旅人「刻晴さんがなんでも一つ言うことを聞いてくれる!?」 (瑠川Abel)
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旅人「刻晴さんがなんでも一つ言うことを聞いてくれる!?」

刻晴ちゃんと蛍ちゃんがめっちゃ可愛いと思ってます。
でも刻晴ちゃん引けてないので妄想の中の刻晴ちゃんです。言動解釈不一致の部分あってもごめんなさい合わないかたはブラウザバックお願いします。


 

 それは"送仙儀式"が終わってから間もなくの頃――――。

 

旅人「こっくせーさーんっ」

 

旅人「こっくせーさーんっ」

 

旅人「こっくせーさーんっ!」

 

刻晴「……どうかしたの、旅人」

 

旅人「刻晴さんがなんでも一つ言うことを聞いてくれるって聴きました!」

 

刻晴「」ブーッ

 

刻晴「げほ、げほ……誰よ、そんなこと言い出したのは」

 

旅人「凝光さんです!」

 

刻晴「……あのね、旅人。凝光の『それ』はもう叶えたはずよね? 君のお兄さんを探してほしい――凝光がもう手配は済ませたと思うのだけれど」

 

旅人「はい! 千岩軍にも璃月港にも連絡を入れてくれているそうです」

 

刻晴「だったらもう――」

 

旅人「でも、私は刻晴さんに叶えて欲しいことがあるんです!」

 

刻晴「……私、こう見えて忙しいんだけど」

 

旅人「まーまーまー! そうお時間は掛かりませんので!」

 

刻晴「あのね旅人、私は――」

 

旅人「……黄金屋に不法侵入されてましたよね」ボソッ

 

刻晴「うっ」

 

旅人「もし私があそこに行かなかったらどうなってましたかねー」

 

刻晴「う……っ!」

 

旅人「確かに私は見返りが欲しくて黄金屋に向かったわけではないですけど、それでも……《仙祖の亡骸》を守るために、ファデュイの《公子》と戦って……とっても強くて、ぼろぼろにされたわけで……」シクシク

 

刻晴「あーもーわかったわよ! 確かに非常時とはいえ黄金屋の、《仙祖の亡骸》の護衛が不十分だったのも認めるし、彼らの命を救って貰った恩もあるわ!」

 

旅人「さっすが刻晴さんっ! 話が早くて助かります!」

 

刻晴「……君、けっこう自由人よね」

 

旅人「えへへ。モンドでしっかり教わってきましたから!」

 

刻晴「今度凝光を通してモンドとの交易を厳しくするわ」

 

旅人「あーん刻晴さんのいけずー!」

 

刻晴「はぁ……で、私に何を叶えて欲しいの? 言っておくけど、璃月での事なら凝光に頼むべきよ? 私に出来て彼女に出来ないことなんてほぼないから」

 

旅人「いえ、刻晴さんにしか出来ないことですから!」

 

刻晴「そうなの?」

 

旅人「はいっ」

 

 風車アスターのようにクルクルと表情を変えながら、旅人は微笑みを向ける。

 頬はほんのりと朱に染まり、不意に向けられたその表情に刻晴は思わず胸が高鳴った。

 

旅人「蛍、って呼んでください」

 

刻晴「蛍?」

 

旅人「はい。私の本当の名前なんです」

 

刻晴「本当の名前……そうね。言われてみれば旅人、ってのもおかしい名前だったわね」

 

旅人「そうなんですよねー。でも、旅人って呼ばれるのも慣れちゃってたので気にしてないんですが」

 

刻晴「そうなの? じゃあどうして――」

 

旅人「名前って、特別な人に呼んで貰いたいじゃないですか」

 

刻晴「とくべ、つ」

 

刻晴「……」

 

刻晴「………」

 

刻晴「…………~~~っ!?」

 

刻晴「な、なななななな何をいきなり言い出してるのそもそも私と君はまだ出会ったばかりでしょ!?」

 

旅人「時間なんて関係ありませんよー。『私』は、『刻晴さん』の特別になりたいんです」

 

刻晴「~~~~」

 

旅人「ね、刻晴さん。『蛍』って、呼んでください」

 

刻晴「わ、私はまだ君のことをぜんぜん知らないわ! そ、そんないきなりは――」

 

旅人「それじゃあ、これから知ってください。私のぜんぶ、刻晴さんに教えますからっ」ギュ

 

