鬼のいる間に平穏を (秋一文字)
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一話

初めまして。一文字と申します。
頭ん中にアークナイツのネタが迸って来たのでつらつらと。
危機契約が遅々として進まにゃい…。


龍門近衛局の休憩室。無機質な部屋に幾つかのソファや家具があるだけの簡素なこの場所で、吸っていたタバコの紫煙をゆっくり吐き出す。

 

「あれ、分隊長?」

 

座っているソファの後ろから、聴き慣れた声が耳に届く。振り返ってみると、意外そうな表情をしたループス族の青年がいた。

 

「おぉ、PC682913じゃねぇか。なんだ、何か用か?」

「いえ、分隊長が此方にいらっしゃるとは思ってませんでしたので。今日は非番では?」

「あー…。そうだったんだけどな。ウェイ長官から直々に呼び出し食らったんだよ。」

「…また何かしでかしたんですか?」

 

またとはどういう事だろうか。まるで俺がトラブルメーカーみたいな言い方じゃないか。

いやまぁ、たまに建物壊すよ?でもあれちゃんと理由あるからね?こないだのアレも粘着爆弾とか凶悪極まりない武器使ってるシチリアン供が悪い。

だってそんな方法で攻撃してくるとは思わないじゃん。寧ろビル一棟で済んだだけ御の字だと思うんだ。

 

「違ぇよ。今日の10時にロドスの奴等が来るから、俺に部屋の警護しろっつー仕事。」

「…製薬会社が我等龍門に何を?」

「下っ端の俺が知るかよ。もしかしたら医薬品のセールスかもな。」

「いやそんな事でわざわざ長官が対応される訳ないし分隊長かなり上の方じゃないですか…。」

「冗談だよ。」

「知ってます。」

 

ふと壁に掛かっている時計を見てみると9時20分を指していた。そろそろ向かうか?…これ吸い切りたいなぁ…。

ウェイ長官はそこまでだがチェン隊長は時間に滅茶苦茶煩いんだよなぁ。…うん、やっぱ行こ。

タバコの火を消して灰皿に入れ、ソファ横の壁に立て掛けた二つの盾に手を掛けつつ、名残惜しそうに重たい腰を無理矢理立ち上げる。

 

「んじゃ、俺は行くわ。また飲みにでも行こうや。」

「ええ是非。分隊長、お疲れ様です。」

「おう、お疲れ。」

 

盾同士を接続させ一つにし、片手を空けて休憩室のドアを開ける。

面倒くせぇけど仕事だしなぁ。…あ、休日手当出んのかな。いや出てもらわんと困るけど。

 

 

ーーーーーー

 

 

眼下に龍門の街並みが見える廊下を歩いていると、総督室の前に二人、話をしているのが見えた。

枝分かれした緋色の二本角。同じ緋と白のツートンの長髪。低いのによく通る特徴的な声。

厳しく、慎重な龍門の最高権威ウェイ・イェンウーその人が対面に立つ鮮やかな緑髪を靡かせ、独特な形をした盾を持ったひどく長身な鬼族の女性ーーホシグマと何か打ち合わせをしているようだ。

 

「おお、来たかツチグモ。休みなのに済まないな。」

「いえ、お気になさらないで下さい。」

「ありがとう。ホシグマには今しがたもう伝えたが、直ロドスからの者が来る。迎えにはチェン隊長が向かっているので、君達にはこの部屋の警護をお願いしたい。彼女が連れて来る者、それ以外は誰も通さないように。」

「了解致しました。」

「では…。」

「そちらにいるのはミスター・ウェイとお見受けしますが。」

 

突然の声に振り返ると、そこには黄緑がかった髪と服装をしたフェリーンかヴァルポ族らしき女性が立っていた。

 

「何者だ。此処は関係者以外立入禁止の筈だが。」

「失礼しました。私はケルシー。ロドスの者です。」

 

そう言って、ウェイ長官の前に立ち塞がった俺達に、ケルシーと名乗った女性はIDカードを見せて来る。それには確かに、『ロドスアイランド ケルシー』と書かれていた。

 

「付き人が居たはずだが。」

「ご遠慮願いました。迎えの方はロドスの代表に付いて頂こうかと思いまして。」

「つまり君が先駆け…交渉役だと?」

「はい。」

「それを信じろと?」

「信じていただくしかありません。」

 

その言葉を最後に、ウェイ長官とケルシーと名乗った女性は黙った。盾の接続をいつでも外せるように準備しつつ、成り行きを見守る。すると、さほど時間も掛からずウェイ長官が口を開いた。

 

「分かった。ケルシー君と言ったね、中へ。二人とも、この方は特例だ。お通ししなさい。」

「「はっ。」」

「ありがとうございます。」

 

怪しいには怪しいし、正直通したくないが他ならぬウェイ長官本人が判断されたのだ。俺達のそれ以上の判断は邪魔になるばかりだろう。

盾を下ろし、客人と判断されたケルシーに道を譲る。

彼女は俺達の間を抜け、ウェイ長官と共に総督室に入って行った。

 

「では二人とも、よろしく頼むよ。」

「「はっ。」」

 

総督室の扉が閉められ、再び辺りが静寂に包まれた。俺達は互いの持ち場…扉の両脇に立ち、盾の下部を地面に付けた。

 

「…ー……ーー…。」

「ーーーーー。」

 

中から二人の声が聞こえて来るが、出来るだけ耳を傾けないようにする。正直めっちゃ気になる。

 

「意外だな、ツチグモ。」

「あ?」

「お前、今日非番だっただろう?休みには絶対に動かないお前がこの仕事を引き受けるとはな。」

「うっせ、長官直々じゃなきゃ来ねぇっての。」

「ははっ、そうだろうな。」

 

小声で同僚と談笑しつつ、廊下から見える龍門の街並みに目を向ける。

華美、忌避…様々な形容詞を交々させた結果生まれたようなこの国。ふと明るい部分から目を離せば、スラムが映る。港を向けば、警備隊の光やロドスのものと思しき移動都市が見える。

鉱石病、感染者…日々増えるそれ等を駆除する事は出来るのだろうか…。

ロドスアイランドが何をもたらすのか。目的は何なのか。…………。




はい、っつー訳で原作なら二章の始まりからになります。
考証のために滅茶苦茶ストーリー読み込んでwiki参照しまくったのはここだけの内緒話。
続きはのんびり書いていきます。
さぁ、バグパイプ育てなきゃ。


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二話

さぁさちまちま書きますよー書く書く
長かったり短かったりバラバラになると思いますが、キリ良いところで切ってるだけなので特に意味は無かったりします。


ーーーーーー 半刻後

 

 

未だに総督室で話を続けている長官とケルシー。

中の会話に意識を向けないのも兼ねてたまに俺達も言葉を交わして時間を潰していると、エレベーターの動く音が廊下の先から聞こえて来た。どうやら、ロドス本来の代表が来たようだ。

ホシグマに目配せし、来た事を伝える。彼女も気付いていたらしく、頷いて自身の盾を片手に構えた。俺も盾に両手を通し、接続を外す。

 

「ホシグマ。」

「何だ?」

「どんな種族の奴が来るかで、賭けでもしねぇか?」

「…ハッ。良いね、やろうか。…そうだな、私はサルカズが来るに三万龍門幣。ツチグモ、お前は?」

「大穴でコータスに四万龍門幣。」

 

賭け金が決まったと同時に、エレベーターの到着音が鳴る。

 

「うわぁ凄い!こんなに高いビルがあるなんて!」

 

無邪気な少女の声が廊下に響き、カツカツと歩く音がした。横目に見てみると、背の低い少女が廊下の一面に広がる窓まで近づいて、物珍しそうに目を輝かせていた。

…代表者の娘さんだろうか。チェン隊長がそういう通し方するのは珍しいな。

 

「………。」

「えっと…。ご、ごめんなさ…。」

「ーーロドスもなかなかやるようだな。」

「えっ…?」

 

あーあー、娘さん縮こまっちゃってんじゃん。チェン隊長、相変わらず堅物だよなぁ。

どうせ外で待つ事になるんだから、ちっとくらいはしゃがせてやったってバチは当たるめぇに。

 

「…それは…チェンさん、どうも…ありがとうございます。」

「だがーーチェルノボーグの暴動の後、生き残りは皆狂ったように龍門を目指しているそうだな。奴らも感染者なら分かっているはずだろうに。龍門に来たらどうなるかを。」

 

チェン隊長とコータス族の少女、そしてフルフェイスのヘルメットにフードと怪しさ限界突破一千万点の男だか女だかよく分からん奴の三人が、話しながら徐々に近づいて来る。

…ん?チェン坊?それ子供に話して良い内容なの?結構奥まってるしショッキングじゃない?

目の前に来たチェン隊長が、此方を睨みつけて来る。いや多分本人は普通に見てるだけなんだろうけど。知らん人間からしたら睨んでるようにしか見えんぞ?その表情。

 

「ホシグマ、ツチグモ、ご苦労。」

「「はっ。」」

「こちら、ロドスアイランド代表のアーミヤ嬢。そして、ロドス顧問のドクターだ。」

 

は?

