名もなきカードバトラーの戦闘録 (月蛇神社)
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名もなきカードバトラーの戦闘録

おはこんにちばんは。月蛇神社です。
今回は自分が一度はやってみたかったバトルスピリッツの投稿に挑戦してみました。
以下が本作のカードの表記です。

スピリットの表記
カード名 Lv?(乗っているコアの総数。ソウルコアはSと表記) BP

ネクサスの表記
カード名 数字(乗っているコアの総数)

この対戦は作者が実際に使用しているデッキを作者自身が一人二役で対戦させ、その記録を反映させたものです。そのため、プレイミスなどがどこかにあるかもしれません。
また、本作は展開をサクサク進めるために、アニメのように本来必要なステップの確認やフラッシュタイミングなどの確認を省略しています。そういった要素が苦手な方はブラウザバック推奨です。

それでも大丈夫でしたら、ぜひ最後まで読んでくださるとうれしいです。


「VRギア、起動」

 

 その一言で頭に被ったヘッドギア型のゲームハードがピピッという音と共に起動する。この音を耳にするたびに技術の進歩はすごいなぁと俺は思う。

 

 今やVR技術は進化し、フルダイブ機能までも実現させてしまった。それは主にゲームやコンサートといった娯楽を中心に発展していった。

 

 そして、その娯楽の中には当然、カードゲーム業界も含まれているのだ。

 

 腰掛けた椅子の背もたれに深く腰掛け目を閉じる。閉じた目を開くと、目の前には簡素な部屋と一つのモニターが存在していた。

 

 バトルスピリッツ。それが、今から俺が戦うゲームの名だ。プレイヤーは40枚以上で出来たデッキとコアと呼ばれるチップを駆使してスピリットを召喚し、相手のライフを削り取る。このコアをどう使うかが戦況を左右し、俺を虜にさせた要因でもある。

 

 モニターの前に立ち指で触れ、フリーマッチを選択。そして、使用するデッキを選ぶ。さて、今日はどのデッキを使おうか。

 

 しばし思案し、一つのデッキを選択する。デッキのレシピを確認した俺はそのデッキをデッキ置き場にドラッグしOKボタンを押した。すると周囲が暗くなる。あとはマッチングが完了するのを待つだけだ。

 

『プレイヤーネーム:ナツさんとの対戦が決定しました』

 

 程なくしてシステム画面がマッチングが完了したことを知らせ、3秒のカウントダウンが始まる。

 

 それが0になったとき、プレイヤーは開戦の言葉を放つのだ。

 

 

 

 

「ゲート・オープン。界放!」

 

 

 

 

 

 光が晴れた先は宙に浮かぶ荒野と呼べる場所、バトルフィールドだ。

 

 フィールドの端に俺と対戦相手はバトルフォームを纏い、対角線上に配置された。

 

 余談だが、このバトルフォームはバトル後にもらえるポイントで自由にカスタマイズが可能だ。

 

「よろしくお願いします!」

「よろしくお願いします」

 

 対戦前の挨拶を交わす。声質からして相手は女性プレイヤーのようだ。まだまだ少ないとはいえ、最近では女性プレイヤーと戦うことも増えてきた。この調子でバトル人口が増えていってほしいものだ。

 

 デッキからカードが初期手札として四枚浮かびあがり、ライフに5個、リザーブ(コアを溜める場所)に3個のコアとソウルコアと呼ばれる特殊なコアが1つ現れる。そして、手元のプレイシートが光り出した。今回はこちらが先行のようだ。

 

 バトルスピリッツはターンを開始するスタートステップ、ボイドというコア置き場から自分のコアを1つ増やすコアステップ、手札を増やすドローステップ、使用したコアやスピリットを回復させるリフレッシュステップ、カードをプレイするメインステップ、攻撃を行うアタックステップ、ターンを終えるエンドステップの順番でゲームが進行される。そのうち、先攻1ターン目はコアステップとアタックステップはスキップされる。

