人理修復はプロトマーリンと共に (ゼノ丸)
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幕間
幕間:カルデアについての報告書


設定集です。今後、ストーリーが進むにつれて情報が開示されていきます。お楽しみに


人理継続保障機関フィニス・カルデアについての独自調査報告書

 

 

2017年█月█日、人理継続保障機関フィニス・カルデア(以下カルデアとする)へゴルドルフ・ムジーク氏の所長就任するにあたり、我々は魔術協会とは別に人理修復を成し遂げたと思われる人物及び英霊をリストアップし、新たな人材派遣の為の助けとなるべくここに報告書を作成する。

 

 

 

【レオナルド・ダ・ヴィンチ】 英霊:キャスター

 

英霊召喚システム・フェイトが未完成の頃にカルデアで召喚された英霊第三号であり、現カルデアの████を務めている。

 

人理修復以前はニ代目所長ロマニ・アーキマンの説得により、技術局特別名誉顧問としてカルデアに在住。直接戦闘のデータは残っていないが、████のカウンターを狙い召喚された英霊である可能性がある為注意すべし。

 

尚、カルデア訪問時、彼女が反抗的な行動を行った場合███を使用し、強制退去させるものとする。

 

 

 

 

【ロマニ・アーキマン】████████

 

カルデア三代目所長代理であり、████は███████である。

 

人理修復以前は初代所長である、マリスビリー・アニムスフィアの助手として、カルデアに入館。医療スタッフとして活動。レフ・ライノールの爆弾テロ以降は二代目所長オルガマリー・アニムスフィアに代わり、カルデアを指揮した。現在████である。

 

 

 

 

 

【レフ・ライノール】█████████

 

1999年にカルデアに赴任した圧倒的な魔力量を持った魔術師であり、近未来観測レンズ「シバ」の開発者である。人理焼却の犯人の一人であり、その正体は████████である。

 

現在は███である。

 

 

 

 

 

【天道 健】マスター

 

オルガマリー・アニムスフィア自らがスカウトした、二十一番目のマスターである。

 

変換魔術、強化魔術を得意とし、特に変換魔術は████を████に変換できる程の力量持つ。その為、カルデアから退館後封印指定にされる可能性がある。

 

時計塔時代では、鉱石科に所属。臆病な程の慎重さを持って、数々の課題で好成績を収めていた。又、フラット・エスカルドスと接触している姿が確認されており、エルメロイ教室が後ろについている可能性がある。注意されし。

 

 

 

 

【藤丸 立香】マスター

 

ファーストオーダーによるマスター不足の為、一般枠としてカルデアに入館した四十八人目のマスターである。

 

一般枠である為魔術は使えないが、マスター適正が極めて高く、天道 健と比べて倍近い英霊と契約した。

 

人理修復以降、魔術回路を構築することに成功した為、カルデアから退任後は時計塔で三年の研修を受けることが決定されている。

 

 

 

 

【マシュ・キリエライト】デミ・サーヴァント

 

カルデア局員であり。2000年にカルデアの初代所長マリスビリーが人間と英霊を融合させることで███を██するため█████によって█████████████である。レフ・ライノールの爆弾テロ発生時に英霊█████と融合し、デミ・サーヴァントとして現界した。

 

上記の理由により質の良い魔術回路を持っている。

 

人理修復以前は、上記の理由により寿命が少なかったが、人理修復以降は謎の要因により寿命が平均的な女性寿命と同じになっている。

 

 

 

 

【████████████】英霊:ルーラー

 

人理修復以降に出現した、亜種特異点を攻略する際に共闘。その後特異点修復後は活動限界を悟り、カルデアに身を置くことを選択した。

 

彼と話すと、我々の本来の目的を悟られる可能性が高い。遭遇してもなるべく会話はしないように勧める。

 

 

 

 

ーー以上。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

追記

 

亜種特異点修復完了後もなんらかの理由で退去していない英霊を複数確認した。我々の本来の目的の妨げになる可能性が高い。緊急で各英霊を簡潔にリストアップしたので至急対策を練るべし。詳しい情報は魔術協会が公開しているカルデアの資料を参照すべし。

 

 

 

 

【マーリン】英霊:キャスター

 

天道 健と契約したサーヴァントの一騎。自由な性格であり、カルデアのどこに現れるか分からない。

 

このサーヴァントは、天道 健がカルデアに来る前にフラット・エスカルドスと共に召喚されていた為、座に退去する必要がないのだと思われる。

 

マーリンの伝承を考慮すると、彼女は冠位を持っている可能性があり、この中でリストアップした英霊の中でも特に注意したい存在だと考える。

 

 

 

 

【オデュッセウス】英霊:ライダー

 

藤丸 立香と契約したサーヴァントの一騎。第一特異点から藤丸 立香と肩を並べておりいわゆる古参サーヴァント。

 

その頭脳を駆使して、現カルデアのデータ処理や資料作成のサポートとして座に退去せず残っていると考えられる。

 

当日には退去している筈なので、問題は無いのだが、万が一の為対策を練っておいて損はないと思われる。

 

 

 

 

【█████████████】英霊:█████

 

天道 健と契約したサーヴァントの一騎。第四特異点から召喚されている。██████████の為、決まった姿は持たない。

 

上記の能力により、カルデア局員に姿を変えて警備をしている可能性がある。魔力放出まで変えられるのかは不明だが、十分に警戒する必要がある。

 

 

 

 

【█████████】英霊:█████

 

天道 健と契約していたサーヴァントの一騎。███の████により受肉している。

 

███████の██████な為、簡単に見つけて対処することが可能であるが、サーヴァントの性能をそのまま引き継いでいるので、無闇に接触するのは危険である。

 

又受肉をしたことより、マスターが居なくとも活動家のである為、マーリン同様に最大級の警戒をしておくべきである。

 

 

 

ーー以上。

この資料を参照し、我々の目的が成功されるのを期待する。

 

NFF




サーヴァント予想とか考察待ってます!


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原作開始前
是非カルデアのスタッフに!


皆様初めまして、ゼノ丸と言います。
初めて書く小説なので文のバランスや表現が変な風になっている可能性がありますが、温かい目で見てくれると嬉しいです。
それではどうぞ!


唐突だが俺、天道 健(てんどう たける)は転生した。

 

そう転生だ。

 

よくあるトラックに轢かれて死んだり、神様のミスで死んだりして異世界で新しい生を受けるあれだ。

 

別に俺はトラックに轢かれても無いし神様のミスで死んだりしていない。だから正確には転生ではないのだが、色々複雑になるので転生ということにしておいた。

 

前の世界でベットで寝ていて起きたらこの世界、『型月世界』にいたのだ。

 

その事に気づいたのは俺が3歳の頃、魔術師の家系であるとこの世界の父に教えてもらった時だった。

 

当時、父は魔術師の在り方や根源がうんたらと言っていたが、俺はそんな事を聞いている場合では無かった。

 

最初は、型月世界だと?!と困惑しながらも、憧れの世界に転生したことに喜んでいた。が、そこで一つの問題があることに気付いた。

 

そう、この世界が『型月世界』であることが分かったが、型月の「stay night」「Apocrypha」「Grand Order」「月姫」「空の境界」のどの世界なのかが分からなかったのだ。更に、「月姫」と「空の境界」は名前を知っている程度なので、その世界だと分かってもどうすることもできない。

 

「fate」世界なら、ある程度の知識があるので何か対策ができるかもしれない。そう思った俺は、この世界が「fate」世界である事を祈りつつ、ここがどの世界なのかを調べるために、ある一つのワードを探すことにした。

 

 

 

 

『聖杯戦争』聖杯を求める七人のマスターと、彼らと契約した七騎のサーヴァントがその権利を奪い合う殺し合い。この世界がどの『型月世界』かを知るには、この戦争があったかどうか、誰が勝ったのかが分からないといけない。

 

早速調べようとしたが今の当時の年齢は3歳だ。当然勝手に本を持ち出すことは出来ないので中々情報が集まらない。父や母に「教えてー」と可愛く言っても「まだ早いでしょー」と言われて相手にされなかった。なので暫くは魔術の基礎を学ぶしか無かった。

 

5歳になった頃、立ち入りが禁じられている書斎に忍び込もうとしたこともあったが、父にバレてお説教を食らってしまった。しかし、「魔術基礎が一通りできるようになったら解放してやろう」と条件付きだが入れてやると言う言葉を貰ったので、俺は更に魔術基礎を身につけようと努力した。父は本当に飴と鞭の使い方が上手いなと今は思う。

 

 

10歳になった頃、「そろそろお前もここを使っても良いだろう」と父に言われ、今まで入るなと言われていた書斎に入ることが許された。ここなら聖杯戦争についての記録が残っているかもしれないと早速本という本を読み漁っているとそれらしき書物が見つかった。

 

「『2004年の聖杯戦争について』か」

 

これを見た瞬間、この世界が「fate」世界の何処かであることが分かった。この結果を受けて心の中でガッツポーズを取りつつ聖杯戦争の記録を漁り始めた。

 

 

その書物には2004年の聖杯戦争であったこと、参加者の名前、そして、勝者の名前が載っていた。

 

 

 『――勝者、マリスビリー・アニムスフィア&キャスター』

 

 

 

この世界がFate/Grand Orderの世界で確定した瞬間であった。

 

 

 

 

この世界がFGO世界であるとわかってから、天道はカルデアに入る為に、転換魔術の修行に励んだ。カルデアに行くにはオルガマリー・アニムスフィアからスカウトを受ける必要があったからだ。天道家の家系は水属性の転換魔術を代々得意としているので、俺が転換魔術を上手く使えるかというのが課題だった。幸い、俺は魔術の才能があったらしく、小さい頃の努力もあり、地元の高校を出た後、すぐに魔術協会の総本山「時計塔」へと留学できた。

 

入学後は様々な授業で好成績を収め、自身の名前をアピールしていった。

 

そして現在、時計塔に入学してから2年、20歳になった俺は遂に、小さい頃からの願いを叶えたのだった。

 

 

 

「単刀直入に言うわ。天道 健、あなたを人理継続保障機関、『カルデア』のスタッフとしてスカウトします」

 

 

 

 

オルガマリー・アニムスフィアに指定の部屋に来るようにと呼び出され、部屋に入った瞬間、カルデアのスタッフとして働いて欲しいと言われたのだ。当然俺は行きますと即答した。遂に俺はカルデアのスタッフとなることに成功したのだ。やったぜ!これでドクターやマシュ、主人公と会うことができる!

 

そんな事を思いつつ、大事な業務内容について質問した。

 

「それでロード・アニムスフィア、私はどのような事をすれば良いのでしょうか?」

 

「オルガマリーで良いわ。あなたにはカルデアの実行部隊である四十八人のマスターになってもらいます」

 

 

 

 …ん?

 

 

 

 

「…マスター、ですか?」

 

「えぇ、あなたには最初のマスターの内一人として、ファーストオーダーに参加して貰うわ」

 

 

 

 

 ――あかん、このままじゃ、死ぬ。

 

 

 




次回、サーヴァント召喚します!(多分)


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英霊召喚(フライング)

2本連続投稿です。
後1話ぐらいはそのまま投稿するかもしれません。


不味いことになった。

 

俺が、最初のマスターだと…。このままでは俺はレフ・ライノールに仕掛けられた爆弾にやられてしまうじゃないか!不味い不味い不味い…

 

「あなた大丈夫?顔色が良くないのだけど?」

 

「…いえ、大丈夫です、少し内容にびっくりしただけですよ」

 

オルガマリー所長が心配してくれたので俺はとりあえず問題ない事を伝えた。

 

「そう、よかったわ。じゃあ1週間後、この紙に書いてある所に来なさい、集合が完了したらカルデアに出発します。ではまたね」

 

そう言いつつ、オルガマリー所長は足早に去っていった。取り残された俺は、この事態を解決すべく、なんかいい案無いかなと思いながら部屋を出た。

 

 

 

 

あれから5日経ったが、いい考えは全く思いつかなかった。カプセルを守る術式やら爆弾除去魔術やら色々考えてみたが、絶対助かるという確信があるものは無かったのだ。

 

この術式なら…いや、だとしても爆弾が正確に何処にあるかなんて分からな…うわっ

などと考えながら歩いていたら通路の角で人とぶつかってしまった。

 

「あ、すいません…考え事をしていて…」

 

「いやーこちらこそごめんね!僕も前を見て歩いて無くてさー」

 

そう言いつつ俺より年上のイケメンな人がぶつかった時に落とした資料を拾ってくれた。なんだこのイケメン、殴りたい…。あれ、この顔何処かで見たような気がするぞ…

 

「それで、考え事ってなに?できれば聞かせて欲しいな!」

 

「あ、えーっと…」

 

「あ、まだ名乗ってなかったね!僕の名前はフラット、フラット・エスカルドスって言うんだ!」

 

 

――え、

 

 

えええええええええぇ!!!フラット?!フラットだって!?あのエルメロイ教室の???めちゃくちゃ成長してるじゃないか!!!

 

「君は?」

 

「あ、天道健です、よろしくお願いしますフラットさん」

 

フラット・エスカルドスと言えば、ロードエルメロイⅡ世の事件簿に登場する天才だ。フラットならなにか俺には思いつかない事を提案してくれるかもしれない。事件簿から10年以上経ってるから会えないと思ってたけど…こんな奇跡あるんだな…

 

「よろしくねー!で、何に悩んでたわけ?」

 

「それがですね…」

 

こうして俺は大人のフラットに言葉を少し変えつつ、レフ教授について、これから起こることについて説明し、何か良い案を貰おうと考えた。

 

 

 

「成る程ねー、そのレク教授が天道君の入るコフィンを爆破しようとしてるわけだね!」

 

「レフ教授です、フラットさん…それで何かいい案ありませんかね?」

 

「うーん爆弾が仕掛けられてる場所が分かればいいんだけどねー…確かに難しいね」

 

やっぱり大人のフラットでも駄目か…これはどうにもならないかもしれない。こうなったらカルデアに行くのをバックれるしかないかもしれない。

 

「はぁ…先にサーヴァントを召喚できればいいんだけどなぁ…」

 

その時、大人のフラットがサーヴァントという言葉を聞いて目を輝かせた。

 

「え?サーヴァント?!サーヴァントってあの『聖杯戦争』の奴だよね!」

 

「はい、その奴です。でもサーヴァントは今度行く所じゃないと召喚できないんですよ」

 

「へぇ、そうなんだ…ねぇ、その召喚の術式知ってる?」

 

…まぁその程度なら原作を見ているから知っている。魔法陣は…時計塔の書物を漁ればなんとかなるだろう。しかし、大人のフラットは何故こんなことを聞くのだろうか?