 

「…何だ、どうしたツチグモ?」

「いえ、何も。」

「ーーしつこいようですが、今一度。このままだと、龍門は次のチェルノボーグになるのは確実です。」

「あれは…ケルシー先生……!」

 

まだ脳は整理できてないが、流石はコータス族。耳はとんでもなく良いらしい。…いやいやいや、待て待て待て待て。このお嬢ちゃんが代表?隣のヘルメットマンじゃなくて?

思わず片眉上げちゃったじゃねーか予想外にも程があんだろ。何?そんなに人員不足なの?こんな子供代表に据えるとかブラック通り越してもう認識出来ねえ色だわ。

 

「君達ロドスの交渉役がウェイ長官と会談しているようだ。ここで待っていてくれ。後程案内する。」

 

おいこらチェン坊、サラッと話進めんじゃないよ。後で問い質すからな?

そそくさと総督室に入ってしまったチェン隊長が扉を閉める。すると、後に残された客人二人が小さく息を吐いた。

 

「ふぅ…。チェンさん、とっつきにくいというかなんというか…。」

 

その言葉にフルフェイスマンが頷くと同時に、二人はハッとした表情で口元を押さえた。そして、恐る恐る此方を見て来る。

実際分かる、あの性格治さないと後々いき遅れそうでおっさん心配なんだわ。

 

「あ、あの…す、すみません!悪気は無くて…その…。」

 

二人に向かって苦笑いで首を横に振り、小さく肩をすくめる。

不必要に客人と会話出来ない以上、出来うるフォローと言うとこれくらいしかない。

ボディーランゲージが通じたようで、アーミヤ嬢は改めて頭を下げる。そして、小さな声でドクターとやらに何かを耳打ちしていた。

二人が首を縦に振るのと同時に、総督室の扉が再び開かれた。

 

「どうぞこちらへ。」

 

「賭けは俺の勝ちだな。」

「悪運の良い奴め。」

 

扉が閉められた後、ホシグマの渋面に思いっきりの皮肉顔を返してやった。




はーい、今回は短め。次回は多分結構長くなると思います。
流れ的には原作2-2終了後から2-3の話の幕間的な感じになるかなー
『この作戦が始まる前、龍門では』みたいな。
まぁ、詳しい日にちは決めてないのでのんびりお待ち下さいませませ。


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三話

はい三話です。一文字です。さぁ、きな臭くなってまいりました。


ーーーーーー

 

 

「ーー以上が今日の情報だ。」

「成る程。」

「こりゃまた…。」

 

龍門近衛局の会議室の一つ。チェン隊長、ホシグマ、俺の三人以外おらず、がらんとした部屋の中。

チェン隊長が総督室で公開された情報をまとめた紙に目を通していく。

チェルノボーグの暴動の概要。ロドスの内部調査書。そして、『レユニオン・ムーブメント』と呼ばれる感染者の群の事について。

ざっと読んだだけでもその情報の異常性、特に最後の項目が目を引く。

感染者が結託し、自身等の立場のためと各国に攻撃する。謂わば次代の為の死兵の軍という訳だ。

情報として知ってはいたが、これ程とは…。

 

「…こいつ等、放っときゃ自壊すんじゃねぇのか?」

「そうも言えん。既にチェルノボーグが落とされた事を踏まえ、決して静観できるものではないだろう。」

「小官もそのように思います。ただの感染者の群ではなく、国土を持たない一国の軍団であると見なした方が自然かと。」

「…所詮は感染者だろう?国境に今以上の戒厳令敷いときゃ、奴等は勝手に死ぬだろ。」

「これ以上のものとなれば、そう何年も続けられるものでもない。それに、そういう奴等こそ小さな穴から入って食い潰してくるものだ。」

「……。」

 

そりゃま、そうだが…。

椅子の背もたれに寄りかかりつつ、無機質な天井を仰ぐ。…だとするなら、出来る事は二つに一つ。律儀に穴を虱潰しに一つ一つ探すか、頭を一息に叩くか。

 

「っても、コイツ等に回せる人員なんざそうはいねぇだろ。軍隊並みなら、それこそ中級以上のオペレーターでも居なきゃ話にならん。」

「…そうですね。近衛局だけでなく炎国の各機関に協力を仰いだとしても、回して貰える戦力は数える程になるでしょう。」

「それに関しては問題ない。」

「え?」

「あ?」

 

チェン隊長の意外な言葉に、俺達二人は素っ頓狂な声を上げた。

 

「どこにそんな余裕があんだよ。よしんば俺達が指揮したって、穴は埋まらんぞ?」

「ロドスが協力を申し出て来た。」

 

…おいおい、ただの製薬会社にどんな軍事力があんだよ。チェルノボーグから逃げて来たのだって奇跡に近いだろうに。つか、あんな場所に何しに行ったんだか。ウルサスにセールスついでに観光か?

 

「ロドスの戦力は一企業のそれを遥かに超えて高水準だ。龍門での作戦行動に充分ついて来れる域だと、私は踏んでいる。」

「…チェン隊長がそう仰るのは珍しいですね。何か根拠でも?」

「今朝方、共に戦場へ出た。その時の判断だ。」

 

ほほーん。何に付けてもクソ真面目なチェン坊にここまで言わせるなら、そこは期待しても大丈夫だろうな。

 

「なら、人員はそれで足らそう。で、当面の各自の配置は?」

「ああ。ホシグマ、お前は通常通りの業務を続けてくれ。だが、無線機は常にオンに。」

「了解しました。」

「私はスラムの『巡回』を兼ねて、龍門にレユニオンが既に入り込んでいるかどうかを探る。」

「俺は?」

「ツチグモはロドスに同行して欲しい。向こうの指示に協力する形で監視しろ。」

「…あいよ。」

 

気がかりは残ってるが、異論はない。二人に比べれば、俺の立場が一番動きやすい。それに、下手な警官を付けるより多少なりとも内情を知ってる人間がいた方が効率も良いだろう。

 

「では、各自今日の情報を頭に入れ、明日からの任務に臨もう。」

「「了解。」」

 

資料を持って、先んじて立ち上がったホシグマを見送る。チェン隊長と俺だけになった会議室に、静寂が辺りを包む。

 

「……ツチグモ。まだ何か用か?」

「チェン坊、ロドスの実状はどうなんだ?」

「話した通りだ。」

「嘘付け。まぁ戦力云々はお前の見立てだし、凡そその通りなんだろうが。他は?」

「……。」 

 

チェン坊が黙る。詮索は無駄だと視線が語っているが、敢えて無視して睨み返す。やがて、観念したのか小さく溜め息を吐くと、手に持っていた資料を机の上に置いた。

 

「詳しい内部調査がまだな以上、憶測にしかならないが…。彼女達に、今以上の協力を求めるのは困難だろう。アーミヤ代表や他の者が踏ん張ってるとは言え、維持が手一杯だと思う。…様々な意味でな。」

「だろうな。経験も知識も未熟な子供をマジの頭に据える企業なんざ、ついぞ聞いた事ねぇ。」

「…私もだ。」

「それにあのヘルメットの野郎、ありゃなんだ?」

「ロドスの顧問博士。それ以上は、私にも現状分からん。アーミヤ代表は随分懐いているようだが…。」

「…ハァ、分かった。」

「?」

 

頭に突然話を切り上げた俺への疑問符を浮かべるチェン坊を尻目に、立ち上がって扉へと向かう。

 

「兎も角ロドスに合流次第、一度連絡入れる。」

「…あ、ああ、頼む。」

「それとついでだ。明日、お前が今持ってる俺でも見れる範囲の仕事幾つか回せ。いいな?」

「…何を言って」

「お前最近鏡見たか?疲れてんならそう言え。」

 

返答を聞かずに、扉を閉める。

まぁ正直、後輩上司が先輩部下差し置いてクマ作ってんのは見てられんってだけのお話なんだが。

ふと廊下の時計を見てみれば、まだ夜は始まったばかり。街に繰り出すか、それとも明日以降の事を『彼』に伝えに行くか…。

さて、どうしようかな。

 

「おお、ツチグモか。丁度良かった。」

 

掛けられた声の方へ向くと、ウェイ長官が年老いた鼠を供に連れていた。灰色の林ーーまたの名を『貧民窟の鼠王』。言わずと知れた、ウェイ長官やエンペラーのクソペンギンと肩を並べる龍門のボス格。

そんな彼が、事もなげに近衛局の廊下を歩いている異常事態に、一瞬身体が固まった。

 

「ツチグモ?」

「ああいえ、失礼致しました長官。何か御用ですか?」

「ワシがおるのが、そんなにも意外だったかね?」

「…いえ。大方、ウェイ長官に呼び立てられたのでしょう?」

「ホッホ、お前は相変わらず勘がええのう。」

 

カラカラと笑う鼠王。人の出入りがほぼ無い重要施設じゃなきゃ、今頃上へ下への大騒ぎになってるって自覚あるんだろうか。この爺さん。

 