 

 

・ターン1

 

 

「では始めよう。スタートステップ、ドローステップ、メインステップ」

(さて、手札はそこまで悪くない。まずはこいつだな)

「3コスト ゴッドシーカー 超星使徒タルボスを召喚」

 

ゴッドシーカー 超星使徒タルボス Lv1(S1)BP2000

 

 フィールドに紫色のシンボルが出現し、砕ける。その中から預言者のような風貌の紫色の竜が現れた。その竜は手に持った魔本を開き、3枚のカードを提示する。

 

「召喚時効果によりデッキの上から3枚オープン、その中からカード名にヴィオレ魔ゐを含む創界神(グランウォーカー)ネクサス1枚と系統:超星を持つコスト4以上のカード1枚を手札に加える」

 

オープンされたカード

・超神星龍ジークヴルム・ノヴァX

・ゴッドシーカー 超星使徒ペルディータ

創界神(グランウォーカー)アポローン

 

(……まずまず、か。まあ何もないよりはましだな)

「コスト8の超神星龍ジークヴルム・ノヴァXを手札に加え、残ったカードは破棄」

「……あー、超星かぁ」

 

 ここまでの動きで相手はこちらのデッキが何なのかにおおよその見当がついたらしく、呟きが聞こえる。距離的にはかなり離れているが、問題なく聞こえるのもVR空間のいいところだ。

 

「そしてタルボスの常時効果で系統:超星を持つコスト3以下の自分のスピリットすべてはアタックできず、相手の効果を受けない。続けてバーストをセット。ターンエンドだ」

 

 俺のデッキ……超星の序盤の動きとしてはまあまあいいものが出来た。欲を言えばヴィオレ魔ゐも確保しておきたかったところだが、それでもタルボスの除去されづらいシンボルは次のターンに召喚するスピリットのコストの軽減にしやすく、バーストもセットしてある。超星に採用されるバーストは大体はあの1種類くらいだが……さて、相手はどう思うか。

 

 

・ターン2

 

 

「行きます!スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!……うーん」

 

 メインステップに入ったところで、相手は手札を見ながら軽く唸っている。その様子から、どうやらあまり良い手札ではないらしい。

 

 もちろん、その仕草がブラフという可能性もあるが。

 

「やるしかないか。4コスト 秩序戦艦バチマン・ド・ゲールを召喚!」

 

秩序戦艦バチマン・ド・ゲール Lv1(1) BP5000

 

 相手の場に白のシンボルが現れ、砕ける。そこからなかなかに大きな人型の戦艦が現れる。

 

 ……バチマン。バチマンかぁ。

 

(武装ガチャかぁ……!)

 

 彼女のデッキはS(スピリット)武装、またの名を武装ガチャというデッキで確定だろう。

 

 煌臨というギミックを駆使し、デッキの上からスピリットをノーコストで召喚するデッキだ。使用者の運に非常に左右されるデッキだが、場合によっては速攻でケリをつけることもある。

 

 切り札の他デッキへの出張性も高く、全盛期には強すぎる故にそいつが制限カード(デッキに1枚しか入れられないカード)に指定されたと言えばどれだけやばいか伝わるだろうか。

 

「続いてバーストをセット!アタックステップは何もせずにターンエンド」

 

 

・ターン3

 

 

「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ」

 

 ドローしたカードを確認し、即座に行動を決める。

 

「2コストで2体目のタルボスを召喚、召喚時効果により3枚オープン」

 

ゴッドシーカー 超星使徒タルボス Lv1(1)BP2000

 

 フィールドにもう1体のタルボスが召喚され、先ほどのようにカードが提示される。

 

オープンされたカード

・ヴィオレ魔ゐ-魔族side-

・超星使徒コーディリア

・魔界竜鬼ダークヴルム

 

(よしっ、今度はいいぞ)

