異世界転生じゃ……ない、だと? (ウミノ シオ)
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番外編
非日常と邂逅と


番外編です。
捏造と云う名の妄想で出来てます。

三輪の口調が、よぉ分からん……(コレでいいのか……)

◇◆◇
pixivで行われてるコンテストに応募してみたやつです。
サブタイのセンス……orz



“いつもと変わらない日”になるはずだった。

 

 

この日も、“いつもの日常”が始まるはず――だった。

 

 

 

 

 

()()()が現れるまでは――――

 

 

 

 

 

 

 

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「助けて!! 姉さんが……!!

姉さんが死んじゃう!! 姉さんを助けてよ!!」

 

「――悪いけど、おれじゃあ君のお姉さんを助けることは出来ないんだ…………ごめん」

 

 雨に濡れ、胸から血を流す姉さんを抱えながら、()()()()を倒した少し年上だと思う茶髪の少年に助けを求めた。

 バケモノ――後に近界民(ネイバー)と呼ばれる異界からの侵略者が送り込んできた兵器、“トリオン兵”

 

 それを倒した。

 

 頼れるのは、茶髪の(この)少年しかいない。

 

 ――俺たちの周りには、バケモノに殺られた、血を流す男女数人しかいないのだから……

 

 ――なのに……ッ

 

 

 ド、ゴォォォと、大きな音をたてて()()()が、俺たちの前に現れた。

 

「「!!」」

 

 大きい音の方を見ると――バケモノと、()()を茶髪の少年が持つ“刀”とは違う武器――“槍”で刺し、突っ込んできたのは

 

 青っぽい軍服のようなのを着た()()()()()()だった。

 

「っと。ココもそう安全な場所じゃねぇ……坊主たちも避難しな」

「……な、んで、ここに…

「あ? 何て?」

 

「姉さんを助けて!」

 

 移動するよう、青髪の男に言われる。茶髪の少年が何か呟いたようだが雨音が邪魔をして聞き取れない。

 男が聞き返してきたが、それよりも姉さんを助けてほしくて声をあげた。

 

 男が俺に視線を向けると、茶髪の少年はこの場から逃げるように離れていく。

 

「姉さんを…助けて……」

 

 

 ……助からないのは……もう、わかってる。

 どんどん冷たくなってきているんだ……

 

 ――雨に濡れているから、だけじゃない……って、わかってる。

 

 わかっているけど……!

 

 

 青髪の男は俺たちに近づいてきて見下ろす。

 

 ――何をしたのか、よく分からない。

 だけど、さっきの青っぽい服から黒を基調とした別の軍服みたいなものに変わり、その上着を姉さんに掛けてくれた。

 そしてまた青っぽい服に戻ると男は一瞬、何かを考えるような仕草をしてから上着で傷口を被い包むようにして姉さんを抱き上げる。

 

「!」

「トリアージで黒札が付けられると思うが……それでも病院に行くか?」

 

 

 トリアージ? 黒札?

 

――姉さんは助からない……?

 わかってる。

 

 それでも病院に運んでくれるって……

 

 

「――ッ! それ、でも……お、願い…します…ッ」

「あぁ……病院まで案内頼むぞ? ココの土地勘が無いからな」

 

 

 

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 病院はニュースでみた野戦病院のように、たくさんの怪我人やその家族で溢れかえっていて

 

――姉さんの手首には、青髪の男が言ったように黒札が付けられた。

 

 

◇◆◇

 

 家に連絡をいれるため病院に設置されている公衆電話に並ぶ。

 

 母親が出て、こっちの安否を確認してくるのに安心したからか涙がでた。

 自分のこと、姉さんのこと、居る病院の名前を嗚咽でつっかえながら話して電話をきった。

 

 人気(ひとけ)の少ないベンチに座る。

 

 泣き止んで落ち着くまで青髪の男は俺の側にいた。

 

 

 

 

 

 

 

「貴方は……戦いに行かなくていいんですか?」

 

 こんなところで俺の側に居なくていいのに。

 

「……あー……オレ、ね……坊主たちからみると()()()()になっちまうんだわ」

 

「――――ッ」

 

 カッと頭に血が上り、目の前が真っ赤になる。

 

――――姉さんを殺した(ヤツラ)()()()なのか?

 

 思わぬ言葉に勢いよく青髪の男の方を見る。

 

「つっても、ココ襲ってる連中の仲間じゃなくてな? ウチ今、戦争中で()()に出てるヒマなんてないし。

有ったとしても蹂躙しにはいかねぇなぁ……ウチ、そう言うの嫌いだし。特に困ってないし」

「仲間じゃない? 戦争中……」

 

 男は俺の方を見ると目を見ながら落ち着いた声で話してくれた。

 だから少し冷静になる。

 

 そうだ。敵なら姉さんを病院に運んでくれたりなんかしない――俺のことも殺しているはずだ。

 ……あの人みたいに無視することもできた。

 だけど、手を貸してくれた。

 

 悪い人、ではないのかもしれない。

 

「それにオレ、只今、不可抗力で迷子中なんだわ」

「…………は? 迷子?」

「あぁ……さっきも『ウチ今、戦争中』って言ったろ? 防衛戦してるところで近くに(ゲート)――バケモノが出てきた黒い穴……アレが開いて吸い込まれて? ……繋がったのがココ(日本)だった、つーワケ」

 

 思わぬ言葉に虚をつかれ、変な声が出たが、男はなんてこともないと言うように肩を竦めてみせた。

 

「……そんなこと、あるんですか?」

「オレは聞いたことねぇなぁ……

宇宙空間に放り込まれるようなモンだし……戻れないから人生終了(The END)……

――オレ……すっごく運良かったなぁ」

 

 そう言うと、男は天を仰いだ。

 

 

 

 

 

「これからどうするんですか」

「――――どーすっかねぇ……

さっきの坊主はトリガー使いみてぇだから……お仲間さんと交渉、かなぁ」

 

 男は頭の後ろで手を組み、ベンチの背もたれに寄りかかって空を見上げる。

 

 

◇◆◇

 

「秀次ッ!」

 

 遠くから俺を呼ぶ声がした。

 声の方を見ると、両親がこっちにくるところだった。

 俺がベンチから立ち上がると、青髪の男がこの場から立ち去ろうとする。だから――

 

「みわ……俺は、三輪(みわ) 秀次(しゅうじ)って言います。貴方は?」

 

 なんとなく……なんとなく、名乗らないといけないような気がした。

 相手が名乗ってくれるとは限らないが。

 

「――――『()()()()

……そう呼ばれてる。じゃあな、ミワ」

 

 そう言って俺の前から居なくなった。

 多分、あの人とその仲間を探しに行ったんだろう。そう言っていたから。

 

 

 

 

 

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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ̄ ̄ ̄

 

 

 異界からの侵略者――近界民を撃退した『境界防衛機関ボーダー』に入隊し、(あずま)さんの下で戦術などを学ぶことになった。

 ボーダーに入ってからの日常――いつもと変わらない、そんなある日。

 

 本部であの時遭遇した青髪の男――『ランサー』と再会することになる。

 

◇◆◇

 

鈴風(すずかぜ)……?」

 

 防衛任務を終え、報告を済ませた後、東さんとラウンジへ向かう。

 途中の自販機前に知り合いがいたのか、東さんが声をかけた。

 『鈴風』と呼ばれたのは、長い黒髪を首の後ろで結んだ東さんぐらいある長身の男だ。

 

――どこかで……?

 

「ん? おぉ、アズマじゃん。なんか久しぶり?」

「そうだな。お前は防衛任務ばかりやってるから」

「好きでやってんじゃねぇですけどねー」

 

 コーヒーの入ったカップを手に、こちらを向いた男の顔は()()()の青髪の男――『ランサー』に似ていて

 

「……ラン、サー……?」

 

 思わず声が出た。

 

 ――でも、なんで髪の色が……?

 

「おぉ? ミワ、だったよな? お前もボーダーに入るとはなぁ……まぁ、理由は察するが」

 

 東さんの陰になっていた俺を見つけたランサーは、苦笑いをしながら思い出すように俺の名前を口にした。

 

 ……そんなに背は低くないはずだ……

 

「秀次のこと、知ってるのか?」

「あぁ、侵攻の時にな」

「――なるほど。だから“ランサー”と云う名前を知っていたのか」

 

 俺と近界民であるランサーが知り合いなことが不思議だったのだろう。東さんは理由を知って納得していた。

 俺としては、東さんとランサーが知り合いなことが疑問なんですが?

 そのことが顔に出てたのか「本部が建つ前に玉狛で会った」とランサーが話してくれた。

 

「今は『スズ()カゼ() ソラ()』って名乗ってる――改めてヨロシクな、ミワ」

 

 そう言うと、鈴風さん(ランサー)は俺の頭をわしゃわしゃと撫でた。

 

 

 

 

 

 

 

「良かったのか? アズマと行かなくて……」

 

 乱れた髪を直しながらランサーと共に東さんを見送る。

 ランサーと話をするためだ。

 

「大丈夫です。また後で会いますから」

「ふ~ん…………ココアで良いか?」

 

 渡されたカップを受け取りながら「ありがとうございます」と応える。

 

「なんで黒髪に?」

 

 綺麗な青だったのに。

 

「――日本(ココ)だと青髪は目立つからなぁ……

トリオン体をちょい弄って黒髪に設定したんだよ」

 

 率直に聞けば答えてくれる。

 前髪を摘まむランサーを見ながら、生身との差が少ない程度にはトリオン体の設定が変えられることを思い出した。

 

「まぁ、確かに青い髪は目立ちますもんね」

 

 顔も整ってるから余計に。

 

 日本人離れした顔に日本人名って云うのは……どうしてそうなった?

 

 

 

 

「――ここにいる、と云うことは“交渉が成立した”ということなんですよね?」

 

 あの時に言っていた迅 悠一(あの人)とその仲間はボーダーだった。

 だから、“交渉が成立していればランサーもボーダーに居るかもしれない”と思っていた。

 

「まぁ……イザコザは、ちょいあったがな」

 

 苦笑いをするランサーを見て、なんとなく察する。

 

 近界(向こう側)技術(テクノロジー)であるトリガーは、謎が多い。

 だから、近界民であるランサーのトリガーは喉から手が出る程のモノなのだろうということは、素人に毛が生えた程度の俺にでも察せれる。

 

「トリガー……取られたんですか?」

「いやいやいや! 奪わせねーよ!? アレ、オレしか使えねーから!

――知的好奇心に駆られて、解体なんてされでもしたら堪ったもんじゃねぇ……」

「……」

 

 やりかねないと思ったら何も言えなかった。

 

 ――そう言えば……

 

「そう言えば、ランサー――鈴風さんは、よく三門(ここ)が“日本”だって分かりましたね。別の星って思わなかったんですか?」

 

 「繋がったのが日本だった」って言ってたし。だけど、何で()()()()()()()()()()()()()……

 向こうは“国であり、星である”『惑星国家』と言うらしいから、一つの星にいくつもの国が存在する“地球”なんて珍しいのは分かるけど、別の星の可能性だってあるだろうに……

 

「向こうでも“トリアージ”って普通に使うんですか?」

 

 ――なんか、さっきから質問ばかりしているな。

 

「……あれ? 言って無かったっけ……?

オレ―― “前世、日本人” なんだよ」

 

 ・・・・・・・・・・・・は?

 

「――“一つの星に国がいくつも存在する”なんてのは、オレも地球しか知らないからなぁ……」

「いや、ちょっと待て」

「あん?」

「――()()()()()? ()()?」

 

 ちょっと待て。意味が分からない……いや、分かる。分かるけど…………前世?

 生まれ変わり……とか、転生……とか?

 

 ――仏教かな?

 

「おぉ……だから、繋がった国が日本だって気付くのにちょい時間が掛かちまって――日本語の看板と瓦屋根で分かった。

あと、向こうには“トリアージ”なんて言葉……多分ないぞ?」

 

 ――情報が過多すぎて処理しきれない……

 

 ちょっと気になって訊いた俺が馬鹿だった……

 

 

 

     前世とか聞いてない……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【オマケ】

 

 

「えー……っと?」

「『米屋(よねや) 陽介(ようすけ)』――ウチの攻撃手(アタッカー)です」

 

 秀次はオレに、カチューシャを着けた自分と同い年ぐらいの少年――米屋 陽介を紹介する。

 

「どもっす」

 

 米屋少年はペコッとお辞儀する。

 そら、急に隊長が知らん人間連れてきたら困るよな~

 分かる、分かる。オレも困惑中だ。

 

 たまたまラウンジで秀次に出会って、話があるから…って隊室に連れてこられたんだよな。

(名前呼びなのは、前に下の名前で呼んで良いって言われたから、三輪から秀次になったんだ)

 そしたら先客が――って、隊員だから居て当たり前なんだが。

 

 いや、知ってたよ? 東隊が解散して、元東隊の隊員が新しい部隊(チーム)作ったのは。

 東も『新生 東隊』作ったし?

 ――作ったってより、隊員の育成のためって感じだけど。

 

 ――う~ん、これは……東に(なら)って秀次も隊員紹介か?

 ちょい前に二宮と加古も隊員連れて紹介してったんだよなぁ……

 ……東も、新生東隊の隊員を紹介しにきたけども。

 

 流行りなのか?

 

「えーと……秀次?」

「『鈴風(すずかぜ) (そら)』さん――『弧月(試作):槍』から『弧月(改):槍』をエンジニアと作った」

「おぉ!」

「……どーゆう紹介の仕方だよ、シュージ」

 

 米屋少年が目をキラッキラさせて……――ハイライトないなー……

 

 秀次、ちょいと(紹介が)紹介になってないぞ?

 

「貴方が開発室で試作を振り回してるのを陽介が見て、『弧月(改):槍』をトリガーセットしたんですよ」

 

 マジか。

 あと「テメェのせいだ」って言う副音声が聞こえる気が……

 

「トリオンの消費が少ないっつーし……カッコ良かったんで!」

「……マジか」

「マジっす!」

「――なので陽介に指導してやってください」

「「……マジで?」」

「マジだ」

 

 

 

  こうして師弟になりました。

 

 




日本人なのに、日本語が難しいと感じるのは どういうことなのか……

三輪っぽくなくても、三輪視点……です←
原作キャラの視点、むっずッ! 何度挫けそうになったことか……
えー……三輪が、原作ほど近界民に敵意を持ってない風になりました…………オリ主だけかな?←

……自分で自分の首絞めにいってるって、知ってるんだ……だって、本編――――
ぬわぁぁぁ…… ( ̄ロ ̄lll)


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1月3日

(前半)はpixivと同じ。
(後半)は会話文を加筆……若干pixivとは違くなったかもしれない。

◇◆◇

明けましておめでとうございます。
約一年ぶりの投稿です(異世界転生)

昨年はたくさん読んで頂きまして有難うございます!
今年も不定期更新になると思いますが、お付き合い頂ければ幸いです。

今年もよろしくお願いします。


【1月3日 昼】

 

 

 ボーダー隊員がよく行く焼肉屋で“新旧東隊”による『東隊長のお誕生日お食事会』が開かれていた。

 

 楽しい楽しいお食事会になるはずなのだが……一人、浮かない気持ちでいる人物がいた。

 『A級7位 三輪隊』の隊長である三輪秀次だ。

 

 

 別に楽しくない訳ではない。

 年に一回――どころではないが、元の所属部隊のメンバーとの食事会は……まあ、楽しい。楽しみの一つでもある。

 

 互いに“隊長”と云う立場で忙しいこともあり、そう頻繁に食事会をすることはないが誘われれば参加――――加古に「行くわよね? 迎えに行くわ」と強引に誘われていた。

 初めのうちは煩わしいと思っていたが……馴れた。馴れって怖い。

 

 

 ――そう、意外と楽しみなのだ。旧東隊メンバーとの食事会は。

 なのに浮かないのは――――去年、一昨年、三年前と毎年、会計時に二宮と加古(年上二人)()()()()()()()()()()()で揉めるからだ。

 

 『自分も』と言いたいが年上二人はまず話を聞かないし、未成年に払わせたくない東春秋(本日の主役)が最終的に会計を済ませてしまう。なんたることか。

 

 去年から参加している現東隊の二人はというと……

 年上二人の言い合いは“じゃれあっているようなもの” “喧嘩するほど仲が良い”と見ていたが――去年の誕生会、あまりのことにドン引きしていた。

 

 事前に決めてるんじゃないの? と。

 

 三輪も三年前は自分の知らないところで決めてるものだと思っていた。決まってなかった……

 

 

今年も決まってないんだろうな……

片桐隊もいないし……一人、いや三人であの二人を止めるのか……?

なにより……また東さんに払わせるのか……? 気が重い……

 

 ――という三輪の心を年上二人(二宮と加古)は知らない。

 

 

 

 因みに。東隊()()()にあたる『A級8位 片桐隊』は県外スカウトの準備等のため、新旧東隊オペレーターは家庭の事情により本日は不参加である。

 

 後日、片桐隊(二期生)による誕生会が開かれ、新旧東隊オペレーターからはプレゼントが送られたそうだ。おめでとう、東隊長!

 

 

 

 

 楽しい時間というものはあっという間に過ぎ去るもので――――魔の会計の時間である。

 案の定、二宮と加古は互いに支払いを譲らなかった。

 

俺が。わたしが。

わたしの方がA級隊員(固定給)でお金があるもの。嫌味か。

あら、そんな風に聞こえた?嫌だわ~

 

 東隊の三人は苦笑を、三輪は額に手を当て(はじまった……)と諦めモード。

 

 

 ゴングが鳴り響きそうになった――その時。

 

「お客様――『会計時に揉める様なことがあれば請求書はボーダー本部の鈴風にお願いします』とお電話いただきました」

 

 笑顔の店員に止められた。

 

 ニコニコニコ。

 

 笑顔のはずなのに迫力が凄い。

 言い合っていた二宮と加古も店員の迫力に止まる。

 

 

 そして――(何故、店を知っている?)と新旧東隊のメンバー全員が心の中で思った。

 

 「行く焼肉屋――固定じゃん」と一応、S級な隊員に返されることだろう。気づいて。

 

 

 

◇◆◇

 

 

【1月3日 夜】

 

 防衛任務を終え、冬島隊の作戦室へ向かっていると見知った後ろ姿が二つ目に入った。

 

「よぉ、スワにツツミ――お前らもこれからフユシマ隊か?」

 

『諏訪 洸太郎』

 『B級 諏訪隊』の隊長で銃手(ガンナー)。金髪でヤンキーっぽいが面倒見が良くて後輩に慕われている兄貴肌。

 

『堤 大地』

 見えてるかどうか分からない糸目の堤も銃手で、諏訪隊に所属している。そして大体、加古の炒飯で死ぬ。

 

「おう、そーゆうアンタもか?」

「……介抱要員かなぁ」

 

 これから“酒盛り”と云う名の『東、冬島隊両隊長の誕生会(夜の部)』だからだ。“会”とか可愛いモンじゃないがな。

 多分、もう始まってると思う。

 

 呑んでも酔わないから大体、酔っぱらいの介抱がメインだ。

 水分摂らせて仮眠室か各自隊室(ベッド)に放り込むだけだが。

 

 

 

 話をしながら冬島隊作戦室に向かう。

 

「「お世話になりまーす」」

「なるな、なるな。特にツツミ! お前は酒に()ぇだろーが」

「あ、じゃあおれも介抱要員ですかね」

「……メンバーにもよる」

「ですよねぇ……」

 

 冬島隊作戦室に居ると思われる人の顔が浮かんだんだろう。堤が微妙な顔をする。

 多分、居るのはいつものメンバー(麻雀仲間)だ。

 

「……ケイとフユシマが問題か」

「東さんは大丈夫ですからね」

「……いつものメンバー()()()()問題ないが……」

「……スワ、それフラグ……」

 

 “悪いことは口にすると本当になる”って上官(おっさん)が言ってたやつ……

 

 

三十路(みそじ)手前、おめっとさーん」

「全然めでたそうに聞こえねー」

 

 開口一番の言葉に笑いながら返してきたのは『A級2位 冬島隊』の隊長で特殊工作兵(トラッパー)の冬島慎次だ。

 本日、めでたく二十九歳になった。おめでとう。おめでとう……?

 

 部屋には本日の主役である東と冬島、本日の主役と諏訪隊の二人とはよく麻雀をしている慶――それから

 

「風間……お前がいるとか珍しいな」

「諏訪か。鈴風が来ると聞いた」

 

 誰からだよ。冬島? 東? 慶?

 

 冬島隊作戦室に着いたオレ、諏訪、堤は何故か居る加古、沢村、蒼也達三人の姿に顔を見合わせた。

 

知ってた? 知らん。知りません。

 

 オレからの無言の問い掛けに首を振って答える諏訪隊の二人も居るとは思わなかったようだ。

 

 ほら、言わんこっちゃない。フラグ回収しちまったじゃねーか。

 

 

 加古は多分、東にくっついてきたんだと思う。昼の部から引き続き参加の)うだ。

 沢村は……こっちも東にくっついてきたのかな? 彼女もよく東と飲んでいるらしいから……どこかで聞きつけたのかもしれない。

 蒼也は……慶か? たまたまの可能性もある。しかしオレが来るって誰が言った。

 

 

 「ケーキはねーよ?」と言えば衝撃を受けたかのように蒼也は目を見開いて固まった。

 

 そんなに食いたいのか……? つか、こいつ甘党だったっけ?

 

「……男だらけでケーキはナイだろ……」

 

 今回は女子が二人いるけど。

 

 甘い物より味の濃い物の方が……いや、二日酔いを懸念するなら油っこい物や味の濃い物は止めといた方がいいな。

 特に冬島はあっさりさっぱりしたやつ――胃的な意味で。

 

 そう言うと蒼也は無言で顔を手で覆った。こりゃ、酔ってんなぁ……

 

 ちろっと蒼也の側の床を見ると缶が二、三個転がっていた。酔うの(はえ)ぇわ。

 慶と冬島も出来上がりつつあるし……早ぇよ、お前ら。

 いつから飲んでんだ……

 

 去年まではオレを含めて六人だったが、今年は三人増えて九人という大所帯の賑やかな飲み会になるようだ。

 

 

「そうだ、鈴風」

「ん?」

「昼間は助かった、ありがとう」

 

 つまみを作ったり片付けたり――定期的に片付けとかないと散らかる。

 

 一段落ついたところで飲んでいると、東が声をかけてきた。

 

「別に~? やっぱ揉めたのか?」

「はは……想像通りだ」

アズマ大好き(アズマスキー)ここに極まり、だな」

「私が払う予定だったのよ?」

 

 案の定、会計で揉めたらしい。

 

 東と話してるところに加古がお酒片手に割って入ってくる。

 

「ニノミヤを煽らなきゃいいだけの話だろ? もしくはアズマ抜いたメンバーで割り勘にするとか……」

「二宮くんが譲らないんだもの」

 

 不満そうに言ってはいるが、加古の顔は――愉しそうに笑っている。

 

 揉めるなら会費制にでもすりゃあいいんじゃねーの?

 ……わりとマジで秀次に提案してみよう、そうしよう。

 

「でも、どうして私たちが焼肉屋(あそこ)にいるって分かったのかしら?」

「えぇ? それ、マジで言ってる? ――行く焼肉屋、固定じゃん」

「「あっ」」

 

 おい。二人揃って“そうだった……!”みたいな顔すんな。

 

「それにニノミヤが予約してるのをツジが聞いたって言ってたし」

「……二宮くんが原因ね」

「原因て……」

 

 うっかりさんなところはあったりするが、揉める原因は二宮と加古(二人)なのでは……? 二宮だけの問題じゃない、罪を押しつけるな……

 

「はてさて、一体いくら請求くるかねぇ~?」

「そんなに食べたかしら?」

「……成長期の、育ち盛りな男子を甘くみない方がいい」

 

 オレ(十代)は、上官を、支払いで、泣かせた。

 (育ち盛りを)甘くみていた上官を――

 

 ……高い、いいお肉ばっか食ったからなぁ……

 以降、制限をつけられたのは言うまでもない。

 

 

 オレのセリフに苦笑する東は経験者だ。

 新旧東隊や片桐隊、狙撃手な隊員達や中高生時々二十歳(ハタチ)以上の隊員らと焼肉屋に行く。

 人数が増えると――まあ……うん。中々にいいお値段になる。

 

 オレもA級三バカ(陽介、公平、駿)を連れて行って遠慮なくバクバク食われ偉い目に遭った。

 それ以降は“成長期の男子はこーゆうもん”って心積もりで行くことにしている。

 オレも育ち盛りを甘くみてた。

 

 苦笑も浮かべたくなるだろ……

 

 人様の誕生日だから少しは押さえてるかなぁ……

 

 

「なに? なに? 何の話~? 東くん、飲んでる~?」

「酔っぱらい が 現れた!」

「ふふ……言い方」

「酔ってないわよ」

 

 ほろ酔いな沢村が缶チューハイ片手にやってきた。

 

「沢村もその辺にしといた方がいいんじゃないか?」

「東くんまで私のこと酔っぱらい扱いするの?」

 

 絡んでる、絡んでる。ほろ酔いどころじゃなかったようだ。

 忍田が居るとセーブしているからか大人しくしているが、居ないと中々に面倒な飲み方をするようだ。

 

 うわーめんどー(棒読み)

 

 

 沢村を東に任せて加古と離脱する。撤退、撤退。

 

 沢村を東に押し付け任せて男五人が居るところに向かう。

 麻雀を始めてたようだが……慶と冬島、大丈夫か?

