麻帆良の小さな戦士たち【旧版】 (ハクアルバ)
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ep.01 小さな先生との出会い

ネギまのアーティファフトがLBCSだったら?という妄想から書き始めました。

基本的にネギまの原作通りに書いていきます。


1995年、雪広財閥子会社の玩具メーカーが、ホビー用小型ロボット"LBX"を発売した。

 

「いけっ、ズール!」

「アマゾネス!」

「ブルド!」

 

携帯端末で操作する小さなロボット、LBX。

しかし高性能であるが故に、ケガをする人が後を絶たなかった。

 

「ゴメン、やられた!」

「でもまだ二対一よ!」

「こっちが有利!」

 

彼らはやがて危険なオモチャと呼ばれ、発売停止となった。

 

「えっウソ!? もうアタシ一人!?」

「「がんばれー」」

 

ところが2001年、麻帆良工科大学が『マジックダンボール』を開発。LBX専用の戦場として発売された。

 

「うわっ、この子強っ!」

「全滅ね」

「ウソ……アタシの防御全振りブルドが……」

 

LBXの発売も再開され、日本中でLBXバトルが流行っていた。

 

「キミ強いねー」

「おねえさん手も足も出なかったよー」

「あっ、もうこんな時間! 急がなきゃ!」

「キミも遅れないようにね」

「はい、バトルしてくれてありがとうございます」

 

そして現在2003年2月 麻帆良学園女子中等部に一人の少年がやってきた。

 

「ねえ聞いてよー。最近影久(かげひー)がLBXにハマってさー。一緒に遊んでくれないの~」

「まき絵もLBXやればいいじゃん」

「いいなー。私も弟欲しいなー」

 

「みなさん静かに。では先生、自己紹介を」

「はい、今日からこの学校でエル…英語を教えることになりました、ネギ・スプリングフィールドです。三学期の間だけですけど、よろしくお願いします」

 

………………

 

キャァァァァァァァァ!!

かわい~~~~~~~!!

弟キターーーーーーー!!

 

「うわっ!?」

「何歳なの~?」

「じゅ、10歳で」

「どっから来たの?」

「ウェールズ…イギリスの山奥です」

「LBX持ってる~?」

「はい、持ってます! これが僕のLBX、"K・アーサー"です」

 

「カッコイーー!!」

「王様みたい!」

「アーマー&クラウン製だっけカ? さすがイギリス人ネ」

「かっこいいでしょ? K・アーサーのモデルはご存じ円卓の騎士アーサー王!この機体の特徴は背中のウイングブースターの噴射による高速剣技!武器は無敵の聖剣エクスカリバー!そしてなんと鳥の形に変形することができ最高飛行速度は」うんたらかんたら

「「へ、へぇ~……」」

 

「やれやれ、LBXだけはいっちょまえに紹介しちゃって。やっぱりガキね」

「ちょっとアスナさん! なんですかその態度は!? LBXの紹介を丁寧にするのは所有者の礼儀ではありませんこと?」

「なにが礼儀よ。こいつの肩を持ちたいだけでしょ! このショタコン!」

「なっ!? あ、あなただって、オヤジ趣味のくせに~!」

「「ギャーギャー!!」」

「あっはっは! やれやれー」

 

「あわわわ……喧嘩だ。どうしよう……」

 

…………

 

………

 

……

 

 

「ぜぇ…ぜぇ……いいこと思いついた。あんた、昼休みにあたしとLBXバトルしなさい! あんたが負けたらこの学校から出ていくのよ!」

「えぇーー!? そ、そんなの生徒が勝手に決めていいことじゃ…」

「いいからやるのよ! あたしに勝てないようなガキがこの学校で先生できると思わないで!」

「アスナさん! またそんな強引に……」

「アスナはLBX絡むとアツいからなー」

「あうう……」

 

キーンコーンカーンコーン

 

「授業終わっちゃったね」

「じゃ先生、昼休みに校舎前ね! 逃げるんじゃないわよ!」

「は、はい……」

 

 

昼休み 女子中等部校舎前

 

 

「どっちが勝つかなー」

「ネギ君に賭け(ベット)!」

「なっ!? あたしに賭けなさいよ!」

「あ、ネギ君来たで~」

 

「お待たせしました」

「さあ、始めるわよ! マジックダンボール展開!」

 

(このダンボール箱、LBXバトルの衝撃を吸収できるのか……イギリスでは見たこと無いな)

 

「行くわよ! アキレス!」

「K・アーサー!」

 

バトルスタート

 

「ん? 装備は槍だけですか? 機動力が高くないのなら盾も持たせるのがセオリーですが…」

「いらないわよそんな重いの! 早速いかせてもらうわよ!」

 

K・アーサー目掛けて走り出したアキレス。突き出した槍の先端を、K・アーサーはギリギリで避ける。

 

「突進ですか」

「まだまだぁ!」

 

方向転換し、再び突進を仕掛けるアキレス。K・アーサーは剣で槍を受け止めようとしたが、アキレスの体重をかけた突進に怯んでしまう。

 

「くっ…」

「でた、アスナのガードブレイク戦法!」

「くらいなさい!」

 

アキレス、空中から重力を利用した刺突を仕掛ける。……が、すんでの所で躱されてしまった。

 

「ちっ!」

「今度はこっちの番です!」

 

K・アーサーの振るった剣がアキレスに直撃。

 

「おお! クリーンヒット!」

「や、やったわね~!」

 

「LBXのテンションゲージを使い過ぎてるから躱せないんです。教師として戦い方を教えてあげましょうか?」

 

「なにをえらそうにこのガキーー!! あんたは!ここで!おとなしく!やられてりゃ!いいのよーー!!」

 

槍の乱れ突き。しかし、K・アーサーには一度も当たらない。

 

「文字通りの一本槍ですね…」

「やかましい! うぉりゃあああああ!!」

 

「そろそろいきますね。必殺ファンクション!」

 

『アタックファンクション カウンターアタック』

 

攻撃を避けられたアキレスは、強烈な斬撃をくらい倒れた。

 

「あっ! アキレス!」

「僕の勝ちです!」

 

「にゃはは! 読み的中!」

「な、なかなかやるじゃないの…」

「お見事ですわネギ先生! このあと私と勝利の宴を」

「あー、もう昼休み終わるから行くわよー」

「ちょっ、アスナさっ、馬鹿力で引っ張るのはおやめなさいっ」

「あははは……」




ネギ君にはK・アーサーを持たせました。

・ネギ君の出身地
・アーマー&クラウン(LBXメーカー)がある国
・K・アーサー(コンゴウ ヒノ)の留学先
共通点はイギリスです。


アスナはメインヒロインなので、装甲娘のミカヅキカリナと同じアキレスに。

アスナのバトルスタイルは、アニメの北島沙希の突撃戦法を参考にしてます。


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ep.02 バトルフィールドの謎

麻帆良学園や雪広財閥に独自設定を入れてみました。今回は独自設定の説明回になります。


個性的な2-Aの生徒に振り回されながらも、初日の授業を終えたネギ先生。

 

「ふー、やっと一段落だー」

 

職員室に向かう彼の前に、一人の男性が現れた。

 

「やあ、ネギ君」

「あ、タカミチ!」

 

「どうだい? 麻帆良学園は」

「生徒が多くてびっくりしたよ! 朝の通学ラッシュも凄かったし」

「ははは。まあ、じきに慣れるさ」

「それと『マジックダンボール』っていうのも驚いたなー。LBXでバトルしても傷ひとつ付いてないんだもん! こんなのイギリスには無かったよ!」

「そのことなんだがネギ君、一緒に学園長室に来てくれるかい?」

「え? う、うん。いいけど…」

 

コンコン

 

「失礼します」

「フォフォ、来たのネギ君」

 

「今から『マジックダンボール』のことを君に説明しようと思ってね。これは2年前うちの工科大学が作ったものなんだ」

「そうなんですか!? すごいじゃないですか!」

「LBXの戦場としてすぐに製品化が決定し、物流にも使えないかと検討したんだが……去年から奇妙な現象が起こってね…」

 

「奇妙な現象?」

 

「ごく稀に箱が光るらしいんじゃよ。これまでに30件ほど報告を受けとる」

「我々はマジックダンボールの素材に魔力が絡んでると睨んで調査を始めた。あの箱の成分をどれだけ解析しても、普通のダンボールと同じ紙の成分しか検出できなかったんだ」

 

「魔力って、まずいじゃないですか! 魔法を知らない人にバレたりしたら…」

「そうなのじゃ……工科大学の連中は魔法を知らん者が多い。不用意に魔法のことは聞けん」

「既に日本中に出回ってしまった。販売元には事情を話して、海外での販売をやめさせたよ。これ以上リスクを広げる訳にはいかないからね」

 

「だからイギリスには無かったんだ……でも魔法がバレるリスクがあるなら、回収した方がいいんじゃないですか?」

「ネギ君、マジックダンボールを回収するとどうなると思う?」

「LBXバトルができなくなって販売停止になります」

「そうなんだ。国内LBXメーカーの最大手は雪広財閥の子会社、実は雪広財閥はこの学園を維持するのに欠かせない存在なんだよ」

「LBXが売れてから財閥の株は上がっておる。今LBX事業に水を差せば、ワシらの立場も危ういからのぉ…」

 

「な、なるほど……色々事情があるんですね……」

「説明は以上だよ。このことは魔法を知らない人に話しちゃダメだからね」

「はい、それでは」

 

「……ネギ君にはまだ難しかったかのう?」

「理解してると思いますよ、あの子は賢いので。ん?学園長、このLBXは?」

「フォッフォッフォ! ワシのハンドメイドじゃ。名付けて月光丸!」

「日本の武士がモチーフですか。学園長もLBXバトルを?」

「バトルはせん。年のせいかCCMの操作がおぼつかんのじゃ。そのうち適合者に渡すときに、傷まみれじゃ格好悪いしのう」

(適合者……?)




雪広財閥と工科大学の設定を弄りました。
ハカセは工科大学ではなく麻帆良大学工学部の人なので、マジックダンボールとは無関係です。

次回、LBCS初登場!


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ep.03 カウンターシステム

前回に続き放課後、学園長室からの帰り道。

 

ネギはマジックダンボールの件が気になり、一人で考え事をしていた。

 

(素材不明の箱が日本中で出回ってるのか……LBXとこの学園を守るために? 魔法の存在がバレるかもしれないのに? 誰が作ったんだ? う~~ん……)

 

「……考えてもしょうがないか。それより僕の下宿先、あのアスナさんの部屋なんだよなー。どーしよ……」

 

ヨロヨロ……

 

(…ん? あの人は2-Aの宮崎さん? たくさん本持って危ないなあ……)

 

「おっとと…」フラフラ

 

(そこ階段だけど大丈夫かなあ)

 

「あっ」グラッ

「まずい! LBCSコネクト、K・アーサー!」

 

 

「きゃあああああ!」ボフッ

 

「な、なんとか間に合った……」

 

『コネクトエラー 適合率54パーセント パージシテクダサイ』

 

「はぁ、またこれか……やっぱり男じゃ使いこなせないのかな……」

 

CCMの吐くエラーメッセージに辟易としながら、ネギは自分が男であることを嘆いた。

 

「……あれ? 私、ケガしてない……?」

 

「宮崎さん、大丈夫ですか?」

「……えーっと……誰、ですか……?」

 

LBCSの正体がわからないのどかが困惑していると……

 

「あ…あんた……」

「わっ!? ア、アスナさん!?」

「ちょっと来なさい!!」

 

一部始終を見ていたアスナが、ネギを林の中へ連れて行ってしまった。

 

「ガキが先生なんておかしいと思ったらあんた、ロボットだったのねーー!!」

「い、いや違いま…」

「じゃその格好はなに!? コスプレ? 改造人間!?」

「魔法使いです!!」

「ま、魔法使いーー!!?」

(し、しまった!)

「その格好のまま来なさい! あんたが魔法使いだってこと証明して、出てってもらうから!」

「勘弁してください! これがバレたら僕、大変なことに……」

「知らないわよそんなこと!」

 

『コネクトエラー パージシテクダサイ』

 

「ああ、もう! 武装解除!!」

「なっ!? キャーー!!」

 

ネギは自分に武装解除呪文をかけてLBCSを解いたが、威力が強かったのか、アスナを巻き込んでしまった。

 

「あはは……脱げちゃいましたね……二人とも」

「なんてことしてくれんのよーー!」

 

「騒がしいぞ、そこで何してるんだ?」

「た、高畑先生!?いやぁぁぁーーー!!」

 

教え子の下着姿を見てしまい、タカミチは気まずそうにしていた。

 

「高畑先生に見られた……」

「ご、ごめんなさい……」

「で、なんで魔法使いがこんな所まで来て先生やってるの?」

「そ、それは修行のためです。立派な魔法使い(マギステル・マギ)になるための……」

「ふーん……で、その魔法使いとさっきのLBXの格好って関係あるの?」

「あ、それはLBCS(リトルバトラーズカウンターシステム)といって、魔法でLBXを体に装着する技術です」

「LBXを装着? 何の意味があるのよ?」

「身体能力を大幅に上げて人を助けたり、敵と戦ったりするのに使うんです」

「それって誰でもなれるの?」

「魔法使いになるか、魔法使いのパートナーになるとコネクトできます。男性より女性の方が適合率が高いみたいです。僕は男なのでK・アーサーのブースターで飛ぶのが精一杯なんです……」

「へぇー。魔法使いがいて、エルビーなんとかがいて、世の中広いわねぇ……」

 

アスナが荷物を取りに中等部の校舎に戻ると、クラッカーの破裂音が鳴り響いた。

 

ようこそ、ネギ先生ー!

 

「あっ、そうだ。あんたの歓迎会するんだった!」

「ほらほら、主役は真ん中!」

「あ、ありがとうございます!」

 

「肉まん作ったアルヨー」

「ネギ君日本語上手だねー」

 

(私、助けられたんだよね……? あの人、誰だったんだろー? ちゃんとお礼も言えなかったなー……)

 

「ネギ君のLBXは変形するんですよね? 変形機構を見せてもらえますか?」

「あ、はい。ウイングのこの部分を動かしてヘッドパーツに被せると…」

「おー、ホントに鳥になった!」

 

(王様みたいな格好で、背が低くて…ネギせんせーのLBXに似てたようなー……)

 

「のどか、ボーっとしてどうしたですか」

「え? あ…なんでもないよ……」

「? 具合が悪いなら言うですよ」

 

(…………そんなわけ、ないよね)

 

各々がネギに話しかける中、のどかは話しかけられずにいた。




LBCS初登場です。と言っても男ですけど……。

装甲『娘』の登場はもうちょっと先になります。

ちなみに、ミゼレムクライシスでの適合率の合格ラインは80%以上です。ネギ君は適合率が低いので、LBCSの必殺ファンクションはろくに使えません。


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ep.04 子供のおもちゃ

今回は夕映視点の話を書いてみました。


side-夕映

 

今日はのどかを児童文学研究会に連れて来ました。

のどかの男性嫌い克服のために、男の子相手に絵本の読み聞かせをさせてみたです。

 

「『人間は不完全だからこそ進化する……か……いいさ、好きにすればいい。』

二人の勇者が放った光に焼かれ、悪魔は消えていきました。めでたしめでたし」

 

パチパチパチ

 

「かっこいー」

「おもしろかった~」

 

「のどか、おつかれさまです。感情がこもってましたよ」

「そ、そうかなー? 子供だから、あんまり抵抗なかったかも」

「世の中は男と女しかいないです。苦手でも男性に慣れておかないと、将来困りますよ?」

 

「ねえ、おねえちゃんはLBXやらないの?」

「あ、ごめんね……おねえちゃんLBXは持ってないの」

「私も持ってないです」

「なーんだ じゃいつものメンバーでやろー」

「よーし、マジックダンボール展開!」

 

ドドドッ ガキィン

 

「……やっぱり男の子って、本よりおもちゃが好きなのかなー?」

「でしょうね。男というのは、内面的にはいつまでも子供なのです」

「…………」

「ですが、おもちゃやゲームで一緒に遊んだり、時には喧嘩をすることで友情を深めていくのが、男の子というものです」

「友情を深める……」

 

「よっしゃ! おれの勝ち!」

「もう一回やろー」

 

「……ねぇ、おねえちゃんにLBXのこと、教えてくれない…かな……?」

「のどか?」

「私、こんな性格だけどネギせんせーとお話したいの……LBXのことを少しでも知ってたら、会話が弾むと思って……」

 

「うん、いいよー」

「LBXの動かし方はねぇ、CCMのこのボタンを……」

 

 

よく言ったですのどか! 男性嫌い克服に一歩前進ですね!

 

あ、でも私はLBXに興味ありません。やはり子供のおもちゃというイメージが拭えないです。

 

うちのクラスでLBXの所持を確認できるのは、アスナさんに委員長さん、くーふぇさん、楓さん、ハカセさん、鳴滝姉妹の7人、ネギ先生も含めると8人です。

ハカセさんはロボットの研究をしているので持っててもおかしくはないですが、あの委員長さんが持ってるのが理解できません。アスナさんと遊ぶためでしょうか?