「ヴィオレ魔ゐ-魔族side-と超星使徒コーディリアを手札に加え、残ったカードは破棄」

「うわぁ……まゐ様入っちゃった」

 

 あれがネクサスの戦艦形態じゃなくて本当によかった。戦艦形態だと相手が効果で手札が増やした分、自分もドローできるのだ。自主的に手札を増やしにくい白にとって、選択肢を与えることになってしまう相手からしたら早々に除去したい危険な1枚だ。

 

「続けて3コスト1軽減、2コストで創界神(グランウォーカー)ネクサス、ヴィオレ魔ゐ-魔族side-を配置!」

 

 一体のタルボスが手に持った本を残し、消滅する。その本は魔法陣と共に一人でに開き、俺の背後に、愛する男のために戦った少女の姿を映し出す。

 

「不足コストはタルボスを消滅させることで確保。そして、同名のネクサスがないため神託(コアチャージ)!デッキの上から3枚をトラッシュへ」

 

トラッシュへ置かれたカード

・白晶防壁

・黒き超星使徒ブラックヴルム

・ソウルクランチ

 

「その中の対象カード1枚につきボイドからコアを1つこのネクサスへ置く。更に、ソウルクランチは創界神ネクサスの神託でトラッシュへ置かれたとき、手札に加えられる」

 

ヴィオレ魔ゐ-魔族side-1

 

 このソウルクランチは相手スピリットのコアを2つ取り除くマジックだ。コアの無いスピリットは消滅してしまう(一部例外はいるが)。そのため、このカードを使えばコアが1つしかないバチマン・ド・ゲールを除去することが出来る。あのスピリットもデッキガチャをするカードなので出来れば除去したいところだが残念なことに使用コストが足りず、使用出来ない。

 

「アタックステップ。何もせずにターンエンドだ」

 

 俺はターンエンドを選択した。

 

 スピリットを減らす代わりに創界神ネクサスを配置。この選択が吉と出るか凶と出るか……。

 

 

・ターン4

 

 

「何もなし、か。スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!リザーブのコアを全てバチマン・ド・ゲールへ移動!」

 

秩序戦艦バチマン・ド・ゲール Lv2(5S1) BP7000

 

 バチマン・ド・ゲールのレベルが上がり、雄たけびを上げるようなポーズを取る。

 

 本来2つでレベル2になるバチマン・ド・ゲールにコアを置いてきたということは……。

 

(くるか!)

「アタックステップ!秩序戦艦バチマン・ド・ゲールでアタック!アタック時効果によりデッキの上から1枚オープン、系統:武装を持つスピリットカードの場合ノーコストで召喚出来る!お願い!」

 

 バチマン・ド・ゲールがこちらへ迫り、そのボディの背部が開かれる。

 

 そこから現れたのは、白いマントを翻す鉄の皇。

 

「ここでそう来るか!?」

「やった!鉄騎皇イグドラシルをレベル2で召喚!」

 

鉄騎皇イグドラシル(Rv) Lv2(3) BP10000

 

 戦艦から飛び出した皇はズシンと大地を揺らし、フィールドに降り立つ。そして、その腕を突撃する戦艦へと向けた。すると、戦艦は白いバリアに包まれる。

 

「イグドラシルの召喚時効果により、次の自分のスタートステップまで系統:武装を持つ自分のスピリットは相手の効果を受けない!」

 

 これでバチマン・ド・ゲールどころかイグドラシルを除去することも出来なくなってしまった。BPもタルボスでは勝つことが出来ない。ここの選択肢はこれ一択だ。

 

「ライフで受ける!」

 

 戦艦の腕の砲門から弾がバルカンのように発射される。それは俺に着弾する直前で白いバリアに阻まれ、バトルフォームのライフカウンターへと衝撃が吸い込まれていく。

 

ライフ5→4

 

 ライフが砕ける衝撃が俺を襲う。だが、こちらもただライフを失ったわけではない。

 

