物語を斬り開く聖なる刃 (天空を見上げる猫)
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01 選ばれしは、小説家の少女
『炎の剣士は自身の可能性を確かめる為に剣を振るい、水の剣士は友と共に歩む為に技を磨き、雷の剣士は大切な者達の幸せの為に戦い、天空の騎士は守りたい者達の為に力を望む。これは4人の少年少女が運命を斬り開く物語。…なんてね、やっぱり語り部みたいな話し方は合わないね。さて…楽しみにしているよ、君達が歩む物語の結末を。』
とある会社の個室、そこには二人の女性が対面していた。一人は黒髪をポニーテールにし、少し大人びた雰囲気をした少女、もう一人は金髪に紅と蒼のメッシュが入った優しい目付きの女性が一台のテーブルを挟んで対峙してており、女性の手には原稿用紙の束が握られていた。
「…。」
「…うん、バッチリですね。今回もお疲れ様です、羽斬先生。さて、学生と作家を兼業してるのに締め切りを守って面白い話を書ける。本当に箒ちゃんには感謝しかないね。」
「ふぅ…ありがとうございます。いえ、感謝しきれないのは私の方です。さんの家に居候させて貰えるだけでなく私に作家としてデビューする切っ掛けとチャンスをくださったんですから。」
「ふふ、それこそ気にしなくて良いのに。居候の件だって貴女の事が心配な御両親が直接私に頼んだ事だし、その切っ掛けとチャンスを自分の物にしたのは他でも無い箒ちゃん自身よ。それにしても…良かったの?IS学園の入学に了承して。」
「えぇ、元々IS学園に行きたいと思っていたので、時間を作ってISの勉強もしていましたから。少なくともIS学園では篠ノ之束の妹として見られるかもしれませんが私は私ですので。」
「そっか、箒ちゃん自身が決めた事なら私は何も言わないよ。勿論、私達もサポートするね。あ、どうする?今日、私はまだやる事があるから一緒に帰れないんだけど…。」
「何度か1人で帰った事もあるので大丈夫ですよ。それに買い出しを頼まれているので…ッ!?」
箒が話している時、あるイメージが脳内に広がる。それは灼熱の炎に包まれている世界が広がり、1本の剣が地面に突き刺さっていた。そして剣の背後に1体の紅い龍が浮遊しており、まるで目の前にある剣を守護している様であった。
「…ん?…ちゃん、…うきちゃん!箒ちゃん!!」
「…ハッ!?閃華…さん?」
「良かった…!急に黙ったから心配したんだよ?気分は?本当にどうしたの?」
「だ、大丈夫です。ただ急に頭の中に現実離れしたイメージが浮かんだんです。その現実離れしたイメージがあまりにも鮮明で驚いたんです。」
「現実離れしたイメージ?」
「はい…辺り一面燃えてて、剣が1本だけ地面に突き刺さってて…あ、後、紅い龍がその剣を守る様に浮かんでいました。」
「っ!?箒ちゃん!それって本当!?」
「え、えぇ…そのイメージがどうしたんですか?」
閃華は箒から聞いたイメージの内容を聞くと驚き、慌てながら直ぐに確認する。箒は閃華の慌て様に困惑しながら質問する。
「…箒ちゃん。今から私に着いて来てくれる?」
「?分かりました。」
箒は疑問に思いながら言われた通り閃華に着いて行く。そして途中で閃華は箒の疑問に答えるながら移動する事にした。
「箒ちゃんには話したよね。私達の会社アヴァロンは色んな事業を展開して、ISの武装とかも製造してるって。」
「はい、主に近接武装を製造していて特に片手剣タイプの【エクス】と大剣タイプの【ガラティン】は特に、多くのIS操縦者が使用していますよね。」
「うん。そして今アヴァロンは武装だけでじゃなくて、3機のISを開発に成功しいて、その内の2機は既に操縦者が決まってるよ。その内の1人はテストパイロットとしてIS学園に入学するんだけど…一応、あの娘も入学する予定なんだけど少し問題があって、その問題が片付いたらになるから箒ちゃん達とはタイミングが合わないんだよね。」
「あぁ…そう言えばそんな事言ってましたね。…うん?まさか…」
「うん。箒ちゃんには最後の1機を専用機として託したいと思う。」
「ま、待ってください!?私はIS学園には入学しますが代表候補生ではないですし、IS適正に至ってはCですよ!?それなのに専用機なんて…」
「箒ちゃんなら大丈夫。むしろ、箒ちゃんだからだよ。それに…箒ちゃんは
「それはどう言う…」
「着いたよ。」
箒は閃華に技術開発室と表示されている場所に連れられてカードキーを使い中へと入り、箒も閃華に続いて入る。そこではパソコンやタブレットを操作している人達が殆どであった。
「皆、お疲れ様。」
「!鳴神さん、お疲れ様です。今日は此方に来られる予定ではなかった筈では?」
「うん。そうなんだけど、ちょっと事情が事情だからね。急遽此方に来たんだ。」
「事情…?っとこの娘は確か…篠ノ之箒さんですね。初めまして、技術開発部門責任者の桜木睡蓮です。」
「ど、どうも、閃華さんのお世話になっている。篠ノ之箒です。宜しくお願いします。」
「宜しくね。ところで鳴神さん、先程言っていた事情と何故箒さんを此処に?」
「その事なんだけど、箒ちゃんは
『!?』
閃華の言葉に作業をしていた人達が驚き、一斉に顔を上げて箒に注目する。一方注目されている箒は冷や汗を掻きながら、先程から閃華から口に出している選ばれたに疑問に思っていた。
