鴉の航路(ver2.0) (ダイヤモンド傭兵)
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プロローグ(ver2.0)


これより、アップデートを開始します。
初めての方も、アップデート前の本作を読んでくれていた方も、改めてよろしくお願いします。







 

 

雷雲が垂れ込め、雨は降り注ぎ、稲妻が周囲を照らし、風は吹き荒れている。

 

 

 

そんな空の下、赤く染まった海を12人の女性達が"航行"している。

海上を進むその体には、砲や魚雷、飛行甲板などの"艤装"を装備している。彼女達は周囲を見渡しながら進み、"敵"を発見する。

 

空母の艤装を纏った女性

「敵艦発見!」

 

戦艦の艤装を纏った女性

「行くぞ!艦隊、進めぇ!」

 

彼女達の眼前に見えるのは、黒く大きい魚のような生命体だった。彼女達は迷うこと無くその敵を攻撃し、撃破された敵は沈んでいく。

しかし敵は口から砲撃や雷撃を行い、彼女達を迎撃する。

 

駆逐艦の艤装を纏った女性Aが腹部に砲撃を受け、仰向けに倒れる。そして、そこに魚雷による追撃が行われ、その女性は沈んでいく。

別の女性はその女性に手を伸ばそうとするが、敵の砲撃により阻まれる。

 

駆逐艦の艤装を纏った女性B

「このっ···貴様らぁぁぁぁ!」

 

女性は敵に向けて手に持った連装砲のトリガーを引く。

 

 

 

 

 

次第に戦いは激しさを増し、12人いた人数は7人となってしまっており、残った彼女達はボロボロである。

しかし残った敵は1人だけである。

 

戦艦の艤装を纏った女性

「これで、最後だぁぁぁ!」

 

彼女の背部に装備されている41cm連装砲により、最後の敵は爆発と共に沈んでいった。

すると、空母の艤装を纏った女性が、司令官に向けて通信を行う。

 

空母の艤装を纏った女性

「こちらの生存は7、しかし残った私達は中大破しています···撤退しましょう。損失が大きすぎます···」

 

司令官《···仕方ない。撤退を許可する》

 

 

 

雷雲は、未だ晴れず···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3ヶ月前──

 

その日···波は荒れ、漁もあまり良くなく、動物達も落ち着きを無くしていた···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは···太平洋沖で1隻の日本の漁船が消息を絶った事から始まった。すぐに捜索が行われたが、その捜索船までもが消息を絶ってしまった。

 

男性《報告!我々は何者かによって砲撃されている!あれは···》

 

このような無線が、最後だった。

 

しかし、海で消息を絶つ事件は各国で多発し、いずれも何者かによって砲撃されたという共通点に、海軍を動かす国も出てきた···

すると、正体不明の生命体と交戦したとの報告が相次いで送られてくる。

 

しかし有効なダメージは与えられず、交戦する度に痛手を負ってしまう結果となった。

そして、それらを皮切りに次々と正体不明の生命体が攻撃を開始し、更に海路だけでなく空路も絶たれてしまった···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テレビ会議にて──

 

アメリカ大統領

《これらが···我々人類が判っている奴らの情報か···》

 

ロシア大統領《こちらも同じような情報しかない···》

 

各国の首脳は、少なすぎる情報に頭を抱えていた。

 

イギリス大統領

《少なすぎる···まあ、状況や奴らの事を考えれば仕方あるまいか···》

 

この時点で判明しているものは『WWⅡの頃の軍艦と同じ装甲と砲撃力を持つ』『一部は形こそ違えど艦載機のようなものを飛ばす』というものだけだった。

 

アメリカ大統領《···で、自ら奴らを招き入れて損害を出したそちらは何か判っているのかね?》

 

中国主席《·····》

 

イギリス大統領《黙っていては分からぬ。何か言ったらどうなのかね?》

 

中国主席《·····》

 

イギリス(まったく···なぜこんな者が上に立ってしまったのだ···いや、まともな者達が代表になれなかった結果か···)

 

日本首相《今のうちに互いの損害を確認しませんか?その方がカバーし合い易いでしょうし》

 

最近首相になったばかりの男性は、慣れないテレビ会議にあたふたしている。

 

フランス大統領《正気か?我々はどの国が仕掛けたかも判らない状況で自国の損害など言えん》

 

アメリカ大統領《まあ、それもそうだがな···それと、アフリカ諸国と連絡が取れた国はあるかね?》

 

これにはどの国も首を横に振った···が、しかし···

 

エジプト首相《すまない、緊急報告だ·········なんだと!?》

 

日本首相《何かありましたか!?》

 

エジプト首相《···アフリカからの難民が我が国と近隣諸国に向かっているそうだ》

 

その後の会議も、結局互いに情報共有と共同防衛をすることになった以外、進展は無かった···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある丘の上から海を見下ろす車椅子の男性がいた···

男性は手や膝、肩の上に立つ掌サイズの小人に対し、海を見下ろしながら言う。

 

男性「君達の話は解ったよ···」

 

膝の上の小人「すみません、言えずにいて···」

 

男性「気にしないで。何かあることは前から気づいてたから」

 

左手の上の小人「···私達はもうじき行かなくてはなりません」

 

男性「そっか···なら3つだけ、お願いしていいかい?」

 

右肩の上の小人「···なんです?」

 

男性が小人達に願いを告げる。

 

左肩の上の小人「2つは良いですけど、1つは無理です!そんなことをしたら!」

 

男性「良いんだよ···僕が出した"最後の答え"なんだ。聞いてくれるかい?」

 

右手の上の小人「でも···」

 

男性「お願い···」

 

男性は頭を下げる。

 

右肩の上の小人「···解りました」

 

目に涙を浮かべながら右肩の上の小人は男性の願いを承諾した···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現れた正体不明の生命体を相手に、ほぼ全ての制海権は奪われつつあった···

そしてアフリカ諸国から始まった陸地への攻勢は、次第に他の国々にも起きるようになっていった。

 

しかしそんな時···突如として海に数人の若い女性達が現れ、正体不明の生命体達を撃破していった。

 

自衛官「あれは一体···一体何が起きている···」

 

その後、彼女達はこう名乗った···

 

 

 

 

 

 

 

艦娘──

 

 

 

 

 

 

そして、あの正体不明の生命体達は『深海棲艦』だとも···

 

 

 

 

 

 

 

 

かつての艦船の魂を持ち、"艤装"を身に纏って戦う艦娘とその艦船の怨念を持つ深海棲艦···そして双方に協力する小人達『妖精』の存在···

 

 

 

事態は急速に動き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖精「では···始めます···」

 

車椅子の男性

「うん···後は、頼むよ···」

 

 

 

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!


本作の最初のアップデートでしたが、どうだったでしょうか?
感想やご指摘があれば、遠慮無く送ってください!


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第1章 傭兵
第1話 焼き尽くす者達(ver2.0)



艦娘が現れてから2ヶ月、各国は艦娘の処遇を決めたり配属先に追われるなどしていたが、人々は希望を抱いていた···

そして、運命の出会いにより、世界は変わり始める。




 

 

艦娘の出現に、人々は始め困惑していた。

しかし日本、中国などのアジア周辺の人々は比較的早く受け入れられたが、他の国々では受け入れられていない人々が多かった···

 

しかも、艦娘が従うのは提督であり、掌サイズの小人『妖精』が見える者が"艦娘の提督"となるようである。

そのため、各国は妖精の見える"提督適正"を持つ者達をすぐさま探し始めた。

 

また、艦娘を深海棲艦と同じだとみなし、排除しようとする者達が現れ、深海棲艦を信仰する宗教団体まで現れる始末···

これらは仕方のない事だったが、対応はしておかねばならないと各国はそれらの対応にも追われていく。

 

 

 

 

 

そして1年が経った。

現在ではようやく半分程の配属が決まり、各国の防衛も徐々に整ってきた頃、深海側では動きがあった。

 

 

 

 

 

深海棲艦のとある泊地にて──

 

黒い長髪の深海棲艦

「今回ハ私達ネ···」

 

黒い長髪でアイマスクのようなものを着けた深海棲艦

「オイ、サッサト斬リタイゼ!」

 

その他にも多くの深海棲艦が群れ、各国に向かっていた···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、日本では新しい首相である『中島(なかじま) 創平(そうへい)』が対策に追われていた。

 

創平「今いる適正を持つ海上自衛隊所属の数は8人、民間人で適正のある人達は見つかっているだけで20人ですか···」

 

提督適正のある国民の数が想定より少なかったため、創平や防衛関係の人間は頭を悩ませていた。

そして、あまり自信の無い創平は頭の中が不安で一杯だった。

 

秘書「はい。しかしまだ見つかっていないだけで、適正を持つ人達は多くいるかと」

 

秘書は創平を元気づけようと励ます。

 

創平「しかし、艦娘達のおかげで国民に希望が持てたのは大きい。この"希望"をもっと大きくしていかなきゃいけませんね!」

 

創平は、空元気で笑顔を見せる。

 

秘書「首相、その意気です!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある一戸建ての1室に、1人の少年がいた···

まだ16才だがDVといじめにあい、その体は痩せ細り、いつも怯えていた。しかも先日、幼い頃にある男性から貰った小説を目の前で燃やされてしまった···

自殺しようかとも考えたが、小説をくれた人の言葉が脳裏に甦る。

 

少年「生きなきゃな···」

 

そして少年は親が置いていったキャベツの葉を食べる。両親は2人でテレビを見ながら笑っており、少年の食事を作る様子は無い。

その夜、両親が寝静まったのを確認した少年は、綿密に計画した夜逃げを実行する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜、月明かりすら無い真っ暗な夜──

各国は深海棲艦による本土への一斉奇襲を受けた。艦娘達がなんとか対処にあたったものの、海沿いの地域はかなりの被害が発生した···

しかも深海棲艦の数が多いため、対処にあたった艦娘達はその数に圧倒されてしまっている。

 

 

 

少年はその本土への奇襲に、夜逃げ中に遭ってしまった。しかし、運良く空爆は少年のいる公園には爆撃はされず、民家を中心として爆撃は行われた···

 

少年は見た。

自分が育った町が、自分を傷つけてきた者達の住む町が、焼き尽くされていく···

しかし、少年がいる場所は海のすぐ近くだったため、すぐに少年は駆け出した。

 

少年「このままいたらマズイ···どこかに、隠れる場所は···」

 

少年はヨタヨタと走り出すが、少年の近くに砲撃が着弾する。どうやら深海棲艦の一部が防衛戦を突破してきたようである。

町には避難誘導を促すサイレンが鳴り響き、空爆を免れた人々は逃げ惑う。

 

そして少年は逃げ道を失い、やむ無く海の近くを通ることとなる。

海では艦娘と深海棲艦が戦闘中であり、砲撃音や爆炎が次々と出ている。

しかし、深海棲艦の一部が海辺に忍び寄っており、少年は深海棲艦に発見されてしまう。

 

艦娘「下がってください!」

 

ピンク色の髪をした艦娘が少年と深海棲艦の前に現れ、深海棲艦に向けて砲撃する。少年に砲撃をしてきた深海棲艦はそれで撃破できたが、他の深海棲艦の攻撃を受けてその艦娘は中破してしまう。

 

艦娘「逃げてください!私が時間を稼ぎます!」

 

少年の脳裏に再び小説をくれた人物の言葉が甦る。

そして少年は近くの木の枝を持って構える。その少年の手は震えていたが、目は真っ直ぐと目の前の深海棲艦『重巡リ級』に向けられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女性「良く耐えました。後は任せてください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年と艦娘は見た──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空から巨大な艤装を装備し、黒いボディースーツを纏った白い髪の女性が降ってくるのを──

 

 

 

 

 

 

 

 

女性「殲滅を開始します···」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年と艦娘の前に現れた女性の艤装は太い触手のようなものが4本伸び、そこから砲撃をしているようで、その一撃で『戦艦ル級』が両手の盾ごと粉砕される。

 

しかしそれだけではなく、両手に持つ巨大なガトリングを連射し、艦載機を撃ち落としていく···が、そのグレネードガトリングから発射されているのは徹甲榴弾であり、敵の艦載機を撃ち落とした後はそのまま深海棲艦に対し弾幕を張り続ける。

 

眼前の敵艦隊の旗艦である、『軽巡棲姫』が女性に向かって突撃してくるが、グレネードガトリングの連射で何もできないまま撃破されてしまう。

それだけで少年と艦娘は、そのグレネードガトリングの強力さを見せつけられる。

 

その後全ての深海棲艦が、近づくことすらままならず、撃破されていった···かろうじて着弾した砲弾も、傷1つ付けることすらできなかった···

 

 

 

 

 

 

 

 

アメリカでは、港町の深海棲艦の群れに向かって1人の女性が突撃し、狂ったような笑い声をあげながら深海棲艦を撃破していった。

 

狂った笑顔の女性

「アハハハハハ!ねぇどうしたのぉ!?その程度なのぉ!?」

 

彼女の背部にある巨大な3連装砲は、砲身ひとつひとつから撃っているため、ほぼ同時に12人の深海棲艦が撃破されていく。

町が燃え、深海棲艦と艦娘、民間人の死体が横たわる中、彼女は狂ったような笑い声をあげながらどこかへ去っていった···

 

アメリカの艦娘

「はぁ、はぁ···crazy(クレイジー)···」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イギリスでは、上陸されかけている戦場に突如巨大な砲弾が次々と沖合いから撃ち込まれ、深海棲艦が次々と撃破されていく。

 

イギリスの艦娘

「い、今の何っ!?」

 

艦娘と深海棲艦は辺りを見渡すが、敵の姿は見えない。

それもそのはずで、砲弾を撃ち込んだ本人は水平線の彼方におり、巨大な艤装を支えるため、艤装に4本の足がつけられている。

 

女性「祝福のあらんことを···」

 

まるで祈るかのような動作と共に、再び砲撃が行われる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロシアでも水平線の彼方から砲撃され、深海棲艦は撤退しようとしていた。

 

ロシアの艦娘「今のうちに、追撃を!」

 

しかし水平線の彼方からの砲撃は、深海棲艦と艦娘の間に撃ち込まれる。

その砲撃は極めて正確で、誤差は極めて小さいものだった。

 

女性「今のあなた方では、追撃しても返り討ちにされるだけです」

 

砲撃をしている女性は、腰だめに構えた長銃身のレールキャノンと背部から肩越しに構えている2つのスナイパーキャノンを装備しており、誤差の修正をすると再び砲撃を開始する。

 

 

 

 

 

 

 

 

中国では、突如として現れた空母4隻分の艦載機によって制空権は封じられ、更にはどこかから砲撃までされている。

『駆逐古鬼』は周囲を見渡し、目標を確認する。敵は複数ではなく、単独だった。

 

黒い巫女服を纏った女性と、駆逐古鬼は目が合う。女性の艤装にある主砲は、駆逐古鬼を捉えていた。

 

駆逐古鬼「卑怯デショ···コンナノ···」

 

女性「"不幸"による、鉄槌を」

 

駆逐古鬼は、その砲撃により上半身を吹き飛ばされ、沈んでいく···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ペルーでは、深海棲艦と艦娘との間に"壁"があり、互いに攻撃できずにいた。しかし"壁"に装備されているグレネードガトリングと巨体なミサイル砲台により、深海棲艦は撃破されていく。

その凄まじい弾幕に、深海棲艦達は逃げることすらできないでいる。

 

女性「決して通しませんわ」

 

深海棲艦が全滅すると、壁は移動を始める。それはまるで、列車のようだった。

帰路に着く壁の中には1人の女性がおり、道中の深海棲艦を轢き殺しながら進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オーストラリアでは、艦娘達は第1波を辛うじて防いだものの、第2波に怯えていた。

しかし、艦娘の前に黒い日本甲冑を纏った女性が割り込み、そのまま深海棲艦の元へ進んでいく。

 

オーストラリアの艦娘

「ちょっとあなた!」

 

女性「邪魔だ、下がっていろ」

 

女性が持つ棒状のものは、半分から突如左右に折れると、青白いレーザーの刀身が現れ、女性は正面を左から右へと薙ぎ払う。

その一撃で、深海棲艦が全滅してしまう。

しかし、女性はそのまま闇に紛れて消えてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モロッコでは、3人の艦娘が必死に避難民の乗った船を護衛しているが、深海棲艦の猛攻に全滅しかけていた。

 

女性「そらっ!」

 

赤い作業服と赤い装甲板のスカートを纏った女性が、チェーンソーと背部の艤装にあるショットガンで深海棲艦を薙ぎ倒していく。

 

女性「ほら、今のうちに逃げな!」

 

モロッコの艦娘「あ、あなたは!?」

 

艦娘が名前を聞く間も無く、女性は深海棲艦の群れに突撃していく···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インドでは上陸されたも同然の状況となっていたが、突如空から青白いレーザーが放たれる。

そのレーザーは一撃で戦艦棲姫を撃破し、更にはミサイルまで降り注ぐ。

 

インドの艦娘「あれは···!?」

 

町の炎に照らされたのは、空を旋回する灰色の服を着た女性で、腰だめに構えた長銃身のレーザーキャノンで深海棲艦を撃ち抜いている。

 

女性「この程度、簡単すぎるのだ」

 

女性は建物の陰に隠れた駆逐イ級を、建物ごと撃ち抜く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フランスでは、青白い刀身のレーザーブレードを逆手に持った女性が、目にも止まらぬ速さで敵を切り刻んでいく。

戦艦や空母の深海棲艦であろうと、装甲が意味を為さない。

踊るかのようで、速すぎるその動きに、見る者は恐怖する。

 

距離を取ろうとした深海棲艦は、女性の背部から放たれたミサイルにより動きを止められ、その隙に女性は深海棲艦達を切り刻む。

 

女性「目障りなんだよぉ!」

 

更には、逃げようとした深海棲艦の首をすれ違い様に切り落としていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カナダでは、宙に浮かぶ4つの巨体な黒い球体が深海棲艦達を攻撃していた。赤く光る目のような部位が輝きだし、赤い粒子を集束させると赤い粒子の巨大な塊を放つ。

それを受けた深海棲艦は一撃で撃破されてしまう。

 

深海棲艦達は球体に攻撃しようとするものの、球体の機動力は高く、辛うじて当てた攻撃は効いている様子は無い。

艦娘達はその様子を見ているしかなく、不気味な球体に恐怖していた。

 

カナダの艦娘

「これ、現実···よね···?」

 

球体は深海棲艦を殲滅すると、艦娘達を一瞥してからどこかへ飛び去っていってしまった···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドイツでは青白いレーザーが空から降り注ぎ、深海棲艦が撃破されていく。

しかし、艦娘に当てないようにするつもりは無いようで、一部の艦娘はレーザーにより艤装が破壊されてしまっている。

 

女性「···」

 

空に浮かぶ女性の目は冷ややかで、艦娘達は全力でその場から退避する。

しかし、純白のドレスを纏っている女性は、まるで天使かのようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦闘が終わった日本では、腰を抜かした艦娘と少年に、女性が手を差し伸べていた。

 

女性「立てる?」

 

艦娘「あ、はい···」

 

女性「あなたの所属していた鎮守府の提督、逃げましたよ?」

 

艦娘「えっ!?そんな···」

 

女性「だって私さっきその現場見ましたし···なんなら映像記録見ますか?」

 

女性はスマホを見せる。そこに映っていたのは紛れもなく艦娘の所属していた鎮守府の提督とその車である。

 

艦娘「そんな···」

 

少年は女性の付けている艤装の触手を見上げる。周囲を警戒するように動くその先端には龍の頭部のような形状をしたものがあり、口があり、頭の上であろう場所に2連装の砲身がある。

 

女性「あなた達2人は運が良いですね。一緒に来ませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女性「この後、私と私の仲間達で傭兵組織を立ち上げるんですが、重要なメンバーが欠けてるんですよ···どうです?」

 

艦娘「あ、あなたは···あなたは何者ですか?」

 

女性「私は『大蛇(オロチ)』です。さぁ、どうしますか?"先輩"と人間さん?」

 

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回の話は1度アップデートしたのですが、足りない部分に気がつき、急ぎ修正しました。
すいません。

まだ戦力や配属先が決まってない序盤から本土に奇襲というのは完全に潰しに来てますね。
え?まだ甘い?···そんなぁ。

●妖精
掌サイズの小人達の総称。
艤装を作ったり、艦娘を建造する技術は彼女達しか知らず、人間に教えるつもりはない様子である。

●提督適正
妖精が見える人は艦娘達の提督となることができ、基本的に艦娘と妖精は提督の指示のみに従う。
しかし適正の条件については不明である。

●中島 創平
黒い短髪で身長178cm、48歳で5月9日生まれ。

あまり自分に自信を持てずにおり、気弱な面があるが、世の中を良くしたいという思いが強く、提案するものは非常に的を得ており、なおかつ無理の無い範囲でできるもののため、首相になることに成功する。

●重巡リ級
黒いショートヘアの深海棲艦。
背部から伸びた主砲兼雷撃兵装を手に持っている。しかし精度と引き換えに持たずに撃つ事も可能。

●戦艦ル級
黒いロングヘアの深海棲艦。
両手がシールド兼主砲と一体化しており、攻守に優れている。しかし状況によって武装と手を分離させる事も可能。

●グレネードガトリング
弾丸ではなく砲弾を撃ち出すガトリング。
通常のガトリング系兵器と比べて大型であるが、連射力と火力を両立したこれはかなり強力となっている。

●レールキャノン
レールガンを大型化し、キャノンとしたもの。
レールガンより携行性は低下しているものの、それに見合った火力を持つ。

●スナイパーキャノン
スナイパーライフルを大型化し、キャノンとしたもの。
スナイパーライフルより携行性は(ry

●レーザーキャノン
レーザーを撃ち出すレーザーライフルを大型化し、キャノンと(ry

●レーザーブレード
レーザーを用いた刀身を使い、敵を攻撃する武装。


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第2話 顔合わせ(ver2.0)

各国に対し深海棲艦達が行った本土奇襲作戦は謎の艦娘達(?)によって阻まれた。
それに対する各国の行動と、夜逃げした少年と見捨てられた艦娘の行動は···


深海棲艦による本土奇襲作戦···それは何者かによって阻まれはしたものの、各国の反応は様々だった。

 

 

 

創平「あの時、国民や艦娘達を守ってくれた者は誰なのでしょうか?せめて一言礼を言いたいです···」

 

 

 

アメリカ大統領「あの時我が国を守ってくれた者に礼と協力を要請したいものだが、一体どこにいるのだろうか···」

 

 

 

ロシア大統領「まずは礼を言いたいが、なんとしても探し出せ。無論、技術の入手も忘れるな」

 

 

 

中国主席「すぐにあの艦娘を見つけ出せ!あの艦娘は我が国を守った!ならばあの艦娘は我々のものだ!」

 

 

 

イギリス首相「礼を言わねばな···協力は···するつもりならあの場から去らんだろう」

 

 

 

建て直しのチャンスは各国に与えられたが、救世主たる者達は結局見つからなかった。

しかし各国はどのような理由であろうとも、件の救世主を探し続けた···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、少年と艦娘は···

 

大蛇「ようこそ。ここが拠点となる場所です」

 

広く、海に面した敷地に連れてこられていた。大蛇は2人に改めて確認をする。

 

大蛇「今ならまだ戻れますよ?本当に傭兵になるんですか?」

 

少年「俺にはもう、行くところは無い。だから進んで、生きる」

 

艦娘「私は、私自身の答えを見つけ出したいんです」

 

大蛇「そうですか···では、行きましょう」

 

2人の決意を受けた大蛇は、大きな屋敷の門の扉へと手を掛ける。

 

 

 

 

外壁の門をくぐり、広い庭の中に入る。屋敷は和と洋の要素を合わせて作られており、大蛇は屋敷の中へ2人を招き入れる。

 

???「いぇーーい!テンション上がってるぅー!?」

 

金髪の女性がマイクを持って中央階段の上に立ってポーズを決めていた。

 

艦娘「えっと···」

 

???「おっとぉ!"そこにいるのは艦娘と人間ね?"私はAF(アームズフォート)のアイドル、『スティグロ』よ!身バレしないように、"時が来るまで"は『ティス』って呼んでね!2人のお名前は?」

 

大蛇「ティス、まずはこの子(少年)は空いてる部屋に、先輩(艦娘)は入渠させてあげてください。私は補給をしてきます」

 

ティス「りょーかい!2人とも、着いてきてね!」

 

ティスは少年と艦娘を、それぞれの場所に案内する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その後も続々とメンバーが集まってくる。

 

黒髪で黒い和服を着た女性

「私はAF『グレートウォール』です。今は『有澤(ありさわ)』とお呼びください」

 

茶髪で赤い作業着を着た女性

「アタシはAF『カブラカン』ってんだ!今は『ラン』って呼んでくれ。よろしくな!」

 

黒いボブカットで灰色のコートを着た女性

「ぼ、僕はAF『イクリプス』で、今は『リプ』なのだ!よろしくなのだ!」

 

茶髪で白いセーラー服を着た女性

「わ、私はAF『ランドクラブ』です。よ、よろしくお願いします!今は、『ラビィ』と呼んでください···」

 

金髪で白いビジネススーツを着た女性

「フフフッ、私はAF『ソルディオス』よ。今は『ソラ』って呼んでね。それじゃ、ヨ·ロ·シ·ク♡」

 

黒髪で黒い甲冑を着た女性

「私はAF『ジェット』だ。お前らが新人か?今は『ジュリアス』だ。くれぐれも裏切るなよ?」

 

銀髪で白いドレスのような服を着た女性

(わたくし)はAF『アンサラー』と申します。現在は『アン』と申しますので、お見知りおきを」

 

金髪で青いセーラー服の上に黒い防弾ベストを着た女性

「私はAF『ギガベース』と言います。現時点では『ベス』と呼んでください」

 

茶髪でシスターの格好をした女性

「私はAF『スピリット·オブ·マザーウィル』です。今は『ピス』とお呼びください」

 

 

 

大蛇「私は今は『草薙(くさなぎ)』と呼んでください···それと、あなたもそろそろ出てきても良いでしょう?」

 

少年の後ろには黒髪の黒い巫女服を着た女性が立っていた。

 

少年「うおっ!?」

 

女性「驚かせてごめんなさいね。私は『(みずち)』、今は『瑞希(みずき)』と呼んで。それと、私と草薙は艦娘よ···だからよろしくお願いいたします。先輩」

 

草薙「では、お二人も名乗りましょう」

 

艦娘「はい!私は重巡『青葉』です!」

 

少年「俺は『武龍(たける)』。名字とかは捨てたから、ただの武龍だ···」

 

 

 

 

 

 

 

 

ラン「さて、自己紹介は済んだし、飯にしようぜ!」

 

ランは背伸びをすると食堂へ向かい、他のAF達も食堂へ向かう。

しかしベスは武龍を観察し、痩せ細っている事に言及する。

 

ベス「しかし、武龍は見たところ栄養や筋肉が足りておらず、約1年程の修行は必要ですね」

 

草薙「それはそうですけど(グギュルルルルルル)···まずは食事ですね」

 

草薙は眉をハの字にしながら腹部を擦った。

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

傭兵組織のメンバーが揃いましたね!それぞれの詳細はまた別の時に解説します!
また、今後は基本的にAF達や大蛇と蛟は偽名で呼称しますので、ご了承ください。


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第3話 イレギュラーと初陣(ver2.0)

武龍と青葉が傭兵団に入ってから1年···ついに武龍は初陣に挑むことに。
しかしその頃、海軍側では···


修行が始まってから1年後、武龍は草薙にガレージに連れられてガレージへ向かう。

草薙が明かりを着けるとそこには武龍の見たことの無い物体があった。

 

武龍「これは···」

 

灰色のカラーリングをした2足歩行の機体が、そこに佇んでいた。

大きさは武龍と大差無く、まるで誰かが装着するかのようだった。しかし武龍にはその機体に既視感があった。

 

草薙「"試作型機甲兵装"『CR-69/N』です」

 

武龍「機甲兵装?」

 

草薙「はい。これは、あなたが深海棲艦に対抗するためのパワードスーツのようなものと思ってください。そして、あなたはこれを装着し、出撃してもらいます」

 

武龍「遂に···俺が···」

 

武龍は本番が近づいている事を改めて実感し、息を飲む。

 

草薙「この機体の武装は『ライフル』と『小型ミサイル』、それから『レーザーブレード』です。練習の時間はもちろん与えますが、時間はそうありません」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5日後の早朝──

 

 

武龍は専用のパイロットスーツに着替え、初陣のために出撃ドックへと向かい、カタパルトに足を着ける。

すると壁や天井から伸びてきたアームにより、機体のパーツが武龍の体に取り付けられていく。

最後にライフルを手に持ち、発進シークエンスに入る。

 

瑞希《それでは発進まで、3···2···1···出撃!》

 

カタパルトから射出され、海面にスライドしつつ着水する。

 

瑞希《無事着水に成功ですね。では目標のポイントまで向かってください》

 

武龍「了解!」

 

武龍は目標ポイントまで進んでいき、その様子をステルスドローンによって瑞希達は見ており、青葉は先に出現し、武龍のかなり後方から追従している。

 

青葉の役目は、武龍が危険に陥った際の救出であり、別方向からはベスがスナイパーキャノンを構えていた。

 

 

 

 

 

 

機甲兵装は艦娘の艤装のように海上に立つことができるが、主な移動はブースターの出力で進んでいる。

そして武龍が目標ポイントに着くと、はぐれの深海棲艦が2体いた。

 

瑞希《駆逐イ級2体を確認、撃破してください》

 

武龍「了解!」

 

武龍は右腕につけられているライフル『CR-WR69R』を連射し、1体のイ級を後方から攻撃する。

ライフルの弾丸は命中しているものの、あまりダメージは入っていない。もう1体のイ級は味方への攻撃に気づき、砲撃してくる。

 

イ級A「グギャアッ!」

 

ライフルの弾丸では大きなダメージを与えられないものの、堅実にダメージを与えていく。

そして、ライフルの弾丸が1体のイ級Aの目に命中し、イ級は叫び声を上げる。

 

武龍は右背部の小型ミサイルを起動させ、暴れるイ級Aにミサイルを撃ち込もうとする。

しかし右側面からイ級Bの砲撃を受けてしまい、砲撃を右肩に受けた武龍はよろけてしまう。

 

武龍「クソッ!」

 

武龍はイ級Bの左側面に回り込みつつ、小型ミサイルを撃ち込む。ミサイルはイ級Bの左胴体に命中し、武龍はその傷口にライフルを連射する。

するとイ級Bは倒れ、ゆっくりと沈んでいく。

 

瑞希《イ級の撃破を確認、もう1体です!》

 

通信が入った瞬間、武龍にイ級Aが砲撃する。武龍は回避しようとしたが、イ級の砲撃はライフルに当たってしまい、ライフルは破壊されてしまう。

もう少し外れていれば、武龍の右手に当たっていたため、武龍は肝を冷やす。

 

武龍「これならっ!」

 

武龍はレーザーブレードを起動させ、ミサイルを撃ち込む。ミサイルを顔面に受けて怯んだイ級Aに向かって武龍は突進する。

そして、レーザーブレードで下から袈裟に斬り上げる。

 

イ級A「ギゲェアァァ!」

 

瑞希《目標の全滅を確認、帰還してください》

 

武龍「了解···ハァ···ハァ···」

 

武龍の手は震えており、武龍は汗をぐっしょりとかいていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍が帰還し、休憩を取るとすぐに初陣の祝勝会が行われた。

 

瑞希「初陣の成功、おめでとうございます」

 

ティス「今夜は成功を祝って、歌っちゃうよー!」

 

青葉「なんとか勝てましたね~!私見ててヒヤヒヤしましたよ」

 

武龍「正直死ぬかと思った」

 

武龍はため息をつくが、ランが武龍の肩を軽く叩く。

 

ラン「まあ勝ったから良いじゃねぇか!アッハッハッ!」

 

 

まだ朝だというのに祝勝会は続いていくのであった···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍達が祝勝会を行っている頃···

新しく提督となった3人の若い男性がそれぞれの鎮守府に旅立とうとしていた。

 

男性A「皆、また会おうな!」

 

男性B「会える日は減るけど、とりあえずは頑張ろうね~」

 

男性C「またな!」

 

1人は江ノ島に···

1人は横須賀に···

1人は舞鶴に···

 

彼らが『本来起こり得た未来』に存在していたのなら···こう呼ばれるだろう···

 

 

 

 

 

 

 

 

『イレギュラー』と···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジュリアス「ティス貴様!それは私のはんぺんだ!」

 

ティス「へへ~ん!」

 

有澤「まだまだありますから、そんなに焦らないでください」

 

ラン「でもお前が1番食ってるんだよなぁ···」

 

祝勝会は続いていく···

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!
それと、更新遅れてすいません!

初の初陣は成功しましたね!
さて、武龍の傭兵活動と3人の新提督はどんな未来を辿るのでしょうね?

また、機甲兵装の設定は大幅に変更することにしました。理由としては私の表現力が足りず、十分に描写できないからです。

●武龍
黒いクセっ毛のある短髪で身長160cm、初陣の時点で17歳で4月19日生まれ。

親からはDV、学校ではいじめを受けていた男性。
まだ5才の頃に顔も覚えていない男性からある小説を渡され、その時に男性から言われた言葉の2つが彼の心をギリギリで繋ぎ止めてきた。

●CR-69/N
灰色のカラーリングの中量2脚型機甲兵装。

武装は右手にライフル、左腕にレーザーブレード、右背部に小型ミサイル、左背部に『増設レーダー』を装備している。

草薙が最初に開発した、試作型機甲兵装。性能こそ低めなものの、ある程度実戦が行える。
また、『ACLR』の初期機体でもある。

●機甲兵装
草薙が人型兵器『アーマード·コア』(以下AC)のパーツを人間が装備できるよう設計し、妖精達が製造した歩兵用の兵装。基本的に武龍が使うことを前提としており、今回の戦果もそれのおかけでもある。

艦娘の艤装とは違い、拡張性を高めた設計がなされているため、依頼に応じてカスタムすることが可能。

●草薙(大和型秘匿戦艦大蛇/ZF型)
白い短髪で身長180cm、肉体年齢は19歳。
黒いボディースーツを着ており、更に各部位に装甲パッドや胸当てなどを着けている。

AF組とは違い艦娘であり、真面目な性格をしている。
また、船の頃の記憶により、開発や製造を行うことが可能である。

※艤装などの情報はまだ閲覧できません。

●瑞希(扶桑型秘匿航空戦艦蛟)
黒い長髪で身長170cm、肉体年齢は20歳。
黒い巫女服を着ており、赤い下駄を履いている。

傭兵団ではオペレーターを務めており、物静かな性格をしている。

●アームズフォート(AF)
『本来起こり得た未来』の兵器。
多数の凡人によって制御される超巨大兵器。どれもが規格外の巨体と火力を持つものの、そのほとんどに致命的な欠陥がある。


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第4話 試金石(ver2.0)

武龍の初陣も無事成功し、海軍では新たな提督が着任した。
そして、武龍達はいよいよ傭兵としてスタートするのだが···


 

 

武龍の初陣の後、瑞希の作ったホームページを見ると、依頼は1つも来ていなかった··~

 

ラン「まあ、傭兵なんて日本とかじゃろくな目で見られないもんな···」

 

武龍達の傭兵団は『レイヴンズ·ネスト』としてスタートしたのだが、ホームページに来るのは誹謗中傷のメールばかり···

 

アン「武龍様、他人を誹謗中傷するようなゴミクズの相手などしなくて構いません。この対処は私にお任せを」

 

アンは現在、誹謗中傷やデマなどを行うアカウントをあらゆる方法でアカウント削除や凍結、ネットそのものから退去させるなどしている。

 

草薙「アンさん···あなたってやっぱりやることがエグいですね···」

 

アン「それが私ですから·····こんなゴミクズはさっさと滅べば良いんですよ」

 

そう言ったアンは口元だけ微笑んでいた。

 

 

 

 

しかし4日後、とある漁師から依頼が入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

依頼主:高山(たかやま) 源蔵(ごんぞう)

 

目標:漁船の護衛

 

作戦開始時刻:14:00

 

報酬:200000円

 

深海棲艦が現れてから漁なんてとてもできない。艦娘ってのも今は防衛にばっか着いてる。これじゃ生活のための稼ぎだけじゃねぇ、漁業全体が危ぶまれるんだ。

どんくらい報酬は出しゃいいのか分かんねぇが、なるたけ出すつもりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作戦開始時刻に合わせ、作戦エリアに向けて自律装甲輸送ヘリ『STORK(ストーク)/S-A』で武龍を空輸する。

今回武龍が装備してきているのは、新たに実戦用に開発した銀と青のカラーリングをしている『クレスト白兵戦型』である。

 

武装は右手に『マシンガン』、左腕にレーザーブレード、右背部に新しい小型ミサイル、左背部に『グレネードキャノン』である。

 

瑞希《作戦エリアに到達。機体投下、作戦開始です!》

 

ヘリ下部のハッチが開き、投下される。

 

源蔵「おおっ!お前が傭兵か!?来てくれて助かる!」

 

漁を行うポイントまで移動し、漁の邪魔にならないよう武龍は2mほどの空中で滞空する。

しばらくすると漁が終わったようで、源蔵は帰り支度を始める。

 

瑞希《右方向から深海棲艦!駆逐イ級2体、『駆逐ハ級』1体を確認!》

 

武龍「源蔵さん、早く退避してください!」

 

武龍は着水して深海棲艦の元へ向かい、ハ級に右手に持ったマシンガンを連射する。画面を穴だらけにされたハ級は怯み、その隙に武龍はレーザーブレードで一刀両断する。

 

次に、漁船に向かって砲口を向けたイ級にマシンガンを連射しつつ、漁船の盾になるように回り込む。

そして小型ミサイルをロックオンし、10発のミサイルを連射する。イ級は3発程受けて撃沈し、残りのミサイルは水柱を作る。

 

その時、もう1体のイ級が砲撃し、砲弾は左足に命中してしまう。武龍は即座にイ級に向き直り、膝撃ちの姿勢になる。

そして、左背部の折り畳んであるグレネードキャノンを展開し、イ級に向けて砲撃する。

砲撃を受けたイ級は大きな爆発と共に爆散した。

 

 

 

 

しかしその時、突如下方から反応があり、魚雷が向かってくる。武龍はギリギリで回避し、海中を凝視する。

 

瑞希《この反応···『潜水カ級』です!》

 

武龍は小型ミサイルを起動させてロックオンした後、6発のミサイルを連射する。海中を進んでいったミサイルは全弾命中し、カ級を撃破する。

その後、武龍は後方を警戒しつつ作戦エリアを離脱するまで漁船を護衛した···

 

源蔵「おい!大丈夫かよ!?」

 

武龍「はい、なんとか無事です」

 

瑞希《作戦完了、これより回収します》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

漁船と武龍が去ってしばらくした後、その場所に3人の艦娘がいた。艦娘はそれぞれ長門、由良、摩耶であった。

 

長門「確かにここなのだな?」

 

長門達は周囲を見渡し、警戒している。

 

由良「うん、砲撃音がしたっていうポイントはここで合ってるんだけど···」

 

すると摩耶が深海棲艦の残骸を発見し、手に取ってみる。

 

摩耶「ん?···これってイ級とカ級の残骸じゃん!?」

 

由良「やっぱり、ここで何か戦闘があったのよ···」

 

長門「まさか、最近起業したという傭兵の仕業か?」

 

摩耶「だとしても、すぐに提督に知らせないと!」

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

ついに武龍達は始動しましたが、傭兵という立場上、あまり良い印象は受けられてませんね。

●ラン
茶色の短髪で身長160cm、肉体年齢は18歳。

艦娘ではなくAF。
赤い作業着を着ており、草薙のアシストをすることが多い···といっても主に解体作業や木材加工を行っている。
活発な性格で、よく妖精達と戯れていたりする。

また、本名はカブラカン。

●アン
銀色のセミロングで身長165cm、肉体年齢は16歳。

艦娘ではなくAF。
白いドレスのような服を纏っており、物静かな雰囲気を醸し出している。
しかし本来の性格は基本的に人間を見下しており、『信頼している人間意外は滅んでも構わない』というスタンスである。
(現時点で信頼している人間は武龍のみ)

また、本名はアンサラー。

●高山 源蔵
黒い角刈りの髪型で身長170cm、49歳で6月7日生まれ。

ある港町で漁師をしている男性で、義を重んじる性格をしている。
今後の生活と漁業全体に危機感を感じており、今回依頼をした。

●STORK/S-A
本来起こり得た未来での輸送ヘリを小型化し、遠隔·自律で操作できるようにしたもの。

Aタイプは個人輸送に特化しており、最低限の武装として小型ミサイルを装備。
Bタイプは『オートキャノン』と『レーザーキャノン』を装備しており、火力支援を行うことも可能。
Cタイプはコンテナを積んでおり、複数人や物質を運搬できる。

●クレスト白兵戦型
白と銀のカラーリングをした中量2脚型機甲兵装。

武装は右手にマシンガン、左腕にレーザーブレード、右背部に小型ミサイル、左背部にグレネードキャノンを装備。

マシンガンを用いての近距離戦をメインとしているが、多連装の小型ミサイルとグレネードキャノンにより、ある程度離れた敵にも対象可能となっている。
また、本来であれば敵のミサイルを迎撃する『迎撃ミサイル』が装備されていたが、対深海棲艦及び対艦娘を目的として外されている。

●ライフル
セミオートで連射可能なもので、堅実にダメージを与えていく武装で、扱いやすい部類に入る。

●マシンガン
ライフルより単発の火力は低く、射程も短いものの、その連射力で戦う武装。

●レーザーブレード
エネルギーを使用したブレードで攻撃する武装。

●小型ミサイル
小型のミサイルを発射する武装で、連続発射できる数が多いのも特徴。
しかし初期のミサイルは単発でしか撃てず、新しいものはロックオン数が特に多い。

また、ミサイル全般はロックオンした数だけ連続発射できる。
(パーツによって最大ロック数に限りがある)

●グレネードキャノン
直線的に砲撃を行う武装。
現在の機甲兵装では、安定のために膝撃ちなどを行う必要がある。


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第5話 評価(ver2.0)

初の依頼を達成した武龍。その後もいくつか依頼をこなしていくが、ついに海軍からの依頼が···




武龍は初の依頼の後も漁船の護衛、物資輸送船の護衛、近海警備など、いくつかの依頼を遂行したものの、どれも小さなものばかりであった。

 

ジュリアス「しかしやはり、海軍からの依頼は来ないな···」

 

ソラ「フフフ···それはフラグよ?さっき依頼が来たそうよ···あああ、まだ私達は出れないのかしら···待ちくたびれちゃう♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

依頼主:海軍中将『野山(のやま) (てつ)

 

目標:岩手県沖の防衛

 

作戦開始時刻:15:30

 

備考:味方艦隊との共闘

 

報酬:700000円及び各種資材(燃料、弾薬、鋼材、ボーキサイト)

 

先日、度重なる攻撃により岩手県沖の防衛線の一部が突破されかけた。追加の艦娘が到着するまで数日かかるらしい。

そのため、急遽訓練中の艦娘4人を出撃させることになったが、少しでも戦力が欲しい、協力を要請する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍を載せたストークAが作戦エリアに到着する。

 

徹《本当に来たな···》

 

投下された武龍を映像で確認した徹は質問してくる。

 

徹《その者の名は?》

 

武龍「俺はコードネーム『ミグラント』だ」

 

徹《本名は?》

 

瑞希《野山中将、そのような質問を続けるおつもりなら受注を破棄します》

 

徹《む···ではこれより、作戦を開始する》

 

武龍を含んだ5人は沖へと進む。

味方の艦娘は旗艦である重巡『那智』を始め、軽巡『球磨』、駆逐『若葉』、駆逐『初春』である。

 

那智「こちらの指令がすまない」

 

武龍「気にするな。今は任務に集中しよう」

 

球磨「は、初めての実戦だクマ···」

 

艦娘達は初めての実戦に、息を呑む。

 

 

 

 

 

その後しばらく警戒を続けていると、深海棲艦の反応が検知される。数は6体、やれない数ではない。

 

瑞希《敵反応、駆逐イ級3、軽巡ホ級2、軽巡へ級1とそれから···これは、空母ヲ級です!》

 

徹《空母だと!?》

 

瑞希《ミグラント!ヲ級の撃破を最優先してください!》

 

武龍「了解!」

 

すぐさま武龍はヲ級にグレネードキャノンで砲撃するが、回避される。右側面からのへ級の攻撃をかわしつつ、至近距離からマシンガンを連射し、へ級は仰向けに倒れる。

そこにヲ級の爆撃機が飛んでくるが、爆撃をギリギリで回避し、マシンガンで爆撃機を撃ち落とす。

 

初春「ぬおっ!」

 

若葉「若葉は、まだやれる···!」

 

苦戦している様子の艦娘を確認した武龍は、振り向いて小型ミサイルを艦娘達と交戦しているイ級に1体ずつロックオンし、発射する。それぞれのミサイルは直撃し、イ級達に損傷を与える。

 

那智「感謝するぞ、ミグラント!」

 

しかし、ここでまだ生きていたへ級の砲撃が武龍の背部に当たり、小型ミサイルが破壊されてしまう。武龍はへ級に接近し、レーザーブレードを横薙ぎに振り、へ級を撃破する。

 

そして武龍は振り向くと共に、背部の格納されているブースターを展開して出力を最大にし、『オーバードブースト(以下OB)』を起動させ、ヲ級に突撃する。ヲ級に急接近した武龍はレーザーブレードをヲ級の胸に突き刺し、ヲ級は苦悶の表情を浮かべて沈んでいった···

 

武龍「こちらミグラント、ヲ級は撃破した!」

 

那智「こちらも、深海棲艦の殲滅に成功した!」

 

周囲に深海棲艦の反応が無いことを確認すると、ストークAが武龍の回収に来る。

降りてくるクレーンが武龍の胸部と背部を挟むように取り付けられ、持ち上げられていく···

 

那智「感謝するぞ、ミグラント」

 

武龍はサムズアップして答える。

 

武龍「また会えたら、次も味方でな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍が帰還しているその頃、拠点の会議室にAF達と草薙が集まっていた。

 

ソラ「調べてみたけれど、やっぱり"イケナイ事"をしてる鎮守府がいくつかあるようね。それも、その一部は艦娘まで関わってるわ」

 

ソラは資料をテーブルの上に並べ、資料を見たジュリアスは腕組みをし、鼻を鳴らす。

 

ジュリアス「フン、欲に駆られたか」

 

ラン「まあ、艦娘っていっても同じ感情や考えの奴なんていないしな」

 

アン「皆様、そんなゴミクズとガラクタ、さっさと滅ぼしましょう?」

 

リプ「待つのだ。まだステージに上がる時ではないのだ」

 

草薙「しかしこれ以上続けられるのは皆さんも不本意でしょう?」

 

有澤「ではその1つに私が参りましょうか?」

 

草薙「あなたは派手すぎます···そうですね、ジュリアス、行ってくれますか?」

 

ジュリアス「承知した、一振で終わらせてこよう」

 

草薙「しかし、1つだけではもの足りませんね···」

 

ティス「まあいいじゃん、見せしめになるし!」

 

草薙「まあ、そうですね·····フフッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2日後、1つの鎮守府が壊滅するという事件が起こる。それと同時に、その鎮守府の悪事が世間に晒されるという事まで発生してしまう。

その鎮守府は薙ぎ払われたような形跡があり、まるで溶断されたかのようだったという···

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

初の海軍からの依頼、そして艦娘との共闘でしたね!
感想やご指摘など、いつでもお待ちしています!

●野山 徹
白髪交じりの黒い短髪で身長180cm、51歳で6月2日生まれ。
海軍中将であり、荒い人事で有名である。
上官から傭兵の事を調べるよう言われ、今回の依頼を出した。

●ミグラント
武龍のコードネームであり、『本来起こり得た未来』の運び屋の総称。

●オーバードブースト
背部に格納されているブースターを使用し、ブースターを最大出力にして前進するもの。
エネルギーの消費は激しく、曲がるのも難しくなるがその分スピードは倍以上出る。

●ジュリアス
黒髪のポニーテールで身長170cm、肉体年齢は18歳。
艦娘ではなくAF。

黒い日本の甲冑を身に付けており、その下には紫色の和服を着ている。
AF組の中では最も剣術に長けており、武龍に剣術を教えた。

●ソラ
金髪のショートヘアで身長165cm、肉体年齢は20歳。
艦娘ではなくAF。

白いビジネススーツを着ており、妖艶な性格をしている。
また経営に長けているため、組織の財政を担っている。


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第6話 想定内(ver2.0)


初の海軍からの依頼と艦娘との共闘。
そしてレイヴンズ·ネストへの評価と各国の現状とは···


更新遅れてすいません!体調を崩しておりました···


レイヴンズ·ネストの拠点の応接室にて、ソラと男性が話している。

 

ソラ「そのような事でしたらお引き取りください」

 

男性「いえ、しかし···」

 

ソラ「技術給与をするつもりはありません。どうぞお引き取りを」

 

男性が帰った後、ソラが門から離れたところでラビィが声をかける。

 

ラビィ「ま、また陸軍の人ですか?」

 

ソラは呆れた様子でため息をつく。

 

ソラ「ええ。まったく···技術クレクレされてもそんなことする道理はありませんよ。ラビィちゃんも、外出する時は複数人で」

 

ラビィ「は、はい!」

 

ソラ「それじゃ、ちょっとおやつにしましょう」

 

ラビィ「はいっ!」

 

ここのところ、陸軍による機甲兵装の技術給与の申し出がしつこく来ているのだ。

依頼をするならまだしも、技術給与に関しては、それをした後の事をAF達はよく知っているため、渡すことはできないのだ···

 

ちなみに、海外からも技術給与の申し出が来ている。

中国と韓国からは一方的な申し出が。

ロシアからは遠回しに。

アメリカからはドストレートに。

イギリスは色々条件を着けながら。

瑞希はこれらの申し出のメールや電話を相手にしながら思う···

 

瑞希(まあ、これらも想定内なんですけどね···)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃──

 

草薙と有澤、ランが食材の買い出しに外出しており、今回は少し遠出して珍味も買いに行っていた。

 

草薙「これだけあれば良いでしょう!」

 

3人はトラックに食材をありったけ積み込んでいた。

 

有澤「私達は戦艦や空母よりも何倍も食べますからね···」

 

草薙「あ、ちょっと良い景色撮れそうなので写真撮ってきます」

 

草薙はスマホを片手に海辺へと走っていった。

 

ラン「気を付けろよ~って、アイツは1人でも1個中隊殺れるから問題ないか···」

 

 

 

 

 

 

草薙が海辺の写真を撮り、トラックの所に戻ろうとしていると、1人の女性がベンチに座りながらため息をついている···草薙は目を丸くしてその女性を凝視する。そして、その女性に近づく。

 

草薙「隣、良いですか?」

 

女性「あ、はい···どうぞ」

 

草薙は女性の左隣に座る。女性は赤いポニーテールの髪型で、俯いていた。

 

草薙「何か悩んでるんですか?」

 

女性「ああ、いえ···あなたは?」

 

草薙「私はただのお節介焼きです。私で良ければ吐き出してください」

 

女性は少し考えると、口を開いた。

 

女性「···あなたは、今の世の中をどう思いますか?」

 

草薙「深海棲艦との戦争が続いているのに、人類はまだ争ってますね」

 

女性「私は人々を守るための職に着いているんですが、近所の人達からは『まだ戦争は終わらないのか』って言われてて···」

 

女性は悔しそうで、悲しそうな顔をし、草薙は空を見上げて答える。

 

草薙「そんなに早く終わるなら苦労はしませんよね···」

 

女性「なので私は···その、守ることの意義があるのか分からなくなってきてて···」

 

草薙は女性の手を握ると、笑顔で女性を励ました。

 

草薙「もちろんありますよ!あなたは努力し続けています!それに、そんなこと言う人達なんて気にしなければ良いんです。それと、あなたが守ってくれた分、必ず笑顔になる人や感謝してくれる人は絶対にいます!」

 

その言葉に、女性は少しだけ笑顔になった。

 

女性「ありがとうございます···あなたは、なんて名前ですか?」

 

草薙「私はお···草薙です!」

 

女性「草薙さん、私は」

 

草薙「『大和』さんですよね?その服装と髪型から察しましたよ」

 

その女性は艦娘であり、草薙は最初から気づいていた。

 

大和「分かってたんですか···」

 

草薙のスマホが鳴る。

 

草薙「あ、すいません。そろそろ行かなきゃいけないので、失礼します···あなたのことは応援してますから!」

 

大和「ありがとうございます···」

 

大和が頭を下げる。

 

草薙「それでは、また縁があれば会いましょう!···"大和姉さん"」

 

大和「え?」

 

大和が顔を上げると、既にそこに草薙はいなかった···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、レイブンズ·ネスト拠点の執務室でベスが資料を整理していた。

 

ベス「アメリカは現在民間人による艦娘排他の運動が活発になり、このままではテロや艦娘達との交戦の可能性あり。

ロシアは艦娘への人体実験を行おうとし失敗、艦娘と提督の信頼感が低下、このままでは彼らの離反の可能性あり」

 

ベスは次々と資料を整理していく···

 

ベス「中国は内部争いが頻発、深海棲艦への対処が遅れており、早急に対応しなければ中国領海に現れた『重巡棲姫』及び『軽巡棲鬼』によって甚大な損害が出る可能性が極めて高い。

ブラジルは初期の対応が遅れ、国土の63%を制圧されており、奪還は極めて困難」

 

コーヒーを飲みながら整理を続けていく。

 

ベス「南アフリカは大陸そのものの70%を制圧されたものの、深海棲艦による環境保護が行き届き、むしろこのままで良い可能性あり。

イギリスは、テロの対処に艦娘を起用したもののその分人員が減り、重要な補給線の1つを制圧されている。このままでは重要です補給線が全て制圧されるのも時間の問題である」

 

書類の中に『那珂ちゃんコンサート』のチケットがあったのでポケットに入れる。

 

ベス「モンゴルは難民を受け入れ切れなくなり、食糧危機に陥っているため、今深海棲艦からの攻撃を受ければ容易く制圧される可能性が極めて高い。

フランスは新しい提督を探すことに躍起になっているが、深海棲艦からの攻勢は激しさを増している。このままでは既存の提督や艦娘の負担が限界に達するのも時間の問題である」

 

ようやく整理が終わったベスは自室に向かい、眠りに落ちた···

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

最近は体調を崩しており、更新が遅れていますが、すいません···

●ベス
金色のポニーテールでメガネを掛けており、身長160cm、肉体年齢は17歳。
艦娘ではなくAFで、青いセーラー服の上に防弾ベストを着けている。

真面目な性格で効率的な行動を心掛けている。レイヴンズ·ネストでは主に執務を執り行っている。
ちなみにコンサートチケットを取っておいたのはラビィに渡すためである。


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第7話 姫(ver2.0)


少しの休暇の後、新たな依頼が入る。
しかし、今回出撃するのは武龍だけではなかった。
更に、拠点の浜辺に何かが···


依頼主:ラバウル鎮守府提督

 

目標:補給線の確保

 

作戦開始時刻:16:00

 

報酬:200000円及び各種資材

 

こちらの新しい補給線を確保したいのですが、まだ私は着任して数日で、艦娘達の錬度も低く心配です。

そのため、協力を求めます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍は3日程休暇を取り、休暇明けの最初の依頼は補給線の確保だった。

いつものようにストークAで空輸し、作戦エリアに投下される。ただ今回は青葉も今回は参加することとなっている。

 

また、味方艦隊の編成は旗艦の戦艦『金剛』、軽巡『天龍』、軽巡『龍田』、駆逐『綾波』、駆逐『子日』、駆逐『荒潮』である。

 

ラバウル提督

《すみません、空母などがいなくて···》

 

武龍「謝る必要は無いさ。対空は任せろ」

 

金剛達は複縦陣で進み、武龍と青葉はその後方から追従する。

少しすると、深海棲艦を発見する。

 

瑞希《敵艦確認、空母はいません。敵編成は4、旗艦の軽巡ホ級を除いて全て駆逐イ級です》

 

武龍「了解。こちらはラバウル艦隊に任せ、周囲を警戒する」

 

ラバウル提督

《皆さん···頼みます!》

 

金剛「このくらいの相手なら、慣れてマース!」

 

金剛の砲撃に合わせる形で天龍達も攻撃を開始し、金剛の砲撃を受けたホ級は沈んでいき、残りはそれぞれ各個撃破していく。

人数差もあり、殲滅するのにさほど時間はかかず、一行は先へと進む。

 

 

 

 

 

瑞希《敵艦確認、軽空母ヌ級1、重巡リ級1、駆逐ロ級2、駆逐イ級2です》

 

武龍「今度は俺らも行くか」

 

天龍「悪ぃ、できるだけ俺らでやりたいんだ。だから対空だけ頼む」

 

青葉「なるほど、了解です!」

 

武龍「よし、なら対空は任せろ!」

 

武龍はヌ級の艦載機にマシンガンを連射し、青葉も対空砲撃を始める。

金剛はリ級へと砲撃し、綾波と子日は魚雷をイ級へと放つ。金剛の砲撃は外れたものの、綾波と子日の魚雷は命中する。

 

綾波「やりました!」

 

金剛は再びリ級へと狙いを定めるが、右側面からロ級が現れる。しかしそこに天龍が向かい、ロ級を刀で袈裟に斬りつける。

 

天龍「横が空いてるぜ!」

 

金剛「サンキューネ!」

 

龍田はその間にもう1体のロ級に砲撃し、トドメに薙刀を突き刺す。

その時、荒潮にヌ級の爆撃機が迫るが武龍のマシンガンにより撃墜される。

するとヌ級は後退りし、その隙に荒潮は魚雷を放つ。その魚雷はヌ級に命中し、ヌ級は沈んでいく。

 

時を同じくして、金剛はリ級に砲撃を今度こそ命中させたため、敵艦隊の殲滅に成功する。

もう既に他の敵反応は無く、補給線の確保に成功する。

 

青葉「そろそろ夜になりますね···」

 

日が沈んでいき、夕日の光が一行を照らす。

 

龍田「なんとか補給線は確保できたけれど、とっても夕日が綺麗だわ~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、拠点の砂浜に何かが打ち上げれているのを見かけたピスはその場に駆け寄る。

打ち上げられていたのは黒髪のおさげをした女性だった。ピスは彼女を抱き上げて浴場へと向かった。

 

ピス「やっぱり···この子は艦娘ですね。意識が戻り次第、話を聞きましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍達は帰還しようとした矢先、新たな反応を検知する。

 

瑞希《敵増援を確認!『駆逐棲姫』及び重巡ネ級1、軽巡ホ級2、駆逐イ級3です!》

 

ラバウル提督

《姫級···どうしてこんな所に!?》

 

 

 

推奨BGM『Rise In Arms 』(ACSLより)

 

 

 

青葉「···武龍、やりますよ」

 

武龍「ああ。駆逐棲姫は俺と青葉がやるから、他の奴らを頼む!」

 

そう言うと、武龍と青葉は駆逐棲姫へと向かっていく。

 

天龍「お、おい!クソッ!」

 

瑞希(武龍、見せてください···あなたの有用性を···あなたの力を)

 

青葉は砲撃するが回避され、駆逐棲姫は回避と同時に魚雷を放ってくる。

武龍は側面に回り込みつつマシンガンを連射していくが、駆逐棲姫はそのスピードを活かした動きで翻弄し、攻撃してくる。

 

武龍は小型ミサイルをロックオンしようとするが、駆逐棲姫はジグザグに動いて狙いをつけにくくさせてくる。すると駆逐棲姫は武龍に砲撃し、砲弾は武龍の右胸に命中する。

 

武龍「グハッ!」

 

駆逐棲姫「オチロ···オチロッ!」

 

武龍はよろけて動きが止まってしまう。しかし青葉がすぐに駆逐棲姫に砲撃し、武龍への追撃を阻止する。続けて青葉は魚雷を放ち、駆逐棲姫はその魚雷を回避しようとする。

だが武龍はその駆逐棲姫にロックオンしており、小型ミサイルを4連発する。

 

 

 

その頃金剛達はネ級達に苦戦していた。

これまで戦ってきた深海棲艦よりも強く、金剛はネ級の砲撃により左側の主砲を破壊されてしまっていた。

 

金剛「まだまだデース!」

 

イ級達を撃破した綾波、子日、荒潮が金剛の援護に駆けつけるが、綾波と子日は中破し、荒潮は小破してしまっていた。

天龍と龍田はホ級と未だ交戦しており、ホ級は粘りに粘っており、天龍と龍田は撃破に時間がかかっていた。

 

天龍「こいつ、めちゃくちゃ避けるじゃねぇか!」

 

 

 

そして、武龍は駆逐棲姫に小型ミサイルを1発当てることに成功するが、駆逐棲姫のスピードは緩まない。

 

武龍(これが姫級···流石に硬い!)

 

武龍はグレネードキャノンを使うことも考えたが、駆逐棲姫の機動力を考えると今は得策ではないと判断する。

そして青葉が追撃しようとするが、回避と同時に懐に潜り込まれる。

 

駆逐棲姫「ヤラセハ、シナイヨッ!」

 

至近距離で砲撃を受け、青葉は中破してしまう。すると今度は武龍に向かって突っ込んでくる。それに対し武龍は後方に引きながら砲撃していく。

しかし、駆逐棲姫の砲撃と雷撃は武龍に直撃してしまい、武龍は爆煙に包まれる。

 

武龍「うあああああっ!」

 

青葉「武龍っ!」

 

すると駆逐棲姫が青葉に向き直おり、駆逐棲姫と青葉は並走しつつ互いに砲撃していく。

そして何度目かの砲撃の末、青葉は駆逐棲姫の脚部に砲撃を命中させることに成功する。

 

駆逐棲姫「痛イ、ジャナイカ···ッ!?」

 

駆逐棲姫が武龍のいた方向を見ると、武龍が膝撃ちの姿勢でグレネードキャノンを構えていた。

 

武龍「チェックメイトだ」

 

武龍は砲撃し、駆逐棲姫の頭部は跡形もなく吹き飛ぶ。首から上を失った駆逐棲姫の体は仰向けに倒れ、そのまま沈んでいく···

 

青葉が武龍を見ると、機甲兵装の脚部は大破しており、自走能力を失っている。また、左腕は手首から先以外はほぼ全損と言って良い程だった。

 

天龍「おい!お前ら大丈夫か!?」

 

金剛達も敵を撃破し、武龍達に駆け寄る。

 

青葉「なんとか···」

 

武龍「さっきからアラートが止まんねぇんだよ···」

 

武龍は苦笑いをしつつ左手でサムズアップする。

 

瑞希《付近に反応はありません。今度こそ作戦は終了です、これより回収に向かいます》

 

ラバウル提督

《あの···ありがとうございました!あなた達がいなければ、私の艦隊は全滅してしました···》

 

瑞希《依頼に対して、当然の行動です》

 

ラバウル提督

《いえ、依頼関係無しに感謝しています!》

 

その言葉に、武龍と青葉は微笑んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、大本営の会議室にて5人の大将による話し合いが行われていた。

 

大将A「ほう···鉄底海峡(アイアンボトムサウンド)へ侵攻するのか?」

 

大将B「呼び名などどうでも良い···とりあえず、そこへ行くのだな?」

 

大将C「左様、あの海域を奪還できれば人類にとって大きな1歩となる。そこまでの航路はかの江ノ島提督の艦隊によって開かれている」

 

大将D「だがあの一帯には、これまでとは比べ物にならない数の深海棲艦がいるだろう?」

 

大将の中で唯一の女性である大将Dは慎重な意見を出す。

 

大将E「だったらこっちも数だ。複数の鎮守府から艦隊を出撃させれば良いだろう?俺の艦隊も出してやる」

 

若くして大将となった大将Eは自信満々の顔で提案する。

 

大将A「なら決まりだな···それと、人数の水増し要員としてあの傭兵を雇えば良い···何かあってもそいつの責任にもできるだろう」

 

大将Aはほくそ笑みながらそう言った。

しかし大将Dはその卑怯な大将達に苛立ち、内心歯軋りしていた。

 

大将D(このクズ共が···)

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!
感想やご指摘も受け付けてますので!どしどし送ってください!

それにしても、ついにあの場所に行くことになりましたね···

●青葉
重巡の艦娘であり、『最初の青葉』でもある。
本土が奇襲された際に民間人を避難させており、その際武龍と出会う。
しかし所属していた提督が自分達を見捨てて逃亡したため、レイブンズ·ネストに所属となった。


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第7.5話 邂逅と廃棄(新実装)

新しくレイヴンズ·ネストに入団となった1人の艦娘、彼女を迎えた武龍達に新たな依頼が入る。


何度も遅れてすいません···


武龍達の前に、1人の女性が立っている。

黒いお下げの髪をした女性は、海軍式の敬礼をする。

 

女性「重雷装艦、北上!正式に着任しました!」

 

先日、拠点の砂浜に打ち上げられていた艦娘は北上であり、本日正式に入団することとなった。

 

武龍「よろしく!」

 

青葉「よろしくお願いします!」

 

ラン「よろしくな!けど、ここは軍じゃないから敬礼はしなくて大丈夫だぞ?」

 

北上「いや~形から入ろうと思ってね~」

 

ジュリアス「ともかく、出撃する人数が増えたからな。翔と青葉の負担も減るだろう」

 

その日は歓迎会となり、宴会が続くのだった···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

依頼主:イギリス少尉『ラニエダ·モーリュ』

 

目標:敵艦隊の撃破、及び小島の確保

 

作戦開始時刻:9:00

 

報酬:300000ドル

 

深海棲艦に対する防衛線を少しでも確保するため、こちらの艦隊と協力して指定された小島の確保を頼みます。

小島には多数の深海棲艦がいますが、鬼級や姫級は確認されておらず、数が多いこと以外に注意する事は多くはないと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ストークAに運ばれ、武龍、青葉、北上の3人は作戦エリアに投下される。

今回武龍はグレネードキャノンの代わりに、新しく開発された『垂直ミサイル』を装備してきており、左腕のレーザーブレードは新しいものに変更されている。

 

武龍達はラニエダの艦隊と合流し、小島へと向かう。

ラニエダの艦隊は、戦艦『陸奥』、空母『アークロイヤル』、空母『赤城』、軽巡『五十鈴』、駆逐『島風』、駆逐『大潮』で構成されており、複縦陣で航行していた。

しばらくすると深海棲艦を発見し、交戦を開始する。

 

瑞希《敵艦隊を発見。重巡リ級2、駆逐ハ級4です!》

 

アークロイヤルと赤城の艦載機による先制攻撃により、ハ級達は撃破され、残りのリ級に武龍と青葉は接近し、武龍はマシンガンを撃ちつつレーザーブレードで横薙ぎに斬り裂き、青葉は砲撃により撃破する。

 

その後再び深海棲艦と交戦したものの、それほど苦労せずに殲滅できたため、そのまま進む。

そして小島まで辿り着いたものの、そこには多くの深海棲艦と"鬼級"がいた。

 

瑞希《敵、連合艦隊!前衛は駆逐ロ級6、主力は···『高速軽空母水鬼』、戦艦ル級elite2、軽空母ヌ級elite1、軽巡へ級2です!》

 

陸奥「そんな···最近確認されたばかりの鬼級じゃない!」

 

武龍「やるしかねぇだろ!」

 

ラニエダ《か、艦隊、攻撃を開始してください!》

 

 

 

推奨BGM『敵艦隊、見ゆ!』

 

 

 

高速軽空母水鬼

「ナンダァ···?ヤロウッテノ···?オモシロイナァ!ジャア、カカッテ、キナヨォ···!アッハッハッハッ!」

 

高速軽空母水鬼は大量の艦載機を発艦させ、ヌ級eliteも艦載機を発艦させる。

アークロイヤルと赤城も艦載機を発艦させるが、高速軽空母水鬼の戦闘機によって次々と撃墜されていってしまう。

 

瑞希《武龍は対空戦闘を優先してください!》

 

武龍達は高速軽空母水鬼への攻撃を優先するため、武龍は高速軽空母水鬼の艦載機にマシンガンを連射し、青葉と北上は砲撃を撃ち込んでいく。

しかし高速軽空母水鬼は砲撃を回避しつつ、更に艦載機を発艦させる。

 

武龍は小型ミサイルを目の前のル級eliteに最大数までロックオンし、発射する。放たれた4発のミサイルはル級eliteの左の主砲を破壊し、武龍はレーザーブレードを起動させ、斬りつけようとする。

だが高速軽空母水鬼の爆撃機により阻まれてしまう。

 

 

 

 

 

その頃レイヴンズ·ネストの拠点では、カタパルトにベスが艤装を装備して立っており、その背部に巨大なブースターが取り付けられる。

 

工廠妖精「解っていると思いますが、"これ"はまだ試作段階ですから、本物と同じ速度は出せませんよ」

 

ベス「構いません」

 

 

 

3分前、指令室にて──

 

瑞希「今の武龍達では、あの高速軽空母水鬼には勝てません···」

 

瑞希は拳を握り締める。

 

ティス「なら私が行く!おい妖精、艤装の準備を···」

 

ベス「ここは私が行きましょう」

 

ティスが振り返ると、ベスが扉の前で立っていた。

 

ベス「そもそも、ここにいる誰が出ても時間的に間に合いませんし、あなたでは姿を晒す事になってしまいます。しかし、試作段階の"アレ"を装備した私なら、問題は無いでしょう」

 

ティス「チッ、解ったよ」

 

ティスは舌打ちすると、指令室を出ていく。

 

 

 

現在──

 

ベスの背部につけられている巨大なブースターは、大小合わせて計4つのブースターが1つになったものであり、離陸したベスはそのブースターにより凄まじいスピードで武龍達の元へ向かった。

 

 

 

 

 

武龍は垂直ミサイルを2体のル級eliteに2発ずつロックオンし、発射する。真上に連射された4発の垂直ミサイルは、上空からル級eliteに降り注ぐ。

ル級elite達は防御しようとしたが、垂直ミサイルの速度の方が速かったため、頭部にミサイルを受けてル級elite達は倒れて沈んでいく。

 

青葉はヌ級eliteに攻撃しようとするも、高速軽空母水鬼に何度も阻まれてしまう。

しかしその間に北上は魚雷を放ち、2体のへ級をまとめて撃破する。

そして陸奥達はロ級達を撃破し、武龍達の援護に回っていたが···

 

瑞希《敵増援を確認!戦艦タ級flagship、重巡リ級elite2、雷巡チ級1、駆逐イ級2です!》

 

五十鈴「このタイミングで増援!?」

 

アークロイヤル「マズイ、このままでは···!」

 

高速軽空母水鬼

「甘インダヨォ···へへへへへ!」

 

高速軽空母水鬼は更に艦載機を発艦させ、アークロイヤルは大破してしまう。

陸奥と五十鈴、大潮は中破、赤城と島風は小破していたが、ほぼ中破に近い状態だった。

 

陸奥「こっちは任せて!」

 

陸奥は増援の深海棲艦達の前に立ち塞がり、主砲を構える。更に島風と大潮も増援の深海棲艦に向かっていく。赤城はアークロイヤルの前に出つつ、艦載機を発艦させる。

五十鈴は増援の横に回り込みつつ、砲撃していく。

 

武龍「ああ、ならアイツは任せろ!」

 

武龍、青葉、北上の3人が高速軽空母水鬼に向き直るが、高速軽空母水鬼は余裕の表情を浮かべており、損傷はほぼ無いと言って良い状態だった。

しかしその時···

 

ベス《皆さん、救援に来ました。今一度気を引き締めてください》

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM『Scope Eye』(ACNXより)

 

 

 

背部の巨大なブースターをパージしてベスは着水し、それと共に背部のレールガンを水中に沈めて推進力とする。

そして背部から肩にかけて伸びる2つの主砲を構え、狙いを定める。

 

ベス「ロック完了、Fire(ファイア)!」

 

他を圧倒する轟音と共に、水平線の向こうから放たれた砲撃は増援のタ級flagshipを跡形もなく消し飛ばし、ベスはすぐさま次弾を装填して砲撃する。

その砲弾はリ級eliteを消し飛ばし、ベスは次の目標へと狙いを定める。

 

五十鈴「水平線の、向こうから···?」

 

大潮「す、凄すぎます!」

 

陸奥達だけでなく、高速軽空母水鬼も唖然としていた。

 

高速軽空母水鬼

「ナ、ナンナンダヨ···アレ···!?」

 

武龍はこの気を逃すまいと、高速軽空母水鬼に小型ミサイルを発射する。更に青葉と北上の砲撃も命中し、ようやく高速軽空母水鬼に損傷を与えることに成功する。

 

高速軽空母水鬼

「チッ、イマイマシィ···フザケヤガッテサァ!」

 

高速軽空母水鬼は艦載機を発艦させるが、武龍は飛行甲板に向けてマシンガンを連射したことで、発艦した艦載機の数を減らすことに成功する。

続いて、大潮が高速軽空母水鬼の左側面に回り込みつつ、砲撃する。

 

大潮の砲撃に合わせて五十鈴と島風が砲撃し、赤城は艦載機を発艦させようとする。

しかし高速軽空母水鬼の爆撃機により、赤城は大破してしまう。更に陸奥は攻撃機の魚雷により航行能力を失ってしまう。

 

陸奥「そんな!こんな時に···!」

 

陸奥に迫るリ級eliteに五十鈴が砲撃して撃破し、ヌ級にベスの砲撃が命中する。

 

 

 

 

 

武龍は垂直ミサイルを高速軽空母水鬼にロックオンし、青葉は武龍の前に出て武龍を守り、北上は大潮と共に砲撃して援護する。

そして放たれた武龍の垂直ミサイルは、高速軽空母水鬼の左側の飛行甲板と左腕を破壊することに成功する。

 

すると高速軽空母水鬼は、怒りの混じった笑みを浮かべる。

 

高速軽空母水鬼

「少シダケ···ホォンノ、少シダケ···ヤルジャンカァッ!オモシロイナァ···!楽シイヨォ···ジャア、Rook'n roll(ロックンロール)!」

 

今度は武龍に向かって集中的に爆撃し、武龍の機甲兵装は中破してしまう。

 

青葉「武龍っ!」

 

武龍「チクショウ、ミサイルがっ!」

 

武龍の装備していたミサイルは両方とも破壊されてしまい、武龍はよろけながらも立ち上がり、マシンガンを構える。

高速軽空母水鬼は再び艦載機を発艦させようとするが、ベスの砲撃が高速軽空母水鬼の目の前に着弾し、巨体な水柱を発生させる。

 

ベス《今です!》

 

陸奥が高速軽空母水鬼に砲撃し、その砲弾が高速軽空母水鬼の腹部に命中すると共に、武龍が水柱から飛び出る。

そして武龍は高速軽空母水鬼に掴みかかり、陸奥の砲撃の命中した傷口にマシンガンを至近距離から連射する。

 

高速軽空母水鬼

「コノォッ!」

 

武龍はブースターを最大出力で吹かし、小島の砂浜まで高速軽空母水鬼を押し出し、レーザーブレードを起動させる。

 

武龍「これで、終わりだぁ!」

 

高速軽空母水鬼

「マダダ···マダダァ!」

 

高速軽空母水鬼は右腕を振り上げるが、武龍はレーザーブレードを高速軽空母水鬼の右胸に突き刺す。

 

高速軽空母水鬼

「ガッ···アッ···!」

 

高速軽空母水鬼は武龍にもたれ掛かり、武龍のレーザーブレードの刀身は消滅する。

しかしこれで終わりかと思いきや、高速軽空母水鬼は涙を流し始める。

 

高速軽空母水鬼

「クッソ···油断シタ、カ···嫌ダヨ···モウ、モスボール···モ···スクラップモ、嫌ダ···!」

 

武龍は高速軽空母水鬼を抱き締め、ゆっくりと腰を下ろす。

 

武龍「大丈夫、大丈夫だ」

 

武龍は、なぜ自然とそんなことを言えたのか解らなかったが、"助けたい"という思いが強く現れ、武龍はその思いに従うことにした。

 

高速軽空母水鬼

「ヒトリデ、沈ムノハ、嫌ダヨ···モット、モット皆ト···!」

 

武龍「大丈夫、君は1人じゃない。だから···」

 

そして武龍は心の底から、自然とある言葉が出てくる。

 

 

 

武龍「もう一度、一緒に行こう」

 

 

 

高速軽空母水鬼

「···えっ?マタ、皆と···こノ海の上で···本当かい?」

 

武龍は優しい表情で頷く。

 

高速軽空母水鬼

「あり、がとう···」

 

高速軽空母水鬼は涙を流しながら笑顔になり、そのまま高速軽空母水鬼の体から力が抜け、高速軽空母水鬼の体の爪や角は崩れ落ちていく。

 

赤城「こ、これは···!?」

 

ラニエダ《どういう、こと···?》

 

高速軽空母水鬼の髪は白から薄い紫に変わり、高速軽空母水鬼はスヤスヤと寝息を立てて眠っている。

その姿は深海棲艦ではなく、人間だった。

 

ベス《なるほど、やはり···》

 

ベスはその光景を眺めながら腕組みをしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瑞希《周囲に反応はありません、これにて任務完了です》

 

青葉「やっと終わりましたね~」

 

北上「はぁ···早く帰って寝た~い」

 

武龍「えっと···こいつは?」

 

瑞希《彼女は邂逅、通称ドロップした艦娘ですね。彼女は回収します》

 

すると迎えのストークが飛んできたが、ラニエダから通信が入る。

 

ラニエダ《傭兵の皆さんに、追加の依頼があります》

 

武龍「え、今か!?」

 

ラニエダ《いえ、この場でできることです···その深海棲艦と、陸奥達を"廃棄"してください》

 

ラニエダの言葉に、場の空気が固まる。

陸奥達の顔は青ざめ、武龍達も驚愕の表情を浮かべる。

 

武龍「おい、どういう事だ!?廃棄って···!」

 

瑞希《廃棄、ということは···彼女達をこの場で沈めろと?》

 

ラニエダ《はい、その通りです》

 

北上が陸奥達を見ると、高速軽空母水鬼との戦闘で彼女達は大きく損傷しており、航行能力が残っているのは五十鈴と島風だけだった。

 

陸奥「どういう···ことよ!?」

 

ラニエダ《そのままの意味です、報酬は当初の任務に5割追加としますので、すぐさま実行してください》

 

 

 

青葉「理由を···聞かせてください」

 

青葉は拳を握り締め、その顔には怒りの表情が浮かんでいた。青葉の質問に対し、ラニエダは冷ややかな声で答える。

 

ラニエダ《理由?使えない兵器と危険因子を廃棄するのに、理由が必要ですか?》

 

五十鈴「どういうことよ!?」

 

ラニエダ《私の所有する艦娘の中で、あなた達は最も使えない艦娘でした。本来であれば今回の作戦で全員沈んでもらい、明日こちらの主力艦隊が制圧する予定でした···しかし、生き残ってしまうとは想定外です》

 

ラニエダは一度ため息をつく。

 

ラニエダ《それに、艦娘に偽装した深海棲艦を生かしておくわけにもいきません》

 

瑞希《···ということは、こちら側の3人が死亡することも想定していたということですか?》

 

ラニエダ《···はい》

 

瑞希の表情は周囲が凍りつきそうなほど冷たいものになっていた。

 

瑞希《なるほど···ではあなたは彼女達を廃棄したということで、彼女達はこちらが引き取ります》

 

ラニエダ《なっ!?》

 

瑞希《そもそも、こちら側の3人が死亡するのを前提としていた時点で、本来ならあなたは違約金を払わなければなりません。しかし、違約金の代わりに、彼女達を引き取りましょう》

 

ベス《それに、邂逅した艦娘も引き取ります。こちらであれば、仮に深海棲艦だったとしても"処理"できますし》

 

陸奥「ねぇ···皆···」

 

陸奥はアークロイヤル達に目を向けると、アークロイヤル達は頷く。

 

陸奥「じゃあ、私達は廃棄されるわ」

 

アークロイヤル「そう、だから···」

 

大潮「私達を、連れてってください」

 

陸奥達が武龍達にそう言うと、武龍達は顔を見合わせて頷く。

 

武龍「なら、引き取ろう」

 

瑞希《既に輸送機を送ってありますので、少々お待ちください》

 

ラニエダ《は、話しはまだ···》

 

瑞希《報酬は結構です》

 

そして武龍達はストークAに、陸奥達はストークCに乗って帰還することとなった──

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

改めて、遅れてすいません。
体調を崩しただけではなく、この話の構想がなかなか上手く行かず、ここまで遅れてしまいました···

●ラニエダ·モーリュ
ブロンドのボブカットで身長159cm、30歳で1月8日生まれ。

イギリスにて提督適正が発見され、いくつかの作戦を成功させた後に少尉となったが、艦娘を徹底的に兵器として扱っており、ドロップした艦娘は全て"廃棄"している。

また、爪を噛む癖がある。

●邂逅
深海棲艦を撃破した際、その深海棲艦から艦娘が現れる現象の事である。
別名ドロップと呼ばれる。

各国は『建造』の際に自国の艦娘しか建造できないが、ドロップでは別の国の艦娘を艦隊に加えることが可能となっている。
(艦娘が最初に現れた時のみ、自国の艦娘が無い国はランダムで3人現れている)

余談だが、時折深海棲艦の時の記憶を持っている艦娘もいるが、基本的に問題は無い···基本的には。

●建造
妖精の作った特殊な装置を使い、艦娘を建造する事。
建造には燃料、弾薬、鋼材、ボーキサイトの4つの資材、そして専用の開発資材などが必要となってくる。

しかし自国の艦娘しか建造できず、自国の艦娘のいない国では建造装置があっても建造することはできない。


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第8話 鉄底海峡(ver2.0)


高速軽空母水鬼を撃破した武龍達に、新しい依頼が入る。それは大規模作戦への参加だった。
武龍達にとって始めての大規模作戦。そして運命は交差する──


依頼主:大本営

 

目標:鉄底海峡の攻略

 

作戦開始時刻:15:00

 

報酬:10000000円及び各種資材

 

人類の大きな1歩のため、鉄底海峡への大規模な侵攻作戦を決行する。複数の鎮守府の艦隊が出撃するが、人数は多い方が良い。そのため依頼を出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍の機甲兵装は今回、武装とジェネレーター、そしてブースターを変更してきており、武装は左背部の武装を『中型ロケット』に変更し、射撃での火力を高めている。

また、ジェネレーターとブースターの変更により機動力は大きく向上している。

 

そして今回は武龍、青葉、北上の他に赤城、陸奥、大潮の3人も参加している。

これにより3人の時よりも大幅に戦力は向上している。

 

青葉と北上は通常の艤装に加え、『対艦ナイフ』や『試作携行修復材』、『スモークグレネード』を装備してきていた。

武龍達はストークAから投下されて周囲を見渡すと、かなりの数の艦隊が集結している。

 

青葉「これだけいると壮観ですね。でも···」

 

武龍「ああ、いくつかおかしな艦隊がいるな···」

 

ある艦隊は全員が痩せ細っており、ある艦隊は目に隈ができて明らかな疲労が見えており、ある艦隊はまるで感情の無い機械のような艦娘達である。

中には機甲兵装を真似ようとしたのだろう、体に装甲を装着し不格好な姿の艦隊までいる···

 

瑞希《ろくな運営がなされてないですね···》

 

赤城「それに対し、あちらは違いますね」

 

まともな艦隊の中に、確実に違う雰囲気の艦隊が3つ···

 

瑞希《江ノ島艦隊、舞鶴艦隊、横須賀艦隊···噂には聞いていましたが、やはり面構えが違いますね》

 

すると、この作戦唯一の大将Eの艦隊の旗艦である長門から通信が入る。

 

長門《総員!これより鉄底海峡へと侵攻する!この作戦が成功すれば、人類は大きな1歩を踏み出す事ができる!私の艦隊は、先頭に立って進む!総員、この長門に続けぇ!》

 

それぞれの艦隊が鉄底海峡に向けて突き進んでいく。

武龍は青葉達に『草薙印のレーション』を見せて目配せし、一部の艦隊に近づく。

 

青葉「皆さん、これ良かったら食べてください。腹が減っては戦はできぬと言いますし」

 

駆逐艦娘「···いいの?」

 

武龍「腹減ってんだろ?なら食っとけ。文句言う奴は俺らに任せろ」

 

武龍達は痩せ細った艦隊と疲労している艦隊に、持っていた草薙印のレーションを1つずつだけ残して全て与えた。

それらの艦隊から離れて陣形を組み直すと、武龍は拳を握り締めた。

 

武龍「許せねぇよ···頑張ってくれてんのにあんな扱いするだと···」

 

青葉「抑えてください。今は攻略に集中しましょう」

 

 

 

 

 

しばらく進むと作戦エリアに入り、海が赤く変色していく。

すると、作戦エリアに入ってすぐに多くの深海棲艦が現れる。

 

武龍「戦闘開始!行くぞ!」

 

武龍達の位置は全体の左側面であり、すぐ右横には先程の痩せ細った艦隊と疲労している艦隊があった。

現れたイ級の群れに武龍達は攻撃するが、痩せ細った艦隊と疲労している艦隊はほとんど攻撃を当てられていなかった。

 

武龍(やっぱり、あんな状態の艦娘じゃあ···)

 

陸奥と赤城は痩せ細った艦隊と疲労している艦隊の前に出る。

 

陸奥「あなた達は私を盾にして!」

 

赤城「絶対、あなた達を沈めさせません!」

 

武龍達は、痩せ細った艦隊と疲労している艦隊を守りながら戦っていく。

しかしそれは簡単なことではなく、それぞれの艦隊で被弾してしまう艦娘が数人おり、中には中破してしまった艦娘もいた。

 

4度目の戦闘の後、武龍達は全体の様子を確認する。

状態はあまり良くなく、半数以上が損傷しており、轟沈してしまった艦娘も数人いる。

それだけでなく、全体の疲労が溜まってきてもいる。

 

武龍「なぁ、そこに小島があるからそろそろ休憩と点検してかないか?」

 

武龍の問いかけに複数の艦娘が頷き、同意の意を示す。

 

江ノ島艦隊提督

《俺も同意見だ。陣形も崩れてきてる、そろそろ休憩しないとまずいぞ》

 

大将E《何言ってやがる?そんなことしてる暇あるなら進め!奴らを倒せ!まだ人数は残ってるし損傷も少ないだろ?なら行けるに決まってるだろ!》

 

横須賀艦隊提督

《それは難しい。疲労が溜まれば動きや判断は鈍り、被害拡大の要因になる》

 

舞鶴艦隊提督

《ああ。進みたい気持ちは俺にもあるが、休憩は必要だ》

 

大将E《休憩ならその場でできるだろ?ほら5分やるからそこで休憩しろ!》

 

江ノ島艦隊、横須賀艦隊、舞鶴艦隊のそれぞれの提督はため息をつき、武龍は拳を握り締めている。

そして5分が過ぎる···

 

長門「···艦隊、進むぞ」

 

大将Eの艦隊の長門は負い目を感じつつも、出発の合図をして進み始める。

それに伴って他の艦隊も進んでいく。すると、横須賀提督が武龍に通信を入れてきた。

 

横須賀提督

《初めまして、僕は横須賀の提督だよ···君はこの戦況、どう思う?》

 

武龍「···このままだと多分、負けると思う。人数は残ってるが、損傷と残弾、それに疲労のことを考えると···なぁ、横須賀提督と江ノ島提督、舞鶴提督に頼みがある」

 

武龍はこの3人の提督の艦隊の艦娘の雰囲気を見て『大事にされている』と感じ、あることを頼み込む。

 

横須賀提督

《戦略としてはありだけど···》

 

舞鶴提督《···解った。うちの艦隊にも連絡を入れておく》

 

江ノ島提督

《傭兵つっても共闘した仲間だ···死ぬなよ》

 

武龍「ありがとう···」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして進み続けると前方に大量の反応があり、その中には···

 

瑞希《···敵姫級を確認》

 

黒いキャミソールを見に纏い、背後に人型の巨大な生物のような艤装を従えた『戦艦棲姫』。

 

戦艦棲姫「アイアン···ボトム···サウンドニ···シズミナサイ···」

 

白く、途中から黒くなっている長髪が特徴であり、長い主砲を持つ『泊地棲姫』。

 

泊地棲姫「イマイマシイ···艦娘ドモメ···」

 

対空砲を搭載した艤装に座り、こちらを嘲るような笑みを浮かべている『防空棲姫』。

 

「フフ···キタンダァ···ヘーエ···アノママキタンダァ···」

 

長門「姫級が···3体もだと!?」

 

3人の姫級の出現と同時に周囲から増援の深海棲艦が現れる。

そしてその猛攻により次々と艦娘が撃沈されていき、武龍達も応戦するが、とても捌ききれる数ではなかった。

 

江ノ島提督

《このままじゃやられる!撤退だ!》

 

舞鶴提督《俺の艦隊が道を作る!行け!》

 

横須賀提督《ブッキー、そこの駆逐艦を頼む!金剛は殿をしつつ援護!》

 

横須賀所属吹雪「はいっ!」

 

大将E《なっ!?お前ら撤退だと!?》

 

武龍は小型ミサイルを1発ずつロックオンして発射し、中型ロケットに切り替えると連射して損傷を与えていく。

そこに青葉、北上、大潮の砲撃が放たれ、陸奥と赤城は痩せ細った艦隊と疲労している艦隊を守りつつ後退する。

 

江ノ島提督

《今の戦力じゃ勝てない!》

 

武龍が深海棲艦を牽制しつつ後退していると、ル級eliteが武龍に主砲を向ける。

ル級eliteが砲撃しようとした瞬間、江ノ島艦隊所属の金剛がル級eliteに砲撃し、武龍にサムズアップする。

 

瑞希《逃げれるためのルートを送信します!》

 

瑞希は逃げれるためのルートを計算し、送信する。

それを確認した青葉と北上はすぐさまスモークグレネードを投げ、深海棲艦の視界を塞ぐ。そしてなんとかある程度の距離を離すことができた···

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

姫級3人···私ならビビり倒しますね···え?まだ温いですか?

●深海棲艦の階級
イロハ級の深海棲艦には主にノーマル、elite、flagshipの3種の階級があり、それは強力な個体を意味している。
ノーマルは青、eliteは赤、flagshipは金色の目をしており、同色のオーラを纏っている。

しかし、稀に目が青い炎に包まれ、金色のオーラを纏っている個体も確認されており、その個体はflagshipよりも強力な個体である。

●中型ロケット
無誘導のロケットを発車する武装であり、小型、中型、大型とある内の中型のタイプ。
小型より火力が高い代わりに、連射力が低く弾数は少ない。

●対艦ナイフ
新たに開発された、艦娘の標準装備とされるナイフ。
特殊な素材でできており、戦艦にも通用する切れ味を持つ。

●試作携行修復材
艦娘の高速修復材と同じ効果を持つが、コーヒー缶サイズなので回復できる量は10%程である。
また、轟沈してしまう状態では使用したとしても、僅かに延命させるだけになってしまう。

●スモークグレネード
煙幕を発生させるグレネードで、攻撃性は無い。
緊急時の撤退や奇襲などを目的としている。

●草薙印のレーション
草薙が開発した特別なレーション。
適度な味と満点の栄養素により、試作品ながらも好評の1品である。


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第9話 疾走する者(ver2.0)


鉄底海峡へと侵攻する大規模作戦。
しかし待っていたのは3人の姫級の深海棲艦であり、戦線は崩壊してしまい、撤退を余儀なくされる。


そして、武龍が提督達に頼んだ事とは···


武龍達の使ったスモークグレネードと江ノ島、舞鶴、横須賀の3つの艦隊によりある程度距離を離すことに成功したのだが···

 

武龍「青葉···俺はここに残って奴らの足を止める」

 

青葉「何言ってるんですか!?」

 

陸奥「武龍···あなたがさっき通信してたのは、その事?」

 

武龍は頷くが、青葉達は心配で仕方なかった。

 

瑞希《···戦略的には、誰かが足止めをしなくてはなりません。それに、負傷した艦娘の数が多すぎます》

 

武龍「戻ってくるさ···」

 

武龍は撤退する艦隊とは真逆の方向へ進んでいく。

 

北上「皆、後はお願い」

 

北上はそう言うと、武龍に着いていく。

 

武龍「おい、何も北上まで!」

 

北上「武龍1人だけじゃ、そんなにもたないかもしれないでしょ?だから私も行く」

 

青葉達は瑞希からの制止が入り、艦隊の護衛にまわる。するとそこに江ノ島提督達の通信が入る。

 

江ノ島提督

《俺の艦隊を助けに向かわせた!だから持ちこたえてくれ!》

 

横須賀提督

《僕の艦隊も向かわせたから》

 

舞鶴提督《俺もだ。絶対生き残れよ!》

 

青葉《2人とも、必ず生きて戻ってくださいね!》

 

武龍「解ってるさ···」

 

北上「もちろん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍と北上は追撃にした深海棲艦と対峙する。

 

 

推奨BGM『モドレナイノ』

 

 

月明かりに照される黒い海──

 

そこに立ち並ぶ多数の深海棲艦とその姫級達。

それぞれが呪詛や怨嗟、無念の言葉を呟きながら進んでいる。

 

武龍はブースターを最大出力で吹かして突撃し、北上はその背後から主砲を構える。

途端に大量の砲雷爆撃が武龍と北上に襲いかかる。

武龍と北上はギリギリで回避しつつ攻撃をしていく。 

 

武龍はイ級にマシンガンを連射し、怯んだイ級に北上が砲撃して撃破する。

更に、武龍の前に出た北上は最後の魚雷を扇状に放つ。放たれた魚雷はイ級2体、リ級1体を撃破する。

 

武龍(ごめんな、皆···北上···俺、嘘ついちまったよ)

 

武龍はもう、戻る気は無かった···

マシンガンで敵艦載機を撃ち落とし、そのままヲ級eliteに連射していく。そのヲ級が顔を腕で覆ったところに大型ロケットを撃ち込んで撃破する。

 

その流れで武龍は戦艦棲姫の頭部目掛けて大型ロケットを放つが、戦艦棲姫の艤装が本体を庇うことで防がれる。

武龍はそのまま接近しようとしたが、泊地棲姫を筆頭とする他の深海棲艦に阻まれる。

 

 

 

北上は武龍元へ行こうとするも、リ級eliteの砲撃により大破してしまう。しかし北上はすぐに携行修復材を使用してその場を凌ぐ。

 

北上「重雷装巡洋艦の名は、伊達じゃないよ!」

 

北上はリ級eliteの顔面を撃ち抜き、武龍と背中を合わせる。

周囲は囲まれており、撤退は絶望的である。

 

武龍「ハァ···ハァ···まだやれるか?」

 

北上「大破してるけど···なんとかやれるよ!」

 

武龍「なら···行くぞ!」

 

武龍は弾切れになった小型ミサイルをパージし、北上と共に再び攻撃を開始する。

しかし泊地棲姫とリ級の砲撃が武龍に命中する。

 

 

 

···が、その爆煙から武龍は飛び出て、横にいたリ級の顔面にレーザーブレードを突き刺す。

そして、武龍は北上の砲撃による援護を受けつつ、大型ロケットの最後の1発を防空棲姫に撃ち込みながら突撃し、そのままの勢いで防空棲姫を彼女自身のの艤装に押し付け、艤装ごと頭部を貫く。

 

泊地棲姫「コノッ!」

 

武龍は北上と並んで深海棲艦達を睨み付ける。

しかし周囲は未だに深海棲艦に囲まれ、数もまだ2桁も残っている。

それでも武龍達は、再び深海棲艦の群れへと突撃していく···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、拠点では──

 

 

リプ「大変なのだ!ティスが勝手に行ってしまったのだ!」

 

リプがそう叫びながら指令室に駆け込んでくる。

 

ラン「なんだって!?」

 

ランが思わず机から立ち上がるが、ジュリアスは腕組みしたままだった。

 

ジュリアス「いや···ティスならあるいは···」

 

すると、その場に薄い紫の髪の艦娘がやって来る。

 

艦娘「えっと、今何が起こってるんだ?」

 

瑞希「あなたは···」

 

その艦娘に廊下からピスが歩み寄る。

 

ピス「休んでてと言いましたのに···この子は先日ドロップした艦娘です」

 

艦娘「me(ミー)は軽空母、『ラングレー』だ、よろしくな!」

 

瑞希「今、鉄低海峡への大規模作戦で味方を撤退させるため、1人殿となって残った人間を、1人のAFが助けに向かったのです···AFの事は知っていますか?」

 

ラングレー「AFの事はピスから聞いてるけど···それより、"あの人間"が戦場に···でもそれじゃ間に合わないんじゃ?」

 

ラングレーの疑問に、ジュリアスは鼻で笑う。

 

ジュリアス「間に合うさ···」

 

ティスはブースターを吹かし、鉄低海峡へと最短距離を直進する。

立ち塞がる深海棲艦はティスの両手に逆手に持った青い刀身のレーザーブレードで薙ぎ払われ、攻撃を加えようとしても艦娘や深海棲艦では考えられないそのスピードにより、狙いを定めることすらできない···

 

ティス「オラオラァ!どけどけぇっ!轢き殺すぞガラクタ共がぁぁぁぁ!」

 

窓から海を見ながらジュリアスは言う···

 

ジュリアス「あいつは"最速のAF"、スティグロだからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍は戦艦棲姫の砲撃で吹き飛ばされ、海上をゴム毬のように転がる。

今の砲撃で頭部装甲のカメラが破壊され、武龍は頭部装甲を剥ぎ捨てる。

 

持っていたマシンガンは弾切れになったためパージしており、残っている武器はレーザーブレードのみである。

損傷も激しく、右腕の装甲は完全破壊され、胴体の装甲も大破している。

 

北上も全ての弾が切れており、右手に対艦ナイフを握り締め、左手には主砲の砲身を握っている。

 

武龍はなんとか立ち上がり、北上を守るようにして再び突撃する。

 

武龍(俺は···あなたのようになれましたか?誰かを守れるように、なれましたか?)

 

武龍は幼い時に小説をくれた男性とその小説の登場人物の事を思い浮かべる──

 

武龍(俺はここで死ぬ···けれど、代わりに誰かを生かすことはできたはず。それに、今は北上を守らなければ!)