 ライフが砕けたことに反応してセットしていたカードが開かれる。

 

「ライフ減少によりバースト発動!超弩級星艦シュバルツシルト・ドラゴン!バースト効果によりBP13000以下のスピリット/アルティメット2体を破壊……と行きたいがイグドラシルの効果で破壊は出来ない。その後、このカードをバースト召喚。ヴィオレ魔ゐの対象なのでコアチャージ」

 

超弩級星艦シュバルツシルト・ドラゴン Lv1(1) BP8000

ヴィオレ魔ゐ-魔族side-2

 

 赤のシンボルから竜と戦艦を合体させたようなドラゴンが炎と共に出現する。その炎は相手スピリットに襲い掛かるが、スピリットはバリアに守られて傷一つすらつけられない。

 

「続けてイグドラシルもアタック!フラッシュタイミング、バチマン・ド・ゲールのソウルコアをトラッシュへ置き煌臨!煌臨条件は紫/白のコスト5以上!」

 

 天から白のシンボルが2つ交差しながらイグドラシルの元へと降りてくる。イグドラシルはそれを受け入れ、光に包まれたかと思うと、2丁の大型の銃を構え神々しく輝く機体がそこにあった。

 

秩序軍神(ノーブル・ゴッド)グレイス・オーダー Lv2(3) BP12000

 

秩序軍神(ノーブル・ゴッド)グレイス・オーダー!煌臨時効果により、デッキの上から2枚オープン」

 

 煌臨した軍神は両手の銃を天に向けて撃つ。そのエネルギーは雲を引き裂き、そこから機体に刻印が刻まれた一機の機兵を呼び出す。

 

オープンされたカード

・煌龍銃剣ガンズ・バルムンク

・聖刻猟兵ジェット・ベイク

 

「その中から系統:武装/死竜を持つスピリットカード1枚をノーコストで召喚する。武装を持つジェット・ベイクをLv2で召喚!」

 

聖刻猟兵ジェット・ベイク Lv2(2) BP9000

 

 機兵がフィールドに降り立つ。それと同時に、バチマン・ド・ゲールは機体を崩壊させて消滅する。

 

「不足コアはバチマン・ド・ゲールを消滅させて確保!グレイス・オーダーはダブルシンボル!ライフを2つもらうよ!」

「タルボスでブロック!」

 

秩序軍神(ノーブル・ゴッド)グレイス・オーダーBP12000 VS ゴッドシーカー 超星使徒タルボスBP2000

 

 グレイス・オーダーの前にタルボスが立ちふさがり魔術を放とうとする……が、しかしその前にエネルギー弾に貫かれ爆散した。

 

「まだまだ行くよ!ジェット・ベイクでアタック!アタック時効果によりシュヴァルツシルトを手札に戻しボイドからコア1つをこのスピリットへ!さらにフラッシュタイミング、ジェット・ベイクの効果でお互いのアタックステップに1回、系統:界渡/化神を持つスピリット/アルティメット1体を回復させる!ジェット・ベイクを回復!」

 

聖刻猟兵ジェット・ベイク Lv2(3) BP9000

 

 ジェット・ベイクが腕を振るい、衝撃波がシュヴァルツシルトを襲う。カードが飛び上がり手札へと戻る。

 

 このアタックも受けるしかない。

 

「ライフで受ける!」

 

 機兵の攻撃はこのターン2つ目のライフを砕く。

 

ライフ4→3

 

「ターンエンド!」

 

 

・ターン5

 

 

「スタートステップ」

 

 ステップを進めながら状況を整理する。

 

 こちらのフィールドには創界神ネクサスであるヴィオレ魔ゐが1枚。ライフは残り3つ。

 

 それに対して、相手の場にはそれぞれレベル2のスピリットが2体。ジェット・ベイクは実質2回分のブロックが可能であり、グレイス・オーダーに至っては煌臨中であれば疲労状態でもブロックが可能だ。さらにそれらはイグドラシルの効果でこちらの効果を受けないため、純粋なBP比べで除去するしかない。