刻晴「~~~っ。ああ、もう。君はずるいわね。そんな顔でお願いされたら、断りづらいじゃない」

 

旅人「えへへ。モンド仕込みです」

 

刻晴「……」

 

刻晴「………」

 

刻晴「…………ほ、蛍」

 

旅人「はい」

 

刻晴「蛍。蛍。蛍。……ええ、いい名前ね。儚げな光を連想させる、この世界にふさわしい名前だと思うわ」

 

旅人「刻晴さん。もっと……もっと、呼んでください」

 

刻晴「……蛍。私はまだ君の全てを知らないわ。だからこれから、じっくり君のことを教えてね」

 

旅人「はい。任せてください! 『あなたの』蛍ですから!」

 

刻晴「……~~~っ!」

 

旅人「あはは。刻晴さん顔真っ赤ですよー!」

 

刻晴「君だって真っ赤じゃないの!」

 

旅人「夕焼けの所為でーす!」

 

刻晴「じゃあ私だって夕焼けの所為よ! あ、こら逃げるなーーーー!」

 

旅人「あはははは!」




蛍×刻晴も刻晴×蛍も好きです
甘雨ちゃんも可愛いです


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刻晴「旅人のお願いをなんでも一つ聞くことになった、結果」

刻晴ちゃんを引かせてください
前回の続きとなってます。かけ算が逆になったりもしますのでご注意ください。


 

 

刻晴「…………」

 

刻晴「…………」

 

旅人『名前って、特別な人に呼んで貰いたいじゃないですか』

 

刻晴「特別、ね」

 

刻晴「…………」

 

刻晴「……~~~っ」

 

刻晴「っ! っ! っ!」ボフンボフンボフン

 

甘雨「刻晴様? その、座布団をばしばしと叩いてどうしたのですか?」

 

刻晴「いつの間に来たのよ甘雨!?」

 

甘雨「今ですけど」

 

刻晴「……」コホン

 

刻晴「甘雨、何の用かしら」

 

甘雨「頼まれていた書類をお持ちしました」

 

刻晴「ありがとう。下がっていいわ」

 

甘雨「はい。体調が悪いようでしたらお薬を用意させますが。それとも旅人さんをお呼びしましょうか?」

 

刻晴「」ブーッ

 

刻晴「な、なななな何でそこで旅人が出るのよ!?」

 

甘雨「……? 凝光様が『最近の刻晴は旅人にお熱だからあまり邪魔はしないであげて』と仰ってましたので」

 

刻晴「とりあえず大丈夫だから、大丈夫だからもう下がって。ついでに凝光を一発殴っておいて」

 

甘雨「わかりました。失礼します。一発、ですね」

 

刻晴(…………凝光殴るのいいんだ)

 

 苦笑しつつも刻晴は自分の作業に没頭する。

 山のように積み上げられた書類。いつもより少ないわね、と思いながら筆を走らせる。

 

刻晴「……おかしいわ。やっぱり何処か身体が悪いのかしら」

 

 ギィ、と椅子に寄りかかって背中を預ける。いまいち仕事が捗らない。いつもならもっと手早く処理している案件ばかりなのに。

 

刻晴「…………どうやら私は思った以上に寂しいようね」

 

 冷静に自己分析をして、胸にぽっかり穴が空いているような感覚に気が付く。

 理由はわかっている。だって、『彼女』のことを思うだけで胸の穴は暖かさで満ちて、すぐに冷たくなるのだから。

 

刻晴「蛍……今日はもう会えないのかしら」ショボン

 

旅人「刻晴さーん」

 

刻晴「……思った以上に私は純情ね。いもしない蛍の声が聞こえてくるんだから」

 

旅人「こーくせーさーん」バンバンバン

 

刻晴「……え?」

 

旅人「こくせーさーんっ」マドバンバンバン

 

刻晴「蛍!?」

 

旅人「えへへ。来ちゃいました」

 

刻晴「来ちゃいました、って。ここけっこう高い部屋よ?」

 

旅人「璃月は高いところが多いので、風の翼でひとっ飛びしてきました!」バサバサ

 

刻晴「君はいつも自由ね……」

 

旅人「仕方ないじゃないですか。門番さんが『夜は誰であっても進入禁止です!』って言うんですから!」

 

