはピザまんですか?」

 

「まぁ、そうだけど……………………まさか、金欠だから俺から奪おうと」

 

「そんな事はしません!金欠なのは少し否定できませんが………………………私も食べたくなってきたので買ってきますね!」

 

「あー…………………これでラスト1個だったんだよなぁ…………………………………」

 

そう告げるとこの世の終わりみたいな表情を浮かべる五月氏。そんなに食いたかったんか………………………。

 

「……………………しゃーないな。半分だったらあげてもいいけど」

 

「えっ、良いんですか!?火野君、あなたは神様ですか!?」

 

「大袈裟すぎる…………………すぎない?」

 

と、言う訳で近くの公園のベンチに座ってモグモグタイムである。

 

「うん、美味しかったわ」

 

「ふぅ…………………ごちそうまでした。この御恩は必ずお返ししますね」

 

「…………………じゃあ、お返しは模試で良い点数を取ってくれれば良いよ」

 

「!………………………えぇ、任せてください」

 

「ふむ、頼もしい限りだ。感動的だな。だが無意味だ…………………………は?意味が分からんわ。何言ってんだ、こいつ(キレ気味)」

 

「何故自分にキレてるんですか…………………………………そう言えば、先日塾講師をされてる下田さんという方の元へ出向いてまいりました」

 

「ほー。バイト先が見つかったんか」

 

「バイトと言えるのか分かりませんが、下田さんのお手伝いをしながら更なる学力向上を目指そうと思っています」

 

「へー…………良いんじゃない?将来教師になりたいなら、確実にいい経験になるだろうし」

 

「えぇ、私もそう思っています。……………………ところで、火野君の方はどうですか?上杉君と武田君に勝てそうですか?」

 

「……………………それは見てのお楽しみ、ってね」

 

はぐらかされて五月の不満そうな表情を見ながら俺はニヤッと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────────そして2週間後の模試当日。少し早めに家を出ていると仕事前の星奈さんと遭遇した。

 

「ここ最近の頑張りは知っていたので、激励をと思いまして待っていました。模試、頑張ってくださいね」

 

「いやー、星奈さんに頑張れと言われちゃ頑張るしかないっすねー」

 

「どうですか、調子は?」

 

「んー……………………昨日見た深夜アニメの最終回がマジで最高でした」

 

「つまり準備万全と言う事ですね」

 

流石星奈さん、分かってらっしゃる。

 

「やることはやった、気合は十分、調子は絶好調…………………………誰にも負ける気がしないですね」

 

「えぇ、私は既に総悟様の勝利を確信を第六感がそう告げています。…………………ですが、もしそれを阻むとすれば」

 

星奈さんが視線を向けた先には三玖ら5人、そして上杉の姿が。

 

「ちょ、揃いも揃って目の隈が凄いな」

 

「昨日も最後の追い込みしてたから少し眠い……………………ソウゴはどう?」

 

「アニメの最終回見て普通に寝た」

 

「要は絶好調って訳ね」

 

流石は二乃、分かってらっしゃ「はははは!上杉君に火野君!ひとまずここまで逃げずに来たことを褒めておこう!」……………………この朝からくっそうるさい声の主は1人しかいねぇ!

 

「総悟様、階段の上で立っている彼が総悟様が言っていた方ですか?」 

 

「えぇ、そうです。今回上杉と対決する斉藤祐輔です」

 

「だから僕は武田祐輔だッ!火野君、君わざとやっているだろう」

 

「うん(素直)」 

 

「清々しい程あっさり認めるね!?……………………兎に角、君達は後悔することになるだろう!あの時逃げておけば良かったと!」

 

「ほんと朝から元気ね……………………」

 

「むぅ………………………ソウゴとフータローはあなたに負けない」

 

「君達には話していない!」

 

…………………………………ピキッ。

 

「ここが僕と君との最終決戦場!いよいよ「Fuck You…………ぶち〇すぞ……………!」ヒッ!?」

 

三玖に対しての態度が気に入らなくてどこぞの中間管理職の人が出掛けたが何とか抑える。ステイクールよ、総悟!

 

「………………………失敬、俺の中の利〇川が出掛けてね………………悪いが武田、既にこの時点で勝敗は決してるんだよ。こっちは7人で戦ってるんだ。スーパーラッキーセブンの時点で勝ち確みたいなもんだからな」

 

「……………………………ふふっ、どうかな。それは君たちの弱さだ(火野君、怖ッ!本当に同い年なのか………………?)」

 

「さぁ、そいつはどうだかね。まぁ、全ては模試で明らかになるさ…………………………………じゃけん、さっさと教室行って最後の追い込みしましょうねー」

 

「お、おう(…………………………あれ、これって一応俺と武田の対決だよな?当事者である筈の俺の影が薄いのは気のせいか…………………?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして遂に。

 

「試験、始め!」

 

全国模試と言う名のシン・川中島の戦いが始まった。

 

to be continued…………………




あらかじめ言っておきますが、次回はもう結果発表から始めるのでそのつもりで。トイレでの下りも書いてたんですけど、大して新鮮味がなかったのでカットしました。

それでは、また次回でお会いしましょう。……………………………皆もマジで体調には気を付けてな。


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迫る黒い影

…………………………………えー、お久しぶりです。何とか生きてました。

まぁ、理由はアレです。忙しすぎてヤバい。以上です。

ブラック通り越してダークレベルの忙しさです。はー……………………こんなペースで終るのかねぇ。

個人的に未完のままで放り出したくないんです。始めたからには完結させたい主義なので。なので、基本的に執筆を辞める気はありません。…………………………まぁ、一切更新されなくなったら書く気失せるレベルの何かがあったと思ってく察してださい。

さぁ、そんなわけで本編をどうぞ。…………………………………そもそも皆、前回のお話覚えてる?










模試から約1ヶ月後。

 

「旦那様、先月行われた全国模試の結果が届きました」

 

「ご苦労。それで、結果は?」

 

「お嬢様方は個人差はあれど前年より大幅に成績を伸ばしております。勿論お嬢様方の努力があっての事ですが、お2人による家庭教師は大成功と言えるでしょう」

 

「………………………」

 

マルオは無言でタブレットをスクロールさせる。

 

「武田様は全国8位の快挙。………………………そして上杉様は驚異の全国3位でした。旦那様にとっては残念な報告となるかもしれませんが、彼の宣言通りとなりました」

 

「……………………おかしな答案だね。前四科目はノーミスの満点だが、最後の科目のラスト数問だけ白紙で提出とは」

 

「火野様からの報告によれば、突然気を失うように寝てしまったと。試験勉強で根を詰めすぎていたのかもしれません。しかし、もし全問解いていたとしたら…」

 

「さて、ね。そんなこと考えても、仕方ないよ。……………………と言うか、江端は火野君と連絡先を交換していたのかい?」

 

「えぇ、去年の12月頃の諸々(家出作戦)で連絡を取る為に交換していました。そして、当の火野様ですが──────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何と全国1位でございます

 

「………………武田君と上杉君を倒すと宣言していたとは言え、まさか全国の頂点に立つかぁ……………マジかぁ……………(語彙力喪失)」

 

別に総悟は上杉のように勉強熱心と言う訳ではない。学校のテストレベルならいざ知らず、全国模試レベルにもなると凡ミスの1つや2つ程度はしたりする事もあってオール満点は今までなかった(それでも学校内では1位だったが)。

 

だがしかし、『武田にイラッとしたから』と言う不純と言えば不純かもしれない動機とは言えガチモードになった結果、宣言通り武田や上杉だけではなく全国の猛者も蹴散らして頂点に立ったのである。YDK(やればできる子)と書いて総悟と読むのだ。

 

「僕でも学生時代は全国模試1位なんてとった事はなかったのに、本当に凄いなぁ…………………」

 

「彼は旦那様よりも頭が良いのかもしれませんな、ほほほ」

 

「………………………いやいや、江端。そう決めつけるのは時期早々だよ。だって、そもそも時代が違うし?僕らの頃は模試とかの難易度も(以下略)」

 

江端はちょっとした冗談のつもりで言ったのだが、プライドが高い少し残念な大人であるマルオにはそれが伝わらなかった模様。

 

結局、目的地に着くまでマルオのマシンガントークは続くのであった。ちなみに、江端が途中から聞いているふりをして適当に受け流していたのは誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君達が10位以内に入ったとしても僕は勝つつもりでいた。8位というのは願ってもない順位だったよ。しかしまさか、その上をいかれるとはね………………………見事としか言いようがないね」

 

「そう………(適当)」

 

「上杉君は3位、そして火野君は全国1位おめでとう」

 

「どもー(適当)」

 

「ところでもうすぐ」

 

「ちょっと待て。何で俺はこんな昼間からお前とブランコを漕いでるんだ」

 

ブランコの柱に寄っ掛かりながらスマホで漫画を読みながら武田に適当に返している総悟。そして上杉は先ほどから疑問に思っていた事を漸く口にする。

 

「ははっ、昨日の敵は今日の友!これが青春なのかもしれないね」

 

「こんな昼間からキッズ達に混じって公園でブランコを漕いでるのが青春とは草を通り越して芝生える。つーか、我々を呼び出したマルオさんはまだなんですかねぇ。早くしないと武田君を焼き土下座させたくなっちゃうぜ(カ○ジ)」

 

「や、やめたまえそんな物騒な事を言うのは!冗談何だろうが、一瞬熱々の鉄板の上で焼かれながら土下座する自分を想像して鳥肌が立ったじゃないか!」

 

「あははー。……………………そういや上杉から聞いたぜ武田君よ。君、悪魔の誘惑を拒んだそうじゃないか。ちょっと見直したで」

 

「……………あぁ、模試の模範解答の話かい?当然さ、不正で手に入れた結果何て何の意味もないからね☆」

 

「ふーん…………………………お前を〇す(ヒ〇ロ)」

 

「急に何で!?」

 

まぁ実際に〇す事はなく、それから暫くして公園に似合わぬ高級車が停まる。そこから出てきたのはマルオだった。

 

「待たせてすまないね。少し長話をし過ぎて喉が渇いたものだから、コンビニに寄って飲み物を買っていたのでね」

 

「(やっぱ医者って大変なんやなー………………)」

 

実際はその長話に医者の要素は一ミリも絡んだないのだが総悟は知る由もない。

 

「まずは武田君、8位おめでとう。出来の良い息子を持ててお父さんも嬉しいだろう。医師を目指してると聞いたが、良かったら僕の病院に……」

 

「申し訳ありません。光栄な話ではありますが、僕の進路についてはもう少し考えたいと思っています」

 

「そうかい。良い返事を期待しているよ。……………次に火野君」

 

「はい」

 

「まさか全国1位を取るとはね。これには素直に驚かされたよ。おめでとう」

 

「ありがとうございます」

 

「………………………さて、上杉君。全国3位おめでとう。君は宣言通り全国10位以内をやってのけたと言う訳だ」

 

「ど、どうも………………」

 

「君は以前、『この仕事は俺たちにしか出来ない自負がある』と言っていたが、その通りかもしれないな。…………………………報酬は相場の5倍で、アットホームな職場。家庭教師を2人雇用したいと思っていてね。上杉君に火野君、やるかい?」

 

「!……………勿論!言われなくてもやるつもりだったんですから、給料が貰えるなら願ったり叶ったりです!」

 

「何で断る必要があるんですか(正論?)…………………………………勿論、やらせていただきますとも」

 

『《朗報》ワイ将軍、再び家庭教師の雇用が決定ww』のタイトルのスレが総悟の脳内に建てられ、同時に完全勝利BGMのUNI〇ORNが流れる。そんな状況はマルオは知らず、言葉を続ける。

 

「では、当初の予定通り卒業まで」

 

「あ、その事なんですけど。成績だけで言えばたぶん卒業だけなら問題ないです」

 

「『大丈夫だ、問題ない(イー〇ック)』みたいな感じなんですよね。別にボコボコに負けて時間が巻き戻るフラグとかではなくて」

 

「………………そうかい」

 

マルオは総悟のよく分からない例えには突っこまない事にした。聡明だ。

 

「それでいいと思っていましたが、五月の話と武田の話を聞いて思い直しました。次の道を見つけてこその卒業!あいつらの夢を見つけてやりたいと思っています」

 

「ほー………………………奇遇だねー、俺も似たようなこと考えてた」

 

「………随分な変わりようだね、上杉君。就任直後の流されるまま嫌々こなしていた君とは思えないが」

 

「し、知っていたんですか…………………」

 

「そりゃ、初日の電話でのやり取りを聞いてれば誰でも分かるだろ。あの頃が懐かしいね~。あの時、お前が無理とか言い出しそうだったから、ゴールデンボール(意味深)を掴んでノックダウンさせたっけ。良い思い出だね?」

 

「少なくとも俺にとっては良い思いでじゃないけどな!?失言しそうになった俺にも非はあるけど!」

 

「………………(何となく距離を取る武田)」

 

「(………その光景を想像しただけで鳥肌が………)ま、まぁ間違ってる訳でもないし、どんな方針を取ろうと構わないさ。だが、君達はあくまで家庭教師だ。娘達には紳士的に接してくれると信じているよ。良いね?(威圧)」

 

「も、勿論です!俺は一線を引いてますよ!俺はね!なっ、火野!」

 

「………………さぁ?」

 

「おい、何か誤解を生むような反応は止めろ!いや、ほんとに一線は引いてますから!神に誓って!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5分後

 

「ふー、良い乗り心地だったねぇ」

 

「き、緊張したぜ…………………」

 

アパートまで載せて行った貰った総悟と上杉。総悟はリラックスしてたようだが、上杉はマルオがいるのもあってか緊張した模様。

 

「ひ、火野君に上杉君!?あの、今の車って…………………?」

 

「お、五月。喜べ、ワイらは再び雇用される事になったぞー。や っ た ぜ」

 

「えっ、そうなんですか!それは良かったですね!」

 

「Foo!気持ち~。嬉しさのあまり上杉もさっき公園で暴れて子供にドン引きされてたしな」

 

「暴れてないわ!…………………あとの4人はいないのか?」

 

「いえ、今日は皆家にいますよ」

 

と、言う訳でアパートの扉を開けると。

 

「うわっ、汚っ!」

 

「何をやってるんだ、お前ら?」

 

「あ、火野さんに上杉さん!今、大掃除してたんですよ!」

 

「主に一花とか一花とか一花とかの荷物をね」

 

「………そういや、この前Gが出て俺が素手で捕まえる羽目になったのもほぼ確実に中野一花って奴の仕業だしなァ……今でも覚えてるぜ、あの感触をよォ………(憤怒)」

 

「いや、ほんとそれは申し訳ない……………」

 

余談だが、Gが出た日の仕事帰りの一花は帰って早々、4人から強制的に荷物のある程度の片づけをさせられたらしい。

 

「ね!アロマ使った?」

 

「え?」

 

「ほら、誕生日プレゼントであげたやつよ!」

 

「…………あー、アロマね。うんうん、アロマか。良いよな、アロマ。人を選ぶけど俺はうまいと思うぜ」

 

「絶対使ってない奴の反応だな」

 

「もう!ちゃんと教えるから使いなさいよね!」

 

「つーか、そもそもアロマってなんだ?」

 

「小学生にでも分かるように言うと、何かリラックス出来るいい匂いがするやつだな」

 

「……………………もしかして、アロマを使いながら火野のプレゼントのホットアイマスクを使えば最高なんじゃ?」

 

「最高っす(確信)」

 

上杉は早めに教えてもらおうと誓うのだった。そうすれば勉強の疲れも取れて、さらに勉強が出来るからである(勉強星人)

 

「私の千羽鶴はどうでしたかー?」

 

「あぁ、お前よくあんなに鶴を作っ……………………あー、今日は試験の反省会も出来なさそうだし、俺は帰るわ」

 

「えっ、もう?」

 

「少しくらいゆっくりしていってくださいよー」

 

二乃と四葉はそう言うが、結局上杉は帰って行った。

 

「ソウゴはどうするの?」

 

「んー……………………帰っても特にやることないしなー……………………片付けでも手伝おうか?」

 

「あら、それは助かるわね。またGが出た時にも助かるし」

 

「俺に取らせるのは確定なのか……………(困惑)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幸いにしてGも出ることなく、片づけは1時間も経たずに終わった。

 

「ふー、大分片付いた………………………………あとはこの箱を……………………あれ、この箱って何だろう?見覚えないけど……………………四葉、これ誰のか知ってる?」

 

「!………………そ、それ私のだよ~。もう着ない服を捨てようと思ってたんだ~。よいしょっと」

 

「いらないものは捨てなよー、って私が言えた口でもないんだけどね……………………ん?」

 

ふと、四葉が持っていた箱から何かがひらりと落ちるのが見えた。

 

「あれ、何か落ち……………………え?」

 

それは小学生の男女2人組が映っている写真。その写真に映っている2人を一花は知っていた。もっとも、男の方は去年の林間学校の時点でもしかして、とは思っていたのだが。

 

「…………やっぱりそうだったんだ………四葉とフータロー君は6年前に─────────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………もう去年の話なんだっけ」

 

今でもあの日の事は鮮明に覚えている。訣別の日だ。あの訣別が無ければ上杉さんも私も前には進めなかった。あれは必要な事だった。

 

……………………筈なのに。

 

「……………それじゃあいつまで経っても四葉は幸せになれない(救われない)ぞ…………………………どうして火野さんの言葉がずっと消えてくれないんだろうね……………………………」

 

私が上杉さんと過去に会っていた事が火野さんにバレた日に、告げられた言葉。あの言葉がずっと私の頭の中で消えない。何故なのだろうか。

 

私が幸せになれない?違う、そんな事は無い。姉妹の皆が幸せになってくれることが私の幸せだ。

 

「……………だから今の私は幸せ。うん、幸せだよ」

 

私は段ボール箱をゴミ袋に入れるのだった。

 

────後から考えてみれば、この時私は自分に言い聞かせるよに呟いて無理矢理(・・・・)納得しようとしていただけだったのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===============

 

時は春休みの旅行最終日にまで遡る。

 

「ぬわああああん疲れたも」

 

「おかえりんご」

 

「おおおおおおおおん!?」

 

家に帰って久しぶりに自室に帰還すると神様がいた。しかも服とか結構ボロボロなんだが、大丈夫なんかこの神様…………………。

 

「問題が片付いたようで何よりだね。神は何でも知っているのさ」

 

「あー、何かそんな気がしてたわ。…………………そっちもここに来てるって事は賊は捕まったって事でおk?」

 

「………だったら良かったんだけどね」

 

神はため息をつくと俺の椅子に腰かける。

 

「ほんのちょい警戒を緩めた隙に自爆させられて有力な情報は得られなかったよ。長時間の追い掛けっこをしていたから、なんて言い訳はするつもりはないけどね」

 

「…………………でもさ、神様なら蘇生とか出来るんじゃないのか?ド〇クエで言えばザオリクみたいなやつで」

 

「それが出来るならとっくにやっているさ。僕を狙ってくる刺客は揃って追い込まれたり捕まったりすると特殊な自爆魔術で命を絶つんだが、一度それをされるとありとあらゆる蘇生手段が機能しないんだよね」

 

「じゃあ、特殊な自爆をさせないようにさせないといけないのか」

 

「その通り。これまでもその自爆をされる前に封じ込めて刺客を捕らえる事は何度も成功してはいるんだが、誰も口を割らないで、どんなに警戒していてもそれを掻い潜って全員自爆して死んでる」

 

「……………正気じゃないな」

 

俺の素直な感想に神様も『まったくだよ』と同意する。

 

「僕は刺客を束ねるボスが存在していると考えている。刺客を自爆させるようにしているのも、自分へと辿り着かせたくないのも理由に入っているのだろう。大本を叩かなければ、いつまでも終わらないだろうね」

 

「なんつーか、その…………………………………災難だな。こんな言葉しか咄嗟に出なくて悪いが」

 

「構わないよ。…………………()にも似たような事があってね。そんときはさっさと片付けて暫くは平和だったんだが、まーた狙われるようになってね。やれやれ……………………っと、君も旅行で疲れてるだろうし、そろそろ本題に移ろう。簡単に言うと、僕は暫く君の所に顔を出せなくなるよ。理由は何となく分かるだろうけど、本腰をいれて元凶の捕縛に専念したいからね。暫くは休み返上だよ」

 

「………………………」

 

……………………どうやら、俺はこの神の事が予想以上に好きだったらしい。何か普通に寂しく感じる。

 

「………………いや、僕はホモじゃないんで無理っす」

 

「人の心を読むな!そう言う意味じゃなくて友達的な感じだわ!」

 

「はいはい、分かってるよ。まぁ、そんな訳で暫く会えなくなるわけだが、君のタブレットとかのアプデとかメンテナンスは普通にやるから安心して欲しい。僕じゃなくて第2位(・・・)が来てやってくれるよ」

 

第2位、か………………そういやこの人(第1位)以外の神界人に会ったことないな。少し興味ある。

 

「彼女は普通に信頼のおける良い人だから安心してくれていいよ。次の月末に来る予定だからよろしく」

 

しかも女の人らしい。…………ますます興味が湧いてきた(正直者)

 

「おk……………………てか、それなら俺の予定が空いてる日を教えた方が良いんじゃ?」

 

「安心しろ、君の予定がない暇そうな日にこっちから天井を突き破って勝手に来るから」

 

「勝手に来るのは良いけど普通にドアから入れ(命令形)」

 

「はいはい。じゃあ、またな」

 

神様はいつも通り音もなく消えた。それがいつも通りなのが逆に寂しく感じた………………少しだけだが。

 

「……………荷物整理すっか」

 

そう呟くと旅行の荷物の整理を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《東京》

 

「………………11秒かぁ」

 

土砂降りの東京の人気のない路地裏。右手に銃を持ち、フードを被った男がスマホのタイマーに表示されていタイムを見て呟く。

 

「僕としては10秒は切りたかったけど………………………まぁ、今はこんなもんかな~」

 

そう呟いて男はスマホを仕舞うと、目先の震えながら地面に腰を抜かして座り込んでいる不良の方を見る。

 

「おいおい、いつまで震えてんだい?男ならしゃきっとしないと?」

 

「…あ………あ……………………あ……………あぁ…………」

 

男の問いに不良は何も返せない。まぁ、当然であろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

血まみれの死体が10個(・・・・・・・・・・・・)転がっているのだから。

 

「まぁ、あいつ(・・・)能力(・・)はまだ完全には定着してないから不完全って言ってたからな。あと1ヶ月ちょいもすれば完全に使いこなせるようになるらしいし、そうなれば10秒以内に殺すのも容易いな…………………」

 

「……………なっ、何なんだよお前っ…………………………………!?」

 

「…………………はぁ?」

 

絞り出すように出した不良の問いに男はめんどくさそうに目を向ける。

 

「なっ、何で……………………こいつらを……………………仲間を殺したんだよ………………!?」

 

「何でって……………まぁ、実験台に丁度良さそうって言うか……………暇潰し(・・・)と言うか」

 

不良は絶句する。そして再び身体が震えだす。暇潰し感覚で人を殺しておいて何ともなさそうな表所を浮かべている目の前の悪魔に恐怖したのだ。

 

「おっ……………俺も殺すのか……!?」

 

「……………………………………………」

 

男は何も言わずに男を見つめる。不良はその視線から目を外せずにいた。外せば殺される気がしたからだ。数秒に過ぎない時間が不良にとっては長い時間に感じた後、男はつまらなさそうな表情を浮かべる。

 

「……………この事を何も言わないなら、お前だけは見逃しても良いよ。どうだい、約束できるかな?」

 

「あ、あぁ!!約束する!!警察にも誰にも言わねぇ!!だから助けてくれ!!」

 

男は地面に頭を擦り付けて命を請う。その光景に男は一瞬だけ愉悦の表情を浮かべると、すぐに口を開く。

 

「いやぁ、素晴らしいね!土下座までするとは!よし、君は助けよう!」

 

男の陽気な声を聞いて僅かでも希望を見出したのか、男が期待の籠った表情で顔を上げると

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんて言うわけないでしょ」

 

次の瞬間、乾いた銃声が鳴り響いて死体がもう1つ増えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後、その男はとある廃ビルの屋上にいた。どこからか聞こえるサイレンの音を聞き流しながら呟く。

 

「大好きな漫画の世界(・・・・・)は十分に楽しんだでしょ、総悟………………………いや、兄さん(・・・)。冥途の土産として、僕が受けた屈辱以上の圧倒的な絶望と苦痛をプレゼントするから…………………………………今から1ヶ月後に会うのが楽しみだね!」

 

狂喜が入り混じる楽しそうな笑みを浮かべる男─────────総悟の前世にて()だった男が何故かこの世界に潜んでいるのだった─────────。

 

黒き影は迫る。少し先の未来で、京都に。

 

to be continued…………




唐突のちよっとした新キャラ紹介

???

東京に潜む総悟の前世における弟。存在自体はかなり序盤から匂わせていた。どういうわけかこの世界に潜んでいる。何者からか何かしらの能力を与えられている。その目的は総悟への復讐。彼が復讐を狙う理由とは……………………?

第2位(真名:不明)

第1位の部下。性別は女性。神界人の新キャラ。第1位からは信頼されており、総悟とはいずれ会うことになる。

はいっ、と言うわけで修学旅行編…………………………………って、なるのを楽しみにしてた方には申し訳ない。本編は暫くお預け。まぁ、まだ構成が決まり切ってないのでね。繋ぎとして、ここからは事前に予告していたスピンオフです。

第1弾は本編ではあまり出番がない神様のお話。タイトルは安直に『Past of God』です。あと、事前に予告してた内容があったと思うんですが………………………アレは嘘だ。色々と考えたら内容はがらりと変わった。なので、アレは忘れて(懇願)

第2弾が星奈さんの過去編。タイトルは予告通り『星の誕生』です。

第3弾は…………………………今のところは分からんです。もしかしたら村正ちゃんの過去をやるかもしんないし、やらないかもしれない。いずれはやるんですけど、第2弾が終わって、本編構想がまだ終わってなかったら第3弾もやる感じで。

それでは、またお会いしましょう。………………………あー、やることありすぎてめんどい。


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第10巻
シスターズウォー? その1


ウマ娘が2.5周年で勢い盛り返したせいで投稿遅れました。すまん。




「ふぅ、水星たぬき(意味不明)。と、言う訳で特級呪霊こと『全国模試』もオワタので、修学旅行の話に入るか」

 

高校の修学旅行って普通は大学受験勉強の影響を考慮して、2年生の内にあるのが普通だと思うのだが、この高校はどう言う訳か高3で修学旅行がある。それを当初知ったときは『頭おかC(辛辣)』と思ったが、後で調べてみると一応高3で修学旅行をやる所はあるらしい、少数派だけど。

 

まぁ、高2で開催されてたら俺は三玖と行けなかったかもしれないから結果オーライ!やったぜ☆

 

「皆は当日行動する班を決めておいてもろて。定員は5名まで。決まったら代表が先生に各自報告する事っ!以上!終わり!閉廷!おしまい!」

 

……………………まぁ、俺は班に関しては悩む必要はないんやけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中野一花は覚悟を決めていた。総悟を修学旅行の班に誘う覚悟を。

 

彼女の覚悟はどの程度のものかと言うと

 

「『ソウゴ君と同じ班になる』、『ただし三玖を傷つけたり、誰かを利用するような手段は取らない』

 

『両方』やらなくっちゃいけないのが『長女』のつらいところだね。覚悟はいい?私はできてる

 

とまぁ、ブチャ〇ティが憑依してるんじゃないかと思われるレベルで覚悟完了していた。プロ〇ュート兄貴も少しはビビるだろう。

 

世界線が異なれば四葉を利用するような変化球的な手段を取っていたかもしれないが、総悟と出会ったこの一花は違う。変化球ではなく直球での勝負を。誰かを利用するのではなく、自分自身がぶつかっていく女に成長していた。

 

「(昨日色々とシミュレーションしたし、大丈夫大丈夫………………)………………あ、ソウゴ君。今ちょっと良い?」

 

「だが断る」

 

「え」

 

「嘘だよん。どったの?」

 

開幕早々『だが断る』されてからかわれる一花。『もー、ソウゴ君は相変わらずだなぁー』なんて思いつつも一花は本題を切り出す。

 

「修学旅行の班についてなんだけど…………私と一緒の班を組まない?」

 

「!」

 

総悟は少し驚いた表情を見せる。一花はポーカーフェイスで表面上は冷静を保ちつつも、内心は心臓ドキドキで答えを待つ。

 

「あー、一花姉さん。実はなんだが─────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全国模試が終わって何日か経ったある日の事。

 

「ぐぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!ここで第1クールが終わるッ!!何度見ても衝撃の展開すぎィ!」

 

いやぁ……………もう言葉が出ない。そういえばこの作品ガン〇ムだったな……………脚本家繋がりでコード〇アス のトラウマ回(血染めのユ〇ィ)を思い出したわ……………………しかし、グエ……………いや、ボブもかわいそうすぎる。グエ………ボブ虐やん、こんなん。人の心とかないんか?

 

「はぁ、こいつは黒いサ〇ライズや……………そういや今日は星奈さん特性のトマトパスタか………………あー、ダメダメ。トマトと結びつけるのはよそう…………」

 

そんな事を考えていると、誰かから着信が入ってくる。誰や、衝撃展開で心をかき乱されたワイに電話してくるのは……………………三玖や!

 

『もしもし、ソウゴ?』

 

「ほい、全回復(ちょろい)」

 

『……………全回復?』

 

やっべ聞こえてた。

 

「あ、いやこっちの話だから気にしないで。どうした三玖、何かあったの?」

 

『もうすぐ修学旅行でしょ?かなり気が早いけど…………………ソウゴは誰と班を組むかとか、もう決めてたりするの?』

 

「あー…………そういやうちの高校は修学旅行は3年にやる珍しいタイプだったな。班はまだ決めてないよ」

 

と言うか、修学旅行自体すっかり忘れてたわ。全国模試に全集中したからか、その反動か毎日夜までアニメや漫画が止まらなくてね(中毒)。やばいよやばいよ。

 

にしても、修学旅行の班かぁ……………………まぁ、誘いたい人は今電話してる彼女なんだけどね…………こういう時にさっさと誘える根っからの陽キャなら良かったんだが……………………もうちょっと、その…………あと2週間くらい心の準備の期間が欲しいと言うか(ヘタレ)。

 

『じゃあ、ソウゴ。修学旅行で私と一緒の班にならない?』

 

「おっ、そやな。……………………あ、え?い、今なんて?」

 

『修学旅行、私と同じ班にならない?勿論ソウゴが良いな』

 

「よろしくお願いいたしますばいしますばいしますばい!!(食い気味)」

 

と、言う訳でまさかの三玖から誘われると言うウルトラCで通話終了。結果オーライとは言え………………何かこういうのって普通俺の方から誘うべきなのでは?

 

「おいおい、しっかりしろ俺氏。奥手にも程があんだろ。もうちょっと積極的に行かにゃ………………このままじゃいつまで経っても告れないぞっ!むん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────とまぁ、そう言う訳で既に決まっていまして。悪いな、誘ってもらったのに」

 

「うんん、先約があるなら大丈夫だよ(……………三玖、本当に積極的になったね。姉としては喜ぶべきなんだろうけど、恋のライバルとしては先を越されて悔しいような………………まぁ、しょうがないか。それに、同じ班になれなくても、チャンスはあるかもしれないからそこまで悲観する必要もないよね)」

 

一花の恋の炎はこの程度では止まらない。それを総悟は知る由もない。またしても何も知らない火野 総悟さん(17)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、今日は三玖がいるのか」

 

「この後バイトだけど少しだけ参加する」

 

今日の勉強会は全国模試以来の全員集合だった。

 

「ふんふんふふーん。ところで、皆は修学旅行の班は決まった?」

 

「いえ、私はまだです」

 

「私も同じくです」

 

「私もー」

 

総悟が修学旅行の班について尋ねてみると、五月、四葉、一花はまだ未定の模様。

 

「二乃は決まったん?(そういや上杉の事好きらしいが、もう声掛けたのか?)」

 

「……………えぇ、私の中(・・・)では既に決まっているわ。私はフー君と二人っきりの班を組むわ」

 

「………………へぇ(堂々と宣言するその心意気はマジで尊敬するぜ、ほんと)」

 

「(何か隠し事をしているようだったので、少し前に問い詰めた際に上杉君はモテ期が来たと言っていましたが…………嘘ではなかったんですね……………)」

 

総悟は心の中で感心し、五月は上杉にモテ期が本当に来ていた事に驚いていた。

 

「…………誰も言いたいことはなさそうだし、決まりね」

 

「決めんな。俺の話を聞け」

 

「もう、何よ!いい?あんたは私と一緒にデートできる事を感謝してれば良いの!」

 

「俺はもうクラスの男子と班を組んだぞ」

 

「…………………」

 

「……………何かすまん」

 

衝撃の事実に固まる二乃。そんな二乃を憐れむような眼で見る総悟。何とも言えない微妙な空気にただ黙る残りの面々。

 

「スーッ…………二乃、勉強始めるか?」

 

「………………そうね」

 

この後、全員普通に勉強した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と言う訳で、修学旅行の班はこうなった。

 

『武田、前田、上杉班』

 

「班長は誰がやんだコラ」

 

「お前も一組だったんだな(今更発言)」

 

「この僕を差し置いているまい!」

 

 

『総悟、三玖班』

 

「(『同じ班にならない?』とは言っていたけど、まさかの2人きりだったとは……………………や っ た ぜ(歓喜) )」

 

「(先手必勝。こういうのは早い者勝ち。……………やった)」

 

 

 

 

『一花、二乃、四葉、五月班』

 

「……はは、結局ほぼいつメンになったね」

 

「………何でこうなるのよ………」

 

「(………何故か微妙に気まずい!)」

 

「(八つ橋が食べたいですぅ……)」

 

修学旅行を前に、火花散る恋のダービーはまだ始まったばかりである─────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……………ナイル川(?)」

 

総悟は自分の家に帰還すると荷物を置いて自室の椅子に座る。

 

「スマホで遊んでるゲームも飽きてきたなぁ………………運営が何と言うか、目先の利益ばかり追求して悪手ばかりと言うか。何だかなぁ………………神様にでも愚痴りたいけど、最近来ないしなぁ………………俺の交友関係の中でも結構腹を割って何でも話せるし、偶には来ないかねぇ…………」

 

そんな彼の願いを聞き届けたのだろうか。突如として、大轟音とともに天井の一部が崩れ落ちた。

 

「……………………」

 

突然の出来事にびっくりしすぎて総悟は何も発せない。そのまま固まっている内に視界が晴れてくると、人の影が2つ見えてきた。

 

「いやぁ、来ちゃった来ちゃった!ここが第1位様がよく話してくれる総悟君の部屋かぁ~」

 

「はぁ、本当に天井を突き破るとは……………………第1位様は冗談交じりで言っているだけだと思うのだけれど」

 

「大丈夫ですよリリィ様。まぁ、どちらにせよ彼が学校から帰ってくる前に直しておけば良い話ですよ。このカノンでもそれくらいの修復はお手の物ですから。直してしまえば、私たちが天井を突き破って入ってきた証拠もなくな…………………あ」

 

カノンは漸く気付いたようだ。頭に埃を被って不機嫌そうな表情を浮かべている総悟の存在に。

 

「あ、え?確か今日帰ってくるのはもう少し後の時間の筈じゃ…………確か今日の授業の時間割とかこのメモ帳にメモって…………あ、これ昨年のだ」

 

あ、オワタとでも言いたげな表情を浮かべるカノン。リリィは呆れたようにこめかみを抑える。

 

「スーッ……………なんだろう、天井ぶち破って入ってくるのやめてもらっていいですか(ひ〇ゆき)」

 

「……………ハイ」

 

このあと天井を丁寧に直したのは言うまでもなく。これが総悟が第1位以外に出会う2、3人目の神界人のカノンとリリィとの出会いだった。

 

to be continued……………




この小説を休止している間に水星の魔女が始まって、そして終わっていたのでここで水星の魔女ネタ。そしていつものジョジョ。あとはひ〇ゆき。

しかし、去年の秋アニメは豊作でしたね。私はつい最近になってから、ぼざろ、ポプテピ、ジョジョ6部、水星の魔女などを見ました。他にも色々と見たんですけど、特に面白かったのがこの4つかな。

今年に入ってから放送してたのだと、おにまい、鬼滅、【推しの子】、呪術くらいですかね。他にも面白いのあったら教えてちょんまげ。

総悟は前世でも恋愛経験はないので、恋愛が絡むとヘタレになります。三玖の方がよっぽど勇気がある。それでも主人公なんですかねぇ………………。

一花姉さんは三玖に先を越されて失敗。まぁ、これで諦める訳はないのですが。一花姉さんがもうちょっと早く誘ってればねぇ………………。

そして二乃は……………………どんまい!

遂に神界の第2位のリリィとヤベー秘書官ことカノンが登場。ネタバレになるけど、さっそく次回でカノンはやらかします。流石、この小説でヤベー奴ランキングで上位に入る奴です。面構えが違う()そして、第1位を秘かに狙うリリィは総悟と何を話すのやら。

お楽しみにー。


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シスターズウォー? その2

どうも、定期的に音速で失踪するノッブです。

今回は理由としては資格の試験があったので、ちよっと集中する為に休んでました。どうせゲームしてたんだろと思った方、残念でした~(煽り)

………………とまぁ、おふざけはこれくらいにして本編再開しまーす。

ちな、試験は受かりました。


天井の修理が終わった後、カノンが土下座を越えた土下刺さり(頭から床に突き刺さる謝罪方法)を披露してワイが草を生やして床の修理も終えた後、俺は2人にお茶を出す。

 

「いやぁ、ごめんねー。色々とやらかしたのにお茶まで出してもらって」

 

「別に良いですよ、土下刺さりとか言う面白い技(?)を見れて面白かったんで」

 

「ふっふっふ、第1位様の秘書官になる前のブラックな職場で結構使ってたんですよ。どうしても退職届受理して貰えなかったんで、『退職させてください!』って、土下刺さりで床に突き刺さった後、上司が動揺してる隙にそのまま地面に潜って逃げるんです!すごいでしょう?」

 

「自慢げに言う事なんですか、それ……………………」

 

何故か得意げに自慢するカノンさんにリリィさんは呆れ気味。まぁ、そりゃそうだわ。

 

「それでは改めました自己紹介を。私の名前はカノン。第1位様の秘書官を務めています!よろしくね、総悟君!」

 

「私はリリィ。序列第2位の神界人です。以後お見知りおきを」

 

「これはどうもご丁寧に。知ってはいるでしょうけど、火野 総悟です」

 

ふむ、どうやらカノンさんは明るい系女子。リリィさんはクール系か。しっかし、こんな可愛い女の人とあの神様は働いてるんかー。

 

「第1位様が総悟君の事を良く話してくれてたけど、ほんとに聞いてた通りだねー」

 

「へー。神様って俺の事ってどんな感じで言ってたんですか?」

 

「えーっとね、フレンドリーでノリが良くていい奴。あと、未だに告白してないヘタレ野郎、って」

 

「よーし、今度来たらお茶に下剤いれて出そ(キレ気味)」

 

……………………とは言え、悔しいが否定はできない。ヘタレなのもまぁ……………………そうですね(素直)

 

「おっと、お喋りも良いですがそろそろ本題に入らないと」

 

「あー、確かタブレットとかのアプデとかメンテナンスでしたっけ?……………あれ、でも第2位のリリィさんが来てやるとか言っていたような?」

 

「ええ、その筈だったんですが……………………カノンがどうしても行きたいと言うので、仕方なく」

 

「だって、実際に会ってみたかったですもん。……………………あと、この間合法的に仕事サボれますし」

 

どっちかって言うと後者の方がカノンさんの主目的じゃね(名推理)

 

「はぁ………………これが第1位様の秘書官が務まっているのが未だに信じられません」

 

「(これ呼ばわりで草)」

 

「ふふーん」

 

「(そして何故か得意げでもはや草越えたモー〇ーファンタジーなんだわ)」

 

カノンさんの事が少し分かってきた。これはあれや、面白枠だわ。あの神様もそういう所が好きで秘書にしてるんじゃね?

 

「…………………さて、では仕事をしますか。カノン、第1位様から渡されていた物は?」

 

「はいはい、こちらです」

 

カノンさんはリリィさんにUSBメモリを渡した。

 

「へー、そっちの世界にもUSBメモリとかあるんですね」

 

「おっ、気づきました?実は私たちの世界で人間が開発したものが流通しているのは第1位様のお陰なんですよ~。まぁ、その過程で結構ドンパチあって、秘書官の私も死に掛けたりして大変でしたけど」

 

……………………そう言えば、前にちょこっとだけそんな感じの事を言っていたような気が。

 

「リリィさんも色々と大変だったんですか?」

 

「…………………いえ。私は騒動の後に第2位になったので」

 

あれ、何か妙な間があったような……………?

 

「…………お喋りも程々にして、そろそろ始めましょう」

 

「ですね!じゃあ、総悟君のタブレットを貸してもらって良い?」

 

「あ、はい。どうぞ(……………ま、気のせいか)」

 

そう結論付けて俺はタブレットをカノンさんに渡す。そしてそのままUSBとタブレットを接続する。

 

「えーっと、確か第1位様は『USBを繋げたら自動で更新が始まって、終わったらタブレットに終わったと言う通知が来る』って言ってましたっけ。そうすれば3分で終わるとか終わらないとか」

 

「へー」

 

カップラーメン作れるやん。作らんけど。

 

よし、じゃあ……………………3分間待ってやる(ム〇カ大佐)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6分経過

 

「…………何か、終わったって言う通知出ませんね」

 

「……………………」

 

3分で終わるんじゃなかったんかい!もう倍の時間が経ったのに、いまだに終わる気配なし。リリィさんは何も言わんけど、内心『はよ終われ』とでも思っているのだろう。そんなオーラを感じる。

 

「……………もしかして、USBが壊れてるとか、実は違うやつとかなのでは?」

 

「……………あなたなら十分あり得ますね」

 

「やばー、リリィさんからの信用がまるで無い!いやいや、そんな筈ありませんよ。裏面に『アップデート&メンテナンス用USB』って記載が…………………ないですね。……………あ、てかこれ私がこの前買ったやつだ…………………」

 

……………………。流石に呆れたワイの視線と、少しキレそうなリリィさんの視線がカノンさんに突き刺さる。

 

「(…………………あ、終わった。持ってくるUSB間違えた。お2人からは呆れ気味な視線!空気もキンキンに冷えてる!やばい、この空気をどうにかしないと!えっと、えっと…………………)も、持ってくるUSBを間違えた奴は遊泳すべっ!なんちゃって、アハハハハハ!」

 

「「……………………」」

 

「(……………オワタ。余計空気が悪化した。総悟君は反応に困って微妙な表情だし、リリィさんはゴミを見るような冷たい視線!)だ、大至急取りに行ってくるので暫しお待ちください!」

 

あ、冷や汗流しながら窓から出ていった。しかし、絶妙につまらないギャグだったな。と言うか、あの状況でそんなギャグをかましたらどうにかなるとでも思ったのだろうか。いい方向に向かう訳がない。下手すれば幼稚園児でも分かる(辛辣)

 

「はぁ……………申し訳ございません。カノンがご迷惑をお掛けして」

 

「あ、いえ……………こういうのって結構あるんですか?」

 

「……………本人は前の職場よりは減ったとは言っていましたが、1年間に始末書案件は二桁は起こします」

 

「えぇ……………(困惑)」

 

よくクビにならないな………………………まぁ、でも明るい人だからそういう所が気に入られているのもあるのだろうか。おっちょこちょいなの抜けば俺的にも悪い人ではないなー、とは思うし。あとは共に戦った戦友であるから、とか?

 

「……………………そう言えば、あなたは第1位様とはかなり付き合いが長い方でしたね」

 

「え?まぁ…………そうですね」

 

あの神様とはもうすぐ20年近くの良好な付き合いになる。もし神様が今も人間だったら、生涯の親友になっていたと思う。しかし、何故リリィさんは急にそんな事を聞いたんだ?そんな俺の疑問に答えるようにリリィさんは言葉を続ける。

 

「………………あなたから見て、第1位様はどのような人物であると思いますか?」

 

何故それを急に聞いたかはよく分からんが……………………そうだな、どんな人物か。

 

「…………………まぁ、一言で言えば良い人、ですよね。たぶん色々と忙しいのに、定期的に俺の方に顔出ししてくれて様子を見に来てくれますし、前に『こちら側の問題には絶対巻き込まないと約束する』って言ってましたし。俺の事をちゃんと考えてくれてるんだな、って」

 

「なるほど。私はまだあなたほどの付き合いはないので、ふと気になって聞いてみました。答えていただきありがとうございます」

 

「あー、いえいえ。……………………まぁ、付き合いは短いんでしょうけど悪い人ではないんだな、って言うのはリリィさんも感じてるんじゃないですか?」

 

「……………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『え?僕が第1位を引き受けた理由?……………………そういやリリィには話してなかったね』

 

数日前。私は第1位に何故人間としての生を終えた後に神界人、そして数字持ちになったのかの理由を尋ねた。それを訊いたのは偶々と言うか、ただの気まぐれだった。

 

『最初はただの好奇心。世界を管理するとか面白そうじゃん、って思ってね。…………だけど、今はそれ以外にも理由はある』

 

『僕はこの世界が嫌いじゃない。普通に好きだ。僕にとって地球が故郷なら、ここはもう第2の故郷だ。だから、ここがもっと素敵な場所だと感じるような世界にしたい。この世界で過ごす内にそう思ったのさ』

 

『その為にも、僕の右腕としてよろしく頼むよ、リリィ』

 

そう言って私の目を見て第1位は笑みを浮かべる。私を信頼しきっているその目には真実が見えていない。私が本当はそちら側(・・・・)の神界人ではないと言うことが。父が言っていたように、この男の目は曇っている。なのに、その目が一瞬眩しく見えたのは気のせいだろう……………………そうに違いない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………リリィさん?おーい、リリィさーん?」

 

「っ………………カノン?」

 

気が付くと目の前に不思議そうな表情を浮かべたカノンがいた。

 

「……………………いつ戻ってきたの?」

 

「つい1分前ですよー。そしたら総悟君が『何かフリーズして声を掛けても何も反応しないんですけど、変な事でも言っちゃいましたかね?』って。どうしたんですか?声が聞こえなくなるほど考え事なんて珍しいですね」

 

「……………………彼と話していて少し思い出した事があっただけです。申し訳ありません、総悟様」

 

「いえいえ。何か地雷でも踏んだのかと思ったんですけど、そうじゃないなら良かったです」

 

その後、アップデートは何の問題なく3分で終わってカノンとリリィは退散した。カノンは『また天井突き破って来ても良いですか~?(冗談)』と言って、総悟に『そしたらあなたの上司にある事ない事吹き込みますね(冗談)』と返され、『じ、冗談ですからね(震え声)』と言う感じで帰って行った。それをリリィは呆れた目で見ていたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、しかしカノンさんは面白い人だったな。今度神様にどんな始末書案件起こしてるのか聞いてみよ。……………おっと、そんな事よりも修学旅行に必要なものを買いに行く予定だったんだ。予定よりも大幅に遅れてるけど、まぁ今日はアニメとかないし別にええんやけど」

 

当初の予定からは遅れたが、総悟は修学旅行に必要なものの買い出しに近くのショッピングモールに来ていた。

 

「とりま、おやつとか買っておくかー。バナナはおやつに入るんかなー、なんて言うネタがあるけど違うんだよなぁ……………………バナナは印税なんよ(?)」

 

そんなしょうもない事をぶつぶつ呟きながら色々と見ていると、とあるコーナーの前で足を止める。

 

「んだこれ、京都フェア?お、八つ橋とかあるじゃん。割引されてて結構安いな。まぁ、でもこういうのは現地で買うのが良いからなー……………………よし、買おう(意味不明)」

 

「いや、流石にそれはどうかと思う………………」

 

ツッコミ役の二乃が不在なので誰もこの男にツッコむ者はいないかと思われたが、ところがどっこい。総悟が振り返ると、そこにいたのは何と三玖だった。

 

「おぎゃあ!(幼児退行)み、三玖!?何故ここに?」

 

「修学旅行で必要なものを買いに来たついでに、食材とかも買っておこうと思って。そしたら総悟と会った」

 

「なるほどねぇ。しかし、三玖にツッコまれるのも何か新鮮で……………………気持ちよかったです(変態)」

 

「えぇ…………(困惑)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、八つ橋は当然買わずに総悟は色々と買い物を終わらせた。その間三玖も付き合ってくれて、買い物をするにあたって色々と相談に乗ってくれたので総悟は三玖の家まで荷物を持っていく事にした。

 

「ありがとう、ソウゴ。荷物を持ってくれて」

 

「良いんだよ、それくらい。気持ちよかったし(ド変態)」

 

「(ソウゴがいつも以上にヤバい……………)ソウゴ、ちゃんと寝てる?変なもの食べてない?」

 

「え?まぁ、そこそこ寝てるしヤベーものは食べてないけど」

 

『何でそんなこと訊いてくるんだ?マジで分からん』的な表情を浮かべる総悟。気づけアホ

 

「しかし、もうすぐ修学旅行か。京都ねぇ……………………まぁ、俺は小学校の修学旅行行ってないから初京都なんだけどな。なんなら修学旅行自体実は初めて」

 

「え、そうなの?」

 

「小学校の時は前日になって高熱出してね。まぁ、班員が嫌なタイプしかいなかったから良いけどねー。中学の時は本来は東京に行く予定で楽しみだったんだが色んな事情が重なって中止になったんだよねー。………………自由行動の最中に公開初日の映画見に行くつもりだったのに」

 

「そうだったんだ」

 

修学旅行の最中に映画を見に行くことを企んでいた事を聞けば何かしら思う所があるのが普通だが、三玖は『まぁ、ソウゴならやりそう』と納得していた。誰かツッコめや

 

「じゃあ、ソウゴは今回が最初で最後の修学旅行なんだね」

 

「まぁ、そうなるな」

 

それを聞いた三玖はある決心した。

 

「………………決めた。私がソウゴの一生の思い出に残るような修学旅行にしてみせる(やる気MAX)」

 

「お、おう(アニメだと背景が炎になってるレベルで気合が入ってる………………)」

 

三玖の気合の入りように少し驚いた総悟。そんな総悟に三玖は言葉を続ける。

 

「……………それに、私も京都でやりたい事が色々とある」

 

「へー、そうなのか。何かの体験とか?」

 

そう尋ねると、三玖は微笑を浮かべて人差し指を口の前に立てて言う。

 

「……………まだ内緒」

 

「(……………あ、可愛い。好き。結婚しよ(直球))」

 

─────この時点で彼らは修学旅行が楽しいものになると思っていた。だが、彼らはまだ知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この修学旅行が憎悪に満ちた『悪意』によって狂わされていく事になろうとは────────。

 

to be continued………………




最近、快活クラブに月2のペースで行ってます。この前は進撃の巨人全巻を7時間で読みました。いやー、おもろかった。

あと、100カノにドハマりしました。読んで中々良いインスピレーションが得られた希ガス。にしても、五等分ってヒロインが5人しかいないのって少ないですね()



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シスターズウォー? その2.5

ウマ娘、毎度同じことの繰り返しで好きなキャラも実装されないので飽きた。

原神、フリーナを無課金でゲットしたら初めて1ヶ月も経たずに飽きた。

ファンパレ、飽きかけてる。

…………………誰か、スマホゲームで飽きない面白いゲームでも教えてください。そのせいでモチベがあがらず、執筆も大遅延しました。

……………………いや、遅延はいつもの事か。まぁ、そんな訳で最新話どうぞ。


風太郎はらいはと共に靴下や下着等などの新調をしにデパートに来ていた。偶然総悟も来ていたのだが、遭遇することはなかった。

 

「ま、年季が入ってたからこれもいい機会かもな」

 

「そうそう。家庭教師のお給料も貯まってるんだから、少しくらい自分のために使ってもバチは当たらないって。あ、でも五月さんたちへの誕生日プレゼントはケチってたら駄目だよ?」

 

「へ~。あいつら誕生日なのか」

 

「え、もう終わってるけど」

 

【悲報】 上杉先生、生徒の誕生日すらも把握していない…………

 

「……………ま、別にやらなくてもいいだろ。つーかあいつらも遅れてたし、そもそもあっちから言わないということは」

 

「頂いたらお返し!小学生でも知ってる常識だよ!それに、火野さんはちゃんとあげてたよ!」

 

「あいつ、何で教えてくれないんだよ………………」

 

総悟『は?おい、上杉トマト。誕生日くらい自分で覚えておくのは常識だよなぁ?それくらい分かるよねぇ?ねぇwww』

 

ちなみに、総悟が五つ子の誕生日にあげたのはこちら。

 

一花→ 勘で選んだ一花が好きそう小説(前後編の2冊)

 

二乃→ ちょい高級な天然水(1600円)

 

三玖→ めっちゃ美味い抹茶プリン、ちょっと高級な緑茶の茶葉

 

四葉→ 某人類最強のスキンヘッド俳優が出ているサメ映画のBD

 

五月→ お食事券(2000円分)

 

三玖に対しては他の4人より少しだけお金を掛けてたりする。二乃は天然水とか言うよく意味不明なチョイスに最初はブーブー言っていたが、飲んでみたらめっちゃ美味い水だったので普通にお礼を言ったとか。

 

「あー、上杉さん!」

 

上杉がどうするか悩んでいると、同じく修学旅行に必要な物の買い出しに来ていた四葉と五月に遭遇。

 

「五月さんと昨日メールしたんだ。一緒に買い物しようって」

 

「ふ~ん。それよりも誕生日」

 

「あ~!シー!シーッ!」

 

そして何を血迷ったか、上杉は五月の背後にピッタリ付いて尾行する。もはやストーカー以上の存在である。

 

作者「こいつほんま…………(呆れ)」

 

「な、なぜついてくるのですか!?」

 

「どうせ同じものを買うんだ。いいだろ?(ついでにこいつらの買い物を観察してりゃ欲しいものも見つかるかも知れないしな)」

 

「ええそうです!しかし同じであっても全く別物……………下着を買いに来たんです!」

 

「(デジャブ!)」

 

と言う訳で、上杉は四葉と待機。五月はらいはと下着を見に行った。

 

「お前はいいのか?お子様パンツで」

 

「あはは、持ちがいいので………………って、何で知ってるんですか!?」

 

「ったく、模試を終えたばかりとはいえこんなことしてる場合なのかよ…………そういや四葉、お前将来の夢とかあるか?」

 

「……………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────とびっきりお給料の貰える会社に入って、お母さんを楽させてあげるんだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「四葉?」

 

「……………うーん、考えた事もなかったですね~、あはは………」

 

「やっぱりな…………」

 

四葉がほんの一瞬だけ表情が暗くなったのだが、上杉は気付かなかった。

 

「(この前も四葉の将来について総悟と話した時、あいつは『体育教師とかスポーツインストラクターが適してんじゃね?』とは言っていたが……………………まぁ、確かにこいつは運動能力は優れてるからその方面で探してやるのがベストか)」

 

そう結論付けたタイミングでらいはが帰ってくる。

 

「おまたせー」

 

「五月はどうしたんだ?」

 

「奥で採寸と試着してるよ」

 

「そんな事しなくても他の子と同じサイズで即決でいいだろ、五つ子だし(適当)」

 

「あ、五つ子ハラスメントですよ!略してイツハラ!…………………けど、採寸って……………まさか五月、一人だけ抜け駆けしたんじゃ………………」

 

「ふーん(興味ゼロ)」

 

ク〇ウド以上に興味なさげな上杉である。

 

「五月には後で色々と尋ねるとして………………林間学校では散々な結果で終わってしまいましたし、今度こそ後悔のない修学旅行にしましょうね!」

 

「別に林間学校は何だかんだでまぁ楽しめたから散々でもないが……………ま、どうでもいいが体調管理には気を付けるさ」

 

「もー、ほんとは楽しみなくせに。家で何度も修学旅行のしおりを確認してるもんね」

 

「らいは!!」

 

妹に暴露されて慌てる兄。何故この男は変なところで『特に興味なさげです~(大嘘)』的なムーブをかますのやら。

 

「それに、写真の子にも会えるかもしれないしね!お兄ちゃんの初恋の!」

 

「は、初恋!?そ、そうなんですか上杉さん!?」

 

「い、いや別に初恋とは一言も言ってないが…………つーか、めっちゃ食いついてくるな」

 

「あ……………その、上杉さんの恋愛話がちょっと気になっちゃって!あはは~………」

 

我に返った様子の四葉は誤魔化すように笑う。上杉が訝しげに感じていると、そこへ五月が戻ってくる。

 

「お待たせし『グゥ~』マッ!?」

 

早々、腹の音を鳴らす五月。マジで胃の大きさおかしいよ…………

 

「五月、お前…………」

 

「し、しかたないじゃないですか!これは生理現象です!」

 

「どうだか…………」

 

「じゃあ、折角だしご飯食べて行こうよ!私もお腹空いちゃった!」

 

「良いですね!らいはちゃん、行きましょう!」

 

「お、おい待てって!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

らいはと手を繋ぎながら駆け出す四葉。それを追う風太郎。その四葉の背中を複雑そうに見つめる人物が1人いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………」

 

その人物は五月。

 

「(……四葉の先程の様子…………………私はてっきりあなたは小学生の頃の修学旅行で上杉さんと出会っているのに、それに気付いていないと思ったのですが…………………どうやらそうではなかったようですね。それに、四葉は上杉さんの事を……………)」

 

五月は上杉兄妹と四葉の会話を最後の辺りだけ聞いていた。正確には聞こえてしまった、と言うべきか。らいはの初恋というワードに食いつく四葉をこっそり見た五月は確信した。四葉は既に上杉と出会った事を覚えている事、そして四葉が上杉に好意を持っている事も。

 

半年以上前、睡眠薬に眠らされた上杉を家に送る為に生徒手帳に記載の住所を見るついでに写真を見た時から心当たりはあった。四葉は上杉と過去にあっているのではないかと。

 

だが、四葉本人がそう言った素振りを見せなかった事や、上杉が自分と過去に会ったことがある姉妹がいるか聞いた際に四葉は名乗り出なかった為に自分の直感に自信が持てずにいた所、二乃との家出騒動や上杉の家庭教師辞任、引っ越しなどと言った出来事が息を付く暇もなく重なった事で、つい先程まですっかり記憶の奥底に沈んでいた。

 

「(………………しかし、それを知った所で私はどうするべきなのでしょう…………私が何か四葉にしてあげられる事はあるのでしょうか……………?)」

 

「…………五月?おい、五月?」

 

「!………す、すみません少し考え事を」

 

「らいはが問いかけても反応しないレベルで没頭してたな。ま、どうせ食い物の事でも考えてただろうが」

 

「もー、お兄ちゃんは一言余計なんだから!五月さんは何か食べたいものはある?」

 

「そ、そうですね………私は何でも構いませんが……(分からない。私はどうすれば良いのでしょうか……………?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(よし……………俺、この修学旅行で三玖に告るわ(覚悟完了))」

 

「(この修学旅行で私はソウゴに告白する。これだけは他の誰にも絶対に、誰にも譲れない……………!)」

 

「(この前は三玖に先を越されたけど…………………今回は私が1番に告白する。正々堂々とぶつかっていくんだ…………!)」

 

─────1人の男と2人の姉妹の恋の戦い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(この修学旅行がフー君を振り向かせる最大のチャンス。……………ここで確実にケリをつけるわ)」

 

「………………………………」

 

「(……四葉………………)」

 

─────3人の姉妹のそれぞれが抱く想い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………第1位様。お時間宜しいでしょうか?」

 

「…………………………」

 

─────天才の元人間(創真)に降りかかる最大の脅威。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わしが力が完全に取り戻せるまであと僅かじゃ。力を完全に取り戻した暁には、手始めにあの小僧から殺してやるとしよう。………………見ていて無性に腹が立つ奇人だしのう」

 

「あぁ、同情するよ兄さん。楽しい筈の修学旅行が僕の手によって最悪なものへと変貌するのだから!………………心も体も苦痛に満ちた死を送るのがとても楽しみだよ」

 

─────共通の人物(総悟)の命を狙う人外達。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────様々な思惑が交差する修学旅行がいざ始まる。

 

to be continued…………




次回から修学旅行がスタート。

ちな、この先の話なんですがついこの話から読み始めてハマった人もワンチャンいるかもなんで、少しお知らせ。この先の話を完全に理解する為には、

・幕間の物語(呪われた一刀(村正)

・Past of God

・星の誕生

の三つを全て読んでくれてる前提で書くんで、これらを読んでいないと一部チンプンカンプンになるよ☆

まだ読んでない人は作者が次話を投稿するまでにパパっと読んでおこう!