 そのため、最低突破ラインのBPは13000。しかし、今の盤面、手札ではそれを用意することは不可能だ。仮に、BPを突破したとしても相手にはライフが5つも残っている。恐らくブロックせずにライフで受けるだろう。

 

 圧倒的不利な状況。加えてバーストにも気を付けなければいけない。今ここで下手に行動するのは危険だ。

 

「2枚目のヴィオレ魔ゐ-魔族side-を配置。バーストをセットしターンエンド」

 

 次のターンにつなぐ。これが最善だろう。相手にあのカードが手札になければしのぐことは可能だ。

 

 

・ターン6

 

 

「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!ジェット・ベイクにソウルコアを移動。アタックステップ!ジェットベイクでアタック!フラッシュタイミング、ソウルコアをトラッシュに置き煌臨!煌臨条件はコスト6以上!」

 

 天より白のシンボルが落ちてくる。それは宙で砕け、龍の姿をとると、ジェット・ベイクに重なる。

 

 次の瞬間、そこには一体の機龍が煌臨していた。

 

「来たれ、秩序を司る龍よ!秩序龍機(ノーブルドラグーン)νジークフリード!」

 

秩序龍機(ノーブルドラグーン)νジークフリード Lv2(3) BP15000

 

「……まじかぁ」

 

 思わず声がこぼれてしまう。嘘だろあいつ制限カードだぞ。手札増強も無しに引いてくるとは、先ほどのデッキトップからイグドラシルを引く運といい、このナツという相手はよほどの豪運の持ち主らしい。

 

「νジークフリードの『煌転装』発動!系統:武装を指定し、その系統を持ったブレイブカードが出るまで自分のデッキを破棄!」

 

 ジークフリードが咆哮し、ナツのデッキが破棄される。

 

 1枚……3枚……5枚……

 

「あ、あれ?」

 

 6枚……10枚……12枚……

 

「あのー、バルムンクさーん。まだですかー?」

 

 ……流石にこれには見てるこちらも同情する。ここまで出てこないのはそうそう見ない光景でもないが、それでも自分があの立場だときついものだ。

 

 結局、彼女は総数23枚目のカードで、ようやくお目当てのものを引いた。

 

「まあ、その、なんだ。こんなときもあるさ」

「うぅ……お気遣いありがとうございます……それでも!煌龍銃剣ガンズ・バルムンクをノーコスト召喚!νジークフリードに直接合体(ブレイブ)!」

 

 ジークフリードの足元から一本の銃剣が大地を引き裂き現れる。それを握るジークフリードの顔は、どことなく申し訳なさそうに見えた。

 

秩序龍機νジークフリード Lv2(3) BP15000+6000=21000

 

「さらに、効果でデッキから破棄されたアルテミックシールドをトラッシュから2枚回収!νジークフリードは合体アタック中相手の効果を受けない!さらにガンズ・バルムンクの効果でブロックされない!ガンズ・バルムンクと合わせてダブルシンボル!」

 

 ジークフリードがバルムンクを振るい、こちらを襲う。さぁ、今度は俺が賭ける番だ。手札のカードを1枚掲げる。

 

「フラッシュタイミング!4コストかつソウルコアを使用しマジック、白晶防壁を使用!グレイス・オーダーを手札に戻す。さらにソウルコアを使用して発動したためこのターン俺のライフは1しか減らない!」

 

 俺の眼前に分厚い半透明の防壁が現れ、ジークフリードの攻撃を軽減する。さらに、その攻撃の一部はグレイス・オーダーへと弾かれ、それを受けたグレイス・オーダーは手札へと戻る。

 

「くっ……グラン・ウォーデンがあれば……!」

「このアタックはライフで受ける!」

 

ライフ3→2

 

 マジックがしっかりと発動したことに俺は安堵のため息をつく。今の局面、白晶防壁が無効化されたら俺の敗北は決定していた。

 