刻晴「それは仕方ないわ。送仙儀式を終えた今、璃月の指導者である七星が暗殺されることだけは絶対に避けなくてはならないもの」

 

旅人「うぅ。寂しくなって刻晴さんに会いたくなったらどうするんですか!」

 

刻晴「……っ」マッカッカ

 

旅人「というわけで忍び込んじゃいました!」テヘッ

 

 窓から差し込む月明かりに旅人の笑顔が照らされる。トクンと高鳴る胸の鼓動と、満たされる暖かな気持ち。

 どうやら自分は思った以上に彼女を『特別』に見ているようだ。

 

 だからか、だからか――言葉よりも先に、身体が動いていた。

 

刻晴「……蛍」ギュ

 

旅人「っ!? こここここくせいさん!?」

 

刻晴「私だって寂しかったのよ? 君の所為なんだから」

 

旅人「わ、私の?」

 

刻晴「そうよ。君は私の『特別』なんだから」

 

 そう言って刻晴は愛おしそうに旅人を抱きしめる。夕焼けの下での告白とは違う彼女からの抱擁に、旅人は思わず動揺する。

 

旅人「あにょ! あのあにょ刻晴さん!?」

 

刻晴「何を慌てているのかしら。君は私の『特別』なのよ? これくらい当然でしょ」

 

旅人「そ、そうですけど。あぅぅ。今日の刻晴さん、群玉閣の時みたいで……っ」

 

刻晴「群玉閣? ああ、そういえば君を思わず抱きしめたのもあの時だったわね」

 

旅人「凄く強き抱きしめて貰って、ドキドキしたの思い出しちゃうんです……!」

 

刻晴「……君、想像以上に可愛い反応をするのね」

 

 いつもは自分をからかってくるだけの旅人が、自分の一挙一動に慌てふためき頬を赤らめている。

 

刻晴「蛍」

 

旅人「は、はい!」

 

刻晴「『好き』よ」

 

旅人「っ!!!」

 

刻晴「『特別』なんて言葉で済ませたくないわ。……君が好き。大好きよ」

 

旅人「あ、あ、あう……~~~~~っ」

 

 堪らないとばかりに旅人は手で顔を隠そうとする。が、腕を伸ばしてそれを邪魔する。

 

刻晴「ダメよ。可愛らしい君の顔をもっと見せなさい」

 

旅人「え、あ、う……~~~っ。は、はい……」

 

 借りてきた猫のようにおとなしくなる旅人を抱きしめたまま、真っ赤な顔をじぃ、と見つめる。

 

刻晴「ねえ、君は『好き』って言ってくれないのかしら?」

 

旅人「え!? う、うぁ……っ」

 

刻晴「クスクス。冗談よ。君の気持ちは十二分に伝わってるから、無理に言葉にしなくてもいいわ」

 

旅人「そ、そんなこと! 言います、言わせてください! 私は、刻晴さんのことがだいす――――!?」

 

 旅人の言葉は途中で途切れてしまう。

 刻晴が、自分の唇で旅人の唇を塞いでしまったから。

 

旅人「っ!? っ!?!?!??!!!!?!?!」

 

刻晴「ん……っふふ。言わせてあーげない」

 

旅人「こ、こくせーさん……っ」

 

刻晴「寝室にいきましょう。今日は朝まで、どれだけ私が君のことを想っているか教えてあげるわ」

 

旅人「~~~~~っ」

 

旅人「…………」コクン

 

 軽々と旅人を抱き上げ、寝室の扉を開ける。

 ゆでだこのように顔を真っ赤にしたままの旅人は、刻晴の胸元をギュ、と掴みながらゆっくりと頷くのであった。

 

 ………

 ……

 …

 

パイモン「朝起きたら旅人がいないんだけど!?」璃月港フワフワ

 

甘雨「だいじょーぶだと思いますよ。パイモンさんも食べますか?」清心ムシャムシャ

 

パイモン「にっげぇーーーーーーーーーーー!?」




ほたこくに見せかけてこくほたです。どっちも好きなんですぅー!!!!!!