 

「はい、知ってますよ」

 

「なら、そのサーヴァントを先にここで召喚しちゃえばいいんだよ!」

 

なるほど…って、ええええええ!?何を言っているんだこの人は…要するに大人のフラットはカルデアに行く前にでサーヴァントを召喚してしまおうとしているのだ。この案は俺も考えたが魔力源である聖杯やカルデアの英霊召喚システムがない為、断念した案である。確かに『天才馬鹿』と呼ばれていたフラットならサーヴァント召喚式ありますと言えば、提案するかもしれないと思っていたが…

 

「…そんなことできるんですか?」

 

これが出来たら願ったり叶ったりなのだが、まぁ現実は甘くないよな…

 

「できるよ!」

 

…できるんだ。

 

 

 

 

それから、天道は大人のフラットと話し合い、キャスターのサーヴァントを召喚することになった。召喚するのに最適な霊脈を探し、魔法陣を描くのに1日を有した。

 

「――これが魔法陣だね!さて、俺もサーヴァント見たいし、頑張りましょうかね!『介入開始(ゲームセレクト)』」

 

彼がそう唱えた直後、召喚に使う魔法陣が光り始めた。そしてその魔法陣が改造(ハッキング) され始める。俺はこのフラットが扱う「混沌魔術」に唖然とするしか無かった。

これが、エスカルドス家が1800年かけてようやくたどり着いた「大望」なのかと。

これが、俺が逆立ちしても到達することができない「天才」なのだと。

 

「『観測終了(ゲームオーバー)』はい、終わったよ!」

 

天道がフラットの凄さを実感していると、改造(ハッキング)を終えた大人のフラットが天道を呼びにきた。

 

「あ、ありがとうございます」

 

俺は大人のフラットにお礼を言うと、当人は複雑な笑みを浮かべた。

 

「それでなんだけど、多分サーヴァント自体は召喚できると思うんだ。でも代わりにそのサーヴァントの命令権らしい令呪が最大2画になっちゃったんだ…ごめんね」

 

成る程…それで複雑な表情をしてたのか。まぁカルデアに行けば令呪は補充できるし、問題ないだろう。

 

「いえいえ、全然大丈夫ですよ!では早速召喚してみますね!」

 

「うん、頑張って!」

 

大人のフラットに応援されながら、俺は詠唱を開始した。

 

 

 

「『素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。

  降り立つ風には壁を。

  四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。』」

 

 

詠唱を始めると空気が一気に重くなる。

 

 

「『閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

  繰り返すつどに五度。

  ただ、満たされる刻を破却する』」

 

 

魔力の渦によって木が騒めき、木葉が舞う。

 

 

「『――告げる。

  汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

  聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ』」

 

 

光が魔法陣中へ吸い込まれる。

 

 

「『誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者。我は常世総ての悪を敷く者』」

 

 

…そして、数々の偉業を成し遂げ、人々が思う英雄が今ここに、顕現する。

 

 

「『汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――』」

 

詠唱を終えた瞬間、魔法陣は光を束ね、解き放った。成功だ、サーヴァントの召喚に成功したんだ!このことに俺と大人のフラットは笑みを浮かべた。後は、召喚に応じてくれたサーヴァントと契約するだけだ、どんなサーヴァントとで会えるだろうか、楽しみで仕方がない。

 

 

 

…できればメフィストフェレストはやめて欲しいな。多分爆破する側になりそうだから。

 

 

そして、光が収まっていき、その中から一人の影が近付いてきた。その姿は可憐で、美しい女性だった。彼女は俺の目の前まで来ると夢魔の如き笑顔で語りかけてきた。

 

 

 

 

 

 

「――ごきげんよう、異界のマスター。 私はマーリン。 花の魔術師マーリンという。 キミの旅路を見守り微笑む、見ての通りの綺麗なお姉さんさ♪」

 

 

 

 

 

 

プロトマーリン来ちゃったよ…




という訳で人理修復はプロトマーリンと共に、開始です!
因みに私は1万円貢ぎましたがプーリン当たりませんでした。


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プロトマーリン

誤字脱字報告ありがとうございます。めっちゃ助かってます。


「…君がマスターだね?」

 

プロトマーリンは妖艶な瞳でこちらを覗いてくる。その瞳は俺の全てを見透かされているように感じた。そして10秒ぐらいだろうか。俺を見続けていたプロトマーリンが口を開いた。

 

「――うん。君をマスターとして認めよう。今から僕は君の手足となる、よろしく頼むよ、マスター!」

 

「…あぁ、よろしく頼むよ、マーリン。天道健だ」

 

 

なんだかよくわからないが天道はマスターとして認められた様だった。しかし、何故プロトマーリンが出てきたのか、そもそも何故マーリンが召喚出来たのか、と沢山の疑問が溢れてくる。

 

「うわぁ凄いね!こんな美人を召喚するなんて天道君やるじゃないか!」

 

 

フラットはプロトマーリンを見てはしゃぎつつ、俺の背中をバンバン叩いてきた。痛いですフラットさん…

 

「いやぁ君にそう言って貰えるとお姉さんも嬉しいよ、えっと君の名前は?」

 

「フラットです!」

 

「フラット君。君はいい性格してるね、気に入ったよ!」

 

「えへへ、ありがとうございます!」

 

なんか秒で仲良くなってるし…魔術の天才同士、波長が合うのだろうか?…

と言うかプーリンは俺が召喚したんですけどー

 

そう思いながらフラットを睨みつけているとマーリンはそれを見てクスクス笑っていた。

 

「おやマスター、もしかして嫉妬しているのかな?大丈夫だよ、お姉さんはマスターの英霊(もの)だ!」

 

と揶揄ってくる始末だ。いやー性格悪い!流石グランドクソゲフンゲフン…

 

「あははははは!!!ごめんね天道君!話し込んじゃって」

 

――フラットまで笑ってくる。絶対に許せねぇ、ドン・サウザント!

 

「あ、やばい…じゃあ僕もそろそろ行くね、これから先生と会わなきゃいけないんだ!召喚儀式、楽しかったよ!またどこかで会おうね!」

 

そう言い残しフラットは去っていった。先生とはウェイバーの事だろうか、もっと色々聞いてみたいことがあったが、もう本人はいない。本当に嵐の様な男だった。

 

そして俺は待っててくれたプロトマーリンと向き合う

 

「マーリン、いくつか聞きたいことがあるんだがいいか?」

 

ここでさっき疑問に思っていた何故マーリンが召喚出来たのかについて聞いてみることにした。

 

プロトマーリンによると、今召喚に応じてくれたプロトマーリンは天道も知っている通り、別世界のマーリンだった。なのでそれとは別に、この世界にはちゃんと男のマーリンが居るらしい。だから居ないはずの私はサーヴァントとして現界できる。と言われた。

 

つまり…

 

 

 

この世界には男のマーリンが居るんだから女のマーリンが居る訳がない

 

     ↓

 

女のマーリンは存在しない

 

     ↓

 

存在しないということは実質死んでいる

 

     ↓

 

サーヴァント擬似現界 V

 

 

 

 

と言うことらしい。

 

 

――なんということだ。屁理屈じゃないか!これにはもう流石としか言いようがない…なんでもありだな単独顕現…

 

「さて、マーリン。早速お願いがあるんだけど…」

 

ここで本来の目的であるレフ爆弾の回避、ついでに人理修復について話してみた。

 

「爆弾の件ならお姉さんに任せてくれたまえ!人理は…後から考えるとするよ♪」

 

と、人理修復の件については濁されたが、爆弾の心配は無くなった。やったね。これで安心してカルデアに行けるようになった。

 

気持ちを切り替えた天道は早速人理修復に向けての活動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

「――あ、マーリンはファーストオーダーが始まるまで霊体化生活だからね」

 

「な、酷いじゃないか、鬼!悪魔!陳宮!」

 

…本当に大丈夫だろうか?なんかプロトマーリンが陳宮のネタを言っていた様な気がするが、聞かなかったことにしようと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人理継続保障機関フィニス・カルデアは南極の標高6,000メートルの雪山の地下に作られた地下工房である。その正体は「人類の未来を見守る」という名の下に、極秘で英霊と人間を融合させるデミ・サーヴァントの実験を行なっていた施設だ。

 

この施設に天道が来てから一ヶ月、いよいよこの時が来たようだった。今日はファーストオーダー開始日である。ラプラスとトリスメギストスを使い、2015年までの歴史には存在しなかった“観測できない領域”である過去の特異点を発見し、カルデアはこの特異点を人類絶滅の原因と仮定し霊子転移(レイシフト)を行い特異点を破壊する事により未来を修正するための作戦を開始する日である。しかし、レフ・ライノールの手によって、その作戦は崩壊する事になるが――

 

 

(…マーリン、霊体化生活も今日で終わりだ。…ちゃんと守ってくれよ?)

 

(分かっているとも。いやぁ、この一ヶ月は暇だったからね、存分にやらせてもらうとも!)

 

天道は霊体化したプロトマーリンとコミュニケーションを取りながらベンチでお茶を飲んでいた。

 

天道は今、これから起こることに、恐怖していた。

 

いくら魔術で守ってくれる、大丈夫だ,と思っていても、爆破に巻き込まれるという恐怖が外れない。自分が爆弾の上で横になるというのが怖くない筈がなかった。

これにはプロトマーリンも(こればかりはしょうがない、我慢してくれ)としか言えなかった。

 

 

 

そんな時、声を掛けてくれた人物がいた。

 

 

 

 

「――おや、大丈夫かい?緊張しているのかな?」

 

 

 

 

キリシュタリア・ウォーダイム。

 

 

 

現カルデアAチームの一人であり、後にクリプターと呼ばれる一人だ。

 

「いえ、大丈夫です、ありがとうございます…」

 

強がって大丈夫だということを伝えると、キリシュタリアはそれを見透かしたのか、俺に語りかけてきた。

 

「我々は霊子転移(レイシフト)が初めてだ。勿論私にだって恐怖はある、でも人理を守る為には、恐怖を押し込む忍耐力が必要なんだ。我々人類に恐怖を無くせというのはナンセンスだからね」

 

なんていい奴なんだ…特に接点もない俺に対してもカウンセリングをしてくれている。同時に俺はキリシュタリアのその後が脳裏にちらついて、心が痛んだ。なんとかして、Aチームも救えないのだろうか。

 

(それは無理だね、理論上は可能だけど、…此処が新しい特異点になっても知らないよ?)

 

プロトマーリンは容赦なく現実を突きつけてくれる。そう、彼らを救うことはリスクがデカすぎるのだ。それ故に、今は彼らを救わない。キリシュタリアに言われた通り、ここは耐えなければならない。この言葉を胸にしまい、俺は返事をする。

 

「ありがとうございます、今の言葉で気が楽になりました。キリシュタリアさんも頑張って下さい!」

 

「うん、お互い頑張ろう」

 

「キリシュタリア!行くぞ!」

 

「あぁ!それではね――」

 

こうしてカドックに呼ばれたキリシュタリアは俺の所から去っていった。

 

まさかの人物から激励の言葉を貰った俺は覚悟を決めて、時間を掛けつつ、ゆっくり立ち上がる。

プロトマーリンは待ってましたとばかりに俺に声を掛けた。

 

(心の整理は終わったかい?)

 

「あぁ、バッチリだ…マーリン、俺らも行こうか」

 

(うふふ、了解した、マスター)

 

こうして俺らもファーストオーダーに向けて、移動を開始した。

 

 

 

 

――全ては、俺がこの後爆発で死n…いや、人理修復の為に…!




とりあえず連続投稿は終了です。
冬木編からは自分のペースでゆっくり頑張って行きますので、今後もよろしくお願いします!


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炎上汚染都市 冬木
霊子転移開始ィ!


誤字脱字報告、ありがとうございます。遂に冬木編スタートです。
フォントとか新しい試みをしてみたんですけどできてるかどうか不安です。(出来てませんでした。降参!)


「…時間通りとは行きませんでしたが、全員集まったようね。特務機関『カルデア』にようこそ。私はここカルデアの所長を務めているオルガマリー・アニムスフィアよ。これより、ファーストオーダーについての概要を説明するわ!」

 

管制室に集められた俺たち、四十七人のマスターはオルガマリー所長からファーストオーダーについての説明を受けていた。

 

大体話している内容は分かっているので、今はこちらの情報を整理しようと思う。

 

まず、俺の一つ前の列にいるAチーム。

 

キリシュタリア・ヴォーダイム

 

オフェリア・ファムルソローネ

 

スカンジナビア・ペペロンチーノ

 

カドック・ゼムルプス

 

芥ヒナコ(ぐっちゃんパイセン)

 

ベリル・ガット

 

デイビット・ゼム・ヴォイド

 

彼らはクリプターとなり、後にぐだ男たちの前に立ちはだかる存在だ。しかし先程プロトマーリン言った通り、彼らを救うことは出来ない。救った場合、こちらが特異点になってしまうかもしれない為だ。グットラック、どうか頑張ってくれ…

 

次に、最前列にいる我等が主人公。ぐだ男こと、藤丸立香だ。数いたマスター候補の中から、数合わせとして呼ばれた一般人。俺はこいつと共に人理修復をするのだ。…多分。

 

何故多分なのかって?それは俺というイレギュラーが生き残ってしまった場合、藤丸立香が霊子転移(レイシフト)を行わない可能性があるからだ。しかし、この世界でもマシュと一緒に管制室へ入って来ていたので、その可能性はほぼないと思っていいだろう。そして、もう一人――

 

パァン!

 

 

…おっと、今のは痛い。

 

藤丸が所長の平手打ちを食らったようだ。

 

そして平手打ちを食らった藤丸はそのままマシュに連れられていった。…この平手打ちが無かったら藤丸は生き残れないからな、寝るだけで爆発から逃れるとは、ラッキーボーイだぜぃ!

 

…さて、後はレフ・ライノールだ。彼は席の一番後ろで腕を組みながら所長の話を聞いている。この時既に爆弾をセットした後なのだろうか、後ろからでは表情が読み取れなく、不気味でしょうがない。

 

――実はこのファーストオーダーが始まる前に、先にレフが爆弾テロしようとしてるとオルガマリー所長に暴露しようとした時があった。しかし、いざ話そうとしたときレフの目が鋭くなり、何か変なことを言ったら先にお前を消してやる…という風に笑顔で訴えてきた為、断念したのだ。

 

なので爆弾テロを実行されるのは間違いないのだが、今回はプロトマーリンがついている。全てをお前の思い通りにはさせないぞ!

