ダンジョンに蟲使いが現れるのは間違っているだろうか。 (タロス(元通りすがりの電王好き))
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設定集
設定集その1 トミーロッド、ベル、【ヴァーリ・ファミリア】、???編


20日まで触れないとか書いときながら、2日だけ休みが入って少し余裕ができたので慌てて初投稿です。

投票いつの間にか3つもいただいてとてもびっくりしました!本当にありがとうございます!!_|\○_
月末になって余裕ができてきたら溜め込んだ分もしっかり書いていくつもりですので、気長にお待ちください!

急いで書いたので結構雑かもしれませんが、随時更新していく予定なのでそこは許してください。

とりあえず現時点での設定を書ける限り書きました。ここ変じゃね?とかありましたら教えてください!改善していきます!



【トミーロッド】

 

 

・本創作の主人公。

元美食會副料理長。

基本的な設定や性格は原作通り。

 

 

自分の中でのベルの存在が思ったよりも大きく、ちょくちょく影響を受けている。

グルメ細胞の悪魔が憑いた事自体は嬉しいが、欲を言えばオーガーかヘアモンスターが良かったと内心ちょっとだけがっかりしている。

 

 

・本創作では、ベルを強くしてもう一度トリコやサニーとのような本気の戦いで味わった野生のバトルをすることが目的。勝ち負けはどうでもいいし、最悪死ぬことになっても満足できる戦いであったのならそれでいいとさえ思っている。

ダンジョンに生息する蟲で良さそうなやついたら捕獲する予定。

神を殺してはならない(ヴァーリ談)らしいが、そんなの知らねと言わんばかりに気に食わないやつは誰だろうと殺す。

ベル以外に自身の肉体で戦おうと思える奴がいなくて退屈してる。

 

 

・ヴァーリ・ファミリアの人達のことは、みんな等しく美食會支部長よりちょっと上くらいに思っている。つまり無様に負けたら容赦なく蟲達の卵を産む肉塊ルート直行。

 

 

・原作と同じく自身の蟲は可愛いとは思っているが、死んだら役に立たないor用済みになったらゴミと一蹴。要らないと判断したら一切の躊躇いなく爪で引き裂く。

 

 

・バタフライワームの焼酎漬けがお気に入り。(オリジナル設定)

 

 

・恩恵は貰っていないが、本人は自由に行動ができるのでむしろそれがいいと思っている。

ベルを自身以上の実力者に育てるまでは離れる気はない。

 

 

・パートナーアニマルはオリジナル混合獣類。

(パラサイトエンペラーの進化系を予定)

(出番あるかは11/24の時点で不明、案は一応ある)

 

 

・裏チャンネルには干渉することすらできない。

 

 

・煽り口調は日常。

 

 

 

 

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【ベル・クラネル】

 

 

・本創作の準主人公。

概ね原作の設定通り。

 

 

・原作よりちょっと大人っぽくて発想豊か。

 

 

・トリコで言う小松の立ち位置に近くなりかけてる。

料理の腕はそこそこあるので、特殊調理食材以外なら扱える。

 

 

・恩恵貰う前から祖父から渡されたメニューをこなす形で鍛錬していて、ある程度は身体がしっかりしている。剣技や体術は皆無。

(原作のままでグルメ細胞注入されたら、身体中の細胞が食い尽くされて即死ルート)

 

 

・祖父と村の人との会話を意図せず聞いちゃって自身の家族の名前だけ知る。(メーテリア)

直後に問い詰めるが、有耶無耶にされて聞けず。

(オリジナル設定)

 

 

・ヴァーリ・ファミリアの人達は強くてかっこいいから大好き。

 

 

・アフテクとレグリオは、ベルの雰囲気にどこか既視感を感じているようだが…?

 

 

・ディニエルのことがちょっとずつ気になり始めている。

 

 

・トミーロッドのことは見た目も相まってだいぶ怖いけど、優しいのを知ってるからいい人だと思っている。

 

 

・ゼブラの力の影響で、性格などがほんの少しずつ…?

 

 

 

 

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【ヴァーリ】

 

 

・本創作オリジナルファミリア

【ヴァーリ・ファミリア】の主神

 

 

・イメージキャラクターは、キックフライトのルリハがに近いもの。

 

 

・基本笑顔でいつもは天真爛漫。公私はしっかり分けているタイプ。

 

 

・感情表現が結構豊かで、(ロキ以外には)第一印象から可愛いと思われるやつ。

 

 

・天界で神々に求愛されることもあったが、事務仕事でそれどころじゃないと断り続けていたらいつの間にか難攻不落みたいに扱われた。

 

 

・基本は仕事帰りのOLみたく、そこそこ高い身長で蒼髪のポニーテール、第一ボタン外したワイシャツと黒のズボン、革靴を履いてる。

 

 

・キレると誰が相手であれ口が悪くなる。

 

 

・天界で面倒ごとを押し付けられまくって書類書くなどの事務仕事がとにかく多かったため、嫌々言いながらもフェルズを通してギルドから仕事手伝うように頼まれてこなしたり(ベルが加入するちょっと前くらいからファミリアの仕事の方に力を入れるため断るようになった)、自分から進んで団長達の分のファミリアの仕事をこなしたりと結構真面目。

 

 

・たまに働き過ぎて過労で倒れることも。

 

 

・ロキとフレイヤが特に問題行動起こしてばっかりで名前を聞かない日がなかった程のため(天界の頃の時点では)個人的に嫌い。

+

ロキの悪戯で大好きな兄弟を殺されているため、ロキは特に大嫌い。

 

 

・(ロキによって腹違いの兄であるホズが騙され、異母兄の光の神バルドルを殺され復讐をするためにリンドと呼ばれる女性によって生まれた。そして一夜で成人し、ホズを殺した。)

 

 

最初出会った頃は、天界の父親(オーディン)からグングニル貰ってぶん投げたろかと本気でやろうとしていた程。

しばらくしてからようやく少しずつ緩和されたが、未だに無意識に睨む程には嫌い続けている。

ベルの加入が後々に…?

 

 

・ゼウスやヘラとは結構仲が良かった。そして、その2人相手にまともに話せる数少ない神。

後述するが、それぞれのファミリアから子どもを預かる程信頼されていた。

 

 

・ゼウスとヘラが黒龍に負けて眷族がほぼ全て死んだと聞いた際、最初は子ども達に伝えれず1人で悲しんでいたが、直後にフレイヤとロキの2つのファミリアが2人を追放しようとしているのを聞き慌てて止めに入った。

が、当時はファミリアを持っていなかったため発言力がほとんどなかったのも相まって努力虚しく、ゼウスとヘラの2人を残すことができなかった。

それ以降、ロキとフレイヤ、2つのファミリアを更に嫌うようになった。

 

 

・暗黒期は、預かった子ども達への風評被害の対処や【アストレア・ファミリア】との連携の強化、ギルドでの事務仕事や闇派閥の対策などに奔走し続けて死の7日間を過ごした。

(アフテクという偽名を使ったのも対処法の一つ。)

石を投げられたり等色々あったが、なんとか闇派閥との決戦に勝って平和を取り戻す。

が、神といえど一般人と変わらない身体能力などのため過労で倒れてしまう。

 

 

・暗黒期が来る前まではファミリアなんてものは作るつもりはなかった。

が、暗黒期が来てこのままだと子どもが危ないことを身を持って知ったため、死の7日間が過ぎた後にファミリアを結成した。

 

 

・【アストレア・ファミリア】とも仲が良かった。

遠征に行くと聞くたびに自身の眷族を無償で応援に向かわせる程。団長達もアストレア・ファミリアと同じ食卓を囲める程とても仲が良い。

たまたま団員を貸せなかった日に、闇派閥の手でダンジョン内の罠に誘い込まれて壊滅してしまった。

その一件から、個人としても主神としても闇派閥を絶対に許さない姿勢。

 

 

・現在はベルが可愛い模様。あと髪がふさふさで最高。

 

 

・善神。某人理修復ゲームみたく表示するならば、秩序・善となる。

 

 

・そもそも出向くことすら極稀だが、酒場などの公共の場では寛容になる場合がある。根本的な私怨などの深い感情が関わるときは例外だが…?

 

 

 

 

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【アフテク・フォリエット】

(本当の名前はアグラレス・マクト・ローヴァル)

 

 

・イメージキャラクターは、口調が荒くなったverのココが一番近い。かも?+過保護

服装はリヴェリアの通常時のアレンジした…っぽいもの。

(曖昧で申し訳ない)

 

 

・種族はハイエルフ。

 

 

・【ヴァーリ・ファミリア】の団長。

レベルは7。

ステイタスは魔力のみSS、それ以外は平均A↑。

(ステイタスの限界値?人は限界と思わなければどこまでも成長できるものなのだぞ。by アフテク)

発展アビリティ『魔導』『精癒』持ち。

 

 

・二つ名は『魔導神(ヘカテー)』。

(名前安直過ぎるかもだけどそこはごめんなさい)

 

 

・攻撃魔法2種類、回復魔法1種類、付与魔法1種類、特殊魔法1種類、反射魔法1種類、そして護身術に近いが槍術を使えるかなりの万能。

(魔法は3種類まで?決めつけは良くないぞ。いけると思えば人はどこまでもいけるものだ。

by アフテク)

 

 

・槍と杖が合わさったような槍を主武器にする魔法槍兵。

(魔法剣士の槍ver)(魔法8、槍術2くらい)

 

 

・武器は十文字槍の中央部分が杖の形になっていて、突き刺すことも魔法を出すこともできるアフテク専用特別装備。

 

 

・実は【ヘラ・ファミリア】所属のハイエルフ(女性)と、【ゼウス・ファミリア】所属のハイエルフ(男性)との間に生まれた子。ヘラの方で引き取ることに。

将来有望な子として名前も知られていてとても良い子。この頃は堂々とアグラレスという名を名乗っていた。

 

 

・黒龍討伐の遠征直前、現代で言う中学生くらいの歳の時にアルフィアがヴァーリの元に連れて行って預かるように頼んだ。(ほぼ強制)

この時点でのレベルは2。二つ名はまだ早いので付けないという旨をヘラが聞き、神会で事前に伝えている。

 

 

・暗黒期の頃はレベル4。

主に【アストレア・ファミリア】とよく動いていたことがあり、決戦時は共にダンジョンに向かいアルフィアと対峙した。

(リヴェリア?あーそういやなんか無駄にでかい図体のドワーフと一緒になんか変なハイエルフいたなぁ…どうでもいいが。という認識)

 

 

・リヴェリアとは暗黒期のダンジョン内での決戦前にて初の顔合わせ。

この時はアルフィアという優先事項もあったため、特にこれといった会話もなかった。

リヴェリア側はアフテクのことを知っているようで、少し複雑な顔をしていたが……?

 

 

・暗黒期が終わった直後、2回目で街内で偶然すれ違った時にリヴェリアが本当の名前の方で呼んでしまい、周りの市民達に一斉に睨まれ石を投げられかけたことがあった。

慌てて訂正しながら路地裏に駆け込んで、二度と言わないように言った。

 

 

(この辺のエピソードはいつか出せたら番外編みたいな形で出したいですね。

トミーロッド関係ないので、良くないとかあれば止めますがw)

 

 

・団長としての仕事がない時は、レグリオと共にダンジョン58階層の「龍の壺」という場所まで行き、ひたすらにモンスター狩りという名の耐久レースを行っている。

 

 

 

 

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【レグリオ・ガルム】

 

 

・イメージキャラクターは、仮面ライダー電王のモモタロスが一番近め。

主武器と一部の戦い方はトリコのノッキングマスター次郎のを使用。

 

 

・種族は狼人。

 

 

・【ヴァーリ・ファミリア】の副団長。

レベルは7。

ステイタスは敏捷、器用がSS。魔力がDでそれ以外はA↑。発展アビリティ『破砕』持ち。

 

 

・二つ名は『月の狼(フェンリスウールヴ)』

(元ネタは北欧神話の例の狼から。暗黒期が終わってからこの二つ名が決まった時、ヴァーリはちょっと複雑な顔をしていた。)

 

 

・状況に応じて不壊属性の黒と白の双剣と、まるで狼の爪を模したかのような特注のグローブを使い分けている。

(このグローブは、アフテクのとある魔法と組み合わせることで最強の攻撃を行うことができる。トリコのクッキングフェス編見た人ならわかるやつです。)

 

 

(ちなみにアフテクとレグリオは恋人ではないです。お互いに一番上手く動きを合わせてくれて信頼できる人…という認識から離れません。)

 

恋人if……はないか、うん。

 

 

・大まかなことは、レベルも含めてアフテクのと同じ。

 

 

・【ゼウス・ファミリア】で活躍していた狼人の子ども。

 

 

・黒龍討伐の直前に、ゼウスの指示でザルドがヴァーリの元に預けた。

 

 

・オラリオ暗黒期の時は【フレイヤ・ファミリア】と共に、地上側でザルドと対面の後闇派閥討伐組に参加していた。

レグリオがザルドを倒すことはできずとも、長く戦い続けてかなりのダメージを与えて弱らせていたため、オッタルがかなり余裕を持って倒せた。

 

(この時倒したのはオッタルだが、長く戦い弱らせたのはレグリオのため経験値はレグリオがごっそり持っていった。

これにより、実質的にはレグリオが倒したようなものという認識になっている。)

(オッタルはなんとかランクアップできたが経験値がかなり少ないため、原作より全体的にだいたい2段階ほどステイタスがダウンした状態になっている。)

 

 

・決戦時にベートと顔合わせ。

この時点でのレグリオからのベートの認識は、素質のある同族程度のものだった。

ベートが死の7日間の後【ヴィーザル・ファミリア】を抜けてから、レグリオにもっと強くなるために頭を下げて特訓を行うようになった。

お互いのファミリアの都合上頻度は下がったが、ベルが加入した後も変わらず特訓している。

遠征の前にも特訓をする約束もしていた程。

 

 

・上記のことから、ベートとは結構仲がいい。ベートの悩みを聞くこともあるほど。

また、当時のベート(原作のベート)の性格や言動が大きな誤解を招くと判断して治すとまではいかずとも良い方向に流した。そのため、本シリーズでのベートは原作で言うところの団員と打ち解けた辺りからのスタートとなる。

 

 

 

 

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【パーポス・タイター】

 

 

・イメージキャラクターは、名前の一部、言動、性格など全てシュタインズゲートゼロの橋田至。

神の恩恵とスキルによって物を作るのが更に上手くなっていて、ロボットも作ることが可能になっている。

 

 

トミーロッド……美食會……ロボット…あっふーん…(察し)

 

 

・【ヴァーリ・ファミリア】所属。

レベルは4。種族はヒューマン。

二つ名は『創造神の担い手(スーパーハッカー)』。

 

 

・ヴァーリからよく「スーパーハカー」と間違えられる。元ネタもシュタゲに。

 

 

・ステイタスは魔力と器用のみS。それ以外は平均C↑。発展アビリティ『神秘』持ち。

 

 

・基本は武器を使わないが、ダンジョンに潜る際は護身用として短剣を隠し持っている。

自作の特殊な銃のようなもの(見た目は未来ガジェット1号機ビット粒子砲)を使い、出したい物の名前を言うと共に引き金を引くと出すことができる。

 

 

・入団時期は死の7日間が過ぎた直後。

オラリオ内で家族と暮らしていたが、闇派閥の侵攻で両親を殺され孤児になっていたところをヴァーリに引き取られる形で入る。

(この時点でベルが加入した時とあまり変わらない歳と体格。)

 

 

・加入した頃から物作りが大好きで、レベル2の時点で神秘の発展アビリティを持つ。

神秘持ちは少なく総じて狙われやすいので、自力でもある程度は防衛できるようにアフテクとレグリオの2人が徹底的にしごいてレベル上げとステイタス上げをした。

結果的にそれなりに防衛できるようになったので感謝はしているが、それはそれとして2人のことはちょっと苦手という認識。

 

 

・アスフィはファミリアのメンバー以外で数少ないまともに話せる人。

アイテムの質の良さ等で競うこともある。

パーポスがだいたい勝っているため、アスフィにとってはライバルみたいなもの。

 

 

 

 

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【ディニエル・ワルク】

 

 

・イメージキャラクターは、服装や能力は四天王のココ。性格は一部ポケモンのイブキから。ほとんどはオリジナル。+アフテクの過保護。

 

 

・【ヴァーリ・ファミリア】所属。

レベルは3。二つ名は『毒の従者(ヴェナムバレット)』。

 

 

・ステイタスは全て平均B↑。毒はスキル扱い(元は体質)のためステイタスはあまり関係しない。

 

 

・極度に感情を表に出すと、体内の毒が自分の意識とは関係なく溢れ出す。

 

 

・自身に優しくする者や普通に接してくれる者は、絶対裏があると思い込んでいる。

 

 

・アフテクの一族と同じエルフの森出身。

普通の家庭だったが、ディニエルが生まれた際毒が溢れ出てまともに世話もできない状態だったため、周りの人どころか実の親すらも見離した。

 

 

・そんなディニエルを自身の従者として引き取ったのが、【ヘラ・ファミリア】所属のアフテクの母親。

後に【ヘラ・ファミリア】で世話を一部引き受け、一緒に過ごしたのがアフテク。

そのため、アフテクの一族(特に一緒に過ごしてくれたアフテクに感謝してもしきれない。)

 

 

・黒龍討伐失敗の際、アフテクの両親に守られて両親は亡くなった。

その時アフテクの両親に「ヴァーリのところにいるアグラレスのことをよろしく頼む」と言われ、オラリオに1人で戻る。

 

 

・そしてボロボロの状態でヴァーリの元に来て事情を説明し、そのままアフテクに仕える形で入団する。

暗黒期の頃は、ヴァーリやアフテクの身の回りの世話等で奔走していたため実はヴァーリの次くらいに影の貢献者であり過労枠の一人。

 

 

・ベルのことを信用できていないようだが…?

 

 

 

 

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【???】

 

・オリジナルキャラ。

 

・所属は【ディアンケヒト・ファミリア】の予定。

 

 

・トリコの世界で言うところの「再生屋」枠。

 

 

・【ミアハ・ファミリア】とはそれなりに仲がいい。表立っては仲良くできないため裏でこっそりとだが。

 

 

 

 

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【???】

 

 

・オリジナル設定を持ったトリコに出てくるキャラ。

 

 

・闇派閥側。

 

 

・トミーロッドが……というよりは美食會として見過ごせない相手。

 

 

・後々とんでもない猛獣を出してくる。

 

 

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【???】

 

・グルメカジノと言えばこの人、という人。

 

・原作と細かい部分は変わってるが、大まかな部分は変わりなし。

 

・ただし、勝負をしかける理由は大きく変更している。

 

 

 

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【???】

 

・食林寺にて登場。

 

・原作とは別人(の予定)

 

・ダンジョン37階層の闘技場にいる。

 

 

 




とりあえずここまでです。読んでくださりありがとうございます!

よろしければ感想(?)や評価、投票などお願いします!今後の励みになります!!

更に別枠にて自己満という名の番外編も書くつもりではいますが、今のところは本編終わるまでやらないつもりです。いつになるのかわからないですけどね…。いやそもそもちゃんと人気あるのかな…

ちなみに今後のストーリー(2/9時点)は、

????(オリジナル展開)(間に別のグルメモンスター)
      ↓
イシュタルファミリア+???(こちらもオリジナル展開)

となる予定ではあります。

なるべくトリコの話も入れつつダンまちのストーリーも混ぜたいですが、中々難しいので結構悩んでます。

この設定の方でだけアンケートを置いておきますので、よろしければそちらもお願いします。


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本編
グルメ1:昆虫使い、オラリオに立つ


初投稿です。


「残飯食ってる暇はねーし!」

魔王の吐瀉物(サタンボミット)!!』

 

グルメ界。

全ての一般的な人間が居住することのできない、極めて過酷な環境で構成される地域だ。

 

その中のエリア2と呼ばれる地域にて起きようとしている戦いに向け、1人の男の髪から人が吐き出されていた。

オカマのような容姿と濃い青を基調とした赤い水玉模様の服装、昆虫を思わせる背中の羽と赤のズボン、茶色のブーツに両腕と腰に拘束具を付けた美食會と呼ばれる組織の副料理長であるトミーロッドという人物だ。

 

そして同じ美食會副料理長のスタージュン、グリンパーチと共に戦っていたが、その途中敵組織の頭目ジョアの菌によって溶かされてしまい、死を迎えていた…。

 

「(これが、死ぬという感覚か……存外に悪くない人生だったよ…。)」

 

不思議な光に包まれながら、トミーロッドはふとそんなことを思いつつ瞼を閉じた。

 

 

「………………?」

 

 

が、どれだけ経とうが意識が残っていることに違和感を感じ一度目を開けてみると、そこはグルメ界でも人間界でも見かけたことのない人が行き来している街の大通りの真っ只中であった。

周りを見渡すと、かつて所属していた美食會ですらも存在しなかった見た目の人たちが当たり前のように生活していた。

 

「(死後の世界、という風でもなさそうだが…ここは何処だ…?周りにいる奴らも気になるが、なぜボクは五体満足で生きてるんだ…?)」

 

突然の出来事にさしものトミーロッドも困惑を隠せないが、それも当然であろう。

本当に死んだと思っていた自分が見知らぬ世界に飛ばされていただけでなく、ジョアに溶かされたはずの体が嘘のように原型を保てているのだから。

そして、ふと自身の小型の収納袋に手を入れ手持ちを確認していると、料理人を奪っていた頃の美食會でも使用していたが自身が所持した覚えのない()()()()()()が入っていた。

 

「(こんな物持ってきた覚えなんてないが、ここでいくら考えてもしょうがないか……変わらず虫を出せるようだし、()()()もちゃんとついている。なら、とりあえずこの街について何か……ん?)」

 

「へぶっ」

 

そう考え、どこを見ても全く知らない街についての調査がてら歩き回ろうかと思ったその時、何かが背中の前羽に当たった。

 

「いてて……あっ!ご、ごめんなさいぶつかってしまって!」

 

「あぁ?……あっそ。」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

side ベル

彼は、今は亡き祖父の「冒険者に、そして英雄になりたいならオラリオに行くといい」という遺言に従いこの地に足を踏み入れていた。

 

祖父に英雄になることを誓い日々その努力を怠っていないベルにとっては、確定事項にも等しかったため祖父の葬式が終わってすぐに向かっていた。

 

そして、オラリオの門番に「冒険者になるのなら、ギルドというところに行くとよい」と聞きギルドに向かったが、そこで「冒険者になるのであれば、まずどこかファミリアに入っていただいてから改めて冒険者登録をしにお越しください。」といった指示を受けた。

 

という経緯がありファミリア探しを行っていたベルだったが、(田舎で暮らしていた頃から欠かさず鍛えていたとはいえ)いかにも貧弱な見た目と可愛らしい容姿、そして駆け出しどころかギルドで支給されたナイフ以外ない装備も相まってどこのファミリアでも門前払いで終わっていた。

 

途方に暮れたベルだが…

 

「やっぱり見た目のせいなのかなぁ…そうだ!ダンジョンでモンスターから魔石を取ってそれを見せれb」

 

そんな無意識な独り言を言い切る前に、

 

「へぶっ」

 

前をよく見ていなかったためか、僕はすぐ前に立っていた人の硬い羽にぶつかってしまった。

 

「いてて……あっ!ご、ごめんなさいぶつかってしまって!」

 

「あぁ?ん。……あっそ。」

 

何か言われるのだろうなと無意識に内心身構えていると、声だけでもわかる程に興味なさげな返事が返ってきて思わず顔をあげた。

そして僕は、気づいたらそのまま立ち去ろうとしていく男の人?を追いかけていた。

 

「待ってください!」 「…んだよ」

 

その男の人?は立ち止まり、いかにも鬱陶しいと言わんばかりにイライラしてるような表情を見せる。

そして、僕も何も考えずに追いかけてしまったため何を言えばいいのかわからなくなってしまう。

「あ、あの…さっきの、その……」

 

とりあえず、先程のぶつかってしまったことについて何か言おうとしたが、

 

「……はぁ。おい、お前」

 

不意に声をかけられる。

 

「は、はい!」

 

「そんなに何かしたいんならこの街について教えな、それでいいだろ」

 

「へっ、えっ、それでいいんですか…?」

 

「いいも何も、ボクがそう言ってるんだ。それとも、こっちのがお望みなのかなぁ?」

 

男の人?はそう言い突然口を大きく開ける。その瞬間、その口の中から真っ黒で目と口と思わしき部分が赤く輝く模様…いや、()()と思わせるかのようにうねうねと動き出すそれを見せつけてくる。

 

村にいた頃に鍛える一環でモンスターと戦って多少の奇妙な見た目は見慣れているとはいえ、目の前のそれはモンスターの比にもならない脅威だと本能的に感じ取った。感じ取ってしまったのだ。

 

思わず無言で何度も首を横に振った僕を見て、その人は口を閉じ歩き出した。慌ててついて行きつつ、僕はオラリオについて自分が知る限りのこと(ほとんど祖父の受け売り)を話した。




ここまで読んでくださりありがとうございます。
よろしければ感想や評価などお願いします。今後のシナリオ大体はできてますが、指摘などありましたらちょこちょこ変えていくつもりです。


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グルメ2:期待と兆し

書いてくださった感想があまりにも嬉しくて、頑張ろうと躍起になってリアルをギリギリまで切り詰めながら作業用BGMをお供に設定と一緒に書き進めていたらその分反動が重くのしかかってきちゃったので初投稿です。



side トミーロッド

 

見知らぬガキにぶつかられ、オラリオと呼ばれているらしい街を歩き回りつつガキが知っていること全てを説明してもらった。

途中まではつまらない街かと内心呆れ話終わったら移動するか…と考えていたが、とある単語と説明を聞いてその考えは切り捨てた。

 

その単語とは、ダンジョン。

 

そのガキ曰く、ダンジョンというのは階段構造上になっている地下空間というものらしい。

階層が多数あり、数多くのモンスターがその中で生まれ棲息している魔窟でもあるのだとか。

残念なことにそこに虫型のモンスターがいるかどうかは実際に行ってみないとわからないらしい。

が、もしいるのであればボクの()()()()()()()()()がさらに増えるかもしれない…。

 

幸い、ボクの蟲達はクッキングフェスでの戦争時と比べボク自身から見ても異常な程に強くなっている。

ボク自身も以前とは見違えるくらい細胞が活性化しているのがわかる。今のボクは余程のことがない限り()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

それは純粋に嬉しいことだが、あの時のような戦いはもうできないのはなんとも面白くない生活になりそうだな…と内心ため息をつく。

 

そこまで考えた所で一旦思考を切り上げ、ボクは目の前のガキに話しかける。

 

「おい、ガキ」

 

「は、はい!あと、僕はガキじゃなくてベル・クラネルです!」

 

「ふん、ガキの名前なんざいちいち覚える必要なんてない。

それより、そのダンジョンってのはどこにある?」

 

「へ?え、えっとオラリオの中心にあるバベルという建物の真下ですけど…」

 

「そうか」

 

バベル。中心ということは道中に見えた真っ黒な摩天楼施設らしきところか。幸いなことに、この世界に来てからボクはボスからの指令どころか何にも縛られていない。そうとわかれば…

 

「あ、あの?まさかとは思いますけど…」

 

「あ?そのダンジョンに行ってみるさ。なに、ちょっと遊びに行く程度だよ。」

 

「ええぇぇぇぇぇ!!?!?だ、だめですよ!!まだ僕達冒険者登録どころか恩恵も貰っていないんですよ!!僕も潜りたいとは思ってますけど危なすぎます!!!」

 

突然大声で止められる。ガキのくせにボクの保護者気取りか!

だが、そんなものをいちいち聞く必要など一切ない。

 

「うるさいなぁ…ボクが何をしようが君の知ったことではないだろ。」

 

「そ、それはそうですけど…」

 

言いくるめられたガキが何かを言いたそうにしている。まだ言いたいことがあるのかとうんざり気味だったが、ふと考える。

さっきこいつは僕も潜りたいけど、と言っていたな…

だがボクみたいなのはともかく、このガキ1人でだとダンジョンという危ない場所(らしい)所に行くのは危険、ということになるか…。

 

まさか、こいつボクに連れて行って欲しいとでも言いたいのか…!?

 

もしそうならマジでやめてほしいものだが…と、考えている最中

 

「でも、きっかけがなんであれ僕みたいな人の話をあなたは真面目に聞いてくれたんです。少なくとも悪い人ではないと思いました。強さもわからないので、もしかしたら余計なお世話かもしれません。ですが、その人がダンジョンに丸腰で向かって死にに行くのを見てみぬ振りをするなんて、とてもできません!!」

 

さっきまでの生まれたての子鹿のようにプルプルと震え縮こまりかけていたガキの姿など、微塵も感じられないほどに今のこいつは真剣な瞳でボクを見ていた。

 

言っている事自体は本当に余計なお世話だし、そもそも美食會というあらゆる食材を手段を選ばず分捕る組織の副料理長になっている時点で、こいつの言う悪い人でしかない。

 

だが、ボクはその表情、何より瞳にどこか見覚えがあった。

 

「(この瞳を、ボクは知っている…。まさかあの時の……)」

 

そして思い返すは、アイスヘルにてセンチュリースープを巡ってトリコと文字通り死闘を繰り広げていた時。

そして、クッキングフェス会場にて美食會総出で料理人を攫いに行った際に出くわした、サニーという男と決戦をした時。

 

「(あの時のあいつらと、同じ瞳…もしかして、いや、まさかこのガキは…!)」

 

美食會に入った頃からほとんどのことに関心がなく、ただひたすらに蟲と食材捕獲のことしか考えていなかったボクが、唯一新しく持てた関心。

 

今はまだこいつは見た目、実力ともに最底辺と言ってもいい程に弱い。

 

だが、もし()()()が実力を付けたら…

もし、()()()があの時と同じような戦いを繰り広げてくれるのなら…!

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()に思わずそう期待を持ち始めた。

 

「(何かの運命なのか、とさえ思える…ボクの袋には、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…。だが、これは()()()()()()()()()()()を持たなければ、逆に喰われてしまう危険な代物。こいつの覚悟を聞いておく必要がある、か……)」

 

ついさっきまで考えていた蟲のコレクション等のことを後回しにするか、と頭の片隅に追いやりつつ、ボクは改めて少年(ベル)に向き直る。

 

「おい」

 

「は、はい!なんでしょうか…?えっと…」

 

先程までの真剣な表情はどこへやら。

一瞬でさっきまでの情けない顔に戻ってしまう。

 

「…ボクの名はトミーロッドだ。ダンジョンとやらは後にする。まずファミリアとやらはどこにあるんだ?」

 

「はい?えっと、トミーロッドさん。いきなり過ぎてちょっと追いつけないですが…ファミリアというのは1人の神様ではなく、色々な神様がそれぞれで設立しているものなんです。数が多く、1つひとつ回るのは骨が折れると思いますので、まずはギルドというところに行って聞きに行かないと……」

 

そう少年(ベル)がぎこちないながらも説明し、面倒くさいがしょうがないか…と思考を切り替え、ギルドとかいう場所に向かおうとした矢先に、

 

「へぇ〜。なら、お2人ともうちに来る?」

 

真後ろから突然全く知らない女に声をかけられた。

少し驚きながらも背後へ振り向くと、手にマントのような物を持った女性が立っていた。

その姿は蒼髪のポニーテールでスーツのワイシャツだけと黒いズボンと革靴を履き、いかにも仕事帰りのOLという雰囲気を漂わせているものだった。

 

「……誰だお前。」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

side ヴァーリ

 

「……誰だお前。」

 

バサッ「あらそうね、私としたことが自己紹介を忘れていたわ…私はヴァーリ!貴方達の言う神様よ!」

 

「……」「え、えぇぇぇ!!?!!」

 

魔導具として付けていたマントを(無駄に)大きな動作で取り、少々きまらないながらもその大き過ぎず小さくもない胸を揺らし、元気な声で自己紹介をする彼女の名はヴァーリ。

天界よりこの下界であるオラリオに降り立った超越存在(デウスデア)である神の1柱だ。

オラリオでは、ウラノスに次ぐギルドや神々の纏め役兼探索系ファミリア【ヴァーリ・ファミリア】の主神として過ごしている。

謂わば神々の副リーダー的存在だ。

 

そもそもヴァーリというのは、北欧神話において司法を司る神のことであり、かの大神オーディンの子供の1人である。

 

それはさて置き、彼女は眷族探しをしていた。

基本的に形式は存在しないが、大半のファミリアは入団希望者自らが入りたいファミリアの拠点、つまり館に訪れ、そこで交渉をしファミリアごとで決められている試験や面接などの手順を踏んでいく必要がある。

そこに主神が関わることは勿論あるが、それは団員に見定められてからの場合が大半だ。

 

が、彼女は「そんなまだるっこしいことやってらんないわ!」と、主神自ら自身の鑑識眼(自称)を持って護衛の眷族をも引き連れず、姿を隠せる魔導具のマントを借りてまで1人で探していたのだ。

 

当然そんな事情を知らない2人にとってはまさに渡りに船……ではなく寝耳に水案件だ。突然の事態に頭がついてこれずその場で硬直してしまうベルと、何言ってんだこいつと言わんばかりの面倒事に巻き込まれたくないという表情をするトミーロッドの2人の表情に、彼女は構わず話を続ける。

 

「話は途中からだけど聞かせてもらったわ。ファミリアを探しているのでしょう?

なら、私のところに来ない?私もちょうど眷族を探していたのよ!」

 

傍から見れば適当に眷族を選んでいると誤解されてもおかしくないような振る舞いをする彼女だが、適当にというわけではなかった。

 

「(たまたま歩いていたら大声が聞こえちゃって、そこに向かったらすっごく強そうな雰囲気を出している人?と、これから先が楽しみな表情と雰囲気を持っている小人族みたいな子を見つけてしまったわ…!

ほとんど偶然だけど、先に見つけれたの私だしこれはいいってことよね!?)」

 

……前言撤回。やっぱり適当なのかもしれない。

そして、キラキラと目を輝かせて返事を待つ神ヴァーリを端にトミーロッドとベルは、

 

「……行くぞベル、速くギルドとやらに向かわn「ほんとですか!?是非!!是非入らせてください!!」「……マジかよ」

トミーロッドは面倒くさいやつには関わらないとばかりに無視を決め込み、そそくさとベルを連れてギルドに向かおうとしていたが、ベルの方はめちゃくちゃ乗り気だった。なんならすぐにでも入りたいという表情さえ出していた。

普段は思うことはあっても声に出すことはほぼ皆無なトミーロッドも、思わず反応してしまう程にベルは即答だった。

ベルはともかくさすがの神ヴァーリもトミーロッドの疑いをかけているような態度に気づき、

 

「勿論大歓迎よ!よろしくね可愛い兎さん!