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刻晴「膝枕がしたい?」旅人「はい!」

 

 

 

刻晴「いいわよ。おいで」ヒザポンポン

 

旅人「ちーがーいーまーすー!」

 

旅人「私が! したいんです!」

 

刻晴「」ジー

 

刻晴「来ないの?」ヒザポンポン

 

旅人「いきますっ!!!!!」

 

刻晴「~♪」

 

旅人「ゴロゴロゴロゴロ……」

 

刻晴「いいこいいこ」ナデナデ

 

旅人「はふぅ……幸せです……」

 

刻晴「そのままゆっくり眠るといいわ。君の寝顔を見るの、とっても好きだから」

 

旅人「うぅん……」ゴシゴシ

 

旅人「」ッハ!?

 

旅人「ちーーがーーいーーまーーすぅーー!」ガバッ

 

刻晴「あっ……」

 

旅人「私がしたいんです! さ、どうぞ!!!」ヒザバンバン

 

刻晴「さてと、仕事に戻ろうかしらね」

 

旅人「むーーーーーー!」

 

刻晴「そんな顔しないの。蛍だってわかるでしょ。寝てたら仕事が進まないの」

 

旅人「わかってます。でも、刻晴さんはもっとお休みするべきです!」

 

刻晴「?」

 

旅人「ああもうやっぱり気付いてないじゃないですか! もう! こんな時間! ですよ!!!」

 

刻晴「こんな時間、ってまだ日付も変わってないじゃない」

 

旅人「普通日付が変わるまで仕事はしません!!!」

 

刻晴「七星の仕事が"普通"に収まるわけないでしょ」

 

旅人「んぎぎぎぎぎ」

 

刻晴「蛍、心配してくれるのはわかるけど、こればっかりは私にしか出来ないことなのよ?」

 

旅人「わかってます。わかってますけどー……」ショボン

 

刻晴「それに休もうとすると君が布団に潜り込んで来るからあまり眠れないのよ?」ジー

 

旅人「うっ」

 

刻晴「まあ、私も君のことが大切だから睡眠時間は別に気にしてないけど……」

 

旅人「」パァァァァ

 

刻晴「だからといって、仕事を終わらせないで休むわけにはいかないわ。七星として解決しないといけない問題はまだまだたくさんあるわ」

 

旅人「むぅぅぅぅ」プクー

 

刻晴(膨れてる蛍も可愛いわね……)

 

旅人「……わかりました」

 

刻晴「そう? じゃあまた膝枕の続きを――――」

 

旅人「えいっ」グイ

 

刻晴「きゃあ!?」バターン

 

旅人「いつまでも休んでくれない刻晴さんはお仕置きです!」

 

刻晴「お、お仕置き?」ドキッ

 

旅人「そうです。まずは拘束します!」

 

刻晴「拘束、って――!?」

 

旅人「ふふ。風元素を利用してロープで両手首を縛らせて貰いました!」

 

刻晴「器用な真似を……!」

 

旅人「これで刻晴さんはもうお仕事が出来ません。さあ、おとなしく私に膝枕されるんです!」

 

刻晴「っく、殺せ!」

 

旅人「言いたかったんですか?」

 

刻晴「…………今のは忘れて」カァァ

 

旅人「」ニヤリ

 

旅人「刻晴さんが膝枕させてくれたら考えますよー」ヒザポンポン

 

刻晴「っく……!」

 

旅人「膝枕させてくれないなら、もっと酷いことしますからね!?」

 

刻晴「もっと酷いこと?」

 

旅人「例えば……例えばそう! 刻晴さんを押し倒しちゃいます!」

 

刻晴「…………ふむ」

 

旅人「それで身動き出来ない刻晴さんにあーんなことやこーんなことを――」

 

刻晴「続けて?」

 

旅人「え? えっと……す、すっごい恥ずかしいことをしちゃいます! 刻晴さんが顔まっかっかにして謝りたくなるくらいの!」

 

刻晴「…………」

 

旅人「どうです。それが嫌ならさっさと私の膝に――」

 

刻晴「いやよ」

 

旅人「えっ」

 

刻晴「蛍の膝は遠慮するわ」

 

旅人「えっ」

 

旅人「えっっっっっっっ!?」

 

刻晴「あら。そしたら私は蛍に"すっごい恥ずかしいこと"をされるのよね? あー困ったわ。私いったいどんなことをされちゃうのかしら」クスクス

 

旅人「こ、こくせーさん???」

 

刻晴「蛍」

 

旅人「えっ――」

 

 刻晴は縛られた両手を旅人の首に回し、背中から布団に倒れ込む。

 自然と旅人が刻晴を押し倒すような形だ。戸惑う旅人を余所に、刻晴は期待に瞳を輝かせる。

 

