マシュ・マックの短編集 (マシュ・マック)
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戦姫絶唱シンフォギアエターナル

戦姫絶唱シンフォギアと仮面ライダーエターナルのクロス小説です。
この作品は連載の予定でしたが、作者の都合で打ち切りになりました。
折角なので書いたこの話をここに投稿します。
それではどうぞ。


  NoSide

 

桜咲き誇る4月のある日。ある所に一人の青年がいた。

20代前半を思わせる整った容姿にすらりとした長身、黒いジャケットを着た茶髪の青年は、特に目的地がある訳でも無く、辺りを歩き回っていた。

青年は暫くして、ある一点に視線を集中させていた。

青年が視線を向けるその先には・・・

 

 

 

 

 

「はぁ〜。どうしよ〜」

 

「にゃあ〜」

 

何処かの学校の制服を着た高校生くらいの少女が木の上で猫を抱えていた。

更に少女は困った様な顔をしながら溜め息をついていた。

この少女の様子を見て青年は思った。

 

(バカかあいつは)

 

青年は少女の状況から、木の上にいた猫を助けようと木に登ったは良いが、今度は自分も降りられなくなってしまった。つまり、ミイラ取りがミイラになってしまったのだと予想した。

 

「・・・・・・・・・・・」

 

青年は暫く少女の方を見ていると、無言で少女が登った木に向かって歩いて行った。

 

「おい」

 

「へ?」

 

少女が登った木の根元まで来た青年は下から少女に声を掛け、少女は突然声を掛けられた事に戸惑いながら左右を交互に見る。

しかし、青年がいる下に視線が行く気配がない。

 

「何処を見ている? 此処だ」

 

「へ? ・・・あ!」

 

青年に言われ、漸く少女は下にいる青年に気付いた。

 

「お前こんな所で何やってるんだ?」

 

「え〜っと・・・、この子が木に登ったまま降りられなくなっていて・・・、助けようとして私も登ったんですけど・・・」

 

「自分まで降りられなくなってしまった、と?」

 

「うっ・・・・・・、はい」

 

「・・・・・・・・・、はぁ〜」

 

自分の予想が当たっていた事に青年は思わず溜め息をつく。

 

「跳べ」

 

「へ?」

 

「受け止めてやるからさっさと跳べと言っているんだ」

 

「ええ!?」

 

青年の言った事に少女は驚く。

 

「で、でも良いんですか? 初対面の人にそんな・・・、ご迷惑なんじゃ・・・」

 

「良いからさっさと跳べ。同じ事を二度言わせるな」

 

「は、はい!」

 

青年から発せられる言葉に若干の苛立ちが含まれているのを感じた少女は慌てて降りる準備を始めた。

 

「えっと・・・、じゃあ、行きます!」

 

そう言うと少女は意を決して木から飛び降り、青年はそれを受け止めた。

 

「大丈夫か?」

 

「え? あ・・・、はい。えっと、その・・・、だ、大丈夫です!」

 

「そうか、なら下ろすぞ」

 

青年は少女を足から下ろして地面に立たせた。

 

「えっと・・・、その・・・」

 

「ん?」

 

「助けていただいて本当にありがとうございます!!」

 

少女は深々と頭を下げながら青年に感謝する。

 

「ああ、その事か。気にするな。お前を助けたのは只の気まぐれだ」

 

「それでも、私もこの子も助かりました。本当にありがとうございます!」

 

そう言って少女は再び青年に深々と頭を下げる。

 

「まあ良い。じゃあ俺はそろそろ行くぞ」

 

「あ、あの!」

 

立ち去ろうとする青年を少女が呼び止めた。

 

「今度は何だ?」

 

「もし良かったら名前教えてください。あ、私は立花響って言います」

 

「・・・・・・、大道克己」

 

少女、立花響の自己紹介を聞いた青年、大道克己は自分もまた名乗り、今度こそ彼女に背を向けて歩き出した。

 

「大道克己さん。ありがとうございます、克己さん!」

 

再度克己に礼を言う響きに対し、克己は振り返らず、何も言わず去って行った。

 

 

 

 

 

因みにこの後、響が入学初日から遅刻した事できついお叱りを受けたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

克己が響と出会った翌日。

昨日と同じ様に、克己は特に当ても無く朝から町を歩き回っていた。

そして夕方になり日が落ちかけた頃。

克己は視線は目前のある光景に集中していた。

克己の視線の先には炭素の固まりが道の所々に落ちていた。

 

「・・・・・・、ノイズ」

 

そう呟いた直後、

 

「いやあああああああ!!」

 

何処かから悲鳴が聞こえてきた。

 

「!」

 

その悲鳴を聞いた克己は悲鳴が聞こえた方向へ走った。

 

 

 

 

 

「! あいつは」

 

走った先で克己が見たのは、昨日自分が助けた少女、立花響が彼女よりも幼い女の子と共にノイズに囲まれている状況だった。

 

「何をしている! 早くこっちに来い!!」

 

「! 克己さん!!」

 

「早くしろ! 死にたいのか!?」

 

「はい!!」

 

克己に促された響は女の子を抱えて川に飛び込み必死に泳ぎ、対岸に着くと同時に二人は克己によって引き上げられた。

 

「はぁ、はぁ、ありがとう、ございます。克己さん」

 

「ボサッとするな! 走るぞ!」

 

「は、はい!」

 

克己は響が連れていた女の子を背負い、響と共に走り出した。

 

「はぁ、はぁ、シェルターから、離れちゃいましたけど、はぁ、はぁ、どうするんですか? はぁ、克己さん」

 

「とにかく走れ! 何処か隠れられる所を探してそこでノイズをやり過ごす!」

 

「はい! はぁ、はぁ、はぁ、ああっ!」

 

「お姉ちゃん!!」

 

「響!!」

 

疲労が限界に達した響は足を縺れさせ、転んでしまう。

 

「か、克己さん、はぁ、私より・・・、早くその子を・・・」

 

「ふざけるな!! 立て! こんな所で諦めてんじゃねえ!!」

 

「!!」

 

克己に叱咤された響は二年前にある人から言われた言葉を思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『生きるのを諦めるな!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は、はい!!」

 

響は自分の体に鞭打ちながら必死に立ち上がり、何とか克己についていく。

暫く走っていた三人は近くの工場に逃げ込み、隠れられる場所を探した。

すると響が建物の屋上に通じる梯子を見つけた。

 

「克己さん! この上なら!」

 

「良し! 登るぞ!」

 

「はい!」

 

響が見つけた梯子を女の子を背負った克己と響が登って行き、屋上に着くと同時に響と女の子は屋上に寝そべり、克己も屋上に腰を下ろした。

三人とも体力は限界に近く、呼吸も荒かった。

 

「死んじゃうの?」

 

ふと突然、女の子が克己達に訊いてくる。

それを聞いた響は女の子に微笑みながら首を横に振った。

そして、ふと視線を移すと驚愕の表情を浮かべた。

 

「克己さん!」

 

「!」

 

響の声を聞いた克己は響が視線を向ける先に自身も視線をやった。

そこには大量のノイズが三人を囲んでいた。

克己は直ぐさま二人を庇う様に二人の前に出る。

 

(拙い、このままじゃ!)

 

今自分達が置かれている状況に克己は焦りを禁じ得なかった。

 

(今の状態で二人を守りながら戦うのは少しきついが・・・仕方ない!)

 

意を決した克己が懐のある物を取り出そうとしたその時・・・、

 

 

 

 

 

「? これは・・・、歌?」

 

克己の耳に突然歌が聞こえてきた。

歌が聞こえてくる方向に視線をやるとそこには・・・、

 

「響?」

 

響が目を閉じながら歌を歌っていた。

歌が止み、終わったかと思った次の瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キィィィィィィィィィン!!

 

「な!?」

 

突如響の胸元から強いオレンジ色の光が溢れ出した。

 

「くっ!」

 

余りの眩しさに右腕で顔を覆う克己。

光が収まった後にあったのは・・・。

 

 

 

 

 

「ふぇ?えええええ!? 何で? 私、どうなっちゃってるの!?」

 

オレンジ色のアーマーを纏った響の姿だった。

 

(あれは・・・、まさか、シンフォギア!? コイツ、シンフォギア装者だったのか!?)

 

予想外の事態に克己は内心驚きを隠せなかった。

 

(だが・・・、これなら!!)