「明日からの任務についてだが、恐らく君がロドスにつく事になると踏んでいてな。違ったか?」

「いえ、その通りです。」

「では問題ない。…リン、申し訳ないが…。」

「安心せい、最近耳が遠くての。余程の大声でもなければ聞こえんようになってきたわ。」

 

よく言うぜタヌキ爺。ネズミだけど。

 

「…この者を探し出して欲しい。情報に不備が無ければ、恐らく…。」

「分かりました。」

 

そう答え、ウェイ長官が差し出して来た紙を受け取る。

 

「…この任務は、ロドスには悟られないように。必要があればこちらから伝える。」

「はっ。」

 

そう言って、ウェイ長官は会議室の方を見た。

 

「…ツチグモ。チェンは中に?」

「ええ、窓から出て行かない限り、まだ居るかと。」

「フォッフォ!確かに、あの娘御ならやりかねん!」

 

バッチリガッツリ聞こえてんじゃねぇかリン爺さん。嘘吐くなら最後まで通せよな。

 

「ツチグモ、君はこのままリン老人を御自宅までお送りしろ。くれぐれも丁重にな。」

「はい。」

「ではリン、私はこれで。」

「うむ、またいつかな。ウェイ長官。」

 

鼠王に軽く会釈すると、ウェイ長官はチェン隊長の居る会議室へと入って行った。

…仕事、全部肩代わりしてやるか。

 

「ではツチグモ君、よろしく頼むよ。老人の一人歩きは危ないからのう。」

「吐かせリン爺さん。そこらの暴漢より、アンタの方がよっぽど恐ろしいだろが。」




鼠王しゅきぃ…。おっと、いかんいかん。
感想、質問等ありましたらお気軽に感想欄までどうぞ。
感想は本当にモチベあがるので、どれだけつまらないのでも是非是非。
質問も、ネタバレは流石に出来ませんが、支障ない範囲ならばいくらでもお答え致します。

ネタが尽きるまではそこそこの頻度で更新出来るかと思います。お楽しみに。
次回もまだ2-3には入りません(多分)。

ではでは、また次回。


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四話

はい、四話です。ちょっと平穏な回になります。
機器契約24等級で止まってるクソ雑魚ドクターは私です。


ーーーーーー

 

 

陽も沈み切ったこの時間でも、龍門は尚賑やかだ。飲み屋や飯店からは匂いのついた料理の湯気が立ち込め、路地を少し入った所を見れば水商売のキャッチー達が声を高々に客を集めている。

そんな街の様子を横目に、鼠王の隣を歩く。時折、鼠王や俺に気付いた街の人間が声を掛けてくるが、それでもこの喧騒は俺達を蚊帳の外にして続いていた。

 

「…ワシに、何か用があるのではないか?」

 

自分への声に笑顔で手を振り返しつつ、鼠王が此方を見上げて来る。どうやら、案の定此方の用事に気が付いていたようだ。必要のない護衛を引き受けていた癖に、今の今までずっと黙っていたのはこう言う事か。

 

「…明日から、俺達近衛局はスラムに入る。それをアンタに伝えようと思ってた。」

「うむ、それはウェイ長官から聞いておる。」

「…やっぱりか。」

 

この答えも予想の範疇だ。彼と鼠王が一緒に歩いて来た時点で、そんな気はしてた。

だいぶ前から、稀にウェイ長官は散歩や見回りを称して外へ出る事があった。安魂夜の日なんて、夜中にちょっと出かけると言ってたしな。

つーか、あの日はとんでもねぇ一日だった。

昼間は安魂夜の祭の組み立て監視、日が暮れればシチリアンやら龍門マフィアとペンギン共の裏の龍門全体を巻き込んだドンパチ。俺達近衛局も右へ左への大捕物になった。

騒動の最中に爺さんが出て来たと思えば撃たれ、更に混乱が加速。最早安魂などとは言ってられない事態に発展した。

一頻り落ち着いたとは言え、そんな日に供すらつけずに行こうとするもんだから疲れを押して護衛を無理矢理申し出てついて行ってみれば、そこには龍門の頭が勢揃い。ついでにフェンツ運輸の頭目までいた。

頭達の横の繋がりは以前から噂されてたし、鼠王自身からそれとなく伝えられていたがいざ目の当たりにすると何とも異様異質な光景。思わずリン爺さんの護衛とバーの外で愚痴る程度には異常な事態だった。

クソペンギンとアイツの部下、あいつ等マジでいつかシメる。

 

「知ってんなら話は早いな。…ま、そう言う事だから黙認してもらえると助かる。」

「無闇にスラムの者に手を出さんなら、ワシは何も言わん。ああ、帰ったら娘にも伝えておかねばのう。『明日から暫く外で季節外れの花火が上がるが、火が地に付かん限り好きにやらせておけ』とな。」

 

その言葉が終わると同時に、周りで街道を歩いていた一人の脚が早まった。鼠王の娘であるユーシャ嬢に今の伝言を伝えに行くつもりなのだろう。

龍門で知らぬ事なし、それを支えているネットワークは決して緩くない。時の情勢から根も葉もないウワサ、鼠王がその気になれば個人の私生活だって丸分かりにしてしまう。まさに、龍門そのものがリン爺さんの庭と言って差し支えないだろう。

 

「…本当便利だな、その情報網。」

「フォッフォッ。伊達や酔狂で長生きなどしとらんという事じゃ。」

「…………。」

 

そうなって来ると、気掛かりなのは先程長官から渡された任務になって来る。近衛局で爺さんを少し待たせて着替えがてら資料を軽く確認してみたが、その内容は下手をすれば彼の逆鱗に触れかねないものだった。

それをどう説明したものかと思案していると、突然鼠王が立ち止まった。

 

「先程のウェイ長官の任務じゃがな。」

「……。」

「お前が何を頼まれたかは知らんし、知る気もない。じゃが、『それ』に関しては心配するな。ワシが皆を止めよう。何も虐殺が始まるわけではなかろう?」

「…恩に着るよ。」

 

礼を言いつつ横を向くと、何処か優しく笑う鼠王が都会のネオンライトに照らされてまた俺を見上げていた。…こうして見ると、頼りがいのあるただの爺さんなんだよなぁ。ただまぁ、話してる内容とこの人の正体からしてそんな事はまかり間違って天地がフォークダンスを踊ってもあり得ないんだが。 

 

「さて、その代わりと言ってはなんじゃがの。」

「ん?」

「この近くにうんまい魚団子スープを出す店があるんじゃ。晩飯がてら、ちと付き合えい。」

「……分かったよ。」

 

公園の方を親指で指差しながらいつもの好々翁の顔に戻ったリン爺さんへ、とびっきりの呆れ顔を返す。こんな事が代償なら安いものだ。

 

 

ーーーーーー

 

 

「やっとるかね?」

「へぇ。…あっ、どうも。ご無沙汰してやす。」

 

先んじて入ったリン爺さんに続き、暖簾を潜る。屋台の中に入れば蒸された魚やスープの良い匂いが鼻を擽った。何処かと思えばジェイ君の屋台。龍門のガイドブックや料理誌にも載る名店だ。

 

「ツチグモの旦那まで。お久しぶりでさぁ。」

「おう、二ヶ月ぶり。…相変わらず不健康なツラだな?」

「…すいやせん。こればっかりはどうにも…。」

「あぁいやすまん、気にすんな。お前さんが元気でやってんなら、それで良いからさ。」

 

どっからどう見てもその筋の人間にしか見えないが、彼は至極真っ当な龍門市民だ。最初見た時疑ってごめん。その時の詫びがてらに時たま寄っていたが、彼の作るスープはまさに絶品。今となってはあの時の自分の失態を抜きにして、空いた日に通っている。

 

「で、今日はどうされやす?」

「ワシはいつもの。」

「俺もいつものを頼む。」

「へぇ、分かりやした。んじゃ、お二人分のお酒から。」

 

そう言うと、ジェイ君は俺達の前に酒の入ったコップを置いて手際良く料理の支度をしていく。だいぶ間が空いてたのに『いつもの』がすんなり通じるのは素直に凄いと思う。

 

「お前もこの店に来とったんじゃな。」

「ジェイ君のスープは龍門で指折りだぞ?来てない奴の方が少ないだろ。」

「言えとるの。」

「ありがとうごぜぇやす。」

 

料理の手を止めず、ジェイ君は少し気恥ずかしそうに頬を赤らめた。そんな彼を二人してニヤニヤしながら酒を煽っていく。

 

いつもの日常。いつもの終わり。

 

酒で気分を良くしたリン爺さんやジェイ君の他愛もない話で、職場での事は何でもなかったかのようにただの平日の夜は更けていった。

 

酔い潰れた爺さんをおぶって家まで送る羽目になるとは思ってなかったが。

テメェの限界くらいテメェで管理してもらえません?