 

……え? 皆さんのLBXの種類を教えてほしい? 私にわかるわけないじゃないですか。

 

 

その日の夕方、寮に帰るとLBXの所持者が増えてました。

 

「ユエー、のどかー。これなーんだ?」

「あっ、これって……」

「LBXですね。なぜハルナが持ってるですか?」

「漫画研究会の先輩がもういらないっていうからもらったのよー」

 

「この子、絵本に出てくる魔術師みたい」

「ジョーカーっていうらしいわよ。よろしくね、ジョーカー」

「おもちゃに挨拶してどうするですか」

「いいじゃない、これから私の相棒になるんだから!」

 

「それで、バトルの練習はするんですか?」

「ん~、くーちゃんに教えてもらおっかなー」

「くーふぇさんですか。いいですかハルナ、絶対にマジックダンボールの中で練習してください。絶対ですよ!?」

「わ、わかってるって」

 

以前アスナさんがマジックダンボールを使わずに練習してたら、委員長さんに見つかってこっぴどく叱られてました。ハルナには同じ目に遭ってほしくないです。

 

「そんじゃ、くーちゃんとこ行ってくるねー」

「あ、私も行く。LBXのこと、もっと知りたいから……」

「ハルナ、LBXばっかりやってないで、勉強もするですよ」

「おまえが言うなっ!」

「くすくすっ」




ジョーカーは原作ゲームでのベースカラーは白ですが、仙道は黒、ビリーは青に染めています。

ハルナの機体も最初は白ですが、そのうち彼女の色に染まることでしょう。


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ep.05 センスがあってもなくても

LBXの出番が無いので、図書館島編は端折りました。


2003年3月18日

 

「こちら報道部です。先ほどの成績発表の集計結果に誤りがございました。学年第一位は2年A組、平均点81.0点です」

 

「「「や……

 

やったーーーー!!」」」

 

期末試験の結果を聞き、2-Aの生徒は喜びの声を挙げた。

 

「合格じゃよネギ君! これからはさらに精進じゃな」

「はいっ!!」

 

「もぉー、おじいちゃんしっかりしてぇなー」

「すまんすまん、遅刻組の採点結果だけ合算し忘れとったんじゃ」

 

「はぁ~、やっと終わったぁー。図書館島のダンジョンで罠にかかったり、いきなり地底図書館まで落とされたり、ゴーレムが出てきたり、自分に封印魔法かけたせいでLBCS使えなかったり……」

「どうせK・アーサーになっても飛ぶこと以外できないんでしょ?」

「うぐっ……」

 

アスナがネギのコンプレックスを刺激する。

 

「ネギ君クビにならんでよかったなぁ」

「おお、そうじゃ木乃香!」

「ん?」

「今日はおぬしの誕生日じゃな。プレゼント用意したぞい」

「そうや、忘れとったわ!」

 

3月18日は近衛木乃香の誕生日である。試験勉強や図書館島でのごたごたで、当の本人も誕生日のことを忘れていた。

 

「ほれ、開けてみぃ」

「あっ、LBXや!」

「見たことない機体ですね」

 

「そいつは『月光丸』。ワシのハンドメイドじゃ」

「もろうてもええん?」

「もちろんじゃ」

「うれしーー! おじいちゃんありがとーーー!!」

「これ、抱きつくでない……」

「このかよかったじゃん! 今度バトルしようよ!」

「うん! その前に操作おぼえんとなー」

 

(そいつがいずれ()()()()()となる……センスのあるおぬしなら、使いこなせるじゃろう)

 

 

 

「さーて、期末試験も終わったし、LBX解禁よーー!!」

「ハルナ、燃えてますね」

「当然でしょ! テスト期間中はいいんちょがLBX禁止令なんか出したせいでバトルできなかったんだから! まずはバカイエロー! 今日こそあんたに勝ぁーーつ!!」

「やれやれ、まだ懲りてないアルか。武術センスのないハルナじゃ、私を超えることはできんヨ」

「それはどうかしらね? マジックダンボール展開!」

 

「ハルナがんばれー」

「応援ありがと。行くわよ、ジョーカー!」

「ヨウキヒ!」

 

バトルスタート

 

「いつも通り速攻いくアル!」

 

ヨウキヒの拳がジョーカーを襲う。ジョーカーは鎌を両手で持ち、防御の姿勢を取る。

 

「ほぅ、ガードは覚えたアルね」

「もうこれくらいでやられたりしないわよっ!」

 

今度はジョーカーが仕掛ける。鎌の斬撃をヨウキヒは紙一重のところで躱す。

 

「おっと、危ないアル」

「ちぃっ」

 

「くーふぇさんのヨウキヒ、武器も盾も持ってないです」

「うん、中国拳法の戦い方をLBXバトルに採り入れてるんだよ」

 

LBXバトルをするには何らかの武器を持たせるのが常識だが、古菲は敢えて何も持たせない。LBXで掌底を打つときに手を開くため、持たせた武器を落としてしまうからだ。

 

ヨウキヒは右手を引き掌底の予備動作を取るが、ハルナはこれを見切り、一歩下がって回避する。

 

「!?」

「躱してからの、カウンター!」ズバッ!!

 

「やりやがったネ! 連撃アルーー!」

 

ヨウキヒの拳の連打を防ぎきれず、ジョーカーの体勢が崩れた。

 

「やばっ、ガードが!」

「今日もこの技で沈むネ! 必殺ファンクション!」

 

『アタックファンクション 気功弾』

 

気功弾の衝撃波で砂煙が上がり、視界が悪くなる。ヨウキヒの視界からジョーカーは消えた。

 

「終わったネ。オヌシじゃ私には勝てな」

「勝手に終わってんじゃないわよ!!」

 

勝利を確信したヨウキヒの背後からジョーカーが現れ、斬撃を浴びせた。

 

「んなっ!? まだ生きてたアル!?」

「何回もくらってわかったの! 気功弾は、ジャンプすれば当たらない!!」

「上に逃げてたカ! 気付かなかったアル!」

「今度はこっちの番よ! 必殺ファンクション!」

 

『アタックファンクション デスサイズハリケーン』

 

「に、逃げ場が無いアルーー!!」

 

ジョーカーの起こした強烈な嵐がヨウキヒを斬り裂いた。

 

「やられたアル……」

 

「武術のセンスだけで勝敗は決まらない。それがLBXバトルのおもしろいところよ!」

「油断したアル! 次はこうはいかないアルーー!」

 

「ハルナ、やったね」

「この調子でネギ君も倒すわよーー!」

「調子に乗るなです!」




木乃香には和のイメージに合わせて月光丸を持たせました。

古菲は中国武術繋がりでヨウキヒを持たせました。そのまんまですね。


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ep.06 工場見学

原作14時間目の家庭訪問の代わりに、工場見学の話にしてみました。


2003年3月 春休み

 

雪広財閥のグループには、LBXの製造・販売会社が存在する。

 

「ネギ先生、本日はLBXメーカー"雪広タイニーマキナ"へお越しいただきありがとうございます! ……あら、アスナさんもいらしてたんですか」

「なによ、あたしが居たら悪い?」

 

この日、ネギとアスナは工場見学に来ていた。ここで生まれた小さな戦士たちが、世界中の子供たちを熱狂させている。LBXの製造は今や雪広財閥の一大事業となっていた。

 

「ここって委員長さんの財閥の子会社なんですよね?」

「はい、LBXの再販売の引き金となった『マジックダンボール』の製造、販売もこちらでやっておりますわ」

 

(ここでマジックダンボールのこと、何かわかるかな……?)

 

「にしてもネギ、なんでLBXの会社の見学なんてしようと思ったのよ?」

「え、LBXの製造ラインを見てみたくて……」

「そんなの見て何になるのよ」

「アスナさんも少しは興味を持ってくれます!? では、案内いたしますわ」

「ありがとうございます!」

「お邪魔しまーす」

 

 

「この会社は主に集積回路を作っていまして、そのノウハウをLBXに応用したのですわ」

「へぇ~」

 

「ここがコアスケルトンの生産ラインですわ」

「わぁ……こうやって作ってるんだー」

「なんか機械だらけでわけわかんないわね……」

 

「こちらがアーマーフレームの成形機ですわ」

「プラモデルの金型みたい!」

「ホント男子ってそーいうの好きよね……」

 

「ここではLBXの耐久試験をしてますわ」

 

ガァン ガァン

 

「これも大事な工程ですよね!」

「うるさいだけだしもう行くわよ!」

 

見学エリアの大半を見終わると、ネギが本題を切り出した。

 

「委員長さん、マジックダンボールを作ってるとこ見せてもらってもいいですか?」

「ごめんなさい、その部署だけは関係者以外立ち入り禁止になってますの」

 

(やっぱり無理か、魔法が関係してるんだもんな……)

 

魔力を用いた商品の販売、ネギはそれが気になって工場見学に来たのだが、あっさりと断られてしまった。

 

どうにかしてマジックダンボールの秘密を知ることはできないか……とネギが考えているうちに、時刻は正午を過ぎた。

 

「そろそろお昼にしましょうか。屋上庭園へ行きましょう」

 

ネギたちが屋上の自動ドアを通ると、何かが真上を通過した。

 

「あっ、あれは!?」

「オーディーンです。K・アーサーと同じ可変機ですわ。アーマー&クラウン社には後れを取りましたが、今年度の主力商品になるかと」

「まだ発売されてないのね。ちょっと見てきていい?」

「いいですわよ」

 

アスナがオーディーンを見に行くと、LBXの開発部門の科学者が近づいてきた。

 

「失礼します。お嬢様、LBXの調子はいかがでしょうか」

「特に異常ありませんわ。今日はLBXを置いて帰るので、メンテナンスをお願いしますね」

「かしこまりました」

 

科学者は委員長のCCMからデータを受け取ると、その場を去って行った。

 

「あれ? 委員長さんもLBX持ってたんですか」

「ネギ先生には紹介してませんでしたね。これが私の愛機、ジ・エンペラーですわ!」

「かっこいい……いかにも皇帝って感じですね」

 

「実は私、ジ・エンペラーのテストプレイヤーをやってますの」

「へぇー、そうだったんですか。いつから持ってるんですか?」

「……8年前ですわ」

 

ネギは委員長の雰囲気に陰りを感じた。

 

「委員長さん? 何かあったんですか?」

 

「8年前、私には弟ができるはずでした。このジ・エンペラーは元々、弟のために用意したおもちゃのひとつだったんです……結局、流産になりましたが……」

 

「そ、そうだったんですか……ごめんなさい、余計なこと聞いちゃって」

「いえ、お気になさらず……」

 

「ただいまー。ん?どうしたのよ、二人で暗い顔して」

「アスナさんには関係ありませんわ」

 

「……なるほど、ネギに話したのね。そろそろテンション戻しなさいよ。せっかくネギと一緒にいるのに、いつものショタコンはどうしたのよ」

「ア、アスナさん……今はそっとしておいた方が」

 

「そうだ、委員長!今からバトルするわよ! そういう嫌な気分は、バトルして吹っ飛ばすのよ!」

「まったく、あなたはどうしてそう単純なんですか……」

「あんたが暗い顔してんのは見てらんないのよ!」

 

「……ありがとう」

 

「ん? なんか言った?」

「なんでもありませんわ! マジックダンボール展開!」

「やる気になったのね。行くわよ、アキレス!」

「GO! ジ・エンペラー!」

 

バトルスタート

 

アキレス、槍を突き出し突進する。ジ・エンペラーは一歩も動かず、向かってくる槍の先端を掴んだ。

 

「また突撃ですか。アスナさん!その戦い方では私に勝てないのはわかってるはずです!」

「だからネギ相手に特訓したの! あんたに負けっぱなしとかイヤだからね!」

 

ジ・エンペラーは至近距離で蹴りを入れられ、体勢を崩す。

 

アスナは委員長とは初等部からの仲だが、LBXバトルで委員長に勝てたことがほとんど無い。

 

今回も自分の勝ちだろうと高を括っていた委員長だが……

 

「ハンマーが、当たりませんわ……」

「回避だって覚えたわよ!」

 

特訓の甲斐あってか、ジ・エンペラーの重い一撃を次々と躱していく。

 

「でも避けてばかりじゃ勝てませんわ!」

 

回避に必要なテンションゲージが無くなり、ハンマーを槍で受け止める。

 

「ハンマー振り回すやつが相手なら、その隙を突いて攻撃するのよね?」

「はい。でも委員長さん、なかなか隙がありませんね……」

「隙なんて見せませんわよ!」

 

ジ・エンペラー、鍔迫り合いの状態から急に力を抜いて一歩後ろに下がる。

 

アキレスはバランスを崩して前傾姿勢になり、そこにハンマーのスイングがぶつかる。

 

「あっ!」

「追撃ですわ!」

 

ジ・エンペラーの二撃目をジャンプで飛び越え、背後から胴体に槍を突き刺す。

 

「っ! やりますわね」

「攻撃直後なら、隙ってできるんじゃない?」

「いいですよアスナさん!」

 

「一気に削るわよ! 必殺ファンクション!」

『アタックファンクション ライトニングランス』

 

「ではこちらも、必殺ファンクション!」

『アタックファンクション インパクトカイザー』

 

稲妻と衝撃波がフィールドの中央でぶつかり合い、大爆発を起こした。

 

「打ち消されたか……チャンスだったのに」

 

「フィールドに大穴が!」

「これは改良が必要ですわね……アスナさん、バトルは中止ですわ。この状態でバトルを続けるのは危険ですので」

「まあ、しょうがないか。でも次こそあんたに勝ってやるんだから!」

 

そのとき、マジックダンボールに空いた穴から謎の光が漏れ出した。

 

「え、なによこれ」

「わ、わかりませんわ……」

 

漏れ出した光がアスナと委員長を包み込む。すると二人のLBXのアーマーフレームがコアスケルトンから外れた。アーマーフレームは持ち主の体格にまで拡大し、二人の体に鎧のように貼り付いた。

 

「どうなってんのよ……この格好、アキレスよね……」

「これは、ジ・エンペラー……?」

 

「アスナさんと委員長さんが、"装甲娘"になっちゃった……」

 

 

To be continued




アスナのライバルは委員長、アキレスのライバルはジ・エンペラーというわけで、委員長はジ・エンペラーを使います。

委員長とソフィアさんはクラス、チームのまとめ役って所が共通点です。


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ep.07 誤作動

LBXバトルに熱中していたアスナと委員長。だが二人は突如としてLBXを纏う戦士、"装甲娘"となってしまった。

 

「アスナさんと委員長さんが、LBCSになっちゃった……」

「これ、アキレスの槍よね!? マントもついてる!」

「これはティターニア? お、重いですわ……」

 

(そんなバカな……二人とも魔法を使えないはずなのになんで?)