 

「響!」

 

「え!? あ、克己さん。あ、あの、私一体どうなっちゃったんですか!?」

 

「落ち着け立花響!!」

 

突然の出来事に狼狽する響を克己は一喝して落ち着かせる。

 

「良いかよく聞け。今この状況を打開して三人とも助かる方法がある」

 

「!! 本当ですか!?」

 

「ああ。だがそれには響、お前の協力が必要不可欠だ」

 

「わ、私、ですか?」

 

「そうだ。突然の事で気が動転しているのは分かる。だがお前を含め、俺達が助かる為にも今は俺を信じろ。良いな?」

 

「・・・・・・・・・。分かりました。何だかよく分かりませんけど、私、克己さんを信じます」

 

「感謝する、響」

 

真剣な表情で言葉を発する克己に、同じく響も真剣な表情で答える。

 

「それで、私は何をすれば良いんですか?」

 

「安心しろ。別に難しい事じゃない。お前は只その子と自分の身をを守ればいい」

 

「この子を守る、ですか?」

 

「そうだ。説明は省くが、今のお前はノイズに触れても炭素化する事は無い」

 

「ええ!? ど、どうしてですか!?」

 

「説明は省くと言っただろ。とにかく、今のお前はノイズに対抗する事が出来る」

 

「私が、ノイズと・・・。あ、でも克己さんはどうするんですか?」

 

「俺か? 俺は・・・、」

 

克己は懐からロストドライバーと一本のメモリを取り出す。

 

「奴らを殲滅する!」

 

克己は取り出したドライバーを腰に着け、右手の人差し指でメモリのスタートアップスイッチを押す。

 

『ETERNAL』

 

その瞬間、メモリからガイアウェスパーが発せられ、その後克己はメモリをドライバーに差し込んだ。

 

「変身!」

 

『ETERNAL』

 

掛け声と共にドライバーのメモリスロットを右に倒す。

再びガイアウェスパーが流れ、旋風が巻き起こり、克己の体に白い鎧が装着されていく。

旋風が治まると克己の姿は完全に変わっていた。

アルファベットのEの文字を横に倒した様な触覚、∞をモチーフにした黄色の複眼、腕・アンクレットには青い炎の刻印され、胸・右腕・左腿・背中に合計25のマキシマムスロットが設けられたベルト、コンバットベルトと黒いマント・エターナルローブを纏った永遠の戦士の姿へと。

 

「え? ええええええ!? 今度は克己さんの姿が変わった!!」

 

「お兄ちゃん達、かっこいい!」

 

驚く響を余所に女の子は丸でヒーローを見る様な目で克己達を見ていた。

 

「俺があいつらの相手をする。響はその子と自分を守れ。良いな?」

 

「え!? あ、はい! 分かりました!」

 

「任せたぞ響。さあノイズ共、死神のパーティタイムだ!」

 

変身した克己は自身の専用武器であるナイフ、エターナルエッジを構え、ノイズの群れに立ち向かって行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  響Side

 

克己さんとノイズの戦いが始まってから数分。

状況は圧倒的だった。

向かってくるノイズを克己さんは拳や蹴り、ナイフで次々に倒していく。

時々ノイズが形を変えて襲い掛かって来ても克己さんはそれをマントで難なく防いでいた。

そして戦っている克己さんを見ている私には、今の克己さんの姿が、二年前に私を助けてくれたツヴァイウィングの二人の姿と重なって見えた。

 

「うわぁ、仮面ライダーのお兄ちゃん、かっこいい!」

 

「へ? 仮面、ライダー? 何それ?」

 

ふと、一緒にいた女の子がそう言ったのが聞こえ、思わず訊いてしまった。

 

「お姉ちゃん知らないの? 仮面ライダーはね、変身して悪い怪物と戦って皆を守ってくれる正義のヒーローなんだよ!」

 

女の子は目を輝かせながら仮面ライダーについて私に教えてくれた。

 

「皆を守る、正義のヒーロー・・・」

 

確かに今の克己さんは丸でアニメやマンガに出てくる悪と戦う正義のヒーローの様で、とてもかっこよかった。

と、そうこうしている間にいつの間にか私達を取り囲んでいたノイズは克己さんによって全て倒されていた。

 

「響後ろだ! 気を付けろ!!」

 

「へ?」

 

突然克己さんの叫び声が聞こえてきて後ろを見てみる。

 

「!!」

 

さっきまで私達を取り囲んでいたノイズとは比べ物にならない位巨大なノイズが私達に向けて腕を振り下ろそうとしていた。

 

「くっ!」

 

私は咄嗟に女の子を抱き締め、横に跳んだ。

すると自分でも驚く程跳んでしまい、私達は屋上から飛び降りてしまった。

 

「うわあああああああ」

 

「響!」

 

落下する私達を助けようと克己さんも屋上から飛び降りた。

 

「ど、どどどどどどうしましょう克己さん!?」

 

「心配するな」

 

そう言って克己さんは緑色のメモリを取り出し、メモリのスイッチを押して、右腕のスロットに差し込んだ。

すると突然私達の周りに竜巻が発生した。

竜巻は私達を受け止めてゆっくりと地面まで下ろした後に消えた。

 

「大丈夫か二人とも」

 

「は、はい! 大丈夫です! えっと、ね?」

 

「うん! 大丈夫だよ!」

 

「そうか。どうやらあれが最後みたいだな」

 

そう言った克己さんが視線を向けた先にはさっきの巨大ノイズがいた。

 

「さあ、これで終わりだ」

 

克己さんはさっき右腕のスロットに差し込んだ緑色のメモリを抜いて、今度はナイフについているスロットに差し込み、スロットについているボタンを押した。

 

『CYCLONE MAXIMUM DRIVE』

 

メモリから流れた音と共に旋風が巻き起こり、克己さんのナイフに集まって行く。

そして、風がナイフに集約されると同時に克己さんはナイフをノイズに向けて振るった。

 

「サイクロンインフェルノ!!」

 

ナイフを振った瞬間、集約された風が刃の様な形になりノイズに一直線に向かって行き、風の刃はノイズを切り裂いた。

 

「終わりだ」

 

そう言いながら克己さんはノイズに向けてサムズダウンして、それと同時にノイズも炭の固まりとなって消えた。

 

「・・・・・・、凄い」

 

私は無意識の内にそう呟いた。

女の子も目を輝かせながら克己さんを見ていた。

そして私の頭にさっきこの子が言った事が浮かんできた。

 

 

 

 

 

『仮面ライダーはね、皆を守ってくれる正義のヒーローなんだよ!』

 

 

 

 

 

「正義のヒーロー。仮面ライダー」

 

この時私は思った。今日というこの日を私は永遠に忘れないだろう、と。

 

 

 

 

 

そしてこれが私と、後に英雄として語り継がれる事になる永遠の戦士、仮面ライダーエターナルの最初の出会いだった。

 

 




読んでいただきありがとうございました。


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閃乱カグラ 舞い忍べ!タイガーホース

書き上がったので投稿します。
今回は閃乱カグラとケロロ軍曹のクロス小説です。
それでは、どうぞ。


  NoSide

 

ここは、ケロン軍、中央母艦『グランド☆スター』その内部にある独房。

現在ここに、一人の男が収監されていた。

その独房の扉が開き、中に一人の男が入ってくる。

 

「起きるであります。ゼロロ“元”兵長」

 

「・・・・・・・・・、ケロロ、“元”隊長」

 

今この時、この独房内で一人の男が再会を果たした。

 

「・・・・・・・・・・・・、それで、どのような用件でござるか?」

 

最初に口を開いたのはこの独房に収監された男、ドロロ兵長。嘗てゼロロと名乗っていたケロン軍特殊精鋭部隊『アサシン』とトップに立った男であり、宇宙侵攻軍特殊先行工作部隊、ケロロ小隊の隊員だった男である。

 

「先程、貴様の処分が決定したであります」

 

次に口を開いたのは独房に入ってきた男、ケロロ小隊隊長、ケロロ軍曹。ドロロ兵長の元上官だった男である。

 

この二人、嘗ては同じ部隊に所属する上官と部下の関係であったが、現在、その関係は存在せず、あるのは裏切り者と嘗ての同朋、という関係だけである。

何故そうなったのか。全てはあの時、ケロン軍本部からケロロ小隊に下された一つの指令から始まった。

 

 

 

 

 

ペコポン人抹殺指令

 

 

 

 

 

この指令を受けたケロロ小隊は直ぐ様、本部に指令通達の真意を問い、指令の撤回を要求。

しかし、その要求が受け入れられる事はなく、代わりに返って来たのは・・・、

 

 

 

 

 

ケロロ小隊は直ちに指令を遂行されたし。指令が遂行されなかった場合、ケロロ小隊一同を命令不服従の反逆罪にて処罰の対象とする。

 

 

 

 

 

理不尽な最後通牒だけだった。

それを受けた小隊メンバーは不本意ながらも、指令を遂行せざるを得なかった。

 

 

 

 

 

しかし、この理不尽な通達に従わなかった男が一人だけいた。

 

 

 

 

 

指令決行の当日。

ケロロ小隊と、指令遂行の為に本部から送られてきた増援部隊の前に、一人の男が立ちはだかった。

 

 

 

 

 

ケロロ小隊の隊員の一人、ドロロ兵長である。

 

 

 

 

 

ドロロ兵長は只一人、本部からの指令に離反。

嘗ての同胞の行く手を阻むべく、一人、大軍勢の前に立ちはだかり、孤軍奮闘した。

 