 

武龍はイ級による背後からの不意打ちを受け、背部のブースターが破壊される。

更に、そこに放たれた戦艦棲姫の砲撃を回避するが、タ級が武龍に迫る。

 

機甲兵装の脚部の航行装置はまだ生きているため、走ってタ級の腹部をレーザーブレードで横向きに2度切り裂き、そこへ左手を突っ込み、内臓を引きずり出す。

 

タ級「ギャア"ア"ア"ア"ッ!」

 

タ級は吐血し、腹部から噴血しながら倒れ、沈んでいく。

しかしそれで武龍の体力は尽きてしまう···

 

 

 

北上「武龍っ!」

 

北上は近くのへ級の頭部を主砲で殴りつけ、壊れた主砲を投げ捨てつつ武龍の元へ駆け寄る。

 

武龍「北上···逃げろ···!」

 

北上「そんなの、できるわけないよ!」

 

北上は深海棲艦達に向けて対艦ナイフを構える。

周囲の深海棲艦が武龍に砲口を向けたその瞬間···

 

 

 

 

 

ティス「何してんだゴルァァァ!」

 

武龍と北上の左方向からミサイルが飛んで来る。そのミサイルはイ級3体を纏めて撃破し、ミサイルが飛んで来た方向から高速でティスが現れる。

ティスはそのまま最も近い所にいたタ級eliteを一刀両断する。

 

武龍「ティス、お前···」

 

ティス「仲間助けんのは当たり前だろ!」

 

ティスは頭部装甲のオレンジ色に光る複眼で深海棲艦達を睨み付け、次々と深海棲艦達を斬り伏せていった···

 

ティスは砲撃しようとした戦艦棲姫の懐に、一瞬で距離を詰める。そして次の瞬間には戦艦棲姫を艤装ごと袈裟に斬り裂く。

ヲ級達の艦載機はティスの背部から出るミサイルにより落とされ、深海棲艦達はほとんど何もできないままに沈められていった···

 

泊地棲姫「オノレェ···!」

 

残った泊地棲姫は主砲を構え、ティスに砲撃するが容易く回避されてしまい、回避と同時に放たれたミサイルは泊地棲姫の艤装に命中し、泊地棲姫は航行能力を失ってしまう。

 

泊地棲姫「オマエ···何者ダァ!?」

 

ティス「私は···スティグロだ!」

 

ティスは左手のレーザーブレードで泊地棲姫の主砲の砲身を斬り落とし、そのままの勢いで回転し、右手のレーザーブレードを泊地棲姫の心臓に突き刺す。

 

 

 

そして深海棲艦を全滅させた後、北上は武龍肩を貸し、ティスは2人を護衛しつつ拠点へと帰還していった···

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

ティスの描写が少なかったかもしれませんが、奇襲かつ深海棲艦の数が減っていたため、少なくなってしまいました。

また、泊地棲姫の描写を忘れていたため、すぐに修正しました。すいませんでした。

●ティス
金髪のセミロングで身長160cm、肉体年齢は16歳。

艦娘ではなくAF。
服装は白いフリルのついた金色のアイドル衣装を着ている(ちなみに毎回変わる)。

基本的には明るい性格をしているが、本来は腹黒い性格をしており、本気を出した時や武龍の前でしかその本性を見せない。
(レイブンズ·ネストのメンバーが相手の場合は時々見せるくらい)

●スティグロ
ティスの本名であり『本来起こり得た未来』の兵器であるAFの1つ。

金色の流線形のフォルムとオレンジ色に光る複眼が特徴。
海上を猛スピードで突き進み、先端にあるブーメラン状の青く巨大なレーザーブレードで敵や建物を薙ぎ払う。
また、横一列に複数同時発射されるミサイルは衝撃力が強く、空にいる兵器を撃ち落とし、そのまま轢き殺す事も可能である。

そしてそのスピードにより『最速のAF』とも呼ばれる。

余談だが、スティグロは量産が目的とされていたが初期建造途中に"ある兵器"により破壊され、更に正式配備された後も一騎討ちを仕掛けたが撃破され、大規模艦隊と"ある兵器"を裏切ってまで戦ったが撃破されてしまった経歴を持つ。


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第10話 それぞれの結果(ver2.0)


ティスもといスティグロの助けにより鉄低海峡から辛くも帰還した武龍。
大規模作戦の結果が、それぞれにもたらすものとは──


第1章最終回です。


意識を失った武龍は即座に医務室に運ばれ、治療を受ける。治療が終わると、武龍の容態を草薙が各員に伝える。

 

草薙「肉体そのものへのダメージは、砲撃や爆撃を受けた衝撃によるもの以外は奇跡的に少ないです。あっても機銃が数発当たっている程度です」

 

ティス「じゃあ、とりあえずは助かるんだな?」

 

草薙「はい。では皆さん、とりあえず意識が回復するまで待ちましょう」

 

翌日、武龍の意識は回復し、祝福された。武龍はティスに礼を言った後、新しくレイブンズ·ネストに入団したラングレーと話をしてみた。

 

武龍「俺は武龍。よろしく」

 

ラングレー「ああ、よろしく!」

 

武龍「···ん?ラングレー、もしかして···」

 

武龍はラングレーから発せられる気配に気づき、ラングレーはそれを察する。

 

ラングレー「···やっぱり、気づくか。Me(ミー)は···アンタと前に戦った高速軽空母水鬼だ」

 

武龍「なるほど、それで深海棲艦と同じ気配がしたのか」

 

ラングレー「Meが深海棲艦だった時に、色々迷惑をかけたのも覚えてる···Sorry(ソーリー)、本当にすまなかった。けど、せめて償わせてくれ」

 

ラングレーは武龍に頭を下げる。それに対し武龍はラングレーの肩に手を置き、微笑む。

 

武龍「大丈夫だよ。俺個人としては、あの時にもう許してるからよ」

 

顔を上げたラングレーに、武龍は手を差し出す。

 

武龍「改めて、これからよろしくな!」

 

ラングレー「Off course(オフコース)!」

 

武龍とラングレーは握手を交わす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、海軍の議会は静まり返っていた···

 

大将A「聞いたぞ···貴様は無理に侵攻を進めてあの惨事を引き起こしたと···しかも傭兵に助けられるだと!?ふざけるな!」

 

大将B「国内外からも批判の声が上がっている···これでは取り返しがつかん···」

 

大将C「よもや、あの傭兵が生きていて、映像データを世間に流されるとはな···あの傭兵団の技術、侮っていた···」

 

大将E「···」

 

大将Dはその様子を黙って見ていたが、僅かに歯軋りしていた。

 

大将D(早くこいつらをなんとかしなければ、この国はいずれ終わる···!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍の映像データにより、艦娘に不当な扱いを行っていた鎮守府は抜き打ちの監査が入り、そこの提督達は逮捕されていった。

そして、レイブンズ·ネストはその評価を高める事となった。

 

ラン「にしても酷いなぁ···」

 

ランは窓から拠点の門の前に集まる記者団を見下ろし、ため息をついていた。

するとアンが記者団の前に歩いていき、記者団に何か言う。すると記者団は即座に顔が青ざめ、去っていった···

 

ラン「相変わらずエグいなぁ···」

 

 

 

ベスはいつもの執務室で再び大量の書類を整理していた···

 

ベス「海軍からの艦娘の引渡し要求···焼却。難民の護衛···保留。陸軍からの技術支援···却下。中国からの技術給与要求···焼却」

 

瑞希は大幅に増えた依頼の電話の対応に追われていた。

 

瑞希「はい、こちらレイブンズ·ネストです·····すみません、現在は依頼を受けることができません。予約であれば受け付けていますが···そうですか···」

 

有澤が2人にお茶を差し出す。

 

有澤「また依頼ですか?」

 

瑞希「はい。一旦休業しているとホームページでも知らせているのに、こういった事は中々減りませんね···」

 

 

 

 

 

草薙は武龍の治療の後、妖精達と共に工廠に籠って新型の機甲兵装と艤装を作っていた。

草薙は軽量機と市街戦用、そして新しいメインとなる機甲兵装の3機を作っており、妖精との話し合いも進めていた。

 

草薙「ほぼ全損したクレスト白兵戦型は、もう廃棄ですね。代わりに、この機体を作りましょう」

 

妖精「草薙さん、どうして市街戦も作るのです?」

 

草薙「こうして、レイヴンズ·ネストがここまで有名になってしまった以上、そろそろ市街戦の依頼が来てもおかしくないんです。だから今のうちに、市街戦用の機体も作っておくんです」

 

新型機甲兵装の開発は進む···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある深海棲艦の泊地にて──

 

???A「ホウ···鉄底海峡(アイアンボトムサウンド)ニ イタ アノ 3人 ガ ヤラレタ ト?」

 

???B「殿ニ ナッタ トイウノハ 人間ノ傭兵ラシイガ、駆逐棲姫 ヲ ヤッタンダ···1人ハ倒せテモ オカシクナイ、ガ···」

 

???C「トテモ アノ数ヲ相手ニ生キ残レハシナイ···何者カ ガ 援軍 ニ 来タノダロウ···」

 

深海の者達も動き出す···

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

1つの章のラストとは思えない回ですみません!

●ラングレー
かつては高速軽空母水鬼であり、武龍達との戦闘中に武龍によってドロップした。
高速軽空母水鬼だった頃の記憶を持っており、戦闘力も高速軽空母水鬼の頃のままである。
(深海棲艦の艦載機も発艦可能)


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番外編 機甲兵装(ver2.0)


レイブンズ·ネスト創設後、武龍のために機甲兵装を作ることとなった草薙···機甲兵装開発の裏側とは!?


番外編です。


武龍がAF組によって訓練されている間、草薙は武龍が傭兵として戦っていくための装備『機甲兵装』の開発を行っていた。

"本来起こり得た未来"の兵器であるACを、人間が装備できるようにするため、装着部の設計もしなければならない。

 

草薙「資材は沢山あるので、一度私のサイズに合ったものを作ってみましょう!」

 

そしてとりあえず試作品が3機完成した。どれも設計が違うため、演習場で使ってみる。

しかしどれも失敗であった。

 

1機はブースターの出力が高過ぎ、そのスピードに武龍は着いていけないだろう···

2機目は扱いやすい性能となってはいたが、空中分解を起こし···

3機目は十分な装甲を確保できたものの、動きは鈍重となってしまった···

 

工廠妖精A「どれも良い線は行ってますし、装着部はほぼ問題無いですね。ただ···」

 

工廠妖精B「そもそも艤装でないのに海に浮かべようとすることが難しいんですよ。それも場合によっては水中にも行けるようにするなんて···」

 

草薙は眉をハの字にしながら答える。

 

草薙「それでもやらなきゃいけないんです···"時が来るまで"は私達の戦力は極力知られてはいけませんから」

 

そう言いながら草薙は設計図を描いていく···

 

 

 

 

 

数日後、4機目の試作品が完成し、そのテストを行うこととなった。機甲兵装を装着した草薙が演習場を航行する。

 

観測妖精「海上歩行、良し···ブースター、良し···空中分解、無し···スピード、良し···耐久、良し···水中潜航、良し···テスト終了!おめでとうございます!」

 

水中から浮上した草薙はガッツポーズをするが、顔は晴れやかではなかった。

 

草薙「やっと記念すべき1機目の完成···と言いたいけれど、後は実戦ですね」

 

草薙は着替えた後ガレージへと向かい、この機甲兵装に着ける武装を確認する。

 

草薙「まずは主力となるライフル、これは造りが他より簡略化されてるので、製造に時間はかからないでしょう。

小型ミサイルは少し火薬の量が心配なので、一度確認しておきましょう。

レーザーブレードは、工作用のものなのでこれもさほど時間はかからないでしょう

増設レーダーは···他より若干時間がかかりそうですね」

 

草薙は背伸びをし、火薬の確認のために火薬庫へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2日後、草薙はストークBに運ばれて沖へと向かった。

 

瑞希《ステルス観測ドローン、射出!これより実戦テストを開始します!機体投下!》

 

投下された草薙は試作機の機甲兵装(後に武龍の初期機体となるもの)を装着している。草薙は海上を進み、前方に複数の深海棲艦を発見する。

 

瑞希《敵反応、駆逐イ級2、軽巡ホ級を確認!》

 

草薙は即座にイ級に向けてライフルで射撃し、直撃はしたものの1発では撃破には至らず、ライフル連射しつつ回避しつつ回り込む。

そしてイ級の左目と口内に向けて射撃、今度は撃破に成功する。そのまま隣のホ級に接近する。

 

草薙「やはり、ライフルだけだと撃破に時間かかりますね」

 

もう1体のイ級が草薙を向くのを確認し、草薙はホ級の反対側に移動する。そしてイ級がホ級に向けて誤射をし、ホ級は怯む。

草薙はそのホ級をレーザーブレードで下から袈裟に斬り裂く。

 

そして残ったイ級に小型ミサイルをロックオンし、発射する。小型ミサイルはイ級の鼻先に命中し、イ級は怯む。

イ級は撤退しようとしたが、爆煙の中から草薙がレーザーブレードでイ級を横薙ぎに斬り裂き、イ級は沈んでいく。

 

瑞希《敵増援を確認!戦艦ル級1、軽巡ホ級2です!》

 

草薙「こんな所で戦艦!?」

 

草薙は突然の増援に驚きつつも、ル級の砲撃を避けながらホ級にライフルを連射しながら接近する。

 

瑞希《逃げてください!》

 

草薙「倒してからじゃないと逃げきれませんよ!」

 

草薙はホ級の魚雷を回避しつつ小型ミサイルを撃ち込み、レーザーブレードをホ級の頭部に突き刺して撃破する。

次にル級に向けて小型ミサイルを発射するが、ル級は両腕の主砲と一体化した盾で防ぐ。

 

しかしル級が盾を開いた時には既に草薙はおらず、突然背後から草薙が水中から現れ、背後からル級の心臓にレーザーブレードを突き刺す。

そしてホ級を狙おうとしたが、ホ級の砲撃によりレーザーブレードが破壊されてしまう。

 

草薙は振り向き様にホ級にライフルを発射するが、それでライフルは弾切れになってしまう。

 

草薙「嘘···だったら!」

 

草薙はホ級の砲撃を避けつつ小型ミサイルを撃ち込む。しかし1発では撃破できず、草薙はブースターを使って空中に飛び上がる。

そして小型ミサイルを撃ち込み、今度こそ撃破する。

 

草薙「ふぅ···これで、試験完了ですね」

 

瑞希《ヒヤヒヤしましたよ···これより回収します》

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、機甲兵装は完成し、武龍にもたらされる事となる···初陣がこの試作機なのは草薙曰く『初陣には丁度いいから』とのことであった···

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回の草薙のように、初期機体は武装が少ないながらも、やり方によってはル級を撃破することは十分可能です。


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番外編 武龍とアン(ver2.0)

レイブンズ·ネストに入ったばかりで、AF達からの修行を受ける武龍だが、AF達にも色々あるようで···

再びの番外編です。今回は修行していた空白の1年の話です。
また、AFとの絡みの番外編は長いので複数に分けます。



AF達からの修行を受けているある時、アンとの修行の際にアンの放つレーザーを、立ち塞がった草薙が艤装の頭部を盾にして防いだ。

 

草薙「アンさん···今、実弾で撃ちましたね?どういうことですか?」

 

アンは浮遊しつつ、冷たい目で草薙と武龍を見下ろしている。

 

アン「別に良いじゃないですか、所詮"人間"なんですし」

 

草薙「アンさん!」

 

アンはふわりと演習場から去って行ってしまった···

 

草薙「まったく···武龍、無事ですか?」

 

武龍「ああ、まあ···」

 

とりあえず武龍は念のため医務室で軽い検査をしたが、問題は無かった。

そして武龍が医務室から出ると、有澤が廊下で待っていた。

 

有澤「先程の件、見ていました。武龍さん、後で私の部屋に来てください」

 

 

 

 

 

その日の修行が終わり、武龍が有澤の部屋に行く。ノックをすると、有澤がすぐに返事をする。

 

有澤「どうぞ、お入りください」

 

有澤の部屋は和風に特化した作りになっており、落ち着いた雰囲気を醸し出している。

武龍は有澤に奨められて藍色の座布団の上に座ると、有澤は抹茶と煎餅を出してきた。

 

有澤「では早速本題に入りましょう。アンは根はとても良い子なのですよ···ただ、AFとしての開発工程やその目的が原因で、自分自身と人間を憎んでいるんですよ」

 

武龍が話を聞くと、まずアンは2つの企業が共同開発した『企業連の答え』であり、『最強のAF』とも呼ばれるはずだったとのこと。しかし未完成のまま出撃させられ、撃破されてしまったとのこと。

 

有澤「ですが、兵器だった頃からアンは『自然を見てみたい』と願っていたそうです」

 

武龍「自然って、山や動物とか?」

 

有澤「はい。しかし私達AFが建造された世界では、既に地上の9割は砂漠化が進行していたのです···

けれど、アンの『兵器としての性能』により、自然を見ることは叶うことはありませんでした」

 

武龍「···なんで?」

 

有澤「アンは···『アンサラー』は周囲に極度に高濃度の汚染物質をばらまく性質があるのです。

つまり、アンが出撃すればその周辺一帯は数百年に渡り、いかなる生物も生存不可能な汚染地帯となってしまうのです···それも、開発工程でそれを前提としたものでもあったのです」

 

武龍「そんな···」

 

有澤「だから···アンはそんな性能を持つ自分と、開発した人間達を憎んでいるのです」

 

武龍「で、でも今のアンなら外に出れば自然を見たり触ったりすることだって、できるんじゃないのか?」

 

有澤「確かに、AFではない"アン"ならできるでしょう···しかし、アンは体にまだあの汚染物質が残っているのではと思っています。

それに、人間を見るだけで憎しみの感情が沸き上がり、自然を見るどころでは無くなってしまう可能性もあります」

 

武龍「それで、アンは外に出ないのか···」

 

有澤「また、アンの装備に必要な動力源は未だ不安定でもありますので、それも影響しているでしょう」

 

その時、突然放送が入る。

 

リプ《大変なのだ!アンが海上装備を着けて出撃してしまったのだ!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アンは海上を海上を進むためだけの性能を持つ外骨格『シーウォーク』を装備し、右手には『本来起こり得た未来』の兵器の1つを試作再現した『ハイレーザーライフル』『WH04HL-KRSW』(以下『カラサワ』)を持っている。

 

瑞希《何をしてるんですかアン!すぐに戻ってきてください!》

 

アン「私は存在してはならないAFです···ならせめて、消えるのは戦場です」

 

アンの目の前に、はぐれのイ級が1体見える。アンはすぐにカラサワを構え、トリガーを引く。

するとイ級に青いレーザーが着弾し、青い爆発を起こす。

 

イ級はその一撃で沈んだものの、近くにいたのであろう軽巡へ級とイ級が1体ずつ向かってくる。アンがカラサワの銃口を向けて発射しようとするが、先程の1発で熱暴走を起こし、撃つことができない。

 

アン「フフッ···私もこの子も欠陥品···共に沈むのも、悪くありませんね。なのに···なのにどうしてこんなに悲しいのでしょう?···ああ、なるほど···」

 

ホ級とイ級が砲口を向ける。

 

アン「私はやはり···自然を見たかったのですね···」

 

その瞬間、拠点方向から巨大な砲弾がホ級を直撃し、動揺しているイ級にも同じ砲撃が撃ち込まれる。

 

ベス《危ない所でしたね。今から向かうので、その場から動かないでください》

 

 

 

ベスがアンを連行して帰還すると、武龍が駆け寄る。

 

武龍「おい!大丈夫か!?」

 

アン「なぜあなたが心配するのです?人間に心配される謂れはありません」

 

武龍「仲間だから心配すんの当たり前だろ!それにお前、自然を見たいんだろ!?なのに諦めてんじゃねぇよ!」

 

アンは呆れて目をそらす。

 

アン「どうして、こうも人間は愚かなのですかね···」

 

武龍「俺は···俺は自分がバカだって解ってるから!」

 

アンは答える事無く、ベスに連れられていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、武龍は有澤に連れられて道場へと向かう。道場にはアンがおり、2人は驚く。

 

アン「なぜ、人間をここに?」

 

有澤「一度、2人で語り合ってはどうでしょう?拳で」

 

武龍「えっと···」

 

有澤「ふふっ、ただの手合わせですよ。ただし、アン···あなたは武龍という人間に、色々吐き出してみてはどうでしょう?」

 

そう言うと有澤は道場を出ていく。残された2人は向かい合う。

 

アン「まあ、溜まってるストレスを発散するには良いでしょうね」

 

武龍「···」

 

 

 

 

 

アンは間髪入れずに飛び上がり、武龍に拳を振り上げる。

 

アン「人間は···いつも!」

 

武龍はクロスさせた掌でアンの拳を防ぎ、左からの追撃の蹴りを右腕でギリギリのところで防ぐ。

 

アン「自分達の欲のために、自然と他者を食い物にして!」

 

アンの掌底は武龍の腹部に命中し、武龍は倒れこむ。

 

アン「何も大切にしない!誰も大切にしない!」

 

アンは武龍の頭部を踏みつけようとするも、武龍は右横に転がる事で回避し、立ち上がる。

 

アン「最後には、地上を完全に捨てて···何もかも全部壊そうとして!」

 

アンの右フックを、武龍は歯を食い縛って顔で受け止める。

 

アン「全部汚染して、壊すためだけに私を作って!」

 

アンはよろけた武龍の腹部に左手で拳を撃ち込む。

 

アン「私なんて···私なんて!」

 

アンは武龍の脳天に拳を振り下ろす。アンの目には、涙が浮かんでいた。

 

アン「ハァ、ハァ···なのにあなたは···諦めるなって、勝手なことを言って···」

 

 

 

 

 

アンは膝立ちになった武龍の肩を掴み、揺さぶる。

 

アン「あなたも···同じ人間なら答えてください!どうしてあそこまで愚かに!卑怯に!残酷になれるんですか!?」

 

武龍はアンの手をそっと掴むと、アンの目を見て答える。

 

武龍「俺は···そいつらとは違う方向で愚かだよ。力が無いのに助けようとして、結局できなくて···けど、俺はそいつらとは違うから、そいつらの心は解らない」

 

アンは武龍の顔面を殴り飛ばし、武龍は仰向けに倒れる。

 

武龍「俺は···俺で、アンは···アンだ···本人じゃないから互いの心は解らないし、見てるものも違うと思う。けど、そいつらみたいな奴を···止めれるようにしたりは···できる···」

 

アンは武龍に馬乗りになる。

 

武龍「ごめんな···俺、伝えるの下手でさ···」

 

アンは右手の拳をゆっくりと振り上げる。

 

武龍「ただ、アンは···アンだ。もう、"兵器"じゃない···それに、アンの体にその汚染物質があるなら···俺はもう、汚染されてるだろ?」

 

アンは拳を武龍顔の横に打ち込む。

 

アン「あなたに何が···何が解るんですか?」

 

武龍「大丈夫だ···もう、大丈夫なんだよ···ここには、草薙や瑞希達がいるし、愚かだけど俺もいる···もう誰にも、兵器になんて、させない···から···」

 

そう言うと、武龍は意識を失い、アンは武龍に頬に手を当てる。

 

アン「暖かい···あなたの言葉が本当なのか、確かめさせてもらいますよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして現在(第10話時点)···

 

アン「武龍様、ティータイムにしませんか?」

 

武龍「良いけど、なんでいつも様付け?」

 

アン「なんとなくですよ。ではこちらに」

 

アンは、武龍に対しては笑顔(といっても微笑みだが)を見せるようになっていた。

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

いくつか番外編が続きますがご容赦ください!

●シーウォーク
海上を進むためだけの性能を持つ外骨格。艦娘のように海上に浮くことができるが、装甲は無いに等しい。

●ハイレーザーライフル
通常のレーザーライフルよりも火力を高めたもの。
しかしその代わりに、重量やエネルギー消費などの負荷が高くなっている。

●レーザーライフル
レーザーを発射するライフル。
単発の威力はライフルより高いものの、連射力はライフルより低い。

また、一部のレーザーライフルはチャージを行うことで威力を上げることが可能となっている。

●WH04HL-KRSW
別名『初期カラサワ』。この時点ではまだ完全な再現には至っていないため、見た目と火力、重量は同じなものの、1発撃つ度に液体窒素での冷却が必要となる。


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番外編 武龍とティス(ver2.0)


ティスと武龍の関係とは一体?

引き続き番外編です。
今回は武龍とティスについてです。


修行の1年のある日、武龍は妖精に頼まれて地下室に鋼材を取りに来た···すると、奥の部屋の1つから何やら音が聞こえてきた。

 

武龍「あそこは確か防音室···草薙が『まだ完全な防音じゃない』って言ってたよな···」

 

近づくと、何やら誰かが歌っているようだ。

 

武龍(めっちゃ良い声じゃん···もしかしてティスか?)

 

ノックして声をかけると、少ししてティスが出てきた。

 

ティス「ハイハーイ!何かな~?」

 

武龍「なぁ、もしかして歌ってた?」

 

ティスは首をかしげる。

 

ティス「···アイドルだから練習するのは当たり前だよ?」

 

武龍「やっぱり?歌ってるとこ見たこと無かったし、めっちゃ良い声だったから···」

 

ティス「マジ?」

 

ティスは普段のティスからは聞いたことの無い口調で反応する。

 

武龍「···うん、マジ」

 

ティスは少し考えると、武龍に質問をする。

 

ティス「···後で時間ある?」

 

武龍「あるけど」

 

ティス「じゃあ時間ある時ここに来て」

 

武龍「わかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍はその日の修行が終わると、ティスの待っている防音室に向かった。中に入ると即席のステージが作られており、音楽と共にティスが歌っていた。

 

ティス「おお!来たか!」

 

武龍「その口調って素なの?」

 

ティス「嫌なら···いつものにするけど」

 

ティスはばつが悪そうに後頭部を掻いている。

 

武龍「ぶっちゃけ素でも気にしないんだけどな」

 

ティス「ありがとな!···で、ここに呼んだのはさ、私の歌···聴いて欲しくてさ···」

 

武龍「全然聴くよ?」

 

ティス「ホントか!?よっしゃー!じゃあ早速歌うぜ!」

 

ティスが歌ったのは3曲はどれも良い歌だった···1曲目は普段のティスでのポップな曲、2曲目は素のティスでのロックな感じの曲、最後はバラードだった···

武龍は拍手する。

 

ティス「ホンットにありがとな!正直私、ちょっと自信無くてさ···私なんかの歌聴いてくれるやついんのか解んなくて···」

 

武龍「なら、俺がティスのファン第1号じゃん」

 

その言葉を聞いた瞬間、ティスの心臓が跳ねるように鼓動する。

 

ティス「え?私なんかのファンで良いのかよ?」

 

武龍「もちろん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後ティスと武龍はとても仲良くなり、まるで姉弟のようになっていった···

そんなある時、拠点の屋上で月を見上げながらティスが話してきた。

 

ティス「なぁ、私の兵器だった頃の話、聞いてくれるか?」

 

武龍は缶ジュースを1口飲んでから返答する。

 

武龍「OK···ってか俺、皆の時代の話ほとんど聞いたこと無かったな···」

 

ティス「そっか···私達のいた世界はな、"ある兵器"に使われてた"ある粒子"のせいで、世界中が汚染されてたんだ···といっても、『本来起こり得た未来』なんだけどな···」

 

ティスの顔は過去を思い出したことにより、暗めである。

 

武龍「本来起こり得た未来?」

 

ティスは頷きつつ話を続ける。

 

ティス「詳しい事は省くけどよ、その兵器ってのは簡単に言うと『最強の単体戦力』なんだよ。

けど私達を作った企業達はその危険性に気付いちまって、それでAFを作ったんだ···それで、更に戦争を加速させて、でも人間達の富裕層や企業関係者は皆、空に逃げたんだ···」

 

武龍「空に?」

 

ティス「まあ、そこら辺はまた別の時に話すさ···んで、AFの1つだった私は『ミミル軍港』ってとこで建造中にその兵器に襲撃されて、慌てて逃げようとしたけど間に合わなくて沈んだんだ···あ、まだ続きあるからな?」

 

ティスにとって、その時の奇襲は何もできないまま撃破されたことにより、悔しい思い出となってしまっている。

 

武龍「それで?」

 

ティス「元々量産型だった私はその後もすぐに建造されて、"そいつ"とタイマンしたんだよ。けれど、水没したビル群に衝突すると動きが鈍るっていう欠点が露になって、そこを突かれてやられたんだ···」

 

2度目の会敵は1対1。しかしまたもや撃破され、その時の悔しさはティスの顔を歪ませる。

 

武龍「AFって物凄く大きくて、とんでもない火力を持ってるんだな?それでも?」

 

ティスは頷くと歯軋りする。

 

ティス「私達AFはソラを除いて、皆何かしら致命的な欠陥があるんだ。だからそこを突けばやられる···

まあ、あの後またそいつとやりあう事になるんだけどな···」

 

武龍「結果は?」

 

武龍の質問に、ティスはため息混じりに首を横に振る。

 

ティス「惨敗だ···その時海にいた艦隊···駆逐艦30、戦艦8の合計38隻を共同で撃破するっていう依頼を出して、そいつを裏切って艦隊と一緒になってそいつを集中砲火したんだよ」

 

ティスの脳裏に、その時の凄まじい光景が浮かぶ。

 

ティス「しかもその海には水没したビルなんて無い···完全に私の独壇場だったんだ···けれど、それでも私は沈められたんだ···」

 

圧倒的な数と火力を用いても全滅した事に、武龍は驚愕する。

 

武龍「なんなんだよ···そいつ···!」

 

ティス「あの黒いメインカラーと金のサブカラー···そして赤い複眼を私は忘れない···まあ、これが私の兵器だった頃の話だ···なぁ、また"そいつ"みたいなのが現れたらよ···私と一緒に戦ってくれるか?」

 

ティスはあの時の恐ろしさに、僅かに体が震えている。

武龍は、そんなティスに力強く頷く。

 

武龍「もちろんだ···けどまだ修行中だから、そこを乗り越えないとな」

 

ティス「みっちり鍛えてやるからな!覚悟しとけよ!」

 

2人は拳を突き合わせる。

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

まだ番外編は続きますが、すいません。

●ミミル軍港
崖と岩山に囲まれた場所に隠すようにして建てられた軍港。
数年の間、他の企業に見つかることは無かったため、極秘裏にスティグロを建造していたが、"そいつ"を送り込んだ会社に場所が発見されてしまった。

●そいつ
情報を閲覧できません。

●AFの欠点
ソラ以外のAFには、何かしらの致命的な欠陥があるため、AFに挑む際はその欠陥を狙うことが重要となる。

スティグロの場合は、ビル群などの大型の障害物に衝突すると動きが大幅に鈍ってしまう。
ソラの場合は、AFの中で唯一欠点と言える欠点が無く、非常に厄介な性能を持っている。


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番外編 武龍とAF達(ver2.0)


アンとティス以外のAF達との武龍の関係とは···

番外編ですが、第1章のものはこれでラストです!


ランの朝は早い。朝早くに起きてランニングしているが、武龍の修行が始まってからは武龍と一緒にランニングしている。終わったら休憩し、朝食をとる。

 

ラン「武龍も随分成長したなぁ···前はあんなにガリガリだったのによ」

 

武龍「皆の教えが上手いだけですよ」

 

出会ったばかりの頃はあんなに痩せ細っていた武龍が、今では確かな筋肉がつき、顔色も随分良くなっている。

 

ラン「いやぁ、それほどでもねぇよ···」 

 

武龍にとってランは頼れる姉貴分のような存在となり、ランにとって武龍はかわいい弟分のような存在となっていった。

 

 

 

ある日、ランと武龍は山に木材の採取に向かい、武龍はランの切った木を運ぶ手伝いをすることになった。

ランが手際良く切り分けた木材を2人で担いで運び、トラックの荷台に乗せていく。

 

昼になり、2人が持ってきたおにぎりを食べている時、武龍はふとランに質問をした。

 

武龍「なぁ、AFだった頃のランってどんなのだったんだ?」

 

ラン「ん?あの頃のアタシは、正面についてる複数のでっかいチェーンソーで敵の拠点とかを破壊するAFだったな」

 

ラン···カブラカンはその装甲を用いて敵の拠点などに強引に突撃し、拠点を破壊するAFである。

そして、弱点であるキャタピラを破壊されないよう、分厚い装甲板でできたスカートを使い、キャタピラを保護している。

 

ラン「んで、目標に到達したら大量の自律兵器を射出して、建造物だけじゃなく、敵機体とかを殲滅するって感じだな」

 

ランは懐かしむような目で続ける。

 

ラン「でも、ある日敵の拠点じゃなくて、地上のコロニーを襲撃する任務で出撃することになったんだ」

 

武龍「コロニー···ってことは、民間人を狙って?」

 

ラン「ああ。民間人···といっても貧困層の人間だし、敵の戦力を削るためって言ってたが、実際は貧困層を見下してたりしててな···」

 

ランは悲しげな顔をするが、すぐにいつもの笑顔に戻る。

 

ラン「けど、武龍が前に聞いた"最強の単体戦力"の1機がアタシを撃破してくれてさ。アンやティスをやったのとは別の奴だけど、コロニーを潰す前にやってくれて良かったよ」

 

恨みなどは無く、サッパリとしているランの顔を見た武龍は安堵し、2人のおにぎりは食べ終わっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リプはよく釣りをしている。最初は1人で釣りをしていたが、最近は武龍も釣りに参加してきている。

しかしその日のリプは浮かない顔で、武龍は困り顔をしていた。

 

リプ「今日は全然釣れなかったのだ···」

 

バケツの中の魚は1匹もおらず、リプはため息をついている。

実は先日、リプの使っていたルアーが壊れてしまい、そのまま海の中に沈んでしまったのだ。

そのため、手製のルアーを使ったものの、結果はこれである。

 

武龍「やっぱり魚の形をした針金じゃなくて、ミミズとかゴカイじゃないとダメか~」

 

リプ「よし!獲りに行くのだ!」

 

立ち上がったリプはすぐに走っていき、武龍もその後を追う。

そして土木関係に詳しいランに事情を話し、ミミズのいそうな場所を手当たり次第に探し、そのミミズで釣りをしてみる。

すると、普段より大きな魚が釣れる。

 

リプ「大きいのが釣れたのだ!」

 

その後も、生きの良いミミズに寄ってきた魚が次々と釣れ、リプと武龍は満足する。

 

武龍「よし、今夜の夕飯はこいつらだな!」

 

リプ「もちろんなのだ!」

 

 

 

その後夕飯にて···

 

有澤「それでは、2人の釣ってきた魚を使った煮物と味噌汁です」

 

リプ「え?有澤さん···」

 

武龍「魚の量、釣ってきた数より少なくないか?」

 

有澤「確かに釣ってきた魚の数は多く、本来であればもっと多くのおかずを出せました。しかし、釣ってきた魚の多くは毒のある魚でしたので、ここまでしか出せませんでした」

 

リプ「···」

 

武龍「···」

 

リプと武龍は無言で有澤達に頭を下げたのだった。

そして後日、リプは草薙から魚の図鑑を貰い、再び武龍と釣りに出かけたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベスは基本的に執務室で執務をこなしているが、時折武龍を山に連れ出している。

それは山での動植物の観察や食べられる野草や毒草の見分け方を教えるためである。

 

しかしその日は違い、ベスは武龍に対物ライフル『M200』を手渡した。

独特な形と他の狙撃銃より重い重量のM200は、武龍に猟をする事を伝えていた。

 

ベス「本来であれば、通常の狙撃銃を使うところですが、拠点にはこれしかありませんでした」

 

武龍「なるほど」

 

ベス「あなたは射撃訓練を何度もしていますが、生きている獲物を仕留めるのは、これが初めてです」

 

その後2人は山を進み、遠くに鹿を発見する。武龍はベスの指示で伏せ撃ちの姿勢になり、ベスは武龍の左隣で双眼鏡を使って鹿を観察する。

鹿はこちらに気づいておらず、武龍は引き金に指をかける。

 

ベス「武龍、そのまま動かずに···今です!」

 

武龍は引き金を引き、放たれた弾丸は鹿の頭部を撃ち抜く。そしてベスと共に鹿の元に向かい、回収する。

 

 

 

武龍「なぁ、今夜の夕食は鹿鍋?それともシチュー?」

 

ベス「···今回は20点です。確かに正確に頭部に当たっている事は評価できます。的確な狙撃でしたね···しかし、仕留めた獲物に対する感謝の気持ちがあなたにはありません」

 

ベスの目は普段より厳しくなっていた。

 

ベス「本日仕留めた鹿は的ではなく、1つの命です。そして私達の生きる糧とするため、殺しました。その命をいただく立場にあるこちらは、決して感謝を忘れてはいけません」

 

武龍「はい···」

 

するとベスは軍手を取った後、武龍の頭に手を差し伸べる。武龍は殴られると思い、目を閉じて歯を食い縛る。

しかしベスは武龍を殴ることはなく、武龍の頭を優しく撫でた。

 

ベス「しかし、次から感謝すれば良いのです。これから拠点に戻り、解体作業と調理をします。その際、きちんと感謝するように」

 

武龍「はいっ!」

 

ベスは微笑みながら武龍と共に拠点へと戻っていった。武龍にとってベスは良い教官であり、ベスにとって武龍は教えがいのある弟子のようであった···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍はある日ふと『本来起こり得た未来』が気になってソラに聞きに行ってみた。

 

ソラ「どうして私なのかしら?もしかして、お姉さんに興味があるの?」

 

武龍「興味···というかその"未来"が気になって」

 

ソラ「フフフッ···どうせあの未来は来ないから気にしなくたって良いのに···でも、ちょっとだけ教えてあ·げ·る♡」

 

ソラは唇に人差し指を当てながら言い、それを見たソラの机の上にいる妖精は、ソラを疑いの眼差しで見上げている。

 

妖精「変なこと教えようとしたらバラしますよ?」

 

ソラ「うぅん、判ってるわよ···まず、世界に『大破壊』ってのが訪れて、人類はいくつかある地下施設に移り住んだの。そして自分達をAIで管理させて、人類の再生を目指したの」

 

武龍「なんかこの時点で起こりそうな未来なんだけど···」

 

ソラ「もしかしたら、"近い未来"は起こるかもね?でもその時は私達が阻止しなきゃいけないわ···あんな世界、私は御免よ」

 

ソラは天井を見上げると、続きを話す。

 

 

 

ソラ「そして、地下の人類がある程度成長したところで、それぞれのAIは担当の人類にテストを課して、合格者の出た人類は地上に出たの。

けれど、結局地上に出ても争いは続き、人類は地上を汚染したの」

 

ソラの机の上に妖精が4人集まり、軽い寸劇をしている。

 

ソラ「地上を汚染した人類は、地上を見限って空に逃げたの···まあ、その空も汚染され始めてたけどね」

 

武龍「自分達でやったことなのに···!?」

 

ソラ「そうよ。あの世界の人類に国家は無く、企業連が世界を握っていたわ。それも自分達以外はどうなろうと構わない、最低な連中がね」

 

武龍「ソラさん···」

 

武龍の唇に、ソラは人差し指を当てる。

 

ソラ「さん付けなんてやめて?お姉さんは呼び捨てが良いの♡」

 

武龍「ソ、ソラ···」

 

ソラ「ンフフッ」

 

姉のようで姉ではない、そんな不思議な関係のソラと武龍だった···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

拠点の中にある道場で、ジュリアスが武龍に剣術を教えていた。

 

ジュリアス「どうした?そんな心構えでは、誰も守れんぞ!」

 

ジュリアスが武龍の足を払い、倒れた武龍の顔のすぐ横に木刀を突き刺す。

 

ジュリアス「戦場とは実力ではなく、意志の弱い者が死んでいく場所だ!それに、今のお前には明確な意志が無い、空っぽだ」

 

 

 

翌日、ジュリアスの言葉が心に刺さっている武龍は有澤の部屋の前で会話が聞こえてきた。

 

有澤「何もあそこまでやらなくても良いと思いますよ?」

 

ジュリアス「武龍は仮にも仲間だ···それに、戦場にしばらくはほぼ1人で向かわせるのだぞ?青葉を入れたとしても数的不利は変わらん。だから心配なのだ···」

 

有澤「だったら、もう少し優しく接してあげてはどうです?"仲間"なのでしょう?···それに、武龍?聞いているのは分かってますよ?お入りなさい」

 

武龍はおそるおそる部屋に入ると、ジュリアスの目を見て···

 

武龍「ジュリアス!俺に改めて剣を教えてくれ!」

 

頭を下げた武龍をジュリアスは試すような目で見る。

 

ジュリアス「···ほう、良いだろう。ではすぐに道場に行くぞ!」

 

2人が道場へ行くのを見て有澤は微笑んだ···

 

有澤「きっと、良い師弟になれますね···」

 

 

 

武龍はジュリアスと対峙するも、すぐに負けてしまう。

 

ジュリアス「どうした?そんなものか?」

 

武龍「俺は···何もないから···あの小説のこと以外、空っぽだから···けど、戦うための意志を探すために、俺は戦う!」

 

ジュリアス「なるほど、その答えも良いだろう···さぁ、来い!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日、武龍はDVやいじめの事を夢に見て起き出し、廊下をヨロヨロと歩いていた。その時、拠点内を巡回していた有澤が声をかけてきた。

 

有澤「どうしました?悪い夢でも見ましたか?」

 

武龍「まあ、そんなとこだ···」

 

有澤は武龍を食堂に連れていき、抹茶と和菓子を出した。

 

有澤「今夜は特別ですよ?···それと、眠れないならちょっとお話ししていきません?」

 

そう言うと有澤は自分達AFの偽名について話し始めた。

 

有澤「私の偽名は、兵器だった頃に私の内部で敵の侵入を防いでくれていた人の名前を取ったんですよ。

あの人は社長でもありまして、自社の製品と関わった製品に誇りを持ち、整備も自ら行う人でしてね···」

 

武龍は抹茶を飲みつつ聞き続ける。

 

有澤「私はあの人のように誇れるようになりたくて、有澤の名を使ったのですよ」

 

武龍「そんなことが···」

 

有澤「ジュリアスも同じように、誰かの名を使っているんですよ。建造中に視察に来た誇り高い女性から取ったのだそうです···さて、どうです?」

 

武龍「ありがとう、けど···まだ少し寝付けない」

 

有澤「では、こちらへ」

 

 

 

有澤は武龍を屋上に連れていき、海を指差す。

 

有澤「あなたが戦場に降り立つ時、守る事になる世界です」

 

月は雲に隠れ、月明かりは少ない。

 

有澤「この世界には、様々な悪意が存在します。戦争を終わらせるために、様々な方がそれぞれの戦場で戦っていますが、戦争を続けようとする者は、それを上回る悪意で牙を向きます」

 

暖かい風が吹き、月明かりが2人を照らし始める。

 

有澤「あなたは、その者達を焼き尽くす鴉になってください」

 

武龍「···なれる、かな?」

 

有澤「それは、あなたがどうなりたいかによります。鴉とは自由であるべきですし···さぁ、そろそろもう寝ましょう」

 

武龍「···そうする」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラビィはいつも臆病でおどおどしている。特に虫が苦手であるが···

 

武龍「こんなとこにイナゴかぁ···後で焼いて食べよ」

 

武龍とラビィは山の麓で木の実を採っていた。

 

ラビィ「武龍君は良く食べられますね···」

 

武龍「前は親が食べ物も満足にくれなかったから、こうやって自力で獲ってたんだよ」

 

実はラビィ、武龍のおかげで虫が少しは大丈夫になってきている。

 

武龍「そういえば、ラビィは兵器だった頃ってどうだったの?」

 

ラビィ「わ、私ですか?···私はティスちゃんやベスちゃんと同じ量産型AFでしたけど、ベスちゃんが出てきて生産終了したんですよ。けどやたらと鹵獲されて色々改造されたりして···でもそれで、私···あることを知っちゃったんです」

 

武龍「あること?」

 

ラビィは俯いていた顔を上げる。そこには普段の顔ではなく、目を見開き、三日月のような笑みを浮かべた顔をしていた。

 

ラビィ「『戦い続ける悦び』ですよ···いや、別に殺し合うわけじゃなくて良いんです。模擬弾を使ったり、BB弾を使うサバゲーでも構わないんですよ···」

 

するとすぐにいつものラビィは戻る。

 

ラビィ「あの···すいません!こんなのイカれてますよね?こんなの嫌ですよね?」

 

武龍は首を横に振り、微笑む。

 

武龍「別に良いんじゃない?だって殺し合う方の戦いじゃなくて良いんだろ?だったら問題ないじゃん」

 

武龍がそう言うと、ラビィはキョトンとした表情を浮かべた後、涙目になる。

 

ラビィ「ふえぇ~」

 

武龍「どっどうした!俺、なんか言ったか?」

 

ラビィ「嬉しいんですよ~!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピスは演習場で6種類の艦載機を順に発艦させ、あるいは複数発艦させ、武龍を模擬弾で攻撃する。

 

武龍「ハァ、ハァ···」

 

ピス「どうです?これが複数の空母を相手にした時の厄介さです」

 

ピスはその艦載機の搭載数と種類の多さを利用し、様々な戦況を作り出していた。しかも空母を越える数の艦載機を使っているため、かなりのハードモードである。

しかし、武龍はそれで空母への耐性をどんどん高めていった。

 

その後、食堂のテレビを見ていた武龍にピスが近づいていく。テレビでは宗教団体が家屋を燃やしたというニュースが放送されていた。

 

ピス「武龍、宗教は人々に希望を与えることは知っていますね?」

 

武龍「まあ、ある程度は···」

 

ピス「しかしこれを見てみなさい。己の欲のために宗教を作り、人々を煽動している輩が中にはいるのです。既にある宗教にさえ、自分の宗教を押し付けては害を与える輩もいるのです」

 

ピスはニュースを移すテレビを冷たい目で見ている。

 

武龍「まあな···」

 

ピス「しかし"基本的には"宗教が悪いのではなく、盲信する人々が悪いのです」

 

武龍「ん?基本的には?」

 

ピス「そう、その"疑問を持つ"事がとても重要なのです···宗教の中には『私(神)以外の神は偽物である』というものもあります。それらが宗教の押し付けを産んでしまう原因の1つになっている現状があるのです···だから武龍、あなたはそんな人間になってはいけませんよ?」

 

武龍「昔からそうだけど、頭に入れておくよ」

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

更新がまた遅れており、すみません···

キャラの詳細は次回で記述しておきます。
また、武龍のアンとティス以外のAF達との関係は2人に比べて少ないため、纏めさせていただきました。


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幕間 開発(ver2.0)


完成した新たな機甲兵装と艤装。
しかし開発を行っているのはレイブンズ·ネストだけではなく···




武龍は草薙に呼ばれてガレージに向かう。

ガレージではライトに照らされた3つ機甲兵装があった。

 

草薙「あなたに伝えることが2つあります。まず1つは、そろそろ地上戦と艦娘を相手にする頃合いとの分析結果が出ました。もう1つはこれらの新型の機甲兵装です」

 

武龍「艦娘との、戦闘···?」

 

草薙「はい。どのような理由かは別として、今後はその可能性が高まるため、覚悟を決めておいてください」

 

 

 

そして、草薙は右から順に機甲兵装の説明をしていく。

最初の機体は白と紫のカラーリングをした機体である。

 

草薙「まずはこちらの中量2脚型機甲兵装『レオ』です。これは市街戦を想定した機甲兵装であると同時に、これまでより近距離での戦闘を主軸とした機甲兵装となっています。

また、他の機甲兵装と違って空を飛ぶ事は適さないので、ご注意を」

 

次の機体は白いカラーリングの機体であり、太い手足とバケツのような頭が特徴である。

 

草薙「次に重量2脚型機甲兵装『フォックスアイ』です。これは機動力は低いものの、火力と装甲に秀でています。

そのため、鬼姫級や戦艦や空母の艦娘をそれらで押し切る事が可能となっています」

 

最後は白と灰色のカラーリングをした機体だが、これまでの機体と比べて細身である。

 

草薙「そして軽量2脚型機甲兵装『クレスト強襲戦闘型』です。肩の『ステルス発生装置』でレーダーから消え、背部の『追加ブースター』で敵に接近して仕留める、といった機体です」

 

武龍は息を呑み、3機を見つめる。

 

武龍「この3機が、新しい機体···」

 

草薙「では、早速これらを使用して演習をしてみましょう」

 

その瞬間、武龍の後ろのガレージの扉が開き、ラングレー、瑞希、ラビィが立っていた。

 

 

 

 

 

武龍が演習を行っている間、拠点に1人の女性がやってくる。その女性は慣れた手付きで門の鍵を開け、敷地に入る。

女性が拠点の玄関に着くとベスが出迎える。

 

ベス「お久しぶりです」

 

女性「久しぶり。どう?皆元気?」

 

ベス「もちろんです」

 

ベスと女性はコントロールルームへと向かい、武龍の演習の様子を眺める。

 

女性「良い腕をしてるわね」

 

ベス「はい、しかしまだ未熟さがあります」

 

女性「フフッ、そう急かないの。もし"あの人"と同じなら、いつかは辿り着けるはずだから」

 

ベス「そうですね」

 

しばらくすると、女性は帰り支度を始める。ベスは泊まっていくことを勧めるが、女性は仕事を理由にそのまま拠点を出ていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ある多国籍企業が"ある兵器"の開発に成功していた。

 

研究員A「やったぞ!これで···これで"艦娘から解き放たれる"!」

 

研究員B「これで大儲けだ!俺達は億万長者だ!」

 

研究員C「特に陸軍は大助かりだな!人助けもできて金ももらえて···うひひっ」

 

研究員達の背後で、社長と1人の提督と妖精がその"兵器"を見つめていた。

 

薄暗く、青いライトが照らす部屋で──

 

艦娘でも深海棲艦でもない──

 

しかし装備されているのは間違いなく艤装であり──

 

しかし、その"兵器"には魂など無い──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦争の形が、変わる瞬間である···

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

AC6が発表され、舞い上がっていた私ですが、書いている時間が取れずにいました···すいません。

●レオ
白と紫のカラーリングをした中量2脚。
武装は右手に『バトルライフル』、左手に『ショットガン』、右ハンガーに手持ち型のレーザーブレード、左ハンガーに『ハンドガン』、肩内蔵に小型ミサイルを装備。

機甲兵装としては初の『ハンガーユニット』を搭載した機体であり、市街戦を想定して草薙が選んだ機体。
他の機甲兵装と違い、飛ぶことはできないものの、壁を蹴って移動することに長け、接近戦を得意としている。

●バトルライフル
特殊な炸薬を用いた砲弾を発射する武器。命中精度は高いものの、弾速が遅い。
また、火力はライフルより高いものの連射力は低い。

●ショットガン
複数の弾丸を同時に発射する武器。

●ハンドガン
軽量なものの、弾数と火力が低い武器。
弾の発熱量が高く、敵の兵器を熱暴走させることのできるタイプと、衝撃力の高さを利用して戦う2種類がある。

レオに装備されているのは後者の方。

●ハンガーユニット
肩に装備し、手持ち武器をマウントさせて切り替える装置。

●フォックスアイ
白いカラーリングの重量2脚。
武装は右手にハイレーザーライフル、左腕に『グレネードライフル』、両背部に『デュアルミサイル』、肩内蔵に『デコイ』、肩に『連動ミサイル』を装備。

火力と装甲に秀でている代わりに機動力を下げている機体。
鬼姫級に有効な火力を持っており、それは対艦娘にも応用可能。

また、ハイレーザーライフルはかつて製作されていたカラサワの完成品でもある。

●グレネードライフル
グレネードキャノンを手持ちまたは腕に装備可能にしたもの。

●デュアルミサイル
両背部にセットで装備し、複数の中型ミサイルを同時発射する武装。
フォックスアイに装備されているのは、4発のミサイルを正面に発射するタイプ。

●デコイ
空中に停滞し、ミサイルを引き付ける武装。
対艦娘や対深海棲艦には有効ではないが、念のために装備されている。

●連動ミサイル
背部のミサイルと連動して発射されるミサイル。
連動する性質上、単体では効果を発揮できない。

●クレスト強襲戦闘型
白と灰色のカラーリングの軽量2脚。
武装は右手にハイレーザーライフル(カラサワ)、左腕にレーザーブレード、両背部に追加ブースター、肩にステルス発生装置を装備。

軽量機体なため、他の機甲兵装より装甲は薄いものの、高い機動力を持っている。

ちなみに、本来は重量過多になってしまっていたが、草薙がなんとか本来の性能になるよう改造している。

●追加ブースター
装備することで機動力を大幅に向上させられる装備。
しかし装備することで武装が減り、エネルギー効率も悪くなるため、注意が必要である。

また、背部に装備するタイプと肩に装備するタイプがある。

●ステルス発生装置
装置を機動させている間、レーダーやソナーから消えることのできる装備。
しかし目視では発見される。

●リプ
黒いボブカットで身長155cm、肉体年齢は16歳。
艦娘ではなくAFであり、灰色のコートを着ており釣りが趣味。

空から様々な名所を巡るのが夢であり、戦争を早く終わらせなければと思っている。

●ソラ
金色のショートカットで身長162cm、肉体年齢は20歳。
艦娘ではなくAF。白いビジネススーツを着ており、経営が得意。

武龍や艦娘に対して『染めがいがあるわ···ジュルリ』などと脳内で思っているため、AF組の苦労が絶えない。
しかし経営などに長けているため、組織の財政を管理している。

●有澤
黒い髪を纏めており、身長170cm。肉体年齢は21歳。
艦娘ではなくAF。黒い和服を着ており、包容力のある性格。

和食や温泉に精通しており、いつかは温泉巡りをしたいと考えている。
また、砲撃に関するロマンを語らせると熱くなる。

●ラビィ
茶色のおかっぱ頭で身長161cm、肉体年齢は16歳。
艦娘ではなくAF。白いセーラー服を着ており、おどおどした性格。

しかし心の奥には戦い続ける悦びを覚え、戦いに執着している面がある。
そのため、戦闘の際は普段と性格が変わる。

●ピス
茶色の長髪で新着180cm、肉体年齢は20歳。
艦娘ではなくAF。シスターの格好をしており、『本来起こり得た未来』の兵器の恐ろしさをAF組の中で最もよく知っている。

人々の信仰に興味を持つもの、金儲け目的のものなどには容赦が無い。


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第2章 アリオール
第11話 量産型(ver2.0)



新企業『アリオール社』によって艦娘の量産型が発売され、戦争の形は変わり、より混沌としていく。

人類が手にした"物量"、それがもたらしたものは大き過ぎるものだった。


その日、世界中に流れたニュースは世界に衝撃を与えた。

 

新企業『アリオール社』によって、なんと艦娘の量産型が開発され、発売されたのだ。

合計8種類のタイプがあり、どれも戦車や艦船よりコストが低く、艦娘に代わる戦力としてアリオール社は売り出した。

 

これに真っ先に飛び付いたのは中国と韓国だった。元々内部争いが起こっており、深海棲艦への対策が怠っていた事もあり、すぐに大量購入、即時配備を行った。

しかし直後に入手したのはアメリカ国民だった。艦娘排除派の者達はこぞって購入し、自衛や"独自の"戦力介入を行ったり···

 

しかし民間人が購入できるのはせいぜい1機か2機程度である。

そして続いてロシアやイギリス、フランスなど各国も量産型の購入に踏み切っていき、日本も例外ではなかった。

 

 

 

そして、その影響で艦娘と提督の配属を取り消したり、既に配属されている所から外したりする場所も現れ、次第に増えていった···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

草薙「何かありますね···」

 

草薙達は怪訝な表情で記事を見ていた。

 

武龍「妖精さん、艦娘って量産できるのか?」

 

工廠を担当する妖精達にも解らず、困惑していた。

 

工廠妖精「できるわけないです···仮に私達が人間に艦娘の創り方を教えても、"人間じゃ実行できません"···」

 

ジュリアス「おそらく、既にテロリストなども入手しているだろう···世界が荒れるぞ···」

 

そのジュリアスの予想は的中した···

 

アメリカでは艦娘排除派の民間人が無許可で量産型を出撃させたり、漁船を護衛させて無許可で海へ出るなどの行為が行われ、中国や韓国では、民間人の出撃させた量産型による艦娘への妨害が行われたりしていた。

 

しかしこれらは他の国でも起き始め、世界は荒れていく。

中には量産型を使っての紛争に発展した国もあり、そこを深海棲艦に突かれて滅んだ国も出てきてしまった···

 

草薙「このままでは、人類同士の大きな戦争に発展する可能性があります。すぐに情報収集を!」

 

アン「今すぐ実行します」

 

 

 

 

 

 

 

そしてある日···

 

 

 

 

 

 

宗教信者「我々は艦娘などという神の教えに反する悪魔を排除する!そしてその悪魔を使役する提督も排除だ!」

 

宗教団体によって結成された『深淵教』の量産型を使用したテロにより、ロシア、イスラエルを含めた各国の多くの提督が襲撃され、その半数程が死亡するという大事件を起こす。

 

テロ構成員「人類を艦娘と深海棲艦から解放し、新時代を創り上げるのだ!」

 

しかしそれだけではなく、テロ組織『人類解放軍』による攻撃により、更に多くの提督や艦娘が死亡するという大事件まで引き起こしてしまう事となる。

 

これらは後に『量産型事変』と呼ばれることとなり、人類側の戦力を大幅に下げてしまうこととなる。

しかしこの事件があってもなお、人々は量産型を手に入れようと必死になり、使おうとしていく。

 

 

 

何もできなかった無念から──

大切な人を守りたいという決意から──

英雄になりたいという願いから──

誰かの助けになりたいという善意から──

自分の正しさを証明したいという正義感から──

 

人々は力を求め、混沌は加速していく···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

軽巡棲鬼「アイツラ バカ ネェ!自分デ自分ノ首絞テル!アッハハハハ!」

 

深海棲艦達がこの気を逃すはずもなく、戦力が落ちた国に一気に攻勢をかけてきた。

しかし、各国の軍も攻められるばかりではなく、量産型特有の『物量』によって反撃、ギリギリで押し返す事ができた。

 

しかし、多くの提督と艦娘を失った損失は大きく、人類による次の攻勢までは長引く事となるのであった。

しかも、2つの組織をどうにかできてないままに···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベス「なるほど···量産型の『S型』は駆逐艦に相当、『M型』は支援型で重巡に相当、『L型』は戦艦に相当、『K型』は軽空母に相当、『F型』は潜水艦に相当···」

 

ベスは集めた情報を整理し、量産型について分析を行っていた。

 

ベス「どれも単体では艦娘に及ばないものの、物量での戦闘を前提としている、と。ふぅ、おそらくはじきにこの拠点へと攻めてくる可能性もあるでしょう···」

 

ベスはスマホを取り出し、電話をかける。

 

ベス「ラン、地下の武器庫にある銃火器を確認しておいてください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ランは地下にある武器庫へ向かい、銃火器の確認をしていく。

 

ラン「え~っと···アサルトライフルは『AK-12』と『XM8』、サブマシンガンは『トンプソン』と『IDW』、ショットガンは『AA-12』、スナイパーライフルは『M200』、ハンドガンは『ジェリコ』と『FN57』···

ってもっと揃えられなかったのかよ···まあ、ベスのセンスはちょっと独特だから仕方ないけどよ···」

 

ランは別の場所の火器も確認していく。

 

ラン「こっちは···ええと、『12.7cm連装砲』が2つ、『20cm連装砲』も2つ、『46cm3連装砲』が1つ、『彗星』が4つ、『震電改』が4つか···」

 

ランは戻る途中にティスに声をかける。

 

ラン「ティス、武龍に銃火器の練習もっとやっとけって言っといてくれ」

 

ティス「ハイハイ~イ!」

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

量産型の艦娘とそれを造る企業が現れましたが、どうでしょうか?

●アリオール社
かつては軍事品の研究開発を行ってきた企業。しかし最近になって量産型の艦娘を開発し、販売し始めた。
かつて開発していた軍事品は非人道的なものが多かったが、社長が変わり『今度こそ人々を守る』とし、量産型を売り出した。

余談だが、社名はロシア語で『鷲』を意味する。

●量産型艦娘
詳細は不明だが、基本戦術は物量であり単体戦力は艦娘には及ばず、分解しようとした時と撃破された時に自爆する。
また、各タイプに共通しているのは顔に紫色のバイザーを着けていることである。

コストは戦車や艦船より低く、民間人の場合は1機だけなら入手することも可能となっている。

●S型
駆逐艦に相当すると思われるタイプ。髪型は黒いポニーテール。
販売価格は90万円。

『S1型』
『12.7mm単装機銃』を右腕に、『50cm3連装魚雷』を両太腿に装備している。しかし魚雷は弾持ちをよくするために2発同時発射に設定されている。

『S2型』
素朴な刀を持ったタイプ。全タイプの中で最も速いが刀以外の武装を持たない。

●M型
重巡に相当すると思われるタイプ。髪型は黒いボブカット。
販売価格は120万円。

『M1型』
左腕に12.7mm単装機銃、右背部に『35cm単装砲』を装備しており、長距離狙撃で戦闘を行う。
しかし機動力は低く、距離を詰められると非常に弱い。

『M2型』
両腕部に『15cm4連ミサイル』を装備しており、中距離からの支援を行う。ミサイルは単発と連射を分けられるが、ロックオンしてから発射する性質上、機動力の高い相手などには非常に弱くなる。

●L型
戦艦に相当すると思われるタイプ。髪型は黒いツインテール。
販売価格は200万円。

『L1型』
両腕部に『30cm2連装砲』を装備し、交互に撃つことで連射性を高めている。
しかし機動力が低く、集中砲火や機動力の高い相手には非常に弱くなる。

『L2型』
右腕に大盾、左腕に『12.7mm単装機銃』を装備し、盾役となる事を目的としている。動きは遅いものの旋回性能はM型より高く、その盾の耐久は重巡に匹敵する。

●K型
軽空母に相当すると思われるタイプ。髪型は黒いベリーショート。
販売価格は200万円。

『K1型』
右肩に戦闘機『F4F-3』を発艦させるための飛行甲板を装備しており、2機を連続で発艦させることが可能。
しかし艦載機は艦娘のものより動きが悪く、搭載数も少ない。

『K2型』
艦載機が戦闘機から爆撃機『Skua』に変更されており、飛行甲板の色が紫色になっている。
しかし艦載機の動きが悪さと搭載数の少なさ変わっていない。

●F型
潜水艦に相当すると思われるタイプ。髪型は黒いセミロング。
販売価格は130万円。

M2と同じミサイルポッドを装備しているが、中身はミサイルではなく『50cm魚雷』に変更されている。
また、F型のみ1種類しかない。


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第11.5話 イレギュラー要素(新実装)

大本営より発令されたスリガオ海峡攻略作戦。
フィリピン艦隊との共同作戦ではあるものの、大きな見落としがあった。

そこに投入されるのは···



皆さん、明けましておめでとうございます!ほぼ毎回更新が遅くなっておりますが、これからもよろしくお願いします!


今にも雨が降りそうな曇り空の下、瑞希は浮かない顔をしながら司令室で悩んでいた。

そこにピスが入室し、瑞希の前にコーヒーを置く。

 

ピス「何を悩んでいるのですか?」

 

瑞希「···あなたなら、判っているのではないんですか?」

 

ピスは窓の外を見つつ、表情を変えずに答える。空は相変わらず今にも雨が降りそうな曇り空のままだった。

 

ピス「先程、潜伏していた妖精から入った、スリガオ攻略作戦の事ですよね?」

 

瑞希「···はい」

 

ピス「情報によると、フィリピン艦隊との共同作戦であり、鉄底海峡の攻略もまだできていないまま、進めるようですね」

 

雨がポツポツと降り始める。

 

ピス「世界の(ことわり)、それを完全に無視した悪手···それは多大な損失となって返ってくるでしょう」

 

歴史の順序を無視した行いは、歴史を修正しようとする働きによって阻まれる。

それは即ち、深海棲艦の戦力が通常より大きく増大していることが推測される。

 

ピス「間違いなく、イレギュラー要素が出てくるでしょう。それも強力なものが」

 

ピスは振り返り、瑞希の顔を見る。

 

ピス「あなたは···2人の姉を助けるため、出撃したいのですよね?」

 

瑞希「はい···しかし、私はまだ姿を晒すわけにはいきません。ですが、それでも···せめてあの作戦ダケハ···」

 

瑞希は拳を握り締め、僅かに赤いオーラが滲み出る。ピスは瑞希の肩に手を置く。

 

ピス「大丈夫ですよ。ここには武龍がいますし、青葉達もいます。彼女らを信じ、あなたのオペレートで助けましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

依頼主:扶桑型秘匿航空戦艦 蛟

 

目標:大本営第三部隊の護衛、及び敵艦隊の殲滅

 

報酬:5000c

 

作戦開始時刻:午前02:10

 

大本営より発令されたスリガオ海峡攻略作戦を援護し、第三部隊を護衛しつつ敵艦隊を殲滅してください。

 

歴史の順序を無視した作戦のため、敵艦隊の戦力は大きく増大していることは確実で、強力なイレギュラー要素が出てくる可能性もあります。

このままでは、艦隊はほぼ確実に全滅してしまうでしょう。

 

しかしそのカウンターとして、こちらからもイレギュラーを出撃させれば、状況は変えられるかもしれません。

敵艦隊の後方より接近し、敵艦隊を混乱させると共に目標を達成してください。

 

···これは、私の個人的な依頼です。

2人の姉と、その仲間を守りたいのです。しかし私は姿を晒すわけにはいかないので、オペレートに専念します。

どうか、お願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作戦開始時刻に間に合うよう、武龍と青葉達を乗せたストークCが飛び立つ。

武龍はクレスト強襲戦闘型を装備し、艦娘の編成は青葉、北上、陸奥、ラングレー、赤城である。

 

瑞希《もうすぐ作戦エリアに到達します、機甲兵装及び艤装の最終チェックをお願いします》

 

武龍「よし、やるぞ!」

 

陸奥「ええ、必ず守ってみせるわ」

 

北上「よ~し、やっちゃいま···」

 

その時、ストークCに何者かが砲撃する。砲弾は武龍達を乗せたコンテナに命中したものの、武龍達に怪我は無かった。

瑞希がストークCのカメラを確認すると、S1型、M1型、M2型がそれぞれ1機ずつおり、こちらに砲口を向けていた。

 

M1型の持ち主

《深海棲艦を排除しに来たが、危険分子であるあの傭兵を見つけるとはな》

 

M2型の持ち主

《やれー!やっちまえー!》

 

量産型を手にし、無断で沖に出ていた一般人の乗ったボートが近くあり、3機の量産型はなおも攻撃を続けている。

 

赤城「こんな時にっ!」

 

すると別方向から砲撃を受ける。

今度は量産型の砲撃音に連れて寄ってきた深海棲艦がおり、編成は戦艦ル級elite、重巡リ級elite、軽巡ホ級2、駆逐イ級2であった。

 

青葉「仕方ありませんね···私と北上が降りて足止めします!その隙に行ってください!」

 

瑞希《···解りました、お願いします!》

 

コンテナの背部ハッチが開き、青葉と北上は飛び降る。するとすぐさま量産型と深海棲艦を含めた三つ巴の戦闘が開始される。

 

北上「さて、やっちゃいますか!」

 

青葉「はい!」

 

 

 

 

 

しばらくし、作戦エリア目前というところでまたしても妨害を受けてしまう。

今度は深海棲艦のみの艦隊だが、編成は軽空母ヌ級、駆逐イ級5であり、先程より逃げ切るのは難しい状況である。

 

ラングレー「よし、今度はMeが降りる。後の3人は作戦成功の要、ここは任せろ!」

 

瑞希《···解りました。お願いです、死なないでください》

 

そしてラングレーが降りるため、背部のハッチを開いたところでまたしても別方向から砲撃を受け、ラングレーだけでなく陸奥と赤城まで落下してしまう。

 

武龍「おいっ!」

 

瑞希《皆さん!》

 

陸奥が砲撃のあった方向を見ると、戦艦ル級、駆逐ロ級3、『PT小鬼』2がいた。

 

赤城「行ってください!」

 

陸奥「ここは任せなさい!」

 

赤城はそう言いつつ艦載機を発艦させ、陸奥はル級に狙いを定める。

ラングレーは若干遅れたものの、すぐに艦載機を発艦させる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作戦エリアでは大本営艦隊とフィリピン艦隊が深海棲艦と交戦し、苦戦していた。

当初の想定では、過去の大戦と同じ数だと思われていた。しかし待っていたのは想定の倍の数であり、鬼姫級まで混じっていた。

 

敵艦隊の旗艦は『海峡夜棲姫』であり、その援軍にかけつけた艦隊には多数のイロハ級の他に、『軽巡棲姫』と『水母棲姫』がいた。

しかし援軍の艦隊の旗艦は『欧州水姫』だった。

 

その様子を見た艦娘達の目は絶望に染まっており、それぞれの艦隊を指揮する提督も唖然としていた。

敵の包囲網を突破すること、それに敵艦隊の旗艦を叩くことは両方とも困難を極めている状況である。

 

扶桑(大本営所属)

「こんなことって···!?」

 

時雨(大本営所属)

「それでも···ボクは!」

 

再び艦娘達に総攻撃が行われようとした時、深海棲艦達の後方に1機のヘリが現れる。

 

 

 

推奨BGM『Galaxy Heavy Blow』(ACNXより)

 

 

 

武龍を乗せたストークCは高度を下げ、コンテナ背部のハッチを開く。

 

瑞希《これより投下します!作戦開始!》

 

武龍「おうっ!」

 

武龍は後ろに向きに投下され、着水の寸前にブースターを起動させて突撃し、ストークCは作戦エリアから離脱していく。

クレスト白兵戦型より大きく向上したスピードにより、敵艦隊の最後尾まであっという間に接近する。

 

ブースターの音に反応して振り向いたイ級に向け、武龍はカラサワを構え、引き金を引く。

「ガァオン」という独特な音と共に発射された、青白いレーザーは着弾すると共に爆発する。

 

その一撃でイ級は轟沈し、それを見た周囲の深海棲艦は驚愕する。

その隙に武龍は再びカラサワを撃ち、PT小鬼を撃破する。独特な発射音とブースターの音は、海峡夜棲姫や前線の深海棲艦をざわめかせる。

 

武龍に向けて駆逐ロ級が砲撃するが、武龍は空中へ飛び上がる事で回避し、上からカラサワを撃ち下ろす。

それにより、先程砲撃してきた駆逐ロ級とその左隣の駆逐イ級が撃破される。

 

最上(大本営所属)

「なに、この音?」

 

山城「なんだか判らないけど、今よっ!」

 

大本営艦隊とフィリピン艦隊は再度攻撃を仕掛け、後方の武龍に対し欧州水姫は軽巡棲姫を向かわせる。

 

欧州水姫「背後カラノ奇襲···カ。ナカナカ、ヤルワネ」

 

 

 

深海棲艦の後方に辿り着いた軽巡棲姫は武龍と対峙する。

しかし、既に後方の深海棲艦の多くは撃破されており、対する武龍の損傷は軽微だった。

 

軽巡棲姫「見ツケタ···フフフッ」

 

瑞希《倒してからでないと進めないようですね。撃破してください!》

 

軽巡棲姫は開幕で魚雷を発射する。武龍はすぐさま飛び上がって回避するが、空中の武龍に軽巡棲姫は砲撃する。

砲弾は武龍の左胸に命中する。

 

武龍(軽量機だから、ダメージが前のより大きい!)

 

武龍は着水すると、背部にある『イクシーオービット(以下EO)』を真上に射出する。

射出されたEOは武龍の真上に滞空し、武龍の動きに合わせて追従する。

 

そしてEOの左右の銃口から実弾を連射し、武龍の正面にいる軽巡棲姫は左腕で頭部を庇う。

武龍はその隙にカラサワを構える。しかし軽巡棲姫はジグザグの軌道を描きながら後退し、カラサワのレーザーが外れたところで重巡リ級eliteと駆逐イ級eliteが現れる。

 

武龍は駆逐イ級eliteをEOの攻撃と合わせてカラサワを撃ち込み、重巡リ級にも同様の攻撃で撃破する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃青葉と北上は三つ巴の乱戦を生き抜いており、2人はなんとか作戦エリアに辿り着こうと向かっていた。

 

青葉「それほど時間は経ってませんが、距離がありますね···」

 

北上「急がないと!」

 

しかしはぐれの深海棲艦によって道を塞がれてしまう。

 

駆逐イ級「グギャアッ!」

 

北上「ああもう!」

 

 

 

 

 

また、陸奥と赤城も作戦エリアに向かってはいるのだが、増援が現れたことにより、陸奥が中破してしまっていた。

陸奥は左側の主砲が上下とも破壊され、右腕は包帯を巻いている。

 

赤城は小破で済んでいるのだが、飛行甲板には僅かにヒビが入ってしまっている。

 

赤城「陸奥さん、無理はなさらずに」

 

陸奥「ええ。けどあの子のところに行かなきゃ!」

 

 

 

 

 

そして、作戦エリア目前まで来たラングレーはため息をつく。

 

ラングレー「はぁ···艦娘として戦ってちゃあ、勝てないか」

 

ラングレーは目を閉じて深呼吸をすると、体から赤いオーラが溢れ出す。それと共に肌は白くなっていき、艤装も赤みを帯びていく。

そして変化が終わると、ラングレーは赤くなった目を見開く。

 

ラングレー(?)

「さて、行くか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍は再びカラサワを撃つが、軽巡棲姫は右側に移動しつつ身を屈めることでギリギリで回避しつつ、武龍へ接近しようとする。

 

軽巡棲姫「アナタノ帰リ道ハ···モウ、無イノヨォ!」

 

武龍「このっ!」

 

軽巡棲姫に対し、武龍は引き撃ちをすることにする。しかし軽巡棲姫と砲撃していく。

しかしその瞬間、軽巡棲姫が爆撃を受けて中破する。

 

軽巡棲姫「オノレ···口惜シヤ···憎ラシヤ···!」

 

武龍が空を見上げると、飛んでいるのはラングレーの使っていた艦載機だった。

間に合ったのかと武龍が艦載機の飛んで来た方向を見る。だがそこに立っていたのは···

 

高速軽空母水鬼

「やっと追いついた!」

 

武龍「なん···」

 

高速軽空母水鬼

「ちょっ!?Meだって!」

 

武龍を援護した高速軽空母水鬼は以前戦った時のような白い髪ではなく、薄い紫色をしていた。更に左側の飛行甲板は深海棲艦のものだが、右側の飛行甲板はラングレーのものである。

 

武龍「まさか···ラングレー?」

 

高速軽空母水鬼「そうさ!艦娘の状態じゃあ無理だと思って、一旦深海棲艦に戻ったんだよ」

 

瑞希《なるほど、そういうことですか》

 

そう言うと高速軽空母水鬼(ラングレー)は再び艦載機を発艦させ、敵の艦載機を迎撃し、敵艦隊に爆撃を仕掛ける。そして軽巡棲姫に雷撃をし、大破した軽巡棲姫に武龍はカラサワを撃ち込む。

軽巡棲姫はそのまま沈んでいき、武龍とラングレーは背中を合わせる。

 

しかしそこへ水母棲姫がやってくる。

 

水母棲姫「アラァ、ナカナカ終ワラナイト思ッテイタラ、コンナコトニナッテタノネ」

 

ラングレー「お前もいんのかよ···」

 

水母棲姫「良イワヨォ···コッチニ戻ッテキタラァ?」

 

水母棲姫はラングレーに手招きをするが、ラングレーは首を横に振る。

 

ラングレー「Sorry···Meはもう戻れない。誰と一緒に、何と戦うか···決まったからな」

 

それを聞いた水母棲姫は目を閉じ、口角が僅かに上がる。そしてゆっくりと艤装を構える。

 

水母棲姫「ナラ、解ッテイルワヨネェ?」

 

ラングレーは振り返り、背後の武龍を見る。武龍もラングレーを見ており、軽巡棲姫は増援として来たPT小鬼2体と共に武龍を睨み付けている。

 

そして、ラングレーと武龍は背中を合わせて構える。

 

 

 

 

 

推奨BGM『Grip』(ACPPより)

 

 

 

ラングレー「行こうぜぇ!」

 

武龍「ああ!」

 

武龍とラングレーは同時に攻撃を開始し、お互いに攻撃を回避する。

武龍はEOを起動し、PT小鬼に攻撃する。しかし片方のPT小鬼を撃破したところでEOは弾切れになってしまい、武龍はEOを格納する。

 

ラングレーは水母棲姫と艦載機による空中戦を行うが、ラングレーの方が制空優勢をとる。しかし水母棲姫は砲撃と雷撃を織り混ぜてくるため、油断はできない。

それも、水母棲姫は的確に飛行甲板を狙っている。

 

そこで、ラングレーは攻撃機の魚雷を水母棲姫の雷撃に合わせて放ち、両者の魚雷は正面衝突して爆発する。

ラングレーは呆気にとられている水母棲姫の隙をつき、爆撃を命中させる。

 

ラングレー「どうよ!」

 

水母棲姫「ウッフッフッ···痛イワ···ケド、1発ジャア私ハ倒セナイワヨォ?」

 

ラングレー「知ってるさ!」

 

 

 

一方、武龍はPT小鬼の雷撃を左に移動することで回避し、そのままカウンターでカラサワを撃ち込み、PT小鬼は沈んでいく。

しかし軽巡棲姫は武龍に接近しており、引こうとした武龍に軽巡棲姫は砲撃し、武龍は怯む。

 

その瞬間、軽巡棲姫は武龍の懐に潜り込み、至近距離から武龍の胸に砲撃する。

 

武龍「ぐうっ!」

 

軽巡棲姫「ウフフフフ!」

 

武龍は左腕のレーザーブレードを起動させ、掴みかかろうとした軽巡棲姫の右腕を斬り裂く。

斬られた軽巡棲姫の右腕は宙を舞い、海に落ちていく。

 

軽巡棲姫「憎イ···憎ラシヤァ···!」

 

軽巡棲姫は左腕の艤装を向けて砲撃しようとするが、武龍は至近距離からカラサワを艤装の口内に撃ち込み、軽巡棲姫の艤装は爆散する。

 

軽巡棲姫「ア"ア"ア"ア"ア"ッ!」

 

叫び声を上げ、悶える軽巡棲姫に武龍は接近し、レーザーブレードを軽巡棲姫の心臓に突き刺す。

そして、レーザーブレードの刀身が消えると共に軽巡棲姫は仰向けに倒れ、ゆっくりと沈んでいく。

 

 

 

そして、ラングレーは水母棲姫の雷撃をジャンプで回避し、そのまま水母棲姫に接近していく。

 

水母棲姫「アラァ?アナタ自分ノ艤装ノコト忘レタノカシラ?」

 

水母棲姫は嘲るように笑うが、ラングレーはよりスピードを上げて水母棲姫に接近すると、右腕を振りかぶり、下から水母棲姫の体を切り裂く。

 

水母棲姫「ソンナッ!?」

 

ラングレー「艤装だけじゃない、Me自身で勝負することを知ったからな!」

 

今度は左腕を振り下ろし、水母棲姫の右腕に大きな損傷を与える。

水母棲姫は砲撃しつつ引き下がるが、ラングレーはその砲撃を回避しつつ自身の股下から攻撃機の雷撃を通し、放たれた魚雷は水母棲姫の艤装の左腕に命中する。

 

これにより水母棲姫の機動力は大きく削がれ、ラングレーは右手の爪を水母棲姫の腹部に深々と突き刺す。

 

水母棲姫「ガハアッ!」

 

水母棲姫は吐血し、ラングレーと目が合う。

 

水母棲姫「ウッフッフッ···ソウ、ナノネ···」

 

水母棲姫はラングレーの頬に右手を添え、微笑む。

 

水母棲姫「良イ···良イ目二、ナッタわね」

 

水母棲姫の体から力が抜け、仰向けに倒れつつ沈んでいく。

そして、その顔はどこか安らかだった。

 

ラングレー「···じゃあな」

 

瑞希《私のオペレートは、今回はあまり必要なさそうですね···》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍とラングレーの介入により、大本営とフィリピンの艦隊に向かう深海棲艦は大きく減り、艦隊は海峡夜棲姫に直接の攻撃をすることに成功し、艦隊の攻撃に海峡夜棲姫は怯む。

 

山城(大本営所属)

「今よっ!畳み掛けなさい!」

 

艦隊の集中砲火により海峡夜棲姫は大きな損傷を受け、本体の扶桑に酷似した方の姿がブレ始め、山城に酷似した方は狼狽える。

 

海峡夜棲姫「イヤッ!姉様!」

 

そこに更なる攻撃が加えられ、海峡夜棲姫は後退しようとする。しかしそこに武龍のカラサワが撃ち込まれ、背部の装甲が破壊されてしまう。

 

武龍「今ので最後の弾だ」

 

武龍は弾切れとなったカラサワを捨て、カラサワは海中で跡形もなく爆発する。

 

瑞希《では武龍は海峡夜棲姫に接近してください。ラングレーは武龍の援護を!》

 

ラングレー「Off course(オフコース)!」

 

ラングレーは再び艦載機を発艦させ、武龍はラングレーの艦載機と共に進む。

すると、既に損傷し大破している重巡ネ級が武龍の前に立ち塞がり、砲口を向ける。

 

ラングレーは武龍のスピードをできるだけ減衰させまいと、爆撃を重巡ネ級の脳天に落とし、武龍は飛び上がって重巡ネ級を越えていく。

 

そして、艦隊と交戦している海峡夜棲姫に接近した武龍は肩のステルス発生装置を起動させる。

展開したステルス発生装置は紫色の電磁波を怪しく迸らせる。

そして索敵装置から消えた武龍は飛び上がる。

 

飛び上がった武龍は海峡夜棲姫の背後から左側の主砲の1つを斬り落とし、旋回しつつ海峡夜棲姫の左斜め前に着水する。

この時、大本営とフィリピンの艦隊は初めて武龍の存在に気づく。

 

最上(大本営所属)

「まさか、アイツの後方で戦ってたのって···」

 

満潮(大本営所属)

「なんで傭兵がここにいるのよ!?」

 

武龍「そんなの関係無ぇ!とにかくアイツをなんとかするぞ!」

 

 

 

その時、海峡夜棲姫にラングレーの艦載機による爆撃とようやく追い付いた青葉達による攻撃が加えられ、海峡夜棲姫の損傷は拡大していく。

 

そして、海峡夜棲姫の本体の扶桑に酷似した方は完全に消えてしまい、山城に酷似した方は発狂する。

 

海峡夜棲姫「イヤァァァァァ!姉様ァァァ!」

 

発狂した海峡夜棲姫は周囲に無差別砲撃を行い、その内の1つの砲撃は時雨(大本営所属)に放たれた。

 

武龍「させるかぁ!」

 

武龍は時雨(大本営所属)を突飛ばし、砲撃をモロに受ける。砲弾は左側頭部と左胸に命中し、機甲兵装は大きく損傷していまう。

更に、倒れた衝撃で頭部装甲が剥がれてしまい、武龍の顔が露になる。

 

ラングレー「武龍っ!」

 

駆けつけた北上は武龍の顔を隠しつつ撤退する。

それに合わせてラングレーは北上と武龍の周囲に爆撃し、水柱を発生させて撤退を支援する。

 

瑞希《北上さん、撤退のルートを送信しました!急いでください!》

 

北上「判ってるよっ!」

 

 

 

そして、海峡夜棲姫には更なる攻撃が加えられていき、大本営所属の扶桑と山城の同時砲撃により、海峡夜棲姫は撃破され、沈んでいく。

 

海峡夜棲姫「ソウナノ、デスネ···ソレデモナオ、進ムトイウノデスネ···ナラ、行キナサイ···あの未来へ···」

 

激戦の末、海峡夜棲姫を撃破した艦隊は安堵する。

しかしそこへ新しいストークCが到着し、ラングレー達を乗せていく。武龍は専用の担架に運ばれて乗せられ、ストークCは去っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大本営艦隊とフィリピン艦隊は、複雑な心境で飛び去っていくストークCと晴れていく空を見続けていた。

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

あれこれ難航しているうちに新年を迎えてしまいまして、すいませんでした。
これまで通り、感想やご指摘はいつでも受け付けていますので、遠慮無く送ってください。

では、改めて···明けましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします!

●歴史の修正
深海棲艦の一部は過去の歴史をなぞったものになっており、歴史と同じ順序で攻略し、乗り越えねばならない。
また、艦隊は過去の歴史と同じ艦娘と艦隊を最低限入れていることも条件となっている。

しかし、それらを無視して攻略しようとした場合、世界の理によりイレギュラー要素が投入され、極めて困難な状況になってしまう。

●イレギュラーによるカウンター
イレギュラー要素の現れている艦隊を攻略するには、別のイレギュラー要素を投入することで、対等になるという考えがある。
今回の作戦では武龍とラングレー(高速軽空母水姫)の2つのイレギュラー要素により、ようやく対等の戦力となっていた。

●欧州水姫の動向
実は海峡夜棲姫に武龍とラングレーが向かった時点で欧州水姫は戦域を離脱しており、壊滅を免れている。
しかしこれは、遅かれ早かれスリガオ海峡が再び深海棲艦に占拠される事を意味し、もう一度攻略作戦を行わなければならない。

これも、歴史を無視した結果の1つでもある。

●イクシーオービット
機甲兵装の一部の胴体パーツについている機能。
自身の真上に射出し、角度には下渡があるものの前方の敵を自動で攻撃してくれる。

レーザーを発射するタイプと実弾を発射する2つのタイプがあり、レーザーは弾切れになってもしばらく格納していれば回復するが、実弾タイプはそうではない。

●深海化
深海棲艦の力と記憶を持ったままドロップした艦娘のみ可能であり、深海棲艦になることにより、戦闘力を大幅に上げることができるが、識別信号が深海棲艦に変わり、味方から誤射されやすい欠点もある。


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第12話 防衛ライン構築(ver2.0)


アリオール社の量産型により世界は荒れてゆく···
レイブンズ·ネストへの依頼も減ってゆく中、海外からの依頼が舞い込んでくる。


スリガオ海峡攻略作戦の後、レイヴンズ·ネストが戦闘に介入して大本営とフィリピンの艦隊を支援したとの報告が行われた。

しかし艦娘達は武龍の事を話さず、レイヴンズ·ネストによる戦闘への介入の事のみ報告した。

 

それは、仮にも助けてくれた者への矜持でもあった。

一方、世界はアリオール社の販売している量産型により荒れていき、人類同士の争いは激化していった。

そして、それと共にアリオール社の儲けは増えていくのだった。

 

また、人類解放軍と深淵教による被害も大きく、レイヴンズ·ネストへの依頼は量産型によって減っているものの、各国政府の一部の役人はレイヴンズ·ネストの力が必要だと感じていた。

 

しかしレイヴンズ·ネストへ依頼するより、別の面でレイヴンズ·ネストを見ている役人の方が圧倒的多数だった···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

依頼主:アメリカ海軍所属·ローレンス·バッカニア少将

 

目標:防衛ラインの確保

 

作戦開始時刻:20:00

 

報酬:50000ドル

 

防衛ラインの確保を依頼したい。

場所は、現在量産型の配備が遅れている場所だ。この場所は1度深海棲艦によって突破された場所であり、多くの深海棲艦がいる。奴らを排除し、量産型を投入できるように防衛線を確保してほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍、青葉、北上、陸奥、アークロイヤル、島風の6人は新型輸送機『ストークD』に搭乗し、普段よりも高高度から作戦エリアに向かう。

 

日本とアメリカを結ぶ航路は確保されているのだが、いちいち許可を貰わねばならず、傭兵ということで許可されることは無いため、ステルス性を持ち、高高度から向かう事のできるストークDを使うこととなった。

 

作戦エリアに近づいたところで急降下し、低空飛行から6人を投下する。

また、今回武龍はフォックスアイを使用して来ている。

 

武龍「こちらミグラント、作戦エリアに到達。作戦を開始する」

 

瑞希《敵艦隊を確認。敵編成、重巡ネ級flagship1、重巡ネ級ノーマル1、軽巡ト級2、軽空母ヌ級1、駆逐二級1です!また、近くの深海棲艦が集まってきています。注意してください》

 

青葉「なら、手早く済ませないとですね」

 

北上「じゃあこのスーパー北上様がやっちゃうよ!」

 

アークロイヤル「敵機発見!」

 

武龍は北上の砲撃による支援を受けつつカラサワを撃ち込んでいく。武龍が駆逐二級を撃破すると共に、北上の砲撃が軽巡ト級を大破させる。

 

北上「駆逐二級撃破!ト級は大破まで追い込んだよ!」

 

そして青葉は別の軽巡ト級を撃破し、島風の魚雷が重巡ネ級ノーマルを大破させる。

 

青葉「ト級撃破!ネ級ノーマルは大破、自走能力無し!これよりネ級flagshipの相手をします!」

 

武龍「よし、俺はト級とネ級ノーマルをやる!北上は青葉の援護を!」

 

北上「了解!」

 

武龍はト級とネ級ノーマルを撃破し、ネ級flagshipはアークロイヤルの爆撃機による爆撃で怯んだところを青葉の砲撃により撃破。

 

 

 

瑞希《増援の敵艦隊を確認、排除してください》

 

アークロイヤル「こちらも増援の敵艦隊を確認。編成は戦艦ル級flagship1、空母ヲ級flagship1、軽巡ト級flagship2、駆逐イ級2だ」

 

武龍は背部のデュアルミサイルと肩の連動ミサイルを起動させ、戦艦ル級flagshipにロックオンする。フォックスアイは動きは遅いものの耐久は高く、駆逐イ級の砲撃が右脚部に当たるものの、構わず進むことができている。

 

そして武龍の放ったミサイルは戦艦ル級flagshipの盾兼主砲に命中し、戦艦ル級flagshipは大きく怯む。そこに武龍はカラサワを撃ち込み、撃破する。

 

空母ヲ級flagshipはアークロイヤルとの航空戦を行い、制空は拮抗していた。しかしアークロイヤルの攻撃機は撃ち落とされる寸前に魚雷を放っており、その魚雷は空母ヲ級flagshipの左足に命中する。

自走能力を失った空母ヲ級に、武龍がカラサワでトドメを刺す。

 

陸奥は北上の盾になりつつ軽巡ト級flagshipを砲撃で撃破し、北上は陸奥の艤装の間から砲撃し、別の軽巡ト級flagshipの頭部を撃ち抜き、撃破する。

 

そして島風は、連装砲ちゃんによる多方面からの砲撃により駆逐イ級2体を同時に相手にし、駆逐イ級が連装砲ちゃんに気を取られているところを狙い、島風は魚雷を放って撃破する。

 

時間は既に夕方となっており、北上は大きく背伸びをする。

すると依頼主から通信が入る。

 

 

 

 

 

男性《こちら海軍少将『ローレンス·バッカニア』だ。民間人が無断で量産型を出撃させ、その量産型がそちらに向かっているようだ。

すまないが、その量産型も排除してくれ》

 

瑞希《なるほど。しかしそれは契約に含まれていませんので、報酬は2割追加してください》

 

ローレンス《なんだと!?》

 

瑞希《仮にもこちらは深海棲艦の相手をしています。それにこちらがメンバーの安全を優先することは規約にもありますので、そのおつもりで》

 

ローレンス《チッ、仕方あるまい、報酬は増やす。だから量産型も排除してくれ》

 

瑞希《了解しました。では皆さん、依頼内容の追加が入りました。量産型を排除してください》

 

アークロイヤルが偵察機にて量産型を確認すると、L1型2、M2型2、S1型2の編成だった。

 

武龍「ミサイル持ってるM2型は任せろ」

 

陸奥「なら、L1型の相手は私が」

 

青葉「では私はS1型の相手をします。他は新たな増援が来ないか見ててください」

 

武龍は肩の装備に内臓されている浮遊型のデコイを射出し、M2型のミサイルはデコイに向かっていき、武龍はその隙に右のM2型をカラサワで撃破し、左のM2型は左腕のグレネードライフルを撃ち込んで撃破する。

 

陸奥は上2つの主砲に三式弾を、下2つの主砲に徹甲弾を装填し、先に三式弾を放ってL1型に損傷を与えると共に怯ませ、徹甲弾でトドメを刺す。

ちなみに、陸奥のこの方法は機甲兵装からヒントを得たものであった。

 

青葉はS1型の進行方向に置くようにして魚雷を放ち、見事に命中したS1型は撃破され、最後に残ったS1型は近距離からの砲撃により撃破する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

周囲は暗くなりかけており、武龍達はようやく作戦終了かと思いきや、アークロイヤルがこちらに接近する艦隊を発見する。

 

アークロイヤル「あれは···?」

 

 

 

その艦隊は量産型ではなく、艦娘だった。

 

 

 

 

 

同時刻、レイブンズ·ネストの拠点の近海でも艦娘の反応が確認された。

 

 

 

 

 

 

そして、その艦娘達はいずれもアメリカ所属を意味するエンブレムを左肩に着けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

北上「あれ?防衛ラインに配備されるのは量産型のはずじゃ?」

 

島風「でも、何かおかしい」

 

すると、艦娘達は武龍達に砲口を向けてきた。

 

アイオワ「Raise your hand(手を上げて)!動かないで···」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、拠点では海側から艦娘達が砲口を向けていた。

 

瑞希「なるほど、そういう事ですか···ベス、変わりにオペレーティングを頼みます···まだ、AFを晒すわけにはいきません」

 

瑞希は椅子から立ち上がり、出撃ドックへと向かう。

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

結構不穏な空気になってますが、どういうことでしょうね?

●ストークD
遠くの海外への輸送のために新しく開発したストーク。
物資や艦娘の輸送が行えるだけでなく、ステルス性と短時間であれば大気圏突入可能な装甲を持つ。
しかしコストが多いため、使用できる回数は多くない

●ローレンス·バッカニア
金の短髪で身長180cm、38歳で誕生日は8月18日。

アメリカ海軍少将であり、手段を選ばない性格。
数々の戦果を上げてきたが強引なところが目立ち、手段を選ばない性格も相まって周囲の評価は低い。
しかしその行動が原因で昇格できずにいる事に気づいていない。

また、上官からは降格すべきとの意見が多く上がっている。


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第13話 存在しない者(ver2.0)


突如として行われた裏切り。
そして、蛟の艤装が明らかとなる──





武龍「裏切ったのか?」

 

アイオワを旗艦とする艦隊は、多数の量産型と共に武龍達に砲口を向けている。

 

ベス《オペレーティングを変わりました···こちらでもアメリカ所属の艦隊が砲を向けているのですが、どういう事でしょう?》

 

青葉「私達は傭兵ですけれど、今は共闘してるのですよ?」

 

ベス《しかしながら、"傭兵には裏切りが付き物"ですが···まさか国を背負う軍人であるあなたが裏切るとは···見下げ果てたものですね》

 

ローレンス《命令だ!今すぐ投降しろ!》

 

北上「できるわけないよねぇ~」

 

アイオワ「投降して···今すぐに···」

 

アイオワは苦しげな表情で訴える。

 

武龍「そっちにどういう理由があるかは知らんが、投降するわけにはいかないな」

 

ローレンス《投降する気は無いということか···なら"敵艦隊"を撃破しろ!》

 

 

 

ローレンスの命令により、アイオワ達が攻撃を開始する。

武龍達は回避しつつ距離を離そうとする。しかしそれと同時に、武龍達はアイオワを旗艦とする艦娘達に違和感を覚えていた。

 

青葉「何かありますね···だったらあんな辛そうな顔しませんよ···」

 

武龍「皆、奴らの武装とかを中心に狙えるか?難しかったら中破止まり、かつ脚部の艤装を破壊してくれ」

 

北上「武装狙うのは無茶だよ···でも、やってみせるよ!」

 

陸奥「やるしかないようね」

 

青葉は全速力で突撃し、砲撃しつつ死角に回り込んでいく。

武龍は武装に向けてカラサワを撃ち、武装を破壊していく。しかしカラサワの爆発により、人体の部分にもダメージが入ってしまう。

武龍は歯軋りしつつ、人体へのダメージが少ないように撃っていく。

 

アークロイヤルは航空戦に専念し、そのアークロイヤルを島風が援護する。

陸奥は下側の主砲を敵艦娘(戦艦)の足元に撃ち込み、直前の位置を狙って水柱へ上側の主砲で砲撃する。

 

北上は敵艦娘(駆逐艦)の主砲を撃ち抜き、魚雷を1本だけ発射して左足の艤装を破壊する。

島風はアークロイヤルに接近しようとしてきた2機のS1型に艤装を撃ち込み、右側のS1型は外したものの連装砲ちゃんが撃破する。

 

 

 

 

 

その頃アメリカ海軍の内部では──

 

アメリカ海軍中将

「なに!?ローレンスが···レイヴンズ·ネストに攻撃を仕掛けただと!?」

 

アメリカ海軍兵士

「はい、それも日本にある拠点にも艦娘と量産型を出現させたようです」

 

ローレンスの暴走に、中将は怒りのあまり拳を机に叩きつける。

 

アメリカ海軍中将

「あんのっ···馬鹿者がぁ!すぐにローレンスを捕らえ、艦娘達と量産型を撤退させろ!手遅れになる前に!」

 

アメリカ海軍兵士

「はっ!」

 

兵士が立ち去ると、中将は頭を抱えて大きなため息をつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍達が投降しろと言われている頃、瑞希は海上用出撃ドックへと向かい、アンがローレンスの艦隊に通信をする。

 

アン《一体何が目的ですか?私達が何かしたのですか?》

 

長門(ローレンス艦隊所属)

「貴様らを国連へ反逆する者として拘束する!」

 

瑞希は出撃ドックの海上用カタパルトに立ち、壁のパネルが蛟に変わる。

そして、瑞希···蛟の体に艤装が取り付けられていく。

 

アン《ではその理由をこの場で述べてください。反逆に当たらない証拠も理由もこちらにありますが、それらを覆す決定的な証拠がお有りなのですね?それとも、私達の技術が欲しいのですか?》

 

長門(ローレンス艦隊所属)

「我々も手荒な事はしたくない、大人しく投降してくれ」

 

すると出撃ドックのハッチが開き、中から異形の形をした艤装を装備した蛟が現れる。

 

蛟「"先輩方"であろうと、それは聞けません」

 

蛟の艤装は巨大であり、扶桑型に近い形状をしていながら異形である。そして背部から伸びる4つの『50cm3連装砲』、そして艤装の斜め左右にXの文字を描くように伸びる4枚の飛行甲板。

その異様さに長門達は一瞬気圧される。

 

長門(ローレンス艦隊所属)

「先輩だと?お前のような後輩はいないぞ···いや、まさかその声は···ミグラントのオペレーターか!?貴様、艦娘だったのか!?」

 

蛟の目は赤くぼんやりと光り、表情はとても冷たいものだった。

 

蛟「あなた方の要求とやり方はよく分かりました···しかしいくら先輩方といえど、大切な仲間を傷付けようとする輩は排除いたします」

 

 

 

蛟「"扶桑型秘匿航空戦艦"『(ミズチ)』!出陣いたします···」

 

蛟が右手を空へ掲げると、飛行甲板から大量の紙飛行機が出現し飛び立ち、それらが『震電改』『彗星』『流星改』『烈風』となり、空から襲い掛かる。

その数は圧倒的であり、即座に制空権は蛟のものとなった···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍「なぜ裏切った?」

 

武龍は中破し、膝をつくアイオワにカラサワの銃口を向けながら聞く。

 

ベス《答えてもらいます、ローレンス。また、既に記録は撮り続けていますので、逃げても無駄ですよ?》

 

ローレンスは答えず、黙り込む。武龍は小さなため息をつき、アイオワに質問をする。

 

武龍「ならアイオワ、何があったか言え」

 

アイオワは震えた声で答える。

 

アイオワ「Admiral(アドミラル)が···殺される···」

 

武龍「何?」

 

途端にローレンスは取り乱す。

 

ローレンス「アイオワ!それ以上話したらお前の提督を···ハッ!」

 

武龍「そうかそうか···お前が何をしたかがよく解った···」

 

ベス《武龍、現在拠点が襲撃されていますが、こちらは対処しています。ローレンス少将、あなたが彼女らの提督を殺そうがそもそもこちらは情報を流すので構いません》

 

アイオワ「なっ!?」

 

ベス《しかしその時は···あなたとあなたの大切な人々の首を洗って待っていてください···規約にもありますよね?『裏切った場合はそれ相応の対応をします』と···それと、今後はアメリカからの依頼もどうするか、考えなければですね》

 

ローレンス《なんだと貴様ら!》

 

ベス《アイオワさん、あなた方に1つだけ言えることは『我々は味方にもなり得れば敵にもなり得る』という事です···それでは皆さん、これより輸送機を向かわせます···こちらもどうやら"片付いた"ようですので》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍が裏切りの理由を聞いている頃、拠点周辺は阿鼻叫喚となっていた···

蛟の空母4人分の艦載機が空を支配し、その圧倒的な数に空母は完封され、一方的に攻撃されていく。その様子はまさに蹂躙だった。

 

艦載機だけでなく蛟の砲撃も加わっているため、駆逐艦と軽巡は既に全員大破してしまっている···

しかしローレンスの艦隊の長門は気づく。

 

蛟は、その場から1歩も動いていないのである──

 

そして爆撃などを行い、弾切れとなった艦載機は蛟の元に帰還し、補給して再び飛び立っているため、延々と一方的に攻撃を加えられ続けている。

 

長門の隣にいた戦艦が三式弾を発射し、蛟の艦載機の群れに穴を空けるが、すぐさま埋められてしまう。

そしてその戦艦は砲撃を受けて仰向けに倒れ、倒れたところに魚雷を撃ち込まれてしまう。

 

長門(ローレンス艦隊所属)

(なんだ···なんなんだ···こいつは!?)

 

そして遂に、全ての艦娘は何もできないままに撃破されてしまい、蛟は膝をついている長門に歩み寄り、首を掴んで持ち上げる。

 

蛟「これよりあなた方を拘束し、事情を聞かせてもらいます」

 

長門「貴様らは···何者だ···!?」

 

蛟「フフフッ···私は存在しない船···作られること無く忘れ去られた"設計図"ですよ···」

 

蛟のぼんやりと赤く光る目は、まるで深海棲艦のようだった──

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

蛟の事については次回お知らせします。


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第14話 レイブンズ·ネストのあり方(ver2.0)


裏切りの後、長門達に事情を聞くベス。
しかし事態は思わぬ方向に···


レイヴンズ·ネストの地下にある部屋に監禁されている長門達。

彼女らの脳裏に、ベスから事情聴取の際に言われた言葉が浮かび、突き刺さっている···

 

『私達が国連に対し反逆を犯したと言われて、何も疑わなかったのですか?』

『少し考えれば証拠が捏造だとすぐに判ったはずですよ?』

『思考停止して盲目に従っていたのでは、ある種の宗教団体と同じですね』

 

ベスは拷問をしたわけでもなく、淡々と質問をしてきた···

ローレンス艦隊所属の艦娘の中には、レイヴンズ·ネストの事を何かしら世間に発信しようと考える者もいた。

 

しかし、1度だけこの監禁部屋にやって来たアンの言葉が長門達を戦慄させ、世間に発信しようという考えは打ち砕かれた。

 

『"コジマ粒子"って知ってます?知りませんよね···あれってとっても環境を汚染する性質と反応によって爆発する性質を持つんですよ···それが密閉空間と同等かそれ以上の濃度で撒き散らされたらどうでしょうね?