1000人もの方に見て頂いていて戦々恐々、足腰諤々な一文字です。
アークナイツの人気しゅごい…。
さぁ、次回からついに本編が原作2-3に絡んで来ます。お楽しみに。
んじゃまた次回。


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五話

はいはい、五話です。一文字です。やっとこ危機契約28等級まで行けました。週末が楽しみでネタが降りて来ない日の夜しか眠れない。


ーーーーーー

 

 

同じ龍門でも華美な中央街とは違い、スラムのはいつも薄暗い。まぁ当然っちゃ当然なんだけれども。ともあれそんな場所の入り口に、場違いな人影が固まっていた。俺と同じように重装備な奴から、殆ど何も持たない奴まで。

その中に、昨日見た顔が二人ほど映る。ドクターとアーミヤ嬢だ。彼等の特徴的な見た目は、そう見間違えられるものでもない。

となれば、周りにいるのはロドスの社員か。確かに昨日チェン坊が言ってた通り、これが会社の私兵ならばかなりの戦力になりうるだろう。

 

「失礼。アンタ等、ロドスアイランドの人間かい?」

「えっ?」

 

その場にいた全員が、声を掛けた俺の方を見つめて来た。その向けられた顔を頭の中に記憶しつつ、人だかりの中心部の方を見やる。

此方に気が付いたのか、小さな声で「すいません」と言いながら、人混みをかき分けてドクターを連れたアーミヤ嬢が顔を出して来た。

 

「あ、貴方は昨日の…。」

「龍門近衛局特別任務隊所属、鎮圧分隊長のツチグモだ。昨日ぶりだな、嬢ちゃん。」

 

片手で持っていた盾を足に立て掛けて置き、まだ幼いロドスの代表に敬礼を向ける。するとアーミヤ嬢の後ろにいる一団の何人かが、俺の名前を聞いて驚いたような様子を見せた。恐らくその数人は龍門に出入りした事があるか、龍門出身なのだろう。

それにつけても、そんな驚かれるような事でもないと思うんだが。

 

「では、貴方が私達に協力してくれるんですか?」

「ああ。チェン隊長は別働隊で既にスラムへ入ってる。案内役が居ないなら、俺が先導しようか?」

「ありがとうございます。ですが、情報の一部は彼女達から頂きました。なのでツチグモさんには、現地の詳しい位置関係等を示していただければと。」

 

彼女達?…まさか。

 

「やっほーっ!ツチグモさーん!」

 

嫌な予感が的中した。声のした方を見てみれば、見覚えどころか覚えていたくないルビー色の髪に、その上で白熱灯さながらに光る輪っか。ペンギン急便のトラブルメーカー筆頭、サンクタ族のエクシアが大手を振っていた。

マジか…。マジかマジかマジか…!

渋面かます俺の方へ、ケラケラ笑いながら我が物顔で前へ進み出て来るクソ天使。何度こいつ等の後片付けで苦労したか、何度こいつ等の所為で始末書書かされたか…!

 

「ちょっとちょっとー。久々の再会にそんな顔はないんじゃない?ここは『おお、我が友よー!』とかいって手ぐらい握って肩叩きあうとこだよ?」

「おお友よ。」

「に゛ゃーっ?!いたたたたた!!」

 

お望み通り、戯言並べるアホの耳をむんずと掴んで引っ張ってやる。野良猫みたいな叫び声をあげ…いや、事実野良猫か。ともかく、ジタバタ暴れるさまは見てて痛快だ。

 

「あ、あの…。ツチグモさんとエクシアさんはお知り合いなんですか?」

「いや、ちと違うな。こいつ等の後始末に、何度も駆り出されてるってだけの間柄だよ。なぁ、バカ天使。」

「何かあったら毎回ちゃんと弁償してるじゃん!こんな事される謂れなんか無いと思あいたー!」

「そういう問題じゃねぇんだよなぁ…!」

 

実際、そういう問題ではない。アメ一個運ぶだけでも建物壊したり特別任務隊を引っ張り回す事態に発展させるペンギン急便に対する評価は、俺の中では最早マフィアの下請けと何ら変わらない。

更にタチが悪いのはこいつ等自身、基本的に悪気がない事だ。あのクソペンギンは別として。

最短の道を選んだ結果そこが『何かしらの最重要区画』だったり、邪魔だったので応戦したのが『鼠王の幹部』だったりするだけ。

ここまで来ればエクシア含め、ペンギン急便のメンツは全員が全員何某か悪運の星の元に生まれてきたのではないかと錯覚するレベルに思えてくる。

いい加減叫び声が鬱陶しくなって来たのでエクシアの耳を離すと、耳を押さえながら不満タラタラの眼差しで此方を睨んで来た。文句があるのはこっちなんだがな。

 

「ハァ…。まぁいい。配達は情報だけか?」

「いちちち…。うん、それだけ。」

 

…仕事自体はちゃんしてるのに、何であんなに騒動を掻っ込めるんだか…。

いやもう考えないでおこう。こいつ等の事は考えるだけ無駄だ。

 

「アーミヤちゃん。このバカから聞きたい事はもう聞いたのかい?」

「え、あ、はい!」

 

ならば、追い返しても問題ないだろう。悪い奴らでは無いのだが、潜入やら捜索やらとは対極にいるこいつ等がいては話にならない。

 

「んじゃエクシア、てめぇはさっさと帰れ。暫くは何も面倒を起こすなよ。」

「しないって、信用ないなぁ…。いたたー…絶対後で腫れるやつじゃんこれ。この鬼!」

「至ってその通りだが?あぁそれと、クソペンギンにもさっきの言っとけ。」

 

ガキみたいに舌を出しながら歩いて行くエクシアに釘を刺し、ロドスアイランドの人員に再び向き直る。

 

「突然出て来た上、アンタ等の代表を差し置いて仕切りだして悪かった。だが、アンタ達ロドスの人間の大半は感染者だと聞いてる。多分ウェイ長官からも言われたと思うが、無用な混乱を避ける為に作戦行動中は出来るだけ俺や別働隊のチェン隊長の指示に従ってもらう。ロドスの方針はある程度理解しているつもりだ。何かあればアーミヤ嬢やドクターの意見も踏まえて指示は出す。そこは安心して欲しい。…いきなりの事で戸惑うだろうが、これはアンタ等の為でもある。済まないが、どうか理解してくれ。…作戦内容は、昨日か今朝の内にチェン隊長から連絡が入っていると思う。ここまでで、何か質問は?」

 

多少はどよめいてはいたものの、各自合点がいったのか、ロドスの部隊員達は黙ったまま各々の武器を持ち直した。

うん、よく訓練された良い兵士だ。感染者じゃなけりゃうちに欲しいくらいだ。

…さて、件の捜し人は見つかるかね…?




ペンギン急便のメンツは好きだけど、龍門の特に警察系の人間からしたら感染者とは違う意味で爆弾が歩いてるのと同義だよねな話でした。
余談ですが、ツチグモさんは叩き上げです。
次回もよろしくお願いします。


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外伝 序章

一文字です。今イベント前半完走して無性に外伝書きたくなりました。許して下さい!ちゃんと更新しますから!


ーーーーーー

 

 

「っあ゛ー…。あっづ…。」

 

前後左右、何処を見ても森、森、森。見上げれば燦々と太陽が輝き、俺の体力を容赦なく奪っていく。

此処はサルゴンの熱帯雨林。何故俺がこんな場所にいるかは、数日前に遡る。

 

 

ーーーーーー

 

 

「は?サルゴンに行きたい?」

 

駐留するロドスアイランドの移動都市の食堂で、俺は素っ頓狂な声を上げた。

目の前で座るフルフェイスヘルメットのドクターが、こくんと頷く。

 

「ああ。ガヴィル女史は知っているかい?」

「知ってるも何も、何度か世話になってらぁな。」

 

本音を言えば、世話にはなりたく無いが。あの『治療』と称した怪我人への暴力行為は、龍門の闇医者にかかった方がまだマシに思えてくる。

話を聞いていくと、どうやらそのガヴィル女史が帰郷の為、暇な人員を集めているんだとか。何故俺が。

 

「それで、君にも是非ついて来て貰いたい。良い羽伸ばしになると思うけれど?」

「待て待て待て。俺はロドスじゃなく龍門の預かりだ。例え休みで行くにしても、長官の許可がねぇと外国なんざはなから管轄外だ。悪いけど、他を当たってくれ。」

「そう言われると思って、ウェイ長官からは既に許可を貰っている。後は君の意思次第だ。」

 

何してんだあの人は…。下手すりゃ国際問題にも発展し兼ねない事をそんなあっさり決めてんじゃないよ…!