刻晴「さ、蛍」

 

刻晴「私に"すっごい恥ずかしいこと"して?」

 

旅人「あ、う、う……!」

 

刻晴「大丈夫よ。私は君のことが大好きだから、君のしてくれることならなんだって受け止めるわ」

 

旅人「」カァァァァァァァァ

 

刻晴「……さ、蛍」

 

 旅人の視線は自然と刻晴の唇に向けられた。艶めかしく動く唇が妙な厭らしさを魅せる。

 ペロリ、と刻晴が舌なめずりする。それが旅人の感情(ばくだん)を爆発させる切っ掛けだった。

 

旅人「こ、こくせーさん!」ガバッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

刻晴「まったく。蛍は私の前では隙だらけね」

 

旅人「あうぅ……こ、刻晴さんが魅力的すぎるのがいけないんです!」ギュー

 

刻晴「ふふ。蛍も可愛いわよ」

 

 ひとときの甘い時間を過ごして刻晴は再び仕事に戻っていた。とはいえ机と椅子を寝室に運び込んで旅人の相手をしている辺り、七星としての"普通"とはだいぶかけ離れているようだ。

 

 今もこうしてベッドの上から旅人は刻晴に背中から抱きついている。出来る限り刻晴の作業効率を落とさない姿勢を模索した結果だ。

 

旅人「むー……。お仕事に刻晴さんを奪われたようです」

 

刻晴「そんなことないわよ。蛍が自分から言ったんじゃない。『特別』だって」

 

旅人「そうですけどぉ……」

 

 旅人は妥協は出来ても納得はしていない。抱きしめる力を少しだけ強くして抗議する。

 けれど刻晴にとっては涼風のようなもの。大して動揺するまでもなく淡々と仕事をこなしていく。

 

旅人「」ムー……

 

旅人「っ!」ピコーン

 

 何かを思いついた旅人は、にへへ、と少しばかし意地の悪い笑顔を浮かべた。

 もちろん刻晴は気付いていない。

 旅人はまた抱きしめる力を強くする。けれど今度は抗議の意味ではなく、甘えるような力の込め方だ。

 

旅人「……こくせーさん」ギュ

 

刻晴「どうしたの? 甘えたくなったのかしら」

 

旅人「…………だいすきっ」ササヤキ

 

 刻晴の耳元で甘い声で愛の言葉を囁く。

 いつもなら真正面からぶつけられる熱い感情が、耳から直接脳を揺らす。

 

刻晴「……」

 

刻晴「…………っ」

 

刻晴「…………~~~~っ!」カァァァァァァァァ

 

旅人「えへ。告白してからやっと一本返せましたっ!」

 

刻晴「ほ、蛍……!」ワナワナワナ

 

旅人「はーいなんですかー」ニマニマ

 

刻晴「これで勝ったと思わないでねっ!!!!?」

 

旅人「えーーーーーー!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パイモン「……なんだか最近清心を食べても苦さを感じなくなってきたぞ」

 

甘雨「!!!」シュババババ

 

パイモン「甘ったるい空気が濃すぎるんだよ!!!」




ほたこくもこくほたも大好きです。いやもうどっちも攻めてどっちも受けろ。


ところでそろそろぼくのところに刻晴ちゃん来ませんか???来てくださいお願いします。。。。。。


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旅人「刻晴さんと璃月デート! ぜんぺんっ!」

 

 

 ――――璃月:玉衝執務室。

 

旅人「こっくせーさーんっ! デートしましょうデート!」ドアバターン

 

刻晴「ごめんね蛍。今日の仕事がまだ終わってないの」カキカキカキカキ

 

旅人「まだ終わってなかったんですか!?」

 

刻晴「ええ。少しばかし手を焼く案件が多くてね。千岩軍も人手不足だし、こればっかりは時間をかけるしかないわ」

 

旅人「むー……」ムスー

 

刻晴「そんな不満げな顔をしないで。しっかりと埋め合わせはするから」カキカキカキカキ

 

旅人「むー……」

 

甘雨「お話は聞かせて貰いました」シュバ

 

旅人「!?」

 

刻晴「どこから入ってきたのよ!?」

 

甘雨「仙人ですので秘密です」ドヤ

 

刻晴(ハーフじゃないの)

 

刻晴「……それで、何か用かしら甘雨。追加の仕事かしら」

 