で…むむっ、その様子は私を疑ってるのかな…?大丈夫よ!団員は4人しかいないけど、みんな私の自慢の子供たちだから!!」

 

簡潔に(トミーロッドにとっては)見当外れなことを言い、もういいよねと言わんばかりの様子と、ほらほら早く!と言いつつベルの腕を引っ張り館に連れて行くヴァーリ。引っ張られてはいるがスキップでもしそうな勢いでテンションが上がりとても幸せそうな笑顔を浮かべるベル。

そんな載せられやすいベルを見て、早速幸先が不安だ…が、仕方ないか…と再び考えることを止めて歩き始めたトミーロッド。

 

 

が、その瞬間

 

()()()()()()()()()()()

 

すぐに背後を振り向くトミーロッド。

 

そこにあるのは説明の際にベルがバベルと呼んでいた建物だけ。

 

気のせいかと一瞬思ったが、確かに視線は感じた。バベルの中から誰かがこちらを覗いているとすぐに予測を立てたトミーロッド。

 

ただの視線なら、感じ取りはしてもそこまで気にはならなかっただろう。

 

だが、

 

トミーロッドは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

つい先程自分と戦わせるためにベルを強くすることを(内心で)決めたトミーロッドにとっては、無視できないものだった。

 

だが、視線の主が誰なのかまではわからない。少なくとも、()()()()()()()()()()()()()()()のは明らかだった。

 

そう判断し、彼は()()()()()()()()

 

瞬間中からクキュクキュとまるで虫が這い出て来るような奇っ怪な音が現れ、漆黒の霧のようなモヤを、そしてその霧の中からクワガタムシのように大きく発達した鋏と硬い外殻を持った()()()1()()()()()()()

 

「さぁ、行ってきな。殺して構わない。」

 

トミーロッドの合図と共に一瞬でバベルに向かって飛び出した昆虫。その昆虫は《《かつて氷の大陸で使用したそれとは明らかに比べ物にならないほどの速度、当時の倍近くの大きさや切断力を誇る鋏、そしてかつての同胞が使用していたグルメ界屈指の硬さを持つロックオークの樹液を思わせる外殻を備えていた》》。

 

「どうやらあの時食っておいて正解だったみたいだなぁ。まさか()()()()()()()()()()()()()()()…。これからが楽しみだ……」

 

予想以上の自分の進化に思わず感嘆するトミーロッド。ベルを強くする合間に自分の実力がどれだけ上がったかをどうやって試そうか…そんなことを考えながらベル達を追ってトミーロッドは飛んで行ったのだった。

 

────────────────────

 

side フレイヤ

 

「あの子の魂、凄く綺麗…!なんて純粋で透明な魂なのかしら…。あぁ……彼が欲しいわ…」

 

バベルの塔、最上階。

オラリオ最強派閥の主神のみが借りることを許されている部屋だ。

その部屋にて、自身の護衛であり最強派閥の団長でもある猪人を控えさせる彼女の名はフレイヤ。

オラリオ最強の派閥【フレイヤ・ファミリア】の主神だ。

 

そんなフレイヤは、今日もガラス張りの窓から外を眺めていた。

彼女は自身の隣に立つ存在、つまり伴侶(オーズ)を求めている。それは天界であれ下界であれ変わらないことだった。

だが、誰でもいいというわけではない。

その者の本質である魂の輝きが彼女にとって魅惑的なものである必要があるのだ。

彼女は、対象の魂の本質を見抜くことができるその洞察眼をもって英雄足りえる者、つまり魂がより輝いている者を探しては、それが例え既に別のファミリアに所属していようとも構わず自身の眷族にしているのだ。

故に、たまたまではあるが見かけたベルという少年の魂に、一瞬で一目惚れしたのだ。

 

そうしてベルをどう手に入れるかということを思考していたその時、隣にいた()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()がこちらを向いた。

視線に気づかれるくらいどうということはない。

フレイヤ自身そう思い構わずベルの向かった方角に視線を向けていたが、直後にあり得ない事が起きた。

 

ベルの隣にいた者から、変わらず漆黒だが()()()()()()()()()()()()()()()()()からだ。

予兆も何もなしに突然現れたこの魂。いや、現れたというよりは()()()()()()というのが正しいか。

そう判断したフレイヤだが、更に予想外の事態が起きる。

 

その生物がこちらに向かって飛んできているからだ。

こちらを狙いにきたと即判断。フレイヤは控えさせていた自身の護衛を呼び出す。

 

「オッタル!」

 

主神からの突然の呼び出しにも動じず、素早く入室する護衛の猪人。

 

「フレイヤ様、如何されm…フレイヤ様!」

 

オッタルも気づいたのか、部屋の隅に置いていた大剣を取りすぐさまフレイヤの前に割り込む。

直後、ガラス張りの窓の一部分が割られ1匹のクワガタムシにも思える昆虫が侵入してきた。

 

「フレイヤ様、すぐにお下がりください。」

 

「えぇ。」

 

オッタルの急な指示に頷き、すぐに距離を取るフレイヤ。

直後、迫ってくる昆虫を真っ二つにしようとオッタルは正面から大剣を振り下ろす。

 

が、掠りはしたが素早く回避され、昆虫はそのままオッタルの脇腹を貫き通り過ぎる。

 

「(速すぎる……!!それに外殻が硬いのかこれは…掠っただけで、僅かだが俺の()()()()()()()…。)」

 

「オッタル!」 「…っ!」

 

いつものフレイヤからは考えられない焦りが混じった声で、すぐさま我に帰るオッタル。

 

「(奴を斬るには、関節部を狙うしかないか…!)」

 

すぐにそう思考を切り替え、フレイヤの御前で血を流すわけにはいかないと血が流れ始めた脇腹の筋肉を無理矢理膨張させ出血を抑える。

そして、再び大剣を構える。

昆虫も飛びながら向きを180°切り替え、再び素早く突進してくる。

オッタルはそれを寸前のところで見切り、横に回避しながら頭と胴体の繋ぎ目である関節部を素早く両断した。

直後、昆虫は真っ二つに斬られ、そのまま落ちた。

昆虫が沈黙したことを確認したオッタルは、そのまま貫かれた自らの脇腹を静かに触る。

 

「オッタル、大丈夫?」

 

「ええ、この程度全然平気です…っ!!フレイヤ様!!」

 

「えっ?」

 

そんな突然の事態に思考が全く追いつかないフレイヤ。

オッタルだけは直前に気づいていたが、先程の僅かな会話の隙に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「(出遅れてしまった、間に合わない…!!)」

 

主神に傷を負わせまいと、間に合わないことを理解していながら手を伸ばし追いかけるオッタル。

オッタルの敬愛するフレイヤが傷付けられると思った刹那、

 

驚くフレイヤの肩から突如現れた銀の槍が、()()()()()()()()()()()

そのまま黒髪の猫人が現れ、ゆっくり歩きながら槍を軽く振り上げ昆虫を引き裂く。そのまま槍を巧みに振り回し、外殻以外を全て粉々にした後に全てを手のひらに収め、割れた窓から投げ捨てた。

それが済んだ後にフレイヤの元へ振り向き、

 

「申し訳ありません、フレイヤ様。勝手な行動を取ってしまいました。」

 

と軽く頭を下げ謝罪した。

直後、ドタドタと廊下が騒がしくなりフレイヤファミリアの幹部達を始めとした全団員が駆け付けた。

「フレイヤ様!」「ご無事ですか!?」

そんな声が多数聞こえる中、気を取り直したフレイヤは1ミリも動じず

 

「いいのよアレン、助かったわ。オッタルもありがとね。みんなも駆け付けてくれてありがとう。」

 

すぐにいつもの表情に戻り、自身を守ってくれた眷族にお礼を言うフレイヤ。黒髪の猫人アレン・フローメルを始めとした全団員は、ありがとうございますと言い再び頭を下げる。

そんな中、オッタルだけは自身が自らの主神を守れなかったという事実に俯いたまま自身を責めていた。

そんなオッタルを見てフレイヤは

 

「気にしなくても大丈夫よ。貴方が真っ先に対処してくれたから私は無事なのよ。だからそんなに自分を責めないであげて、ね?」

 

オッタルの傍に寄り、肩に軽く手を置きながらそう優しく告げる。

主神のその優しさに感極まり、アレンの他多数の団員が見ているにも関わらずオッタルは思わずポトッと雫を零す。

 

「さぁ、そのお腹無理矢理出血を止めてるとはいえ放置していいものでもないでしょう?

ポーションで治してきなさい。貴方達も戻って大丈夫よ、私も後ですぐ向かうわ。」

 

「「はっ…」」

 

すぐさま全団員は片膝を付き、了承の意を込めて返事をした後にポーションを取りに館に戻る。

 

そして、自身の眷族が立ち去ったのを見てからフレイヤは少し思索に耽る。

 

「(さて…あの少年の隣にいたあの男は何者かしらね…?まぁ、なんであれこの返礼はたっぷりさせてもらうわね…フフ……)」

 

フレイヤはそう考え、部屋を後にするのだった…。

 

 

一方その頃、ダンジョン入り口近くにて……

 

「?これ…虫?こんなに細かく切り刻まれてる……ガラスも落ちてるみたいだし、何があったの…??」




と、いうわけで例の女神様としっかり因縁ができてしまいましたw
こういうシーンを書きたいためにこれを書き始めた、まであるかもです()

さて、(私個人の考えもあります)本編にも書きましたが、トミーロッドのオラリオでの目的はトリコやサニーと同じ野生の戦いを繰り広げてくれる可能性の高いベルを育てることと、自身の蟲コレクションを増やすことです。
蟲については、トリコの映画版冒頭にてインフィニ・ビーを始めとした色々な蟲達を管理しているシーンがあって、それを持ち去ろうとしたギリムを真っ先に止めに入ったのがトミーロッドだったのでこういう可能性もあったのかなぁと考えて入れてみました。

そして、本人の実力に関してですが、原作で書かれていた最後に蟲込みでまともに戦った時がクッキングフェスのみ(と記憶してます)だったのと、GOD編で復活して元上司達と戦って勝っているのを見るに本人も蟲も相当強くなっていないと話が合わないなぁと思ったので、原作で表記されていた捕獲レベル×10〜くらいの強さにしました。どうやったかについては、サニーの髪の中でエアやアースとかの食材を食べてきた…ってことで()

あと、神ヴァーリと【ヴァーリ・ファミリア】というのが今回のオリジナルファミリアと主神ですね。
あの自由奔放で身勝手極まりない過ぎる神々の纏め役なのですから、アスフィに負けない…いや、それ以上の苦労人です()
【ヴァーリ・ファミリア】の構成員やヴァーリのオラリオで苦労人となっている理由などについては3話にて明かす予定です。

最後に1つ。トミーロッドと【フレイヤ・ファミリア】の繋がりのでき方がかなり無理矢理かもしれませんが、ここでできないと後々その機会がちょっと無くなりそうだと判断したのでここで繋げました。

以上、突然始めた些細な補足でした_|\○_
1話に引き続き評価や感想などありましたらお願いします。
指摘なども受け付けていますので、ここはこうなんじゃない?といったことがありましたらそれもお願いします。改善等頑張っていきます!

あっそうだ(唐突)
今回やこれからで、トミーロッドが昆虫を出す時にアニメでも流れてた専用BGM流しながら読んでみると臨場感が出て中々いいですよ!
(ちなみにわかってる人もいると思いますが、今回出した昆虫はジョンガルクワガタです。本来の捕獲レベルは38。)


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グルメ3:彼の覚悟

リアルの山積みになってたことが粗方終わって、トリコのアニメ見ながら内容考えなきゃなぁと思ってDアニメ開いたら、トリコの配信がとっくに終了しててめちゃくちゃ萎えかけてるので初投稿です。

※前話の団員が3名というところ、間違えてしまったのに先程気づいて慌てて直しました!正しくは4名です!申し訳ありません!
頑張ってセリフ内容等考えましたが、ここおかしいとかあったらすいません!許してください!緑の雨降らせますから!

それと、お気に入り50件突破、しおり10件突破本当にありがとうございます!!ほんとにめちゃくちゃ嬉しいです…!!こんな私ですが頑張って面白い内容が書けるようにしていきますのでよろしくお願いします!((*_ _))


side ベル

 

刻々と色を濃くしていく夕焼けの中、あれから僕は神様の案内でオラリオの北東辺り…神様曰くファミリアの(ホーム)があるらしく、そこに向かって歩いていた。

 

途中、トミーロッドさんがいないことに気づいて慌てて辺りを見回そうとした直前、そのトミーロッドさんがまるで虫のように羽を広げて飛んできた。

自然な風に空を飛ぶトミーロッドさんを見て僕は開いた口が塞がらなかったが、当の本人はさも当然のように降り立ち僕を少し見てから「羽がついてるんだから飛べるのは当たり前だろ」と思考を読まれたかのように答えられたのだ。

 

僕は一瞬そうなのかな…と思わず考え込んでしまったが、いやいや!そもそも人に羽が生えてるあれが特殊過ぎるだけなんだきっと、うん絶対そうだ!と無理矢理思考を切り替えることにして歩き続けた。

 

そして数分後、神様は一軒家の前で立ち止まった。ファミリアの館というか…一人暮らしする用の家でも少し大きいような、そんな感じの印象だった。神様はそのまま

 

「さぁ着いたわ!ここが私のファミリアの館、もとい法廷の館(コートホーム)よ!」

 

「おぉぉ……ここが…!!」「ほう」

 

どんなところでも(ホーム)(ホーム)だ。思わず感激している僕の前で先に入っていく神様を追うように、そのまま僕もトミーロッドさんとその館に入った。

そんな僕の目の前で神様は

 

玄関で待ち構えていたと思われるエルフの女性に、拳骨を喰らわされていた。

 

 

「いっっっっったぁ!!」

 

「全く……主神ともあろうものが誰も引き連れずに1人でホイホイ歩き回るんじゃない!何かあってからじゃ遅いんだぞ。」

 

「あうぅ……いやぁごめんごめん。なんかいい眷族が見つかりそうっていう直感が来たから仕方なく「ふんっ!」へぶっ!!」

 

「仕方ないわけがないだろう馬鹿者!お前のその癖は今に始まったことではないが、せめて誰か連れて行けと言っている!!」

 

「おぉぉぅぅぅ……」

 

……エルフの方は心配しての行動みたいだけど、それにしてはやり過ぎではないのだろうか。

そんな風に考えながらその様子を見ていると、

 

「…む?君たちは?っ!?ンンッ!……いや、このアホ神に連れて来られたのか?」「アホ神とはなんだー!!」

 

一瞬咳払いしてるのが見えたが、何になのかわからない僕を他所に気を取り直したのか確認をしてきた。

 

「あ、あはは……まあそんな感じです。」

 

「……あぁ。」

 

上がってもいいと言われたので、僕達はそのまま上がり、エルフの人の後をついていきながら会話をした。

 

「そうか…見苦しいところをお見せして申し訳ない。そしてうちの主神が迷惑をかけてすまなかった。君たちはうちのファミリアに入りたいのか?」

 

「は、はい!勿論です!!」

 

「まあそんなところだ」

 

「…ふむ、こんな主神だが人を見る目は確かにある。それに連れられたのならまあそれなりに信用してもいいのだろう。「こんなってなんdぶへぇ!」

改めて名乗ろう。私はアフテク、アフテク・フォリエットだ。ここの団長を務めている。ハイエルフだ。レベルは7。二つ名は『魔導神(ヘカテー)』という名をいただいてる。よろしく頼む。」

 

「ぼ、僕はベル・クラネルです!今日始めてオラリオに来ました!よろしくお願いします!……ハイエルフ…凄い。

 

「……トミーロッドだ。」

 

ハイエルフって本当にいたんだ……おじいちゃんの話でしか聞いたことなかったけど、実物見れたの凄く嬉しい…感激だ……。

でも、なんだかトミーロッドさんが少しそわそわしているような感じがする。ここの雰囲気が気に入らなかったのかな…とか考えるけど、僕にはわからない。

そして、さっきから流れるように拳骨喰らわされている神様がそろそろ本気で可哀想に見えてきた。

そんなこんなで一回り広い部屋に案内されると、2人の男性がそれぞれソファーで向かい合って座って、書類みたいなのを書き進めながら何かを話していて、1人のエルフ?の女性がエプロンを付けて厨房に立っていた。が、アフテクさんに気づいたのか作業しているようだった全員がこちらに振り向いた。

特にこちらに気づいてから、厨房に立っていたエルフの人がいそいそと料理する手を止めてはアフテクさんの元へテクテクと向かっていた。

 

「アフテク様!おかえりなさい!ご無事で何よりです!!お怪我はありませんでしたか…??」

 

「い、いや、玄関にいただけなんだが…」

 

「ん?あー団長か。あー!!神さんぼくのマント返してくれよ!!それ無くてめっちゃ困ってたんだけど!!」

 

「いいじゃんかースーパーハカーくん!まだ数枚あるんだし。あと神さん言うな。」

 

「スーパーハカーじゃなくてスーパーハッカー!数枚あるとはいえあれ全部仕上げが終わってないんだよ!傑作のそれを参考にしたいんだけど、使われちゃったからメンテしなきゃだし……だから返してくれよ!!」「えー!!もうちょっとだけいいじゃーん!!」

 

「ったくうるせぇなお前ら……おいアフテク、その後ろのやつは誰なんだ?新規入団者か?」

 

「あぁ、その説明も含めて主神(このバカ)がしてくれる。まずは話を聞くとしよう。おい、いい加減くだらない喧嘩はやめないか!」

 

ゴゴンッ!

 

「「うぐぁ……」」

 

「……お二人とも、話に移りましょう。」

 

……賑やかで凄く楽しそうだけど、アフテクさんが苦労しているんだなというのがなんとなくわかった。そんなこんなで従者と思われるエルフの方に従い、神様と僕達はここに来るまでの説明をした。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

side トミーロッド

 

法廷の館(コートホーム)とやらに着いてからは、主にベルとヴァーリが全て説明していた。

そして、その説明が全て終わった後に玄関で既に済ませていたアフテク以外で、お互いでの自己紹介が始まった。

そいつ曰く、こいつらには自己紹介をしていないだろうからもう一度頼む、とのことだった。

 

「あ、改めまして!僕はベル・クラネルです!今日オラリオに来たばっかりですけど、皆さんに追いつけるよう頑張りたいと思います!よろしくお願いします!」

 

「トミーロッドだ。ベル(こいつ)を強くすること以外は適当にしてるつもりさ。」

 

「おう!よろしくなお前ら!俺はここの副団長をしているレグリオ・ガルムだ。種族は狼人(ウェアウルフ)。レベルは団長(こいつ)と同じ7だ。二つ名は『月の狼(フェンリスウールヴ)』。」

 

「ぼくはパーポス・タイター。アイテムや魔導具作りが得意なのさ。種族は人間(ヒューマン)。レベルは4。二つ名は『創造神の担い手(スーパーハッカー)』だって。よろよろー」

 

「で、では私も…私はディニエル・ワルク。団長のアフテク様の従者もしています。レベルは3。二つ名は…その、『毒の従者(ヴェナムバレット)』…です。」

 

…なんともまぁうち(美食會)に負けず劣らず個性的なメンツだこと。最後の一人が口籠っていたのは何か辛いことでもあったのか。まあボクにはどーだっていいことだけどさ。

ボクからしてみれば決して強いなどと1ミリも思えないが、この都市ではトップとは行かずとも屈指の精鋭揃いらしい。

……程度が知れるな。

 

そうして(こいつらにとっては)豪華な入団祝いの宴会になった。

食事は案の定対して美味くはないし量も多くはないから違和感しかなかったが、グルメ界の食材や美食會での料理法では(こちらの世界)では到底味わえない()()()()()が少しあってそれなりに楽しめた。グルメ細胞という概念すらないのに、これだけ美味いのは()()()として少しは学ぶことがあるのかもしれない…。そんな風に少し考えながら酒を飲んだ。

ベルはというと、酒に酔ったヴァーリの愚痴に付き合わされていた。隠そうともせずに大声で喋っているので、聞きたくなくともこちらには聞こえてしまう。

なんでも、ヴァーリはギルドに度々仕事を手伝うように頼まれていて、ロイマンとかいうヴァーリ曰くデブのギルド長がこちらのことなど一切構わず直接ここに足を運んでまで頼んでいるそうだ。

それに対しヴァーリはそれくらい自分でやれの一点張りで突っぱねているが、あまりにもしつこくてうんざりしてきているという。

先程までの無理矢理連れて行くような様子からはとても考えつかないような事だが、人は酒などで酔うと本音が出やすい。

あれは本当の事なのだろう。どんなに苦しくとも意地でも手伝いなんぞ頼もうとしなかった美食會(ウチ)とはまるで対極的で、情けない奴らだった…と思い返すと同時に、必要ならとちょこちょこ手伝いに行っていたあいつ(スタージュン)を思い出して少し感慨に浸る。

 

日が沈んだ頃、皆が寝落ちて宴会が終わった後にアフテクがボク達を専用の部屋に案内した。

冒険者として登録するために必要とベルが言っていた神の恩恵とやらは、肝心のあの女神(ヴァーリ)が寝てしまったので明日にしてくれ、とのことだ。

ボクは恩恵なんてものは貰わないつもりだ。

だがベルにはこれからのために、そしてボクの目的のためにも必要なのは明白なので、ベルとヴァーリと共に明日はダンジョンに行くついでにギルドに寄ることになった。

 

そして…薄々察してはいたが、割り当てられたボクの部屋はとても狭くてこじんまりとしたところだ。

だが、最低限の棚や机があるのでとりあえずはボクの工房(蟲の管理場)を作ることができそうだ。追加の棚はそのうち買うなり調達するなりすればいいだろう。その結論に至った。

 

そしてボクは今日のうちにあることを済ませようと思い、ベルを自身の部屋へ呼んだ。

 

「トミーロッドさん、何か用でしょうか?」

 

キョトンとした表情のままベルが入室する。

ただここに来いとしか言わなかったので当然っちゃ当然だが。ウジウジするなんざボクの性に合わない。なのですぐさま本題に入る。

 

「単刀直入に聞こう。お前、何を目指している?この街で何になるつもりだ?」

 

面倒くさいが、この力を渡す以上覚悟は聞かなければならない。あの目をできるこいつにそんな事はないと思うが、もし低俗な願いだったりしたらこの力は渡さずに即殺す。それ程に大事なものであり、危険な物だ。

突然の質問でびっくりした様子だったが、すぐさまうーん…と熟考に移り、そしてそのまま彼は答えた。

 

「えっと…少し子供っぽいかもしれませんが、僕は英雄に憧れているんです。

どんな強敵が現れても、どんなに辛い選択や困難が待ち受けていても、そこに助けを求める者がいるなら!護りたいものがあるなら!英雄はいつも必ず己を賭して全力で戦い、向き合い、そして勝利を勝ち取る。護りたいものを守る。

僕はそんな英雄の在り方に強く憧れました。僕もそんな風に在りたいと。

そして、僕はここに来る前に祖父を亡くしています。あの時の悲しさをもう二度と味わいたくない、もう二度と大切なものを無くしたくないんです。だから僕は英雄になりたい。なって、護りたいものを全て守り、助けを求める者に救いの手を伸ばしたいんです!」

 

そう言い切った彼の目は、あの時と同じ、いやそれ以上に強く輝いていた。

ボクにとってはこの上なく眩しいし、反吐が出そうなものだ。

だが、その覚悟が彼の、ベル・クラネルのものならば、これを扱うのにふさわしい存在となるだろう。

 

「……はっ、御大層な願いだこと。本当に反吐が出そうなものだ。」

 

「……」

 

「だが、それでいい。」

 

「……え?」

 

「なんでもない、こっちの話だ。

さて、君の覚悟は聞けた。十分だろう。ボクは君にこの力を与える。」

 

「…なんですか?その注射器みたいなのは。」

 

「これは、()()()()()()()()()()()()()が入っている物さ。ボクの強さの()でもあり、同時に()()な物だ。これを上手く使うには、適応した身体と相応の覚悟が必要だ。お前は既に1つ合格している。」

 

だが、このやり方は本来決していいとは言えないものだ。

普通グルメ細胞を安全に取り入れるのであれば、同じグルメ細胞を持つ食材を食べる必要がある。

だが、それでは時間もかかる上に個体ごとでグルメ細胞の量が違い、足りなければまた摂取せねばならないからだ。その上、成功しても扱えるグルメ細胞の力が弱く、戦闘においては意味をなさない場合が多いのだ。それでもこの方法は身体に害が出ることはほとんどないので安全なやり方と言える。

その点、この直接注入するやり方は一発で問題ない。

だが、一度に大量のグルメ細胞を入れる必要があるが故に、もし身体に馴染まずまた本人の覚悟が足りず失敗するようなら、逆にグルメ細胞が全身の細胞を食い尽くして死に至る。逆に成功した場合、グルメ細胞の力を十全に扱えるようになり、本人の成長次第でその強さは更に飛躍的に跳ね上がるのだ。ハイリスクハイリターンというやつだ。美食會では強いやつ以外はどうでも良かったので、攫った料理人に射し込んでいくら死のうが特に気にはならなかったが。

 

「トミーロッドさんの、強さ…」

 

「これを使いこなせば、お前はお前の言っていた英雄とやらに近づける。袖を捲くって腕を出しな。」

 

「は、はい……これでいいですか?」

 

さぁ、気張れよ。お前がそれに打ち勝った時、()()()()()()()()()()()

 

「それでいい。……()()()()。」

 

「えっ?」

 

プスッ

 

ドクンッッ!!!ドクンッッッッ!!!!!

 

「!!!!??!?!?!ゲボッ!!!!がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!ァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!」

 

ドサッ

 

グルメ細胞を射し込んだ瞬間、彼の身体が飛び跳ね、拒絶反応を起こしたかの如く大量に吐血し、直後に気絶した。

これでいい。後は彼の身体が上手く馴染むかだ。

 

その直後、廊下がドタドタと騒がしくなり先程まで寝ていた人達を含めファミリアの人全てが集まってきた。

 

「今の声はなんだ!?……!!おい、大丈夫かベル!!しっかりしろ!!」

 

「なんて血の量だ……おい、トミーロッド!お前何かしたのか!?」

 

「ちょ、大丈夫なん??応急処置くらいしかできないけど、ぼく診た方がいい?」

 

「ベルさん!?」

 

「うるせぇな…こいつに力を与えただけだ。すぐ目を覚ますさ。」

 

……こいつらの対応どうするかまでは考えてなかった。声抑えるようにするべきだったか…とボクは少し後悔した。

 

──────────────────────────────────

その夜、時を同じくして黄昏の館にて…

 

「ロキ、少しいい?」

 

「ん?その声はアイズたん?入ってええで!」

 

「ん、失礼します…」

 

「こんな夜更けにどないしたんや?遠征が近いはずやろ?」

 

「あの、こんなのが落ちてたんだけど…これって何?」

 

「んん??なんやこれ…何かの生き物の身体…が切り刻まれた後に見えるなぁ…それにこの破片……!!こ、これまさか…」

 

「?」

 

「なぁアイズたん、この破片拾ったのどこでや…?」

 

「??えっと…ダンジョンの出入り口……バベルの真下、かな?」

 

「!!!そか……これはえらいことが起きとるのかもなぁ」

 

「?」

 

「フレイヤの奴が、()()()()()()()()っぽいな…」

 

「!?」




以上が3話です!楽しんでいただければ幸いです!
前話に続いて評価や感想等ありましたら是非お願いします!励みになります!

さて、今回もちょっと補足させていただきますね。

まずご存知の方もいると思いますが、オラリオの北東というのは原作では怪物祭が行われる闘技場がある方角ですね。
ちなみにこのファミリア、毎年怪物祭になると騒音が辛くて団員みんな出払ってますw

そしてヴァーリファミリアの構成員について。これは察せる方もいると思いますが、今回のキャラ4人にはそれぞれイメージキャラみたいなのが存在します。
何故なのかは、原作で中々出ないようなキャラor全く見かけないような感じのキャラを出したかったからですね。後は自分が好きなキャラ(に似ているキャラ)を出したかったのもあります。

誰が誰をイメージしてるのか予想してみてください。ちなみに4人とも元のイメージキャラは別作品ですw

後、構成員のレベルが全体的に高い理由ですが、これはこのファミリアがオラリオ暗黒期から存在しているからです。その時のストーリー等の大まかなもの(キャラのセリフや表現はなく、起こった出来事だけを書いた感じのですが)は既に作成済みなので、2月のリアルが忙しくて作れない時とかに出そうかと思ってます!

そしてグルメ細胞の設定についてですが、原作では「適応する身体さえあれば十分」という風に書いていて、それだとちょっとあっさり過ぎるかなぁと思ったので「それ相応の覚悟が必要」というのを追加しました。この方がダンまちっぽくあると思ったんですがどうでしょうかね…?
グルメ細胞を取り入れた際の詳細の反応が、原作を読み返しても特に書かれていなくてわからなかったので、ここではオリジナル展開にしました。この先もこういうのが多くなると思うので、その都度オリジナル要素を入れますがご了承ください((*_ _))

と、以上が補足でした!

次回は四天王一のやべーやつが出てくる予定です!


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グルメ4:グルメ細胞と覚醒

活動報告で遅れることを書いてから、罪悪感が半端なくて寝る時間削りつつ書いたらなんとか納得できるものが書けたので初投稿です。

今回で前回告知した四天王の正体とベルくんのステイタスが明かされます!ではどうぞ。


side ベル

 

「んっ……あれ?ここ、どこ…?」

あれから気絶しそのまま眠ってしまい、体内時計で朝と思われる時間に起き上がったベル。だが、そこは真っ白な空間だ。まっさらで何もない場所と言ってもいいのかもしれない。

なぜこんなところにいるのか、よくわからない。けど、ここにいると不思議と落ち着ける、そんな風にベルは感じた。気絶する直前にトミーロッドに何か注入されたのは覚えている。恐らくそれが原因だろうと推察。

そこまで考えたところで、

 

『ようやく起きやがったか小僧。気の短ぇ俺を待たせるたぁいい度胸してんじゃねぇか、おぉ?』

 

少し遠い位置からか、唸り声に似た響きのする声で話しかけられる。

モンスターの唸り声ならばそれなりに聞き慣れてるはずのベルですら、その声は聞いたことがなかった。

何かデジャヴを感じつつ一瞬体が飛び上がりそうになるが、それをなんとか抑え恐る恐る顔をあげるベル。

そこにはオールバックの赤い髪と大きく裂けている左頬、そして朱色のシャツの上に紫色の毛皮のコートを羽織り、グレーのズボンと茶色のブーツを履いている大男がベルの元へと歩き、目の前で止まった。

 

「おい小僧、なぜお前はここに来た?」

 

「え?いや、来たくて来たわけではないんですけど…逆にここどこなんですか?それと、僕は小僧じゃなくてベル・クラネルです」

 

なんか、トミーロッドさんと初めて会った時も似たようなこと言った気がするなぁ…と少し思い出す。実際は初めてというより昨日のことなんだけれども。

 

「あぁ?………嘘は、ついてねぇみてぇだな」

 

目の前の大男は神様みたいに嘘を見抜くことができるのか…もしかして同じ神様ってのだったりは……いやないか、と少し考えたがすぐ切り替える。

 

「むしろこんな時に嘘をつく理由がないですよ!」

 

「!…うははははは!!そりゃそうだ!おもしれぇ奴だなぁ!!えぇおい!

 

あの時の小松によく似てやがるな。

 

で、ベルだったか。ここはお前の精神世界だ。心の中とでも思っときゃいい。何があったか知らねぇが、現実で意識を失ってなけりゃここには来れねぇ。」

 

「そう…ですね。確かに今の僕は、現実では意識を失っています。」

 

「あぁ。俺ぁ宇宙のとある星で寝てたんだが、なぜかここに来ちまった。で、なんでてめぇは意識を失った?」

 

「貴方もですか…あっえっと、それは…」

 

この大男の人も…?僕とは違って普通に寝てたらって言ってたけど、何か関係があったのだろうか…と気になるが、考えてもわからないまま時間が無駄に無くなりそうなのでそのまま僕はこうなるまでの出来事を話す。

トミーロッドさんの名前を出した瞬間、ほんの一瞬だけれど元々険しい顔をさらに険しくしていたように見えたのは気のせいなのだろうか…そうでないのならばきっと何か知っているのかな、今聞くべきかな……?

そんなことをちょっと考えながら説明をし終えると、大男の人は

 

「サニーの奴が出していたあの虫野郎か……フッ、そういうことか。

わーったよ…ったく。」

 

「?」

 

話を聞き終えて独り言を言ってると思ったら、一瞬だけどこちらを見てきた。そして小声でよく聞こえなかったが何かを呟いた直後

 

「おい小僧」

 

「だからベルですってば」

 

「呼び方なんざどーだっていいだろうが。

…単刀直入に言うぞ、小僧に()()()()()()()()()。」

 

「……え?」

 

今、彼はなんと言ったのだろうか。

力を貸す?僕に?理解が追いつかない待ってほしい。

何がどうしてこうなったのだろうか……

必死に考えを整理して纏めようとしている僕を見向きもせずに、彼は話を続けていく。

 

「安心しな、俺の力をそっくりそのまま渡したところでてめぇには扱い切れねぇ。そこの調整だけはしてやらぁ。だがな、思い上がって調子に乗るんじゃねぇぞ。調子に乗ったら、その場で殺すからな!!」

 

いや、そういうことではないんだけども……

彼が僕の目の前まで来て物凄い圧をかけてくるが、恐怖より先に僕は次々とわけわからないことが流れ込んできて思考が追い付かず、理解不能だったためそれどころではなかった。

そうして目を回して僕の頭からぷすーっと音が出てショートした状態になっていると、僕の周りから光の粒のようなのが出てきた。

それと同時に僕の意識が途切れはじめた。

 

「ふん、小僧の本体が目を覚ます頃か…ちょうどいい。

おい、これからてめぇは美味いもんをたらふく食え。てめぇ自身のグルメ細胞を進化させろ。そうすりゃてめぇの言っていた()()()()()に近づける。」

 

「!!」

 

「それと、グルメ細胞の悪魔を介してだがてめぇの動向は見れる。暇があれば手伝ってやらぁ。」

 

「あ、ありがとうございます!!絶対、英雄になってみせます!

あ、えっと、貴方の名前は!!」

 

光の粒が増えてきて目の前が見えなくなり意識が朦朧としてくる中、ふと僕は名前を聞けてないことを思い出す。

これからもこの声を聞くことになるのなら、聞いておかなければならないことだ。

 

「あぁ?名前だぁ?……そういや言ってなかったな」

 

だんだん目の前が暗くなる。聞き逃さないように耳に全神経を傾ける。

 

「俺は、ゼブラだ」

 

そう聞き終え、僕は再び意識を失う。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ん……ここ、は…?」

 

僕が再び目を覚ました場所は、自室のベッドだ。

気のせいなのか起きる前より、耳が…というよりは()()が良くなりすぎて遠くの音も聞き分けれるようになっているっぽい…?

これもグルメ細胞?ってものの影響なのかなと思ったが、まだ判断材料が少なすぎて自分では解決できない。とりあえずなってしまったからには仕方ないので、必要以上に音を拾ってしまうこの耳の対処として耳栓でも買うかゼブラさんに聞かないと…などと思いつつそのまま起き上がろうと上半身を起こすと、隣で本を閉じる音が聞こえた。

 

「起きたか、ベル。」

 

そう言いながら本を仕舞ったのは、このファミリアの団長であるアフテクさんだ。

 

「アフテクさん。おはようございます。あ、あの、心配かけてごめんなさい…」

 

「あぁ、おはよう。ベルが気にする必要は全くないぞ。トミーロッド、だったか。あいつがそうしたようだからな。」

 

「あはは……そういえば、トミーロッドさんは?」

 

「む?あぁ、あいつは主神の部屋にいるぞ。

何か話をしているようだったが、まあ気にすることでもないだろう。」

 

そんな気はしてた、と僕は内心苦笑する。

あの人は多分これも織り込み済なのだろう。どこまで見抜いているのだろうか、と考えると少し怖くなってきた。

 

「そういえばベル、神の恩恵と冒険者登録がまだだったな。体に問題ないようなら今から行うか?」

 

「あ、はい!!是非!!体は大丈夫です!」

 

「そうか。ならついてこい、主神の部屋を案内しよう。」

 

団長さんにそう言われ、僕は後ろをついていく。

 

そうして廊下を歩き階段を降りてとある一室の前のドアに到着すると、団長さんはノックをする。

 

「ヴァーリ、私だ。ベルの恩恵を刻みに来た。」

 

「ん?あぁアフテクね!いいよー入っておいで!鍵は空いてるよ!」

 

失礼します。そうアフテクさんは言いながら入室した。僕もそのままお邪魔します、と言い入る。

そこには、アフテクさんの言う通りさっきまでずっと話していたのか椅子を向かい合わせて話をしている様子だった神様とトミーロッドさんがいた。

トミーロッドさんが僕を見て少しニヤッとしていたのが見えたが、どういう反応なのかわからない。それに対して、神様がどことなく疲れているような顔をしているのはどうしてだろうか…空元気にも見えるけど、とりあえず本人が気にしてない風だったからそこについて触れないようにはしようと決めた。

 

「おはよーベルくん!昨日は恩恵刻むの忘れちゃってごめんね…今からパパっとやっちゃおうね!」

 

「はい!大丈夫ですよ!」

 

「……いい子過ぎて泣ける……」

 

「良かったなヴァーリ。他のやつだったら一瞬で勘違いされて退団されていたぞ」

 

「ちょっ!!そういうこと言わないの!!今こうしてちゃんといてくれてるんだから!ね!!」

 

「これから気をつけろということだ馬鹿者!」ゴンッ

 

「ふぐぅ!!……わ、わかってるよぉ…」

 

……神様ってもしかして狙ってるのかな?それとも天然?

ちょっと失礼なことを考えてしまったが、神様はすぐ気を取り直していた。

 

「さてベルくん、上着を脱いでそこの椅子に座ってくれ。」

 

「はい!」

 

僕は言われた通り上着を脱いで椅子に座る。

こういうことは初めてなので、少しスースーしてて気恥ずかしい。けど、これからもこういったことが増えるだろう。なるべく早めに慣れておきたいなと切り替える。

 

「では私は部屋に戻るとしようか。冒険者登録に行く時は呼んでくれ。」

 

「おっけー!ベルくんの案内ありがとね!」

 

「案内ありがとうございました!アフテクさん!」

 

「あぁ。」

 

そう言いアフテクさんは退室していく。

昨日から思っていたことだけど、アフテクさんってクールですごくかっこいいなぁ…エルフってみんなあんな感じなのかなぁ、と考えていると

 

 

「な……なんだこれぇぇぇぇぇ!!?!?」

 

 

神様が突然叫び出した。近くにいた僕はあまりの叫び声の大きさと耳の良さで必要以上に音を拾ってしまっていたので、思わず目を閉じて耳を塞いだ。またもや意識を失いそうになるが、なんとか気力で保てた。

そんな僕や慌てて戻ってきたアフテクさんとその従者のディニエルさん、そしてどこから聞いたのかやってきたレグリオさんを他所に、神様はやっと落ち着いたのか慌てて僕のステイタスを紙に写し出す。

 

「どうしたヴァーリ!!」

 

「こ……これ…ベルくん!いったい何があったの!?」

 

写し終わって自身で確認し終えたのか僕に紙を差し出す神様。

それを受け取るとアフテクさんやレグリオさん、トミーロッドさんまで覗いてきた。

それほど気になる内容なのだろうか。そう思い僕もステイタスを見てみる。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ベル・クラネル

 

Lv.1

 

力:I 0

 

耐久:I 0

 

器用:I 0

 

敏捷:I 0

 

魔力:I 0

 

 

グルメ細胞:I

 

 

《スキル》

【グルメ細胞の食欲】

・超早熟する。

・食欲が続く限り効果持続&食欲が上がる。

・未知なる食材への好奇心の丈により効果向上。

・身体能力の大幅向上。

・損失した体の各部分の再生可能。

 

音の悪魔(ボイスデーモン)

・グルメ細胞に宿る。

・音の悪魔の力を行使可能。

・聴覚超向上。

・カロリーを消費して食欲のエネルギー放出可能。

・威嚇行動可能。

 

 

【英雄決意】

・能動的行動に対するチャージ実行権

 

 

《魔法》

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

既にステイタスを見ていた神様は頭を抱え、レグリオさんとアフテクさん、そしてアフテクさんに呼ばれたのかディニエルさんまで見に来ては開いた口が塞がらないを体現したかのようにそのまま固まっていて、トミーロッドさんはなぜか楽しそうに見ていた。

かくいう僕はというと、皆と同じく突っ込みどころが多い内容での少し驚きと起きた時に気になっていたことが解決できたからかの安堵と、早く試したくて仕方ないという歓喜の表情を見せていた。(らしい)

ちなみにこの時パーポスさんは、自室でアイテム製作をしていたため来なかったと後でアフテクさんから聞かされた。




なんとか書き切りました…とりあえずは一段落ってとこですかね。
今回も引き続き感想や評価などあればぜひお願いします。

さて、今回も軽めに補足をしておきます。

まず四天王をゼブラにした理由ですが、四天王の能力のうち一番応用が効きやすいのが彼の音の力だからですね。次点ではココの毒もありだったんですが、戦い方がだいぶ地味になるかと思ったのと強度に難ありだったのでやめておきました。
あと、毒で無意識に人殺しちゃったり誰かに撒き散らしちゃいそうですしお寿司。
トリコのは使うとしてもフォークやナイフくらいでそれなら形変えてついでみたいな感じで出せばだいたいなんとかなる、サニーのは……うん、ちょっと難しいかな…って感じですはい。
それに、ゼブラは言動があれですけど実は結構面倒みがいい奴ですから結構合うかなと思いました。個人的にこのキャラ好きなのもありますけどw

あと、トミーロッドはベルが起き上がるのを確信していたので、先に主神の方に行ってグルメ細胞の説明やらを軽くしていました。他にも色々話していましたが、それは追々書いていきます。
それらしい表現は書いてあるので、それを見ていただければと思います。

そしてステイタスですが、正直こんだけ時間かけといて本気でこれで大丈夫なのかと言われるとうーん…って感じです。
スキル名他に候補がなくてちょっと適当っぽく見えちゃっているのが不安ですので、これがいいんじゃない?とかありましたら教えてください!自身で気づいた部分も含めてなるべく修正していきます!