 

「うぐっ」

「委員長?」

 

「力が、入りませんわ……」

「え? 委員長!? どうしたのよ!?」

「はぁ…はぁ……」

 

過呼吸を起こして横たわる委員長を見て、ネギはすぐに指示を出す。

 

「アスナさん、CCMでLBXの操作を終了してください! LBXが動かなくなれば、解除できるはずです!」

「う、うん! わかった!」

「委員長さん、CCM使わせてもらいます!」

 

LBXの操作を切ろうとしたが、二人のCCMの画面には激しいノイズが走り、操作できる状態ではなかった。

 

「どーしよ、バグって動かないんだけど!」

「こうなったら……風花・武装解除(フランス・エクサルマティオー)!!」

「きゃあ!?」

 

風を纏った武装解除呪文を唱え、二人のLBCSが外れる。

 

「どうにか解除できました!」

「もう、強引なんだから……」

「委員長さん、大丈夫ですか!?」

 

「…………」

 

「気を失ってるわね……ねえ、さっきのなんだったの?」

「恐らくマジックダンボールの魔力が漏れたせいで、カウンターシステムが誤作動したんだと思います。LBCSは魔力を使ってLBXを装着するので、魔法使いじゃない委員長さんは体力を奪われたのかと……」

 

「ふーん……じゃあなんであたしは平気だったの? あたしも魔法使いじゃないわよ?」

「それは…う~ん、わかりません……」

 

ネギはアスナが無事だった理由を考えたが、どうしてもわからなかった。

 

しばらくすると、意識を失ってた委員長が目を覚ました。

 

「ん……あれ? 私、寝てたのですか……?」

「あ、委員長! 大丈夫?」

「わ、私としたことが、ネギ先生の目の前で居眠りなんて……」

「気にしないでください。きっと日頃の疲れが溜まってたんですよ」

 

「では私とアスナさんがLBXの姿になったのは、夢だったのですか……」

「な、なにそれ~? 変な夢ね~?」

 

委員長は魔法を知らない。ネギとアスナはLBCSが存在する事実を伏せた。

 

(はぁ、どうにかバレずに済んだ……でも、マジックダンボールの事は学園長に報告した方がいいよね……)

 

 

 

翌日、ネギは学園長室に向かい、事故の全容を報告した。

 

「アスナ君たちにケガが無くてよかったわい。まさかマジックダンボールが壊れるとはのぉ」

 

学園長に事の経緯を説明すると、タカミチが新聞を持ってきた。

 

「学園長、これを見てください。件の記事です」

 

"マジックダンボールの欠陥判明 大手企業の失態"

 

この日の新聞の一面であり、マジックダンボールの耐久性の弱点について書かれていた。

 

ただし、新聞は魔法を知らない人も読むため、魔力やLBCSの事は一切書かれていない。

 

「これからLBXバトルはどうなるの?」

「従来のマジックダンボールでは、"複数の必殺ファンクションの同時使用禁止"だそうだ。これから必殺ファンクションに耐えられる改良版を開発するらしい」

「じゃあ、改良版が出回ればそのルールも無くなるんだね?」

「そうなるね」

 

ネギの問いに答えるタカミチ。だが、彼らが危惧するのはLBXバトルだけではない。

 

「アスナ君たちに起きたことだが、ネギ君の推測通りカウンターシステムの誤作動みたいだよ」

「やっぱり!」

 

「魔法がバレるリスクどころか、コネクトしてしまうと体力を奪われてしまう。危険なものよのぉ……」

「今我々にできることは、新ルールの周知と徹底、カウンターシステムの誤作動は発見次第すぐに武装解除…ですかね?」

「そうじゃな……雪広財閥が絡んどる以上、ワシらの手で衰退させる訳にもいかんしのう」

 

 

 

(カウンターシステムの誤作動か……ククク…こいつは使えそうだ……)

 

学園長室の扉の前では、一人の少女が不敵に笑っていた。




次回から3年生になります。だいたい原作通りに進みます。


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ep.08 吸血鬼の噂

2003年4月 新学期

 

マジックダンボールの欠陥、新ルールの追加もどこ吹く風。LBXの人気はさらに広まり、メインターゲットの子供を中心に多くの人がLBXを手にしていた。

 

ネギが受け持つ3-Aの生徒にも、流行りに乗ってLBXバトルを始める者がいた。

 

「アキラ、LBXで対戦しよーよ。ホームルームまでまだ時間あるし」

「ゆーなもLBX持ってたんだ」

 

朝練を終えた裕奈とアキラ。彼女たちがLBXを始めたのはつい最近のことである。

 

「ジャンヌ・D! おとーさんの出張のお土産だよー」

「へぇ、カッコいいじゃん。じゃいくよ、トリトーン」

 

バトルスタート

 

「初心者だからお手柔らかにね」

「私も初心者だけどね」

 

ジャンヌ・D、中距離から二丁拳銃を連射する。トリトーンはダッシュで弾丸から逃げるが、二、三発被弾してしまう。

 

トリトーンは射撃に集中するジャンヌ・Dに接近し、アンカーを振るうが、

 

「おっと! この子身軽だから当たらないよ~」

 

ジャンヌ・Dは横ステップで回避し、トリトーンの攻撃を躱す。その直後、トリトーンに向けて発砲する。

 

トリトーンの攻撃を躱しては撃ち、躱しては撃ちの繰り返しだ。ジャンヌ・Dの一方的な攻撃により、トリトーンのライフは残り4分の1を切った。

 

「アキラやられっぱなしやん」

 

アキラの隣では朝練あがりの亜子が見ていた。

 

「この勝負もらったー!」カチッカチッ

 

「……あれ? 弾切れ?」

「チャンス!」

 

仕返しとばかりに、ジャンヌ・Dに容赦なくアンカーを振るう。

 

「うわっ、ちょっ、リロードできなっ」

 

ガァン!

 

アンカーの一撃がクリーンヒットした。

 

「あー! あとちょっとだったのにー!」

「見事な逆転負けやなー」

 

「悔しいから戦い方の勉強しよっと。Lマガに戦術論とか書いてないかなー? アキラー、Lマガ持ってるー?」

「はい」

「ありがとー! えーっと、二丁拳銃の戦術は……」

 

LBXマガジン、通称"Lマガ"は新商品の情報や、初心者向けの戦術指南が書かれた情報誌である。

 

「ウチもそろそろLBX買おかなー」

「亜子も興味ある?」

「だってみんな楽しそうやから」

「じゃまずは機体選びからだね」

 

亜子とアキラはLBXのカタログを開き、気になる機体を探す。

 

「ズール、ムシャ……うーん、なんかピンとこんなぁ」

「水中型とかどうかな? ナズー、シーサーペント、マッドロブスター」

「最後のエビやん! ん?この水兵みたいな子かわいくない?」

「マリーフェインだね。この子も水中型だよ」

「これにしよっかなー? そういや昨日、まき絵帰ってないんやけど、そっち泊まってない?」

「いや? 来てないけど?」

「連絡は?」

「電話しても繋がらんのや……」

「ってことは、行方不明!?」

 

まき絵が昨日から帰ってないと聞き、裕奈とアキラは不安の表情を浮かべた。

 

そのとき、しずな先生が3-Aの教室に入ってきた。

 

「みんな聞いて、まき絵ちゃんが桜通りで倒れてて、今学校の保健室にいるの」

「え!? まき絵が!?」

「様子見に行こ」

「「うん!」」

 

三人はLマガを読むのを止め、保健室に向かった。それからまき絵たち四人が不在のままホームルームが終わり、生徒たちは身体測定を始める。

 

多感なお年頃の女子たちの前で、柿崎はある噂話をした。

 

「ねえねえ、最近寮ではやってるあの噂、どう思う?」

「あ~、あの桜通りの吸血鬼ね」

「えー、なにそれ!?」

 

噂の真相を知ってる美空は反応が薄い。逆に噂を全く知らない桜子たちは興味津々だ。

 

「なんかねー、満月の夜になると出るんだって。桜通りの並木道に、化け猫の顔した血まみれの吸血鬼が……」

 

「キ…キャー!」

「こわいですー!」

 

「吸血鬼なのに化け猫? へんなの。そんなのデマに決まってるでしょ」

 

 

「先生ーー!大変やーー! まき絵が…まき絵がーー!」

「亜子さん!? どうしたんですか!?」

 

廊下を走ってきた亜子に呼ばれ、ネギたちは保健室に向かう。保健室では、まき絵が寝息を立てていた。

 

「桜通りで倒れてたんだって」

「ま、まさかあの噂の吸血鬼にやられて……」

「そんなのいるわけないでしょ」

 

(ほんの少しだけど、まき絵さんから魔力を感じる……この感じ、マジックダンボールが壊れた時の魔力に似てるような……)

 

「ん……あれ? なんでみんないるの?」

「あ、まき絵起きた!」

「よかったー。心配したんだからね」

 

「ていうかここどこ? 今何時?」

「学校の保健室だよ。今は朝9時」

「えええーーー!? 晩ごはんも朝ごはんも食べてないよー!」

 

「随分寝てたのね……なんかあったの?」

「えーっと……おっきな猫ちゃん見た気がするんだけど、その後は覚えてなーい」

 

まき絵はアスナの質問に曖昧にしか答えられない。事件当時の記憶のほとんどが飛んでしまったようだ。

 

その日の夜、部活を終え帰路につくアスナたちは、桜通りの近くを歩いていた。

 

「のどか、私たち書店寄るから先帰っててー」

「噂とか関係なしに、この時期は不審者が出やすいので気をつけるです」

「うん」

 

「……本屋ちゃん一人で大丈夫かな?」

「心配なん? 吸血鬼とかデマゆーたんアスナやろ?」

 

 

「あ、桜通り……か、風強いですね……ちょっと急ごうかなー。こ、こわくない~……」

 

怖さを紛らわすため鼻歌混じりに早歩きで通り抜けようとする。

 

(ちっ、いちいち()()()をぶっ壊すのは面倒だが、しょうがない)

 

突如、木々の合間から"ドォン!"という爆発音がした。

 

「ひゃあ!!?」

 

のどかは爆発音に驚き、その場で尻もちをついてしまう。

 

「LBCSコネクト、ヴァンパイアキャット。宮崎のどか、悪いけど少しだけその血を分けてもらうよ」

 

「キャアアアア!!」

 

そこにいたのは、猫の耳を生やした吸血鬼だった。

 

 

To be continued




裕奈はアーティファクトの二丁拳銃のイメージからジャンヌ・Dを持たせました。

アキラは水泳部で力持ちという設定から、水中型でハンマー使いのトリトーンに。

亜子のアーティファクトはナースなので、旧装甲娘で救護班だったマリーフェインを選びました。

そして、エヴァンジェリンは一番最初にヴァンパイアキャットと決めてました。
共通点は吸血鬼で、ミドルネームのキティの意味は子猫ですので。


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ep.09 LBCS、戦闘開始

学生寮への帰り道、のどかはヴァンパイアキャットのLBCSに襲われた。そこにネギが現れ、ヴァンパイアキャットに攻撃をしかける。

 

「待てーー! 僕の生徒に何をするんですかー!」

「もう気付いたか……」

「ラス・テル・マ・スキル・マギステル、魔法の射手・ソードビット!」

「ハルベルトガード!」

 

「くっ、ガードされたか!」

「驚いたぞ。必殺ファンクションの代用とはいえ、凄まじい威力だな……」

 

「えっ!? き、君はウチのクラスの…エヴァンジェリンさん!?」

 

「10歳にしてこの力……さすがは奴の息子だな」

 

「LBCSを使えるってことは、あなたも魔法使いですね? なぜこんなことを……」

「私にかけられた呪いを解くためだよ。ネギ先生、おまえの血もいただく!」

「戦うしかないんですね……LBCSコネクト、K・アーサー!」

 

「武装したか。なら手加減はせんぞ!」

 

ガキィィン

 

「K・アーサー……奴と同じとは、面白い!」

 

ギリギリギリギリ

 

「奴って、父さんのことですか!?」

「お父さんの話が聞きたいか? 私を捕まえたら教えてやるよ」

 

ドスッ

 

「くぅっ」

「痛くはないだろ。LBCSの魔力が守ってくれてるんだからな」

 

「こっちで音したよね?」

「喧嘩とちゃう?」

 

「この格好を見られたらまずいな……仕方ない、氷結・武装解除!」

 

パキィィン

 

「うわぁっ!」

 

「あっ! ネギと本屋ちゃん!」

「しまった、逃げられた! LBCSも解除させられたし」

「えるびー、なんやて?」

「いえ、なんでもありません! それより宮崎さんを頼みます! 僕は犯人を追いかけますので!」

「えっ!? ちょっとネギーー!!」

 

 

「エヴァンジェリンさんどこ行ったんだろ……上から探すか。LBCSコネクト!」

 

ゴゴゴゴ……

 

「……ん? マジックダンボールが壊されてる!? さっきの爆発音はこれか!」

 

 

(そろそろ魔力が尽きそうだな……逃げ切れるか……)

 

「いた!もう逃がしませんよ! 魔法の射手・ソードビット!」

「くっ…ハルベルトガード!」

 

バキキッ

 

バキィィン!!

 

「!!」

「やっぱり魔力不足ですね。これで終わりです! 風花・武装解除!!」

 

ブォォォォォ!!

 

「してやられたか。しかしなぜ私が魔力不足だとわかった?」

「壊れたマジックダンボールがあったんです。わざと壊してカウンターシステムを誤作動させた。なぜなら、コネクトに必要な魔力が足りないから……ですね?」

「正解、なかなかの洞察力だ。私が魔力を封じられたのはおまえの父、サウザンドマスターの仕業だ」

「え、父さんが……?」

「奴のせいで私は15年間もこの麻帆良学園で中学生生活をやらされてるんだよ!!」

「そ、それと僕の血に何の関係が…」

「呪いを解くには、奴の血縁者であるおまえの血が大量に必要なんだ。観念しておとなしく血を吸われろ」

「追い詰められてるのはそっちですよ!? 今は魔法もLBCSもろくに使えないじゃないですか!」

「そうだ。だからパートナーを呼んでおいた」

 

「こんばんは、ネギ先生」

「えっ、君は3-Aの…」

「紹介しよう。私のパートナー、絡繰茶々丸だ」

「ええーーー!? 茶々丸さんがパートナー!?」

「捕まりたくなければ、こいつを倒してみろ」

「でも、生身の生徒に攻撃なんてできません!」

「フン、甘いことを……やれ、茶々丸」

「発動、(インフィニティ)ドライブ」

 

ウォォォォン

 

「な、生身のまま補助ファンクション!?」

「攻撃力と防御力を上げた。これでLBCS(おまえ)と対等だな。文句は言わせんぞ?」

「では参ります」

「こ、来ないでください!」

 

ブンブンッ ガシッ

 

「素手で止められた!?」

「申し訳ありません、マスターのご命令ですので」

「くっ……放してくださいっ…!」

「どうだ、これが茶々丸の力だ。ではおまえの血、吸わせてもらうぞ」

 

 

「コラーー! そこの変質者どもーー!」

「ん?」

「ウチの居候に何すんのよーー!」

 

ドゴッ

 

「はぶぅ!?」

 

「あ、あれ? あんた達ウチのクラスの…あんたらが犯人なの!?」

「ぐっ…ネギ先生の保護者か。撤退するぞ!」

「了解です」

 

ゴゴゴゴ……

 

「あっ! 待ちなさいよーー!! ……行っちゃった」

 

「う…うわーーん! アスナさーーん!」

「わっ!? ちょっとネギ」

「こ、こわかったですーー!」

「あーもう、ひっつかないでよー。LBCSも外したら? 見つかったら困るでしょ?」

 

 

To be continued



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ep.10 相棒は誰がいい?

翌日 昼休み

 

「ふぁ~ぁ……昼はねむい……」

 

ゴソゴソ

 

ヴァンパイアキャット(こいつ)、ひびまみれだな……誤作動で無理矢理コネクトしたせいか……ハカセにでも頼むかな)

 

 

「ハカセ、LBXの修理頼めるか?」

「そこ置いといてください。これ終わったら直しますので」

「ヨウキヒ…古菲のか」

「あの人武器持たせずにバトルするから、すぐ手のパーツが壊れるんです。しかも機械音痴だからいつも私に修理頼むんですよ?」

「あいつらしいな」

「人のこと言えるんですか? その子ズタズタじゃないですか。パテ埋めくらいは自分で…」

 

「すやすや……」

 

「やれやれ、夜更かしも程々にしてくださいね」

 

 

 

 

 

(はぁ~、まさか僕の生徒に吸血鬼がいるなんて……僕にパートナーがいれば太刀打ちできるんだけどなー)

 

「ネギ君元気ないなー?」

「あ、木乃香さん……」

「アスナさんが言ってましたわ。パートナーを探してるそうで」

「委員長さんたちまで……」

「先生の欲しがってるパートナーってどういうやつ? 結婚相手?」

「この中だと誰がタイプ?」

 

(『魔法使いの相棒』だなんて言えないな……そうだ)

 

「え、LBXバトルの相棒が欲しいかなーって……」

「なーんだ、そういうパートナーか」

「タッグバトルって楽しいよねーふみか!」

「はいですー」

 

「そういうことでしたら、是非この雪広あやかにご指名を! LBXの実力には自信がありまして」

「私もネギ君と組んでみたいなー。皆でバトルして一番強い人がパートナーってのはどう?」

「待つですハルナ、それだとナンバーワンを決めるだけです。相棒は強ければいいというものではありません。皆さんがネギ先生とバトルして、実力と相性を見てもらうというのはどうですか」

「ではそうしましょう。マジックダンボール展開!」

「ネギ君、ウチらの攻撃ちゃんと見といてなー」

「いいですけど、フィールド壊れたりしませんか?」

「ご心配なく。開発中の改良型を持ってきましたわ」

「おおっ! さすがテストプレイヤー!」

 

「GO! ジ・エンペラー!」

「いくで、月光丸!」

「ジョーカー!」

「ジャンヌ・D! あれ?アキラやらないの?」

「私はいいや」

「くーちゃんは?」

「ヨウキヒは修理中アル」

 

「四人ですか。ではいきますよ、K・アーサー!」

 

バトルスタート

 

(LBXバトルにはプレイヤーの癖やセンスが出てくるんだよな……パートナー選びの参考になるかも)

 

「そんじゃ私から行くわよーー!」

 

ブゥン ブゥン

 

「おっと、当たりませんよ」

「ネギ先生! 熟練者の動きを見てくださいませ!」

 

ブン! ギィィン ガァン!

 

(委員長さん、テストプレイヤーやってるだけあって強いな……アスナさんと対等に喧嘩できるくらいだから、武術のセンスもありそうだ)

 

「いいんちょさん、上手だねー」

「ええ。ハルナとは雲泥の差です」

「なにを~! 私だってー!」

 

ガッ

 

「ありゃ? サイスの柄が当たった…」

 

(ハルナさんの戦い方は相手に近寄り過ぎかな? 今の間合いだと、リーチの短いナックルの方が向いてる気がする……)

 

「ウチも負けへんで~~!」

 

ブゥン ブゥン

 

「大きく振りすぎですよ! 剣はこうやって素早く振るんです」

 

バシッ!