甘雨「いえ、刻晴様が抱えている案件を代わりに処理しに来ました」

 

刻晴「え? でもあなたも仕事がたんまりと溜まっているはずよね?」

 

甘雨「最近は百識をはじめ皆が頑張ってくれてますので、比較的手が空くようになりました。ですので――」

 

 

 

甘雨「――ここは私に任せて先に行ってください」キリッ

 

 

 

 

旅人「あれ言いたかっただけですよねー」アシブラブラ

 

旅人「はぁ。『一時間ほど待って』って言われたので待ってますけど、刻晴さんまだかなー」アシブラブラ

 

旅人「まあ引き継ぎとかもあるでしょうし、仕方ないことですよねー」

 

刻晴「蛍、お待たせ」

 

旅人「あ、刻晴さ――――!?」

 

刻晴「どうしたのよ。似合ってないかしら?」

 

 玉衝としての衣装ではなく着物を着込んだ刻晴が立っていた。下ろされた髪が普段とは真逆の落ち着いた印象を与えてくる。

 普段であれば凜々しく見える刻晴も、今日ばかりは違った魅力に溢れている。着物の紫色は彼女のイメージカラーであり、それがまた旅人の心臓を脈打たせる。

 

旅人「」パクパクパク

 

刻晴「ちょっと、何かいいなさいよ。君とデートなんだから、私だってそれなりに気合いをいれるわよ」カオマッカ

 

旅人「いえ、あの、その、その……み、魅力的すぎて直視できないんです!」

 

刻晴「……~~~っ。何を言ってるのよっ。さ、行きましょ!」手ギュ

 

旅人「あ……は、はいっ!」

 

刻晴「璃月港を案内してあげるわ。璃月の夜市には手芸品や小物を売る屋台があってね。オススメのお店がたくさんあるの。歩くだけでも面白いんだから」

 

旅人「それに刻晴さんも一緒だから百倍楽しくなりますね!」

 

刻晴「百倍なんかじゃ済まさないわよ。君と二人きりで楽しみたいのだから」

 

旅人「は、はい……~~~っ」マッカー

 

刻晴「あら、顔が真っ赤よ?」

 

旅人「刻晴さんだって真っ赤だったじゃないですかー!」

 

刻晴「うっ……ほら、行くわよ」グイ

 

旅人「誤魔化しましたね!」エヘヘ

 

刻晴「……何で笑顔なのよ」

 

旅人「刻晴さんが、私にメロメロって考えるとすっっっっごく嬉しいからです!」

 

刻晴「……~~~っ。ああもう、蛍はずるいわね」

 

旅人「えへへーっ」

 

 

 

<万民堂>

 

刻晴「注文は、っと。そうね、蛍が選んで」

 

旅人「いいんですか? 刻晴さんが好きな食べ物は――」

 

刻晴「よっぽど変な味付けを変えた物以外なら大丈夫よ」

 

旅人「好きな食べ物とかないんですか?」

 

刻晴「……あまり執着しない方なんだけど、海老のポテト包み揚げは格別ね」

 

旅人「そうなんですか? まだ食べたことないんですよねー」

 

刻晴「ならぜっっったい食べるべきよ! 一つ食べただけで、口の中が幸せで満たされるの。溜まりに溜まったストレスが一気に吹っ飛ぶわ!」

 

旅人「は、はい。じゃあエビのポテト包み揚げを二人前と、あれとそれと――」

 

刻晴「」ソワソワ

 

旅人「……刻晴さん、おもいっきし執着してるじゃないですか」

 

刻晴「……してないわよ?」

 

旅人「……へぇ」ジトー

 

店員「お待たせしましたー」

 

刻晴「っ!」ソワソワ

 

旅人「あ、こっちに二人前置いてくださーい」

 

刻晴「ちょっと蛍!?」

 

旅人「えへへ。刻晴さん、食べたいですか?」

 

刻晴「意地悪をしないで。その為に二人前頼んだんでしょ?」

 

旅人「そうですけど。……はい、あーんっ」

 

刻晴「なぁ!?」

 

旅人「あ~ん」ニヤニヤ

 

刻晴「蛍……!」

 

旅人「冷めちゃいますよ~?」イヒヒ

 

刻晴「……~~。あ、あーん……っ。あふっ、あふっ」

 

旅人「あ、熱かったですよね! すいませんお水です――」

 