 

「……頭回ってないだろ、ケイとフユシマ」

「奇跡が起きて太刀川が勝ってる」

「素面だとズタボロなケイが……? やべーな」

「ヤバいっすよ」

 

 案の定、冬島はズタボロのようだ。やべー。酔ってるのにやるから……

 対して慶は奇跡を起こしているようだが――明日には覚えてないだろうな……笑っていられるのも今のうちだ。

 

 蒼也が大人しい……元々口数も少ないが、そろそろ限界のようだ。ふらふら~揺れてる。

 

 

 

 

 

 東、諏訪、堤達と共に酔い潰れた参加者を各隊室の仮眠室に放り――蒼也(お眠)は諏訪が連れていった。馴れてらっしゃる。

 加古(ほろ酔い?)は堤が。沢村(ほろ酔い↑泥酔↓)は東が送って、冬島と慶(泥酔)は自隊仮眠室のベッドに放り込んで解散!

 

 

 

 後日――冬島隊狙撃手(スナイパー)当真(エース)がオペレーターからの菓子折りを持ってきたり、太刀川隊銃手(ガンナー)唯我(お坊っちゃん)がブルブル震えながら菓子折りを持ってきたり、二宮に睨まれたと思ったら二宮隊の面々からお礼のメッセージが届いたり……なんか色々あったりする。

 

 

 

 

 

 

Happy Birthday!

 




pixiv版とは別仕様にしてみました。

【1月8日(前編)】は『本編』に予約投稿済みです。暫し待たれよ。


東さん、冬島さん、誕生日おめでとう!


pixiv版が(1月3日が)ダイジェスト(それでも長い)
こちらは、書き始めた頃に一度挫折しカットした会話文とかを加筆修正したものになります。頑張った……!
のわりに冬島さんとの会話が――ない……ッ!!Σ( ̄ロ ̄;)


前半、東さんの誕生会in焼肉屋はワートリ(アニメ)2022カレンダー見て思いついたw
ありゃ~ぜってぇ東さんのお誕生会だよ。なんたって1月2月のイラストに新旧東隊だからw
今年のカレンダー(2023)も、たしかなまんぞく(*´ー`*)

だがしかし、『東さんの誕生会』を書いててふと思った。
片桐隊や百合さん、クローニンは “いつからスカウト旅に出たのか?” と。

12月、玉狛の二人は居る気配がない(仕様上、仕方がないとは思うけど)
…………片桐隊長(オペの結束ちゃんも)居ったな!?本部に迅さんきて、沢村さんにセクハラした時……あれ、12月だったな?
――ってことは、三が日は居るんとちゃうやろか?いや、正式入隊日にも居る可能性……
スカウト旅、いつからや……σ(-""-;)


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本編
青槍似の転生者


 異世界転生をした。

 と言っても、ネット小説でお馴染みの“剣と魔法のファンタジーな世界”――ではなく。

 “トリガーとトリオン”と云うのが存在する世界に、だ。

 

 なるほど、意味わからん。

 

 

 前世を思い出したのは(ある日)突然。

 十数年、生きてきて……唐突に、ふっ…と……

 

 アレ、ヤメてほしいわ……

 

 朝、身支度をしていた時――急にどっかで見た顔だなぁ……いや、オレなんだけどさ?って、鏡に写った自分の顔に引っかかりを覚えて……

 

アレ? コレランサー(Fate/stay night)じゃね?

あれ……? ココ型月世界だった?

いやいやいやいやいや……いぃや、違う

…………違う、よ、ねぇ?(滝汗)

 

嫌だぞ、自害とか!

 

 鏡に写った顔は真っ青だった――

 あの時は、ホント焦った。

 

閑話休題。

 

 

 前世を思い出して思ったのは『オレは青槍(クー・フーリン)成り代わりだった……?』だ。

 

 異世界転生をして、生きるために軍人になって――トリオンが普通より少し多かったからかブラックトリガーって云う『特別』なトリガーじゃないが、オレ専用のトリガーを渡された。

 

 槍だ、槍。槍型!

 しかも名前がゲイ・ボルク

 もうココまできたらオレ『クー・フーリン(ランサー)成り代わり』だったんだな(混乱)

 ――ってなるのも仕方がないと思うんだ。

 

 仕舞いには槍(トリガー)を携え、戦場を駆け抜けてたら『青の槍兵(ランサー)』って呼ばれるようになって……元々孤児で名前なんてなかったからもうランサーでいっかーって。

 

◇◆◇

 

 自国防衛戦の最中、急に開いた(ゲート)に落ち…いや、飲み込まれて? 出た先は――どこかで見た、よう、な?

 

 …………ニホン?

 

 トリオン兵に建物が壊されてるから日本だと気付くのが遅れた。

 

 異世界転生改め、SF世界(現代)転生だった模様。

 

 

(私の知る日本では)ないです。

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

 トリオン兵を倒しながら道無き道を走る。

 

 まさか『人口が億をこえる』『(マザー)トリガーが存在しない』星――『玄界(ミデン)』が地球とはなぁ……

 ホント、まさかだわ。

 

 ――ホント……()の知らない日本だな、こりゃ……

 

 マジ、SF(現代)

 

 

 五階建てぐらいだと思われる建物だった屋上から見回すと辺りはトリオン兵だらけ。

 破壊に回収、殺戮――

 あ、自衛隊の兵器効いてねぇ……やっぱトリガーじゃないとダメなのか。

 

 …………いや、弱点に当たりゃあワンチャン……

 

◇◆◇

 

 途中から降りだした雨で視界が悪くなる。

 宛てもなく、ただただ向かってくるトリオン兵を捩じ伏せながら先へ進む。

 

 戦闘用トリオン兵――モールモッドを刺して突っ込んでった先には胸や背中から血を流す男女数人の刺殺体と。

 

「助けて!! 姉さんが……!!

姉さんが死んじゃう!! 姉さんを助けてよ!!」

 

 胸から血を流した女性()を抱えて座り込む黒髪の少年と対峙する茶髪の少年の二人がいた。

 茶髪の少年は――トリガーを握っている。

 トリガー使いだ。

 

「「!!」」

 

 ――お取り込み中、か? 間が悪かったな……

 

 しかし……日本にトリガー使いが居ようとはな。

 

「っと。ココもそう安全な場所じゃねぇ……坊主たちも避難しな」

「……な、んで、ここに…

「あ? 何て?」

 

「姉さんを助けて!」

 

 移動するように言えばトリガー使いの少年が何かを呟いたようだったが雨音が邪魔をして聞き取れず、聞き返すと黒髪の少年がこちらに助けを求めてきた。

 黒髪の少年の方に視線を向けるとトリガー使いの少年はこの場から離れていった。

 

 まだまだトリオン兵がいるから討伐に向かったか?

 

「姉さんを…助けて……」

 

 少年に近づき抱えられている少年の姉を見下ろすと胸――トリオン器官のある場所に穴が空いていた。

 刺されただけか、抉り出されたのか……どちらにしろ助からない。

 それは少年も薄々気づいていることだろう。

 だが、現実を受け入れたくない……といったところか。

 

 トリガーを解除し、換装を解く。着ていた軍服の上着を少年の姉に掛けトリガーを再起動し、戦闘体に戻る。

 

 避難所……より、やっぱ病院の方がイイのか?

 けど多分、怪我人が押し寄せてパンク状態――野戦病院と化してるぞ、きっと。

 それにコレは……

 

 傷口を上着で被い、包むようにして少年の姉を抱き上げる。

 見ず知らずの男に姉が素手で抱き上げられるのなんて嫌だろうからな。

 

「!」

「トリアージで黒札が付けられると思うが……それでも病院に行くか?」

「――ッ! それ、でも……お、願い…します…ッ」

「あぁ……病院まで案内頼むぞ? ココの土地勘が無いからな」

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

 

()()()()……」

 

 足元から声がかかる。

 視線を鍋から声の方へ向けると黒髪の小さなお子様が目を擦りながらこちらを見上げていた。

 

「おぉ、おはようさん」

「うむ。きょうはランサーが()()()()()()()()()()なのか?」

 

林藤(りんどう) 陽太郎(ようたろう)

 『境界防衛機関ボーダー』の『玉狛支部』のマスコット的な“お子様隊員”だ。

 

「あぁ、そうだぞー

レイジは()()()()だし、キョースケとウサミは家から学校で、ボスは本部に行った。

ジンは明け方に帰ってきたから、まだ夢の国……コナミは――」

 

ちょっとぉぉぉ!!

なんで早く起こしてくれないのよ!!」

 

小南(こなみ) 桐絵(きりえ)

 赤いカーディガンがトレードマークなボーダー最強部隊『玉狛第一』の“攻撃手(アタッカー)”がヘアブラシ片手にドタバタやってきた。

 

 あ、羽っぽいアホ毛がいつも以上に跳ねまくってる……

 

「――お寝坊さんだな。

ちゃんと6時半に起こしに行った……()()()声掛けしたぞ? 携帯にだって鬼電してやったし」

 

 因みに現在、七時半……の少し前だ。

 

「…………ホントだ……あぁもぉ!」

 

 携帯の着信を確認した小南は憤りながら洗面所へ向かって行った。

 

 洗顔と歯磨きか……こりゃ、飯食う時間無いな。

 

◇◆◇

 

 ――四年半前、オレは『境界防衛機関ボーダー』に所属することになった。

 

 あの後、病院に着き『三輪(みわ) 秀次(しゅうじ)』と名乗った黒髪の少年と姉が両親と再会したのを確認すると、トリガー使いの少年とその仲間を探しに移動した。

 

 見つけるのはワリと簡単だった。

 

 戦闘体は便利なモノで、AR的な感じで視覚に『トリオンの使用状況』『状態』『使用可能な武器の種類』『レーダー』なんかが確認できる仕様になっている。

 そのレーダーでトリガー使いが居る場所へ向かったワケだ。

 

 トリガー使いの少年――『(じん) 悠一(ゆういち)』は、

副作用(サイドエフェクト)”と云うやつで()()()()()()()()()()()()らしく初遭遇の時とは違ってにこやかに迎え入れてくれた。

 ――が、他のトリガー使い達は若干ピリついていた。

 特に『城戸(きど) 正宗(まさむね)』と云う顔に傷のある男(後の最高司令官)はこちらに殺気を向けてきた。

 

 あの時の小南も敵意剥き出しだったなぁ……

 

 こちらに敵意は無いこと、迷い込んだ(?)だけなことを話し、迅の口添えもあってなんとか収まった。

 まぁ「トリガーを渡せ」とは言われたが「生体情報が登録された専用トリガーだからオレ以外のやつは起動できない」ってちょっと揉めたが。

 

閑話休題。

 

 

「ほら、弁当」

 

 陽太郎に朝メシを食わせてると小南が身支度を終えてやってきた。

 弁当と、それより少し小さめのランチバッグを渡す。

 受け取った小南は不思議そうに小さい方のランチバッグを目の高さにまで持ち上げる。

 

「何? これ」

「サンドイッチ。朝メシ抜きだと昼までもたないだろ? だから小さめのサンドイッチ作っといた。

学校着いてから時間がある時にでも摘まみな」

 

 まぁ、迅のサイドエフェクトが在ったから作れたワケだが。

 

「~~~~っ ねぇ! ハムサンド! ハムサンド入ってる?! あんたの作るハムサンド、美味しいのよ!!」

 

 中に何が入っているのか分かると目をキラキラさせて中身が何なのか訊ねてきた。

 

「あぁ、入ってる入ってる。

野菜少ないから昼の方、多くしといたぞ」

「やった! ありがと! ――行ってきますッ!!」

「あぁ、いってら~気ィ付けろ~」

 

 小南を見送り、ダイニングに入ると

 

「あらしのようだったな……」

 

 と、こんな顔(≡з≡ )をしながらもきゅもきゅご飯を食べていた。

 

 

 

よくある風景

 

 

 

 

 

「洗い物終わったらライジンマルと散歩に行くか、ヨータロー」

「むむ、では はやくたべなくてわ!」

「ゆっくりでイイぞ~」

 

 

 




ちまちま書いてやっと出来た。しばらく書きたくない……(二の腕プルプル)

プロローグってとこですかね……(¬_¬;)

◇◆◇

◆さっぱり書けなかったオリ主の設定とか◇

『槍ニキ似なオリ主』名前:ランサー(仮)

 元孤児、故に名前がなかった。
 物心つく頃にはトリガー使いの訓練生に。その頃は「青いの」とか「チビ」と呼ばれてた。
 専用トリガーを持つようになってからは敵味方問わず「ランサー」と呼ばれるように。

◆玄界に着てから...
 『鈴風 空(すずかぜ そら)』として生活している。
 前世のことは上層部と三輪、玉狛に話してある。
 音読みで後ろから読むと……空風鈴(くうふうりん)
前世の話しを聞いて林藤さんが付けたったwww
 本部に住んでいるが、本部と玉狛を行ったり来たりしている。
 本部の自室と玉狛では生身だが、それ以外では常にトリオン体で過ごしている。

◇生身》ランサー(Fate/stay night)
 あまり身形(みなり)拘り(こだわり)がなく、与えられたモノを着てる。
◇トリオン体》ランサー 黒髪ver,
       (目は赤いまま)
 烏丸より濃い青色の上着(肩に玉狛のエンブレム)、白Tシャツに黒のレザーパンツ、黒のミリタリーブーツ。

 普段はボーダーのトリガーを使用している。もちろん、主トリガーは『弧月(槍/試作)』www

 何故か人名がカタコトになる、と云う不思議……

◆専用トリガー『ゲイ・ボルク』◆
 専用トリガーは2パターンあり、
刺し穿つ死棘の槍(刺しボルク)” と “突き穿つ死翔の槍(投げボルク)” ……どっちも読み方はゲイ・ボルク。

 専用トリガーは、生体情報が登録された人物以外、起動することが出来ない。
 昔、奪われることがあったため、生体認証制になった。
 専用トリガーを与えられた者は、親兄弟などを人質に捕られ敵側に寝返らないよう、記憶を処置される。

 ボーダー本部から許可なく使用することを禁止されている。

 投げボルクは「黒トリガーなんじゃねぇの?!」ってぐらいの破壊力なため、本人もあまり使いたがらない。
(オリ主:流石、対軍宝具ェ……)

 専用トリガーを授けてくれた『王様』は転生者ではないか?と思ってる。
 オリ主を見て驚いたり、トリガーの名前が名前だし…………さだかではない。


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玉狛での日常

レイジさんの口調はコレで良いのだろうか……難しいφ( ̄へ ̄;)


 陽太郎、雷神丸との散歩から戻ると

 

「散歩か?」

「おぉ、レイジではないか。ぼうえいにんむはおわったのか?」

「あぁ、今戻った」

 

木崎(きざき) レイジ』

 『玉狛第一』の隊長で、ボーダー唯一の

完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)”と支部の玄関前でバッタリ遭遇した。

 

「お疲れさん――メシ食うか?」

「今日はランサーだったのか……いただこう」

 

 三人と一頭で玉狛支部に入る。

 

◇◆◇

 

 陽太郎をレイジに任せ、人肌ぐらいのお湯とタオルを用意。玄関に待たせてた雷神丸の腹と足を拭く。

 足と腹がキレイになった雷神丸は心なしかご機嫌に陽太郎の下へと向かって行った。

 

 少々汚れたお湯とタオルが入った洗面器を持ってキッチンへ。トリガーを解除し生身に戻る。

 

 日本で青い髪は()()()。だからトリオン体の設定を弄って日本によくある髪色(馴染む黒)にした。じゃないと、おちおち出歩けやしない。

 ……顔は弄ってないから目立つっちゃぁ目立つが……

 

 お湯を棄て、洗面器は軽く水洗い――コレは後でちゃんと洗う。

 搾ったタオルは洗面器の中へ。後で洗濯しに行くからその時にでも洗面所に持っていこう。

 手を洗い、味噌汁の鍋を火にかけ、塩鮭をグリルで焼く。

 洗面所で手を洗ってきた陽太郎はリビングのソファーに座り、雷神丸と共にお子様向け番組の観賞。

 

 レイジはそのまま風呂だ。

 

◇◆◇◆◇

 

「どーよ?」

「うん、うまい」

「っし! 出汁取りマスター!」

 

 味噌汁を啜るレイジに感想を聞くと表情は変わらないが“うまい”と言う返答に思わずガッツポーズがでた。

 

 前世の味だが……今世では味わったことのない味だ。そして日本食はやっぱり美味い。

 だから料理を覚えようと思った。

 

 “前世()”は簡単な料理しかしたことがない。

 今世は“料理をする”なんてこと考えたこともなかった。考える(そんな)余裕も無かったが。

 

 一から料理を始め……最近、和食を作り出した。

 

「……お前は何を目指してるんだ」

「え? 別に?

……強いて言うなら、()()()に戻っても“美味しいゴハン”が食べたいから。だな」

 

 日本の(この)味を覚えたら……“もう()()()()()()が食えなくなるのでは?”と、こっちに着て一週間もしないうちに思ってしまったのが始まりだ。

 

 ……いや、もしかしたらオレの故郷がメシマズなだけかもしれんが…………うん。

 

 だから料理を覚えようと思った。

 大事なことなので二度言いました。

 

「美味しいゴハン……」

玄界(ミデン)――ってか日本の味、覚えちまったら向こうのメシなんて……

味気なくて食えなくなりそうだしなぁ……」

「そんなにか……?」

「栄養はあるだろうけどなー…………

なんつーか……()()()は『食事を楽しむ』って感じだが、向こうは『栄 養 補 給』って感じ――彩りないし……」

 

 携行食もこっちの方が美味いし、バラエティー豊富だしなぁ……なんて、思わず遠い目になる。

 

 

「う~ん、良い匂い…」

 

「迅……今頃、起きてきたのか」

「おはよう、お二人さん」

 

(じん) 悠一(ゆういち)

 ボーダーに二人しかいない“(ブラック)トリガー”持ちの“S級隊員”で、玉狛支部所属の(自称)“実力派エリート”が寝起きのままでやってきた。

 

「レイジ、レイジ。こいつ……“暗躍(あんやく)”と云う名の よちよち(予知予知)歩きで帰ってきたの明け方なんだぜ?」

()()()のことだろ」

「そーなんだけどさー……」

 

 オレの告げ口にレイジは苦笑いを浮かべる。

 

「……よちよち歩きって……酷くない? レイジさんまで……

――はぁ、まぁいいや。ランサー、おれにもご飯、ちょーだい」

 

 予知予知歩きがお気に召さないようだ。

 ぶつぶつ言って席につく。

 

「酷くあるか。未成年が朝帰りとか…………防衛任務に入ってた訳でもないのに」

 

 言いながら迅のメシの準備をしにいく。

 

「だが前よりかは寝てるんだろ?」

「今日は5時間、ってところか? ……あのまま即寝ならな」

「ははは……ちゃんと寝ないとランサーがご飯食べさせてくれないからね~」

 

 冷蔵庫から塩鮭を出してグリルで焼く。

 味噌汁は……湯気が出ているが温め直した方がイイか?

 あとは……漬物と卵? 納豆と味付け海苔も要るかな……

 