……………とは言ったものの、幕間以外は五等分要素が1ミリもないのが難点。そこは作者も自覚してるし、書く前は何とも思ってなかったんだけど書いてて『これ、風呂敷広げすぎたかなぁ………読者は楽しめんのかなぁ…』なんて思った。で、案の定お気に入り登録者も若干減りました。これはしゃーない。この番外編を始めたのは後悔はないんだけど、失敗と言ってもまぁ、過言ではない。

『読んでね☆』とか言ったものの、まぁ読んでなくても最低限の説明はする(たぶん)ので、最近読み始めた人の中で『五等分要素なくてもええで(優しさの塊)』みたいな人がいたら、読んでくれると嬉しいです。

だがしかし、ここから削除するのももったいないしもうこのまま行くしかねぇ!!果たして読者の皆様を飽きさせずに色々と消化しなければならない事が山盛りのこの修学旅行の話を綺麗にたたむことが出来るのかどうか!!そこそこの年月執筆をしてきた作者の腕が試される!!

無理だったら、そんときゃ土下座しよ(適当)

では、また次回でお会いしましょう!


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シスターズウォー? その3

漸くタスクを片付けて山場を乗り切ったので初投稿です。マジきつかった。




時は少し遡る。星奈の前には黒い石みたいなのがあった。

 

「……………これは」

 

「………パンです」

 

何を隠そう、この黒い塊はクロワッサンであってクロワッサンではないものである(?)

 

「ま、まぁ中野さんはバイト始めたばかりだしね。パン作りは難しいから最初は誰でもこうなるよ。幸運にも向かいのパン屋はさほど脅威じゃないしね。頑張ろう!」

 

「はい!」

 

「(謎の敵視……………)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからまた少し経ったある日。星奈と今日は四葉も来ていた。そんな2人の目の前にはトロォっとした何かが。

 

「何かベチャッとしてる……………」

 

「おかしい…………手順通り作らせてるのに不思議な力で失敗する……………」

 

「(不思議な力…………もしかして、創真さん(お父さん)の仕業…………?)」

 

※違います by神様の父

 

「まぁ、前よりは食べ物に近づいてると思いますし、大丈夫ですよ。……たぶん

 

「頑張ってね、三玖!」

 

「うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからまた少し経ったある日。三玖は誇らしげに星奈にパンを見せた。

 

「おぉ、今回はちゃんとパンですね」

 

「まだお店に出せるレベルじゃないけど、三玖ちゃんがここまで作れるようになって私も嬉しいよ………………」

 

ここに至るまでに一体何があったのか、若干憔悴している店長を嬉しそうであった。

 

「店長さん、ありがとうございます。……………でも、これはまた美味しいパンじゃない」

 

「確か修学旅行までにとか言ってたっけ」

 

「はい。一日目のお昼が自由昼食の筈……………侵略する事火の如し。そこでソウゴに私のとっておきをあげて、そして………」

 

「……………遂にやるんですね」

 

星奈は三玖が総悟の事を好きなのを三玖の総悟を見る目が他の姉妹と少し違う事から、確信はないもののだいぶ前から察してはいた。そして、恐らくもう1人(一花)総悟の事が好きな人物がいる事も。

 

ハッキリと100%の確信に変わったのは、バレンタインのチョコ作りの指導を三玖からお願いされた際に彼女が自ら明かした時である。無論、総悟にはこの事は内緒にしている。

 

余談だが、総悟が三玖の事が好きなのはとっくにお察ししているが、本人から何か相談された訳でもないので自ら干渉する事は控えている。

 

「しかし、同じ班じゃないとお昼を一緒に出来ないかもしれないのでは?」

 

「なので、既に同じ班を組む約束をしておきました」

 

「!…………先手必勝とはこの事ですね」

 

原作以上に行動力の塊とかした三玖であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして迎えた修学旅行当日。集合時間よりも1時間早く来た総悟は────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、快活。いやー、やはり漫喫は良い文明だわな。ここの漫喫は無料でトースト提供しているから朝食も済ませれたし」

 

漫喫に来ていた。修学旅行の当日に

 

もう一度言おう。修学旅行の当日に

 

「いやー、楽しみすぎて無駄に早く起きちまったからな。時間に余裕があったら、漫喫行くのはオタクにとっては普通だわな」

 

※修学旅行前に漫喫行くのは全然普通じゃないです。異常です。

 

ブースにある個室のテーブルには既に読み終わった漫画が10冊ほど積み上げられていた。滞在時間は約60分なので、1冊当たり6分ほどで読み終えた計算となる。これはかなり速いタイムと言えるだろう(作者調べ)

 

「おっと、いかんいかん。もう少しで集合時間か。名残惜しいが、そろそろ行くか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ソウゴ?」

 

「やぁやぁ、おはようさん三玖。皆も」

 

漫喫のあるビルから出るとばったりと三玖達に遭遇した。

 

「え、ソウゴ君………今このビルから出てきたよね……………?」

 

「ん(漫喫の看板指差し)」

 

看板を見た五つ子達は一瞬で「あっ…………(察し)」となって理解した。

 

「まさか火野さん、楽しみすぎてここに泊まってたんですか!?」

 

「んなわけあるか。早く起きたから暇つぶしに寄っただけだ。帰宅困難でもないのにわざわざ俺がここで一泊する奴に見えるか?」

 

「いえ、正直火野君ならやりかねないと思ってしまいます……………」

 

「(コクコク)」

 

五月の言葉に三玖も首を縦に振って同意する。

 

「修学旅行前にもう出費してるなんて呆れるわね…………」

 

「………んだよ、二乃のくせに……………褒めるなよ……………照れるだろうが………」

 

「脳みそ腐ってんのか!!1ミリも褒めてないわよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総悟side

 

朝から色々とあっ………………いや、別に特に何もなかったが、問題なく修学旅行開始。

 

先生の諸々の注意事項が終わって、今は駅のホームで新幹線待ちの最中。隣には三玖がいて死にそう(幸せすぎて)

 

「ふわぁ……………」

 

「どうした三玖?楽しみすぎて眠れなかった的な?」

 

「う、うん(ほんとは店長さんに無理を言って早朝に厨房を貸してもらってパンを作ってたからなんだけど………………)」

 

「旅行あるあるだよなー」

 

まぁ、ワイはそこまで旅行に行かんし、旅行死ぬほど大好き人間でもないから『普通の』旅行だったら別にぐっすりすりすり睡眠だが……………………今回は三玖と一緒の旅行なので話は別だ。昨日も楽しみすぎて中々寝付けず、ニヤニヤしながら部屋を左回りしてたわ(サイレン〇スズカ)……………しかし、やっぱ何度見返しても2期が泣けて面白すぎるんだわ。

 

さて、そうこうしてる内に団体専用の新幹線が到着。悲しい事にグリーン車ではなかった。グリーン車は自称進学校の奴らに取られた。クソが(辛辣)

 

「(ま、とは言え席が三玖の隣だしな。これは最高しか言葉が出な)」

 

「ZZZ………」

 

「(いや、寝てる!?)」

 

よっぽど眠かったのか、席に座った瞬間爆睡していた。どんだけ楽しみだったんだ。トランプとかウノとか持ってきたんだが……………………まぁ、寝顔が死ぬほど可愛いからええか!(チョロい)

 

「(ワイもちよっと眠いし、ちよっと寝よっかな。………………その前に三玖の寝顔をあと3分くらい目に焼き付けよ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………きて…………………ウゴ……………………起きて、ソウゴ」

 

あの世に行きかけるほど良い声と体を小さく揺すられる感覚で目を覚ますと、目の前に三玖の顔があった。

 

「…………………あの世?」

 

「いや、ここは現世………………それよりもソウゴ、もうすぐ着くよ」

 

「そうなん?」

 

調べてみると、どうやら丁度京都駅の1個前の駅を通過したみたいだった。

 

「折角の新幹線だけど、お互い寝て過ごしちゃったなー。ま、良い夢見れたけど」

 

「どんな夢を見たの?」

 

「グリーン車を割り当てられた自称進学校の奴らを全員ぶっ倒してグリーン車を1人で占拠する夢」

 

「そ、そうなんだ(そんなにグリーン車乗りたかったんだ…………)」

 

まぁ、そんな訳で新幹線は京都駅に到着。諸注意をパパっと先生から受けて、終わり!解散!そして自由行動開始!

 

「じゃけん、行きましょうね~」

 

「うん!」

 

ここからはダイジェストで三玖と総悟の自由行動をお届けしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

京都タワー

 

「どうしよう、三玖。この景色見てたら……………軽音やりたくなってきた」

 

「そっか。………………いや、何で軽音?」

 

「………何でか……わかんねぇけど……………やりたかったんだ…………どうしても………地鳴らしを(エ〇ン)」

 

「軽音じゃなかったの…………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

南禅寺 水楼閣

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!完全にあれやん……………けいおん!けいおん!けいおん!けいおん!けいおん!けいお(以下略)」

 

「そ、ソウゴが…………いよいよ壊れた………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大吉山展望台

 

「ふぅ、しかし先程は流石にはしゃぎすぎちまったな。流石に自重せねば」

 

「ぜぇ………ぜぇ……………」

 

「大丈夫か、三玖?」

 

「な、何とか………………それにしても、良い眺め………………」

 

「そうだな。この宇治の夜景に浮かぶ妖艶な麗奈の姿が浮かぶぜ……………(響け!ユー〇ォニアム )」

 

「いや………まだ午前中だけど……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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伏見稲荷大社

 

一花ら余りも……………仲良し姉妹らは伏見稲荷大社に来ていた。まぁ、もっと言えば主に二乃の先導で上杉らの班の後ろをこっそりと着けて辿り着いたようなものだが。一花も、四葉も、五月も誰もその先導を止めなかったのは各々の思惑や考えがあったからなのは言うまでもない。

 

「(!………………いた、ソウゴ君と三玖だ。予想通りこの時間に来たね)」

 

一花は修学旅行前、総悟がどこを巡るのかをさりげなく尋ね、ここに来ることも把握していた。そして、移動時間や電車・バスの運行間隔、各スポットでの滞在時間等の様々な要素を考慮し、ここに来る時間を大まかに予測していたのだ。

 

その次に一花は自分の班がどう動くのかを考えた。二乃、四葉、五月らの性格等様々な要素を塾慮し、こう結論を出した。

 

恐らく二乃の主導で上杉の班についていくであろう、と。

 

そう考えた一花は今度は上杉らの班にもさりげなくどこを巡る予定なのかを尋ねた。すると、彼らの班も伏見稲荷大社を訪れる事が判明したのだ。そこからまた移動時間や(同上)の様々な要素を考慮し、ここに来る時間を大まかに予測した結果、上杉の班と総悟の班がほぼ同時刻に伏見稲荷大社を訪れるのではないかと言う説が浮かんだ。だから、一花は二乃が上杉の班に着いて行くのに対して異議を唱える事はなかった。

 

無論、一花はただ予測しただけ。当日の状況によっては外れる事など当然ある。故に、半分以上賭けに近かったが──────── 一花はその賭けには勝った。

 

だが、これはまだ勝負の土俵に立っただけなのは当に理解していた。恋のダービー。相手は自分の妹(三玖)

 

「(………………三玖、林間学校の時に言ってたよね、私もお好きにどうぞって。そして、負けるつもりもないからって。………………三玖の告白を邪魔するつもりはない。けど、私は三玖が告白するのを待ったりはしない。私の好きに、自分のタイミングでさせてもらう。そして、私も負けるつもりはないからね)」

 

一花がそう決意している一方、総悟は上杉たちの存在に気が付いた。

 

「おー、誰かと思えば上杉達やん。ここで会うのは偶然とも言えるし─────そうでないとも言えるね」

 

「どっちだよ………」

 

「やぁ、火野君に三玖さん!君たちもここに来るとは奇遇だね。僕たちは今から学問の神様が祀られてる神社に行くつもりだけど、君たちはどうするんだい?」

 

「……………マジか、俺達もそこに行くつもりだったんだよなー」

 

若干苦虫を嚙み潰したような表情になっているのはたぶん気のせいだろう。決してちよっと面倒な武田がいるからとかではない筈だ、恐らく。

 

「私達は受験生だから真剣に神頼みしないと。私は勿論、皆の分も」

 

「だな。特に二乃とか二乃とか二乃とか二乃とか二乃とか二乃とか二乃とか二乃とかな」

 

「(あんの野郎……………!)」

 

二乃がツッコミに飛び出そうになるのを何とか理性で抑えているのをいざ知らず、結局5人で目的の神社に到着した。

 

「じゃ、俺ら先にお参りさせて貰うわ。この後も予定があるんでね(と、言うのは嘘ではないけど三玖と2人っきりで回りたいんだわ!!)」

 

「お前らそんなにスケジュールを詰め込んでるのか?」

 

「まぁ、それなりには(そんなに詰め込んでる訳でもないけど、早くソウゴと2人っきりで回りたいしそう言う事にしておこう)」

 

同じことを考えている2人はお賽銭を投げ入れて祈る。

 

「(三玖達が無事に希望の進路に進めますように…………もし進めなかったらこの神社燃やすからな(脅迫))」

 

どこぞの彼女が100人出来る予定のモンスター彼氏と同じような脅迫も付け加えて総悟の参拝は終了。参拝する上杉らと別れて先を進み、千本鳥居のマップに入る。

 

「おぉ、すげぇな…………」

 

「壮観…………………」

 

思わず足を止めてそう呟く2人。写真もパシャパシャ撮っていると、総悟はひみつ道具を取り出すかのように棒を取り出した。

 

「テッテレー!自撮り棒~(某青タヌキ風)……………折角だから一緒に撮る……………撮らない?」

 

「!………うん、撮る!」

 

と、言う訳で鳥居をバックに2人でパシャリ。

 

「おぉ、ええやん。後で三玖にも送るわ(三玖が可愛いすぎるんだわ。世界遺産とギネスとノーベル賞の申請しよ………)」

 

「うん、お願い(後でバックアップして、帰ったら現像して額縁にいれて飾ろ……………)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四ツ辻

 

「ぜぇ…………ぜぇ………………」

 

「ふー、頂上まであと少しか。三玖はマジで大丈夫か?」

 

「だ、大丈夫…………」

 

瀕死寸前(大嘘)の三玖。総悟は辺りを見回すと、目と鼻の先にお食事屋があるのを見つけた。

 

「………あぁ、そういやここに美味い飯屋あるんだっけ……………あっ、そうだ(唐突) 三玖、あの店にぃ、うまいご飯があるらしいんだけど行きませんか?行きましょうよ(名案)」

 

美味いご飯も食べれて三玖の体力も回復できるまさに一石二鳥の名案。だが、三玖には手作りのパンがある事を総悟は知らない。

 

「!…………待って、総悟。実は……………お昼を作ってきたの」

 

「おー、そうなんかー…………………って、なにィイイイイイィ──────ッ!!

 

一瞬遅れて理解した総悟はジョ〇ョ風の驚きの声をあげた。

 

「私のとっておきを作ったの。だから、お昼は眺めの良いところで食べない?」

 

「勿論勿論モチロン!そんなの当たり前だよなぁ?(あびゃびゃべべぶぶぶぶぶぶぶぶぶ)」

 

まさかの手作りに総悟の心の声は完全に語彙力を失った模様。

 

「ふぅー…………………じゃあ、行こっか」

 

「Oui(フランス語で『はい』)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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一花side

 

四ツ辻に到着した時にはもうソウゴ君や三玖の姿はもうなかった。あとフータロー君達も。恐らくもう頂上に向かっているのだろう。……………そして、三玖は恐らく頂上で何か仕掛ける気だ──────例えば告白。

 

根拠はなくてただの勘だけど、何故か確信があった。5つ子故なのだろうか。

 

「へー、行き方が2通りあるんだね」

 

「フー君はどっちの道を行ったのかしら……………」

 

「あ、美味しそうなお食事屋さんがありますよ!」

 

……………五月ちゃんには少し悪いけど、ここは先を優先させてもらおう。

 

「左のルートの方が少し早いみたいだしこっちで良いんじゃないかな?どっちのルートを通ったにせよ、頂上に繋がってるのは同じだからフータロー君ともたぶん頂上で会えるだろうから早く行こうよ」

 

「……………それもそうね。早く行きましょ」

 

「ご飯……………」

 

……………よし、これで計画通り。実際の所、どちらのルートが早いかどうかは知らないし、ソウゴ君らがどっちを選んだのか分からない。ただ、右のルートにはなくて左のルートにしなないものがあるのを私は事前に知っていた。

 

それは──────

 

「あ、お手洗いです」

 

五月ちゃんの言う通り、お手洗いである。

 

「丁度行きたかったのでこちらで正解でしたね」

 

「この先には確かないのよねー。私も行っておこっと」

 

「じゃあ、私もー。一花はどうする?」

 

「私は大丈夫だから待ってるよー」

 

そして、皆がお手洗いに行って私だけになった瞬間──────私は頂上目掛けて駆け出す。これで私1人。何の制限もなく行動できる。

 

「(ソウゴ君単体ならもうとっくに頂上に着いてるだろうけど、体力のない三玖がいるなら話は別。上手く行けば私が先回り出来るはず─────!)」

 

仕掛けられるタイミングがあるかは分からないが、取り敢えず先に着いておけば、三玖のみが告白すると言う『そもそも勝負の土俵にすら立てなかった』と言う事態は避けられる──────結果としてどうなるかはさておき。置いて行ってしまった皆には少し申し訳ないと思ってるけど、この恋を後悔で終わらせたくはないので、今回だけは大目に見て欲しい。

 

「(………見えた、頂上──!)」

 

ソウゴ君らと遭遇しなかったって事は、2人は右のルートだったのだろう。私は一ノ峰に足を踏み入れた。

 

「はぁ……はぁ……………誰も……………いない……………?」

 

どうやら私が1番乗りだったみたいだ。急にどっと疲れが押し寄せてくる。水分補給をしていると、左のルートから聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

……………どぎゅああああああああああああああああああああ─────!!」

 

慌てて隠れた瞬間、三玖をおんぶしたソウゴ君が左のルートから現れた。

 

さて─────ここから私はどう動くか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総悟side

 

「ハァ……………ハァ……………………つ、着いたァ!三玖、大丈夫か」

 

「ぜぇ………ぜぇ………な、何とか………………」

 

どうも、三玖がマジでヤバそうだったので途中からおんぶして一気に駆け上がってきた男です。いやぁ、普段から鍛えておいて良かった。

 

「ぜぇ…………ぜぇ……………………そ、ソウゴ……………お、お昼……………………」

 

「待て待て待て!喋るよりも先ずは水分補給しなさんな」

 

「……あ、空っぽ……………そう言えば…………………さっきの展望台の時に……………全部飲んじゃったんだっけ………」

 

おっとっと。…………頂上に自販機とか置いてあるんかな?

 

「ちよっと自販機探してくるから三玖は休んでてな」

 

「……うん、お言葉に甘えてそうさせてもらう…………………」

 

と、言う訳で自販機とかの捜索開始。頂上も案外色々な建造物とかあってまぁまぁな広さがあるんだなー、なんて考えていると。後ろから俺の名前が呼ばれる声がした。聞き覚えしかない声が。

 

「ソウゴ君」

 

「ん?……一花姉さんか。ここに来てたのか。って、他の皆は?」

 

「……………………」

 

……………ん?何かいつもと雰囲気が違う気が。

 

「……………………よしっ」

 

何がよしなん、と思ったが口には出さなかった。否、出せなかったと言うべきか。何故なら一花姉さn……………一花が今までに見たこともないような真剣な表情だったからだ。

 

「……ソウゴ君、話があるんだ。ほんとはこんなタイミングで言うべきじゃないのかも知れないけど……手遅れになったら一生後悔するだろうから……………」

 

そして、彼女は言った。

 

「ソウゴ君、私は─────────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君の事が好きです」

 

──────ほんの一瞬、思考が止まった。

 

「あの花火大会の日に、背中を押してくれた時からずっと好きでした」

 

ほんの一瞬、理解が追いつかなかった。けれど、すぐに理解した───────俺は今、一花に告白されたのだ、と。

 

「付き合ってください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バサッ

 

一花姉さんの背後から何かが地面に落ちる音がした。その何かとは小さな紙袋。そして、その紙袋を落としたのは───────

 

「み……三玖…………………」

 

「……………………………」

 

三玖は驚いた様子を見せていた。俺は告白の衝撃を受けてか、何も気の利いたことを言えなかった。対する一花は視線こそ三玖に向けているが何も言わない。三玖の左手が俺からでも震えているように見えた。けど、彼女はそれを右手で抑えて口を開いた。

 

「ソウゴ…………私────!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お取込み中悪いけど、楽しい修学旅行はおしまいだよ兄さん(・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな声背後から聞こえてきた瞬間、殺意(・・)と伴に忘れかけていた前世での記憶(・・・・・・)が一瞬で脳裏を駆け巡った。反射的に振り向くと同時に回し蹴りを放が、俺の足は空を切る。

 

誰もいなかった。嫌な幻聴でも聞いたのかと一瞬思った。だが、違った。

 

カシャン、と背後から何かが地面に落ちた音がする。音のした方を振り向くと、視線の先の地面にあったのは三玖がいつも身に着けているヘッドホン。

 

そして。

 

最初から誰もいなかったかのように。神隠しでもあったかのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………三玖?」

 

先程までそこにいた筈の三玖の姿はどこにも無かった。

 

to be continued……………




次回でシスターズウォー(?)編はラストです。次々回からはオリジナル編突入です。ここが物語の大きな山場です。上手く畳めるように頑張ります。

次話を投稿する前に、まだ読んでない人は本編以外の話を読んでおいて貰えると嬉しいです。ここから先は本編以外で書いた話もバリバリ絡んでくるので。

では、次回もよろしくお願いしますばい。


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幕間の物語
ガリ勉の天才とオタクな天才 その1


お待たせしましたー。気付けばお気に入り登録者が70人もいて、しかも評価をしてくれてる人が9人も。まだ7話しか投稿してないのにありがたいものですね。これからもお気に入り登録者を増やしたり、評価を少しでも良くする為に精進しますので、よろしくお願いします。

…………我ながら、何か今日は真面目だな。次回はもっとふざけておこっと。


これは高校1年生の物語。どう言った経緯で上杉と総悟は出会ったのか────その一部始終を綴った物語────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4月の下旬。

 

「この前の英語の小テストも学年1位…………ま、100点だったんだから当然だな」

 

掲示板に貼り出される英語の小テストの上位者表を見て満足そうな笑みを浮かべながら頷くのは勉強を愛し、勉強に愛された男、上杉風太郎。彼は自分より下位の者はもとい他人には関心は持たない男である────のだが。

 

「それにしても………毎度のごとくいつもいるな、こいつ」

 

彼の視線は1番上にある自分の名前の1つ下へ。そこにあった名前は同じく満点で1位の人物────火野 総悟だ。

 

「俺と同様に全ての科目の初回の小テストから今回に至るまで全部満点…………俺と同じ位の中々の実力者…………要は天才な訳だ」

 

さりげなく自画自賛をする上杉氏。普段は家族以外は誰も言ってくれないから自分で言っているのだろうか。

 

「火野 総悟か……………昼飯食った後に少し見て来るか…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(………………あいつか)」

 

総悟のいるクラスに着き、上杉は近くにいた奴にどいつが総悟なのかを教えてもらって、窓際の1番後ろの席に座っている彼を廊下からこっそり見ていた。

 

「(今は本を読んでいるのか。ブックカバーで表紙は分からないが、オール満点を取るあいつの事だ。恐らく勉強しているのだろう。昼休みにも勉強するのがオール100点の秘訣なのか?…………って、本を机の中にしまって立ち上がりやがった!)」

 

「………………ふぅ。キリの良いところまで読んだし、飯食いに行こっと」

 

総悟が立った瞬間、上杉はガラケーをいじってるフリをしながら彼が昼飯を食べに行くのを見送った。

 

「(……………待てよ。今ならあいつが読んでいた本を確認出来るんじゃないのか?ちょうど良い、どんな本で勉強をしているのか参考までに見させて貰おう)」

 

上杉は気配を消しながら総悟の席に接近。幸いな事に、総悟の席の周りには誰もいないのと上杉が地味過ぎて誰も彼が入ってきてたのに気付いてなかった。

 

「さっき読んでた本は…………これか。さーて、どんな本なのやら…………」

 

上杉はしおりを挟み込んでいた箇所を開いてみる。それを見た上杉の目は驚愕で大きく開かれる。彼の目に映ったのは───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────水着姿の可愛いロリだった!

 

「何てものを見せつけてくれてんだ!!」

 

思わず声に出してそうツッコミを入れて本────いや、ラノベを閉じる。上杉には刺激の強いものだったか、若干顔も赤くなっている。

 

「(こ、こいつ……………勉強してるかと思えばこんなものを読んでいたのか…………よくよく見れば、こいつの机の中に入ってるの全部似たようなもんじゃねーか!てか、隣の空席の中も全部!学校に何冊持ってきてるんだよ!)」

 

心の中でツッコミの嵐を浴びせながら上杉は深呼吸をして落ち着きを取り戻す。

 

「(…………どうやら、オール100点を取る秘訣は別にあるらしい。こうなったらその秘訣を突き止め、更なる学力向上の為にそれを俺のものにしてやる……………!)」

 

上杉は総悟がオール満点を取り続ける秘訣を突き止め、それを自分のものにして学力をさらに向上させる事を決心するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後

 

「黒猫とパンケーキ作る、ミャン♪パンケーキに黒猫のせる、ミャン♪」

 

何か良いことでもあったのか、もしくはこれからあるのか、総悟はご機嫌そうに歌を口ずさむ。そんな彼から少し離れた所から追跡しているのは上杉だった。

 

「(どんどん住宅街から遠ざかってるから家に帰る訳ではなさそうだな…………この方角にあるのは確か大型ショッピングモールだったな……………あまり行ったことはないが、何かあるのか………?)」

 

頭の中で考えを色々と巡らせているとあっという間にショッピングモールに到着。2人とも中に入る。

 

「中も大型なだけにだだっ広いな。人も多いし…………おっと、見失わないようにしないとな」

 

一定の距離を保って総悟を追う上杉。そんな総悟は追跡に1ミリも気付かず、エスカレーターで上の階へとどんどん上がっていく。そして5階に上がると、総悟は近くにいた女性に話し掛ける。

 

「(誰だ、あの女の人は?大学生くらいか?ま、まさか………彼女ってやつか!?……………いや、オール満点を取るような奴だ。恋愛なんて勉強を妨げるような愚かな行為はしないだろうな)」

 

そして、総悟はその女の人と一緒に書店へと入っていく。上杉もこっそり入店し、本を眺めるフリをしながらしっかりと2人を捉えていた。

 

「(……………おっ、参考書のコーナーに入った。参考書を買いに来たのか。オール満点を取る奴がどの出版社の参考書を使うのかは少し気になるな。さぁ、何を買うんだ?)」

 

そして総悟の足はとある場所で止まる。

 

「ちょっと待って下さい、星奈さん。これ………」

 

「(お目当てを見つけたのか?一体何を買うんだ…………?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここの参考書、4巻と5巻の順番が逆になってるなー。直しとこっと」

 

「(……………は?)」

 

「総悟様はそう言う所に敏感ですものね」

 

「ちゃんと順番通りに並べてないと無性に直したくなるんですよねー。自宅にある漫画とかも順番通り揃えないとイライラしますから」

 

そして2人は参考書のコーナーから抜けて行った。

 

「(…………いや、それだけ!?順番どおりにしただけで買わないのかよ!…………じゃあ、結局買いに来たのって…………)」

 

総悟が行った方を覗いてみると

 

「ポケモ………じゃなくて。新刊、ゲットだぜ!」

 

「(やっぱりかよ!)」

 

総悟のお目当てはラノベであった。

 

「ラスト1冊でしたね、総悟様」

 

「ふー危ない危ない。ネットで注文しても良いんだけど、送料とか掛かりますしねー。それに、本屋に行って自分の手でゲットした時の方が満足感ある気がしますわ。じゃ、お会計行ってきまーす」

 

ご機嫌そうにスキップしながらレジへと向かう総悟を見て上杉はため息をつく。

 

「とんだ時間の無駄だったな……………結局、あいつが自分の趣味の本を買うの見ただけじゃねーか…………帰って勉強するとしよう……………はぁ」

 

再度ため息をついて帰ろうとする上杉。そんな彼の耳に総悟の声が飛び込んで来る。

 

「あ、そう言えば………書店注文をしていた例のアレ(・・)ってありますか?」

 

「ああ、アレ(・・)ですね?奥の戸棚に補完してありますので、少々お待ちください」

 

「(……………例のアレ?まだ何か買うつもりだったのか?)」

 

足を止めて横目で見ていると、総悟は独り言を呟く。

 

「……………アレは絶対買っておかないとな…………俺と同じく1位のあいつ(・・・・・・)には負けられないからな」

 

「!」

 

「あいつも思ってると思うが、俺は1位の座をお前だけに独占させるつもりはねぇぞ。絶対負けねぇからな」

 

「(……………ああ、上等だ。勿論俺も負ける気はないからな…………火野)」

 

ライバルに対して心の中でそう返していると、先程の店員が例のアレを持って来る。

 

「お待たせしました。こちらの……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アニメの神様』でよろしいですか?」

 

「いや、勉強の本じゃないのかよ!!」

 

「ん?」

 

「あ」

 

思わず大声でツッコミを入れてしまった上杉。その声に総悟も上杉の存在に漸く気が付いた。

 

「あれ、もしや…………って、おい!?」

 

「(に、逃げるが勝ち!)」

 

逃げたら余計怪しまれるのは冷静に考えれば分かるのだが、見つかってしまった動揺の余り咄嗟に逃げ出してしまう。だが、駆け出した上杉の目の前に瞬間移動の如く現れた星奈が前を塞ぐ。

 

「……………あなた、先程から私達を………いえ、総悟様をつけて見ていましたね?」

 

「なっ……!?」

 

「あなた、誰です?総悟様の知り合いですか?もしくはただのストーカーですか?」

 

「え、えっとですね、俺は「俺と同じ学校の同級生ですよ、星奈さん。だろ?」…そ、そうです!」

 

会計を済ませた雑誌を持つ総悟の振りに上杉は慌て頷く。

 

「おや、そうだったんですか?」

 

「ええ。所で松岡禎つ…………じゃなくて、上杉。もしかして、学校出た時からつけてた?」

 

「あー…………まぁ、そうだ。色々と全部話すから、ちょっと場所を移さないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

 

「フハハハッ!オール満点を取る秘訣を突き止めて、それを自分のものにする為に俺を調査しようとしてたのか!フハハハハハッ!や、ヤバい…………総悟君、腹筋大激痛…………!」

 

「い、幾らなんでも笑い過ぎだろ!学力向上を目指して何が悪い!」

 

「いやいや、別にその姿勢は悪くないぜ。ただ、そんな怪しくて回りくどいやり方しなくてもふつーに訊いてくれば良かったのにww」

 

「うっ…………それはまぁ、そうなんだが………」

 

「全くです。それにしても、恋のストーカーではなく勉強のストーカーとは…………何と反応して良いのやら…………」

 

俺はひたすら爆笑しているが、星奈さんはどう対応すべきか困り顔である。

 

「…………だが、紛らわしい事をしたのは悪かった。すまん」

 

「あー、良いよそんな気にしないで。別に怒ってないし」

 

「私も怒ってはいませんが………呆れと言うか困惑と言うか……………」

 

「…………そう言えば、さっきお前が独りで言ってた1位に負けられないとかって何の事を指してるんだ?」

 

「あー、あれ?ネット上で行われる『アニオタ選手権』って言う早押しクイズ的なやつの事なんだけど。詳しく話すと「ああ、うん分かった。アニメとか分かんないんで大丈夫だ」………あ、そう…………」

 

やはりガリ勉はアニメとか見ないのか…(しみじみ)

 

「けどまぁ、俺も上杉とは話したいと思ってたから良い機会になったよ」

 

「そうなのか?」

 

「まっ、ゆくゆくは友達とかになりたかったしな」

 

どうせ来年の秋から始まる五つ子の家庭教師で恐らく上杉と関わるのだろうし、機会を見つけて早めに仲良くなっておいては損はないだろうと考えていた所だった。ただ、色んな予定が重なりまくって機会が中々見つからなかっただけで。

 

「それで、上杉。お前、俺がオール満点取る秘訣を知りたいとか言ってたよな」

 

「え?あ、ああ。そうだが…………」

 

「折角ここで会ったのも何かの縁だ。秘訣が2つあるんだが、その内の1つを教えても良いぜ(ちなみに、もう1つは俺が前世での知識を持って転生してる事だがね)」

 

「ほ、本当か!?」

 

急にテンションが高くなった………ほんとに勉強好きなんだな。

 

「お、おう…………ただ、1つ条件があってな」

 

「条件?金を使わない系なら構わないが……」

 

そんじゃ、遠慮なく言わせて貰おうか。

 

「……………お前の家に遊びに行かせてくんない?」

 

to be continue………




おまけ

上杉「そう言えば、店員に例のアレってお前が言っただけで店員が完全に何の事か分かってたな」

総悟「ああ、俺が小学生の頃から行ってるからね。全員と絆レベルMAXですから余裕で通じるわ」

上杉「はぁ…………あと、星奈さん、でしたっけ?火野の付き人と言っていましたけど、付き人って給料高いんですか?」

星奈さん「(何て生々しい質問………)まぁ、それなりには高いですが。………………もしや、付き人やりたいんですか?」

上杉「高額なバイトなら何でもやりたいです!」

総悟「高額なバイトか…………あ、高額と言えばアレじゃん」

上杉「心当たりがあるのか!是非とも教えてくれ!」

総悟「オ〇オ〇詐偽の受け子」

上杉「俺に犯罪の片棒を担がせる気かよ!?人に何てもんを勧めてんだ!」

総悟「テヘッ♪」

今日も駄文を読んでいただき、ありがたき幸せ………。その2は2巻の途中か終わったら投稿します。


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ガリ勉の天才とオタクの天才 その2

お待たせしました。失踪はしてないっすよ。尤も、今のところは失踪するつもりはないですけどね。最近、予定が立て込んで忙しくてですね。申し訳ない。

2月の初週を乗り越えればまた前みたいなペースで投稿できる……………かも知れないので、よろしくお願いします。


「ほんとに俺の家で良いのか?言ってもお前が好きなラノベ、だったか?それはないぞ」

 

「そんなの知っとるぞー」

 

ガリ勉の家にラノベが置いてある事など1ミリも期待してない(辛口)

 

「じゃあ、何の為に俺の家に?」

 

「そうだな……………お前がどんな環境で勉強をしてるのかとか見てみたいからなー」

 

…………まぁ、実際の所正直に言うとどんな環境なのかとかには特に興味はない。俺が上杉の家に行く理由は1つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(らいはちゃんに決まってるだろうが…………!)」

 

妹ちゃんである。

 

「(らいはちゃんは明るくて素直な妹……………最高じゃねぇか!良い感じに仲良くなっておきたい!くっそー、転生特典が4つだったら俺も妹を頼んでたんだけどな~!)」

 

言っておくがロリコンではない。決してロリコンではないからな!そこんとこ忘れるなよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と言うわけで上杉宅に到着。

 

「ただいま」

 

すると、上杉の妹ちゃんのらいはちゃんが登場。もう既に可愛い。

 

「お帰りー、お兄ちゃん!今日は少し遅かったね?」

 

「……まぁ、色々と用事があってな」

 

用事=勉強のストーカー(?)…………なんて言うのは本人の名誉の為に黙っておこう。

 

「あれ?後ろの人達は?」

 

「あ、どうも。火野 総悟と申しまして。上杉君の友達です」

 

「いや、まだ友達とは」

 

「なんだおめぇ?そんな些細な事で細けぇな。ぶっとばすぞ」

 

「物騒だな!」

 

「私は総悟様の付き人の星奈と申します」

 

「と、とにかくだ。らいは、悪いがこの2人に麦茶でも………………らいは?」

 

何故か固まってるらいはちゃん。だが上杉に声を掛けられてハッとした表情で後ろへ叫ぶ。

 

「お父さん、大変!あの勉強星人でクズで自己中なお兄ちゃんがお友達を連れてきたー!」

 

「なに!風太郎が友達だと!?明日地球は終わるのか!?」

 

散々な言われようだな。にしても、らいはちゃんは意外に毒舌らしい。けど、嫌いじゃないわ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガハハハ!まさか風太郎が友達を連れてくるとはな!人生ってのは何が起こるか分からないもんだな!」

 

「大袈裟だっつーの…………」

 

………おいおいマジかよ……………上杉のお父さん、cv.日〇聡じゃないか!銀〇でバカ兄貴とかオーバー〇ードでアイ〇ズ様とか鬼〇の刃で煉〇さん等のキャラクターを演じたお方の声じゃないの!お父さんの事は知識には無かったから初めて知ったぜ。これはたまげたなぁ。

 

「良かったなぁ、勇也さんがお父さんで。うん、ほんとお前はついてるわ。声とかめっちゃええやん!」

 

「お、おう………?」

 

本人は困惑気味だが、まぁ良いや!

 

「それで、総悟君だったか?」

 

「総悟って呼び捨てで良いですよ(cv.日〇聡で呼び捨てにされるなら悪くないし、むしろ最高だろ!)」

 

「じゃあ遠慮なく総悟って呼ばせて貰うぜ。まぁ、対して面白いものは無いが、ゆっくりしていってくれ」

 

「ではでは、お言葉に甘えて…………つーか、上杉は自分の部屋とかあるの?」

 

「自分の部屋はないな。勉強する時はそこの食卓を使ってる」

 

「そうなのか…………お、そこに置いてあるのは参考書ですな?どれどれ…………」

 

どれも古いなー。中古で買ったのか。けど、いい問題ばかりだな。

 

「火野は参考書に何を使ってるんだ?」

 

「俺か?まぁ、色々とって感じ。今度家に来た時に見せてあげるよ。見たら驚くぞ。俺の本棚には大量の」

 

「ラノベとかがぎっしりつまってるんだろ?」

 

………君のように勘の良いガキは嫌いだよ。

 

「すごーい!星奈さんって料理が得意なんですね!」

 

「いえいえ、これくらい練習すればらいはちゃんにも出来るようになりますよ」

 

おや、星奈さんはらいはちゃんの料理のお手伝いをいつの間に。とんでもない早さで野菜を切ってやがりますよ。材料からしてカレーかな?

 

「らいはちゃんって料理上手なのか?」

 

「らいはの作る料理はどれも絶品だ。特にカレーはな」

 

「へー……………ちなみに、お前は?」

 

「……………………」

 

………あっ、ふーん(察し)

 

「おお、そうだ!折角だし、総悟と星奈さんも食ってけよ」

 

「え?」

 

「風太郎が友達を連れてきた記念だ!遠慮なく食っていけ!」

 

勇也さんから思いがけない提案を受けた。この兄貴が言うようにらいはちゃんのカレーは特に絶品らしいし食べてみたい気はするが……………。

 

「あー、でも星奈さんが」

 

「今日はまだ夕食の準備はしてませんよ」

 

「それなら尚更食べて行きませんか?…………嫌………ですか…………?」

 

「全然嫌じゃないよ!!寧ろ大歓迎!!是非いただきますとも!!」

 

「やったー!じゃあ、今日はお米を多めに炊かないとね!」

 

「よーし、じゃあお兄さんが炊こう!」

 

らいはちゃん、可愛い過ぎやせんか?もうこの子の為なら幾らお金を貢いでも良いわ、うん!

 

「………つー訳だ。カレーが出来るまで暫しお待ちを!」

 

「お、おう………………てか、本来なら客人のお前じゃなくて俺が言うべき台詞なんじゃ……………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

きっかり90分後

 

「おあがりよ!」

 

全員分のふんわりカレーオムレツが完成した。

 

「おお!何か今日はいつもより豪華だな!」

 

「カレーのオムレツか?」

 

「星奈さんが余ってた卵でオムレツを作ってくれたんですよねー」

 

「もうプロの料理人みたいな手つきで凄かったんだよー!」

 

「ふふっ。らいはちゃん、ありがとう」

 

ああ、頭を撫でてあげてる星奈さんは母性の塊やなぁ……………。さぁ、と言うわけで食うとしよう。

 

「「「「「いただきます」」」」」

 

スプーンで一口パクリと頂く。そして

 

「「「「「うまい!」」」」」

 

満場一致である。

 

「うまい!うまい!うまい!うまい!うまい!うまい!うまい!うまい!うまい!うまい!うまい!うまい!」

 

「何回言うんだよ…………」

 

12回言わないと気が済まないんですぅ。それに目の前の勇也さんの中の人は、どこぞの列車で12回『うまい!』を言った男の声を担当した訳ですし、ねぇ?

 

「ほんとうまいなぁ。カレーも絶品だし、オムレツはフワッとしてるし……………まさにスーパーベストマッチ!」

 

「らいはちゃんのカレーが良い味を引き立てていますね」

 

「星奈さんのオムレツがさらに美味しくしてるんですよ!私も星奈さんみたいに調理がうまくなりたいなー」

 

星奈さんとらいはちゃんで互いに誉めあっておりまする。やさしいせかい。

 

「それなら、今度時間がある時に色々と教えますよ?」

 

「やったー!星奈さん、大好きっ!」

 

「~~~~~~~~~~~っ!………総悟様。私、人生で初めてキュンとしました」

 

「みたいですな」

 

俺もこんなに星奈さんが悶えてるところなんて初めて見ましたもん。ちなみに、そんな星奈さんの様子を見て俺もキュンとしました。ごちそうさまです♪

 

「丁度良い、上杉も星奈さんにしごいでもらえば?」

 

「えー…………」

 

あからさまに嫌そうな顔をしてんじゃねぇ!

 

「ちっとは料理くらい出来た方が良いでしょ。飲食系のバイトとかで活躍出来るぞ」

 

「な、なるほど…………確かに一理あるな………」

 

「お兄ちゃんも一緒に教えてもらったら?それで高いお給料のお店で雇って貰えたら、借金問題の解決にぐっと近づくしね!」

 

「「!」」

 

「らいは、お客さんの前だぞ」

 

「あ、ゴメン…………」

 

………………ふむ、そう言うことか。意図せずこの家庭を事情を知ってしまったが、この家を見れば確かに納得だ。

 

「ごほん……………おかわりはまだあるから、火野さんも星奈さんも遠慮なく食べていってね!」

 

「じゃあ、おかわり!」

 

「私もお願いします」

 

あと2、3杯は行けますよ~!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふー、食った食った。じゃあ、我々はそろそろおいとましますわ。ごちそうさまでした」

 

「おう!風太郎、通りまで送ってややれ」

 

「へいへい」

 

さて帰るかと言うタイミングで、らいはちゃんが話し掛けてきた。

 

「火野さん、星奈さん!お兄ちゃんは自己中でクズで最低な人間だけど………良いところもあるんだ!」

 

辛口で散々言われてるが、お兄ちゃんは何か弁明なり、言い訳なりしないんですかねぇ………(困惑)

もしや、自覚あり?

 

「だから……………また食べに来てくれる…………?」

 

「ええ、勿論です。機会があればまた一緒に作って食べましょう。あと、教えるのもですね」

 

「今度はゲームとかで遊んだりもしようね~」

 

こんな可愛い子からの誘いを断る者はいるだろうか?いや、いない(断言)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お見送りはここまでで良いよ。約束通り俺の秘訣を教えるから、今度は俺の家にカモン!」

 

「わ、分かった…………それと、俺の家の事情は他の奴等には他言無用で頼む」

 

「オッケー、誰にも言わないよ。上杉が妹ちゃんにクズとか自己中とか言われてることも」

 

「…………そ、そうだな。俺の名誉の為にそれについても黙っておいてくれ。…………にしても、家族以外の人と飯を食うのも久々だったな」

 

「へー。道理で楽しそうだった訳だ」

 

「………ま、悪くはなかったな」

 

そこは素直に『楽しかった』って言っておけば良いのにー。素直じゃないな~。

 

「そんじゃ、また明日学校で~」

 

「ああ。…………それと、星奈さん。料理の件、良ければ俺もしごいて貰えますか?バイトの幅を増やしたいので」

 

「ええ、勿論です。スパルタで行きますので、覚悟しておいて下さいね?」

 

「………は、はい……」

 

若干顔が引きつってるけど、自らしごかれに行ったその姿勢はgoodですな(上から目線)

 

ちなみに、このしごきが経験となったのかは分からないが、後に上杉はケーキ屋のバイトに採用される事になるのだがそれは別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから2週間後の俺氏の宅。

 

「おい、火野」

 

「んぁ?」

 

「これはどういう事だ?」

 

「そう言う事だ」

 

「答えになってねぇ!」

 

Q これはどういう事だ?

A そう言う事だ。

 

うーん、この答えはガリ勉には無理があるか。いや、頭の中まで覗けちゃう神様でもない限り誰でも無理か。

 

「何が腑に落ちないんだ?目の前に参考書があるだけじゃない」

 

「いや、確かにそうなんだが……………けどな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋の一室が大量の参考書で埋まってるってどゆこと!?」

 

上杉の目の前には大量の参考書の入った本棚が部屋の大部分をみっちり占めている光景が広がっていた。本棚にぎっしりつまってるのはラノベとかだけではないのだよ!

 

「何でこの山のような参考書があるのかって理由はですね………………ある所に黄色いマッハ20のタコの先生がいました」

 

「とんでもないワードが出てきたな………」

 

「その先生はとても教育熱心な人間…………いや、タコで、何と日本全国すべての問題集を解いて憶えていた」

 

「そりゃすげぇな…………まぁ、漫画とかラノベの世界の人………タコの話なんだろうけど」

 

「そして俺は思った。『俺もタコみたく日本全国の問題集を解いて覚えれば、爆弾の前で問題が解けるまで動けないみたいな状況になっても余裕でクリアできる無敵マンになれるんじゃないかと』……………つー訳で、親に頼んで日本全国の問題集を買って貰ったって訳よ」

 

「………色々とツッコミ所は満載だが、取り敢えずは理解した。これ、全部解いたのか?」

 

「ああ。生憎、時間だけ(・・・・)はバカみたいに持て余していたからね。それでも全部マスターするには2年くらい掛かったけど」

 

まぁ、アニメとか見てた分の時間を勉強に充てればもっと早く終わってたかもしれんが。全部マスターしたお陰で苦手だった理系科目も今となっては得意となり、マジで無敵(たぶん)

 

「なるほどな…………そりゃ学年1位も余裕な訳だ。この参考書の山を見て、正直お前の方が勉強バカだと思ったわ」

 

「そんな称号いらんわ。勉強バカの称号は上杉だけ持ってろっての。俺はアニメバカとかそっちの方がご所望だね。で、どうする?上杉もここにあるの全部解くのなら貸すけど?」

 

「い、いや流石に全部は時間的にな…………まぁ何冊かは借りさせて貰っても良いか?」

 

「良いけど、レンタル料高いよ?」

 

「金取るのかよ!?」

 

「嘘だよ(迫真)」

 

友達から金をむしり取るほど俺は外道じゃないゾ。

 

「つーか、この規模まで来るともはや図書館だな」

 

「それは俺も前々から思ってた。とにかく、ここの参考書は全部自由に使ってくれて構わないからな。あ、でもラノベとか漫画は絶対に貸さんからな。触ったりでもしたらぶっ〇す」

 

「触らねーよ!マジで殺りそうだし!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(やれやれ…………何とも変わった奴だな、こいつは………………)」

 

尤も、その変わった奴(総悟)からも『勉強が大好き過ぎる変わった奴』と思われているのだが知る由もない。

 

「(それにしても、『友達』ねぇ……………そう言えば、中学の頃は勉強の邪魔になると思って人付き合いとか全然してこなかったな………………まぁ、気の許せる友人は1人位いても別に良いか。変わってるが悪い奴ではないし、勉強に支障は来さないだろうし)」

 

そう結論付けて上杉は口を開く。

 

「総悟」

 

「ん?」

 

「その……………色々と、ありがとな」

 

「フッ、色々とか……………じゃ、色々とどういたしまして、と言っておこうかな」

 

こうして2人は知り合い、互いに良き友となったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てか、俺って結構感謝されるべきだよね?勉強のストーカーを寛大に許したり、参考書の貸し出しを許可してるし?これはもう頭を垂れて総悟様って呼ばないといかんのではないかねぇ?ねぇ?ねぇ?」

 

「超うぜぇな!(こいつと友人になって良かった………んだよな………?)」

 

おわり





NGシーン

総悟「素晴らしい提案をしよう。お前もオタクにならないか?オタクにならないなら〇す」

上杉「いや、何で!?」

総悟「術式展開。破壊殺・空式!」

上杉「ギャァァァァ!」

没にした理由:総悟は術式展開出来んから(適当)



今日も読んでいただき誠にありがとうございました!