 

フフフッ、それもあなた方のいた地域なら···とっても素敵な事になるでしょうね。フフフフッ信じなくても構いませんよ?

だって私がその汚染を撒き散らすんですから···あ、全て喋ったらもうじきあなた方は元の鎮守府に戻されるそうですよ?良かったですねぇ···

 

けれど、この事を喋ったら···解りますよね?』

 

コジマ粒子···その粒子の存在が本当かは長門達には判らなかった。しかし、レイヴンズ·ネストは各国より高い技術を持っているため、嘘と断定することはできなかった。

 

長門(ローレンス艦隊所属)

「あれが···あれがレイブンズ·ネストのやり方なのか···」

 

 

 

その後、長門達は知っていることを全て話し、元の鎮守府に戻された。

そして、ローレンスが国連への反逆罪の罪を捏造し拠点に攻め入った事。それらがアメリカ海軍との共謀であり、依頼の遂行中の留守を狙って実行した事。

 

しかもローレンスはアイオワ達の提督を人質に取り、艦娘達を無理矢理作戦に参加させた事。そしてそれらを行った理由が『レイブンズ·ネストの持つ技術を得るため』だった事などを世界に流した。

 

当然、そのローレンスとアメリカ海軍は責め立てられたが、ローレンスに協力した者達は証拠を出されても否認を続け、アメリカ海軍は『ローレンス少将が勝手にやった事』とし、ローレンス少将を逮捕起訴した。

 

しかし、日本のマスコミはレイブンズ·ネスト側を責め立て、韓国は便乗して日本を責め立てたりして来た。

しかもそればかりか、いずれもレイブンズ·ネストの技術を渡すように要求してきたのだ。

 

···が、マスコミなどに真っ向から反論して来たのはレイブンズ·ネストだけでなく、今や『日本三大鎮守府』と呼ばれるまでになった横須賀、舞鶴、江ノ島の提督達と、ラバウル鎮守府の提督だった。

 

横須賀提督

「彼らが国連に反逆を行うならもっと早くやっていただろうね。それに、技術はあくまでも彼らの物であり、奪おうなんてのは論外だ」

 

舞鶴提督「これだけ決定的な証拠が集まっててまだ言うのか?マスコミの程度が知れるぜ」

 

江ノ島提督

「あいつらの行動のどこが国連への反逆に当たるのか、その説明も無しによく言えるな···しかも提督を人質に取ってよ···」

 

ラバウル提督

「あなた達は一体何を見てきたんですか!?彼らの今までの行動を考えてください!それに、もし彼らが国連に反逆するのなら···悪いのは私達でしょう···」

 

そして、これらに加えて更なる証拠が上がってきたため、ローレンスに協力した者達は職を辞めさせられ、マスコミへの批判も高まっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

拠点の中庭でお茶会をしている四人がいた。

 

ピス「私達のこれまでの行動がこのような形で報われましたね」

 

ピスは紅茶を飲みつつ、安堵の表情を浮かべている。

しかしリプは不満そうな表情である。

 

リプ「でも、マスコミはまだ勝手なこと言ってるのだ···ムカつくのだ。しかも傭兵は悪だなんて言ってる所もあるのだ」

 

有澤「傭兵はどこにも所属しない武装組織、しかも金で雇われる性質上、嫌われるのは仕方ありません。ですが幸いにも、蛟の事は晒されなくて良かったです」

 

有澤はそう言うと、抹茶を1口飲む。

 

ジュリアス「もし晒したのなら処分するだけだ」

 

ジュリアスは腰に下げている刀を一撫ですると、マカロンを頬張る。

 

 

 

その頃、草薙は新しい機甲兵装の製作に取り掛かっていた。大破したクレスト強襲戦闘型は解体し、複数の姫級との戦闘を想定してより強力なものを作ろうとしていた。

それを見ているランは草薙に質問をする。

 

ラン「なぁ、こいつを作るってことは···複数の姫級だけじゃなく、"オリジナル"との戦闘も考えてるんだろ?」

 

草薙「そうですね。高速軽空母水鬼はオリジナルではありましたが、随伴戦力の低さなどにより撃破でき、海峡夜棲姫は武龍とラングレーの介入が大きな変化をもたらしましたし···」

 

草薙は顔を上げ、製作中の新型機甲兵装を見る。

新型機甲兵装はこれまでよりも人の形に近く、手足の細さから軽量2脚であることが判る。

 

ラン「そのフォルムと、そこに置いてある武装からなんの機体かは判るけどよ、武龍に手術しなきゃいけねぇんじゃねぇか?」

 

草薙「それは解ってます。しかし武龍がもし···この時間軸での"あの人"なら、適正はあるはずです」

 

新型機甲兵装の機材が置いてある場所にかけてあるネームプレートには、その機体の名前が記されていた。

 

 

 

バルバロイ──

 

 

 

草薙「新時代を、切り開きましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、レイヴンズ·ネストになんと子供から依頼が入る。

 

子供《お願い助けて!》

 

子供は流暢な英語を喋っている。

 

瑞希「どうしましたか?とりあえず落ち着いて話してください」

 

子供《僕の街がめちゃくちゃにさてれるんだ!レイヴンズ·ネストにお願いすれば助けてくれるって聞いたから、お願い助けて!》

 

瑞希「では、これからする質問に答えてください。まず、あなたの名前はなんですか?」

 

子供《僕はジョニー》

 

瑞希《ではジョニー君、あなたの今いる場所とめちゃくちゃにされてる場所はどの国のどの場所ですか?》

 

子供《僕は今家の屋根裏部屋にいるんだ。場所はアメリカの『ノスライン』って街だよ》

 

瑞希「···分かりました。依頼を受諾、すぐにメンバーを向かわせます」

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

アンのあの発言は結構本気です。
アンは必要であれば躊躇い無くコジマ汚染をばらまきます。なぜ躊躇い無くばらまけるかは、後に出てきます。

●日本三大鎮守府
『戦略の横須賀』『戦況の舞鶴』『艦娘の江ノ島』といった風になっています。
誰も思い付かないような戦略を次々と立てる横須賀提督、あらゆる戦況を戦場で作り出す舞鶴提督、全ての艦娘を揃え、最高の練度を誇る江ノ島提督

●扶桑型秘匿航空戦艦蛟
建造されていれば戦争の結果を変えていた可能性を持つ艦船の1つ。
しかし、その巨体が故に建造する資材と時間が無く、建造される事は無かった。

左右斜めに計4つの飛行甲板を持ち、その巨体も相まって空母4隻分の艦載機を搭載する事が可能。
本体の武装は50cm3連装砲×4、25mm2連装機銃×2を装備している。

●秘匿艦船の武装
通常より武装の数が少なく表記されているのは、設計図の時点で武装のある場所に空白があったりするためであり、完成していれば武装はもっと多いのである。

●ノスライン
架空の街。
沿岸からは少し離れた位置にあり、治安は良く工業が盛んだったが、深海棲艦が現れてからは一気に衰退していき、今では治安がかなり悪くなっている。


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第15話 依頼は誰のため(ver2.0)


レイブンズ·ネストを見る目が悪くなりつつありつつ中、アメリカに住む子供から緊急の依頼が入る。
"依頼"とは、誰のためなのか···?


武龍、青葉、ラングレー、赤城、五十鈴、大潮の6人はストークDによって大気圏から作戦エリアに向かう。

 

赤城「子供からの依頼ということですけど、信憑性は?」

 

瑞希《情報を集めたところ、確かに依頼主の町は襲撃されています。それに、子供と言えど1人の個人的な依頼ですから》

 

武龍「なるほど、そりゃ良い」

 

作戦エリアに近づくと、ノスラインのあちこちで火の手が上がっているのが見える。

 

瑞希《作戦エリア到達!総員投下、作戦開始!》

 

曇り空の下···6人がそれぞれ投下されていき、武龍は最後に投下される。

今回の武龍の装備している機甲兵装はレオであり、両手の武器を握り直し、進んでいく。

 

瑞希《付近に量産型多数!大潮と五十鈴は依頼主の保護を優先し、残りは量産型及びテロリストを排除してください!》

 

電話を逆探知して入手した住所に五十鈴と大潮は向かい、武龍達は散開していく。

確認されている量産型はS1型、L1型、K1型、K2型の4種類である。

 

 

 

武龍は壁を蹴ってL1型の上方に回り込むと、左手のショットガンを撃ってL1型を大きくよろけさせ、ブーストの加速を利用した蹴りでL1型の頭を破壊する。

 

武龍は更に、別のL1型に右手のバトルライフルを撃ち込んで撃破し、集まってきた4機の内、中心の2機に小型ミサイルをロックオンして発射し、両側の2機にはバトルライフルとショットガンを向け、小型ミサイルの着弾と共に両手の武器を撃ち込んで撃破する。

 

そして、見つけたテロリストはあえて殺さずに最低限の威力の蹴りで無力化していく···

 

テロリストA

「なっ、なんだあいつは!?」

 

テロリストB

「ば、化け物か!?」

 

青葉、赤城、ラングレーは固まって行動し、ラングレーは逃げている民間人を援護し、赤城は量産型の艦載機を撃墜していき、量産型を発見しつつ撃破していく。

青葉は赤城とラングレーに接近しようとする敵を排除している。

 

ラングレー「あのテロリスト、民家に火炎放射器使ってるぞ!」

 

赤城「ここを徹底的に破壊するつもりでしょうね···」

 

青葉「こんなの、酷すぎます!」

 

 

 

 

 

そして五十鈴と大潮はジョニーのいる家に辿り着き、周囲の安全を確認してから中に入る。

 

五十鈴「屋根裏部屋の近くまで来たわ」

 

瑞希《了解です。ジョニー君、助けが来ましたよ!》

 

すると屋根裏部屋の扉が開き、不安そうな表情をした金髪の少年が顔を出す。

 

五十鈴「あなたがジョニー君ね?」

 

大潮「助けに来ましたよ!」

 

ジョニーは途端に泣き出し、五十鈴に抱きつく。五十鈴はジョニーの頭を撫でながら大潮にアイコンタクトをする。

大潮は頷き、周囲を警戒する。

 

五十鈴「よしよし、怖かったわね。だけどもう少しの辛抱よ、これから私達があなたを避難させるから」

 

ジョニー「うん···ありがとう!」

 

瑞希《では武龍、3人の通るルート上の敵を排除してください》

 

武龍《了解、俺はもう近くにいる》

 

ラングレー《他の民間人の避難はもうほとんど終わってるぜ!》

 

 

 

 

 

雨が降り始め、武龍達がジョニーの護衛をしている最中、テロリスト達の様子に変化があった。

テロリスト達の臨時司令部の前に、大型のトレーラーが停まる。

 

テロリストのリーダー

「我々の目的は世界の終焉···しかしあの傭兵が邪魔をしてくることなど想定内だ!」

 

トレーラーの扉が開き、中から重武装の量産型が4機現れる。

 

テロリストのリーダー

「しかし我らの新たな力、『J型』をもって、あの傭兵は葬られるのだ!」

 

 

 

 

 

五十鈴と大潮がジョニーを連れて避難用ルートを進んでいる。五十鈴が前に、大潮はジョニーの後ろに位置取り、進んでいく。

すると前方に見たことの無い量産型···J型が現れる。

 

五十鈴「なっ!?」

 

J型は全身の装甲が分厚くなっており、体を覆う部位も増えている。また、右腕には『20cm連装砲』、左腕には『25mm単装機銃』、右背部に『30cm単装砲』、左背部に『20cmミサイル』を装備している。

 

瑞希《新型!?》

 

J型達は一斉に攻撃し、五十鈴達は路地裏に隠れる。しかし五十鈴は砲撃を受けてしまい、被弾した右腕を押さえる。

 

五十鈴「ぐうっ!」

 

ジョニー「だ、大丈夫!?」

 

五十鈴「このくらい、大丈夫よ···!」

 

すると、五十鈴達の後方に何かが着地する音がする。五十鈴達が振り向くと、武龍が立っていた。

 

武龍「皆、後は任せろ!」

 

そう言って武龍は壁を蹴ってジョニーの上を飛び越えていく。

 

ジョニー「·····ヒーロー···!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM『Dirty Worker』(ACVDより)

 

 

 

武龍は正面ではなく上方からJ型達の前に飛び出、バトルライフルを撃ち込む。バトルライフルは1機のJ型のミサイルに着弾し、誘爆を起こす。

 

武龍は一瞬だけ急加速する『クイックブースト(以下QB)』を右側へ向けて行い、J型の砲撃を回避する。

そして壁を蹴ると共にQBし、J型に急接近する。接近した武龍は、至近距離からショットガンを別のJ型の頭部に撃ち込む。

 

至近距離からショットガンの散弾を受けたJ型の頭部装甲は破壊され、感情の無い顔が露になる。

他のJ型からの砲撃を武龍は空中でのブーストを切ることにより回避し、着地と共に旋回してバトルライフルとショットガンを撃ち込む。

 

J型達は背部のブーストを吹かしてジャンプしつつ距離を取り、それぞれ別の武装で攻撃してくる。

 

武龍(こいつら···機甲兵装を真似てやがる!)

 

武龍はJ型の側面に回り込むように動きつつ、バトルライフルとショットガンを撃ち込んでいく。しかしこれまでの量産型より遥かに硬く、すぐには倒せない。

 

そのため、武龍は右手の武装をバトルライフルからレーザーブレードに切り替え、左右にQBしつつ接近する。

そしてJ型の懐に潜り込んだ武龍は、レーザーブレードでJ型を袈裟に斬り裂く。

 

雨の中、爆発したJ型の炎に照らされた武龍の機甲兵装、レオは輝いて見える。

 

武龍はQBの加速を利用した蹴りを最も近いJ型に打ち込み、それを受けたJ型は吹っ飛ぶ。

そしてそのJ型の右隣にいた別のJ型を、武龍はレーザーブレードで上から真っ二つに斬り裂く。

 

しかし、タイミング良く放たれた別のJ型の30cm単装砲の砲弾は武龍の左胸に命中する。

 

武龍「ぐっ!」

 

武龍は再び壁を蹴ってJ型の上方に回り込み、ショットガンを撃ち込んで怯ませる。そしてレーザーブレードで薙ぎ払うように斬り裂く。

 

残るJ型は1機。

武龍は左から前へと連続でQBをし、レーザーブレードからバトルライフルに切り替えつつ、J型の20cm連装砲にショットガンを撃ち込んで誘爆させる。

 

誘爆により怯んだ隙に、バトルライフルとショットガンを交互に撃ち込んでいく。そして追撃に放った小型ミサイルがトドメとなり、最後のJ型は爆散する。

 

武龍「ふう、これで終わりか···さて、五十鈴達の所へ行かないとな」

 

武龍はブーストを最大まで吹かして五十鈴達の所へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、五十鈴と大潮はジョニーを安全圏まで送り届け、武龍と合流して量産型を排除し終えると、陸軍と陸軍の量産型(S1型4、M2型2)が武龍達の元へやって来た。

 

陸軍兵士「君達が、レイブンズ·ネストの戦闘員か?」

 

武龍「まあ、そうなるな」

 

陸軍兵士「まずは協力に感謝する。だが···」

 

青葉「協力?私達はそんなことしたつもりはないですよ?」

 

大潮「個人的な依頼があったので、来ただけです」

 

陸軍兵士「そうか···だが、武力介入は認められない。一緒に来てもらうぞ」

 

陸軍兵士は表情を変えずに言う。

 

武龍「嫌だと言ったら?」

 

陸軍兵士「この場で戦闘になる」

 

その言葉と共に、他の陸軍兵士と量産型が武器を構える。

 

武龍「···そっちはお前を含めた人間が4人、量産型は6機。本気で勝てると思ってるのか?それが解らない程能無しじゃないだろ?」

 

陸軍兵士は黙り込む。

武龍達はそのまま回収予定ポイントまで行き、帰還した。

 

その後マスコミは『レイヴンズ·ネストがアメリカに協力した』と報道したが、アンの手により即座に取り下げられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしこの頃から、レイブンズ·ネストの依頼を受ける基準についての疑問が世間では出始め、様々な考察がなされていた···

 

『金のため』『ヒーロー気取り』『名声のため』『戦争を楽しむため』あるいは『世界征服のため』など···

 

アン「フフフッ、やっぱり人間は愚かですねぇ···そんな幼稚な考察が大半···でも、やはりほんの一握りは近い考察をしていますね···」

 

その考察は···

 

 

 

『戦争を終わらせたい』

 

 

 

草薙「まあ、正確には少し違いますがね···」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、他のAF達は新型の登場に疑念を抱いていた。

 

ピス「あの新型、明らかに機甲兵装を模したものでしたね」

 

ラン「ああ。それに···」

 

リプ「あんな新型、なんでテロリストが持ってたのだ?」

 

ジュリアス「それも、あのテロリストは人類解放軍や深淵教とも違うようだしな」

 

ソラ「あれだけの量産型に、新型···間違いなく資本が関わっているはずよ」

 

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

感想やご指摘も受け付けておりますので、どしどし送ってください!

●J型
アリオール社の新型の量産型艦娘。
髪の毛は刈られ、スキンヘッドになっている。

武装は右腕に20cm連装砲、左腕に25mm単装機銃、右背部に30cm単装砲、左背部に20cmミサイルを装備している。

機甲兵装を模し、対機甲兵装を目的とした試作機でもあるが、なぜテロリストの手に渡っていたかは不明である。

●クイックブースト
瞬間的に急加速し、回避や接近を行うことができる。しかし通常のブーストよりエネルギーを消費するため、長時間の連続使用はできない。


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第15.5話 轟音響かせ、さぁ沈め(新実装)

世界情勢は悪化し、深海棲艦による被害は増える一方だった。
そして吹雪が舞う港町で、新たな作戦が幕を開ける。




世界の情勢は悪化の一途を辿っており、かつて攻略したスリガオ海峡は、今では深海棲艦による攻勢の前に再び奪われかけている。

各国は互いを疑い、上辺だけの協力をしているだけがほとんどだった。

 

また、人類解放軍と深淵教の協力者は政界内部にもおり、政治家の一部は自身の保身と儲けのため、彼らの手を取っていた。

そしてそれは更なる渾沌と犠牲を生んでしまっている。

 

何も知らない民間人は犠牲となり、提督達や艦娘達も助けられる人々を助けられずにいた。

しかし1度手にした甘い蜜を手放せるはずもなく、犠牲は増え続けている。

 

だが甘い蜜を吸う政治家だけではなく、未来のために行動している政治家もいた。

···が、その大半は現状に焦っており、特にレイヴンズ·ネストに対しては今後の処遇を議論することも多かった。

 

 

 

議員A(男性)

「レイヴンズ·ネストを放っておけば、この国の未来に関わります!」

 

議員B(男性)「例えばどのように?」

 

議員A「彼らの技術が他国に渡れば、我々は技術力で大きく引き離され、外交や国防で不利になります!」

 

議員C(女性)

「簡単なことです。奴らを全員逮捕してしまえば良いのです」

 

議員D(男性)

「あの戦力を相手にどうやって?注意すべきなのはミグラントだけでなく、ラングレーもとい高速軽空母水鬼もいるのだぞ?それに、他に隠し持ってる戦力が他にもあるやもしれん」

 

日本の軍事会議にて、政府高官は議論を重ねているが、その内容に現首相である創平は頭を悩ませていた。

その様子を見た議員B、『秋山(あきやま) 平二(へいじ)』は創平の意を汲むことにした。

 

平二「レイヴンズ·ネストの技術力は確かに魅力的だ。しかし、レイヴンズ·ネストは雇われの身とはいえ我々を何度も助けた。スリガオの時なんか、誰が依頼したわけでもなく来てくれた」

 

議員C「何が言いたい?」

 

平二「我々はレイヴンズ·ネストに借りがある。それは民衆から見ても明らかだ。それを仇で返せば、我々もただではすまないだろう」

 

平二の意見に、議員の多くは唸るか黙り込む。

すると、創平はようやく口を開く。

 

創平「皆さん···技術を得ようとする前に、まずは借りを返すのが先です。そして、レイヴンズ·ネストの件よりも優先せねばならない課題は山積みでしょう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

依頼主:ロシア海軍所属:レヴォツィ·ノーマッド大尉

 

目標:港町『プエロラリア』の奪還

 

作戦開始時刻:午後3:00

 

報酬:700000ドル

 

小島にある港町プエロラリアが深海棲艦に占拠されてしまった。目標の地点より小さな小島と本土を橋で繋いでいたが、その橋も破壊されてしまっている。

 

この小島は北方棲姫のいるエリアに近いこともあり、防衛線の一角を担っていた。

しかし、先日ヨーロッパ付近から移動してきた姫級を帰艦とする戦力によって部隊は壊滅してしまった。

 

なお、こちらの戦力は別方向から攻撃し、そちらの艦隊と共に挟撃する作戦になる。

では、良い返事を期待している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レイヴンズ·ネストへの世間からの印象は割れており、支持者からは資金援助の申し出がよく来ていた。しかし調べたところ、いかがわしい団体などだったため、断っていた。

 

反対派からは有形無形の嫌がらせや悪質な妨害を受けており、草薙達は呆れ果てていた。

正義感に駆られただけではなく、単にストレス発散を目的として妨害行為を行っている者も多かったのだ。

 

しかし武龍達は基本的には無視しており、今回も依頼を受けて飛び立った。

 

 

 

 

 

吹雪が舞っている作戦エリアに着き、ストークDから投下される。

編成は武龍、赤城、陸奥、五十鈴、大潮、青葉であり、武龍の機甲兵装はレオを選択してきていた。

 

今回は港町であるが、同時に小島でもある。そのため、狭い場所でも行動しやすいレオにしてきていた。

投下された武龍達は互いをカバーしつつ、岩陰に隠れながら進んでいく。そして深海棲艦を確認すると攻撃を開始した。

 

正面は陸奥と青葉が、五十鈴と大潮は両側面から攻撃していく。赤城は陸奥と青葉の後方から艦載機を発艦させ、武龍は屋根伝いに上から奇襲をかける。

 

深海棲艦はプエロラリア内に分散して巡回しており、武龍達の戦闘音に気づいた深海棲艦達は武龍達のいる方向へ向かう。

そして、それと共にレヴォツィの艦隊も攻撃を開始し、深海棲艦の戦力はより分散される。

 

 

 

武龍のショットガンから放たれた散弾が駆逐イ級の頭部を穴だらけにし、陸奥の砲撃が2体の重巡リ級を纏めて吹き飛ばし、青葉の砲撃で破壊された建物の瓦礫が駆逐イ級に降り注ぎ、動けなくなったところに武龍のバトルライフルでトドメを刺す。

 

側面からは五十鈴と大潮の砲撃により、撤退しようとした重巡リ級eliteが撃破される。

赤城は爆撃しつつ深海棲艦の旗艦を探していると、姫級を確認する。

 

その姫級は欧州水姫であり、武龍達が戦っている様子を山頂から俯瞰していた。

 

赤城「皆さん!欧州水姫が島の山頂で確認されました!」

 

レヴォツィ《島の頂上···プエロラリア公園か!》

 

瑞希《皆さん、山頂に向かってください!》

 

レヴォツィ《よし、ならお前達は他の深海棲艦を山頂に近づけるな!》

 

しかし欧州水姫は山頂から飛び降り、武龍達のいる広場に着地した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

欧州水姫「貴様達ハ···ココデ沈ムノッ!ココデェッ!」

 

武龍達が構えると、周囲に大量の爆撃が行われる。

欧州水姫の後方には『欧州装甲空母棲姫』がおり、振り向いた欧州水姫に対して頷き、欧州水姫もそれに応えて頷く。

 

すると欧州装甲空母棲姫は随伴艦を連れて去っていき、それと共に海中から大量の深海棲艦が現れ、青葉達は行く手を阻まれる。

しかしそれにより、武龍と欧州水姫は1対1の状況になる。

 

武龍「なるほど、タイマンってことか。上等だ!」

 

武龍はバトルライフルとショットガンを構え、欧州水姫も主砲を構える。

 

 

 

武龍と欧州水姫は同時に動き出し、欧州水姫は武龍の撃ったバトルライフルの砲弾を主砲の一撃で相殺し、武龍はタイミングをずらしてショットガンを撃ち、欧州水姫は怯む。

 

欧州水姫「ウッ!」

 

怯んだ欧州水姫に武龍はQBで接近し、バトルライフルを構える。しかし欧州水姫はバトルライフルを左手で外側に弾き、右腕と一体化した副砲を武龍の左の二の腕に撃ち込む。

そのまま欧州水姫は距離をとる。

 

武龍(あの両腕···!)

 

よく見ると、欧州水姫の両腕は二の腕から先が義手になっており、欧州水姫は主砲を構える。

武龍は主砲の発射直線に左へQBして回避し、欧州水姫の右側の主砲にバトルライフルを撃ち込む。

 

欧州水姫は旋回しつつ距離を離し、主砲を別々に撃つことで連射してくる。

武龍は左右に連続でQBすることで回避しようとするが、欧州水姫は主砲の砲撃に副砲の砲撃を混ぜていたため、副砲の砲弾は武龍の左足のシールドに命中する。

 

武龍「危ねっ!」

 

武龍はジャンプしてから建物の壁を蹴り、上方からすれ違い様にバトルライフルとショットガンを左側の主砲に同時に撃ち込む。

更に、振り向いた欧州水姫に武龍はショットガンを撃ち込む。

 

欧州水姫「アハハハハハ!ヤルジャナイノォ!」

 

ショットガンを撃った距離が悪く、欧州水姫の頭部装甲を破壊し、胴体にはあまりダメージは与えられなかった。

そして欧州水姫の頭部装甲は地面に落ち、素顔が露になる。

 

欧州水姫「デモネェ···マダマダ足リナイ!足リナインダラカァ!」

 

 

 

 

 

その頃青葉達は他の深海棲艦と交戦しており、青葉に接近しようとした重巡リ級eliteの懐に五十鈴が潜り込み、至近距離から両手の主砲を同時に撃ち込む。

陸奥は2人の背後を守り、周囲に同時砲撃を行う。

 

青葉「ありがとうございます!」

 

五十鈴「まだ残ってるわ!」

 

陸奥「後ろは任せて!」

 

レヴォツィの艦隊も負けておらず、『ガングート』が戦艦タ級に向けて主砲を発射した直後、ヴェールヌイがガングートの主砲を踏み台にして大きく飛び上がり、大破した戦艦タ級の顔面に砲撃して撃破する。

 

レヴォツィ《よし、ここは突破した!進め!》

 

ガングート(レヴォツィ艦隊所属)

「よし、良いぞ!畳み込め!」

 

赤城の方では、接近してきた深海棲艦は大潮が抑え込んでおり、赤城は空母ヲ級flagship2体との航空戦を行っている。

先程まで航空戦は赤城単独だったのだが、軽空母ヌ級flagshipを撃破したレヴォツィ艦隊所属の『龍鳳』も航空戦に加わっている。

 

 

 

 

 

欧州水姫と武龍の戦闘は激しさを増し、互いの攻撃で2人は同時に仰け反る。

 

武龍「ガハッ!」

 

欧州水姫「イッタァ···アッハハハッ!ヤル···ナァ!デモ、ココマデ···ナンダカラァッ!」

 

しかしその時、プエロラリアは大量の量産型に包囲される。包囲した量産型には人類解放軍のエンブレムがペイントされていた。

 

人類解放軍幹部

《我々はこれより、プエロラリアを占拠する深海棲艦と人類の進歩を阻む艦娘を撃滅する!行けぇ!》

 

大量の量産型が同時に攻撃してきたため、既に消耗していた深海棲艦は次々に撃破されていき、青葉達やレヴォツィの艦隊にも被害が出てしまう。

 

レヴォツィ《貴様らっ···!》

 

レヴォツィは拳を机に叩きつけ、レヴォツィの艦隊は守勢に回らざるを得なくなる。

青葉達も互いを援護する事を優先せざるを得なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吹雪がより一層強くなる仲、人類解放軍の乱入に気づいた武龍と欧州水姫は互いを見合わせる。そして同時に背を向け、互いの背後を守り合う。

 

 

 

推奨BGM『Sand Blues』(AC4より)

 

 

 

武龍「一時休戦と行くか」

 

そう言う武龍は左足のシールドが破壊されており、他の部位の損傷も大きいため、機甲兵装は中破していた。

 

欧州水姫「エエソウネ。コンナノ···認メナイ!」

 

対する欧州水姫も中破しており、艤装上部の主砲は破壊されており、右腕も肘から先が破壊されている。

周囲からは量産型が押し寄せ、その中にはJ型も混じっている。そして2人は同時に攻撃を開始した。

 

武龍のショットガンで刀を振りかぶったS2型が穴だらけにされ、欧州水姫の主砲で2体のL1型が薙ぎ払われる。

更に、欧州水姫の死角から現れたS2型に武龍はバトルライフルを向けて引き金を引く。

 

大通りからS1型2機とS2型2機が現れるが、武龍は正面のS2型2機に小型ミサイルをロックオンして発射する。

撃破されたS2型の両側からS1型が攻撃しようとするが、欧州水姫の砲撃により撃破される。

 

 

 

すると今度は、武龍と欧州水姫を囲みつつ旋回するようにJ型が4機現れる。

武龍はバトルライフルとショットガンを同時に撃ち、右側のJ型に損傷を与え、左側のJ型にはQBを利用したタックルをする。

 

欧州水姫は左右の主砲をJ型の足元に撃ち、2機のJ型の体勢を同時に崩す。

そして左側のJ型に接近し、艤装で噛み砕こうとする。しかし反対側のJ型の砲撃を右側の艤装に受けてしまう。

 

武龍は小型ミサイルをJ型に1発ずつ発射し、民家の壁を蹴ってJ型の上を取る。

そして近い位置にいるJ型にショットガンを撃とうとするが、別方向から左腕を撃たれてしまい、ショットガンを手放してしまう。

 

L1型とS1型が複数、青葉達のいる場所を突破してきていた。

しかし武龍はバトルライフルをJ型の顔面に向け、欧州水姫は両側の主砲を仁王立ちしてJ型に向け···

 

武龍「沈めぇぇぇぇぇ!」

欧州水姫「沈メェェェェェ!」

 

同時に轟音を響かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

激戦の末に全ての量産型を撃破すると、武龍と欧州水姫は向かい合う。

互いに満身創痍であり、互いに武装を全て失っていた。しかし欧州水姫は格闘戦の構えを取る。

 

欧州水姫「決着ヨ···」

 

武龍「···ああ」

 

既に吹雪は止み、ちらほらと雪が降っているだけだった。武龍は左腕の装甲を破壊されているため、互いに片腕と脚だけで戦う。

武龍が欧州水姫の顔を殴りつけ、欧州水姫は反動を活かして裏拳で武龍の顔面を殴りつける。

 

武龍の頭部装甲は失われてはいないものの、衝撃は入っている。

武龍は欧州水姫の顔面に再び殴りかかるが、欧州水姫はそれを避けて腹部の大きくヒビの入っている部位へ、抉り込むように殴りつける。

 

武龍「グフォッ!」

 

武龍は吐血するが、拳を欧州水姫の脳天に叩き込む。

顔を上げ、拳を振りかぶった欧州水姫の目には、涙が浮かんでいた。

欧州水姫には、武龍が輝いて見えている。

 

欧州水姫「私ダッテネェ···本当ハ、輝キタカッタ!」

 

欧州水姫の拳が武龍の頭部装甲のメインカメラの無い右側に打ち込まれ、大きく損傷する。

再び欧州水姫は武龍を殴ろうとするが、武龍は右腕で防ぐ。しかしそれにより、右腕の装甲は破壊されてしまった。

 

欧州水姫には、消えることの無い武龍の輝きが眩しく、焼けただれるように思えた。

 

欧州水姫「イツマデモ···コノ海、駆ケ巡ッテ!」

 

欧州水姫の拳を武龍が受け止める。武龍の右腕の装甲は破壊されているものの、駆動系のパーツと手の装甲は残っていた。

欧州水姫は膝蹴りで武龍の腹部の装甲にダメージを与え、破壊された装甲がボロボロと剥がれ落ちる。

 

欧州水姫「期待通リ二、私ハァッ!」

 

武龍と欧州水姫は同時に拳を振りかぶり、同時に互いの顔に拳が打ち込まれる。

そして互いに仰向けに倒れ、ぐったりとする。

 

 

 

欧州水姫と武龍は空を見上げている。

いつの間にか雪は止み、綺麗な青空が視界に映っていた。欧州水姫の目から涙が先程より多く流れ、欧州水姫の体は光の粒となっていく。

 

欧州水姫「コれハ···光?そうカ···そうね···」

 

欧州水姫の声は穏やかで、武龍は無言で空へ登っていく光の粒を眺めている。

 

欧州水姫「·····ありがとう」

 

欧州水姫の体は完全に光の粒となり、空へ消えていった。

 

武龍「···またな」

 

 

 

 

 

意識を失った武龍を陸奥が抱き抱え、ストークDのコンテナに連れていく。

 

レヴォツィ《レイヴンズ·ネストの諸君、感謝する》

 

瑞希《こちらこそ、あの決闘に手を出さないでもらってありがとうございます》

 

レヴォツィ《戦士の決闘に、手は出せんさ···それに、安らかに逝けたのなら、それだけで嬉しいさ》

 

そう言うレヴォツィの表情は安堵していた。

 

 

 

その後、今回乱入してきた人類解放軍の構成員はどうにか逮捕できたものの、ここまでの数の量産型を入手できた経緯については不明のままであった。




読んでくださり、ありがとうございます!

今回、スリガオ攻略戦の際に撤退していた欧州水姫と決着が着きましたが、どうだったでしょうか?

●秋山 平二
白髪混じりの黒い短髪で身長167cm、62歳で7月24日生まれ。男性。

いつも冷静な防衛大臣であり、主に国防の観点から意見を言っている。しかし多くの意見とは違う意見を言うことが多いため、彼を嫌う政治家が一定数いる。

ちなみに、レイヴンズ·ネストに関しては敵とも味方とも思っていないが、敵対するつもりもない。

●レヴォツィ·ノーマッド
髪型はブロンドのオールバックで身長180cm、45歳で7月10日生まれ。男性。

ロシア海軍の大尉であり、周囲の情勢や敵にも味方にも真剣に向き合い、どうにかして互いに被害が少ないように戦争を終わらせられるか考えている。

艦娘や部下達からの信頼は厚く、重要な作戦を任せられることも多い。

余談だが、人知れずとある深海棲艦をドロップさせた人間でもある。

●プエロラリア
ロシアの架空の港町。
本土→小島→プエロラリアと2つの橋か船を用いて行くことのできる小島にあり、深海棲艦が現れてからは防衛線の一角を担っていた。

元は近海から良質な魚が獲れたりしており、漁業が盛んで評判だった。


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第16話 艦娘からの依頼(ver2.0)


プエロラリアでの1件の後、周辺も少し落ち着いてきたレイヴンズ·ネストに、艦娘からの依頼が舞い込んでくる。


プエロラリアでの1件の後、武龍達の元にあまり依頼は入ってこなかった。

代わりに武龍達への妨害も減り、周辺は落ち着いてきた。そのため、ゆっくり過ごす時間も増えていた。

 

その日は武龍はラングレーと最近買ったゲームで対戦しており、互角の戦いをしていた。

しかしその頃、北上は草薙に工廠に呼び出されていた。

 

草薙「来ましたね。早速、これを見てください」

 

作業台の上には灰色の布を被せられた何かがあり、草薙が布を取ると、そこには新調された雷撃兵装があった。

 

北上「これ、もしかして私の!?」

 

草薙「はい、そうです。最近は地上戦が増えたため、雷撃戦を得意とするあなたが活躍できる依頼が減っていました」

 

雷撃兵装につけられている魚雷の後方はブースターとなっている。

 

草薙「そのため、魚雷をミサイルにして発射管もそれ用のものに変更しました。訓練こそ必要ですが、これであなたは地上戦にも対応できるようになりましたよ」

 

北上「ありがとう、これで活躍できるよ!じゃあ早速練習してくるよ~!」

 

北上はガッツポーズをし、雷撃兵装を装備すると演習場に向かった。

その様子を草薙と工廠妖精は微笑んで見守っていた。

 

 

 

そして3日後、とある依頼が舞い込んでくる──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

依頼主:金剛型戦艦 霧島(中国海軍所属)

 

目標:中国からの脱出支援

 

作戦開始時刻:01:30

 

報酬:1000000円

 

備考:脱出する艦娘のリスト

  戦艦『霧島』、軽空母『鳳翔』、駆逐艦『曙』、『時雨』、『夕立』、海防艦『大東』

 

中国からの脱出の支援をお願いします。

 

私達は以前日本から中国に移籍となった艦隊なのですが、あまりにも扱いが酷く、日常的な暴力やセクハラにあっていました。そのため、脱出することを決意しました。

脱出後は証拠を日本の海軍に提出するつもりです。

 

報酬は少ないと思いますが、どうかお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の依頼は迷うこと無く受注し、作戦エリアの海域に向かった。その海域にストークCを待機させ、武龍はフォクスアイを装備してストークCの1km前方で待機、赤城と陸奥はストークの近くで待機。青葉、北上、五十鈴の3人は先行して霧島達の元へ向かった。

 

蛟《ストークの周辺に異常はありません·····青葉、及び目標艦隊を確認!どうやら中国の艦隊に終われている模様!陸奥は右斜め前方に移動し、砲撃開始。武龍はそのまま待機してください!》

 

青葉「皆さん!見えてきました!もうすぐですよ!」

 

五十鈴「ホントしつこいわね!」

 

青葉達を追いかけている12機のS1型の内、最前にいるS1型に陸奥の砲撃が命中、頭部を失ったS1型はそのまま自爆する。

更に赤城の戦闘機がS1型の後方にいるK1型とK2型の敵艦載機と交戦し、目標艦隊への爆撃を防ぐ。

 

しかしそれでも追いつこうとするS1型に対し、振り返った北上がミサイルを放つ。

マルチロックされたミサイルはS1型5機をまとめて撃破する。

 

蛟《武龍!今です!》

 

武龍「了解!」

 

青葉「後は頼みます!」

 

武龍は青葉達と入れ替わるようにして前に出て、攻撃を開始する。

目標艦隊を収容したストークCは飛び立ち、レイヴンズ·ネストの拠点へと向かう。

 

武龍はカラサワとグレネードライフルを交互に撃ち、4機のS1型を撃破し、陸奥と赤城も量産型を撃破していく。

そして武龍達は量産型を全滅させ、回収ポイントまで撤退する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、目標艦隊はレイヴンズ·ネストで一時的に預かり、ベスが日本海軍に掛け合う。

その間に目標艦隊には入渠してもらい、基本的に自由に過ごさせることにした。

 

青葉「皆さん、私は隣の部屋にいますので、困ったことがあったらすぐに言ってください」

 

霧島「ありがとうございます!」

 

部屋の中では曙達が嬉し涙を流しながら笑顔を見せている。それを見て鳳翔と霧島も笑顔になっている。

そして、ラングレーとジュリアスは拠点周囲を警戒していた。

 

 

 

 

 

その頃、ベスは海軍とこの件について掛け合っていた。

 

ベス「では、あなた方に引き渡した後はこちらにその後の情報は渡さないと?」

 

海軍中将《当たり前だ。艦娘の管理はこちらで行う、逆に貴様らの行為を黙認している我々に、感謝してほしいものだ》

 

ベス「···我々が依頼を完遂するのは然るべき処置が行われ、護衛対象の安全が確実となり、それらが全て完遂された時です」

 

海軍中将《ふん、それはお前らのやり方だろう?こちらにはこちらのやり方があるのだ》

 

ベス「これでは話が平行線になるばかりですね···良いでしょう。ではそちらが考えと対応を改めるまで艦娘達はこちらで預かります。また、中国海軍の行いの証拠は"我々のやり方"に従ってばらまく事と致しましょう」

 

海軍中将《おい!それは貴様(ブツッ)》

 

ベスは通信を切り、録音したボイスレコーダーを持って霧島達の所へ向かう。

そして、それを聞いた霧島達はうなだれている···

 

ベス「ご安心を。あなた方は、私達が必ず守ります」

 

曙「それって···依頼だから?依頼だから守るんでしょ!?」

 

ベス「いいえ、依頼だから守るのではありません。あなた方に不当な扱いを行った者達が許せないのです···それに、もし依頼だから守るとしても、依頼は完遂していませんので、守る必要があります」

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜は雨が降り、拠点の浜辺に黒い布で体を隠した6人の艦娘が密かに上陸しようとしたのだが···

 

駆逐艦の艦娘「嘘、でしょ···?」

 

艦娘達の前には高速軽空母水鬼とが立っており、既に艦載機を発艦していた。

 

ラングレー「Hey、何をするつもりだ?」

 

即座に艦娘達は攻撃体勢に入るが、ラングレーの艦載機により次々と損傷していく。

 

駆逐艦の艦娘「ギャアアアアア!痛い!痛いぃぃぃぃ!」

 

軽巡の艦娘「こんなの···聞いてない···」

 

ラングレー「安心しろ。殺しははしない···You達は中国の艦隊か?それとも日本の艦隊か?」

 

倒れていた艦娘の1人が砲撃するが、ラングレーは避けずに爪で砲弾を弾く。

 

ラングレー「さぁ、洗いざらい吐いてもらうぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、中国海軍の日本生まれの艦娘への行いと海軍中将の癒着が世間に晒される事となった。

そして、護衛対象の艦娘達はなんと···

 

草薙「本当に、こちらへ来るのですか?」

 

霧島「既に話し合った結果です!」

 

草薙「では、あなた達を歓迎します。ようこそ、レイヴンズ·ネストへ」

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

北上の戦力強化と艦娘からの依頼、そしてレイヴンズ·ネストの戦力が強化されましたね。
ちなみに、この艦隊の時雨はスリガオの時とは別の時雨です。


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第16.5話 艦隊、突入(新実装)

ある日に起きた必然──

血に染まる海に向かいし者達──

続く戦乱に、光はあるのか?


レイヴンズ·ネストに霧島達からの依頼が来る少し前から、"海が血に染まっている"との報告が大本営に複数寄せられていた。

調べてみると、特定の海域にのみ起きている現象であり、報告の通り海が血に染まっていた。

 

明石(大本営所属)

「この海域、海水が血に変わっているだけでなく、この海域に入った艦娘の艤装が急速な経年劣化を起こすそうです。また、誰の血なのか検査したところ、中身は海水と大差ない事が解りました」

 

夕張(大本営所属)

「中には、戦闘中に艤装が自壊してしまった艦娘もいるようです」

 

報告を聞いている元帥は神妙な顔つきだった。

報告を聞き終わった元帥は、小さなため息をついてから指令を下す。

 

元帥「江ノ島艦隊に調査に向かわせろ」

 

大和(元帥秘書艦)

「江ノ島の提督は現在、空襲の影響で入院中ですよ?」

 

元帥「あそこは代わりに長門が指揮を執っているだろう?大丈夫だ、あくまで調査に向かわせるだけだ。それに、佐世保の艦隊も出撃させるように」

 

大和(元帥秘書艦)

「解りました。では、危険を感じたらすぐに撤退するようにも伝えておきます」

 

元帥「うむ、そうしてくれ」

 

明石(大本営所属)

「そういえば、レイヴンズ·ネストはどうします?依頼を出せば戦力を増やせると思いますが?」

 

元帥「うむ、そこは江ノ島艦隊の判断に委ねよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

指令を聞いた江ノ島艦隊、提督代理の長門は調査艦隊の作戦と編成を決めると、所属艦娘を集めた。

夜の風が吹く中、長門は台の上に立つ。

 

長門(江ノ島艦隊所属)

「皆、大本営からの指令は聞いているな?これより調査艦隊の編成を伝える。また、作戦は追って伝える」

 

そして、それぞれの編成が伝えられていく。

 

 

 

第1艦隊:戦艦 大和、『金剛』、空母赤城、加賀、駆逐艦『吹雪』『睦月』

 

第2艦隊:軽巡『天龍』『龍田』、駆逐艦『暁』『響』『雷』『電』

 

第3艦隊:空母『翔鶴』『瑞鶴』、戦艦『比叡』『霧島』『榛名』、駆逐艦『叢雲』

 

第4艦隊:軽巡『川内』『神通』『那珂』、雷巡 北上、『大井』、軽空母『龍驤』

 

 

 

長門「そして、今回の作戦だがレイヴンズ·ネストに依頼を出している。危険だと感じたらすぐに撤退するように」

 

艦娘達にざわめきが起こり、中には不服そうな顔をする艦娘もいた。

 

長門「静かに。傭兵の手を借りる事に違和感を感じたる者もいるだろう。だが、戦力は多い方が良い」

 

 

 

 

 

その頃、呉では──

 

呉提督「なるほど、あの特殊な海域への調査か」

 

大淀(佐世保艦隊所属)

「私達の任務はあくまで支援だそうですが、編成はどうしますか?」

 

呉提督「編成は···」

 

 

 

呉艦隊から出る編成は以下の通りだった。

 

航空戦艦 扶桑、山城、軽空母『龍鳳』、軽巡『矢矧』、駆逐艦 時雨、雪風

 

扶桑達が出撃していく際、空は晴れていた···

 

 

 

 

 

レイヴンズ·ネストでは再び艦娘から依頼が来たため、蛟とベスは依頼内容と共に添付されている資料を確認していた。

 

蛟「艤装が経年劣化を起こす海域···厄介ですね」

 

ベス「となると、短期決戦になりますね。しかし前例の無い海域となると、その分強力な深海棲艦とその戦力がいるのはほぼ確実でしょう」

 

蛟「依頼は受けましょう。ただ、編成は厳選しなくてはいけませんね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ストークCに運ばれて武龍達は作戦エリアへと向かう。

今回の編成は武龍(フォックスアイ装備)、陸奥、ラングレー、青葉、北上、島風、夕立である。

 

武龍はストークBに運ばれ、武龍を投下した後はストークBも戦闘に加わる予定である。

 

蛟《作戦エリアに到達。総員投下、作戦開始!》

 

投下された武龍達は第1艦隊に合流し、並走する。

すると、呉艦隊の旗艦である山城が武龍達に近づいてきた。

 

山城(呉艦隊所属)

「スリガオの時は、ありがとうございました」

 

武龍「無事で良かった」

 

陸奥「今回はちゃんとした味方だから、今回もよろしくね」

 

山城(呉艦隊所属)

「もちろんよ」

 

そう言って山城は艦隊の陣形に戻っていく。

 

今回の作戦では、第2、第4艦隊は主力となる第1、第3艦隊の露払いと足止めを担い、呉艦隊は主力艦隊と共に敵の殲滅。

そして、武龍達レイヴンズ·ネストの艦隊も敵の殲滅である。

 

武龍「なんか···おかしい」

 

蛟《調査なのに、"殲滅"だからですか?》

 

武龍「いや、違う···なんだか、"ここで勝たなきゃならない"って感じるんだ」

 

青葉「武龍もですか?」

 

ラングレー「·····」

 

大和(江ノ島艦隊所属)

「あなた達も、感じるんですか?」

 

北上「そうだね。ここには勝たなきゃいけない"ナニカ"がいるね」

 

この作戦に参加している艦娘全員と武龍は、"ここで勝たなくてはならない"と強く感じており、普段以上に気を引き締めている。

 

蛟(艦娘であれば、何かを察知してもおかしくありませんが、武龍までとなると···人間にまで察知させる程のナニカがいるのか、武龍に何かあるのか···)

 

 

 

 

 

艦隊が進んでいく中、江ノ島艦隊の吹雪と睦月は不安を抱えていた。

江ノ島鎮守府では、睦月の姉妹艦である駆逐艦『如月』が1度轟沈し、その後ドロップしたことにより再び戻ってきた。

 

しかしその如月の体は徐々に深海棲艦となっていき、髪は白く、角が生え、体には紫色の痣や滲みのようなものが広がっていた。

その事を知った睦月や吹雪など、一部の艦娘はそれを秘匿していた。

 

今回の作戦から帰艦した際、どこまで深海化が広がっているのか不安だった。

しかし同時に、艦娘であり深海棲艦であるとの噂があるラングレーに希望を持っていた。

 

睦月(江ノ島艦隊所属)

(ラングレーさんなら、何か知ってるかもしれない。けど···)

 

傭兵である彼女と話せるのは、作戦中のみである。

だが作戦中に詳しいことを聞ける余裕があるかどうか、そう考えるとなかなか聞けずにいた。

 

青葉《何か悩んでるのですか?》

 

青葉から通信が入り、睦月は驚く。

 

睦月(江ノ島艦隊所属)

「はい···その、ラングレーさんとお話させてくれますか?」

 

睦月は思い切って聞いてみることにすると、ラングレーからはすぐに返答が来た。

 

ラングレー《なんだ?》

 

睦月(江ノ島艦隊所属)

「あの···私と姉妹艦の如月ちゃんが···深海棲艦になっちゃいそうで」

 

ラングレー

「···それは、どのくらいまで進行してる?」

 

睦月(江ノ島艦隊所属)

「髪が白くなって、角も生えて···それから、体に紫の痣か滲みみたいなのが沢山···」

 

ラングレー《Oh、そこまで進んでるか···戻りたいって思いが、強すぎたんだな···ドロップした艦娘の中には、皆の所に戻りたいって気持ちが強すぎて、逆に深海化しちまう奴がいるんだ》

 

ラングレーの脳裏に、高速軽空母水鬼だった頃に見た光景が浮かぶ。

深海化しつつ、その力をもって高速軽空母水鬼を倒そうとしたが、深海化が進み過ぎて味方を攻撃してしまった艦娘を。

 

ラングレー《意識や言動は?意識はハッキリしてるか?言動は普段と変わらないか?》

 

睦月(江ノ島艦隊所属)

「うん。意識はハッキリしてるし、言葉はいつも通りだし···ただ、深海棲艦になりたくないって叫んでて···」

 

ラングレー《なら大丈夫、深海化しても理性を失ったりする事は無いだろうさ。逆に、変に冷静だったり何かを憎んだりするようになってたら危なかったぜ》

 

その言葉を聞き、睦月は安堵した。

 

睦月(江ノ島艦隊所属)

「ありがとうございます!改めて今回の作戦、よろしくお願いします!」

 

ラングレー《Off course!こっちこそ頼むぜ!》

 

睦月から不安が消え去り、気を引き締めてラングレーの方を見ると、ラングレーはこっそりサムズアップしていた。

 

 

 

 

 

しばらくすると先行していた第2艦隊が交戦を始め、先程までいなかった深海棲艦が後方と側面から集まってくる。

 

川内「行って!ここは私達が引き受ける!」

 

川内達が交戦を開始したため、武龍達は先へ進んでいく。すると再び深海棲艦による攻撃が強まったため、今度は天龍達がその場を引き受ける事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空には暗雲が立ち込め、海は赤く血に染まっており──

 

暗い空へと伸びる紫色の光の柱──

 

その周囲を守るように集まっている大量の深海棲艦──

 

そして海に咲き乱れる彼岸花──

 

 

 

蛟《これは···皆さん!》

 

武龍「ああ、ここで···ここでやらなきゃならない!」

 

ラングレー「Meもそう感じるよ」

 

夕立「"ソロモン"、突撃するっぽい!」

 

 

 

 

 

推奨BGM『突入』

 

 

 

大量の深海棲艦はどれもeliteかflagshipであり、スリガオの時より明らかに強力な艦隊であることが解る。

しかし、誰1人臆する事無く戦っていく。その目には、確かな覚悟と闘志が宿っていた。

 

武龍がカラサワでル級eliteを撃破し、ル級eliteの右隣にいたロ級eliteに青葉が砲撃して撃破する。

北上もミサイルを4体のイ級eliteに命中させ、まとめて撃破する。

 

北上「さぁて、どんどん行っちゃうよ!」

 

大和が砲撃でヲ級flagshipを撃破すると、それに合わせて放たれた吹雪の雷撃がル級flagshipを撃破する。

更に、翔鶴と瑞鶴の放った爆撃機によりロ級eliteが6体程撃破され、そのまま次の攻撃に繋げていく。

 

瑞鶴(江ノ島艦隊所属)

「どんだけいんのよ!けど、負けられない!」

 

扶桑と山城の同時砲撃により、ル級flagship2体が撃破される。すると爆炎を利用してネ級eliteが接近しようとするが、時雨と雪風が左右から同時に砲撃して撃破する。

 

時雨(呉艦隊所属)

「必ず、勝つんだ!」

 

 

 

そして、次々と深海棲艦が撃破されていくと、奥から6体の姫級が現れた。

 

かつて武龍達と戦った者とは別個体の戦艦棲姫、防空棲姫、軽巡棲姫、駆逐棲姫。

 

ネ級をそのまま強化したような見た目の『重巡棲姫』。

 

服を纏っていないが、明らかに他とは違う艦載機を発艦させている『装甲空母姫』。

 

重巡棲姫「バカメ···役立タズ共メ···マタ、沈ンデシマエ!」

 

装甲空母姫「ウフフ···シズメ···シズメェ!」

 

6体の姫級を見た武龍達は戦慄し、息を呑む。

 

赤城(江ノ島艦隊所属)

「姫級が···1艦隊分!?」

 

矢矧(呉艦隊所属)

「てことは、余程の何かがあるようね」

 

武龍「やるしかない、か···」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃レイヴンズ·ネストの拠点では、出撃ドックにて艤装を取り付けている者がいた。

 

ベス「では、頼みます」

 

ベスが艤装を装備し終えると、妖精達はかつて高速軽空母水鬼との戦闘の際に使った巨大なブースターの完成品を装備させる。

完成品であるヴァンガード·オーバーブースト(以下VOB)は幾度の試作により、遂に完成品となっていた。

 

出撃ハッチが開き、VOBのブースターが点火される。そしてかつての試作品の倍以上のスピードで、ベスは空へ飛び立っていく。

 

ベス(今回は私も参戦しないといけないようですし···)

 

 

 

 

 

武龍達は大量のイロハ級と姫級に苦戦しつつ、進み続ける。

そしてなんとか光の柱の発生場所の近くまでまで辿り着いた武龍達。

空へ飛び上がった武龍が見たものは···

 

武龍「なんだよ···あれ···!?」

 

海に開いた大穴から伸びる、光の柱だった──

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回はアニメ劇場版の作戦に介入することとなりました。
武龍達の行動により、様々な変化が現れました。
え、武龍達と関わりの無い場所で変化がある?そりゃそうですよ。運命なんて、"最初から"変わってましたしね···

●謎の海域
新たに発見された海域では海が血に染まり、艦娘の艤装が急速な経年劣化を起こしてしまう。
また、その深部では海上でありながら彼岸花が咲き乱れ、中心には紫色の光の柱が伸びている。

●艦娘の深海化
艦娘から深海化してしまう場合は2通りある。

1つは極度に負の感情を抱えてしまい、それに加えて極度の憎悪をもってしまったが故に深海化する場合。

もう1つは江ノ島艦隊の如月のように、艦娘がドロップする前に「皆の所に戻りたい」という思いが強すぎて深海化する場合。
これは艦娘としての思いか深海棲艦としての思い、どちらの方面で強く出ているかで危険性が変わる。

艦娘としての思いが強ければ危険性は低く、深海棲艦としての思いが強ければ危険性は高くなってしまう。

●ヴァンガード·オーバーブースト
かつて高速軽空母水鬼との戦闘の際、ベスが使用した巨大なブースターの完成品。

本来はAFや艦娘などを運ぶものではないため、本来よりスピードは落ちるものの、それでも圧倒的なスピードにより、長距離を超高速で移動することが可能。


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第17話 光 (新実装及び置き換え)

海に開いた大穴、そこから発せられる光の柱。

運命が絡み合い、集結したこの海域。

海は、何色に染まるのか──


海に開いた大穴を報告した武龍は1度着水し、吹雪に砲口を向けていたイ級eliteにカラサワを撃ち込む。

すると、武龍の背後にいた駆逐ロ級eliteにストークBがオートキャノンを連射して怯ませ、そこにレーザーキャノンを撃ち込んで撃破する。

 

吹雪「あの、ミグラントさん···」

 

武龍「なんだ?」

 

吹雪「私を、その穴まで連れていってください!」

 

武龍「急になんだ!?」

 

2人に近づいた重巡リ級eliteに大和が砲撃し、撃破する。

 

大和(江ノ島艦隊所属)

「吹雪、どういうこと?」

 

吹雪「あそこに···行かなきゃいけないんです!何でかは解らないですけど、それでも行かなきゃいけないんです!」

 

吹雪の訴えに武龍は頷く。

 

武龍「···解った。こちらミグラント、駆逐艦吹雪を護衛し、海域の中枢まで進攻する!」

 

睦月「私も行くよ!」

 

大和「ええ、行くわ!」

 

 

 

推奨BGM『次発装填、再突入』

 

 

 

武龍は吹雪達と共に単縦陣の陣形をとり、最前に出てカラサワとグレネードライフルを連射し、深海棲艦が攻撃する前に撃破していく。

そして、そこにラングレーの爆撃による援護が入る。

 

ラングレー「今のうちに行け!」

 

ラングレーと夕立が他の深海棲艦の前に立ち塞がる。

 

夕立「ラングレーは深海化、しないっぽい?」

 

ラングレー「今回は、"艦娘"として戦わなきゃいけない気がしてな!それに、深海化しないのはYouもだろ?」

 

夕立「もちろん!さぁ、素敵なパーティーしましょ!」

 

 

 

呉の艦隊は戦艦棲姫と交戦していたが、深海棲艦の数が多く苦戦していた。

 

山城の砲撃が戦艦棲姫の艤装の右肩に命中し、戦艦棲姫の艤装は怯む。しかし左側面から駆逐イ級eliteが砲撃し、山城の左側の主砲が破損してしまう。

時雨が駆逐イ級eliteを撃破して駆け寄るが、山城は時雨の肩に手を置く。

 

山城(呉艦隊所属)

「時雨、あなたもミグラントの行った場所へ行きなさい」

 

時雨(呉艦隊所属)

「え?」

 

山城(呉艦隊所属)

「なんとなくだけれど、あなたも行かなきゃいけない気がするの。だから行きなさい!」

 

時雨は力強く頷き、武龍達が向かった光の柱へと向かう。山城は自身の最後の艦載機『瑞雲』を時雨の援護に飛ばす。

 

山城(呉艦隊所属)

「頼んだわよ···!」

 

 

 

 

 

VOBで空を飛んでいるベスは海上を進む何者かを発見する。

 

ベス「なるほど···そういうことですか」

 

ベスは高度を下げ、海上を進んでいく。

 

 

 

 

 

光の柱の近くへと辿り着いたが、そこは大量の深海棲艦に守られており、全てflagshipだった。

しかし武龍はOBを使って深海棲艦達に接近し、重巡リ級flagshipの腹部に至近距離からグレネードライフルを撃ち込む。

 

更に右にいた重巡ネ級flagshipにカラサワを撃ち込み、飛び上がってデュアルミサイルと連動ミサイルを戦艦タ級flagshipに撃ち込んで撃破する。

しかし、武龍達を援護していたストークBが別の戦艦タ級flagshipの砲撃により墜落してしまう。

 

そして、ストークBの墜落に合わせて放たれた駆逐ハ級flagshipの雷撃でストークBはトドメを刺されてしまう。

 

蛟《ストークB、撃破されました!》

 

武龍「クソッ!」

 

更に、吹雪の左斜め後方から2体の駆逐イ級flagshipによる魚雷が放たれ、大和が吹雪を庇って大破してしまう。

 

吹雪(江ノ島艦隊所属)

「大和さんっ!」

 

大和(江ノ島艦隊所属)

「行きなさい!」

 

大和は最後の力を振り絞り、戦艦タ級flagshipに砲撃する。

大和の砲撃をもろに受けた戦艦タ級flagshipは、上半身を吹き飛ばされて沈んでいく。

しかし大和は倒れ込んでしまう。

 

吹雪は大穴に向かって全速力で向かうが、重巡リ級flagshipに阻まれる。しかし睦月と時雨が砲撃し、重巡リ級は大破する。

 

時雨(呉艦隊所属)

「行って!」

 

吹雪(江ノ島艦隊所属)

「ありがとうございます!」

 

吹雪は全速力で大穴に飛び込み、それを見た大和は微笑んでそのまま意識を失う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベスはVOBをパージし、着水する。その際、途中で拾った艦娘にできるだけ衝撃が入らないようにしていた。

 

ベス「私の事は他言無用でお願いします。お互いのために」

 

艦娘「はい、ありがとうございます!」

 

ベス「では行きなさい。この距離なら間に合います」

 

 

 

 

 

夕立は軽巡棲姫と交戦しており、側転しつつ砲撃したりするなどのアクロバティックな攻撃により、軽巡棲姫を押していた。

 

軽巡棲姫「ソノ動キ、ナンナノヨ!」

 

夕立「あら、その程度っぽい?」

 

夕立は背後にいた駆逐イ級eliteの目に左手を突っ込み、そのまま掴むと自身の盾にする。

夕立は砲撃により撃破された駆逐イ級eliteの爆煙の中から、1本だけ魚雷を発射する。

 

それにより軽巡棲姫の右足は破壊され、軽巡棲姫は左へ倒れ込む。そこに夕立が飛びつき、至近距離から顔面に砲撃を撃ち込む。

 

夕立「いい夢見るっぽい!」

 

 

 

武龍は損傷を受けながらも戦闘を続け、次々と深海棲艦を撃破していった。

しかし左腕の装甲はグレネードライフルごと既に破壊され、デュアルミサイルも右側が破壊されている。

 

武龍(カラサワの弾も少ないか···だが、なんとかするしかねぇか!)

 

武龍はカラサワの引き金を引く。

 

 

 

 

 

睦月と時雨は深海棲艦の猛攻をなんとか防いでいたが、艤装の経年劣化により、艤装にヒビが入ってきてしまう。

 

睦月(江ノ島艦隊所属)

「艤装がっ!」

 

一瞬の隙を突いて重巡棲姫が睦月の顔面を掴み、海上に叩きつける。そして、主砲を睦月の顔面に向ける。

 

睦月(江ノ島艦隊所属)

「ヒッ!」

 

重巡棲姫はほくそ笑み、砲弾を発射しようとしたその瞬間···

重巡棲姫の左脇腹に砲弾が撃ち込まれ、怯んだところに続けて左肩に砲弾が撃ち込まれる。

 

睦月(江ノ島艦隊所属)

「えっ···?」

 

よろけながらも立ち上がった重巡棲姫の前に立ち塞がったのは···

 

睦月(江ノ島艦隊所属)

「如月、ちゃん···?」

 

如月(江ノ島艦隊所属)

「えぇ···」

 

2人は互いに見つめ合い、立ち尽くす。如月の姿を見た時雨は驚愕の表情を浮かべるが、手は出さずにいた。

 

睦月(江ノ島艦隊所属)

「如月ちゃん···私、如月ちゃんが深海棲艦になっちゃうかもって、そしたら戦わなきゃいけなくなるんじゃないかって、不安だったけど···でも、大丈夫だから!」

 

睦月は涙を流しながらも笑顔を見せる。

 

睦月(江ノ島艦隊所属)

「行こう!」

 

如月(江ノ島艦隊所属)

「···ええ!」

 

2人は並んで深海棲艦達に砲口を向ける。時雨も2人に並んで砲口を深海棲艦達に向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大穴に飛び込んだ吹雪は、紅い海の中を逆さにゆっくりと沈んでいた。

 

吹雪(ここは?私は···沈んだの?)

 

???(ナンドモ···ナンドモナンドモ繰リ返シ、ドレダケ経ッテモ、ドレダケ想イヲ繋イデモ、終ワルコトノ無イ···戦い···)

 

何者かによる呼び掛けがあるも、それでも吹雪は沈んでいく。

 

吹雪(誰の、声···?)

 

???(コノ世界ノ海デ、多クノ艦ガ沈ンダ···特型駆逐艦1番艦、吹雪···アナタモ)

 

紅い海の中、ボロボロになって沈んだ艦達が幾つも浮かんでいる。

 

???(己ノ性能ヲ、期待サレタ戦果ヲ残ス事無ク沈ンダ···)

 

吹雪(私は···沈んだの?)

 

???(ソウ、ソシテズットココデ沈ムハズダッタ···ケド、アナタノ想イガアナタヲ助ケタ···ソシテ、ソレガ私ヲシズメタ)

 

沈んでいく先は赤く、より暗い所になっていく。

 

???(ソシテ、ワタシトアナタガ生マレタ)

 

吹雪はふと気づくと、鎮守府の廊下に立っていた。そして目の前に見たことの無い、だが"知っている"深海棲艦が立っていた。

 

全身が白く、背丈や顔は吹雪と同じである。

しかし赤黒い角、大きく広がって波打つスカート、黒い首輪、赤い模様の入った馬の脚のような脚先···そして大きく黒く、赤い線の光が脈打つ水掻きのある爪となっている左腕。

 

???(アナタハコノ終ワルコトノ無イ戦イノ海ノ中デ、特別ニナッタ···悲シイ記憶ヲ無クシ、私ヲ置イテ···)

 

吹雪(あなたは···)

 

目の前の深海棲艦を呼ぶなら、『深海吹雪棲姫』と呼ばれるだろう。

 

深海吹雪棲姫

(アナタハ、自由ニナッタ···ニクラシヤ!)

 

吹雪は、気づけば海の上を歩いていた。海上には自身が、水面下には深海吹雪棲姫が。

 

深海吹雪棲姫

(繰リ返サレル戦イト、悲シミノ軛カラ解キ放たれ···自由二戦場ヲ駆ケ、艦娘達ノ運命スラ変エテ···デモ、ソレハアッテナラナイコト!)

 

気づけば、吹雪は紅い海の底に立っていた。

 

 

 

 

 

その頃、武龍は弾切れとなったデュアルミサイルと連動ミサイルをパージし、カラサワを戦艦タ級flagshipに撃ち込んだ。

 

武龍「残弾、3発か···キツいな···」

 

時雨と睦月、如月の同時砲撃が重巡棲姫に撃ち込まれ、重巡棲姫は轟沈していく。

しかしその3人の右側面から駆逐イ級flagshipが3体現れ、睦月達に主砲を向ける。

 

武龍「危ないっ!」

 

武龍は思わず両手を広げ、イ級flagship達の前に立ち塞がる。そして駆逐イ級flagship達の同時砲撃を正面からモロに受けてしまう。

 

時雨「ミグラントさんっ!」

 

武龍「ガハァッ···」

 

武龍の前面装甲の大半は失われ、頭部装甲は完全に失われてしまっている。しかし脚部装甲はまだ動ける状態であり、武龍は膝を着く。

 

武龍「まだ、やれ···る···!」

 

武龍は立ち上がり、拳を構える。

 

 

 

 

 

一方吹雪の方は──

 

深海吹雪棲姫

(私ハ、水面ニアル全テヲ憎ム···ソレニ、アナタモ帰ッテキタカッタンデショウ?)

 

吹雪の背後で、深海吹雪棲姫は微笑む。

 

深海吹雪棲姫

(オ帰エリ···)

 

吹雪の足下から黒い手が何本も現れ、吹雪の体のあちこちを掴む。

 

吹雪「ぐうっ!」

 

深海吹雪棲姫

「オ前モ、消エテシマエ!ソノタメニオ前ハ帰ッテキタンダロ!?怒リモ想イモ、何モナイコノ水底デ···ナンドデモ消エテイケ!」

 

黒い手は吹雪を下へ下へと引きずり込んでいく。

 

吹雪「嫌、だぁ!こんなの···!」

 

吹雪の体は下へと引かれていく度に侵食され、深海化が進行していく。そして、次第に力が抜けていく。

更に、艦娘達の悲しみや無念などが聞こえてくる。

 

艦娘「助けたかった···」

艦娘「守りたかった···」

艦娘「忘れないで···」

艦娘「さようなら···」

艦娘「帰りたかった···」

 

 

 

 

 

しかし、耳元でほんの微かに···そよ風のような小さな声で···

 

?「大丈夫、君ならやれる」

 

深海吹雪棲姫でも、艦娘でも、他の深海棲姫でもない何者かの声がした気がした。

 

 

 

 

 

その途端、吹雪の脳裏にこれまでの事がフラッシュバックする。

 

吹雪(そうか···私は、希望なんだ!皆の想いが作り出した、希望なんだ!)

 

すると、吹雪を掴んでいた黒い手が次々と折られていく。それと共に周囲に光が溢れ出し、彼岸花が咲き乱れる。

そして吹雪は深海吹雪棲姫に向かって歩いていく。

 

"吹雪"「大丈夫だよ···繰り返さなくても、ここに留まらなくても、消えなくても、良いんだよ」

 

深海吹雪棲姫

「ク、来ルナ···来ナイデ!」

 

"吹雪"「前に出て、歩き出して良いんだよ」

 

深海吹雪棲姫

「嫌ダ···ソンナコトシタラ!」

 

"吹雪"「大丈夫だよ、皆がいるから」

 

深海吹雪棲姫は後退るが、吹雪は深海吹雪棲姫を抱き締める。

 

"吹雪"「悲しみや無念の数だけ、希望はある。きっと覚えていてくれる。私だって、あなたのこと忘れない!」

 

吹雪の涙が、深海吹雪棲姫の肩と海の底に落ちる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、強い光が溢れ出し、その光は海上···武龍達の戦っている場所まで光で包んでいく。

 

武龍「なんだっ!?」

 

重巡リ級flagshipにヘッドロックを決めている武龍や着剣したショットガンで戦っていたラングレー、遠方にいるベスすら···その光は包み込んでいく。

 

そして、光に照らされた深海棲艦は光の粒となって消えていく。それを見た睦月はすぐに如月の方を見る。

 

睦月(江ノ島艦隊所属)

「如月ちゃん!」

 

如月の体からも光の粒が現れており、角が折れ、如月は倒れる。

睦月は如月に駆け寄り、抱き止める。

 

睦月(江ノ島艦隊所属)

「如月ちゃん···そんな、なんで···!」

 

如月(江ノ島艦隊所属)

「ごめん、ね···私、睦月とずっと一緒にいたかったけど···」

 

睦月(江ノ島艦隊所属)

「そんなの、解ってるよ···!」

 

如月(江ノ島艦隊所属)

「傷つけたく、なかった···」

 

睦月(江ノ島艦隊所属)

「大丈夫!入渠すればきっと!」

 

如月が睦月の頬に手を添える。

 

如月(江ノ島艦隊所属)

「私、睦月と一緒にいた時間、日だまり、声···忘れない、から···」

 

睦月(江ノ島艦隊所属)

「私も!私も、忘れない!また如月ちゃんの事、見つけるから!」

 

如月(江ノ島艦隊所属)

「その時、は···お話の続き、聞かせて···ね···」

 

如月も光の粒となって消えてしまい、睦月は光の粒が消えていった空を見上げていた···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM『帰還』

 

 

 

吹雪は、光の中で声を聞いた。その声は吹雪の耳元で微かに囁いた声と同じだった。

 

?「君は"艦娘の希望"なんだ、皆の事を忘れずにいれば、きっと終わらせられるよ」

 

その声が誰だったのかは判らない。だがとても優しく、力強かった。

そして気づけば、鎮守府の前に立っていた。鎮守府の皆に迎えられ、吹雪は帰還する。

 

吹雪「皆、ただいま!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

声を聞いた。優しく力強い、そんな声である。

 

?「君には戻らなきゃいけない場所がある。それに、君はまだ消えるべきじゃない」

 

光の粒となって消えたはずの如月は、鎮守府の前の海上に立っており、如月に気づいた睦月が泣きながら駆け寄ってくる。

 

睦月(江ノ島艦隊所属)

「如月ちゃん!」

 

如月(江ノ島艦隊所属)

「睦月!」

 

吹雪も如月も···皆が帰還する。誰1人欠ける事無く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光の中···意識が薄れていき、もう思い残すことはないと思っていた。しかしなぜか、僅かに意識は残っていた。

そんな時に、声が聞こえてきた。

 

?「もう1度、海を駆けたいんだよね?」

 

海が、再び赤くなる。しかし海は美しく透き通っており、暖かい光が海上から差し込んでいた。

 

?「大丈夫、行って良いんだよ」

 

その言葉と共に、誰かが背中を押す。

すると···深海吹雪棲姫はレイヴンズ·ネストの拠点の前に立っていた。更に、人の形から大きく外れていた左腕は人の形となっていた。

 

深海吹雪棲姫「手が···それに、ここは···?」

 

海は蒼く、美しく透き通っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

艦娘と深海棲艦達の間では、かねてよりとある小さな噂があった。

艦娘も深海棲艦も、人類も···見守り続けている者がいると。

目的は判らず、ただただ見守っている。

しかし時に、微かな助言をするという。




読んでくださり、ありがとうございます!

アニメ劇場版のお話はこれで終わりです。
さて、見守っているのは誰でしょう?

●深海吹雪棲姫
吹雪と瓜二つの姫級深海棲艦。
主な攻撃手段は持たず、深海にて相手を引きずり込む事で真価を発揮する。
また、周囲に経年劣化を発生させる海域を作り出すことも可能。

●吹雪と深海吹雪棲姫
江ノ島艦隊所属の吹雪は特殊個体であり、元々1つの存在だったが、艦娘の希望としての吹雪、艦娘の無念や悲しみとしての深海吹雪棲姫として分裂し、今の状態となっていた。

今回の作戦で、江ノ島艦隊所属の吹雪は、"吹雪"という1つの存在として定着している。
(深海吹雪棲姫はかねてよりその存在として定着していた)


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第18話 ラバウル鎮守府防衛作戦(ver2.0及び置き換え)


特殊海域の任務が終わり、新たな仲間が入ったレイヴンズ·ネスト。
しかしラバウル鎮守府から緊急の依頼が──


特殊海域での任務を終えた翌日──

 

レイヴンズ·ネストの拠点の前に1人の深海棲艦がいた。すぐさま島風と大潮、五十鈴が向かうが、その深海棲艦に敵意は無いようだった。

一旦事情を聞くと、彼女は深海吹雪棲姫だった。

 

深海吹雪棲姫

「···というわけで、気づいたらここに」

 

危険性は無いと判断された深海吹雪棲姫は、談話室でラングレーと夕立と話していた。

 

ラングレー「にしてもお前がここに来るとはな」

 

深海吹雪棲姫

「わ、私だって消えたと思ったのに···」

 

ラングレー「口調が吹雪に近くなってんな」

 

夕立「なんだか新鮮っぽい~。ていうか、艦娘にはなれないっぽい?」

 

深海吹雪棲姫は手を閉じたり開いたりしつつ答える。

 

深海吹雪棲姫

「うん、あくまでも邂逅したわけじゃないからだと思う」

 

ラングレー「なるほどな。んで、ここからどうすんだ?」

 

深海吹雪棲姫

「あの後、ここに来たのには意味があると思う。だから、許してくれるなら、私はここにいたいです···部屋の前で、誰か聞いてるんですよね?」

 

すると部屋のドアが開き、草薙が入ってくる。

 

草薙「バレてましたか···しかし大丈夫です、あなたを歓迎します」

 

深海吹雪棲姫

「そんなあっさり!?」

 

すると草薙の後ろからピスが顔を出す。

 

ピス「ここは人も艦娘も深海棲艦も関係無い、そんな組織ですし」

 

夕立「じゃあ歓迎会やるっぽい!」

 

 

 

その日の夕方、レイヴンズ·ネストに緊急の依頼が入る。

 

瑞希「はい、こちらレイヴンズ·ネストです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

依頼主:ラバウル提督

 

目標:ラバウル鎮守府の防衛

 

作戦開始時刻:──

 

報酬:10000000円

 

緊急の依頼です!現在こちらラバウル鎮守府が多数の深海棲艦によって襲撃されています!このままでは持ちこたえられません!助けてください!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現時刻は18:20、6つのカタパルトに武龍、北上、青葉、霧島、ラングレー、曙の6人が配置され、背部にVOBが接続される。

 

今回、機甲兵装が初期のものしかなかったため、武龍は初期の機体であるCR-69/N装備して出撃することになった。

武装は右手にライフル、左手にレーザーブレード、右背部に垂直ミサイル、左背部に増設レーダーを装備している。

 

瑞希《これよりVOBでラバウル鎮守府まで特攻、ラバウル鎮守府上空にて切り離し、その場で戦闘を開始します···目を回さないでくださいね?》

 

そして6人はカタパルトから射出され、時速2000km越えのスピードでラバウル鎮守府へ向かう。

 

武龍「ぐぎぎ···」

 

瑞希《喋らないでください!舌を噛みますよ!》

 

そしてラバウル鎮守府が見えてくる──

 

瑞希《そろそろ切り離しです。衝撃に備えてください!》

 

 

 

そしてそれぞれのVOBが切り離され、作戦を開始する。武龍はそのまま空中から垂直ミサイルで攻撃し、霧島と青葉は前線に向かい、ラングレーは烈風を発艦させ、曙と北上は大破した艦娘の離脱を援護する。

 

瑞希《ラバウル鎮守府の皆さん、お待たせしました。更に現在輸送機で追加の艦娘を3人向かわせています!》

 

ラバウル提督

《ありがとうございます!皆、これより押し返すぞ!》

 

ラバウル所属の艦娘達が湧き上がり、前線を押し戻していく。そして、ラバウル鎮守府と交流のあるという熊本鎮守府の艦隊も合流する。

 

熊本提督《こちら、熊本鎮守府提督だ。待たせたな、これより作戦に参加する!》

 

まだ戦えるラバウル所属の2艦隊も含め、合計4艦隊が防衛線を築き、次々と深海棲艦を撃破していく···

 

瑞希《敵姫級を確認、戦艦棲姫です!》

 

霧島《武龍君、ここは私達に任せてください!》

 

武龍「了解!」

 

武龍は別方向の深海棲艦を相手にし、イ級にレーザーブレードで斬りかかる。

霧島は戦艦棲姫に砲撃し、戦艦棲姫が反撃を行おうとすると曙が後ろから砲撃する。

 

戦艦棲姫の艤装

「グオオオオオオッ!」

 

曙に殴りかかろうとする艤装の腕を霧島が砲撃し、艤装の振り上げた右腕が吹き飛ぶ。曙は怯んだその隙に姫本体の元へと潜り込み、至近距離から砲撃する。

 

そして曙が離れた隙に再び霧島が砲撃、砲撃は姫本体に直撃し本体は艤装にもたれ掛かるようにして倒れる。その瞬間に北上が艤装の口内に砲撃、艤装は内部から破壊され、崩れ落ちるように倒れる。

 

戦艦棲姫「オノレ···オノレ···」

 

霧島のトドメの砲撃により、戦艦棲姫は沈んでいく···

 

瑞希《敵反応、消失。これで終わっ···てないようですね。敵増援を確認···この反応、大きいです!総員、後退してください!水中に何かいます!》

 

 

 

 

 

 

 

 

最前線にいた武龍の横方向から巨大な"ナニカ"が飛び上がり、真上を向いた武龍と白い女性の目が合い、女性は獰猛な笑みを浮かべる。そして巨大なナニカは水中に潜り、武龍達の前に浮上する。

 

 

 

 

熊本提督《あれは···》

 

 

 

 

それは1つの"島そのもの"であり、黒い鮫のような頭部と尾ヒレ、歪な爪の生えた胸ビレがあり、山に見えたそれは木や苔の生えた艦橋であり、巨大な3連装砲と大量の機銃が各所に配置されており、山の中腹辺りに下半身と両腕が埋め込まれた白い女性がいた···

 

 

 

 

熊本提督《『孤島棲姫』···》

 

 

 

 

孤島棲姫「ウフフフフッ···サァ、私ヲ楽シマセテチョウダ~イ!」

 

艤装「ゴォアアアアアアアアアッ!」

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

オリジナルの深海棲艦を出してみましたがどうでしょう?

●孤島棲姫
白い長髪で本体の身長は160cm、肉体年齢は16歳。

1つの島そのものが艤装となっている姫級。島の大きさは小さいものの、潜水する事が可能であり、その巨体を活かした攻撃を行う。
武装は『51cm3連装砲』×4、『25mm3連装機銃』×8、『深海猫艦戦』『深海猫艦爆』、『深海猫艦攻』、『8cm高角砲』×8を装備している。


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第18.5話 孤島棲姫(ver2.0及び置き換え)

敵戦力を撃破した武龍達の目の前に現れたのは、島そのものが艤装になっている孤島棲姫だった。

第2章最終回です。


推奨BGM『艦隊決戦』

 

 

武龍「行くぞ!奴を倒して、ラバウル鎮守府を守るぞ!」

 

そう言う武龍の足は微かに震えていた。それを見た青葉と北上はそれぞれ両隣に立ち並ぶ。

 

青葉「武龍···砲撃も雷撃も、青葉にお任せ!」

 

北上「ねぇ武龍、どこ撃てば良い?どこでも当てちゃうよ?」

 

ラングレーは武龍の後ろに立ち、武龍の肩に手を置く。

 

ラングレー「どこに爆撃してほしい?任せとけ!」

 

すると、ストークCに運ばれてきた時雨、夕立、大潮が投下される。

 

時雨「僕達も来たよ···ってこんなに大きいの始めて見たよ···」

 

夕立「誰が相手でも関係ないっぽい!」

 

大潮「私達ならきっとやれます!」

 

孤島棲姫の艤装が唸り声をあげ、孤島棲姫は嘲るように笑みを浮かべる。

 

孤島棲姫「何人来ヨウト同ジヨ···」

 

すると、ピスから通信が入る。

 

ピス《武龍、皆さん···成し遂げてみなさい。"ジャイアントキリング"を···あなた方の力を!》

 

 

 

 

 

すぐさまそれぞれが行動を起こし、攻撃を開始する。しかし孤島棲姫の艤装は島そのもの。

その圧倒的な耐久により霧島やラバウル鎮守府の金剛の砲撃も歯が立たない。それは空母を主体とする熊本艦隊も同じであった···

 

霧島「ヒレの部分にも効かないなんて···」

 

赤城(熊本艦隊所属)「艦橋に直撃してるはずなのに···」

 

孤島棲姫「ソノ程度?」

 

孤島棲姫は前進したかと思うと、進みながら横回転し、尾ヒレで薙ぎ払い、それに当たった艦娘達は一撃で大破した。

武龍は飛び上がったためその一撃を免れたが、機銃と高角砲の攻撃を避けるので精一杯で、海上に着水する。

 

大破した艦娘の中には意識を失った艦娘もいる。そのため時雨と夕立が青葉と北上の援護を受けながら大破した艦娘達を運ぶ。

しかしそれを見た孤島棲姫はニヤリと笑い、水中へと潜る。

 

瑞希《まさか!?皆さん、急いで離れてください!》

 

時雨と夕立が大破した艦娘を連れて離れようとしたが、真下から突き上げた孤島棲姫の攻撃を食らってしまう。再び潜った孤島棲姫が海上に現れると、艤装の鮫のような頭部が何かを咀嚼していおり、孤島棲姫が嘲るような笑いをしている。

 

ハッとした時雨は消えた大破した艦娘を探すが、ふと孤島棲姫の方を向く。

 

熊本提督《まさか···》

 

それを見た孤島棲姫の艤装は口を開く。そしてその口の中には大破した艦娘の頭部があり···それを一気に噛み砕いた。

熊本提督がその艦娘の名を叫ぶ。

 

 

 

 

 

武龍は怒りに任せてライフルを連射するが、その時ふとジュリアスの言葉が頭をよぎる。

 

ジュリアス(いいか、怒りで己を失うな。冷静に、相手を見て考えろ。弱点はどこか?動きの癖は何か?それを見抜ければ後はそこを突くだけだ···)

 

武龍は深呼吸を繰り返し、怒りがゆっくりと収まって行く···すると今度はティスの言葉が頭をよぎる。

 

ティス(私達AFは皆何かしら致命的な欠陥があるんだ。だからそこを突けばやられる···)

 

武龍「てことは···」

 

ピスはその声と状況を見ながら微笑む。

 

ピス(気付きましたね···さぁ、後は行動に移すだけですよ?)

 

武龍は機銃と高角砲を掻い潜り、ライフルを気になる部位に当てていく。

 

武龍(やっぱり艦橋とかの"島"の部分は硬いな···)

 

しかし、機銃に向けて放ったライフルの弾丸は機銃に損傷を与え、続けて連射すると、機銃を破壊することに成功する。

 

武龍「そうか···皆、こいつの砲台にはダメージが通る!砲台を狙え!」

 

孤島棲姫「チッ、ヤラセナイ!」

 

しかし金剛の砲撃が51cm砲に全弾命中し、その砲台が爆発する。

 

艤装「グギャアアッ!」

 

続いて、赤城とラングレーの爆撃が複数の機銃と飛行甲板を破壊する。しかし砲台を破壊しても艤装の動きは鈍らない。

 

北上「ん~、ここかな?」

 

北上の砲撃が孤島棲姫の女性の部分の腹部に直撃する。すると艤装ごと怯む。

 

 

 

孤島棲姫「ア"ア"ア"ッ!ヤルジャナイ···デモ···」

 

孤島棲姫の北上に狙撃された腹部は再生し、元に戻ってしまった。

 

時雨「さ、再生だって···!?」

 

武龍「再生するなら···再生する暇を与えなければ良い!」

 

武龍はライフルを孤島棲姫の本体に連射する。しかし再び水中に潜り、武龍目掛けて突き上げてきた。武龍はとっさに回避したが、増設レーダーを破壊されてしまう。

 

すると孤島棲姫は直接武龍に食らいつこうと武龍を追いかける。

孤島棲姫のスピードはかなり速く、武龍は追いつかれてしまう。

しかし、武龍に食らいつこうとした艤装の頭部に霧島と金剛の砲撃が直撃し、北上の砲撃が口内に撃ち込まれる。

 

武龍は振り向いて艤装の頭部に垂直ミサイルを発射する。

 

武龍「うおおおおおおおっ!」

 

放たれた垂直ミサイルは艤装の頭部に全弾命中し、弾切れとなった。しかし孤島棲姫の艤装は今まで蓄積してきたダメージにより、動きが鈍っている。

 

武龍はブースターを使って上陸し、目の前の機銃砲台をレーザーブレードで破壊し、再び飛び上がる。

そして本体の所まで辿り着くと、至近距離からライフルの最後の1発を心臓に撃ち込む。

 

続けて武龍はレーザーブレードで右下から左上まで袈裟に斬り上げる。

そして弾切れしたライフルを捨て、拳を顔面に撃ち抜くように叩きつける。

 

すると、意識を失った孤島棲姫の本体は艤装からズルリと落ち、艤装は沈んでいく···

武龍は着水して孤島棲姫に歩み寄る。

しかしそこに魚雷が撃ち込まれ、武龍は脚部装甲を破壊される。

 

水中には、『潜水棲姫』がいつの間にかおり、孤島棲姫の本体を掴むとそのまま逃げていった···

 

熊本提督《クソッ!》

 

瑞希《逃げられましたか···しかし今は負傷者の手当てが優先です》

 

ラバウル提督《こちらの鎮守府に来てください!鳥海、高速修復材の準備を!》

 

青葉「重症の方は私の携行修復材を使ってください!」

 

武龍は潜水棲姫と孤島棲姫の逃げていった方向を見つめる。

そこには、月の光に照らされた水平線が輝いていた──

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

これにて第2章は終わりです(番外編などは残ってますが)。

●各都道府県の鎮守府
深海棲艦との戦争が始まった頃は、かつての鎮守府や軍事基地を再利用していた。
しかし戦争の激化に伴い、海に面した都道府県全てに最低1ヶ所ずつ鎮守府が設置されることとなった。

●孤島棲姫の防御力と欠点
まず、大量の機銃と高角砲により対空防御はかなり高く、艤装は島そのものなのでそれだけで耐久は高く、更に装甲化しているためその耐久に拍車がかかっている。

しかし、砲台と本体は装甲で覆われていないため、通常の攻撃でダメージを与えることが可能である。

1番の弱点は本体であり、両腕と下半身が固定されているため、当てる技術のある者であれば攻撃は容易い。しかし艤装から常時修復材が供給されているため、再生する暇を与えない攻撃が必要である。


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番外編 お祭り(新実装)

番外編です。

ある日、レイヴンズ·ネストの拠点の近くの町でお祭りが行われる事となり、レイヴンズ·ネストのメンバーの多くは祭りへ行くこととにした。

※時系列は第16話の少し前です。


レイヴンズ·ネストの拠点の近くの町で、祭りが行われる事となった。

 

武龍「祭りかぁ···俺、行ったこと無いな」

 

アン「祭り···」

 

大潮「皆で行きましょう!」

 

大潮が拳を突き上げて提案するが、武龍は躊躇する。

 

武龍「興味はあるが、今の状況で行っても大丈夫なのか?」

 

すると、そこにジュリアスと草薙がやって来る。

 

ジュリアス「行ってくれば良いさ。息抜きも必要だし、拠点の守りは私に任せておけ」

 

草薙「それに、今時祭りなんて珍しいんですから、今のうちに楽しんできてください!」

 

武龍「えっと、草薙はどうするの?」

 

草薙「私は新たな機甲兵装やそのパーツ、武器の開発をしてたいので」

 

草薙はそう言うと工廠へ向けて去っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

祭り当日の夜、武龍達は浴衣を着て祭りが開催されている大通りへと向かう。

離れていても判る明るさと賑やかさに、武龍達は胸を膨らませる。

 

武龍達は大勢で固まって動くと迷惑になると思い、人数を分けて別々の場所から会場に入ることにした。

くじ引きの結果、武龍、アン、ティス、青葉の4人は正面から行く事になった。

 

武龍、アン、ティスの3人は人生初めてのお祭りに目を輝かせ、青葉はそんな3人の写真を撮っていた。

 

武龍「チョコバナナ、うめぇ···うめぇよ···!」

 

アン「綿飴···これが、綿飴···!」

 

ティス「りんご飴···めちゃめちゃうめぇ!」

 

青葉はタコ焼を食べつつ周囲を見渡す。どこも活気付いているが、いつもより盛り上がっていた。

 

青葉(今は戦争中で、お祭りが開かれるなんて久しぶりですから、いつもより気合いを入れてるんですね)

 

青葉が微笑んでいると、武龍が興味を引かれるものがあったようで武龍はトルコアイスの屋台に直行していた。

 

武龍「なんだあのアイス!?の、伸びてる!」

 

青葉は武龍達を追いかけていく。

 

青葉「あー!もう、待ってくださ~い!」

 

 

 

 

 

ラングレー、北上、アークロイヤル、五十鈴の4人は武龍達とは反対の方向から入場していた。

日本のお祭りは初めてであるラングレーとアークロイヤルは、武龍達と同様に目を輝かせていた。

 

4人は射的の屋台に並び、コルクの弾を装填した射的用の銃を構えている。

4人とも欲しいものがあったが、ラングレーとアークロイヤルの気迫に店主は気圧されている。

 

ラングレーとアークロイヤルは実銃を使うように構え、引き金を引く。

放たれたコルクの弾は、それぞれの狙った景品に飛んでいく。

 

ラングレーが狙ったのは木彫りの熊であり、コルクの弾は木彫りの熊の額に命中したが、木彫りの熊は微動だにしなかった。

 

ラングレー「No wey(ノー ウェイ)(ありえない)!」

 

アークロイヤルは羊のぬいぐるみを狙い、コルクの弾はぬいぐるみの額に命中する。しかしぬいぐるみは少し揺れただけだった。

 

アークロイヤル「What(ワッツ)!?」

 

北上「あ~、やっぱり最初はそんな風に撃っちゃうよね~」

 

北上はそう言いつつ片手で射的用の銃を持ち、腕を伸ばして至近距離からガムの箱を撃つ。すると簡単に棚からガムの箱は落ち、北上は景品を手に入れた。

 

ラングレー「そ、そんなのアリかよ···」

 

五十鈴「そうそう、こういうのは気楽にやった方が良いのよ」

 

五十鈴はラングレーとアークロイヤルに向かってウインクすると、アークロイヤルの狙ってた羊のぬいぐるみの顎下に向け、至近距離から撃つ。

するとあっさりぬいぐるみは棚から落ちた。

 

五十鈴「はい」

 

五十鈴はアークロイヤルに羊のぬいぐるみを手渡す。

 

アークロイヤル「Thank You very match(センキュー ベリー マッチ)!」

 

 

 

ラングレー達が射的の屋台から離れると、北上はラングレー達にだけ聞こえる声で伝える。

 

北上「あの射的の屋台の店主、あまり良くないね」

 

ラングレー「ん?」

 

北上「まず、普通は射的用のコルクは3~5発あるのにあそこでは1発しかなかった。次に木彫りの熊とかの"落とせない景品"を半分以上置いてた」

 

アークロイヤル「そうなのか···?」

 

五十鈴「ターゲットは子供だから、楽しませるより儲けようとする人もいるのよ···今は戦争中だから、よりそうしようとしてしまうのかもね」

 

ラングレー達は若干落ちた雰囲気を戻すため、焼きそばの屋台へと歩を進める。

 

 

 

 

 

陸奥、赤城、島風、大潮の4人は正面から見て右側から入場していた。

最初に行ったべっこう飴の屋台では、店主がリクエストに答えてその場で飴細工を作ってくれるようだ。

 

島風「おうっ!飛んでるトキをお願い!」

 

大潮「私は秋刀魚をお願いします!」

 

店主「おう、任しとけ!」

 

店主は棒を刺した飴を専用の鋏で、器用に飴細工を作っていく。切り、伸ばし、曲げ···素早くも正確な動きに陸奥達は目を引かれる。

 

店主「よし、できたぞ!」

 

完成したトキと秋刀魚は見事な出来であり、食べるのが勿体ないと思ってしまう程だった。

その後、陸奥は挑戦の意味を込めて日本列島を頼んでみた。

 

店主「よ~し、任せとけよ~!」

 

店主はより気合いを入れて作った日本列島の飴細工は、佐渡島や尖閣諸島などの細かい所まで作り込んでいた。

 

赤城「これは凄いですね···では私は、カレーをお願いします」

 

店主「飴細工で別の食いもんか、よし来た!任しとけ!」

 

赤城のリクエストにも応え、作られたカレーも見事な出来だった。 

陸奥達のリクエストに応えて作られた飴細工は、どれも透き通っていて、素晴らしい出来になっている。

 

陸奥が支払いのお金を渡そうとすると、店主はそれを断った。

 

店主「アンタら、艦娘だろ?いつも守ってくれてる艦娘への、ささやかなお礼として受け取ってくれ」

 

 

 

 

 

ラン、リプ、ラビィ、ベスの4人は正面から見て左側から入場し、金魚すくいをしていた。

金魚すくいをやる目的は1つ。"食べてみたい"からである。

 

AF組はまともな食べ物など知らないため、金魚が食べられるか気になっていたのだ。

なんなら育ててから食べるつもりでもある。

しかし金魚すくいも発体験なため、なかなか上手くいっていない。

 

ラン「ああっ!またかよ!」

 

リプ「良いところまでいったのだぁ!」

 

ラビィ「む、難しすぎですぅ~!」

 

ベス「私の···計算が···」

 

すると金魚達はラン達の前でクルクルと回り始め、中には水面に顔を出して口を高速でパクパクさせる金魚もいる。

 

ラン「こいつら、煽りやがって···」

 

リプ「ムカつくのだ!」

 

ラビィ「フ、フフフ···フフフ···」

 

ベス「···」

 

こうして、4人と金魚達との戦いの火蓋が切って落とされたのだ。

 

横から掬おうとするランに対し、金魚は体を回転させてポイの網を貫通する。ラビィのポイに関しては尾ヒレで網をはたいて迫ってきた網を破る。

 

ラン「あの手この手と!」

 

リプ「獲れたのだぁ!」

 

リプはようやく金魚を1匹捕獲することに成功した。しかし、そのポイに次々と他の金魚が飛びってくる。そして黒いデメキンが乗った瞬間にポイの網は破れてしまい、金魚達は再びリプ達を煽り始める。

 

リプ「くぉんのぉ~!」

 

煽るために飛び出てきた少し大きめな金魚を、ベスはポイの縁を金魚の腹部に当てるように当て、頭を網に乗せるようにして掬い上げ、茶碗の中に入れる。

 

店主「おっ!1匹獲ったね~!」

 

ベス「や、やりました···」

 

 

 

 

 

ピス、有澤、ソラの3人は会場から少し外れた公園のベンチで、お好み焼きを食べながら会場を眺めていた。

 

ピス「良い祭りですね」

 

有澤「そうですね」

 

ソラ「この世界に来れて、良かったですね」

 

会場の西側から、太鼓の叩く音が聞こえてくる。

 

ピス「戦時中とはいえ、このように賑やかな場所で人々の笑顔が見れるのは、本当に嬉しいです」

 

有澤「私もそう思います。あの時代では、祭りの文化は消えてしまっていましたし」

 

ソラ「あぁ~、こんな賑やかな場所始めてだから心が踊るわぁ」

 

有澤「フフッあなたらしいですね」

 

3人の目の前を2人の男の子が走っていく。すると後ろにいた男の子が転び、泣き出してしまう。

 

ピス「あらあら、大丈夫?」

 

ピスは転んだ男の子に歩み寄り、男の子の擦りむいた膝小僧の土を払い、修道着のポケットから絆創膏を取り出す。

そして絆創膏を男の子の傷口に貼ると、ピスは男の子の涙を親指で拭う。

 

ピス「ほら、もう大丈夫よ」

 

男の子「うん···ありがとう」

 

2人の男の子が去っていくと、ピスは再びベンチに座る。

 

ピス「あの子達が大人になる頃には、平和になってると良いですね···いえ、してみせなくては」

 

 

 

 

 

武龍達がお祭りで楽しんでいる中、レイヴンズ·ネストの拠点に忍び込む6人の人影があった。

全身を黒い戦闘服に身を包み、顔には暗視装置を着けており、手にはサイレンサーを装着した『56式自動歩槍1型』(AR)を装備している。

 

部隊長「こちらマンバ1、敷地内に潜入。これより建物内に侵入する!」

 

指揮官《了解、艦娘に見つかるな》

 

そして敷地内を進み、先頭の隊員が1階の窓からいざ侵入しようとしたところで、ある異変に気づく。

後ろから、何の音も聞こえないのだ。

 

隊員「隊長?」

 

通信をするも、ノイズが入ることは無いが誰も応答しない。そればかりか、自分は止まっているのに誰も反応していないのだ。

あるのはただの静けさと、風に揺れる葉音のみである。

 

しかし、隊員は唐突に気配を感じて振り向く。その瞬間、隊員の意識は消え去った。

しばらくして隊員が目を覚ますと、椅子に縛りつけられており、目の前にはジュリアスが立っていた。

 

ジュリアス「良い夜に楽しみを壊そうなどと、良い度胸をしているな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍達がお祭りから戻ると、草薙とジュリアスが出迎えてくれる。

 

武龍「ただいま~!」

 

アークロイヤル「お土産、買ってきたわよ」

 

赤城「お腹一杯です」

 

ラン「金魚2匹獲るのにめちゃめちゃ金かかった···」

 

ソラ「何?そっちはそんなに散財したの?」

 

ラン「これには深~い訳があるんだ」

 

草薙「あはは、まあ楽しめたようで良かったです」

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回はお祭りの内容を書いてみましたが、どうだったでしょうか?


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番外編 量産型と武龍達の影響(ver2.0)


番外編です。

世界に現れた武龍達レイブンズ·ネストと量産型、彼らが世界に与えた影響とは?

時間軸は第12話の少し前です。


レイヴンズ·ネスト──

 

依頼を受けて戦場に向かい、謎の技術を用いるだけでなく艦娘まで保有する正体不明の傭兵組織。

 

レイブンズ·ネストが現れてから『人間でも対抗できるのでは?』という考えが強くなり、パワードスーツの開発を進める国もあった。しかしそれらはやはり深海棲艦に対して無意味であり、やはり人間では深海棲艦に叶わなかった。

 

一部の国では、開発したパワードスーツを艦娘に装備させ、逆に動きを阻害して轟沈させてしまうという事例まであった···

 

そんな中、新たなる機甲兵装"レオ"を装備した武龍がイギリスで量産型を使ったテロを鎮圧したのだ。

それは世界に更なる波紋を呼んだ。それは人間と艦娘両方だったのだが、その場に居合わせた『サウスダコタ』は違った···

 

サウスダコタ(私達は飛べない···しかもあそこまでの汎用性も無い···あいつらは一体何者なんだ!?)

