ありふれていない者のありふれた物語 (NEOⅢ)
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第一章
プロローグ
月曜日。
それは一般的に言うと憂鬱な日の始まりである。
神崎怜もその一人だ。といっても学校が嫌なのではなく、その空気が嫌なだけなのだが。
いつも通りの時間にいつも通りの無表情で教室に入る。
「おはよう、神崎くん!」
「おはよう、神崎くん いつも同じ時間よね」
「あぁ おはよう」
怜に挨拶をしてきたのはこの学校で二大女神などと言われている白崎香織と、八重樫雫だ。
白崎は元気に八重樫は少し呆れたような声音で挨拶をした。
何故怜が二人と親交があるのかと言うと、怜の友達?の南雲ハジメという人物に白崎がよく話しかけに行き、ときたま暴走し、それを八重樫が止めるという漫才みたいなことが起きる過程で、少しながら接点を持っただけだ。
ちなみに白崎は自分が気づかないほどの淡い恋心を、南雲に抱いているのだが、八重樫以外に気づいている人は居ない。
そしてその近くにいつもいるのが、天之河光輝と坂上龍太郎だ。
天之河は完璧超人で、人助けをよくしているが、他人を疑わず更には都合が悪いと無自覚でご都合解釈をする。無自覚というのが恐ろしいところだ。もちろん八重樫はその悪癖を、何度も指摘しているが笑って流し、治る気配がない。
坂上は天之河の親友にして脳筋。それ以外の説明のしようがない
「おいおい、俺たちには挨拶もなしか?」
「? お前たちは挨拶をしてないだろう?」
その言葉を聞いた天之河は顔を少し顰め言葉を募ろうとするが、その前にある大きな声が教室に響いた。
「よぉ、キモオタ!また、徹夜でエロゲか?」
その人物は檜山大輔。何かと南雲に対して敵対心を持っている。原因は、白崎が自分より劣っていると思っている南雲に構うからだ。
「おはよう南雲くん!今日もギリギリだね」
白崎が南雲に対して笑顔で話しかけた途端、教室にいる大半の人達から、敵意と侮蔑と呆れが乗った視線が向けられる。怜の近くにいた八重樫と天之河、坂上も南雲に近づき、八重樫が挨拶をする。
そんな中、天之河が南雲に、香織に迷惑をかけるな、などというので怜は・・・
「天之河、それは違うぞ。白崎はただ単に南雲と話したいだけだ」
と天之河に伝える。
「そうだよ光輝くん。神崎くんの言う通り、私が南雲くんに話したくて話してるだけだよ?それに迷惑だなんて思ってないよ?」
白崎が怜の言葉に同調して教室の空気が、さらに殺気だっていく。
もちろんこれと似たような会話を、毎朝してるのでクラスの何人かは、白崎が好意から南雲に話しかけているのは知っている。
「え? あぁ、香織はホントに優しいな」
当たり前だか天之河はそれに気づいていない。白崎自身が否定した迷惑と思っていない発言も、南雲に気を使っていると思っている。
その光景に怜は天之河に対して嫌悪感を募っていく。
それと同時に南雲は、自分の席に座り怜にカバンから出した本を出す。
「これ、昨日言ってた本の新刊」
「あんがと。この主人公結構いいと思うんだよ。」
「だよね!僕もそう思う!」
「だがそれより、お前のスタンスは知っているが、折り合いをつけてくれよ」
その言葉に南雲は・・・
「アハハ……」
愛想笑いで返した
そして授業が始まると南雲は夢の世界の住人になり、周りからまた敵意をむけられていた。
―――――――――――――――――――――――――――――――
午前の授業が終わり昼休みになると怜は弁当を食べ、南雲は目を覚ましたあとチャージゼリーで昼を済ませまた寝ようとしていた。
そんな中、白崎は南雲に近づき・・・
「珍しいね、南雲くん。良かったらお昼一緒にどう?」
それを聞いた南雲は抵抗とばかりにチャージゼリーの残骸を見せるも。
「えぇ!お昼それだけなの!?私のお弁当分けるからちゃんと食べようよ!」
白崎は止まらなかった。その時、天之河が・・・
「寝ぼけたままで香織のお弁当を食べようなんて俺が許さないよ?」
などと言い、白崎がそれに対し何故、許可がいるのか本当に分かってなさそうに答え八重樫が吹いていた。