………ちなみに、総悟はラノベとか漫画は別の部屋にて超厳重に管理してます。


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HINO'Sキッチン

「皆さんおはようございます。火野 総悟です。さぁ、今日もよろしくお願いいたします。メールを見てみましょう。『いつも楽しく拝見させて』」

 

「ま、待ってください!」

 

どこぞの朝の報道番組でやっていた料理コーナーをパロる総悟に五月がストップを掛ける。

 

「んだよ、五月。折角良いところだったのに。何をそんな困惑してるん?」

 

「家庭教師の約束の2時間前に材料を持って突然やって来て、料理番組みたいな事をされては誰でも困惑します!」

 

「おいおい、約束を覚えてないのか?前にカレー作るって約束しただろ?それを今日果たそうと思ってな」

 

「……………ああ、そう言えばそうでしたね。林間学校で色々とありすぎてすっかり忘れてました」

 

五月も漸く思い出した模様。まぁ、あの3日間は色々と濃い出来事があったから忘れるのも無理はないだろう。

 

「確か………私が食べたこともないようなカレーを作るでしたね?」

 

「そゆことだ。俺の頭の中には全36巻、計315話の知識が詰め込まれている。その中には勿論カレーに関するものもな」

 

「よく分からないですが、とにかく凄そうなのは分かります…………!それで、どのようなものを作るのですか?」

 

「『香りの誘爆』の異名で知られる『カレーリゾットオムライス』だ」

 

「『香りの誘爆』…………!今から完成が楽しみです!私も自分で作れるようになるために見ておきます!」

 

「さぁ、早速作って行きましょう」

 

と言うわけで…………今日作りたくなる簡単レシピ(たぶん)を紹介!HINO'Sキッチン!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えー、材料としては4人分でこんな感じ。後でメモはあげるわ」

 

①米(1カップ)、玉ねぎ(1/2個)、牛挽肉(150g)、カレー粉(大さじ1と1/2)、マンゴーチャツネ(大さじ1)、バター(大さじ2)、すりおろしニンニク(小さじ2)、ピザ用チーズ(50g)、塩・胡椒・パセリ(適宜)

 

② 顆粒コンソメ(大さじ1)、湯(1L)

 

③《卵液》 卵(8個)、牛乳・生クリーム(大さじ2)、バター(大さじ4)、塩・胡椒(適宜)

 

④《ソース》 オイスターソース・酒(大さじ2)、醤油(大さじ1)、砂糖(小さじ1)

 

「火野君、このマンゴーチャツネとは……?」

 

「そもそもチャツネってのは、南アジア・西アジアを中心に使われているソース、またはペースト状の調味料の事だ。色んな種類があるんだが、今回はマンゴーverだ。このマンゴーチャツネがスパイス同士の持ち味を結び付け、一段と深いコクを与えてくれるんだよねー」

 

「な、なるほど…………!」

 

五月が感心したところで、調理開始である。

 

「先ず玉ねぎをみじん切りにし、鍋にバターを熱したらニンニクとみじん切りにした玉ねぎを入れる。玉ねぎが透き通るまで炒めたら、 牛挽肉・カレー粉を入れて香りが出るまでさらに炒める」

 

「んん~!既に美味しそうです~!食べても良いですか?」

 

「いや、気が早いっての………」

 

総悟が呆れてる最中も調理は進む。

 

「さっき色々と炒めた鍋に米を加えて炒め、マンゴーチャツネ・混ぜ合わせた②をひたひたに加える。沸騰したら弱火にし、沸騰している状態を保ちながら、水分が足りなくなれば残りの②を入れ、弱火で15分煮る…………お、帰ってきたな」

 

ここで、買い物に出掛けていた五月を除く4人が帰宅してきた。

 

「ただいまー………あ、何かいい匂いがするねー」

 

「この匂いはカレーかしら。五月が作……………って!?」

 

「あ、ソウゴだ」

 

「おお!火野さんがカレーを作っています!」

 

産まれた順に各々異なる反応を見せる。

 

「ちょっとあんた!何勝手に私達の家のキッチンを使ってるのよ!」

 

「総悟君はユー達の先生だから使ってOK。QED.証明完了」

 

「どんな理屈よ!?」

 

「二乃、今から火野君を追い出すような真似はしないで下さいね。そんな事をされては私が何をしでかすか分かりませんから!!」

 

「え………ええ…………」

 

五月からとんでもない圧力を加えられ、頷く他に二乃には選択肢がなかった。そして15分が経過。

 

「15分煮たらピザ用チーズを入れて混ぜ合わせ、塩・胡椒で味を調える。次にボウルに卵をときほぐし、牛乳・生クリーム・塩・胡椒を加えて混ぜあわせて卵液を作る」

 

ここまでくれば完成は目前。クライマックスである。

 

「フライパンにバター大さじ1を熱し、卵液の1/4を流し入れて、箸を使って 素早くかき混ぜる。先程味を調えた鍋の中身を1/4のせ、奥側を箸で端から折り返しまして。 フライパンを手前に返し皿にとり、形を整える作業を4回繰り返す。皿に移した後、フライパンにソースの材料を入れて、沸騰したら火を止めて完成したソースを掛け、パセリを添えれば─────」

 

5人の前にオムライスの皿が出された。

 

「おあがりよ!ゆきひら謹製『カレーリゾットオムライス』!熱いんで気ぃつけなっ」

 

「…………ていうか、ゆきひらって誰よ?」

 

「この料理のレシピを作ったとんでもねー高校生。んなことより、熱いうちにさっさと食うぞー」

 

スプーンや水をさっさと用意し、6人は食卓につく。

 

「「「「「「いただきます」」」」」」

 

各々がスプーンでオムレツに切れ込みを入れた瞬間、中に閉じ込められていたカレーリゾットの香りが解き放たれる。

 

「凄いです!嗅いだこともない、何てまろやかな香りなんでしょう!」

 

「…………ま、まぁ悪くないんじゃないかしら?べ、別にこれくらい私でも作れるけどね!」

 

「二乃、素直に認めれば良いのに」

 

「おー、お米が凄くツヤツヤ輝いてる!こんなに輝きを放ってるお米をお姉さんは見たことないなー」

 

「自然とにやけちゃいます~!」

 

五つ子からは好評である。そして口に運ぶと───────味の怒涛の打撃が彼女らを襲った。

 

「美味しい!こんな美味しいカレーリゾットは初めてだよ!」

 

「ソウゴ、凄い……!」

 

「私の語彙力では凄く美味しいとだけしか言えません!」

 

一花、三玖、四葉が一言ずつ感想を述べてく中、五月はと言うと───────

 

「とっても美味しいです!鶏ガラと牛すじの濃厚な出し汁にバターで炒めた牛ひき肉や玉ねぎのうま味がライスにも乗って、リゾットのとろみがしっかりと焼かれた卵と渾然一体でスプーンを動かす手が止まりません!」

 

───────3人と比べるとかなり長めの感想であった。しかも中々食レポがお上手。

 

「…………おい、二乃。将来、五月はグルメレポーターになった方が良いんじゃねぇのか?食レポの才能を垣間見た気がするんだが」

 

「……あながち否定できないわね………」

 

と言う訳で五月の将来の選択肢が増えたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食後

 

「いやー、大好評で何よりなことでしたよ」

 

片付けを終えた総悟はつまようじを口に加えながら満足そうに呟く。

 

「ほんとに美味しかったです…………けど、あの美味しさを上杉さんが味わえないと思うと、とても残念です」

 

「案ずるな、四葉。代わりの品を既に用意済みだ」

 

そう言うと総悟は取り出したタッパーからとんでもない異臭がするものを箸でつまむ。

 

「『炙りゲソのピーナッツバター和え』‥………これを上杉の退院記念にあげようかと思うんだが………四葉、味見してみるか?」

 

「‥‥‥…い、いえ!お腹一杯ですので遠慮しておきます!」

 

何故かイカの足で特殊なプレイ(意味深)をされる幻覚を見た気がした四葉は即座に拒否。他の四人も幻覚を見たのか首を横に振るのだった。

 

と、言う訳で上杉は退院直後にとんでもないゲテモノ料理を味わう羽目になるのだがそれは別の話────。

 

end




おまけ

上杉「このゲソピー、意外と美味いな」

五つ子「「「「「え」」」」」

総悟「(貧乏舌………なんて恐ろしい………)」



五月回と言うより、食戟のソーマパロ回って言うのが正しいのだろうか…………?いや、五月回で良いんだよ!!(強引)

自分が食戟のソーマを知ったのは『衛宮さんちの今日のごはん』みたいなほのぼの料理系アニメないかなー、ってdアニメストア探したら見つけたって感じです。見てみたらまさかのエロくて面白かったですね。アニメも全部見ちゃいましたわ。見てない方は機会があれば見てみて下さい!

本日も読んでいただき、サンキューです。

次もぜってぇ見てくれよな!


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罪の鎖は想いを縛って離さず

お待たせ、アイスティー……………あ、違う違う。

四葉の幕間の物語です。案外短い気が……………………まぁ、幕間だし良いでしょ。


12月23日

 

「ふんふふふーん~♪」

 

自分の好きなアニメの主題歌を鼻唄で歌いながら町を歩くのは中野家の四女、四葉である。

 

「いやはや、ラスト1個でギリギリセーフだったけど……………何とか手に入れられて良かった~!」

 

今日は四葉の好きなアニメの円盤の発売日。ネット注文でも手に入れる事は出来るのだが、店頭販売限定のイラストカードを求めてわざわざ出向いて手に入れた次第である。

 

「限定イラストカード以外にもアニメの第0話にあたる小説もついてるから楽しみだなー……………………あ、そう言えば火野さんもこのアニメが好きだったような…………私よりも前に来て買ってるのかな?」

 

火野と四葉の共通点に『アニメ好き』と言う共通点がある。それが判明したのは彼と出会って翌日の土曜日。『屋上の告白』の回の話よ。5人で100点のテストをみっちり復習させられた後、四葉は火野に話し掛けていた。

 

『あのー、火野さんってアニメとか好きなんですか?』

 

『そうだよ(肯定)』

 

『やっぱり!私もアニメが好きなんです!』

 

『あ、マジ!?そっかー、何か嬉しいなー。四葉は何のアニメが好き?』

 

『私はですね─────────』

 

この後、他の面子を置いてきぼりに2人はアニメトークを30分程繰り広げていた。途中で二乃が『はよ帰れ』的な事を言っていたのだが、トークが白熱しすぎてどちらからもスルーされたのは言うまでもない。

 

そんなこともあって、共通の趣味を持つ者同士で結構仲が良く、家庭教師の授業終了後に好きなアニメの感想や考察を話したりするのも珍しい光景ではない─────────最近は三玖が少し不満そうにしているのだが。

 

そんな事を考えながら近くの公園に通りかかると─────────

 

「………………あれ?火野さん?」

 

ベンチに座って熱心に何かを見ている人物は自分達の教師だった。四葉は近づいて話し掛ける。

 

「火野さーん」

 

「……………」

 

「……………………あれ?火野さーん!」

 

「んぁ?……………あれ、四葉じゃーん」

 

2回目の呼びかけで漸く反応した総悟。その手には特典の小説が。

 

「漸く反応してくれました。2回呼び掛けたんですよ?」

 

「あ、そうなの?全然気付かなかったなー」

 

「…………ははーん。さては、その特典の小説に夢中になってたんですね?」

 

「あ、バレた?…………お、四葉も買ったのか」

 

「はい!ラスト1個でしたが、滑り込みセーフです!」

 

えっへん、と少し誇らしげに四葉は商品を見せる。

 

「おー、そうかそうか。1つ言っておくと、この特典の小説……………色々と凄いぞ。読んだら尊死しそう(小並感)」

 

「そんなに凄いんですか!一体何が書いてあるんでしょうか…………?」

 

「それは見てのお楽しみって事で。…………あ、そう言えばさ。前から四葉に1つ聞きたかった事があるんだけど、今良いか?」

 

「私に、ですか?よく分かりませんが聞きたいことがあるならお構いなく尋ねてもらって構いませんよ!」

 

「じゃ、お構いなく。…………俺の勘違いだったらごめんだけど。四葉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前、5年前に上杉と会ってるだろ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何でそれを知っ……………あっ!」

 

口を手で塞いだ時にはもう遅かった。予想外の質問だったから、思わず正解と言わんばかりの言葉を漏らしてしまった。私の反応を見て火野さんは確証を得た表情を浮かべる。もう手遅れだ。私の頭ではここから上手く誤魔化す方法は思いつけなかった。

 

「……………やっぱり四葉だったか。忘れていたわけでもないらしいな」

 

火野さんの中ではすでに確信があったのだろうか。口振りからそう感じた。

 

「………………どうしてそう思ったんですか?」

 

「四葉だけは最初から好意的だったからな。そこで俺はこう考察した─────『昔、上杉に会ってたから最初の時点で好感度が高かったんじゃね?』と……………………まぁ、正解だって確証はどこにも無かったけど」

 

「…………だとしても、正解してしまう辺り流石は火野さんですね」

 

「……………………四葉」

 

火野さんの表情に真剣味が増す。

 

「何であの時名乗り出なかった?それに上杉に『もう会えないって』言ったらしいじゃないの。どうしてそんな事を?」

 

「………………………」

 

「……………何か理由があるなら、俺で良ければ力になれないかって思ったんだが…………………余計なお世話だったか」

 

「そ、そんな事はないです!余計なお世話なんて思ってません……………………私の事を考えて言ってくれてるのはとても嬉しいです……………………でも、これで良いんです。私だけが特別であってはいけないですから」

 

「……………………」

 

「昔、私はお母さんの為に。上杉さんはらいはちゃんの為にと、互いに勉強を頑張ろうと約束したんです。ですが…………………私は下らない事に執着して上杉さんとの約束を破り、勉強を疎かにして部活動ばかり打ち込んだ私だけ落第しました。そして私は姉妹の皆を巻き込んで転校する事になって、迷惑を掛けてしまったんです………………」

 

一度話し始めると堰を切ったかのように止まらなかった。何で話してしまったのだろう。私は火野さんに自分の過ちを話して贖罪でもしている気になっていたのだろうか、私は。

 

────────そんな事で私の罪が許される訳ないのに。

 

「上杉さんはテストで1位を取れるようになっていた…………………あれからずっと勉強していたのが私にも分かります。それに比べて私は……………」

 

「…………確かにそれは『自分が京都の子』って言いづらいわな」

 

「………今の私は姉妹皆のおかげでここにいます。なので、自分だけ特別だなんてあってはならない。だから、あの時の事は全部消してしまおう………………そう決めて私は5年前に出会った格好に似せた服で」

 

「『さよなら』を告げたって訳か…………………」

 

私の言葉を火野さんが継ぐ。勿論その言葉は正解だ。

 

「……………………火野さん。この事は」

 

「誰にも言わねーよ。……………この事を勝手に言う気にはなれない。俺の胸の内にしまっておく事を約束する」

 

「……………すみません、ありがとうございます。……………………では、私は失礼しますね!また明日の決行日にお会いしましょう!その時にこの小説の感想も言いますね!」

 

この話題を打ち切るかのように明るい声を出して私はすぐに去ろうとする。逃げようとした理由は簡単だ。火野さんの表情からして私に何を言おうとしてるのか分かったからだ。多分、その言葉は────────

 

「四葉」

 

逃げるよりも前に火野さんから声が掛かる。流石に無視は出来ず私は立ち止まる。

 

「俺も話を聞いたばかりで考えがまとまってる訳じゃないんだが……………………四葉。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それじゃあいつまで経っても四葉は幸せになれない(救われない)ぞ」

 

その言葉は……………………私の行為(さよなら)への否定。そう言って良い。確かにその通りかもしれない。この生き方は私が本当の意味で求める────────いや、求めていた『幸せ』は来ないのかもしれない。

 

「それで良いのか?」

 

「……………私の『幸せ』は姉妹の皆が幸せになってくれる事です。だからもう幸せです(救われてます)よ」

 

私は張り付けたような笑顔でそう言って、公園を去っていた────────その幸せは本当でもあり、嘘でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総悟は四葉が去った後もベンチに座っていた。その目は小説には向いておらず、黙って空を眺めていた。

 

「まー、総悟君なら気付くと思ってたよ。『京都の子』の正体にね」

 

総悟が声のした方を向くと、滑り台に寝転がる神様の姿が。何気に久しぶりの登場である。

 

「………最近姿を見せないと思ってたら急に来たな」

 

「年末が近くなると、こっちも決算とかで色々と忙しくてね」

 

「会社かよ……………」

 

それで、と神様は切り出す。

 

「どうする?上杉にバラすのかい?」

 

「言わねーよ。誰にも言わないって約束したし」

 

「……………………………」

 

何故か神様は黙り込んで意外そうな顔を浮かべる。総悟が何だよその表情は、と尋ねると────────

 

「いや、てっきり約束を余裕で破ってバラすのかと」

 

「それやったらただの人間の屑だろ」

 

「……………………うん?」

 

「『あれ、違うの?』みたいな顔をすんな!俺は屑じゃなくてSだからな!そこんとこ間違えるんじゃねーぞ!」

 

「はいはい……………………それにしても。私の『幸せ』は姉妹の皆が幸せになってくれる事です、ね」

 

ふざけた表情から神様は真面目な表情に一瞬で変わってそう呟く。

 

「その『幸せ』は確かに『本当』だ。………………ただ、それは姉妹に迷惑を掛けてしまった負い目・罪悪感故から来たもの。だから、その幸せには彼女の『意志』…………『自分の気持ち(本心)』が含まれてない。そう言う意味では『嘘』とも言えるね」

 

「……………………」

 

「……………ただ、あまりその事ばかり考えすぎない方が良い。先ずは自分の幸せを追求しなよ。あらゆる場面において、基本的には他人の事より自分の事が優先するのが道理だからね」

 

「わーってるよ。自分よりも他人を優先する生き方は偽善、って赤い弓兵も言ってた事だし……………………ただ、このまま放置するつもりはねぇよ?俺は四葉の友達であり、そして先生でもあるからな。困っている生徒がいるなら手を差し伸べてやるのが先生って奴だろ?」

 

「────────見捨てるという選択肢は先生にはない。いつでも信じて飛び降りて下さい、か。君も立派な教師の鑑だな」

 

「……………やっぱ声真似上手いな。いや、真似って言うか……………………もはや完全に福〇潤本人だわー」

 

すると、神様はその場でくるりと回転する。次の瞬間には間接が曖昧で黄色い触手を持ち、丸描いてちょんな顔を持つ超生物───────いや

 

「殺せるといいですねぇ、卒業までに。ヌルフフフフフフ」

 

「おー、殺〇んせーだ。スゲー………………って、おい!人前で黄色いタコに変身しちゃまずいだろ!見つかったらネット上でも現実でもとんでもない大騒ぎになるぞ!」

 

「ちゃんと人がいないことは確認済みだっての。…………じゃ、僕は帰るよ。そろそろ休憩時間も終わりだしね」

 

そう言うと、マッハ20のタコの姿からいつもの姿に神様は戻る。

 

「じゃあ、総悟君。たぶん今年来れるのは今日が最後だから、一足早いが良いお年を!」

 

「おう、来年もよろしくなー。………………さて、いよいよ明日か。上杉がどんな反応するか楽しみだなー」

 

───────四葉が過去の鎖から解放されるのは、まだ先の話である。

 

continue to the main story…………




幕間の物語って基本的には1話完結型なんですけど、四葉の場合は本編にもつれ込んで延長戦。今回の話で解決した訳じゃないからね、しょうがないね。

次の幕間の物語はこの小説のメインヒロインの三玖。内容は大方決まってるので、作者の気が乗りだしたら本編と並行して書き始めるのでお楽しみに。

本日も駄文を読んでくれてありがたき幸せ!次の話でもオナシャス!


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呪われた一刀(村正) 

乙骨憂太のcvは緒方恵美さんに決まりましたね。そしたらTwitterのトレンドにシンジ君が入ってて草。五条先生の中の人も反応してましたね。取り敢えずはイヴが楽しみですねー。

FGOソロモンは見てきましたが、感想としては面白かったけど大勢出てたのにびっくりする程喋らなかったですね、予算の都合とかあるからしょうがないんでしょうけどもー!



さて、本題のウマ娘ですが。実を言うと名前自体はかなり前から知ってました。が、『馬耳とか何か抵抗あるなー』とかでアニメとか長らく見る事なかったんですが、電車で隣に座っていたお姉さんがアプリをやってたり、アニメがめっちゃ泣けるとかTwitterで見掛けたんで『そんない面白いなら見てやろうじゃねぇか(上から目線)』で二期まで一気に見た結果…………………………………………涙が止まりませんでした、特に二期。泣き過ぎて翌日は目が痛くなりました。トウカイテイオーの三度にもわたる挫折からの復活劇、ダブルジェット………………じゃなくて、ツインターボ師匠がかつてテイオーから教わった『諦めない事が大事』と言う意思が巡り巡って再びテイオーに継承された所とか、ライスの『ライスは『ヒール』じゃない……………『ヒーロー』だっ……!!』の所とか……………………もう泣きまくり。マジでもっと早く見ていれば良かった、と逆に後悔しました。何だこの神アニメは、最高かよ。3期はよカモン!見たことない人は今からでも遅くないから、見てみて欲しいなー。

ちなみにウマ娘の中で特に好きなのはライス、テイオー、ゴルシ、セイちゃん、ネイチャ、ターボ師匠、キタちゃんですかねー。皆、魅力的でかわいらしい………………かわいいは罪ってはっきり分かんだね。

さて、長く語り過ぎましたね。次回はFGOの2部第6章の感想でも書きますか。一言だけ言っておくと原作者のシナリオはやはり最高だったよ……………………。

今回は忘れたころにやって来る幕間の物語。普通に本編やろうと思ったけど2か月前から取り掛かってた幕間の物語が仕上がったのがこっちを先にあげます。本編を楽しみにしてた方には申し訳ない。新キャラも登場する三玖の幕間の物語。時系列としては林間学校終了後に上杉が入院していて総悟が1人で家庭教師を奮闘している頃。では、本編をどうぞ!


日曜日 AM9:00

 

『今日の最下位は牡牛座のあなた!いつもよりも周りを警戒するようにしましょう!不幸は突然やって来るかも!そして怪しいものには触らないように!ラッキーアイテムはプリンです!』

 

「だって、二乃」

 

あんた(三玖)も牡牛座でしょうが」

 

「と言うか、皆もだけどね………」

 

本日は日曜日。学校も家庭教師も休みである。五つ子達は朝食を取りながらテレビの星座占いを見ていた。

 

「コンビニに走って買ってこようかなー…………」

 

「そう言えば、コンビニに新発売のプリンがあったような……………新発売と言えば確か他にもブツブツブツ」

 

「プリンかぁ。そう言えば昨日、撮影の差し入れで貰って食べたなー」

 

そんな他愛もない話をしている内に5人は朝食を食べ終える。すると五月が思い出したかのように、三玖に封筒を差し出す。

 

「三玖、これがお父さんから預かっていた火野君のお給料ですので、お願いしますね」

 

「分かった」

 

給料を渡すのは上杉に対しては五月、総悟に対しては三玖と決まっていた。少し前に上杉に対しては家を知っている五月が給料を渡す役割を引き受けたが、総悟の方はどうするかとなった時に三玖が『ソウゴには私が渡す』と名乗り出た、と言うエピソードがあったりする。

 

「では、私は上杉君に…………いえ、彼は今入院中ですのでらいはちゃんにお給料を渡してきますね(ついでにプリン等々を買ってきましょう!)」

 

「私もソウゴに渡してくる」

 

「行ってらっしゃーい」

 

一花の声を背に2人は各々の家に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昨日、1日中雨が降っていた影響で水溜まりがあちらこちらで出来ている道を歩く三玖。

 

「えっと…………確かこの道を右に曲がったらもうすぐ…………」

 

余談だが、初めて総悟の家に行ったときは事前に父親から聞いておいてくれた五月から場所を教わって行った。でも初回はちょっと迷った。

 

「(2人きりでソウゴに会える機会ってあんまり無いから少し嬉しい……………あ、でもお出掛けに誘えば2人きりになれる!そうだ、機会がないなら作れば良いんだ…………!)」

 

そんな事を楽しげに考えている三玖。しかし、運命のいたずらかそんな楽しい時間は長く続かない。朝食時に立てられたフラグの回収時間がやって来てしまう。

 

三玖の背後から高級そうなスポーツカーがもうスピードで駆けて来たと思えば次の瞬間

 

バッシャーン!

 

道路の右側を歩いていた三玖の側に出来ていた水溜まりをもうスピードで踏み、水しぶきが上がる。不幸にも貯まっていた水の量はかなり多かった為───────

 

「………………………………」

 

三玖の身体(主に右側)が濡れたのは言うまでもない。車は三玖の存在に気付いてるのか気付いてないのかはさておき、スピードを落とさずそのまま走り去って行った。

 

「……占い、当たった……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「三玖さん!?どうしてそんなにびしょ濡れに!?」

 

庭の草木の手入れをしていた星奈はびしょ濡れの三玖を見つけるとすぐに作業を放り出してすっ飛んでくる。

 

「実は………………さっきここに来る途中で後ろから車が猛スピードで来て……………それで昨日の雨で出来てた水たまりを踏んで水しぶきが………………」

 

「……………それでその車は?」

 

「そのまま去りました……………」

 

「とんでもない輩ですね………………そう言えばここに用事と言うのは……………?」

 

「お給料を総悟に渡しに来て…………幸いなことにこっち(左側)のポケットにいれてたから濡れてなかったのと、もう近くまで来てたので今から引き返すのも、と思って」

 

「ああ、そうでしたか……………総悟様は先程突然『あっ、そうだ(唐突)ちょっと昨日やってたアニメの聖地巡礼して来ます!』と、出掛けてしまって……………………暫く帰ってこないかと。しかもスマホを持って行くのをうっかり忘れいて連絡も取れないんですよね……………」

 

それを聞いて三玖は心の中で溜息をつく。折角ソウゴに会えると思ったのに、と。

 

「(おまけにびしょびしょに濡れるし……………今日は占いの通り、本当に運勢は最下位……………)へっくし!」

 

濡れたのが原因か、小さくくしゃみをする三玖。それを見た星奈は口を開く。

 

「取り敢えず三玖さんは家に入ってここのお風呂を使ってください。そのままだと風邪をひきますから」

 

「え?で、でも」

 

「良いんです、遠慮しないで!ささ、中にどうぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

15分後

 

「さっぱりしたぁ……………」

 

お風呂場を後にして言葉通りさっぱりした表情を浮かべながら火野家の豪邸を歩く三玖。ちなみに、先程着ていた服は洗濯中なので星奈が何処からか調達してきた部屋着を着用中。なお、総悟の部屋着ではない。

 

「最初に来た時も思ったけど、本当に広い豪邸……………フロアマップが無かったら確実に迷ってた……………」

 

この家には至るところにデパートの如くフロアマップが設置されている。過去に来て迷った人がいたので設置された背景がお察しできる。

 

「星奈さんは1階のリビングで紅茶を飲んでるって言ってたから、改めてちゃんとお礼を言っておか『ガチャン』………ガチャン?」

 

リビングに向かおうとした矢先に背後からの音に反応して後ろを振り向くと、床に何か落ちていた。近くに寄ってみると──────

 

「これって………………刀?」

 

─────鞘に収まった刀が落ちていた。

 

「もしかして本物……………?確か刀は登録証があれば所持してても問題ない筈だけど…………ソウゴの家のかな?それにしても、カッコいい…………そう言えば、何処かでこれと似たのを見たような…………気のせいかな?」

 

手にとって色んな角度からじっくりと刀を見る三玖。戦国武将好きの三玖にとって刀は興味の対象だった。

 

「……………ここまで来ると刃の部分も見てみたい………でも、切って怪我でもしたら嫌だし……………」

 

『何じゃ、刀を鞘から抜かぬとは意気地無しじゃな』

 

「誰だって怪我したくないのは当たりま…………………え?今の声は………………?」

 

周りに人影はなし。しかもその声色は聞いたこともない、自分の知らない声。その声の出所は──────

 

『ふむ……………貴様が初めてここに来た時にも見掛けたが…………改めて見てもお主、どうも気になるのう』

 

──────自分が手に持っている刀だった。

 

「………か、か、か、刀が……………喋った……………!?」

 

『いい反応じゃ。驚かれるのは久しぶりじゃから中々に新鮮じゃのう…………さて、小娘よ。悪いが少し付き合って貰うぞ』

 

そして次の瞬間、三玖の意識はプツンと途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………え?」

 

目が覚めるとそこには見知らぬ風景が広がっていた。自分のマンションと比べると小さすぎる畳の部屋、そしてつぼやおけ、囲炉裏など今の時代では到底使われない物が置いてある。

 

「何処ここ………………これ、もしかして………………過去にタイムスリップしたとか…………?」

 

「たいむすりっぷ?何を訳の分からぬ事を言っている、小娘」

 

三玖は声のした後ろを振り向く。そこにいたのは腰の辺りまで赤い髪を伸ばし、アホ毛をピョンと生やしている見た目が中学生位の女がいた。

 

「だ……………………誰?」

 

「人に名前を尋ねる時は先ず自分から名乗るのが礼儀であろうが。あと、年上は敬えと教わなかったのか」

 

「(え…………年上なの?どうみても中学生くらいにしか見えないけど…………取り敢えず話を合わせておこう。そうしないと何か面倒な事になりそうだし…………)……………す、すいません…………私の名前は中野三玖です。それで、あなたは誰…………でしょうか…………?」

 

「…………………ま、及第点と言った所かのう」

 

「(凄く上から目線…………)」

 

三玖が内心そう思っているのをいざ知らず、少女は名乗りをあげる。

 

「…………わしの名は千子(せんじ)村正。お主が先程見ていた刀に宿っている魂みたいなものじゃな。しかとこの名を脳裏に焼き付けておけ」

 

「(村正……………村正……………そうだ、思い出した。さっきの刀、確かに『村正』だ。中学生の時に戦国時代の展示をしている博物館に行った時に似たのを見た事がある…………………)」

 

刀を見た時の既視感に納得しつつ、三玖は質問する。

 

「あ、あの。ここはどこですか?タイムスリップ………いや、時間を遡って昔に来たとかですか……………?」

 

「ふむ、昔に時を遡る事をたいむすりっぷと言うのか。なるほどのう………………お主の言うたいむすりっぷではないぞ。ここは心象結界。お主の意識をここに招いた。体の方は床に転がってるが心配するな」

 

「は、はぁ……………あの、心象結界って……………?」

 

「ようはわしの心の中じゃな。心の中だと安直でつまらぬから心象結界とわしが名付けた」

 

「……………じゃあ、もしかしてここは……………………あなたの家?」

 

三玖の問いに村正は然り、と肯定する。

 

「正確には家と工房も兼ねているがのう。心象結界は恐らくわしが生前1番記憶に残っている場所が反映されているのじゃろう。それが自分の家と工房、と言う訳じゃな」

 

「なるほど……………」

 

取り敢えず納得する三玖。すると今度は村正の方から質問する。

 

「ところでお主、わしの事はどれくらい知っておるのじゃ?」

 

「え?えっと……………………室町時代中期に活躍した刀工流派村正の生みの親で、後は……………いや、でもこれは……………」

 

「何じゃ、さっさと話さんか」

 

「いや、その………………もしかしたら怒ったりするかも…………」

 

「良いから早く話せ。でないとおぬしの意識をここから出さんぞ」

 

さらっと監禁の脅しをかける村正。仕方ないので三玖は話す。

 

「その……………村正の銘は『妖刀』と呼ばれてて………」

 

「…………………」

 

「徳川家に災いや不幸をもたらした事から呪われている妖刀って呼ばれてて…………た、たぶん偶然ですけど…………」

 

かなり気を遣う三玖。だが、自分の作った刀が妖刀呼ばわりされても村正は特に怒った様子は見せなかった。

 

「…………お主の言う通り、その徳川家とやらにもたらした災いや不幸をもたらしたのは恐らく偶々じゃろ。村正は呪われてなどおらぬ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────この一刀(・・・・)を除いてな

 

その一言は三玖にとって聞き逃せるものではなかった。

 

「この一刀って………………私がさっきまで眺めていた村正さんが宿っている刀の事……………?」

 

「それ以外になにがあると言うのじゃ。わしが宿っている刀に触れるとその者の意識を乗っ取ったり、生気を吸い取って刀に炎を纏わせる事も出来る。これは呪いと言ってもあながち間違いでもなかろう。本来なら外部から人の意識をここに招くときは莫大な生気を使うのじゃが、今回はお主の生気は吸い取っておらん。元々蓄えていた力を使った。要は自己負担じゃ……………無意識に吸いとってなければ良いが

 

「(何か不穏な声が聞こえたような……………)」

 

「わしと言う呪いについて説明するにはわしの生涯を話さねばならぬ。正直、思い出すだけで殺意が湧くが……………………まぁ、昔話も偶には良かろう」

 

村正は憂鬱そうな表情を浮かべながらも昔話を始めた。

 

「5歳の頃からわしは師匠と住んでいた。何でも、川に流されていたわしを師匠が拾ったらしくてのう。自分の名前以外の記憶を失っている状態だったが、恐らくわしは親に捨てられたのだろうよ」

 

「(リアル桃太郎………………)えっと、そのお師匠さんも鍛冶屋さん…………?」

 

「勿論じゃ。そこでわしは鍛冶に興味を持ち、師匠から鍛冶の技術を学んだ。元々素質があったのか、ぐんぐん上達していった。本来なら1人前の鍛冶屋になるには5年は掛かるのじゃが、わしは2年で1人前の領域に到達した。わしは師匠の助けをしながら楽しく日々を送っていた……………………じゃが、そんな日々は長く続かなかった」

 

村正が一瞬悲しげな表情を見せた──────ように三玖には見えた。

 

「師匠が突然病に倒れたのじゃ。看病の甲斐もなく、師匠数日後にあの世に逝ってしまった……………………わしを自分の鍛冶屋の後継人として託してのう」

 

「……………………」

 

三玖も大切な母親を亡くしている為、当時村正の胸中は容易に想像できた。

 

「こうしてわしは師匠の鍛冶屋を継いで鍛冶屋として生活していった。わしの打った刀──────『村正』はかなりの人気でのう。打った刀は飛ぶように売れて行った。そして師匠の後を継いで2年後の事じゃ。わしに弟子入りを申し込んできた男がおったわ。当初はどうするか迷ったが、奴の熱意に押されて弟子を取る事にしたのじゃ……………………これがわしの人生最大の過ちじゃった」

 

「え…………?」

 

「5年後、奴がわしから技術を完璧に学び終わると……………………わしに刃を向けた」

 

「………………え!?」

 

村正は歯をギリッと鳴らしながら続ける。

 

「奴はわしの技術を盗み、そしてわしを殺すことでこれまで培ってきたわしの名声や村正の名を全て自分のものにしようとしておったのじゃ。どうやら初めからそのつもりだったみたいじゃな」

 

「そんな…………!」

 

「刀で一刺し、さらに工房に火がつけられてわしは死んだ……………………筈じゃったのだがのう。気が付くと何故か工房にあった刀にわしの意識が宿っておったわ。原因は分からず最初は戸惑っていたが、たまたまわしの意識が宿った刀を拾う者がいてのう。結論から言うと、その者の意識を乗っ取って思うがままに操れたのじゃ。新たな肉体を手に入れたわしは誓った。全てを奪った奴にも同じ目に合わせてやる、とな」

 

そう言ってニヤリと獰猛な笑みを浮かべる村正。三玖は少し怯えた表情を浮かべるが、村正は気にも留めない。

 

「数年掛けて修練を行い、そして奴の家を襲撃した。そして奴の家族含め皆殺しにしてやった─────と、思っていたのじゃがな。わしは1人だけその家の童を殺し損ねていた」

 

そこまで話すと村正は一旦ため息をつく。

 

「数年後、その童はわしを倒しにやって来た。そしてわしは敗北を期した。わしを倒すのを目的に色々と修行していたらしいのう」

 

「………………」

 

「わしは封印され、意識は途切れた。そして再び目を覚ましたのがつい最近でのう。恐らく長い年月が経って封印の力が弱まったのじゃろう。………………まぁ、わしの過去はこんな所じゃ」

 

「……………その、何と言うか………………大変でしたね、色々と」

 

三玖の言葉にまったくじゃ、と村正は答える。

 

「…………さて、そろそろお前には帰ってもらうか。力を使い過ぎた。これ以上力を使い過ぎるとわしの目的の達成がさらに遠のくからのう」

 

「………………目的?何かやりたいことがあるんですか?」

 

「勿論あるぞ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この(火野)家の奴らを全員殺す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………え?」

 

村正から飛び出た言葉に対して思わず三玖は間の抜けた声をあげてしまう。

 

「殺すって……………………な、なんで………?」

 

「簡単な話じゃ。わしの復讐はまだ終わっておらぬからじゃ」

 

「終わってないって………………けど、あなたを殺した人は」

 

「そうじゃ、奴はもういない。わしが殺したからのう」

 

「…………じゃあ」

 

「それでもう終わり、とでも言いたいのか?……………言った筈じゃ、わしは奴から全て(・・)奪うと誓ったと。奴の血を継ぐ者が生きている時点でわしの復讐はまだ終わっておらぬ。奴等を滅ぼした後に、わしの復讐は漸く終わる。確かに奴等には直接的な恨みはないが、あいつの子孫が生きていると言うのはわしにとっては許しがたい────────だから殺す。……………ああ、言い忘れていたな。わしを殺した男の名は火野 政宗じゃ」

 

「っ!」

 

総悟らの先祖が村正を殺した男である事にもはや疑いの余地はなかった。そして村正の標的に自分が愛する男(総悟)が入っている事も。

 

「………………そんなこと、させない。絶対に殺させたりなんか」

 

「身の程をわきまえよ小娘」

 

三玖の喉元にいつの間にか刀が突き付けられていた。三玖には押し黙る以外に選択の余地はなかった。

 

「殺させないとは大きく出たが、貴様に何ができる?わしを上回る力がなければ止める事など出来ぬが?見るからに大した力を持たない貴様がどのようにしてわしを止めると?」

 

「それ、は……………」

 

良い考えなど思い浮かぶわけもなく、三玖は何も言えない。それを見た村正はつまらなさそうに刀を降ろす。

 

「前に偶々貴様がこの家に来ていた所を見た時、どうも気になったからわざわざここに招いたのじゃが……………………もう良い。貴様は用済みじゃ」

 

村正がそう呟くと同時に三玖の視界が揺らぎ始める。どうやら元いた場所に戻されようとしているようだ。

 

「(このままじゃソウゴとソウゴの家族が………………帰ったら星奈さんやソウゴに話さないと…………!)」

 

三玖はそう決めた。そして三玖の意識が心象結界から退去する直前になって村正がそうじゃ、と何かを思い出したかのように呟く。

 

「言い忘れていたが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここでの記憶はお主の頭の中から全て消させてもらうからのう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………ううん……………………あれ?私、何で廊下で倒れてるんだろう………?」

 

三玖は何故か自分が廊下の床に寝ているのに気付いて身体を起こす。

 

「………確かお風呂を出て星奈さんのいるリビングに行こうとして……………どうしたんだっけ?それに、何か大切な事を忘れているような気がする……………………」

 

頭の中には先程まで無かった違和感。スマホで時計を見るとお風呂を出てから5分程しか経っていない。この5分で何かあったのだろうか?考えてみるが答えは出ない。

 

「おや、三玖さん。さっぱりしましたか?」

 

そこに星奈がやって来る。

 

「え?あ、はい……………その、ありがとうございました」

 

「いえいえ。今日は日差しも出てるので3時間もあれば乾くと思いますよ。それまではゆっくりしていただいて結構ですよ」

 

「……………………」

 

「……………どうかしましたか?」

 

三玖が固い表情を浮かべているのを見て星奈が問い掛ける。

 

「その……………何か大切な事を忘れてるような気がして………もやもやしてるんです」

 

「ふむ……………………あ、もしかしてこれじゃないですか」

 

星奈はポケットからお金の入った封筒を三玖に渡す。

 

「先ほど着ていた服を洗う前にポケットから取り出して預かっていました。これの事じゃないですか?」

 

「(………あ、確かに忘れてた………)多分それですね。すっかり忘れてました。お風呂でさっぱり流されていたのかも」

 

「ふふっ、上手い事を言いますね」

 

給料の事を忘れてたのだろう、と三玖は自分で自分を納得させた。

 

その後の顛末としては、三玖は星奈からお昼をご馳走になったりして乾くまでくつろいでいると総悟が帰宅。三玖がいる事情を聞いてドライバーに対してキレて『そいつをぶっ〇す(ガチトーン)』と捜しに行こうとするソウゴを宥めて止めた後、三玖は給料を渡して帰って行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………ふぅむ。少しばかり力を使い過ぎたか」

 

刀の中、心象結界にて村正はあぐらをかきながらそう呟く。

 

「相変わらず外部から人間の意識を心象結界内に引き入れるのは力の消耗が激しいのう。あと半年で力を完全に取り戻す予定じゃったがこれで2か月程先延ばしになってしまったか。……………………それにしても、何故わしは三玖とか言う女が気になったのかのう……………………?」

 

村正は自問自答するが答えは出てこない。

 

「……………………まぁ良い。これ以上考えても答えは出ぬし、時間の無駄じゃな。……………わしが力を取り戻すまで八()月と言った所か。それまでの猶予を精々楽しめ、火野の血を継ぐ者達よ」

 

そう呟くと村正は結界内の床に寝転がり、目を瞑るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………と、まぁこんな事が裏で起こっていた訳だ」

 

手に持っていた本を閉じて立ち上がるのは神様だ。

 

「あ、ちなみに僕は少し先の未来から語り掛けてるよ。え、何でそんな事が出来るのかって?答えは簡単、神様だからね☆だから僕はもうこの後何が起こるのかは全部知ってる。まぁ、君達にはまだ教えられないけど……………………そうだな。場所といつかだけは教えてあげようか。何のとは分かるだろうから言わないけど、第6部の新情報が解禁された記念にね」

 

そう言う彼の背後にとある街並みが浮かび上がり、見つめながら神様は呟く。

 

「時は6月。舞台はかつて日本の首都とされていた『千年の都』──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────京都だ」

 

to be continued……………




はい、と言う訳で三玖の幕間の物語でした。そして新キャラのロリババア村正ちゃんの登場回でもありました。ちなみに、三玖に水を掛けた糞野郎(辛辣)のドライバーはハンドル操作をミスって電柱に激突。高級スポーツカーはスクラップになりました。描写する価値もないから書かんけど、まさに天罰。ざまぁwwww

なお、車による水はね・泥はね行為は、道路交通法の「泥はね運転違反」にあたります。ドライバーの方は雨上がりなどではスピードの出し過ぎにご注意ください。………………誰にも頼まれてないけど、何となくノリで注意喚起してみました。

読んで『これ、原作は一応ラブコメなんだよな……………?』って思った方は大正解。作者も書いてる間同じこと思ってたから。今回に限ってはラブコメのラの字もない物騒&ダークファンタジーな展開でした。

新キャラは現時点ではあと2人来る予定ですが場合によってはもっと来るかも?村正ちゃんの詳しいプロフィールはまた後日明かします。まだ設定が完全に固まっていないのでね。彼女の幕間の物語で明かすのも良いかな?まぁ、取り敢えず暫くお待ちください。

ちなみに、容姿は灼眼のシャナのシャナみたいな感じなのをイメージしていてくれれば良いです。まぁ、性格は全然かけ離れていますが。元から赤髪キャラをイメージして書くのは決めていたので赤髪キャラで可愛い女の子いないかなー、って考えてたらシャナが思い浮かんだ感じです。ついでに刀使いだし。

村正ちゃんが本格的に動くのは皆さんお察しであろう、6月の京都……………………原作で言うなら修学旅行(シスターズウォー)編ですね。総悟らは無事に修学旅行を終えれれるのかが作者も今から心配。まだ執筆してませんが取り敢えず言えるのは大波乱は間違いないです。マジで総悟は逃げた方が良い。

今回も駄文を読んでいただきありがとうございました。……………FGOのメリュジーヌがが可愛すぎて尊い、好き(唐突な告白)


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カフェでの(軽い)追憶

一週間以内に投稿すると言ったな、あれは嘘だ。

……………………すみません、やっぱ無理でした。リアルとウマ娘が忙しすぎる。

あ、そうだ。SAO見てきました。正直な感想としては……………………まぁ面白かったです。ただ、シンエヴァみたいに4回も見に行く程ではないかなぁ、と正直思いました。この差は何なのかは自分でもはっきりとは分からんですが……………………まぁ、見て損は無いのは確かなので、良ければ見に行ってみてください。初見さんも大歓迎な内容となっていますのでね。次に映画行くのは呪術回戦かなー。その次はスパイダーマン?

本日は二乃の幕間です。割と短めの総集編的な話。




期末テストと言う壁も見事に5人揃って乗り切った。家庭教師の授業も一段落と言う事で、テストが返却されて週明けの月曜日に春休み用の宿題を総悟がドーンと残して授業自体は暫く休みとなっていた。

 

それから2日後の水曜日、まいどお馴染みツッコミキャラの二乃はとあるカフェに来ていた。。

 

「…………………結構人がいるわね。まっ、平日とは言えお昼時だからそりゃそうか。久しぶりに今日は1人きりで堪能しようかしら」

 

二乃のお目当てはランチタイム限定のパンケーキである。つい最近、ネットの記事で紹介されていたのを見たパンケーキ大好き人間である二乃は午前中で授業が終わるのを利用して来ていたのだ。

 

「いらっしゃいませ~。カウンターでよろしいですか?」

 

「はい、大丈夫です」

 

「それではご案内しまーす」

 

店員に案内されてカウンター席に座る。

 

「へー、例のパンケーキ以外にも美味しそうなのが沢山あるのね…………………」

 

「おすすめはオムライスとサンドウィッチ、あとコーヒーも美味しいゾ」

 

「どれどれ………………………確かに美味しそうね。そう言えばコーヒーも美味しいってネットにも書いてあっ……………………ん?」

 

どうも聞き覚えがある声だった。目もくれていなかった隣を見ると、右手にコーヒーカップ、左手にラノベを手にしている男────────────自分達の家庭教師の1人(総悟)がいた。

 

「なっ…………………何であんたがここにいるのよ!?」

 

「俺も例のパンケーキが目当てで、10分前に来ていたのさ。こう見えても、ネットで俺は甘辛党の日本総大将って異名で言われてまして………………ま、嘘なんですけどね(桜〇政博)」

 

「嘘かよ!一瞬信じ掛けたわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=======================

 

「はぁ…………………予想外だったわ。ここに、しかも隣にあんたがいるなんて」

 

「俺と運命の赤い糸で結ばれてんだろ(適当)」

 

「それだけは絶対に嫌よ!………………前にもこんな会話があった気がするわね」

 

「神社のお参りの時ですねぇ」

 

「………ああ、そうだったわね」

 

確かあの後お参りの後にアパートでお年玉をあいつらに渡そうとして色々とあったんだっけ。ふふっ、まだ2ヶ月前の事なのに懐かしいわ。

 

「……………そういや訊いてなかったんだけど、何で用済みって言ったん?」

 

「……………まぁ、色々と深い事情があったのよ」

 

「へー」

 

「……………気にならないの?」

 

「深い事情が、って事?興味ないね(クラ○ド)」

 

…………………何故だろう、それはそれで何かムカつく。

 

「お待たせしました~」

 

そんな事を話してる間に頼んだサンドイッチが到着。火野の所にもオムライスが。さて、お味は─────

 

「!……………美味いわね。こんなに美味しいサンドウィッチは初めてかも」

 

「だろ?……………んっー、美味しい」

 

隣の火野もオムライスを美味しそうに食べていく。

 

「今度は皆も連れて行こうかしら」

 

「そうしな。色んなメニューがあるし皆気に入るだろ」

 

「あんたはよくここに来るの?」

 

「いや、来るようになったのはつい最近。モチーフになったのかはしらんが、とあるアニメで出てきたカフェに似ていたから何となく入ったみたら見事にハマった」

 

「へぇー…………………アニメが切っ掛けなのはあんたらしいわ」

 

こいつがここに来る理由に納得以外の言葉が見つからない。

 

「ここの喫茶店は半年前にオープンしたんだってさ。いやー、もっと早くここの存在を知りたかったなー、マジで」

 

「確かにそうね」

 

こんな美味しいサンドウィッチとはもっと早く出会いたかったと素直に思う。

 

「半年前と言えば…………………皆と出会ったのも半年前だよな」

 

「…………………そう言えばそうね」

 

出会ったのが確か去年の9月頃、か。いつの間にかもう半年も経ってたのか、家庭教師2人と出会ってから。

 

「確か初めて二乃に出会った時はストーカー扱いされてたんだっけ。その2だっけ?」

 

「そうだったかしら?よく覚えてるわね、あんた」

 

「記憶力には自信があるもんでね。で、その後は自業自得で二乃は怒られた、と。つーか、後にまたやらかすから合計で2回も怒られてんのか」

 

「………………仲良くなった今でも偶に夢で見て飛び起きるわ。お母さんと同じくらい怖かったわ……………」

 

「星奈さんは怒らせてはいけない(戒め)、って訳だ」

 

全く以て完全同意。まぁ、普段は何でも出来て頼れる良い人だから好きだけどね。

 

「で、初めての中間テストでは俺らを庇ってくれたんだっけ。あん時はマジでサンキュな」

 

「…………………別にあの時はあんたらの為にやったんじゃないわよ」

 

──────あの時、私は何もするつもりはなかった。寧ろクビになってくれて全然構わなかった。けど、あいつらの解雇が示唆された時に三玖が浮かべていた悲しそうな表情を見てしまった。そしたらもう気づけば携帯を奪い取って庇っていた。

 

「………………なら、姉妹の為って訳か。姉妹が大好きってはっきり分かんだね。そしてこれではっきりした……………………………やっぱり二乃はツンデレなんですねぇ」

 

「何をどうはっきりさせたらそうなるのよ!」

 

「あはは~……………で、そっから二乃が張り切ってた秋の花火大会や俺が本気を出し過ぎた林間学校、二乃と五月の姉妹喧嘩、優雅なマンション生活から一変してアパート生活が始まったり、期末試験を乗り越えたりしてして今に至る、と…………………波乱の連続が色々とあったわけか………………………」

 

「こうして振り返ってみると色んな事があったのね。……………………あんたは私たちと出会ってからの半年間はどうだった?」

 

「そりゃあ楽しかったし………………………面白かったね、うん。俺らと出会えて、二乃も人生面白くなっただろ?」

 

「…………まぁ、そうね」

 

ここまで濃い半年は初めてだった。良い事ばかりではなかったが………………………振り返ってみれば、2人と出会ってからの半年は楽しかったし、面白かった。

 

「……………………今だから言うけど、最初期の頃は俺にとって二乃は『友達』としては見てなかったんだよね」

 

「………………まぁ、そうでしょうね。散々邪魔してたんだから。逆に、その頃は私の事をどう見てたわけ?」

 

「弄ると面白くてツッコミの上手いツンデレ」

 

「………………。で、今は?」

 

「弄ると面白くてツッコミの上手いツンデレの友人」

 

「最後に友人が付いただけで全然変わってないじゃない!」

 

「てへ☆」

 

こ、このドS野郎ェ………………………。

 

「ちなみになんだけど、皆言ってるよ。『俺と二乃の絡みがコントみたいで面白いから見ていて飽きないって』」

 

「……………それ、マジ?」

 

「マジ。…………………二乃は将来、お笑い芸人になるのも将来の選択肢にいれとこうな」

 

「絶対に入れないわよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜

 

「…………………ねぇ、三玖」

 

「なに?」

 

「私と火野の絡みって…………そんなに面白いの?」

 

「うん(即答) 二乃もツッコミを入れたりしてる時はいつもより輝いてると思う。二乃は立派なツッコミ担当と断言出来る」

 

「いや、断言しなくて良いから!」

 

喜ばしい評価(?)を頂いた二乃であった。




おまけ

二乃「(まったく、三玖ったら………誰が立派なツッコミ担当よ!私はツッコミキャラじゃないっての!……………………ただ、あいつにツッコミを入れてるとストレス発散にもなって、悪い気はしてない自分もいるのよね……………)」

はい、と言うわけでツッコミキャラは否定しつつも何だかんだで総悟へのツッコミを楽しんでいる二乃でした。やっぱツンデレなんですねぇ。

次回は春ならではのオリジナルの話。完成次第投稿します。お楽しみに。

本日も読んで頂きありがとうございました。


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声優デビューの一花さん

『原作が五等分の花嫁なのに、神様の話とかどこに五等分要素があったんだ!』とかそろそろ言われそうなので、ここで五等分要素を補給っと。

幕間の話、今回は一花姉さん。内容としてはタイトルの通り。

それではどうぞ。






















「……………なにぃ!?声優のお仕事のオファーが来たぁ!?」

 