 

「どうかな?」

「…ッチ、つくづく食えねえヤツだなアンタも。」

「良く言われるよ。」

 

恐らくマジックミラーの下では満面の笑みを浮かべているのだろうドクターに、臆面もなく嫌な顔を叩きつける。

そこまでお膳立てをされていて『行きません』は通用しないだろう。と言うか、ウェイさんが良いと言った瞬間、俺の都合なんて些事は遥か彼方に飛んでいくしか無い。

そんなこんなで、俺はサルゴン行きの慰安旅行(?)に同行する事になった。

ただ行くのは悔しかったので、普段使っている龍門の装備ではなくロドスのものを使用するのと、旅先の物損などの補填は全部ロドス持ちという制約を付けてやった。暴れるつもりは最初からないが、こうでもしとかないと俺の財布が持たない。

 

それから暫くして、サルゴンへと飛ぶ飛行機がロドスから出発した。

…まぁ、後は今の状況からお察しだ。飛行機は謎の襲撃を受けて見事墜落。盾持って落ちてる最中、ブリキを張り合わせたオモチャのような何かが黒煙を吐いていたように見えたが、あれはきっと幻覚か何かだろう。…いや、そうであってくれ。頼むから。

 

 

ーーーーーー

 

 

そして、ジャングルに着地し今に至る。

俺はまぁ、軍役でサバイバルは多少慣れてるが他のメンバーが気掛かりだ。ブレイズや此処出身のガヴィル女史、ケー坊は大丈夫だろうがウタゲ嬢なんかは知識は持っててもそれに耐えれるかどうかは未知数。…クロ坊はどうでも良いや。兎に角、こりゃ何としても早めに合流した方が良さそうだ。

指針が決まれば、行動あるのみ。まずはフィールドサインから探すとしますか。




脳内プロットでは、4〜6話くらいのつもりです。何だこれは、現状更新並みじゃないかたまげたなぁ…。


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外伝 一話

はい、一文字です。ケーちゃん探検やばいですね。いつの間にか一日経ってた。


ーーーーーー

 

 

密林を彷徨ってもうどれくらい経っただろうか。人の痕跡らしき跡を追うものの、一向に里やら人工物は見つからない。ギラつく太陽と熱帯雨林特有の湿気で、一分が一時間にも感じてくる。

こんな中を装備そのままで歩く訳にもいかず、上を脱いで半裸になったは良いものの滝のような汗は未だ止まない。獣やら何やらがいつ襲ってくるか分からないし、盾の接続を外して臨戦態勢でぬかるんだ土に步を進めていく。

この分だと、本格的にウタゲ嬢が心配になって来た。機内でバカンス云々とか言ってたし、この落差で発狂とかしてないと良いんだが。…あの娘のポテンシャルも中々計り知れないものがあるから、戦闘とかは心配ないだろうけど。

ともあれ、まずは自分の事だ。第一に、食に逸れないのはまだ幸いと見るべきか。キノコやら果物はどんな毒があるか分からんから食わないとしても、そこそこの頻度で鳥やら獣には出会う。いざとなれば、そこそこの期間生き残れるだろう。

気を紛らわそうとタバコをポケットから出して火をつける。紫煙が肺を埋め尽くす感覚に、ごちゃごちゃしていた頭が一気に明瞭になった。

…まさか、フィールドサインの選び方を間違えたか?いや、大丈夫な筈だ。現に人の声らしき音が聞こえてくるじゃないか。このままサインを追い続けてれば…。

 

………ん?人の声?

 

気がついた時には身体がその方向へ走っていた。木を避け、草をかき分けた先に、二人の人影が目に映る。

良かった…!

心細くはなかったと言えば、嘘になる。ロドスの連中かはまだ分からないが、とにかく人は人だ。やっと会話が出来る期待とタバコの煙で胸を膨らませて茂みから顔を出す。

 

しかし、期待も虚しくそこにいたのは暗い緑の鱗と太く立派な尻尾をしたアダリスク人だった。

 

「「…!?!?」」

「…あー…。コンニチハ…?」

「「ーーーー!!(テ、テメェ、何者だ!!)」」

 

こんな出現の仕方をした此方に非があるが、二人のアダリスク人は驚いた後、持っていた簡素な作りの石槍を突き付けて来た。

オーウウソダーロマジカーァ。コトバツウジナーイ。サルゴンゴワカンナーイ。

取り敢えず此方に敵意がない事をわかってもらう為に、茂みから体全体を出して盾を地面に置く。しかし二人は槍を構えたまま、警戒しながらゆっくりと俺を左右で挟んだ。

 

「ーーーー!ーー!(何処の部族の者だ!言え!)」

「ーーー!?(祭典の邪魔でもしようってのか!?)」

 

サルゴン語でギャーギャー言われたところで何一つ分からないんだが。頼むから龍門か極東の言葉で喋ってくんねぇかな。おっちゃん殆ど外国行かない人間なんだよ。

どうせ龍門語で話しても通じはしないので、諦めてボディランゲージに徹する事にした。

お前らと俺じゃ言葉が違うこと。俺に敵意は無いこと。俺のように言葉が通じない人間が居ないかを聞いてみる。

 

「…………。」

「………………。」

 

 

「「「……………………。」」」

 

 

さぁ、どうだ…?

 

「「*サルゴンスラング*!!ーーー!!!!(ブッ殺す!!!!)」」

 

でぇーーー?!

マジかよ何が悪かったんだよアレか敵意ないってサムズアップかそれとも指差しか口パクからのバッテンか。

 

「おい待て話だ当たる当たる!話をしようわ危ね!」

「ーーーーー!ーーー!(ちょこまか動くな!一思いに死ね!)」

 

両隣のアダリスク人が、サルゴン語で何かを言いながら槍を執拗に突いてくる。行動から察するに…と言うか察するまでもないが、取り敢えず暴力的な言葉なのは分かった。飛んでくる槍の餅つきじみた応酬を避けつつ、更に話し合いに持ち込もうとするが、アダリスク人の二人は一向に聞く耳を持たない。

 

「いい…加減に…しろ!」

 

あまりに鬱陶しくなってきたので、槍先の下から振り上げ気味に裏拳を叩き込む。

その時、足元に違和感を感じた。いつの間にか、すっかり忘れていた。今いる場所が密林のど真ん中で。今立つ場所がドロッドロの畦道だって事に。

目的通り、両腕はその側に立っていた其々のアダリスク人の石槍を弾き飛ばす。しかし、そのままの勢いを殺し切る事は出来ず、生暖かくて硬い感触が、拳を形作っている手の甲に広がった。

 

「あ。」

「ーーーー!?(ぐわぁっ!?)」

「ー、ーーーーー!!?(な、何だ!!?)」

 

は い 国 際 問 題

 

いや違うんだ俺は殴るつもりなくて石槍吹っ飛ばそうとしただけなんだ信じてくれ。何かお向かいの方から多人数の声が聞こえて来てるけど今度こそロドスメンバーだよないやそうであって下さい。

 

「ー、ーーーー!…ーー、ーーーーーー!?ーーーー!!(な、何だ今の音は!…これは、貴様がやったのか!?よくも同胞を!!)」

 

嘘だろ*極東スラング*が。




はい、つー訳で本編よりもギャグマシマシでお送りします。あー^^気持ちが楽なんだじゃあー^^


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外伝 二話

はい、間が空いてしまって申し訳ありません。ちょっと仕事が忙しいので…。来月入るまでは、少し更新頻度が下がります。ご了承下さい。


ーーーーーー

 

 

いやぁ、どうしてこうなった。

 

「ーー、ーーーー!(族長、この先に美味い肉が獲れるとこがあるんですよ!)」

「ーーーー、ーーーーーー!(馬鹿野郎、族長はきっと果物が食べたいんだよ!)」

「ーー(族長!)」

「ーー(族長!)」

 

いやぁもう、ホントどうしてこうなったのよ…。

盾を背負う後ろに横目を向けると、何十人と顔やらを腫らしたアダリスク人が俺の後をついて来ている。奴等がその視線に気付けば、大歓声が上がる。サルゴン語で。

いくら外国語に疎くたって流石に分かる。…こいつらは俺を新しい頭に挿げたらしい。

あの後、出て来たアダリスク人達はそれまで相手していた二人と同じく俺の身振りをまるっきり無視して吶喊して来た。仕方なくそれを迎え撃っていたら、いつの間にか周りのアダリスク人は俺に頭を垂れていたのだ。正直今でも何でなのかは分からない。

……いや、嘘だ。理由は分かってる。ぶっ飛ばしたうちの一人が何か他のより身体の装飾が多かったから、恐らくそいつが『元』族長かなんかだったんだろう。

んで、俺がそいつを倒したから次は俺が頭と。…どんだけ…どんだけ実力社会だよ…!蛮族此処に極まれりってか…!?

 

「はぁ…。」

「ーーーーーー!(どうされました族長!)」

「ーーーーーーーー!!(腹でも減りましたか族長!!)」

「ーーーー!ーーー、ーーーーー!(違えねぇ!野郎ども、メシ狩ってきて族長に元気出してもらうぞ!)」

「「「ーーーーーー!(うおおおおおっ!)」」」

「うおぃちょ待て待て待て待て!なんか知らんが兎に角違う!違うから!!」

 

よく分からん会話の後、掛け声っぽい雄叫びと共にバラバラに散ろうとしたアダリスク人どもを制止させる。

留まってくれて何よりだが、ただでさえ今の状態を処理し切れてないってのに散開なんかさせたら、もう仕切りきれる気がしない。

もうやだ龍門帰りたい。

らしくもなく弱音を吐きかけたが、ぐっと飲み込む。どうせ吐いたってこいつらには通じないし、助けも来ないのだ。泣きたくなってきたわ。

これが仕事ならまだ精神を落ち着かせられるだろうが、生憎休暇の不慮の事故。多少取り乱してるのはご愛嬌と割り切って貰うしかあるまい。…誰が?