刻晴「ん――っ」グイ

 

旅人「ん――!?」クチウツシー

 

刻晴「ん、ちゅ……ふぅ。どう、美味しいでしょ?」

 

旅人「あ、わわわわわわ」マッカマッカマッカッカー

 

刻晴「お返し、よ」ニッコリ

 

旅人「べ、別の意味で口の中が幸せすぎるんですけど?!?!?!?!?」




前後編です。後編はそのうち~。


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刻晴「蛍と璃月デート。後編ね」

 

 

 

店員「おっと綺麗なお姉さん、今日はいい《かんざし》があるけど見ていかないかい?」

 

刻晴「そうね。蛍、見ていきましょう」

 

旅人「……はい」ムスー

 

刻晴「もう、まだヘソを曲げているの?」

 

旅人「曲げてません。刻晴さんが一枚上手なだけでスネてませーん」ムスー

 

刻晴「拗ねてるじゃないの」ナデナデ

 

旅人「ん~……もっとなでなでを要求します」

 

刻晴「ふふ、わかったわ」

 

店員(瑠璃百合の花が咲いてる……っ!)

 

刻晴「店員さん、その金色と紫のかんざしを一つずつ貰えるかしら?」

 

店員「え、あ、はい! 毎度あり!」

 

刻晴「ほら蛍。これでお揃いよ」

 

旅人「わ、私に紫のかんざしなんですか?」

 

刻晴「そうよ。金色はあなたの色なんだから私が身につけるべきでしょ?」

 

旅人「~~~」マッカッカ

 

旅人「私も! 刻晴さんにプレゼントしたいです!」フンスフンス

 

刻晴「あんまり気を遣わなくて良いのよ?」

 

旅人「いえ! プレゼントさせてください!」

 

刻晴「……そう。ならありがたく頂くわ。一緒に選ぶ?」

 

旅人「ここは私に任せてください!」エッヘン

 

刻晴「それじゃあ一時間後に待ち合わせしましょう。そうね……玉京台で待っているわ」

 

旅人「はい!」

 

 

 

 

旅人「……何にしよう。刻晴さんに似合うのがいいなぁ」

 

旅人「……」

 

旅人「……何でも似合う!!!!」ジュルリ

 

旅人「」ッハ

 

旅人「いけないいけない。刻晴さんはこんなにも綺麗なかんざしをくれたんだから、私も負けないくらい凄いモノを送るんだ……!」フンスフンスフンス

 

パイモン「なにやってんだ?」

 

旅人「どっっひゃぁ非常食!?」

 

パイモン「オイラは非常食じゃねえ!」

 

旅人「あはは、ごめんごめん。考え事してて気付かなかった」

 

パイモン「まったく、最近刻晴とばっかり過ごしててオイラのこと忘れてるだろ! 相棒だぞ!」

 

旅人「アハハー」

 

パイモン「まったく。稲妻へ向かう手段がなくて滞在してるからしょうがないが……で、旅人は何を探してるんだ?」

 

旅人「刻晴さんへのプレゼントです!」

 

パイモン「」ムシャムシャ

 

旅人「清心いきなりかみ始めてどうしたの!?」

 

パイモン「……甘ったるい空気を感じたら噛むようにしてるんだぞ」

 

旅人「パイモンも知らない間に進化したんだねぇ」ウンウン

 

パイモン(こいつ、自分が原因だって気付いてねぇ……!)

 

旅人「パイモン、刻晴さんって何をあげたら喜んでくれるかな?」

 

パイモン「旅人が全裸にリボンを巻いて『私をどうぞ(はぁと)』とかどうだ?」クシシシ

 

旅人「もうした」

 

パイモン「え?」

 

旅人「私は刻晴さんの所有物(もの)だよ?」キラキラ

 

パイモン「」

 

旅人「それでもやっぱり刻晴さんにはプレゼントしたいからねー。じゃあパイモン、次の案はある?」

 

パイモン「」

 

旅人「おーい?」

 

パイモン「もうお前が心を込めたモノならなんでもいいんじゃないか?」ゲンナリ

 

旅人「そう? それが案外難しいんだよね。うーん……」

 

パイモン「……オイラはとりあえず甘雨の様子でも見てくるぞ」フラフラフワフワ

 

旅人「あ……行っちゃったよ」

 