全国模試が終わって数日後。通常授業を行っていた総悟と風太郎。その休憩途中に一花姉さんに『相談がある』と言われ、そして上述の叫びに至る。

 

「ほら、前に出た映画の試写会があったって言ったじゃん?それを見たとあるアニメ監督さんが私に興味を持ってくれたらしくてね。名前のない、台詞の少ないモブのキャラなんだけど、一緒に仕事をしてみないかって言われたんだ。どんな内容かは台本を貰ってないから分からないんだけどね」

 

「へー。そんなに気に入られたのか、タマコちゃん。『……………う~ん。タマコには難しくて、よく分からないのです~。それよりもケーキを食べるのです~』」

 

「ちょ、みんなの前で真似するの禁止!」

 

「あんた、ほんと声真似上手いわね……………」

 

二乃も思わず感心してしまう。

 

「で、肝心の相談って?」

 

「いやまぁ、ちょっとどうしようか迷っててさ。その監督さんは声優としても才能がありそうとは言ってくれたんだけど、こういうお仕事はやった事ないしさ。私はレッスンとか受けてないし、声優としては素人だからどうしよっかなー、って」

 

「なるほどねぇ………………まぁ、俳優とか女優とかタレントでも声優としても上手い人もいるけどねー」

 

「ソウゴは俳優とかが声優やるのには否定的じゃないの?」

 

「まぁ、上手ければ別に全然良いかなー、とは思うよ。上手ければね(強調)

 

ここ重要とでも言いたげに強調する総悟。

 

「ちなみにだが、俳優が声優の仕事をやった結果、下手くそだったらどうするんだ?」

 

「…………………(無言の笑み)」

 

「あ、もう何も言わずとも答えが分かった気がします……………」

 

四葉と五月の脳裏にキレた総悟が風太郎を巴投げするイメージが浮かんだ。上杉「いや、どんなイメージだよ!?」

 

「一花、これは受けるかどうかしっかり考えた方が良いと思います。でないと、場合によっては上杉君が酷い目に遭うかも知れません」

 

「何で酷い目に遭うのが俺なんだ…………」

 

上杉のツッコミはごもっともである。

 

「あ、そうだ!私に良い考えがあります!」

 

「何だコン〇イ司令官(四葉)

 

「1回試しにアテレコをしてみるのはどうでしょうか?そしたら、一花が向いてるかどうか何となく分かるかもしれません!」

 

誰かコ〇ボイ司令官にツッコミを入れろや

 

「良いアイデアだ、四葉。じゃあ、勉強が終わったらやってみるか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と言う訳で勉強終了後。

 

「丁度動画サイトに無料公開してあるアニメがあったのでこれを使うとしよう。どこにしよっかなー………………じゃあ、このシーンの台詞にするか」

 

練習に使うシーンを決めると、総悟はノートに縦書きで台詞を書き起こし一花に渡す。

 

「あ、台本って縦書きなんだね」

 

「うん。で、あと注意しなければいけないのが、台本のページをめくる時に音を立てたらやり直しになる。収録用のマイクは高性能だからな。それ以外にも、椅子から立ち上がる音、衣擦れや靴の音も立てちゃいけない。そういう音も拾っちゃうからね」

 

「へー、そうなんだね」

 

総悟の知識に一花が感心している間に全てのセッティングが終わった模様。

 

「じゃ、とりま俺と一緒に1回やってみるか。まぁ、ワイも素人だけど本番は誰かと一緒にアテレコするし、その練習と言う事で。じゃあ三玖と五月。合図したら再生ボタンと録画ボタンを押して貰っていい?」

 

「うん」

 

「はい、分かりました」

 

「ふー…………………よーい、アクション!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《テイク1》

 

「あー、ダメダメ。ダメウーマン!(ブ〇ゾン)」

 

「うわー、私の所だけ映像と声がズレまくってるね」

 

「ていうか、アンタは普通に上手かったわね」

 

「まーね」

 

一花とは対照的に総悟は普通にアテレコが上手かった。他の皆も二乃と同じことを思っていた。

 

「うーん、映像と声がズレないように声を当てるのって意外と難しいね……………」

 

「ま、心配するな。何度もやってればその内『そこっ!』って感じでタイミングが分かって来るから」

 

「そっか。じゃあ、もう1回やってみるね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《テイク8》

 

「んー………………タイミングは合うようになってきたけど、どうも演技が棒読みくさいな」

 

「自分では結構演技してるつもりなんだけど、実際録画したの見てみると棒読みみたいに聞こえるの、どうしてなんだろうね?」

 

「……もしかして、役になりきれてないとか?」

 

「おっ、三玖鋭いね!まさに俺が言おうとしていた事だよ」

 

褒められた嬉しそうにご満悦の表情を浮かべる。

 

「声優ってのは命を吹き込む仕事だからな。映像に映るキャラを生きてる人間にしなきゃならない。キャラクターになりきり、生きた台詞を言う事で命を吹き込む。これが声優の神髄…………………って、でぇベテランの大御所声優が仰ってたわ」

 

「でえベテラン?…………………あぁ、大ベテランと言う事ですね。相変わらず、火野君はたまにちょっと変わった言葉を使いますね」

 

「まぁでも、ここまでの付き合いとなればもう何となく分かるだろ?」

 

「まぁ、確かにそうですね……………慣れって恐ろしいものですね………………」

 

五月がそう呟く中、総悟は一花の方を向き直って口を開く。

 

「まぁ、そう言う訳で一花。キャラクターになりきる事と、後は強弱を意識して口をハキハキと動かすのと声色に表情をつけるようにする事を意識しな。勿論、映像とズレが無いようにする事も忘れずに」

 

「……………ソウゴ君」

 

「ん?」

 

「改めて思ったけど、声優さんってほんと凄いね」

 

「それなー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからも色々とダメだしされつつ、何度も何度も練習を重ねる事2時間半経過。

 

《テイク37》

 

「えーっと………………た、田中君は何か好きな食べ物とかある?」

 

「そうだな、俺は紅ショウガが1番好きだな」

 

「あ、、え?べ、紅ショウガ?」

 

「そうなんだよ。毎日三食、紅ショウガをおわん1杯分欠かさず食べてる。これが結構美味しんだよ」

 

「やばー!うちの彼氏、イケメンで優しくて百点なのに、紅ショウガマニアだ!だから、顔が若干赤いのとちゃうか!?」

 

「………………はい、カット」

 

三玖の声を聞いて一花は肩の力を抜いてふぅ、と一息入れる。

 

「お疲れ様です、一花。どうぞ、こちらを」

 

「ありがとう、五月ちゃん。………………ふー、お水が美味しいね!」

 

「一花、最初の頃よりすっごく上手くなってたよ!上杉さんもそう思いますよね?」

 

「まぁ、そうだな。最初は素人から見てもポンコツだったが、まるで見違えたな」

 

上杉も珍しく褒める。さて、肝心の録画映像を確認している総悟はと言うと──────

 

「…………………おぉ、ええやん!ズレもないし、ちゃんとキャラに命吹き込まれてるし、今までで1番良いぞ~」

 

「……………よっし!」

 

総悟からもお褒めの言葉を貰った一花は思わずガッツポーズ。相当嬉しかったのだろう。

 

「いやぁ、疲れたぁ……………」

 

「ねぇ、一花も声優の素質があるんじゃない?声優のお仕事、やってみるのもありだと私は思うけど」

 

「奇遇だな、俺も二乃と同じ意見だ。やはり一花には声優の才能もある。毎日30分位練習すれば十分通用するレベルだと思うし、やってみたらどうだ?」

 

「うん、そうする。明日社長と会うから引き受けるって言っておくよ」

 

自信がついた一花は声優のお仕事をやってみる事を決めるのだった。こうして、総悟アニオタ大先生による特訓は幕を下ろしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後

 

「で、結果はどうだった?」

 

「監督さんや他のプロの声優さんからも『めっちゃ上手!』って褒められちゃった。リテイクなしの1発オーケーだったよ。あれから毎日練習したし、総悟君から言われた注意事項も守ったからね。色々とありがとね、ソウゴ君」

 

「どういたしまして。ちなみに、どんな役だったんだ?」

 

「主人公の同級生の役。思っていたよりも意外と出番はあったかなー。…………………まぁ、序盤でタコみたいなエイリアンに殺されて死ぬんだけど」

 

「やばー。ドラマだけじゃなくてアニメでも死ぬんかい!何でなん?どんだけ死亡キャラ引き当てるん?なぁ?」

 

「ほんと、何でだろうねー………………」

 

──────後に一花は女優だけでなく声優としてもそこそこの有名人となるのだが、それはまた別の話である。なお、演じるキャラの4割は途中で退場する模様




──────なお、映画は小規模上映のわりにそこそこヒット。レビューの中に一花の演技にケチを付ける者は誰も居なかったそうです。

やったね、一花姉さん!これで女優と声優の二刀流!あの大〇選手と互角(?)だよ!

第1位「互角とか意味わからん。いっちょん分からん」

そういや青ブタの映画面白かったです。ファンは見に行くんだよ!行け!冬のランドセルガールも忘れずにな!

次回からは星奈さんのお話です。準備が出来次第投稿するのでしばしお待ちを。

それでは、また次のお話で。


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Past of God
#1 ようこそ、神の世界へ


これを投稿するまでに色々とありました。ウマ娘のハーフアニバ、めんどくさいじじいが激おこ(?)、激おこによるモチベーション低下と体調不良等々。じじいについては詳細を言う本人にばれてもヤバいので言いませんけど…………………………ほんとめんどくせーじじいです。価値観の違いってやつですかね、知らんけど。

まぁ、色々とあってこんなに遅れたんです。すみません。ほんとに書く時間と気力がない。

ただ、ここまで待たせたんですから神様のお話は全て準備が殆ど整いました。全8話になる予定。なので、次の話は早めに投稿できる筈…………………………まぁ、分からんけど(保険)

それでは、どうぞ!


これは、第1位の神が『プロローグ』に至るまでの物語─────────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神界人。超越した力を持ち、世界を管理する事を使命として請け持つ存在………と言われているものの、流石に全ての神界人が世界の管理者になれる訳ではなく、世界を管理しているのは第1位から第100位までの『数字持ち』と呼ばれる者達、要は優れたエリートらである。この数字持ちは古くから続いており、大きな権力と神界人の中でも優れた知性や能力を持つ、いわゆる『名家』の出身者が担当している。他の神界人は数字持ちの補佐や管理とは無関係の職で働いたりしているのが現状だ。

 

そんな神界人達の頂点に立つ第1位には専属の秘書官が配属される事になっており、今回新しい第1位の秘書官として配属されたのが─────────

 

「いやー、それにしても実感が湧かないなぁ……………………私が秘書官かぁ………………………」

 

そう呟く女性こそが今日から新たに秘書官。名前はカノン。性格は真面目だが空振りやすい。前職で始末書や反省文を書いた回数は1年間で44件。よくクビにならなかったな

 

「我ながらよくあの難関試験を突破できたよね。今でも信じられないけど。いやぁ、努力が報われて良かったなぁ………………………そう言えば、今度の第1位は元人間(・・・)なんだっけ。良い人だと良いんだけど………………………さて、到着っと」

 

着いたのは要塞のような外見をした神界で1番立派な建物。ここが彼女の新たな職場である。

 

「うひゃー、前の職場が霞んで見える程の立派な建物だなぁ…………………………………っと、いけないけない。秘書官たるもの、第1位様を待たせるなんて事があってはならないからね。もう今年は始末書書かないって決めてるんだから。急げ~!」

 

そう呟きながら建物に入るカノン。中の豪華な装飾に目を奪われそうになりつつも、第1位専用の部屋に到着した。

 

「ふーっ……………………失礼しまーす………………………って、やっぱりいないよね。予定していた集合時間の20分前だし」

 

謁見の間を思わせるような第1位の部屋には案の定誰もいなかった。

 

「ひゃー、何とも広い部屋だなぁ………………………第1位様の部屋は初めて見たけど、すごいなぁ…………………………………けど、豪華すぎて少し眩しいかも、なーんて」

 

「ほんとだよ。金とか余りにも使われ過ぎて眩しいったらありゃしないね。リフォーム案件だよ」

 

「ですよねー。何かこう、もう少し抑え気味にした方…………………………………ふぇ!?」

 

俗かと思って慌てて声の聞こえてきた上を向くと、ハンモックに揺られながら漫画を読んでいる青年の姿があった。漫画を閉じると青年はハンモックから飛び降りてカノンの前に着地する。

 

「だだだだだだだだだ、誰ですかあなた!?ここはサボり専用の空き部屋じゃないんですよ!?」

 

「それくらい知っているとも。ここは僕の部屋なんだし」

 

「え?…………………………じゃあ、あなたが第1位様?」

 

「まー、そう言う事だね。何かこの指輪がその証明みたいな感じなんでしょ?」

 

そう言って指輪の嵌められた手をひらひら振る元人間(・・・)の第1位。

 

「そ、そうですね…………………………………その、先の無礼をお詫びいたします!」

 

「別に無礼でも何でもなかったし謝る必要なんてないよ。そりゃあ誰もいないと思っていたら上でゴロゴロしている奴がいたら誰でもビビるだろうし。ところで、君は?」

 

「あっ、申し遅れました!私、第1位様の秘書官のカノンと申します!新人ですが、よろしくお願いします!」

 

そう言ってカノンは勢いよく頭を下げる。

 

「うんうん、元気がいいねー。ところで、カノンさん。1個質問があるんだけど良いかな?」

 

「はい!遠慮なくどうぞ!それと、私の事は呼び捨てで良いですよ」

 

「じゃー、カノン。遠慮なく質問するけど………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何で1時間も遅刻しとるん?」

 

一瞬カノンの頭の中が真っ白になった。文字通り真っ白である。まるで漂白剤だ(?)

 

「…………………………………え?1時間って…………………………………え?い、いやいや確か9時に顔合わせの筈じゃ……………………ほ、ほら私の時計は8時40分で」

 

「今9時40分なんだよなー」

 

部屋に備え付けられている時計は確かに9時40分であった。カノンは何も言わずに部屋を出て、隣の空き部屋に備え付けられている時計を確認する。時刻は9時41分を指していた。さらに隣の部屋も確認。時刻は同じであった。

 

「…………………………」

 

カノンは何も言わずに第1位のいる部屋に戻る。そして

 

「すみませんでしたァァァァァァァァァァ!!」

 

勢いよく綺麗な土下座をするだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ、まさか時計がずれているなんて……………………もうやらかさないと朝から誓ったばかりなのにぃ……………………………しかも第1位様の秘書官とあろうものが初日から何たる失態でしょう…………………あのぉ、遅刻しておいて言うのもおこがましいんですけど、初日からクビは勘弁して欲しいのですが……………………」

 

「おk」

 

別に第1位は怒っていない。来るまで漫画読んだりぐーたら出来たのもあるし、本人も深く反省しているのが分かっているからだ。

 

「うぅ、何とお優しい…………………………………ありがとうございます……………まるで神様みたいです……………………」

 

「まるでと言うか実際に神なんだけどね、あんまり実感ないけど…………………………さて、1時間も遅れてしまったが予定通りミーティングを始めようか」

 

「そ、そうですね!………………ゴホン。それでは改めまして、第1位様の秘書官を務めるカノンです。以後、よろしくお願いします」

 

「うん、こちらこそよろしく」

 

「それでは、先ずは神界人について軽く説明しますね。我々は人間を遥かに超越した力を持ち、世界を管理する使命を請け持つ存在です。とは言え、流石に全ての神界人が世界の管理者になれる訳ではなく、世界を管理するのは第1位から第100位までの『数字持ち』と呼ばれる者達、俗に言うエリートと呼ばれる者です。その殆どが古くから続く、大きな権力や他の神界人よりも秀でた知性や能力を持つ『名家』の出身者が担当しています」

 

「へー…………………じゃあ、僕みたいなのはイレギュラーなんだね。今までに前例は?」

 

「名家以外の者がなった事例は今までないですね」

 

「なーるほどね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後も自分達の業務内容についてなどの説明が行われる事30分が経過した。

 

「まぁ、我々の業務についてはざっとこんな感じでしょうか。何か質問はありますか?」

 

「特には。やる事は大体分かったよ。これで説明は終わり?」

 

「そうですね、説明はこれくら『パリンッ!!』ひっ!?」

 

「っと………………………大丈夫?」

 

「は、はい。今のはっ………!?」

 

「これを投げた奴はコントロールが下手くそだね。とーしろ以下だ。危うく君に当たる所だった」

 

第1位が手に持っていたのは背後の窓ガラスを破って大きめのレンガ。カノンに当たる筈だったが、それを第1位が振り返りもせずにキャッチした事で事なきを得た。

 

「何か書いてあるね。何々………………………『さっさと辞めろ。人間上がりの低能に神界の頂点は務まらない』……………」

 

「……………はぁ…………………………本当は我々に対して嫌悪感を抱くと思うので、大丈夫そうならスルーしようとおもっていたのですが………やっぱり駄目みたいですね………実はですね、この神界では人間は見下されていると言いますか、格下に見られているんです」

 

「………………………」

 

カノンは歯切れが悪そうに言うのを第1位は黙って聞いていた。

 

神界人の殆どがとても優れた頭脳や能力を持っている事を誇りとしており、プライドが高い故に他の種族、特に人間はとても見下されている。学校や親からも人間については『自分達よりも弱く、尊敬するに値しない愚かな生物』と教わる為、悪意を持って見下してる訳でもない。『人間は見下されて当たり前』。それが神界人にとっての常識となっている。流石にこれには第1位も不愉快に感じたいに違いな─────────

 

「はっはっは!!」

 

「えっ!?」

 

「なるほどねぇ…………………………そいつは面白くなりそうだ………………!」

 

─────────否。第1位は不快な感情ではなく『面白そう』と言う予想外の感想を漏らし、にやりと笑う。

 

「い、嫌じゃないんですか?元人間の第1位様からすればこの神界での人間の評価は不服以外にあり得ないかと思うのですが……………」

 

「あぁ、全く以て不愉快だよ。だからこそ、だ────────この評価を一気に手のひら返しにさせてやるのは最高に面白い、と思わないかい?」

 

「!!」

 

何とも楽しそうに笑う第1位の姿がカノンの瞳に眩しく映る。この人は神界に大きな変化を巻き起こしてくれる。

 

────────自分は彼のような人物がやって来るのを待っていたのだろう。

 

思わずカノンは運命的なものを感じるのだった。

 

「さて、カノン。僕は僕のやりたいようにやらせてもらう。だから、人間を格下に見ているこの世界をいい意味でぶっ壊して、良い感じの世界にマインクラフトするけど、君はどうする?恐らく色々と面倒な事になるかもしれないから、無理に付き合う必要はないけど…………………どうする?」

 

「……………そんなの決まっています。私はあなた様の秘書官ですよ?マインクラフトと言うのは良く分かりませんが、行き着く所までお付き合いさせてもらいますとも!」

 

「いいねぇ、その迷いのない返事。気に入ったよ。それじゃあ、よろしく頼むよ」

 

「はい!私にドンとお任せください!」

 

差し出された手をカノンは握り握手する。こうして2人の激動の日々が始まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、それと。1時間も遅刻した事についてはちゃんと反省文を提出してね」

 

「……………………………………………ハイ」

 

この後、めちゃくちゃ反省文書いた。

 

to be continued………………




《新キャラ紹介》

カノン

第1位の補佐を務める神界人の秘書官。真面目ではあるが、どこか抜けている。前の職場では始末書案件を起こしまくっていた。人間を見下す傾向にある神界人の中では珍しく人間に対してはとても好意的。人間に好意的である理由は彼の祖父が関わっている。だが、人間で好意的であるが故に他の神界人からは批判的な目で見られている。友達はおらず、両親とは幼少期からどうも気が合わず、今となっては音信不通。だが、互いに特に気にはしていない。気が合わないゆえに、彼女は祖父にとても懐いていたおじいいちゃん子であった。当の祖父は既に死亡している。

《用語》

・神界&神界人

神界人が住む世界、そしてその世界に住む人。世界観としては魔法(神界では神聖術と呼称する)が存在するファンタジー寄りの世界観となっている。基本的に不老不死。神界人としての生活が飽きたら、神界人から他の種族への転生が可能。人間を遥かに超越した力を持ち、世界を管理する使命を請け持つ存在。とは言え、流石に全ての神界人が世界の管理者になれる訳ではなく、世界を管理しているのは第1位から第100位までの『数字持ち』と呼ばれる者達、俗に言うエリートと呼ばれる者達。他の神界人は数字持ちの補佐や管理とは無関係の職で働いたりしている。数字持ちの殆どが古くから続く、大きな権力や他の神界人よりも秀でた知性や能力を持つ『名家』の出身者が担当している。神界人は他の種族よりも優れた能力や知性を持つが故に、他の種族を見下しがち。特に何の特殊能力を持たない人間に対してはそれが顕著である。神界では人間は見下されて当然と言うのが常識となっている。

・神聖術

人間で言う魔術・魔法の神界での呼称。SAOのと同じ呼び方じゃんとは言ってはいけない

・固有能力

神聖術では到達できない奇蹟のような事象すらをも引き起こすのが固有能力。数字持ちのみが所持できる。その能力は人によって様々であり、望む能力はなんでも手に入れる事が出来るシステムとなっている。だが本人の能力や適性によっては、実力以上の固有能力を獲得しても使うことが出来ないため、望む能力を手に入れる事が出来ると謳っているが実際には獲得できる固有には制限が掛かっているようなものである。数字持ち内でも固有の優劣は存在している。ちなみに、他種族が転生して神界人、そして数字持ちになった場合は前世でその人物が生前に築き上げた伝説・成果や特徴、趣味などを基に固有能力が決定されるシステムとなっている。他種族が神界人に転生し数字持ちになる事例が今まで無かった為、このシステムが使われたことは一度もなかったが………………?


今回は導入に近いですね。さぁ、約1ヶ月ぶりの投稿がこれで面白いと思ってくれるかどうか…………………。

話はそれますが、私はこの作品で執筆は最後にしようと考えています。理由としては単純で、書きたいものがないからです。まぁ、何かのラノベや漫画にドハマりすれば撤回するかもですが、今のところはこれで最後の予定です。なので、この作品は2017年から始めた執筆活動の『集大成(フィナーレ)』にする予定です。どういう意味かは、後々分かるかもしれません。

本日も読んでいただきありがとうございました。つい5分前までこの後書きを書いてました。眠いんで、さっさと寝よ。


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#2(あ っさりと)変わる世界

えー……………………9か月ぶりです。お久しぶりです。帰って来たノッブです。

え?どの面さげて戻って来てんだ?……………………それを言われると返す言葉もないんですが、まぁこれには事情がありまして。解説しますと。

五等分のアニメ完結で何故かモチベ低下→モチベ回復の為にリコリコを原作として小説を匿名で執筆→リアルの方で色々とあって半年以上、リコリコの小説も執筆する暇も気力がなくなる→昨日あたりでリアルでやるべきことが片付き、漸く執筆再会の為に動き出す。

こんな感じです。どこかの話で書いたかもしれませんが、基本的に未完のまま終わらせる事はしたくない主義なので完結に向けて頑張ります。

えーっと、前回は……………………あぁ、神様編の初回でしたか。たぶん、超久しぶりにこの小説を見る人は初回と言うか神様編がどんな話かお忘れだと思うので、この話を見る前に一個前の話を見ると良いと思います。

まぁ、とは言えこの神様編は元々修学旅行編の内容を考える為に時間稼ぎも兼ねて書こうと思った話なので、そこまで本編に大きく関わって行く訳ではありませんので、初回やあと8話くらい(予定)ある話もさらっと読んで『ふーん(適当)』くらいに思って貰えればと。

本当に重要なのは星奈さんの方の話なんですが、星奈さんの過去編自体も面白そうなのが書けなければボツにするつもりなので、神様編が終わったら星奈さんの方を書くか本編を書くかはまだ未定です。決まり次第、またお知らせするのでしばしお待ちを。

ふぅ、ぼんじょび。では、お待たせしました。第2話、どうぞ。



2人で世界をマインクラフトしようと決めてから土日を挟んで翌週の月曜日。問題は早速起こった。

 

「えぇ!?第2位から第100位までの数字持ちが全員第1位様を支持しない事を表明して行方不明ですか!?」

 

「らしいねー」

 

カノンが出勤して間もなく第1位からとんでもない事をさらっと伝えられた。

 

「ちなみに、こんな事って今まであったん?」

 

「い、いえ…………こんな事は初めてです………………………」

 

「だよねぇ」

 

「そ、それは今朝にでも数字持ちの方から言われたんですか?」

 

「何か第2位が代表して書いた通達書が今朝に置いてあった。シンプルに第2位から第100位の数字持ち及びその部下はお前には従わない的な事が書いてあったねー」

 

「そ、そうですか……………」

 

ちなみに、その紙は第1位が読んだ後にシュレッダーに掛けられて処分済みである。

 

「どどどどどどどど、どうしましょう!?我々2人だけで他の99人分の数字持ちのその部下の仕事をやるなんて流石に無理ですよ!絶対手が回りません!」

 

「大量の業務で精神的に僕らを潰そうと言う事だねぇ」

 

カノンが焦るのも無理はない。数字持ち達にはそれぞれ担当する世界やその他の業務が割り振られており、それを普通は数字持ち本人やその部下達で行うのが普通なのだ。それを全部2人だけでやれだなんてブラックを通り越して混沌。ダークネスである。

 

「そ、そうだ!他の数字持ちの方を説得しましょう!」

 

「いや、良いよ。どうせ応じないだろうし、こっちとしても居ない方が好都合(・・・)だ」

 

「好都合………………?」

 

「こっちも好き勝手出来るじゃん。何せ反対する奴が誰もいないんだし」

 

「な、なるほど……………………確かに今なら何をしようとも反対してくる数字持ちはいないので好き勝手できますけども……………………」

 

「と言うかこの展開も既に予想済みだし、土日の間に対策も済んでるのさ」

 

「えっ」

 

驚愕するカノンを他所に、第1位は懐から自作のスマホを取り出す。

 

「ふむふむ………………問題なく機能してるみたいで何よりだ」

 

「あのー………………どういうことですか?」

 

「世界の管理を目的とした人工知能(AI)を作っておいたのさ」

 

「??????」

 

ハテナマークを浮かべまくるカノン。

 

「あー………………………ここって人間が生み出した技術とか文化自体やその知識って存在しない感じ?」

 

「そうなんですよね…………学校とかでもそう言うのは習わなくて」

 

「ふーん………まぁ、AIは簡単に言うと人間の知的能力を模倣したようなものさ」

 

「………………要するに、人間から脳だけ取り出した的な感じですか?」

 

「……………中々ぶっ飛んだ例えだが、取り敢えずそんな認識で良いよ。とまぁ、こんな感じで彼等がいなくても特に問題ないし……………これでマイクラに専念できる」

 

第1位のモットーは『人の100歩先を行く』。本人曰く、『1歩先を行くだけでは物足りない』らしい。そしてモットー通り彼はこの展開を予想し、先手の対策を打っていた。これで業務が格段に楽になるに加えて、通常業務の範囲外に位置する『世界のマインクラフト』にも専念できる訳である。

 

「さぁて…………さっさと世界を作り変えますかねぇ…………………………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────1ヶ月半後。神界とは別次元に位置する第1位を除く数字持ち達のアジトにて。

 

「…………………………妙だ」

 

そう呟くのは第2位の神界人だ。

 

「我らが奴に反旗してから1ヶ月。膨大な仕事量に潰されてさっさと辞めて行くと思っていたのだが……………………………未だにその兆しはない。それどころか、世界の管理は正常に行われている…………………………」

 

彼らの狙いは自分たちが反旗して第1位のもとから去る事で、世界の管理などの膨大な仕事量を押し付ける事で心を折らせ、自主的に辞めるように仕向ける事だった。だがしかし、その兆候は未だに見れないに加えて、世界の管理が正常に行われている事は彼らにも分かっていた。

 

「まさか2人だけで行っているのか?」

 

「それこそあり得ん。あの量は不眠不休で働いたとしても終わる筈がない」

 

「だが、実際に奴はこなしている」

 

「何かこざかしい手を使っているに違いない。ずる賢い人間ならやりかねないだろう」

 

他の数字持ち達も好き勝手に喋っていると、その部屋に入って来る者が。その者はいずれかの数字持ちの部下である。

 

「失礼いたします。調査結果の報告に参りました」

 

「ご苦労。それで、どうだった?」

 

「は。それが…………誠に残念なご報告になるのですが………………………今や神界での人間に対する評価は覆りつつある状況です」

 

「「「「「!?」」」」」」

 

彼らにとってはとんでもない報告に驚きの反応があちこちで上がる。

 

「ば、馬鹿な!ここ数百年で人間に対する評価は最底辺だった筈!それが一体どうして覆った!?」

 

「それが………………………第1位によって人間の世界の文化や技術力が持ち込まれまして。それらが神界人にとっても余りにも便利だったり素晴らしく感じるものばかりだったらしく、それを契機に今までの人間に対する評価が揺らぎ始め…………………………1ヶ月も経つ頃には人間の文化や技術で神界が満ち溢れ、人間に対する評価も確実に改まっている状況であります。さらに、政治的手腕も凄まじいもので以前よりも神界全体の状況が良くなっているように思われます…………………」

 

第1位が行ったのは人間の世界の文化や技術の輸入である。持ち込まれた物の例としては、現代では必須のアイテムと言っても過言ではないスマホが挙げられる。無料配布が行われたスマホは最初の内は『人間が作ったものなんて』とこれまでの人間対する見下し気味な評価が邪魔して特に流行りもしなかったものの、今までに見たこともないスマホに対する好奇心に勝てなかった一部の神界人が使ってみた所、その便利さ等にドハマりしたのは言うまでもない。その一部の者達から別の者達へと、その便利さは一気に広められて大流行に至る訳だ。

 

スマホなどのように人間の技術・文化は神界で大流行を巻き起こし、さらには凄まじい政治的手腕によって神界の経済や治安の向上により、たった1ヶ月で神界人の第1位、そして人間に対する評価は手のひらドリルしたのであった。

 

「奴め、何と言う事をしてくれたのだ!人間と言う尊敬するに値しない生物の技術を神聖なる神界に持ち込むとは!」

 

「神界を汚しよって!」

 

ブちぎれる数字持ち達。だが、第2位が無言の圧力で制した事で静寂が訪れる。

 

「どうやら、我々は奴を甘やかしすぎようだな……………………奴が自ら辞めていくように仕向けるような間接的な手段を取った事自体が実に甘かった」

 

「では、どういたしますか…………………?」

 

「決まっているであろう。あの時(・・・)と同じように────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────邪魔者は殺すのだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

====================

 

「ほい、マインクラフト完了っと」

 

「(やばー!!初の元人間の第1位様、本来なら他の数字持ちがやる筈の膨大な業務を余裕で捌くだけでなく、色々とやってたった1ヶ月で殆どの神界人の人間に対する評価を180°ひっくり返した!!ていうか、神界人はちょろすぎん!?)」

 

人をダメにするヨ〇ボーでリラックスしながらそう呟く第1位に、カノンもおったまげである。

 

「ふぅ、しかし意外にあっけなかったな。人間時代に社長として働いてた時の仕事の方がきつかったが」

 

「(やびゃー!!これだけの事をやっておいて人間時代の方がきつかったん!?バケモンやん!!)」

 

さらっと直属の上司をバケモン呼ばわりしているカノン。第1位がそれに気づいているかどうかはさておき、第1位はカノンの名前を呼ぶ。

 

「カノン、せっかくだからパーティーでもするか」

 

「あ、それは良い案ですね!早速準備しましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、カノンは第1位と共にマインクラフト大成功記念のパーティーを開いていた。

 

「かぁ~、悪魔的ッ!このビールとか言う飲み物は悪魔的ですね!ずっと前に私を『人間を尊敬してるとかマジで頭おかしいww』とか言っていたクラスメイトもドハマりしてるのこの前見かけましたし!」

 

「うん、藤〇竜也にそっくりすぎて本当に悪魔的だよ」

 

その日の夜、カノンは第1位と共にマインクラフト大成功記念のパーティーを開いていた。

 

「しっかし、終わってみればあっけないな。うまくいくと予想していたとは言え、こんなにもあっさりと事が運ぶとはね。何か拍子抜けだな…………………………まぁ、人間に対する評価も変わってきてるし良いか」

 

「そうですよ~。うまくいくに越した事はないですって~」

 

「すっかり酔ってるな……………………」

 

まだビール1杯目なのだが、どうやらカノンはお酒には弱いようだ。

 

「いやぁ、本当に世界を変えちゃいましたねぇ~、私達。ふふふっ、夢が叶いました~」

 

「夢?」

 

「はい~。私、この世界を少しでも変えられたらと思って、秘書官になろうと思ったんです~。まぁ、ここに来るまでだいぶ時間は掛かっちゃいましたけどね~」

 

そう言うとカノンは酔っていながらも少しだけ真剣そうな目で語り出す。

 

「私のおじいいちゃんは数字持ちで、ある時事故で人間の世界に迷い込んでしまって。途方に暮れていたら、親切な人間が助けてくれたらしいんですよ~」

 

「へー」

 

「おじいいちゃんは神界から救助が来るまで1週間くらい滞在したそうなんですけど、そこで色々と素晴らしい文化や技術に触れて感動したり尊敬したそうなんです~。おじいちゃんはもうずっと前に事故で亡くなっているんですけど、その事に関する日記が私の家に残されていまして。それを学生時代に読んで私も人間に対して尊敬と興味を抱いていたんですけども、その頃には『人間は尊敬に値せず、見下されて当たり前』と言うのが常識になっていまして~。私はおじいちゃんが大好きだったので、それが正しい事だとは受け入れられなくて。そしたら、学校の同級生や先生からも異端児だって事で嫌われたりいじめられたりしたんですよね~」

 

「…………………………」

 

酔っているのもあって本人はのほほんと笑いながら言うが、当の第1位は笑い飛ばす事は出来なかった。

 

「けどまぁ、私はさほど強くもないので。ずっと逃げてばかりでした。てへへ、逃げてばかりなんてかっこ悪いですよね~」

 

「そんな事ないと思うけどね」

 

「え?」

 

意外な反応にカノンは目をパチパチさせる。

 

「逃げるのだって立派な選択肢さ。『逃げるは恥だが役に立つ』って言葉もあるし。その時は逃げて、弱虫とか指を差されても良いのさ─────────最後に勝って笑えばね」

 

「第1位様……………………」

 

「君は最後に勝って笑ったパターンなんじゃないのかい?現に今、秘書官とか言う神界の中枢に携わる職について、しかも夢もあっさり叶えちゃったんだしさ。どんな気分だい、かつて人間を尊敬していた君をいじめていた奴らが今では人間が生み出したものにドハマりして、手のひら返ししてるのを想像している気分は?」

 

「…………………最高ですね!!想像するだけでこのビールが爽快で進みますね!今日は飲んで飲んで飲みまくりますよ~!第1位様も、どうぞどうぞ!」

 

「はいはい、どうも。けど、はっちゃけるのもほどほどにね(彼女、アルコールが入るとマジで豹変してはっちゃけるな。………………………にしても、君の話を聞いてなおさらマインクラフトして良かったと思ったよ、ほんと)」

 

「分かってますって!Foo!サイコー!!」

 

「ほんとに分かっとるんか………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………ムニャムニャ…………もう飲めましぇん………」

 

酔いつぶれてソファーで眠りについたカノンの声を聞きながら黙って少年ジャ〇プのページをめくる第1位。

 

「やれやれ、カノンはお酒には注意するように言っとかなくちゃな。服を脱ぎ出そうとしたときは少し焦ったもんだ………………」

 

そう呟きながらページをめくろうとした次の瞬間の事だった。

 

「…………………………へー、最近のジャンプは剣が生えてくる仕組みになってるんだ」

 

「安心しろ、それは我が放った剣だ」

 

ジャ〇プを貫通してきた剣を人差し指と中指で止めた第1位がジャ〇プから視線を上げると、黒いフードを被った男が複数人。

 

「………………………誰かと思えば、今まで仕事をすっぽかしていた数字持ちの何人かじゃん。誰が誰だかは知らんけど。で、何か用?ようやく復職?」

 

「あぁ、その通りだ。仕事が出来たのでな」

 

「へー、そうなんだ…………………で、どんな?」

 

男らは何も言わない。ただ、周囲に浮遊して第1位に向けられた光弾や剣などの武器がその答えを示していた。

 

「………………………あぁ、そろそろこんな事にでもなると思ってたよ」

 

そう呟いて第1位が立ち上がると、その周囲に剣やら斧やら槍やらが出現して彼らに向けられる。

 

「始める前に聞くけど──────帰る奴はいるか?」

 

その問いに対する返答はない。次の瞬間、部屋に爆発音が響き渡るのだった─────────。

 

to be continued…………………




ちなみに残りの8話は既にある程度は書き終わっているので、離れていた期間で色々と得たネタを挿入して良い感じのが出来ればすぐに投稿します。


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#3 Welcome to earth

味噌ラーメンがうますぎてやばい。うまー。

原作が五等分の花嫁なのに原作要素が一ミリもない小説はこちらです。


「…………………ん………………………んん…………………ふわぁー……………………」

 

カノンは目を擦りながら大きく伸びをする。どうやらここは家のようだ。

 

「いやぁ、昨日は楽しかったなぁ…………………あんなにはっちゃけたの久しぶりだよ~。いやぁ、お酒の力って凄いもんですねぇ………………………あ、そう言えば第1位様が運んでくれたのかな?お礼を言わなきゃね。さっ、準備準備っと」

 

朝食を召し上がって身だしなみを整えて準備万端。カノンは家を飛び出してすぐに職場に到着した。

 

「おはようございま………………………やばばばばばばーー!!!何ですかこれは!?えぇ!?」

 

カノンは驚愕した。昨日のパーティーで使った第1位の部屋がボロボロだからである。天井には穴が開いてそこから日の光が差し、窓ガラスは全壊、置いていたインテリアはボロボロ、壁には大きな穴が開いていた。ボロボロのソファーに寝そべっている第1位がカノンの方を向く。

 

「おー、おはようカノン。二日酔いとかは大丈夫か?身体はだるくない?」

 

「え?まぁ、身体はなんともないですけど…………………………って、そんな事よりも!何ですかこれ!?まさか………………………私が知らない内に暴れて!?すみません、許してください!何でもしますから!」

 

「もし暴れたらとっくに僕が何とかしてるよ。自分で言うのも自慢んみたいでアレだけど、強いし」

 

「あっ、確かに…………………じゃあ、昨日は一体何が………………?」

 

「─────敵襲だよ」

 

予想もしてなかった言葉にカノンは一瞬言葉を失った。

 

「どうやら、僕を気に食わない連中がとうとう動き出したらしいね。君が酔いつぶれて寝てる間に5人から敵襲を受けたねー」

 

「サラッととんでもない事を言ってますけど、大丈夫ですか!?お怪我は!?」

 

「落ち着きなって、ノーダメだよ。全員撃退した。捕まえれりゃなお良かったんだが、逃げ足だけは早くてね」

 

それを聞いてほっとしたカノンは胸をなでおろす。

 

「良かったぁ…………………いや、よくよく考えたら全然よくないですね…………………………第1位様が戦っている最中に秘書官である私は酔いつぶれて爆睡してたなんて…………………………うぅ…………………………」

 

「そう落ち込むなっての。昨日のパーティー中は業務時間外だからな気にすんな」

 

「うぅ、第1位様はお優しいですね……………………お酒のように体に染みます…………………あっ、今私うまいこと言いましたね~」

 

「…………そうだね(適当)」

 

割と適当に返事されてるが、カノンはそれに気づかない。それにしても、と表情を引き締める。

 

「第1位様を狙うような刺客ですか………………………うーん、一体誰なんでしょうね?ここ最近の第1位様に対する神界人での支持率は絶好調ですし、一体誰がそんな事を…………………………?」

 

「いるじゃん、僕を恨んでそうな奴らが」

 

「んー……………………そんな奴らなんていましたっけ?」

 

「今も進行形で職務放棄してる奴らがいるじゃん」

 

「………………………あっ!もしかして他の数字持ちですね!最近、彼ら抜きでも余裕で仕事が成り立ってたんですっかり忘れてました!」

 

カノンに遠回しに他の数字持ちを要らないもの扱いされているが、実際にその通りである。反逆を予想していた第1位が人工知能などを投入したお陰で現在も仕事は余裕で進められている為、『もうこの2人だけで良いんじゃないかな』みたいな状況になっている。

 

「フッ、君も中々言うようになったじゃないか。まぁ、彼らがいなくても成り立っているとは言え、数字持ちなんだからいるべきなんだけどね」

 

「…………………やっぱり、人間の文化を導入した事や神界全体の人間に対する評価が変わってきた事が原因ですよね?」

 

「多分ね。まったく、やれやれだ」

 

面倒事が増えた事が憂鬱な第1位は大きなため息をつく。

 

「ええっと………………………それで、どうしますか?一先ず、他の数字持ちと話し合いでも設けますか?」

 

「………………君は彼らがそれに応じると思うのかい?口より先に手を出してきた奴らが?」

 

「………………いえ、絶対応じないでしょうね」

 

もうこの時点で交渉の余地は無かった。で、あれば戦う以外に道は無い。

 

「じゃあ、話は決まりだな」

 

「ですね!じゃあ、先ずは作戦とか立てないとですね。まずは……………………」

 

「あー、待った待った。それについては既にもうを考えてある」

 

「おー、流石ですね!正直、こういう考え事とか苦手だし、めんどくさいので助かります!」

 

「君、よく秘書官になれたよね………………」

 

少し呆れ気味で呟く第1位だが、まぁ良いやと切り替える。

 

「じゃあ、カノン」

 

「はい!」

 

「君に──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1ヶ月の有給休暇を授けよう!」

 

「はい!…………………はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カノンside

 

「あっという間に来てしまった………………地球に……………………………」

 

私カノン!有給貰って地球に来たよ!やったね!

 

…………………………まぁ、本当は秘書官なんだから第1位様と一緒に戦うのが当たり前だと思うよ、そりゃあ。けど、私はびっくりするほど弱いからね。だから、第1位様は戦いに巻き込まれないように配慮してくれたのだろう。私としても、足手まといと言うか足枷になるのも嫌なので異論はない。

 

『これお金とか必需品ね。それと、連絡機能を備えたブレスレット。…………………このブレスレットだけは肌身離さず持っててね、マジで』

 

最後だけ真面目な口調で言われた後に、日本と言う国の東京にあっという間に飛ばされました。にしても、そんなにこのブレスレットが大事なんですかね?よく分からないけど。

 

「第1位様が戦っているのに、私だけ休むのも気が引けるんですけど…………………………………まぁ、でも折角有給貰って地球に来たんですし、楽しまなきゃ逆にダメですよね!よーし、こうなったテンション上げていきますよー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スカイツリーにて

 

「スカイツリーの展望台にとうちゃーく!……………………って、曇ってて何も見えないし!そりゃ人も少ないですわ!くっそぉ………………………こうなったら、お土産を全爆買いする!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワイン専門店

 

「高っ!ロマネコンティってこんな高いのかぁ……………………………うーん、流石に今のままじゃ買えないし…………………………………あっ、そうだ。無いなら増やせば良いんだ…………………(悪魔の笑み)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

競馬場

 

「やっ…………………………やったァァァァ!貰った全資金ぶっぱしたのが100倍以上になって返ってきたァァァァァ!天才か、私はッ!これならロマネコンティも余裕で買える!待っててね、ロマネコンティ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

滞在先のホテルにて

 

「むにゃ………………もう飲めましぇん……………(酔い潰れ)へへっ、明日は何をしましょうかねぇ…………お金はあるんですから、もっとぱーっと使ってやりますよぉ…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………と、言う訳で滞在1日目からフルスロットルで行った結果、3日で資金を使い果たしまして……………」

 

『ちょっと何言ってるか分かんない』

 

わずか滞在3日。その間に私は貰った滞在資金を全て使い果たしていました。これは…………………典型的なダメ人間と言う奴ですね(名推理)

 

「何か、こう………………………弾けちゃったんですよ……………………………競馬で一発当てた辺りからですかね…………………………」

 

『取り敢えず、君は結婚したらお金の管理は夫の方に任した方が良いと言う事が分かったよ。そして、大量の始末書が必要だと言う事もね☆』

 

「始末書は嫌です……………始末書は嫌です…………」

 

『そんな『スリザリンは嫌だ』みたいに言ってもダメです(無慈悲)』

 

うぅ……………………有給でお休み中に始末書を書くことが確定してしまうなんて…………………不覚です………………!

 

『まったく…………………………必要最低限は振り込んどくから、次もまた競馬とか豪遊したら命綱なしで富士山の火口に飛び込んでもらうからね?(脅し)』

 

「はい!もうしません!次は固いレースにだけ賭けま『は?(威圧)』い、今のは冗談ですよ、ほんとに!神に誓って冗談です!」

 

『ふん、どうだかね…………………』

 

「そっ、そう言えば第1位様の方は大丈夫ですか?」

 

これ以上この話題に触れられたくないので咄嗟に話題を変えました。

 

『あれから毎日襲撃来てるけど、何だかんだで全部撃退してるよ。つーか、丁度今も戦ってる最中』

 

「へー、そうだんですか……………………………って、今も!?」

 

『そそ。剣飛ばしてる最中』

 

やんばー!!え、じゃあ今まで私と話しながら戦ってたって事!?何か凄ッ!

 

『……………あっ、消えやがった。今日はあっさりしてたな。『逃げるな卑怯者!逃げるなァァァァ!!』って某長男なら言ってたわ』

 

「某長男って名前の人がいるんですか?(天然ボケ)」

 

『そんな名前の人いてたまるか…………………あぁ、そうだ。カノン、君のおじいちゃんの日記って今もあるのかい?』

 

「?……………あの日記は人間の世界(地球)での内容を除けば数日分しか書いてなくて後は空白ですよ。しかも、その数日分も大した内容じゃないですけども?」

 

『さぁ、それはどうだろう?元数字持ちって事は頭が良かったはずだ。何かが巧妙に隠されてるかもしれないよ?』

 

んー………………第1位様はそう言うけど、それは無い気がする。あの日記は何度も読んだが、特に隠しギミックはない。本当にただの日記だ。

 

「まぁ、調べ分は構わないのでお好きにどうぞ。私の家の倉庫に置いてあるので。ちなみに、その地下倉庫はひいおじいちゃんのものを私がそのまま貰ったやつです」

 

『へー、そうなんだ。オッケー、ありがとさん。じゃ、早速調べ事するんでここら辺で』

 

「あっ、はい分かりました。それでは失礼しまーす!」

 

こうして通話は終わった。私はベットにだいぶして一息つく。

 

「ふぅ……………………そう言えば、おじいちゃんの事って第1位様に話してたっけ(酔ってたので覚えてない)………………………まぁ良っか!にしても、おじいちゃんかぁ……………………事故がなかったら、今も生きてたのかなぁ…………」

 

おじいちゃんは私が小さい頃に爆発事故で亡くなった。その事故で半数以上の数字持ちが亡くなっており、当時は神界が激震したらしい。他の数字持ちの人達によって調査は行われたそうだけど、原因は不明で結局調査は打ち切りになった。私はどうも両親とは反りが合わなかったので、おじいちゃん子だった。だから、おじいちゃんが亡くなった時は心に穴が開いたような感覚で、立ち直るまでにかなりの時間が掛かった。

 

「………………………って、しんみりしてもしょうがないよね!さっ、ビールでも飲もっと!…………………………この前のロマネコンティと比べると、随分安くなっちゃったなぁ……………………はぁ、ロマネコンティちゃんが恋しい……………………………」

 

1日で全部飲まないで、少しは残しておくべきだったかなぁ…………………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこからさらに時間は飛んで有給最終日。私は既にほろ酔い状態。

 

「はー、何だかんだで今日で地球滞在最後ですかぁ…………何かさみしいな~…………」

 

どう言う訳か分からないが、毎日のように続いていた2週間前から第1位様に対する攻撃がピタリと止んだらしい。それから何も起こらなかったのもあって諦めたと判断したのか、予定通り私は帰る事になった。

 

「毎日のように戦っていた第1位様には申し訳ないけど、何だかんだで良いリフレッシュになって楽しかったな~。色んな所に行けたし、美味しいものもたくさん食べれたし、道に迷ったりしたら助けてくれる親切な人もいたし…………………………………なーにが『自分達よりも弱く、尊敬するに値しない愚かな生物』だっての!全然そんな事ないじゃん。これを最初に広めた奴は節穴過ぎだっての」

 

もしくは、ちゃんと調べもせず適当な偏見で広めたんでしょうね。馬鹿を通り越して愚かですよ、全く。

 

「まっ、そんな事はさておき………………………今日で地球とはおさらばですからね。今日の夜ご飯は少し奮発して高級なお弁当を買っちゃった!まぁ、第1位様も許してくれる!………………………たぶん」

 

『まぁ、これくらいなら許してやんよ(寛大)』or『また始末書書くんか?お?(威圧)』のどちらなのだろうか…………………………いや、もう今日は考えるのは良そう。始末書案件でも明日の私が何とかしてくれる。

 

「さーて、いたたきま『コンコン』……………………はーい、今開けまーす」

 

内心では『いい感じの所で水を差すかのように邪魔しやがってェ…………………』と悪態をつきながらドアを開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それが私の意識はぷっつりと途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

調べ物をしに出掛けていた第1位が帰ってくると、机に写真伏せて置いてあった。

 

「………………………………」

 

写真の裏にはとある座標の情報と時間の記載が。そして、肝心の写真の内容は──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

十字架に磔にされているカノンが写っていた。

 

to be continued…………………



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#4 隠された真実

青ブタの映画がとても良かった。全人類は青ブタを見るべき。

国は青ブタの視聴を義務化する法律を作ると良いと思う()


カノンside

 

「ん…………ううん……………………………………………は?」

 

目を覚ました時には私は大広間の中で十字架に縛り付けられていた。いや、なにこの状況?