 

「…はぁ。」

「ーーーー、ーーーーーー?(族長、さっきから吸ってるそれは何ですか?)」

 

自分でも訳の分からん自問自答をしていると、俺のすぐ近くにいた元族長のアダリスク人が俺のタバコを指差してきた。

嗜好品が珍しいのだろうか。これだけ草が鬱蒼と生えていれば、タバコ葉くらいそこらを探せば見つかりそうなものだが。

まぁ折角興味を持ってくれたのだ。その期待に応えてやるくらいはいいだろう。

ポケットの箱から新しい一本を取り出して、元族長に手渡す。彼はタバコを受け取ると、興味深そうに丹念に触ったり、色んな角度からしげしげと見つめ始めた。

初めての物で好奇心をくすぐられるのは良く分かるが、埒が明かなそうなので今俺が銜えているタバコを指差す。

意図を理解したのか、元族長もタバコを銜えたのでライターで火を着けてやる。すると、予想通りフィルターから出て来る煙をどうするかアタフタし始めたので、吸い方を実演する。

口の構造からして吸えるのか疑問だったが、杞憂に終わった。上手いこと煙を口の中に溜めて、肺の中に外気と一緒に流し込む。初めてなら咽せるかと思っていたが、そういう事もなく紫煙を一気に吐き出し、元族長は今までになくキラキラした目でこっちを見て来た。こっちみんな。

 

「ーーーーーー!ーーーーーーーー!!(コレ何ですか族長!めっちゃ美味いですね!!)」

 

言葉はわかんないけど気に入りましたか、そうですか。なんか雰囲気でそう感じたので、ぎこちない笑い顔を返しておく。すると、何度かタバコを吸った後元族長は他のアダリスク人の元へと駆けて行った。…まぁ、どうでも良いや。

…さて、この後の身の振り方はどうするべきかね?このままコイツらのねぐらで世話になんのもまぁ…いやいや、それだと龍門の救助がいつ来るか分かったもんじゃないし。やっぱ、ドクターやガヴィル女史と合流するのが最優先と見ておいた方が良いな。どっか人が集まるとこで待ってるのが得策か。

んじゃあ、そこに案内し…て…。

会合所とかそんな感じの所がないか聞こうと後ろを向くと、アダリスク人達が元族長と同じく目を輝かせて列を作っていた。…え?

 

「ーーーー!ーーーーー、ーーーー!(族長!是非我々にも、その美味い煙を!)」

 

え、え…えぇー…。




バトルパートと重要なとこ、後筆が乗ったとこ以外は短めを目指してます。
あ、エイヤ来ました。早速昇進2、特化2まで育てました。育成計画大幅にズレましたが私は元気です。
ツチグモのステに関するアンケートを載せましたので、よろしければお答え頂ければ幸いです。


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オペレーター【ツチグモ】

生存報告を兼ねてツチグモさんのステータス公開。
以前のアンケートの通り、ネタバレ注意です。


基礎情報

 

【コードネーム】ツチグモ

【性別】男

【戦闘経験】龍門所属時で二十年(未確定)、それ以前は不明

【出身地】極東

【誕生日】十月五日

【種族】鬼

【身長】214cm

【鉱石病感染状況】

メディカルチェックの結果、非感染者に認定。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 能力測定

 

【物理強度】卓越

【戦場機動】優秀

【生理的耐性】卓越

【戦術立案】優秀

【戦闘技術】卓越

【アーツ適正】普通

 

卓越?そんな簡単な言葉であいつのしぶとさは表現出来ないだろう。何せ、龍門では首をもがれても二年は生きていられるとまで言われてるんだからな。

ーーチェン

 

お前、人を何だと思ってんだ。普通に死ぬっつの。

ーーツチグモ

 

 個人履歴

 

龍門の中級警視であり、近衛局特別任務隊に所属する古参兵。近衛局に入隊する前の経歴は極東出身という情報以外一切不明であり、更にその入隊時期や理由も曖昧な部分が多い。

曰く、あまりに凶悪な犯罪者だった為、ウェイ長官が密約を交わした。曰く、何百年も前から生きており、極東と龍門の橋渡し役の為に抜擢された。

また、彼自身それ等を肯定も否定もしない。

要人護衛やリスクが大きい犯罪要件、また暴動鎮圧の他、長く軍人を務めていた事からの独自のツテを利用しての情報戦など幅広い領域に高い専門性を持つ。

現在は重装オペレーターとしてロドスに協力しており、現場での戦術指揮支援も行なっている。

 

 

 健康診断

 

造影検査の結果、臓器の輪郭は明瞭で異常陰影も認められない。

循環器系源石顆粒検査においても、同じく鉱石病の兆候は認められない。

以上の結果から、現時点で鉱石病未感染者と判定。

 

【源石融合率】0%

鉱石病の症状は見られない。

 

【血液中源石密度】0.013u/L ーー危険な任務に就く事が多々あるが、感染の兆候は現状見られない。

 

龍門だけではなく、長々期に渡って数多の戦場や仕事に赴いてこの値を維持しているのか?…驚きを通り越して呆れすら出て来るな。

ーーケルシー

 

尚、角があった筈の額部には炸裂したような痕があり、鬼族の象徴とも言える特徴的な角は失われている。

 

 第一資料

 

非常に大柄で、口は悪いが気さくな鬼族。彼らの種族の特性から作戦時は好戦的であるが、長年の経験からなる合理的な判断能力も併せ持つ。

また大の酒好き。ロドスでよく一人飲みをしているが、何時間飲み続けても酔う素振りすら一度も見せていない。

 

 

誰か彼の鯨飲を止めて下さい!飲んでいるのが安酒とは言え、このままじゃいつか酒代でロドスが潰れますよ!

ーー 医療オペレーター N.K

 

あの人凄いよね。あたしも前に飲み比べで勝負したんだけど、どれだけ経っても顔色一つ変えないんだもん。でも次は勝つから!

ーーブレイズ

 

やれるもんならやってみな、黒ドラ猫の下戸娘ちゃん。

ーー ツチグモ

 

 

 第二資料

 

龍門近衛局においての地位は鎮圧分隊隊長と決して高くはないものの、部下や上層部の信頼は厚い。

組織上は直属の上司である筈のチェンやホシグマに対してまるで同等のように話し、また二人もそれを注意する様子がないところからも、彼がいかに長い時間龍門に居て、どれだけの功績を挙げてきたかは想像に難くないだろう。

 

 

 

 第三資料

 

彼の来歴の謎に対し、彼の扱う武器は至極シンプルだ。互い違いの二つの盾はただ重く、厚く、硬い。電磁石で接合して大盾になる点と、彼のアーツを射出する為の小さな穴が頂部と底部に空いているという少々変わった点以外は、前時代的とも取れるほど単純な作りをしている。彼はこの非常に重い二つの盾をまるで手甲のように軽々と扱い、攻撃を弾き、眼前に対峙する敵を殴る。ただそれだけ。ただそれだけなのだ。

その闘い方から勘違いされやすいが、前述した通り彼はアーツが扱えない訳ではない。寧ろツチグモのアーツは敵の足をその場に止めておくにはピッタリだろう。

しかし余程の数の敵が向かって来るか個人の耐久力が高く無い限り、そのアーツを見る前に地に伏す事になる。また運悪く見られたとしても、隙を逃さない彼の盾に叩き潰されるか、援護に回る仲間によっての沈黙を余儀なくされる事だろう。

総じて彼は、まさに理想的な重装オペレーターであると言える。堅固で、倒れず、相対する敵を少しでも長く足止めする。

その盾を何らかの理由で捨てない限りーー。

もし彼が盾を棄てたならーー今のままならばきっとその未来は来ないだろうが。その時は後先など考えず、すぐさまその場を逃げる事を推奨する。決して忘れてはならない。彼は極東の鬼である事を。彼の名が『ツチグモ』である事を。彼がーーーーである事を。

 

ーーウェイ

 

 

 

 第四資料

 

極東出身のオペレーターに訊いても、彼については皆一律に「知らない」か「知らない方が良い」としか言われない。仲が良さそうなオペレーターのホシグマやチェンに問うても同等だった。

気の良い彼からは思いも寄らないほど何か大きな罪でも犯したのだろうか。あるいは、ドクターのように何も覚えていないのだろうか。

しかし、ロドスでの彼の行いには悪意を全く感じ取れない。もしくは狡猾に隠しているのだろうか。

だが我々は彼を信じたい。共に歩む彼を。龍門に居ながら、感染者の未来の為にと躊躇いもなく盾を振るってくれる、彼を。

 

 

 昇進Ⅱで解放

 