あと、グルメ細胞の食欲にある超早熟するという項目については
憧憬一途(この作品のベルくんはまだ誰にも惚れてないので発動しません、メインヒロインもちょっと決めきれてません。)に似たスキルの早熟する+グルメ細胞の成長の速さ等を見て更に一段階上げました。まあ憧憬一途とグルメ細胞のスキル一部の複合スキルと思っといてください。

次回はやっとダンジョンに潜る予定です!


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グルメ5:全て私(の虫達)がやりました。

いつものように作業しながら書き進めていたら、好きだったゲームがサ終すると発表しててめっちゃ悲しいので初投稿です。

いつの間にかUA5000突破してました!本当にありがとうございます!!頑張っていいのを書けるようにしたいと思います!

今回無駄に長いです!!削りたかったんですが、どこも必要そうな気がして削れなかったのでこのままになってます。すいません許してください!トリコバーガーの回いつか書きますから!
ではどうぞ。



side レグリオ

 

 

ドガンボゴゴゴゴォォォォン……!!!

 

 

ン゙ン゙ッ…新入りの前では既に自己紹介しているが改めてやっておこう。俺はレグリオ、レグリオ・ガルムだ。【ヴァーリ・ファミリア】の副団長をさせてもらっている。

 

 

ズズゥゥゥゥゥゥンブゥゥンブブブゥゥゥンピピッピーードガガガ!!!!!!!

 

 

今日は新入り(と言ってもトミーロッドはなんか見ない方がいいし本命はベルの方だけだが。)の実力を見るついでに、ダンジョンについて頭より体で知ってもらいたいと思って連れてきたんだ。説明するよりかは俺が着いていく形で実際に見てもらった方が早いしな。上層程度ならなんてことないんだ。ほんとになんてことないんだ。

 

……そろそろ現実逃避はやめるか。

 

 

「ギャァッハハハハハハハハハハ!!!ダンジョンってのはこんなにも脆いのかぁ??えぇ!!スイッチオーン!!」

 

 

ザシュッ…ピーードガガガガガガガガガガ!!!!!!!ガラガラガラズズゥゥゥゥゥゥン…

 

 

「さぁてと、さっさと降りようか…深層とやらにね……フフ…」

 

 

「トミーロッドさん〜〜〜〜!!!いい加減止まってください〜〜〜!!!!」

 

 

どうしてこうなった…よくわからん虫?を出しながらダンジョンを階層ごと破壊しながら進むとか常識知らずにも程があるだろうが!!

さっきまで「頑張ります!」って息巻いてたのが嘘のように泣きじゃくっているベルを片手で持ち上げ羽で飛びながら降りていくトミーロッドを追いつつ、何故こうなったかを思い出すためにも俺は2時間ほど前まで記憶を遡ることにした…

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

2時間前…

side レグリオ

 

朝にベルとかいう新入りのあまりにも異常なステイタスを見て固まっていた俺達は、この事を絶対に誰にも明かしてはならないという旨をベルに伝えた。第一級冒険者の俺達ですら見たことも聞いたこともないスキルだらけのこれを他のクソッタレな神々共が知れば、まず間違いなく奪いに来るだろう。

そして、奴らなら絶対気が済むまで玩具にしてしまうという確信すらあった。

幸いなことにうちの主神はこちらの考えを読み取ったのか、少し目線を向けると任せろといった様子で親指を立ててきた。

あんな自己満足のためなら誰がどうなろうとも一切気にも止めない奴ら(神々)とは全く違う神だからこそ、俺達はあの神の眷族になったんだなぁと、改めて見直した。

 

そして少し話し合った結果、今後はアフテクと俺が1日おきに交代でベルの訓練と座学に付き合うことになった。

俺は人にものを教えれるほど理解しているわけではないから、ベルと戦闘スタイルが少し似ているというのもあって基本的には体を使った訓練を俺が、座学をアフテクが担当することになった。今はないだろうけど、この先仮に魔法を習得するようなことがあれば、その訓練や鍛錬はアフテクメインになるがまた俺達がやることになるだろう。

あり得もしない話だがこんなことを話してしまう辺り、俺もアフテクの奴もあいつにそれなりの期待をしちまったのかもな…

 

トミーロッドの奴が既にベルに強くしてやると決めていたようで少し言い合いになったが、結局お互いが邪魔しない範囲でなら勝手にやっとこうということで一応収まった。トミーロッド自身面倒くさがりなようで、メニューだけ渡して自分でこなせという形式にする予定だというのを聞いたので内容次第で組み込めると思いメニューを見せてもらったが……なんというか…ベル、頑張れよ。と思わず心の中でベルに同情してしまった。

 

ちなみにトミーロッドは恩恵を頑なに拒否していた。そこにも驚きだったが、

 

「ボクはこれ以上強くなる必要なんてないさ、それじゃ意味がないしね。

それに、恩恵なんて首輪みたいなものを受けたら自由に動けないじゃないか。

あー、勘違いしなくともボクはここで特別悪さをするつもりなんてないさ。ボクはボクでやりたいようにやるだけさ…フフ。」

 

と言っていた。何をしでかすつもりかわからん上に胡散臭さも少し感じ、ヴァーリを少し見たが小さく首を横に振った。嘘ではないということだろう。

…まぁ、悔しいが俺達では足元にも届かないくらいの実力があるならば、単独になろうが死ぬこともないか…と早めに思考を切り替えることにした。

ディニエルの奴は変わらずの同じ眷族への過保護で「貴方は死ぬ気ですか!?」やら「いくら強かろうが自殺行為にも等しいのわかってます!?!」とかなんとか言っていたが、結局俺と同じ考えに至っていたっぽいアフテクに諭され諦めていた。

そうして忘れかけていた朝食を食べ、一応ダンジョンへの付き添い兼トミーロッドの監視ということで俺が、あとギルドに用があるついでに冒険者登録の手続きを手伝うためとアフテクが、それとベルとトミーロッドの4人でギルドへ向かうことになった。アフテクの奴もなんだかんだで過保護なとこあるんだよな…ディニエルに移ってるしどっかの副団長に似てるなんて言ったらぶっ殺されかける(経験談)から言わないけど。

ちなみにパーポスは相変わらずアイテム製作、ディニエルとヴァーリは家事兼いつもの()()()()()()だ。あのバカファミリアがそろそろうちに面倒ごとを持って来るだろうしな…。

 

そんなこんなで俺達はギルドに着いた。

相変わらずの人だかりで俺には少し苦手だったが、今回俺はここに用がない。

俺は話に関わらないように後ろに控えつつ、話だけは聞いておくことにした。

冒険者登録を済ませた後、さっきまで応対していた男の職員がベルの元に1人の女性を連れてやってきた。エイナというハーフエルフらしい。前に一度見かけたことあった。

どうやらベルの担当アドバイザーとやらはそのエイナが務めることになったという。

トミーロッドの奴にも付くみたいだが、本人はまるで相手にしていなかった。それどころか話を全面的に無視し始めていた。あんまりな態度に飛び出しそうな雰囲気を露わにしそうになるところを必死に堪えているのか、エイナはその額に青筋を浮かべつつさっきまで話についていけず呆然と立ち尽くしていたベルの腕を掴んでそのまま個室に引き摺るように移動していた。その際なぜか同じ個室に向かおうとしているトミーロッドの腕も掴もうとしていたが、その度に最低限の動作で躱していたため結局エイナの方が先に諦めてそのまま個室に入っていった。後に続くようにベルも、そしてトミーロッド、ため息をつきながらアフテクも入っていった。

俺は入る必要がないため、そのまま近くにあるギルドの共有スペースのソファーに座ってのんびりと待つことにした。

……周りの視線に紛れて明らかに感じたことのある敵意を向けている視線の持ち主が数人いたが、今はどうでも良かった上に対した強さでもなさそうなので無視しておくに限る。

 

それから1時間くらい経っただろうか。何もないまま適当にソファーでくつろいでいると個室から4人が出てきた。

ベルとエイナの顔にはわかりやすいくらいにげんなりしている様子が見えて、トミーロッドは変わらず仏頂面、アフテクは面倒ごとが増えたと言わんばかりに暗い顔をしながらブツブツと独り言を言っていた。…今度仕事手伝うか。

だが話の方はしっかりまとまったらしく、ギルドで新規冒険者にあるという初心者講座も受けたとのことだ。ただ、これ以降のダンジョンについての講座はこちらでアフテクが担当すると昨日の時点で決まっているのでギルドでの講座はこれっきりだ。アフテクから伝えられていたらしく、少し安心した。

そうして予定通りアフテクとは別れ、俺とベル、そしてトミーロッドの3人でダンジョンに行くことにした。

 

正直上層ちらっと見るだけの予定なのに過保護な気もするが、パーポスやディニエルのレベル上げの時も同じようなことをしていたし今更変わらんか…とそんなことを考えながら、俺達は螺旋階段を降りながらバベルの地下にあるダンジョンの入り口へ入る。

途中トミーロッドが露骨に面倒くさそうな顔をしていたのが少し見えて、何かしでかすのだろうか…と少し不安になったのを覚えている。結局ダンジョンに着くまで何もしてはいなかったのでひとまず安心だ。

……まだ気を抜けないが。

 

第1階層。

『始まりの道』の別名の通り、どの冒険者もここからダンジョン攻略もとい冒険を始めていく。

その例に漏れずベルもここから始めるが、何せ講座を受けていたとはいえダンジョンについてまだ知識がほぼ皆無の状態で連れてきたのだ。通常時より危険度が高い。

だが、座学ばかりだとうんざりして抜け出しそのままこっそりダンジョンに潜り、そこで致命傷を負う又は死んでいくといったことが少なくない……とうちのアイテムを買いに来たファミリアの団員から聞いた。

ならば付き添いでいいから一度だけダンジョンの怖さを味わってもらうために共に潜り、その実体験を以て座学の内容を頭に叩き込みやすくする、というのが今回の狙いだ。

 

ベルは初っ端からとんでもないスキルを持っている為恐らく上層どころか中層でも初見だろうが勝てそうというのが率直な意見なのだが、さっきも言ったようにベルは知識もダンジョン経験も皆無なのだ。

いつかは冒険しなければならないとはいえ、最初くらいは慎重に行っても何も問題はないだろう。

早速ギルドの受付嬢がよく言っている「冒険者は冒険してはいけない」に違反することになるから、怒られるんだろうな…とかちょっと思ったが些細なことなので気にしないでおく。

 

余談だが、ここはまだまだ狭い方でダンジョンは円錐構造になっている。

下に降りれば降りるほど面積が広がるという少し特殊な仕組みになっているのだ。

 

そんなこんなでどうするかを考えていると、少し遠くの位置からボゴッという音と共に壁から1匹のモンスターが産み出された。あれはゴブリンか。

ベルの実力を見るためにもちょっとばかし狙わせてもらおうかね。

ベルも俺と同じタイミングでモンスターの出現に気付いたのか、同じ方向を見ていた。

 

「お、ちょうどいい。ベル、あいつを狙ってみろ。」

 

「はい!頑張ります!」

 

そう元気良く応えては、バッという音と共にゴブリンに向かって地を蹴りだした。

そしてそのままナイフを構え、手慣れたかのようにすれ違いざまに首と胴体を両断した。

 

「グギャァッ!?」

 

一瞬のうちに行われた動作にゴブリンは反応することすら叶わず、そのまま魔石を残して灰となっていく。

普通の初心者ならば複数相手はともかく、一体相手なら苦戦することはなくともだいたい出鱈目な攻撃が多く、魔石を砕いてしまったりそうでなくとも欠けさせてしまったりと全体的に荒っぽい動きになることが多い……というのをよく聞く。

だが、ベルは既に知っているからそんなことないと言わんばかりに魔石を欠けさせることなく綺麗に両断したのだ。

薄々察してはいたが、さすがに気になったので俺はベルに少し聞いてみることにした。

 

「おいベル、お前ここに来る前にこいつらと戦ったことあるのか?妙に手慣れている感じがしたが」

 

「あぁ、それは僕が住んでいた村では時々モンスターの襲撃があったので、鍛錬の一環としてゴブリンだけじゃなくここで言う上層のモンスターのほとんどを狩ってましたよ。」

 

なるほど、村に襲いに来るやつで既に慣れていたということか。

オラリオの外ではまだそんな物騒なことがあるのかとも少し思ったが、今はそれよりm「ブブブブゥゥゥゥンンザシュジャクバギッドゴッグシャ」

 

 

……なんだこの音は?

ベルは既に聞こえていたのか振り向いていたが、俺も音がする方へと振り向いた。

 

そこには、1階層に湧いたモンスターを他の人が狩っている分も含め全て、小さい虫?のような生物一匹が高速で飛び回り蹂躙している光景が広がっていた。

 

「ふーん…1階層とはいえ話にもならないな」

 

トミーロッドは、自分がやりましたと言わんばかりにそんな光景を顔色一つ変えずに平然と眺めていた。奥でこちらに向けて猛抗議している他の冒険者たちを完全無視し、いきなりこちらを見たかと思えば一瞬のうちにすぐ目の前まで移動し俺に質問を投げかけてきた。

 

「おい、ダンジョンってのは下の階層に行けば行くほど強い猛獣がいるんだよな?」

 

「(猛獣…?)あぁ、そうだが」

 

「そうか…」

 

そう言い少し顎に手を置いて考えている素振りを見せたが、すぐにそれを解きそのまま独り言のように呟いた。

 

「じゃあ、この階層の床ごとぶち抜いていけばいいってことだな?」

 

……は?いやいや、何を言ってるんだこいつは。

床ごとぶち抜くだと?何度脳内で聞き返しても正気の沙汰とは思えない発言だが、そんなことを考えている間にトミーロッドは口を大きく開けた。

 

 

「さぁ産まれてきな、()()たちよ!」

 

 

そう言い放った直後トミーロッドの口からカサカサと少し嫌な音がし、瞬間、機械にも思えるような見た目や青い触覚のような部分と、腹部が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()その赤い虫が大量に飛び出し、ダンジョンの壁や床など張り付けるところ全てに満遍なく張り付いていた。

あまりの出来事に驚愕している俺とベルを他所に、トミーロッドはさらにもう一匹の虫を出した。

それはさっきまでのとは違い、朱色で両目が飛び出しており鎌と思われる部分が異様に発達しているが、飛び回ることはせずただトミーロッドのすぐ近くで浮遊していただけの一見無害そうなやつだった。

 

そしてトミーロッドが自身の右手の指の爪を一瞬で伸ばすと

 

 

「フフフ……()()()()()()()()

 

 

瞬間、側を浮遊していた虫をその爪で縦に引き裂いた。

 

そしてそれに呼応するかのように、さっきまで張り付いたまま大人しかった爆虫と呼んでいた虫達の青く光る触覚と思われる部分が赤く光り、一斉に大爆発を引き起こした。

 

一階層のあらゆる場所から爆発音が聞こえ、たちまち足場が崩れ始めた。

ダンジョンの床に限ったことではないが、基本的にダンジョン全体はモンスター達の母胎となっている。

そのため壁や床、そして天井は決まった階層ごとに産まれてくるモンスターの大きさに合わせて全体的に層が厚いのだ。

そして、それは下の階層に行けば行くほどさらに厚くなっている。それだけ強く大きいモンスターが産まれる場所でもある、ということだ。

よってその大きなモンスターが産まれることがほぼない上層は、他と比べたら薄いのだ。

だがそれは他と比べたらの話であり、俺達からすれば十分厚い方なのだ。

 

それなのにも関わらず、トミーロッドは平気でそれを破壊してのけた。それどころか降りながらもまた新しい爆虫とさっき引き裂いていた虫を両方とも産み出していた。

 

「アッハハハハハハ!!!まだまだたっぷりあるからなぁ!!」

 

そうして冒頭に戻る……。

……うん、やっぱわからんわ。考えないほうが良さそうだ、俺はそう思った。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

そうして階層を爆破しながら降りていく俺達だが、12階層辺りだろうか?そこに着いた時にふとトミーロッドが止まりだした。

 

「やっっと止まったか……おいトミーロッド!お前何を危ないことして……あ?」

 

やっと文句の一つを言えると思い早々に言いに行ったが、言ってる最中に隣にいたベルに手をあげられた。文句の矛先をベルに変えようとした瞬間、()()()()()()()()()()

 

ベルは既に聞こえていたらしく、すっと耳を澄まして発生源を探し始めた。

 

俺も音を探ったが、遠いのか捕捉しづらくただ何か音がする、くらいにしか思えなかった。

 

そうして難航していると、トミーロッドが突然ダンジョンの奥に向かって無言で飛び始めた。俺と違って捕捉できたのか、ベルも同じ方向に向かい走り出した。

俺もほんの少し遅れたが、慌てて同じ方角に走り出した。




というわけでダンジョン初回から暴れまくりのトミーロッドでした!
今回も読んでくださりありがとうございます!
よろしければ感想や評価などをお願いします!あといつも感想やしおり等ありがとうございます!励みになります!

今回はちょっと書き方変えつつ軽く補足させていただきます。

・レグリオの「クソッタレな神々」
レグリオ(と今回は書いてないですが実はアフテクも)はとあることがあって以来ヴァーリと一部の神以外の神々(特に某二大最強派閥の神)をめっちゃ嫌っています。理由はいつか設定を出す時にでも。

・今回出した虫
ここの爆虫と起爆虫ですが、以前書いた通り本来の捕獲レベル×10〜程となっています。そのため元々の長所を更に伸ばした感じに表現してみました。

・何かの音
これは次回にわかります。何かの咀嚼音のような…?
次回はその音の原因(こっちメイン)と、書けたらディニエルやヴァーリ達の館側に訪れたファミリアについてもちらっと書きたいと思います!
書けなかったら、その次の回に必ず書きます!


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グルメ6:起死回生の一撃

鬼一法眼師匠がめちゃくちゃ可愛くて即聖杯入れてスキルマレベル90にしたり、異端児バレンタインでレイの配布とガシャでフィアが当たって嬉しかったり、ダイマックスアドベンチャーエンドレスモードで50匹討伐行けたりとそこそこ嬉しいことが重なってるので初投稿です。

今回は、初の本格的な戦闘シーン&初めての3人称視点(?)ってのに挑戦したので内容が今までに比べてはるかに雑に見えるかもしれません!もし読みづらかったりしたらごめんなさい!すぐ訂正します!
そして、物凄く今更なのですがこの小説はアニメでしかトリコを見たことのない人やそもそもトリコを知らない人でもなるべく楽しめるように書いてはいます!わからないところなどはこちらに聞いていただいても大丈夫ですし、調べたらちゃんと出ますしね。なので、まあなんというかたくさんの人に読んでみてほしいですw
あとこれも今更ですが、捕獲レベルというのはトリコの世界での猛獣の捕獲難易度を表した数値のことで、決して強さだけで測ったものではありません。まあトミーロッドの虫だけは生息地やらなんやらは関係ないので例外ですけどもw

ちなみにアンケートは次回作書く前に締め切ります。たくさんの投票ありがとうございました!!結果は次回にでも。
ではどうぞ。



12階層まで(爆発で)降りた3人は謎の音の発生源を探すべく耳を澄ましながら奥に向かって走っていたが、段々と大きくなっていくその音の元へ辿り着く。そこには、

 

 

「グジュル、グジュ……ボギッゴギッ…」

 

 

上層の実質的な階層主であるインファント・ドラゴン。通常種の色である朱色とは違い、朱色に加え紫が混ざったかのような色を持つ存在…()()()であろうそれを、巨大な前足で捕らえ捕食している()()の姿があった。

 

 

「「「っ…!?」」」

 

 

普段は余程のことがない限り感情を表に出すことはないトミーロッドだが、それが嘘だと言われても信じれる程に今の彼は、そしてベルとレグリオを含めたその三者は全員同じ驚愕の表情を浮かべていた。が、考えていることは全て違っていた。

 

まずベルとレグリオは、理解が追いついていなかった。

何故ならば、目の前で捕食されている小竜、インファント・ドラゴンと思われる存在。それは本来Lv1〜2なりたてくらいのパーティだと全滅するほどに上層では圧倒的な強さを持つモンスター。

…このダンジョンにおいては階層主というRPG等で言うところのボスが存在するのだが、上層には存在しない。

が、インファント・ドラゴンは上層では希少であまり姿を現さない上、他のモンスターと比べとても強力なモンスターなので実質的な階層主という扱いなのだ。特にベルは、ちょうど数時間前にだがついでという形でエイナからそれを教えてもらったばかりなのだ。

更にはそれの強化種……ギルドでも未だに確認された例のないモンスター。当然だがエイナが言っていたそれとは全く違う紫がかった朱色という姿。

 

レグリオも同じ考えを持っていた。そしてこれはレグリオの完全な野生の勘だが、恐らくこのインファント・ドラゴンは推定レベル5…もしくはそれ以上の強さを持つ可能性があったのだ。

そのオラリオ史上類を見ない強化種のインファント・ドラゴンは、今まさに謎のワニによって両前足で抑えつけられ首元から捕食されているのだ。

戦闘していたのならば周りが地形などが荒れていてもおかしくないのだが、見渡してもそのような跡は存在しない。つまりこのワニは、無傷でインファント・ドラゴンに勝ったということなのだろう。

階層主の強化種に加え、それを余裕の表情で食い尽くしている謎のワニ。異常事態に次ぐ異常事態。もはやどこからどう反応すればいいのかわからない状態だった。

 

 

一方トミーロッドは、その巨大なワニと思われる生物をデータとしてだが見たことがあった。既視感を覚え、すぐさま自身の脳をフル回転させて記憶を掘り起こす。

 

そのワニの名は、()()()()()

かつてトミーロッドのいた世界で存在していた、バロン諸島と呼ばれるマングローブ群生地帯の島。その生態系の頂点に位置する強さを持つ極めて獰猛な性格を持つワニだ。

だが、その強さはあくまでもバロン諸島ではという話であり、実際はトミーロッドの実力の前では蟲を出す以前に何も触れずに倒せるレベルなのだ。

 

当時あったデータでは捕獲レベルは5…一度だけ起きた異常事態(イレギュラー)込みでも8というものだ。

トミーロッドが体内で蓄えている蟲達の平均捕獲レベルは■■■■オーバー。率直に言えば相手どころか虫けら同然なのだ。 虫だけに

 

が、それはあくまで前の世界での話。

 

今トミーロッドの目の前にいるガララワニは、どこからどう見ても捕獲レベル5どころか8でもない。

正確な数値は測れないのでわからないが、恐らくはグルメ界入り口付近の猛獣に匹敵…もしかしたらそのさらに上かもしれない。そんな相手だった。

正直なところ、どちらにしてもその程度ならばトミーロッドにとってはまるで相手にならないことには変わらない。

なんならちょうど良いのでベルの成長の為の餌にしてやればいいか、そんな風にも考えていた。

 

が、先程トミーロッドが驚愕した部分はそこではなかった。

 

「(どこからこの世界にやってきた…?いや、それよりもなぜ()()()()()()()()()()()…!?)」

 

今トミーロッドが本気で思考していることは、まさにそれだった。

この猛獣の発生源。自然発生はどう考えてもあり得ない。

ならば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()トミーロッドに心当たりがあるとすれば、それは当時所属していた組織、即ち美食會に専属としていた再生屋カイトラの存在だ。

だが、彼は再生はできてもここまでの強化は施せない。ついでに言うと、彼はNEOのスパイの一人だったのだ。よってその選択肢は切り捨てた。

 

「(前者はボクと同じヤツがいなければ明らかに難しい……その上、ボクと同じかそれ以上の実力者じゃなければこんなことはできない。ならば後者か……?)」

 

そこまで思考したところで、ガララワニがこちらを向いた。

どうやらインファント・ドラゴンを食い尽くしたようだ。

ダンジョンに生息するモンスターが必ず体内に持っている魔石、それすらも残さずにその小竜は跡形もなく綺麗に捕食されていた。

そうしてガララワニがこちらに向いた瞬間、開戦の合図だと言わんばかりに特大の咆哮をあげた。

ダンジョンに生息するモンスターの出す咆哮。それとはまた違って、しかし強力なそれを出すガララワニ。

 

「グルォォォォォ!!!!」

 

思わず耳と目を塞ぐレグリオとベル。

トミーロッドはそれに動じることもなく、特に何も言わず観察も兼ねて蟲を数匹出してから近くの高台にて様子を見ることにした。

 

ベルに、内から声が聞こえる。

 

『おい小僧。わかってるたぁ思うが、今の小僧にこいつは中々つえーぞ。心してかかりな。』

 

「っ……ええ、どうやらそのようですね…腕試しにはちょうどいいかもです、ね!」

 

自身の言葉を合図に、ベルが一気にガララワニの正面に向かって駆け出す。

レグリオも位置を把握し、すぐさま愛用の双剣を構えながら側面に回り込む。

それに対してガララワニは、真正面から口を大きく開き噛み砕かんとベルに向かって飛びかかり、ベルはそれを大きく横に回避しそのまま足を斬りつける。

まずは機動力を奪えたか!と思ったベルだった。

 

 

が、()()

 

 

明らかに通常のワニより巨大な胴体や顔を狙わずに、足を狙うことで機動力から奪っていく。

決してその判断は間違ってはいない。

だが、ベルが持っていた武器はギルドで支給された初心者向けのナイフ一本だけなのだ。

そしてそれは、当然ながら特別製というわけでもなくただ一般向けに作られたもの。

故に、赤黒いそのガララワニの頑丈な外皮を傷付けることは叶わなかった。

それどころか、あまりの頑丈さにナイフが柄を残して刀身が砕けてしまった。

持ち武器を失ったベルは、先程の噛み付きを回避した際にナイフを持っていた手とは反対の左腕にヒルのような生物がついていることにも気づけず、動揺で一瞬固まってしまった。

 

「っ!?グハッ!!」

 

そしてそこに付け入るかのように、ガララワニが素早く回転し気づかれるよりも早くその尻尾でベルを叩き飛ばした。

 

 

飛びかかったことで狙えるようになっていた腹部に潜り込む直前だったレグリオは、ガララワニの突然の回転にギリギリで気づき素早く飛んで躱したことで難を逃れた。

が、その直後腕に何か生き物が飛んできては血を吸い始めた。

空中で取ろうとして悪戦苦闘する中、

 

ボゴォ!

 

という音が聞こえ音がした方へ視線を向けると、先程のガララワニに吹き飛ばされ壁にめり込むベルが目に入る。

 

「ベル!!」

 

その光景を見て、思わず声をあげた。

あげてしまった。

腕についたヒルに吸われていた血が垂れていることも厭わずに。

瞬間、その血の匂いを嗅いだガララワニがすぐさまレグリオの方を向き高速で跳ね、そのまま勢い良く回転しその尻尾でレグリオを壁へ叩き飛ばした。

 

「ぐっ…!!」

 

空中というろくに身動きが取りづらい位置な上途中までベルの方に意識が向いてしまったレグリオは、ガララワニの俊敏な動きに反応が遅れもろに攻撃を受けてしまった。

だが、Lv7故にダメージはほぼ全く無かったが、強く飛ばされたのか壁の少し奥にめり込んでしまいすぐには復帰ができなかった。

 

そしてズシンッという音と共に着地したガララワニは、まるでこちらが本命とでも言うようにゆっくりとベルの方を向きそのまま歩き出す。吹き飛ばしすぎて距離が少しあるが、それでも余裕と言わんばかりに笑みを浮かべていた。

 

 

ガララワニが歩いているのを視認し急いで体を起こそうとしたベルだったが、先程の尻尾での叩き飛ばされた時にガードもままならない状態の影響で、上半身全体の各部分の骨に罅が入ったのか下半身と左腕以外動かせないでいた。叩き飛ばされた際に臓器も多数潰されたのか、吐血も絶えず皮膚の見える部分全てに跡が残るほどだった。

おまけに手持ちの武器は何もない。元々保護されつつ見学目的で大丈夫だろというレグリオの判断によって、装備もまともにつけていない。着ていた服も各所に穴が空いてしまい、見てるのも辛そうなボロボロ具合だった。ついでに先程まで付いていたヒルも、吹き飛ばされた衝撃でそこら辺に転がっていた。

次まともに攻撃を受ければ、ベルは意識を失う。死んでしまうかもしれない。絶体絶命の危機。一言で言うならまさにそんな状態だった。

 

「(…正直ちょっと怖いけど、この力を使うしかない、かな…)」

 

ベルがこの状況を打開するには、

グルメ細胞の悪魔こと音の悪魔(ボイスデーモン)を使うしかない。

ここまで使わなかったのは、調整されてると言われたとはいえ自身の身に余る力を使うことにまだ少し()()があったからだ。

まるで制御できなければ自身が()()()()()()()のような、そんな恐怖を直感的に感じ取ったからだ。

だが、今のこの状況ではそんなことは言っていられない。使うしかないと腹を括る。

そして覚悟を決めたのか、ベルは自身の内で未だに呑気に眺めているゼブラに話しかけた。

 

「ゼブラさん」

 

 

『…あぁ?』

 

「音の力って、どうやって使えばいいですか?」

 

『ハッ、ようやくか。簡単だ、使いたい体の部分にエネルギーを溜めればいい。俺は口から出してたから小僧もそれでできるだろう。』

 

「く、口からですか……それはちょっと」

 

『あぁ!?別に悪かねーだろーが!!』

 

「いや、なんというかその…うーんとにかく今は怖いので、それはいつか試します!!じゃあ、それを()()()()()ことはできるんですね?」

 

『ったく、注文が多い小僧だ…できるぜ』

 

「…わかりました」

 

『小僧、まだある。もう一つだ。』

 

「?」……

 

そうして話し終えて、今動かせる左腕にエネルギー…ステイタスを見た時は食欲と書いてあったからそれがいいのだろう、と判断しその食欲のエネルギーを溜めて集中させる。

さっきまでノシノシと歩いていたガララワニが、そのエネルギーを感じ取ったのか一瞬立ち止まる。

そしてさっきまで余裕だったその表情を崩し、本能的に危機を感じたのか一気に飛びかかった。

 

それを見て寸前のところで真横に躱してから、ベルは地を強く蹴りガララワニの横顔に飛び込みながら己の全てを出し切るかのようにエネルギーの溜まった拳を強く構える。

そして、エネルギーが溜まった効果なのかバチバチと音が鳴りながら少し赤と白い光が纏った色に変化した左腕の拳を振るう。その際、ある名前を叫んだ。その名は、先程の会話でゼブラが教えていた名前だ。

 

『小僧。その技には名前がある。繰り出す時はそれを言えばいい。その名は…』

 

()()()()()()ィィィィィィィィ!!!!」

 

瞬間、ベルのその拳はガララワニの頬に巨大な跡を付けて当たった。

その威力は、文字通り格の違ってガララワニのその硬い外皮で構成される頬を余裕で貫通するものだった。

直後、ガララワニを中心として周りに衝撃が発生して少し固まり、体内で僅かにバチバチという音がしてガララワニの体の至る所から出血が起こり、そのまま倒れた。

 

直後、全てを出し切ったベルはふらふらな状態でその場に座り込んだ。

 

「はぁ…はぁ…この技凄く強いけど、物凄くお腹が減るし疲れる……このワニ、食べれば回復できるかなぁ」

 

「できるさ。それと細胞の成長くらいはするだろう」

 

そう独り言を呟いたベルの隣に、ベルを横目で見ながらトミーロッドが降り立つ。

 

「トミーロッドさん!さっきまで何処行ってたんですか…!?手伝って欲しかったんですけど…」

 

「手伝ったらお前のためにならんだろうバカが。ボクはボクで少し気になることがあったからね、ちょっと観察してたのさ」

 

「??」

 

途中からベルを見ずにどこか遠くを見ながらトミーロッドはそんなことを言う。

言葉の意味がわからずただただ困惑するベルだったが、その直後にベルの腹からグゥゥ…という音が鳴る。

 

「あっ…僕、お腹空いてたんだった…あはは……」

 

「ふん、しょうがないやつだ…館に戻ったらそのワニの肉を使ってボクが軽く料理してやる」

 

「……えっ!?トミーロッドさんって料理できるんですか!?」

 

「逆になんだと思ってんだ…まあいい。

ボクはこのワニを運ばなきゃいけないから手が開かない。お前はそこの狼にでもおぶられてな」

 

「へ?」

 

直後、ベルの隣にレグリオが着地する。

どうやらやっと壁から抜けれたようだ。

 

「狼ってお前なぁ…ともかくあんのクソワニ、壁にめり込ませやがって……次会ったらぶっ飛ばしてやる。

まあいい。んで、ベルを運ぶんだったか?仕方ねぇ、任せな。」

 

そのまま何事もないかのように、ベルをひょいっと背中に乗せるレグリオ。ベルはあたふたと慌てていたが、すぐさま落ち着かされた。

そしてそのまま帰っていく3人だったが…

 

ダンジョン固有の自動再生で既に修復が始まっているとはいえ12階層までの床や壁のほとんどに未だ残っていた大爆発の跡、そして子供を背負っている狼人(ウェアウルフ)の【ヴァーリ・ファミリア】副団長と、オカマ顔の背に羽が生えている変人(一般人の感覚)が巨大なワニを腕一本で持ち上げている姿を冒険者を始めとした多数の一般人に目撃され、そこでまた面倒ごとが起きたがそれは別の話……。




〈おまけ〉
ギネス「引退したから暇だわー」

マザースネーク「お、なんか人間界では異世界転生ものってのが流行ってるらしいぞ」

エンペラークロウ「それマジ??早速引退組で行ってみようぜ」

バンビーナ「よっしゃぁぁ遊ぶぜぇぇぇぇぇ!!!異世界でも山で水切りできるかなぁ??」

スカイディア「異世界では今度こそ平和に暮らしたいなぁ…」

ヘラクレス「グルメ界みたいに安心して呼吸するためのエアツリーとかあったらいいんだけど」

ムーン「アナザ食いたい」

デロウス「お宝置いてある洞窟とかないかなぁ…そこ住処にしたい」


作者「君たち出たら世界いくつあっても足りないからダメです」


ここまで読んでくださりありがとうございます!
よろしければ感想や評価などよろしくお願いします!_|\○_今後の励みになります!!

さて、今回もまた補足をさせていただきます。

・トミーロッドの蟲全体のやガララワニの詳細な捕獲レベルを出さない件
正直ここについては結構悩んだんですが、あんまり明確化しちゃうとちょっと面白くないしじゃあこここいつでええやんとかになっちゃうかなぁと思ったので出しませんでした。ここまでの話で元のレベル×10〜とか書いちゃってますが、それも一応明確化はしてないです。最低でも十倍以上強くなってるよーというだけで。説明下手くそなのでわかりづらかったらすいません。

・ベルが音のエネルギーを口から出すのをちょっと嫌がってる
こういうところで女っぽさを出すベルくん。君原作の時から思ってたけど、女々しすぎん??
それと、単純に口から出す構図はちょっと今後の戦闘でよろしくないかもなので別の形でボイスミサイル等は再現したいと思います。どうなるかはお楽しみに。

・ビートパンチ
やっと一つ技を出せました。ここの名前ゴスペルパンチでもいいかもですが、ちょっと出すには根拠不足?というかなんというか…ってのがあったのでここはゼブラの方の名称を優先しました。これもまた上のと同様別の形で必ず出します!

と、こんな感じですかね…次回は予定通りファミリアの館での出来事を書きます!その後にこれの続きに入る予定です!


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グルメ7:ロキファミリアとの交渉

リアルの面倒ごとをこなしていたり、この小説のタグやら設定やらどうしようと思いながら弄ってたりこの話の内容をどうするか考えていたらめっちゃ時間かかってたので初投稿です。

ダンまち4期おめでとうございます!!!嬉しすぎて発狂しかけました。
緑色の妖精と思われるマーク?がついてるので恐らくジャガーノート編ですかね?ソード・オラトリアの2期も出るしなんにせよ楽しみです!
ダンメモの方でも新ストーリーの枠が出てましたね。クノッソス攻略編かな?

今回は予告通り館側での出来事です!ただ何度か見返して確認しましたけど、それでも全体的に駄文かもなので読み辛いとかこの内容おかしくね?とかあるかもなので、見つけたら教えてください!直していきます!

なんか設定に書いときますっての増やしすぎてる気がするので、次回辺りに出そうかな…。

それと、お気に入り100件突破本当にありがとうございます!!!正直めちゃくちゃ嬉しいです_|\○_
これからも頑張って書いていきますのでどうぞよろしくお願いします!

アンケートもありがとうございました!!結果は40票でアイズがメインヒロインに決まりました!!まさかヴァーリの票数がレフィーヤを上回るとは思っていませんでした……!!(ヴァーリ23票、レフィーヤ20票)
ディニエルも前回まで全然出番なかったのに意外と4票も入れてあったの驚きでしたw

それではどうぞ。



ベル達三人がダンジョンでガララワニと交戦している頃……

 

 

ヴァーリ・ファミリアの本拠地こと法定の館(コートホーム)では、いつものエプロン姿とは違いダンジョンに行く前かのような全身タイツに両手両足や腰そして首元や頭などに多数のターバンを付けその上にローブを着込んでいるエルフの従者と、少し前に戻ったハイエルフの二人が向かい合ってソファーに座り込み、これからやってくるファミリアのことで話していた。

 

「アフテク様ー、そろそろあいつら追っ払うのうんざりしてきたんですけど…」

 

「仕方ないだろう、あいつらは元から無駄にしつこい奴らだ。今更愚痴を言ったってどうにもならんさ。」

 

「はぁ…まあそれはそうなんですけども……」

 

「私個人としても、あのファミリアとはあまり顔を合わせたくない。それに、いつもは騒がしいうちの主神も()()()()になるくらいだ、そういう意味でもあまり来ないで欲しい連中ではあるな…」

 

そう言い二人は揃って奥のリビングに目線を移すと…

 

 

そこには昨日までの天真爛漫という言葉が相応しいような様子が少しも感じられず、ただ何も言わずに般若のような険しい顔と雰囲気のまま腕を組みリビングの椅子に座って窓の外を眺めているヴァーリがいた。

こうなっている時の主神には、事が済むまで無闇に話しかけてはいけない。

このファミリアの全団員の常識である。

その空気に耐えかねたのか、ディニエルが口を開く。

 

「そ、そういえばパーポスさんはどうしたんですか?」

 

「ん?ああ、あいつは長いこと作っていたアイテムがようやく完成したらしくてな、そろそろこちらに上がってくるそうだ。久しぶりに人の顔を見たいとも言ってたな。」

 

「珍しいですね…確か今作ってるアイテムって、製作開始日が1()()()ほど前でしたっけ?