 

「目を覚ましましたか」

 

「……………………………」

 

そこにいるのは第2位だけではない。他の数字持ち達も殆どが揃っていた。

 

「…………………………あぁ、なるほど。私はあなた方に攫われたんですね。人質ってやつですか」

 

「察しが良くて助かるよ。すまないね、カノン君。用が済んだら解放するさ。本当はこのような手荒な手段は用いたくなかったのだがね」

 

「…………第1位様を殺そうとして、散々手荒な真似をしている癖によくそんな事が言えますね」

 

「貴様、たかが秘書官の分際で生意気な!」

 

誰かが攻撃しようとするが、それを第2位が止める。

 

「君は少し勘違いしている。君は我々が行っている事を悪だと思っているが、それは早合点だ」

 

「………………どう言う意味ですか?」

 

「我々は神界をあるべき姿(・・・・・)に戻そうとしているだけさ。皆にとって(・・・・・)正しい世界に、ね。奴が第1位になってからこの世界は変わってしまった。違うかい?」

 

「…………………いえ、その通りですね」

 

別にそれは否定しない。確かに第1位様によって良い方向にこの世界は変わった。人間の文化がこの神界にも溢れた。

 

「それが何か問題でもあるんですか?」

 

「この神聖なる神界が汚されてしまっているんだ。問題しかないだろう?」

 

「………既に殆どの神界人は人間の文化を受け入れていますが?」

 

「彼らは奴に騙されているのさ。恐らく洗脳でもされているのだろう、哀れなものだ。そもそもの話、カノン君。人間と言うのは我々と違って優れた知性も身体能力なく、尊敬にすら値しない愚かな種族だ。そんな低能な奴らが作り出した文化など、果たして我々に必要かい?私はそうは思わな─────────」

 

「…………………………………」

 

まだ何か喋っているが、私は何も聞いていなかった。どうでもよすぎた。第2位が喋ってるのを遮るように私は口を開く。

 

「1つ聞きたいことがあるんですけど」

 

「……………………………何かな?」

 

「あなたは………………………人間と会ったり喋ったりした事はあるんですか?人間の文化に触れてみたりした事はあるんですか?」

 

「何を聞くかと思えば…………………………言ったはずだ、人間と言うのは我々と違って優れた知性も身体能力なく、尊敬にすら値しない愚かな種族。そんな低能な奴らと会話は勿論、作り出した文化になど触れたくもないね」

 

…………………………あぁ、やはりか。

 

「あぁ………………………そうですか、これでよく分かりました」

 

「そうかそうか。我々が行っている事が正しいと理解してくれた、と言う事で受け取って良いんだね?」

 

「えぇ、そうですね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あんたが第2位の割には馬鹿って事が良く分かりました

 

その言葉に大広間が冷え切るのが良く分かった。

 

───────後から振り返ってみれば私はとんでもない事を言ったと思っている。酔っていたのもあって、馬鹿正直に言ってしまったのだろう。お酒って怖いね。

 

「確かに、人間は我々よりも身体能力や知能では劣ってるかもしれないですよ。私、ここ1カ月くらいは人間と接してたんで。けど、何も見ないで尊敬に値しないとかって決めつけるのは飛躍しすぎじゃないですか」

 

「…………………………………」

 

第2位は黙っていた。

 

「実際に人間と話してみたり文化に触れてみて、それで尊敬に値しないって言うならまだ分からなくもないんですけど……………………………それすらしないで、人間は尊敬するに値しないー、とか…………………………………馬鹿だなー、って感想しか思い浮かばないんですけどね?」

 

「…………………………………」

 

「と言うか、思ったんですけど………………………さっき皆にとって(・・・・・)正しい世界に戻そうとしてる、とか言ってましたよね?けど、それって本当は…………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなた方にとって(・・・・・・・・)正しい世界に戻したいしたいだけじゃないんですか?」

 

「……………………へぇ」

 

それを聞いた第2位のまとう雰囲気がガラッと変わった。先ほどまで胡散臭いように感じていた紳士のような雰囲気が消えた。これが本性だろう。

 

「てっきりビビるかと思っていたが……………あっちで何かの影響を受けたのもあるだろうが、中々口が達者だな。それに鋭い所もある。遊んでやろうかと思ったが……………生憎時間がなくて、な!」

 

「がはっ……………!」

 

一瞬で目の前に来たかと思えば、腹部に拳が深くめり込む。途端に意識が遠のいていく。

 

「お遊びは後に取っておこう。メインディッシュを始末してからゆっくりと楽しんでやるから、な」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第2位らは大広間を出て別室に入る。そこは神界をリアルタイムで監視できる部屋だった。部屋のあちこちに神界の様子が写し出されている。

 

「奴は今どこにいる?」

 

「不明です。奴は完全に姿を消しています。逃げたのかも知れませんが、どうしますか?」

 

「構わん。それよりも、対神奇襲兵器『天の矛』の最終調整はどうだ?」

 

「調整は完璧に済んでおります。……………ですが、第2位様。奴は指定された場所に来ますかね?」

 

「唯一、最初から自分の味方でいてくれたあいつを奴は見殺しには出来ないだろう。人間と言うのは情を捨てきれない奴らしいからな。元人間の奴も確実に来るだろう」

 

彼等の作戦は至ってシンプルだ。指定した場所に第1位をおびき寄せた後、神界から数億光年離れている場所に設置された『天の矛』から放たれるエネルギー照射で跡形もなく抹殺しようとしているのだ。

 

「奴は案外あなどれないからな。念の為『天の矛』まで持ち出す羽目になったが、まぁ良かろう。奴の最期を盛大に看取ってやろうじゃねぇか」

 

そう言って第2位は笑った。冷酷で、残忍な笑みを浮かべて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全ての準備を終えた第2位らは先ほどまでいた大広間に戻ってくる。いつからか意識を取り戻していたのか、カノンが首を上げる。

 

「よぉ、待たせたな秘書官」

 

「…………………!」

 

「さっきと変わらない敵意を向けてくるか…………………………………だが、さっきと違って怯えや恐怖も見えるな?」

 

「………………そりゃあ、まぁ…………どうせ私も後で殺す気でしょうし」

 

「ほう、察しが良いな。だが、俺達への忠誠を誓うなら命は助けてやっても良いが?」

 

「生憎ですが、私が忠誠を誓ってるのはあの人だけですので。どうせ死ぬので言ってやりますけど……………………誰がいなくても問題のないお前らなんかの元で働くか、バーカ!!」

 

あながち間違いではない事を言われ、場が殺気立つが第2位にはその様子はなく、やれやれとため息をつく。

 

「………………全く、お前もお前の祖父も変わり者だな。揃いも揃って、人間に肩入れするとは」

 

「!?」

 

「何で俺がお前の祖父を知っているかって?簡単な話さ。俺とお前の祖父はかつて同僚(数字持ち)だったからさ。まぁ、公には既に俺は死んでいることになっていて、顔も変えているからお前が知らないのは無理もないが」

 

カノンはその言葉に目を大きく見開く。そんな表情が愉快でたまらないと言った風に第2位らは笑う。

 

「事故で地球に行ってからあいつは変わっちまったな。人間の文化や人間自体に愛着を持ち始めた。奴を発端に他の数字持ちも影響を持ち始めた。あぁ、本当に不愉快でしかなかったな。今も思い出すだけで反吐が出るぜ」

 

「っ……………………!」

 

「おいおい、怒るのはまだ早いぜ?冥途の土産に良い事を教えてやるんだからよ……………お前の祖父が死んだ事故の調査で爆発の原因は分からず、原因不明と処理されたが……………………………本当原因が分かってないとでも思ったか?」

 

「!!」

 

「そもそもの話、調査何て行われてねぇ。原因なんて調査するまでもなく(・・・・・・・・・)分かってる」

 

「……………まさか………………………」

 

「そう!!お前の想像通りだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前の祖父を殺したのは俺と言う訳だ!!ア"ーッハーッハーッハーッハッ!!!ア"ーッハーッハーッハーッハッ!!!」

 

狂ったかのように高らかに笑う第2位。彼とは対称的にカノンは茫然としていた。思考が鈍り、頭が真っ白になる。

 

「手口は今からやろうとしている事と同じさ。適当な理由であいつや他にターゲットにしていた奴らを呼び出し、そこを『天の矛』の照射で跡形もなく消し去った、って訳さ。俺は近くでその瞬間を見ていたが、傑作だったな。何が起こっているのかも分からず消え去るのを見るのはな!!ハーッハーッハーッハッ!!」

 

「…………………んで」

 

カノンの瞳からは涙が零れていた。

 

「何で…………おじいちゃんを………………何でおじいちゃんを殺したんだよ!!」

 

「何で?人間に肩入れし始めたあいつが気に食わなかったのもあるが、単純に邪魔になると思ったからな。俺たちの正しい世界を作る計画に賛同しなさそうな奴は事前に消しておくに限るだろう?それだけの事だ」

 

「そんな理由で、私の………………………私のおじいいちゃん達を殺したのか!?ふざけるな…………………………ふざけるなよぉ!!」

 

「いい表情だ!もっと楽しみたい所だが…………………………どうやらメインディッシュが来たらしい」

 

そう呟くと目の前に映像が浮かび上がる。その映像に映っているのはただ1人。

 

「第1位様!!」

 

「やはり来たか!やはりこいつを見捨てられないだろう!優しい奴だ………………………だが、それが仇となるのさ!」

 

「ダメ…………このままじゃ『天の矛』が……………逃げて、第1位様!逃げて!!」

 

届くはずもない。だが、カノンは叫ばずにはいられなかった。だって、彼は一緒に夢を叶えた仲間だから。

 

「さらばだ第1位……………『天の矛』、照射!」

 

第2位が合図した瞬間、映像上の第1位にまばゆい光が降り注ぐ。画面が暫く乱れていたが、やがて映像が回復する。そこに映っていたのは地面が抉れている映像、そして先ほどまで第1位がいた場所には何もなかった。

 

第2位はもう興味を失ったのか、再びカノンの方へ視線を向ける。

 

「さぁて、デザートの時間だ………………………心だけでなく、体にも苦痛と絶望を叩きこんでやるよ。じっくりと、なぁ……………………」

 

下劣な笑みを浮かべながら近寄る第2位ら。これから何が起こるのかはカノンも分かっていた。これから起こる事を想像すると震えが止まらなかったし、泣き叫びたかった。そうしてしまった方が楽になれたかもしれない。でも─────

 

「(……………………私の運命ももはやこれまで…………けど、せめてあの人の秘書官として…………最後の瞬間まで堂々とするんだ…………………それが秘書官としての私のプライド!)」

 

─────────彼女はもう逃げるだけの女の子ではなかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フッ、初めて会った時よりも良い表情をするようになったじゃあないか、カノン。流石は僕の秘書だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カノンが首を上げる。第2位らも上げる。重力に逆らって天井に立っている人物が1人。

 

「なっ、おま」

 

「『普通のパンチ』」

 

喋る時間も与えず、第2位の目の前に瞬間移動したかと思えば文字通り某禿げた最強ヒーローの『普通のパンチ』を顔面に叩きこむ。『普通のパンチ』を喰らった第2位は高速回転しながら部屋を突き破ってダイナミック退出して行った。他の数字持ち達は誰1人この急展開についていけず、ただ突っ立っていた。そんな彼らに目もくれず、十字架を軽く蹴って粉々に破壊すると、落ちてきたカノンをお姫様抱っこで受け止める。

 

「あ……………………え????」

 

「すまなかったね、カノン。君を危険な目に合わせないようにしたのにも関わらず、危険な目に合わせてしまった。このお詫びは後でちゃんとさせて貰うよ」

 

「や……………………やばーーー!!」

 

その人物─────────つい先ほど死んだはずの第1位を見てカノンは驚きながらも、嬉しそうに叫ぶのだった。

 

to be continued………………




おや、数字持ちからメッセージが……………………え?今からでも入れる保険はないか?

そんなのないんで、第1位は命懸けで、死ぬ気で何とかしろ。つーか、死ね(直球)


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#5 第1位の奇妙な能力

そう言えば、私が休んでる間にジョジョ6部のアニメが終わったんだよなぁ……………………なんて思いながら書いた本話です。どうぞ。


「………ふむ」

 

「な、何ですか?」

 

「今日更新されたジャンプをまだ見てなかったなー、って」

 

「(やんびゃー!この状況下でこの人は何を呑気な事を言っとるん!?)」

 

自由過ぎる第1位の発言にカノンも心の中でツッコむ。

 

「……………ところで、どうやって生き延びたんですか?映像を見る限りでは確実に当たったように見えたんですけど………………………?」

 

「それに関しては俺も聞かせてもらいたいな」

 

声のした方を2人が向くと、そこには『普通のパンチ』によるダイナミック退出から帰ってきた第2位の姿があった。

 

「あれは予兆や音もなく光以上の速さで光線が照射される兵器だ。それをどうやって避けやがった?それに、どうやってここに来た?この空間は俺達以外しか知らない座標に位置しているんだが?」

 

「さぁね。ただ、居場所を突き止めるのは容易かったよ。だって、ご丁寧に位置情報を発信してくれていたからね」

 

第1位はカノンに肌身離さず身に付けるように言っておいたブレスレットをチラリと見ながら言う。

 

「(なるほど、俺達が秘書官を狙う事を想定していた訳か……………………だが、『天の矛』はどう避けた?他の数字持ちに襲撃させた時の映像を見る限り、こいつの固有能力は恐らく武器を何もない空間から射出する能力だ。ならば、勘だとでも言うのか?)……………………まぁ良い。どうやって『天の矛』の攻撃を避けたのかは知らないが、『天の矛』が健在であるならば、こちらの優位性は変わらない」

 

「へぇ」

 

「教えてやろう。この天の矛の最大出力で照射すれば惑星は簡単に吹き飛ばせる。そして今、天の矛は神界を標的に定めている。…………………そこの秘書官でも、この意味が分かるだろう?」

 

「まさか…………………………神界人全員を人質に!?」

 

目的の為ならば自身の生まれ故郷の同類達を滅ぼすことに躊躇がない。悪魔のような男である。

 

「だが、俺は寛大だからな。貴様らが大人しく死んでくれれば、発射は中止しよう。だが、抵抗すると言うならば神界は一瞬で滅びる。さぁ、どうする?まぁ、お前ら2人の命で大勢の命が助かるんだ………………………どれが最善の選択かは分か」

 

「違うな。間違っているぞ、第2位」

 

第2位の言葉を遮り、某シスコン(ルルーシュ)風にそう否定する第1位。そのままニヤリと笑いながら続ける。

 

「君はもう1つの選択肢を忘れているようだ。それは、『神界は滅ぼさせずにお前らを倒す』だ。…………………こうなる事は既に予測済みだ。今からそれを証明してみせよう。…………点火」

 

そう呟くと第1位は親指で人差し指の第一関節を押す。そして、異変はすぐに起こった。

 

「だ、第2位様っ!」

 

慌てた様子で一人の数字持ちが駆け込んでくる。その数字持ちは第2位が天の矛の制御を任せていた者だった。

 

「て、天の矛が突然爆発し…………………………跡形もなく消滅しました!」

 

「なっ!?」

 

流石に第2位も驚きを隠せなかった。他の数字持ち達も動揺している。

 

「へっ!きたねぇ花火だ(ベジータ)…………………実際に見てないから知らんけど」

 

「ちょっ、急展開過ぎてついていけないんですけど…………何がどうなってるんだかさっぱり………」

 

カノンも混乱している模様。まぁ、急展開と言えば急展開なので分からなくもないが。

 

「貴様ァ、何をした!?」

 

「そう大声で叫ぶなよ、№2君。なぁに、簡単な話さ。ここに来る前に『天の矛』とやらを爆弾に変えて点火しただけさ。………………こいつ(・・・)がな」

 

第1位の背後から禍々しいオーラを纏った、猫耳と髑髏を組み合わせたような頭部と、レザー状の手袋にブーツ、そして髑髏のベルトが特徴的な人型の何かが現れた。

 

「え、何……このキモいムキムキ猫は…………?」

 

「キモくないよ、カッコいい。………………『キラークイーン』。触れたものを爆弾に変えたりする能力を持つスタンド。本来ならスタンド使いではない君らには見えないんだけど、特別に見えるようにしてあげてるのさ」

 

ジョジョ立ちを披露するキラークイーン。かっこいい。

 

「まー、そんな感じで『天の矛』も消え去ったし…………君らは今まで自分たちに都合の良い書き換えた世界(・・・・・・・)で好き勝手してきた。だが、それもここまでだ」

 

「…………………………ッ!?」

 

第1位の言葉に数字持ちらの間に明らかに動揺する反応を取る者がカノンにも見えた。

 

「ちょ、書き換えた世界ってどういう事ですか!?」

 

「簡単な事さ。彼等が神界人の記憶や認識(・・・・・)を自分たちの好きなように書き換えたって話」

 

「……………………え?」

 

唐突に出てきた話にカノンは間の抜けた声をあげてしまう。そんなカノンに対して第1位は説明を続ける。

 

「切っ掛けは君のおじいさんの日記を読みに行った時の事さ────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==========================

 

「…………………………うん、マジで何も無かったわ」

 

日記を読み終えた第1位はそう呟く。何か隠されたメッセージでもあるのではないかと考えていたが、本当に何もなかった。

 

「……………………にしても、この地下倉庫汚すぎでしょ。埃まみれでかなり長い間掃除してないって一瞬で分かるわ」

 

カノンは地下倉庫をここ最近は使用してないので、埃が溜まるのも必然と言えるだろう。

 

「折角だし、掃除しましょうかねー」

 

そう呟くと一瞬だけ第1位の姿がブレたかと思えば、地下倉庫は整理整頓されて新品同然となっていた。マッハを超えるスピードで、僅か2秒で掃除を終わらせたのだ。

 

「ま、こんなもんか。さて、用は済んだしさっさと……………………空気の流れを感じるな」

 

帰ろうとしたタイミングで第1位が空気の流れがある事に気づく。先程は散らかっていたりで気づかなかったが、綺麗にすることで気づくことができたのだ。

 

「この倉庫には隠し部屋的な何かあると言う事か。隠し部屋は…………………………ここか」

 

壁の一部を押すと奥に引っ込み、隠し通路が出現する。

 

「ビンゴ」

 

そう呟くと、第1位は隠し通路に足を進める。薄暗い通路を歩く事僅か1分。目の前に大量の本が埋め尽くす、巨大な書庫が出現するのだった。

 

「すっご。こんな大量の書物が……………………これは、昔使われてた教科書か。神界の歴史とか載ってるのか。へー」

 

傍にあった本をぺらぺらと流し読みする第1位。だが、視界の端に人間と言うワードを見つけると、そのページをじっくりと眺める。

 

「………………『人間は考える事で新たな技術や物を生み出し、現在進行形で文明を発展させている種族である。頭を使って考えることができる点では我々との数少ない共通点であり、生み出してきた技術や物には惹かれるものもあり、尊敬に値する種族の1つである』……………………何だこれ。以前読んだ現在使われている教科書とは真逆な事が書かれている。カノンは昔から人間が見下されるのが常識ですって言ってたな。なら、こんな記述の教科書が存在していた事自体が妙だな…………………………」

 

『人間は見下されて当たり前』。それが少し前まで神界で昔からの常識だった。だが、昔使われていた教科書にはそれとは真逆の事が書かれている。この矛盾はどう言う事なのか。

 

「…………………色々と調べてみるとするか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────────それから何だかんだで色々と調べたり考えたりして、結論として出したのがさっき言った通り、彼等が神聖術で神界人の記憶や認識を自分たちの好きなように書き換えたって事」

 

「いや、最後らへん説明めっちゃ適当にしましたね!?」

 

「何か説明するのだるいし疲れたんで。とりま出した結論が分かれば良いだろう?」

 

まったく、自由過ぎる神である。

 

「書き換え以前に存在していた書物などは秘密裏に全て処分し、書き換えた事を他の神界人に勘づかれないようにしたのだろう。だが、爪が甘かったな。彼女の祖父が残していた書物の存在に今日に至るまで気付けなかった事が、お前達の悪行を暴く事に繋がるとはな。死してなお、お前達は彼女の祖父に一杯食わされたわけだ」

 

「おじいちゃん……………………けど、第1位様。記憶や認識を書き換える術は確かに存在していますし、あの彼らは人間を嫌っているから動機は十分にあります…………………………けど、彼らがその術を行使したと言う証拠がないです」

 

「──────そ、その通り!確かに我々は人間を嫌っている。動機も手段も確かに存在している。だがしかし、お前の話はあくまで推測でしかない!俺たちがやったと言う証拠がなければ、ただの想像の域でしかない!」

 

カノンの言葉に便乗するかのように数字持ちの1人が叫ぶが、当の第1位は特に表情を変えずに平然としている。

 

「証拠はあるよ。彼らが犯人ならば、目の前にいる彼ら自身(・・・・)が証拠になるのさ」

 

「???」

 

第1位の言葉にカノンはクエスチョンマークが何個も浮かぶ。すると、第1位の背後から顔に奇妙な紋様の浮かんだ帽子とスーツ姿の小柄な少年の姿をした何かが現れる。

 

「こいつはスタンド『天国への扉(ヘブンズ・ドアー)』。スタンド攻撃を仕掛けた対象を情報の象徴である『本』に変え、『本』の各ページには対象の嘘偽りのない『人生の体験』────────記憶や経験を読むことができ、嘘偽りのない情報を手に入れられる。この情報を隠すことはどんな神聖術を使おうが不可能だ。つまり、彼らが記憶や認識を書き換えた犯人なら、『本』を読めばその犯行を示す記述があると言う事だ。それ以外の悪行の数々もついでに、ね」

 

チート過ぎる能力の登場に、数字持ちの何人かの顔はどんどん青ざめて行く。この反応の時点で既に自白しているようなものになるのだが。

 

「じゃあ、第1位様の前ではどんな隠し事も嘘もつけないって事ですか?プライバシーもクソもないと?」

 

「女の子がクソとか言うんじゃないよ……………けど、その通りだ。まぁ、流石に人のプライバシーに土足で入り込む真似はしたくないから今回のような用途でしか使うつもりはないが。…………………さて、それじゃあ君達にご協力願おうか。別に君達が犯人じゃないなら、断る理由もな」

 

「……………………いいや。その必要はないぞ」

 

第2位が第1位の言葉を遮る。何か吹っ切れたように、やれやれと言いたげな表情を浮かべる。

 

「古い書物などは全て回収し処分した筈だったが…………………………素直に認めよう、お前の祖父に一杯食わされたな」

 

「や、やっぱりあなた達が…………………」

 

「その通り!お前の祖父を含め、俺たちの理想の世界を作り上げるのに邪魔な数字持ちを全員始末した後、俺たちは記憶や認識を思うがままに書き換える大規模な神聖術を行使した。そして記憶や認識の書き換えがバレないように術を行使する以前に存在していた書物などは全て回収し処分した筈だったが…………………………死んだ後も、俺たちの邪魔をするとはなつくづく厄介な野郎だ……………さて。俺たちの計画を暴かれたりするイレギュラーな事はあったが────────」

 

第2位が指を鳴らすと、一瞬で第1位とカノンは包囲される。

 

「────────お前らを始末すれば何も問題ない。あいつが持っていた書物も全て処分し、再びあの神聖術を行使すれば全てはお前が第1位になる前の状態にリセット出来る。だろ?」

 

「そうだね。それが出来れば、ね」

 

「言っておくが、これまでのお前への襲撃はデータ収集とお前の固有能力を暴くことがが目的だった。だから、手加減するように命じておいた。だが、今回は容赦はしない。お前の固有能力が結局何なのかは不明だが、強力な固有能力を持つ99人の数字持ち相手ではこちらが圧倒的に優位。何の問題もない」

 

「ふっ、そう言ってる時点で君らは負け確だね。だって僕、最強だもん(五条悟)」

 

良い声で煽って行くスタイル。第1位に対する殺意がどんどん膨れ上がって行く。

 

「ちょっと、これ以上無駄に挑発しないでください!殺意がどんどん膨れ上がってますけど!?」

 

「問題ないね。いい方法があるからね」

 

「え、そうなんですか?一体、どんな方法ですか?」

 

「それはね、こうするんだよ」

 

第1位は指をパチンと鳴らした次の瞬間である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………………え?」

 

カノンは見知らぬ森にいた。

 

to be continued……………




皆はジョジョだと何部が好きですかね?私は4部が1番好き。

アカン、来週で水星の魔女が終わってしまう(唐突)

マジでどうなるんだろう……………………はよ日曜になれ。

カノンは神界の中ではかなりイレギュラーな存在。他の神界人が常識を疑わない中、常識の正しさを疑い、どんなにいじめられても考えを変えずに人間を見下さなかった。本人は自分の事を雑魚だの卑下してたけど、ある意味強者。

さて、それにしてもわれらが第1位の固有能力は一体何なのか?

少し前の話では某金ぴかのごとく武器を飛ばしていましたが、今回はスタンド能力をちらつかせていました。果たして彼の固有能力は何なのか?そこらへんの答え合わせもお楽しみに。


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#6 最終決戦の幕開け

アニメとか見てると何故か妹が欲しくなる現象。共感してくれる人いません?うちは生意気なクソガキの弟しかいません。やれやれ。


「……………………これがその方法か?自分だけ犠牲となってあの秘書官だけでも逃がそうと言う魂胆か?何とも感動的だな…………………………………だが、あの秘書官も我々の真実を知っている以上、始末する事には変わらない。お前の行為はあいつの命を数分生き長らえさせただけで、無意味でしかない」

 

「さぁ、どうかな?ほんとに無意味かどうか、試してみる?」

 

「…………俺はあの秘書官を始末しに行かせてもらう。あとは好きにしろ。……………………さらばだ、第1位」

 

その合図の瞬間、数字も持ち達の固有能力による攻撃が一斉に襲い掛かり、その猛攻故に第1位の姿が見えなくなった。それを確認した第2位は今度こそ第1位に興味を失ったようで、死体を確認する事もせずカノンを追ってその場から消えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、カノンは第1位によってどこかの森に転送されていた。

 

「ここは…………………………森?何で私は………………………まさか………………………!?」

 

「そう、奴がここへお前を逃がしたのだ。愚かにも、な」

 

カノンが振り向くと、そこには浮遊する第2位の姿が。

 

「今頃、あいつは始末された頃合いだろう。後はお前を始末すれば、真実を知る者は誰もいなくなる訳だ」

 

「ッ……………………!」

 

それを聞いてカノンは一瞬泣きそうになるが、すぐに表情を引き締める。

 

「…………………………なら、そう簡単に死ぬわけには行きませんね。生きてこの真実を皆に公開します………………………第1位様もそれれを望んでる筈ですから」

 

「ならばどうする?何の固有能力も持たないお前が俺を倒すとでも?言っておくが、俺の固有能力は最強だ。模擬戦闘でも誰にも負けたこともないし、そもそも俺の固有能力は誰にも分からない(・・・・・)

 

「……………………そうですね。たぶん、私じゃあなたと戦っても勝てないでしょう」

 

そう言ってカノンは第2位に対して背を向ける。

 

「なので、選択肢は1つ──────────『逃げ』しかないですね!」

 

カノンは超高速で森林を駆け始める。第2位も追いながら複数の光弾を放つ。

 

「よっ!」

 

光弾が当たる直前にカノンはジャンプして木の枝に飛び移って回避した。

 

「ほう………………………少しはやるじゃないか。能無しかと思っていたが、どうやらそうではなかったらしいな…………………………ならば、これは避けれるかな?」

 

第2位は頭上に大きな光弾を放つ。上空で光弾は弾けたと思えば、一気に雨のように降り注ぐ。

 

「……………行けっ…………!」

 

自分を鼓舞するように呟いたカノンは木から飛び降りてさらに加速。光弾の雨を森に生えてる木や地形を利用しながらパルクールのようにアクロバティックな動きで避けていく。数分に及ぶ攻撃の雨が止んだが、カノンの身体には一切の傷はなかった。

 

「………………これは少し驚いたな。全て避けきるとは」

 

「生憎、私はずっと逃げていたものですからね。神聖術はそこまで得意ではないですけど、唯一得意だったのが身体能力の強化でしたから。逃げるにはこの上なく相性抜群です」

 

「確かにな。だが、逃げてばかりでは何も変わらないが?」

 

「いえ、それは違いますよ。身体能力の強化する術はそこまでエネルギーを使いませんが、攻撃系の術は身体能力の強化よりはエネルギーを消耗します。長期戦になればあなたの方が先にエネルギーが尽きる。そうなれば、私にも勝機があります。違いますか?」

 

「なるほど、確かにその通りだ。いかに数字持ちと言えども、エネルギーが尽きればお前でも倒せるかもしれんな。考えたものだな」

 

第2位はあっさりと認めて見せる。それがカノンには少し怪しく見えた。

 

「(この人、まだ全然余裕そうだ…………………………………恐らく、まだ固有能力を使ってないだろうしそりゃそうか。にしても、誰にも分からない固有能力って一体…………………?)」

 

「考え事とは感心してる場合なのかなァ!」

 

「!!」

 

考え事をしていたカノンだが、放たれた光弾は何とかギリギリで避けた。

 

「ッ………………………!危なかったぁ…………………………!」

 

「見事な反射神経だな…………………………良いだろう、ここまで耐えたご褒美だ。特別に固有能力を見せてやろう!」

 

「(来る!?あいつの動きに全身全霊で注目しろ!固有能力の正体を見破るんだ!そして逃げてみせるんだ!)」

 

そして、第2位は紫色のオーラをまとい、口を開く。

 

「固有能力、発動」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………………え?」

 

カノンはいつの間にか地面に倒れていた。

 

「一体何が……………うぐっ…………………!」

 

脚や腕に、いや全身に痛みが走る。いつの間にかカノンの全身に穴が開いていて、そこから血が出ていた。痛みの余り叫びそうになるのを意地で抑え込むが、涙だけは我慢できなかった。

 

「いいねぇ、その苦悶に満ちた表情。俺は人が苦しんでいるのを見るのが大好きでね…………………………だが、まだ足りないねぇな!!」

 

「ガハッ…………………………!」

 

急降下してきた第2位の手刀がカノンの胸を貫く。致命傷を喰らったカノンは血を吐く。そんな彼女の首根っこを第2位は掴んで持ち上げる。

 

「くっ………………………そぉ…………………!」

 

抵抗しようとするが、腕や足に力が入らない。そうこうしてる内にカノンの意識が少しずつ遠のいて行く。

 

「どうせお前は死ぬからな。最後に俺の固有能力を教えてやるよ。俺の固有能力は『時間停止』だ。止まった時の中で動けるのはこの俺だけだ」

 

「…………なっ………………じゃあ、最初から勝ち目なんて……………………」

 

「そうだ、お前に勝ちめなんて最初から無かったんだよ!!だが、必死に逃げ回るお前を見ているのも少しは面白かったぞ、秘書官。だが、これでゲームセットだ」

 

万事休す。これほどまでにこの言葉が似合う状況は無いだろう。時間を操る能力の前では自分は無力でしかない事をカノンは痛感していた。

 

「(………ごめんなさい、第1位様……………………やっぱり私なんかじゃ敵う相手じゃなかったです…………弱いなりに頑張ったんだけど………悔しいなぁ………)

 

自分の弱さに対する悔しさと逃がしてくれた第1位への申し訳なさを思いながら、カノンの意識は暗闇に吞まれていった────────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいや。ゲームはまだ終わってないよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

意識が完全に消えようとした時だった。圧倒的な何かが私の身体に入り込んできたのは。

 

「(…………温かい…………それに、凄く安心する……これは………………)」

 

死にかけの私の身体を何かが包み込む。すると、身体中に空いていた傷が再生していく。いや、何と言うか…………『私』が、私の身体が作り直されていく(・・・・・・・・)みたいだった。暗闇に沈みかけてた私の意識が引き上げられていく。 私を迎えに来ていた死神が悔しそうに遠ざかっていく気がした。まぁ、それは幻覚なんだろうけど。

 

「良かった、間に合って。君を守りながらでは流石に僕も全力で戦えないからここに逃がしたんだが……………これは愚策だったな。すまなかったね」

 

「い、いえそんな!こうして生きてるんで、全然問題ないですよ!…………にしても、ご無事でなりよりです」

 

クリアになった視界には私を抱える第1位様がいた。とてもホッとした様子で、初めて見る表情だった。

 

「………ふむ、今回はあまり驚いてないようだね?」

 

「……………まぁ、何となく生きてるんじゃないかって気がしてました。私がそう信じたかっただけかもですけど……………っと」

 

改めて私の身体を見回す。身体に空いていた穴は勿論、服の穴まで完璧に治っていた。神界にも回復の術式はあるが、第1位様の使ったアレは回復と称するには不適だ。

 

『再生』と称するのが正解だろう。

 

「…………あれ、そう言えば第2位は?」

 

「君を掴んでいた腕を手刀で切断してアクセルキックで吹っ飛ばしたけど………………っと、噂をすれば」

 

第1位様の視線の先にはさっきと違ってボロボロな第2位の姿があった。ほんとに片腕がな…………あ、再生した。

 

「……………不意討ちとは卑怯だな。正々堂々と戦うことすらできないのか?」

 

「卑怯もラッキョウもあるかっての。真っ正面から殴りに行ったら君が気付くのが遅いだけだったと思うんですけど(煽り)」

 

「…………まぁ良い。しかし、どうやってあの場を潜り抜けた?奴らは俺には及ばなくとも数字持ちだ。数字持ち99人に対してお前が勝つ見込みはないと思っていたのだが?」

 

確かに……………普通に考えて99対1はどう考えても無理なのでは?

 

「まー、簡単に話すとね…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は、ははははははは!!勝ったぞ!!我らの勝利だ!!」

 

「何とも呆気ない最期だったな!!」

 

「所詮はその程度だっ「確かに所詮はその程度だったね、君らの方が(・・・・・)」なっ!?」

 

先の総攻撃で死んだ筈の第1位がいた。傷1つついておらず、余裕でピンピンしていた。そしてその右手には「剣」と言うには独特な形をしており、赤い光を放つ文様を備えた三つの円筒が連なるランスのような形状をしていた。

 

「まぁ、某先生みたいに無限(・・)を現実に持ってきちゃったから、無傷なのもしょうがないね。………………第2位がいないな」

 

そして第2位がいないのに数秒で気が付いた。

 

「カノンの方に行ったか。すぐに探知するとは、腐っても数字持ちのNO2って訳か。じゃ、僕も行くか」

 

そう呟くと、3つの円筒が連なるランスの部分が回転を始め、周囲の風を魔力を伴う超高速回転で巻き込んで異常なまでに圧縮していく。

 

数字持ち達は本能で悟った。あの技を使わせてはならない、と。使われれば全て終わる、と。

 

「や、殺れ!奴を今すぐ」

 

天地乖離す開闢の星(お前らの台詞に割く尺はないぞ)

 

そして無慈悲に放出され真空波の渦が解き放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ、そう言う訳で全員ノックアウトして、ついでにあの異空間破壊してここに来たって感じ☆」

 

「さらっと言ってますけどとんでもないことしてますよ!?」

 

異空間を破壊するにはとんでもない威力の術を行使しなくては不可能な筈。それを難なくやってしまうなんて……………やっぱり凄い、この人。

 

「あぁ、そうだ。ついでに君の部下は回収してあげたよ。ほれ」

 

第2位の隣に魔方陣が出現したと思えば、気絶してる数字持ち×99が出てきた。

 

「………やれやれ、使えない奴等だ。たった1人相手に全員返り討ちとはな」

 

うわぁ……………こいつ、最低だ。自分の部下に対してそんなことを言うなんて。クソ上司だ。

 

「だがまぁ……………ある意味好都合かも知れないな。何せ、この手で貴様を殺せるのだからなぁ!」

 

「へぇ。99人がかりでも殺せなかったのに?」

 

「俺をそいつらと一緒にするな!!お前にも俺の最強の固有能力を見せてやろう。まぁ、お前はどんな能力か分からずに死ぬがなぁ!!」

 

「!!第1位様、あいつの固有はじ」

 

固有能力(時間停止)、発動!」

 

遅かった。第1位様に伝えるよりも早く第2位は固有能力を発動し─────────時は止まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===============

 

停まった時の中で動けるのは第2位、ただ1人。ゆっくりと第1位に近づいていく。

 

「クハハハッ…………いかに強いと言えど、この時間停止能力の前では無力に等しいんだよ。何故なら、この停まった時の中で動けるのは俺だけなんだからなぁ…………!」

 

そして第1位の目の前に立つ。

 

「本来なら致命傷を負わせた後に能力を解除して苦しむ所を楽しみたい所だが……………奴の固有が分からない以上、解除するのは愚策。ここで殺すとしよう」

 

第2位は何もないところから召喚した剣を構える。狙うは第1位の首だ。

 

「じゃあな、第1位ィ!!安心しろ、秘書官もすぐに殺してやるからなぁ!!」

 

そして、剣を振り下ろした───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────が。

 

「悪いが、それはノーサンキューだね」

 

「んなっ!?」

 

首をはね飛ばす筈だった剣は一瞬で粉々に砕かれた。動けない筈の第1位の手によって。

 

「ほい、ギャリック砲」

 

「グホァ!?」

 

某ツンデレ王子の技が至近距離で直撃。第2位は木に叩きつけられ、地面に倒れる。時間停止も解除してしまった。

 

「時間停………………って、えぇ!?第2位が倒れてるし!何で!?」

 

「最強なんて言うから、どーせ時間停止とかそんな所だろうとは思ったよ。想定通りで草」

 

「(余裕過ぎて草生やしてる…………)」

 

カノンが引き気味な様子で心の中で呟いている中、地に伏していた第2位が苦悶に満ちた表情を浮かべながら立ち上がる。

 

「どう言うことだ……………何故止まった時の中で動ける!?あり得ない筈だ!!」

 

「残念ながら、時の止まった世界を認識出来るんでね。あと、良い事を教えてあげよう。時を止めれるのはお前だけの専売特許じゃない────『ザ・ワールド』」

 

その言葉を証明するかのように、第2位の背後に第1位は一瞬で移動する。

 

「なっ!?」

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄アッ!」

 

今度は黄金のスタンド(ザ・ワールド)が無駄無駄無駄無駄ラッシュをおみまい。第2位は盛大に吹っ飛んで木に叩きつけられた。

 

「で、どうする?君の最強(笑)の能力も通用しない。素直に降伏するのが身の為だと思うけど」

 

「…………ッ……………………どんな固有かは知らんが、時間操作が通用しなくともお前など殺してやる!!いでよ、聖剣ノヴァ!」

 

第2位の声に応じて、聖剣ノヴァと呼ばれた剣が現れる。何とも神々しい剣だった。

 

「あれは、聖剣ノヴァ!?確か太古の戦争で製造された神殺しの兵器で、強大な力を持つあまり封印されていると聞いていましたが、まさか第2位が所有していたなんて………………!」

 

「聖剣ノヴァねぇ。大したことなさそうだけど……………………………ま、聖剣には聖剣をって言うし(?)、こちらも聖剣で相手をしよう」

 

そして、地面を突き破って禍々しい力を感じさせる黒い影が現れる。その黒い影は第1位を覆い、白を基調としていた彼の服を黒く染める。第1位は静かに手を挙げ、現れた黒き聖剣(エクスカリバー)を握る。剣を軽く振ると、それだけで放たれた魔力が地面を抉っていた。

 

「………………何とも禍々しい姿だな。それが正義の味方の姿か?」

 

「別に正義の味方を宣言した覚えはないね。さぁ、第2位。ケリをつけよう。今までのつけを支払う時だ。カノンは、そこで動かないでね。動いたら多分死ぬからね」

 

「は、はいっ!」

 

ノヴァに光の魔力が。エクスカリバーに闇の魔力が宿る。

 

「シッ!」

 

「ハァァァァァァ!」

 

そして次の瞬間、相反する聖剣がぶつかり合うのだった。

 

to be continued…………………




フラッシュの映画って面白いのかな?面白いなら、暇だったら見に行ってみるかぁ……………………。


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#7 創造(creation)

次で神様編は終わりです。次は本編か星奈さんの話かは決まり次第お伝えします。




光を呑み込む闇の極光が森を無慈悲に抉る。第2位は迫り来る極光を必死に避けていた。

 

「(クソッ、あの聖剣何て威力だよ!?ノヴァの出力を軽々と超えているぞ!?)」

 

序盤は互角に渡り合っている─────そう思っていたのだが、剣の刃を魔力で覆い、射程距離を大幅に拡張して振るう───────まるで、剣からビームを飛ばすかのような第1位の戦い方に第2位は早くも劣性に追い込まれていた。

 

「(…………まぁ、良い。あれだけの威力の攻撃を何度も繰り出せば神聖力は多く消耗する。神聖力が無くなるのも時間の問題だろう。ならば、あの特性を持つノヴァを持つこちらが有利…………!)」

 

内心ほくそ笑みながら、第2位は登った崖から第1位を見下ろす。湖に浮いている当の本人も第2位を見上げるが、その表情に焦りや疲れは見られない。

 

「(悟られまいとしてるのが分かるぞ、第1位……………しかし、逃げてばかりいるのも気に食わんな………)さぁ、次はこちらから行くぞ!」

 

そして第2位は崖から一気に第1位へ突っ込む。そのまま第1位に向けてノヴァを振るうが、エクスカリバーの突きが剣の動きを止めた。

 

「吹っ飛べ」

 

第1位がそう呟くと同時に剣から放出された魔力の勢いで第2位は高速回転しながら吹き飛ぶ。が、途中で体勢を整えて着地する。

 

「チッ、舐めた真似を………………なに!?」

 

自分の腕や足に金の鎖が巻き付いている事に気が付く。引きちぎったり、ノヴァで斬り離そうとするがとてつもない強度で出来ない。

 

「対神兵器『天の鎖』。神性が高ければ高いほど強度が増す鎖。まさに、神の名を司る僕達に取っての天敵だ」

 

そう解説する第1位の方へ第2位は天の鎖にグンと引っ張られ、エクスカリバーによる一閃がクリーンヒット。第2位の胴体が真っ二つに割れて地に伏す。

 

これにて勝敗は決した……………………と、普通ならそう思うだろう。

 

 

「…………………へぇ」

 

第1位の瞳に映るのは、まるで逆再生されるかのように第2位の傷が再生されていく光景だった。

 

「剣を目の前にしても君は平然としていた。何かあると直感したが……………………再生能力か」

 

「聖剣ノヴァは致命傷を負ったとしても、10回まで代替生命で蘇生させる特性を持つ。つまり、俺をあと9回殺さないと俺は殺せないと言う訳だ。そして」

 

第2位は第1位にビシッと指を指す。

 

「お前の固有能力、長期戦には不向きなのだろう?」

 

「……………………」

 

「お前の固有能力は出力は凄まじいが、神聖力の消耗が激しいのだろう。短期決戦でケリを付けたかっただろうが………………残念だったなぁ?」

 

「……………………」

 

「お前のこれまでの攻撃から推定するに、お前の神聖力はもう底が見えている。つまり、もう勝負は付いていると言う訳だ」

 

完全に勝利を確信した第2位。ノヴァを手に、微動だにしない第1位へと近寄る。

 

「ここまで俺を追い込んでくれた褒美だ。最後に何か言い残すことはあるか?」

 

「……………………じゃあ、1つだけ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あまり憶測で物事を語らない方が良いよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何を言っ………………ぬおっ!?」

 

次の瞬間、第1位から放たれた闇の魔力の勢いで第2位は紙切れのように吹き飛ばされる。

 

「ば、馬鹿な!!奴にあれだけの力が残っている筈がない!!だと言うのに、何だあの出力は!?」

 

第1位を覆うようにそびえ立つ、禍々しい魔力の柱を見ながら第2位は理解不能とでも言いたげな表情で叫ぶ。そんな第2位をニヤリと笑いながら第1位は魔力の放出を止めると口を開く。

 

「いつ、誰が、どこで僕の固有能力が短期戦向きだなんて言ったよ?憶測も大概にすることだ。じゃなきゃ君──────死ぬよ?

 

「ッ……………なっ、何なんだ貴様は!?天の矛を破壊したり、99人の数字持ちを1人で圧倒したり……………お前の固有能力は何なんだよ!?」

 

冷静さをかなぐり捨てた様子の第2位。そんな彼とは対称的に冷静な第1位はその質問にあっさりと答えた。

 

「僕の固有能力は創造(Creation)。現象、武器、概念、物、空想の産物──────ありとあらゆるものを創り出す能力さ」

 

「なっ……………!?」

 

「君の言ってた通り、確かにこの固有能力は弱点として神聖力の燃費が悪い。けど、僕は固有能力を応用して、体内で1の魔力で100の魔力を創り出す永久機関的な仕組みを確立している…………つまり、僕の神聖力は無限って事さ」

 

「ふっ、ふざけんな!そんな能力何でもありじゃねぇか!?」

 

「そう言われても、別に僕が選んだわけじゃないんだが」

 

「そもそも、俺の固有能力を上回るような能力は与えられないようにしている!!お前がそんな能力を持つなんてあり得ないんだよ!!」

 

自分から小細工を暴露していく第2位。第1位は呆れ気味の様子で言う。

 

「だからそんなの知らないって。まぁ、後で暇な時にそれも調べておいてあげるよ。……………で、どうする?もう既に君の負けは確定してるみたいなものだと思うんだけど。さっさと投降するのが賢い選択じゃないの?」

 

この時点で勝敗は既に決していた。第1位と第2位の間には絶望的なまでの差が存在していた。最強だと思っていた自身の固有能力も通用せず、もはや勝つすべなど存在しない。自身と第1位の間に存在する圧倒的な隔たりに、そして今まで勝ち組であった自身の敗北と言う事実に第2位は完全に心が折れ、深く絶望していた。

 

「あああ……………ああああああああああああああああああ ああああああああああ??ああああああああああああああああああああああああ        あああああああああああああああああああああああああ あああああああああああああああああああああああ  ああああああああああああああああああああああああああああ あああああああああああああああああああああああ ああああああああああああああああああああああああ あああ あああああああああああああ あああああああああああああああああああ ああああああ あああああああああ『あああ あ あああ』」ああああああああ※?ああああ???あ。あ。あ。ああああああああああああ!?」

 

深い絶望によって狂乱しながらも、第2位は空へと逃げ去る。

 

「はぁ………………」

 

めんどくさそうにため息をつく第1位。そして、緑色の粒子を放出する2枚ずつ2対からなる純白の4枚の翼を背中から展開すると第2位を追って飛び出す。出力差によって、案外すぐに追いつくと空中で取っ組み合い、回転しながら死闘を繰り広げる。

 

「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」

 

「おー、怖い怖い」

 

温度差を感じさせるやり取りを繰り広げる2人は、第2位が出現させたたポータルにそのまま突入。ポータルを抜けた先は神界だった。しかも市街地だった。

 

「うおっと!」

 

危うく建物にぶつかりそうになるが、2人は取っ組み合うのをやめてギリギリで避ける。

 

「ああああああああああああああああああああああああ!!」

 

「(ここで戦うと他の神界人達に被害が及ぶな…………取り合えずここから離れるか………)」

 

ノヴァをエクスカリバーで受け止めながら第1位はそう考えると、魔力を放出させて第2位の足を地面から浮かせると、エクスカリバーからビームの照射を浴びせる。第2位は空へと高く打ち上げられ、昇りきった所で急降下。そのまま第1位の城を思わせる職場の建物に叩きつけられた。

 

「これであと8個」

 

そう呟くと同時に第2位は再起動。 そのまま襲い掛かるかと思いきや、建物をノヴァで一閃。建物の上半分が崩れ落ち、第1位は瓦礫に埋もれる。

 

 

「そんな攻撃なんて効かないんだよなー(無敵)」

 

翼を展開させて瓦礫から飛び出すと、第2位の上を取る。そして魔力を纏ったエクスカリバーによる斬撃をお見舞いし、大きな爆発が起こる。

 

第1位が着地すると、ワンテンポ遅れて四肢を失った黒い固まりが落ちてくる。

 

「あと7つ」

 

「ぬがああああああああああああ!」

 

叫び声と伴に四肢から新たな手足が生え、ダメージを再生して蘇生する第2位。ちょっとしたホラーだなー、なんて呑気な事を第1位が考えている内に第2位は空へと飛び上がる。そして念力で瓦礫の中から支柱を10個程浮かび上がらせると、そのまま投擲する。

 

「ほんとに正気をなくしてるな……………そんな攻撃が通用するわけないのに」

 

それを第1位はエクスカリバーで軽々と捌いていく。今度は残っていた建物の一部を丸ごと持ち上げて投擲してくるが、魔力を纏わせたエクスカリバーの一振で木っ端微塵になる。

 

「さぁ、僕のターンだ」

 

そう呟くと第1位は第2位に突撃を慣行。ノヴァに防がれるが、翼の推力も相まってそのまま半壊した建物に突っ込む。数秒後には建物のあちこちで爆発が起こり、戦闘の苛烈さが伺える。2人にとっては一応勤務先の建物なのだが、2人とも容赦なく攻撃を続ける。建物にとってはたまったものではない。残った部分の崩壊も目に見えてきた所で、2人は取っ組み合ったまま建物の壁を突き破って上階から飛び出す。

 

「あああああああああああ「いちいちうるさいな、夜なんだから静かにしろ!」ガッ!?」

 

怒るところはそこなのだろうかと言うツッコミははておき、至近距離で放たれた攻撃をスレスレで回避しつつ、第1位は背負い投げの要領で地面に叩きつける。そのまま狂戦士のごとく何度も何度も地面に叩きつけた後に、蹴り飛ばす。立ち上がろうとする第2位の元に丸い球体が5つ転がる。

 

「はい、どーん」

 

丸い球体─────────某蜘蛛男の宿敵の『パンプキンボム』は合図とともに爆発を起こす。爆心地から黒い煙が漂う中、第1位はエクスカリバーを両手で構える。

 

「あと6個。一気に決めさせてもらうか」

 

そう呟くと同時に魔力が剣に収束していき、剣から放たれた禍々しい光が空へと突き立つ。

 

「第1位ィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!」

 

黒煙の中から蘇生を果たした第2位がノヴァを片手に大技の発動を阻止しようと襲い掛かる。ノヴァの刃が第1位の首元に襲い掛かるが、当たる寸前でエクスカリバーから片手を放すと手の甲で受け止める。いつの間にか固まり黒い籠手が嵌められており、第2位の決死の攻撃に対するダメージは一切なかった。

 

「『だからうっさいって言ってんだろサマーソルトキック』」

 

「ゴハァ!?」

 

無茶苦茶なネーミングのサマーソルトキックが顎にヒット。第2位の体勢が崩れたところで再び両手で構え、準備は整った。

 

「『約束された勝利の剣(エクス……カリバァァァァッ!)』」

 

宝具の真名を口にしながら、剣を振り下ろす。禍々しい光の断層による究極の斬撃として放たれる。光を呑む闇の極光は第2位を飲み込み、射線上にあった建物の残骸も全て呑み込み、建物の背後にあった森を地面ごと抉る。

 

そして次の瞬間、衝撃波と伴に禍々しい闇の極光が空へと放たれ、神界を照らした。まるで、戦いの終わりを告げるかのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第1位はゆっくりと歩を進める。その手にはもうエクスカリバーはない。必要がない。彼が歩を進める度に、背後の森がどんどん再生していく。アフターケアも万全と言うわけだ。数分歩いたところで彼は足を止める。視線の先には服はボロボロで、再生されない四肢から血が流れ続ける第2位の姿が。その側には聖剣ノヴァが。しかし、ダメージに耐えきれなくなったのか、もしくは代替命を全て使い果たしたからか、朽ちて消えていった。

 

「ぅ……………ぁ………………」

 

「だからあの時素直に降伏しろと言ったんだ」

 

そう吐き捨てるように文句を垂れながら左手をかざして第2位の出血を魔法で止める第1位。空いている右手をさっと振るとポータルが開き、カノンとその他の数字持ち達(まだ気絶中)が現れる。

 

「………………うんっ!?第1位様!?」

 

「やぁ、カノン。お迎えは済んだよ」

 

「あ、何か景色が違うと思ったらモーリーから神界に帰ってきたんですね」

 

「そゆこと。…………モーリー?」

 

「暇だったので、あの星に適当に名前つけてました。森が広すぎるのでモーリーです!」

 

「…………そう」

 

ネーミングセンスねぇ………と、呟きそうになるのを何とか堪える第1位。ちなみに、あの惑星は誰もいない無名だったので後にガチで『モーリー』と名付けられるのだがそれはさておき。

 

「…………勝ったんですね」

 

「まーね。だが、まだ全部は終わってない。そうだろう、第2位?」

 

四肢を失い、神聖力も残っていないにも関わらず、地面を這ってても逃げようとしている彼を第1位が浮かび上がらせて自分達の目の前に持ってくる。

 

「…………あなた達の負けです。今までのツケが回って帰ってきたんです。ちゃんと罪を償ってください」

 

「……秘書官風情が…………この俺に偉そうな口を……………!」

 

この期に及んで偉そうな態度を取る第2位。そう簡単に変わらないと言うことだろう。

 

「そもそも、俺は間違っていない!!間違っているのはお前らの方だ!!俺達の方が人間よりも格上だ!!人間を格下に見て何が悪い!!」

 

「…………憐れな男だ。別に人間をどう思うかは勝手だ。だが、問題なのは君は記憶や認識を書き換えてまで他人に自分の考えを否応なく押し付けた事だ。僕からすれば、君が見下してる人間よりもそんな愚かな行為をする君の方が格下だよ」

 

「ッ……………!!」

 

見下すような、否。憐れむような表情を浮かべながら第1位は正論で一蹴し、他の数字持ち達も超能力で持ち上げると、ポータルを開く。

 

「よし、カノン。こいつら全員牢屋にぶち込むぞ。僕が作った特注の檻でね。神聖術も固有も一切使えない」

 

「おー、それなら完璧ですね!じゃあ、さっさと放り投げ」

 

「…………おい待て」

 

カノンの言葉を遮ったのは第2位だった。

 

「……………何だい?言いたいことがあるなら後にしてくれない?」

 

「安心しろ、すぐ終わる。…………………どうやら、俺達はお前を侮っていたらしい。俺たちの負けのようだな……………………」

 

今更何を、とカノンが問う前にだが、と第2位は続ける。その目は何かを決意したようにカノンには見えた。そして、その予感は的中した。

 

「だが…………だがな…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………檻に入る位ならこうしてやらぁ!!」

 

「「!」」

 

次の瞬間、第2位だけではなく気絶している数字持ち達が一斉に赤く発光する。

 

「(…………自爆か!)『ザ・ワールド(時間停止)!』」

 

時が止まる。これで自爆も止まる。この隙に自爆を阻止すれば──────────

 

「!止まってない!?」

 

しかし、実際には自爆は止まってなかった。さらに赤く発光し続ける。止まった時の中で第2位は口を開く。

 

「無駄だ。ありとあらゆる干渉を無効化し、必ず爆発する………………それがこの特殊な神聖術だ。お前に自爆を止める術はない!」

 

「……………………チッ」

 

自爆を止められない事を悟った第1位はすぐさま大きなポータルを開く。ポータルの先には何もない暗闇が広がっていた。その中に一気に第2位らを放り込む。

 

「これで終わったと思うなよ、第1位。既に種は蒔き終えてい」

 

言い終わるよりも先に第2位の身体は爆発。そして他の数字持ちらも爆発し、99人分の超高熱エネルギーがポータルの中から神界に迫りくるが、寸前で第1位がポータルを閉じた事で事なきを得た。

 

そして時は動き出す。

 

「!?い、一体何が………あれ、第2位らがいない……?」

 

「自爆したよ、彼らは」

 

「じ、自爆!?」

 

「いかなる干渉も効かない自爆らしい。時間を止めても自爆は止まらなかった。時間さえあれば他の手段で何とか自爆を止められたんだが、猶予がなかったから仕方なく何もない空間に奴等を放り込んだ」

 

「そうですか。…………何でそう簡単に命を捨てられるんでしょうかね」

 

「さぁね。理由の推測は出来るが、したくもない。と言うか、知りたくもない」

 

第1位は強い口調で拒絶する。命を簡単に捨てる行為が彼の琴線に触れたようだった。

 

「………………ああ、それよりもだ。すまなかった、カノン。本当は彼等に罪を償って貰いたかっただろうに。彼等は君のお爺さんを殺したんだから」

 

「いえ、そんな!第1位様が謝る事じゃないですよ!……………確かに罪を償って貰いたかった気持ちはあります。でも、第1位様は彼等によって歪められた神界を本来あるべき形へと戻してくれました。それで充分ですよ。私も、そしておじいちゃん達もそう思ってくれてますよ」

 

「………………そうかい。そう言ってくれるだけで、少しは気が楽になるね」

 

第1位はそう言って笑みを浮かべる。カノンも笑みを浮かべると、グーッと背伸びをする。

 

「まぁ、取り敢えずもう深夜ですし休みましょう!もう色々とあって眠いですしね!」

 

「そうだね。取り敢えず寝よ(この後膨大な後始末をしなきゃいけない事を考えると憂鬱だし、少しだけでも現実逃避しよ)」

 

エクスカリバーをぶっぱなしたり、職場をぶっ壊したり、第2位らの悪行等々の公表などの大量の後始末が彼等を待っている。現実逃避したくなるのも無理はない。

 

「そう言えば、カノンは地球での生活はどうだった?」

 

「そりゃあもう楽しかったですよ!……………ただ、1つ心残りがありまして。私、お弁当を食べようとする直前に拐われたのでお弁当を一口も食べれなかったんですよ~」

 

「へぇ、そいつは災難だったね」

 

「ほんとですよ~。10万円位する高級弁当だったんで、ほんとに心残り…………………で…………」

 

途中で口を滑らせた事に気付いたがもう遅し。カノンは恐る恐る第1位の方を見ると、当の本人は笑顔を浮かべていた。

 

「カノン」

 

「はっ、はい……………」

 

豪遊を寛大に許してくれる事を心の底から願うカノンに対して、第1位は口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「始末書に加えて来月は減給なんでよろしくね☆」

 

「嫌だアァァァァァァァァァ─────!」

 

無慈悲な決定に対して、カノンの叫び声が神界に響き渡るのだった。

 

to be continued………




第1位の固有能力:創造(Creation)