 

 

 

 

ドロロ兵長の予期せぬ妨害を受け、ケロロ小隊及び本部からの増援部隊は混乱。

また、今回のケロン軍の行動を遺憾に思った他の宇宙人達の介入もあり、結果、ケロン軍の作戦は失敗。ケロン星は他の星々から糾弾される事となる。

 

 

 

 

 

そして、同胞を裏切り、孤軍奮闘し、地球を守ったドロロ兵長は、その後ケロン軍によって身柄を拘束され、軍法会議にかけられる事になる。

そして現在、会議で決定したドロロ兵長の処分が、嘗ての上官であるケロロ軍曹より伝えられようとする。

 

「それで、拙者はどうなるのでござるか」

 

「今回の貴様の反逆行為により我が軍は甚大な被害を被った。本来であれば、死刑が妥当な所であります。しかし・・・」

 

ケロロは一度、言葉を区切る。

 

「軍の上層部は貴様のアサシンとしての能力を高く買い、只失われるのは惜しいと判断。よって、上層部は貴様のこれまでの記憶を全て削除。新たに別の記憶と人格を植え付ける事で、貴様の能力を再利用する事に決定したであります」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

自身の処分を聞いたドロロは何も言う事なく、只沈黙を貫いた。

 

「・・・・・・・・・・・・、しかし安心するであります。貴様がその処置を施される事は永遠にないであります」

 

「?」

 

暫くして、再び開いたケロロの口から発せられた言葉の意味が理解出来ず、ドロロは首を傾げる。

 

「なぜなら、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貴様は今ここで死ぬからであります」

 

そういうとケロロは何処からか、拳銃を取り出し、ドロロに向ける。

 

「今回の貴様の反逆行為により、我々ケロロ小隊もまた、連帯して責任を取る事になったであります。結果、ケロロ小隊は解散、隊長、及び隊員はそれぞれ別々の激戦地へ送られ、二度と再会する事は無くなったであります」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「貴様の勝手な行動により、我輩達もまた多大な迷惑を被ったであります。よって我輩は私怨に走り、上の決定に背き、貴様をこの場で殺すであります」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「最後に何か言い残す事は無いでありますか?」

 

「・・・・・・・・・・・・、ならば一言言わせてもらいたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

忝いでござる。隊長殿」

 

「っ!!」

 

ドロロの言った一言に、ケロロは驚きを露にする。

 

「・・・・・・ぜ、・・・、何故でありますか!?」

 

驚きを露にしたケロロは手にした拳銃を投げ捨て、両目に涙を溜めながら叫んだ。

 

「我輩は貴様を殺すのでありますよ!! 恨まれる筋合いはあっても、礼を言われる筋合いは無いであります!! なのに何故! 貴様はそんな言葉を我輩に掛けるでありますか!?」

 

「それは違うよ、ケロロ君」

 

「!!」

 

ドロロの口調が変わった事に、ケロロは再び驚く。

その口調は遠い昔、自分と、自分の部下でもある、もう一人の幼馴染に向けられたモノと同じ、ドロロと名を変える前の、ゼロロと呼ばれていた頃のモノだった。

 

「確かに君は僕を殺しに来たよ。でも、同時に僕を救いに来てくれたんだ」

 

「救いに・・・」

 

「うん。記憶と人格を消されて軍の操り人形にされる僕を、そうなる前に殺す事で僕を救ってくれる。だから言わせてほしいんだ」

 

そう言うとドロロはケロロと同じく両目に涙を溜めながら、それでも笑顔を浮かべながら、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう、ケロロ君」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

心からの感謝の言葉をケロロに送った。

 

「!!!! ・・・・・、ゼ、ゼロロ・・・」

 

耐え切れず、瞳から大粒の涙を流しながら、ケロロは先程投げ捨てた物とは別の拳銃を取り出す。

いや、よく見るとそれは拳銃ではなく、ピストル型の注射器であった。

 

「心配ないであります。クルルの作ったこの薬なら、苦しむ事無く死ねるであります」

 

ケロロはドロロに近づき、ドロロの首に注射器の先端を当てる。

 

「安心するであります。直ぐに我輩・・・、いや、我輩達も追い付くであります。寂しい思いはさせないでありますよ」

 

涙に濡れた瞳で、懸命に笑顔を作り、ケロロは注射器の引き金に指を掛ける。

 

「今まで、良く頑張ったであります。ゼロロ。ゆっくり休むであります」

 

そして・・・、

 

「ありがとう」

 

ケロロは・・・、

 

「さよなら。ケロロ君」

 

注射器の引き金を・・・、

 

「さよならであります。ゼロロ」

 

引いた。

 

クルルの作った安楽死用の薬を打たれたドロロは、ゆっくりと、眠る様に、静かに、この世を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・はずだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ・・・・・・、ここは・・・一体・・・」

 

ドロロが目覚めた場所、そこは真っ白な空間が無限に広がっていた。

 

「拙者は確か・・・、グランド☆スターの独房で、ケロロ君によって・・・」

 

『目が覚めたみたいですね。宇宙(ソラ)の彼方よりの来訪者』

 

「!! 何奴!?」

 

突如聞こえて来た声にドロロは警戒心を強める。

 

『この度は私を、そして、私の愛し子達を救っていただき、本当にありがとうございます』

 

「何者でござる!? 姿を見せるでござる!!」

 

『ですが、その所為であなたはあの様な形でしか救われなくなってしまった。本当に申し訳ありません』

 

どこからともなく聞こえてくる声に、ドロロは戸惑いを隠せなかった。

 

『これよりあなたを別の世界へと転生させます』

 

「なっ!? 別の世界? どういう事でござるか!?」

 

『そこはあなたの知る私と、似て非なる私。そこへあなたを私の愛し子として転生させます』

 

「さっきから一体何を言っているでござるか!? キチンと説明するでござる!!」

 

『これが押しつけである事は重々承知しています。ですが、私にはどうしても耐えられませんでした。同朋を裏切ってまで私達を救ってくれた恩人があのような最後を迎える事が』

 

「なっ!? くっ・・・」

 

戸惑うドロロを余所に、その空間は突然眩い光を発し始めた。

 

『最後に、この様な形になってしまいましたが、どうか新たなる地で幸せを掴んでください。それだけを、私は切に願っています』

 

「うわあああああああああ!!」

 

光はやがてドロロを空間ごと飲み込んだ。

光が収まった後、そこにドロロの姿は無かった。

 

『どうか、あなたの新たなる人生に幸あらん事を』

 

ドロロの姿が消え、誰もいなくなった空間に、そんな声が響いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如謎の存在により異世界へと転生したドロロ。

彼を待っていたのは、何もかもが新しい、二度目の人生だった。

 

「これは・・・、まさか! 本当に拙者はペコポン人に生まれ変わったのでござるか!?」

 

新たなる生を受け、戸惑うドロロ。

何故自分が新たな生を受けたのか。その答えを得るため、ドロロは土呂呂として生きていく事を決意する。

その最中、土呂呂は自身と同じ忍びの道を志す少女達と出会う。

 

ある時は伝説の血を引く少女と。

 

「あの! 本当に助かりました! あ、私、飛鳥って言います」

 

「拙者は土呂呂と申す。よろしくでござる、飛鳥殿」

 

ある時は強さを求める少女と。

 

「アンタ強ぇな! どんな修行したらそんなに強くなれんだ!?」

 

「別に特別な事はしていないでござる。只自身の心行くまで修行あるのみ、でござる」

 

ある時は己の血に迷いし少女と。

 

「私には家族がいない。私は、独りぼっちなんです」

 

「それはどうでござろうか。拙者には斑鳩殿が独りぼっちには見えないでござるよ」

 

ある時は亡き家族の面影を追いし少女と。

 

「柳生殿は何故、雲雀殿を守りたいのか? それを今一度よく考えてみるでござる」

 

「オレが・・・、どうして雲雀を守りたいのか・・・」

 

ある時は己の未熟を憂う少女と。

 

「ヒバリ・・・、やっぱり、忍に向いてないのかな?」

 

「確かに向き不向きは時として重要でござる。しかし、だからとてそれが全てとは限らないでござるよ」

 

そして、またある時は悪の道に殉じる少女達と。

 

「お前が最近この辺りに現れるという謎の忍か?」

 

「だとしたらどうするでござる?」

 

「私達と共に来てもらいましょうか」

 

「断る、と言ったら?」

 

「力尽くでも、と言わせてもらいます」

 

「・・・・・・・・・、是非も無し、でござるな」

 

新たな世界で出会った少女達に、土呂呂は嘗ての自分を重ねる。

 

「半蔵の連中を助けたと思えば、今度はわしらを助けるなんて、どういうつもりや?」

 

「土呂呂さん。あなたは一体何を考えているのですか?」

 

「拙者は只、飛鳥殿達や焔殿達の友人として手を貸している。それ以上もそれ以下もないでござる」

 

「じゃあ、何でヒバリ達や蛇女子学園の人達をお友達だと思ってくれるんですか?」

 

「そうでござるな・・・。強いて言うなら、似ているからでござろうな」

 

「似ている? 誰にだ?」

 

「飛鳥殿達も焔殿達も似ているのでござるよ。遠い昔、親友達と共に夢を追い掛け、一度はそれを掴みながらも、私情に走り、同朋を裏切り、全てを捨てた、あの時の拙者に」

 

(・・・・・・、土呂呂さん。どうしてそんな悲しそうな眼をするんですか?)