こんなに時間をかけるなんて何を作ってたんでしょうか…」

 

「さぁな…サプライズだおーって言っては、私には全く見せてくれなかった。

どうせろくでもないものなんだろうけどな。」

 

「あ、あはは…きっとそうでしょうね」

 

「毎回だけど二人して酷くなーい?さすがのぼくも傷付くんだけど常考」

 

そう話す二人の元に、黄土色のシャツの上にところどころに煤がついている白衣を着た細身の眼鏡かけた男がやってくる。

 

「なんだ、もう来ていたのかパーポス。この後客が来るんだが、人に会うのとその格好はいいのか?」

 

「えまさかの無視?別に構わないよ。あでもこの白衣は着替えてくるね。ただ、その客多分ぼくにとって話したくない相手だから基本そっちに丸投げするお。」

 

「はぁ…まあ、そう言うと思っていた。仕方ない。」

 

「貴方という人はアフテク様に無駄な労力をかけて……」

 

「ふっ、これくらいは構わないさ。大したことでもないからな。」

 

「アフテク様は甘すぎなんですよ……そういえば前から気になっていたんですけど、パーポスさんってなんで誰とも話そうとしないんですか…?」

 

「んー?別に誰ともってわけじゃないお。ただ話せる相手が極少数なだけで」

 

パーポスがそう話している途中で、玄関の方からコンコンッとノックの音が聞こえる。

瞬時に話を中断する三人。ヴァーリもゆっくりと玄関の方へ振り向く。最初に話していた訪問客が来たのだろう。慌てて白衣を替えるためパーポスは別室に移動した。

そのまま何も言わずにディニエルがアフテクの方を向き、小さく頷くとアフテクも頷く。

そしてディニエルは、そのまま玄関の方へと向かって行った。

 

玄関のドアを開けると、そこには小柄で金髪碧眼の小人族フィン・ディムナ、高身長で緑髪のハイエルフのリヴェリア・リヨス・アールヴ、そしてその後ろで引き気味に隠れている赤髪で糸目の神ロキ、山吹色の髪のエルフのレフィーヤ・ウィリディスというロキ・ファミリアの首脳陣が訪れていた。

 

 

「やあディニエル、突然の来訪すまないね。少しそっちの団長と話がしたいんだけどいいかい?」

 

予想通りな顔ぶれと言葉に思わず吐き気を覚えるディニエルだが、なんとか表情には出さずに誤魔化した。

それでも目つきだけは誤魔化せなかったのか、リヴェリアの背後に隠れていたロキと近くで縮こまっていたレフィーヤは震え上がっていた。

 

「即刻帰れ…と言っても聞かないのでしょう?チッ…さっさと上がってください。話は館で聞きます。つまらなかったら即帰っていただきますので。」

 

「助かるよ。」

 

そう言い捨て、そそくさと上がって案内に入るディニエル。フィンが軽くお礼を言い4人は中へ入るが、その様子は態度にこそ出さないが少し落ち込んでいた。

 

「…やっぱり僕らは嫌われてるまま、か…。

わかってはいても、なんとも辛いものだね。」

 

「ハイエルフの私がいても態度を変えないとは……同胞であろうと容赦ない、ということなのだろうか。」

 

「だからうちは行きたくなかったんやぁ…!あかん胃がキリキリしてもうたわ」

 

「が、頑張ってくださいロキ…。」

 

だが、落ち込むためにこの場に来たわけではない。ロキ以外はすぐさま切り替え、少々急ぎ目に法定の館に上がった。 「ウチもう帰ってええ…?」「ダメだ」

 

 

そうして法定の館のリビングにて、フィン、リヴェリア、ロキ、レフィーヤの4人が。

それに向かい合うようにアフテク、ディニエル、ヴァーリの3人が座った。

ちなみに、パーポスは話し合いに参加しないためディニエルとアフテクの席の後ろで立っている。

誰も一言も発さず、その場を気まずい空気が包み込む。

少し経って、その空気の中先に口を開いたのはロキ・ファミリア側のフィンだ。

 

「…さて、アフテク。おりいって頼みがあるんだ。」

 

「「「………。」」」

 

「近いうちに僕らは遠征に行くことになっている。だが僕達だけでは深層…それも未知の階層の攻略は些か不安なんだ。そこで、深層に詳しいヴァーリ・ファミリアにも参加して欲しいんだ。

勿論無償で、というわけじゃない。それ相応の報酬を「断る。」……なぜだい?」

 

フィンの提案とその報酬を、目を閉じたまま言い切らせる前にあっさりと却下するアフテク。

そして、薄々察していたのかそれに驚かずに理由を聞くフィン。

そんなフィンに対し、アフテクはまるで興味ないとでも言いたげに、目を開かずに腕を組みながら淡々と答える。リヴェリアは、その時のアフテクにどこか既視感を覚えていた。

その様は、まるでかつての最恐派閥に所属していた()()()()()を思わせるものだった。

 

「簡単な話だ。いくら報酬を積まれようが、私達にとってそれは何のメリットもない。ドロップアイテムも当然ながら要らない。

そもそもだ。何度も言っているが、お前達の私利私欲に私達を巻き込むな。いい加減に覚えろ。

それと、私とレグリオは()()()()()()を忘れたわけではないからな。」

 

その言葉を聞き、フィンはそうか…と小さく言いながら目線を下げ、リヴェリアは何も言わず複雑な表情をしたまま小さく俯いた。レフィーヤに至っては青ざめた表情のままだ。

ちなみにロキは、先程から神威を開放してきそうな勢いで無言でこちらを睨んでくるヴァーリに体中から滝のように冷や汗を流していた。

 

「話は終わりましたね、ではお帰りください。」

 

話が終わったと判断したディニエルは、さっさと帰ってくれと言わんばかりに4人に帰りを促した。

 

「っ……あ、あぁ…時間を取らせてしまってすまなかったね。じゃあ僕達はこれで失礼するよ。」

 

少し表情を暗くして、慌ててディニエルの言葉に反応してからフィン達は玄関へ向かう。

フィン達が外に出た後、リヴェリアが退室直前に立ち止まりゆっくりとアフテクの方へ振り向いた。そして、少し悲しそうな表情をして独り言のように呟いた。

 

「…もう、あの時みたいに共に戦ってはくれないのか?()()()()()…」

 

「!!貴様…訂正しなs「その名で呼ぶな!!ふざけているのか?それならば今すぐ魔法でその腐った頭を粉々にしてやろうか!!」…!!アフテク様!さすがにそれは!」

 

「ちょっと団長、それはやり過ぎだって!」

 

リヴェリアがその一言を発した瞬間、ディニエルが憤怒し訂正させようとしたが、アフテクはそれ以上に憤激し、怒鳴った。

すぐさま立ち上がり、自身の座っているソファーの隣に置いてあった杖を取り出すアフテクを見て、ディニエルは思わず冷静になって慌てて止めに入る。

後ろに控えていたパーポスも止めに入る中、リヴェリアは慌てて謝り出す。

 

「す、すまないアフテク…配慮が足りなかった」

 

その謝罪の声を聞き、自身の従者と団員の止めも相まってアフテクは動きを止め、杖を持ったまま丁寧に座り直す。

そのまま一言も発さず座り込むアフテクとその隣にいつの間にか水を用意して手渡しているディニエルの代わりに、パーポスが小声でリヴェリアに話す。

 

「リヴェリア氏、さすがにその呼び方は良くないですぞ…二度と言わないようにしてほしいのと、団長はあーなるとしばらく落ち着けないんで、早めに帰った方がいいですぞ」

 

「あ、あぁ…そうだな。」

 

「あぁ、そうだ一つ言い忘れてたお」

 

「?」

 

「副団長…レグリオからの伝言なんだけど、ベートにすまんなって言ってたお」

 

「そうか…わかった、伝えておこう。そして本当にすまなかった。」

 

リヴェリアはそう言い残し、頭を下げてから玄関の方へ向かい先に外に出ていたフィン達と合流し、そのまま帰路についた。

それをパーポスは見届けた後、早々にディニエル達の元へと向かった。

 

 

 

 

しばらくして…時間にして30分程経過してから、アフテクは漸く落ち着いたのか軽く息を吐きながら窓の外を見る。

ヴァーリも機嫌が直ったのか、いつもの明るい表情に戻っていた。

 

「はぁ…すまないなディニエル、パーポス。ヴァーリ。怒りで我を忘れてしまっていた。」

 

「いえ、アフテク様は何も悪くありませんよ…」

 

「キミの気にすることじゃあないさ。そんな事言ったら、私だって終始不機嫌で何も喋らなかったしね…そこはごめんね」

 

「二人とも別に気にすることはないお。そんなことより、そろそろ副団長と新人が帰ってくる頃なんじゃないか?ぼくの魔導具(アイテム)もそう告げてるお。」

 

「相変わらず変なとこで反応するんだなそれ…フッ、それもそうか。よし、今日は私が準備しておこうかな。」

 

「えっ!いやいや、そんな畏れ多いですし、私がやりますよ!」

 

「いや、むしろやらせてくれディニエル。気分転換がしたいんだ。」

 

「…そういうことであれば、わかりました。ですが、私もお手伝いさせていただきます!」

 

「そうか。フフッ…なら、しっかり頼むぞ。」

 

「!…はい!勿論です!」

 

そうして珍しくアフテクが手を洗って準備に入り、ディニエルもエプロン姿に着替えて慌てて参加していく姿があった。

だが、この後巨大なワニを抱えたトミーロッドと上半身の骨に罅が入って動けない状態のベルを背に乗せたレグリオが戻ってきて、その楽しげな雰囲気はすぐ破壊されることになるのだった……。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

おまけ?

 

一方、ロキファミリア側。

 

帰路についている途中のこと……

 

「ふぅ…今回もダメだったか…」

 

「すまない…私が余計な事を言ってしまったが故に怒らせてしまった」

 

「リ、リヴェリア様は悪くないですよ!きっとそうd「いや、今回は私が悪い。」っ…リヴェリア様……」

 

「まぁ、なんにせよあの様子だと断られることに変わりはなさそうだけどね…」

 

「せやから言うたやんけ……前みたいにヴァーリがうちになんか言う事は無くなっとったみたいやけど、それでも居辛いし一言も話せへんかったわ……」

 

「ふむ……ついでにロキが言ってた、アイズが見つけたっていうガラスの破片と虫と思われる生物のことも聞きたかったけどそんな余裕はなかったね…」

 

「せやなぁ…まあ、ウチに対してはアレやけど、それでもこのオラリオに来とる神の中でも一、二を争うほどの善神や。聞けたとしても何も変わらなそうやな。」

 

「あぁ、きっとそうだね。」

 

「そうだな…さて、遠征はどうしたものか…」

 

「とりあえず、ベートには伝えておかないとね。」

 

「そうだな、その件は私がやっておこう。伝言も預かっていることだしな。」

 

「伝言?なんだいそれは」

 

「なに、そこまで大したことではないさ。」




ここまで読んでくださりありがとうございます!
よろしければ感想や評価、投票などよろしくお願いします!!

さて、今回も少し補足します。

・不機嫌なヴァーリ
北欧神話見ている方はとっくにご存知かもしれませんが、ヴァーリというのは大神オーディンの息子で司法を司る神のことです。ロキの息子説もありますが、今回はオーディンの息子説を採用しました。詳細は設定に出しますが、天界にいた頃ロキの悪戯で家族を殺されているので激しく憎んでいるっていうことです。

・予想していた来客
実はロキ・ファミリアは高頻度というわけではないですが、そこそこ頻繁に訪れています。今回のように遠征の協力を頼みに行ったり交流しようとしたりと。これの理由も設定に書きます。

・あの時のこと
これも詳細は設定にですが、あの時というのはオラリオ暗黒期にまで遡ります。これにはザルドとアルフィアも大きく関係しています。

・「アグラレス」とは
これも詳細は設定に(ry、アフテク・フォリエットという名前は偽名です。本当の名前がアグラレスなことと偽名を使っていることにはちゃんと理由があります。

と、こんなとこですかね…
前書きにも書きましたけど、これは設定にーってのを増やし過ぎていてそろそろちゃんと書いとかないとわからなくなってしまうと思うので、次回はキャラごとの設定集の1つ目?を出そうと思います!トミーロッド調理の回はこちらのリアルの都合が済んでからになりそうなので、かなり遅くなると思います!すいません_|\○_
恐らく活動報告くらいなら書けるかもなので、書ける時に書いていこうかなと思います!


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グルメ8:いざ、実食!

月末に出すとか言っておきながら、ほぼ2週間ほど遅刻とかいう大失態やらかしてしまったので初投稿です。

投稿が遅れてしまい申し訳ないです。リアルが少し前まで本当に忙しかったのと、話の内容どうするかで本気で考えてたり、スマブラのホムヒカ参戦で使い込んでたり、買いたかった過去作のポケモン買ってそれをやってたりで中々進まなかったんです…_|\○_
……あれ、これ半分くらい自分のせいでは?

それはさておいて、前からそうだったのですが、3人称視点で書くのを続行していきたいと思います。
1話とかでやってたside〜ってのをいつかリメイクついでにそのうち書き換えた方がいいのかな…と思っているんですが、どうでしょうかね…?
その辺のご意見とかあれば教えてください。お願いします!

今回ようやくトミーロッドの料理回に入れました!ではどうぞ。



夢を、見ているようだ。

 

 

なんだろう…全く見たことのない夢で、その上ここは知らない場所のはずなのだけれど…

 

 

なぜか、僕にとってここは知らない場所ではない、と。

 

 

そう、体が言っているように感じた。

 

 

全く不思議な感覚に疑問を持ちつつ、周りを見渡してみると

 

 

白髪の誰かが…遠目に見たところ恐らく女性の人が、人に囲まれてる中ベッドで吐血しながら寝込んでいるようだ。

 

 

「はぁ…はぁ……ゲホッゴホッ!!」

 

 

「■■■■■!!」

 

 

「おい、誰かゼウスの糞爺を呼べ!ヘラもだ!急げ!!」

 

 

「お前たちもだ!すぐに医者を呼べ!!」

 

 

「はい!」

 

 

ベッドで寝かされてる人が吐血した。

それに反応するかのように、囲んでいる人の1人がベッドで寝ているであろう人の名前を呼んでいる。

 

 

そして、医者と共によく知らない名前を呼んでいた。

 

 

その中に少し見覚えのあるような人がいたが、今の僕にはわからない。

 

 

なぜか、その女性の名前だけ上手く聞き取れない。

 

 

ノイズのようなものが邪魔をしている。

 

 

手を伸ばすこともできない。

 

 

体すらも動かすことができない。

 

 

どうしちゃったんだろう、僕。

 

 

何も、できない。

 

 

ただ、その光景を見てることしかできない。

 

 

「はぁ…はぁ……いつ死ぬかわからない体だったけど、今回は、本当にダメなようね…」

 

 

さっき吐血した女性の人が、まるで何かを悟ったかのような清々しい表情をしてベッドから少し起き上がった姿勢のまま、まるで独り言を言うように話している。

 

 

「嘘だ…嘘だと言ってくれ……■■■■■…!

私とあいつを…お前の子ども達を残して、お前が先に逝くな…!!」

 

 

そう言いながら、ベッドにいる白髪の女性に声をかけ続けている灰色の髪の女性がいた。

 

 

その目は閉じているが、話すにつれて、少しずつキラキラと輝く涙が零れているのがわかった。

 

 

「そうなっちゃうわね……本当に、本当に不本意だけれども。」

 

 

「ねぇ……アルフィア。

 いいえ……姉さん。」

 

 

白髪の女性の人が震えながらも腕を伸ばしているのを、灰色の髪の女性…アルフィアと呼ばれていた人が、静かに手を取る。

 

 

「貴女があの子を育ててもいい。

 誰かに預けてもいい。

 私は、あの子が幸せに暮らすことができれば、それでいいわ…。

 それ以上は何も求めない…。

 

 

 お願い……あの子の、ことを…よろしくね」

 

 

そう言い切り、白髪の女性の腕は、力がなくなったのかガクリと崩れ落ちる。

 

 

「っ………■■■リア……!!」

 

 

崩れ落ちる腕を掴みながら、アルフィアさんがそれに額を当てて涙を堪えていた。

 

 

だが、既にその閉じた瞳からポロポロと涙が零れていた。

 

 

何もできずその様子をただ見ていると、不意に意識が途切れそうになった。

 

 

この感覚は、ゼブラさんの時と同じ…?

 

 

そう考えている間に、僕はすぐ意識を失った。

 

〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰

 

「……い、おーーい、そろそろ着くぞー起きろーベルー。」

 

「っ…ん…?」

 

ダンジョンでガララワニと戦い勝利した後、時刻が夜近くになっていたこともありファミリアのホームまで帰りつつ、背負っているベルを軽く揺らしながら気の抜けたような声で起こすのは、レグリオだ。

 

「ふん、グルメ細胞の力を使ったくらいで疲れて寝るとはね…まだまだってところか」

 

そう言いながら、ベルが仕留めたガララワニを片手で持ち上げるのは、元美食會副料理長のトミーロッド。

そんなトミーロッドの悪態を起き上がりで寝惚けていることもありスルーしつつ、ベルは先程まで見ていた夢のことを考えていた。

 

「あれ……今のはいったい」

 

「どーしたベル、嫌な夢でも見ちまったか?」

 

「それは……えっと、今はわからないので、整理がついたら話します…。」

 

「……?まぁ、それでいいんならいいけどよ。おっと、それより着いたぜ!」

 

起きたベルの様子に少し疑問を持ちとりあえず質問を投げかけるが、曖昧な返事で返され時間が必要かと判断したレグリオは、とりあえずは深く追及しないようにしとこうと考え、思考を切り替えた。

 

そうしていると、ドアが開きアフテクとディニエルが出迎えに来た。

 

本来ならばここで和やかな挨拶が飛び、日常に戻れたはず……なのだが。

 

「おかえりなさぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?!?なんですかその生き物は!!いや、それよりもベルさんは何があったんですか…!?重傷っぽいですけど治療院に行かなくていいんですかこれ?!」

 

「よく帰っ……た…おい、なんだそのワニのような生き物は……あと、その背負ってるベルはどうしたんだ」

 

「お、おう……話すと長くなるからとりあえず入りたいんだが、その前に…トミーロッド。この大きさ、どうやって持っていくつもりだ?」

 

「あ、あはは……」

 

まず、出迎えに来た二人のエルフの内ディニエルが、神々が言うところのギャグ漫画の如く目を飛び出しそうな勢いで驚愕しながらガララワニとベルを交互に見つつ質問を多数投げかけ、アフテクは重傷っぽく背負われているベルとトミーロッドが片手で持ち上げているワニのような生き物を見てから、胃に穴が空きそうと言わんばかりに頭と腹部を抱えながら目線を落として絞り出すように問いかけ、レグリオは現実逃避をするかのように目線をトミーロッドの方に向けてそのまま気にしていたことを聞いた。

ベルはその光景を、レグリオの背から見てただただ苦笑するしかなかった。

 

もし、この場にパーポスが居合わせていれば

 

「カオス過ぎテラワロスww」

 

というコメントをしてしまうだろう。そんな状態だ。

 

それはさておき、確かにレグリオの言う通り、このままではガララワニを館内に運べないのは誰が見ても明らかだ。

 

ではどうするか。

 

「そだね。面倒くさいけど、やると言ったからにはしっかりこなさないとだ」

 

「!?ちょっおまえ何する気だ!!」

 

「トミーロッドさん!?な、なにを…」

 

そう言いながら、トミーロッドの口からまたもやクキュクキュ…という嫌な音が鳴り始める。

ディニエルとアフテクには初のことなので、嫌な音に顔を歪めつつもこれから起きることにどこか疑問符を浮かべていたのだが、それに対してレグリオとベルは既に似たようなことを見ていたので思わず止めようとした。

 

「さぁ産まれてきな!」

 

ダンジョンに潜った時と同様、トミーロッドは静止を聞かずに黒い靄を大きいのを一つ、小さいのを複数ボトッと落とすように出していた。

 

そしてその靄が晴れると、大きい靄からはまるで継ぎ接ぎしたかのように数え切れないほどの多種多様な他の蟲達の模様を付けた細長い胴体と、両手に独特の形をしたその蟲自身の体の倍近くの大きさを持つ鋏を持つグロテスクな見た目をしている巨大な蟲が。

 

小さい複数の靄からは、銀色の見るからに硬そうな鎧、そしてその小さな体格にまるで似つかわしくない程の巨大な顎と角を持つ蟻のような蟲が隊列を作って並びながら現れた。

 

レグリオは、どこか心配そうな顔を浮かべているベルを背負いつつダンジョン内で出したそれより強力な蟲が何かしでかさないかと身構え、アフテクは青ざめつつも一応ということで杖を取り出していた。ディニエルにいたっては吐き気を堪えるかのように後ろを向きながら口元を抑えており、それどころではなかった。

 

 

が、すぐにそれは杞憂となるのだった。

 

 

「ジャイアントパラサイトはその肉を運べる大きさに切れ。で、ニードルキャリアントはキッチンまで運べ、すぐ終わらせな。」

 

ジャイアントパラサイトと呼んでいた巨大な蟲にはガララワニの肉を切ることを、ニードルキャリアントと呼んでいた小さい蟻にそれを運ばせるという、レグリオ達の予想していたこととは全く別の内容を指示していたのだ。

 

ザクッ!というジャイアントパラサイトの肉を切る音と、それを順番に背中に乗せてせっせと運ぶ蟻を他所に、ベル含むファミリア一同は思わず内心でずっこけ

 

「「「「((((紛らわしすぎる!!))))」」」」

 

と心の中でツッコんでいた。

 

それに気付いたのか、トミーロッドはレグリオ達の方に振り向き

 

「ん?…あぁ、ボクの蟲は本来全部戦闘用だけどね、適材適所って言葉があるだろう?それをやっただけさ」

 

と、言葉を残して切り終えたジャイアントパラサイトを屋根に居るように指示してから、そのまま最後の肉を運んでいるニードルキャリアントの後に続くように館に入って行った。

 

レグリオ達は、その光景をただただ見ていることしかできていなかったが、トミーロッドが館に入ったところで全員ハッと我にかえり慌てて館に戻ったのだった…。

 

 

そうして一行が館に戻ると、そこには一度に複数の作業をこなすかの如く音だけを残して目にも止まらぬ速さで肉を切りながら調味料をかけているトミーロッドの姿があった。

その服装は普段のそれとは違い、水玉模様は共通だが襟のついた私服のようだった。

ちなみに先程まで肉を運んでいたニードルキャリアントは、素早く体を洗った後キッチンの端の方で小さく隊列を作って待機していた。

 

そのすぐ近くのテーブルでは、その異様な光景に開いた口が塞がらずただそのまま座って身動き一つ取ろうともしない主神とパーポスがいた。

 

「お、おいヴァーリ…パーポス……?」

 

「……ハッ、あぁレグリオね、おかえり!

ってベルくん!?いや、それよりあれはいったい何なの…?なんというか、ギャップが凄まじ過ぎて頭が追いつかないんだけど……(小声)」

 

「てか、勢いに任せちゃったけどあれ大丈夫なん…?正直ぼく不安しかないんだけど(小声)」

 

「言うな…俺達もそこは同感だが、正直反応に困ってるところなんだ…(小声)」

 

「やっと来たか。さっさと支度済ませて席に座ってな。あとそこ、全部聞こえてるよ」

 

動いていない主神に声をかけたはいいが、ついつい余計な会話まで挟んでしまう。

そこを聞かれてしまった二人は…だけでなく、先程まで異様な光景を見ていた他の人達は慌てて定位置に座る。

その際、レグリオはベルをどうするかで少し固まったが、それを見たトミーロッドが「そこに座らせとけばいい」と言ったのでそのまま座らせることにした。

 

そうこうしてる間にも、トミーロッドは素早い中でも手際良く料理を進めていた。

切り分けられたガララワニの肉をあらかじめ油の敷いたフライパンでジュワァァ…という音と共に焼きながら、トマト、レタス、きゅうりといった野菜を手頃な大きさに切り分けてサラダボールに詰めていく。

そして既に炒め終えていた玉ねぎと鶏がらスープを混ぜ、そこにわかめともやしを加え入れ簡単なスープを作る。

 

そうしている間に焼いていた肉に焦げ目が付く。

それを確認してからトミーロッドは肉とスープをそれぞれ別の皿に盛り付け、近くで待機していたニードルキャリアントに運ぶように指示をし、自身はサラダボールを持ってテーブルに向かい、中央に置いた。

 

「ほらどーぞ。グルメ食材がこの肉しかないからあんまりいいものではないが、まあこんなものだろ」

 

「「「「「「おぉ〜〜!!」」」」」」

 

本日のメニュー

・ガララワニのステーキ

・グリーンサラダの盛り合わせ

・簡単なわかめスープ

 

運び終えたニードルキャリアント達がキッチンテーブルの端で固まって寝ている中、トミーロッドは料理が完成したことを告げる。

そして、トミーロッドは先程まで使っていた包丁の方を見ながら思索に耽っていた。

 

「(食材の質はともかく、包丁がお世辞にも良いものとは言えないな…。

おまけに食材そのものが足りない、素材も足りない……こういう時にGTロボが便利だったんだがな…それはさておきこの街に鍛冶師がいないのならば、研ぎ師の真似事になるがそのうちやる必要はある、か…そのためにも明日はっていやいやまてまて、何を考えている…いつからボクは世話焼きになったんだ…)」

 

考えている内に少しトミーロッド自身の考えが変わっていることに内心で首を振り、思考し直そうとしていると、「おーい何してんだ、お前も早く座れよ」とレグリオから声がかかりそのまま座る。

 

そして、全員が座ったところで食べようとした時、ベルが動かせる左腕のみを自身の目の前に出し感謝をする動作を行った。

 

「おいベル、何だそれは?」

 

「えっと、ご飯を食べる前にはこうしろって体が…」

 

「?こうか?」

 

「はい、それで両手を合わせるんです。今から食べる食材に感謝を込めるんだそうです」

 

「ほーなるほどなぁ、食べる食材に感謝なんてのは考えたことなかったなぁ」

 

「エルフには自然に感謝という意味でならば少しばかりあったのだが…確かに食材全般に、というのはなかったな」

 

「そうですね…なら、私達もそうしてみましょうか」

 

「いいんじゃないか?こんなこと初めてするかもしれないお」

 

皆がそう言い、トミーロッドを除く全員が手を合わせ目を閉じた。その後、目を閉じつつもいつの間にか涎をポタポタと垂らしていたベルが、

 

まるで体の意思に従うようにある言葉を言う。

 

「この世のすべての食材に感謝を込めて、いただきます。」

 

そして、それに合わせるようにファミリアの皆が

 

「「「「「「いただきます!」」」」」」

 

と、声を合わせる。

そうしてステーキに丁寧に切り込みを入れ一口サイズにしてフォークでスクっと刺し口に運んで食べる。すると…

 

「「「「「「お、美味しい〜〜!!!」」」」」」

 

と、思わず全員が感嘆の声をあげる。

それもそうだろう。そのガララワニの肉というのは、かつてトミーロッドがいた世界での味ですら現代で言う高級ブランド和牛に匹敵する程の脂のノリと旨みを持っているものだ。

それの強化種であれば、旨みが更に増しているのは当然のことだ。

そのステーキは、食べた部分を噛むたびにまるで洪水の如く肉汁が溢れ出し食べた者の口の中を満たしていく。

従来の食材ならば、そういったものは好まれないこともあるだろう。

だが、その美味しさは本来肉や魚などの生物をあまり好まないエルフであるアフテクやディニエルをも唸らせる程のものだった。

 

「あぁ…とても美味しいな。肉というのはこんなにも美味なものだったのか…」

 

「ええ、本当にそうですね…これからも食べてみようと思える程に美味です。」

 

そんな中…

 

「あれ…傷が治った?」

 

ベルの体全体に先程まであった目に見える傷が全て消えていったのだ。そして、体内で折れていたはずの骨や潰されていた臓器が再生を遂げていたのだ。

さらに…

 

「(わわっ!何これ!)」

 

突如、小刻みに震えた後ビキッという音がベルの体から鳴ったのだ。

それに対してベルは驚き自身の体を少し見渡すと、一見何も変わってないように見えるが、他ならぬ自身の体だからこそベルにはわかったことがあった。

ほんの少しだが、筋肉が付いたのか体が大きくなっていた。

ちなみにベル本人はまだ気付いていないが、この時点で身体能力及びグルメ細胞の悪魔の力が向上していた。

音は小さかったためレグリオ達には聞こえなかったようで、全員が特に気にせず食べていたのでベルは内心ホッとしていた。

そして、意識を切り替えてベルはトミーロッドの方を向きある言葉を伝えた。

 

「トミーロッドさん!」

 

「あ?」

 

「こんなにも美味しい料理を食べたのは初めてです!ありがとうございます!」

 

「うんうん!私もだよ!ほんとにありがとね!」

 

「おう!俺も初めてだ!ありがとな!」

 

「私もだ、肉の美味しさというものを初めて理解できた。ありがとう。」

 

「ぼくもめちゃくちゃ美味しかったお!久々に楽しい食事ができたぜ」

 

「私も、食事のバランスがとても良くて美味しいです。ありがとうございます。」

 

「……何なんだ、お前ら…」

 

ベルがトミーロッドに感謝の言葉を伝える。

そして、それに続くようにファミリアの人達がそれぞれ感謝の言葉を送る。

 

トミーロッドは驚いた。

無理もないだろう。何故ならば、トミーロッドは美食會副料理長ということもあり、本人は特に気にせずにいたがその能力や言動も相まって組織内では尊敬より畏怖の念を集めていた。

よって、個人として恐れられることはあれど、感謝をされたことは全くと言っていいほどなかったのだ。

加えて、美食會のボスである三虎に食事を作ることが、かつてのトミーロッドの組織での役割の一つだった。

だが、どれだけ作ろうが食べてもらうことはあれど、感謝をされたことなど一度もなかった。

食を支配するものとして認識し活動していた組織のため、当然のことなのだが…。

 

更に言うと、三虎は通常時どころか食事の際も表情を変えることはなく、ただただどこかつまらなそうに食べていた。

よって、トミーロッドには自然と「食事は作業のようなもの」という認識がどこかにあったのだ。

 

そんなトミーロッドにとって、この反応は予想だにできなかったことであり、全く経験のなかったことなのだ。

 

「…ん゙ん゙っ…とりあえず、食べ終えたらさっさとステイタスの更新とやらをしてもらいな。」

 

「?は、はい!」

 

照れ隠しで少し咳払いをした後、ステイタス更新を促すトミーロッド。

なぜステイタスなのか疑問に思いつつも返事を返して食事に戻るベル。

 

そうしている間にも、食卓は賑やかになっていった。

ダンジョンで起きたことをレグリオが話し、アフテクは強化種と思われるインファイト・ドラゴンについて真剣な表情に変わり考察をし始め、ディニエルは何やってるんですかと言わんばかりに呆れの目線をレグリオに送り、ヴァーリはダンジョンを破壊していったことに笑い出し、パーポスは仏頂面で聞くという状態になっていた。

そして、全員が食べ終えた後、ベルが再び手を合わせる。

それに続いて、皆が手を合わせ感謝の言葉を言う。

 

「「「「「「ごちそうさまでした!」」」」」」

 

そうして食べ終えて皆が満足し、ディニエルとアフテクが食器を片付けている中、ベルはヴァーリにステイタスの更新を頼み、レグリオとアフテクは明日の訓練のために後で見せてほしいということを伝え、パーポスは自室に戻っていき、トミーロッドはニードルキャリアントを連れて外に出たのであった…。

 

「(あ、夢のことどうしよう…明日訓練って言ってたし、その時に聞こうかな…。)」




如何でしたでしょうか?よろしければ感想や評価など、よろしくお願いします!((*_ _))ペコリ

今回も軽く補足していきます。

・ベルが見た夢
グルメ細胞が馴染んできたという演出を出すべきかと思ったので、体の記憶を掘り起こすということをやってみました。
何でもありって設定のグルメ細胞だし、このくらいはいいかなって思いました()

・ニードルキャリアント
完全なオリジナルモンスターです。名前が安直かもですが、トリコっぽさを出せるよう頑張って考えました。
戦闘もできますが、名前の通り荷物運びなどで使われることが多い蟻です。トリコの世界での捕獲レベルは一匹で24ほど。群体だと40ほどです。

以上ですね。

話の展開が遅くてグダグダになってる気がしますが、次回から動かしていくつもりですのでこれからもよろしくお願いします_|\○_

それと、投稿頻度は今までみたいに早くはできないと思います…。なるべく週1くらいにはしたいですが、ちょっとこの先の予定を見ていくと難しそうでだいぶ不安定になると思います…すいません。

次回はトミーロッドメインになる予定です。


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グルメ9:交渉と刺客

トリコ見るためにアマプラ入れようか本気で悩んでるので初投稿です。

前回の投稿から日がかなり空いてしまい申し訳ないです…_|\○_
リアルがそこそこ忙しかったのもありますが、難産気味で色々調べ回っていたのと息抜きで書き始めた小説のが早く書けてしまったというのがありました。

あくまでこちらがメインですしなるべく早めに投稿できるようにしていこうとは思います。

それと、評価に赤線が入っててめっちゃびっくりしました…評価してくれた方本当にありがとうございます!!嬉し過ぎてこれを見た日に手元に持っていたコーラ振り回しちゃってぶちまけました。
これからも面白い話が書けるように精進していきますので、よろしくお願いします!!

、投票は次話を書く前に締め切ろうかと思います。たくさんの投票ありがとうございます!結果発表は次回に。

追記:感想の方で言われて、ステイタスの成長速度を改めて見直したらおかしいことがわかったので修正しました!今後こういったことがなるべくないように気をつけていきます。



あれから朝を迎え、予定通りに動き出すトミーロッドとファミリアの人達。

前日は本来の予定とは少し…いやだいぶ違ったことになってしまったが、それでも一応は目的は達成した、ということでレグリオ達は納得することにした。するしかなかった。

そして、そのまま予定通りベルはアフテクと勉強会を、ディニエルは家事と買い物をしてからソロでダンジョン潜りを、パーポスは製作していたアイテムの最後の点検の後、試運転を行うのだとか。

 

そして、トミーロッドは元の世界の包丁と似たのを作れるかを聞くため、この世界の鍛冶師が集まっていると聞く【ヘファイストス・ファミリア】の鍛冶場に向かうことになった。

そして、その案内役としてまたもやレグリオが抜擢された。

レグリオ自身の武器の整備もあるためちょうど良いのだが、本人は「なぜだ…」と小声で少し恨めしそうな声を出していた。

蟲を遠慮なく出していき、周りへの迷惑などを一切考慮しないトミーロッドへの反応と後始末の量に疲れている、というのは本人のみぞ知ることだ。

それ以外にも疲れる要素はあったのだが…

 

それはさておき、早速二人はヘファイストス・ファミリアが経営しているというバベルに向かう。のだが…

 

「お前、なんか嬉しいことでもあったのか?」

 

「んー?どうしてそう思ったのかな?」

 

「いや、口角上がってるぞ…」

 

「おっと、これは失礼…フフ。」

 

「(笑顔こっわ…なーに考えてんだか……)」

 

このように、トミーロッドは笑みを隠しきれていない様子だった。

元々の顔つきもあって、その笑みは他者から見れば不気味なものだが。当然レグリオも引いていた。

その笑みの理由は、昨日にまで遡る……

 

 

▶▶▶

 

 

昨日のこと……

 

ガララワニのステーキを食べた後、トミーロッドが見守る中ベルはヴァーリにステイタスの更新をしてもらっていた。のだが…

 

「……ベルくん?何ですかこれ?」

 

「僕に聞かれても……」

 

「ま、グルメ細胞の成長なんてこんなもんだろ」

 

「こんなもんだろ、じゃないでしょうぅぅぅ!!?!?とんでもない伸び方してるよ!!?これ私が力使ったって疑われるじゃんんんんんんん!!!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ベル・クラネル

 

Lv.1

 

力:I 0 → S 900

 

耐久:I 0 → S 900

 

器用:I 0 → S 900

 

敏捷:I 0 → S 900

 

魔力:I 0 → E 400

 

 

グルメ細胞:I 狩人:SS 対異常:EX 憤怒:?