現象、武器、概念、物、空想の産物など、ありとあらゆるものを創り出す能力。もはやただのチート能力。弱点として神聖力の消耗が激しい。だが、第1位は固有能力を応用して、体内で1の神聖力で100の神聖力を創り出す永久機関的な仕組みを確立させて、消耗の激しさをカバーしている。これにより、長期戦にも余裕で対応できる。ちなみに、第2位が自分よりも強い固有能力が与えられないように小細工していたのにとんでもないチート能力が与えられた理由は、元人間が転生して数字持ちの神界人になった場合は、前世でその人物が生前に築き上げた伝説・成果や特徴、趣味などを基に固有能力が決定されるシステムであった為(神様編第1話の後書きの伏線(?)回収)。今まで他種族が数字持ちになる事はなかった為、誰もいじらずそのまま忘れ去られる程に放置されていた結果、今回第1位の生前を基に『創造』の能力が与えられる事になった。第2位が存在を忘れてなければ良かったのに、馬鹿だねぇ

ちなみに、魔力とか神聖力とか意味は同じなんですけど、今回あえて魔力表記と神聖力表記の2パターンありますが、これは元ネタの(Fateシリーズのエクスカリバー)の方では魔力で表記されているので、エクスカリバー使っている時は魔力表記で書いているだけです。まぁ細かい事は気にすんな。

ふぅ、にしてもFate/stay nightのセイバールートを今のufotableの技術で見てみたい。やらないかなぁ…………………やってくれないかなぁ……………………。


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#8 そしてプロローグ/アベンジへ

ふぅ、ポンポコリン。

これで神様編終わりです。ちかれた。

次は本編か星奈さんの話になるか分からんけど、どちらにせよその前に一花の幕間の話を挟もうか検討中。内容はまだ決まってないんで、良いのが思い付いたら次は一花の幕間です。思いつかなかったら本編or星奈さんの過去編で。


その後の出来事を簡単に語ろう。

 

第1位によって、第2位等の悪事は全て白日の下に晒された。神界に激震が走ったのは言うまでもない。自分たちの記憶や認識を第2位らによって書き換えられていた衝撃的な事実に皆が最初は戸惑ったが、月日が経つにつれて徐々に受け入れていった。

 

さらに、第1位の調査よって第2位らの親族も加担して富を得ていた事が発覚。相応の罰を受ける事になり、権力や地位を失った事で大幅に弱体化。

 

そして、第1位によって新たに選ばれた第2位(・・・)以外の数字持ち達によって神界は新たなスタートを切る事になったのだった──────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────それから1年。

 

「もうあれから1年ですか…………早いものですねぇ…………」

 

休日の日、カノンは第1位とカフェに来ていた。『今日暇ならお茶でもしない?』と誘われたのである。

 

「神界も本当に大きく変わりましたね~。以前まではカフェなんてありませんでしたし」

 

「そうだね。地球から色んな文化を持ち込んだが、それが神界人によってさらに発展していくのを見るのは中々面白いよ」

 

彼らがいるこのカフェも人間の文化の流入によって生まれた。働いているのは神界人である。文化の流入によって、これ以外にも新たな職業を生んだのである。

「あぁ、そうだ。前から聞きたかった事が2つあるんですけど」

 

「ん?」

 

「何で第1位様は人間としての生を終えた後に神界人、と言うか数字持ちになろうと思ったんですか?」

 

第1位はコーヒーを飲み干すと口を開く。

 

「んー……………………まぁ、理由としては面白そうだったから(・・・・・・・・・)かなー」

 

「え」

 

「だって、世界を管理するとか面白そうじゃん。断ったら二度とできないだろうし」

 

そうあっけらかんと言ってのける第1位に対してカノンは一瞬言葉を失うが、すぐに笑みを零す。

 

「何と言うか、第1位様らしい理由な気がしますね」

 

「それは褒め言葉として受け取っておくよ。で、もう1つは?」

 

「もう1つは大した事じゃないんですが、最近ふと気になりまして…………先代の第1位様って何で辞めたのか知ってますか?」

 

「………………………」

 

「諸事情とは言っていたんですが、詳しい理由が未だに分からなくて。もしかしたら、あの第2位に逆らったりしたのかなー、って」

 

「………………まぁ、本人はもう神界にいないから別に良いか」

 

少し考える素振りを見せていた第1位だが、そう呟くと語り始める。

 

「辞めた理由は知ってるよ。君の言う通り。第2位と一悶着あったのさ」

 

「!…………やっぱりそうでしたか。となると、彼も私達みたいな事をしようとして追放された。そんな所でしょうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不倫

 

「……………は?」

 

「だから、先代第1位がクビになったのは不倫。先代第2位の愛人の1人に手を出したらしいよ」

 

「えぇ……………(困惑)」

 

何ともまぁ下らない理由であった。 前代の数字持ち全員クソじゃん、とカノンは心の中で毒づく。

 

「で、それに不服だった先代第1位は神界に対して一泡吹かせようとしたらしくて。先代第2位らに対抗できそうな奴を第1位に任命して、神界を滅茶苦茶にして貰おうとしたらしい。で、生前とんでもない経歴を持つ僕に対して第1位になることを打診してきたって訳」

 

「えぇ…………(2度目)と言うか、それ言われて第1位様はどうしたんですか?」

 

「内心『マジでくっだらねぇなー』って思いながらも、さっきも言った通り神界人の使命が面白そうだったから承諾したけどね」

 

「なるほど……………でも、何で先代第2位は先代第1位の任命を止めなかったんですかね?数字持ちが持つ拒否権を行使していれば、今頃第1位様はここにはいなかったのに」

 

「さぁね。大方、僕が苦しむ様でも見て酒の肴にでもしようと思ったんだろう。ほら、全員ストライキとかしてたじゃん」

 

「あー、そんなこともありましたねぇ…………ただ、それが結果的に自分達の破滅に繋がったのは皮肉なものですね」

 

『全くだね』とカノンに同意しながら第1位は大きく欠伸をする。

 

「眠そうですけど、大丈夫ですか?何か仕事でも?」

 

「例のシステムの構築をやってた」

 

「あー、例の『転生システム』ですか」

 

半年前、『漫画の世界とかに転生の夢を叶えてやるかなー、面白そうだし』と言う理由で第1位が作り始めたのが『転生システム』である。

 

「確かアニメや漫画などの世界に転生させるんでしたっけ?アニメや漫画などの世界は第1位様が固有能力で作り出したんでしたっけ?」

 

「いいや。例えば、A世界で存在している漫画があるとしよう。A世界ではその漫画はとある作者が産み出した読み物だ。だが、世界と言うのは無限に存在する。めっちゃ頑張って探せばあるんだよ──────漫画の内容が現実となっている世界が」

 

「A世界では漫画として存在しているのが、別の世界ではその漫画の世界が現実として存在している世界があると……………叶わぬ夢と思ってる人にとっては最高ですね」

 

喜べ諸君。我らが第1位が転生の夢を叶えてくれるぞ

 

「転生する対象の人物は第1位様が選ぶようになるんですか?」

 

「それも僕か作ったシステムが全部自動で選定してくれる作りにする予定。まぁ、完成はまだ先だけどね」

 

自動化はいい文明、と呟きながら第1位はまた欠伸をする。

 

「眠そうですし、今日は休んだ方が良いのでは?」

 

「そうさせて貰うよ。けど、その前にカノンに紹介しておきたい人物がいてね。今日は彼女の紹介も兼ねて君を呼んだのさ。……………あ、来たよ」

 

第1位の視線の先には銀髪の美少女と称すべき人物がいた。その人物は2人の前に来ると頭を下げる。

 

「はじめまして、カノン。私はリリィ。新たに第2位(・・・)の数字持ちです。よろしくね」

 

「あー、どもども………………ふぁっ!?第2位、ついに決まったんですか!」

 

「ああ、漸くね」

第2位に相応しい人物の選定はかなり難航していた。第1位が求める第2位のハードルが高かったからだ。曰く、『何かあって僕が死んだりした場合に、僕の次に偉い第2位にこの世界を託すことになる。託すには相当優れた神界人じゃないとね』との事。

 

「あ、私は第1位様の秘書官を務めてるカノンです!気軽に接してくれて構わないので、よろしくお願いしますね!」

 

「よろしくね、カノン。そして、第1位様も」

 

「うん。リリィは頭脳明晰かつ魔法…………じゃなくて神聖術の才能が神界人の中でもトップクラスだ。最強の術師と言っても過言ではない。下手すれば僕よりも強かったりしてね?」

 

「いやいや、あんなチートの塊みたいな固有能力を持っておいて何を言ってるんですか。第1位様を相手に勝てる人なんているとは思えないですけど?」

 

「……………………なら、私がその勝てる1人になりましょう」

 

「え。……………………え?」

 

とんでもない発言にカノンの語彙力は喪失した。

 

「私は何事においても1番を目指したい性分ですので、いずれは第1位の座に就きたいと思っています。その為にもあなたを超える強さや頭脳がなくてはダメでしょうから。………………『その時』が来たら、私はあなたに力でも頭脳でも勝ちますので、今のうちから覚悟しておいてくださいね?」

 

「…………………へぇ」

 

それを聞いた第1位は怒る訳でもなく、ただ面白そうに笑う。

 

「生憎だが、僕も負ける気はないよ。……………………じゃあ、『その時』が来るのを楽しみにしてるよ」

 

「ええ、楽しみにしておいて下さい」

 

「(………私だけ蚊帳の外感が半端ないような……気のせい……?)」

 

火花を散らす第1位とリリィ。その間にいるカノンは蚊帳の外を感じているのだった。

 

こうして、新たな第2位のリリィが加わって神界の発展と世界の管理は行われていく。新たな神界の物語がここから始まるのである──────────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

約2年後。

 

「………………おーい、1人でぶつぶつ喋ってるそこの君ー、そろそろ良いかーい?」

 

「ん?」

 

そして、プロローグへと繋がり──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……………………リリィ。第1位を殺すのだ。悪の権化である第1位を殺し、神界を救い……………父の無念を晴らすのだ』

 

「はい。第1位は必ず私が殺してみせます」

 

────────アべンジ(復讐)と繋がる。

 

to be continued…………




《新キャラ紹介》

リリィ…………………第1位によって新たに第2位に任命された落ち着きのある女性。頭脳明晰かつ神聖術の才能が神界人の中でもトップクラス。第1位は最強の術師と評しており、神聖術に限っては自分よりも強いかもしれないと思っている。向上心が強く、いずれは頭脳面でも戦闘面でも第1位に勝つことを目標としている。

しかし、彼女は数字持ちであると同時に『()の無念』を晴らす為にも、第1位の命を狙うアヴェンジャー(復讐者)でもある。

彼女の存在が本編にもどのように影響するのか。そして、彼女の復讐の結末は如何に────────。


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星の誕生
エピソードⅠ Anti-God Weapon


星奈さんの過去編が漸く全てオワタ。全8話。

この間に漸くですが本編の方を進めていきます。長かった………………。

それではどうぞ。いきなり本編では殆ど語られることがなかった星奈さんの過去が大体全部語られます。



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………」

 

私は劣悪なスラム街で産まれたらしい(・・・)。信用できるものは誰もおらず。親は子供を平気で売り、友も女も平気で裏切る。

 

何も信じれず育った私が子供の頃から信じられた事実。

 

それは『殺せば人は死ぬ』と言う事。

 

故に私はなったのだろう。殺し屋になる道を。

 

それが私の天職だったみたいだ。私が持っていた殺しの才能を上回る才能がなければ誰も逃れられない。結果、私は文字通り無敵だった。

 

数えて千人を殺す頃には、私は『死神』と呼ばれていたそうだ(・・・)

 

────────そして、今。私は国を越えた非公式の研究組織のもとにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                           

 

 

 

                                           言語設定… オート…

                                           

                                           ID入力を確認。

                                           

                                           認証システム… 作動…

                                           

                                           認証中…… 認証中……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                   認証完了。最重要機密事項に関する情報をアンロック。

 

《対神兵器の実用に向けた実験概要に関する報告書》

 

先の戦いにより、第1位が持つ固有能力が強大である事を確認。現勢力では第1位を倒せる確率はほぼ0に近い。そこで、我々は第1位に対抗するべく対神兵器の開発を決定。神界で行えば第1位に察知される可能性が高い為、とある地球にて我々と契約した人間の科学者らが代わりに実験を行っている。第1位に我々の存在が知られる事のないように、我々は指示や知識・技術の提供を行うのみの干渉しか行わないとする。今のところ、第1位がこの実験の存在には気づいていない事が潜入者(・・・)から報告がされている。

 

現在、人間を対神兵器へと転用する実験を続行中。転用が成功すればあらゆる世界に存在する無数の人間が神に対抗しうる兵器となり、強大な戦力となる。現在まで100以上の実験を行ったがどの個体もフェイズ1の段階で機能停止。原因は不明。

 

しかし、111体目の個体(通称:AGW-111)は今のところ機能を停止は見受けられず、フェイズ1は終了。間もなくフェイズ2に突入予定。

 

第2段階の実験では本格的に未知の変化が多いことが予想される為、近い距離で目視する観察役が必要である。既に観察役の手配は科学者の1人によって完了しており、観察者は従順でそこそこ優秀であるとの事。外部に情報を漏洩させる事はないとの報告を受けている為、我々もその観察者を承認した。

 

以上を持って現段階の対神兵器の実用化に向けた実験に関する報告書とする。

 

なお、この報告書は最重要機密事項である為、外部への持ち出しは禁ずる。これを破った者には死の処分が行われる事を肝に銘じておくように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

某国非公式研究所

 

「ウギッ!」

 

ガシャンという音が響く。何事かと思って研究員らが振り向くと、1人の男が頭を押させて蹲っていた。

 

「準備が遅い。俺の世紀の研究を妨げるな」

 

そう吐き捨てて、自身が叩きつけて粉々になったフラスコのガラス片を踏みつけて背を向ける。

 

男の名は桐生誇太郎。バイオ企業の御曹子にし国際研究機関の科学者である。国を超えた非公式研究組織にて実験を行っていた。

 

そんな桐生はガラス越しに下の階を見下ろす。そこには拘束された少女が多数の装置に繋がれて苦悶の表情を浮かべていた。

 

「悪く思うなよ、モルモット。お前が苦しめば、俺はこの世の誰よりも天才となるのだからなぁ……………………!」

 

そう呟く桐生の目はまさに狂気に染まっていた。

 

「し、主任。監視役の主任の婚約者が到着したとの報告がありましたが……………………」

 

恐る恐ると言った様子で桐生の部下が報告するが、桐生は興味なさそうに口を開く。

 

「間もなく今日の分の実験は終了となる。あいつをさっさと監視部屋に入れておけ。モルモットも部屋に戻す。念のため口止めと、外部に連絡が取れる電子機器の類を全て回収するのを忘れるなよ」

 

「は、はい」

 

「それと、だ。1つ訂正しておくがあいつは婚約者ではない」

 

「そ、そうなのですか?」

 

「そうだ。あいつは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただの道具に過ぎない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………」

 

拘束台を外された少女は無言で起き上がる。漸く苦痛でしかない人体実験が終わり、自由時間ではあるが少女は特に感情を浮かべずに部屋の壁に寄っ掛かる。一先ず次の実験まで休もうと目を瞑ろうとするが、強化アクリル板の壁で仕切られた向かい側の部屋の扉が開かれる音で視線をそちらに向ける。

 

「失礼しまーす……………えーっと…………………………………あ、取り合えず自己紹介するね。私の名は白水楓。今日からあなたの監視役をする事になったの。まぁ、何というかそのー……………………よろしく?」

 

「……………………」

 

少女は特に何も返さない。アクリル板の壁越しに沈黙だけが流れる、何となく気まずい時間が流れる。

 

「…………………えーっと……………………そ、そうだ!良かったらあなたの名前を教えてくれない?」

 

「……………………」

 

「………………ま、まぁ嫌なら嫌で教えてもらわなくても良「AGW-111」…………………あ、え?今、何て?」

 

思わず聞き返す楓に対して、少女はもう一度名前を告げる。

 

「被験体AGW-111。それが私の名前」

 

「…………………聞き間違えかと思ったけど、そうじゃなかった……………………」

 

この研究所で実験の被験者となっている少女の名はAGW-111。正式にはAnti-God Weapon(対神兵器) NO.111。この正式名称、そしてそれが意味する事を真に理解しているのは桐生ただ1人である。無論、AGW-111は彼女の本当の名前ではない。だが、彼女にはそれしか名乗る名前を持ち合わせていない。

 

「既に聞いているかもしれないけれど、私は殺し屋だったらしい(・・・)

 

「あー、何かそうみたいね……………………でも、らしいって何で他人事のように?」

 

「……………………私にはこれまでの過去の記憶(・・)が全てない。桐生と言う男から私が殺し屋だった事を聞いた。何でも、私の唯一の弟子が裏切って私を崖から突き落とし、その衝撃で記憶を失ったらしい。そして、そんな私をこの研究機関が目を付けて実験台にしているわけ。殺し屋の界隈では幾多の技術を持つ『死神』なんて呼ばれてたらしいけど、その技術自体も忘れていてはただの小娘でしかない」

 

「な、なるほど………………ところで、年はいくつ?」

 

「さぁ。聞いてもないし、特に興味ない」

 

「(…………見た感じ、小学生の低学年くらいだよね?まだ幼いのに、実験台にされてるなんて……………)」

 

楓が複雑そうな表情を浮かべていると、楓は拘束台の上で横になる。

 

「私から話すのはこれくらい。後は勝手にして」

 

「え、あ………………うん」

 

どこか拒絶すら感じるような口調で言うと、暫くして静かな寝息が聞こえてくる。楓は備え付けの椅子に座ると、小さくため息をつく。

 

「……………………桐生さんが何をしてるのか分からないけど、郊外に漏らす事を禁じられてる辺り、絶対やばい感じがするんだよね……………………けど、私にはそれを止める力も権力もない…………はぁ…………何とも歯痒いね………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白水楓。24歳。1年前までは(・・・・・・)、親の製薬会社の出資先の研究所でとある研究を行う医薬品開発者であった。だが今は訳あって桐生の婚約者……………………否、便利な駒と化している。

 

「……………………ふぅ」

 

研究所に来て1ヶ月が経った。

 

紙媒体の論文を読んでいたのを中断する楓。この研究所内では電子機器は全て没収されるので、研究論文を読むには毎度印刷をしなくてはならない。その為の代金がめっちゃ勿体ない。前に桐生に『コピー機とか使えないですかね~……………?』とそれとなく聞いたが一瞬で一蹴されたので、読みたくば代金を払って紙媒体で読むしかないのである。

 

「………………あっ」

 

そんな事を考えていると拘束された星奈が監視部屋に戻ってくる。論文を机に置くと声を掛ける。

 

「お疲れ様。少し休んだらバイタルチェックするから言ってね」

 

そう声を掛けるが特に反応は帰ってこない。出会って1ヶ月。あれこれ話しかけてはいるのだが、未だに反応は薄く、楓は少女との心の壁を感じていた。だが、楓は少しでも仲良くなろうと話しかけるのを止めなかった。

 

「えーっと……………………そ、そう言えば論文をコピーしに行ったらコピー機の紙がなかったんだ~!」

 

「そう」

 

当然反応も薄い。まぁ、ぶっちゃけどうでも良い話題だったのは楓も言ってから自覚したが。

 

「……………………うん、自分でも言っていて何だけどどうでも良すぎたね。たぶん誰でも薄い反応しか返ってこないよね~、あはは……………………」

 

「…………ねぇ」

 

「!……………………なになになに!?」

 

自分から話しかけてくれたのは初めてだったので、食い気味にアクリル板に近寄る楓。そんな楓に少し引きつつも少女は口を開いた。

 

「…………………相変わらずシャツがダサい」

 

「グホッ!?」

 

楓はダメージを喰らっているが、少女の口から飛び出した指摘はまぁ間違ってはいない。彼女が白衣の下に来ているシャツには、ムキムキの手足と羽を生やしたニンジンのキャラが載っており、とんでもなくダサいのである。これが彼女の残念な欠点の1つ。

 

「えー、やっぱダメかぁ……………………そのー、少しでも清涼剤にでもなれば良いかなー、って思ってんだけどなぁ……………………」

 

「……………………」

 

少女は何も言わないが、『それで清涼剤になる訳ないでしょ(辛辣)』的な事を言いたげな目をしている。と、そこへ。

 

「楓!チェックデータを取るのに何分かけている」

 

「あ、桐生さん。すみません、今から取」

 

そう言い終わるよりも前に楓が持っていたタブレットを桐生は奪い取ると、タブレットで頭を殴る。一切の躊躇なく。そのまま楓の頭を強く掴む。

 

「お前の親父がうちの親が経営しているバイオ企業の下請けだから情けでお前を貰ってやっているんだ。恩に報いろ。俺の命令には誠心誠意、全力で従え」

 

そう一方的に言い放つと、タブレットを楓の足元に投げつけると出て行った。

 

「あいたたた……………………じゃあ、チェックデータ取っていくね?」

 

先程まで痛みに表情を歪ませていた楓だが、少女の方を向く時にはもう笑顔を浮かべていた。

 

「………………………」

 

「……………………どうかした?」

 

「………………え?」

 

予想外だったのか、少女は思わず間の抜けた声を出してしまう。

 

「いや、何か怒っているような気がしたから……………………」

 

「っ!?……………………気のせい。やるなら早く初めて」

 

「え、あ……………………う、うん!じゃあ先ずは……………………」

 

「(……………………怒っていた?私が?……………………いや、あり得ない。別に私は彼女の事なんて何とも思っていない……………………筈)」

 

チェックを受けながら少女は心の中でそう呟いているのを楓は知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからまた数日後。

 

「ファッ!?今日はチェック項目がマジで多すぎる!」

 

実験を終えて帰ってきた少女を迎えたのはそんな叫び声であった。

 

「急いで進めないとまた叩かれる……………………あの人、頭ばかり狙ってくるから困った困った」

 

「……………頭を叩かれると何か問題でも?」

 

「ん?あぁ……………………こう見えても私は研究者だから。頭が悪くなるのは困っちゃうからね」

 

「………………研究」

 

少女はいつも楓が何か読んでいる事を思い出した。それは研究に関する何かしらの文章なのだろう。では、何の研究なのか?それを尋ねようとした矢先である。

 

「楓ェ!待たせるなと何で言えば分かるんだ!!」

 

「ヒッ!?すみません、あと3分位あれば終わるんでもう少し待っ」

 

「このノロマが!言ってダメなら体に教えてやる!」

 

そう言うと桐生はタブレットを奪い取り、楓の頭を目掛けて────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やめろ

 

その一言が発せられた瞬間、桐生の手が止まる。その場の空気が冷え切り、部屋を照らす蛍光灯が点滅する。その声の主は少女だった。

 

たった一言だが、それでも尋常ではない殺気が放たれる。楓はあからさまに表情に出してビビる中、当の桐生は内心冷や汗をかきながらも、何とかそれを表情には出さなかった。

 

「(……………………こいつの体内には自爆装置や力を抑制する制御装置が埋め込んである。殺される事は万が一にもないと理性では分かっているのに、一刻も早くここから離れろと本能が告げているみてぇだ……………………くそったれが)………………さっさと終わらせろ」

 

そう一言だけ告げると、桐生は去って行った。

 

「あ、行っちゃった。……………ふっ、勝ったね」

 

「あなたは何もしてないと思うのだけれど」

 

少女はジト目で冷静にツッコミを入れる。

 

「うっ、確かに……………………て言うか、ありがとね。けど、何で助けてくれたの?」

 

「………………別に。うるさいのが面倒だっただけ」

 

「あぁ、なるほどそういう……………………まぁ、理由は何でも助けてくれてありがとね、えーっと…………えーじー……………………何だっけ?」

 

「AGW-111」

 

「あぁ、そうそう!………………けどさー、それだと呼びづらい…………呼びづらくない?と言うか、可愛くないよねー。もっとこう、呼びやすい別の名前とかないの?本名とか」

 

「…………それが分かってたらもう言ってる」

 

それを聞いた楓は『それもそうだよねー』と呟きながら何か考えていたが、すぐに何か閃いた様子を見せる。

 

「………………そうだ!私があなたに名前をつけても良い?」

 

「……………あなたが?」

 

「えーじーなんちゃらだと呼びづらいし、可愛くないじゃん?だから、私があなたの名前を考えても良い?」

 

「……………………」

 

「どう?」

 

少女は暫く黙っていたが、やがて口を開く。

 

「……………………すきにしたら」

 

「え、良いの!?やった~!」

 

「……………けど、服のセンスのダサさからして、名づけのセンスもあるのかどうかも怪しい気はする」

 

「んなっ!?べ、別に服のセンスとネーミングセンスは関係ないでしょ!……………………たぶん、恐らく、メイビー」

 

《s》段々自信がなくなってて草《/s》

 

「うーん、しかし名前………………名前かぁ……………どんなのが良いかなぁ……………」

 

ぶつぶつ呟く楓を尻目に、少女は先程の行動について自問自答していた。

 

「(……………何で私は咄嗟にあの女を助けた?まさか、私が彼女に心を許し始めているとでも言うの?………………いや、そんな筈はない。そんな筈は………………)」

 

to be continued……………




《登場人物》

AGW-111…………………人間を対神兵器へと転用する実験台とされている少女。お察しの通り、後の星奈さん。本人は過去の記憶を全て失っているが、かつては『死神』と呼ばれた凄腕の殺し屋。年齢は不明だが、楓は小学生の低学年くらいと予想している。意外と毒舌。

白水 楓……………………かつては親の製薬会社の出資先の研究所でとある研究を行う医薬品開発者だったが、桐生の親が経営するバイオ企業の傘下に彼女の親の製薬会社が入った事もあって、今は桐生の婚約者(便利な駒)と化している。桐生に従順で外に情報を漏らさず、死んでも構わないモルモットとして監視役に抜擢された。ファッションセンスが救いようがないほど壊滅的だが本人はそんな事はないと思っている。

桐生 誇太郎……………………バイオ企業の御曹子にし国際研究機関の科学者。天才なのは間違いないが、性格は横暴。国を超えた非公式研究組織にて実験を行っている。唯一、神界人との接点を持っており、何かしらの契約を交わしている模様。楓とは婚約者の関係だが、本人は便利な駒としか見ていない。

取り合えず第1話終わり。色々と裏話もあるんですけど、それは然るべき時に話します。どのような経緯で『白水 星奈』と言う人物が誕生するのかを注目しつつ、次の話をお楽しみに。


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エピソードⅡ The girl is human to her.

まぁ、久しぶりに投稿したと思ったら五等分に関係のない話だったらそりゃお気に入り登録者も減りますわな。商売じゃなくて趣味でやってるんで、そこまで気にはしてないけども。

気にしてるのはワイが唯一やってるウマ娘のゲームが最近オワコンみたいな雰囲気になってる事ですかねぇ。まぁ、そうなったのは運営の悪手があったからなんで自業自得と片付けるのは容易いんだけどね。ただ、このままオワタになるのは勿体ないんで頑張ってもらいたいが。

まぁ、勢い戻らなかったら流石に見限るかもしれないんで、皆さんがやってるゲームで面白いのあったら感想で教えてください。




楓が研究所に来てから3ヶ月が経った。

 

「ふぁっきゅー!!」

 

「…………………急に何?」

 

論文を読んでいた楓が急に叫ぶのを、少女はうるさいと言いたげな表情を浮かべながら尋ねる。

 

「もうね!論文論文論文………………………そればっかで飽きた!マジで秋田県!」

 

「…………………………」

 

「………………今のは忘れてね」

 

すべってて草。

 

「………………………あっ、そうだ!ねぇ、このインナーはどう?似合ってる?」

 

少女はちらりと楓のインナーを見る。りんごにムキムキの手足と天使を思わせる羽が生えたキャラが載っていた。

 

「……………相変わらずダサい」

 

「のっぶ!?……………………おかしいなー、結構自信あったんだけど」

 

悲しいかな、彼女はファッションセンスが少し………………いや、大分ずれている。もはや手遅れの領域だ。

 

「何かこう……………もっと良い服は持ってないの?」

 

「生憎、私服は殆どこのブランドの服ばかりなんだよね。……………………そんなにこれダサい?」

 

「ダサい」

 

「即答ぅ…………………そこそこ有名なブランドなんだけどなぁ」

 

そこそこ有名と言うのはセンスがずれた商品を出す事で有名なブランドであるのだが、彼女はそれをよく分かっていない

 

「私がもといた研究所内でも同じことを言われたんだよねー」

 

「………………研究?」

 

少女は前にも彼女が自身が研究者である事を言っていたのを思い出した。何の研究を行っているのかについては、桐生のせいで聞けなかったが。

 

「そう、研究。私は『万能薬』に関する研究を行っているの。」

 

「…………万能薬」

 

楓が研究しているのは万能薬の研究だ。

 

万能薬とは、その語義上は『何にでも効く薬』ではあるが、薬学においてそのような薬の存在には否定的である。病気一般を取ってみても、様々な要因によって発生しており、その中には相反しあう理由で発生しているものも少なくないからだ。

 

だが、楓はその万能薬を生み出す為の研究に取り組んでいた。

 

「この世にないものを生み出そうとしているから大変だよ~。研究所でも色んな事に取り組んでは失敗してばかりの連続だったなぁ」

 

「……完成させられる見込みはあるの?」

 

「うーん………………………分からん!」

 

「………。見込みがないのによく続けられるね」

 

「まー、私の夢だからね」

 

「……………夢?」

 

少女の反復の言葉に楓は頷く。

 

「うん!万能薬で病気に苦しんでいる多くの人達を助ける!それが私の夢!薬学においてそのような薬の存在には否定的なのは分かってる。万能薬なんてものを作るのも超絶難しい事もね。けど、だからこそ、だよ。とても高い壁であるからこそ、やりがいがあるってものだから!」

 

この空間にいるのは2人。記憶がないとは言え、人の命を奪ってきた血塗られた殺し屋(AGW-111)と、多くの人を救う為に邁進する研究者《楓》。少女には楓がまぶしく、羨ましく見えた。

 

「…………………。私はあなたが羨ましい」

 

「へ?何で?」

 

「…………私には、もうそんな夢を持つ事は出来ないから」

 

「!……………それは」

 

バチッ!!

 

楓の言葉を遮るかのように少女の身体に電流が走る。

 

「くっ……………電流……………!」

 

「な、なにが…………!?」

 

『リラックスタイムは終わりだ、モルモット。拘束台に上がれ。実験再開だ』

 

慈悲のかけらもない桐生の声がスピーカーから流れる。安らぎの時間は常には続かない。この研究所にいる限り。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

様々な液体等が機械の手によって少女の背中から注入されていく。その苦痛に表情は歪んでいるのだが、桐生には興味はない。興味あるのは成果のみである。

 

「主任、被験者の肉体が未知の変化を始めています」

 

「それで?」

 

「強大なパワーを秘めています。もし逆らわれたりしたら……………………と思いまして」

 

「もし奴が脱走を試みる場合、奴は楓を人質にとるだろう。あの拘束台は神………………いや、特注だから破壊は出来ないが、独房を仕切るアクリル板なら可能だろうからな。だが、こちらとしてはあの女がどうなるろうと興味ない。言わば、あの女はモルモットの邪心を図る捨て石だ」

 

自身の婚約者を人として見ず、ただの駒としか見なさない桐生に部下は流石に言葉を失った。横暴ではあるが人の心はあると思っていたからだ。

 

「そんなどうでも良い事よりも、実験は順調なのか?」

 

「え、あ……………はい、こちらにあるデータ通りです」

 

「ふむ……………………この調子ならフェイズ3の細胞の株分けや耐久性実験にも入れそうだな。至急手配しろ。俺は少し席を外す」

 

「は、はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桐生は部屋を出ると、エレベーターに乗り込む。階層ボタンで特定の数字を入力すると、エレベーターは横に動き始める。そうして数分後、彼しか知らない隠し部屋の中にいた。中には椅子と机、モニターしかない簡素な部屋である。『Sound only』と表示されている画面に向かって桐生は口を開く。

 

「ジョーカー()、間もなく被検体がフェイズ3の実験段階に移行します。計画もいよいよ折り返し地点かと」

 

『111番目で漸くフェイズ3、か。まさか1年以上も掛かるとはな。お陰でこちらの計画も停滞が進んでいる』

 

「申し訳ありません。これまで試した110体のモルモットでは何故か適合出来なかったものでして。詳細な理由は不明ですが、この個体での実験が成功すればその理由も明確になるかと」

 

『……………………まぁ良い。こちらは目立った動きが出来ない状態だ。だから、わざわざ地球で我々の代わりに行ってもらっているのだ。文句は控えよう。だが、なるべく早く仕上げろ』

 

「はっ」

 

『…………それにしても、お前は何とも思わないのか?この非人道的な実験に加担していると言うのに』

 

その問いに対して桐生は残忍な笑みを浮かべながら答える。

 

「他人が死のうが苦しもうが、知ったことではないですね。どうでも良いの一言に尽きる。俺が興味あるのは、あなた方の代わりにこの実験を進める事に対する報酬となっている『人智を超えた知識』を手にし、地位と栄誉を手にする事のみですから」

 

『地位と名誉の為なら他人が死のうと苦しもうと構わないと言う訳か。まぁ、お前に限らずこの研究所にいるのは殆どお前と同じような奴らばかりだろうがな。クックッ……………………やはり人間は面白いものだな……………!』

 

地位と名誉に拘る桐生にジョーカーは面白いものを見たかのような声色で笑う。

 

『長話が過ぎたな。そろそろ標的の元に潜入捜査させている奴が来る時間だ。では、今後も進捗があり次第報告しろ』

 

「分かりました。それでは。………………クックッ。もうすぐだ。もうすぐ俺は人智を超えた知識を手に入れる。そうすれば、俺がこの世界研究者の中で……………………いや、全人類の頂点に立つ日も近いだろなぁ……………!ハハハハハハッ!!」

 

そう言って桐生は笑った。心の底から愉快そうに笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日の夜

 

「……………………よーし、チェック終わり!はー、疲れた疲れた~」

 

チェックしたデータの送信を終えた楓は首を回してタブレットを机に置く。

 

「…………今日も論文を読むんだ」

 

「まーね。今はこれ位しか出来ないから。いつか研究を再開できる機会が来た時に困らないようにね。……………あぁ、そうだそうだ!ねぇ、今日のインナーはどう?結構可愛いと思うんだけど」

 

「ダサいとしか思わない」

 

「えー。可愛いでしょう、どう見ても」

 

きゅうりにムキムキの手足が生えたキャラのどこが可愛いのか、少なくとも少女は理解に苦しむ。まぁ、客観的に見ての可愛くはないだろうが。

 

「うーん、これもダメかぁ。一体どの服なら可愛いって言ってくれるのかなぁ……………………」

 

「先ずはそのブランドから離れた方が良いと思うのだけれど」

 

少女の言ってる事は正論としか言いようがない。

 

「持ってきた服の中にこのブランド以外の何かあったっけなー…………………逆にどんなのだと可愛いと思う?」

 

「………………研究所で過ごした記憶以外ない私に言われても分からない。ここであなたの着ているダサい服以外のものを見た事がないから」

 

「だ、ダサい……………」

 

「…………それよりも。私につけるとか言ってた名前はどうなったの?」

 

「……………………黙秘権ッ!」

 

「………………はぁ」

 

要はまだ思い付いていないと言う事である。それを聞いた少女はどこか不満そうな表情を浮かべる。

 

「……………そんなに時間が掛かるものなの?名前を考えるのって」

 

「私は子供はいないから、誰かの名前を考えた事なんてなくてね。何かこう、接してる内に良い感じのが思い付くかなー、なんて思ってたんだけど……………………人生はそう上手く行かないものですなぁ、なんて」

 

「……………………まぁ、急ぐ事でもないから別に良いのだけれど」

 

そう区切って少女はただ、と微笑を浮かべて続ける。

 

「あなたの服と同じように名づけのセンスはあるのかだけが不安」

 

「めっちゃストレートに言うね!?流石にお姉さん泣くよ!?」

 

ストレートな物言いにどこか不満そうな表情を見せる楓。そんな彼女を見てからかった張本人は無意識の内に薄く笑う。それを見た楓も笑みを浮かべる。

 

「ふふっ」

 

「……………?」

 

「あぁ、ごめんごめん。会って間もない頃よりも笑ってくれる回数が増えたなー、って」

 

「!…………………そっか。やっぱり、そういう事だったんだ」

 

少女は楓の言葉に何処か納得したかのように見えた。少なくとも楓には。

 

「……………………ねぇ、聞きたいことがあるのだけれど」

 

「おっ、良いよ!何でも答えるから遠慮なくカモン!」

 

「あなたは…………私を……………………ッ!!カハッ!!」

 

「えっ……………………」

 

突然、少女は苦しそうに胸を抑えると吐血する。突然の事に楓も一瞬言葉を失うが、すぐにアクリル板の傍まで駆け寄る。

 

「ど、どうしたの!?大丈夫!?」

 

「ゲホッ、ゲホッ!!」

 

「これはたぶんヤバいやつだ……………そうだ、連絡しないと!」

 

壁に備え付けられている内線電話から桐生らの研究チームへと連絡を取る。

 

「……………………あ、すみません!さっきから彼女が急に血を吐いて苦しみだして!」

 

『こちらでも確認していますが、桐生主任が放置して構わないとの事です』

 

「えっ……………………」

 

『想定内の拒絶反応なので死には至りません。以上です』

 

内線の電話は無慈悲にも切られた。何を言っても無駄だと楓は悟る。彼らは少女をモルモットとしか見ていないのだ。楓はアクリル板の方を振り返る。少女は未だに苦しそうに吐血していた。部屋には血が飛び散っており、アクリル板にも赤い跡が付いている。

 

「……………………………」

 

楓はアクリル板のすぐ傍まで行くと、膝をついて座り、ただ見守る。何も言わずにただ見守る。目と耳を塞ぎ、何も見ないし聞かない事も出来た。目を逸らしたくなるのも当たり前の光景だ。それをしても責められはしないだろう。

 

だが、彼女は目を逸らさず『見る』事を選んだ。そうするべきだと考えたからだ。

 

モルモットではなく彼女(・・)と言う()を見る。それは楓にしか出来ない事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ん……………………んんぅ……………………っ!?」

 

楓はいつの間にか自分が床に伏していた事に気づくと、慌てて体を起こす。

 

「やばっ、何で寝て……………………あっ」

 

「…………………」

 

目の前にはアクリル板越しに近くで自分を見つめる少女の姿があった。

 

「……………そうだ!体の方はもう大丈夫!?」

 

「大丈夫。今は安定したから何ともない」

 

「……良かったぁ………もうどうなるかと思ったよ……」

 

心底安心したように楓は息をつく。そんな楓を見ながら少女は口を開く。

 

「…………………ねぇ」

 

「へ?」

 

「もし、私があのまま死んでたらあなたはどう感じた?」

 

「え…………………き、急にどうしたの?」

 

「いいから答えて」

 

そうせがまれると、楓は考えるまでもなくすぐに答える。

 

「どうって……………………そりゃあ寂しいし、悲しいよ」

 

「…………………何故そう感じるの?」

 

「そりゃあ、私にとってあなたは友達って言うか……………娘みたいに感じてると言うか………………………まだ出会って1年も経ってない仲だし、あなたがどう思ってるかは分からないけど、とにかく私にとってはもう、あなたは大切な()の1人だから、かな」

 

「……………………そっか。それを聞いて漸く確信した」

 

「??」

 

どう言う事、と言いたげな表情の楓に少女は話始める。

 

「私はこの研究所内ではモルモット扱い。私を人間として見れくれる者はいない。だから、私が実験によって苦しもうと、倒れようとも誰も気にも掛けてくれなかった」

 

「……………………」

 

「……………………けど、あなたは違った。私の事を気に掛けてくれた。話し掛けてくれた。名前を考えてくれてる。倒れたら心配してくれた。無事を喜んでくれた。…………………あなたは私の事をモルモットじゃなくて()として見てくれて、接してくれた。それが私にとってはずっと嬉しい事だった。それが漸く分かった。だから以前、私を人として見てくれるあなたを叩こうとしたあいつ(桐生)が許せなかったんだ」

 

少女はそう言い切ると、少し間を置いて楓に尋ねる。

 

「……………私はこの先、実験がうまく行っている限りはどんどん人ならざる存在になっていくと思う。それでも…………………それでも、あなたは私を()として見てくれる?接してくれる?」

 

そう問い掛ける少女は少し不安そうに楓には見えていた。その答えは考えるまでもなく決まっていた。

 

「当たり前だよ。この先どうなろうと、あなたは大切な人。それはずっと変わらないよ、絶対」

 

それを聞いた少女は今まで溜まっていた何かが決壊するかのように、涙が流れ出す。けど、溢れ出すその涙を拭おうともせずにこう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ありがとう、楓」

 

初めて楓の名を呼び、初めて人前で、楓の前で笑った。その笑顔は楓にとって、決して忘れる事のない美しいものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────楓が来てから1年が経過した。

 

「漸く最終フェイズも終わりが見えてきましたね、主任」

 

「そうだな。………………どうも、楓が来てからモルモットの調子が良いような気がするが、お前はどう思う?」

 

「えっと………………………そう、ですね。彼女の存在が実験の順調な進行に多少は貢献しているのではないかと。まぁ、データ上ではその証拠はありませんが」

 

「……………………まぁ、あいつにも少しは使い道があったと言う訳だな」

 

そう言い残して桐生は去る。部下は地雷を踏まなかった事に安堵し、息をつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桐生は独房に近づくことはなくなり、安全な場所で指示を出すだけになった。律儀に命令を聞く楓はもしもの時(・・・・・)の生贄と言う訳である。

 

拘束台も強化された事からも、少女がどんどん人ならぬ存在に変わっていくのも楓は分かっていた。だが、楓は余計な事は何も聞かない。彼女はただ─────────

 

「お疲れ様。少し休んだらバイタルチェックして…………………あとはいつもみたいにお話しよ?星奈(・・)ちゃん?」

 

─────────真っすぐに少女…………………否。星奈を見て、今日も平和に笑う。

 

「うん」

 

そんな彼女につられて星奈も小さく笑みを浮かべる。年相応の可愛らしい笑みだった。そして、視線を彼女の顔から下に落とす。

 

「…………………うん、いつも通り。ダサい」

 

「うっそ、自信ありの新作なんですけど!?」

 

インナーがダサいと言われて少し凹む楓を見て星奈はクスッと笑う。星奈は知った。見てもらえる事が嬉しい事を。そんな彼女はこの時点ではまだ知らない─────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────この幸せな日々が間もなく終わってしまう事を。

 

to be continued……………




うーん、展開がちょっと早すぎるかなー、と思いつつも投稿完了。星奈さん………………じゃなくて、星奈ちゃんが楓と仲良くなっていく過程をもっと丁寧に描写すべきかなー、なんて思いもしたけどこれ以上伸ばしたら本編再開がさらに遠のいて飽きられそうだし、これくらいが丁度良いのかな。過去編よりも本編の方をはよやって欲しい人の方が多そうだし。


ここからは裏話。

星奈ちゃん本人は今回の話で気づくまで無自覚でしたが、星奈ちゃんの楓に対する好感度は初期の前回の出会った初期の頃から割と高めでした。そりゃあ、周りが自身を人間として見ないクズな研究者しかいない中で、自分を人として気に掛けてくれて、話し掛けてくれる奴がいたら好きにもなりますわ。俺でも楓を好きになる、ファッションセンス以外は。

そう言えば声優の和氣あず未さんがご結婚されたみたいですね。おめでとうございます。いやぁ、めでたいめでたい。いいですねぇ、結婚。いつか自分もするのかなぁ、なんて考えたり考えなかったり。

まぁ、そんな訳で本編も執筆途中なんでお楽しみに。


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エピソードⅢ Eternal farewell at the end of the encounter part1

やばー。投稿するの忘れてたし、今回1万文字越えや。なんかキリのいいところまで行こうと書いてたら、いつの間にかこんなんで草。

まぁ良いや、そう言う訳で間もなく折り返し地点。楽しんでもろて、どうぞ。


1年近く経つ頃には、楓と星奈の2人にとって何でも話せる場所になっていた。桐生を含んだ研究員が誰も会話をモニターをしていない時間帯を見つけ、星奈は楓の生い立ちも聞いた。

 

かつては親の製薬会社の出資先の研究所でとある研究を行う医薬品開発者であったが、生家の経営破綻に伴い経営する桐生の一族が経営するバイオ企業に買収された、実質上の政略結婚であり、婚約者であっても自分は召使いであって女ではない事。

 

彼の才能は尊敬しているが、どうしても好きにはなれない事。

 

「……………なるほど。だから、今は論文ばかり読んでると言う事ね」

 

「そうなんだよね~。今は事実上、研究は凍結状態だから実験とかは出来ないの。まぁそれでも、出来る事はあるから今はそれに熱心に取り組むだけ、って頑張ってるけどね」

 

逆境でもめげないのが彼女らしいと星奈は感心する。

 

「ふぅ、ちょっと休憩しよっかな……………………あ、そうだ!星奈ちゃんに見せたいものがあったんだよね!」

 

そう言うと楓は持参していた荷物から複数の写真を取り出すと、アクリル板を背に腰を下ろす。星奈も近くに来て座る。

 

「これは…………」

 

「昨日、私の数少ない友達が送ってくれた星空の写真。綺麗でしょ?私の生まれ故郷の日本で撮ったんだって」

 

楓の言葉に星奈は写真を食い入るように見ながら無言で頷く。相当夢中になっているようだ。

 

「……………そう言えば、楓が与えてくれたこの名前も星が切っ掛けだっけ」

 

「そうそう、この研究所から帰るときに偶々流れ星が見えてね。それでピンと来たんだよね。気に入ってくれて何よりだよ~」

 

「服のセンスとは違ってネーミングセンスは普通で安心した」

 

「前から思っててけど、星奈ちゃんて結構毒舌だね……………」

 

まぁ、星奈の言う通り服のセンスが少しずれているのは否定できないが。

 

「そう言えば、星奈ちゃんは自分の誕生日は分かる?」

 

「………………知らない。殺し屋『死神』はほぼ全ての情報が不明みたい。あと、私は劣悪なスラム街で育ったらしいから仮に私が過去の記憶があったとしても、もしかしたら自分の本名も生まれた日も知らないかもしれない」

 

「……………そっか。ねぇ、だったらさ。来週をあなたの誕生日にしない?」

 

「来週を?何故?」

 

「どうやらお気付きではなさそうだから言うけど、あと3日で私と君が知り合って1年になるんだよね」

 

「………………1年。もう1年も経っていたんだ」

 

星奈は少し感慨深そうに呟く。それに楓もうんうんと頷く。

 

「時の流れってやつは早いもんだよねぇ。……………………でさ、自分の生まれた日が分からないなら、3日後を星奈ちゃんの誕生日にしない?」

 

「……………………」

 

「あなたと出会えて私は良かったと思ってるし、私の話も聞いてくれて感謝してる。だから、あなたに誕生日を贈らせてくれない?」

 

楓の問いに星奈は少し黙っていたが、やがてフッと笑みを漏らす。

 

「………………名前に続いて、また楓から大切なもの(誕生日)を貰えた。ありがとう」

 

「!………………良かった。なら、誕生日プレゼントも買わないとね!何が良いかな~?」

 

「………プレゼントを買うのはあなたの自由だけど……………………恐らく私に渡す事は無理だと思う」

 

「確かにそうかも。けどさ、もしかしたらいつか……………アクリル板越しじゃなくて、あなたに直接触れられる日が来るかも知れないでしょ?そうなった時に、あなたに渡す為に用意しておきたいんだ」

 

楓の言葉に星奈は少し驚いている様子だったが、すぐに薄い笑みを浮かべる。

 

「………そうね。いつかそんな日が来ると良いね」

 

「でしょ?だから、誕生日プレゼント期待しておいてね!」

 

「分かった。……………ただ、あなたが今も着ているようなダサい服はいらないから(辛辣)」

 

「えっ、ダメなの!?前よりもセンスが良くなったし、今なら気に入ってもらえると思って色々と候補を考えてたのに!」

 

センスが良くなったと思っているのは楓だけである。悲しいかな、この研究所にいる全ての人間は楓のファッションセンスが良くなったとは微塵も思っていない。

 

「えー、やっぱダメなのー?こういう服とか絶対気に入ると思うのにー」

 

「誕生日プレゼントがそういうダサい服だったら1週間は話聞かないし、いつか私の手で破り捨てる(マジトーン)」

 

誕生日プレゼントを再検討する羽目になる楓であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2日後

 

「うーん、あれから色々考えたんだけど……………………何を上げたら1番喜ぶんだろうなぁ……………………」

 

お店の多い街通りをブラブラ歩き回る楓。昨日も色々とお店を回ったみたのだが、何かピンと来る物はなかった。

 

「どうしよう、マジでプレゼントにあのダサい服しか思いつかない……………………いや、別にダサくないと思うけどね、私は!」

 

いいえ、マジでダサいです

 

悩める楓だったが、ふととあるお店の前で立ち止まる。そのお店はネックレスのお店だった。何となく楓はお店に入ってみる。

 

「ネックレスねぇ…………私はこいうのあんまり興味ないからどれが良いとかよくわからな……………………あ」

 

楓はとある商品の前で立ち止まる。それは星をモチーフにしたネックレスだった。

 

「わぁ、綺麗………………こういうのに疎い私でも思わず見惚れちゃうほど綺麗……………………これなら、星奈ちゃんも気に入ってくれるでしょ!よし、これにしよ!値段は……………………え」

 

値段は日本円で30万円だった。

 

「…………うぅむ、これ買ったら中々の出費…………ま、いっか。一応そんな多くはないけど貯金はあるし、明日から食費を減らせば致命傷寸前で済むかな?明日から朝はもやしにしよう。まぁ、これで星奈ちゃんが喜んでくれると思えば安い物……………………すみませーん、これくださーい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同日同時刻

 

桐生は隠し部屋でジョーカーに報告をしていた。

 

「以上が被検体から得られたデータです。如何でしょうか?」

 

『……………………』

 

ジョーカーからは何も返ってこない。返って来るのは沈黙のみ。桐生がそのまま黙っていると、3分程経ってようやく声が掛かる。

 

『………………これではっきりしたな』

 

「はっきりしたと、言いますと?」

 

桐生の問い掛けに、ジョーカーはこう吐き捨てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『この研究が時間の無駄だったと言う事だ』

 

そう断言すると、ジョーカーは続ける。

 

『人間を神に対抗しうる兵器へと転用できれば、あらゆる世界に存在している人間を強大かつ膨大な戦力として利用できる。そう考えて人間を対神兵器への転用させる実験を行わせたが……………………完成形でこの程度では到底足りん。この程度では、奴と渡り合う為には同じ個体が最低でも4000億人はいる。奴を殺す為ならもっと必要になるだろう。だが、第1位に気付かれずに4000億人以上を調達するのは不可能だ。奴は確実に察知するだろう。加えて、お前達にこちらの技術を提供したのにも関わらず、対神兵器への転用に1年以上も掛かる始末。これでは遅すぎる」

 

「ですが、まだ」

 

『桐生』

 

桐生の言葉を遮るようにジョーカーが低い声で言う。

 

『我らからすれば低能なお前の意見など求めていない。ただ、言われた通りの事をしていれば良いのだ。そうすれば、お前の欲しがる人智を超えた知識を与えてやる』

 

「…………申し訳ありません。私ごときが出しゃばるような真似を」

 

『桐生。被検体を準備が出来しだい始末しろ。研究データも全て抹消せよ。それが済み次第、貴様が望むものを与えてやる』

 

「……………了解いたしました」

 

そう言うと一方的に通信が打ち切られる。通信が終わった瞬間、桐生は近くにあった椅子を蹴り飛ばす。

 

「クソッたれ!!神サマだか何だか知らないが、この俺を低能と馬鹿にしやがって!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!」

 

桐生は部屋のものに八つ当たりしながら叫ぶ。4分近く叫んだあと、漸く冷静さを取り戻したのか肩で息をしながら呟く。

 

「……………………まぁ良い。あのモルモットを始末して臨むものさえ手に入れば、もう奴の言いなりになどならなくて済む……………………そうすれば、俺は全人類の頂点に立つ事になるからなァ……………!!」

 

そう狂気的な笑みを浮かべなら桐生は部屋を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

「ふんふんふふーん♪」

 

楓は上機嫌な様子で研究所に入って来る。

 

「いやぁ、しかし何とも高い買い物をしてしまったもんだね。ま、別に後悔はしてないけどね~。いやぁ、喜んでくれると良い「いやー、しっかし急に打ち切りとか残念だよなー」…………ん?」

 

研究員同士が話している会話が聞こえた楓は物陰に隠れて話を盗み聞きする。

 

「つーか、何で急に打ち切りになったんだろうな?」

 

「さぁな。どうせ上の事情だろう。あのモルモットが危険すぎるからとかじゃないの?」

 

「(えっ?打ち切りって……………星奈ちゃんの事だよね?どういう事?そう言えば、いつもよりも研究所全体が騒がしいというか………………何かに混乱しているような……………?)」

 

思わず飛び出して聞こうとする楓だが、次の瞬間衝撃的な言葉を耳にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「けどさー、殺処分するくらいなら俺があれ貰いたいんだよなぁー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(……………………え?いま、なんて…………殺、処分……………………?)」

 

楓が呆然とする中、男らは会話を続ける。

 

「何だよ、情でも湧いたのか?」

 

「いや別に?俺ってああいう幼女系がタイプだからさ。俺の発散用の道具として使いたいなー、ってだけだよ」

 

「やめとけやめとけ。お前みたいなロリコンは瞬殺されるのがオチだよ。何せ相手は女の恰好したバケモンなんだからさ」

 

「まぁでも、あと2、3時間後に執行だろ?出来たらチラッと顔だけ見てきて、今日のおかずにさせてもらうわ、ハハハハハッ!」

 

男らが歩き去って行く音を楓は物陰から呆然とした様子で聞いていたが、手に持っていた包装された箱に入っている誕生日プレゼントを床に落とした音でハッと正気に戻り、そのまま走り出す。