 

「あやや~ 剣飛ばされてもうたー」

 

(木乃香さんは性格からしてゆったりしてるな……接近戦には向いてないかも……)

 

「う~ん、せっちゃんのマネしたらええんかなー?」

 

バンバンバンバン

 

「うわっ!?」

「あっはは! 三人も相手してちゃ動けないでしょ? 狙い放題だにゃー♪」

「漁夫の利ですか。ずるいですわ」

 

バンバンバンバン

 

(かなり被弾したな……ゆーなさん初心者なのに射撃うまいなー)

 

「今度こそ、当たれー!」

 

ガキィン

 

「隙ありですわ!」

 

ブゥン

 

(まずい……!)

 

ギィィン

 

 

 

 

「……え? アキレス?」

「アスナさん!? 邪魔しないでください!」

「あー、ごめんねー。こいつLBXの修理済んでなかったのよー」

「なーんだ、そうなら言ってくれればいいのに」

 

(ア、アスナさん? K・アーサーは壊れてないですけど……)

(あんたエヴァちゃんに狙われてるんでしょ? いざって時にLBCS使えなかったらどーすんのよ!)

(そ、そうでした……)

 

キーンコーンカーンコーン

 

「やばっ、授業の準備しないと」

「ヨウキヒ直ったらバトルしてほしいアル!」

「のどかとの相性も見てあげてください。彼女はLBXの購入を検討中です」

「ちょ…ちょっと、ユエ~」

「ネギ君モテモテやなー」

 

 

夕方 学生寮

 

「アスナさん、止めてくれてありがとうございます」

「エヴァちゃんの件が終わるまで、あんたはLBX使用禁止ね」

「いいや、それには及びませんぜ」

「え? 誰かいるの?」

「下ですよ下!」

 

「あーー! カモ君!!」

「お久しぶりっス、ネギの兄貴!」

「お、おこじょがしゃべった……?」

 

 

To be continued



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ep.11 助っ人参上!

「カモ君久しぶり! 大きくなったね」

「さっきのLBXバトル見てましたぜ。最後はそこの姐さんに助けられて、男としてはちょっとカッコ悪かったっスよ」

 

「どうせ、誰と仮契約しようかなーとか考えてたんじゃないっスか?」

「そ、そうなんだけど、誰がいいかよくわからなくて……」

 

「そういうときは"LBXを持ってて、運動神経が良さそうな人"を選ぶのが無難っス!」

「LBXを持ってる人?」

「LBCSの戦い方はだいたいLBXと同じっス。LBXの戦術を知ってれば、LBCSになった時に即戦力になるっスよ!」

「なるほど、参考にするよ」

 

「あんたおこじょのくせに妙にLBXに詳しそうだけど何者なのよ? ここに何しに来たの?」

「俺っちはLBXのメカニックっス! 昔ネギの兄貴に助けられた恩を返しに来たんスよー」

 

「カモ君メカニックになったの!?」

「LBXで楽しく遊んでる人間が羨ましいっス……おこじょの短い手じゃLBXの素早い操作はできねぇ……それでも俺っちはLBXが好きだからメカニック始めたんスよ。LBXが傷付いたら言ってくだせぇ。俺っちがすぐに直しますんで」

 

「それじゃ早速だけど、あたしのアキレスの修理してくれる? 細かい作業って苦手なのよね」

「合点承知でい! おお、こりゃ結構使い込んでるっスねー。直し甲斐があるっス」

 

「おこじょのくせに器用ね……あたしお風呂に入るから、あとは任せたわよ」

 

「ネギー、あんたもお風呂入りなさいよー」

「う、うん……」

「姐さん、修理終わったっスよ!」

「誰が姐さんよ。あっ、キズが埋まってる……」

「動かしてみてくだせぇ」

 

「あ、動かしやすくなってる!」

「上半身は関節のグリスアップをしたんスよ。下半身は膝と足首の関節が削れて緩くなってたんで、瞬間接着剤で太らせたっス」

 

「やるじゃないの。ありがと」

「これくらいお安い御用っス! それにしても、関節が摩耗するまで使い続けるのはどうかと思うっス。グリスを差してたら防げたのに」

「アスナさんは普段メンテナンスをしないからね」

「う、うるさいわねー。機械いじりは苦手なのよ」

 

 

翌朝

 

「ふあ~~……あれ?あたしの下着がない! 木乃香のも!?」

 

「姐さん、おはようございます! これぬくぬくっスよー」

「な…なにやってんのよあんた……」

「それにしてもこの国の女子の下着は柔らかいっスねぇ 装甲娘として最前線で戦ってる連中はパンツがくったくたになるまで履き続けるってのに」

「何の話よ! このエロおこじょーー!!」

「アスナー、動物虐待はアカンでー」

 

 

「まったく、下着泥棒のおこじょなんてとんでもないペットが来たもんだわ!」

「まーまー、小動物のいたずらやんか」

 

「……」

「どうしたんだ兄貴? さっき…いや昨日から落ち着かないみてえだが」

「じ、実はウチのクラスに問題児が…」

「おはよう、ネギ先生。今日もサボらせてもらうぞ」

「エ、エヴァンジェリンさん、茶々丸さん!」

「おっと、学校内ではおとなしくしておいた方が身のためだぞ。また生徒を襲われたくはないだろ?」

「くっ……」

 

「あの二人が問題児っスね!?」

「うん…エヴァンジェリンさんは吸血鬼なんだ。しかも真祖…」

「し…真祖!? 最強クラスの化け物じゃないっスか!」

「でも今は魔力が弱まってるらしいんだけどね」

「弱体化っスか……だったら俺っちにいい案があるぜ」

「どうするつもりよ?」

「先に相方の茶々丸ってヤツを兄貴と姐さんが二人がかりでボコっちまえばいいんだよ! そうすればエヴァンジェリンも倒しやすくなるぜ」

「二人がかりって……アスナさんと仮契約しろってこと!?」

「そういうこと。二対一で各個撃破っス!」

 

「……ん? 仮契約ってなによ?」

「魔法使いと仮契約すれば、主人の魔法使いから魔力を分けてもらえるっス! 特殊能力に目覚めたり、兄貴みたいにLBCSになれたりするっスよ」

「なるほどね。で、どうやって仮契約すんの?」

「兄貴とキスするのさ」

 

「え…え~~~!?」

 

「これが一番簡単な方法なんスよ!」

「アスナさんは『LBXを持ってて、運動神経が良さそうな人』……わかった、やるよ!」

「そーこなくっちゃ!」

 

「……やっぱいいわ。仮契約しなくてもあたしはLBCS使えるっぽいし? それに…初めてのは、好きな人としたいし……」

「ア、アスナさん?」

「LBXの工場行った時あたしだけ平気だったじゃん! それってあたしに素質があるってことでしょ? 見てなさい、LBCSコネクト、アキレス!」

 

「ほら、できた!」

「な、なんでできるんスか!? 普通の人はできないハズなのに」

「僕もわかんないよ……」

「体に倦怠感とかないんスか?」

「へっちゃらよ。仮契約はナシでいいわよね?」

「まあ、アスナさんが平気なら……」

「どうなっても知らないっスよ……」

 

 

To be continued




カモ君をメカニックにしてみました。まあ、ハカセの技術には遠く及びませんが。

次回、VS茶々丸!


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ep.12 これが私の力

「いいか茶々丸、おまえの()()()は一般人に見られていいものじゃない。もし使うのであれば、人前は避けることだ」

「はい、マスター」

 

「おーい、エヴァ」

「うっ…タカミチ……」

「学園長がお呼びだ。一人で来いだってさ」

「わかった、すぐ行く」

「お気をつけて、マスター」

「おまえも気をつけろよ。奴らに仕返しされないとは限らんからな」

「了解です」

「仕返し? 何か悪さでもしたのか?」

「うるさい、貴様には関係のないことだ」

 

 

「茶々丸って奴の方が一人になった! 今がチャンスですぜ!」

「だ、だめだよ。人目に付くとマズいよ」

「なんか辻斬りみたいでイヤね」

 

「えーん。あたしの風船がー」

「木に引っかかってるわね。取ってあげたいけど今出たら茶々丸さんに見つかっちゃうし……」

 

バシュッ ドドドド……

 

「え……」

「飛んだ……」

 

「わー! お姉ちゃんありがとー!」

 

「そ、そういえば茶々丸さんってどんな人ですか?」

「え、えーと……なんかおとなしくて変な耳が付いてて……」

「見りゃわかるっス。てかどう見てもアンドロイドだろ」

「ええーー!!?」

「茶々丸さんって、人間じゃないのー!?」

「気づいてなかったんスかーー!?」

「そういや生身で∞ドライブ使ってたっけ…」

「その時点で人間じゃないっスよ!?」

 

 

「あらあら、おぶってくれるのかい? ありがとねえ」

 

「ニャーニャー」

「茶々丸が猫助けたぞー!」

「さすが茶々丸ー!」

 

「茶々丸さんって……」

「いい人だー」

 

「なに感激してるんスか! 茶々丸の奴をヤるって決めたでしょ!? 人目のない今がチャンスですよ!」

「うっ……しょうがないわねー」

 

 

「ニャーニャー」

「……こんにちは。ネギ先生、アスナさん」

「あの…僕を狙うのはやめていただけませんか?」

「申し訳ありません、私にとってマスターの命令は絶対ですので」

「……そうですか。LBCSコネクト、K・アーサー!」

「アキレス!」

 

「LBCSが二人……∞ドライブ発動時の勝率…30%未満……」

「へっ、戦う前に負けを認めたっスか?」

「マスターの命令のため、ここで倒れる訳にはいきません。LBCSコネクト、ハーデス」

 

「茶々丸さんも!? あの時本気出してなかったのか!」

「なんか…すごいキラキラした翼ね……」

「見とれてる場合っスか!? 鎌の攻撃に気をつけるっスよ!」

 

「このまえと同じように力が湧いてくる……うぉりゃああああ!!」

 

スカッ

 

「あれ?」

「姐さん、何やってんスか!」

「でやぁ!」

 

ガキィィン

 

「くっ!このっ!当たれっ!」

「もっとよく狙うっス!」

 

「隙ありです」

 

ズバッ

 

「うわっ!!」

「アスナさん!」

 

「あなたの戦い方は普段のLBXバトルから予測できます。直線的で猪突猛進、カウンターに弱い」

「へぇー、エヴァちゃん以外は無関心かと思ったら、意外とよく見てるじゃない」

 

(今だ! 後ろから…)

 

「発動、ディメンションΣ」

 

「なっ…!」

「分裂した!?」

 

バシュバシュバシュ

 

「いだだだ! 俺っちに撃つなーー!!」

「このぉ! まともに戦いなさいよー!」

 

ドスッ

 

「消えた…!」

 

ズバッ

 

「こっちもです! ということは」

「あれが本体ね! いくわよ、ライトニングランス!」

 

ピシャアアアン

 

「ぐぅっ…!」

「よっしゃあ! 痺れて動けないっス!」

「とどめです。魔法の射手・ソードビット!」

 

「すいませんマスター……もし私が動かなくなったら猫のエサを……」

 

「……やっぱり戻れーー!!」

 

ズバズバッ

 

「うわぁっ!!」

「ネ…ネギ!?」

 

「……コネクト解除」

 

ゴゴゴゴ……

 

「あーあ、逃げちゃった……」

「兄貴!? 自分に撃ってどうするんスか!? LBCSで軽減できるからって無茶苦茶っスよ!」

「や、やっぱり僕の生徒なので怪我させたくなくて……」

「なにやってんのよ! 軽減しきれてなくて切り傷できてるじゃない!」

 

 

夕方 喫茶店前

 

「ハカセ、この前茶々丸が野良猫にエサやってたぞ。AIの成長は問題なさそうだな」

「もっとユーモアがあってもいいですよね。私のこと『お母さん』って呼んだりしないかなー」

「おいおい、同級生でお母さんはないだろ」

「それを言ったらエヴァさんだって『マスター』じゃないですか」

「おっと、噂をすれば」

 

「おかえり、茶々丸。随分汚れてるけどどこ行ってたの?」

「猫にエサをあげてきました」

「またか。すっかり動物好きになっちまって」

「あ、ショートした跡がある。あんまり無茶なことしちゃダメだよ?」

「申し訳ありません」

 

「では、私は帰りますね。明日は研究室にいますから、何かあったら連絡くださいね」

「おう」

 

「……茶々丸、LBCSを使ったのなら記録(ログ)を改竄しておけ。ハカセはLBCSのことは知らないんだからな」

「了解です、マスター」

 

 

To be continued




LBCSハーデスはアンドロイドでしかコネクトできないので、茶々丸に使わせました。
茶々丸と装甲娘のハーデス(P・E・R・U)は成長するAIを持つアンドロイド、動物好きという点が共通してます。


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ep.13 忍者の秘奥義

擬音語と会話文ばっかりで漫画みたいな表現になってますね……

地の文で表現したいけど、雰囲気が壊れそうなのでこのままにしてます。


「かえで姉、おはよー」

「おはようです」

「おはようでござる。今日は二人とも早いでござるな」

「休みだからこそ早起きしてLBXで遊ぶんだよ!」

「いい心がけでござる。早起きは三文の徳と言うし、拙者はこれから修行に行くでござる」

「勉強した方がいい気もしますけど…」

「かえで姉、出かけるまで時間あるんだったらバトルしようよ!」

「構わんでござるよ。風香殿と史伽殿二人でかかってくるでござる」

「二対一だね! いくよ、ヴェスパー!」

「ホーネット、出番です」

「ジライヤ、出陣でござる」

 

バトルスタート

 

「ふみか、スナイパーなんだからよく狙ってよ!」

「わかってるです!」

 

バキュン バキュン

 

「そう簡単には当たらんでござる。スナイパーから先に排除するでござるよ」

「やらせないよ! ……あれ?ジライヤどこ行った? 隠れても無駄だよ!」

 

「あーん! 至近距離じゃ狙い撃ちできないですー! お姉ちゃん助けてー!」

「え!? もうそっち行ったの!?」

 

(やはり気づいてないでござるな……)

 

「ふみかから離れろー!」

 

ドスッ

 

「今だふみか!」

「はいです!」

 

『アタックファンクション ヒートフェンス』

 

ジュウウウ……

 

「オーバーヒート…やるでござるな」

「からの~」

 

『アタックファンクション ソニックランス』

 

ドスッ!

 

「やった! かえで姉に勝った!」

「まあ、二対一ですけど」

 

「油断したでござるな」

 

ドサッ

 

「え? そんな! ホーネットがやられたです!」

「ジライヤがもう一機!? いつの間に!?」

「最初から二機いたでござるよ。CCMのレーダーは見てなかったでござるか?」

 

「ずるいですー!!」

「二対一って言ったじゃん!」

「拙者は『二人でかかってこい』とは言ったが、『二対一』とは言ってないでござるよ」

 

ズバズバズバッ

 

「ちょ、速すぎ! ガードしきれないよー!」

「とどめでござる」

 

『アタックファンクション 旋風』

 

ズバァァン!

 

ドサッ

 

「あーん、負けたー。二機同時操作とかずるいよー」

「あれどうやったの?」

「それは秘密でござる。では拙者は修行に行ってくるでござるよ」

 

 

山の中

 

「ここなら誰もいないよね……LBCSコネクト、K・アーサー! 必殺ファンクション!」

 

『コネクトエラー パージシテクダサイ』

 

「……コネクト解除。はぁ、やっぱりダメか。エヴァンジェリンさんが襲って来たらまたアスナさんに頼らなきゃならないのかな……」

 

「……おや? 誰かと思えば、ネギ坊主ではごさらんか」

「な、長瀬さん!? こんなところで何してるんですか?」

「修行でござる。ネギ坊主こそ何してるでござるか?」

「あ、僕はその…体力作りの特訓……みたいな?」

「拙者と同じでござるな。修行ついでに食料でも獲ってみるでござるか」

「あ、はい! やってみます!」

 

「岩魚は警戒心の強い魚だから、遠くからこのクナイで…」

「えいえいっ……あれ? 飛ばないな」

 

「次は山菜採りでござる」

「あ、それなら僕にもできそう」

「16人に分身して一気に集めるでござる」

「に、忍者だーー!!」

「「「忍者? なんの事でござるか?」」」

 

 

「ごちそうさまでした。こういう自給自足の食事も楽しいですね」

「そうでござろう? ではネギ坊主、拙者のLBXと対戦するでござる。そのK・アーサーと戦ってみたいでござる」

「いいですよ。マジックダンボール展開。いくよ、K・アーサー!」

「ジライヤ!」

 

バトルスタート

 

「あれ? レーダーの反応がふたつあるぞ?」

「もう気づいたでござるか。さすがネギ坊主」

「二機使うなんてずるいですよ!?」

「あいあい、片方は取り下げるでござるよ。これで一機に集中できるでござる」

 

ズガガガガガ

 

「なっ!? 速い!」

 

ブンブンッ

 

(速すぎて当たらない……カウンターを狙うか…)

 

スカッ

 

「え? 消えた!?」

「そいつは残像でござるよ」

「ジライヤが…三機!?」

「おっと、LBX自体は増やしてないでござるよ。これぞ『分身の術』でござる」

「やっぱり忍者じゃないですか!」

 

ブンブンッ ブンッ!