 

 

《スキル》

【グルメ細胞の食欲】

・超早熟する。

・食欲が続く限り効果持続&食欲が上がる。

・未知なる食材への好奇心の丈により効果向上。

・身体能力の大幅向上。

・損失した体の各部分の再生可能。

・(new)特定の条件達成時、一度だけオートファジーの発動が可能。

 

 

自食作用(オートファジー)】(new)

・グルメ細胞が成長の壁にぶつかった時かつ瀕死時、または極限まで怒った時かつ瀕死時、一度だけ発動可能。

・自身の体中の細胞を食い尽くし、全回復する。

・時間制限は5分。それを超えると、死に至る。

・5分以内にグルメ食材を食すと、限界を超え更に大きな成長を迎える。

 

 

音の悪魔(ボイスデーモン)

・グルメ細胞に宿る。

・音の悪魔の力を行使可能。

・聴覚超向上。

・カロリーを消費して食欲のエネルギー放出可能。

・威嚇行動可能。

・(new)本人の意識とは別に、一定時間潜在意識が悪魔の形で顕現可能。本人のみ抑制可能。

 

 

【英雄決意】

・能動的行動に対するチャージ実行権。

 

 

【美食を追い求めし者(小)】

・グルメ食材と相対した時、全アビリティに小補正。

・好奇心の丈により向上可能。

 

 

《魔法》

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

思わず敬語になって問いかける主神のヴァーリと返答に困るベル。

そして異常という言葉では済まない程の速度の成長に対して、当然のように答えるトミーロッドに本気で頭を抱えながらブンブンと首を横に振るヴァーリの姿がそこにあった。

ステイタスの上昇量。特に魔法を使ってないにも関わらず上昇している魔力。ランクアップもせずに発展アビリティの発現。追加で狩人と対異常は最高ランクに、憤怒に至っては測定不明が。更にはスキル効果の追加に新スキル。もはや本来のステイタスの常識という常識を根本から破壊し尽くした内容であった。

この異常という言葉に収まり切らないこの内容に対してヴァーリは、

 

「(…私にはわからなさ過ぎる!!あまり気が進まないけど、アフテクとレグリオに後は任せよう、うんそうしよう!)」

 

投げた。それはもう綺麗さっぱりに。

普段は役割を投げ出すことなくしっかりこなす彼女だが、今回ばかりはお手上げだった。

まあ、普通ならばこんな結果を見せられては無理もないのだが…

そしてそのまま窶れたかのようにげんなりとしているヴァーリの傍らで、本来のステイタスの伸び方を知らないためステイタスの用紙を見ながら「おおー」と感嘆の声をもらすベルと、無表情でベルの持つステイタス用紙を覗きながらスキル効果の確認とそれに合うメニューの考察を始めたトミーロッドがそこにいたのだった…。

 

ちなみにその後、座学内容と訓練内容を考えるためにとアフテクとレグリオがベルのステイタス用紙を受け取り読み始めたのだが、読み進めるごとに表情が青ざめ読み終えると現実逃避するが如く遠目になり

 

「「(対人経験とか場数とかを踏ませとけば後は適当でいいかなぁ…)」」

 

とだいぶ投げやりになっていたのだが、それはまた別の話。

 

 

◀◀◀

 

 

そんなわけで、現在アフテクはベルに座学を教えながらも内心では頭を抱え、別行動をしているレグリオもまた悩んでいたのだった。

そしてトミーロッドはというと…

 

「(まだ成長が足りないってとこか…だが、伸び代はしっかりある。今回はガララワニだったから物足りないだろうし、次はもうちょっとまともなグルメ食材でも狙おうかね…フフフ)」

 

 

「(だが、やはりわからない。なぜダンジョン内に猛獣が現れた…?下層へ偵察に出した蟲も戻ってこないようだし、そっちにも気を付けねば、か…)」

 

この通り成長量に少し物足りなさを感じながらも、ベルに素質があることを喜んでいたのだ。

その一方で、ガララワニが現れた理由を掴めていないことに歯痒さを感じていた。

ガララワニ戦の前にさりげなく出していた蟲。それは、トミーロッドがこの猛獣出現の原因を探るためにダンジョンの下層へと向かわせたものだったのだ。

翌日までに何かその仮説を裏付けると思えるものを発見し次第即持ち帰るようにと指示を出していたのだが、結果は未生還。

よって、ここで考えられることは2つとなった。

 

「(()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()())」

 

という結論に至っていた。

前者にしろ後者にしろ、トミーロッドにとっては退屈しないで済みそうだという安堵と、どんなやつが待ち構えているのかという期待で思わず口角が上がっていたのである。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ほら、そろそろ着くぞ」

 

そうこうしている内にレグリオの案内で一つの鍛冶場に着いたトミーロッドだが、レグリオが中にいる人物を呼ぶため声を出そうとすると、発する前から目の前の鍛冶場の扉が開き中から黒髪と褐色肌の巨体、更には豊満な胸と左目の眼帯が特徴の女性が出てきた。

そしてその勢いでレグリオに抱きつこうとしていたのだが、レグリオははぁ…とため息を軽くついてから少し横に移動して抱きつきを回避した。

回避されたその女性はそのまま顔からズザァァっと地面を滑る…ということはなく、わかっていたかのように軽く受け身をしつつとても軽いノリで話すかのように口を開いた。

 

「何だ何だ、久しぶりにやってきおったから抱きつこうとしたというのに、拒否するとは酷いぞ。」

 

「うるせぇ、いい加減その癖をやめろ椿。気持ち悪くて敵わん。」

 

「良いではないかー!減るものでもあるまいし」

 

そう、この女性の名は椿・コルブランド。ヘファイストス・ファミリアの団長であり、レベルは5。更には「単眼の巨師(キュクロプス)」という二つ名を持つオラリオ都市最高の鍛冶の腕と第一級冒険者としての実力を持つ凄腕の者なのだ。

そして、彼女は工房に長く籠もっていると人肌が恋しくなる、という理由での抱きつき癖持ちでもある。

世の男の大半にとっては豊満な胸を持つ者に抱きつかれるというのはご褒美に等しいものなのだが、全てがそうではないのだ。現在で言うならば、レグリオがまさにその部類に含まれる。

 

「むぅ〜……ところで、今日はどういった用だ?」

 

「いつもの整備だ、代金もいつも通りな。」

 

「ふむ?それは構わぬのだが…そこの者は誰だ?手前に何かあるのか?」

 

「トミーロッドってんだ。詳細は本人から聞け。」

 

そうしてそのまま流れるようにトミーロッドは説明に入った。

面倒くさくて早く終わらせたいのか、所々省略して簡潔に説明していたが……。

要は、「この鍛冶場で特別な包丁を作れるか」ということである。

 

「ほう……ちょう…?まさかとは思うが、料理などで使うあの包丁のことか?」

 

「あぁそうさ。聞けばこの世界では特殊な剣が作れるそうじゃないか。ならば、その技術で包丁を作るのくらい訳はないだろう?」

 

椿は聞き慣れない単語を聞いて思わず確認のために再度聞き、それに対してトミーロッドはまだわからないのか、というような表情を見せつつ話を続けた。

 

かつてトミーロッドがいた世界では、剣や斧などといった武器の代わりに料理人が使用する武器があった。それが包丁である。

 

普通ならば、包丁というのは料理をするために使われるものであり人を切るなどといった武器として扱うことは本来絶対あり得ない物。

だが、トミーロッドのいた世界ではメルク包丁や蘇生包丁といった下手をすればどんな武器や道具よりも強力な包丁が存在していたのだ。

特にメルク包丁は様々な特殊調理食材などに合わせた包丁だけでなく、猛獣を狩る時などの戦闘用に使う物などもあり物次第では免許が必要なほど切れ味が鋭すぎて危険なものもあるという代物である。

だがメルク包丁という名の通り、製作者はメルクのみ。

実際に同じものを用意するには、メルク本人に頼まなければならないのだ。

しかし、トミーロッドが今いる世界はかつての世界ではない。よって、蘇生包丁はおろか製作者がメルクのみというメルク包丁は作れないということだ。

そして、それはトミーロッドもわかっている。

なので、トミーロッドが求めているのは「この世界での特殊な武器の作り方を包丁に適用できないか」ということなのだ。

 

「えっと……つまり、彼奴が求めているのは例えば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…ということなのか?」

 

「俺に聞くな……まあ多分そういうことだろうよ」

 

「ううむ……初めて聞く注文よのお…どうしたものか…」

 

さしもの都市最高の腕を持つ椿といえど、このような注文は初めてな上いまいち理解できなかった部分があったため、近くにいるレグリオに聞くことで確認をとっていた。

レグリオは聞かれたくないかのようにうんざりとした顔で答えていた。

 

「ふむぅ…挑戦したことがない物故できると確証を持っては言えぬが、整備のついでがてら少し模索してみるとしようか。恐らくできるとは思うが、何せ付与するのは武器ではなく包丁ときた。同じやり方では良くないのかもしれぬからな。」

 

「そうか。」

 

「なんか…悪いな。となると代金はどーすんだ?」

 

「そんなもん後からで良い。まだできると決まったわけではないからな、また来てくれ!」

 

しばらく考えた後にそう椿が発言し、トミーロッドはそれにただ一言のみ反応。

そしてレグリオはどこか罪悪感を感じて謝りつつも代金についての確認をするが、椿はそれを後回し。また来てくれ!と言葉を残してそのまま自身の鍛冶場に戻っていく。

 

それを見てから、トミーロッドとレグリオは踵を返して館へ歩き出していた。

 

その途中、複数の謎の足音を聞いた二人。

それを聞き取ったトミーロッドは、一瞬止まってから人気の少ない裏路地へと入って行った。レグリオも辺りを警戒しながら同じように裏路地に入って行く。

 

「……刺客、ってとこか?」

 

「ふん、どれも雑魚の気配しかしないじゃないか。バレてんだからさっさと来いよ、ゴミ共。」

 

レグリオのまるで慣れたかのような反応とは別にトミーロッドのその言葉が頭にきたのか、その直後に周囲一帯から黒一色の仮面と服装を付けた獣人族と思われる銀の槍持ち一人と、それぞれ槍、大槌、大戦斧、大剣を持った背丈の低い四人組、そしてそれに続くかのように全身黒ずくめで姿を隠した様々な武器を持った者達が二人に襲いかかっていた。




ここまで読んでくださりありがとうございます!よろしければ感想や評価などよろしくお願いします!_|\○_

さて、今回も軽く補足していきます。

・ベルのステイタス
個人的にキリのいい数字が良いってのが含まれちゃってこうなりましたが、今回はガララワニなのでグルメ細胞が馴染んだのもあってこんな感じかなと思いこの数値やスキル、発展アビリティを入れました。不自然だ、とかありましたら教えてください。

・特殊な包丁
ダンまちの世界的に、一振りで山を割ったり形状変化する包丁といったのはできないと思うのですがそれに近いのは出そうかなと思ってるので今回この描写を出しました。いつか使うかも…?

・刺客
あれーおかしいねどこかで見た事あるような見た目だね(すっとぼけ)

こんな感じですね。
次回はベル側とトミーロッド側両方になる予定です。


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グルメ10:過去と失望

ネット内でのグルメスパイザーネタにいまいちついていけないので初投稿です。

更新めっちゃどころか1ヶ月近く遅れてしまい申し訳ないです。
色々ありましたが、一番はスマブラの影響でゼノブレイド2にどハマりしてしまってクリアするまで小説の方に全く手を付けていなかったのが原因です…あれ神ゲー過ぎませんかね??ちなみに自分は(本当にどちらかと言われたら)ヒカリちゃん派で天の聖杯以外ならカサネが好きです(隙自語)

番外編かなんかでこのssと繋げてみたいですけど、本編とあまり関係なくなりそうな上に関連付けるの難しそうなので泣く泣く断念しときます…_|\○_

それと、前回までの投票ありがとうございました!!グルメカジノ、サンサングラミー、食林寺編全部やります!!!といってもかなり先になるのでまあ気長にお待ちくださいw

それではどうぞ。


「アフテクさん」

 

「ん、なんだ?」

 

「…アルフィアって女性の方、知ってますか?」

 

「……今、なんと?」

 

朝より行われた座学の休憩時間の最中、不意にベルが読書を嗜んでいたアフテクに対してその質問を投げかけた。

その中にアルフィアというワードが聞こえ、思わず聞き間違いという可能性を考慮して確認のために再度聞いたアフテクだが、返ってくるのはアルフィア、と同じ言葉。

 

「……一応聞くが、その言葉はどこから出てきた?」

 

「うーん…夢の中で、というか…なんというか…」

 

「夢?なんだそれは」

 

「えっと……」

 

一応としてその単語の出処を聞くと、なんと夢の中だという。

冗談か何かと考えたが、アフテクから見てベルが軽口を叩いているようには思えなかった。

詳細を聞く必要があると判断し、本を閉じて聞く態勢に入るアフテク。

そうしてベルの口から夢の出来事を聞いていった。

 

それは、アフテクがレグリオと共に幼い頃に見てきたものと()()()()()()だった。

夢というにはあまりに具体的すぎるそれについての詳細を求めるも、わからないとのこと。

アフテクはその時の状況を思い出しつつ何かあったか、と手探りのように探っていく。

だが、その時はベルの話し方ができるような客観的に見ている人はいなかった…と記憶している。いたところで、当時はその後にあった黒龍との戦いでレグリオとアフテク、そしてディニエル以外の者達は皆戦死したからだ。

だが、ここまでの正確な内容を自分達以外の関係者が伝えずに知るのは不可能だ。

とそんなこんなで長考し続けた結果アフテクは、

 

「(…非常に気になる内容だが、今は深く考えてもわからないな。レグリオが戻ってきたら少し相談に乗ってもらうか…)」

 

「アフテクさん…?」

 

「ああ、すまない。少し考え事をしていた。アルフィアさんの話だったな」

 

その考えをレグリオが戻るまで一先ず置いておくことにした。

そして、アフテクはベルの最初の質問であるアルフィアについてを話し始めた。

 

余談だが、暗黒期の最中ヴァーリが引き取ってきた孤児であるパーポスを除いて、ヴァーリファミリアの者達は皆かつて存在していた二大派閥のゼウス、ヘラファミリアと決して浅くない関わりを持っている。レグリオとアフテクに至っては、そのファミリア出身と言える存在だ。

そのため、オラリオ内では絶対悪として現れ多くの傷跡を残し数多の冒険者や一般人などから忌み嫌われている闇派閥の代表格であるアルフィアやザルドといったかつての二大派閥の話を、唯一このファミリア内では悪びれることなく身内感覚のように気楽に話せるのだ。

 

「なんだか、とっても凄い方なんですね…アルフィアさんって」

 

話を聞き終えたベルが、どこか嬉しそうにそう口にした。

 

「そうだな。私の師であり、今も目標としている方だ。そして、妹…メーテリア様を何より大事にしていた。

あれからずっと努力してきてはいるが、追いつくどころか未だにあの方の背中が見えないよ」

 

「(メーテリア…)アフテクさんなら追い付けますよ…きっと」

 

「…根拠はあるのか?」

 

「いえ、全く。

ですが、不思議とそういう気がしますね」

 

「なんだそれは…ふっ、ありがとな」

 

そして、どこか遠くを見ながら自嘲気味にそう言うアフテクを励ますように、ベルが話す。

そして、それを聞いてアフテクは少し驚きつつもすぐに緩やかな表情を戻し感謝を述べた。

 

「さて、休憩は終わりだ。続きを始めるぞ」

 

「あ、はい!」

 

そう言ってアフテクとベルの座学は再開した。

その時のアフテクは、休憩前とは違いどこか嬉しそうな表情だったとか……。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「こいつら、やはりフレイヤんとこのか…」

 

一方、椿のところへ向かい要件を済ませて帰路についていたレグリオは、突如現れた刺客達の攻撃を表情一つ変えずに避けながらそう呟いた。

戦闘に入るなり真っ先にトミーロッドのもとへ殴り込みに行った5人はともかく、他の者達はレグリオが大きく見積もってもせいぜいがレベル2〜3ほど。

それならば、レベル7のレグリオにとっては集団であろうと攻撃をいなすなど造作もないことだ。

 

「さてと、あいつは……うわ、マジで手すら出してねぇのか。これはフレイヤの奴らとはいえ、ちょっと同情するわ…」

 

あまりにもレグリオに向けられる攻撃が緩いため躱しながらもトミーロッドの方に目を向けると、そこには腕を組みながら小柄な4人の攻撃を全て最低限の動作で躱しつつ、銀の槍を持つ獣人族に対して既に吐き出していた蟲を向かわせて戦わせ、まるで相手にしようとしていなかった。

 

「な、なぜ当たらない…」

 

「フレイヤ様の仰っていた以上に手強い…」

 

「このままではかすり傷一つ付けられないぞ…」

 

「ならばどうする?」

 

「「「「決まっている。さらに全力だ!!」」」」

 

先程からずっとトミーロッドを斬りつけていた4人が一撃も当たらないことに驚愕の感情を表し、手を止めずにそのまま軽く話し合う。

そして、結論が出たことでさらに攻撃の速度を増していく。

その速度の差に、通常ならば第一級冒険者といえどただでは済まないだろう。

だが、4人の目の前にいるのは第一級冒険者ではなくトミーロッド。

速度が変わろうが表情1つ崩さずに躱し続けていた。

 

「ちぃっ、なんだこの蟲達は…全く近づけねぇ…」

 

一方、その場に参戦しようとしていたが数十匹の多彩な蟲達に阻まれて一向に進めないでいた獣人がいた。

 

元々、槍というのはその長い柄による刺突や払いを主な攻撃手段としているものだが、反面懐に潜り込まれると対処が難しくなる武器だ。

そしてそれは、槍を使用する者である以上第一級冒険者であろうが例外ではない。

そのため、この獣人はひたすら目で追えない程高速で飛び回り懐に一瞬で潜り込んでは切り傷を作り続けていくという所謂ヒットアンドアウェイを繰り返していく蟲達に対処できず苦戦していた。

そうして少しずつ押されていく獣人が、ついに痺れを切らしたのかトミーロッドに怒りの声をあげた。

 

「くそがっ!なぜ俺と戦わねぇ蟲野郎!」

 

「んー?これ以上雑魚に構ってやるほど僕はお人好しじゃないからね、君にはその蟲で十分だろ」

 

「んだとてめぇ…ふざけるなぁ!!」

 

そんな声を、()()の意も含めてトミーロッドは軽く流す。

その態度と返答に堪忍袋の緒が切れたのか、獣人は露骨に怒りの表情を見せ突如槍を素早く大きく振り回し周りの蟲達を大きく吹き飛ばした後にトミーロッドに飛びかかった。

トミーロッドの回りでひたすら攻撃し続けていた4人がすぐさま獣人が飛びかかる部分にだけ空間を作り、そこに槍を構えた獣人が飛び込む。

その速度は、通常の冒険者どころかレグリオ程の実力者であっても避けることは難しい程のものだ。

だが…

 

「へぇ…随分とまぁ御大層な攻撃だこと。

けどいいのかなぁ?()()()()()()()()()

 

トミーロッドはそんな飛びかかりにも怯むことはなく、むしろニヤッと不気味な笑顔を見せ目の前で飛びかかろうとしている獣人に忠告する。

そんな忠告を無視してあと少しで穿とうとするも、その槍が届くことはなかった。

なぜならば、

 

「はっ、何言ってやがる!そんな奴らとっくに(ザシュッ!!)…は?」

 

その槍が届く直前その持ち主の腹部に先程吹き飛ばしたはずの蟲達が刺さり、グリグリと文字通りドリルのようにその肉壁をこじ開けていたからである。

 

「なっ…さっき吹き飛ばしたはずの蟲が…ごはっ」

 

槍を持つ手に力を入れる余裕がなくなり、そのままカランカラン…という音と共に槍を落としてしまう。そしてバタンという音と共に俯せに倒れ、その腹の部分から蟲が多量の血と共に血塗れの状態で飛び出した。

それと同時に周りで飛んでいた蟲と合流し、残りの蟲達はトミーロッドの回りで攻撃を続けていた4人に狙いを定めそのまま襲いかかる。

突然の事に頭が追いついていなかった4人だが、蟲達が羽音を立ててこちらに向かってきたことで意識を戻し慌てて迎え撃つ。

 

その様子を見ていたトミーロッドは、徐々に先程までの不気味な笑顔から一転、まるで遊び飽きた玩具を見るかのような冷たい目付きに変わり、腕を組む姿勢は変えずに残りの戦闘員達全てを無力化させていたレグリオのもとへ降り立ち確認をとっていた。

 

「おい、一応聞くが…今の奴らがこの都市最強ってのは本当か?」

 

「ん?あぁ、()()()()そうなっているな」

 

「そうか…チッ雑魚じゃないか、ちょっとは期待したんだがな」

 

「それより、さっさと館に戻ろうぜ。ここに長居はあまり良くねぇ」

 

「ふん…」

 

そうしてトミーロッドは、今もなお戦闘を続けていた蟲を呼び戻した後自身の爪で跡形もなく引き裂き、2人は館へと戻っていったのだった。

 

「な、逃げるつもりか!」

 

「待て!逃さんぞ!」

 

「よせ兄者、今の我々では追いつけん…」

 

「…遺憾だが、今は撤退しかない。」

 

「「「「…仕方あるまい」」」」

 

4人は追いかけようとするも既に疲労困憊で追撃が難しい状態となっていたためそちらを諦めて、倒れた獣人に予備で持っていたポーションをかけてから運びその他の者は各自で動くように指示していた…。

 

 

 

 

 

 

『よっしゃ〜〜〜〜!!!!!ついに完成したお!!!さて、どこで動かそうかな……』

 




今回は字数あまり多くないですね、多分次もそうなるかもしれません。
今回もよろしければ感想や評価などよろしくお願いします!_|\○_

そしていつもの補足をば。

・ベルの夢の話
どういう内容かはグルメ8の最初の方参照。

・刺客
ちょっと無理矢理感あります(し返り討ちにあってます)がここで襲うのは後々に響いてくるので大事な場面です、はい。

と、これくらいですかね。
これと前回のでまだ時間は昼回るくらいという事実。
次回はファミリア内の話になる予定です。


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グルメ11:不発と予兆

誕生日にどうしても投稿したくて数時間で書き上げたので初投稿です。

本当はもっと早くに投稿したかったのですが、ピクシブの方でどうしても投稿したかったゼノブレイド2の小説があったのでそっちを書いてからになりました。すいません許してください!なんでもはしませんから!

それはそれとして、UA数2万突破&お気に入り200件突破&評価バー?が赤のまま伸びたのと投票者数10人突破本当にありがとうございます!!!!あまりにも嬉しすぎて、ガチで固まった後スクショめっちゃ取ってしまいましたw
これからも面白い内容書けるよう精進していきますので、どうぞよろしくお願いします!!

さて、今回は前述した通り数時間で書いたものなので、誤字脱字や内容ミスが多いかもしれません。もしありましたら是非教えてください!見かけ次第直していきます!

ではどうぞ。



刺客の件から数分、レグリオとトミーロッドがちょうど昼くらいにようやく館に着く通りに入ったところで買い物を終えたディニエルと合流、そのまま館に帰還すると…

 

 

ガション、ガション……ピピー…ブブー…バチバチバチ

 

 

館(の敷地内)のすぐ横のちょっとした空き地にて、謎の自律型ロボットが動いていたのだ。

そして、その後ろでいつもの白衣姿で腕を組みながらロボットの様子を見守っているパーポスとその隣で目をキラキラ輝かせて動作を眺めているベル、その後ろで興味なさげに見ているアフテクの姿があった。

 

「今帰ったぞー……パーポス?お前何作ってんだ?」

 

「あ、副団長お帰リンボ。」

 

「(リンボってなんだリンボって……)」

 

 

ンンンンンンンン!!!何やら拙僧のことを呼んでいる声が

 

 

「あっレグリオさん!おかえりなさい!パーポスさんがロボット完成させたらしくて、それを見せてもらってるところなんですよ!」

 

「お、おうそうか…そいつぁ良かったな…」

 

「帰ったかレグリオ。…察しの通り、いつものだ」

 

「だろうな…変なことにならんよう、祈るのみだ…」

 

一応帰りの挨拶でもと思いレグリオは声をかけるが、パーポスからは謎の返事が来てベルからはまるで男のロマンを目の当たりにした小学生のそれのような反応が、そしてアフテクからは呆れたような目線と口調での簡潔な説明が返ってきた。

ちなみにディニエルは、一応ということなのか簡潔にただ今戻りましたとアフテクに伝えてから館内へと入っていき、荷物を置いて準備を整えていたのかすぐさまダンジョンに行く服装でそのまま出て行ったのだった。

他にすることもないのでとりあえずパーポスのロボットの動きをしばらく見ていると、突然ロボットからバキッという嫌な音がなり、そのまま関節部分が外れてから動かなくなってしまったのだ。

 

「え!?…な、何が起こったんだお…?」

 

「…ちょっと見せてみな」

 

「トミーロッド氏?……いいけど、更に壊さないでほしいお」

 

「んなことしないっての」

 

そのロボットのもとに駆け寄り停止した原因を探っていたパーポスの近くに、トミーロッドがゆっくりと歩きロボットの前でしゃがみ観察し始めながらそんなことを言っていた。

 

そして、パーポスが離れてからトミーロッドは改めて外れた関節部分を手に取り細部まで観察したりロボット全体と外れた関節部を交互に見てから顎に手を置いて少し考え出し、思いついたかのように置いた手を外すと口を大きく開けだして一瞬のうちに蟲のいる黒い靄を2匹分産み落としたのだ。

 

一つの靄からは、群青色一色の体に髭のように口元から生えている触覚、そして刺々しくていかにも頑丈そうな鎧にも見える甲殻を持つ昆虫が。

 

もう一つの靄からは、茶色の球体のような体にまるで筋肉隆々の男の腕のように血管が浮き上がっているようにも見える体中の模様、そしてとても悍ましい顔つきをした蟲を呼び出していたのだ。

 

「い、一応聞くが……喧嘩ふっかけるわけじゃ、ないよな?」

 

「はぁ?そんなわけないだろう」

 

以前のこともあり確認のため聞いたレグリオに、レグリオの方を見て馬鹿か?とでも言いたげな表情をしながら先程呼び出した2匹の前で軽く人差し指を動かし出すトミーロッド。

そして、それを終えると2匹を連れてパーポスの前に立ちだした。

 

「ど、どうしたお…?」

 

「お前にこの2匹をくれてやる。こっちの青い奴はアーマーホイホイで、こっちの茶色い奴が粘獣蟲だ。」

 

「は、はぁ…?」

 

「アーマーホイホイの甲殻はかなり頑丈な上に柔軟性にも優れている。だから、このロボットのメイン外殻やら補強やらにすればこの世界で物理的に破壊されることはまずないだろう。

そして、接続に難があるようならこの粘獣蟲のガスを使え。

そうすりゃこのロボットの難点を解決できるだろう。ああ、別に返す必要もなければ量の調整や蟲自体の安否などは気にしなくていい。

その辺はフェロモンでこいつらに詳細な指示は送っといた、後は好きにしな」

 

パーポスの言葉を聞く必要がないと言わんばかりにトミーロッドは立て続けに説明をし、パーポスに2匹の蟲を譲渡した。

 

パーポスには本来嬉しいことではあるのだが、立て続けの説明だけでなく突然グロテスクな見た目の蟲を渡されてすぐには思考が追いついていないのだ。

ちなみに、他の者達は突然の専門的な説明に全くついていけてなくてその場で固まっていた。

 

「あ、ありがとうだお…?」

 

追いついていないが、とりあえず受け取ったものを使う準備と考えを纏める時間を欲しいため感謝の意を伝えてから2匹を連れて部屋に戻ろうとするが、それをトミーロッドが引き止める。

 

「待て、まだある」

 

「なんだお?これ以上の説明は後にしてほしいんだけど…」

 

「そっちじゃない、そのロボットの名称だ」

 

「…?」

 

「そのロボットの名称は『G()T()()()』にしておけ」

 

「は、はぁ…まあ名称はまだ決めてなかったから別にいいんだけども…」

 

そうしてパーポスは2匹の蟲と共に部屋に戻り、トミーロッドは館内に入っていった。

その場が静寂に包まれたことで3人は我に返り、慌てて館内へと入っていったのだった……。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

おまけ

 

ダンジョン、およそ24階層にて……

 

毒の雨よ(ポイズンレイン)!!」

 

ディニエルのその声と共に、ダンジョンのとある一室内にて天井に紫色の雲と共に猛毒の雨が自身ごとモンスター達に降り注がせて溶かしていっていた。

そうして、雨が止んだと同時に先程までディニエルの周辺にいた多数のモンスター達が消え、代わりに魔石がたくさん落ちていた。

 

「ふう…魔石を溶かさないようにするのは、少し骨が折れますね…って、あちゃー……少し溶かしちゃってましたか…調整がまだまだですかねぇ…」

 

そう独り言を言いながら、溶けてしまったものそうでないもの問わずに魔石を拾って腰にかけているポーチにしまっていく。

 

「……ベルさん、でしたか…彼には、なるべくこの私を知ってほしくはないですけど…それも時間の問題のような……」

 

魔石を拾う際に手や髪からポトポトと垂れる紫色の雫…毒を見つめながら、ディニエルはそう呟く。

彼女は、生まれたその時から毒が体から溢れ出す体質持ちであり、周りのエルフ達どころか産んだ実の親にすら見離された子なのだ。

それを引き取り、自身の家庭内で従者という形で面倒を見たのがアフテクことアグラレス一家である。

アグラレスの両親はそれぞれかつての二大派閥であるゼウスファミリアとヘラファミリア、オラリオの外にある里においても影響力は甚大で彼女らに意見できる者はいなかった。

恩義を感じたディニエルはそれ以降、連れ出してもらう形で里を出てからもアグラレス一家にのみ心を開き、従者として立派に仕えていた。

当初はまだ慣れず失敗することもあったが、それでも暗い表情を一切見せずに一生懸命にその仕事をこなす姿は、とても純粋で美しいものだった。

そんなディニエルをアグラレスは妹のように、血が繋がっているわけではないとはいえアグラレスの両親達は、アグラレスと同様実の子どものように接していたのだ。そこには優劣などなく、ただ平等に愛そうという純粋な親心だけがあった。

ディニエルにとってこの生活は温かく、そして掛け替えのない時間だったのだ。

このまま、何事もなく幸せに過ごせれば……

 

 

そう思い、そして願っていたディニエルなのだが、

 

 

その幸せは

 

 

長くは続かなかった。

 

 

それは、冒険者三大クエストの最後の一つである黒龍の討伐があったからだ。

 

その戦いにて、アグラレスの両親は世話役として同行させていたディニエルを守るために身を挺して庇い、命を落としてしまう。

アグラレスはヴァーリのもとに預けているため、この場にはいないのが不幸中の幸い、というところだった。

命を落としてしまう際に二人は、最後の力を振り絞ってディニエルにこう言い残した。

 

「私達は全滅してしまった……もう、帰ることさえできない…ディニエル、お前はオラリオに戻って、ヴァーリという名の神様のもとへ向かって、ちょうだい…。」

「そこに、お前もよく知っているアグラレスがいるはずだ……どうか、私達の愛娘を、助けてやって、くれ……」

 

パタッ…

 

「そ、んな……あ、あぁ……義父様…義母様……イ、イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」

 

彼女…幼いディニエルの叫び声が、その場に鳴り響いた……。

 

 

 

それからは、ふらふらと千鳥足のようにオラリオに自力で戻りヴァーリの目の前で力尽きて意識を失い、介抱されて回復してからも両親達の遺言に従い暗黒期など様々な困難に立ち向かいながらもずっとアフテクの側を離れず仕えていたのだ。

その際ディニエルに罵倒したりする同族のエルフなどもいたのだが、たまに優しくするものもいた。当時のディニエルには、とても有り難いものだった。

だが、そんな人達も仲良くなりダンジョンで共に潜った際、ディニエルの毒を目の当たりにすると皆等しく口を揃えて化け物だと言い、置いていくばかりかモンスターの群れの中に突き落とす者までいたのだ。

その際は危機を察知したアフテクによって助かったのだが、それ以来ディニエルは他人を信用することがなくなってしまった。

 

そしてそれは、現在も変わっていなかったのだ。

 

「…ベルさんだって、あいつらみたいにきっと、最後は捨てるに違いありません……とりあえず帰ろっと」

 

そう呟きながらダンジョンの上へ登る階段に差し掛かったその時、

 

 

フシュゥゥゥゥ……コーー……

 

 

そんな音が聞こえたのだ。

それがモンスターならば声の大きさ的に少なくとも視界に入るはずなのだが、それはなかった。

 

「……?気のせいでしょうか…」

 

そう言い、ディニエルは特に気にせずに帰路に着いたのだった……。

 

 

 

『さぁ、まずは食材達を呼び寄せてしまいましょうか…!おいでなさい!かつての猛獣達よ!!』ザシュッ

 

グジュゥゥゥゥゥ……グゴガァァァァ!!!!!!




如何でしたでしょうか。よろしければ今回も感想や評価などよろしくお願いします。_|\○_

今回も軽く補足していきますね。

・リンボ
晴明推しのやべーやつはこのssに登場させる予定は一切ありません。なのでこれはパーポスのネタや作者の悪ふざけのようなものだと思っといてください。邪魔とかでしたら消します。

・ロボット
トリコ見ている方ならご存知のあのGTロボです。
ただ、今回はトリコの世界のように宇宙探査や火山火口などの危険領域に食材探しといった目的などは一切ないので、その辺の要らない機能は捨ててほぼ戦闘特化になると思います。
環境に適応ともう一つの目的は必要ですけど。
出す場面はちゃんと決めてありますのでご安心を!そしてお楽しみにです!

・トミーロッドの蟲の譲渡
彼は蟲一匹一匹に対して全くと言っていいほど思い入れなどがないので、目的や自己満のためならば割とこういうことしていそうだと自分は原作読んでそう思ってます。
というわけで、パーポスくんは戦闘にも作業にも使える超万能蟲を2匹貰ったというわけですね。どんどん周りがやばくなってく…!

・今回の蟲
アーマーホイホイの本来の捕獲レベルは35、粘獣蟲は捕獲レベル90です。もう何度も言ってるのでこれ以降はレベルだけにしますが、トミーロッドの蟲達はこれ×10↑が推定捕獲レベルになっています。
ちなみにそれぞれの特徴や効果は、原作のものに少しプラスさせてもらってます。

・ディニエルの内側
本編で書いたまんまです。実は設定に書いてないけど、自身の構想の中では最初から決めていたものなので今回こうして書きました。設定集の方にもいつか書きますね…

・謎の声
あれーおかしいねアニメトリコの最終盤にいた気がするね(すっとぼけ)(2回目)

と、こんな感じですかね。
次回は……現時点ではまだ未定です。多分ですが文章自体少なめで別のファミリアの話多めの本ファミリア少々になるかと。変更になるかもしれません。

最後にアンケートも載せておくので、よろしければお答えください。それでは。


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グルメ11.5:とある交渉

時々ようつべでトリコのOPやED集を見返すんですが、ゼブラが登場するたびにかっこよさで(内心で)叫びまくってるので初投稿です。

今回はトミーロッド要素が皆無なので小数点つけました。
今後の展開等を考えてどうしても外せないところを入れたので、「トミーロッド要素を見たかったからこのss開いたの!」という人は大変申し訳ありませんがもうしばらくお待ちください…_|\○_

それと、アンケートの方ですが沢山の票をありがとうございました!今回も次を書く前に締め切ろうと思います。

ではどうぞ。



少し前…レグリオとトミーロッドが椿と交渉を、そしてアフテクとベルが座学を行っていた頃のこと……

 

 

「はぁーー……やっとダンジョンの修復が終わって、ロキファミリアが遠征に向かったか…にしても、あの爆発跡は一体何だったんだ……」

 

大きな溜め息と共にそんな愚痴にも似た言葉を吐きながら自身の部屋……所謂ギルド長室にて、手元の報告書を机に置く太っ腹のエルフ……ギルド長のロイマンがいた。

彼は、先日(トミーロッドの興味本位全開で)起きたダンジョンの1階層〜11階層までの爆破事件の後始末や、それによる多数の冒険者のダンジョンへ向かえない問題の解決に当たっていた。ちなみにロキファミリアの遠征はダンジョン破壊の日の翌日を予定していた為、間一髪で問題なく進めることができたという。

だが、破壊跡から人為的なものだということは判明したものの、肝心の犯人と思わしき存在が見つからず結局難航したままダンジョンが修復を終えた、という形になったのだ。

 

「だからって私を呼び付けるのはやめなさいよ…何よ緊急事態って!急いできた意味ないじゃないの!!」

 

そんなギルド長の正面にあるソファーに、言動とは裏腹に慎ましく座っているワイシャツと黒ズボンの神の姿があった。神ヴァーリだ。

彼女は、今日はファミリアの仕事がないためベルとアフテクの座学をまるで授業参観する母親の如くゆっくりと眺めていたのだが、そんな時に近くの窓に見覚えのある使い魔と共に一枚の手紙が送られてきたのだ。

それを受け取り読み進めたヴァーリは、読み終えた時には血相を変えて飛び出していったのだ。そしてその結果が今に至る。

 

「それについては申し訳ありません、神ヴァーリ。

しかし、私としましてもこの件について貴女様にどうしても聞いておかなければならないことがあるのですよ」

 

「ふーん…?」

 

そう反応してから、ヴァーリは近くのテーブルに出されていた紅茶を飲む。

その内容に、ヴァーリは少しばかり心当たりがあった。

ダンジョン内での爆発、そして先日レグリオから食事の席で聞いたトミーロッドの奇行……もしかしなくてもそのことだろう。

ヴァーリ個人としては、本人がこの件で特別何も言ってこなかったのも相まって別に隠し通す必要もない。

 

「もう既に聞いているでしょうけれど、先日のダンジョンで爆発があって暫くしてから、貴女の眷族…それも副団長と新人と思わしき少年、そしてその隣に巨大なワニのような生物を持ち上げていた謎のオカマっぽい者がダンジョンから出てきたという報告がありました。」

 

「……」

 

一呼吸置いてから、要件を続けるロイマン。

 

「───貴女様…神ヴァーリは、この件について何かご存知ですか?」

 

その言葉を聞き、紅茶を飲む手を止めてゆっくりと一度テーブルに置いてから、ヴァーリは口を開いた。

 

「──いいえ、何も?」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「はぁぁぁぁ……結局あれだけとか、マジであり得ないんだけどぉぉぉぉ……」

 

ギルド長のロイマンに呼ばれてからそれなりに時間が経った後…現在、神ヴァーリは帰路に着いていた。

あれから、結局ヴァーリはトミーロッドの件を隠すことにしたのだ。何故か。

 

それは、こんなしょうもないことのためだけに無闇に話を大きくしたくないからだという。

ダンジョンの1階層〜11階層を大規模に破壊して進んで行くという時点でしょうもないもクソもあったものではないのだが、ヴァーリは結局、「誰にも直接的な被害が出ずに済みダンジョンの異常なども(最上層では)起きず、既に修復されているため今は問題ないから良い」という意見を押し通したからだ。

あの後、幸いにもダンジョンが破壊されている間潜れなかった他の冒険者達は片手で数えれるほどだった為、ギルドからのレベルに応じた臨時の支給で事無きを得たという。

少額とはいえどギルドの財布を使うような対処法にロイマンはいい顔をしなかったが、これまでの同じような態度にウンザリしていたヴァーリの「たまには自分で払えや」という圧で仕方なく出したのだ。

 

「これでお礼…のつもりだけど、トミーロッドくんはきっとそんなこと考えてないんだろうなぁ…」

 

ふと思った事をそのまま口に出しながら、快晴の空を見上げるヴァーリ。

彼女が今回トミーロッドのことを隠したのは、単純に自身のファミリアにとって不利益になるからというのではない。

そういった程度の不利益ならば、別に問題はない程ヴァーリファミリアは零細ではないのだ。

 

では何故か。

 

それはただ単に…

そう。本当に、ただ単に

 

昨晩作ってくれた、美味しいご飯のヴァーリなりの返礼のようなものだからだ。

 

あの時の料理はもはや言葉では表現仕切るのが難しい程美味しかったのだ。

それこそ、豊穣の女主人の店長であるミア母さんのそれを遥かに超えるものを。

だが、ヴァーリに限らずこの世界に於ける下界に降りた神というのは、ダンジョンに潜ることは絶対に禁止とされている。

理由は割愛するが、ちゃんとした経緯で決まったことだ。

そのため、ヴァーリはダンジョンでトミーロッドを手助けして礼を尽くす、という手段が取れない。

そこで咄嗟に考えたのが、今回の事でトミーロッドに被害が行き届かぬようにするということだ。

トミーロッドからしたら、ただただ勝手にばら撒かれた火の粉を勝手に払ってくれただけ…という風に思われても何ら不思議ではない事だが、ヴァーリはそれでもいいと思っている。

むしろ、逆に表立って褒められるようなことをほとんどしていないから当然だとさえ。

 

「さて、早く帰ってベルくんの座学眺めよーっと!」

 

トットットットッ……

 

そんな誰にも気付かれないような内心を押し殺し、ヴァーリは帰路に着く。

そして曲がり角を曲がったその時、

 

ドンッ!