 

「早く行かなきゃ……………星奈ちゃんの所に……………………!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………」

 

全てを聞いた星奈は何も言わない。楓もいま彼女が何を考えているのか分からなかった。

 

「私に出来る事なら何でもするよ。だから、望みを捨てずに助かる道を探して行こ?ね?」

 

そう声を掛ける楓だが、当の星奈はどこか達観しているような表情だった。

 

「……………いつか、こうなる気はしていた」

 

「え……………?」

 

「私は夥しい人間を葬った殺し屋。生きていていい訳がない。だから、この結末を迎えるのはむしろ当然の義務」

 

「…………………!」

 

星奈はもう自身だ辿る結末を受け入れてしまっているように楓には見えた。だから、星奈は彼女に笑みを見せる。

 

「……………今までありがとう、楓。辛い事もあったけれど、あなたと過ごせた時間はとても心地よかった」

 

「っ…………………そんな簡単に諦めないでよ!きっと、まだ何とか出来るよ!」

 

自分がいかに無責任な事を言っているかは楓も自覚していた。ただ、それでも言わないという選択肢を取る事は出来なかった。

 

「……………ありがとう。けど、こればっかりはしょうがないよ。………………それに、私みたいな化け物(・・・)はこの世界に存在しない方がたぶん色々と都合が良いと思う」

 

「っ………………!」

 

星奈が自分のことをそんなふうに(化け物)言うのが楓はとても悲しかった。

 

「……………………そうだ。誕生日プレゼントって結局どうだった?」

 

「……………うん、用意してあるよ」

 

「そっか……………ありがとう。じゃあ、見せて貰っても良い?私の最初で最後の誕生日プレゼントを……………………最期の思い出を私にくれる?」

 

「……………………」

 

楓は無言で懐から誕生日プレゼントが入った箱を取り出す。震える手で包装を取ると、中身を見せようと箱に手を掛ける。

 

「(………………………星奈ちゃんは運命を受け入れている……………………なら、私がわがままを言って困らせる訳にはいかないよね……………私に出来るのは彼女の意志を尊重する事だけ……………………)」

 

楓はそう言い聞かせながら、震える手で箱を開けて行く。そして、楓の視界に星のネックレスが映ったその時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『被験体AGW-111。それが私の名前』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…………………相変わらずシャツがダサい』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あなたは私の事をモルモットじゃなくて人として見てくれて、接してくれた。それが私にとってはずっと嬉しい事だった。それが漸く分かった。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……………私はこの先、実験がうまく行っている限りはどんどん人ならざる存在になっていくと思う。それでも…………………それでも、あなたは私を人として見てくれる?接してくれる?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………ありがとう、楓』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………………名前に続いて、また楓から大切なもの(誕生日)を貰えた』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓の頭の中にこれまでの思い出が一瞬で過ぎった。

 

「……………………いやだ」

 

「……………………え?」

 

やはりこのまま終わりを迎えるのは楓には無理だった。大粒の涙が床に落ちるのも気にも留めず、楓は星奈に向かった叫ぶ。

 

「嫌だ嫌だ嫌だ!!星奈ちゃんとこんな所でお別れ何て嫌だよぉ!!」

 

「楓………………」

 

星奈はここまで感情的になる楓を始めて見た。それ故か、言葉を失ってしまう。

 

「これが最初で最後の誕生日プレゼントなんて嫌だ!!来年も、再来年も、ずっとあなたの誕生日を祝ってあげたい!!」

 

「……………………」

 

「前に私の夢の話をした時に私が羨ましい、自分にはそんな夢を持つ事は無理って言ってたけど、私はそんな事はないと思う!生きていれば絶対、何かやりたい事や夢が見つかるかもしれないし、そう言うの夢ややりたい事を探すのって人生の醍醐味ですっごく楽しんだよ!それに、私が羨ましいって事は本当は夢を見つけたいんじゃないの!?」

 

「……………………!」

 

「あと………殺し屋だから生きていい訳がないとか、星奈ちゃんは存在しない方が良いって、周りの人達は皆そう言うかもしれないけど!だったら、そんな声を掻き消すぐらいの声で私が言う!!星奈ちゃんは生きてて良いんだって!!」

 

「……………………!!」

 

大声で一気に自分の想いを伝えた楓は肩で息をする。そして、アクリル板越しに自分を見つめる星奈に向かって手を伸ばす。

 

「ハァ、ハァ………………だから、さ………………私と一緒にここから逃げよ?そして……………………一緒に生きよ……………?」

 

「……………………」

 

星奈は何も言わない。俯いていて楓からも今彼女がどんな顔なのか分からない。楓にとってはとても長く感じたが、実際はほんの1分後の話だった。

 

「………………あなたは本当にずるい人だね」

 

「…………………」

 

「何も言わなければ、私はあのまま死を受け入れられたのに……………………なのに」

 

星奈は自分の腹部に手を突き刺すと、埋め込まれていた自爆装置と抑制装置を取り出して床に放り投げる。傷口は一瞬で塞がった。

 

「……………あなたが前に写真で見せくれた星空をこの目で見たい」

 

自分と楓を遮るアクリル板に掌で触れる。アクリル板にひびが入る。

 

「私もあなたのように夢を持ってみたい。探してみたい」

 

アクリル板のひびがどんどん広がって行く。

 

「……………あなたがくれた誕生日をこれからも祝って貰いたい」

 

楓は後ろに数歩下がる。次の瞬間、アクリル板が粉々になって砕け散った。

 

「全部、あなたのせい。私がこう思うようになったのも、全部あなたのせい。だから……………………責任取って、私と一緒に生きて」

 

「………………うん、喜んで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

研究室内に警報が響き渡る。

 

「警報!?………………………なっ!?し、主任!被検体が脱走しました!!自爆装置も外されて、独房の床に穴があいて」

 

「何故誰もモルモットの監視をしていなかった!!モルモットの監視の1つすら出来んのか、この役立たずどもが!!」

 

報告した研究員を蹴り飛ばしながら桐生は叫ぶ。桐生の指示で研究資料やデータなどの研究の証拠を抹消する作業を全員で行っていた為、桐生を含め誰も星奈と楓の会話やモニターを誰も見ていなかったのである。まさに失態である。

 

「武装警備員に連絡!!奴を絶対に逃がすな!!さっさと見つけて殺せ!!そうしなければ、ここにいる全員が殺されると思え!!俺も奴の始末に向かう、お前達は証拠の抹消を進めていろ!!」

 

「わ、分かりました!」

 

桐生は憤怒の表情を浮かべならが研究所内を走る。

 

「(あと一歩で目当てのものが手に入ると言うのに、モルモットの分際でこの俺に手間を掛けさせやがって……………!!上等だ、モルモット!!お前は俺の手で確実に殺してやる…………………!!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーっと、確か案内図だとこの辺が……………………あった」

 

楓の目の前にある部屋にか関係者以外立ち入り禁止と言う表記がされている部屋があった。パスワード式で厳重な警戒態勢。だが

 

「じゃあ、星奈ちゃん。お願いしても良い?」

 

「分かった」

 

星奈が軽く蹴りを入れると、ドアは大きく凹んで吹き飛ぶ。彼女の前ではどんな警備も意味をなさない。

 

「ふっ、ちょろいね」

 

「あなたは特に何もしていないけどね」

 

「まぁ、それはそうだけどね」

 

話しながら2人は部屋に入る。その部屋は配電盤が設置されている部屋だった。楓は暗闇だと逃走確率が上がると考え、研究所の電源を落とそうとここを星奈と共に訪れたのだ。

 

「よーし、じゃあ電源を落として行こー!……………………あ、そう言えば落とし方とか分からないや。オワタ」

 

「……………………はぁ。下がっていて」

 

ため息を付きながら星奈はそう言うと、拳に白いオーラを纏うと配電盤に向けて拳を振るう。次の瞬間、配電盤は火花を散らして機能を停止し研究所全域が暗闇に包まれる。

 

「これでよし。恐らく監視カメラも停止しているだろうから、今のうちに逃げよう」

 

楓の言葉に星奈は頷くと、2人はダッシュで部屋を跡にする。

 

「それで、どうやって逃げるの?」

 

「そうだね……………走って逃げるのだと星奈ちゃんはともかく、私は何処かで力尽きるからね。なので、ここは車と言う便利な交通手段を使って逃げるとしよう。研究所を出て近くの街に入れば、違和感なく溶け込めるしね」

 

「それで、その車とやらはどこにあるの?」

 

「地下の駐車場!」

 

2人はエレベーターではなく階段を使って地下へと降りて行く。途中で誰ともすれ違わなかったのは幸運だろう。急いだお陰か、1分も経たずに誰もいない地下の駐車場に到着した。

 

「あの青いのが私の車!あれに乗るよ!」

 

少し先にある小さな車を指さすと、2人は車を目指して走る。長年閉じ込められていた研究所から自由になるまでもう間もなくだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいや、そうはさせない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、2人の背後から飛んで来たミサイルが楓の車を直撃。楓の車は大きく爆発し、炎に包まれる。

 

「なっ……………………!?」

 

楓が後ろを振り返ると、そこにはドローン兵器を引き連れている桐生がいた。間もなく、地下にジープが何台も入って来て2人を囲む。そして、降りて来た武装警備員が2人を囲む。

 

「正門ではなく別のルートから逃亡を図ると思っていたが、俺の予想通りだったな。そして、お前()が裏切っているであろう事もな。さぁ、モルモット大人しく投降しろ。そして、俺の為に死んでくれ」

 

桐生は目の前にいる星奈に武器をチラつかせながらそう勧告する。だが、星奈の答えはもう決まっていた。

 

「悪いけど、それは無理。私は生きていたいから」

 

「生きていたい、ねぇ………………何もかも俺達に作られた人形のくせに、まるで人間みたいな事を言うようになったな」

 

「………………作られた存在?」

 

楓がそう問い返すと、桐生は邪悪な笑みを浮かべなら肯定する。

 

「教えてやるよ。こいつが『死神』と呼ばれる殺し屋であり、記憶喪失であると言うのは全部()だ。こいつは元々、殺し屋でもないし記憶を失ってもない。俺達が実験を進めるのに都合が良いからと、そう言う設定(・・)しただけだ。お前は元々この実験の為だけに作られたバイオロイド。お前は人間じゃねぇ、人の姿をしただけのまがい物の化け物(・・・)なんだよ!」

 

「………星奈ちゃんが、殺し屋でも記憶喪失でもない…………………?」

 

衝撃の事実に楓も驚きを隠せなかった。当の星奈もショックを受けているのか、何も発しない。

 

「これで分かっただろう?お前の性格も、記憶も何もかも、俺達によって与えられたもの。お前自身は何も持っていない、空っぽの器なんだよ!そんなお前が生きていたいとは笑わせてくれる。どんなにあがこうが、お前は俺達人間のようには生きられない。生きる価値すらない。どんなに人間の真似事をしようと、お前は化け物(・・・)でしかないんだよ!」

 

「……………………」

 

「お前の唯一の価値は、お前が死ねば俺の欲しいものが手に入ると言うだけだ。だったら、ここで大人しく死ね」

 

冷淡な声で桐生はそう言うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………星が見たい」

 

真実を語っている間、沈黙していた星奈はそう呟いた。

 

「夢を持ってみたい。探してみたい」

 

「あ?」

 

「楓に誕生日を祝って貰いたい」

 

何を言っているのかと言いたげな桐生に対して、星奈は彼の目を見ながら口を開く。

 

「確かに、あなたの言う通り私は今まで空っぽの器だったのかも。けど、今は違う。楓と出会って、生きたい言う望みや、夢を持ちたい。誕生日を祝って貰いたいと言う欲求を抱くようになった。私自身がそう望んだもの。私の中に存在している確固たる想い。これは誰かによって与えられたものじゃない!」

 

「………人間もどきが生意気な……………………!」

 

「それに、私は別に人間じゃなくても良い。世界中が私を化け物としてしか見なかったり、生きる価値がないと言っても…………………私を人として見てくれて、生きていて良いって言ってくれる人がいるから」

 

そう言って星奈は笑みを楓の方を向いて浮かべる。楓は驚いていた様子だったが、すぐに笑みを浮かべて頷く。

 

「だから、お前なんかの為に私は死んでやらない。これが私の答え」

 

「………………はぁ」

 

桐生は心底めんどくさそうにため息をついた。

 

「………………今までのモルモットは記憶や感情がないと何故か神聖力を制御できずに死んでいった。だから、お前には記憶や感情を与えたが……………………その結果、こんなにもうざったい野郎になるとはな………………ところで、俺は今の会話でお前の弱点が分かった」

 

「…………弱点?」

 

星奈が訝しげな表情を浮かべる中、桐生は冷徹な笑みを浮かべながら言う。

 

「お前の弱点、それはな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こいつがお前の精神的な支えである事だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、銃声が鳴り響く。星奈は咄嗟に攻撃を受けたのかと身構えるが、自身は何ともなかった。

 

「……………………ぁ」

 

楓の小さな声がした。数秒遅れてドサッと倒れる音がする。星奈が楓の方を見ると、彼女は地面に倒れていた。その服には銃で撃たれた穴が開いていた。

 

「……………………楓?」

 

「……………………」

 

「……………………かえで?」

 

「……………………」

 

楓からは何も返ってこない。体を揺らしても、何も反応しない。

 

「あ…………そんな…………あぁ……………………あぁぁぁ…………………うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………………………!!」

 

「お前はまだ幼いが故に、こいつに依存する事で精神を安定させてきた、なら、その支えを取っちまえば、絶望がお前を支配し、生きる気力すら奪う。そうなれば」

 

膝をつく星奈にゆっくり近づくと、桐生は無抵抗の彼女の後頭部に銃を押し付ける。

 

「お前を殺すなど容易いものさ。じゃあな、モルモット」

 

次の瞬間、銃声が駐車場ないに鳴り響いた──────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────筈だった。

 

「ウガァァァァァァぁァァァ!?腕が、俺の腕がァァァァァァァァァァ!?」

 

桐生が銃を持っていた右手が腕ごと切断されていた。その痛みに悶える桐生を気にもしない様子で星奈はゆっくりと立ち上がると、赤黒いオーラを纏っていく。

 

「A――urrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrッ――――――――!!」

 

「グォッ!?」

 

声にならない、女の子らしからぬ咆哮とともに赤黒く染まった神聖力が放出され、その余波で桐生や武装警備員が吹き飛ばされる。

 

研究所を貫いて神聖力が空へと放たれる。何も知らない者からすれば光の柱がそびえ立つ神秘的な現象に見えるであろう。まさか小さな少女の肉体から放たれる憎しみの光だとは誰も思うまい。

 

「……………………」

 

彼女は止まらない。理性を失い、目に映るものを全て破壊する獣と化した。

 

「殺せ、奴を殺せェェェェェ!!」

 

桐生の合図で武装警備員から攻撃が開始されると、同時に赤黒いオーラを纏う彼女も静かに動き出すのだった―――――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神界

 

「………………!」

 

椅子に座って小説を読んでいた第1位が何かを感じて立ち上がる。それと同時にカノンが部屋に転がり込んでくる。

 

「たたたた大変です!とある世界で神聖力の行使を感知しました!その世界に神界人は誰もいない筈なのに、しかもとんでもない出力のものです!」

 

「あぁ、僕もほんの僅かだがそれを感じた。カノン、リリィを招集して一緒に調べて何でも良いから分かり次第報告しろ」

 

「分かりました!第1位様はどうなさるつもりですか?」

 

「直接この目で見てくる」

 

そう言うと第1位は一瞬でカノンの目の前から姿を消した。

 

to be continued……………




《用語解説》

神聖力…………用語は既に神様の過去編で出てきてたし、軽く解説してたけど改めて。要は魔力、MPと同じ。神聖術や数字持ちの特権である固有能力は全て神聖力を用いて発動させる。

星奈ちゃんが暴走するだけでなく、第1位も動き出す事態に。あーあ、バレないようにしてたのに遂に第1位が動き出しちゃって………………これ、第1位を何とかできたとしても(たぶん無理)桐生は褒美貰えないやろ。だって、星奈ちゃんが暴走したのこいつのせいだし。『やらかしたで賞』があったら桐生がノミネートだよ、おめでとう。

まぁ、そんな訳で楓と星奈ちゃんの2人の物語の行く末をお楽しみに。


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エピソードⅣ Eternal farewell at the end of the encounter part2

ここ最近、無性に一蘭のラーメンが食いたいという想いが浮かびまくるの何でなん?

では、どうぞ。今日はあとがきは少し長めです。



















桐生は目の前の光景に唖然としていた。その訳は明確だ。

 

「アハハハハハハハハ!!アハハハハハハハッ!!」

 

完全に正気を失った様子で狂ったように笑いながら武装警備員を1人、また1人と星奈が消し去っているからだ。しかも、首をはねたり体を真っ二つに引き裂いたりするなどの残酷にも程があった。星奈の顔や服などの色んな箇所に血を浴びている。最初に囲んでいた武装警備員はとっくに死亡し、応援に来た警備員ももう間もなく全滅しようとしていた。

 

「馬鹿な、明らかに想定以上の力を発揮している…………………奴のどこにあんな力が……………まさか、楓を殺したショックで奴らも知らない潜在能力が目を覚ましたとでも言うのか……………………」

 

桐生が呆然と呟く中、星奈は武装警備員の最後の1人を始末し終える。そして、ゆっくりと桐生の方を向く。桐生を見る星奈は狂気的な笑みを浮かべていた。その笑みに桐生はあきらかに怯えを感じさせる引きつった表情を浮かべる。

 

「や、殺れ!!」

 

震える声でそう指示を出すと、ドローンが一斉に襲い掛かる。

 

「……………………はっ」

 

まるで嘲笑するかのように星奈は笑うと、一歩踏み出す。その瞬間、強い衝撃波が放たれてドローンはあちこちに散り、コンクリートの壁に叩きつけられて機能停止した。

 

「米国の最新兵器のドローンが一瞬で全滅、だと……………………!?」

 

もはや桐生を守ってくれる武装警備員も、ドローンも全て消えた。桐生は楓を殺したことを今更になって後悔した。まぁ、桐生は彼女を殺した事自体に罪悪感を感じているのではなく、楓を殺した事で星奈を暴走させてしまった事に後悔しているのだが。

 

「……………………」

 

星奈は無言で桐生に近づく。最後の標的を仕留めようと、ゆっくりと近づく。

 

「く、来るな!!俺の傍に近寄るなァァァァァァァァァ!!」

 

そう情けない悲鳴をあげながら逃げようとする桐生だが、足がもつれて転倒する。その間に死神が彼のすぐ目の前に迫っていた。

 

「や、やめろ………………!!」

 

「……………………」

 

楓は拳を構える。

 

「頼む、やめてくれ…………!!」

 

拳に赤黒いオーラが纏われる。

 

「やめろォォォォォォォォ…………!!」

 

そして、拳が放たれた──────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

 

「ッ!?」

 

楓は突然意識を取り戻す。彼女は死んでいなかった。

 

「……………そうだ!私、確か撃たれて…………」

 

自分の体のあちこちを触ってみるが、何処にも穴が空いている様子はない。色々と見ている内に、胸ポケットにしまっていた星奈への誕生日プレゼントが地面に落ちる。

 

「!…………これが守ってくれたんだ…………」

 

誕生日プレゼントのネックレスが入っている箱に銃弾が突き刺さっていた。どうやらこれのお陰で命拾いしたようだ。気絶したのは自分が撃たれたと感じたことによるショックか、もしくは倒れ込んで頭をぶつけた時のショックか。

 

「………………え」

 

ここで初めて彼女は周りの状況を認識した。周囲には人間だった者が転がっており、血生臭い匂いが漂っている事を。あまりにも残酷な光景に思わず楓は口元を抑えてしまう。

 

「や、やめろ………………!!」

 

声のした方を振り向くと、桐生を楓が殺そうと拳を構えている最中だった。楓には彼女が武装警備員らを殺した事、そして何か大きな力に呑み込まれており、正気を失っているのがすぐに分かった。1年間彼女の側にいたが故の早計だろう。

 

楓は急いで立ち上がると、星奈の元へ駆け寄る。星奈は彼女のことなど認識すらしていないのか、命乞いをする桐生に拳を振り下ろそうとしていた。

 

「ダメ!」

 

そんな彼女に恐れる事無く楓は背後から抱き着く。

 

「ダメだよ星奈ちゃん………………そっち(・・・)に行ってしまったら、星奈ちゃんはもう戻れなくなっちゃう……………………だから戻って来て……………!」

 

楓は涙を浮かべながら必死に言葉を紡ぐ。

 

「……………………かえ、で……………………?」

 

星奈を包んでいた赤黒いオーラが消えて行き、拳を降ろす。その目も正気に戻って行た。桐生は限界だったのか、その場で倒れて気絶する。楓がホッとした様子を浮かべたその時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダァン、ダァン、ダァン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………ゴフッ」

 

吐血しながら楓が再び地面に伏した。地面に血の海が静かに広がって行く。

 

「…………楓!?」

 

星奈は一瞬何が起こったか分からないと言いたげな表情を浮かべていたが、すぐに地面に伏している楓を仰向きに起こす。

 

「…………はは……………………ドジこいちゃった…………」

 

楓の視線の先には先程星奈が衝撃波で壊したと思われていたドローンの1台があった。先程の攻撃で完全に機能を停止したのか、今は完全に沈黙している。

 

「ど、どうすれば…………何か手当を…………出血を止めないと…………!」

 

「……………いや、これはちょっと無理かなぁ……………………」

 

楓はこの傷が致命傷である事が体感的に分かっていた。……………間もなく自分が力尽きる事も。

 

「なんで……………………飛び出さなければ、攻撃されなかったのに……………」

 

「声を掛けた位じゃ、止まってくれない気がして…………勘だけどね…………そしたら、気づいたら飛び出してた……………………」

 

楓の勘は正しかった。2人は知る由もないが、後にあのままでは、正気を失った暴走状態で安定化してしまう所だった。

 

呼び戻してくれたのは楓の感触だった。

 

「あと1秒……………………あと1秒早く気付いていれば守れたのに…………なのに、私が力をコントロール出来なくなったせいで……………………私が楓を殺した……………………!」

 

自分を責める星奈。だが、楓はゆっくりと首を振る。

 

「それは、違う……………そんなわけ、ないよ……………………私がそうしたいから動いただけ……………………それに、星奈ちゃんになら………殺されても良いかな、って思う。それくらい大切に思えるから……………………星奈ちゃんもいつか…………そんな人と巡り合えると思うよ………………たぶん……………………」

 

「…………楓以外にそんな相手がいるとは思えない……………思えないよぉ……………!」

 

「…………星奈ちゃんが思っている以上に世界って広いから………………絶対いるよ……………………ゲホッ!!」

 

口からもさらに吐血。楓はいよいよ自身に残された時間が僅かである事を悟る。

 

「…………ごめんね……………………一緒にいてあげられなくて…………大人になった星奈ちゃんを見たかったなぁ…………」

 

「やめて……………………そんな…………………そんな永遠の別れみたいな事を言わないで…………………!」

 

「………もう時間もないし………最期に1つだけお願いがあるんだけど……………たぶん、星奈ちゃんは生きて行くうちに何度も辛い事を経験すると思う……………………だけど、どんな絶望的で辛い状況でも、生きる事を諦めないで……………大抵の事は、諦めなければ何とでもなるから……………………」

 

「ッ……………………分かった。あなたがそう言うなら」

 

それを聞いた楓は満足そうに微笑む。星奈も涙を彼女の頬に流しながらも、微笑む。

 

「…………これからは白水 星奈って名乗りな……………苗字がないと色々と不都合だし……………………」

 

「…………うん、そうする」

 

「……………………あぁ、あと………これだけは伝えておかなきゃ………星奈ちゃんとは血のつながりはないけど……………私は娘みたいに思ってたんだ……………ちょっと言うのが遅かったかもだけど……………星奈ちゃん………」

 

目を閉じる瞬間に彼女はこう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────“愛してる”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それが彼女の最期の言葉だった。白水楓、永年24歳。その僅か20年余りの短い生涯を()に看取られて、満足そうな笑みを浮かべながら逝った。

 

「────────────!」

 

声にならない星奈の慟哭が響き渡る。星奈は漸く気が付いた。いかに自分にとって楓の存在が大きかったのかを。

 

1年前の出会いの末、2人の道は永遠に分かれる事となった────────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一体どれほどの時間が経っただろうか。

 

動かなくなった楓の前に膝をつく放心状態の星奈の後頭部に銃が突きつけられる。

 

「最期の最期まで何の役にも立たない奴だったな、こいつ()は」

 

「……………………」

 

「だが、安心しろ。あいつのもとにすぐ送ってやる」

 

桐生が引き金に手を掛けた次の瞬間。

 

ヒュン!

 

「ッア!?」

 

空から飛来した銃弾が桐生の銃を弾き飛ばした。

 

「何だ!?どこから……………………!?」

 

桐生が辺りをキョロキョロ見回していると、上から白い羽が落ちて来る。上を見上げると、そこには緑色の粒子を放出する2枚ずつ2対からなる純白の4枚の翼を展開した男が2人を見下ろしていた。その手にはヘカートIIと呼ばれる狙撃銃を持っていた。

 

「……………………」

 

男は桐生を一瞥するだけで、同じくこちらを見上げている星奈と楓の遺体の方に移す。男────────第1位は星奈の側に降り立った。翼もヘカートⅡも一瞬で消滅する。そして、膝をつくと星奈と視線を合わせる。

 

「………………彼女は君の大切な人、だよね」

 

「………………何で、分かるの…………?」

 

「君を見ればすぐに分かるからさ。……………すまない。従来の方法で転移するとなると、体感的には一瞬なんだが実際には5分程時間が経過している。この時間の経過を無くすために、一瞬で転移できる最新式の装置を作っていたんだが、まだ未完成だったからね…………」

 

例えば、12時ピッタリに神界から特定の地球へ従来の方法で転移を行ったとしよう。転移する人物の体感では一瞬で地球に到着するのだが、実際には5分程転移に時間が掛かっていて、転移が完了した際には時刻は12時5分となっている。今回もこの5分の経過がなければ、楓も救えていただろう。

 

だが、星奈にとってそんな事はどうでも良かった。結果として、自分では楓を守れなかった。ただそれだけの事なのだから。

 

「……あなたは………誰…………私と同じような存在…………?」

 

「いや、そうではないよ。僕は神様、って言ったら君は信じるかい?」

 

「(!…………………こいつ、まさかジョーカーと同じ…………!?)」

 

桐生がそんな事を考えているのをいざ知らず、第1位は辺りを見回す。

 

「………僕が感知した神聖力は君のものか。君、名前は?」

 

「………………星奈…………………私の名前は白水 星奈…………楓から貰った、大切な名前………………」

 

「星奈ちゃん、か…………良い名前だ」

 

そう言うと第1位はスッと立ち上がる。

 

「取りあえず、星奈ちゃんは僕と一緒に来てくれるかい?落ち着いた場所で色々と話を聞きたい事があるんでね。……………………あと、お前も」

 

「ヒッ!?」

 

どさくさに紛れて逃げようとしていた桐生の目の前に第1位は瞬間移動。驚いた桐生は腰を抜かして尻もちをつく。

 

「何をやっていたのかは知らないが、ロクでもない事なのは分かる。お前にも洗いざらい吐いて貰おうか。お前、さっき僕を『ジョーカー』と同じって言っていたな。そいつが協力者の神界人か」

 

「な、何故知って…………!?」

 

「察しの通り僕は『ジョーカー』と同じ存在だ。だから、お前が頭の中で考えている事など僕には」

 

『第1位様』

 

ここでリリィから通信が入る。タイミングが悪いなと思いつつ、リリィの通信に答える。

 

「リリィか。何か分かったのか?」

 

『すぐそこから離脱してください。あの時(・・・)と同じタイプの特殊な神聖術による高エネルギー反応の予兆が観測されました』

 

「────────!」

 

第1位の脳裏にあの時の光景────────全てを道連れにしようとして、先代第2位が使用した特殊な神聖術による自爆の光景が蘇った。

 

「(まだ未解明のアレと同じタイプか………………時間の猶予的にも全員を救うのは無理か。となれば、優先すべきは)」

 

第1位は星奈と楓の遺体を担いで一瞬で上空に離脱。次の瞬間、予兆もなく発生した特異点(ブラックホール)が桐生を、そして研究所の全てを吞み込んだ。

 

「なに、あれ………………?」

 

「ブラックホールだよ。証拠もデータも、何もかも永遠に葬られるか。………『アル・シャマク』」

 

そう一言呟くと、ブラックホールは一瞬で消え去る。それを見た星奈は改めて自分を抱えるこの男が本当に神様である事を実感するのだった。

 

「今のは、一体……………?」

 

「隔絶された空間にブラックホールを飛ばした。これでもう大丈夫。周辺がだいぶ抉れたが、問題ない」

 

「!?」

 

星奈が瞬きを一回する間に、ブラックホールで抉られた地面が全て元に戻っていた。第1位が一瞬で戻したのは言うまでもない。

 

「さて………………話すにしても、先ずは場所を変えようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………なるほど。大体分かったよ」

 

第1位は星奈から話を聞き終わると、複雑な表情を浮かべる。

 

「行われていた人体実験の研究に関するデータを手に入れられなかったのが残念だが、今更言ってもどうしようもない。ボチボチ調べていくしかないか」

 

「………………あの、本当に神様なんですよね?」

 

「ああ」

 

第1位の肯定に星奈は縋るように第1位の手を掴む。

 

「お願い…………私はどうなっても構わない。だから、楓を助けて…………………!」

 

「…………残念だけど、それは出来ない。彼女の魂はもうないんだよ。失われた命は回帰しない。もう2度と戻らない。それが死と言うものだ。それに、一度死んだ人間を蘇らせるなんてのは禁忌の行為だと僕は思う────────と言っても、納得できないかもしれないが」

 

「…………………正直、蘇らせて欲しいとも考える私もいる。けど、彼女は自身の死を受け入れて人生を終えた。なのに、それを私のわがままで蘇らすのは…………………自分本位で身勝手だと思う………………ごめんなさい、変な事を言って……………」

 

「いいや。そう考えるのも分かるよ。僕も人間時代、そういう考えが過ぎった事もある。…………中学時代、ずっと生きていて欲しかった最高のせんせー(・・・)がいたからさ」

 

どこか遠い記憶を噛み締めるように、懐かしそうに第1位はそう呟くと『さて』と続ける。

 

「星奈ちゃん、君は黒幕に確実に命を狙われる。何故なら黒幕からすれば、自分達が提供した技術や理論をもとに生み出された君の事を僕に調べられれば、いつかは自分達の元に辿り着かれてしまう可能性があるからね。だから、このまま君を放置していては確実に刺客を差し向けられるだろう」

 

「……………………」

 

「だから、暫くの間は僕と一緒に生活してもらうよ。君を護衛するのと、色々と協力して貰いたいからね。これ以上、君のような存在が生み出されない為にも。構わないかい?」

 

第1位の問い掛けに、星奈は承諾の意を込めて首を縦に振る。

 

「…………………ところで、あなたの事はなんて呼べば……………………神様?」

 

「んー………………それだと何処となく距離感を感じるし、久しぶりに僕の人間時代の名前を名乗るとしようか」

 

そう決めると、第1位は自身の真名を明かした。

 

「名乗るのは久しぶりかな。僕の名前はね────────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────結城(ゆうき) 創真(そうま)

 

to be continued…………………




《人物紹介》

結城 創真……………………第1位の真名、もとい人間時代の名前。作者の処女作における主人公。生前の功績がとんでもない事もあり、それを見込んだ先代第1位によって(下らない理由もあったが)神界の序列第1位に就任。固有能力はありとあらゆるものを創り出す『創造』の能力。



没にしましたけど、修学旅行編で明かす案もありました。

実は今作は処女作というか前作と(がっつりとではないけど)リンクしていたというお話。勘違いしてほしくないのは続編ではないということ。既に彼の物語は完結しているので。

彼を登場させる案は執筆開始時から考えていました。(いるかは知らないけど)処女作から読んでくれている古参の方に対してちょっとしたファンサのつもりで。別に伏線らしい伏線は入れてませんでしたが、第1話において

・世界一の金持ちになったり → 前作にて世界一の規模の会社の社長になった事を描写。……………ちょっと無理やりすぎたかな。

・大国同士の戦争を丸く納めたり、地球に降ってくる隕石を破壊して地球滅亡の危機を救ったり、後は宇宙からの侵略者を撃退したりとか色々と →前作を読んでいる人はお分かりでしょうが、彼は頭脳も身体能力も超チートでした。

あとは

・彼の固有能力があらゆるものを作り出す『創造』。そして、固有能力の解説で『他種族が転生して神界人、そして数字持ちになった場合は前世でその人物が生前に築き上げた伝説・成果や特徴、趣味などを基に固有能力が決定されるシステムとなっている。他種族が神界人に転生し数字持ちになる事例が今まで無かった為、このシステムが使われたことは一度もなかったが………………?』という解説。

→前作を読んでいた方はご存じの通り、創真は『発明』が趣味。新しいものを『創り出す』のが好きであり、実際作中でも色々な発明品を作っていた。様々なものを創り出してきた成果・特徴、『発明』と言う趣味をもとに『創造』と言う固有能力の獲得に繋がった。名前にも『創』の文字が入ってるしね。……………やっぱ無理やりすぎたか?

ざっと伏線(?)はこんなものですかね。まぁ、だいぶこじつけと言うか、強引だったから誰も気づけなかったでしょう。すまんな、作者はプロの小説家ではないんや、許して。

最近創真が主人公の処女作を見返してみたら『何か性格変わった?』って気がしたけど、まぁ彼も本編終了後も人間としては100年以上生きていた裏設定があるので、そんんだけ生きてたら性格も変わるだろうし、まぁ問題なしって事で(強引)

さて、勘の鋭い読者はお気づきかと思いますが今回までの4話は暗殺教室の殺せんせーの過去編をベースにしていました。感想でも言ってる人いましたね。家にある暗殺教室の漫画を見返してたら、『星奈さんの過去編のベースにしよ(唐突)』と思った感じです。楓のキャラ設定や桐生 誇太郎と言う名前を見て、暗殺教室を読んでいた人ならピンときた人もいるのでは?

暗殺教室と言えば、暗殺教室の作者が現在連載している『逃げ若』がアニメ化決定しているので、いつか放送されたら皆さん是非見てください。

今回の話でとりあえず折り返しです。あと4日で終わります。創真も語っていたように脅威はまだ消えていません。その脅威に楓という大切な存在を失った星奈はどうしていくのか。

残りの4話は楓が『自分』と向き合う物語です。もっと言えば、『自分のした事』と向き合う物語ですかね。それではお楽しみに。


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エピソードⅤ Crime and Punishment part one

特に言うこと無し!

どうぞ!


あの事件から2週間が経ったある日の早朝。

 

第1位こと創真は日本の首都東京にあるタワーマンションの最上階のベランダにてパソコンでリリィとカノンとリモート通話をしていた。

 

『なるほどー、星奈ちゃんが楓が育った国に行きたいと。それでいま日本にいるんですね』

 

「ああ。ところで、リリィ。そっちでの調査は進んでいるかい?」

 

『はい。私が主担当で桐生と言う男と結託していた神界人を捜索していますが、まだ見つかっておりません』

 

「証拠となる人間やデータは全て消えてしまったからね。それに、僕らに悟られる事無く人体実験を進めていたと言う事は相当なやり手だ。すぐ見つかるような奴でもないか…………………こっちでも色々と調べるが、何か分かったらすぐに連絡してくれ」

 

『了解しました』

 

『そう言えば、星奈ちゃんの様子はどうですか?元気にしてますか?』

 

「まぁね。彼女はずっと研究所の中にいたから、毎日が新鮮みたいでね。その甲斐もあってか、楓さんを失ったショックから少しずつ立ち直りつつあると思う。……………っと、彼女が来たから切るね。じゃ、何かあったら連絡よろしく」

 

画面上の2人にそう言うと通話を終える。それと同時に星奈がドアを開けて入ってくる。

 

共同生活を始めてから2週間が経ったが、特に問題なく生活できていた。最初はお風呂の使い方やスマホの使い方やら一から百まで全て教える必要があったが、星奈は呑み込みが早く、一度教えてしまえばあとは全て自力で出来たので創真としても楽だった。

 

「おはよう、星奈ちゃん。どうだい、調子は?」

 

「おはよう、創真。体調面では特には大丈夫」

 

ちなみに、年齢的には当然創真の方が遥かに年上ではあるのだが、創真が『堅苦しいのは面倒だから』と言う事で星奈も敬語ではなく普通に話すようにしている。

 

「そっか、それなら良かった。何か不調を感じたらすぐに言うんだよ」

 

創真は彼女のバイタルデータなどの情報をもとに解析を進めている。解析が進んで色々と分かってくれば、その情報をもとに黒幕の尻尾を掴めたりするかもしれないからだ。

 

「今日もごはん食ったら外行くか。どっか行きたいところとかある?」

 

「…………………」

 

「どうかした?」

 

「……………ここ最近、ずっと色んな所に出掛けたり、遊んでばかりの生活で良いのかなって…………………それに、私が力を上手く制御できないせいで、創真にも時間を割かせちゃってるし…………創真だって本当は色々とやらなければいけない事もある筈なのに………」

 

それを聞いた創真は苦笑しつつ、星奈の頭を撫でる。

 

「あ………………」

 

「子供がそんな事気にするなよ。君は今までずっと研究所で辛い実験に耐えながら生きて来た。その分楽しい事を沢山しても、別に罰は当たるまい。あと、僕のやらなければならない事の中に君と一緒に過ごす事も入ってるよ」

 

「!」

 

「さーて、今日はどこに行こっかねー。僕も地球に来るのは久しいから色々と見て回りたい所が沢山あるんだよね~」

 

そう言って笑いかける創真。釣られるように星奈も笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                言語設定… オート…

                                           

                                ID入力を確認。

                                           

                                認証システム… 作動…

                                           

                                認証中…… 認証中……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                        認証完了。機密任務に関する情報をアンロック。

 

《対神兵器抹消を目的とした特殊任務の概要》

 

殺し屋マインドキラーへ通達

 

無能な人間の失態により第1位に対神兵器の実験の事が感知され、処分を命じた対神兵器も第1位の手によって保護された。このまま第1位に対神兵器の事を調べられれば、我々の元に辿り着いてしまう可能性がある。潜入者によって我々には辿り着かれないように工作は行ってはいるが、第1位が工作をものともせずに我々の元に辿り着いてしまう可能性も十分にあり得る。確実にたどり着かれないようにする為にも、今回対神兵器の抹消を目的とした任務の実行が決まった。実験の成果とも言える対神兵器を抹消させれば、第1位らは有力な情報を得る事が出来なくなるため、我々の元に辿り着く可能性も大幅に下がるだろう。潜入者の情報によれば、第1位は対神兵器に関してまだ完全には把握しきれていない模様。全てを把握される前に、早急に対神兵器を抹消せよ。なお、今回は標的は対神兵器である為、可能な限り第1位との接触は避けるように。仮に第1位に捕縛されるような事態に陥った場合、情報漏洩を防ぐ為にも処分を行う。なお、この機密任務の詳細を外部に漏らした者も同様に処分を行う。

 

以上。

 

「……………………」

 

リリィは任務の情報を読み終わると眉を潜める。

 

「マインドキラー………………対象を精神的に追い詰めて自発的に自害させる、人格破綻者でもある殺し屋。自らは直接手を汚さない特殊な殺し屋だが、任務の成功率は100%…………………やはり悪趣味な殺し屋ですね」

 

リリィとしてはこういうタイプの神界人とはあまり関わりたくないタイプだ。人格破綻している点もあるが、人を精神的に追い詰める悪趣味な手口も気に食わない。

 

「つれないなぁ。君も味わってみれば良いのに。心からじわじわと殺していく快感を。何なら君も一緒に行く?」

 

リリィが後ろを振り向くと、そこにいたのは不気味な笑みを浮かべる男。噂のマインドキラーだった。

 

「丁重にお断りします。私は自分の持ち場を離れるわけには行きませんので」

 

「おや、それは残念。振られちゃった~。にしても、標的は人間と神界人との狭間を彷徨う兵器でもあり生物か。………………やりがいのある仕事だ。もうプランも決まったし、あとは準備して実行するのみだ」

 

「………………。今回は対象の傍には第1位がいます。彼との接触を断ちつつ、どうやって行う気ですか?」

 

「あぁ、その事なんだけど。君にも少し協力して貰いたくてね」

 

「………………私が?」

 

「そ。詳細はまた追って連絡するよ。じゃあね~」

 

そう言うとマインドキラーは手をヒラヒラ振って去って行く。その後姿をリリィは無言で見送るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事件から1ヶ月経った日の夜。リリィは創真が滞在しているマンションに来ていた。

 

「悪いね、リリィ。急に呼び出して」

 

「いえ、お構いなく。それで、用件は?」

 

「君の意見が聞きたくてね」

 

創真が指を鳴らすと、空中に様々なデータが映し出される。

 

「………………これは彼女に関するデータですか」

 

「察しが早くて助かるよ。彼女の協力のもと色々とデータを取らせてもらってね。まぁ、全てが解明できた訳ではないが。一部のデータを基に少し前から考えていたんだが、神聖力の安定性が彼女の精神状態によって大きく左右されているんじゃないか、と思ってね」

 

「……………………」

 

リリィは内心舌を巻く。リリィは神界に保管されていた研究データを既に目を通しており、彼女の精神状態によって神聖力の安定性が左右される事もすでに認知していた。当然ながらリリィは創真にその情報をわざと教えていなかった。下手に情報を渡せばどこまで突き止められるか分からないからだ。

 

だが、いずれ彼が自力でこの情報を突き止める予感もしていた。ここまで早かったのは少し想定外だったが。

 

「………………えぇ、データを見る限りおそらく第1位様の仮説は正しいと思われます」

 

「だよね。君もそう言うのなら間違いないのだろう」

 

下手に否定しても逆に怪しまれると考え、リリィはそう肯定した。

 

「彼女はあの暴走以降、神聖力の制御が上手くできずに不安定な状態だ。意識がある内は何とか暴走はすまいとしているが、例えば睡眠状態などの無意識な状態では自制出来ないようでね。少し前までは僕が寝ている彼女の傍にいて抑えてあげていたよ」

 

「原因はもう分かっているのですか?」

 

「………………原因は幾つか考えられるが、まだ完全には絞り切れてない」

 

「では、今も進行形で彼女の神聖力を抑えているのですか?」

 

「いいや、今はこれを使っている」

 

創真はリリィに銀色のブレスレットを見せる。

 

「これは神聖力を安定させるための装置。安定性を維持する機能と出力を強制的に抑える機能が備わっている。僕が作った。今はこれを装着させて強制的にではあるが安定状態にさせている」

 

「(いつの間に………………そのようなものを自作出来るほど既に解析は終わっている訳ですか……………………それにしても)………………何故そこまで彼女のために動くのですか?」

 

リリィの問いかけに創真は手を止めると、無言で彼女の方を向く。

 

「彼女と知り合ってまだ1ヶ月。血のつながりがあるわけでもない。なのに、第1位様が自ら彼女の為に動く理由はなんですか?」

 

「理由、か。…………人間時代の僕と重なる部分があるから、かな」

 

「……………………」

 

「……………………既に知っているかもしれないが、僕も人間時代は彼女のように人間離れした強大な力を持っていた。まぁ、彼女のように制御できない類のものではなかったが。それに、彼女と同じく僕も人殺し(・・・)をした事がある。そういう同じ共通点もあるからか、何かと彼女にお節介を焼いちゃうのかな。まぁ、後は純粋に目の前に困っている人がいたら助けてあげたいと思うのもあるよ」

 

「……………そうですか」

 

リリィは第1位の生前については少しだけ知っていた。生前の彼には人間ではない『相棒(・・)』がおり、その相棒の存在もあって人間離れした特殊な力があった事。そして中学3年生の時に恩師を暗殺(・・)していた事も。

 

「では、私は戻ります。引き続き、今回の首謀者の行方を追っていきます」

 

「あぁ、頼んだ。カノンの面倒も見てやってくれ。よろしく頼むよ、リリィ」

 

「…………………はい。それでは」

 

創真に信頼を寄せられているリリィはそう返事すると神界へと戻っていくのだった。それを見送ると、創真は再びデータの方を見る。

 

「……………神聖力が不安定な原因、か………もし僕が想定している仮説の内の1つが正しいとすれば、それ(・・)を背負わすには彼女にはまだ荷が重いとは思うが……………………まだ完全に解析は出来ていないが、あの仮説が正しい場合はどうしたものかな…………………」

 

その表情は珍しく悩んでいるように見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、創真と星奈がゲームで遊んでいるとリリィから創真に通信が入る。

 

「どうかした?…………………黒幕の仲間を捕らえた?それは本当かい?」

 

『はい。第1位様の部屋に侵入しようとしている怪しい人物がいたので捕らえました。大した実力もなかったので、下っ端かもしれませんが。これから尋問を行いますので、第1位様もおいでになられるのが良いかと』

 

「勿論そうさせてもらうよ。すぐに向かうから尋問の準備だけしておいてくれ」

 

『了解です』

 

通信を終えると、創真は星奈の方を向く。

 

「悪いね、ちょっと用事が出来たから神界に戻らなければならなくなった。もしかしたら結構長くなるかもしれない」

 

「大丈夫。大事な用事なのは分かっているから」

 

「ほんとごめん!あ、そうだこれを渡しておくよ」

 

創真は懐から財布を取り出すと星奈に渡す。

 

「僕の財布。これでお昼ご飯で何か好きなものでも食べてきな。近くにはショッピングモールもあるし」

 

「で、でも」

 

「大丈夫、僕は金持ちだから。使いまくって日本の経済を回しまくってくれ。じゃ、さよならいおん」

 

面白いのとつまらないの微妙な境界線の挨拶をわざとかまして第1位は消えた。部屋に取り残されたのは星奈だけ。暫く財布を見つめていたが、このまま突っ立っていてもしょうがないので星奈は外出の準備をするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(……………………そう言えば、1人で外出するのって久しぶりかも)」

 

いつも創真と一緒である事が殆どだったので、星奈が1人で行動するのは久しぶりだった。まぁ、1人で行動する際も何かしらの手段で見守っていたのかもしれないが。

 

「(……………………楓)」

 

ふと、星奈の脳裏に楓の姿が過る。何気なく首にかけているネックレスに触れる。このネックレスは楓から貰った最初で最後の誕生日プレゼントだ。あの日、楓の懐にあったのを見つけた創真が星奈に渡した。ネックレスが入っていた箱には銃弾が刺さっていた。この誕生日プレゼントの存在が一度は楓を守り、そして理性を失っていた自分を楓が命を懸けて助けてくれた事に繋がったのだ。

 

あの日以来、楓は肌身離さず身に着けている。

 

「私ねー、将来はキャビンアテンダントになるの~」

 

「あら、いい夢ね~。だったら勉強も頑張らないとね」

 

「(……………………夢)」

 

向かいから歩いてきた親子の会話を聞いて星奈は足を止める。

 

「(…………私の夢………本当に見つかるのかな………………創真は『夢なんて生きてればその内見つかるようなもんよ』とは言ってくれたけど……………)」

 

そんな事を考えていると、前方から強風が吹いて何かが飛んでくる。顔面に当たる直前でキャッチする。その何かとは写真だった。

 

「…………………!」

 

しかもその写真は星空の写真だった。脳裏に浮かぶのは楓が見せてくれた星空の写真だった。

 

「あ、ごめんなさーい!それ私のですぅ~!」

 

「えっ……………………」

 

目の前からアルバムを持った女の人が走ってきた。しかも、どことなく星奈に似ていて、面影を感じるような人だった。

 

「か……………楓……………………?」

 

「へ?」

 

「!……………いえ、何でもないです。………………ど、どうぞ」

 

「ありがとー!家で整理していたら、風が吹いて窓から飛んで行っちゃって大変だったよ~!いやはや、窓を開けっぱなしにしていたのに気付かなかったとは」

 

明るい雰囲気まで楓にそっくりだった。

 

「じゃあ、私はこれで……………」

 

「あ、待って!」

 

去ろうとする星奈の腕を創真がくれたブレスレットの上から掴んで止める。

 

「これ、とっても大事な写真なんだ。だから、拾ってくれたお礼したいんだけど……………あ、折角だからお昼ご飯でも奢るよ!」

 

「え…………で、でも」

 

「お願い!そうでもしないと私のが気が済まないから!ね?ね?」

 

「え、えっと……………じ、じゃあ……………………お言葉に甘えて……………………」

 

グイグイ来るのに押されたのもあって、星奈は承諾するしかなかった。

 

「よし、そうと決まれば早速行こう!あ、そうだあなたの名前を教えてくれる?」

 

「し、白水星奈です……………(ほんとに楓みたいにグイグイ来る……………………)」

 

「え、私と苗字一緒じゃん!私は白水(・・)綾心!よろしくね、星奈ちゃん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「話には聞いていたけど、この牢獄内は本当に神聖術やスマホによる通信が出来ないんだね。確かリリィが設計から建造まで手掛けたんだっけ」

 

「はい。ここの囚人が牢獄の外部と連絡を取らせないように、ありとあらゆる通信手段での連絡が出来ないようにしています。……………あぁ、彼女(星奈)の事が気になるのでしたらご安心を。彼女は私の部下がモニタリングをしており、何か異変があればここに来て伝えるように言ってありますので」

 

「さっすが、分かってるじゃないか。じゃ、心置きなく尋問するとするかね」

 

「はい」

 

2人は牢獄内を歩いていく。第1位の後姿を見ながら、リリィは時計をチラリと見る。

 

「(………………作戦開始時間まであと少し。あとは指定の時刻まで第1位を足止めすれば良いだけ。…………………対神兵器の彼女に恨みはありません。ですが、これが私の仕事ですので。恨むなら、あなたが生み出される原因を作った第1位を恨んで下さい)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(さぁ、作戦開始と行こうかねぇ……………!)」

 

to be continued………………




遂に星奈を抹殺する為に殺し屋マインドキラーが動き出す。果たしてどのような作戦を実行するのか?

そして、楓と同じ苗字かつ似た雰囲気を纏っている綾心の正体とは?

次回をお楽しみに!デュエルスタンバイ!

……………………ところで水星の魔女ロスがいまだに続いてる同志いません?