 

そんな土呂呂の存在は、少女達の中で、徐々に大きくなり始めた。

 

(どうしたんだろ私。土呂呂さんの事を考えると、何だか凄くドキドキする・・・)

 

(どうしてしまったんだ私は。何で土呂呂の事が頭から離れないんだ・・・)

 

そして、巨大な陰謀に巻き込まれていく土呂呂と少女達。

果たして、彼らの運命は・・・。

そして・・・、

 

 

 

 

 

「私、飛鳥は、土呂呂さんの事が、一人の男性として、好きなんです!」

 

 

 

 

 

新たなる生を受けたその世界で、土呂呂はその瞳に何を映す?

 

 




閃乱カグラ、ケロロ軍曹のクロス小説。舞い忍べ!タイガーホースでした。
読んで頂きありがとうございます。
この作品は、ハーメルン内で投稿されている閃乱カグラの二次小説を読んで興味がわき、アニメを見て、思い付きました。
大まかなあらすじは、本格的な地球侵略を開始したケロン軍を裏切ったドロロが死後、地球の意思(?)のようなモノにより、別の地球(閃乱カグラの世界)に人間として転するという物です。
また、話の最後にあった様に恋愛、及びハーレム要素有り(のつもり)です。
因にタイトルの「タイガーホース」に関しましては、何の事か説明するまでもないと思うので省きます。

最後に今後も書き上がった話からこう言った風に投稿して行きます。
読んで頂きありがとうございます。


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アカメが斬る! 転生者はユニークチートな先生

  ???Side

 

「・・・・・・、ここどこ?」

 

 気が付くと僕は見慣れない空間にいた。そこは文字通り何も無く、真っ白な空間が延々と続いていた。

 

(何がどうなってるんだ?)

 

 僕は確か、バイトが終わって家に帰って、夕飯の支度をしようとしたら、急に眠たくなって、そのままベッドに倒れ込んで・・・、気が付いたらここにいた。

 

「・・・・・・、うん。さっぱり分からん!」

 

「あの〜」

 

「ん?」

 

 後ろから聞こえてきた声に反応して振り向くと、そこには綺麗な銀髪を腰まで伸ばした、まるでギリシャ神話などに登場する女神のような格好の女性がいた。

 

「えっと・・・、あなたは?」

 

「あっ! 申し遅れました! 私は第30回転生チャンス獲得大抽選企画の担当をしている、リリスと申します! おめでとうございます! あなたは見事当選し、異世界へ転生するチャンスをお掴みになりました!」

 

「ちょちょちょ、ちょっとタンマ!!」

 

「はい?」

 

「何その転生チャンス何とかって!? 僕全く身に覚えが無いんだけど!?」

 

「え? ですが、確かにあなたは我々がお送りした用紙に必要事項を記入して抽選に応募していただいた筈ですが・・・」

 

「用紙?」

 

「はい。こちらになります」

 

 そう言うとリリスさんはどこからか『今の人生は楽しいですか?』と書かれたその紙を取り出し、僕に見せてきた。

 そして僕はその手紙に心当たりがあった。

 

「それって・・・、確か、何年か前に僕の家のポストに入ってた怪しげなチラシ・・・。え? まさかそれ本物だったの?」

 

「はい。そして今回、3759万の応募の中からあなたは当選しました!」

 

「さ、3759万って・・・」

 

 凄い倍率だな・・・。でも、これは思わぬ儲け物だ!

 

「それで、どうします? このチャンスを使用されますと、元の世界では死亡扱いとなり、戻る事も出来ません。今なら当選を辞退する事も出来ますが?」

 

「辞退? まさか! こんな面白そうなチャンス、手放すつもりなんて毛頭無いよ!」

 

「では・・・」

 

「うん! どうせ今の人生に未練は無いし、そのチャンス、喜んで使わせてもらうよ!」

 

「分かりました! では、早速転生の準備にかからせていただきます! まず、転生する際の注意事項ですが、今回あなたが転生するにあたり、幾つか制約がございます」

 

「制約?」

 

「はい!」

 

 リリスさんはくじ引き等に使われる抽選箱を取り出し、僕に差し出して来た。

 

「まず、転生する世界はこのくじで決まります。この中から一つお取りください」

 

「つまり、転生先を自分で選べないって事?」

 

「はい!」

 

「へぇ〜、それはそれで面白そうだね」

 

 そう言いながら僕は抽選箱に手を入れ、中からくじを一つ取り出し、リリスさんに渡した。

 リリスさんはくじを開き、書かれた内容を僕に見せた。開かれたくじには『アカメが斬る!』と書かれていた。

 

「という訳で、転生先は『アカメが斬る!』の世界に決まりました!」

 

「げ・・・」

 

 くじの結果に僕は少し顔をしかめる。よりにもよってあんな死亡フラグだらけの世界になるとは・・・。

 

「では、続いて転生時の特典を決めていただきます!」

 

 そう言ったリリスさんは今度は大きな六面のサイコロを取り出し、僕に手渡した。

 

「このサイコロを一回振って、出た目の数がそのまま特典の数になります」

 

「つまり最高六つ、最低一つ、って事か」

 

 僕は受け取ったサイコロを放った。サイコロは数回弾み、やがて止まった。

 出た目は・・・、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 六だった。

 

「良し!」

 

「おおっ! お見事! では、このくじの中から六つ取ってください」

 

「え!? 特典もくじ引きなの!?」

 

「はい!」

 

「マジで!?」

 

 屈託ない笑顔で抽選箱を差し出してくるリリスさん。

 これには流石に驚きを隠せなかったが、とりあえず言われた通り抽選箱からくじを六つ取り出し、リリスさんに渡した。

 

「・・・・・・・・・、おぉ〜! これは中々すごいですね〜」

 

「え?」

 

「では早速特典の発表で〜す! 今回あなたが転生する際につく特典は〜〜、こちら!!」

 そう言うと何も無い空中に文字が現れる。

 

①『金色の文字使い(ワードマスター)』より、文字魔法(ワードマジック)(もどき)。

②『ONE PIECE』より、三色(見聞、武装、覇王)の覇気。

③『ルパン三世』より、斬鉄剣(もどき)。

④『Fate/』より、王の財宝(ゲートオブバビロン)(中身無し)。

⑤『オリジナル』より、限界の無い鍛えれば鍛えるほど強くなる体。

⑥『オリジナル』より、原作キャラ『???』に憑依転生。

 

「・・・・・・・・・・・・、何これ?」

 

 くじの結果を見た僕の口から思わずそう漏れた。

 次の僕は結果を見て気になった事をリリスさんに質問した。

 

「あの、リリスさん。いくつか訊いていいですか?」

 

「はい! 何でしょうか?」

 

「じゃあまず、①と③についてる(もどき)って何ですか?」

 

「いい質問です! これは今回の特典として与えられるのが、原作のそれと似て非なる物であるという事を示しています」

 

「原作のそれと似て非なる物?」

 

「例えば『金色の文字使い(ワードマスター)』の『文字魔法(ワードマジック)』は強力な反面、重い制約や反動(リバウンド)がありましたよね?」

 

 リリスさんの言葉に頷く。

 

「今回あなたに送られる特典の『文字魔法(ワードマジック)』にはそういった原作の制約や反動(リバウンド)が一切ありません。とはいえ、さすがにこれほどの力をノーリスクに使いたい放題というのはまずいので、こちらで独自の制約や反動(リバウンド)を付けさせてはもらいます。ということです。それでもオリジナルのそれに比べたらだいぶ使い勝手の良い物になっています!」

 

「え〜っと・・・、つまり僕は、原作に比べて比較的緩い条件下で、あのチート魔法が使えるようになる。っていう事ですか?」

 

「簡単に言えばそういう事になります!」

 

「何それ、マジでチートじゃん」

 

 原作の文字魔法(ワードマジック)を知っている僕はそう言わずにはいられなかった。

 

「因みに制約や反動(リバウンド)の内容自体は転生後に自身でお確かめください」

 

「あっ、はい。分かりました。それで③のもどきも①のと似た様な感じなんですか?」

 

「Yes! そもそもルパン三世という物語に登場する斬鉄剣自体、シリーズや作品によって設定が違うじゃないですか? なので今回こちらで独自の設定の斬鉄剣を特典として進呈します!」