 

突然、誰かに頭をぶつかられたような衝撃が襲いかかった。

 

「いったたぁ……あっねぇ君、大丈夫?……ってあれ?貴女もしかして…」

 

「っててぇ……誰だい!ぼくのバイト帰りを邪魔する奴はぁ!って、あれ?君は…」

 

ぶつかった衝撃で少し目眩を起こしかけるも、すぐさま目を覚ましてぶつかった相手に声をかける両者。

が、お互いの顔を見合わせたところで、一瞬止まる。

その相手とは……

 

 

 

 

 

 

「いやぁ〜〜〜、まさかこんなところでヴァーリと会うとはねぇ!バイトの早帰りが幸いしたっていうやつかな?」

 

「やっぱりヘスティアかぁ……とりあえずはお久し振り、になるかな?」

 

そう。先程ヴァーリがぶつかった相手は、神ヘスティア。

ヴァーリや他の神と同じく天界から下界に降り立った超越存在の神の一柱だ。

そんな二人は現在、近くの喫茶店にてのんびりと寛ぎながら久しぶりの再開を楽しんでいた。

ちなみに代金は全額ヴァーリ持ちである。そう仕組んだのはヘスティアで、気付かれた際にヴァーリは拳骨を放ったが結局支払ったという。

 

「うんうん!久し振り…って言うには、かなり年月が経ってる気もするけどね」

 

「あはは……まあそうだね。あの()()以来、かな」

 

「あの時は物凄い怖かったんだぞー?初対面のはずなのに、あんなに怖い勢いで迫られたら従うしかないじゃないか…」

 

「あれはどう考えても貴女が悪いわ。

別に年中無休で働けとは言わないけど、だからって引き籠もるのはもっと良くないもの」

 

「うぐっ…」

 

ここでの説教とは、天界にいた頃に遡る。

天界においてのヘスティアは、自身の神殿に引き籠もってはひたすらぐうたら三昧だった。神としての振る舞いの欠片すら見せなかった彼女はそれはもう酷い有り様だったという。

そんな友神を見ていられないと、同郷であり彼女と仲のいい神ヘファイストスと神アストレアがこれを糺そうと行動する。

が、それでも全く変わらろうとすらしない彼女に折れてしまった二人の女神。

そんな時、アストレアが何かを思いついたように行動を起こし、一人の女神を呼んだ。

その女神がヴァーリである。

ヴァーリは、司法の神としてではなく個人的な頼みとしてアストレアにヘスティアのことを頼まれてこれを受諾。

そうして、二柱のそれとは比べ物にならないほどの説教で(一時的にだが)見事神殿から引きずり出したのである。

そうしてそれからも、ヴァーリとヘスティアは所謂ガールズトークのそれに近いような勢いで沢山の話をしていた。

 

「そろそろ、アストレアにも手紙出さなきゃかしらね…思い出したら心配になってきちゃったわ」

 

「そうだねぇ…あ、そういえばさ」

 

「?」

 

「今のヴァーリってさ、天界にいた頃よりなんだか綺麗になったね」

 

「え…そう、かな?」

 

「そうだよ〜!!目の下の隈も消えてるし髪も整ってるし…何よりも、天界にいた頃よりずっと楽しそうだよ」

 

ヴァーリが個人的にあまり嫌っていない神ということもあり雑談が弾んでいく中、不意にヘスティアがそんなことを言い出す。

だが、ヘスティアの言っていることは事実だ。

天界にいた頃のヴァーリは、現代で言うところのブラック企業にずっと就職し続けていた体崩壊寸前のOLのようなものだったのである。

本人はもはや慣れつつあった為下界に降りる直前に言われるまで気付いていなかったのだが、その目の下には濃い黒の隈ができておりポニーテールで纏めてある髪はボロボロ。

更に服装は表面だけ取り繕っているような感じで内面は目も当てられない。

挙げ句の果てには、終始死んだ魚の様な目付きをしていたのだ。

天界の神々は、下界に降りた者達も含めて大半が娯楽しか求めていない。

その為、何も面白味がなくつまらない神としての書類仕事などは全て放ったらかしにしていた。

その上、自身の暇潰しや興味本位などといった巫山戯た理由で神同士の殺し合いを平気で起こす奴等が多かったのもあり、ヴァーリを始めとしたほんの一部の真面目な神はこれを止めたり神々を抑えるのに奔走。

文字通り一ミリも休む暇がなかったほどである。

そんな生活に嫌気が差したため、ヴァーリは下界に降りることを決意。

そうして降りて行った後に様々な困難があったが、なんだかんだで天界にいた頃よりは落ち着いた生活を送れていた為自然と健康になっていった、ということだ。

 

「……私、昔は子ども達に気を遣わせちゃったのかな…」

 

「えっ、君もう眷族がいるのかい!?というかいつの間にファミリアを!?いいなぁぁ〜〜〜羨ましいよぉ……」

 

「眷族も何も、私ファミリア創設したの10年近く前なんだけど……まあそれはいいや」

 

少し不思議そうに自身の身体を見遣るヴァーリと、その際に放った言葉に反応して悔しがるヘスティア。

 

「……ねぇヘスティア、一応聞くけど…」

 

「ん?なんだい?」

 

そんなヘスティアの様子を見て何かおかしいと思い始めたヴァーリは、唐突に質問攻めに入った。

 

「貴女、いつぐらいにこの下界に降りたの?」

 

「んー…1ヶ月ほど前かな?」

 

「ふーん…で、さっきぶつかった時はバイトがどーのこーの言ってたよね?バイトを始めたのはいつ?」

 

「あ、あぁうん…そうだよ。数日前…かな」

 

「……じゃあ、その下界に降りた日からバイトを始めるまでの間、貴女は何をしていたの…?」

 

「うげっ……」

 

ヴァーリの予想通りだったのか、何気なく質問に答えていったヘスティアが明らかに怪し気な反応を見せ始めていた。

そんなヘスティアの様子を見て、ヴァーリは段々と表情を険しくさせていく。

この下界において、神は相手の嘘を見抜くことができる。それは神であれば誰でも例外がないのだ。

そしてそれは、相手が神だろうと関係のないこと。

そんな二柱の周りがどんどん重い空気になっていく中、嘘を付くことができないヘスティアは言い逃れができない事を察したのか正直に話し出す。

 

「……君の予想通りだよ。ぼくは下界に降りてから数ヶ月の間、ヘファイストスのところで居候してたんだよ。

で、そうしてるとヘファイストスが怒り出して追い出されちゃったんだ。

その後は、ヘファイストスが用意してくれた廃教会地下の隠し部屋に住みながら暮らしている、ということなんだ」

 

完全に…というわけではないが、概ね予想通りだったためその場で説教をしたくなったヴァーリだったのだが、それよりもそんな自身の脛をかじるような真似を1ヶ月近くもの間されて追い出しても尚最後まで温情をかけるヘファイストスに内心で涙を流さずにはいられなかった。

 

「……あの、怒ってる、よね…?」

 

「今の話を聞いて怒らない者なんて、神どころか人にすらいないわ、全く…」

 

「うぅ……」

 

だが、それはそれとしてきっかけがどうあれ今現在のヘスティアはこうして懸命に働いていた。その姿勢は評価するべきだろうとヴァーリは考える。

ならば、最低限でも昔のよしみで何かできる事をしてあげよう…と思い至った為、少し考え始めるヴァーリだった。彼女もなんだかんだで優しいのである。

 

「……あの、ヴァーリ?」

 

ヴァーリにも説教をされると思い無意識に身構えていたヘスティアだが、その様子が一向にないどころか無言で顎に手を置いて考え事をし始めるヴァーリに声をかける。

そうしていると、ヴァーリが何かを閃いたのか改めてヘスティアの方に向き直りある提案を持ちかけた。

 

「ねぇヘスティア」

 

「な、なんだいヴァーリ」

 

「貴女、さっき眷族が羨ましいとか言ってたわよね?」

 

「え?あ、あぁうん…そうだね」

 

「なら、私は貴女の眷族になりそうな子探しと貴女がファミリアを創設した場合のホームを提供しようかしら」

 

「……へ!?えまってまって!!いいのかい!?破格過ぎると思うんだけど!!」

 

「まだ話は終わってないわ、代わりの条件があるの」

 

「…?」

 

「貴女のファミリアができて私がホームを提供し終えたら、空いた廃教会は私に譲って欲しいの。…どう?」

 

「あ、あぁ!勿論いいとも!!」

 

その提案内容に、ヘスティアは快諾した。

この提案内容は、ヘスティアから差し出すべきものがファミリアを創設して新ホームを貰う際にそれまでの住処だった廃教会だけという。

ヘスティア個人としては、廃教会に特別これといった思い入れがないため固執する理由がないのだ。

それどころか、自身の眷族探しに付き合ってくれる上にファミリアを創設したら新ホームを提供してくれるのだ。これ以上の好条件はこれまでの神生どころかこれからの神生でもお目にかかることはないだろう、それ程の破格な提案だったのだ。

だが、それはそれとしてヘスティアはその提案内容に少し気になることがあった。

 

「…ねぇヴァーリ。その提案はすごく嬉しいんだけどさ、そこまでしてあの廃教会を欲しているのは何か理由があるのかい?」

 

そう、ヘスティアにはヴァーリがこのような破格の提案をしてでも廃教会を欲しているようにも見えたのだ。

何故なのか、ただそれが純粋に気になったのだ。

 

「…そうね、まあ色々あるのだけれど…何より()()()()()()()()()()……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、かしら」

 

どこか遠くを見ながら、ヴァーリはそう呟いた。

その様子に少し疑問を持ったヘスティアだが、自身にはわからないことだと割り切って席から立ち上がった。

 

「よし!せっかく魅力的な提案を受けたんだし、ぼくはそろそろ眷属探しの方もうちょっと頑張ってみようかな!」

 

「あら、もう行くの?」

 

「当然!思い立ったが吉日、だからね!」

 

「…そうね。フフ、たしかにその通りだわ…頑張りなさい」

 

「ああ!任せといてくれたまえ!代金ありがとねー!この借りは百倍にして返すぜー!!」

 

そう言ってヘスティアは駆け足で自身のホームへ戻っていった。

その後ろ姿を見送りつつ、ヴァーリは会計を済ませてから改めて帰路に着く。

 

「……さて、ヘファイストスとも交渉しとかないとかしらねぇ…」

 

面倒くさそうにそう呟くヴァーリだったが、不思議と悪い気はしなく、それどころか自然と口角が上がっていたのだとか。




こんな感じですかね…ここまで読んでくださりありがとうございます!
よろしければ感想や評価などありましたらお願いします。

今回でやっとヘスティアを出せました。
前々から感想でも言われていたので出さなきゃとは思ってたんですが、自分がこんなにも一つのことで長々と書く人だとは思ってなかったので予想よりめっちゃ時間がかかってしまいました…これからは必要なさそうだったり同じような事しかしないと思ったらカットしていこうかな…と思います。

今回も軽く補足します。といっても今までと比べてだいぶ裏側のこと書いてるので、不快であればスルー推奨です。

・ギルド長さん
ギルド側の対応、ぶっちゃけ公式でのギルドの動き方どれを見てもこの破壊活動に似た場合のが見つからなかったのでほぼ100%憶測で書きました。ここおかしくね?とかありましたら教えてください!

・ヴァーリのギルドへの対応
冷静に考えたらもうちょっとまともな対応をする筈なのですが、今回は嫌いな相手だけでなく朝早くに呼ばれたのもあって本人は無意識にイライラしている…という設定のもと書いてます。(メメタァ)

・ヴァーリの神関係
ヘスティアは本文内にて、ヘファイストスとは数回話した程度、アストレアとは設定集にもあるようにかなり仲が良いです。
アストレア様に限らずアストレアファミリアの皆は個人的にも大好きなので、いつかそういった話を出せたらなぁ…と思いまする。

・提案
一見大丈夫なの?と(自分も)思ってしまう内容ですが、大丈夫です。
まだ書いてないだけで、それを実現できるだけの用意はあります。
だいぶ後になるかもですがちゃんと書くのでお楽しみにです!

と、こんな感じですかね…

作者は5月中旬終わり頃から2週間程?リアルの方で忙しくなり書く余裕がないと思うので、それまでになるべく多く書けるように頑張っていこうと思います。

次回はダンジョンの話になる…かもです。
ここでメインヒロインのアイズを出したいなぁ…と考えてます。(まだ何も書けてない)

それでは。


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グルメ12:『地獄から来た魔獣』

改めてトリコのアニメを見直していると、サニーの声優さんの演技が凄すぎて声聞くたびにリアルヘアロック状態になってるので初投稿です。

ちょっと投稿遅れてしまい申し訳ないです。書きたいからというだけで性懲りもなく新シリーズ書き始めたりウマ娘にハマり始めたりであっという間に連休が無くなりそうだったため慌てて徹夜で書き上げました。
ちなみに自分はメジロマックイーンとアグネスタキオン、あとカレンチャンが好きです。(隙自語)

あと、アンケートご協力ありがとうございました!!作者がやりたいようにやっていい、とのことなのでお言葉に甘えて好きにやらせていただこうかと思います!
ただ、適当に入れたら良くないとも思ってるのでそこら辺も上手く折り合いをつけれるように頑張ります!

今回、やっと少し話が動きます。
ではどうぞ。



「さっさと来な。今日はダンジョンに潜るがてら新技とやらの試運転なんだろ?」

 

「あ、はい!今行きます!」

 

「ったく…」

 

ベルが午前にアフテクと座学を行い、午後にレグリオと……時折アフテクも交えて、トミーロッドの特訓メニューをこなしたり実戦形式の訓練を行ってそろそろ1週間が経とうとしていた。

その間、ベルはダンジョンに潜ることはなかったがその代わりというべきか、自身の能力でありスキルでもあるグルメ細胞の力に向き合い、そして使い方を模索してある程度までの把握をしていた。

ガララワニ戦の際に放ったビートパンチ、その時は状況が状況だったために、無意識に避けていたベルはやむを得ず使っていたのだが、そのことで相談しに行った際トミーロッドからの

 

「使う使わないはお前の勝手だが、体の一部としてその力がある以上、お前は嫌でも向き合わなければならない」

 

という言葉で熟考の後、踏ん切りがついて自らダンジョンに潜るのを中止し、自身の内にいるゼブラに能力やそれを使った技などのことを聞きつつ、それをレグリオに頼み込み実戦形式で特訓に付き合ってもらっていたのだ。

それによって判明した事が少なからずあった。

 

それは、燃費があまり良くないことだ。

ゼブラ曰く、この能力は他のグルメ細胞の力と比べて威力がとても高い方なのだが、それによるカロリー……ベルたちの世界で言うところの体力や精神力のそれに似たものを消費する量もまた他と比べて多い。

つまり、無闇やたらにグルメ細胞の力を使うのはあまり良くないということだ。

これだけならば、この世界における魔法と似たような扱いで対処のしようは幾らでもあるのだが、問題は仮に尽きた場合のことだ。

アフテク曰く、精神力は尽きても気絶するだけで特にこれといった命の危険はないという。

要はダンジョン探索の真っ最中などでは危険だが、ホームなどで試し撃ちなどをし過ぎて気絶したとしても暫く休むか専用のポーションを使えば問題はないということだ。

 

だが、カロリーの場合はそうもいかない。

これもゼブラ曰く、カロリーは精神力とは違い『生きるためのエネルギー』を消費しているため、尽きてある程度時間が経つと死ぬ危険性があるのだ。

そのある程度の時間の間に、何か食べ物を食さないといけないのだとか。

しかも、ゼブラの能力は一度カロリーが尽きると復活するには、とにかくたくさんの食材を食べてカロリーを全回復させないと声を出すことすらもできなくなるのだという。

自身の細胞を進化させるほどのレアな食材であれば話は別らしいが、そんなものは早々見つかることは無いということなので基本は宛にできないのだ。

ベルに発現したスキルの1つ『自食作用』で戦闘時のそういった危機の際に一度だけ全回復させて5分間だけ全開状態で戦わせてくれるというものもあるが、それでもやはり先延ばし…というか何も解決策にはならない。むしろ5分以内に食材を口にしないと本当に死んでしまうから尚更危ないのだ。

なので、これを使うのは余程の時くらいだろう。

よって、長期の戦闘が予想される場合はポーションと同じように予め食料を多数持ち込んで行くしかない。

それ以外の今回のような日帰り探索の時などは、上手く調整してガス欠にならないようにするしかないのだ。

ちなみにこれは余談だが、一週間近くに及ぶ特訓の結果ベルのステイタスは大きな成長を見せていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ベル・クラネル

 

Lv.1

 

力:S 900→SS 1093

 

耐久:S 900→SS 1129

 

器用:S 900→SS 1101

 

敏捷:S 900→SS 1231

 

魔力:E 400→E 482

 

 

グルメ細胞:I 狩人:SS 対異常:EX 憤怒:?

 

 

《スキル》

【グルメ細胞の食欲】

・超早熟する。

・食欲が続く限り効果持続&食欲が上がる。

・未知なる食材への好奇心の丈により効果向上。

・身体能力の大幅向上。

・損失した体の各部分の再生可能。

・特定の条件達成時、一度だけオートファジーの発動が可能。

 

 

自食作用(オートファジー)

・グルメ細胞が成長の壁にぶつかった時かつ瀕死時、または極限まで怒った時かつ瀕死時、一度だけ発動可能。

・自身の体中の細胞を食い尽くし、全回復する。

・時間制限は5分。それを超えると、死に至る。

・5分以内にグルメ食材を食すと、限界を超え更に大きな成長を迎える。

 

 

音の悪魔(ボイスデーモン)

・グルメ細胞に宿る。

・音の悪魔の力を行使可能。

・聴覚超向上。

・カロリーを消費して食欲のエネルギー放出可能。

・威嚇行動可能。

・本人の意識とは別に、一定時間潜在意識が悪魔の形で顕現可能。本人のみ抑制可能。

 

 

【英雄決意】

・能動的行動に対するチャージ実行権。

 

 

【美食を追い求めし者(小)】

・グルメ食材と相対した時、全アビリティに小補正。

・好奇心の丈により向上可能。

 

 

《魔法》

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「(そういえばゼブラさん…カロリーの話をした時、なぜか表情を険しくさせてたなぁ…あれは何だったんだろう……聞いても答えてくれなかったし)」

 

と、そんなことを思い出しながらベルはトミーロッドと共にダンジョンに潜っていった。

もう一つ余談だが、ガララワニの出来事の翌日からベルはレグリオに替えの武器として今現在レグリオが使っている双剣にする前に使用していた片手剣を装備している。

こちらは双剣のとは違い特別な何かというわけではないが、使われている素材はほとんど深層のものでとても頑丈だ。

「お前なら、有用な武器で自身が腐るなんてことにはならねぇだろ」という言葉と共に渡されたのだとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ……っ!!」

 

「グ、ギュゥゥゥゥ………」ボトボトッ

 

「…ふぅ……」

 

「へぇ…それなりに様になってきてるじゃないか、その威嚇」

 

「まだまだ、ですよ……これでも、まだほんのちょっとしか、出せてないみたいですし…はぁっ…」

 

「よくわかってるじゃないか。

ま、そんなんで満足されてたら引き千切ってたところだけど」

 

「え゛っっ……冗談はやめてくださいよぉ…」

 

「さぁて、どうかなぁ?フフフ…」

 

そんな雑談を交えながらも、現在トミーロッドとベルは順調にダンジョンの中層……13階層辺りを進んでいた。

その際に遭遇した敵はというと、上層のも含めてガララワニと比べるとベルにとってはもはや敵にもならなかったため、無駄な戦闘は避けるということも兼ねてスキルにあった『威嚇行動』というのを試していた。

ゼブラ曰く、殺気を含ませてオーラを漲らせそれを出す……つまり、目の前の敵に威圧をかけるようにすれば良いということでベルは早速試してみた。

 

すると、先程まで目の前にいたモンスター達がピタッとまるで時が止まったかのように動きを止め、そのままベルを見つつガタガタと震え始めて意識を失い魔石を残して灰となったのだ。

せいぜいモンスターが逃げるくらいかなぁ…と思っていたベルは、予想以上の結果になったことで改めて自身の能力の恐ろしさを味わいつつカロリー消費に慣れないためか少し息を荒げ、トミーロッドはベルのその成長っぷりに少し感嘆の声を漏らしつつ冗談を言いながら、二人は更に潜っていった。

 

❑❑

 

ちなみに……

上層の8階層にて進んでいる途中、キラーアントと呼ばれる蟻のモンスター1匹を遠目で発見した際ベルは変わらず威嚇で無駄な戦闘を避けようとしたが、トミーロッドはそれを制止。

不思議そうにトミーロッドを見るベルを置いて、トミーロッドは完全に気配を消してからキラーアントに接近、その直後にキラーアントを()()()()()()()()()()()

突然のことにあんぐりと口を開けて驚いているベルを他所に、トミーロッドはそのまま掴み続ける。当然のように、キラーアントは固有の性質であるフェロモンを出すことも動くこともままならない。

すると、キラーアントは段々と縮んでいきそのまま一つの()()のようなものになっていったのだ。

 

「……はっ!え、と、トミーロッドさん?あの、何をしたんですか……?」

 

「あん?見りゃわかんだろ、こいつを()()()()()大きさにしてやっただけだ」

 

「いやわかりませんてそんなの…って、え?取り込む?今取り込むって言いました!?」

 

「それ以外に何があるってのさ」

 

「それ以外しか思いつかないと思いますけど!?」

 

当然、そんな光景を見せられて黙っているベルではなかった。

怒涛の勢いでツッコむが、トミーロッドはそれを軽くあしらう。

これ以上は聞いても理解できないだろうしわかりたくない、と第六感的な何かで感じたベルは聞くことを諦めそのままとぼとぼと足を運んだ。

そんなベルのあとをトミーロッドは結晶化したキラーアントを()()()()()()()ゆっくりと付いていったのだった……。

 

 

❐❐

 

 

そうして二人が15階層に入った瞬間、

 

 

ズズズズズッッッ……

 

 

突然、ダンジョン全体が大きく揺れ始めた。

少し経つと止んだが、何かを感じ取ったのかトミーロッドもベルも表情を少し険しくさせていた。

 

「……何か、出たようですね」

 

「この気配は、猛獣かな」

 

「折角ですし、どんな奴なのか探ってみます」

 

そう言ってトミーロッドが少し下がった後に、ベルは片膝を付いて地面に片手を付ける。

そして、目を閉じて意識をその手に集中させながら、掌の部分から超音波を連続で発生させた。

これもゼブラから能力のことを聞いた際にあった技の一つだ。その名も……

 

『エコーロケーション、反響マップ!!』

 

そうして、暫くベルはその姿勢のまま超音波を出し続け下の階層の状況を探っていた。

すると……

 

「これは……牛みたいなモンスター…ミノタウロスかな?が、食べられてる…?

それに、()()()()()()()()()()()()の、これは……猛獣、かな…?そして周りに…多数の、人…!?」

 

「んで、どんな感じだ?」

 

暫く見守っていたトミーロッドがそうベルに問いかける。

少ししてから、ベルは超音波の発生を止めたのか立ち上がり、真剣な表情でトミーロッドに答える。

 

「ここから多分2階層下…17階層の一室に、トミーロッドさんの言う猛獣らしき奴がいます。

そして、それと交戦中の団体がいるようですが、一部が危険な状態なのですぐ行かなきゃ…!!」

 

「……へぇ、やはりか。」

 

言い終えるなり、下へ続く階段へと一直線に駆け抜けていくベルの背中を見ながら、トミーロッドは不気味な笑みを出しベルの後を追うように飛んでいったのだった……。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「はぁ〜〜……まさか撤退する羽目になっちゃうなんてなぁ……」

 

「いつまでそれを言うつもりよ馬鹿ティオナ。気持ちはわかるけど、あの新種のモンスターの腐食液で武器やアイテムの大半が溶けちゃったんだから、しょうがないでしょ。」

 

「それでもだよ〜〜!なーんかこう、ふかんぜんねんしょう?って感じ〜!」

 

「なぜそこで疑問形なのでしょうか…?」

 

「さぁ…?」

 

そんな雑談を交えつつも、現在遠征から帰還中のロキファミリアが17階層を進んでいた。

その理由が先程の会話にあったように、「遠征用にと準備した武器やアイテムの大半が、突如現れた多数の新種のモンスターの攻撃によって溶かされ、遠征を続けることが困難になった」ためであったのだ。

その場所が50階層という深層、それもモンスターが湧かないはずの安全地帯にて起きた出来事のため窮地に立たされていたのだが、この遠征組の中で唯一その腐食液に溶かされず対処できたアイズの活躍によって、なんとか撤退を成功、ギリギリのところで帰路につけたのである。

そうして、一行は17階層までなんとか進めたのだったが……

 

 

ボゴッボゴゴッ

 

 

ダンジョンの嫌がらせとでも言うべきなのか…その途中のとある一室にて、不幸にも牛型のモンスター…ミノタウロスが、ダンジョンの壁から大量に出現したのである。

これに対して、ロキファミリア団長のフィンは主力である自身ら幹部達を温存、そして下の者達の経験を積ませるという目的も兼ねて、ミノタウロス討伐の指揮を次期団長候補であるラウルに一任させていた。

それを受け、ラウルの指揮のもとミノタウロス討伐を行っていたのだが……

 

 

交戦する直前、突如()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「っ!?なんすかこれは…!!」

 

「落ち着けラウル、指揮官の君が慌てちゃいけない」

 

「は、はい!」

 

そう言いラウルに冷静さを取り戻させたフィンだったが、フィンも自身の親指を噛みつつ何かを感じ取ったかのように思索に耽りつつあった。

 

「(親指がこれ以上ない程に疼いている……先程の極彩色のモンスターといい、この嫌な揺れ方といい、一体何が来るつもりなんだ…!?)」

 

そう思い警戒していると、目の前のミノタウロスの一部が逃走を始めた。

上の階層へと続く階段に向けて走り出すミノタウロスを見てまずいとフィンが追撃の指示を出そうとした瞬間、それは現れた。

 

「な、なんだこいつぁ……」

 

「また新種…!?」

 

「あれだけのミノタウロスを、一息で…」

 

「何なんすか……あ、あり得ないっすよ……」

 

「なに、あれ……」

 

「巨大な……蛇?」

 

「馬鹿な…連続して新種だと?」

 

「質の悪い冗談じゃ……」

 

「はは…全くだよ……」

 

一瞬にして、階段のすぐ横の大きな壁に特大サイズの罅が入り、そこから多数の鬣と腕を持つ蛇のように細長い胴体の生き物が飛び出すようにして現れ、その勢いのまま付近にいたミノタウロスを全て一息で丸呑みにしてしまったのである。

そのあまりの光景に、それぞれ別の言葉を吐きつつ驚愕や絶望といった表情に変わる一行達。

 

そうなるのも無理はない。

 

何故なら、その場には……

 

 

 

「ギュオ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ギャオ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙!!!!!!!!!」

 

 

 

トリコの世界ですら『地獄から来た魔獣』と恐れられている猛獣デビル大蛇……それの更に強い個体、所謂強化種である

 

 

 

デーモンデビル大蛇が、現れたのだから。

 




ここまで読んでくださりありがとうございます!
よろしければ感想や評価などありましたらよろしくお願いします!

今回も軽く補足しますね。

・ゼブラのカロリーの話
トリコ原作では全く表記されていなかったけど、四獣編でいつの間にかしっかり習得した体になっていたやつです。
ネタバレになるかもなのでこれ以上は言いませんが、こちらのssではゼブラもしっかりあのお寺で修行をしたという設定で通してます。

・トミーロッドの蟲取り込み
原作をどれだけ読んでもトミーロッドが新しい蟲を得る際どうしているのかが全くわからないので、ここは100%オリジナルで書きました。
これちょっと違和感ありすぎじゃない?とかありましたら教えてください。

と、こんな感じですかね…

前書きにも書いたように、新シリーズ出しちゃってそっちも書きたいので投稿ペースは少し落ちると思います。そこはすいません。
でもあれはこのss書く前からずっと候補にあげてて書きたかったやつなんです…!!

次回は今回の続きです。
アイズとベル絡ませてぇなぁとしか考えてません、はい。

それでは。


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グルメ13:対決!デーモンデビル大蛇【前編】

興味本位でアニメトリコの公式サイト探してみたらまだ残ってて驚いた上に、ガツカツカレーのレシピへのリンク置いてあったので作るためにも見てみようと思って開こうとしたら全く開けなくて凹んだので初投稿です。

前回アイズとベルを絡ませたいなどと書きましたが、色々あってそれは次回になりました。ついでに今回トミーロッド出ません。ゴメンネ…

今回はvsデーモンデビル大蛇戦前半です。
戦闘シーン書くの相変わらず上手くないので、ここおかしいとかあったら教えてください。
ではどうぞ。



ザッ!ギィン!ギィン!ガガガ!!シュッ…ズザザ……

 

「おっらぁ!!」

 

「そりゃあ!!あ、あら?」

 

「ティオナ!後ろよ!」

 

「えっ?うわわっ!!」

 

「っ……!あのモンスター、魔石も見当たらないし、攻略法がわからない…!」

 

「アイズ!」

 

「まともに攻撃も当てれんぞ…なんとかならんのか、フィン!」

 

「はぁ…はぁ……なんとかなってたら、とっくに指示は出してるさ…」

 

既に30分程。アイズやロキファミリアの幹部達とデーモンデビル大蛇は、ほぼ一進一退の攻防を繰り広げていた。

その間これといった突破方法はなく、どちらかと言えばほんの少しずつだが幹部達が押されているという状態だった。

幹部達は上手く連携を取り合い、散らばりながらも的確に敵を惹き付けその隙に首元を狙って武器を振るったり、あえて正面から受けてリヴェリアの合図と共に離れ魔法を喰らわせる、などといった様々な作戦で攻撃を仕掛けていた。

が、それでも決め手に欠けるどころかまともな傷一つ付けれていなかった。

それでも攻撃を絶え間なく続けていた為、ロキファミリア側は疲弊する一方。

元々遠征での緊急事態への対応でそれなりに消耗していたとはいえ、立て続けの戦闘の為確実に限界が近付いていた。

そして、肝心のデーモンデビル大蛇はというと…

 

ギュ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!!!

 

まるで何事もなかったかのように、ただ悠然と吠えていた。

疲弊しつつあるとはいえ、相手はオラリオ最強派閥のロキファミリア。

それもLv5やLv6といった幹部陣を全て相手取った上で、この余裕だった。

このロキファミリアの攻撃に対して、デーモンデビル大蛇はただ前脚で素早く薙ぎ払ったり、上半身を少し縮めた後に頭突きをかますかの如く勢い良く正面に突撃、または上体をくねくねと上手く動かして攻撃を躱していただけだった。

そんな消極的とも舐めてかかっているとも取れるようなデーモンデビル大蛇の様子を見て、ふとフィンの頭の中にはある一つの可能性が過った。

 

「(このモンスター…まさか、全力を出していないのか…!?)」

 

そう考えた瞬間、ロキファミリアの幹部、アマゾネス姉妹のティオナとティオネと狼人のベート、そしてヒューマンのアイズによる連携攻撃が再度開始された。

 

まず、ティオナとティオネがデーモンデビル大蛇の前に立ちデーモンデビル大蛇の攻撃を誘う。

案の定、デーモンデビル大蛇は少しニヤッと()()()()()()()()()()()()()再び頭から上半身を少し縮めた後に、ロケット頭突きとでも言えるような攻撃をかましてきた。

それを待っていましたと言わんばかりにティオナとティオネの二人は跳躍してこれを回避。

デーモンデビル大蛇は勢い良く壁に突撃してそのまま頭まで埋まった。

そこに、アマゾネス姉妹が首元近くを狙ってティオナとティオネの2人が肘や拳、足などの身体を使ってそれぞれ叩きつけて固定を。

更にほぼ同時に2人が引き付けている間に、後方に回り込んだベートが得意の足技による渾身の踵落としを決めて下半身を固定させた。

そして通常時と比べて伸びた状態の胴体を、アイズが自身の魔法で風を纏いながら愛用の剣デスペレートを携えて全力で縦に斬り捨てる。

 

「よしっ!」

 

「さっすがアイズ!」

 

「ハッ、やるじゃねぇか!」

 

決まった!と思い反射的に三者三様の反応を見せる3人。

アイズもこれで決まった……

 

 

と、思っていた。

 

 

「アイズ!皆!!離れろ!!!」

 

 

親指で危険を感じ即座に指示を出すフィンの声も、届かず。

 

 

「…っっ!!!!」

 

「「「アイズ!!?」」」

 

直後、アイズの剣を持っていた右手に強烈な痺れと痛みが襲いかかった。

あまりの痛さに、思わず手を開いてしまい剣を落としてしまう程だった。

その手を少し覗くと、手全体が痺れて動かしづらくなっているだけでなく掌の部分が真っ赤に腫れ上がっていた。

これは現代で言うところの、鈍器などで鉄などの硬いものを思いっ切り叩くとその分の反動や痺れが手に伝わってくるという現象に似たものだ。

 

「(手がジンジンして、痛い…けど、確かに斬ったは、ず………!?うそ、そんな……)」

 

「リヴェリア、念の為魔法で団員たちを守れ」

「!…わかった、だがアイズ達は」

 

「僕とガレスが行く」

 

「……頼んだ」

 

アイズがデーモンデビル大蛇の方に振り返ると、先程の胴体には傷一つ付いていなかった。

正確にはアイズから見て反対側の方にほんの少し小さく付いていたのだが、それはアイズからは見えない。

傷一つ付けれなかったことにアイズが段々と青ざめていく中、デーモンデビル大蛇はのんびりと何事もなかったかのように頭を壁から引っこ抜いた後に、何もなかったはずの胴体から()()()()()()()()()()

 

「「「「「なっ……!?」」」」」

 

モンスターとして以前に、生物としてあり得ないようなその行動に幹部一同が驚愕する中、デーモンデビル大蛇はまず正面を向いたまま、何かしたのか?と言わんばかりに尻尾から下半身部分を動かし目にも止まらぬ速さで強くダンジョンの天井に連続で叩き付けた。

咄嗟のことで全く動けずにいたベートは、回避することも叶わずもろに直撃。

少ししてから激しく叩きつける音が止み、デーモンデビル大蛇が下半身を天井からゆっくりと剥がすと、そこには多量の血を流しながら天井に貼り付けられたかのようにめり込むベートの姿が。

少ししてからガラッ…という音と共に力なく落下して、そのまま仰向けに倒れた。

 

「「ベート!!」」

 

「「「っ……!!」」」

 

そんな有り様を見せつけられ、思わず声をあげるアマゾネス姉妹。

その隙を見逃さず、デーモンデビル大蛇は増やした腕の内2本でそれぞれ2人を掴んだ。

 

「なっ!!ぐっ、抜け出せない……」

 

「なにこれ〜〜!!力強すぎるぅぅ!!」

 

そう叫びながら2人はデーモンデビル大蛇の手の中で必死に藻掻く。

が、いくら抵抗しようとも抜け出すことは叶わず。

アマゾネスという力のステイタスが高い種族であるにも関わらず余裕の表情で圧倒しているその姿は、まさに化け物。

 

「はぁ!!!」

 

「ぬぉぉぉ!!!」

 

そんな2人を救出するため、ベートのもとに駆けようとしていたフィンとガレスの2人は姉妹を優先。2人を掴んでいたそれぞれの腕を切り落とそうとそれぞれ槍と大戦斧を振るった。が……

 

 

ガギィンッ!!

 

 

「「なっ…!?」」

 

別の腕に弾かれる。それどころか、2人の武器に罅が入ってしまう。

先程のアイズの時の胴体は分厚いためまだ硬いことはギリギリ納得していたフィンだったが、まさか多数あるとはいえ細い腕までもが硬いとは予想外だった。

一体なぜ…と思ったが、その答えはデーモンデビル大蛇からの攻撃を受ける直前にあった。

 

「(そうか、伸縮性のある腕や胴体をギリギリまで縮めて硬くしていたのか…!)」

 

そう推測したフィンが息づく暇もなく、デーモンデビル大蛇は武器を弾いた腕とは別の腕を限界まで縮めた後に勢い良く発射し、自身の腕ごとフィンとガレスを横壁に叩き付ける。

 

「「がはっ…!!」」

 

「「「フィン!!ガレス!!」」」

 

「……!!てめぇ!!」

 

「こん、のやろーーー!!」

 

ミシミシ…という体内からの悲鳴音と共に吐血してしまうフィンとガレス。

2人ともLv6の耐久力の為か致命的なダメージにはならなかったが、暫くまともな戦闘行動ができない程には消耗してしまった。

 

そして、未だに掴んだ手の中で鬼のような形相で必死に藻掻いているアマゾネスの姉妹2人をポイッと空中に放り投げ、それをまるでラケットでテニスボールを撃つようにデーモンデビル大蛇が1本の腕で勢い良く叩いた。

 

「「ガッッ……」」

 

「ティオナ!ティオネ!!」

 

たったそれだけのことでも、2人には十分過ぎるほどのダメージだった。

2人は吐血し、動けなくなった。

そうして次の狙いをリヴェリアとその他の団員達に付け、突如デーモンデビル大蛇は先程までずっと大きく開いていた口元を閉じた。

 

「何をする気だ…!?」

 

フィンの指示通り団員達に貼るための防護魔法の詠唱を終えタイミングを見計らっていたリヴェリアだが、デーモンデビル大蛇の突然の奇行に警戒の度合いを上げつつそう呟く。

何が起きるのかはわからないが、とてつもなく嫌な予感はする。そんな感じだった。

何をしでかすのか全くの未知数のためおちおちやられた幹部達の救助にも向かえず、むしろリヴェリアの後ろから動かしてしまうと守り切れない、という状態だ。

 

 

当たってほしくはないが…というリヴェリアの心の声と共に感じた嫌な予感は、不幸にも当たってしまう。

 

ギュブギュブギュブ……ゲェェェ!!!!