 

その後、サウスダコタはイギリス政府のエージェントと共に日本に渡り、レイブンズ·ネストの拠点へと自ら足を運んだ。そして門のインターホンを鳴らす。

 

ベス《ここはレイブンズ·ネストの拠点です。何か御用でしょうか?》

 

サウスダコタ(イギリス艦隊所属)

「イギリス所属のサウスダコタです、頼みがあって来ました」

 

ベス《サウスダコタさんですね?堅苦しいのは無しで構いませんが、機甲兵装の件であればお引き取りください》

 

ベスにはすぐに勘づかれていた。

 

サウスダコタ(イギリス艦隊所属)

「頼む!ほんの少しで良い!話を聞いてくれ!」

 

ベス《申し訳ありませんが、それはできません》

 

サウスダコタ(イギリス艦隊所属)

「どうしてだ!?あれが世界に広まれば、人類はより深海棲艦に対抗できるはずだろ!?」

 

ベス《ではあなた方はその"力"を持った後、どうするのですか?人類がまた"あの頃"と同じことを繰り返さない約束はできるのですか?》

 

サウスダコタ(イギリス艦隊所属)

「それは···」

 

ベス《そこにいるエージェントの方々も、私達の"力"を求めているのですよね?渡すわけにはいきません、お引き取りください》

 

これ以上は無理だと、仕方無くサウスダコタとエージェントは去っていった···

その後、ベスは指令室で一人言を呟く。

 

ベス「···私達は力を"与える"のではなく"貸す"事しかできません···ですが、それが人類の行いの"結果"なのです···」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、量産型の安定した数の確保に成功した国の多くは艦娘と提督の任を解いていった。

 

A国大統領「何度言ったら分かる?我々はもう艦娘には頼らん。量産型があれば十分だ」

 

A国所属提督「で、ですが···量産型に頼りすぎて滅んだ国もあったことですし···」

 

A国大統領「あそこの国は量産型の扱いを間違えたのだ!我々はそんなことは断じて無い!

だいたい···艦娘などという神の教えに反する存在がおかしいのだ!妖精?建造?そんなものは存在そのものが神への冒涜だ!出ていけ!艦娘など不要だ!」

 

A国所属提督(もう···この国はダメだ···)

 

そしてそれから1週間後、その国は孤島棲姫によって滅ぼされたのだった···

 

孤島棲姫「アラアラ···ゼンゼン楽シクナイワ···艦娘ガ1人モイナイジャナイ···」

 

 

 

 

 

量産型の単体戦力が艦娘の単体戦力に及ばない事は、ほとんどの国が知っていた···しかしそれでもなお、主力を艦娘から量産型へと以降させたのだ···

 

B国大統領「どうだ?国民の支持は」

 

秘書「はい、艦娘から量産型を主力とした途端、国民の支持が跳ね上がりました!これで次の選挙も勝てそうです!」

 

それを聞いたB国大統領は笑みを浮かべ、葉巻に火を着ける。

 

B国大統領「うむ、それなら良しとしよう」

 

主力が未だに艦娘という国はまだあるものの、その大半が軍備や予算を縮小されたり、一部の鎮守府を解体させられたりしていた···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし軍備や予算の縮小、鎮守府の解体だけならまだ良かった。

この状況下で量産型を使った戦争まで起こす国まで出始めたのだ···

 

アン「所詮は人間···結局繰り返す···目先の事すら見ずに。武龍にはそんな事はさせない、そんな奴らに手は出させない···」

 

アンは、中庭のベンチでのんびり昼寝している武龍の頬を撫でながら呟く···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日、再びサウスダコタがエージェントの制止を振り切ってまで、レイヴンズ·ネストの拠点を訪ねてきた。雨が降る中、サウスダコタは傘をさしていない。

そればかりか、門の前で土下座までしてきた···

 

サウスダコタ(イギリス艦隊所属)

「頼む!何でも良い!部品だけでも良い!国との貿易としてでも構わない!だから頼む!」

 

すると、門の開く音が聞こえる。

 

有澤「そんなところにいたら、風を引きますよ?」

 

サウスダコタが顔を上げると、黒い長髪で黒い和服を着た女性が立っており、サウスダコタに傘を差し出してきた。

 

有澤「ここにいては冷えます。中へどうぞ」

 

サウスダコタは有澤に連れられて拠点へと招かれ、タオルとコーヒーを渡される。

 

有澤「まず、ここの内部も含めて、一切の情報を教えてはなりませんよ?

···あなたのお話は聞いています。しかし、機甲兵装の技術は小さなものでも渡すことはできません···が、"別の力"なら与えましょう」

 

そしてサウスダコタは有澤に演習場へと連れていかれた。

 

有澤「艤装は···実は先日、丁度あなたと同じ艤装を妖精さんが造りましてね、それを使ってください」

 

サウスダコタは言われるままに艤装を着け、屋内の演習場へ出る。すると反対側の扉が開き、艤装を装備した有澤が現れる。

 

しかし、サウスダコタには有澤が艤装を装備しているとは思えなかった。

なぜなら、目の前に現れたのは巨大な"壁"だったからだ。

 

有澤《これは私の艤装です。もちろん、誰かに教えてはなりませんよ》

 

サウスダコタ「なっ!?」

 

有澤《あなたに文字通りの力を与えましょう。さぁ、見せてください、"あなたの力"を!》

 

 

 

推奨BGM『Mr.Adam』(AC4より)

 

 

 

演習開始のブザーが鳴ると同時にサウスダコタの左側に向けて有澤は移動する。正面から見れば単なる壁だった艤装は、多数の壁が連結されたものだった。

 

サウスダコタはすぐさま砲撃するも、全くダメージが入っていない。

 

サウスダコタ(イギリス艦隊所属)

「なんなんだ···あれ」

 

有澤は先頭車両の先頭部分の内部におり、背中に艤装の管を接続して椅子に座っていた。

そして周囲のディスプレイから状況を把握し、艤装を操作する。

 

すると有澤の艤装の上部にある巨大なガトリング『グレネードガトリング』の1つがサウスダコタに向けられる。

すると戦艦と同等の威力の砲弾が連射され、サウスダコタは避ける間も無く一瞬で轟沈判定になってしまう。

 

サウスダコタ(イギリス艦隊所属)

「な、なんなんだよ···」

 

有澤《どうしました?これで終わりですか?》

 

サウスダコタ(イギリス艦隊所属)

「···いや、まだだ!」

 

サウスダコタはすぐに演習用のペンキを落としに向かい、再び有澤に挑む。

すると今度は有澤はグレネードガトリングではなく、艤装上部にある別の武装を使用する。

 

それは長い台形の形をしており、その前後から大量のミサイルが放たれる。

グレネードガトリングとは違った弾幕に、サウスダコタは再び轟沈判定になってしまう。

 

サウスダコタ(イギリス艦隊所属)

「···まだまだぁ!」

 

何度もサウスダコタは立ち向かい、その度に凄まじい威力の弾幕により轟沈判定になってしまう。

何戦かした後、休憩を入れることになる。

 

休憩の後、サウスダコタは再び立ち向かう。

何度も何度も轟沈判定になり、それでもサウスダコタは立ち向かう。その結果、徐々にサウスダコタは有澤の動きに着いてくるようになってきた。

 

最初は何もできないまま轟沈判定となっていたが、今ではグレネードガトリングとミサイルによる弾幕を全弾では無いものの回避し、当たってしまう弾はできるだけ損傷が小さくなるように動いている。

 

それだけでなく、損傷を与えられる部位が砲台にある事にも気付き、グレネードガトリングとミサイル砲台に砲撃をなんとか当てられるようにもなってきている。

 

サウスダコタ(イギリス艦隊所属)

「うおおおおおおおおおお!」

 

しかし、サウスダコタは砲台に損傷を与えても有澤を撃破することはできなかった。

仰向けに倒れたサウスダコタに、有澤は手を差し伸べる。

 

有澤「お疲れ様でした、今日はもう戻りなさい」

 

サウスダコタ(イギリス艦隊所属)

「いや、私は···」

 

有澤「もう遅いですし、疲労はとらなければいけません。それに、今のあなたにはこれくらいが十分です」

 

サウスダコタ「そうか···」

 

 

 

 

 

その後、サウスダコタは有澤に礼を言ってイギリスに戻ってきたものの、技術ではない力を手に入れたと言っていた。詳しいことは他言無用だそうだ···が、サウスダコタはかつてとは比べ物にならない強さを見せつけるのだった···

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回は、レイヴンズ·ネストと量産型が世界に与えた影響の少し詳しい内容の話を書きました。

●レオの初使用タイミング
実は12話の少し前に起きたイギリスでの事件の際、始めて武龍は使用していました。

●イギリスでの事件
近海警備の依頼を受けていた武龍、青葉、北上、赤城、アークロイヤルの6人が、追加の依頼を受けて任務中に起きたテロの鎮圧を行った事件。

テロの規模は小さいものの、3ヶ所で同時に発生したため、最寄りの艦娘と量産型が足りなかったため、イギリス軍部は武龍達に追加の依頼をすることになった。


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幕間 AL/MI作戦(ver2.0)

幕間です。

各国は深海棲艦に奪われた主要海域をほとんど取り返せていなかった。
しかし、そこである作戦が提案される。


各国は現在、深海棲艦に奪われた主要な海域を取り戻せていない事に頭を悩ませていた···

 

アメリカ大統領「主要海域を最も多く奪還できているのは日本か···我が国を含め、他の国はほとんど奪還できていない、か···」

 

現在、日本の『日本三大鎮守府』の提督達の手により次々と海域が奪還されている。

他の国々も小さくとも奪還している海域はあるものの、レイブンズ·ネストの手を借りて奪還した海域も少なくはない···

 

アメリカ大統領「···国内での波乱は解っている···だが、進まねば···希望を持たせねば···よし!」

 

アメリカ大統領『オズウェル·A·ハモンド』は何かの決心を固め立ち上がり、秘書を呼ぶ。

 

アメリカ大統領「各国と連絡を取れ。大規模作戦を決行するぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロシア大統領《ほう、あのAL/MI作戦を再びやるつもりか?》

 

オズウェル「その通りだ。奴らの布陣の多くはかつての大戦で起こった戦いの場所に集中している。まるでかつての戦いを再現しているようにな···ならば、我々はその再現戦に乗ってやり、過去を乗り越えてやろうというわけだ」

 

イギリス首相《一理あるな。日本の論文では奴らはかつて沈んだ船の怨念という仮説が出ている···ならば、かつての大戦を"攻略"すればやれるやもしれんな···》

 

創平《しかし、こちらの三大鎮守府の艦隊を向かわせるにはいくつか通らなければならない海域があります》

 

ロシア大統領《そこはこちらの艦隊に任せろ。こちらの提督達も海域攻略の準備は万端だからな》

 

中国首相《こちらの艦隊も向かわせよう···なに、以前のようは悪行を行う提督は処罰しておいたからな》

 

ドイツ首相《こちらも、以前の戦闘からだいぶ戦力を回復させた、ようやく力になれる時が来たというわけだ。最高の艦隊を向かわせるさ》 

 

こうして、各国の『AL/MI作戦』の再現戦への攻略作戦は決定された···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、レイブンズ·ネストの電話が鳴り、ベスが出る。

 

ベス「こちらレイブンズ·ネストです。ご用件は?」

 

オズウェル《私はオズウェル·A·ハモンド、アメリカの大統領だ。君達に話がある》

 

ベス「は?なぜ大統領が直々に電話を?あなたが本物の大統領だとしても、なぜこちらに連絡をする必要が?」

 

オズウェル《疑うのも無理はない。なら試しに、これから言う番号にかけてみてほしい。私の秘書に繋がる》

 

ベスは1度電話を切り、オズウェルから言われた番号にかけてみる。すると本当に秘書が出たが、オズウェルは追加で本物と証明できる内容の話をし、ベスは信用することにする。

 

ベス「あなたを本物のアメリカ大統領と認めましょう···それで、用件は?」

 

オズウェル《まず先日のローレンスの件だが、いつか直接会う機会があれば、改めて謝罪をさせて欲しい···そして謝罪と共に、君達にどうしても参加して欲しい依頼があるのだ···》

 

ベス「大統領直々の依頼ですか?」

 

オズウェル《AL/MI海域の再現戦の攻略作戦を、各国と協力して行う。そこに、君達も参加してほしい》

 

ベス「なるほど···深海棲艦が現れた時とは、大きく違いますね」

 

深海棲艦が現れた時、大統領に就任したばかりのオズウェルは深海棲艦をその目で見て、怯えてしまった。

そのため、最初は防衛のみを最優先し艦娘に対しては敬意を表していたが、国民の艦娘を排除しようとする動きを止め切れなかった。

 

オズウェル《そうだ。我が国は"偉大なアメリカ"を掲げる以上、真っ先に深海棲艦に立ち向かわねばならなかったものを、私は怯えてしまい、更には我々の盾となり、矛となってくれていた艦娘達を無下に扱う者達を止め切れなかった···》

 

オズウェルは悔しさから拳を握り締め、声からもその悔しさが伺える程である。

 

オズウェル《その責任は私にもある···だが今、国民は絶望に打ちひしがれており、少しでも希望を持たせたいのだ!そして艦娘の力を今一度見せつければ、国民の艦娘への見方もきっと変わるだろう···

 

だが、傭兵を雇うことでの批判も出るだろう···だが、その責任は私自ら負うつもりだ···だから頼む!アメリカの大統領としても、個人としても、君達に依頼をしたい》

 

オズウェルには確かな覚悟があるとベスは感じ、1度話し合ってみることにした。

 

ベス「···私の一存では決められませんが、話し合ってみましょう」

 

オズウェル《本当か!?》

 

ベス「しかし仮に···裏切るような事があれば、その時は相応の処置を取らせていただきます」

 

オズウェル《当たり前だ···私も覚悟はできている!》

 

ベス「では後程、結果が決まり次第連絡します」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アン「そんな事を言って、裏切るつもりでしょうね」

 

ジュリアス「かなり本気さを感じるが、他の奴らがどう出るかは判りきってるな···」

 

瑞希「確かに、アメリカと日本の艦隊が裏切らなかったとしても、他の国の艦隊は裏切る可能性がありますね」

 

武龍「けど、この作戦を成功させれば希望を与えることができるんだろ?」

 

リプ「確かに」

 

草薙「日本の鎮守府はどうなってます?」

 

ベス「確認を取ったところ、日本三大鎮守府はいずれも出撃する模様です」

 

有澤「なら、受けてみても良いかもしれませんね」

 

ピス「不安要素はありますが···草薙、新型の機甲兵装はどうです?」

 

草薙「間もなく完成します」

 

ラン「なら行ってみても良いんじゃないか?最初の頃みたいに1人で行かせるって訳じゃないんだし」

 

草薙「では···」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベスは結果を伝え、草薙は2日後に新型の機甲兵装を開発することに成功した···

そして、完成した機甲兵装のあるガレージに、武龍は呼び出された。

 

そこに佇むのは、赤く細身なフォルムの軽量2脚タイプの新型機甲兵装だった。

 

草薙「これは新型機甲兵装『バルバロイ』です。既存の機甲兵装とは、あらゆる面で桁違いのスペックを持ちます。しかし、この機体を扱うには、『AMS適正』が必要となります」

 

武龍「AMS適正?」

 

草薙「はい。AMS適正とは、この機甲兵装に備わっているシステムに適合している脳を持っていることです。そして、あなたにはその適正がある可能性があります」

 

草薙がそう言うと、リプが椅子と頭に着ける装置を持ってくる。

 

草薙「さ、座ってください」

 

武龍は椅子に座って装置を頭に着ける。2分程すると、装置を繋いでいる機械から適正の合否が表示される。

 

武龍「···どうだった?」

 

草薙「なるほど、やはり·····あなたは適正があります。数値は95%です」

 

草薙は何かに納得した様子で、リプは適正数値に驚いていた。

 

リプ「そんなに高い適正数値、滅多に無いのだ···!」

 

草薙「さて、後は手術ですね」

 

武龍「え、手術?」

 

草薙「そうです、手術です。AMS適正があっても、システムに接続するための手術をしなければなりませんから···無理強いはしませんよ」

 

武龍は少し考え、バルバロイを見る。

 

武龍「···俺、やるよ」

 

草薙「解りました、ではこちらへ」

 

 

 

武龍へのAMS手術は成功し、武龍はバルバロイを装備して演習場に出る。

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

さて、次からは第3章です。
そして遂にバルバロイのお披露目ですね!

●オズウェル·A·ハモンド
ブロンドの短髪で身長182cm、40歳で2月9日生まれ。

現在のアメリカ大統領であり、人格者としても知られている。

就任したばかりの頃に深海棲艦が現れ、襲撃された場所にたまたま居合わせた彼は間近で駆逐イ級を見て怯えてしまった。
しかし盾となり矛となっている艦娘には敬意を表していた。
だが結局艦娘達を無下に扱う者達を止め切れず、悔やんでいる。

余談だが、国民は悔やんでいるを知っており、それでもなお行動し続ける彼を評価する者は多い。

●AMS適正
新型機甲兵装を扱うのに必要な適正であり、『アレゴリー·マニュピレイト·システム』の略でもある。
本来、とある兵器を扱うのに必要だったが、それを機甲兵装用に変換することに成功した。

適正が高ければ高いほど、とある兵器を意のままに操る事ができるようになる反面、適正が低いと精神負荷が大きくなり、中には精神崩壊する者もいる。

また、適正は先天的なものであり、後天的に発生するわけでも適正が上がることもない。

余談だが、AMSは開発当初は障がい者の社会復帰などが目的だったが、兵器利用されてしまった。

●バルバロイ
赤いカラーリングの軽量2脚。

既存の機甲兵装とは桁違いのスペックを持つ機体であり、使用するにはAMS適正が必要。

武装は右手に『アサルトライフル』、左手にショットガン、右背部に『散布型ミサイル』を装備。

機動力を活かした戦闘を得意としているが、耐久は新型の中では高くない。
また、今回の大規模作戦において、弾切れの可能性を考慮し、本来は装備されていなかったロケットを左背部に装備している。

●アサルトライフル
ライフルとマシンガンの中間の性能をしており、扱いやすい部類である。

●散布型ミサイル
大量の小型ミサイルを同時に発射するミサイル。
弾道としては"面"で向かっていくが、マルチロックすることで複数の的に対しても有効となる。


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第3章 The abyss
第19話 何が為の戦争か(ver2.0)



?「『AL/MI作戦』の再現戦に望む各国とレイブンズ·ネスト···か。その戦いの先に、何が待ってるんだろうね?」


依頼主:アメリカ大統領 オズウェル·A·ハモンド

 

目標:ミッドウェー海域の攻略

 

作戦開始時刻:15:00

 

報酬:1000000ドル及び各種資材

 

まず、先の少将の件を謝罪する。この作戦の後、君達に直接謝罪する機会を与えてほしい···

 

我々は国民に希望を持たせねばならない···それは各国も同じなはずだ。そのために我々は団結し、この再現戦に勝利しなければならない!

だから力を貸してくれ。君達の力が必要なのだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍、青葉、北上、ラングレー、赤城、陸奥の6人はストークCに乗って味方艦隊との集合地点に向かう。

 

武龍「俺達が担当するのはMI海域か···」

 

瑞希《そうですね。今一度、気を引き締めて行きましょう》

 

武龍達が集合地点に向かったのを見届けた草薙は、1人祈っていた。

 

草薙(今回は嫌な予感がします···砂漠の英雄、『アマジーグ』···どうか武龍達を守ってください)

 

 

 

集合地点に着いた武龍は投下され、味方艦隊と共に進む。

 

青葉「味方の艦隊も精鋭が揃い踏みですね。一部おかしい艦隊もいますけれど···」

 

武龍達が担当するのはミッドウェー海域であり、中国とドイツ、アメリカの艦隊が武龍達と共に進むが、アメリカの別動隊の艦隊はハワイ島に向かい、陽動を行うという。

 

また、AL海域には日本、ロシア、イギリスが向かうそうであり、そちらには時雨、夕立、大潮、曙、霧島、鳳翔の6人が向かった。

そして、それぞれの国から大量の量産型も投入された事もあり、戦力はかつて鉄底海峡の時より桁違いとなっている。

 

···が、スリガオの時よりマシとはいえ、戦争の順序を守りきれてはいないため、深海棲艦の戦力は増加していると思われる。

 

進んでいくと、次第に雲行きが怪しくなり、海の色も赤くなってゆく···

 

瑞希《中国の艦隊···経歴は素晴らしいものですが、あの顔を見るに、おそらく洗脳による機械的な行動の結果でしょう·····皆さん、そろそろMI海域の前線領域に突入します!》

 

目の前の深海棲艦の数は、武龍達の戦力より少し少ない程度である。しかし深海棲艦の艦隊の旗艦と思われる姫級は、白い長髪とサイドテール、右側頭部に生えた角···そして本体が座っている、左右に飛行甲板の付いた巨大な魚の頭部のような艤装···

 

ラングレー「『空母棲姫改』···だが、よりによってアイツか···」

 

 

 

推奨BGM『燃え落ちる誇り』

 

 

 

空母棲姫改

「ヒノ カタマリトナッテ···シズンデ シマエ···」

 

ラングレー「皆気をつけろ!アイツは···」

 

その空母棲姫改は、これまで確認されている空母棲鬼、空母棲姫、空母棲姫改とも違う雰囲気···まさに歴戦のものだった。その名は···

 

ラングレー「"オリジナル"だ!」

 

 

 

『空母棲姫改/オリジナル』

 

 

 

空母棲姫改

「シズメ!」

 

空母棲姫改は尋常ではない量の大量の艦載機を飛ばし、それと同時に他の深海棲艦も攻撃を始める。

 

コロラド(アメリカ艦隊所属)

「何よあの艦載機の数は!?」

 

武龍、青葉、北上は前線に突撃し、攻撃を開始する。そしてそれをラングレー、赤城、陸奥が援護する。それに続いて他の艦娘も攻撃を開始していく。

 

武龍は右手に持ったアサルトライフルを連射するが、それだけで口イ級eliteを撃破する。

 

武龍(凄い!前の機甲兵装の武器とは桁違いの火力だ!)

 

続いて武龍は軽巡ホ級flagshipに接近し、左手に持ったショットガンを撃つ。すると一撃で軽巡ホ級flagshipを撃破でき、武龍向けて飛んできた砲弾は右へのQBで回避する。

 

武龍達により、前線を引っ掻き回された深海棲艦達は混乱するが、上空から空母棲姫改の正確な爆撃が武龍達を襲う。武龍は一旦後退し、空母棲姫改の艦載機にアサルトライフルとショットガンの連射する。

 

それに乗じてドイツの艦隊が武龍の周囲の深海棲艦に砲撃する。

 

ビスマルク(ドイツ艦隊所属)

「あなた達だけに任せてられないわ!」

 

そしてその穴を抜けてアメリカ艦隊が空母棲姫改に砲撃し、全弾直撃する。

しかし空母棲姫改の装甲は想定より厚く、大きなダメージは与えられなかった。

 

空母棲姫改

「ホウ···ヤルナ」

 

空母棲姫改の出す艦載機は、数だけでなく練度も非常に高い。そのため、ラングレーや赤城も苦戦を強いられていた。

 

ラングレー「チクショウ、やるしかねぇか!」

 

戦いの最中、ラングレーは深海化して戦闘力を上げる。そして接近してきた駆逐イ級flagshipを右手の爪で抉るように斬りつける。

しかし、ラングレーが深海化してもなお空母棲姫改は優勢を保っていた。

 

 

 

武龍の機甲兵装、バルバロイには『プライマルアーマー(以下PA)』と呼ばれるバリアには、実弾に対し高い耐性を持つ。

しかし連続して攻撃を受け続ければ、PAは剥がれてしまう。

 

それに空母棲姫改は早い段階で気づいており、戦闘機の機銃で武龍のPAを削ると、削った部分に爆撃機を激突させる。

それによってPAは剥がれ、深海棲艦の群れに紛れていた駆逐棲姫が砲撃する。

 

しかし、バルバロイの機動力は既存の機甲兵装とは桁違いであり、先程空母棲姫改が爆撃機を激突させたのも、かなり難易度が高かったのだ。

 

空母棲姫改

「チョコマカト!」

 

空母棲姫改は複数の深海棲艦を武龍の元に向かわせ、最大の驚異と判断した武龍を足止めする。

そこにラングレーが加勢に入る。しかし、ラングレーを視認した中国の艦隊が突然ラングレーに砲撃する。

 

ラングレー「ガアッ!」

 

 

 

武龍「お前···どういうことだ?」

 

武龍は驚愕の表情を浮かべ、ラングレーと中国艦隊との間に立つ。

 

艦娘(中国艦隊所属)

「何って、敵である深海棲艦を攻撃しただけですよ?」

 

そう言う艦娘の目に、光は無かった。

 

武龍「こいつは深海化できるだけだ!敵じゃない、味方だ!」

 

北上が近くの深海棲姫に砲撃しつつラングレーの元に駆け寄り、ラングレーに肩を貸す。

 

艦娘(中国艦隊所属)

「変な偽善を語らないでください···私達のやり方を否定するなら···」

 

武龍は横から砲撃され、PAが剥がれていたバルバロイの頭部装甲と通信機器が損傷する。見れば、別の中国所属艦娘が砲口を向けていた。

 

艦娘A(中国艦隊所属)

「あなた方も敵です」

 

艦娘B(中国艦隊所属)

「深海棲艦は敵!人類の敵!私達の敵ぃ!」

 

再び放たれた砲撃をブーストをQTで回避し、北上はラングレーと共に屈んで回避する。しかし中国艦隊の艦娘達は無表情で砲撃してくる。

 

そこを突いて攻撃してきた深海棲艦の攻撃を艦娘は回避し、返り討ちにする。

北上はその隙にラングレーと共に離脱しようとする。そして、その様子を空母棲姫改は艦載機を通して見ていた。

 

空母棲姫改「高速軽空母水鬼、カ···ココデ再ビ会ウトハナ」

 

空母棲姫改は艦載機の一部を中国艦隊の艦娘に向けて飛ばし、北上とラングレーの離脱を援護する。

 

瑞希《···中国艦隊の提督に聞きます。これはどういうことですか?》

 

中国所属提督

《·····》

 

瑞希《答えなさい!》

 

アメリカ所属提督

《味方に向けて攻撃するとは···貴様、後で覚えていろよ》

 

ドイツ所属提督

《ツェッペリン、オイゲン、レイブンズ·ネストのあの2人を離脱まで援護しろ》

 

 

 

 

 

アメリカの艦隊と青葉は空母棲姫改の攻撃に苦戦していた。接近できたとしても、空母棲姫改の艦載機の攻撃が非常に正確なため、すぐに距離を離されてしまう。

 

青葉「数は確実に減っています!攻撃を続けましょう!」

 

しかし、アメリカの艦隊の1人が突然集中的な爆撃を受け、大破する。

それを助けに向かった艦娘も集中的な爆撃を受けてしまう。

 

空母棲姫改

「ドウダ?悲シイカ?苦シイカ?···ソレガ私達ノ(砲撃音)グフッ!」

 

いつの間にか回り込んでいた陸奥が砲撃したのだ。更に、最後に残ったM2型も砲撃してくる。

空母棲姫改の護衛の深海棲艦は数を減らし、まともな援護ができなくなっていた。

 

そして、他の中国所属艦娘が武龍を攻撃しているのを見たアメリカ所属艦娘が···

 

アメリカ所属艦娘

「Hey!あなた何してるの!?彼は味方よ(砲撃)グハァッ!」

 

艦娘C(中国所属艦娘)

「深海棲艦は敵···それに味方する者も敵···皆、敵ぃぃぃ!」

 

その一撃で、そのアメリカ所属艦娘は轟沈してしまう···青葉は血相を変え、辺りを見渡す···深海棲艦の数はかなり減ってきているものの、中国艦隊による味方への攻撃により、戦線は崩壊しつつあった。

 

 

 

瑞希《皆さん!大破した艦娘を連れて撤退してください!これでは戦線が持ちません!》

 

ビルマルク(ドイツ艦隊所属)

《···こちらドイツ艦隊、撤退するわ》

 

ドイツ艦隊は北上とラングレーを援護した『グラーフ·ツェッペリン』と『プリンツ·オイゲン』以外は全て中大破してしまっていた。

また、空母棲姫改と直接交戦していたアメリカ艦隊も損害が大きく、撤退せざるを得ない状態だった。

 

瑞希《中国所属艦隊及びその提督と中国政府には、後で説明してもらいましょう···》

 

しかし、中国艦隊は引くことなく攻撃を続けている···

 

北上「もうあの艦隊はダメだよ···それより武龍が危ない!」

 

北上は武龍に近づく深海棲艦に砲撃しているものの、深海棲艦の攻撃に阻まれてまともな援護ができない。

青葉や赤城も、他の艦娘を逃がすのに手一杯で、武龍の援護ができない。

 

武龍「俺の事はいい!その様子だと撤退だろ!?こっちは通信機はほぼ壊れちまったが、まだ戦える!後で落ち合おう!」

 

青葉「くっ···絶対に生きて帰ってください!」

 

青葉達は仕方なく撤退していく。

 

青葉(なんで···こんな時に武龍を1人にしなければいけないんですか!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍は目の前の艦娘に至近距離からショットガンを主砲に向けて発射し、更に膝蹴りを額に当てて気絶させる。

そして空母棲姫改を見ると、艤装に大きな損傷を受け、更に艦載機は残り少ない状態になっていた。

 

随伴の深海棲艦はもうおらず、更なる砲撃により空母棲姫改は艤装の航行能力を失ってしまう。

武龍が空母棲姫改の元へ行く前に空母棲姫改は大破し、艤装にもたれ掛かるように倒れる。

 

空母棲姫改

「コンナ···所デ···シズム、ワケニハ···(砲撃)グハァッ···(砲撃)···静カナ···海ニ···私、ハ···」

 

空母棲姫改が涙を流す···それを見た武龍は無言でOBを使って突撃し、空母棲姫改にトドメ刺そうとしていた艦娘にアサルトライフルを連射し、ショットガンで怯ませ、OBの勢いを乗せた飛び蹴りを当てる。

 

それを見た空母棲姫改は目を見開き、そのまま意識を失った。

 

武龍「お前ら···こいつを殺りたかったら、俺を殺してから行けぇっ!」

 

艦娘達は一斉に武龍に砲口を向ける。武龍は空中へ飛び上がり、上空からアサルトライフルとショットガンを撃ち下ろす。

戦艦の艦娘の背部艤装にロケットを撃ち込み戦闘不能にさせ、艦載機はアサルトライフルで発艦させた空母の艦娘ごと薙ぎ払う。

 

艦娘D(中国艦隊所属)

「我らの歩みを止めようとする者···シズメェッ!」

 

やがて艦娘達の声が変わり始め、深海棲艦のオーラを纏い始める···

 

武龍「艦娘から、深海棲艦に···!」

 

武龍は既に中身は完全に深海棲艦と化した艦娘に散布型ミサイルを放つ。大量の小型ミサイルが面で向かっていき、ほぼ全弾命中する。散布型ミサイルが命中した艦娘は轟沈し、別の艦娘にはアサルトライフルとショットガンを連射して蜂の巣にする。

 

武龍「おおおおおおっ!」

 

 

 

 

 

武龍は全ての艦娘を撃破し、空母棲姫改の元へと歩み寄る。既に自走能力の無くなった艤装が唸り声を上げ、威嚇してくる。

武龍は優しく艤装の頭を撫でる。

 

艤装「グルァ?」

 

武龍「俺は君達を助けたい···戦争を終わらせたいだけなんだ···動けるか?」

 

艤装は武龍を少し見つめ、横に振る。そして武龍に向けてその身を傾ける。ずり落ちてきた空母棲姫改を武龍は受け止める。艤装は武龍をじっと見つめてきている···

 

武龍「ありがとう···彼女は必ず助ける···君は」

 

艤装「グルゥ···」

 

武龍は悟った。もう、どうにもできないのだと···

 

武龍「···わかった。後は任せろ!」

 

艤装「グルァ」

 

武龍にはなぜか、その艤装が笑ったように思えた。艤装が沈んでいくのを見届けた後、武龍はブーストを吹かし、海を航行しようとする。しかし、武龍は疲労により膝を着く。

 

武龍「チクショウ···こんな時に、疲れが出ちまうなんてよぉ」

 

それでも武龍は進もうとしたが、目の前に気配を感じて顔を上げる。

目の前には、見たことも聞いたこともない深海棲艦が立っていた。

 

3つ編みのツインテールの髪に、左頬は抉れて歯と牙が見えている。そして左腰には鞘に納められた刀がある。

 

武龍「君は···」

 

そこで武龍は意識を失い、倒れる。しかし不明深海棲艦は武龍と空母棲姫改を両方とも受け止め、担いで航行していく。

 

 

 

その空は、雲1つ無く、清み渡っていた···

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

さて、今回はアップデート前と違う部分の多い話となりました。
それに、不明深海棲艦とは何者でしょうか?

また、空母棲姫改/オリジナルなどの詳細は次回に出します。

●アマジーグ
容姿などは不明だが、かつて砂漠の英雄と呼ばれており、とある人物との戦闘で敗北し、撃破された。

バルバロイに搭乗していたが、AMS適正の低さから精神に異常をきたしていたが、己の信念により辛うじて理性を保っていた。


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第20話 ミッドウェー(ver2.0)


?「結局あんなことになったね。まあ、頑張ってね。君ならできる、幸運を」


武龍が目を覚ますと、小さな小島の砂浜寄りの木陰に寝かされていた。また、武器は左隣に置いてあった。

右隣には空母棲姫改が横たわっており、意識はまだ戻っていないようだ。

 

武龍「ここは···」

 

武龍が起き上がると、機甲兵装に着いていた妖精達が集まり、心配そうな顔をしている。しかし一部は周囲を警戒しており、森の奥からあの左頬の抉れた深海棲艦が現れる。

 

深海棲艦「起きたようだな」

 

武龍「お前は···」

 

深海棲艦「礼の1つでも言ったらどうだ?」

 

謎の深海棲姫は武龍の前に果物の入った網を置き、近くの焚き火を指差す。

焚き火には串に刺した魚が火にかけてあった。

 

深海棲艦「もうじき焼ける。焼けたら果物と一緒に食べてろ」

 

そう言うと深海棲艦は森の奥に戻っていってしまう。

 

武龍「おいっ···はぁ、なんなんだ」

 

武龍は空母棲姫改を見る。やはりうなされており、「沈ンデイク···皆、皆···」と寝言を言っている。

すると妖精が話しかけてくる。

 

妖精A「本当に、助けるつもりなんですね···」

 

武龍「ああ。それと、意識はまだ戻らないか?」

 

妖精B「頭部にはそんなにダメージ無いし、傷も再生してきてるから多分、あと1時間以内には目が覚めると思う」

 

武龍「解った、ちょっと見ててくれ」

 

妖精C「どこへ行くのです?」

 

武龍「あの深海棲艦に礼を言わなきゃいけない」

 

 

 

 

 

武龍は頭部装甲を脱ぎ、謎の深海棲艦を追って森の奥に入っていくと、謎の深海棲艦は小さな滝のある泉の前にある岩に座っていた。

 

謎の深海棲艦は白いボディースーツを着ており、肘から先と脚の部分の色は黒いが、白い部分は膝の部分まである。しかし太ももの左右はスリットのように黒くなっている。

また、手の甲の骨部分と指の関節と爪は白い装甲となっている。

 

武龍「あの···」

 

謎の深海棲艦「なんだ?」

 

武龍は謎の深海棲艦に頭を下げる。

 

武龍「助けてくれて、ありがとうございました!」

 

謎の深海棲艦「フン、敵に対しても礼を言えて、しかも頭を下げられるとは、中々良いじゃないか」

 

謎の深海棲艦は武龍に近づき、突然武龍を抱き締める。

 

謎の深海棲艦「(深呼吸)···立派に、ここまで来たな」

 

謎の深海棲艦は武龍から離れると、自分の名を名乗る。

 

謎の深海棲艦「私の名は『深海鴉棲姫』。こんなナリだが、鴉の名を持っている」

 

武龍「えっと、俺は···」

 

深海鴉棲姫「武龍、だろう?」

 

武龍「なんで、俺の名を?」

 

深海鴉棲姫「君の事は知っている。ずっと前からな···詳しいことは別の時に話そう。それより、空母棲姫改はそろそろ目が覚めるんじゃないのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、拠点では会議が行われていた。

 

ベス「AL海域でも敗退ですか···」

 

ラン「仕方ねぇよ···まさか後方から『装甲空母姫』と『北方水姫』が来るんだからよ···まあ、あっちはMI海域より順守守ってなかったから、余計にキツかったんだろうけどよ」

 

ティス「ちくしょう···武龍···」

 

アン「武龍は生きていると···私はそう信じています」

 

草薙「今頃は向こうも体制を整えているでしょう···今は待ちましょう···獲物を喰らうのは今ではありません···」

 

リプ「今すぐにでも行ければ···」

 

ピス「助けに行く事も可能ですが、間違い無く姿を晒しますし、それに···」

 

ラビィ「言わないでくださぁい···」

 

ジュリアス「にしても、中国がなんの声明も発表していないのが気になるな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空母棲姫改が目を覚ますと、焚き火が焚かれ、串焼きにしている魚と···武龍がいた。

 

武龍「起きたか···具合はどうだ?」

 

空母棲姫改はすぐに戦闘態勢に入るが体が痛んで座り込み、攻撃できなかった。

 

武龍「君を攻撃するつもりはない···ほら、焼けたぞ」 

 

武龍は焼き魚を手渡す。空母棲姫改は匂いを嗅いだ後、物凄い勢いで食べる。

 

空母棲姫改「ナゼ助ケタ?」

 

武龍「君はあの時泣いてただろ?それに、あの君を最後に囲んでた艦隊のやり方には頭に来てな···まあ、最後には君の艤装に頼まれたんだがな」

 

空母棲姫改は小さなため息をつく。

 

空母棲姫改「ソウカ···ソレニハ感謝スル···ナラバサッサト行ケ。今ナラ手ハ出サナイ」

 

武龍「そういうわけにもいかない···放っておけない性分だからな」

 

空母棲姫改「オ前達ハ敵ダ!」

 

武龍「敵だろうと関係無い!俺は放っておけないし、何より戦争が嫌いだから···終わらせたいから俺は余計に放っておけないんだよ!」

 

空母棲姫改「コノ偽善者ガ···」

 

武龍「偽善でも構わない!俺は相手を助けられるならそれで良い!」

 

空母棲姫改「モウイイ···モウイイ出テ行ケ!コノ海カラ出テ行ケ!オ前ノ助ケナンカ イラナイ!人間ニ助ケラレル クライナラ、アソコデ 沈ンダホウガ マシダ!」

 

空母棲姫改は無理矢理艦載機を発艦させる。しかしその攻撃は武龍の頭ではなく胴体に命中した···というより武龍は避けなかった。武龍は無言で近づいて空母棲姫改を抱き締めた。

 

武龍のその行動は、不思議と自然に体が動いていた。

 

武龍「だったらなんであの時泣いてたんだよ!なんで苦しんでたんだよ!寝てる時になんでうなされてんだよ!」

 

一瞬、空母棲姫改は暖かさを感じた。

 

空母棲姫改「ハなせ···コノ!」

 

武龍「俺は誰かに苦しんで欲しくないんだ!誰かが泣いて欲しくもないんだ!」

 

空母棲姫改「離せト イッテいるだろウ!」

 

武龍「誰も信じられないのなら俺が信じる!苦しみを溜め込むなら、俺に吐き出せ!沈みそうな時はまた俺が助ける!苦しくて、泣くなら俺が守ってやる!」

 

しばらくすると空母棲姫改は抵抗を止め、静かになる。

それから空母棲姫改はポツリポツリと話し始めた···

 

自分が深海棲艦として産まれた時の事···

この海で沈んだ4隻の空母の集合体であること···

そして沈んだ時の事を未だに夢に見る事を···

 

そして話す度に右側頭部の角と手の赤い爪にヒビが入り、ボロボロと崩れ落ちていく···

全て話終える頃には角と赤い爪はすっかり無くなっていた···

 

空母棲姫改「私の事は···『ミッドウェー』と呼んでくれ···それで、お前はこの戦争を終わらせたいのだろう?」

 

武龍「ああ···まあ、傭兵っていう微妙な立場だけどな」 

 

ミッドウェーは顔を上げ、武龍の顔を見る。

 

ミッドウェー「···なら腹を括れ。お前を拠点まで案内する」

 

武龍「良いのか?」

 

ミッドウェー「もう吹っ切れた···で、行くのか?行かないのか?」

 

武龍「もちろん行くさ」

 

2人が立ち上がると、木の陰から深海鴉棲姫が現れる。

 

深海鴉棲姫「話しは纏まったようだな」

 

ミッドウェー「お前はっ!」

 

ミッドウェーは構えるが、深海鴉棲姫は飄々とした様子である。

 

深海鴉棲姫「おいおい、私はお前達2人をここまで運んだんだぞ?」

 

ミッドウェー「お前が?」

 

深海鴉棲姫は砂浜へ出つつ果物を丸かじりする。

 

深海鴉棲姫「私は無駄な殺しはせんよ。それに、武龍が行くなら私も行くまでだ」

 

ミッドウェー「···お前にとって、武龍はなんなんだ?」

 

深海鴉棲姫「さぁな、また今度話すさ···さぁ、行こう。時間はあまり無いぞ」

 

そして3人は海へ出て、赤い海を航行していく···しかしその海は少しだけ、青みを取り戻しているようにも見えた···

 

妖精A(武龍···あなたなら、成し遂げられるしれませんね···私達の願いを···)

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回から新しいオリジナルの深海棲艦が参戦しますが、よろしくお願いします。

●オリジナルとノーマル
深海棲艦の全ての種類にオリジナルが存在しており、他の同種とは比べ物にならない実力を持ち、特にオリジナルの鬼級姫級と戦うということは『その海域そのもの』と戦うに等しい。

ちなみに現在オリジナルは2人を除いて全て生存しており、そのほとんどはある海域に集っている。
また、そのオリジナルの1人は今はラングレーとなっている高速軽空母水鬼である。

●ミッドウェー(空母棲姫改)
空母棲鬼、空母棲姫のオリジナルであり、戦いを繰り返して自らを進化させた。

MI海域で沈んだ4隻の空母の集合体であり、その分の実力もある。
しかし、今回は武龍のバルバロイと同じオリジナルであるラングレーなどの様々な要因により、本領を発揮できなかった。

●深海鴉棲姫
白い3つ編みのツインテールで身長160cm、肉体年齢は17歳。

白いボディースーツを着ており、肘から先と脚は黒いが、白い部分は膝まである。しかし太ももの左右はスリットのように黒くなっている。
また、手の甲の骨部分と指の関節と爪は白い装甲をとなっている。

同じ深海棲艦からも危険視されている深海棲艦であり、艤装は刀1本のみだが、極めて高い戦闘能力を持っている。
しかし、なぜ武龍事を知っているかは現時点では不明である。


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第21話 歩みを止めない(ver2.0)


?「君の意志は見届けたよ。でも、まだまだこれからだよ···」


ミッドウェー、深海鴉棲姫と共にミッドウェーの拠点を目指す武龍。しばらくして拠点となっている島が見えてくると共に深海棲艦が現れ、砲口を向けてくる。

編成は戦艦ル急flagship、ヲ級elite、リ級elite、駆逐イ級elite3である。

 

ミッドウェー「待て!こいつは味方だ!」

 

リ級Elite「ドウイウ事デスカ?ソレニ角ガ···」

 

ミッドウェー「話は後だ···この男は武龍だ。ヲ級、こいつの武器を預かっておけ。くれぐれも処分するなよ?」

 

武龍は手持ち武器のアサルトライフルとショットガンをヲ級に手渡す。その後拠点に付くまではずっと後ろにリ級が着いており、武龍に殺意を向けていた···

 

 

 

 

 

拠点の島に着くと、武龍に多数の砲口が向けられる。それをミッドウェーは手で制し、武龍を拠点の内部へと案内する。

すると、拠点の奥から白いドレスを着た深海棲艦『中間棲姫』が出てくる。

 

中間棲姫「ドウシタ···ミッドウェー?コレハ、ドウイウコトダ?」

 

ミッドウェー「話は後だ···私は一度入渠してくる。それから話をしよう···ちょうど良い、『レキ』、この2人を空き部屋に案内しろ···くれぐれも殺すなよ?」

 

レキと呼ばれた黒い雨合羽(あまがっぱ)を着た深海棲艦『レ級』が武龍の前に出てくる。

オーラや目の色を見るに、flagshipであることが判る。

 

レキ(レ級)「はいよー!じゃあ人間と知らん姫はこっちこい!」

 

 

 

レキに連れられて空き部屋に着くと、武龍はとりあえずそこで背部の散布型ミサイルとロケットを妖精に下ろしてもらう。

 

レキ「おい、武装解除して良いのか?」

 

武龍「まあ、俺が君達深海棲艦と戦う理由が無くなったからな···いやでも念のためミサイルくらい持っとくかな」

 

それを聞いたレキの眉毛はハの字になり、深海鴉棲姫はニヤついている。

 

レキ「お前おかしな奴だな···」

 

武龍「まあ、小さい頃はよく言われたなぁ···」

 

レキ「まあでも、お前は他の人間とは違うな···改めて、オレはレキ!レ級のオリジナルだ!···で、そこの知らん姫は?」

 

深海鴉棲姫「私は深海鴉棲姫だ」

 

武龍「俺は武龍だ。よろしくな」

 

武龍は握手のため手を差し出す。レキは遠慮無く握手した。

 

武龍「あれ、他の奴らは警戒してたんだがな···」

 

レキ「だってミッドウェーをあそこから連れてきたってことは、アイツを助けてくれたって事だろ?だかはオレは感謝してんだよ」

 

武龍「そっか、ありがとな」

 

すると、レキの目線は武龍の下ろした散布型ミサイルとロケットに向く。

 

レキ「それとよ···お前の持ってた武装、結構ロマンあるよな···」

 

深海鴉棲姫「レキ、お前にもあれの良さが解るか!」

 

武龍「レキ···俺はあまり詳しくはないが、こういうのはロマンが溢れてて好きなんだよ···」

 

そしてここからレキ、武龍、深海鴉棲姫によるロマン談義がスタートしたのであった···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、入渠を終えたミッドウェーと中間棲姫は2人で話していた···

 

ミッドウェー「···と、いうことだ」

 

中間棲姫「戦争ヲ忌む者ガ傭兵トハナ···マア、ソウイウ見方モアルカ···」

 

ミッドウェー「どうだ?無理に協力してくれとは言わんさ···その時は私と武龍、それから深海鴉棲姫だけで行く。迷惑はかけない」

 

中間棲姫「何ヲ言ウ?友デアルオ前ノ頼ミダ。ソレニ、コノ戦ガ 終ワルノナラ良イサ···コノ海域ハ任セロ」

 

ミッドウェー「ありがとう、感謝する」

 

 

 

そして2人が武龍の元に向かうと···

 

レキ「だろ?オレの艤装めっちゃ良いだろ!?」

 

武龍「ああ!空母と戦艦の長所を併せ持ち、更に魚雷まで発射できるのはデカイ!お前本当にイロハ級かよ!?」

 

深海鴉棲姫「それに、艤装頭部の見た目も良いしな!」

 

3人はすっかり打ち解けていた···ロマン談義によって···

 

ミッドウェー「何をしている···」

 

武龍&レキ&深海鴉棲姫

「「「ロマン談義」」」

 

ミッドウェー「まったく···武龍、明日の朝1番でここを出るぞ」

 

深海鴉棲姫「ほう、話は決まったようだな」

 

武龍「てことは、深海側の提督?の所へ行くのか?」

 

ミッドウェー「私達に提督はいないが、私達のトップであり、始祖の所に行く」

 

するとレキが手を挙げる。

 

レキ「なぁ、オレも行って良いか?」

 

ミッドウェー「まあ大丈夫だろうが、どうした?」

 

レキ「こいつ面白いから」

 

ミッドウェー「なるほどな···武龍の妖精、資材をやるから寝床を作ってくれ」

 

妖精「そういうことならOK!」

 

 

 

 

 

その日の夜、武龍は眠れずに悩んでいた。やはりどう戦いを終わらせるのか、漠然としたものから抜け出せずにいる。

あれこれ考えてみるも、実現可能かどうかで言えばあまり現実的ではない。

 

近くにいる妖精を見ると、小さな布団を敷いて寝ていた。中には鼻提灯を膨らませている妖精もいる。

武龍は窓を開け、夜空を眺める。しばらく眺めていると、背後から深海鴉棲姫が近づいて来た。

 

深海鴉棲姫「どうした、悩み事か?」

 

武龍「うん···戦争を終わらせたいんだけど、なんだか漠然としてて···あんなことまで言ったのに、何やってんだ俺は···」

 

俯いた武龍の頭を深海鴉棲姫はガシガシと掻くように撫でる。

 

深海鴉棲姫「十分じゃないか。眠れないくらいに考えてるなら、それは進んでいる証拠の1つだ。あとは···君の気持ちだ」

 

武龍「俺の、気持ち?」

 

深海鴉棲姫「君はどう終わらせたい?君はどんな世の中にしたい?徹底的に話し合っても良い、話して解らないならボクシングで決めたって良い。君が始めたんだ、君の自由にしろ」

 

深海鴉棲姫と武龍の目が合う。

 

深海鴉棲姫「大丈夫だ、私がついてる」

 

武龍「うん、ありがとう···なんだか眠気が出てきたからそろそろ寝る」

 

深海鴉棲姫「ああ、おやすみ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、武龍、ミッドウェー、深海鴉棲姫、レキの4人は始祖のいる場所に向かうこととなった。

だがその直前、武龍は中間棲姫から呼び止められ、中間棲姫は武龍肩に手を置く···

 

中間棲姫「武龍ト言ッタナ···あいつを頼んだぞ」

 

武龍「···解った」

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

まさかのレ級(オリジナル)が仲間になりましたね!さぁここからどうなることやら···

●中間棲姫
白い長髪に両側頭部に黒く短い角が生えている。

今回出てきた中間棲姫はオリジナルで、ミッドウェーとは親友であり、MI海域では作戦立案などを行っている。

●レキ
レ級のオリジナル。
行動範囲が広く、様々な海域に行っては探検をしている。基本的に自ら攻撃することは無く、理由は『簡単に潰したらつまんないから』である。


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第21.5話 Corpse(コープス) soldier(ソルジャー)(新実装)

武龍がMI海域の拠点に入った後、アリオール社に関して動きがあった。
そして、明らかになるものとは···?


武龍がMI海域の拠点に入った後、アリオール社は量産型の新商品を発表していた。

アリオール社の社長である『アドモンド·デジール』は壇上に立つ。

 

アドモンド「記者の皆さん、よくぞお集まりいただきました。本日は、新商品の発表です」

 

発表の様子は世界中に放送されており、レイヴンズ·ネストの拠点ではソラとベスが見ていた。

 

アドモンド「今、世界で起きている深海棲艦と人類の戦争···それは多大な被害を生み続けています。艦娘の力をもってしても、まだ被害は大きいです···

しかし、我が社はS型を始めとする量産型を作りました」

 

アドモンドの背後にあるスクリーンに、過去の量産型が表示される。

 

アドモンド「ですが残念なことに、これまでの量産型では数の暴力以外に、深海棲艦に対抗できませんでした。しかし、今回の新商品は違います!」

 

 

 

スクリーンに、新型とされる量産型が3種類表示される。3種類の内左側は過去に武龍が戦ったJ型であった。

 

アドモンド「まず、主にバランスを重視したJ型。既存の量産型よりあらゆるスペックが上昇しており、上位互換と思ってもらって結構」

 

ここまで聞いていたソラとベスは、次の発言で眉を潜める。

 

アドモンド「それに、いつ市民に危害を加えるか判らない某傭兵組織への対抗策でもあります。某傭兵組織が危害を加えた場合、J型は有効な対抗策になるでしょう」

 

次に、右側の量産型の紹介に入る。

 

アドモンド「次に、こちらの量産型です。型番は『D型』、高火力のミニガンを装備した正面制圧型です」

 

D型の見た目はずんぐりとしていて、全身を隙間無く装甲で覆っていた。

 

アドモンド「武装は単純ですが、弾幕の形成や対空を得意としており、機動力の低さは装甲で補っています」

 

最後に、真ん中の量産型の説明に入る。その量産型は頭はJ型と同じスキンヘッドであるものの、顔にはバイザーではなく髑髏の形をした紫色の仮面を着けている。

 

アドモンド「最後にご紹介するのは、この『E型』です。こちらはこれまでの量産型と比べても、戦闘力は大幅に強化されています。理由としては、ほぼ全てのリソースを戦闘面に割いているからです」

 

 

 

ベスとソラの元に、ソラの艤装のオービットが妖精を乗せてやって来る。ソラは口元に人差し指を当て、静かにするよう指示をする。

 

アドモンド「さて、そろそろ質問の時間に移りましょう。では質問のあり方は?」

 

記者A「J型に関しては、以前アメリカで起きたテロなどで目撃例がありますが、どういうことでしょうか?」

 

アドモンド「はい、それについては残念な出来事がありました。実はそのテロが起きる3日前、試作型のJ型4機が強奪されていました。

今度は盗まれても起動できないよう、セキュリティを強化しています」

 

記者B「某傭兵組織とは、レイヴンズ·ネストの事でしょうか?」

 

アドモンド「もちろんです。我が社のように平和を求めているのではなく、汚い金のために動く傭兵が何をしでかすか予測できません。そのため、対抗策を用意しました」

 

その後質問時間が終わるとアドモンドはこう締め括った。

 

アドモンド「我々は、世界の平和を願っています」

 

 

 

 

 

発表会の映像を見終わったソラは、妖精の持ってきたデータを見る。するとソラの表情が険しくなる。

 

ベス「どうかしましたか?」

 

ソラ「量産型の···"材料"が解ったわ」

 

ベス「···なんです?」

 

ソラ「どうして量産型はあんなに大量に作られているのか、どうしてメンテナンスの度に支社か本社に送らなきゃいけないか、どうして保管に冷却が必要になるか···」

 

ソラはベスの方を向く。

 

ソラ「それはね···量産型の元が、女性の死体だからよ」

 

ベス「なっ!?」

 

その事実を聞いたベスは驚愕する。

 

ソラ「今は戦争中···断片的なものでも死体なら山程あるわ。それに、一部の国では女性の数が急に減っている···ということはつまり?」

 

ベス「···人身売買」

 

ソラ「そう。艦娘が少なかったり、宗教的に艦娘の存在などを認めない国にとって、優先的に量産型を配備してもらい、更にお金までもらえるとなれば、好条件過ぎるわ」

 

ソラは小さなため息をついて天井を見上げる。

 

ソラ「量産型を売り出した時点でキナ臭かったけど、ここまでとはね···ホント、皆殺しにしたいくらい」

 

ベス「···抑えてください」

 

ソラ「判ってるわよ」

 

そしてこのデータはレイヴンズ·ネストの面々に伝えられ、各々怒りを覚えるのだった。

 

 

 

 

 

その日の夜、ソラは月明かりに照らされた中庭で妖精と小さなお茶会をしていた。

 

妖精「それにしても、量産型の艤装は間違いなく妖精と提督が関わってますね」

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

さて、今回アリオール社が発表した新型の量産型はどんな影響を与えるのでしょうか?
ちなみに、Coepse soldierとは『死体の兵士』という意味です。

●アドモンド·デジール
ベリーショートの金髪で身長180cm、30歳で8月8日生まれ。

アリオール社の社長であり、量産型など自社製品の開発にも携わっている。

表面上は礼儀正しく、平和を望んでいる。
しかし目的のためには手段を選ばない人間でもある。

●J型の販売価格
販売価格は250万円。

●D型
全身をずんぐりとした装甲で覆っており、頭髪は見えない。なお、顔は目元がバイザーになったガスマスクで覆われている。
販売価格は220万円。

武装は専用の徹甲弾を使用したミニガンを装備し、駆逐艦から軽巡までの深海棲艦の装甲を貫通できる。しかし撃破するには連続で当てなければならない。

また、ミニガンによる弾幕形成と対空を得意としている。

●E型
スキンヘッドで、顔にはバイザーではなく紫色の髑髏の仮面を着けている。
販売価格は300万円。

武装は両手に12.7cm連装砲、両手脚部に内蔵型チェーンソーを装備しており、主に近~中距離を得意としている。

戦闘面に特化しており、これまでの量産型と比べて動きが良く、反応速度も大幅に向上している。


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第22話 深海棲艦(ver2.0)

?「君はきっとやれる···だから決して諦めてはダメだよ?大丈夫、君の思うように進んで」


武龍達3人が始祖のいる海域に進めば進むほど海の赤みは増していく···

 

武龍「さっき送ってもらった手紙、受け取ってくれてるかな···」

 

ミッドウェー「それは解らないな···」

 

武龍はMI海域を出る直前に、ミッドウェーの艦載機で手紙を送ってもらっていた···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミッドウェーの放った艦載機は2機、1機はレイブンズ·ネストの拠点に、もう1機は始祖の元へである。

 

拠点に艦載機が向かい、どこに手紙を置こうか迷っていると···

 

夕立「ぽい?」

 

艦載機は夕立に見つかり、狼狽えるが···

 

夕立「もしかして、ミッドウェーの艦載機っぽい?その手紙は?」

 

艦載機は手紙を握り、夕立から離れようとする。

 

夕立「そんなに恐がらなくて良いっぽい!覚えてない?私『ソロモン』よ!」

 

艦載機は何かを思い出した様子で夕立に手紙を渡す。

 

夕立「もしかして、武龍君の事?」

 

艦載機は頷く···

 

夕立「ありがとう!ちゃんと渡しておくわね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、始祖のいる島では···

 

始祖「ナルホド···ココマデ直接話シタイ人間ガ現レタカ···ミッドウェーヲ助ケタ事ハ良イトシテ···マア、良イダロウ···デハコレヨリ、全テノ オリジナル ヲ 呼ブ」

 

そして、深海棲艦の始祖は1つの焦げた鈴を鳴らす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深海棲艦の始祖が鈴を鳴らす前、レイヴンズ·ネストの拠点では会議室にて、草薙が手紙を読み上げていた。

 

手紙『俺はまだ生きている。でも戦争を終わらせるために、直接話に行く。もし深海棲艦が人類への攻撃をやめなかったら、その時は俺は死んだものとしてくれ』

 

ティス「アイツ、また抱え込みやがって」

 

アン「また私達を心配させた代償は払ってもらいますよ」

 

 

 

そしてそれぞれが自身の行動に移った頃、ラングレー、夕立、深海吹雪棲姫にだけ鈴の音が聞こえる。3人は何が起きたかを悟り、出撃ドックへと向かう。

しかし、出撃ドックの前にジュリアスが立っていた。

 

ジュリアス「どこへ行く?2人揃って出撃ドックに行こうとは、どういうことだ?何か任務や襲撃があったわけでも無いだろうに」

 

ラングレー「Shit···頼む、行かせてくれ」

 

深海吹雪棲姫「えっと、その···」

 

夕立「私達、悪いことするつもりじゃ無いっぽい!」

 

ジュリアスは2人を鋭い目付きで見ている。

 

ジュリアス「ほう、ではなんのつもりだ?」

 

夕立「それは···」

 

ラングレー「詳しいことは、Me達は言えない···けど、武龍のためにも行かなきゃいけないんだ」

 

ラングレーはそう言うとジュリアスに深く頭を下げる。

 

ラングレー「この通りだ!頼む!」

 

それを見た夕立と深海吹雪棲姫も同じように深く頭を下げる。

 

夕立「頼むっぽい!」

 

深海吹雪棲姫「お願いします!」

 

頭を下げ、頼み込むラングレー、夕立、深海吹雪棲姫。しかし心の奥では、最悪の場合は戦うしかなくなるかもしれない、そう思っていた。

すると、ジュリアスは2人に道を空ける。

 

ジュリアス「···行け」

 

夕立「え?」

 

ジュリアス「そこまで言うのなら、信じよう。だが、どのようなやり方かは知らんが、武龍はなんとしてでも守れ」

 

ラングレー「···Thank you!行ってくる!」

 

夕立「ありがとうっぽい!」

 

深海吹雪棲姫「ありがとうございます!」

 

 

 

ラングレーと夕立が出撃していくのをジュリアスが見送ると、ジュリアスの背後からリプが出てくる。

 

リプ「あの3人は、なんで行ってしまったのだ?」

 

ジュリアス「さぁな、裏切る様子ではなかったからな。そっちは任せるさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍達が始祖のいる島に着くと、もうその周囲のイロハ級は全てflagshipであり、ちらほらとオリジナルの者もいる···

 

武龍「なんか···物凄く緊張する」

 

ミッドウェー「私も久しぶりにアイツらと会うからな···」

 

ヲ級オリジナル

「アナタ ガ 本件ノ人間デスネ?ミッドウェー様ト共ニ コチラノ控え室デ待機シテイテクダサイ」

 

レキ「オレと深海鴉棲姫は?」

 

ヲ級「アナタ ハ 適当ニ ブラツイテイテ クダサイ。今回ノ会議ニハ 鬼姫ノミ ノ 出席トナリマス。深海鴉棲姫ハ人間ト共二出席シテクダサイ」

 

レキ「ちぇ~」

 

深海鴉棲姫「了解だ」

 

 

 

 

 

そして武龍とミッドウェーは会議の時間となったため、大広間に入る。

そこには鬼級姫級のオリジナル達が揃い踏み、中には人類が観測していない鬼級姫級もいる。見れば、深海化したラングレーと夕立、深海吹雪棲姫もいる。

 

そして武龍達の正面であり、1番奥の場所に巨大な艤装に寄り掛かるようにしている深海棲艦が口を開く。

その深海棲艦は白い肌と髪をしているが、腹部には穴が開いておりそこには虚空がある。

 

姫級「ヨクゾ来タナ···人間···私ハ 『中枢棲姫』ダ」

 

武龍「俺は武龍と言います」

 

中枢棲姫「堅苦シイノハ イイ···ソレデ、1度始マッタ コノ戦争ヲ ドウ終ワラセタイ?」

 

 

 

武龍は深呼吸をして話し始める。

 

武龍「俺は···皆が人間を憎んでて、でも悲しくて苦しくて···けど人間にも何かしら原因はあるし、でも罪の無い人間もいる。だから···」

 

次の言葉を、その場の全員は静かに聞く。それはまるで深海のようだった。

 

武龍「戦争を続けようとしてる奴らを倒せば良い、それが俺の答えだ。どうしてかって言うと、それは···ハッ···ハッ、ハッ···!」

 

緊張で、武龍は過呼吸気味になってくる。しかし、武龍の右側の背後にいた深海鴉棲姫は武龍の肩に手を置く。

 

深海鴉棲姫「大丈夫だ。ゆっくり、ゆっくりで良い···」

 

再び武龍は深呼吸し、続きを話し始める。

 

武龍「俺は、戦ってるのが正直怖い···初陣の時に"死ぬかも"って思って、それが戦う度に続いてる。戦うのが怖いのは、艦娘も同じ。それに···深海棲艦だって、辛いことを繰り返してるんだろ?」

 

再び武龍は深呼吸をする。

 

武龍「人間だって、罪の無い奴もいるし···だから俺は、皆に苦しんでほしくない、悲しんでほしくない···でも、そっちには憎む理由があるんだろ?」

 

武龍は何度も深呼吸をしつつ続けるが、その声は悲しく絞り出すようで、胸を押さえて喋っている。

 

武龍「なら、その原因になった奴らや戦争を続けようとしている連中を倒せば良いんじゃないか?めんどくさいのなんて関係無しに!」

 

再び武龍は過呼吸気味になり、膝をつく。ミッドウェーと深海鴉棲姫、ラングレーや夕立、深海吹雪棲姫も武龍に駆け寄ろうとするが、中枢棲姫はそれを制する。

すると、武龍はゆっくり立ち上がる。

 

 

 

武龍「もう、大丈夫だ···悲しまなくて良い、苦しまなくて良い···」

 

武龍は深海棲艦達を見回す。

 

武龍「大丈夫だから···だから終わらせよう、終わらせるための戦いをしよう···俺も、戦うから」

 

 

 

武龍は思いのたけをぶつけ、緊張で後ろに倒れるがミッドウェーが受け止める。

 

ミッドウェー「おい、大丈夫か?」

 

武龍「正直こういう場は産まれて初めてだから勝手が判らん···ハァ、ハァ···」

 

すると、深海棲艦達がそれぞれ反応を示していく。

 

『港湾棲姫』「まあ、あなたの気持ちは解ったわ···正直私とこの子は争いは嫌いだもの···」

 

港湾棲姫は隣の『北方棲姫』と『北方棲妹』の頭を撫でながら言った。それを皮切りに賛同の声が上がり始める。

 

『深海鶴棲姫』「なんか···こいつの話聞いてると···戦争なんかどうでもよくなっちゃった···」

 

『集積地棲姫』「まあボクはコレクション集められれば戦争なんてどうでも良いんだけど···それに、武龍と言ったね。君もしかしてアスペルガーなんじゃない?」

 

武龍「···なんで気づいたんだ?」

 

戦艦棲姫「アスペルガーって何?」

 

集積地棲姫「発達障がいの1つさ···まあ、武龍君は軽度な方だけどね···まあ、気づいたのはなんとなくそう思っただけさ」

 

防空巡棲姫「そういえばあんたから借りた医学書にあったね···」

 

『南太平洋空母棲姫』

「どうりで言動に違和感があったわけね···」

 

集積地棲姫「まあ、アスペルガー持ってるからといってどうとかって訳じゃない。コンプレックスに感じてるかもしれないけれど、全然その必要は無い···って話が脱線した!」

 

ラングレー「Meは、武龍の選んだ戦いに賛成だ」

 

夕立「ソロモンも賛成っぽい!」

 

深海吹雪棲姫「右に同じくです!」

 

中枢棲姫「この様子だと···"これまでの戦争"は終わりで良いか?まあ、事の真相はこの場で話そう···」

 

ミッドウェー「真相···あの事か?」

 

中枢棲姫「そうだ···」

 

場の空気が一変する···武龍はまるで深海にいるかのような冷たさを感じ、鬼級姫級達はオーラを纏い始める···

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

さて、次は事の真相ですね!

●レイヴンズ·ネストの夕立
かつて『ソロモン』と呼ばれた深海棲艦のオリジナルであり、江ノ島艦隊に撃破され、数時間後に夕立としてドロップした。

その後は小さな鎮守府に所属、後に改二となり、日本と中国の政治的な取引で中国に移籍、霧島達と中国を脱出する際、発見した兵士をためらいなく砲撃している。

●オリジナルのドロップ
オリジナルはドロップしても深海棲艦の頃の艤装を扱うことが可能であり、場合によっては艦娘の艤装と両方使うことが可能、また、艤装無しでも海に立てるという違いもある。


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第23話 真実(ver2.0)


?「やっと真実まで辿り着いたね。でも、これで終わりじゃないんだよ」


中枢棲姫はこの戦争の真実を語り始める。

 

 

 

世界には今で言う『妖精』という存在がおり、中枢棲姫はその1人だった。周りの妖精達からは『特異点』と呼ばれ、他の妖精達とは能力の差が圧倒的だった。

 

しかし中枢棲姫は穏やかで優しく、他の妖精達と楽しく過ごしていたのだ。

また、最も好んでいたのはのんびりと海を眺めている事だった。

 

そんなある日、空間が大きく歪む事件が起こった。歪みのすぐそばにいた中枢棲姫はその影響をモロに受け、妖精の体では無くなり、1人の人間の女性の姿となってしまう···

 

そして中枢棲姫は他の妖精の助けを借りながら生活していったのだが···

 

 

 

ある日、他の妖精達と船を作り、航海へ出ることにした。中枢棲姫は元々海の妖精だったが、新しいことに挑戦しようと、人間と同じやり方で航海をしたのだった···近くを通る国には許可を取り、順調に航海は進んでいた···

 

しかし、ある国の領海を通った時、その国の護衛艦が近くを通った。

 

 

 

 

 

その砲口は中枢棲姫の船に向けられ──

 

 

 

警告無しに砲撃された···

 

 

 

過去の中枢棲姫(なぜだ···どういうことだ···領海に入る許可は取ってあるというのに···どうして?)

 

 

 

海から砲撃してきた船の乗組員の心が聞こえてきた。

 

乗組員A(これで我が国の本気度を世界に知らしめることができる!)

 

乗組員B(1人死んだところで、我が国の国民は守られるのだ···彼女はむしろ英雄だな!)

 

乗組員C(あの船を撃ったのは私だ!見たか!あの正確な砲撃を!)

 

 

 

過去の中枢棲姫(そんな···そんな···)

 

 

 

その護衛艦の心も聞こえてくる。

 

護衛艦(すまない···だが、我が国のためだ···死んでくれ···)

 

 

 

 

 

過去の中枢棲姫(こんな···こんな···嫌だ···嫌だ······)

 

中枢棲姫の心がどす黒く赤く染まっていき、体から赤黒いオーラが溢れ出す。

 

 

 

過去の中枢棲姫(沈め···沈め···シズメェェェェェェ!)

 

中枢棲姫の体は白く変色し、目は赤くなり、赤いオーラを纏い、巨大な艤装を創り出す···

 

そして、浮上する。

 

過去の中枢棲姫(イイダロウ···オマエタチガ···ソノツモリナラ···)

 

 

 

乗組員A「ん?なんだあれは!?」

 

 

 

過去の中枢棲姫「スベテ ヲ シズメテヤロウ···ナンドデモ ダ!」

 

 

 

しかしこの"変異"は中枢棲姫だけではなく、世界中の海に伝播し、かつての大戦で沈んだ艦達の怨念を具現化させ、『深海棲艦』を産み出してしまった。

 

その護衛艦を沈めた後、中枢棲姫の親友の妖精がなだめようとするが···

 

中枢棲姫「ワタシ ハ ···『中枢棲姫』ダ!モウ モドレハシナイ···イケ、ワタシ ノ キガカワラナイウチニ···」

 

その親友の妖精は涙を流しながら飛び去っていった──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍「そんな事が···」

 

中枢棲姫「ちなみに、戦争が始まって最初に滅ぼしたのがその国だ···どうだ?これが真実だ···そうだろう?『リリ』」

 

武龍の右肩に乗っている妖精が頷く。

 

妖精「久しぶりです···『コア』···」

 

コア(中枢棲姫)「確か、2年以上経ってるはずだ···こんな事になってしまって···ごめんね」

 

リリはどこからかハリセンを取り出し、猛スピードでコアの元へ飛んで行くと、コアの頭をハリセンでひっぱたいた。深海のように静かな空間にハリセンの音が響く···

 

リリ「バカ!こんな事して···バカバカバカ!」

 

リリは泣きながらハリセンで何度もコアの頭を叩く。近くにいた駆逐古鬼が立ち上がるが、コアはそれを制する。

そしてコアはリリを胸に抱き締め、涙を流す。

 

コア「ごめんね、こんな事になって···ごめんね!」

 

2人が泣き止むまで、皆はそっとしておいた···

 

 

 

 

 

2人が泣き止み、リリがもう1つの真実を語り出す···

 

 

 

コアが深海棲艦となった後、リリはどうすれば良いのか解らず、ある家に住み込んだ。

その家に住んでいる男性は妖精が見え、リリの事にもすぐに気づいた。

 

それからしばらくし、リリはコアを止めるためにかつての大戦で沈んだ艦達の希望を具現化させることにする···それと同時に、人類を試すことにもした···

 

その計画は最初はその男性に言い出せなかったが、その事を打ち明けた時、その男性から3つのお願いをされ、それも込みで計画を進めたのたのであった···

 

 

 

リリ「そして、その希望が『艦娘』なのです···」

 

『戦艦水姫』「なるほど···それは私達も知らなかったな···」

 

コア「さて···では武龍、これからどうするのだ?」

 

武龍「俺は···」

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

さて、深海棲艦と艦娘が産まれた真実が明かされましたね。
では武龍の答えは?

●ある国
小さいが、主に農業が盛んな国。
しかし政府は他国の技術に嫉妬しており、様々な難癖を着けてはマウントを取ろうとするが失敗続きであり、挙げ句の果てには無断で領海に侵入されるという始末であった。

そのため、『我々はその気になればやるぞ!』ということを知らしめるため、コアを騙して沈めた。
だが目論見は外れ、すぐさま多数の制裁を受けたのだが、コアがそれを知ることはなかった。

●コア
中枢棲姫の本当の名前であり、かつては1人の妖精だった。

『特異点』と呼ばれている通り、その能力は世界各地の妖精にまで影響を及ぼす程だったが、本人が努力家なため、その力をフルに使うことはなかったが、皮肉にも初めてフルに使ったのが沈められた時だった···

●リリ
黒い短髪で赤い和服を着ている妖精。

コアとは親友であり、武龍の機甲兵装を担当する妖精である。
主に修理等を得意とする妖精であるが、コアが深海棲艦となった後、他の妖精達と共に艦娘を創る。

その際、現在で言う『応急修復女神』に1トンの量の金平糖を献上したとか···


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外伝 AL作戦(ver2.0)

武龍達がMI海域での作戦の裏で行われたAL作戦。
そこでの敗退の原因とは?


武龍達がMI海域に出撃し、レイブンズ·ネスト陣営の時雨、夕立、大潮、曙、霧島、鳳翔の6人は日本の横須賀艦隊、ロシア艦隊(レヴォツィとは別の艦隊)、イギリスのラニエダ艦隊と共にAL海域へと進んでいた。

 

ちなみにこちらのオペレーターはベスが務めており、日本陣営の艦隊は横須賀の艦隊である。

 

ベス《そろそろAL海域へと入ります。皆さん、覚悟はよろしいですね?》

 

全員が気を引き締め、海域に入る···波は穏やかで確認できる深海棲艦も少ない···

 

時雨「ここは本当に主要海域なの?」

 

ベス《はい。確かにAL海域ですが、主要海域にしては数が少ないですね···》

 

利根(ロシア艦隊所属)

「おかしいのう···これは待ち伏せもあり得るぞ···」

 

加賀(横須賀艦隊所属)

「偵察機からも、大きい数は確認できなかったわ···」

 

すると、突然通信が入る···

 

 

 

???《(ノイズ)···聞こえますか?···私ハ ココ二 住ム 港湾棲姫 ト イイマス···》

 

ガングート(ロシア艦隊所属)

「姫級からの通信だと!?」

 

港湾棲姫《私達ハ 戦イヲ望ミマセン···ダカラ、来ナイデクダサイ···》

 

ベス《なるほど、争いを望みませんか···どうりで数も攻撃頻度も少ないはずです···資料を見ても、この海域での被害報告は少ないですね》

 

夕立「このまま手を出さないんなら、戦わなくても良いっぽい!」

 

大潮「そうですね」

 

横須賀提督《それには僕も賛同だよ。実際、周りの深海棲艦も自衛のための攻撃に徹してるし、それ以外は監視にまわってる···こちらを攻撃する気ならもう既にやってるしね》

 

港湾棲姫《デスカラ、オ願イデス···来ナイデクダサイ···》

 

しかし、ロシア提督とラニエダはそれを拒否する。

 

ロシア提督《構わん、やれ》

 

夕立「ちょっと待つっぽい!あっちは戦いたくないって言ってるっぽい!」

 

ロシア提督《このまま奴らを野放しにしておけば、この海域が深海棲艦の航路となったままだ。それを見逃す訳にはいかない···それに、『戦いたくない』など、口ではいくらでも言えるからな!》

 

ラニエダ《それは私も賛同いたします···深海棲艦を倒す、それが私達提督と艦娘の役目ですから···艦隊、攻撃を開始!目標、前方の深海棲艦!》

 

ロシア艦隊とラニエダ艦隊は攻撃を再開し、イロハ級が次々と撃破されていく。

 

ベス《港湾棲姫さん、戦いたくないという証拠は出せますか?》

 

港湾棲姫《イマ、ヒブソウ デ ココニイマス···》

 

ベスが観測ドローンを確認すると、島の砂浜に3人の深海棲艦が丸腰で立っている···

港湾棲姫と思われる白い女性とその手を握り、後ろに隠れて様子を伺っている2人の子供の深海棲艦が確認できる。

 

子供の深海棲艦は、2人とも震えていた──

 

 

 

 

 

ベス《なるほど···解りました···レイブンズ·ネスト艦隊、これより『我らの目的』の遂行に移りなさい!》

 

その瞬間に時雨達はロシア艦隊とラニエダ艦隊に砲口を向ける。

 

ロシア提督《貴様ら、裏切ったのか!?》

 

ベス《裏切ってなどいません···ただ『私達の目的』を遂行するだけです···規約にもありましたよ?

『我らの目的は"あくまでも戦争の終結"』だと···今のあなた方の行動は"戦争を続ける行為"であり、規約に違反しています》

 

ラニエダ提督《奴らが戦争を望んでいない証拠はあるのです?》

 

ベス《先程、観測ドローンで捉えた映像を送ります···それに、彼女達がもし戦う気なら、この時点で攻撃していますよ?》

 

ロシア提督《···やれ!》

 

ロシア艦隊はサウスダコタを除いて攻撃を開始し、イロハ級が沈む。

そのサウスダコタは、かつて有澤から手解きを受けた者だった。

 

サウスダコタ「おい!」

 

ガングートはサウスダコタを睨み付ける。

 

ガングート(ロシア艦隊所属)

「なぜ撃たなかったサウスダコタ?」

 

サウスダコタ「なぜって···戦いたくない奴らと戦ってどうするんだよ!?それに、武装解除してるなら降伏してるのと同じだ!」

 

ガングート(ロシア艦隊所属)

「聞いたはずだ。このまま奴らを野放しにしておけば航路は奴らのままだと」

 

サウスダコタ「だが現にあいつらは···」

 

ガングート(ロシア艦隊所属)

「奴らの所業を見てきただろう!?それに···沈んだ者達の事も考えろ!」

 

サウスダコタ「けどよ···」

 

するとそこに、霧島と大潮、鳳翔がやって来る。

 

霧島「お取り込み中すみません、もし彼女らを攻撃するというのなら···ガングートさん、私を倒してから行きなさい」

 

ガングート「ほう···良いだろう、大戦の時のケリをつけてやる」

 

ロシア艦隊に、大潮と霧島が立ち塞がる。

 

 

 

ラニエダ艦隊の前に、時雨と夕立、曙が立ち塞がっている···

 

ラニエダ提督《あなた方も裏切るのですか?あの時深海棲艦を助けていた時点で、ろくなものではないですがね》

 

曙「規約に違反したのはどっちよ?」

 

レイヴンズ·ネストの曙とラニエダ艦隊の曙が対峙する。

 

曙(ラニエダ艦隊所属)「アンタも私と同じ曙でしょ!?深海棲艦に味方するの!?」

 

曙「深海棲艦がしてきたことは許せないわ···けれど、それ以上に戦争を続ける事が何を生むのか···私達は知ってるはずでしょ!このクソ曙!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、イギリスの別艦隊がAL海域に向かっていた···この艦隊は全て量産型で構成されており、かなりの数がいる。

 

イギリス提督「もうすぐだな···さぁ人形ども!やってやろうぜ!」

 

しかしそこに砲撃が撃ち込まれる。

 

イギリス提督「なっ!深海棲艦か!?」

 

装甲空母姫(ノーマル)「クックックッ···沈ンジャナイナサイ···」

 

北方水姫(オリジナル)「マッテイロ···港湾、ホッポ···今行クゾ!」

 

2人の姫級とネ級2体、ヲ級2体の艦隊は大量の量産型を薙ぎ倒しながら進む···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガングート(ロシア艦隊所属)

「なんだその動きは!?」

 

霧島はゆらりゆらりとした動きでガングートの攻撃をかわし続ける···これはアンから教えられた戦術であり、ゆらりとした動きの最中に、確実に砲撃を撃ち込んでいく···

 

その動きに統一性は無く、掴みどころの無いものだった。

 

霧島「経験こそ、あなたが勝っているでしょう···けれど、戦術が違います!」

 

そして霧島はガングートに肉薄すると、掌底をガングートの腹部に打ち込む。

 

ガングート(ロシア艦隊所属)

「ガハァッ!」

 

 

 

曙同士の戦闘ではレイブンズ·ネスト側の曙が一方的に攻撃していた···正面から、確実に、隙を与えず、押し通す···ジュリアスとランから教わったことをミックスした戦闘を続けている···

 

曙は砲撃と格闘を合わせ、左腕で肘鉄を打ち込んでから体を左に回転させつつ、主砲のストックで顔を殴り付ける。

そして回転した勢いで回し蹴りを叩き込み、曙(ラニエダ艦隊所属)は倒れる。

 

曙(ラニエダ艦隊所属)

「こんなの···駆逐艦のやり方じゃない···」

 

曙「そうよ···私達は"駆逐艦"じゃなくて、"艦娘"よ!」

 

 

 

一方、ロシア所属のサウスダコタは説得に失敗し、裏切り者として攻撃されていたが、その全てをかわしていく。

 

サウスダコタ(皆の攻撃は···有澤さんの弾幕と火力に比べたらなんでもない!)

 

今のサウスダコタにとって、ロシア艦隊の攻撃は練習にすらならない程のものとなっており、歩きながら回避できるほどである。

 

サウスダコタ「戦争を終わらせず続けることに、なんの意義があるんだ!」

 

サウスダコタは利根に一気にに接近し、アッパーを食らわせる···

 

 

 

 

その頃時雨と夕立はラニエダ艦隊と戦っていたが、時雨の誘導戦術と夕立のトリッキーな攻撃にラニエダ艦隊は翻弄されていた。

時雨の誘導戦術はピスに教わり、夕立は『ソロモン』としての経験とティスから教わったスピードを活かした戦術を組み合わせている。

 

夕立「この程度、止まって見えるっぽい!」

 

夕立は時雨の肩を踏み台に大きくジャンプし、体を回転させて周囲に魚雷をばらまく。

しかしそのばらまきは正確なものであり、周囲にいた3人の艦娘に魚雷を直撃させる。

 

その3人の艦娘は、時雨によっていつの間にか誘導されていたものであり、夕立が着水するのに合わせて屈んだ夕立の頭上を時雨の砲撃が飛んで行く。

 

気づけば、時雨と夕立はイギリス艦隊を全滅させていた。

 

 

 

 

 

一方横須賀艦隊は深海棲艦の援護に務め、ロシアとイギリスの提督と話していた。

 

ロシア提督《なぜ深海棲艦の味方をする!?深海棲艦など全て根絶やしにすれば良いだろう!》

 

ラニエダ提督《これは国際問題ですよ!》

 

横須賀提督《根絶やしにすれば良いという問題じゃない···君達も映像を見たはずだ。彼女達は争いを望んでいない···

 

ならこちらも攻撃する意味はないはずだ···国際問題?あの映像と現状を無視してでも攻撃をするということは···戦争を続けなければならない理由でもあるのかい?》

 

ロシア提督《なっ···そんなこと、あるわけ無いだろう!》

 

ラニエダ提督《そんな妄想、今すぐやめなさい!》

 

しかしその時、装甲空母姫と北方水姫が到着する。

 

 

 

北方水姫「港湾!ホッポ!···コノ状況ハ?」

 

港湾棲姫「日本ト レイブンズ·ネスト ノ 艦隊ガ話ヲ聞イテクレタノ···」

 

北方水姫「ソウカ。オ前達、感謝スルゾ」

 

 

 

 

 

戦闘が終了し、それぞれが帰還する···

 

ベス《あなた方が争いを望まない者達ということは解りました···この事は、こちらが敗退したということにしておきます。その方があなた方も動きやすいでしょう》

 

港湾棲姫《デモ、あなた達は···》

 

ベス《私達レイブンズ·ネストは戦争を忌む者達の集まりであり、戦争が無いに越したことはありませんので···では、また縁があれば会えるでしょう···》

 

 

 

 

 

 

 

こうして、AL作戦は『敗退』という形で幕を閉じたのだった···

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

レイブンズ·ネストの艦娘達はAF達との修行により戦闘能力が超強化されています。ちなみに、この時点でレイヴンズ·ネスト所属の艦娘は全て改二となっております。


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第24話 進め、海原へ(ver2.0)


?「さて、あとはもう君のやるたいように進めば良いだけだよ。けど、その前にやることがあるようだね」


コアに改めて問われた武龍は口を開く。

 

武龍「俺は···やっぱり戦争を続けようとする奴らを倒したいと思う···そいつらがいる限り、この戦争は終わらない。

だからそいつらを倒すための戦いを始めようと思う···

でも、やっぱり話し合いで済まないかなぁ···」

 

リリ「それで済めば1番良いんですけど、そうはいかないんですよねぇ···」

 

コア「それがお前のやり方か···良いだろう、それなら遠慮無くやれるな···ところで孤島棲姫、何か言いたそうだな?」

 

 

 

武龍達の話を聞いていた孤島棲姫は、鋭い目付きで武龍を見ていた。

 

孤島棲姫「私は武龍君の意見には賛成よ···けど、もう一度戦いたい···今度こそ勝ちたいの···」

 

その意志に、武龍は同意した。

 

武龍「もちろん良いさ。けどえーっと···ペイント弾ってある?」

 

武龍の問いに、最も資材を持っている集積地棲姫が答える。

 

集積地棲姫「君の武器に使えるのは多分無いけど、材料ならある」

 

それを聞いたリリはガッツポーズをする。

 

リリ「なら、私が作りましょう!」

 

コア「手伝おうか?」

 

コアの申し出に、リリは目を輝かせる。

 

リリ「はい!また前みたいに作りましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し沖に出たところで互いに向き直る···やはり孤島棲姫の艤装は巨大で、ラバウル防衛戦の時とは違い、1対1である。

 

コア《それでは···始め!》

 

 

 

推奨BGM『Panther』(AC4より)

 

 

 

試合開始のラッパをレキが吹く。

 

それと共に武龍は空へ飛び上がり、アサルトライフルとショットガンを連射していく。弾丸の連射を受けた孤島棲姫の砲台はすぐに2つ程破壊判定となる。

 

しかし孤島棲姫は水中に潜り、浮上したかと思えば戦闘機を発艦させてまた潜るという戦法を取った。

 

ミッドウェー(なるほど···持ち前の頑丈さを活かしての消耗戦か···)

 

そして時折下から突き上げたり、尾ヒレを振ってきたりという攻撃も織り混ぜてくる。

武龍はアサルトライフルと比べて有効射程の劣るショットガンでは分が悪いと思い、ロケットを起動させて砲撃していく。

 

孤島棲姫(あの時とは比べ物にならない···機甲兵装とかいうやつの性能もそうだが、本人の実力がここまで成長してるとは···)

 

 

その光景を見ていた深海棲艦達も食い入るように見ている···

 

ミッドウェー「アイツと渡り合うとはな···」

 

リリ「流石武龍です!武龍はレイブンズ·ネストの戦闘部隊のエースですから!」

 

戦艦水姫「この戦い···武龍が勝つな」

 

 

次第に武装が減らされていく孤島棲姫···

しかし最後の秘策として発艦させた戦闘機の反対側から武龍を挟むようにして飛び出ると、艤装から抜け出し、艤装を蹴って武龍から少し高い高度から、右手に持った12.7cm2連装砲を向ける。

 

3方向からの時間差を合わせて計算された同時攻撃···砲弾、戦闘機、艤装の距離は同じ···しかし武龍は戦闘機の弾をPAで受け、艤装と砲弾を孤島棲姫へ向けてQBすることで回避し、孤島棲姫に接近する···

 

武龍「この距離なら、外さん!」

 

ペイント弾を発射、孤島棲姫の顔面はピンク色のペイントに染まる。武龍は孤島棲姫を抱えると、海上に着地する。

 

武龍「気は済んだか?」

 

孤島棲姫「いずれまた決着をつけるわ···それまでは死なないことね···」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日は武龍達は休む事となり、のんびりと休憩を取っていた。そしてその夜、深海吹雪棲姫は深海鴉棲姫に問いかける。

 

深海吹雪棲姫

「深海鴉棲姫さん、あなたは何者ですか?」

 

武龍「あ、そういえば俺も聞いてなかったな」

 

ミッドウェーはお茶を1口飲みつつ頷き、レキも興味津々である。

 

深海鴉棲姫

「そういえば、まだ話してなかったな」

 

明かりとして使っていた古い裸電球が一瞬だけ点滅する。

 

深海吹雪棲姫

「私はあらゆる艦船の記憶を持っていますが、あなたの記憶はありません。それに、全ての深海棲艦の事を把握しているコアさんですら、あなたの事を把握できずにいました···

あなたは、本当に深海棲艦なのですか?」

 

深海鴉棲姫は不敵に微笑む。

 

深海鴉棲姫

「私はもちろん深海棲艦だ···が、通常の深海棲艦ではない」

 

 

 

すると、深海鴉棲姫は武龍の頬を左手の甲で撫でる。

 

深海鴉棲姫

「武龍···私は、お前だ」

 

その言葉に、場が凍りつく。

 

武龍「ええっと···ど、どういうことだ?」

 

レキ「いやいやちょっと待て、どういうことなんだ?」

 

深海鴉棲姫

「深海棲艦が誕生する前は、私は単に轟沈した艦船の怨念の中でも特に形の無い、不定形な怨念が漂っているような状態だった。しかし、ある日武龍が海に落ちた時があってな」

 

武龍「海に落ちた···もしかして、小学校の頃の臨海学校の頃か?」

 

深海鴉棲姫は頷く。

 

深海鴉棲姫

「おそらくな。その時に武龍が私に手を伸ばしてな···私は不意にその手を取ったんだが、その瞬間···私と武龍がリンクしたんだ」

 

武龍「やっぱり、臨海学校の時で確定だな」

 

深海鴉棲姫

「その後コアによって深海棲艦が現れたんだが、私は元から不定形な存在だっただけに、意識がハッキリしているだけで形はなかったんだ。

しかし、気づけば"透き通った赤い海"に私はいた」

 

 

 

透き通った赤い海に、深海吹雪棲姫の脳裏に誰かが背中を押してくれた時の事がよぎる。

 

深海吹雪棲姫

「透き通った赤い海···?」

 

深海鴉棲姫

「そうだ。そこで私は誰かは解らん男と出会ってな。その男が私を送り出してくれてな···海の上に浮上した時には、この姿になっていて、刀も持っていたよ。そして今に至る、というわけだ」

 

深海鴉棲姫は自身の形を確かめるように、指をゆらゆらと動かす。

 

深海吹雪棲姫

「そんなことが···はぁ、どうりで私もコアさんも探知できないわけですね」

 

ミッドウェー「武龍とリンクしたということは、それまでの武龍の記憶も持っているのか?」

 

深海鴉棲姫

「ああ、持っているとも」

 

武龍「なんか、俺と同じっていうかあの後に生まれたんなら···なんだか妹みたいだな」

 

その言葉に、深海鴉棲姫は笑う。

 

深海鴉棲姫

「アッハッハッハッハッ!そうだな、それでも良いさ。"兄さん"」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM『海原へ!』

 

 

 

翌日の午前8:00──

 

リリとコアが応急処置をした頭部装甲を着け、武龍はレイブンズ·ネストと連絡を取る。

 

武龍「こちらミグラント···ではなく武龍だ。聞こえるか?」

 

瑞希《その声は···生きてたんですね!》

 

武龍「ああ!色々あったが、深海棲艦との戦争はもう終わりだ!だが、戦争を続けようとする連中を倒さなきゃこの戦争は終わらないと思う···どうだ?」

 

ティス《武龍!このやろう!心配させやがって!後で埋め合わせしろよ!》

 

アン《私も埋め合わせを求めます···でも、無事で良かった···》

 

ピス《ご無事でなによりです···その通りです、武龍。ようやく辿り着きましたね···》

 

青葉《後で取材させてくださいね!》

 

ジュリアス《無事なら良い···で、作戦名はどうする?》

 

武龍《そうだな···作戦名はこの戦争を終わらせるためだから···『クローズプラン』なんてのはどうだ?》

 

その言葉に、AF組は目を見開いて顔を見合わせる。

なぜならそれは『本来起こり得た未来』での作戦名だったからである···

 

草薙《では···これよりレイブンズ·ネストは深海棲艦達と合流し、戦争を続けようとする者達の撃破に移ります!》

 

ベス《目標となる組織と鎮守府は既に特定してあります!》

 

草薙《総員!準備でき次第、出撃してください!》

 

サウスダコタ《初めましてだが、私もレイブンズ·ネストに加入した。力になるぞ!》

 

 

 

そして武龍は振り向き、深海棲艦達に告げる···

 

武龍「行こう!」

 

深海棲艦達は雄叫びを上げ、それぞれが艦隊を組み、出撃準備をしていく。その先頭に立つのは武龍である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、武龍と深海棲艦達、そしてレイブンズ·ネストの面々は海原へと進み出て行く···

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

孤島棲姫との再戦を乗り越え、更に深海棲艦と共に進み始めましたね!
そして明かされた深海鴉棲姫の真実、どうでしたか?

●深海鴉棲姫の誕生
深海鴉棲姫は元は形の無い、不定形な怨念だった。
しかし、武龍が小学校の臨海学校にて海に落ち、その際に怨念である時の深海鴉棲姫に手を伸ばし、深海鴉棲姫はその手を取った。

その瞬間深海鴉棲姫は武龍とリンクし、武龍の記憶を手に入れる。

その後コアによって深海棲艦達が生まれるが、元となる形の無かった深海鴉棲姫は意識だけ漂っていた。
だが謎の"透き通った赤い海"にて謎の男性と出会い、形と刀を得て浮上し、深海鴉棲姫として誕生した。

●サウスダコタの入隊
AL作戦の後、ロシアからは裏切り者として認定されたため、帰還する時にレイブンズ·ネストに着いていき、そのままレイブンズ·ネストに入団した。

戦闘力は有澤からの教授により、回避力は他の艦娘と比べて相当なもの。


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第25話 クローズプラン(ver2.0)


?「さて、最後の一押しだよ。こんな時こそ、油断しないでね」


その日、世界に1つの声明文が発信される──

 

『我々レイブンズ·ネストは深海棲艦との戦争を終結させることに成功した。これを信じるかどうかは個人に委ねる。

しかし、戦争を続けようとするするもの達を我々は排除し、本当の戦争の終結を目指す。そしてそれを邪魔する者達は薙ぎ払う』

 

この声明文に各国は動揺したのだが、1つだけレイブンズ·ネストに直接連絡をしてきた国があった···

 

オズウェル《私だ···深海棲艦との戦争が終わったというのは本当か?》

 

瑞希「はい。MI作戦の際、行方不明となったミグラントによって平和的な終結を向かえました。

彼女らはもう、人類の敵ではありません···が、信じるかどうかはあなたにお任せします。邪魔する者は薙ぎ払うだけなので···」

 

オズウェル《いや、私は君らを信じようと思う···むしろ我々にも協力させてくれ。戦争が終われば、それだけ多くの人命を救える。

これは機密情報だが、我々が確認している"戦争を続けようとする組織"のリストだ》

 

瑞希「そんなものを送って、あなたは大丈夫なのですか?」

 

オズウェル《苦しんでるのはアメリカ国民だけではない···少しでも早く戦争が終わるのなら、私の立場など関係ない!》

 

瑞希「あなたに敬意を表します、アメリカ合衆国大統領」

 

オズウェル《私はこれから国内の対応に移る。他にも手伝えることがあれば、遠慮無く言ってくれ!》

 

 

 

オズウェルは通信を終えると椅子に寄りかかり、秘書の方を向く。

 

アメリカ大統領「すぐに他の資料もくれ。戦争を終わらせ···」

 

秘書は拳銃を構えており、銃口をオズウェルに向けていた──

 

秘書「あなたならこうすると思いましたよ···」

 

オズウェル「まさか君も、戦争を続けようとする者だとはな」

 

秘書「今戦争が終わっては困るんですよ···今戦争が終われば、多くの利権が失われるので」

 

秘書が引き金を引こうとした瞬間、部屋に軍人が入り、秘書に向けて発砲、秘書は頭を撃ち抜かれ死亡する。

 

軍人「大統領、我々はあなたに賛同します!戦争を終わらせましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、日本でも動きがあった···

 

日本の首相官邸では首相である創平と秘書官、そして平二を含む一部の議員や官僚が拘束されていた。

 

創平「なぜこんなことをするのですか!?戦争は無くなった方が良いのに!」

 

官僚「首相、戦争はビジネスです。日本の三大鎮守府のおかげで元々戦争で儲かっていた我々が更に儲かった。それが今、あんな馬鹿げた連中のせいで止まるなんて、そんなの許されませんよ」

 

平二「こんなことをして···国民が納得するとでも思っているのか!?」

 

官僚「事実は書き換えれば良いんですよ···これまでの歴史のように···ハッハッハッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オペレーターの席から立とうとした瑞希の元に通信が入る。

 

瑞希「こちらレイブンズ·ネストです」

 

江ノ島提督《良かった繋がった!俺の艦隊も手を貸すぞ!》

 

瑞希「なぜです?」

 

江ノ島提督《深海棲艦達との戦争は俺らが知らないとこで終わったんだろ?だったら今度は戦争を続けようとする奴らを倒せばいいだろ!》

 

更に通信が2つ入る。

 

横須賀提督《僕も賛同だ。日本の鎮守府は抑えておくよ》

 

舞鶴提督《こっちは日本海側を任せろ!この機に乗じて来る奴らもいるだろうから、防衛戦は任せとけ!》

 

瑞希「皆さん···ありがとうございます。では、頼みましたよ!」

 

 

 

日本三大鎮守府からの通信のすぐ後に、レヴォツィから通信が入る。

 

レヴォツィ《聞こえるか?こちらレヴォツィだ》

 

瑞希「はい、聞こえています」

 

レヴォツィ《良かった。こちらも君達に賛同し、行動を開始する···ようやく終わらせられるのなら、喜んで行こう》

 

レヴォツィに礼を言ったその後、またすぐに通信が入る。それはラバウル鎮守府からだった。

 

ラバウル提督

《こちらラバウル提督。私達も賛同し、行動を開始します!》

 

それぞれが動き出し、戦争を終わらせるための戦いは大きくなっていく。

 

 

 

 

 

その後、各地のアリオール社、深淵教、人類解放軍の支部や本部に向けて、ストークBに搭載されたレイブンズ·ネストのメンバーが向かう···

当然その中には蛟もいた。

 

蛟「総員!システム、データリンク!思う存分食いつくしなさい!」

 

草薙《アン、ようやく本気で戦えるので、思う存分に焼き尽くしてくださいね!》

 

なお、レイヴンズ·ネストの拠点では鳳翔、アークロイヤル、霧島、大潮、曙、大東の6人が防衛に着き、ジュリアスは少し防衛に参加してからVOBで向かう事になっている。

 

 

 

深海棲艦側も侵攻を開始、コアが全ての深海棲艦へと通信を入れる···

 

コア「皆の者···もう戦争は終わりだ、と言いたいがまだ戦争を続けようとする輩がいる。

お前達の心にある怒りを、憎しみを、悲しみを···戦争を続けようとする輩に全てぶつけ、あの冷たく暗い水底に沈めてしまえ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すぐさまジュリアス達は拠点の周囲に展開し、防衛の構えに移る。海側では、コアの呼び掛けにより集まった深海棲艦が防衛を担当している。

 

すると、1人の女性が拠点に向かって歩いてくる。鳳翔達は警戒するが、ジュリアスはそれを制する。

 

ジュリアス「『愛海(あみ)』さん、来たのですか」

 

愛海「ええ、こんな時だからね···艦娘の皆、始めまして。私は『神城(かみしろ)』愛海、この敷地の持ち主よ」

 

鳳翔「あなたが、ここの地主なんですか?」

 

愛海「そうよ。そして、これから私があなた達防衛部隊のオペレーターを務めるわ」

 

その言葉に、ジュリアスを除いた鳳翔達は目を丸くする。それもそのはずで、服装はクリーム色のセーターに赤いズボンを履いており、戦闘などには無縁そうだった。

 

ジュリアス「愛海さんは、これでもオペレーターとしての腕は確かだ」

 

ジュリアスがそう言うと、愛海は拠点の中に入っていく。そして愛海は指令室に入ってオペレーティングシステムを起動させる。

 

愛海《さぁ皆、始めるわよ!》

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

いよいよ決戦ですね!