「ライフ減少によりバースト発動。超弩級星艦シュバルツシルト・ドラゴンをレベル2で再び召喚、2枚のヴィオレ魔ゐにそれぞれコアチャージ」

 

ヴィオレ魔ゐ-魔族side-A3

ヴィオレ魔ゐ-魔族side-B1

 

「νジークフリードは合体アタック後ターンに1回だけ回復できる。ターンエンド」

 

 

・ターン7

 

 

 さあ、反撃を始めよう。

 

「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。7コスト3軽減、4コストで超星使徒コーディリアを召喚!ヴィオレ魔ゐにコアチャージ。アタックステップ!」

 

超星使徒コーディリア Lv2(3) BP7000

ヴィオレ魔ゐ-魔族side-A4

ヴィオレ魔ゐ-魔族side-B2

 

 赤のシンボルが砕け、太陽系を模したような杖を持つ神官のような龍が現れる。

 

 その龍は大地に杖を突き刺し、祈りをささげる。杖の先端の宝玉が輝きを増し、光の爆発を起こす。

 

「アタックステップ開始時、コーディリアの効果でトラッシュのソウルコア以外のコアを好きなだけこのスピリットへ置く。この効果で4つ以上置いたとき、手札の系統:超星を持つスピリットカード1枚をソウルコアをトラッシュに置いたものとしてこのスピリットへ煌臨させる!煌臨条件は系統:星竜をもつコスト6以上!」

 

 光が晴れた先には、4枚の翼を持ち、白い鎧をまとう赤き龍が存在していた。

 

「奇跡を起こす赤き龍をここに!超神星龍ジークヴルム・ノヴァX、煌臨!」

 

 超星の切り札の一角が今、ここに煌臨する。

 

「来たわね……ジークヴルム・ノヴァ!」

「ヴィオレ魔ゐにコアチャージ。そして、ジークヴルム・ノヴァの効果により系統:超星を持つスピリットに煌臨したため、俺のライフが5になるよう回復!」

 

 ジークヴルム・ノヴァの輝きが、俺のライフに光を灯す。

 

超神星龍ジークヴルム・ノヴァX Lv3(7) BP18000

ヴィオレ魔ゐ-魔族side-A5

ヴィオレ魔ゐ-魔族side-B3

ライフ2→5

 

「いくぞ、超神星龍ジークヴルム・ノヴァXでアタック!」

 

 ジークヴルム・ノヴァは4枚の翼を広げ、フィールドを飛び立つ。背後の少女が、その龍へと手をかざし、龍に力を与える。

 

「アタック時効果により、BP合計15000まで相手スピリットを破壊!さらに『超界放』を発動!赤/紫の創界神ネクサスであるヴィオレ魔ゐから4つコアをこのスピリットへ置くことで相手のライフを2つまでボイドへ送る!」

 

超神星龍ジークヴルム・ノヴァX Lv3(11) BP18000

ヴィオレ魔ゐ-魔族side-A4

ヴィオレ魔ゐ-魔族side-B0

ナツのライフ5→3

 

 ジークヴルム・ノヴァは天空から地上へ虹色に輝く炎を放つ。その炎はジークフリードを破壊するには至らなかったが、ナツのライフを焼き尽くすには十分の威力だ。ナツの周囲を赤いバリアが囲み、彼女のライフを2つ奪う。

 

「フラッシュタイミング!4コスト2軽減でマジック、アルテミックシールドを使用!このバトルが終了したとき、アタックステップを強制的に終了させる!」

 

 ナツのフィールドからいくつもの六角形で作られたシールドが展開される。

 

 しかし、そのシールドは完成する寸前で色を失い、その機能を停止させる。

 

「ヴィオレ魔ゐ-魔族side-レベル2の神域(グランフィールド)を発動。お互いのアタックステップ中、相手がマジックを使用したとき、自分のトラッシュの系統:超星を持つカード4枚を除外することでただちにその効果を無効にする」