 

~~~ 魚が焼けるまで、しばらくお待ちください ~~~

 

 

「どーぞ」

「いっただきまーす!」

 

 両手を合わせて元気良く――

 

 ……朝からテンション高ぇ(たけぇ)なぁ…………若さか? 若さなのか?

 

 さ~て……洗濯でもしますかね。

 

 

 

 

 

玉狛での日常

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

 

「すっかり馴染んじゃってるよね~」

「馴染む……? 馴染むって三門(ココ)の生活にか?」

「戸惑いとかあるかな? って思うじゃん? けど……わりかし最初っからソツなくこなしてるし?」

 

 食器を洗って片付け、洗濯物を干しに行き……終われば昼食の準備だ。

 ――と言っても朝食を作ってる時に昼に使うモノも準備してたからそこまで時間はかからない。楽ができる。

 

 キッチンには昼食を作るオレとカウンターからこちらを見ている迅。

 食事を終えたレイジは腹ごなしにランニング――へ行く前に、ソファーで寝落ちした陽太郎を寝床へ。

 雷神丸も陽太郎に着いて行った。

 

「前世日本人なんだ。多少の違いはあるだろうが基本は変わらねぇ……戸籍が()()()()なりゃあ、どうとでもなる」

 

 唐沢サン様々だ。……悪の組織、とは?

 

 

「そう言えばそうだった。

まぁ、小南たちと仲良くやれてるみたいだから良いんだけどね。

それに――料理したことないわりに最初から手際は良いし、美味しいし……」

 

 好きで戦争してた(戦ってた)ワケじゃねーんだがなぁ……料理をするなんてそんな発想もなかったし。

 前世じゃ出汁すら取ったこと無かったからなぁ……だし入り味噌(液体タイプ)ちょー便利☆

 

「んー……まぁ、ヨータローのお陰もあるかね。仲良くやれてるのは」

 

 レイジは兎も角……小南は陽太郎がいるから、だな。あとは……餌付け、かな?

 

「……料理に関しては正直、オレも驚いてる。()より上手くて……」

 

 いや、ホント。マジで。

 前世より美味しい(和風だしの素使用の)“だし巻き玉子”が出来て驚愕した。

 

「ま、そのお陰で美味しいゴハンが食べられる訳なんだけど~」

 

 ドコから出したのか。メシ食って間もないのにぼんち揚を食いながら迅はケラケラ笑う。

 ――――違和感なく料理しているのが馴染んでるってことなのか? うん?

 

「――そんなジンくんに悲しいお知らせです」

 

「……え?」

「“遠征組”の穴埋めで防衛任務三昧になるから、しばらくは玉狛(こっち)に顔が出せなくなった……すまんな」

 

「え……?」

 

 ぼんち揚がポロッと落ちたぞ? 袋の中だからセーフか。

 

「…………ご飯、食べれないの?」

「……朝は作れないかな?」

 

 昼メシなら作れるかも?

 

「朝 がっ! 一 番! 楽しみ! だったのに~~」

「朝ぐれーしか居ねぇだろ、お前(おめぇ)……」

 

◇◆◇

 

「それでお昼ごはんは、な~に?」

「……メシ食って2時間も経ってねーのにもう昼メシの話かよ……

――ヨータローが『お子様ランチ』を」

 

「『陽太郎セット』だ!」

 

 迅のセリフに呆れながら朝に準備しておいたタネからハンバーグを形作っていると、耳元で陽太郎の大きな声。

 驚き、右を見れば肩の辺りに陽太郎の顔だ。

 

「……ヨータロー、起きてきたの?」

 

 ちょっと……いつの間によじ登ったのさ?

 気づかなかったんだけど……

 

 

「おれはひとりでもおきれるんだぞ? しらなかったのか、ランサー」

「おぉ、ヨータローは凄いなー

けど今、料理中だからオレから降りてくれなー?」

「ふむ。しかたがないな」

 

 やれやれ、といった(てい)で陽太郎はそろそろ降りる。

 

「それで――『陽太郎セット』の中身って?」

「チキンライスにナポリタン、ハンバーグとエビフライにサラダを少々……それからデザートは、ホイップクリームとさくらんぼが乗ったプリン、だな」

 

 迅の隣に座らせた陽太郎に水を渡す。

 

「チキンライスにははたがたつんだ」

 

 ボーダーと玉狛のエンブレムが描かれたやつな。朝、一生懸命作りました。

 

「ランサーはすごいんだぞ? こんなちいさなはたに たまこまとボーダーのエンブレムをかいたんだ!」

「へぇ、すごいね~」

 

 おっ、思いの外、好評価。

 陽太郎は指で旗の大きさを迅に教えてた。

 因みに、2.5㎝×4㎝(紙の部分)だ。

 

 手先も()より器用になっている。

 

「大人は余り物だな。ナポリタンか、オムライスか……はたまた両方か」

 

 それに+ハンバーグとエビフライが付く。

 

「オムライス…… ランサー、オムライスにはたってたてれるか?」

「あぁ、できるぞ。――オムライスにするか?」

「うむ!」

 

 チキンライスをオムライスに変更――聞いてて食べたくなったな?

 変更するか聞けば陽太郎は嬉しそうに頷いた。

 

「んじゃあ、おれも。お昼はオムライスにしようかな? ふわとろのやつ!」

 

 だから朝メシを(以下略)

 

 呆れながら、中断していた昼食を作る。

 

 

 迅……幾ら十代がよく動くから燃費が良いとは言え……お前最近、()()()体、動かしてるか?

 お前がほぼほぼトリオン体で活動してるってこと、知ってるんだからな?

 ちょ…っと、お腹を気にしだしているのも……知ってるからな?

 

 ――睡眠をとらせるためとはいえ、まさか「寝ないとメシ抜き」の影響が (迅の)腹にあらわれるとは……なんか、すまん。

 あと、もう少し自分の体を労ってくれ……まだ十代なんだ。もっと自分第一で良いんだぞ……?

 

 ……レイジにダイエットメニュー(運動)の相談してみようか……

 

 ――さて。林藤とレイジはオムライスとナポリタン……どっちを食うかなぁ

 

 

 

頑張り屋さん、たまには休め

 

 

 

 

 




お待たせしました(え?待ってない?)
――実はコレ、一週間ぐらい前には書けてたんですよ←
じゃぁ何故、今になったのか?

キリの良いところまで書こう!としていたんですけど、なかなか進まなくて……

「じゃあ2話は玉狛で終わらせればえぇやん? コレの続き、3話にしよう。そーしよー」と、ぶった切って投稿となりました。


3話目は、やっと原作ですよ~


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ボーダー本部にて

やっと原作です(時間軸は)

◇◆◇
お気に入り、しおり、有難うございますm(_ _)m


『境界防衛機関ボーダー』本部

 

 

 

「あ゛ー……眠ぃ(ねみぃ)……」

 

 トリオン体だから“眠い”とか無いんだけど。

 精神的な問題だ。気分だ、気分。

 

◇◆◇

 

 迅に言った数日後から“A級トップチーム(遠征組)”の穴埋めで防衛任務三昧になった。

 

 まじ、ぶらっく

 

 ()()()じゃ何日も一人で防衛任務、寝ないなんてザラで。慣れてる……ハズ。

 トリオン体だから“疲れる”なんてことは無い――ハズなんだがなぁ……

 やっぱ、年には敵わないのかねぇ……

 

 あーーーー早く、ふかふかの布団で寝てぇ! 惰眠 貪りたい……!

 

 今ならオヤスミ3秒、イケんじゃね?

 

 ――なんて思うが、安易にトリガーは解除できない。解除すると青髪に戻る。

 

 玉狛と本部にある自室以外では常にトリオン体だ。そのトリオン体は黒髪に設定してある。

 

 オレが青い髪をしたアチラからきた人間(近界民)だということを知っているのは、上層部と極一部の隊員だけ。だから不特定多数の隊員が使用する仮眠室では寝れない。

 ――はぁー、面倒くせぇ……部屋が来い!

 

◇◆◇◆◇

 

 (気分的に)重い体に鞭を打ちつつ、ノロノロと住居区を目指す。

 

 

 

「あれ? 鈴風さん?」

 

 ()()()()()()()()()()()()()鈴風(すずかぜ) (そら)”の名を呼ばれ、声の方に顔を向けると、紫色のベストが特徴的な隊服を着た黒髪の少年が二人、こちらに歩いてくる。

 

「ヨースケ……と、シュージ?」

「こんちわ。ずいぶん疲れてるみたいっすけど……防衛任務終わり?」

 

米屋(よねや) 陽介(ようすけ)

 カチューシャがトレードマークの『A級7位 三輪(みわ)隊』所属の“攻撃手(アタッカー)”で、A級3バカの一人『槍バカ』と呼ばれる“戦闘狂(バトルジャンキー)”な槍使いだ。

 ――オレの“弟子”だったりする。

 

「あぁ……今ならオヤスミ1秒だな」

「マジかー……久々に模擬戦したかったな~……」

「陽介、ランサー「()()()()()()、な。スズカゼさん」……鈴風さんに迷惑をかけるな」

 

三輪(みわ) 秀次(しゅうじ)

 『A級7位 三輪隊』の隊長で、“万能手(オールラウンダー)

 四年前の第一次近界民(ネイバー)侵攻で遭遇して以来の仲だ。

 

 『(通称)近界民ぶっコロ派』ではあるが、近界(向こう)からきたオレには悪感情は持っていないようで「近界民も悪い奴ばかりじゃないのは わかる……」と理解しようとはしてくれているが……目の前で姉が殺されているんだ、複雑だろう。

 

「けどさ秀次~ 久々に“()()”に会ったんだ……相手してほしいじゃん!

秀次だって鈴風さんに会うの久々だろ?」

「……」

「無言は肯定と取るぞ~」

 

 テンションが高い陽介だけが、ニヤニヤと愉しげだ。

 ……仲良きことは美しきかな?

 

「何か用があったんじゃねーの?」

 

 トリオン体なのに眠くて気絶しそうだわ……しないけど。

 

「そーだった! 鈴風さんに聞きたいことがあるんだよ」

「聞きたいこと~? ……手短に頼むぞ?」

 

()()()()()()()()()でトリオン兵をバラバラにすることは……可能ですか?」

 

「――――何日か前にあったやつか。ボーダーのトリガー以外の反応があった、っていう……」

 

 陽介の言葉を受け、秀次が質問する。

 確か、“警戒区域”に学生が入り込んだところに捕獲用トリオン兵(バムスター)が一匹 現れたんだったっけ……

 

「無理ですか?」

「いや……出来なくはない、が……」

 

 バラバラ加減が、なぁ……

 

 思わず頭をガシガシかく。

 

刺し穿つ死棘の槍(刺しボルク)()()()()()()から()()()()()()()()()()()になるが……

突き穿つ死翔の槍(投げボルク)は――刺さった場所を起点に1㎞圏内は()()だ。爆心地に近い程、原形留めてねぇぞ? きっと」

 

 残骸ありゃあ良い方だわ……

 

 トリガー使いなんてトリオン体を破棄した瞬間、ボーダー(こっち)みたいな緊急脱出(ベイルアウト)機能がなきゃ、あの世逝きだ。

 

「うへー……それ、もう(ブラック)トリガーじゃん。更地にするなんて天羽の黒トリガーかよ……」

「オレもそう思った。けど、“ウチのが特殊なだけ”なんだとよ」

 

 ソースはウチの王様。トリガーの授け主だ。

 分類的には汎用トリガーに数えられるらしいが……はんよう、とは?

 

「オレとしても、なるべくなら使いたくないからな」

 

 初めて“突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)”を使った時のことを思い出して、ゲンナリする。

 

「え、じゃあアレって、下手したら黒トリガーってこと? マジで?」

「可能性はゼロじゃねぇな」

「黒トリガーである可能性も念頭に入れた方がいいか……」

 

「うわ……あのメガネボーイ、とんでもないの匿ってるってことか!?」

 

 ・・・・・・・・・・・・。

 

「……聞いちゃいけないことを聞いちゃった気がするんだが……?」

「陽介……」

 

 おい戦闘バカ。黒トリの可能性もあるかもね~って話してる時にハイライトの無い目ぇ煌めかせて、滑らしちゃいけない口滑らしてんじゃねぇよ。

 眠気も吹っ飛ぶだろーが。

 秀次なんか額に手ぇ当てちまったぞ? オレも頭抱えたい。

 

「? 別に鈴風さんならダイジョブでしょ」

 

 何言ってんの? 何か問題でも? と言うかのように陽介はきょとんとした顔をする。

 

 ……ぶん殴ってイイかな?

 

「ヨースケ……ドコに誰の目と耳があるか分かったもんじゃねぇんだよ。

――こう言った組織は“裏切り”と“スパイ”って云うのが()()()だ」

 

 物語だと。

 カメラとか盗聴とかも。

 

 ――ま、ちゃんと精査してるだろうけど。

 

「かもしんないけど……

オレは鈴風さんのこと信頼してるし、裏切るとかスパイとか……ナイでしょ――密告する相手いる?」

 

 ・・・・・・・・・・・・。

 

「いねーし、メリットがねぇ……――じゃなくてなぁ……」

 

 戦闘バカは本能で信頼、信用出来るか否かを決めるのか……まったく。

 

「問題は、お前ら三輪隊の信用度だ、って言いてぇの」

 

 “メガネボーイ”が何か――やらかしたんだろうな、近界民関係で。だから三輪隊が見張るだか監視だかすることになったんだろ?

 それを内緒でやらなきゃなんねぇのに――トリガーに関しては「確認したかったから聞いた」でいいが……

 

「“メガネボーイ”の話を関係ないオレに話した、って上が知ったら……どう思う? 無関係な人間に任務内容を話すなんて……特殊な仕事、任せらんねぇだろ」

 

 一般社会()()ですよー

 

 信頼してくれてるのは……有難いが(嬉しいけど)な。

 

「だったら鈴風さんに手伝ってもらう、ってのは?」

「…………は?」

「陽介……お前……」

 

 何かを考えてると思えば……

 

 思わぬ提案に呆気にとられる。それは秀次も一緒だったようで、呆れて言葉がでないようだった。

 

「関われば無関係じゃなくなるじゃん!」

 

 ・・・・・・・・・・・・。

 

おーまーえーなぁー……

 

 ちょっと前のオレの気持ちを返せ!

 

 サムズアップする陽介にヘッドロックを掛ける。

 

「痛い痛い」

「自業自得だ……」

 

 トリオン体なんだから、痛くなーい痛くなーい

 

◇◆◇

 

「……けどさ秀次、()()()のために鈴風さんに ついてきてもらうっての、アリだと思うぜ?

近界民が黒トリだった場合、鈴風さんが居りゃあ怖いモンなしだろ?」

「……」

 

 ヘッドロックから逃れた陽介は頭を擦りながらオレを関わらせることを秀次に提案した。

 

「“防衛任務、模擬戦以外での戦闘行為は禁止”されてんだよ、残念ながら」

「うっそー……」

「オレを使うんなら、上の許可取ってきてくれや」

 

 残念、無念。南無~

 

「――戦わなければ良いんですよね?」

「え」

「対象の監視を手伝ってもらえますか?」

 

 考え込んでると思ったら……

 

「……わーったよ。“メガネボーイ”の話、聞いちまったからなぁ……」

「最初から協力してくれりゃイイのに……」

「お前ねぇ……絞め足りなかったか? ん?」

「すみませんでしたッ!」

 

 不貞腐れる陽介を、手をにぎにぎしながら見ると、直ぐに謝られた。

 ――次はアイアンクローかな?

 

 

 

 

 

 

 

「相手が黒トリガーだった場合、上へは事後報告になりますが――――()()()()にも戦闘に加わってもらう」

 

「……マジかー」

 

 

 

 爆弾を放り込まれた。マジかー

 

 

 

 

 




お待たせしました、3話目です。
今回は早かった……まぁ、当然ですよね。半分以上は、2話の時に出来てたんですから(¬_¬;)

時間がかかったのは後半の方ですね……「どうやってオリ主をオサムの見張りにつけるか」のセリフ回しに悩みました。

あと私の学の無さが露呈…(´Д`|||)
勉強しないとなぁ……語彙力ほすぃ…


次回は、やっと原作主人公たち出てくるよっ!



…………たぶん。いや、きっと。


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12月14日 午前①

思いの外、早く書けた……
読み難かったらスミマセン…


◆9/25◆
今更ですけど……三輪って月見さんのこと “名前呼び” でしたっけ??
米屋は「蓮さん」って読んでた気がするけど……
「月見さん」じゃ、なんか しっくりこないんですよね……
もう「蓮さん」のままでいいか?←



 秀次に監視の手伝いを頼まれたのは丁度、隠密偵察用トリオン兵『ラッド』の駆除が終わった日だった。

 

 あの日は、そのまま解散。オレも自室に戻って即寝だ。

 

 オヤスミ3秒……ありゃ気絶だな。

 

 

 

 

 

 次の日。噂の“メガネボーイ”――三雲(みくも) (おさむ)の見張りを、秀次達とは別行動ですることになった。

 いくらボーダー隊員同士とはいえ、オレと秀次達とは年が離れてる。

 真っ昼間に二十代後半と高校生が一緒にいるなんて……オカシイだろ? しかも中学生の後をつけるとか――

 通報案件でしかない。

 

 だから、別々で見張ることに。

 この日は、特に何事もなく終了。また明日、になった。

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

 

【12月14日 土曜日】

 

 

 昨日は本部へ戻らず、玉狛に寄った。

 

 久々に食ったレイジの『肉肉肉野菜炒め』は美味かったー

 

 そして、そのまま泊まって――翌朝の今日、これまた久々に朝食を作った。

 本部に居ると食堂で済ませちまうからなぁ……

 

 迅は暗躍中らしく留守。一応、サンドイッチを作ってきたが多分、陽太郎の腹に収まるだろう。

 

 

 九時半。

 オレは玉狛を後にし、本部へ行く――ふりをして、三雲の行動範囲内に向かう。

 じゃないと迅に情報が行きそう……

 

◇◆◇◆◇

 

 

 いい感じのカフェで まったりする。

 表向きの今日のオレは()()()だからだ。

 

 オレの行動範囲は本部と玉狛だけじゃない。

 トリオン体でなら外も自由に出歩ける。だから、たま~にふらりと街をブラつく。

 

 まぁ、さすがに市外には出れないが。

 

《おっ! メガネボーイが家、出たぞ》

《これより追跡を開始する》

 

 三輪隊の前衛二人から内部通信が入る――と言っても、二人は生身だから携帯との通話になる。

 本日の任務(お手伝い)の始まりだ。

 

《了解~》

 

 注文したコーヒーを飲みながら返す。

 

《今日こそは、近界民(ネイバー)に接触してくんねーかなー》

《不謹慎だぞ、ヨースケ》

《だって、何のアクションも無いとか……ヒマすぎて死にそ~》

《お前ねぇ……》

 

 陽介のセリフに戦闘狂だなぁ~と苦笑いがでる。

 

《――ところで鈴風(すずかぜ)さん、今ドコに居んの?》

《オレ? カフェでコーヒー飲んでる》

《え……なんで、そんなとこに居んの!?》

 

《だってオレ……今日、()()()はオフだもの。

“玉狛から本部に戻る途中~”ってシチュエーションなんだけど?》

 

 だから今日はいつもの()()()()()()()()が肩に付いた“濃い青色のジャケット”じゃない。

 宇佐美に“おまかせ”した結果――黒のPコートになった。

 ボタンはボーダーのエンブレムが描かれている。そして一つだけ、さりげな~く玉狛のエンブレムになってたりする。芸が細かい。

 中は白のロングTシャツに黒のスキニーパンツとミリタリーブーツ。

 中のカラーリングはいつもと変わらない。

 

 ボーダー支給のスマホを弄り、連絡事項を確認する。

 

《……あんたか……》

 

《は?》

《秀次?》

 

 今まで黙っていた秀次が口を開いたが、なんだか様子がおかしい――怒ってる……?

 

《ランサー! あんたが迅に話したのかッ!?》

 

《なんで!?

――シュージの機嫌が悪いのは、ジンのせいか!》

 

 秀次が何の迷いもなく『ランサー』呼びするのは、チームメイトもオレが近界民であることを知っているからだ。上層部とA級と玉狛、それとB級の一部の隊員。

 

《あー……なんか、本部を出る時に迅さんに会ったらしくて……》

《……あぁ……何となく察した……》

 

 ――な~にやらかしてくれてんだよ、迅のヤツ……

 

《確かに昨日、玉狛に泊まったけど……夕飯食って、朝メシ作ってきただけだぞ?

それにアイツ、ココ最近、帰ってないみたいだし……昨日も今朝も居なかった》

 

 ま~た不規則な生活になりやがって。まぁ、体重は落ちただろうけどな。

 

《……なんとでも言える》

《会えないヤツに何を話せ、ってんだよ……》

 

 携帯だってロクに出やしない。

 

 秀次は“玉狛”って聞くと頭に血が上るからなのか、人の話しに耳を貸さなくなる。

 何をやらかしたらこんなに嫌われるんだ……

 

《――三輪くん、落ち着きなさい。鈴風さんが貴方に嘘をついたこと今までに有ったかしら? それに、鈴風さんは防衛任務以外の仕事の話を他人にしたこと無かったと思うわよ?》

《……》

 

 三輪隊(自分の部隊)のオペレーターである月見(つきみ)の落ち着きはらった声に、やっと耳を貸す気になったようだ。

 ホッと胸を撫で下ろす。

 

 

 

《そー言えば……なんで鈴風さん、模擬戦と防衛任務以外の戦闘行為が禁止になったの?

――まぁ、模擬戦と防衛任務(それ)以外で戦うなんてこと()()()じゃそうそうないけどさ》

 

 ・・・・・・・・・・・・。

 

 眉間に皺が寄った気がする。目頭を揉む。

 

《――あれ? 鈴風さ~ん?》

 

《……どっかの戦闘バカが、防衛任務中に、(ゲート)が開かなくて「ヒマだからバトろうぜ!」って……》

 

《……えーっと、それって》

《本部が建って直ぐぐらい、だったかなぁ……》

《……前に東さんが言ってたやつか……》

 

《あの時は太刀川くんがごめんなさいね?》

 

《あ、やっぱ太刀川さんなんだ》

 

 まぁ、その直後に門が開いたからトリオン兵を倒すワケなんだが――慶はトリオン兵を倒しながらオレにまで攻撃を仕掛けてくるという……

 それに気付いた蒼也が慶の首根っこ掴んで強制退場させてたっけ……

 

 その後の慶?

 忍田と蒼也に(しぼ)られ、忍田に首根っこ掴まれて、テスト前のような顔で謝りに来た。

 

《オレに対する“禁止事項”じゃなく、()()()()()()()()()()()の禁止事項だな》

 

 ――性懲りもなく、模擬戦を挑んでくるがな。

 

 スマホをポケットに仕舞い、コーヒーを飲み干す。

 会計を済ませ、店を出た。

 

 

◇◆◇

 

 秀次達と交代して三雲を尾行する。

 いつまでも同じ人間が後をつけていると怪しまれるからだ。

 気付いて、いるか? ――気付いてない……?

 

 三雲が携帯を手にする。

 

《どこかに電話しだしたな》

《近界民に?》

《……近界民が携帯持ってるって?》

 

 持ってるとしたら――玄界(こっち)に協力者が居るってことになるぞ?

 

《ないかー……じゃあ誰にだ?》

《さ~ねぇ……》

 

 親、兄弟、友人、彼女……他は何だ?

 

《――電話、終了。移動する》

《了解》

《了解~》

 

 

 

 

 

 三雲の後を50mぐらい離れて歩く。

 

 途中、何回か警報が鳴り、警戒区域に門が開いた。離れているとはいえ、戦闘音や地響きがすごい。

 

 今日の防衛任務(担当)はドコの隊だったかなぁ……

 

◇◆◇

 

 

「河川敷……?」

 

 三雲の目的地のようだが……誰も居ない。

 待ち合わせみたいな雰囲気の電話だったんだがなぁ……まだ着ていない、とか?

 ゆっくり歩きながら首を(めぐ)らせ辺りを見ると、川のほとりに自転車が一台――()()は居たみたいだ。

 

《待ち合わせの相手に電話か~? ――出なかったみたいだな。

おっ、と……走り出した》

 

 慌てて電話を切った三雲は警戒区域へ走り出した。

 

《場所は?》

《……弓手町方面、かな?》

《了解、向かう》

 

 レーダーと月見のナビで秀次達と弓手町の警戒区域へ向かう。

 

 

 

 

 

 警戒区域に入って再び秀次達が三雲を追う。

 

《へぇ……ミクモはレイガスト使いか――ずいぶんと振り回されちゃって、まぁ……》

 

 少し前に開いた門から現れた捕獲兼砲撃用トリオン兵――バンダーと戦う三雲を少し離れた高い場所から見ていた。

 

 それにしても……バンダーとの戦い方を良く理解してる。

 アイツは砲撃した後に少しスキが出来るんだ。そこを狙えばカンタン、なんだが――まぁ、B級上がりたてなら使い慣れてないのも仕方がないか……?

 スラスターにちょっと振り回されてる感がある……まぁ、仕留められたから後は慣れだな。うん。

 

 だけどレイガスト(アレ)、重いから初心者に向いてねぇんだよなぁ……

 B級上がりたてにはちとキツイんじゃねぇか?

 

 それにしても――ずいぶん小さいトリオンキューブだな…………あれでよく入隊が許可されたもんだ。

 

『レイガスト』

 剣と(シールド)モード、二つが一つになった“防御重視・重装型”の攻撃手(アタッカー)用トリガー。

 『スラスター』はトリオンを噴出させ、(ブレード)の動きを加速させるレイガスト専用のオプショントリガーだ。

 

 レイガストはあまり人気がない。

 刃の形を変えることは出来るが、スピード型攻撃手が使う『スコーピオン』程の自由度はないし、盾モードも“防御用トリガー”の『シールド』のように自在に変形させることが出来ない。

 