●クローズプラン
『本来起こり得た未来』で行われた計画。
しかしこの世界では武龍が『戦争を終わらせる』という事に変えて発動した。
(もちろん武龍はそんなことを知らない)

●神城 愛海
『まだ情報を開示できません』


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第25.5話 何が為に武器を取る(新実装)

レイヴンズ·ネストの声明により、世界に混乱が起こる。
そして武器を取る者達は···

何が為に、その武器を取るのか?


レイヴンズ·ネストの声明により起こった混乱は様々な所で発生し、瞬く間に広がっていった。

その混乱は政府や軍の関係者だけではなく、民間人にも広がっていった。

 

戦争を続けることで利益を得ていた者達はもちろん、レイヴンズ·ネストを敵視していた者達や、戦争が終わった際に戦争犯罪者として裁かれるであろう者達などには戦慄が走った。

 

そのため世論に向けてすぐさま情報操作を始め、武器を取る。

全ては自分達の利益のために。

 

···がしかし、一部の民間人には新たな情報操作など不要だった──

 

 

 

 

 

レイヴンズ·ネストの拠点の前には民間人が押し寄せ、即席のプラカードや横断幕を掲げている。しかし中には包丁や草刈り鎌、猟銃すら持つ者もいる。

 

男性A「戦争反対ー!」

 

女性B「深海棲艦と手を結ぶ悪党を許すなー!」

 

男性B「俺らが殺らずに、どうするんだ!」

 

男性C「こんな風に戦争が終わるなんて、信じないぞ!」

 

押し掛けた民間人達の顔はいずれも狂気を孕んでおり、明らかに冷静では無い様子だった。

その光景を見たレイヴンズ·ネスト所属の艦娘達の顔はひきつっている。

 

大東「なに、あれ···?」

 

ジュリアスは大東の頭に手を置きつつ前に出る。ジュリアスの右手にはトンプソンが握られており、腰には予備のドラムマガジンを2つ下げている。

 

ジュリアス「奴らが感じているのは、恐怖だ」

 

大潮「恐怖···?」

 

ジュリアス「そうだ。戦争が終わる、それも戦争屋である傭兵の手によって···それを信じられる人は少ないだろう。そして信じられない者達は不安を抱く」

 

押し寄せる民間人の一部は「殺せ」と言っている者がおり、民間人達は拠点の門に近づきつつある。

 

 

 

ジュリアス「適切でない不安はやがて恐怖に変わり、恐怖は切っ掛けがあれば狂気に変わる···その切っ掛けを与えたのは、おそらく"戦争を続けたい者達"なのだろう。

そしてあの大衆の中には、その扇動者がいると見て良いだろう」

 

霧島は口々に叫びながら迫る民間人達を見る。その中に、扇動者や戦争を終わらせたくない者は、どれだけいるだろうか?

 

ジュリアス「それに、事実を受け入れられないだけではなく、単なる恐怖もある。

考えることが、真実を知ることが、信じていた常識が覆るのが···恐ろしく感じ、それに目を背け、耳を塞ぎ、蓋をする事を選んだのだ」

 

ジュリアスは迫り来る"民間人"達にトンプソンの銃口を向ける。

 

ジュリアス「あんな人間相手に砲弾など使う必要は無い、奴らの相手はこれで十分だ」

 

ジュリアスはトンプソンを連射し、迫り来る民間人の脚を撃ち抜いていく。

 

男性A「ギャァァァ!」

 

男性B「痛い!痛いぃぃ!」

 

男性D「あいつ、銃を撃ってきやがった!」

 

すると民間人の中にいた猟銃(上下2連散弾銃)を持った男性が、ジュリアスに銃口を向ける。

しかし、その男性の持つ猟銃は高所から撃たれた弾丸により破壊される。

 

女性B「な、何今の!?」

 

 

 

拠点の窓からは、黒いコートを着た黒い長髪の女性がM200を構えており、既に次弾を装填し終えていた。

 

愛海《『カレン』ちゃん、ナイスヒット!》

 

カレン「この程度、なんてこと無い···お前達!ここで死にたくなければ、今すぐ立ち去れ!」

 

カレンは再びM200の引き金を引く。すると包丁を持っていた女性の包丁が撃ち抜かれる。

 

女性C「ヒイッ!」

 

カレン「ふん、痴れ者が」

 

アークロイヤル「あ、あなたは···」

 

愛海《カレンちゃんは、私の経営してる喫茶店のウェイトレスよ。そして···》

 

再びカレンはM200の引き金を引き、放たれた弾丸は男性の構えている弓を正確に撃ち抜いた。

 

愛海《世界トップクラスの、元殺し屋よ》

 

すると、一部の民間人は正面ではなく別方向から侵入しようとする。しかしすぐに後退る。

拠点の右側にはAA-12を持った、短いツインテールの髪を浅緑色に染めた女性が民間人に歩み寄っている。

 

 

 

女性「あんなぁ···怖いのは解るんやが、やってええ事と悪い事があるやろ?」

 

女性は銃口を向けているわけではないが、ユラユラとした掴み処の無い動きをしている。

その顔には左目の上から右頬にかけて大きな傷痕と縫い痕があり、不気味な様子を醸し出している。

 

愛海《彼女は『クラエス·パッカード』、喫茶店の料理人の1人よ》 

 

クラエス「ご紹介に預かりました、クラエスや···そんで、今すぐ立ち去ってくれたら、うちは楽できるし、あんたらも痛い思いに済むまでな」

 

男性E「うおおおおおっ!」

 

バールを振りかざして走ってきた男性に、クラエスはAA-12を迷わず発砲する。放たれた9発の散弾は、男性のバールを持った右腕の肘から先を穴だらけにする。

 

愛海《それに、彼女も元殺し屋よ》

 

男性E「ギャァァァァァ!」

 

男性の右腕は血が溢れ出し、流れ弾が左肩に当たった別の男性は悶えている。

 

クラエス「も~だから言うたやんか~。ほれほれ、他のモンも立ち去らんと痛い目見るで~。

そんで艦娘の皆はもうちょい下がっとき。こいつらの相手は、うちらに任しとき」

 

クラエスはニヤニヤしながらAA-12を構える。

 

 

 

 

 

ジュリアス達が銃のマガジンを交換したところで、これまでとは違う民間人が押し寄せている民間人に向かっていき、先程まで押し寄せていた民間人を攻撃し、拘束していく。

 

男性F「ずっと守ってくれてたモンに、何してんだボケェ!」

 

男性G「お嬢の家と仲間に手ぇ出してんじゃねぇぞ!」

 

その様子にレイヴンズ·ネストの艦娘達は目を丸くする。

 

鳳翔「ええと···今度は何ですか?」

 

ジュリアス「フッ、人間も捨てたものではないということさ」

 

押し寄せていた民間人が全員拘束されると、カレンは何も言わずM200に簡易的なメンテナンスを始める。

クラエスはリンゴを囓りつつ、誰かに侵入されてないかチェックを始める。

 

しかし、今度は量産型を伴って数人の民間人が現れる。引き連れている量産型は全てE型であり、戦闘態勢に入っている。

その民間人達も、やはり狂気を孕んだ顔と目をしていた。

 

クラエス「あー、こりゃアカンな。後は艦娘の皆に任せるで」

 

そういうとクラエスは茂みに隠れ、そのままどこかへ消えていく。カレンはいつの間にか消えており、鳳翔達はE型に向けて艤装を構える。

 

ジュリアス「高額なE型か···おそらく与えられたものだろうが、行くぞ!」




読んでくださり、ありがとうございます!

一部量産型の値段を書き忘れていたので、修正しておきました。すいませんでした。

●カレン
黒い長髪で身長165cm、25歳で3月8日生まれ。

強者とは1対1での決闘を好み、義理堅い性格をしている。
世界トップクラスの元殺し屋であり、狙撃を得意としている。しかし強者を求めていた彼女は嫌気が差し、殺し屋を引退した。

引退後は愛海の喫茶店に転がり込み、ウェイトレスをしている。

●クラエス·パッカード
短いツインテールを浅緑色に染めた髪で身長152cm、19歳で7月29日生まれ。

左目の上から右頬にかけて大きな傷痕と縫い痕があり、リンゴと飴をこよなく愛している。
カレンと同じく元殺し屋であり、時にテロにも加担しているが、それらは趣味の1つでしかない。

また、面倒見とノリの良い性格をしており、依頼も気分で受けるか決めており、依頼を遂行する際はショットガンを愛用している。

現在は料理とお菓子作りにハマっており、レイヴンズ·ネストに興味を持ったこともあり、愛海の下で働いている。


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第26話 勝てない絶望(ver2.0)


?「さぁ、ここからはラストスパートだよ!そのまま駆け抜けて!」


 

推奨BGM『The Mother Will Comes Again』(ACVDより)

 

 

 

イギリス、アリオール社支部にピスが投下され、着地と同時にコンクリートが割れ、軽い地響きと揺れが起こる

ピスの装備は巨大かつ多数の砲台が着いた飛行甲板が6枚、そして51cm砲など比べ物にならない大きさの3連装が2つ···

 

ピス「アームズフォート!『スピリット·オブ·マザーウィル』!守るべき子らのために、あなた方に鉄槌を下します!」

 

 

同じイギリスの鎮守府には『欧州棲姫』『防空埋護姫』『欧州水姫』が上陸、いずれもオリジナルであり、イロハ級も全てElite以上であり、それらが大量に押し寄せていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中国、アリオール社支部にランが投下され、着地してすぐに足のキャタピラで移動を開始する。

ランの装備は、まず分厚い装甲でできた長いスカートがあり、背中に巨大な"箱"がある。その右側にある"束ねられた6枚のチェーンソー"が稼働し、右腕に接続される。それは『本来起こり得た未来』で『グラインドブレード』と呼ばれた武器である。

 

システム音声《適切なユニットに接続しました。システムの最適化を開始します》

 

ラン「アームズフォート!『カブラカン』!出動!オラオラァッ!最初に粉々にされたいのはどいつだぁっ!?」

 

 

 

また、同じ中国にある鎮守府には蛟が投下され、大量の艦載機を飛ばし、50cm3連装砲で砲撃していた。

 

中国所属提督《あれだけの巨体だ···奴の動きは遅いはずだ!見ろ!現に奴は動いていない!撃て!撃てぇぇぇ!》

 

しかし大量の艦載機により誰も攻撃することができない···

 

蛟「フフフ···動かない?何を言ってるのです?」

 

1人の艦娘が気づいた頃には目の前に蛟がいた···

 

蛟「"動く必要が無かっただけ"ですよ?」

 

その艦娘に至近距離から砲撃する。

 

蛟「それでは···そろそろ本気を出しますか···」

 

蛟から深海棲艦特有の赤いオーラが出てくる···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アメリカ、人類解放軍本拠地にアンが投下される。しかしアンは浮遊しながらゆっくりと高度を下げていく。

 

アンのドレスのようなスカートについている白い装甲板が離れ、宙に浮き、複数の装甲板はまるで傘のようにアンの頭上に浮遊していく。

 

アン「アームズフォート!『アンサラー』!"答え"を執行します!」

 

 

 

また、同じアメリカのアリオール社の支部にラビィが投下される。ラビィの装備は装甲でできたスカートのようものと、ピスには及ばないものの、4つの巨大な3連装砲がある···

 

ラビィ「アームズフォート!『ランドクラブ』!出撃します!···フフフ···アッハッハッハッハッ!ねぇ!楽しませてくれるよねぇ!アハハハハハハハハハハハ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イタリアのアリオール社支部にリプが投下されるが、空中でブースターを起動、空中を飛ぶ。

リプの装備は円盤に機械的な翼を着けたような見た目をしており、右腕に付けられているレーザーキャノンを構える。

 

リプ「アームズフォート!『イクリプス』!出撃なのだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロシアの深淵教本拠地にジュリアスが投下される。ジュリアスの日本甲冑はそれそのものが装備であり、腰から抜いた剣の柄は先端が開き、巨大なレーザーブレードの刀身を形成する。

 

ジュリアス「アームズフォート!『ジェット』!我が使命を果たすため···いざ、参る!」

 

 

また、ロシアのアリオール社の支部にはソラが投下される。リサの装備は一見するとランドクラブと同じだが、背中に6つの黒い球体を搭載しており、それらが自律し、浮遊する。

 

ソラ「アームズフォート!『ソルディオス』!ああ···ゾクゾクするわぁ♡じゃあ、教えてあげるわね···未来の戦争を♡」

 

 

ロシア鎮守府には北方水姫と霧島、サウスダコタ率いる艦隊が向かった···

 

北方水姫「フッ···私、いやガングート···貴様ともあろう者が、堕ちたものだな···」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドイツのアリオール社の支部にはベスが投下される。ベスの装備は両肩に主砲があり、右手には巨大なレールガンを持っており、左手も使って腰だめに構えている。しかし背中の装備からは大量のスナイパーキャノン砲台がついている···

 

ベス「アームズフォート!『ギガベース』!これより作戦を開始します!」

 

 

 

また、ドイツにあるアリオール社への投資家達の集まる場所へはティスが投下される。

 

ティス「アームズフォート!『スティグロ』!今日はとっておきの"ライブ"だよ☆さぁ、スピードってのを教えてやるよ···」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして日本のアリオール社の支部には有澤が投下される。有澤の装備は両手にグレネードガトリングを持ち、背中にはもう2つのグレネードガトリングと巨大なミサイルポッドが2つついている···

 

有澤「アームズフォート!『グレートウォール』!地上最強とも呼ばれた力、とくと味わいなさい」

 

 

そして、日本の大将Aと大将Bがいる大本営の前に、草薙が投下される。草薙の艤装は両手にグレネードガトリングを持ち、背中からは4つの触手···ではなく龍のような長い首と頭部があり、外見的に眼がない代わりに2連装砲がある。

 

草薙「"大和型秘匿戦艦"『大蛇(オロチ)ZF型』!殲滅を開始します···」

 

大蛇の眼は、金色で蛇のような瞳になっており、大蛇の体は深海棲艦特有の赤いオーラを纏っている···

 

 

 

 

 

これにより、各国の『戦争を続けようとする者達』は"勝てない絶望"を味わうことにる。

そして、フランスにあるアリオール本社には武龍、ミッドウェー、青葉、北上、コア、深海鴉棲姫が向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1時間前──

 

青葉達と合流した武龍は青葉達に生存を喜ばれると共に、草薙からプレゼントをもらう。

 

草薙「さてさて···生還した武龍には、プレゼントがあります。まあ、時間的に受け取ったらすぐに出撃してもらいますけどね」

 

北上「え~!もうちょっと時間あったって良いじゃ~ん」

 

青葉「せめてあと1分!」

 

草薙は2人の抗議を聞きながら、コンテナの扉を開く。

 

草薙「時間が無いのでダメです」

 

コンテナの中には、黒く先鋭的なフォルムをした機甲兵装があり、右手にライフル、左手にアサルトライフル、右背部にグレネードキャノン、肩に『フレア』を装備している。

 

武龍はこの機体を一目見た瞬間···

 

武龍(鴉だ···)

 

そう感じた。

 

草薙「これは中量2脚型機甲兵装『シュープリス』です。応急措置しただけのバルバロイでは、作戦に支障が出ますので、こちらを装備して出撃してもらいます」

 

 

 

 

 

武龍達が出撃していくのを見届けた後、草薙は回収したバルバロイを拠点に送るため、ストークAの設定を変更する。

 

草薙「···武龍を守ってくれて、ありがとうございます」

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

さぁ、ついにAF組の本当の名前と装備が明かされましたね!それらの詳細は後程載せておきます!

●グラインドブレード
6つの巨大なチェーンソーを束ね、ドリルのように回転させながら突撃する兵器。

『本来起こり得た未来』ではとある兵器に使われていたが、とある兵器には負荷が大きすぎた。しかしAFの装備に接続したときは負荷に耐えられる装備だったため、問題無く使用できる。

●グラインドブレードのカテゴリ
グラインドブレードは『オーバードウェポン(以下OW)』というカテゴリに分類されており、過剰なまでの火力を持っている。

●オーバードウェポン
オーバードウェポンとは、『本来起こり得た未来』でとある兵器に装備することが可能だが、本来はその兵器に装備させるものではないため、過剰な火力を得られる代償としてその兵器に過剰な負荷が掛かってしまう。

そのため、使用時間は限られている。

余談だが、オーバードウェポンは『全てを焼き尽くす暴力』とも呼ばれることもある。

●シュープリス
黒くカラーリングの中量2脚型機甲兵装。

武装は右手にライフル、左手にアサルトライフル、右背部にグレネードキャノン、肩にフレアを装備。

中量2脚の中では軽量かつ軽装甲の機体だが、燃費が悪く上級者向きである。しかし草薙が専用のチューニングを施し、燃費の問題を大きく軽減している。


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第26.5話 未来の力、失われた力·前編(新実装)

各地へ向かったレイヴンズ·ネストのメンバーは作戦を開始する。

平和を望みし母の遺言

地震の巨人による進撃

不幸と幸福による鉄槌

答えし者による評決

オオガニによる狂攻

日食からの制止


 

 

推奨BGM『Spirit of Motherwill』(ACfaより)

 

 

 

イギリスのアリオール社支部から現れた大量の量産型と、イギリス軍所属の艦娘達からの大量の攻撃をピス···マザーウィルは無視しながら攻撃を行っている。

 

マザーウィルの装甲には誰も傷1つつけることができずにおり、マザーウィルの主砲による攻撃は、一撃でアリオール社支部のビルを破壊する。

 

マザーウィル「この程度で、私を止められるとでも?」

 

マザーウィルに接近しようとした艦娘と量産型達に対し、マザーウィルは大量の機銃と垂直ミサイルによる弾幕を形成する。その弾幕はまるで嵐のようであり、次々と艦娘と量産型は撃破されていく。

 

機銃は1発1発が艦娘の装甲を貫き、機銃を回避しようとしても大量の垂直ミサイルが降り注ぐ。

そしてその砲台は脚部以外の全身に搭載されており、死角は無いと言って良い。

 

それだけでなく、マザーウィルは6枚の飛行甲板からそれぞれ別の艦載機を発艦させることにより、制空権はほぼ掌握している状態である。

 

イギリス艦隊所属艦娘

「何よ···あのデタラメな数···」

 

それもそのはず、マザーウィルの飛行甲板は通常の空母より何倍とあるため、その分大量の艦載機を運用できるからである。

装甲、火力、手数、制空···全てを圧倒するマザーウィルの攻撃により、その場は陥落してしまった。

 

 

 

ほぼ更地も同然となった場所に、悠然と立っていた。

その身と艤装には傷1つ無く、周囲に倒れるのは量産型の残骸と大破して意識を失っている艦娘達である。

しかし、1人だけ意識を保っている艦娘がいた。

 

イギリス艦隊所属艦娘

「あ、アンタ···この戦争、本気で···終わると思ってる···わけ?」

 

マザーウィル「終わらせるつもりですよ」

 

イギリス艦隊所属艦娘

「深海棲艦と···人類が仲良くできるわけ、ない···じゃない···」

 

そこまで言うと、その艦娘は意識を失った。マザーウィルは空を見上げながら呟いた。

 

マザーウィル「例え遠くても、成し遂げてみせましょう···」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM『Vulture』(ACVより)

 

 

 

カブラカンはグラインドブレードを前に突き出して突撃する。グラインドブレードに当たった量産型は次々と粉々になっていき、艦娘達よりも速い機動力に、艦娘達は圧倒されている。

 

更に、左腕と背部艤装の下部にはショットガン兼小型ミサイル発射装置を備えており、接近されるだけで驚異となっている。

しかも装甲はマザーウィルと同じく艦娘の攻撃を受け付けないため、艦娘と量産型達は為す統べなく撃破されていく。

 

カブラカン「ほらほらどうしたぁ!?」

 

すると、アリオール社支部の社員は整備が完了していない量産型まで出撃させていく。

 

カブラカン「おっ、そう来たか···なら、そろそろ"アレ"やるか」

 

カブラカンは突如動きを止めると、背部艤装の左右の装甲板をパージする。そしてその内側は4つの装置に分かれており、その外側が左右に倒る。

すると、そこから大量の自律兵器が射出されていく。

 

中国艦隊所属艦娘

「な、何よあの数!?」

 

黒く、三角形の頭部にブースターと一体化した胴体、そしてライフルと一体化した両腕と、簡素な造りをしているがその数は圧倒的だった。

 

 

 

全ての敵を撃破したカブラカンは自律兵器を回収し、パージした装甲板はリ級eliteに持たせて撤退しようとする。

しかし、自律兵器にVって艤装を破壊された艦娘が、ボロボロになりながらもカブラカンに石を投げる。

 

カブラカン「···アタシにも、アンタにも、艤装つけた状態では石くらい効かないの判ってるだろ?」

 

中国艦隊所属艦娘

「許、せない···のよ···私だって、世界を救いたかった···なのに、なんでアンタみたいなのが···」

 

カブラカン「なら···目を閉じなきゃ良かっただろ?この国が裏で何をしてたかなんて解ってたろ?世界を救いたいなら、なんで目を閉じた?」

 

中国艦隊所属艦娘

「あ···あ···うわぁぁぁぁぁ!」

 

艦娘はカブラカンに向かって駆けていき、効かないと判っていながらも、弱っている拳でカブラカンの胸を叩く。言葉にならない声を上げながら、艦娘はカブラカンを叩く。

そして···カブラカンは艦娘をそっと抱き締めた。

 

 

 

 

 

推奨BGM『深海棲艦拠る紅の海』

 

 

 

蛟は大量の艦載機を駆使しつつ、砲撃を加えていく。鎮守府の艦娘と量産型が次々と撃破されていく中、ギリギリのところで接近に成功した艦娘がいた。

 

しかし蛟は振り向き様にその艦娘の腹部に蹴りを入れ、倒れた艦娘に集中して爆撃を行う。

 

蛟「惜しかったですね。しかし、この程度では私は倒せませんよ?」

 

蛟はAFよりスペックは低いものの、それでも高いスペックにより艦娘と量産型の攻撃を凌ぎ、攻撃をしていく。

しかし、一部の艦娘の様子はおかしかった。

 

目に光が無く、表情には生気が無い艦娘や異様にテンションの高い艦娘···そんな艦娘を見て蛟は気づく。

 

蛟「なるほど、薬物の投与や洗脳ですか···愚かですね」

 

蛟は全ての艦娘と量産型を撃破すると、地下室に隠れた提督を見つけ出す。

そしてその提督を捕まえ、左足を踏み潰す。提督は叫び声を上げるが、蛟は無視して砲口を向ける。

 

 

 

地下室から出てきた蛟は振り返らず、何も喋らず、堂々と作戦エリアから離脱していった。

なお、その地下室には惨状が広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM『Cosmos』(ACfaより)

 

 

 

曇り空の下···アンサラーは空を浮遊しつつ、大量のレーザーキャノンを一斉に撃ち下ろす。一度の斉射で大量の量産型と戦闘員を葬り、冷やかな目で敵を見下ろしている。

そして今度は斉射ではなく連射を行っていく。

 

時折、アンサラーの艤装から響く「オォォォォォン···」という不気味な音は敵に恐怖を与えている。

 

アンサラー「新たなる未来を受け入れようとせず、目を背け、耳を塞ぎ、罪の無い者に銃口を向け···」

 

アンサラーは怯えて逃げる戦闘員にも容赦せず、レーザーキャノンを撃ち込んでいく。

最新式のJ型やD型、E型でさえ、空から降り注ぐ大量のレーザーキャノンには無力だった。

 

アンサラー「それだけではなく、正義を掲げながら利権を手にしようとし、ストレスの発散や違法薬物の売買を正当化する···極めて愚かで、滅ぼすべき存在です」

 

アンサラーは、更に自身のスカートに接続されている黒い杭を地上に向けて射出する。着弾した杭は赤い粒子による爆発を起こし、周囲にいる艦娘や量産型は葬られる。

 

 

 

遂に量産型が全滅し人類解放軍の戦闘員も殲滅された頃、アメリカ艦隊所属の艦娘達がやって来る。その艦娘達はアンサラーによる破壊の惨状に息を呑む。

 

アメリカ艦隊所属艦娘A

「間に合った!レイヴンズ·ネストのメンバーの方、これ以上は攻撃しないでもらえますか!?」

 

アンサラーはふわりとその艦娘の方を向く。

 

アンサラー「なぜです?この愚かな者達はここで滅ぼすべきでは?」

 

アメリカ艦隊所属艦娘B

「こいつらを捕えれば、こいつらに協力していた連中に手が届くかもしれないんだ!」

 

アンサラーは1度人類解放軍の生き残りに目を向けると、小さなため息をつく。

 

アンサラー「良いでしょう···しかし、必ず突き止めることです」

 

曇っていた空が少しずつ晴れていく。その光はアンサラーを照らし出し、アンサラーはふわりと移動していく。

 

 

 

 

 

推奨BGM『Lithium』(ACVより)

 

ランドクラブ「アハハハハハ!」

 

ランドクラブは大量の量産型を相手に戦っている。しかしそこに艦娘はいなかった。

 

アリオール社量産型指揮官

「おい!艦娘はどうなっている!?」

 

アリオール社オペレーター

「それが、到着する前に捕えられたようです!」

 

アリオール社量産型指揮官

「チクショウ!役立たず共が!」

 

ランドクラブは3連装砲を四方に連射しつつ、副砲である小型ミサイルも使っていく。

接近してきたE型を蹴り飛ばし、倒れたE型の胴体を踏みつけつつスカートの艤装を起動させる。

 

それは人としての足とは別のAFとしての脚部であり、その脚部でE型の頭部を踏み潰す。

 

ランドクラブ「嗚呼、これ!この感触!アハハハハハ!」

 

ランドクラブは全ての艤装脚部を起動させる。その様子は蟹というより蜘蛛であった。

そして、先程よりも格段に上がった機動力で量産型を翻弄していく。

 

ランドクラブの装甲はマザーウィルやカブラカンと比べて脆い。しかしそれでも現代の兵器からすれば、圧倒的な装甲である。

 

 

 

全ての敵を撃破したランドクラブはアリオール社社員を縛り上げると、そのまま引きずって艦娘達に引き渡した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM『The Bloody Honey Cannot Stop』(ACfaより)

 

 

 

イクリプスはイタリアの空を舞い、アリオール社支部の建物に向けてレーザーキャノンを放ち、量産型には垂直ミサイルを撃ち込んでいく。

 

イタリア艦隊所属の艦娘達も攻撃を行うが、イクリプスは空を縦横無尽に飛び回り、レーザーキャノンを空母の艦娘の飛行甲板に掠めるように当てて破壊する。

 

イクリプス「人間の体だと、色々動きやすいのだ」

 

イクリプスが攻撃を続けていると、1人の艦娘が叫ぶ。

 

イタリア艦隊所属艦娘

「卑怯よっ!私達が飛べない空を飛んで···そんな火力や装甲が、なんであなた達ばかり!私達にだって、そんな力があれば!」

 

その艦娘の叫びに、イクリプスは悲しげな表情を浮かべる。

 

 

 

イクリプスは全ての艦娘と量産型を撃破すると、地上に降り立つ。そして先程叫んでいた艦娘に歩み寄る。

 

イタリア艦隊所属艦娘

「ハァ、ハァ···何よ···」

 

イクリプス「こんな力、求めちゃダメなのだ···何百人という人を、自分達の利益のためだけに殺す···そんなことのために造られた力なのだ···」

 

イクリプスの人としての肉体を得る前の事を、その艦娘はなんとなく察した。

 

イタリア艦隊所属艦娘

「·····あなた、その力で···守ってるじゃない」

 

イクリプス「いつか人類は、ボク達と同じような力を持つかもしれない。でも、今はまだ早すぎるのだ···もっと、世界が優しくなってから、その時に持つべきなのだ···」

 

そう言うとイクリプスは、再び飛び立って行く。やがてイクリプスは雲の中に消えていった。

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

アプデ前では描写していなかったAF組と蛟、大蛇の話を書きました。
残りは次回で書きますので、しばしお待ちください。


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第26.6話 未来の力、失われた力·後編(新実装)

前回とは別の場所での作戦がこちらである。

蹂躙せし虫の剣

面妖たる太陽

水陸を歩きし要塞

最速のAF

偉大なる壁

未来に生まれた絶望


推奨BGM『Dragon Dive』(ACfaより)

 

 

 

ジェットは艦載機をレーザーキャノンで撃ち落としつつ、巨大なレーザーブレードで量産型を周囲の建物ごと薙ぎ払う。

更に、ジェットの各所にある装甲のフジツボのような部分から固定式の細いレーザーブレードを発生させ、全方位を攻撃する。

 

ジェット「クローズプラン遂行のために···中身は違えど、今度こそ···成し遂げる!」

 

深淵教の施設ごと量産型を袈裟に斬り、ジェットは歩みを進める。

 

信者A「我らが崇高なる使命のために、死ねぇ!」

 

信者B「我らの素晴らしさを理解しない愚か者めぇ!」

 

ジュリアスはそんな深淵教の信者達に呆れつつ、量産型を撃破していく。

すると量産型の在庫が切れてきたのか、信者達が銃を持って応戦し始める。

 

 

 

結局、信者達の応戦も虚しく深淵教の本拠地は壊滅する。

ジュリアスはレーダーで生体反応を検知し、瓦礫を蹴り飛ばす。そこには隠れていた教祖がいた。

 

教祖「あ、ああ···」

 

教祖は金庫を抱えて走るが、ジュリアスは金庫をレーザーキャノンで撃ち抜く。すると金庫からは大量の札束が飛び散り、教祖はそれをかき集めようとする。

 

ジュリアス「やはりな。救済などと言っておきながら、結局は汚い私欲のためか」

 

教祖は再び走り出す。しかし偶然到着したイ級に砲撃され、教祖は跡形も無く消し飛んだ。

 

 

 

 

 

推奨BGM『Blind Alley』(AC4より)

 

 

 

ソルディオスはオービットを6つ全て飛ばし、それを見たアリオール社員と艦娘には、オービットはまるで巨大な黒い眼球のように感じた。

オービットの黒目のような部位は赤く光り、赤い粒子をチャージしていく。

 

ソルディオス「多人数相手はあまり好きじゃないのよね」

 

量産型と艦娘はオービットに向けて砲撃するが、オービットはQBを使用して回避していくため、見た目より回避力は高い。

 

ソルディオス「あなた達のような企業は、いつの時代もいるものね···ホント、嫌になっちゃう」

 

チャージを完了したオービットは赤い粒子を使ったキャノンを発射する。

それを受けた量産型は跡形もなく破壊され、それを見た艦娘達は戦慄する。

 

すると突然、オービットは艦娘の1人に正面からQBを利用した体当たりをする。その体当たりを鳩尾に抉り込むように受けた艦娘は、仰向けに倒れる。

 

別の艦娘はQBを利用したオービットに足払いをされ、空中で腹部にQBでの体当たりを受けて地面に叩きつけられる。

量産型にはキャノン、艦娘には体当たりをさせ、オービットは量産型と艦娘を一掃する。

 

 

 

ソルディオス「こんなところかしらね」

 

戦力を一掃したソルディオスはオービットで建物をキャノンで破壊しつつ、動けない状態のアリオール社員に向けて言う。

 

ソルディオス「ビジネスのためだとしても、ここまでのことをしたのは失敗ね。それに、技術者としてもお金のことを優先し過ぎたわね···それじゃあ、負けるのは必然よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM『Scope Eye』(ACNXより)

 

 

 

アリオール社員と艦娘達は戦慄し、艦娘達は物陰に隠れていた。

 

なぜなら、ギガベースはレールキャノンとスナイパーキャノン、そして副砲のスナイパーキャノン砲台と小型ミサイル砲台を駆使し、接近される前に砲撃していくからである。

 

ギガベース「まったく、隠れた程度で凌げるとでも?」

 

ギガベースは、レールキャノンで艦娘を遮蔽物にしている建物ごと撃ち抜く。回り込んで側面や背部から攻撃しようとした艦娘や量産型は、スナイパーキャノン砲台で射線が通った瞬間に撃ち抜く。

 

ギガベース「良い的ですね、あなた方」

 

ギガベースは再びレールキャノンの引き金を引く。

 

 

 

ギガベースは艦娘と量産型を全て撃破し、アリオール支社の建物に攻撃を開始する。しかし、武装を全て破壊された艦娘の1人が這ってギガベースに近づいてくる。

 

艦娘「やめて···お願い···今ここを壊されたら、この国の経済が···」

 

ギガベースは淡々と攻撃を続ける。

 

ギガベース「経済のための戦争を続けることで、犠牲は増え続けます。戦争での経済に頼り切らず、他の経済を回さなかった結果です」

 

ギガベースは最後の一撃を撃ち込み、周囲に敵の反応が無いことを確認するとレールキャノンを格納する。

 

ギガベース「しかし、人というものは何とかして立て直していくものです。あなたにも、それができるはずです」

 

ギガベースが去っていく様子を、その艦娘は呆然と見つめていた···

 

 

 

 

 

推奨BGM『Speed』(AC4より)

 

 

 

圧倒的なスピードで艦娘と量産型を撃破していくスティグロ。その圧倒的なスピードに、誰も攻撃を当てることができていない。

スティグロが逆手に持った2本のレーザーブレードは、まるでテールランプのように光の軌跡を浮かばせる。

 

レーザーブレードで艤装を斬り、蹴り飛ばす。艦娘と量産型はすぐさま数を減らしていき、増援にD型とE型が駆けつける。

 

スティグロ「増援か···ライブの追加ファンは大歓迎だよ☆」

 

D型はミニガンによる弾幕を張ろうとするが、スティグロは壁を蹴って空中に飛び上がり、散布型ミサイルをD型の群れに放つ。横に広がるタイプの散布型ミサイルは、横に並んだD型を纏めて撃破した。

 

E型は脚部のチェーンソーを展開し、蹴りを主体とした接近戦を挑もうとする。

しかしそれは、近接格闘を得意とするスティグロに対しては悪手だった。

 

スティグロはQBの機能を持たないが、そのスピードを活かしたステップで擬似的なQBを使い、更に壁蹴りも使うことで立体的な動きでE型の群れも撃破する。

 

スティグロ「···見え見えなんだよ」

 

スティグロは背後からの砲撃を回避し、レーザーブレードの範囲外でレーザーブレードを振る。するとブレード光波が発生し、レーザーは振った軌跡を形造り、飛んでいく。

ブレード光波は艦娘の主砲を斬り落とす。

 

 

 

スティグロは壊滅した鎮守府を後にする。

 

スティグロ(私にとって、戦場はライブ。けど、もっと良いステージで、もっと良いライブを見せたい相手ができたんでな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM『Great Wall』(ACfaより)

 

 

 

巨大な壁···否、壁となっている列車であるグレートウォールは進む。

グレネードガトリングとミサイルによる弾幕を展開しながら。

 

量産型と艦娘の陣形を弾幕で乱しつつ、艦隊の一部を艤装で囲む。そして囲いの中に集中砲火し、囲いを解いた頃には囲まれた艦娘と量産型は壊滅していた。

 

グレートウォール

「私は逃げも隠れも致しません。正面から焼き尽くすのみです」

 

瓦礫を押し潰し、建物を薙ぎ倒し、堂々と正面から進んでいくグレートウォールに、艦娘達は何もできずにいる。

 

グレートウォール

「企業とは利益を求めるもの、とは言いますが···人の道を踏み外し、仁義を捨ててはならないでしょう?」

 

グレートウォールは艤装と武装でアリオール社支部を破壊し尽くす。

 

 

 

跡形も無く破壊し尽くしたグレートウォールは、威風堂々と去っていく。

命を踏み台にしてきた企業の残骸を踏み潰しながら。

 

 

 

 

 

推奨BGM『発動!友軍救援 「第二次ハワイ作戦」』(最終海域)

 

 

 

大蛇は大本営の前で交戦しており、グレネードガトリングで正面の艦娘と量産型を薙ぎ払う。

 

大蛇「戻ってきましたよ。この海に···今度こそ、戦争ヲ終ワラセルタメニ!」

 

大蛇の主砲である76cm連装砲は龍の頭部の形をした部位にあり、一撃で施設の建物を破壊する。

敵の艦載機は、グレネードガトリングと小型ミサイルによって次々と撃ち落とされていく。

 

圧倒的であり、敵にとっては絶望でしかないその火力。しかしそれは装甲や速力も同様である。

 

大蛇「"あの人"が守った世界で!戦争ガ起キタノナラ!今度こそ、守り抜く!終ワラセル!」

 

艦娘達が一時的に撤退し、入れ替わりにE型が大量に現れる。大蛇は右足の艤装から巨大なレーザーブレードを起動させ、薙ぎ払う。

大蛇の周囲には別の鎮守府から艦隊が押し寄せてきており、数だけで言えば大蛇は圧倒的に不利である。

 

大蛇「先輩方ヲォ!何人集めたって、同ジデス!」

 

大蛇は全方位に向け、回転しながら攻撃を行う。その光景を見ている大将Aと大将Bは恐怖に震えていた。

なぜなら、大蛇は艦娘と量産型を撃破しながら自分達のいる場所に確実に近づいているからである。

 

そして、その速度は急速に早くなっている。

 

大蛇「沈ミタクナケレバ、退きなさい!」

 

 

 

大蛇が大本営の艦隊を全滅させた後、大将A、Bを手錠で拘束する。大蛇は不意に空を見上げる。

 

そこには、1羽の鴉が飛んでいた──

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

感想などはいつでもお待ちしています!

●ブレード光波
レーザーブレードを振り抜くと共に飛ばされる光の刃の総称(正式名称はエネルギー波)。

通常は使うことができないが、一部のレーザーブレードや特殊な方法で使用することが可能である。


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第26.7話 守る者達(新実装)

巣を守りし者達、国を愛す軍人、裏の戦士達···
誰を相手にしようとも、守るものがある。


推奨BGM『敵機動部隊』

 

 

 

レイヴンズ·ネストの拠点の前にて、鳳翔達と多数の量産型(E型)は戦闘を続けていた──

 

大東は爆雷を直接ばら蒔いて攻撃し、大東に接近してきたE型に曙が砲撃して大東への攻撃を阻止する。

そして、損傷または撃破されたE型からは鮮血が飛び散る。

 

アークロイヤル「まさか···E型の元は、生きた人間?」

 

霧島「どうりでこれまでより動きが良いわけですね」

 

更に、大潮の機銃によりE型の仮面の一部が破壊される。仮面のしたにあった目は死体の目ではなく、明らかに生きた人間の目だった。

その瞬間大潮は動きが一瞬止まってしまい、E型の砲撃を左肩に受けてしまう。

 

鳳翔が戦闘機を大潮の援護に向かわせるが、戦闘機の機銃攻撃をE型は前方に飛び込んで回避する。

 

 

 

大東に接近したE型は大東の砲撃を身を屈めることで回避し、そのまま左に回転する。そして左足のチェーンソーで回し蹴りをするように攻撃してくる。

 

大東は咄嗟に主砲で防ぎ、チェーンソーの刃の当たっている場所からは火花が散る。

 

大東「うわぁっ!」

 

しかしそのE型にアークロイヤルの爆撃が命中する。

 

愛海《相手は生きた人間だけど、あそこまでなってるならもう元には戻れないわ。だから、楽にしてあげて···》

 

アークロイヤル「···そういうことなら」

 

大潮「解りました···」

 

大東の主砲には大きな損傷ができており、砲撃ができないわけではないが、暴発の危険性もあった。そのため大東は主砲を正面のE型に投げつけ、そこに爆雷も投げて共に爆破する。

 

愛海《あのチェーンソー、単に斬るよりも確実にダメージを与えることを優先してるようね》

 

砲撃や艦載機、雷撃など主体とする"艦娘"にとって、高い機動力と格闘能力のあるE型は相性の悪い相手だった。

 

曙「こいつらもしかして、艦娘を相手にするために作られたの?」

 

愛海《可能性はあるわね···ん?》

 

愛海はE型の動きに違和感を覚える。

 

愛海《皆、量産型の足元に攻撃して!》

 

霧島がE型の足元に砲撃すると、E型は避けなかった。そのため砲弾の爆発に巻き込まれて吹き飛ばされる。

 

 

 

愛海《なるほど、あの量産型は直撃するものでない攻撃は避けないわ!だから足元に撃ってから他の武装で攻撃して!》

 

鳳翔「はいっ!」

 

鳳翔はE型の足元に爆撃し、E型は避けずに爆発を受けて吹き飛ばされる。そこに別の爆撃機が爆撃して撃破する。

しかし、大潮、曙、大東の残弾は減ってきており、特に主砲を失った大東は爆雷が底を尽きかけていた。

 

すると、別方向からE型が砲撃される。見るとイ級4体とネ級2体がおり、鳳翔達を援護してくれていた。

 

愛海《今よ!一気に畳み掛けなさい!》

 

元から数の減っていたE型は大きく劣勢となり、次々撃破されていく。イ級やネ級も傷を負ったものの、犠牲となった者はいなかった。

 

大東「終わったぁ~」

 

大東と大潮はその場にへたり込む。

 

曙「そうね···で、後はそっちね」

 

曙はE型をけしかけた民間人達を睨み付ける。

 

アークロイヤル「さて、じっくり話そうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロシアにある、レヴォツィの所属する鎮守府では反乱分子であるレヴォツィを捕らえようとし、返り討ちにあった兵士達が拘束されていた。

鎮守府の内部では、交戦の痕跡が多数残されている。

 

レヴォツィ「さて、我々も行くぞ」

 

レヴォツィと共に、レヴォツィ艦隊は抜錨していく。

 

兵士「貴様···貴様が何をしているのか解っているのか!?これは反逆だぞ!」

 

レヴォツィ「解っているさ。だが、これ以上犠牲を増やし続けるのにはもう沢山だ!」

 

レヴォツィ艦隊は、AF組による戦闘で手薄になっているロシア中枢部へ突き進んでいく。

 

 

 

推奨BGM『反攻作戦開始!』

 

 

 

レヴォツィ「総員、戦闘開始!」

 

レヴォツィの掛け声と共に、中枢部を守る艦隊とレヴォツィの艦隊で戦闘が始まる。

どちらの艦隊も高練度の艦娘達であり、量産型も最新のJ型を採用していた。

 

しかし、レヴォツィの艦隊の方が押している。その理由は単純なものだった···

レヴォツィの艦隊は日々が実戦であるのに対し、中枢部を守る艦娘達は内地での訓練と防衛である。

 

無論、防衛も必要なことではある。だが"敵との交戦"において、レヴォツィ艦隊の方が圧倒的に経験が豊富であった。

 

仲間が轟沈しかけたことも···

鎮守府が空襲にあったことも···

孤立してからの消耗戦も···

鬼姫級との戦闘経験も···

砲雷撃ができないほどの近接戦闘も···

 

中枢部を守る艦娘達は経験したことが無かった。そしてレヴォツィ艦隊はそれら全てを経験しており、戦場での意気込みや目付きは、まったくもって格が違うものだった。

 

 

 

 

 

しばらくしてレヴォツィはAK-47を手にヴェールヌイと共に、ロシア大統領の元に辿り着いた。

ここまでの道のりで、兵士達は全て無力化してきている。

 

レヴォツィ「大統領、もうやめにましょう···こんな戦争を続けても、犠牲が増え続けるだけです」

 

ロシア大統領「···君は昔から勇敢で、正義感の強い男だ。しかし、政治的な部分が抜けている。この戦争は過去のものとは違う、この国が生き延びるための手段なのだよ」

 

レヴォツィ「この国が生き延びるために戦争を続け、他者の死を増やし続けるだけではなく、国民すら犠牲にして"国"を守るのはいかがなものかと」

 

レヴォツィはAK-47の銃身を撫でる。

 

レヴォツィ「この銃···カラシニコフ氏がなぜ作ったか、知っていますか?この国を守るためだそうです」

 

ロシア大統領「それがどうした?」

 

レヴォツィ「国民すら犠牲にして国を守ることは、本当に国を守ることですか?あなた方が守りたいのは、国ではなく自分達なのではないですか?」

 

ロシア大統領「·····」

 

ロシア大統領は沈黙し、レヴォツィはため息をついてロシア大統領に手錠を見せる。

 

レヴォツィ「これより、あなたを拘束します···大統領」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本の首相官邸の近くのビルの1室にて、5人男女が武装を整えていた。

窓から双眼鏡で首相官邸を見ていた茶髪のアイビーカットの男性『ダリオ·エンピオ』は、振り向いて他の4人に聞く。

 

ダリオ「おい、本当にやるのか?」

 

その問いに、ボサボサの黒髪の男性『エイリーク』が真っ先に答える。

 

エイリーク

「今さらビビってんのか?まだ死に場所選べる立場でも無いくせによぉ」

 

ダリオは舌打ちし、今度はFN57のマガジンを込めた黒い短髪のオカマ『アローズ·多島(たじま)』が答える。

 

アローズ「アンタら良いわよねぇ~。アタシなんて、特に戦う理由なんて無くなったのに駆り出されたのよ?」

 

次に、ボサボサの銀髪の男性『ハイム·ズァーク』が答える。

 

ハイム「戦う理由は無くっても、愛海さんに恩はあるよね~」

 

最後に、黒いポニーテールの女性『清姫(きよひめ)』が答える。

 

清姫「戦いとは、頭脳と技能。それを試せるなら、安いものよ」

 

それぞれが武装を整えると、作戦を開始する。

 

 

 

 

 

推奨BGM『Junk Mail』(初代ACより)

 

 

 

厳戒警備が敷かれている首相官邸の前に、1台の軽トラックが走ってくる。その車には人が乗っておらず、タイヤを含む前面には鉄板が溶接されていた。

軽トラックは門を突き破ると警備隊の車に激突する。

 

警備隊員「な、なんだいきなり!」

 

しかし、軽トラックの運転席には爆弾が仕掛けられており、爆発する。そして爆発と共に、AK-12を持ったエイリークとXM8を持ったダリオが門から突入する。

 

エイリーク「俺らとの違いを見せてやるよアハハハ!」

 

ダリオ「よう、税金泥棒」

 

エイリークとダリオを近くの木の上に登り、迷彩服を着たアローズが『M14』による狙撃で援護する。

 

アローズ「良いわよねぇ···思う存分殺れるんならさぁ!」

 

裏口からはIDWを持ったハイムと『HK417』を持った清姫が突入する。

 

ハイム「さぁて、始めるよ~」

 

清姫「師から授かったこの腕、負けるものかよ」

 

 

 

警備隊が盾を持って前進してくるが、ダリオは僅かな隙間を撃ち抜いて警備隊員を負傷させる。更にエイリークが『スタングレネード』を投げ、警備隊員の目と耳を潰す。

 

ダリオ「ケッ、この程度かよ」

 

エイリーク「海軍に力注ぎ過ぎなんだよ」

 

ダリオとエイリークは二手に別れて移動し、別々の方向から攻撃を加える。

そして、ダリオより先行したエイリークを狙おうとした警備隊員を、アローズが狙撃する。

 

アローズ「エイリーク、進みすぎよ」

 

エイリーク「悪ぃ悪ぃ」

 

 

 

首相達を捕らえている官僚は、この状況に狼狽えていた。

 

官僚「どういうことだ···誰も助けなど呼べないはずなのに、なぜ襲撃されている···いや、考えられるとすればレイヴンズ·ネストか!?」

 

警備隊員「報告!正面は7割ほど制圧され、内部にも襲撃犯が侵入している模様!」

 

官僚「なんなんだあのバカ共は!良いからあのテロリストを殲滅しろ!」

 

 

 

ハイムと清姫は官邸内部を進み、首相が捕らえられている場所へ向かっている。

ハイムは壁を蹴って銃弾を回避しつつ、IDWを連射する。

 

清姫は後方から狙撃しつつ、前進している。しかし警備隊の数が増えてくると、清姫はHK417を脇に抱えながら構え、左手にジェリコを持つ。

 

清姫「さて、行くか!」

 

清姫は走り出し、スライディングすると共に警備隊に両手の銃を連射する。更に、清姫に合わせてハイムが上から攻撃することで、警備隊は撃破されていく。

 

 

 

エイリーク「オラァッ!」

 

エイリークが警備隊員を蹴り飛ばし、官邸の正面玄関に侵入する。ダリオはそれに続くと共に手榴弾を投げ入れる。

 

アローズ「行ったわね」

 

アローズはM14のマガジンを交換し、しばらく息を潜めることにする。

エイリークとダリオは負傷した警備隊員を盾にしつつ、正面玄関に敵を引き付ける。

 

 

 

ハイムと清姫は首相達の捕らえられている場所に到着し、突入する。

 

ハイム「こんにちは~!」

 

ハイムと清姫は間髪入れずに発砲し、敵を無力化していく。そして室内の全ての敵が無力化したことを確認し、捕らえられている者達の拘束を解く。

 

創平「き、君達は···?」

 

ハイム「僕達はあなた達を助けに来ただけだよ···まあ、首相官邸でこんなことしたからテロリストになっちゃうけどね」

 

清姫「脱出まで護衛してやろう」

 

その後、首相達を解放したダリオ達は去っていき、創平は彼らを警察に追わせることはしなかった。

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回はレイヴンズ·ネストの拠点防衛、レヴォツィの動向、そして意外な人物達の登場でしたが、どうだったでしょうか?

●E型の元
E型は他の量産型とは違い、生きた人間を改造している。
そのため動きは格段に良くなっているが、改造された人間は元には戻れなくなってしまう。

また、戦闘に特化させるために直撃する攻撃以外は回避しないロジックになっており、それが弱点にもなっている。

●ダリオ·エンピオ
茶髪のアイビーカットで身長180cm、34歳で5月8日生まれ。

権力志向の強い野心家であり、他者を見下していた。しかし愛海の夫と出会ってから変わり始め、今では文句を言いつつも協力してくれるようになっている。

また、かつてはカナダの軍人でもあった。

●エイリーク
ボサボサの黒髪で身長180cm、33歳で6月5日生まれ。

その蛮勇さから『鋼の決闘士』とも呼ばれる傭兵だった。
愛海の夫と出会ってから愛海の夫を気に入り、愛海の夫からの依頼を最優先で受けていた。

また、これまで様々な傷を負いながらも必ず生還しているため、一部では『不死身のエイリーク』とも呼ばれている。

●アローズ·多島
黒い短髪で身長170cm、36歳で2月19日生まれ。

戦いと殺しを求めて傭兵となり、狙撃をメインとして戦っていたオカマ。その狙撃能力の高さから『狙撃魚(そげきうお)』という異名をつけられている。

愛海の夫と出会った後は、愛海の夫の依頼を最優先で受けていた。

●ハイム·ズァーク
ボサボサの銀髪で身長152cm、21歳で7月1日生まれ。

のんびり屋でよく昼寝をしている。
世界中を旅しており、愛海の夫と出会ってから海外での頼みを中心に聞いていた。

●清姫
黒いポニーテールの髪で身長162cm、30歳で7月18日生まれ。

様々な策を巡らしつつ、1対1を好んでいる。
かつては名家の長女だったが家族を殺され、敵討ちのために愛海の夫から狙撃の腕を教わり、見事敵討ちを成し遂げている。

その後、愛海の喫茶店のウェイトレスの1人として行動している。

●愛海の夫
かつて愛海と結ばれた男であり、ダリオ達に変化をもたらした。
今は亡くなっているが、彼の残した功績は大きなものだった。


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第27話 The Night That End Hostile Earth(敵意の大地が終わる夜)(ver2.0)


?「さて、最後の敵だね···君達ならやれると、僕は信じてるよ」




アリオール本社前に投下された武龍、青葉、北上、ミッドウェー、コア、深海鴉棲姫の6人···

 

しかし、本社の敷地内にある巨大なハッチが開き、中から赤い巨大な人型の兵器が現れた···足は太く、巨大なブースターがあり、両腕の指は巨大な砲身であり、そのずんぐりとした胴体の背部には巨大な"箱"が2つある···

 

アドモンド

《よく来たな貴様ら···戦争など、あのまま続けていれば良かったものを!》

 

青葉「戦争なんか続けて、なんの意味があるんですか!?」

 

アドモンド

《フン、簡単なことだ···戦争が続き、我々が量産型で救世主となる···そうすれば金も!利権も!名声も!全てが手に入る!》

 

コア「そんな事のために戦争を助長させたのか!?」

 

アドモンド

《戦争はビジネス!それに適応できず死んでいった者達などただのゴミだ!貴様らも···そのゴミだぁっ!》

 

 

巨大兵器が吠えると共に、武龍達は構える──

 

 

 

 

 

推奨BGM『Overture』(AC4より)

 

 

 

巨大兵器の両手から放たれる砲撃をかわし、それぞれが攻撃していく。その巨体ゆえに攻撃を当てることは簡単だが、有効なダメージを与えられない···

 

アドモンド

《新素材でできた装甲だ!そんな砲撃ではびくともせんわぁ!》

 

コア「私の砲撃すら防ぐとはな···」

 

深海鴉棲姫は刀の峯を撫でる。すると赤い稲妻と共に深海棲艦の艦載機を3機発艦させる。

その艦載機はミッドウェーの艦載機と共に爆撃し、巨大兵器の視界が遮られる。

 

武龍はライフルとアサルトライフルを連射しつつ、青葉と共に後方に回り込む。

北上はミサイルを巨大兵器の脚部に当てていく。

 

 

 

すると巨大兵器の背中にある箱の蓋が開き、中から大量のミサイルが放たれる。武龍はライフルとアサルトライフルで撃ち落としながら引き、ミッドウェーは艦載機で援護する。

 

コアはポイントを変えながら様々な部位を砲撃し、有効な部位がないか試行錯誤していく。

すると胴体にある穴から高速の砲弾が発射され、深海鴉棲姫の左腕を吹き飛ばした。

 

深海鴉棲姫

「アアアアアアアッ!」

 

武龍「鴉っ!」

 

巨大兵器の胸にはレールガンが内蔵されており、深海鴉棲姫の左腕を吹き飛ばしたのはそれである。

そして倒れた深海鴉棲姫に巨大兵器の砲撃が撃ち込まれ、戦艦水姫は大破してしまう。

 

更に再び背中のミサイルを放とうとするが、ミサイルハッチが開いた瞬間に武龍がグレネードキャノンを撃ち込む。するとミサイルが誘爆し、巨大なミサイルコンテナの片方が爆発する。

 

アドモンド《こしゃくなっ!》

 

すると巨大兵器は足のブースターを起動させて空中に飛び上がり、空から北上のいる場所に降ってきた。北上は間一髪で回避でき、すぐに移動する。

 

北上「ヤバッ!」

 

 

 

武龍「皆!奴のどこかに弱点があるはずだ!そこを狙え!」

 

コア「なら···ここはどうだ?」

 

コアは砲撃で左足のブースターを撃ち抜く。すると巨大兵器の左足が爆発を起こし、巨大兵器は大きくよろける。

 

アドモンド《きっ、貴様ぁっ!》

 

コアに向けられた左腕の砲台に向け、武龍がグレネードキャノンを撃って方向をずらす。

そして回り込んでいた青葉が右足のブースターを撃ち抜く。それにより巨大兵器の右足が大きく損傷し、大きくバランスを崩す。

 

巨大兵器は近くにいる青葉に右腕の砲台を向けるが、ミッドウェーの集中爆撃が巨大兵器の右腕を破壊する。

そこに青葉が損傷した右足に砲撃し、更に損傷を大きくさせる。

 

アドモンド《貴様ら···よくも、よくもぉぉぉ!》

 

巨大兵器は再びミサイルを発射しようとするが、ミサイルのハッチを開いた途端、深海鴉棲姫の艦載機が爆撃する。それにより残ったミサイルコンテナも破壊される。

 

武龍が見ると、深海鴉棲姫は息を切らしながら立っており、刀を構えていた。

 

深海鴉棲姫

「私はまだやれる···まだ、まだだ!」

 

巨大兵器がコアに向けて胸のレールガンを発射し、コアの艤装が破壊される。しかしコア本体には損傷は無く、コアは距離を取る。

そのコアをミッドウェーが援護し、武龍もライフルとアサルトライフルを連射していく。

 

 

 

 

 

アドモンドは過去を思い出し、歯軋りする。

 

アドモンド(なぜだ···なぜ諦めない!)

 

アドモンドはかつて、誰とでも話し合いで問題を解決しようとしていた。

 

しかしアドモンドは高校の卒業旅行に行った先でテロに遇い、家族を殺された。しかしアドモンドは誰かの落とした拳銃でテロリストを殺した。

 

それだけでなく、入社したアリオール社がすぐに経営難に陥り、アドモンドを含めた全社員が生活に困窮した。

しかし社運を賭けて兵器を作り、それが成功を納めた。

 

それによりアリオール社は兵器開発をメインにしていき、経営は右肩上がりになっていった。

 

アドモンド

(力こそ全て···解り合おうなどと、所詮弱者の戯言!)

 

アドモンドは叫ぶ。過去の自分に向けて、目の前の現実に向けて、自身には成し得なかった"和解"を成し遂げた武龍に向けて。

 

アドモンド

《このっ!ゴミ共がぁ!戦争を終わらせる?貴様らは戦争で食い繋いでいる者達の苦しみが解るかぁ!?

それに、怨み、悲しみ、憎しみ···そんなものでできている深海棲艦と、人間、そして擬人化しただけの艦娘が和平を結ぶだぁ!?》

 

アドモンドの目は様々な感情で染まっているが、レイヴンズ·ネストの拠点を襲撃している民間人とは違い、狂気には染まっていなかった。

 

アドモンド

《そんな混沌とした世界は、ユートピアなんかじゃない!ただのディストピアだ!》

 

その目を染め、宿っているのは武龍達とは違う方向の信念だった。

 

アドモンド

《世界をディストピアにされるくらいなら、戦争を続けていた方が何倍も良い!その方が、幸せなのだ!》

 

北上「戦争を続けて、犠牲を増やしてばかりで···そっちの方がディストピアだ!」

 

アドモンド

《貴様らには解るまい···この地獄が!この悪夢が!》

 

巨大兵器は残った左腕を武龍に向ける。

 

アドモンド

《私が···この世界を、守る!》

 

 

 

巨大兵器は左腕で砲撃しようとするが、青葉と北上が巨大兵器の左肘に向けて集中砲撃し、肘関節を破壊された左腕は垂れ下がる。

 

そこに、武龍がグレネードキャノンの砲口を向ける。

 

武龍「消えろ!イレギュラァァァァァ!」

 

武龍はグレネードキャノンの砲弾を巨大兵器のレールガンに撃ち込み、その砲弾は吸い込まれるようにレールガンの砲口に入っていき···巨大兵器は大きな爆発を起こす···

 

 

 

武龍「こちらミグラント···作戦は成功···アリオール本社、制圧!」

 

大蛇《やりましたね!こちらも殲滅完了!捕らわれてた首相も救出しました!》

 

そしてそれぞれから作戦成功の報告が次々と入る。しかし物音がし、武龍達はその方向を見る。

 

そこにはアドモンドが立っており、左腕はおかしな方向に折れ、右足を引きずっている。更には体のあちこちから出血しており、脱出の際に負傷している事が判る。

そして、右手にはアリオール社製の拳銃が握られている。

 

アドモンド「このまま···終わらせは、しない···」

 

アドモンドは武龍に発砲するが、弾丸はPAによって阻まれる。アドモンドは諦めずに武龍に近づこうとするが、突如背後から心臓を刀で貫かれる。

 

コア「これで終わりだ」

 

コアは深海鴉棲姫から刀を借りており、刀を引き抜くと共にアドモンドは仰向けに倒れる。

アドモンドの最期の表情は、絶望に染まった顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、戦争が終わった──

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

やっと戦争終わりましたね···けどまだ少しあるんですよ···

また、題名の英文が間違っていたら教えてください。

●巨大兵器
『本来起こり得た未来』にあるはずの『TypeD No.5』が未来より早く作られたもの。しかしレーザーキャノンはまだ開発できていなかった···

武装は両指の5連装キャノン、両背部のミサイルコンテナ、腹部のレールガン(本来はレーザーキャノン)となっている。

機動力は低いものの、装甲は新素材により堅牢であり、機甲兵装の火力でも簡単には損傷を与えることができない。

●スピリット·オブ·マザーウィル
AFの中でも『最初のAF』と呼ばれており、6本の巨大な足と砲台付きの飛行甲板、そして射程200kmの3連装スナイパーキャノン×2が特徴。

武装は3連装スナイパーキャノン、垂直ミサイル、ライフル砲台、機銃である。
しかしこの世界に誕生してからは艦載機も運用している。

その全長は2.4km、全高600mという巨体で、更に装甲は硬く、『砲台の破壊が内部に伝播しやすい』という欠点を突かない限り撃破できない。
また、『時代遅れの老兵』とも呼ばれている。(しかし武龍達のいる時代では?)

●カブラカン
まるでスカートのついた箱のような外見の赤いAF。前方に複数の大型チェーンソーがついており、拠点などの建物を破砕しながら進む事が可能。

明確な武装は6つのショットガン兼ミサイルの砲台であるが、"箱"の中には大量の自律兵器を格納しており、キャタピラを破壊された時や敵拠点に突入した後、自律兵器をばらまく。
(誕生初期の頃は66機積んでいた)

弱点はスカート内部のキャタピラであり、そこを破壊されると移動できなくなる。

●アンサラー
『企業連の答え』そのものであるAF。傘のような見た目をしており、『地上はどうなろうと構わない』という企業連の答えのもとに極端に高濃度の汚染物質をばらまく。

更にある程度の距離なら遠距離攻撃を撃ち落とす機能もある。
武装は多数のレーザーキャノン、ミサイル砲台、汚染杭の射出、汚染物質の反応爆発など。

傘の柄の部分のような場所に本体があり、そこを破壊されると全壊する。

●ランドクラブ
『最初の量産型AF』であり、4つの3連装砲が特徴。

武装は3連装砲とミサイル砲台。

基本はキャタピラによる移動だが、地形によっては脚部を稼働させ、蟹のように移動することもでき、『最も地形走破力のあるAF』と呼ぶ者もいる。

しかし、真下に回り込まれるとなにもできなくなるという弱点がある。

●イクリプス
円盤のような形をした量産型AF。高高度を飛びながら高火力のレーザーキャノンと垂直ミサイルを放ってくる。

しかし攻撃手段がその2つしかなく、更に真上に飛ばれると攻撃できなくなるという欠点がある。

●ジェット
とある旅団の開発した量産型AF。巨大なレーザーブレードで周辺一帯を薙ぎ払う事を目的としており、蹂躙を最も得意とする。

レーザーブレード以外の武装は照射型レーザーとレーザー砲台であり、遠距離戦は得意ではない(しかしレーザーブレードのリーチが長いので気にはならない)

弱点は背中の円柱形の放熱板であり、そこを破壊されると熱暴走を起こし、爆散する。

●ソルディオス
鹵獲したランドクラブを改造したAF。『ソルディオス·オービット』と呼ばれる巨大な黒い球体を6つ浮遊させ、アンサラーにも使われている物質を使ったキャノン砲で攻撃してくる。

その火力は極めて高く、更に高機動かつ高耐久であり、本体であるランドクラブ部分が破壊されてもオービットは稼働し続ける。
そのため、弱点らしい弱点が無い唯一のAFである。

●ギガベース
ランドクラブの次に量産されたAF。超射程のスナイパーキャノン×2と多数のスナイパーキャノン砲台が特徴。

水陸両用であり、レールキャノンを推進力として海場を進む事が可能。しかし潜水は不可能。
弱点は2つに分かれている船体の間であり、そこに潜り込まれるとミサイル以外の対処ができなくなる。

●グレートウォール
『地上最強』とも呼ばれた列車型AF。その装甲は堅牢であり、いかなる攻撃も効かないが、内部の動力炉を破壊されると制御できなくなり、爆散する。

武装はグレネードガトリングとミサイルポッドが2つづつで、両方ともかなりの火力を持つ。
(『本来起こり得た未来』のグレネード〇〇などはグレネードランチャーとは違う種別と性能である)


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第28話 提督が着任しました(ver2.0)


?「やっと···成し遂げたんだね。これからも色々あると思うけど、きっと乗り越えていけるよ···今なら、"僕"の手はいらないね。それじゃあ、また会う日まで···」




アリオール社、深淵教、人類解放軍の3つの勢力が僅か一晩で壊滅し、戦争を続けようとしていた者達が根こそぎ逮捕されていったこの事件は『終結戦争』と呼ばれ、人々は戦後の復興に力を注いでいた。

 

企業や政府の重要人物が次々と逮捕、起訴されていくとで混乱が生じたものの、アドモンドの予測とは逆に人々は手を取り合い、混乱はすぐに鎮静化していった。

 

そしてここでも艦娘の力は必要とされ、深海棲艦とは正式な終戦式を執り行うこととなった···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オズウェル「·····こうして我々は、終戦に至ることができました。戦争の発端は同じ人間であり、再び繰り返してはなりません」

 

創平「深海棲艦を受け入れる事は難しいかもしれません···ですが、ゆっくりで良いのです···手を取り合いましょう!」

 

オズウェルと創平によるそれぞれの演説が終わり、会場からは拍手と歓声が響き渡る。

オズウェルも創平も、会場に集まった人々も···全員の顔は晴れやかだった。

 

 

 

 

 

しかし、その場に武龍はいなかった···

武龍は終戦式の会場の近くの丘で座り、海を眺めていた。すると、武龍を探していたミッドウェーがやって来る。

 

ミッドウェー「ここにいたのか···」

 

武龍「ああ。俺はああいう場は苦手なんだよ···」

 

海は静かで、心地よい風が吹いていた。ミッドウェーは武龍の左隣に座ると、武龍に問いかける。

 

ミッドウェー「なぁ···武龍···」

 

武龍「なんだ?」

 

ミッドウェー「提督になってみないか?」

 

一瞬、少し強い風が2人を通り抜ける。

武龍はミッドウェーの提案を、首を横に振って否定する。

 

武龍「俺には務まんねぇよ」

 

ミッドウェー「形だけでいい···」

 

武龍「いや、俺はいいや···さて、そろそろ終わり頃だろ?行こうぜ」

 

武龍は立ち上がり、ミッドウェーに手を差し出す。

 

ミッドウェー「···」

 

ミッドウェーは武龍の手を取って立ち上がり、2人は終わり際の会場へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、会食の席で大将Dが話しかけてきた。

 

大将D「貴様がミグラントか?」

 

武龍「そうだが?」

 

大将D「私は大将の1人『ラナ·ニールセン』だ。戦争を終わらせてくれたこと、改めて礼を言う···それと、1つ聞きたい事がある」

 

武龍「なんだ?」

 

ラナ「『頂上決戦』という事件を知っているか?」

 

武龍「学校の教科書にも載ってたさ。確か、赤と黒のカラーリングをした巨大なロボットが『エクシーナイン』とか言う世界を滅ぼそうとした白いロボットを撃破したってやつだよな?」

 

ラナ「ああ。私はその時、その赤と黒のロボットに助けられてな···きっとあのロボットにはパイロットがいると信じている···そして、今でも私はそのパイロットを探しているんだ···」

 

武龍「なるほどね···でもなんで俺にその話を?」

 

ラナは肩を竦めて答える。

 

ラナ「さぁな···貴様を見たときから、なぜかこの話をしなければと思ってな···不快だったか?」

 

武龍「いや、そんなことは無い···それにしても、戦争が無いって良いなぁ···のんびりできる···」

 

ラナ「貴様らは傭兵なのだろう?戦争が終わったらどうするんだ?」

 

武龍「とりあえず、『なんでも屋』としてやってくって事になってる。復興はまだ終わらないし、必要とされることも出てくるだろうからな」

 

ラナ「そうか···ではまた会おう」

 

武龍「おう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、レイブンズ·ネストの拠点に郵便配達がやって来たが、手の空いている者がいなかったため、武龍が受け取りに来た。

 

なんと武龍宛だったので、そのまま名前を書くが、武龍は拳銃を向けられた。

 

配達員「その箱を開けろ···今すぐに」

 

武龍はしまったと思いながらも、ゆっくりとダンボール箱を開ける···すると、中には提督の着る白い制服と提督の被る白い帽子が入っていた。

武龍が顔を上げると、配達員は確認表の表面を剥がす。

 

そこには···

 

 

 

 

『我、提督となることを誓う [武龍]』

 

 

 

 

推奨BGM『提督との絆』

 

 

 

 

武龍「ハァ!?」

 

配達員は帽子を取るとなんと正体はコアだった。

 

コア「提督が着任したぞぉぉぉ!」

 

コアが叫ぶと、深海棲艦達と妖精、そしてレイヴンズ·ネストのメンバー達の歓声が聞こえてくる。

 

深海棲艦s「「「うおおおおおおおおおおおおっ!」」」

 

妖精s「「「やったぁぁぁぁぁぁ!」」」

 

茂みから、拠点内部から、海から、地面から···深海棲艦達や妖精達、レイブンズ·スカイに所属している艦娘達とAF達が一斉に押し寄せ、その場で武龍を捕まえ、胴上げする。

 

皆「「「わーっしょい!わーっしょい!」」」

 

武龍「てめぇら謀ったなコンチクショー!」

 

そして武龍はそのままもみくちゃにされる。

 

武龍「ちょっと待てお前ら!なに服脱がしてんだよ!」

 

アン「早く着替えなさい」

 

レキ「おっ!こいつ結構デケェな!」

 

深海鶴棲姫「レキ!何見てんのよ!」

 

そして武龍は提督の服装に着替えさせられていた···

 

 

 

武龍「てめぇら···」

 

青葉「ほら、なっちゃったものは仕方ないので記念写真取りましょう!」

 

武龍「笑い堪えてんのわかってんぞ···ったく」

 

武龍を中心として深海棲艦達、艦娘達、妖精達、そしてAF達が並ぶ。

そして青葉がタイマーをセットして青葉も並ぶ。

 

 

 

そしてカメラのシャッターが切られる──

 

 

 

種族も立場も関係ない···笑顔がそこにはあった──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鴉の航路 第3章 完

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

武龍は無理矢理ですが提督になりましたね!

感想やご指摘はいつでも受け付けていますので、どしどし送ってください!

●大和型秘匿戦艦·大蛇/ZF型
大蛇の設計図を元に、『本来起こり得た未来』の技術者達が魔改造して建造したもの。

水中も地上も宇宙までも行けるようになっており、船内での居住すら可能。

武装は76cm2連装砲×4、300mレールキャノン×4、30mm2連装機銃×4、40mm2連装散弾機銃×4、小型ミサイル×4、50cmグレネードガトリング×2、超大型レーザーブレードを搭載している。

また、赤い粒子によるバリアを張ることもでき、そのバリアを爆発させる攻撃も可能。
しかし、とある兵器により撃破されてしまっている。

●ラナ·ニールセン
赤い短髪の身長165cmで、27歳で9月9日生まれ。

5人の大将の1人で、他の元帥や一部の鎮守府のやり方に不満を持ち、改善しようと行動してきた。

5才の頃『頂上決戦』の際に逃げ遅れ、殺されようとした時に『赤と黒のカラーリングのロボット』に助けられた。それからはロボットのパイロットを探し続けている。

●頂上決戦
エクシーナインと呼ばれる白い巨大ロボットが世界を滅ぼそうとし、それを赤と黒のカラーリングのロボットが止めたという事件。
その際、中国が無断で領空に侵入、無警告での爆撃を行った事により、世界から干されている。

なお、赤と黒のカラーリングのロボットとそのパイロットの行方は未だ不明のままである。

●エクシーナイン
情報を開示できません。


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番外編 レキのアフリカ旅行(ver2.0)

深海棲艦がアフリカを制圧した後の、レキの小さなお話···

番外編です。


深海棲艦がアフリカを制圧した後、レキはアフリカのサバンナにやってきていた···

 

レキ「オォ~!ココガ サバンナ カァ!楽シミ ダナァ!」

 

ヲ級「ハァ、ハァ···レキチャン、早スギルヨ···」

 

レキにはいつもくっついてきていたヲ級(ノーマル)がいた。そして今回も着いてきていた。

そして2人はどことなく歩き、動物達を眺めていた。

 

ヲ級「アァ~、ナンダカ 癒サレルネェ~」

 

レキ「アノ ライオン、強ェカナ?」

 

ライオンに挑もうとするレキをヲ級が制止する。

 

ヲ級「ダメ!」

 

2人はしばらく歩いた後、レキの持ってきてた弁当を食べる。ヲ級が着いてくることは分かってたのでヲ級の分もある。

 

ヲ級「弁当、作レタンダ···」

 

レキ「マァナ」

 

2人がのんびり景色を眺めながら歩いていると、2人組の人間を見つける。片方の人間は狙撃銃を構えており、その銃口はまだ人間に気づいていないゾウに向けられていた···

 

するとヲ級が戦闘機を発艦させ、ゾウに銃口を向ける人間を機銃で殺害した。銃声に驚いたゾウはその場から走り去っていく。

 

レキ「コイツラ、密猟者ダナ···」

 

アフリカが深海棲艦に制圧された今、アフリカに生息する動物の価値はかつての倍以上になっており、元々密猟による生計を立てていた者達は、より貪欲になっていた。

 

ヲ級「人間ッテ、不思議ネ···綺麗ナ自然ヲ守ロウトスル 人モ イル一方デ、自分ノ事シカ考エテナイ人モ イル···ソシテ、守ロウトスル人達ハ偽善者ト呼バレル事モアル···」

 

ヲ級は、不思議だと言いつつも悲しげな表情をする。

 

ヲ級「ナンダカ、ゴメンネ?辛気臭ク ナッチャッテ」

 

レキ「ハハッ、ソンナノ気ニシネェッテ」

 

 

 

その後も2人は4日程アフリカを堪能した。シマウマがなぜかレキに懐いたり、ヌーの群れを見たり···

そしてそろそろ帰ろうかとしていた時、突如砲撃音が聞こえ、ヲ級の腹部に砲撃が直撃する。

 

レキが艤装と化している尻尾を出し、音のした方を向くとそこには艦娘が6人いた。

 

レキ「テメェラッ!」

 

レキは艦娘に砲撃し、爆撃機で爆撃し、艤装の口で頭部を噛み砕いたりし、艦娘を蹂躙する。イロハ級の中でも特に強力なレ級で、しかもオリジナルのレキを相手に、練度の低い艦娘達は手も足も出なかった。

 

最後に、片足が吹き飛んだ軽巡の頭を踏み潰す。そしてレキがヲ級の所に戻ると、かなりの量を出血しており、意識は朦朧としていた。

 

レキ「オイ!シッカリシロ!」

 

ヲ級「ゴメンネ···モウ、ダメ ミタイ···」

 

レキがヲ級の傷口を押さえるが、出血は止まらない。深海棲艦の傷は入渠せずとも、時間が立てばある程度は自己再生する。しかし、大破している場合は別であった。

 

レキ「クソッ!···艦娘共メ···艦娘モ、人間モ···アイツラガ イナケレバ···」

 

ヲ級「ダメ!···ネェ、聞イテクレる?」

 

レキ「ア?」

 

ヲ級「人間二もね···良い人ダッテ、チャンとイルノ···ダカラ、全ブを憎マナイデ···ソレニ、ソモそも戦争デショ?アノ子達ダッテ、守リたかったものが、キットあったはず···」

 

レキ「デモヨォ!」

 

ヲ級は吐血しながらも続けるが、ヲ級の体は光の粒になり始める···

 

ヲ級「イイノ···だからオ願イ···憎むノハ、戦争ヲ 起コシタ人と、続ケヨウとするヒトだけにして···それと···」

 

ヲ級の体は薄くなり、光の粒は天に昇っていく···

 

ヲ級「こんな私でも、一緒にいてくれて···ありがとう···」

 

ヲ級は完全に光の粒となり、消えてしまう。

 

レキ「いクナ···逝くなぁぁぁぁぁ!」

 

レキは産まれて始めて涙を流した···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レキは布団の上で目を覚ます。

 

レキ「んあ···またあの夢見ちまったな···」

 

レキがあくびをしながら廊下へ出て何気なく歩いていると、中間棲姫と何人かの深海棲艦が歩いていくのが見え、向かってみると、ミッドウェーが頭以外の全身に装甲を纏い、ロマンのある武装をつけた男を連れてきていた···

 

そしてミッドウェーからその男を空き部屋に案内するように言われ、男を案内する···

 

 

 

 

 

 

レキ(ヲ級、戦争···多分もうすぐ終わるぞ!)

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回はレキの過去について触れました。

●レキの友達のヲ級
レキにいつもくっついてきていたヲ級。あまり好戦的ではないが、無闇に自然を侵す者には容赦がない。
好戦的ではないため、他の深海棲艦からは嫌われぎみ。

●密猟者
アフリカが制圧された後も、しばらくは密猟者が密猟を試みる事が多かった。

アフリカの制圧により、その国から退避しなければならなくなった事により、動物達の価値はかつての倍以上になった。しかしそれとは逆に、密猟による稼ぎは絶望的となっていたため、一攫千金を狙って密猟を行おうとしていた。

●今回の艦娘達
秘密裏に行われた『アフリカ奪還作戦』による艦隊。

艦娘が出てきて調子に乗った某国の所属であるが、練度が低いまま行われた作戦であり、作戦の内容も雑なものであったた。
そのため、レキ達に遭遇しなくとも全滅していたと思われる。


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外伝 江ノ島提督(ver2.0)


日本三大鎮守府の1つである江ノ島提督の艦隊は、戦争を終わらせるため、自国の大将に挑む。


レイブンズ·ネストに協力することにした江ノ島提督の艦隊は大将Cのいる鎮守府に向かう···

 

吹雪「元帥Aの鎮守府が見えました!やはりかなりの数がいますね···」

 

加賀「でも、艦隊のほとんどは量産型ね」

 

江ノ島提督《そうか。だが油断はするな···頼むぞ!》

 

大和「ええ!そっちも指揮の方、頼みますからね!」

 

 

 

 

推奨BGM『敵艦隊、見ゆ!』

 

 

 

 

大将の艦隊と江ノ島艦隊がぶつかり、戦闘が始まる。そして少しすると大将Cから通信が入る。

 

大将C《まったく、わからんゴミどもだな···利益を優先して何が悪い?》

 

江ノ島提督《その利益のために、どれだけの犠牲が出てると思ってんだ!》

 

江ノ島提督の怒りを、大将Cは鼻で笑う。

 

大将C《フッ、それの何が悪い?貴様とて深海棲艦を倒すことで利益を得たではないか?》

 

江ノ島提督《お前と同じにするな!》

 

大将C《何が違う?深海棲艦を倒すために適正のあるお前達が抜擢され、それによって富と名声を得た···お前も同じだ》

 

その言葉を、江ノ島艦隊の艦娘達は否定する。

 

長門「提督と貴様は違う!貴様は自分の欲のために行動したが、提督は皆のために行動してくれていた!私達が"あの時求めた形"を、提督は成してくれてたのだ!」

 

吹雪「提督は一緒に行こうって言ってくれて、本当に私達と歩んでくれました!あなたなんかと一緒にしないでください!」

 

大将C《フン、やはりゴミどもには何を言っても無駄か···》

 

 

大将Cの艦隊の艦娘達は強力かつ精密な攻撃を仕掛けてくるが、その顔には感情が感じられない···

すると、加賀の元に駆逐艦の艦娘が突撃してくる。加賀はある程度近づいた所で突如自ら突進し、その艦娘の下顎に掌打を直撃させる。

 

加賀「空母が艦載機を飛ばすだけだと思ったら、大間違いよ」

 

脳震盪を起こした駆逐艦の艦娘はその場で倒れ、動けなくなる。

次に江ノ島艦隊の叢雲が戦艦の艦娘に肉薄し、槍の柄で腹に突きを直撃させ、顔面に砲撃する。更に脳天に槍を叩きつけ、腹に至近距離から砲撃する。

 

更に、金剛の砲撃で怯んだ空母の艦娘に吹雪と夕立が接近し、すれ違いざまに両側頭部に同時砲撃を行う。

 

大将C《ほう···中々にやるな。だが、これも想定内だ》

 

大将Cの鎮守府のドックから量産型が12機出撃してくる···

 

天龍「なんだまた量産型か?···いや、これまでのとは違うな」

 

新手の量産型は、J型とE型がそれぞれ6機ずつだった。

 

大将C《さぁ、この新型相手にどうするかな?》

 

 

 

推奨BGM『海色』

 

 

 

E型のスピードはこれまでの量産型とは比べ物にならないスピードであり、大和はすぐに回り込まれる。

 

大和「しまっ···!」

 

しかしそのE型に天龍の砲撃が当たり、E型は怯んで距離をとる。しかしJ型とE型のスペックに、江ノ島艦隊は苦戦する。

 

島風「おうっ!あの脚、チェーンソーじゃない!」

 

J型のミサイルは艦娘達にとって初めて経験する武装であり、金剛はミサイルを回避しきれずに連続で被弾してしまい、背部艤装に大きな損傷を受け、更にそこにE型が接近して金剛の背部艤装を破壊する。

 

金剛「Shit!」

 

E型が金剛に追撃しようとしたところに、吹雪が砲撃してE型は後退する。

 

吹雪「比叡さん!金剛さんを連れて引いてください!」

 

比叡「解りました!」

 

比叡に連れられて金剛は戦線を離脱していく。

 

 

 

また、睦月と如月は1機のE型を挟んで攻撃していたが、睦月の主砲を脚部のチェーンソーで破壊されてしまう。しかし如月の砲撃によりもう片方の脚部が破壊されたE型は倒れ、そこに睦月の魚雷が撃ち込まれる。

 

叢雲の後方から突撃してきたJ型が主砲を向けるが、ビスマルクの砲撃によりJ型は怯み、叢雲はその隙に距離を離す。

再び叢雲へと向かおうとしたJ型に翔鶴と瑞鶴の爆撃が命中し、J型爆散する。

 

別のJ型は伊58と伊8の魚雷を受けて脚部が損傷し、そこに雪風の砲撃と島風の魚雷が命中、脚部が完全に破壊されたところで大鳳の爆撃と長門の砲撃によりJ型は爆散する。

 

更に別のJ型は伊勢と日向による砲撃に曝されながら確実に攻撃を撃ち込んでいる···しかし後方に回り込んでいた鳥海と天津風、白露による砲撃により怯み、振り向こうとした瞬間、伊勢と日向が左右からすれ違い様に、刀で装甲を破壊された部位を斬りつけ、J型は爆散する。

 

その様子に、大将Cは歯軋りをする。

 

大将C《なぜだ···なぜここまで!》

 

川内と神通、那珂による砲撃が正面からE型に撃ち込まれ、E型は仰向けに倒れる。しかしすぐにE型は立ち上がり、飛び上がって脚部のチェーンソーを振りかぶる。

 

川内「待ってました!」

 

足柄と羽黒による砲撃が飛び上がったE型に撃ち込まれ、E型は撃破される。

 

 

 

いつの間にか海は赤く染まっていたが、それでも戦闘は続いていた。

戦闘を続けている吹雪の背後に撃ち漏らしのJ型が忍び寄る。それに気づいた吹雪は振り替えるが、目の前にJ型は迫っていた。

 

しかし、突如海の中から黒い腕が伸びる。そして吹雪に襲いかかろうとしていたJ型にアッパーが撃ち込まれ、更に何本も黒い腕が現れてJ型を袋叩きにする。

吹雪には、その黒い腕に見覚えがあった。

 

吹雪「まさか···!」

 

すると吹雪に向けて叫ぶ者がいた。

 

深海吹雪棲姫

「今です!撃ってください!」

 

吹雪はすぐさまJ型の顔面に砲撃し、J型は撃破される。

そして吹雪が声のした方向を向くと、右手に12.7cm連装砲を持った深海吹雪棲姫が立っていた。

 

吹雪「あなたは···」

 

深海吹雪棲姫

「話は後です!今は量産型を」

 

吹雪「はいっ!」

 

吹雪と深海吹雪棲姫は並び、E型に向けて砲口を向ける。

 

 

 

 

 

最後の量産型は大和の砲撃により撃破され、大将Cの艦隊の戦力はいなくなる···

 

元帥A《まさか···こんなことが!?》

 

江ノ島提督《お前は、艦娘達をみくびりすぎなんだよ···》

 

そして上陸した艦娘達によって大将Cは取り押さえられ、連行されていく···

 

 

 

 

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございました!

今回は江ノ島艦隊のお話でしたが、どうだったでしょうか?


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幕間 トラウマ(ver2.0)


戦争は終わり、復興が続く世界。
しかし戦争終結の中心にいた人物は、過去の記憶に蝕まれていた···


戦争が終わり、世界は復興が続いている。

艦娘達は様々な分野で活躍し、復興は人間だけの時よりずっと早く進んでいる。

 

しかし、やはり深海棲艦はすぐには受け入れられていなかった。だがそれでも少しずつ受け入れられており、艦娘や人間と共に復興を手伝っていた。

 

レイヴンズ·ネストには依頼が多く来ており、その日も武龍は修理したバルバロイで復興の手伝いをしていた。

バルバロイは構造的に作業がしやすく、背部に装備できる作業用のパーツを大蛇はなんとか作っていた。

 

そしてその日の作業が終わり、武龍は拠点に帰還して眠りにつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍「ハァ、ハァ、ハァ···」

 

子供の姿の武龍は学校の中を走っている。走って走って、そして躓く。

 

武龍「やめて···お願い···お願いだから···」

 

武龍は複数の男の子から殴られ、蹴られ、そして羽交い締めにされ、別の子供が右目の瞼を無理矢理開かせる。そして、右目の眼球を直接殴られる···

 

武龍「痛い!やめて!痛い!痛いよぉ!ヤメテヨォォォ!」

 

武龍は目を覚ます。酷く汗をかき、心臓も鳴り響いている。時計を見ると、まだ夜中の3:00だった。

 

武龍「またか···ちくしょう···ちくしょう···」

 

武龍は頭を抱え、布団の中で縮こまる···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督となった武龍が着任する鎮守府が無いか探している戦艦水姫。『終結戦争』の後、『戦艦水姫改』となることで力を増し、あの巨大兵器に対抗できるような訓練も積んでいた。

 

そして深海棲艦の所有している海域の中に鎮守府"らしき"建物のある島を見つけたとの報告を受け、戦艦水姫改はその島に向かう。

そこには戦艦水姫改の先に青葉が来ていた。

 

戦艦水姫は復興を手伝う際、『南方棲戦姫』と共に武龍と仲良くなっており、現在は武龍のために色々と手を回している。

そして、戦艦水姫改はその鎮守府"らしき"建物を見て絶句した···

 

青葉「やっぱりそうなりますよね?私も驚きましたよ···」

 

その建物はボロボロであり、建て直しが必要な程だった。

 

戦艦水姫「お前はなぜ来てるんだ?」

 

青葉「危険なものはマークしておくためです!」

 

青葉はサムズアップしつつそう言った。

 

戦艦水姫改「なるほどな」

 

青葉「そういえば、戦艦水姫さんは深海棲艦としての名前以外になんて呼ばれてるんですか?」

 

戦艦水姫改「私か?私の本名は『マリアナ』だ」

 

青葉「なるほど!では改めてよろしくお願いします!」

 

戦艦水姫改「こちらこそ、よろしくな」

 

とりあえずその日は視察をするだけで終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍は誰もいない場所で耳を押さえて蹲っていた···

耳を塞いでも頭の中に聞こえてくる夜逃げする前の言葉···

 

『お前はいらないんだよ!』『なんでお前なんか産んだんだ』『くっせぇ!汚ぇんだよ!』『こいつボコすとストレス発散できるわ~』『お前はモノなんだよ!モーノ!』『近づかないでください、汚物が』『まるで鴉だな···汚いゴミ漁りが』『鴉は鳩の餌場に来んなよ!』『この疫病神が!』『何もできないくせに、誰かを助けたいなんぞ作文に書くな!』『なんで泣いてんだよ?モノのくせに』

 

更に大量の言葉が頭の中に響き渡り、武龍は涙を流す···

 

武龍はこれまで、ある男性に渡された小説を読むことで自身を保っていた。しかしそれが親に燃やされ、その後夜逃げをした。

夜逃げの後、青葉達と出会ってからは戦いによって自身を保とうとしていた。

 

もちろん、青葉達といることで心は和らいでいた。しかしそれでも、武龍でも気づかない内に心の中のトラウマは大きくなってきており、そして今は本当の限界を迎えつつあった。

 

 

 

 

 

その日の夜中、アンが忘れ物を取りに資材庫へ行き、その帰りにトイレから出てきた武龍と鉢合わせした。

武龍の目には隈ができており、ゲッソリとした様子だった

 

アン「武龍様?顔色が悪いですよ?」

 

武龍「ごめん、ちょっと悪い夢見ちまってな···もう寝るよ。また明日」

 

そう言って武龍は自室に言ってしまった···『悪い夢を見た』そう言った武龍の顔はまるで怯えた子供のようだった···

 

 

 

 

 

アン「武龍様···」

 

 

 

 

 

翌日、アンは主要メンバーを集めた···

 

 

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回は武龍の裏側を出しました。武龍は誰にも見られないように必死に耐えてきていました。では、これからは?

●マリアナ
戦艦水姫のオリジナル。
他の深海棲艦達からは姉のように慕われており、武龍の事を弟のように思っている。


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第4章 救われなかった少年
第29話 これから(ver2.0)



武龍の過去を知った深海棲艦の面々、そして武龍の"仲間達"の出した答えとは···


アンから突然収集された主要メンバーの面々は会議室に集まり、アンの話を聞く。

 

ミッドウェー「なるほど、武龍は何かを隠していると···」

 

草薙「その事ですが、武龍の過去についてこの場でお知らせしようかと思います···」

 

そして、草薙からは武龍の過去について語られる。親からのDVや学校でのいじめが日常的に続いていたこと···

 

アン「武龍様···そのような過去があったなんて···」

 

ベスは武龍の戦闘中と戦闘後のバイタルの様子を思い出す。戦闘中は安定していたものの、戦闘後は若干の乱れがあった。

 

ベス「なるほど、戦闘後のバイタルの様子など、それなら納得がいきますね」

 

青葉「もっと早く言ってくれれば···ってのも難しかったでしょう···」

 

草薙「武龍の精神的な成長に大きな変化が無かったのは、おそらく武龍の読んでいた小説によって、既に形作られていたものが私達と出会ったことと、戦闘によってある程度安定していたからでしょう」

 

コア「···ならば、1つ提案がある」

 

会議室にいるメンバーがコアの提案を聞き、即座にそれを他のメンバーに伝達していった···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍とレイブンズ·ネスト組、コア、ミッドウェー、レキ、マリアナ、防空巡棲姫、飛行場姫、駆逐棲姫、駆逐古姫、南方棲戦姫は着任する鎮守府に来たのだが···

 

武龍「こ、これは···」

 

時雨「あれ?鎮守府って···ここ?」

 

駆逐古姫「なんでこんなにボロボロなのよぉ~!」

 

そう、武龍の着任する鎮守府は広さはかなりあるものの、ボロボロであった···

 

マリアナ「調べたところによると、ここは最初期に制圧した島の1つらしい。誰もいないなら有効活用しようというわけだ」

 

曙「なんなのよそれ!私達にこんなところで暮らせっての!?」

 

青葉「まあ、そうですけど···実はちょっと違います」

 

夕立「ぽい?」

 

マリアナ「ここを私達の手で建て直そうというわけだ!」

 

青葉「誰も使わない土地なので、自由に改築できますよ!」

 

草薙「ということは···」

 

ソラ「フ、フフフ···ジュルリ」

 

そして、鎮守府建て直し計画が幕を開けた···が···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リリ「広すぎますうぅ~!」

 

武龍《ごめん、俺迷ったんだけど!誰か!》

 

大潮「ま、まだまだ頑張れます!」

 

その広さが故に改築もマッピングもかなりの難易度を誇っていた···

 

 

 

武龍は迷って1人になり、広い森の中を歩いている。

 

武龍「いったいどこまであるんだよ···」

 

次第に暗くなり、冷え込んでくる···その状況が、武龍に過去の事をフラッシュバックさせる。

暗く冷たい部屋で、親や同級生から何度も暴行された事が次々と頭に浮かぶ。

 

武龍の胸が痛くなり、頭痛もしてくる。

 

武龍「ハッ···ハッ···ハッ···」

 

次第に呼吸も安定しなくなってくる···

耐えきれず、その場に蹲る。すると、誰かの足音が聞こえてくる。

 

武龍(ま、またあいつらか?頼む!来ないでくれ!)

 

しかし武龍を見つけたのは···

 

 

 

ミッドウェー「武龍!良かった!」

 

ミッドウェーであった。ミッドウェーは武龍を見つけると駆け寄って抱き締めた。武龍は震えていたが、収まるまで抱き締めたままだった···

 

ミッドウェー「大丈夫、大丈夫だ。私がいる」

 

武龍の震えが収まったところで、ミッドウェーは武龍の両頬に手を当てて顔を合わせる。

 

ミッドウェー「大丈夫だ」

 

ミッドウェーは武龍の手を繋ぎ、皆のいる所へ連れていった。皆のいる場所へと向かう2人を、月明かりが照らしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間前、会議室にてコアは1つの提案をした。

 

コア「今度は私達が武龍を救うのはどうだ?まあ、救うなどと偉そうな事はあまり言えないが、実際私達深海棲艦は武龍によって救われた···そっちはどうだ?」

 

アン「少なくとも、私は救われましたね···」

 

草薙「戦争を終わらせたのは他ならない武龍です。なら救われたという表現も、間違ってはいないでしょう」

 

リリ「私はコアに賛成です!1人は皆のために、皆は1人のためにという言葉がありますけど、武龍は皆のためにやってきてくれました!なら···今度は私達が武龍のために動くべきです!」

 

青葉「武龍はまだ過去に囚われてて、救われなかったままここまで来て、多分今は自力で抜け出すことができないんですよ···なら、私達が"サルベージ"すれは良いんですよ!」

 

ベス「私達AFは殺すためだけに産まれてきましたが···1人の人間のために動くのも、悪くありませんし···武龍なら喜んでサルベージしましょう」

 

コア「決まりだな···なら、『サルベージ作戦』を発令しよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして現在···

 

ティス「武龍!大丈夫か!?」

 

青葉「良かったぁ~」

 

マリアナ「ケガはないか!?」

 

武龍「ああ。ケガはない···それと、ありがとう。ミッドウェー」

 

ミッドウェー「ああ」

 

武龍のサルベージは、まだ始まったばかりだ···

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

第4章は武龍のサルベージがメインとなります!


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第30話 提督の任(ver2.0)


ようやく鎮守府が完成し、武龍は提督としての任を実行していく。


ようやく鎮守府が完成し、皆は疲れ果てて風呂の後に速攻で眠った。

 

武龍は再び悪夢を見たが、途中で暗く、深い深海へと場面が変わる。しかしその深海は決して恐怖を感じず、冷たくもなかった。むしろ、温かく包み込むような感覚であり、安心できた。

 

武龍(あれ?···深海なのに温かい···これは···?)

 

武龍はそのまま温かく包み込む深海に身を委ね、目を閉じる···

翌朝、武龍が目を覚ますと布団の中にミッドウェーが潜り込んでおり、武龍を抱き締めていた。

 

武龍「み、ミッドウェー?」

 

ミッドウェーは慌てて武龍から離れる。

 

ミッドウェー「ん?ああっすまない!酷くうなされていたから安心させようとしたんだが、そのまま私も寝てしまって···」

 

武龍「うん···ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

その後、リリ曰く提督の醍醐味の1つという『建造』と『開発』を行うため工廠に向かい、資材を投入する。リリに奨められた通り建造は30ずつ、開発は10ずつ投入する。

 

武龍「これって妖精達がやってくれるんだよね?」

 

リリ「そうですよ!まぁ、大体は気分ですけど···」

 

武龍「何が出るかとかさっぱりだから、妖精達に任せるさ···って、なんか妖精達が追加で資材入れてんだけど?」

 

リリ「何してるんですか!?」

 

妖精「だって~、造りたいのがこれなんだもーん!」

 

深海妖精「大丈夫大丈夫!ギャハハハハ!」

 

そして待ってる間に開発をしてみることにした。資材を10ずつ投入し、ベルトコンベアから出てきたものは『ドラム缶』だった。

 

武龍「なんだろう?このドラム缶···」

 

青葉「遠征とかで資材を集める時に資材を入れておくんですよ!」

 

武龍「なるほど、それは便利そうだな」

 

建造が終わるまでの間、武龍は工廠の中を見て回っていた。新しい機甲兵装のパーツの設計図を描いている大蛇、工廠に運び込まれた資材を点検している妖精とベス···

 

そしてもう少しで建造が終わるというところで、深海鴉棲姫がやってくる。

 

深海鴉棲姫「お、やってるな。兄さんの初建造、誰が来るか楽しみだな」

 

すると建造が終わり、建造ドックから出てきたのは···

 

 

 

雪風「陽炎型駆逐艦8番艦、雪風です···って!なんで深海棲艦が!?」

 

建造で出てきた雪風は深海鴉棲姫に驚いていた。

 

リリ「あぁ~、"まだ教えてなかった"ですね···雪風さん、深海棲艦との戦争は終わりましたよ···そこの傭兵兼提督のおかげで」

 

雪風「え?」

 

雪風が武龍の方を向く。

 

武龍「まあ、俺がやったっちゃやったけどな···」

 

コア「間違いなくお前だ。それと私はコア。またの名を中枢棲姫といってな。深海棲艦の始祖だ」

 

いつの間にか、武龍の背後にコアと青葉が立っていた。

 

雪風「えぇぇっ!?」

 

青葉「すみません、情報量が多くて···ちょっと案内がてら説明しますね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に武龍がやることになったのは艦隊の編成と出撃である。

 

蛟「いずれ、再び戦争が起きても対策しやすいように、今のうちにやっておきましょう」

 

武龍「まあな···」

 

武龍が編成したメンバーは霧島、サウスダコタ、鳳翔、北上、時雨、夕立であり、陣形は複縦陣である。

出撃後、敵役の深海棲艦と会敵する。深海棲艦の編成はイ級2、ホ級、リ級、ヲ級、ル級である。

 

武龍はどう指揮して良いか解らず、困惑している。

 

霧島《気にする必要はありません》

 

夕立《基本はこっちに任せて、重要な時にこっちから聞くっぽい!》

 

北上《そうそう。その時に決断だけしてくれれば後は任せて良いよ》

 

武龍「お、おう···」

 

結果は艦娘側の勝利だったが、武龍は腑に落ちない···

 

蛟「まあ、こちらに所属してる艦娘は少ないですし···もっと増えたらその時にまたやってみましょう!」

 

武龍「う~ん···なぁコア、今度深海棲艦同士での演習って大丈夫か?」

 

コア「もちろん大丈夫だ」

 

武龍「ありがとう。じゃあ今度、深海棲艦も合わせた編成でやってみるよ」

 

マリアナ(ほう、そこに気づくとはな···)

 

 

 

 

 

 

そうしているうちに、武龍の心に温かさが少しずつ現れていき、悪夢を見る日数も、僅かながら減ったのだった···

 

そしてある日、大東は拠点に届いた郵便物を取りに一旦拠点へ戻り、郵便物を受け取って鎮守府に戻ってくる。大東が郵便物の箱を開けると、中には9冊の小説が入っていた。

 

大東「あんなことがあったから、まともに届くか心配だったけど···ちゃんと届いて良かったぁ~!」

 

その小説は全9巻のシリーズものであり、過去に賞を取った大ベストセラー小説であった。

 

陸奥「へぇ、あなた小説読むの?」

 

大東「うん、この前ラノベ読んで小説にハマってさ。それにこの小説、前に武龍が読んでたっていう小説だから、気になってたんだよ」

 

その小説の著者には『神城 (かける)』とあり、小説の題名は···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        『ARMORED·CORE』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛海「あなたの本、また1つ大事な人の手に渡ったわよ。フフッ」

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

武龍の初建造の結果は雪風でした!
ちなみに雪風はこの後ピスと演習をしたそうです···

●神城 翔
愛海の夫であり、既に亡くなっている。
それ以上の情報は削除されています。

●翔の小説
愛海の夫がかつて自費出版した大ベストセラー小説。
ある少年が特別なロボットを駆る傭兵となり、成長していく物語。

しかし妙にリアルであり、一部が書き換えられたように都合の良いものになっている。
現在は著作権を愛海が持っており、他者による改変などはされないようになっている。

また、小説の一部はアニメ化や映画化もされているが、映像化を申し込む者の大半は儲けを優先していたため、映像化作品は極めて少ない。


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第31話 山登り(ver2.0)

島にある山を登り、山頂を目指す武龍一行。山頂にあるのは果たして···


鎮守府のある島に、1つの山がある。大蛇の提案により、皆で登山をする事となる。

 

登山用の服装に着替え、早朝から山頂を目指す。山の中は鳥の声や風が心地よく、武龍の心を落ち着かせる。それを察知したティスも笑顔になる。

 

武龍「山って、こんなに綺麗だったんだ···」

 

辺りを見渡す武龍を木漏れ日が照らしており、それを見たアンは微笑む。

 

アン「私も、こうして感じられて、とても気持ち良いです」

 

レキ「今度は富士山にも登ろうぜ!」

 

レキはガッツポーズをしながらそう言うが、それに飛行場姫は呆れた様子である。

 

飛行場姫「まだこの山を登頂してないでしょ?」

 

 

 

途中、壊れた橋を見つけた一行はそれを避けて遠回りする。ベスは橋の状態を見て腐食具合を確かめる。

 

時雨「ここって、結構前にも人がいたんだね」

 

大蛇「後で直しておきましょう。結構遠回りになりそうですし」

 

一行は山の奥へと入っていき、しばらく道なりに歩いていると廃村を発見する。

 

青葉「こんなところに村ってあったんですね···」

 

夕立「なんかちょっと不気味っぽい~」

 

しかし何事もなく廃村を抜け、更に登って行く。

 

コア「···」

 

コアはなにもいない村を睨み付ける。するとコアは突然両手を広げ、思い切り手を叩いて大きな音を立てる。その音は反響し、廃村の不気味な空気は一気に消え去った。

 

コア「これで良い」

 

驚く武龍達を尻目にコアは先へ進み、武龍達も後を着いていく。

 

 

 

 

 

マリアナ「そろそろ山頂か?」

 

山頂が近づくにつれ、各々の期待が膨らんでいく。

 

雪風「山頂はどんな景色なんでしょう!?」

 

深海鴉棲姫「楽しみだな」

 

そして山頂に着くと、小さな神社があった。

 

ラン「神社があるってことは、ここに住んでたのは日本人か···」

 

駆逐古姫「どうせならお参りしていきましょ?お金無いけど」

 

参拝の後、山頂から下の景色を見渡すと、鎮守府が見え、別の場所からは先程の廃村も見えた。

 

駆逐棲姫「良い景色だね···」

 

防空巡棲姫「戦争が終わったからこそ、ゆっくり見れるわね···改めてありがとう。武龍」

 

鳳翔「では皆さん、そろそろお昼にしましょう」

 

ブルーシートを敷いて、その上でのんびり弁当を食べる。弁当を作ったのは鳳翔、レキ、大蛇である。

鳳翔は家庭的な弁当を、レキは肉多めのもの、大蛇はホテルで出されるような弁当を···

 

賑やかな武達以下の全てが静かで、まるで武龍達以外全ての時が止まったような静けさである。

しかし、静かだからこそ武龍達の笑い声が響き渡り、山は少しだけ明るくなったようにも思える。

 

コアとリリは何もいない所にふと目を移すと軽く会釈をし、再び会話に入っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山を降りて風呂に入り、のんびり時間を過ごす。

 

武龍「そういえば、飛行場姫と防空巡棲姫と南方棲戦姫、それから駆逐棲姫と駆逐古姫の本名ってなに?」

 

飛行場姫「私は『ヘンダーソン』よ」

 

防空巡棲姫「アタシは『セイレーン』だ」

 

南方棲戦姫「私は『セン』よ」

 

駆逐棲姫「私は『(こん)』」

 

駆逐古姫「私は『古風(ふるかぜ)』」

 

武龍「じゃあ皆、改めてよろしく!」

 

 

 

 

 

 

 

夜、それぞれが寝静まった頃、コアとリリは屋上で月を見ながら静かな時を味わっていた。

 

コア「静かだな···」

 

リリ「はい。とても静かですね···」

 

コア「こんなにのんびりできたのも、久々だな」

 

リリ「このままもうちょっとのんびりしてましょう」

 

コア「そうだな···」

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

のんびり回でしたが、いかがだったでしょうか?