 

「ど、どうしよう……」

「そう警戒しなくても、ただの残像に攻撃力は無いでござるよ」

 

(でも本体の高速攻撃が怖いな……カウンターアタック……はダメだ、残像だったらダメージにならないし、チャンスゲージがもったいない……)

 

「そうだ、残像ごと吹っ飛ばせばいいんだ! 必殺ファンク…」

「もう遅いでござる!」

 

バチバチバチ

 

ズバッ!

 

「あっ! K・アーサー!!」

 

「紫電手裏剣でござる。拙者の勝ちでござるな」

「参りました。長瀬さん強いですね」

「これでもまだまだでござる。拙者より強い者などたくさんいるでござるよ」

 

 

翌朝

 

(長瀬さんすごいなー。普通の人ができない戦い方を一人でこなしてるんだもんな。僕も一人で強くならないと!)

 

ゴゴゴゴ……

 

「行ったでござるか。それにしても、LBCSって実在するんでござるな。てっきり都市伝説かと思ってたでござる」

 

 

To be continued




忍者のLBXといえばクノイチやバル・スパロスがいますが、楓のはジライヤにしました。
楓と装甲娘のジライヤは二人ともござる口調の忍者ですので。

風香と史伽はスカカードが蜂の格好なので、LBXも蜂にしました。

風香はスズメバチがモチーフのヴェスパー、武器は槍のハニカムスピアです。

史伽はホーネット、武器はスナイプアーバレストです。
史伽と装甲娘のホーネットは性格や喋り方が似てるので、妹にホーネットを持たせました。


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ep.14 VSエヴァンジェリン 前編

4月15日 放課後

 

バンバンバンバン

 

「亜子、逃げてばっかじゃ勝てないよ!」

「そんなんいうても、避けるので精一杯や……」

「とどめだよ!」

 

『アタックファンクション マキシマムチェイン』

 

ババババババババ

 

「ああっ!」

「亜子、まだまだだね!」

「ゆーなって容赦ないな」

「LBXバトルは甘くないの!」

 

 

「みんなー、お待たせー」

「あ、まき絵遅かったやん」

「いやー、停電用のろうそくとか買ってたらエヴァちゃんとぶつかってさー。買ったものばらまいて、拾うの大変だったよ!」

「気を付けなよ? エヴァちゃん小さいんだから」

 

 

(同じクラスにアレの適合者がいたとはな……私のために働いてもらうぞ、佐々木まき絵)

 

 

「皆さん停電の準備してるんですね」

「今日の夜8時から12時までだよ」

「学園都市全体の年2回のメンテナンスです」

「街灯とか全部消えて、真っ暗になるんです……」

「生徒は外出禁止だってさー」

「え~ つまんなーい」

 

「ネギは停電中どうすんの? あたしは寝るけど」

「僕は寮の周辺の見回りです」

「そか、ネギ君先生やからなー」

 

 

午後8時

 

「そろそろ停電やな。まき絵、ろうそく用意しよ」

「うん……あれ? 袋の底になんか入ってる。これって、LBX?」

「まき絵? どしたん?」

「……フフフ」

 

 

『こちらは放送部です。これより学園内は停電となります。学園生徒の皆さんは極力外出を控えるようにしてくださ…』

 

「封印結界の予備システムへのハッキング…成功しました。これでマスターの魔力は戻ります」

「この時を待ちわびたぞ。LBCSコネクト!」

 

 

「真っ暗でちょっと怖いけど、誰もいないから暇だねー」

「……兄貴、何か異様な魔力を感じねーか? この大浴場の中から」

「そういえば確かに…まさか!」

「エヴァンジェリンの奴っス! 恐らくこの停電で魔力が復活したんだろうな」

「そ、そんな……」

 

「ネ~ギ君、あーそーぼー♪」

「まき絵さん!? 停電中なのに何してるんですか!?早く寮に帰ってください!」

「そう言わずに遊ぼうよー。LBCSコネクト、ヴァンパイアキャット!」

 

「ま、まき絵さんがLBCSに!?」

「前にあいつに噛まれたから操り人形になってんだ! 兄貴、こっちも構えとけ!」

「うん! LBCSコネクト、K・アーサー!」

 

「ネギ・スプリングフィールド、今日こそおまえの血を存分に吸わせてもらうぞ」

「出やがったなエヴァンジェリンに茶々丸!」

「あ! ゆーなさんに亜子さん、アキラさんも!?」

 

「行け、我が下僕!」

「「「LBCSコネクト」」」

「ジャンヌ・D」

「マリーフェイン」

「トリトーン」

 

「チッ、運動神経の良さそうなの集めやがって!」

「クラスメイトを操るなんて卑怯ですよ!」

「なんとでも言え。人形使い(ドール・マスター)の力、見せてくれるわ!」

 

バンバンバン

 

「うわあっ!?」

 

ブゥン

 

ドゴッ!

 

「ひー! 容赦ねえっスー!!」

 

「いっくよー! トリプルヘッドスピアー!」

「兄貴! ガードだ!」

 

ガキィィン!

 

「もー、ガードしないでよー」

「まき絵さん! やめてください!」

「兄貴、運動部の4人は無視すりゃいいっス。魔法使いじゃないからじきに体力切れになるっスよ」

「そ、そうだね。よーし!」

 

ゴゴゴゴ……

 

「空中戦か! ナイスアイデアだぜ!」

「飛べるのは茶々丸さんだけ、撃ってくるのはゆーなさんだけだから、今は逃げ回って時間稼ぎだ」

「そううまくいくと思うか?」

「なっ!? エヴァンジェ…」

 

ガッ ギギギギギ……

 

「私も飛べるんだよ。そこの小娘と一緒にするな!!」

 

「アタックファンクション サイドワインダー8!」

「「うわあああ!!」」

 

 

ドガーーン!!

 

 

「あ…危なかった~~」

「こいつら魔法使いじゃねーのになんで使いこなしてんだ!?」

「私が魔力を分け与えたからだ。みくびるなよ小動物」

 

「6人同時とか分が悪すぎっス! 兄貴、CCM貸してくれ!姐さん呼ぶから!」

「うん、おねがい!」

 

「茶々丸、挟み撃ちだ。こいつを墜落させるぞ!」

「了解です」

 

(まずい…急上昇!)

 

ズバッ

 

「ぐあっ! おい茶々丸! 気を付けろよ!!」

「申し訳ございません」

 

「今だ、風花・武装解除!」

 

ブォォォォォ

 

「ちっ、当たるか」

「「きゃあ!!」」

 

(当たったのはまき絵さんとゆーなさんだけか…)

 

「「うーん……」」

「流石に消耗して気絶したみてぇだな」

「残りの2人も助けないと!」

 

 

To be continued




まき絵もヴァンパイアキャットにしました。

まき絵とヴァンパイアキャット(アンリ)は声優さんが同じで、純粋で子供っぽい性格が似てますので。


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ep.15 VSエヴァンジェリン 後編

ピリリリリ ピリリリリ

 

「……ん~? 誰よこんな時間に……はい、もしもし?」

「姐さん! お休みのとこ申し訳ねえが、今すぐ大浴場に来てくんねえか? 兄貴がピンチなんだ!」

「え? ネギに何かあったの?」

「今エヴァの奴と戦ってるとこっス! 姐さんのクラスメイトが操られて、助けながら戦ってんだ!」

「はあ!? ネギ一人で戦ってんの?」

「だから姐さんの力を貸してほしいんだ! アキレスを忘れずにってうわあ!!『ガキィィン』」

 

「あのバカ! また一人で突っ込んで! あたしが行くまで倒れるんじゃないわよ!」

 

 

ギギギギギ……

 

「ぐうっ……!」

「ほらどうした? 押し返してみろ! 奴の息子だろ?」

 

(前に戦った時よりパワーが増してる……これがエヴァンジェリンさんの力……!)

 

「兄貴、LBCSで飛べる時間はあんまり長くねぇぞ! 兄貴は男なんだから」

「わかってるよ! 降りる前に亜子さんとアキラさんを解放しないと…」

 

「今度こそ撃ち落としてやる! 魔法の射手・デビルソウル!」

 

ウォォォン

 

「うわあっ! 避けても追ってくるー!」

「フハハハ! 闇魔法の追尾弾だ!」

 

ドォォン

 

「ぐあっ!!」

「兄貴しっかりしろ! 落ちてるっスーー!!」

 

バッシャーン

 

「ぷはっ!」

「下が風呂で助かったぜ……」

 

「「ネギ君倒す」」

「うわっと!」

「武装解除が難しいならブレイクオーバーだ!」

「強引だけどしょうがないよね。魔法の射手・ソードビット!」

「無駄や。マジックウォール」

 

ガキキキンッ

 

「くそっ、アシストかよ」

「包囲します。ディメンションΣ」

 

バシュバシュバシュ

 

「いででで! またこれかよー!」

 

「今だ、やれ!」

「アタックファンクション、オーシャンブラスト」

 

ドババババ

 

(くっ、まずい……!)

 

 

 

「ライトニングランス!」

 

ピシャアアアン

 

「「うあああ……!」」

「な…なにっ!?」

 

「よし、ブレイクオーバーね!」

「アスナさん! 来てくれたんですね!」

「姐さんありがとうございます!!」

「このバカネギ! 逃げればいいのに一人で戦って! 心配したんだからね!?」

 

「操り人形が全滅……所詮普通の小娘か」

「あんたもいい加減にしなさいよ! ネギを襲ったりまきちゃんたち操ったり!」

 

「マスター、停電復旧まであと1時間です」

「もたもたしてられんな。茶々丸、ぼーやを集中攻撃だ!」

「了解です」

「やらせないわよ!!」

 

ガッ ギリギリギリ

 

「アスナさん、邪魔です」

「ネギ! 遠くに逃げて! あと1時間耐えるのよ!」

「う、うんっ!」

 

バシュゥゥゥン

 

「逃がすか! そいつの相手はいいから追うぞ茶々丸!」

「はい、マスター」

 

 

「兄貴、どこまで行くんスか!?」

「学園の外! エヴァンジェリンさんは学園の結界から出られないからね」

 

「なかなかせこい作戦じゃないか」

「やばっ、来たっスよ!」

 

「もう一度撃ち落としてやる! 魔法の射手・デビルソウル!」

「同じ手はくらいませんよ! 魔法の射手・ソードビット!」

 

ボン ボン

 

「相殺か……だが、」

 

ドォォン

 

「「うわぁ!!」」

 

「ひとつ落とし損ねたな。LBCSも使いこなせてないし、そろそろ限界なんだろ?」

「兄貴、あの橋に降りようぜ! ジェットの出力が落ちてやがる!」

「くっ、もうちょっとなのに……」

 

「結界の外には行かせんぞ!!」

「エヴァンジェリンさん! もう諦めてください!」

 

「茶々丸、包囲しろ」

「発動、ディメンションシグ…」

 

「させるかあっ!!」

 

「ちっ、もう来たのか」

「アスナさん! 茶々丸さんを頼みます!」

「オッケー! 手出しはさせないわよ!」

「ぐっ…マスター、申し訳ありません」

「まあいい、ぼーやのLBCSは限界が近い。私一人で仕留める!」

 

「……こうなったら僕の全力を出します。LBCS解除!」

「ちょっと! コネクトしてないと危ないわよ!」

 

「何をする気だ?」

 

「セットアップ、エクスカリバー!」

「K・アーサーの武器だけ出してどうするんスか!?」

 

「来れ雷精風の精! 雷を纏いて吹きすさべ! テンペストブレイド!!」

 

ビュオオオオオ

 

「な、なによこれ……!」

「そうか! 兄貴は適合率が低いから、大技はこうやって撃つしかねぇんだ!」

 

「不完全な代用技など消してくれる! アタックファンクション、デビルソウル スワーム!!」

 

グオォォーーーン

 

「あ、悪霊の大群っスー!!」

「ネギー! 負けるんじゃないわよーー!!」

「うおおおおーーー!!」

 

「嵐と悪霊が相殺してるっス!」

「押しきれない!? こいつにまだこんな力が……!」

 

ズバァァン!!

 

「ぐあっ!!」

「マスターのLBCSが!」

 

「やったぜ兄貴! これでエヴァンジェリンは丸腰だ!」

「ぜぇ、ぜぇ……僕の、勝ちです」

「くっ、まだ決着はついてないぞ! LBCSが無かろうと……うぁっ!」

 

「! 予定よりも停電の復旧が7分早い!」

「ど、どうしたの!?」

「マスターの魔力を抑える封印が回復しました! このままでは湖に…」

 

「LBCSコネクト!」

 

 

ゴゴゴゴ……

 

「……茶々丸か?」

「僕ですよ」

「ぼ、ぼーや…! なぜ助けた!?」

「え?だって、エヴァンジェリンさんは僕の生徒じゃないですか」

「……」

 

ポロッ

 

「あっ! ヴァンパイアキャットが!」

 

「落としましたよ、マスター」

「……悪いな」

 

 

「さて、これで一件落着っスね」

「もうこんなことはやめて、授業にも出てもらいますからね」

「フン、わかったよ。おまえには助けられたしな。呪いを解くのも後回しにしてやる」

 

「安心してください。呪いのことは僕が猛勉強して、マギステル・マギになったら解いてあげますから」

 

「それまで何年待たなきゃならないんだ!おまえの血があればすぐに解けるんだよ! 私はまだ諦めた訳じゃないからなー!」

 

 

To be continued




17話あたりでオリジナルの話を書く予定です。


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ep.16 小さな戦士、人から人へ

翌日 昼休み

 

「アスナさん、昨日はありがとうございました」

「まったく世話のかかる先生なんだから。寝てるとこ起こされたし、コーヒーでもおごってもらおうかな?」

「は、はい!……あ、こんにちは。エヴァンジェリンさん、茶々丸さん……」

 

「ネギ先生、アスナさん。こんにちは」

「……フン、私はこんなぼーやに負けたのか」

 

「な、なによその態度! 負けたんだから先生の言うこと聞きなさいよ!」

「だからこうして学校に来てるだろ。ところでネギ先生、ひとつ言わせてもらう。昨日のLBCSの扱い方、褒められたものではないぞ。まさかあの土壇場でLBCSを解除するなんてな」

「それはあたしも思った。ホントに危なっかしいんだから!」

「そんなこと言われても、大技を撃つためにはしょうがなかったんですよ。僕は適合率54%しかないんですから…」

 

「なんだ、意外と高いじゃないか」

「え……?」

「男性のLBCS適合率はせいぜい10%程度だ。54%もあるなら、もしかしたら伸ばせるかもな。男だからといってLBCSが使えない訳ではない。おまえの父親はK・アーサーを完璧に使いこなしてたからな」

 

(そうか…あれはやっぱり父さんだったんだ……)

 

「でも奴は10年前に死んだ……私にかけた呪いも解かずにな」

「10年前? ちょっと待ってください! 僕、父さんに会ったんです!」

「……何だと?」

 

「6年前、僕の故郷が魔物に襲われた時、K・アーサーのLBCSで助けてくれたんです。このK・アーサーはその時父さんがくれた物なんです」

「そうだったんだ……」

「そんな……奴が……サウザンドマスターが生きてるだと?」

「実は僕も、あれが本当に父さんだったのか疑ってたんです。LBCSを使いこなせる男性なんてほとんどいませんから」

 

「フ……フハハハハ! そーか!奴が生きてたか! 殺しても死なんような奴だとは思ってたが!」

「なんか…うれしそうね」

「ええ。マスターのあんな顔は初めて見ました」

 

「父さんを探したいんですけど、このK・アーサー以外に手がかりが無いんです。CPUやメモリの中身も調べてもらったんですけど、記録は何もありませんでした……」

 

「京都だな」

「え?」

「京都に行ってみろ。どこかに奴が住んでた家があるはずだ。奴の死が嘘だというのなら、そこに何か手がかりがあるかもしれん」

「ネギ、修学旅行先は京都・奈良で決まりね」

「そうですね。自由行動の時間に探そうと思います」

 

「へー、京都行くんだー」

「あ、まき絵さん!」

「ねえねえ、このLBXもしかしてエヴァちゃんの? 昨日ぶつかった時に袋に入ってたんだけど」

「ああ、それか。私も昔LBXをやってたんだが、飽きた おまえにやる」

「いいの!? ありがとー! よーし、今度弟とバトルだー!」

「その前に練習でしょ? 慣れてないと難しいわよ」

「僕が教えてあげましょうか?」

「うん、おしえてー」

 

 

「……マスター、よかったのですか?」

「単純に私の興味だ。あいつがどう使いこなすのか見てみたくなったのさ」

「まき絵さんは適合率が高いですが、魔法使いではありません」

「そんなことわかってる! そうじゃなくてLBXプレイヤーとしてだな」

 