 そして何より――重い。コレが一番のネックだと思う。

 

 レイガストはどちらかと言えば“玄人(くろうと)向け”だ。覚えることが多いため使ってる隊員も少ない。

 オレの知る限りでは三雲で四人目……開発者を入れると五人。

 一人は『盾』として、サブで使用。

 一人は『打撃』――殴るって。レイガスト本来の使い方じゃないと思う。しかもスラスターで拳を加速させるとか……

 一人は『レイガスト二刀流』

 開発者が思ってる使い方ではないだろうなぁ……

 

 スラスターは投擲に「良さそうだな……」と思ったりなんかした。

 

閑話休題。

 

 

 

《白髪の坊主と……黒髪の嬢ちゃん? ――ミクモの知り合いか?》

《なんで、警戒区域(ココ)に民間人が居る!?》

 

 バンダーを倒した三雲が白髪の少年と黒髪の少女に近寄り――嬢ちゃんを叱ってるみたいだな。二人と何かを話した後、三人は移動する。

 

《――この先は……弓手町駅?》

 

 四年半前の大規模侵攻で、ここら一帯が警戒区域に指定された。駅は区域外だったが近かったために移転。

 

《そこで話しでもすんのかねぇ》

 

《蓮さんは奈良坂と古寺を狙撃位置に誘導。鈴風さんは――介入しやすい位置に移動してください。

俺と陽介は、このまま三雲を尾行だ》

《わかったわ》

《鈴風、了解~》

《オッケー》

 

 旧弓手町駅へ迂回しながら“移動用トリガー”『グラスホッパー』を使って建物の屋根を渡って行く。

 

 

◇◆◇

 

 ホームを見渡せる位置でいつでも行ける場所から三雲達三人の動向を見張る。

 

 ――白髪の少年の近くから“にゅ~”っと……

 

《…………何だ? あれ……》

《鈴風さん? どうしました?》

《いや……なんか……()()()()()? みたいなのが出てきて……》

《炊飯器……?》

 

 多分……()()はトリオン兵だ。見たことのないヤツだな。

 

《あ、なんか口? から、舌みたいなモノ出した》

 

 会話は聞こえないが、この舌? みたいなモノを黒髪の少女に掴ませたいらしい。――が、少女は掴むのを躊躇しているようだ。

 そりゃそうだ。得体の知れないモノなんて出来れば触りたくない。

 

 ん? 三雲が掴むのか?

 

 三雲がトリオン兵の舌を掴んで一分もしないうちに黒い炊飯器のようなトリオン兵の頭上にキューブが現れた。

 ……このトリオン兵にはトリオンを測る機能でも備わっているのか……? 

 

 そして、やっぱりキューブが小さい……

 

《はぁーやっと着いたー……って、()()が言ってた炊飯器? なんか、ちっせぇー》

 

 思っていたモノのより小さかったのだろう。陽介は正直な感想を口にした。

 確かに小さい。両手に乗せれそうなサイズだから普通の炊飯器を想像していれば小さく感じる。

 だが、このサイズで多機能とか――優秀だな。

 

 秀次達が駅のホームに着いた頃には黒髪の少女が黒炊飯器なトリオン兵の舌を掴んでいた。

 少女が黒炊飯器の舌を掴んでから数分後――黒炊飯器の上に大きなキューブが現れる。

 

《おわっ! なんだ、あれ……でっけー》

《こちらからも確認出来た――踏み込む》

 

 ……あの嬢ちゃん……今までよく無事だったなぁ……

 

 黒髪の少女のトリオンキューブは三雲の何倍有るんだ?! と云うぐらいに大きい。

 今までに何度か襲われていても不思議じゃないぐらいの大きさだ。

 こりゃ……二宮や公平の()()()()はあるかねぇ……

 

 

 

 

 

《動くな、ボーダーだ》

《――近界民がトリガーを使ったのか?》

《間違いない、現場を押えた――ボーダーの管理下にないトリガーだ》

 

 秀次と陽介が三雲達三人の背後から現れた。奈良坂が状況の確認をすると秀次はスマホで見たことの説明をする。

 

《トリガー……トリガー、ねぇ……オレはトリオン兵だと思うんだがなぁ……》

 

 炊飯器型(あんな)トリガー……みたことがない。

 オレが知らない()()かもしれないが。

 

 ――ってか陽介。お前、いつの間にパック牛乳なんて買ったんだよ。

 

《何を根拠に? ――どちらにせよ、近界民との接触を確認》

 

 根拠を示せと言われても困る。そんなもん……無い(ねぇ)

 

 

《――処理を開始する》

 

 秀次達は三雲達と一定の距離を保ち、

 

 

トリガー起動(オン)

 

 

 トリガーを手にした二人の服装が変わる――

 

 

 

 

 




◆現在、公開できる情報◆

鈴風(すずかぜ) (そら)/ランサー

◆プロフィール◆
◇ポジション:アタッカー
◇年齢:26歳(推定) ◇誕生日:__
◇身長:185㎝ ◇血液型:__
◇星座:__ ◇職業:__
◇好きなもの:料理、猫、自己鍛錬
◇家族構成:__

◆(ボーダーの)トリガーセット◆
◇主/弧月(試作):槍、__、__、グラスホッパー
◇副/__、__、__、__

近界民(ネイバー)/軍人/元孤児
・名前は無い(鈴風もランサーも仮名)
・槍使い/青の槍兵(ランサー)と云う異名を持つ
・何故か人名がカタコトになると云う不思議
・専用トリガー『ゲイ・ボルク』
 (刺し穿つ死棘の槍(刺しボルク)突き穿つ死翔の槍(投げボルク)
異界からの迷い人(世界規模での迷子)
・『米屋(よねや) 陽介(ようすけ)』と師弟関係

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

声だけの出演…… “オペレーター” 月見さんと、“No.2狙撃手” 奈良坂(一言しか喋っとらん……!)

二人の口調が合ってるのか……
分からん……

原作のシーン、セリフを使うって……大変っすね……
齟齬が出ないようにするって……
何度、書き直したことか……Φ( ̄¬ ̄;)


長くなっちゃったので…………分けます……しばらく、お待ちください……
あばばばばヽ(´Д`;≡;´Д`)丿

◆追記◆4/28
何故か名前は片言(カタカナ)になっちゃう主人公なのに、太刀川さんの名前がおもくっそ漢字になってた
Σ(゚Д゚;≡;゚д゚)え、今まで気付かなかったんだけど?!

『慶→ケイ』に修正しました。

『ケー』にするかで悩んだ……「シュージとヨースケだから、ケーかな?」って。「でも、なんかしっくりこない……」で、ケイにしました。

(レイジさんは『レイジ』のままだな……)


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12月14日 午前②

やっと出来た……
中途半端な感じがするけど…… 投 稿 ☆ミ

一応、読み直したりしているのですが……おかしな箇所があったら教えてください。
間違えて覚えてたりするので←


《――で? どっちが近界民(ネイバー)なんだ?》

 

 秀次と陽介が三雲達と接触したのを視認。

 ホームに向かってグラスホッパー(光の板)を何枚か等間隔で出し――(かけ)る。

 足音をたてないためだ。

 どんなに気を付けていても多少なりとも音が鳴る。

 

《今、そのトリガーを使っていたのはそっちの女だ》

《初の人型近界民が女の子とか、ちょーっと殺る気削がれるなー》

 

「……オレが近界民だってこと、ヨースケのヤツ忘れてねぇか?」

 

 もしかして……? とは思っていたが……

 

《……そうね。3日前にも「オレ、人型近界民 初めてなんだよな」って言っていたわ――貴方、馴染みすぎなのよ》

 

 それ、迅にも言われたなぁ……「馴染んでるよねー」って。

 …………あれ? 近界(向こう)から来たこと、陽介に言ってなかったっけ?

 

 

《油断するなよ。どんな姿だろうと近界民は人類の敵だ》

 

〔ま、待ってください! こいつは――〕

 

〔ちがう、ちがう。おれだよ、近界民は〕

 

 

 トリオン体は、ある程度の距離の声を拾うことが出来る。

 味方の声は、内部通信のおかげでハッキリ聞こえるが、相対する人間の声までは拾えない。だからオペレーターの支援で鮮明にしてもらう。

 視力も一緒だ。

 

 秀次が少女の方が近界民だというと、三雲が黒髪の少女を庇うように前へ出て弁明しようとする。

 そのセリフを遮るように自分が近界民だと白髪の少年が告げた。

 

「――間違いないだろうな?」

「まちがいないよ」

 

 支援無しで聞こえる距離にきた。

 

 白髪の少年の言葉が間違いないことを確認した秀次は、銃手(ガンナー)用トリガーの拳銃(ハンドガン)の引き金を引く。

 

「な……何して「ためらわねーなぁ」――!!」

 

ダンッ…とホームの屋根を一蹴り。飛び降りて着地。

 ためらうことなく、引き金を引いた秀次。それを咎めようとした三雲だったが自身の背後に降ってきた第三者――オレの登場に動揺したようでセリフが途中で切れた。

 

鈴風(すずかぜ)さん……」

戦う(やる)のは結構だが、そいつの仲間や目的を訊いてからでも遅くねぇだろ――な~んも分からねーじゃぁボーダー(こっち)に不利益だ」

 

「……近界民を名乗った以上、見逃すわけにはいかない。近界民はすべて殺す――それがボーダーの務めだ」

 

《やっぱり、貴方以外の近界民は信用できません》

《……そりゃ、しゃーねぇわ》

 

 オレの意見に秀次は銃をフォルダーに仕舞いながら撃った理由を言う。内部通信では近界民に対する思いを吐露した。

 姉が殺されてるんだ、仕方がない。

 いいヤツが居るのは頭で理解してても心が拒絶するんだろう。四年じゃ、過去にするには短すぎる。

 

「びっくりしたー……おれが一般人だったらどうする気だ」

 

「空閑!!」

「うおっ マジか。この距離で防いだ!?」

「おぉー」

 

 安堵と驚愕と感嘆の声。

 秀次に撃たれた白髪の少年――クガは『盾』の印が付いたシールドを右手にかざして座っていた。

 そこそこ近い距離から撃たれた弾を、傷一つなく全て防いだのだ。

 

「あのさ、ボーダーに迅さんっているだろ? おれのこと訊いてみてくれない? いちおう知り合いなんだけど」

 

 あ……

 

「そ……そうです! 迅さんに訊いてもらえれば分かるはずです!

こいつが他の近界民とは違うって……」

 

「……迅、だと?

――やっぱり、一枚噛んでたか……玉狛支部……!」

「あっちゃ~」

 

 服についた土埃を払うクガと三雲のセリフに秀次の片眉がピクリ上がる。

 ――スイッチ、入っちゃったかな……

 オレは手で目を覆って、天を仰いだ。

 

 迅って単語(それ)……今日は地雷……

 

 …………どんだけだよ

 

◇◆◇

 

 オレがちょいと現実逃避をしている間にいつの間にか『三輪隊vsクガ』になっていた。

 

 お前ら行動早すぎ。

 

 陽介の先制攻撃は避けられたが、攻撃手(アタッカー)用トリガー『弧月(こげつ)』のオプショントリガー『幻踊(げんよう)』でクガの首に傷を付けることは出来た。が、浅かった。

 

 三雲に止めさせるよう懇願されたが怒りスイッチが入っちゃってる秀次に何を言っても聞く耳はない――近界民を相手にしているから尚更。

 オレが無理だと分かると、三雲はどこかに電話をしだした。数回の着信音の後に聞こえてきたのは迅の声だ。どこからかココを見ているようだが――オレがさっきまで居たところか、その反対側か。

 だいたいの場所に絞られる。

 

 安心して見てなよ、とは――()()()()()()()()()

 

〔三輪隊は、確かに腕の立つ連中だけど遊真(あいつ)には勝てないよ。あいつは――〕

 

 

 

 

 

 

 

《あーあ……やっぱサシで()りたかったなー……反撃がなきゃイジメみたくなっちゃうじゃん》

 

 

 奈良坂の狙撃で右腕を落とされたクガは、あちこち傷だらけになっている。当てた奈良坂(撃ち抜いた本人)は《はずれ(・・・)だ》と舌打ち。即死させるチャンスを不意にしたことに苛立っているようだ。

 陽介は近界民と戦えて楽しそうだが、少しガッカリしていた。戦闘狂め……

 

「空閑はなんで反撃しないんだ……? 空閑の強さはあんなもんじゃないはずだろ!」

 

 確かに。戦い慣れてる感じなのに本気――全力を出しているようには感じない。何か理由が……?

 

 いつの間にか黒炊飯器なトリオン兵がいなくなり、代わりに黒炊飯器の顔? に似た……豆? 電球? みたいなやつが三雲の側に浮いていた。

 

 曰く。相手の位置取りがうまい。

 そーなんだよ。必ず片方は死角に回りこむんだよなぁ……陽介の相手していれば秀次が隙を突いてくるし、挟み撃ちを回避しようとすれば狙撃(スナイプ)。三輪隊とのバトルって、結構 (せわ)しねーんだよ……

 

 …………手強いが勝てない相手ではない、って……やっぱ手ぇ抜いてんの?

 手抜き……反撃をしない理由――

 

 

《手古摺らせるな、近界民! そろそろ観念して大人しく死ね!》

 

〔シールド ――――!?〕

 

 

 秀次はベストのポケットから出した弾を銃に装填し、撃つ。

 それを防ぐためにクガはシールドを展開させたが、秀次が撃った弾はシールドを貫通――

 

 

〔重っ……なんだこりゃ……〕

 

 

 クガの体に()が四つほど。

 

鉛弾(レッドバレット)

 トリオンを重しに変え、相手の動きを拘束する銃手用のオプショントリガーだ。

 直接的な破壊力はないが、シールドと干渉せず貫通する特性を持つ。当たれば非常に強力だが『弾速が遅い』『トリオン消費が激しい』なんかの難点も多くて、使用している隊員は少数だ。

 

 

《これで終わりだ、近界民!!》

 

「空閑!!」

 

【解析完了――印は“ボルト”と“アンカー”にした】

 

〔OK〕

 

 

 秀次と陽介がクガに襲いかかる――のと同時に、聴覚支援で聞こえたクガと黒炊飯器のやり取りに()()()()()()が頭を(よぎ)る。

 

 

 グラスホッパー、短い間隔、起動――

 

 直感に従い、短い間隔で設置した光の板を踏ん(グラスホッパー)で駆ける。

 

 はやく、早く疾く……!

 

 

〔“アンカー”+“ボルト”〕

 

 

 クガ()の無防備な後ろ姿――――は、無視。

 

「――クアドラ」

「「!?」」

 

 

()なら――――

 

 

 『弧月(試作):槍』を右手に展開し、『アンカー』と『ボルト』を撃ったクガの射線に入る。

 

「!」

「「鈴風さん!?」」

 

「おっ……らぁぁぁ!!」

 

 槍を回転させ、秀次に柄を向ける。両手で握り――右脇腹目掛けてフルスイング

 

「ぐっ……」

「は?! ちょ…! 待っ…!」

 

 クリティカルした秀次を、そのまま陽介の方へぶっ飛ばす。

 勢いで反転し、クガの方を向くことになった――直後、胸や腹に衝撃がくる。

 

 ()()()()()()がみるみる大きくなり、ズシッと重みが増す。

 そのまま砂利の上に落ち――そうになるのを弧月()を地面に突き立て、足からの着地を試みる。――が、重さに勝てず見事なまでに弧月はポッキリと真っ二つ。

 

「ぅお、もてぇ~」

 

 背中から地面に落ちた衝撃に一瞬、息が詰まる。そしてやってくる体への重み。腹と胸だけかと思ったら錘は弧月を持たない方の左腕や脚にまで付いていた。

 

 ……身動きが取れん……

 

「鈴風さん……!」

 

 嫌でも青空を見る形になっているオレに脇腹を抑えた秀次と陽介が駆け寄ってくるのが視界に入った。

 

 

 昔なら、()()の生死なんざ気にせず、敵の首を()()()()()のに――

 

「――――平和ボケしたかねぇ……」

 

 

 敵の首よりも味方を護る方を選んでいた。

 

 

◇◆◇

 

 

「なんで……! 俺たちを庇ったりなんかしたんですか!!」

 

 秀次と陽介に起こされ、一息――とはいかず、秀次に非難される。

 

 なんで、って……

 

 ホームが少し賑やかになってきた。

 迅と三雲の話し声が聞こえるからやっと迅が現れたのだろう。

 

「シュージ……お前が言ったんだろ? 相手が(ブラック)トリガーだったらオレにも戦闘に参加してもらう、って」

 

 弾食らっただけで戦闘になってないけどな。

 

「!」

「え、マジで!?」

 

「あー……やっぱ、ランサーは気付いたか~――にしても、お前もずいぶんと派手にやられたねー」

 

 線路に降りて、迅がこちらへやってくる。

 ホーム上から迅に声をかけられ、そちらへと顔を向けていたクガも今はこちらを見ている。

 

「そりゃ、お前……あんな直ぐ様相手のトリガーをコピー出来るのが『通常(ノーマル)』だの『量産型』のトリガーであって堪るかっての」

 

 そんなトンデモトリガーを“汎用でっす☆”なんて言うのはウチだけで結構です。

 

《ツキミ――緊急脱出(ベイルアウト)したらトリオン体の再構築にどれぐらい時間かかる?》

《そう、ね……グラスホッパーと“錘”の分が減るだろうから――数時間、ってところかしら?》

《あー……まぁ、戦闘することなんてないだろうからトリオン体に成れるだけなら問題ない、か》

《護身用トリガーも用意しておくわ》

 

 戦闘体が破壊された後、新たに戦闘体を作り直すにはトリオンと時間がかかる。戦闘体は基本、“使い捨て”だ。

 今回のようにトリオンの消費量が少ない、または消費していない時に戦闘体を破棄した場合、戦闘体を作り直すのにあまり時間はかからない。トリオン量にもよるが。

 

「こーなる未来は視えてなかったのか?」

「いや……無いことはないけど――かなり低い確率だったんだけどなぁ……」

 

 秀次と陽介に支えられながら迅に訊けば、困ったように頭を掻きながら答えた。

 ふーん……黒トリガーって気付かない確率の方が高かったのか。

 まぁ、気付いたのはギリギリだからなぁ……

 

 

「ここでトリガーを解除するワケにはいかないから緊急脱出するわ」

 

 

緊急脱出(ベイルアウト)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボフンっとマットの上に落ちる。

 

 緊急脱出するとこんな感じだったか……

 

 緊急脱出なんて出来た当初――初期も初期の実験でやって以来だ。

 

 今回、“念のために”と三輪隊の作戦室を緊急脱出先に設定していた。

 部屋を出て月見のもとへ行く。

 

青い髪(その姿)を見るのなんだか久しぶりだわ」

 

月見 蓮(つきみ れん)

 『A級7位 三輪隊』のオペレーター。オペレートも一級品だが、戦術も なかなか……

 黒髪ストレートに切れ長な目のクールビューティーな美人。姉御肌だからか、彼女を慕うオペレーターが沢山いる。

 因みに。A級1位部隊の隊長とは幼馴染みで、戦術の師弟関係だったりする。勿論、師匠は月見の方だ。

 

「ほとんどトリオン体だからな~」

 

 今は完全生身だから本来の姿である青髪の状態だ。

 

 

「――それで護身用トリガーは用意したのだけれど……」

「うん? なんか問題でも?」

「『オペレーターの服』――勿論、男性用よ? と、『三輪隊の隊服(ベストなしver,)』どちらが良いかしら?」

「……」

 

 取り敢えず……女物だったら青髪のまま(このまま)引きこもる。籠城する。

 180オーバーの男がオペ子の格好とか――――恐ろしい……

 

「いや別に、いつもので……」

 

「『隊服』だ」

 

 振り向くと、つい数分前に別れた秀次がマットが並ぶ部屋から出てきた。

 

「シュージ? ――お前……ジンの話、聞かずに緊急脱出してきたのか?」

 

 オレが緊急脱出した後、どんな話をしたかは知らない。ずいぶんと早いお帰りに(これは迅にキレて緊急脱出してきたな、こいつは……)と、思わず半目になる。

 案の定、オレの問いに対し「……フン」と鼻を鳴らしてそっぽを向いた。図星か!

 

 

 

「…………隊服で、良いかしら?」

 

 

 

 

 




【あとがき】
『トリオン体の再構築』については、独自解釈・独自(捏造)設定になってます。
 “戦闘体が破壊されたら、トリオンと時間をかけて作り直す” のなら、『トリオンの消費量が少ない状態で破壊 または破棄したら、戦闘体を作り直すのに あまり時間はかからないのでは?』と思ったから。
 出来るって思ってたんだよ!←
 月見さんとの会話を書いてて「トリオンが回復するのに1日ぐらいかかるんだっけ?(※人による)……トリオン体もだっけ? BBFに書いてあったよなぁ」と探して凹んだ……

独自解釈(捏造)設定って最 高(さいっこう)だね☆←

◇◆◇

 遊真のセリフ……『アンカー』『ボルト』『クアドラ』が漢字表記されてないのは、主人公が その表記を知らないからです。


 やっと『12月14日 午前』が終わった…………次『午後』かぁ←

◇◆◇

仕事を始めて……思った以上に眠いです。
長くスマホ見てらんない……あと(脚が)筋肉痛。むくみかな?


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12月14日 午後

お待たせしました~(待ってない)

口調とか合ってるかな……


鈴風(すずかぜ)さん?」

 

 デジャヴ……

 

「え?」

「いや~前にも似たような感じで声掛けられたなぁ、って……」

 

 戦闘体の再構築が完了するまでの間、何もすることがない。

 だからと言っていつまでも三輪隊の作戦室に居るわけにもいかず……三輪隊には新たな任務が与えられたようだし。

 いっそのこと寝てしまうか……と、自室を目指していたところに声を掛けられた。

 ……デジャヴだな。

 

「それでどうした、コアライとオクデラ(コアデラ)

 

小荒井(こあらい) (のぼる)』『奥寺(おくでら) 常幸(つねゆき)

 『B級 (あずま)隊』の高1攻撃手(アタッカー)コンビ。

 茶髪の方が小荒井、黒髪の方が奥寺。

 まだまだ発展途上中だが、コンビネーション攻撃は中々に良い仕上がりになってきている。数年後が楽しみだ。

 

「どうもこうも、鈴風さんがいつもと違う格好だったから!」

「スーツなんて珍しいなぁ、って……どうしてその格好に?」

「……トリガーがメンテナンス中で今、護身用トリガーを起動してるから?」

「……なんで疑問系?」

 

 生身(青髪)彷徨(うろつ)くワケにはいかないため、護身用トリガーを起動することになった。

 三輪隊の隊服(ベストなし)になるところだったが、いらん憶測を立てられるのも面倒臭い。

 だから無難にオペレーターの制服になったんだが――(ブラック)トリガーとの戦闘(三輪隊VSクガ)を見ていたのがバレ、上層部からの呼び出しをくらった。

 オペ服で向かい尋問されること小一時間……忍田に「勝手なことをするな」と小言を貰い――まぁ、怒られるのも仕方がないんだがな。本部長の指揮下に入ってる訳だから。

 んで、緊急脱出(ベイルアウト)したこともバレて……「ついでだからメンテナンスしておく」と戦闘用トリガーは鬼怒田に没収された。

 オペレーターだと勘違いされる――可能性は無きにしもあらず、とオペ服から上層部が着ているスーツにチェンジすることに。

 あんま変わんない気がするのはオレだけだろうか?

 

「お前ら今日はオフだったろ?」

「ヒマだし、“ランク戦でもしようか”って来たんです」

「そっかー……護身用じゃあ模擬戦出来ないよなぁ……」

「あれ? コアライって戦闘狂の仲間だった……?」

「久々に鈴風さんを見掛けたから、対戦してほしかったんですよ」

 

 頭の後ろで手を組み、口を尖らせ不満そうな小荒井を奥寺がフォローする。

 

「ありゃ……そりゃぁスマンな」

「それは残念だな」

 

「「東さん!」」

 

(あずま) 春秋(はるあき)

 元『A級1位部隊』現『B級 東隊』の隊長で、狙撃手(スナイパー)用トリガーの開発に尽力した“最初の狙撃手”。

 ボーダー内には彼から戦術や狙撃を教わった弟子が沢山いる。

 

 小荒井の頭を撫でるオレの後ろからやってきた東を見つけた二人は嬉しそうに声を揃えた。

 

「“対近界民(ネイバー)戦”に役立つから鈴風には二人と対戦してほしかったんだが……」

 

 そりゃ近界(向こう)出身だもの。近界民戦の戦略、立てやすかろうよ。

 

「……近界民戦に役立ってもランク戦の役には立たないだろ」

「そんなことないさ。お前との戦いで学ぶことは沢山あるし、経験は無駄にはならない」

 

 ――前世をいれても、(コイツ)に口で勝てる気がしない……

 

「…………キヌタに訊いてみっか……」

 

◇◆◇

 

 この後、開発室に突撃して使用できる戦闘用トリガーの有無を確認し『オレVS東隊』が開戦。忙しいだろうに、東がノリノリで参戦したのは意外だった。

 最後は『オレVS東』になったんだが――

 

 ゼロ距離アイビスはヤメレ……

 

 攻撃手な距離感の狙撃手とか、恐ろしいな?

 いつものトリガーだったら()けれたんだがなぁ…………トリオン漏出過多(ろうしゅつかた)で緊急脱出してるか。

 

 

 

 

 

 

 

 『オレVS東隊』の模擬戦を観ていた攻撃手(18)を皮切りに攻撃手時々射手(シューター)銃手(ガンナー)――と、千本ノック張りに模擬戦をすることに……

 オレと東が()ってるのが珍しいってのもあったんだろうが、次々と代わる代わる戦って――正直、疲れた。

 因みに東は、模擬戦を申し……巻き込まれる前に戦線を離脱していた。くっそ、羨ま……

 

 「戦闘体の再構築にはトリオンを使うというのに……なにをやっとるんだ、貴様は!!」と、鬼怒田に怒られた。

 いや……十人近くと戦うことになるなんてオレも思ってなかったし…………やらかした感はあるので、無言で土下座しといた。

 

 

 

 