 パイモンと分かれた旅人は夜の璃月港を練り歩く。とはいえプレゼントに焦点を絞ればめぼしい店は思ったよりも少ない。

 店先に並んでいる色とりどりの反物やアクセサリーを見てはため息を吐く。

 どれも刻晴に似合いそうだが、今ひとつ何か物足りないのだ。

 

旅人「はぁ。何がいいかなぁ」

 

「お、旅人さんじゃないですか」

 

旅人「あ、お久しぶりです」

 

旅人「……」

 

旅人「……っ!」

 

旅人「これだーっ!」

 

 ………

 ……

 …

 

旅人「刻晴さーん!!!!!!!」ブンブンブンブン

 

刻晴「随分時間が掛かったのね」

 

旅人「はぁ、はぁ……お待たせしました!」

 

刻晴「汗びっしょりじゃない。はい水」

 

旅人「ありがとうございますっ」グビグビグビプハー

 

旅人「…………」

 

旅人「刻晴さんっ!」

 

刻晴「なに?」ニコニコ

 

旅人「これ、受け取ってください!」

 

刻晴「ええ、ありがとう」

 

 刻晴は旅人から受け取った布包みを開く。

 中に入っていたのは、綺麗に加工された石珀のネックレス。

 

 けれど普通の石珀とは違った。透き通る石珀ではなく、中心に何かが入っている。

 

刻晴「これ……雷蛍かしら?」

 

旅人「はい、石珀が雷蛍を取り込んでそのまま加工されたそうです!」

 

刻晴「へぇ、随分珍しいものじゃない」

 

旅人「しかもこれ、雷蛍の雷元素がそのまま使えるらしいんです」

 

刻晴「そうなの?」

 

旅人「はい。ですから、刻晴さんにピッタリかなって!」

 

刻晴「そう。……えぇ。とっても綺麗」

 

 刻晴は月明かりに照らしながら雷蛍の入った石珀をしげしげと見つめている。

 

刻晴「雷元素……それなら……」ブツブツ

 

旅人「こくせーさん?」

 

刻晴「ねえ蛍。これを私にくれるのよね?」

 

旅人「はい! 私からのプレゼントです!」フンス

 

刻晴「そう。それじゃ――」

 

 微笑んだ刻晴は石珀のネックレスをそっと旅人の首に付ける。

 

刻晴「ねえ蛍。あなたはいつか稲妻に――そして、テイワットの他の国にも行くのよね?」

 

旅人「……はい。それが私の旅ですから」

 

刻晴「その旅に、私は同行できない。私は璃月七星だから」

 

旅人「……はい」

 

刻晴「でも私は、本当はあなたの旅に付いていきたい。もしくは、あなたにずっと璃月に残って欲しい」

 

旅人「それは……できません」

 

刻晴「そうよね。出来ないことだわ。だから、このネックレスを私だと思って持っていって欲しいの。あなたが『私に似合う』と思ってくれたからこそ」

 

旅人「刻晴さん……」

 

刻晴「ねえ蛍。ここから見える璃月港の景色はどう?」

 

旅人「とっても、とっても綺麗です。みんなが笑顔で、賑わっていて……」

 

刻晴「ええ。私はこの景色を、ここで暮らしている皆を守りたいわ」

 

旅人「はい。はい……っ」

 

刻晴「私は璃月七星、玉衝の刻晴。そして……あなたの『特別』よ」ギュッ

 

刻晴「ねえ蛍。いつかあなたの旅が終わったら、また璃月に戻ってきて。私はずっと、ここで待ってるから」

 

旅人「刻晴さん……。はい、はい……!」

 

 泣きじゃくる旅人をあやすように、刻晴は優しく抱きしめる。

 柔らかな抱擁と暖かな温もりが旅人の心を落ち着かせる。

 そっと身体を離した二人は見つめ合い、そして旅人はそっと目を閉じる。

 

 先ほどよりも強い抱擁を交わし、二人の影が重なった――――。

 

 

 

 

 

 おまけ。

 

甘雨「シゴト……シゴトハドコダ……!」

 

パイモン「お、おおおお落ち着け甘雨! ほら、清心! 清心を喰って落ち着くんだ!」

 

甘雨「シゴ……シゴト……シゴトオオオオオオ……!」バリバリムシャムシャ

 

パイモン「だ、誰か甘雨を止めてくれぇぇぇーーー!」



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