「エヴァちゃん、ほんとにもうやらないの?」

「もう一機持ってるんですよね?」

「飽きたと言っただろうが! このへんの奴らは弱いからつまらん!」




8話からほとんど原作通りに書いてきましたが、今回で一段落。

次回はオリジナルの話になります。


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ep.17 御令嬢の役目

ダンボール戦機には神谷重工が、ネギまには那波重工があります。
今回は重工の御令嬢の話を書いてみました。


修学旅行数日前の放課後、千鶴と夏美は商店街の書店で本を探していた。

 

「ちづ姉、LBXバトルの専門書、売り切れらしいよ」

「あらぁ、昨日入荷したばかりなのに?」

「LBXは人気だからねー。っていうか、ちづ姉もLBX始めたんだ」

「私の実家は知ってるでしょ?」

「うん、那波重工だよね。デクーとか作ってるとこ」

「LBX事業に少しは貢献しろって言われて、『ジ・エンプレス』のテストプレイヤーをやらされてるんだけど、全然勝てないのよ~」

「あー、家の仕事を手伝えってやつね」

「負けてばかりだから「これじゃデータにならない」っていつも叱られて……それで、専門書で勉強しようってわけ」

 

「専門書なんか読まなくても、誰かに稽古つけてもらったら?」

「それがね~、あやかは真面目過ぎて説教くさいし、アスナさんや古菲ちゃんにはボコボコにされるし、双子ちゃんにはトラップに引っかけられるし、結局どう戦ったらいいかわからないのよー」

「ちづ姉、もっと相手を選んだ方がいいよ……」

「どっかにいい師匠いないかしら?」

 

千鶴と夏美が書店を出ると、中等部の制服を着た少女が一人、少し離れた模型店に入って行った。

 

「ん? あれ本屋ちゃんじゃない?」

「本屋ちゃんが模型店? 違和感あるわね……」

「気になるよね。ちょっと覗いてみよっか」

 

「いらっしゃい」

「おばさん、こんにちはー。今日も使わせてもらいますね」

 

「本屋ちゃん何してんのかな?」

「夏美ちゃん、覗き見なんて失礼よ。普通に入りましょ」

 

カランカラン

 

「いらっしゃい……あら、もしかしてあなた、那波重工のお嬢さんじゃない?」

「はい、千鶴と申します」

「ほらやっぱり! 那波重工製のLBX、結構売れてるのよ。特にデクーシリーズはミリタリー系が好きなお兄さんたちに人気でねー」

「へぇー、そうなんですねー」

「そうそう、6月にタイニーマキナからオーディーンが発売されるじゃない? 発売前からすごい人気で、毎日予約の電話が来るのよー」

「夏美ちゃん、オーディンってなにかしら?」

「LBXの新商品だよ。ていうか伸ばし棒足りないよ!」

 

ジリリリリ…

 

「また予約の電話ね。はいもしもし」

 

「ちづ姉、実家のLBXをもっとアピールしなくていいの? このままじゃお客さん取られちゃうよ?」

「そんなこと言われても、私LBXのことはあんまり詳しくないし……」

「もう! ……あれ?本屋ちゃんは?」

「こっちよ。LBXの練習してるみたい」

 

「本屋ちゃん、一人で練習?」

「はい……あ、那波さん、夏美さん……」

 

「それウォーリアーだよね。本屋ちゃんの?」

「いえ、お店から借りてるんです……自分のLBXは持ってないので……」

「まだ買わないの?」

「いろんなLBXを試してから決めようと思ってます……ウォーリアーは使いやすくてかっこいいけど、クノイチやクイーンはかわいいしー……」

「本屋ちゃんまでLBXに興味持ったのね。私はLBXの魅力なんてよくわからないわ」

「それテストプレイヤーのセリフじゃないよ……」

 

「え……那波さん、テストプレイヤーなんですか?」

「テストプレイヤーといっても、バトルして記録を集めてるだけよ。でも全然勝てないし、戦闘データの質が悪いってダメ出しされるし、もう辞めちゃおうかしら。そもそもLBXってテストプレイヤーなんかいなくても作れるんでしょ?」

 

「テストプレイヤーは必要だと思います……」

 

カランカラン

 

「あら、いらっしゃい」

「おばちゃん、こんにちはー」

「ジオラマ使わせてもらうよー」

 

「LBXは『危険なオモチャ』とも呼ばれてて、使い方を間違えるとケガをします。それでもLBXは子供たちを笑顔にしてくれるんです……テストプレイヤーというのは、子供たちの笑顔を作るために必要な仕事だと思うんです……」

 

「そこだ! 必殺ファンクション!」

「うわっ、やられたー」

 

「みんな楽しそうだよね。LBXバトルって結構危険だから、テストプレイヤーがちゃんとデータを取らなきゃダメだよね」

「言われてみれば、テストプレイヤーの役目なんて考えたことなかったわ。まさかあなたに説得されるとはね」

「い、いえ……別に説得するつもりは……」

「本屋ちゃん、いい事言ったんだから自信持ちなって!」

「は、はいっ」

「そうねぇ……子供たちのためにも、まだまだ頑張ってみようかしら」

 

「あ、あの……那波さんのLBX、見せてもらってもいいですかー?」

「はいどうぞ。ジ・エンプレスっていうのよ」

「ストライダーフレームですね……装甲が薄くてスピードはありますが、打たれ弱いんですよねー」

「なるほど、だからすぐにやられてたのねぇ」

「避けながら戦えってこと?」

「そうですね……戦い方はハルナに教えてもらうのがいいと思います。ハルナのジョーカーもストライダーフレームでハンマー使いなので……」

「ハルナさんね、わかったわ。教えてくれてありがとね」

「じゃあねー」

「はいー」

 

 

 

「それにしても、みんなLBXにハマり過ぎじゃない?家の事情でやらされてるちづ姉はともかく、本屋ちゃんまで興味持つなんてね」

「夏美ちゃんは流行りに乗らないの?」

「私はやらないよ。LBXなんか持ってたら余計子供っぽく見られるもん」

「あら、そうなの?」




ちづ姉の異名は『女帝』ですので、ジ・エンプレスを持たせました。武器はハンマーのアフロディーテです。


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ep.18 LBXの魂 前編

今回はハカセが作ったLBXの話です。


「エヴァさん、見てください! ついに私のオリジナルLBX"ファントム"が完成しました!」

「青いコウモリみたいだな。禍々しくてかっこいいじゃないか」

「茶々丸に搭載したジェット推進機構を小型化して、アーマーフレームに組み込んでみたんです。早速ですが、ファントムのテストをお願いできますか?」

「テスト?市販化でもするのか?」

「私の目標は自分で開発したLBXの一般販売です! 腕のいいLBXプレイヤーにファントムのテストをやってもらいたいんですよ」

「私じゃなくてもいいだろ……」

「噂で聞きましたよ。エヴァさんはLBXバトルがかなり強いんだとか」

「……わかった。どうせ今は暇だし、やってやるよ」

「ありがとうございます! まずはジオラマの外周を飛行してください」

 

フラフラ……

 

「姿勢制御がかなり難しいな」

「クイーンやホーネットのようなホバータイプとは違い、ブースターで浮遊してますから仕方ありません。エヴァさんでも難しいですか」

 

「……なるほど、操作に慣れが必要だな。空中戦ができるのが強みではあるが、この操作性じゃ一般販売は厳しいだろうな」

「まだまだ改良の余地がありそうですね。では次のテスト項目を」

「もうやらんぞ。使いづらいったらありゃしない」

「えー? もう少し協力してくださいよー」

「別に熟練者じゃなくてもできるだろ。今までのLBXとは違うから、むしろ熟練者の方がファントムの操作に馴染みにくいんじゃないか?」

「なるほど……経験の浅い人にテストしてもらうのもアリですね」

 

 

3-A教室

 

「というわけで、このファントムを使ってバトルをしてもらいたいんですよ。できればそのままテストプレイヤーになってくれたら嬉しいのですが」

「そういうのはハカセが自分でするもんじゃないの?」

「私はLBXバトルが得意ではないので」

 

「のどか、これは引き受けるべきです。自分のLBX欲しがってたじゃないですか」

「う、うん……使ってみようかなー」

「では宮崎さん、お願いしますね。極力ブースターを使って飛びながら戦ってください」

「バトルの相手は誰がするですか?」

「ここはテストプレイヤーであるこの私が…」

「はいはーい! 私のキャットちゃんとバトルしよー!」

「じゃあまきちゃん、よろしくね」

 

「出番を取られましたわ……」

「委員長と宮崎だと実力差がありすぎじゃない? 佐々木くらいが丁度いいんだって」

 

 

「なんかフラフラしますー……」

「隙だらけだよー!」

 

ドスッ

 

「やはり姿勢制御が難しいみたいですね。制御しやすいようにブースターを減らしてみるか…? でもそれだと直進時の推進力が低下、コンセプトである"ハイレベルな空中戦"が実現できませんね。クイーンのようなホバータイプと同レベルになるのでは開発した意味がありません……いや、ブースターを減らさなくても、姿勢制御用のCPUを組み込んでみるというのは…?」

 

「のどか、使いにくいなら無理しなくていいですよ」

「も、もうちょっとだけやらせて……」

 

「いっくよー! 必殺ファンクション!」

『アタックファンクション ライトスピア』

 

「ガ、ガード…!」

 

スカッ

 

「ナイス回避です!」

「私、ガードしたはずなんですけど……」

「ん? システムエラーかな? 宮崎さん、ファントムのコントロールを切ってください」

「は、はい……」

「え~? もう終わり?」

「仕方ないです。LBXが誤作動したら危ないので」

 

テクテクテク

 

「え? 勝手に歩き始めた…?」

「わ、私動かしてないですよー?」

 

ジタバタジタバタ

 

「なんか手振ってるです!」

「そんなバカな! ファントムが勝手に動くなんてありえません! まさか…ブレインジャック!?」

「これはスクープ! "LBXの暴走!"」パシャパシャ

「ど、どうなってるのー?」

 

 

To be continued




後編は怪奇現象の犯人の視点で書いていきます。


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ep.19 LBXの魂 後編

「皆さん、おはようございます」

「「「おはようございます!」」」

 

おはようございます。

 

「今日の欠席は…いつも通り相坂さんだけですね」

 

 

 

 

 

私、出席してるんだけどなー……

 

 

 

 

 

いくら私に存在感が無いからって、居ない人扱いされるのは辛いです。

 

……いじめられてる訳ではありません。私は"幽霊"なので、皆さんに認識されないから仕方ないんです。

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

あ、授業終わりましたね。

 

今日も流行りのLBXバトルが学園のあちこちで始まります。

 

校則でおもちゃは持ってきたらダメってことになってるんですが、学園はLBXメーカーと繋がりがあるみたいで、LBXだけは黙認されてるんだとか。

 

LBXバトルはプレイヤーの性格とか戦略とかがバトルに反映されるので、見てて面白いです。

 

個人的に委員長さんのジ・エンペラーの戦い方が好きですね。ハンマーの重さに振り回されず、流れるように戦うスタイルがかっこいいです。

 

「なんかフラフラしますー……」

「隙だらけだよー!」

 

宮崎さん、新しいLBXの操作で苦戦してるみたい。ブースターを使った浮遊が難しそう。

 

やっぱり、見てるだけはさみしいなー。私も皆さんと遊んでみたかったなぁ……

 

幽霊だからCCMにもLBXにも触れません。せめて私に"体"があったら……

 

「のどか、使いにくいなら無理しなくていいですよ」

「も、もうちょっとだけやらせて……」

 

……あれ?

 

私の体がLBXになってる……いつの間にか取り憑いちゃったみたいです。

 

「いっくよー! 必殺ファンクション!」

『アタックファンクション ライトスピア』

 

ひゃあ!? 危ない!

 

「ナイス回避です!」

「私、ガードしたはずなんですけど……」

「ん? システムエラーかな? 宮崎さん、ファントムのコントロールを切ってください」

「は、はい……」

「え~? もう終わり?」

「仕方ないです LBXが誤作動したら危ないので」

 

機械だけど、人間の体と同じ所に関節があって動きやすいなー。そういえば、"足がある"ってこんな感じでしたね。懐かしい……

 

「え? 勝手に歩き始めた…?」

「わ、私動かしてないですよー?」

 

今なら気付いてもらえるかも? 皆さん、私です! 出席番号1番の相坂さよです!

 

「なんか手振ってるです!」

「そんなバカな! ファントムが勝手に動くなんてありえません! まさか…ブレインジャック!?」

「これはスクープ! "LBXの暴走!"」パシャパシャ

「ど、どうなってるのー?」

 

あー、声は出せないんですね……どうしよう……

 

「ハカセさん、ファントムにMチップは入れてましたか?」

「入れてません。改造するときに外してしまったので……」

「いいんちょ、Mチップって何?」

「LBXの行動を緊急停止させるための安全装置ですわ。市販のLBXには搭載が義務付けられてます」

「Mチップとやらが入ってないのであれば、LBXバトルで止めるしかないですね」

 

そんな……せっかく気付いてもらえるチャンスなのに……

 

「……龍宮? LBXで何してんの?」

「ていうかLBX持ってたですか。意外です」

 

「なるほどな、あれは幽霊が取り憑いてる」

「え…えーー!? 幽霊!?」

 

あ、気付いてくれた……!

 

「なんでわかるの?」

「アサシンのスコープを改造して、特殊な電磁波を探知できるようにしたのさ。この電磁波の形は人間、つまり幽霊だ」

 

「そ、そもそも幽霊なんているはずが……」

「委員長、もしかしてびびってる?」

 

「Mチップ搭載義務違反だ。葉加瀬、後で仕事料もらうからな」

「わ、わかりました」

「悪霊め、神社の巫女として除霊してくれる!」

 

バキュンバキュン

 

ひぃぃ! やめてくださーい!

 

「逃げられたか」

「今のファントムの挙動見ました!? あれこそ私が想定していた動きです! 諦めかけてましたがやはりファントムには市販化の可能性が!」

「なに興奮してるですか。被害が出る前になんとかして止めるです」

 

「今ジオラマから何か飛んでいきませんでした?」

「あっ、ネギ先生! 緊急事態ですわ!」

「実はね、かくかくしかじか……」

 

「エ、LBXの暴走!?」

「LBXの相手はLBXでするしかありませんわ。このまま放っておく訳にはいかないので、ネギ先生も手伝ってもらえますか?」

「はい、僕でよければ。作戦はどうしましょう?」

「廊下の端に追い詰めるってのはどうかな?」

「ファントムは空中を飛べるので、すぐ逃げられると思います。追い詰めるのは難しいかと」

「そこは私にお任せを! LBXを閉じ込めるアイテムを持ってますので」

「ではそのアイテムでファントムを追い込み次第、僕とまき絵さん、委員長さんの3人がLBXでファントムをブレイクオーバー、その後龍宮さんが除霊…という流れでよろしいですね?」

「はい! 被害が出ないうちに解決いたしましょう!」

 

「ユエー、私たちにできることってあるかなー?」

「たぶん無いですね。ケガしないように離れて見てるです」

「う、うん……」

 

「みんな見て! さっき撮ったファントムの写真に人の顔が!」

「ひいっ! 心霊写真!?」

 

「あっ! この人うちのクラスの『相坂さよ』って人ですよ! 生徒名簿に1940って書いてありますから、63年前に亡くなったんですね……」

「やっぱり幽霊なんだねー……」

「この世に未練がある霊は怪奇現象を起こす。悪霊にはさっさと成仏してもらわねば」

 

 

私、悪霊だと思われてるみたい……まだ成仏したくないなあ……この体も返さないとまずいよね……

 

「ん? おい兄貴、あれファントムじゃねぇか?」

「ほんとだ。皆さん、いましたよ!」

 

見つかった!?

 

「もう逃がしませんわ! マジカルエッグ起動!」

 

な、なんですかこれ……出られません……!

 

「壁ができたよ!? なにこれ!?」

「マジックダンボールの周りにバリアを追加したものです。バトルが終わるまで逃げられませんわ!」

 

「こりゃ魔法結界だな。なんで委員長が持ってんだ?」

「委員長さんはタイニーマキナでテストプレイヤーやってるんだよ」

 

「アサシン、Ready」

「ジ・エンペラー!」

「いくよ、キャットちゃん!」

「K・アーサー!」

 

バトルになっちゃいました……

 

「悪霊退散ですわ!」

 

ブゥン ブゥン

 

「委員長、びびってなかった?」

「LBXによる被害を阻止したいんです! びびってなんかいられませんわ!」

 

ジ・エンペラーのハンマー攻撃はくらいたくないです!

 

「相坂さよが取り憑いてからファントムの動きが変わったな」

「なるほど、相坂さんのバランス感覚で姿勢制御をこなしてるみたいですね。この動きをデータ化してアルゴリズムを作れないかな…?」

 

地上は危ないので空中に逃げます!

 

「空中なら僕が!」

 

ひいっ! ついてこないでください!

 

「相坂さん、ごめんなさい!」

 

ズバッ!

 

「やりますね、ネギ先生」

「くらえー、キャットちゃんのチクチク槍攻撃ー!」

 

チクチクチクチク

 

「アホみたいな技です」

 

あーもう! 鬱陶しいですー!

 

ドスッ グサッ!