 気が付きゃ夕方を()うに過ぎ、玉狛に着いた時にはいい時間になっていた。

 

「すっかり遅くなっちまったなぁ……

“今日も寄る”とは言って朝出てきたけど――メシ、あるかなぁ……」

 

 玄関を開けると――知らない靴が三足。客か?

 サイズ的に十代の子供っぽい、が……スニーカーだし。

 玉狛に来るぐらいだから近界民には寛容だろう……と、トリガーを解除して上がる。

 

「おーう、ウサミ~ ……メシ残ってるかぁ?」

 

 リビングに入れば宇佐美と――昼間に別れた三雲達三人。計四人がいた。

 

「――って……なんだ、お前ら。ジンに連れ込まれたのか?」

「連れ込まれた、って……鈴風さん、おかえり~」

「「え、」」

 

 ふふふと笑う、黒髪ストレートの眼鏡少女は『宇佐美(うさみ) (しおり)

 『玉狛第一』のオペレーター。

 眼鏡が大好きで、自身も眼鏡を愛用。

 眼鏡人口を増やそうと色んな人に眼鏡の良さを語っている。かくいうオレも勧誘された――視力は悪くないのに。

 オペレーターの技術は申し分ないんだがなぁ……

 

 最初は「誰だ? この人」という顔をしていた三雲と黒髪の少女は宇佐美のセリフに目を丸くして驚いたようだった。

 髪色だけでそこまで変わるか~?

 

「3人のこと、知ってるんですか?」

「おー……昼間にちょっと、な」

「なるほど~っと。夕飯……多めに作ってはいたんですけど……鈴風さんの分、無くなっちゃいました。

――見た目によらず大食いな子がいまして~」

「ま、しゃーねぇわ――来るの遅かったし……」

 

「すずかぜ、って……迅さんに『ランサー』って呼ばれてた……? ん? でもあの時の髪は黒だったような?」

 

 マンガだと頭上に『?』がたくさん浮かんでいそうなクガは、オレの髪色が違うのは何故だ? と腕を組んで首を傾げていた。

 

「えぇ!? 迅さん、遊真くん達の前で鈴風さんのこと“ランサー”って呼んじゃったの!?」

「――シュージでも“スズカゼさん”呼びなのになー」

 

 なんのための名前なのか……

 

「え、えーっと……本当に鈴風さん、なんですか?」

 

 俄に信じがたい、というような三雲に「トリオン体の設定、弄れるのは知ってるだろ? それで髪の色を変えてんだよ」と言って、トリガーを起動し生身(青髪)からトリオン体(黒髪)に変わってみせる。

 

「青い髪は日本だと目立つからなぁ」

 

 マンガやゲームのキャラじゃあるまいし…………()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「ま、改めて――スズカゼ(鈴風) ソラ()。本部所属の()()S級隊員……ヨロシク」

 

「おれは空閑(くが) 遊真(ゆうま)。ヨロシク、すずかぜさん」

【はじめまして、スズカゼ。私はユウマのお目付け役でレプリカという】

 

「知ってると思いますが三雲(みくも) (おさむ)です。こっちは雨取(あまとり) 千佳(ちか)

「よろしくお願いします」

 

 自己紹介をしたら、三人と一体も自己紹介してくれた。

 

 

 

 

 

 

 

【スズカゼ……君は『青の槍兵(ランサー)』なのではないか?】

「――それって、親父が言ってた“青い髪の槍使い”のこと?」

 

 ・・・・・・・・・・・・うそやん

 

 ふよふよ~とオレの近くにやってきた黒炊飯器――レプリカと空閑のセリフにしゃがみこんで頭を抱えたくなった。

 

 

 嘘だ! 誰か、嘘だと言ってくれ……ッ!

 

 あんな……見たまんまの通称(通り名)が蔓延してるとか…………近界(向こう)に帰れない……いや、帰りたくない!!

 

「……何をもって、オレが“青の槍兵”だと思ったんだよ」

 

 半目でレプリカを見る。

 

【“青い髪”と武器が“槍”と云う点。それから“機動力”だ。

『青の槍兵』は、“長い青髪に赤い目をした、神速の槍兵(そうへい)”と言われている】

 

 うわぁ……わりと具体的ぃ…

 

【昼間の、君の機動力には驚かされた】

「おれも。一瞬で間合いに入ったから……()()にはおどろいた」

 

 レプリカに同意するように、空閑は腕を組んでうんうん頷く。

 

【通常トリガーであの機動力……本来のトリガーだともっと速いのだろう?

――そして、“長い青髪に赤い目”をした君の姿で確信が持てた。“スズカゼ ソラ”……君が『青の槍兵』だと】

 

 リアルorzを披露してしまうほどの絶望って、あるんだなぁ(遠い目)

 

「他所でも青の槍兵(その呼び名)使われてんのかよ……」

 

 

◇◆◇

 

 

「――取り敢えず、キッチン借りるわ……」

 

 トリガーを解除して、キッチンへ。

 項垂れながらなのは心が満身創痍だからだ。あの通称はオレの心を抉ってくる……黒歴史かな?

 オレが作った黒歴史(ワケ)じゃないのに……

 

 エプロンをつけ、手を洗う。

 

「何作るんです?」

「んー? ふわふわ卵とじうどん、かな~……うどん、あったよな?」

 

 冷蔵庫を開けて朝に取った出汁と、卵と小ネギを取り出す。う~ん……人参と鶏肉、入れようかな~

 

「前に鈴風さんが買ってきた冷凍うどんと乾麺――両方あるよ~

さっと食べたい時とか冷凍の方は重宝するよね!」

 

 冷凍うどん、便利だよな~レンチンで直ぐ食べれるし。

 

「ふわふわ卵とじうどん……おいしそうだな」

「鈴風さんの作るご飯は美味しいからね~

うぅ……食べたい。食べたいけど、こんな時間に食べたら太っちゃう……」

「空閑……あれだけ夕飯食べたのに、もしかしてまだ食べ足りないとか言うのか!?」

「育ちざかり、ですからな~」

 

 うどんに興味を持ち、まだお腹に余裕がある空閑に三雲は驚きが隠せないようだ。語尾がちょっと上擦っていた。

 “大食いな子”とは空閑のことだったのか。

 

「オレとクガは確定として……ウサミとミクモとアマトリはどうする?」

 

 冷凍庫から、五個入りの冷凍うどんを取り出しながら四人を見る。

 

「ち、千佳ちゃん! 私と半分こ、しよ!? ――は、半分なら……半分なら、なんとか……」

「ウサミ……脅すのはやめてやれ」

 

 ぐりん、と音がしそうな勢いで雨取の方を向いた宇佐美は、その勢いのまま雨取の手をとる。

 宇佐美……ちょっと怖いぞ?

 

「お、おどしてなんて……!」

「半分なら、半分にしてやるから……」

「ふむ。あまるなら、おれが食べるよ?」

 

 あたふたする宇佐美に半眼になる。

 こんな顔(≡з≡)をしながら空閑は手を上げて残りを食べると言う。

 

「あ、私も……食べてみたいです」

 

 雨取もおずおずと手を上げる。

 残りは三雲だなと、ふいっと三雲に視線を向ける。こちらもおずおずと手を上げ……

 

「えっと……ぼくも半分で……」

 

 五個入り冷凍うどん、全部茹で

 

「あ、おれも食べたーい!」

「ジン……」

「「迅さん」」

 

 声がした方を見ると、こちらに向かってくる迅と玉狛支部の支部長である『林藤(りんどう) (たくみ)』が立っていた。

 

「お? なんだ、(そら)……来てたのか?」

「ほんの数分前にな」

 

 その、ほんの数分でオレのメンタルはボロボロです……

 

「それで早速、飯か?」

「メシ食いにきたからなー」

 

 いい加減、メシが食いたいのだが……?

 

「俺も少し貰おうかな~」

「……乾麺にする」

 

 どう考えても冷凍うどんじゃ足りない人数になった。

 冷凍うどんを戻して、戸棚から乾麺(うどん)を……一袋二人前だから、四袋取り出す。

 

 鍋に水を入れて火にかける。

 別の鍋には出汁。

 小口切りにした小ネギは卵を溶いて入れ、とろみをつけてから最後の仕上げに入れる。

 とりあえず、水が沸騰するのを待つかぁ……

 

 

 

 

冷凍うどんは、しばし お預け……

 

 

 

 

 




◆現在、公開できる情報◆

鈴風(すずかぜ) (そら)/ランサー

◆プロフィール◆
◇ポジション:アタッカー
◇年齢:26歳(推定) ◇誕生日:__
◇身長:185㎝ ◇血液型:__
◇星座:__ ◇職業:__
◇好きなもの:料理、猫、自己鍛錬
◇家族構成:__

◆(ボーダーの)トリガーセット◆
◇主/弧月(試作):槍、__、__、グラスホッパー
◇副/__、__、__、__

new◆パラメーター◆
◇トリオン:__ ◇攻撃:__
◇防御・援護:__ ◇機動:9
◇技術:__ ◇射程:__
◇指揮:__ ◇特殊戦術:__
◇トータル:__
※(ボーダーの)通常(ノーマル)トリガー装備時

近界民(ネイバー)/軍人/元孤児
・名前は無い(鈴風もランサーも仮名)
・槍使い/青の槍兵(ランサー)と云う異名を持つ
・何故か人名がカタコトになると云う不思議
・専用トリガー『ゲイ・ボルク』
刺し穿つ死棘の槍(刺しボルク)突き穿つ死翔の槍(投げボルク)
異界からの迷い人(世界規模での迷子)
・『米屋(よねや) 陽介(ようすけ)』と師弟関係

new・本部所属の(一応)S級隊員
※専用トリガーが、黒トリガー並みの威力だから。
※(この話の)投げボルクはエグい←

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

なんとかGW中に投稿できた……

一月(ひとつき)かけて…………12月15日に いけなかった……orz
ぐだぐだ だぁ……(´Д`;)

時間が無いんじゃない……眠くて書いていられないんだ……orz


今後書きたいこと……
・加古さんの誕生日←
・大晦日、初詣
・東さんの誕生日(冬島さんもいるよ)
・入隊式
・アフト戦まで、日常←

取り敢えず、次話は12月15日~18日(玉狛)かな?

◇◆◇

機動力……もっちょい有っても良いだろうか……


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玉狛とサンドイッチ

お久しぶりです。

相変わらずサブタイのセンスが……

暑い日が続いておりますが、皆様、熱中症などにはお気を付けくださいm(_ _)m


【12月15日 日曜日】玉狛支部

 

 朝食を終え、洗い物をし――いそいそと差し入れのサンドイッチを作る。

 

 なにやら三輪隊は新たな任務なのか、玉狛を――近界民(ネイバー)である空閑を監視することになったらしい。()()()()()()()()()()()()()建物に三輪隊の攻撃手(アタッカー)である陽介と狙撃手(スナイパー)の古寺がいる。

 朝も(はよ)からご苦労さんなこった。

 

 ……偶々見かけちゃっただけだ。他意はない。

 

 労いをもって差し入れをしようと思った次第であるマル。

 

 

 厚焼きタマゴのサンドイッチとオーソドックスな(ゆで卵とマヨネーズを混ぜた)タマゴサンド。それからカツサンドにハムサンド、からしマヨがアクセントなシャキシャキレタスとハムチーズサンド。

 それにフルーツサンド(いちご、みかん、パイナップル)三種もプラス。

 

 ――ちと多かったか? いや、高校生だし…………余ったらオレの昼メシにすればいっかー。そーしよ、そーしよ。

 

 あとは――玉葱、パプリカ(赤、黄)、アボカド、人参と、蒸したさつまいもを賽の目切り。蒸したカボチャは他より少し大きめに。ブロッコリー(これも蒸してる)は一口大に切り分け、ミニトマトとレタスとキャベツは食べやすい大きさに切って、ふた付きの容器に詰める。

 切るのは少々手間だが、これなら野菜を沢山摂ることが出来る。

 うん。これがなかったら野菜がレタスとキャベツだけという悲惨なことに……

 ドレッシングは食べる前にかけるから別の容器に数種類用意。“好みは人それぞれ”だからな~

 因みに()は“フレンチドレッシング(白)”が好きでした。

 

 個別包装にしたサンドイッチ、サラダが入った容器、コーヒーとコーンスープは専用の保温ボトルに。それらと、食器とスプーンを大きめのバッグに――

 

 バンッ!

 

 予期せぬ大きな音に思わず肩が跳ねる。

 

「……なんだ?」

 

 音がした方に何があったかを考える。

 確か、あっちは……昨日泊まっていった三雲達三人に宇佐美と迅がボーダー隊員のポジションの説明をしてる応接間があったハズ……

 

 差し入れを詰め始めた時、小南がやってきて戸棚を開けて見るなり「……ないッ!」と、こちらが声をかける間もなく出ていったが……あっちに突撃したのか?

 

 トリガーを起動し、差し入れを詰めたバッグを持って行ってみると、レイジと京介の二人が丁度、件の部屋の前にくるところだった。

 

 

「お疲れ様です」

 

烏丸(からすま) 京介(きょうすけ)

 『玉狛第一』所属の万能手(オールラウンダー)

 元々は本部に所属していたが一年ほど前に玉狛に転属してきた。

 黒髪がもさもさしているが、イケメンなため学校や本部に女子ファンが多いらしい。

 

「おう、お疲れ~」

「ずいぶんと大荷物だな」

「あぁ、朝から頑張ってるヤツらがいたんでな――差し入れだ」

 

 京介に声をかけられたんでバッグを持たない左手を上げ応じる。

 レイジからは呆れたような声をかけられた。解せぬ。

 

「何、作ったんです?」

「食べやすいようにサンドイッチ。それとサラダ」

「……」

 

 作った物を聞かれ答えたら期待するかのような目でじっと見られる。男前が無表情でじっと見てくるとか……怖いぞ、京介。

 無表情なのに目をキラキラさせてるとか、“目は口ほどに物を言う”とはいうが……

 

「――厚焼き玉子とカツが残ってるから……後でサンドイッチ、食うか?」

「「是非」」

「お、おう……」

 

 玉子焼きとカツを作りすぎたから昼前の間食にしようと思っていたんだ。空閑がメチャクソ食うから。だから食うか訊ねたらレイジと京介、二人が声を揃えて「是」と。

 え、レイジも……?

 これ……追加、必要じゃね?

 

 

「あたしは! 今! 食べたいのっ!!」

 

 和気藹々? とした空気に小南の声が水を差す。三人が顔を見合せ……

 そうだった。突撃した小南のこと忘れてた。

 三人揃って応接間に入る。

 

「なんだ、なんだ……騒々しいな、小南」

「いつもどおりじゃないすか?」

「どら焼きなら昨日、“いいとこのやつ”買ってきたからあるぞ?」

「……えっ、あるの?!」

 

 宇佐美の頬をぐに~と引っ張って八つ当たりをしていた小南は、手をそのままにオレの方をみた。

 あまり力を入れていないんだろうが宇佐美の頬を離してやれ……

 

「あたた~……そう言えばそうだった。鈴風さんが昨日 買ってきてくれたんだよね~」

 

 小南の手から逃れた宇佐美は自身の頬を擦る。

 

「……うそ」

「ホント、ホント。丁度、お前がみてた戸棚の下に……」

「うぅ……気付かなかったぁ……」

 

 衝撃の真実? に、八つ当たりをやめた小南はしょんぼりする。

 ……そんなに食いたかったか……

 

 

「それで……そこの3人、迅さんが言ってた新人すか?」

「新人!? あたし、そんな話聞いてないわよ!?」

 

 京介のセリフにガバッと顔をあげ怒りだす。

 浮き沈みの激しい奴だなぁ、小南は……

 

「なんでウチに新人なんか来るわけ?! 迅!!」

 

「まだ言ってなかったけど実は――――この3人、俺の弟と妹なんだ」

 

「!?」

「…………」

「「?」」

 

 新人――三雲達が玉狛所属になるのは初耳だと迅に詰め寄る小南に、迅は『三雲達は自分の兄弟である』と突拍子もないことを言い出した。

 思わず無言になるのは仕方がないよな?

 突拍子がないし、どっからどう見ても4人が兄妹には見えない。

 レイジと京介は『何を言い出すんだ、コイツ……』と言わんばかりのジト目で迅をみた。多分オレもジト目で見ていると思う。

 三雲も驚いてるぞ?

 

「えっ、そうなの? 迅に兄弟なんかいたんだ……」

 

 ・・・・・・・・・・・・。

 

 マジかー 信じちゃうかぁー

 

「とりまる、あんた知ってた!?」

「もちろんですよ。小南先輩……知らなかったんですか?」

 

 京介ェ……迅の嘘にノっかるなよ――真顔だから信じちゃうだろ。

 

「言われてみれば、迅に似てるような……」

 

 空閑の顔をジッと見る小南。三人の中だと空閑が似てる、のか……?

 空閑がニチャと口角をあげる。

 

 ・・・・・・・・・・・・。

 

 毎度、京介の嘘に騙されてるのに京介の言葉を信じちゃう小南は純粋すぎやしないか?

 小南の将来が不安すぎる……

 

「ランサーも知ってたの?」

「――まず、ジンの家族構成を知らんのだが?」

「あ、そっか……」

 

 だからと言って、どっからどう見ても兄弟には見えねぇだろ……

 つか、殆どの人の家族なんて知らねーよ? 強いて言うなら“京介には弟妹が多い”ってことぐらいなら知っている。たまにチビッ子どもの相手をしてるからな。

 

「レイジさんも知ってたの?」

 

 オレの答えに納得した小南は、レイジにも訊ねる。

 

「あぁ……よーく知ってるよ――――迅が“一人っ子”だってことを」

 

「…………ぅえ?」

 

 長い無言の末、小南の口から変な声が出た。

 無言が続いたのは理解が追いつかなかったからなんだろう。“迅に兄弟がいる”と思っていたのに、レイジに“一人っ子だ”と言われたら『どう言うことだ?』と なるのも仕方がない。

 

「この“すぐダマされちゃう子”が、小南桐絵

17歳」

「だましたの!?」

「いやー まさか信じるとは……さすが小南! はっはっは」

 

 宇佐美が小南を示しながら三雲達に紹介する。そして小南には騙されていたことを暴露。

 笑い事じゃないぞ、迅。信じる方も、信じる方だが。

 

「こっちの“もさもさした男前”が、烏丸京介

16歳」

「もさもさした男前です、よろしく」

 

 無表情のまま、右手を上げて三雲達に挨拶をする京介。

 

「こっちの“落ち着いた筋肉”が、木崎レイジ

21歳」

「落ち着いた筋肉……? それって人間か?」

 

 落ち着いた筋肉……どう言う紹介の仕方だ? レイジも困惑するわ。

 

「それで、こっちが――――あ、鈴風さんは本部の人だった!」

「本部の人です」

 

 オレも左手を上げる。自己紹介は昨日したし。

 

 

「ンじゃまぁ、ちょっと出てくるわ――

昼前には戻る!」

 

 『面倒に巻き込まれる』とオレの副作用(サイドエフェクト)……じゃなくて、直感が告げるので迅が本題に入る(巻き込まれる)前に退散~

 

 

 

『いってらっしゃい』

 

 後ろから何人かに声をかけられた。

 

 

 

当たり前のようにかけられる

 

『いってきます』『いってらっしゃい』

『ただいま』『おかえり』

 

少し前は そんな言葉をかけることも、かけられることもなかったのに――

 

 

()は当たり前だったのに――)

 

 

不思議な感じだ……

 

 

 

「……いってきま~す」

 

 背中にかけられた言葉に応えて玉狛を出る。 

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

 

 屋根から屋根に()んで、玉狛支部を監視するのに丁度いい建物の屋上に到達。もちろん静~かに着地する。

 

「米屋先輩、真面目にやってくださいよ」

「つってもよ~……白チビ近界民、玉狛から出てこねーじゃん。どーせ出てくるの夕方だぜ? ……きっとぉ」

 

 屋上では三輪隊の古寺が玉狛から視線を外し、隣で目を閉じ横になっている陽介に苦言を呈していた。

 陽介は……やる気なし。体を動かすのが好きだからなぁ……戦闘狂(バトルジャンキー)め。

 

「あー……もしかしたら今日もお泊まりかもしんねぇなぁ……アイツら」

 

「へぇ、そうなんですねぇ……って! うわっ! 鈴風さん?!」

「え、なんで!?」

 

 オレの登場に驚く二人。陽介は跳ね起きた。

 

「お疲れさーん――差し入れ、持ってきたぞー たーんと食え~」

 

 バッグワームを解除し、バッグを持ち上げてみせた。

 

「あざーっす! ――じゃなくて!! いつの間に!? つか、なんでオレらの居る場所、わかったの?!」

 

「バッグワームって便利だよな~ 視認されない限り、レーダーに映らないし……

場所が判ったのは――偶々だ、偶々。偶々 視界に入った」

 

 二人の視界に入らないように玉狛を出てバッグワームを展開し、レーダーに映らないようにした。

 自分達のいる方に玉狛から近づいてくるのがいると警戒するだろうからな。あと、サプラーイズ!

 

 トリオン体は生身の倍以上の身体能力になる。生身でも驚く視力に、トリオン体だともっと良くなる、という……ビックリだね~

――見かけた時は()()だったけど。

 バッグワームは戦闘体(トリオン体)の“目眩(めくら)まし”であって、生身には効かない。

 オレ(生身)の視界に入っちゃったのは運がなかった。

 

「偶々……」

「そんなんで見つかるのか……」

「あー……なんか、スマン?」

 

 意気消沈気味の二人には申し訳ない。

 生身時に見つけたことは内緒にしーとこ~っと。

 

 

「おっ! カツサンド!」

「色々あるぞ~――だがヨースケ、お前はまず野菜を食え」

「えー」

「シュージが言ってた……『陽介は野菜を食わない』と」

 

 バッグ内を物色し、カツサンドを発見した陽介の手からカツサンドを奪い、野菜の入った容器とスプーン、ドレッシング数種を持たせる。

 

 「どうすれば野菜を食べるようになると思います? 陽介の母親も困ってて……」って秀次に愚痴られてたんだよな~

 

《それと――陽介くんは章平くんが食べた後よ?》

「蓮さん……?」

 

 野菜を目にし『うげっ』と顔をしかめていた陽介は月見からの通信に顔を上げ、首を傾げた。

 

《章平くんは真面目に玉狛を監視して(任務をこなして)いたの。当然、先に休憩を取る権利があるわ》

 

「――と、言 う ワ ケ で。コデラ……好きなの お食べ」

「あ、ありがとうございます……」

「ちぇー……」

「自業自得だな」

 

 月見の一言で休憩に入る順番が決まった。

 古寺にカツ、タマゴ、ハム、LHC(レタスとハムチーズ)を渡す。

 

「カツ! カツ残しとけよ!?」

「……全部、食べられるわけないじゃないですか……」

 

 陽介が勢いよく、古寺に念押しする。どんだけだ。

 

《鈴風さん……暫くそこに居てもらえるかしら?》

 

 二人のやり取りを呆れて見ていると、月見から内部通信が入った。

 

「ん? あぁ……別に構やしないが――11時前には戻るぞ? 午後から防衛任務だし」

 

 昼メシ作るし……――陽介の監視か?

 

《問題ないわ。よろしくね?》

「スズカゼ、了解(りょうか~い)

 

 

◇◆◇

 

 

「そー言や……鈴風さん。昨日、二宮隊と模擬戦した(バトった)って――マジ?」

 

 結局、陽介も食いだして……。

 二人がサンドイッチを(しょく)している間、代わりに玉狛をみてると昨日のことを聞かれた。

 因みに。支部から出て行ったのはレイジだけだった。……防衛任務だったっけか?

 

「えっ、そうなんですか? おれは『東隊と模擬戦してた』って聞いたんですけど……」

「マジで!? そっちはそっちで見たかったー!」

 

 なにやら昨日のことが噂になっているようだ。

 

「つか、誰から聞いたんだよ」

「おれは小荒井たちからです。『瞬殺だった……けど、東さん凄かったッ!!』って」

 

 ホント、東のこと好きだなぁ……小荒井達は。

 確かに東は凄かった。アレ、トラウマなるわ(ゼロ距離アイビス)

 

「うわー……それ、すっげぇ気になるぅ……――オレはラウンジで噂聞いた」

「あー……うん、まぁ……アレ観てた奴も多かっただろうからなぁ……」

 

 ごちゃ混ぜになって()()()()()()()()()って噂になってもおかしくはない、多分……

 

「アズマ隊()()バトったが、ニノミヤ()とはバトってないな――隊員、個人個人とはバトったが」

 

 

『二宮隊』

 射手(シューター)ランク1位、個人総合2位の二宮(にのみや) 匡貴(まさたか)が隊長のB級1位部隊。

 『射手』『銃手(ガンナー)』『攻撃手(アタッカー)』で構成されていて、二宮がエースで点取り屋だ。

 数ヶ月前までは二宮隊もA級部隊だったが、狙撃手(スナイパー)が一般人にトリガーを流したこと、共に近界(ネイバーフッド)に密航したことが原因で降格処分をくらった。

 因みに、二宮は元A級1位『東隊』の隊員で東の弟子(戦術)。東が隊を作った時に紹介された。

 

 二宮の絨毯爆撃(時々、誘導or追尾弾)(バ火力 全 開 攻撃)は非常に()けるのが大変である……避けるけどッッッ!

 今回は普段のトリガーじゃなかったから被弾した。早さが()りなのに、脚に被弾は痛かった。

 

 因みに。(アタッカー)犬飼(ガンナー)二宮(ラスボス)の順で対戦。

 辻と犬飼の間に別の隊の攻撃手を三人、二宮の後には銃手を二人相手にした。

 しかし、どこから話が回ったんだ? ここぞ! とばかりにわいて出て来やがって……

 

「マジかー。ログあっかなぁ……」

 

 二宮隊辺りは録ってそうだが……

 

 

 

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 きっちり約束通り11時前に陽介達のもとを去り、玉狛に戻ってきた。

 持っていったサンドイッチたちを三輪隊で美味しくいただいてくれるらしい。月見が「フルーツサンドは全種類、必ず持って帰ってくるように」って念押ししてたなぁ……

 