 

「…以上で説明を終わります。何か質問は…無いみたいね。それでは、各自、配置について」

 

整理が終わった時に丁度説明が終わった様だ。さて、俺も指定の位置に向かうとしよう。

 

このファーストオーダーは、Aチームが特異点Fへ先に行き、俺らB〜Dチームは安全が確保されるまで待機ということだった。俺は、自分と同じ番号が書いてあるコフィンまで辿り着き中に入った。

 

これから、レフ爆弾をこのコフィンの中で喰らわなければならない。

 

(気分はどうだい?)

 

(最悪だ。爆破される身になってみろよ!)

 

こんな時でもプロトマーリンはいつもの調子で話しかけてくる。だがそのお陰で緊張もほぐれている。

 

(なに、何度も言うけど心配はご無用だよ。冠位(グランド)の資格を持つ者として、君に使えるサーヴァントとして、天道健、君を守ることを誓おう)

 

 

 

『霊子転移まで、あと10秒、9、8…』

 

 

 

(…ありがとう、マーリン)

 

 

 

 

心の準備は出来た――

 

 

 

 

 

 

さぁ!爆発でもなんでも来るがいい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…5、4、3、2、1、霊子転移(レイシフト)開始、冠位指定(グランドオーダー)、起動します』

 

 

 

 

 

 

システムが起動した瞬間、自分の視界は突如として放たれた光に覆われていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――あれ?

 

 

 

 

 

 

 

――俺は…どうなった?

 

 

 

 

 

 

 

 

――ここはどこだ?

 

 

 

あれから何分経ったのだろう。気がつけば、俺は真っ黒な空間にいた。見渡す限り何も無く、ただ暗黒の空間が広がっているだけの空間だった。

 

 

 

霊子転移(レイシフト)直後にこの暗闇の空間…まさか俺はレフ爆弾で死んでしまったのか!?何しろ体があるという感覚がない。

 

 

――クソっ!失敗したのか、俺は!

 

 

 

「…スター、マスター!」

 

 

 

 

プロトマーリンの呼ぶ声が聞こえる。だけどもういい、もう俺は死んでしまったのだから…今更どうこうしても無駄だ

 

 

――ごめんな藤丸、人理修復頑張ってくれ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――いや勝手に死なないでもらえるかな?マスターはちゃんと生きているよ」

 

 

 

 

ほらね、生きてるって…え?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――俺生きてるの!?

 

「勿論生きているとも。僕がしくじると思ったのかい?」

 

――思ってしまいました。申し訳ございませんでした。…というか、生きてるんならこの空間は一体どこなんだ?

 

「あぁ、ここはマスターの頭の中…夢みたいなものさ、マスターが中々起きないから、可愛いお姉さんがこうして直々に起こしに来てあげたのだよ」

 

――なるほど、道理でマーリンが…いやいや、なんで頭の中にマーリンがいるんだよ!

 

「夢魔ですから」

 

よく分からない返答をされた。分かったことといえば、このサーヴァント(プロトマーリン)には常識が通用しないということぐらいか。

 

「とにかく、はやく目を覚ますと良い、もう霊子転移(レイシフト)は終わっているからね」

 

このなんと。ということはぐだ男とマシュの超感動シーンを見ることが出来なかったのか…凄く残念だ。だが、今はとりあえず起きるとしよう。特異点Fが俺を待っている。

 

 

…しかし、これどうやったら起きれるのかが全く分からん…マーリン、どうしたらいい?

 

 

…。

 

 

いないんかい!クソッ!どうしたものか。…スーパーサ◯ヤ人になるみたいに力を溜めてみれば、ここから脱出できるかもしれない、うおおおおおおおおおおおお!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

「――ここは?」

 

どうやら無事に起きれたらしい。俺はいつの間にここに倒れていたのか…そう思いながら周りを見回してみると、そこには 文 字 通 り の 地 獄 が広がっていた。

 

建物は崩壊し、草木は無く、これがこの世界だと主張する様に、炎があたり一面に燃え広がっている。

 

この光景(地獄)を見て固まっていると、いつの間に実体化したのか、プロトマーリンが後ろから話しかけてきた。

 

「無事に起きたみたいだねマスター。さぁ、ここからが本番だよ」

 

 

まるで物語の語り部の如く、彼女は俺に言い放った。

 

 

 

 

 

「これが最初の特異点――」

 

 

 

 

 

「特異点F、『炎上汚染都市 冬木』さ」




プロトマーリンのキャラが未だに掴めていません助けて


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聖遺物を漁ろう

誤字脱字報告ありがとうございます!
今日も連続投稿です。疲れた…


「これが最初の特異点、『炎上汚染都市 冬木』さ」

 

プロトマーリンに言われてようやく理解した。これが特異点なのだと。

 

藤丸立香はこんなのをを7つも攻略したのか…今までゲームの中の世界だからか実感が湧かなかったが、現実になると嫌でも実感が湧く。…俺は本当に人理修復できるのだろうか?

 

俺の中で藤丸の株が上がった瞬間だった。

 

「思い詰めるのは良いのだけれど、周りにも目を配って欲しいね。囲まれているよマスター」

 

人理修復のことで悩んでいたときにプロトマーリンのその一言で意識を周りに向けると、俺たちは大量の骸骨に囲まれていた。

 

「うわぁ…気持ち悪い。マーリン、初戦闘だけど…いけるね?」

 

「ふふっ、仕方ないなぁ君は。任せたまえ!」

 

そう言いつつ、マーリンは杖で二回床を叩いた。その瞬間、骸骨共、プロトマーリンが作り出したであろう翼が付いた魔力弾によって撃ち抜かれていた。

 

え?

 

「はい、ご苦労様。さぁて、どちらに進もうか?」

 

「ちょっと待ってマーリン。あの骸骨共を一撃で倒したのか?!」

 

「その通りだけど…何か不満かい?」

 

プロトマーリンはさも当然のように返答した。嘘だろ?マーリンこんな強かったのかよ…

グランドクソ女郎とか言ってすいませんでした。

 

 

 

 

「いや、予想以上だったよ。ここらへんの骸骨は任せていい?」

 

「えー、お姉さん疲れちゃったなー、パスしていいかい?」

 

 

 

 

 

 

前言撤回。働け、畜生!

 

 

 

 

 

 

 

「それで、何故マスターは空き家に侵入して物を物色しているんだい?」

 

「誤解する言い方はやめろ!それはだな…これを入手するためだよ」

 

俺たちは、ある物を探すために大きいお屋敷。遠坂邸(爆心地)に来ていた。そして俺の手には赤いペンダントが握られている。これを見れば、俺が何をしたかったのかが分かるだろう。

 

そう、サーヴァント、エミヤを召喚するのに必要な触媒。凛のペンダントである。FGOをプレイしていた頃から思っていたことの一つに、特異点で触媒用意すれば簡単に好きなサーヴァント呼べるんじゃないか?という物があった。今までなら妄想をして終わっていたのだが、今回は別だ。だって現地にいるもんね!と言うわけで、ウキウキで触媒を回収しに来たのだった。

 

 

――決して空き巣ではないぞ!

 

 

「やっぱり空き巣ではないかい?」

 

「ちがーう!…そうだとしてもここには人がいないし、何より人理修復っていう使命があるんだから、少し多めに見てもらわなきゃ」

 

「まぁ家の物色は勇敢なる者の特権だからね。そういうことにしといてあげよう」

 

なんとかプロトマーリンさんにご理解頂けた。と、言うことでこのペンダントは回収させて貰った。

 

「それで、次はどうするんだい?個人的には、もう一人のマスターと合流することをオススメするよ」

 

プロトマーリンの言う通りなので、俺らは藤丸たちを探すことにした。

 

俺らが来てまだそんなに経っていないから大橋あたりだろうか?そう思った俺が川に沿って藤丸達を探そうとした。が、移動中に骸骨共と戦っている藤丸たちを運良く発見できた。

 

しかし、まだマシュも戦闘に慣れていないのだろう。苦戦しているように見えた。

 

 

――ここで藤丸達にリタイアされてしまっては困る。

 

 

そう思った俺はプロトマーリンへ指示を飛ばしていた。

 

「マーリン、助けてやってくれ」

 

「やれやれ、こういうのは柄じゃないんだけどなー」

 

そう言いつつ、プロトマーリンは杖を回転させ渦を作り、骸骨共に向けて放った。当然、骸骨共は避けられるはずもなく、渦に巻き込まれ、木っ端微塵になっていった。流石できる女だ!

 

「あ、あなたは!天道健!それに…そのサーヴァントは一体なんなの?」

 

オルガマリー所長は俺を幽霊を見たような顔をしながら話しかけてきた。それもそのはず。死んだと思っていた奴が平気な顔をしながら戻ってきて、しかもサーヴァントまで連れていたのだ。俺がオルガマリー所長の立場でも、そんな顔をしてしまうだろう。

 

「はい、天道です、オルガマリー所長。無事で何よりです」

 

「所長。彼等は一体…?」

 

「フォウ?」

 

マシュと藤丸が俺に問いかけてくる。俺は藤丸達を知っているが2人(と一匹)は俺のことを知らないから、自己紹介は必要だ。

 

「俺は天道健だ。よろしく、」

 

「よろしくお願いします、藤丸立香です!」

 

「先輩のデミ・サーヴァントであるマシュ・キリエライトです。よろしくお願いします。天道さん」

 

「フォウ!キュウ、フォウ!」

 

 

 

 

 

 

 

「それで天道健。そのサーヴァントは一体何者?いつ契約したの?」

 

自己紹介が終わった瞬間、オルガマリー所長の質問ラッシュが始まった。所長、目が怖いです…

 

「そ、それはですね…

 

『所長、藤丸君!今近くにサーヴァント反応が確認された!かなり近い位置にいるから注意して!』

 

ここで話に割って入るようにDr.ロマンがら通信が入った。情報が遅いですよドクター…多分そのサーヴァントは俺のサーヴァントです。

 

「そんなことはわかってるわよ!今、天道健とそのサーヴァントと合流したところです!」

 

「どうも、ドクター」

 

『えぇ?!天道君!?生きていたのかい?』

 

ドクターにも幽霊を見たような顔をされた。色んな人に揃って同じような反応をされると俺も悲しくなる。

 

「うふふ、君には私を笑わせる才能があるようだね。君の召喚に応じて良かったよ」

 

それを見てプロトマーリンまで笑ってくる。もうほっといてくれ…

 

「えぇ、生きていますよドクター。なんか文句あるんですか?」

 

『ごめんごめん…それで、天道君の隣にいる美人な女性が君のサーヴァントなのかな?できれば真名を教えてほしい』

 

真名を聞かれたとき、俺が召喚したサーヴァントが性別が違くとも、〈マーリン〉であるという事実に気づいた。これは良い物を見れるかもしれない。

 

「さぁ、ドクターに自己紹介してやってくれ!」

 

俺のとびっきりの笑顔で自己紹介を頼んだ意図をプロトマーリンも理解したのか、プロトマーリンも満面の笑みで自己紹介を始めた。

 

「――うふふ、私はただの花が大好きな綺麗なお姉さん。マーリンお姉さんだよ〜!初めましてだね、ロマニ・アーキマン君♪」

 

…。

 

――凄い破壊力だ。これがプロトマーリンじゃなかったらただの痛いおばさんにしか見えなかっただろう。しかし、プロトマーリンのような絶世の美女がやると、どうも痛々しく見えないのであった。恐ろしや…

 

そして、等のドクターはというと…

 

『うえぇええええぇえ!?マーリン?!マーリンだって…!?この女があの塔に閉じこもって人を観察するしかやっていない引きこもりのろくでなしだって?!嘘だああああぁあ!!!!!』

 

予想通りのリアクションをしてくれた。やばい、吹き出しそう…

 

「酷い…酷いよロマニ君…」

 

「ドクター、初対面の女性にそれはないと思います!」

 

「そうですよドクター!マーリンさんに謝って下さい!」

 

プッ…やばい…面白すぎる…

 

今、俺の目の前では、プロトマーリンが嘘泣きを始め、それを見てプロトマーリンに謝って下さいとドクターに迫る藤丸とマシュという素晴らしい光景が映し出されていた。

 

『ええ…本当にマーリンなのかい?ボクの記憶だとマーリンは確か男と言われている筈なんだけど…』

 

「女性に向かって男だろう?とは最低ねロマニ」

 

「ドクター、それはいけませんよ!」

 

「マーリンサイテイフォウ!」

 

「おぃぉぃぉぃ……ププッ」

 

…流石に可哀想になってきたので、助け舟を出すことにした。

 

「マーリン、あまりドクターを虐めないであげて。ドクター、彼女は本当にマーリンですよ。現実を見てください!」

 

『…わかった。今は一人でも多く戦力が必要だからね…よろしく、マーリン』

 

ようやくドクターもマーリンは女だと認めてくれたようだ。まぁこの世界のマーリンは男なんだけどね。

 

「よろしく、ロマニ君…クスッ」

 

――マーリンはマーリンでそろそろ笑うのをやめて欲しい…




後半はこういうやりとり見てみたなと思ったので書きました。マーリンシスベキフォーウはどうしようか迷っています…
次回、サーヴァント戦です。戦闘描写がうまく表現できるか不安ですが頑張ります!


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怪しい物には触れないでくれたまえ

サーヴァント戦です。夜中に書いたものなので誤字脱字多いかもしれません。


「それで、所長たちは何を?」

 

オルガマリー所長に今何をしているかと聞いておく。この返答で、ストーリーが大体どこら辺まで進んだのかが分かるだろう。

 

「そうね、私たちは今、霊脈地にキャンプを作った後、向こうの教会を調べようと移動していたわ。それに、教会以外にも、まだ調べていない所が沢山あるの。マスターが他にも残っていてくれて助かったわ。貴方には私と藤丸と共にこの特異点Fの調査をするように命じます!」

 

なるほど。順序が少し違うが次の目的地が教会だということは、近いうちにシャドウサーヴァントとの戦闘がある筈だ。

 

「わかりました。協力します」

 

『此方も可能な限りサポートをする。藤丸君も、マーリンがいるなら多分大丈夫だとは思うけど、気をつけて進むんだよ!』

 

「分かりました!」

 

「よろしい、それじゃあ出発しましょう」

 

方針が決まった俺らは教会へと向かうべく、行動を開始した。

 

その後、骸骨と遭遇する事は何回かあったが、シャドウサーヴァントとは合わなかった。このまま終わってくれると良いのだが…

 

その時だった。突然、どこからか鎖が出現したのは。…これは、メデューサの!