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エピソードⅥ Crime and Punishment part two

この話含んであと3話。もう番外編はこれでラストです。いい加減本編をやらねば。つーか、やりたい。

では、どうぞ。


神界ではガチガチに拘束された男が創真とリリィによって尋問されていた。

 

「何も知らない、ねぇ」

 

「本当ですってば!気づいたらあの部屋の中にいたんです!嘘じゃないですって!」

 

「……………リリィ」

 

創真に名前を呼ばれたリリィは自身の見解を述べる。

 

「……………………神聖術で調べてみましたが、彼の言葉は嘘ではないようです。神聖術で記憶を消去されたのかと」

 

「ふむ………………大方、リリィに見つかったから情報漏洩を防ぐために消されたか。僕の固有能力でさっさと失った記憶を復元させるか」

 

「待ってください」

 

そう言うと創真は男に向けて手をかざして固有能力を行使しようとするが、それをリリィが止める。

 

「彼の戦闘力はさほど高くない。なのに彼をここへ送り込んできて、記憶喪失にさせたと言うことは」

 

「……………僕らが彼の記憶を復元させるのが敵の狙い、とでも?」

 

創真の言葉にリリィは頷く。

 

「敵は我々が記憶を復元させるのを見越して、復元させようとした瞬間に発動する何かしらの神聖術を仕込んでいる可能性があります。彼がこの場で自爆するようなものでしたら第1位様と私がいるので何とでもなるでしょう。ただ、記憶を復元させようとした瞬間に発動する神聖術が神界のどこかの街で遠隔作動するようなものだった場合、被害を防ぐ事は出来ません」

 

「……………ここって外部との通信だけで神聖術の全面的な使用は阻害してないのかい?」

 

「この牢獄内で神聖術の使用を完全に封じると、我々の方も戦力ダウンとなってしまいます。そこを突かれて奇襲されては命の危機もあるので。ちなみに、囚人が何か神聖術を発動させたりするなどの怪しい行動をすれば、すぐにシステムが探知して意識を奪います」

 

それを聞くと第1位は『なるほど』と呟く。

 

「…………だが、彼の消された記憶やどうにか復元させたい。彼の記憶をわざわざ消したという事は、僕らに知られてはまずい情報を持っていた可能性がある」

 

「それには同意です。ですので、ここは神聖術のプロである私にお任せを。私が分析をしつつ記憶の復元を行います。仮に何かトラップの神聖術が仕込まれていても、発動などさせません。ただ、1時間ほど掛かりますが」

 

「そうか。……………自信はあるんだな?」

 

「勿論です。私は神聖術に関しては第1位様にも勝っている自信はあるので」

 

それを聞いた第1位はニヤリと笑う。

 

「言ってくれるじゃないか。まぁ、いつか僕も神聖術に関して君を上回ってやるつもりだけどね。…………………取り合えず、今回は君に任せるよ。すぐに作業に取り掛かってくれ。ついでに僕も見させてもらうよ。何かあった時は君を守らなくちゃならないしね」

 

「………………了解しました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、どうしたの?食べないの?もしかして調子悪かったとか?」

 

「あ、いえ……………そんな事はないです……………」

 

注文したハンバーガーを食べる星奈は動揺していた。その原因は言うまでもなく、目の前の楓にそっくりな女性である。

 

「(白水って苗字も一緒で、雰囲気まで楓そっくり…………もしかして本当は生きていた?………いや、そんな筈はない………………もしかして姉妹だったとか?けど、楓は妹や姉がいるなんて言ってなかった…………………)」

 

思考を巡らす星奈。その様子を見た綾心は手を伸ばすと星奈のほっぺをムニュっと掴む。

 

「もー、ダメだよ星奈ちゃん?食事中に考え事なんて。さつきからずっと難しい顔をしてるよ?」

 

「あ、えっと……………すみません、あなたが母に似ていたので、つい……………………」

 

「へー、お母さんに。お母さんってどんな人なの?」

 

「………………お節介で、どこか子供ってぽくて、ファッションセンスが皆無で、それでも立派な夢を持っていて……………………私の事をしっかりと見てくれる人、です」

 

「おー、めっちゃいいお母さんじゃん!……………………あれ、けどそんなお母さんと似てるってことは私もファッションセンスが皆無で子供っぽいって事………………?」

 

「い、いえ!そう言うわけじゃ」

 

「あはは、分かってるよそれくらい~」

 

綾心の笑顔につられて星奈も笑みを自然と笑みが浮かんだ。少しづつ親近感が湧いてきた星奈は綾心に質問をしてみることにした。

 

「綾心さんはこの辺りに住んでいるんですか?」

 

「そうだよー。実はつい最近ここに引っ越してきたんだ~。星奈ちゃんもここら辺に住んでいるとは思うけど、結構長年いる感じ?」

 

「……………実は私もつい1ヶ月くらい前にここに来たばかりなんです」

 

「へー、そうなんだ!じゃあそういう意味では私たち仲間じゃん!今まではどこに住んでたの?」

 

「……………今までは、海外の方に住んでいたんです。けど、父の事情で私と父だけ日本に来ることになったんです」

 

流石に自身の事情を話すわけにはいかないので、適当な理由を述べる星奈。まぁ、海外の方にいたのは間違いではないが。

 

「そっかー。じゃあ、海外での友達とは離れ離れって事か。寂しくない?」

 

「……………そう、ですね。正直、ここに来て数日は心ここにあらずって感じでした。けど、私の父が色々と元気づけれくれたので。今は大丈夫です」

 

「そっかー。お父さんはどんな人?」

 

「えっと………………父は優しくて、頭が良くて、強くて………………すごくいい人です」

 

「ふふっ、星奈ちゃんは両親に恵まれたね」

 

「………………はい」

 

楓とも創真とも血のつながりはないが、楓は言うまでもなく彼女にとっては母親であり、創真も自分の事を色々と気にかけてくれたり助けてくれる存在である事から、楓は勝手に創真の事を父親のような存在だと心の中では思っている。

 

「………そういえばなんですけど、さっきの写真って……………………?」

 

「ん?あぁ、これの事?」

 

星奈はふと、あの写真の存在が頭に浮かび、それについて尋ねてみると綾心は懐から先ほどの星空の写真を星奈に渡す。

 

「これはねー、私が取った写真なんだー。すごいでしょ~?」

 

「はい、本当に綺麗な写真だと思います」

 

「……………本当はお姉ちゃん(・・・・・)と一緒に撮ろうと思ってたんだけどねー……………先月の海外の事故で帰らぬ人になっちゃって」

 

「!!」

 

『お姉ちゃん』というワードに星奈は大きく反応する。

 

楓と同じ苗字、そして類似した雰囲気、先月に海外で事故によって帰らぬ人となった姉の存在。

 

星奈の中で点と点が繋がった気がした。

 

「あの……………………綾心さん」

 

「うん?」

 

「その…………………もしかして、そのお姉さんの名前って……………………かえ」

 

コツン

 

その時、星奈の靴に何かが当たった感触がした。テーブルの下を覗いてみると、そこには野球ボール位の大きさの黒い球体があった。

 

「(ボール?フードコートなのに、どこからこんなものが………………?)」

 

不思議そうに首を捻っていると、黒い球体は突然輝き始めた。

 

「危ない!!」

 

星奈が咄嗟に叫ぶ。何か考えがあった訳ではない。ただ、彼女の心が警鐘を鳴らした。黒い球体を掴んで誰もいない方向へ投げた次の瞬間、大きな爆発が起こり星奈と綾心の2人は吹き飛ばされるのだった─────────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いいかい、星奈ちゃん』

 

『君はまだ神聖力を完全に制御できていない。正確にはあの時の暴走によって想定以上の出力で行使した事で、不安定な状態になったと言うべきかな』

 

『だから、今はこのブレスレットをつけていてくれ。これは神聖力を安定させるための装置だ。安定性を保つ機能と出力を強制的に抑える機能が備わっている。これをつけている限り暴走はない筈だ』

 

『もしも僕がその場にいなかった場合には、ブレスレットのこの六角形のマークを押せ。そしたら、僕がどこにいても一瞬で君の目の前に転送される』

 

『だから、星奈ちゃん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶対に神聖力を行使しちゃダメだよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……………………うんん……………………」

 

「あ、良かった!星奈ちゃん、目を覚ましたんだね!」

 

意識を取り戻した星奈は自分が綾心におんぶされているのに気が付いた。辺りは騒然としていて、銃声や悲鳴が飛び交っていた。

 

「一体、何が……………」

 

「私もよく分かんないんだけど、なんかテロ的な感じ?映画とかで出てくるような銃を持った特殊部隊みたいな奴が沢山いたって感じ!」

 

「!(………………そうだ、創真を呼べば何とかしてくれる筈………………ブレスレットがない!?)」

 

神様である創真なら何とかしてくれると考えるが、いつの間にかブレスレットは消えていた。もしかしたら先ほどの爆発で外れてどこかに吹き飛んでしまったのかもしれない。

 

「よし、この非常階段を使っ!?」

 

綾心の目の前に音もなくテロリストらが3人現れると、銃を乱射。綾心は慌てて近くの柱の陰に隠れた。

 

「(どうすれば…………創真と連絡を取ろうにも、専用のスマホが手元にない。あれもどこかに吹き飛んでしまったみたい…………………普通のスマホだと別の世界にいる創真には連絡は取れない……………………どうする?どうすれば良いの……………………?)」

 

「ッ……………………ちょっ、ごめん……………………一旦降ろすね……………………」

 

綾心は星奈を降ろすと、床に倒れこんでしまいそうになるのを星奈が慌てて支える。

 

「!!」

 

「アハハ……………………どうやらさっきので幾らか食らっちゃったみたい……………………」

 

綾心の太ももや肩から血が出ていた。先の銃撃で命中していたのだろう。

 

「あー……………これはダメだ。星奈ちゃん、君だけでも逃げて」

 

「な、何を言って………………」

 

「………………この怪我じゃ足手まといになる。私が囮になるからその隙に逃げて。………………大人が子供を守るのは当然の義務だからね」

 

そう言って痛みに耐えながら精一杯の笑みを浮かべる綾心。その笑顔が楓のものと重なって見える。

 

「(また、私だけが助かるの…………………?また、楓の時みたいにこの人が犠牲になって。自分だけ生き残って……………………それで良いの……………………?)」

 

そう自問自答する星奈。迷っている間にもテロリストらは無言でじりじりと近づいてくる。

 

『──────星奈ちゃん』

 

「ッ!」

 

懐かしい声が聞こえた。振り向くと、そこにいたのは楓だった。

 

『─────あなたには力がある。その力で、皆を助けてあげて』

 

そう言うと楓はフッと消えた。もしかしたら今のは星奈が見たただの幻だったのかもしれない。だが、今の言葉で星奈の心は決まった。

 

「(…………ごめんなさい、創真。けど、私はあの時のように自分だけが助かるのは、嫌だ………………!)」

 

「星奈ちゃん…………?」

 

立ち上がった星奈を見つめる綾心。そんな彼女に向かって星奈は口を開く。

 

「ここで待ってて。私が何とかする」

 

「え……………?」

 

そして、星奈は約1ヶ月ぶりに神聖力を開放する。神聖力の白いオーラが身に纏われる感覚が久しい。

 

「(大丈夫、私なら出来る。平常心で、落ち着いていれば出来る……………!)」

 

星奈が飛び出すとテロリストらは星奈に向けて銃を乱射してくるが、星奈は銃弾の雨を軽々と避けて急接近すると、1人のテロリストの銃を蹴りで弾き飛ばすとそばにあったレジを掴んで顔面にぶつける。怯んだすきに手加減したパンチで吹き飛ばすと、男は壁に叩きつけられて気を失う。2人目のテロリストは足払いで転ばせると、そのまま腹部に踵落としして意識を奪う。

 

「あと1人…………!」

 

撃ってくる最後のテロリストの背後に神聖力を生かして一瞬で回り込むと、軽々と放り投げる。テロリストは叩きつけられた衝撃で銃を手放すが、すぐに立ち上がるとナイフを手に星奈に襲い掛かる。だが、星奈はナイフによる攻撃を難なく避けると、ナイフの刃を掴んで粉々に砕くとサマーソルトキックを顎に命中させて戦闘不能にした。

 

「はぁ………………はぁ……………………はぁ……………………やった……………………制御出来た……………!」

 

神聖力を制御しつつ、テロリストの命を奪わずに無力化できた。その喜びを嚙み締めつつ、星奈は綾心のところに戻る。

 

「綾心さん、もう大丈夫。テロリストは全員倒……………………し……………………?」

 

先ほどまでいた場所に戻ってきたが、綾心の姿はなかった。よく見ると、床にあった綾心の血の跡がどこかへと続いていた。

 

パアァン──────。

 

そんな音が星奈のいるフロアに響いた。星奈は早まる動悸を抑えつつ、銃声がした場所に向かう。その場所に着いた星奈は目先で誰かが倒れているのを発見した。

 

「………嘘だ嘘だ嘘だ……!」

 

星奈が駆け寄ると、倒れていた綾心を血で手が汚れるのも気にせず抱き起す。

 

「……………………」

 

綾心は何も言わない。ただ、黙って星奈の頬に手を触れると、微笑みを浮かべて静かに目を閉じた。星奈には彼女の体がフッと軽くなる感じがした。

 

「あ、あああぁ……………」

 

また救えなかった。その事実と彼女の最期の笑みが楓が最期に浮かべた笑みと重なり、半ばパニック状態で涙が止まらない星奈の思考が完結しない。そんな彼女をどこかに潜んでいたテロリストが包囲する。

 

『目標、()に釣られました。今より一斉射撃で始末します』

 

──────()。つまり、自分をおびき出すための餌として、彼女はその命を散らした。自分の存在が、彼女を死に至らしめた。その事実と、彼女を殺したテロロリストに対する憎悪。

 

「ああああぁぁぁ…………A――urrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrッ――――――――!!」

 

それらは再び、赤黒いオーラを纏う(暴走状態)には十分すぎるトリガーだった──────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「第1位様ぁ!!」

 

牢獄の一室で作業を見学している第1位と作業中のリリィの元に飛び込んできたのはカノンだった。

 

「何だいカノン、そんな焦った様子で。また何かやらかし」

 

「星奈ちゃんがヤバいです!またあの時と(・・・・)同じ神聖力が観測されたんです!しかも、モニタリングをしていたリリィさんの部下は眠らされていて、どうやら5分前からずっと暴走しているみたいなんです!」

 

「なっ……………」

 

創真は一瞬動揺するが、すぐに冷静になってリリィとカノンの方を向く。

 

「リリィ。一旦作業は後回しだ。転移装置で行く。念のため一緒に来てくれ」

 

「了解です」

 

「カノン。全ての数字持ちに警戒態勢を取らせるように通達。作っておいた防衛システムも警戒レベルマックスで作動させろ。リリィの部下がが眠らされたということは、刺客が既に内部にいる可能性がある。気を付けろ」

 

「わ、分かりました!」

 

第1位はリリィを掴むと、牢獄の壁をぶち壊して外に出ると転移装置を作動させて星奈のいる地球へ向かうのだった──────。

 

to be continued………………




牢獄内では外部と通信が出来ないので、異変を発見したカノンは走って牢獄に来ました。お疲れさんです。

次回もお楽しみに。


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エピソードⅦ Crime and Punishment part Three

次でラストなんですけど、もう1時間後には投稿します。理由は……………………まぁ、引き延ばしにしてないでさっさと終わらせて本編に集中して、お気に入り登録者を目標の700人にまで持っていく為とかそんな感じ。

はい、よーいスタート。


殺せ。目に映るもの、全てを殺せ。何もかも壊してしまえ。

 

彼女の頭の中でそんな声が囁かれる。

 

「アハハハハハハハハ!!アハハハハハハハッ!!」

 

あの時と同じ狂気的な笑みを浮かべながら、我を失った星奈は殺戮の限りを尽くす。自身に攻撃を仕掛けてくるテロリストを1人、また1人と手に掛けていく。それを繰り返している内にテロリストは誰もいなくなった。暴走から経った5分あまりの出来事だった。

 

ガタッ

 

そんな音がした方を星奈が向くと、そこにはテーブルの下に隠れて怯えている子供の姿があった。勿論、星奈に子供たちの存在は何の害にもならない。考えるまでもなく分かるだろう、普通の状態(・・・・・)ならば。

 

「………………アハ」

 

赤黒いオーラを纏って星奈は近づく。子供たちは完全に腰が抜けているのか、泣きもせず震えるだけで動こうとしない。星奈は子供らが隠れていたテーブルを放り投げると、拳を強く握りしめる。

 

「……………………シネ!!」

 

そして、凄まじい勢いで振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………!?」

 

だが、その拳が振り下ろされる事はなかった。寸前でその拳を掴んで止めている者がいた。創真だ。創真は星奈に掴んでいない拳の方で殴られ、その拳は腹を貫通する。だが、創真はそれに表情を変えることなく、星奈の腕に予備のブレスレットを装着。その瞬間、星奈が纏っていた赤黒いオーラが消えて、正気を取り戻す。

 

「あ、れ……………………私は何を……………………ッ!?」

 

星奈は拳だけでなく体全体が赤い返り血で染まっている事、そして目の前の創真の腹に穴が空いている事に気が付くと一気に血の気が引く。創真の傷は一瞬で治ったが、それよりも創真を攻撃してしまったと言う事実に衝撃を受けていた。

 

「…………あ……………………」

 

視線を感じたかと思えば、リリィが庇っている子供らの姿があった。その目は自身を見ていて、化け物を見るような目で怯えていた。

 

「ち、違う………………私は………………ただ、皆を助けたくて……………………綾心さんを救おうと……………………」

 

「……………星奈ちゃん」

 

「来ないで!」

 

創真が近づこうとすると、星奈は拒絶の声を上げる。

 

「………私は、創真も傷付けた……………………命の恩人に対して……………………」

 

「星奈ちゃん、それは」

 

「……あぁ…………………………やっぱり、私みたいな化け物(・・・)は存在しない方が良かったんだ……………………」

 

涙が一筋流れると、星奈は窓を突き破って何処かへと去ってしまう。その後姿を創真は追うことが出来なかった。創真は床に何か落ちているのを見つける。それは星奈が身に着けていた楓からの誕生日プレゼントのネックレスだった。一先ずネックレスを回収して懐にしまう。

 

「……………………よろしいのですか?追わなくて」

 

「……………どこにいるかはすぐに感知できるし、すぐに彼女の元に移動できる。……………………ただ、追いかけても今の彼女では何も聞いてくれないだろう。それに……………」

 

「……………それに?」

 

「……………いや、何でもない。さて」

 

星奈の事だけを気に掛けている場合ではない事は創真には分かっていた。やるべき事はまだ他にもある。

 

「………………リリィ、その子供を外まで送り届けてくれ。恐らく警察が待機している。僕はここが封鎖される前に確かめたい事がある」

 

「了解しました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………ここが星奈ちゃんが暴走を始めた所だな。神聖力の残滓が濃い」

 

創真は星奈が暴走し始めたフロアに来ていた。そのフロアは星奈が暴れた跡がしっかり残っていた。辺りの壁や天井にはヒビや穴が出来ており、辺りには人間だった(・・・)ものが転がっていた。

 

「さっき、綾心と言っていたな。大方その人物が死亡した事が切っ掛けに暴走した、と言ったところか………………この世界で生きている『綾心』と言う名前の人物を調べろ」

 

創真専用のスマホに向けてそう言うと、スマホは検索結果を空中に表示する。そこには様々な『綾心』と言う人物の詳細が表示される。

 

「……………そりゃ大勢いるか。てか、全員を検索してもしょうがないだろ。………………はぁ、いつもなら考えるまでもなくすぐに分かるってのに何やってんだか。……………………今だけはこっちに集中だ。今から数十分前にこのデパートにいた『綾心』と言う人物は?」

 

星奈の事が気になってか集中できていない自分の頬を軽く叩いて喝を入れると、創真はさらに条件を絞って検索を掛ける。リストに表示される『綾心』の多くが除外され、最終的にリストに残った数は──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────『0』だった。

 

「………………初めからこの場に綾心なんて人物はいなかった、と。何者かが綾心と名乗って星奈ちゃんに近づいた。その正体は星奈ちゃんを狙う神界人、と言ったところか。後は……………………」

 

創真は近くにいたテロリストの遺体に触れると、一瞬で何かを確信したように頷く。

 

「……………………神聖術で操られていた痕跡がある。ほんの僅かだけ残滓が残っているな。僕らが来る前に痕跡を消す筈だったのだろうが、想定よりも早く僕らが来たことで痕跡を抹消しきれなかったのだろう。……………………これで確定した。全て仕組まれていた。僕の部屋に侵入しようとしていた奴も、僕を神界に呼び戻すための餌だった訳か。どうせ記憶を戻したところで得られるものも何もないだろう。……………………こっちは既に一歩出遅れていた訳か」

 

そう呟くと創真は悔しそうに拳を握りしめる。そこへ用事を終えたリリィが戻ってくる。

 

「リリィ、今回の事件は神界人の何者かのよって仕組まれていた」

 

「……………みたいですね」

 

リリィはテロリストから神聖術の痕跡を探知すると、誤魔化しは不可能と判断して同意する。

 

「どうやら今回の件での死亡者は操られていたテロリスト以外には誰もいないようです。…………………もう忘却の神聖術を行って宜しいですか?」

 

「………………あぁ、今回は神界人によって起きた介入だから『修正』を行う必要があるんだったね」

 

『修正』とは、今回の事案で言えばこの世界の人間に対し『このテロが起こったこと自体』を忘れさせる事を指す。この世界に住む人間によって引き起こされた事件などに対して『修正』は行わないが、神界人の介入で引き起こされた事案に対しては、本来起こる事がなかったものである為に『忘却の神聖術』で全ての人間から忘れさせ、さらに現場の事案の痕跡の抹消を行うことで、最初から何もなかった状態にする、言わば軌道『修正』を行うと言う事だ。なお、忘却の神聖術は神界人には効果がないように設定されている。

 

「……………………あぁ、そうだ。忘却の神聖術の対象に星奈ちゃんは含めないでくれ」

 

「それは構いませんが……………何故です?」

 

「ちよっと考えたいことがあってね。…………ダメかな?」

 

「……………。いえ、了解しました。彼女を術の対象から外します」

 

リリィが両手を広げると、空中に大きな術の文字羅列が浮かび上がる。

 

「忘却の神聖術、執行します」

 

そう宣言すると文字羅列は全方位に、ありとあらゆる方向に散らばっていく。これで誰も今回のテロ及び星奈の暴走は誰も覚えていない、例外(・・)を除いて。

 

「リリィは先に神界に戻っていてくれ。信頼できる君がいれば神界も安全だろう。現場の修復は僕が行うよ」

 

「………………分かりました」

 

そう返事をするとリリィは消え去った。

 

「さて、僕も掃除を済ませて立ち去るとするか」

 

そう呟くと、デパート内ヒビや穴が修復されていき、テロリスト達は何処かへと転送され、その血や肉片も消え去る。先ほどまで凄惨な現場だったのが、一瞬で何もかもがテロが起こる前の状態に戻っていた。

 

「……………………調べてみれば、操られていたとは言えテロリストなのには変わりがないようだね。変死死体として後で捜査機関に見つけてもらえるようにして、後の処遇は任せるとしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全ての処理を終えた後、創真は横浜にあるランドマークタワーのヘリポートに座り込んで街の風景を黙って眺めていた。暫くそうしていると、また1人ヘリポートに現れると創真の隣に座り込む。

 

「ここ、第1位様の好きな街なんでしたっけ?」

 

「正確にはここの横浜ではないけどね。人間の時、社長をやってた時は横浜に本拠地を構えていたんだ」

 

その人物は秘書官のカノンだった。

 

「…………………星奈ちゃんは今どこに?」

 

「あのデパートを飛び出して以降、ずっと高速で移動中。どこに向かっているのかは知らないが、一応周りの人に見つからないように小細工はしておいたけど」

 

「そうですか……………良いんですか?追いかけなくて」

 

「追いつこうと思えば1秒も掛からないで追いつける。………………ただ、リリィには言わなかったが今の彼女に何て言うべきか悩んでてね」

 

第1位の発言にカノンは驚いた表情を浮かべる。彼女からすれば第1位を一言で表すならば『天才』であり、彼に乗り越えられない問題などないと思っていたからだ。

 

「悩む、ですか………………少し意外です」

 

「僕にだって悩む時くらいあるさ。君たちと同じようにね」

 

「それを聞いてさらに親近感が湧きました」

 

それから暫く2人の間に沈黙が流れる。カノンも何も言わない。ただ黙って横浜の風景を眺めている。

 

「……これはまだ仮説の段階だけど、正解だと思っている」

 

何分か経った後、第1位は突然語り始める。

 

「彼女は大量虐殺を行ってしまった自分が生きていて良いのかという『葛藤』と、楓さんの『生きていて欲しい』と言う願いとの板挟みにあっていたが故に、精神的に不安定な状態で神聖力も制御できなかったのだろう」

 

「……………………楓さんの願いって、悪い意味では『呪い』だった、とも言えるわけですね」

 

「そういう解釈はあんまり好きじゃないんだけど、それも否定できないね。……………………僕が犯した最大の間違いは、彼女をその『葛藤』と向き合わせるべきか否か、その答えを明確に出来なかった。今日みたいな事が起こる前に、もっと早く結論を出すべきだった」

 

「……………………今でしたら、もう結論は出ているんですか?」

 

そう尋ねると、第1位は首を横に振る。

 

「……………彼女はまだ幼すぎる。しかも、あの殺戮は神聖力が暴走しただけで、彼女の意志で行われたわけではない。まだ幼い子供に、そんな大量虐殺の罪を背負わせるべきなのか?全て忘れさせても良いんじゃないか……………………何て考える自分()いる」

 

「……………星奈ちゃん自身に自分のした事と向き合って欲しいと思っている自分もいるって事ですよね?」

 

「……まぁ、そうだね」

 

カノンの問い掛けに第1位は静かに肯定する。

 

「カノンが僕の立場だったらどの選択が正しいと思う?」

 

「………本当に難しい事を聞いてきますね………………」

 

そう言いつつもカノンは唸りながらも考え始める。また再び沈黙が訪れれる。その沈黙が破ったのは10分後。今度はカノンだった。

 

「………………すみません、第1位様。私なりに考えたんですけど……………………正直、どっちの選択も間違っていないです。どっちも正しいと思いました」

 

「………なるほどね」

 

「………………人間や神界人とかって、1人1人に個性があって、考え方や主義もバラバラじゃないですか?だから、人の数だけ色んな『正しさ』があると思うんですよ」

 

「……………………」

 

第1位は黙って続きを促す。

 

「数ある『正しさ』の中から、どれを自分にとっての『正しさ』とするかは自分で決断しなきゃいけないんですよねー、生きていくなら」

 

「……………………」

 

「正直、面倒くさいですよ。けど、それでも選ばなきゃいけない場面は山ほどあるんですよねー……………………生きてくって難しいものですね~、ほんと」

 

「……………そうだね。確かに、僕も人間だった頃は選択の連続だったね」

 

カノンの言葉に思わず昔を思い出したのか、第1位は笑ってしまう。

 

「って、結局これ答えになってないですよね。すみません、漫画みたいに変にかっこつけた事を言っちゃて」

 

「いや、そうでもないさ」

 

そう言うと第1位は立ち上がる。

 

「確かに、この二択はどちらも間違いではないのだろうね。けど、やはりどちらが自分にとって正しいのかを選んで、その正しさを信じて今やるべきことをやらなければならない」

 

「……………………」

 

「………………君と話していて思い出した事がある。僕は人間だった頃、中学時代に恩師(殺せんせー)を殺した。人間時代の僕はその先生を殺したという事実を忘れた事もないし、忘れたいと思ったこともない。殺したことの意味やその重さを受け止め、まっすぐに見て、受け入れて生きてきた。そして、今の僕がある訳だ。……………………何で今の今まで思い出さなかったのかねぇ………………人間時代も含んで100年以上生きているが故か、それとも自分の中では当たり前の事になりすぎて、わざわざ思い出す必要もなくなってたか………………………………………………決めたよ、カノン」

 

そう呟くと、第1位の背中から2枚ずつ2対からなる純白の4枚の翼を展開された。

 

「僕は今の自分のあり方が大好きだ。だから、そんな今の自分を作ってくれた『正しさ』が、彼女の為にもなると信じる事にした。………………これで、心すっきりだ」

 

そう言ってニヤリと笑う第1位にカノンも笑みを浮かべる。

 

「………はい、それで良いと思います。きっと、私が第1位様の立場でも同じ選択をしていました」

 

「そっか。……………君がいなければ、僕はまだここでどうすべきか悩んでたかもしれない。君と話せて良かったよ。これは大きな借りが出来たな」

 

「なら、今度スイパラを奢ってください!それでチャラって事で!」

 

「良いよ、好きなだけパフェでもケーキでも食わせてやる。…………………じゃ、自分のすべき事をしに行ってくる」

 

「はい、お気をつけて!」

 

第1位は一瞬でその場から空へと飛び去る。それをカノンは見上げていた。

 

「大きな借り、かぁ…………何度も命を助けてもらってるんだし、寧ろ私の方が第1位様に借りがめっちゃあるんだけどなぁ……………………これでちょっとは借りを返せてれば良いけど……………………ま、取り合えずスイパラ楽しみって事で、あとは第1位様に任せて帰ろ!」

 

自分の尊敬する第1位なら何とかしてくれると信じ、カノンもその場から消え去るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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星奈side

 

一体、どこまで来たのだろうか。気づけば、何処かも分からない樹海に1人だった。

 

──────人殺し。

 

「……やめて…………………」

 

──────化け物

 

「あああああああああああああああああ──────!!」

 

頭の中で声がずっと響く。私を人殺しや、化け物と呼ぶ声が。どんなに走っても、叫んでもずっと響く。

 

「……………………どうして……………どうして私が生き延びてしまったの!?あの時、楓が生き残るべきだった……………………!」

 

そうだ。彼女は万能薬を開発し、多くの人を助けるという夢があった。眩しく感じるくらい、とても素晴らしい夢だった。けれど、その夢は志半ばで途絶えてしまった。私がいたから。私なんかが存在していたからだ。

 

あの時、私が死ぬべきだった。

 

『──────そう。あの時、あなたが死ぬべきだった』

 

「ッ────!?」

 

目の前にいたのは綾心。頭からは血を流していて、その目は虚ろだった。

 

『あなたが悪いんだよ。あの時、生きたいなんて願ったから。だから、彼女は──────私の妹は死んだの』

 

「い、もうと……………………まさか……………………」

 

『そう。楓は可愛い妹だったのに、あなたのせいで死んだ』

 

膝をついて頭を抱えてしまう。涙が溢れて止まらない。もう何も聞きたくない。けど、綾心の声が頭に響く。

 

『あなたは本当に傲慢だね、星奈ちゃん。よーく考えてみなよ。人殺しに生きる資格なんてあると思うの?』

 

「………ぁ……………」

 

『沢山の人の命を、人生を奪って。その家族まで悲しめて。なのに、自分だけはのうのうと普通の人生を送ろうとしている。……………………そんなの許される訳ないよねぇ?』

 

…………………何も言えない。言い返せない。全部、綾心が正しい。

 

『純粋な人間ですらな、化け物のあなたに生きる資格何てないんだよ。なのに、あなたは普通の人生を望んだ。だから、罰が当たったんだよ。禁止されていた神聖力を行使して暴走し、私も死んだ。多くの人が死んだ』

 

「……っ……………」

 

『生きていくなんて考えない方が良いよ。多くの人を殺した罪を背負って生きるなんて、ずっと茨の地獄を歩くようなものだよ』

 

……………………確かに、その通りかもしれない。

 

『けどまぁ、星奈ちゃんは私を助けようとしれくれたしね。良いことを教えてあげる。君の罪を償う方法を』

 

綾心がそう言うと、私の目の前に小型のナイフが落ちてきた。

 

『命を奪ったからには、命で償うのが筋でしょ?だから、死をもってあなたの罪は償われる。そして、あなたを蝕んでいる苦しみからも解放されるなんて、最高じゃない?』

 

………………。それは…………………何とも魅力的だ。私なんかの死で罪が償えるのなら、安いものだ。私の命など他の人間と比べれば軽いのだから。

 

これで全て終わりる。何もかもが、この一瞬で。私はナイフを持つと、自分の心臓に向けて狙いを定める。目を瞑り、勢いよく心臓めがけてナイフを振り下ろした──────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────だが。

 

「……………………?」

 

来るはずの痛みも、衝撃もない。まだ意識もある。ゆっくりと目を開ける。ナイフは刺さる寸前で止まっていた。だが、止めたのは綾心でもない。創真でもない。そもそも、誰も止めていない。

 

──────止めたのは自分だった。

 

「……何で?」

 

「何でって、そんなの単純明快だよ」

 

声のした真上を向くと、創真が木の枝に座って私を見下ろしていた。

 

「回りくどいのは面倒だからはっきりと言おう。君がどんなに口先では死のうと言っても、心の奥底では生きたいと望んでいる。ただそれだけさ」

 

「違う!私は、もう生きるのなんて」

 

「じゃあ、何でそのナイフで刺すのを止めたんだい?」

 

「それは………………」

 

言葉に詰まる私の前に創真は降りてくると、私が持っていたナイフを一瞬で取り上げて、そのまま私から背を向けて少し離れる。

 

「………………仕方ない、少々手荒だが分からせてやるとしよう。君が心の奥底で望んでいる気持ちに、ね!」

 

そう言って私の方を振り向いた創真の手に持つナイフが私の心臓めがけて投げられる。そのナイフを受け入れるように私は手を広げる。そして、ナイフ私の心臓を貫いて──────

 

「っ…………!?」

 

──────ナイフは無意識に私の手がキャッチしていた。

 

「これで、もう言い逃れは出来ないね」

 

「……………………。あぁ……………………そっか。私、この期に及んでまだ生きたいなんて思ってるんだ…………大勢の人を殺した化け物なのに…………」

 

手からナイフが落ちて、私の足に刺さる寸前で創真がナイフを回収すると、そのまま粉々にしてしまう。そのまま創真は膝をついて私と目を合わせて話し始める。

 

「生きたいと思う事を悪いと思っているなら、全くもってばかばかしい。何故なら、生きたいと思うことは、君が化け物ではなくれっきとした人間である事の証拠だ。生きたいと思う自分を卑下する必要は全くもってない」

 

「………でも…………私は、人を沢山殺して……………………」

 

「……………気に入らないな。君は人殺しに生きる資格などないと本当に思っているのかい?もしそれが正しいのなら、僕も生きる資格がない事になってしまうんだがね」

 

「え……………」

 

創真にも生きる資格がなくなる……………………まさか。

 

「…………………僕も人間だった頃、人を殺したことがある。まぁ、正確に言えば人とは言えないかもしれないが……………………殺したのは中学校3年生の時の恩師さ」

 

「…………………」

 

「僕が……………いや、僕らが殺らなくてもどっちみちその先生は死んでいた。けど、絆を守って卒業する為に、恩師にすべき事だと皆分かっていた。だから、殺した事に後悔は一切ない」

 

創真がどういう状況だったのかは分からないが、その先生を殺したことに後悔はない事だけは分かった。…………………ふと、創真に聞いてみたい事が出来た。

 

「……創真は……………殺したと言う事実を受け止められたの?大切な恩師を殺したと言う事実を、忘れたいと思ったことはないの………………?」

 

「ないね」

 

私の質問に創真は即答だった。

 

「殺したという事実から目を背けるのは、正しくないと僕は思ってる。殺したことの意味やその重さを受け止め、まっすぐに見て、受け入れていかなきゃならないんだよ。後悔なく、胸を張って生きてくためにはね」

 

殺したことの意味やその重さを受け止め、まっすぐに見て、受け入れる……………………。

 

「…………………実を言うと、僕は迷っていた。君に自分のした事と向き合わせるべきか、それともまだ幼い君に自分のした事と向き合わせるのは過酷だから、忘れさせても良いんじゃないかって。どちらも正しいが故に、僕はすぐに答えを出せなかった。答えを出さずに君と生活していたが故に、君にまた手を掛けさせてしまった。………………けど、もう迷わないよ」

 

「!」

 

「君にあえて酷な事を問おう。星奈ちゃん、君が生きることを望むなら、多くの命を奪ったことの意味やその重さを受け止め、目を離さず向き合わなければならない。……………君にその覚悟はあるかい?」

 

「…………私は……………………」

 

真剣な目で創真は聞いてくる。多くの命を奪ったことの意味やその重さを受け止め、目を離さず向き合う覚悟。……………………私に出来るのだろうか?

 

『余計な事をしてくれるなぁ………………けど、今ならまだ行けるかな?』

 

ここまで黙っていた綾心がそう呟くと、辺りから人型のロボットが空を埋め尽くす程の数で現れる。そして、そのまま私目掛けて攻撃してくるが、その攻撃を創真がシールドを張って全て防ぐ。

 

「創真!」

 

「なぁに、心配しなさんな。この程度、どうってことない。何故なら、僕は強いからね」

 

……………………確かにそうだ。創真は強い。力的な意味でも、精神的な意味でも。それに比べて私は──────

 

「……………………私は、強くない。1人で自分のしたことに向き合える自信なんて…………………ない……………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………けど」

 

けど、それでも私は……………私は……………………!

 

「…………私は、生きたい………………生きて……………………幸せになりたいよぉ…………!!」

 

言ってしまってから、『あぁ、やっぱりそうなのだ』と実感した。私の1番の望みは『生きて幸せになる』事なんだ。それはたぶん、誰もが心の底では抱いている想い。結局、私は他の女の子と同じような存在だったんだ。……………漸く、私と言う人間(・・)の事が分かった気がする。

 

「……………………創真。1つだけお願いがある」

 

「良いよ、言ってごらん」

 

「私は………あなたみたいに強くない………自分のしたことに1人で向き合える自信がない。けど……………………見て見ぬふりは出来ない。向き合わなければならない。だって、私は生きて、幸せになりたいから……………!」

 

「うん」

 

「……………だから…………私が自分のした事と向き合えるように…………私を支えて欲しい………………!」

 

それを聞いた創真は私の方を向くと嬉しそうに笑う。

 

「勿論、喜んで支えるよ。と言うか、頼まれずとも支えるさ。だって、血は繋がって無くとも僕は君の父親(・・)だからね。そうだろう?」

 

「………うん…………うん……………!」

 

思わず創真に抱き着く。創真は私を受け止めて、頭を撫でてくれる。暖かい手で、とても落ち着くものだった。

 

『…………あーあ。完全に立ち直っちゃったか。これで私の……………………いや、()の計画はパーだな』

 

そう呟く綾心だが、その姿が一瞬にして知らない男に変わった。

 

「あ、綾心じゃない…………?」

 

「綾心なんて人物は最初から存在しないよ。ここにいるのは、君のデパートでの暴走を引き起こした黒幕、殺し屋の神界人『マインドキラー』だけだ」

 

「……………楓の姉って言うのとかは、私を暴走させて自害に追い込むための嘘だったって事……………………?」

 

「あぁ、お前の言う通り。楓って奴に姉なんていねーよ。ぜーんぶ嘘に決まってるだろ。楓って奴を連想させるように顔立ちを変えたり振舞うようにして、あとは色々と動揺させる事を言って、ある程度精神的に揺さぶりを掛けさせた所でテロリストに殺されたように見せかければ、お前は暴走すると踏んだ。そして、結果的に俺のシナリオ通りに事は進み、あとは精神的に完全に参ってしまったお前をとどめとばかりに追い詰めて、自死させれば俺の任務は完了だったんだが……………………あと一歩のところでしくったか」

 

………………そうか、あの時制御装置のブレスレットがなかったのもこいつの仕業か。そう言えば、握手したときにブレスレットを触られていた。あの時に何かされたのだろう。デパートで見た楓の幻もあいつが見せた幻影。

 

全てこいつの仕業だったのだ。

 

「噂で聞いたことがある。標的を精神的に追い詰め、自害させる殺し屋。何とも悪趣味な奴だ」

 

「つれないねぇ、第1位。お前だって人間時代に殺し屋ごっこをしてたじゃねぇか。俺はお前と同じ穴の貉なん」

 

創真は一瞬でマインドキラーのもとに移動し、蹴りで空中から叩き落すがガードされていたのかあまり効いていないようだった。

 

「お前なんかと一緒にするなよ。僕はお前みたいな悪趣味はない」

 

「そうかい、そいつは残念だ。……………仕方がない、さすがに第1位を相手にしては叶わない。ここは退くとしよう」

 

「………………そうはさせない」

 

私はマインドキラーの前に立ちはだかる。楓と似た姿で私を追い詰め、あの星の写真など楓との思い出を利用された。この借りは返さなければ、私の気が済まない。

 

「…………………星奈ちゃん、そいつは君に任せるよ。僕はこの馬鹿みたいな数のロボットを片付ける。……………もう、君に枷は必要ない。必要なのはこれだけだ」

 

そう言うと、腕についていたブレスレットが外れる。そして、目の前にあのネックレスが浮かぶ。それを受け取ると、私は首に掛けた。

 

「ハッ、気でも狂ったか第1位。こんなガキに俺が負ける訳ねぇ。感謝するぜ、俺に任務完了のチャンスを与えてくれたことに」

 

「いやぁ、無理でしょ。だって君

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弱いもん(笑)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「……………舐めた事抜かしてんじゃねぇぞ、クソが!!決めたぜ、このガキを絶対ぶっ殺してやる!!ただ殺すだけじゃない、苦痛に満ちた死を与えてやる!!」

 

煽り耐性のないマインドキラーは殺意マックスで星奈を見据える。だが、創真に動揺した様子はない。

 

「弱い犬ほどよく吠えるとはよく言ったものだ。……………………星奈ちゃん、君が今まで神聖力を制御出来なかったのは、人殺しを行ってしまった自分が生きていて良いのかという『葛藤』と、楓さんの生きていて欲しいと言う『願い』との板挟みにあっていたが故に、精神的に不安定な状態で神聖力も制御できなかった。けど、今の君ならもう大丈夫。だろ?」

 

「…………………うん。私はもう迷わない。生きるって、決めたから!」

 

星奈は神聖力を全力で開放する。彼女の全身から神聖力の白い光が放出されるが、その色が青色に変わる。彼女の体にも変化が起き、幼い体が一気に成長して、服がビリビリと破れていく。

 

「(なんだこのとてつもない出力は……………!?神聖力を完全に制御したとでも言うのか?!まずい、奴を今すぐ殺せと俺の直感が叫んでいる!)」

 

マインドキラーは星奈に襲い掛かるが、突如として布のような黒い影が地面から出てきて行く手を阻む。

 

「駄目じゃないか、今はプリキュアで言う変身シーンみたいなものなんだから。それを邪魔するのはご法度だよ」

 

そのまま黒い影は星奈を覆う。そして、影が霧散すると星奈の全容が見えてくる。髪型は変わらないものの、身長が伸び、胸も大きくなるなど子供から大人の体に成長していた。その身には黒スーツを身に纏っており、その首にはあのネックレスが掛けられている。

 

「な、なんだその姿は……………………!?」

 

「彼女は自分のした事と向き合う覚悟を決め、生きていくことを決意した事で精神が安定し、神聖力を完全に制御した。神聖力もフルパワーで使用できるようになり、それに合わせて体が適した姿…………………いや、ここは成長した言っておこうか」

 

「………………創真、あの機械の大群はお願い。私はこの男の相手を」

 

そう言うと星奈は青い神聖力を身に纏い、飛び出すのだった──────。

 

to be continued………




金沢に旅行行きてー(唐突)


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エピソードⅧ She lives by saving people.

つい1時間前に前話を投稿してるので、まだ見てない読者の方はそちらを先にどうぞ。

……………………見に来てもらっておいて言うのもあれですが、もっと夜中の1時何で早めに寝た方がええで。なお、作者は投稿直後は寝ている予定。


星奈は言わば、人間と神界人の境界線に立つ存在。神界人として見ても、人間としても半端者の存在。

 

故に、マインドキラーは大した脅威にはならないと想定していた。

 

彼の手口は策を巡らせて、精神的に攻撃して標的を自死に追い込むものだ。この手口を取る理由は、彼が神界人の中では戦闘能力が低い方だからだ。故に、戦闘せずに勝つ方法を模索した結果、今の手口を確立させて殺し屋としての名声を手に入れた。

 

だが、今回の相手は半端者の女。故に、彼女相手ならば自分でも勝てる──────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────そう考えていた時期が彼にもあった。

 

「ハアッ!!」

 

「おぐふっ!?」

 

星奈の拳がマインドキラーの腹にめり込み、多くの木を破壊しながら後ろに吹き飛び、地面に這いつくばる。

 

「ウガァ…………くそっ、たかがパンチだぞ……………早く治れ……………!」

 

治癒の神聖術を掛けるが、どういう訳か治りが遅い。それに苛立ちを感じていると、星奈の追撃の攻撃が襲い掛かる。何とかスレスレで避けると、今度は神聖術の攻撃を仕掛ける。

 

「死ねぇ!!」

 

氷や炎属性の攻撃が星奈を襲うが、その攻撃は星奈が身に纏う神聖力に触れた瞬間、一瞬で無効化されて粒子となって消え去った。

 

「んなっ!?ど、どういう事だ!?」

 

『どうして君の治癒が遅れて、君の神聖術が通用しないのか……………不思議だよねぇ?』

 

「第1位!?」

 

脳内に直接、第1位が話しかける。人を煽るような楽し気な様子で。

 

『ちょーっと考えれば分かる事なのにね。分からないようだから、心優しい僕が教えてあげるよ』

 

「黙れ!!」

 

『彼女は対神兵器をコンセプトに研究がされていたんだ。つまり、彼女は神界人との戦闘において強さを最大限発揮する。彼女が行使する神聖力は2つ特徴がある。1つめは、自分の身体に触れる全ての神聖力及び神聖術による攻撃を無効化する。2つめは、彼女の攻撃は神界人に対してはとてつもない威力を発揮する。君の治癒が遅れるのはそう言う事だ』

 

「何だ、それ………………俺との相性は最悪って事じゃねぇか……………………」

 

『そうだね、君にとって戦う相手としては最悪の相性だね。逆に彼女にとっては、最高に相性が良いけど』

 

星奈の拳がマインドキラーに迫る。反射的にシールドを張るが、そのシールドも意味を為さず無効化される。ギリギリで避けると、マインドキラーは距離を取る。

 

「(どうする?どうする?どうする?どうする?どうする?どうする?どうする?どうする?どうする? 空から攻撃をするか?いや、空には第1位がいる。自ら奴に隙だらけの背中を見せる事になる…………!そもそも、神聖術による攻撃は効かない。なら、それ以外のナイフとかで……………………!)」

 

マインドキラーが駆け出すのを星奈も追い掛ける。マインドキラーは先ほどまで星奈が使おうとしていたナイフを手に拾うと、星奈に襲い掛かる。星奈も創真によって上から降ってきたナイフを手に取ると、マインドキラーとナイフによる鍔迫り合いを繰り広げる。

 

「心からじわじわと殺していく快感を味わえていたのに、めんどくさ事にしてくれたなぁ!!あの時、死んでいれば良かったものを!!どうせ第1位に俺は勝てない、なら俺の楽しみを奪ばった罪をお前の死で償え!!」

 

「………かわいそうな人。そんな事でしか、楽しみを味わえないなんて。ほんとうにかわいそうな人」

 

「半端者ごときが俺を憐れむな!!お前なんぞに憐れまれるほど、俺は落ちぶれていない!!」

 

「………うんん、今から落ちぶれるよ。だって」

 

星奈はマインドキラーのナイフを蹴りで空へと上げた。

 

「あなたは、ここで私に負けるから!!」

 

「舐めるなァ!!」

 

マインドキラーは神聖力を纏わない手で殴りかかるが、クロスカウンターで逆に頬に星奈の拳の攻撃がクリーンヒットで命中。怯んだ隙に、星奈はマインドキラーの胸元を掴むとそのまま上空に放り投げ、自身もジャンプする。マインドキラーを追い越して樹海の木の高さを超えると、星奈の視界には三日月と星空が広がっていた。

 

「(……………………楓。私、今この世界がとても居心地が良いんだ。神聖力を完全に制御出来るようになったのもあるけど、自分の生き方を私自身がしっかりと決めれたのが1番の要因かも知れない……………………あなたにもらったこの命が果てるまで、私は生き続ける事をこの星空に誓う……………………だから、見ててね)」

 

心の中でそう誓うと、星奈は足に神聖力を集中させる。そして、遅れて上がってきたマインドキラーに目掛けてキックを放つ。

 

「これで、終わり!」

 

「ガァァァァァァァァァァァァァァァ!?」

 

星奈の蹴りが腹部に命中し、マインドキラーは彼女ごと急降下。樹木を何本折ってもその威力は止まる事無く、結局少し離れたところにあった崖に叩きつけられるまで止まらなかった。星奈はマインドキラーを叩きつけた後、そのまま弧を描くような軌跡を描きながら1回転して着地する。

 

「素晴らしい、流石は僕の娘だ。やはり、彼では相手にはならなかったか」

 

服に着いた戦闘マシンの残骸を払いながら創真が近づいてくる。どうやらケリがついたようだ。

 

「怪我はない?」

 

「うん、私は全然大丈夫。……この人全然動かないけど、大丈夫なの?」

 

「気絶してるだけだから大丈夫。そして、今度は自爆も許さない。リリィ」

 

いつからいたのか、現れたリリィがマインドキラーを作り出した青い結晶体の中に閉じ込める。

 

「あらゆる神聖術の干渉・作動を防ぐ結晶体に閉じ込めました。これで自決は不可能です」

 

「ナイスだ、リリィ」

 

「…………いえ、それほどでも。では、彼を連行します」

 

そう言うとリリィは消え去るのだった。

 

「今の人は……………?」

 

「序列第2位のリリィさ。君の事もちょこちょこ相談してた。僕の秘書官と別のベクトルで頼りがいある数字持ちさ。……………にしても」

 

創真は星奈の全身を改めて見ながらそう呟く。

 

「先ほどまでは小学生レベルだったのに、今となっては大学生レベルだね。急成長しすぎじゃない?」

 

「確かに……………この格好だともう電車の運賃とかもこども料金じゃなくて大人料金で払わないと」

 

「(真っ先に気にするのそこ?)」

 

もっと他に気にする事があるのではないかと思いつつも、創真はある提案をする。

 

「星奈ちゃん、僕に提案がある」

 

「提案?」

 

「いろんな世界を見て回る旅をするってのはどう?」

 

「旅………………?」

 

「この世にはいろんな世界があって、いろんな人や景色、文化がある。君の世界を広げる為にも、精神的な成長をする為にも色んなものを見て回るべきだと思ってね。その経験は今後の君の人生を豊かにしてくれると思うんだが、どうかな?」

 

「…………………うん、凄く良いと思う。私も、私が知らない事を沢山知ってみたい」

 

「決まりだね。準備が出来次第行くか。僕もリモートで仕事する用意しとかなくちゃね。……………………あぁ、それと。君は気付いているかな?」

 

「?」

 

分かってなさそうな雰囲気の星奈に、創真は上を指す。星奈が空を見上げると、そこには満点の星空が輝いていた。

 

「すごい……………!」

 

「ここは楓さんが君み見せた星空の写真が取られた場所さ。この場所で、星の下で君は大きく変わった。これも縁かな」

 

創真はスマホでパシャッと写真を撮る。撮った写真には星空に笑顔で目を輝かせる星奈が映っていた。

 

「何とも良い笑顔をするようになったじゃないか。良かった良かった」

 

そう言って創真は優しい笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

言語設定… オート…

                                           

                                ID入力を確認。

                                           

                                認証システム… 作動…

                                           

                                認証中…… 認証中……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                        認証完了。機密任務に関する情報をアンロック。

 

《機密任務に関する報告》

 

今回のマインドキラーによる対神兵器の始末は失敗に終わった。さらに、マインドキラーが作り出した状況を第1位に利用され、対象の覚醒を促してしまう結果となった。今回の一件をもとに議論した結果、対神兵器の始末は暫く見送る運びとなった。奴を始末するには大きな戦力を動員する必要が見受けられるが、大きな戦力を動かせばすぐさま第1位に探知され、大きな損害を負ってしまう可能性があるからだ。幸い、対神兵器を詳細に調べても我々の元へは辿り着く事はなかった事と、第1位は対神兵器を普通の人間として生活させるつもりである事が潜入者からの情報で発覚している。これ以上、こちらから不用意に手出しをする必要もない。以降、対神兵器に手出しを出すことは厳禁とする。破った者は処罰の対象となるので注意されたし。

 

《追記》

捕らえられたマインドキラーは潜入者が隙を見て始末予定

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────5年後。

 

星奈は創真と共にマンションの屋上から夜の街を見下ろしていた。

 

「それで、旅はどうだった?」

 

「……………多くの喜びも、悲しみも、怒りも、いろんな景色を見ました。それら全てが糧となって今の成長した私がいます。だから、とても有意義な旅でした」

 

「そっか」

 

5年の間、創真と星奈は共に文字通り色んな世界を渡り歩いて旅してきた。そこで多くの景色を見て、人や文化と触れ合う事で星奈は大きく成長した。年齢的には彼女は子供なのだが、その精神はもはや大人のものと大差はなくなった。

 

「…………………本当に行ってしまうんですね」

 

「あぁ。僕にもやるべき事があるからね。……………別に今生の別れじゃないんだから、そんなに悲しそうにするな。ちょくちょく会いに行くからさ」

 

それに、と創真は続ける。

 

「君は1人じゃない。遠く離れていても、愛する人はずっと見守っている──────僕の好きなとあるアニメの名言さ」

 

「…………………そうですね、その通りだと思います」

 

星奈は首に掛けているネックレスに触れながらそう頷くのだった。

 

「星奈ちゃんは今後はどうしたいかは決めた?一応高卒認定試験は受かっているから大学や専門学校に行くのもありだし、いきなり働き出すのも全然良いし」

 

「………実はまだ決めかねていて。もう少し考えてから決めたいと思います」

 

「そっか。まぁ、時間はたくさんある。大いに悩むと良いさ。………………じゃ、僕はそろそろ行くよ」

 

創真は立ち上がって背伸びすると、星奈の方を向く。

 

「…………そうだ。創真さんにこれだけは伝えておかないと」

 

「ん?」

 

「……………私はこれまで多くの人の命を奪ってきました。だから、これからはこの力で私の手が届く範囲で多くの人を助ける。それが、私に出来る償い……………………『自分のした事と向き合う』という事だと思うから」

 

「……………………」

 

それが旅で成長した星奈が出した結論だった。その答えを聞いた創真は静かに笑う。そのまま彼女の頭を優しく撫でる。

 

「!」

 

「…………本当に成長したね」

 

それ以上の言葉は2人にはもう不要だった。創真は白い光に包まれると、その場から消え去るのだった。

 

「…………また会いましょう、お父さん」

 

星奈は暫くの間空を見上げて創真を見送る。そんな彼女の姿を星が静かに見守っているのだった──────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………お父さん、ね。人間だった時以来に久しぶりに呼ばれたものだ」

 

「え?何か言いましたか?」

 

「いや、何でもないよカノン」

 

旅の写真を眺めていた創真はタブレットをデスクの上に置くと、椅子に深く腰掛ける。

 

「さぁ、カノン。仕事だ仕事。仕事が僕たちを待っているよ」

 

「うぅ……………『秘書官カノンの憂鬱』って名前で小説でも出しましょうかね………………」

 

「君、最近ハルヒ見た?」

 

「アニメ版のエンドレスエイトは生き地獄でした。新手の拷問じゃないですか、アレ」

 

流石はエンドレスエイト、神界人も生き地獄と言わせる特級呪物である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、数年後

 

ど゛う゛し゛て゛な゛ん゛だ゛よ゛お゛お゛ぉ゛お゛!゛!゛!゛(藤〇竜也)

 

「(え、えぇ………?)」

 

──────星奈はとあるヤベー奴男と出会うのだが、その出会いはいずれ幕間の物語にて。

 

to be continued…………




お久しぶり、藤〇竜也。

実は星奈さんが総悟よりも果てしなく年下だったと言うね。姉ではなく実は妹ポジ。とはいえ、肝心の総悟が振舞からしてあまり年上に見えないと言う悲しい事実。なので、実際は総悟も本編で言っていた通り姉ポジ。それでええんか総悟

修学旅行編が終わったら幕間の物語で星奈さんと総悟の出会いを描きます。

こっからは愚痴まじりの感想的な。

漸く番外編が終了。何か色々と勉強になった期間でした。番外編を投稿してて分かったのが、読者の皆様のニーズって『番外編とかええから本編見たいんじゃ!』何ですよね。現にお気に入り登録者が10人近く減ってもた。オワタ。

どうせ見限るなら本編見て見限ってほしかったような……………………まぁ、しゃーない。

ただ、ここまで減ったのは初めてなんでね。少しは凹むんだわ…………あー、もう何だかなぁ………………………………ナゲットマン!!(唐突な叫び)

まぁ、私はお気に入り登録者とか評価とかポジティブ系の感想がモチベの源泉なんでね(承認欲求モンスター)。もはや後藤ひとり。

とりまこの小説では番外編はもう書かないかなー。つーか、書くのも特にないし。強いて言うなら村正ちゃん(皆覚えてる?)の過去編とかだけど……………………まぁ、書くなら1話完結で済ませるか、本編中のどっかで軽く語るとかにします。これでまた長ったらしく書いてお気に入り登録者や評価が減ったらマジで書く気が失せて活動休止しかねん!完結はさせたいんや、だからモチベは保ちたい!

と、言う訳で書いたらすっきりしたんでここら辺で。では、次は約1年ぶりの本編で。

……………………ちょい待て、1年も本編進んでなかった事に今マジでビビった。皆すまねぇ。こっからは寄り道なしで行くから、応援よろしくお願いしますばい!


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