 トリガーを解除し、昼食の準備をする――の前に、京介達との約束のサンドイッチを作らねば……! 防衛任務に行っているレイジの分は新たに後で作ろう。

 

「ランサー――もどってきていたのか」

 

 陽太郎が、てとてとと雷神丸と共にやってきた。

 

「おー……たでーま」

「なにをつくっているのだ?」

 

 早速だな。

 オレの手元を見るために陽太郎はカウンター前の椅子をよじ登ってきた。

 

「サンドイッチ」

「サンドイッチ……!」

 

 目をキラキラさせているところ申し訳ないが……

 

「食べたら お昼(メシ)……入らなくなるぞ?」

「むむ……」

「昼……オムライスって言ってなかったか?」

「オムライス……サンドイッチぃ……」

 

 サンドイッチに後ろ髪を引かれているようだ。

 

「……半分ずつにするかぁ……」

「! いいのか!」

「しゃーねぇなぁ……」

 

 良心の呵責に耐えかねてしまった。

 “甘やかすのは良くない”のは分かっているんだが……うぐぐ……。

 

 

 

甘やかし、しすぎですかね?

 

 

 

「ちょっと! なんで陽太郎にはサンドイッチがあるのよ!!」

「――リクエストだから?」

「おれも作ってもらったよ?」

「はぁ!? あたしにも作りなさいよ!!」

「えー」

 

(……俺も“作ってもらった”ってことは小南先輩には言わない方がよさそうだな)もきゅもきゅ

 

「“えー”じゃない! あたしも食べたいのッ!!」

 




 お、お、お、お久しぶりです! お待たせしましたーッ!! (待ってないって?)
 二ヶ月半? ぶりの投稿になってしまいました……ヽ(´Д`;≡;´Д`)丿
――の、わりに あまり話しは進んでいないという…………日常って、意外と難しいな!?

 まだ しばらく、ぐだぐだ します←

 次話は『12月18日』かな? 戦闘シーンは――ありません!←


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12月15日 午後

(お久しぶりです)
久々すぎて、なんか途中から変になってるような……

サブタイが浮かばない……ほとんど15日だから……((( ;゚Д゚)))ガクガク


「ウサミ……アマトリはどうした?」

 

 昼食を摂る面々を見ながら、黒髪の小さな頭が見当たらないのに気付く。

 自分を含めた七人(陽太郎は少量)分の昼食を用意していたんだが……

 因みに。レイジは防衛任務、林藤は本部に行っている。

 出来上がったオムライスを宇佐美に渡しながら見当たらない雨取のことを訊ねる。

 

「……え? あれ~?」

「そう言えば……さっきから見ないわね」

 

 キョロキョロと辺りを見渡す宇佐美。

 水を一口飲んだ小南はなんでもないかのような口振りで言う――サンドイッチのことを根に持ってるのか……?

 

「もしかして、まだやってる!?」

何時(なんじ)から訓練、始めたんだ?」

「えーっと……訓練室の説明とかしてからだから――10時頃、かな?」

「10時……」

 

 時計を見やれば。針は十二時十分を指そうとしている。二時間は経つ、ってことか?

 昨日の、レプリカがやってみせたヤツが簡易的なモノだったとして。それでもあのトリオンキューブの大きさだ。ただ的を狙うだけならトリオン切れを起こす、ってことは()ぇだろうが……

 

「――集中力すげぇな……」

 

 単純作業なんて一時間もしないで集中力切れるわ。もって三十分がいいとこだな……

 狙撃手(スナイパー)向き、っちゃー狙撃手向きなのか。

 

 空閑の前に無言でサラダを置く。抗議するような顔をされたが、ドレッシングを置いて無視。野菜を食え、野菜を!

 玄界(ミデン)の野菜は新鮮だぞ~? シャキシャキだし、青臭くないし(ただし、物による)、みずみずしいし……

 季節関係なく新鮮な野菜が手に入るとか凄いよな? 近界(向こう)じゃ、新鮮な野菜なんてそうそう手に入るもんじゃないし……いや、お貴族様(お偉いさん)は別か。

 

 

 雨取を呼びに地下にある訓練室(トレーニングルーム)へと向かう。

 

◇◆◇

 

 玉狛の地下にはトレーニングルームが三つある。

 トレーニングルーム『001号室』と『002号室』は“仮想戦闘モード”と云う『コンピューターとトリガーをリンクさせ、トリオンの働きを擬似的に再現することでトリオンを消費することなく、戦闘訓練を持続的に行える』狙撃手以外のポジション用のトレーニングルームだ。

 模擬戦をしたり、技の精度を上げるために篭ったり……。仮想空間だからトリオンを気にすることなく、戦闘訓練を行うことができる。

 本部だとC級隊員(訓練生)にトリオン兵との戦闘に慣れさせるため、本来のより“やや小さめ”に再現し、戦闘訓練を行う。もちろん模擬戦にも使用。

 連携や戦術の確認をするために各隊の作戦室にもある。

 

 玄界のトリガー使いの能力が上がっていってるのは、この訓練のお陰だろう。

 “やられても復活する”“死なない”なんて、若い――十代の少年少女たちからすれば()()()みたいなものだ。

 

 多少の痛みは有れど、死にはしない“トリオンで出来た戦闘体”。やられても戦場その場に生身で放り出されない“緊急脱出(ベイルアウト)”なんて便利な機能――

 

 少なからずは()()()()()でやってる隊員もいるだろう。

 悪いとは言わないが――もし緊急脱出できず、生身で戦場に放り出されたらどうするのか……

 ()()()()()()()()()()()と言いきれるか?

 

 ……悪い方に考えたらダメだな。でも少しは危機感ってのは持ってもらいたいが……

 

 

 『003号室』に雨取が居るというので入る。

 

 そこは――三門市の河原を忠実に再現していた。

 

 地下にあるとは思えない広さなのは、トリガーで創って(拡張して)いるから。そうでもしないと狙撃手の訓練をするための広さを確保することが出来ないからだ。

 因みに。003号室(こっち)に容量を使っているため、他の二つの部屋は殺風景になっている。

 

 

 そしてそこには数発ずつ撃ち抜かれた数十体の的が転がっていた。

 

「おー……すっげー数ぅ……」

 

 オレ、ムリ。

 

 ――さて。雨取に声をかけるか。

 あー……だけど、めっちゃ集中してっからなぁ……驚かせちまうかな?

 一応トリガー起動しとく? ……いや、でもうっかり誤射って(オレの)頭、吹っ飛んだらトラウマになるか。

 起動は止めとこ。雨取の精神衛生のために。

 けどまぁ……ボーダーのトリガーは(生身に)当たっても死にゃあしないし……精々、気絶するぐらいだ。

 よし、いこう。的を交換するタイミングで……

 

「アマトリ」

「え、あ……鈴風さん! もう終わり、ですか……?」

 

 よし。驚かせることも誤射らせることもなかった。

 『もう終わり』とは?

 

「いや。昼メシの時間になっても来ないから呼びにきた」

「……お昼!」

「ココ、時計無いかんな~」

 

 

 トリガーを解除した雨取と共にトレーニングルームを出る。

 

「訓練……ってか“撃ちっ放し”始める前、レイジになんて言われた?」

「えっと……“トリオンが切れたら終わっていい”って言われました」

 

 ・・・・・・・・・・・・。

 

「それ……2~3日、出れねぇな……」

「え?」

 

 レイジは知らないから仕方がないとしても、あのトリオンキューブの大きさはなぁ……

 

「アマトリのトリオンだと、そう簡単にトリオン切れを起こすってことは無いと思う」

「そうなんですか……?」

「レプリカに測ってもらったろ? あの大きさはボーダーにもそうはいない」

 

 こいつはちゃんとしたトリオン量、測った方がいいな。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 昼を終えたオレは玉狛を後にし、ボーダー本部へとやってきた。

 

「鈴風さん!」

 

 ――うん。コレ、何度目だ?

 

 ピンクっぽい紫を基調とし、黒に赤ラインが入った襟が特徴的な隊服を着た気の強そうな女子隊員が手を振りながら、ショートヘアにメガネのオペレーターと――同じ隊服の黒髪男子と灰色の髪のメガネ男子を引き連れてきた。

 

「カトリにソメイ……お前たちも防衛任務か?」

「そ、この後なの。()ってことは鈴風さんも?」

 

 

香取(かとり) 葉子(ようこ)

 『B級7位 香取隊』の隊長で、何でも卒なくこなせちゃう天才肌の万能手(オールラウンダー)

 

染井(そめい) (はな)

 香取の幼馴染みで、香取隊のオペレーター。

 

 二人とは四年半前の大規模侵攻の時に出会った。

 染井が家だった瓦礫の下敷きになっている香取を助けようとしているところに出会(でくわ)し、救出したのがきっかけだ。

 そのあと、二人揃ってボーダーに入隊したのには驚いた。

 「ボーダーに入ったら会えると思った」「お礼が言いたかった」らしい。

 

 この二人はオレが近界民(ネイバー)であることを知っている数少ないB級隊員だ。

 

 

「あぁ、今防衛任務に着いてる部隊と交代でな」

「アタシたちと一緒だ! ――華、今防衛任務に着いてる部隊って?」

 

 オレの言葉を聞いて香取は染井の方を向き質問する。

 

「影浦隊、弓場隊、那須隊、柿崎隊、早川隊。待機は加古隊ね」

「ふ~ん」

 

 ……ちょいと濃い面子だな。

 しかし加古隊が待機で入ってるとは……

 

「アタシたちの他に防衛任務に着く隊は?」

「わたしたちと鈴風さんの他は二宮隊、荒船隊、茶野隊。待機は諏訪隊よ」

 

 因みにオレは、そのまま夜のシフトにも入ってる。

 

「よ、葉子ちゃんが……」

「葉子が、年上の男と、にこやかに……話して、いる……だと?」

 

 香取に困惑の目差しを送る香取隊の男子二人。

 ……そんなにか? 気の強いところは有るだろうが……

 年上ってそんな居な……あ、香取って高1だっけ? だったら年下の方が少ないのか。

 

「ちょっと、あんたたち……アタシを何だと思ってんの……?」

「いや……だって、お前……いつもツンツンしてんだろ!? 特に目上には喧嘩腰が多いだろ!」

 

 黒髪男子が控えめに頷く。

 そうなのか、知らなかった。“迅に絡む駿”みたいな感じだと思ってた。

 

「はあぁぁぁ?! アタシだって誰彼構わず突っ掛かってってないんだけど!? 尊敬してる人にまでツンケンしないわよ! バッカじゃないの!?」

 

「そん、けい……!?」

「そうよ! 鈴風さんはアタシと華の命の恩人なんだから! 瓦礫の下敷きになってたアタシを助けてくれたのよ!? ――かっこ良くて優しくて強かったら尊敬するでしょ?!」

「「お、おぅ……」」

「カトリ、ちょい大袈裟……」

「そんなことないもん!」

「ア、ハイ……」

 

 香取の勢いに香取隊の男子二人と共に気圧される。

 染井は香取のセリフに「うん、うん」頷いてるし。

 

 

「――ふむ? シュージやカゲとは普通に話してたと思ったが……」

 

 カゲとは喧嘩腰だったか……? まぁ、二人共、負けず嫌いなところがあるからなぁ……けど、アレは売り言葉に買い言葉、みたいな?

 

「三輪と……影浦先輩?」

「……三輪先輩はアタシとは弧月とスコーピオンで違うけど、ポジションが同じだから扱い方を教わってんの。影浦先輩からはスコーピオンね? ――鈴風さんに二人を紹介してもらったのよ」

「「……」」

 

 深呼吸して心を落ち着けた香取は男子二人に秀次とカゲとの関わりを教えた。

 男子二人はぽかんとしてた。コソ練ばらしてきたからか?

 

「あ、そうだ、鈴風さん! アタシ、マンティス使えるようになったのよ! 今度、模擬戦してくれない?」

「あぁ、いいぞ。カトリの予定に合わせる」

「! じゃあ、後で連絡する!!」

「了解~」

 

 ……やっぱ、迅に絡む駿かな?

 

 新技も出来て、次シーズンのランク戦も上位で終われそう「あっ! 鈴風さん!」……あ?

 

「昨日ぶりです!」

 

笹森(ささもり) 日佐人(ひさと)

 『B級10位 諏訪隊』の攻撃手(アタッカー)が駆け寄ってきた。

 

「エライめに合った……」

「あはは……」

 

 遠い目になるオレに昨日のことを思い出した日佐人が苦笑する。

 

「昨日……? 何かあったの?」

「うん。昨日、鈴風さんと模擬戦したんだよ」

「!!」

 

 訊かれたから答えた日佐人のセリフに香取は目を見開く。驚いたようだ。

 それに気付かず日佐人は言葉を続けた。 

 

「鈴風さんと東隊の模擬戦も面白かったな~。その後、何人かの攻撃手の先輩たちと対戦もしてて……おれも対戦させてもらったんだ!」

 

 実に楽しそうに昨日のことを悪気なく話す日佐人は、キラッキラしたエフェクトが舞っているような笑顔だ。

 

「……る」

「え?」

「葉子……?」

「葉子ちゃん?」

 

 俯いて何かを言う香取の声が聞こえなかった日佐人と香取隊の男子二人は困惑する。

 

「――やる。香取隊も……鈴風さんと模擬戦やる!」

「葉子ッ!」

 

 顔を上げた香取の目は、闘志に燃えていた。

 火に油が注がれた……?

 

「鈴風さん! 香取隊とも模擬戦やって!」

「葉子、おま……何言ってんだよ! 大体、鈴風さんって……今、思い出したけど! S級隊員だろ!?」

「だから何? S級だったら、何だっていうのよ?」

「いや、だって……」

「天羽はあんま顔見せないから知らない。どこかのセクハラ男は特定の隊員としか()ってないでしょ……?」

 

 

天羽(あもう) 月彦(つきひこ)

 ボーダーが所有する(ブラック)トリガーの一つの適合者だ。黒トリガー持ちは()()()()S級隊員になる。

 因みに、通常トリガーでのポジションは万能手だ。

 

 そんな天羽は、ふらりとやってきてはオレと模擬戦を()っていく。

 そして、副作用(サイドエフェクト)を持っているからか「今日も()()()してる」「鈴風さんも本部長と同じ強い色だけど――不思議な色()持ってるよね」――なんて不思議なことを言ったりする。

 強さとかが色で視えてるらしい。

 不思議な色とか強い色ってどんな色だ……?

 

 

 (なにがし)さんは何処かの誰か(餅バカ)が し つ こ い ! から、特定の隊員とだけバトってるように見られがちなんだよなぁ……

 あいつも気付いたら昨日のオレ状態になってたりする。人気者は大変だね~(他人事)

 

 

「S級はランク戦は出来ないけど模擬戦は出来るんだから……対戦してくれるなら戦いたいじゃない!」

 

「カトリもバトルジャンキー(戦闘部族)の一員だった……?」

 

 そ、んな……馬鹿な……!

 

 

◇◆◇

 

 

 香取をなんとか(なだ)めて――模擬戦を了承したが、男子二人の顔色が悪くなってたのは……なんだか申し訳ない。

 防衛任務のため、それぞれ持ち場の支部へ向かった。

 日佐人は本部待機だけど。

 

 

 

 

 

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 玉狛でメシを作ったり、本部で模擬戦をしたりして日にちが経ち――

 

 

 

「は? 遠征部隊、帰ってきたの?」

 

 十二月十八日――今日も今日とで玉狛を監視している陽介と古寺に差し入れを持っていくと、近界(ネイバーフッド)へ遠征に行っていたA級トップチーム帰還の知らせを受けた。

 因みに、今日はハンバーガーだ。ポテトもあるよ。

 さすがにこの寒空でのシェイクは絵面が悪い。気分的に寒空しいのでコンソメとポタージュ、スープを二種類 用意した。

 

 

「――って、さっき連絡あったっすよ?」

 

 マジか。また慶の「模擬戦やろうぜ!」攻撃が始まるのか……と、天を仰ぐ。

 

「……まじかー」

「えーと……ドンマイ?」

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

《目標地点まで、残り1000》

 

 すっかり日が暮れ、夜になり……内部通信からは三輪隊のオペレーターである月見の声が聞こえる。

 

「…………ツキミさんや」

《なにかしら、鈴風さん》

「オレにまで通信、繋げなくても良くねーか?」

 

 もうしばらくしたら玉狛に行くし。……あれだったら本部に行く。

 

 しかし、冬の夜は寒い(さみぃ)な。四年経つが……慣れん。

 持ってきたお汁粉が温かい……身に染みるぅ~

 陽介と古寺もお汁粉をモチモチしてる。

 

「あまーうまー」

「一口サイズの焼き餅もいいですねー」

 

 陽介たちの声は向こうには届いていない。食べてる間はこちらからの声が筒抜けにならないように切らせてある。

 

 繋げていたら、“餅”という単語を耳にした餅バカ()が煩くなるのが目に見えてる……

 

 ――向こうからの声はちゃんとこちら側に届いている。

 

 

《そう? 有った方が便利だと思うわよ? 例えば……太刀川くんたちが玉狛に到着する前にその場を離れる時とか》

「……まぁ、ねぇ」

 

 月見の言うことも、一理ある。

 面倒事には巻き込まれたくない、というのが本音だ。

 

 本部住みで戦闘員として働いてはいるが、()()()()は近界民で日本人じゃない。

 戦ってるのは“前世が日本人()()()”よしみでだ。

 

 戦えない人間に「死ね」とはさすがに言えないからな。

 

 

 城戸派だの、忍田派だの、玉狛派だの……ぶっちゃけ、どうでもいい。

 そりゃあ命令されれば任務は遂行する。が、内部抗争はノータッチだ。勝手にやれ、としか言えない。

 

 ただし、“一般市民に不利益を起こさない範囲で”だが。

 

 ……薄情だろうけどな。

 

 

《……え?》

「え?」

《え、ちょ……なんで、米屋たちと居るんだよ!》

 

 月見と話していると、内部通信から慶の焦った声がする。

 

「なんで、って……見つけちゃったから?」

《みつけちゃった……》

「自分の視力(生身)にビックリだねー」

《手伝ってくれねーの?》

 

 ちょーっと、なに言ってるか解らないですねー

 

 陽介を見ると苦笑して肩を竦めてみせた。

 古寺も苦笑してる。

 

《太刀川くん……どうして鈴風さんが手伝ってくれるって思ったの……?》

《……米屋たちと居るし?》

《……》

 

 慶の返しに無言になる月見。

 

「……善意のお手伝いは監視と食事の提供だけとなっております」

「大変美味しゅうございましたー」

《おい、槍バカ! 鈴風さんのメシって、何食ったんだよ! 羨ましいんだけど!》

「サンドイッチにハンバーガー、唐揚げ、コロッケ……あと、丼モノとスープなんかもあったなぁ。しかも全部、出来立て ほやほや~」

《コロッケ!》

「ホクホクとモチモチの2種類あった、旨かった」

《わぁ、おいしそ~ 鈴風さん! 今度、太刀川隊作戦室(ウチ)で作って~》

 

 陽介と公平が食べ物の話で盛り上がる。食べ盛りだからなぁ……

 太刀川隊オペレーターの国近からは調理要請がきた。

 

 賑やかになってきたなぁ。

 

「そのうちな――で、話を戻すとして。オレは()から『防衛任務、模擬戦以外での戦闘行為を禁止する』って言われてんの……知ってんだろ?」

《え、そうだっけか……?》

《チッ、太刀川のせいか》

 

 蒼也が舌打ちをする。多分、眉間にシワ作ってんぞ……

 

《ぅ゛……けどさぁ……》

 

 慶が諦め悪く呟く。

 

()()()()()()もございません。お諦めください」

「鈴風さんが真顔で抑揚なく敬語……丁寧語? なの……怖いんだけど」

 

 

《目標地点まで、残り500》

 

 ……ブレねー……って、もう直ぐか。

 

「それでは諸君、健闘を祈る! 頑張りたまえ! ――オレは玉狛でメシを食う」

《え、マジで手伝ってくんないの!?》

「戦闘行為は禁止ですーって、何回言わすんだよ。ったく……」

 

 ホント、諦めの悪いこった。

 

「まぁ、鈴風さん居たら楽だし……なぁ?」

「えぇ、まぁ……4日前の戦闘をみると居てくれたら心強いですよね」

「って言われても、介入しないぞ? それにこういうのは、ボーダーと空閑(当人同士)で解決した方がいい」

 

 持ってきた差し入れを片付けはじめる。

 

 

 

 

 

 ギャーギャーブーブー言われたが、無視して帰ることにした。

 迅が現れたことで陽介と古寺が合流に向かったことだし。

 

 

 城戸派が近界民嫌いなのは分からんでもない。親兄弟――身近な人間を亡くしたり、今までの平和な日常を奪われた訳だから。

 だけど、オレや玉狛のエンジニアなどボーダー(こちら側)の味方な近界民もいるし、空閑みたいな味方になるかもしれない近界民もいる。

 

 誰彼かまわず話し合え、とは言わないが、話し合える余地があるなら歩み寄ればいいのに……と、思わんでもない。

 

 全方位に敵意向けるとか疲れるだけだろ。

 敵意、害意を持たない近界民まで敵に回す必要は、ない。

 それだったら、忍田派のように『街の安全が第一!』で、襲ってくる敵を倒す『専守防衛』の方が楽でいい。

 わざわざ波風立てる必要なんてないんだし……

 

 因みに。祖国(ウチ)は『防衛戦⇒国が特定出来た⇒殲滅だ!』っていう、ちょっと過激だけど穏健な国だ……穏健?

 

 

 それに、この黒トリガー奪取には迅が関与するようだしな。

 迅に何も言われていないが、関わらない方が吉だ。退散、退散。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「お? スズカゼさんの方が先だったか……おかえり」

「はいはい、たでーま。なんだ? レイジたちまだ戻ってねーの?」

 

 トリガーを解除し、靴を脱いでると空閑がやってきた。

 

 そんな遠くまで行った感じではなかったんだが……

 

「……何か作る?」

 

 脱いだ靴を揃え、リビングへ向かうオレの後ろをソワソワしながら空閑がついてくる。

 夕食の時間は終わってるはずだが……

 

「…………晩メシはちゃんと食ったんだろ?」

「ええ、まぁ……でも、スズカゼさんのゴハン、おいしいし……」

「……」

 

 振り向いて言えば、指をもじもじしながら話す空閑がいた。

 キュンとしたのはなんでだ……? ――母性……? 母じゃねーよ。

 

「あ! ランサー、やっと戻ったわね! ――って、どうしたのよ。片膝なんてついて」

「……なんでもない」

 

 父性か母性か解らんものが芽生えでもしたんじゃねーの? 知らんけど。

 

 知らんけど!

 

 

 

父性ってなんですかねー

 

 

 

 

 

「ランサー、もどっていたのか……むむ? どうしたのだ? はらがいたいのか?」

「なんでもない。腹は痛くない。とりあえず、そっとしておいてください……」

 

 

 

 

 




 大変、遅くなりました(切腹)
 そして12月18日が、くっそ短かった……ほぼ、15日……
 そして、「思ってたのと違うんだけど!」と思う方がいたら申し訳ないです……(鈴風さん(オリ主)って、こーゆう人なの……)

 前回から今回までの間に、短編を五つ書いた(息抜きしすぎた)からなのか、なんか『異世界転生じゃ……ない、だと?』っぽくなくなってるような気がするんですよねー(気のせい?)

 間隔、空けすぎた……



 香取隊の辺りが、一番 楽しく書けましたwww

(加古さんバースディを書きたいw)

◇◆◇

 笹森くんが葉子ちゃんと こんな風に喋れるかは知りません←
 同級生だし……ありやろ?(無し?)

この二次創作(ウチの小説)では、葉子ちゃんの性格がワリとマイルドですw(マイルド……?)
 あと、三輪とカゲさんが葉子ちゃんの師匠ポジになった……
(葉子ちゃんが強化されとるw)
(ちょw玉狛第二、ダイジョブ?!w)
※大概のキャラが強化されてる……?!

◇◆◇

 『正式入隊日(1月8日)』まで、また ぐだぐだ日常編

 アクション、上手く書きたい……w


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12月25日

加古さん、お誕生日おめでとう!



サブタイが思い付かないと安易に月日になる……orz

※誤字脱字あるかもしれません。気付いたら その都度、修正します。


 十二月十九日(次の日)。本部に行けば昨日の一部メンバーに絡まれた。

 

 

「お汁粉、焼き餅だったってマジか?!」

 

太刀川(たちかわ) (けい)

 『A級1位 太刀川隊』の隊長で『攻撃手(アタッカー)ランク1位』『個人総合1位』の実力者――なのだが、戦闘系と餅以外、あまり役に立たないという……ミスター残念。

 

「つーか、お汁粉食いたかったんだけど!」

「お前もブレねーなぁ……」

 

 開口一番が餅についてとか……徹底していて逆に感心する。

 

 

「手伝ってくれても良かったのにー」

 

菊地原(きくちはら) 士郎(しろう)

 『A級3位 風間隊』所属の攻撃手で『強化聴覚』の副作用(サイドエフェクト)を持つ、ちょっぴり毒舌なやつ。

 

「文句はケイに言え? 元凶はアイツ」

 

 慶を指差して言えば、文句を言ってきた菊地原はむっ として黙る。

 

 

「鈴風さんさ~、迅さんが邪魔しにくるって知ってた?」

 

当真(とうま) (いさみ)

 『A級2位 冬島隊』所属の狙撃手(スナイパー)で、リーゼントがトレードマーク。『狙撃手ランク1位』『個人総合4位』と云う実力者だ。

 

「知らん。けど最近、暗躍してたみたいだから? なんかやるだろうなーとは思ってた。まぁ、邪魔するなら玉狛に着く前で離れた場所――ってなると、あの辺りが丁度いい」

「だよなぁ……嵐山隊も着て散々だったぜ」