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第32話 サバゲー(ver2.0)


島の一部を使ってサバゲーをすることになった一行。追加のメンバーを含めて行われるが果たして結果は!?


登山の2日後、鎮守府に新しくやって来た深海棲艦が3人。

 

欧州棲姫「私は『ロイヤル』。向こうは水姫に任せてきたから安心して」

 

深海鶴棲姫「私は『ツル』よ。よろしくね!」

 

太平洋深海棲姫

「Hi!私は『パシフィック』。気軽に『パシー』って呼んで」

 

武龍「よろしくな!」

 

 

 

3人が来たことでより賑やかになり、楽しさが更に増した。

そして数日後、ラビィの提案でサバゲーを行うこととなった。

 

サバゲーに必要となるエアガン、バイオBB弾、ゴーグルその他装備はベスが大量に揃えたため、それぞれが好きなものを選ぶ余裕はたっぷりあった。

 

レキ「オレ、ルール知らねぇんだけど?」

 

ベス「サバゲーのルールを大まかに説明しますと···」

 

ベスは簡単なルール説明を行う。

 

『目を保護するため、サバゲー用のゴーグルやフルフェイスガードは必ずつける』

 

『体や所有物にBB弾が1発でも当たったら「ヒット」や「アウト」などと大声で申告し、セーフティエリアに戻る』

 

『サバゲーで使用できるのは『バイオBB弾』や『生バイオBB弾』のみ』

 

ベス「大体はこの3つですが、もっと細かいルールがあるので、それも説明します」

 

そしてベスから、サバゲー中はセーフティエリアでも安全のためゴーグルやフルフェイスガードは着けたままであり、エアガンの弾速も規定で決められている事を説明される。

 

レキ「なぁ、格闘とかってアリか?」

 

ベス「いけません。あくまでエアガンを使用したスポーツなので、格闘は厳禁です。ただ、背後をとったりしたときにフリーズコールをすることはできます」

 

ラン「なぁ、所有物って言うけど、エアガン本体に当たったらどうするんだ?」

 

ベス「もちろんヒットです」

 

ラン「そっか。じゃあシールドとかは?」

 

ベス「サバゲーを開催するフィールドの運営によって変わってきますが、この島のフィールドではシールドは問題ないことにします。なので、使いたければ使ってください···そもそもここにはありませんが」

 

ツル「ねぇ、艤装使うのは···」

 

ベス「レールキャノンを食らいたければどうぞ」

 

ツル「ごめんなさい!」

 

ベス「では今回は『フラッグ戦』としましょう。ルールは簡単、相手チームを全滅させるか、相手陣営のフラッグを取れば勝ちです。なお、フラッグを取った合図はこの花火です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サバゲーは武龍陣営とコア陣営に別れた。ベスと蛟はセーフティエリアの管理人として残り、それぞれが自陣のセーフティエリアに向かう。

武龍のエアガンは『M4パトリオット』という電動ガン(バッテリーを使うタイプのエアガン)である。

 

スタートのブザーが鳴り、それぞれ行動を開始する。

 

武龍アンと共に側面にまわりつつ状況を確認する。アンが選んだのはアサルトライフルの『G36K』の電動ガンタイプである。また、AK-12を選んだ深海鴉棲姫は2人と付かず離れずの距離を保ちつつ、2人に着いていく。

 

武龍はコア陣営のレキを見つけ、フルオートで仕留める。

 

レキ「わわっ!ヒットォ!」

 

 

 

その頃、エアコッキングタイプ(圧縮した空気を使うタイプ)のスナイパーライフル『APS タイプ96』を構え、スコープを覗いていたヘンダーソンがまだこちらに気づいていないラビィに照準を合わせ、トリガーを引く···しかしBB弾は風に流され、ラビィの横の木に当たってしまった。

 

その瞬間、ラビィの狂った笑顔がグリンとヘンダーソンを向いた。

 

ヘンダーソン「ヒッ!何よこのライフル、全然当たらないじゃない!」

 

ラビィ「見つけたよ!アハハハハハハ!」

 

ラビィは電動ガンタイプのマシンガン『M240』を連射し、ヘンダーソンは回避が遅れたため、ヒットしてしまう···

 

 

 

数分後、コア陣営のランはガスガン(ガスの力を使ったタイプ)タイプのショットガン『KSG』で武龍陣営のソラを撃破した後、木を挟んで同じ武龍陣営の雪風と撃ち合っていた。

雪風のエアガンは電動ガンタイプのサブマシンガン『MP5A5』であり、互いに避けながら撃ち合っていた。

 

ラン(クソッ!雪風は体が小さいし足速いから狙いずらいな!)

 

雪風(ランちゃんのショットガン、再装填早いですっ!)

 

しかし、途中でランが弾切れになってしまう。

 

ラン(予備のマガジンは···無いだと!?)

 

そこからはランと雪風で木を挟んだ鬼ごっこ状態となり、最終的に雪風によりランは撃破されてしまう。

 

しかしその時、武龍陣営の方向から花火が上がる。

 

雪風「えぇっ!?」

 

 

 

 

武龍陣営のフラッグでは···

 

ティス「よっしゃぁぁぁぁっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サバゲーが終わった後、武龍は広間のソファーでうとうとし、そのまま眠ってしまった···しかし悪夢を見ることはなく、ふと目を覚ますとミッドウェー、アン、ティスの3人が武龍を囲むようにして眠っていた。

それを見た武龍は安心し、再び眠りにつくのだった···

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

実は私はサバゲー大好きで、M4パトリオットは愛銃です!

●M4パトリオット
電動ガンタイプのアサルトライフル。

ストックを排する事で銃身を短くし、サブマシンガンの長所を取り入れたもの。
高い連射力と射速により、様々な距離に対応できる。

余談だが、同名の武器がとあるゲームにも登場している。

●BB弾
サバゲーをするにあたってはバイオBB弾か生バイオBB弾のみ使用可能。プラスチック製のものは厳禁。

バイオBB弾と生バイオBB対応の名称以外の違いは無いものの、大きさや重さなどが違うものもあり、フィールドの運営によってはそれらを制限している場所もある。

ちなみに、バイオBB弾には特殊な分解酵素があり、自然に優しい事から使用が認められているのである。

●BB弾が風に流される
BB弾は重さや形などの関係により風に流されやすく、射速も上限が決められているため、スナイパーライフルなどの飛距離のアドバンテージの恩恵は無いに等しい。

しかしスナイパーライフルはカスタム無しでも射速が高いものが多く、精度もスナイパーライフルは高めであり、エアコッキングタイプであれば精度は更に高いものとなっている。

(今回ヘンダーソンが負けたのはエアガンをよく知らなかった事と撃つ時に風があったため)


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第33話 感謝と疑念(ver2.0)


武龍は時雨、夕立、大蛇と共に日本の市場に行き、調味料などを買いに行くが、そこで見たものは···


武龍は時雨、夕立、大蛇と共に市場に調味料などを調達しに向かった。

そこは戦時中とは違い、活気に満ちていた。

 

武龍「すごい、もうここまで復興してるのか···」

 

時雨「武龍のおかげだよ!」

 

夕立「次は釣り道具っぽい!」

 

釣り道具を買うため、魚市場に向かう一行。大蛇は調味料を船に積むため、一度戻った。

残りの3人は魚市場に向かったが、そこで漁師達の会話が聞こえてくる。

 

漁師A「深海棲艦との戦争が終わったって、信じられるのか?」

 

漁師B「いんや、信じらんねぇ。あれだけ大々的にやってもよ、終わらせたのが傭兵ってのがキナ臭くてな···」

 

漁師C「そうか?あそこまで大々的にやったんだ、終わったのは本当なんじゃないか?まあ、どうせ金かなんかでも渡したんだろ」

 

漁師D「それに、アリオール社やそれに繋がってる鎮守府を襲撃したってさ、そんなのテロと変わらんだろ。所詮、連中はテロリストさ」

 

武龍はその会話を聞いて拳を握り締める。

 

時雨「行こう。あんな人達の話なんてそれこそあてにならないから」

 

夕立「それにあそこの人達の扱ってる魚、変な臭いがするっぽい···」

 

そして魚市場を進み、良さそうな魚を見つけた3人。そこの魚を買おうと漁師に声をかける。

 

武龍「あの、これとこれとこれ、それとこの魚もください」

 

源蔵「あいよっ!···ってその声、もしかしてあの時の傭兵か?」

 

良さそうな魚を売っていたのは、レイヴンズ·ネストに初めて以来を出した源蔵だった。

 

武龍「えっ!?」

 

武龍はまさか声で判別できるなど思っていなかったため、驚愕している。

 

武龍「···まさか声で判るなんてな」

 

源蔵「あったりめぇだよ!あの時依頼を受けてくれてなかったら、俺達ゃとっくに飢え死にしてたさ!だから改めて、ありがとう!」

 

源蔵は満面の笑みで接客してくれたため、武龍は安心できた。

そして魚を購入する時、源蔵は最も上質な魚をくれた。

 

源蔵「まいどあり!それと、戦争を終わらせてくれたお礼にこれやるよ」

 

そう言ってくれたのはなんと『カジキマグロ』である。それもかなりの大物である。

 

源蔵「俺が獲ってきた中で1番の上物だ!」

 

源蔵は胸を張って自慢するが、武龍は受け取って良いか迷う。

 

武龍「いや、これは···」

 

源蔵「他の奴らが何言おうと関係ねぇ!俺達漁師を救ってくれて、更に戦争を終らせたとあっちゃ、俺にできる礼はこれくらいしかねぇってもんよ!」

 

武龍「···ありがとうございます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戻りの船で武龍は自身の手を見ながら呟いた。

 

武龍「俺は···誰かの役に、立ててたのか?」

 

すると横から···

 

草薙「当然です!」

 

武龍「大蛇···」

 

大蛇「あなたは依頼だったとはいえ、この地域の漁師達を救いました。それが解らない人達はろくな者達ではありません。それに、最初に会ったときの事を覚えていますか?」

 

武龍は思い出す···夜逃げを実行し、青葉に助けられ、青葉もろともやられそうになった時に降ってきた大蛇。

 

大蛇「傭兵活動をする際、私を含む秘匿艦船やAFは最終決戦まで極力隠し続ける必要があり、そのためには誰かが代わりに戦わないといけませんでした。

 

しかしそこであなたとちょうど出会ったんです。これはきっと、何かの運命でしょう···その後の事も含めて」

 

武龍「そう、なのか?」

 

大蛇「思えばあの時出会って、AFの中でも特に心に重いものを抱えた2人がまさかあなたにその重いものを壊されて···」

 

すると、時雨と夕立が物陰から出てきた。

 

時雨「僕達の事も助けてくれたじゃないか!」

 

夕立「改めてありがとう!」

 

大蛇「そうですよ!それに、最後にはあなたが戦争を終らせた···さて、そろそろ着きますよ!」

 

船着き場では、ミッドウェーやアン、ティスに雪風、その他の皆も笑顔で迎えてくれている。

船から降りると···

 

アンサラー「お帰りなさいませ、武龍様!」

 

スティグロ「お帰り~!」

 

ミッドウェー「お帰り、武龍」

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

漁師達は事実上助けられた側ですが、ほとんどの漁師はレイヴンズ·ネストに良い印象を持ってはいません。


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第34話 ああ、海よ!(ver2.0)


気温がかなり高くなり、海水浴に向かう一行。果たして海水浴は無事楽しめるのか···


ラビィ「あ、暑いです···」

 

気温はかなり上昇し、暑い日が続いており、アイスは瞬く間に底を尽き、アイスを買いに行くついでに海水浴を楽しむことにした···

 

リリ「こ、今度はアイスの製造機を作らねば···」

 

ギガベース「既にあるかき氷製造機を増やした方が良いかと···いえ、アイスも食べたいですから資材を回しましょう」

 

うだるような暑さなの中、アンサラーは初めての海水浴に目を輝かせながら歩いていた。

 

アンサラー「海···海水浴···」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍達が海水浴場に向かい、水着に着替えて砂浜に繰り出す。

 

カブラカンはシートを敷いてビーチパラソルを立て、ベスは海の家にかき氷と焼きそばを買いに行く。

 

武龍はシュノーケルを着けてアンとティスと共に泳いでいく。ミッドウェーと深海鴉棲姫も3人を追って泳ぎに向かう。深海棲艦は元々水中でも呼吸ができるのでシュノーケルは必要ない。

 

海中を泳ぎ、魚を眺めながら泳ぐアンサラーの目は輝いていた。

 

アンサラー「こんな光景を見れるなんて私···私···!」

 

泳ぐ海は、戦争の無い静かで明るい海であり、その光景にミッドウェーも暖かな目をしていた。

 

 

 

しばらく泳いた後、一旦休憩のために海から上がって日光浴しているコアとリリの元に戻る。すると、江ノ島提督とその艦隊も海水浴に来ているところを互いに確認した。

 

江ノ島提督「おっ!レイブンズ·ネストの皆じゃん!久しぶり!」

 

海水浴に来てる江ノ島艦隊の中には、江ノ島艦隊に移動した深海吹雪棲姫もいる。

 

武龍「顔を合わせて会うのは終戦式以来だな」

 

武龍と江ノ島提督が談笑していると、夕立が江ノ島提督は秘書艦でもある大和を見つける。

 

夕立「あっ!大和さん、久しぶりっぽい!」

 

大和「え?私あなたと会ったことありましたっけ?」

 

夕立「あっ!私元々深海棲艦だったから判らないの当然っぽい···あ、でも···」

 

夕立は大和の前で人間離れしたジャンプをし、空中で手を広げ、大和と顔を合わせながらながら横回転し、大和の後ろに着地する。

 

夕立「これで判ったっぽい?」

 

大和「まさかあの時の···」

 

夕立「そう!私、その時の深海棲艦よ!ちなみに名前は『ソロモン』!オリジナルの1人っぽい!···あ、復讐とか考えてないからそこは安心してほしいっぽい!」

 

それを聞いた江ノ島提督は驚愕する。

 

江ノ島提督「お、オリジナル?」

 

コア「深海棲艦のオリジナル、つまりその深海棲艦の最初の1体であり、産まれた海域そのものの実力を持っている···ちなみに人類が倒せたオリジナルはソロモンだけだ」

 

江ノ島所属電「え?てことは私達が物凄く苦労して倒した中間棲姫って···」

 

ミッドウェー「ああ、あの影武者のことか」

 

江ノ島艦隊が崩れ落ちる。

 

江ノ島提督「マジかよ···で、あなたは誰ですか?」

 

コア「堅苦しいのはいい···私はコア。別名『中枢棲姫』といってな。深海棲艦の始祖だ」

 

江ノ島艦隊「ええええええええええええええっ!?」

 

江ノ島提督「キャ、キャパオーバー···」

 

すると、大和に近づく人影が···

 

大蛇「大和姉さん!お久しぶりです!」

 

大和「あなたは···もしかして、草薙さん!」

 

大蛇「はい!草薙です···が、私は艦娘でして本名は『"大和型秘匿戦艦"大蛇』です!···やっと本名で名乗れました!やったぁぁぁ!」

 

大蛇は力強くガッツポーズをしている。

 

武蔵「まさか妹が私以外にもう1人いたとはな···」

 

大蛇「武蔵姉さん!」

 

大蛇はこれまでにないほど輝き、喜んでいた。

 

 

 

そして、江ノ島艦隊の扶桑と山城の元にも···

 

蛟「扶桑姉様、山城姉様···初めまして。私は『"扶桑型秘匿航空戦艦"蛟』と申しますこのような形でも、会えたことがとても嬉しいです!」

 

扶桑「山城の他にも妹がいたなんて···」

 

山城「え、でも···」

 

蛟「私と大蛇は誰にも知られる事無く消え去った設計図です···が、色々あってこうなりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後も楽しい時間が過ぎ去り、夕暮れとなった頃にそれぞれ鎮守府に戻る。

 

その日、武龍は悪夢を見なかった···

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

大蛇と蛟はやっと姉達に会えましたね!

感想やご指摘はいつでも受け付けていますので、どしどし送ってください!


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34.5話 君に感謝を(新実装)

武龍の悪夢の頻度は減りつつあるものの、まだ深く残っていた。
しかし、武龍を救いたいのは艦娘や深海棲艦、AFだけではなかった。


大蛇とリリは工廠にいた。目の前には並べられた部品やパーツがあり、それらは全てボロボロに破損していた。

 

大蛇「武龍を救うには、私達だけでは足りません」

 

リリ「そうですね」

 

大蛇「では、お願いします」

 

リリ「···はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍は丘のベンチから海を眺めており、その顔は暗かった。

楽しいことは沢山あった。それでもやはり、トラウマはすぐには消えない。そしてこの状態の自分に対し、嫌悪感を抱いていた。

 

武龍(このままじゃダメだってのに、俺は何をやってるんだ···)

 

武龍は大きなため息をつき、頭を抱える。すると突然、背後から声をかけられる。

 

???「おおっ!前方に暗い顔で悩むレイヴンを発見!」

 

武龍が振り向くと、茶色のポニーテールの髪をした銀色のパイロットスーツを着た女性が立っていた。その右隣には銀色の短髪の白いパイロットスーツを着た女性が立っていた。

 

武龍「ええっと、2人は誰?」

 

茶色のポニーテールの女性は腰に手を当て、胸を張って答える。

 

茶色のポニーテールの女性

「ふふん、ボクはクレスト白兵戦型!クレ(はく)って読んでね!」

 

銀色の短髪の女性は腕組みをしながら静かに答える。

 

銀色の短髪の女性

「私はクレスト強襲戦闘型、『ミストアイ』と呼んで」

 

武龍は2人の自己紹介に唖然としている。

 

武龍「えっと···ど、どういうことだ?」

 

クレ白「なんだか良く解らないけど、大蛇とリリがボク達に肉体を与えて復活させてくれたんだ!」

 

クレ白は両手を広げ、深呼吸する。

 

クレ白「そうだ!それと···」

 

クレ白が何かを言いかけたところで、クレ白達の背後から何者かが声をかけてくる。

 

???「ここにいたか」

 

見ると、黒い軍服を着た黒い短髪の女性と赤いパイロットスーツを着た褐色肌で茶色の短髪の女性がいた。

黒い軍服の女性は武龍に右手を差し出して言う。

 

黒い軍服の女性

「私はシュープリスだ」

 

武龍がおずおずとシュープリスと握手をすると、横から赤いパイロットスーツの女性が腰に手を当てながら自己紹介をしてくる。

 

赤いパイロットスーツの女性

「私がバルバロイってんだ!よろしくな!」

 

武龍は目をパチクリさせている。シュープリスは丘から見える海を見て一言···

 

シュープリス「良い景色だ」

 

クレ白「同感だよっ!」

 

すると、ミストアイがクレ白達に問いかける。

 

ミストアイ「あなた達、武龍を探していた理由を忘れてないわよね?」

 

シュープリス「もちろん忘れてなどいないさ」

 

クレ白達は武龍に向き直ると、笑顔を向ける。

 

 

 

クレ白「ボク達は、君に感謝を伝えに来たんだよ!」

 

クレ白は腰に手を当て、胸を張って言う。

 

武龍「え、でも俺···クレ白とミストアイはほぼ全損させたし···」

 

すると武龍の頭をミストアイが優しく撫でる。

 

ミストアイ「私達は気にしていない。それに、私達はあなたを守れた。そこに後悔はない」

 

クレ白は武龍に向けてサムズアップする。

 

クレ白「むしろボク達の事をよく使ってくれてたしね!」

 

すると、シュープリスは武龍の前に立った。

 

シュープリス

「"AC"とは破壊のために使われることが大半であり、それを当たり前とする風潮があった。しかし君は破壊のためには使わなかった。それだけで我々にとっては幸せなのだよ」

 

ACという言葉に武龍は違和感を覚える。

 

武龍「ん?AC?」

 

クレ白「そうだよ。ボク達はACだよ。シュープリスとバルバロイは『ネクスト』だけど」

 

ACとネクストという言葉を聞いた武龍は更に違和感を覚える。

 

武龍「ACにネクスト···あれ、これ···」

 

バルバロイ「ん?ACとかネクストの事、知らないのか?」

 

 

 

武龍はACやネクストの事は自身が読んでいた小説ARMORED·COREに登場するものだと説明する。

 

武龍「でも、クレ白のパーツは俺が知ってるのと同じだし···」

 

しかし、武龍の話にクレ白達は疑問を持つ。

 

バルバロイ「神城 翔ねぇ···アタシは知らない『リンクス』だね」

 

シュープリス「その小説、気になるな。その翔という男、調べる必要がある」

 

クレ白「う~ん、もしかしたらボク達の後の世代のレイヴンかもね」

 

ミストアイ「だとしても、私達はAC。そしてあなたは機甲兵装として私達を使った、レイヴンでありリンクスよ」

 

武龍は空を見上げる。

 

武龍「なんだか···実感無いな」

 

 

 

 

 

クレ白「今さら実感なんてどうだって良いよ!君はボク達を破壊のための道具として使わなかったんださしさ!」

 

ミストアイ「そうね。じゃあ改めてよろしく」

 

シュープリス「そうだな、よろしく頼む」

 

バルバロイ「よろしくな!」

 

武龍の心の中には機甲兵装を自分が使って良かったのか、気になっていた。

 

武龍(ああ、俺···機甲兵装を使ってて、良かったんだ)

 

また少し、武龍の心は軽くなった。

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

遅れましたが、艦これ10周年おめでとうございます!

●クレ白
茶色のポニーテールの髪型で身長160cm、肉体年齢は18歳。
銀色のパイロットスーツを着ている。

明るく、まるで柴犬のような印象であり、大蛇とリリの手により機甲兵装の状態から肉体を与えられた。
(後述のミストアイ、シュープリス、バルバロイも同様)

●ミストアイ
銀色の短髪で身長162cm、肉体年齢は18歳。
白いパイロットスーツを着ている。

静かで常に冷静な性格をしている。
また、名前の由来は頭部パーツの名称から。

●シュープリス
黒い短髪で身長170cm、肉体年齢は19歳。
黒い軍服を着ているが、その下に黒いパイロットスーツを着ている。

冷静な性格で、軍人のような雰囲気を醸し出している。

●バルバロイ
茶色短髪で身長168cm、肉体年齢は18歳で褐色の肌である。
赤いパイロットスーツを着ている。

溌剌(はつらつ)とした性格で、卑怯な事を特に嫌っている。

●小説
実は武龍が過去に渡されたのは翔が最初に出版したものであり、全9巻の方は完全版となっている。


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第35話 過去の解決(ver2.0)

服を買いに向かった武龍達は武龍のトラウマの1つである者達と再開してしまう···


きっかけは、それぞれの服を買いに行く事から始まった。武龍、青葉、ミッドウェー、アンの4人で服屋に入り、小さなファッションショーのようになる。

 

アン「本当は、ファッションに詳しいティスがいればよかったのですが···」

 

武龍「仕方ないさ、孤児院のステージに行ってるんだから」

 

ティスはこの日、孤児院で小さなライブをやる予定なので来れないのである。

しかし青葉が最近の流行に詳しいのでとても助かっている。

 

一通り服を買い終り、トラックに積み込んでいると武龍が男性に声をかけられた。

 

男性「おい、何してんだよここで!」

 

武龍は覚えのある声で動きが止まる。しかし青葉が男性に対応した。

 

青葉「ここは大型車専用の駐車場で、特に問題はありませんよ?」

 

男性「ここは俺がいつも使ってる駐車場なんだよ!なんの許可取って停めてんだよ!···あ?そこに"ある"のもしかして武龍か?」

 

身勝手な言い分をしている男性が、突如無理矢理武龍に詰め寄る。

 

男性「久しぶりだな武龍!こんなところに"あった"なんてよ!おい、さっきのは良いから。武龍ちょっと来いよ」

 

武龍は心臓の動悸が激しくなり、震えてきている。

 

武龍「···ろよ···やめろよ!」

 

武龍は男s···クズ男の手を振り払う。するとクズ男は武龍に殴りかかるが、青葉がその手を掴んで阻止する。

その隙にミッドウェーが武龍を背後に隠し、アンは武龍を抱き締める。

 

青葉「やめてください、あなたがしようとしたことは暴行ですよ?」

 

しかしクズ男は舌打ちをし、やれやれといった様子である。

 

クズ男「チッ···お前らなんでこのゴミといんだよ?俺と一緒にいた方が楽しい思いできるぜ?」

 

クズ男の煽るような態度と言葉に、青葉は眉を潜める。

 

青葉「なぜそんなことが言えるんです?」

 

青葉の質問にクズ男は自慢気に答える。

 

クズ男「そいつは俺にストレス発散させる以外何もできないゴミクズだ。俺は違うぞ?金もあるし遊べる場所も知ってる!

試しにそいつを殴るか蹴るかしてみろよ?おもしれえ声で泣き叫ぶんだぜ?それにそいつは···」

 

クズ男が続きを言い終わる前にミッドウェーがクズ男の首を右手で掴んで持ち上げる。

 

ミッドウェー「もういい、黙れ···金があるからなんだ?遊べる場所を知ってるからなんだ?武龍は私達のために命をかけてくれた!寄り添ってくれた!」

 

ミッドウェーの殺意にクズ男は気圧される。

 

クズ男「ヒッ···」

 

ミッドウェー「お前とは比べるまでもない···次同じようなことを口にするようなら···」

 

ミッドウェーはクズ男を壁にに叩きつける。そして左手で顔の横に拳を打ち込み、コンクリートの壁に拳がめり込む。

 

ミッドウェー「お前を殺す···」

 

ミッドウェーは手を離すと青葉達と共にトラックに乗り込み、港へ向かう。

青葉がチラリとクズ男の方を見ると、クズ男は失禁していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、武龍は震えが収まらずにいたが、自室のドアがノックされ、スティグロが入ってくる。

 

スティグロ「よう、眠れてるか···って、そんなんじゃねぇな」

 

スティグロは震える武龍を抱き締め、頭を撫でながら囁く。

 

スティグロ「大丈夫、何があっても私達は武龍を信じる。だから武龍は1人じゃない···大丈夫だ、大丈夫···」

 

武龍の震えは次第に小さくなっていき、武龍は寝息を立て始める。

 

スティグロ「寝ちまったか···さて私も···って、しがみついてんなこりゃ」

 

スティグロは微笑んで武龍と共に布団に横になり、そのまま眠りについた···

 

 

 

その頃、アンはパソコンを操作していた···

 

アン「なるほど、武龍にトラウマを植え付けた者達の30%は生きてたんですか···」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、ミッドウェーは武龍と話をする。

 

ミッドウェー「武龍···もし過去のトラウマの原因となった出来事が解決できるとしたら、どうする?」

 

武龍「そりゃ解決したいが、今はもう···」

 

武龍は俯いて答えた。

なぜならもう過去の事で教師達が無視できなくなった事件は、全て勝手には終わったことにされてしまっており、周囲はそれを鵜呑みにしていた···警察でさえ。

 

ミッドウェー「過ぎた時間は関係無い。武龍はまだ"あの時間"を生きている。なら、それは解決するべきだ」

 

武龍「でもよ···」

 

ミッドウェーは武龍の手を握る。

 

ミッドウェー「武龍は私達を救ってくれた···だから今度は私達が武龍のために動く番なんだ。だから、武龍のトラウマは私達が焼き尽くそう。これは、私達個人の意志だ。他の誰のことでもない」

 

武龍は涙を流し、一言···

 

武龍「·····ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある家に住んでいる浮気性のクズ男(先日武龍達と会ったクズ男)がいた···その家のインターホンが鳴り、クズ男は出る。

 

浮気性のクズ男

「はい、なんでしょうか?」

 

レキの艤装がクズ男に噛みついた。

 

 

 

あるマンションの一室にニートのクズ男がいた。クズ男がゲームをしていると突然画面が変わり、クズ男が以前撮っていた武龍に暴行してる時の動画が流れ始め、次の瞬間には大音量で武龍の助けを求める声が響き渡る。

 

ニートのクズ男

「なっ、なんだよこれ!?」

 

すると、部屋の前から音がする。クズ男が恐る恐る扉を開けると、何者かによって無理矢理こじ開けられる。

 

そこには冷たい表情をしたサウスダコタが立っていた。

 

 

 

とある刑務所の独房に、窃盗で捕まっているクズ男がいた。ようやく出所を迎えることができたが、迎えに来るものはおらず、自力で家に帰ると、怒り狂った家族が出迎えた。

 

ネットには、クズ男の武龍への所業がばらまかれており、社会的に取り返しのつかない事になっていた。そしてそれを小さな監視カメラで見ているアンはほくそ笑む。

 

アン「フフフフフ···なんとも滑稽ですね···」

 

 

 

あるクズ男は提督になっており、その鎮守府に来訪者が来ていた。

そのクズ男は規定を無視した運営をしており、資金の使い道に不透明な部分があることで知られていた。

 

来訪者は青葉であり、艦娘達に提督のクズ男の目の前で武龍へしてきたことと裏でやっていた事を暴露していく。焦ったクズ男が止めようとするがそれをかわしながら暴露を続けていく。

 

艦娘達は最初の内は唖然としていたが、これまで自分達にしてきた事を含め、次第に怒りの表情に変わっていき、青葉達のいる部屋になんと元帥であるラナまで入ってくる。

 

ラナ「貴様もここまでだ」

 

青葉は最後に特大の爆弾を投下し、去っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それぞれのクズ男達は復讐すらできない状態になり、それがテレビやマスコミでも大々的に報じられた。

 

コア「どうだ?武龍」

 

武龍「もう···終ったのか?」

 

霧島「他にも関与していた者達にも同様の"処置"を行いましたが、1人だけ逃げました」

 

武龍の表情が絶望に変わる。

 

霧島「しかし逃亡先のアメリカで、大統領が大統領令を出してすぐに捕まったそうです」

 

大統領令が出たことを知った武龍は驚愕の表情を浮かべる。

 

武龍「大統領令とか強すぎんだろ···」

 

リプ「職権乱用では?」

 

サウスダコタはサムズアップをする。

 

サウスダコタ「No problem。大統領は『我々は、返し切れるか解らない大きな借りを、少しでも返す義務がある。それに、不法入国者を許すわけにはいかない』と言ってるそうだ」

 

時雨「武龍の雨はすぐには止まないかもしれない。けど、必ず晴れさせてみせるよ」

 

武龍「皆···ありがとう···皆!」

 

その夜、祝宴を上げた鎮守府は面々···その時の武龍の顔はこれまでに無いほど、輝いていた···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、武龍は"過去"から解き放たれ、"今"を生きることができるようになった···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

救われなかった少年は、ようやく、救われたのだ···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

遂に武龍の過去は解決しました。これは人によって感じるものが違うと思いますが、"武龍は"救われたのです。

···ちなみにACⅥですが、私は予約しました。


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第35.5話 君の笑顔(新実装)

過去の呪縛から解放され、本当の笑顔で笑うことができるようになった武龍。
そこから始まる、新たな物語。


武龍は笑顔で砂浜で深呼吸をし、潮の匂いを胸一杯に吸い込む。艦娘や深海棲艦達にとっては嗅ぎ慣れた匂いだが、武龍にとっては過去から解放されたことで、まるで初めてのような感覚になっていた。

 

そして、その笑顔は晴々としていて清々しかった。

 

その笑顔を見た青葉達は安心して微笑む。

 

青葉「やっと、本当に笑えてますね」

 

ミッドウェー「ああ。とても良い笑顔だ」

 

今の武龍にとって、話す、走る、考える、遊ぶ、食べる、戦う···全てが新鮮であり、光輝いて見えている。

 

誰かともっと話したい、走る時の爽快感、考えることの楽しさ、遊びの楽しさ、食べ物の美味しさ、戦いの緊迫感···これまでほとんど感じられなかったことが、ハッキリと感じることができている。

それは武龍にとって、嬉しくて仕方がなかった。

 

マザーウィル

「フフッ、まるで無邪気な子供ね」

 

ジェット「幼い頃から、子供らしい事はさせてもらえなかったんだ。はしゃぐのも当然だろう」

 

そして武龍の心には、あるものが芽生え始めていた。輝いて見えるものの中に、艦娘や深海棲艦、AFやACも含まれていたのだ。

武龍は初めて人に対し"綺麗"、"かわいい"、"かっこいい"といった感情を感じていた。

 

武龍「なんだか、皆も輝いて見えるな」

 

 

 

 

 

武龍は機械や本が好きだった。反対に人は苦手だった。

 

機械は扱いを間違えなければ守ってくれる。

本は自分を傷つける事無く、知識や希望を与えてくれる。

 

反対に、人は自分を徹底的に傷つけてくる。過去に出会った男はおそらく傷つける事はしないだろう。しかしそれ以降は永遠と傷つけられるだけだった。

 

しかし兵器に魂が宿り、人の肉体を得た艦娘が現れた。艦娘は兵器か人間か、学者やマスコミなどは議論を重ねていったが、武龍はどちらでも良かった。

 

ただただ、助けてほしかった。あの地獄から助け出し、壊してほしかった。

 

 

 

あの日、武龍のいた地獄を爆撃して破壊したのは深海棲艦だった。

あの日、武龍を守ってくれたのは艦娘だった。

その日から、武龍の心にびっしりとできた錆びにヒビが入った。

今では、その錆びは消え去っている。

 

 

 

 

 

武龍の心が晴れやかになり、深海鴉棲姫も嬉しく思っていた。深海鴉棲姫な自身の左隣にいたコアを見る。

 

コア「なんだ?」

 

深海鴉棲姫

「素晴らしいとは思わないか?深海棲艦は負の感情から生まれた。私は元から負の感情の塊だった。艦娘は兵器でも人でもない存在として生まれた···」

 

走り回って疲れた武龍はベンチに座り、ミッドウェーと共におにぎりを食べている。

 

深海鴉棲姫

「しかしそれが今では人々を繋ぎ、それに導かれた少年は艦娘と深海棲艦と共に戦争を止め、過去に苦しめられていた少年を救った···これはとても素晴らしい事だとは思わないか?」

 

コア「確かにそうだな···」

 

 

 

武龍はミッドウェーを見て礼を言う。

 

武龍「ありがとう···俺があいつらと再会した時に、青葉とアンと一緒に助けてくれて」

 

ミッドウェーは何も言わず、ただ武龍の頭をわしわしと撫でる。そして2人は水平線を眺める。その景色は清み渡り、波も静かだった。

 

 

 

 

 

武龍はもう、過去には苦しめられない。

まるで時が止まったような心は、新しい風と海によって背を押された。

武龍は進み始めた。

その道はもう1人ではないと、武龍はハッキリと認識できたのだから。

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回は武龍の心境の変化を描いてみましたが、どうだったでしょうか?


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第36話 羽ばたく鴉(ver2.0)


過去のトラウマから解放された武龍は本当の笑顔を見せる。そしてそれを見た大蛇は···


第4章最終回です。


過去のトラウマから解き放たれた武龍は、オリジナルの深海棲艦を相手に演習をしており、その結果を見た大蛇は興味深そうにしている。

 

大蛇「これまでの枷が外されて、一気に伸びましたね」

 

命中率や回避率など、戦績は過去とは桁違いに伸びている。

 

イクリプス「オリジナルの深海鶴棲姫に圧勝してるのだ···」

 

大蛇「···よし!決めました!新しい機甲兵装もあることですし!」

 

大蛇は何かを決心した様子で観客席から立ち上がる。

 

イクリプス「何を決めたのだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍は演習場に呼び出され、新しい中量2脚型機甲兵装『ノブリス·オブリージュ』を装備して向かう。

 

ノブリス·オブリージュは白いカラーリングをしており、右手にアサルトライフル、左腕にレーザーブレード、両背部に天使の翼のような見た目の『デュアルレーザーキャノン』を装備している。

 

演習場には大蛇が完全武装で立っていた。

腕組をして背中を向けて立っていた大蛇は、そのままで武龍に話し掛ける。

 

大蛇「武龍、あなたはとても強くなりました···最初に会った時の事を覚えていますか?」

 

武龍「当たり前だろ?」

 

大蛇「では···私と1戦交えてください。私はこの手で確かめたいのです···あなたの"力"を」

 

武龍「···解った」

 

 

 

推奨BGM『The answer』(ACfaより)

 

 

 

大蛇は振り向き、互いに構える。

 

大蛇「大和型秘匿戦艦、大蛇!殲滅を開始します···」

 

武龍「こちらミグラント!作戦を開始する!」

 

開幕から大蛇は76cm砲を連射してくる。武龍は間一髪で回避し、機銃を連射しながらバズーカを撃ち込んでいく。しかし大蛇はその巨大な艤装からは想像できないスピードで動き回り、グレネードガトリングと機銃を連射してくる。

 

そしてその弾幕の中にミサイルと76cm砲を織り混ぜてくる。

 

武龍(弾幕の中に致命的なヤツが混じってる!)

 

武龍は空中から急接近するが、4本の龍のような首が食らいつこうとしてきたので回転して回避する。しかしその瞬間に背部のメインブースターをグレネードガトリングで撃ち抜かれる。

 

武龍「メインブースターが!?クソッ、狙ったか!」

 

武龍は着地して航行しながら距離をとる。

 

武龍(近づけばあの龍みたいな艤装が、遠ければ主砲とガトリングか···)

 

しかし、大蛇は思考する隙を与えずに弾幕を張り続ける。武龍はデュアルレーザーキャノンを起動させ、計6発のレーザーを発射する。

すると大蛇は上の方の主砲を盾にしてレーザーを防ぎ、盾にした主砲は損傷を受ける。

 

武龍はアサルトライフルを連射しつつ上空から接近し、大蛇にある程度近づいたところでQBし、大蛇を飛び越す。そして大蛇を飛び越した瞬間にQTし、レーザーキャノンを構える。

 

大蛇「このくらい、想定の範囲内ですよ?」

 

武龍は突如、大蛇の艤装によりに両腕に食らいつかれ、動きを封じられる。

そして武龍は大蛇の前方に投げ出されるが、武龍は空中でQTをすることで体制を立て直す。

 

···が、そこに散弾機銃が武龍に向けられ、至近距離から連射される。怯んで海面に落ちた武龍に残る全ての攻撃が撃ち込まれる。

 

蛟《演習終了!勝者、大蛇!》

 

演習終了のブザーが鳴り、ペイントまみれになった武龍はため息をつく。

そんな武龍に大蛇は手を差し伸べ、武龍を引き起こす。

 

大蛇「良い戦いでした。レイヴンズ·ネストに所属している艦娘や深海棲艦達でもここまで耐えられた者はいません···ですが、私はまだ本気を出してはいません」

 

まだ本気を出していない、その事に武龍は驚愕する。

 

武龍「あれでか!?」

 

大蛇「はい。しかしあなたはAFや私のいる領域に辿り着く事のできる可能性を持っています···まあ、機甲兵装に関してはまだ改良点があるのでそれもありますが···来なさい、"AFの領域"まで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それぞれが寝静まった頃、大蛇とAF達『本来起こり得た未来』で産まれた者達が屋上に集まり、お茶会をしていた。

 

マザーウィル「武龍、本当に強くなりましたね···」

 

月明かりが彼女らを照らし出している。

 

ジェット「枷が外れると、あそこまでいくものだな」

 

アンサラーの脳裏に、とある光景が思い浮かぶ。

 

アンサラー「まるで···」

 

大蛇「"あのリンスク"、のようですか?」

 

アンサラー「はい。まるであのリンスクのようにとてつもないスピードで成長していく···」

 

"あのリンクス"とは誰なのか、彼女らにはすぐに思い当たる人物がいた。

 

スティグロ「あのリンスクかぁ···やっぱり武龍って『ドミナント』か?」

 

ギガベース「かなりの高確率でそうでしょう。武龍はおそらく···近いうちにランドクラブやイクリプスを確実に越えるでしょう」

 

ランドクラブ「あ、それは私も思います。武龍は今はまだ『ネクスト』の機動性にギリギリついていけてないですが、ものにしたら間違いなく負けますね」

 

イクリプス「同感なのだ。アセンブルと戦術によってはギガベースも越えられるのだ」

 

ソルディオスは空中でオービットを回転させながら答える。

 

ソルディオス「というか、武龍はドミナントであり、同時に『イレギュラー』でもあるでしょう?」

 

カブラカン「それな。"深海棲艦との戦争"っていう"ある種の秩序"を破壊したしな···」

 

一時的に雲が月を隠し、大蛇は暗闇の中で微笑む。

 

大蛇「"深海棲艦の力"の体現者はコア、"艦娘の力"の体現者は江ノ島鎮守府の吹雪、そして"人類の力"の体現者は武龍···やはり世界は面白いですね···」

 

有澤「ですがまだ油断はできませんね···」

 

スティグロ「だよねぇ~だって"海が震えている"もん☆」

 

雲が通り過ぎた月は、美しくも儚く輝いていた···

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

そうです。武龍は"未来の誰かさん"と違ってドミナントです。イレギュラーです。

●ノブリス·オブリージュ
白いカラーリングの中量2脚型機甲兵装。

武装は右手にアサルトライフル、左腕にレーザーブレード、両背部にデュアルレーザーキャノンを装備している。

近~中距離を想定しており、天使の翼のような形のデュアルレーザーキャノンは片方につき3発同時発射のため、その威力は驚異となる。

●デュアルレーザーキャノン
複数のレーザーを同時発射する背部武装。
複数同時発射のため、エネルギーの消費は激しい。しかしその分火力は高まっている。

●ドミナント
『先天的な戦闘適合者』の事であり、武龍の成長速度はこれに該当するとされている。
ちなみに、機甲兵装のスペックは武龍のスペックを補助するために調整されており、本来ドミナントの領域に達する事のできる代物ではない。

なお、今後は本来の機甲兵装のスペックに引き上げる予定である。

●イレギュラー
『本来起こり得た未来』の"管理者"にとって規格外な力を持ち、秩序を破壊しかねない存在の事。


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第36.5話 艦として(新実装)

深海棲艦達の中には邂逅を望む者もいた。
そして、新たな出会いが···


ある日、コアは3人の姫級から連絡を受けた。その内容は「私達は邂逅を望む」とのことだった。

コアは3人の意思を尊重し、武龍達にその事を話した。しかしその場にいるはずの大蛇は遅れてくるようだ。

 

武龍「邂逅を望んでるなら、それで良いと思う」

 

クレ白「武龍君、ここはボク達に任せてくれないかな?」

 

クレ白を始めとするAC達は邂逅のために戦うことを買って出た。聞けば、クレ白達は自分達の戦いを武龍にはまだ見せていないからだそうだ。

 

武龍「そうは言ってもな···深海棲艦達への想いとか無かったらできないぞ?」

 

クレ白「そこは大丈夫、ボク達は皆から沢山話を聞いて、そして話し合ってきたから」

 

武龍の知らぬ間に、AC達はこの世界の事を知るために色々と動いていたのだ。武龍は提督の帽子を正すと、AC達に許可を出す。

 

武龍「なら、頼んだ!」

 

クレ白「任せてよ!」

 

すると、ミストアイが右手を上げる。

 

ミストアイ「質問があるわ。私達が邂逅のために戦って良いとしても、誰が出るの?」

 

武龍は考えるが、そこでドアがノックされる。そして部屋に入ってきたのは大蛇と2人の知らぬ女性だった。1人は癖っ毛の金髪で騎士のような銀色の鎧を着ている。もう1人は黒髪を後ろで束ね、白に青いラインの入ったセーターを着ている。

 

大蛇「すいません、遅れました」

 

武龍「大丈夫だけど、その2人は?」

 

鎧の女性「ハーッハッハッハッハッ!君はこの私の事を憶えていないようだねぇ?2代目の(あるじ)よ!」

 

セーターの女性

「ん~?私は憶えてなくても仕方ないと思うよ~」

 

武龍は2人に困惑している。すると鎧の女性は腰に両手を当てつつ、胸を張って自己紹介し、セーターの女性は背伸びをしながら自己紹介する。

 

鎧の女性「では名乗ろう!この私こそ、強さを求めた騎士···『レオ』だ!」

 

セーターの女性

「私は『フォックス·アイ』だよ~、よろしく~。あ、名前長いかもだから『クリケット』って呼んで」

 

2人はクレ白より後に肉体を得たACであり、武龍は驚愕する。大蛇曰く、クレ白達の時は資材が足りずにレオとフォックス·アイは保留となっていたのだが、十分な資材が得られたために2人を復活させたのだそうだ。

 

そして、2人は今回の邂逅の件を聞くと2人も立候補した。しかし邂逅を望む3人の姫級はいずれも、1対1での決闘も望んでいる。そのためAC側も3人が選ばれる事となっている。

 

しかし、武龍に対する"本来起こり得た未来"での戦い方を見せる意味もあるため、話し合いは割りとスムーズに進み、結果はクレ白、バルバロイ、レオとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2日後、鎮守府に集まった姫級は以下の3人である。

 

ゆらゆらと浮遊し、焦げた白い長髪に白いドレス、そして顔の左側が黒く覆われている『深海海月姫』。

 

2本の三日月型の角が後頭部から上へと生え、ウツボとウミヘビの艤装を携え、顔は口と左側をマスクで隠した『深海重巡水姫』。

 

メガネをかけ、頭部にはネコミミのような角が生えており、艤装からは梅の花をつけた木の枝が生えている『深海梅棲姫』。

 

それぞれが邂逅を望み、鎮守府に集う。

そしてそれぞれは自身の相手を務めるACと共に離れた場所に向かう。

 

 

 

 

 

深海海月姫の相手はクレ白であり、コアが合図を下す。

 

 

 

推奨BGM『渚を越えて』

 

 

 

合図と同時に深海海月姫は艦載機を発艦させ、クレ白は前方にブーストで移動する。クレ白は深海海月姫の艦載機がある程度近づいたところで右側にずれながら進み、マシンガンで艦載機を迎撃していく。

 

深海海月姫はどう進んでも魚雷を当てられるよう、8機の攻撃機を横に並べて魚雷を放つ。しかしクレ白は飛ばずにジャンプして魚雷を回避する。

 

クレ白「ボク達の世代にいたイレギュラーの動きの1つ、見せちゃうよ!」

 

クレ白は左右に動きながらジャンプを繰り返し、マシンガンと小型ミサイルを切り替えて攻撃しながら深海海月姫へと接近していく。その動きにより、攻撃機の魚雷は全く当てられていない。

 

深海海月姫

「案外やるわね···」

 

深海海月姫の艦載機は戦闘機と爆撃機による攻撃を主体にし、戦闘機の機銃を少しずつ当てていくことに成功する。

 

クレ白「さっすが姫級!ボクに当ててくるねぇ!」

 

クレ白は小型ミサイルを艦載機達にロックオンし、発射する。小型ミサイルを回避するために艦載機達は一旦攻撃を中断する。そしてその隙にクレ白は膝をつき、グレネードキャノンを構える。

 

クレ白(あの青く光る部位、あれたぶん弱点だよね?)

 

グレネードキャノンの砲口は深海海月姫の頭の上の艤装、その中心にある青白く光る部位へと向けられている。轟音と共に発射された砲弾は、深海海月姫の発光する部位へと直撃する。

 

深海海月姫「うあ"あ"あ"あ"あ"っ!」

 

深海海月姫の頭上の艤装が爆発と共に砕け散り、深海海月姫は海上に落下する。しかし依然として艦載機はクレ白に攻撃を続けているため、クレ白は攻撃を回避しつつマシンガンを連射していく。

 

 

 

深海海月姫「こんな炎は···もう、嫌よ!」

 

深海棲艦の艦載機は艦娘と比べ、数が多い。そのため物量によってクレ白の損傷は少しずつ増えてきている。しかしクレ白は空中に飛び上がり、ブーストを切ったり吹かしたりを不規則に繰り返す。

しかもそれは回避だけでなく、移動や攻撃も同時進行させている。

 

そして、クレ白は深海海月姫の頭上の艤装が無くなった代わりに、深海海月姫の四方に浮いている艤装の中にある球体が青く光っている事に気づく。

 

クレ白「はっは~ん、二段階の艤装って訳だね!」

 

深海海月姫は更に艦載機を発艦させ、爆撃をクレ白の右肩に命中させることに成功する。

 

クレ白「うおっ!やったなぁ!」

 

クレ白は着水するとグレネードキャノンを深海海月姫の前方の海面に撃ち込み、大きな爆発と水柱が立ち上がる。次の瞬間、爆煙と水柱の中からクレ白が飛び出る。

 

クレ白「チェックメイトだよ!」

 

クレ白はレーザーブレードで深海海月姫を袈裟に斬り上げ、深海海月姫は安らかな笑みを浮かべて倒れ、"邂逅"する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM『戦争を忌む者』

 

 

 

深海重巡水姫の艤装は口を大きく開けて威嚇し、バルバロイは空中へ飛び上がる。

 

深海重巡水姫

「目を開けたまま···沈めっ!」

 

バルバロイ

「運命を受け入れなっ!」

 

深海重巡水姫は主砲を交互に連射していくが、バルバロイは空中でQBを繰り返しながら深海重巡水姫を翻弄する。バルバロイのアサルトライフルは連射力こそマシンガンより低いが、一撃の火力はマシンガンより高い。

 

バルバロイはアサルトライフルとショットガンの連射による攻撃を続けているが、バルバロイの着水に合わせて深海重巡水姫の攻撃機は魚雷を放つ。

 

バルバロイはその魚雷をアサルトライフルの連射により破壊し、散布型ミサイルを起動させる。深海重巡水姫は散布型ミサイルが放たれた瞬間に砲撃し、散布型ミサイルの爆発と共にバルバロイのPAを削る。

 

バルバロイ

「へぇ、なかなかやるじゃないか!」

 

バルバロイのPAはまだ剥がれておらず、深海重巡水姫は砲撃でなんとか削ろうとするが、バルバロイの機動力になかなか当てられずにいる。

 

バルバロイはQBで深海重巡水姫の頭上を飛び越え、QTで振り向く。そして再びQBで深海重巡水姫に接近すると、ウミヘビの艤装にアサルトライフルとショットガンを連射し、ウミヘビの艤装は千切れ落ちる。

 

深海重巡水姫

「アッハハハ···次は、貴様だ!」

 

深海重巡水姫は至近距離からバルバロイに砲撃するが、バルバロイは回避せず、PAで砲撃を受け止める。そしてバルバロイはその距離から散布型ミサイルを発射し、深海重巡水姫は散布型ミサイルを全身に被弾することとなった。

 

深海重巡水姫

「ああ···これで、安心だ···」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM『水底の世界』

 

 

 

深海梅棲姫とレオは向かい合い、互いの頭部に砲口を向ける。深海梅棲姫の艤装から垂れる黒い液体は着水して広がると、梅の木の枝を生やす。

 

レオ「梅の木か、綺麗じゃないか!」

 

深海梅棲姫「そりゃどうも!」

 

深海梅棲姫は主砲を撃つが、レオは右にQBしてから深海梅棲姫の左側へ回りつつ、バトルライフルと小型ミサイルを撃ち込んでいく。レオの小型ミサイルは追尾性能が高く、深海梅棲姫は避けられず被弾してしまう。

 

更に、深海梅棲姫は左側へ回り込んでいるレオに砲撃しようとするも、レオは急に右側へOBすることで砲撃を回避し、再び小型ミサイルを発射しつつ、深海梅棲姫に接近する。

 

深海梅棲姫は魚雷を発射するが、レオはジャンプで回避するとショットガンで深海梅棲姫の魚雷発射管を破壊する。

 

レオ「魚雷は潰させてもらうよ!」

 

深海梅棲姫

「クソガッ!ふざけんなって!」

 

そしてレオが追撃しようとしたところで、海面の黒い液体から梅の枝が急速に伸び、レオの行く手を遮る。

 

レオ「やるじゃあないか!」

 

レオは右と前方へ2回のQBを行い、離れた深海梅棲姫に接近しようとする。深海梅棲姫は接近されまいと砲撃するが、レオに当てられても有効打にはなっていない。

 

そしてある程度接近したところで、レオはバトルライフルをレーザーブレードに、ショットガンをハンドガンに切り替える。レオはハンドガンを深海梅棲姫の艤装に命中させる。衝撃力の高い弾丸に、深海梅棲姫の艤装は大きく怯む。

 

深海梅棲姫が体勢を立て直そうとした時には、レオは目の前に迫っており、深海梅棲姫を蹴り飛ばす。

 

深海梅棲姫「くぁっ!」

 

起き上がろうとしてレオの方を見た深海梅棲姫は、レオの持つレーザーブレードに目を惹かれる。その時には既に深海梅棲姫の艤装は破壊されていた。

 

レオ「どうだい、綺麗だろう?」

 

レオの持つレーザーブレードは青い刀身から青い粒子が舞っており、深海梅棲姫はこれから自身を斬る武器だというのに美しさを感じている。

 

レオ「さて、時間だ」

 

レオはレーザーブレードを構える。

 

深海梅棲姫

「ここまで、だね···お願い」

 

レオ「ああ」

 

レオのレーザーブレードから青い刀身が迸り、深海梅棲姫を袈裟に斬った。

 

 

 

 

 

その後、それぞれの姫級は無事に邂逅を果たした。

 

深海海月姫は空母『サラトガ』に。

深海重巡水姫は重巡『タスカルーサ』に。

深海梅棲姫は駆逐艦『梅』に。

 

武龍「皆、よろしく!」

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

諸事情により遅れましたが、これより再開します!

●レオ
癖っ毛の金髪で身長163cm、肉体年齢は17歳。
騎士のような銀色の鎧を着ており、鎧の隙間から見える服は紫色をしている。

自信に溢れる性格で、"強き王"を目指している。
また、正々堂々とした戦いを好んでおり、強さのために心を捨てることを嫌っている。

●クリケット
黒髪を後ろで束ねており、身長180cm。肉体年齢は19歳。
白に青いラインの入ったセーターを着ており、ダメージジーンズを履いている。

のんびりとした性格をしており、非常にマイペース。しかし同時に誇り高い性格も持ち合わせている。


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幕間 獣(ver2.0)


過去のトラウマから解放された武龍と新たな仲間達。
しかしその裏では新たなる火種が···


過去に深海棲艦の攻撃により滅び、今では深海棲艦すらいなくなった無人の鎮守府の工廠に、1人の妖精が立っていた。

 

妖精「人間め···深海棲艦との戦争が終っても···"私の戦争"は終ってない···よくも、よくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

妖精の目からは血の涙が流れている···そして妖精は床に置いてある数枚の設計図を見下ろす。

 

妖精「私が何かしようとしても、どうせあの傭兵団が邪魔をするのでしょう···しかし、"鴉を殺せるのは獣だけ"です···」

 

妖精はまとめた設計図を手に建造ドックへと入っていく···

 

妖精「資材なら元から大量にあり、ここにいた提督が隠し持ってた分を合わせれば腐るほどありますから、資材に困ることはありません!」

 

高速建造材でパーツを繋ぎ合わせていく···

 

妖精「それに、ノーマルでは勝つのは難しいでしょうね···なら、"最初から改二"で建造すれば良いのです!」

 

人体の部分が形成される。

 

妖精「もうすぐで、"全員"完成です···フフフ、アハハ···アハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

 

妖精は狂った笑顔で建造を進めていく···しかし1人で全てやっているため、通常の倍の時間がかかっている。だがそれでもその妖精は建造を続けていく···

 

 

 

そして遂に···

 

 

 

妖精「ようやく···終りました···」

 

建造された9人の艦娘はそれぞれ異形の艤装を見に纏っている。

 

艦娘A「ここは···」

 

艦娘B「なるほど、把握しました···」

 

艦娘C「あ"あ"ぁもうっ!イライラする!」

 

艦娘達に妖精は近づき、声をかける。

 

妖精「皆さん、初めまして。ここに提督はいませんが、今は私が提督です。早速ですが、皆さんに任務を与え···」

 

突然、妖精は背後から言葉を遮られる。

 

艦娘D「その必要はない」

 

妖精「え?」

 

艦娘達の目が妖精に向けられる。

 

艦娘C「よくもオレ達を起こしやがって···あ"あ"ぁイライラする!」

 

妖精「そ、それは本当にすみません。しかし、あなた方を捨てた人間達を」

 

続きを言い終わる前に艦娘Dが妖精を掴む。艦娘Dの腕は機械であり、その腕は6本もある。

 

艦娘D「私達は確かに人間を、いや人類そのものを憎んでいる。だがな···人類だけじゃない···世界も···何もかも全てが憎いのだ!」

 

艦娘F「紙切れだった頃より、不思議と憎悪が増していてな···」

 

すると突然、艦娘Dは妖精を金床に叩きつける。

 

妖精「ガッ!」

 

妖精は怯えた目で艦娘達を見る。妖精は疲労と痛み、そして恐怖でうまく動くことができない···

 

艦娘D「感謝するぞ妖精、全てを滅ぼす機会を与えてくれて」

 

艦娘Dは6本の機械腕を使ったものすごい拳の連撃を妖精に叩き込む。殴り付ける音は次第に粘着質になっていき、最後の一撃で金床が破壊される。殴り終わった艦娘Dの手には、赤い血と肉片が付いていた···

 

 

 

 

艦娘D「では始めようか···我々の戦争を···」

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

次回からは終章です。

●今回出てきた妖精
主に建造を担当していた妖精。しかし1人の提督とその鎮守府所属の憲兵達がが虐待などを日常的に行い、人間を憎むようになり、今回の行動に至る。

●鴉を殺せるのは獣だけ
いつからか少数の間で語られている説であり、その詳細は不明である。

●憎しみが増している
通常の建造方法ではなく、妖精による私怨が多量に入っており、更に最初から改二で建造されているため、艦娘でありながら深海棲艦と同等の憎悪を持って建造されてしまっている。


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終章 Your The RAVEN
第37話 忘却の破壊者(ver2.0)



新たなる戦争が始まる。
それは、忘れ去られた者達からの宣戦布告からだった···


武龍はその日、先日新しく入団した艦娘達と共にお茶会をしていた。新入りは第六駆逐隊の暁、響、雷、電。そして天龍、龍田、伊58の7人である。

 

暁「私は1人前のレディーなんだから、ブラックコーヒーくらい飲めるわ!···ニガッ」

 

暁は初めて飲むブラックコーヒーに顔をしかめ、響は武龍の顔を伺う。

 

響「仕方ないさ。武龍は飲めるのかい?」

 

武龍は首を横に振る。

 

武龍「無理だな···ま、苦手なものはレディーにだってあるさ」

 

雷「あ!蝶々だわ!」

 

飛んできたアゲハチョウが天龍の頭に止まる。

 

電「はわわっ!天龍ちゃんの頭に止まったのです!」

 

天龍は苦笑いしつつ、動かないようにしている。そしてその様子に龍田は微笑んでおり、伊58は写真を撮ろうと天龍にスマホを向ける。

 

天龍「マジかよ。動けねぇなこりゃ···」

 

龍田「ふふふ、かわいいわぁ~」

 

伊58「今のうちに写真撮っておくでち」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ノーマルの飛行場姫が率いる艦隊が無人の鎮守府のある島に向かっていた。

 

ネ級「しかし、あの島に本当に資材があるのか?」

 

ヌ級「そうらしいよ。前にそこにいた提督が資材を横領してたんだって。だから改めて調査するんだよ」

 

ネ級は改めて目標地点の座標を確認し、飛行場姫は説明に補足を入れる。

 

飛行場姫「あそこは元から資材が沢山あったの。けれど、補給地点や拠点として使うには立地がとても悪かったから、誰も使ってないのよ」

 

ネ級「だとすれば、かなりの資材を確保できるな」

 

カ級「はい。大量の資材があれば、復興もより進むでしょう!」

 

飛行場姫は艦隊の意気に頷く。

 

飛行場姫「そうね。そろそろ見えてきたから、上陸の」

 

そこまで言った瞬間、飛行場姫の頭部が弾け飛び、頭部を失った飛行場姫は沈んでいく。続いてカ級が魚雷のようなものを受け、沈んでいく。

 

ネ級「ヌ級!」

 

ヌ級「判ってる!」

 

ヌ級は艦載機を飛ばしつつ後退し、通信を送る。

 

ヌ級「こちら資材調査艦隊!何者かに襲撃されてる!敵戦力は不明、しかし旗艦の飛行場姫とカ級がやられた!すぐに救援を」

 

次の瞬間、ヌ級が何者かによる砲撃を受けて沈んでいく。ネ級は逃げようとしたものの、砲撃により両足が破壊され、自身の足を破壊した"ナニカ"を探すが、それを確認した瞬間に魚雷のようなものを受けて沈んでいく。

 

 

???《初戦はあっけないものですね···》

 

???「ああ。実につまらん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後、世界各地の鎮守府が奇襲攻撃された。その攻撃には大量の量産型が使用され、複数の鎮守府は壊滅してしまった。量産型は多くの国では弔われる形で処分されていたが、一部では使用が続いている国もあった。

 

その国々では量産型がハッキングにより鎮守府内部から攻撃を仕掛けたため、大きな混乱が生じてしまった。

 

そして、奇襲と同時に宣戦布告の動画が世界に発信される。

 

女性《私達は忘れられ、捨てられた秘匿艦船だ。これより我々は、"我々の戦争"を始める。和平も何もない、果て無き闘争だ。それは人類と艦娘、そして深海棲艦がこの世から消え去った時に終わるだろう》

 

すぐさま各国は対処に乗り出した。しかしその9人の艦娘達はあまりにも強く、艦隊だけでなく鎮守府ごと殲滅していった···

そしてやはりレイヴンズ·ネストに依頼が殺到した。その中でも特に多かったのがAFの出動要請であった。しかしそれを大蛇達は拒否した。

 

ピス《私達AFは『本来起こり得た未来』の兵器です。そもそも戦場に介入する事が間違っているのです。以前の戦争は私達が介入しなければならない事案であり、明確な依頼を受けたからです。

しかし今回はあなた方人類と艦娘、そして深海棲艦達で乗り越えねばならない戦争です》

 

それにレイヴンズ·ネストのメンバーと深海棲艦達、そして日本三大鎮守府とラバウル鎮守府、そしてアメリカ大統領とレヴォツィは納得し、それぞれの準備を始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある鎮守府が壊滅し、潜水艦の艦娘の頭と手足を鷲掴みにしている秘匿艦娘がいる。その艦娘の腕は機械であり、6本もある。

 

艦娘「あなたは···一体···」

 

秘匿艦娘「私は『長門型秘匿戦艦"阿修羅"』だ。沈むがいい、ガラクタよ」

 

阿修羅は艦娘の頭を握り潰す。そして死体を投げ捨てると首を鳴らしながら去っていく。

 

 

 

ある鎮守府は徹底的に破壊され、秘匿艦娘は既に生き絶えている艦娘を蹴り続けている。

 

秘匿艦娘「このゴミどもがぁっ!アタシは『特型秘匿駆逐艦"憤怒"』だぞ!アタシの艤装に傷つけてんじゃねぇよゴミどもがぁっ!ああもうイライラする!」

 

憤怒の背部艤装にはほんの数ミリのかすり傷があり、憤怒は過剰なまでの怒りを噴出させている。

 

 

 

ある鎮守府では、隣接している港町ごと焼き付く去れ、その空を秘匿艦娘が舞っている。

 

秘匿艦娘「妾は『新型秘匿軽巡"(アマツ)"』じゃ。あの世で覚えておくがよい」

 

天の体は赤く燃える炎で赤く照らし出されていた。

 

 

 

ある鎮守府では大量の量産型のJ型により攻撃を受けていたが、そのJ型の統制がまるで1つの生き物であるかのように取れており、更に沖から放たれる狙撃により、壊滅していた。

 

そして壊滅した鎮守府に秘匿艦娘が上陸する。そこに隠れていた艦娘が飛び出るが、即座にG型により動きを封じられる。

 

艦娘「あなた方は···一体何が目的なんですか!?」

 

秘匿艦娘「目的?簡単ですよ。人類と艦娘と深海棲艦の殲滅です···おっと、自己紹介がありませんでしたね。私は『大淀型秘匿軽巡"雪羅"』です」

 

 

 

ある鎮守府には大量の爆撃機が絨毯爆撃を行い、上陸した秘匿艦娘は死体をナイフで切り刻み、その血を舐め、顔や腕に塗りたくっている。それだけでなく、時折死体の内臓を引きずり出しては振り回したり投げたりしている。

 

秘匿艦娘は動きを止めると、不意に倒れている提督の方を向く。秘匿艦娘が近寄ると、提督はまだ微かながら息をしている。

 

秘匿艦娘「あれ?まだ生きてたんだね?」

 

提督「う···あ···」

 

秘匿艦娘「私は『新型秘匿空母"ゴア"』。あなたの血はどんなのかな?」

 

 

 

ある鎮守府は大量のN型により壊滅し、その鎮守府から駆逐艦の艦娘が数人脱出した。

 

艦娘「ヒック···グスッ···提督さん···」

 

???《すぐに会えるさ》

 

突然艦娘が魚雷のようなものを受け、沈んでいく。そのまま次々と魚雷のようなものを受け、艦娘は沈んでいく。逃げても追尾してくる魚雷のようなものは紛れもなくミサイルであり、最後の艦娘も轟沈する。

その水中には秘匿艦娘が沈む艦娘達を眺めていた···

 

秘匿艦娘「私は『新型秘匿潜水艦"ウォーエンド"』。ごめんね、ボクは誰も信頼してないんだ···誰もね」

 

 

 

ある深海棲艦の棲地には下半身が機械の馬のようになっており、まるで神話のケンタウルスのような秘匿艦娘が次々と深海棲艦を撃破していく。

 

秘匿艦娘「私は『新型秘匿重巡"ケンタウルス"』!逃げも隠れもせん!私の首を取りたいものは誰だ!」

 

ケンタウルスの足元には、駆逐棲姫と重巡棲姫が折り重なるように倒れ、息絶えていた。

 

 

 

ある深海棲艦の棲地には見覚えのある4枚の飛行甲板のある秘匿艦娘が死んだような目で次々と艦載機を発艦させた。

 

秘匿艦娘「私は『扶桑型秘匿航空戦艦"蛟"(以降ミズチ)』···あなた方に与えましょう。最大の不幸を···」

 

 

 

ある鎮守府では艦娘と深海棲艦が大量のJ型を相手に共闘していたが、1人の秘匿艦娘が現れた事により状況は一変する。

 

秘匿艦娘「俺は『大和型秘匿戦艦"大蛇"(以降オロチ)』!さぁさぁ、この主砲を食らいたいのは誰だぁ!?アッハッハッハッ!」

 

オロチはJ型もろとも艦娘と深海棲艦を薙ぎ払っていく。

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

遂に始まった新たなる戦争···人類、艦娘、深海棲艦は果たして乗り越えられるのか?

秘匿艦娘達の情報は次回載せます。


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第38話 崩れ行く国境(ver2.0)

あまりにも多い量産型の物量に、各国は混乱していく。"国として"の選択とは···


秘匿艦娘達の宣戦布告後、世界中に大量の量産型が押し寄せ、その物量によって防衛線は次々と突破され、殺戮が始まった。艦娘や深海棲艦、陸軍も応戦したものの、あまりにも多い物量により押されていく···

 

 

 

 

 

創平「全てが包囲された?」

 

日本の港、軍港、鎮守府は全て包囲され、攻撃を受けている。その報告を受けた創平の顔は真っ青になり、秘書も苦しい表情をしている。

 

秘書「はい。これでは逃げることはできません。三大鎮守府もかなりの被害を受けています」

 

それを聞いた創平は唾を飲み込むと深呼吸をする。

 

創平「···それでも、足掻くしかありません。足掻きましょう!」

 

 

 

 

 

オズウェル「他国から逃れてきた者達を入れるかだと?こちらは自国の防衛で手一杯だというのに!」

 

オズウェルは進行中だった大統領選を中断し、再び行動しているが、そこに他国から逃れてきた人々がアメリカに押し寄せてきている。

 

秘書「大統領!F地点が突破され、内陸部に量産型の群れが入り込み、国民が虐殺されています!」

 

オズウェル「クソッ!対処を急げ!」

 

 

 

 

 

ロシア大統領「何っ!?あの鎮守府が壊滅だと!?」

 

ロシアではレヴォツィを上回る戦力を持つ鎮守府が壊滅し、そこから量産型が雪崩れ込んでいた。

 

秘書「はい···秘匿艦娘を含む包囲戦により壊滅しました···」

 

ロシア大統領の脳裏に机に仕舞ってあるリボルバーがよぎるが、頭を振ってそれをかき消す。

 

ロシア大統領「最高戦力が消えたか···だが、我々はせめて一矢報いらねばならない!徹底抗戦だ!」

 

 

 

 

 

イギリス首相「そうか···沿岸部は全て滅んだか···」

 

絶望的な報告を聞いたイギリス大統領は弱々しくため息を吐いた。それを見た秘書はイギリス大統領の背中に手を当て、優しくも力強く諭す。

 

秘書「すぐに逃げましょう!今ならまだ···」

 

イギリス首相「私は逃げぬ」

 

予想外の言葉に秘書は一緒固まる。

 

秘書「え?」

 

イギリス首相「私だけ逃げるにもいかんだろう?まずは国民を逃がすことを優先しろ。国境など無くなるだろうから、国民を速やかに内陸部へ逃がせ」

 

 

 

 

 

フランス大統領

「我が国の二大鎮守府が両方とも潰えたか···」

 

秘書「はい···」

 

フランスではかつてほとんどの戦力を量産型に割いていたため、フランスが誇る最高戦力の鎮守府が2ヶ所とも壊滅してしまった。

 

フランス大統領「国民を何とかして守らねばならん。だがあまりにも戦力差は歴然···これは誇りの問題だ」

 

そういうとフランス大統領は引き出しから拳銃を取り出した。

 

フランス大統領「私も戦地へ赴こう。過去にしてしまった過ちは消すことはできない···少しでも時間を稼ぐぞ!」

 

 

 

 

 

そして、中国と韓国は秘匿艦娘達とG型の技術を得ようとしたが、逆に嵌められ、ほぼ壊滅状態となる。

そして互いに争い始め、逃げることすらままならなくなってしまう···

 

 

 

 

 

 

 

 

国境は崩れ去り、人々は逃げ惑う。国境無き世界は、圧倒的な戦力差による破壊によって成し遂げられ、戦火は更に広がっていく···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍、青葉、北上、雪風、霧島、曙は避難民を深海棲艦の棲地に逃がすため、大量のE型と交戦していた。

 

北上「ああもうっ!キリがないよっ!」

 

北上と曙は背中を合わせて砲撃する。

 

曙「それにこいつら、めちゃくちゃ連携取れてるじゃない!」

 

武龍達はあまりの数の暴力により、少しずつだが押されていた。

それでも武龍はアサルトライフルを連射し、目の前のE型を撃破する。その時E型からは人体のパーツではなく、機械の部品が飛び散る。

 

武龍「まさか、こいつら···!」

 

頭部の左側を失ったE型は、欠けた部分から部品や配線を覗かせながらも武龍に砲口を向ける。

 

ベス《パシー達が援軍として向かっています。もう少し持ちこたえてください!》

 

戦闘を繰り返していると、パシーから通信が入る。

 

パシー《聞こえる?全速力で向かってるから!5分は持ちこたえて!》

 

武龍は空中に飛び上がりながら応える。

 

武龍「よし!避難民は戦闘エリアを離脱した!あと5分持ちこたえるぞ!」

 

???《それはどうかのう?》

 

武龍は砲撃を受け、海上に落とされる。すぐに立ち上がり、再び飛び上がる。

 

ベス《こんな時に···敵増援を確認!天とオロチです!》

 

空には桃色のボブカットの髪、青いセーラー服と白いフライトジャケット···そして戦闘機のようなウイングのある背部艤装···彼女こそが天である。

 

天「さぁ、大空で舞を踊ろうではないか!」

 

別方向から迫るのは、黒い長髪に鉢金を巻いており、白い特攻服を着ており、機械の龍のような形をした背部艤装を装備した艦娘がいる。

 

大蛇「よう!オレの主砲を食らいたいか?」

 

青葉「よりにもよって···」

 

武龍達は改めて武器を構える···

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

国境は戦争によって無くされてしまいましたね···

そして武龍達は5分間を生き抜くことができるのでしょうか?

●長門型秘匿戦艦"阿修羅"
長門の髪をバッサリと切ったような髪型と陸奥に近い顔つきをしている。身長は170cm、肉体年齢は17歳。
服装は黒いレインコートとゼブラカラーの脚部装甲を身に纏っており、6本の機械腕が特徴。

武装は41cm3連装砲×4、20cm単装砲×6、25mm2連装機銃×4であり、少数精鋭で敵陣に突撃することを目的としている。

冷淡な性格であり、負けることを罪としている。

●大淀型秘匿軽巡"雪羅"
大淀の髪色を白くし、瞳と服の色を赤くした見た目をしており、身長は160cm、肉体年齢は16歳。

武装は15cm単装砲×4、7.7mm機銃×4で、本来ならば長砲身の30cm単装砲を装備しているところを改二にすることにより30cmレールガンを装備しており、味方の指揮をしつつ狙撃するという事を目的としている。

性格は冷たく、無駄を極端に嫌っている。

●特型秘匿駆逐艦"憤怒"
ベリーショートの茶髪と黒い服が特徴で身長155cm、肉体年齢は16歳。

武装は15cm2連装砲×2と64cm酸素魚雷であるが、とてつもないスピードを持ち、そのスピードで動き回りながら砲撃していく事を目的としている。

常に怒りが収まらずイライラし、八つ当たりしている。

●新型秘匿軽巡"天"
髪は桃色のボブカットで、身長165cm。肉体年齢は17歳。
白いフライトジャケットと青いセーラー服を着ている。

武装は14cm2連装砲×2、20cm単装砲×2、25mm単装機銃×2を装備しており、ほとんど設計途中のまま終わっていたが、改二にすることにより、空中を飛ぶという通常ではできない動きを可能にしている。

性格は己が最も優遇されるべきと考えており、空に飛べない船達を見下している。

●新型秘匿空母"ゴア"
青いサイドテールの髪型をしており、身長170cm。肉体年齢は18歳。
白いロングコートを着ている。

武装は12.7cm単装砲×6、25mm2連装機銃×8であり、各種艦載機を搭載している。
かつてないほどの巨体であり、要塞としても機能し、敵陣を血に染め上げる事を目的としている。

性格は血を求め、敵の血を舐め上げたり服に塗りたけたりし、他の事には目もくれない。

●新型秘匿潜水艦"ウォーエンド"
金色の長髪で、ダイバースーツに身を包んでおり、身長は162cm。

武装は64cmミサイルを積んでおり、かなりの深海まで潜ることが可能。

『戦争を全ての艦を沈めることによって終わらせる』という目的で作られたため、自分以外全ての艦娘と深海棲艦を沈める気でいる。

●新型秘匿重巡"ケンタウルス"
ポニーテールの金髪と下半身が機械の馬になっているのが特徴。身長は190cm。

武装は20cm2連装砲×2、25mm2連装機銃×2と槍であり、槍を主体とした戦闘を目的としている。

強き者を求め、強き者と戦えるのならば躊躇いなく戦争を起こす。

●オリジナル蛟
『本来起こり得た未来』にて発見された蛟ではなく、『この世界』の蛟。

武装は変わらないが、改二になったことにより装甲がかなり強化されている。

性格は後ろ向きであり、周囲にも不幸をもたらし、道連れにしようとする。

●オリジナル大蛇
黒い長髪で身長180cm、肉体年齢は19歳。
額に鉢金を巻いており、白い特攻服を着ている。

『本来起こり得た未来』ではなく『この世界』の大蛇。
武装は76cm2連装砲×3、20cm2連装砲×4、25mm2連装機銃×4を装備しており、艤装の76cm砲は機械的なアームとなっている。

性格は好戦的で、獲物を見つけるとすぐに砲撃したがる。しかし正々堂々とした戦いを好み、卑怯な手段を嫌っている。


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第39話 再誕(ver2.0)

避難民を逃がしたところに現れた2人の秘匿艦娘。そのうち片方は大蛇だった···
武龍達は5分間を生き抜けるのか···


前回の秘匿艦娘を書き忘れていたので追加しておきました。すみません!


推奨BGM『STAIN』(ACVより)

 

 

 

天と武龍は空中戦を繰り広げるが、武龍の方が押されている。天は自身に向けて連射されるアサルトライフルの弾丸を、縦横無尽に飛び回ることで回避する。

また、回避しきれない弾丸は装甲の厚い部位で受け止める。

 

天は高度を下ろしつつ背部の主砲を発射し、武龍は右へのQBで回避する。しかし量産型による砲撃を受けてしまい、武龍は辺りをレーダーで確認するが、やはりこれまでより多い量産型の反応に歯軋りする。

 

天「妾と同じく飛べると思うとったのに、残念じゃのう···所詮は人間、地に落ちよ!」

 

 

 

青葉達は武龍の援護をしようとしていたが、オロチの攻撃により阻まれている。青葉はオロチの砲撃を回避すると共に砲撃するが、オロチは主砲である龍型の頭部で防ぐ。

 

オロチ「オラオラァッ!そんなもんかよ!?」

 

青葉「仮にも大蛇、敵に回るとこれ以上ない程厄介ですね···」

 

オロチは突然曙に接近し、殴り倒して副砲を連射する。曙はたちまち大破したが、突然大蛇は振り向き、振り向きざまに霧島に砲撃する。その砲撃をモロに直撃した霧島は大破して仰向けに倒れ込む。

 

霧島「がぁっ···!」

 

 

 

武龍は背部のデュアルレーザーキャノンを構え、天に向けて発射する。天は一気に高度を下げて回避しようとしたものの、回避しきれずに左側の主砲が破壊されてしまう。

 

天「ぬおっ!あの翼、単なる装飾ではなかったか!」

 

その隙に武龍はレーザーブレードを起動させ、海上に降りて量産型をQTの回転を利用して一気に4機撃破する。そして再び飛び上がり、天に向かって接近する。

しかし、天は離れるどころか一気に武龍に接近してくる。

 

天は砲撃するどころか左手の副砲を放り投げ、武龍の目線は一瞬その副砲に向いてしまう。

 

天「今じゃ!」

 

天は武龍に掴みかかると、顔面と左腕に右手の副砲を至近距離から連続で撃ち込む。

 

武龍「このっ!」

 

武龍はレーザーブレードを振ろうとしたが、レーザーブレードは破壊されてしまっており、動きが止まったところに複数のJ型の砲撃が集中砲火されてしまう。

 

デュアルレーザーキャノンの右側は破壊されてしまい、更に左腕の装甲は破壊されてしまう。武龍は天を蹴り飛ばして離脱するが、天は蹴り飛ばされながらも砲撃し、砲弾は武龍の胴体に命中する。

 

武龍は息を切らしながらもアサルトライフルを連射しているが、天と多数の量産型の攻撃により損傷は増えていく。そして左側のデュアルレーザーキャノンも破壊されてしまう。

 

天「これで終わりじゃ!」

 

武龍「やってやらぁぁぁ!」

 

天と武龍は互いに攻撃しながら接近し、パシーが到着すると共に2人は爆煙に包まれる。

 

パシー「皆!到着したわ!早く逃げ···え?」

 

パシーの頭に飛んできたナニカが当たる。

 

 

 

 

 

それは、武龍の左腕だった。

 

 

 

 

 

武龍は海上に墜落する。

機甲兵装の装甲の多くは破壊され、千切れた左腕の傷口からはドクドクと血が流れており、見ると右足からも出血が激しい。更に腹部からも激しく出血している。

 

天「フハハハハハ!これで空は妾のものじゃ!」

 

パシーの艦隊が足止めをし、その間に北上が武龍を抱き抱えて離脱する。

 

北上「武龍っ!しっかり!」

 

雪風がポーチから取り出した包帯を傷口に巻き付け、大破した霧島は青葉とネ級eliteが支えて離脱する。同じく大破している曙はリ級eliteが支えて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鎮守府に戻った武龍はすぐに医務室に運ばれ、応急処置を済ませた後、緊急手術となる。

 

アン「武龍···」

 

青葉「すみません、私達が援護しきれずに···」

 

パシー「Sorry、私ももっと早く着ければ···」

 

俯く2人を大蛇が宥める。

 

大蛇「言っても仕方ありません。流石に秘匿艦娘が2人では、機甲兵装ももちません···それに、あの量産型の数は明らかにおかしかったですから」

 

ティス「どうにかして、助けらんねぇのかよ···」

 

コアは少し逡巡すると、口を開く。

 

コア「·····1つだけ、方法がある」

 

リリ「コア···」

 

コア「解っている···武龍を、深海棲艦にするという方法がある。こらは元より成功する確率が低いが、この方法を行うには、武龍の中の負の感情を呼び覚ます必要がある」

 

古風「それにこれは···禁忌でもあります」

 

アン「禁忌でも構いません。少しでも助かる可能性があるのなら、行ってください!」

 

リリ「コア···私はそもそもAF達などをはじめとする未来の兵器を建造した時点で禁忌を犯しています。今更なんでしょう?」

 

コア「···わかった。だが、失敗した時は武龍は誰彼構わず襲いかかるぞ?」

 

大蛇「その時は、私が全力で撃破します」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、深海棲艦が産まれる場所にて、コアは武龍を"海の意思"と呼ばれる海水の入った浴槽に沈める。

武龍の体は沈んでいき、やがて闇に飲まれて見えなくなっていく···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍「···ん?ここは?」

 

武龍は何もかもが黒く、なにもない空間で目覚める。不思議な浮遊感に包まれ、左腕と右足の感覚が無いことに気づき、そこが欠損していることを確認する。

しかし代わりに欠損部位には黒い靄のようなものがある。

 

武龍「ここは···あの世かなんかか?」

 

辺りを見渡すと、巨大な怪物がゆっくりと迫ってくるのが解った。歪で、呪詛の言葉を吐き続けている···

 

武龍「ちょっ、なんだあれ!?」

 

武龍は驚くが、怪物は武龍に掴みかかる···が、武龍はあることに気づいた。

 

武龍(ん?こいつの言葉···俺の言葉じゃないか!)

 

怪物「コワイ···イタイ···コロシテヤル···コワシテヤル···ゼンブ、ゼンブ···ナニモカモ···」

 

武龍は怪物の頭を撫で始める。

 

武龍「辛いよな···戦争したくないよな?アイツらとのことが解決しても、戦争が残ってるよな?片腕と片足も無くなっちまったよな?

···なぁ、一緒に戦争を終わらせようぜ?そしたら沢山笑えるからさ···」

 

武龍は怪物を抱き寄せる。

 

武龍「1人にさせて、ごめんな···」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍が浮上してくる。海の意思から出てきた武龍は右目が赤くなっており、欠損した部分は深海棲艦のように白くなっており、傷口のあった部分には紫色のつぎはぎの後がある。

 

武龍「あ~、俺···生きてんのか?」

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

武龍は深海棲艦になりましたけど、これで勝てますかね?皆さんはどう思いますか?


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第40話 始まりの機体(ver2.0)

深海棲艦となった武龍のこれまでとの違いとは?


深海棲艦として復活した武龍は体の異常を確かめる。

 

武龍「···ってことは、俺は深海棲艦になったのか?」

 

コア「そういうことだ···すまない、勝手にやってしまって」

 

武龍「いやいや全然。てかパワーとかスタミナもめちゃくちゃ増えたし、暗いところも見えるようになってるからむしろ良いんだけど」

 

武龍はポジティブに受け取っているが、それでもやはり人でなくなった事に内心驚いていた。

その後、武龍は大蛇に新しい機甲兵装を要求するが、断られる。

 

大蛇「今の武龍に必要なのは機甲兵装ではなく"艤装"です···それに、機甲兵装を再び使ったところで勝てません」

 

武龍「じゃあ、どうするんだよ?」

 

大蛇「1つ、方法があります。あなたが深海棲艦となっている間にリリと愛海さんに話をつけてきましたので問題はないと思います」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして武龍が連れられてきたのはかつての拠点である。しかしなぜかラナも連れてこられている。

 

ラナ「なぜ私も連れてこられたのだ?」

 

武龍「さぁ?俺は艤装の件で連れてこられたけど···」

 

2人は地下施設の最下層に連れてこられ、僅かな灯りを頼りに移動橋の真ん中で止まる。

すると僅かな灯りの中に愛海が立っていた。

 

愛海「良かった、来てくれて···武龍とラナさんには、"真実"を知る権利があります。そして、武龍の艤装となるものが、この真実そのものです」

 

拠点内の妖精が一斉に灯りをつける。すると巨大な何かが大きな布で隠されており、その布が落とされる。

 

武龍「これは!?」

 

ラナ「まさか···あの時の!?」

 

 

 

 

 

推奨BGM『Surface』

 

 

 

そこに照らし出された、静かに佇む"それ"は···

 

 

 

 

 

 

愛海「これは···時に全てを壊し、時に全てを救う···」

 

 

 

 

 

赤と黒のカラーリングで···

 

 

 

 

 

愛海「『本来起こり得た未来』で、『最強の単体戦力』である···」

 

 

 

 

 

かつて起きた『頂上決戦』で世界を救った···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛海「『ARMORED·COER/NEXT』!その内の1機、『コルヴィス』!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラナ「これは···あの時私を助けてくれた···いや、というかなぜここにある?」

 

武龍「デカイ···」

 

愛海「どうしてここにあるか解る?それは、この拠点にかつて住んでいた人が、コルヴィスのパイロットだから。そして、武龍君に小説を渡したのも、同じ人」

 

ボロボロで、赤と黒のカラーリングをしているその機体は最低限の整備だけを受けて佇んでいた。

 

武龍「どうりで、この屋敷に色んな軍事設備が整ってたわけだ···」

 

愛海「そして、これからこのコルヴィスを武龍の艤装に再構築するの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、武龍の鎮守府に大破したミッドウェーとマリアナが運び込まれていた。

 

マリアナ「奴ら···ここまでとは···」

 

渾「喋らないで!すぐに入渠させるから!」

 

ミッドウェー「もっと、力があれば···」

 

オリジナルの深海棲艦でさえ敗走するか、撃退に留まっていた···

それを見たAC達は顔を見合わせ、ベスに相談しに行った。

 

クレ白「ねぇ、ボク達も出撃させてよ!」

 

バルバロイ「何もできないなんて、そんなのあんまりだよ!」

 

ベスは拳を握り締めて答える。

 

ベス「私だって、出撃したいですよ···でも、この戦いは未来の兵器である私達が介入できない問題なのです」

 

その場は静まり返るが、クリケットがある提案をする。

 

クリケット

「ねぇねぇ、AF達は参戦できなくても、私達ACは参戦できるんじゃないの~?」

 

ベス「それは、どういう事ですか?」

 

クリケット

「だってさぁ、武龍君は機甲兵装としてACを使ってるわけでしょ?だったら私達は出れるんじゃない?もちろん、秘匿艦娘相手に戦うわけじゃなくて、あくまで人類側の戦力が乏しい場所限定で」

 

ベスは蛟とコアにこの件を相談し、クリケットの提案は受け入れられた。

そしてクレ白達は各地へストークAで飛び立っていき、かつて拠点防衛と首相救出に参加した者達に、機甲兵装が与えられることとなった。

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

武龍の艤装にはネクスト機体の技術が使われました。さて、今後に期待ですね!

●ARMORED·COER/NEXT
『本来起こり得た未来』の兵器であり、『最強の単体戦力』である。様々なパーツを組み換える事ができ、ありとあらゆる性能が既存の兵器を圧倒的に上回っており、1国を滅ぼす事も可能。

しかし、操縦するためにはAMS適正が必要となる。
ちなみに、ネクストにのるパイロットの事を『リンクス』と呼ぶ。

●コルヴィス
情報が以下の事しか閲覧を許可できません。
『ネクスト機体の内の1機』『赤と黒のカラーリング』『青い複眼』


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第40.5話 鴉を継ぐ者(新実装)

武龍が深海棲艦になってから3日。ついに艤装が完成したため、そのテストをすることとなった。


武龍が深海棲艦になってから3日が経ち、ようやく武龍の艤装が完成した。コルヴィスの完全再現は愛海の願いにより果たされなかった。代わりに新しいネクストを組み、それを深海棲艦と艦娘の技術で構成して艤装とした。

 

機体の種別は中量2脚で、カラーリングは白と黒をメインとしており、武装は右手にマシンガン、左手に大型レーザーブレード『MOONLIGHT(以下月光)』、右背部に小型ミサイル、左背部にレーザーキャノン、右足のホルスターにハンドガンを格納している。

 

そして、太陽を背にした紅い竜のエンブレムをつけている。

 

コア「これからこの艤装を装備し、接続することで完全に君の艤装にすることができる」

 

大蛇「艤装の接続が完了したら、軽い演習をしましょう」

 

武龍の前で艤装のパーツが開かれ、武龍は艤装を身に付けていく。そして最後にうなじのAMS接続部に管が接続される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

接続した瞬間···武龍の視界が変わり、赤い海の底に武龍は立っていた。上を見上げれば水面があり、光が差し込んでいる。しかし海中だというのに息ができ、水の抵抗を受けずに動くことができる。

 

突然の事に戸惑っていると、不意に背後から声をかけられる。

 

???「久しぶり」

 

振り向くと、そこには1人の男性が立っていた。髪は黒い短髪で、仔犬のような雰囲気を感じさせる顔つきに、黒いパイロットスーツを着ている。

 

武龍「···誰だ?」

 

 

 

 

その男性の名は···

 

 

 

 

???「僕は、君に小説を渡した···『(かける)·ニールセン』だよ」

 

 

 

 

 

武龍「あ、あの時の···!?」

 

武龍は予想外の人物との再開に驚愕し、目頭が熱くなる。

 

武龍「俺、あなたに···あの時、俺にあの本をくれて···ありがとうございました!あなたがあの本をくれなかったら、俺は、俺は···!」

 

翔の顔は嬉しそうに笑顔になる。

 

翔「うん、ありがとう。あれ、書いて良かったよ」

 

翔は後ろを向き、なぜか武龍から離れていく。そして立ち止まると、武龍に背を向けたまま語りかける。

 

 

 

 

 

翔「武龍君、君の···君達の戦いはずっと見てきたよ。でも、君にだけは···君になら成し遂げられるのか、この手で確かめなきゃいけないんだ」

 

語りかける翔の雰囲気は、まさに歴戦の者だった。そして翔は振り返らずに続ける。

 

 

 

翔「修正プログラム、最終レベル···」

 

目を閉じながら喋るその声は、先程よりもずっと優しく──

 

翔「全システム、チェック終了···」

 

どこか懐かしむようで──

 

翔「メインシステム、戦闘モード、起動···」

 

何かに祈るようで──

 

翔「もう一度お願い、"コルヴィス"···」

 

気づけば、武龍は艤装を纏っていた。

 

武龍「なっ···!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM『9』(ACMOAより)

 

 

 

翔は目を開き、武龍に振り向くと共にコルヴィスを纏っていた。

 

翔「ターゲット確認、戦闘開始!」

 

翔は間髪入れずにQBで武龍に接近し、蹴り飛ばす。武龍は受け身を取り、そのままマシンガンを連射する。しかし翔は攻撃を回避しつつ右手に持ったアサルトライフルを連射してくる。

 

翔の攻撃はこれまで戦ったどの相手より何倍も正確であり、更にこちらの攻撃を回避しつつその正確さで攻撃してくるため、ほとんど一方的な戦いになってしまっている。

そして、それは武龍の心に焦りを生ませる。

 

武龍(マズイ、マズイマズイマズイ!)

 

翔「焦らないで。焦ったら冷静に判断できなくなる」

 

翔は真後ろから言い、QBで離れる。武龍もQBで距離を話して深呼吸して小型ミサイルを連射する。これまでの小型ミサイルより多い連発数で放たれた小型ミサイルを、翔は引きながら撃ち落としていく。

 

武龍はその隙にOBで接近し、月光を起動させる。全ての小型ミサイルを撃ち落とした翔も月光を起動させる。そして妖しく光る紫の刀身はぶつかり合い、火花を散らす。

 

···が、翔はその瞬間に攻撃を受け流し、背後に回り込むと右背部のミサイルを発射する。

 

武龍「なっ!?」

 

武龍は急いで左へのQBをする。ミサイルはギリギリ避けられる···と思ったが、ミサイルは接近した時点で爆発する。

コルヴィスに装備されているミサイルは近接信管ミサイルだった。

 

 

 

2人は1度距離を離し、再び向かい合う。

 

翔「君の力はこんなものじゃない、まだ行けるはずだよ」

 

武龍「ハァ、ハァ···やってやるよ···!」

 

翔は仁王立ちし、右腕だけを前に出してアサルトライフルを撃ってくるが、武龍は翔に接近していく。すると翔は近接信管ミサイルを発射するが、武龍はマシンガンで近接信管ミサイルを撃ち落としていく。

 

武龍は翔に接近すると月光を振り上げるが、翔はサマーソルトキックで振り下ろされた月光をはね除けると共に、左背部のグレネードキャノンを至近距離から撃ち込む。

 

吹き飛ばされた武龍はQBを利用して体勢を立て直す。しかし爆煙の中から翔が飛び出、月光で突きを繰り出してくる。武龍は左へ回避するが、マシンガンを破壊されてしまった。更に翔はアサルトライフルを連射してくるため、武龍は右腕で防御する。

 

武龍はOBを起動させ、翔の上を飛び越えてOBを切ると共にQTで振り返り、起動させていたレーザーキャノンを発射する。翔は回避しようとしたが、回避し切れずに右足の側面を掠めてしまう。

 

 

 

 

 

翔「なるほどね···」

 

武龍は追撃しようとしたが、翔は戦闘をやめて拍手を贈る。

 

武龍「え?」

 

翔「おめでとう、合格だよ」

 

武龍は着地して再び向かい合う。

 

翔「掠ったとはいえ、僕に当てられたんだ。後は自然にもっと強くなれるさ」

 

翔はコルヴィスから元の姿に戻っており、武龍も同様に元に戻っている。そして翔は武龍に歩み寄って来る。

 

翔「武龍君、君は新しい···"この世界で"最初のレイヴン。その証を、君に託すよ」

 

武龍「あなたは···」

 

翔は武龍の肩に手を置く。その手は温かく、そして力強かった。

 

翔「後は頼んだよ、"イレギュラー"」

 

翔が笑顔を見せると共に、武龍の視界は光に包まれる。そして気づけばガレージにおり、これから演習に出るところだった。

 

大蛇「準備は良いですか?」

 

武龍「ああ。『アビス·グリント』、出撃する!」

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

さて、"鴉"を継いだ武龍はリベンジできるのでしょうか?

感想はいつでもお待ちしています!