 

「成る程」

 

「因みに今回あなたが手に入れる斬鉄剣の設定はこのようになっています」

 

 そういってリリスさんが指をパチン! と鳴らすと僕の目の前に文章が現れた。

 

『斬鉄剣の設定:東方の島国に伝わる秘伝の金属『クラム・オブ・ヘルメス』と隕鉄を混合して作られた刀。その強度と切れ味は地上最強クラスで、帝具『万物両断エクスタス』を超える。その為取り扱いは要注意』

 

「またしてもチート級ですね・・・」

 

 何ですか取り扱い要注意って・・・。

 

「②はそのままで・・・、この④の王の財宝(ゲートオブバビロン)の(中身無し)っていうのは、いつでもどこでも何でも出し入れ出来る収納庫と考えればいいんですよね?」

 

「Yes! その通りです!」

 

「これも大概チートだな。⑤も長い目で見れば中々強力だし・・・。リリスさん、この⑥は、僕は転生後に原作キャラの誰かになる形で転生するっていう事ですか?」

 

「Yes! その通りです! 因みに誰になるかは転生してからのお楽しみ。更に転生する時期は各キャラの原作開始前だという事は確定していますので、そこから原作開始までに何をしようとあなたの自由です」

 

「成る程。じゃあ例えば、仮に僕がタツミに転生したとして、ナイトレイドに入らずにイェーガーズに入る。なんて事もありなんですね?」

 

「もちろんです! そういった原作ブレイクも今企画の醍醐味ですから! さて、一通り説明し終えましたが、他に何かご質問はありますか?」

 

「いえ、大丈夫です」

 

「分かりました。それではいよいよ転生させます! あちらをご覧ください!」

 

 リリスさんが右手で示した方を見ると、そこには豪華な装飾の扉があった。

 

「あの扉を開きますと転生が始まり、次に目が覚めたその時から、あなたの新たな人生が始まります!」

 

 リリスさんの言葉を聞きながら僕は扉に向けて足を進め、扉の前までたどり着くと、扉に手を当て、力一杯押した。

 瞬間まばゆい光が僕を包み込んだ。

 

 

 

 

 

「それではどうかお気をつけて。新たな人生が良きものとなる事を心よりお祈りします」

 

 

 

 

 

 そんなリリスさんの言葉を最後に、僕の意識は遠のいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・、懐かしい夢を見ました」

 

 それは()がまだ()だった頃、偶然手にしたチャンスを使い、この世界に転生した時の記憶だった。

 転生してからの人生は喜びあり、悲しみありと、様々だった。

 前世では手にする事の出来なかった、出来ないだろうと思っていた幸せを手にした事もあった。

 当たり前のように続くと思っていた日常を奪われ、絶望した事もあった。

 現状を呪い、生ける屍となりながらも、小さな幸福を見つけ、再び生きる希望を見つけた事もあった。

 そんな人生を歩んで来た結果、今の私がここにいる。

 

 コンコン。

 

「どうぞ」

 

「失礼します。ブドー大将軍がお呼びです。至急執務室に来て欲しいとのことで」

 

「分かりました。すぐ向かいます」

 

 侍女の言伝を聞き、私は目的地を目指し、足を進める。

 数分後、目的の部屋の前にたどり着いた私は扉をノックし、屋主の許しの声を合図に扉を開き、入室する。

 

「失礼します」

 

「おお、来てくれたか。急に呼び出してすまないな」

 

「お気になさる必要はございません。それでご用件は何でしょうか?」

 

「うむ。お前にやってもらいたい事がある。頼めるか? ラン」

 

 

 

 

 

 嘗て真島司(ましまつかさ)としての生きていた私は、現在、原作で帝国がナイトレイドを殲滅するために将来結成される特殊警察、イェーガーズのメンバーの一人、ランとして生きている。この世界で見つけた自分の使命を果たすために。

 

 



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遊戯王ARC-Ⅴ FOUR SIMILAR BOYS

  NoSide

 

(世の中には自分と同じ顔をした人間が三人いる。誰かがそんな事言ってたっけ・・・)

 

 舞網市に住む少年、榊遊矢が朝起きて一番に目にしたのは・・・、

 

 

 

 

 

『デュエルで、笑顔を・・・。世界に、みんなの未来に、笑顔を・・・』

 

 

 

 

 

『融合じゃねぇ! ユーゴだ!』

 

 

 

 

 

『君たち、邪魔だよ』

 

 

 

 

 

 自分と同じ顔をした三人の半透明の少年たちの姿だった。

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・。まだ寝ぼけてるんだな。もう一度寝よう・・・」

 

 目の前の状況を忘れようと布団に入り直す遊矢。

 残念ながらこれは夢ではない・・・。

 

 

 

 

 

 デュエルチャンピオン、ストロング石島とのエキシビジョンマッチの果てにペンデュラム召喚という新たな力を得た遊矢。

 そんな彼の前に現れた自分の名前と、デュエリストである事以外の記憶を無くした三人の自分そっくりの少年。

 

 

 

 

 

「バトルだ! ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンで攻撃! 反逆のライトニング・ディスオベイ!」

 

 無益な争いを好まず、他者を傷つける事を望まない心優しきエクシーズ使い、ユート。

 

 

 

 

 

「クリアウィング・シンクロ・ドラゴンの効果発動! レベル5以上のモンスターが効果を発動した時、それを無効にしてそのモンスターを破壊できる! ダイクロイックミラー!」

 

 思った事をすぐに口にしてしまう直情的な熱血シンクロ使い、ユーゴ。

 

 

 

 

 

「すごいよ! 僕を相手にここまで戦った君は本当にすごい! 褒めてあげるよ。でももう遊びは終りだ。とどめだ! スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン!」

 

 桁外れの実力を持つ冷酷な融合使い、ユーリ。

 

 

 

 

 

 突然始まった謎の共同生活。彼らと出会い、遊矢の人生は大きく変わった。

 

『なあ遊矢! このカード、デッキに入れてみろよ! ゼッテー役に立つからよ!』

 

『何言ってんの。そんな運任せのギャンブルカードなんか入れるだけ無駄だよ。遊矢君もこんな単細胞のアドバイスなんか間に受けることはないからね』

 

『んだとゴラァ!! 誰が単細胞アメーバだ!?』

 

「ちょっ!? 落ち着けユーゴ! そこまで言ってないよ!」

 

『止めないか二人とも、遊矢が困ってるだろ。だがユーリの言う事も一理ある。そのカードは遊矢のデッキに入れるには、いささかリスクが大きすぎる。だがユーリ、余計な事を言ってユーゴを煽るのはやめろ』

 

「・・・・・・、またやってる。遊矢・・・、やっぱり病院行った方がいいんじゃ・・・」

 

 

 

 

 

 彼らの協力を経て、遊矢はペンデュラムの更なる可能性を見出す。

 

「力を貸してくれ! ユーリ!」

 

『しょうがないな。負けたら承知しないよ』

 

「『振り子の申し子よ。神秘の龍と一つになりて新たな力を生み出さん! 融合召喚!! 出でよ! 雷鳴轟く剛嵐の龍! オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン!!』」

 

 融合。

 

 

 

 

 

「頼むぞ、ユーゴ!」

 

『よっしゃあ! 任せろ!』

 

「『星の命を司る紅蓮の炎。今ここに激しく燃え上がれ! シンクロ召喚!! レベル7! オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン!!』」

 

 シンクロ。

 

 

 

 

 

「ユート!」

 

『問題無い! 既に勝利の方程式は整っている!』

 

「『二色の眼の龍よ。絶対零度の凍気を放ち、立ちはだかる敵を打ち砕け! エクシーズ召喚!! 現れろ! ランク7 オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン!』」

 

 エクシーズ。

 

 

 

 

 

 それぞれの召喚法を会得し、デュエリストとして成長していく遊矢。

 また、行動を共にする内に四人の絆は深まっていった。

 

『やったな遊矢! ついに舞網チャンピオンシップ出場決定だ!』

 

『全く、特別枠で出場可能だったにも関わらず、それを辞退してわざわざ四戦すると決めた時は、何考えてるんだって思ったけど、心配は杞憂だったみたいだね』

 

『ああ。何より遊矢は今回の四戦を経てさらに強くなった。大会でもいい成績が期待できるだろう』

 

「これもみんなユートやユーゴ、ユーリのおかげだよ。三人が俺に融合、シンクロ、エクシーズを教えてくれたおかげで、赤馬零児が言ってたペンデュラムのその先を見つける事ができた。本当に感謝しても仕切れないよ」

 

『礼なんて水くせぇぜ。別に大した事はしてねぇんだからよ!』

 

『そうだね。そこの単細胞バナナは大した事はしてないね』

 

『そうそう、単細胞バナナの俺は大した事は・・・っておい! 誰が単細胞バナナだ!? この冷血無愛想紫キャベツ!!』

 