 

「…これは、鎖?」

 

「おっと、ストップだよ藤丸君」

 

鎖に触ろうとした藤丸をプロトマーリンが静止させる。ナイス判断だ、その鎖はシャドウサーヴァントであるメデューサの物だからな。そして、獲物が来るのを待っていたかのように、q鎖が生き物みたく動き出し、藤丸の体に巻きついていった。

 

…っておいいい!なんで藤丸捕まってんだよおおお!!!

 

「ガアッ…」

 

「フフフ…あらあら、活きのいい獲物が捕まったこと…」

 

「先輩!!」

 

そしてメデューサがどこからか現れる。これは非常にまずい。下手したら藤丸が死んでしまい、人理修復が出来なくなる。

 

「マーリン、藤丸を鎖から解放してくれ」

 

「やらせはしないわ…!」

 

早速プロトマーリンに藤丸の解放を指示するが、それを好き放題させてくれる敵ではない。残った鎖でプロトマーリンの身体を拘束しようとしながら、槍を構え突っ込んでくる。だが、今回はサーヴァントが一騎だけではない。

 

「…マシュ」

 

「はい!」

 

すまない藤丸、マシュを少し貸してもらうぞ。

 

マシュがシールドで槍の刺突をいなしつつ、突進してメデューサを俺たちから距離を遠ざけた。

 

「マーリン」

 

「分かっているとも」

 

その隙に、プロトマーリンは魔力でチャクラムを作り、拘束しようと迫ってくる鎖ごと切断し、藤丸を救出した。

 

「ケホッ…ゲホッ…」

 

「大丈夫か?藤丸」

 

「はい、大丈夫です…」

 

幸い、命に別状は無いみたいだ。よかった…

 

「所長、藤丸のことをよろしくお願いします」

 

「分かったわ、貴方は早くマシュの援護に行きなさい!」

 

「了解です」

 

オルガマリー所長に藤丸を預けた俺は、メデューサを抑えているマシュの救援に向かった。

 

 

 

 

 

 

「はぁ!」

 

「フフフ、もっと踊りなさい…」

 

マシュは防戦一方だった。それもその筈、メデューサの槍の傷はたとえどんな万能な治癒魔術でも治せない呪いの槍。下手に動けば槍に当たるかもしれない、その恐怖が彼女を縛りつけていたのだった。

 

「防御ばかりでは私を倒せないわよ…それとも、攻撃する余裕すらないのかしら!」

 

このままでは押し切られてしまう。なんとかして、天道さんが先輩を助けるまで持ち堪えなければ…

 

その時、槍の刺突を完全に流せなかったのか、バランスを崩してしまった。

 

「間抜けね…」

 

このチャンスを逃すまいと、メデューサは首を狙い槍を振る。

 

 

 

 

「…すいません、先輩…」

 

 

 

 

衝撃に備えて目を瞑るが、いつまで経ってもその衝撃はこない。

 

 

 

 

恐る恐る目を開けてみると、そこには白いローブの魔術師が槍を杖で防いでいた。

 

 

 

 

 

 

「いやぁ困るよ。この子は僕の物語の主要人物でね、序盤で脱落させるのは、勘弁してもらいたいな」

 

 

 

 

 

 

――プロトマーリンは妖艶な瞳で、メデューサを見つめていた。

 

 

 

 

 

 

――良かった、間に合った…。なんとかギリギリで間に合ったらしい。後数秒遅れていたらゲームオーバーだったね。

 

それにしても、キャスニキはどこにいるのだろうか?流石にあの時出てきても良かったではないか…。

 

「夢魔め…何度も何度も邪魔をしおって…」

 

「それは申し訳ない。私は少々面倒臭い女なのさ!」

 

そう言いつつ、メデューサは槍、プロトマーリンは杖で、近接戦闘を始めていた。…何でキャスターがランサーと近接戦闘を繰り広げられるのかが意味不明だが、男マーリンも良く(エクスカリバー)片手に敵を殴っていたので、プロトマーリンも似たようなものだろう。

 

「そこ、足元注意だよ」

 

「ッ…おのれ!」

 

プロトマーリンは攻防の中、様々な魔術を所々に設置しながら、ダンスを踊っているかのように立ち回る。メデューサは、完全にプロトマーリンの作った舞台に翻弄されていた。

 

「調子に…乗るな!」

 

メデューサは痺れを切らしたのか、設置した魔術を強引に突破してプロトマーリンの懐に入り、心臓を目掛け刺突を放った。

 

「やれやれ、常に冷静にならなければ、気付ける物にも気づけないよ」

 

その瞬間、プロトマーリンの足元に設置してあった拘束魔術によって、メデューサはその攻撃体制のまま捉えられてしまった。その言葉は、まるでメデューサに戦術の授業をしているように感じられた。

 

「とっておきだよ!」

 

プロトマーリンはメデューサの頭上に(エクスカリバー)を出現させて、突き刺した。

 

「うおおおお!!!…」

 

直撃したメデューサは呻き声を挙げながらエーテル化をしていき、消滅した。

 

「敵機消滅を確認しました…。戦闘終了です。マーリンさん、天道さん、ありがとうございました!」

 

「お疲れ様、マーリン、マシュ」

 

「うふふ、ご苦労様♪」

 

こうして無事メデューサを倒すことができたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、教会への調査を中止し、大橋まで戻ってきた。

 

「マシュー!!」

 

「先輩!!!ご無事ですか?!」

 

「あぁ、大丈夫だよ。ごめん、俺のせいで…」

 

「いえ、大丈夫です!私も無事でしたし。」

 

藤丸もプロトマーリンの治癒を受けて、元通りになったみたいだ。後、ここでイチャイチャするのをやめて欲しい…

 

「フォウ!フォウ!」

 

ほら、フォウ君もそう言ってるじゃないか!

 

「フォウさん!どこに行ってたのですか?戦闘中に見掛けなくて、心配しましたよ!」

 

「フォウ!フー、フォウ!」

 

「大丈夫だ。キャスパリーグなら、安全な所に避難して貰ったとも」

 

なるほど、だからいなかったのか…そう言えばフォウ君はマーリン相手にも普通に接しているが大丈夫なんだろうか?

 

(ここのキャスパリーグは私が追い出したわけじゃないからね、問題ないのさ)

 

その疑問にはプロトマーリンが念話で答えてくれた。そうかそうか、なら安心だ。マーリンシスベキフォーウが見られないのは少し残念だけどね。

 

「この後はどうしますか?所長」

 

「そうね、大きな戦闘があったからこれ以上の探索は危険よ。一先ず霊脈地にあるキャンプに戻りましょう」

 

ということで、キャンプに戻ることになった。あれ、誰か忘れているような…

 

「――待ちな、お前さんたち」

 

「…ッ!誰?」

 

――あーこれは…

 

「さっきのは見事だった、小娘は小娘だったが、良い強者もいるじゃねぇか!一丁俺の話を聞いてくれねぇか?」

 

…この声は一体、何ニキなんだ!!!

 




キャスニキが遅れて登場です。
ヒーローは遅れてやってくるってね!


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宝具、展開します!

誤字脱字報告ありがとうございます!
マシュメインです。これすっ飛ばすと色々おかしくなるので丁寧に書きました。


「――俺の話を聞いてくれねぇか?」

 

 

 

謎の声は俺らに話し合いをしようと語りかけてきた。

 

 

「話し合いをするんだったら、まずは姿を見せることね」

 

 

オルガマリー所長は強気に言い返す。俺は正体が分かっているから心配はしていないが、もしこの言葉に怒り、襲いかかってきたらどう対処するつもりだったのか。守るのは俺たちなんですけどね…

 

 

 

「吠えるじゃねぇか!まぁ、そうだな。姿ぐらい見せなきゃな。」

 

 

 

声の主はそう言うと奥の方から堂々と俺らの前に姿を見せた。こんにちは、キャスニキ。

 

「俺はキャスターのサーヴァントだ!今は訳あってあいつらと敵対中でね、暫くの間協力しないかって提案しに来たんだ」

 

『また新しいサーヴァント反応が現れたんだけど…ってあれ?』

 

キャスニキの登場によりドクターもカルデアから通信してきた。…いつもちょっと遅いよな。

 

「…ちょっと、ロマニ。アレ、どう思う?」

 

『うーん。とりあえず事情を聞こう。彼はさっきのとは違ってまともな英霊のようだからね』

 

 

「お、話のわかる奴もいるじゃねぇか。なら、早速話し合いさせてもらおうかね――」

 

 

 

 

ここで俺らはキャスニキと情報交換を行うことにした。カルデア側の事情を説明し、キャスニキからは、ここの特異点ができた経緯、セイバーが大暴れしていること、セイバーにキャスター以外のサーヴァントが倒されたこと、倒されたサーヴァントが聖杯の泥に汚染されたことを説明してもらった。

 

 

「――ということだ、どうだ?」

 

「そう。貴方はセイバーを倒したいけど、一人では勝ち目がないから私たちに協力を仰いだ。そういうことでいいかしら?」

 

さすがだぞ!相手が 言いたいことを バッチリ 理解 しているんだな!

 

「その通りだ、悪い話じゃないだろ?」

 

『そうだね、ボクからはキャスターの話に乗っても良いと思うよ?』

 

「決まりだな!宜しく頼むぜ、あんた!」

 

そう言ってキャスニキ俺の肩をポンと叩いてきた。…え、俺っすか?

 

「おの坊主よりもお前さんの方が魔力が上だからな、一丁仮契約してくれや!」

 

なるほどな。確かに一般人の藤丸より俺の方が魔力は高い。当然の判断と言えるだろう。

 

「おやマスター、モテモテじゃないか」

 

プロトマーリンの茶化してくる。やめてくれやい!

 

「――それにこっちには美人がいるしな!」

 

プロトマーリン目当てでした。

 

 

 

 

キャスニキと合流後、霊脈地に築いたキャンプに戻った俺らは、マシュの宝具を使えるようにするため、特訓を行うこととなった。ただし――

 

 

 

「ほら、姿勢がなってないぞ〜♪えい!」

 

「クッ…はい!」

 

 

 

――教えているのがプロトマーリンなので少し不安だ。

 

 

「あの盾についてなら私が一番知っているとも!」と言い、自信満々に師範役を買って出たのだが…不安だ。

 

 

何故不安なのかと聞かれれば表現がし辛いのだが…とても不安だ。

 

 

 

 

「…っと大体こんな感じかな?後は大きな刺激があると良いんだけどね…」

 

「はぁ…はぁ…はい、ありがとうございます!」

 

どうやら無事終わったみたいだ、あれ?でもマシュはまだ宝具発動できてないよな…

 

「じゃあ後は冬木のキャスター君に任せようかな!」

 

「おうさ!やっと出番が来たな!」

 

やっぱり実力行使なんだな…死なない程度にしてやってくれよ…

 

「さて、嬢ちゃん。味方だからって遠慮しなくていいぞ。俺も遠慮なく、坊主を殺すからよ」

 

「っ…!?」

 

「あなた正気!?この訓練にマスターは関係ないでしょう!」

 

「サーヴァントとマスターは運命共同体だ、何せ、マスターが死んでしまったらサーヴァントを活動できないからね。」

 

オルガマリー所長が反抗的な意見を示すが、プロトマーリンに言いくるめられてしまう。俺も他人事ではない為、意見することができない。

 

「そういうこった、覚悟しろ」

 

「先輩…下がっていてください!先輩の足手纏いには…なりません!」

 

「そうこなくっちゃ…なぁ!」

 

キャスニキは杖を構え、マシュのマスターである藤丸目掛けて刺突を繰り出した。

 

マシュは慌てて藤丸の前に立ち、刺突を防御するが、キャスニキの猛攻は止まらない。一手一手を追うごとにマシュの動きは段々と鈍くなっていく。その光景を見ていくうちに、見るに耐えなくなった俺はプロトマーリンに間に入って貰おうと指示を出そうとした。

 

「マーリン、マシュに加勢して――」

 

「それはいくらマスターの命でも聞けないな」

 

しかし、プロトマーリンは俺の意見に反して動こうとはしなかった。

 

「何でよ!マシュだってあんな苦しそうじゃない!」

 

オルガマリー所長もマシュを助けるべきだと主張する。しかし、この後の言葉に俺らは黙らざるをえなかった。

 

「何故とは、二人の為にならないからだよ。あの盾を使いこなすには、マスターとサーヴァントの心が通じ合わないといけない。ここで割って入っても、不完全に終わってしまうだろうね。宝具の発動は無理だと断言しても良いだろう」

 

そう。ただ信じて見ていろ。プロトマーリンはそう主張した。

 

「――もし、それでも助けてやれというのなら、君の令呪を使うと良い。その時は、私はマスターのサーヴァントとして、あの二人を護り通すことを約束しよう。さぁ、どうするかな?」

 

そうだ、令呪を使えば良い。簡単な話だ、でもそれではマシュが宝具を使えなくなる…。

 

 

 

――俺は、どうする…?

 

 

 

「…天道健、何をしているの?はやく令呪を使いなさい!」

 

オルガマリー所長もそう言っている。

 

 

 

…それでも、俺は――

 

 

 

「…。」

 

 

 

「…それが君の答えだね、うん、よく我慢した。それでこそ、僕が見込んだマスターだよ」

 

 

 

「…ッ!貴方!!!」

 

 

 

そう、俺は何もしないことを選んだ。確かに今助けるのは簡単だ。でも、時には自力で解決した方が良いものもあるのだろうと今思った。人理修復の為にはここを乗り越えなければならない。頑張ってくれ、藤丸、マシュ…

 

 

 

 

 

 

 

「そらそら!このままじゃマスターが先にくたばっちまうぜ!」

 

「ハァ…ハァ…ハァ…!」

 

マシュの体は限界だった。あらゆる角度からくる火弾、そして杖の打撃、それらを守るには休みなしで盾を振り続ける必要があったからだ。プロトマーリンさんたちも動こうとしてくれない。どうやら私だけで、ここを乗り越えなければいけないようだ。

 

「ふん、これで最後だ、主もろとも燃えちまいな!」

 

キャスターさんの魔力が突然上がり始める。…これは宝具が発動する合図だ。

 

――このままじゃ、宝具を発動できないせいで先輩が…

 

どうすることもできないのかと、項垂れると突然声が頭の中に響いて来た。

 

 

(気持ちを全て解放するんだ、その盾はきっとその声に答えてくれるはずだよ)

 

 

これはマーリンさんの声だった。その優しい言葉は、私を行動させるために十分なエンジンになる。

 

 

 

 

 

そう、私は守りたい…みんなを、先輩を、今だけでいい――

 

 

 

 

 

――私にマスターを守れる力を!!!