怜はその問答をみて、南雲なら、異世界に飛ばされないかなと思っているんだろうなと思い、お弁当を片付けようとした時、天之河の足元に魔法陣らしきものが輝き、教室全体を包み込み、視界が真っ白に塗りつぶされた。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
感想お待ちしておりますm(_ _)m
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異世界
左腕で顔を覆い目を閉じていた怜は、騒ぐ周囲の気配とそれを囲む人達に、目を向けた。
それから目に入ったのが巨大な壁画だった。長い金髪を靡かせ微笑む中性的な顔立ちの人物の後ろには、神々しい光が溢れていた。
回りには動植物がその人物を崇めているかのように頭を垂れていた。
その壁画を見た時、怜が感じた感情は、言葉にできないほどの
そんなことを思っていると、豪奢で煌びやかな衣装を纏い、高さ三十センチはある烏帽子のようなものを被っている七十代ほどの老人が歩み出てきた。
「ようこそ、トータスへ。勇者様、そして御同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル•ランゴバルドと申すもの。以後、宜しくお願い致しますぞ」
そう言ったイシュタルと名乗る老人は優しげな笑みを浮かべた。
だが怜はその奥にある歪さに気づいていた。
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現在、怜達は場所を移り、テーブルがいくつも並んだ大広間に通されていた。
恐らく、晩餐会をするためのものだろう。
上座に近い位置に社会科の畑山愛子先生と天之河達四人組が座っている。
他の人達は適当に座っており怜は南雲の隣に座った。
ここまである程度静かだったのは理解が追いついていないことや天之河が落ち着かせたからだろう。
全員が着席したのを確認すると、絶妙なタイミングでメイド達が入ってきた。
もちろん美女、美少女メイドだ。
それを見た男子は鼻の下を伸ばしてメイド達を凝視していた。最もそれを見た女子達の視線は凍えるかと思うほどの冷たさが宿っていた。
怜の隣に座っている南雲も凝視しそうになっていたが、白崎がにこやかな笑みを浮かべ南雲をジッと見ていたのに気づき視線を前に固定した。
それを見た怜はため息を吐いた。それから南雲に注意をした。
「南雲、メイド達に目を移すのはなんとも言わないが、こいつら飲み物の入れ方が不格好だ。恐らくこのためだけに顔が良い奴だけを集めたんだろう。飲み物も何が入っているか分からないから、飲むのはやめとけ」
「うん、神崎くんがそういうならそうなんだと思う。それから!メイド達に目を移してなんてないから!」
小声で話しているのに声に力をいれるという器用な事をした南雲であった。
「さて、あなた方においてはさぞ混乱していることでしょう。一から説明させて頂きますので、私の話を最後までお聞きくだされ」
そう言いイシュタルはテンプレで、勝手な話をし始めた。
要約すると、この世界はトータスと呼ばれていて、この世界では3つの種族に別れていた。人間族、魔人族、亜人族である。
その内の、人間族と魔人族は何百年もの間戦争を続けている。最近は力が均衡していたこともあり大きな戦争は起きなかったみたいだが。
魔人族は、人間族には数で及びないものの個人の持つ力は強大でその差に人間族は数で応戦していたらしい。
だが突然、魔人族が魔物を使役できるようになり、人間族のアドバンテージである数を上回ることになった。そもそも魔物を使役できても良くて一、二匹であったとのこと。
そのことから魔人族は人間族に再び宣戦布告をし、人間族は滅びの危機を迎えていた。
それから怜達を召喚したのはエヒトと名乗る人間族が崇めている神様らしい。
そのエヒトからこのままでは人間族は滅ぶと信託を受け召喚を行ったとのこと。
地球はこの世界より上位の世界らしく例外なく強力な力を持っている。
この話をしていた時のイシュタルは、恍惚とした表情を浮かべていた。
なお人間族の九割以上がエヒトを崇めている聖教教会の信徒らしい。
怜は本来ならありえないことが起きている現状について人だけではなく、この世界の歪さも感じ危機感を覚えていた。その時、突然立ち上がり猛然と抗議する声が響いた。
畑山先生だ。
「ふざけないでください! 結局この子達に戦争をさせようってことでしょう!