 

「あ~ん! キャットちゃんにひどいことしないでー!」

 

LBXバトルをやってみたいとは思ってましたが、こんな形でやることになるなんて……

 

「え、消えた!?」

「ファントムの『インビジブル』です!」

 

「どこにいるかわかんないよー!」

「まき絵さん落ち着いて! インビジブルで消えても影は残ってるから、影がある所にいるはずです!」

「なるほど! さすがネギ君!」

 

「……影なんて見当たりませんわ」

「空中でインビジブルを使ったんですね。こうなると簡単には見つかりませんよ」

「「そ、そんなー!?」」

 

今のうちに逃げなきゃ! でも外にはバリアがあるし……私一人でこの四機を倒せそうにないし……

 

バキュン

 

きゃあ!!

 

「姿は消せても、電磁波は消せてないようだな。私には効かんぞ」

 

ガシッ

 

「つかまえたー!」

「まき絵さん! そのまま掴んでてください!」

 

は、はなしてくださーい! うう……せめて声が出せたら…!

 

「おとなしくしてなさい!」

 

 

『ひええ~助けてーー!』

 

 

「ん? ちょっと、私のCCMから声がするんだけど!」

「また怪奇現象ですか!?」

「朝倉さん、見せてください……これは、ファントムからの音声通話です!」

 

『も、もうやめてください! こんなの、友達にすることじゃないですよー!』

 

「ファントムの音声……つまりこれが相坂さんの声ってことですか」

「友達……相坂さんは、悪霊じゃない……?」

 

 

「もー! じたばたしないでー!」

 

結局、除霊されちゃうのかな……

 

「必殺ファンクション!」

『アタックファンクション ホークアイドライブ』

 

バン バン バン

 

 

 

 

 

私は、皆さんと友達になりたかったのに……!

 

 

 

 

 

「ちょっと待ってくださーーい!!」

『アタックファンクション ソードサイクロン』

 

ドン ドン ドォン

 

「ネ、ネギ先生!?」

 

……え? 助けてくれた……?

 

「龍宮さん、やめてください。この人は悪い幽霊じゃないんです」

「みんな、これ聞いて!」

 

『あれ? もう攻撃しないんですか……?』

 

「これは…相坂さよの声か……?」

「しないよ。だって私たちクラスメイトじゃん」

 

『!! 私の声が聞こえるんですか!?』

 

「朝倉さんのCCMに相坂さんの声が届いてるです」

「さっきは攻撃しちゃってゴメンね?」

「さよちゃん、私たちと友達になろ?」

 

『……はい! 私、ずっと一人でさみしかったんですーー!!』

 

「ハカセ、ファントムはさよちゃんにあげてもいいよね?」

「構いませんよ。いいデータを集められるのなら、幽霊でも大歓迎です!」

 

『あ、ありがとうございます! では改めて、相坂さよです。皆さん、これからもよろし…おね……』

 

「相坂さん?」

 

『…………』

 

「あれ? 動かなくなったよ?」

「声も聞こえない……成仏しちゃったのかなー?」

「言い忘れてましたが、スペックのせいでバッテリーの消費が早いので気を付けてくださいね」

 

動けませーん! 誰か充電してくださーい!




さよちゃんとファントムは幽霊が、龍宮とアサシンはスナイパーが共通点です。

LBXに取り憑くのはミゼルオーレギオン、音声通話はゴジョーさんのシン・エジプトを参考にしてます。

次章から修学旅行の話に入りますが、その前に次回だけミゼレムクライシス後の世界の話を書きます。


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ep.20 レジェンドと謎の装甲娘

今回からダンボール戦機の人物が登場します。


2054年

 

ブラックミゼルの討伐に成功し、今なおミゼレムの脅威から世界を守り続けている装甲娘たち。

 

レジェンドと呼ばれている川村アミ、花咲ラン、ジェシカ・カイオス、古城アスカの四人は現在、ミゼレムの討伐任務を終え、ダックシャトルの中で休息を取っていた。

 

 

「はぁー、今日も疲れたなー……」

「残存ミゼレムの完全消滅まであと少しよ。地方はどうしても人手が足りないから、私たちが頑張らないと」

「そうだよアスカ! 気合いで乗りきろうよ!」

「ランはいいよなー。体力あるから人一倍動けるし、オーバーセンスだってすんなり会得したし」

「すんなりじゃないもん! 結構苦労したんだからね!? アスカはもっと食べて、体力つけなきゃ! 昔はよく食べてたじゃん」

「俺はそのうちモデルの仕事があるから、脂肪増やす訳にはいかねーの」

 

「ラン、ちょっといい?」

「どしたのアミ?」

「ジオラマの中にミネルバ改を置きっぱなしにしたでしょ? 持ってきたわよ」

「ありがとー。当分遊んでないから、グリス差したりしてメンテナンスしてたんだ」

 

「あと、こんなのもあったんだけど」

「あっ! それもあたしの!」

「それ、確かユウヤが使ってた"ジャッジ"よね」

「アルテミスで暴走したやつか。なんでランが持ってんだ?」

「前にユウヤが来たときに置いてったんだ。「ラン君がLBCSを使いこなせるようになったから、僕の昔の体験談は役目を終えた。過去の自分、そしてジャッジとも決別する」って言ってさ」

「処分しないの? ユウヤはいらないって言ってたんでしょ?」

「う~ん…なんとなくだけど、これは処分しちゃいけない気がするんだ。"新しい持ち主を待ってる"って感じがして」

「なんだよそれ~」

 

「ユウヤかー。もう当分会ってないわね」

「バンやカズにも久々に会ってみたいよねー」

「ミゼレムの件が全部片付いたら慰安旅行しましょうよ。元シーカーのメンバーやアテナスのみんなも誘って」

「賛成!」

「バカンスかー。私はアロハロア島に行ったことないから、行ってみたいなー」

「そっか、アミはあの時日本で療養中だったよね」

「まあ、私たちもアルテミスや暗殺阻止で忙しかったから、バカンスを楽しめたわけじゃなかったんだけど」

「そうだったんだ。じゃあバカンス目的で行くのはみんな初めてってことね」

「おーし、バカンスに一日でも早く行けるように、ミゼレム退治頑張ろうぜ!」

 

 

 

ブーー!ブーー!

 

 

 

「うわっ! なんだ!?」

「アラートよ。メタモR、非常用回線を開いて!」

『了解だモ!』

 

「宇崎だ。おまえたち、大至急タイニーオービットまで来てくれるか?」

「拓也さん!? どうしたんですか?」

「所属不明のLBCSがタイニーオービットに侵入し、強化ダンボールの開発データを盗んだらしい」

「強化ダンボール……? 何のために?」

「はっきりとはわからんが、ミゼレムの仲間なら強化ダンボールのデータを悪用し、強固なバリアを作るかもしれん」

「そうなると討伐が面倒になりそうだね……」

「私たちが取り返します! そのLBCSってどんなやつですか?」

 

「イフリートだ」

「イフリート……コウヅキクレアのことかしら?」

「いや、コウヅキクレアとは別人らしい。奴の出す炎のせいでまだ誰も近づけてないんだ」

「そこで俺たちの出番ってわけか」

「ああ、奴はまだ社内にいる。逃げられる前におまえたちがイフリートと接触し、奴を拘束してくれ」

「「「「了解!」」」」

 

『目的地変更! タイニーオービットへ向かうモ!』

 

 

タイニーオービット

 

LBXの国内最大手メーカーであったが、ミゼレムの襲撃によりLBXの生産を停止。技術者はミゼレム対策として試作型LBCSの研究開発を進めていた。

 

現在、侵入者の放火により火災が発生。社員は避難を余儀なくされた。

 

 

「アスカ、まだいける?」

「なんとかな。さっきトマトジュース飲んで栄養補給したし」

「よーし、行くわよ!」

「「「「LBCSコネクト!」」」」

 

「LBCSなら、高温地帯でも問題ないわ。さっさとイフリートを見つけて捕まえるわよ」

「この辺めっちゃ焦げてんじゃん! 壁なんか高熱で熔けてるし!」

「イフリートの炎で強引に穴を開けたのね」

「無茶苦茶しやがって」

 

 

「これが強化ダンボールの開発データ……これで世界を変えられる……さて、次の目的地に飛ぶ準備をせねば」

 

 

「いたぞ、あいつだな!」

「イフリートの適合者がもう一人いるなんて聞いてないんだけど?」

「あんた何者!?」

 

「もう突入してきたか……私に近づくな。さもなくば、とんでもない目に遭うゾ」

 

「そうはいかないんだよな」

「強化ダンボールの開発データ、返してもらうわよ!」

 

 

「戦えば魔力を使う……もう飛ぶしかないな、仕方ない」

 

 

「あいつなんか光ってない?」

「必殺ファンクションか!? やらせるか!」

 

「来るな 来るな!」

 

「取り押さえるのよ!!」

 

 

 

 

 

「来るなぁーーー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……おい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、起きろ!」

 

 

To be continued




ユウヤがジャッジを置いていった件はでっちあげです。公式設定ではございません。


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ep.21 ここはどこ?

所属不明のLBCS"イフリート"を拘束しようと立ち向かったレジェンドの四人

 

しかし、拘束することは叶わず。レジェンドの花咲ランは現在、見知らぬ土地へと飛ばされていた。

 

side-花咲ラン

 

 

 

「……おい」

 

 

 

う~ん……?

 

 

 

「おい、起きろ!」

 

 

 

え!? あたし、寝てた……?

 

 

 

「やっと起きたか」

「あれ? イフリートは?」

「イフリート?」

 

「ていうかここどこ? みんなどこ行ったの!?」

「おまえの仲間のことは知らんが、ここは麻帆良学園だ」

 

麻帆良学園……ってどこ? 聞いたことないんだけど。

 

「それより、おまえのその格好はなんだ?」

「なんだって言われても…LBCSだよ。知らないの?」

「知っとるわ! なぜLBCSの格好のままなのかと聞いとるんだ! 魔法秘匿義務を忘れたのか!?」

 

「魔法?秘匿義務? なんのことかわかんないよー……」

 

(こいつ……魔法のことを何も知らないのか?)

 

 

なんか変な子供に絡まれちゃった……

 

あたし、なんでこんな所にいるんだろ? タイニーオービットでイフリートを取り押さえようとして、気がついたらここに……

 

わけわかんない。

 

そうだ、CCMで助けを呼ぼう!

 

……あ、あれ? 連絡先が全部圏外になってる……なんで?

 

 

「茶々丸、そいつを見張っておけ。私はじじいと話をする。逃がすんじゃないぞ」

「了解です、マスター」

 

プルルルル……

 

「ほぉ、珍しいのぉ。おぬしから電話を寄越すとは」

「LBCSのことで話がある」

「なんじゃ?」

 

「魔法を使えない者がLBCSを使いこなせる…と言ったら信じるか?」

「それはありえんわい。LBCSの動力源は魔力だからのう。そんなこと、ワシの数倍長く生きとるおぬしの方がよく知っとるはずじゃが?」

 

「さっきLBCSを装着したままの女が倒れてたんだ。今は茶々丸に見張らせてる」

「なんと……そやつの特徴は?」

「高校生くらいで赤い髪の女だ。魔法のことは何も知らないらしい。こいつの処遇をどうする?」

 

「魔法を知らない……うーむ、さすがにそやつを野放しにはできんのう……LBCSが露呈すれば、魔法の存在がバレるのも同然じゃからの」

 

「魔法協会も災難だな。ただでさえマジックダンボールの件で翻弄されてるのにな」

「マジックダンボールをわざと壊して悪用したのはおぬしじゃろうに……そうじゃ、今日はその子を保護してやってくれんか?」

「私がか?」

「女子寮は今空きが無いんじゃ」

「拘置所にでもぶちこめばいいんじゃないか?」

「それはこれから会議して決める。こんな前例の無いこと、ワシ一人で決められんわい」

「それもそうだな」

「一応その子の名前を聞いておきたい」

 

「おい、おまえの名前は?」

「花咲ランです……」

 

「うむ、わかった。処遇が決まったら協会の者に迎えに行かせるぞい。それまでその子を頼んだぞ」

「フン、しょうがないな」

 

どうしよう……誰にも連絡できない……

 

「そこのおまえ」

「な、なに……?」

「いつまで(L)(B)(C)(S)でいるつもりだ?」

「はいはい、解除すればいいんでしょ」

 

この子なんなの? どう見ても年下なのにさっきから偉そうなんだけど。

 

「今日は私の家に泊まれ。夕飯と風呂も用意してやる」

「え、いいの?」

「もう日が暮れてるし、おまえの仲間とも連絡が取れないんだろ?」

「あ、ありがと……お世話になるわけだし、あんたたちの名前聞いていい?」

「エヴァンジェリンだ」

「絡繰茶々丸です」

 

この茶々丸って人、アンドロイドだ……

 

ミゼルやシータとかは人間と見分けがつかないくらいだったけど、この人はバレバレだね。耳の形がなんか変だし、膝の関節とかどう見ても機械だもん。

 

 

「ここが私の家だ」

「お邪魔しまーす」

「では、私は夕飯の支度を」

 

わぁ…この家、人形がいっぱいあって、ドールハウスの中に入り込んだみたい。

 

あ、ヴァンパイアキャットがある!

 

「どうした? LBXを凝視して」

「これ、友達が使ってるLBXと同じなんだ」

「ほぅ、奇遇だな」

「エヴァちゃんもLBXが好きなの?」

「腐れ縁だ。LBXなんて、好きでも嫌いでもない」

 

腐れ縁? よくわかんないけど、そういう人もいるんだ……

 

…………

 

………

 

……

 

 

さて、夕飯食べてお風呂も入ったし、寝るとしますか。

 

 

 

 

……なんか眠れないなー。

 

 

「どこ行く気だ?」

「お手洗い…借りていいかな?」

「好きにしろ」

 

 

 

はぁ……なんでこうなっちゃったんだろ?

 

無事にみんなと会えるのかな……?

 

電話は相変わらず繋がらないし……

 

 

 

さみしいなぁ……

 

 

 

「お手洗い、長いですね」

「……」

 

 

To be continued




ネギまのシナリオにレジェンド女子を組み込む形で進めていこうと思います。

原作ではエヴァンジェリンは携帯を持ってませんが、LBXバトルができる⇒CCMを持ってるという設定にしてます。


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ep.22 合流しなきゃ!

2003年4月22日 早朝

 

突如麻帆良学園に迷い込んだ花咲ラン

 

寄る辺のない彼女は、エヴァンジェリンのログハウスで一夜を明かすことになった。

 

 

 

『プルルルル…』

 

う~~ん……

 

電話? まだ眠いのに……

 

「もしもし?」

 

「ラン! 大丈夫?」

「アミ!? 急にみんないなくなるから心配したんだよ!?」

「私もよ。気が付いたら京都の清水寺にいたの」

「京都!? なんでそんな遠くに?」

 

そっか、あたしだけじゃなくアミも飛ばされてたんだ……

 

「わからない……ランは今どこにいるの?」

「麻帆良学園ってとこだよ」

「麻帆良……? 聞いたことないわね」

「ジェシカとアスカは? CCMの連絡先が全部圏外になって繋がらなかったんだけど」

「私もラン以外はみんな繋がらなかったわ」

「これってあのイフリートのせいだよね? ジェシカとアスカも遠くに飛ばされてるかも。ダックシャトルに戻って合流しようよ」

 

「ラン、ちょっと待って。ダックシャトルには戻れないと思うの」

 

え? どういうこと?

 

「おかしいと思わない? 私もランも知り合いの連絡先が圏外で繋がらない……CCMの故障だとしたら説明がつくけど、今こうして電話できてるよね?」

「うん」

 

「CCMの故障でもないのに繋がらない。もしかしたら、私たちだけ別の世界に飛ばされた……そう考えられないかしら?」

「べ、別の世界!?」

 

なにそれ!? 別の世界があるとか信じられないんだけど!