「それは、それは」

 

 知らなかったことと、オレの考えを言うと当真は肩を竦めた。

 

 

「柚宇さんがいつ料理してくれるの~? って言ってるすけど」

 

出水(いずみ) 公平(こうへい)

 『A級1位 太刀川隊』所属の射手(シューター)。「やってみたら、出来ちゃった」で、合成弾を作っちゃった天才。通称『弾バカ』

 『槍バカ(陽介)』と『迅バカ(駿)』と一緒に居ることから『A級3バカ』と呼ばれてたりする。

 

 公平のいう『柚宇さん』とは、太刀川隊のオペレーター『国近(くにちか) 柚宇(ゆう)』のことだ。

 

「昨日の今日でか。あー、まぁ……24、25以外ならいつでも?」

「クリスマス以外すね……ちょーっと聞いてみまーす」

「ク、クリスマス……!?」

 

 公平に「クリスマス以外なら、いつでもOK」と伝えると、近くで聞いていた慶の顔色が悪くなる。

 去年のことを思い出したんだろうか。

 

 去年()散々だったからなぁ……

 

()()だし……あと普通にイブは玉狛でpartyだ」

「無駄に発音が良いな?!」

「それで? 今年もケーキを持ってくるだろうな?」

 

風間(かざま) 蒼也(そうや)

 『A級3位 風間隊』の隊長で『攻撃手ランク2位』『個人総合3位』の“小型かつ高性能(ハイスペック)”な男前だ。

 

 慶の方がランク上だから蒼也よりハイスペだろ、って?

 それをも上回る戦闘狂餅バカ(残念さ)なんだよ……

 

 

「今年はクロエに」

「……」

「――夜にも持ってきゃいいんだろ、持ってきゃーよぉ!」

「よし」

「よし、じゃねーよ」

 

 蒼也の眼力に負けた……

 

 そして、持ってったケーキは蒼也の胃に収まるのである、マル。

 

 

 ……今年は何人(犠牲者が出る)かなぁ……

 

 

 

 

 

________________

_____________

__________

 

 

 

【12月25日 午前】

 

 クリスマス――それはキリストの降誕日。または降誕祭。

 

 キリストの誕生日ではないらしい。

 ずっと誕生日だと思ってたんだけど。いつだよ、誕生日。

 

 しっかし、日本ってイベント(お祭り)好きだよなぁ……

 

 

 

 「クリスマスは恋人と過ごすの(ハート)」なんて言う世間様が多いが、ココ、ボーダーではそんな甘~い雰囲気は――ない。

 いや、一部はキャッキャウフフしてふわふわしてるがな。

 「サンタさん、来るかな~」とか。

 

 ……大人は大変だ。

 

◇◆◇

 

 ランク戦ロビーで待ち合わせしている人物を見つけ、声をかける。

 

「クロエ、待たせたか?」

「いえ。わたしも今、着たところです」

 

黒江(くろえ) 双葉(ふたば)

 『A級6位 加古隊』所属のA級最年少(13)攻撃手。

 

「あれ? 双葉と鈴風さんって知り合いだったの?」

 

緑川(みどりかわ) 駿(しゅん)

 『A級4位 草壁隊』所属のエース攻撃手。A級3バカの一人で『迅バカ』

 そして黒江とは幼馴染み、だそうだ。

 

「カコ経由でな」

「へぇ~」

「師匠です」

「うん……?」

「師匠です」

「……だ、そうだ」

 

 師匠発言に思わず黒江を見れば念押しされた。

 

「よねやん先輩以外に弟子いたの?! って言うか双葉が弟子!?」

「カコに『弧月を使うから見てあげてくれないかしら?』って紹介された。 オレ的にはただ対戦してただけなんだが……」

 

 いつの間に師弟関係になったのか……

 

 

 東経由で加古、二宮……から、黒江と辻、犬飼。

 三輪からは陽介。忍田から嵐山、柿崎、天羽。んで、柿崎からカゲ、照屋、虎太郎。蒼也から諏訪を経由して日佐人。慶からは京介。

 嵐山、柿崎、迅の同級生トリオから弓場を紹介されて王子、帯島。あ、三人から生駒も紹介されてた。んで、王子からは樫尾。

 

 紹介された攻撃手や万能手(オールラウンダー)()るようになって。そこから派生して色んな隊員とバトるように。

 最近、香取経由で三浦とも戦るようになったな。

 

 陽介以外で強いて言うなら、黒江(自己申告)、辻、帯島の三人……か?

 

 加古、二宮、弓場の圧が強い……

 

 

「東さんの攻撃手バージョン……? ん? でも犬飼先輩って銃手(ガンナー)でしょ? 鈴風さんって銃手トリガー使えたっけ?」

 

 うん? 東の攻撃手バージョン? なんじゃ、そりゃ?

 

「使えないことはないが……イヌカイ(アイツ)、スコーピオン使うだろ? だからツジのついでに相手しろ、ってニノミヤが」

「あー……」

 

 スコーピオンも使えるけど……理不尽にもほどがある。

 二宮(アイツ)、オレのこと嫌いだろ。絶対。

 

 

「――おっと、そうだった。クロエ、頼まれてたバースディケーキ」

「! ありがとうございます!」

 

 ケーキの入った箱を黒江に渡す。

 ポーカーフェイスというやつなのか、あまり表情の変わらない黒江だが心なしか口角が上がり、嬉しそうだ。

 

「ケーキ……? それで待ち合わせ?」

「今日、加古さんの誕生日だから……」

「なんか もう、毎年恒例になってるからなぁ」

 

 加古が入った年、東にクリスマスケーキを届けたら気に入ったようで。そこから毎年作ってる。つっても三回目。

 

 ――ある年の、加古誕(加古による“おもてなし”)炒飯に「ケーキが、ぶっこまれていた……」と恐れ戦いた餅バカから聞かされ、製作を拒否ったこともある。

 犯人(加古)は「美味しかったから入れたら(炒飯が)美味しくなると思って……」などと供述。被害者()は一時、意識不明になったようだが完食を成し遂げたそうだ。

 何回、堤に謝ったか……

 

「ってことはさ? 双葉にケーキを渡したから鈴風さんの用事は終わったんだよね?」

「ん? まぁ、そうなるな」

「じゃあさ、じゃあさ! おれと模擬戦しよーよ!」

「!」

「鈴風さん、最近、色んな人とバトってるんでしょ? おれも()りたーい!」

「成り行きで戦ることになっただけなんだが……しゃーねぇなぁ」

「やったー!」

「……ずるい」

「クロエ……?」

「双葉?」

 

 昼の防衛任務まで時間もあるからいいか……と了承すると、駿の喜びの声と共に消え入るような声がした。

 声の方を見るとムスッとした顔の黒江が俯き加減でいた。

 

「わたしも、戦りたい」

「って言っても加古さんの誕生日、祝うんでしょ?」

「……最近、模擬戦してない……」

 

 ……確かに。

 最近は戦闘狂の相手ばかりしてたから黒江と模擬戦をしていない。

 

「――――確か……カコの誕生会は昼からだったな……」

 

 数日前に慶、二宮、加古の同級生トリオが話てるところに出会(でくわ)し、クリスマスの話から加古の誕生日の話になって『昼は隊の皆が祝ってくれるの。だから鈴風さんたちには夜にきてほしいのよね。炒飯、作って待ってるから』って語尾にハートが付いてる感じで話してた。

 

 話を聞いて無表情になった慶は顔色が悪くなり、若干 震えてたと思う。

 眉間に皺を寄せる二宮は、人を射殺さんばかりの目で加古を睨みつけてた――何があった……。

 二人と加古の温度差が激しすぎて、うへ~ってなったんだよなぁ……

 

「そう、ですけど……」

「時間的に10本先取なら戦れるかな?」

 

 オレも昼は防衛任務だし。

 

 訝しげにこちらを見上げる黒江に提案すると目を見張り、次第に嬉しそうな顔になる。

 

「ケーキ、冷蔵庫に入れてきます!」

「おー……じゃあ、先にシュンと戦ってるぞ~」

「はい! ――駿。直ぐ戻るけど、簡単に殺られないでよ?」

「……ゼンショしまーす」

 

 早歩きでランク戦ロビーを後にする黒江を駿と二人で見送ると、個室ブースに向かう。

 

「よーし! 戦ろう!」

「まずは、とりあえず10本だな」

「1本は取るぞー!」

 

 そう簡単には取らせません(大人気ない)

 

 

 

◇◆◇

 

 

 駿、黒江との模擬戦の後、防衛任務のために早沼支部へ行った。

 

 今回は他の隊員と模擬戦はしなかった。

 逃げ切ってやったぞ! 餅、弾、槍の戦闘バカ共から!! (テンションおかしい)

 

 

 

 防衛任務を終え、再び本部へ向かう。加古誕生会(夜の部)に出るためだ。

 途中、胃薬と酒を買いに店に寄る。

 

 胃薬は“被害者”に。酒は加古に。

 

 本日、加古はお酒解禁の二十歳(ハタチ)になった。だから酒を買っていこうと思ったんだが――

 加古が飲むのってワインしかイメージ浮かばないんだが?

 

 あとは、まぁ適当に。どうせ飲む奴しかいないだろうし…………飲める元気あるかな?

 

 しかし、めでたい席で胃薬のお世話にならなきゃならん加古炒飯被害者とは……合掌。

 

 

 

 

 

 

 

「生きてるか~?」

 

 加古隊の作戦室の戸を開けての第一声が生きてるか~?(コレ) とは……

 

 視界に入ったのは、ぶっ倒れている慶と堤。二宮と諏訪はゲ○ドウポーズ。蒼也、東、秀次の三人が無事なようだ。

 

 いつものメンバーと、今回は珍しく二宮……巻き込まれたのか? 諏訪も巻き込まれか?

 

「見ての通り……無事なのは、俺たち3人だけだ」

「憐れだな……」

 

 部屋に入り、苦笑する東の隣に座る秀次の隣にいく。

 

 東と秀次は元東隊ってことで呼ばれたのかな? 分かるが未成年者(十七歳)がいるって……

 

「生きてるか、だなんて……鈴風さん酷いわね――来ないかと思ったわ」

 

 キッチンスペースから料理を持って加古が現れた。唐揚げのようだ。

 

「防衛任務があるって言ったろ? ――だいたい……マトモに作った炒飯を魔改造する必要なんてねーのに、あんなモン食わされたら言いたくもなるっつーの……」

 

 そう、加古は普通に料理が上手い。旨い物が作れるのにも拘わらず、何故か炒飯()()()要らない物を ぶち込んで逆ロシアンルーレットな炒飯を作り上げる。

 

 殺人シェフになる女――それが『A級6位 加古隊』の隊長『加古(かこ) (のぞみ)』である。

 

 本家ロシアンルーレットは、弾一発に対して空は五。加古炒飯は八対二――旨いのが二割で残りは激マズ炒飯……逆ロシアンルーレットだ。

 

 加古の旨い炒飯ってどんなのだよ……

 

 蒼也と『鈴鳴(すずなり)第一』の隊長『来馬(くるま) 辰也(たつや)』の二人が今のところ不味い炒飯に当たっていない。

 

 必ず当たるのは堤と慶。

 東は知らん。

 諏訪は多分、今被弾してる。

 二宮は被害に遇って以来、巻き(連れ)込まれない限り加古隊作戦室(ここ)には来ない。賢明な判断だ。

 

 

「知的好奇心を抑えることが出来ないのよ~ はい、風間さん。どうぞ」

 

 そう悪びれなく言う加古は持ってきた唐揚げを蒼也の前に置く。

 

「鈴風……ビールはあるな?」

「どんだけ飲み食いす気だ、お前(おめぇ)は……」

 

 たしかに唐揚げにビールは旨いけど。すでに缶ビール二本空けてるじゃねーか。そんで、ケーキも食うの……? お前の胃袋、どうなってんだよ……

 

「お前がアルコールを買ってくるとは珍しいな」

「ほら、加古、お酒解禁だろ?」

「……それでか」

「どれがいいか分からんからテキトーに買ってきた。イメージはワインだけど」

 

 対面に座る蒼也にビールを渡しながら酒を袋から出す。

 ぶっ倒れている慶と堤がいたであろう場所には胃薬を……

 

「あ……ニノミヤとスワ。胃薬、要る?」

 

 テーブルに置く前に、二宮と諏訪に訊く。水は各自で貰ってくださーい。

 

 

 

 

「――んで? 炒飯に何を入れた、殺人シェフ」

「嫌ね。堤くんも太刀川くんも死んでないわよ?」

 

 頬に手を当て「うふふ」と加古が微笑む。

 ……堤と慶を殺した、とは言っていない。

 

「何を入れた、ダークマター製造機」

「暗黒物質なんて作ってないわ」

「……」

「…………今日はマグロ、ワサビ、マヨネーズ……それからチョコミントアイスよ」

 

 加古が白状した食材にオレは頭を抱えたくなった……なんだ、その組み合わせ。

 

「なんでチョコミント……しかもアイス……」

「因みに、二宮くんと諏訪さんのは生姜、豆腐、ケチャップ、ホイップクリーム」

「……ホイップクリームが台無しにしてんじゃねーか、そっちは……」

 

 オレは頭を抱えた。

 甘いのは要らねーだろ。なかったら普通に食える。……多分。

 

「マグロは火を通したのか……? それとも」

「生よ」

「……火を、通せ……せめて火を、通してくれ……!」

「お刺身の“いいやつ”なの。火を通すなんてもったいないわ~」

「なら、刺身で出してやれよ……マグロが可哀想だ。つか毎度言ってるだろ。追加食材入れたら完成した炒飯の味見をしろって!」

「面白くないじゃない」

「面白さを、求めるな……ツツミが死ぬ……!」

「これくらいじゃあ死なないわよ。大袈裟ね~」

 

 上品に「ふふふ」って笑いやがって……

 堤をなんだと……いつか死ぬぞ……?

 

「食品ロスになるから味見をしろ」

 

 加古に文句を言うのを諦める。堂々巡りもいいとこだ……

 

 この間、蒼也は黙々と料理を腹に収め、東は苦笑しながらビールを飲み、秀次は遠い目をして、二宮と諏訪は胃薬を飲んでいた。

 堤と慶? なんとか起き上がれるようにはなっていたが、顔は青かった。

 

 

 

 食べ残された炒飯たちは、全部まとめて炒め直し、食った。

 アイスとホイップを温めるととんでもなく甘い(にお)いになってヤバかったが。

 マグロは、チョコミントアイスが溶けてたから洗って食った。……アイスをマグロの上に乗っけるな。

 単品だと旨い。ちょっとすーすーした、ような?

 

 慶や諏訪になんで平気な顔して食えんだよ?! って顔された。

 食えない頃と比べりゃマシだ。

 

◇◆◇

 

 炒飯でダウンしてた奴らが復活し、酒盛りが始まる――前に、未成年の秀次を家に送ることにした。

 

 

「一人で帰れますよ。子供じゃないんだから……」

「高校生は()()子供だと思うがねぇ……甘えられる時に甘えとけ。送られとけ」

 

 一人で帰れると言う秀次の頭をわしゃわしゃ撫で、お酒が飲める大人たちに軽く声をかけ、加古隊作戦室を後にする。

 

 

 二十歳以下は補導対象だ。まだ補導されるような時間ではないが大人が一緒の方が良いだろう。

 『アンチボーダー』なんてのも居るらしいからな、念のためだ。

 

 

 ボーダー隊員である中高生は防衛任務のせいで九時十時は勿論、十二時以降も帰宅のため出歩いてたりする。

 

 補導されそうになったら警察に見せる証明書みたいなモノがあったりするらしいが……大人が一緒にいるならやっぱ家まで送り届けた方がいいと思うんだ。親だって安心するだろ? ……多分、きっと。

 

 

 子供は守らなきゃ、って思うんだよ。――近界民(ネイバー)と戦わせておいて何だけど。

 

 ……オレ自身が子供時代、バリッバリに戦ってて説得力もクソもないがな。

 

 まあ、近界(向こう)は殺らなきゃ殺られる世界だし? 是非もないねー……

 

 

「……鈴風さんはちょっと子供扱いしすぎだと思う」

「実際、子供だろ?」

 

 大人なんてハタチから死ぬまで――半世紀以上と長い。

 二十年、有るか無いかの短い子供時代を子供らしくしてたってバチは当たらんと思うがね。

 近界民が現れるとはいえ、玄界(日本)は比較的平和なんだし。

 

 急がなくたって嫌でも大人にならざるをえないんだ。

 

 

 秀次がムスッとした顔でみてくる。

 

「……そんなに子供扱いされたくない、と?」

「そりゃ、そうですよ」

「つってもねぇ……」

 

 ボーダー隊員(ここの子たち)って環境なのか、考え方だったり振舞い方が子供っぽくないんだよなぁ……仕方がないっちゃー、仕方がないんだが。

 

 バカ騒ぎしてる奴らもいるが基本、物分かりがいい。

 復讐だとか、家族を守りたいとか……想いは人各々(それぞれ)

 

 品行方正とまではいかなくても、逸脱した奴はいないし、自制心が強い。

 

 普通ならもう少しユルいと思うんだよな。

 

 それに――多かれ少なかれ、力を手にすると暴走する奴が出てもおかしくないが、そう言う奴は今のところ見たことがない。

 

 だから、()()()()()()()()連中を“甘えさせる”のも大人の役目だと思ってるワケだ。

 

 

「ワガママ言わない、真面目、物分かりがいい――そりゃあ、いいことなんだけどな? ()()()()()()()ってのは。でもちょっと心配になるんだよ…… “我慢してないかな?”って」

「……」

「シュージはさ……もう少し、肩の力を抜いてもいいと思うんだ。

――リラックスする時間あるか? 考えすぎも体に悪いし……ちゃんと寝れてる?」

「……っ、もういいです……」

 

 隣を歩いてた秀次が早歩きで先に行ってしまった。

 

 なんか、いらんこと言ったか……?

 

 頭を掻きながら秀次の後を追う。

 

 

 

難しいお年頃だねぇ~

 

(もっちょい甘えても いいのに)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――さて。ニノミヤにジンジャエールでも買ってくか……」

 

 今年の加古誕生会にもいないと思っていた二宮がいたため、ヤツの好きな飲み物であるジンジャエールは買ってなかった。

 

 ジンジャエール、うまいよな。

 

 秀次を家まで送り届けたことだし……ジンジャエールを買って、本部へ戻りますかー。

 

◇◆◇

 

 そして、本部に戻ったオレが目にした加古隊作戦室は――死屍累々。

 

 余裕そうな堤、加古、東以外は夢の国に旅立ったようだ。いや東もそろそろヤバいかも。

 

 しかし……オレが部屋を出てる間の、ほんの十数分で一体、何があったら酔い潰れる(こうなる)んだ……?

 

「お帰りなさい。鈴風さんも飲むでしょ?」

「……酒豪の気でもあるのか、カコには」

 

 加古がワイングラスをちょっと上げ、飲みに誘う。実に優雅である。

 

 ……ワイングラス、あったのか。

 

 堤はさっきまで(炒飯で)ぶっ倒れてたとは思えない飲みっぷりだ…………足りるか……?

 

 四人(実質、三人)を潰した犯人は――堤……? いや、加古か?

 

 

 

 加古の誕生会は十二時(天辺)を回る前にお開きにし、野郎共を仮眠室へ放り込み、加古は家まで送り届けた。

 諏訪は堤が抱えて帰ってった。多分、諏訪隊の作戦室だと思う。

 

 ……うん。飲めるヤツばっかになると片付けが大変だな……

 

 

 

 

 

Merry Christmas

 

 

 

 




 加古さんの誕生日に間に合うよう、頑張りました!!
 やれば、出来る子だったんだね!(笑)
(でも、ちょっと まとまってない感じ……)

 次は『年末年始(大晦日、元旦)』『冬島さん、東さんの誕生日』ですね!
 1月3日までに間に合うかな……?

(う~ん……キャラ説明、一々要らないかな……)


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年末年始

お待たせしました! 今年、初の『異世界転生』です。
今年も よろしくお願いしま~す!

そして相変わらずの、サブタイのセンスのなさよ……



(ゲート)発生、門発生

近隣の住民の皆様は警戒してください。繰り返します――』

 

 警報が鳴り、警戒区域に門が開く。

 

 

 門から少し離れた場所を巡回していたオレが到着した時には既に戦闘用トリオン兵(モールモッド)が二体、姿を現した後だった。

 

 

 グラスホッパーで上から近づき、弧月(こげつ)(試作):槍を弱点のあると思われる位置めがけ、ぶん投げる。

 一体目の上に着地。槍を引き抜き、念のため弱点の目玉を切り裂いとく。

 

 二体目のモールモッドと対峙する。

 

「よ、っと……お、らぁ!」

 

 攻撃をかわし、もぐり込んだ底から弱点めがけ、槍を突き刺す。

 

 

 機能停止(沈黙)を確認後、(さば)いて()()も確認する。

 

「……偵察用トリオン兵(ラッド)はいねーな。――回収班、回してくれ」

《了解しました、向かわせます》

 

 耳に手を当て、今日の防衛任務先の支部に連絡を入れる。

 回収班が到着するのを倒したトリオン兵に腰掛け、一服して待つことにした。門が開かないのを前提にしてるが。

 

 

「ランサー、お疲れ~」

 

 タバコに火を点けたところに、オレが倒したトリオン兵の上をひょいひょい跳んで、玉狛支部で防衛任務に着いているハズの“(自称)実力派エリート”がやってきた。

 

 眉間に皺がよる。

 

「ジン……お前、担当する場所、違うだろ」

「いや~丁度、近くに門が開いたから……来 ち ゃ っ た ♪」

「来 ち ゃ っ た ♪ ……じゃねーよ」

 

 タバコの火を消す。

 未成年がいる時は、なるべく吸わないようにしている。

 トリオン体とはいえ、副流煙はあまりよろしくないからな。

 吸うのは良いのか、って? オレの体だからいいんだよ。

 

 (タバコが)もったいねー……

 

 

「ダイジョブ、ダイジョブ。しばらく門、開かないから」

「何が、大丈夫だ……それよかお前、良かったのか? 風刃(ふうじん)手放したりなんかして――アレ、()()なんだろ?」

 

 『(ブラック)トリガー』は、“自分の()”と“全てのトリオン”を注ぐことで出来る――が、皆が皆、出来る訳じゃない。高いトリオン能力を持つ者が作れる可能性を持っている、そうだ。

 そして、風刃は迅の師匠()()()

 

 迅に最後に会ったのはクリスマスの朝だったか?

 黒トリガー争奪戦の後に比べりゃ、マシな顔になってたが……

 

「形見を手放したぐらいで最上さんは怒ったりなんかしないよ。むしろ、内部分裂しなくて良かったーって、安堵してるさ」

「……そーかい。お前が気にしてないってんなら、別にいいさね。

ま。お前と風刃の相性は良すぎるから本部に預けたとしても結局、使うのはお前になるだろうさ」

 

 

 迅の副作用(サイドエフェクト)である『未来視』と風刃の相性はピッタリで、“迅のための黒トリガー”と言っても過言じゃないだろう。

 

 黒トリガーには作った人の性格や感情が反映されるらしく、使用者と相性が合わないと起動できない、なんていう難点もある――が、迅の師匠だっただけあってバッチリがっちり、サイドエフェクトが活かせる仕様になってる。

 

 因みに。風刃は好き嫌いが少ないようで本部には二十人ぐらいの人間が起動できるそうだ。

 

 ただ、銃手(ガンナー)の弓場が起動できるって知った時は驚いた。――も少し、人を選んでもいいんでないか?

 

 

「それでも本部には使える人が沢山いるからね。選択肢が増えるよ――そうだ、ランサーも試したんだって?」

()()()()()()んだよ」

 

 起動するか、否か、を。

 

「案の定、起動しなかったがな。

いくら()()()()()()だろうが近界(ネイバーフッド)産まれの近界育ちな近界民(ネイバー)だからか反応しなかった。

――良かったな。起動してから持ち逃げされる、なんてことにはならないぞ? きっと」

 

 持ち逃げされたとしても、起動できないなら意味がない(宝の持ち腐れだ)。戦力、減になるが。

 

 

「――それで? オレになんか用があって来たんだろ? わざわざご苦労なこったな」

「用がないと来ちゃダメ? ――――なんて言わないさ。実は、頼みたいことがあって、ね」

 

 ……嫌な予感がする、ってオレの直感が告げてくるんだが?

 

 

 

 回収班が到着して目にしたのは、モールモッドの上で対峙するように立つ、にこやかに話す迅と苦虫を噛み潰したような顔のオレだった。

 

 

 

 

 

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【1月1日 三門神社】

 

 初詣の参拝客で賑わう神社に玉狛支部所属のボーダー隊員たちとやってきた。

 

 ……何やってんだろ、オレ。

 

 

 年に一回、来るか来ないかの神社で初詣って……

 

「へぇ~……出店とかあるんだな、初詣の時って」

「おれは、おしるこがたべたい」

「ふむ? スズカゼさんって“はつもうで”、来たことないの?」

年末年始(この時期)は基本、防衛任務に着いてるからなー……何気に初めてだわ。――ヨータロー、お汁粉は帰りだ」

「ほう」

「ランサー……おわったら、おこしてくれ。ねむ……ぐぅー」

 

 右腕で陽太郎を抱え、左手は人混みで離れないよう空閑と手を繋いでいる。雨取は宇佐美とだ。

 二人がオレや宇佐美と手を繋いでいるのは小さいから。三雲は二人よりも背が高いから大丈夫なんだが……ちょっと目を離したらこの人混みだ。迷子になりかねん……中学生にそれは失礼か。

 

 

 数日前の“迅の頼み事”は初詣(コレ)だ。

 あれやこれやと、話をはぐらかされ……元日早々に玉狛に呼ばれた時点でお察しである。

 まさか、子守りを任されるとは思わなかったが。

 

 せめて空閑は京介かレイジが……あ、京介は自分の弟妹の相手、レイジは防衛任務だった。いなかった。もう迅でいい(なげやり)

 

 因みに。前世でも初詣なんてしたことない。神社は行ったことあるけど。

 

 四年――毎年、年末年始は防衛任務に入ってたんだなぁ……今更だけど。

 

 

「ええ? あんたが初詣初めてとか、あたし初耳なんだけど。ウソでしょ……?」

 

 艶やかな赤い着物姿の小南は声こそ驚いているが、表情をなるべく崩さないようにするという、器用なことをしている。