そんなの許しません!私達を早く帰してください! ご家族も心配しているはずです!あなた達がしていることは誘拐ですよ!」
ちなみに迫力はまったくと言っていいほどない。今年二十五歳になるにもかかわらず百五十センチ程の低身長に童顔、ボブカットの髪を跳ねさせながら生徒のためにいつも動いている姿はその一生懸命な姿と空回ってしまうギャップに庇護欲を掻き立たされるからだ。
その事で空気が幾らか和らいだが、次のイシュタルの言葉で凍りついた。
「お気持ちお察しします。しかし........あなた方の帰還は現状では不可能です」
「ふ、不可能ってどういうことですか!?喚べたのなら帰せるはずでしょう!?」
「あなた方を召喚したのはエヒト様ですが故、我々ではどうすることもできないのです。あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意思次第ということですな」
そう言ってイシュタルは無責任に説明した。
それを聞いた畑山先生は、脱力して椅子にもたれこんだ。それと同時に生徒たちも騒ぎ始めた。
そんな中でも怜は周りを深く警戒し、何時でも動けるように足を椅子から出していた。それ故に、イシュタルの目の奥にある侮蔑を感じ取れた。
未だにパニックに陥っている中、天之河が立ち上がりテーブルを叩いた。その音にクラスメイトはビクッとなり注目を集めた。
曰く、俺は戦う、滅亡の危機にあるのを知っていて放っておくことなんて出来ない。
曰く、救済さえすれば帰してもらえるかもしれない。
曰く、大きな力があるから人々を救い、皆が家に帰れるように、世界も皆も守ってみせる。
そんな、何も理解していない発言を聞いた怜は意見をぶつけた。
「お前は戦争の意味を理解しているのか?」
その発言に天之河は力強く頷いた。
「いいや、理解していない。しようともしていない。戦争をするということは一重に人を殺める覚悟を持つということだ。」
「なっ!? 殺さなくても済む方法があるはずだ!」
「断言出来る。そんな方法はない。大多数の人間を救うとお前は豪語した。こと戦争において救うということは他の誰かを殺すということだ。」
「そんなわけないだろう! 皆、安心してくれ!俺が誰も傷つけずに殺さずに皆を救ってみせる!」
怜が吐いた言葉に不安になっていたクラスメイトも、天之河の言葉を再び聞き、そんなことは忘れたと言わんばかりに、キラキラした目を天之河に向けていた。
その光景に怜は舌打ちをし黙り込んだ。
その後に渋々、八重樫も白崎も賛同し、結局、全員が戦争に参加することになってしまった。
怜はイシュタルがわざと正義感の強く、一番影響力がある天之河に魔人族の残酷さを強調するように話していたことに気づいていた。
怜は、要注意人物にイシュタルを加えたのだった。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
感想お待ちしておりますm(_ _)m
原作とほぼ同じ内容なのは申し訳ないです
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立場と王女
不本意ながらも戦争に参加する表明をしたからには、戦いの術を身につけなければならない。しかしいくら能力が高くても、武というものは一朝一夕で、身につくものでは無い。
しかも戦争がない日本で生まれ、血を見ることに慣れていない者に魔物や魔族と戦うなど、不可能である。
流石にその辺のことは予想していたのか、聖教教会の神山の麓のハイリヒ王国にて受け入れ態勢が整っているとのこと。
その後イシュタルは、魔法を行使しハイリヒ王国の王城へと、足を踏み入れたのだった。それを見たもの達は、これから起こる冒険と、魔法を使えるという事実に、胸を膨らませていた。
王城に入ると怜達は、玉座の間に案内された。その道中騎士やメイドとすれ違うのだが、皆が彼、彼女らに期待の眼差しを向けていた。
玉座の間では、覇気と威厳を纏った初老の男が立ち上がって待っていた。その隣には王妃とおもわれる女性。そのさらに隣には、十歳前後の金髪碧眼の少年と、十四、五歳の金髪碧眼の少女が控えていた。
イシュタルは怜達を玉座の手前で留め、国王の元に歩み手を差し出した。国王はその手を恭しく取り軽いキスをした。怜は教皇の方が立場が上だと理解したと同時に、周りに意識を向けた。
その後晩餐会が開かれたが、怜は食事に手をつけずに警戒していた。その光景を見ていた王女は、周りが料理を堪能しているのに対し、一切料理に手をつけない怜に興味を持った。
ちなみに殿下は、白崎に大して必要に話しかけており、それを見た南雲が矛先が殿下に向けばいいと期待していた。
「すいません、貴方のお名前を伺ってもよろしいですか?」
怜は話しかけられるとは思わなかったため、返事に少しの時間を要した。
「.........俺か?」
「はい。そうです」
「俺の名前は神崎 怜........好きに呼べ」
「はい!では怜さんとお呼びさせていただきますね!私のお名前はリリアーナ・S・B・ハイリヒです!ぜひリリィとお呼びください!」
「断る」
「むー。なんでですか?」
「俺は人を名前で呼ばん」
「それは何故ですか?」
「大した理由じゃない 故に言う必要が無い」
「どうしてもですか?」
「どうしてもだ」
「分かりました。ですがいつの日か名前で呼んでくださるよう期待していますよ!」
「俺に
そんな問答をしている内に晩餐会は終わり、各自一人ずつ与えられた部屋に案内された。皆一様に明日の鍛錬について思いを馳せているであろう。
そんな中、怜は警戒を絶やすことなく、天蓋付きベッドで眠りについた。
リリアーナの口調が分からない(´・_・`)
話の大まかな流れはできてるけど中盤以降の流れだから難しい
ここまで読んでくださりありがとうございます!
感想お待ちしておりますm(_ _)m
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