 

除外されたカード

・ゴッドシーカー 超星使徒タルボス×2

・ゴッドシーカー 超星使徒ペルディータ

・黒き超星使徒ブラックヴルム

 

 少女の力がシールドの展開を無効にする。それに追い打ちをかけるように、超弩級星艦の身体が紫色に輝き出す。

 

「フラッシュタイミング。ソウルコアをトラッシュに置き煌臨!煌臨条件は系統:星竜を持つコスト3以上!」

 

 星艦の姿は一回り小さくなり、背中に2門の大砲を持つ黒い龍が煌臨する。

 

「煌星第九使徒フェーベを煌臨!煌臨時効果により、νジークフリードのコア2つをトラッシュへ!」

 

煌星第九使徒フェーベ Lv2(3) BP7000

ヴィオレ魔ゐ-魔族side-A5

ヴィオレ魔ゐ-魔族side-B1

 

 フェーベの大砲からエネルギー弾が撃ち出され、ジークフリードのコアを砕く。コアを失ったジークフリードはレベルが下がり、銃剣を大地に突き刺してどうにか立っている。

 

秩序龍機νジークフリード Lv1(1) BP10000+6000=16000

 

 ナツのリザーブのコアは1つ。これで、アルテミックシールドを使用するならばジークフリードから不足コストを補うしかなくなった。

 

 そして、ヴィオレ魔ゐ-魔族side-は神技(グランスキル)として、コアを2つ取り除くことで相手スピリット/アルティメットのコア1つをトラッシュに送る効果を持っている。

 

 つまり、彼女が取れる選択肢は一つしかない。

 

「くぅ……きっついなぁ!4コスト2軽減で2枚目のアルテミックシールドを使用!不足コストはνジークフリードから確保!」

 

 ジークフリードは最後の力を振り絞り、無効化されていたシールドの機能を復活させる。しかし、その代償に自らの身体は銃剣ごと光と化し消滅する。

 

 これで、ジークヴルム・ノヴァの道を遮るものは何もない。

 

「ジークヴルム・ノヴァXはダブルシンボル!ライフを2つもらう!」

 

 赤き龍がナツの目の前へ移動し、拳に炎を纏わせる。そのまま、彼女を守るバリアに拳を叩きつけ、すぐさま逆の拳も振り下ろす。バリアで軽減された衝撃が彼女のライフをさらに2つ奪いとる。

 

ナツのライフ3→1

 

 ジークヴルム・ノヴァが俺の場に戻ったとき、フィールド全体がシールドに囲まれる。アルテミックシールドの効果だ。

 

「アルテミックシールドによりアタックステップが終了。ターンエンド」

 

 

・ターン8

 

 

「きっとこれがラストターン……それでも、やれるだけやってやる!スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!……6コスト、鉄騎皇イグドラシルを召喚!」

 

鉄騎皇イグドラシル(Rv) Lv2(3S1) BP10000

 

 白のシンボルが砕け、その中から吹雪と共にイグドラシルが現れる。そのイグドラシルの上にはリザーブのコア4つ全てが置かれている。グレイス・オーダーに賭けるのだろう。

 

「召喚時効果により系統:武装を持つスピリットに耐性を付与!アタックステップ!鉄騎皇イグドラシルでアタック!フラッシュタイミングで秩序軍神グレイス・オーダーに煌臨!煌臨時効果によりデッキトップを2枚オープン!」

 

秩序軍神グレイス・オーダー Lv2(3) BP12000

 

 軍神が再びフィールドへと煌臨する。軍神が天へと銃を撃ち、2枚のカードが舞い降りる。

 

オープンされたカード

・氷楯の守護者オーシン

・秩序の砲術機トゥール・ビヨン

 

 しかし、最初と違い、戦況を覆すようなカードは現れなかった。その2枚の内、ナツはトゥール・ビヨンを手に取る。

 