 

デーモンデビル大蛇の閉じていた口の隙間から、黄緑色でブクブクと泡立っている液体が漏れ始めたのだ。

あれを吐き出すつもりか!?と察したリヴェリアは杖を構える。

その予想も当たってしまい、少しした後にデーモンデビル大蛇はリヴェリアだけでなく後ろの団員達全員に被せるかのように大量の黄緑の液体を吐き出した。

 

「ヴィア・シルヘイム!」

 

それに対し、リヴェリアは詠唱を終え用意していた防護魔法で自身の後方にいる団員全員を囲うようにドーム状の結界を張る。

結界のが一歩早かったためか、なんとか液体がかからずに済む。

が、少しすると結界の各所からジュゥゥゥ…という音が鳴り、小さくだが綻びが出始める。

 

「何!?結界を溶かすだと…溶解性の毒というやつか……ぐっ!?」

 

そう呟き、慌てて結界の修復のために更に自身の魔力を注ぎ込む。

だが、そうしている間ずっと待っているほどデーモンデビル大蛇はお利口ではないし馬鹿でもない。

結界の維持でリヴェリアが集中している間、デーモンデビル大蛇は結界の位置まで移動。直後、2本の腕を使い結界ごと弾き飛ばした。

いつもならば避けるなり防護魔法を上手く使いなんとか受け止めるなどのことをしていたリヴェリアだが、現在結界の維持で手が離せなかっため扱うどころか回避することができなかったのだ。

そうして、結界や他の団員共々リヴェリアは壁側に弾き飛ばされる。

結界は物理攻撃にもしっかり対応するのだが、かなり強力ではあるがデーモンデビル大蛇の攻撃が手加減されているためか結界に罅が入れど砕けることはなかった。

だがここだけでなく、元々遠征で魔法をそれなりに使用していたためリヴェリアはこのタイミングで精神疲弊を起こしてしまい、結界魔法への物理攻撃による衝撃なども相まって倒れてしまう。

その際に結界が解けてしまったが、不幸中の幸いというべきか結界に張り付いていた毒は先程の弾き飛ばしでついでになくなったため、結界が解けても団員達にかかることはなかった。

が、リヴェリア達と比べレベルが極端に低いためか皆弾き飛ばしの影響で気絶してしまった。

 

そうして周りにいた大多数を軒並み吹き飛ばした後、振り返り上層へと動き始めようとしたデーモンデビル大蛇だが、ここで足を止める。

直後、デーモンデビル大蛇の周りを多数の風が舞った。

アイズの唯一使える魔法【エアリエル】によるものだ。

それと同時に剣による無数の斬撃の音……ではなく、金属と金属がぶつかり合うような音がした。

暫くそんな音が響き続けるが、デーモンデビル大蛇は平然としていた。

それどころか、最初の時と同じく特に疲れた様子もない余裕ある姿を見せていた。

 

ロ゙ロ゙ロ゙ロ゙……ギュ゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!!

 

やがて鬱陶しく感じたのか、突如デーモンデビル大蛇は現在いる17階層全体に響かせるかのように爆音のそれにも近い鳴き声をあげた。

ここまででも既に何回か鳴いてはいたが、それは全てそこまで大きいわけではない。つまり様子見程度のものだった。

 

「くっ……!?耳が……鼓膜が、破れそう……」

 

そんな鳴き声を移動しているとはいえ至近距離で聞かされたアイズは、思わず移動を止めて両手で耳を塞いでしまう。

そしてそこを狙いデーモンデビル大蛇が即座に鳴くのを止め、またもアイズを自身の腕で掴み壁まで押し込んだ。

 

「!しまっ(ドゴッ!!)かはっ……!!」

 

両手で耳を塞いだままでまともな回避が一歩遅れたアイズに、容赦なく直撃した。

そのまま壁に押し込まれ、元々被弾をあまり想定していない軽装備なのも相まって大ダメージを受けてしまう。

そんなアイズのもとに、腕でしっかり固定しつつもゆっくりと近づくデーモンデビル大蛇。

自然と口角が上がっているように見えるのは、気のせいではないだろう。完全に勝ちを確信している様子だった。

そうして近づき、少し頭を伸ばせばすぐ届くだろうその位置で止まったかと思えば、再度口を閉じて黄緑の溶解液を吐き出す準備に入っていた。

腕を緩める気配がまるでないことから、自身の腕ごとアイズを溶かそうという魂胆が見える。

 

「(ごめん、みんな……私、ここまでみたい…)」

 

先程のアマゾネス姉妹と違いあまり力がないアイズは藻掻こうとするもまともに動かせないことで諦めに入ったのか、心の中で今は倒れている仲間達に謝り出した。

抵抗をしなくなったためか、デーモンデビル大蛇の手の中で視界が段々暗くなっていく。

そして、それと同時に心の奥底の本音が漏れ出す。

 

「……たす、けて…」

 

絞り出すように弱々しく放たれた一言。

悲しくも、誰にも届くことはない。

 

 

 

 

………はずだった。

 

 

 

 

 

ドゴンッッッッ!!!!!

 

 

 

 

「グギャオオオアアアア!!?!??!」

 

 

 

 

「……え?」

 

突然の浮遊感。

 

手を離してしまい、更に強く吹き飛ばされ壁に勢い良く衝突するデーモンデビル大蛇。

 

目の前を駆け出す赤黒い稲妻のようなエネルギーの塊が。

 

その中に、まるで素手で殴り飛ばしたかのように片腕を思いっきり振るったような構えをしている人が。

 

かと思えば、直後にまるで何かに抱き上げられたかのように自身に感じる誰かの手の感触。

 

先程までの真っ暗な景色から一変、アイズの目の前には白髪で紅い瞳の少年が先程の赤黒いそれを纏いながらアイズを抱き抱えていた。所謂お姫様抱っこである。

 

何か反応をする前の一瞬の内にそれなりの距離を移動したかと思えば、その白髪の少年はアイズをそっと丁寧に降ろす。

 

「ふぅ……よし、もう大丈夫ですよ。」

 

「あ、えっと…」

 

「あいつは僕が引き受けますので、貴女はここにいてください。」

 

 

「ゼブラさん。力、使いますね…」

 

 

スゥゥ…はぁぁぁぁぁぁぁぁ……!!!!

 

「っっ……!?!??!」

 

そう言い切った瞬間、少年は一つ息を整えると同時に先程のエネルギーの塊とは別のオーラのようなそれを纏い始める。

それと同時に、その少年の背後から圧倒的な威圧感が放たれると共に、まるで全身の血管が浮き上がった海坊主かのような人型のそれが見えた。

それを見たアイズは気絶することは辛うじてなかったが、化け物と呼ぶにはあまりに言葉が足りないようなそれを連れて少年はデーモンデビル大蛇の前に立つ。

 

 

「さぁ、僕の栄養になってもらいましょうか……!!」

 

 

()()()()()()()少年はそう呟き、デーモンデビル大蛇へと向かう。

 

 




如何でしたでしょうか。宜しければ感想や評価などよろしくお願いします!_|\○_

今回は補足要らなそうなのでなしです。

最初はベルくんの戦闘シーンも入れるのを想定してたんですが、あんま長いと読みづらいかなー?という考えが頭を過ぎったので分けることにしました。

次回もこれの続きです。多分文字数少なくなります。
それでは。


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グルメ14:対決!デーモンデビル大蛇【後編】

真面目な宝じょ……投稿者「活動報告で伝えていたとはいえ、前回の投稿から2ヶ月程空いたようだな。これだけ投稿が空いたら誰だって書く時の感覚は鈍るだろう、僕だって実際同じだからな。
……このおよそ2ヶ月間、本当に大変だった。リアルのことに追われたり濃厚接触者判定を受けて自宅待機を受けてその際の予定変更での連絡などに追われたりウマ娘やFGO、ダンメモなどのイベント周回をこなしたり…な。」

サボりたいパラ……投稿者「何が言いてぇんだよ!そんな話をすれば俺がリアルの疲れやゲームや鬱を癒すことより書く事に専念するとでも思ってんのか!」

真面目「別にお前の心配はしてないよ。僕が心配してるのはこのシリーズを待っている読者様だ。(実際はわからないが)こんなに長く待たせてしまったことでの辛い思い、これ以上読者様にさせたくない。そのためにも、お前とここで決着を付ける。」

※真面目な投稿者、フルボッコなう……

サボり「まだ終わりじゃない、次こそウマ娘やFGOをする時間…もとい、体を癒す時間を設ける!(シュンッ)」

真面目「(ガシッ)次 な ん て な い 。 敗者に相応しいエンディングを見せてやる……」


(事前に伝えていたとはいえ投稿が遅れてしまい、大変申し訳ありませんでした。ではどうぞ。)


「にしてもあの新入り、やっぱ何度見てもスキルがおかしすぎるわ」

 

「なんだレグリオ、藪から棒に」

 

ロキファミリアがデーモンデビル大蛇と戦闘を繰り広げていた頃、ヴァーリファミリアの本拠地「法廷の館」にてレグリオとアフテクは並ぶようにソファーに座りそれぞれ書類仕事をしながら話していた。

目線を合わせてはいないが、2人は至って真面目に仕事に打ち込んでいる様子だ。

 

「ほら、俺ここ1週間ほどあいつと訓練してただろ?」

 

「まあ、そうだな。私も時々参加させてもらったことだしな」

 

「んで、先週に1度見た上で改めて新入りのスキルの効果を間近で何度も見たんだけどよ、ありゃやべぇわ。

とてもレベル1が持っていい出力をしてねぇ」

 

「それに関しては私も同感だ。

だが、なぜ今それを?」

 

「……俺達や師匠を始め、多数のレベルが高い冒険者たちの強力なスキルや魔法にデメリットもあるのはわかるだろ?

あれは効果が強力であればあるほど、それに比例してデメリットもでかい場合が多い。

…あの新入りのは、それが特にでけえと思うんだ」

 

「…あの項目内にある、カロリーと言うやつか?」

 

「そうだな。それと「スキルの能力そのものもね!」うおっ!…ってなんだ、ヴァーリか」

 

 

段々と真剣な表情に変わりながら話す2人のもとに、ヴァーリファミリアの主神ヴァーリが会話に割って入るように現れた。

 

 

「やっほー。会話が聞こえたからつい、ね」

 

「…はぁ。それで?そのものも、というのはどういう事だ」

 

「文字通りだよ。2人もわかってるとは思うけど、あの能力はとてもなんて言葉じゃ済まないほど強力だ。

最初スキル項目で見た時は半信半疑みたいなものだったけど、トミーロッドくんの話と実際の訓練の様子を見て、今私の中で確信に変わりつつある。」

 

「……あれは危険だ。ベルくんの身に余る、という意味でね。」

 

「「……。」」

 

「けど、私が言う前にあの子は感づいていたのかな…訓練の途中から出力を抑えて使用し始めたみたい。」

 

「それでか、その日以降からスキルの力あまり使わなかったのは…」

 

「ふむ、なるほど…薄々察してはいたが、それなら合点がいくな」

 

「…私はダンジョンまで様子を見守ることはできない。だって、神だからね…。」

 

「だから2人に頼むよ、ベルくんのことを。」

 

「言われなくとも、そのつもりだぜ」

 

「まあ、ここまで面倒を見たことだしな。同じ家族でもあるし今更何も問題はない。」

 

「! ありがとう…。

あとこれもわかってるとは思うけど、あの力を他の人に見られたら色々と不味い。だからなるべく隠すようにしてほしいんだけど…それも頼めるかい?」

 

「…なるほど、わかった。請け負おう。」

 

「あー…てことは、あれ教えちまったのは不味かったかなぁ…」

 

「ん?あれ?あれとはなんだレグリオ、何かしたのか?」

 

「あー…あいつのスキルって要は音での攻撃だろ?だから…義姉さんと似てると思って、つい……」

 

「…!おいまて、まさかとは思うが……」

 

「………やっちまったぜ☆」

 

「はぁぁぁぁ……馬鹿者。素直に喜べんぞ……」

 

「…えっと……とりあえず、誰かが見てないかベルくんが使ってないことを祈るしかないね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、僕の栄養になってもらいましょうか…!!」

 

ギュォォォォォァァァァァァァ!!!!!!

 

ベルはそう言いながら、前方にいるデーモンデビル大蛇に向かって威嚇行動を取りながらゆっくりと前進していく。

それに対してデーモンデビル大蛇は、先程の殴られによるダメージなぞないとでも言うかのように変わらず吼える。

 

 

そうして、両者が対峙する。

 

 

一方は不気味な笑みを。一方も同じく不気味ながらも、どこか楽し気な笑みを浮かべていた。

 

そのまま少しの間お互いは全く動かなかったが、どこからか鳴った石の落ちる音を皮切りに、両者は激突した。

 

先に仕掛けたのはデーモンデビル大蛇。

先程までのロキファミリアにした様に、素早く一本の腕を伸ばして掴もうとした。

 

ジェットボイス

 

一瞬の内に両足首に赤黒いエネルギーを纏わせたベルは、それを素早く横に一瞬で移動することで回避。そのまま大きく弧を描くように迂回しながらデーモンデビル大蛇に近づく。

それに対し、デーモンデビル大蛇はベルを狙って多数の腕を伸ばしていく。

が、どれも当たることはなくベルはデーモンデビル大蛇の目の前に着く。

そして、そのまま更にダンッ!と強く地を蹴り、デーモンデビル大蛇の首元を狙ってすれ違い様に片手剣を振るった。

 

 

ギィンッ!ピキッ…

 

 

しかし響くのは、まるで金属同士がぶつかり合うような鈍い音と。

そして、何かの欠けたような音だけだった。

 

「やっぱり、硬いですね…」

 

デーモンデビル大蛇から距離を取りつつ、ベルはそう呟く。

手元の片手剣を見ると、先端付近の刃が欠けてしまっていた。

その一方でデーモンデビル大蛇の方を見れば、先程斬った部分には傷一つ付いていなかった。

それどころか、なんともないように平然と佇んでいた。

 

「む…これは、もうちょっと使わないといけないようですね…」

 

『おい小僧。てめぇのその武器じゃ一生かけようが攻撃は届かねぇぞ、わかってんのか』

 

『えぇ、たった今それを実感しましたよ…なので、出力上げさせてもらいますね』

 

『フン、好きにしやがれ。ってか、訓練中もそうだがいちいち俺に許可取る必要ねぇだろ』

 

『それは……なんというか、必要かと思っただけで…』

 

『あぁ?訳のわからねぇことを言ってんじゃねえ。それよりも来るぞ』

 

『…!』

 

無意識に悪魔の能力の使用を抑えつつあった自分に言い聞かせるように、ベルはそう呟く。

そして少々ゼブラとの会話の後に腕を構えているデーモンデビル大蛇に向き合い、ベルは覚悟を決める。

 

特殊付与(エンチャント)・サウンドアーマー」

 

そう言った途端、ベルの手に持っていた武器の片手剣に赤黒いエネルギーが付与された。

その直後、再度デーモンデビル大蛇がベルに向けて伸ばした腕を右足を軸とした軽いステップで軽く躱し、その伸び切った腕を先程の片手剣で素早く両断する。

すると、先程まで弾かれていたデーモンデビル大蛇の硬い皮膚をあっさりと貫通し、ざくりと気持ちのいい音で綺麗に切断できた。

 

ギュェェェァァァァァ!!?!?

 

先程までアイズの剣撃をも余裕で弾いていたのもあって、まさか斬られるとは微塵も思わず油断していたデーモンデビル大蛇は悶絶。

斬られた腕がビタンビタンッと跳ねている中、デーモンデビル大蛇は痛みを紛らわせるためかのように叫び続けながらその場を動き回っていた。

 

『チッ、うっせぇ奴だ……おい小僧、こいつのウィークポイントはわかるな?』

 

『ええ。まだ大雑把にでしかわかりませんが…顔の上部分ですね?』

 

『そうだ。今はまだそれでいいが、すぐにでも正確なポイントまで絞れるようになれ。でねぇと殺すからな!』

 

『わかってますから、今そんな物騒なこと言わないでくださいよ…ゼブラさんが言うと洒落にならないんですよ。』

 

『…ケッ』

 

そう言った後、ベルはデーモンデビル大蛇に再度向かい合う。

デーモンデビル大蛇は、痛みがようやく和らいだのか荒い呼吸をしながらもベルを見据えている。

その表情は、誰が見ても怒り有頂天といったものだ。

 

「(ウィークポイントはあの目の下辺り…この位置からだと捉えられないけど、ちょっと飛べばこれが使えるかな。)」

 

一方でベルがデーモンデビル大蛇のウィークポイントへの攻撃手段を考えていると、突如デーモンデビル大蛇が襲いかかる。

今度は先程までとは違い、本気といった様子での攻撃だ。

腕を振り回しつつ、今度は髪一本一本から毒液を吐き出していく。

それをベルはジェットボイスの力で素早く動き回ることで難なく回避し、そのまま後ろへと下がった後にデーモンデビル大蛇に向けて大きく飛び上がる。

 

「(よし、ここだ!)ボイスミサイル!!

 

飛び上がった後ベルが右手を開いてデーモンデビル大蛇に向けてそう叫んだ瞬間、ベルの右手から赤黒いエネルギーの砲撃が放出された。

デーモンデビル大蛇はそれを払い除けようと腕を大きく振るったが、その腕ごと吹き飛ばされベルがウィークポイントと定めた部分に当たる。

 

ギュェェェェァァァァァァァ!!?!?!!??!!

 

それなりに警戒したにも関わらず、今度は腕どころか自身の弱点とも言える第二の目のような役割の部分を攻撃されたため、大ダメージと共に大きく怯んだ。

 

「よし、これなら!」

 

そう呟き怯んでいるデーモンデビル大蛇に向かっていくベル。

だが…

 

ギュァァァァァ!!!!!!!

 

「なっ!?っぐ!!」

 

怯んでいたと思われたデーモンデビル大蛇は実は怯んでおらず、あえて怯んだように見せることでベルが再度突っ込んでくるのを待っていたのだった。

確かに捉えたと思っていたベルは想定外の事態に動きを止めてしまい、その一瞬の隙を突かれベルはデーモンデビル大蛇の腕に捕まってしまった。

 

「(そんな!確かにウィークポイントは狙ったはず……!!?)」

 

捕まりながらもそう思い、ベルは改めてウィークポイントを探る。すると、

 

「(なっ…!さっきのとは別のウィークポイントが出ている!?)」

 

先程まで出ていた部分とは別で、今度は目と顎の下部分に新たに多数のウィークポイントが発生していたのだ。

 

「(あんなにたくさんのウィークポイントを見落としていたなんて…!でもあの位置は狙いづらい、ならレグリオさんから教わったあれを……いや、今はそれよりもここから抜け出さなきゃ!)」

 

そうこう考えていたベルはすぐさま思考を切り替え、なんとか抜け出そうとする。

だがいかに前回のガララワニの時と比べ大幅に強化されたとはいえ、ベルはまだレベル1。抜け出すのは困難だった。

そうこうしている内に、デーモンデビル大蛇は毒を吐き出す態勢に入り始めたのかまたもや口を閉じて毒を生成しだす。

 

ギュブッギュブブ…

 

「!!スゥゥゥゥ……

サウンド・バズーカぁぁぁ!!!

 

それを見たベルは本能的に危険を察知。

瞬時に範囲攻撃を行い、それに怯んだ隙に離脱に成功した。

 

「はぁ…はぁ…危なかった……」

 

しかし、その範囲攻撃のカロリー消費は激しくベルは先程までの余裕がなくなりつつあった。

デーモンデビル大蛇から距離を取り、膝に手を付き肩で息を切っている。

 

「トミーロッドさんにも言われたしもうちょっと余裕を持って勝ちたかったけど、仕方ない…出し惜しみはなしでいかなきゃ…!!」

 

そう言いながら、デーモンデビル大蛇を見据えるベル。

音の怯みから復活し、先程以上に憤怒の形相で今にも食い殺さんとベルを見据えるデーモンデビル大蛇がいた。

 

両者は再度対峙するが、今度はベルが先に仕掛けた。

一直線にデーモンデビル大蛇へ向けて駆けていくベルを見て、デーモンデビル大蛇は髪から毒を吐き出しながら再度捕らえようと多数の腕を伸ばしていく。

 

「ふっ!はっ!」

 

それをベルは上手く左右にステップして躱しつつデーモンデビル大蛇の伸ばした腕に乗り、デーモンデビル大蛇の真正面を向かうように大きく飛び上がる。

 

「(ここで、レグリオさんから教わった()()を…!!)福音!!

 

飛び上がった直後にベルがそう叫ぶと、ゴーン、ゴーン…と鐘のような音が響き、その音が赤黒く内部でバチバチと稲妻が小さく走っている霧のようなものとなってベルの身体から部屋全体に飛び出し、ベルが狙っていたウィークポイントに限らずデーモンデビル大蛇の全身に大ダメージを与えた。

更に間髪入れずにベルは右手に白い光と先程の赤黒い霧を集中させる。

それに合わせて、先程のとは別の鐘の音が部屋中に響き渡る。

 

「これで…! ボイスミサイルゥゥゥゥ!!!

 

その言葉を皮切りに、ベルの突き出した右掌から特大サイズの白と赤黒が混じったエネルギーが放出される。

その攻撃を、デーモンデビル大蛇は抵抗する間もなくもろに直撃し、攻撃が終わった後に全身が黒焦げ状態になって倒れ沈黙した。

こうして、デーモンデビル大蛇とベルの戦闘はベルの勝利によって幕を閉じた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

デーモンデビル大蛇の沈黙を確認してから着地したベルは、そのままゆっくりと大の字に倒れ肩で息を切っている。

ただ、その表情はどこか晴れやかなものだった。

 

 

 

「………」

 

部屋の端の方で壁に背中をつけていたアイズは、その戦闘の一部始終を見つつただただ呆然としていた。

そうして、デーモンデビル大蛇が沈黙しベルが意識を失ったのか息切れが聞こえなくなったところでハッと我に返り、ベルのもとへ手元に残っていたポーションを渡しに行こうとした瞬間、何かの羽音が部屋に響き始めた。

 

「おーおー、派手にやったねぇベル。また倒れているのは如何かと思うけど、しっかり仕留めれたみたいだしそこは評価してやろうか」

 

直後にそんな声が聞こえる。瞬時に声のする方へ振り向くと、そこには両手で沢山の食材を抱えながら背中の昆虫のような羽で飛んでいる人物…トミーロッドとその後ろで共に飛んでいる巨大な数匹の蟲達の姿があった。

トミーロッドは倒れているベルの近くで着地し、蟲達に指示をした後に食材を片手で抱えもう片方の手でベルを担ぎ、そのまま飛び始める。

一方で蟲達は先程のデーモンデビル大蛇のもとまで飛び、一匹一匹がそれぞれデーモンデビル大蛇の体の一部を持ち上げて運ぼうとしていた。

そんな様子に呆気にとられていたアイズだが、去ろうとしていることに気づき慌てて気を取り戻した後にトミーロッドに話しかけた。

 

「…待って!」

 

「んー?なーんだ、雑魚共が揃って無様に倒れてるのかと思ったら、一人だけ意識があるじゃないか。言っとくけど、どんな質問であれ答えるつもりはないよ。」

 

「貴方は、誰?」

 

「…こいつ、人の話聞く気ないのか?ボクは答える気はないと言ったはずだけどね」

 

「……答えて、ください。」

 

「雑魚に答えることなんて何もない。ボクのことより、そこの後ろにいるゴミ共の方を心配したほうがいいと思うけど?」

 

「!!」

 

そう言ってトミーロッドがアイズの後方に指を指す。

その方向にアイズが振り向くと、プルプルと震えながらだが起き上がろうとしているロキファミリアの幹部達がいた。

アイズは質問の事を置き、慌てて幹部のもとへと向かう。

その間にトミーロッドは一瞬のうちにベルと食材を抱えて、蟲達はデーモンデビル大蛇を抱えて飛び上がり、地上へと戻っていったのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……へぇ、あの子供みたいにちっちゃい奴、中々やるじゃん。

あの力見てるとなんだか他人事のように思えないし、何か依頼でもしてみようかねぇ。

師匠の話通りなら、あれは間違いなく…

ってあー……まぁた喋りすぎちった、師匠からよく言われてたことなのになぁ。

さーて、素材集め素材集め…っと。」




本当に久々に書いたので、色々と酷いことになっているかもしれません。それでも宜しければ感想や評価などよろしくお願いします!_|\○_

今回も補足はなしです。わからない部分などがありましたら是非教えてください!できる限りお答えします。

本当はもうちょっと長くする予定でしたが、これ以上投稿が先延ばしにされるのはまずいと判断したので早めに切り上げました。次回にその部分も書きます。

それと、戻って早々あれですが1話だけpixivで書きたいものがあるのでそれを終えたらまたこちらに戻ります。それでは。


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グルメ15:一方その頃

置鮎さんの声聞くたびにトリコ連想する程アニメ見返したので初投稿です。

3ヶ月もの間更新できてなくて申し訳ないです。
実習やら何やらがありますが、一番は書くモチベが全く上がらなくてほとんど読み専になっていました。
モチベは回復しつつありますが、これから就活入ってくるので投稿間隔は月単位にはしたくないですが空いてしまうと思います。ご了承ください…。他の投稿者様の更新速度を見習いたい……。

それではどうぞ。



「つまり、ダンジョンに潜っていたら17階層でデーモンデビル大蛇とやらに遭遇したのだな?」

 

「ああ」

 

「で、そいつをベル1人に向かわせてお前は食材を集め回っていたと」

 

「そうだ」

 

「そしてベルの向かった先に着いたら、ベルはそのデーモンデビル大蛇を倒していたが、カロリー切れ間近とやらでベルも倒れていたと」

 

「何度言わせるんだ、さっきからそう言ってるだろう」

 

「なぜ!!そこで!!ベルから!!目を離す!!?」

 

「あん?」

 

昼を過ぎて日が西へ沈み始めた頃、ヴァーリファミリアのホームである「法廷の館」にてそんな怒号が響き渡る。

その声の主は、ヴァーリファミリア団長のアフテク。

その怒りの対象は現在一通りの処置を終えて眠っているベル、その原因となった者の1人であるトミーロッドへ向けてのものだった。

 

あれからトミーロッドは倒れたベルとデーモンデビル大蛇、そして自身で集めた食材を自身の蟲と共に担いでダンジョンからホームへと引き返した。

その際に再び民衆たちの注目を集めることとなったが、トミーロッドはなおもこれを無視。

そうしてホームまで向かい、食材とデーモンデビル大蛇の切り分けと運搬を蟲に任せてトミーロッドがホームの部屋までベルを運ぶ際、たまたま遭遇したディニエルが驚愕。

その際の悲鳴を聞き慌てて駆け付けたレグリオがベッドを用意しに行き、同時に来たアフテクが回復魔法と治療を施す。

そうしてなんとか無事にベルをベッドに寝かせて一安心したのも束の間。

アフテクは事情を聞くためにトミーロッドに話を、レグリオとディニエルは必要な果物などの買い出しに向かい現在に至るのだった。

 

「んだよ、お前は常に付きっきりの甘々な指導をしろとでも言いたいのか?

あり得ないね。んなやり方で育つのは自立のできないただのガキだ。」

 

「それは、確かにそうだが……だがいくらなんでも倒れるまで放置するのはおかしいだろう!?

デーモンデビル大蛇とやらを倒した後だから良かったものの、もし倒せていなかったらどうするのだ!?」

 

「はぁ?その時はベルはそこまでのやつだったってことだろうがよ。」

 

「なっ……!?そんなのあり……?」

 

トミーロッドの見殺しにするとも受け取っていい発言にアフテクは思わず絶句。

直後に無意識に「ファミリアの一員としてあり得ない」と言おうとしたところで、ふとこのタイミングで自身の師の行ったことを思い返す。

 

 

.。o˗ˏˋ ˎˊ˗

 

 

『まだ足りんな。本当に私を目指すというのならば、限界などあと500は超えてみせろ』

 

そう言われては、当時レベル1にも関わらず師に協力した団員が連れてきた中層のモンスター達、時には階層主までをも引き連れた怪物進呈(バスパレード)を全て助けなしで1人で相手させられるという、修行という名の虐待のような何かを受けさせられたり。

 

『そのままでいろ。

お前はまだ生と死の境界を見極めることすらできていない未熟者だ。

今のその感覚を覚えれば、お前は自身の限界を知り戦い方を自然と身につけることができる』

 

そう言われてはダンジョン58階層の『龍の壺』と呼ばれる場所で、ゼウスファミリアのザルドと共同でザルドに反対向きに抱えてもらい、「砲竜」ヴァルガングドラゴンの砲撃をあえてアフテクのコンマ数ミリの差の目の前で避け続けるという、少し間違えれば即死にもなりかねないような生き地獄を受けさせられていた。

 

余談だが、ザルドはこの修行に付き合わされる度「アルフィアの俺に対しての扱いが目に見えて雑になってきていて辛いのだが」とため息混じりに同僚に愚痴を溢していたという。

その際に同僚から

「いいじゃねぇか!あのヘラファミリアでも有数の別嬪さんだぜ?むしろ構ってもらえてありがたいと思っとけ、じゃないと俺は嫉妬の炎で狂いそうだ……」

などと言われ、更に続けて「お前がいいならあいつは俺がもr」などと言い切る前に謎の音の衝撃で2人は酒場ごと吹き飛んだとかないとか。

 

また、

『アフテク。お前はエルフ、ましてや王族に連なる者だ。当たり前ながら基本を怠ることは私が許さん。瞑想を教えてやるから、これからは毎日これを行え。少しでも集中が乱れていたらこの拳骨が振り下ろされると思え』

と威圧込みで言われ、師から振り下ろされかねない福音拳骨の恐怖に耐えながら瞑想を行うというもはや修行と呼べるのかすら怪しい日課をこなしたり、等々……。

 

ちなみに本人は無自覚だが、アフテクはレグリオと共にパーポスとディニエルが加入した際もレベルがある程度上がるまでは『龍の壺』にて似たようなことを行っているのだが、それは割愛するとしよう。

 

 

閑話休題。

 

「あ゛ーー………」

 

「トミーロッド氏〜!ちょっといいかお〜?

ってあれ?団長と取り込み中だったのかお?」

 

アフテクはそういった自身の経験と行いからトミーロッドに碌な言い返しができず呻きながら言葉を選んでいると、気の抜けたような呼ぶ声と共にパーポスが2人の部屋に入室してきた。

 

「いいや、今終わったところだ。

 んで、要件はなんだ?」

 

「あ、そうなの?実はトミーロッド氏が前に言っていたジーティー…ロボ?の試作っぽいものができたから、トミーロッド氏の意見を聞きたいのと同時に見て欲しいんだお!」

 

「ほう、随分と早いじゃないか…なら見させてもらおうか」

 

「ま、待て!まだ話は終わってないぞ!」

 

バタンッ!という扉が閉まる音によってアフテクの声は届かないまま、トミーロッドはパーポスと共に退室をした。

 

「…これ、私からでは何も言えないのではないか…??」

 

1人となった部屋で、頭を抱えたそんなアフテクの独り言が寂しく響くのだった……。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

「……なるほどね、それが今回の事の顛末か。」

 

「うん、これで以上。」

 

「そうか、ありがとうアイズ。部屋に戻って構わないよ。」

 

「はい、失礼しました。」

 

軽く一礼しつつそう言った後、アイズは退室する。

ここはロキファミリアのホームである黄昏の館、その団長室。

その部屋にて、現在ロキファミリアの最古参であり首脳陣であるフィン、リヴェリア、ガレス、そして主神のロキが集まっていた。

主神のロキ以外は皆、多くないとはいえそれぞれ身体のどこかに包帯を巻いている様子だ。

そんなことを気にせず、4人は話を始める。

 

「さて……今回の件、どう思う?」

 

「そうだな、ひとまず蟲の件はその者の召喚したもの、という認識で間違いはなさそうだ。」

 

「同感じゃ。ついでに言うならば、以前に団員が目撃したという例の巨大モンスターを抱えてた者の特徴と一致するようじゃ、同一人物と見て問題なかろう。」

 

「せやなぁ、そうなると一緒にいたっちゅう副団長のことも考えてヴァーリファミリアとの関わりはありそうやなぁ……確定と考えてもええんちゃうか?」

 

「ああ、僕もそう思うよ。ギルドは全くの無関係だなんて公表しているけど、これは嘘だろうね。」

 

「それと、これは個人的な話だが…」

 

「「「?」」」

 

「僕達が倒れてる間、あの蛇型の巨大モンスターを単身で倒したという少年が気になるかな」

 

「それもそうじゃのお…」

 

「アイズ曰く白髪で目が赤く、赤黒いオーラを纏っていたんだとか」

 

「それで戦っとったってアイズたんは言っとったなぁ。確かに興味深くはあんなぁ」

 

「だろ?僕としては彼のことも知っておく必要があるかな、所属ファミリアも気になるし」

 

座りながら団長室の机に肘を立てて、口元を隠すように両手を顔の前で組みながら何かを見据えるようにそう言うフィン。

予測とはいえ、その頭の回転の速さでフィンは表のとは別の事実を少しずつではあるが読み取っていこうとしている。

 

「……ま、これは私欲だから優先事項がそこまで高くはない。やれる時にでもやっておこう」

 

「それで、これからどうするのだ?フィン」

 

「今回の遠征でうちは多大な損失を被ったからね、暫くは資金稼ぎでもしながら落ち着こうと思うよ。調べたいこともできたしね。」

 

「例のモンスターとその魔石の件、じゃな…」

 

「確か()()()の魔石、だったか?あんな不気味な色をした芋虫のモンスターは誰も見たことがないとのことだからな…」

 

「ああ。それとあの蟲使いらしき人物…無関係と決めつけるのは早計かなと思ってね」

 

「!…ヴァーリファミリア、にか?」

 

「フィン、いくらなんでもそれはあり得んやろ。

あのヴァーリやで?あの善神がそないな事するやつとは微塵も思えんのやけど」

 

「ふむ、それもそうだね。

これは…ヴァーリファミリアにもう一回訪問しなきゃいけないかもしれない、かな…。気が重いけどね」

 

「……その場合、私は残っていていいか?フィン。」

 

「その方がいいだろうね。リヴェリア個人の事もあるとはいえ、あの件でちょっと印象悪くなっちゃったからね…代わりはベート辺りでも連れて行こうかなと思うよ。」

 

「すまない、助かる。」

 

「あ!ならついでにウチも留守番したいんやけd「主神が行かないでどうやって正式な交渉の場を作るんだい?」ヒィッ、もう勘弁してやぁ〜〜!!!」

 

そんなロキの悲鳴が、黄昏の館全体に響き渡るのだった……。

 

 

 

▲▽▲▽

 

 

 

「…オッタル」

 

「はい、フレイヤ様」

 

「私達は2度も苦汁を飲まされた、間違ってる?」

 

「いいえ、仰る通りです」

 

「穏便に済ませる予定だったけど、こうなっては仕方ないわね…。

オッタル、明日ついてきなさい」

 

「は。」

 

「それと、これを渡しておくわ」

 

「…これは?」

 

「明日になればわかるわ。」

 

「…わかりました。仰せのままに」

 

「頼むわね。…さて、そろそろ黙っているのも終わりにしましょうか…ねぇ?ヴァーリ?フフフ……」

 

「……」

 

 

    

 

 

 

「……そうですか、2体の猛獣はそのようになってしまったと」

 

「……」コクコク

 

「ふむ…今更止めるのは難しいですし、何かしらの対策を講じなくてはなりませんね…。」

 

「それに、あの者たちの手駒は全くと言っていいほど宛になりませんし…。」

 

「はぁ……。にしても、ここの世界は随分と窮屈なものですねぇ。当たり前の力にすら代償が不可欠とは、頭が痛くなるのを感じます。」




宜しければ感想や評価、指摘などありましたらよろしくお願いします!_|\○_

原作からちょくちょく変更点ありますが、まあそれなりに考えてたり考えてなかったりするのでわからなかったら適当に聞いちゃってください(丸投げ)

次の次から話が動いてくるかと思います。それでは。


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グルメ16:豊穣の女主人にて

先週なんとか就活の内定決まったので初投稿です!ちょこっとでも更新頻度上げれるよう頑張ります…

もうここまでくると投稿の遅さがデフォになってる気がしちゃってますけど、それでも申し訳ないです…
代わりにと言ってはあれですけど、クリスマス辺りに(新規のも含めて)3か5?作分投稿する予定ではありますのでそれで許してください_|\○_

あとこれは読者の皆さんへの質問なんですけど、ダンまち本編の60階層から下の情報ってどこで入手できるのでしょうか…??文献とかあったら教えてください!


追記:誤字報告ありがとうございます!即確認して訂正させていただきました。


それではどうぞ。


労働やボランティアといった自らの行動などで人や街に貢献した者には、相応の対価が必要だ。

ある時は、その者に対しての金や物といった形として残る報酬であったり。

またある時は約束事や信頼などの、形には残らないが当事者にとっての大事なものであったり。

その形は千差万別、人それぞれというものだ。

 

そしてそれは全ての者に与えられるべきものだと、(女神)は思う。

自身のみが娯楽を満喫したり裕福に暮らすというような事をせず、その娯楽や裕福さをなるべく全ての者に平等に分け与えるべきだと(女神)は思う。

 

「は〜〜〜!ベルくんの髪、サラッサラで触り心地最高だわぁ〜〜〜!!