 学校関係者(先輩後輩)に遭遇しても大丈夫なように、だそうだ。

 

 小南がオペレーターとか無理な話だろ。せめて射手(シューター)辺りにしとけば良かったものを……那須が射手なんだし。

 

「逆に訊くが、三が日中に神社(ココ)で会ったことあったか?」

「…………ない、わね……」

 

 そう言うことなんだよ、小南……

 

 

 

 

 

「お、栞じゃん!」

「陽介~」

 

 後ろから声がかかり振り向くと、手をひらひら振って三輪隊の三人と公平と共に陽介がやってきた。

 

「ミワ隊の人、と……?」

《A級1位タチカワ隊の射手だ》

《ほう。タチカワ隊の……隊長が()()()()()()()()なのは聞いた。シューターって……?》

《銃手は銃を持ってるが、射手はそのまま手元にキューブを出して弾を射つ……コナミが使うメテオラの やり方が射手だ》

《ほうほう、アレか》

 

 イトコだという宇佐美と陽介が手を上げ「あけおめー」「ことよろ~」と軽い感じに新年の挨拶をし「よし!」と、がっちり握手する。

 宇佐美の眼鏡が光った、ような……?

 その傍らで、いつの間にかオレの背中に張り付いて「おぉ! 高い!」と、はしゃいでいる空閑に内部通信で射手のおおまかな説明をする。

 内部通信での内緒話はトリオン体同士だから出来ることだ。

 

 しかし、何が“よし”なのか……イトコ同士のノリがわからん。

 

 

「……明けましておめでとうございます」

「こんな格好で悪いな、シュージ。今年もよろしく」

「鈴風さんは――子守りか?」

「……そんな感じだな」

 

 空閑を少し睨み付けるが、無視することにしたらしい秀次から新年の挨拶を受ける。

 一緒にきていた奈良坂が、こちらを見て疑問を投げ掛けてきた。

 

 完全に寝ている陽太郎を抱っこ、空閑を背負っている状態を見れば、子守りをしていると思うのも当然だ。

 

 因みに。数分前まで三雲は「空閑! 鈴風さんの迷惑になる、背中から降りろ!」と、説得していた。

 空閑の粘りに「……大人しくしていろよ?」と、諦めた感じだ。残念ながら、高さにはしゃいで大人しくなってはいなかったが。

 

 

「コーヘイはミワ隊と初詣か?」

「すねー。この後、太刀川さんたちとも合流すよ」

 

 公平から慶が来ることを知らされ、ちょっとうんざりしていると、不穏な言葉が耳に入った。

 

「…………()()?」

「太刀川さんと風間隊すね~」

「うへぇ……めんどくせー」

 

 ……つか、ここで空閑と慶たちが遭遇して大丈夫なのか?

 

 ところで……迅のヤツはドコ行きやがった?

 

「待った待った! お願い、待ってっ! そっち行かないでってば、太刀川さん!!」

「そー言われると、行きたくなるよなぁ」

「お願いだから、行かないで!」

 

 遠くから慶を引き止める迅の焦る声がすると、余裕綽々な慶の姿が目に入った。

 その後ろには他人のふりをした風間隊。

 

 ……修羅場か。

 

()()()()()()、こいつは……」

「太刀川さーん! こっち、こっち~」

 

 慶たちを見つけた公平が、手を振り呼ぶ。

 

 

「お、鈴風さん――と、背中に引っ付けてんのがウワサの黒トリガーか?」

「迅さん、と?」

「ウワサのジンのライバルで、No.1攻撃手(アタッカー)だ」

「ほう……“1番強い”とウワサの弧月使いの人か」

「へー……おれのこと知ってんのか」

「おうわさは、かねがね……」

 

 オレを挟んで空閑と会話する慶の後ろで、あいたたたーと言わんばかりに額に手を当て、天を仰ぐ迅の姿が目に入った。

 

「なんで今日に限って生身なんだよ、お前……」

「え……?」

 

 何、言ってるの? というような不思議そうな顔でオレの顔をみた迅は首を傾げる。

 

「トリオン体だったら内部通信、使えたろ……」

「…………うわー……なんでおれ、生身だったんだろ……」

 

 理解するまで、しばしの沈黙……から、トリガー起動。今更、トリガーを起動しても遅い。

 “うっかり”は、あかいあくまの専売特許だ……知らないか。

 

 

◇◆◇

 

 

 初詣を終え、太刀川、風間、三輪各隊にお年玉を上げて(お年玉は、隊員分を隊長に一括)神社(現地)解散。

 戦闘狂(攻撃手)二人が模擬戦をしたがったが元旦ぐらい休め。

 

 「大人しく餅でも食ってろ」って言ったら「お雑煮作りに来い」って……そのまま模擬戦ですね、わかります。

 行くワケねーだろ。“お袋の味”を味わってこいつーの。

 

 ――元旦早々、疲れたわ~……

 

 

 

 

 

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【1月2日】

 

 朝の防衛任務を終えたオレは、ボーダー本部のラウンジに来ていた。

 

「鈴風さん、今いいです?」

「イヌカイとツジか……お年玉ならニノミヤに渡したぞ?」

「貰いました」

「ありがとーございま~す! じゃなくてですね……いや、有難いですけど」

 

犬飼(いぬかい) 澄晴(すみはる)』『(つじ) 新之助(しんのすけ)

 『B級1位 二宮隊』所属の『コミュ力カンスト銃手』犬飼(高3)と『女子苦手攻撃手』辻(高2)

 

「? 何かあったか?」

「えっと……鈴風さんって明日、予定……空いてますか?」

「明日ぁ? 特に……あー……朝は防衛任務だったわ」

 

 連日の防衛任務は、数少ない成人に課せられた中高生の短い()()()を死守するための戦いだ(大袈裟)

 

 『戦える成人、少なすぎる問題』なんだよなぁ……

 

 ボーダーは“出来立て”だから仕方がないっちゃー、仕方がないんだが……

 

 

「――それが、どうし……あぁ……アズマの誕生日か」

 

 冬島もだったなぁ……と、ちょっと上をみて思い出した。

 

「それで、ちょーっと二宮さんと加古さんが揉めちゃって」

「……」

 

 犬飼が苦笑、辻が困り顔だ。

 

 年下を困らせるな、年上。

 

 

 しかし、まあ……なんで、あぁも仲が悪い……いや、加古はからかい半分か。んで、二宮が躍起になるから余計に……愉悦る加古の顔が浮かぶわぁ……

 

 同族嫌悪か、ホントに相性最悪か……前者か?

 

 

「どっちが払うかで揉めてんのか?」

「えぇ、まぁ……」

「どうにか、なりません?」

 

 確か去年は主役の東が払ったって聞いた。ソースは秀次だ。

 「割り勘にすれば いいのに……」と嘆いてた。東は「未成年に払ってもらうのもなぁ」って苦笑してたし……

 

「どーにかったってなぁ……どこ行くか決まってんの? 知ってる?」

「多分……いつもの(とこ)だとは、思うけど……辻ちゃんは?」

「半月ぐらい前に二宮さんが予約してるのを聞きました」

「おぉ! 辻ちゃん、ナイス!」

「……焼肉屋(いつもの)、ね」

 

 スマホを取り出し、タップする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長くなったんで、分けました(続きは執筆中)




 お待たせしました、第10話です。

 冬島さんの誕生日まで入れたら、長くなったので分けました……( ̄▽ ̄;)アハハ...
 1月3日(夜)は、酒盛りですw多分←

 1月8日(入隊日)が遠いなぁ……

◇◆◇

 玉狛に近い支部って何処だろ……三門市の地図が欲しい(笑)

 太刀川さんと遊真の邂逅が原作より早くなりましたw二次あるある、ですねw
 風間隊が空気に……(¬_¬;)

 犬飼先輩と辻ちゃんの口調が……合ってるかなぁ……


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1月8日

*pixiv版とは別仕様にしました。
【1月3日】(誕生会)【1月8日】(正式入隊日)を分けて、番外編に【1月3日】を投稿してます。

*注意*
セリフじゃないけど、今回はちょっとメガネくんに厳しめ発言?があります。読む人によっては厳しめに感じるかも……ご注意ください。(保険をかけとく)


 新旧東隊による『東隊長のお誕生日お食事会』で今年も二宮と加古は会計で揉めたらしい。――が、今年は事前に焼肉屋(お店)に連絡をして、二人が揉めたら請求書を(オレに)送ってもらうよう手配した。

 〝請求書、お送りします〟って焼肉屋から連絡もきたし。

 

 つか、予約した奴が払えばいいのでは……?

 

 まあ、給料貰ってても使い道が殆どないからオレは別にいいんだけど……

 

 だからか、一触即発になりそうだったのが不発に終わり、その日の内に秀次と小荒井と奥寺(コアデラ)からお礼のメッセージが届いた。

 本日の主役に払わせなくて済んだ……! と。

 

 年下(後輩)を困らせるんじゃねーよ、年上(先輩)二人……

 

 そんで。その後の『東、冬島隊両隊長 誕生会(夜の部)』と云う名の飲み会では東に礼を言われたり、東にくっついてきたと思われる加古(昼の部より引き続き参加)に文句を言われたり。

 不満そうに言ってはいたが愉しそうに笑ってもいた。二宮を煽るなよ。

 

 

 後日、本部で遭遇した二宮に強めに睨まれたオレは((今日は当たりが(つえ)ぇ…………いつもか))と遠い目になっていた――ら、犬飼、辻、氷見から()()()〝いつもより機嫌が悪くなかった〟というメッセージが届き、睨まれたのは八つ当たりのようなものであったことが判明した。

 

 ()()()()()()()()()のは加古が払ったワケでも東が払ったワケでもないからか?

 ……揉めるな。無理か。煽り屋(加古)がいるもんなぁ……

 

 そしてオレに八つ当たんな。

 

 

 

 

 

 冬島隊オペレーターからの菓子折り(お礼)を届けにきた当真と駄弁ったり、ブルブル震えながら菓子折りを持ってきた太刀川隊の唯我(お坊っちゃん)を公平からのご注文通りに軽~く蜂の巣にしたり。餅バカ及びA級三バカと全力鬼ごっこ(追われるのはオレ)、お子様隊員の相手、焼肉屋にお支払へ行ったりして時間が過ぎ――――1月8日(入隊日)を迎える。

 

 

 

 

 

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【1月8日 ボーダー本部】

 

 入隊式を終え、仮想空間で出来た訓練室がいくつかある部屋にC級隊員が着る白い隊服姿の新入隊員たちが嵐山隊の三人の後についてやってきた。

 

 嵐山隊の狙撃手である佐鳥が見当たらないのは狙撃手(スナイパー)の新入隊員を連れて地下にある狙撃手用の訓練室へ向かったからだろう。

 

 う~ん、狙撃手用の訓練室(あっち)の方が面白かったか……?

 

 ここにいる新入隊員は攻撃手(アタッカー)銃手(ガンナー)射手(シューター)希望者で、これから『対近界民(ネイバー)戦闘訓練』を受けるようだ。

 

 

「鈴風……珍しいな、お前がいるなんて」

「そりゃあ、お互い様ってやつだろ」

 

 訓練室にやってきた風間隊と観覧席で鉢合わせた。

 

「近界民を見にきたの?」

「あぁ、どれぐらいボーダー(こっち)のトリガーに慣れたかな~って」

「……鈴風さんはよく玉狛に行ってるんですよね? あの近界民と対戦したりしてないんですか?」

 

 菊地原の問いに答えると至極当然な疑問を歌川から投げかけられる。

 

 週の半分を玉狛で過ごしているようなもんのオレが、空閑がボーダーのトリガーに使い慣れているかどうか知っていて当然なことを知らないんだから疑問にも思うだろう。

 

「オレは訓練にはノータッチ」

 

 降参をするかのように両手を軽く上げる。

 

 まあ何かと対戦してくれって頼まれるんだけど。

 

「なんで?」

「一応、()()()()なんで? ――こっちも色々……キド派に忖度してやってんだよ」

 

 近界民嫌いの上層部が「近界民に肩入れするのか!」なんて言わないワケがない。オレも近界民だから何かとネチネチ言われる。

 言われても軽くスルーするし、気にはしないが――――毎度言われる身にもなってほしい。堪ったもんじゃない。

 

 ――鬼怒田は専用トリガー(ゲイ・ボルク)を調べられないから、だろうけど。研究者ェ……

 

「……大変ですね」

「……ホントにな」

 

 などと世間話をしていると訓練室の方からどよめきが起こった。

 どうやら空閑が記録を出したらしい。

 

「おー……1秒切った」

「あんなの、慣れたら誰だってできるじゃん」

「言うねぇ」

 

 と、言ってるそばからまたしても記録を塗り替えた。0.4秒とか、やるなぁ。

 

「あれが迅の後輩……鈴風、お前ならやれるか?」

「0.4切れって? C級と同じ条件でやったらムリだろ、立端(タッパ)もあるし」

 

 投擲あり? つってもC級と同じ条件だと“弧月(改):槍”または“弧月(試作):槍”は使えんからなぁ…………弧月(ノーマル)は投げ難そうだし。

 細長く、槍状にしたスコーピオンをぶん投げる?

 ……槍形態(スコーピオン)を投げるだけなら0.4切れる……? ……ビミョーか?

 

 刺し穿つ死棘の槍(刺しボルク)なら余裕そう。

 

 

「……なるほど、確かに使()()()()なやつだ」

「そうですか?」

「素人の動きじゃないですね。やっぱ近界民か……」

「近界民つってもピンキリだぞ? 皆が皆、あんな動きが出来るワケじゃねー。クガ(アイツ)近界(向こう)で傭兵だったらしいからな、トリガーを使うのは慣れてる」

 

 近界民つっても全員が兵士(武官)ってワケじゃない。書類仕事をする文官もいる。

 まあ、文官も有事になれば戦うことになるけど。トリガー(武器)の扱いに慣れてるといっても、武官(本職)と比べたら素人みたいなもんだ。

 それでもC級と比べれば近界民の方が断然動ける。戦時が身近か、そうじゃないかの違いだ。

 

 空閑がボーダー(こっち)のトリガーを使いだしてまだ一月(ひとつき)も経っていない。

 それなのに訓練用で小型化されているバムスターを無駄のない動きで仕止められるのは、元の大きさのやつと戦い慣れているからだ。

 小型化しているとはいえ、性能は元の大きさのやつと差はない。

 

 こっちのトリガーに慣れたらもっと速くなるんじゃないか?

 やっぱ環境の違いだな。

 

 

「……何やる気だ、ソウヤ(アイツ)

「近界民に絡みに行くんでしょ……感じ的に」

「……だよなぁ」

 

 蒼也が階段を降り、新入隊員がいる階下へ向かう。

 

 蒼也(アイツ)……突拍子もないことするからなぁ……

 

 ハラハラするような気持ちで蒼也の後ろ姿を見送る。

 

 

 下では空閑が三人の新入隊員に絡まれていた。

 空閑が……断った、のか? 空閑に絡んでた新入隊員が驚いたような、傷ついたような顔をしているが……

 『おれたちと組もうぜ!』『おことわりします』『んな?!』ってトコか、あれ。

 

 空閑は三雲、雨取と組むって言ってたしなぁ……だから三雲が玉狛に転属したワケだし。

 

 

 蒼也が下に着いたようだ。なにやら嵐山と話し始め……

 

「アラシヤマが慌て、止めてる? クガと()るってか?」

近界民(C級隊員)が使ってトリガーは訓練用ですからね。使えるのは一つだけですし、正隊員のトリガーとは性能差がある。さすがに嵐山さんも止めますよ」

 

 空閑は乗り気だけど。戦闘部族め……

 

 だが蒼也の視線の先にいると思われるのは京介と木虎と一緒にいる三雲――――

 

「戦る相手……クガじゃなくてミクモ?」

「……誰?」

「タマコマに転属したB級のミクモ・オサム。クガの友人で保護者的なメガネ」

「ふ~ん」

 

 訊いといてそれか。

 

 三雲と木虎が驚いて――いや、嵐山も驚いてるな、あれ。京介も僅かに……ポーカーフェイスだなぁ。

 

「――にしても、なんで近界民じゃなくてメガネの方なんだろ……? 正隊員同士だから模擬戦するには問題ないけど」

「クガを使()()()()()()()認定してるからな。そのクガと組むミクモの実力が見たいんじゃねーか? ……わからんけど」

 

 空閑の実力とやらを確かめる(見る)んじゃなかったのか? 最初から三雲の実力を確かめるためだった?

 

「あの二人で隊を作るんですか?」

「あと一人、狙撃手が入る。そんで、遠征に行けるA級目指してんだと」

「近界民が遠征?」

「行きたいってやつのお手伝い。色々あんのよ、色々」

「……物好きなやつー」

 

 そんで嵐山と京介が三雲を留めてる。明らかに実力差があるからだ。

 

 片やA級3位の隊長で攻撃手二位、個人総合三位。

 片やちょい前にB級に昇級した元万年C級隊員だからなぁ……

 

 

「お? 戦るのか? 模擬戦」

「みたいだね」

「ですね」

 

 新入隊員がざわめく。

 そら正隊員同士の勝負っていわれたら、どんな戦いになるのか観たくなるよな。

 だが時枝が新入隊員をラウンジへ誘導する。

 さすが気遣いの出来る男。

 

 嵐山にOKをもらったと思われる空閑は残るようだ。

 

 師匠である京介と二、三言葉を交わした三雲が訓練室に入る。

 

 

≪模擬戦開始≫

 

 開始の合図と共に蒼也がカメレオンで姿を消す。

 それに驚く三雲がレイガストを構える間も無く、蒼也の攻撃が入る。

 

≪トリオン供給機関破壊、三雲ダウン≫

 

「バカだなー、訓練室ならトリオン切れしないから隠密トリガー(カメレオン)も使い放題。勝負になんないよ」

 

 風景に溶け込む隠密トリガーである『カメレオン』のデメリットはトリオンの消費が大きいことだ。

 だからカメレオンが出来た当初は風景に溶け込み、相手の隙をついてサクッと……なんて使用するやつが多かった。今は風間隊の三人の他には数人しかいない。

 

「ミクモがカメレオンの存在を知らなかった可能性……?」

「「え?」」

 

 オレのセリフに訓練室を観ていた菊地原と歌川が反射的に顔をこちらへ向ける。

 

 驚くよなぁ……オレも今その可能性に気付いた。

 多分、蒼也のことも知らないと思う。

 

「……多分、使う予定のないやつは知らないんじゃね?」

「うそでしょ……?」

 

 菊地原に信じられないものを見るような目で見られた。

 

 多分、マジ。

 

 ボーダー入って数ヵ月――C級なら知らないこともある。

 本部にいた頃もあまりランク戦はしてなかったみたいだからB級が使ってるとこは見たことがないのかもしれない。――B級に居る、数少ないカメレオンをセットしてる隊員は個人ランク戦ではなく、部隊(B級)ランク戦の方で使用することが多い。使わないワケじゃないが。

 

 レイガストも(シールド)モードがあるのを最近までマジで知らなかったらしいし……

 

 

 ――()()()()()()()()B級隊員にならないで(C級隊員のままで)どうやって雨取千佳(幼馴染み)を守ろうと思っていたのか――――

 

 

≪伝達系切断、三雲ダウン≫

 

≪三雲ダウン≫

 

≪三雲ダウン≫

 

≪三雲ダウン≫

 

 

 手も足も出ないとはこのことか……見事な殺られっぷりだな。

 

 そして空閑は楽しそうだ。

 ボーダーのトリガーはシンプルだったり、カメレオンみたいな面白いのもあったりする。

 

 ……お蔵入りしたモノも数知れず。

 

 

 何やら考え込んでるようだが……カメレオンの攻略法でも考えてんのか?

 

≪三雲ダウン≫

 

()(つー)すぎ。光るものがないよね。

――なんであんなやつに絡んでるんだろ、風間さん」

 

 空閑と組む三雲の実力を以下略。

 

 

 一度(いっぺん)、京介に頼まれて三雲と模擬戦をしたが……瞬殺すぎて思わず「え?」って声が出た(一戦目)

 どのぐらいまで力を抑えたら打ち合えるのか……と模索してる内に三雲の体力の方が限界に達し――五戦で終了。模擬戦はその一度きりだ。

 

 体力・持久力ともに無く、本当にボーダー隊員として大丈夫か……? と心配になったし、よくこれをボーダーに入れようと思ったなぁ……と、天を仰いだのもつい最近で――――どんな未来が視えたんだ、迅。

 

 

 蒼也の動きは読めだしたようだが――それに二十敗以上かかるってのは、なぁ……

 

 ()()に身体がついて行かないのか……?

 

 ……こりゃ、生身のトレーニングを……だがまず、体力と持久力をつけないと…………バランスのいい食事も必要だな。

 

 筋肉に一番良いのはプロテインだね。

 

 

「終わったっぽい――って、まだやるの? 充分、負けたでしょ」

「ガッツはついたな……」

 

 諦めたらそこで試合は終了(しゅーりょー)ですってな。

 ……なにか掴んだか?

 

≪ラスト一戦、開始!≫

 

「ムリムリ、また瞬殺で終わりだよ」

「そう、とも限らんぞ?」

 

 三雲が室内をトリオンの弾で満たしていく。

 

「弾速、超スローか? 考えたなぁ」

 

 トリオン切れを起こさない訓練室だから出来ることだな。

 蒼也もこれだけ室内を弾で満たされるとなると姿を現して弾を避けなきゃならない。

 カメレオンを解いた蒼也はスコーピオンで弾を破壊する。

 

 レイガストを構えてトリオンキューブを出した三雲に蒼也が突っ込んでいく――が、逆にレイガストを突き出した三雲がスラスターで蒼也へと突っ込んでいく。

 

 壁際まで追いやった三雲は蒼也をレイガスト(盾)内に閉じ込める。

 レイガストに開けた穴から中へアステロイドを放つ。

 

「「!!」」

「決まった、か?」

「まさか……!!」

 

 

 三雲の首にスコーピオンが生える。

 

≪伝達系、切断。三雲ダウン≫

 

 三雲のアステロイド(攻撃)よりも、蒼也のスコーピオン(攻撃)の方が速かったようだ。

 

「……惜しかった、ですね」

「いや……そうでもないな……」

 

 アステロイドの爆発で起きた煙りが晴れると片腕を失った蒼也の姿があった。

 ホント寸での差だったようだ。

 

≪トリオン漏出過多! 風間ダウン!!≫

 

≪模擬戦、終了!≫

 

「……引き分け……」

 

 菊地原がポツリと訓練室を見ながら呟く。

 蒼也が三雲と引き分けになったのがショックだったようだ。

 言っても二十四敗だが。

 

 それでも三雲からすれば大金星だな。

 

◇◆◇

 

 京介と蒼也が話し出したからオレも下へ向かう。

 

 おぅ……なんか、すっげーけちょんけちょんに言ってんなぁ……

 苦笑が零れる。

 

「……だが、自分の弱さをよく自覚していて、それゆえの発想と相手を読む頭がある。知恵と工夫を使う戦い方は――俺は嫌いじゃない」

「……!」

 

 おぉ……蒼也が褒めてる。珍しい……

 

「邪魔をしたな、三雲」

「あれ? 結局おれと勝負してくんないの?」

「……勝負? おまえは訓練生だろう。勝負したければこちらまで上がって来い」

「A級3位のかざま先輩か……()に行く楽しみが増えたな」

 

 

「お疲れさん」

「あぁ……また後でな」

 

 少し言葉を交わして蒼也とすれ違う。

 

 

「スズカゼさんだ……来てたの?」

「本部に用があったからな。それよか対近界民戦闘訓練、歴代1位記録達成おめでとう」

「ありがとう?」

「1秒切るとは思わなかったわ」

「じゃあ勝負してくれる?」

「B級に上がったらなー」

「うむむ……スズカゼさんもダメかー」

 

 蒼也と入れ違いでやってきたオレに気づいた空閑が近寄ってくる。

 案の定、勝負を挑まれるが正隊員じゃないことを理由に断ると「ちぇー」と拗ねられた。

 

 すぐにでもB級(正隊員)になれるだろうから我慢しろ、戦闘部族。

 

 三雲は京介と反省会だ。

 けど、木虎はなんで京介の三雲にかける言葉に怒ったり喜んだりしてるんだ?

 三雲が誉められるのが嫌……そーいや年上や同い年のヤツには当たりが強いんだったな……

 それに京介のこと慕ってるんだったっけ。

 

 焼きもちか。

 嫉妬か。

 羨ましいのかぁ……

 

 そーいや京介のやつ、玉狛に移動してからランク戦してないんだったな。

 

 なるほど、なるほど。青い春か……

 

 

「三雲くん、大変だ。きみたちのチームメイトが……!」

「え……?」

 

 何処かとやり取りを(通信)していた嵐山が慌てて三雲に声をかける。

 

 ここに居ない三雲のチームメイトっていうと雨取だが……

 

 狙撃手訓練室で事件か?

 

 

 

 

 

――to be continued. . . . . .




大変長らくお待たせしました(土下座)十一ヵ月って……
異世界転生、第11話です。

pixiv版とは別仕様にしてみました。
pixiv版は(1月3日が)ダイジェスト(それでも長い)
それに対し、ハーメルン版の『1月3日』は書き始めた頃に一度挫折しカットした会話文とかを加筆修正したものになります。長くなったので分けました←

『1月3日』は『番外編』に投稿してあります。

◇◆◇

三雲対風間のシーン、なんかおかしいかもしれない……
コミック読み返して修正するかもしれません。


前書きにも書きましたが、オッサムに対してセリフじゃないけど読む人によっては厳しめに感じる発言が……あります。
(タグ追加した方がいいのかな……)

ふと思ったことなんだよね。空閑が現れなかったらC級のままで、どうするつもりだったんだろう?って。
B級に上がるためのランク戦も積極的にやってる感じがしないし……

まあ、やる気と実力が噛み合ってないとは思うんだけど。

オリ主、レイジさん、とりまるパイセンによる『メガネくん肉体改造』が……はじまる……か?


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