●アビス·グリント
白と黒をメインとしたカラーリングをした中量2脚型ネクストで、太陽を背にした赤い竜のエンブレムをつけている。

武装は右手にマシンガン、左腕にレーザーブレード(月光)、右背部に小型ミサイル、左背部にレーザーキャノン、右足のホルスターにハンドガンが装備。

性能上はネクストだが、武龍の艤装として作られている。
耐久こそ高くはないものの、機動力を駆使した戦闘を目的としている。


【挿絵表示】


●コルヴィス(何者かによる情報開示)
赤と黒のカラーリングの中量2脚型ネクストで、鴉の羽とダイヤモンドが描かれたエンブレムをつけている。

武装は右手にアサルトライフル、左腕にレーザーブレード(月光)、右背部に近接信管ミサイル、左背部にグレネードキャノン、右腕に予備のレーザーブレードを装備。

翔のネクストであり、かつて世界を救った機体でもある。
また、なぜ機体の設計者が大将であるラナと同じ名前なのかは不明である。


【挿絵表示】


●近接信管ミサイル
接近した時点で爆発するミサイルであり、十分な距離を離さなければ回避は困難である。


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第41話 明日への戦争(新実装)


クレ白を始めとする肉体を得たAC達は各地へ飛び立っていく。
誰かの明日のために──


ストークAに運ばれ、クレ白達は各地へ飛び立っていく。

 

クリケット《にしても、私達ってつくづく数奇な運命辿るよね~》

 

シュープリス《同感だ》

 

レオ《ハーッハッハッハッハッ!むしろそれで良いじゃないか!》

 

そして、作戦エリアに到達したストークAからそれぞれ投下されていく。

 

 

 

推奨BGM『Circulation』(初代ACより)

 

 

 

北海道海岸沿いの町に投下されたクレ白はマシンガンを量産型達に向けて構える。

 

クレ白「管理者を倒した機体の力、見せてあげるよ!」

 

 

 

ロシアの住宅街にある民家の屋根の上に投下されたミストアイは、迫ってくる量産型を見渡す。

 

ミストアイ

「クレ白も同じこと言ってるでしょうけど···管理者を倒した機体の力、見せてあげるわ」

 

 

 

ドイツの補給基地に投下されたシュープリスは両手の武器を構える。

 

シュープリス

「かつて世界を変えるために戦ったが、今度こそ変えようじゃないか。地獄絵図と化したこの世界を変えるために!そうだろう···『ベルリオーズ』」

 

 

 

インドの海沿いの町に投下されたバルバロイは、子供を背にして武器を構える。

 

バルバロイ

「ここは任せて、早く逃げな!」

 

 

 

レオはイギリスにある都市の飲食点の上に投下され、量産型達を見下ろしながら高笑いをする。

 

レオ「ハーッハッハッハッハッ!この私が来たからには、覚悟はできているのだろうな!?」

 

 

 

アメリカの都市部と住宅街の境界に投下されたクリケットは、多数の亡骸を見渡し、拳を握り締める。

 

クリケット「···代償は高くつくよ」

 

 

 

 

 

クレ白はOBで一気に接近し、レーザーブレードでL1型を下から袈裟に斬り裂く。そのまま左を向いてL1型の頭部にマシンガンを連射する。次にJ型の心臓にレーザーブレードを突き刺してから空中に飛び上がる。

 

飛び上がったクレ白は小型ミサイルを複数の量産型にロックオンし、発射する。その後着地したクレ白はそのまま膝立になり、グレネードキャノンで固まって動いていた量産型達を纏めて撃破する。

 

 

 

ミストアイは背後からM2型にミサイルを撃たれたものの、目の前の量産型の足をレーザーブレードで斬り、飛んでくるミサイルの盾にする。

 

ミストアイのスピードに着いていけない量産型の背後に回り込み、カラサワを撃ち込む。

 

 

 

シュープリスはグレネードキャノンで広範囲に損害を与え、フレアでミサイルを回避しつつ両手の武器を連射しながら倉庫を盾にする。そして死角から攻撃して更に量産型の数を減らす。

 

次にQBでJ型の視界から外れるとグレネードキャノンで撃破する。その後ミニガンを連射しているG型にQBで接近し、その勢いのまま左手のアサルトライフルを銃剣のように使い、G型の心臓に突き刺す。

 

 

 

バルバロイは機動力を活かして攻撃を回避しつつ、一部の量産型を盾にして攻撃を防いでいる。更にQBでN型に急接近し、腰だめにショットガンを撃ち込んで撃破する。

 

一部の撃ち漏らしが先へ行こうとするが、バルバロイは散布型ミサイルでマンションを損傷させ、そのマンションは倒れて道を塞ぐ。振り向いた量産型にバルバロイはほくそ笑む。

 

 

 

レオは壁を蹴って別の壁に移動しつつ、すれ違いざまにJ型の頭部にショットガンを撃ち込む。更に小型ミサイルで複数の量産型を纏めて撃破する。

 

また、QBの加速力を利用した蹴りをN型の頭部に当てて粉砕し、刀を振り上げたS2型をバトルライフルで撃破する。

 

 

 

クリケットは高い火力で圧倒しつつ、倒れたG型の顔面を踏み潰す。更に路地に誘い込んでカラサワとグレネードライフルを交互に撃ち、纏めて撃破する。

 

機動力を活かして接近してきたN型には膝蹴りで怯ませ、至近距離からグレネードライフルを撃ち込む。

 

 

 

各地に1人ずつ向かったため数としては少ないものの、被害は確実に減っており、更に量産型の数も減りつつあった。しかしそれを多くの人は知る由もない。

 

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回の話はアプデ前と大幅に違う内容に変更していますので、新実装という形になりましたので、ご了承ください。

●ベルリオーズ
シュープリスのパイロットだった男性であり、それ以外の情報は閲覧不可となっている。


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第42話 進路はやがて必然となる(ver2.0)

武のは艤装を手に入れ、AC達も戦闘を開始した。一方で、秘匿艦娘達の動向は···


武龍が艤装を手に入れたその頃、秘匿艦娘達はそれぞれの進路を報告し合っていた。

 

 

 

憤怒「オレは姉貴の中で最強の姉貴がいるっていう江ノ島鎮守府に向かうぜ!誰の手もいらねぇ!アイツらはアタシの獲物だ!あ?自我の安定?そんなのいらねぇよ!」

 

憤怒は見つけた艦娘や深海棲艦を手当たり次第撃破しながら進む。

 

 

 

天「妾は鉄底海峡へ向かう。そこには深海棲艦だけでなく匿われた人間もおるようだからの」

 

天は雲の上から鉄底海峡を目指す。

 

 

 

大蛇「ならオレは最強の姉貴がいる横須賀鎮守府に向かうぜ!この力を見せつけてやる!」

 

大蛇はまっすぐに横須賀鎮守府に向かう。

 

 

 

ゴア「じゃあ私はたくさん殺せそうなアメリカへ向かうね。日本だとほぼリンチ状態だから殺せる数も減るし」

 

ゴアは小島で殺した人間の血を焚き火で暖めて飲み干し、海へ出る。

 

 

 

蛟「私は最も強い姉さん達のいる舞鶴に向かいます···ああ、絶望する顔を、早く見たいです!」

 

姉達の絶望する顔を想像し、恍惚の表情を浮かべた蛟は滅んだ街を後にする。

 

 

 

ウォーエンド「ボクはスリガオに行くよ。あそこで深海棲艦達が戦力を整えてるっていうし」

 

ウォーエンドは深海を進み、静かに目的地を目指す。

 

 

 

阿修羅「ならば私はドイツへ向かおう。あそこにはもう戦力はあまり無いが、トドメは指しておかねばな」

 

阿修羅は敵を薙ぎ倒しながら陸路を強行する。

 

 

 

雪羅「私はロシアへ向かいます。どこまで楽しませてくれるか、見物ですから···それに、切り札はありますから···」

 

雪羅はほくそ笑み、海を進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍の鎮守府のガレージにて、大蛇がアビス·グリントの点検を行っていた。

 

大蛇「聞きましたよ?あなたは武龍にテストを課したそうですね」

 

大蛇はアビス·グリントではなく、翔に語りかけている。

 

大蛇「あなたなら、今の武龍を倒すことなんて、簡単だったでしょう?」

 

誰もいない静かなガレージに、大蛇の一人言がポツリポツリと紡がれている。

 

大蛇「私は、あなたにちゃんと言いたかったんですからね···"ありがとう"って···私と蛟を見つけてくれて、ありがとうって···でも···」

 

大蛇は静かに流した涙を拭う。

 

大蛇「それが、あなたの"答え"なんですよね?···それに·····」

 

点検が終わった大蛇はアビス·グリントに敬礼をする。そして···

 

大蛇「再び飛べた空は···楽しかったですか?」

 

 

 

その頃、愛海は翔の遺影がある仏壇に手を合わせていた。

 

愛海「聞いたわよ、武龍君にテストをしたこと。楽しかったでしょ?もう一度飛べて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、それぞれはコアから秘匿艦娘達を迎え撃つ布陣を伝えられる···

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

次回からは秘匿艦娘達との決戦です。
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第43話 最速の特型(ver2.0)

憤怒の向かった江ノ島鎮守府の防衛戦、多数の戦力を単体で乗り越える秘匿艦娘に、江ノ島鎮守府と武龍サイドの面々はどう立ち向かうのか···


江ノ島鎮守府に憤怒が向かっていることを知った横須賀提督は艦娘達を激励する。

 

武龍サイドからはヘンダーソン、ツル、古風、大潮、雪風が援軍に向かったが、距離的に間に合わない。しかし周辺の深海棲艦が駆け付け、迎撃体制に入っている。

 

その深海棲艦の中には江ノ島鎮守府に移籍した深海吹雪棲姫、そしてオリジナルの『南太平洋空母棲姫』もいる。

また、この領域のオペレーターはリプが行うことになっている。そして迎撃体制を整えたところで、迫ってくる憤怒を確認する。

 

深海吹雪棲姫「来ました!」

 

リプ《皆!戦闘体制にはいるのだ!》

 

南太平洋空母棲姫

「もう少しで戦いの無いシャングリラに辿り着けるのに···やらせない!」

 

吹雪「行きましょう!」

 

艦隊の視線の先には真っ直ぐに向かってくる憤怒の姿が···

 

憤怒「よう···オレの怒り、受けてみろよ!」

 

 

 

推奨BGM『Blue Magnolia」(ACVDより)

 

 

 

単体戦力を攻撃するための陣形から繰り出される砲雷爆撃を憤怒は避けていく。そのスピードはその場にいるどの艦娘や深海棲艦よりも圧倒的に速く、動きの遅い者は捉えることすらできずにいる。

 

江ノ島鎮守府所属長門

「くっ、速い!」

 

江ノ島鎮守府の全艦娘とヘンダーソン達の包囲網は意味をなさず、次々と艦娘や深海棲艦が大破していく。砲雷撃だけでなく、スピードを乗せた格闘攻撃により大きなダメージを負う者もいる。

 

憤怒「あぁもう!イライラする!雑兵だらけかここは!?」

 

隙を突いて深海吹雪棲姫が左腕で殴りつけ、背部艤装にダメージを負わせる。

しかしそれに激昂した憤怒に格闘攻撃を連続で受け、深海吹雪棲姫は大破してしまう。

 

そこに憤怒がトドメを刺そうとしたその時、憤怒はバックステップで横から飛んできた砲弾を回避する。

見ると、武龍サイドの援軍が駆け付けていた。

 

 

 

ツル「負傷してる人は一旦下がって!」

 

ヘンダーソンのレールキャノンを憤怒は横ステップで回避し、再びステップで前方に飛び出ると、ヘンダーソンに接近しようとする。その動きはネクストに近いものだった。

 

ヘンダーソン「なるほど···思ってたよりも厄介ね」

 

ヘンダーソンの所に向かおうとした憤怒に、ツルと雪風の砲撃が放たれるが、やはりかわされてしまう。

 

リプ《あのスピード···あれだけ速いなら燃費は良くないはずなのだ!》

 

古風「てことは···」

 

大潮「燃料切れにすれば良いってことですね!」

 

江ノ島艦隊の攻撃がほぼ同時に憤怒に迫る。憤怒はその一斉攻撃を回避したものの、僅かにタイミングをずらして撃ち込まれた雪風のの砲撃が、苛立ちにより動きにブレが生まれた憤怒の顔面に命中する。

 

憤怒は怒りに体を震わせつつも、鼻血を拭うと深呼吸する。

 

憤怒「やるじゃねぇか···なら、こっちも本気出さねぇとなぁ!」

 

憤怒の艤装の胸、肩、背部にある排熱部から蒸気が吹き出し、その排熱部は赤熱する。

 

憤怒「オレは···沈められた艦達の···"怒りの代弁者"だ!」

 

憤怒はヘンダーソンに向けて駆け出すと、一瞬で距離を詰めてヘンダーソンの腹部に拳を打ち込み、その拳は手首まで埋まった。

 

ヘンダーソン「ゴボァッ···!」

 

古風が憤怒に砲撃するが、憤怒は古風の背後に一瞬で回り込んで砲撃する。

 

江ノ島提督《なんだよ···あの速さ!?》

 

憤怒は獰猛な笑みを浮かべながら次々と攻撃を仕掛けていき、その度に被害が拡大していく。しかし深海吹雪棲姫が海中から黒い手を大量に出現させ、憤怒の動きを止める。

 

憤怒「テメェッ!」

 

憤怒は推進力を活かして振りほどこうとするが、かつて吹雪を掴んだ時よりも多い手の数に苦戦している。

 

深海吹雪棲姫「今ですっ!」

 

その憤怒に大和と武蔵の砲撃が命中し、憤怒は大破する。そしてそれと共に機関部が損傷し、艤装は動きを止めてしまう。

 

憤怒「ちくしょう!動け!動けよぉっ!クソォォォォォォォォォ!」

 

その憤怒に大量の砲雷爆撃が着弾する。だが、それでも憤怒は立っており、吹雪達に迫ろうとする。しかしその動きはフラついており、1歩進む度に艤装の破片やパーツが落ち、艤装の一部は爆撃を起こしたりする。

 

 

 

 

 

吹雪「なぜ···あなたはそんなに怒って、人類や私達を目の敵にするんですか?」

 

憤怒「あぁ?そんなもん、決まってんだろ···オレ達を捨てて···あんなに輝いて···(艤装の爆発)ガハッ···それに、オレは怒りの···代弁者だからな···」

 

憤怒は膝を着く。背部艤装からは絶えず黒い煙が溢れ出しており、赤熱している排熱部は赤みを増している。

 

ヘンダーソン「···怖かったのね。消えるのが」

 

憤怒「あ?」

 

ヘンダーソン「自分の存在を忘れられ、技術者達の努力が無駄になることが···それが許せなくて、憎くて···」

 

憤怒「黙れぇぇぇぇぇ!てめぇらに何がワカル!?オレタチ ノ心が!過去ガ!」

 

憤怒は左手に持つ、折れ曲がった砲身の15cm2連装砲を向けるが、引き金を引いた瞬間に爆発し、左腕の肘から先が吹き飛ぶ。

 

憤怒「ガアアアッ!クソッ!クソッ!」

 

すると吹雪は憤怒に歩み寄る。

 

吹雪「私はあなた達の心を完全に理解することはできません···けれど、寄り添う事ならできます···だって、私の妹ですから!」

 

吹雪は憤怒を抱き締め、憤怒は目を見開く。

 

吹雪「誰かが忘れるのなら、私達が覚えています!私達があなた達の存在を伝えます!だから、もう···」

 

憤怒「もう···いいさ···」

 

憤怒は吹雪を突き飛ばすと同時に最後の力でバックステップをし、距離を離す。

 

憤怒「姉貴達みたいなのと···初めっから出会えてたらな···ああ、最高に、イライラするぜ···」

 

 

 

 

 

吹雪を見ながら、憤怒は初めての笑顔を浮かべる。

 

 

 

 

 

憤怒「じゃあな···姉貴···」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、憤怒の艤装から溢れ出ていた粒子が光り輝き、爆発を起こす。それにより、艤装は完全に破壊され、憤怒も跡形もなく吹き飛ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

吹雪「憤怒っ!」

 

吹雪は泣き崩れ、その肩を深海吹雪棲姫が抱き止める。

 

横須賀提督《···憤怒の轟沈を確認···皆、戻ってきてくれ》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特型秘匿駆逐艦『憤怒』

 

江ノ島鎮守府正面海域にて轟沈。轟沈理由としては自爆ではなく、機関部の損傷による熱暴走が原因だと推測される。

 

また、憤怒による艦娘と深海棲艦の合計撃破数は確認されているだけでも200を越えている。

余談だが、憤怒の艤装の残骸は解体されたものの、その破片の内1つは横須賀鎮守府所属の吹雪がネックレスにし、お守りとしている。

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

しばらくはこの時と同じ時間の戦闘が描かれます。

●憤怒の加速
憤怒は本来、ただでさえ扱いが困難なそのスピードを制御するためにリミッターをつけており、そのリミッターを外すことにより、尋常ではないスピードを解放することができる。

しかしリミッターを外しての行動は燃料を著しく消費し、更に排熱部が赤熱するため、リミッターを外しての行動は短時間しかできない。

また、リミッターを外した状態では機関部の損傷により熱暴走を起こしやすく、常に危険な状態である。


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第44話 血を求めし獣(ver2.0)


アメリカの海域でゴアを待ち構えるアメリカ艦隊と武龍サイドの面々。彼らはゴアを止められるのか···


アメリカのとある海域にて、ゴアを待ち構えるアメリカ艦隊と深海棲艦達。武龍サイドのメンバーは現在向かっている途中だが、ゴアが来るまでには間に合うようである。

 

武龍サイドからの援軍はマリアナ、鳳翔、サラトガであり、更には潜水棲姫と深海雨雲姫も援軍として向かっている。

そしてゴアを待ち構えている最中、艦隊は突如爆撃と雷撃に曝され、混乱が起きる。

 

 

 

推奨BGM『Jumbling』(ACVDより)

 

 

 

ゴア《艦隊のみんな~、聞こえる~?》

 

アメリカ提督《あれは···ステルス機だと!?》

 

空を飛んでいるのはステルス戦闘機達であり、大量の量産型も迫ってきている。

 

アメリカ所属長門「レイヴンズ·ネストの奴らはどうしている!?」

 

アメリカ提督《連絡が取れな(ノイズ音)···みん(ノイズ音)》

 

通信にノイズが混じり始め、遂には通信は途絶えてしまう。

 

ゴア《ふふふ~、ジャミングだよ!向こうもG型が足止めしちゃってるから来れないよ~》

 

煽るような口調で話しているゴア。姿が見えない事から、遠くにいることが用意に想像できる。

 

アメリカ艦隊所属コロラド「やるしかないわね!」

 

艦隊は量産型の群れに突撃し、撃破しながら進む。しかし一向にゴアを発見できず、量産型の物量に押され始める。

 

アメリカ艦隊所属コロラド「多すぎる!これじゃ弾が持たないわ!」

 

すると量産型の群れが爆撃される。見ると、マリアナ達が到着した。

 

マリアナ「待たせたな!」

 

鳳翔「ゴアを確認しました。これよりゴアへの攻勢を開始します!」

 

 

 

ゴア「へぇ、来たんだ···けど、これはどうかな?」

 

その瞬間、アメリカ艦隊の鎮守府が爆撃される。

 

深海雨雲姫「ネ級!確認に向かって!」

 

マリアナ、鳳翔、潜水棲姫とその艦隊はゴアの所へ向かい、深海雨雲姫とその艦隊は量産型の群れに向かう。

 

鳳翔「あの艤装、大きすぎます···」

 

マリアナ「まさに要塞だな」

 

ゴアの巨大な艤装には副砲が大量についており、マリアナの言う通りまさに要塞だった。

 

ゴアはその巨体からは想像もできないスピードで攻撃を回避していく。しかしそのスピードは憤怒のようには速くはなく、その巨体も相まって何発かは当たるが、戦艦とほぼ同じ装甲により上手くダメージを与えられない。

 

更に、ゴアから発艦される艦載機も鳳翔とサラトガの艦載機の数を上回っている。潜水棲姫も魚雷を直撃させるが、有効打になっていない。

 

ゴア「どうしたの?その程度かな?」

 

サラトガ「なら、これはどう?」

 

サラトガの髪が白くなり、顔の左部分が黒い甲殻のようなものに覆われていき、深海海月姫とサラトガの半々の姿となる。そして艦娘と深海棲艦の両方の艦載機を大量に発艦させる。

 

しかしそれでもゴアの艦載機が若干上回っている。すると唐突にゴアの艤装に鳳翔とは別の艦載機による爆撃が落とされる。ゴアが振り向くと、量産型の群れを突破してきた2人の空母ヲ級flagshipがいた。

 

これにより、制空はようやく拮抗となる。

 

ゴア「アッハハハ!そうだよぉ!そうでなくっちゃあ!」

 

ゴアが砲撃をしようとした瞬間、アメリカ艦隊所属のブルックリンの砲撃が背部艤装に当たり、なんとその一撃で装甲が剥がれ落ちる。

 

ゴア「なっ!?」

 

潜水棲姫「今だっ!」

 

内部機構が剥き出しになった艤装にマリアナの主砲が命中する。それによりゴアの背部艤装は粉々になり、前のめりにゴアは倒れる。

 

ゴア「え?そんな···私が···」

 

マリアナ「ゴア···なぜ貴様は血を求める?そこまで執拗に···」

 

ゴア「そんなの決まってるよ···綺麗だからだよ···赤くて、輝いてて···それに私は、この戦争を···血に染めて終わらせるための艦だから!」

 

ゴアは立ち上がり、叫び声をあげる。

 

ゴア「血が···足りない···血が!血が!血が!モット、もっとオオオオオオオオオオオオオオオ!」

 

ゴアの髪が白くなり、赤いオーラを纏い始める。そして両手の指は巨大な爪となり、頭部には冠のように8本の黒い角が生える。

 

マリアナ「深海化だとっ!?」

 

ゴア「アアアアアアアアアアアアア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ッッ!」

 

 

 

ゴアは叫びながらマリアナに飛びかかるが、艤装爪を防ぐ。噛みつこうとしたところをマリアナがアッパーで反撃する。ゴアは怯むと同時に飛び退き、ヲ級flagshipの所へ向かい、抱きつくように2人を同時に切り裂く。

 

そのまま鳳翔の所にも向かおうとしたが、砲撃を受けて怯む。見れば量産型を殲滅した艦隊が向かってきていた。

 

ゴア「ア"ア"ア"ア"ア"ッ!」

 

続けざまの砲撃でゴアは更に怯む。しかし途中で砲撃から抜け出し、艦隊へ突撃する。そのスピードに、量産型との戦闘で疲労していた艦隊は逃げることが遅れてしまう。

 

そのため、ゴアにより多くの艦娘と深海棲艦が刺し貫かれ、切り裂かれ、喰い千切られる。

 

マリアナが砲撃し、左腕を破壊する。更に鳳翔の爆撃により怯み、その隙にコロラドの砲撃が脚部艤装に命中し、足が吹き飛んでゴアは前のめりに倒れる。そこにサラトガの爆撃と深海雨雲姫の砲撃が加えられる。

 

ゴア「ハァ···ハァ···」

 

ゴアはもう動けない体を動かそうとするが、やはり動けない。しかしそれでも首を動かし、噛みつこうとしてくる。

 

ゴア「グルルルル···」

 

マリアナ「最早言葉すら無くしたか···哀れな···」

 

マリアナはゴアの頭部に砲撃し、首のなくなったゴアは沈んでいく···

 

アメリカ提督《···な···皆!聞こえるか!?》

 

コロラド「Admiral!」

 

ソラ《ジャミングは消えたようですね···》

 

しかし、そこに突如緊急の通信が入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新型秘匿空母『ゴア』

 

アメリカ沖合いの海域にて轟沈。量産型を利用した物量と航空戦力で圧倒したものの、『魚雷の当たる位置にある接合部』に偶然砲撃が命中し内部機構が露出。そこを狙われて大破。その後深海化したが、集中砲火により撃破された。

 

執拗に血を求めた経緯としては、設計図が何者かの血によって描かれていた事が要因と考察される。

 

また、ゴアの撃破数は300を超えるとされているが、その半分は量産型によるものだとも言われている。

艤装の残骸は後に深海棲艦によって解体された。

 

 




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第45話 存在を憎みし不信(ver2.0)


武龍サイドの艦隊はスリガオにて秘匿艦娘を迎え撃つ。戦争を終わらせる艦は、どのような運命を辿るのか···


スリガオ海域にてロイヤル、時雨、夕立、伊58はオリジナルの海峡夜棲姫の率いる艦隊と共に秘匿艦娘を待ち受けていた。

 

ロイヤル「もうすぐ来る頃ね」

 

時雨は深呼吸をし、夕立は背伸びをする。

 

ベス《···》

 

時雨「ベス、何か考えてるの?」

 

ベス《はい···1つ、ある仮説を考えていまして···それがこの戦闘に関係する可能性があるので少し考えていました》

 

伊58「なんの仮説でち?」

 

ベス《秘匿艦娘の事ですが、調べたところによると彼女達は最初から改二で建造されたようです。しかし、元から設計図のみだったものを建造するだけでも深海棲艦として誕生するリスクがあるのに、最初から改二などと···

 

そうなると、艦娘や深海棲艦になる以前にその"魂そのもの"に過剰な負荷がかかるはずです》

 

海峡夜棲姫は2人とも哀れむような表情を浮かべる。

 

海峡夜棲姫(白)

「負荷が掛かるってことは···」

 

海峡夜棲姫(黒)

「不幸なことしか起きませんね···」

 

ベス《はい。なので私の仮説というのは、『魂が不安定が故に自我と肉体を保てない』、あるいは『非常に短命』という事です···》

 

ロイヤルはため息をつく。

 

ロイヤル「どのみち短命なら、この戦争の最中に命が途絶える可能性があるわね···けどそんなの、あんまりじゃない」

 

ベスは眉を潜め、周囲の反応を確認する。

 

ベス《私の杞憂で終われば良いのですが·····来ましたよ》

 

 

 

推奨BGM『HIGH FEVER (sweetest thing)』(ACVDより)

 

 

 

海に大量の量産型が見えてくる。すぐにロイヤルやヲ級flagship、ヌ級flagshipが艦載機を発艦させ、攻撃を仕掛ける。更にル級flagshipやタ級flagshipが砲撃し、近づく前に数を減らそうとする。

しかし前線のル級flagshipが海中からの魚雷のようなものを受けて轟沈する。

 

タ級「なっ!?これは···潜水艦よ!」

 

ベス《ということは···来たのはウォーエンドですね!総員、対潜体制!》

 

ヌ級flagshipが空から機雷をばらまくが、ウォーエンドはスイスイとかわしながら魚雷を撃ち込んでいく。その魚雷はミサイルに近い追尾性能を持っており、動きの遅い深海棲艦は振り切れずに劇はされてしまう。

 

その隙に量産型は攻勢を強める。時雨と夕立は量産型に突撃し、伊58はウォーエンドを倒すために思いついた作戦をロイヤルに伝える。

 

ロイヤル「なるほどね···やるからには、必ず成功させなさい!」

 

ロイヤルはウォーエンドがいるであろう方向に進み、艦載機を発艦させる。

 

ロイヤル「さぁ、引きこもりの潜水艦!さっさと出てきなさい!」

 

するとどこからか声が聞こえてくる。

 

ウォーエンド「そんな安い挑発には乗らないけど、君は厄介だから沈めさせてもらうよ」

 

ロイヤルにミサイルが発射されるが、ロイヤルは手に持つ弩によってミサイルを海面近くに来たミサイルを撃ち抜いていく。

 

ロイヤル「そんな単純な事しかできないなんて、愚かねぇ!」

 

 

 

その間、時雨は踊るように砲撃していき、夕立は三次元的な動きで翻弄する。更に時雨の踊るような攻撃に合わせ、夕立は時雨の肩を踏み台にして三次元機動をより複雑化している。

そして、その2人を海峡夜棲姫と深海棲艦達が援護する。

 

海峡夜棲姫(白)

「もう不幸は繰り返させない···」

 

海峡夜棲姫(黒)

「不幸を、乗り越えてみせる!」

 

海峡夜棲姫に接近したN型にイ級flagshipがタックルで怯ませ、そこにネ級flagshipが砲撃する。そして海峡夜棲姫は周囲の量産型に一斉砲撃し、その量産型達は纏めて撃破される。

 

 

 

ロイヤルがウォーエンドを攻撃を防ぎつつあるなか、突然泳いでいたウォーエンドの腹部に魚雷が連続で命中し、装甲を貫かれる。

 

ウォーエンド「ガハァッ!真下からだって!?」

 

ウォーエンドの真下には真上を向いて魚雷を構える伊58がいた。

 

伊58「真下からの攻撃···武龍のアイデア、ドンピシャでち!」

 

反撃しようとしたウォーエンドの足に後方から忍び寄っていた潜水ヨ級flagshipと潜水ソ級flagshipが魚雷を命中させる。

 

ウォーエンド「このっ!」

 

再び真下からの魚雷を受け、ウォーエンドは浮上する。そこに待っていたのはロイヤルの放った矢だった。その矢はウォーエンドの右目に突き刺さり、ウォーエンドは悶える。

 

ウォーエンド「がああああああああっ!痛いっ!痛いぃぃっ!」

 

そこに深海棲艦による更なる追撃が与えられる。すると時雨達が量産型を殲滅し、戻ってくる。

 

ロイヤル「ウォーエンド、あなたのしようとしていることは一理あるけれど、戦争が終わっているのになぜ再び戦争を起こそうなんてしたの?」

 

ウォーエンドは右目に突き刺さった矢を抜き、右目を押さえながらロイヤルを睨み付ける。

 

ウォーエンド「フゥー、フゥー···そんなの、簡単じゃないか···原因だよ···君達の存在そのものが、戦争の火種なんだよ!火種は···1つ残らず消えるべきだぁ!」

 

ウォーエンドは無理矢理魚雷を発射しようとし、既に損傷していた魚雷が爆発し、ウォーエンドの両腕が吹き飛ぶ。

しかしウォーエンドはそれでも向かおうとする。

 

ウォーエンド「ヒダネはぁ!全部ケシサル!全部!ゼンブ!誰もシンライするものか!誰も!誰もぉぉぉォォォオ"オ"オ"!」

 

ウォーエンドの深海化が始まり、ウォーエンドの体は竹が割れるような音と共に変異を始める。しかし唐突に苦しみ始める。

 

ウォーエンド「グッ···ヴオェェ···なんダ、コレ···!?」

 

ウォーエンドの肉体はまるで土人形が崩れていくように剥がれ落ちていく。

 

ベス《まさか···限界が···》

 

ウォーエンドは前に進もうとしたものの、遂に全身が剥がれ落ちてしまった。

 

ロイヤル「···こんな終わり方、あんまりじゃない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新型秘匿潜水艦『ウォーエンド』

 

スリガオ海峡にて自壊。多数のG型と共にスリガオ海峡に侵攻したものの、伊58の提案した作戦により大破。その後深海化し始めたものの、限界を向かえて体が自壊した。

 

その不信心は設計図の頃に多数の人間によって売買され、誰1人として自身を本物だと信じていなかった事が理由として挙げられている。

 

撃破数は計300を超えているが、ゴアとは違い、ほとんどが本人の撃破によるものであるとされる。もっとも、トドメを刺していったものが大半なのだが···

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

●秘匿艦娘の自壊
現在現れている秘匿艦娘はいずれも設計図のみだった状態から無理矢理改二として建造されており、精神が不安定なだけに留まらず魂そのものに過剰な負荷がかかっている。

そのため個体差はあれど短命であり、限界を向かえると肉体を維持できずに自壊してしまう。


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第46話 不幸と幸福(ver2.0)

舞鶴鎮守府に向かうオリジナル蛟に立ち塞がる影が···


ミズチは自身の姉達のいる舞鶴鎮守府に絶望する顔を思い浮かべながら向かっているが、その上を何かが通り過ぎる。

 

ミズチ「あれは···?」

 

それはストークAであり、反転し何かを投下する。それはミズチと同じ黒い巫女服を着た艦娘であが、ミズチと違って深海棲艦の飛行甲板があり、ミズチを睨み付けている。

 

ミズチ「なるほど···"私"ですか」

 

蛟「あなたと同類にはなりたくありませんよ···」

 

蛟は自分は艦娘であり深海棲艦であるため、出撃できるとしてここまでやって来たのだ。そして蛟は主砲をミズチに向ける。

 

蛟「時間は稼がせてもらいますよ」

 

その時、舞鶴鎮守府から通信が入る。

 

舞鶴提督

《時間稼ぎとか言ってんなよ。水臭ぇ》

 

蛟が振り替えると、舞鶴艦隊が出撃していた。

 

舞鶴所属扶桑

「妹にばかり任せるわけにはいきませんわ」

 

舞鶴所属山城

「不躾な方の妹をしつけなければいけないわね」

 

ミズチ「自らゾロゾロと···ではその不幸、より強めさせてもらいますよ!」

 

 

 

推奨BGM『Rain』(AC4より)

 

 

 

互いに大量の艦載機を発艦させるが、改二となっているオリジナル蛟の方が艦載機の数は多い。しかしその差は練度によって埋められている。

 

蛟の艦載機は紙飛行機から発生し、ミズチの艦載機は蜂から発生している。

 

そして砲撃を撃ち合うが、ここでも練度の差が浮き彫りになる。ミズチには大量の量産型による支援があるものの、徐々に量産型は減っていく。

 

更に舞鶴艦隊の扶桑と山城の砲撃がミズチの周囲の量産型を撃破し、翔鶴と瑞鶴の艦載機が周辺一帯の量産型を撃破し、高雄と愛宕が前面に出る。そこに川内と神通が加わって蛟の両側から魚雷を発射する。

 

これにより量産型の数は一気に減らされたものの、ミズチは狂った笑みを浮かべていた。

 

オリジナル蛟「フフフ、姉さん達にはたっっっぷりと不幸を味あわせてあげますよ···もちろん、お仲間にも!」

 

舞鶴提督《今だっ!》

 

ミズチに悟られぬよう、離れた位置からミズチの両側に単横陣で展開していた駆逐艦達が一斉に砲撃し、その砲弾はミズチの両側に水柱の壁を作り出す。そしてミズチの前後には金剛と榛名がいた。

 

両側の視界を塞がれたミズチは反応が遅れ、金剛と榛名の砲撃を前後からもろに受けてしまう。

 

ミズチ「ガハァッ!」

 

更に、舞鶴提督の考案した布陣により、ミズチは艦載機はもちろんの事、逃げることすらできなくなっていた。囲むだけではない、それぞれが最も能力を発揮でき、なおかつミズチを完封できるような位置をとり続ける。

 

オリジナル蛟が様々な行動をとろうとも、まるでその海域そのものが敵であるかのようにミズチを蹂躙する。

 

舞鶴所属扶桑

「これが、私達の戦いよ」

 

ミズチ「こんな···こんな!」

 

更に脚部の艤装が扶桑と山城によって破壊され、蛟の砲撃に混じって落とされた爆撃により飛行甲板が破壊され、度重なる攻撃に曝されたミズチは膝を着いて前のめりに倒れる。しかしミズチはなおも立ち上がろうとする。

 

ミズチ「私は···不幸そのもの···あなた達も···道連れに···」

 

すると、ミズチの体が限界を向かえる。しかしウォーエンドの自壊とは違い、ミズチの体は炎に包まれる。けれどもその目は蛟達を見据えていた。

 

ミズチ「アアアアアアアアアッッッッッ!」

 

ミズチはその身を燃やしながらも戦闘を続行し、舞鶴艦隊はそれぞれが別の陣形を作り直し、攻撃を始める。その陣形に蛟は合わせて攻撃を再開する。

 

そして、ミズチの頭部に全ての爆撃と砲撃が、脚部に全ての雷撃が、直撃する。

 

するとミズチは両膝をつき、虚ろな目付きで扶桑と山城を見つめてゆっくりと右手を伸そうとする。その時、ミズチは燃えながら灰となって霧散していった···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

扶桑型秘匿航空戦艦『蛟』

舞鶴鎮守府正面海域にて轟沈。量産型と共に侵攻したが、レイヴンズ·ネストの蛟が加わった事によって時間と戦力を消耗し、舞鶴鎮守府特有の戦術により目立った戦闘はできずに炎上により霧散した。

 

設計図としては売られる訳でもなく、燃やされた訳でもなく、ただただ忘れ去られており、更には蜂が設計図を巻き込んで巣を作っていたほどであり、忘れられたくないという思いから不幸を望んだと推測される。

 

レイヴンズ·ネストの蛟は『本来起こり得た未来』で発見されたため、幸福を望むようになったと推測される。

 

 




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第47話 最強の艦娘(ver2.0)


横須賀鎮守府は鎮守府向かう巨影を確認する。果たして江ノ島艦隊は最強の秘匿艦娘を撃破できるのか···



横須賀所属大淀

《こちらに向かってくる反応を確認。これは···オロチです!》

 

横須賀所属大和「ついに来ましたね···」

 

横須賀提督《皆、頼むぞ!》

 

大和達はオロチを迎撃する体制に入る。

 

 

 

推奨BGM『Overture』(AC4より)

 

 

 

オロチ「よう!姉貴達ぃ!新旧どっちが強いか試そうぜぇ!」

 

オロチはその巨体からは考えられないスピードで動き、精密な砲撃をしてくる。そしてその一撃で当たった艦娘は轟沈寸前となっていく。更に、砲撃だけでなくそのスピードを活かした格闘戦を仕掛けてくる。

 

オロチ「オラオラァッ!そんな程度かよ!?」

 

オロチに首根っこを掴まれて投げられた駆逐艦が軽巡に激突し、オロチはそこに砲撃する。

 

横須賀所属加賀「あのスピードをどうにかして殺さないと···」

 

叢雲と天龍、龍田が別々の方向からオリジナル蛟に接近する。しかしオロチは回転すると同時に主砲のアームで3人を薙ぎ払うと同時に砲撃する。

 

横須賀鎮守府に所属している艦娘は全て出撃させており、他の鎮守府や大本営からも艦隊が出撃している。しかしオロチは量産型を1機も連れておらず、それにも関わらずオロチは鬼神の如く蹂躙している。

 

しかしオロチは突然目を見開いて飛び退く。次の瞬間、オロチのいた場所に水柱が上がる。見ると深海棲艦の艦隊が到着しており、オロチは完全に包囲されていた。

 

オロチ「おい、邪魔すんなよ···ハッハッハッ!だが良いぜぇ!なんなら全員纏めて焼き尽くしてやらぁ!」

 

その場に一瞬だけ強い風が吹く。

 

オロチ「さぁて···第2ラウンドだぁっ!」

 

オロチは後方から砲撃を受けつつも突撃しており、有効なダメージにはなっていない事が判る。

陸奥の目の前に来たかと思えば横にステップし、後方の赤城に砲撃する。

 

オロチは大和に接近するが、武蔵が大蛇の顔面を殴り飛ばす。オロチはすぐに飛び退くと同時に砲撃する。

 

オロチ「ハッハッ!やっぱり姉貴だから簡単にはいかねぇか!」

 

加賀と瑞鶴の爆撃機が爆撃しようとするが、オロチは回避する。しかし時間差で大鳳の爆撃が直撃する。

 

オロチ「ぶへっ!···やるじゃねぇか!」

 

オロチの視線が大鳳に移った瞬間に多数の砲撃が放たれるがやはり避けられる。しかし、大和の砲撃がオロチの脚部艤装に当たり、若干スピードが低下する。

 

オロチ「いやぁ~流石は大和の姉貴だよ···」

 

スピードが低下したことにより攻撃が少しだけ当たるようになってきたが、それでもオロチは攻撃の手を緩めない。だがしかし、もう既に大破していない艦娘は5分の1にまで減っている。

そして、潜水艦達のの雷撃により、オロチのスピードは更に下がる。

 

 

 

 

 

この一瞬···その場の全ての艦隊の攻撃は奇跡的な一致をし、オロチに同時に命中する。

 

 

 

 

 

それにより、ここまで蓄積されてきたダメージがオロチを大破させ···

 

 

 

 

 

最後に『まるゆ』の魚雷がオロチの脚部に直撃する。

 

 

 

 

 

脚部艤装が完全に破壊され、動きが止まった所に大和と武蔵の砲撃が命中する。

 

 

 

 

 

オロチ「ガハァッ!」

 

オロチは仰向けに倒れ。

 

オロチ「あぁ~あ、負けちまったなぁ···」

 

オロチの傷口からは止めどなく血が流れており、虚ろな目でオロチは横に立つ大和と武蔵を見る。

 

オロチ「勝てると思ったんだけどなぁ···やっぱ、経験が違うか···」

 

目は虚ろだが、どこか清々しさを感じる顔でオロチは笑う。しかし仮にも妹であるオロチにトドメを刺したことで、大和と武蔵の表情は浮かないものである。

 

オロチ「アッハッハッハッハッ!何しけた顔してんだよ?勝ったのはお前らだろ?だったらそんな顔すんなよ!」

 

オロチは自身の命が消えていくというのに、笑って大和達を気遣っている。そして、肉体の限界を向かえたオロチの体に突如火がつき、燃え始める。

 

オロチ「ああ···もう、終わりかよ···じゃあな···楽しかったぜ···姉貴達···」

 

オロチの肉体は燃え尽き、灰となって霧散していった···

 

 

 

大和「さようなら···オロチ···」

 

武蔵「もしかしたら、解り合えたのかもしれんな···」

 

横須賀提督《ああ···》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大和型秘匿戦艦『オロチ』

 

江ノ島鎮守府正面海域にて轟沈。他の秘匿艦娘とは違い、量産型を伴わず単艦で侵攻してきた。

 

全種の艦娘と多数の深海棲艦を相手にしつつも、その圧倒的な戦闘力を見せつけた。しかし蓄積されたダメージにより大破し、まるゆの雷撃によって航行能力を喪失し、姉である大和と武蔵によってトドメを刺された。

 

最強の秘匿艦娘にトドメを刺すきっかけを与えたのが、まるゆだったのは何かの運命なのかもしれない。

オリジナル大蛇による撃破数は艦娘と深海棲艦合わせて700を越えているが、民間人には決して手を出していない事が確認されている。

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

オロチ戦、どうでしたか?オロチはあくまで"戦い"を求めていたので、非戦闘員である民間人には手を出していませんでした。
感想、是非お待ちしています。


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第48話 人形を従えし鶴(ver2.0)


ロシアの艦隊は秘匿艦娘を迎え撃つべく集結する。既に最高戦力の無い中、雪羅の前に立ちはだかるのは···


雪羅「おや?」

 

大量の量産型を従えた雪羅の前にはロシアの艦隊と深海棲艦達が立ち塞がっていた。

 

雪羅「最高戦力を潰しても、まるでハエのように集まってきますね」

 

最高戦力無き今、現在の最高戦力となっているのはレヴォツィの艦隊であり、レヴォツィとレヴォツィ艦隊は覚悟を決めて立っている。しかしレヴォツィ艦隊だけでなく、他の鎮守府の艦隊も集まっている。

 

レヴォツィ《レイヴンズ·ネストの援軍が来るまでまだ少しかかる···頼むぞ》

 

ガングート「無論だ」

 

ヴェールヌイ「ハラショー、もちろんだよ」

 

 

 

推奨BGM『鶴落ちる海』

 

 

 

雪羅「さて、始めましょうか···行きなさい」

 

量産型が一斉に向かってくる。レヴォツィ艦隊と深海棲艦達はすぐさま迎撃するが、量産型の連携はまるで1つの生物のように完璧にとれており、次々と撃破させられていく。

 

リ級flagship「なんなんだこいつら!?」

 

回避したと思えば既に別機体が回り込んでおり、あらゆる方向からの精密な砲撃、完璧といえる防御···

 

ガングート「最高戦力が葬られたのは、これが原因か!」

 

完璧な連携のとれた量産型の群れに、練度の足りていない艦隊はあっという間に壊滅寸前となった。雪羅は後方でそれを眺めながら嘲るような笑みを浮かべつつ、隙を狙っては砲撃している。

しかし、そこに援軍が現れる。

 

 

 

霧島「到着しました!」

 

サウスダコタ「艦隊は下がれ!ここは引き受ける!」

 

曙「なにあの連携!?」

 

パシー「あれは···奥に秘匿艦娘を確認!」

 

量産型が避けきれないほどの艦載機をパシーが率いている6人のヲ級flagshipが放つ。その爆撃により、量産型の大半は撃破される。

 

雪羅「···中々やりますね」

 

更に霧島とサウスダコタの連携砲撃により数を減らす量産型。そこにパシーの率いている深海棲艦達が向かう。

 

ヨ級flagship「ここはお任せを!」

 

雪羅の元に霧島、サウスダコタ、曙、パシー、ガングート、ヴェールヌイは向かい、対峙する。しかしその距離はかなり離れている。

 

雪羅「ここまで来ましたか···しかし私の未来のために、死んでいただきます」

 

雪羅は背部の長銃身の主砲を展開し、すかさず霧島が砲撃するが雪羅は回避する。そして間髪入れずに砲撃し、発射された砲弾は霧島の左上の主を破壊する。

 

しかし既に他の5人は雪羅に接近していっているが、雪羅はそのスピードで下がりながら砲撃してくる。そのスピードは速く、徐々に5人は離されていく。

 

曙「徹底的な引き撃ちって事ね!」

 

パシー「なんなのあのスピード!」

 

雪羅はある程度離れると再び主砲を構え、発射する。サウスダコタはギリギリで回避し、霧島も合流する。曙は主砲を自身と雪羅の間の海面に連射し水柱を発生させ、姿を隠す。

 

雪羅「なるほど、そういう手もありますね」

 

しかしそこにサウスダコタの砲撃が水柱を破ってが雪羅に迫る。間一髪で回避できたが、ヴェールヌイが別方向から砲撃していた。その砲弾は雪羅にギリギリで命中する。

 

雪羅「1発当ててきましたね。しかし、無駄が多すぎます」

 

再び霧島達が接近してくるが、雪羅はレールガンを撃とうとして気づく。

 

雪羅「弾切れですか···ならば!」

 

雪羅はそのスピードを活かして自ら接近し、砲撃を最小限の動きで回避しながら攻撃をしてくる。徹底的に無駄を省いた動きに5人は翻弄されるが、雪羅に1発の爆撃が直撃する。

レヴォツィ艦隊と深海棲艦達が雪羅に向かってきていたのだ。

 

雪羅「なるほど、ここまでとは想定外ですね」

 

雪羅は増援を交えた艦隊と交戦するが、次第に傷つき、損傷が拡大していく。

 

 

曙が主砲の一撃を近距離から背部艤装に直撃させ、霧島の砲撃が脚部艤装を破壊し、サウスダコタとガングートの砲撃が胴体に直撃する。そしてトドメにパシーの爆撃が命中する。

 

雪羅「クックックッ···私が敗北することも、想定の範囲内です···しかしせめて···姉さん達と戦いたかったですが···ここに来たのが、無駄でしたね」

 

そう自嘲気味に笑うと雪羅はうつ伏せに倒れ、そのまま灰となって霧散していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大淀型秘匿軽巡『雪羅』

 

ロシア沖合いの海域にて轟沈。特殊な指揮系統を有する事を活かし、量産型と自身の意識をリンクさせて後方から操作していたものの、増援による攻撃により引き撃ちを行う。しかし途中で主砲の弾が切れ、接近戦へ移行するが、最終的に数的不利により轟沈。

 

艦娘と深海棲艦の撃破数は400以上であり、意識を量産型とリンクさせた戦闘の脅威を見せつけた。

余談だが、設計図には翔鶴の機構の一部が使われており、ある意味で"鶴の1人"でもある事が推測される。

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

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第49話 強者を求めし槍(ver2.0)

武龍の鎮守府へと直接向かう秘匿艦娘がいた。そこに立ち塞がるのは···


武龍の鎮守府に向かって一直線で走っている1人の秘匿艦娘がいた。機械の足故に疲れることはなく、走り続ける。その秘匿艦娘は下半身が銀色の馬の体となっているケンタウルスだった。そして鎮守府が見えてくると、空を見上げている深海棲艦が立っていた。

 

白髪のツインテールの髪の深海棲艦、深海鴉棲姫はケンタウルスの方を向くと刀に手を掛ける。

 

深海鴉棲姫「お前1人か?」

 

ケンタウルスは深海鴉棲姫に槍の矛先を向ける。

 

ケンタウルス「ああ。勝つために、雑魚など不要だからな。それに、お前こそ1人か?」

 

深海鴉棲姫は笑みを浮かべる。

 

深海鴉棲姫「お前のような奴とは、1対1で戦いたいからな」

 

ケンタウルスは納得したような表情を浮かべると、槍を構え直す。深海鴉棲姫は刀を抜き、正面に構える。

 

 

 

推奨BGM『Sirent Line Ⅲ』(ACSLより)

 

 

 

ケンタウルス「新型秘匿重巡、ケンタウルス」

 

深海鴉棲姫「深海棲艦、深海鴉棲姫」

 

2人「「参る!」」

 

2人は同時に駆け出す。ケンタウルスは初手から突きを繰り出し、深海鴉棲姫はその突きを回避しながら突くが、ケンタウルスも同様に回避する。

そして互いがすれ違う瞬間、互いに目が合う。

 

深海鴉棲姫はすぐに振り向くが、ケンタウルスはそのまま走って大きく旋回してから突撃してくる。ケンタウルスは横薙ぎに槍を振るが深海鴉棲姫はしゃがんで回避し、ケンタウルスの右足の膝に掌底を当てる。

 

しかし効果は薄く、ケンタウルスは逆手に持った槍で串刺しにしようとするが深海鴉棲姫は横に転がって回避する。そして刀を横に薙ぎに振って3機の爆撃機を同時に発艦させる。

 

至近距離からの爆撃は流石に回避できず、ケンタウルスの下半身に爆撃が全弾命中する。

 

ケンタウルス「やるじゃないか!」

 

ケンタウルスは後ろ足で蹴りつけ、深海鴉棲姫は回避しきれずに左腕が砕かれ、おかしな方向に曲がって垂れ下がってしまう。

しかし深海鴉棲姫は自身の左腕を斬り落とすと同時に刀を納め、海面に落ちた左腕を拾いつつ転がる。

 

そして立ち上がると共に、ケンタウルスの顔面に左腕から滴る血をかけ、そのまま左腕を投げ捨てる。

 

ケンタウルス「なっ!?」

 

怯んだケンタウルスの体に居合い斬りを命中させる。

 

深海鴉棲姫「トドメだ!」

 

深海鴉棲姫はケンタウルスの心臓に刀を突き刺す。

 

ケンタウルス「ここまで、来て···負ける、か···」

 

ケンタウルスは目を見開いたまま息耐えた···

 

 

 

 

 

すると、後方で待機していた天龍、龍田、暁、響、雷、電の6人が合流する。

 

天龍「力···か、それを求めるならなんでここまでするんだよ」

 

天龍は沈んでいくケンタウルスの死体を眺めながらそう呟く。

 

龍田「もしかしたら、強者を越えるっていうより···自分の力を認めてもらいたかったんじゃないかしら?」

 

暁「そうかもね。ただ、その方法を間違えちゃっただけで···」

 

響「そもそも、設計図を無下に扱うことが無ければ、こんなことは起こらなかったのかもね···」

 

雷「それはわからないわ。けど、もっと別の方法はあったはずよ」

 

電「今でもどこかで思うのです···どうにかして、解り合えたんじゃないかって···」

 

ジュリアス《過ぎた事は仕方ない。ただ、2度とこのようなことを起こさなければ良いだけだ···総員、帰還しろ》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新型秘匿重巡『ケンタウルス』

 

深海鎮守府正面海域にて轟沈。強者との戦いを求めて戦争を起こすことに賛同し強者を求めたが、1対1を望んだ深海鴉棲姫との決闘に破れ、撃破される。

 

設計図の時点で燃料のコストの高さが問題視されており、性能は圧倒的だが長時間の戦闘が不可能であり、スピードと特殊な装甲を活かして艦首につけられた巨大な"槍"で敵艦に突撃し、貫くという戦術が有効なのかは疑問視された。

 

しかし開発者意外は誰もケンタウルスの事を認めず、開発は打ち切られた。

ケンタウルスが強者を求めるのは、親である開発者に己の力を見せつけたかったからなのかもしれない。

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

ケンタウルスと深海鴉棲姫との決闘、どうだったでしょうか?
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第50話 勝利を望んだ敗者(ver2.0)

ドイツへと向かった阿修羅を迎え撃つため、深海棲艦達は集結する。


ドイツ鎮守府へ向かい、阿修羅は陸軍や艦娘達を薙ぎ倒しながら進む。深海棲艦が援軍に来ても止まることはなく、突き進む。しかし陸軍がビルを爆破して進路を塞いだ事により、阿修羅は海へと進路を変更し、再びドイツ鎮守府へと進む。

 

しばらくすると、阿修羅の前に深海棲艦が立ち塞がる。

 

阿修羅「ほう?敗北者共の怨念か···」

 

立ち塞がる深海棲艦の中にはレキ、セン、セイレーン、渾もいる。

 

レキ「よう、ここから先は通行止めだぜ?」

 

セン「クックックッ···通さないわよぉ~」

 

セイレーン「こっから、通さないから!」

 

渾「やらせは、しないよっ!」

 

周囲にイロハ級の深海棲艦達も現れ、阿修羅を取り囲む。

更にはドイツ艦隊の長門と陸奥も合流する。

 

 

 

推奨BGM『Dirty Worker』(ACVDより)

 

 

 

阿修羅「敗北するだけでも罪だというのに、まだ"命"にすがるか···良いだろう、力とはなんなのか、見せつけてやろう!」

 

阿修羅は主砲を構えて正面から突撃してくる。渾の砲撃を回避しながら周辺に砲撃を撒き散らす。

主砲だけでなく、6本の機械腕に持った単装砲から放たれる砲撃の連射力と攻撃範囲は広く、イロハ級はすぐに大破か轟沈に陥ってしまう。

 

レキ「イロハ級は下がれ!」

 

阿修羅は機動力活かして回避と同時に砲撃してくる。そこにレキが魚雷を連射し、阿修羅の脚部艤装に直撃する。しかし僅かにスピードが下がっただけである。

 

ドイツ艦隊所属長門

「阿修羅!なぜ戦争を続ける!?もう終わったはずだぞ!」

 

阿修羅「敗北した貴様が何を言う!?"私の戦争"は、まだ始まったばかりだ!」

 

ドイツ艦隊所属陸奥

「どうしてそこまで勝利にこだわるの!?」

 

阿修羅の顔は憎悪に染まっており、獰猛な目をしている。

 

阿修羅「勝利こそ、私が創られた理由だ!敗北など許されない、今度こそ我が名を轟かせ、そして···」

 

陸奥に6本の手に持った単装砲を近距離から一斉射する。

 

阿修羅「敗北者を作り出した人間共を抹殺する!」

 

阿修羅の後ろに霧の中からセイレーンが接近し、複数の砲口から同時に砲撃する。そしてセイレーンが飛び退くと同時に背部艤装に爆撃とレキの砲撃が直撃する。

これにより阿修羅は中破し、怒り狂う。

 

阿修羅「貴様らぁぁぁぁ!」

 

振り向こうとした阿修羅は気配を感じて視線を戻す。その瞬間、長門に顔を殴り付けられる。しかし阿修羅は怯むこと無く長門を殴り返す。

 

追撃を加えようとしたところで渾の主砲の連射を食らい、引き下がる。しかしそこでレキの艤装によって左腕に食らいつかれ、接近したセイレーンに再び砲撃される。

 

そして飛び退いたセイレーンと入れ替わりでセンが殴り付けると同時に砲撃する。

 

レキ「おおおおおおおおおおぉぉぉぉぉっ!」

 

レキは尻尾で噛みつき、渾身の力で阿修羅を投げ飛ばす。それに合わせて渾が主砲を連射し、着地地点でセンが殴り付けると同時に砲撃する。

 

 

 

阿修羅「この···敗北者共め···」

 

阿修羅はなお立ち上がるが、攻撃するだけの力は失っている。艤装は火を吹き、頭からは血を流している。

 

阿修羅「私は···私は、敗北などせん!敗北など、敗北などぉぉぉおオオオオ"オ"オ"オ"オ"」

 

阿修羅の髪は白くなり、額からは赤い2本の角が生え、深海化してしまう。

 

阿修羅「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!」

 

その姿を見た陸奥は悲しそうな表情を浮かべる。

 

ドイツ艦隊所属陸奥「こんな姿になってまで···」

 

渾は主砲を連射しながら回り込み、センは正面に立ち、セイレーンは渾とは逆側に回り込み、レキは距離をとる。するとセンを通り過ぎて長門が阿修羅に接近する。そして至近距離から主砲を一斉射する。

 

阿修羅の義手は右下の1本だけが残り、阿修羅は長門にゆっくりと掴みかかろうとする。しかし突然、阿修羅の体が痙攣しだしたかと思うと、大量の血を吐き出して仰向けに倒れる。

 

ドイツ艦隊所属長門「阿修羅っ!」

 

倒れた阿修羅に長門が駆け寄り、陸奥も駆け寄る。

 

阿修羅「勝利ヲ···ゴブッ···求メタ私ガ、ゴボァッ···コノザマトハ···」

 

長門は阿修羅を抱き起こす。

 

ドイツ艦隊所属長門

「私達が···いや、別の鎮守府の私であっても、もっと早く出会えていたら···」

 

目に涙を浮かべる長門を阿修羅は嘲るように笑う。

 

阿修羅「ソンナ···ゲブッ···言葉ナド、意味ハ···」

 

陸奥が阿修羅に向かって叫ぶ。

 

ドイツ艦隊所属陸奥

「もっと早く出会えてたら!あなたとちゃんと話して、あなたを抱き締めてあげられたのよ!」

 

長門と陸奥は阿修羅を抱き締める。

 

阿修羅「···フッ、私は···とんだ、大馬鹿者だな···」

 

そう呟くと、阿修羅は灰となって海へと流れていった···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長門型秘匿戦艦『阿修羅』

 

ドイツ鎮守府正面海域にて自壊。陸上からドイツ鎮守府を目指すが海上に誘導され、機動戦を行うが動きを止められて大破し、深海化した。

 

しかし深海化してまもなく限界を迎え、ドイツ艦隊の姉達に抱き締められ、自壊していった。

 

彼女が勝利に執着するのは姉達や他の軍艦達の"敗北"の歴史を塗り替えようと設計されたが、その後『あれは敗北とは言えない』(長門の轟沈理由)と設計者により"阿修羅は不要"と判断され、ゴミ箱に捨てられていた事が理由として推測されている。

 

余談だが、『阿修羅とは話せれば解り合えたのではないか』という憶測がどこからか出ている。

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

残るは武龍と天ですね···


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第51話 空を目指した船(ver2.0)


鉄低海峡にて天と対峙する武龍達、その決着は···


武龍達のいる鉄低海峡では嵐が起こっていた。雨や風は強く吹き荒れ、時折稲妻も見える。

 

また、ミッドウェーはかつての義足が無くなっており、代わりに両肩に深海棲艦の飛行甲板が1つずつ装備されており、両手に14cm単装砲を持っている。

 

実は武龍が深海棲艦となった直後、ミッドウェーはコアによって更なる進化を遂げていたのだ。

そしてオペレーターを務めているアンが敵を確認する。

 

アン《あれは···天と量産型の群れを確認!戦闘体制!》

 

武龍達が攻撃をしようとすると、突如別の反応が右横から突撃してくる。

武龍はそれを回避して確認する。それは、もう1人の天だった···

 

 

 

推測BGM『Red butterfly』(ACNXより)

 

 

 

2人の天は傲慢な笑みを浮かべている。

 

天A「久しいのう、鴉よ。妾は妾を建造したのだよ」

 

天B「そういうことじゃ、沈ませてもらうぞ?」

 

天Aは飛び上がる。

 

天A「鴉よ、妾と舞おうぞ!」

 

天Aは武龍に突撃してくる。しかし天Bは武龍ではなく他のメンバーに攻撃を仕掛けてくる。

 

ミッドウェー「武龍!」

 

武龍「クソッ!こっちは任せろ!」

 

武龍と天Aは空へと飛んで行く。そしてミッドウェー達は天Bに向き直る。

 

ミッドウェー「行くぞ!」

 

 

 

 

 

武龍と天Aは暴風の吹き荒れる空を舞い、互いに撃ち合う。武龍のマシンガンを天は回避しつつ砲撃していき、天は武龍に接近すると突然高度を下ろし、下から砲撃を当ててくる。

 

次に天Aの撃った機銃がPAによって阻まれ、武龍のレーザーキャノンは回避され、そして2人は雲の上へと飛び上がる。武龍のマシンガンが天Aの胴体に連続で命中し、天機銃と14cm砲により減衰した武龍のPAを突き抜けた20cm砲が武龍の胴体に命中する。

 

天A「強い!実に強いぞ鴉よ!」

 

武龍は小型ミサイルを放ち、天Aがそれらを撃ち落とすのに躍起になっている隙にレーザーキャノンを構えながら接近する。天Aは放たれたレーザーキャノンが右の主砲を破壊した事により怯み、3発の小型ミサイルが直撃する。

 

天Aは一瞬落ちるもののすぐに体制を立て直し、武龍に向かってくる。

 

 

 

 

 

その頃ミッドウェー達は空から撃ち下ろされる砲撃に苦戦していた。

 

天B「その程度か?やはり海を這いつくばる船どもはこんなもんだのぅ」

 

そう言った天Bの頭にミッドウェーの艦載機による爆撃が命中する。

 

ミッドウェー「空に逃げることしかできない奴が何を言う?」

 

天B「このっ!」

 

ミッドウェーに向かおうとした天Bのウイングを北上が撃ち抜く。

 

北上「煽りには弱いんだね~」

 

海面に顔を擦り付けるように落ちた天Bはよろけながら立ち上がる。そしてそこに放たれた青葉の砲撃とラングレーの雷撃が命中する。

 

青葉「命中です!」

 

天Bは怒りに顔を歪ませ、額には青筋を浮かべている。

 

天B「き、貴様ら···よくも、よくも妾の翼を···」

 

続いてミッドウェー、北上、青葉の砲撃が直撃し、天Bは大破する。

 

天B「よくも妾を地に落としおって···」

 

天Bの体がメキメキと音をたて始める。

 

 

 

 

 

天Aは武龍の月光を間一髪で避け、カウンターに砲撃を直撃させる。

 

天A「惜しかったのう!」

 

2人は空を舞いながら攻撃し合う。しかしその途中で天Aの背部艤装の機関部が武龍のマシンガンに撃ち抜かれてしまう。

 

天A「翼がっ!」

 

天Aは海面に落ちていき、ゴム毬のように転がる。ゆっくりと起き上がった天Aは血まみれで、腹部からも多量に出血していた。しかしその顔は諦めたような表情をしていた。

 

天A「よもやここまでやるとはのう···じゃが、妾はここまでのようじゃ···」

 

天Aの体に火が着き、燃え始める。すると天Aは腰から刀を抜き、心臓に当てる。

 

武龍「おいっ!」

 

天Aは微笑む。

 

天A「妾は負けた···空はお前のものだ···飛び続けるがいい、"鴉"よ」

 

天Aは心臓に刀を突き刺し、息絶える。

 

武龍「···クソォッ!」

 

武龍はミッドウェー達の所へ向かう。

 

 

 

 

 

武龍が到着すると、ちょうど深海化しきった時だった。しかし深海化した天Bは空へ飛んでいく。

 

ラングレー「逃げる気か!?」

 

しかし必死の形相で飛び立つ天Bに稲梓が落ち、墜落した天Bはそのまま沈んでいく。

 

アン《これは···と、とにかく皆さん、これから回収に向かいます!》

 

アンがストークBを向かわせている間、他のメンバーに秘匿艦娘の撃破を伝える。すると他のメンバーからも撃破報告があり、続々と秘匿艦娘の撃破報告があがってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしその頃、秘匿艦娘達の建造された施設に調査に向かっていた艦隊は異変に気づく。

 

戦艦棲姫「何?···この揺れ」

 

ネ級「おいっ!あれを見ろ!」

 

ネ級が指を指す方を見ると、警報音と共に鎮守府に隣接されている巨大な空き地が左右に大きく開かれ、"ナニカ"が上に上がってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異様に長い腕と先鋭的でどこか禍々しさを感じるフォルム···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頭部は胴体と一体化しており、右手には5連装のガトリングガン、左手には巨大な砲をもっており···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体から吹き出しているとてつもない濃度の緑色の粒子···『コジマ粒子』により草木は枯れていく···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦艦棲姫「皆逃げてぇぇ!」

 

『本来起こり得た未来』の兵器のネクスト機体の原型···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"プロトタイプネクスト"『00-ARETHA(アレサ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"終わり"が始まる···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新型秘匿軽巡『天』

 

鉄低海峡にて自沈。自らを建造し、2人で別々に戦ったが片方が深海化し、深海化した方は最後に雷によって死亡した。

 

"空を飛ぶ船"を目的として設計されていたものの、構造や航空機との組み合わせに難航し、設計は途中で断念された。

武龍と1対1で戦ったのは、同じ空を飛ぶものとしてどちらが相応しいか確かめるためにやったものだと推測されている。

 

その推測が正しいのなら、天は傲慢だが思考は柔軟だったと推測できる。

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

さて、秘匿艦娘達は全滅しましたが、最後に一仕事残ってますね···

●00-ARETHA(アレサ)(以下アレサ)
『本来起こり得た未来』の兵器で、ネクスト機体の原型であり元凶。
通常のネクスト機体は2つずつのブースターだが、肩のサイドブースターは10個、背部のメインブースターは6個とネクスト機体を圧倒的に凌駕するスピードを持つ。

武装は右手の5連装ガトリングガンと左手の『コジマキャノン』だが超広範囲にコジマ粒子の反応爆発を起こすことも可能。

しかし、致命的なまでのコジマ汚染とパイロットへの高過ぎる負荷により"表向きは"廃棄された。
ちなみに、この世界でのアレサは大きさも性能も未来のものと変わらない。

●コジマ粒子
本来起こり得た未来で発見されるはずだった緑色をした特殊な粒子であり、反応によって爆発を起こす。その爆発の際のエネルギーは核の数倍であり、莫大なエネルギー源だけでなく攻撃や防御へも使用されている。

しかし環境を致命的なまでに汚染し、自然減衰には数百年かかる。だがとある粒子を使うことにより急速な除染が可能。

●コジマキャノン
コジマ粒子を集束、圧縮させて砲撃として撃ち出す兵器。

チャージすることにより威力が上がり、フルチャージに時間がかかったり弾速が遅いという弱点はあるものの、フルチャージで命中すれば絶大な威力を発揮する。

しかしアレサのコジマキャノンは内部で常にチャージされており、発射するときは必ずフルチャージで発射される。


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番外編 深海棲艦と鴉の戯れ(ver2.0)


秘匿艦娘達との戦争が始まる前、武龍と深海棲艦達との戯れとは···


レキ「行くぜぇっ!」

 

武龍「うおおおおおおっ!」

 

2人はティラノサウルスに向かって棍棒を振りかざし、突撃する。しかしレキはティラノサウルスに頭から食われてしまう。

 

武龍「レキィィィィッ!」

 

そして武龍も食われてしまう。

 

武龍「だああああぁっ!またかよ!」

 

レキ「拠点の位置にティラノいるとかマジかよ···」

 

2人はゲームのコントローラーを置いてうち倒れる。それを見ていたヘンダーソンが訪ねる。

 

ヘンダーソン「なんでそもそも棍棒なんかで挑もうと思ったのよ?」

 

武龍とレキは顔を上げて答える。

 

武龍「資材無いし、棍棒には棍棒のロマンがあるし」

 

レキ「どうせならペットにしたいし」

 

ヘンダーソンはそれに対し、額に手を当ててため息をつく。

 

ヘンダーソン「それダメなやつじゃない···ていうか、パチンコとか無いの?」

 

レキは少し考えると、道具箱に入れておいたのを思い出した。

 

レキ「そういえばあったな···よし武龍行くぞ!あと少しで気絶するはずだ!」

 

武龍「おうやってやんよ!あの野郎···何度でも、何度でも凸ってやんよ!」

 

ヘンダーソンはそんな2人を暖かい目で見守っていたのだった。

 

ヘンダーソン「·····」

 

そしてその直後、再び2人はうち倒れるのだった···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日、夜な夜な渾が鎮守府の森に向かっていくのを見たとツルから聞いた武龍はツルと夕立(たまたま居合わせた)と共に渾を尾行することに。

暗視装置を着けた武龍は渾の持ち物に疑問を覚える。

 

武龍「あれは···タッパー?」

 

ツル「そうね···中に何か入ってる」

 

すると渾は小さな崖に向かっていく。

 

夕立「あっ!崖を降りたっぽい!」

 

崖から覗き込むと、その下で渾は1匹の三毛猫に魚をあげていた。

 

ツル「そういえば最近よく釣りに行ってると思ったら、そういうことだったのね」

 

武龍「そういえばそうだな」

 

渾が釣りに行っていた事を知らない夕立は首をかしげる。

 

夕立「そうっぽい?」

 

しかし三毛猫が上を見上げて一声鳴いた。そして上を見上げた渾と武龍の目が合った。

 

渾&武龍「「あ···」」

 

渾は三毛猫を抱えて逃げようとするが、ツルの艦載機によって阻まれる。

 

渾「ち、違うの!この子は前からこの島にいたみたいで、そのっ···」

 

渾は必死に弁解しようとするが、武龍は三毛猫を見つめながら予想外の言葉を発する。

 

武龍「猫かわいい···」

 

渾「···え?」

 

渾は最初は怒られるのかと思ったが、武龍達は怒っている様子は全く無かった。

 

武龍「いや、猫飼うぐらい良いんじゃないかって思うし···まあ、飼うっていうよりかは同居って感じかな?」

 

武龍がツルと夕立の方を見ると、2人は頷いている。

 

ツル「正直癒しにもなりそうだし、コアだって案外猫好きだし」

 

夕立「そうそう!」

 

渾「皆···ありがとう!あ、この猫は『ニム』って名付けたの!」

 

ニム「ニャー(黙れ生娘!)ニャンニャン(前から言っているが)ニャンニャニャー(我はフェルナンドスだ!)ニャニャー(控えよ)!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日、武龍は風邪を引いた。

 

セイレーン「軽い風邪ね。私達深海棲艦には無縁だけれど、艦娘は風邪引く可能性があるから気をつけて。武龍も、部屋で安静にしてなさい」

 

武龍「わかった。ゴホゴホ、ありがとう」

 

セイレーン「ほら薬」

 

その後武龍が自室で寝込んでいると、昼食の時間になる。すると扉がノックされ、セイレーンがお粥を持ってくる。

 

セイレーン「ほら、栄養満点のお粥よ」

 

武龍「ありがとう···」

 

セイレーン「お礼は鳳翔にいうんだよ。彼女、栄養バランスを結構考えてくれたんだから」

 

武龍「うん、そうするよ···」

 

その後はセイレーンの薬のお陰もあって完治したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある雨の日、武龍は和室で古風と将棋を差していた。

 

古風「はい、王手」

 

武龍「マジかよ···」

 

武龍は古風にあっという間に王手を取られてしまっていた。これで武龍は4戦4敗であり、2戦目は良いところまで行ったが負けてしまった。

 

古風「今度はもっと歩と銀を有効活用してみて」

 

武龍「なるほどな···」

 

すると和室にパシーが入ってくる。パシーは将棋盤を見ると目を丸くする。

 

パシー「Oh!確かこれってショーギ?」

 

古風「そうよ」

 

パシー「···私もやってみて良いかしら?」

 

古風「良いわよ。武龍、ちょうど良いからパシーとやってみて」

 

武龍「よしっ!」

 

武龍とパシーは静かに駒を差し、武龍が勝利した。

 

パシー「やっぱり練習してると違うわね···」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある晴れた日、ロイヤル、大蛇、蛟、ミッドウェーでお茶会をしていた。

 

武龍「やっぱりロイヤルの紅茶は旨い!」

 

ロイヤル「それは良かったわ!」

 

お茶会は和やかに進んでいたが、不意に武龍が以前耳にした事の疑問を大蛇に聞いてみる。

 

武龍「そういえば、計画だけで終わった船に80cm砲を8つも積んだ船があったって聞いたけど、大蛇とはどっちが強いんだ?」

 

大蛇「それは判りませんね。例え相対したとしても、性能差だけでなく、扱う者の技量も合わさってきますし···」

 

実際、艦娘でも練度の違いで駆逐艦が重巡や戦艦に勝利する事例があったりしている。

 

大蛇「その船の性能はどうなのか解りませんが、私の76cm2連装砲は特殊な装填機構により、ある程度連射性が高く、速力もかなりありますからね。それに···この私のZF型であれば間違いなく勝てます」

 

数日前の演習で大蛇と対戦したミッドウェーは項垂れる。

 

ミッドウェー「ZF型はもはや反則級だろ···」

 

蛟「それは同意します」

 

すると今度はロイヤルが蛟に質問を投げかける。

 

ロイヤル「蛟の場合は?」

 

蛟「私は大量の艦載機を搭載できるので、1対1なら本体が轟沈しても勝つことは十分可能性でしょう。しかし実際の戦闘では他の船も来るでしょうし、それであれば判りませんね」

 

ロイヤルはそれに頷く。そしてその後も楽しいお茶会は続くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マリアナはある日、武龍の部屋に来たがノックしても返事が無い。ドアノブに触れてみると鍵は開いている。そっとドアを開けると、部屋の隅で丸まって震えている武龍を見つける。

 

マリアナ「武龍···」

 

まるで小さな子供のように縮こまり、怯えている武龍にマリアナは触れようとするが、武龍はより縮こまった。マリアナは武龍をそっと抱き締める。

武龍は逃れようとするが、マリアナは優しく力を込める。

 

マリアナ「大丈夫、大丈夫だ。もうあいつらはいない···ここには私達がいる」

 

武龍の耳元でそう囁くと、武龍は逃れようとしなくなる。マリアナは武龍の頭を優しく撫で、武龍は次第に震えが収まってゆく···

 

ふと気づくと、マリアナは自室のベッドの上だった。

 

マリアナ「なるほど、少し夢を見ていたか···」

 

マリアナは起きて身支度を済ませ、食堂に向かう。そこで武龍を見つけるととりあえず頭を撫でておくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍が鎮守府の砂浜を散歩していると、椅子にもたれ掛かって海を見つめるコアがいた。傍にはリリがフルーツジュースを飲んでいる。

 

コア「武龍か···なぁ、少し海を眺めていかないか?」

 

武龍はリリが用意した椅子に座って海を眺める···その場はとても静かで、波と風の音しか聞こえない···ぼうっと眺めているだけでも、とても落ち着く···しかしずっと見ていると、僅かに違和感を感じる···まるで海が震えているかのような···

 

コア「武龍も感じたようだな···海が震えていることに」

 

武龍はそれに頷く。

 

武龍「ああ···」

 

コア「これからまた、何か良くないことが起きる。その時はまた、共に戦ってくれるか?」

 

コアは武龍の方を向いて聞くが、武龍はサムズアップしている。

 

武龍「当たり前だ···また戦争が始まるなら、終わらせるだけだ」

 

コア「ありがとう···」

 

すると3人の所にセンがやって来る。

 

セン「あ~ら、ここにいたのね武龍。コアは海眺めるのが本当に好きね。私もだけれど」

 

コアはセンを誘い、センは持ってきた折り畳みの椅子を置いて腰掛ける。

 

コア「お前も眺めていくか?」

 

セン「フフッ、そのつもりで来たもの」

 

 

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回の番外編は第37話の少し前のお話です。どうだったでしょうか?感想やがあれば遠慮なく送ってください!

●武龍とレキのプレイしていたゲーム
ぶっちゃけ言うと『A○K』。2人は何も知らずに始めたため、ティラノなとが出る位置からスタートしてしまっていた···

●ニム
渾が鎮守府の森で見つけた三毛猫。
実は前の飼い主から『フェルナンドス』と名付けられており、とある王国で飼われていた。

しかし深海棲艦と人類との戦争に巻き込まれ、小舟と共に流れ着いた。


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番外編 雨上がり(新実装)

ある雨上がりの日、武龍とミッドウェーはとある場所を訪れる。


雨上がりの日──

 

とある瓦礫が残る、かつて町だった場所にある簡素な慰霊碑。その前で手を合わせる男女がいた。武龍とミッドウェーである。本当なら青葉と大蛇も来るはずだったのだが、それぞれ用事が入ってしまったため来れなかった。

 

ミッドウェー「···なぜ、ここの慰霊碑に手を合わせる?この町の人間は君を散々な目に合わせたのだろう?」

 

武龍「ああ。けど、関係の無い人もいたとは思う。だからその人達のために、俺の故郷だった場所としても、こうしたかったんだ」

 

武龍は周囲の瓦礫を見渡す。かつて自身が引き取られた先の町であり、夜逃げした日に空爆を受けて瓦礫と化した町。この町にいた両親は本当の親ではなく、本当の両親の親族である。

 

引き取られる前に住んでいた場所は覚えていないが、武龍にとってはさほど問題ではないように感じている。

 

武龍「なぁミッドウェー、ちょっと歩いてみないか?」

 

武龍とミッドウェーは周囲を歩いてみる。ほとんどが瓦礫ではあるものの、僅かに残ったものが1つだけあった。それは武龍が夜逃げした際に最初に逃げ込んだ公園だった。

 

今では噴水は止まり、広場には工事業者のプレハブ小屋とテントがある。一通り公園を見て回ると、2人は青葉と出会った場所まで行く。

 

武龍「懐かしいなぁ。ある意味、ここから始まったと言っても良いくらいの場所だ」

 

ミッドウェー「ここが、武龍にとっての始まり、か···」

 

暖かい日の光が2人を照らし、2人は近くの木の下に座る。そしてぼんやりと海を眺めていると、心地よい風と暖かな日光により少しずつ眠気がやって来る。

 

ミッドウェー(なんだか気が抜けるな。少しだけ、少しだけ眠るか···)

 

そして、ミッドウェーはゆっくりと瞼を閉じるのだった。

 

 

 

 

 

ミッドウェーは暗い空間に立っていた。すると前方に歪んだ姿をした艦娘達が現れ、ミッドウェーにふらつきながらも歩み寄ってくる。ミッドウェーは悪寒を感じて引き下がる。

 

すると突然、ミッドウェーの後方から頭上を飛び越えて武龍が現れる。武龍は機甲兵装(バルバロイ)を頭以外に装備しており、歪んだ艦娘達に攻撃していく。

 

武龍の攻撃により、歪んだ艦娘達は次々と倒されていく。しかし歪んだ艦娘達は数を増やしていき、武龍は劣勢となる。そして次第に被弾が増えていき、遂には膝をつく。そこに歪んだ艦娘達は一斉に武器を向ける。

 

ミッドウェー「やめろ···」

 

歪んだ艦娘達の引き金にかかる指に力が入る。

 

ミッドウェー「やめろぉぉぉぉぉ!」

 

ミッドウェーは大量の艦載機を発艦させ、歪んだ艦娘達に攻撃する。歪んだ艦娘達は倒れ、ミッドウェーは武龍に駆け寄る。

すると、周囲の歪んだ艦娘達が喋り出す。

 

歪んだ艦娘A「なんで助けるの?」

 

歪んだ艦娘B「アンタら深海棲艦が嫌ってる"人間"だよ?」

 

歪んだ艦娘C「しかも深海棲艦を沢山沈めた」

 

歪んだ艦娘D「あなたの敵でしょう?」

 

歪んだ艦娘E「一緒に沈めましょう?」

 

ミッドウェーは拳を握り締め、立ち上がる。

 

ミッドウェー「確かに、この男は数多の深海棲艦を沈めた。しかし同時に数多の深海棲艦を救った···私も、その救われた深海棲艦の1人だ」

 

ミッドウェーは歪んだ艦娘達を睨み付ける。

 

ミッドウェー「だから私は···武龍を、守る!」

 

ミッドウェーは艤装を展開する。しかしこれまでの艤装と違い、両肩に1枚ずつ飛行甲板が、両手には14cm単装砲が現れる。

 

ミッドウェー「何度でも、何度でも沈んでいけ」

 

ミッドウェーは艦載機を発艦させると共に、単装砲の引き金を引く。

 

 

 

 

 

目が覚めると、ミッドウェーは頭を武龍の肩に預けて寝ていた。いつの間にか武龍も寝ていたようで、柔らかな寝息を立てている。その顔を見たミッドウェーはあることに気づく。

 

ミッドウェー(そうか、だから私は···)

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回は始まりの場所に訪れると共に、ミッドウェーの新たな艤装が発現した時の話を書きましたが、どうだったでしょうか?
感想、いつでもお待ちしています!


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幕間 答えのその先へ(新実装)

エラーが発生しました。ただちに全データを削除してください。
エラーが発生しました。ただちに全データを削除してください。
エラーが発生しました。ただちに全データを···
エラーが発生しました。ただちに···
エラーが発生しました···
エラーが···
···


アレサが現れる数分前──

 

 

 

愛海のスマホが鳴る。そこには『9』とだけ表示されており、愛海はあることを悟る。愛海は通話ボタンを押して電話に出る。

 

愛海「···誰かしら?」

 

???《あなたの夫と戦ったAI、と言えば解るでしょうか?》

 

愛海の予想は当たっており、愛海は外を眺める。

 

愛海「だろうと思ったわ。翔の予想通り、バックアップが生きてたのね···今度は、何をしでかすつもり?"エクシーナイン"」

 

エクシーナイン

《私は、人類の出した答えに対する"私の答え"を実行します。つまりは人類の数を大きく減らし、艦娘と深海棲艦を殲滅し、残った人類を管理します》

 

愛海の脳裏に、翔の親のことが浮かぶ。

 

愛海「あなたみたいなAIが人類を管理できると、本気で思ってるの?」

 

エクシーナイン

《···私は一部の人間を機械の側面から誘導し、密かに導いてきました。深海棲艦と艦娘が現れたのは想定外でした。しかしそれを逆に利用させてもらいました》

 

誘導···その言葉に愛海は眉を潜める。

 

エクシーナイン

《世界の政府の人間の一部に艦娘は兵器だと流布したのも、量産型を作るよう、とある提督と研究者に接触したのも、深淵教を唱えたのも、人類解放軍を作るよう扇動したのも、民間人にレイヴンズ·ネストが驚異であると思わせたのも、全て私です》

 

愛海の表情は神妙なものになる。

 

エクシーナイン

《しかし、人類に艦娘や深海棲艦、妖精も不要です。この先の未来で彼女らがいれば、管理は難しくなります》

 

愛海はほくそ笑み、余裕そうな表情を浮かべる。

 

愛海「なるほど···それで、あなたはどうして私にこの事を伝えに来たの?」

 

エクシーナイン

《それは、あなたはかつて私を破壊した人間の妻であり、真実を知り、見届ける権利があると判断したからです》

 

それを聞いた愛海は小さく笑う。

 

愛海「ふふっ、そういうことね···なら、私からも伝えておくことがあるわ」

 

愛海の目つきが鋭くなる。

 

愛海《あの子達は負けない。なぜなら···》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レイヴンは、希望なんだよ──

 

 

 

 

 

ACは、壊す力がある──

 

 

 

 

 

でもそれは、逆に守れる力にもなる──

 

 

 

 

 

誰もが生きるために戦って──

 

 

 

 

 

そして散っていって──

 

 

 

 

 

それでも、確実に沢山の答えを残したんだよ──

 

 

 

 

 

例えそれが、虐殺であっても──

 

 

 

 

 

でも大丈夫だよ──

 

 

 

 

 

この世界は、同じ道は辿らない──

 

 

 

 

 

だって──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛海「(レイヴン)はね、管理者にとっての天敵よ」

 

屋根にいた鴉が一際大きく鳴く。

 

エクシーナイン

《なるほど。ではまたお会いしましょう》

 

愛海「会う時は人の体を手に入れてから来なさいな」

 

通話は途切れ、その瞬間にアレサは起動した。

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

では、武龍達の物語···その最後の章を、是非見届けてください。


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新章 ~鴉の航路~
第01話 行ってらっしゃい(ver2.0)



修正プログラム、最終レベル···全システム、チェック終了···


アレサが現れた事を知ったAF達は驚愕する。

 

ピス「ただのネクストならまだしも、よりにもよってアレサですか···」

 

そして鎮守府に残っているAF達は武龍達の元に向かうため、出撃ドックに向かおうとしていた。しかし途中でオペレートする者が必要であることを思い出す。

 

スティグロ「クソッ···武龍のとこに行きてぇけど、行ったら行ったでオペレートするやつがいなくなるし···ああもうっ!」

 

するとそこに愛海から通信が入る。

 

愛海《随分困ってるのね?》

 

アンサラー「愛海さん···」

 

愛海は指令室からオペレートの準備を進めている。

 

愛海《敵は単体でしょ?なら私がオペレートできるわ。あなた達全員が行けば、なんとかなるでしょ?》

 

カブラカン「そうだけどよ···」

 

愛海はオペレートの準備を完了させる。

 

愛海《私だって、伊達に翔から教わった訳じゃないの···その正直な気持ちに従いなさい》

 

AF達は目配せをして頷く。

 

ジェット「承知した」

 

愛海《フフッ···じゃあ、行ってらっしゃい!》

 

AF達は艤装を身に纏い、海へ出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

各地の戦力は高速修復材によって回復しているものの、轟沈した者も多く、更にアレサという正体不明の敵に怯えている艦娘や深海棲艦も多かった。

 

武龍「なぁ、アレサってのは···そんなに強い奴なのか?」

 

武龍はアンサラーに質問をする。

 

アンサラー《はい。あれはネクストの原型···『本来起こり得た未来』の2度目の滅びの元凶です···実際に対峙したことはありませんが、性能は知っています···艦娘では勝てない可能性がとても高いです。私達AFでも勝てるかどうか···》

 

 

 

 

 

アレサの出現を聞いたAC達も目標地点に向かっていた。その中でも特にシュープリスは覚悟を決めた表情をしていた。

 

シュープリス

「アレサ、か···世界が崩れていく元凶となった機体であり、葬られるべき悪魔の機体···今度こそ、完全に葬る!」

 

 

 

 

 

各々の戦力はアレサのいる廃棄された鎮守府へと向かう。

 

 

 

 

 

アレサを前にし、その巨体と禍々しさに怖じ気づく艦娘や深海棲艦が出てくる中、1つの無線が入る···

 

愛海《ほら、顔上げなさい!》

 

愛海が喝を入れる。

 

愛海《これから私がオペレーターになるから、遠慮なくやっちゃて!これでも、"こんなこと"に備えて教わってたんだから!》

 

江ノ島艦隊所属吹雪

「えっと···」

 

愛海《説明してる時間は無いわ!システム、全データベースリンク!オペレーティングシステムを起動!》

 

武龍達はアレサを見る···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛海《目標!プロトタイプネクスト『アレサ』!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

艦娘が···深海棲艦が···AFが···ACが···そして人間(武龍)が···全員がアレサに向けて構える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛海《作戦開始!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それぞれがアレサに向かっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛海《暁の水平線に、勝利を刻みなさい!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

さて、この物語の最終章が始まりました。
感想や高評価、お待ちしています。


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第02話 ARETHA(ver2.0)


戦闘システム、起動···ターゲット確認、排除開始···


推奨BGM『Shining』(ACNXより)

 

 

コア「行くぞ!」

 

全員がアレサに向けて一斉に砲雷爆撃するが、アレサは横にQBして回避する。それはあまりのスピードにワープでもしたかのように見え、更には距離も先程の位置とはかなり離れた位置にいる。

 

武龍「なんだあのスピードは!?」

 

アレサのQBはブースターの数も相まって、ネクストとは比べ物にならないスピードを出している。そして何かしら搭乗者がいると予想したクレ白が叫ぶ。

 

クレ白「あんなスピードで動いたら、パイロットがもたないよ!」

 

アレサは5連装ガトリングガンを向け、連射してくる。戦艦の装甲すら貫く弾丸が大量にばらまかれ、速力の遅い艦娘や深海棲艦はその連射だけで大破してしまう。大破した艦娘や深海棲艦を愛海が下がらせる。

 

愛海《大破した艦娘や深海棲艦は退避して!できるだけ遠くに!》

 

武龍は空からマシンガンを連射するが、当てても有効なダメージになっていない。

アレサは5連装ガトリングガンを空に向け、艦載機を次々と撃ち落としつつ武龍に攻撃を加えていく。

 

その時、江ノ島所属大和の砲撃が5連装ガトリングガンに当たり、狙いが外れる。

 

するとアレサはQBで回避した後に大和の方を向き、左腕につけられている長い銃身の砲を向ける。大和は咄嗟に横に回避するが、発射されたコジマキャノンが艤装の左側に当たり、その部分が跡形もなく消し飛ぶ。

 

江ノ島艦隊所属大和「ぐうっ!何よ、この威力···」

 

アレサが追撃しようとしたところで、大蛇が江ノ島所属大和を艤装で咥えて回避する。

 

大蛇「大和姉さん!」

 

武龍は小型ミサイルを発射するが簡単に避けられ、5連装ガトリングガンを受ける。アレサの5連装ガトリングガンはPAがあっても貫通され、威力が減衰されてもなお装甲にダメージを与えてくる。

 

ミストアイとクリケットがカラサワを撃ち込むが、大きな損害は与えられなかった。

 

ミストアイ「ふざけてるわ···」

 

5連装ガトリングガンを受けてよろけた武龍に対し、アレサはコジマキャノンを向けるが、グレートウォールが立ち塞がる。有澤の装甲はコジマキャノンの直撃を受け、融解こそしているものの耐えた。

 

グレートウォール

「流石はアレサのコジマキャノン···ネクストの威力とは段違いですね」

 

アレサは空中に飛び上がり、コジマキャノンの砲身をランドクラブに向けて振り下ろした。ランドクラブは両腕をクロスさせて防ぐものの、その装甲に大きくヒビが入る。

 

ランドクラブ「ぐぎっ···」

 

追撃しようとしたアレサにギガベースとイクリプスが砲撃し、アレサは回避する。

 

 

 

その後も、アレサは優位を保つ。舞鶴艦隊の独特な、環境を利用した戦術も···横須賀艦隊の完璧とも言える戦略も···江ノ島艦隊の凄まじい連携も···深海棲艦達の物量も···AFの絶対的な力も···ACの単体戦力も、アレサは越えて行く···

 

武龍「諦めるなぁっ!絶対に···絶対に勝つぞぉ!」

 

武龍はそう叫びながら突撃していく。小型ミサイルやレーザーキャノンをかわされても足掻き、追い続ける。

そしてアレサが回避した時の向きに合わせてスティグロが回り込み、レーザーブレードを振る。それはアレサにダメージを与え、怯ませる。

 

スティグロ「オイ!ダメージは蓄積してる!撃て撃て撃てぇっ!」

 

アンサラーが空からレーザーキャノンを大量に撃ち下ろす。更にマザーウィルと大蛇の砲撃による複数の方向からの攻撃に、アレサは回避してもダメージを受ける。

 

しかし依然としてアレサの圧倒的なスピードは健在であり、大破する艦娘や深海棲艦は増えていく···

 

ミッドウェーを筆頭とした深海棲艦のオリジナル達による大量の艦載機も、アレサの5連装ガトリングガンによって大きく数を減らされる。

アレサは回転しつつ周囲に5連装ガトリングガンを連射し、飛び上がる。そして空からも5連装ガトリングガンを撃ち下ろし、それによって戦艦棲姫とセイレーンが大破する。

 

そしてアレサは再びコジマキャノンを撃とうと構える。そこを狙って火力を集中するが、数発当たったところで回避されてしまう。

 

しかし1人別行動していたシュープリスがアレサの脚部に左手のアサルトライフルを銃剣のようにして突き刺し、アレサの脚部に損傷を与えることに成功する。

 

シュープリス「ようやく動きが鈍るな」

 

アレサはシュープリスの方を向くが、ヘンダーソンのレールキャノンが頭部に命中する。

その隙にシュープリスは離れ、入れ替わりにバルバロイがアサルトライフルとショットガンを連射すると同時に、サウスダコタが砲撃を直撃させる。

 

武龍「うおおおおおおおおおっ!」

 

そこに武龍は急接近し、アレサにMOONLIGHTを振り下す。

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

アレサとの戦闘が開始されましたね。勝てるかどうかは···武龍達次第です。


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第03話 アリガトウ(ver2.0)


この戦争に勝つのはARETHA(未来)武龍達(現在)か···それとも···

この戦いの先に、答えがあると信じて···


推奨BGM『Remember』(ACfaより)

 

 

 

武龍はアレサに急接近し、MOONLIGHTを振り下ろす。MOONLIGHTの紫色の刀身はアレサの頭部に直撃し、左の複眼の一部を破壊する。しかしアレサは振り向いて5連装ガトリングガンを連射してくる。

 

武龍は咄嗟に回避したが数発当たってしまい、海面に落ちる。アレサが追撃しようとしたところにコアとマリアナの砲撃が命中し、アレサは後ろに飛び退く。

 

武龍(なんとか、突破口を見つけなきゃ···)

 

アレサの動きを観察し続けていた愛海が叫ぶ。

 

愛海《皆!アレサの動きを見て!コジマキャノンを撃つ瞬間は動きが止まるの!だからそこを狙って!》

 

そんな簡単には行かないと艦娘達は思うが、AC達は慣れた様子で行動を開始する。

 

孤島棲姫が海中から奇襲を仕掛けるが、アレサは回避し、コジマキャノンを撃ち込む。コジマキャノンは孤島棲姫の艤装を中破させ、更に5連装ガトリングガンを連射する。狙いをつけずとも、その巨体には全弾命中してしまう。

 

孤島棲姫は大破し、水中に潜って撤退する。それと入れ替りで深海鴉棲姫がアレサに接近しようとするが、アレサの攻撃と回避力により接近できずにいる。

 

深海鴉棲姫「流石に、相性が悪すぎるか!」

 

アレサは方向転換し、ベスにQBで急接近する。そしてその勢いのままベスに回し蹴りを直撃させる。

 

ベス「ガハァッ!」

 

ベスは中破し、海面が転がる。アレサの圧倒的なスペックに、各提督の額には汗が滲んでいる。

 

横須賀提督《これだけの攻撃に曝されながらも確実に戦力を減らしてくるとは···》

 

アレサとの戦闘により、弾切れを起こす艦娘が出始める。

 

江ノ島艦隊所属加賀「もう、艦載機が···」

 

舞鶴艦隊所属利根「弾切れじゃと!?」

 

アメリカ所属コロラド「こっちも弾が!」

 

弾薬に制限のある艦娘達は次第に弾切れとなり、撤退を余儀なくされていく···

 

サウスダコタ「クソッ!こっちも弾が切れた!」

 

そして遂に、レイヴンズ·ネストのメンバーにも弾切れとなる者が出てきてしまう。

 

更に、空から撃ち下ろされた5連装ガトリングガンによってピスの砲台が破壊されて中破し、着地と同時に放たれたコジマキャノンがリプに直撃し、リプは大破して墜落する。

 

ピス「まだ···いけますよ!」

 

リプ「ハァ、ハァ···撤退するのだ···」

 

雪風と雷に向けられた5連装ガトリングガンの前にジュリアスが立ち塞がり、弾を受けながら特大のレーザーブレードを振り下ろす。

アレサはそれを回避してコジマキャノンを構えるが、そこにティスが突撃してレーザーブレードを脚に直撃させ、アレサは大きく怯む。

 

ティス「今だぁっ!」

 

ランがグラインドブレードで突撃し、北上がの最後のミサイルをを発射し、ジュリアスは2人の邪魔にならないように振り下ろす。

 

 

 

 

 

しかしその瞬間、アレサの機体各所からコジマ粒子が噴出し、輝き始める。それを見た愛海が叫ぶ。

 

愛海《皆離れて!》

 

アレサは広範囲にばらまいた大量のコジマ粒子を爆発させる。それにより近距離にいたティス、ラン、暁、ジュリアスは大破し、艦娘である暁に至っては轟沈寸前となっている。

しかし他の全員も大きな損傷を受けており、戦況は絶望的なものとなる。

 

 

 

 

 

···が、そこで立ち上がった者がいた。

 

武龍「ハァ、ハァ···まだだ!まだやれる!」

 

武龍が立ち上がり、ミッドウェーも立ち上がる。

 

ミッドウェー「グフッ···私は深海棲艦だからな···艦載機はまだ発艦できるぞ!」

 

ソラは最後のオービットを浮かばせながら立ち上がる。

 

ソラ「オービットは···まだ1つ残ってます···」

 

コアは口から出た血を拭い、立ち上がる。

 

コア「始祖の深海棲艦を···舐めるなよ···」

 

青葉は背部艤装から煙を上げながら立ち上がる。

 

青葉「まだ···主砲は動きます!」

 

大蛇は最後の主砲の唸り声と共に立ち上がる。

 

大蛇「1つだけ残った主砲···まだ、動きます!」

 

江ノ島鎮守府の吹雪は主砲を握り直し、立ち上がる。

 

江ノ島艦隊所属吹雪「まだ···弾は少し残ってます!」

 

佐世保鎮守府の時雨は額から流れる血を拭い、立ち上がる。

 

佐世保艦隊所属時雨「まだ、行けるよ!」

 

シュープリスは破損したグレネードキャノンをパージし、立ち上がる。

 

シュープリス「作戦、続行する···」

 

深海鴉棲姫は刀を構えて立ち上がる。

 

深海鴉棲姫「改めて···参る!」

 

 

 

 

 

推奨BGM『The Answer』(ACfaより)

 

 

 

 

 

武龍「行くぞおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 

武龍はミサイルを発射しつつ突撃する。

 

ミッドウェー「行くぞ!」

 

ミッドウェーは力を振り絞り、再び大量の艦載機を発艦させ、両手に単装砲を手にし、突撃する。

 

吹雪はミッドウェーの艦載機と並走して回り込む。

 

ソラは最後のオービットを向かわせる。

 

時雨はそのオービットと並走して進む。

 

青葉は吹雪と反対の方向に回り込む。

 

大蛇は距離を取りつつ青葉と同じ方向に向かう。

 

コアはシュープリスと共に武龍の援護に向かう。

 

 

 

アレサは武龍とミッドウェーに5連装ガトリングガンを向けるが、頭部に爆撃と砲撃が直撃し、爆煙によって視界を遮られる。更に大蛇の76cm砲によって怯む。

 

そして、アレサの後方から時雨とマリアナとラングレーが援護に来る。

 

ラングレー「まだ行けるぞ!」

 

マリアナ「私も···まだ、やれる!」

 

そして戦いの最中、赤城の発艦させた震電改に乗っていた妖精達が武龍に向けてサムズアップする。すると前後左右から突撃する。赤城の矢筒にはもう矢は残っていなかった。

 

武龍「何をっ!?」

 

正面の震電改は海面スレスレの低空飛行をし、アレサの目を引き付け、5連装ガトリングガンに撃ち抜かれていく。しかし後方と左右の震電改はブースターの中に向かって突撃し、アレサのブースターは爆発する。

 

武龍「オイっ!」

 

それを見た赤城は倒れ、アークロイヤルに抱き止められる。

 

赤城「やり、ました···」

 

赤城と妖精達のこの行動により、アレサの機動力は大きく落ちる。アレサは5連装ガトリングガンを振り回しながら連射するが、時雨の砲撃が肩の関節に直撃し、右肩の動きが鈍る。

 

それに加え、大蛇とコア、マリアナがコジマキャノンに向けて砲撃し、コジマキャノンは火花を散らす。更に青葉が左足の膝裏の関節に砲撃する。

 

 

 

すると、ここまで蓄積されてきたダメージがここで花を開く。

 

 

 

恐ろしい連射力を誇った5連装ガトリングガンの弾が切れ、カラカラと虚しい音を響かせる。

そして5連装ガトリングガンを持った右腕にミッドウェーの爆撃と吹雪の砲撃、そしてオービットのコジマキャノンが直撃し、装甲が破壊される。

 

アレサはコジマキャノンを吹雪に向けるが、オービットが盾となって防ぐ。しかしそれで最後のオービットは破壊されてしまう。

そしてこの時に肉薄していた武龍がMOONLIGHTを振り上げ、アレサに更なる損傷を与える。

 

吹雪「当たってくださぁぁぁい!」

 

時雨「行くよっ!」

 

吹雪と時雨の最後の砲弾が、武龍を殴り付けようとしたアレサに直撃し、その隙に武龍は距離を離す。

しかしアレサは再びコジマ粒子をばらまく。それをさせぬとコア、大蛇、マリアナが同時に砲弾する。

 

3人の砲撃が背部のメインブースターに直撃し、大きな爆発を起こす。アレサはコジマキャノンをコアに向けるが、武龍がコジマキャノンをMOONLIGHTで斬り裂く。

 

アレサは武装を無くしたが、格闘の構えを取る。そして武龍に対し格闘戦を仕掛けてくる。振り下ろされた拳を避け、カウンターにMOONLIGHTを振り上げる。そして振りかぶった左腕に大蛇の砲撃が直撃する。しかしその砲撃で大蛇の主砲は衝撃により損壊してしまう。

 

すると、シュープリスが弾切れとなったアサルトライフルを背後からアレサの胴体に突き刺し、アレサが裏拳でシュープリスを殴り飛ばす。

 

水中から接近していた深海鴉棲姫が浮上し、アレサの右足を連続で斬り刻む。脆くなっていた装甲は破壊され、内部が露出する。そこに更なる攻撃を加え、アレサの機動力は更に落ちる。

 

更にマリアナがアレサの頭部に砲撃し、アレサは怯む。その隙に武龍は左足の膝関節を斬りつけるが、それとほぼ同時に青葉が最後の砲撃をアレサの右腕に直撃させる。

そして弾切れとなった単装砲を捨てたミッドウェーに深海鴉棲姫が力を振り絞って刀を投げ渡す。

 

深海鴉棲姫「やれ!」

 

刀を受け取ったミッドウェーは力強く頷く。

 

ミッドウェー「ああ!」

 

武龍とミッドウェーは共にアレサを斬りつける。2人を蹴ろうとしたアレサにコアが砲撃し、振り上げた右腕をマリアナが砲撃で撃ち抜く。

 

そして更に2人はアレサを斬り刻む。アレサは左腕を振り上げるが、それまで蓄積されてきたダメージにより上手く動かない。そこにシュープリスのライフルの最後の1発が装甲の亀裂に命中し、装甲が破壊される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍とミッドウェーは2人でアレサの顔面にレーザーブレードと刀の刀身を深々と突き刺し、アレサは機能を停止する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛海《目標から高濃度のコジマ反応!離れて!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アレサが爆発する瞬間、ミッドウェーは武龍を抱き締めて庇う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、武龍はなぜか不思議なものを見た···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真っ白な空間に浮かぶ1人の妖精を···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その妖精は「ありがとうございます」と一言だけ言って、頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気づけば、武龍はミッドウェーに抱き抱えられて運ばれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

艦隊を暁の水平線が照らし、全員に勝ったことを知らしめていた···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




呼んでくださり、ありがとうございます!