「ッ!?それは本当ですか!?」
「うん。さっき箒ちゃんに確認したら灼熱の大地に突き刺さった1本の剣、そしてその剣を守護する様に浮遊した紅い龍。あの2人と同じ様に、それぞれの世界と聖剣、そして守護者のイメージが見えたみたいだからね。」
「成る程…確かにそれなら納得ですね。箒さん、此方にあるテストルームへ。」
「分かりました。(選ばれた…か、それが本当かは分からないが…やれるだけの事をやろう。)」
箒は案内されたテストルームへと向かい、技術開発部の技術者達が準備を始める。そして、技術者達は期待の眼差しを向けていた。その自身に向けられている期待の眼差しに困惑していた。
(なんと言うか…純粋に私に期待されるのに慣れていないからむず痒いな…)
「では箒さん、此方を。」
「これは…」
睡蓮は箒にアタッシュケースを差し出して中身を見せる。アタッシュケースの中には金色の文字が刻印され、3つの装填スロットがある鞘に納められ鍔部分に金色でX字の紋章のある炎の様な装飾のある剣と紅い龍の表紙をした紅い本が入っていた。
「此方が私達が完成させたIS…【セイバー】の待機状態の【聖剣ソードライバー】と【ブレイブドラゴン】です。では、最初に【聖剣ソードライバー】を腰に当ててください。」
「分かりました。…こうか?うおっ!?凄いな…自動で巻き付いた…」
箒は言われた通りに【聖剣ソードライバー】を腰に当てると自動で紅いベルトが自身の腰に巻き付き驚き声を上げ、睡蓮と閃華は頷いていた。
「次に【ブレイブドラゴン】を開いて起動させてください。開くと音声が鳴るので鳴り終わると【ブレイブドラゴン】を閉じてください。」
「はい。」
《ブレイブドラゴン!かつて、全てを滅ぼすほどの偉大な力を手にした神獣がいた…》
『開いた…!』
(開いた?普通に開けたんだが…まるで開かないみたいな言い方だな?まぁ、音声も鳴り終わったみたいだから閉じてっと。)
「続いて箒さんから見て右のスロットに【ブレイブドラゴン】を装填してください。そして装填したら【聖剣ソードライバー】に納められた【火炎剣烈火】を握ってください。」
「右のスロットに装填…ッ!?」♪~♪
箒が【ブレイブドラゴン】をスロットに差し右手を柄の部分を掴み、待機音声が鳴ると同時に、先程頭の中に浮かんだイメージと同じ光景が目の前に広がっていた。しかし、箒は先程浮かんだ光景と違う点がある事に気付く。灼熱の大地に突き刺さった剣は同じであるが紅い龍は居らず、深紅のドレスを身に纏い深紅の髪を持つ女性が剣の前に立っていた。
「此処は!?ッ!」
『お待ちしていました、選ばれし少女よ。炎の聖剣と紅き龍は貴女を歓迎します。』
「選ばれた…か、閃華さんも言っていたが、それは私が姉さん…篠ノ之束の妹だからか?」
『あぁ…そう言えばあの方の妹でしたね。答えはNOです。あの方の妹であってもなくても貴女を選びました。それに周りが何と言おうと貴女は貴女で、選んだのは私なのですから。さて、話は此処までにして最後の行程です。この剣を…いえ、【火炎剣烈火】を引き抜いてください。」
「この剣を…(!この光景もそうだが、剣も燃えているのに熱くない。むしろ…暖かい。それに、この人?の言葉からは嘘を感じない…それに私を選んで信じている、なら…今度は私が!私自身を!私を信じている人達の期待に応えてみせる!)」
箒がゆっくりと【火炎剣烈火】の柄に触れ、力強く握り締める。その瞬間に現実世界とリンクし、閃華の声が聞こえてくる。
「箒ちゃん、そのまま起動コードと共に【火炎剣烈火】を引き抜いて!起動コードは…』
『息を吸ってそのまま力を込めて、体の奥底から全力で私の言う通り叫んでください…』
「『抜刀。』」
「抜刀!」
《烈火抜刀!ブレイブドラゴン!》
箒は閃華と女性に言われた通りに全力で抜刀と叫びながら【聖剣ソードライバー】から【火炎剣烈火】を引き抜き、そのまま交差する様に大きく斬り付ける。
《烈火一冊!勇気の竜と火炎剣烈火が交わる時、真紅の剣が悪を貫く!》
音声が流れると、そこには
「これが…【セイバー】か。」
『セ・イ・バ・ー!セ・イ・バ・ー!』
「…セイッ!ヤァ!ハァァァアッ!…凄いな、初めて纏うのに動きに違和感が無い。」
箒は最初に拳を開いたり閉じたりした後に、何度か【火炎剣烈火】を振るい動きながら感覚を確かめ、自身の動きに違和感が無い事に驚いている。
「どう?箒ちゃん?」
「大丈夫です。凄く私に馴染んでいて全く違和感がありません。…ところで閃華さん。」
「…何?」
『ほ・う・き・ちゃん!ほ・う・き・ちゃん!』
「この【セイバー】コールと箒コールどうにかなりません?」
「ごめんね?多分暫くはこのままだと思う…。他の二人の時もこんな感じだったから…。」
「あ、そうですか…。そう言えば…何か大事な事を忘れているような…?」
箒の呟きと疑問はフィーバー状態となっている技術開発室の技術者達によって掻き消されてしまい、未だに思い出せずにいた。暫くしてスマホを確認して思い出すのは別の話。
如何でしたか?感想待ってます。
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