『へぇ、ユーゴ。キミ、死にたいのかい?』

 

『いい加減にしないか。ユーゴ、ユーリ。せっかく遊矢のジュニアユース選手権出場が決まったのに、こんな時に喧嘩なんか・・・』

 

『『うるせぇ(うるさい)な! いの一番に退場したナストラルは黙ってろ(黙ってなよ)!!』』

 

『・・・・・・・・・』

 

「お、落ち着けユート! 無言で拳を握らないでくれ!! お前まで喧嘩する(そっち)側に行ったら、ストッパーが俺一人になるから! 止められなくなるから!!」

 

 

 

 

 

 始めは戸惑いの連続のこの共同生活だったが、いつしか四人には自然と笑顔が浮かぶようになった。

 こんな日々がずっと続けばいい。遊矢は心からそう思った。

 

 

 

 

 

 だが、その思いは届かなかった。運命は彼らを放ってはおかなかった。

 

 

 

 

 

 舞網市で起こる謎の失踪事件。それを切っ掛けにユート、ユーゴ、ユーリの記憶が蘇る。

 

『思い・・・、出した・・・。俺の・・・、俺たちの故郷は・・・』

 

『リンを・・・、俺の幼馴染みを攫ったのは・・・!』

 

『僕は・・・、僕のやるべき事。それは・・・』

 

 

 

 

 

『融合次元のアカデミアによって滅ぼされた!!』

 

『ユーリ!!』

 

『プロフェッサーの命令に従う事!!』

 

 

 

 

 

 記憶が戻り、互いを敵と認識し、戦いを始めようとするユート、ユーゴ、ユーリ。

 そんな三人を止めようと、遊矢は三人の間に立ちはだかる。

 

「止めてくれ!! 何で!? 何でこんな事になったんだ!? どうして三人が戦うんだ!? さっきまで笑い合っていたのに!?」

 

 涙を浮かべながら戦いを止めようとする遊矢に、ユート、ユーゴ、ユーリは戻った自分たちの記憶、関係、遊矢の知らない四つの次元の事を全て話した。

 三人の話を聞いた遊矢はただ自分の思いを口にする。

 

「ユート達の事情は大体分かった。この世界が四つの次元に分かれているとか、正直信じられないけど、これだけは言える。デュエルは争いの道具じゃない!! そして何より、俺はユートやユーゴ、ユーリを今でも仲間だと、親友だと思ってる! 俺は親友同士で争って欲しくない!!」

 

 遊矢のその言葉はユート、ユーゴ、ユーリの胸に深く突き刺さった。

 

 

 

 

 

『プロフェッサーの命に従う。それが僕の絶対理由。なのにどうして・・・』

 

『ユーリはリンを連れ去った張本人。それは間違いない。なのに何で・・・』

 

『アカデミアは俺の敵。つまりアカデミアに所属するユーリも敵。なのに何故・・・』

 

 

 

 

 

『『『こんなにも、四人で過ごした日々が、心に残るんだ・・・』』』

 

 

 

 

 

 記憶が戻り、一切の交流が途切れた遊矢、ユート、ユーゴ、ユーリの四人。

 そんな四人を他所に進んで行く舞網チャンピオンシップ。

 その三回戦、バトルロイヤルの最中、舞網市はアカデミアの精鋭部隊、オベリスクフォースの襲撃を受ける。

 舞網市にやってきた少女セレナを捕まえるため、遊矢の幼馴染みの少女柊柚子を捕らえるため、オベリスクフォースはバトルロイヤルの参加者達に襲い掛かる。

 幼馴染みにアカデミアの魔手が伸びている事を知った遊矢は柚子を守るために戦う事を決意をする。

 そして、そんな遊矢を目の当たりにしたユート、ユーゴ、ユーリが下す決断は・・・?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遊戯王ARC-Ⅴ 『FOUR SIMILAR BOYS』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『『『お楽しみはこれからだ!!!!』』』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 運命の輪は回る。

 

 

 

 

 

 四人の少年を中心に・・・、

 

 

 

 

 

 多くのモノを巻き込みながら。

 

 

 

 

 

 その結末を知る者は、まだ、いない。

 

 



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ハイスクールD×D 赤白の天龍と黄金の英雄王

お久しぶりです。突然ではありますが今後投稿する予定の無い作品を二つほど削除して、こちらに移動させました。 もしよければ暇つぶしにでもご覧ください。


 

  NoSide

 

 此処は私立駒王学園、放課後の校舎内の廊下。そこを一人の教師と、一人の男子生徒がプリントの束を持ちながら歩いていた。

 

「いや〜、手伝ってもらってすまないね、言峰君。おかげで助かるよ」

 

「いえいえお気になさらず、どうせ暇を持て余していた所ですし」

 

 そう言いながら人懐っこい笑顔で答える男子生徒。

 

 

 彼の名は言峰優誠。通称ユーセー。

 成績優秀、文武両道、容姿端麗。そして温厚で礼儀正しく、人当たりも良い為、学園での評判はかなり良く、周囲からは優等生として知られ、学園の生徒達は勿論、教師達からも信頼されている。

 

「ああ、そのプリントはそこに置いておいてくれ」

 

「はい。分かりました」

 

 職員室についた優誠は、指示された場所に持っていたプリントの束を置いた。

 

「それでは、僕はこれで失礼します」

 

「おお、助かったよ。ありがとうな、言峰君」

 

 教師からの感謝の言葉を背に、優誠は職員室を後にし、自分の鞄を持ち、下校するため、校門を目指す。

 

(さてと、今日はこの後、あそこのスーパーのタイムセールに寄って・・・、ん? あれは・・・)

 

 ふと、校庭の一角に視線を移すと、三人の男子生徒が体育館の方から走って・・・、いや、正確には何かから逃げていた。

 暫く見ていると、竹刀を持った道着姿の女子達が三人を追い掛ける様に走って行った。

 

「・・・・・・・・・、はぁ〜、全く、本当に懲りませんね・・・」

 

 その様子を見ていた優誠は、男子生徒達が走って行った方へと足を進めた。

 

 

 

 

 

  一誠Side

 

 俺の名前は兵藤一誠。親しい奴は俺の事をイッセーと呼ぶ。現在俺、いや、俺達は絶体絶命のピンチに陥っている。

 

「待ちなさい!! この変態三人組!!」

 

「今日と言う今日は絶対に許さん!!!」

 

 竹刀を持った剣道部員の女子達に追われているのである。

 

「くっそー、お前の所為だぞ! イッセー!!」

 

「お前があんな大声出すから!!」

 

「お前らがいつまで経っても替わらないからだろ!!」

 

 俺と一緒に剣道部員達から逃げている悪友の松田と元浜が文句を言ってくる。

 何故このような事になったのか。それは数分前に遡る。

 

 

 

 

 

【回想 数分前の体育館裏】

 

 

『村山の胸、マジでけぇ!』

 

『80 70 81』

 

 松田が興奮しながら言い、元浜が何やら分析している。

 

『片瀬、良い脚してんな〜!』

 

『78.5 65 79』

 

 俺達三人は現在、松田が体育の時間に偶然見つけた穴から女子更衣室を覗いていた。

 因に穴の大きさの都合により、覗いているのは松田と元浜だけである。

 

『コ〜ラッ! 俺にも見せろ!』

 

 俺は松田のみっともなく突き出した尻を掴み、引っ張り出そうとするが、松田は全く動こうとしない。

 

『二人占めすんなって〜の!』

 

 そして次の瞬間・・・、

 

『おい!!!』

 

 俺は思わず声を上げてしまった。

 

 

【回想終了】

 

 

 

 

 

 結果、俺達は覗いていた事がばれ、剣道部の女子達に追われているのだった。

 え? 只の自業自得じゃないかって? うるせぇ! つーか今回俺は松田達と違って全く見てないんだぞ! それなのにしばかれてたまるか!!

 

「あいつら! 一体どこに隠れたの!?」

 

「まだ近くにいる筈! 何としても探すのよ!!」

 

 そう言って女子達は俺達を見つけようと、どこかに走って行った。

 

「うへぇ〜、おっかねぇ〜」

 

「こりゃ捕まったら間違いなく酷い目に遭わされるぞ」

 

「ああ、何としても逃げきらねぇとな」

 

 学園中を走り回った結果、結局俺達はまた体育館裏に戻って来てしまい、現在、近くの茂みに中に隠れている。

 

「とにかく、このまま見つからない様に逃げるぞ」

 

「「おう」」

 

 俺の言葉に応える悪友達と共に、俺達は脱出を図った矢先・・・。

 

 

 

 

 

「逃げられると思っているんですか?」

 

 バシッ!