【権限記録・機密】

「古代とも取れる程、昔の話です。極東のとある自治区に、『土蜘蛛』と呼ばれる鬼を中心とした一族が慎ましく暮らしておりました。しかし、彼等は極東の中枢に従わず、自分たちの土地を自分たちの手で治めていたそうです。勿論、それを良しとしなかった時の統治者達は、従わぬのなら滅ぼすのみと土蜘蛛一族に兵士を派遣して、彼等を討滅せしめんと図りました。ですが、土蜘蛛一族は殆どが戦闘能力の高い鬼族。彼等が独自に編み出したアーツの力も相まって、さしもの大軍も押しつ押されつの拮抗状態が何年も続きました。そして何年も、何年も長く続いた争いの果てに両軍は互いに疲弊し、最後には相互不可侵の和睦を持って、この長い戦いに幕を下ろしたのです。」

 

「此処までが、彼の一族の成り立ちです。ここからは、彼個人と取り巻いた悲劇の話。」

 

「…二十数年程前の事です。土蜘蛛一族は昔と変わらず慎ましく、静かに暮らしておりました。…ですが、当時の地区管轄者は彼等を完全に沈めようとある策略を講じ、独断で実行したのです。…それは、あまりに非人道的な策でした。ひどく簡潔に言えば、高密度の源石の粉末を含ませた爆薬を、彼等の村に放ったのです。そして源石の飛沫が基準値以下になるや否や『土蜘蛛一族はみな鉱石病に冒されている。疾く討たねばならない。』と声高に防護服を着せた討伐軍を向かわせました。討伐軍が見たのは、急激に進行した鉱石病により、苦しむような体勢で既に源石の塊となって生き絶えている土蜘蛛一族の姿。これでは最早生きている者は居ないと判断した討伐軍は、村をそのままにして退却しました。」

 

「…此処からは父からだけではなく、ツチグモ本人からも聞いた話になります。」

 

「当時出稼ぎに出ていたツチグモは、ニュースで自身の村が壊滅した事を知ったそうです。急ぎ村へ戻っても、そこは最早毒を放つ奇岩が並ぶだけの廃墟。怒り狂い、復讐に走ったのは、彼にとって自然な事だったかと思います。…同じ目に遭っていれば、あるいは私でもそうしていたでしょう。ニュースで『誰』が主犯であるかは明白。彼は真っ先に地区管理者の元へと駆けて行ったそうです。……この先は、もう詳しく語らずとも分かるでしょう。有り体に言ってしまえば管理者の三族、実行部隊、派兵された兵士。謀略に関わった者の悉くを、彼は鏖殺したのです。…中心ではないにしろ都市を一つ、数年間使い物にならなくする程の被害を、誰にも頼らず、ただ一本の武器を使う事もなく、たった一人で齎したのです。」

 

「これで満足しましたか?でしたら、私達はこれで失礼します。ああ、彼の名誉のために言っておきますが、この罪を踏まえても彼は間違いなく良いと分類される人間です。…それはそれとして、今思い出したのですが、古来より極東にはこんな言葉があったのでした。『土蜘蛛とは、未曾有にして不可避の災害である。』…この古事成語をどう取られるかはお任せします。それでは、ご機嫌よう。」

 

ーーフミヅキ

 

ボイス等

 

秘書任命 なぁおい、仮にも部外者を秘書に置くなよ。あ?チェン坊やホシグマもやってるから問題ない…?そう言う問題じゃねぇんだよ!

会話1 俺の所属はあくまで龍門だ。ロドスには、協力はしてもそれ以上はしないからな。

会話2 おい、アーミヤちゃんからまた催促だ。早く終わらせろよ。

会話3 あ?俺の話?聞いたって面白ぇもんじゃねぇぞ。死ぬ時に死にぞこなった、唯の中年だよ。それだけ覚えとけ。

昇進後会話1 チェン坊と俺の間柄?あぁ、入隊した後の訓練を俺が担当したんだ。今じゃ立場はアイツの方が上だが、まだまだ若いヒヨッコだな。ま、それでも充分有能だよ、あの子は。

昇進後会話2 物好きめ。お前さんは、いつまで経っても何考えてんのか分かりゃしねぇ。…部外者にここまでしてくれたんだ、盾くらいは預けるよ。

信頼上昇後会話1 ホシグマのやつ、随分丸くなったもんだ。…いや、どうなんだろうな?前からあんなだった気もするし、案外そのままかも知れん。

信頼上昇後会話2 此処は居心地良いなぁ。龍門や故郷が霞んで見えやがる。…全部の都市が、こうなら良いのにな。

信頼上昇後会話3 俺みたく近衛局に長い間勤めてるやつは少ない。理由はまぁ、色々あるが大抵任務中に鉱石病に罹ったとかそんなもんだ。…一つ、決めた事がある。もし俺が鉱石病になったら、俺はロドスに来るよ。ウェイ長官に逆らってでもな。そん時ゃ、よろしくな。

放置 ……こちらツチグモ。ロドスアイランドに異常はない。…体壊すなよ、ドクター。皆んなが悲しむぞ。

入職会話 龍門近衛局鎮圧分隊所属、コードネームツチグモだ。特別規約に則り、一時ロドスに身を置かせてもらう。…ところで、酒の備蓄は充分なんだろうな?

経験値上昇  ははぁん、成る程。こりゃやられた方はたまったもんじゃねぇな。

昇進1 昇進…昇進ねぇ。信頼してくれんのは嬉しいが、お前さんもう少し外部の事勉強しろよ?

昇進2 お前、前の俺の話聞いてなかったろ。俺ぁロドスの人間じゃねぇって何度も…。…あぁもう分ぁーかった!分かったよ!好きに使いやがれ、この世間知らず!

編成 お?出番か。

隊長任命 やめとけやめとけ、角立つぞ。…はいはい、やりゃいんだろ。

作戦準備 準備は上々、後は野となれ山となれだ。

戦闘開始 ハッ!ガキどもが揃いも揃って…。

選択時1  あいよ。

選択時2 おうよ。

配置1 矢面立ってこその重装よ。

配置2 おおっと残念、此処ぁ行き止まりだ。

作戦中1 こちとら、仮にも老兵でな。お手柔らかに頼むぜ。

作戦中2 ほれどうした、撃ってこい!

作戦中3 守るだけが重装だと思うなよ!

作戦中4 ……頭槌い、石槌い持ち。…撃ちてし、止まむ!

★4で戦闘終了 ふぅ。天王山は何とか越えたな。さ、次だ次。まだやる事は山ほどあるんだろ。

★3で戦闘終了 ハッハ!こんなモンで攻め込もうたぁ、まだまだ青いな。

★2以下戦闘終了 周りに異常はねぇな。次はもっと慎重にやってくれよ、ドクター。

作戦失敗 おら早く逃げんだよ!後ろなんざ見なくて良い!さっさと行け!邪魔だ!

基地配属 ん?仕事か。ま、そこそこやるよ。

タッチ1  あ?

信頼タッチ  っとと…。おい、酒なんか飲んでねぇからどっか行け。ほれシッシッ。

タイトルコール  アークナイツ。

挨拶 よぉ、息災そうだな。ドクター。

 

・ゲーム性能

 

星六 重装オペレーター

 

 

募集タグ

近距離/生存/爆発力

 

 

ステータス(昇進ⅡレベルMAX時)

HP:4130(+20)

攻撃:590(+20)

防御:800(+20)

術耐性:0

再配置:遅い(70s)

コスト:24/28/32

ブロック:3

攻撃速度:普通(1.2s)

 

攻撃範囲(初期→昇進Ⅰ→昇進Ⅱ)

 

■□ → ■□ → ■□

 

特性

通常攻撃が一回の攻撃で二回ダメージを与える

 

潜在能力

二段階:コスト−1

三段階:素質1強化

四段階:防御力+30

五段階:素質2強化

六段階:コスト−1

 

 

昇進Ⅰ

龍門弊30000

初級重装SoC×5

初級源岩×14

初級異鉄×8

 

昇進Ⅱ

龍門弊180000

上級重装SoC×4

D32鋼×5

融合剤×4

 

 

素質1 受け流し(昇進Ⅰ)

15%の確率で遠距離攻撃をガード(昇進Ⅱで+5%、潜在能力で+5%強化)

 

素質2 対多部隊特化(昇進Ⅱ)

自身がブロックしており、尚且つ攻撃した敵の数だけ追加でSPを1(潜在能力で+1)獲得する

 

 

基地スキル1 長年の伝(昇進Ⅰ)

貿易所配置時、受注効率+25%、注文数+2。龍門近衛局所属のオペレーターと同時配置時、受注効率+40%

 

基地スキル2 地獄耳(昇進Ⅱ)

応接室配置時、手がかり捜索速度+40%

 

 

スキル(各特化3時)

 

スキル1:不沈の大盾(時間回復、手動発動、必要SP8、効果時間30秒)

ブロック数+1。攻撃しなくなる。防御力+120%。素質1の発動率が+55%される。敵に狙われやすくなる。

 

 

スキル2:櫓落とし(攻撃回復、自動発動、必要SP12、効果時間20秒)