「秩序の砲術機トゥール・ビヨンをノーコストで召喚、維持コストはグレイス・オーダーから確保!召喚時効果によりボイドからコアを1つこのスピリットへ置きレベル2にアップ!」

 

秩序軍神グレイス・オーダー Lv1(2) BP7000

秩序の砲術機トゥール・ビヨン Lv2(2) BP8000

 

「いっけぇ!グレイス・オーダー!」

「そのダブルシンボル、ライフで受ける!」

 

 グレイス・オーダーの銃撃が迫る。その攻撃を、俺はライフで受ける。

 

ライフ5→3

 

「アタックステップを終了。ターンエンド」

 

 

・ターン9

 

 

「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ」

 

 本来であれば、ジークヴルム・ノヴァが攻撃するだけでこのゲームは終わる。それでも、こちらも万全の体勢で行かせてもらおう。

 

「8コスト5軽減3コスト。全てを滅ぼす黒き龍をここに!滅神星龍ダークヴルム・ノヴァX、召喚!」

 

 紫のシンボルが二つ闇と共に現れ、砕ける。その瞬間、フィールド全域を闇が覆い、晴れたときには黒いジークヴルム・ノヴァが存在していた。

 

滅神星龍ダークヴルム・ノヴァX Lv3(4) BP16000

超神星龍ジークヴルム・ノヴァX Lv3(5) BP18000

ヴィオレ魔ゐ-魔族side-A6

ヴィオレ魔ゐ-魔族side-B2

 

「滅神星龍ダークヴルム・ノヴァXの効果により、カード名にノヴァXを含む自分のスピリット全ては合体できず、相手の効果を受けない」

 

 ダークヴルム・ノヴァの力が、ジークヴルム・ノヴァの身体に薄い闇のオーラを纏わせる。

 

 これで、最後だ。

 

「アタックステップ!超神星龍ジークヴルム・ノヴァXでアタック!」

「……来い!」

「ジークヴルム・ノヴァの『超界放』発動!ヴィオレ魔ゐのコアを4つ置き、最後のライフ1つを砕く!」

 

 ジークヴルム・ノヴァとダークヴルム・ノヴァが同時にブレスを放ち、ナツへと迫る。

 

「ライフで受ける!」

 

 2つのブレスが合わさり、二体の龍の合体攻撃が彼女の最後のライフを消し去った。

 

 勝者が決まったとき、両者は光に包まれ、バトルフィールドから姿を消した。

 

『Game set』

『You win』

 

 

 

 

 

 フィールドから切断される1分間の間、マッチング待ちの黒い空間で一人佇む。

 

 今回の相手は強かった。あのとき、手札に白晶防壁がなければ、あるいは相手の手札に翼神機グラン・ウォーデンのようなマジックを無効化するようなカードがあれば、負けていたのはこちらだったかもしれない。

 

 久しぶりにフリーに潜ってみたが、また対戦したいと思う相手だったので、フレンド申請を送ってみる。それを受理するかはあちら次第だが、出来れば受けてくれると嬉しい。

 

 さて、そろそろこの辺りで閉めるとしよう。

 

 

 

 

「ありがとうございました。いいバトルでした」




お疲れ様です。読了ありがとうございます。
私自身、カード小説に初挑戦した感想ですが、行動の一つ一つを記録しながら対戦させるというのは結構手間のかかる作業で、対戦が終わるころにはかなり疲れました。それでも、スピリットたちの描写を考えるのはとても楽しく、今まで以上にサクサク書けたと感じています。
デッキレシピは後程、活動報告の方で公開しようと思っています。ガチ勢向けと言える内容ではありませんが、あまりお金をかけずに作れる内容だと思います。

もしよろしければ感想、評価をお願いします。



ちなみに、武装側の結局開かれなかったバーストはフェンリグです。初期手札に来たのはいいけど開く機会なかったの……。


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