 

「「「うっ・・・」」」

 

 突然、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてくると同時に、俺達の首の後ろ辺りに衝撃が走り、そこで俺の意識は遠のいた。

 

 

 

 

 

  優誠Side

 

「やれやれ、これで一体何度目ですか? イッセー・・・って、訊くだけ無駄でしたね」

 

 僕は気絶した友人とオマケ二人を見ながら、独り呟いた。

 

「見つけた! いたわよ皆!!」

 

 一人の剣道部の女子が僕達に気付き、声を上げて仲間に知らせる。その知らせを聞き、続々と女子達が集まってくる。

 

「覚悟しなさいこの変態三人組・・・って、あれ、言峰君?」

 

「こんにちわ、村山さん、片瀬さん」

 

 女子達の中に同じクラスの子がいたで、僕は二人に挨拶をする。

 

「もしかして・・・、言峰君がそいつらを・・・?」

 

「ええ、偶然見かけたので。余計なお世話だったでしょうか?」

 

「余計だなんてとんでもない! 寧ろ助かったくらいだよ」

 

「そうそう」

 

「そうでしたか、それは良かった。では、後は皆さんで好きにしてください」

 

「うん。ありがとね言峰君」

 

 三人を女子達に引き渡した僕はその場を後にした。

 

「「「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!」」」

 

 その直後、イッセー達の悲鳴が響いたのは、言うまでもない。

 

 

 

 

 

「さてと、それじゃあ今度こそ帰るとしますか・・・、ん?」

 

 イッセー達の悲鳴を背に、校門を目指す僕は途中、旧校舎の前で、何かが光るのを見た。

 

「これは・・・、チェスの駒?」

 

 気になって光った場所に行くと、そこにはチェスで使う駒、形状からして兵士《ポーン》の駒が落ちていた。

 只、僕が拾った駒は、僕の知る普通のチェスの駒とは大きく違っていた。

 

「紅いチェスの駒・・・、随分と珍しいですね・・・」

 

 本来チェスの駒は白と黒である筈なのに、僕が拾ったチェスの駒は赤、それも普通の赤色ではなく、紅と言った方が相応しい程に、鮮やかな色をしていた。

 興味を持った僕は暫くの間、その駒を眺めていた。

 

「そこのあなた」

 

 すると後ろから誰かが声をかけて来た。振り向くと、そこには僕が拾った駒と同じ色の髪の美女が立っていた。

 その美女の顔に僕は覚えがあった。

 

「あなたは確か・・・、三年のリアス・グレモリー先輩、ですよね?」

 

「ええ、そうよ。あなたは、確か二年の・・・」

 

「言峰、言峰優誠です。それで、僕に何か?」

 

「あなたが拾ったそれを返してほしいの」

 

 そう言って先輩は先程拾った兵士《ポーン》の駒を指差す。

 

「ん? ああ、これ、先輩のだったんですか?」

 

 僕は先輩に近づいて行き、拾った駒を渡した。

 

「ありがとう、助かったわ。これはとても大切な物なの」

 

「そうでしたか。見つかって良かったですね」

 

「ありがとう。ところであなた、随分と興味深そうにこれを見てたけど・・・、どうかしたの?」

 

「ああ、すいません。余りに珍しかったので、つい・・・。あ、じゃあ僕はこれで失礼します。さようなら」

 

「さようなら。これを拾ってくれて本当に助かったわ。気をつけてね」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 そう言って僕はその場を後にし、今度こそ下校した。

 

 

 

 

 

  リアスSide

 

「言峰優誠、中々良い子だったわね・・・」

 

 それにしても本当に助かったわ。私とした事が、まさかこれを落としてしまうなんて・・・。

 

「ここにいましたか、部長」

 

 後ろから私の知った声が聞こえてくる。振り向くと、そこには私の良く知る面々がいた。

 

「どうやら見つかったみたいですね?」

 

「ええ、親切な子が拾ってくれたわ」

 

「言峰君、ですね?」

 

「ええ、そうよ。あなたは同じ学年だけど、彼とは親しいのかしら?」

 

「いえ、特別親しいと言う程ではありませんが、僕のクラスでも、彼の評判は良く聞きます」

 

「そう。それじゃあ、探し物も見つかった事だし、部室に戻りましょう」

 

「はい部長」

 

 私達は旧校舎の中に入って行った。

 

 

 

 

 

  優誠Side

 

「やれやれ、本当にいつになったらイッセーは覗きを止めるんですかねぇ〜」

 

 放課後の学校の帰り道。僕は先程の出来事を思い出しながら、自宅を目指す。

 尚、僕は当初の予定通り、タイムセールを実施しているスーパーに寄り、夕飯の買い物をした。

 その為、今の僕の手には学校の鞄の他に、買い物袋が握られている。

 

『その問いは問うだけ無駄ではないのか? 優誠よ』

 

 僕の中にいる存在が僕に話し掛けて来た。

 

「どういう意味ですか? ギル」

 

『どういう意味も何もそのままの意味だ。あの雑種共が覗きを止める等有り得ん。故にそのような問いは問うだけ無駄だと言う事だ。そして何より・・・』

 

 ギルはそこで一旦区切る。

 

『そのような事は有り得んと思っているのは他でもない、お前自身であろう? 優誠』

 

「・・・・・・・・・、やはりそう思いますか?」

 

『無論だ。それよりも優誠、分かっていると思うがあのリアスと言う女・・・』

 

「悪魔、なんでしょう?」

 

 僕はギルが言葉を言い終わる前に答える。

 

『フン、やはり気付いていたか』

 

「当然です。どうやら彼女があの人の言っていた、この町を裏で統轄する悪魔、その片割れでしょう。そしてもう片方は恐らく・・・フフッ」

 

 ふと、いつの間にか僕の口から笑みがこぼれた。

 

『ん? どうした優誠、随分と楽しそうではないか?』

 

「改めて思っていたのですよ。やはりイッセーは面白い。いや、彼といると本当に退屈しない、とね」

 

『確かに。あの男は中々どうして面白い。最初見た時はどこにでもいる平凡な雑種かと思ったが、その生き様には中々に興じさせるモノがある」

 

「当然と言えば当然ですね。曲がり形にもイッセーはその身にあれを宿しているのですから」

 

『赤い龍《ウェルシュ・ドラゴン》、嘗てこの我《オレ》が屠った、二天龍の片割れ』

 

「最も、肝心のドラゴンは未だ目覚めてはいませんがね・・・、ん?」

 

 僕達がイッセーの話で盛り上がっていると、妙な気配を感じた。振り向くと、そこには女性が一人、こちらを見ていた。

 

 

 

 

 

  NoSide

 

「貴様が最近この辺りに現れる噂のはぐれ狩りか」

 

 突如現れた女は、常人の発する物とは思えない異様な気配と殺気を放ちながら優誠を見ていた。

 

「貴様が何者かは知らんが、我らの目的の為、貴様にはここで死んでもらう!」

 

 そう言うと同時に、女の背中から黒い翼が広がり、付近にその羽が舞う。

そして、その様を見ていた優誠はと言うと・・・、

 

「・・・・・・・・・・・・、はぁ〜」

 

何故か溜め息をついた。

 

「貴様、この状況で溜め息など、気でも触れたか?」

 

「溜め息の一つや二つ、つきたくもなりますよ。折角人が良い気分でいたのに、面倒なカラスが現れるんですから」

 

「なっ! 貴様! この私をカラスだと!!」

 

優誠の発したカラスと言う言葉に女は激昂する。

 

「ええ。あなたの様な空気の読めない堕天使なんて、カラスで十分ですよ」

 

「貴様ぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

再びカラスと言った優誠に女堕天使は更に激昂し、その手に光の槍を出現させ、それを優誠に向けて投げる。

 

放たれた光の槍は一直線に優誠に向けて飛んで行き、命中し、周囲には土埃が舞う。

 

「はぁっ、はぁっ、フン、見たか、下等な人間が我ら堕天使に“ザシュ!”・・・え?」

 

優誠を始末したと思った女堕天使だったが、不意に聞こえてきた謎の音に言葉を中断てしまう。

そして、音が聞こえて来た自分の体を見てみると女堕天使は愕然とする。

彼女が見たのは自身の胸に剣が刺さっている光景だった。

先程の音はこの剣が自身に刺さる音だった。

 

「ゴホッ・・・、な、何、が・・・「この程度の攻撃にすら反応出来ないなんて、どうやらあなたはカラスではなく、カラス以下の雑種だった様ですね」なっ・・・」

 

ザザザザッ!