ブロック数-1。攻撃力+210%。通常攻撃の間隔をわずかに短縮(0.7sに)し、防御力が一番低い敵を優先して攻撃する。

 

 

スキル3:八束剥(攻撃回復、手動発動、必要SP70、効果時間60秒)

 

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攻撃力+130%。効果時間中、前方広範囲にいる地上敵全員の移動速度を-65%し、攻撃力の180%の術ダメージを0.7sの間隔で与える。わずかに通常攻撃の間隔が延長(1.6sに)。ブロックしている敵全員を攻撃する。その度に攻撃力の280%のダメージを与え、1.5秒間スタンさせる。



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外伝 三話

はい外伝本編です。もう何言ってっか分かんねぇな。


ーーーーーー 

 

 

とほほ…。まさか、マジで全員せがみに来るとは思ってなかった。今吸ってる分どころか、予備まで空になったタバコの箱を振りながら、後ろを振り返る。そこには楽しそうに紫煙を辺りに吐き出すアダクリス人が映った。

側から見てると、不良の溜まり場みたいだな。

…まぁ、信頼を得られたなら良しとするか。タバコ程度で満足ならもう何も言えねぇよ。

 

「待てレユニオン!ドクターを連れてくなー!」

「?」

 

ふと聞き覚えのある声に振り向いてみると、ドクターと一緒にいるはずのケー坊がそこそこ先の草むらから飛び出して来た。

 

「ーーーー!ーーーーーー!」

「おーいケー坊!こんなとこでどうしたー!ドクター達と逸れたかー!?」

「ーーー!!」

 

あ、ダメだなコレ全く聞こえてねぇわ。つかアイツ、何してんだ?武器振り回してなんか叫んでっし、最初のも微妙にしか聞こえなかったんだけど。まぁ近付けば分かるか。

 

「おーい!聞こえてっかー?」

「ーーーー!?ー、ーーなーー!絶対ードクターをーーーぞー!」

「??」

「お前らなんか、オイラがやっつけてやるー!」

「???」

 

声を掛けながら近づいて行くが、ケー坊が叫んでいる内容はなんとも支離滅裂だった。

やれドクターを連れて行くなだのやっつけるだの、辺りを見回したところで、ケー坊の言うそんな影は見当たらない。

 

「おいケー坊。」

 

取り敢えず話を聞こうと、暴れ回るケー坊の肩を叩く。思えば迂闊だった、と言わざるを得ないだろう。もっと熟考してからこの判断をしていれば。

 

「……。」

「お前、さっきから何してんだ?ドクターと一緒だった筈だろ?何だってこんな場所にい」

「お前がレユニオンのボスかぁー!」

「んなっ?!」

 

一瞬光が煌めき、手のひらほどのナイフが俺の顔を掠めた。あと一瞬避けるのが遅れていたら、間違いなく俺の頭はスイカよろしく真っ二つになっていただろう。普通のナイフなら兎も角、ケー坊のアーツ付きなら話が変わってくる。

他のやつのアーツとは違い、ケー坊のはある程度の装甲を貫通する。いくら俺でも対策無しに受ければ大怪我必至だ。

尚も暴れるケー坊から手を離し、接続したまま背負っていた盾を片腕に通す。

 

「おいらにそんな盾なんて無意味だ!かんねんして、ドクターを返せ!」

「何だってんだ…!アイツの居場所が知りてぇのはこっちなんだよ…!」

 

二歩ほど下がってもう片腕を盾に通し、接続を外す。遠距離メインの術師に間合いを広げるのは愚策だが、今はそうは言ってられない状況。

しかも戦力にもなる相手である以上、大きな怪我をさせる訳にもいかないと来た。さぁて、どう動くか…。

 

「ーーーー、ーー!(族長、加勢します!)」

「お前も仲間かぁ!」

「ー、ーーーー?!(えっ、うわぁっ?!)」

 

元族長のアダクリス人が隣に並んできた。と、同時にケー坊が元族長に向かってナイフを投げつけてくる。まだ反応しきれていない元族長を突き飛ばし、茂みに突っ込ませた。

 

「ダダダダダァ!」

 

流石は元野生児。隙とあらば見逃さない。続けて飛んでくる無数のナイフを弾きつつ、後ろに目を向ける。

どうやら元族長以外は初めてのタバコでヤニクラを起こしているようで、槍とか構えようとしてコケていた。頼りになるんだかならないんだか。

それはそれとして、尚も続くナイフの連投。捌き切ってはいるが、全くの無傷とはいかない。ケー坊のアーツの影響で、既に盾の塗装が剥がれ始めている。素体の表面や内部に届くまでそうは持たないだろう。アーツが中に達してしまう前に、何とか決着を着けなくてはならない。

どうしようか悩んでいると、ふと自分やケー坊が今どこに立っているのかを思い出した。

そうだった。此処熱帯雨林だったな。

 

「!?」

 

ナイフの猛攻を凌ぎつつ盾の頂部から糸状のアーツを発射させ、ケー坊の近くの細枝にぶつけて折る。

何が来るかとナイフの手を止めて身構えたケー坊と反対側の太い樹に伸縮性を高めた糸を貼り付かせ、バンジーの要領でぬかるんだ地面を蹴った。幹の高い所に足を着け、跳んだ勢いが死にきる前に糸を切り、今度は樹の幹を思いっきり蹴り飛ばす。

 

「ッラァ!」

「うひゃあっ?!」

 

そのまま左腕を突き出し、ケー坊の目の前の地面を殴り付ける。

左手の中程までが地面に埋まり、多量の水分を含んだ土が彼女に向かって巻き上がった。それをモロに引っ被ったケー坊が怯んでる内に立ち上がり、右腕を振り上げる。

 

「ペッ、ペッ!うえー…よくもやっ」

「ちっ…たぁ…落ち着けおてんば娘!」

「ぎゃん!!」

 

手のひらをグッと固め、ゲンコツ一閃。鈍くも小気味の良い音と感触が、拳と付近に響いた。アーツで硬化させたりはしてないとは言え40kgはある盾を装着したままで、しかも装甲手袋を付けての拳骨は中々に効くと思う。事実ケー坊は一声鳴いた後、声にならない声を上げながら服が汚れるのも厭わずに俺の脚元をもんどり打って転げ回っていた。

 

「頭は冷えたかケー坊?」

「ーーーーッ!ーーッ!!」

 

……やり過ぎたか?

…いやしかし、何でまたレユニオンなんかと俺たちを間違えたんだ?後ろのアダクリスの奴らはまだ分からんでもないが、知らぬ仲じゃなし。

…まさか、まさかな。

 

「おいケー坊。」

「ーーーーッ!なんだレユニオン!ったー…!」

「お前、何か食ったか?」

「お前なんかに答えないぞ!早くドクターを返せ!」

 

頭を押さえて涙目になりながらも、勇ましい言葉を吐くケー坊。槍やら斧やらが入っている彼女の背中のホルダーに目を向けてみると、いつも見る武器の束の中に薄ぼんやりと光るキノコが入っているのが見えた。

 

「んだこれ?」

「あっ、返せ!それはおいらのキノコだぞ!」

「お前、まさかこれ食ったのか?」

「美味しかったから持ち歩いてたんだ!とにかく返せぇ!」

 

たまに痛みで顔を歪めながらも、ケー坊は俺からキノコを引ったくった。

…読めた分かった。こいつコレ食って一種の錯乱状態に陥った訳だ。そうなればさっきまでの行動にも合点がいく。つーかこんな光ってるようなキノコなんか食うなよな…。

 

「…ハァ。ヴァルカン嬢ちゃんも、もう少しキツ目に拾い食いすんなって言っとけよ…。」

「ゔー…!」

 

まだ錯乱状態が解けてないケー坊が此方を睨み付けて威嚇してくる。…こりゃ毒が抜けるまで、まだ暫く掛かりそうだな。

 

「ーーーー!ーー、ーーーー?(やりましたね族長!こいつ、どうします?)」

 

またいつの間にか、元族長のアダクリスが槍を構えて俺の横に立つ。言葉は分からんが、恐らくケー坊の処遇を聞いているのだろう。…通じるかどうかは微妙だが、まぁ賭けてみよう。

 

「取り敢えず連行だ。近くに人が集まる場所はあるか?」

「…?ーーーー、ーーーーーー。(祭典の会場なら、近くにありますが。)」

 

ジェスチャーを幾つか交えながら龍門語で話してみると、元族長は少し考えて道の先を指さした。

なんだ、話通じんじゃん。最初のアレは何だったんだよ。とまぁ誰に言うわけでもなく愚痴っても仕方ないので、取り敢えず頷いて歩を進める。

 

「なっ、こら離せ!」

「ーーーー!ーーーーーーーー!(暴れるな!族長の決定だ!)」

 

ケー坊の声で振り返ると、アダクリス人達はケー坊をぐるぐる巻きにふん縛っていた。

そこまでしなくても良いんだけどなぁ…。




今回はツチグモさんが勝ちましたが遠距離なら勿論ケーちゃんに軍配が上がります。


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