 

「私たちの居た世界とは違うから、知り合いと連絡が取れない。ということはダックシャトルも、この世界には無いってことよ」

「ここが別の世界だとしたら、どうやって帰るの?」

「イフリートを見つけるのよ。元の世界に帰る方法を知ってるはず。一旦合流して作戦を立てましょ」

「あたしが新幹線でそっちに行こうか? 清水寺なら京都駅から近いし、アミがこっちに来るより楽じゃない?」

「そうね。じゃあ清水寺の近くで待ってるから」

 

よーし、準備はできたし、早速出発…

 

「おい待て、勝手な行動をするな。詳しいことは言えんが、おまえはこの世界の"イレギュラー"なんだからな」

「そんなこと言ったって、もう京都で友達と会う約束したんだけど」

「ったく……茶々丸、抑えとけよ」

「了解です」

「なにすんの? 邪魔しないでよー!」

「またじじいに電話しなきゃな」

 

 

「エヴァか。なんじゃこんな朝早くに」

「例の女の仲間が京都にいるらしい」

「ほぉ」

「で、あの女が京都に行きたいと言ってるんだが、行かせてもいいのか?」

「それがのう……会議で話をつけて、魔法協会で身柄を保護することになったんじゃ。ガンドルフィーニ君が迎えに行くまで家から出してはならんぞ?」

「そうか。京都にいるあいつの仲間はどうするんだ?」

「ネギ君に修学旅行のついでに連れて帰ってもらうとしよう。その子の名前と特徴を聞き出してくれんか?」

 

 

「うおりゃあーーー!!」

「!?」ドサッ

 

「どうしたんじゃ?」

 

「あっ! あいつ逃げやがった!」

「な、なんじゃと!?」

 

「申し訳ありません。背負い投げをくらいました」

「逃がすなと言っただろうが!! くそっ、ぼーやに連絡だ!」

 

 

「もしもし? エヴァンジェリンさん?」

「ぼーや、緊急任務だ! 赤い髪の女子高生が京都行きの新幹線に乗るつもりだ! 見つけたら修学旅行が終わるまで保護して連れて帰れ!」

「ええーー!? そんなこと急に言われても」

「魔法を知らないのにLBCSを使えるというイレギュラーだ。いいか、絶対に人前でLBCSを使わせるなよ!?」

「そ、そんな人がいるわけ…」

「つべこべ言うな!! そいつの名前は"花咲ラン"だ!わかったな!?」

「はいっ! わかりましたっ!」

 

 

「はぁぁ……このあとガンドルフィーニの相手をしなきゃならんのか……3-Aの連中がいなくてのんびりできると思ったのに……」

「マスター、御愁傷様です」

「おまえがしっかりしないから逃げられたんだろうがー!!」ギリギリギリ

「申し訳ありまあああ いけません そんなに巻いてはああああ」

 

 

イレギュラーがどうのこうの言ってたけど、あいつらに構ってられない!

 

あたしはみんなの所に帰るんだから! まずはアミに会わなきゃ!

 

 

大宮駅

 

「早く来ちゃったから暇アル。誰かLBXバトルしないカ?」

「新田先生に見つかったら没収されるです」

「旅館に着くまで対戦は禁止でござるな」

 

「さよちゃん、新田がいる時は出てきたらダメだからね」

『はい、おとなしく隠れてます!』

 

「皆さん、ちょっといいですか?」

「ネギ君どないしたん?」

「赤い髪の高校生くらいの女性を見てませんか?」

 

『赤い髪の女子高生ですか』

「見てないです」

「う、うん……」

 

「あ、今赤い髪の人入って来たよ!」

「あの人とちゃう?」

 

 

「すいません、花咲ランさんですか?」

「えっ!? なんであたしの名前知ってるの?」

「エヴァンジェリンさんから聞きました。京都に行くんですよね?」

「うん、そうだけど」

 

あー、エヴァちゃんの差し金か……

 

あたし、エヴァちゃんにLBCSの格好見られただけだよね? LBCSってここじゃタブーなのかな?

 

「僕はネギ・スプリングフィールドです。これから五日間花咲さんの護衛をさせてもらうので、よろしくお願いします」

「護衛……?」

 

べつに守ってもらわなくてもいいんだけどなー。こんな小さい男の子にできるの?

 

「中学生が大勢いるんだけど、この人たちはなんなの?」

「僕の生徒です。これから修学旅行なので」

「え!? ということは先生!?」

「は、はい……」

 

この子先生だったんだ……

 

で、あたしは中学生の修学旅行に同伴しろってこと?

 

あたし、場違いじゃない?

 

 

 

 

 

 

「やれやれ だから来るなと言ったのに」

 

 

To be continued




当分の間ランの一人称視点で書いていきます。


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ep.23 京都への道中

どこかの学園に飛ばされたと思ったら、アミはなぜか京都にいて、今度は中学生の修学旅行に同伴? わけわかんない事ばっかり続いてるような……

 

でも、アミの居場所がわかってるだけまだマシだよね。アミって頭いいから、イフリートを探す手掛かりも見つけてくれそう。

 

「おい兄貴、エヴァンジェリンの言ってたこと鵜呑みにする気か? 魔法関係者でもねえ奴の護衛なんておかしくね?」

「やっぱり変だよね。今から学園長に電話して確認するよ」

 

あたし、この子に守られなきゃならないの? 中学の先生らしいけど、なんか頼りなさそうだなー。

 

「…はい、任せてください。親書も必ず届けますので」

「あいつの言うとおりだったか」

「うん。魔法協会が保護するつもりだったのに、脱走したんだって」

「脱走犯かよ!? そりゃエヴァの奴慌てて電話するわけだ」

 

ちょっと聞いてみよっか。

 

「ねえ、あたしはずっと護衛されなきゃなんないの?」

「はい、学園長から正式に指示が下りましたので」

「べつに守ってもらわなくても、あたしは結構強いんだけどなー。空手やってるし、いざって時はLBCSも…」

 

「あっ!ダメですよ!? 人前でLBCSを使っては!」

 

やっぱりLBCSのことはデリケートみたい。エヴァちゃんもLBCSのこと隠そうとしてたよね。

 

『JR新幹線あさま506号 まもなく発車致します』

 

東京駅行きの新幹線が来ると、ネギ君が班ごとの点呼を始めた。

 

「6班はエヴァンジェリンさんと茶々丸さんが欠席で人数不足なので、ザジさんは1班、桜咲さんは5班に入ってください」

「了解です」

 

え!? エヴァちゃんと茶々丸さんもここの生徒なの!?

 

欠席って……二人とも普通に元気そうだったけど、気が乗らなかったのかな?

 

『あのぉ、私はどうしたらいいですか?』

「あ、さよさん(ファントム)も6班でしたね。じゃあ、3班に入ってもらえますか?」

『朝倉さんの班ですね。わかりました』

「さよちゃん、修学旅行楽しもうね!」

『はい!』

 

「ちょっとネギ、この人は誰なの? うちの学生じゃないみたいだけど」

 

気まずい……

 

「皆さんに紹介しますね。こちらが修学旅行の間だけ一緒に行動する花咲ランさんです」

「は、花咲ランです……清水寺にいる友達に会いに行こうとしたら、一緒に旅行することになっちゃいました。あはは……」

「奇遇ですね。僕たちも初日に清水寺に行く予定なんですよ」

 

よその学校の修学旅行に混ざるなんて気まずいよ……早くアミに会いたい。

 

「よろしくねー」

「花咲さんって何年生?」

「高校1年だよ」

「私たちよりひとつ先輩だね」

 

「花咲先輩はLBX持ってる?」

「うん、持ってるよ。ミネルバ改っていうんだ」

 

「見たことない機体でごさる。非売品でござるな」

「このツインテールって、飾り?」

「スラスターじゃない? これでさよちゃんみたいに飛ぶんだよ」

 

「なるほど、軽量なストライダーフレームがベースで、スラスターを頭部と脚部に搭載することで飛行が可能というわけですか。武器腕は威力重視で、ビーム砲による遠距離攻撃も可能と。これは面白い!LBX開発の参考になります!」

 

ハカセって人がミネルバ改のこと褒めてるんだけど、あたしは機械とか全然詳しくないんだよねー。改造とか開発とかは全部山野博士たちがやってくれてたし。

 

「空中戦ができる格闘機ってことアルね。今度私のヨウキヒとバトルしてほしいアル!」

 

LBXを見せたら、みんな興味持ってくれた。やっぱLBXっていいよね。見ず知らずの人でも、LBXを知ってればすぐに打ち解けられる気がする。

 

 

『まもなく終点、東京です』

「皆さん、次は京都行きの新幹線に乗り換えですよ」

 

東京駅周辺はミゼレムの襲撃で壊滅したはず……アミの言うとおり、ここは別世界……なのかな?

 

「肉まんまだ残ってますよー」

「そこのお姉さん、肉まん食べるカ?」

「おっ、美味しそう! 急いで出発したから朝食とってなかったっけ。5つください!」

「そんなに食べるの?」

 

空手とLBCSの任務でカロリー消費するから、食べなきゃやってらんないんだよね。

 

あ、でもこっちの世界でLBCSの任務ってあるのかな? 人前でLBCSの話はタブーみたいだし、今度ネギ君に聞いてみるか。

 

「みんなー、LBXバトルの代わりにカードゲームやろー。勝った方がおやつ獲得のルールで!」

 

肉まん食べたら眠くなってきた……昨日はなかなか寝つけなかったし、今朝はアミに電話で起こされたっけ……

 

「ここで呪文カード発動! パルに5ダメージね」

「あーん、やられたー」

「花咲先輩もやる?」

「あたしはいいや。頭使うの苦手だし、なんか眠いし」

「今は無理しないで寝てた方がいいです。眠いと旅行は楽しめませんので……って、もう寝てるです……」

 

…………

 

………

 

……

 

 

「花咲さん、起きてください。京都に着きましたよ」

「ん~、着いたの?」

 

やれやれ、寝る時間はずらすもんじゃないね。

 

さて、清水寺に着く前にアミに電話しとこう。待ち合わせの場所を決めとかないとね。

 

 

To be continued




修学旅行の班分けを一部変更してます。さよちゃんを3班に入れたことで3班が六人になったので、ザジは3班ではなく1班(双子とチアリーダーの班)に入れました。


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ep.24 清水寺と露天風呂

京都に着いてからアミに電話しようと思ったら、圏外で繋がらない……?

 

おかしいなー、今朝は電話できたのに……

 

「花咲さん、ながら歩きは危ないですよ?」

「あ、ネギ君、悪いけどあたしの友達探すの手伝ってくれる? 清水寺で待ち合わせなんだけど、連絡が取れなくて……」

「相手のバッテリー切れですかね……花咲さんの友達ってどんな人ですか?」

「いつもイヤーマフを着けた人だよ。川村アミっていうんだ」

「わかりました。境内は広いので、3-Aの皆さんにも協力してもらいましょう」

 

30人もいれば、誰か見つけてくれるよね?

 

 

「ここが噂の清水の舞台!」

「誰か飛び降りれっ!」

「おやめなさいっ!」

 

本堂からの見晴らしはいいんだけど、アミは見当たらないなー。

 

「この先は恋占いで女性に人気の地主神社があるです」

「恋占いですって!?」

「ホラ、ネギ君行こ行こー!」

 

参拝のついでにアミを探してほしかったんだけど、みんないつの間にか占いや運試しに夢中になってる。

 

真面目そうなネギ君はクラスのテンションに振り回されてるし……

 

でも、修学旅行の邪魔しちゃ悪いよね。

 

「あれがかの有名な"音羽の滝"です。三本の滝はそれぞれ学業、縁結び、健康にご利益があると言われてるです」

 

せっかくだからあたしもご利益頂戴しますか。

 

クラスの大半が縁結びの滝に集中してるけど、あたしはやっぱ健康かなー。格闘家は体が資本だからね。

 

 

 

「酒樽の設置、完了しました。これより帰還します。」

「あれ? あの人……もしかして……」

「のどか? 飲まないですか?」

 

 

 

「何これおいしー!」

「美味ですわ。なんでしょう、この未成年が飲んではいけないような味は」

「いくらでも飲めそう!」

 

縁結びの水っておいしいの? 健康の水はただの水って感じだったけど。

 

「いいんちょ、しっかりしなさいよっ!」

「はひー?」

 

……ん? みんななんで倒れてるの?

 

「こ、これはどうしたんですか!?」

「縁結びの水を飲んだ人だけが、酔いつぶれてしまったみたいです」

 

は? 酔いつぶれた!? お酒でも入ってたの!?

 

「皆さん起きてください! 他の先生にバレたら修学旅行中止の上、停学ですよ!」

 

「あ、あら? みんなどうかしたの?」

「しずな先生!? こ、これはその……」

「えーと、一部の生徒が疲れて寝てしまって……」

「バスに押し込みますから、旅館に向かいましょう! 花咲さんも手伝ってください!」

 

え、清水寺の参拝は終わり?

 

まだアミに会えてないんだけど!?

 

…………

 

………

 

……

 

 

結局アミと合流できないまま、旅館に着いた。こんなはずじゃなかったのに……

 

「花咲さん、少しお時間よろしいですか? 話したいことがあるです」

「うん、どうしたの?」

「音羽の滝でのお酒の混入事件について、のどかが不審者を見かけたそうです」

「イヤーマフを着けた女性が滝の近くにいたんです……花咲さんに言おうと思ったけど、すぐにいなくなってしまって……」

 

アミ、やっぱり清水寺にいたんだ。でも、いなくなったってどういうこと? 今朝電話で待ち合わせの約束したのに。

 

「誰かと電話してたんです……酒樽を設置したって言ってました」

「お酒を混入させたのは、あなたが探してるイヤーマフの人というわけですね。悪さをする人があなたのご友人なのですか」

「はあ!? アミはそんなことしないよ! あたしはアミの正義感の強さ知ってるんだから!」

 

「そもそもあなたは麻帆良の生徒ではないですよね? 私たちの修学旅行にいること自体不自然です。あなた、一体何者ですか? 私たちに何をする気ですか?」

 

この子、あたしを疑ってるの!?

 

「ユエー、そういうのやめようよー……イヤーマフの人はともかく、花咲さんが関わった証拠は無いよね?」

 

「……そうですね。花咲さんに尋問してもしょうがないです。部屋に戻りますよ」

「あっ、待ってよー……」

 

アミが悪さなんてするわけないのに。

 

……でも、音羽の滝にいたのならなんで合流してくれなかったんだろ?

 

相変わらずアミと連絡取れないし、これからどうしたらいいの?

 

 

「…………」

 

「なに? あんたまだいたの?」

「その……ユエのこと、嫌いにならないでください。修学旅行楽しみにしてたから、予定が狂って機嫌を損ねたみたいで……」

「別に夕映ちゃんのことは気にしてないよ」

 

あたしだって予定狂わされてるんだけどなー。別世界に飛ばされるし、友達とはぐれるし、合流するはずのアミはいないし……

 

「そういえば、花咲さんってどこの生徒ですか……?」

「神威大門装甲学園って知ってる? 自慢じゃないけど、そこの特待生なんだ」

「カムイダイモン……? 聞いたことないです……」

 

有名校の神威大門を知らない……別世界って、これまでの常識が通用しないってことか。LBCSも人前で使っちゃダメって言われたし、なんかややこしいなぁ。

 

 

「みんな酔い潰れてるから静かでござるな。このか殿、暇潰しにLBXで対戦するでござる」

「ええよー。でも分身はやめてな?」

 

 

「あたしたちも気晴らしにバトルしようよ。ここでも流行ってるんでしょ?」

「私は持ってないんです……自分のLBXは欲しいんですが、"これ"というのが見つからなくてー」

「ふーん、考えて決めるタイプなんだね」

「はい……」

 

 

「のどか、そろそろお風呂の時間です。ハルナたちはまだ動けないので、私たちだけで入るです」

 

もうそんな時間か。

 

「花咲さん、あなたも一緒に入るです」

「え? あたしも?」

「ネギ先生はお忙しいので、代わりに私があなたを監視するです。怪しい人物を放置すると、何をしでかすかわかりませんので」

「はぁ……あたしのこと疑っても無駄だからね?」

 

 

 

ここのお風呂は露天風呂だ。夜空の星を眺めながらのお風呂って、風情があっていいねえ。

 

あたしと夕映ちゃんは素っ裸になったけど、のどかだけタオルで体を隠してる。

 

「タオルなんて取っちゃえば?」

「そ、外で裸になるのって初めてで……覗かれたり、しないよねー……?」

 

「どうしたの?」

「のどかは恥ずかしがり屋なのです。特に男性が苦手みたいで」

 

男嫌いってこと? あたしだって男に裸を見られるのは嫌だけど。

 

「じーーっ」

「な、なに……?」

 

女同士でも、ジロジロ見られるのは恥ずかしいんだけど……

 

「ユエー、失礼だよー?」

 

「体は細身なのに筋肉がついてるです。花咲さん、格闘技を習ってますか?」

「うん、実家が空手の道場なんだ」

 

「格闘家とは予想外でした。ここで何かされたら、武術経験ゼロの私とのどかではひとたまりもないです。体力バカのアスナさんと一緒に入るべきでした」

 

夕映ちゃんはあたしから距離を取った。技掛ける気なんかないってば。

 

 

「……ねえユエー、あれなんだろー?」

「LBX……でしょうか?」

 

インビットだ。なんで露天風呂に?

 

「あ、木の上にも……」

「どうやら、LBXに覗かれてたみたいです」

「盗撮LBXなんかぶっ壊してやる! いくよ、ミネルバ改!」

 

LBXを悪用する輩ってどこにでもいるんだね……まあ、現れたら倒すだけだけど!

 

バキュンバキュンバキュン

 

「一機撃破! 次!」

 

バキュンバキュンバキュン

 

「花咲さん、LBXの手際がいいですね」

「うん……どう見ても熟練者の動きだよ」

 

「よし、殲滅完了!」

「すごい……もう倒しちゃった……」

 

ずっとミネルバと一緒に戦ってきたからね。これくらいは余裕かな?

 

 

「ひゃあああーー!」

 

 

今度は更衣室で悲鳴!?

 

「今の声、木乃香さんです」

 

待ってて、今助けてあげるから!

 

 

To be continued



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