 

「ぎゃあああああああああああ!!!」

 

口から血を流しながら、状況が理解出来ない女堕天使

そんな彼女の耳に再び優誠の声が聞こえて来たかと思えば、それと同時に先程、自分の胸に刺さった剣と同じ剣が四本飛来し、彼女の四肢を貫く。

堪らず女堕天使は叫び声を上げ、地面に倒れる。

 

「い・・・、一体・・・、何・・・が・・・」

 

朦朧とする意識の中、女堕天使は頭を動かし、先程自分が光の槍を投げた方を見る。

舞った土埃が治まるとそこには・・・、

 

 

 

 

 

「やれやれ、制服が埃だらけになってしまいましたね」

 

 

 

 

 

 全く無傷の優誠が立っていた。

 

「そ・・・、そん・・・、な・・・」

 

 女堕天使は何が起こったのか最後まで理解出来ないまま、只、惨めに死んで行った。

 

『フン、興醒めな幕切れだな。帰るぞ優誠』

 

「ええ、でもその前に、あれを始末しておきます」

 

 そう言うと優誠は右手の指を鳴らす。すると、女堕天使の亡骸に刺さった剣が発火する。亡骸は炎に包まれて行き、やがて、炎が消えた後、亡骸は文字通り、骨も残さず燃え散り、後には何も残らなかった。

 

『駄肉を塵一つ残す事なく完全に焼失させるその手腕、相変わらず見事なモノだな。嘗て埋葬機関第七位に名を連ねし代行者、言峰優誠よ』

 

「お褒めいただき恐悦至極。ではいい加減帰るとしましょうか、英雄王ギルガメッシュ」

 

 そう言い、優誠は今度こそ帰宅する為に歩き出して行った。

 

 



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Fate/Zero 聖なる焔の聖杯戦争

 


 崩壊する大地。そこに立つ青年と彼を見守る仲間達

 

 

「・・・みんなは急いで脱出してくれ。俺はここでローレライを解き放つ」

 

 

「ローレライとの約束だ。これは俺がやるべき事だから」

 

 

 自身の決意を告げる青年に対し、各々の思いを伝える仲間達。

 仲間達が去った後、青年は持っていた剣を地面に突き刺し、一回転させる。そこから魔方陣が発生し、青年は地面の下へと沈んでいった。

 

 

 

 

 

  青年Side

 

 

 まもなく俺は消える。覚悟は出来ていた。これを終えたら俺は消えると。

 後悔は無かった。これは俺にとって、犯した罪に対する贖罪であり、果たすべき使命であったから。

 只、それでも僅かな未練はあった。自分を支えてくれた仲間達。そして、傍にいてずっと見守っていてくれた女性。

 みんなともう会えないのは残念だし、もっと一緒に居たかった。

 そう思っていると、俺にとって関わりの深い存在の声が聞こえて来た。

 

 

『世界は滅びなかったのか。・・・・・私が見た未来が僅かでも覆されるとは、・・・・驚嘆に値する』

 

 

 その言葉を聞いて俺は誇らしく思えて、思わず笑った。そして、段々と体の感覚が無くなって行くのを感じた。

 

 

『私はローレライ。私は今・・・・・解放され空に還る』

 

 

『最後にお前達に・・・感謝の印を・・・・・』

 

 

 その言葉を最後に、俺の意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ、う〜ん・・・」

 

 

 朦朧とする意識の中、辺りを見回した。そこは、真っ暗な空間だった。その時、ふと思った。

 

 

「ここは一体、俺は確かローレライを解放して、その後、消滅したはず・・・」

 

 

 自身の今までの行動を思い返し、思考の海に潜る青年。

 

 

「もしかして、ここが所謂、死後の世界って言うやつなのか。つーか、本当にあったんだな」

 

 

 そんな事を考えていると・・・。

 

 

『目が覚めたようだな、ルーク』

 

 

 俺の良く知った声が聞こえて来た。

 

 

「この声は・・・・・、ローレライ!」

 

 

『どうやら、一先ずは成功したみたいだな』

 

 

 成功、だって?

 

 

「どういう事なんだ?俺はどうなったんだ?それに、ここは一体・・・」

 

 

『落ち着け。まずはお前が置かれている状況を説明しよう』

 

 

「あ、ああ。頼む」

 

 

『まず最初に伝えなければならない事がある。ここは先程までお前が居た世界とは違う別の世界だ』

 

 

「なっ!?」

 

 

 別の世界、だって!?

 

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!別の世界ってどういう事だよ!なんでそんな所に俺は居るんだよ!」

 

 

『それは私がお前をその世界に送ったからだ。そうするしかお前を救う手はなかった』

 

 

「俺を救う、だって?」

 

 

『そうだ。お前をもう一度仲間の元へ帰す為にどうしてもそうしなければならなかったんだ。』

 

 

「みんなの所に帰れるのか!?」

 

 

『ああ。だが今すぐには無理だ』

 

 

「なっ!。どうして!!」

 

 

『お前の体の消滅は私にも止める事は出来なかった。もう一度お前を元の世界に戻すには一度体を完全に消滅させて、再度体を作り直す必要があった。だが、あのままでは体の再構成が終わる前に魂が消滅してしまっていた。そこで私はお前の魂を別の世界へ送り込む事で消滅を回避させた』

 

 

 ・・・・・・。何だか難しくてよく分からないけど、

 

 

「え〜っと、・・・つまり、今俺がここに居るのは、元の世界に帰る為に必要な準備が終わるまでの間、魂が消えないよう避難させたから・・・って事か?」

 

 

『簡単に言えばそういう事だ。体の再構成にはまだ時間が掛かる。だからそれまでの間、この世界に居て欲しい』

 

 

「・・・・・。分かった。ありがとうな。俺の為に色々と」

 

 

『気にするな。私としてもお前が消えるのは心苦しかったからな。体の再構成が終わったら、また呼びかける』

 

 

「分かった。それじゃあ頼む」

 

 

『最後に少しではあるが力を貸そう。きっと役に立つ筈だ』

 

 

 そう言うとローレライの声は聞こえなくなり、俺の目の前に光が3つ現れてその内の2つが俺の中に入って来て、残りの1つが1本の剣になった。

 

 

「ありがとう。ローレライ」

 

 

 俺はもう一度、俺の為に動いてくれている存在に礼を言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ローレライと会話を交わしてしばらくして・・・。

 

 

「・・・・・。これからどうしようか?」

 

 

 早速俺は悩んでいた。

 

 

「こんな真っ暗で何も無い所でどうすれば良いんだ?せめてここがどういう場所なのか聞いときゃ良かったな〜」

 

 

 これからどうしようか考えていると・・・、

 

 

「・・・・・ッ!!!」

 

 

 突如強烈な頭痛が俺を襲った。

 

 

「・・・ってぇ!!。・・・・何だ、・・・これ・・」

 

 

 それが只の頭痛でない事はすぐ分かった。この頭痛がし出したときから頭の中に何かが入ってくるのを感じた。まるで何かを与えられているような感じだった。

 暫くして、頭痛が治まった。そして俺の中にはさっきまで知らなかった事に関する情報があった。

 

 

「はあっ・・・、はあっ・・・、聖杯・・戦争だって・・・」

 

 

 聖杯戦争、聖杯、英霊、サーヴァント、マスター、魔術師、令呪。

 この世界で起きようとしている戦いの情報に俺は少し混乱したが、直ぐに回復した。

 

 

「・・・・・。入って来た情報の通りなら、今俺はサーヴァントとして召喚されるのを待っている。ってことか」

 

 

 今自分が置かれている状況を理解した俺は少し気を落とした。

 

 

「また、・・・・・戦うんだな・・・」

 

 

 元の世界で戦い、異世界に来てまでまた戦いに身を投じるのかと思うと気を落とさずにはいられなかった。しかし、

 

 

「・・・・・って、いつまでも落ち込んでても仕方ないな」

 

 

 直ぐに気持ちを切り替えた。

 

 

「ローレライとの約束もあるし、それにローレライから貰った力もある」

 

 

 そう言って俺は背中の剣を手に取る。

 

 

「戦ってやろうじゃないか、その聖杯戦争とやらを」

 

 

 これから起こる戦いに、俺はこの戦争を戦い抜く事を決心する。

 

 

「・・・・・っと、そういえばどんな奴が俺のマスターになるんだ?。それにどんな奴らが参加するんだろうな」

 

 

 これから起こる戦いについて思いを馳せる俺。  すると、

 

 

『イヤダ』

 

 

「ん?」

 

 

 突然声が聞こえてきた。ローレライとは違う、別の誰かの声が聞こえて来た。

 

 

「なんだ?この声は?」

 

 

『イヤダ』

 

 

「おい、どうしたんだ!」

 

 

『イヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダ』

 

 

「おい!大丈夫か!!?おい!!」

 

 

 先程から聞こえてくる何かを恐れ、拒絶する声。そして、

 

 

『タスケテ』

 

 

「えっ!?」

 

 

『ダレカ、・・・・タスケテ・・・』

 

 

 聞こえてくる声が助けを求める声に変わった。そして

 

 

「っ!何だ!?これ」

 

 

 突然体が引っ張られる様な感覚に襲われる。

 

 

「もしかして、この声の主が俺を召喚しようとしてるってことか!」

 

 

 俺は自分の身に起こった事を予測する。    そして、

 

 

「分かった。・・・・・今いくぜ!!」

 

 

 声の主の元へ行く事を決意し、【英霊の座】から消える。

 



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