 

 

 

 

「我が魔術は炎の檻、茨の如き緑の巨人。因果応報、人事の厄を清める杜――」

 

 

 

「――焼き尽くせ、木々の巨人。『焼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)』』!!!」

 

 

 

 

燃える木の巨人が現れ、こちらに向かってくる。これでできなきゃ先輩が死ぬ。そんなこと、させるものか――

 

 

 

 

 

 

 

「あああああああぁぁあああああああ――――!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――その瞬間、燃える木の巨人を巨大な城壁が侵入を防ぐように聳え立つ。そして、巨人と城壁は相殺されたように瓦礫となり崩壊していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…私、今…」

 

 

 

 

「おめでとう、君は、宝具を発動することに成功したんだ」

 

 

 

マーリンさんに抱えられながら、私は自覚した。

 

 

 

 

無事に先輩を守ることができたんだと――




ちょっと頭の中で考えていた構図を全て使ったので、更新遅めになると思います。ごめんなさい。

二週間以内には絶対出します


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冬木の大聖杯

皆さんこんばんは、ようやくボス戦です!
追記:ちょっと題名ふざけすぎたので下方しました…


プロトマーリンとキャスニキよる特訓で無事にマシュの宝具、『仮想宝具 擬似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)』を展開できるようになったことにより、俺たちは冬木の大聖杯を回収する為、大空洞に向かうことになった。

 

「さぁ着いたぜ。この洞窟の先が大聖杯だ」

 

「天然の洞窟に見えますが…これも元から冬木にあったものなのでしょうか?」

 

「…これは半分自然で半分人口ね。魔術師が長い月日をかけて作り上げた地下工房よ」

 

洞窟の中には、所々にコンクリートのようなもので舗装されているところがあった。実際に見てみると本当に大きい。確か、2・300年ぐらい前に作られていたはずだ。俺はそこまで細かな設定は覚えていないが、多分そのぐらいだっただろう。

 

「さて、キャスターのサーヴァント。大事なことを確認し忘れていたのだけど、セイバーのサーヴァントの名前は知っているの?まるで何度か戦ったことがあるような口ぶりだったけど」

 

「…あぁ、知っている。奴の宝具を食らえば誰だって気づくさ、あの(宝具)は余りにも有名だからな」

 

 

ここで、冬木のセイバーこと、アルトリア・ペンドラゴンの真名ネタバレシーンが入る。

 

 

――そういえば、プロトマーリンとアルトリアはどういう関係なのだろうか?世界が違うから、アルトリアはプロトマーリンのことをマーリンと分からないかもしれない。もし、アルトリアに 「敵にマーリンがいる」ということを知られたら、確実に俺らを狙ってくる…

 

――よし、プロトマーリンのことについては黙っておくことにしよう。

 

「その剣とはもしかして、これのことかい?」

 

そう言ってプロトマーリンは、話題に出た宝具(エクスカリバー)を手に持ち、キャスニキに見せた。…何やってんだお前えええ!!!

 

「そうそう、それそれ…って、何でお前さんがセイバーの宝具持ってんだ!?」

 

「それはだね。私がこの剣、約束された勝利(エクスカリバー)に剣の持ち主である、騎士王アーサー・ペンドラゴンの師匠だからだよ」

 

「…なるほど!アーサー王の師匠であるマーリンさんだから、アーサー王の宝具(エクスカリバー)も持ってるということなんですね!」

 

やめてくれ、プロトマーリン!ここのセイバーはアーサーじゃなくてアルトリアだ!

 

「ほう、姉ちゃんはセイバーの師匠なのかい?こいつは驚きだ。もっとはやく協力を仰げばよかったな」

 

キャスニキよ、株を上げないでくれ。マーリンは男女どちらもろくでなしだぞ?

 

「そんじゃ、セイバーは嬢ちゃんと師匠の姉ちゃんに任せるぜ。俺はアイツを止めとくからよ…」

 

キャスニキが振り返ると、そこには弓を構えたエミヤが立っていた。アーチャーが弓を使うとは珍しい。

 

「おうおう、そこの新奉者。相変わらず聖剣使いを護ってんのか、てめぇは」

 

「新奉者になった覚えはないがね。つまらん来客を追い返す程度の仕事はするさ」

 

「ようは門番じゃねぇか。一体何故セイバーを護ってるのかは知らねぇが、そろそろ決着つけようや」

 

いただきました、名シーン。個人的には、この特異点Fの中では一番好きなシーンだ。こんなのを生でみれるとは…俺もラッキーボーイだぜぃ!

 

「なにボサっとしてるんだ、とっとと大聖杯の所まで行きやがれ!」

 

 

 

「…そうね、行くわよ。三人共」

 

 

「「「はい」」」  「――私は数えられていないのかい?」

 

 

 

 

…エミヤはキャスニキに任せて、俺らはセイバーと大聖杯の所へと向かいはじめることにした。

 

 

 

 

 

 

 

「――これが…大聖杯…!」

 

「こんなの…超抜級の魔術炉心じゃない…なんでこんな極東の島国にこんなものがあるのよ…」

 

 

大聖杯がある洞窟の奥に辿り着いた俺たちは、藤丸でも肌で感じられるほどに禍々しい魔力を放っている大聖杯に圧倒されていた。そして、その大聖杯の真前に立ち塞がるように一人の女性が立っている。

 

 

――この特異点の主、セイバーオルタだ。

 

 

彼女は顔だけを動かし、藤丸とマシュを見つめ、口を開く。

 

「――ほう。面白いサーヴァントもいるものだな。それに――」

 

続いて、俺たちに目を向ける。あれ?なんかプレッシャーが増しているような気がするぞ…

 

「――そこの白ローブの女からはあのろくでなしの気配がする。今すぐにでも切り捨てたいほどにな」

 

ああぁああ今思ったことは間違いじゃなかった!!!セイバーオルタは今すぐにでも斬りかかんとする目つきで俺たちを睨んでいた。勘弁してください!

 

「――あれが、騎士王、アーサー・ペンドラゴン。でも…」

 

『あぁ、霊基が変質しているのもそうだが…マーリン。アーサー王の性別も変わってるのだけど…これはどいうことなんだい?』

 

マシュやドクターがプロトマーリンに向けて疑問を放つ。当然だ、伝説で男として語り継がれていた人物は女だったのだから。

 

「そうだね、この世界ではアーサーは女なんだろうね。実際に見て、私もびっくりしているよ」

 

とプロトマーリンは素直に返す。というか、この世界って言っちゃったけど大丈夫なんだろうか?その内バレることではあるが、少し時期が早いんじゃないか?

 

『この世界?この世界って何だい?』

 

「…それは帰ってから説明しよう。ほら、今は目の前の敵に注目しないと」

 

ドクターは当然の疑問をプロトマーリンにぶつけるが、当人は回答を濁した。言ってしまったものは仕方ないから、カルデアに帰還した後でみんなに話そう。

 

「――そうか、貴様はマーリンなのか…」

 

セイバーオルタの殺気が増す。やはり戦闘は避けられないのか…

 

「が、貴様は後回しだ…まずは、その盾の娘からだ。構えるがいい。その守りが真実かどうか、この剣で確かめてやろう」

 

――どうやら後回しにしてくれるようだ。セイバーオルタはマシュを見据えると、聖剣を上に構え、魔力を放出する。

 

「来ます――マスター!!」

 

「あぁ、一緒に戦おう!マシュ!」

 

 

藤丸とマシュは共に盾の後ろで構え、セイバーオルタと対峙する。

 

「ちょっと藤丸!危ないから戻りなさい!」

 

その姿にオルガマリー所長が慌てて藤丸戻そうとするが、セイバーオルタはそれを待ってくれる筈もなく、魔力を聖剣に流し始める。そして――

 

 

 

「卑王鉄槌。極光は反転する。光を呑め――」

 

 

 

 

「宝具、仮想展開します…行きます――」

 

 

 

 

 

 

「『約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)』!」

 

 

 

 

 

「『仮想宝具 擬似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)』!」

 

 

 

 

 

漆黒の斬撃と人理の城壁が重なり合った。

 

 

しかし、城壁は段々と形を崩していった。

 

――何故だ?何故マシュの宝具が押されている!?

 

その理由は、天道という本来の歴史にはいないイレギュラーが合流してしまった為に、藤丸の精神が成長しきっていないというのが原因だったが、天道はその理由には気づかなかった。

 

 

藤丸とマシュの危機を悟った俺は、無意識に藤丸に向けて叫んでいた。

 

 

「藤丸!令呪を使えええぇえええ!!!」

 

 

その言葉を受けた藤丸はマシュに向けて令呪を放つ。解き放たれた令呪は、マシュの身体を包み、マシュの魔力を増大する。

 

 

「…頼む、マシュ――」

 

「はい、見ていてください、先輩――」

 

 

 

「「はあああああああああああああぁああああああ!!!!!」」

 

 

 

令呪により、力を取り戻した城壁は、聖剣の黒い光を呑み込み、斬撃を押し返した――

 

 

 

「くっ…」

 

 

自分が放った光に飲まれたセイバーオルタは、膝をつく。勝負の決着がついた瞬間だった。

そして、セイバーオルタが光に包まれていく。

 

「――フ、聖杯を守り通す気でいたが、己が執着に傾いたあげく敗北してしまうか…結局、どう運命が変わろうとも、私一人の力では同じ末路を迎えるというわけか」

 

「それはどういうことだい?君は何を知っているんだい?」

 

「いずれ知ることになるだろう、異界のマーリン。グランドオーダー――聖杯を巡る戦いは今始まったばかりだという事をな」

 

プロトマーリンの質問にこう答えたセイバーオルタは、エーテル化していった。

 

 

 

「――おう、無事に終わったみてぇじゃねか!」

 

 

その言葉に俺たちは後ろを振り向くと、先程のセイバーオルタと同じく光に包まれているキャスニキが歩いてきた。ごめん、すっかり忘れてた…

 

 

「俺もここで強制退去とは納得いかねぇが、まぁしょうがねぇ。坊主共、あとは任せたぜ!」

 

「キャスターさん…」

 

「よく頑張ったな嬢ちゃん。あんたも中々の強者だったぜ!そしてカルデアのマスター共!次があるんなら、そん時はランサーとして召喚してくれよな!」

 

キャスニキはそう言い残し、座に退去していった。安心しろ、キャスニキはこの後、藤丸に召喚されるさ…多分

 

「お疲れ様、マシュ」

 

「はい!セイバー、キャスター、共に消滅を確認しました。これは私たちの勝利なのでしょうか?」

 

『ああ、よくやってくれた藤丸君、天道君、マシュ!所長もさぞ喜んでくれて…あれ、所長は?』

 

「冠位指定…何故あのサーヴァントがその名称を…?」

 

オルガマリー所長はそうブツブツ呟いている。俺の元の世界でも、その伏線は回収されていないのでとても気になるところだ。さて、俺もこの勝利に浸るとしよう。

 

「お疲れ様、マーリン。本当に助かったよ」

 

「当然だとも、私は大魔術師だからね、もっと褒めてくれたまえ!」

 

プロトマーリンが調子に乗りはじめる。この時ぐらいはこういう調子でもいいと思った。

 

何より、可愛いしね!

 

そんな俺たちの束の間の喜びはある人物の一言で止まることになる――

 

 

 

「――いや、まさか君たちがここまでやるとはね、1匹の死に損ないを含めて、私の計画の想定外にして、私の許容の範囲外だ」

 

 

 

来たな…レフ・ライノール――




次回、冬木から脱出します。
一週間予定が詰まってるので投稿休みます!ごめんなさい!


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帰還

UA一万突破ありがとうございます!これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします!

一週間予定があって書けぬと言ったな、あれは嘘だ。寝る前に時間があったのでちょっとずつ書きました。


「――死にぞこなった二十一番目のマスターはともかく、四十八人目のマスター。まさか君たちがここまでやるとはね。見込みの欠片も無いガキだからと、善意で見逃してしまった私の失敗だったよ」

 

声の主、レフ・ライノールはわざとらしく声を張りながら俺たちを見下していた。

 

「レ、レフ教授!?」

 

『え、レフ教授だって!?まさか彼がこの特異点にいるのかい!?』

 

マシュたち四人はレフの姿見て仰天していた。俺はレフが助かっていることや、彼の正体が魔神柱であることが分かっているので特にこれといった反応は無いのだが、他の人から見れば、[爆弾で爆死したと思っていた人物が、無傷で生還していた]という風に見える。

 

――今思えば、俺と合流した時の四人の気持ちもこんな感じだったのかもしれない。

 

 

「おや、その声はロマニ君かな?君も生き残ってしまったのか。直ぐに管制室に来いと言ったのに――統率のとれないクズばかりで、吐き気が止まらないよ」

 

「…皆さん、下がってください。あの人は、あれは私たちの知ってるレフ教授ではありません!」

 

あまりに今までと明らかに態度が違うレフにマシュは危険だと判断したのか、自分の後ろに付くようにと盾を構え、俺たちを誘導する。しかし、オルガマリー所長は一人、ふらふらとレフの元へ駆けて行った。

 

「あぁ、レフ!あなたがいなくなったら私はこの先どうやってカルデアを守ればいいか分からなかった――」

 

「所長!戻ってください!その男はレフ教授では…」

 

マシュの叫びも虚しく、オルガマリー所長はレフの元へ辿り着いてしまった。ここは俺も止めるべきだったかもしれない。

 

 

「――やぁオルガ。元気そうで何よりだ。君も大変だったようだね」

 

「えぇ、そうなのよレフ!管制塔は爆発するし、カルデアには帰れないし…想定外のことばかりだった!でもあなたが、レフがいれば何とかなるわよね?」

 

「勿論だともオルガ、本当に想定外な事ばかりで頭にくる。特に想定外だったのは――君だよ、オルガ」

 

 

「―え?」

 

 

「爆弾を君の足元に設置したのに、まさか生きているなんてね」

 

ナ、ナンダッテー!ここでレフのカミングアウトが始まる。オルガマリー所長は、自分の肉体はもうとっくに死んでいることを聞いて、膝から崩れ落ちた。

 

「嘘…私は、カルデアに戻れないの?私が…消滅…?」

 

オルガマリー所長の顔は真っ青だ。その時、絶望している姿を見ていたマシュが何かを思い付いたのか、プロトマーリンに言い寄った。

 

「マーリンさん!マーリンさん程の魔術師なら、オルガマリー所長のことどうにかならないんですか?」

 

「な、マーリンだと!?」

 

 

レフはマーリンという名を聞いてギョッとした。マシュの言う通り、プロトマーリンならばオルガマリー所長のこともどうにかなるかもしれない。俺もプロトマーリンなら出来るかもしれないと思っていた。しかし、オルガマリー所長を救うことはできないとプロトマーリンは判断したのだ。何故なら――