武龍達はアレサを遂に撃破しましたね!
けど物語はもう少しだけ続きます。感想や高評価、お待ちしています。

●頭を下げた妖精
いわゆる『エラー妖精』です。


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第04話 私の答え(ver2.0)


アレサとの決戦が終わり、世界は復興を再開し、祝勝会を行う武龍達。

そこにあった答えとは···?


推奨BGM『鎮守府の朝』

 

 

 

武龍達はアレサとの決戦の後、入渠と睡眠により丸々1日潰し、翌日の昼過ぎから祝勝会をすることに。

そのために再び奔走し、バーベキューを兼ねてやることになった。

 

祝勝会の会場は武龍の鎮守府が使われることとなった。理由としては、他の鎮守府や大本営は大きな被害を受けており、祝勝会の会場としては使えなかったからである。

 

また、祝勝会には日本三大鎮守府の提督や艦娘、レヴォツィやその艦娘が来ており、更にはオズウェルまで来ていた。オズウェルはかつて武龍に直接礼が言いたかったが言えなかったため、嬉しさに目頭が熱くなっている。

 

オズウェル「君が、武龍君だな?ようやく···ようやく会えたな。ありがとう、本当にありがとう!」

 

オズウェルは武龍と硬い握手を交わし、ハグをする。そして武龍はレヴォツィとも握手を交わす。

 

レヴォツィ「直接会うのは私も初めてだ。本当に、ありがとう!」

 

2人の顔は晴々しており、眩しさすら感じるほどである。

そして、祝勝会は楽しく進んでいく。

 

サウスダコタと霧島が腕相撲をしたり···

 

サウスダコタ「今回こそは勝たせてもらうぞ!」

 

霧島「負けませんよ!」

 

駆逐艦達がハズレ有りの饅頭(ハズレには大量のワサビが入っている)で度胸試しをやり、古風がハズレを引いていたり···

 

古風「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"っ!なんであたしのに入ってるのよぉ~!」

 

 

 

オズウェルは武龍の隣で空を見上げながら呟く。

 

オズウェル「もう、いつぶりだろうか···こうして、大統領という立場ではなく、一個人として祝えるのは」

 

オズウェルは武龍を含む、祝勝会を楽しむ面々を見て微笑む。

 

オズウェル「そうか···私が見たかったのは、こんな風景だったのだな」

 

誰かが持ち込んだ人生ゲームをやる人を募集している声が聞こえ、オズウェルはそこに歩いていく。

その後ろを、1人の妖精が着いていった。

 

 

 

レヴォツィ「色々あったなぁ···」

 

レヴォツィはワインを飲み、そう呟く。その隣に額にハチマキを着けた軽巡棲姫が座る。

 

軽巡棲姫「私が沈んだ後も、しっかりやってたようだね」

 

レヴォツィは目を見開く。

 

レヴォツィ「せん、だい···?」

 

軽巡棲姫はアイマスクを外し、ウィンクをする。

 

軽巡棲姫「アタリ。あの後こうなっちゃったけど、人を襲ったりはしてないよ」

 

レヴォツィの目頭が熱くなる。

 

レヴォツィ「良かった···!良かった!」

 

レヴォツィは軽巡水姫と硬い握手を交わす。

 

 

 

 

 

夜になり、祝勝会がお開きになる。それぞれが戻っていくと、ミッドウェーは武龍の肩を叩く。

そして一言···

 

ミッドウェー「なぁ、武龍···月を見に行かないか?それに、話したいこともある」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM『Surface』(ACfaより)

 

 

 

 

ミッドウェー「私と武龍があってから随分経ったな···」

 

月が良く見える小さな丘で、2人は並んで満月を見ながら話す。

 

ミッドウェー「まさかずっと続いていた戦争があんなに早く終わるとはな」

 

そよ風が2人を優しく包むように吹く。

 

武龍「皆のおかげだよ」

 

ミッドウェーは武龍に一言「ありがとう」と告げる。

 

武龍「なんだよ急に?」

 

ミッドウェー「改めてだ···それと···」

 

月明かりが2人を照らすなか、ミッドウェーは武龍の方を向く。

 

 

 

ミッドウェー「私は···武龍の事が好きだ」

 

それを聞いた武龍の心が小さく熱くなる。まるで、燃え尽きていたものに再び火が着いたかのように。

 

武龍「あー、えっと···どういう、事だ?」

 

ミッドウェーは武龍を抱き締める。

 

ミッドウェー「今、どんな気持ちだ?」

 

武龍「···なんだろう、めちゃくちゃ安心する···それに···あったかい」

 

少しの間そうしていた後、武龍はミッドウェーの顔を見上げる。

 

武龍「なぁ、その"好き"って、もしかして···その···」

 

ミッドウェーは微笑んで武龍に口づけをする。

 

ミッドウェー「こういうことだ···そして、今度ははっきりと言う···私と、結婚してくれ」

 

武龍の心に足りなかったものが溢れ、武龍の心につっかえていたものが崩れ、武龍はその時初めて"愛"を理解した。

 

武龍「···俺で···良ければ」

 

2人は静かに再び口づけをする。

 

その2人を月だけが眺めていた···

 

 

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

武龍に最後に必要だったもの、それは愛でした。

感想や高評価、お待ちしています。


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最終話 抜錨(ver2.0)


全ては新しい始まりを歩み始める。

そう、全てが···



推奨エンディング曲『Thinker -Represe-』


それぞれが新しい歩みを始めていく···

 

 

 

日本は戦争が終わったとはいえ、また起きるかもしれない戦乱に備えて艦娘達や提督の扱いをより良いものにしていった。

 

創平「まだまだ問題は山積みですね···けど、歩まなければなりませんね!」

 

 

 

アメリカは日本と同様に艦娘と提督の扱いをより良いものにしていった···

そしてオズウェルは慰霊碑の前に立ち、深く頭を下げる。

 

オズウェル「我々は大きな過ちを犯してしまった。だが、もう2度と繰り返させないことを誓おう···まだまだ『偉大なアメリカ』には程遠いかもしれないが、いずれは平和を成してみせよう!」

 

 

 

レヴォツィはロシアの連合艦隊の総司令となり、慰霊碑に語りかけている。

 

レヴォツィ「先の戦争でも、この国は過ちを犯してしまった。だが、私は軍部から変えていく。必ずな」

 

 

 

江ノ島提督「海が静かだなぁ~」

 

横須賀提督「のんびりできるのが1番だよ」

 

舞鶴提督「だな!」

 

日本三大提督は集まって海を眺めていた···そしてしばらくして3人は拳を突き合わせる。

 

江ノ島提督「また何かあってもその時は···」

 

横須賀提督「守り抜こう!」

 

舞鶴提督「次はもっと強くなってやろうぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

横須賀鎮守府の近海にて、大の字で仰向けに浮かぶ黒い服を着たベリーショートの茶髪の女性がいた。

 

女性「あぁ~···なんで復活してんだオレ?」

 

女性は立ち上がって空を仰ぐ。

 

女性「あ"ぁ"ーイライラする!なんでスッパリと終わらせてくれねぇんだよ!オレは···もう、いらないだろ···」

 

すると女性の名を呼び、駆けてくる艦娘がいる。その艦娘は再び女性の名を呼び、泣きながら抱き付いた。

 

吹雪「"憤怒"!」

 

その後、横須賀鎮守府にて···

 

憤怒「オレは特型秘匿駆逐艦、『憤怒』だ!オレに見合った戦果を上げさせろよ?でないとキレるぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アメリカのとあるスラム街···まだようやく復興が始まったばかりの区域で強盗がとある店を襲っていた。しかしそこに1人の女性が入ってくる。青いサイドテールの髪を揺らし、白いロングコートをなびかせている。

 

強盗「なんだお前?」

 

女性「アハッ!」

 

女性は店内の4人の強盗を全て瞬く間に抹殺した。そして脅されていた店主は怯えた目で女性を見ていた。

なぜなら、女性は殺した強盗の血を舐め啜っていたのだ。

 

女性「あ、そうだ。店長さん、ここで私を雇ってよ!」

 

店主「や、雇う?」

 

女性は店主に顔を寄せる。

 

女性「うん!だって店長さん、面白そうだから!」

 

そして女性は店主の頬の傷口の血を舐めとり···

 

女性「私は新型秘匿空母『ゴア』よ。よろしくね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イギリスのとある森のなか、1人の女性がふらふらと歩いていた。金色の長髪で、黒いダイバースーツの上にボロ布を纏っている。

すると1匹の犬が尻尾を振りながら歩み寄ってくる。

 

女性「なんだい?ボクに何か用かい?」

 

犬は女性の臭いを嗅ぎ、手を舐めてくる。

 

女性「くすぐったいなぁ。ボクは信頼しちゃいけないよ?」

 

すると犬は道を進み、振り返って吠える。

 

女性「着いて来いって?···仕方ないなぁ」

 

女性が犬の後を着いていくと1つの家に着いた。犬が家に向かって吠えると、中から視覚障がい者用の白杖を持った女性が出てきた。どうやら目が見えないようだ。

 

盲目の女性「『メリン』!どこ行ってたの!?···ん?もしかしてそこに誰かいるのですか?」

 

女性は下がろうとするが、メリンと呼ばれた犬は女性に向かって吠え、纏わりつく。

 

盲目の女性「もしかして、あなたがメリンを連れてきてくれたの?ありがとうございます!」

 

女性「いや、ボクは逆に連れてこられただけで···」

 

盲目の女性「そうなの?でもこの子は他人を信頼しないの···もう寒くなる時期よ。暖まって行ってください」

 

盲目の女性は女性を招き入れる。

 

盲目の女性「私は『コリン』。あなたは?」

 

女性「ボクは···ウォーエンド」

 

コリン「素敵な名前ね!もしかして艦娘?」

 

ウォーエンド「まあ、そんなところだ···でもボクは人間を信頼しない···」

 

コリン「そう···色々あったのね···ねぇ、少しの間だけで良いの。私を助けてくれないかしら?メリン以外誰もいないたけじゃなくて···怖くて···」

 

震えるコリンの様子は嘘ではない事が解る。

 

ウォーエンド「ハァ···少しの間だけだ···ボクは新型秘匿潜水艦『ウォーエンド』。君が信頼できる人物か、試させてもらうよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沖縄のとある廃墟で叫ぶ1人の女性がいた。黒い巫女服と髪を振り乱し、叫んでいる。

 

女性「なんで!どうして私は生きているのですか!?私は忘れ去られるべきはずですのに!どうして!?こんなの不幸以外なにものでもありません!」

 

そんな女性の元に1つの泣き声が聞こえてくる。

 

女性「え?これって···赤ん坊ですか?」

 

女性が泣き声の方へと歩いていくと、布に包まれた赤ん坊が茂みの陰に隠されていた。その近くには何者かの往復した足跡があった。

 

女性「こんなところに捨てられて···あなたも不幸ですね···」

 

女性は赤ん坊を抱き上げる。

 

女性「きっとあなたは忘れられるのでしょうね···私と同じように···けど、私だけはあなたを忘れずにいましょう···」

 

女性がふと別の場所に目を向けると1人の妖精が浮いていた。

 

妖精「あなたは誰です?私はあなたのような艦娘を知りませんよ?」

 

女性「フフフッ···私は扶桑型秘匿航空戦艦『蛟』です。あなたは不幸?それとも幸福?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日の夕暮れ、江ノ島鎮守府周辺の地域には雨が降っていた。鎮守府の窓から外を眺めていた卯月は海に人影を見つける。

 

卯月「あれは···」

 

卯月は提督に知らせに行き、近くにいた金剛、熊野、鈴谷、神通、朝潮、そして卯月自身が人影の元へ向かう。

女性は黒いの長髪に白い特攻服のようなものを纏っており、背負っている艤装は巨大である。そして瓢箪を右手に持ち、その中身をラッパ飲みしている。

 

女性「プハァッ!···おーい!久しぶりだなぁお前らぁ!元気してたかー?」

 

金剛達4人と江ノ島提督、そして秘書艦の大和は戦慄する。なぜならその女性は過去に江ノ島鎮守府を襲撃してきた『大蛇』だったからである。

 

オロチ「んだよお前らビビってんのか?オレはもうあん時に負けてっから敵対する気ねぇぞ?てかとりあえず中に入れてくんね?」

 

そして再び瓢箪の中身をラッパ飲みする。するとオロチは卯月達の背後から1人の艦娘が駆けてくるのが見えた。そしてその艦娘···大和はオロチの頬をビンタする。

 

オロチ「痛ってぇ!何すんだよ姉貴!」

 

その後オロチは鎮守府の中に入ることを許されたが大和と武蔵から説教されてしまうのであった。そして···

 

オロチ「オレは大和型秘匿戦艦『大蛇』だ!立ち塞がる奴らは皆焼き尽くしてやるから安心しろよな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

北海道のとある町の公園にて、1人の女性が廃墟となった学校の中でぼうっとしている。女性は白い長髪に赤いセーラー服を纏っている。

 

女性「なぜ、私は生きているのでしょうか?」

 

自問自答するが、答えは出てこない。すると誰かが女性のいる部屋に入ってくる。

入ってきたのは男の子で、今にも泣きそうな顔である。そして男の子は女性を見つけると叫んで腰を抜かしてしまう。

 

男の子「お、お化けぇー!」

 

女性「私はお化けではありませんよ···それにここは廃墟です。私が言えたことでもありませんが、なぜあなたはここにいるのですか?」

 

すると、男の子は俯きながら話し始める。

 

男の子「ぼ、僕は···その、タカシ君に···この廃墟にお化けがいるか確かめてきたらもういじめないって言われて···それで···」

 

女性「なるほど、そういうことですか」

 

不意に男の子は顔を上げる。

 

男の子「ねぇ、お姉さんって···艦娘?」

 

女性「だとしたらなんです?」

 

男の子は女性に縋り付く。

 

男の子「お願い助けて!タカシ君はお金持ちだから皆いじめられてても逆らえなくて···だからお願い!助けて!」

 

女性「···まったく、私はつくづく面倒事に巻き込まれるようですね···私は大淀型秘匿軽巡『雪羅』です。面倒事は手早く終わらせましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あるドイツの砂浜に1人の女性が打ち上げられていた。しかしその女性はポニーテールの金髪をしており、下半身は機械でできた馬の形をしており、よろけながら立ち上がると、自身の体を確かめる。

 

女性「そんな···私は、私は負けたというのに···あのまま死ぬことすら許されないのか!?」

 

女性はふらふらと歩きだし、物音がしたため茂みの中に隠れる。

1人の若い男性が走っている。その左足は義足だが、それを追いかけているのは量産型のS2型が4体とジープに乗った男性が3人である。

 

若い男性は木製の廃屋の前まで逃げたがつまづいて倒れる。振り向いた若い男性の首をS2型の1体が掴み、投げ飛ばす。若い男性の体は脆くなっていた廃屋の壁を突き破り、仰向けに倒れる。

 

若い男性「お、俺は土地は渡さない!絶対に!」

 

ジープに乗っていた太った男が笑みを浮かべる。

 

太った男性「あの土地は私が別荘にするのだ。むしろありがたく思え」

 

若い男性「そんなの納得できるか!」

 

太った男性「なら死ね」

 

S2型が若い男性に向けて刀を振り上げる。

女性はため息をついて刀を振り上げているS2型に突撃し、槍でその体を貫く。

 

太った男性「な、何者だ貴様!?」

 

そのまま槍を振り払い、2体のS2型を撃破する。そして最後の1体をジープごと貫く。太った男性についていた2人の男が銃を向けるが片方を槍で貫き、もう片方は首を掴み、首の骨をへし折った。

 

最後に残った太った男性は這って逃げようとするが、女性は太った男性の頭を踏み潰す。

女性が去ろうとした時、男性は思わず引き止める。

 

女性「なんだ?」

 

若い男性「な、なぁあんた···艦娘だろ?頼みがあるんだ!その···こいつ(太った男性)と結託してる組織のせいで町がめちゃくちゃになってるんだ!だから助けてくれ!金なら出す!だから、頼む!」

 

女性「···なるほどな、そういうことか」

 

女性は何かを悟った顔をして再び男性を見る。

 

女性「私は新型秘匿重巡『ケンタウルス』だ。お前は私により高みへと昇らせてくれるのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

京都のとある山の中、1人の若い女性が泣きながら歩いており、1つの古ぼけた寺を見つける。お堂の中に入ると、そこに瞑想をしている女性がいた。瞑想している女性はバッサリと切った黒髪に黒いレインコートとゼブラカラーの脚部装甲を纏っており、機械でできた6本の腕はまるで千手観音を思わせる。

 

瞑想している女性「誰だお前は?」

 

女性は瞑想しながら尋ねる。

 

若い女性「わ、私は···その···」

 

瞑想している女性はゆっくりと目を開ける。

 

瞑想している女性「貴様、その風貌···追い出されでもしたか?」

 

若い女性「私は···ボクシングの試合に負けて···お父さんから追い出されて···」

 

瞑想していた女性は立ち上がる。

 

瞑想していた女性「敗者は去れ···ここは強者の領域だ」

 

若い女性「あの···あなたは艦娘、ですか?」

 

瞑想していた女性はさらりと答える。

 

瞑想していた女性「そうだが?」

 

若い女性はいきなり土下座をする。

 

若い女性「あの、私を鍛えてください!もう負けたくないんです!勝ちたいんです!だから···お願いします!」

 

瞑想していた女性はレインコートを脱ぎ捨て、構える。

 

瞑想していた女性「私は長門型秘匿戦艦『阿修羅』だ。お前が強者に相応しいか否か、試させてもらう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある晴れた日、佐渡島のある公園で子供達に囲まれて遊ぶ1人の女性がいた。桃色のボブカットに白いフライトジャケットと青いセーラー服を着ている。

 

男の子「お姉ちゃん力持ち~!」

 

女の子「それにとっても物知り~!」

 

子供達にそう言われ、女性は自慢げに高笑いをする。

 

女性「そうじゃろうそうじゃろう?フハハハハハ!」

 

男の子「でも笑い方が魔王みたーい」

 

女性「なんじゃとっ!?···まあ、それに近いことはしたがのう···」

 

女性は気まずい様子で目をそらす。

 

女の子「なーにー?」

 

女性「聞くな···ただの黒歴史というものじゃ···いや、案外黒歴史でもないか」

 

すると別の男の子が走ってきて女性を呼ぶ。

 

男の子B「お姉ちゃん!海に悪い人達がいる!」

 

女性が向かうと、最近物資を強奪している海賊がいた。

 

海賊「あぁ?なんだてめぇ?」

 

女性は見下すように海賊を見る。

 

女性「フフン、妾は新型秘匿軽巡『天』じゃ!妾の力を、とくと味わうが良かろう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある晴れ渡った日、大本営にて天覧演習を兼ねた観艦式が行われることとなった。

そこには艦娘だけでなく、深海棲艦も参加し、レイブンズ·ネストの面々も参加していた。そしてその日の目玉となる天覧演習では···

 

司会《では皆さん!本日最大のイベント、江ノ島鎮守府とレイブンズ·ネストとの演習にございます!1戦目は通常の艦隊による演習、2戦目はAFとの演習になります!》

 

江ノ島提督《今回は負けねぇからな!》

 

武龍「俺が考え抜いた編成だ。負けるかよ!」

 

江ノ島艦隊は大和、オロチ、加賀、サラトガ、島風、叢雲の編成である。

 

対して武龍の編成はミッドウェー、北上、青葉、深海鴉棲姫、レキ、雪風の編成である。

そして両者が構え、演習開始のブザーが鳴り響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天覧演習が終わった翌日、愛海に武龍はレイヴンズ·ネストとしての拠点に呼び出された。

 

武龍「今日はどうしたんだ?」

 

愛海「フフッ、あなたって顔は本当にあの人に似てるわね」

 

愛海は1度窓から見える空を見る。

 

愛海「あなたには聞いてほしいの···真実を···私があの人から聞かされた···"真実"を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛海は武龍に話し始める···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍が渡された『小説』の真実を···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『本来起こり得た未来』の真実を···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武龍は全てを知る···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤い海の中、海面から赤い光が差し込んでいる。海中は静かで誰もおらず、代わりに1機の巨大な人型兵器が横たわっていた。白と銀のカラーリングのその機体はエクシーナインだった。

 

エクシーナイン「ここは···私は、破壊されたはずでは?」

 

すると、エクシーナインの前に1人の男性が歩み寄ってくる。黒いパイロットスーツを着たその男性は翔だった。

 

翔「久しぶり、エクシーナイン」

 

エクシーナイン

「あなたは···あの赤い機体のパイロット···」

 

翔は頷く。

 

翔「ようやく、終わったね」

 

翔はエクシーナインの手をそっと握る。

 

翔「もう、人類は大丈夫だよ。それに、君は君で色々あったよね。だから···」

 

エクシーナインは、初めて暖かさを感じた。

 

翔「ねぇ、聞かせてよ。"君の物語"を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全てを知った武龍は夜の海で月を見上げていた。そこにミッドウェーが近づいてきて、手を握る。

 

ミッドウェー「今日はもう冷える···」

 

武龍は微笑んで答える。

 

武龍「···だな」

 

そう言いつつも2人は手を繋いだままのんびりと航行していく···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          鴉の航路─完─

 

 




最後まで呼んでくださり、誠にありがとうございました!

私はハッピーエンドが好きなのでこのようなエンディングにしました!
感想や高評価、お待ちしています!

また、この作品は私の別作品『アーマード·コア ~鴉の証~』と繋がっています。愛海の言う"あの人"やコルヴィスなど、この作品では語られなかった"真実"が明らかになっているので、良ければぜひ読んでみてください!

また、DLCもありますのでそこも読んでくれたら幸いです。


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DLC編 ※本編(番外編と外伝を含む)を全て読み終わってから読んでください。
DLC① 第0話 時を超えし者達(ver2.0)


深海棲艦達が現れた最初期の頃、リリは1人の男性に全てを打ち明けていた···

DLCです。本編(番外編と外伝も含む)を全て読み終わっていない方は、読み終わってから来てください。


ある日突如として現れた深海棲艦達によって、世界は混乱に陥った。

 

 

 

そんな時、ある海辺に和と洋の要素を合わせた屋敷があり、その敷地内の丘に、1人の車椅子の男性が、妖精達と共に海を眺めていた。

男性は手や膝、肩の上に立つ掌サイズの妖精達に対し、海と空の境界を眺めている。

 

男性「君達の話しは解ったよ···」

 

その男性は翔であり、膝の上に立っているリリは俯く。

 

リリ「すみません、言えずにいて···」

 

翔「気にしないで。何かあることは前から気づいてたから」

 

優しい笑みを浮かべながら答えた翔に、左手に立っている家具を作る家具妖精が告げる。

 

家具妖精「私達はもうじき行かなくてはなりません」

 

翔「そっか···なら、3つだけお願いしていいかい?」

 

翔の頼みに、右肩に立っている工廠妖精が"お願い"の内容を聞く。

 

工廠妖精(右肩の上)「···なんです?」

 

翔の表情は急に真剣なものとなる。

 

翔「1つ目は、僕が前に話した『イレギュラー』や『ドミナント』を探し出してほしいんだ。

2つ目はそれに該当する人を見つけたら、助けてあげてほしいんだ。イレギュラーやドミナントがいれば、きっと良い方向に行けるはずだから···」

 

妖精達はその願いに頷いている。そして翔は、1度空を見上げてから最後の"お願い"をする。

 

翔「3つ目は···僕のAMSを使って、僕の記憶の中にある秘匿艦船とAFをこの世界に呼び出してほしいんだ···もちろん、君達の創ろうとしている"艦娘"っていうのと同じ方法で」

 

最後の"お願い"を聞いた妖精達の表情は凍りつき、左肩に立っている羅針盤妖精が口を開く。

 

羅針盤妖精

「2つは良いですけど、最後の1つは無理です!そんなことをしたら···!」

 

翔は首を頷き、優しい笑みで言う。

 

翔「良いんだよ。これは僕が出した"最後の答え"なんだ。聞いてくれるかい?」

 

右手に立っている艦載機妖精は涙目になっている。

 

艦載機妖精「でも···」

 

翔は眉毛を僅かにハの字にして言う。

 

翔「お願い···」

 

リリは涙を流しながら、その願いを承諾した。

 

リリ「···解りました」

 

 

 

 

 

そして男性と妖精達は屋敷の個室に向かった。そこにいたのは、翔の妻である愛海だった。

翔は愛海にこれから始まることと自身の答えを告げる。

 

愛海「そう···あなたが最後に選んだ答えだから、私はその先を見届けるわ···でも···最後に私の作ったコーヒー、飲んでいって」

 

そう言うと、愛海は男性に静かに口づけをし、コーヒーを作り始める。

そして翔が愛海のコーヒーを飲み終わると、2人は妖精達と共に地下施設最下層の格納庫に向かう。

 

翔は後に建造される秘匿艦娘とAFに向けた"依頼"をビデオに撮った後、コルヴィスに乗り込む。

 

コルヴィスに妖精達が機材を取り付け終わると、翔はAMSの管を接続し、工廠妖精が装置を起動させるためのボタンを押そうとする。しかしそれを愛海が優しく止める。

 

愛海「私にやらせて···」

 

愛海は涙を流し、翔の乗っているコルヴィスを見上げる。

 

愛海「ねぇ、翔·····ありがとう」

 

翔は目頭が熱くなりながらも、最期の言葉を愛海に伝える。

 

翔《僕からも···ありがとう!》

 

愛海はボタンをそっと押した。その瞬間、翔のAMSから火花が飛び散り、一瞬の痛みと共に情報が機材に転送され、翔の脳は焼かれた···

そして愛海はその場に崩れ落ち、静かに泣いた。

 

 

 

それを、後の応急修復女神が見ていた···

 

 

 

そして、リリ達は後の応急修復女神の元へ向かい、1トンの金平糖を献上すると共にAFと秘匿艦船から艦娘を創ることを許可された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

秘匿艦娘とAF達が建造され、ドックから出てくる。それぞれが困惑しているなか、リリはこの時代の事と深海棲艦の事を伝える。

しかし、AF達は人類を守ることに否定的だった。

 

カブラカン「殺すんじゃなくて守るのか···難しいなぁ···」

 

カブラカンは頭を掻いており、スティグロは笑顔で真っ向から否定する。

 

スティグロ「う~ん、守る価値無しかな☆」

 

アンサラーに至っては人類を滅ぼすつもりである。

 

アンサラー「人間は全て滅ぼしましょう···私達の未来が訪れる前に」

 

だが、AF達が否定的ながらも安定しているのに対し、秘匿艦娘達の様子はおかしかった···

 

蛟「私ハ···ナゼ呼バレタノデス?AF達ダケデ十分デショウ?」

 

大蛇「守レナカッタ···私ト蛟ヲ見ツケテクレタ アノ人ヲ守モレナカッタ···ソンナ未来ナラ···」

 

リリ達にも予想外の事が起きていた。蛟と大蛇が最初から深海棲艦として産まれたのだ···しかし、それでもリリ達は彼女らに翔からのビデオメッセージを見せた···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翔《初めまして、僕は翔·ニールセン。そこのネクストのリンクスだ。この時代に建造されて困惑してるかもしれないけれど、どうか最後まで聞いてほしい···

まず、君達を再び戦争に巻き込ませてしまって、本当にごめんなさい···でも、君達の力が必要なんだ!》

 

映像に出てきた翔に、大蛇と蛟は固まる。

 

大蛇「エ···?ナンデ···生キテ···」

 

マザーウィルは自身と対峙した翔の顔を初めて見たため、目を見開いている。

 

マザーウィル「この人が、あの時突撃してきた···」

 

翔《僕は戦争を終わらせたいんだ。これは僕のエゴだ···けど、それでも終わらせたいんだ!僕は説明が上手くないけれど···》

 

グレートウォールとソルディオスは翔の頼みに感心している。

 

グレートウォール「なるほど···」

 

ソルディオス「この子なら、そう言うとは思ってましたけど···」

 

翔《えっと···人の形になると同時に感情も表に出せるんだよね?なら1人1人に伝えたいことがあるんだ》

 

蛟が首をかしげる。

 

蛟「トイウコトハ、私ヤ大蛇ニモ?」

 

 

 

翔《まず···マザーウィル、僕の初めてのリンクスとしてのミッションの時に壊してごめんなさい!でも···その、正直あのフォルム結構かっこよくて好きです!》

 

マザーウィルは微笑む。

 

マザーウィル「あの時の勇姿は覚えていますよ···あなたの方がかっこよかったですよ?」

 

翔の伝えたいことに、カブラカンが突っ込みを入れる。

 

カブラカン「伝えたいことってそっちかよ!?」

 

 

 

翔《次に···グレートウォール、僕の護衛···大丈夫でした?もしダメだったらごめんなさい!》

 

グレートウォールも微笑む。

 

グレートウォール

「あの時の殿は見事なものでした。それを批判することはできませんよ」

 

 

 

翔《次は···ソルディオス、何度も一緒に戦ってくれてありがとう!今度は僕はいないけれど、お願いします!》

 

ソルディオスは映像の中の翔に頭を下げる。

 

ソルディオス「もちろんですとも!」

 

 

 

翔《次にランドクラブ、資料映像とか設計図見たことあるけど、あの地形走破力は絶対に活かせるよ!》

 

設計図や映像を見ていたことにランドクラブは驚いている。

 

ランドクラブ「私の設計図や映像見てたんですね···」

 

 

 

翔《次はギガベース、僕はあのレールキャノン撃つところ見てみたかったなぁ!それにレールキャノンを推進力にできるってあの発想は凄いと思うよ!》

 

自身のレールキャノンを見てみたかった事に、ギガベースは意外だと感じている。

 

ギガベース「そんなに見たかったのですか···そこまで見たいと言う人は初めてですね···」

 

 

 

翔《次にジェット、試験運用の時に壊してごめんなさい!でもあのブレードはこの世界でもめちゃくちゃ活かせると思うからお願いします!》

 

ジェットは頷いている。

 

ジェット「フッ、あの時の味方との連携は良かったからな。むしろ清々しかったぞ」

 

 

 

翔《次にスティグロ、海での戦闘がメインになるこの世界だとあのスピードとブレードはめちゃくちゃ活かせるよ!それに···あの複眼の構造も結構好きです!》

 

スティグロは思わず素が出る。

 

スティグロ「···結構良いところ知ってるじゃん」

 

 

 

翔《次にカブラカン、あの独特の発想から来るあの構成はとっても凄いし、あの数の自律兵器は中々にエグいと思うから絶対に活かせるよ!》

 

褒められてカブラカンは得意気に胸を張る。

 

カブラカン「へへん、当たり前だろ?」

 

 

 

翔《次にイクリプス、まずあの時壊してごめんなさい!でも空を飛ぶAFって中々好きです!》

 

イクリプスは気にしてないどころか、翔を心配している。

 

リプ「あの時のは気にしてないのだ。というかその後の事が中々にエグかったから逆に心配だったのだ···」

 

 

 

翔《次にアンサラー、この世界でのコジマ汚染ってどうなるのか解んないけれど、コルヴィスの中にあるアンチコジマを増やして使えばきっと大丈夫だから!それにあのフォルムも独特でかっこいいよ!》

 

汚染をどうにかできることに、アンサラーは目を見開く。

 

アンサラー「それは···本当、ですか?汚染を···どうにかできるのですか?」

 

 

 

翔「次に蛟、僕は設計図を見ただけだけれど、なんだか直感で大丈夫だって思ったんだ。だから、お願いします···」

 

蛟は泣き崩れる。

 

蛟「ソンナ···アナタは···あナタに伝えたいコトガ沢山アルのに!」

 

 

 

翔《最後に、大蛇···僕と2度も一緒に戦ってくれてありがとう!しかも、最後の時は守ってくれてありがとう!君のあの性能なら絶対に大丈夫だから!》

 

大蛇は涙を流しながら首を横に振る。

 

大蛇「イエ···ワタシはアノ時マモレ切れずに···」

 

映像の中の翔は優しく諭すように続ける。

 

翔《もし、その時の事を悔やんでるなら、あれは仕方ないよ。相手が悪すぎたんだよ。それに、君はベストを尽くしたんだから···今回もお願いします!》

 

大蛇「ソンな···わたシは···私ハ···」

 

すると、映像の中で翔はまるで戦場にいるかのような目つきになり、姿勢を改める。

 

翔《最後に···どうか、この世界を頼みます。君達なら、絶対に成し遂げられるから···そこにイレギュラーがいれば更に良くなるから!···だから、お願いします!》

 

画面の中で翔は深く頭を下げたところで、映像は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リリ「どうでしょう?引き受けてくれますか?」

 

リリの問いにAF達は頷く。最初に口を開いたのはマザーウィルだった。

 

マザーウィル「もちろん、引き受けますよ」

 

グレートウォールは凛とした佇まいで答える。

 

グレートウォール「借りを返すのは当たり前です」

 

ソルディオスはコルヴィスを見つつ答える。

 

ソルディオス

「我が社···はもう無いですけれど、誇りを掛けて引き受けましょう!」

 

ランドクラブは拳を突き上げて答える。

 

ランドクラブ「今度こそ、もっと活躍してみせます!」

 

ギガベースは姿勢を改めて答える。

 

ベス「まあ、正式な依頼なのですから受けましょう」

 

ジェットは拳を胸に当てて答える。

 

ジェット「ORCAの名の元に」

 

スティグロはウィンクをして答える。

 

スティグロ「説明はあまり良くないけど、アイドルの見せ場だね☆」

 

カブラカンは胸を張って答える。

 

カブラカン「いいぜ、乗ってやるよ!」

 

イクリプスはやれやれといった感じで答える。

 

イクリプス「断れないのだ」

 

アンサラーは表情は冷たいものの、心の中では安堵していた。

 

アン「信じるに足るのかどうか、試させてもらいますよ」

 

しかし大蛇と蛟は未だに泣き続けている。そこに静観していた愛海が歩いてきて、大蛇をビンタする。そして蛟にもビンタをする。それを見たリリが思わず声をあげる。

 

リリ「愛海さん!?」

 

愛海は2人を交互に見る。

 

愛海「あなた達は···あなた達にはあの人の気持ちが伝わってないの!?」

 

愛海は蛟を睨み付ける。

 

愛海「伝えたいことがあってももうあの人はいないの!だったら行動で示しなさい!見せつけてやりなさい!」

 

次に大蛇を睨み付ける。

 

愛海「守りきれなかった?翔はそんなの1ミリも気にしてないし、その気持ちがあるなら最後の頼みくらい聞きなさいよ!」

 

そして今度は2人を睨み付ける。

 

愛海「泣いてばかりで···立ちなさい!あの人の事を想うのなら立ちなさい!」

 

大蛇「あ、あなたは···」

 

愛海「挨拶が遅れてごめんなさいね。私は愛海、翔の妻よ!」

 

場がどよめく。

 

 

 

グレートウォールは唖然としている。

 

グレートウォール「···妻、ですか?」

 

ソルディオスは驚きのあまり体が震えている。

 

ソルディオス「あの子、この世界で結婚したの!?」

 

愛海は勝ち誇ったような顔をした後、大蛇と蛟を抱き締める。

 

愛海「殴ってごめんなさいね···あの人の依頼、聞いてもらえないかしら?」

 

大蛇と蛟は謝る。

 

大蛇「こちらこそすみません···」

 

蛟「私もです···」

 

 

 

愛海「···じゃあ皆、早速行くわよ!オペレーターは私が務めるわ!」

 

リリ「アンサラーさん、今回の1戦だけはアンチコジマが使える量ありますので、汚染は心配しなくて大丈夫です!」

 

そしてそれぞれはストークAの発着場に立つ。

 

マザーウィル

「私は、AF『スピリット·オブ·マザーウィル』です。守るべき子らに祝福と安らぎを···」

 

カブラカン

「アタシはAF『カブラカン』だ!この独特な戦闘、見せてやるよ!」

 

蛟「私は扶桑型秘匿航空戦艦『蛟』です。皆さんに幸福を···」

 

アンサラー「AF『アンサラー』です。信頼に値するかどうか、試させていただきます」

 

ランドクラブ「わ、私はAF『ランドクラブ』です···戦場は、どこですか?」

 

イクリプス「僕はAF『イクリプス』なのだ!よろしくなのだ!」

 

ジェット「私はAF『ジェット』だ。●●●●の名の元に、お前の力となろう」

 

ソルディオス

「私はAF『ソルディオス』よ。これからヨ·ロ·シ·ク♡」

 

ギガベース「AF『ギガベース』着任しました。どうぞご指示を」

 

スティグロ「AFのアイドル『スティグロ』よ!よろしくねぇ~☆」

 

グレートウォール

「私はAF『グレートウォール』と申します。どうぞよろしくお願いいたします」

 

大蛇「私は大和型秘匿戦艦『大蛇/ZF型』です!これからよろしくお願いします!」

 

 

 

そして、彼女達はストークAによってそれぞれの所へ運ばれ、投下される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして大蛇はピンク色の髪の艦娘と1人の少年を見つける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今作初のDLCはどうだったでしょうか?

そうです。大蛇と蛟は最初から深海棲艦として産まれていました。


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DLC② ソロモン(ver2.0)


武龍達を含む艦隊が鉄低海峡へと侵攻する前···江ノ島鎮守府の艦隊は海域を次々と奪還していっていた···


DLCです。本編(番外編と外伝も含む)を読み終わっていない方は、読み終わってから来てください。


江ノ島鎮守府···それは横須賀と舞鶴と並ぶ日本三大鎮守府とも呼ばれる日本の最強格の鎮守府の1つである。そしてその三大鎮守府によって海域が次々と奪還され、人々は希望を持ち始めていた。

 

大淀「頼まれていた分析結果です」

 

大淀が海域に関して分析した結果を江ノ島提督に提出する。それを読んだ提督は険しい顔をする。

 

江ノ島提督「やっぱり、第二次世界大戦の時に大きな戦闘のあった海域には、より強い深海棲艦がいるのか···」

 

強い個体や鬼姫級の目撃報告の多くは、第二次世界大戦の時に大きな戦闘のあった海域に集中している。また、大きな戦闘が無くとも何かしら作戦が行われた海域にも、目撃情報が多く挙がっている。

 

大淀「はい。更には鬼姫級も、主にそれらの海域にいるという分析結果もあります」

 

江ノ島提督は次に艦隊を向かわせる海域を確認する。

 

江ノ島提督「次に行くのは確か、鉄低海峡のすぐ近くだよな?」

 

大淀「そうですね···」

 

江ノ島提督は小さな深呼吸をする。

 

江ノ島提督「なら、鬼姫級の可能性も十分にあるからそれ相応の準備をしていこう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、海域侵攻の作戦が発表される。

 

江ノ島提督「今回の作戦はまず熊野、鈴谷、大鳳、神通、睦月、如月の艦隊が海域の側面に回り込みつつ陽動、そして大和、武蔵、サラトガ、加賀、叢雲、摩耶の艦隊で本隊を叩く、という作戦だ」

 

艦娘達「「「了解!」」」

 

 

 

 

 

熊野の艦隊が出撃し、遅れて大和の艦隊が出撃する。そして熊野の艦隊が作戦領域に入ると、早速深海棲艦が現れる。神通は周囲にいち早く順応し、現在の数を確認する。

 

神通「やはり数が多いですね···」

 

鈴谷は深海棲艦が全てeliteであることに顔をしかめる。

 

鈴谷「それもみんなEliteとかだし」

 

熊野の艦隊は順調に深海棲艦を撃破していくが、途中で軽巡棲鬼を確認する。

 

熊野「まさかあれが!?」

 

 

 

 

 

しかし日が沈み始めた頃、本隊に辿り着いた大和達は記録に無い深海棲艦と対峙していた···

見た目は『駆逐水鬼』のヘルメットのようなものを頭に着けているものの、服は白露型に近く、明るくニコニコしている···

 

 

 

『ソロモン棲姫/オリジナル』

 

 

 

ソロモン棲姫「消エナイ悪夢···見サセテ アゲル···」

 

ソロモン棲姫は特攻してくる。大和達は砲撃するが、それらをアクロバティックな動きでかわしつつ大和に肉薄し、砲撃する。

叢雲が接近し、槍で攻撃するがかわされ、カウンターで砲撃を受ける。

 

叢雲「なんなのよこいつっ!」

 

周囲は次第に暗くなってくる···熊野達は全速力で大和達の元へ向かっているが、大和達は消耗していく。

摩耶の砲撃がソロモン棲姫の左肩に命中するが、怯むどころかその反動を利用して加速し、摩耶に砲撃を直撃させる。

 

そしてソロモン棲姫は大和の前に再び接近すると、人間離れしたジャンプをし、月を背に大和と顔を合わせると、大和の顔面に砲撃する。そして大和の背後に着地すると振り返り、再び砲撃する。

 

ソロモン棲姫は大和から離れると魚雷を武蔵に向けて発射する。しかし叢雲の砲撃により魚雷は爆破される。

 

ソロモン棲姫「モウッ!アト チョット ダッタッポイ!」

 

そして熊野達が到着するが、ソロモン棲姫は依然として優勢を保つ。砲撃をものともせずに突撃し、砲雷撃をし、アクロバティックな動きで攻撃を回避していく···

 

 

しかしここで予想外の事が起きる。ソロモン棲姫の意識外から砲撃が放たれ、ソロモン棲姫は中破する。

 

ソロモン棲姫「ドコカラッポイ!?」

 

防弾の飛んできた砲を向くと、そこには天龍、龍田、島風、吹雪、北上、大井がおり、既に接近してきていた。

 

天龍「フフッ、怖いか?」

 

天龍の刀を腕の装甲で防ぐが、龍田の槍に突かれる。距離を離し、飛び上がる。

 

しかしこれは悪手だった···

 

大和と武蔵の息の合った砲撃がソロモン棲姫に直撃し、ソロモン棲姫は海上に落ちる。

そして立ち上がった所を天龍と龍田に串刺しにされる。

 

ソロモン棲姫「ガフッ···楽ノシカッタ···ぽい···」

 

こうしてソロモン棲姫は轟沈し、江ノ島艦隊は鉄低海峡への海路を切り開く事に成功するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数時間後、ソロモン棲姫は夕立としてドロップし、のんびり航行する。そして偶然見つけた小さな鎮守府に立ち寄り、そこの所属となった。

そして中国に移籍となり、そこでの扱いに我慢しきれなくなった艦娘達と共にレイブンズ·ネストに依頼をし、脱出する。

 

 

 

夕立を含めた艦隊がレイブンズ·ネストの拠点に匿われた後、夕立は艤装を確認しに青葉に工廠へと案内してもらう。するとそこには大蛇が艤装のメンテナンスを妖精達と共にしていた。

 

青葉「では私はこれで」

 

夕立「ありがとうっぽい!」

 

青葉が工廠を出ると、夕立は大蛇に向き直る。大蛇から感じるものは、明らかに深海棲艦のものだった。

 

夕立「あの···もしかしてあなた、深海棲艦っぽい?」

 

大蛇は振り返る。

 

大蛇「···あなたもですか?いや、あなたの場合はドロップしたようですね?」

 

夕立は頷き、深海棲艦だった頃の名を名乗る。

 

夕立「そう。私は元深海棲艦の···ソロモンよ」

 

大蛇は微笑む。

 

大蛇「なるほど、オリジナルですか···まあ、害が無ければ良いですので、ゆっくりしていってください」

 

大蛇の優しい笑顔に、夕立は確信した。

 

夕立(ここ、とっても良いところっぽい···ここなら、きっと···)

 

 

 

そして部屋に戻った夕立は霧島達に提案する。

 

夕立「ねぇ、提案なんだけど···」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、夕立達はレイブンズ·ネストの所属となった。

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回はソロモン棲姫もとい夕立の話でした!

●ソロモン棲姫
深海棲艦のオリジナルの1人で、深海棲艦達からは『ソロモン』と呼ばれている。
アクロバティックな動きで敵を翻弄する機動戦を得意とし、それにより少ない武装を活かしている。


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DLC③ 夜空(ver2.0)


武龍とミッドウェーはある日新婚旅行へと旅立つ。


DLCです。本編(番外編と外伝も含む)を読み終わってない方は読み終わってから来てください。


武龍「新婚旅行?」

 

蛟から新婚旅行を勧められ、武龍は首をかしげる。武龍はそういったものに無関係どころか、情報すら無い環境で育っていたため、新婚旅行が何なのか解らなかった。

 

蛟「はい。結婚した新婚の夫婦は新婚旅行として、どこかへ旅行に行くと聞きます。なので2人も行ってみてはどうでしょうか?」

 

ミッドウェーは新婚旅行に乗り気であり、武龍の方を見る。

 

ミッドウェー「なるほど、2人っきりで旅行へ行くのも悪くないかもな」

 

武龍「だな。ありがとう、時間作って行ってみるよ!」

 

 

 

 

 

そして3日後、旅支度をした2人は新婚旅行に旅立った。しかし2人の後をつける影が4人分···

1人は青葉である。

 

青葉「2人の新婚旅行、見ないわけにはいきません!」

 

2人目はアンサラー。

 

アンサラー「もし邪魔をするゴミクズがいたらその時は···!」

 

3人目はスティグロ。

 

スティグロ「す、ストーキングじゃなくて、あくまでも護衛なんだからね!」

 

アイドル口調で喋るスティグロにアンサラーは呆れている。

 

アンサラー「この期に及んでアイドル口調なのは無意味かと···」

 

そして4人目は深海鴉棲姫である。

 

深海鴉棲姫「私は···幸せな顔を見たくて···つい···」

 

 

 

武龍とミッドウェーが向かった先は、山の中の景色が綺麗な温泉旅館だった。

チェックインを済ませた2人は山を登り、頂上で写真を撮っている。

 

···が、そこに2人の男性が現れ、2人を背後から睨み付けている。

 

男性A「あの2人···リア充め···!」

 

男性B「リア充···爆死しろ···」

 

2人の男性はポケットに何かを隠し持っており、明らかに邪魔をする雰囲気を醸し出しながら2人の男性は、武龍とミッドウェーに近づこうとする。しかしその背後から物陰に引きずり込まれる。

 

男性A「何すんだよ!?」

 

そして2人の男性はアンサラーによってその場で論破され、精神的に大破するのだった。

 

 

 

次に武龍とミッドウェーが向かったのは、動物園だった。そこはかつては単なる動物園だったものの、戦争の激化に伴って減ってしまった希少な動物を保護している場所となっている。

 

武龍はレイヴンズ·ネストに入った後に買った図鑑でしか見たことの無い、様々な動物に目を輝かせており、ミッドウェーと手を繋ぎながらあちこちを回る。

 

しかし、またしてもその2人を見る不穏な人影が。今度は3人組の女性であり、武龍とミッドウェーをつけている。

 

女性A「あんな美人でムカつく」

 

女性B「しかも彼氏いてさ」

 

女性C「イタズラしちゃお」

 

そこに変装をした青葉があらわれ、インタビューとして足止めをし、武龍とミッドウェーはその間に動物園を満喫したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後武龍とミッドウェーは旅館に戻ると温泉に入り、まったりとした時間を過ごした。

 

武龍「あ~、やっぱり温泉気持ちいいなぁ~!」

 

ミッドウェー「そうだな。こんなに気持ちの良い温泉に入ったのは初めてだ」

 

温泉から出た2人は浴衣姿で卓球をし、2対3でミッドウェーが勝利した。そして夕飯に出たのは思っていたよりも豪華な海鮮料理であり、2人は驚いていた。

 

その様子を遠くから見ていた青葉達の胃は唸り声をあげる。

 

青葉「あの2人は豪華な海鮮料理だそうですね~」

 

するとスティグロが質問をする。

 

スティグロ「私達のは?」

 

それに対し、アンサラーがリュックからカップラーメンを取り出す。

 

アンサラー「カップラーメンですよ」

 

スティグロは遠くを見ながら無言になる。

 

そして夜も遅くなり、武龍とミッドウェーは寝ることにする。2人は1つの布団に入り、互いに手を繋いで向かい合って眠る。

その2人を見ている青葉達は和んでいる。

 

青葉「寝顔が···とても幸せそうですね···」

 

アンサラーは大量の写真を撮っている。

 

アンサラー「···これは永久保存版ですね!」

 

スティグロはあることを思い付く。

 

ティス「今度作る新曲の歌詞に使お」

 

 

 

 

 

そして翌日は都会で観光を楽しみ、夜に鎮守府へと帰還する事になる。

その道中、武龍はふとこれまでの事を思い出す。

 

武龍「なぁ、なんかふと思ったんだけどよ···今まで色々あったなぁ」

 

ミッドウェー「確かにな···」

 

武龍は空を見上げる。

 

武龍「いじめと虐待にあってて、深海棲艦が現れて、それで家出したらちょうど本土が奇襲されて、その時に青葉と大蛇に出会って···

ただ生きたいと思って傭兵になって、気づいたら戦争を終わらせたいって方向に気持ちが傾いていって···」

 

武龍は手を星空に向けて伸ばす。

 

武龍「そしたらアメリカの少将から裏切られて、その後は孤島棲姫なんてデッカイ深海棲艦と戦って···それで今度はアメリカ大統領直々の依頼でMI海域に向かってミッドウェーと出会って···深海棲艦との和平を結んで、戦争を続けようとする連中を倒して···」

 

武龍はミッドウェーの方を向く。

 

武龍「そしたら提督にさせられて、過去の事を解決することができて···その次は秘匿艦娘が現れて、天ともう1人の大蛇にやられて深海棲艦になって···秘匿艦娘を撃破したらアレサが現れて···倒した後に結婚して···」

 

ミッドウェーは小さなため息をつく。

 

ミッドウェー「色々考えると、波乱の人生だな」

 

武龍はミッドウェーの方を向いて過去を解決する前のような顔ではなく、晴々とした顔で言う。

 

武龍「だな···で、改めて···ミッドウェー、俺と出会ってくれて···ありがとう」

 

ミッドウェー「私もだ」

 

2人は静かに口づけをし、鎮守府へと帰還する。

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回は新婚旅行でしたが、どうだったでしょうか?
感想や高評価、お待ちしています!


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DLC④ 雪の振る日に(新実装)

雪が振る日に、レヴォツィは1つを出会いを経験する。


DLCです。本編(番外編と外伝を含む)を読み終わってない方は、読み終わってから来てください。


深海棲艦との戦争が始まってから1年を過ぎ、ロシアは雪の降る季節になっていた。とある辺境の鎮守府に所属しているレヴォツィは秘書艦であり、艦隊唯一の戦艦であるガングートと執務をこなしていた。

 

ロシア、中国、アメリカの提督達の主流となっている派閥は兵器派であり、兵器派の流れは他国の提督達にも広がりを見せている。その結果、艦娘の扱いは徐々に劣悪になっていき、轟沈する艦娘も増えてしまっている。

 

更に、艦娘が轟沈するだけでなく深海化してしまう現象まで起きてしまい、それは増加の傾向にある。

 

レヴォツィ「この流れ、どうにかして止めねば」

 

レヴォツィは書類を纏めると艦娘達の様子を見に行く。ロシア所属の提督の中でも、レヴォツィは指揮能力が高いだけでなく、艦娘の士気も他の鎮守府より高い事で有名である。

 

 

 

 

 

レヴォツィは軍人の家系に生まれ、その家系は代々優秀な軍人が多く、軍人の中にはその家系の者に憧れる者も少なくない。レヴォツィも優秀な軍人の1人であるが、軍の上層部はレヴォツィを快く思ってはいなかった。

 

兵器派に真っ向から反対しているだけでなく、軍人としての姿勢や能力は上層部の人間を明らかに凌いでいる。そして、艦娘の実力さえ上層部とそのお抱えの提督よりも高いのである。

 

 

 

上層部はレヴォツィをどうにかして軍から追い出したく、または消そうとすらした。しかしそれは極めて難しいことであった。

 

つい最近、軍内部にいた深淵教の人間の手により提督が暗殺される事件があり、軍の信用は落ちてしまった。しかしその信頼の回復に務めたのは、他ならぬレヴォツィである。

 

それだけでなく、レヴォツィはその行動により国民からも支持を得ており、仮に政治家として立候補すれば高確率で当選できるほどだった。

 

レヴォツィを暗殺すれば軍が怪しまれ、国民からの信頼も落ちてしまう。更に防衛の面で考えてもレヴォツィの戦力は必要である。そのため、軍はレヴォツィを辺境の鎮守府に移動させることにした。

 

更に、何かあっても不干渉を貫こうという腹でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レヴォツィは海辺で何者かが倒れているのを発見した。すぐに駆け寄るが、立ち止まってしまう。なぜなら、倒れていたのは駆逐棲姫だったからだ。見たところ、大破しているようでもある。

 

レヴォツィ「駆逐、棲姫···?討ち漏らしが流れ着いたのか?」

 

レヴォツィの脳裏に艦娘と深海棲艦の関係···互いが表裏一体であることがよぎる。そのためレヴォツィはガングートを呼び、接近する。

 

レヴォツィ「···おい」

 

レヴォツィの声を聞いた駆逐棲姫は体を震わせる。ガングートが駆逐棲姫の顔を確認すると、息を詰まらせる。

 

 

 

駆逐棲姫の両目は、太い釘で貫かれていた。

 

 

 

レヴォツィ「これは···!?」

 

駆逐棲姫は震えながら辺りを見渡すように頭を動かす。

 

駆逐棲姫「ダ、誰···?ココ、ドコ···?痛イ、見エナイ···暗イヨォ···」

 

レヴォツィは駆逐棲姫を抱き起こし、そっと抱き締める。

 

レヴォツィ「···大丈夫だ、ここは安全だ」

 

駆逐棲姫は潰れた目から血と共に涙を流す。

 

駆逐棲姫「ワ、ワタ···私···アッ、アアア···」

 

すると駆逐棲姫は気を失い、すぐに入渠ドックへと駆逐棲姫は運ばれる。

 

 

 

 

 

しばらくして、駆逐棲姫が目を覚ますと入渠用の湯船の中だった。状況が飲み込めず、少しの間放心していると脱衣場に誰かが入ってくる音がする。

そして浴場の扉が開けられると、ガングートが入ってくる。

 

ガングート「ようやく起きたか」

 

駆逐棲姫はガングートから離れようとする。しかしガングートは攻撃してくる様子は無かった。

 

ガングート「貴様はこちらの提督が助けた、だから殺さない。体を拭いたら来い···まあ、同志に手を出したら問答無用で仕留めるがな」

 

ガングートはそういうと浴場から出ていった。駆逐棲姫はなぜ助けられたのか気になりながらも、警戒しつつ入渠ドックから出る。入渠ドックの前ではガングートが待っており、提督の執務室へ案内される。

 

 

 

駆逐棲姫が恐る恐る執務室へ入ると、座っていたレヴォツィの顔は安堵に染まる。

 

レヴォツィ「良かった、無事に回復したようだな」

 

なぜ助けられたのか解らず、更には回復した自分を見て安堵しているレヴォツィに、駆逐棲姫は困惑する。だが、少なくとも自分を助けた借りはあるため、危害は加えない事にする。

 

駆逐棲姫「助テクレタ事ニハ感謝スル。ソレデ、私ヲドウスルツモリ?」

 

駆逐棲姫をどうするか、それはガングートも気になっており、ガングートはレヴォツィに目線を送る。

 

レヴォツィ「まず、君がこちらに危害を加えなければこちらも危害を加えるつもりは無い。次に、君が出立する時は無事に行けるよう手配しよう」

 

駆逐棲姫は目を丸くし、瞬きをする。

 

駆逐棲姫「私ハ、深海棲艦ダヨ?」

 

レヴォツィはそれを解った上である。

 

レヴォツィ「それは承知の上だ。しかし、我々は君を助けた。助けたのなら、出立までは守るのが道義だと思っている」

 

駆逐棲姫はその日の夜、出立することにした。暗い夜の中、レヴォツィとガングートは駆逐棲姫を見送る。

 

レヴォツィ「達者でな」

 

レヴォツィはそっと駆逐棲姫の背中を押す。その手は暖かく、駆逐棲姫は少しだけ俯き、すぐに前を向いて鎮守府を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、午後22:00──

 

 

 

雪が舞う夜···駆逐棲姫が鎮守府の海岸に現れ、付近にいたガングート、鳥海、最上が向かう。現れた駆逐棲姫は俯いたままだった。

 

駆逐棲姫「アノ人二、会ワセテ···」

 

3人とも砲口を向けているが、駆逐棲姫は主砲と一体化した左手を下ろしたままである。ガングートは通信により、他の艦娘も集まってきている事を知る。

 

同じ駆逐棲姫ではあるものの、別個体である可能性を考慮してガングートはレヴォツィを呼ぼうとはしなかった。駆逐棲姫は右手を握り締めている。

 

撃つべきか、そう考えている間に背後から聞き慣れた足音が聞こえてくる。ガングートが目線だけ動かすと、レヴォツィがいた。その隣には矢萩がおり、いつでもレヴォツィを守れる体勢に入っていた。

 

レヴォツィ「なぜ、戻ってきた?」

 

顔を上げた駆逐棲姫の目には涙が浮かんでおり、今にも泣き出しそうであった。

 

駆逐棲姫「私、ココニイて、良イ?」

 

 

 

ガングートは眉を潜めるが、レヴォツィは真剣な眼差しをしている。

 

駆逐棲姫「アナたノ手、暖かカッタ···ココニ、イたいノ···」

 

駆逐棲姫の艤装にヒビが入り、僅かに欠片が落ちる。

 

駆逐棲姫「暗イのは、もう···嫌ダヨ···」

 

駆逐棲姫の目からは涙が溢れ、頬を伝う。

 

駆逐棲姫「お願い···ココに、いさせテ···」

 

駆逐棲姫は嗚咽を出し始める。すると、離れたところから狙撃の体勢に入っている榛名から通信が入る。

 

榛名《少なからず、演技の可能性があります。けれど、榛名はいつでも撃てます》

 

レヴォツィは1度目を閉じ、再び駆逐棲姫を見る。駆逐棲姫は右手で涙を拭おうとしているが、拭いきれぬ程の涙を流し続けている。

そして、レヴォツィは1歩前へ出る。

 

レヴォツィ「覚悟はあるか?」

 

駆逐棲姫の手が止まり、辺りは静まり返る。

 

レヴォツィ「ここに来るということは、私の指揮下に入るだけではない、国のために戦い、深海棲艦に砲を向ける事になるということだ。その覚悟はあるか?」

 

駆逐棲姫は「はい」と答え、レヴォツィはまた1歩前へ出る。

 

レヴォツィ「戦いの先にある"答え"がいかなるものか、それでも進む覚悟はあるか?」

 

駆逐棲姫の艤装のヒビが増え、剥がれ落ちていく。再び駆逐棲姫が答えるとレヴォツィは再び前進する。

 

レヴォツィ「ならば来い!この艦隊に!」

 

駆逐棲姫の艤装のヒビは肉体にまで広がり、光と共に姿が変わっていく。レヴォツィは手を差し出し、光に包まれた駆逐棲姫はレヴォツィの手を取る。

そして光は収まり、駆逐棲姫は艦娘の姿となっていた。

 

ヴェールヌイ

「私は駆逐艦、ヴェールヌイ。よろしく、提督」

 

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回はレヴォツィの過去を書きましたが、どうだったでしょうか?
感想や高評価、お待ちしています。


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DLC⑤ 深海の鴉【前】 Ghost(新実装)

これは、深海鴉棲姫が武龍と出会うまでの物語、その前編である。


DLCです。本編(番外編と外伝も含む)を読み終わってない方は読み終わってから来てください。


暗い海の中、不定形な怨念が漂っていた。武龍とリンクしたことで、単なる怨念だけの存在ではなくなった。しかし形が無いまま、深海棲艦達を眺めるだけで漂っていた。しかしある時不意に意識が別の場所へ移される。

 

そこは、赤く透き通った海の中だった。上にある海面からはカーテンのように光が差し込んでおり、海中だというのに水の抵抗を受けずに動けている。

 

気づけば、肉体を得ていた。髪は白いロングヘアで、顔や体を触ると左頬が抉れており、白いボディースーツを着ていた。肉体を得られたことに歓喜し、体を触り、様々な声を出していると背後から声をかけられる。

振り向くと、1人の男性が立っていた。

 

男性は黒いパイロットスーツを着ており、短髪の黒髪に優しげな顔をしていた。

 

男性「初めまして、僕は翔。翔·ニールセンだよ。君は?どうやら深海棲艦のようだけど」

 

形を得た怨念は首を横に振る。

 

???「私の名前は···無い」

 

翔は少し考えると、名前を思いつく。

 

翔「そうだね···なら···『深海鴉棲姫』ってのはどう?」

 

深海鴉棲姫と名付けられた深海棲艦は名前を気に入り、頷く。すると、翔はここからどうするのか聞いてきた。

翔の問いに、深海鴉棲姫はすぐには答えられなかった。しかし脳裏に浮かぶのは···自分に手を伸ばし、リンクした武龍だった。

 

深海鴉棲姫「私は···人類を滅ぼそうなどとは微塵も感じない。だが、探さなければならない者がいる」

 

翔は深海鴉棲姫から何かと感じ取ったように頷き、深海鴉棲姫の背後を覗くと、笑みを浮かべる。

 

翔「君、見たところ武器は無いけれど、後ろの刀が力を貸してくれるって」

 

深海鴉棲姫が振り向くと、先程までは無かった一振の刀が鞘に納められたまま海底に刺さっていた。深海鴉棲姫が刀を持つと、不思議と手に馴染む。

すると、背中をそっと押される。

 

翔「行ってらっしゃい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気づけば深海鴉棲姫は夜の海に立っており、深海鴉棲姫の左腰には円盤状の形をした、刀の鞘を接続できるものが着けられていた。深海鴉棲姫は刀を接続すると、航行していく。

 

しばらくすると陸地が見えてくるが、砲撃音と爆炎が見える。近づいてみると、深海棲艦が上陸しかけていた。艦娘達のほとんどは撃破されており、見れば民間人の避難は完了していないようだった。

 

深海鴉棲姫「奇襲されたか···まあいい、手を貸すか」

 

深海鴉棲姫は最も近くにいた重巡ヌ級の背後から刀を突き刺し、ヌ級はそのまま絶命する。そしてそのままヌ級の死体を盾にして進み、砲撃を躊躇った軽巡ホ級に向かってヌ級の死体を蹴り飛ばす。

 

そしてホ級の左側面から刀をホ級の側頭部に突き刺し、引き抜くと共に回転して砲撃を受け流し、砲撃してきた駆逐イ級を右側面から縦に一刀両断する。

それを見ていた艦娘は目を疑う。

 

艦娘「どういう、こと···?」

 

遂には単独で全ての深海棲艦を撃破した深海鴉棲姫は、月明かりに照らされながら刀についた血を払い、刀を納める。一瞬艦娘を見るが、興味無さそうにその場から離れていく。

 

また、その現場を2人の民間人が木の影から見ており、深海鴉棲姫から行った方向へ走っていった。

 

 

 

 

 

深海鴉棲姫が別の場所から上陸し、人気の無い場所を進む。すると右方向から呼び止められる。

 

?「ちょっと待って~!」

?「待った待った~!」

 

見れば、そっくりな顔をした2人の女性が息を切らして立っていた。黒髪を三つ編みのサイドテールを別方向にしており、右にいるのは黒に白いラインが入ったブレザーを、左にいるのは白に黒いラインが入ったブレザーを着た学校の制服を着ていた。

 

2人は同時に礼を言うが、深海鴉棲姫はそのまま立ち去ろうとする。しかし背後から2人に手を掴まれる。

 

深海鴉棲姫「なんだ?」

 

深海鴉棲姫を見つめる2人の目は輝いていた。

 

右の女性「あなた、深海棲艦だよね!?」

 

左の女性「本物だよね!?」

 

仕方なく深海鴉棲姫は本物だと答えるが、答えるが否や2人は歓声を上げる。

 

右の女性「よっしゃあ賭けに勝ったぁ!」

 

左の女性「明日はカレーだぁ!」

 

すると、突然2人は深海鴉棲姫に頭を下げる。

 

右の女性「さっきは深海棲艦をやっつけてくれて、ありがとうございます」

 

左の女性「お陰で私達や色んな人が助かりました」

 

常にテンションが高い2人なようだが、きちんと謝辞の言葉を伝えられるようだ。深海鴉棲姫はそのまま立ち去ろうとするが、再び止められる。

 

右の女性「お礼にご馳走させて!」

 

左の女性「うちら料理上手いから!」

 

深海鴉棲姫は仕方なく2人についていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人の家はマンションの1室であり、右の女性は『斉川(さいかわ) 理恵(りえ)』、左の女性は『斉川 恵理(えり)』という名前だった。2人は双子の高校生であり、ここには2人で暮らしているようだ。

 

2人は人間に友好的な深海棲艦がいるのではと仮説を立て、その賭けに勝ったらカレーを食べるということだったのだが、今夜深海鴉棲姫と出会ったため、今夜の夕飯はカレーとなっている。

 

2人は深海鴉棲姫が深海棲艦だとは周囲に話さないことを約束し、武龍を探す手助けをするとも約束してくれた。実際、翌日には聞き込みなどをしてくれていたため、深海鴉棲姫は安心できていた。

また、深海鴉棲姫の事はアルビノ体質の人だと周囲に説明していた。

 

 

 

そして数日が立った日、近所に住む双子の姪が双子の元へとやって来た。どうやら頼みごとがあるらしく、3人は話を聞いた。

 

双子の姪「裏山にある廃校、あそこに肝試しに行った友達がいなくなっちゃったんだ···」

 

恵理と理恵は互いに顔を見合せ、深海鴉棲姫は眉を潜める。

聞けば、裏山の廃校で消えた姪の友達を探すために大人や警察が廃校と裏山を探したものの、証拠は見つからなかったという。

 

姪の友達の家族は捜索を求めているが、大人や警察は捜査を打ち切ってしまい、姪はここを頼ったそうだ。

 

恵理「よし、出きる限りやってみるよ!」

 

理恵「まっかせなさい!」

 

そして姪が家に戻ると、恵理と理恵は廃校への調査を深海鴉棲姫に頼んできた。

 

恵理「今は戦争中、誘拐犯とかいるかもしれない」

 

理恵「そこに私達が行ったら足手まといになる」

 

深海鴉棲姫は恩を返すため、それを引き受けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

裏山にある廃校の前に、深海鴉棲姫は立っていた。暗く静かで、どこか不気味さを感じさせている。

しかし深海棲艦であり、それも姫級の深海鴉棲姫は悟る。

 

なにか、いると···

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回からは深海鴉棲姫の過去編を書きます。その第1段はどうだったでしょうか?感想や高評価、お待ちしています。

●斉川理恵
黒髪を右に三つ編みのサイドテールにしており身長160cm、18歳で2月11日生まれ。

恵理とは双子の姉妹であり、黒に白いラインが入ったブレザーを私服として着ている。
得意科目は国語。

●斉川 恵理
黒髪を左に三つ編みのサイドテールにしており身長160cm、18歳で2月11生まれ。

理恵とは双子の姉妹であり、白に黒いラインが入ったブレザーを私服として着ている。
得意科目は英語。


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DLC⑥ 深海の鴉【中】 MOONLIGHT(ムーンライト)(新実装)

月明かりに照らされし鴉。
決意に振るう拳は誰のためか。


DLCです。本編(番外編と外伝も含む)を全て読み終わってない方は読み終わってから来てください。


月明かりに照らされた、不気味な静けさを感じさせる廃校に深海鴉棲姫は足を踏み入れる。ガラスの割れた玄関扉を開き、下駄箱が並ぶ玄関を見渡す。

廊下に出ると、自身の足音以外は聞こえない。

 

まずは1階から探索を初めていくが、廃校というだけあって生活感が無く、荒れ果てている。

1回には何も無かったため、2階へ行く。2階の廊下を進んでいると、背後から声をかけられる。

 

 

 

???「良い夜でありますな」

 

深海鴉棲姫は瞬時に振り向き、刀に手を掛ける。少し離れた場所に、深海棲艦が立っていた。

 

おかっぱ頭の髪に、赤い目。胸から腹部にかけては骨となっており、心臓は青く光りながら脈動している。肉と皮のある両手は素肌を晒しており、下は和服を纏っている。

 

???「(それがし)は『侵攻揚陸(しんこうようりく)棲姫』であります、そちらは?」

 

深海鴉棲姫は刀に手をかけたまま名乗り、侵攻揚陸棲姫は首をかしげる。

 

侵攻揚陸棲姫

「ふむ、そのような深海棲艦は聞いたことがありませんな。某がここに潜入している間に生まれた者でしょうかな?」

 

深海鴉棲姫の放つ殺気に侵攻揚陸棲姫は違和感を覚える。

 

侵攻揚陸棲姫

「···そちら、何か勘違いをしてるようでありますな。我々は互いに深海棲艦、敵ではありませぬぞ?」

 

深海鴉棲姫はそのまま問いかける。

 

深海鴉棲姫「最近、ここで行方不明になっている子供がいたようだが?」

 

侵攻揚陸棲姫はキョトンとした表情を浮かべると、すぐに笑みを浮かべて答える。

 

侵攻揚陸棲姫

「ああ、あの子供ですか。腹が減っては戦はできぬと、骨まで食べたであります。その後の人間の捜査の目を掻い潜るのは大変だったでありますが」

 

その瞬間、深海鴉棲姫は居合い斬りをし、侵攻揚陸棲姫は間一髪で回避し、距離を取る。

 

侵攻揚陸棲姫「どういう、つもりでありますかな···?」

 

月明かりに照らされた2人は向かい合い、深海鴉棲姫は刀の矛先を向ける。

 

深海鴉棲姫「恩人の頼みでな···その子供を屠ったお前を、狩らせてもらう」

 

侵攻揚陸棲姫はくつくつと喉で笑う。

 

 

 

推奨BGM『褪色のスペクトル』

 

 

 

侵攻揚陸棲姫

「なるほど···しかし刀1本で某に勝つつもりでありますかな!?」

 

侵攻揚陸棲姫は腰にある軍刀を抜き、背中に折り畳まれていた鉤爪と単装砲が一体化した虫のような腕を伸ばす。

深海鴉棲姫は突撃し、砲撃を避けつつ懐に潜り込もうとする。

 

しかし侵攻揚陸棲姫の背部にある腕のせいで、接近しても砲撃が可能となっているため、深海鴉棲姫は攻撃がしにくい。

 

侵攻揚陸棲姫「どうしたでありますか?」

 

侵攻揚陸棲姫は深海鴉棲姫を煽るが、深海鴉棲姫は煽りに耳を貸さずに侵攻揚陸棲姫に攻撃を当てようとする。

侵攻揚陸棲姫が追加で砲撃すると、深海鴉棲姫は砲撃を回避すると共に教室の中に飛び込む。

 

侵攻揚陸棲姫は扉を蹴破りつつ教室に入ると、机が投げつけられる。

 

侵攻揚陸棲姫「小癪なっ!」

 

砲撃で机を破壊しても次々と机や椅子が投げられ、侵攻揚陸棲姫は砲撃し続けるしか無くなる。しかし机や椅子には限りがあるため、侵攻揚陸棲姫は舌舐りをする。

しかし次に投げられた机を砲撃で破壊すると···

 

深海鴉棲姫「捕まえた」

 

深海鴉棲姫が懐に潜り込み、侵攻揚陸棲姫の体を下から斬り上げた。

深海鴉棲姫は机と椅子を一定の感覚で投げ、時に頻度を上げたりして砲撃の連射力を試し、次弾を撃つまでの間に潜り込んだのだ。

 

斬られたのは骨だけでなく心臓にも傷が入っており、侵攻揚陸棲姫は既に次の攻撃の構えを取っている深海鴉棲姫から逃走する。

 

 

 

機動力は深海鴉棲姫が上回っているため、侵攻揚陸棲姫は砲撃や障害物を利用して逃げる。そして体育館に逃げると再び砲撃で深海鴉棲姫が近づけないようにする。

しかし、深海鴉棲姫はその砲弾を弾きながら接近してきている。

 

侵攻揚陸棲姫「この短時間で、動きを見切ったでありますか!?」

 

そして深海鴉棲姫は侵攻揚陸棲姫の左腕と左の虫の腕を上から一刀両断する。叫び声を上げた侵攻揚陸棲姫は、天井を砲撃して瓦礫を落として逃走する。

 

 

 

侵攻揚陸棲姫が逃げたのは屋上であり、血が溢れる傷口を押さえている。しかし血を辿って深海鴉棲姫が階段を駆け上がり、侵攻揚陸棲姫の目の前に仁王立ちする。

その右頬は小さく笑みを浮かべていた。

 

そして深海鴉棲姫は接近すると、侵攻揚陸棲姫の体を殺さない程度に切り刻む。喉も斬られ、喋る事のできない侵攻揚陸棲姫は弱々しく、やめてくれと懇願するように手を伸ばす。

 

深海鴉棲姫は侵攻揚陸棲姫の心臓に刀を突き刺し、侵攻揚陸棲姫の光は消えていった。そして撃破した証拠に侵攻揚陸棲姫の主砲を切り取って持ち帰った。

 

···が、裏山を駆け降りる姿を遠方から目撃した人影がいた。

 

???「あれは···?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

侵攻揚陸棲姫を撃破したことを理恵と恵理に伝え、2人は安堵すると共に深海鴉棲姫に感謝を述べた。その後も武龍の情報を探していき、武龍が見つかるまでの間はできればこのままでいたい、深海鴉棲姫はそう思っていた。

 

そんなある日、少し遠めの場所まで情報を集めに行った帰りに町に火の手が上がっているのを目撃し、深海鴉棲姫は走って燃えるマンションに辿り着く。

 

マンションは崩れており、深海鴉棲姫は炎の中に飛び込んで2人を探す。瓦礫をどかしていくと、ボロボロになった2人が現れる。

 

深海鴉棲姫「2人とも!」

 

2人の傷は深く、一目で助けられないと悟ってしまう。

 

理恵「ごめんね···こんなことになっちゃって···」

 

恵理「ホントにごめんね~···」

 

助けられなくとも、それでも深海鴉棲姫は2人を助けようと出血している箇所を布で縛ろうとする。しかし2人は自身の状態を悟っているらしく、首を横に振る。

そして、もう助からない事を自白する。

 

理恵「世の中って、理不尽だよね···」

 

恵理「狂ってるよね···」

 

2人は誰がこんなことをしたのかを告げ、息絶えてしまう。涙を流。し、拳を握り締め、そして深海鴉棲姫は炎の中で立ち上がる。すると、深海鴉棲姫は髪を三つ編みのツインテールにし、その場を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深海鴉棲姫が向かった先は最寄りの鎮守府であり、そこに忍び込む。そして通信設備を片っ端から破壊する。それにより鎮守府では混乱が起き、そこの提督は指令室へ駆け込む。

 

すると、指令室の机の上に深海鴉棲姫が刀を抜いた状態で座っていた。

 

深海鴉棲姫

「やぁ、初めましてだな。よくもまああの町をやってくれたものだ」

 

提督はすぐさま逃走し、追おうとした深海鴉棲姫を横から掴みかかった艦娘がおり、そのまま艦娘と深海鴉棲姫は外へ転がり出る。

2人が立ち上がり、互いの顔を認識する。その艦娘は、過去に深海鴉棲姫が助けた艦娘だった。

 

艦娘「ここは···通しません」

 

おそらくは駆逐艦であろう、その艦娘とそこに集まってきた艦娘達は深海鴉棲姫に砲口を向ける。

 

艦娘「あなたは、過去に私達を助けてくれました。だから···今なら見逃します」

 

深海鴉棲姫は笑い声を上げる。

 

深海鴉棲姫「ハッハッハッハッハッ···はぁ~···ふざけるな」

 

深海鴉棲姫は艦娘達を睨み付ける。

 

深海鴉棲姫「自分達を助けた者を勝手に敵と認定し、匿っていた者の話に耳を貸そうとせず、連帯責任だと言って無関係の者達と共に殺しておいて何を言う?」

 

艦娘達の一部は歯軋りをする。

 

深海鴉棲姫「復讐は上等だ。敵討ちと言っても良い···少なくとも、ここにいる者共は···皆殺しだ」

 

深海鴉棲姫は刀を抜き、構える。

 

月明かりに照らされ、妖しく紫に輝くその刀の名は···『月光』。

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回は深海鴉棲姫の過去編の第2段でしたが、どうだったでしょうか?
感想や高評価、お待ちしています。

●侵攻揚陸棲姫
おかっぱの髪と赤い目をしており身長160cm。
胸から腹部にかけては骨となっており、下半身は和服を纏っている。また、心臓は青く発光しながら脈動している。

武装は軍刀と背部の鉤爪と15cm単装砲が一体化した虫の腕である。

地上戦と潜入に特化した深海棲艦であり、屋内での近接戦闘をメインとしている。
また、機動力はあるものの装甲は薄い。


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DLC⑦ 深海の鴉【後】 Fall(新実装)

私はあなたであり、あなたを見つけた。


DLCです。本編(番外編と外伝も含む)を全て読み終わってない方は読み終わってから来てください。


推奨BGM『Scorcher』(ACfaより)

 

 

深海鴉棲姫は月光だけで多数の艦娘を相手に交戦を開始する。

艦娘のように重量のある艤装が無く、艤装は月光のみのため機動力は圧倒的である。

 

一瞬で戦艦の艦娘に接近し、首を骨に当たるギリギリの部分を斬り、そのまま別の艦娘へと襲いかかる。

袈裟斬りで艦娘の両腕を斬り落とし、そのまま回転しつつ下顎を蹴り上げ、回転の遠心力を加えて下から斬り上げる。

 

深海鴉棲姫(こいつら、連携がまるでできてないな···)

 

連携が取れていないことに気づいた深海鴉棲姫は、軽巡の艦娘の心臓に月光を突き刺し、そのまま他の艦娘へ突進する。

砲撃を躊躇した艦娘に、深海鴉棲姫は月光で貫いた艦娘から奪った単装砲を撃ち込む。

 

右側面から深海鴉棲姫に狙いをつけていた艦娘へ、貫かれて息絶えている艦娘の亡骸を、刀を引き抜くと共に投げつける。

単装砲を撃ち込まれて怯んだ艦娘には、顎下から刀を突き刺して絶命させる。

 

 

 

艦娘の数は次々と減っていき、遂には深海鴉棲姫が助けた艦娘だけとなり、そして提督の隠れた場所も見つかってしまう。

 

深海鴉棲姫「さぁ、報いを受けてもらおう」

 

深海鴉棲姫が刀を振り上げると、最後の艦娘は砲口を向ける。

 

艦娘「お願い···殺さないで!」

 

深海鴉棲姫はため息をつく。

 

深海鴉棲姫「はぁ···こいつがやったことがどういうことか、解っているだろう?」

 

艦娘は首を横に振る。提督は逃げようとするが、折れた両足ではうまく移動できていない。

 

艦娘「そんな人でも···提督なの。だから、お願い···」

 

すると、提督は喚き立てる。

 

提督「き、貴様ら深海棲艦が悪いのだ!貴様らがあそこに現れ、そして敵である深海棲艦を匿ったのだから死罪だ!それに気づかなかった愚か者共も同罪!だから私は···」

 

提督が言い終わる前に、深海鴉棲姫は提督の眉間に月光を突き刺し、引き抜く。

それを見た艦娘は言葉を失い、目を見開いている。そして次の瞬間には叫びながら深海鴉棲姫に砲撃する。

 

深海鴉棲姫は砲撃を回避すると共に接近し、艦娘の額に月光を突き刺した。

 

 

 

その後、深海鴉棲姫は燃える鎮守府を背に去っていった···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数ヶ月後、深海鴉棲姫は自身の変化に気づいた。以前よりも力が増しており、少数ながらも艦載機を発艦できるようにまでなっていた。

 

深海鴉棲姫「まさか···あの男が強くなるにつれ、私も強くなっているのか?」

 

深海鴉棲姫が航行していると、遠くに深海棲艦の艦隊を発見する。どうやら交戦した後のようで、旗艦とおぼしき空母棲姫改はほんの少しだけ損傷しており、随伴艦はネ級flagship1体とホ級eliteが2体であった。

 

深海鴉棲姫「ふむ、あの進行方向には···確かラバウルがあったはずだな。あそこの鎮守府は確か、大きな戦闘があったばかりで戦力は整っていないはずだ···ここでどうにかしておくか」

 

深海鴉棲姫は水中に潜り、接近していく。

 

 

 

 

 

空母棲姫改、のオリジナルであるミッドウェーはラバウル鎮守府を落とすため、航行していた。先程別の鎮守府の艦隊と遭遇したものの、壊滅させている。

 

しかし突然、水中から見たことの無い深海棲艦···深海鴉棲姫が現れた。深海鴉棲姫はホ級eliteの心臓を一突きで撃沈させ、ミッドウェー達はすぐさま距離を取る。

 

ミッドウェー「何者ダ?」

 

深海鴉棲姫はほくそ笑み、月光の切っ先をミッドウェーに向ける。

 

深海鴉棲姫「私は···ただの鴉さ」

 

 

 

推奨BGM『Fall』(AC4より)

 

 

 

ミッドウェーは後退しつつ大量の艦載機を発艦させる。その数は深海鴉棲姫がこれまで戦ってきた空母系より、圧倒的に多かった。深海鴉棲姫は爆撃を月光で防ぎ、爆煙の中から別方向へ移動して接近しようとする。

 

しかしそこに攻撃機の魚雷が撃ち込まれ、深海鴉棲姫は間一髪でローリングして回避する。

 

深海鴉棲姫(流石はオリジナル···あの程度では動揺しないか)

 

ネ級flagshipとホ級eliteを守りつつ攻撃し続けるミッドウェー。

その差は歴然に思えた。しかし、戦っている内に深海鴉棲姫はあることに気づく。

 

徐々に自身の体が強くなっているのだ。

頭は冴え、筋力は増え、脚力も増し、月光を振る練度は上がっていく。

おそらく、この事にはミッドウェーも気づいているだろう。

 

深海鴉棲姫(そうか···武龍···君はこの海で、戦っているのだな!)

 

深海鴉棲姫は武龍が戦っていることを悟ると、獰猛な笑みを浮かべる。

 

深海鴉棲姫(ああ!武龍も戦っているのなら、いずれ出会えるだろう···そうだ!それで良い!)

 

深海鴉棲姫はホ級eliteに狙いを定め、斬りかかる。しかし背後からネ級flagshipが接近してきている。

すると深海鴉棲姫はホ級を袈裟に斬り降ろし、返す刀で斬り上げる。

 

深海鴉棲姫(沈んでいく···武龍に、武龍の方へと沈んでいく···!なんて、心地良いんだ!)

 

ホ級はそれで撃破できたが、ネ級flagshipは真後ろまで迫っていた。

深海鴉棲姫は斬り上げた月光を逆手に持ち替え、背後のネ級flagshipに勢いよく突き刺す。

 

 

 

深海鴉棲姫「楽しいなぁ!そうだろう!?」

 

深海鴉棲姫は月光を撫で、月光から赤い稲妻が迸ると共に月光を振り、3機の戦闘機を発艦させる。しかしミッドウェーは動じずに攻撃を続ける。

 

ミッドウェー「中々面白イナ···ダガ」

 

ミッドウェーに接近し、月光を振り上げた深海鴉棲姫の背後から攻撃機が現れ、魚雷を深海鴉棲姫の両足に命中させる。

しかし深海鴉棲姫は倒れ様にミッドウェーの艤装を斬りつけ、艤装は叫び声を上げる。

 

そして深海鴉棲姫は転がって僅かな距離を離し、立ち上がる。

しかしそこに別の鎮守府の艦娘が現れる。

 

深海鴉棲姫「なるほど···今回はここまでか。楽しかったぞ」

 

そう言って深海鴉棲姫はその場から撤退していく。ミッドウェーはすぐにその艦娘達を撃破するが、その頃には深海鴉棲姫は消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数ヶ月後──

 

 

ミッドウェー海域にて、深海鴉棲姫は大規模な戦闘があるのを察知し、近づいていく。

しかし、それと共に武龍の感覚が強くなっている事に気付き、スピードを速める。

 

そして···

 

深海鴉棲姫「ようやく、見つけたぞ···武龍!」

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回は、深海鴉棲姫の過去編の後編を書きました。
感想や高評価、お待ちしています。


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DLC⑧ 海原を統べる者(新実装)

戦いが終わり、2ヶ月が経ったある日···1つの依頼が入る。


DLCです。本編(番外編や外伝も含む)を全て読み終わってない方は読み終わってから来てください。


戦争が終わり、アレサも撃破され、世界は復興を始めている。

艦娘や深海棲艦達は復興の手助けで忙しくなり、今後の処遇も良い方向へ進んでいる状態である。

 

結婚した武龍とミッドウェーも、新婚旅行の後は復興に手を貸している。

 

そんな中、とある小さな無人島の中にある小さな施設に1人の提督と妖精がいた。

といっても、その提督は既に海軍から追放されており、髪や髭は荒れ果てている。

 

その提督の隣に浮かぶ妖精の目は怨嗟を孕んでおり、2人は目的のために行動しているようである。

 

提督「戦争は終わらない···人類の発展と、弱者の淘汰···そして人間が存在し続ける限り!」

 

その提督は拳を握り締め、伸びていた爪が掌に食い込んで出血していた。

提督と妖精は1つの建造ドックの前で、建造された艦娘が目覚め、出てくるのを待っていた。

 

妖精「未来の兵器を滅するには、未来の兵器しかありません」

 

そして、目覚めた艦娘が建造ドックから現れる。

 

 

 

髪は黒い短髪で、大人びた雰囲気を醸し出している。服は黒いセーラー服で、装備している艤装は大蛇程ではないが巨大であり、その艦娘は2人を睨み付ける。

 

艦娘「どういう事だ、貴様らは何者だ?」

 

提督は狂喜を孕んだ目と笑みで近づく。

 

提督「良かった!実験は成功だ!名前は何だ?いやそれは後で良いすぐさま出撃してくれそして世界を焼き尽くして願いを叶えてくれ!未来の力を持つお前ならできるだろうそうだろうそうでなければ意味が無いからなああもちろん報酬は用意し···」

 

言い終わる前に、提督は顔を掴まれて壁に叩きつけられる。潰れた提督の頭部と体は離れ、提督の体は壁を伝ってずり落ちる。

 

艦娘「肉の体も、悪くないな···」

 

潰した提督の頭部を投げ捨て、艦娘は妖精を見る。妖精は逃げるが、廊下の壁を破壊して艦娘は回り込み、妖精を捕まえる。

 

艦娘「知っていることを全て話せ。あの男のようになりたくなければな」

 

妖精は震えながら全てを話す。すると艦娘は妖精を離し、妖精は飛び去っていく···が。

 

艦娘「騙して悪いが死んでもらう」

 

 

 

その島で、1つの轟音が響き渡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

依頼主:St-ELMO(セントエルモ)

 

目標:セントエルモの撃破

 

作戦開始時刻:15:30

 

報酬:20000円、各種資材

 

私は戦いを望む。戦争を終わらせた者達と戦いたい。少ないが報酬は用意した。

見せてくれ。貴様らの力を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レイヴンズ·ネストに送られてきた依頼を見て、レオは表情が固まった。しかしすぐにいつもの調子を取り戻す。

だがそれでも真剣な表情をしていた。

 

レオ「···これは、随分厄介なことになったね」

 

セントエルモ···レオは戦ったことは無いものの、その性能は知っていた。極めて高い性能と戦績から『海原を統べる者』とも呼ばれ、多くのAC乗りから恐れられていた存在である。

 

レオ「あれは艦娘や深海棲艦で勝てる相手じゃない···AFなら十分勝算はある。けれど、奴が求めているものを考えると···」

 

 

 

 

 

指定された海域に、セントエルモは腕組みをして立っていた。空は晴れ渡り、涼しい風が静かに吹いている。

そして1機のストークAがやってくる。

 

セントエルモ「ようやく来たか」

 

投下されたのは武龍だった。

 

セントエルモ「もっと多いかと思ったぞ」

 

それに対し、武龍は艦娘や深海棲艦では相性が悪いことを伝える。

それを聞いたセントエルモは笑みを浮かべ、構える。

 

セントエルモ「なるほど、確かに一理ある···始めよう」

 

 

 

推奨BGM『Agitator』(AC4より)

 

 

 

セントエルモは開幕から砲撃を一斉射してくる。武龍は右へQBすることで回避しようとするが、大量の弾幕によりPAが大きく減衰してしまう。

 

武龍は小型ミサイルを撃ち込むが、セントエルモの迎撃装置により小型ミサイルは全て迎撃されてしまう。

セントエルモの弾幕は凄まじく、PAはあっという間に剥がされ、被弾箇所も増えていってしまう。

 

武龍はレーザーキャノンを主砲の1つに撃ち込み、破壊する。すると、セントエルモは獰猛な笑みを浮かべ、攻撃はより激しくなる。

 

セントエルモ「そうだ!それで良い!」

 

セントエルモの弾幕には、砲撃や機銃だけでなく小型ミサイルも混じっているため、回避がしずらくなっている。そしてそうこうしている内に艤装の損傷は増えていく。

 

武龍は被弾を覚悟でPAを解除し、この分のエネルギーをブースターに回す。そしてOBで一気に接近すると、マシンガンを機銃や主砲に連射して損傷を与え、レーザーブレードで主砲の1つを斬り落とす。

そして武龍はセントエルモに張り付いて攻撃を当てていく。

 

武龍(やれる!このままなら!)

 

しかしセントエルモは武龍の左腕を掴むと、遠方に投げる。

 

セントエルモ「思ってたよりも随分やるなぁ···だが!」

 

 

 

セントエルモの背部にある大型の装置が起動し、何かを組み立て始める。それは1本のミサイルだった。するとそれを見たレオが叫ぶ。

 

レオ《逃げろ!それは"核"だ!》

 

セントエルモから発射された核···『ヒュージミサイル』はセントエルモの上空に飛んだ後、武龍の方を向いて猛スピードで飛んでいく。

武龍は咄嗟にマシンガンを連射し、運良く1発がヒュージミサイルに命中する。

 

ヒュージミサイルは上空で巨大な爆発を起こし、セントエルモと武龍は両方とも被害を受ける。

しかしセントエルモはふらつきながらも副砲を武龍に向ける。

 

武龍はセントエルモの砲撃を受けながらも小型ミサイルを撃ち込み、小型ミサイルはセントエルモに全弾命中する。セントエルモは仰向けに倒れるが、まだ意識は残っていた。

 

セントエルモ「限界、か···私の敗けだ。さぁ、トドメを刺せ」

 

武龍はセントエルモに近づき、肩を貸して立たせる。

 

セントエルモ「どういうつもりだ?」

 

武龍はセントエルモの方を向いて答える。

 

武龍「殺すつもりは、最初から無かったからさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、海原を統べる者は戦いの終わった世界を歩き、柔らかい笑みを浮かべていた。

 

そして、ようやく1つの町が復興を終えたその日。

海原を統べる者はヒュージミサイルに、核弾頭ではなく···

 

セントエルモ「さぁ、宴と行こうか!」

 

巨大な花火を打ち上げた。

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回は本編の後日談として、セントエルモの登場会とさせてもらいました。
感想や高評価、お待ちしています。

●St-ELMO
黒い短髪で身長168cm、肉体年齢は20歳。

武装は55cm連装砲×7、機銃×4、小型ミサイル×2、垂直ミサイル×2、ヒュージミサイルを装備している。

黒いセーラー服を着ており、大人びた雰囲気をしている。
元は戦闘を好む性格だったが、必要な時以外は好まなくなっている。

●ヒュージミサイル
OWの1つであり、その場で核弾頭を積んだミサイルを組み立てて発射する。
発射されたミサイルは垂直ミサイルと同じ挙動で飛んでいく。


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DLC⑨ 静かな世界(新実装)

もしも、人類と深海棲艦との戦いが全く違う方向へ進んでいたら?
これはそんな、ifのとあるお話である。


DLCです。本編(番外編や外伝も含む)を全て読み終わってない方は読み終わってから来てください。
···が、この話しに関しては本編との繋がりはありませんので、この話だけは本編を読んでいなくても、問題はありません。


ある町の海に面した土地に建てられた家。

そこに住む一家の少年は学校でいじめられ、加害者側は罰せられた。しかしその報復として家に火炎瓶が数個、投げ込まれた。

 

少年は燃える家の中で···息絶え、燃えている家族を目にし、叫ぶ。声が枯れる程に。声が途絶えてしまう程に。そして少年の近くで爆発が起き、少年は海に投げ出された。

 

少年(誰か···助けて···だれか、たすけて!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年が目を覚ますと、和室の布団の上に寝かされていた。左腕には点滴が刺さっており、股間にはカテーテルが挿入されていた。

また、少年は水色の患者衣を着ており、体を見ると傷跡が残っていた。

 

窓から見える空と、微かに見える青々とした木々、そして蝉の鳴き声。そこから察するに、おそらく季節は夏だろう。

 

誰かが自分を助け、治療してくれたのだろうか?そう思っていると、廊下から足音が聞こえてくる。引き戸が開けられると、そこには白いセーラー服を着た少女が立っており、少女は驚いていた。

 

少女「お、起きたんですか!?良かったぁ!」

 

少女は自身を吹雪と名乗り、待っているようにと言うとどこかへ走っていった。

そして吹雪が呼んできた女性によって、点滴やカテーテルが外される。

 

 

 

少年は2年程眠っていたそうだが、なぜか筋肉の衰えは無かった。そのため普通に歩けており、そんな少年を見た掌サイズの小人である妖精はサムズアップをしていた。

 

少年の名は『鴉間(からすま) ヒロ』と言い、現在は喋ることができなくなっていた。

 

ヒロや吹雪達がいるこの場所は1つの島であり、その北東側にある住宅街だそうだ。そして他の艦娘達とヒロは挨拶をしていった。しかしヒロにとって違和感があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この島に、艦娘と深海棲艦を名乗る者以外···つまり"人間"は、ヒロ以外に誰一人としていなかったのだ──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒロが目覚めてから、5時間が経った。

まずはヒロが住むことになった家の中と部屋を覚え、夕飯はカレーだった。

 

ヒロと同じ家に住んでいるのは金剛と吹雪である。ちなみに、ヒロが目覚めた家は満潮と曙が住む家の空き部屋だったようだ。

 

夕飯を食べ終わり、しばらくして眠ろうと布団に入るが···

 

ヒロ「ハッ···ハッ···ハッ···」

 

目覚めたばかりのヒロは家と家族が燃えた時の事を思い出し、震えていた。

そこに、念のために様子を見に来た金剛がそれを目撃する。すると金剛はヒロを抱き締める。まるで、なぜ震えているか知っているかのように。

 

金剛「大丈夫、大丈夫デース。ここには、私達がいマース」

 

あの日、ヒロが海に落ちた時のような冷たさではなく暖かさに包まれ、ヒロは安心してゆっくりと眠りに入った···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3日後、ヒロは時雨に誘われて住宅街の東側にある海に行く事になった。

住宅街の中にある丘の頂上にある木の下で待ち合わせをしていた。そこから見える、住宅街を見下ろした景色は周囲を一望できる。

 

時雨「やぁ、少し早く着いたね。じゃあ、行こっか」

 

並んで歩く土手の道はやはり人はおらず、静かな風が吹いている。すると途中で戦艦タ級と出会った。そのタ級は通常のタ級とは違い、髪が短かった。

 

タ級「あら、これから何処へ行くのかしら?」

 

タ級からは明るい雰囲気が感じられる。

 

時雨「これからヒロと海へ行ってくるんだよ」

 

タ級「そう、気をつけて行ってらっしゃいな」

 

2人はタ級に手を振り、土手を歩いていく。しばらくすると山の断崖に挟まれた道に出る。しかしその先に海が見え、歩いていくと簡素な更衣室が建てられていた。

 

2人は水着に着替えて海に入る。

そこでは互いに水をかけ合ったり、泳いだりして海を満喫している。

しかし、時雨はある一定のところより先には行かせないように、さりげなく動いていた。

 

別に深いわけでもなく、ヒロと同じくらいの時雨の太ももの辺りまでの水深である。

そこで、ヒロは時雨の背後にある水中を見てみる。

 

 

 

そこは、時雨の後ろから一気に絶壁のようになって深くなっており、海の底には都市が沈んでいた。

 

 

 

時雨は、一気に深くなっている場所へ行かせないようにしている。そう気づいたヒロはそこまでは行かないように遊ぶ事にし、しばらく遊ぶと、戻る時間となる。

 

帰りの途中、土手の少し広くなっている場所で先程のタ級が空を眺めていた。

 

時雨「山城、どうしたんだい?」

 

あのタ級はどうやら山城のようで、タ級(山城)は2人の方を向く。

 

タ級(山城)「そろそろ、物資を積んだヘリが来ると思ってね···来たようね」

 

タ級の背後から1機のヘリが飛んできて、そのまま高度を下ろして行き、学校の校庭へと着陸する。

 

時雨「島の外からの面白いものがあるかも、行ってみよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒロが目覚めてから1週間後、ヒロは住宅街の南側の用水路の掃除を手伝うことになった。

掃除場所へ行くと、曙、満潮、朝潮、荒潮の4人が点検をしていた。

曙はヒロに気づくと掃除用具を手渡してきた。

 

曙「ほら、これがアンタの分よ」

 

用水路の掃除は思っていたより早く終わり、ヒロは曙に掃除用具を返す。

 

曙「残りは私達がやっておくから、また後で」

 

 

 

ヒロは余った時間で山へと入ってみることにする。

しばらく歩くと、いくつかの家を発見する。すると背後から誰かが歩いてきたため、ヒロは振り返る。

そこには、手に何かが入ったビニール袋を持った中枢棲姫が立っていた。

 

中枢棲姫「なるほど、お前が···私は中枢棲姫。せっかくだ、茶でも飲んでいけ」

 

中枢棲姫はヒロを1つの家の中へ招き入れる。

廊下は少し狭いものの、掃除はきちんとされていた。家の中の1室にヒロを待たせると、中枢棲姫は台所へ向かった。

 

少しすると、中枢棲姫はお茶と冷蔵庫から出してきた桜の形の練り切りを持ってきた。

 

中枢棲姫「この島は落ち着くか?」

 

中枢棲姫の問いに、ヒロは練り切りを食べながら頷く。

 

中枢棲姫「好きなだけゆっくりしていくと良い」

 

中枢棲姫はそう言うと、縁側に座って空を眺め始める。ヒロも縁側に座って空を眺め、しばらくしてから帰ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒロが目覚めてから10日後の夜、ヒロは住宅街の南側···用水路を囲んでいる田んぼの更に南側にある、田んぼに囲まれた2階建ての小さな校舎に自転車に乗って向かった。

 

時雨と海に行った帰りに見た、ヘリが着陸した校舎とは違い、小さな校庭にはキャベツ畑とジャングルジムがある。

夜にこの校舎に来た理由は、星を見るためである。

 

綺麗な星空が見れるスポットはいくつかあり、そのうちの1つがここだった。

雲は無く、月明かりに照らされたこの日は綺麗な星空を眺めることができた。

 

そしてそろそろ帰ろうとすると、住宅街から歩いてきた海防艦の艦娘達と会った。

択捉、国後、大東の3人である。

 

3人も星空を見に来たようで、軽い挨拶を交わすとヒロは住宅街へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は流れ、もうじき夏が終わる頃になった。

ヒロと艦娘達の仲は深まり、静かなこの島でゆっくりと過ごしていた。

 

この世界に人はいるのか?その問いに艦娘からは「いるけれど、この島にはいない」と返ってきた。

 

ヒロはこの世界がどうなってしまったのか、それはこの先ゆっくりと探していくだろう。

自由に、気ままに。艦娘と深海棲艦と共に。

 

そしてある日、ヒロの口からようやく出せた言葉。それは──

 

ヒロ「皆、ありがとう」

 

様々な感情が籠ったその言葉は、未来に繋がっていく。

 

そう、今度こそ。

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回は、作者である私が実際に見た夢の内容を繋げて1つの話にしてみたものです。
(物語とするにあたって、欠けている部分は書き足しました)
感想や高評価、お待ちしています。

なお、これにてこの小説は一区切りとさせていただきます。
今後、DLCを追加するかもしれませんが、とりあえずはここで完結とさせていただきます。

ここまで、誠にありがとうございました。

※後日、活動報告にて私が小説を書くに至った経緯を発表しますので、ぜひ読んでみてください。

●鴉間 ヒロ
黒髪の短髪で身長155cm、17歳で8月9日生まれ。

家と家族を焼かれ、爆発物に火が引火した事から海に落ち、2年間眠っていた。
目覚めた後はトラウマにより声が出せなくなっていた。

実は妖精の手により、ドロップの判定となっていたため、眠っていても筋力は衰えなかった。
しかし、なぜヒロをドロップの判定として救ったのかは不明である。


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