私、これのために頑張りたくなっちゃうわねぇ……」

 

「(神様、そんなにくっつかれると食べ辛いのですが…。あと、擽ったいです…)」

 

ならば、普段あれこれと頑張っているーー今回はとある出来事によって多少の不機嫌も含むーー私に対して、新人ことベルくんのーーー現在食事中だけどもーーーこの触り心地のいい髪をひたすら触って顔を埋めても、きっと許されるだろう。

私はそう思うのだ。

ちなみにベルくんの髪の触り心地よさを知ったのは、前回ステイタス更新をした際に少し触れたからだ。

 

 

……等と、心の中で誰に向けてかもわからない言い訳を並べ立てながら、この女神ことヴァーリはベルの髪に癒されていた。

夕刻時、現在ファミリアのホームの法廷の館には起きたばっかりのベルとその看病役であるギルドから戻りたてのヴァーリのみが残っていた。

 

 

テーブルに、大量の料理を添えて。

 

 

あれから暫くしてベルは漸く起床。

しかし、ベルは先の戦闘の影響によってカロリー不足で声を発する事自体が難しい状態だった。

そのことを予め把握していたトミーロッドは、デーモンデビル大蛇をメインとした様々な食材を用いて傍から見ていたヴァーリが思わず引く程多数のメニューを高速で作り置き、本人はアフテク達に勧められ視察がてらオラリオの酒場である「豊穣の女主人」に先発して向かうことになったのである。

 

「(意外…!トミーロッドさんって誰の指示や誘いも受けないようなイメージあったんだけど、違うのかな…?)」

 

起きた後のヴァーリからの説明を聞いた際に、ベルはそう思っていたとかないとか。

なお、ベルが思っていたことは実際殆ど違っていたということだけここに記しておく。

 

一方、ヴァーリは仕事を終えて昼過ぎということで優雅な紅茶タイムを楽しんでいた時に、またもや巨大なモンスターを抱えて飛んでいた人物の件で再度ギルドから呼び出しを受ける。

「どういうことだね?これは」から始まったギルド長ロイマンの執拗な質問責めに合い、グッタリとした表情と脱力した状態の体を引き摺るようにホームに戻り玄関を開けた後、真っ先に視界に入ったのは倒れているベルとそれを担いでいるトミーロッドの歩いている後ろ姿。そして周辺の大小様々な食材が玄関一帯を支配している惨状。

 

足元の隙間すらないような状態に、さすがのヴァーリもこれには無意識に思考と足を止めてしまう。

また、今までに見かけたことすらもない香りや見た目の食材達に思わず目を奪われてしまうが、たまたま通りがかったレグリオの声かけによって我に返る。

そして慌ててベルの介抱に眷族たちと奔走している間に、いつの間にかトミーロッドが大量の料理を拵えていたという。

そうして起きたベルのステイタス更新を行う前に、現在こうしてトミーロッドが作り置いた料理を食べているということだ。

 

 

少しその様子を見ていたヴァーリだが、途中自身の顔ほどの大きさの色鮮やかなハンバーガーを顎を外す勢いで大きく口を開けて食べたり、逆に小さくも正確にサイコロ状に切られたステーキ肉を一個一個丁寧にフォークで口に運ぶなどといった、頬張りながらもしっかり噛んでゆっくり味わうように食べているベルに、小動物のような愛らしさがあると気付く。

気付いてからのヴァーリの行動は早く、ゆっくりと髪をなぞるように触ったり後頭部に軽く顔を埋めるといった、ベルの食べるところを邪魔しない程度(ヴァーリ談)に癒されていた。

 

それに対してのベルはというと、やめてほしいといえばそうなるのだが、生来の性格と神様相手ということであまり強く言えずにいた。

更に言うなれば、密着とは言わずともそれに近い状態で後ろからくっつかれているため当たるところが当たってしまい、ついでに後頭部越しで女性の吐息がかかっていることで男として邪な感情を抱かずにはいられないような状態だった。

 

……そう。

本来ならば世の男の100人中100人がそのような問いを投げかけられた場合、必ずと言っていいほどそう答えるだろう。

だが、ここにいるのはベル・クラネル。

そして、彼は()()()()()()もあり超がつくほどの鈍感男だ。

普通ならば男として抱くはずの感情を持つこともなく、むしろ普段と変わらないような態度で食事を続けていたのだ。

それどころか、少し()()()()と感じてしまっている…というのが現状だった。

 

『おい、このアホ女始末した方が早いんじゃねーのか?』

 

『ゼブラさん!?だ、ダメですよ!!この方は神様なんですから!!』

 

『知るか、俺の邪魔をするやつは全て消せば済む話なんだよ!』

 

『済みませんよ!?と、とりあえずそこをなんとか踏み留まってくださーい!!』

 

そんな彼の淡々とした気分は、少しした後に食事の速度が落ちていることに苛々し始めたゼブラによって一瞬にして焦りに変わってしまい、グルメ細胞の悪魔が顔を出すのを抑えるのに必死になっていたのだった……。

 

 

 

❏❑❐❐

 

 

 

「誘っといていうのもあれだが、来てくれるなんて珍しいなトミーロッド。てっきり断るかと思ってダメもとだったぞ」

 

「別に?この世界の食について理解を深めておこうと思っただけだよ、どうせ不味いのはわかっていることだけど」

 

「ほ〜ん?その割にはえらく乗り気だったように見えたんだが、俺の気のせいか〜?」

 

「………」カサカサカサ

 

「わ、わかった!わかったから無言で口から蟲出そうとするのをやめろ!な!?」

 

「…ふん、最初からそう言えばいいんだ。」ガリッ

 

「お、おう……(今の食った、のか…?えぇ…)」

 

「お前たち何をしている、早く行くぞ。」

 

「そうですよ!アフテク様をあまり待たせてはなりません!」

 

「副団長〜、あんまり遅いと置いて行っちゃいますぞ!」

 

「わ、わーったよ…」

 

一方、トミーロッドとヴァーリファミリアの全員は外食を取るということで雑談等を交えつつも、目的地の『豊穣の女主人』へと向かっていた。

…が、実際のところただ食事をするだけならば、トミーロッドが用いるグルメ食材の料理のがずっと美味しいことはここ1週間ほどで全員もわかっていた。

では何故豊穣の女主人へと向かうのか。

それは、今もその店にて働いている1人のとある店員に用があるからだ。

食事はそのついでのようなもの。

ヴァーリファミリアは、その店員に用がある時に連絡も兼ねて食事に行くということを、不定期に行っているのだ。

アフテクが今回持っている少し大きめの紙袋も、そのために用意したものと言える。

なおトミーロッドもこの件を一応伝えられてはいたのだが、本人はどうでもいい事柄だと判断し途中から適当に聞き流していたのだった。

 

「いらっしゃいま…ん?あっ!ヴァーリファミリア御一行様にゃ!」

 

「久し振りだな、アーニャ。元気にしていたか?」

 

「毎日ミア母ちゃんに扱き使われる日々だけど、なんとか元気にゃ!

…ん?今日は主神様はいないのかにゃ?」

 

「ああ、今は訳あって新人の面倒を見ていてな…後から来るとのことだ。」

 

「おお!ついにヴァーリファミリアに新人さん!これはめでたいにゃ! 早速ミア母ちゃんに伝えてくるにゃ!!」

 

「いや、先に席を案内して欲しいのだが……って、もう行ってしまったか。ふふ、相変わらず落ち着きのないやつだ」

 

「あんの小猫風情は…アフテク様を無視するどころか待たせるだなんて、いったいどういう神経しているんだか……」ブツブツ…

 

「(と言いつつ毒を出さなくなった辺り、ディニエルはしっかり変われたようで何よりだ…)

ふふっ…」

 

「アフテク様?如何なさいました?」

 

「ん。いや、特に何もないぞ。」

 

「…?」

 

そうこうしている内に一行は豊穣の女主人へと到着し、1人で盛り上がり先に店内へと駆け出して行った、猫人の店員であるアーニャを見送っていた。

その際にディニエルからの不穏な言葉が聞こえてくるが、心情と態度の変化に少し喜ぶアフテク以外の一行はいつものことのように流していた。

そうして少し待っていると、店の奥から1人の黒の髪をした女性でもう1人の猫人こと、クロエ・ロロが現れる。

 

「お待たせしてすみませんニャ!ヴァーリファミリア御一行様ですニャ?いらっしゃいませ!」

 

「ほう、クロエか。そちらも相変わらず元気そうで何よりだ」

 

「おかげさまでニャ!ささ、外で立ち話もなんですし、席に案内しますニャ!」

 

「ああ、頼む。」

 

「ん?お、おいあいつらって…」

「バカッもう忘れたのか…!?例のヴァーリファミリアだ」

「ああ、例の巨大モンスターの件のことか?あのオカマみてぇなやつもいるってことは、そういうことだよな…?」

 

クロエのアフテクとの会話を長くせず、かといって客を手ぶらで立たせないように手早く席へと案内する様子は、さながら接客に手慣れた1人の立派な店員の姿そのものだ。

そんなクロエの案内によって、一行は店の西側にある丸いテーブルを囲むように全員席に着く。

途中周りの客からひそひそと小さく会話が聞こえていたが、特に気にすることでもないというアフテクの判断によって無視を決めていた。

 

「久しいね、アフテク!事務仕事の方はもういいのかい?」

 

「久しいな。大丈夫だ、手分けして行えたからな」

 

「あっはっは!!そうかいそうかい、そいつはいいことだ!注文はいつものかい?」

 

「ああ、それで頼む」

 

「それじゃあ失礼しますニャ!」

 

「ああ、クロエもありがとう」

 

ミアとの軽い雑談を交え案内を終えたクロエが厨房に戻り少し経つと、漸く戻ってきたアーニャによってお冷が運ばれてきた。

そうして皆が一杯飲んで一息ついたところで、アフテクが立ち去ろうとしていたアーニャに声をかける。

 

「すまないがアーニャ、リューを呼んでくれないか?いつもの件だと伝えておいてくれ」

 

「了解にゃ!すぐ呼んでくるにゃ!」

 

そう聞いたアーニャは、すぐさま同じ店員の1人であるリューを呼ぶため再度店の奥に戻っていく。

そのまま暫く待っていると、それなりに多めの料理と共にそれを運ぶ薄緑色の髪を持つエルフこと、リュー・リオンが現れた。

 

「お待たせしました、こちらが料理です。

…そしてお久しぶりです、皆さん。お元気そうで何よりです。」

 

「久しいな、リュー。お前も元気そうで良かった。」

 

「ええ、本当に…。

 今日はいつもの件、で合っていますか?」

 

お互いに小さく微笑みながら、再会の挨拶を行う。

そう、ヴァーリファミリアが用があるという店員は、このリューのこと。

今でこそ彼女は店員だが、昔はれっきとしたレベル4であり現役冒険者だったのだ。

更に言うなれば、当時の彼女の所属ファミリアは『アストレア・ファミリア』。

かつてのオラリオ有数の精鋭揃いである正義の眷族にして、今はなきファミリア。

そして、数少ないヴァーリファミリアと深い親交があったファミリアだ。

かつては無償でお互いの眷族を遠征の手伝いに向かう程の仲のファミリアに、なくなってもなお気にかけたいというのはファミリアの総意なのだとか。

そんなわけで、不定期ではあるが時折食事ついでに様子を見に来たり用を済ませているということだ。

 

「ああ、今日はこれを渡しに来たんだ。」

 

そう言って、アフテクは所持していた少し大きな紙袋を丁寧にリューに渡す。

 

「本当にありがとうございます。アフテク様には、いつも助けられてばかりです…なんとお礼を申し上げれば良いのか……」

 

「なに、いつものことだ。こちらには何も影響はないから、気にすることはないぞ。」

 

受け取った紙袋を少し開き、中を見たリューがアフテクに深く頭を下げると共に心のこもった感謝の言葉を伝える。

それに対して、アフテクはまるで当然の事と言わんばかりにいつも通りに話す。

 

アフテク達ヴァーリファミリアがリューに渡した物とは、アストレア・ファミリアの元主神にして現在都市外に避難中の主神アストレアへのお金や服、日用品などの仕送りだ。

 

情報漏洩回避のためリューとアフテク、そしてヴァーリしか場所を知る者はいないのだが、現在アストレアは都市外にて貧しいわけではないが、そこそこ苦労する生活を送っているとのこと。

助けに行きたいのもやまやまなのだが、アフテクとヴァーリはそれぞれ1ファミリアの団長と主神。

不定期でも都市外に向かって直接仕送りを渡すことができるほど、長期的に暇ではない。

故に、唯一渡せるリューに中継して貰うしかなかったというわけだ。

 

そういったやり取りを行っていると、店の入り口の戸が開く音が響く。

 

「ちわーっすミアさん!元気にしてたー?」

 

「し、失礼しまぁす…」

 

「お、おい…あの白髪のガキって…」

 

「あ、ああ…多分例の運ばれていた新人らしきやつで間違いなさそうだぞ…」

 

「やっぱりか…」

 

女性らしからぬ豪快な声と共に店に入るヴァーリ、そしてその影で小声で続くベルの姿があった。

その影でまたも別の客が小声で話していたが、些細なことだった。

 

「…ほう?さすがグルメ細胞、といったところか…」

 

「またあのバ神は……いやそれよりも、ベルの声が戻っているようだな。良かった…」

 

そんなヴァーリの様子にため息混じりに呆れながらも、ベルの声が小さいながらも戻ったことに安堵の表情を見せるアフテクがいた。

そしてベルの回復の早さに内心感心しつつ、小声で呟くトミーロッド。

 

「そうだミアさん!また話聞いてもらっていい?まぁたストレス溜まることがあってねぇ…」

 

「またかい…あいよ!この仕込みが終わったら少しだけ行くから、ちょいと待ってな!」

 

ミアはいつものことのように軽くため息をつきながらも、料理の手を止めずにヴァーリの呼びかけに応える。

普段は厳格な姿勢で店を経営しているミアだが、時にはこういった世話焼きな部分もある辺りが慕われている所以なのだろう。

 

「んで?声はどのくらい戻った?」

 

「えっと……、多分8割くらいだ、ってゼブラさんが言ってます」

 

「そうか。ならここの飯でも食ってれば回復するだろ」

 

「そうですね…!」

 

「結構回復したんだな…って、ゼブラ?誰だそいつ?」

 

「ふむ……音の力、か…」

 

「え?えーっと…この力の元の持ち主、みたいなものです。」

 

「?…とりあえず規格外っぽそうな人、という認識で良さそうですかね…?」

 

「まあ、多分そんな感じで良いと思います」

 

「なにそれ、なんか響きがかっこいいね!」

 

「そ、そうですか?言われてみれば確かに…」

 

ヴァーリがミアを待っている最中、ヴァーリファミリアの席ではベルを中心にしてそんな会話が始まっていた。

ベルの力の話になった際、アフテクはふと自身の師のことを思い出す。

 

「ご予約のお客様、ご来店にゃ〜!」

 

そうして思いを馳せようとしていると、突如店員のアーニャの声と共に店の戸が開く音が響く。

音につられて全員が戸の方へ振り向くと、赤髪で糸目の人物を先頭に団体が入店し始める。

 

「ちわーっす!!ミア母さん元気にしとっ……あっ…」

 

「……あ゙?」

 

 

 

ーーーその瞬間、店内の空気が淀み始めた。




宜しければ感想や評価、指摘などありましたらよろしくお願いします!_|\○_

それはそれとして、活動報告の方にも書いてありますが自身のss関係用のTwitter作りました!時々呟いたりするのでよければ見ていってください。→@7538315DAAAAAA
普段はこちらにいますが、こっちではほぼ全く呟かずゲーム関係が多いのでご了承いただければと思います…。→@Hideout0417

次回は意図的に出さなかった店員の話の予定です!それでは。


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グルメ16.5:かの女神

クリスマスにも年末にも出せなかった上に次回から話が動くことになったアホなので初投稿です。
ま、まあこれで去年の書き納め兼今年の初書きということで…どうかお許しを。

それはさておき、今回は予告通りの回となります。

ではどうぞ。


初めて見た時、美しいと思った。

 

こんなにも先が見たくなる魂、今までに見たことがなかった。

 

彼の魂は、それ程までに綺麗に映っていたのだから。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

私はいつも探していた。

 

伴侶(オーズ)となる存在を。

 

天界で何度も探したが、いなかった。

 

下界から還った魂の中にも、いなかった。

 

ならば、未知の可能性があるという下界ではどうだろうか。

 

……

 

結論から言えば、見つけることはできた。

 

漸く、という枕詞がつくが。

 

ただ、難点が幾つかあった。

 

1つは、彼の魂に少しではあるが靄がかかっていたこと。

 

これに関しては不明だが、私のものにできた時にでも対策を考えれば如何とでもなるはずだ。

 

そしてもう1つは、既に所有者らしき人物がいたことだ。

 

最初に見かけた際の雰囲気と行動を見るに、恐らくはあの女神のファミリアに入ったのだろう。

 

それだけでも少し厄介だ。

 

…まあ、少し手間がかかるというだけで、私の眷族(子ども)達にかかればあの女神相手だろうと奪う事自体は造作もないのだが。

 

問題は、所有者もそのファミリアに入ったということだ。

 

何者かは全くもって不明だが、第一級冒険者を凌駕する程の強さを持つ昆虫を使役する、()()()()()()を持っているのは間違いないようだ。

 

けれども、報告によればどうやら昆虫以外の武器や攻撃手段を持っていない様子という。

 

恐らくではあるけど、昆虫の強さを信じ切っていて自身が戦うことを想定していないのだろう。

 

ならば、それさえ()()()しまえば勝てない道理はない。

 

残りのファミリアの子ども達は、予定通り行けばオッタル達で対処可能だもの。

 

フフ、楽しみね…ヴァーリ?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

10分程前、ベルとヴァーリが店に着く前の道中にて……

 

「神様、これからどこへ行くんですか?」

 

「ん?あーそういや言ってなかったね。『豊穣の女主人』ってお店さ!」

 

「お店、ですか…?」

 

「そ!まあ外食みたいなものだね。」

 

先導するヴァーリと、その後ろをベルが歩きながら会話をする。

ベルがトミーロッドによって用意された食事を食べ終え完全ではなくとも声が概ね戻った状態になったため、連れて行けると判断したヴァーリが先に向かったアフテク達に合流しようとしているのだ。

 

「なるほど…でも僕、ホームでたくさん食べた後ですよ?そこまでしていただかなくても大丈夫です!」

 

「それは知ってるよ。でも、まだ()()()()()()んでしょ?」

 

「…!」

 

ベルの本音を言い当てるかのように歩みを止めゆっくりと振り向いて、そう答えるヴァーリ。

 

天界から下界へと降り立った神々、もとい超越存在(デウスデア)に、嘘は通じない。

例に漏れずヴァーリもその一柱のため、嘘は見抜いていた。

かつて天界での神々や下界の者達に言い寄られた際は、建前の言葉とは別で悪意や下心が見えていたため嘘が見えることにありがたみを感じつつも良しとは思わなかった。

だが、ベルの嘘は親切からくる優しい嘘ということも見抜いていたため、ヴァーリは密かに嬉しさを感じていた。

自然と声に優しさが篭もるのも、きっと必然だったのかもしれない。

 

「それは…はい。でも、なんでわかったんですか?僕、何か言いましたっけ?」

 

「ふふ、神に嘘はつけないのよ。それがなくとも、貴方の顔を見たらなんとなくわかっちゃった」

 

「そ、そういうものなんですか…」

 

「そういうものよ」

 

ふふっ、と軽く微笑んでからヴァーリは歩みを再開する。

顔に何かあったのかな、と自身の顔をペタペタと触りながら慌てて確認をするベルをチラリと見て、また微笑む。

 

「こんばんは、いい夜ね。」

 

少し遅れたベルが慌ててついていこうとしたその時、前方の道から黒いフードを被った人物が現れた。

先程まで暗闇だったその道からなんの前兆もなく現れる姿は、まさしく神出鬼没というに相応しいものだった。

 

「誰…っ!」

 

「……どういうつもりかしら、フレイヤ?」

 

「!?」

 

敵かと判断し慌ててヴァーリの前に出て剣を構えようとしたベルだが、ヴァーリがそれを片手で静止し落ち着いた声色でフードの人物…即ちフレイヤに話しかける。

フレイヤという名前を知ってはいても実際の人物を知らなかったベルは、その発言を聞き驚愕した。

 

「あら、もう見抜かれちゃったの…残念だわ」

 

「嘘つけ、そういうことは神威を隠してから言いなさい。それに、どうせ近くに眷族(子ども)達配置してるんでしょう?あんたんとこのやりそうな事よね」

 

「…そうね、それに関してはごめんなさいね、善処しておくわ。」

 

「改善する気皆無の発言やめなさい、聞いてるだけでイライラするわ」

 

表情を暗くしあからさまに不機嫌、という様子を見せながら話すヴァーリと、それを意に介さず応えるフレイヤ。

まるで対比にもなるこの2人の間には、神威によるものかはたまた純粋な怒りによるものか、今にも火花が散りそうな程に雰囲気が悪くなっていた。

 

「で?あんたがただで来るわけないのは知ってるのよ。…用件は?」

 

「そうね、私はそこの子に興味があるのだけども…」

 

「…僕、ですか?」

 

「そうよ、ちょっと2人でお話させてほしいのだけど…いいかしら?」

 

「はあ?あんたのその言葉が信用できるわけないでしょう?断固反た「いいですよ」っ、ベルくん…!?」

 

「大丈夫ですよ、神様……すぐ終わると思いますので。」

 

「…フフ。じゃあちょっとの間だけ、借りるわね?」

 

「ここで待っててください、神様。」

 

「え、あ、うん…」

 

そう言って2人は店への道から少し外れて近くの広場へと歩いていき、暗闇の中に消えていった。

 

「……大丈夫、かな…」

 

そんな2人の様子を、ヴァーリは後ろから見送ることしかできなかった。

そして一言、そう呟く。

それがフレイヤの魔の手によるベルへの不安か、一瞬ベルの手からバチバチ、と溢れ出した赤黒いエネルギーに対しての不安か…それは神のみぞ知る。




宜しければ感想や評価、指摘などありましたらよろしくお願いします!_|\○_

新年ということでダンメモやらFGOやらで色々とイベントが発表されましたね…情報量多くて大変だ…
ちなみに自分はFGO福袋で沖田オルタ以外狙いで引いたら沖田オルタ宝具2になりました。きっと一周回って大吉なんだろうな……(白目)

次回こそ話を動かしつつこれの続きとロキファミリアの方に少しだけ触れたいと思います。

それでは。


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グルメ17:混沌

レジェンドアルセウスと原神にどハマりしてたので初投稿です。

この2つのゲーム面白すぎる…その間にソシャゲのイベント来るしどんどん書く時間減ってまう……頑張りますw

今回は久し振りの長めです!ではどうぞ。



「それで、要件は何でしょうか?」

 

「そうね。回りくどい事はやめておくべきでしょうし、単刀直入に言うわ」

 

日が落ちてきた中、近くの広場で腰を下ろした1人の少年と1柱の女神はそう言って話の本題に入ろうとしていた。

 

「貴方、私のところ(ファミリア)に来る気はない?歓迎するわ」

 

「お断りします」

 

聞く人が聞けば歓喜の涙に咽ぶであろう申し出を、ベルは間を置くことすらなく辞退した。

その一言を聞いた瞬間、2人の周辺一帯から凄まじい程の殺気が溢れ出すが、ベルはこれを無視していた。

そんなベルに対し、フレイヤは驚く事もなく至って平静な状態で聞いていた。

 

「…一応、理由を聞いても?」

 

「ご存知とは思いますが、僕は既にファミリアに所属している身であること、以前にレグリオさんとトミーロッドさんに眷族の方を仕向けていたこと、そして神の力とやらで僕を半ば強制的に引き込もうとしていたこと、この3つです」

 

「あら、そこまでとはさすがね」

 

片手の指を1本ずつ上げながら理由を述べていくベルに、特に悪びれる様子もなく話すフレイヤ。

 

「前2つはなんとなく察せるけど…最後のはどうやって知ったのかしら?」

 

「知ったわけではないですが、最初に気付いたのはこの力を()()()()()時で、そこからファミリアの皆さんの話をもとに予測しただけです」

 

「…そう、残念」

 

自身に浮かび上がった疑問を口にし、ベルからのその答えを聞いて、フレイヤは納得したような顔で返事をする。

普段のフレイヤであれば、このように答えられたところで強引に引き込もうとしていたのだが、ベルの片手の指から無意識に出ているであろう赤黒いエネルギーの弾ける様子を見て、それを中断した。

 

これが仮にただの一冒険者の魔法程度ならば、もしもの場合に備えて近くに待機させていた自身の眷族に対処させることなど造作もなかった。

だが、フレイヤはそうしなかった。

なぜか?

 

このエネルギーの放出を受けてしまうと、目の前の少年の意思とは無関係に、例えオッタルに任せたとしても魔法とは明らかに異なる何か洒落にならない結果になると感じ取ったからだ。

それは、フレイヤという神としての直感がそう判断したと言っても過言ではなかった。

 

それにベルは今、受け継いだ、という答え方をしていた。

それはつまり、ベルの手から溢れ出すエネルギーの力は自身で発現したものではなく、第三者の誰かから受け取ったもの。

それは誰なのか?

 

順当にいけば、あの水玉模様の格好をした蟲を生み出す者の仕業だと考えれるだろう。

しかし、フレイヤはそれだけではないのでは、と考えた。

これもまた神の直感によるものにはなるのだが、冗談と一蹴するには情報が不足しているのもまた事実なのだ。

少なくともわかっているのは、目の前の少年の魂の色が以前と比べて少し()()がかっているのだ。

それも内面的なものではなく、内側から()()()()()()()かのような何かが。

 

「話は以上ですか?なら、僕は早く神様のところに戻らないといけませんので、これで失礼します」

 

「ええ、そうね。邪魔しちゃったわね」

 

そうフレイヤが思索していると、ベルが立ちあがってそう告げる。

それに対してフレイヤはあっさりと返答をする。

ベルはその姿勢に少し疑問を抱くが、それよりも置いて行ってしまった神様のところに行かなきゃ、という思考に切り替えて走って行く。

 

 

 

 

「……ふふ、初めて振られちゃったわ」

 

「フレイヤ様、よろしかったのですか?」

 

面と向かって断られたにも関わらず、気にする様子もなくベルの背中を少し見送った後に、視線を変えて夜空を軽く見上げながらもどこか妖艶な雰囲気と共にそう呟くフレイヤに、近くの建物の影から現れたオッタルがそう言う。

その声を聞いたフレイヤは視線を変えることなく、独り言のように言葉を続ける。

 

「…本当は良くないわ。けど、今はこうするしかなかったの」

 

「……?」

 

そう言った後見上げていたフレイヤは、その視線を無表情ながらもその瞳の奥に疑問を浮かび上がらせているオッタルに移して、更に続ける。

 

「あの子を今回改めて見たけど、想像以上に()()()わ。私の魅了だって、どういうわけか別の感情で押し返されたもの。勿論あの子の魂は美しかったし欲しいけど、それ以上に対策をするためにも、早急に私のものにするしかない」

 

「……」

 

いったい何を言ってるのだろう…というオッタルの表情を意に介さず、「本題に入るわ」という切り替えの言葉と共にフレイヤはオッタルに告げる。

 

「この手紙を持って、あの子と同じ行き先の店にいるヴァーリに届けてきなさい。それが終わったら帰っていいわよ。私は先に戻って、準備を進めるわ」

 

「…御意。」

 

その指示を皮切りに、オッタルは即座に店へと向かう。

それを少し見送った後にフレイヤは、普段いるバベルへとは向かわずに、フレイヤファミリアの戦いの野(フォールクヴァング)へと向かう。

その後ろを、周辺に配備されていた眷族達が集まって同行する。

 

「─少し荒療治になるけど、許して頂戴ね」

 

 

──透き通るようなその一言を残して、女神は口角を上げながら進んでいく。

 

 

 

▲△▼▽▲△▼▽

 

 

 

豊穣の女主人に向かう少し前。

ロキファミリアのホーム『黄昏の館』にて。

 

「………」

 

ロキファミリア幹部の少女──アイズ・ヴァレンシュタインは、自室で黄昏れていた。

その原因は言わずもがな、少し前までの遠征もといダンジョンでの出来事にあった。

 

50階層での不気味な芋虫型のモンスターと、下半身が蟲、上半身が女性の人体というモンスター。

どちらも()()()()()()極彩色の未知の存在で強力なものだったが、それは今の彼女には関係がなかった。

 

今、彼女の頭の中にあるのは、17階層にて遭遇した巨大な蛇のようなモンスターこと、デーモンデビル大蛇。

そして、それを倒した赤黒い稲妻のようなものを纏う白髪の少年──ベルの姿だった。

 

「……凄かった」

 

その時の一部始終を思い返していた彼女は、ふとそう呟く。

自分どころか、ファミリア総勢で戦ってもまるで歯が立たなかった。

その上、久しく経験することがなかった絶体絶命の危機に陥る程に。

そんな相手に、多少苦戦している様子はあれど彼は1人で勝ってしまった。

 

「…どうしたら、あんなに強くなれるんだろう」

 

アイズという少女は、異常とも言える程強さに貪欲だ。

かつて両親を目の前で失って以来、その悲劇を二度と起こさないためにと彼女は自ら剣を取って強くなることを選んだ。

そしてひたすらに強さを求めた結果が、現在(第一級冒険者)に至る。

無論彼女は現在の強さで満足するわけではなく、これからも精進することに変わりはない。

 

 

だからこそ、あの少年が気になる。

あの強さの秘密が気になる。

 

 

あれ程の強さの秘訣を…そのきっかけでも得られたら、自分は更に……いや、今まで以上に成長が見込めるかもしれない、そう考えていた。

そうして、ちょうどよく近くで倒れていた本人にお礼がてら話を聞こうと思った。

 

…のだが、桃色の髪の変な人が奇妙な姿形の蟲達と一緒に彼を連れて行ってしまったから、話をすることすらできなかった。

それなら力ずくで…などと一瞬思いかけたが、自分はその時そんなことをする余裕すらない状態だったことを、動かそうとした際に各所が痛む身体が教えてくれた。

そのため、見ている事しかできなかったのだ。

 

「誰だったんだろう…」

 

今はただ、彼が気になってしょうがない。

けど、この後はファミリアでの宴会だから探すのは明日からになるかな…と思索して、目の前のことに集中しようと切り替えていた。

 

 

……そう、思っていたのだけれど……

 

 

まさか、ファミリアの宴会先でいち早く再会できるとは、夢にも思わなかった。

 

 

 

▼▽▲△▼▽▲△

 

 

 

「あっ…」

 

「……あ゙?」

 

店内にてのんびりとミアを待ちながら眷族達の楽しげな様子を眺めていたヴァーリは、突如開かれた店の扉から現れた赤髪の神の姿によって、ご機嫌とも言えるその緩んだ表情を一瞬にして険悪なものへと変えた。

それを無意識に見てしまった赤髪の女神ことロキは、一瞬にして後方にいたリヴェリアの背後へと隠れていった。

 

「な、なしてヴァーリがおるんや…助けてオカン!」

 

「誰がオカンだ!気持ちはわかるがいいからさっさと入れ」

 

「ひぃっ!わ、わかったからその拳骨落とそうとするのは勘弁してくれやぁ!」

 

隠れると共にそう言い出すロキを、リヴェリアはまるでいつも通りだと言わんばかりの呆れたような態度を取っていた。

後ろにいた団員たちはいつも通りだと思いつつも、過去に同じような場面を何度か見てきたものが多いためか、どこか同情の視線を主神に送っていた。

 

「……はあ、流石に酒場でまであんたに怒るほど短気じゃないわ。勝手に騒いでたら?」

 

少ししてから、ヴァーリが大きく溜息を吐いてロキにそう告げる。

その言葉によってロキはおろか、この場にいた全ての者が固まる程の衝撃をあたえていた。

 

「へ…?え、ええんか?」

 

「そう言ってるでしょ。公共の場でとやかく言うほど私は小物ではないわ、こっちはこっちで忙しいのよ」

 

「…!ありがとうな!ヴァーリたん!!」

 

「その呼び方はやめろ!気持ち悪いわ!!」

 

しっしっ、なんて声が聞こえるような表情と手の動きと共に淡々と理由を述べるヴァーリに、沈んだ表情から一転してぱぁぁっと明るい表情になったロキは、その言葉と共にヴァーリにお礼を告げる。

その際の呼び名が本気で嫌だったのか、顔を顰めながらツッコミを入れその後に自身のテーブルまで戻るヴァーリの姿があったが、お互いの眷族達はそれどころではない様子だった。

 

「「「「(ヴァーリ(様)がロキ相手に私情を優先しなかった…だと!?)」」」」

 

特に、程度の差はあれど同じようにロキを毛嫌いしている節のあるヴァーリファミリア一同は大きく驚いていた。

その様は凄まじく、アフテクとディニエルの2人は露骨に開いた口が塞がらないを体現しており、パーポスとレグリオは食べようと運んでいたものを思わず落としてしまう程である。

 

「…?」

 

…唯一、この場の状況を理解できていないパスタを大きく頬張りながら首を傾げている白兎は例外だったが。

ちなみに現在彼は、隣の席のヴァーリから不機嫌そうな表情をしながらも片手で酒を、もう片方の手でその白髪をワシャワシャと撫でられるという無駄に器用なことをされていた。

そんな彼は少し前にも同じようなことをされていたため、既に学習して抵抗を諦めているのである。

 

「さて!ヴァーリからの許しも得たことやし、今日は思う存分飲んだれやぁ〜!!」

 

『うぉぉ〜〜!!!』

 

ロキのテーブルに足をかける姿勢と共に告げられた音頭を皮切りに、ロキファミリアの宴会が始まった。

 

「師匠!!」

 

「ん?おおベートか!久し振りだな!」

 

「おう!遠征でもあんたの教え通りにやってきたぜ!」

 

音頭の直後、宴会の席から1人の狼人がガッツポーズをしながらヴァーリファミリアの狼人のもとに訪れる姿があった。

それがこのベート・ローガである。

 

彼はロキファミリアの幹部にして、()()()6()というロキファミリア内だけでなくオラリオ屈指の実力者である。

そんな彼は、現在レグリオの指導を受けている。

2人の出会いはオラリオの暗黒期が終わる頃からと長いものだが、それ故にファミリアの壁を越えて公然と関わることを可能としていた。

なおこの2人の関係について、ヴァーリファミリア一行は黙認の姿勢を取っていた。

 

 

余談だが、こちらのベートは原作と呼ばれる世界線のベートとは少し違い、誤差に近い程少々だが人付き合いが良い方向に変わっている。

これもレグリオとの関係による影響なのだが、詳細は割愛するとしよう。

 

 

「それでな、遠征の最中にあのクソアマゾネスがあんな巫山戯たこと言いやがってよ…」

 

「ふっ、相変わらずだなお前らは」

 

「うがー!!聞こえてるよクソ狼ぃ!!」

 

「おい、その悪口は俺にも効くんだが…?」

 

「そうだぞ、師匠にでけー口叩くんじゃねぇよアホが」

 

「えっ!?え、えーと…ごめんなさい!!」

 

「無鉄砲すぎんのよ、あんたは」

 

「うーん、じゃあなんて言おうかな…」

 

「何でもいいでしょうに…はぁ…」

 

「……あ!あっかんベートだ!」

 

「…くふっ、何それ」

 

「…はぁ?なんだそのガキでも言わねーようなダッセー悪口」

 

「ぶふっ!!…いや悪い、一周回って面白かった」

 

「ちょっ、師匠!!?」

 

「む〜!!一周回ってってなんだよーー!!」

 

そんなこんなで楽しそうにレグリオ達が団欒を始めている中、ただ一人アイズだけは視線を動かさずソワソワと落ち着きがない様子だった。

 

「……」

 

「アイズ、あそこの少年が気になるのか?」

 

「!リヴェリア…。うん…」

 

視線の先には、変わらず不機嫌そうに酒と食事を口に運びながらもミアに愚痴をこぼし、もう片方の手でベルの頭を撫でるという無駄に器用な様を展開しているヴァーリと、それをまるで意に介さず食事に没頭しているベルの姿があった。

 

「でも、ヴァーリ様が怖くて…」

 

「ああ…原因の一端は私にあるからな、仲介役くらいなら手伝ってやるとも」

 

「いいの…?その、前に危なかったって」

 

「……それを言われると何も言えないな…まあ、多分大丈夫だ」

 

「…?リヴェリアがそう言うなら、わかった」

 

そうして吹っ切れたアイズは、気合を入れるためかふんすという意気込みとリヴェリアと共にベルのもとへと向かおうとする。

 

 

「邪魔するぞ、神ヴァーリはどこだ」

 

 

その一歩を踏み出そうとした瞬間、扉の方からこの場に似つかわしくない重い声が響き渡る。

何事かと一同は扉の方を向くが、そこに立っている人物を一目見た瞬間、ぎょっと信じられないものを見るような目に変わる。

なぜならば、そこには──

 

『(オッタル……!!なぜ都市最強のあいつがここに!?)』

 

──【フレイヤ・ファミリア】の団長にして都市最強と名高い、【猛者(おうじゃ)】オッタルがそこにいたのだから。

 

「うぇっ…私?」

 

まさかそんな人物が来ると微塵も思っていなかったヴァーリは、不機嫌だった様子も引っ込んでしまい思わず気の抜けたような声を出してしまう。

 

「そうだ」

 

それに対して周りの視線を全て無視しながらもオッタルは、どこからか1枚の紙を取り出しながら、一直線にズンズンとヴァーリのもとへと向かう。

 

「我が主神、フレイヤ様から貴女への手紙だ。読んでくれ」

 

「え、ええ…。……これは…!?」

 

手紙を受け取り、言われるがままに開けて内容を読むと、その表情が一瞬にして驚愕の一色に染まった。

そこには、このような文面があった。

 

 

───明日、貴女のファミリアに戦争遊戯を申し込むわ。詳細を話してあげるから、バベルの塔まで来なさい。───

 

 

 

 

 

 

 

おまけ!

 

 

「俺の役目は終わった、戻らせてもらおう」

 

「あ、ちょっと待ちなさいオッタル!」

 

「……?」

 

「あんた、また目の下黒くなってるわよ?」

 

「……なんだと」ペタペタ

 

「はぁ…はい、これ使いなさい」ブンッ

 

パシッ「……これは?」

 

「私がよく使ってる、効果が強い方のアロマテラピーよ。貴方のことだから、どうせ幹部絡みでの厄介事なんでしょ?それで少しはストレスを和らげときなさい」

 

「……感謝する」スタスタ…

 

 

その後……

 

「最近のオッタルさん、なぜか女性っぽい匂いがするのよね…」

 

「でもその時のオッタルさん、なんだか表情が柔らかいわよ?」

 

「……色々大変なのは察せるけど、正直に言ってちょっと気持ち悪いわ…」

 

フレイヤお付きの侍女達の間でそんな話題が起き、それを聞いた幹部が更にオッタルを貶すタネができたと言わんばかりに口撃しまくったとかないとか……。




宜しければ感想や評価、指摘などありましたらよろしくお願いします!_|\○_

やっとここまで持ってこれた……。
この次辺りから自分の書きたい回が来るので、なんとかいいペースで進めていけるように努めます!

トミーロッドの出番皆無が続いてるような気がしますが、この後からはそれなりに出てくる予定ですのでどうかお許しを…

それと、今回のに合わせて設定の方も更新しておきました!

それでは。


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