 

「すまないね。私は魔術が大の得意ではあるけど、魔法が使えるわけじゃないんだ。彼女の肉体が残ってない以上、彼女を救うことはできないよ」

 

「そんな…」

 

そう、プロトマーリンは魔術師であって魔法が使えないのである。推測だが、オルガマリー所長を救うには第三魔法、『天の杯(ヘブンズフィール)』魂の物質化が必要だと考えている。遺伝子だけ持ち帰り、後からホムンクルスやらを生成するという手もあるが、それだとオルガマリーのそっくりさんになってしまう。なので今の俺らには、オルガマリー所長を救う方法は存在しないのだった。

 

「フ、フハハハハハ!残念だったねオルガ。どうやら最後の希望も消えたようだ!」

 

プロトマーリンの言葉を聞いて安堵したかのように、レフは再び笑い出す。

 

「そうだ、冥土の土産に、今カルデアがどうなっているのか見せてあげようじゃないか」

 

レフが指を弾くと、大聖杯の上の空間が歪み、その中に真っ赤なカルデアスが映し出される。

 

「さぁ、見たまえアニムスフィアの末裔よ。あれが君たちの夢の成れの果てだ――」

 

途端、オルガマリー所長がカルデアスに吸い寄せら始める。このままでは不味いと思い、助けようとは思ったが、俺も、マシュも、藤丸も、その場から動こうとはしなかった。否、動けなかったのである。一歩でも前に出たら自分もカルデアスに引っ張られる、と本能が警報を鳴らしていたからだ。

 

「――さぁ、オルガ、君の宝物に触れるがいい。遠慮なく、無限の死を味わいたまえ」

 

 

 

死の宣告が響く――

 

 

 

「嫌…いや…誰か助けて――」

 

 

 

 

足は動かない

 

 

 

「死にたくない…しにたくない――」

 

 

 

…動かない

 

 

 

「だって私まだ何もしてない!褒められてない!認められてない!――」

 

 

 

…動け

 

 

 

「ヤだ…ヤめテ…いやイやいヤいやイヤイヤイヤイヤ!!!――」

 

 

 

 

動いてくれ…

 

 

 

 

オルガマリー所長の体が、ゆっくりとカルデアスに溶けていくき――

 

――消え去った。

 

 

 

「「「………。」」」

 

 

結局一歩も動かなかった。もしかしたら、助ける方法があったかもしれないのに。…この特異点が消えるわけじゃないので、助けてここで待機してもらうこともできた筈だ。

 

今更こんなことを言ってもオルガマリー所長は帰ってこない。俺は、自分の無力さに絶望していた。

 

 

「アハハハハハハハハハ!!!素晴らしい!君たちのその顔は最高だ!」

 

奥でレフが何かを言っている。そうだ、無力な俺をもっと笑ってくれ。

 

 

「これで終わりだと思っているのかな?お前の番だよ天道健。君もこのカルデアスと一体化する最高の地獄を――」

 

 

――それ以上の言葉は続かなかった。

 

 

 

「『ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ』」

 

 

 

 

無言の詠唱。否、ソレは妖精が語りかけているのかと錯覚させるほどの美しい詠唱を極限にまで圧縮させた末に無音に近くなっただけにすぎない。されど、その詠唱は瞬時に膨大な魔力を束ね、一瞬にしてレフ・ライノールの体を無に返した。

 

 

 

「――僕はね、別にこの物語がバッドエンドになっても構わないんだ。でも、こんな序盤で終わってしまうのは面白くない。だから、手を加えるぐらいはさせてもらうよ。」

 

今の攻撃を放った者がそっと呟く。レフ・ライノールは、プロトマーリンの一撃によりあっという間に倒されたのだった。

 

 

「…!」

 

俺たちはこの事実を処理するのに数秒を用した。

 

「…マーリン。レフは死んだのか?」

 

「死んではないと思う。どこかで生き残っている筈だよ」

 

俺の質問に、マーリンは優しく返す。その華やかさは、先程までの人物とは雰囲気がまるで違かった。

 

そして、その問答が終わるのを待っていたかのように、洞窟が振動し始める。

 

『…不味い、このままじゃ全員生き埋めになるぞ!今からじゃ霊子転移(レイシフト)までに時間がかかる!だからこの洞窟から急いで脱出して!』

 

…そうだ、急いでここから出なければ生き埋めにされてしまう。

 

「マーリン」

 

「分かっているとも、ささ、皆集まって、この洞窟から脱出するよ」

 

魔法陣を展開させたプロトマーリンの元へ俺たちは集まり、無事に外に脱出することに成功した。

 

 

 

 

 

「オルガマリー所長…」

 

藤丸が今は亡き所長の名を呟く。今の気分は最悪だ。

 

ドクターにより、霊子転移(レイシフト)の準備が整うまでの自由時間が与えられた。当然なにかアクションを起こす気分ではないため、そのまま座って待ち続けた。

 

このままぼーっとして何も考えない時間が続けばいいのにと、俺は初めて思った。

 

 

「フォウ!フォウ!」

 

フォウ君も慰めてくれている。なに、元々分かっていたことだ。覚悟はできていた筈だ。

 

しかし、実際に話していて、そこにいた人が突然消えるということが、どれほど辛いのかまではまるで理解していなかった。

 

『…霊子転移(レイシフト)の準備が完了した。皆準備して』

 

霊子転移の準備が整ったらしい。俺たちは出てきた魔法陣の上に乗り、カルデアに帰還した。




…シリアスな展開で終わってしまいました(自分基準)
次回、英霊召喚します!藤丸はニ基召喚します、どんな鯖なのかお楽しみに!


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英霊召喚(正規)

最初の文が全く思いつかずに3日過ごしてました。ごめんなさい。
いよいよサーヴァント召喚します。少し長めです。


帰還した先で待っていた光景は、爆弾の爆発で所々が瓦礫の山となっていた管制室だった。生き残ったカルデアのスタッフたちは、魔術やトンカチ片手に室内を修理している。アプリ内では、爆破された管制室の様子がよく分からなかったが、実際に見てみると相当なダメージを受けているように見える。…よく他のマスターは仮死状態で済んだな。

 

「無事に転移完了だ。藤丸君、天道君、マシュ、お疲れ様」

 

「いやぁ、散らかっていて悪いね。おかえりだ諸君!全員無事に帰ってきてくれてよかったとも!」

 

ここで、ドクターとダヴィンチちゃんが俺たちを迎えてくれた。

 

「えっと…ドクター、彼女は?」

 

「おや、いきなり絶世の美女が登場して驚いたかい?わかるよわかる、でも慣れてくれたまえ」

 

彼女の登場で空気が少し軽くなった気がする。さっきまでの雰囲気が暗すぎたのもあるが、こうして場を和ませてくれる存在はとても大きい。

 

「私はレオナルド・ダヴィンチ。ダヴィンチちゃんと呼んでくれたまえ!」

 

「は、はぁ…」

 

藤丸がダヴィンチちゃんのテンションについていけていない。頑張って慣れてくれ、藤丸。

 

「はい、ストップ。とりあえず色々話したいことがあるだろうけど、今日あった出来事が出来事だから皆疲れていると思う。今日は各自部屋でゆっくりしていてくれ」

 

俺たちの顔を見てドクターは部屋で待機を命じてくれた。藤丸とマシュはその言葉に無言で頷き、管制室からゆっくり出て行った。

 

――俺も相当疲れが溜まっているので、ここは遠慮なく休憩させてもらおう。

 

そう思った俺は、重くなっている足を動かし、自室へと向かった。

 

 

 

 

翌日、俺たち生き残りマスターズは再び管制室へ集合することになった。少し眠気が残っているが、この程度は大丈夫だと思う。

 

「おや、寝不足かい?ダメだねー君は、睡眠はとても大事なんだからしっかり取っておかなくては」

 

プロトマーリンも真っ当なことを言ってくる。が、今回は素直にその助言を聞き入れることはできない。何故なら――

 

「俺が寝不足になってるのお前のせいだろうがー!!!」

 

「なんのことかな?僕はマスターの睡眠を妨害した記憶は無いのだけど…」

 

「夢の中に侵入しといて何言ってんだ!」

 

――そう、プロトマーリンは睡眠中の俺の夢の中に突如現れ、「今回の反省会をしよう!」と言い放ってきたのだ。ふざけるんじゃない。なんで寝てる時間に反省会をする必要があるんだ。そうこうギャーギャーしていたら、いつの間に朝になってしまったという訳でだ。

 

「ほら、自身が歩んだ道を振り返るのも大事だろう?物語も回想というシーンがあるじゃないか」

 

「だからって睡眠中にやる必要ないだろ!はっ倒すぞ!」

 

「倒す?あぁ…僕はこのままマスターに襲われてしまうのか…」

 

「どこまで頭お花畑なんだよ!…もうあっち行けよ!」

 

このままプロトマーリンを置いて管制室まで走り去ってしまいたいと思ったその時、俺の前に救いの天使が現れる。

 

「あ、おはようございます!天道さん、マーリンさん。管制室へ行くんですよね?良かったら一緒に行きませんか?」

 

マシュは笑顔で俺たちに挨拶をしてくる。このままプロトマーリンと一緒に管制室に行ける雰囲気では無かったので、ありがたく一緒に管制室へ行くことにした。

 

 

 

 

 

 

「おはようマシュ、おはようございます天道さん、マーリンさん」

 

「おはよう三人共、昨日はお疲れ様」

 

管制室に入ると、藤丸とドクターが既に集まっていた。ダヴィンチちゃんは、他の職員たちと管制室を修理してる。夜通し作業をしていたのか、ボロボロの状態だった管制室がほぼ修繕されていた。この後お礼を言っておこうと思う。

 

「全員集まったね。 これから、今後のことを話そうと思う。まずは生還おめでとう藤丸君、天道君。君たちには全てを押しつけてしまったけど、それらを見事に乗り越えてくれた、その事に心からの感謝を送る。所長のことは残念だったけど…今は弔う余裕がない。悼むことぐらいしかできないんだ」

 

「「…。」」

 

所長というワードが出てきた瞬間、雰囲気が暗くなる。ドクターはこうなることを分かっていたのだろう。少し間を置いた後、そのまま話を続けた。

 

「いいかい?ボクらは所長に代わって人類を救うんだ。それが彼女の手向けになる。シバで見つけた七つの特異点を修復して、人類の未来を取り戻す。やってくれるかい?」

 

「…はい、やってみせます」

 

当然だ、この時の為に、俺はカルデアに入ったのだから。

 

「頑張ります!」

 

「はい!絶対に成し遂げてみせます!」

 

二人も同じ気持ちのようだ。二人はお互いを見て頷いた後、即答した。

 

「――ありがとう。その言葉でボクたちの運命は決定した。これより、カルデアは全所長、オルガマリー・アニムスフィアが予定した通り、人理継続の存命を全うする。目的は、人類史の保護、奪還。各特異点にあると思われる聖遺物、聖杯を回収することだ。以上の決意をもって、作戦名はファーストオーダーから改める。作戦名は『人理守護指定・グランドオーダー』。我々は、魔術世界の最高位の権限を持って、この作戦を必ず完遂する」

 

「「「はい!」」」

 

やることは決まった。さぁ、七つの特異点が俺たちを待っている、俺たちの戦いはこれか――

 

「――とは言え、今の戦力じゃ正直人理修復は難しいだろう。そこで、新しくサーヴァントを召喚して力を貸してもらおうと思う。召喚する部屋に移動するから皆ついてきてくれ」

 

――あり?タイミング間違えたかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

ドクターに案内された部屋に入ると、そこには前世でも見慣れた光景が広がっていた。青と黒で塗られたドーム状の空間に透明な魔法陣、そう、いわゆるガチャ画面だ。

 

「それでは、これから英霊の召喚を始めるよ。今回は、冬木の聖杯から回収した霊子と、本来藤丸君に支給される筈だった呼符を使って召喚してもらう」

 

早速、ドクターの説明が始まる。今回の召喚では聖杯の霊子と呼符で合計三騎を召喚できるらしい。ここで、どちらが二騎召喚するかという話になったが、俺には既にプロトマーリンがいるということで、藤丸が二騎、俺が一騎召喚するということになった。

 

「質問なのですがドクター、この召喚で触媒は使えますか?」

 

ここで大事なことを聞いておく。これでできないと言われたら冬木で凛のペンダントを回収した意味が無くなるからだ。

 

「え?使えるは使えるけど…天道君は聖遺物を持っているのかい?」

 

「はい、冬木で拾ってきました!ほら、ここのポケットに…」

 

どうやら無事に使えるらしい。よっしゃあ!これでエミヤを確定で…ってあれ?…無い!?

 

「あれ…ペンダントがない…」

 

「ない?ないってまさか…聖遺物を無くしてしまったとでもいうのかい!?」

 

まさかの事態にドクターも藤丸たちもびっくりしている。不味い、やらかした。きっと洞窟を脱出する時に落としてしまったのだろう。俺は計画していたことが全て瓦礫と化したことを察して、膝から崩れ落ちた。

 

「だ、大丈夫だよ天道君。触媒なしでもサーヴァントは召喚できる。気にしなくてもいいんだよ」

 

この哀れな姿を見て、ドクターが慰めてくれた。くそぉ…なんて日だ。

 

「全く、実におっちょこちょいだね君は」

 

プロトマーリンがさらに傷を広げてきた。すんませんでした。

 

「でも、マスターの失態はサーヴァントである私の失敗でもある。今回は特別に私が触媒を用意してあげようじゃないか」

 

そう言ってプロトマーリンは俺に向かって手元に出現させた触媒(エクスカリバー)を此方にポイと渡した。

 

 

 

――いやこれ宝具じゃねぇかああああああ!!!

 

 

「マーリン…これって?」

 

「あぁ、『約束された勝利の剣(エクスカリバー)だよ』。アーサー王確定プレミアムチケットさ、存分に使用してくれたまえ!」

 

え、いいの?これでプロトアーサー呼べってこと!?マジかよ…

 

「あはは…流石アーサー王の師匠だ、やることが違うね…」

 

これには流石のドクターもドン引きである。

 

「流石はマーリンさんです!これなら最高の戦力を期待できます!」

 

「よくわからないけど…流石マーリンさんだ!」

 

藤丸とマシュは感動しているようだ。やめろ、これ以上煽てるとプロトマーリンが暴走してしまう。

 

「…とりあえず、召喚を始めよう。天道君、その剣と呼符をサークルの中へ」

 

ドクターに言われた通りに俺は魔法陣の中に呼符と『約束された勝利の触媒(エクスカリバー)』を置いた。

 

「よし、システムオールグリーン!それじゃあ、召喚システム起動!」

 

「はい!『素に銀と鉄――」

 

 

 

「…天道君?この召喚システムは詠唱は要らないよ?」

 

 

…。

 

 

 

はやくいってよぉ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

召喚システムが起動し、召喚サークルに光が収束する。やがてその光が三輪に増え、光の輪に囲まれた召喚サークルから光の柱が上がった。そしてその中から、一人の英雄が姿を表す。

 

 

 

 

 

「――問おう、貴方が私のマスターか?」

 

 

 

 

 

 

竜の因子を持つブリテンの王、アルトリア・ペンドラゴンがここに現界した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――あれ?プーサーじゃなくてアルトリアが出てきたぞ???どうなっているんだ、マーリン?

 

 

(どうやら、アーサーは此方の世界に来れなかったようだ、だから代わりに此方の世界のアーサーが召喚されたんだろうね)

 

 

念話でプロトマーリンが答えてくれた。なるほどな、つまりビーストⅥはまだ此方の世界に根元していないのかな?それはいいことだ。

 

おっと、アルトリアが黙って俺見ている。早く答えなければ…

 

 

「そうだ、俺が貴方を召喚した」

 

 

「――そうか。サーヴァントセイバー、アルトリア・ペンドラゴン。貴殿の召喚に応じ参上した。これから私はマスターの剣となり盾となる。これからよろしく頼む」

 

 

そう高らかにアルトリアは宣言する。流石は騎士王だ。全ての仕草が完璧だった。

 

「ようこそアルトリア、この世界では私は初対面になるのかな?」

 

プロトマーリンもアルトリアに挨拶(?)をした、なんだろう、嫌な予感がする。

 

「…マスター、このサーヴァントからは何故かろくでなしの気配がします。一体何者なのですか?」

 

「…マーリンです」

 

この瞬間、アルトリアが口を開けて固まった。これ不味いんじゃないの?

 

「マ、マーリンですって!?マーリン、いつの間に性転換したのですか!?それに貴方は今アヴァロンにいるのでは?」

 

アルトリアが混乱し始める。彼女はプロトマーリンに向かって鬼のように質問を飛ばしていた。

 

「マーリンさんが性転換…?」

 

「ん?騎士王はこのマーリンと会ったことがないのかい?そういえば冬木の時も世界がなんとかって言ってたけど…」

 

ドクターたちも困惑している。そういえば説明していなかったな…この問題を解消する為に、俺たちはプロトマーリンについて皆に説明した。

 

「――なるほど、つまりこのマーリンは別世界にいるマーリンなのですね。信じ難い事ですが、大体分かりました」

 

「――まさかこの世界にマーリンが二人もいるとか…世界滅びた原因それなんじゃないかな…」

 

「すいません。説明するのが遅くなってしまって…」

 

とりあえずは納得してくれたみたいだ。一人更に頭を抱えている人物がいるが、とりあえず放置しておこうと思う。

 

「そういう事だからよろしく頼むよ、アルトリア」

 

「はい、マーリンがいるなら心強いです。よろしくお願いします」

 

プロトマーリンとアルトリアが握手を交わす。これなら二人喧嘩しなくて済むだろう。

 

 

 

 

 

 

「…さて、次は藤丸君のサーヴァントを召喚しよう。藤丸君、前へ」

 

 

続いて、藤丸がサーヴァントを召喚する番になった。ドクター曰く、二騎の内一騎は、冬木で縁を結んだサーヴァントが来るだろうという事だ。お、これならちゃんとキャスニキが召喚されそうだ。

 

「よし、召喚システム起動!」

 

 

先程の様に、サークルの中に三つの輪が現れ、今度は光の柱が二つ昇る。無事に二騎召喚できた証だ。

 

その光の柱から二人の英雄が出てきた。その内の一人は…

 

 

「おっと、今回はキャスターでの現界ときたか。ああ、あんたらか。前に会ったな」

 

 

「あ、キャスターさん!また会いましたね!」

 

「お、今回はそっちの坊主がマスターかい?真名クー・フーリン召喚に応じて参上した!」

 

「クー・フーリン。ケルトの大英雄だね。特異点ではお世話になったよ、また我々の召喚に応じてくれて感謝してるよ」

 

ドクターの解説が入る。召喚した一騎は予想した通り、キャスニキだった。まぁ、キャスニキは冬木をクリアした報酬だから簡単に予想できただけなんだけどな。

 

そして、もう一人のサーヴァントが柱から出てくる。その姿が分かった時、俺は思わず固まってしまった。

 

「――真名オデュッセウス、ここに現界した。人類史を救うというおまえたちの大冒険、俺が幾ばくかの力となろう。前へ進むための一歩が、いかに重く苦しいものか……多少は知っているからな」

 

 

「オデュッセウス…トロイア戦争で活躍した戦士だ!こんな大英雄を召喚するなんて…すごいよ藤丸君!」

 

 

なんと藤丸はオデュッセウス引き当てていたのだ。流石にこれは俺も予想ができない。てっきりメデューサやアルトリアオルタが来るものだと思っていた。

 

「流石ですね先輩!このお二人が一緒なら、この先の特異点でも戦い抜けそうです!」

 

「あぁ、そうだねマシュ。二人共、よろしくね!」

 

「おうさ!召喚されたからにゃ全力でやらせてもらうぜ」

 

「光の御子殿の言う通りだ。俺に為せない事は無い。せいぜいやってみるさ」

 

藤丸たちも興奮しているようだ。俺だってオデュッセウスを引いたら興奮する。なんだって宝具カッコいいからね!

 

 

ここで俺は大事なことに気づいてしまう。

 

 

第一特異点前にプロトマーリンにアルトリア、キャスニキ、オデュッセウス――

 

 

 

――これ、過剰戦力じゃね?




次回は感想欄で言った通り設定集を出します!勿論、ただ情報を殴り書きするだけじゃなくて物語があるように工夫しますので期待していてください!


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邪竜百年戦争 オルレアン
ワイバーンは美味しいらしい


カレンFGO実装だって!?小説書いてる場合じゃねぇぞおい!(書きます)


俺と藤丸が新たなサーヴァントを召喚して一週間が経った。

 

この一週間は新しいサーヴァントとのコミュニケーションや戦闘訓練、新たな特異点の調査等、それぞれが人理修復を果たす為に時間を費やしている。

 

勿論俺たち天道グループもこの一週間、戦闘訓練を行なっていた。

 

 

「はあああぁ!!」

 

アルトリアの聖剣がプロトマーリンの放った魔弾を次々と切り裂いていく。

 

俺とアルトリアはプロトマーリンと模擬戦を行っていた。プロトマーリンが「君は戦闘経験が少なすぎるから、僕が鍛えてあげよう!」と進言してくれたので、アルトリアと共に本格的な戦い方を教わっていた。ただし――

 

「いい太刀筋だね、流石は別世界のアーサーだ!おっと、ビーム注意だよ♪」

 

「な、なんて卑怯な戦い方なのですか!貴方は男のマーリンとは違うと思っていたのですが…マスター、宝具の使用許可を。あのろくでなしに一撃食らわせないと気が済みません!」

 

「…我慢してくれ」

 

――このように訓練というよりかはプロトマーリンに遊ばれている感じがした。一応立ち回り方のアドバイスはしっかり貰える為、文句はあまりないのだが…

 

そう思いつつ、隣を見る。そこには同じように藤丸とマシュ、キャスニキがオデュッセウスと模擬戦を行っていた。

 

「マシュ殿はもっと後ろを信用してもいい。後衛に攻撃を通さないのも盾役の大事な仕事だが、それだけではすぐ自分の身を滅ぼす。なに、味方は歴史に名を残した英雄なんだ。もっと安心して前に出ても良いと思う」

 

「はい!」

 

オデュッセウスは訓練の中、的確に状況を把握して三人へアドバイスをしている。そうそう、俺が心の中で思い浮かべていた戦闘訓練がこれだ。それに比べてプロトマーリンは――

 

「そうだね…一週間前と比べたらだいぶ良くなったけど、もう少し頑張れる筈だよ。もっと敵の動きを観察してもっと頑張るんだ」

 

そう、大体半分ぐらい頑張れというアドバイスだった。全然分からん!マーリンなのに説明下手くそでどうするんだよおい。

 

「成る程…わかりました」

 

――これで分かってしまうアルトリアもアルトリアだった。

 

 

 

『みんな、新しい特異点の場所が分かった。今すぐ管制室まで来てくれ!』

 

ここでドクターからのアナウンスが入る。どうやらようやくオルレアンに行く準備ができたようだ。

 

早速俺たちは管制室に向かうと、ドクターが他の職員たちに指示を出しながら俺たちを待ってた。全員揃っているのを確認したドクターは、簡潔に今回の作戦内容を説明し出す。

 

「よし、全員いるね。今回新たに見つかった特異点は、西暦1413年のフランスだ。正史では、ジャンヌ・ダルクが処刑された年とされている。そこに、大きな歴史のズレが観測されたから、ボクたちはこの時代にレイシフトを行って歴史を修正する。ここまではいいかい?」

 

よし、ここは原作通りで安心した。もしかしたら全然違う所が特異点になるかもしれない心配していたが、どうやら大丈夫だったみたいだ。俺たちが頷くとドクターはそのまま説明を続ける。

 

「じゃあこれからレイシフトを行うんだけど、その前に一つ注意して欲しいことがある。前回の冬樹のように複数人でレイシフトを行えばそれぞれ違う場所に転送されてしまう可能性が高い。契約したサーヴァントとは離れることはないけど戦力は確実に小さくなってしまう。転移が完了したら、お互いが何処にいるかを確認して、合流できそうだったら速やかに合流すること、いいね?」

 

成る程、この人理修復は俺と藤丸、二人のマスターがいるから色々と制約が追加されているみたいだ。此方の戦力的に負けることはないと思いたいが、万が一のとこもある。レイシフト後は速やかに合流するように心掛けておこう。

 

 そうして俺たちはそれぞれコフィンの中へ入り、レイシフトを開始して特異点へと転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レイシフトが完了した俺たちは、草原のど真ん中に立っていた。プロトマーリンとアルトリアは俺の周りにいるが、藤丸たちの姿は無い。どうやらドクターの言った通りそれぞれ別の場所に転移したみたいだった。

 

 

 ――さて、どうやって合流しようか。

 

そう思っていると、通信機が鳴り出し、そこから絶世の美女が空間へ映し出された。

 

『やぁ、ダヴィンチだよ!レイシフトは成功したね、君たちは今、リヨンという町の近くにいる。藤丸君たちはドンレミに転移したみたいだから、ラ・シャリテという町まで移動して合流してもらいたい。大丈夫かい?』

 

ダヴィンチちゃんが地図を見せながら説明してくれた。どうやら俺たちは第五章ぐらいの場所へと転移してしまったらしい。まだリヨンはジャンヌ・オルタ達に襲われていないようなので、ここはとっとと移動した方が良いだろう。

 

「了解、ラ・シャリテまで移動します」

 

『ありがとう、それでは早速移動を開始してくれたまえ!あ、道中ワイバーンが出ると思うからついでに倒して行ってね』

 

そう言い残し、ダヴィンチちゃんは通信を切ってしまった。ついでにと面倒臭いクエストを残して。

 

そうだ、オルレアンといえばワイバーンだったな…

 

そう思い周り見渡すと、野生のワイバーンが何体かで群を組み空を飛んでいるのを見つける。

 

「…ほう、ここにもワイバーンがいるのですね」

 

アルトリアがそう呟く。そういえばアルトリアは竜の遺伝子やらなんかを持っていた筈なので、ワイバーン狩りでは頼りになるかもしれない。

 

「アルトリア、ワイバーン狩りだけど大丈夫?」

 

「はい。ワイバーンは肉は硬いのですがとても美味しいのです。早速何体か狩って調理しましょう!」

 

アルトリアは目を肉に変えてワイバーンに突進していく。え、やっぱり食べるんですか…

 

「やれやれ、流石は空腹王だね。僕もワイバーンを食べるという発想は思い浮かばないよ」

 

プロトマーリンもドン引きしている。俺らが呆けている間に、アルトリアは恐ろしい速度で食材を調達していた。

 

「『風王鉄槌(ストライク・エア)』!」

 

アルトリアが持つ聖剣から、風が吹き荒れる。直撃を食らったワイバーンは真っ二つになりヒラヒラと墜落していく。次々と倒されていく同胞を見て、他のワイバーンたちは逃げ出していった。

 

「このくらいでいいでしょう。マーリン、ご飯の支度をお願いします」

 

「…了解したよ」

 

戦闘が終わったかと思うと、二人は早速食事の準備を始めている。これは藤丸たちと合流するのは先かもしれない…。

 

――その時だった。

 

 

「…!マスター、下がってください」

 

プロトマーリンとアルトリアが急に顔を変え、俺の前で獲物を構えた。その瞬間、狂気を交えた咆哮が大気を震わせた。

 

 

「Arrrrrrrrrrrrrrrrrthurrrrrrrrrrrrrrrrrr!!」

 

 

 

その咆哮の主は、一直線に此方へ駆けてくる。

 

「素晴らしい程の狂気だね…マスター、これが誰なのかわかるかい?」

 

アルトリアもプロトマーリンもその姿だけでは誰だか分からないようだ。彼の宝具の一つ、『己が栄光の為でなく(フォー・サムワンズ・グロウリー)』を使用していからだろう。彼の纏っている黒いもやが、その正確な姿を捉える事が出来なくしているのだ。

 

だが、原作知識のある俺は、その正体がはっきりわかる。そう、先程のアルトリアが放出した魔力だけで此方を認識し、一直線に突撃してくる存在は一人しかいない――

 

「…サー・ランスロットだ」

 

「な…に…?」

 

傷だらけの黒いフルプレートを纏った狂気の騎士が襲来した瞬間だった。




最近忙しくなってきたのでまた時間置くかもです。


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発狂する円卓の騎士

お久しぶりです。活動報告に書いた通り、無事に諸事情も終わったので執筆を再開します!
久しぶりに書いたので色々間違えあると思いますので見つけた時は、そっと誤字報告していただけると助かります、


「そ、そんな…ランスロット卿…どうして貴方が」

 

突如強襲してきたかつての部下に、アルトリアは動揺を隠せなかった。

 

直ぐに自らの剣を抜くが、ランスロットの攻撃に対して、防戦一方になっている。

 

何処からから奪ってきたのだろう。ランスロットは背中に背負った無数の槍を使い、アルトリア()()を狙って攻撃していく。プロトマーリンもこれを良いことに魔弾をランスロットに向けて放っているが、彼はそれを器用にいなしていく。流石は円卓最強と呼ばれているということか。

 

――しかし、アルトリアはZEROの記憶が無いのだろうか?どちらにしろ、このままではアルトリアの精神が壊れてしまうだろう。

 

「アルトリア、このサーヴァントは何かを強制的に付けられてやらされているかもしれない…早く倒して楽になってもらおう」

 

「…分かりました。ランスロット卿、お覚悟を!」

 

ここは無理にでもそういってアルトリアを納得させるしかない。まぁ今のランスロットは、バーサーク属性を足されてバーサーク・バーサーカーになっているので間違ってはいないのだが。

 

「Arrrrrrrrrrrrrrrrrrr‼︎‼︎」

 

アルトリアの動きが鋭くなったのを感じたランスロットは背中に背負っていた槍を両手に装備し、投擲し始める。『騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)』によって強化されたそれは、一つ一つが宝具となる。並の英霊ならば、ひとたまりもない攻撃だ。しかし、アルトリアは持ち前の直感と剣技で槍を撃ち落としていく。この槍では倒せないと感じたランスロットは、雄叫びをあげながら次の手を繰り出した。

 

「Arrrrrrrrrrrrrrrrrthurrrrrrrrrrrrrrrrrr!!」

 

ランスロットは2つの宝具を解除し、右手に漆黒の剣を作り出す。『無毀なる湖光(アロンダイト)』エクスカリバーと同等の力を持つと言われている魔剣。それを大きく振りかぶり、アルトリアに突撃していく。

 

アルトリアは正面から受け止めるが、ランスロットの力に押され始め、再び防戦を強いられていった。

 

「マーリン」

 

ここで、俺と共に、静観していたプロトマーリンに声を掛ける。

 

「うん、これは僕も動くしかないようだね。本当はこういうの性に合わないんだけどなー」

 

そう言いつつ、プロトマーリンは杖で床をカツンと叩く。すると、叩いた場所を中心に花が咲いていった。

 

「それでは、花の魔術士マーリンがナビゲートをしてあげよう。さぁ、別世界のアーサー王よ。君の物語の鱗片、私に見せておくれ」

 

プロトマーリンが手を翳すと、周りに咲いた花から花びらが飛んでいき、アルトリアを包む。『英雄作成』。元の世界ではゴリラ作成とネタにされてきたが、実際には馬鹿にならない(と思う)強さがある。

 

「…!これなら!」

 

プロトマーリンによる力の増量を感じたアルトリアは、風の護りから黄金の剣を露出させる。解き放たれた宝剣は、光を呑み、金色の光を放っていた。

 

「thurrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr!!!!」

 

対するランスロットも、雄叫びをあげながら暗黒の剣を掲げ、魔力を凝縮させる。刹那、大地を蹴り立てて突進した。

 

瞬き一つで間合いを走破し、放たれる一閃。だがしかし、騎士王に迷いはない。限界まで圧縮させた魔力を解き放ちただ一度、振りかざす――

 

 

 

 

 

「はあああああああぁああ!!!」

 

 

 

 

 

アルトリアの一閃が、ランスロットの剣を撃ち落とし、見事に打ち倒した。

 

 

「…素晴らしい、流石だねアルトリア」

 

「はい、マーリンもありがとうございます」

 

アルトリアはプロトマーリンと言葉を交わした後、アルトリアは地に伏しているランスロットに近づく。ランスロットの体からは、光が溢れ出している。既に力を使い果たし、退去をする直前のようだった。

 

「…ランスロット卿。あなたは…」

 

この時のアルトリアは、何故彼がバーサーカーになったのか、誰に操られていたのか等、沢山の疑問が渦巻いていた。

 

「我が王よ…」

 

退去する寸前だからか、狂化が解除されたランスロットはアルトリアに向けて、声を絞り出す。

 

「私は、貴方に…」

 

そう言い残し、円卓最強の騎士は座へと還っていった。

 

 

「――お疲れ様アルトリア、マーリン」

 

この重い空気に、俺はお疲れと声をかけることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――どれくらい時間が経ったのだろうか。沈黙していた俺たちの時間が動き始めたのはカルデアから通信が掛かってきてからだった。

 

『やぁ、さっきは戦闘、お疲れ様。今、藤丸達が凄いスピードでそっちに向かってるから、暫くそこで休んでおくといい。それではね』

 

どうやら藤丸達ともう合流できるらしい。それを聞いた俺たちは、合流する為に広げていた荷物(ワイバーンの肉)を回収し、即座に移動できるよう支度を始めた。

 

 

「…マスター」

 

 

片付けが終わった頃にアルトリアから声が掛かる。

 

「先程のランスロット卿は最後何を伝えようとしていたのでしょうか…」

 

それは小さな疑問だった。あの時の言葉が最後まで聞けなかったのだから、疑問に思うのは当然である。

 

そして、俺はその問いにほぼ完璧に答えることができる。あの言葉の全貌は「私は、貴方に裁いて欲しかった」だと考えている。不忠の罪を犯したにもかかわらず、アルトリアに許されてしまったのが原因で、バーサーカーとして現界していたので、間違いではないだろう。

 

しかし、これをそのまま伝えたら、アルトリアがどんなことを思うのかはわからない。どうしたものかと沈黙していると、プロトマーリンが察したのか代わりにアルトリアの問いに答えてくれた。

 

「多分、彼はかつて仕えた者に剣を向けてしまったことを悔やんでいるんじゃないかな?

 

「…そうですか。はい、もう大丈夫です。ありがとうございます」

 

少し強引だったが、アルトリアは納得してくれたみたいだった。プロトマーリンには後でありがとうと言っておこう。そう思いながらプロトマーリンを見ると、彼女はこちらを見ながら何回もパチパチとウインクをしていた。なんだろう、ムカつく。

 

「他の英霊を強制的に操るとは、許しては置けません。マスター、必ずや元凶を討伐してみせましょう」

 

「あぁ、そうだな」

 

こうして、改めて指揮が上がった俺たちは、藤丸達の到着を待とうと近くの木に腰掛けようとした時、突然大地が振動し始めた。

 

「…!マスター、下がって」

 

アルトリアは非常に不味い事態だと認識し、俺の前に立ち剣を構えた。しかし、隣にいるプロトマーリンは千里眼で迫ってくる物を見たのか、クスクス笑っていた。

 

「マーリン、戦闘前に笑うとは何事ですか!しっかりして下さい!」

 

「いやぁ失敬失敬。見えた物がとても愉快な物だったからね。ほら、見えてきたよ」

 

そう言ってプロトマーリンは前を指差す。…おや、あれは。

 

 

 

なんと俺の視界には、巨大な鉄の馬っぽいなにか(トロイの木馬)がガッシャンガッシャンと音を立てながらこちらに向かって疾走してくる様子が映し出されていた。

 

そしてその上には――

 

 

「ちょ、危ねぇ!もうちょっと乗り心地どうにかならないもんかねこれ!」

 

 

「確かにそうですね、私たちはサーヴァントだから大丈夫ですが…きゃあ!」

 

 

「…あ、居ました!天道さん達です!おーい!」

 

 

「フォーウ!!!」

 

 

マシュとフォウ、キャスニキに聖女様が激しく揺られていた。




何故かシリアスになってしまいました。次回は多分藤丸sideを書くと思います。
3日に1話更新できればいいなーって思いながら頑張ります!


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[side:藤丸]特異点攻略開始!

気がついたら時間経ってました。ごめんなさい。
いやぁ、中々アイデア思いつかないすね…二次創作舐めてました。


俺たちがレイシフトした後に待っていたのは何処までも続く巨大に草原だった。

 

「ふぅ、無事に霊子転移(レイシフト)完了です。先輩、大丈夫ですか?」

 

「うん。ありがとうマシュ。二人もいる?」

 

「問題ねぇ」

 

「俺も大丈夫だ」

 

マシュとクーフーリン、オデュッセウスは無事に同じ場所へレイシフトできたみたいだった。しかし、天道さん達の姿が見当たらない。別の場所へ転移してしまったのだろうか。

 

そう考えていると、腕に装着していて通信機が鳴り、そこからドクターの映像が出てきた。

 

『あー、聞こえているかい藤丸君』

 

「はい、バッチリ聞こえます」

 

『よかった、無事に成功したんだね。自体は把握している。君たちが天道君達と合流するまで、僕がナビをするからそれに従って欲しい』

 

俺は頷いてドクターの指示を待つ。

 

――それにしても、このアニメみたいな物がもうこの世にあるなんて思いもしなかった。これが魔術の力なんだな…

 

そんな事を思っていると、ドクターは地図のような物を見せながら作戦を伝えてきた。

 

『今、藤丸君達は地図の右上、ドンレミって場所にいる。天道君は下の方のリヨンにいるから、ここから南に進んで天道君と合流してくれ。できるだけ早くね』

 

できるだけ早くと言われてもここからだとリヨンまでは結構ある。最低でも1日はかかるんじゃないか?そう思っているとドクターは自分の顔を見て察したのか、その疑問に的確に答えてくれた。

 

『大丈夫、藤丸君と契約しているオデュッセウスはライダーの英霊だ。なにか高速で移動できるのを持っているはずだよ』

 

なるほど、ライダーというクラスなのだから、何か乗り物があるだろうということか。

 

俺はオデュッセウスに目向けると彼は頷きながら答え始めた。

 

「ロマニ殿の言う通り、俺にはトロイの木馬がある。この人数だと定員オーバーなのだが、上に乗ってくれれば大丈夫だろう」

 

そう言うと、オデュッセウスは何もない所に手を振りかざした。すると、どこからか風が吹き始め、光を放った。その光が収まると、そこには超巨大な四足歩行のロボが鎮座していた。

 

「「『「…。」』」」

 

 

他のメンバーやドクターはいきなり登場した自称トロイの木馬を見て固まっている。勿論、俺も例外ではない。

 

「どうだマスター。カッコいいだろう?」

 

オデュッセウスが満面の笑みで此方を見ている。 いや、確かにカッコいいんだけど…いきなりの事すぎて脳が処理しきれていない。

 

どう返答するか迷い空を見上げたその時、俺はトロイの木馬より謎のものを目撃してしまった。

 

「どうしたんだマスター。上に何か…」

 

「二人共、大丈夫ですか?一体上に何が…え?」

 

ここにいる仲間達もこの異変に気づき始める。なんと空にはとんでもない大きさの光の輪っかが浮かんでいたのだ。

 

「こりゃ…すげぇな。何かの魔術か?こりゃ」

 

クーフーリンでもこの現象は分からないらしい。少なくとも、この上空にある光の輪っかは自然にできたものではないという事はなんとなくわかった。

 

『クーフーリンの言う通り、これは何かの魔術である可能性が高い。恐らく、人理焼却の理由の一端だろう。とりあえず、あれはボクが解析するから、キミ達は現地の調査に専念してくれ。』

 

空の画像を見たドクターは、そう言い残すと通信を切ってしまった。恐らく今から解析を始めるのだろう。

 

暫く空を見上げたままだったが、このままでは埒があかない。ここはドクターが言った通り、天道さんとの合流を進めた方がいいだろう。そう思った俺は、早速号令をかける。

 

「よし、それじゃあみんな、オデュッセウスのロボに乗って天道さん達がいる所へ合流しよう!」

 

「はい!」

 

「了解した」

 

「おうさ」

 

「フォウ!」

 

 

 

 

 

 

――ん?フォウ?

 

 

 

 

 

「フォウさん!?また付いてきてしまったのですか!?」

 

「フォーウ…ンキュ、フォウ…」

 

どうやらフォウ君がまた一緒にレイシフトしてしまったらしい。フォウ君は申し訳無さそうに縮み込んでしまった。

 

「まぁ、来ちまったもんはしょうがねぇんじゃねぇか?きっちり守ってれば問題はないだろ」

 

「はい、そうですね。フォウさん、離れないでくださいね!」

 

「フォウ!」

 

クーフーリンのおかげで、フォウ君は事なきを得たようだった。

 

「それじゃあ、今度こそ出――

 

「…!ちょっと待ってください!フランスの斥候部隊がいます。今、あのトロイの木馬?で移動するのは危険です」

 

マシュが指を挿しながら静止してくる。その方向を見てみると、確かに鎧の着た兵士が何人か確認できた。しかし、あの兵士達は何かと戦っているようだが…

 

「お、アイツら、女と戦ってやがるな。ありゃサーヴァントか?」

 

クーフーリン曰く、フランス兵達は、金髪の女性と戦闘を行なっているらしかった。目を凝らして見ると、そこには複数の兵士の攻撃を防いでいる女性の姿が確認できた。

 

「どうする、マスター?」

 

オデュッセウスが俺に問うてくる。俺は答える前に走り出した。

 

「あの襲われてる人を助ける!お願い!」

 

 

 

 

「――わかった」

 

刹那、先程まで戦闘していた兵士が一斉に倒れ込んだ。代わりに、兵士のいた場所には黒い板のようなものが浮いているのが見える。先程の声の主、オデュッセウスが手をあげると、その板は彼の周りに飛んでいき、背中の鎧に装着されていった。え、ファ○ネルじゃん。

 

「峰打ちだ、安心しろ、マスター」

 

そう言って、オデュッセウスは残された女性の方へと歩いていった。俺は慌ててその後をついていく。

 

――訓練の時は素手で戦っていたから分からなかったが、実際にはあの時より何倍も強いんじゃないか?

 

先程の戦闘。いや、蹂躙は暫く俺の頭の中で繰り返し再生されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あの、ありがとございました。私はルーラー。ルーラーのサーヴァント、ジャンヌ・ダルクと申します」

 

 

なんと、助けた彼女はあの聖女ジャンヌだったらしい。この事実にマシュは口を開けて驚いていた。

 

「え!?まさかあのジャンヌ・ダルクですか?しかし、今回の年代からは貴方が亡くなってからまだ時間が経っていない筈で直ぐの召喚は…あ、すいません」

 

「構いません。それよりも、お願いがあります」

 

彼女、ジャンヌ・ダルクは改まって俺たちに頭を下げてきた。

 

「頭をあげてください!俺達のできることなら、手伝います!」

 

俺は直ぐに承諾する。困っている可愛い人を助けるのは当たり前だ。…それに、この時代の人だから事情に精通しているかもしれない。

 

「…ありがとうございます。お願いというのは、私と共に戦って欲しいのです。今、この時代で起こっている事、倒すべき敵の情報、全てをお話しします」

 

そして彼女は、この時代で何が起きているのかを語り始めた。

 




少し長くなりそうなので、もう一話藤丸の話をやります。次はいつ出せるだろう…がんばります!


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